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1984-07-03 第101回国会 参議院 農林水産委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月三日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         谷川 寛三君     理 事                 川原新次郎君                 北  修二君                 最上  進君                 村沢  牧君                 藤原 房雄君     委 員                 浦田  勝君                 大城 眞順君                 岡部 三郎君                 熊谷太三郎君                 坂元 親男君                 高木 正明君                 竹山  裕君                 初村滝一郎君                 星  長治君                 水谷  力君                 稲村 稔夫君                 上野 雄文君                 菅野 久光君                 刈田 貞子君                 鶴岡  洋君                 下田 京子君                 田渕 哲也君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農林水産大臣   山村治郎君    政府委員        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省構造        改善局長     森実 孝郎君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        農林水産省食品        流通局長     小野 重和君    事務局側        常任委員会専門         員        安達  正君    説明員        日本国有鉄道新        幹線建設局企画        課長       伊藤  博君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○農業振興地域整備に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送付) ○土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案及び土地改良法の一部を改正する法律案、以上両案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、先日参考人皆さんの大変貴重な御意見をいただきました。そのことも参考にしながらきょうは御質問申し上げたいと思っておりましたが、それに先立ちまして、この六月の二十九日でしたか、私が見たのは読売新聞でありますけれども、そのトップ記事で、ことしの米価はまた据え置きかという報道が、解説ではありますけれども、ほぼもう確実みたいに見える報道がなされておりました。米価審議会のまだ日程も決まらないというお話なのでありますけれども、にもかかわらず、こういう推定記事が流れるというところに私は大変不満もありますし、これが本当にそうであると大変だというふうにも思うわけでありますが、その辺ひとつ早々から恐縮ですけれども大臣の御見解お聞かせいただきたい。
  4. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 実は私もあの新聞記事を見て驚いたわけでございまして、私の方へまだ事務当局からもそのような報告は来ておりません。それにあのような記事が出まして私だけがつんぼ桟敷に置かれているのかと思って早速連絡をとりましたが、そういうようなことは一切ございませんで、今のところはっきり申しまして、本年度の生産者水仙の取り扱いについては全くの白紙でございます。そして、例年どおり食管法に基づくところのいわゆる物価その他の事情を参酌いたしまして、そして生産性確保を旨として米価審議会意見を聞いて決めていきたいというぐあいに考えますので、あの記事は私もまだ聞いておらないことが出ておったというようなことを含めまして、ひとつ推測というぐあいにとっていただいて結構だろうと思います。
  5. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 こういうことを申し上げて大変失礼でございますけれども、大変生まじめでいらっしゃる大臣がよく御存じないで、そして後で何かやはりそうだったのかということになってしまうようなことも過去にはあったような気がいたしまして、それだけに大変気になるのでございますけれども、絶対にそういうことのないようにしていただきたい。  それから、さらにそれに関連をいたしまして、そうではありましょうけれども、それだけにまた、今こうということはなかなか言われる立場にはおいでにならないと思いますけれども、今、米の状況というのは大変大きな時期を迎えているわけであります。  農家皆さん方のかなり大幅な引き上げ要求はそれぞれ根拠が私はちゃんとあると思うのです。そういう要求がされているわけでありますが、そんなことが勘案をされるのでありましょうか。その辺のところ、大臣はしなきゃならぬというふうに思っておいでになるのではないかと思いますけれども、感触はいかがでございますか。
  6. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) ただいま申しましたとおり、再生産確保するということを十分踏まえてやってまいります。
  7. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 再生産を踏まえていただくということで大変結構だと思うのです。そこで、再生産費確保するということの実態について、私は少々お伺いを申し上げたいと思います。  新潟県の例で大変恐縮でありますけれども、これはもちろん適当な統計ではなくて、農林水産省北陸農政局新潟統計情報事務所統計によるわけであります。  これでいきまして、五十八年の生産費はまだわかりませんけれども、五十七年の米の生産費でいきますと、これは第二次生産費、つまり地代、資本利子を含めたものを考えるのではなくて、一応第一次生産費のところで見てまいりますと、これが実際にかかる経費とのかかわりでは一番大事だと思いますので、そんなふうに見てまいりますと、五十七年で、第一次生産費が十アール当たり十三万五千三百五十八円かかっております。これがちょっと手元の統計資料で見てまいりまして、過去四年間の平均でいくと、大体五・六七五%ぐらいずつ生産費が上がってきている。こんな試算もできるわけであります。  いずれにいたしましても、この生産費のうち、さらに流動資本に当たる部分労働費ですね、これを差し引きます。さらに、ただいま審議をしておりますのは土地改良法の一部改正、農振法の改正ということであります。したがいまして、そのことにかなり焦点を当てて見てまいりますと、その中でこれも正確にそのことが全部反映されているということにはならないわけであります、費目が必ずしも一致をするというふうには言えないわけでありますが、関連をする費目として、建物土地改良設備費があります。その中の償却費分と、それから水利費の分と、これの合計を見てまいりますと、五十七年度で一万一千四百四十円ということに相なりました。実は、この実態というものがそれぞれの地域で行われている土地改良事業なり圃場整備事業なり基盤整備事業なり、そういったものの経費とのかかわりでどうなっているかという問題があるわけであります。  私は、大変地元のことで恐縮なのでありますけれども、自分の地元三条のある地域調査をいたしました。その結果は、ここは幾つかの土地改良区の賦課が重なっておりまして、国営刈谷田右岸かん排事業、それから三条郷土地改良区の用排水改良事業、それからその地域圃場整備事業、こういうものが重なっているわけであります。国営かん排事業の方は引き渡しを受けていませんから、償還が一切まだ行われていません。そういう面での工事費賦課が行われていません。それからもう一つ土地改良区の三条郷土地改良区というのは、これはもう償還が始まっております。圃場整備事業の方はまだやはり工事費償還が始まっていませんで、利子負担だけてあります。これを細かく申し上げている時間はありませんけれども、それで、現在のこれだけの負担合計を見てまいりますと、二万一千八百五円、十アール当たり、になっているわけであります。  ここで、新潟県の生産費調査の中の平均的なものでありますけれども、ここで言って関連をすると思われる費用合計が一万一千四百四十円であります。約倍くらいの負担になっております。これをちょっと私は時間をかけて恐縮なのでありますけれども償還が始まると大変じゃないかと今心配をしております。  といいますのは、国営かん排事業は六十二年度から、圃場整備事業は六十一年度からということで償還が始まるわけであります。この償還試算をざっとしてみましたところが、かん排の方の関係ではこれが三万四百八十七円、十アール当たり。それから県営土地改良区の土地改良費用の方が四千七百三十八円、圃場整備事業の方が二万三千五百八十円、それにその国営かん排事業附帯をしての県営事業が行われています。これが全然今のところわかりませんが、現在利子の一部負担でもって六百円程度になっております。合計いたしまして大体五万九千四百五円、つまり約六万円ぐらいになっております。  さらに、圃場整備事業によって減歩が行われておりまして、この減歩平均いたしまして約一・七%ということになっております。この一・七%分の減歩分、米に計算をすると、大体去年の決定米価でいつでも約二千七百四十円くらいの見当になるのじゃないか、十アール当たり。そうするとこれも減収の分というのは支出増と置きかえてみまして計算をすると、少なくとも十アール当たり六万円以上の負担になってくるということになるわけであります。  これは特殊な例がということになりますと、この地域だけの特殊性がといったら、実はこのかん排事業のところを見てまいりますと、それぞれの地域によって、事情によってずっと賦課の割合が違って計算をされますけれども、新しく用水などを受けるところはやはり十アール当たり、六十二年度の償還が始まりますと六万円ちょっとくらいの利息に、実際のものを含めてということに相なるわけであります。こういう計算をしてまいりますと、米価の中に占める生産費としてのこうした土地改良圃場整備、その他、そういう言ってみれば構造政策に基づく農民負担という形のものはかなり大きなものになってしまっております。こういう状況について一体どういう形での解消を考えておられるのでありましょうか。  例えば、米価だけでこれを解消するということはまず不可能でありましょう。しかし、米価というものの中にも一定程度配慮をされていかなければならないものではないか。特殊な地域のことだけを申し上げるのではなくて、平均的に言って、これが全部入れという意味じゃないですけれども、やはりその辺のところの反映というものがされていかなければならないのではないか。果たして今の米価というものの中には、農家立場からいって本当に生産費が償えるような形の米価になっているかどうか、この辺のところの疑義が出てくるのもむべなるかなと思うのです。  ちょっと長い質問で恐縮でありましたけれども実態の方を申し上げました。そして構造政策ということで、こういう負担が大きくなってくるのでありますけれども、これをどういうふうに今後解消していく方向をとられようとしているのか、その辺のところをお聞かせいただきたい。
  8. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まず、御指摘がございました刈谷田川右岸地区償還金のことについて御説明いたします。  実は急な御質問で調べましたので、若干概数で恐縮でございますが、国営かん排県営圃場整備県営かん排等全部そのまま足し上げますと大体御指摘数字の反当償還額が、五万四千円という数字が実は出てくるのです。ところが、この四つの事業が重なる区域というのは、面積としては全体の八分の一でございます。  それからもう一つは、四つ重なっている場合をさらに調べてみますと、国営かん排刈谷田川右岸排水だけの受益地区県営かん排刈谷田川右岸地区排水だけの受益地区県営かん排五十嵐川沿岸地区のかんがいだけの受益地区でございます。したがって具体的に積み上げますと一番多いところ、八分の一の一部なのですが、四万九千円という数字になるようでございます。  そこで問題は、マクロ的に見て一体、年償還額がどのくらいで分布しているのかということを十アール当たり数字で申し上げますと、これは昭和五十六年の数字でございますが、全体として六百五十四地区のうち実は二万円以上の地区は五十地区で約九%弱でございます。全体としては比較的均等分布をしているわけでございますが、そう高い水準という状況ではないわけでございます。しかし、米の生産費調査等を見てみますと、土地改良区費や土地改良設備費が年々増加をして生産費調査にも出ていることは事実でございます。これをどう償っているのかという問題は二つの側面があるだろうと思います。  一つは、価格政策の中でどう考えるかという価格政策の中で考える限界の問題、それからもう一つは、そういった土地改良投資というものが農民立場で、受益者立場でどういうふうに受け取られているかという問題と両面あるだろうと思います。  価格政策の問題は直接担当しているわけではございませんが、甚だ基本的な考えで言いますと、御案内のように、価格政策というのはいわば商品の性格とか、生産流通事情によって支持方式が違うわけでございます。買い入れ方式もあるし、不足払い方式もあるし、市場介入方式もある。極端に言えば輸入のコントロールだけでやっている支持方式もある。そういった価格支持方式の違いから算定方式が違うわけでございまして、生産費をベースにする場合でもいろいろな取り方もございますし、それからパリティ方式による場合もあるわけでございまして、価格政策の問題を生産費要素の個別の動きと直結してなかなか考えにくい点があることは、御理解を賜る必要があると思います。  特に今日の状況から申しますと、やはり需給調整機能という価格政策機能を考えますとき、一般的に農産物価格上昇自体に期待していくということは難しい。コストの要因をただ財政とか、消費者負担に転嫁するというふうに考えていくことには難しい要素があるだろうと思います。そういう意味において、やはり第二の課題である構造政策の問題、そしてそれを農民がどう受け取っていくかという流れの中で問題を基本的に考えていかなければならないと思います。  実は、土地改良に対する投資の受けとめ方というものは、短期的には、農業経営自体に着目して考えれば単収が増加する面と、それからもう一つは、労働力が節減されるというのがまず直接の要素として出てまいります。それ以外に例えば、災害等に強い経営ができるようになるという要素とか、それからさらに基盤整備が進むことによって、毎度申し上げていることで恐縮でございますが、やはり流動化が進んできて能率が高い経営をつくる条件ができ上がってくるという側面があるわけでございます。  それから、農家自体の問題としては、はっきり申し上げますならば、資産としての農地の価値が上昇につながっているということもこれまた事実でございます。そういう意味において水利費用増高という問題は事実として私は受けとめなければなりませんが、直ちにそれを価格政策自体に直結して考え、あるいはごく短期的に単収の増加とか、コストの節減だけで直結して考えるというわけにはいかないで、やはり全体として農業経営がそういう条件整備の上に立って形が変わってくる中では、成果をどう享受していくかという問題であろうと思います。しかし、それだけに私は、土地改良事業実施につきましては慎重な配慮が必要だろうと思っております。  そういう意味で、実は昨今における新規の採択については、土地改良区の法制上は三分の二の合意という仕組みで考えているわけでございますが、実際は九割以上の合意がなければ採択しない、あるいは地元説明会営農計画ディスカッション等大いに重なる形をとる努力をしている点もそこにあるわけでございます。
  9. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 金額的な試算相違点につきましては、あくまでも試算でありますから、将来六十二年のあれで、そしてこれは多分県を通じていろいろ具体的な試算の内容はお聞きになったのだろうと思いますけれども、実はその県の試算そのものに、また地域試算をしているのとの食い違いがいろいろとございますので、その辺のところは実際にその時期になってこないとわからぬという面もございます。それにいたしましても、一部の地域で約六万円の負担ということ、全部重なるとそういう形のものが出てまいります。それから、今の試算の中であれがありましたけれども、そういうのが重なるところではなくて、この刈谷田かん排事業だけで、今試算をされているものの中で一番負担の高いところは、今推定をされているものはやはり約六万円くらいになる部分があるのです。あるいは五万くらいのところもありますということで、面積的にも推計のあれにもまたいろいろと違いがあると思います。  いずれにいたしましても、そういうところの農家は、これはちょっと困るということに現実の問題としてはなるわけなのです。その辺のところの、実を言うとここの地域かん排事業用排水分離事業立地条件の中からやむを得ずやらざるを得なかった。それから圃場整備事業については、これはかなり疑義があって、そして受け入れられないという人たちもかなり大勢いたわけです、こういうふうになるのじゃないだろうかということで。だが、それを周りからいろいろと説得もあって、皆さんが承知をしたという形なのです。  ところが、説得をされた時代は、例えばこの圃場整備事業、実は予算としては十一億ちょっとくらいでできるという試算、それも物価値上がりをある程度見込んでという計算でいたのでありますが、実はやってみて、現在になってこれが約二十七億余りになっております。先ほど申し上げた国営かん排事業も、六十八億で始めるつもりで予算最初の出発のときはあれだったものが、それが二百五十六億余り、約二百五十七億くらいということになってきております。  私は、ここでいろいろ問題がありますけれども一つは、予定どおり工事の方が進捗をしていっていれば、まだ物価値上がり工事費値上がり等によるこうした工事費増高影響はもっと少なくて済んだのではないか。例えば圃場整備事業も五カ年計画予定というのがもう七年ですか、になってまいりますし、特に国営かん排の方はある程度進んでいって、もうこれは九〇何%、ほぼ完成に近いわけでありますが、附帯県営の方が予算がつかないということで二五%程度しか進捗をしていませんということであります。そういたしますと、こうした予定どおり工事が進んでいかないということの中で、工事費の高騰のしわ寄せを関係農民がまた受けなきゃならぬ、こういう問題もあるわけなのであります。これは何としても、予算措置の問題でいろいろとあると思いますが、計画を着実に、最もこなしていく、そういう予算的な確保というものも精いっぱいやっていただかなければ、今後さらにこういう問題がそれぞれ広がっていくのではないか、こんなことが心配されるのですが、その辺はいかがでございましょうか。
  10. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のとおり、私どもが調べたところでは、県営圃場整備の中の三条市が受益地域であるところについては本成寺地区でございますか、当初の十一億四千万という事業計画が二十七億六千万に増加しております。これは御案内のように、隣接した福多地区と比較してみますと、福多地区の方は、実は二十四億七千万が二十七億四千万にふえた程度だと。この本成寺地区は、実はオイルショックの前に計画をいたしまして現在の事業費に換算されているものでございますから、御案内のように、オイルショックの前後では事業単価が再度にわたるオイルショックを通じて二倍以上になっておりますので、そういった被害が非常に出てきている、影響が出てきているということは事実だろうと思います。  そこで、私どもやはり重要な問題は、事業進度確保するということについて努力をすることでございます。予算の厳しい制約のもとでございますが、実は昨年も本院において御議論もありました点を考慮いたしまして、特に国営かん排附帯県営につきましてはできるだけ新規を抑えながら、基盤整備全体の予算の中でも枠をできるだけとりまして、事業促進を図っているところでございます。御指摘のございました地域についても、刈谷田川特会事業で大体九割の進捗率になっておるのに対して、県営がまだ四分の一程度のところがあるということは事実でございます。八割から大体二割五分の間に進捗率が分布していることも事実でございます。これはひとつその促進について特段の配慮をしてまいりたいと思います。厳しい予算制約のもとでございますが、新規の抑制、事業効率的実施とあわせて、やはりそういった事業効果が早期に発現する地区についてはできるだけ予算の配分に配慮してまいりたいと思っております。
  11. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私がこんな具体的な事例を申し上げましたのは、前の委員会のときに同僚の上野委員から第三期計画問題等について伺いました。とにかく予算は大体全部スムーズに使われましたけれども工事の方は全体の中の何%ダウンで結局なっていましたというようなことに今後ならないように、最大の努力をしていただかないと、こういう状態が各地に出てくるのじゃないか、私のところばかりの問題ではない、これからの問題だということを大変心配をするわけなので、そのことをぜひ踏まえて今後の御努力をお願いしたい、このように思います。  そしてまた、さらにもう一点お伺いをいたしたいのは、生産費の中にどう反映するかという問題については、これはもちろんいろいろな理論があります。それからまた、米価問題そのものについては改めてまたその時期にいろいろとお伺いをしたいというふうに思うわけでありますが、いずれにしてもこうした土地改良基盤整備等々という事業をやっていくことによって、結局、賦課金賦課という形で農民負担というものがふえていきます。この分をこの間の御質問の中で、日本農業のあるべき姿でいろいろと御意見を伺ったわけでありますけれども、その中で、コストダウンを図っていくという方向性から見るならば、こうした経費増というものをどうやってそのコストダウンに結びつけていくかというのは、価格政策があるいは投入労働量減少かということでいくしかないのだろうと思うのです。  そういったときに、投入労働力減少の問題は、では、これは一体どういうふうに今後展開をしていくでしょう。この経費がかかった分をどういうふうに吸収をしていって、さらにコストダウンにつなげていけるだけのメリットがこれによって出てくるのでありましょうか。少なくとも先ほど申し上げました、私ども地域の、あるいはあなた方から言えばごく一部の人たちということになるかもしれませんが、その一部の者は仮に総合して六万円の負担ということでいけば、平均との差は四万五千円ぐらいになるわけでありますから、そうすると、今の米価でいつでも二俵くらいの増収を上げるか、それに匹敵するだけの労働力減少というものができなきゃならぬ。ところが労働力減少をやろうとするには、ほぼ機械化状況限界に来ております。そうすると、あとは、おっしゃりたいだろうと思いますけれども規模拡大によって農地を有効的に活用して、できるだけそういうコストを下げていくという方向へ持っていこうということになるのではないかと思うのであります。  ここで基盤整備をやって、ほぼそういう拡大をする部分は拡大をしてしまったし、あと朝晩休日農業で頑張っていける部分はもうこれ以上は離さない、請負にも出さないし、委託もしないしというような傾向が非常に強くなってきている。こんなところで何かこうコストダウンというものには結びついてこないような心配がしてならないのでありますけれども、その辺のところをどうやってコストダウンにこういう場合にはつなげていったらいいのか、その辺のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  12. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 地区全体として見ますと、採択いたします際に、いわゆる先ほど申し上げましたような労働力の直接的な節減効果と、それから単収の増収の効果とが投資と見合うかどうかという点はチェックして採択をしております。しかし、委員御指摘のように、地区の中で実はかなりでこぼこがあるものでございますから、非常にその効率のいいところと、その限りにおいてはマイナスになるところがあることは否めないだろうと思います。そういう意味で、私は、どうしても単価の高い圃場整備事業については、先ほども申し上げましたように、全員の同意で採択する、場合によっては地区除外をやるというふうな慎重な手続なり努力というものがやはり現実には要るのではないかということで指導しているわけでございます。  そこで、問題はどうやって生産性向上に結びつけていくかということでございますが、一つは、特に排水不良地域とか圃場区画の小さい地域においては顕著だろうと思いますけれども、やはり現在の経営単位を前提にしておいても労働力の節減効果は私は顕著明白に出てくると思います。しかし、もちろんそれだけでは十分ではないわけでございます。例えばここにも一つ数字がございますが、五十七年の稲作の例で申しますと、一アールから一・五ヘクタールの階層というのは労働時間は反当五十七時間である。三反歩未満の階層になってくるとこれが八十二時間かかる。これに対して、例えば五アール以上の階層であれば三十二時間というふうに、労働時間の違いは非常に大きいわけでございます。  私は毎度申し上げておりますように、やはり基盤整備を進める上に立って、地域農業集団等地域の話し合いを通じて流動化を段階的に進めて規模拡大を図っていく。その規模拡大ができれば、これも段階的な配慮が要ると思いますが、なるべく経営単位に大きく土地をまとめるような面的集積につなげるということを各種の措置を通じて誘導を講じているわけでございますが、こういう形を通じて、今申し上げたような、つまり第二段階における利益が実現するための政策努力ということをこれからの課題としてやはりやっていかなきゃならぬ。そういう意味においては私ども、現在三次構の後期対策を実施し、あるいは地域農業集団の育成や流動化奨励金の措置を全国的に講じておりますが、特に土地改良事業の終わった地区、あるいはかなり進捗した地区に重点的にその施策の効果が上がるように配慮しているのもそういう点にあるわけでございます。
  13. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 お考えはわからないわけじゃありませんけれども、ただ具体的な計算をしていってみますと、これも推計ですからそのとおりになるかどうかというのは、まだその時期になってみなければわかりませんけれども、先ほど申し上げましたように、大体第一次生産費あるいは固定経費部分というのが五・六七五%くらいずつ年間上がっていくというふうに推計をいたしまして、例えば今の特殊な地域で返還をする、六十二年度推計をしてみますと、大体十アール当たり十七万八千三百八十円くらいに第一次生産費がなります。それに今の固定経費の分もその推計で上がっていくと仮定をして、九万二千四百八十円ぐらいになります。それで、そうすると残りの八万五千九百円というものの中に水利費労働費が含まれるということになるわけであります。  そうすると、先ほどの、そういうふうになるのではないかという私の推計で仮に六万円ということにいたしますと、労働力に当たる部分は二万五千円程度にしかならないということにもなってまいりますが、そうすると、これほどまでコストダウンをできるあれはまずこういう地域では不可能というふうになってしまうのじゃないでしょうか。私は、政府としては全国的な規模で、要するに全体として取り組んでおられるのですから、平均的な数字をとられながら見ていくのはこれは当然だと思います。だが同時に、政策推進に当たってこういう部分が出てくることに対する対応策というものがなければ、私は今後の問題として、こういう構造改善を進めようというときに、このことが問題になると農民の側が今度は受け取らない、その政策を受け入れないということになるのではないか、そんなふうにも思うわけでありますが、何かこういうことについての対策はおありでございましょうか。
  14. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 先ほどから申し上げておりますように、やはり価格政策は商品別の特性なり生産流通事情方式が決まってまいりますし、また、方式によって算定方式が決まってくる。また、その算定方式の中で必ず需給事情というものを頭に置いていかなければならない。そういう政策全体の中でどう吸収していくかという問題でございまして、やはり価格政策自体でこの問題を解決する有効手段は、御指摘のように私はないだろうと思います。  問題は…
  15. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 もう少し大きい声で言っていただけませんか。
  16. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 価格政策自体の中で、そういう個別的なばらつきが非常に多い中で、いわば価格政策は、先ほど申し上げておりますように、仕組みなり算定方式なり算定の考え方によって、しかも平均的に決まってくる本質を持っておりますから、そういう個別的な事情価格政策自体の中で吸収していくことは私はやはり困難だろうと思います。  そこで問題は、そういう負担というものを農民の方にどうやって理解してもらうか、あるいはどういうふうに判断してもらうかということが非常に大事だろうと思います。私は、実は先ほども繰り返して申し上げまして恐縮でございますが、特に単価の高い補助事業整備事業については採択を慎重にという姿勢をとっているのはまずそこにあるわけでございます。直接の労働生産性の向上効果あるいは単収の増加効果を農民が理解する、さらにその次の段階におけるそれが流動化への誘因になることを理解するということを農業経営の面でとらえて、同意してもらえるところはやるが、そうでないところはやはり少しおくらさざるを得ないのじゃないか。また、従来は採択につきましてはできるだけ事業効率的実施という視点もありまして、なるべく大きくまとめてとる方式をとっておりましたが、実は最近一地域地区除外を認めておりますのも、私はそういう事情があるわけだからでございます。これはやはりそういった意味土地改良実施なり採択自体に慎重な配慮を払っていくということと、それからある程度進んだところでその成果がフルに享受できるように、新しい展開が可能になるように、やはりどうやって営農指導なり、あるいは土地の利用調整を進めるかということを考えることにあるだろうと思います。  そういう意味で、先ほども申し上げましたように、私は土地の利用調整活動、特に規模拡大政策に直結する部門については、これは土地改良事業が進んだ地域、ある程度終わった地域を重点においてその成果が上がるように考えたいというのは、そうでなければ効果が十分に発揮できないというだけではなくて、やはりそういった具体的な経営事情というものもあるという判断に立っているということを御理解を賜りたいと思います。
  17. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 これからの姿勢として、こういうことが起こらないようにいろいろと慎重に配慮をしていただくということが非常に私は大事だというふうに思います。ぜひそうお願いしたいと思います。同時にまた、こういうことが起こってきておりますのは、これは、今自分の地元をたまたま調べてこういうところがあったというだけの話でありまして、これは全国でもやはりあちこちにあるのです。決して私のところだけの特殊な例ではないというふうに思います。全体の中で言ったら量は少ないというふうになるかもしれません。そういうものの中には、過去の構造政策の推進のもとでやむを得ず受け入れだというような形で農民の受け身の部分になっているものが結構あるのではないか、そんなふうにも思うわけでありまして、従来のそうしたものに対する、私はきょうここでそれをどうしていくということで申し上げるのではありませんけれども、そういう従来の進めてこられたことでの責任といいましょうか、その辺のところを将来ははっきりとさせていただいていかなければいけないのではないか、こんなふうに思うわけであります。  これから、米価をお決めになる大臣にちょっと聞いておいていただきたいと思いますけれども、私は程度の差はあっても、こうした統計上にあらわれてくる平均的な数字とはかなり離れた、それよりも高い部分というものは結構多いと思います。むしろそれが一般的なのだと思います。というのは、例えば非常に単純な平均を申し上げて恐縮ですけれども、三十円の支出の者が五人いて、二十円の支出の者が三人いて十円の支出の者が一人いる。一人平均二十四円の支出ということになりますけれども、過半数の五人の者は三十円の支出ということになっているわけであります。そういうこれは単純な算術平均のことですけれども、加重平均されたりいろいろと手を加えて配慮しておられます。でも、やはりそういう影響が私はあるのが大半だろうと思います。  ということになりますと、今局長の言われたように、こういう部分的な特殊なものを価格政策の中で見ていくということは、これは問題でありましょうけれども、やはり傾向的なそういうものの中で価格政策の中ではある程度配慮をしなければならないものというのはあるのではなかろうか、こんなふうにも思います。今農民皆さんがかなり切実な要求として引き上げ要求をしているのも、私はその辺のところに実はあると思うわけでありまして、価格設定についてはどうぞそういう観点も踏まえながら御検討をいただきたい、このように思いますが、いかがでございましょうか。
  18. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生の言われるのはよくわかりますが、米価米価としてマクロ的な視点で再生産確保ということをやっていきたいと思います。また、御指摘の問題につきましては、他の政策分野で努力をしてまいりたいというぐあいに思います。
  19. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 少し御理解をいただいたとは思います。しかし、こういう言い方をして大変失礼でございますけれども、まだまだ農家立場というものは、もっともっと複雑な感情も、それから利害関係もみんな含まれておりますので、どうぞその辺十分に御勉強いただきまして、ぜひ、米価決定には農民の要望がある程度反映できますようにお願いをしたいというふうに御要望を申し上げます。  そこで、また局長にお伺いいたしますが、今度の農振法改正の中で、特に地域のいろいろな計画が生活環境整備等のかかわりでもっていろいろとあれされるようになってきておりますけれども、それだけに地域の個々の構成員の声といいましょうか、意思というものが、どういうふうに、例えば、基盤整備事業なりそういうものに反映をできるかどうかということが大変重大な問題になってくるのではないかと思います。  この間、参考人の御意見の中で、青木先生が社会計画、経済計画、物財計画についての三位一体論というものを展開されました。私もこれは大いに賛成なのであります。そこでその三位一体論の立場でいきますと、特に圃場整備事業とか土改とかというあれは、言ってみれば物財計画に当たるわけであります。物財計画の方は一定程度進んでいるわけでありますが、この物財計画を進めるに当たっても、実は地域の、あのときは青木先生は集落計画、あるいは大和田先生は農村計画というようなことの御意見がありましたが、そういう集落計画あるいは農村計画というものがきちんと出されてやられていきませんと、地域で積み上げられませんと、先ほどの圃場整備事業ではありませんけれども、かなり疑義があって意見は随分出ているのだけれども、何かしようがない、何としてもやってくれやという周りからの圧力のような形で、皆さんは結局承知をしてしまうという状況が生まれているわけであります。今後こういうことがないようにするためには、やはりそういう集落計画、農村計画というものに積極的に取り組んでいかれなければいけないのではないかというふうに思うわけでありますが、この辺のところをどのようにお考えになっておりますか。
  20. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 青木先生のおっしゃる三位一体の計画論というのは、私も常日ごろいろいろ拝聴をしております。  私は、そういったハード面とソフト面を同時にとらえて、しかも農業生産自体の問題、それから物的な条件整備の問題、コミュニティーの問題、人間の生き方の問題等を包括的にとらえた法制というものを、例えば今の農業に関する法制の中で準備できるか、あるいは各省の縦割り行政の中でどこまでやっていけるかということはなかなか難しい問題がございますし、人間の意識が多様化し、非常に自由が約束された社会でございますだけに、そう簡単ではない。問題は、そういうことが可能な状況を段階的にやはりつくり上げてくることだろうと思います。  そこで、御指摘のございましたコミユニティーの意向をどう参酌するかという問題は、これは市町村長さんたちのイニシアチブによる働きかけと、それからこれに対する住民の反応というものをまたもう一回くみ上げていくという交互作用の中で計画がつくられていくことが必要だろうと思っております。  実は、現在実施しておりますこの種のいわば実験的な事業でございますモデル事業あるいはパイロット事業等ではそうでございますが、特に最近始めている比較的歴史の新しいモデル事業につきましては、集落単位に住民の参加のもとに懇談会を開設いたしまして、土地利用状況生産基盤や生活基盤の状況、それからそれに対する住民の要望を詳細に把握いたしまして集落診断カードをつくり、その集落診断カードで診断図をつくって実施計画をつくるというふうなことで実際やっているのもそういうことに通ずるわけでございます。そして、御指摘の点を頭に置きまして、仮にこの法律を施行する場合におきましては、市町村長さんたちのイニシアチブも一方においては尊重しながら、他方においてはそこで盛り込まれるべき内容について、やはり集落におろして住民の皆さんに理解を求める、と同時にそこの希望を聞いていくという交互作用を重視し、これに必要な留意点等につきまして私どもも行政指導をしてまいりたいと思います。
  21. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 その点は、土地改良法の一部改正の中で特に今度総代会の設置要件がさらに緩和されるという形になります。これには私は実は疑義がございます。これは確かに集めづらくなってきたとかいろいろなあれはあると思いますけれども、やはり民主的な運用ということから考えれば、直接参加の全体総会というものができるだけ広く運用されることが望ましいというふうに思います。  しかし、それを仮にそういうふうにするとするならば、なお個々の関係農民意見が、農家意見が反映をさせられる場というのが、例えば土地改良区ということになれば、今度総代会になってしまえば直接の参加のあれがなくなって、発言の場がなくなってしまう。それであればそれなりに今度は逆に集落の計画の中でそういう議論が積み上げられていく、それが総代会にも反映をするというシステムでもとられていけば、それは一つの代替措置として私はむしろいい方向へ動いていくことになるという可能性も持っていると思うのです。それだけに、一方ではこういう手続上の問題が出されていますだけに、この集落計画についてはぜひ積極的な御指導とお取り組みとをお願いしたいと思います。  時間もございませんので、さらにもっと伺いたいことがありますから先へ進ませていただきます。  次に、こうした圃場整備事業等を通じて生活環境用地等を創出することができるということに相なるわけでありますけれども、この点については、この間の視察で勉強させていただいたあの大須賀町では、町長さんが何か一%ずつ出していただいてと、実にうまいところに目をつけられて、ああうまくやられたなあと、そう思っていた分もございました。ということは、あそこの河川の切りかえですか、何かあれをやっていきながら今の河川用地をうまく生かして公園だとかなんとかというような話を伺いました。  だが、生活環境用地を生み出していくということが目的として使われるようになると、私はいろいろと問題が出てくるのじゃないかという気もするわけなのであります。したがいまして、この圃場整備事業等を通じての減歩率というものは大体どのくらいを限度というふうに考えておられますか。この点はある程度その辺を明らかにしながら御指導いただきませんと、何も大須賀町の町長さんみたいにそっちの方ばっかり向いている町長さんばかりとは、ここでこういうことを言っては大変失礼なのですけれども、限らない場合もあります。例えば、都市部の代表の方がなったときにはその辺十分に御理解になっていないという場合も起り得ます。それだけにその辺のところを伺いたいのです。  これは先ほどの例でまた恐縮でありますけれども、先ほどの本成寺地区圃場整備事業は実は工区が三つに分かれていて、山手の方はかつての農道が非常に狭かったものですから減歩率が三・六%なのです。かなり大きいわけです。このことがやはり中ではいろいろと内輪もめの原因にもなってくるということにも通じておりましたので、それだけに減歩の問題というのは、この程度限界ということをある程度明らかにしておいていただいた方がいいのではないか、こんなふうに思います。いかがでございましょうか。
  22. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私もそんなに大幅な非農用地のための減歩が行われることは決して好ましいこととは思っておりません。そこで、法制的には公共施設用地にも限定しておりますし、市町村土地改良区等農協の法的主体に限るということに今回の法制はしているわけでございますし、また、非農地の位置、規模が適切なものとなるよう事業計画で決める。特に共同減歩の対象といたしましては、生活環境施設については農振計画の法的計画にのせたものに限るというふうに、最初から何かやろうじゃないかということじゃなくて、法的主体が具体的な計画を持って、しかも事業計画の中でその位置や規模を決めてやる場合に限るということにしているのもそういうことでございます。  減歩率がどのくらいがいいかということは、実は地域の実情で一律に私は言えない点があると思いますが、過去の実績を見ますと、大体二%ぐらいのものだろうと思います。私は、やはり基本的にはある程度まとまった規模で圃場整備をやり、そこで減歩をする場合の減歩率はそう大きな数字を考えるべきではないし、また、そういうふうにならないだろうと思っております。それを数字をもって示すのか、あるいは手続その他の内容の考え方で示すのかはなかなか難しい問題がありまして、御指摘の点も頭に置きまして、法の施行に当たってはいろいろ工夫と、研究していきたいと思います。
  23. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 さらに重ねて恐縮でございますけれども、これも今の具体的な場所のことの例として一つ参考に申し上げるのですけれども、今のように山手の方では三・六%という減歩卒になりましたが、一つの工区では減歩率〇にすることができました。これで平均が一・七におさまったのです。〇にすることができたというのは、実は未利用地が結構いろいろと点在しているものがありまして、それらのものを農地として今度は組み入れていって、そしてその辺のやりくりをやったという形の中で生まれてきています。私は、こういう公共的に用地を生み出していくというような場合に、そうした未利用地の利用、不耕作地の利用というようなことを積極的に進めていただくということが非常に大事なのではないかと思います。その辺のお考えはいかがでしょうか。
  24. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のとおりだろうと思います。未利用地の利用ということを考えます場合に、一つは山林原野をどう考えるか。これにつきましては、特に私どもが今回の法改正で里山の開発を進めるという考え方のもとに林地の交換分合をお願いしているのもそういう点に出るわけでございます。それからもう一つは、やはり低利用の農地あるいは裏作が行われていない農地等の利用率を上げていくという側面が一端にある。これにつきましては、土地の集団的利用調整活動を通じて利用効率を上げていくということが言えると思います。いずれにいたしましても、圃場整備等によって減歩をする、一方において生活環境施設用地を生み出す。しかし一方においては、農業自体の合理化、近代化が基本にあるわけでございますので、そういうものの全体の姿を明らかにしながら問題を処理するということは強く地元に指導してまいりたい、全国に指導してまいりたいと思っております。
  25. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 もっとお聞きしたい部分がありましたけれども、もう一つ、簡単にこれは御意見だけ伺います。  農業集落排水の問題です。これは上野委員からいろいろとまた御質問があるかもしれませんが、私はちょっと観点を変えまして、せっかく農村で農業政策上これを推進するということに相なるわけでありますから、この集落排水事業というものには、水の再利用と、それから汚泥のリサイクルというようなことをやはり原則にしていくべきではないだろうか、そんなふうに考えるのですけれども、こういう有効利用についてのお考えというものをお聞かせいただきたいと思います。
  26. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私も全く同感でおります。農業集落排水事業につきましては、御案内のように重金属等の有害物質を含むおそれのございます工場排水等を対象にしておりません。そういう意味におきましては、汚水処理施設から排出される処理水や発生汚泥のリサイクルということは安全であり、十分可能なわけでございます。場所によっては水の問題はそう必要はないかもしれませんけれども、特に活性汚泥の利用という問題は、私も普遍的な問題であろうと思っております。そこで、実はことしから新しい予算を計上いたしまして、何とか新規にリサイクル技術の確立を図っていきたいということで、農業集落排水リサイクルシステム技術開発調査費を計上しております。これは処理水、発生汚泥中に含まれる農業生産に不可欠な肥効分である窒素と燐を活用して地力増進に結びつくような処理を行って、あわせて処理水も、再利用が必要なところでは再利用を図っていくというシステムづくりでございます。  これは今後国の事業としても、それからまた、集落排水協会の技術的なノーハウ等も活用しながら研究を進めて、そういう指導を全国的にやれるような状況を一日も早くつくりたいと思って努力をしておるところでございます。
  27. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そういうリサイクル、有効利用というものはぜひとも積極的にお進めをいただきたいと思います。期待をしておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。  最後に、私は、実は今までの減反政策というのが非常に大きな影響を与えている地域が出てきておりますという観点から、緊急に急いでやるべき基盤整備事業等についての焦点というものの一つを定めていただく必要があるのじゃないかと思う点がありまして、その点をひとつお伺いをしたいと思います。  それは、これも新潟県の私の県で申しわけありませんが、長岡市の蓬平というところで、この五月の十五日にかなり大きな規模で崩落事故がございました。これは写真を持ってきていて、恐縮ですけれども…。(写真を示す)それでこの崩落事故は、田んぼの部分がかなりやられているわけなのですが、事故が起こった直後、地元人たちが、これは減反も一つの要因であるということを発言いたしまして、地元の新聞やテレビで報道されました。私も早速そこへ調査に行ったのでありますけれども、行ったところが、今度は県の農林部長さんからよくわからないことを勝手に余り言うなということでしかられましたということで、要因かどうかということは一切言わないということにしたのだそうであります。  私は、そのことをその日から伺うことができませんでしたが、ずっとそこの今の落ちたところの上の方に行きまして、そして私も写真を撮らしていただきました。(写真を示す)これでいきますと、耕作放棄をしている部分がかなりあるのです。この耕作放棄をしているところでひび割れが起きまして、そのひび割れしたところに雪解け水が入りまして、小さな崩落がその写真にもありますようにあちこちに起こっているのです。こういう耕作放棄が結果として、そういう地すべりが起きやすいところではあったようでありますけれども、やはりそれを誘発したということにもなるのではないかと思うのでありまして、まずこの点は御調査をいただいたかどうか、もちろん調査をされたと思いますけれども、ございますか。  これとちょうど対照的と言ったら言葉があれかもしれませんが、入広瀬村というところがありまして、ここはこの間の農林水産業施設災害のときに私もちょっと申し上げた、みの一枚田とか田ごとの月などという言葉が使われておりますけれども、そういう細かい田んぼ、そこと同じような田んぼの多いところです。ここが今はかなり積極的に基盤整備を、これは実は農林予算だけではありませんで、災害対策の地すべり対策あるいは県単もあれば村の単独もある。いろいろなものを含めまして、そして工夫をして積極的に展開をしておられる。今申しましたような、みの一枚田や田ごとの月の田というのはほとんど今解消している、もうほんのわずか、一部しか残っておりません。こういう形に積極的に展開をしていって、耕作放棄というものをやらせない。しないで済むようにするということが、特に私は山村地域では極めて大事な、今緊急な課題になってきているのじゃないか。現実の問題として耕作放棄が随分起こってきているのです。それだけに、今の基盤整備を重点的に指導していかなければならない部分というのは、その辺にひとつねらいを定めていただかなきゃいかぬのじゃないか。特に、山村を新しくしていただくという大臣の名前のとおりに、積極的にぜひその辺に焦点を当てていただきたいものだと思うのですけれども、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  28. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘がございました地すべりの原因として、耕作放棄が一つの原因ではないかという議論があることは伺っております。ただ、これまでの県における調査結果によりますと、水田の畑地化は地下水供給の増にはどうもなってないのではないかということが報告されておりますし、さらに、近傍の地域において良好に管理された水田地帯においてもかなり地すべりが実は発生しておりまして、どうも現時点で減反による耕作放棄が地すべりの原因というふうに議論を集約することにはいささか疑問を持っております。しかし、水田の畑地化と実は地すべり発生のメカニズムも、一つの御指摘のような課題でございます。五十七年度から県の長岡の農業試験場で調査が行われておりますし、今後さらに我々も協力して調査研究を進めたいと思います。  第二に、やはり圃場整備とか、あるいは地すべり防止工事附帯関連事業で広くやっております排水施設の整備事業といった基幹的な土地改良事業実施というものが、こういう地すべり等の現象を防止することは疑いもない事実でございます。だからそういう意味で、発生した後の復旧とか代償工事ではなくて、やはり基幹的にはそういった圃場整備や防災的な基盤整備をどう進めるかが重要な課題だろうと思っております。  そうなってまいりますと、まさに御指摘のように、中山間地帯の問題をどう考えるか。これは御存じのように、過疎地域とか振興山村とか、あるいは急傾斜等については、従来からも補助率の特例とか採択基準の特例を講じて配慮してきたところでございますが、やはり第三次の土地改良長期計画においては、こういった事業種類のこういった地域における事業実施はかなり大きなウエートを持ってくる、比重が上がってくるというふうにまた我々は受けとめているところでございます。  なお、御指摘地域の災害復旧につきましては、現在具体的な対策方法を検討しておりますし、地すべり防止地域自体は、実はこれは建設省所管の地区でございますので、現在県の土木部が調査を進めておりまして、その結果で対策工事が近々に実施されることになるということを御報告申し上げておきます。
  29. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ありがとうございました。  私は、今の地すべりの起こった地域は、本当に残念でありますけれども現実に起こってしまったわけであります。これの対応を農水省としてもいろいろやっていただいているということを伺っておりまして、その点は感謝を申し上げますけれども、これは建設省が進めていく災害復旧の工事であると同時に、やはり今後の農村地域山村農業経営という観点もあるわけでありまして、そういう観点から農林水産省のこれに対する積極的なお取り組みを今後ともぜひお願いをしたい、このように思うわけであります。  いずれにいたしましても、農振法の改正土地改良法改正等に当たっては、今までいろいろの点で御質問いたしました。御同意をいただいた分もありますし、積極的にひとついい点を生かしていただきますように、その点を特にまたお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。
  30. 上野雄文

    上野雄文君 それでは、私の方から前回に続いていろいろお尋ねをしたいと思います。  最初に、集落排水事業の問題でありますが、これはいろいろお教えをいただきますと、既に通達で取り組みをされているのが改めて土地改良区の仕事として取り入れられているということになったようでありますが、方針として、集落の排水事業であっても、下水道の事業などについては市町村が今日まで下水道の事業を主として取り組んでいるわけでございます。流域下水道は都道府県が中心ということになるわけですけれども、それ以外のものはほとんど市町村が取り扱う。基本的に自治体との関係の中で、どういうふうに農水省の方としては考えているのか、その点をまずお尋ねをいたしたいと思います。
  31. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私ども農林省が実施しております集落排水事業につきましては、まず最初に結論を申し上げますと、今後とも市町村の下水道事業として実施される場合が中心になると思います。やはり土地改良区が新しく参加するといっても、それは補完的な問題だろうと思います。混住化の進展とか早急な施設整備の要請が高まっているところで、市町村だけではどうも対応できないという場合において、地域の共益施設である排水路の管理主体である土地改良区が、その適正な管理を確保するという意味から参加していくわけであるからでございます。  そこで、実際問題といたしましても、目的とか範囲等ではみずから管理する農業排水路に限定されることになるわけでございますし、また我々といたしましては、市町村を主力に考えて補完的に考えるという立場から考えても、市町村と十分調和のとれた事業実施を市町村の判断を尊重し、これと調整のついた事業実施が必要であろうと思っておりますので、土地改良区が市町村との間で実施主体とか実施範囲とか実施時期等について十分調整協議の上、問題を処理するように法制化しているわけでございます。
  32. 上野雄文

    上野雄文君 農村地帯の集落排水というのは一体どうやったらいいだろうかというのは、自治体にとっても大変な一つの悩みであったろうと思うのです。ただ、この種の事業でありますだけに大変な金がかかる。先発と後発とではまた大変な違いが生まれてきはせぬか。そういう場合の将来ともの維持管理の経費等について、先発グループと後発グループとで住民負担が異なってくるということになってきますと、公平な負担ということを中心にして考えますと、やはり自治体中心がいいのではないかというふうに私どもとしてはとらえておりますので、そういうような方向でぜひひとつやっていただきたいと思います。  ただ、一例を申し上げますと、これは農水省の関係ではないのですけれども、建設省の関係ということになるでしょう。県営住宅の問題なのですが、大変長い歴史を各都道府県や市町村で持っていると思うのです。うちの県なんかでも、近くて便利で安い二十年も前につくったやつがあるんです。最近の住宅になると、遠くて不便で通勤費がかかって大変な負担になってくるという。じゃ具体的にどうしたらいいのだということになってくると、一定の算式があるものですから都道府県でも積極的に変えようとしない。その算式がずっと推移して少しずつの値上げをするぐらい。これは全体の公平なことを考えるというのであれば、全体をプールしてもう一回年度ごとに計算をし直すぐらいの措置が行われて私はいいのではないかなと思っている一人なのです。そういうような思想が貫かれてしかるべきだというふうに思っているものですから、そういう点について特に皆様方の一貫した取り組みというものを要請したいというふうに思っております。
  33. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 確かに私は、将来課題として御指摘の点はあると思います。ただ、現実はまだ集落排水事業が緒についたばかりでございまして、緊急性の高い地域で非常に手を挙げる方が多い中から、特に選定してやっているという状況でございます。しかし、確かに同じ市町村内において後発地域と先発地域との間において費用負担も違う、またその費用負担が違うところに特別の理由がないというような場合については、費用負担の平準化の努力ということは必要になってくると思います。御指摘の点は、これからの宿題として受けとめさしていただきまして、十分勉強さしていただきたいと思います。
  34. 上野雄文

    上野雄文君 ところで、社団法人日本農業集落排水協会、略称集排協会というのが設立をされました。私はふっと頭の中をよぎったのは、実はこの種の事業について建設省の仕事のやり方というのは日本下水道事業団というのがありまして、それが流域下水道もそうでありますし、それから市町村の何十億という大きな仕事についてもほとんど全部一括引き受けをやっているわけです。そういう感じてこの社団法人日本農業集落排水協会というのがスタートしたのかなというふうに受けとめたわけなのです。その辺からひとつ設立の認可、所轄行政庁は当然農水省ということになると思うので、ちょっと御説明をいただきたいというふうに思うのです。
  35. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御案内のように、農業集落排水事業は新しい技術分野を含んでおりまして、特に農村に適しました各種の技術開発、そのための調査研究、それからもう一つは、既存の技術を農村地域にふさわしいようにどう体系化するかという問題が山積しているわけでございます。そこで、本協会は農村に適した汚水の処理技術の開発、普及指導等を行うという目的で設立されたものでございます。市町村等の公共団体の事業主体が会員となって設立しております。主要な業務は技術開発事業調査研究事業、啓蒙普及事業と受託事業でございます。  御指摘がございました点は、恐らく自主設計の問題だろうと思いますが、実はこれは希望がある具体的な農業集落排水事業についての基本設計とコンサルティングにとどめておりまして、今御指摘のようなことは、今の段階では考えておりません。そのように報告をされております。
  36. 上野雄文

    上野雄文君 まだできたばかりで、そこまでということにはならぬかもしれませんが、ただ下水道事業団がやっている仕事の中身については、局長は御存じですか、御存じですね。あれは国が事業に関して一定の補助を決めて都道府県が採択をする。そうしますと都道府県の議会でその事業実施を決めて、あとは事業団と受託契約してしまうだけです。ですから、でき上がって機械が運転するまで都道府県はほとんど何もやらなくてよろしい、市町村についてもそういう仕組みですね。そこまではこれはやらないというふうに受けとめてよろしいわけですね。
  37. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のとおりでございます。目的事業には、事業主体から委託を受けて農業集落排水施設の建設工事実施することが含まれておりません。
  38. 上野雄文

    上野雄文君 わかりました。  次に、土地改良の県段階の連合会の問題についてでありますが、今度の改正で指導の業務という「指導」という文言、今までは技術的な援助ということで、実態上として換地の問題であるとか、あるいは管理指導とかそういうものが入っておったわけです。特に「指導」という文言を明確に入れるそういう意図はどういうことからなのか、そのことについてお尋ねをいたしたいと思うのです。
  39. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 県の土改連は、会員が行います土地改良事業に関します技術的な援助とか教育及び情報の提供とか、あるいは調査研究等を中心とした業務を行っております。ただ近年、御案内のように圃場整備事業が進展して換地処分が増加し、制度的、技術的になかなか難しい問題が起こってきている。それからもう一つは、土地改良施設の操作管理の高度化という課題が出ているわけでございます。そういう状況のもとで、特に土地改良施設の管理の指導、換地処分の促進、適正化に関する指導等は中心的な業務として役割をふやしてきているということでございます。今回の改正は、こういった技術指導業務が非常に重要になってきている、また、ある程度実態ができ上がってきた、熟成してきたということを受けまして、これを法律上明定いたしまして、一層円滑な推進を図ることとしているわけでございます。したがって、この明文化というものは実態の追認的ないわば改正とでも申し上げましょうか、これがなければ実態に具体的な支障が生ずるという性格のものではございませんけれども、こういう技術指導の面において、やはり連合会がその責務を明らかにして、要望にこたえて積極的に問題に取り組める体制づくりをするということと御理解を賜りたいと思います。
  40. 上野雄文

    上野雄文君 県段階の連合会に対して都道府県を通じて補助金をかなり出していると思うのですが、それらの総額は一体部門別にどのぐらいずつになっているのですか。
  41. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 合計欄で申し上げますと、換地センターの補助金が三億三千七百六十万、それから管理センターの補助金が二億八千百万ということになっております。
  42. 上野雄文

    上野雄文君 私は栃木県と茨城県の今年度総会の議案書が手元にあるのですけれども、大体一億三千万から二億程度予算が組まれていると思うのです、これは一般会計です。特別会計まで合わせますと相当な額になります。それらについての全国的な資料を実は届けてもらいたかったのですけれども、手元にないのです。財政面から分析をしてどういうふうにとらえておられるか、総額どのぐらいで、どうなっているのだというような点について教えてもらいたいと思いますが。
  43. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 五十六年度の収支でさっき申し上げました。先ほどの数字もそうでございます。全国で合計いたしますと四百六十一億円の収入、決算総額になっております。このうち一般賦課金それから特別賦課金、過年度賦課金等の賦課金が二十億三千万円でございます。それから調査計画とか設計等の受託料とか補助金等の収入が百九十六億円でございます。それから換地関係の受託料や補助金等の収入が九十五億七千万円でございます。それから適正化事業の収入が六十五億円でございます。それからそれ以外に国から受けております換地センターや管理センターの補助金がそれぞれ先ほど申し上げましたように三億強、三億約四千万と二億八千万ということになるわけでございます。これが大体主要な支出でございます。  なお、これ以外に機械の貸与、工事関係等の規模が大体三十五億円ということになっております。  なお、御指摘のような資料につきましては、別途御要望もございましたら、また提出させていただきます。
  44. 上野雄文

    上野雄文君 市町村全部のものは統計がありますか。――それはない。単位土地改良区の全部のものというのは、そこまでは…。
  45. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) これは個別のものは若干はございますけれども、全部県の監督でございまして、それぞれ県が集計しておりまして、私の方は全国の県連のものを集計しております。
  46. 上野雄文

    上野雄文君 全体の金の流れというか、どういうふうな使われ方をしているかというのは農水省として検討したという経過はないのですか、この単位の全部を集めたものですね。
  47. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 土地改良法上、単位土地改良区の指導監督は都道府県知事の任務ということになっております。連合会は農林大臣の任務ということになっております。私ども平均的な意味で全国のものをある程度推計し整理して把握しておりますが、直接県別に具体的な数字としては持っておりません。しかし、必要があれば報告の徴収という形をとってとることは可能でございます。
  48. 上野雄文

    上野雄文君 そこで、私はこの前から自治体との関係等について主としてお尋ねもし、さらにまた、土地改良区として自主組織としての育成という面からもお尋ねをしたと思うのです。  問題は、連合会の「指導」という文言が、今局長の答弁を聞いておりますと、そんなに積極的な意味はないのだというふうに受けとめられるような感じでありますけれども、そう言うのであれば、なぜ「指導」という文言が入らなきゃいけないのだろうかという逆の疑問がわいてくるわけなのです。今までの援助というのであれば、やはりあくまでも援助であり、援助に従わないなどというばかな話はないのです。ところが、「指導」というのが入ってくると、指導に従わないということが生まれてくるだろうと思うのです。より権力的な運営――自主的な組織の育成という立場からすれば、私は観念的な議論かもしれませんが、そういうような感じがするわけです。もっとわかりやすく言うならば、何か中央集権的な仕組みというものをこういう団体の中からもつくり上げていこうとしているのかなというふうに私が受けとめた面もあるわけです、杞憂であればいいのですけれども。そういう点についてどうお考えですか。
  49. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 甚だ恐縮でございますが、全く杞憂とお考えいただいていいのではなかろうかと私は思っているわけでございます。先ほども申し上げましたように、技術的指導というのは、換地処分とかあるいは管理技術等の面で非常にウエートを増してきておりまして、はっきり言うと、単位土地改良区の持っていない技術上の知識について移転ということが重要な課題で、それは県連だけでもなかなかうまくいかない点があって、また国がその技術者を研修しているというふうな体系があるわけでございます。そういう状況がこの十年間ぐらいに非常に成熟してきており、それをいわば実態追認的に行うという問題でございます。ただ、私は、こういった規定を置くことによって連合会の職員の皆さんが責務の重要性を感じてますます責任を持ち、一層業務に精進してくれるものと期待しておりますが、中央集権的なものを考えるというふうなことは全く杞憂とお考えいただきたいと思うわけでございます。
  50. 上野雄文

    上野雄文君 私の言うことが杞憂になるようにひとつやっていただくことが非常に大切なのではないかというふうに実は思うのです。  それと、立ち入ったことをお尋ねすることになるかと思うのですけれども、栃木県と茨城県の通常総会の議案書を見る限りでは、さっき私、ちょっと勘違いをして数字を言い間違いましたが、栃木県で五十八年度の恐らく決算で十一億八千万、それから茨城県が十六億という数字になってくると思うのです。ところが、これは一般会計でして、あとぐるぐる見ていきますと大変な資産があるのです。これがどっちのものを見ても一遍に全部がわかるという一覧表の仕組みになっていないのです。それからこの簿記の方式も、官庁簿記で役所のものと全く同じ。こういう点については、この連合会なんかがいろいろ指導ができるということになっているのだろうと思うのですけれども、何かそういう一元的な扱いをやったことがありますか。これは中央集権的な考え方と別にして、事務処理の方式やなんかでもっとわかりやすくしていこうというような取り組みはどうなのでしょう。
  51. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 従来から保有している財産等が一定の資産価値の増加によって相当重要な意味を持ってくるという場合は、他の営業活動の場合同様に連合会についても結果としてはあるということは事実でございます。それを特別会計とおっしゃったのだろうと思います。  そこで、問題は今までの官庁簿記がいいかどうかという問題でございます。私どもも実は今その点を痛感しておりまして、現在、付記複式簿記に切りかえることについて検討を進めておりまして、できるだけいろいろな関係者の御意見も聞いた上で一つの指導方針を決めて指導したいと思っております。若干時間をいただきたいと思います。
  52. 上野雄文

    上野雄文君 最近、参議院議員の選挙のやり方が変わりまして、比例代表制度が導入されてから各業態別というか、省庁別というかいろいろな取り組みが変わってまいりました。それで土地改良に関しては、土地改良政治連盟というのがあらゆるところに生まれたようであります。  ことしの五月にこの「農業土木」というのに、たしか徳島県の連合会長をおやりになっておった方だと思うのでありますが、原田さんという方が、「連合会と政治連盟」という巻頭言をお書きになっているのです。これは、今までは土地改良連合会の仕事を一生懸命やってきたけれども、今度は選挙の方式が、これは読んでみますと、「今回の参議院選挙制度により、土地改良の力を具体的な票で評価することができなくなったため、票にかかわるものとして強力な政治連盟を結成し、土地改良の力を公に認めていただくことが何よりも重要であります。」、というふうにお書きになっているのです。こちらの立場の方からすれば当然のことかもしれないのですね。今度はそういう政治連盟に力を入れるために、土地改良連合会の方は私は身を引いてそっちで一生懸命やりますから、また今後もよろしくという意味のことなのです。  私は、問題はそのことではなくて、よその県の土地改良政治連盟の話をすると間違うといけませんから、我が栃木県の土地改良政治連盟がお出しになっている「土政連だより」というものを中心にしてちょっとお尋ねもしてみたいと思っているわけでありますが、まだ創刊号と二号までしか出ていないようなのです。これをずっと開きますと、私の旧制中学の先輩でもあります渡辺美智雄さんの写真が一番先にはっと出てまいりますし、知事も出ますし、これまた県庁の先輩の、農務部長をやった大島さんの写真も出ております。それから、岡部先生の写真もここに出てくるわけです。これは創刊号です。今度第二号が出ましたが、またやはり同じ写真がずっと出ておりまして、こういうところに載ることができない方にとってはまことにうらやましい話だろうと思うくらい、毎回毎回見せられております。機関誌ですから当然のことなのです。  ただ、この中に、会員を募集をしたわけですが、特に法人会員の名簿を見てみますと、これはほとんど全部が土建屋さんなのです。法人ですからまあそれでいいかもしれません。ところが、これがあらゆるものが網羅されておりまして、中には県外の建設業の方もここにお入りになっているわけであります。建設業協会、さらに舗装協会、地質調査、コンクリート製品協同組合、測量設計、換地、生コン、その他、いやいや、大変な数の人たちが傘下に集められて土政連というのが組織をされているわけです。これがかなりの力を発揮するのは選挙のときだ。この面から見ればまさにそのとおりなのです。  ただ、私が先ほど来から集落排水の問題や土地改良連合会の問題等でいろいろお尋ねしたのも、集落排水協会ができて、都道府県や市町村を会員といたしますが、この協会が設計をし、いろいろした場合に、これが具体的に下へおりておったら、もうこの土政連に入っていない業者は、実態土地改良の仕事は全くやれない仕組みにされてしまっているのではないか。あなたの方は決してうんと言わないでしょう。そんなことを指導したなどと言ったらとんでもない話になるから。答弁を私は期待をいたしませんけれども、事実上の問題としてこういうことが行われるとしたらば、一体どういうことになるのでしょうか。あなたの方でこういうところまでお調べになったことがありますか。
  53. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 土地改良政治連盟が全国でかなり結成されていることは知っております。これは土地改良事業を推進するために県民の政治力を結集して、農政活動によってその促進を図ることを目的とした政治団体でございます。政治資金規制法に言っておるところでございまして、そのこと自体私ども、だから、今そういう冊子等も御提示がございましたが、実は何も見てもおりませんし、存じてもおりません。  そこで問題は、建設業者が参加しているのは何か工事の受注に関係があるのじゃないかというふうなことでございますが、国の土地改良事業国営事業県営事業に分かれております。  国営事業につきましては、これは会計法の規定に基づきまして、指名競争参加資格を有する業者の中から業者を信用度、技術的水準を勘案して決定いたしまして指名して、指名競争を実施して、落札して決めているということでございます。特に指名競争の参加者の選定会議を農政局単位で行っておりまして、厳正に実施しているところでございまして、そういうことは私は特にあるとは思っておりません。  県の補助事業なり市町村の補助事業はどうか、これはまた、農林省の補助事業は建設省の事業のように単純明快ではございません。いろいろな段階の補助事業があって、またそれぞれ事業主体も違うわけでございます。一概に言えないわけでございますけれども、例えば県等につきましても、やはり国の例に準じて厳正な指名基準に基づき指名し、また、ルールに従って入札を実施しているわけでございまして、特にそういうことではないだろうと思います。  ただ、非常に景気の悪い時期でございまして、関係業界がやはり公共事業、我々の関係業界であれば土地改良事業の拡大ということを全国的にも地域的にも非常に渇望しておられるということは事実でございまして、私どものところにも、建設業者の代表の方が予算をふやしてくれ、ふやしてくれという陳情が農民とは別にあるような御時世でございますので、やはり予算がふえて事業がふえるということに皆さん関心をお持ちだということは、そんたくするに事実だろうと思うわけでございます。
  54. 上野雄文

    上野雄文君 これは、それぞれの地域地域でどういうふうなやり方をしているかという具体的な問題をまた取り上げて議論しなきゃならぬ問題だと思うのですが、ただ全体としてはそういう中でおやりになっておりますし、今度は農水省の方にこういう機関誌が届かないというのは非常に残念だから届けるように私の方も言いますよ。県の、大体主査、係長のちょっと下クラス以上にこれは全部配られているのですから、農水省へ行かないなんという話は私はないだろうと思っておりますが、まあまあ、それはないと言うならいいです。  ただ、一つお尋ねしたいと思っているのは、土地改良政治連盟と連合会の事務所を同じにしておくというのはどうお考えになりましょう。
  55. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 事務所が物理的に一緒かどうかという問題は私は別の問題であろうと思いますが、あくまでも別種の公的団体と政治団体でございますから、峻別した運営が行われるように指導してまいりたいと思っております。
  56. 上野雄文

    上野雄文君 きょうのところはこの程度にしておきますけれども、やはり疑われるようなことは避けるようにしていかなきゃいけないと思うのです。まだ十分に材料を提供いたしておりませんから、大臣にお答えをいただくというのは少し材料不足かと思うのでありますが、何とはなしに大臣もおわかりになったような感じがするのです。それらの問題についてはどんなふうにお考えですか。
  57. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 各県のいわゆる土地改良政治連盟は政治資金規正法の届け出を行っておりまして、土地改良事業団体連合会とは別のものとは思っております。しかし、土地改良事業団体連合会の果たすべき役割というものは、会員の行うところの土地改良事業の適切かつ効率的な運営の確保、会員の公共の利益の増進を図るための公益的な法人ということを聞いておりますので、その趣旨を踏まえて今後ともこの事業活動に専念するように指導してまいります。
  58. 上野雄文

    上野雄文君 ただ、私は栃木県連の収支報告書を選挙管理委員会に行って全部写してきたわけですが、連合会の会長も政治連盟の会長も一緒、それから政治連盟の事務局長と理事が一緒、事務所が一緒、そして会員は常に指名に参加をする建設業者の皆さんがびっしりということになってくると、これは一体どこで区別をつけたらいいのか。法律上は区別はされていますけれども、これがこれから私が言う指導の問題とか何かというものが入ってきたときに大変な非民主的なことが行われる下地をつくることになってしまうのではないのか、こういうことを申し上げたわけです。せっかくの御指導、御鞭撻をお願いを申し上げて、終わりにいたしたいと思います。
  59. 村沢牧

    ○村沢牧君 既に我が党議員から四時間余にわたって二法案について質問がされましたものですから、私はこれを確認をし、総括をする立場で申し上げ、さらにまた、二、三の個別について質問いたしたいと思います。  そこで、今、上野議員からせっかく土地改良連合会なり区の問題が出ましたから、これに少し関連をいたしますけれども、今回の法改正によって土地改良区及び連合会の地位と期待が高まってくるわけであります。改良区はこれにこたえなければならない。そのためには改良区みずからが民主的な運営に努力することは当然のことであるけれども、国としても改良区の基盤の充実、役職員の資質の向上のためにこれまた対応も迫られてくるというふうに思います。  そこで、今、上野議員から指摘がありましたように、改良区と政治連盟が全く表裏一体の形になる。この政治連盟が長期計画達成のために政治的に大いに行動してもらうならまた結構であるけれども、特定政党の、あるいは特定の候補者の選挙につながってくるようなこういう形であると、そういうところへ国が積極的に、また表面的に――違いますけれどもね、政治連盟と改良区とは。そうなると何か疑問を抱かざるを得ない。  私のように農業土木に熱心で、かなりの知識を持っている者でありますが、残念ながら政治連盟から御推薦をいただいたことはありませんから、別にひがんだ気持ちで申し上げるわけではないのですけれども、その点についてはやはり国が援助をする限りにおいては、政治連盟に援助するわけではありませんけれども、しっかりした態度を持ってもらいたいと思う。  そこで、特に私はこの法改正に伴なって必要とするところは、技術だとか管理能力、あるいは施工士、管理士などの資格取得などについて研修もしていかなければいけないという必要が出てくると思いますけれども、どういう考え方を持っておられますか。
  60. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まさに土改連の仕事として管理業務とかあるいは換地業務等についてすぐれた技術者が必要な時代になってきておることは事実だし、また、すぐれた技術者を県土連に確保することによって土地改良区に対する有効な技術指導が行われることは事実でございます。そういう意味におきまして、実は国も直接技術的な講習、研修会を今申し上げました換地の問題とか、管理技術の問題とか、さらに農村計画的な、いわゆる農村の整備計画的なものについては今までもやってまいりましたが、こういった点については強化を図っていくと同時に、県土連に対するこういう技術的な業務を担当するための講習会の経費等については助成を講じておりますし、これからも強化を図っていく必要があると思います。また、これに関連いたしまして、換地士の問題、その他御指摘のありました資格を確保するという問題も大きな問題になってくるだろうと思います。いろいろ改善措置も従来から講じてきておりましたが、これからも要望を受けとめながら前向きに対応してまいりたいと思っております。
  61. 村沢牧

    ○村沢牧君 対応していくということは、積極的に国としてもそういう技術だとか管理能力あるいは資格取得等について研修会等を設けてやっていくということなのですか、その用意がおありなのですか。
  62. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 先ほど申し上げましたように、従来からも実施しておりますものをさらに強化すると同時に、要望を受けとめまして新しい予算の計上や指導業務の充実についてはさらに考えてまいりたいと思います。
  63. 村沢牧

    ○村沢牧君 連合会によってはみずからの力をもって、例えば改良区が行う事業等について実施設計、指導監督するところもあるわけですね。したがって、連合会の力を強めていくとするならば、先ほどお話があった農業集落排水協会などに委託してやるのではなくて、連合会がみずからやっていくという姿勢を持つべきだというふうに思いますが、どうなのですか。
  64. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 集落排水事業は新しいジャンルの仕事でございまして、やはり従来のシステムを農村地域においてどう効率的に使っていくかという問題以外に、先ほども話題が出ましたような、例えば活性汚泥の活用とか、それから新しい技術過程の導入等についてやはり技術的な知識を整理することが必要だろうと思います。  私は、はっきり申し上げますと、集落排水協会は場合によっては県土連に対する有効な技術ソースになる、指導に当たる場合もあるというふうにむしろ御理解を賜る方がいいのではないかと思います。そういう意味において、県土連と集落排水協会がオーバーラップする形ではなくて、有効な技術的なノーハウを集落排水協会からやはり県土連にも伝達されていくということをこれからは集落排水事業実施なり、その充実に伴って考えていく必要があるのではないだろうか、このように思っているわけでございます。
  65. 村沢牧

    ○村沢牧君 国の補助を得るために設計認可等を受けるときに、この協会を通じて設計書を出せばスムーズに通っていく、したがって、この協会を通じなければならないという形になってくるのではないですか。
  66. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 先ほどもお答え申し上げましたように、集落排水協会自体については技術的な研究とか調査が主力でございまして、あとは全体設計について受託を行うということをポイントにしておりまして、工事実施自体には直接タッチしないということにしております。御指摘の点は実施設計の問題だろうと思いますので、現在の業務としてはそれは予定しておりません。
  67. 村沢牧

    ○村沢牧君 この協会についてはいずれまた細かく質問する機会もあろうというふうに思いますけれども、これは農水省の指導によってこういうのをつくられたのですか。自主的につくられたことは、表面的にそうなのですが、構造改善局長としてはこういうのがやはり集落排水のために必要だ、そうお考えになってある程度指導性を発揮したのですか。
  68. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私は、やはり今日の状況から見ますと、農村地域における集落排水については技術的に開発しなければならない課題、またその前提としての調査事項がたくさんございます。それ以外に、農村地域にふさわしい経済的な既存の技術を結びつけたシステムの開発ということが重要な課題でございます。新しいジャンルだけに、この問題については国の現在おります土木関係の技術者だけでは十分でないという点を考えまして、やはり集落排水協会という形で技術者を集め、また必要な民間等での進んだ技術、ほかの分野で進んだ技術等の方々からも提供を受け、そういう調査解析なり取りまとめを行って技術指導を行えるようにしたいということで、積極的に評価した上でつくったものでございます。
  69. 村沢牧

    ○村沢牧君 まだ発足したばかりの協会のようでありますから、いずれまた、この運営なり事業を見ておりまして御指摘を申し上げたり、また注文も申し上げたいと思います。  そこで、もとへ戻りますけれども、構造改善局長は今回の二法案の改正について各省折衝など、かなり汗を流して努力したということも聞いておりますし、また、今日までの答弁を聞いておっても熱意が入っているというふうに見受けられますけれども、率直に言って、こうした改正をしなければならない理由というのは何であったのか、また、この改正後のねらいは何ですか、構造改善局長の見解を聞きたいというふうに思います。
  70. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 今日の農産物の需給事情、国際的関係消費者の胃袋の飽和状態等を考えますと、やはり農業政策の重点というものは、従来の所得均衡に着目した価格政策から構造政策へ移行していかなければならないということが私どもの課題だろうと思っております。  これにつきましては、私どもやはり基盤整備を着実に進めていくという物的な条件整備と並んで、やはり土地の利用調整を通じて最終的に規模拡大なり面的集積に連なる土地の利用実態をどうつくるかが重要な課題と考えて、地域農業集団の育成を通ずる中核農家規模拡大という問題を打ち出して、その指導に昨年来当たっているわけでございます。しかし、今日の農村の状況を見ますとき、農家自体でもやはり通勤兼業農家と専業的な農家、中核農家との間には物の考え方や意識にも大きな違いがあるわけでございまして、この連帯をどう確保していくかという問題、さらに農家と非農家が両存する地域もかなり平場等ではふえてきているわけでございます。こういった混住社会の実態を踏まえながら、地域社会として連帯を確保するための必要な問題に取り組む行政の姿勢がなければ、やはり土地の利用調整、それによる最終的な中核農家の育成というものはなかなかスムーズに進まないという考えでございます。  そういう意味において構造政策を中心にした農業の体質強化ということは、村づくりに取り組む市町村挙げての姿勢が要るし、また、これを援助するための手法や仕組みを整備する必要があるというふうに判断しているわけでございます。同時に、農政の課題は、農業の合理化、生産性の向上、農業生産力の拡充というだけではなくて、やはり農村社会を二十一世紀を展望して豊かな住みよい社会として建設していくこと自体がまた重要な課題だろうと思っているわけでございます。  そういう二つの視点に立って今回の計画事項の追加、手法の整備等の法改正を提案さしていただいたわけでございます。
  71. 村沢牧

    ○村沢牧君 農基法が制定されてから三十三年たち、いわゆる農基法農政が農業と他産業との格差の是正や自立経営農家の育成を目指して選択的拡大生産を進めてきたけれども、今日の農業の実態はこれとは逆なような形になってきておる。このことは先日私も当委員会指摘をしたところであります。  そこで、こうした今までの農政を顧みて、農政審の答申は六十五年から十年間に九十万ヘクタールの農地の移動を目標にし、中核農家経営像として稲作は五ヘクタール、酪農は八ヘクタール、肉牛王ヘクタールのあの面積を描いていますが、このような規模拡大構造政策だけで名実ともに中核農家の育成にはならない、私はそのように思うのであります。すなわち生産対策、価格対策が伴わなければ、農業経営の安定にも農政の発展にもならないが、この辺はバランスをどういうふうに考えますか。これは大臣にひとつお聞きしますか。
  72. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) このたびの構造政策につきまして、やはり需要の動向に即応した国民食糧の安定的供給を確保する、そしてこのためには優良農地確保するとともに、技術、経営能力にすぐれた生産性の高い農業経営によりまして農業生産の相当割合が担われるような農業構造を確立することが必要であるというぐあいに考えております。  あと、詳細につきまして局長の方から御答弁させます。
  73. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) やはり先ほども申し上げましたように、従来の所得均衡に着目した消費者負担とか財政負担に依存する価格政策の展開で問題が解決しない状況に来ていることは、私は事実だろうと思います。そういう意味において、農政の重点を構造政策に置かなければならないということはまた事実だろうと思うわけでございます。しかし、ただいま村沢委員御指摘のように、私ども構造政策だけで問題が進むとは決して思っておりません。やはり一つ生産政策という問題をどうやって確立していくか、新しい技術開発の問題とその速やかな中核農家への技術情報の移転という体制づくりについては、これからも新しい時代にふさわしいように考えていく必要があるだろうと思います。  それからもう一つは、価格政策につきましても、つくるだけの立場ではなくて、やはり将来を展望した、先ほど御指摘もございました六十五年度の見通しも展望しながら、その上に立っていわば再生産確保と、それから需給の均衡が実現できるような長期的な視点に立っての運営姿勢が必要になってくるだろうと思います。基本法が制定されて以来かなりの長年月がたったわけでございますが、いわゆる所有権の移転に着目した自立経営の育成という視点は若干内容的に変わってはきておりますけれども、中核農家という観念で生産性の高い農家をつくり、生産性の向上を通じて所得の増大を図っていくという路線に基本は変わっておりませんし、そういう路線の延長線上にあるものとお考えいただく必要があるのではないか。  また、価格政策の面につきましても、当時の時点では畜産物、果樹、蔬菜等の選択的拡大ということを価格政策需給調整機能一つの重点として打ち出したことは事実でございます。需給事情が変わってきた今日、その需給事情にふさわしい価格政策の展開を図ることも、やはり農業基本法が予定した考え方の延長線上にあるものだろうとは思っております。  なかなか難しい時期ではございますが、そういった意味で、構造政策を農政の軸に据えながら、各般にわたる施策を整合性をとって実施するための努力が必要だろうと思っております。
  74. 村沢牧

    ○村沢牧君 構造政策を進める上で、先ほど私が申し上げました農政審の答申、九十万ヘクタールの農地の移動、あるいは中核農家としての経営像が今後の農政としてやはり正しい指摘であるのか、これだけの移動ができるのか、その辺についてはどうお考えですか。
  75. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のように、六十五年度の見通しては、中核農家に七十八万ヘクタールの農地を集積するという前提を考えております。その場合、移動する面積のうち約半量がいわゆる所有権の移転により、残った半分が利用権の集積等による規模拡大ということを頭に置いて考えているところでございます。  そこで問題は、果たして規模の大きい階層の農家にそういった形で順調に利用権の集積が進むかどうかという問題でございます。  最近までの状況を見ますと、まずトータルの数字で申し上げると、利用権の設定面積が十三万五千ヘクタールに達しましたし、また、利用権の設定のいわば前哨戦的な段階にございます全面的な作業受委託の水田等平場を中心に六万五千ヘクタール、二十万ヘクタールぐらいはどうにか目に見える形で動いてきている。しからば、それが果たして中核農家に集積されているかどうかということでございますが、これは若干別の違う統計資料からとったものでございますけれども、七八%まではいわゆる中核的農家がその流動化した土地を借り入れるという方法が行われております。一反歩以上の階層に利用が集積していることは事実でございますが、率直に申し上げますと、まだ三反歩以上の階層に利用が集積するところまできていないということもまた事実でございます。  これは地域別、作目別に分析してみますと、やはり何といっても、制度の改正なりそういった奨励事業実施からまだ三、四年の歳月しかたっていないわけでございまして、具体的には例えば、露地野菜の地域で地力の低下を回避するための規模拡大、利用権の設定、あるいは西日本で酪農農家が従来、全量を購入飼料に依存していたものを、できるだけ自給飼料をつくりたいということで限界地の畑地を借りている、そういう意味での利用権の設定、それから過去のやみ小作が再編成されて追認されたもの等が主力になっているわけでございますし、また、平場の稲作等につきましては、まだ今の段階では作業の受委託に重点がかかっている、したがって利用権の設定等では三町歩以上の階層という形でなかなか集中的に数字が出てきていないという実態はあるわけでございます。  しかし、私はやはり今日の状況を考えますと、跡取りのいない専業農家というものがかなり生まれてきている、また老齢化が進んだ農家もかなりございますし、土地利用型農業につきましては、規模の生産性格差というものは農家にも顕著に受け取られているところまできました。そういう意味においては、やはり全国的なものとしてこれを進めていくことが必要であろうと考えまして、昨年の夏以来、地域農業集団の育成による土地利用調整を進めているところでございます。  その場合も、いわば直ちに面的集積とか、いわゆる利用権の設定ということを標榜する場合はなかなか全国的に動いてこない、そういう意味において規模拡大も、利用権の集積ではなくて作業受委託から入っていくことも評価するし、また、大型機械の共同利用のための土地の共同利用という面から入っていってもいいし、あるいは地力の維持培養のための土地利用の交換という点から入っていってもいいし、さらに里山開発や裏作導入等の農地の効率的利用という視点からも入っていっていいということで、幾つかの多様な地域と作物の実態に応じた入り方を指導しているところでございます。  そういった形で、今までのいわば模範的な個別としての中核経営の育成ではなくて、全国的な広がりを持った中核経営の育成をやはり段階的に進めることが必要であり、またそういう可能な条件が先ほども申し上げましたように逐次できつつあるというふうに認識しているところでございます。
  76. 村沢牧

    ○村沢牧君 次は、今度の整備計画に農業従事者の安定的な就業促進を図るということを加えておるわけでありますが、具体的に、この法律関連をして農水省としては農村の雇用創出のために何をしようとするのですか。時間がありませんから簡潔に答弁してください。
  77. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 構造政策の進展を図る意味において兼業農家の不安定な所得機会をできるだけ安定化していく、端的に言えば出稼ぎ、日雇い等の解消努力を進めるということが私どもは基本だろうと思います。そういう意味において市町村段階において、農振計画において就業改善の問題を取り組んでいただくということの計画をそれぞれ地域実態に応じて定めていただくことは、私どもは重要な課題だろうと思います。  その場合、手法としては何が考えられるか、受け口としては何が考えられるかという問題につきましては、一つは、工場等の導入による安定雇用機会の推進という問題でございます。農村工業の導入につきましては、現在私どもは特に広域的な観点からの導入、それからもう一つは、地元の就業機会が少ない遠隔地域の工場導入に重点を置きまして積極的に推進すると同時に、テクノポリスの制度の積極的な推進等も評価し、その活用も図りたいと考えているわけでございます。具体的な問題といたしましては、こういった考え方で農業者雇用の施策を講ずる以外に、通産省の立地促進施策、労働者の地域別の雇用調整施策等への要望も、地域の要請を受けとめながら取り組んでいきたいと思います。  第二の問題は、やはり長期的に見れば地場で安定した雇用機会をつくっていくという地場産業の育成という問題だろうと思います。  従来、地場産業の育成ということでは、農林水産物の利用加工等に比較的重点が置かれてきたし、これからもかなり重要なジャンルを占めると思いますが、今日の高度化、多様化した消費者の生活なり価値観の多様化等を受けとめるとき、やはりそういった加工のあり方等についても従来と違った発想が要るだろうと思いますし、また、農村の豊かな自然資源を活用した、従来の狭い意味の観光ではなくて広い意味の観光的な事業の振興ということも必要だろうと思います。現にそういうことで成功している地域も、例えば今御指摘でございました村沢委員の地元等でも幾つかあるわけであります。  そういう意味で私ども、従来からも各般の総合助成施策にその措置を講じてきたわけでございますが、五十九年からは新しく新農村地域定住促進対策事業を発足させまして、ハード面の整備だけではなくてソフト面の整備についても取り組みたいと思っているわけでございます。
  78. 村沢牧

    ○村沢牧君 局長の答弁のような抽象的なことは私もわかっているのです。一体、この整備計画にこれだけ入れるのだから何か具体的なものがあるのか。例えば優遇措置についても、農村工業導入法では優遇措置があるわけであります。一体この計画にこういうようなものを入れて何かの優遇措置を考えているのかどうなのか、その辺のことについて聞いておるわけなのです。ですから簡潔に答弁してください。抽象的な答弁は要らないです、もう時間がないから。
  79. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 現段階ではまだ優遇措置は特に準備しておりません。しかし、市町村の計画なり要望をもう一回受けとめた形で私どもそういった工場導入の政策等についても必要な見直しを要するものと考えております。
  80. 村沢牧

    ○村沢牧君 それから環境整備施設を今度またつくる、あるいは農村排水でも土地改良区ができるようにする、これも結構なことだというふうに思うのですけれども、実際こういう計画を具体的に移すためには、これまた財政的な裏づけなり補助金なり何かなくては絵にかいたもちにすぎないのですけれども、一体補助対策というのはどうするのですか。ただこういう文句を並べただけなのですか。何か考えているのですか。
  81. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 従来の土地改良事業、それから生活基艦の整備事業地域の総合助成事業等各般の施策がございます。私ども来年の予算要求に向けて検討中でございますが、この農振計画に具体的に盛り込まれたものについては、やはりその優先対策とか事業の進度是正を優先的に図っていくことが非常に重要な課題だろうと思います。これ以外に他省の事業にまたいろいろお願いしていかなきゃならぬ問題があると思いますので、こういった点についても前向きに対応する必要があると思っております。
  82. 村沢牧

    ○村沢牧君 この改正法によって計画されたものは、優先的に従来ある施策の中で考えていくということなのですが、そうすれば、また今ある施策の進捗が極めて遅くなるということですね。こういう時期であるからはっきりしたことは言えないとしても、局長としては、せっかくこういう法改正をしたのだから、この法改正に基づいて将来何らかの対策を講じていきたいという気持ちを持っているのですか。
  83. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私は、この農振計画というものは全国一律に一斉にやるべきものではなくて、やはり熟度に応じて段階的にやっていった方がいいし、それからまた、その内容についても地域差があっていいと思っております。そういう形で数年を要するものと思いますが、その要望を受けとめまして現在の補助事業等で不備なものについては新しいものを考えるという局面は十分あると思います。十分そういった地元の要望を受けとめて新しい事業を考えていくことも次の課題として検討させていただきたいと思います。
  84. 村沢牧

    ○村沢牧君 せっかく苦労して法改正したのですから、これは具体的に実るようなことを考えなきゃやはりだめだというふうに思います。せっかくこれが成立すれば法律の裏づけができたのですから、皆さんは自信を持って大蔵省でもどこでも折衝して、そのふさわしいものを獲得するように努力をしなければいけない、そのように特に要望しておきたいと思います。  そこで、個別の問題について三点ほど簡単にお伺いしたいと思いますが、私が以下お伺いすることは、農用地利用増進法を促進していく、あるいは農業地域の振興について必要だというふうに思いますので、そういう立場から御答弁願いたいと思います。  一つは、農用地利用増進法と農業者年金の経営移譲の整合性についてでありますが、農業者年金制度は、加入者が六十歳に達すると経営移譲ができるが、使用収益権で経営移譲をした場合、後継者がその農地を売買または貸し付けをしたときは経営移譲年金の支給が御承知のとおり停止をされるわけであります。したがって、使用収益権によって、経営移譲を受けた農地を農用地利用増進法による利用権の設定等によってこれを集団的に利用するという場合には、経営移譲年金の支給停止をしない、そうすべきではないか、かように思いますが、これは農業者年金の立場から言うと難しいけれども、局長は両方の立場を抱えていますから、農用地を利用増進する、中核農家をつくっていくという立場から見ればどうなのですか。
  85. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) この議論は、私は率直に申し上げて非常に難しいと思います。  と申し上げますのは、農業者年金の支給要件というものを逆に言うと考え直せ、もっと構造政策上効果のあるものに純化して重点的に考えるという議論にもなる。しかし、その議論は逆に言うと、ようやくどうにか定着しつつある農業者年金制度自体の存立の基礎にもかかわる問題でございまして、そういう意味でこの議論はそういった各論を具体的に片づけるだけで済みませんで、そこに触れてくるそのことは、いわゆる生前一括処分の場合の贈与税の扱いの問題等とも関連をしてまいりまして、非常に難しい問題があると思っております。今の時点では遺憾ながら私は、農業者年金は農業者年金として今の定着した実態の中で、今の論理の中で運営せざるを得ないのではないだろうかと思っております。しかし、両者を含めて大きな課題であることは受けとめております。
  86. 村沢牧

    ○村沢牧君 私は、中核農家に土地を集積する、規模拡大をしていくということになれば、こうしたことはあわせて将来考えていかなければいけないのではないか。農業者年金の基本にも触れるような問題にもなってきますから、直ちに法改正というわけにはいかないでしょうけれども皆さん方も十分検討すべき問題だというふうに思いますから、指摘をしておきます。  次は、今話がありました相続税や贈与税の問題でありますけれども、この納税猶予制度の適用を受けている農地の面積の二〇%以上を処分した場合は納税猶予制度が打ち切られる、しかし、農用地利用増進法に基づいて貸し付けまたは売買する場合に限って猶予制度を継続してもいいのではないか。これは大蔵省の所管に属するけれども、農水省構造改善局長としてはどう考えますか。
  87. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 実は何か敗軍の将みたいで申しわけないのでございますが、五十六年と五十七年の税制改正で持ち出しまして、大分激しい議論をいたしましたが、見送られた経過がございます。  五十九年の税制改正では、これを贈与税の納税猶予制度の対象として絞って要望しましたが、引き続き政府部内で検討ということで決着がつかなかった経過もあります。これは実は率直に申し上げましてなかなか難しい問題でございまして、今の徴収猶予によりますメリットが生かされているのが比較的市街化区域の農地に集中している実態がある。  それからもう一つは、必ずしも長子相続、単独相続である必要はなくて、分割相続も認められていること。そこで、構造政策として今の税制が不徹底である、もっと縛ったらいいじゃないかという議論が実は有力にございます。しかし、私は、そういう相続税制という継承に関する制度を変えることはなかなか容易ではないと思います。そういうことと見合いになっているというあたりに難しい問題があることは御理解を賜りたいと思いますが、私はこの問題は、これからも引き続き農林省としてあらゆる機会をとらえて要求し、その実現に努力すべきものだろうと思っております。
  88. 村沢牧

    ○村沢牧君 農用地を中核農家に集積をする、中核農家育成という立場に立ては難しいことではあるけれども、何かそういうものにも前向きな姿勢で取り組まなきゃ、ただこの規模拡大だけ口で言っていたってだめなのです。皆さん方のつくった法律が絶対正しいものであって変えないなんていう根性があるからなかなか積極的にならないけれども、もっと前向きに取り組んでいただきたいというふうに思います。ここですぐこういうふうにしますという答弁がくるとは思いませんですけれども、よろしく今後とも積極的な対応を示してもらいたい。  最後にもう一点ですけれども、農用地は農業用に供するのが本来の姿であります。しかし、市町村の計画などによって公共用地だとか住宅団地なりに転用しなければならない問題が現実に存在しているわけです。その際、市町村が代替地を取得しなければならない場合がこれまた往々にしてあるわけですけれども、そのような場合には、県や国の場合と同じように農地法の第三条、第五条の権利移動の制度の適用除外にすることはできないのかどうか。これまた、代替地を取得して中核農家を育成していこう、農地を保全をしていこう、こういう立場でやるのですから、市町村のやることについても国や県と同じように認めてもいいじゃないか。この辺はどういうふうに考えますか。
  89. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 村沢委員の御指摘の点は、私は気持ちとしてはよくわかるのでございますが、ちょっとこれは農地法の法体系の基本に触れる問題もございます。というのは、御存じのように都道府県なり国は農地法上の許可権者でございます。つまり、行政主体として一つの公権力を行使する。それに対して市町村はいわゆる許可権者ではございません。そういう意味で、農地法の位置づけが違うために、いわば農地法の適用除外ができないという問題があるわけでございます。  問題は、そういう意味では二つの解決を現利用法では考えていかざるを得ないだろう。  一つは、やはり現段階でつくっております農地保有合理化法人を積極的にそういう市町村の計画なり意図がある場合においては活用していただく。それに対して、国なり県なりが応援する体制をつくっていく、これが第一点だろうと思います。  それから第二点は、やはり転用許可事務について、どういうふうな弾力性を与えていくか。線引きの見直しについてどういう弾力性を与えていくか。その反対効果として開発の問題なり取得の問題をどう考えていくかということを、個別的にではなくて総合的にとらえてやりやすい状況を行政の中につくっていくということだろうと思います。  御指摘のお気持ちはよくわかりますので、直接私は、その法改正自体にはなかなか法体系として難しい点があることは申し上げざるを得ませんが、ただいま申し上げました仕事の進め方については、具体的な問題として勉強させていただきたいと思います。
  90. 村沢牧

    ○村沢牧君 時間が参りましたから以上で終わりますが、私が最後に三点申し上げたことは、いずれも局長は難しいという答弁ですが、難しいから質問し要請しておることであります。抽象的な御意見ならいつでも承っているところでありますから、それなりきに今後とも私もまた質問したり要請してまいりますから、皆さんの方でもせっかくひとつ御勉強いただきますように要請して、私の質問を終わりたいと思います。
  91. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 両案に対する質疑は午前はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ―――――・―――――    午後一時二十八分開会
  92. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案及び土地改良法の一部を改正する法律案、以上両案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  93. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 質問させていただきます。  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案及び土地改良法の一部を改正する法律案にかかわっていささか質問をさせていただくわけでありますが、何しろ素人でございますので、丁寧にお答えをちょうだいいたしたいと思います。  ところで、農村社会の問題を考えるに当たっては、やはりこれから日本の農村、農業がどうあっていけばよいのかということが最前提になろうかというふうに思います。先ごろ私は、全国農協中央会が出された「国民にとって農業とは」という検討結果がまことに興味深く思われました。経済発展に果たす役割の大なることを基本にして食糧供給あるいは環境保全、資源確保といった公的な役割を強調するなど共鳴できる部分がたくさんあった次第でございます。  そこで、改めて大臣にお伺いをするわけですけれども、これからの日本の農業の未来像についてお伺いいたします。
  94. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) これからの日本の農業の未来像をどういうぐあいに考えておるかということでございますが、現在国土庁におきまして進められております第四次全国総合開発計画の策定作業等に対応しながら、我が農林水産省内におきましても、我が国農業、農村の長期展望について検討が進められておるという段階でございます。  二十一世紀に向けて農業、農村の展開方向につきましてはさらに検討を進めることといたしておりますが、現段階でお答えいたしますとしますと、規模拡大が進み、生産の相当部分が高い生産性を実現できる経営によって担われる。また、生産性の向上が進み、EC並みの価格水準を実現できる経営が広般に成立する。また、土地利用型農業では、消費の変化に対応して、米、麦、大豆等多様化した耕種農業と、酪農、肉用牛を主体とした草地農業へと変容していくであろう。  さらに、農村地域におきましては、農業集落は全体としては引き続き混住化、兼業化、高齢化が進むことは避けられないものと思いますが、こうした中で農家構成は、さまざまな形態の中核農家のほかに、自給的、生きがい的農業活動の色あいを強めたところの高齢者農家、通勤兼業農家が存在するといったふくそう的な構造となるものと考えられます。一方、国民の価値観の変化等に対応し、農産物の安定供給や国土自然環境の保全、緑豊かな居住、レクリエーションの場としての役割を高める、こういうぐあいになろうと考えております。
  95. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 ありがとうございます。  それでは、法律の問題についてお伺いいたします。  この法が改正成立後、いわゆる拡充農振計画の策定を指導することになろうかと思いますけれども、生活環境の違いとかあるいは土地利用の状況等を踏まえて、その策定に当たっては決して押しつけになるような画一的な計画であってはならないというふうに思うわけでございます。  先日の参考人の御意見の中にも、押しつけは困るというような御意見がございましたが、そこで、自主性を基礎に地域の実情を反映するような個性豊かな計画づくりということについてどんな御配慮をなさっておりますか、あるいはどんな御指導をされますか、お伺いいたします。
  96. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まことに御指摘のとおりであろうと思います。画一的なものでなく、地域の特性と実情を反映したものになるよう運営してまいる考えでございます。  具体的には、例えば種苗改善に関する事項については、東北地方の純農村等ではこれが大きな課題として浮き彫りにされると思いますが、むしろ大都市近郊では簡単に触れるだけでいいというふうに、まず同じ事項でも地域によって濃淡に差があっても差し支えないということを明らかにしていきたいと思います。  それからもう一つは、これは形だけではなくて中身のあるものにする必要があるという認識から、一挙に見直しを行うという形ではなくて、それぞれの地域社会で市町村長さんなりあるいは地域住民の方の熱意のある地域から熟度が熟成されたとき段階的にやっていくということで、ある程度年次を分けてやっていきたいと思っております。
  97. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私は、農林水産委員会の中ではただ一人都会をねぐらとする者でございますものですから、大変いつも陣地を持っていないということで肩身の狭い思いをいたしておりますけれども、そのことについていささかお伺いをいたします。  経済の安定成長あるいは国民の価値意識の変化等に伴って、最近国民の生活の中にいろいろゆとりが出てきたというふうに私は思っています。こうしたことを踏まえて、都市住民にも広く農業やあるいは緑に親しむ機会を与え、国民に農林業の存在を考えてもらうチャンスとなるような機運が整ってきているのではないかと思います。先日参考人の御意見の中でも、非農家農家のコンセンサスづくりのために一坪農家運動が繰り広げられているという大阪方面のお話等も伺いました。それから私も、都市部の代表としてしかく農業に理解を持とうということで、ベランダ農業運動というものを進め仲間づくりをいたしております。  それで、農林水産省としてもそうした都市部に向けての農業を理解してもらう施策というようなことがあろうかと思いますけれども、その点お考えはいかがでしょうか。
  98. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 大都市生活者、特に子供のときからそこで生まれた方々にやはり自然の生態系なり農業生産や田園生活を理解していただくことは、その方自身の人間の情操の問題とか創造性の問題として重要であると同時に、やはり農業なり農村を広く国民に理解していただく意味では大変重要なことだろうと思っております。  従来農林省といたしましては、一つは、自然休暇村整備事業等にありますように、農業と農村生活を体験する場を整備する事業等をやってまいりました。これ以外に、都市近郊のいわゆる学童農園の整備等については金融措置を講じたり農地法上の特例の扱いをする等の配慮をしておりましたが、さらに本年度から新しい都市と農村の交流事業を発足させることにしております。  具体的には、一つは、都市側の市町村、これは区なんかも入ると思いますが、それから農村側の市町村の姉妹都市提携による交流の促進というものの制度を打ち出してまいりたい。それから第二番目は、やはり大都市圏、特に三大圏でことしはやりたいと思っておりますが、農山村の市町村の代表者等の参集を得て町と村の交流促進のためのセミナーとかお祭りをやってまいりたいと思っております。それから三番目は、やはりライフサイクルのある時期において農村地域に住んでいただくという意味では、過疎地域などの空家や廃屋その他附帯地の利用提供や貸し付け、場合によっては売買等をあっせんして、部分的であれ生活の根拠を都市の生活者の方に持っていただくことが大事であろうということで、こういった交流のための紹介あっせん等の事業をやってまいりたいと思います。  私どもは、この事業はこれから農政をやるためにもぜひ必要だし、また二十一世紀の国土計画を考える場合にも大事な課題だと思っておりますので、十分前向きに取り組んでまいりたいと思っております。
  99. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それではこれからのその一番弱い、農村の実情について知らない立場で教えていただくということで質問さしていただきます。  先日参考人のお話を伺っておりました中で、大和田参考人のお話の中に、集落の形成についての話が出ておりました。この集落のあり方ということについてお伺いをしたいのですが、大和田参考人のお話の中では、二兼農家ばかりでは日本の農業は成長し得ない、中核的な専業農家を中心にして、二兼農家も含めて集落づくりをするのが一番理想的である、その場合の中核農家は集落当たり二戸からないし四戸あれば十分であるというようなことをおっしゃっておられましたのですが、農業の担い手という立場から集落の生産構造をどのように考えたらよろしいのでしょうか、あるいはまた、非農家を含んだ社会構造としての集落の現状をどのように考えたらよろしいのでしょうか。
  100. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 今日の農村の実態を見ます場合、農業の中でも中核農家と通勤兼業農家という対立があり、やはり生活原理や生産構造の差異が出てきております。それ以外に、大都市、中都市の周辺では非農家が参加するという形で農村の集落が変わってきていることは事実だろうと思います。  私どもは、まず一つは農業の立場でどう考えるかという問題でございますが、農林省といたしましても、やはり兼業農家の安定所得機会を確保しながら、段階的に土地利用の集積を中核農家に図っていくことを構造政策の基本に置くべきだろうと思っております。  最近の動向を見ますと、例えば野菜の連作障害への回避とか、飼料基盤の確保とか、それから、いわゆるかなり安定した所得を持った通勤兼業農家の作業の委託発注というふうな動向を契機といたしましてやはり動いてきております。私どもとしては地域農業集団という活動を通じて段階的に中核農家の規模利用、規模拡大ないしは土地利用の面的集積が可能なような状況をつくるための話し合い活動を進めることが基本だろうと思っております。  ただ、先ほどの大和田参考人のお話にも関連してまいりますが、大都市周辺では中核農家が集落にほとんどいないということを懸念しなければならない地域が、まだ例外的ではございますが、あることも事実でございます。こういった場合においては、この地域農業集団の話し合い等におきましては、やはり外部の方もその土地の地権者じゃなくても参加していただくことを受け手として考えていく必要があると思います。  村のあり方としてどう考えるか、先ほどから申し上げております農業内部あるいは農業と非農家との間を通ずる混住化現象というものは、従来の総有的な規律で実施されてきておりました日本の農村集落のゲマインシャフト的な、いわゆる戒律的な取り決めなり問題の処理ということを低下さしてきている。またそれは経済の発展と同時に、人間の意識の発展の中でもたらされたもので、昔にさかのぼって解すべきものではないだろうと思っております。  そういう意味において、私どもささやかでございますが、今回住民協定という集落協定という制度を提案さしておりますのもそういうことの一つでございまして、やはり今日の時点に立ってみんな対等の権利者の立場で地権者相互の間で、あるいは共同のコミュニティーに必要な施設を利用する共通の立場に立って話し合いをし、協定を結んでコミュニティーの問題を解決するためのそういう体制づくりを考えてまいりたいと思っているわけでございます。
  101. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 このたびの法律改正の中に、農用地利用計画において定められた農業用施設についてはその適切な配置に関する協定を結ぶことができる、十八条の二から十一まででしょうか。それからさらに、「当該施設の維持運営に関する協定を締結し、当該協定が適当である旨の市町村長の認定を受けることができる。」ものとするとともに、協定事項、協定基準に関して所要の規定を設けることができる、十八条の十二ですか、このことについてお伺いをいたしますが、その協定制度について施設及びその維持運営についてのみ限って対象にしたのはどういう意味でしょうか。
  102. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 今回法制化いたしました協定もベースはやはり私民法上の無名契約だろうと思います。そういう意味におきましては特に法律の定めがなくても指導事業としてできるわけでございます。ところが、施設の配置に関する協定等は単なる民法上の契約に基づく効果だけでは不十分である。例えば最初消極的だった人が後から簡単に参加できるという形をとれば広がりも持てるだろう。それからまた、本人が土地を譲り渡したり相続した場合でも、相続人に効果が及ぶということでなければ関係は安定しない。そういう意味から承継効とか単独行為による参加を認めるという特別の法律上の効果を与えるという意味でその限りで法制化をした。また当然そういう性格のものでございますから、行政上の認可についての要件等を決めたわけでございます。  もう一つの集会施設等の協定でございますが、これはやはり今日の農村社会ではそういった集会施設や小水路の問題は普遍的な共益施設でございまして、この管理責任をどうするか、費用負担をどうするか、また、その利用をどうするかということは農村生活を営む者にとっては欠かすことのできない問題でございます。また、それが十分行われなければコミュニティー機能も低下していくし、農村の資源管理にも悪影響を与える。そういう点を考えまして、これについてはむしろ行政上有効適切な指示を市町村長等に行わしめるために一定の法的な定めを設けまして、届け出、認可のための要件等も定めたわけでございます。したがって、ベースにございます民法上の契約で処理できます協定はこの法律には書いておりません。私どもとしてはこの法律予定しました以外の問題につきましても、例えばハウスと農機具舎の配置の問題というふうな問題がなかなか問題になるでしょうし、集落道とか里山とかあるいは街路樹とか樹木の管理の問題、そういった問題についても幅広く協定や申し合わせが行われますよう指導をしてまいりたいと考えているわけでございます。
  103. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから法律の中身に、農業上効率的かつ総合的に利用する土地及び土地に関する権利の取得等に関していろいろ事項がうたわれておりますので、農地についていささかお伺いしたいと思いますけれども農地流動化ということで私わからないので教えていただきたいわけです。農地に関して利用構造の面について多く論じられていますけれども、それはいわゆる所有権の異動というものが硬直化しているからであろうというふうに理解するわけであります。  そこで、農地の所有構造の変化というものは今後どんな条件が整ったときに起きるのであろうかということと、そういう条件が整って所有権の異動ということが活発になった場合、集落の秩序等に何らかの変化が起きるであろうかどうか、このことをお伺いします。
  104. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘の点はなかなか私は難しい問題だろうと思います。  多少歴史的に経過を申し上げますと、実は昭和三十八、九年までは農家の他産業への就業は挙家離農の形をとり、農地の所有権を移転させるという形が多かったわけでございます。三十九年を境といたしまして決定的に通勤兼業農家になり、所有権は手離さなくなったという形が生まれてきているわけでございます。もちろん、その間の事情をもたらしたものはやはり高度成長、工場の地方分散、それからもう一つは通信、輸送手段の進歩等がそういった基本にあるわけでございますが、やはり同時に、基本的には経済社会の発展の中で日本全体が金融資産が固定資産に対して過大な社会となって地価が急上昇した、資産的保有傾向が高まったということが基本にあるわけでございます。  実はこういった傾向は日本だけでなくて、大なり小なり先進諸国で起こっております。もちろん日本は資源制約が極端な国でございます。極端でございますが、そうするとやはり、先祖伝来の土地所有で資産的保有傾向ということであれば、安定雇用機会があってもなかなか所有権は手離さない。そこで所有権に着目した規模拡大政策というのは原則的には困難であろう、こういうことで昭和五十年代の初めから農政といたしましては利用権に着目した規模拡大政策という方向を打ち出しまして、農振法の改正、さらに農用地利用増進法の制定、地域農業集団の育成等一連の施策を進め、さらにその基本にある問題の条件整備のために村づくりという視点から今回の法制をお願いしているということでございます。  そこで、今後どうなるだろうかということについては、なかなか一概には言えないと思いますが、私はやはり大勢としては利用権あるいは利用権に近い利用の提供ということが主体になるだろうと思います。しかし、現在でもそうでございますし、過去においても、例えば北海道等におきましてはやはり挙家離農の形がかなりございまして、土地も相対的に安く、所有権の移転による規模拡大もなお可能である。また最近、地価が地域的には低迷してきているものでございますから、北東北等でもそういう動きが出てきております。非常にクラシックにというか、教科書どおりに物を考えるなら、私は所有権移転による規模拡大は基本にあることは事実だろうと思いますが、それはやはり展望としてもある程度地域が限られているというふうに、考えるのが筋道ではなかろうか、こう思っているわけでございます。
  105. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 そこで、利用権の設定ということで少しお伺いをいたします。  農用地利用増進事業農地流動化にどのくらいの効果をもたらしたのかということをお伺いするわけですが、農業調査等によれば、経営耕地面積に占める借入地の割合が、昭和五十三年の四八%から昭和五十八年には七四%に増加したということを読んで流動化が進んでいるというふうなことが言われるわけでございますが、この流動化の今後の目標、いわゆる利用権という立場における今後の目標、見通しということをお伺いしたいと思います。
  106. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まず、最近までの実績を申しますと、昨年の十二月現在の数字で約十三万三千ヘクタールの利用権の設定が農用地利用増進法制定以来行われております。特に五十七年度からはかなり急テンポで増加してきております。これ以外に、実はこれに至らない水田を中心にいたしました作業の受委託が、特に作業の受委託のうち全面受委託が約六万五千ヘクタールぐらいございまして、これを合わせますと約二十万ヘクタール前後が動いてきていると見ていいと思います。  ただ、率直に申し上げますが、御指摘を受ける前に申し上げますが、この利用権設定のうちの三割ぐらいは従来のやみ耕作が若干メタモルフォーゼして追認されてきたというものもあることは否定できないだろうと思います。  そこで、それが構造政策上どういうふうに役立ってきているかということにつきましては、圧倒的部分が一ヘクタール未満階層からオファーされております、サプライは。それに対して借り手はどうかということになりますと、これも圧倒的に一ヘクタール以上の階層でございますが、毎度議論されておりますように、まだ三ヘクタールとか五ヘクタールの階層に集中するというところまでは来ておりません。どうも動きを見てみますと、まだまだ平場の水田作では、先ほど申し上げた作業の全面受委託の形をとって規模拡大を進めている状況の段階が多い。利用権の設定が進んでおりますのが、野菜作農家とか西日本の酪農家で、いわゆる自給飼料の基盤を持たない農家が畑地で設定するという形がかなり多いようでございまして、その意味では、まだこれから進んでいく一つの過程にあるのではないだろうかと思います。  私ども長期的には、農政審議会の長期見通しては、大体六十五年までの間に九十万ヘクタールの農地流動化予定しておりまして、そのうち所有権に移転するものと利用権の設定に移転するものとに分けて考えておりますが、私どもといたしましては、このうち利用権の設定等による移動を一応四十万ヘクタールと見ておりまして、現在の数字が実質を含めると二十万ヘクタールということでございますので、これから十分加速をつけていくならば目標は一応達成することは可能ではないだろうかいうふうに見ているわけでございます。
  107. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 ちょっと質問を先取りされた感じでございますが、農業所得確保のために規模拡大が当面の課題であるわけです。そのために農地流動化政策がとられているわけですけれども、今の話のように、利用権設定が増大したということが農業所得にどんな影響をもたらしているかという問題が、私素人ですけれども、いささか気になるわけです。  それで資料を見ますと、土地移動は、利用権の設定は進んでいるのだけれども、いわゆる農家の階層変動に停滞の傾向があるというようなことについてどのようにお考えでしょうか。つまり、三ヘクタール以上の上層所得のデータを見ますと、停滞ないし減少というのが、五十七年度の白書で私は読み込んできたのですけれども、こういう現像は、いわゆる利用権の設定をして土地流動化を図るということに効果を上げているというふうに考えてよろしいのかどうか。
  108. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私、率直に申し上げまして、昨日によって地域によって非常に差があるということは事実だろうと思います。流動化の対価と申しますか、いわゆる広い意味での小作料の動きを見てみますと、水田で申しましても一万五千円から五万円ぐらいの間に分布をしております。それが実は交換価値を反映した形になりませんで、むしろ地域の需給関係を反映した形になっているところに非常に最近の特徴はございます。  例えば、一番小作料が低いのは愛知県とか東海地方の平場でございまして、むしろ小作料が水田等について割高なのは庄内地方等の稲作の銘柄米地帯でございます、純農村地帯。これは、基本的にはやはり兼業農家の安定雇用機会の問題であり、いわばどの程度サプライがあるかどうかということと、それからもう一つは、受け手がどの程度あるかということだろうと思います。前者は受け手が不足し、後者は出し手が少ない。むしろ中核農家として残ろうという姿勢をしているのが多いというところに問題の難しさがあるだろうと思います。そういう意味においては、地域別の需給関係によってその小作料の数字が動いてくる状況はまだ当分は続くと見ざるを得ないし、これは事実として受けとめながら就業部面その他での改善努力を進めながら問題の解決を図るのが一番いいのではないだろうかと思っております。  そこで、一体借りる方のメリットはどこにあるのだろうかということなのですが、はっきり申し上げますと、かなり大規模な稲作経営を実現しつつある経営を大観してみますと、利用権の設定までいかないで作業の全面受委託でやっている方が多いものですからまだ計量的に把握はできませんけれども、最近の動向を見てみますと、規模拡大による大型機械の稼働によるメリットとか、あるいは償却費の負担の分散によるメリット以外に、やはり中核農家経営によって優良な土づくりが行われる、単収もかなり銘柄米地帯と生産の難しいところでは差があるという状況がありまして、そのことが中核農家への利用の集積の一つの誘因であり、比較的高い小作料を生み出す、可能性を生み出す条件にもなっているという動向も見られるわけでございます。  なお状況を見守っていかなければなりませんが、私どもの認識は、余り今の段階で、一挙に利用権で、しかも面的集積ということを標榜するとかえって全国的に動かなくなる。むしろ段階的に、利用規模拡大も利用権以外に作業受委託でもいい、それから入り方も、機械の共同利用による土地の共同利用ということから入ってもいい、あるいは地方問題から入ってもいい、さらには農地の効率的利用という視点からも入っていいという、四つの入り口を地域農業集団の育成活動では幅広く設けて、段階的に熟成しながら規模拡大と面的集積につなげていきたい、このように思っているわけでございます。
  109. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 そこで、新規の設定にせよ、やみ上がりの移行にしても、とにかく利用権の設定というものが一巡し、利用構造というものが現時点ではある形ででき上がってきているというふうに思うのですけれども、硬直化をしているというふうに考えるべきか、これはさらに進むというふうに考えるべきか。
  110. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私は、今の路線を、つまり先ほど申し上げました幅の広い路線を当面は続けるべきものであり、それによって、規模拡大なり面的集積の中間段階がたくさんできてくる、それがそれぞれの地域で段階的に仕上がっていくというふうに考えるべきものだろうと思っております。
  111. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから設定期間の問題ですけれども、設定期間をどういうふうに考えるか。それから、農地利用の増進事業が発足して八年を過ぎているわけでありますが、再設定の現状ということもあろうかと思いますが、こういう点について。
  112. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) ごく最近の数字でちょっと経過的に申し上げますと、六年以上が実は六四・七%まで来ております。それから五年以下が三五・三%ということでかなり長期のものがふえてきております。年次によって見てみますと、やはり当初は六年未満が圧倒的だったものがはっきり逆転するところまで来ております。これは不動産取引でございますから、ある意味ではやはり対人的な信用関係が基礎になります。そういう意味においては、短期から入って長期に切りかえていくということが言えるだろうと思います。  それからもう一つは、先ほどから再三申し上げておりますように、作業受委託から入って、それが利用権の設定に高まっていくというプロセスが要るだろうと思っております。私どもといたしましては、やはり賃貸奨励措置等を講ずる場合においては長期のものを優遇していく。それからもう一つは面的集積、つまり圃場利用をしやすいように面的集積を伴うものを優遇していくという形で、極力そちらに近づける努力を多角的にしてまいりたいと思っております。
  113. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 農地流動化ないしは利用権の設定ということで、担い手の側から見た問題点を幾つか考えてみたいと思います。それは、農地流動化の進展にマイナス的な要因になるのではなかろうかということでお伺いをするわけです。  その一つは、先日参考人の中の青木先生からもたしか話が出ていたと思いますけれども生産組織における中核農家の過重負担という問題、これは生産組織の論理と個別営農の論理というものが現場で本当にかみ合うのかどうなのかという問題と、これは私は全然現場がわかりませんのでお伺いをするわけですが、事集団の論理ということがどういうところで整合性を持つのか。
  114. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まさに御指摘のとおりだと私も思います。生産組織というものが長期継続性を持った安定した形というふうに考え得る場合はむしろ例外的ではないだろうか。やはり大型機械の導入とか、土地利用の集団調整の過程で新しい土地の利用体系や経営体系を考えていくそういった中で生産組織が生まれてくる。しかし、その生産組織の中で多くの場合は、段階的には中核農家が大部分経営をやって、逐次その中核農家の個人経営部分が相当部分を占めるように切りかわっていくというプロセスを通ることが、いわゆる家族経営という近代社会における、自由社会における農業経営の原点からいけばそういうものであろうと思っております。  しかし、しからばそういう生産組織というものが意味がないかどうかということについてはこれはまた別でございまして、やはりそういう集団的な土地利用調整の受け口として、あるいはある時点における労働力地域社会における農作業の受け手をまとめていく形において積極的な意味を持つ場合もあるわけでございまして、そこはやはり基本的には中核農家の個別経営規模拡大が基本であるという認識を持ちながら、それぞれ地域の実情なり需要に応じて生産組織を活用していくということが問題ではなかろうかというふうに思っているわけでございます。ただ、率直に申し上げまして、労働の慣行も作物によって違いますし、農民の意識も地域社会の変化の程度によって違いますので一律に論ずることはできませんので、むしろそれはそれぞれの場所で考えていただいて受けとめるという方がいいのではなかろうかと思っております。
  115. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから、心配する二つ目は、先ほど出た小作料の話であります。  小作料の実情がどうなっているのかということで先ほど局長は少しおっしゃいましたけれども、五十七年白書などで見ますと、稲作については小規模層での所得の低迷等により、五十五年以降大規模層の支払う小作料が小規模層の所得を上回っているという状況が生じているというようなことが書いてあるわけです。この小作料の問題が利用権設定ということの足を引っ張っていはしないかどうか。  なお、物納等についても状況を知りたい。  それから、三つ目の憂慮して考えてみたいことは、安定兼業農家は、生産組織で行う農作業の受託によってわずかな時間労働で稲作経営が可能になる、つまり、農作業受託事業というのは潜在的利用権設定農家経営維持を可能にするというひとつのパラドックスがあるというふうに思うのですけれども、これは農地流動化の進展にマイナス的要因になるのかならないのか。
  116. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まず、小作料の問題を申し上げたいと思います。  全国的に見ますと、小作料の水準というのは先ほど申し上げましたように、東海地方が最も低くて南東北が最も高いという分布はございますが、ある程度収れんはあります。ただ個別的な地域においてはかなり下がることは事実でございます。その小作料の誘因を決めておりますのは、実は支払い能力あるいは貸す側の要求ということ以上に、その前提にある農地の貸し借りについての需給関係が決定的に物を言っているという状況があるわけでございます。そのことは、先ほど申し上げました極めて地価の高い東海地方と東北との小作料が全く逆の倍以上の関係にあるということからも御理解いただけるだろうと思います。  私は、やはりできるだけ貸し手がふえていく、借り手が収れんしていくという農業生産実態をつくるような方向構造政策のあり方としてはまず第一段階であり、今の段階において小作料の負担自体をそう神経質に考える必要はないのではないだろうか。むしろ神経質に考えていくと、かえって流動化に歯どめをかける形になっていくわけです。やはり今日の農家でございますから、割の合わない小作料を大規模農家も払わないわけでございますし、また、土地を出していく農家事情というものもだんだん変わってきているわけでございますから、こういう意味において流動化量をふやす条件をつくりながら、その中で小作料問題が自然に片づいていく姿をよく見きわめて考えるべきではないだろうかというふうに考えております。
  117. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 二つ目の小作料の次の問題は。
  118. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 失礼いたしました。  物納はどのくらいかということにつきましては、最近の数字を見てみますと、大体中国地方は非常に少ないのですが、それ以外の地域は大体三割強でございます。
  119. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 もう一つ三つ目の問題。
  120. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) ちょっと物納は私、失念いたしたのですが、第三の点はちょっとよくわからなかったので、恐縮でございますがもう一回ちょっとお聞かせ願えれば。
  121. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 つまり、二兼の人にプラスの条件ばかりそろっていて、それをしょい込む相手はマイナスの要因ばかりしょい込まないかということでございます。
  122. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のように、確かに最近の経済調査等を見ますと、そう考えられる状況はあると思います。問題はやはり、先ほども申し上げましたように、二兼農家が土地の利用を中核農家に積極的に手放していく、それも一挙にということは私は無理だと思います。段階的に、例えば八反歩所有の人がまず二反歩出し、三反歩出し、五反歩出すというふうに段階的にふやしていく、そういう状況をつくることによって問題を構造政策の視点からいろいろと解決していく以外にないのではないだろうかと思っております。  最近の動きをちょっと見てみますと、例えば自作農主義というものが従来から一番メリットがあるひとつの根拠として、自分の土地はよく管理する、自分のうちの土壌の管理は行き届くということが言われているわけでございますが、最近ではむしろ水田等では、中核農家に貸し付けた土地の方がよく肥培管理をしてくれるという実績が評価されているケースが全国的に起こっております。そういう意味において、私はやはりサプライをふやすことを考えていけば段階的に問題は片づくのではないだろうか。むしろ、小作料もある程度収れんして安定してくるのではないだろうかと思っております。
  123. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 次に、就労機会の促進ということで、このたびの改正事項では農業従事者の安定的な就業の促進に関する事項が盛り込まれておりますけれども、農村地域における安定的な就業機会の確保対策として昭和四十六年に制定された農村地域工業導入促進法はどんな実績を上げてきたというふうにお考えですか。
  124. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農村地域の工業導入は、四十六年の発足以来五十八年の三月末現在で申し上げますと、実施計画を策定した市町村が九百六十一、導入した市町村が七百三十二、導入企業が二千九百六十八社、雇用従業員数が十六万四千人、うち地元雇用者が十三万四千人という実績を上げております。うち農家世帯では、これを一市町村当たりの就業者数で見ますと、大体九十一人の地元雇用を行っているという形になりまして、私は、それなりに地域社会における出稼ぎや日雇い等不安定就業機会の改善には大きく役立ち、また、農家所得の向上に寄与してきたと思っております。
  125. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 これも私は現場を知りませんので、これは新聞でございます。「農村部への工業導入は、周辺農家の働き口を作る点から期待されている。しかし、現実には、地元雇用にそれほどつながらないという問題」がたくさんあるのではなかろうかということで、「その一つの例として、先日、千葉県我孫子市にできた日本電気我孫子事業場の場合を取材した。我孫子事業場は、コンピューター機器をふんだんに利用し、これまでとは一味も二味も違うシステムを使っている。同事業場は従業員が三千二百人、ほかに関連企業で千三百人。このうち、純粋に地元農家から雇用された人は百人足らずだろうという。しかも、入った企業でも、その職種は食堂、売店、運送、守衛などのパート仕事が大半だ。工場誘致に水田を提供した地元農家は〃採用には地元を優先したい。地元なら交通費もかからないし…〃という会社側の当初の言葉を信じていただけに、期待が外れ、がっかりしている。市役所や会社の説明では、もともと省力化工場」であったからというふうに言われている、地元農家が非常に落胆している、こういう記事がありますけれども、こういうことをどのようにお考えでございますか。
  126. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘もございましたので、この日本電気の例を全部調べてみたわけでございます。はっきり申し上げますと、実は日本電気は御案内のように、地域別子会社をおつくりになって工場を新設されているわけでございますが、農村工業の導入でやられたところが六件、それ以外は農村工業導入の制度にはよっておられません。農村工業導入の制度でやられました地域については、地元雇用者の比率は八五%という数字になっております。御指摘のありました我孫子工場の例を聞いてみましたら、これはどうも従来府中にありました府中工場を工場ぐるみ移転したということで、従来の従業員がそのままついていったという形が基本のようでございまして、確かに四千五百人のうち地元新規に雇用した方は百人だけということになっております。私どもはこれからの姿を見る場合でも、また今までの実績を踏まえてみても、新設工場の場合と移転工場の場合は非常に差があるわけでございまして、農村工業の導入に当たっては、やはり工場の新設というものに焦点を合わしているのもそういう点にあるわけでございます。  それから次に、質の問題でございます。私は、これはかなりこれから大きな問題になるだろうと思います。従来はどちらかと申しますと、比較的業種の内容や工場の中における作業の形態から見ましても、特別の技術を要しないかあるいは短期の技術訓練で可能であった職種が多かったために、比較的農村工業導入等でやりました工場では農家からの雇用者が中堅労働力に育ちつつあるというふうに聞いております。ところが、これから一番伸びてくるし、特に農村工業導入では割合にウエートを持っております先端産業等になりますと、果たしてそこがどうなるかという問題があると思います。実はことしから予算を計上いたしました新定住促進対策事業におきましても、従来のハードの問題だけではなくて、ソフトの問題ということで、労働者の再訓練問題、つまり地元雇用を希望する方の再訓練問題ということを取り上げておりますし、また、必要な問題は関係各省にもお願いしたいと思っているわけでございます。  特に御指摘の質の問題については、それにふさわしい教育条件地元にでき上がるかどうかという学校教育の問題もありますし、またそれ以前の問題としては、再教育のシステムをどういうふうに地元に定着させるかという問題もございますので、十分頭に置きまして研究し、努力してみたいと思っております。
  127. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 雇用の問題についてはぜひよろしくお願いいたします。  それで、先ほど大臣から、農村の未来図のようなお話を伺いましたけれども、私の立場から考える農村の未来構想みたいなことを考えてみるに当たって何点かお伺いしたい。  実は、こちらの最上先生と水谷先生が御一緒の委員会でございますが、国民生活・経済に関する調査特別委員会の中で、町づくりの問題を扱っている小委員会がございまして、御一緒に仕事をさせていただいております。そこでは今、新しい町づくりに向けての一つの大事な話し合いをいたしておるわけでございますが、いわゆる都市圏を中心にした町づくりという問題を考えるに当たって、その同じ問題は農村の生活の上にも置けるのではないかというふうに考えますので、何点かお伺いいたします。  まず、町づくりで一番大事に思われることは、高齢化社会を控えて今後どんな町づくりをしていけばいいかという課題に最優先で取り組んでおりますけれども、村づくりではこの点いかがでしょうか。
  128. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農村地域が日本の社会の中で一番早く老齢化が進んだことは御案内のとおりでございます。むしろある程度頭打ちのところまで近づきつつある。その点は都市地域と五ないし十年のギャップがあったと思います。そこで、やはりできるだけ健康なお年寄りには、従来の経験を生かして、一つは農業生産にどう参加していただくかという問題があるだろうと思います。私が先ほど生産組織が一定の条件のもとに意味があると申しましたのは、それは、実態は中核農家が中心になった経営であっても、お年寄りその他に従来の経験を生かして部分的に農業生産なり出荷等に参加していただくというシステムづくりが一つあるだろうと思います。  それから二番目は、老齢化社会共通の問題であると思いますけれども、やはり伝統的な文化だとか技術の保存、伝承というふうな点も含めて、地域社会のまとめ役としてどうお年寄りに活動していただくかという問題だろうと思っております。私ども農村社会を頭に置いた場合、中核農家規模拡大を考える場合でも、やはりそういう地域社会における老齢者の問題も十分に生きがいが発見できるようなことを含めて検討を願うように特に指導しているところでございます。
  129. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 余り時間がなくなりましたので、まとめてあとの分をお伺いしますけれども、いわゆる新社会システムをどう導入していくか、あるいはニューメディア、情報化システムというような問題を農村の未来図の中にどうのせていくか、こういうことをまとめてお伺いいたします。
  130. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) いわゆる新社会システムという場合は、INSに代表されますような情報通信システムの問題、それからもう一つは、いわゆる地熱発電とか、ソーラーシステムとか、あるいは小水力発電に代表されますようなローカル・エネルギーシステムの問題、それからもう一つは、やはり新交通システムの問題等を含めて考えるべきものだろうと思っております。  私も、実は専門でございませんので十分な勉強をしているわけではございませんけれども、やはり農村地域社会の受けとめ方としましても、一つは農業の生産から物流に至るまでの情報の集積と、その情報を流通させるサービスシステムの導入という視点。それからもう一つは、やはり生活圏域の拡大ということを頭に置きまして、農村と地方都市との接近を重視いたしました交通条件整備という問題。それからもう一つは、コストという制約もございますけれども、農村のそれぞれの地形なり特質を生かした、自然条件を生かしたローカルエネルギーの開発利用という問題。特にこれはさらにもっと広い意味でローカルエネルギーということを申しますと、いわゆる再生産過程におけるバイオマスの手法によるエネルギーの活用という問題があるわけでございまして、そういった点を特に重視していかなければならないと思います。実は私ども実施しております構造改善事業等におきましても、こういったタイプのものを特に重視して、モデル的に今取り上げようとしているところでございまして、今後精力的に努力をしてみたいと思っております。
  131. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 次に、土地改良法改正に伴った関連の問題についてお伺いいたします。  いわゆる混住化や生活様式の高度化といった農村地域の社会情勢の大きな変貌のもとで、農業用用排水路の管理面で種々の影響が生じ、土地改良区がその対応に苦慮しているという問題は午前中にも多く出たわけでありますけれども農林水産省としてはこうした実態を具体的にどう受けとめ認識しておられるか、午前中の答えになお乗せてお答えになることがありましたら教えてください。
  132. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) やはり都市化に伴う従来の農業用用水路、排水路の多目的利用という点から、一つ農地のダム機能が低下して、溢水とか湛水被害が発生しやすくなっている。それからもう一つは、生活雑排水、特に中性洗剤等の影響で水質の汚濁が起こっている。それから、都市化が進んだところでは、実は農業用排水路への転落事故が増加いたしまして、その管理責任を問われるという問題が起こっている。それからさらに、こういった問題の一つの帰結というか結論といたしまして、施設管理費用増高という問題が起こっております。そういった意味でのいわゆる問題の発生件数というのは、年度によって差はございますけれども、年々上昇している状況にあるわけでございます。
  133. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 これも午前中に話が出たと思いますけれども、農業集落排水事業と下水道事業とのそれぞれの特質と相違点をお教えいただき、その環境整備の推進の要望が高まる中で、こうした事業が特に農村部において進捗の度合いが低いと言われている理由の中に、種々あると思いますけれども、今後も農業集落排水事業を積極的に推進するためには工期の短縮やあるいは事業費の重点的な配分等が必要であろうかというふうに思いますが、この点いかがでございましょう。
  134. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農業用排水路や公共水面の水質を保持する視点から、また農村の婦人問題と申しますか、御婦人の強い要望を受けとめる意味においても、私は集落排水対策事業はこれからも強化していかなければならないと思っております。そこで、私どもといたしましては昨年から予算を独立いたしまして、新しい費目として独立させると同時に、実は予算全体はマイナスシーリングの状況でございましたが、二倍にふやすというふうな、かなり急激な増加を図ってきたわけでございます。しかし、今日なお農村地域における集落排水路の普及率は一・五%でございます実情を受けとめまして、計画的な事業の拡充ということに努力をしてみたいと思っております。
  135. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 農村地域の混住化の進展は、時代の趨勢とはいえ、公共用施設等の地域で必要とする土地需要に対してもこたえていく必要があることは私の立場でもよく理解できるわけでありますが、地域開発に際しては、土地、水のスプロールが生じないよう、計画的、長期的な観点からの対応が図られるべきではなかろうかというふうに思うわけです。  そこで、今回の換地制度の改善によって、非農用地に生み出し手法の拡充を行うということがありますが、このときにこれは農用地の非農用地化をもたらすという矛盾を持っているというふうに思いますけれども、この際、優良農用地の確保を図ることがまず最前提になるのだというふうに思います。この点どのように国として対策を持っておられるか。それからまた、換地センター等が行う事業の中で、こうした技術者の養成あるいは実地訓練指導というようなことについてどんな御指導をなさっておられるのか、その点についてお伺いします。
  136. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私どもも優良農用地の確保ということは非常に重要な課題だろうと思っております。農政の基本だろうと思っております。特に土地利用、水利用がスプロール化するような、虫食い現象を起こすような転用は抑えていかなければならない、これがやはり農地を転用する場合の基本的な考え方でございます。今回の換地処分等の法改正は、制度改正は末端の需要を受けとめたものでございますけれども、対象の非農用地というのは公共施設用地に限っておりますし、取得主体も市町村、土地改良区、農協等の公的主体に限っておりますし、位置、規模等については土地改良事業計画で定めるし、土地改良事業計画は知事の認可を受けなきゃならぬということになっておりますし、また、共同減歩という一番普遍的な方法でやる場合については、特に農振計画等の公的計画で定めたものに限定しているところでございます。私どもはやはり客観的に地域社会である実需はこれは受けとめて、みんなの費用負担で適正な規模で適切な場所に配置するためにはこの手法が活用されなければならないと思いますが、この乱用は厳に戒めるように指導上も注意してまいりたいと思っております。
  137. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから、土地改良区は混住化の進んだ地域でも引き続き農業用排水路の管理者として責任を今後も全うしていくべきであろうというふうに思います。しかしながら、午前中からいろいろお話が出ておりましたように、その施設管理について土地、水の農業外利用との調整といったいろいろな課題を持つ中で、複雑にしてかつ専門的な知識、経験を必要とする事柄がふえてきているのではないかというふうに思います。これはたしかお話が出ていたと思いますけれども、技術職員の確保をどうするのかというようなこと及びその教育をどうしていくのか、あわせて管理指導センターの機能のことについてお伺いします。
  138. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 申し上げます。  基本的にはやはり末端の土地改良区の職員の技術的水準の向上ということになるだろうと思います。特に、今の需要の中心になっておりますのは、今御指摘がございまして管理指導センターの問題、つまり大規模、複雑化した管理技術の問題、それからもう一つは換地事務の問題、この二つだろうと思います。この二つにつきましては、既に従来からも予算措置を講じまして所要の助成、研修等の助成を行っているわけでございます。  私どもといたしましては、こういった助成措置を引き続き維持すると同時に、国も技術者の研修とか養成等について積極的に参加をしていきたいということで、国または国にかわるべき公益法人等をしてその業務を担当さしているという実態にあるわけでございまして、こういう国が持っております、あるいは国のベースで持っております技術知識の移転ということについては特にこれから留意してまいりたいと思っております。基本的には何といっても末端では土地改良区の合併を進めながら、やはり財政基盤を確立して安定していい職員が従事できる条件をつくることであろうかと思います。こういう意味で、合併の促進と施設の維持補修に関する助成措置の問題については、今後とも推進してまいりたいと思っております。
  139. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 そのほかにお伺いしたい一、二のことがございます。  土地改良事業によって農用地等の排水能力が改善される一方で、水田の湛水能力が弱まり、中小河川のはんらんの要因となるというようなことがよく言われているわけでございます。このようなことがないように河川管理との円滑な調整を進めるべきであろうかというふうに思いますけれども、建設省等の関係はいかがになっているものですか。
  140. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まず、水田の貯水機能の問題でございますが、私どもは、水田が持っているダム機能というものは洪水調節、地下水の涵養の二面において評価していかなければならないと思います。しかし、これは土地改良事業を進め、地下水を下げ、区画を整理して他作物を導入する場合においても本質的に差はないわけでございまして、そのこと自体によって直接の影響はないと思っております。問題は、御存じのように、河川行政、治水行政との関連をどうなるかという問題でございます。  実は、水田におきます排水整備につきましては、二年ないし三年ごとに発生している湛水被害を十年に一回程度の基準で実施しておりまして、発生の確率を下げまして安全値を見た工事実施ということをやっているということでございまして、基本的には下流の洪水に及ぼす影響というのは非常に従来とは違ってきているということでございます。  それから、水田の貯水能力につきましては、私ども従来の地下水を下げ区画整理を行った場合におきましても、基本的にはやはり水の循環過程には差がないわけでございますし、また整備された水田の畦畔の高さは約三十センチという基準でやっておりまして、これにより一筆単位ごとの雨水の貯留能力が高まり、周囲に連なってくる効果を持っているものと評価しているわけであります。  一般に農業用排水路は、農業用排水路専門の場合以外に河川として中小河川であったり、例外的には準用河川である場合等もございまして、こういったものについては十分河川管理者である都道府県知事や市町村と協議しながら進めているわけでございますが、今の段階において、私、一般論としては河川管理の問題等時に河川管理に悪影響を与えるような問題を生じているような認識は持っておりません。むしろ事態は、土地改良事業が進むことによってかなり改善されてきているというふうに見ているわけでございます。  なお、具体的な大規模な工事を行います場合の河川管理との関係につきましては、これは既に建設省と農林省との間で極めて細かい協議をやっておりまして、また、相互に工事の受委託関係も持っておりまして、特に御懸念のような点はないものと思っております。
  141. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 農業用排水路の改修あるいは管理に当たって、地域の自然環境あるいは生態系や景観の保全についてどのような注意をお払いになっておられるか、そのことを聞いて質問を終わります。
  142. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 今日の社会状況のもとで私どもは農業用排水路の建設管理につきましては、一つは工作物の外観その他を周囲の環境にマッチしたものにするということ。それからもう一つは、冬期間は農業は排水の問題はないわけでございますけれども、生活用水を念頭に置いた場合、冬期間の水道維持用水を確保していくという問題。それからもう一つは、やはり暗渠化等との関連やあるいは従来の水路の改修等による空き地の発生等を利用いたしまして、敷地の緑道とかサイクリング道路としての利用等を特に留意しているつもりでございます。私どもなかなか予算制約もございますが、こういった地域社会の真剣に考えておられます環境問題との調和については、これから事業実施に当たってできるだけ好意的な配慮を払っていきたいと思っております。
  143. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 この二法案につきましては、過日もそれぞれの問題につきまして質疑をいたしましたし、現地調査をいたしました。また、参考人をお呼びいたしましてそれぞれの学識経験という立場からのお話をお伺いいたしたところでございます。きょうはそれらのことを踏まえましてまとめといいますか、二、三の問題についてお伺いをするところであります。  今度の農振法、土地改良法、いずれにいたしましても今日までこの法律の果たしてきた役割、そしてまた現時点の混住化の進んでまいりました農村におきまして、さらにまた農業の形態も大きく変わりつつある、こういうものを踏まえまして農業振興地域整備計画の拡充、交換分合の制度とか協定制度の創設とか、こういうものが新たに一部改正になるわけであります。  過日の委員会でも私は何度も申し上げましたが、やはりこれからの農業を合理的な、そしてまた生産性の高いものにしていかなければならない。大臣も当初にビジョンといいますか、あるべき姿ということについてもお話がございましたけれども地域農業集団の育成ということが何といってもこれから一つの大きな課題であろうかと思います。そういうことからいいますと、最近の農林省からいただきましたデータを見ますと、受委託の推移というものはいろいろ出ておるわけであります。ストレートに規模拡大という形にはいかないといたしましても、いろいろな形態があり、その中で受委託の推移で五十六年度農業調査のデータが出ております。  これを見ますと、専業、一兼、二兼でそれぞれ作業委託の内容が異なるようであります。やはりどちらかといいますと作業委託の中の乾燥調製というところはウエートが大きいようであります。農家の方々の意識としましては、やはり自分の農地については自分でという意識は強いのだろうと思うのであります。しかし、今日のこのような社会情勢の中にありまして、どうしてもこの仕事だけはということで委託する作業委託というものが自然こういう形に進んできておるのだと思います。  こういう戸数、面積にわたりましてデータが出ておりますが、私は面積よりも一兼とか二兼とか専業とか、こういう一兼、二兼の方々の推移ですね、この方々の一つは季節、春先その地域での、二兼の方々ですとお仕事の関係でどうしてもこの仕事だけは作業委託をしなきゃならぬという方もいらっしゃるでしょう。また、秋口についてはどうしてもという方もいらっしゃるのかもしれません。こういう農業調査のデータ等、作業委託のこういう姿の中から農林省としましてはこれはどういうふうに受けとめていらっしゃるのか。これは五十六年ということでのことでありますけれども、これからどんどんこれは変わっていくのだろうと思います。今後これがどういう形に推移すると見ていらっしゃるのか、まずその辺からお伺いしておきたいと思います。
  144. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 水田の作業過程、特に労働力のピークという視点から見ますと、やはり田植え労働、刈り取り、脱穀労働については作業の委託が引き続き多い姿は変わらないだろうと思います。    〔委員長退席、理事北修二君着席〕  問題は、ただいま藤原委員から御指摘もございました全作業の委託でございますが、これは出し手は圧倒的部分が第二種兼業農家であるという実態があるわけでございます。かたがた個別の調査等を通じて見ますと、やはり規模の大きい中核農家が平場の水田等では作業の受委託から入って段階的に利用権の設定につながっていくという事実は報告されているわけでございます。そういう意味におきましては、私どもは水稲作に問題を絞って考えるなら、やはり第二種兼業、通勤兼業農家から中核農家への作業の受委託はこれからもなお増加するであろうし、また、その増加の過程を通りながらそれが逐次利用権の設定というものにつながっているというふうに見ていいのではないだろうかと思っております。  これに対して畑作農業等ではわりあいストレートに、既に内日本等においても先ほどの飼料作物の問題、あるいは露地野菜の問題等に代表されますように、あるいは施設野菜の問題に代表されますように利用権の設定が生まれてきておりまして、むしろ利用権の設定に直結した形で規模拡大が進むのではないだろうかと見ています。
  145. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 過日、静岡の大須賀町に視察に行かしていただいたわけでありますが、やはり都市計画の線引きは順次見直され、そしてまた、農地の壊廃はどうしてもせざるを得ないということでそういう計画が進められる。ここでは町長さんは、国道沿い五十メートルは優良農地として残すのだということでありますが、どこでもそういう形ではなかなかいかないのだろうと思います。  過日も申し上げましたが、こういう優良農地確保ということは、マクロ的に見まして農林省としては非常に大事なことなのですが、現場へ参りますと、やはり都市化の進展というのはどうしようもない一つの大きな波であるということです。今度の交換分合制度ということについて、これは確かに制度自体はこれからの農業の中で必要であることは私どもも十分わかるのでありますが、ある地域では平場からどんどん里山の方に農地が押しやられるような形になる。これもこの前のときにいろいろ申し上げたのですけれども、そういうことから、これは優良農地確保するという強い意志の上に、意志といいますか、法的な運用というものをしっかりいたしませんと、優良農地の壊廃というものがどんどん進んでいく危険性があるのではないか。  これもこの前いろいろ申し上げたところで、やはりこの法の運用という上から、平場の優良農地というものを確保するということに相当ウエートを置いた今後の考え方というものをきちんといたしませんと、その地域地域のいろいろな諸問題については、画一的にはここで申し上げるわけにはいかないのかもしれませんけれども、私ども現地でいろいろ見ておりますと、平場のだんだんと都市化した優良農地というものがどんどん宅地化の波に寄せられて売買される。それで今度は山手の方の何倍もの土地を取得するということで、その村にいらっしゃる方ではなくて、別な方が土地を取得するということが、二、三にとどまらず話を聞いておるわけであります。どこまで規制ができるかということは問題でありますけれども、少なくとも、二度と返らない優良農地確保ということの上から、この法の運用というものについては厳格であってもらいたいという気持ちがしてならないのでありますけれども、この点について局長のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  146. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 優良農地確保、特に集団的な農地確保で、土地改良等の投資が行われた農地確保ということは、私どもが基本的に構造政策をとり、農政を論議する場合の出発点であろうと思っております。  ただ、私が申すまでもなく、日本の林業以外の利用可能地というものは十二万平方キロでございまして、その半分が農地で、残った半分が宅地その他である。そういった需要が客観的に増大してくる場合、これをどう受けとめるかということを考えるとすれば、平場の農地がある程度転用されて山場に立地移動を起こすということは、やはり人口の増加なり経済の発展の中で受けとめていかなければならない対数的な関係もあるわけでございます。問題は、この対数的な関係が放置されたままですと、土地、水利用のスプロールを起こし、農業の効率を妨げると同時に、従来の投資をむだなものにしてしまうというところに基本があったろうと思います。  そういう意味におきましては、いわゆる都市計画法、農振法を通じまして、端的に言うと市街化区域と農用地区域の問題になるわけでございますが、線引きの見直しに当たりましては、二十ヘクタールを超えるような集団優良農地確保、あるいは土地改良投資が最近に行われた地域確保ということを最重点に置き、土地、水利用のスプロールを抑えながら線引きの見直しを行うと同時に、農地転用事務についてもそのことを基本に置いて事に当たってまいりたいと思っております。  今回の法改正におきます生活環境施設用地等の生み出しについても、地域社会の要望にこたえながら公平に、適正な位置で、しかも妥当な規模でそれが行われますよう十分配慮して法制化を考えたつもりでございますし、また、その指導もやってまいりたいと思っておるわけでございます。
  147. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 そういうことから言いますと、農業の振興ということと林業とのかかわりですね、この農業振興地域整備計画は、林業の方に実は森林計画の制度があるのですが、これとどう整合性を持たせていくのか。里山は大体七十何万ヘクタールですか、こういうことも言われ、里山開発、さらにまた、採草放牧地やいろいろなことで利用ということについては今日までも議論されてきたところでありますが、今後のあり方としまして、森林の方は森林計画という一つの制度がきちっとあるわけで、それとこの農業振興地域整備計画というものをどのように、接点といいますか、計画の整合性というものを見ているのか。  それからもう一つは、里山開発というのは今後も大事な仕事であることは論をまたないのでありますけれども、最近は、やはり大規模化ということで大きな面積について開発が進められる、そういうことのためにいろいろな支障が出ておるわけであります。過日もいろいろな議論がございましたけれども、不法面積にわたりまして伐採が進みますと、それが下流域に土砂崩れとか、それから雨量の多いときには、そのための大量の水が出まして下流域に大きな被害を及ぼす。こういう地域性というものも考えませんと、最近は大規模な開発ということに重点が置かれて、どうしてもこれが大きくなるということになりますと、今までそういう水の余り出なかったところに大きな水が出て下流域に被害を及ぼす、被害を大きくするということが懸念をされるわけであります。  その辺については、今日までもいろいろ災害のたびに議論もされておりますけれども、この農業振興地域整備計画と森林計画の問題については、それぞれの立場計画を立てるわけでありますけれども、この整合性について、また、今後の災害という視点の上からもこういう問題については十分に考えていくべきだという、この二点についてお伺いしておきたいと思います。
  148. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 今回の八条三項の法改正は、地域において一体的に経営されております農業と林業の相互補完と協力関係に着目して規定を定めたものでございます。  具体的に申しますと、林業の振興プロパーではなくて、例えば、林間放牧による林地の地力増進、間伐材の農業的利用ということは農業の立場からも必要であると同時に、やはり森林資源の充実強化につながるという意味で重視していいものだと思っております。こういった問題を中心に農業の振興と林業の振興のそれぞれの接点の場所における調整ということを留意する必要があるということで規定したわけでございまして、やはり、こういった試みが次の段階において農村計画的なものからさらに山村計画的なものへの展開につながってくるものだろうと思っておるわけでございます。  さて、問題は里山開発の問題でございます。  私も、御指摘のように、例えば、大規模な地区における改良山成り工によって代表されるような工事の方法が常に適当かということについては、十分反省しなければならない面があるだろうと思います。里山、俗に四百万ヘクタールあると言われておりますが、その里山の中でもいわゆる集落に近接した地域の里山につきまして、これは小規模な開発というもので集落ごとの農業の構造改善に直結させていくということが重要であろうと思います。そういった点を重視して今回の林地の交換分合の制度を法改正をお願いしているわけでもございます。  また、ある程度大規模なものにつきましては、やはり国土保全機能を重視するということが非常に大事なことであることは御指摘のとおりでございます。防災施設としては土砂の扞止林とか砂防ダム、排水路の設置ということを従来もやってきているわけでございますが、事業についても工事に当たってもそういったことを十分配慮して事業が進められるよう考えてまいりたいと思っております。またさらに、それぞれの地盤の従来の植生を生かすということも国土保全上重要なことだろうと思いますので、そういう点も工事に当たっては配慮さしてまいりたいと思っております。
  149. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 また、先ほどもお話ございましたが、計画の中で重要な一つは、良好な生活環境を確保するための施設、さらにまた、農業従事者の安定的な就業の促進、これは今日までも農村地域工業導入促進法とか、こういうことで推進してきたことについては先ほど来いろいろ議論がございました。この工場導入のできる地域地域差がございますから、それぞれの町村でいろいろ頭を痛めながら今日まで法制定以来進めてまいりました。こういう低成長の時代でありますから大変な困難があったろうと思います。  データ等を見ますと、地元での雇用というものは、また農業従事者というものはパーセントは最近はそう伸びていないような数字が出ているようであります。さらに最近、一・五次産業というのですか、こういうことで山村でもそれぞれの町村で、一村一品じゃございませんがいろいろな工夫をしていらっしゃる。そういうことに対しまして、今日までも新農業構造改善事業とか、第三期山村振興農林漁業対策事業とか、新農村地域定住促進対策事業といういろいろな事業がございまして、それぞれの趣旨と内容と対象、また補助率、予算、こういうものが組まれて今日まで進んでまいりました。当然地域農業の発展のためにこのたびの農業振興地域整備計画という中で、地域発展のためにこういう制度とかみ合わせたものも考えていかなきゃならないというのは当然のことだと思うのでありますが、今日ございますこういう事業というものと、今度の地域整備計画はどういう形にこれが進んでいくのかということ。  それから、特に山村地域におきまして新しい、今までのように放置されがちな山村というものに対しまして、若い人たちもだんだん眼を向けて、この山村の中で新しい生き方、そしてまた何でも合理化主義に徹しておりました今日までの生活様式が、また昔の形にだんだん戻りつつある、こういうことで非常に意欲を持って取り組んでいると私どももいろいろ聞いております。本年度の予算もそれぞれに頑張っていただいたと思うのですけれども、それは六十年度予算におきましても、ようやくこういう芽が出つつあるということで、山村振興、その地域の一・五次産業と言われておりますこういう山村における産業の振興にはぜひ力を入れていただきたい。今度のまた予算等につきましても御努力いただきたい。  マイナスシーリングとかいろいろ言われておりますが、今日までのこの低滞産業の中で山村が顧みられなかった長い時期がありました。最近そういうものに対して見直されつつある。ようやく今こういう芽が出つつあるときでありますから、これには是が非でもその芽を摘むことのないよう大きく育てていただきたい。これは、予算のことについては政治的なお力を発揮していただくためには大臣からお聞きしなきゃならないと思いますが、こういう予算とそれぞれの事業というものをさらに育成強化していくということで、大臣の御所見、そしてまた、このたびの法改正とこれらの事業との兼ね合わせについては局長からお伺いをしておきたいと思いますが。
  150. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生の言われますように、確かに近年山村を見直すというような傾向が出てまいりまして、私ども喜んでおるところでございます。  農村地域におきましては、農村地域工業導入促進法に基づく工業導入の促進、そして安定的な就業機会の確保とあわせまして農業水産物の利用加工などの地場産業の育成、また、観光農林漁業の振興による安定した就業機会の確保が必要であるというぐあいに考えます。このために農林水産省におきましても、従来から農業構造改善事業などの各種の総合助成事業によりまして農産物の加工、観光農林漁業等を振興し、地域資源を活用した就業機会の確保を図ってきたところでございます。さらに、五十九年度には新農村地域定住促進対策事業を発足させまして、農林漁業の振興、農林漁業関連地場産業の育成、農林漁業関連観光開発と、これらによりまして安定した就業機会の一層の確保に努めてまいるというつもりでございます。
  151. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘がございました就業改善と他の諸施策との関連でございますが、私どもやはり就業改善の問題は、一つは工場の導入という視点からは、農村地域工業導入促進法の特に遠隔地に着目した広域的な実施ということと、今回の市町村レベルにおける新計画の見直しにできるだけ直結さしてまいりたいと思います。さらに、通産省のテクノポリスの法律等との連携も十分先端産業に着目して重視していきたいものと思っております。また、地域別雇用調整という問題に関しましては、労働省の地域別雇用調整政策の活用ということについても計画を受けとめて、積極的に考えてまいりたいと思っております。
  152. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 それから、私から申し上げるまでもなく、山村地域におきましては、農業の傍ら林業をなさっている方々、また非農家、林業に重点的に、重点的といいますか、林業に専念なさっている方、こういう方々がいらっしゃることは御存じのとおりでございます。農業兼業といいますか、こういう形でいるのは百九十八万、非農家の方々が十六万と、一応こういう戸数で言われておりますが、この農業振興と林業の振興との関連というのは一体不可分なものであって、先ほどもお話ございましたように、林業の振興という林業の計画、また農業振興地域計画というものと一体不可分のものである。この林業につきましてもいろいろ議論のあるところでございます。  しかし、最近林業、特に里山といいますか、そういうところにつきましては、若い人たちも何とか定着するような形で、そこに一つの何らかの、観光はもちろんでありますけれども、そのほかの産業、そこでまた生活の場をということで努力していることは御存じのとおりです。こういうことで、農業振興と林業という関連性というものがますますこれから重要になってくるのだと思います。現在外材に押されて林業が非常に低迷状態にあるわけでありますけれども、それだけにこの里山における開発ということが非常に待たれ、そしてまた、今お話ございましたそれらの事業というものが有効適切に働くことが大事なことだろうと思うのであります。  ところで、この里山の利用方法についてはいろいろなことがありますが、採草放牧地として酪農とか肉牛とか、こういうことで、特に国有林についてはそういう放牧地として利用させるべきだということが言われておるわけであります。また、現在もそういう方向に進んでいることは私どもも十分存じておるのでありますが、この国有林の利用につきましては、私ども各地を回りますと、非常に条件が厳しいということや、また、国だからただで貸せということを言っているわけじゃないのですけれども、非常にその土地の状況からしますと決して安くはないということ。何せ放牧地として半年間放牧をするということで、それはそれなりの地域にとりましては非常に大事な役割を担っているわけでありますけれども、もう少し条件緩和といいますか、利用のしやすいような形でこれは国有林の方も考えてはどうか。  きょうはそういうことについて一々固有名詞を挙げてどこで何がどうだということを言うつもりもない。後日また時間を見まして一般質疑のときにやりたいと思いますが、そういう各地でいろいろな要望のあることもお聞き及びだと思うのであります。今後こういう形で推進をするということであるならば、当然それに見合った地元農家の方々の利用しやすいような形で進めるべきだということを私は痛感をするのですが、そういうことについて今まで何かお聞きになったことがございましたら、さらにまた、そういうことは別としましても、今後そういう形で進めるような問題についてはお取り組みをいただくということで、お考えをお聞きしておきたいと思うのですが。
  153. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘の点は従来からも重要な課題でございまして、国有林の活用につきましては、現行法の第二十二条第二項において、「国は、林業基本法第四条の規定の趣旨に即し、農業振興地域における農業の振興に資するため積極的に国有林野の活用を図るように努める」と規定されているわけでございます。現在全体で見ますと、四万五千ヘクタールの国有林で農用地の造成が行われ、さらに二千三百ヘクタールの国有林で林間放牧が上げている実績があるわけでございますが、地域社会においてはなかなか御不満な向きもあるし、またいろいろ林野に事情を聞いてみますと、実は貸したところがちっともうまく利用されていないという貸した立場からの不満などもありまして、私どももなかなか難しいと思って見ている点はあります。  しかし、基本的にはやはり里山の利用ということで、農業的利用、あるいは都市と農村の交流等を通ずる観光的利用、さらに良好な住民による管理ということを基本にして里山の問題を考えていかなきゃなりませんし、またその場合に、御指摘のように国有林野の活用が重要な意味を持つ地域は東北その他たくさんあるわけでございます。そういう意味におきまして、やはり国有林野の活用につきましては、それが農用地造成の元地として利用されるという側面以外に、御指摘の林間放牧の面も含めまして地域社会の要望を取り上げて効率的な農業的利用が行われるよう私ども努力してまいりたいと思います。御指摘の点はよく林野庁の方にも伝えさしていただきます。
  154. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 大臣、今お話ございましたけれども、これは農民のエゴで言う面もそれはないとは言えないのですけれども、国だからただでというそんなことで言っているのじゃ決してないのです。また、それは国有林を管理する立場から言いますと、それぞれの管理責任という立場からいろいろ言い分もあるのですけれども、今局長からお話ございましたように、やはりお互いに協議をし合って、最近の酪農それから肉牛という振興策がとられ、法律改正までしてやろうと。特に大臣は、日本の酪農家に、また畜産農家に被害を及ぼさないようにという御発言もあったわけであります。  これは、よく現地のいろいろな問題についてはお話をお聞きいただきまして、生まれたときの子牛が幾らか、育てるときにどのぐらいのコストがかかるのか、そういうものと販売するときの価格というものが全部一貫して農家経営ということになるわけでありますから、非常に大きなウエートを占める問題であることは御推察いただけると思うのです。みずからアメリカへ行って交渉に当たってこられて胸を張って帰られた大臣、これは畜産振興ということの上から非常に重要な意味を持つということで、今後、林野庁も所管していらっしゃるわけでありますから、十分に御検討いただいて、地元の要望というものに耳を傾け、また、畜産振興の方向にそれが進むように御努力いただきたいと思いますが、大臣どうでしょう。
  155. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 今言われました、国有林をいわゆる畜産にどういうぐあいに利用していくか。これは林野庁とすると、管理責任そのほかいろいろな問題があろうと思います。しかし、少なくとも国有林野の有効利用ということを考えますれば、これは地方の実態をよく見てみまして、何とか有効利用できる面はそれでやっていきたいというぐあいに前向きに考えてやってまいります。
  156. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 いろいろございますが、農振法の方は以上です。  土地改良法につきましても、今度市町村の協議制度とか総代会制とか何点か改正点があるわけであります。農村における下水処理施設、こういう施設の現状というものは非常におくれておることは先ほどお話がございましたけれども、ただ平場で、過日、静岡の大須賀町のように海水よりもちょっと低いなんというので、ひょっとすると高潮のときには水が入ってきて除排水が大変だと、こういうところもございまして、そのポンプアップのための施設が必要だということ。それから山手の方ですと、今度は貯水池の上といいますか、非常に海抜の高いところに集落があるというところもあるわけでして、こういう最近の都市の人口集中化のために、そしてまたさらに、一人当たりの水量の使用量の増大のためにダムをつくらなければ需要に間に合わないということで、どんどん上水道のダム建設が進んでいる。そういう中にありまして、集落がそれよりも上にあるということで、雑排水がそこに流入するような地域も私どもは何カ所か見ております。    〔理事北修二君退席、委員長着席〕  具体的には宮城県の釜房ダムなんか、その上に川崎町という町がある。こんなことで、釜房ダムから来る水は非常に良くて飲めない、水道水が非常に汚れておるということが問題になっておるのです。早くその川崎町の排水処理をどうするかということですが、これは大変なお金がかかることでありますので、農村におけるこういう下水道施設の整備というものも非常に急がれる問題です。またその場所によって、地域によりましてその必要性の重要度というのは非常に緊急を要するものもある。  ところが、こういうマイナスシーリングの時代なものですから、静岡のように除排水をしなきゃならないところ、そしてまた上水道のために我が町の水をきれいにしなきゃならないところ、それぞれの地域で緊急を要するようなところにつきましても、災害で被害を受けますと災害の対象として比較的そういう事業は進むのですけれども、そうでない場合はなかなかこれが進まない。財政的な問題になることはもちろんでありますが、こういう都市化の波の中で今農村におきましても都市と同じように下水施設等の処理施設等は急を要する現状にある。  こういう問題については、これはやはり優先順位等で早く進めなければならないと思うのです。ことしの五十九年度の予算、ちょっと調べてきませんでしたからあれですけれども、こういう集落等においての下水施設、処理施設についてはどういう状況になっているのか。また、来年度についてもこれをさらに進めるために、予算措置等についてはせっかくこういう計画を立てても現実これが絵にかいたもちにならないように、財政的な裏づけをぜひ進めていただきたいと思いますが、どうでしょう。
  157. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のように、集落排水事業は農村の生活環境整備という意味からも、あるいは農業排水路や公共水面の水質保全という視点からも大変要望が高まっております。昨年から予算を独立させまして、昨年は二十一億七千万の国費を計上いたしました。ことしはマイナスシーリングのもとでございますが、これだけは倍増させようということで四十三億三千万の予算を計上したわけでございます。まだまだ足りないというのが実情でございますが、私ども実は緊急に集落排水整備を要する集落数として六千八百五十集落の希望をまとめておりますので、これを整備目標として当面予算確保とその早期完成に向けて努力してまいりたいと思っております。
  158. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 大臣、今、去年よりことしは予算が倍になったということのようでありますから、これは都市住民にとりましては非常に重要なことでありますが、財政の弱い町村が相当な投資をしなきゃならないということであり、それなりの財政的な裏づけがなければ計画は進まないということで非常に重要な意味を持っておりますので、ぜひ今度の六十年度予算の中でもこれをさらに推進するということで御努力をいただきたいと思うのであります。  それから、土地改良の問題については過日いろいろ議論提起をいたしましたから、一つだけ申し上げておきたいのは、土地改良事業も第三次が始まった。第二次は財政の非常に大きなあおりを受けまして、計画も半分そこそこで進まなかったということであります。私は農地、農用地の造成とか土地改良事業とかという問題については、農家の一番の生産手段である農地確保ということでありますから、これはやはり計画計画として進めていただきませんと農家の方々の生活が成り立たない。  さらにまた、四十年から御存じのとおり減反政策が進んでまいりましたために、当時の改善事業でどんどん進んでおりました事業が、今度は途中から水田でなくて畑にということに変わったり、四十年代前半で計画されたものが工期はおくれる、それから水田ができるはずのものが途中から半分は畑地になる、こういうことで農家の方々が当初計画していたものが、なかなか自分の思うように事業が進展しないために大変に苦悩しておる。全国各地の国営県営、いろいろなパイロット事業等についても私ども四十年から五十年にわたりまして全国を調査して、また、この委員会でいろいろ提起をしたことがございます。  私の生まれ故郷の近くの秋田の能代のパイロット事業なんかはまさしくその典型的なもので、何度か当地へ行ったことがございますけれども、これは四十三年に着工をしたものが今日まだまだ四三%の進捗である。土地によって畑地にできるところとできないところとある。ですからこの事業を進めてもらいたいという人も全体の二千七百五十世帯の農家の方々の中に三百四十そこそこの方はいらっしゃるかもしれませんが、しかしそれと同じぐらいの方々は、もうこれ以上工期が長くなるのではとても負担にたえられない。受益者負担にたえられない。とてもこの事業を行っても経済効果が出るとは思えない。やはり工期が長くなってそしてまた途中で計画が変更になるということになりますと、どうしてもこういうことに農家の方々、その当事者というのは大変な苦悩の中に打ちひしがれてしまうというのが現状だろうと思います。  しかし、四十年の後半から五十年にかけましてのオイルショックという大きな経済変動がありましたから、立てた計画がスムーズにそのまま進むということは難しいことかもしれませんが、事農業につきましては、途中での大きな変更というのは大きな犠牲者を出すのだということです。何の作業でも同じかもしれませんけれども、特に農業につきましては、事業計画というものがおくれればおくれるほど大変な負担を強いられるということの一つの典型みたいなものだと思います。これは各市計画の延びたところについてはそれなりに大変ないろいろ対策を講じ、協議をし、進めておるようでありますが、非常に能代のパイロット事業は極端な一つの例じゃないかというふうに私は思うのです。  土地改良事業につきましても、三十二兆ということで計画を立てて進めることになって、過日も大臣から、こういう計画については着実に進めていきたいというお話がございましたが、何せ計画を立てましてもその裏づけになる財源がなければ事が進まないのは当然のことであります。農業の近代化、合理化、生産性を上げるということを叫ばれましても、その基盤をつくるところが進まないということでは、これは言葉のみあって現実が前進しないのは当然であります。こういうことから事業計画、これは一年、二年の狂いのあるのはやむを得ないとしましても、五年も六年も七年もこの計画がとんざをして事業が進まない。途中でそして大きな、大幅な変更がある、こういう農業の問題についてはそれは余りにも農民に大きな負担をかけることになるのではないか、こういうことで、今後の計画等につきましても是が非でもこの計画推進のためには慎重な計画であっていただきたいし、また、それを着実に実現していくための特別な手だてといいますか、政治的な配慮がなければならないのではないか。  今日のように農業、それはもう他産業に比すべくもない現状の中で、農業が他産業から見ますと大きなおくれをとる、こういう中でこの農業振興策をどんなに叫んでもそれがなかなか聞き入れられないというようなことでは将来日本の大きな発展のためには重大問題だと思います。大臣も当初、農業の今後のビジョンにつきましてもいろいろ述べておりましたが、これらのものを推進するためにも農林省でいろいろ事業計画がございますが、一〇〇%狂いのないようにとは申しませんけれども、これらの計画の着実な推進、前進を全力を尽くして進めていただきたいことを私は強く要望いたしておきたいと思うのであります。それぞれの答弁をいただきまして、終わりたいと思います。
  159. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生が今おっしゃいましたように、第三次の土地改良長期計画におきまして三十二兆八千億ということが昨年度から発足いたしまして、先ほどお話がありましたとおり、昨年、本年と二年間で約一一%の進捗状況ということでございます。現下の厳しい財政状況からいうと、六十年度に大幅な好転を期待するというのは無理かもしれませんが、しかし、やはり何といいましても農業基盤整備事業というものは構造政策の中の中核的施策の一つと考えております。今後とも所要の額の獲得に全力を尽くしてまいりたいと思いますし、また、この予算獲得をいたしましてからも効率的にこれを運用することによりましてできるだけ所期の目的に近づいてまいりたいと思います。しかし、あと八年あるわけでございますから、ひとつこの長期計画達成に向けまして最大限の努力を払ってまいります。
  160. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) こういう御時世でございますから、事業の採択につきましては私はやはり慎重な取り扱いが要ると思います。関係農家に部落座談会を通じて十分に理解を求めると同時に、法制上の三分の二の同意だけではなくて、できるだけ高い同意率で採択をしていくという慎重な姿勢をこの際特に重視してまいりたいと思います。この場合、場合によれば、途中からするわけにはまいりませんから、地区除外を当初から考えるという場合には考えてもいいのではないか、そういう弾力的な運用を考えております。予算確保に努めることはもちろんでございますが、事業の施行に当たっては設計基準の弾力的適用なり、地元の創意工夫を生かす工法等の問題についてはさらに努力をしていきたいと思っておるわけでございます。
  161. 下田京子

    ○下田京子君 農振法、土地改良法質問当たりまして、基本的にやはり押さえておかなければならないのは、私ども農地の総量確保をいかにして図るか、むしろ農地の拡大をどうするか、これが大変重要ではないかということをまず御指摘申し上げておきたいのです。  そこで、今回の二法の提案理由を見ますと、共通していることが何かというと、混住化等による農業生産の基礎である土地、水に対する非農業部門からの影響が強まる、そういう現状認識からしていわば調整を図るのだというのが大きなねらいになっているかと思うのです。果たしてこれだけでいいのだろうか。特に農業生産を発展させて自給率を向上させていくという立場から見れば、やはり農地の絶対量がどうなっているか、この点を見てみなければならない。これを見ますと、昭和三十五年に六百七万一千ヘクタールであったものが四十五年に五百七十九万六千ヘクタール、そして五十八年が五百四十一万一千ヘクタールということでどんどん減少してきているわけです。こういうことについてどういう御認識をお持ちか、そしてまた、その歯どめをどのようにしていったらいいか、基本的な御認識をお聞かせください。
  162. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のように、農地の面積が減少していることは事実でございます。戦後三十年間の流れを見ますと、約百五十万ヘクタールの農地が壊廃されておりまして、これに対して約百万ヘクタールの農地を造成し、差し引き五十万ヘクタール前後のところで減少し、大体現在はその水準は横ばいになっているというのが実態でございます。  毎度申し上げて恐縮でございますが、我が国の土地利用を考える場合、林業以外に利用可能な土地というものはいろいろ条件を設定して考えてみますと、傾斜度とか、高度とか、やはり十二万平方キロ程度である。いわば従来その半分が農地であり、半分が多目的の土地需要に充当されていたものが、やはり経済の発展と人口の増加の中で農地を壊廃して新しい需要に充当されていく。私どもはこういった客観的な需要は需要として受けとめながら、一つはやはり新しい農地造成をできるだけ外縁の場所において確保し、それを特に成長部門である畜産の生産に直結させていくという施策をとってきたわけでございます。  そこで、第二に壊廃等の抑制をどう考えていくか。基本的には私どもはやはり農地法の転用許可、農振法に基づく線引きの枠組みの中で守っていくことが基本であろうかと思います。いろいろ議論はございますが、一つは、農振法に基づく農用地面積の指定は毎年着実に増えてきておりまして、そういう点は御案内のとおりでございます。また、壊廃全体もやはり一つの経済成長の鈍化の中で、また、地価のある程度頭打ち現象の中で幾らか頭打ち現象になってまいりまして、例えば転用面積を例にとる場合においても、四十年間における膨大な転用規模に比べると、現在では大体その四割程度ぐらいまで落ち込んできているということは数字として御案内のとおりなわけでございます。  私どもといたしましては、こういった一方における積極的な農地造成への取り組み、他方におい ては農振法、農地法の適切な運用ということを通じて問題に当たるべきものであろうと考えております。
  163. 下田京子

    ○下田京子君 積極的に農地造成をしていこうというふうなお話があったわけなのですが、ここ二、三年の年間の人為的壊廃の面積を見ますと、三万五千ヘクタールから四万ヘクタールが壊廃されておる、御承知だと思うんです。具体的にやはり問題なのは、農振白地における壊廃が進んでいきますと、やはり農地の総量確保というのが非常に困難になっていくのではないかと思うのです。  農振法が制定されて以降を見ましても、昭和四十五年に約五百八十万ヘクタール、それが五十八年には約五百四十万ヘクタールということで、この間だけでも四十万ヘクタールも減少しているわけです。ですから、今のお話では一生懸命やっていこうということなのですけれども、農振法が制定されてからでもこういう格好に減少している。これが一つです。特に人為的壊廃がこの間に九十万ヘクタールにも及んでいるということです。農振法が農業サイドからの領土宣言と言われておりますけれども、そういう意味では確かに無秩序な農地壊廃という点で一定の役割は果たしていると思うのです。農地減少という点で、農振法がその歯どめ的な役割を果たさなかったということを私は現実が物語っているのではないか、こういうふうに申し上げたいのです。  つまり農振法の限界がある。特に線引きの問題なのです。その線引きの中でも、今さきに申しましたけれども、農振地域の白地の問題です。五十七年度末つまり五十八年三月三十一日現在、一番新しい資料ですけれども、農振地域内に採草放牧地を含めた農用地面積が幾らかといいますと五百四十二万ヘクタールでございます。うち農用地区域に取り込んでいるのは四百七十五万ヘクタールであります。ですからその差は言ってみれば農振地区の白地になるわけです。その白地部分の六十七万ヘクタールの扱いが非常に重要になってくると思うのです。この一筆転用許可地域と言われる農振地の白地地区の壊廃がどんどん進んでいく。やはり局長が、総体として農地造成を図りたいのだとおっしゃいましたけれども、現実はそういかないと思うのですが。
  164. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) これはいろいろな物の見方があると思いますが、私は今日の自由な社会の中で固定的に、しかも、経済が発展する中で農用地の面積を抑えていくということはなかなか難しい問題である。問題はやはり壊廃に対して、特に人為的壊廃に対してどういう有効な歯どめをかけていくかということが一つであろうと思います。いろいろ御指摘がございましたが、実は農振地域の面積は指定以来ほとんど全体として変わっておりません。農振白地面積は減っておりますが、農用地面積はふえております。統計としての農振地域の面積は大体トータル同じ数字で推移しているということは御理解を賜りたいと思います。
  165. 下田京子

    ○下田京子君 農振地域がふえているかどうかではなくて、農用地実態がどうなのかという農用地面積そのもので私は伺ったわけです。特に農業振興地域の問題で指定のあり方なのですけれども、特に法体系上、農振法と都市計画法とを比較して考えてみたいと思うのです。  農振地域を指定する際に、まずこれは法律が通った後、四十四年に農林事務次官通達が出ていると思うのですが、市街化区域は農振地域に含まない、まず一つですね。同時に、市街化区域以外でも既成の市街地の区域は含まない、こうなっています。さらに、今後おおむね十年の間に市街化する見込みのところも省きましょうというふうになっているわけです。じゃ一方、都市計画法の都市計画区域にはこういった形で農振法の農用地区域を除外するというふうになっているのでしょうか。なっていませんね。そういう点から見ますと、農振法とそれから都市計画法ということを比較した場合に、平等だというふうには言えないと思うのです。線引き上都市計画法がやはり優先しているというふうに私は指摘せざるを得ないわけです。
  166. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) これはいろいろな物の見方だろうと思いますが、私は必ずしもそう思っておりません。ちょっと先ほどの数字で申し上げたのでございますが、農用地面積自体は農用地区域の面積全体は広がっておりますし、農用地区域内の農地面積も四十九年の四百二十万ヘクタールに対して現在は四百四十九万ヘクタールということでございまして、御指摘のように白地地域で減っているというのが実態だろうと思います。  そこで、問題は農振法と都市計画法との関係でございますが、私が申すまでもなく、市街化調整区域は市街化を抑制するべき地域という性格で考えられているわけです。それから逆に農振法の中で、農用地区域がいわゆる優良農地として保存すべき農用地の区域ということになっておりまして、いわば市街化調整区域と農振白地の部分は制度としては先生がおっしゃるように、特に優劣をつけているわけではないのです。ただ問題は、市街化を抑制すべき区域である市街化調整区域の開発許可の運用を現実の実態に応じてどうやっていくかという問題であるというふうに私は理解をしております。
  167. 下田京子

    ○下田京子君 局長がそう理解しておっても、市街化区域の中にはもう一定きちっと守られているけれども、線引き上で言えばそれに農振法が付随するような格好になる。それは、特に都市計画区域中の市街化区域には集団的優良農地は含めないというふうに言われておりますが、集団的農用地は努めて含めないというふうにうたっていると思うのです。つまり、二十ヘクタール以上の集団農地でも、十アール当たり収量が平均以上の優良のところは含めないけれども平均以下のところはできるだけ市街化区域に入れないでくださいという姿勢になっている。そうですね。うなずいております。しかも、集団的優良農地であっても、特例ということで必要最小限度との条件つきながら、基本的には市街化区域に含めることができる、こうなっているわけです。そうですね。ということは、つまり都市開発優先の線引きであるというふうに指摘申し上げたいわけなのです。
  168. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 実は、そこが若干御認識の相違がある点でございまして、余り御議論を申し上げる気持ちもございませんが、本来自由な土地所有に対して、国が政策目的に従ってどこまで介入していくかという問題として基本的に農地法があり、それから他に農振法があり、都市計画法があると考えております。したがって、線引きの問題はその手段というふうに御理解を賜りたいと思います。  私ども、やはり事実として考えていくならば、現在市街化区域の農地というものは約二十万ヘクタール程度でございまして、全体の農用地面積の四%前後のものでございますが、実際は宅地に充当されている農地のうちの半分が市街化区域の農地からも入ってきているという実績が示しますように、私はやはり制度として所有者自体も宅地化し、都市的利用に充てることを希望し、また制度としても自由化した部分で優先的に、この例が示しますように、都市的利用に充当させて、全体としては枠組みは守られているのではないだろうかというふうに存じているわけでございます。
  169. 下田京子

    ○下田京子君 そういう御認識だから農地が守れないのだと思うのです。今手法であると、線引きは。これは手法じゃないのです。きちっとした領土宣言というような話も出ておりますけれども、どちらを優位に立てているかということなのです。  そこで、再度くどいようですがまた申し上げます。一度線引きしても、都市的開発が進んでくると、調整ということでもう一回見直しという手法がとられますでしょう。ですから、農振法のサイドからは、都道府県知事の定める農振地域整備基本方針について、工業化、都市化の予想外の進展等があった場合には、遅滞なく整備基本方針を変更するということになって、農振地域の線引きそのものを見直されていくわけです。さらに、市町村が定める整備計画も再検討し、遅滞なく所要の調整を行わなければならないということになっているわけです。  こうした方針のもとで、五十年から五十八年に第一回の線引き見直しが実施されております。資料もいただいております。そのとき、市街化区域に五万六千ヘクタール編入されています。うち農地が一万三千ヘクタールです。しかも、この中に農用地区域の農地が千二百ヘクタール市街化区域に編入されているのです。つまり、一度線引きしても都市化が進んでいけば、調整という名において今指摘したように農地は縮小されてきているのです。これは事実でしょう。
  170. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 土地利用というものは社会経済状況の変化の中で変化していくということは、私どもやはり事実として受けとめなければなりません。私どもが単独で線引きをするのではなくて、地域社会の要請を受けとめながら、県、市町村とも相談してやっている線引きの結果でございます。  ただ、私、一言申し上げたいのは、こういった市街化区域、つまり都市化が進み住宅になっていくような都市的な地域の面積の中に確かに編入されたものは五万五千あり、そのうち農地が一万三千あるというのは御指摘のとおりでございますが、既に市街化区域に編入したものであっても、当面農業的利用が立たないものについては、私は逆に市街化調整区域へ戻すことを指導してきたことも事実でございます。この数字の方が少ないことは事実でございますが、八千四百ヘクタールは逆に市街化調整区域へ逆戻りし、二千五百ヘクタールの農地が逆戻りしているということも事実でございます。
  171. 下田京子

    ○下田京子君 どちらが優位なのかという点では、私は今までの経過を持っての事実と、それから法体系上で申し上げたところなのです。その点をきちっと御認識の上で、ただ決意で農地を造成する、農地を守ると言っても、現実的には農地縮小になってきているというふうなことは否定できないわけですから、そこをしっかり受けとめて、なぜこうなったのか、この事態を改善するためにどうやらねばならないかという御認識が大事だということを重ねて申し上げておきます。  そこで、農地を守るという点でいろいろ手法はあるわけで、一筆ごとの転用規制をどう実施していくかといういわゆる農地法の運用の問題も一つ大きな問題になると思うのです。  具体的な事例でお話ししたいのですが、これは先般、四月二日だったと思いますが、参議院の予算委員会の一般で取り上げたことでございますが、福島交通株式会社の社長並びに福島交通不動産の社長をしている小針暦二氏が、日債銀からの融資を受けて白河周辺の土地買い占めをいろいろやりました。これは昭和四十五、六年ごろなので、当初一千万坪の計画でした。それが三百万坪に変更されて、実際には百七十万坪程度で山林、農地が買いあさられたわけであります。  そこで、最初にお尋ねしたい点なのですが、白河市の中での白坂地区の山林が、数字は若干は狂っていると思いますが、約四百七十六ヘクタールあります。その中に農地が約十六・一ヘクタール含まれております。この農地について、現在、植林を目的とするということで転用申請が出されていると思うのですけれども状況がどうなっているか、まず、現状認識をお知らせください。
  172. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 現在、転用許可申請が出ておりまして審議中でございます。これは東北農政局の所管で処理しておりますが、事業実施の確実性、周辺農地に及ぼす影響等について審査を行っているところでございます。
  173. 下田京子

    ○下田京子君 もうちょっと詳しく聞きたいのですけれども事業実施の確実性で今審査中ということなのですが、この転用申請は、もともと市の農業委員会の方に農地所有者本人が植林を目的に転用するのだという農地法四条に基づいての本人申請が出されたのです。しかし、その間に指導が入りまして、転用者が事実上福島交通不動産だということもありまして、五条申請に手直しをさせました。面積が二ヘクタール以上ですから大臣許可ということで、今お話しのように県を通じて東北農政局に行っている、こういうことなのですけれども、事前審査の申し出が実は昨年末にあったのです。ことしの一月に入ってわずか一カ月足らずの間に実は事前審査段階ではオーケーとなっていたのです。ところが、事前審査の申し出をオーケーというのは内示であったのです。ところが、なぜか今また鋭意審査中だ、こうなっているわけなのです。ですから、県がどう言っているか、詳しくちょっとお知らせくださいと申し上げているのです。
  174. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 報告によりますと、位置の選定については、事前審査の段階では各筆ごとに審査し、承認内示を行っている模様でございます。私ども農林省といたしましては、先ほど申し上げましたように、事業実施の確実性というものについて、それからまた周辺農地に及ぼす影響等について厳重に審査をしているところでございます。
  175. 下田京子

    ○下田京子君 周辺農地への影響をどう見るかということが大事なのですね。そこのところをもうちょっと報告してください、どう見ていますか。県からはもう御報告があるいはあるのではないだろうか。あるいは県はただ通過ですから、これは東北農政局を通じて大臣許可になるわけですから、その辺どのように御承知してますか。
  176. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御案内のように、全体の地区の中で一部十六・一ヘクタールの農地があるわけでございます。そのうち九ヘクタールが自創法の規定に基づきまして緊急開拓時代に売り渡した農地でございます。売り渡した農地である限りにおいては形式的には第一種農地ということになるわけでございますが、問題は、一つは周辺の山林等と一体的に植林を行うということを予定しておりまして、その計画自体が確実に実施されるかどうかという問題が一つ課題になるだろうと思いますし、それからもう一つは、具体的な地形でございます。私どもが今まで確認したところでございますと、実はこれは山間部に点在しております小規模の農地で、傾斜地が多く日照不足地。帯で、農地としては生産性が低い農地と見ざるを得ないというふうな報告を受けております。
  177. 下田京子

    ○下田京子君 その御認識が非常に問題があると思いますので、私はあえて取り上げました。今、御報告ということですから、再度調査を私は求めたいのですが、転用許可基準上の農地区分の中で既に第一種農地もあるということ、ただ周辺に与える問題からいえばもう耕作に適さないという話ですが、私は地元なのですよ、局長。現地をよく見ているのです。  そういうところで、これはどういう状況になっているかといいますと、白坂地区の中でも、特に五器洗というところは周りが全部農地です。そして買われた部分だけがもう雑草のような形になっている。そこに木を植えていいかということで、同意をとりにこの三月に入っているのです。それはどういうものかというと、ここに覚書まであります。こういうものは周りが農地でなかったら要らないのです。第二条のところで「甲は、植林後三カ年経過した場合乙の耕作に必要な日照を確保するため、支障木の伐採するものとする。」こうなっている。つまり、耕作が不能だというのは、十年も二十年もたってしまったら耕作できないのは当たり前でしょう。それどころか、そこに木を植えたら周りの農地農地として問題が起きるということでもって、こういう、支障木の伐採までいたしますよということでもって、営々と、何とか転用していただこう、こういうやりとりがなされているのです。ですから、この点で、植林を認めるかどうかということなのですが、私はあえて厳格に対応していただきたいということで申し上げます。  昭和三十一年十月十八日付で、「農地等に植林を相当とする場合の許可基準について」ということで、北海道の基準を参考に出しております。そこには、「その土地に農作物を栽培することが土性、傾斜度、その他の自然条件から見て、甚だ困難であるとか、極めて不適当な土地である」というふうなことを言っておるわけです。だから、こういう通達も出ていますけれども、総合的にやっていただきたいと。  それから、その耕作放棄の問題なのですが、これも昭和四十七年十二月二十五日に売買契約を結んでおりまして、小林照子さんという方の場合なのですけれども、この契約内容を見ましても、四十八年の三月三十一日までに土地にある農作物をすべて撤去せよということで契約まで取り交わしているのです。ですから、四十七年に契約を結んで四十八年の三月三十一日までには土地にある耕作物全部撤去せい、こうなっているわけですから撤去しなきゃならないわけです。つまり、それからもう十年以上、そしたらこれは農地として適当かどうかということになってみれば、もう売ってしまったのですから、耕作できないのですから、放置されているわけですから、それはもうどうにもならないというふうになるわけでございまして、こういう点をどう認識されているのか、その現状認識を踏まえて対応いただきたいと思うのです。
  178. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) せっかくの御指摘もございますし、下田委員の地元でよく御存じのようでございますから、私がここで具体的なことを申し上げてもあるいはおしかりを受けるのかもしれません。よく調べまして、御指摘がございましたように、総合的に判断をさしていただきたいと思います。
  179. 下田京子

    ○下田京子君 総合的にということは非常にいいことだとは思うのですが、どういう立場からかというと、農地を守る、周辺農地農地としての利用を侵害しないという、まさに局長の立場から考えて総合的に対応いただきたいということで、あえて申し上げておきたいと思うのです。  そこで、そもそも植林ということなのですが、その次の、一体植林ということで目的達成可能かどうか。大体小針さんはこのごろ余り騒がれていてそれだけの金もなさそうだから、目的達成できないのじゃないかなんて話も出ています。ただ、目的達成可能かということで、別な方が入って、日債銀が後ろについて、第三者の会社なんかつくって、さあ資金ができました、植林可能だということになっていったら、これは問題なのです。私はその立場から言っているのです。  次に、実は五十三年の五月八日に白河南部総合開発計画ということで、小針さんが総面積七百六十八ヘクタールの開発計画を県の方に出しております。これは大規模土地取引事前指導申し出ということで出されまして、A、B、C、D、Eと五ブロックに分かれてそれぞれこう図柄を入れているのです。その中の一つには住宅用地というようなこともございまして入れられ、具体的に今、西三坂というところなんかも踏まえてやられておりますが、こういう経緯も御承知かどうか、あわせて知っているなら御報告ください。御存じなければお聞き取りください。
  180. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 詳しくまた聞いておりませんので、よく調べてみます。
  181. 下田京子

    ○下田京子君 詳しく知らないということだったのですが、そうすると少々は御存じだったということですか。今の大規模土地取引事前指導申し出ということについて、何かやっているということは。
  182. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 何かやっているという程度でございます。
  183. 下田京子

    ○下田京子君 何かやっているということになると、そのねらいが何かということなのです、ねらいが何か。さっき申し上げましたように、四十五、六年にその土地を百七十万坪買いあさりましたね。そのときに日債銀から実は四百億円お金を借りています。そういう融資を受けながら開発構想を進めてきたわけであります。オイルショック等があって挫折はしたけれども、その一環としてさっき申しましたように、大規模土地取引事前指導申し出という形で出されているようなことも踏まえた開発構想が出されているということをきちっと踏まえて、一体何なのか、そこら辺をしっかり据えてやっていただきたいと思うんです。  そもそも、なぜ森林にするかということなのですけれども、これは何が目的だというふうに局長はお考えですか。
  184. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私、今ちょっとそこはわかりません。俗に林地保有にするには、特別土地保有税が安くなるということが理由だということは一般に言われますが、このケースがそれに当たるのかどうか、そこまでは私は存じません。
  185. 下田京子

    ○下田京子君 いや、いみじくも今指摘された保有税の軽減がねらいじゃないかと思うのです。なぜならば、さっきそれで言ったわけです。というのは、日債銀から四百億円のお金を借りているでしょう。融資を受けているでしょう。そうしたら一定商品として開発して、ちゃんと資産評価を高めなきゃならないわけです。そうでしょう。資産評価を高めなきゃならないのに森林にするということは何かといったら、逆に資産評価を低めてしまうでしょう。なのに森林にしたいということでやっているわけでしょう。ですから、当面は開発計画を一たん温めておいて、土地保有税逃れで、森林でやると。ですから、優良な森林の育成なんてことはとてもほど遠い。そして、農地が壊廃されていくという問題を含んでいます。そこを私は指摘しておきたいのです。  現に、さっきも申し上げましたが、その五つの開発構想の中で西三坂山という開発計画が出ています。これは五十七年九月十七日に事前指導の申し出がありまして、五十八年十二月二十二日に県からもうオーケーが出ているのです、事前指導は。ところが、なぜか本申請がなくてストップにまたなってる。もう一連のそういう事業とのかかわりでございます重大な問題ですから、農地つぶしに農水省が手を貸すようなことはないように、厳重にその立場から調査いただきたいし、また指導監督いただきたいし、対応いただきたいという点で、重ねてその姿勢を伺いたいと思います。
  186. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農地転用の許可に当たって必要な事項の調査については十分御指摘も念頭に置いて調べてみます。私ども農地転用の許可という問題はなかなか難しい問題でございまして、やはり一つは法の建前の問題、それから土地の農業的利用の可能性の問題、それから現況との関係、いろいろな要素の中で、一方においてはただいま委員御指摘農地を守るという視点、他方においては法的安定性という視点等も頭に置いて解決をしなければなりませんので、まさに先ほど申し上げましたように、そういう点で御指摘いただいた点を頭に置いて調査しまして、総合的に判断さしていただきたいと思います。
  187. 下田京子

    ○下田京子君 さらに、農地転用の取り扱いというのは、現況主義の問題もあったりでなかなか大変だという話もありましたが、新白河駅用地の買収に絡んでのことでも御質問申し上げたいと思います。  実はこれも先般、四月三日の予算委員会質問したのですけれども、とにかく新白河駅が正式に位置決定される前に小針さんは位置がどこにあるかということを承知した上で、その駅用地並びに周辺用地を買いあさったのではないかという疑惑絡みでございます。農民から小針さんが買った値段というのは、平米当たり六千三百六十三円です。それが国鉄には二万四千二百円と、約四倍の値段で売っています。総面積が六千三百三十三平米でございまして、ざっと一億一千万円の差額が小針さんの懐に入るというところでございます。  国鉄さんお見えだと思いますが、福交から受けた六千三百三十三平米の土地の中で、地目が畑、田についても平米当たり二万四千二百円ということで、鉄道用地も二万四千二百円ということで同じになっている。田、畑は宅地に造成するまでに一定の費用がかかるのじゃないだろうか、同じということはどうしてなのだろうかと思うのですけれども、その辺のいきさつを。
  188. 伊藤博

    説明員(伊藤博君) 私どもの買収しました土地でございますが、地目上、田、それから畑、鉄道用地となっております。これにつきましては宅地見込み価格ということで評価いたしたものでございまして、同じような状況でございましたので同じような価格をつけております。
  189. 下田京子

    ○下田京子君 ちょっとこれ、局長でも大臣でもごらんになっていないとわからないのですが、後で聞きますから…。(資料を手渡す)  同じような状況だからそういうことで買ったということなのですが、地番の一〇六-八から一一一ですね、この約五千平米は区画整理事業による合筆換地によって現在の位置に換地されているわけです。つまり仮換地は、交換契約が五十六年の三月二日であったと思うのですが、約十カ月後の五十六年十二月二十九日になされております。これは推測なのですけれども、相当早い時期に、というのは十カ月前から換地はどこにするよというふうな格好で大分国鉄さんはきちっと頭に入れて小針さんと取引していたというふうに思うわけです。  そこで聞きたいのですが、減歩率は何%でしたか。当然その減歩は国鉄側が負担したと思うのですが、どうでしょうか。
  190. 伊藤博

    説明員(伊藤博君) この地域の土地区画整理につきましては西郷村が施行主体になっておりますので、西郷村と協議をいたしましてこの部分の土地を取得したものでございまして、減歩率は三五%でございます。
  191. 下田京子

    ○下田京子君 国鉄負担ですか。
  192. 伊藤博

    説明員(伊藤博君) 先生の御質問意味がわからないわけでございますが、私どもとしましては、西郷村と協議をいたしまして区画整理事業の従前地を取得するように協議をして決めておりますので、その従前地を取得し、ここの部分の土地につきまして仮換地を受けたものでございます。
  193. 下田京子

    ○下田京子君 ですから、区画整理事業ですから減歩があるわけでしょう。減歩率が三五%だということ。それは西郷村と協議してしたということはわかるのですが、その減歩は国鉄側が負担したのですか、どうなのですかと聞いているのです。
  194. 伊藤博

    説明員(伊藤博君) そこの部分の用地を確保するために当然減歩されてその土地を得ているわけでございますから、国鉄負担という言い方になればそういう形になろうかと思います。
  195. 下田京子

    ○下田京子君 確認しますが、国鉄負担でない負担というのはあるのですか。国鉄が負担したのでしょう。
  196. 伊藤博

    説明員(伊藤博君) 国鉄がそこの土地が必要性があったわけでございますから、その土地が区画整理事業内に入っておりますが、当然その地域を、その地区確保するためには、減歩率を含めた用地を取得する必要があったわけでございます。
  197. 下田京子

    ○下田京子君 国鉄が必要だから三五%の減歩率も負担して得た。この土地は何のための、何の目的で必要だったのでしょうか。
  198. 伊藤博

    説明員(伊藤博君) ここの土地につきましては、雪害対策上ここに留置線を一線設けておく可能性を残しておくために必要といたしたものでございます。
  199. 下田京子

    ○下田京子君 雪害対策上必要だというのは、それは基本計画にありましたか、事業実施計画に出てきたのですか。
  200. 伊藤博

    説明員(伊藤博君) 雪害対策についてちょっと説明さしていただきますが、当初国鉄で計画しておりました東北新幹線につきましては最大の問題として…
  201. 下田京子

    ○下田京子君 詳しいことはいいのです。基本計画にあったのか、どこにあったのかと聞いている。
  202. 伊藤博

    説明員(伊藤博君) 基本計画にはございません。
  203. 下田京子

    ○下田京子君 基本計画になければ事業実施計画にのってきたのか、それでなかったらいつどんなところにのってきたのか、それを聞きたいのです。  なぜかというと、これは地目が鉄道用地とあるのです。これは現在の駅舎用地そのもので、この地目が鉄道用地となっていると、これはどういう理由なのか非常に不明なのです。しかも鉄道用地の部分のところで換地したところの話は、これは現在何にも使われていないのです。そういう土地でしょう。
  204. 伊藤博

    説明員(伊藤博君) では最初に、地目が鉄道用地になっている点について御説明申し上げます。  登記簿によりますと、国土調査による成果として昭和四十九年三月四日を登記の原因日といたしまして、昭和五十五年の五月六日に地目変更の登記がなされております。  それから、雪害対策の実施計画でございますが、実施計画につきましては、ここの用地の確保等につきます細かい点につきましては規定されておりませんで、これは私どもの裁量でこういう用地を確保したものであります。
  205. 下田京子

    ○下田京子君 国鉄さんとやりとりしていると時間がなくなってしまうから、局長、大臣もちょっと今差し上げた資料をごらんください。  畑となって、ずっと一〇六-八から一一一までありますでしょう。ここまでの区切りのところは、実は今言っているように基本計画にはなかったけれども、突如として雪害対策用に必要なのだということで引き込み線のために駅の並びで買ったんだというわけなのです。そこは今何にも使っていないのです。  その下の、今度は地目がずっと鉄道と書いてあるでしょう、一一三から一一七のところは鉄道用地になっていますね。これがなぜ鉄道用地になっているかというのがわからないのです。これは駅舎そのものなのです。  さっき国鉄さんのお話で、あいまいなのですが、一一三から一四、一五、一六、一七と駅舎にかかわるところのものがずっとあると思うのです。それぞれこれは原因も違うし、それから、条件は若干同じですか、そういうことで例えば一一四番を見ますと、面積が百三十八平米で、条件つき所有権の移転仮登記がなされたのが四十七年二月十二日なのです。その原因が発生したのが四十七年の二月十二日、売買によってなのです。その転用の条件としては、農地法の五条の許可を得ることとなっているのです。  ところが、なかなか転用申請がおりなかったわけなのです。おりない中で、鉄道用地ということで、転用前の農地でなくて、現況が鉄道であるというふうに書いてしまったわけなのです。  そこで問題なのです。それで農水省に聞きたいのですけれども、さっき現況主義もございましてということがありましたが、この土地が実は昭和五十五年四月二十六日、西郷村の農業委員会に現況証明願という格好でもって地元のもとの地主さんから出されているのです。五十五年四月二十六日にこれはかかっているのです。局長、いいですか。その中に、現況証明願ということで、「別紙土地について農地の適用除外地としてその願出について承認を求めます」と、こういうことで出されておりまして、証明を受けようとする土地の所在、地番、地目、地籍というものが今言ったように全部駅になっているということで、言ってみれば、これは東北新幹線建設工事の着工以来鉄道敷地として現在東北新幹線の橋脚等が敷設され、また、一部は新白河駅舎用地として工事が進んでおり、現在は、非農地となっておりますと、こういう現況承認がくっついて、そして出されたのです。その出されたものが、公共に付するという格好ででしょうか、あるいは現況がこうなっていたからやむを得ずということでしょうか、とにかく地元の西郷村の農業委員会で許可が出たのです。  ところが、先般現地に行ってお話をいろいろ伺ってきたら、今担当はかわっているのですけれども、こういうやり方というのはとにかく異例中の異例だ、当時の会議録が全然ないのだというわけなのです。  私はここで言いたいのは、現況証明がたとえば宅地だという格好で、これはやむを得ないということでどんどん農地がつぶされていくような法の運用になったら一体どうなりますかということなのです。おわかりいただけたでしょうか。そういう点で農地法破りを公認することはないようにきちっと指導いただきたい。
  206. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 非農地証明の問題は、御案内のように、農業委員会が行政サービスの一環として都道府県が定めた基準により発行しているわけでございます。福島県のたまたま私は今発行基準を持っておりませんし、どういう運用になったかは実態をよく調べてみます。  しかし、全体として申し上げますと、非農地証明というものは、比較的私は厳格に運営され、厳格に運営され過ぎるために、実はその現況が変わった土地が第三者に譲渡されて、権利の争いを起こし裁判になっているケースもございまして、そうそう乱用されているケースは一般論としてはないと思いますが、よく事情は聞いてみたいと思います。
  207. 下田京子

    ○下田京子君 なぜこういうやり方をやったかということなのですけれども、これはっきり言って、小針さんが駅位置発表前に土地を買いあさっていて、その土地と合わせて宇都宮の用地を交換しているのです。そういう経過の中で出てきている問題だということを非常に疑惑絡みの中で、こういう転用がなされたということを改めて申し上げておきます。国鉄さんには、これは引き続きまた別途質問申し上げるということで、きょうはお帰りくださって結構です。  次に、農振法の改正に即してお尋ねいたします。  具体的に今回の農振法改正が、農地を守るという点でどういう積極面があるのかということなのです。交換分合制度の拡充について、今回の改正では、交換分合ができる場合を従来の整備計画の作成または変更というにとどまらず、山林等の開発の場合、あるいは協定制度による施設用地についてもできるのだというふうに拡充していったわけです。しかも、重大なことは創設交換制度でそれがやれるとなっているわけです。その対象用地が整備計画に定められた施設で政令で定められる要件を備えるものと、こういう大変不明確な書き方をしているわけなのです。  お尋ねしたいのは、この政令、十三条の四第二項を受けてどういうものを考えていらっしゃるのでしょう。
  208. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 十三条の四の政令につきましては、農振計画において、施設の種類、おおむねの位置、規模等が定められているということを定めるつもりでおります。  それからなお、同じ十三条の四の三項で、取得者につきましては、市町村、農協、土地改良区その他政令で定める者とございますが、これにつきましては営利を目的としない法人を入れるつもりでおります。
  209. 下田京子

    ○下田京子君 すると、二つ聞きたいのですけれども、今回整備計画の拡充によって生活環境施設、さらには就業の促進ということで、工場用地等も創設換地の対象用地になるのかなと思うわけなのですが、それはどうか。それから今言った政令で言われる取得者の部分ですね。第三者取得が今度入りましたから、営利を目的としない法人だとおっしゃいました。非常に明確なのですが、じゃ具体的にどういう法人なのか。この点。
  210. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 工場用地は全く考えておりません。入る建前になってもおりません。  それから、これは参考までに申し上げますと、そういう御懸念がほかの省からもございまして、私はほかの省とも約束をしております。  それからもう一つ、営利を目的としない法人としては、これは今のところ念頭にある具体的なものはございません。ただ、公益法人でこういうものがあり得るということを例外的に考えて予定しておるだけでございます。
  211. 下田京子

    ○下田京子君 ちょっとすっきりしないのですね。  今のところは考えていないということなのです。しかし、交換分合制度が拡充されたということで農用地区域の農地または農振白地の農地の転用が見込まれる場合には、それを公共的な計画に即してスムーズに進めていくという一つの手法として出てきたということは否定できないと思うのです。そういう点から見ると、運用次第では農地縮小に一層弾みがかかっていくという問題を私は指摘しておきたいと思います。  次に、農振計画のあり方なのですけれども、今回の農振法改正で、整備計画の拡充でもって農業振興から生産、生活一体の農村計画的なものをやるのだというふうに入っております。この点では先般も青木参考人等からいろいろお話も伺いました。この農村計画という考え方で基本は何かといえば、やはり農業の振興というところにあると思います。そのためには、専業農家も兼業農家もあるいは非農家も含めたその地域の農業の持つ大事さということも含めて十分な話し合いをする。そして住みよい地域づくりという計画をまとめていかなければならないと思うのです。  この点で、私は、先般新潟県の亀田郷の土地改良区あるいはその関係者のところに行って、亀田郷地域づくりの計画実態をいろいろ勉強させていただいてまいりましたが、この亀田郷地区というのは第一区から第九区までございまして、言ってみれば旧市町村単位に分かれているのです。その区ごとに自治会から農協から、もちろん土地改良区も含め、青年、婦人会、それからPTAなどすべての組織が一つに集まりまして話し合いをやっている。意識、意向調査もやる。環境の点検作業も進める。そういう話し合いの中から計画を立てていく。これは非常に私は学ぶ点があるなと思いました。  そういう意味で、この手法を取り入れたというこの農村計画づくりというのは、従来の農振計画よりは、机上でマスタープランをあれこれやっているよりははるかにいいものがあるというふうに思いましたので、今後こういう計画づくりをきちっと生かしていく、それが大事だと思うのです。  確認します。
  212. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私どもも実は亀田郷のセンターの例というのを立法過程において参考にさせていただいた経過がございます。私ども、特に集落座談会で末端から積み上げる。それから特に混住化が進みますと、アンケート調査で御意見を伺うことが非常に重要だと思いますので、そういう形で地域住民の意向の把握と積み上げということには努力したいと思います。  なお、ちょっとおわび申し上げますが、先ほどの答弁で私、政令で定める法人として、その他営利を目的としない法人と申し上げましたが、実は前に申し上げるのを省略しておりましたので、市町村とか農協とか土地改良区と同種のものも政令ではっきり書くことになるわけでございまして、市町村以外の地方公共団体、それから農事組合法人、農協の連合会等が入ります。おわび申し上げます。
  213. 下田京子

    ○下田京子君 ところが、今一つのモデルにも据えて、住民を中心とした計画づくりを大事にしていきたいと。ところが、この亀田郷でも大きな問題になっているのがやはり農業振興なのです。周りが市街化区域に囲まれております。特に亀田郷土地改良区の中でも大江山農協がございます大江山地区です。ここの苦労というのがまた大変で、まず訴えられましたことは何かというと、負債が大変だということなのです。正組合員が六百六十人の農協なのですけれども、五百万円以上の負債を抱えている方が九十二名、一千万円以上の方が三十五名おります。こういう地域に、周りが市街化区域ですから、転用で売却した代替地として大江山の農用地区域の中に農地取得という格好で入ってくるのです。借金で困っている農民はその土地を売る。その結果、この地区で八百八十ヘクタールの農地中、地区外の代替地取得地が何と百四十ヘクタールにも及んでいるという格好になっております。  本当に、こういう点では今言ったような地区的なまとまりといっても、もうまとまりにくくなってくるのです。ですから、農業も大変だけれども農村づくりも大変だ、こういうような実態になっていまして、結局は市街化に伴う転用の波がこうやってあらわれているという点をどう見るかということが大事だと思うのですけれども、この点いかがですか。
  214. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私が申すまでもなく下田委員も御存じのように、現在、農地を手放した場合と代替農地の取得について税制上の特例があるわけです。この税制上の特例がいいか悪いかという御議論は、昨年の税調その他の場所においても随分議論をされた経過があることは知っております。しかし、現実に農地を手放さざるを得なかった農家が引き続き農業を継続するために、公共目的等に売り渡した土地の対価を農業に投資して新しい経営を始めることを一概に私は抑圧することはいかがなものであろうかと思っておるわけでございます。これを新しい土地、特に外縁部に求めていく場合において地域社会との調整をどう図っていくかということは難しい問題でございますが、私どもといたしましては、やはりそういう取得につきましては、常時農作業に機械設備その他らか見て従事できるかどうか、それから資産保有目的とかあるいは投機目的ではないか等を審査いたしましてこれを許可しているという実態があるわけでございます。  市街化の問題というものは、制度の問題ではなくて、流れであり事実であるわけでございます。これにどういうふうな筋道を与え、スプロールを防止し、摩擦を少なくするか、こういう総合的な行政努力が必要であろうと思っております。今回改正をお願いしております農振法、土地改良法改正もあるいは不徹底な点もあるかもしれませんが、そういう連続線上の問題として考えておりますことは御理解を賜りたいと思います。
  215. 下田京子

    ○下田京子君 代替地が悪いとかなんとかを言っているのではなくて、現状がそういう中で実際に農業の振興も大変である、それから農村づくりも容易でない、そこに目を当てた格好での法の運用になりませんと生きてこないということを言っているわけでございまして、これは白根市の場合なんかも同様なのです。ここは入り作問題が大変深刻になっていて、もう御承知だと思うのですけれども、とにかく新潟というのは周辺上越新幹線でしょう、それから北陸の高速自動車道、それから燕三条の周辺の駅問題、あるいは新潟の県庁舎移転問題というものがございます。  そういう中で、その白根のところでなのですけれども、四十七年から五十七年までの間に、農地の取得面積のうち市外農家の取得が全体の三一・四%も占めている。いわゆる入り作なのです。この入り作規制という点で大分苦労されまして、事細かく申し上げませんけれども、ここにもお持ちいたしましたが、農地法第三条の規定に基づいて所有権移転許可申請に係る農業委員会における判断指導基準というものを定めているのです。なかなかあれで苦労をされております。引受人の居住地から申請地までの距離が二十キロメートル以上ある場合はだめだとか、あるいは実際に自己所有農地を過去三年以内耕作していないような場合はだめだとか、そういうことで九項目規制をしてやっていますけれども、現実的にはそれだけ苦労していてもなかなかどうにもならないというふうな状況にあります。  ですから、これらをしっかり踏まえた上で、結局は集団的優良農地を守るといっても次々と崩れてきているという点なのです。そこをやはり指摘しておかなければなりませんし、そういう中にあって本当に農地を守るという姿勢というものは大変なものだと思います。同時に、都市開発の進む中で農民自身が農地を守っていくという、そういう取り組みも大事なのだということは御指摘申し上げておきたいと思うのですが、その点での、そういう立場からの御指導はいかがか。
  216. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 土地所有者として、農業経営者として農民が土地を守る意識、農業として利用していくという意識を持っていただくことが基本であることは私も全く同感でございます。ただ、これは行政が指導するというふうな問題でなくて、そういうふうになっていただく状況をつくっていく努力というものがやはり行政としては必要なのではないかと思っております。  それから、今の白根市の話でございますが、私は一つ地域社会における具体的な農業委員会の活動の基準として評価できるものではないかと思います。ただ、私ははっきり申し上げまして、代替地取得の入り作というのが農業を守る立場と矛盾するのかどうかということになりますと、これはなかなか微妙な問題がございまして、入り作形態で入ってくる方がよい農業の専業的な方であり、段階的に地域社会に同化してくる場合もありまして、そういう点は一概に排他的に考えられない面はあるだろうと思っております。
  217. 下田京子

    ○下田京子君 次に、土地改良法改正の問題でお聞きしたいのです。  今回の改正のまず第一の柱としておりますのが農業用用排水路の管理、これは本来なら下水道の整備というものがやられなければなりませんが、先ほどもお話ありましたように、わずか農村地域にあってはその普及率が一・五%というような状況の中にあって、中心的柱に置いているわけなのです。これと相まって、言ってみれば市町村と土地改良の従前の協議制度から、協議が調わない場合には知事裁定というものが今度出てきたわけですけれども、この知事裁定という手法がどういう意味を持つのかということなのです。  そこで聞きたいのは、実際に資料等を見ますと、今までも管理運営のために土地改良区が持っているその負担が七二・二%と圧倒的に多いということがわかるのですけれども、家際にはどれほどの市町村が助成をしているのかというのはわからないのです。その辺の数字をまずお聞かせいただいて…。
  218. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 市町村が土地改良区の協議に基づいてどの程度助成をしているかということでございますが、まず地区数で申し上げますと、助成のあった地区の全体として五百四十四地域のうち市町村だけが助成している地域が五百地域で、あと市町村と農協の両方というのが四十四ございます。  そこで、どの程度の援助をしているかということにつきましては、助成額は工事費の助成額が四十九億円、それから管理費の助成額が四億五千八百万円、それから別に、これは結局管理費に属する部分が多いと思いますが、人件費の助成が二億六千万、それから事務費、これも管理費に属する部分が多いと思いますが、四億三千二百万ということになっております。
  219. 下田京子

    ○下田京子君 六百五十四地区中五百四十四地区、八三・二%ぐらいに当たりますが、これが市町村が助成している、こういうことだと思うのですが、とすれば、さっきも言いましたが、知事裁定という仕組みを設けたのは一体何なのだろうか、こう思うのです。八三%幾らかというのは実際に市町村が援助しているわけですから、現に協議がやられているというところだと思うのです。協議がやられているけれども、恐らくそうなれば負担の基準についての問題点も含めて知事裁定ということが必要になるのかな、こういうふうに理解するわけなのです。とすれば、その負担についての国の考え方というのはあってもいいのではなかろうかと思うのです。いかがですか。
  220. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私が申し上げましたのは、協議が行われて市町村等が助成をしている例でございまして、協議まで至らなかったものや協議しても解決しなかったものは外側にまずあると…
  221. 下田京子

    ○下田京子君 まあ一七%ね。
  222. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) あると御理解をいただく必要があると思います。  そこで、問題は実はなかなか単純じゃございません。市町村のお立場から言うと、土地改良区の主張以外にやはり住宅、団地の住民の主張があって、あるいはほかの方々の主張があってなかなか解決しないというところもあるでしょう。特に都市化が急速に進んでいるところではそういう傾向があるわけでございます。私どもは知事裁定を導入するというのは、やはり十分に話し合って解決がつかない場合においては知事の裁定が両当事者を拘束する効果を持つという、いわば法的に申しますと担保的な機能というか、公権的機能に着目して法改正をお願いしているわけでございます。  したがって、まさに下田委員御指摘のように、私どもは手続についても実態基準についても絶対に統一的なマニュアルを作成することが必要だと思っております。現在このマニュアルの検討を、法施行を念頭に置いて進めておりますが、今内容的に、例えば例示的に申し上げますと、裁定に当たっては十分に話し合いを一定の条件のもとに行って、しかる後に持ち込むとか、あるいは裁定の前に、地域によって違いますけれども、公正な第三者的な調停機能というものも活用するとか、そういうことも考えなければならないと思いますし、また、裁定する場合は管理費等についてはどういう基準で負担を持たせるかという負担基準で、どういう水量割りにするか、時間割りにするか、そういう問題も含めたマニュアルにする必要があると思っております。
  223. 下田京子

    ○下田京子君 その負担基準なのです。問題は財政なのです。さっき言いましたのは、本当に農業を守っていこうというそういう農民の意識が大事だと言いますけれども、農業を守っていこう、そのために必要ならば財政的にも援助しようという政府の姿勢がなければならないという点も今大事なところだと思うのです。  そこで、国としての財政的援助のあり方なのですけれども、一定基準を考えるということですから、申し上げたいのは、これは亀田郷の場合に大規模の排水ポンプですか、これは公益的なものだということで県管理になっておりまして、国が四〇%、それから県が四〇%、残り二〇%を農地が一、宅地二、これはそういう面積換算でもって宅地分を自治体が負担しているというようなことでいろいろ苦労しているのです。  先般、局長も御一緒されましたけれども、大須賀町の大石町長さんも言っておりましたけれども事業はやった、しかし、維持管理費は何も持ってくれない、言うのもおこがましいがというようなことで、ここで言わせていただければ、大変な負担になっているので、その辺の維持管理運営等を一定程度見てほしいという御指摘がありましたから、ぜひそれらにこたえる基準を設定してほしいと思います。  最後になりますけれども、共同減歩による創設換地というのも、これが非常に大事だと思うのです。特にその中で、五十三条の三の一項三号についてなのですけれども、もう時間になってしまったので残念なのですが、そこのところは実は「主として」というのが入っていない。
  224. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 下田君、時間です。
  225. 下田京子

    ○下田京子君 何で落ちてしまったのか、ちょっと教えてください、それだけ。
  226. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 時間だから簡潔に。
  227. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 恐縮でございますが、御質問があんまり簡潔過ぎてちょっとわからなかったので…。
  228. 下田京子

    ○下田京子君 土地改良法の法案のあれにちゃんと出ています。五十七ページ。五十二条の三の三項、新設部分
  229. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 五十七ページの数字で申しますと、二号に、ございますのは、まさに割合を決めるという意味で、農業を営む者が主として利用して、その大部分が利用するということだから、こういう手続で認めていくということでございまして、それに対して五十八ページの三号にございますのは、そこで割合を決めるという意味でございます。
  230. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 まず初めに、農振法は昭和四十四年に制定をされておるわけです。それから土地改良法昭和二十四年にできておる。今までにこの二法が果たしてきた役割、さらにあわせてその問題点についてお伺いをしたいと思います。
  231. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農振法でございますが、農振制度におきましては、一体として農業の振興を図ることが相当と認められる地域について農業振興地域の指定を行い、長期にわたり今後おおむね十年以上にわたり農業上の利用を確保すべき土地については特に農用地区域の設定を行うということでございます。  この農用地区域については、転用の制限、開発行為の規制等を行うと同時に、重点的な農業施策を実施するということになっているわけでございます。狭い国土のもとで緻密な稠密な経済活動が営まれている我が国の現状でございますから、こういう形でいわば将来の農業生産の基盤として確保すべき地域を決め、これについて重点的な投資を行うという考え方をとっております。現在、昭和四十九年末には約四百二十一万ヘクタールであったものが五十七年末には四百四十九万ヘクタールがこの農用地区域内の農地面積として指定されているわけでございます。  なお、現時点で農振法の役割を整理して申し上げますと、やはり集団的な農用地の確保と土地、水利用のスプロールの防止に重要な機能を果たしてきたと理解しておりますけれども、混住化の進展や住民意識の多様化等、農業をめぐる諸情勢の変化のもとでやはり地元市町村が地域の農業振興により総合的、包括的に取り組むという展開を見ると、内容もまた手法も不備であるという点から今回の改正をお願いしているわけでございます。  土地改良法でございますが、土地改良法は御案内のように、制定以来農業基盤整備に関する法制として二十四年に制定されたわけでございますが、これは戦前の水利法とか土功法の経過をたどって制定された歴史的な沿革のある法制でございまして、今日の情勢では単なる水利事業だけではなくて、圃場整備、農用地造成、干拓、防災等を含む各種の土地改良事業実施するための手続を定め、負担区分を定め、これらの枠組みを決める重要な働きをなしているわけでございます。  特に最近の状況の課題を申し上げますと、やはり農村における土地利用の多様化という問題、それから農業用排水路の利用の多様化、そういった問題から非農業部門との調整を要するということで重要な課題になっております。今回の法律改正は四十七年の改正を受けましてさらに発展させて、いわば今日の社会的需要にこたえるように、特に混住化に伴う社会的需要にこたえるための法制を整備したものでございます。
  232. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 いずれにしましても、この二法は日本の農業というものを体質を強化する、あるいは農業の発展振興のための極めて重要な基本的な法律だろうと思うのです。  そこで、まず包括的にお伺いをしたいのですけれども、過去二十年ないし三十年という中長期の期間をとってみた場合、我が国政府の農業政策というものは果たしてどういう役割を果たしてきたのか、あるいはその問題点があるとすればどういう点か、この点をお伺いをしたいと思います。
  233. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 我が国の農業、農村は、三十年代以降の経済面の成長過程でさまざまな問題に直面しております。しかし、生産性を高めながら発展し、国民の基本食糧の主要部分を供給するという役割を果たすとともに、他産業への労働力、土地など資源の移動、国内市場の拡大等の一端を担うことにより国民経済の発展と国民生活の向上に寄与してまいったものと思っております。  しかしながら、他方におきまして畜産物消費の増加率に伴いまして自給率が低下してきた品目もございます。また一方、潜在的に供給過剰にあるものも出てまいりました。土地利用型部門において、経営規模の拡大が所期のとおりには進んでおらないということもございます。農業労働力の高齢化が進んでいるといった問題点も生じてきております。  最近の自給率の推移を品目別で見ますと、小麦、大豆など反転上昇してきたものもございます。主食用の穀物では六九%程度維持し、野菜、果実、牛乳についてはおおむね自給を確保してきたというところでございます。  また、農産物価格につきましては、昭和五十年代当初から内外の価格差、需給動向、これらを考慮に入れながら価格政策の抑制的な運用に努めてまいったところでございます。  今後の農政の展開に当たりましては、生産性の向上を図りながら総合的な食糧自給力の維持強化に努めてまいりますとともに、その基盤ともなる農村社会の活性化を図ってまいる考えでございます。
  234. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 そのときどきのいろいろの状況とか問題点に応じてそれぞれ手を打ってこられたと思います。ただ、農業の力というものを判定する場合に、いろいろの見方があるしいろいろの指標があると思うのですけれども、極めて単純で簡単なものはやはり自給率というものが一つのバロメーターになると思うのです。  我が国の場合は、例えば一九六〇年、それから一九八〇年さらに中間の七〇年とありますけれども、この時点で比較した場合に、総合的なカロリー換算で見て、やはり自給率は七九%、五九%、五三%、このように低下してきております。反面欧米諸国、アメリカ、フランス、西ドイツ、イギリス、こういうところはそれぞれ自給率に差はあっても大体上昇の傾向をたどっておる。こういう点から見ると、日本の農政は必ずしも成功していないのではないかという気がしますが、この点はいかがですか。
  235. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まず、日本人が現在の段階において消費している穀物の量ということを考えますと、昭和三十年代と比べますと比較にならない高い水準でございます。これは、御案内のように、畜産物の消費の増大を主として国内で畜産物を生産することによって賄い、その原料であるトウモロコシ、マイロあるいは大豆等を国際市場に依存した、輸入に依存したということによるものでございます。  ちなみに、現時点で日本が輸入しております穀物その他農産物を標準的な単収で外国の農地をどのくらい使っているかという試算がいろいろあるわけでございますが、例えばコーヒーや砂糖等まで入れますと千三、四百万ヘクタールの外国の農地を使っているという試算があります。つまり、迂回生産に依存する消費が非常にふえたものでございますから、その分だけ穀物の自給率が下がったということで、我が国の穀物生産自体が大幅に下がったということではないと思います。下がった要素があるとすれば、麦作の減少ということだろうと思います。
  236. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それからもう一つの指標として考えられるのが、いわゆる価格支持率。これは国際価格と国内価格の差というふうに単純化して考えてもいいと思うのですけれども、もちろんこれもどういう品目をとるかとか、どういうとり方をするかでいろいろ数字が違ってくると思います。これは政策フォーラムの主要農産物の十三品目について生産価格支持率が日本の場合は上昇傾向にあって、現在四五%だと。それからECの場合はほぼ横ばいで、大体二六%という数字が出ております。これも言えば、指標面で見れば悪化しておるのであってよくなってはいない。この点についてはどう思われますか。
  237. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 実はこの政策フォーラムの分析なり提言が出ました場合、私どもも内部で随分議論したのですが、どうもこの数字じゃ判断できないのじゃないかと。分析してみますと、昭和三十年から四十年の間にかけての支持率が上がってきておりますのは、国際価格――シカゴ相場が低下いたしましたことと国内価格の上昇が両方響いているわけでございます。ところが今度は四十五年以降の変動を見ますと、実は為替レートの変動が極端に影響してまいりまして、これではちょっと判断できないのではないだろうか。しかし、農林省が一九六九年に試算したものもございまして、これによりますとやはり三割という支持率が出ております。
  238. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 農水省が一九六九年に出されたものがありますし、それからやはり同じ年に経済企画庁が出されたものもありますけれども、いずれも価格支持率は上昇の傾向という事実が出ておるわけです。だから、傾向そのものは個々のとり方とか数値にはいろいろな出し方があっても、傾向そのものはやはりふえつつあるということが言えるのではないかと思いますが、いかがですか。
  239. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 企画庁と農林省の数字の違いは、実は米の輸入米と国産米との品質格差の修正の計数が違うもので出てきたものだと思います。ただ、傾向としては、この期間の問題としては委員御指摘のとおりでございます。これは、実はシカゴ相場の低迷期と農産物の国内価格が三十五年から四十五年は上昇期にあったということが反映しているものだろうと思います。
  240. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから、こういう我が国の農業の体質の弱さの、何といいましても一番大きな問題点というのは、農地面積の絶対数が少ないということもありますけれども、やはり二戸当たり農地面積が格段に少ない。アメリカは日本の百四十五倍、ECは日本の十四倍、日本がEC並みの農業を目指すにしてもまだまだ大きな構造的な開きがあるという点を考えなければならないと思います。  特に日本の場合は、農業生産物のシェアというものを見ましても、いわゆる中核農家のシェアが、特に米、いわゆる土地利用型農業において非常に少ない、稲の場合は三一%にすぎない。他の施設野菜とか酪農の場合には大体九〇%のシェアを中核農家が持っておる。こういう土地利用型農業における中核農家のシェアの低さ、いわゆる構造改善のおくれというものが大きなウイークポイントではないかと思いますけれども、このように土地利用型農業で構造改善が進まない理由は何だとお考えですか。
  241. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まず、大規模農家生産に対するシェアが低いということは、土地利用型農業の中でも委員御指摘のように私は米の問題だろうと思います。同じ土地利用型農業でも、限界地で農用地開発等を通じて農地をふやし、また飼養規模を上げてきた酪農については極めて高いシェアというものを占めてきておると考えておるわけでございます。  基本的な原因は、言うまでもなく、日本の経済発展の中で甚だ金融資産が過大な社会が生まれて固定資産つまり土地が非常に値上がりした、それで土地の資産的保有という傾向が増大したということ。  それから、また同時に、やはり狭い国土の中での経済発展でございますから、先ほども申し上げましたような、挙家離農ではなくて、通勤兼業農家という形である時期矛盾なく両存できる形があった。それに加えて、水田稲作地域における先祖伝来の伝統的な土地保有意識というものが基本にあると思います。
  242. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、構造改善が進まない理由は今言われた点もあると思いますけれども、やはり政策的にやや問題があったのではないかという気がするわけです。これは後ほど少しまた触れたいと思いますけれども、その前にまず、農村地域への工業の導入について二、三質問をしたいと思います。  農村地域における混住化の原因は何とお考えになりますか。
  243. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) これはやはり狭隘な国土と過密な経済ということに尽きると思いますが、特に、一つは低平地におきましては大都市圏への人口の集中に伴う住宅の外延的進出、それからもう一つは平場の農村等におきましてはやはり工場等新しい企業の進出ということが言えるだろうと思います。
  244. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 昭和四十六年に、農村地域工業導入促進法が制定されて、農村に対する工業の進出に税制、金融その他の面で優遇措置がとられました。その後の実績は、当初の計画から見れば余り進んでいないようでありますけれども、しかし、かなりの市町村においてこういうことが受け入れられ、進んでおるわけであります。私は、この農村地域に工業を導入することの意義と影響についてどう考えたらいいかちょっとわからない面がありますので、お伺いをしたいと思います。
  245. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 二つの側面があると思います。当初農村地域の工業導入が真剣に考えられた時期は、農村地域における農家の所得の低さ、不安定さ、特にやはり出稼ぎ、日雇い等という就業状況をできるだけ解消して、安定農家所得を上げていくということがねらいだったことは事実でございます。  しかし、同時にこの時期、農政自体にも、構造政策自体にも一つの変革があったことは事実でございます。それは昭和四十年代の農地法の改正が示しますように、いわゆる挙家離農による所有権移転による規模拡大は無理だという認識のもとに、やはり利用権に着目した規模拡大政策へ結びつけてきていることにもう一つ側面があったと思います。
  246. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、農業の構造改善という点から考えた場合に、農村地域へ工業が進出することについてはメリットとデメリットと両方あると思うのです。メリットは構造改善にとってのメリットかどうかわかりませんけれども、やはり過疎化を防止する、出稼ぎとか日雇いという就業をなくして安定した就業を目指す。就業が安定すれば、農業からそっちの方に転換をして構造改善が進むということも一つの考え方ですけれども、この反面、デメリットとしてやはり混住による諸問題が起こってくる。それから兼業そのものがなくならない。むしろ兼業がふえて定着をしてしまうということにもつながるのではないか。それから、やはり工業が進出してくれば土地の価格が上がるし、それがさらに農地流動化というものを阻害する。こういう点からすると、果たして構造改善のために役立つのかどうかとなれば一概に判断しかねると思うのですが、いかがですか。
  247. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私は、それは条件によってだろうと思っております。はっきり申し上げますと、極端に生産刺激的な価格政策をとる場合は、ある意味では地域社会における就業機会の増加と申しますと工業の地方進出というものはマイナスに働く面もあると思います。  私どもが、実は今回就業の改善という問題を構造政策の連続線上でとらえておりますのは、今日の日本人の胃袋の飽和状態、所得の状況、さらに国際的な関係等を考えた場合において、やはり従来の所得均衡に着目した生産刺激的な価格政策はとれない。むしろ、生産性の向上に着目した構造政策を考えなければならないステージに入っている。そういう状況のもとにおいては、通勤兼業農家と中核農家の振り分けと申しますか、その間における農用地の利用権の移動が行われるためには、より就業の安定を図ることがベターであるという認識があったというふうに御理解をいただきたいと思います。
  248. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、土地改良事業と構造改善について若干お伺いをしたいと思います。  日本の、特に米に例をとってみましても、生産費はアメリカに比べて約五倍だということが言われております。そしてその内訳を比較してみますと、特に目立って多いのが、もちろん肥料、農薬費等も多いのでありますけれども、これは土地条件とか気候条件等の差もあって、アメリカと日本と一概に同一視するわけにはいかないのです。しかし、これはすべての項目で言えますけれども、やはり目立って多いのが農機具代、それから労賃の二つが日本の場合は生産費の約七割を占めております。それからアメリカの場合には、生産費の中の農機具代と労賃と合わせても約三割強にすぎない。こういう点を考えた場合に、やはり規模の違いというものがこういう点ではっきりあらわれてきておるような気がするわけであります。  特に最近は、土地改良圃場整備や農道の整備が進んで、農機にしましてもかなり大型の農機が使える。これは生産性向上にとっては非常に大きなメリットでありますけれども、反面、規模の拡大が進まなければ、それが逆に過剰投資になってしまう。農機具代の返済とかそういうものに追われてしまうということになりかねないのであります。  それから、私は、農機具、農機のみならず土地改良そのものにもそういうことが言えるのではないかと思います。土地改良事業が第一次で、四十年から四十七年までの実績が二兆七千億円。第二次で、四十八年から五十七年までが十二兆四千億円。そして第三次が、これから五十八年から六十七年までで三十二兆八千億円。土地改良が、このつぎ込んだ費用を賄うということが原則になっておりますから、今までの実例をお聞きしますと、大体この費用が効果を賄っておるという結果を私も聞いております。しかし、やはりこれも規模拡大が伴わなければ過剰投資になってしまうおそれがあるのではないか。  特に、第三次の土地改良事業計画では三十二兆八千億円という金額でありまして、今は日本の農産物の総生産額は約十兆円です。それに比較して余りにもこれは過大な金額ではないか。つまりこれだけ金をつぎ込んで果たして費用対効果という点で賄い切れるのか。もちろん補助金で出る分と農家負担の分がありますけれども農家負担の分でもこれはばかにならない金額です。農業の生産費から見てもこの負担額というものは決してばかにならない金額である。もう既に一部では、農家の中でも土地改良負担金に耐えられないというような声も出ておるわけでありますけれども、今後の三十二兆八千億という金額を見た場合に、ますますそういう傾向はふえてくるのではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  249. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 前段の機械の投資が過剰投資になっておるのではないかというお尋ねでございますが、近年機械もなかなかいいものが出てまいりましたし、また、圃場の条件整備されたことによって大型の機械が稼働できる条件ができ上がってまいりました。そのことが日本農業生産性向上に大変大きな役割を果たしておるということは委員御指摘のとおりでございます。  ただ、これを経営的ないし経済的に見た場合にどうなのかということでございまして、まず所得に対する投資という関係から見ますと、近年大変上昇傾向にございます。ただ、それは農業所得と対比した場合にそのような傾向が出ておりまして、農家総所得に対する対比ということになりますと、これは兼業所得が入ってまいります。むしろ兼業を支えるために、より性能の高い機械が必要だ。こういう傾向もございまして、そのことの労働節減効果と機械の費用増大を対比をいたしてみますと、必ずしも採算を踏み外してはいないということが言えるわけであります。  また、経営費の中の割合ということになりますと、これは当然投資ということではなくて、機械の償却費などが主になるわけでございますが、そういう償却費で対比いたしますと、近年農業経営費の中の農機具費は上昇いたしておりますが、さればといって、四十年代あるいは四十五年ごろの数字と対比いたしますと、必ずしも機械の割合が高いとは言えないという傾向にあるわけでございます。  しかしながら、機械の能率、稼働能力という点から見れば、我が国の現在保有しております機械で耕地面積を割りますと、一台当たりのカバーしております面積というのは、機械の持っております稼働能力という点から見れば非常に過小であるということはまぎれもないわけでございまして、このために現有する機械ないしは新しく機械を入れます場合に、いかにしてこれを適正な範囲で稼働さしていくかという工夫が別途必要なわけでございまして、個々の農家規模拡大ももちろんそうでございますが、同時に、機械を効率的に利用するための生産組織と申しますか、そういうことについての工夫をこらしておるわけでございます。そういうことによりまして、経営費の中に占めております農業機械の割合というものを減らすという努力はさらに続けていく必要があるかと思っております。
  250. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 土地改良事業実施というものが直接的な単収の増加とか担当労働時間の節約以外に、やはり土地利用の集積、規模拡大等によって新しい効果を生み出さなければならないということは、私も御指摘のとおりだろうと思っております。実は従来、むしろ土地改良事業の採択に当たっての圃場整備事業等ではそういったことを条件づける措置をとってまいりましたが、どうも昨今の経験的事実から申しますと、基盤整備が完了した、あるいはある程度進んだところでこういった利用集積のための努力を集中する方がはるかに効果的であるということが経験的にも出てきておりまして、そういう意味でこの点についてはこれからも一段の努力をしてまいりたいと思っております。  それから、費用と効果の関係でございますが、基盤整備事業の耐用年数は短いもので四十年、長いものが八十年ぐらいという極めて長期にわたる効用を持っているということはまず御理解を賜る必要があると思います。私ども、実は計測に当たりましては、農業生産上への効果、つまり単収の向上とか、作付面積の拡大とか、営農労力の節減ということと、それからもう一つは、土地改良事業というものは、例えば農道整備による一般耕地の利便性とか、防災上の効果というものを多分に持っておりますので、そういったもの全体を含めまして費用と効果を計測いたしまして、妥当投資額と総事業費関係投資効率を決めて採択をしているわけでございます。確かに御指摘のように、具体的な地域としては、いろいろ具体的に農家負担金を払っていくという過程で問題があるわけでございまして、私どもこういう点については、今後の採択は相当慎重な姿勢でやっていきたい。そういう意味においては、農家が十分納得しているかどうか、また、地区除外を希望する場合においては、必ずしもそれを強行しないで地区除外を認めていくというふうな柔軟な姿勢で問題の処理に当たっていきたいと思っております。    〔委員長退席、理事北修二君着席〕
  251. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 これからの課題としては、やはり規模拡大が進まなければ、せっかくすぐれた農機を入れて生産性を上げて、確かに労働時間は短くなるけれども農家の所得がふえない。労働時間が短くなった労働力というのが、兼業農家はいいのですけれども、専業の場合は使い道がない。結局農家所得は全然ふえないというような結果になりかねないわけであります。また、土地改良事業というのは私は必要不可欠だと思いますけれども、これも構造改善と相まってさらに大きな効果が出てくるということを考えますので、構造改善というものについてさらに一層強力に取り組んでいただきたいと思うのであります。  そこで、減反政策と構造改善についてお伺いをしたいのでありますけれども、ことしの四月に全中が「米をめぐる情勢と課題」という資料を出しております。この中で、減反は大規模稲作農家のシェア低下をもたらし、稲作の規模拡大を進みにくくしておるという点が指摘されております。それから、現にそのシェアの状態を調べてみますと、昭和五十二年と五十七年の五年間の比較をしますと、五十七年は、五十二年に比べて小規模の農家のシェアがふえておるわけであります。一ヘクタール未満、あるいは〇・五ヘクタールから〇・三、それから〇・三ヘクタール未満、こういうところはシェアアップしております。それから一ヘクタールから一・五ヘクタール、一・五から二ヘクタール、二ヘクタール以上、いずれもこれはシェアが低下しております。やはり減反政策というものは大規模農家のシェアを減らすという方向に作用しておる。これは全く構造改善とは逆行する政策ではないかという気がするのですが、いかがですか。
  252. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 確かに、近年の米の過剰問題というものが御承知のような水田利用再編対策を必要とする事態になっておるわけでございまして、そのことが、米作というだけの観点から見ますと、これは規模の大きい農家も規模の小さい農家もそれぞれ転作目標面積を消化してもらわなければいかぬという実態にあるわけでございます。特に非常に規模の小さい農家は飯米程度生産をしておるにすぎませんので、販売量の多い農家に対してもそれ相応の負担をしてもらわなければならない、そのことが、米作農家規模拡大という観点からだけ見ますと、マイナスの要因であるということは間違いないわけでございます。  しかしながら、反面におきまして、そういう転作を進めるに当たりましても各自がそれぞれ小面積の転作をするということではなくて、できるだけ団地化、集団化した能率の高い転作を進めるということを推進いたしておるわけでございまして、稲作以外の作物に対する取り組みということになりますと、兼業度の高い農家にはなかなかやり切れないという点がございますので、その過程におきまして、規模の大きい農家が実質的に転作を通じましてその地域の農業生産をいわば組織化いたしまして、あるいは作業の受委託でありますとか、経営の受託というふうな形で稲作及び他作物を含めた実質的な規模拡大ということに成功しておる事例も少なくないわけでございます。  米につきましてはいろいろ問題はございますけれども、同時に他の作物につきましても日本の生産力を高めていく、こういう必要もあるわけでございますので、両方をあわせてお考えいただきますならば必ずしもマイナスの要因ばかりではない、かように私どもは承知をいたしておるわけでございます。
  253. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 そうは言いましても、やはり米は日本の農作物の中の最も基本的なものであるし、生産額においても約三分の一を占めております。約三兆円になります。その主要農産物の米で構造改善が進みにくいような政策をとるというのは、私は問題だと思うのです。もちろん、米の需給調整を何らかの形でやらなくてはならない。しかし、減反というやり方が一番適しておるかどうか、また減反というやり方が不可避であるかどうか、この点はいかがですか。
  254. 小島和義

    政府委員(小島和義君) しばしば減反というふうに言われるわけでございますが、私どもは稲作をしておりました田んぼをそのままあけておくという政策をいたしておるわけでございませんで、その余剰の水田に対しましても、我が国にとって必要な、むしろ不足をしております作物を植えつけることによりまして全体的な自給力を高めていこう、こういうふうに政策を組み立てておるわけでございます。したがいまして、稲作農家規模拡大というだけの観点から見ますと、先ほど申し上げましたように、適切な方法ではないというふうな御指摘もあるわけでございますが、この政策自体が稲作転作物を含めた大規模な経営をつくっていくということについて、より大きな本質的なマイナスを持っておるというふうには必ずしも考えない、むしろその転作を促進する過程におきまして、その地域の土地利用をいわば再編成いたしまして、場合によりましては集団化をするというふうなことが進み、結果的に力のあります農家がその地域の農業生産についての実質的なシェアを拡大していく、そういうプロセスに該当する場合もあるのではないかと思っておるわけでございます。  また、これにかわるべき対策というふうなことで考えました場合におきましても、議論としてはいろいろなことがあるわけでございますが、国の経済という問題を考え、また、農業の持っておりますさまざまな特殊な性格というものを考えてみますと、目下これにかわるべき適切な方法というのはちょっと思い当たらないということでございます。
  255. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、今の米政策を基本とする場合は、減反はやむを得ないということは言えるかもわからないと思います。これはやはり価格政策との見合いでありまして、今の高価格支持政策をとり続ける限りは、減反というようなある程度強制的な割り当てで生産を減らさないと需給が調整できないということになるわけであります。  それなら、なぜその価格支持をやるかということになるわけでありますけれども価格支持の目的はいろいろあろうかと思うのです。一つ農家所得の保障という意味もあります。それからもう一つは、生産物の需給調整を価格でやるという意味もあると思います。しかし、需給調整の面で考えるならば、価格支持をやりながら減反をやるというのはこれは矛盾であります。ただ、農家所得の保障のために必要だ、特に米は基本的な農産物であるから、そういう意味が大きい面もあるかと思いますけれども、それなら農家所得保障の方法を別の方法で考えられないだろうか、そして米の場合にはもう少し価格を弾力性を持たせる、需給調整機能を持たせる、それがかえって基本的な生産物の米において農業の構造改善を阻害する要因をなくする、そういう方向でいった方がいいのではないかという気もするのですけれども、いかがですか。
  256. 小島和義

    政府委員(小島和義君) お話は、価格政策をもって物の需給調整をしたらいいではないかということだろうと思います。  お話ございましたように、水田利用再編対策を一方において巨額な金を費やして進めておる際でございますので、米価につきましても、この数年来極めて抑制的な運営をしてきたということは御指摘のとおりでございます。ただ、米以外の水田に作付けられるべき作物の収益性と、米の収益性と直ちに均衡させるというふうな価格政策の運用というのはなかなか問題が多いわけでございます。まして、水田の場合には、米をつくるべき土地として造成され管理されておるという実態にございますし、また、我が国の農業自体がかんがい農業を特質として形成されておるという歴史的な背景もあるわけでございますので、その中で考えると、いろいろな価格政策の枠組みの中で物を考えるといたしますと、現在の転作奨励というシステムというのは必ずしも不都合千万なものであるという御指摘は当たらないのではないか、かように考えております。
  257. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、補助金のあり方についてお伺いをしますけれども、補助金というのは非常に政策的に大きな役割を持っておると同時に、反面、補助金そのものの性格から欠陥を持っておるということも言えると思います。  一つは、この間の参考人の中の御意見にもありましたけれども、行政が画一的な押しつけにつながるという面で、これもその補助金が多岐にわたり、また、その一つ一つの補助金の交付される条件が皆決まっておるわけでありますから、どうしても行政の画一的押しつけという弊害があらわれる。それからもう一つは、投資効率というものがやはりよくない。補助金の性格としてそうなりやすいのでありますけれども、これも補助金の使い道についての基準を画一的に押しつける。現地に合わない形で物をつくったり施設をつくったりするという点が起こってくる。それからもう一つの欠陥というのは、補助金は政策目的を持っておるものだと思うのですけれども余り多岐にわたると、どれが重点がわからなくなってぼやけてしまうという点もあるのではないかと思うのです。こういう補助金についてどう考えられますか、お伺いをしたいと思います。
  258. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 補助金一般についてのお尋ねでございますが、農林水産業につきましては、本来、気象条件等自然条件に左右されることが非常に多うございますし、また一年一作というものがほとんどでございます。また、日本の場合には規模が非常に小さいし収益も低い。したがいまして、資本蓄積も少なくて投資力も乏しい。また農業自体の性質といたしまして、水、土地利用を共同でやる場合が多いとか、そういうような状況のもとにおきましては、やはり補助金そのものは非常に有効な政策手段であるということもございます。そこで今御指摘もございましたいろいろな問題があることも私どもは承知しております。  そこで、画一的、押しつけ的なものではないかということにつきましては、私ども最近は統合・メニュー化ということで、できるだけ農村の実態に合ったような補助金の使用方法というものも考えておるわけでございます。また、投資効率についていろいろ御指摘もございましたが、農業の場合には、基盤整備その他考えました場合には、国土保全その他の公共的な利益というものにつきましても非常に意味があるわけでございます。  そういうこともございまして、私ども現在の補助金のあり方につきましては、各方面の御指摘、特に臨調、または現在臨時行政改革推進審議会におきましても補助金問題はいろいろ議論されておりますが、そういう批判も頭に置きながら、極力現在の財政の中で硬直化あるいは既得権化とかそういうような弊害につきましても頭に置いて、できるだけ効率的あるいは重点的な使用を図っていくというようなことで対処したいと考えておるわけでございます。
  259. 北修二

    ○理事(北修二君) もう時間ですが。
  260. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最後に一言だけ意見を申し上げたいのですけれども、私はその価格支持にしろ補助金にしろ不必要と思いません。それから農家の所得というものと一般の工業に従事する人の所得のバランスを何らかの形でとらなくてはならないことは事実です。ただ、できるだけ農業の中の活力というものを生み出すということを考えますと、補助金の支給の仕方を、できるだけ農家の創意が発揮できるように、ある程度自由に使えるように、自由に使わせると何に使うかわからぬからということがあるかもわかりませんけれども、私は思い切って農家の自主性に任せるような、所得保障の意味から言ってもそういうものに簡単化していった方がいいのじゃないか。  それから、価格支持政策にしましても、できるだけそういう競争原理というものは、米なんかでも私はもう少しそういうことにした方が米生産も活力が出てくると思うのですけれども、そういう方向で物事を考えられないかということを私は言っておるわけでありまして、そういう点、構造改善とあわせて今後の農業政策の中で考慮していただきたいと思います。  以上です。
  261. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、日本農業の現状を考えますときに、いろいろと疑問を持たざるを得ません。そういった観点から、まず初めに、大臣のそれこそ偽らざる所見を承りたいと思います。  と申しますのは、農振法、土地改良法がそれぞれ大きな役割を今日まで果たしてきたことは認めます。ところが、この前もちょっと申し上げましたが、農は国のもととか、あるいは生産者は王様であるとか、こういうことがよく言われるのでありますが、それならば、やはり農業をすることによって豊かになり、そうしてそのことに誇りを持つということにならなければいけないのではないか。ところが、現状はむしろ農業をすることによっては生活が成り立たない、不安と常に危機感を持っておるというところが現状ではないだろうか。例えば、五十八年の農家戸数が四百五十二万となっております。そのうち専業農家は六十万戸、そして兼業農家が三百九十三万戸という数字を示しておる。ところが、専業農家よりも兼業農家の方が収入も多く、生活もむしろその方が楽であるということも報じられておる。こういうことと思いあわせて、果たして現在の日本の農業のあり方がいわゆる過去の積み重ねを、足らざるを補うという気持ちで前進させていく、言葉をかえればびほう策といいますか、そうではなしに思い切って根本的に日本の農政のあり方を変えていくという、こういうことも考えるわけでありますが、大臣、いかがでありましょうか。
  262. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) せんだって総理も出席していただきまして、当農林水産委員会でとりあえずこの第三期対策につきましては、本年度の作況を見た上で弾力的にというようなことも総理の口からもこの間出ましたし、また、農は国のもとなり、そして農業を見直す時期も来ておるのじゃないかというようなことも言われました。私もその線に沿って今後大いに勉強して、とりあえずはもう少しゆとりも持った農業という方向へ向かってやってまいりたいと思います。また、長期見通し等についても一生懸命勉強していきたいと思います。
  263. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ただいまの所感を、私の疑問を一応前提にしまして、多くの方からも述べられた点もあると思いますが、時間の範囲内でお尋ねいたしたいと思います。  まずお尋ねしたいことは、農振法ですが、今回の改正によって構造政策推進上の総合的な計画法といった性格を持つことになると思うのであります。ところがその基本柱には、一つには経営規模の拡大、二つには生産性の向上、三つには中核農家の育成といった柱が打ち立てられておると思うのであります。そういった点から、線引き法という性格が足を引っ張られてくるのじゃないか、弱まってくるのではないかという懸念もいたしますが、いかがでしょうか。
  264. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農振法が、制定以来線引き法と申しますか、要するに農用地区域を指定し、農用地区域内の農地を保全し、また、これに重点的投資を行う基本的な枠組みの法制としての機能を果たしてきたことは事実でございます。しかし、土地の利用調整に着目した構造政策の進展を考えるとき、今日の状況のもとにおいては中核農家と兼業農家等の話し合いを進めていかなければならない、やはり地域社会における村づくりの問題に取り組んでいかなければならないという状況にございまして、そういう意味において今回の農振法と土地改良法改正ということをお願いしているわけでございます。  農振法は決して、先ほども申し上げましたように、線引き法だけの性格ではございませんで、線引きを通じて農業の生産基盤を確保していく、それに重点的な投資を行っていくという発想のもとに考えておりますが、同時に、その基本理念としてはやはり農地の効率的利用であり、その効率的利用の前提にありますものは言うまでもなくたくましい中核農家の育成ということにあるわけでございまして、私はこういった今回の改正に盛り込まれた制度の内容なりその動機から考えても、また農振法の当初から予定しております内容からいきましても、特に今御指摘のような農業を守る視点での基盤が弱まったものとは理解する必要はないのではないかと思っております。
  265. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 長い間の経験の積み重ねの上に立った改正でありますから、目的どおりに実るようにぜひ全力を傾けていただくことを要望いたします。  次に、農水省が農用地利用増進法によって農用地の利用増進事業実施してこられたわけですが、規模拡大への結びつきと申しますか、こういった点から流動化実態ですね、経営規模の拡大へ、本当に規模拡大への結びつき、こういう名実ともにその方向に結びついていったと理解しておられるか、いかがでしょうか。
  266. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 結論を先に申し上げますと、私はやはり向かいつつあるという状況だろうと思います。  どういう点かと申しますと、まず事実として、十二万三千ヘクタールの土地が利用権の設定で動いたことは事実でございますし、作業の受委託等も六万五千ヘクタールというところまで来ていることは事実でございます。出し手は一ヘクタール未満の農家であり、受け手はより規模の大きい農家であるということも事実でございます。しかし反面、まだ三ヘクタール以上の大規模な農家に集中するというところまで来ていないということもまた受けとめなければならないと思います。そういった状況を分析してみますと、例えば再三申し上げて恐縮でございますが、野菜作の連作障害に対するための規模拡大、これは施設も露地もございます。それからあるいはまた、飼料作物を導入するための畑地への利用権の設定等が先行いたしまして、必ずしも平場の水田の利用権の設定には直結していない、むしろ現段階では作業の受委託という形で進んでいるという実態にあるということだろうということです。  そういう意味で、私ども、実は直ちに利用権の設定とか、直ちに面的集積を考えるのではなくて、地域農業集団の育成を通じて地権者の話し合いを通じ、規模拡大、機械の共同利用のための土地の共同管理、あるいは地方維持増進のための土地の利用関係の改善、あるいは農用地の効率的利用のための土地の利用関係の改善等を、現実に地域社会が作目ごとにぶつかっている問題から地域社会で話し合って解決していただき、その連続線上の中で利用権の設定、利用の面的集積というものに段階的に近づけていくことが非常に重要ではなかろうかと存念しているわけでございます。
  267. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の御答弁に対しては、私は十分ではなかった、こう言えるのではないかと思います。我々がいかなることを計画していくとしても、改正していく場合にもやはり堅実な発展というものは、過去を顧み、現在を知り、未来を語るという、こういった一貫した歴史の流れの中で進めていくことが最も大事であろうかと思われてなりません。  そこで、関連がありますが、今後日本の高齢化社会が急速に進んでいく、国際的にも最も高齢化社会のスピードの速い日本だと言われておるわけですが、そういう状況の中で、農地流動化と申しますか、どのように進行すると考えておられるか、その老齢化の問題との結びつきにおいてお聞きしたいと思います。
  268. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農家の老齢化、特に跡取りのいない老齢化農家の増大等は、私は農地流動化を図る意味においては一つの重要な促進の誘因になるものと理解しております。このことと生産性の格差、規模格差というものが農家一般に広く理解されていることが今日の流動化の誘因と考えていいのではないかと思います。  ただ問題は、それは老齢化した農家皆さんが単にリタイヤするだけでは問題の解決にならないわけでございまして、やはり同時に、そういった地域における話し合いを通じて、農業生産組織の中で従来の知識と経験を生かした参加感覚の持てる老人にふさわしい仕事に参加していただく、あるいはまた、地域社会の活動の中で従来の経験と英知を生かした指導的役割を果たしていただく、こういうふうな側面での村づくりの努力、コミュニティーを通じての努力ということが相まって十分な効果を上げるし、また、老齢化時代にふさわしい農村のあり方がつくられていくのではないだろうかと思っているわけでございます。
  269. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 特に高齢化の問題と関連して自然増が減少した、農業後継者が少なくなってきた、この厳粛な事実をどのように今後の日本農業の発展のために結びつけていくかということは非常に重大な問題であると私は思っております。こういうことと、先ほど申し上げた専業農家あるいは兼業農家との関連も多様化してくるわけでありますが、この点特に私からも強調しておきたいと思います。  次に、今回の改正で、農業振興地域整備計画の中身に、「農業従事者の安定的な就業の促進」を加えることとしている。こういう文句がうたわれております。そこで、農村地域においては特に工業導入の成果は問題になるわけでありますが、私が思うのに、この工業化の導入に関連して必ずしも満足な状態、実情にはないと思うわけなのです。ならば、今後の運用方針についてどのように考えておられるか、それをどのように具体化していきたいという施策を持っておられるか、お聞きしたいと思います。
  270. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農村工業導入法が施行以来二千九百六十八の導入企業が工場を設置いたしまして、七千五百ヘクタールの工場用地が提供されたわけでございますが、雇用の側面から言いますと、十六万四千人の従業員のうち実に十三万四千人が地元雇用ということになっております。私はやはり、不安定雇用の解消には大きな役割を果たしたものとして、計画どおりにいかなくてもそれは評価できる点があったのではないだろうかと思っております。しかし、残念ながらオイルショックを契機として農村工業の導入は激減いたしまして、最近ようやく若干趨勢をもとに戻しつつある。しかし、そう言っても、当初のような高いベースのものでないことは事実でございます。やはり低成長時代ということを頭に置いてこれからはこの問題を進めなきゃならぬ。  私どもといたしましては、今日の日本の社会的状況、運輸、通信等のネットワークの整備状況等から考えまして、これからは広域的な観点からの工業導入と、    〔理事北修二君退席、委員長着席〕それから、地元の就業機会が少ない遠隔地域に重点を置いた工業導入ということに重点を置いていきたいと思いますし、具体的にはテクノポリス制度への積極的な働きかけや、また通産省の一般の工業立地促進政策、労働省の地域別雇用調整政策との連携は特に重視してまいりたいと思っております。
  271. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この工業導入が農村地域の安定就業に大いに役立つということは否定するものではありません、認めますが、そのことと、今度は地場産業の育成という立場からまた考えなければいけない。この点について農水省とされてはどのようにお考えになり、そしてどのような対策を持っておられるか、お聞きしたいと思います。
  272. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 工業等に代表されますような他地域からの企業の導入以外に、やはり地場産業の育成ということが非常に重要な問題だろうと思っております。特に、従来のような低次加工だけではなくて、もっと高次加工も含めた農林水産物の利用加工を中心にした地場産業あるいは伝統的な観光ではなくて、もっと幅広く購買者にサービスを提供できるような農林漁業や農山漁村という資源を生かした観光事業ということが大事であり、また、現に成功している事例もたくさんあるわけでございます。  従来からの構造改善事業山村振興対策事業等でこれに関する施策を進めておりましたが、特に本年度は地場産業の育成に念頭を置きまして、ハード面だけではなくてソフト面の助成も含めましたいわゆる新農村地域定住促進対策事業を発足させることにしたのもこういう理由によるわけでございます。今後とも地場産業の育成につきましては、省を挙げまして総合的な視点から必要な指導なり助成のために努力してまいりたいと思っているわけでございます。
  273. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 こういうことはいかがお考えでしょうか。  第一次産業における生産、いわゆる農産物の生産を高めていくということと関連して、第二次産業に結びつける加工産業ですね。加工産業に結びつける施設、そしてその内容によって今の地場産業との結びつきと就業、いわゆる失業者に仕事を与えていくという、このことは非常に重大であると思うのですが、いかがでしょうか。
  274. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のように、地場の特産品等を活用いたしました二次加工業を誘致するということは、私は工業の導入等に当たっても特に配慮していい問題ではないかと思います。どういう商品をつくっていくか、その商品が将来の発展性を持つものかどうか、そういうことがこれだけ消費の多様化した自由な時代でございますのでなかなか難しい点がございますが、そういった開発努力というものはできるだけこれからも続けてまいりたい。現に山村振興対策事業等でも地場産業として木工品等をいたしまして成功している事例もあるわけでございまして、そういうノウハウを集積し、できるだけ幅広く御紹介もいたしたいと思っております。
  275. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今難しいとおっしゃったが、難しいからやらぬとか、あるいは手をつけにくいとか、やりやすいからやるという、こういったイージーゴーイングな物の考え方ではいけないと思います。難しい、難しくないというものでもない。本質的にこれは大事なことであるかどうかということが根本でありまして、このことを私は非常に大事なことであると思っておるのです。それでその点については一応とめますが、そういう観点から、全国的にそういった方向に成功しておる府県あるいは施設がありましたら知らせてください。
  276. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私が難しいと申しましたのは、今日の消費の動向の中では、伝統的な商品をつくっているだけではなかなか市場性が出てこない、こういう意味で申し上げたわけであります。どういう商品開発をするかが、まさにポイントだろうと思います。  幾つかの事例で申し上げますと、例えば、一つは大分を初め各県で実施しておられます一村一品運動というようなものは、単なる地場の農水産物を利用した商品開発なりその売り込みだけではなくて、実は観光や文化を売っているという側面もあるわけでございまして、こういった一つの事例もございます。それからもう一つは、従来比較的林業的に利用が低かった広葉濶葉樹を使って振興山村で新しい木工品をつくる。そのために工場をつくるだけではなくて、新しい技術の養成をやるということで取り組んで成功しておられる事例もございます。それから、さらに中部地域等においては、今日の消費の多様化に対応して、非常に多種類のジャムの生産を地場産業として興されまして、今日の消費にマッチして伸びている。また、雇用もふえてきているというケースもあるわけでございます。  やはり、そういった新しい時代にふさわしい商品開発なりサービスの販売ということを考えていただくための努力が要ると思います。我々もそういう情報の提供については、それぞれの地域にできるだけやる努力をしてまいりたいと思います。
  277. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の問題に関連して、特に大臣にお聞きしたいのですが、沖縄における基幹作目は何と申しましてもサトウキビでありますし、またパインであるわけですが、農業に直結したパイン加工、このことと雇用力との結びつきが安定就業という面からも非常に重大である。これは沖縄における特に農政上の立場から発展性のある積極的な施策を講じていただかなければいけない、こう思って所あるごとにそれを強調いたしております。ところが現実は、このパインがいわゆる輸入パインの問題とのかかわり、それから価格とのかかわりが問題になりまして、毎年毎回のようにこのことが問題になっておるわけであります。その意味におきまして、積極的な施策を、いわゆる国内需給生産向上を、何といいましても、大臣が絶えず強調しておられるこの線を踏まえて、足らざるを補うというお気持ちで輸入をする。まず国内生産を優先的に消化する、こういった点を過去におきましても絶えず強調いたしてきて、また、その線に沿ってなされておると思うわけでありますが、これがもう頭の痛いことであります。そういうわけでありますので、特にこのことについてひとつ大臣の所見を承りたいと思います。
  278. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 沖縄におけるパイナップル産業は地域経済における重要な分野であるというぐあいに考えておりまして、せんだってのアメリカとの十三品目の合意内容におきましても、最近の割り当て実績の九十万ケースを維持するということで一応年間妥結を見たようなわけでございます。そしてまた、今先生の言われました企業設備の近代化等に要する資金、また加工工場の近代化、それから企業の合理化、これらの推進にもひとつ積極的に取り組んでまいりたいというぐあいに考えます。
  279. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、地域社会における村づく力、村興しということがこれまで絶えず強調されてきたわけであります。また、この法の精神もそこにあるわけです。ところが、農村と都市との間に見られるいろいろな面からの格差の違い、これの最大の点は何と申しましても生活環境施設の整備水準、この差が否めない事実であると私は思います。ところで、今回整備計画の内容にこの事項を加えておられる。これを契機として従来以上に積極的な取り組みを行ってもらわなければいけない、行ってほしい、こう思うわけなのですが、この生活環境施設整備の内容は、いわゆる都市と農村のバランスのとれた、融和のとれた施設整備というものと不可分の関係があると私は思うわけなのです。では、そのことについてひとつ御所見を承りたいと思います。
  280. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 一部には、生活環境整備というふうな助成は整理しろという御議論が有力にあることは私どもも知っております。行革審等の議論でもそういう議論があった経過もございます。しかし、農村地域においては町村の財政力の水準が低いという事情があってなかなか単独で実施できない事情があり、整備水準が低いことは事実でございますし、また広い空間や厳しい自然との関係において、農村であるがゆえに持たなければならない生活環境施設整備もあるわけでございます。私どもは従来からも各般の助成施策でその事項の追加、拡充を図ってきたわけでございますが、今後は今回の農振法の改正を契機といたしまして、市町村の事情をくみ上げ、その計画に即して事業の採択や優先実施を図り新しい助成制度のあり方を検討すると同時に、これは関係各省が多岐にまたがっておりますので、そういった要望を関係各省に的確につないでいく努力もこれからしてまいりたいと思っております。
  281. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それらの点ひとつ具体的に力を入れてもらうよう要望いたしておきます。  次に、この農振法に導入されることとなった問題の協定制度です。協定制度はいわば緑化協定などとの類似点もあるわけでありますが、その法的性格、特に協定参加者に対する拘束力と申しますか、拘束力はどのように考えておられるか、またどのように理解すればいいのか。このことがまかり間違うというと結果的には、角を矯めて牛を殺すという言葉もありますが、そういった懸念もなきにしもあらず、こういう意味で、協定制度の中にどのようにこの協定参加者をスムーズに包んでいくのか、この配慮が大事だと思いますが、このことについてお聞きしたいと思います。
  282. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 本質的には、ただいま喜屋武委員御指摘のような緑化協定同様に民法上の契約でございます。ただ、農業用施設の配置に関する協定につきましては、参加はもちろん当事者の自由な意思にゆだねておりますけれども、安定性と継続性を担保するという事柄の性格から承継効を一定の範囲で認めますと同時に、これは不作為の事務の場合でございますが、また、協定参加者を、後日参加する者については市町村長への通告で参加ができるということにしております。施設の維持運営に関する協定につきましては、これは基本的には民法上の契約として処理しておりますけれども、もちろんその参加等は処理しておりますので、参加等は自由でございます。ただ、まだその運営についてはむしろ市町村長の立場で適切な運営が行われるよう、また、実効性が上げられるよう必要な指導なりアドバイスをできるということにしているわけでございます。ただいま申し上げましたような法的性格でございますから、義務違反がありました場合においては、例えば差しとめ請求ができるとか、あるいは違約金の支払い請求を行うというふうな民事上の手段の方にしか特にございません。
  283. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 このことも非常に大事である。と申しますのは、私は思うのです。世の中で一番難しいのは人間関係である。同時に、世の中で一番大事なこともまた人間関係である。こういった見地に立ちまして、協定が成立した地域では、それに加わらなかった者、いろいろな事情があるでしょう。利害関係とか、あるいは人間的な性格、いろいろあると思うのですが、加わらなかった者に対して白眼視するとか、あるいはのけものにするとか、あるいは村八分とか、いろいろ出てこないとも限らないと思います。このような問題が起こらないように配慮しないというと、ただ決めたからこうやったといったような圧力的な、知らしむべからず、よらしむべしといった調子で、これを形式的にいかに結びつけようとしてもそれは成功しないと思うのですが、この点いかがでしょう。
  284. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私も全く同感だと思っております。これは従来の総有的性格を持った部落機能というものが後退する中で、新しい時代にふさわしい地権者や共益者の話し合いの仕組みでございます。そういう意味におきまして、施設の配置に関する協定におきましては、やはり営農環境への影響の及ぶ範囲を超えない土地の所有者に限定して参加を考える。また、認可の要件といたしましては、内容が妥当、適切である旨の条項を求める等、決して不参加を理由に社会的な不利を強いることのないよう仕組みを構じておるところでございます。また、施設の管理に関する協定につきましても、自由な意思のもとでの参加はもちろんのこと、内容が、つまり施設の維持運営の方法が適切であるか、それから、協定成立後の参加とか脱退する場合の手続が妥当なオープンなものであるかどうか等の要件をつけているわけでございます。しかし、御指摘のような点もございますので、十分その運用に当たっては考慮するよう市町村にも指導してまいりたいと思います。
  285. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 十分な配慮を願います。  次に、土地改良区の総代会、これは従来は三百一人以上に置くと。ところが今回は二百一人以上に改まるわけなのですね。この土地改良区の総代会の設置要件を緩和するということになっておりますが、緩和したことによって土地改良区と農業者の間の精神的な距離感といいますか違和感といいますか、この距離を引き離してしまうようなことになったら大変なことだと思いますが、この総代会の編成が変わった意義と、その精神、心と申しますか、そのことをお聞きしたいのですが。
  286. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 今回の法改正は、混住化の進展や土地改良区の大型化で代理出席の比率が高いとか、なかなか議決に必要な議席を確保できないという具体的事情から処理したものでございます。もちろん総代会を設けて運営するか、従来どおり運営するかはそれぞれの土地改良区の自由に任しているわけでございますし、また、総代会を設置する場合につきましても、十分地域住民と総代会の意思決定の間に落差を生ずることのないよう、集落における話し合いその他を通じて総代会に臨む等の指導を考えてまいりたいと思います。御指摘の点を頭に置きまして、民主的な運営については今後とも努力してまいりたいと思います。
  287. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 大変失礼な言い分かと思いますが、私もたびたび経験しておる実感を持っておりますので、やはり役人に対する庶民の考え方、また役人が庶民に対する出方、態度というところに考えさせられる面が、私もたびたび経験いたしておるということだけを申し上げまして、ひとつスムーズにそれがいくように御努力をお願いいたしたいと思います。  次に、この運営上の面から、一定の土地改良事業にかかわる同意徴集手続の簡素化、これは民主的な側面からすると、前よりも後退したと見る向きもあるわけですが、農水省はどのように考えておられるのであるか、お聞きしたいと思います。
  288. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 維持更新事業の簡素化につきましては、事業区域や管理方法等に大きな変更がないこと等の実質的に管理と同質のものを対象にするとともに、事業費負担も合理的なものである。端的に申しますと、施設の更新による年間の管理費負担の節減分に耐用年数を乗じた額が建設負担よりも大きくなる、こういう基準で逆用してまいりたいと思っております。  それから、地区の追加のための計画変更については、追加される土地の権利者全員の申し出があることを前提とし、かつ全体の事業影響を及ぼすことのないものでなければならないという考え方でございます。これらの趣旨につきましては、既に法律の上でも一部明確にさしておりますが、政令等を通じてさらに補ってまいりたいと思っています。しかし、御指摘のように、まさにそれは中身の運営の問題でございます。十分事業実施に当たっては説明会等により内容の周知徹底を図ると同時に、また、土地改良区の総会とか知事認可の際の異議申し立て手続において少数の組合員の意見についても十分尊重いたし、また、そういった事情というものが知事の認可に当たっても判断要素になるよう指導してまいりたいと思います。
  289. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 あくまでも民生的な対話というようなお気持ちで…。  次に、どうしても理解ができないのが一つありますが、昭和四十七年の法改正で制度化された非農地受益者賦課制度、それから予定排水の差しとめ請求制度という文句がございます。ところが、それが今日まで全く機能しておらないと聞いております。大事なったい文句はあるけれども、今日までそれが機能しておらない。どういう意味なのか。そして今度の法で今後その対応措置はどのようになさるのであるか。その点をお聞かせ願いたい。
  290. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 都市化の問題、混住化の問題を受けとめて四十七年の改正を行ったわけでございますが、結果としては法律自体は必ずしも十分に作動しなかった点は、というより、ほとんど作動していなかったという点は御指摘のとおりだと思います。この中で土地改良区の市町村協議の制度につきましては、やはり現在の農業用用排水路が生活排水や雨水の処理施設になっている、廃棄物の処理施設になっているという背景もありまして、一都市町村に管理が移管されたものがあるほか、市町村が一定の範囲で費用負担しているという実績があるわけでございまして、実質的には機能を果たしております。  これに対して、非農地受益制度や、管理規程の上に立った差しとめ請求制度については、まだ具体的に発動されたところまで来ておりません。これはなかなか難しい問題がございまして、非農地受益の問題については、施設使用料として一定の管理費用を個別契約により徴収するという実態をどうつくり上げるかということがあって、やはり強制賦課が動いてくるわけであります。あるいは強制賦課を背景にしてそういう実態をつくっていかなきゃならぬという問題が基本にあるわけでございます。また、管理規程と差しとめ請求等につきましては、いわば現在の水質の汚濁防止に関する法例等によりまして、原因者が特定できておりその影響が明白な場合においてはそちらの方から実は処理されているという点もあって、議論していない点があるだろうと思います。しかし、私は、この二つの規定はむしろこれからの運営の改善を図る場合における一つの担保措置として重要なものであり、むしろこの際、我々といたしましては今回の法改正を契機にいたしまして、市町村協議についての運用マニュアルを作成すると同時に、管理規程、差しとめ請求あるいは員外賦課等の制度の問題についても、実効性あるものにするようなマニュアルの作成ということを多少幅を広げまして考えてみる必要があるのではないかと思っております。努力したいと思います。
  291. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 法の規定の運用は原則とただしがあるわけですから、そこをひとつ希望を持つ、そういった薬にしていくという、こういった生かし方が一番大事かと思いますので、希望しておきます。  次に、基本的な問題、これはぜひ大臣にお聞きしたいと思います。  沖縄における基盤整備事業は着々と進展しつつあることを私は申し上げたいと思うのでありますが、サトウキビなどの畑作物が基幹作目であるというだけに、一番必要な水の問題、用水の確保が、これはサトウキビだけでもありませんが、一般的に困っておる、困難を来しておる。この水の問題は、沖縄本島のほかにも多数を占めておる離島においても、どうしても水の問題と関連の農業が多いわけであります。他の都道府県と著しく異なる点、慣行、気候、風土、いろいろ違いますけれども、特に水の問題が著しく他県と差異があるということをより念頭に置いていただいて、抜本的にこの水の問題を解決していただきたいのですが、そのことに対する大臣の所信をお願いいたしたいと思います。
  292. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 沖縄、特にサトウキビが基幹作目ということで、何にしても農業用の水源の確保が大事なことでございますが、そのほかにまたかんがい排水施設の整備、農道や圃場の整備、これらに対する各般の事業を行ってきたところでございますが、沖縄における農業基盤整備状況は、確かに本土に比べまして十分ではございませんので、今採択基準、また補助率及び予算についても特別の優遇措置を講じておるところでございます。五十九年度予算におきましても、全国の農業基盤整備事業費の対前年度比が九九・一%と厳しい状況の中でございましたが、総額で二百二十八億二千二百万円という対前年比一〇二・七%という予算確保したところでございます。しかし、今後とも沖縄の振興を図るために、その気象的、地形的条件等を十分に配慮した上で、水資源の開発、農地整備等、各種の農業基盤整備事業を積極的に推進してまいります。
  293. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、沖縄におきまして、これは自慢の一つでもあると思うのですが、島興し、村興しとこの前もちょっと申し上げました。こういったところから共同作業を季節的に、例えばサトウキビの収穫とかその他いろいろな仕事がありますが、隣近所あるいは親戚縁者が集まって共同作業をやって力をかしてあげるという美風が昔からあります。これを結いの精神と、寄り合いの心と言っております。それから八重山に行きますというと、うつぐみの心と言っております。うつぐみというのは心を寄せ合わせるという言葉でありますが、うつぐみの心、それから結いの精神と、こういう…
  294. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 喜屋武君、時間が来ました。
  295. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 しかも、これは住民の中から出た自主的な美風でありますが、この点、先ほど来強調しております協定制度の中に、心にぜひ生かしていただきたいということを要望いたしまして、時間が参りましたので終わります。
  296. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 他に御発言もなければ、両案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  297. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより両案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  298. 下田京子

    ○下田京子君 私は日本共産党を代表し、ただいま議題となりました両法律案に反対の討論を行います。  今日、我が国の農業は、歴代政府の大企業本位、工業優先の産業経済政策のもとで、農業生産の基盤である農地の縮小や兼業化の進行など深刻な事態にあり、このことが農村における混住化やスプロール化を促進させている根本原因であります。  したがって、豊かな村づくりや活力ある農村社会の形成には、何よりもまず農業を国の基幹産業として位置づけ、工業とのつり合いのとれた発展を図ることです。そのために外国農産物の輸入を抑え、国内農薬を積極的に拡大すること、また、臨調行革路線に基づく土地基盤整備や価格保障予算の削減ではなくむしろ増額することなど、従来の政策の根本的転換が必要であります。  こうした転換なしに農業と非農業の調整を図るという今回の改正二法案の方向は、結局農地及び農業縮小の方向に進まざるを得ません。  具体的に農振法改正案についてその問題点を指摘します。  第一に、農振地域整備計画農地流動化による中核農家規模拡大など構造政策を総合的に推進できるよう、その内容を拡充しています。しかし、本来、農地の効率的利用や総合的利用は、あくまでも農民の話し合いによって進あるべきもので、市町村計画として上から押しつけるべきものではありません。しかも、中小零細な兼業農家も含めて農業生産に意欲的に取り組める農政の展開なくして地域農業生産の発展はあり得ません。  第二に、交換分合制度の拡充については、生活環境施設用地の確保の名のもとに、いわゆる優良農地として囲った農用地区域内農地をも転用を円滑に進める結果につながるものです。このことは、農振法の線引きが都市政策や各種開発政策に従属しているという性格を一層強めるものです。  第三に、施設の配置に関する協定制度については、協定に同意しない者の土地について、協定区域予定地として取り込み、市町村長のあっせん等による運用いかんによっては協定非参加者の権利侵害につながりかねません。  次に、土地改良法改正案についてであります。  まず第一に、換地制度における非農用地の創出手法の拡大は、土地改良法の目的である農業総生産の増大に逆行し、圃場整備等の事業が公共用地の円滑な確保の手段とされかねないものであります。  第二に、土地改良法の民主的側面である農民の自発性に基づく土地改良事業を具体的に保障しているのは、関係農民の申請に基づく事業実施であり、関係農民の同意手続です。この同意手続が、事業の効率化の名のもとに一定の条件つきとはいえ簡素化されることは、民主的側面の後退です。  なお、農業用用排水路の他用途兼用の際の協議制度の拡充は、現実に都市化が進む中で土地改良区の抱えている問題点の改善を目指すものとの評価もできますが、国としての積極的な財政援助なしには解決は困難であることを指摘し、私の反対討論を終わります。
  299. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  300. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより順次両案の採決に入ります。  まず、農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  301. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  最上君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。最上進君。
  302. 最上進

    ○最上進君 私は、ただいま可決されました農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   最近における我が国農業をめぐる厳しい情勢に対処するため、食料の総合自給力の強化を図り、あわせて生産性の高い農業の実現と活力ある農薬・農村を形成していくことが緊急の課題となっている。   よって政府は、農業の振興と農村の整備に係る各種施策を総合的かつ計画的に実施するとともに、特に本法の施行に当たっては、次の事項の実現に遺憾なきを期すべきである。  一、農業振興地域整備計画の変更に当たっては、優良農用地や農用地開発適地を農用地区域に積極的に確保するとともに、不耕作地等の遊休農地の有効利用を図るための指導を行うこと。  二、農用地の開発を円滑かつ積極的に推進するため、農業の振興と林業の振興との関連配慮しつつ、交換分合制度の活用等により、里山等の農業的利用が図られるよう関係者に対する啓もう等に努めること。  三、農用地の効率的かつ総合的な利用の促進に当たっては、市町村、農業委員会、農業協同組合、農地保有合理化法人、普及組織等の協力体制を確立しつつ、兼業農家等を幅広く包摂した地域農業集団を育成し、農業構造の改善施策を総合的に推進すること。また、農業構造の改善施策とあわせ、生産対策、流通対策及び価格対策の適切な実施に努めること。  四、農業従事者の安定的就業機会を確保するため、農村地域への工業導入施策の積極的運用に努めるとともに、地場産業の育成、観光開発等地域の実情にあった各種施策の拡充強化に努めること。    また、これら施策の実施に当たっては、日雇、出稼ぎ等の不安定就業の改善に特に配慮すること。  五、農村地域を定住の場として整備し、後継者の確保、嫁不足の解消、農家・非農家を包摂した新しいコミュニティーの形成を図るため、各種生活環境施設等の整備促進するよう努めること。    また、これら施設の設置に当たっては、創設交換分合制度の活用をも図りつつ優良農用地の確保影響を及ぼさないよう十分配慮すること。  六、農業振興地域整備計画の各種計画事項が円滑かつ整合的に実施されるよう、国は、事業の適切な採択とその実施について十分な配慮を行うこと。  七、協定制度の運用に当たっては、地域の独自性、地域住民の自主性が十分反映され、集落の自治機能が助長されるよう指導するとともに、法律に基づく協定以外の各種の自主的取決めについても、農村におけるコミュニティー機能の活性化を図る観点から、地域の実情に応じ、その適切かつ積極的な活用が行われるよう啓もう指導すること。   右決議する。  以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  303. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいま最上君提出の附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  304. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 多数と認めます。よって、最上君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  次に、土地改良法の一部を改正する法律案について採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  305. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  村沢君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。村沢牧君。
  306. 村沢牧

    ○村沢牧君 私は、ただいま可決されました土地改良法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    土地改良法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、最近における我が国の農業及び農村が、極めて厳しい状況に直面していることにかんがみ、農業生産基盤の整備、開発を図り、農業の生産性の向上、農業総生産の増大及び農業構造の改善等に資するよう、土地改良事業の積極的な実施に努めるとともに、本法の施行に当たっては、次の事項の実現に遺憾なきを期すべきである。  一、第三次土地改良長期計画における計画事業量が達成されるよう必要な予算確保農家負担の軽減、事業工期の縮減等に努めること。  二、農村地域の混住化等の一層の進展により、農業用用排水路等の地域排水路としての機能が拡大し、土地改良区の経費負担が増嵩している状況に対処するため、当該農業用用排水路等の建設事業費負担の公平を図るとともに、市町村等協議制度、非農用地受益者に対する賦課制度等の各般の利用調整制度が地域の実情に即して総合的かつ有効に活用されるよう適切な措置を講じ、地域における公平分担の実現と土地改良区の経費負担の軽減を図ること。  三、土地改良区及び土地改良事業団体連合会の組織運営体制の強化を図るため、その財政基盤の充実、事業運営への構成員の意思反映並びに役職員の資質の向上及び処遇の改善に努めること。    また、今後更に複雑化、高度化すると見込まれる農業用用排水路等の土地改良区による適切な維持管理を確保するため、助成措置の充実に努めるとともに、水系等を基準とした土地改良区の合併を促進すること。  四、土地改良区が行う農業集落排水施設整備事業については、その適切な実施確保するため、市町村等の行う事業と十分な調整を図るとともに、技術援助体制の整備を行うこと。   また、本事業による排水処理施設の設置に   当たっては、資源の有効利用の促進配慮するとともに、農業用用排水の水質保全等を図るため、用排水分離事業等の積極的推進を図ること。  五、ほ場整備事業等を通ずる生活環境用地等の創出に当たっては、優良農用地のスプロール化を防止することを旨とするとともに、用地提供のための農家負担が過重とならないよう、その設置場所の選定及び規模等について十分な配慮がなされるよう指導すること。    また、換地の実施に当たっては、関係者の意見が十分に反映され、公正な運用が図られるよう指導すること。  六、施設更新事業等の同意徴集手続の簡素化及び土地改良区の総代会設置要件の緩和については、組合員の権利を保護し、その意見が十分反映されるよう適切な措置を講ずること。   右決議する。  以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  307. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいま村沢君提出の附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方は挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  308. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 全会一致と認めます。よって、村沢科提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいま可決されました両決議に対し、山村農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。山村農林水産大臣
  309. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) ただいま御可決いただきました二法案の附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上、善処するよう努力してまいりたいと存じます。
  310. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) なお、両案の審査報告書の作成は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  311. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十分散会