○
参考人(
今野元治郎君) 私は、
全国町村会政務調査
委員で
農政を担当しております宮城県三本木町長の今野でございます。
参議院
農林水産委員会の
先生方には、日ごろ全国町村会の
農政活動に対し深い御
理解とお力添えを賜っておりますことをまずもって厚く御礼申し上げる次第でございます。また、本日はただいま本
委員会に付託されております農振法及び
土地改良法の一部
改正案につきまして私の
意見を申し上げる
機会をいただきましたことにつきましても大変ありがたいことと考え、深く感謝申し上げておるところでございます。
まず、私の
意見を申し上げる前に、私の町の概況を御
理解いただくことが必要であると思いますので、その概要を申し上げたいと思います。
私の町は、仙台の北、国道四号線で三十五キロのササニシキの本場の平たん稲作地帯でございまして、総面積は四千四百七十七ヘクタールでございます。そのうち
森林面積は一千四百三十八ヘクタール、
耕地面積は一千六百四十二ヘクタールで、町の中央を流れる鳴瀬川を挟んで北部が平たん水田地帯、南部が丘陵山林地帯になっております。耕地は一千六百四十二ヘクタールのうち水田面積は一千四百八十七ヘクタールで、実に九〇%余の水田という典型的な水田単作地帯でございます。また、私の町では、この耕地の全部と、将来
農地開発等を行う予定の山林五百三十ヘクタールを含め二千七百十三ヘクタール、総面積の六一%に及ん
でおりますが、を農振
地域として指定いたしております。
さらに、
農業基盤
整備につきましては、私の町政の基本姿勢といたしまして格段の
努力を傾注いたしておるところでありまして、
農業構造
改善事業、
農村基盤総合
整備事業、
土地改良総合
事業等によりまして、水田では現在三百四十一ヘクタール、三十アールの区画整理を完了いたしておる次第であります。
しかし、湿田、
排水不良田が依然として多いため、鳴瀬川、一級河川でございますが、この上流に高砂子ダムを建設し、徹底した
用排水分離と乾田化を行うことを主目的とした国営鳴瀬川
地区土地改良事業の実施をお願いすることとし、五十九年度には調査
地区に採択されておる次第でございます。
さて、このたび本
委員会にその
改正案が付託されております農振法及び
土地改良法につきましては、
農村における優良
農地の確保、
農業基盤の
整備、
農業生産の近代化等を積極的に推進する最も基本的な法制といたしまして大きな役割を果たしてまいりましたことは御承知のとおりであります。
さて、近年の
農村を取り巻く
情勢は、
大都市への過度な人口集中が終えんいたしまして、新たに地方中核
都市の急激な
発展と人口膨張が起こっております。これにより地方中核
都市周辺の
農村における
都市化、混住化の傾向が顕著で、
農用地の転用、壊廃が根強く進む趨勢にありますことは否めない事実であります。このように私
ども農林業を基幹的
産業としてまいりました
農村地域にある大部分の町村におきましては、好むと好まざるとにかかわらず
都市化、混住化、兼業化の波が押し寄せ、また
都市からの離職者の帰農などに加え、
農業就業者の高齢化が進んでおりますが、このような
情勢を背景といたしまして、この二法案の
改正をめぐる問題点を指摘いたしまして、
先生方の御
理解をお願いいたしたい次第であります。
第一に申し上げたいことは、
都市化、兼業化、高齢化の進む状況下にありまして、村や
集落の
農業を守り抜く
生産性の高い
農業経営体の育成を図っていくことに徹底した
努力を傾注する必要があるということであります。
既に
農政審議会におきましてもその答申で、今後十年間に九十万ヘクタールの
農地を流動化し、七十万戸の中核
農家の育成を図るよう提案されておりますが、国は、ぜひこの実現について総力を挙げて取り組んでいただきたいと思っております。
私が町長をいたしております三本木町では、まず、就業
機会の確保のために男子型のアルミサッシ場、女子型の縫製工場等民間企業の積極的な
導入によりまして地元雇用
機会の拡大に努めております。また一方では、今後
土地改良事業を推進しつつ、中核
農家を
中心に
兼業農家も経営参加しながら、
地域ぐるみで
生産性の高い稲作拠点づくりを行うべく積極的な取り組みを行っているところであります。
この点から見まして、今回の農振法の
改正で、
農業振興地域整備計画の中に、
農地流動化と中核
農家への
土地集積、
農業者の安定就業の促進などを
計画事項として取り入れ、関連施策の充実強化を図ることとされた国の御方針に対しましては、深く敬意を表し、全面的に賛意を表するものであります。
第二に申し上げたいことは、耕地、草地、林地を一体的に
整備し、その活用を通じ経営規模の拡大と
土地利用度の
向上を図ることが必要であるということでございます。
私
どもの三本木町では、鳴瀬川を挟んで町の南半分が標高四十メーターから五十メーターの丘陵山林地帯となっておりまして、この里山、丘陵山林地帯が私
どもの今後の重要な
土地資源となっております。私の町といたしましては、既耕地が住宅、工業用地等へ転用、壊廃される部分は、必ず
農地開発により耕地を造成して埋め合わせるとともに、
地域農業としても稲作単作から脱却し、経営作目の複合化を進めるための酪農、肉牛経営に必要な飼料基盤として積極的な草地開発を行っていきたいと考えているところであります。
さらに、私
どもは里山の積極的な開発を行うために、里山高度
利用調査を林野庁にお願いし、昨年は林政総合調査
研究所に現地調査を実施していただくなど、適切な活用の方策を確立していきたいと考えております。
今回の農振法の
改正に当たりましても、
農用地の開発適地を集団的に確保するための
交換分合制度の
拡充などの措置を講じられておりますことは、大変ありがたいことと考えております。
第三に申し上げたいことは、
農村において
生活環境施設の
整備により活力ある
農村地域社会の形成を図ることであります。
私は、無秩序な住宅地化や
農業用施設の建設を避け、長期的な
視点に立って、
農村にふさわしい手法により、
農業及び
生活環境改善のための諸施策の
整備を図っていくことが必要であると考えます。
現在、
農村地域に所在する町村行政の大きな柱は、管内における集会
施設、
農村公園、保健休養
施設、
集落道、
集落排水、
処理施設等の
整備であります。
私
どもの三本木町におきましても、各
集落には集会
施設を持っておりますが、大部分が小規模で、かつ老朽化しているため、十分その機能を果たしていない状況であります。このため、最近、
農村基盤総合
整備事業を
導入していただきまして、ようやく一部
地区で近代的な集会
施設、運動公園等の
整備を行っているところでございます。
このたびの
法改正に当たりまして、こういった
生活環境施設整備につきまして特に力を入れられたようであり、
生活環境整備に関する
事項の農振
整備計画への取り入れ、
土地改良事業による
生活環境施設用地の
生み出し、
農業集落排水事業の
法定化、
集落協定制度の
創設等、
制度面で画期的な
改善を図られたことにつきまして、
地域住民に密着し、活力ある
農村社会の形成に直接取り組む町村長として心から賛意を表するものであります。
第四に申し上げたいことは、
農業用用排水路の
維持管理、集会
施設の
維持運営等に関し、
農村コミュニティー機能の充実と適正な費用負担について
制度的な仕組みを確立していくことであります。
このたびの
改正に当たりまして、
農業用排水路の適正
管理に関する
市町村協議請求
制度の
拡充、
集落協定制度による
農業用用排水施設の
維持運営の促進等適切な措置を講じられましたことに対し敬意を表するものであります。
以上、このたびの農振法、
土地改良法の
改正に関し現場の町村長として当面している問題について概要を申し上げた次第であります。こうした
農村における問題に対処していく上で、
地域農業者及び
住民の活動が前提となることが当然でありますが、何といいましても私
ども地域住民に密着している町村長の取り組みがその成否を決定づける重要な役割を持っていると考え、責任の重大さを痛感しているところでございます。
そこで、私
ども現場における町村長といたしましての要望を
一つ申し上げますと、
農村は既に述べましたとおり、
生産と
生活が一体として営まれる共通の場であり、最近の
農村をめぐる厳しい
情勢のもとで活力ある
農村地域社会の形成に当たりましては、
都市計画とは異なった
農村にふさわしい手法によって進めていく必要があろうと考えております。
私
どもは、現地におきまして
地域関係者と創意工夫を凝らし、十分
話し合いを行いながら豊かな
村づくりに取り組む決意でございますが、政府、国会におかれましては、こうした
農業、
農村整備計画を実現するための
生産、
生活両面の総合
整備を図る上で、今後必要な関連予算の
拡充整備を行っていただくことを切望してやまない次第でございます。
最後に、
農家が町の総戸数の半分を占め、町面積の六〇%を農振
地域に指定して、
農業を基幹
産業とし、
農村工業
導入を促進しつつ、
兼業農家の就業
機会と所得確保に懸命に
努力している
農村地
域を代表する一町長といたしまして、この二法案が一日も早く国会で議了されまして、私
ども町村長が現場において直面する
農業構造の
改善と
農業、
農村の健全な
発展を実現するための基本的な法制として大きな役割を果たすことを心から期待申し上げまして、私の
意見といたす次第でございます。
ありがとうございました。