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1984-05-10 第101回国会 参議院 文教委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十日(木曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員異動  五月九日     辞任         補欠選任      杉山 令肇君     小島 静馬君  五月十日     辞任         補欠選任      井上  裕君     村上 正邦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         長谷川 信君     理 事                 田沢 智治君                 久保  亘君                 吉川 春子君     委 員                 大島 友治君                 藏内 修治君                 小島 静馬君                 山東 昭子君                 世耕 政隆君                 仲川 幸男君                 林 健太郎君                 村上 正邦君                 柳川 覺治君                 粕谷 照美君                 中村  哲君                 安永 英雄君                 高木健太郎君                 高桑 栄松君                 小西 博行君                 美濃部亮吉君    国務大臣        文 部 大 臣  森  喜朗君    政府委員        文部大臣官房審        議官        兼内閣審議官   齋藤 尚夫君        文部省管理局長  阿部 充夫君        文化庁長官    鈴木  勲君        文化庁次長    加戸 守行君    事務局側        常任委員会専門        員        佐々木定典君    参考人        社団法人日本レ        コード協会会長  高宮  昇君        日本レコードレ        ンタル商業組合        理事長      牛久保洋次君        岡山大学法学部        教授       阿部 浩二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十四年度以後における私立学校教職員共  済組合からの年金の額の改定に関する法律等の  一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付  ) ○著作権法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 長谷川信

    委員長長谷川信君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨九日、杉山令肇君が委員辞任され、その補欠として小島静馬君が選任されました。
  3. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 前回に引き続き、昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 田沢智治

    田沢智治君 今日、教育の荒廃が叫ばれる中で、国民の関心事は、いかに教育充実してくれるか、この辺に関心が集まっていると思います。教育は人なりということは昔から言われております。教職員関係者が後顧に憂いを残さず教育に専念し、有用な人材を多く育成してこそ高度文化国家日本が保障されるものであると私は信じております。その意味において、我が国教育界の大多数を支えている私立学校に奉職をしておる教職員関係者福祉増進国家の重要な施策一つであると私は確信するものでございますが、文部大臣はいかがお考えでございますか。
  5. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 日本教育は、私学のみならず国公立、それぞれの機能を果たしながら、日本教育のために大きな貢献をいたしておることは先生の御指摘のとおりでございます。とりわけ、高等教育機関におきましては、大体八割近く私学に負っているということになるわけでございます。そういう意味日本教育は、今日の日本の繁栄の大きな基盤になっているわけでございますので、そういう意味私学が果たしている役割は極めて大きい、私もそのような認識を持っているところであります。
  6. 田沢智治

    田沢智治君 第二に、我が国の国公私立間の年金制度が、それぞれ異なった条件のもとに運用されておる現状にかんがみ、行革の一環として年金制度整理統合が進められておる状況であると思いますが、今日どのような実態になっておるか、管理局長よりお聞かせいただきたいと存じます。
  7. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 年金制度改革に関しまして、逐次いろいろな作業が進みつつあるわけでございますが、先生も御案内のことだと思いますけれども、整理をして申し上げますと、まず一つは、国家公務員共済組合公共企業体共済組合統合、それから地方公務員共済組合は非常に数多く分立をしておるわけでございますが、この大部分のものにつきまして、年金制度内での財政単位一元化を図るというような、この二つ措置が、既に制度改正等国会の御承認をいただきまして、本年の四月一日から実施をされたというようなことになっております。その後、これからの年金改革につきましては、去る二月の二十四日の閣議におきまして、公的年金制度長期的な安定と整合性ある発展を図る、こういう見地から、昭和五十九年度におきまして国民年金厚生年金保険、それから船員保険、この三つ制度を通じまして、基礎年金導入を図るというような形での制度改正を行うということに相なりまして、これはすでに国会に提案され御審議をいただいているところでございます。それから、昭和六十年におきましては、共済年金につきましても基礎年金導入を図る等の改革趣旨に沿った制度改正を行うということで、この点につきましては現在、関係各所間で検討が進められているということでございます。これら二つ改革は、いずれも昭和六十一年度から実施をするという旨の閣議決定がなされておるというようなところが現在の状況でございます。以後、六十二年度以降はさらに逐次こういった制度間の公平化負担水準適正化云々といったようなたぐいの改正を七十年度までかけて進めていこうと、こういうような仕組みになっているところでございます。
  8. 田沢智治

    田沢智治君 各種年金制度一元化基礎年金ということになりますか。六十年度からそういう方向にいくということが言われておるんですが、私学共済制度がどのように対応していくのか、それによってメリットとデメリットがあると思いますけれども、その辺のところの基本的な考え方があればお聞かせいただきたいと存じます。
  9. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 私学共済制度につきましては、公的年金制度全体の中の、しかも共済グループの中の一つということで、先ほど申し上げましたように昭和六十年度においてその改正を図りたいということで、現在、共済関係グループ関係各所の中で検討が進められておるところでございますが、この制度自体につきましては、これも先生十分御案内のところでございますけれども、昭和二十七年に私立学校振興会法が制定されましたときに、特にその附帯決議といたしまして、私立学校教職員福利厚生対策につきましては、教育基本法第六条の趣旨に基づきまして、国公立学校教職員と均衡を保てるような別途の施策を考慮すべきであるという御指摘がございました。この附帯決議を受けまして昭和二十八年に私立学校教職員共済組合法が制定されたわけでございまして、私学教職員に対しましても国公立学校教職員と同水準福利厚生年金まで含めまして制度が適用されるというようなことに相なったわけでございます。  このような経緯でもあり、教育基本法精神を外しまして、国家公務員である学校教員とのバランスということを十分考えながら、この共済年金制度一元化については、その精神を体して対応してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  10. 田沢智治

    田沢智治君 私学共済年金財政状況は健全であるということをよく聞かしてもらうんですが、現在の収支状況と今後の見通しについて所見を伺いたいと思います。
  11. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 私学共済組合長期経理財政状況でございますけれども、昭和五十八年度決算がまだ出ておりませんので昭和五十七年度ベースで御報告をさしていただきますが、五十七年度長期経理におきます収入は一千三百九十四億円でございまして、これはいわゆる掛金等でございますが、支出は三百三十六億円、この収支差一千五十八億円のプラスになっておるわけでございますけれども、これは将来の年金給付のための基金でございまして積み立てを行っております。この積み立て累計額は、通年度からのものすべてを含めまして現在六千七百十九億という金額に達しておるわけでございます。昭和五十七年度末で推計をいたしますと、将来の給付のために、現在の私学教職員が退職された場合の給付ということで考えますと、そのために準備をしておくべき計算上の金額——責任準備金、こう申しておるわけでございますが、それに対する充足率は九五%まで達しているというようなことで、私学共済におきましては、これまでも財源率の再計算等を数年に一回行っては、それを踏まえまして必要な掛金率を定めるというような措置を講じてきたというような経緯もございまして、九五%というような所要水準を満たしてきているということで、そういう意味では年金財政は比較的健全であると申し上げることができようかと思うわけでございます。  今後の私学共済長期経理に関する収支見通しについてあわせて申し上げますと、昭和五十五年の一月に実施をいたしました所要財源率の再計算結果を踏まえました上での計算でございますが、さらに将来のことは不確定要素が多々ございますので、それにつきましては、例えば組合員数は年々相当ふえてきているわけでございますけれども、これがふえない、今のままだというふうに仮定をし、毎年の年金改定率八%程度だというように見込み、それから資産運用利回りを七%とし、それから掛金率を千分の百に据え置くというようなことで計算をいたしますと、単年度年金関係収支といたしましては、二十年後の昭和七十九年度からはこのままでは赤字になる。そして保有資産の食いつぶしということがあるわけでございますけれども、そういうことまであわせで考えますと、二十八年後の昭和八十七年度赤字に転じるということでございます。  この推計は、年金改定を毎年八%やるというようなことで、最近の状況に比べればかなり高めに年金改定を見込んでおりますし、それからまた掛金率現行のままに据え置くとか、あるいは組合員数がふえないとかいうような非常に厳しい条件計算をしたものでございますので、そういう非常に厳しい条件の中にあっても、なおかつ二十年ないし三十年は大丈夫だという計算であるということでございますので、そういう意味では、かなり、先ほども申し上げましたように健全財政であるということが申し上げられようかと思うわけでございます。
  12. 田沢智治

    田沢智治君 今のお話を聞きますと、昭和八十年ぐらいまでは資産の見合いを見ても十分だというお話でございますが、他の共済年金から見ても安定した内容であると私たちも思っておりますが、せっかく一生懸命働いて、退職後、年金を楽しみにしておる人たち年金をもらえないということになることは、大きな社会的、国家的問題でございますので、長期展望を作成しつつ、八十年、九十年においても充足できるような方策を今後おとりいただきたいということを要望させてもらいたいのでございます。  また、私学共済に入る資格がある学校において、まだ加盟していない学校数というのはどのくらいございますか。およその数でよろしゅうございます。
  13. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 資格があると申しますか、これ現在制度上は、もう法令上はきちっと決まっておりますので、既に入っていないものは法令上はもう入れないという仕組みになっておるわけでございますが、私学加入をしておらないものが五十九校ございます。
  14. 田沢智治

    田沢智治君 それはどういう理由で入らぬのですか。
  15. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この私学共済制度は、先ほど申し上げましたように昭和二十九年に発足をいたしたわけでございますが、その時点以前におきましては、既設校の場合、これは任意加入でございましたけれども、健康保険あるいは厚生年金保険加入しておったケースがございます。これらのものにつきまして、昭和二十九年に私学共済発足いたします場合に、いわゆる選択をさせたわけでございまして、新しい私学共済に入るか、あるいは従来どおりにするかということを自主的に選択をさせたわけでございますが、そのとき相当数のものが私学共済には入らないということで残ったわけでございます。  その後、私学共済制度が逐次充実をしてまいりますにつれて、その中からやはり入りたいというケース学校等も出てまいりましたこと等もございますので、昭和四十九年の際に、再度法律改正をお願いをいたしまして、その時期においてもう一度選択のチャンスを与えたわけでございますが、これは各学校では所属の組合員のいわば投票によりまして新しい私学共済の方へ入るか入らないかということを判断をしたわけ、でございますが、その結果、百十二校が入るというふうに変わりまして、そのときに残りました五十九校が入らないという判断をしたわけでございます。  そういう意味で、現在では、この入っていないものはその後加入することができるという仕組みには法令上はもうなっておらないわけでございますので、加入可能性というのは現行制度上はないわけでございますが、こういう判断をいたしましたことの背景には、従来の健康保険あるいは厚生年金保険という仕組みの中で、例えば健康保険等につきましては、被用者負担本人負担との間の比率の決め方が、ある程度自由にできるというようなことから、組合員にとって有利な比率が決まっておったようなケース等もあろうかと思うわけでございますけれども、そういったようなこと等が恐らく理由になったのではないかと思いますが、この当時の既加入校百八十校ぐらいのうちで五十九校だけはどうしても残るというようなことで入らなかったということでございます。
  16. 田沢智治

    田沢智治君 それから、私学共済組合福祉事業一環として全国各地宿泊施設設置しておるんですが、聞くところによると、現在設置している宿泊施設よりも、また新たに今後建設する会館予定があるというふうに聞いております。現在の宿泊施設組合員利用者数、そしてその経営実態宿泊施設を設ければ設けるほど赤字になっているのか、あるいは現状では利用者も多くて有効に活用し、かつ健全な運営をしているのかどうか、この辺の所見を聞かしてもらいたいのでございます。
  17. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 私立学校共済組合におきましては、組合員、家族の宿泊あるいは保養あるいは研修、いろいろな用途があるわけでございますけれども、そういう形の利用に供するために会館を五カ所それから宿泊所を八カ所保養所を三カ所、それから海、山の家というものを四カ所、合計で二十の施設設置をいたしまして経営を行っているわけでございます。  これらのうち、会館の五カ所と申しますのは、全国を七ブロックに分けまして、北海道、東北、東京云々という七ブロックでございますけれども、それぞれにいわば私学共済組合地方支部というような趣旨を含ませた会館をつくっているというようなことでございまして、これにつきましては、なお、あと二カ所つくる予定があるわけでございますが、これらの施設利用状況を見てみますと、これは全体の数字でございますので、大変わかりにくい数字で恐縮でございますが、昭和五十七年度宿泊延べ人員は、会館で約十五万人、それから宿泊所で十万人、それから保養所、海の家、山の家、こういうところで約四万人ということで、合計いたしまして約二十九万人が御利用いただいているという状況にございます。  また、会館では婚礼等がよく行われるわけでございますけれども、婚礼等利用あるいは宴会、いろんな格好での集会、勉強会、いろいろあるわけでございますが、そういった一時的な御利用をいただく延べ人員は全施設合計で約三十二万人の方に御利用いただいているというような状況でございます。  この宿泊施設経営でございますけれども、これにつきましては、五十七年度決算によりますと、宿泊経理全体としては赤字を計上しているところでございますが、このうち、若干事情が違いますのは、先ほど申し上げました五つの会館でございますけれども、この会館につきましては独立採算を建前といたしておりまして、そういう運営を行っておるわけでございますが、現在五カ所設置されておりますが、やはり設置をいたしました初年度あるいはその数年間というのは、その設置のために施設建設費その他をこれは長期経理の方から借り入れをいたすわけでございまして、利子つけて借り入れをいたして、それを返していくというような金がかかる関係上、当初しばらくの間は赤字という状態があるわけでございます。  しかしながら、昭和四十三年度開設をいたしました北海道会館、四十五年度開設をいたしました愛知会館といったような古いところにつきましては、逐次、独立採算趣旨に沿った運営がなされまして、黒字に変わりつつあるという状況でございますので、残りの三つにつきましても、現在では赤字でございますけれども、いずれ黒字になってくるというふうに考えるところでございます。  それからなお、会館以外の保養所、海の家、山の家といったようなものにつきましては、その性格利用者がほとんど全部が組合員であって、組合員のためにはできるだけ低額で、低い額で利用に供したいというようなこともございますので、そういった関係上、独立採算という考え方ではなくて、保険経理の中から一部繰り入れをするというようなことによって運営をいたしております。そういった関係上、赤字黒字がということになりますれば赤字というふうに相なるわけでございますが、事の性格上、これは国家公務員共済等保養所等もすべて同じでございますけれども、そういった必ずしも経営的に楽だとは言えない状況経営が行われているということでございます。
  18. 田沢智治

    田沢智治君 私が一番心配するのは、宿泊施設会館等を拡大して運営経費が、赤字増大があるとすれば、将来の年金等の支給に支障を来すような結果を生む可能性があるような計画は謹んでもらった方がいいのではないだろうか。ということは、やはり、それぞれがそれぞれに保養所を持ち、いろいろな施設を持って、必ずしも利用度が高いとは言い切れない面が数多くあると私も聞いておりますので、今後、そういう計画を立てるにつきましては、総合計画のもとに、資産運用によりプラスになるような前提に立った緻密な計画のもとに進めていただきたいということを御要望させていただきたいと存じます。  それから、私学共済組合発足をして、これは昭和二十九年ですか、そのときの組合員の数と経営責任体制はどういうような状態でございましたか。
  19. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 当初の規模は、組合員数がたしか五万人程度発足をしたと思います。現在、先生案内のように三十万を超えておりますので、六倍ぐらいの規模に膨れ上がってきておるわけでございます。その事務処理体制と申しますか、当職員等については、その後ある程度増員等が行われたかと思いますけれども、役員等につきましては、ただいま手元に資料を持っておりませんので恐縮でございますが、ほとんど変わりのない設立当初からの状況であろうかと思います。
  20. 田沢智治

    田沢智治君 当初五万組合員で、役員体制は一人の常務理事を置いておる。今日三十三万、約三十四万人に組合員がふえて、事業内容等も非常によく努力なされた結果、個々に成果が上がっていると私も判断するんでございます。しかも、長期年金財源が六千七百億を保有しているということは大変すばらしいことであると。経営努力に対して敬意を表してもいいのではないだろうか。また、昭和五十七年度短期運営費が六百五十六億、長期が三百三十六億、約一千億の運用をしておるというようなことを見ると、約七千億、八千億ぐらいの資産というものを取り扱っている。私は、やはり五万の組合員と七倍ぐらいに膨れ上がった時点での会員を持つ私学共済組合が、経営責任体制が一人でずっとやっているということに不合理さを私は感ずるんです。ですから、ふやすことがいい、悪いということよりも、できる限り私学共済充実、強化を図るということになれば、私学の方々が、五十九校ですか、まだ残っていると、いろいろな意見を酌みつつ一体化して、教職員質的年金については差別のないような形で維持していくということも大きな私は社会的意義があると、こう思うんです。そういう意味において、一人の常務理事で果たしていいのか。今後、年金統合の問題を含めて緻密な長期計画を立てなきゃならぬという次元の中で、果たしてこういう現状で甘んじていることがいいのかどうか、私は疑問に思うんです。最低二人くらいいた方がいいのではないかと、こう思うんです。文部大臣いかがですか。
  21. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 私学共済組合役員につきましては、先生の御指摘にございましたように、理事長の下に常務理事一名、そのほか非常勤の理事は若干名おるわけでございますけれども、そういう体制運営をいたしておるわけでございます。御指摘のように、私学共済組合の業務は組合員数増加等に伴いまして年々ふえてまいります。昭和五十九年度から、そういう点も考えまして、理事を補佐する審議役二人というのを新たに設けるというような措置も講じたわけでございます。お話にございました常務理事一名では不足ではないかということも、私どももかねて問題意識としては持ってきたところでございますが、ただ、ちょうど時期が昭和五十六年の八月に行政改革についての当面の基本方針閣議決定あるいは臨調からの御答申等々ございまして、こういった常勤の役員については抑制をするというよりも、むしろ現在のものを削っていくということが方向が定められ、進行しているという状態の中でもございますので、課題意識としては持っているわけでございますけれども、なかなか実現がむずかしいというふうに考えておるわけでございます。いずれにいたしましても、大事な御指摘であるところでもございますので、今後、少し長い目で見た課題として持ち、適切な時期に実現ができるようなことをできる限り考えてまいりたい、かように存じております。
  22. 田沢智治

    田沢智治君 私学共済組合職員は何名いますか。
  23. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 約二百名でございます。
  24. 田沢智治

    田沢智治君 二百名の職員がおって、大体日本人というものはその職場に就職すると、一生涯その職場のために尽くし、みずからの生活を保障していくというように終身雇用、定年まで終身雇用ということの次元から見ると、その職場に命をかけてまあ俗に言うと去っていくというようなことになれば、私は部内から一人ぐらい常務理事になれますよと、将来理事長にもなれますよというような道を開いてあげるということは、その職場が活性化していくし、愛情を持っていくし、そしてまたお互いが切磋琢磨して、あるいは我々の代表としてひとつ常務理事にしていい共済組合をつくっていこうというような盛り上がりが私がなり出てくると思うんです。しかし、私学共済組合実態から見れば、どっかから頭へみんな来ちゃって、内部の職員が上進できないというような今の仕組みというものも果たしていいのかという疑問を私は持っておりますので、その辺のところを勘案して、将来そういうような道を開いてあげるという努力をしてもらいたいと思うのですが、これはどうですか、文部大臣、そういうような物の考え方に対して御意見をいただきたいと思うんです。
  25. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 私もちょっと勉強不足で、私学共済が二百名近くいらっしゃって、そして先ほど先生からも大変経営がうまくやっているではないかという御指摘もございましたが、資産も極めて資金量も豊富でありますし、しかも、私学日本の高等教育の八割という比重を占めている。そういう意味から言いますと、よく一人の常務理事でしっかりやっていらっしゃるなということで、まあ、自分の命の文部省のサイドから見ると内輪ですから、ちょっとおかしな言い方になりますが、よくやっておられるなという意味では大変私は評価をしているわけです。今、局長から申し上げましたように、ちょうど時期的には、むしろ、そうした役員はできるだけ減らせという国の方針でもあります。しかし、確かに、今、田沢さんがおっしゃったように、将来自分たち努力して自分たちの中から常務理事にもなっていけるんだよと、いつも外から、外からって、まあ文部省になるわけでしょうけれども、外から来るというよりも、努力すれば自分たちもその道に到達できるんだよという、そういうことから言えば、何かそういうところに少し配慮をしてあげたらいいなという気持ちも、私は、今、先生お話管理局長のやりとりを伺いながらそんな感じを持ちました。いずれにいたしましても、規模が大きくなりますし、そしてまた私学にかかわり合いを持つ職員の皆さんの福利厚生という大事な仕事でございますから、そういうことも含めながら、またその職員が将来に大きな希望を持てるという励みにもなるという意味で、先ほど局長が申し上げましたように、でき得ればそういう方向一つの目途として検討をしていってもいいのではないかなと、そんな実は私も感じを持ちます。
  26. 田沢智治

    田沢智治君 ぜひ、そういう方向でひとつ配慮をしてほしいと思います。  それから、私学共済組合法第二十八条によれば、「組合員及びその組合員を使用する学校法人等は、前条の規定による掛金を折半して、これを負担する。」となっていますが、今、使用者が承知すれば、例えば五、五じゃなくて、使用者側が六で組合員側が四でも掛金はいいんじゃないだろうかというような一つの風潮がございます。私は、やはり法律を適正に運用するということになれば、五対五の割合でいくことが、遵法精神といいますか、相互互助という次元においては大事なことであるのではないだろうかと。福祉的次元組合員を大事にするということになれば、これはまた別の次元で考えることであって、こういう折半にするという法律体系を実質的に崩していっているような風潮が二、三ございます。それに対して毅然とした姿勢をとるべきときにはとって、一つの法体系の中で制度を維持していくということが私は大事だと思うんですが、こういう風潮に対してどのような所見を持たれますか。
  27. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 先生お話にもございましたように、私学共済法におきまして掛金の負担は使用者である学校法人とそれから組合員とが折半をして負担をするということが明確に定められておるわけでございます。御指摘のような事態、私どももそういうようなことがあるやに聞くこともあるわけでございますが、私学共済組合等を通じましていろいろ聞きましても、先生、御承知のように、掛金は学校法人から個人の分と法人の分をまとめた金として送ってまいるという関係もございますので、明確にそういうケースがどことどこであるのかというようなところまでは把握をしておらないわけでございますが、いずれにいたしましても、そういうような事態があるとすれば、法の規定に違反するわけでございまして、大変遺憾なことでございますし、これは私学共済ばかりではなくて、他の社会保険全体についても同じような制度が適用されております関係上、その影響するところも少なくないということも考え憂えるわけでございます。文部省といたしましては、さらに私学共済組合を通じ、あるいは都道府県等を通じまして、その実態等をできるだけ把握をしてみたいと考えておりますが、いずれにいたしましても、各種の学校法人の運営についてのいろいろ協議会等も開催することも−ございますし、あるいはまた都道府県の主管部課長会議というような機会もございますので、いろいろな機会を通じまして、この共済法の規定の趣旨が明確に周知徹底されるようにいろいろな工夫、適切な対応に一層努めてまいりたいと、かように存じます。
  28. 田沢智治

    田沢智治君 これは、昭和五十七年三月三十一日付で千葉県の私立中学高等学校協会の会長から私学共済組合理事長の棚橋先生あて公文書が出ているわけです。その中では、現に六対四の比率で納付を実施しておると。果たしてこれがどうなのかという問い合わせです。それに対して文部省の福利課の係長より、折半負担については下記のように回答するということで、この例外は認められないという回答をしておるわけです。現に東京でも、あるいは大阪でもそういう実態はございます。事実あるということについては、共済年金あるいは共済組合法というものの趣旨を徹底して、そういう制度がある限り、制度運用を、適切に活用していくことが、教職員初め学校関係者がお互いに助けっこする本旨でございますので、それが力関係によって崩れるということになることは、私は一つ制度を変革していく結果を生む可能性はある。これはお互いに不幸になるんじゃないだろうかと。力関係が逆転すれば今度は逆な結果を生んでいくというようなことで、制度制度としてきちっとしている以上は、それをお互いに守るということは、長い歴史性の中でお互いの共存共栄を互助していくということになるので、この辺のところを一応趣旨徹底をきちっとしていかなきゃいかぬと、こう思うんですが、文部大臣いかがですか。
  29. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 今、具体的に御指摘ございましたけれども、文部省といたしましても、実際にそのような形になっているかということについては十分承知をいたしておりませんけれども、もしその事態があるとするならば、法の規定に違反するものと考えられるところでございますので、これは私学共済に限らず、社会保険共通の原則を崩すということでございますので、法の解釈に、理解に適切さを欠いていると、こう言わざるを得ないと、こう思います。
  30. 田沢智治

    田沢智治君 ぜひ、それを徹底してください。  私は、今後、共済組合年金に対する国の補助率を高め、私立学校教職員関係者が退職後安定した生活をよく保障する環境づくりに努力することが私学教育の向上、充実を図る結果になると思います。ぜひ、そういう意味文部大臣におかれても、この補助率を上げてくれという要望も強うございますので、ひとつ、その決意のほどをお願い申し上げたいと存じます。
  31. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 田沢さんの私学職員の皆さんに対する福祉、大変、御熱意のあることは、もう常々私も承知をいたしております。  御指摘の点につきましては、十分大事な問題として考えていかなければいけませんが、先ほどから議論にも出ておりますように、年金あるいは共済一元化という問題も当面控えておる大事な問題でございますので、そうした問題の中で全体的に今後とも検討していく課題であると、このように考えていきたいと思います。
  32. 田沢智治

    田沢智治君 最後に、文部大臣にお聞きしたいんですが、これは、昭和六十年度の共通一次学力試験問題について二つほどお聞かせいただきたいんです。  先般来、共通一次学力試験について各方面より多くの批判が出ている中で、昭和六十年度の共通一次試験日を六十年一月二十六、二十七日に定めたと聞いております。受験生の大半が一月中旬を希望している新聞等の調査がございますし、また私立大学との併願や籍がえ、一月下旬の三年生の学期末試験などを勘案すると、果たして一月の二十六、二十七日が妥当であるかどうかということについては、もう一度再検討する必要性があるのではないかと、こう存じますが、文部大臣どうお考えですか。
  33. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 結論から申し上げますと、既に国立大学のいわゆる入試改善に関する懇談会等で検討いたしまして、この試験期日を繰り下げるということにつきましては、高等学校校長会等からのいわゆる要請によって検討いたしてきたものでございまして、種々、いろんな角度で検討いたしました結果、たしか一週間ぐらいということで、今のお話のように二十六、二十七というふうにいたしたわけでありまして、お話ではございますが、既に要項も決定をいたしまして発表いたしております。したがいまして、これを再度六十年度につきまして改めて検討するということは、これは既に受験生にも頭の中にもうしみ込んでいることでもございますから、これを、検討を改めてするということは不可能だというふうに申し上げざるを得ません。  ただ、この時期については、非常に難しい、いろんな角度から見まして難しいところでありまして、本来のことからいえば、できる限り高等学校の三学期は、できるだけ長く学校で一緒に、もちろんそういう時期ですから、のんびり友達とつき合うなんていうようなことはできない状況であることは十分承知でありますが、原則としては学校にできるだけ長くいるということ、三学期は一番大事な学期であるというような教育上の配慮から考えますと、できるだけ後の方がいいという考え方もございます。しかし、一方ではまた、私学の受験の日との兼ね合いもございます。余り間をあけないでほしいという希望もかなりあるんですね。共通一次があって、それから物すごく間を置いてまた私学というできるだけ試験の時期は、まあ、苦しい時期というんでしょうか、その時期はできるだけ短期間に済ませたいという、そういう高等学校の生徒の気持ちもあるようでございまして、いろんな方向検討いたしました結果、こういう方向にしたわけでございまして、これは単に大学側で考えたということよりも、高等学校校長会等を通じての高等学校側からの要望が主に、できるだけ下げてほしいと、こういう要望を受けて検討した要綱改定であるというふうにぜひ御理解をいただきたいと、こう思います。
  34. 田沢智治

    田沢智治君 それから、きょうのNHKのニュース報道によると、国立大学協会では科目削減など共通一次の根本的な見直しを急ピッチで進めているというようなことで、共通科目が、国、数、外国語を共通化して、あとは選択その他その学校の考えで行がしたらどうかというような案がまとまったように報道されておるんですが、どのような改善作業を今日進められておられるか、その推移についてお聞かせいただければと存じます。
  35. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) ちょっと御質問の御通告がなかったものですから、大学局長がおりました方が詳しいかと思いますが、どういう状況になっておりますかについては、私も余り立ち入らない方がかえっていいと思っておりますので、承知はいたしておりません。また必要がございましたら事務当局から先生の方に御報告をさせていただきたいと、こう思います。  私が、予算委員会でも、またこの委員会でも何回か御答弁申し上げたと思いますが、大臣に就任いたしましてから、この共通一次の問題というのは、大変、国会の御論議にもなっておりましたし、国民の多くの皆さんからも非常に御関心のある問題である。何か共通一次がもう一番のガンで、悪い根源だみたいなことをよくいろんなマスコミなどにも書かれていることは極めて私どもとしては心外でございまして、共通一次ができました当時、これはもう田沢さん一番御存じなんで、あのときは、もうとにかく大変な倍率で試験地獄というようなことでございましたから、そしてもう一つ、一期校、二期校ということの区別が、いかにもAクラスの学校とBクラス学校と——私なんかは石川県ですから、金沢大学へ行くのはAクラスで——ちょっと差し支えあると困るんですが、富山、福井へ行くのはBクラスでと、こういうふうな県の序列みたいなことにまでなる、こういうようなことも改善しなきゃならぬということであります。  もう一つは、個々に大学が問題をつくるものですから、どうしても、今の私学がその傾向があるんですね。できるだけ難解で難しい問題を出すようにどんどん極致をきわめていきますから、いわゆる難問奇問ということで、大学の先生方が答案用紙を見たって実際に答えられないという、そういうケースも非常に多い。高等学校はこの程度の学力があればいいんじゃないか、いわゆる高校の学力の進達の度合い、到達度を見る。私どもとしては、当時、党の立場からお願いをしておったのは、まあ、余り勉強しなくても、ほかのクラブ活動も結構やっていても、それでもこの程度の学問ならいいじゃないかという程度にしてほしいという、そういう要望で、当時ああいう問題が話題になって、そしてその結果、共通一次ができたわけですから、これはこれなりの一つの役割も果たじたじ、また、ある意味での評価はあるんですね。  ただ、今、御指摘ありましたように、最近になりますと、ちょっと五教科七科目を同じようにするのはいかがかなということの負担、それから、もう一つは、文科や理科に進む、それぞれの分野の進路によって、例えば、例を挙げると、一番わかりやすいのは、芸術大学などへ行くのに数学や理科をあんなにやらなきゃならぬのかなと。これはわかりませんよ、それぐらいの学問も修めてなきゃならぬと言う人もあるんですから。ですから、それもどうかなという考え方もありましたし、それから、もう一番問題は、共通一次をやって、その後は各大学で余り学問を中心にしない評価をしてほしいということであったんですが、二次試験にまたその大学固有の試験問題を出す。そうすると高校生は、一次試験を突破して、その次にまた二次試験のハードルのための勉強をしなきゃならぬ、こういう大変な負担があるということで、まあ、長く申し上げましたが、要は、過重負担ではないだろうか、こういうことで、何とか御検討を一度いただけないか、それが日本全体の世論の空気です。国民的な要請です。こういうふうに私は、大臣就任早々に国大協の皆さんにもお願いをし、そしてまた、中曽根総理も大変関心を持っておられましたので、総理も皆さんにおいでをいただいて、かなりの時間、こうした問題の御議論をさせていただいたと。もちろん、私どもの立場からああしなさい、こうしなさいと言えるものではございません。これは大学固有の大事な専権事項ですから、大学の皆様方で十分お考えをいただきたいと、こういう私どもは要望と大きな改善がなされるべきであろうという期待を持って国大協の皆さんにお願いをいたしておるところでございまして、いろんな角度から御検討を非常に精力的にいただいておるというふうに私どもも漏れ聞いておりますので、かなりいい方向に改善をしていただけるのではないだろうか、こう思っているわけでございます。  ただ、誤解を受けるといけませんが、六十年度の試験では、これはもう実際的には物理的に間に合うことではございませんので、六十一年ということを私あえて申し上げていいか、それも大変危険な発言になりますので、六十一年以後、何らかの形で改善の私は成果が見られてくるのではないか、このように考えておりますし、文部省としてもできる限り、高等学校の学生時代が、本当に学問と、そしてクラブ活動、その他いろんな意味で大事な青春期ですから、楽しかるべき高等学校生活が送れるような、試験のための高等学校生活ということにならないように、できるだけ文部省といたしましても、国大協とも十分連絡をとって、そのように指導いたしてまいりたいと、こう考えておるところであります。
  36. 久保亘

    ○久保亘君 私は最初に、この法律案にかかわって提出していただいております資料について少しお尋ねいたします。「学校種別加入状況」の表の中で標準給与の平均月額が示されておりますが、幼稚園の標準給与の平均月額が全体の平均に比べて六一%と著しく低くなっておりますのは、これは単に幼稚園の教職員の年齢が低いということだけが原因でしょうか、どのように把握をされておりますか。
  37. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) ただいま御指摘がございました幼稚園の関係は、平均給与が非常に低いわけでございますけれども、これにつきましては、お話にございましたように、何と申しましても、幼稚園は教員の平均年齢が非常に低いということが中心であろうかと思います。しかしながら、それ以外に想像できることといたしましては、公立の幼稚園等の場合につきまして、必ずしも教育職の俸給表が適用されてないようなケースもあるわけでございますので、そういったこと等とのバランス等から私立の幼稚園について低くなっているというようなケースがあるいはあるのかもしれませんが、これはちょっと私もそこまで詰めてみたことがございませんので正確には申し上げかねるわけでございます。
  38. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると今度は、公立学校共済組合の場合の標準給与の平均月額について文部省から教えていただきましたのでは、私立の二十二万四千五百四十八円に対して二十四万六十八円とお聞きいたしておりますが、幼稚園が組合員数の四分の一を占めて、大変低い標準給与の平均月額になっている中で、全体の平均がほぼ公立学校共済組合と匹敵をしてくるというのは、他の部分においてはかなり上回るものがございますか。
  39. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 幼稚園以外に、例えば大学等のレベルでは、教官等の場合には、ある程度高いというような、給与の水準がですね、というようなケースはあるわけでございますけれども、そういったことのほかに、もう一点は、例えば公立と私立との比較で申しますと、公立学校共済組合の場合の平均給与といいますのは本俸でございますので、それに対しまして、私立の場合の標準給与には手当まで全部込みで標準給与を決めているというような違いがあるわけでございますので、あるいはそれの比較で、本俸と手当込みという制度上の違いが、この数字の上では同じ数字として出てきます関係上平均額が同じようになっているということはあろうかと思います。
  40. 久保亘

    ○久保亘君 公立と私立の場合に標準給与の算定の仕方が違うということになりますと、この標準給与が年金の額等にかかわってまいりますね。そうすれば、なぜ公立学校の場合には手当などを含めることができないのですか。私立の場合にそういう制度になっていろんならば、それは一元化したらいいんじゃないですか。
  41. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) これは少し制度の成立の経緯等があるわけでございますけれども、御承知のように国家公務員、地方公務員全体を通じまして、共済組合制度が当初からつくられておりまして、それがすべて国家公務員、地方公務員については本俸によってすべて計算されるということで、その本俸の給与月額に沿って掛金なり給付金がすべて決まってくるという仕組みがとられておったわけでございます。これに対しまして、私立学校につきまして、同じような共済組合制度をつくるということになりましたときに、私学につきましては、先生案内のように、学校によりまして大変差があるわけでございまして、本俸相当部分というのは少ないけれども、手当で相当カバーしているところでございますとか、あるいは本俸相当部分が——まあ、手当でカバーしているというケースの方がかなり多いかと思いますけれども、そういったような関係で本俸だけを取り上げたのでは、掛金も少なくなるけれども、給付額も非常に少なくなってしまうという問題があるということから、私学については、特に標準給与ということを別に定めまして、それにつきましては本俸と手当を合計した額をもってその標準給与のところに当てている、こういう制度をつくったわけでございます。したがいまして、これは統一するというのはもちろん望ましいてとでございますけれども、統一することが有利になるのか不利になるのかというのは、また難しい問題を生じてくるわけでございます。現在のところでは、掛金負担は手当まで含めておりますから、私学の場合にはそれは不利という言い方はできるかもしれませんが、しかしながら、将来はその手当まで含む金額について年金が出されるという意味で有利だということもあるわけでございますので、そういった公務員と民間の労使関係で給与が決まる職員とのバランスを制度上とるためにやむを得ざる措置であるということで御理解をいただきたいと思います。
  42. 久保亘

    ○久保亘君 誤解ないように、私、私学共済でおとりになっている標準給与の算定のやり方が近代的であると言っているんです。外国の例を見ましても、本俸を基準にして年金計算されるという例は余りないんでしてね。日本年金制度だけがそういうものが多いんです。だから、実際には先進国並みになっていると言われているけれども、日本年金というのは、これは諸外国と比べた場合の、在職中の所得に対する六〇%という計算で合わないんでしてね、欧米におけるやり方に計算をし直すと、日本の場合には四二%ぐらいにしかならぬのじゃないでしょうか。だから、そういう点で非常に落ち込んでいるわけですよ。その中で私学共済が、これは福祉の先進諸国家並みの標準給与の計算の仕方をされているというのは私は大変いいことだと思う。しかし、そういう計算をやって、なおかつ公立学校の本俸だけの標準給与よりも低いということは問題があるわけですね。だから、標準給与の平均月額というのは、そういう意味では公立に比べると、同じ計算方式をとればかなり低いと見ていいんですね。
  43. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) この平均給与でございますけれども、これにつきましては公立の場合等と年齢層等が私はかなり違っている部分があるんではないかと思うわけでございまして、先ほど申し上げましたように幼稚園の部分でそういう影響が非常に大きく出てくるだろうということ、それから大学の関係等につきましても、国立を既に退官されたかなり老齢の方が割合安い給与で私学に行っておられるというようなケース相当数あろうかと思います。そういったこと等がいろいろございますので、先生から今そういうお話がございましたけれども、同じベースで計算したらば直ちにどうなるかということはちょっとにわかに申し上げられないわけでございますが、ただ、ごく一般的に申しまして、特に高等学校以下、最近よく私学の給与が全般的に高くなったということが言われておりますけれども、大学レベルにつきましては大体一割強ぐらい高くなっているということは私どもの計算でも出てくるわけでございますが、高校以下の学校につきましては公立よりも若干低い水準にあると、全体の平均給与といたしまして。ということは事実であろうと思うわけでございます。
  44. 久保亘

    ○久保亘君 そこで、今、わかりましたが、あなた方のこれらの資料というものを、よく説明をしておかれないから、これ、私、予算委員会でも少しお尋ねしましたが、日経連がことしの一月に出しました「労働問題研究委員会報告」というのがございますが、この労働問題研究委員会の報告によれば、私立大学に対する補助金をやめるという提議をされておりまして、そしてその中で「私立大学教職員の給与は、平均して国立大学教職員のそれよりも一二・四%も高くなっている」、こういうことが書かれている。そして、この報告をつくられました委員の名簿を見てまいりますと、私立大学の教授が三名、国立大学の教授が三名入っておられる。そのほかは全部財界の幹部の人たちばっかりです。そんな計算の仕方というのは、これは正当なんでしょうか。今、共済の資料から見ます場合には、こういう指摘の仕方というのは当たらぬのじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  45. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) これは、この計算そのものは、結論から申し上げますと正確でございます。と申しますのは、これは大学の教職員について私立と国立を比較したものでございます。先ほど申し上げましたように、高校以下につきましてはかなり下回っているのは全体の実態だろうと思いますが、大学につきましては、この数字は恐らく日本私学振興財団が五%の抽出調査をいたしまして、それぞれの私学の教員につきまして、それが国立学校に勤務しているとすればどうであろうかというのを履歴によって全部調べまして、その総数で推計をいたしました数字がこの一二・四%程度というようなことでございます。そういう意味で、この数字そのものは大学レベルのものとしては正確なものでございますが、私学全体を言っている数字ではないわけでございます。
  46. 久保亘

    ○久保亘君 それでは、今全体の平均としては二十二万四千と二十四万ということでわかります。それじゃ、国立大学の場合の標準給与の平均月額というのは幾らですか。
  47. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) ただいま手元に国立大学の給与の平均額というのを持っておらないわけでございますが、ここでごらんをいただいております、この御提出いたしました資料で言っております平均標準給与の平均月額と申しますのは、大学の場合で申しますれば、その大学の全職員についての資料でございまして、例えば病院の看護婦さんでございますとか、清掃をしておられる方でございますとか、教授も入っておりますし、そういう形での全職員の給与でございます。  それから先ほど来御議論になっております一二・四%云々というのは教員の給与でございまして、教授等の給与について比較をしたものでございます。
  48. 久保亘

    ○久保亘君 それはおかしいのじゃないですか、そんなこと書いてありませんよ。「私立大学教職員の給与は、平均して国立大学教職員のそれよりも一二・四%も高くなっている」と書いてあるんです。何も先生たちだけを比べているということじゃありませんよ。それで、私立大学に対する助成というのは、全体の大学の経費を基準にして経常費に対して出すようになっているわけでしょう。そうしたら、こういう指摘の仕方というのは当たらぬじゃないですか。
  49. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) そういう意味で言えば確かに不正確な表現だと思います。この一二・四%というのは教員についてのデータでございますので、恐らくそれを活用して誤解して使われたのか、「教職員」という表現になっておりますが、そういう意味では不正確だと思います。もちろん、これは私ども、さっきからこの部分について一二・四%という数字はあるというふうに申し上げておるわけでございますが、この見解そのものに文部省は賛成しているという意味では決してございませんので、その点は誤解のないようにお願いしたいと思います。
  50. 久保亘

    ○久保亘君 もちろん、こんなものに文部省賛成されたら私は大変だと思いますよ。いかに日経連といえどもこんな「労働問題研究委員会報告」という中でわざわざ章を起こして「教育の問題」ということで随分いろんなことを書いたいほうだいに言ってありますが、こういうことに対しては文部省はきちっとした見解を持つべきだと思うんです。それで私立大学に対する補助金は問題だ、こういうことなんですね。そして、憲法まで持ち出してきてあるんです。憲法八十九条に言う「「公の支配に属しない教育の事業」に対し、公金の補助をしてはならないと規定しているのであるが、現実に公金の補助を受けている私立大学は「公の支配に属する教育の事業」なのであろうか。」、こう書いてあります。こんなばかなことを日経連が言うというのは非常に問題だと思うんですよ。これは文部大臣ね、一言なかるべからず。そして、教育基本法の中には−これ教育基本法は全く書いてないんだけれども、教育基本法の中には私立学校というものの性格というものも、条文によって、これは公の教育であるということを明示されておるはずです。それで、こういう言い方でもって私立大学に対する助成を考え直せ、こう言われていることについては文部大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  51. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 私学経常費助成につきましては、私立学校学校教育において果たしております役割の重要性にかんがみて、教育条件の維持、向上、学生等の修学上の経済的な負担の軽減等を図るために私立学校振興助成法の趣旨に沿って実施しているものであります。生意気なことを言うようですが、久保さん一番御存じですからはっきり言わしていただければ、この私立学校振興助成法、私どもがつくって出した、そして一生懸命国会で苦労して通した、毎年毎年予算で苦労して積み上げてきたわけですから、日経連が、いろいろ勉強なさって御提言されることはこれは御自由でございましょうけれども、何か私の胸にくぎでも刺してぐるぐるえぐられるというような感じを実は私は持ったんです。何を言うかという気持ちは当然ありましたが、そこは文部大臣でもございますので冷静に話は受けとめておきましたけれども、したがいまして、正直言いまして、松崎専務理事がこれをお持ちになりました、私のところへ。ですから、私は、お話お話として受けとめながら、いろいろとお話し合いもさしていただきましたが、その中で、国立大学と一割ほど高くなっているという、そういうケースもありますけれども、それは私学の教員の負担というのは大変大きいし、教育の研究条件というのは国立のようにすべて国がやっているわけじゃないです。しかし、先ほども議論にありましたように、現実には高等教育の場合には八割近いものは私学でこれは実際大きな役割を果たしているということ。私はそのときに松崎さんにも申し上げたんですけれども、委員の石井さん初め日本の有数な企業の皆さんいらっしゃるから、その会社へ行って調べてごらんなさいと、私学出た人と国立出た人とどっちが多くて、そして、例えばここに住友ゴムありますし、日産自動車もありますし、トヨタ自動車もありますが、その会社が、今日、これだけ繁栄しておるその大きな役割を一体、そんなことはなかなか分け隔てはできないにしても、会社発展のエネルギーの力は私学の人と官学の人とどっちが多かったか、そういうことも少しお考えになってみていただいて、皆さん御研究されることは結構だけれども、どうぞ皆さん会社へ帰って全社員を集めて一遍みんなにどう思うかということを聞いてごらんなさいと、私はそんなことまで松崎さんに申し上げたわけです。そしてまた逆に、それなら全部私学私学独自でやるんだ、学生の負担によってやるんだと、こういうことである。あるいは私学は昔は数も少なかったから、篤志家による寄附などでやっていかれたケースもある。外国などもそういうケースがある。しかし、今の日本の八割近いものを、全部そういうことになって、仮に逆に私学が全部なくなって、全部それを公がかかわって、これらの向学心に燃える高等教育に進もうとしている人たちのすべてを埋めさすキャパシティーを考えたときに、一体どれだけの金が国にかかるかおわかりになりますか、そういうことも御研究なさいましたかということも私は申し上げ、久保さんがおっしゃるよりももっと強く私は松崎さんに申し上げておきました。まあ、意見は意見だから聞いておいてくれよと、こういうことでもございましたから、私は、そういうふうに私学全体がこういう理解をされない、そういう状況になっているということは大変悲しい。それはまた私学自身もみんな十分考えなきゃならぬことだろうと、こういうふうにも私は考えております。  なお、憲法八十九条の後段の規定、公の支配に属しない教育事業には公の公金を出してはならぬといってとになっておりますが、これはもう先生も今御指摘のとおり、私立学校には学校教育法、私立学校法及び私立学校振興助成法という、こうした法律によって監督規定が置かれておりますから公の支配に属しているものと私どもは考えておりますし、私学助成は憲法上許容されるものである、こういうふうに私どもは定着しておると考えておるわけでございますので、そういう意味では久保さんのこれはむしろ私どもに対する叱咤激励であると、こう受けとめさしていただいて、なお一層私学充実努力をしていきたいと、こう考えております。
  52. 久保亘

    ○久保亘君 文部大臣考え方に私は非常に賛成です。私の先輩で、自分は官学を大学まで出られた方ですが、私立の学園を経営をされた方で、戦後、全国を講演をされて回っておりました。もう亡くなられましたけれども。この方の講演の中で、しょっちゅう言っておられたのは、終戦直後のころです。日本教育をよくしていくためには東京大学と文部省を解体することだと、こういう話をやっておられました。私は解体という上品な言葉を使いますが、この先生はもっと激しい言葉で言っておられたことがありますね。まあ、そのことが全部正しいかどうかわかりませんが、それぐらい私学というのが教育の中で果たしている役割は、国公立学校の補完というようなものではなくて、むしろ大学の八割を占めるという量的なものから見てもはっきりわかるように、少なくとも大学教育や幼稚園教育ということになってきました場合に、義務教育以外のところでは、高等学校においてもそうでありますが、義務教育以外のところでは私学が主体であって、そして国公立がその補完をしているという状況さえあるんですね。そういう意味では私学振興というのは、これは国というか、政府の私は公教育に対する使命だと、こういう考えを持つんです。だから、そういう意味では、この私学共済などが組合員にとってよくならなければ、公立学校共済よりもよくなっていくという状況でなければ、私はその役割が十分に果たせないんだと、こう考えているんですが、この私学の位置づけというもの、一応、義務教育の部分は後で議論するとして、義務教育外の部分において私学を見る見方というのは、私が言っておるようなことは文部大臣は賛成されますか。
  53. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 長くなってかえって恐縮でございますから、結論から一口で言えば、今、先生がおっしゃっておられたような義務教育以外の教育のかかわり合いといいますか、これについては、まさに私学がある意味では国にかわってそれを受けている。私は、そういう考え方で、この私学助成法を国会で制定をする際の論議も、私はまさに久保さんと同じような、そういう立場に立って議論を詰めてきた、そのことを申し上げておきたいと思います。
  54. 久保亘

    ○久保亘君 そこで、今度は義務教育の場合に、私学が義務教育にかかわっていくことは、最近、もう学校をもっと自由にやらしたらいいじゃないか。いわゆる民営的に昔の寺小屋みたいなものを考えているのかどうかしりませんが、そういう議論がございますね。それで、小中学校私学がかかわる度合いというのは今よりも大きくなっていった方がいいと思いますか、まあ、現状ぐらいの方がいいと思いますか。
  55. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) これ非常に難しい問題でございますが、私学は今先ほどから高等教育あるいは幼稚園については久保さんのお話のとおりだと考えますが、ある意味では高等学校などもかなり私学の柔軟性といいましょうか、そういう意味では非常に何か高等学校教育のあり方みたいなものを、もちろん世の中の変化にも対応しやすいという面があるんだろうと思いますが、そういう意味では高等学校が公の高等学校などをむしろ先導的に引っ張っていくあるいは刺激をしているという面が私はあるような気がいたしまして、高校などでは私学の役割というのはかなり公全体の教育の中で大変大きな比重を占めている。それは量的だけじゃなくて、教育の方法あるいは教育制度上の中に非常にいい役割を果たしている、そういう段階に来ているんじゃないかというふうに私は考えます。  しかしながら、各学校段階に応じて、それぞれ特色を果たしながら、公教育の役割を分担していく、それが今日までの国民教育需要にこたえてきたわけでございますので、義務教育については今日的な行き方がいいのではないかな。どうしても、先ほどもこの久保さんのテーマにも今出ておりますように、まだまだ私学に対して公の公費、経費を助成するということについては、こうした日経連のようなお考えが出るということも、国民一つ私学に対する考え方のあらわれでもあるわけです、すべてではございませんよ。まだまだ私学全体に対して国民全体がそう大きな共鳴を得るというところまでは、理解を得るところまでは行ってないんじゃないか。そしてまた大変いやなことでございますが、この国会でも随分久保さんにもしかられておりますが、九産大とか国士館というような問題が出てきますと、そのことだけが大きくぱっと出てくると、何だ私学がと、またこういうことにもなってくる。そういう意味で、まだまだ国民全体から見ると私学に対する理解というのは、もう少し私は成熟しでないような感じがいたします。  したがいまして、義務教育段階というのは、公がこれを負担をしていく、責任を持っていくという現在のあり方というのはいいんではないか。そして、先ほどちょっと触れましたように、高等学校などでは、かなり私学がいろんな意味で刺激をしているということからいいますと、あるいは小中学校も、いい意味日本教育の刺激的役割を果たしている、あるいはどうしても公の、公立の学校ではできにくい面もございますから、そういうところを逆にどんどん引っ張っていくというような役割も果たしてくれるような、そういう役割を果たしてくれたらいいんではないか。私はそういう意味で、結論から言えば義務教育の段階は、公立ていっている今のような形が、まずまず日本教育のレベルからいっても非常にいい形ができている、こういうふうに考えております。
  56. 久保亘

    ○久保亘君 私も私学に対する考え方というのがもう少し変わってこなけりゃいかぬ面もあると思います。  ただ、しかし今度はまた、今九産大や国士館のことをおっしゃいましたけれども、これ、なぜそういうことが起きてくるかというと、今度は私学が非常に企業化してしまう。営利企業化してしまうところに問題があるんでして、だから、そういう点についてよくなっていくためには、教育機関に対して、その公的責任を十分に果たしてもらうために国が金は出す、しかし、教育については干渉しない、金は出すが口は出さぬ。こういうことをもっと徹底さしていく。そういう意味私学共済などについても、少なくとも公立学校共済よりも個々の組合員が受ける条件について下回らない、こういうことを速やかにやっていくということが重要だと思うんです。  それで、教育機関として機能させて、できるだけ営利企業化させない、ほとんどの私学は私は問題はないと思うんですが、一部そういうところで問題になっているところが出てきますから、そういうことが配慮されるべきだと思うんです。  それから高等学校ももう準義務教育と考えていいほど進学率が高まってきておりますが、一方では、最近の傾向として、公立の教育機関を否定する動きがあるんですね。例えば高等学校に行くよりは大学入学資格検定をとって、そうしてそれで大学受験した方が、その方が早い、非常に実践的である、こういうことで、そういう傾向が非常に高まっているということも聞くんです。  それからまた、私の知っておりますところでは、親が子供を小学校の四年までしか出さなかった、三年まででしたかね、それからあとは家庭で教育したんです。それで、この子はそれは天才だったんでしょうね。それだから普通の子供の中学生の年齢のときに大学入学資格の検定に合格しましたですね。そして普通の子供が高等学校の年齢のときには司法試験の一次試験に合格しましたですね。そうするとこういうような教育の仕方というのはいいのか悪いのかですね。私たちは非常に疑問を持ちながら、一方ではまあ大した頭脳を持ったのがいるなと思って感心もしたりして見てきたんです、私のすぐ近くにおりましたのでね。  しかし、そういうようなやり方というのが最近、結果的に言えば公教育を否定するという形でだんだん出てき始めている。こういう傾向については、文部省としてはどういう見方をしておられますか。
  57. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) まず、公教育を否定するというような、そういうケースが実際あるかどうかということは、私自身も知り得てないんですが、確かに、大検コースを利用して、高等学校に行くよりはそちらの方が大学に入りやすいというようなことは、これは新聞にも何かそういうことが出ておりました。しかし、そういう面では高等学校教育について不満があるという面もあるんでしょうから、文部省という立場から見れば、高等学校教育が理解されてないということについて謙虚に反省しなければならぬ面もあるだろうと思います。  しかし、今、久保さんから御指摘のありましたような例というのは、あるいはまた大検コースを利用していこうという、そういう生徒たちの目的は、いわゆる大学に進学しよう、そういう一つのねらい、進学への一つの便法にすぎないということであれば、教育という効果から見ると大変私は残念なことだなあというふうに考えます。やはり十五歳から十八歳という、人生にとって一番多感な大事な時期に、単に大学に進学するそのノーハウというか、技術のみを習得をする、高等学校においてすばらしい仲間や先輩や先生と触れ合う、そのことがその人間にとって将来大変大きな私はエキスになるところだと思う。その時期にその受験の技術のみを習得するというふうなことはいかぬとかいいこととかいうことだけじゃなくて、私はその生徒の周囲にいる人たちがその子供の将来のことを考えたら、もっと悲しんであげなければならぬことではないのかなあ、私はそのように、まあ、久保さんのお話を伺いながら感想として持っているわけでございます。したがいまして、文部省としても、そういうことになるというケースがあれば、これは反省しなければなりません。ただ、大検コースの場合は本来は不幸にして中学で学校をやめた、途中で、中学のみでやめた、あるいはしばらく会社についたけれどももう一遍高等教育に進みたいという意欲が出てきた、そういう人たちのためへの一つのこれはいい意味でのお手伝いであるわけでございますから、そういうことを逆にそれを逆用していくというのは、これはもういい悪いということを論ずるよりは、その当人といいましょうか、その生徒に対して私は将来決して幸せな人生を歩めないんじゃないかなという、そんな感じを私は持つわけです。
  58. 久保亘

    ○久保亘君 一般に私学と総括的に呼ばれるものの中には、その種のことをやらせる学校も出てき始めているわけですね。こういうものは学校という名には私は値しないと思っているんですけれども、そういう意味で、私学の果たしている役割、日本教育の中における位置づけというものを私たちはもっときちっと認識し、それに対応するだけの国の責任を果たす。こういうことが重要だと思いますし、一方、今度は、そういう私塾的なものを含めて私学の営利企業的な側面というものをできるだけ抑えていく、これは法律や権限をもって抑えるということではなくて、大学自体が、学校自体がそういうものに対して留意をしてもらうということが重要なんじゃないかなと思っております。そういう中で、この私学共済などというものに対しても、私は十分いろんな配慮が加えられなければならぬと思うのでありまして、これはことしの改正を見ましても、非常に問題点が多い。これはもう各委員の方々が先日来指摘をされていることなんです。  最後に一つ、もう時間がなくなりましたからお尋ねしておきますが、この資料の中で、短期経理の収支状況で、五十七年度赤字に変わっておりますね。二億六千七百万の単年度赤字に変わってきておりますが、これは何か、特別五十七年には何か大きな理由がございましたか。それから長期経理保有資産が六千七百十八億五千百万になっておりますが、この保有区分はどうなっておりますか。それを二つだけお尋ねしておきたいと思います。
  59. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) まず短期経理について五十七年度赤字が生じているということでございますが、これは先生も御案内のことだと思いますが、五十七年度から老人保健法が実施をされまして、五十七年度の末、五十八年の二月ごろでございましたか、から実施されたわけでございます。その老人保健法の関係で若干前送りに経費の支出をしなければならないというようなケースが出てまいりました関係上、それが五十七年度決算関係でマイナスを生じたというようなことでございます。平年度化すれば収入の関係も変わってまいりますので、その問題が解決するわけでございまして、したがいまして、五十七年度年度だけの特殊な事情でございまして、五十八年度決算は現在やっている最中でございますけれども、この五十八年度決算におきましては黒字にまたもとどおり転ずるという見込みでございます。  それから長期経理資産運用状況でございますが、御指摘にございましたように、六千七百十九億円という総額になっております。この内訳といたしましては、非常に大きいものから順番に申し上げますと、地方債、国債等の有価証券に利用しておりますものが三千五百十一億ということで、半分以上はこういう地方債、国債等の有価証券でございます。それから、その次に多額なものが組合員に対する貸付金でございまして、これが住宅貸付等でございますけれども、千二百六十億円を組合員に対する貸付といたしております。そのほか日本私学振興財団に九百七十一億円を貸し付けをいたしております。これは私学振興財団を経由をいたしまして各私学へまた融資という形で流れておるお金でございます。さらに、その他例えば組合の行う事業に対する貸付金、つまり長期経理から福祉事業等に若干の貸し付け等を行っておりますが、そういう金が約三百億、貸付信託等に信託をしておりますのがこれもまた約三百億等々というようなことの内容運用されておりまして、全体の運用利回りは七・四八%ということでかなり有利な運用が全体としては行われておるわけでございます。
  60. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 私は、私学共済の行っている保健医療事業について、これを中心にお話を伺いたいと思います。  まず最初に、私学共済の行っている保健医療事業のサービスの概要、特に健康管理について伺いたいと思います。
  61. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) お尋ねの保健医療事業の概要、健康管理につきましてお答えを申し上げますが、私学共済では、まず福祉事業といたしまして組合員の保健、保養を目的とする保健事業、病院施設運営に関する医療事業、宿泊施設経営に関する宿泊事業、組合員の貯金の受け入れに関する貯金事業並びに組合員及び学校法人に対して貸し付けを行う貸付事業、五つの事業を行っております。そしてお尋ねの保健事業につきましては、三十五歳以上の組合員と家族を対象とした人間ドック利用補助、私学共済加入の私立医科大学病院と提携して行っております無料健康相談、長期療養見舞品の配付、育児用緊急薬品等の配付、コンピューターなどを利用しました組合員と家族の健康生活調査、健康管理小冊子の作成そして配付等を行っておりますほかに、先ほども議論に政府側から出ておりましたが、各会館が中心になって健康管理講座を開設したり臨時海・山の家などの借り上げを行うなど地域の保健事業も積極的に推進をしているところであります。  なお、医療事業としては、これも先生御承知だと思いますが、東京に下谷病院を経営して組合員とその家族に対します一部負担金の免除、入院料の差額の免除、あるいは家族診療費の割引等を行っております。私学共済といたしましては福祉事業一環である保健医療事業の充実努力を払い、組合員及びその家族の健康管理に対しまして十分配慮いたしておるところでございますし、文部省といたしましても、今後ともこうした事業が充実して行われますように指導してまいりたいと、このように考えております。
  62. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 その健康管理の検診内容はおわかりでしょうか、どんなふうなことをやっているのか。
  63. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) ただいま手元に資料を持っておりませんので恐縮でございますが、人間ドックの場合と同じ内容でやっているそうでございまして、身体計測、一般理学、呼吸器、循環器、腎機能、胃腸管系、肝機能、糖尿病、血液、梅毒、血清反応、眼科、外科、泌尿器科等々といったようなところをやっておるようでございます。詳しいことはちょっとお聞きしておりません。
  64. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 私がその次に知りたいと思いましたのは、同じ学校ですから、文部省の方の共済組合と、それから私学共済の行っている保健医療事業の比較というふうなことがちょっと知りたいと思ったんですが、つまりサービスに差があるのかないのか、いかがなものでしょうか。
  65. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) それぞれの事業をそれぞれの共済組合で行っておりますので若干違いはあろうかと思いますけれども、一般的には大体同じでございます。  例えば人間ドックの場合で申しますと、いろいろ対象年齢も三十五歳以上を対象にしているというようなことで同じでございますが、ただ違う部分として、例えば経費負担が私学共済では八割が組合負担になっておりますが、文部共済の場合には七割まで文部共済が負担をするというようなことで、私学共済の方が有利だというような違いは、それぞれの事業について若干ずつはあろうかと思います。
  66. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 先ほど大臣のお話の中に、私学共済経営する総合病院の下谷病院がございましたが、これは全国では東京に一カ所しかないんでしょうか、いかがでしょうか。
  67. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 私学共済経営しておりますのはこの下谷病院一カ所だけでございます。
  68. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 その下谷病院の病院そのものの規模というか、ベッドというか、そういったものと、もう一つは人間ドックの話が出ていましたが、下谷病院では私学共済組合員の人間ドックを引き受けているんだろうと思うんですけれども、どれくらいの人数を引き受けているのかというようなことを。
  69. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 下谷病院でございますけれども、これは東京都の台東区に所在をしております唯一の私学共済の直営病院でございまして、昭和三十二年度開設をされまして、以来今日に至っているものでございます。  診療科は現在十科ございまして、ベッド数が百九十八床、約二百床のベッド数でございます。基準看護あるいは基準給食、基準寝具といったようなことは条件を満たして実施をしておるものでございます。  この病院の利用状況を見ますと、昭和五十七年度におきましては入院の延べ患者数が約五万人でございまして、これはベッドの稼働率で申しますと約七〇%というようなところになっております。また外来患者の延べ数が約十二万人ということで、収支状況は収入が十六億二千万に対して支出が十六億一千万、大体とんとんの経営が行われておるわけでございます。  ここでは組合員とその家族については特別のサービスをもちろんいたしておるわけでございますが、組合員については負担の一部免除を行うとか、あるいは個室については優先の入室を認めるとか、あるいは入院料の差額を免除する、それから家族診療費につきましては四割引きにする、分娩入院料を割引をする、あるいは身体検査や診断書等の料金の割引もするというようなことで、組合員と家族のための本来の業務に関しましてはそういういろいろな有利な仕組みをつくっておるわけでございます。  なお、昭和三十七年度から人間ドックを開始してきたわけでございますが、検査用の諸設備にいろいろ膨大な費用がかかるというようなこともございますし、それから、あるいはドックに必要な泌尿器科を廃止したというようなこともございまして、四十九年度でこれは人間ドックは取りやめまして、現在ここでは実施をいたしておりません。人間ドックにつきましては各私立医大等にお願いをいたしまして共済組合本部の方で援助をしてやらせる、こういう仕組みをやっておりまして、下谷病院ではやっていないわけでございます。  実際、私も先日ちょっと所用がありまして、この下谷病院というのを行って見たわけでございますが、これは大変狭いところで、今改築等もやっている最中でございまして、これは到底人間ドックは無理だなというような感じでございましたけれども、現在のところそういうような諸般の事情があろうかと思いますが、人間ドックはやっていないわけでございます。
  70. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 それでは、今の下谷病院というのはオープン病院なわけですね、組合員だけを受けている職域病院じゃなくて。それで、今の利用の割合なんというのはどんなふうになっているんでしょうか。
  71. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 結局、ああいう地域にございまして、あの私学共済経営する以前から存在をしていたというような経緯等もございますので、これは組合員利用率としては四%程度ということで、組合員以外の利用が多いわけでございます。
  72. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 先ほど局長が言われた健康管理の検診項目というのは多分あれは人間ドックの項目じゃないか、大変詳しいものですからね。もう少し健康管理というのはふるい分けのあれだから、もうちょっと項目が少ないんじゃないかと思って聞いておったんですが、それはそれでよろしいですが、これも先ほど大臣のお話の中にあったんですが、私学共済加入の私立医科大学ですね。この医科大学に無料の健康相談をやっている。これは私は非常にユニークなおもしろい考えだなと思ってこれ拝見したんですけれども、これはどんなふうにやっているのかなと思うんです。つまり、費用はどうなっているのかどか、それから毎日やっているのかとか、あるいは担当の医者というのが置かれているんだろうかとか、つまり健康相談というのは予防医学の上で非常に大事なわけで、その先どうなるのかなということがあるものですから、その辺ちょっと伺いたいと思います。
  73. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 私学共済組合実施しております無料健康相談でございますけれども、昭和五十二年度から、私学でございますので私立の医科大学の病院と提携をいたしまして、組合員とその家族について無料で健康相談を実施する、こういう仕組みを行っておるわけでございまして、提携をいたしております病院は岩手医科大学病院、独協医科大学病院等、私立の医科大学が全部で二十一病院と提携をしてお願いをしておるわけでございます。  この委託関係の経費は昭和五十七年度では総額で五百五十四万円でございますけれども、結局、一病院当たり二十六万四千円という金額をお渡しをして、よろしくお願いしますということになっているわけでございます。  まことに恐縮なんでございますが、その利用状況につきまして具体にどうなっているかというのを私学共済組合本部の力で把握をいたしておりませんので、それでこれにつきましては早急に本部としてその関係を従来の状況等十分把握をして、またその実態を見て充実をし、あるいは改善すべき余地があれば考えていきたいと思っております。実態をつかみました段階で、別途先生に御報告に上がらせていただきたいと思います。
  74. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 今の健康相談というの私大変関心を持っているものですから、むしろこういうのを進めていく方が予防医学の立場では大変いいのではないかという意味で伺いたいと思ったわけです。  それからもう一つ、やはり先ほど大臣が言われた中で、コンピューター診断というふうなことがありましたが、あれはどういうことでしょうか。
  75. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) コンピューター健康生活調査と申しておりますけれども、健康生活調査票というものを送付をいたしまして、組合員あるいはその家族に中身を記入させる、そしてその回答を得たものにつきましてコンピューターで処理をいたしまして、日常生活における健康生活管理上こういうふうにしろ、ああいうふうにしろというようなアドバイスをつくり上げ、それを結果票ということで本人に送付をする、こういうような仕組みのようでございます。ちょっと現物を持っておりませんので詳しいことはわかりませんけれども、大体事柄としてはそういうことでございます。
  76. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 同じようなことは文部共済、文部省の共済組合ではやっているんですか、どんなものですか。
  77. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) これは文部共済でもやっております。私も、私ではございませんけれども、毎年もらっては家内に書き込ませて家内の分を調べていただいているということがございます。
  78. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 つまりアンケートですよね。アンケートをいただいた後コンピューターに入れていくということで、これまた御注意願いたいと思うのは、アンケートというのにはフォールスポジティブというのとフォールスネガティブというのがありまして、要するにそうであってもあえて言わないというのがあるし、大したことはないのに非常に強調するというのがあって、その中では見逃しの危険というのが一番怖いわけです。何ともない、何ともないと言ってしまって、そうかと思って見逃してしまうというので、何もないから後は健康診断をしなくていいというわけではないということを御注意を願いたいと思っているんです。  でありますが、この私学共済の方をちょっと拝見しますと、地域保健事業の充実を図るというのが書いてあるんですが、この地域保健事業というのも私は予防医学の立場で大変関心があるんですけれども、どういうことを言っているんでしょうか。
  79. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 私学共済組合におきましては、先ほど来お答えをいたしましたように、全国ブロック会館をつくろうということで、現在、五ブロックまでつくり上げておるわけでございますが、そのブロックごとの会館が、いわばその地域、そのブロック私学共済組合の支部というような感じの事業をそこでやると。その地域の実態に即しましていろいろな事業をやるわけでございますが、その中に保健関係の事業もその地域の実態に即したものを支部が中心になってやっていこうということでございまして、具体に現在行っておりますものといたしましては、これはスポーツ施設の通年利用についての補助を千円以内するというようなことでございますとか、あるいは夏季及び冬季におきます民間のこういった保養関係のいろいろな施設利用につきましての補助をするというようなことでございますとか、そのほかに健康管理講座というようなものも、これもこの会館で中心に実施をいたしまして、地域の組合員あるいは家族等の御参加を願って健康管理についてのいろいろ公開講座のようなものを行う、さらには救急箱などの配付を組合員等の家庭にするというような事業が当面行っているものでございます。
  80. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 今の関連ですが、昭和五十八年九月に健康管理実態調査を実施したと書いてあるんですけれども、その結果はどんなふうな結果が出ているでしょうか。
  81. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) これは昨年の九月から十月にかけまして、組合員の中で三十歳以上の者、それから家族につきましても同様でございますけれども、そういう方々全部で四十六万四千人を対象にいたしまして健康管理についてのいわばアンケート調査のごときものを行ったわけでございまして、その回答は、現在、回答率は余りよくございませんで、回答者が十一万一千人、回答率二四%というところで資料が集まったわけでございますが、現在この結果と内容の集計分析をやっている最中でございまして、まだ結果が出ておらないわけでございます。
  82. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 そうすると、今のはコンピューター診断という意味での調査なんですね。
  83. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) これは先ほど申し上げました時点におきまして、今までコンピューター診断等の格好でいろいろと健康管理についての何と申しますか事実関係、いろいろあれをいたしますほかに、組合員の健康管理意識の高揚を図るということをねらいにしてやってきたわけでございますけれども、十年ほどこれをやってまいりましたので、この機会にということで、今までの疾病予防的な項目のほかに食生活でございますとか運動の実践状況でございますとか、ストレス解消法としてどんなことをやっているかといったような幾つかの項目をつけ加えまして組合員や被扶養者の生活形態をつかんでそれを集大成をし、今後、保健事業、どんなことをやっていったらいいかということの参考資料にしたい、こういうことで調査をしたものと聞いております。
  84. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 これとの関連なんですけれども、次に、健康保険法の改正法案が今提出されているわけですが、この法案が成立した場合に私学共済の短期給付へどのような影響があるかということを伺いたいと思います。
  85. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 健康保険改正が現在国会に提案され、御審議をいただいておるところでございます。この中身は、先生申し上げるまでもないことでございますけれども、主として、何と申しますか本人の医療費負担につきまして、従来初診料を除き無料でありましたものを六十年度までは一割、六十一年度から二割というような本人負担を考えるということ、それからもう一つは、退職者医療制度の創設をするというようなことが二つ主な医療関係の中身であろうかと思います。この制度は、現行法令上、健康保険法の仕組み国家公務員共済組合法に適用されることになっており、国家公務員共済組合法は私学共済がそれを準用する、こういう仕組みになっておりますので、この健康保険法の改正が行われますと、当然私学共済組合についても同じ制度が適用されるということになってくるわけでございます。  この改正の影響でございますけれども、今期国会に提出されております健康保険法の改正におきまして退職者医療制度が創設されるということになっておるわけでございますが、この制度は、事業所等を退職して国民健康保険加入する者のうち七十歳になるまでの年金受給者等を対象として本人について八割の保険給付を行うなど国民健康保険よりやや有利な給付を行う、その費用については保険料とその者の現役時代の保険者、つまり健康保険の保険者、共済組合でございますけれども、の方から共同で負担するという、拠出金によって賄うということになるわけでございます。これによりまして私学共済の短期給付の財政に及ぼす影響を試算してみますと、昭和五十九年度におきまして拠出金は三十八億円程度というふうに見込まれるわけでございますが、本人に一割自己負担というような制度があわせて実施されます関係上、それによる支出の減少額が二十八億三千万円程度というようなことで、差し引き、初年度でございます昭和五十九年度につきましては、非常に大ざっぱな計算でございますが、七億九千万円程度の支出の増ということに相なるわけでございます。それから、昭和五十九年度私学共済の短期経理という見地から見ました場合には八十億円余りの剰余金が現在見込まれておりますので、その中で処置が当然できる経費でございますので、そういう意味掛金等への影響することはないというふうに考えております。なお、これは初年度のことでございますので、平年度化いたしますと事情がまた変わってまいりまして、平年度化いたしました場合の影響といたしましては、初年度の場合、つまり昭和五十九年度の場合には給付による支出への影響が七カ月分であるわけでございますけれども、拠出金の支払いは八カ月分だということで、一カ月分出す方が多いという仕組みになっておるわけでございます。そういった関係上、その差額約五億円が持ち出しの大きな要因になっているというようなこともございますので、平年度化いたしますと、その問題が解消するというようなことで、今後の受診状況がどうなるのか、一割負担によって受診を自制するというようなことが出てくるかもしれないということもあるわけでございますし、いろいろなことがにわかに判断できない要素が多々ございますけれども、全体として平年度化いたしますと、さして大きな負担でなくて、とんとんに近いような感じになるんではなかろうかと、現在のところではそう見込んでおるところでございます。
  86. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 そこで、付加給付の問題なんですけれども、現在は私学共済は付加給付をやっているんでしょうか。家族ですね、これはね。
  87. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 大体他の共済制度の場合と同程度の付加給付は行っておるわけでございます。
  88. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 そうすると、もし本健康保険改正案が通りますと、六十年度まで一割自己負担ですね。それからそれ以後は二割になるんですが、それは付加給付をするんでしょうか。どうなんでしょう。ある組合ではやるかもしらんとか言っているようですけれどもいかがでしょう。
  89. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 現在、組合員の療養を受けた場合の負担金というのは、先生御承知のように初診時が八百円でございまして、それから入院一日につき五百円ということでございます。それが今回の改正案では療養の給付に要する費用の二割という率で負担をするということになっております。さっきも、実態とうなってくるかはわからないということを申し上げたわけでございますが、例えば療養費全体で五千円かかったといたしまして一割負担となると本人は五百円負担をする。現在の制度は初診時八百円でございますので、かえって今度の制度の方が安いというようなケースもあり得るわけでございますし、もちろん一般的には高くなるだろうと思いますが、安いケースもあるけれども一般的には高い、負担が増加するというのが一般的な見込みであろうかと思います。  これに対して付加給付でどういうふうにするかという問題でございますが、これにつきましては、私学共済独自の立場におきましても、短期経理の財政をどういうふうに見通していくかというあたりのところは、やや、やってみなければわからないような要素もあるわけでございますし、そろいう点を十分検討いたさなければならないわけでございますし、それから国家公務員共済、地方公務員共済等の共済グループの中でのバランスということも考えていかなければならないだろうと思うわけでございますので、それぞれの対応を見、あるいは相談等もしながら対応策を考えたいと思っておるわけでございます。付加給付が禁じられているというわけではございませんので、もちろん、可能な限り対応するという方向が望ましいのかもしれないとは思っておるわけでございますが、いずれにいたしましても、そういった財政的に大丈夫かどうかという点と、それから他の共済とのバランスという問題を十分考えながら対応策はこれから検討さしていただきたいと思っておるところでございます。
  90. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 もう一つ、先ほど局長言われたのは、私はちょっと全部おっしゃったかどうかわからなかったんですけれども、退職者医療制度が創設されるわけですね、もしあれでいきますと。そのときに、高木先生も質問をしておられた中にありましたけれども、高齢化社会になってくると、そういうことの長期展望に立つとこの辺の兼ね合いはどんなふうになるでしょうかね。つまり、私学共済の財政にどういう影響を及ぼしてくるんだろうかというようなことはどんなものでしょう。
  91. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) これからだんだん私学共済関係も退職者が相当ふえてくるだろうと思うのでありますが、ただ一方で、私学は年々その加入者もふえてきているというような状況も他方でございますので、その辺のところがどういうふうになってくるかということは、にわかに見込めないわけでございますし、先ほど申しました本人負担の問題の対応等もございます。退職者給付の問題だけからいえば、あるいは、ある程度共済組合としての負担がふえてくるということがあり得ようかと思うわけでございますけれども、いずれにいたしましても、この問題だけではなくて、本人負担の問題等を含めまして、総合的に短期経理の財政状況というのは考えていかなければならないことでもございますし、事態を十分見守りながら、また必要に応じて掛金率の変更というようなこともあるいは出てくることがあり得るかもしれませんが、現在のところでは、先ほど来申し上げておりますように、新しい二つ制度で大体とんとんというような感じでもございますし、組合員もふえつつあるという状況でもございますので、それほど心配はしておらないわけでございます。
  92. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 今、退職後の二年期限の任意継続組合員制度というのがありますね。私は今ちょうどこれに入っているわけなんですけれども、これはこの本法が成立をした場合にどんなふうになるのですか。
  93. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 現在、御指摘にございましたように退職後二年間は任意継続組合員制度というものがございまして、御本人が希望すれば短期給付の適用を受けることができるという仕組みがあるわけでございます。これにつきましては、最初にお答え申し上げますと、退職者医療制度が創設された後でもなお存続をしていくということになっておりますので、御本人の判断によりまして二年間は任意継続組合員になって、後、退職者医療給付の方に入っていくか、あるいは最初から退職者医療給付の方を選択するかということは本人が判断ができるわけでございます。
  94. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 実は、私の予定しておりました保健医療事業について及び健康保険改正についての私の予定の質問が大体終わってしまいまして、ちょっと時間が残りましたので、これは予告してなかったのですけれども、大臣を中心にひとつお伺いをしようと思うのです。  前回及び今回もそうでございますけれども、九州産大それから国士館大学等の大学紛争の問題と責任の所在ということがいろいろ出ておったわけですが、私は私学のいい点と悪い点といいますか、長所と短所、欠点というものがあるだろうと思うのです。ですから、そこで大学の責任の所在ということを教育責任と経営責任というのに分けますと、教育責任は教官の資質ということになろうかと思うのです。私は、医科大学が一県一医科大学ができましたあの時点で大学設置基準審議会の専門委員もさせられておりまして、それに参加させられたわけでありますが、そのとき教官については、それぞれ教育経験年数が教授の場合ですけれども十年以上とか、ペーパーはどれくらいだとか、内容はどんなものであるかとか、そういう審査が行われて、定員のうち一人でも不合格があると設置が認可にならないというようなことであったわけです。これは国公私立に関係なく行われてまいりました。その後になるとどうなるかというと、大学の自治の名において教官の選出、選任というようなのは各大学は自治的にやっているわけです。私は自分が国立にいたせいもありますけれども、国立においてはかなりその資格は厳しいと思います。ところが、私の承っている範囲では、もちろん国立と何にも変わらない、あるいはそれ以上すぐれた選出方法をとっておられる私立大学もありますけれども、状況によっては論文がないのに教授にしてしまうとかそういったことがある。そういう意味で私立大学の場合ですと、そういうチェックというのはなかなか行われていないのじゃないだろうかというのが一つあります。  もう一つ経営責任なんですけれども、外国の大学の理事会というのは、大変権威もありますけれども、その権威の中には大学の存在理由というふうなものをしっかり踏まえた有識者によって理事会が成立をしているということで、非常に常識的にすぐれたと思われるような経営を行っている。私立大学の場合、今回問題になっているようなところは再三前回も今回も指摘されておりますけれども、経営そのものが、大学の教育の目的だとか、建学の精神だとか、存在理由ではなくて、利益を追求していくという側に走っている、そういう理事会のあり方が問題になってくるのではないかということでありまして、今の教授選考の場合には、それなりに資格というものの常識的な線がありますけれども、理事の場合にはそれはどうなっているんだろうかと。例えば医科大学のときの例を申し上げますと、同一大学の出身者を三分の一以上置いてはならないと、教授ですが、そういう一つの申し合わせ的なコントロールがあったわけです。だから、理事会というふうなものについて何か、僕よくわかりませんけれども、何というのかな、有識者、専門外の有識者を何分の一とか、その大学の出身者は何分の一とかなんとかというふうな、そういう意味の、規則になるのか、あるいはそういうアドバイスになるのかわかりませんが、そういったものがあれば、理事会が、ある、例えば理事長考え方だけですべてが走る、それから教授の選考もそういうふうな形で、さっき言ったペーパーがなくても教授になれるというふうなのは、そういう場合があるからではないだろうかと思うんで、私は、私立大学において大学の自治を認めて、建学の精神を大いに発揮してもらうというのは私は大賛成なんです。しかし、その理事会のあり方がどうも、教授の、教官の構成よりは理事会の構成が問題ではないか、これについてちゃんとした指導方針がなければならないのではないかと。さっき申し上げた同一大学出身者の教授が三分の一以上占めないというのは、規則ではなくて、たしか申し合わせ的なアドバイスだったと思うんです。ですから、同じような意味でそういうことが必要なのではないかと思うんです。大臣のお考えもあわせて承りたいと思うんですが。
  95. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 大臣からお答えいたします前に、その仕組みのことだけちょっと私からお答えさしていただきたいと思いますが、私学の教員の関係経営者の関係についての御質問があったわけでございますけれども、私立大学の場合におきましても、教官の場合について最初に申し上げますと、教官につきましては、先生案内のように、大学設置基準で教授の資格基準はこれこれ以上であるというようなことが決められておるわけでございます。もちろんその規定にのっとってしか任用ができないわけでございますが、実態上は、例えば博士と同等の研究業績があるというような場合に、同等というのをどう見るかというような弾力的な判断の余地があるわけでございます。その辺のところが的確に行われるためにも、この教官の大事については、教授会といったような形のところで、専門家同士の間で議論をして考えていっていただくというのが一番いいことだと思うわけでございまして、最終的な決定権はあるいは理事会の方にあるにいたしましても、事前の選考につきましては、当然理事会あるいは教授会等で議論をしていただく、それが望ましいということで私どもも指導をしておるわけでございます。  それから経営陣の問題でございますが、現在の法令制度上では、例えば同じ理事会の中に親族の者が三人以上入ってはいけない、二人までしか親族は入れないというような制限規定でございますとか、あるいは学長、校長といったような教学側のポストにある者を、要するに職務上の理事として必ず加入させなきゃいけないとか、そういう制限はあるわけでございます。そのほかに、さらに個々の理事につきましては、審査をいたします際の審査内規の中に、私学理事者は社会的に信望があるような人でなくちゃいけないというようなことが、非常に抽象的なことでございますが書き込まれております。具体に審査をいたしました場合に、過去におきましてその理事が社会的な信望という点から極めて問題であるということでアウトにしたケースもないわけではございません。ただしかし、こういう規定は非常に抽象的な規定で、運用が非常に難しいということもございます。なかなか御指摘の点は難しい点があるわけでございます。  なお、理事者の構成につきましていろいろ、ただいま申し上げましたような構成上の制約以上に非常にいろいろな制約を課するということも考えられるわけでございますが、理事の数そのものが五人からあるいは多いところで十五人ぐらいということでございますので、制約を非常に課しづらい人数であると。学校の、学部の先生方の場合には相当数、講座の教授でございましたらば三十講座ぐらいあるわけでございますけれども、そういう点で、理事の場合にいろんな面から制約をつくっていくのもなかなか難しいという制度的な難点もあるわけでございます。  それだけちょっと、事実関係だけ私から最初に申し上げさしていただきました。
  96. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 高桑先生から、御質問というよりは、先生の御意見を加えて御教示をいただいたと、こう受けとめておりますが、大変私は大事な問題の御指摘であったなあと思います。いわゆる教育責任、経営責任とも、大学を認可するまでの間はかなり厳しく、今管理局長が申し上げたような形で、個々の審査をかなり、しかもまだ昔と違いまして今は二年審査というふうに、かなり時間的な余裕も持ってやってるわけです。しかし、一たん事足り出してしまいますと、御指摘のように確かに大学の自由に任せてるという感じは強いようです。しかし、これも、この九産大や国士館の問題の議論のときにいつも出てくることでありますが、大学の自治、それからこの自主性、そうしたことにできるだけ公の支配が及ばないようにするということの方がいいであろうという、そういう大きな一つの前提がある。したがって、少なくとも大学の、教授は別といたしましても、大学の経営に、私学経営に当たろうとする理事職たる者は、そういう不祥事を起こしたり、少なくとも大学でお金もうけをしようなんていうような、そんな考え方があるべきはずもないという前提で、私はこうしたものは文部省との間に信頼関係がなされているんだろうと、私はこう思うんです。確かに日本の復興、経済の繁栄によって、例えば大学に進みたいという国民的ニーズが非常に高まってきて、それにこたえて私学がいろんな形で私学そのものを拡大をしていった、あるいは申請をし認可されていった。そういう意味では、確かに国が本来負担をしなければならぬ面を私学である程度補っていただいたという面も、確かに国側の立場から見ればあるわけであります。だからこそお互いに信頼感があるんだろうと思うんです。私は、高桑先生も、もう十分現場にいらっしゃったんですから、当時の経緯も御存じだと思いますが、財団法が制定されましたときも、この私学の助成法が制定されましたときも、国会の論議はかなりこの辺でございました。さっき久保さんからもおっしゃったような、いわゆるノーサポート・ノーコントロールということが一番−公がお金を出すことによって国が口を入れるんではないか、監督強化するんではないか、人事のところにまで入れるんではないかというようなことを非常に、当時私学側は、お金は欲しいが余りかかわり合いを持ってもらいたくないという、当時はそういう私学側の気持ちが非常に強い。私どもとしては、もうできるだけの援助したいんです、余りさわりたくないんです、こういう気持ちで当時私どもは取り組んでおりますし、今でもその気持ちは変わりないんです。ですから、議論の中に出ましたように、私学団体の統合を当時自由民主党が言いましたのも、何も自民党が言ってるんじゃなくて、私学の皆さんがおっしゃってるんだけれども、いや懇話会に入ってるのもあれば、連盟に入ってるのもあれば、協会に入ってるのもあれば、全くどこにも入ってない人たちも七十校ぐらいある。どうでもいいんだというようなことでは統制がとれないんじゃないですかと、国から一々口を入れるんじゃなくて、大学がみずから自分たちの良識の中においてすべていろんな問題があっても自浄能力、自分たちでお互いに努力していくという姿勢が本来あってほしい。そういう意味で私どもは、ばらばらの団体よりも一本になってくださって、財団などもみんなでこう。管理というと形おかしいですけど、動かしていくような形の方が、むしろ国が一々口を挟むことでなくなるんじゃないか。お互いにそういう信頼感の中にこうしてでき上がってきておる制度でございますから、先生から今御指摘がありますと、おかしな面は確かにありますが、本来、こんなことがおかしなことだなあと言われないようにあるべき姿が一番いいわけですが、残念ながら、いろんな問題が今日起きてくるということになれば、少なくとも学校経営していこう、そういう人格的な人たちがいささか欠如しているという例がこうした事態になると出てくるのではないか。そういう意味で、大変私はこうした私学の不祥事の問題は残念な事態になっておるなあというふうに考えます。したがいまして、こうしていろんな問題が起きて、そういう私学と国との信頼関係を盾に、逆に言えば今の九産大のような動きがあるとするならば、もっと何らかの形を加えたらどうかというお声は出てきますけれども、平常時の極めて静かなる学園の教育の環境の中で、余り国が口を入れるなんというふうなことは、これはむし逆に言えば皆さんからおしかりをいただくケースの方が多いわけでございますから、何か認可のときだけのいわゆる国のかかわり合いだけで、これでどうぞということがいいのか、もう少し時折は国が何らかの形で見ることがいいのか、さっき言ったように、私学全体のみずからの少なくとも機能を果たす、少なくとも信頼度のあるような何らかの形でやっていく方法がいいのか、こんなことも私はこれから一つ検討課題になると思いますが、ただ文部省といたしましては、学校法人運営調査委員制度——仮称でありますが、これができることでもございますし。それから今度の機構改革におきまして、私学については管理局と大学局と分かれておりましたけれども、今度は高等教育局というふうないわゆる一元化するわけでございまして、その中に私学部というものもできるわけでございますから、そういう中で新たな私学と国との新しい関係が私はここで構築されてくるんじゃないだろうか、こうしたいろんな不祥事のことも踏まえながら、お互いに私学と文部省とで十分な私は話し合いをしながらいい関係ができるようにしていったらいいのではないか、こんなふうに私は思っております。
  97. 小西博行

    ○小西博行君 私学共済昭和二十九年からスタートしているわけでありますけれども、その主な設立の要因といいますか、理由といいますか、これからお伺いしたいと思います。
  98. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 私立学校共済組合昭和二十九年に設立されたわけでございますが、昭和二十六年に私立学校振興会法が制定されました際に国会において附帯決議がございまして、教職員の福祉等につきましても、待遇等につきましても、教育基本法第六条の精神に沿って適切な対応が図られるべきであるという趣旨附帯決議がなされたわけでございまして、それを受けて私立学校共済組合を設立するという法律が制定をされたわけでございます。  そういうことでございますので、この制度発足以前の私立学校教職員に関します法的な福利厚生制度といいますのは、これは国家公務員について恩給制度共済制度が適用されていたのに対しまして、私学教職員につきましては厚生年金健康保険への任意加入、それも包括任意加入ということで学校法人としてまとまって入らなきゃだめだというような形での加入が認められていたというにすぎなかったわけでございます。また、このほかにも私学教職員の独自の仕組みといたしまして私学恩給財団という自主的な組織等もあったわけでございますが、これもまた任意加入という制度でございました。いわば、大部分の教職員が適切な制度の外に置かれていたというような形になっておったわけでございます。そのようなことから、国会附帯決議等もそういう御趣旨でつけられたものだと思いますが、教育基本法第六条の規定によりまして、国公私立ということを問わず法律に定める学校というのは公の性質を持つものである、そしてその教職員は適正な処遇が受けられなければならないという規定、そういう規定をもとにいたしまして、この私立学校教職員につきましても、こういった国家公務員である教員、国立学校の教員、職員等に準ずるような形での福祉制度が必要であるということで、この私学共済制度が成立したということでございまして、以後、逐次この給付水準等も国家公務員、地方公務員に対して見劣りのしないように充実をしてまいりまして、今日ではほとんど全く同じレベルにあると言っていいぐらいの状況になっていようかと思うわけでございます。
  99. 小西博行

    ○小西博行君 今、局長がおっしゃいましたように、私学教職員の待遇だとか、あるいは福利厚生、あるいはサービス、こういう面では国公の教職員と大体同レベルぐらいまでいっているというふうに判断されているわけですね。——それじゃもう十分わかりました。  もしほとんどが達成されていると、しかし、この点がまだ残っているんだという部分は何でしょうか。
  100. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) これは大変難しい問題でございますが、要すれば、私学教職員と、それから国公立学校教職員というのは、公務員であるかないかという身分上の違いがどうしても基本的にあるわけでございますので、その関係上、先ほど他の委員先生から御指摘がございましたように、例えば給与につきまして基礎となる給与のつかまえ方につきまして、公務員であるものについては本俸、手当というのがはっきりしておる関係上、本俸でつかまえるということで、これに対しまして私学の場合には民間で労使交渉等によって決まってきますので、水準も大変ばらばらであると、中身も非常にばらばらであるというようなことがございますので、本俸と手当と区分することはなかなか難しいというようなこともございます。したがいまして、一括をし、そして、しかも、それをほぼ同じような水準のものとして、俸給表等が全部違いますものですから、標準給与という制度を設けまして、それにスライドさして、それで措置をするというようなことで、これが有利か不利かというのはいろいろな議論が出てくるわけでございます。そのほかに、公務員の場合には公務上のいろいろ責任等がございますから、懲戒等を受けた場合というようなことについては、公務員である国家公務員共済組合の場合と私学の場合とでは少し取り扱いが違っているというようなケースも若干ではあるがあるわけでございます。これは全体として私は、先ほど来申し上げておりますように、有利不利ということではなくて、事柄として区別が、ある部分ではせざるを得ないところがあるということでございますが、いずれこういった点も今後の一つ公的年金制度全体を一元化し、公平化を図っていこうという仕組みで、これは官民全体を通じてという感覚で問題が進みつつある中でもございますので、こういった問題に対する対応も、これからの一つ検討課題にはなることであろうとは思っております。
  101. 小西博行

    ○小西博行君 既にもう同僚議員の方からも質問があったと思いますけれども、例えば国立大学の先生が私立大学の方へ移るという場合ですね、年金の面で不利になる点があるんではないかという心配がございます。この点についてはどうでしょうか。
  102. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 現在の仕組みといたしましては通算年金制度ということがございますので、国立から私立へ移りましても、通算で二十年以上に達していれば年金が支給されるという仕組みになっております。例えば国立に三十年ずっと勤めていたと、それで退官されてそれきりだという方と、当然そこで年金がいただけるわけですけれども、それから国立て二十五年いて、あと五年間私立へ行かれたというような場合とを比較しますと、国立へ行かれて私立へ行かれた場合には年金としては二十五年に対する国立の側の年金が出て、後で私学の部分の五年分の年金が別途出ると、通算退職年金ということで別途出るというようなことでございます。私学へ行きますと、国立に在職していたときよりも給与が低くなるというのが普通のケースでございますので、そういった意味ではずっと三十年国立におられたという方より低くなるということも、それはあろうかと思うわけでございます。ただ、これもいろいろなケースがあり得るわけでございまして、その間年金の総体の最終的な額としては低くなるかもしれないけれども、ある程度その間私学から給与を得ているというようなこともあるわけでございますし、いろいろなことを勘案いたしますと、やはりこれはケース・バイ・ケースということを言わざるを得ないのではないか、かように考えております。
  103. 小西博行

    ○小西博行君 将来、年金制度一元化という構想がもう既に打ち出されて、いろいろ進んでおりますけれども、この理由ですね。これはいろいろ言われていると思いますが、その主なものをちょっとお聞きしたいと思います。
  104. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 年金制度一元化の問題が、これは臨調等からも出てまいりましたし、いろいろな機関からいろいろ論議され、そして政府としてもこれを取り上げて現在進めてきておるわけでございますが、これはまず、今後の我が国の高齢化社会の到来ということで、非常に高齢な方が多くなってくるということを考えますと、こういう方々をいわば私的な扶養の方式、つまり家族で養っていくというような方式だけに頼っているということはとてもできないという状況に社会そのものが変わりつつあるわけでございます。  そういった中で、こういう方々に安心をして生活がしていただけるようにということのためには、私どもといたしましても、長期的に安定をした制度を、しかも公平な制度を確立をいたしまして、整備をしていくことが必要であるということがそのねらいでございまして、いろいろな現在分かれておりますものを一元化することによりまして、各制度の間における給付水準あるいは負担の程度についての、いわば制度間格差という言葉で言われているものがございますが、そういうものを解消していくことでございますとか、あるいは非常に小単位なもので経営をいたしておりますと、これは小単位とは言えませんけれども、国鉄のようにどうにもならなくなるというようなケースも出てまいるわけでございます。したがって、そういうものをできるだけ大規模経営統合をしていくということによって安定を目指すというように利点もあるわけでございまして、いわばそういうことから高齢化社会に対応するための方策として、年金一元化というのを全体として進めていこう、こういう考え方になっておるわけでございます。
  105. 小西博行

    ○小西博行君 そこで、一元化に当たって、私学共済の方は今非常にいい状態にあるということになりますので、当然これが平均化というような格好で一元化されるんじゃないかという心配が私学の皆さん方にはあると思うんです。そういう意味で、サービスは低下しないか、この点についてはいかがでしょうか。
  106. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 年金制度一元化に伴いまして、御承知のように私学共済というような共済組合制度におきましては、長期経理、つまり年金関係と、短期経理、医療給付関係と、それから福祉事業三つのものを三本柱として実施をしておるわけでございます。  現在、いろいろ議論されておりますのは、年金一元化問題ということで議論をされておるわけでございますが、これにつきましては先ほど来申し上げましたような方向で、一元化という方向は逐次進めていかなければならない。しかしその場合に、共済組合そのものを一元化するのかどうか、あるいはそのうちの年金部分だけでも一元化するのかどうかというようなあたりの、業務の一元化の問題をどうするかというあたりのところが一つまた大きな問題として、年金制度一元化するという問題と業務を一元化するという問題とは、少し別個の問題として存在をするわけでございます。  現在の私学共済状況等を見ますと、年金業務のほかに、先ほど申し上げました短期給付の業務と、それから福祉事業と、大事な仕事をやっておるわけでございます。年金だけをやっておるわけじゃ決してないわけでございますし、そしてその三つの事業というのは、それぞれ例えば長期経理の方からある程度お金を貸して——これは貸し借りの関係でございますけれども、福祉事業をやって後、借りたお金はもちろん返すというような形での運用等も行われますし、組合員の住宅貸し付け等も長期経理の金の中から貸しているというような関係等もございます。いろいろ難しい問題があるわけでございます。  私どもといたしましては、全体のそういったいろいろな福祉事業でございますとか、そういうたぐいの私学教職員にとって大事な事業が変に損なわれるようなことがないようにということを十分念頭に置きながら、しかも年金そのものの一元化というのは大事なことでございますので、そこの調整を図りながら、ある解決の方向を見出していきたい、かように思っておるところでございますが、いずれにいたしましても、年金制度の方の負担や給付水準一元化という方が先に進んでいきまして、その後で業務の問題をどうするかという問題が後から引き続いて出てくる問題でございますが、常時その辺ば念頭に置きながら対応してまいりたい、かように考えております。
  107. 小西博行

    ○小西博行君 年金制度のいろんな統合して、最終的には七十年ですか、全体を一元化していくという構想みたいなのが出ておりますが、もう既に現在の段階から、さっき申し上げたようないろんな問題ですね。例えば私学共済の中にもいろいろ財産もあるし、そういうものをどういうふうに具体化していくんだというような構想といいますか、具体的作業が進みまして、そしてそれを提示していただきますと、非常に議論もしやすいし、納得もできるということだと思うんですね。私学の皆さん方からすれば、どうしてもせっかくやってきて、また現在うまくいっているじゃないかと、これを何か全体の平均的に落とされたんではどうしようもないと、こういうのが実は本音だろうと思いますね。だから、その辺の調整をうまくやっていただきたい、こういうのが私からの願いでもあります。  そこで、ちょっとお聞きしたいんですが、これも通告をしておりませんので、すぐにお答え願えるかどうかわかりませんけれども、年金制度というのは八つありますね、各種の共済。この共済のそれぞれの特徴というんでしょうかね、私も不勉強で余りわからないんですけれどもね。  例えば厚生年金保険だとか、船員保険だとか、こういうのが八つありますね。その中の一つ私学教職員共済組合という、こういうのがありますね。これが、それぞれが、どういう点がよくて、どういう点が悪いといいますか、条件がこうなんだというものが非常にわかりにくいんですね。これらをすべて最終的には一元化してうまくやっていこうという大きな構想があるということは非常に私結構だと思うんですけれども、その辺の考え方についで少し詳しくお答え願えませんでしょうか。数字等は後でも結構でございますが、急にちょっと申し上げたんで。
  108. 阿部充夫

    政府委員阿部充夫君) 各種の年金制度は、先生おっしゃいましたようにいろいろあるわけでございますけれども、これを大まかに分けますと、国民年金とそれから厚生年金、それから共済組合と大きく言えばこの三つになっておるわけでございます。  国民年金につきましては、現在、これはいろいろございまして大変御説明が難しいわけでございますけれども、給付の算定方式から申し上げますと、国民年金の場合には期間比例で計算をいたしますが、厚生年金の場合には定額部分というようなものがあって、期間に関係なく支給されるようなものがあるとか、あるいは共済組合の場合には期間平均でやるような方式が原則でございますけれども、厚生年金の場合のように定額部分を含むような計算方式をした場合が有利な場合にはそっちに乗ることもできるというような、二またかけて有利な方がとれるというような格好で特に有利になっているというような点等もございます。  それから、例えば支給開始年齢につきましては、国民年金は六十五歳からでございますけれども、これに対しまして厚生年金保険の場合には男子が六十歳、女子は五十五歳となっております。  それからまた共済組合の場合には、現在のところ男女とも五十五歳でございますけれども、これは既に法律改正が行われておりまして、段階的に六十歳まで引き上げるということが決められているというようなことでございますので、これでいきますと一番有利なのは、現状から言えば男女とも五十五歳となっている共済組合が一番有利で、それから厚生年金保険の場合には女子は五十五歳だけれども男子は六十五歳、国民年金は全部六十五歳だというようなことの順番になろうかと思います。先ほど申し上げましたように、六十歳に引き上げということは、もう既に実施をされて、今公務員の場合、経過期間中でございます。  それから算定の基礎となる報酬なり俸給なりのあれでございますけれども、国民年金は報酬比例ではございませんので、これは関係がないわけですが、厚生年金保険の場合には、算定の基礎になりますものが加入全期間の平均標準報酬月額ということでございますので、今までのもらっていた給料の全体平均、真ん中辺の金額が基礎になって支給される。これに対しまして、公務員等の共済組合の場合には、退職前一年間の本俸月額ということで、最終給与で決定されているというような違いがございます。さらにまた、保険料等はそれぞれのケースによって違っておりまして、共済組合の中でもかなり違っておるわけでございます。それから国庫負担の程度でございますが、これにつきましては、国民年金につきましては給付時に負担をするという仕組みで、給付費の三分の一を国庫負担というような形でございます。これはその年に給付をする額に対して国庫で三分の一負担をするということでございます。厚生年金保険の場合には、同じように給付時の負担でございますけれども、給付費の二〇%が国庫負担ということで、片方は三分の一でございますから約三三%、厚生年金は二〇%ということでございます。それに対しまして、共済組合の方はまた違っておりまして、これは拠出時負担でございまして、掛金を掛けでいるときのそれに対する一五・八五%負担するというようなことで、これが拠出時か給付時かというのはまたいろいろ違うわけでございます。それから、共済組合の中でも私学共済だけは特別でございまして、これは給付時負担でございまして、負担率は給付費の一八%というようなことになっております。したがいまして、ここのあたりになりますと、私学共済厚生年金保険の場合と国家公務員や何かの公務員共済との中間的な位置に存在をするような格好になってまいります。それからまた資金の運用等につきましては、国民年金は資金運用部に全部預託をするということになっており、厚生年金保険の場合にも同様でございますが、国家公務員、地方公務員、あるいは私学共済等の共済組合の場合には、ある部分制約はございますけれども、原則として自主的に運用できるということになっておりますので、それによって利子収入等が少し違ってくる可能性があるというようなことがございます。そのほか障害年金、在職中に障害を受けたような場合の障害者の方の年金でございますけれども、こういう場合には、厚生年金保険の場合には、在職中であっても、障害を受けたらすぐにそれから年金が支給されるわけでございます。これに対しまして、共済組合の場合には、在職中は支給されませんので、障害者であっても。ですから、退職をした後に障害給付年金が支給されるというような違いがあります。いろいろな点で、その他細かく申し上げますとまだまだいろいろありますが、そういう面で、それぞれ制度の成立の経緯等いろいろ違っておることもございますし、それから公務員であるかないかということによる身分上の違いから、やむを得ざる制約というような部分もございます。いろんな点で違っているわけでございます。
  109. 小西博行

    ○小西博行君 大変もう複雑で、大臣はもう十分御承知だと思うんですが、私は本当に余り理解できないんですが、これを見ましても、加入者の数というのが、またこれ非常に大きなばらつきがあるんですね、それぞれの団体でですね。それから掛金の率もこれまた違うと、さっきおっしゃったように計算方式もまた違うと、非常に私は複雑なものを一元化していくという大事業だというように私は思いますね。ただ、それぞれの年金をもらっている方々が、できるだけサービスを落とさないでやっていただきたいと、こういう要望が一番強いんじゃないかと思うんですね。またそうあるべきじゃないか。予算が少なくしてサービスを大きく受けたいと、こういうのが大体普通の願いだと思うんですが、なかなかそうはいかないという状態であるだけに、私は早く先ほど申し上げたように具体化しで、こういうものですというものを出していただきたいと。それで、それの上でまた詳しく検討させていただきたいと、そういうことを申し上げてきょうは終わりたいと思うんですが、大臣の御意見を最後にお伺いしたいと思います。
  110. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) これもたびたび政府側から申し上げておりますが、閣議決定が二月二十四日になされておりますので、それに従いまして、いわゆる基本的には長期的な安定、そしてもう一つは公平というこの二つの基本、このことによってお互いにこれから協議していこうということでございます。そしてまた、私ども文部省の立場から見れば、検討方向というのは従来どおり、国家公務員等のいわゆる共済年金制度との均衡、これはもう教育基本法の中にも示されているとおりでございますので、このことだけはしっかり検討をしていかなきゃならぬと、こう考えております。早く何かこう具体的なものをということでございますが、これは文部省だけで、あるいは私学共済だけで出せるものじゃございませんので、関係省庁と十分協議をして、そして今申し上げましたように長期的には安定、そして公平の面は世代間の安定、もう一つはやはり公と民間との公平、このことをしっかりと一つの哲理にいたしながら十分なる協議をしていきたいと、こういうように考えておるわけでございます。
  111. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 御異議ないものと認めます。よって、質疑は終局いたしました。     —————————————
  113. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 次に、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。森文部大臣
  114. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) このたび、政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案は、著作物、実演、レコードの複製物の貸与に関して著作者、実演家及びレコード製作者の権利を創設するとともに、私的使用のために複製する場合に公衆の利用に供される複製機器を使用することの制限及びその機器を使用させた者の責任について規定して著作者等の権利の適正な保護に資することを目的とするものであります。  昭和五十五年六月ごろ出現した貸しレコード店は、現在では全国千九百店舗を超えるまでに普及し、それに伴いレコードの販売量が減少すること等を通じ、著作者、実演家及びレコード製作者の経済的利益が大きな影響を受けるという事態が生じています。このようなレンタル業は、その他の著作物についても今後普及し、同様の問題が生ずることが予想されるところであります。  また、音楽テープの高速ダビング業、ビデ才・ソフトのダビング業等新たなコピー業の出現により、著作物が大量かつ簡便に複製され、著作者等の利益が害される事態が生じています。  以上のような著作物のレンタル業及びコピー業の普及により生じている新たな事態に対応して、著作物等の公正な利用に留意しつつ著作者等の権利の保護を図るため、所要措置を講ずることが、今回の著作権法の一部改正趣旨であります。  次に、本法律案内容について申し上げます。  第一は、著作物、実演またレコードの複製物の公衆への貸与に関する著作首、実演家またはレコード製作者の権利の創設であります。  まず、貸しレコードのように著作物をその複製物の貸与により公衆に提供することについて、著作者に新たに権利を認め、著作者の許諾を得なければ貸与できないことといたしております。  ただし、図書館、視聴覚ライブラリーにおける貸与のような非営利かつ無料の貸与は著作者等の許諾を得なくともできることとし、また、書籍、雑誌の貸与については、貸し本業が長年自由に行われている経緯等にかんがみ、当分の間、適用除外することといたしております。  また、貸しレコードについて、実演家及びレコード製作者に権利を認め、商業用レコード発売後一月から十二月の範囲内で政令で定める期間は実演家、レコード製作者の許諾を得なければ貸与できないこととするとともに、その期間経過後は報酬を支払わなければならないことといたしております。  この報酬請求権は、文化庁長官が指定する団体があるときは、当該団体によってのみ行使できることとし、この報酬の額について当該団体と貸しレコード業者との間の協議が成立しない場合には、文化庁長官の裁定を求めることができることといたしております。また、許諾に係る使用料を受ける権利についても当該団体によって行使できることとし、その場合は使用料の額について同様に文化庁長官の裁定を求めることができることといたしております。  第二は、公衆の利用に供される複製機器を使用する複製に関する改正であります。  まず、公衆の利用に供することを目的として設置されている音楽テープの高速ダビング機等の自動複製機羅を用いて複製する場合は、私的使用を目的とするものであっても著作権法で許される私的使用のための複製に該当せず、著作者、実演家等関係権利者の許諾を得なければならないことといたしております。ただし、私的使用のために複製する本人については民事上の責任を問い得るにとどめ、罰則を適用しないこととしております。  一方、営利目的でこのような複製機器を関係権利者の権利の侵害となる複製に使用させた者については、罰則を適用することといたしております。  なお、自動複製機器のうち文献複写機については、複写の分野における集中的な権利処理体制が整っていないことにかんがみ、当分の間、これらの改正の対象から除いております。  このほか、昭和四十五年の本法制定以降の物価の上昇を考慮して、著作権侵害罪等の罰金額の上限を引き上げる等所要改正を行うことといたしております。  また、この法律の施行期日は、昭和六十年一月一日といたしております。  最後に、昨年十一月に議員立法により成立しました商業用レコードの公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する暫定措置法を廃止し、それに伴う経過措置を講ずることといたしております。  以上が、この法律案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  115. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 以上で趣旨の説明の聴取は終わりました。     —————————————
  116. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  著作権法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に社団法人日本レコード協会会長高宮昇君、日本レコードレンタル商業組合理事長牛久保洋次君及び岡山大学法学部教授阿部浩二君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 御異議ないものと認め、さよう決定いたします。  午後二時まで休憩いたします。    午後零時四十二分休憩     —————————————    午後二時開会
  118. 長谷川信

    委員長長谷川信君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、お手元の名簿にございます三名の参考人の御出席を願っております。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙中のところ、当委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。  皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、本案審査の参考にいたしたいと存じます。  つきましては、議事の進行上、名簿の順でお一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員質疑にお答えを願いたいと存じます。  それでは、まず、高宮参考人からお願いいたします。高宮参考人
  119. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) 御指名を賜りました日本レコード協会の会長をいたしております高宮でございます。  著作権法の一部改正の参議院での御審議に当たりまして、私ども利害関係人を参考人としてお呼びいただきまして、審議にさらに慎重を期しておられますことに対して深く感謝を申し上げる次第でございます。  いろいろと申し上げたいこともございますけれども、時間も限られております。  最初に、レコード協会を簡単に御紹介申し上げておきたいと存じます。  レコード協会は社団法人でございまして、昭和十七年に設立をせられまして、今日までに四十二年の歴史を重ねております。レコードメーカーの団体でございまして、定款に定められましたその目的とするところは、我が国のレコード界全般の融和協調を図り、優良なレコードの普及を心がけで、レコードの適正利用の円滑化に努めて、国民文化の進展向上に努めるというような目的で結成された団体でございます。  昨年来、新しい秩序をレコード産業界につくっていただくということのために、国会におかれましてはいわゆる俗称の貸しレコードの規制の暫定措置法を制定いただきまして、この六月二日からいよいよそれが実施されるというような運びになりましたことにつきまして、先生方の御努力に深謝申し上げますと同時に、さらにまた、このたび著作権法の一部改正につきましていろいろ御審議をいただいておりますが、私どもといたしましては、いろんな経緯はございましたけれども、この際、政府の原案どおりに成立をさせていただくことを希望いたしております。いろいろの事情があったというふうに申し上げましたけれども、法律が成立いたしました上は、善良な市民として、その法のもとに貸しレの商業組合の方々とも十分な合意の形成に向かって、行政官庁の、特に文化庁の御指導も得ながら、その合意の形成に努力をしてまいりたいというふうに考えております。  なお、我々は日本音楽著作権協会、通称JASRAC、それに日本芸能実演家団体協議会、通称芸団協を合わせまして、いわゆる著作権法上の権利者三団体としてこの問題については、その解決、前進に当たってまいりましたが、きょうは参考人としてお呼びいただいておりませんけれども、この両団体は、いずれもこの法の円滑な成立ということについて、原案どおりの成立ということについて希望を表明しておられますので、そのこともこの機会に申し述べさせていただきたいというふうに存じます。  せっかくの機会でございますので、今申し上げましたようなことで、この本法の成立を希望するわけでございますけれども、若干、細部にわたりまして我々の立場を御説明申し上げておきたいと存じます。  まず、我々は今日まで、いろいろな法律の中でも、特に、いわゆる著作権法のいわば枠のもとに、先ほど申し上げました著作者の団体でありますJASRAC、芸能実演家の団体でございます芸団協というようなところと一緒に協力をいたしまして、一つの音楽産業というものを形成してまいりましたし、また、音楽文化というものを支えてきたつもりでございます。なお、これにあわせまして、できました商品あるいは産物を国民一般に供給するというような役割を果たしておりますレコードの販売店、さらにまた言えば、この音楽作品を評価して購入してくださる一般消費者、こういういわば五つの集団によってこの産業は形成され、結果的にはまたそれが日本の音楽文化につながるような活動をしてまいったわけでございますが、そこには先ほども申し上げましたように、レコード協会として考えましても、既に四十二年の営々として積み重ねてきた努力がございまして、おのずからな調和とか秩序とか繁栄というものがあったわけでございます。各三団体、あるいは販売店、あるいは一般国民大衆というようなものは、それぞれの立場からの一つの権利と申しますか、立場を主張すると同時に、分担すべき責任というものは、そういうところは、それぞれにしょってやってきたということで、今日の我が国のレコード産業ないしはレコード文化というものは維持されてきたというふうに考えております。  ところが、先生方もとに御承知のように技術革新が進んでまいりまして、法律でも予見されなかったような事態がこの音楽産業あるいは音楽文化の周辺にもいろいろとあらわれてまいるようになりまして、そういった時代背景の中で、ここに新しくいわゆるレコードのレンタルによる音楽の提供というような現象も生じてまいったわけでございます。それはそれで一つ意味合いもあろうかとは存じますが、これが実際の世の中への供給のされ方におきまして、一般の長年にわたって築き上げてこられました、いわゆる小売業者との比較において眺めますときに、非常に著しく低額でその商品の供給ができる、供給されるというような事態が発生してまいったわけでございまして、やはり安い物はどうしても、それだけの安いがゆえの魅力というものがございまして、非常に急速にこれが発展し広がってきたというようなことがありますことは、先生方もっとに御承知のことでございますが、その結果といたしまして、長年一つの調和、秩序のもとに運営されてまいりました文化産業というものが大変バランスを崩すようなことになりまして、殊にレコード販売店におきましては、売り上げが非常に低下してくるとか、あるいは転廃業に追い込まれるというようなものが、我々の調査によりましても年間に数百件を数えるというような事態が出てまいりましたし、またレコード会社自体も生産の低下、縮小というようなことによりまして非常に窮地に追い込まれるような事態になってまいりました。何とかこれを救済をしていただきたいと、我々自身の努力と同時に、国におかれましてもその辺を何とかひとつ新しい道をつくっていただきたいということで、その一つは、我々はその救済を司法機関に求めまして、今日まで数件の訴訟を提起いたしまして、その中には逆に先方さんから訴えを受けたというようなものもございますけれども、そういうことで司法による判断によって我々の行く道の一つの大きな基準を求めたいものだということにあわせまして、法律もなかなか現状に追いつかないような面も多々ございますので、新しい法秩序というものをつくっていただきたいということで、国会あるいは行政府にもいろいろとお願いをしてまいったわけでございます。  裁判は昭和五十六年、もう既に三年近く前からそういうふうな行動をとったわけでございますが、ここのところへまいりまして、だんだんと、司法当局におかれましても、その見解を判決、決定というような形でお示ししていただきまし芹り、それから一番基本的なものになっておりました昭和五十六年の秋に東京地裁に提出いたしました貸しレコード業というのは我々に与えられている著作隣接権の中の複製権、我々に専有することを認めていただいております。その複製権の侵害だというふうに我々は考えます。したがいまして、これを差しとめていただきたいという訴えを提起したわけでございますが、このことにつきましては、その後の推移で暫定措置法もできましたし、さらにまた一部改正法案も御審議を願っているというようなことから、裁判所の御当局におかれましても、この辺で客観情勢も変わってくるようなことだから、ひとつ職権によって両当事者の間に和解をする道はないかというようなお話もいただいておりまして、貸しレーコード業をやっておられる方々の御意向もありまして、我々もそれをお受けすることがいいだろうということで、目下職権による和解が進行中でございまして、そう遠からぬ日に何分の和解案というものも裁判所当局からちょうだいできるんじゃないかというふうに思っております。  それから、一方立法につきましては、御承知のように、昨秋、暫定法によりまして複製権の保護ということを意図はされておりますけれども、しかし、貸しレコードというものは、ひとつ社会的な存在として認めてやるべきではないかというようなお考えで、一定期間の許諾権をちょうだいして、ここに新しい法秩序というものができたわけでございますが、引き続き、それをさらに長期的なものにするために改正試案を政府によって提案されたというふうになっておりますので、我々は慎重に審議会その他によって御検討の上で学識経験のあられる方々の御審議の上での一つ方向でございますので、個々に申しますと、レコードメーカーの立場から申しますと、いろいろ不満なところはございましても、大きくはその方向に従ってそれに従うべきじゃないかというふうに考えまして、冒頭に申し上げましたように、この改正法案の原案どおりの成立をお待ちしている、待望しているというような次第でございます。  著作権者とあるいは著作隣接権者に社会的な変化、発展、推移ということに対して一つのそれに対する妥協というものをこの法律は要求しておちれるものというふうに我々は受けとめますけれども、著作権法というのは、一部は、その第一条にも書いてございますように、文化的な所産の公正利用ということに留意しながら、著作者等の権利を保護するということを目的として制定されてやりますので、私どもは新しい法改正を厳粛に受けとめながらも、貸しレコ業との間に共存を図っていかなければならぬというふうに考えます。これをどういうふうにして図っていくかということはきょう参考人として私の隣におられる商業組合の牛久保さんあたりとも今後大いにお話を誠実にやりながら、その道を模索してまいりたいというふうに考えております。  そういうことでございますけれども、冒頭にも申し上げましたような、いささかバランスの崩れた広い意味での業界の推移を考えますと、我々、現在の段階では相当な犠牲を、従来のレコード産業あるいはレコード販売店というものはダメージを受けていると。これをどの程度にどういうところで食いとめるかということについて商業組合との間に本当に忌憚のない誠実な意見の交換を図りながら、合意に到達したいというふうに考えている次第でございます。そういうことでございますので、私といたしましては、こういうふうな御配慮をいろいろ賜りましたことに対して感謝を申し上げますと同時に、商業組合とは十分に話し合いをその法の精神に従って進めていきたいと。しかしながら、我々にはレコード産業を維持、発展させていくという社会的な使命もございますので、その存立の根源が危なくならないというぎりぎりの線はどこであるかということを慎重に考えながら、その道を探していきたいというふうに考えている次第でございます。貸しレ業に従事しておられる方々も、既にここで市民権を得られたわけでございますので、市民権を得られたことに伴う社会的な責任というものもおありだろうと思いますので、いろいろとお話をしていけば、必ずそこにお互いに譲るべきは譲り合って到達する道があるんじゃないかというふうに考えております。  そういうことで進んでまいりたいと思いますので、どうぞ、法案そのものにつきましては、たびたび申し上げますように、原案どおりの御採決を賜りますようにお願い申し上げて、私の説明を終わらしていただきます。
  120. 長谷川信

    委員長長谷川信君) どうもありがとうございました。  次に、牛久保参考人にお願いいたします。牛久保参考人
  121. 牛久保洋次

    参考人牛久保洋次君) 私は、日本レコードレンタル商業組合理事長を務めさしていただいております牛久保洋次でございます。  まず初めに、私を代表といたします日本レコードレンタル商業組合について御説明申し上げます。  当商業組合は、去る三月二十四日、通産大臣によって認可いただいた団体でございまして、中小企業団体の組織に関する法律に規定されました、恐らくは音楽産業として初めての全国規模の団体でございます。当組合の組合員数は現在七百九十二名、組合員経営いたします店舗は千百三十三でございます。ちなみに、全国に貸しレコード店がどれだけあるかと申しますと、昨年七月に通産省におきまして日本レコード協会と、当時私どもの団体でございました日本レコードレンタル協会双方の名簿を照合しました結果、ダビング店を含め千九百十店舗という数がございます。  私たちは一年間という時間をかけて、ようやく商業組合設立にこぎつけたわけでございますが、わずか四年足らずの業界が、商業組合という認可条件の一番厳しい組織を設立いたしました背景には、レコードレンタル業を正しく評価していただきたいという数多くのレコードレンタル業者の切なる願いがありましたことをまず申し述べさせていただきたいと思います。  当商業組合は、業界を代表する団体としての責務に沿って、当面、三つ課題に取り組んでまいりたいと存じております。一つは、関連法律のもとに権利者団体との友好かつ円満な関係を築き上げていくことでございます。二つ目には、未加盟店に対する加盟の働きかけを促進することによりまして、いわゆるアウトサイダーを極力なくし、健全な業界の発展に資することでございます。三つ目といたしましては、違法性の高いと言われます店頭ダビングの一掃でございます。当商業組合は、ダビング行為をやらない店舗のみが加盟しておりますが、今後、業界秩序の確立のためにもダビング行為の一掃に努めてまいりたいと考えております。  さて、本日、当委員会におきまして、私はレコードレンタル業界を代表いたしまして、著作権法の一部を改正する法律案につき意見を陳述させていただくわけでございますが、現時点におきまして、私どもの関心事はただ一点、利用禁止を伴わない許諾権行便ということでございます。当法案が成立いたしますとすれば、昭和六十年一月一日からの施行が予定されているわけでございまして、そういたしますと、いわゆる暫定措置法は廃止になる、しかし、その運用内容に関してはそのまま遵守をされるであろう、このように考えまして、したがいまして、私は、本日、暫定措置法の運用をめぐる問題点に触れ、諸先生方の御理解を賜りたいと思っている次第でございます。  昨年、国会において成立を見ました商業用レコードの公衆への貸与に関する著作者等の権利に関する暫定措置法は、来る六月二日から施行が予定されており、日本レコードレンタル商業組合といたしましては、その運用につき関係団体との間で交渉を現在継続しているところでございます。暫定措置法が成立いたしました際、衆議院では小委員長報告の形で、また参議院では附帯決議の形でそれぞれ「許諾権の行使にあたっては、公正な使用料によって許諾すること」と、立法府の意思が明記されました。つまり、レコードの貸与を、レコードの有力な利用態様の一つと位置づけた上で、商業用レコードの公衆への有償貸与による経済的利益についての社会的な不公平感を公正な報酬支払いによって排除する、その点に立法趣旨があったと思料されます、著作者団体であります日本音楽著作権協会と、私ども日本レコードレンタル商業組合とは、この立法趣旨に基づきまして、ことし一月以来公正な使用料の設定のため、誠意をもって、また精力的に交渉を継続してまいりまして、去る四月十三日、十回に及ぶ交渉を経まして、双方、基本的合意に達した次第でございます。日本音楽著作権協会と私ども日本レコードレンタル商業組合とは、この基本合意に基づきまして、今後、運用紙日に関する交渉を、過日、衆議院文教委員会で見て、芥川理事長の御意見にもございましたとおり、誠意をもって継続することになっております。月間の売り上げが百万に満たない店舗が全体の六割を占める当業界にとりまして、音楽著作権協会との合意内容は決して容易なことではありませんが、レコードレンタル業が果たすべき役割として、また、この間日本音楽著作権協会との間で醸成されました信頼関係を将来の布石にしたいと考え、合意を見たものでございます。  しかし一方、隣接権者でございますレコード製作者の間には、許諾権の行使に当たりまして、ある種のレコードを一定期間貸し出しを禁止したいという旨の意向があるように伺っております。私どもといたしましては、立法趣旨に沿って公正な使用料により許諾を賜りたいと切に願っている次第でございます。仮に隣接権者によりある一定期間貸し出しが禁止されるようですと、これは著作物の伝達の媒体が伝達の主体の権利を抹殺するといった本末転倒の事態を生じせしめる結果になり、また暫定措置法の立法趣旨にも反することになるのではなかろうかと思料いたすわけでございます。  私どもレコードレンタル業界は、この暫定措置法及び改正法案を、音楽産業の中にレコードレンタルを位置づけた上で、秩序形成を図るためのものと前向きにとらえまして、これを機に、音楽産業の一翼を担うものとしての役割と責任を果たすべく、商業組合もその意味におきまして設立してまいったわけでございます。したがいまして、レコードの一部貸し出し禁止といったものは、法律のもとでの秩序形成を阻害するだけではなく、著作者団体との間で形成されつつある信頼関係をも破壊しかねないものではなかろうかと考えます。  最近のことでございますが、九州のあるダビングのチェーン本部が、長年の組合の説得が功を奏しまして、店頭から一切のダビング機器を撤廃し、組合に加盟申請してきているという事実がございます。この例からも御理解賜りたいのでございますが、当商業組合はレコードレンタル業界内部の秩序形成に資するため、今後も相応の役割を担ってまいる所存でございます。したがいまして、許諾権の行使に当たりましては、公正な使用料によって許諾されますよう、国会並びに文化庁当局におかれましては、レコードレンタル業の正当な位置づけに関し、御理解と御指導賜りますよう御懇願申し上げ、私の意見陳述とさせていただきます。  どうもありがとうございました。
  122. 長谷川信

    委員長長谷川信君) どうもありがとうございました。  次に、阿部参考人にお願いいたします。阿部参考人
  123. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) ただいま御紹介いただきました阿部でございます。  私は、著作権審議会第一小委員会の委員の一人でございますし、その立場において参考人としての意見を述べさせていただきたいと思います。また一個の学問をする人間として申し上げたいと思います。  初めに、こういう機会に意見を述べさせていただくことに対しまして心から御礼を申し上げます。  御承知のように著作権審議会は第一小委員会から第七小委員会まで現在持っております。第二小委員会から第六小委員会までは現実には現在機能しておりませんが、過去において既にその仕事を一応完了しておりますけれども、第一小委員会、第七小委員会、とりわけ第一小委員会は現在さらに活発に動いているところでございます。第一小委員会はもともと著作権制度全般にわたって審議することと、それから外交関係、条約関係について審議する委員会でございます。  その第一小委員会で、今回の著作権法の一部を改正することが必要ではなかろうかと、このような著作権審議会からの諮問を受けました。それにつきまして、著作権審議会は第一小委員会を設けまして、現行著作権法昭和四十六年の一月一日から施行されておりますが、既にもう十数年経過しておりますし、その十数年の経過というものは、過去における文化そのほかの伝達機関の発展というものに比べてみますと、十五世紀、十六世紀におけるような印刷物の発達というようなものに、それから五百年、千年というようなことにも、今まだたちませんけれども、それに匹敵するような、たった十年なり二十年の間においても著しい変化があるということから、とりわけその間における録音録画機器、それから複写複製機あるいはコンピューター等の新しい著作物利用手段の著しい開発、普及に伴いまして、現行法制定当時に予想もしなかった状態が生じてまいりました。とりわけ最近では、先ほど両参考人からお話がありましたような、レコードを初めとする著作物の複製物のレンタル業というものも出でまいりましたし、あるいはテープの高速ダビング用の出現ということも出てまいりまして、著作権法に対する見直しというものがどうしても必要になってきたということになりました。  そういう点を念頭に置きまして、著作権審議会総会が昨年の一月に先ほど申しましたように第一小委員会に諮問をしたわけでございます。その諮問をしたその第一が著作物の複製物の貸与の取り扱い、それから映画の頒布権の見直しというものが第一のテーマでございました。第二のテーマが貸しレコードに関する実演家、レコード製作者の権利の取り扱いでございます。第三が現行著作権法第三十条の規定の明確化ということでございます。第四が著作隣接権条約への加入の問題、この四点が問題点として提起されたわけでございます。  そのうちの著作隣接権につきましてはこれは条約関係でございますし、ほかの三点とは性質が若干異なりますので、これは一応さておきまして、まず初めの三点について審議したわけでございます。もちろん、その三点の中でそれぞれ皆重要ではございますけれども、その契機となりましたのは、両参考人がただいま申されました貸しレコード問題に端を発していると言ってもよろしいのですが、そちらにウエートを置きながら話を進めてきたわけでございます。その結果といたしまして、我々が委員会で一応の結論を見、著作権法改正に向けまして、第一小委員会の審議結果というものを昨年の九月九日に公にする、その前に審議会の総会に報告いたしております。もちろん、その審議に当たりましては七月段階におきまして中間の報告をいたしております。中間の報告を、これを公にいたしまして、それにつきましての各界の意見を参考に、各界から、各方面から意見を承りました。その意見を承り、改めて九月九日に最終報告案をまとめまして、これを審議会の総会に報告したわけでございます。前後で二十回くらいにわたり審議会が持たれました。慎重に審議した結果といたしまして出したその案に基づきまして文化庁の方で法案の作成に踏み切った。さらにまたいろいろと御意見を承りながら、各方面から意見を承りながら法案の作成に踏み切ったのだろうと思います。  その法案を背景にいたしますと、私たちが考えておりました骨子とほとんど差異はないと申しますか、その趣旨が非常によく生かされておりますので、審議会としては、第一小委員会の委員の一人といたしましては、今回の法案が、このまま国会においても制定されることを、これを強く期待しているわけでございます。  簡単に、我々の考えておりました第一小委員会の審議の結果につきまして申し上げますと、第一に貸与権というものを考えたわけでございます。貸与権と申しますと、著作物を貸与する権利でございますが、現在、貸与するにつきましては頒布権と申しまして、著作物の複製物を、これを公衆に譲渡し、または貸与する権利として頒布権というのが認められております。その頒布権は、現在は映画についてのみ認められておるのでございまして、ほかのものについては認めているわけではございません。そういうところから、例えば、ただいま具体的に問題になっております貸しレコードの問題につきましても頒布貸与ということについてどうだろうか、こういう問題が起こってきたわけでございます。  そういうところから各国におけるところの動きということを考えてみましても、この際におきましては、従前の頒布権というものとは一応異なって、別個に新しい権利として著作者に頒布権ではない貸与権を新たな権利として認めた方が適切ではなかろうか。著作物一般に頒布権というものを認めていくということになりますと、映画と同様な形において認めていきますと、社会的な影響も非常に大きい、これはちょっと困るというところから、もう少し勉強しなければなりませんし、頒布権それ自体につきましては現在国際機関の方でいろいろと審議研究するという、こういう過程にございますので、さしあたり、我々としては、現在のいろいろな事情の変化に応じまして、著作物一般につきまして貸与権というものを著作者に認めていこうというふうに考えたわけでございます。  さらに、その著作者と別個に著作隣接権者がございます。著作隣接権者は、レコードに関しますと、そのレコード製作者、それからレコードに歌やそのほかを吹き込んでおります実演家、さらには放送機関もこの著作隣接権者に入ってくるわけでございます。この著作隣接権者のうち放送機関はさしあたり関係ございませんので、レコード製作者と、それから実演家にもこのような貸与権ということは考えることはできないだろうかということを考えたわけでございます。  しかし、その実演家やそれからレコード製作者につきましては、現行法制上におきましては二次的使用料、それが放送に利用される場合において報酬請求権ということが考えられておりますので、さしあたり、まず報酬請求権というところでよろしいのではなかろうか、許諾権というような貸与権まで認めなくてもと、認めなければならないというような考え方もありましたけれども、さしあたり中間報告のときには報酬請求権というところにとどめておいたわけでございます。  しかし、実態につきましていろいろと承りました。それから、各方面からの御意見を、実情を何回かにわたりまして質問をいたし、そしてそのお答えをいただきました結果としまして、単に実演家あるいはレコード製作者に対しまして、許諾権であるところの貸与権というようなものを認めないで果たして実効があるのだろうかということにつきまして非常な疑問となってきたわけでございます。その当時は、ただいまお話しありました牛久保参考人が申されましたような商業組合というものももちろん設立はされてはおりませんし、その時点におきましては四百ぐらいでしたか、そういうような、組合ではございませんけれども、単純な民法上の組合なのか何かわかりませんが、そういう団体が自主的につくられていたようでございます。しかし、そういう団体に拘束力もありませんし、あるいはまた商業組合がつくられたと仮定いたしたとしましても、そこに組合員以外の者、組合に加入することを強制するわけにもいきますまいし、そのようなことになってまいりますと、果たして実効があるのかないのかというような疑問が出てまいりました。そういうところから、この貸与権につきましても、隣接権者に対しましても、やはり貸与権が必要ではなかろうか。貸与権、簡単に申しますと貸与するに当たって許諾をする権利ということになりますが、それが必要ではなかろうかと判断したわけでございます。  しかし、そういう権利を無条件に認めて、どのような形においても恣意的に行使されては甚だ困るというところから、やはり、その権利の行使にもおのずからなる制限がなければなるまい。そういうところから許諾権についての行使に当たりましても、公正な権利の行使ということを強く要望するように考えることはできないだろうか、こういうふうに考えたわけでございます。  と同時に、もう一つ、先ほどお話がありました暫定措置法がございましたので、その暫定措置法におきましても許諾権ということを考えておられるわけでございます。既に成立している許諾権ということを考えていきますと、今度はその期間が問題になるのではなかろうか。許諾を与える期間というものはどういうふうにしたらいいのだろうか。考えてみますと、審議会でもって簡単に何カ月とか何年とかというような期間を定めるということは必ずしも適切ではない。やはりこういうのは両当事者が真剣に考えて折り合わなければなるまいというところから、短期間というように定めただけにしておきまして、あとは当事者の自主的な自治的な解決に待つのが最も好ましいのではなかろうかというふうに考えて、隣接権者に対しましての許諾権ということを考えたわけでございます。ただ一定の、ただいま申し上げましたような枠内において認めているということでございますので、この法案は審議会の考え方、小委員会の考え方というものを極めて忠実に反映しているというふうに考えますし、また既に国会において成立いたしました暫定措置法の趣旨にも合致するのではなかろうか、こういうふうに考える次第でございます。  さらに、そのほかに小委員会といたしましては貸しレコードの問題だけではございませんで、先ほど申しましたように著作権法の第三十条の問題につきましてもとらえてきたわけでございます。  著作権法の第三十条と申しますのは、これは著作物の私的使用のための複製については、これは著作権の制限を著作権者に対して著作権を働く場が制限されるというような規定でございます、「著作権の目的になっている著作物は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする場合には、その使用する者が複製することができる。」というようになっているわけでございます。これは著作権ばかりではございませんで、著作隣接権においても準用されているわけでございます。そういうところからこのうち私的使用というものは範囲が明確でないために、それが原因となりまして、一つには貸しレコードの問題が起こったわけでございます。貸しレコードは、レコード業者としましては、お客さんにレコードを貸すだけである、複製するのはそのお客さんたちが勝手にやるのであって我々は関知しないと、こういう考え方が出てまいりまして、その貸しレコード業というものは著作権法の三十条に適法な行為として認めることができるとされている行為に該当する、こういうような論法が出てまいったわけでございます。まあ、巧妙といいますか、巧妙な論理でございますし、さらには続きまして、これはレンタルではなくて、そのレコードを売却するわけであります。レコードを売却して、それは普通の値段ででも売却するわけなんですが、二日なり三日くらい後になりますとそれを買い戻すわけでございます。買い戻しが自由であるというような商法が生み出されてきたわけでございます。そうなりますと、その買い戻しの場合においては、二千八百円で初めに売却しましたならば、あと二百円くらいの損料を差し引いて二千六百円くらいで、二千八百円のレコードで売却し二千六百円くらいで買い戻すと、こういう商法がはやってまいりますと、これは二百円の貸しレコードと全く変わりはないということになってまいります。そういうようないろいろな形において、この三十条の脱法行為というように考えてもいいと思いますけれども、そういうような問題も起こってまいりましたので、この三十条を明確化する必要があるのではないかと。このことは家庭内におけるところの録音、録画の問題とも関連いたしますけれども、さしあたりは、この高速ダビングであるとか、あるいは貸しレコードに伴うところの録音ということになりますと、そちらにこの三十条が常に関係してくる。これを明確化する必要があるのではないかということになりまして、その点につきましても、この改正法案の方におきましては一応の手当てがなされております。  我々が考えておりますところの手当てと改正法案の手当てというものとではほとんど変わりはないと。つまりその改正法案では、例えば録音、録画を業者がそれを一個人からの注文に基づいてなしでいくというような場合に、著作物についての複製をする場合には、これはやはり著作権者の制限に服さざるを得ないと。これは当然なことでございますが、さらにはそれを注文するところの個人につきましても、やはりそれに対するところの著作権の制限に服すると考えざるを得まいと。そうでなければ、著作者の権利というものも実効がなくなってくるのではなかろうかと。ただし、そういう場合であっても、その関係というものは権利者と使用者との間の民事的な関係にとどめまして、ただ、著作権法違反であるとかいうような刑事的な問題にまでは進める必要はあるまいと、こんなふうなことも我々も考えましたけれども、それもこの法案の中にはうまく生かされているようでございます。さらに一般の複写、複製機器が町に置かれ、それが業として行われておりますが、さしあたって、それに対するところの適用はしないというような考え方もそのまま生かされておりますし、この著作権法案というものは我々の第一小委員会において審議した結果をよく生かしているのではなかろうかというふうに考えております。私としましてはこの法案をそのままお認めいただければというような感じている次第でございます。  簡単でございますが、意見にかえさせていただきます。
  124. 長谷川信

    委員長長谷川信君) どうもありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取を終わりました。  これより質疑を行います。  なお、参考人の皆様に申し上げます。  各委員質疑時間が限られておりますので、恐れ入りますが、お答えは簡潔にお願いいたします。  それでは、質疑のある方は順次御発言を願います。
  125. 久保亘

    ○久保亘君 高宮さんにお尋ねいたしますが、法律の精神をどのように理解するかということが法の運用の基本にかかわってくる問題だと思うのでございますが、レコード協会の立場として、レコードレンタルは許諾すべきことを前提にしてこの法が改正される、こういうふうに御理解でございましょうか。つまり、許諾権というのは、原則的にはルールに基づいてノーはない、イエスが前提である、こういうふうな御理解でございましょうか。
  126. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) お答えいたします。  今のところは非常に私どもも実は大変苦労をしているところでございまして、法の精神から考えまして、許諾をするということについては、建前として許諾ということはもうもちろん考えております。しかし、レコードというのも、いわばそれぞれに個別性のある商品でございまして、いろんな事情がございますので、一〇〇%全部初めから許諾をするかどうかということにつきましては、どうしてもそういうことを許諾をいたしますというところまで申し上げるのに、若干の調整をしないと、そういう御返事が今ここでは申し上げられないような状況にございます。その辺は我々としては極力法の精神というものを、関係人でございます、今後、進めるに当たりましてはよく相談をしていかなきゃならぬ、商業組合の方々とよく話し合いをしまして、極力合意に到達できるような努力をしていきたいと、そういうふうに考えております。
  127. 久保亘

    ○久保亘君 経済の自由主義という立場を前提にします場合には、レンタル業というのは生まれるべくして生まれてくるものではないかと私は考えるんでありまして、商業の新しい分野としてレンタル業が発生をしてきたというのは、これはもう非常に必然性のあったことだと思っておりますが、しかし、それを完全に自由という立場に置いてはぐあいが悪いというので、法律で一定のルールをつくろうとするものだと思うんです。このルールをつくっていく場合には、やっぱり今何か調整をしなければならぬ問題があると、こうおっしゃいましたけれども、原則的には許諾すべきものと、ここでは合意がないと、なかなかそのルールの話し合いも難しいんじゃないでしょうかね。これは阿部先生いかがでございますか。
  128. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) ただいまの御質問にお答えいたします。  レンタル業が必然的に、自由経済と申しますか、そこの中において出てくるのは必然的ではなかろうかと、こういう御質問のように承ったのでございますけれども、私は大変失礼ですけれども、必ずしもそう思っているわけじゃございません。それはレコードのレンタルということを念頭に置きますと、有体物としてのレコードと、そこの中に化体されております著作物としての音楽であるとか実演家の吹き込んだ実演とかいうのとのこの二つが区別されなければならないのではなかろうかと思います。もちろん一般的にいわゆる物としての貸与ということでございますならば、これは別段格別問題はございませんけれども、無体物としてに対する感覚が、感覚と申しますか、それを第一に考えてまいりますと、それは簡単にはそうはまいらないのではなかろうかと、こういうふうに思うわけでございます。もともとそれは、先ほど申しましたように、著作者に対してそういうような他人に対するところのレンタルであるとか、あるいは複製であるとか、いろいろと問題が出てまいりますが、それをどういうふうに扱ってくるのかということは、頒布の問題といたしまして世界的に問題になりますけれども、必ずしも自由経済だからといってそれは自由に必然的なものというように登場するとも思えないのでございます。
  129. 久保亘

    ○久保亘君 私は別に自由主義経済を是として申し上げているのじゃなくて、そういう経済の仕組みの中でこれは生まれるべくして生まれてきたものではないだろうかということを申し上げたわけなんですけれども、その点はよろしいです。  そうすると、例えばダビングの問題にしても、高宮さんは東芝系の会社の代表をなさっているとお聞きいたしておりますけれども、複製機器などはやっぱり東芝の会社で開発、製造され、普及、販売をされていく、こういうことなんでございまして、それでその辺はなかなか複雑に絡んでくる問題ではないだろうかと思っておりまして、だから、どういうふうにうまく交通整理をやってルールをつくっていくかということが、この法改正の目的であろうと考えておりますが、どうでしょうか高宮さん、レコードとレコードレンタルという今この二つのことを問題にしておりますから、その部分に限ってもいいんですが、レコード協会とレンタル業界というのは本来共存できる存在なのか、やっぱりこれは対立する宿命を持っているから法をつくるべきだと考えておられるんでしょうか。それとも、共存できる、そして共存することによって芸術、芸能、文化の普及発展にむしろ共存できることが貢献度を増すものである、こういう立場で理解をされておって、両者の協力関係を法律でルールづくりをやろうと、こうお考えになっているんだろうか。それはどちらでございますか。
  130. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) 大変難しい御質問のように思って十分のお答えができるかどうかをちょっと我ながら危うんでおりますけれども、率直に極めて正直に申し上げまして、問題なしに共存できる業界であるというふうな確信が実はまだこの段階においては持ち得ないのでございます。  理由といたしましては、まず第一に、我々冒頭の陳述でも申し上げましたけれども、従来極めて長きにわたってレコードというものは権利三団体がつくり出しまして、それをレコード商を通じて販売をしておったわけでございます。レンタルというものは全くなかったわけでございます。それで、それなりに繁栄と申しますか、世の中のお役に立つような存在としてずうっと来たわけでございますけれども、ここへたまたまレンタル業というものが世の中にあらわれましたところを境にいたしまして、ちょうど軌を一にしてこのレコード業界というものが非常に繁栄を失っていくような状況に変わってきたわけでございます。そういう意味で、まず極めて直感的にと申しますか、どうも貸しレコードというものはやっぱりレコード産業の繁栄に必ずしもプラスになっていないという、そういう感覚がこれは非常に強く現在の業界には行き渡っております。非常にみんながそういう気持ちを持っております。  しかし、そうは申しましても、先ほど来いろいろ諸先生からもお話がございますように、時代は移ってまいりますし、技術はどんどん進歩してまいりますし、これまた同じ系統の会社の中でも、片やハードの機械を、ダビングができるような、コピーができるような機械をどんどんつくり出していくというようなこともございまして、これはもう技術革新の必然的な、私は技術がひとり歩きをしていくというのは必然的な本質的な問題であろうと思うんでありますけれども、それと、そういうことでありますので、何らかのここで一つの秩序を、枠組みをつくっていかなきゃならぬ。レンタルももちろん営業の自由という観点から申しますと、決してこれをとめていいというような理屈が我々の方にあるわけではございませんけれども、現実にはやっぱりこれによって非常にダメージを受けている。そこのやっぱり調整点として、あるいは先ほど来阿部先生からもお話がございましたように、学識経験の方々あるいは行政府、立法府というようなところが、このままでは非常にダメージも大きくするだろう、混乱も大きいだろう、そういうところに一つの秩序をつくってやろうというようなお考えで立法をしていただいたのが暫定措置法であり、また今回の著作権本法の改正だろうと思いますので、率直に民間の企業者として考えますと、大変困ったものが出てきたと。しかし、これを頭から否定していくわけにもいかぬから、何とか共存の道を考えていかなきゃならぬだろうというようなところが偽らざるところでございます。  かといって、こういうふうな法秩序ができ上がっていきました後、いつまでもかたきのように考えて、これと対決して頑張っていくというようなことではなく、何かの道がまた牛久保さんあたりといろいろお話をしていくと考え出せるんじゃないか。ただこれは、今もお話がございましたように、非常に商業組合さんもいろんな御努力を、ことに牛久保さん個人を拝見しておりますと、大変一生懸命にまじめにやってくださっている方のように思われますけれども、何と申しましても歴史が浅うございまして、事こういう商売の道に入ってまいりますと、どこまでこの商業組合の、まだ生まれたばかりの商業組合が法の精神を体して、そういう秩序づくりに力を発揮できるかどうかというのは、これ将来の問題でございまして、今日現在では何ともまだ、お言葉はよく承りまして、大変もっともなこともおっしゃるというふうには思いますけれども、絶対大丈夫だという確信が持てない。その前に大変ダメージを受けているという自覚がございまして、というのが偽らざるところでございます。
  131. 久保亘

    ○久保亘君 それでは、もし今私が高宮さんにお尋ねしたようなことに関して、牛久保さんの何か御意見ありましたらお聞かせください。
  132. 牛久保洋次

    参考人牛久保洋次君) 先生の御質問にお答えさしていただきます。  いわゆる共存共栄の関係であるか、対立する関係なのかということですけれども、私どもといたしましては、むしろ音楽産業の発展に貢献していると、このように考えている次第でございます。わずか短期間の間に一千万人以上の人に利用していただいている。その背景には、やはり社会的な基礎というものがあったと思います。また、そういった流れというものが、大きな流れがあるのではないかと思います。  私たちは、この種の議論の過程におきまして、貸しレコード業の出現により既存の業界に多大な損害を与えたという点に関し、もしその観点に立って、何らかのこう規制を加えようということであるならば、私どもとしては、何といいますか、その影響度につき立証する責任がレコード製作者側にあるんではないかなと思います。過去、この間レコード製作者の方々は一体それを立証したことはないわけでございまして、私たちに向ける批判は営業成績の低下の一切がレコードレンタル業の責任に帰する感情論のみに支配されているのではないかなと、こんなように受けとめております。  私たちが実はことし三月実施いたしました首都圏におきますレコードレンタルの利用者千人へのアンケート調査データがございます。これによりますと、レコードレンタルを利用する理由といたしましては、レコードの価格は高くて買えないからといった声が五二%ございます。さらに、自分で買ったしPレコードの中で満足できる曲は幾つあるかという質問に対しまして、LPレコードには十曲あるいはそれ以上含まれているわけでございまして、三、四曲と答えた人が五四%ございます。次に一、二曲と答えた人が二一%でありました。また、レコードレンタルを利用した後レコードの購入枚数は変わらないというふうにお答えいただいた方は四一%ございました。ちなみにこの数字を報告させていただきます。  以上です。
  133. 久保亘

    ○久保亘君 ありがとうございました。
  134. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 三月の十二日ですけれども、JASRACの資料なのでしょうか、ずうっと読んでいってみますと、日本レコード協会事務局長の豊澄明さんという方がここに所感を述べていらっしゃるし、芸団協の小泉さんという方がまた所感を述べていらっしゃるんですね。その中で私は、「生命線を奪われてまで妥協するつもりはない。」とか、あるいは「レコード会社は本質的な部分が損壊されている。それは金ではカバーできないものだ。」、こういう発言があったり、芸団協にしますと、貸しレコード業界が「成り立たないほうがいいのではないか。」と、こういう非常に厳しい批判を持った発言をしていらっしゃるわけです。こんな態度をとっていただく限りにおいてはあの暫定法の意味もないし、今度の法律をつくっていくということについても若干の問題点があるし、参議院で附帯決議をつけたということに対する意味を正しく酌んでいただいていないというような感じがいたしまして心配をしていたのですが、先ほど午前中に私は、日本レコード協会がいわゆるレンタル業者との間に裁判所の和解ができたんでしょうかね。先ほど高宮さんがおっしゃっておられましたけれども、和解「案」が削られまして和解となっておりまして、内容的にこう、書類が出てきているんですね。そういうことになると大変いいことだなというふうに思うんですが、それでも、牛久保参考人はこの内容を御存じなんでしょうかね、やっぱりある部分は制限をされているわけですね。この部分についてはもう許諾しないということがあり得ますよというふうなことになっている。そんなこともこう、考えながら、本法律が成立した暁には、本当にお互いに音楽の好きな日本人をつくっていくという、そういう道に向かって努力をしていただきたいなと思うのですが、牛久保参考人にお伺いいたしますけれども、非常に貸しレコードに対して不信感がいっぱいあると思うんですね。この不信感を払拭していくことが商業組合の任務ではなかろうかと思います。これに対しまして日本ビデオ協会などは、このビデオ協会の審査にパスしなければレンタルしてはいけませんということをきちっとしてるんですね。資金力はどうか、違法行為はどうか、そしてレンタル料金はしかし自由であるというようなことを業務許諾契約の条件にしているわけですね。おたくの組合はそういう条件というふうなもの、ほかから見て、うん、なるほど、これは立派に法の精神に基づいて運営しているというようなことがわかるようなシステムというのはあるのでしょうか。
  135. 牛久保洋次

    参考人牛久保洋次君) 御質問に答えさせていただきます。  冒頭の意見陳述の際申し上げましたとおり、当商業組合といたしましては当面公正な使用料の支払いのための業界内の秩序づくりをまず促進するとともに、アウトサイダー、つまり未加盟店に対する加盟の働きかけや、ダビング機器の撤廃を呼びかけていくことが、認可いただいた組合の使命であると考えております。そしてまたその徹底を図っていこうと考えております。
  136. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 使命であるというのは精神規定ですね。そうではなくて、こうこうこういうことをするんだという明確な締約状況というんですか、そういう許諾条件というんですか、そういうものがないかということです。
  137. 牛久保洋次

    参考人牛久保洋次君) いわゆる使用料の支払いに当たりまして、私ども商業組合は業界の指導、監督する立場から、日本音楽著作権協会の活動に対して全面的な協力を予定しておりまして、以後、日本著作権協会の支部に対応した支部づくりをし、それを窓口にして行っていきたいと考えている次第でございます。
  138. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 先ほど牛久保参考人の御説明の中に、月商売り上げ百万に満たない店が多いと、こういうお話がありましたね。二百五十円で貸しているとすると四千枚ということになりますか、貸すレコードの数は。四千枚、四千人に貸すということになったら、もし貸しレコードがなかったならば、うちのレコード会社、小売店はその四千枚レコードが売れるんだ、こういうことになればあなたの貸しレコード店は、これは敵ですね。四千枚も売れなくなった。しかし、ホーム・テーピイングが貸しレコードからばかり行われているのかということについて私は非常に疑問を持ってるんですね、非常に大きいということについて。確かに文化庁の説明もそのようになっておりました。その統計は日本レコード協会の統計を利用しておりました。今の阿部参考人も、多分そちらの方や通産省の統計などを利用されてやられたんだというふうに思いますけれども、ここに「コンフィデンス」という、一月十日に出されました資料があるんです。「新春特集3」ですか、TDKの調査があるんですね。この東京電気化学工業株式会社が調査したところによると、「テープヘの録音は圧倒的にレコードからテープである。それはジャンルの区別なく行なわれている。その上、テーピングするレコードも自分が持っているレコードからというのが半数以上を占めている。これまでFMからのホーム・テーピング、友人や貸レコード屋を利用してテーピングを行なう行為が多いと思われていただけに面白い結果となっている。」と、こういうふうに言ってるんですね。だから、本当にどのような調査をどのような機関が公平に行ったかということは大変大事なことだというふうに思うのですが、ここでJASRACとの間に合意書が成り立って、LP盤五十円、そしてシングル盤十五円、これからレコード協会と行われるわけですね。芸団協とも行われるわけでありますが、成り立たないような状況になったら——その使用料の値段がね、あなたのところはもう数が少なくなっていくだろう。これもまた大変なことだろうというふうに思うんですね。幾らかということはこれからの話し合いになるというふうに思いますが、今までの接触点でレコード協会との間に六月の二日までに、あるいは芸団協との間に六月の二日のその日にちまでにきちんとした金額が、合意が成り立つであろうという感触をお持ちですか。高宮参考人も、その感触はいかがでございますか。
  139. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) お答え申し上げます。  六月二日と申しますともうあと三週間でございますので、実は、今先生もおっしゃられましたように、裁判所におきます和解というのはそこまでは至っていないと思います。まだ和解の案を裁判官が模索しておられる段階だというふうに私は承知いたしておりますけれども、しかし、一方、裁判所の方でも、もう既に三年来の懸案、係属事案でもございますので、法律も変わるということで、大変精力的に御心配をいただいているように私ども思っております。そういうこともございまして、これも全くそれを忘れてしまうというわけにもまいりませんし、かと申しまして六月二日というのは迫ってまいりますので、それまでに全くできないという、合意に到達できないということを申し上げるのはちょっと早いと思います。両方が本当に詰め合っていってわかったというところがあれば、もちろん六月二日には何がしの見当がつけ得るわけでございますけれども、あれやこれやといろいろ、裁判所の和解にいろいろ行って陳述を申し上げるとか、いろいろ御下問を受けるというようなことへの対応、あるいは国会での対応、いろんなことがございまして、なかなか細かくこれを商業組合との間に詰めていくということも十分にできておりませんし、また、JASRACの方でも、先ほど来のお話を聞いておりますと、もう十数回にわたる——十回でしたか、十回にわたるいろんな交渉の結果、ようやく満足すべき合意に到達したというようなお話を承ったりいたしますと、あるいは六月二日までには、八合目くらいまでは来てるけれども、頂上をきわめるということにはならないというような、そういう事態も起こり得るんじゃないか。この辺は、一生懸命に努力はいたしますけれども、どうなるということは、この段階では、大変申しわけございませんけども、お答えいたしかねるような状況でございます。
  140. 牛久保洋次

    参考人牛久保洋次君) 実は五十六年十二月に私たちレコードレンタル業四社が訴訟を提起されまして、その中で和解勧告は、たしか三月二十二日でしたか、暫定措置法の運用に関する話し合いを行うことにより和解するようにとのことがございました。ちょうど昨日五月九日、東京地方裁判所におきまして三回目の和解交渉が行われました。その場におきましてレコード協会より、部分禁止の実施案が提示されたわけでございまして、部分禁止とは申せ、私どもにとってはほぼ全面禁止を意味するものでございまして、しかもその内容がレコードメーカーの一方的なレコードレンタルを締め出す形になっておりまして、私たちにとって到底合意できるものではないものになっております。  繰り返し申し上げますが、本来の著作権者であります日本音楽著作権協会と十回にわたる審議の結果、ようやく合意いたしました。こういった過程の中で、なぜ隣接権者によってその信頼関係が破壊されてしまうか、これはもう私どもとしては大変残念なことでございます。ぜひ、使用料設定を前提といたしました話し合いを進めていただきますよう、立法府の御協力と御理解を賜りたいと考えている次第でございます。よろしくお願いいたします。
  141. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 それでわかりました。これは日本レコード協会の和解案であって、裁判所の和解案ではないと。私も、これを見まして、よくこれをレンタル商組がのんだなというふうに思っていたものですから。とても、こんなことでは、レンタルの経営は成り立っていかないのではないか、そんな感じがしたものですから伺いました。  それで、今度は阿部参考人にお伺いをしたいんですけれども、著作権の小委員会ではどのようなことが話し合われたのかという中身についでなんですけれども、四月の十日の日経に載っていたんですけれども、英国のレコード協会が日本製のダブルカセットデッキ、どのくらい英国に持ち込んでいるかというのを報告しなさいというふうに言っているんですね。その前に英国レコード協会は、四倍のダビングができる機械を入れていたアイワに対して厳重な申し入れをして、アイワはもう英国には売りません、こういうふうにして撤退しているわけです。しかし、ダブルカセットというのは倍速ということになるんですか、それの数字を入れなさいということは、解釈によれば、多分それに対しては使用料を取るか何か、機器に対するお金を出してもらうことによって何とかするのではないかというような解説があるわけであります。このレコード協会が厳しい態度を示した中に東芝も入っているわけですね、それから日本ビクター初め、シャープ、日立製作所、これはコロムビアレコードですね、それから山水電気、松下電器産業、三洋電機。先ほどの久保委員の質問されたのと同じように、レコード協会は貸しレコードが問題だ、問題だとそう言っていながら、ダビングできるような機械を、家庭でなんか四倍速なんて使わないんだけれども、そういうような機械をもうどんどんつくり出している、それがあるがゆえに非常にホームテーピングなりそういう行為が行われていくんだ、著作権が侵害されていくんだというその元凶になっているところに、一体何にもしないでもいいというような著作権審議会の話し合いだったのかということであります。まず最初にそれをお聞かせください。
  142. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) お答えいたします。  著作権審議会で、もちろんただいま御質問ありましたようなイギリスにおけるような事件については、当時、具体的な問題としてそういうふうに起こったわけではございません。ただ、よく問題になりましたのは私的録音、録画の問題でございます。私的録音、録画の問題につきましては、先ほどちょっとテープの録音につきまして、貸しレコードからの録音というようなことよりも、一般的に自分のレコードからの録音の方が圧倒的に多いのではなかろうかというようなお話もありましたけれども、私が先ほど申し上げましたのは、貸しレコードの方からテープをとるというものが非常に多いというだけのことでありまして、一般的なテープについての録音をどこからとってくるかというようなことで申し上げたわけではございませんので、その点を誤解がないようにしていただきたいと思います。  それはともかくといたしまして、イギリスにおきましては、一般的に頒布権なりあるいは録音権といいますか、そちらについての規定は今のところはなさそうでございます。私の記憶ではございません。ただ、家庭内におけるところの私的な録音ということにつきましては、非常に厳しい判断をしている国でございます。日本のいわゆる三十条の私的録音、録画、あるいは私的な複製ということになりましても、比較的日本は緩やかな考え方をもって——緩やかと申しますとちょっと語弊がありますけれども、イギリスやアメリカになりますと、フェアユースというような考え方、あるいはフェアディーリングとこう申しておりますが、そのような取り扱いは比較的日本よりは厳しく考えております。例えば、学校におけるところの教材として複製するような場合におきましても、日本では比較的学校というところから割にゆったりと考えておりますが、イギリスの場合にも、それは基本的には認めますけれども、その適用は非常に厳しく考えておりますというところで、つまり、要するに、私が申し上げたいのは、イギリスの場合におきましては、無体財産に対するところの感覚が日本におけるよりも非常に厳しいのではないかというように理解してよろしいのではないかと思います。  そういうところが至るところにあらわれてまいります。例えば、御質問からちょっと外れますけれども、貸しレコードの問題につきましても、日本ではまだのんべん——のんべんと言いますとまた語弊が出てくるんですが、ゆったりしておりますけれども、貸しレコードの問題が日本で起こりましたときに、すぐにスカンジナビアのある国の方に、それが向こうのテレビに放映されまして、向こうの方ですぐに貸しレコードの商売が始まりました。それに対して早速向こうの方では立法措置をとったというようなこともございまして、無体の財産に対する感覚の違いかなというふうに、私は、大変残念なことですけれども、そう率直に思っております。その反映がイギリスにおけるそのような四倍速ですか、そのようなダビングの機械に対するところの取り扱いにもあらわれたんじゃなかろうかと思います。この私的録音、録画につきましては、この第一小委員会の方では諮問事項でもなかったので、それは直接には触れてはおりませんけれども、雑談の中におきまして取り上げられまして、これに対する抜本的な解決というものはどうしても早く考えなければなるまいという形ではございますけれども、抽象的な形ではございますが、具体的に申しますと、例えば西ドイツなんかでは、そのような録音、録画機器に対するところの発売、日本で申しますと、いわば酒の蔵出しのときに若干の税金が課せられるというのと同じように、そういう賦課金のようなものも考える余地はあるのではなかろうか、そのようなことを考えながら抜本的に録音、録画については考えていく必要があるだろうと、こんなふうな話し合いはなされております。
  143. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 諮問がなかったからやらなかったということはわかりました。そうすると、今度諮問すればやらなきゃならないと、こういうことになりますね。  それで、著作権関係条約が国際的にあるわけですけれども、これ批准していくという積極的な態度が必要だというふうに思いますけれども、今度の法律改正なんかで批准の条件が整ったかどうか。それから、条約を批准し加入していくというためには一体何が隆路であるか。私の時間があと四分ほどですので、その程度でお答えいただければありがたいと思います。
  144. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) 大変失礼いたしました。条約と申しますと何の条約でございますか。
  145. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 例えばベルヌ条約パリ改正条約とか。こういう著作権に関する幾つかの条約がありますね。そういうものです。
  146. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) お答えいたします。  ベルヌ条約、それからベルヌ条約におけるパリ改正規定、あるいはそのほかのレコード保護条約といろいろございますけれども、既に日本ではもう加盟しておりますので改めて加盟の問題は起こらないかと思います。
  147. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 ローマ条約。
  148. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) ローマ条約と申しますのは、ベルヌ条約ローマ改正条約が、そもそも一九二八年、もっと前ですか、できておりますけれども、日本でベルヌ条約に加盟したのが随分古くの明治三十二年でございます。それ以来、改正改正でやってまいりまして、ベルヌ条約の現在最も新しいのは一九七一年にありますベルヌ条約パリ改正規定と申しております。また別にはベルヌ条約パリ改正条約というように呼ぶ人もおります。でございますので、もう既に非常に古くから、最も新しい国際条約に加盟しております。同時に、万国著作権条約にもこれも加盟しております。そのほかレコード保護条約というのにも加盟しておりますし、それらの条約を扱ってまいりますところのWIPOという、世界知的所有権機構という国連の一専門機関もございます。そこにも加盟しておりますので、条約についてはほとんどに加盟しておると。ただ、著作隣接権条約にはまだ加盟してないということでございます。
  149. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 その実演家、レコード製作者及び放送事業者の保護に関する件、今おっしゃった隣接権条約ですね。これの加盟についてのお考えは何か話し合いができましたでしょうか。これは、外務委員会の話ですなんていうんじゃなくて、姿勢がわかれば向こうで批准するような手続をとるわけですからね。
  150. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) 第一小委員会にも、一番初めにそのような隣接権条約に対する加盟ということをテーマとして諮問されております。しかし、さしあたりまして、これは、先ほど申しましたように、諮問されたときにおける問題点が四点ございました。初めの三点とあとの一点とは違いますので、一応、初めの三点について精力的に審議をいたしまして、残りの一点については一応横に置いてあるというような状態でございます。それで、いつも審議会のときには、その隣接権条約につきましてどうだというような話は出ております。
  151. 田沢智治

    田沢智治君 今の日本人は音痴の人が大分いなくなっちゃったというほど、音楽文化というものが、国民生活の中にとってかけがえができないほど生活をより豊かにするという前提では、必要になってきていると思うんです。私たち政治家も、会合に出ると、カラオケの一つ二つ歌っていかないと帰してくれないということで、私も、大分音痴でございましたが、最近はやや上昇いたしまして、田沢の歌を聞きたいという人も出てくるような状況になっております。こういう意味で、今日まで音楽文化を進展させてきた、これはレコード協会の長年にわたる御苦労と功績がそういう基盤づくりをしたということについては、高く評価すべきものは正確に評価すべきであると、私はそう考えを持っております。  そこで、レコード協会として、貸しレコードの出現によって大きな打撃を受けたと、ごうよく言われるのでございますが、貸しレコード出現以後レコードの生産枚数とか、あるいは全国八千店あると言われる販売店の売り上げがどのように推移してきているかというものを数字をもってお話を承れますか。
  152. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) 田沢先生の御質問にお答えをさしていただきたいと存じます。  レコード協会におきましては、毎月その生産統計をいろいろな分類に従いまして、ずっととり続けてまいっております。ごく大ざっぱなところで申し上げますと、昭和五十五年まではずうっとこれはレコード、テープを合計いたしまして、またレコードも、三十センチのLPだとか、あるいは十七センチのシングルとかも全部ひっくるめての大ざっぱな数字を申し上げますが、合計をいたしますと、一番ピークが、昭和五十五年の二千九百二十八億円という金額でございます。それからいろんな変遷がございまして、ときに衰退を補うためのカラオケテープというようなものが、新しく新商品が出現したりいたしまして、これはもうそういうものをひっくるめての数字でございますが、五十八年で二千八百十六億円というのがこの推移でございます。その間、漸減をいたしております。  先ほど牛久保さんからもお話がありましたが、極めて厳密に立証するということになりますと、そうじゃないという御異論もあるかもわかりませんが、大勢としては貸しレコードの出現と軌を一にして生産金額は減ってきたと。殊に貸しレコードに非常に利用されておりますLPレコードというようなものは、金額的にも非常に急速なダウンをしてまいっておりまして、サイズ別の金額でございますけれども、LPレコード五十五年の千三百六十二億円というのが、五十八年度におきましては千百四十五億円というふうに、急減をしてまいっております。あと、シングルレコード、テープ、いろいろございますけれども、ごく大ざっぱに申し上げますとそういう数字でございます。
  153. 田沢智治

    田沢智治君 レコード協会として全国にレコード販売店を開設する場合は、だれでも申請すれば認可するということではないんですか。何か条件があるんですか。
  154. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) お答えいたします。  御案内のように、レコードは再販価格を認められている商品でございまして、やはりそれなりの理由があって再販維持の指定をちょうだいしているわけでございますので、これを維持することについて非常に関心を払っております。それで、レコード店は全国でおおむね八千軒から九千軒というふうに言われておりまして、メーカーが直接に契約をいたしますいわゆる特約店と、それから卸を経由して契約をいたしております、いろんな言い方がございますが、サブディーラーだとかあるいは二次小売とか、いろんな言葉がございますけれども、そういうもの全部をひっくるめまして、約八千軒から九千軒であろうというふうに推定をいたしております。これらにつきましては、そういう価格の維持、それから価格を維持をするために売り外れたような、売れなかったような商品を引き受けると、返品を受け入れるというようなことがいろいろございますので、そういうことにつきましてはそういう条項を厳重に守って、そのらち外には出ないということを契約書の中でお互いに確認をして、そういう合意のできるところとのみ取引をするというふうにいたしてございます。
  155. 田沢智治

    田沢智治君 レコード特約店とか販売店が八千店から九千店というんですが、これは将来貸しレコード業もやろうというような方針はないんですか。絶対にもうそういうことはやらないんだというような方針なんですか。
  156. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) これは、このように著作権法改正をされますと、レンタル事業そのものが認知をされるわけでございますから、私ども、法律で認められている営業に対しまして認めないというようなことはできないと思います。ただ、従来のレコード店は、貸しレコード業の出現によって非常に手痛い打撃を受けているお店がたくさんございまして、その中のある者はもう既にそれに耐え切れないで転業、廃業をやったというようなことでございますから、もう身をもって貸しレコードをやるということは自分の本来の商いの道が侵されることになるんだということを承知しておりますので、雪崩のようにそういう事態が起きてくるということは、ちょっと考えられないんじゃないかと思います。  それで、しかし中には、八、九千軒もあるようなことでございますので、レコードの販売高は落ちてくると、何とかしなければならぬと、手っ取り早いところでじゃあレンタルでもやるかというようなことに仮になりますと、そういう方々がそういうふうな方向に走っていかれるということもあるいはあるんじゃないかと思いますけれども、相当みずからブレーキをかけるような機能が働くことの方が大きいんじゃないかというふうに一応考えております。
  157. 田沢智治

    田沢智治君 私は率直に申して、今日、郵政が銀行と同じようなことをやったり、農協が銀行と同じようなことをやったり、元来は郵政というものは民間を補完して、支えて国家財政の安定を図るというような使命がありつつも、いろいろな銀行業と同じような営業を拡大をして非常に問題に一時なりました。しかし、時代の進展によって国民のニーズに対応していくというのは、その社会を維持していくに必要な条件として認めなければならない状況も私は出てくると思うんですね。ですから、レコード協会が、今日、音楽文化を支え大いに発展さした功績というものをたたえつつ、時代の進展に対応していくという、硬直した考えではなくして、もっと国民大衆にみずからが飛び込んでいって法秩序を新たに塗り変えていくという指導的役割を果たすのが、長年の歴史と伝統を持ってきたレコード協会の私は使命であるんじゃないだろうか。あれがいけない、これがいけないということよりも、そういう次元の中で新たなる、過去の功績と実績を踏まえて、法秩序維持という意味においては前進していく、指導力を持ってこの問題に対応し、きちっと整理していく、そういうことが私は必要じゃないかなと、こう思うんですが、いかがですか。
  158. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) 田沢先生指摘のとおりで、私どもも、そういうふうな責任があるというふうに思っております。それゆえに、この法律のもとで一定期間の貸与権を認められ、あるいはその後の報酬請求権というものを認められたというような段階で、それをベースにいたしまして、新しい分野を受け持って出現してこられました貸しレコードの商業組合の方々とその辺のところを十分に話し合う。しかし、先ほど来も申し上げておりますように、これからのことでございますので、それを具体的にどうするかということは、結局は、私は牛久保さんの方の商業組合と、もう本当に両方が話し合いをした上でないと、具体的にどうするかということは、今ここでは簡単には申し上げられないようなことではないかというふうに思っているわけでございます。  以上でございます。
  159. 田沢智治

    田沢智治君 牛久保さんにお聞きしたいんですが、おたくのレンタル商業組合加入する場合は、どのような条件を具備しなければならないんですか。
  160. 牛久保洋次

    参考人牛久保洋次君) お答えします。  私どもは、先ほど冒頭の陳述にもありましたように、訴訟あるいは政治問題化しまして、私どものレンタル業というものは正当に評価していただきたい、こういったことから商業組合の設立というものがその背景にあったものですから、現時点では、私どもとしては、いわゆるダビング機器を置いていない貸しレコード店、これはもう全部加盟、そしてまた今後業界の指導監督をしていきたいと、このように考えておりますので、いわゆるレコードレンタル店を営んでおる店は全員これは加盟していただく、こういうふうに考えております。
  161. 田沢智治

    田沢智治君 そこで、私は、あなたの商業組合がしっかりした組織態勢を確立して、レコード協会が過去培ってきた業績を少なくとも認め、たたえ、共に生きる、共存していくという思想なり考え方組合員全体にいかに浸透させ、それをよしとさせていくかという意思統一があなたの組合の将来を決定づける基本的な条件だと、僕はそう考えるんです。ということは、レコード協会さんたちが培ってきた果実によって、あなた方の業界がその果実を受けて生存できるという、親があって子があるんだ、子と親があべこべじゃないんだというような、これは日本人的かもわからぬけれども、私はそれが合理的であり民主的だと思うんです。ですから、一つの集団を維持するには、正義というものと同時に感謝というものの中に生き方というものを位置づけるということが、業界の新しい秩序維持、国民が期待する内容の定着化であると僕はそう考えるんです。  もし、あなたの方がそういう次元で位置づけられるとするならば、私は割合と話が進み得るんじゃないだろうか。ただ安いものを供給すればいいんだ、多少もうかればいいんだというようなことだけでは、私はそう長くこういうものは続かぬと思うんです。ということは、貸しレコード業というものが市民権を持ち、例えば特約店でどんどんやり始めると、今度あなたの方が被害者になってえらい問題になるわけですよね。ですから、共存共栄をしていくということにおいては、よって立つ基盤、何の恩恵によって我々は生きられて営業ができるのかという気持ちと、またレコード協会も、過去培ってきたものだから人に分かち合わないんだというようなかたくなな根性じゃなくて、時代に合って国民が求めるものであるならば、互いにどのように分業しで共存していくかというようなきずなをこの際確立していくという方針を私は誓い合ってもらえないかなと思うんですが、いかがですか。
  162. 牛久保洋次

    参考人牛久保洋次君) 先生のお言葉のとおりだと私考えております。また、私どもも、この商業組合の設立を機に音楽業界あるいは社会の要請にこたえていきたい、また貢献していきたいと考えておる次第でございます。
  163. 田沢智治

    田沢智治君 そういう意味で、結局、貸しレコードがうんと安いというところに問題があるのでありますから、価格等についてよく協会と話し合い、再創造するリサイクルについての協力をどうするんだということまで話し合えば、私は何も許諾権の期間がああでもない、こうでもないということは必要はないと思うんですよ。欲しいものはすぐ結構ですよと、これは国民の文化であり人類の文化なんですから、それを継承するについて制限をつけることはない。ただ制限をつけないとするならば、許諾と同じように快く受けてもらえるようなルールをつくらなければ私はだめだと思う。  そういう意味で、そういう次元での連合、連帯を考えてほしいと私は思うんですが、高宮参考人、いかがですか、そういう考えは。
  164. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) 基本的には田沢先生のような考え方で、私も今後牛久保さんのところと話し合いを進めていきたいというふうに思っております。  しかしながら、やはりこれにはまだ機が熟さないようなところもいろいろございまして、きょうは私が参考人として呼んでいただいておりますけれども、私どもの背後には本当に一万軒に近いレコード商がおりますし、それからまた、この貸しレコードの出現と軌を一にしてみずからの経済的な利益を喪失していった実演家だとかあるいはプロダクションだとか音楽出版社だとかいろいろございまして、そういうところにも、今、先生お話にもありましたような、そしてまた牛久保参考人が申されたような、そういう気持ちで話をしていくというようなことがだんだんと浸透していきますことによって、この事態は好転していくんじゃないかというふうに思います。現在のところ、大変みんなは、みんなと申しますか、被害者意識、ダメージを受けているというようなことに対する反発というのが大変強うございますので、だんだんと時間の経過とともに努力をしていかなきゃならぬ問題ではないかというふうに感じております。
  165. 田沢智治

    田沢智治君 最後に阿部参考人にお伺いしたいのですが、今回の改正法案では、暫定措置と異なり貸与権を、貸しレコードだけでなく著作物一般に認めることになっております。そこで、貸与権を著作物一般に認めるこの法律案についての所見があればちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  166. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) お答えいたします。  御指摘のように、貸与権、これを一般的に非常に広く認めております。それは限定的ではございません。と申しますのは、私、限定的ではなくて今回の法案のように一般的に広く認める方が、今後におけるところの法の運用やあるいは現実に起こってくる社会の進展に対して適切に適応できるのではなかろうかと、こういうように考えております。先ほどからのお話のありましたような貸しレコードの問題であるとか、あるいはビデオソフトの、普通の貸しビデオソフトですか、そのような問題というものは、今からちょっと前にはほとんど想像もできなかったような問題でございます。近いうちに将来起こってまいりますのには、またコンピューターのソフトの貸与というようなものも起こってくるのじゃなかろうかと思っております。現に起こっているのかもしれませんが、そのような進展の中におきまして、個別的に一々貸与あるいはは頒布ということを取り上げますよりも、大きな網をかぶせておきまして、むしろ、それに対する例外を置いた、このような考え方の方がはるかによろしいのじゃなかろうかと、こういうふうに私は考えております。
  167. 高木健太郎

    高木健太郎君 レコードの方には私知識が余りございませんので、乱暴なことを申し上げて失礼にわたるかも存じませんが、その点あらかじめ御了承をお願いしてお許しを願いたいと存じます。  レコードというのは音楽の文化であると思いますけれども、そういう文化というものは元来は全部これは公開であり、そして民族にこれが伝えられていく、あるいはそれが多くの人に伝達されていくということであって、原則的に、できるだけ広く、そして経済的には安く、しかも本物に本当に近く、そういうふうに伝達されていくということが文化を広めていくというのに非常に役立つことである。しかし、今問題になっておりますのは、もとのレコードが幾らかしますと、それよりも安い値段で多くのところに販売されるからして、しかも、それが著作者といいますか、作詞者あるいは作曲家あるいは演出家、そういうものに対してはレコードのときには払われているけれども、それ以外のときには、今まで払われないでやられておったということは、これはよくないと思いますけれども、それらが幾らかでももとに還元できるということであれば安いことの方がいい、たくさんの方がいいというのが、私、そっちの方がいいんじゃないかと、こう思うわけです。それではレコードを製作されるレコード協会の側としましては、それを安価に模倣されるということは自分の商売として成り立っていかないと、また自分がそれをつくるに当たってはいろいろ苦労もしているのに、それらが全然レンタルの方ではしていないのに、それがかかっていないから非常に安くやっているというように考えておられるかもしれませんが、私は本当は、もしも、いわゆる、何といいますか、レコード製作者というような人が一つの権利を持っていくと、隣接権者ですか、その隣接権者というものが極めてオリジナルのものであるなら、これはレンタルの方ではまねができないはずであって、それと本当に同じものができるならば安い方がいいと一般の人は思うに違いないと、こう思うわけです。だから、まねのできないようなものを実際は隣接権者としてはつくるべきじゃないだろうかと、そうすれば幾らか高くっても隣接権者のおつくりになったものの方がレンタルのよりはいいんだから、値段が高くってもいいじゃないかと、そこに値段が高いという差があっても私は一向差し支えないじゃないか。例えば、絵画がある場合に、そのオリジナルの絵画の方が、いかにそれをイミテーションしてまねたところで、もとの絵画がいいということであれば、やはりもとの絵画の方が値段が高くってほかの人も皆買うんじゃないかと、こう思うんです。  そこで、こういう乱暴なことを申し上げるのでひとつお許し願いたいんですが、まず第一は、今の隣接権者であられるレコード協会においてまねのできないものができないかということですね。そういう立派なものをおつくりになったらどうだということを私まず最初に申し上げたい。それから、レコードをつくるのに高くかかるというのは、そういういろいろの設備も要るわけでしょうし、そういうものであるならば、それ以外のレコードをつくるときにもっと安く、それを安価に一般に供給できるように、レンタルが幾らあがいても追っつかないような立派な品を、しかも安価にこれをつくることができれば私はこれが理想的である。理想的な話でございますから、決して高宮さんの方を悪いと言っているわけじゃないわけです。だから、ひとつ、そうしていただきたいと、こういうわけですね。そして昔からよく言いますけれども、昔、私の若いときに生のピアノを弾くというのとピアノの機械化というものがあったわけです。    〔委員長退席、理事田沢智治君着席〕 針なんか出てまして、それを入れた音と、それから実際に生演奏した音と比べると、それは違うか違わないかということで大論争を起こしたことがあります、学者の間で。それは今結論はどうなったかわかりません。ところが、野球とかあるいは相撲とかの放送がビデオで、放送でやられるわけです。最初はどう言ったかというと、そういうものを生放送すれば、もう相撲だとか野球を実際に見に来る人はいなくなるんじゃないか、こう言われたものです。ところが、放送したために実は観客はもっとふえたわけです。そういうことがあったんですね。だから、私はそういうことを思うと、いかに何かレコードをおやりになっても、やはり大きなオーケストラとか、そういうものでは生の方がいいという感じにだんだんなっていくんじゃないか。そうすると、本当の演奏家だとか、あるいは歌手だとか、そういう人たちはより収入がふえるんじゃないかなという気もするわけですね。まあ、レコードではっと売った方が枚数でいくからそっちの方がいいのかもしれませんが、私は本物を聞きたいということになっていくのじゃないかな。それはレンタルでどんどんふえる。そうすると、レコードが売れなくなるというように心配しないで、レコードの方がちょっとでも品質がよければ、やはりもとのレコードを買いたい買いたいというふうになっていくんじゃないか、そっちが本物だ。そしてさらに進んだら、おれはオーケストラに行って本物をもっと聞きたいんだということにだんだんなっていくんじゃないかな、そういう努力といいますか、そういうことができないものであろうか。ああいう缶詰の中に入ったものがやっぱりオープンので聞いたものとは私はどっか違うんじゃないか。そういう意味で、レコードというものがテープよりもよりまさっているとすれば、そういうものはやっぱりもとのレコードを買いたいというようになっていけば、かなりレコード業界の方は今のような形でいろいろお話し合いされるときでも、やはりこちらの方がいいんですから、それは負けましたというふうに貸しレンタル屋さんの方も言われるんじゃないかなと、こういうふうに私は思う。これが乱暴な議論でございますが、いろいろのこういうメディアが進んできた状況では、やはりもう一度レコードというものを振り返って、他に類例のないよいものをつくるというように努力をされる。しかも、安価でいいものをつくる、貸しレンタル屋さんが幾らあがいてもできないというところへ私は努力されることがまず第一じゃないかなと、こう思いますので、これは法律とは少し離れまして、現在はいろいろお話し合いをされ、あるいはお互いにいろいろ問題もおありでしょうけれども、お互いはそういうふうにすべきじゃないか、これはやっぱり競争であろうと思います。  そこで、時間が余りありませんので、一、二お聞き申し上げたいと思いますが、何か一カ月から十二カ月というお話がございましたですね。その間は許諾しない、あるいはその間でどっかで許諾して報酬を払うというようなお話ですね、そうじゃなかったですか。発売をしてからすぐは許諾しない。しかし、十二カ月たてば許諾するものもあれば十カ月で許諾するものもある、そういう意味ですか、これは。ちょっとお聞きします。
  168. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) 今の点だけにお答えを申し上げますが、今度の法律案は貸与権というものを私ども隣接権者にも与えていただく、そしてその貸与権を与える期間というのは一カ月から十二カ月の間で国がお決めになる。その貸与権を隣接権者が与えられている期間に我々隣接権者はそれを貸与を許可してもいいし、貸与をしないこともあり得ると、そういう権利であるというふうに承っております。
  169. 高木健太郎

    高木健太郎君 貸与されるというのは、発売からすぐ貸与されるということですか、あるいは何カ月か置いてから貸与するのか、それは政令でお決めになるわけですか。
  170. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) 政令は私どもの方ではもちろん決めるわけではございませんで、国がお決めになるわけでございますが、その貸与期間という間にその許諾を求めてこなければいけないということになっているんだと私どもは理解しております、貸しレコードをやりたいと思っておられる方はですね。そうすると、今度は、我々貸与権を持っておりますレコード製作者といたしましては、いろんな、結構ですということで貸与オーケーということもあれば、これはひょっとしたら非常にいろんな事情があるので、ちょっと貸与をすることをしばらく待ってもらえぬかというようなお話をすることの自由もちょうだいできているというふうに思います。それで、貸与オーケーというときには使用料をちょうだいしてこれを使っていただくと、それから、ちょっと待ってくださいというときにはもうお金の問題は起きないで、そのかわり、使う方は少し我慢していただく、そういうことになっているように承知しております。
  171. 高木健太郎

    高木健太郎君 そういう一種の拒否権みたいなものなんでしょうけれども、貸しレコード屋さんの方も、今売れば売れるんだけれども、余り後になるともう売れないというようなこともあるでしょうから、お互いそこは競合しちゃうんじゃないでしょうかね、どうしても。だから、それが私は、例えば、あるレコードは何カ月目かに非常にピークがあると、そういうのは今までの御経験でおありでしょうけれども、そこのところはやりたくないとお思いでしょうから。そうすると、貸しレコード屋さんの方は貸す、貸すというんじゃないですが、非常に不利なところに貸与権をもらっているというようなことにもなるんじゃないか。こういうところは、今度組合もできましたから、できるだけお互いに利益を分かち合うように、また隣接権者としては、今までの権利もお持ちでしょうけれども、できるだけそこは話し合いをして、そういうことのないように、できるだけ貸しレコード屋さんの方にももうけを少しでも分けるように、こういうふうに私は考えていただきたいと言うのは、最初にあるように、これは文化ですから独占されるものじゃないと、みんなに広く広める方がお二人とも、僕はかえって将来はもうかるんじゃないか、また作詞、作曲した人も本当に利益を受けるんじゃないか、そういうふうに思いますので、そういうこともひとつお考えをいただきたいと思います。  それから牛久保さんにちょっとお聞きしますが、組合組合と言っても、その組合に入ることは強制力がないんじゃないかと思うんですが、そこはどうなっているんですか。網の目を漏れた人にあなたがどういうふうに対応されるのか。せっかくお互いに合意にいろいろ達しても、網の目から漏れている人があると、そうすると、だれが一体責任をとっておやりになるのか、その点をちょっとお聞きしたいんです。
  172. 牛久保洋次

    参考人牛久保洋次君) お答えさせていただきます。  いわゆる漏れたはぐれ者はどうするかということでございますけれども、いわゆる使用料におきまして、主たる権利者であります日本音楽著作権協会とのお話し合いの中で、組合員の割引等も考慮していただきまして、いわゆるそういった条件的な面でも差別化していただいております。そういったことも、私どもも、いわゆるアウトサイダーをなくす一つの材料に使っていきたいと思っておりますし、また、全国にJASRACと同じような支部を、対応した支部づくりをいたしまして、また、ここでもってこれから強力にやっていきたいと考えている次第でございます。  以上でございます。
  173. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 まず、時間のこともございますので、最初に阿部教授に伺いたいと思うんです。  私は、これからは創造性が尊重される時代、ソフトの時代だろうと思っておりますけれども、つまり、ソフト尊重の度合いというのが文化のバロメーターじゃないかと、そんなふうに思っているんです。さっき阿部先生触れられましたけれども、コンピューターの方もやはりもう訴訟が起こったりしているわけですから、そういうことで、我が国ではまだそういうソフト尊重の意識が、私、自分の経験を通してもそう思っているんですけれども、低いんじゃないかと思っていたりもしております。  そこで、今の著作権の問題というのは、今、販売のことがあったようですが、私は、より以上にソフト尊重ということが重要なポイントだろうと思って伺っているわけですけれども。諸外国の動きは、さっきイギリス、西独のことを触れられましたが、どんなふうになっているんでしょうか。
  174. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) お答えいたします。  例えば、著作物の録音録画についてどのように外国においては取り扱われているか、一例として申し上げたいと思います。  先ほどちょっと西ドイツの例を申し上げましたが、西ドイツの著作権法によりますと、録音録画機器ですね。テープレコーダーにせよ、そのような録音録画機器に対しまして、先ほども申しましたように、お酒の蔵出しのときのように一定の出荷数に対しましてあるパーセンテージを掛けました賦課金を課しております。その賦課金を用いまして著作権者に対するところの著作者に還元すると、こんなふうなやり方をとっておるところもございますし、つまりそれは、私的な複製の場合でございます——各人のうちに録音録画機器がございますが、録音機器、例えばテープレコーダーはほとんどの家庭にあるのじゃなかろうか、日本におきましてもそのとおりだろうと思います。そのような録音機器を用いていろいろな音楽著作物にせよ何にせよ皆録音するだろうと。こういう場合に、私的な使用のためであるならば、日本でありますと、著作権法の三十条によりまして、私的のために複製する場合においては著作権についての制限を受けないと、各人が自由にしても差し支えがないということになっております。それ以上の歩みは現在日本では出ておりません。しかし西ドイツの場合には、そのような録音録画機器にもともと購入するときにそのような賦課金は既に織り込み済みになっておりますので、それらの費用を著作者に還元するようなシステムになっております。あるいはそのような賦課金を課している国というものは何も西ドイツだけに限っておりません。そのほかの国においてもいろいろとございます。例えばオーストリーを例にとりますと、オーストリーは録音録画機器ではなくて録音テープに、今西ドイツで申しましたような賦課金のようなものを課しております。それもまた、そのうちの、はっきり記憶ございませんけれども、二〇%ぐらいは文化振興のために、それからそのほかの八〇%は著作権者に対して還元をするというような形で、私的な複製、録音録画等に対するところの著作権者の利益をできるだけそういう形で補っていこうじゃないかと、こんなふうに考えております。  そういう制度をとっている国は、そのほかにも似たようなものとして、フランスのように目的税のような形において一種の文化税のような形においてとっております。日本でもそういうことを考えていると。現在、著作権審議会の方でもそういうことを考えていないわけじゃございません。第一小委員会におきましても議論の対象としては直接に取り上げてはおりませんけれども、そういう抜本的なこのような解決ということは極めて望ましいと、これに対する今後の努力ということも必要であるだろうというふうに考えております。    〔理事田沢智治君退席、委員長着席〕  と同時に、日本国内におきましては、著作権思想の普及ということについても各種団体において努めております。そのように、賦課金を課するにせよ課さないにせよ、いずれにしても、著作権思想の普及というものは非常に大事なことでございます。とりわけ、昔から日本では比較的簡単に人の物を、無体の物に対する価値の尊重というものは比較的少ないのじゃなかろうかと、こんな感じを持っておりますけれども、そのような考え方を少しでも改めていただき、少しでも無体財産権の観念の尊重の度合いを高めていこうというところで、私から申すのもなんでございますけれども、文化庁の方でも、あるいは著作権資料協会であるとか、各種の著作権関係団体におきまして相当の費用を用いて著作権思想の普及に努めておるところでございます。
  175. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 大変ありがとうございました。大変何か合理的なお話のようで、そっちの方向へ向かっていく方がより私は合理的なんじゃないかなと思って今伺いました。  そこで、五月八日の新聞でございますけれども、このタイトルを見ますと、七日に、「無断レンタルは違法」とかいうので市販ビデオに対しての著作権侵害が認められたという東京地裁の判決が出ておりますが、これと今度の著作権法の一部改正とどういう関係になるでしょうか、阿部先生
  176. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) 先ほどのは五月七日の東京地裁の判決じゃないかと思いますが、それは店頭におけるビデオの高速ダビングの事件じゃなかろうかと思います。高速ダビングの事件は、それは日本ビデオ協会が原告のような形において高速ダビングについての営業差しとめですか、そのような仮処分の申請じゃなかったかなと、こう思いますけれども、それはビデオの高速ダビングの方はビデオソフトをお客さんに貸しまして、ただお客さんの方が店頭に備えであるところの高速ダビング機械でダビングをいたします。そうしますと、お客様が勝手におやりになるのであって店の方とは無関係であるというような店の方の考え方でございます。つまり、店の方ではビデオソフトを貸します。それをお客様が複製するというように二つをはっきり分けて考えていく考え方でございます。貸すことについては別段問題はないのじゃなかろうか云々というようなことなんでございますけれども、もともとビデオの場合には映画の一種として考えられて結構なんでございます。映画でございますと、映画につきましては先ほど申しましたように頒布権というのがございます。頒布権というのは、映画の製作者につきまして映画の方でそれを貸すのに当たりましても映画製作者の許諾がなければならないということはもう既に現行法においても認められているところでございます。ビデオの場合も同じようにそれは映画製作者の方の許諾を得なければだめだ。映画の中に一つに入って映画と同視されるということになっておりますので、ビデオソフトの場合にはそのように許されないということになります。それから、四月六日は、レコードでしたか、ビデオでもレコードでもどちらも似たようなものですが、レコードの場合もこれは音楽著作物としてこれを複製するに当たって、先ほど申しましたように二つに分けて考えていくというのではなくて、やはり店頭におきましてダブルデッキでも何でもいいですが、複製するということは一連の行為として考えて、著作権を侵害する、著作権法精神に全く反するものであると、こういう考え方から複製禁止、営業差しとめについての仮処分の申請が認められたと、こういうように理解しております。著作権法精神ということを非常に地裁の方では強調しておりました。
  177. 高桑栄松

    ○高桑栄松君 もう時間になりました。ありがとうございました。
  178. 吉川春子

    ○吉川春子君 レコード協会とレコード商業組合との利審の調整ということがきょうの審議の主要なテーマになっている感がありますけれども、著作権法が文化を守る法律であるという点を踏まえて幾つか質問させていただきます。二つの団体の利審をどこで一致させるかという一致点を見出す上でも、文化を守り発展させるという点から考えて結論を出さなければならないというふうに思うわけです。  最初に阿部参考人にお伺いいたしますけれども、現在の著作物の情報伝達手段の目覚ましい発達で著作権保護の新たな見直しということが求められていると思うのです。特にヨーロッパ、アメリカに比べて日本では著作権というものに対する考え方が非常におくれていると思いますし、著作権思想の普及の重要性についても、今先生が御発言になりましたけれども、どういう方法でこれを普及していったらいいかという点と、それから特にアジア地域がさらに日本よりおくれているわけで、聞くところによれば紅白歌合戦なんていうレコードが出ているのだそうですね。そういうような非常に著作権思想の普及のおくれたアジア地域において、その中では先進国である日本の果たすべき役割、こういうような点についても簡潔にで結構ですがお願いいたします。
  179. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) お答えいたします。  著作権思想の普及の問題に絞ってお答えいたしますと、先ほどちょっと申し上げましたけれども、文化庁主催で例えば図書館職員についての講習会というのがございまして、そこにおける著作権思想の普及ということを全国的にやっております。それから全国を八つか、覚えておりませんが、沖縄まで含めまして全国地区における著作権講習会というのを各地区の教育委員会か何かそれらの方と共同する形において全国的に毎年毎年やっておりますし、さらに民間団体におきましては、資料協会で全国二つに、関東、関西に分けて著作権思想の普及というようなこともやっております。それからそのほかといたしましては、パンフレットを盛んに配付するというようなこともやっておるように記憶しております。また、ポスターをつくっていろんなところに、評判のいいのはその晩のうちになくなってしまったなんて話を聞いたこともございますけれども、そのような一般的に著作権の思想ということを普及する、そのような活動がなされているように聞いております。  さらに、東南アジアそのほかにおける諸外国との関係におきましては、大分前でございますけれども、日本で東アジア、太平洋地区におけるところの著作権のいろいろな会議を開いたこともございます。そのときにはフィリピンであるとかオーストラリアであるとかあるいは韓国そのほかの国々から、大分多くの国々から参加されております。もちろんそういうのは先ほどちょっと話がありましたベルヌ条約それから万国著作権条約を主管しておりますWIPO(世界知的所有権機関)、これは国際連合の一機関でございますが、そちらの方と共同して文化庁の著作権課の方が開催した国際会議でございます。さらにWIPOの方では、アジア方面の著作権思想の普及を図るためにも、インドであるとかフィリピンであるとか、そちらの方でまた著作権のいろいろな会議を開きます。各国政府から、あるいは各国の団体からオブザーバーを呼びまして、それを紹介いたしまして著作権思想の普及に努めているところでございます。それに対しては日本の方からもいろいろな人たちが出て、それに協力し応援をしておるというように承っております。まあこんなところでございます。
  180. 吉川春子

    ○吉川春子君 先ほど高宮参考人がすべてのレコードについての許諾権を与えるかということについて微妙な御発言がありましたけれども、許諾権の働く期間は一カ月以上一年以内というのが今回の法律案ですが、例えば歌謡曲、民謡、童謡などそのレコードの種類によって許諾の期間に当然違いがあっていいと思いますけれども、こういうようなところで妥協を図るということはできないものでしょうか。だから、あるレコードについては全然許諾権を与えないのじゃなくて、その期間の差によって与えていく、そういうことでレコード協会の利益も図られるような方向に行けたらと思うのですけれども、いかがですか。
  181. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) お答えいたします。  先ほどの私の御説明が、許諾をしないということで強い感じを、印象をお与えしたのじゃないかと思いますけれども、私どもは法律の趣旨を十分に受けとめまして、具体的なお話になる場合には原則的にはもう大部分のものは許諾、貸与権のある期間も開放する方向に進めたいと思っております。ただ、しかし、いろいろとレコード会社それぞれに事情がございまして、例えば大きさで申しますと、非常に数限られたアーティストを抱えてそれが非常に少ない作品を出していくようなところだとか、あるいはそうじゃなくてもっとスケールのそれに比べますと総体的に大きな会社あたりでは、またいろいろやりくりもつけられるというようなこともあろうかと思います、アーティストの数も多くてですね、そういうことでいろいろございますので、この辺のところはレコードというものの非常に個別の性格を持っております事情もございますので、極めて抽象的に申し上げますと、既に昨日東京地裁にもこんなふうに考えておりますということで申し上げましたようなことで、大部分はもう貸与権を行使して、許諾をしないということじゃなくて、許諾する方向でいきたいけれども、特定のこういう事情のものについてはしばらくの間、あるいは今、先生おっしゃいましたように、期間を限って、すべて、一カ月以上十二カ月というのを仮に十二カ月というふうにお決めになられたような場合でも、十二カ月全部禁止しますというようなことではなくて、ある期間が経過したならば大いにひとつ使っていただくというようなことも考えたいと思っておりますし、ここが、今この段階で具体的にどういうものは許諾するということを申し上げるのがなかなか難しゅうございまして、その程度で御理解をちょうだいしたいと思います。
  182. 吉川春子

    ○吉川春子君 それと、もう一つ、レコード協会の高宮参考人に伺いますが、使用料について、著作者、実演家、レコード制作者間の公平な分配についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  183. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) お答えいたしますが、既に、御案内のように、JASRACの方では合意に到達しておられますので、これを一つのプライスリーダーと申しますか、そういう考え方で合意がなすっているとすれば、レコード制作者もそれとのバランスにおいて物を考えでいかなきゃならぬということが大筋では申し上げられると思うんでございます。しかしながら、レコード制作者というのは、レコードをつくり上げますについて、著作者あるいは実演家とはまた違ったいろんな意味の経済的な負担を受け持っているわけでございまして、そういう意味では、例えばJASRACが五十円だからレコード制作者も同じ金額でいいだろうというような意味金額の形式的な公平というようなことではない考え方で、この辺はまた詳しくよくお話し合いをしたいと思いますけれども、商業組合の方と具体的にはお話し合いをしていきたいと思っております。と申しますのは、レコード制作者というのは、ただ、著作者が作品をつくられた、いい実演家がいたのでその人が歌ってくれるということだけで売れるものではございませんで、そのほかにも技術的にもいい品質のものに努力していかなきゃいけないような面もございますし、それから、全く無名の歌手あたりの場合には、それを広めていくために、いろんなところにいわゆるプロモーションとか宣伝とかいうようなこともございますし、そういう費用は、もうこれは従来は一般のレコードを購入してくださる方々が、そのレコードの価格の中に織り込まれていたものでございます。そういうものが従来、今日までのところはレンタルレコードからは全くちょうだいできてないので、レンタルも安い方がいいというお話が先ほど来いろいろございますので、これが値段が高くなることについてはレンタル商業組合の方でも非常に問題を感じられるだろうと思いますけれども、そこのところを十分にお話し合いをしながら、なるほどそれはひとつ負担の均衡というような意味からもよく考えてみようというようなお話でも牛久保さんからの方からちょうだいできるようなことになりますと、よほどまた話も進みやすくなるんじゃないかと、そんなふうに考えております。
  184. 吉川春子

    ○吉川春子君 阿部参考人にお伺いいたします。  録音録画機器に対する賦課金制度が著作権審議会の検討にもかかわらず結論が得られていないというのが現状で、ドイツでは機械に、録音機に賦課金がかけられているし、オーストリアではテープに賦課金がかけられている、こういうお話でした。それで、この点についてはレコード協会もかつて文化庁に要請もされたわけですけれども、この制度がなぜ創設がおくれているのかということについてお伺いしたいと思うんです。  それから、日本でこの賦課金制度を取り入れる場合には、ドイツ方式とか、オーストリア方式とかいろいろあるんですけれども、どういう形で画本では取り入れていくのがふさわしいのか、その二点についてお伺いいたします。
  185. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) お答えいたします。  その賦課金の問題につきましては、著作権審議会の前に、たしか第五小委員会だったと思いますが、そこで盛んに議論されたことがございます。その場合に、やはり賦課金となりますと、録音録画機器のメーカーと、それから、そのような賦課金を出す方と、それから権利者の方との間にいろいろと議論の対立があったわけでございます——と報告書には書いてございますが、その場合に、基本的に、賦課金を課するということになりますと、どうしてもそれは消費者に対して、機器の購入者に対してその値段について価格の転嫁がなされてくるだろうというようなこともございまして、一般消費者がそれについて、価格が少しでも上がることについての納得が得られない限りにおいては、なかなかそのような点に応ずるわけにはいかないのじゃないか、こんなふうな話があったように承っております。最近におきましても、しかし、そういうようなことをいつまでもほうっておくわけにはいきませんので、審議会におきましてもできるだけ抜本的な解決を考えなければなるまいというので、それとはちょっと若干別でございますが、著作権に関するそのような賦課金などの問題を含めまして抜本的な解決を考えるための懇談会というものが構成されております。それは一応審議会とは別な組織でございますけれども、そこに、メーカーの代表者のような方々もいらっしゃいますし、それから権利者のような、芸団協の方であるとか、あるいはレコード協会の方であるとか、JASRACの方であるとかという方々が御出席なさいまして、いろいろと話を詰めている段階でございます。で、だんだんと、一般的に、そのような賦課金を課するに当たっても消費者の理解がなければなるまいということになりますと、どうしても、消費者の無体財産に対する理解の高まりということが必要になってまいります。そのためにも著作権思想の普及ということは非常に大事じゃないのかということになりました。それから、さらにまた、最近少しまたそれに対する障害がふえてまいりまして、録音録画機器に対するところの、何かよくわかりませんけれども、税金が課せられるようになったそうでございまして、そうしますと、さらにその上に賦課金が課せられるということになれば、なかなか今後またそのような話し合いが決着するのには難しくなったのかなという感じを持っております。現在のところ賦課金につきましてはそういう状態にあるので、できるだけ早い機会にそのような懇談会の成果ができることが期待されているわけでございます。  それで、日本ではどういうような制度が望ましいのかという御質問でございますけれども、やはり賦課金につきましては二通りの考え方がございます。一つは、私人としての権利者に対する、還元するという考え方がございます。もう一つは、文化税のような、いわゆる目的税のような形において徴収するという考え方がございます。つまり、賦課金として徴収したものの使途にそれは直結してまいりますけれども、やはり日本の場合には、賦課金というものが課せられることになりましても、それは私上の著作権者の、私権から、私上の権利から発生するものとしての権利として認めざるを得ないのではないのか。これは、著作権法そのほかの法律のすべてに関連するものとして、基本的な姿勢が、思想が、その著作者、著作隣接権者の保護というところ、それを柱にして文化の発展ということを考えておりますので、やはりそういう形の方向にいかざるを得まいというように私は考えております。
  186. 吉川春子

    ○吉川春子君 時間が来ましたので私の質問これで終わりますが、許諾権が与えられるということは、レコード業界にとっては大変強い権限が与えられたというふうにも考えられますので、先ほど来お話が出ましたように、ぜひ文化の普及という面を十分に考えていただいて、各団体の利害が一致できる点で努力いただきたいというふうに私ども共産党も考えております。  以上で、きょうはどうもありがとうございました。
  187. 小西博行

    ○小西博行君 きょうは大変参考になりました。ありがとうございました。  二点だけちょっとお聞きしたいと思うんですが、先ほどから貸しレコードの問題が随分たくさん出ております。まず阿部参考人に、諸外国に比べまして特におくれている部分に文献複写という問題がございます。その文献複写につきましては、日本の場合、関係団体の取り組みの状況につきまして、どのようにやられているのか、その辺の実態をお聞きしたいと思います。
  188. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) お答えいたします。  文献複写につきましては、つまり複製者、機器の問題に尽きるだろうと思います。  文献複写につきましては、もともと基本的には著作権者の許諾権と申しますか複製権に服するのが基本でございます。ですから、文献を複写するに当たりましては著作権者、著作者の承諾がなければなりません。しかし、常にそれがどんな場合でもというわけにはまいりませんので、各種の例外規定が置かれていることは御承知だろうと思います。第一に、先ほど申しました私的利用のためであるならば差し支えがないというのが一つございます。さらには、学校なんかで教育のために用いる場合にもという制限がございますし、さらには、裁判所なんかで訴訟なんかに使うような場合であるとか、さまざまの制限規定が置かれております。しかしその制限規定は、それはそれでよろしいんでございますけれども、そこに問題になってくるのは二つございます。  その制限規定の中でも、とりわけ私的使用のための複写複製でございますが、これはそれほど現在録音機器のように各戸には普及はしておりませんけれども、町に盛んに複写機器を設置しまして、いわゆるコピー屋さんでございます。コピー屋さんがありますので、そこで文献を盛んに複写いたします。のみならず、もともと図書館なんかでも、一部だけだと、こういうふうなことになっておりますが、それも多数の者が複写いたしますと大変なことになりますし、さらには、誤解があるのか、あるいはちょっと知ってでも知らんふりしてやっているのか、いろいろな企業の中においても複製機器がございます。その複製機器で盛んに複写されますと、とりわけ科学、学問的なそういう技術、学術雑誌なんかを複写されたらどうにもならなくなってしまうということになってまいります。  それに対してどのように取り扱ったらよろしいのかというのが一つございます。そこで、それも個別的にいろいろと考えて、基本的には許された制限を外れたものは著作者の承諾を得なければならない、これが基本でございますけれども、だからといって、それが常に実行ができるとは限らないわけです。そこのところから、今回もその複写複製につきましては、どういうふうに考えるかということが問題になりました。結局、現在のところ複写複製につきましては、今回の改正のところからは外してあるわけでございます。  複写複製機器を外したというのは、できるだけそれらにつきましても、録画機器のように、諸外国に見られるような課徴金のようなものがあれば非常に結構なのですが、それをするためには回収すると申しますか、徴収すると申しますか、そのような機関がなければどうにも実効は出てこないわけです。そうすると、名目だけで実がなければかえって弊害が生ずるということがございます。そういう点から、現在著作権審議会ではございませんが、いわば外側のところで、集中的な権利処理機構と申しておりますけれども、そのような機構を設けまして、できるだけ円滑にそのような費用を複写複製機器の方から、あるいは利用者の方から取ることができないだろうか、それによっていろいろな著作権者あるいは出版権者であるとかいう人たちの利益を守ろうじゃないか、こう考えて作業を進めているところでございます。  最近、この四月と思いますが、集中的権利処理機構の設置に関するそれらについての検討をする会議がございますが、そこから報告書が出ております。それに基づいて、これから具体的にいろいろな権利者団体、そのほか利用団体との間に話が進められていく、これが現状だろうと思っております。  よろしゅうございますか。
  189. 小西博行

    ○小西博行君 もう一点だけ、高宮参考人と牛久保参考人にお聞きしたいんですが、先ほどからの議論いろいろ聞いておりまして、レコードの問題というのは、一般の国民から考えた場合にはできるだけ安くいい音楽を聞きたい、こういう一つの大きなニーズがあると思うんですね。当然、レコード会社の方は余り安く貸しレコードという感じでそれをダビングしてどんどんやられたらかなわないと、営業的にもうどうにもならないということで、お互いの利害関係がうまく合わなきゃいかぬという問題があろうと思うのですが、先ほどちょっとお話を聞いておりましたら何かLPレコードが急速にダウンした。それはちょうど貸しレコードがどんどん出だしてからなんだと、こういう御意見がありますね。私は一つ疑問になっておるのは、疑問というよりも教えてもらいたいのは、大体どういう年代の層がそういうLPをどんどん買っていくとかあるいは借りるとか、そういうことになっているのか、これがまず第一点です。  そしてもう一点は、私もカラオケを少したしなんでおりますけど、やっぱりLPを一枚買う場合でも、どうしてもその中で自分の好きな曲というのがあると思いますね。そういう場合には自分で録音してそして自分用、これは販売しませんけど、自分で録音して持ち歩くという現象というのは当然私は現代の若者の中には出てきていると思うのですね。  こういう二点を考えても、やはりお客さんのニーズというものが非常に多様化している。それにこたえていくのが皆さん方の大きな仕事ではないか、こういう感じを持っておりますので、その辺のことについての考え方がもしございましたら一点ずつお願いいたしまして、そして終わりたいと思うのですがね。
  190. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) お答え申し上げます。  安くていい音楽をお届けするようにしたいということは、私どもも考えているところでございまして、少しでも余計もうけたいから高くしたいというよりも、現実にはこれはいろいろお比べいただいてもおわかりかと思いますが、レコード価格の上がり方と物価の上昇率というようなものは、一般の消費物価の上がり方などに比べますとはるかに低いところに抑えられておりますし、それから、よく国際的に割合高いんじゃないかというようなことも新聞、雑誌等で書かれることがございますが、いろいろ調べてみましても必ずしもそういうことはございませんで、むしろヨーロッパ並みのところにおさまっているし、品質的に見ますと、そういう外国の物よりは品質的には少しハイレベルのところにレコード自体も、あるいはそういうジャケットというようなものもあるんじゃないかというふうに考えております。アメリカは非常に生産量がけた違いに大きいものですから、やはり量産の効果ということもあろうかと思いますし、また日本との比較におきましては、為替レートの変動等々もございますので、なかなか正確な時点でつかまえにくいと思いますが、これは極力安い物を安い値段でお届けしたいという考え方は基本に持っております。今後貸しレコードも市民権を得たというようなお話も先ほど来ございますが、そういうことでありますので、LPの一部だけを手に入れたいというようなことにつきましては、何かいい方法でも、仮に我々も納得できるようなことであれば、そういうこともできるかもわかりませんけれども、私どもが、裁判所でも、そういうお考えが、これは仮処分の別の案件でございますが、そういうときでもお認めいただいた中に、非常に貸しレコードの価格は従来のレコードでつくり上げてきた価格体系の中でも極めて安いから、それが非常にふえていった。そういうものに対して、従来のレコード会社というものが、それに対する対抗措置をとっていくのはこれはうなずけるというようなこともございましたようなことで、むしろ負担の均衡ということを、これでひとつ仕事、商売をしていかれるということであれば、一般のレコード屋さんが負担しているような負担の何分の一がのバランスのとれた負担をしていただきたい。そういうことがレンタル料の上にもはね返っていくような考え方を持っていただきたいというようなことを非常に思っているわけでございまして、広くいい音楽を普及させる、好まれる音楽を普及する方法というようなことについては、極力また考えて努力をしてまいりたいと思っております。
  191. 牛久保洋次

    参考人牛久保洋次君) 先生の質問にお答えさせていただきます。  まず私、この貸しレコード問題でこれを著作権法上どう解決していったらいいかということなんですけれども、先ほどどなたか、先生方もおっしゃっていたように、いわゆる商業問題と法律問題が混同視されている、ここら辺がまず第一番目に私どもとしては納得できない部分でございまして、特にこの問題の背景あるいは経緯は、小売商の売り上げが減少した、それは貸しレコードが原因なんだと、それに伴って製作者サイドに圧力かけて、私どもが刻々と社会的に定着あるいは認知されることがおもしろくない、こういったことから出発しますと、先ほど先生お話ありましたように、やはり著作権法というものは文化というもの、その発展、創造、こういったことに立って話してほしいとお話ありまして、私も感銘したんですけれども、ある意味では、そこに、いつも。そういった小売商の特殊な利益、これを考えていくということは問題がちょっとずれていってしまうんじゃないかな、こういうふうに考える次第でございます。  よりよい音楽をより多くの人がより早く気軽に聞きたいという、こういうニーズがあるわけでございまして、僕は昭和二十年生まれなんですけれども、個人的なことになりますけれども、二十年代というのはたしかレコードメーカーは日本でも数社しかなかったと思うんですね。今はもう二十七社、それは確かに大から小までございますし、それが一遍に出てくる。やはりレコードというのは聞かなきゃわからない著作物、無体財産だと思いますし、どなたか先生お話ありましたように、聞いてよけりゃやっぱり買うんです。僕はこの信念でございまして、そういった一つの購買スタイルというものが今でき上がってきていると思っております。ですから、年代はどんな世代が多いかということでございますが、二十代を中心に本当にもう下は小学生から上は大学生、社会人と広がりつつありますし、これからも私どもそういったニーズにおこたえしていきたいと思っております。  それから、先ほどお話ありましたように、何といいますか、公正な使用料でもって許諾していただく、こういうことはぜひとも私どもは再度お願いしたいと思います。一とめてしまうということは、先日の文教委員会の席上、芥川理事長さんがこういう言葉をおっしゃっていました。フランスの詩人がおっしゃったそうだと、いわゆる愛とは見詰め合うことでなく、本当にあしたに向かって見詰め、そして歩むことだ、目先のいさかいでなく、本当に音楽文化の発展、創造、それに向かってどうあるべきか、こういう発言があったんですけれども、ぜひ私どもそういうふうに導いていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
  192. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 大体、もう議論は尽くしてしまったような気がいたしますから、私は簡単に二、三質問をいたします。  阿部先生にお答え願いたいんですけれども、この著作権法の一部を改正する法律が施行されたといたしまして、高速ダビングでレコードを安く複写をして、そうしてそれが一般に普及されるという今までのような傾向がどのくらいやまるでしょうか。非常に効果があるか、非常に効果があってそういう事態はほとんどなくなるか、あるいはほとんど今までどおり何だかんだと言って高速ダビングをつくって海賊版をつくるということがなお行われるだろうか、あるいはその中くらいか、その三つに大体分けてどんなものでしょう。
  193. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) ちょっとはっきりとはわかりかねますが、私の想像、予想と申しますか、違法な高速ダビングを前提といたしますとやはり科罰の規定が相当厳しいのでございますので、私としましては、少なくともやむ傾向に進むのではなかろうかと私は思っております。
  194. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 高宮さんいかがでしょうか。
  195. 高宮昇

    参考人(高宮昇君) 私もだんだんと法律の効果があらわれてやまる方向に行くんではないかというふうに思っております。  と申しますのも、これは既に従来も高速ダビングでレコードをどんと人ダビングしていかねるようなお店を、これはやっぱり我々に対する法益の侵害だということで実は仮処分等の訴えをいたしております。法律がだんだんとこういうふうにできてくるというようなことも一つの力になっていると思いますが、裁判所の御判断でもそれを差しとめ仮処分の決定がございます。それに影響を受けて、従来、我々が訴訟で争っているというようなところでもないところでも、だんだんこれをやめるというようなことを言ってこられているところもございますし、そういうことから考えますと、だんだんと、絶無はどうだかよくわかりませんけれども、阿部先生もおっしゃられましたように法律の効果というものが出てきてずっと減っていく、相当に減っていくんじゃないかというふうに考えております。
  196. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 阿部さんにお伺いいたしますが、と申しますことは、今までのようにいい悪いは別にして、安い値段でいい音楽を複写をして楽しむということがだんだんできなくなるということでしょうか。
  197. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) 失礼ですが、目先といいますか、短時間、短期的に考えたならば、そのような利用形態が少なくなってくるだろうとは思います。しかし、そのことによって受けるところの利益と申しますか、プラスの面は非常に大きいのじゃなかろうかと思います。その目先、簡単に安くよい音楽を複製して聞くことができるというそのようなプラスの面とそのことによってもともと音源としての著作者である作者、作曲家あるいは実演家の持っているところの無体的な権利というものの認識のもとにおいてそのような行為をやめるということとのこのプラスを考えてみますと、長い目で見ますと、そのあとの方に日本の文化を進めるためには私はウエートを置かなければならないのではないか。目先の場合に、学生は確かに、あるいは若い人たちは——若い人たちばかりとは限りませんけれども、安くてというようなことにすぐ飛びついてまいりますが、そこにおいて失われる精神的な荒廃の方が恐ろしい、こういうふうに私は考えております。
  198. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 私も大体において著作権といいますか、を守るという方に傾いているんですけれども、しかしながら、これを本について考えますと、例えば私が本を書く、しかし、それが普通ならば何千円という価格でしか手に入らない、それが何らかの方法で、まだそういう技術は発達しませんけれども、本を非常に安くて、今の高速ダビングみたいな機械が発見されてそうして非常に安くなる。同じ物が三千円の定価の物が三百円で買えるようになる。それは考えようによっちゃ日本全体の文化の進歩にもなる。それと同じことが今のような海賊版のレコードが売れる、普及するということによって日本全体の音楽に対する何といいますか、知識、それから音楽を理解する水準が高まってきている、僕はよくわからないんですけれども、そういうことは言えるんでしょうか。
  199. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) 先ほど申しましたように、近い目でもって見るならば、そうは言えるだろうと思います。  ただ、先ほど先生お話なさいましたように、学術文献なんかでは海賊版が相当多数ございます。現に洋書でございますが、日本の本を全部コピーするとなりますと相当高価になりますので、そう行われておりませんけれども、ここで申し上げるのもちょっとおかしいと思いますが、洋書の海賊版というものは非常に多くあるように私は仄聞しております。つまり、初めからおしまいまで別にコピーしなくても結構なのでございます。必要なところだけ簡単に、複写、複製機器が非常に精巧にできておりますので、それをやりますと外国の書物を買わなくなってしまうというようなことにもなってまいります。日本の本でもそうでありますし、雑誌についてもそうでございます。御承知のように現在の活字文化と申しますか、出版社の方の苦境というものは大変なものであるというように聞いております。ですから、目先においては、利用する者は安くと、自分一人くらいはというように思うかもしれませんけれども、それが積もり重なって、日本の文化をむしろかえって荒廃させるのではなかろうかというように私は思っております。
  200. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 私は何かこの問題は非常に大きい問題を含んでおりまして、今言ったように、文化的な水準と、それから、逆のいろいろなプラスとマイナスと、そうしてそのプラスの面というのは、近代的な技術の発達に伴って当然に行くべき必然性を持っていると。産業革命、ちょっとした産業革命に似たようなプラスの面とマイナスの面とを持っていると。それを何とかしてマイナスの面を少なくして、そうして衆知を集めてプラスの面に変えていくことが本当に必要なんじゃないだろうか。こういうことは、今はレコードでしょうけれども、また、恐らく本人においても、それは外国の高価な本だけではなくして、一般の書物にも及ぶと。そのほかにもいろいろあれするんで、私なんかとても及びませんけれども、何とかしてこれ十分慎重に考えてね。プラスとマイナスでなくって、プラスに統一するということを考えなきゃならないんだなというふうなことを考えておりまして、いかがでございましょう、それについて、阿部さん。
  201. 阿部浩二

    参考人阿部浩二君) 私も、そう思っております。このどちらがプラス、どちらがマイナスというよりも、衆知を集めてプラス方向に進まなければなるまいと。例えば、先ほどの高宮さんや牛久保さん方の方でも、一見利害が対立するように見えますけれども、そうではなくて、対立あるいは妥協点とかというのではなくて、両方で共存していく道をお二人の当事者で必ず見つけなければならないと、そういう使命感のもとにおいて進吏なければ問題は解決しないのではなかろうかと思っております。先ほど先生お話なさいましたように、いろいろと複写、複製、録音、録画機器の開発、発展と進歩というものは大変なものでございまして、これをとめるわけにはとてもいかないだろうと思います。それに従いまして、それに応じたところの法律制度ないしは取り扱いというものが必要ではなかろうかと思っております。  例えば、さっき先生がおっしゃったようないろんな文献のことにつきましても、文献を利用するところの、例えば我々のような大学におる者たちの共同体の中におきまして、人様の文献をいろいろ利用いたします。そのコピーをいたしますけれども、それについてもやはり応分のそれだけのものを支払いながら、つまり、うまい汁を吸う者は苦い汁も吸わなければなるまい、文化的な香りを、文化的な何かの恩恵を浴そうとするならば、文化というものは決してただではないというような意識、そういう感覚というものをみんなお互いに持つ以外はないのじゃないか。最も迂遠なように見えましても、著作権思想なり無体財産に対するところの感覚というものを我々が研ぎ澄ますことが、最も問題を解決する場合の迂遠なように見えての近道じゃなかろうかというように私は考えております。先生の御意見には全く同感でございます。
  202. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 そうであるべきであるにもかかわらず、僕はこの法律は賛成するつもりでおりますけれども、しかしながら、何といいますか、海賊版を余り敵視し過ぎていると。もう少し、何といいますか、その点、法律も考えたらばよかったのではないだろうかというふうに思いますけれども、しかし、著作権者を守っていくということは、あるいは当面はより大切なことではないかというふうにも思いますんで。  ありがとうございました、いろいろ。
  203. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 他に御発言もなければ、参考人の方々に対する質疑はこれにて終了いたします。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお聞かせいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  ありがとうございました。  本案に対する本日の審査はこの程度といたします。  午後六時二十分まで休憩をいたします。    午後四時四十五分休憩      —————・—————    午後六時二十二分開会
  204. 長谷川信

    委員長長谷川信君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  ただいま井上裕君が委員辞任され、その補欠として村上正邦君が選任をされました。     —————————————
  205. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 次に、昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の修正について久保君からの発言を求められておりますので、この際これを許します。久保君。
  206. 久保亘

    ○久保亘君 私は日本社会党を代表して、本案に対し修正の動議を提出いたします。その内容はお手元に配付されております案文のとおりでございます。  これよりその趣旨について御説明申し上げます。  修正案の趣旨は、既裁定年金の額の改定の時期につきまして政府案では四月分からとなっている部分を三月分からに繰り上げようとするものであります。  これは恩給法の改定時期と同様の取り扱いをしようとするものであり、老後の生活を保障する年金制度趣旨から見て当然のことであります。政府案のように恩給法の改定時期と差別的な取り扱いをすることはまことに不当と言わなければなりません。  さらに、今回の引き上げ率はわずかに二%という低率であります。しかも昨年は既裁定年金の額の改定が見送られているのであります。公共料金の引き上げ等物価の上昇によって年金額は実質的に目減りしているのが実態でありまして、多くの退職者の生活は日々厳しいものになってきております。したがいまして、公務員賃金の抑制とこれに連動するこのような低率の引き上げはまことに不当であり、承服しがたいのであります。  そこで、少なくとも年金額の引き上げ時期を三月に繰り上げることによって少しでも高齢の方々の生活を擁護するために本修正案を提出した次第であります。  何とぞ皆様方の御賛同をお願い申し上げます。  なお、本修正によって必要となる経費は約三百八万円の見込みでございます。  以上で、提案理由の説明を終わります。
  207. 長谷川信

    委員長長谷川信君) ただいまの久保君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。森文部大臣
  208. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) ただいまの修正案につきましては、政府として反対であります。
  209. 長谷川信

    委員長長谷川信君) それでは、これより原案並びに修正案について討論に入ります。——別に御発言もないようでありますから、これより昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案について採決をいたします。  まず、久保君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  210. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 少数と認めます。よって、久保君提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  211. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定をいたしました。  久保君から発言を求められておりますので、これを許します。久保君。
  212. 久保亘

    ○久保亘君 私は、ただいま可決されました法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の事項について検討し、速やかにその実現を図るべきである。  一、長期給付に要する費用に対する国の補助率を百分の二十以上に引き上げるよう努めること。  なお。昭和五十七年度から同五十九年度までの間減額されることとなった国庫補助額については、特例適用期間終了後適正な利子を付して、その減額分の補てんを行うこと。  二、日本私学振興財団及び都道府県からの助成については、私学振興の見地から、その充実について必要な措置を講ずるよう努めること。  右決議する。  以上でございます。  委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  213. 長谷川信

    委員長長谷川信君) ただいま久保君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  214. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 全会一致と認めます。よって、久保君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定をいたしました。  ただいまの決議に対し、森文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。森文部大臣
  215. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) ただいま御決議がございました事項につきましては、御趣旨を尊重し十分検討いたしたいと存じます。
  216. 長谷川信

    委員長長谷川信君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  217. 長谷川信

    委員長長谷川信君) 御異議ないと認め、さよう決定、いたします。  本日はこれにて散会をいたします。    午後六時二十九分散会      —————・—————