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1984-06-28 第101回国会 参議院 農林水産委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月二十八日(木曜日)    午後一時開会     —————————————    委員の異動  六月二十六日     辞任         補欠選任      稲村 稔夫君     鈴木 和美君  六月二十七日     辞任         補欠選任      鈴木 和美君     稲村 稔夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         谷川 寛三君     理 事                 川原新次郎君                 北  修二君                 最上  進君                 村沢  牧君                 藤原 房雄君     委 員                 浦田  勝君                 岡部 三郎君                 熊谷太三郎君                 坂元 親男君                 高木 正明君                 竹山  裕君                 初村滝一郎君                 星  長治君                 水谷  力君                 稲村 稔夫君                 上野 雄文君                 菅野 久光君                 刈田 貞子君                 下田 京子君                 田渕 哲也君                 喜屋武眞榮君    政府委員        農林水産省構造        改善局長     森実 孝郎君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    参考人        日本大学農獣医        学部教授     青木 志郎君        大阪土地改良        事業団体連合会          会長       上田  治君        農政調査委員会        理事長      大和田啓氣君        全国町村会政務        調査委員宮城県        志田郡三本木町        長        今野元治郎君     —————————————   本日の会議に付した案件農業振興地域整備に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送付) ○土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付)     —————————————
  2. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案及び土地改良法の一部を改正する法律案、以上両案を便宜一括して議題といたします。  本日は、両案につきまして、お手元の名簿にございます参考人方々から御意見を拝聴いたしたいと存じます。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ当委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。  本日は、両案につきましてそれぞれの立場から忌憚のない御意見をお伺いいたしまして、今後の委員会の審査の参考にさせていただきたいと存じます。よろしくお願い申し上げます。  それでは、これより御意見をお述べいただきますが、あらかじめ議事の進め方につきまして申し上げます。  御意見をお述べ願う時間は議事の都合上お一人十分間程度とし、その順序は、青木参考人上田参考人大和田参考人今野参考人といたします。参考人の御意見の開陳が一応済みました後で、委員からの質問にお答えをいただきたいと存じます。  それでは、青木参考人からお願いいたします。青木参考人
  3. 青木志郎

    参考人青木志郎君) ただいま紹介されました日本大学青木でございます。  私の専門であります建築計画地域計画、特に農村計画研究を通した立場から、また、数少ないことでございますが、私が農村計画的な村づくり実践活動の体験の中から、今回提案されました二法律改正案について意見を述べさせていただきます。意見を説明する前に私の農村計画に対する考え方を述べまして、その立場からの意見をということで御理解をいただきたいと思います。  農村計画研究というのは大変日も浅くありまして、農村計画とは何ぞやということを聞かれますと、研究者一人一人がその立場でいろいろな意見を持っておりますが、私は農村計画とは国土計画の体系に関する一つ領域であり、農林業を主産業とする地域において地方自治体農林業的土地利用を中軸とした当該地域自然的環境社会的環境物財的環境相互矛盾及び内部矛盾の克服と、それらの有機的総合を通じて住民生活の安定と向上を図るための地域認識実践発展的、永続的な過程そのものであるというふうに定義をしております。  ここで定義を一々説明することは時間がございませんが、そういう中で基本的な考え方としましては、農村計画というものの領域というのはいわゆる農林業を主産業とする地域ということでございまして、具体的には自治体の中の農村地域というふうに現段階では一応しておりますが、必ずしも農村計画と言う場合に現在の線引きされた農村地域がその対象となって適当であるかどうかということはまた別の問題でございます。そういう中で、一つ住民がみずからその地域社会を形成するということにおきまして、この計画については住民が義務として権利として参加する計画のうちの一つであるというふうに考えております。  また、この計画三つ計画がございまして、経済計画社会計画物財計画、この三つ計画三位一体計画するということが大変重要である。我が国都市計画を含め、農村地域計画は、残念ながらこの三位一体的な計画がされないところに種々の問題が提起されているというふうに私は判断しております。  また、農村空間というものは、都市空間と違いまして幾つかの特質を持っております。特に、その空間計画には三つ計画がございまして、点の計画と線の計画と面の計画。点というのは施設というふうにお考えになって結構でございます。線というのは道路、水路、鉄道であるとか、そういう線的な空間というふうに考えていただいて結構だと思います。面は、土地利用計画といいますか、圃場であるとか公園であるとかいうようなものが面の計画。山林、森林どもとらえ方によっては面の計画に入れてよいかと私は存じますが、そういう三つ計画三位一体計画される必要があります。都市の場合には主として点と線の計画が主 軸でございまして、農村の場合は面の計画が主軸でございます。この辺が都市計画農村計画との大きな違いでございます。  また、もう一つ特徴は、農村生活生産生活と再生産生活が時間的に空間的に分離しがたい、いわゆる一体的な空間であり、生活であり、また空間もそれに伴って生産生活の一体的な視点から計画をする必要があるという特徴がございます。  それから、農村計画において、主要な空間計画一つとして、私は下位計画である集落計画というものを重視するべき必要があるということでございます。これは、土地利用計画というものが住民合意のもとで有効な土地利用をするについては小領域計画というものを重視するということでございます。  なお、最近の農政の中でも、集落農業とか、あるいは集落土地利用計画というような形のものが集落住民合意のもとで形成されることが、より高度な土地利用のもとで農業生産性を上げるというところにもつながりまして、私はこの集落計画というものを重要視します。また、その集落計画を積み上げまして上位計画に持ち上げるという、いわゆる積み上げ方式計画というものが豊かな農村、豊かな村づくり住民主体村づくりにつながって、そして農業発展させることになるかというふうに考えております。  また、もう一つ、その中での土地利用考え方でございますが、やはり私益追求型の土地利用というものを余り進めると問題がございますので、少なくとも公益という形で土地は本来使わるべき性格がございますが、我が国の場合には公益の公というのが総論賛成各論反対という形になりがちでございます。大上段に公益というようなものを持たないで、少なくともその中間項である共益という形の、ともに地域社会に住んでいる人々が、ある領域の中に住んでいる人々がともに生活を豊かにするという形の中での土地利用というものは、従来の集落という形の中で幾つかの歴史を持っております。そういう従来持っていた農村共同部なよい点というものを、現代の社会にマッチさせた形の中で新しく共益という形の考え方というものをやはり農村計画の中では持ち込むべきであるという考え方を持っています。  また、もう一つ、これは観点が違いますが、やはり美しい村をつくるということ、風格のある農村らしい村をつくるということが大変重要であるというふうに考えております。そういう視点から見ますと、この農振法の改正におきまして、計画内容整備拡充というところでいわゆる生活環境というものを取り上げてその整備をはっきり出したということ、私はこれを高く評価しています。また、農業従事者の就業の問題も私が先ほど言いました社会計画の分野でございまして、こういう社会計画農業計画あるいは物の計画を一体的に整備するという考え方からすれば、こういうものがこの中でうたわれたことを私は高く評価いたします。  それから、森林の問題につきましても、これも同様に、農地森林との一体的な整備ということは当然欠くべからざることでございまして、このものが入ったことは私はよろしいかと存じております。  それから、交換分合制度拡充の問題につきましては、私の専門ではありませんけれども、少なくとも農村計画を我々がするという場合に、その計画自由度を高めるということで大変好ましいことであるというふうに考えております。特に、生活環境整備用地生み出しであるとかいうようなことについては、生産だけでは農村というものは成り立ちませんで、生活があります。ですから、生産生活の一体的な整備という形でこの交換分合がやりやすくなるという点では評価できるかと思います。  それから、協定制度の創出につきましては、これは農業用施設配置に関する協定施設維持管理に関する協定の締結でございますけれども、この施設配置に関する協定は、我々計画する者にとっては大変重要なことでございまして、まさに計画的に農村がつくられるということを保証するということで、これも高く評価します。条件としては幾つか私も考えておりますが、時間がございませんので、御質問の際にお答えいたしたいと思っております。  それから、土地改良の問題でございますが、土地改良区がこの農村整備に対して種々実践活動ができる条件をここにつくり出したということは、私、実際に新潟県の亀田郷土地改良区でその整備計画をしておりまして、こういうことができればさぞよかっただろうというふうに考えて、これも私が考えます農村計画にとって大いに効果ある法改正であるというふうに考えております。  総括して申し上げますと、この法改正は私の農村計画を進めるという視点、また、私が今お話ししました農村計画における考え方ということから考えましても、従来の新農構を初め農林水産省で出していた法制度を一層進めて、より豊かな農村計画に役立つものであるというふうに評価したいと思います。私は法律のことは専門家でございませんが、法はもろ刃のやいばということも聞きますので、十分慎重に取り扱うことは、これもお願いしたいことだというふうに考えております。  なお、この法が最も正しく反映するためには、考え方を再度申し上げますと、やはり住民がみずからこの村づくり計画するという形の中で大勢の方々が参加し、民主的な形の中で運営されることを期待しております。  以上で終わります。
  4. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ありがとうございました。  次に、上田参考人にお願いいたします。上田参考人
  5. 上田治

    参考人上田治君) ただいま御紹介をいただきました大阪土地改良事業団体連合会会長を仰せつかっております上田でございます。  今回、本委員会に付託されております農振法及び土地改良法の一部改正案につきまして意見を申し述べる機会を与えていただき、大変光栄に存ずる次第でございます。  本日は、私の職務柄土地改良法改正案中心意見を申し述べたいと存じます。  私、現在、府連合会会長のほか、神安という土地改良区の理事長職を預からせていただいております。そこで、私の意見を申し述べる前に、神安土地改良区の概況を御説明申し上げ、先生方の御理解をいただきたいと存じます。  神安土地改良区は、淀川右岸に展開する三島平野のうち約千ヘクタールの農地を持っている地区で、極めて低湿地帯でございます。昭和三十年代までわずかな降雨でも地区全体が何日間も湛水するという状態で、抜本的な排水対策を講ずることが私どもの長年の悲願でございました。幸いにして、昭和三十八年から四十二年にかけて大阪府営三島平野用排水改良事業が実施され、地域排水不良が一掃されました。現在私どもは、この事業によって造成されました施設中心として、揚水機場十一カ所のほか、用水路排水路合わせて約百キロに及ぶ水路管理いたしております。  さて、神安土地改良区の関係市は、高槻市、茨木市、摂津市及び吹田市の四市でございまして、まさに大阪市のベッドタウンとしての位置にございます。このため、地区内外での住宅団地等の開発は目覚ましいものがありまして、地区内の各集落におきます農家の割合はおよそ五%にも満たない状態になってまいったのでございます。  特に、神安土地改良区が管理いたしております排水路は、約六千百ヘクタールに及ぶ地域からの排水処理しておりますが、このうち組合員農地は約千ヘクタールでございますから、単純に面積比で見ましても、排水処理量の約八五%は関係市の市街地の排水処理していることとなり、また、公共下水道がほとんど整備されていない現状から家庭雑排水工場排水も一手に引き受けて処理しておるような現状でございます。私がこのようなことを申し上げますと、施設管理などは関係各市に移管してはどうかという御意見が当然ある かもしれません。しかしながら、関係四市にまたがる地域排水には複雑な排水慣行があり、低位部に位置する農地を守るため、大都市近郊にあるからこそ私ども土地改良区が地域の資源である水路管理することにより、地域社会環境を保全し、ひいては農地を守り農業を守ることになると確信いたしておるのでございます。  現に神安土地改良区の地区内農地のうち約六百ヘクタールは農振地域で、そのうち百八十ヘクタールは農振農用地区域となっております。さらに私どもは、地区内農地のかんがいのため既に主要な水路について完全に用排水を分離し、目下用水源である淀川の汚濁に対処して独特の水質浄化工法による水質障害対策を実施中でございます。  ところで、私のところのような大都市近郊にある土地改良区がその使命を果たしていくためには、何と申しましても土地改良区と関係市当局の健全な協調関係が絶対的に必要な条件であると考えております。このため神安土地改良区では、昭和四十七年の土地改良法改正に基づく市町村協議制創設される以前から、既に当改良区の業務運営について関係市の担当者協議調整を行うため、専門の組織を設け積極的に意見交換を図るとともに、管理費分担方法について地道な話し合いを続けてまいりました。この結果、幸いにいたしまして昭和四十八年度より排水管理費のうち都市排水相当分はすべて関係市に負担していただくことで協議が整い、各市との関係も極めて円満にやっているところでございます。  さて、このような大都市近郊土地改良実務者立場から、まず土地改良法改正案について御意見を申し述べたいと存じます。  最初に、市町村等協議制における知事裁定制導入についてでございます。  先ほど申し上げましたように、神安土地改良区では管理費の負担問題につき、幸いにして関係市と協議が整いましたが、大阪の他の土地改良区におきましては協議が整わず、苦慮していると聞き及んでいるのでございます。  都市化の進む中で水路管理している土地改良区は極めて困難な問題に直面し、この問題解決のため、本来地方自治体が行うべき地域住民のための排水対策やごみの処理、場合によっては苦情処理まで肩がわりを余儀なくされているのが実情でございます。  しかしながら、このような努力を重ねているにもかかわりませず、この問題は一挙に解決できる種類のものではございません。このような水路管理の難しい問題について理解をいただけず、消極的な態度になる市町村も一部にあることは否定できないのでございます。その意味におきまして、今回の知事裁定制導入には私、大賛成でございます。  この場合、私ども土地改良区は協議について十分な努力もせずに安易に知事裁定を求めたり、裁定によって土地改良区だけが有利になるようなことを実現させようとするつもりは毛頭ございません。都道府県知事が、公平な立場で一定の方向を示していただけるならば、それを基礎として市町村側と地道な話し合いを続け、円満に問題解決を図ることが重要であると考えておる次第でございます。このような視点から、農業用用排水路管理について、この新制度の発足により市町村等との協議が大いに促進されるものと期待いたしております。  次に、連合会事業範囲の拡大について申し述べます。  私ども連合会の会員となっております土地改良区は約七十団体でございます。私、このような土地改良区に対しましては連合会が積極的に運営指導を行うことがより効果的であり、このため現在、施設管理換地促進中心とした技術指導と真剣に取り組んでいるところでございます。このような時期に当たり、連合会指導業務につきまして法律上の後ろ盾をつくっていただきますことはまことに心強く感じているところでございます。  次に、総代会設置要件の緩和について申し上げます。  さきに申し述べましたように、大阪府下土地改良区はその八割までが組合員三百人以下の小規模なものでございます。このような土地改良区において総会を開催するに当たり、法定出席者数を確保するための理事者側の苦労は並み大抵ではございません。その前日から当日にかけての電話での出席確認はもちろん、委任状の取りまとめなどその努力は想像以上でございます。また、最近では地域情勢の目まぐるしい動きの中で総会に諮るべき案件が多くなってきておりますが、今回の改正によりまして、総会にかわるべき総代会制をとることにより、必要に応じて総代会を開き十分な審議を行えることは、現在の社会情勢に合った合理的な改良運営ができるものと考えております。今回総代会設置要件を緩和されますことは土地改良区の長年の要望に沿ったものでございまして、大いに賛成するとともに、今回の改正案が単に大規模な土地改良区のみでなく、力の弱い土地改良区の運営にまで配慮されていることについて高く評価するものでございます。  次に、非農用地の生み出し手法拡充集落排水事業法定化について若干申し上げます。  先ほども申し上げましたが、私ども土地改良区は今後関係自治体住民方々理解を得ながら円満な協調関係を保っていくことが何よりも重要でございます。このため、地域における生活環境整備ということにも配慮しながら事業を実施するとともに、施設管理をしていく必要があると考えております。今回の非農用地生み出し手法拡充集落排水事業法定化考え方は、その足がかりになるものとして大いに期待するものでございます。  以上、土地改良法改正案について特に関心のある事項に絞って意見を申し述べましたが、基本的に今回の改正案に盛られている事項は、私ども土地改良団体が多年にわたって要望してまいったものでございます。一日も早く成立することを切望してやまない次第でございます。  最後に、農振法の改正案につきまして若干意見を申し述べたいと存じます。  大阪府と申しましても、現在耕地面積が二万一千ヘクタールございまして、南部の泉南、南河内地域や北部の能勢地域におきましてはまだまだ優良な農地が多数ございます。八百六十万府民に対する生鮮野菜供給率も約二〇%強を確保いたしておりますことをまず御理解いただきたいと存じます。私ども土地改良団体もかねてから市町村、農協に協力しながら農振法の適正な運用に努力いたしてまいりました。このような経緯を背景として今回の改正案を眺めてみますとき、特に農業用用排水施設維持運営についての協定制度創設と、生活環境施設用地等を生み出すための創設交換制度創設は私ども土地改良団体といたしましてもまことに時宜を得たものであり、積極的に推進すべきものと考えております。  以上、まことに簡単でございますが、今回の改正案につきまして所見を申し述べましたが、この改正機会に、土地改良区並びに連合会の果たしてまいりました役割をさらに御認識くださいまして、一層の御指導援助措置を講ぜられますようお願い申し上げる次第でございます。  なお、具体的なことにつきましては御質疑によりお答え申し上げたいと存じます。  終わらしていただきます。
  6. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ありがとうございました。  次に、大和田参考人にお願いいたします。大和田参考人
  7. 大和田啓氣

    参考人大和田啓氣君) 大和田でございます。  農振法、土地改良法二法の改正法案の御審議に当たりまして、参考人として意見を申し上げる機会をいただきまして大変ありがたく存じております。  私は、二つの主な論点について意見を申し上げたいと思います。  第一は、いわゆる農村計画に関連する問題でございます。  農業発展農村住民生活向上を図るためには、都市都市計画がありますように、農村農村計画というようなものが必要ではないかということを私はかねてから考えておりました。最近における農地スプロール的壊廃あるいは農業用用排水の汚れを見ますとその必要を痛感いたすわけでございます。農村計画と申し上げましても、実は、これはまだ内容がそう詰まっておるわけではございません。しかし、農村では都市と違い、農地、林地が土地の大部分でございますし、農地農業生産の基盤でございます。したがいまして、農村計画内容都市計画とかなり違ったものであろうというふうに考えます。それは大づかみに申し上げますと、農業振興を基本として住民生活環境改善を図るもので、土地利用区分を含みます。そうして生産条件、緑の自然、生活環境について農村を総合的に整備するものと考える次第でございます。  戦後、経済発展によりまして農村は大きく変化いたしました。兼業農家も非農家も激増いたしまして、専業的農家は極めて少数となったわけでございます。一握りの専業的農家農業生産力発展の原動力でありますけれども、多数の兼業農家あるいは非農家の協力と理解がなければ専業的農家の経営の発展もたく、またその地域農業生産振興もあり得ないというのが現実でございます。  農村生活の面から見れば、このことはさらに明らかであります。農村は今や農家ばかりではなく、非農家の居住の場として極めて重要となりました。農業生産条件とともに生活環境を一体的に整備して住みよい農村をつくりませんと農家が安んじて定住せず、農業生産振興も不可能であろうと考えます。  こういう観点から改正法案を見ますと、従来のいわば線引きを主体とした農業地域整備計画に比べ、計画内容拡充改善されております。そうしてそれを実現するための法的手段が用意されております。計画内容として農業振興の部分が詳細になりましたが、それに加えて、農業構造の改善に関連いたしますけれども、就業の安定や生活環境改善が新たに取り上げられております。また、それら実現の手段といたしまして協定制度生活環境改善施設用地の生み出しの手続が整備されました。農村計画的なものの必要は強く感じておりますけれども、その内容について今後検討を深めなければならないものがたくさんございます。そういう情勢におきましては、当面このような措置を講じて一歩を進めることが私は結構ではないかというふうに思い、この改正法案賛成でございます。  第二は、農村における個と集団あるいは個別経営と集落に関連する問題でございます。  個別経営が経営体として独立しながら、孤立しないで集落農家といろいろな面で協力し合って農業生産生活を営むのが農村の実態でございます。農家は生まれながらにして集落に属し、集落の一員として考え、集落農家とともに行動するのが通常であります。集落に対する農家の帰属意識は極めて強いものがございます。そして、この帰属意識が農家の集団思考あるいは集団行動の原点であろうと思います。最近の農村が変化したということを申し上げましたけれども、それはまさに集落の変化でございます。集落は昔のように意識、考え方がほぼ同じような農家の集団ではございません。しかし、近郊農村などは別といたしまして、今でも集落農家話し合い、助け合い、自治の組織であります。そうしてまた共存同栄の間柄であるわけでございます。そういう機能を集落は現になお持っておるわけで、私はそれは今後も保持強化すべき貴重なものだと考えます。  しかし、集落は別の角度から見ますとそうほめてはかりいていいということではございませんで、現状維持に執着し、新しい変化を好まず、閉鎖的、悪平等的で、出るくいは打つというそういう性格を持っていることを否定できないわけでございます。若い者が農村から出たいという中にはそういう集落の性格が私はおろうかと思います。集落の中で農業に熱心な農家がなかなか規模拡大ができないというのも、こういう集落の性格が関係していると私は考えるものでございます。  以上のことから、農業構造の改善を進めるに当たりましては、専業的農家兼業農家を含めて集落農業を全体として振興し、その中で真剣に農業に取り組む農家の規模拡大を徐々に図っていく用意が一般の農村で必要であろうと思います。また、規模拡大を図ろうとする農家も、集落の性格を頭に置いて、自分の経営改善だけに没頭しないで、集落全体の農業振興のために努力することが大切であります。  こういう観点から考えますと、農振法の改正農業用施設配置農業用用排水施設あるいは集会施設等の維持運営につきまして新たに協定制度を取り入れましたことは大変意味があり、また、大変興味深いことでございます。住民の自発性を尊重しながら、集落話し合い、助け合い、自治の組織あるいは共存同栄の団体という性格を生かすことができるならば、集落に新しい生命が宿り、活力が増すものと考えます。  二法案にはなお、林地の交換分合農業と林業との関連、集落排水改善土地改良区の運営の合理化など多くの条項がございますが、いずれも現下の情勢から見て私は適切な改正であろうと思います。  なお、最後に、先走って大変恐縮でございますけれども、幸い二法が成立いたしましてからの法の運営について申し上げたいことがございます。  農林水産省は、最近、農政を進めるに当たりまして、行政は押しつけるものではない、農家の自主性を尊重し、農家の自発性に期待するという趣旨のことを繰り返し繰り返し申されておるわけです。それは大変結構なことでございますけれども、現地に参りますとなかなかそうはまいっておらない点が多々あるわけでございます。この法律には、協定制度など特に農家の自主性を尊重しなければならないものがございますので、本法の施行に当たりましては、そういう御意向が末端まで徹底いたしますよう特に御配慮をお願いをいたしたいと思います。この法律を現地で十分使いこなすことができるならば、私は農業発展農村生活改善に相当の効果が上が谷ものと考えるものでございます。  以上、二法案に関連して私の意見を申し上げました。どうもありがとうございました。
  8. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ありがとうございました。  次に、今野参考人にお願いいたします。今野参考人
  9. 今野元治郎

    参考人今野元治郎君) 私は、全国町村会政務調査委員農政を担当しております宮城県三本木町長の今野でございます。  参議院農林水産委員会先生方には、日ごろ全国町村会の農政活動に対し深い御理解とお力添えを賜っておりますことをまずもって厚く御礼申し上げる次第でございます。また、本日はただいま本委員会に付託されております農振法及び土地改良法の一部改正案につきまして私の意見を申し上げる機会をいただきましたことにつきましても大変ありがたいことと考え、深く感謝申し上げておるところでございます。  まず、私の意見を申し上げる前に、私の町の概況を御理解いただくことが必要であると思いますので、その概要を申し上げたいと思います。  私の町は、仙台の北、国道四号線で三十五キロのササニシキの本場の平たん稲作地帯でございまして、総面積は四千四百七十七ヘクタールでございます。そのうち森林面積は一千四百三十八ヘクタール、耕地面積は一千六百四十二ヘクタールで、町の中央を流れる鳴瀬川を挟んで北部が平たん水田地帯、南部が丘陵山林地帯になっております。耕地は一千六百四十二ヘクタールのうち水田面積は一千四百八十七ヘクタールで、実に九〇%余の水田という典型的な水田単作地帯でございます。また、私の町では、この耕地の全部と、将来農地開発等を行う予定の山林五百三十ヘクタールを含め二千七百十三ヘクタール、総面積の六一%に及ん でおりますが、を農振地域として指定いたしております。  さらに、農業基盤整備につきましては、私の町政の基本姿勢といたしまして格段の努力を傾注いたしておるところでありまして、農業構造改善事業農村基盤総合整備事業土地改良総合事業等によりまして、水田では現在三百四十一ヘクタール、三十アールの区画整理を完了いたしておる次第であります。  しかし、湿田、排水不良田が依然として多いため、鳴瀬川、一級河川でございますが、この上流に高砂子ダムを建設し、徹底した用排水分離と乾田化を行うことを主目的とした国営鳴瀬川地区土地改良事業の実施をお願いすることとし、五十九年度には調査地区に採択されておる次第でございます。  さて、このたび本委員会にその改正案が付託されております農振法及び土地改良法につきましては、農村における優良農地の確保、農業基盤の整備農業生産の近代化等を積極的に推進する最も基本的な法制といたしまして大きな役割を果たしてまいりましたことは御承知のとおりであります。  さて、近年の農村を取り巻く情勢は、大都市への過度な人口集中が終えんいたしまして、新たに地方中核都市の急激な発展と人口膨張が起こっております。これにより地方中核都市周辺の農村における都市化、混住化の傾向が顕著で、農用地の転用、壊廃が根強く進む趨勢にありますことは否めない事実であります。このように私ども農林業を基幹的産業としてまいりました農村地域にある大部分の町村におきましては、好むと好まざるとにかかわらず都市化、混住化、兼業化の波が押し寄せ、また都市からの離職者の帰農などに加え、農業就業者の高齢化が進んでおりますが、このような情勢を背景といたしまして、この二法案の改正をめぐる問題点を指摘いたしまして、先生方の御理解をお願いいたしたい次第であります。  第一に申し上げたいことは、都市化、兼業化、高齢化の進む状況下にありまして、村や集落農業を守り抜く生産性の高い農業経営体の育成を図っていくことに徹底した努力を傾注する必要があるということであります。  既に農政審議会におきましてもその答申で、今後十年間に九十万ヘクタールの農地を流動化し、七十万戸の中核農家の育成を図るよう提案されておりますが、国は、ぜひこの実現について総力を挙げて取り組んでいただきたいと思っております。  私が町長をいたしております三本木町では、まず、就業機会の確保のために男子型のアルミサッシ場、女子型の縫製工場等民間企業の積極的な導入によりまして地元雇用機会の拡大に努めております。また一方では、今後土地改良事業を推進しつつ、中核農家中心兼業農家も経営参加しながら、地域ぐるみで生産性の高い稲作拠点づくりを行うべく積極的な取り組みを行っているところであります。  この点から見まして、今回の農振法の改正で、農業振興地域整備計画の中に、農地流動化と中核農家への土地集積、農業者の安定就業の促進などを計画事項として取り入れ、関連施策の充実強化を図ることとされた国の御方針に対しましては、深く敬意を表し、全面的に賛意を表するものであります。  第二に申し上げたいことは、耕地、草地、林地を一体的に整備し、その活用を通じ経営規模の拡大と土地利用度の向上を図ることが必要であるということでございます。  私どもの三本木町では、鳴瀬川を挟んで町の南半分が標高四十メーターから五十メーターの丘陵山林地帯となっておりまして、この里山、丘陵山林地帯が私どもの今後の重要な土地資源となっております。私の町といたしましては、既耕地が住宅、工業用地等へ転用、壊廃される部分は、必ず農地開発により耕地を造成して埋め合わせるとともに、地域農業としても稲作単作から脱却し、経営作目の複合化を進めるための酪農、肉牛経営に必要な飼料基盤として積極的な草地開発を行っていきたいと考えているところであります。  さらに、私どもは里山の積極的な開発を行うために、里山高度利用調査を林野庁にお願いし、昨年は林政総合調査研究所に現地調査を実施していただくなど、適切な活用の方策を確立していきたいと考えております。  今回の農振法の改正に当たりましても、農用地の開発適地を集団的に確保するための交換分合制度拡充などの措置を講じられておりますことは、大変ありがたいことと考えております。  第三に申し上げたいことは、農村において生活環境施設整備により活力ある農村地域社会の形成を図ることであります。  私は、無秩序な住宅地化や農業用施設の建設を避け、長期的な視点に立って、農村にふさわしい手法により、農業及び生活環境改善のための諸施策の整備を図っていくことが必要であると考えます。  現在、農村地域に所在する町村行政の大きな柱は、管内における集会施設農村公園、保健休養施設集落道、集落排水処理施設等の整備であります。  私どもの三本木町におきましても、各集落には集会施設を持っておりますが、大部分が小規模で、かつ老朽化しているため、十分その機能を果たしていない状況であります。このため、最近、農村基盤総合整備事業導入していただきまして、ようやく一部地区で近代的な集会施設、運動公園等の整備を行っているところでございます。  このたびの法改正に当たりまして、こういった生活環境施設整備につきまして特に力を入れられたようであり、生活環境整備に関する事項の農振整備計画への取り入れ、土地改良事業による生活環境施設用地の生み出し農業集落排水事業法定化集落協定制度創設等、制度面で画期的な改善を図られたことにつきまして、地域住民に密着し、活力ある農村社会の形成に直接取り組む町村長として心から賛意を表するものであります。  第四に申し上げたいことは、農業用用排水路維持管理、集会施設維持運営等に関し、農村コミュニティー機能の充実と適正な費用負担について制度的な仕組みを確立していくことであります。  このたびの改正に当たりまして、農業用排水路の適正管理に関する市町村協議請求制度拡充集落協定制度による農業用用排水施設維持運営の促進等適切な措置を講じられましたことに対し敬意を表するものであります。  以上、このたびの農振法、土地改良法改正に関し現場の町村長として当面している問題について概要を申し上げた次第であります。こうした農村における問題に対処していく上で、地域農業者及び住民の活動が前提となることが当然でありますが、何といいましても私ども地域住民に密着している町村長の取り組みがその成否を決定づける重要な役割を持っていると考え、責任の重大さを痛感しているところでございます。  そこで、私ども現場における町村長といたしましての要望を一つ申し上げますと、農村は既に述べましたとおり、生産生活が一体として営まれる共通の場であり、最近の農村をめぐる厳しい情勢のもとで活力ある農村地域社会の形成に当たりましては、都市計画とは異なった農村にふさわしい手法によって進めていく必要があろうと考えております。  私どもは、現地におきまして地域関係者と創意工夫を凝らし、十分話し合いを行いながら豊かな村づくりに取り組む決意でございますが、政府、国会におかれましては、こうした農業農村整備計画を実現するための生産生活両面の総合整備を図る上で、今後必要な関連予算の拡充整備を行っていただくことを切望してやまない次第でございます。  最後に、農家が町の総戸数の半分を占め、町面積の六〇%を農振地域に指定して、農業を基幹産業とし、農村工業導入を促進しつつ、兼業農家の就業機会と所得確保に懸命に努力している農村地 域を代表する一町長といたしまして、この二法案が一日も早く国会で議了されまして、私ども町村長が現場において直面する農業構造の改善農業農村の健全な発展を実現するための基本的な法制として大きな役割を果たすことを心から期待申し上げまして、私の意見といたす次第でございます。  ありがとうございました。
  10. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳を終わります。  それでは、これより参考人方々に対し質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  11. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 参考人の皆様方にはそれぞれ大変貴重な御意見をお聞かせをいただきましてありがとうございました。それぞれの皆さんの御意見、それなりに私もそれぞれの評価をしながら伺っていたところでございますが、なお若干についてお考えをお聞かせいただきたいと思うわけでございます。  私どもの方の時間の関係もございまして、私の方でお尋ねをいたしまして、後それぞれからお答えをいただくと大体時町が来てしまうかもしれません。私の聞き方が余り上手でないかもしれませんが、できるだけお答えの方はひとつ取りまとめをうまくお願いをしたいと思うわけであります。  そこで、青木参考人とそれから大和田参考人御両氏の御意見、それぞれ農村計画ということでかなりこの辺を重視しておられるわけでありますが、特に今の農村集落現状というものについてもいろいろなもちろんケースがあるわけでありますけれども、やはりまだかなり閉鎖的な、民主的な運営というものから見ればいろいろと問題点があるところが多いと思うわけでございます。そういう中で積極的にその計画に参加をせよというのは、確かに図式としては大変望ましいことなのでございますけれども、現実の運用の面の中では、参加といってもそう積極的に、余り違う意見もなかなか言いづらいしというようなところなどがあったりする場所が結構あると思うのであります。そういう中で、私はこうした集落を単位に計画を積み上げるというその理想的なよさということと、現実的ないろいろなむずかしさ、越えなければならない壁というものが非常に大きいのではないだろうか、そんなことが第一にございます。  そうした中で、特に今後の構造政策ということ等から考えていきまして、先ほど今野参考人の御意見の中にも、農地の流動化についてというお話がちょっとございましたけれども、中核農家農地を結集をしていくという行き方が果たしてスムーズにいくであろうか。特に、農村集落を単位にして農村計画ということを考えていったときにその辺のところに大変私は不安も疑問も出てくるわけでございます。この辺、ひとつ青木参考人大和田参考人の御意見をお聞きかせいただければ大変ありがたいと思います。  それから、上田参考人は、最初に立地上のいろいろとお話がございまして、都市周辺の土地改良区というのはもう本当に大変だろうと思います。みんな都市排水を引き受けるという中では、言ってみれば化け物みたいな水も引き受けているということになると思うのであります。それだけに、都市周辺の土地改良区のお持ちになっている御苦労というのは非常に大きいだろうと思います。  ただ、そこで、さっきお伺いしていた中で、何と言いましたか、神安土地改良区でいらっしゃいますね。そこはそれぞれの自治体との協議もこういう制度が出る前にある程度うまく話がつけられて運営をされているということでありましたが、他の地域はそうなっていないところもあるやに御意見の中にあったと思います。本来私は、こういう問題というのは、協定制度知事裁定などというものがあろうがなかろうが、いずれにしてももう既に実際には協議がされていなければならない問題である。あなたもちょっと触れられましたけれども、こういう制度をつくったことによって、逆に知事裁定へ安易にすっと持っていくという危険性というのがかえって——歴史があると思うのですね、まだなかなかまとまらないでいるところというのは。それだけに、努力を今後するというよりも、その裁定の方にすっと逃げてしまうという可能性なども心配をされるわけでありますけれども、その辺をどういうふうに見ておられるか。  また、これは他の地域では、おたくのところではこれは多分水量計算によってされたのだろうと思いますけれども都市排水分の負担を自治体で一〇〇%されるというふうになったということでありますが、他の地域はそんなふうになっていないのでしょうか。その辺特に都市周辺の持っている、土地改良区のお持ちになっている悩みなどというものももしあればお聞かせをいただきたい、こんなふうに思います。  それから最後に、今野参考人にお伺いをしたいわけでありますが、市町村長と、言ってみれば最末端の自治体をあずかって、大変御苦労されているお話が今あったわけでありまして、それだけに私も大変だと思うわけでありますけれども一つには農振地域について、都市化、今混住化も、おたくでも大体六〇%が農振地域というふうに言っておられますけれども、混住化が進んでいくという形の中で、農振地域から外してくれという動向というようなものはないでしょうか。これは純農村地域ということでございましたから、あるいは都市周辺、小都市周辺等とはかなり違うのかもしれませんけれども、小都市周辺等ではかなりそうした農振地域から外せという意見ども多く出ているというようなことも、私どもの体験の中でも知っているわけでありますけれども、その辺のところどうでございましょうか。  それから、兼業化対策ということで、今おたくの町で男子のアルミサッシの工場と、それから女子のための縫製工場という例がございましたけれども、これは土建関係に就業する方々はどのくらいおられて、それの実態というものはどうでしょう。それからまた、それに対する対策というのは何かしておられるでしょうか、その点をお聞きをしたいと思います。  以上でございますが、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。
  12. 青木志郎

    参考人青木志郎君) ただいまの集落計画の可能性ということが主体だと思いますが、私は実践的にこういう集落計画というものを市町村計画のときにやるわけで、五十三集落、これは塩尻市の例でございますが、全部これは集落人々がやります。  これは表紙も集落人々が書いたわけですが、これはどういう手法を用いるかといいますと、生活環境点検地図、それから生産環境点検地図、それから土地利用点検地図という地図で具体的に自分たちの地域社会を点検し、まず自分たちの地域社会を、おのれを知るということでそういうことをやりますと、いろいろな矛盾が出てまいります。そういう中で自分たちのやるべきこと、それから集落としてやるべきこと、旧村的領域人々がやるべきこと、それから市町村でやるべきこと、あるいは国に依頼することというようなことを各集落ごとの中で区別をするという方向で計画を立てております。そういう積み上げ方式をやっているわけです。そうしますと、相当自分たちの地域社会理解できますと、その中で自分たちの地域社会全体をよくするためにはどうかということで、図面をしてありますからみんなが発言をします。そういう点で非常に有効な手法だと、これは私のところの研究室でやっていることで、相当効果があるというふうに考えております。  それから、農地一つに大規模にまとめて専業農家に集めるということはなかなか大変で、そう簡単に図式どおりにはまいりませんけれども、実際に農用地の点検地図を見て、休耕地はどこであるとか色塗りを分けてします。そういうような形でだれの土地であるかというようなことがわかる。それが本当に有効に集落として使っているかどうかというふうなことを点検いたしますと、いろいろな意見が出まして、そういう方向に向き得 る可能性は十分にある。ただ、しかし、画一的に大型専業農家中心に全部集めるというような考え方は、私は問題があるだろうと思います。余り画一的にならないで、いわゆる兼業農家も十分農業土地利用として能力を発揮しているところは、私は二種兼業農家でも一種兼業農家でも十分やっていけるというふうに考えまして、余り画一的にならないということでございます。また、そういう集落農業土地利用として生産性を上げている事例を私は幾つか存じております。また機会がございましたら御説明したいと思います。
  13. 大和田啓氣

    参考人大和田啓氣君) 中核農家土地が集まるかどうか、あるいは土地を集めることがいいか悪いかという問題に対してお答えをいたしたいと思います。  御承知のように、これは地帯によって大変事情が変わっておりますから、安定兼業農家が相当できて専業的農家土地利用権設定で非常にスムーズに動いている実態はあるわけです。しかし、そうではなくて、まだもやもやしていて、しかも、二種兼業農家といっても安定兼業農家ではなくて日雇い、出稼ぎをしている、そういう地帯でそういう不安定兼業農家から土地を中核農家に寄せるということは、私はそう慌ててやるべきでもないし、またやろうとしてもできないことだと思います。したがって、私は農村一般としては、いきなり中核農家土地を集めるということよりも、むしろ専業農家兼業農家を含めて、集落農業振興する中でだんだんにそういう事態をつくる方がいいではないかということを先ほど申し上げたわけでございます。  ただ、私が特に申し上げたいことは、兼業農家の問題を議論して、二種兼業農家だけで日本の農業がやっていけるかというと、私はそんなことはないと思うのです。そんなことはないので、やはり中核的な農業を一生懸命やって、農業生活できるような農家がある程度、それも一つの村に一戸とか、二つの村に一戸とかいう、そういうことでなくて、一つ集落に少なくとも二戸か三戸か四戸かそういう農家がいないと、日本の農業生産力というのはとても維持発展することはできないし、また、集落農業振興させること自体もできないという感じがいたします。
  14. 上田治

    参考人上田治君) お答え申し上げます。  ただいまの市町村協議の過程におきまして話し合いがかみ合わない事例はよく聞いております。幸いにいたしまして、私の方は昭和四十八年より市町村協議を軌道に乗せさしていただいて、現在も円満に運営しておるわけでございますが、土地改良区が被害者的な立場に立って行政側に物を申したときには、話はどうしても先生のおっしゃるようにかみ合わないわけでございます。ともに一緒になって地域をよくしていこうという形で、私の方では、四市の市長は全部土地改良区の理事、また水に関係ある下水道部長さん、農林課長さん、そういった方々に四市から一市当たり二名ずつ出ていただいていつも協議の場を設けながら話を進めていっておりますので、スムーズに行っておると思っております。全国的にはまだこういった事例が余りございませんので、よく視察においでになるわけでございますけれども、この点を特に、土地改良区は被害者的立場で物を言ってはだめだということを申し上げているような実情でございます。
  15. 今野元治郎

    参考人今野元治郎君) 第一点の御質問の農振地域より除外される要望がないかと。これは、私が実は町の農業委員会長もずっと続けているせいでございましょうか、農振地域を決める策定の場合にも個別に調査をいたしまして、それで都市計画とあわせて策定をいたしましたので、大きな要望はございません。ただ、一年に二件ぐらいは、家を建てたいから線引きの中間あたりに何とか入れてくれというようなことはございますが、これは県と協議をいたしまして適正に処理をいたしております。
  16. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 小規模な変更でね。
  17. 今野元治郎

    参考人今野元治郎君) はい。  第二点につきましては、町に企業協議会をつくらせまして、いわゆる大企業も土建業者も一緒になって企業協議会をやりまして、それで、田植え時期、そういう時期には適正に、工場の内容等も見て、いわゆる農業も工業も商業も相補完し合うような循環理論で、地域社会ということで農業を第一義にして、みんながやはり、工業であっても農業を考えるというような姿勢に調和を求めていっております。  なお、土建業につきましては、町外の土建業も厚生年金を受けるようなところに就職すべきであって、フリーのようなものはもうほとんど見られないような状況でございます。そのように、都市化といいましょうか、都市周辺でございますので、そういう傾向で、もちろん県外の出稼ぎなんかは一つも、もう十何年前からなくしております。  以上です。
  18. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうもありがとうございました。
  19. 上野雄文

    ○上野雄文君 青木先生、私からちょっとお尋ねをしたいのですが、にわか勉強で先生の、これは去年の農業構造改善協会から出された二月号に載っているこれをさっと読ませていただいたわけですけれども、前段、先ほど先生からお話のあったことが述べられておりまして、また重ねてお話を伺って、私なりに何か理解ができそうな気がしてきたわけなのであります。今また稲村委員からの質問で、先生が生活生産土地利用の点検地図をつくって、そして具体的にそれから入っていくという手法のお話がありまして、私もこれは、なるほどそうすればまたいろいろなあつれきというものも少なくなってくるな、言うなら教育が先行して、それから仕事を始められるということになるのだろうと思うのであります。  それで、実は私、この間の質問の際にも、例の農村基盤総合整備パイロット事業、総パ、総パと言っておりますけれども、先生も御存じだと思うのでありますが、全国で二十四カ所選びながら、なかなかいまだに、四十七年から始めてまた終わらない地域の方が圧倒的に多い。こういうことで、それと先生の手法とを比較されましていろいろな問題点があるのではないかと思うのでありますけれども、そういうようなことについて先生のお気づきの点などについて御指摘をいただければと思いますが、いかがでしょう。
  20. 青木志郎

    参考人青木志郎君) 総パにつきましては、相当広い領域を扱って計画をしたということが一つ。ミニ総パというような形で小さいものも後から出てきたわけですが、やはり言わしていただきますと、管理する論理というように形の中でつくられていくわけです。やはり農業をやっていく者は食糧問題とかマクロ的な計画というような形で農業を見なきゃなりませんけれども、実際に生産しているところで、そこで生活している農民の生活というものをどういうものかということを主体的に考えてはいなかったのですね。ですから、なかなかこう進みにくい。図面の上ではできますけれども、実際にそれ実践していくのは農民自身でありますし、そこの地域住民でございますので、なかなか困難であるというようなことが私は言えるのじゃないか。  私の考え方というのは、ただ、その集落計画の総和が全体の計画には絶対なりません。だから、上位計画としてのああいう総パだとか、それからあるいは広域市町村計画であるとか、そういうものは必要ではございますけれども、そういうものとの調整をする下の方の計画がないわけです。ですから、上の方だけの計画で下へおろしてきますからどうしてもなかなか進みにくいというふうな、考え方としましてはあるかと思います。ですから私は、これからの農村計画、特に農地というものを有効に利用するという形を考えたら、どうしても小領域の中で、面識集団の中で土地をどういうふうにうまく使い合うかということを考える必要がある。そのためには集落計画と。これは私は集落計画で小領域だけやれば結構だということではないのです。集落計画をちゃんとした上で上位計画というものとの調整をいかにするかということがこれからの農村計画の上に重要だろう。いわゆる農業が栄えて農村が滅びるのでは困るわけ で、農村がやはり栄えないと農業はまた伸展しないという形で、お答えになったかどうかわかりませんけれども、そういう形で考えております。
  21. 上野雄文

    ○上野雄文君 重ねてお尋ねして恐縮でありますけれども、今の、先生前段に言われたように、ありていに言って、これだけの補助金をやるからこういう仕事をセットしなければだめなのだ式の天下り的な計画が行ってしまうわけでしょう。そうずばり物を言って、先生にそれを賛成してくれなどということは申し上げるつもりはありませんけれども、今の時点で、この今回の法律改正は、そういう先生が考えておられるようなことがこれからそれぞれの地域農村に持ち込んでいくことができるので、いわゆる先生の農村計画というものがつくりやすくなったという評価をされたと思うのでありますけれども、それが実態的に、先生の言われるような姿の中で押し込んでいくような——今の仕組みで可能ですかね。
  22. 青木志郎

    参考人青木志郎君) 私は相当可能性を持っているというふうに感じております。新農構を初めモデル事業、いろいろ御批判もあるかと思いますが、我々は農民があるいは住民が相当参画した形の中で受けとめて、成果を上げているかと思います。一部、大変立派で、シャンデリアがついた施設ができてけしからぬというような話がありますけれども、そういうのは一部分でございまして、やはり新農構、それからモデル事業というようなものの仕組みが相当私は成果を上げていると思います。そういう意味において、もう一つそういうものを積極的に——その手法がなかったのですね。その問題は非常に考え方はいいし、おろし方はよろしいのですけれども、それを受けとめる側の方のそういう農村計画的な、あるいは集落計画的な手法がなかったわけです。そういうような手法を開発していけば十分に私は発揮できると思いますし、また、その手法を用いて実際に実践していく場合に、今回の二法の改正というものは一歩前進したものである。  これですべてだと思いませんが、今さらというような感じもするのですが、これはこの法律が遅きに失するとは思いませんけれども、もう少し早くやっていれば、もっとモデル事業なり新農構事業が積極的に効果を上げたであろう。だから、むしろこれからこの二法案の改正を機にして、先ほど大和田参考人がおっしゃったように、もっと農村計画法的な制度に国会並びに政府が向かうことを私は期待しておりますし、お願いしたいと思っております。
  23. 上野雄文

    ○上野雄文君 上田参考人にお尋ねをしたいのですが、大変な地域で御苦労をされているという話、特に市町村との協議の場合に、被害者意識の立場で物を言ってはだめなのだ、そういう御苦労の話があったわけでありますが、ただ、土地改良区がいうところの自治組織であるわけですね。実際問題として、財政的に見て、今、維持管理といいますか、運営といいますか、そういう面で一番苦労の多い点は何だろうか、その点などをお話しいただければと思うのです。
  24. 上田治

    参考人上田治君) 現場の土地改良区で一番困っておる問題は何だろうかという御質問でございます。はっきり申し上げまして、都市近郊におきます土地改良区の運営で一番困っておる問題は、維持管理費の増高でございます。  この点につきまして、先ほど申し上げましが、私の方の神安土地改良区では各市との協議がまとまりまして、都市分は市が持っていただく、農地分は組合員が持つという形で、維持管理費を毎年度協議を整えて確保いたしております。したがいまして、他の地域の話を聞きますと、まず人件費が上がる、あるいは都市化に伴いまして水路への不法投棄によるしゅんせつとか、大きくは、都市化してまいりますと、住宅の子供が落ちて死ぬ、それがために実は私も四つ訴えられたわけでございますが、これらの裁判費用、こういったものがどんどん重なってまいるわけでございます。したがいまして、先ほども申し上げましたが、市町村土地改良区が一体になって、下水道がほとんどできておらないわけでございますから、その間、排水路をよくして、維持管理費を両方で生み出していくという努力が何よりも現場では必要ではないかと考えておる次第でございます。  したがいまして、毎年度私の方では、予算編成以前に必要な維持管理費をつくりまして、そうして、市町村の担当部課長との協議機関が正式にでき上がっておりますので、いろいろと協議の上、市と土地改良区の負担を決めて、今先生のお話のように増高は幾分いたしますけれども、できるだけ両方が努力して、余り大きな負担にならないようにやっていくということで努力いたしております。
  25. 上野雄文

    ○上野雄文君 端的に申し上げると、水田がダムとして機能している面というのは非常に大きなものがあると思うのです。最近、鉄砲水の議論や何かというのを聞きますが、私の住んでいるところなんかでも、田んぼが埋まってしまいますから、一斉に水が出るという問題が起こってきているのです。そういう問題で、土地改良区の立場から、防災面での算定なんというようなことは議論の対象にはされておられますか。
  26. 上田治

    参考人上田治君) 防災対策につきまして、実は、土地改良区の理事長は四市の防災会議の委員を仰せつかっております。そういった中におきまして、大きな水害と申しますか、降雨のときにどのように排水をスムーズにやるか、これを各市の消防署も含めまして、樋門の上げおろし、我々の方は低地帯でございますのでダムとかそういうのはございません。ただし、低地帯でございますから、樋門を上げる操作を誤れば上流はつかります。それを各集落の自治会長さん、実行組合長さん、あるいは消防署というところで、それぞれ責任を持っていただくところと協定書を結びまして細部の取り決めをいたしております。降雨のときには必ず上げるとか、あるいはそれに要する維持管理費、人件費等は土地改良区でお支払いするとか、そういった細かいことを決めまして地区内の土地改良施設管理に万全を期しておるわけでございます。
  27. 上野雄文

    ○上野雄文君 その次は、連合会長さんとしてのお立場で私の方でお尋ねをしたいと思うのでありますが、先ほどお話がありましたように、今度は「指導」というのが入ってくるわけですね。多年の要望だというお話もあったわけでありますけれども、私は、現状のこの「援助」という文言だけでも十分に機能し得るのではないかなと思ったのです。あえて「指導」というものが入らなきゃやれないのだというような分野について考えておられることなどをお聞かせいただければと思うのです。
  28. 上田治

    参考人上田治君) 大阪の事例から申し上げたいと存じます。  大阪連合会は、府下四十三市町村並びに六十九土地改良区、十九の農協をもって組織いたしております。したがいまして、指導的な面と申し上げますと、昨年度換地センターを実施いたしましたが、換地士というものは現在連合会に一名おるだけでございます。嘱託員も一名入れております。ところが、大阪府下におきまして府営圃場整備事業並びに団体営圃場整備事業が続々と希望を申し述べられ、国の方にもお願いしているわけでございますが、換地業務に精通しておる者は市町村の役場の職員にもおいでにならないわけでございます。  したがいまして、連合会がまず換地業務から申し上げますと、どうしても技術者を養成していくということが第一番に必要でございまして、こういった換地技術者の養成を、連合会に置いております専門換地士が、あるいは時によれば農林水産省からあるいは全土連から講師をお招きして、そうして指導的な立場に立って換地士を養成して換地業務を円滑にやっていけるようにする、あるいはその他のものにおきましても管理指導センター等におきましても維持管理事業とかあるいは土地改良の、先ほど申し上げましたが、よく大阪では水死事故が起こって裁判ざたになっておるのが数えられないほどあるわけでございます。それがために顧問弁護士を置きまして、各市町村並びに土地改良区の役職員の方々に、こういった場合には こうしなさい、例えば危険な箇所には必ず防護さくをするようにしなさい、防護さくはどの程度の規格であれば裁判には絶対に負けないとか、いろいろあらゆる高度な技術面からの指導を府下全部に行き渡らせる必要がございます。それがために連合会指導的な人材を集めるということが一番大きな急務でございまして、現在も努力中でございます。
  29. 上野雄文

    ○上野雄文君 大和田先生、先生の、シリーズ「農地移動」の「農地移動の現状と課題」という、これは去年の十月号に先生お載せになっておりますが、我がふるさと栃木県の黒磯の三本木の問題が載っておりました。ここで先生がさっとお述べになったわけでありますけれども、私どもぼんくらにもわかるようなことでちょっと先生の所感をおっしゃっていただければなおありがたいなと、こう思っているのですが。
  30. 大和田啓氣

    参考人大和田啓氣君) 私は昨年、三本木を訪ねたわけでありますけれども、私のやっております農政調査委員会の調査で規模拡大に関連して、そう夢のようなことを言ってもとても実現はしないので、十ヘクタール、二十ヘクタールの農家をすぐつくれというようなことを言ってもちっとも現実的な意味がないので、それよりもむしろもっと少ない三ヘクタールとか五ヘクタールとか、あるいはそれ以下でもいろいろな形で複合経営をやりながら、きちっと農業生活できるような農家が相当まとまっているところがあるはずだ、それはやはり日本の構造改善を考える場合の一つ参考になるではないかということで調査を始めまして、その一つとして黒磯を選んだわけです。  私は参りましたが、大変立派な三ヘクタールないし五ヘクタールぐらいの農家がたくさんそろっていて、まだ複合化としては十分でないけれども、たばことか野菜とかそういうものをつくって、とにかく悠々と生活をしている。そうぜいたくではないけれども、皆さん家を新しくつくられて、農繁期でもそんなに体を無理して仕事をしないで、食事でも睡眠でもふだんとそんなに変わらない。わしら体を壊してまで金もうけをしようとは思わないという趣旨のことを言われて、私は大変感銘して帰ってきたわけでございます。だから、日本でまだまだ純農村で私ども参考にすべきところがかなりあるのではないか、そういう感じを持って帰ってきたわけでございます。
  31. 上野雄文

    ○上野雄文君 最後に、今度は三本木の町長さんの方にお尋ねをしたいのですが、私も自治体にずっと関係してきた一人なのでありますけれども土地改良区と町村、町との関係というものについて、どちらも言うなら自治組織という格好になっているわけです。それで、結局は困ったときに全部町村にしりが持ち込まれるという関係にありはしないか。先ほど上田先生からは、被害者の立場で物を言うのじゃないけれども、それを言ったらどうにもならぬ、町から市からお金を取るという場合に、威張って取るのと、頭を下げて取るのと方式がいろいろあるのだろうと思いますけれども、賢明な道を上田先生はお選びになっているのかもしれません。しかし、地域の中のことでありますだけに、今度は逆に町村長としての悩みは一体どんなことが常におありなのか、それが一つ。  それから、今度の法律ができ上がりましてから、具体的にひとつ町としてこんなことやってみたいなというような計画がありましたら、ちょっとお話しをいただければありがたいと思います。
  32. 今野元治郎

    参考人今野元治郎君) 私、部落には今、公と私というのがありますが、もう一つ共、共同という公共私があるのじゃないかというふうに考えております。農民は個人、共というのは部落の責任、公というのは役場、県だというふうに考えて常に私は行政をやっておるものでございます。このごろは公私混同とか言っておりますが。  そこで、町村長さん方もいわゆる公と共の立て分けをだんだんつけていただきまして、これは部落の責任だと。水路とか、道路、圃場整備土地改良をするのに不特定多数の方が通るものにあっては、農道であっても公で負担してやろう、水路についても、不特定の生活雑排が来るものならこれは町で負担してあげましょう、ですから、あなた、土地総パやりなさい、ミニ総パやりなさいと、こういう指導をしている町村長が多くなってきております。私もそういう方向で進んでおりますから、土地改良区のしりを持ってこられるというような懸念は一つもございません。今事業を起こすというときは、話し合いをして、どの負担かということをきちっと決めて管内の土地改良区をやっております。なお、不肖私、一地区千百ヘクタールの土地改良区の理事長もいたしております。  それから、悩みでございますが、今申し上げたように私たちそういう悩みはございません。  ただ、将来の計画としては、今市街地を都市計画で第二種流域下水道で三カ町三万未満の下水計画をいたしております。それで三カ町の一番末線に処理場をつくりまして、県営でそれをやってもらう、その上に公共下水をかぶせて処理する。しかし、農村地帯は経済的に何も該当にならないわけですから、その土地改良区で話し合いましてその排水路なんかを私整備いたしております。その下流に本当にちょっと遠隔の地でかわいそうな地帯があるものですから、総パ事業でやりまして、例えば運動場を整備したり集会場を整備したり、そういうものを換地計画生み出して、それで生活雑排のようなものについては土地改良区で処理していただく。それから市街地を通過する幹線水路につきましては、水路しゅんせつは市街地だけ町でやります、市街地を離れたところは藻刈りとか導水路とかそういうものはあなたたちでやりなさい、それから、水路整備したときは道路の面と住宅の面は、フェンスは町で処理しましょう、こういう協定をしつつございますので、そういう方向に今後とも農村地域整備をもって活用していきたいと思っております。
  33. 上野雄文

    ○上野雄文君 どうも各先生方、ありがとうございました。
  34. 川原新次郎

    川原新次郎君 きょうはどうも御苦労様でございます。時間が余りございませんので、一通り全部お尋ねいたしたいと思いますので、後でお答え願いたいと思います。  まず、青木参考人あるいは大和田参考人のお二方は、農林水産省昭和五十六年に省内に設置しました農村計画制度研究会の委員とされまして、農村計画制度の検討に参画してこられたわけでございますが、同研究会は昨年の九月に、「農村計画制度研究会中間報告——活力ある農村地域社会の形成と資源の適正な利用管理のために——」と題する中間報告を発表されているようでございます。  そこで、青木参考人には、今回の法改正の背景となっている農村コミュニティー機能の低下という問題にどのように対応していったら活力ある農村社会が建設できるとお考えになっておられるか、また、この問題に対して行政が果たすべき役割とその限界についてどのような考え方をお持ちであるのか、御所見を承りたいと思います。  また、大和田参考人には、混住化、兼業化が進む中で農村地域に住んでいる人たちの意識や行動が多様化、複雑化し、農業構造の改善や基盤整備、さらには村づくりを進めることが大変難しくなっていると思われます。このような中で、今後どのようなことを念頭に置いて構造政策を進めていけばよいとお考えになるか、お伺いをいたしたいと存じます。  次に、今野参考人にお伺いいたしたいと存じます。  今野参考人は宮城県三本木町長を務めておられるわけでございますが、そのお立場からごらんになって、今回の土地改良法改正点の一つとなっております農業用排水路等の管理に関する土地改良区と市町村との協議請求制度知事裁定導入する点について、どのように評価しておられるかをお伺いしたいのが第一点。  次に第二点は、現在この制度の運用上、協議が成立しにくい背景をどのように理解しておられるのか、また、全国町村会としては、農業用排水路等の維持管理経費の負担が強まる中で国に対する要請がございましたらお伺いをいたしたいと存じます。  この問題につきましては、土地改良区の立場から上田参考人の御見解も伺いたいと存じます。  次に、上田参考人にお伺いいたしたいことは、先生は大阪土地改良事業団体連合会会長の重職を担っておられるわけでありますが、近年、土地改良地方連合会は、換地センター、管理指導センター及び農村総合整備センターを設置するなどにより指導事業を充実してきておられます。この業務は、技術の高度化、環境の複雑化が進行している中でますます重要になってくるものと考えられます。  しかし、この指導事業運営するためには、人件費、施設費など相当の経費を必要とすると思います。大阪府連合会の場合は換地センターのみを設置しておられるようでありますが、この運営の実態と今後の指導事業の推進方向についてお伺いをいたしたいと存じます。  以上お尋ねいたします。それぞれ御所見を承りたいと思います。
  35. 青木志郎

    参考人青木志郎君) 聞きにくいところがありましたのでちょっとお尋ねいたしますが、農村コミュニティー、その次をもう一度。質問がちょっと聞きにくかったものですから、もう一度農村コミュニティー云々というところを。
  36. 川原新次郎

    川原新次郎君 農村コミュニティー機能の低下という問題にどのように対応していったらいいか、御所見を承りたいということでございます。
  37. 青木志郎

    参考人青木志郎君) 農村コミュニティーの低下という問題でございますが、これも見方によりまして、低下とするかどうかということですね。いわゆる古い封建的な村落共同体的なそういう機能というものは確かに低下いたしました。非農家あるいは新しい住民というようなものが集落にふえましてそういうものは低下いたしたわけでございますが、現実に村をいろいろなお祭りであるとかその他運動会であるとかそういう行事の中で見まして、必ずしもそういうものが低下しているかどうかということは一概には言えないかと思います。もちろん各集落によって違います。  私の研究室でこういう調査をいたしました。個々に年齢別にたくさんの人を調査したわけでございますが、あなたが生きていく上にとって最も大切とするものはどういうものかということを農村集落で調査をいたしました。これは二十数項目ありましたですが、家庭の和であるとか、それから平和であるとか、お金であるとかいろいろたくさんの項目を挙げましたですが、第一位に上がりましたのは家庭の和でございます。これは七十数%でございました。次に上がりましたのが集落の和というのでございます。それが三十数%でございます。それから次に出ましたのが仕事というのでございます。その次の段階はちょっと忘れましたですが、そういう形で集落の和というのが割合と高位にきております。これは集落によって違います。都市近郊農村にまいりますと、集落の和というのは五位か六位になってきます。しかし、二十五、六項目の中で相当上位に、集落の和というものを大切にしているということが私の調査では出てきております。  これは数少ない集落の調査でございます。ですからコミュニティーの機能が低下したかどうかということは私は必ずしも言えない。特に、私が何十集落というこういう集落計画というものをやっている段階では、相当熱っぽく参加いたしまして生き生きとしております。この集落計画には子供も参加さしております。そして子供に作文を書かせまして自分たちの地域社会をどうするかと問うと、非常に建設的なすばらしい意見をみんな書きまして、やはり郷土を愛する、自分たちの集落を愛するというような子たちが出ております。  一概に私は、コミュニティーの機能が低下したということではなくして、いろいろな諸々の条件によりまして旧来持っていたような非常に血縁的、地縁的なそういう共同体的なものは確かに低下したけれども、自分たちの地域社会をどうするかというところに追い込まれるというわけではございません。いろいろな事業が持ち込まれてそれを集落で語るときには、相当まとまりというものが出てくるというふうに考えています。それを私はまた期待しているわけでございますし、またそれを近代的な、新しい現代的な共同体的な形に持ち込むということが、こういう手法を用いるとある程度可能であるというふうに信じております。  それから、農政のそういう役割というものでございますが、地域社会というのは、私が最初に私の考え方を申し上げましたように、そこに住んでいる人々が、みずからの義務として、権利として地域社会を形成するのだということでございまして、そういうことを守るような行政が行われれば、私は、村づくり、町づくりという形で農業が進展していくのではなかろうかというふうに考えております。  それからもう一つ大切なことは、やはりマクロな目で見た農政といいますか、例えば食糧問題、これは諸外国との関係の中における食糧問題であるとか、あるいはまた今後の農政といいますか、そういうもののあり方というようなものをやはり農民あるいは国民を含めてと言っていいかもしれませんが、科学的に客観的にちゃんと把握してその方向を出していただくということが非常に大きな役割ではなかろうか。重箱の隅をつっつくようなことを下まで持っていくというようなことはやはり問題がある。ただ、今の農政を現実に私は見ておりまして、そういう意味では地域農政集落農政土地利用のあり方、進め方というようなことの方向で進んでいることにおいては、私の考えているコミュニティー形成に相当接近した形で行政が行われている、それはそれなりに大きな効果を果たし得るであろう。そしてまた、手法あたりも積極的にこれから農政の中で開発していく必要がある。  我田引水で大変申しわけございませんが、農村計画の手法の研究というようなものを、積極的に我々にさしていただければ大変ありがたいというふうに考えております。
  38. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ちょっと参考人の皆さんに申し上げますが、審議の都合がありますので、御答弁を簡潔にひとつ、大変恐縮でございますが。
  39. 今野元治郎

    参考人今野元治郎君) 第一点につきましては、現在も賦役で水路維持管理をしている土地改良区もございます。物によっては協定も進めておりまして、これまで知事裁定という見解をお持ちになったことは私たち地方自治ということから申しましてすばらしくよかった、こういう例えばトラブルを民事訴訟などに持っていくよりは地方自治の原点から申しましてもいいことだ、こういうふうに感じます。  第二点につきましては、今私たち経験して土地改良区の実情を調査して見ておりますと、キロ当たり水路管理などは二十万程度必要としているようでございます。したがいまして、今後そういう協定を結んだ場合の費用負担でございますし、また、全国町村会といたしましての要望事項につきましてはまだ政務調査会で検討を加えておりません。おりませんので私見でございますけれども、できるならば水利負担といいますか、利用負担といいますか、利用割合というものの基準でもおつくりいただきまして御当局の御指導を願いたい、こういうふうに私は考えておるわけであります。  以上でございます。
  40. 上田治

    参考人上田治君) 先生の御質問にお答え申し上げます。  ただいまの今野参考人への質問に関連して、土地改良区側の立場からお答え申し上げたいと思います。あくまでも先ほど申し上げたとおり、被害者、加害者的な考え方では協議が調っていない。水路が汚れたから、あるいは維持管理費を、都市化の部分を土地改良区がやるのだから補助してくれ、援助してくれでは話はまとまらないと思います。一緒になって現在下水道がない過程においてともに農村環境を守っていく、また混住化社会の住環境を守っていくという姿勢でない限り話はまとまりにくいと考えております。  それから第二点でございますが、大阪府は換地センターのみを設置いたしております。換地センターは昨年六月、国の承認を賜りまして現在運営 しておるわけでございます。  その運営の実態でございますが、センター室長を一名置いております。それから補助職員を二名と換地の専門官を嘱託で一名入れております。それをもちまして現在実施中の府営並びに団体営の圃場整備事業の換地業務の指導をいたしておるのが実態でございます。今の過程におきましては技術者の研修を年二回ないし三回実施いたしております。さらに、現地指導も実際圃場整備をやっておる地域でやっております。換地相談日は毎月一日と十五日、連合会の事務所の中で開きまして、換地業務の指導に当たっておるわけでございます。  さらに、先生の御質問で今後の指導事業の推進方向ということでございますが、今後の問題につきましては、管理指導センター等につきまして他府県では既に設置されております。大阪府におきましても、複雑な都市化の中での土地改良区の指導業務は非常に数多くなってきております。したがいまして、今後は管理指導センターを大阪府にも設けられるよう連合会自体が努力してやってまいりたいと思っております。  さらに、維持管理事業につきましてでございます。  これは先ほども申し上げましたが、年々費用が増高していくということで非常に問題の多い事業でございます。この点につきましては、土地改良施設維持管理適正化事業が国において設けられ、これを受けられるような体制がまだ大阪ではできておりませんが、今後はこれを大阪府の連合会にも導入できるような体制づくりにまず持ってまいりたいということでございます。  この点につきましては、先ほどもちょっと触れましたが、年々、維持管理に属する問題でございますが、転落水死事故が起こりまして、毎年四件ないし五件が裁判ざたになっております。それがために、土地改良施設賠償責任保険制度大阪府の全市町村、全土地改良区並びに土地改良事業をおやりになっておる十九農協さんにもお願いし、指導し、防護施設をやるとともに保険制度でもって、敗訴の場合、また勝訴になりましても弁護人の費用充当に充てていきたい、保険制度導入をさらに積極的に盛ってまいりたい、かように考えておる次第でございます。したがいまして、連合会には現在顧問弁護士を既に置いております。顧問弁護士による法律相談を毎月一回ずつ、この議題になりますのはほとんどが水死事故に対する対応策でございます。  そういった面で、積極的に今後は都市化の中における、混住化の中における土地改良区のあり方について指導してまいりたい、かように思っております。
  41. 大和田啓氣

    参考人大和田啓氣君) 混住化、兼業化の農村で構造政策をどう進めたらいいかというお話でございます。大変難しい問題でございますが、私、村の青年からそういう相談を受けますときによく申し上げるのですけれども、具体的な取りかかり方としては、集落土地は先祖伝来の大変な大事なものであって、それを大事に使おうではないか、有効に利用しようではないか、荒らしづくりはしまいという合意を、これは別に文書の形では必要ないわけですけれども集落の人たちが少なくともそういう合意をして、その上で一体集落として土地を有効に使うためにはどこから取りかかったらいいかということを相談してみたらどうかと。  それは集団転作である場合もありましょうし、作物や作期を相談する栽培協定の場合もございましょうし、農業機械の小規模の共同利用あるいは作業の受委託、それからたばこをつくっている人とそうでない人との交換耕作、あるいは畜産農家と稲作農家との堆厩肥と稲わらとの交換あるいは利用権の設定、経営の受委託、そういう問題まで、一気に土地の貸し借りとい手ところまでいかなくて結構なのだけれども集落農業振興するために土地を一番有効に利用するのはどうしたらいいかということから取りかかっていくのが一番いいではないかということを私よく申し上げるのです。私は、非常に特別な都市近郊やなんかはまた別のやり方がありますけれども、普通の農村においてはそういうことから具体的な構造政策にとりかかることが一番いいのではないかというふうに考えております。
  42. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 きょうは参考人の皆さん大変御苦労さまでございます。  最初に、限られた日本の土地をいかに有効に利用するかということは非常に大事なことでありますし、それなりに国土利用計画法というもので今日まで推進されてまいりましたが、全体的に見ますと、これは四十四年農振法、都市の方では都市計画法、こういうもので始まったわけでありますが、人口急増といいますかこういう都市化の波に押されて、都市計画法の方がどちらかというとどんどん農村の方を侵食するような感じを受けるわけであります。しかし、国民的な合意がございますように、主要穀物についてはやはり日本でも自給をする体制をつくるべきだということも言われております。こういうことから、当然民族生存の基本であります農業をおろそかにしてはならぬわけでありますから、農業また農村、それぞれそういう重要な意味を持っておるわけでありますけれども、特に優良農地と言われるところについては、これは何らかの法の網といいますか、存続をさせるように努力をしなきゃならぬだろう。  しかしながら、人口急増が大都市から地方の中核都市へとだんだん移りつつあります。そういう中でやはり既存の耕地としていいところというのはどんどん地方の中核都市の周辺としては壊廃が進んでおる。国全体のデータを見ますと、壊廃のスピードというのは最近は少し落ちたように言われ、また農地の造成もプラスマイナスしましてそう壊廃が進んでいるのではないのだ、プラスマイナスそう進行はしていないという言い方をするのであります。しかし、田畑ができたという面積だけのことじゃなくて、やはり過去古い歴史の中で培われてまいりました優良農地というものが壊廃になるということは、ほかの用途に使われるということは、一たび道路になりまたほかの施設に使われますと、再びまた農地になるということはないわけでありますから、そういう点では非常にこのたびのこの法律というのはそれなりの意味は持っているだろうと思います。  まず、先ほど四人の参考人のお話を聞きますと、四人ともまことに時宜に適したものだということで、私どもも確かにこのたびの改正は必要なことであって、もっと積極的に何らかの手法があったのではないかというぐらいの気持ちでおるわけでありますけれども、今まで現場で取り扱っておりました皆様方の立場、そしてまたそれぞれの要望というものが今日こういう集約された形になったのだろうと思います。そういう前提の上に立ちまして、先ほど青木参考人から、この法律はそれなりの評価をするが、これを一歩進めてもらいたいといいますか、進めるべきであるというようなことや、また、この法を実施するに当たりましては慎重であってもらいたいという意味のことをお話ししておりました。また、住民が町づくり、村づくりにはみずから参画をし、計画というものに参画をすると同時に、民主的にこれを進めるべきだというお話がございました。  法律ができたからこれですべてがということじゃない。実際その法律がどうそれぞれの集落で実施されるかという実施段階というのが非常に重要な意味を持つのは当然のことだと思うのであります。こういう部門について学問的に今まで御研究なさってまいりました青木参考人におきましては、この計画をさらに実効あるものにするためにも一つの警鐘といいますか、お考えだろうと思うのですが、これを今後やはりある程度の時間をかげなきゃならぬだろうと思います。また、法律ができますと、それに伴います省令とかいろいろな手続もあるだろうと思うのですが、それらのことを含めまして、先ほどお話しいただいたことをもう少し敷衍してお話しいただければと思うのでありますが。
  43. 青木志郎

    参考人青木志郎君) ただいまの御質問で、この法律改正案をもっと積極的に進めるべきだと いうことは、この法案はどちらかというと農業土地利用というようなこと、あるいは農業というような形が中心になっております。もちろん生活環境施設の用地の不足というようなものも非常に要因になったという点で大変私は評価するわけですが、実は我々がというよりも農村人々が住む集落、住宅のある集落という用地の整備というものに対しては今まで余りタッチしていなかったのです。このいわゆる集落整備法といいますか、農村計画法といってもいいのですが、その辺までひとつ進めていただきたいというようなことでございます。よく白地地域といいますが、そういう白地地域計画のあり方というようなものをもっと見直していくべきであろうということが一つ。  それから、法の問題につきましては、私は法律には素人だものですから、一般的に言われている法はもろ刃のやいばだというようなことを聞きますので、それを引用したわけでございます。この法律そのものが下に下がったときにすぐどうこうというようなことは余りないということは、今までの農政の姿勢というものが、地域住民の英知をもって農業を進めていくという方向に向かっておりまして、農民あるいは住民主体的な村づくりということをやっております。事実農林水産省で大手が中心になっております村づくりの表彰というようなもののいわゆる受ける地域というものは、みんな住民主体的に村づくりをしているところが表彰を受けているという形で、そういう意味でのこの法がおりていった場合に、非民主的な形になるとは思いませんけれども、一般的なこういう法の扱い方としては民主的に運営をしていく方向をとっていただきたいということを申し上げたわけでございます。
  44. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 次に、上田参考人には、こういう混住化の中で土地改良で大変な御苦労をいただいておるお話が先ほどからいろいろございました。それらのことはおおよそ私なりに認識をいたしたわけでありますが、この農振法に触れまして、府下にも二万一千ヘクタール農地があって、八百六十万の人口の野菜を二〇%供給しているのだというお話がございました。最近の都市化の進展の中で、この耕地というのは非常に貴重なものだろうと思うのであります。この耕地が農振地域に全部が全部入っているとも言えないだろうと思うのですけれども、やはり府下にもこのぐらいの耕地は守るべきなのだろうと思うのであります。  しかし、最近のいろいろな社会の変動の中で守り得られるのか、やはりやがてはほかの用途に利用されるような方向に行ってしまうのか。それは上田参考人としましては当然、農地を守るということに一生懸命というお気持ちなのでしょうけれども社会の大きな変動の中で守り得られるものか。法律的にはいろいろな網がかぶせられるのだろうと思いますけれども、将来についてはどのようにお考えになり、見ていらっしゃるのか、その辺ちょっとお聞きしたいと思うのです。
  45. 上田治

    参考人上田治君) お答え申し上げます。  先ほども申しましたとおり、大阪府の耕地は二万一千ヘクタールございますが、土地改良区という立場から、今先生お話のようにぜひ守っていきたいわけでございますが、大阪という特殊な大都市圏におきまして、現在も関西新空港問題その他が議題に上っております。そういった中で、まだ今後かなり減るのではないかという見通しを府の方からも聞いておりますので、できるだけ立場としては守りたいのですが、減っていく客観情勢があるということでお答えにかえさせていただきたいと思います。
  46. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 混住化が進みますと、道路だ下水道だ、そういうものも当然付随して施設しなければならぬということで、どんなに最小限度にそれを食いとめようとしましても、やはり必要なものはつくらなければならないということでだんだん侵食されていくのが現実の問題だろうと思うわけでありますが、そういう中で大変な御苦労をしていらっしゃるのだろうと思います。  それから、先ほどから何度もお話がございましたこういう土地改良排水事業等におきましては、技術者のことは先ほど来いろいろお話がございましたが、やはり技術的なこととそれからそれに伴います運営のお金ということが大事なことなのだろうと思います。  上田参考人は、早くに市との、地方自治体との協議会のようなものをおつくりになって進められているということで理想的なお話を聞かしていただいたわけでございますが、ほかの方は必ずしもそういっているとは限らないだろうと思います。連合会中心者ということでもございますから、ほかの地域について、やはり上田参考人がなさったようなことが即そのままストレートでいくということではなくて、いろいろな問題点を抱えているのではないかと思うのですけれども、そういうことについてお気づきの点がございましたらお聞きしたいと思うのです。
  47. 上田治

    参考人上田治君) ただいま先生からお話しのとおりでございます。月平均三府県ぐらいから御視察にお越しになっておられます。その御視察の一番大きな目的は、やはり市町村との協議がうまくまとまっておるということについての具体的な調査、視察でございます。  先ほども申し上げましたとおり、どうしても都市化に伴って悪水、汚水、都市排水が入ってくる、それを市町村の行政側で何とか維持管理費を見ていただこうというような考え方が非常に多いようでございます。先ほども申し上げましたが、いわゆる被害者的な立場で行政側と協議を持とうという御意見を非常に多く見受けるわけでございますが、これでは協議は整わないと私は考えます。したがいまして、先ほど今野参考人の御意見の中に出ておりましたが、行政の責任範囲は、水路であればここからここまで、それからあとは土地改良区が土地改良区側のいわゆる土地排水部分についてどういうふうにしてよくして、住環境もあわせてやっていくか、それに必要な費用はどうしたらいいかという具体的な、しかも双方前向きの姿勢での協議がまず第一に必要だというふうに現場におりまして感じております。
  48. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 次に、大和田参考人にお聞きするわけでございますが、確かに社会社会情勢といいますか、環境は大きく変わって、特に農村においてもそれなりにいろいろな変化があるわけでありますけれども、さっき大和田参考人がお話ししておりましたように、農民の意識というのはやはり現状に執着するとか、出るくぎは打たれるとか、こういうものがやはり根強くあることは事実でしょう。私もそのように思います。  そういう中から、先ほどのお話では、専業農家それから兼業農家のあり方の中で、集落全体のために、中核農家だけを進めるというのじゃなくて集落全体がよくなる、そういう中から中核農家が育ち、そしてその中核農家も部落全体のためにという意識を絶えず持って進んでいかなければならぬというような意味のことのお話があったと思います。それは実に大事なことだろうと思うのですが、生活様式やなんかは都市化の波で変わりましても、意識の変革というものはなかなか難しい。そういう中で一つ集落、中核農家を育成するといいますか、そういうものが育っていくための素地として、今お話があったようなことは大事なことなのだろうと思います。  しかし、現実問題としまして、兼業の方々は近在にお勤めになるかまたは遠くにいられるか、いずれにしましても農業収入の少ない方、農外収入の多い、こういう方とか、どっちかというとそっちの方のウエートが多いのだろうと思いますが、そういうことで集落全体をよくするということは結構なことなのですけれども、そういう意識に農業収入の少ない方々が立つということはなかなか難しいことなのではないか。何か集落でお話し合いをするといいましても、お祭りとかなんかは別といたしますと、土曜、日曜の休み、こういう限られたとき、勤めておりますとなかなか、それも集落の方に出るということはまた難しいことではないか。非常に現実的な問題としては、集落全体をよくした上でということですが、その集落全体の 意識をまとめるというのは、昔のリーダーがなさったのとは違って最近は非常にそういう点では難しい面があるのではないかと思うのです。その辺のことについてどのようにお考えになっていらっしゃるのか、また何らかのそういうものをリードしてなさっている、そういうような現実的なことを何か頭に置きながらのお話なのか、その辺どうでしょうか。
  49. 大和田啓氣

    参考人大和田啓氣君) 御指摘のように、私が申し上げました構造改善の筋道もなかなか難しいことでございますけれども、難しいからといってほうっておくわけにもまいりません。私は、集落の性格は先ほど申し上げたとおりでございますが、やはりいい農家といいますか生産性の高いといいますか、農業を一生懸命やって農業生活しようとして農家一つ社会的な層として農村に定着しなければ、日本の農業は将来非常に危ないということ。それとあわせて、やはり集落農家との関係から見て、集落農業全体として振興をしなければいかぬというこの二つのことを、集落といいますか、村の指導者、それも指導者といいましても、農協の組合長とか市町村長ということばかりではございませんで、私ども村へ入りますと、何ら役職を持たなくても村の人たちからあるいは集落の人たちから尊敬を受けて、いろいろなことをその人に相談するという、そういう非常に影響力の強い人たちがいるわけです。私ども村づくりをする場合はそういう人たちを掘り起こすといいますか、そういう人たちがやはり責任を持って村の農業をこれから仕上げていくということをやってもらう以外に余り具体的な進め方はないのではないかと思います。  それは、今私が申し上げましたことを、農業が大変大事だとか、農業振興しなければいかぬということを幾ら口先で言ってもなかなか浸透するものではございませんし、国や県の行政の限界が当然あるわけでございまして、農家はやはり自分たちの仲間の言うことを一番よく聞くと思うのです。国とか県とかの役人の言うことは右の耳から左の耳へ流しても、村の本当に影響力のある人たちの言うことはよく聞くので、私はそういういわば野に隠れている賢者、事実私どもたくさんそういう人たちに会うわけでございますけれども、そういう人たちの奮起を促すといいますか、そういう人たちに活動してもらって、国や県はそれを助ける。市町村や農協も、これは地元でございますから、市町村や農協の人たちもそういう方向に集落の人たちの気持ちを向ける。  決して精神運動だけの問題ではございませんで、それが具体的に農業を動かしている力になると思いますけれども、そういうことをしながら、先ほど私が申し上げましたように、集落土地といいますか、村の土地は大事でそれを粗末にしてはいけない、不耕作地をつくってはいけない、荒らしづくりはいけない、有効に利用しようというそういうこととあわせて、その集落条件に合ったような農業振興の進め方をしていくということであろうと思います。
  50. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 私も各地へ参りますと、確かにそういうリーダー的な役割を果たしている人にも間々お会いいたします。野に見つけるということですが、なかなかこれはまた育てるとかそんなことでできることでもございませんし、非常に難しいことではございますが、そうあることが望ましいことであり、今日までも日本の集落というのはそういう形で来たわけであります。これは単なる学歴とか学識とか、また年齢とかそういうことでは定まらないものでありますから、そういう方々の育つこと、そういう方々の発見されることを祈るわけでありますが、確かに一面そういうことが大事なことになるのだろうと思うのです。  次に、今野参考人にお聞きしたいのは、先ほど来いろいろお話がございましたが、今、兼業、専業、中核、いろいろなお話の中で、全体的に日本の限られた耕地面積の中で非常に規模拡大ということが一つの大きな命題になっているわけであります。また、そういう中核農家を育てなきゃならぬ、そのためには土地の流動化ということが言われるわけで、集団的ないろいろな手法もあるだろうと思うのでありますけれども、現場にみずから町長さんとして町のいろいろな実態を御存じの立場から、この土地の流動化、また協業化というものが現実どのように今進行しつつあるのかという現状をひとつお聞きしたいと思うのでありますが、いかがでしょうか。
  51. 今野元治郎

    参考人今野元治郎君) 私たちは、基本的に農地の流動化を促進しながら生産性の高い農家にいたしまして、価格政策より構造政策へと移行をするような政策努力をいたしておりますが、今先生が御指摘のように、大変これは地域によって促進されておる地域と促進されていない地域がございます。私の町はどちらかというと促進されていない方であろうと思います。雇用機会の増大を提供して、平場農村といたしましてそういう悩みを持っております。  そこで、ただし生産性の高い土地利用型の農業を続けていくためにはどうしたらいいか。これは混住する部落におきましても、地域集団として中核農家中心として地域集団が固まることによって力が出てくるというふうに考えております。賃貸借して経営移譲したりいろいろなことをしますと、私たち定住構想に、離村するのではないか、孫の時代まで私のうちは農家でない、不動産を持っているうちだということになりますと、町長としては非常に過疎の心配が出てまいります。したがいまして、地域集団として土地利用型の拠点づくりを今後とも進めていきたい。また、そういう方向に町の施策の大宗を決めているわけであります。
  52. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 私ども委員会としましても視察に参りましたし、私個人も各地を回っておりますが、協業化といいますか、こういう土地の流動化、売買とかじゃなくて、また賃貸借ということではなくて協業的に仕事をするということ。農村の方は、先ほど大和田参考人もお話しありましたけれども、非常にこういう固定的な、古い考えに固執しているということではないのかもしれませんが、土地に対するすごい執着心がある。また、新しいことをなかなか積極的にやろうという意識に非常に乏しい。先の失敗を心配するということでなかなかこの協業化ということも、音頭をとる人は一生懸命それを説くのでありますが、成功した例もありますけれども、なかなか現実それが進むということになると、そこへ加わる方がだんだん半減するという話も随分見たり聞いたりしておるわけです、地域集団。  いま一つは、今野参考人のところでは就業の場があるということですからそういう形が考えられてくるのだろうと思うのですけれども地域集団化というものが、農村の方、土地をお持ちの農家方々が、さっきの話じゃございませんが、やはり中心になってそれを進めるよきリーダーといいますか、説得する方があって、それに対してもちろん町長さん、地方自治体、それぞれの農協、いろいろな方々がバックアップするという形でなければ進まないのは当然のことなのです。やはりこういう地域集団化を進めていこうというからには、今野参考人もそれについては何らかの今までの体験を通してのお考えがあるのじゃないかと思うのですけれども、どうなのでしょう。
  53. 今野元治郎

    参考人今野元治郎君) 先生が御指摘のとおり、地域集団をつくりますと、属人的に私は七名ぐらいが一番人事管理上いいと思っております。それで十ヘクタールか十五ヘクタールぐらいが一番機械の効率でもいいのじゃないかと思っているのですが、属人的な仲間をつくりますと属地が飛んでいるのです。ただ集まっただけ。部落なら部落として土地がまとまっていない。これが行政指導上非常に悩みがございます。  したがって、土地改良事業の基盤整備事業を行いまして、換地計画でそれをまとめて、そのところに中核農家を柱として兼業の方々も経営に参画する。作業には出ません、中核農家がやりますが、それで経営に参画して、その地域の持つ水管理、そういうもの、受委託しますと水管理から何から全然参加しないことになります。やはり藻刈りと か、私のところは農協が水路検査をするように、この水路はこの部落、この水路はこの部落と、そうして、その部落に区長さんが、農家組合長さんなり指導しまして、兼業農家の参画している人も朝出て水路払いをする、藻刈り払いする、こういうところに地域の村が残っている。もう受委託して規模を拡大した農家だけがその部落に二戸とか三戸と、水路管理その他においても非常に不満であるということでございます。いわゆる属人的に地域集団をつくりましても、属地が飛んでいる場合については自主的に交換分合してまいりますけれども、これも限界がございます。  不肖私、三十六年から七人で完全協業を実施いたしている経験から推しまして、土地が散在しております。ただし、属人的には十二ヘクタールを経営いたしておりまして、中核農家がそれを耕作して経営に全部参加する、そういうことを町の方々が二十年来見てくれておりますので、そういう土地改良を推進しながら進めていくのが行政者と、こう考えております。
  54. 下田京子

    ○下田京子君 参考人の皆さん御苦労さまでございます。  最初に、農村計画のあり方につきまして、青木上田参考人にお尋ねしたいのですけれども、今回の農振法改正では、言うまでもなく従来の農業振興計画というものにプラスして、生活環境整備、他産業への就労促進と、いわゆる農村計画というようなものが入ってきているわけです。  そこでなのですが、青木参考人が、社会的、経済的、物財的計画三位一体化というようなお話をされて、亀田郷実践例などもお話しになりました。私も行ってまいりましたのですが、住民がみずから参加して民主的なやはり農村計画づくりというのが大事だと、こういうお話がございました。私も全くその点重要だなと思うのです。  そこでお聞きしたいのですけれども、やはりこれは農地を守り、農業振興なくして農村計画づくりというものはないだろう。こういう点で、どういう点に留意していったらいいのか。さっき御質問があれば条件等もお話しするというふうなことがございましたので、青木参考人にこの点をお聞きしたいと思います。  それから、上田参考人は、本当に大阪府のああいう混住化の中でいろいろ苦労されているお話がございました。土地改良区も自治体も被害者意識、加害者意識なくして、農業も守り、そしてまた地域発展ということで下水道の整備が、施設がない中では、これはそれぞれの役割分担というものをきちっと意識化してやらなきゃならないのだというお話がございました。そこで、行政に対する御要望等をこの際、ぜひお聞かせいただきたいと思います。  それから、時間がありませんから続けてお聞きしたいと思うのですが、次に、大和田、今野両参考人につきましては農地の流動化政策のことでお尋ねしたいと思うのです。  今回の農振法改正の中で、今政府が進めております農政の最重要施策ということで流動化施策を入れているわけですが、これも農振法で貫徹しようということが出ているわけです。先ほど大和田参考人は、農業振興と農民の暮らしというものを一体化して、統一化して進めていくことが大事なのだというお話がありました。私もそう思うので、そういう点から今の規模拡大しか生きる道はないという格好でのやり方で果たして流動化というのは可能なのだろうかということで疑問を持っております。その点で大和田参考人にお聞かせいただきたいのです。  それから、今野参考人についても同じように、中核農家が本当に農業に希望を持って生きていけるようにするためには、やはり兼業農家でも、御婦人でもお年寄りでも農業をやりたいのだというような方々が、やはり農業に生きる希望が持てるような農業振興というか、それなくして規模拡大だけでということではいかがなものか。この点で御意見をお聞かせいただきたいと思います。  以上です。
  55. 青木志郎

    参考人青木志郎君) ただいまの御質問に対しまして、農村計画を進めていく場合の条件といいますか、おっしゃるように、農業が栄えないと農村は確かに栄えませんが、そういう意味におきましては、一体農村が豊かになる、栄えるということはどういうことなのかということが一つ私は大きな意味があると思います。  ただいまお話がありましたように、老人にとって農村はいかにあるべきか、子供にとって農村はいかにあるべきか、青年にとっていかにあるべきか、婦人にとっていかにあるべきか、壮年にとっていかにあるべきかというような形で農村を見る目というものが一つ重要なところでございます。そのときに、農村というのは農業土地利用を主軸とする地域でございますから、これを高度に利用するということが基本的に農村を豊かにすることには間違いございませんけれども、そういうのは農家だけではなくして非農家も含めまして、そういう農業というものに対する深い理解というものを持たなければならない。そういうことから、私は農村計画というものが必要であるということでございます。
  56. 上田治

    参考人上田治君) 先生の行政に対する意見はないかということでございます。  今回、法律の一部改正をやっていただくわけでございますが、行政と土地改良区、こういった中におきます話し合いは、先般来申し上げましたとおり、全国各地でうまく協議が調っておりません。したがいまして、知事裁定ということを入れていただけるわけでございますが、やはり府県においてもいろいろ問題があろうと思います。したがいまして、でき得ましたならば、農林水産省並びに農林水産委員先生方のお力でスムーズに早く協議が調えるよう御援助をお願いいたしたい、かように思うわけでございます。と申し上げますことは、片方、市町村土地改良区がもめておる場合には、やはり知事としても裁定で出しにくい場合があって、延び延びになる可能性もあるのではないかということを私は心配する一員でございます。したがいまして、その場合には農林水産省並びに国会の先生方の方で、これがうまく実施されましたならば、その趣旨が生かされるように御配慮をお願いいたしたいということをお願い申し上げたいと思います。
  57. 大和田啓氣

    参考人大和田啓氣君) 農地の流動化の可能性があるかどうかということに関連してお答えを申し上げます。  十分御承知のことで恐縮でございますけれども、二兼農家の中で工場や会社へ行っている農家が三分の二もう既におりますし、六十を超える老経営者で後継ぎがいないという農家が五十万戸いるわけで、私は、土地は動くか動かないかといえば、かなり動くというふうに思います。これは現在でも、この二、三年をとりましても所有権や利用権の形で八万ヘクタールぐらい動いておりますから、問題は、農業を一生懸命やろうとする者の手にそれがうまく渡るかどうかということがむしろ問題だと思います。  その場合に無理をしてはいかぬということを私は何回も申し上げたわけで、ちゃんと安定兼業があって、例を申し上げますれば、一ヘクタール耕している人は一ヘクタール耕さなくても、半分はちゃんとした農家に貸したらどうか。それをどうやってうまく実現できるかということが問題でありまして、農業所得がなければやっていけない人の、そういう二兼農家土地を無理に貸せということは私はとても言う元気はありませんし、また言ったってそんなことは行えない。まあ二兼農家は私はそんなに減らないと思います、それは二兼農家のよさというのはあるわけですから。ただ、今のような規模でやるのではなくて、もう少し経営を縮小して、農業を一生懸命やりたいけれども土地がなくて困っているという人たちに無理なしにどうやってうまく渡せるか、そういう問題だろうと思います。
  58. 今野元治郎

    参考人今野元治郎君) 規模拡大の手法にはいろいろあると思います。私の申し上げておりますのはその一端でございまして、二兼農家も抱え込んだ中核農家中心として地域集団もいいのでは ないか。その中に二兼農家も生命産業を一緒にコミュニケーションを持ちながらやっているというところに喜びを感じる、そこに農業者としての意気が感じられると思います。
  59. 下田京子

    ○下田京子君 一点のみを、もう時間であれなので。  上田参考人、さっき私、行政に対してということを、土地改良区もそれから席あるいは市町村自治体もかなり財政的に窮屈な中で苦労されている。そういう意味で、下水道など完備していない中で、行政は行政、国に対して何かこの際だから、あったら。
  60. 上田治

    参考人上田治君) ただいま私、勘違いいたしておりまして申しわけございませんでした。  国に対しましての特に要望ということは、先ほど公述いたしました中で申し上げましたように細かい点に御配慮いただいております。ただ、この趣旨を生かしていただいて土地改良区と市町村、あるいは土地改良区の運営問題、今後は土地改良区がどのような情勢になりましょうとも、どうしても土地改良区が農地を守るのだという考え方でなければ農地は守り切れないと考えております。したがいまして、今後この法律の趣旨に沿ってよく御指導を仰げましたらと考えるだけでございますので、その点御了解いただきたいと思います。
  61. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、青木参考人大和田参考人にお伺いしたいのでありますけれども、構造改善ということが前から進められておるにかかわらず余り効果を上げていない。規模拡大も一戸当たりの耕地というのはそんなに目立ってふえていない、しかし私は、これはやはり進めなければ大変なことになると思うのであります。特に土地利用型、米とか麦とか主要穀物というものの生産量というものは非常に悪い状態にあるわけであります。辛うじて米は何とか自給はしておるものの、多額の財政負担がないと維持できないという状態でありますし、それから消費者が望む価格では生産できない、逆ざやというものがあるわけであります。したがって、私は日本の農業を健全にするためには、まず基本的な米とか、こういうものの生産力というものを高めなければ農業の活性化はあり得ないと思うわけであります。  そこで、構造改善というのはそういう観点から非常に重要だと思います。いろいろ大型農機が開発されたり土地改良も行われておりますけれども、大型農機や土地改良そのものが、現状では過剰投資になりつつある。なぜかというと規模拡大がそれに伴わないからであります。だから農家は、農機の借金を返すのに大変だとか、あるいはその土地改良の負担金でさえ重荷になるというような状態が見えておるわけであります。ただ、先ほどの話を聞くと、土地の流動化も進んでいくだろうということでありますけれども、この構造改善がこれから進んでいくという希望が持てる状態にあるのかどうか。もし希望が持てるとするならば、それはどういう要素からそう考えられるか、これがまず第一点であります。  それから第二の問題は、農工混住の問題であります。やはり農村に工場がどんどんできていくという傾向は、これからも徐々ながら進むと思うのでありますけれども、これのメリット、デメリットがあると思います。メリットとして考えられることは、やはり過疎化を防ぐ、それから兼業農家の就業を安定させるというメリットがありますけれども、反面混住が生む下水路農業排水路の問題とか、あるいは農業用施設配置の問題とか、そういう問題が出てくる。それからもう一つは、兼業化の定着を進めて構造改善にはむしろブレーキがかかるのではないか。それからもう一つは、やはり土地の価格が高騰していく。工場が出てくれば土地の価格がどんどん上がっていく。これがさらに農業経営とか農地の流動化というものについて障害になりはしないか。そういう点から考えて農工の混住がいいことか悪いことか、つまり行政が積極的にそういうことを推進すべきか、あるいは防ぐべきか、あるいは中立であるべきか、これが第二の質問であります。  以上です。
  62. 青木志郎

    参考人青木志郎君) ただいまの問題は、大変難しい問題で、むしろ大和田参考人の方が適任かと思いますが、私の専門農村空間計画立場からの点から申し上げますと、構造改善事業というものが、いわゆる農業だけでなしに生活も含めた意味での構造改善事業という方向に向かっている中で、私は農業というものを従来の農業構造改善事業とは違った形でプラスの方向に持っていけるものが内在しているというふうに考えておりますし、なるとは言いません、そういうことを希望をいたしております。  それから農工一体論の問題ですが、都市土地利用農村土地利用の秩序ある計画をちゃんとしないと、今おっしゃったようないろいろな問題が出てくるかと思います。そして、原則的に言えば点と線の、工業というのは点と線の産業でございますし、農業というのは面の産業でございます。これが無計画にされますと、面の方が弱くて大変問題が出てくると思いますので、非常に優良な農地を持っている農村地域にみだりに工業を導入するということについて私は疑問を持っております。特に雇用の問題という形でございますと、いわゆる自動車、それが交通網の整備によって相当距離の離れたところにも就業の機会というものを十分得るような空間に日本は形成されてきておりますので、むやみやたらに優良農村地域に工業を導入することについては問題があると思います。
  63. 大和田啓氣

    参考人大和田啓氣君) 構造改善の可能性があるかどうかという問題でございます。  私は、結論を申し上げますと可能性があるというふうに思います。構造改善というのはどういうものを姿として描いているかということにもよるのですけれども、規模拡大ということを議論する場合は、先ほど申し上げましたように、すぐ十五ヘクタールの稲作とか二十ヘクタールの稲作とかということを言われて、それが果たして可能であるかどうかということで終わるわけです。しかし私は、日本の農業あるいは農村の特殊な事情からいって、そういうふうにはすぐにはとてもならなくて、むしろ三ヘクタールとか五ヘクタールとか、ほどほどのところで、例えば水田地帯なら水田だけでなくて、園芸や畜産を入れることによって農業生活できるような農家をつくる、そういう意味で申し上げますと、構造改善というのは私は可能だと思います。土地は動くということは先ほど申し上げたとおりでございます。  それから混住化、兼業化に関連して工場を導入することが果たしていいか悪いか。これはなかなか大変微妙な問題でございますけれども、私はこれも結論から申し上げますと、農地をスプロール的に壊廃しないで、計画的に工場を導入できれば、それは構造改善にとっても結構なことではないか。これは要するに、安定兼業農家をつくって土地を貸しやすくするということでございます。土地は、地価は高くなりますけれども、もう既に高くなった土地で、所有権の売買で規模を拡大するということはなかなか難しいので、やはりそれに相応した利用権の設定ということで規模拡大をやれば、私は高地価の問題はかなり回避できるというふうに思います。
  64. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私が最後でございます。大変御苦労さんでございました。  それでは、私はお話しくださった順序に一括してお習いをいたしたいと思いますので、そのようにひとつよろしくお願いいたします。  まず、青木参考人にお尋ねしたいことは、青木さんが冒頭に自分の体験の中からというお言葉がございました。これは非常に意味のある御発言だと私は思いました。そこで、住民がこの地域社会にどのように溶け込んで、そしてお互いに相互理解を持つことができるか、このことを強調しておられました。  最近の社会情勢、いわゆる個人主義と利己主義というものをどのように調和さしていくかというところに指導者の困難、苦労があるわけでありますが、そういった苦労を背景にして、この交換分合の成否が、交換分合がうまくいくかいかないかということが決定的条件であると私自身も思って おります。そういった点から、この交換分合を成功させる、あるいはその困難点、未解決の問題がございましたらその点をまず承りたい。  次に、上田参考人に対してお習いしたいことは、特に大阪という地域環境からしますと、農村的な、また都会的なそういった特殊の地域であることが特色であると思います。そこで、いみじくも上田参考人地方自治体地域住民の一体、和を強調していらっしゃいました。ごもっともなことだと思っております。  そこで、この統計にもありますが、みずからもおっしゃったのですが、土地改良区が六十五、市町村区が四十四、農協連合区が十九と、この数字は全国的に位置づけても、上中下にしますと中以下であります。こういう実情でありますが、ここまで持ってこられるのにも大変御苦労されたと思います。そこで今後の目標と申しますか、努力点と申しますか、そういった点をお聞かせ願いたいということ。  もう一点は、戦後の住宅のあり方が全国的に大分変わってきておる。特に都会と農村の抱き合わせということになりますと余計その住宅形態が変わって、マンモスビルやあるいはマンション、アパート、こういった住宅の中におるわけでありますから、その住宅と今申し上げた問題とのかかわりはないのであるかどうか、問題点があるのであるかどうか。  次に、大和田参考人に対してお聞きしたいことは、農業生産生活の実態、こういうことを強調しておられました。それを踏まえて地場産業の育成ということと自給自足ということをどのように位置づけておられるか、このことをお聞きしたいと思います。  次に、今野参考人にお聞きしたいことは、活力のある農村あるいは町づくり、村づくりということを強調していらっしゃったわけですが、その中で交換分合の点も強調していらっしゃいました。保健休養施設と、このことと関連しまして、さらには活力のある農村という立場から豊かさということが当然考えられなければいけない。豊かな農村、そして内容的には多様化ということが必然的に考えられてくるわけでありますが、そういう立場から若者の後継者の問題、後継者の育成ということと、次に関連してレクリエーションというものをどのように位置づけてやっていらっしゃるか、以上それぞれのお立場からお習いできたらと思っております。  以上です。
  65. 青木志郎

    参考人青木志郎君) ただいまの御質問に実例を挙げながら御説明をさしていただきます。  先ほど御説明いたしました土地利用点検地図というものを用いまして、そして集落話し合いをしました。それは休耕地を全部赤く塗りましてみましたところ、余りにもその休耕地が多いので集落人々もはっきりしてびっくりしたのですね。その集落のこの休耕地を何とか農業を一生懸命やる人々に貸し借りをしたらどうかというようなことがそこで語られた。それからまたもう一つは、水道を引くという形でございまして、そのときに一軒だけ二キロぐらい離れておりまして、これも離村集落の共同体的な精神になるでしょう、やはりそれを抜かすわけにはいきません。そうすると、大変経費がかかるというようなことで、話し合っているうちに、では下へおりてきたらどうか、集落の中に来たらどうか、そしたら、用地がないからと。  用地は、土地の図面が全部出ておりますから、ここに宅地がある、ここの家はもうおばあさんも東京にいる息子のところに行ってしまってほとんど帰る可能性はないと。そうしたところが、その用地を、では区長、ひとつ東京へ行ってこれを貸すような形あるいは売るというような形を交渉してみたらどうかというような形で、その土地利用というのが集落全体の中で話し合いができたというようなことがあります。これが実現したかどうか私はちょっとわかりませんけれども、少なくともそういうことが語られたということでございます。  それからまた、実際にはこれも鳥取県のある部落でございますが、集落農業用地を全体計画をいたしまして、これは相当な話し合いが行われまして、そして最も水田としてよいところ、それから果樹として、これはナシとブドウでございますが、そのところを全部用地設定しまして交換分合をしてすばらしい農地にしております。そのときにはブドウ園が最も成長期で、お金になるブドウ園を水田にして、そしてブドウ団地に移すというようなこともしております。その移動に関しては、村民が全部出てその移動を手伝うというようなことがございます。そういう意味で、集落という領域の中で土地利用をいたしますと、そのコミュニティー形成のエネルギーといいますか、そういうものを積極的に点検地図みたいな手法を用いてやりますと、相当な合意をもってできるのではないかというふうに考えております。  同じように、これは愛知県の田原町のある地区、旧村的な領域でございますが、ここでは土地利用として畜産団地はどこにつくる、あるいは畜舎をつくるときにはいろいろな条件をつけたりしまして、規制を集落の中でつくってすばらしい土地利用計画をしている例もございます。そういうことが今度の法律によって相当保証された形の中で出ると、一層これからの我が国土地利用計画を含め、いわゆる豊かな農村計画をする上において大変よいのではないかというふうに考えております。
  66. 上田治

    参考人上田治君) お答え申し上げます。  先生の今後の目標ということでございますが、土地改良区、特に都市近郊土地改良区に奉職いたしておりまして、これは所属いたしております神安土地改良区でも大阪府の土地改良事業団体連合会でも常日ごろから今後の目標として申し上げておることでございます。また、理事会等で協議をいたしておることでございますが、まず都市農村、地方行政と農業団体、特に土地改良区との調整、調和がとれない限り都市近郊では土地改良区は成り立たないと考えておるものでございます。したがいまして、これを一つの柱といたしまして現在もこの目標に向かって努力中でございます。  それから第二点の、高層住宅等がどんどんふえてきておりますが、これとの問題はないかという御質問のように承ったわけでございます。高層住宅は随分とふえてきておりますが、高層住宅にお入りになった方々に一坪農家と申しますか、家庭菜園と申しますか、農家農地をお貸しして、そうして自分でつくる楽しみをしていただくということが大阪ではかなり進んできております。こういったことで非農家農家という間にもいわゆる調整と申しますか調和というか、それをとってお互いに理解し合った住環境が現在だんだんつくられてきておるように感ずるわけでございます。これも目標の一つでございますが、都市近郊ではぜひ進めなければならない問題だと。大きな問題点は現時点までは出てきておりません。  ただ、先ほど申し上げましたとおり、水路に転落して水死事故を起こしたり、あるいは転落してけがをしたりした場合に裁判ざたになる例が毎年四、五件ございます。こういった地域につきましてももう少し非農家農家、さらに行政も加えて話し合いの持てる場をつくってまいりましたならば解決するのではないかと考えております。  以上、今後の目標と、あるいは高層住宅等における非農家農家との現在までの関係を申し上げまして説明にかえさせていただきます。
  67. 大和田啓氣

    参考人大和田啓氣君) 村づくりと地場産業の育成あるいは自給自足の問題でございます。  私は、農林水産物の販路あるいは農家の所得の向上ということから地場産業の育成は大いに結構だと思います。また自給自足の問題も、野菜の生産なんかについて申し上げれば、中央市場向けの太いパイプとあわせて地場消費を進めるべきだというふうに思います。  以上でございます。
  68. 今野元治郎

    参考人今野元治郎君) 先生が御指摘のように、個人主義と利己主義が交錯している中で一番大切なことは、活力ある村づくりのためには部落 のコミュニケーションをうまくやる、お手伝いをするということだろうと思います。私の町では開業医を含めた保健婦と一緒になって健康づくり推進会議を持ちました。特に母子愛育会の活動は、県でも二カ町村のうちの一つぐらいだろうと思います。それで農村一日ドック総合健診をやりまして、そういう保健活動に努力をいたしております。  なお、最近よく町で、小さな町なものですから町民運動会なんかやりますけれども、これは去年からやめまして、もう部落のコミュニケーションというと、部落で運動場を求めながら、そこでお年寄りも若い者も一緒になって運動会をやれということで、その経費を町が出しまして部落の創意工夫でやらしておりましたところが、大変チームづくりに効果が出てまいりました。環境整備、その他において大変私はよかったなと思います。  なお、若い者につきましては、結婚相談所を町で設置をいたしまして、近隣町村と一緒に町長が会長になりまして、若い者の結婚相談を推進をいたしておるところであります。  なお、若い者の活力につきましては農協の青年部がございますから、そういう方向に町が援助、かゆいところに手が届くというようにいたしておるわけであります。  老人の方々につきましては、老人センターというようなもので作業をしながら、福壽荘と名前をつけておりますが、そういうところに拠点もつくりながら実施いたして、活力を各方面から出すように努めているところでございます。
  69. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 以上をもちまして参考人方々に対する質疑を終わります。  参考人方々に一言御礼を申し上げます。  本日は、皆様におかれましては御多忙中にもかかわりませず当委員会に御出席いただきまして、大変貴重な御意見を述べていただきましてまことにありがとうございました。当委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十八分散会