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1984-06-26 第101回国会 参議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月二十六日(火曜日)    午前十時一分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         谷川 寛三君     理 事                 川原新次郎君                 北  修二君                 最上  進君                 村沢  牧君                 藤原 房雄君     委 員                 浦田  勝君                 岡部 三郎君                 熊谷太三郎君                 竹山  裕君                 初村滝一郎君                 星  長治君                 水谷  力君                 稲村 稔夫君                 上野 雄文君                 菅野 久光君                 刈田 貞子君                 下田 京子君                 田渕 哲也君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農林水産大臣   山村新治郎君    政府委員        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産省構造        改善局長     森実 孝郎君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        労働省職業安定        局雇用政策課長  佐藤 仁彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農業振興地域整備に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送付) ○土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付)     —————————————
  2. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案及び土地改良法の一部を改正する法律案、以上両案を便宜一括して議題といたします。  両案につきましては、既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、ただいま審議に付されました農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案土地改良法の一部を改正する法律案、これのいろいろと疑問に思っている点につきましてこれから御質問を申し上げたいと存じます。しかし、この両法案とも審議をするに当たりまして、どうも日本農業のあり方というものと基本的にかかわりを持っているということにも相なりますし、その日本農業行き方いかんによりましてはそれこそ法案内容というものも変わってこなければならぬ、こんなふうにもなるわけでございます。したがいまして、具体的な内容に対する御質問を申し上げます前に、日本農業のあるべき姿についてどのようにお考えになっているのか、その辺のところをお伺い申し上げたいと思います。なおまた、参考人の方を後にお呼びをしておりますし、参考人の方の御意見を伺わせていただいて、最終的には私なりの考え方をまとめながらまた御質問を申し上げるつもりでおります。大筋についてこれからお伺いをしたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。  そこで、農振法、土地改良法のそれぞれの一部改正というものは一体基本的に何を目指しているのか、こういうことをまずお聞かせいただきたいと思うのであります。  今、日本農業現状を見てまいりましたときに、その辺のところのイメージがどうもぴんとこない、残念ながら私にはそうなのでございます。したがいまして、まずこの間も地力増進法などの審議をしたわけでありますけれども日本農業の底力というものを一つ増産体制を確立していく、食糧自給度向上するという方向に従って増産という体制をつくり上げていく、こういうことに相なるのでありましょうか。それとも日本農業コストが非常に高いという一般的な評価があるわけでありますけれども、そういったコスト引き下げというところに言ってみれば経済的農業経営といいましょうか、こういうところを目指していくというところにアクセントがあるのでありましょうか。その辺のところからまずお伺いしたいと思います。
  4. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) お答え申し上げます。  食糧安定供給というのは、現在我が国農業に課された最重要の課題でございまして、そこで生産性向上を図りながら国内生産可能な農産物は極力国内生産で賄うという基本方針は現在の農政基本でございますし、また、自給力維持強化ということも国会の御決議にございますように現在の農政基本でございます。ただし、今御指摘のようにそこから直ちに増産に向かうかということになりますと、全体的には自給力維持強化ということは、ある意味では消費生産需要供給の均一の問題でございます。  物量的な増産といいます場合、現在の日本人の食生活を考えてみました場合には、大体一人当たり二千五百カロリー、こういうもので頭打ちのような状況になっておりまして、基本法制定当時考えておりましたような三千カロリーというようなところまではなかなかまいらないというのが私どもの認識でございます。そうしました場合にはその二千五百カロリー、人口増がございますから、そういうマクロの中でできるだけ生産力維持強化をしていくということはやはり大事なことだろうと考えております。しかし同時に、現在消費者からはあるいは外国からは、日米経済摩擦に見られますように市場開放あるいは安価な安全な食糧というものに対する需要も非常に強うございます。今後の農政を見ていきます場合には、やはり国際競争力維持強化ということも重要な面でございまして、そういう観点から見ますとやはり生産性向上コスト低下ということも非常に重要なことであろうかと考えております。  そういう意味で、私ども今後の農政におきましては、基本的には総合的な食糧自給力維持強化ということを前提にしながらも、やはり生産性向上コスト低下ということを図りながら農業活力を生み出していく。同時にまた、市場考えました場合には付加価値、この利用形態についてもいろいろ工夫を凝らしながら付加価値も高めていくというようなことも必要であろうというように考えております。
  5. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 どうも官房長お話を伺っておりますと、増産というか量的な確保のことももちろん無視するわけにいかないが、やはり国際競争力という観点から省力化ということにかなり力点があるように受け取れるわけなのです。もちろん私 はそのことを否定するのではありませんけれども、しかし食糧生産といいますのは、その国での自給ということを一番の基礎に置くというのは、何も国際防衛上の問題とかなんとかということの位置づけばかりではなくて、いわば、今安全という言葉も使われましたけれども、輸入ということについては安全性の問題という観点からはいろいろと問題があるはずでございます。  この間から五十三年産米のことが随分問題になりまして、国内のものでもいろいろと問題が起こるわけでありますが、しかし、外国産の農畜産物を輸入する場合にはさらに長期間船に積んで持ってこなければならない。例えばそれはもう気温が上がった夏場は一切輸送しないなどというのであればまた多少手の打ちようがあるかもしれませんけれども夏場も持ってこなければならない、こういうことになってまいりますと、勢いどうしてもそれに対する対策なども行われる。これは長い目で見て国民の命にかかわってくる、こういう問題にもなって、それが結局例えばEDBにいたしましても、アメリカで問題になってこなければ我我が、我が国が強力にこれをチェックするというそういう体制を事前につくることが困難である、こんなことも含まれてまいります。  私はこんな意見を申し上げていると時間がなくなってしまうのでありますが、要するに、国際競争力ということに力点がいったときには我が国経営規模関係その他を考えていくと、結局はアメリカあるいはオーストラリア、そういった広大な農地を持っているところにはしょせん対抗できないということになってしまって、非常に粗っぽい言い方をすれば、日本農業はそういうところとは競争できないからやめた方がいい、極端に言えばそういうところにまでいってしまう可能性があると思うのです。とはいいましても、コストダウン努力をしなきゃならぬということは認めるわけであります。そこで、コストダウンと言ったときに一つ目標があるのじゃないかというふうに思うのです。  畜産関係審議をしているとき御質問申し上げましたときに、畜産関係では一応コストEC並みを目指しているということでありました。そうすると、耕種関係ではどういうことを目標にしておられるか。やはりEC並みということをお考えになっているのかどうか、その辺のところを。
  6. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 五十七年に報告されました農政審議会の「「八〇年代の農政基本方向」の推進について」でも、農産物全体につきまして長期的にはEC並み価格水準というものを目標にするというような方向は示されております。  今御指摘のように、畜産につきましては具体的にそういう方向で動いていることも事実でございます。また、耕種につきましても、私どもとしては長期的にはそういう方向、これは非常に難しいということは御指摘のとおりでございます。特にアメリカ豪州等と比べました場合には経営規模等は全く開きがございますので、私ども豪州アメリカというものは決して念頭には置いておりません。また、EC各国を見ました場合におきましても、例えば西ドイツでは農家一戸当たり農地面積日本の十五倍、フランスでは二十六倍、イギリスでは六十五倍というように非常に大きいというようなこともございまして、今直ちに、あるいは中期的に直ちにそこまでいくというふうには考えておりませんけれども、私ども現在お願いしております農振法なり土地改良法、あるいはさきに国会で御成立されました農用地利用増進法、こういうものによります規模拡大等努力を重ねていきました場合には、将来展望といたしまして、例えば六十五年におきましては耕種農業につきまして十ヘクタール程度の大規模農家ができた場合には稲作生産費も、第一次生産費で見れば現状の二分の一程度まで下がる可能性はあるといいうような展望を私どもは持っております。そういう意味で非常に長い、また根気の要る方法かと思いますけれども、私どもといたしましては耕種農業につきましてもできるだけ西欧化EC並み水準に近づける努力はしたいというふうには考えております。
  7. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 大体EC一つ目標にして耕種農業努力を続けていくというお話なのでありますが、しかし、そのEC自体にいろいろと問題があるわけでありまして、かつてEC農業担当責任者といたしましてらつ腕を振るって、それこそ農民殺しマンスホルトなどというあだ名がついたオランダの農業大臣をやりましたマンスホルト氏が、当時十六年間いたEC農業推進者立場のときには、それこそ小農統一、統合して大規模経営にという指導方針をやって、そしてコスト引き下げをしてと、こういう努力をしてこられたのです。  そのやり方が余りにも激しかったものですからいろいろと言われたりしたわけでありますが、しかし、マンスホルトがその後がなり大転換をしておりまして、そして、そういう統合した行き方は間違いである、むしろ小農、小さな経営というものをもっともっと大事にして育てていく、多少そこに補助金が要るといたしてもそういう行き方をすべきである、それは世界生態系観点から考えていっても非常に重大なことであるということで、一方では経済性の問題もある程度考えながら、一方では自然の循環系というものを改めて重視をしなければならぬ。この辺のところに私はアフリカの今の状況というものが、言ってみれば欧州農業の理論の押しつけ、その推進というようなことについての反省も一面ではあったかとも思います。  いずれにしても、EC農業行き方というものを根本的に変えなきゃならぬという今立場に立って、それにフランスがある程度賛成であるとか、いやドイツが反対であるとかいろいろなあれがあるようでありますけれども、言ってみれば、EC農業中身がそういう方向でいろいろと今悩み始めてきているという状況の中、それを目指そうというのは、これはいろいろとまた問題があるのじゃないだろうか、そんなふうに思うのですが、その辺はいかがですか。
  8. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 今お話しの農業の姿という点につきましては、稲村先生指摘のように私ども同じような問題意識は持っております。ただ、価格水準としてどうだという先ほどの御質問でございましたので、価格水準として私どもは現在の世界飼料流通等から見まして完全に独立して日本だけが独立の価格体系を持つことは困難である。むしろ価格水準の点で先ほどお答え申し上げましたので、農業のあるべき姿としましては、私どもやはり西欧と同じような問題意識もございますし、必ずしも今まで、昭和三十年代以降政府がとりました急激な構造政策推進というのは頭打ちをしたという点も私どもよくわかりますし、今後の農政、現在の日本農業の姿から見ますと、やはり自然生態系統一のとれたそういう意味での農業を維持していくということも重要である。また、急激な構造政策ということもやはり日本農業には向かないというように私ども理解をいたしております。
  9. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そこで私は、最初に日本農業のあるべき姿について伺いたいということで、今、土地改良法基本的な方向というのがどの辺にあるのかという観点で伺っていった中で、特にコストダウンのところに力点があるようだということでの質問だったわけでありますから、そういう意味でいけば、今の官房長お答えは、私の聞いたことのほんの一部しかお答えに先ほどはなっていなかったから私は確かめをした、こういうことになるわけです。  それにいたしましても、コストダウンを図っていくというためには何も規模拡大ということを基調にして考えていかなくてもできるはずである。そこで日本的な行き方というものを工夫をすべきではなかったか、その辺のところが実はあるのですけれども日本的なコストダウンについてのそうすると御努力をこれまでされてきた面があったのか、あるいは今後そういうことについてどういうふうにお考えになっているのか、この辺のところ、これまたずっとやっているとこれだけで 随分時間がなくなるわけですけれども、要約でお答えをいただきたい。
  10. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) コストダウンという問題を考える場合、いろいろな面があると思いますが、土地利用型農業重点を置いて考えてみるならば、やはり反当投下労働時間を短縮していく問題とか、それからもう一つは個々の経営としては単収を上げていくという問題が基本的な発想であろうかと思います。そういう意味で現在の日本土地利用型農業の現実を考えます場合に、やはり規模拡大利用する耕地の利用の仕方の集積ということが非常に重要だろうと思うわけでございます。そういう意味で、地域農業集団育成ということを昨年から標榜しておりますのは、まさに規模拡大、それからもう一つ大型機械共同利用にふさわしい土地利用の実現、それからそういう前提になる地方の維持増進、それからさらにそれぞれの地域における農用地の効率的な利用という視点を標榜して問題を進めているわけでございます。  しかし、同時に、御指摘にもありましたように、単収の増加への努力技術革新経営能力のレベルアップということは私はやはり農業改善考える場合の基本だろうと思います。どうやってこれから農業中心となる方々経営能力高め技術水準を高めるための努力をするか、そのための情報、組織の整備をどうしていくかということが私どもも重要な農政課題考えているわけでございます。  私どもは、政策構造政策とか価格政策とかいろいろ分解して提議をする手法もございますが、やはり広い意味での農業政策というものを考える場合においては、その二つを基礎にいたしまして、それぞれの地域実態作目実態に応じた改善努力をどうやって組織化するかということだろうと思っております。構造政策発想の原点も私どもはそこにあると思っています。
  11. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、規模拡大ということに一つのあれを置いていることはわかるのです。しかし規模拡大によって、例えば規模を倍にして今までと同じ労働力を投下していけば、労働量規模との率でいけばコストが半分になるということはこれは当然なのですけれども、また同時に、同じ面積であっても単位収穫量が倍加をすれば製品に転嫁をされるコストも半分に落ちる、こういうことになるわけですから、その面ではどちらかだけを追求をしていっても問題だとは思います。しかし、もう一方のそういう単収を上げるという、そちらの方の努力がどれだけやられてきたのであろうか、この辺のところに私は若干疑義があるわけなのですけれども、具体的な御努力があったらお聞かせいただきたいと思います。
  12. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 単収の向上につきましては、やはり技術平準化並びに新技術導入だろうと思います。そういう意味では、現在、農林水産技術会議、国の試験場、県の試験場等中心にしながら各種の試験研究を進め、またそれに基づきました開発された技術というものを改良普及員を通じまして一般農家に伝達していくということがやはり基本的な問題であろうと考えております。特に最近遺伝子工学等の新しい手法導入されてきておりますので、これは農産物等の面では一番利用開発可能性があるということで、私ども今年度の予算におきましても新技術開発というものにつきまして重点的に予算導入をいたしておりまして、今後こういう面によりましても特に技術革新を図っていきたいというように考えております。  反面、昨日もいろいろ御議論ございましたけれども、やはり兼業農家特に耕種農業稲作の場合には技術の進歩によりまして兼業方々でも容易に稲作が可能であるというような問題もございまして、これは逆にコスト等を平均的には引き下げていく要素もございます。こういうことも考え合わせますと、やはり基盤整備であるとか農用地利用増進とかという格好によります規模拡大、あるいは基幹的な農業者のおります中核農家育成とかいうような方法が結果的にはコストダウンにつながっていくというようにも考えております。
  13. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 しかし、例えば私は米の例でいきましたら、NHKの例の「謎のコメが日本を狙う」という出版物もありますけれども、言ってみれば、F1についても、せっかく新城教授があれをして導き出してきたものが、当時は全くその辺の考え方というものが行政の側にはなかったのじゃないだろうか。それが結局中国へ渡り、中国一定成果を上げ、アメリカへ行ってアメリカで今度は商品化への道が進められて、今大変我々にも脅威になり始めている、こんな結果を生んだのじゃないかというように思うのです。その道筋があの辺には書かれているのですけれども。  それだけに例えばF1、私は遅過ぎたと思っても、それはそれなりにこれからの研究開発重点を、大きな力を入れていただくことは非常に大事なことだと思う。例えばそうしたF1で単収を大きく上げる、あるいはこのように天候不順が相次いでいます。この間から何ぼお聞きしても四年連続不作という言葉が出てくるので私は実はじりじりしているのです。四年連続不作というのは、ことしはもう五年になる可能性があるのですが。天候がうんとよくて大変たくさんとれたということがあったら、それが平年作になるなんというのじゃないと思うのです。それがもう例外なのであって、こういう四年も続いてきたことが平年の状態と見ていいということに私はなると思うのです。そうすると、技術体系もそういうことに対応した技術体系として進められていかなきゃならぬのではないかと思うのです。  だから、今の増収ということもあれですし、被害を受けないということでの耐寒性、あるいはそれこそ農薬も次から次へと開発をされてはそれが人体に重大な影響があるということで使用禁止になっていく。要するに化学化合物によるそれへの対応というものは、一時しのぎではあるいは役に立つことはあるけれども、必ず後でまたはねっ返りがあるということになれば、当然耐病性、耐虫害性というものについての開発というものが非常に大事だというふうに思うのです。だから、その辺のところに最大のこれからのあれを注いでいただいて、そして将来、言ってみれば日本農薬の単収はもうどの国に比べてもびっくりするほど高い、こういう状況の中で、経営面積が小さいですからどうしたってコストが多少は高いです。だが、価額的にいけば単収が高いために一定程度成果が上がる、国際競争力に近づいていくというような方向を追求していくのが日本農業の特徴的な方向ではないだろうか。  規模拡大というお話があるけれども、今のままでいったら規模拡大というのは農家の中での特定な農家規模拡大になって、その反面に一方では一部の農家農業経営から離れていく、こういうふうにしなければ規模拡大はできないと思うのです。その辺のあれからいくと、日本農業全体としてはちっとも規模拡大になっていないのじゃないか、そんなふうに思うのです。意見がいろいろと入りましたが、その辺どう判断しておられますか。
  14. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 規模拡大という問題は、まさに御指摘のように個別経営規模拡大というふうに御理解をいただく必要があると思います。日本生産基盤を全体としてどの程度にとらえていくか、総生産力をどの程度にとらえていくかという問題は私は別の問題であろうと思います。  ただ、農業生産向上、特に例えば土地生産力向上というふうなことに着目をした場合、実はこのことは無縁ではないと思っております。今日の発達した技術水準のもとでは、施設利用型農業あるいは露地野菜あるいは土地利用型農業でも、酪農等については専業的な技術水準の高い農家兼業的な技術水準の低い農家との間にははっきり生産性の上でも、したがって所得の上でも格差が生じてきているという事実があるわけでございます。  米の生産技術自体につきましても、ただいま官房長が申し上げましたように、ある時期において 米の開発された技術が全農家平準化したために全体としては単収を上げてきたけれども、それが逆に言うと兼業農家をかえって安定させることになったということを申し上げましたが、今日の状況ではさらに一歩進みまして、特に気象状況等の変化がある場合においては収穫安定性、さらに同じ土地でも、土壌管理違い等からくる単収の違いというものが、中核農家群とやはり兼業農家の間にはかなり明白に出てきている。そういう意味においては、農業というものが活力を持って将来とも営まれていくためには、技術能力経営水準の高い中核農家中心にその相当部分生産が担当されるという実態ができ上がることが、総生産立場から見ても、やはり農業自体を発展させることになるのではないかというふうに御理解をいただく必要があると思います。  なお、それならば農家が減るではないかということについては、私どもそう簡単にはいかないと思いますけれども、長期的に見ますれば、稲作も含めて日本農業相当部分がやはり中核的な農家によって担当される実態が出てくるだろう。農家戸数は目に見えて減少することとは私ども計測しておりませんが、しかし、農業というものをいわば所得の重要な部分として着目する農家群というものはある程度数は限られてくる。そういう意味で、長期見通しでも中核農家七十万戸ということを標榜しているのもそこにあるわけでございますので、このことは先ほど申し上げたことからいっても、農業の総生産を後退させることにはならないと思っているわけでございます。
  15. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私はちょっと角度を変えた形で恐縮でありますけれども、かつては国の農業試験場あるいは都道府県の農業試験場、そこで例えば水稲の稲の大変珍しいものあるいは有望だと思われるもの、これは水稲ばかりではありませんで、それこそジャガイモにしてもその他野菜にしても何にしても、そういうものが試験的に栽培をされていますと、それを見学に行った農家がいつの間にか盗んで、盗んでという言葉はあれですけれども、黙ってちょうだいをしてきて、それが実は急速に広まっていって、常識的な一般的に栽培される品種というふうに追認をしていかざるを得ない、そういうことは過去には随分といろいろございました。しかし、最近余りそういうことを聞かなくなったわけですけれども、それはどうしてそういうふうな積極性がなくなったのでしょうか。その辺はどういうふうにお考えですか。
  16. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) ちょっと私も体系的にお答えする自信はないのでございますが、ひとつケースで若干私の所見、私の見方を申し上げさせていただきますと、確かに稲作につきましてはある程度産地間、品種間の競争の時代、品質の時代になってきておりまして、確立された優良銘柄を計画的に導入し、産地としてまとまって販売していくということが中心になってきていることは重要な意義があろうと思います。このことは、実は戦前の米穀統制法時代においてもそのことはあったわけでございまして、むしろこれから先は新しい品質、収量ともにすぐれた、あるいは耐病性等にもすぐれた品種をどう開発しどう受けとめていくかという問題が、いわば昔のような育種過程と育種過程自体が変わってきておりますので、例えば大正年間に行われましたように、新しく特定の地域試験場開発した優良品種が開発過程で盗まれて新しい地域で定着するというふうな形は、私はこれからは少なくなってくるだろうと思います。  しかし、それ以外の作目を見ますと、実は中心になる農家の新しい技術導入への意欲は非常に積極的でございます。私ども見ておりますと、例えば酪農について、泌乳能力、これは今日の日本の搾乳牛の泌乳能力は平均的に見れば世界で一番高い水準にあるわけでございますが、そういう高い乳量を持った牛の導入の問題、それからもう一つは、牧草の利用の問題等については非常に新しい知識の導入ということが積極的に行われております。それから、割合に従来国の試験場がタッチすることの少なかった野菜作等については、実は野菜農家自体の研究会が全国的に組織されておりまして、それがベースになって技術交換や情報導入をやっているという実態もありまして、確かに昔のように篤農家がある圃場へ行って、あるいは試験場へ行って技術を盗んでくるというふうな形ではございませんが、私は中核農家ではそういう新しい技術導入経営管理の体制についての知識の導入については、かなりどん欲なものが出てきているし、このどん欲さを組織的に育てることがやはり一番大事なことではないだろうかと思っております。
  17. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今局長の御指摘のように、これは野菜農家であるとか酪農農家の一部であるとかいうところに、おっしゃるようにどん欲なあれが出てきているというのは私もわかるわけです。しかし同時に、かつてのようにその人たちの技術が実は国の技術を大いに信頼をしてという形ではなくて、むしろ自分たちお互いの情報交換を中心にして、そしてお互いに技術を高め合うという、民主的な行き方としては一つのいい方法なのでしょうけれども、そういう傾向が強くなってきているということもあるのです。  ただ、そういうどん欲な意向というのが実は一番日本農業で大事な主食の生産農家の大半に見られなくなってきている。かつては主食の生産、米の生産農家が物すごいそういう意識を持っていたわけなのですけれども、それが最近なくなってきているというところに私は大きな危惧の念があるのです。そのことは、これから審議をする農振法の問題にも土地改良法の問題にも実はひっかかっているような気がいたします。なぜそれでは今の主食生産、米生産農家がそういう意欲を持たなくなっているとお考えになりますか。
  18. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) いろいろな見方があると思います。若干私見になって恐縮かもしれませんが、私はやはり一番基本的な問題は、稲作の専業的農家の数が非常に少ない。つまり、第二種兼業農家等に、よって担当されている側面が非常に多いということは、どうしても経営問題、技術問題に対しての総体としての関心度を低めているということが一つあるだろうと思います。  それからもう一つは、やはり稲作についてのある程度技術過程、つまり品種の選定の問題、肥培管理、土づくりの問題、あるいは病害虫の防除の問題、脱穀調製の問題、中耕除草の問題、そういう今日の発達した機械を前提にしたある種の肥培管理の過程というものが一つの教本になっておりまして、ほとんどすべての農家が一応知っている。問題は知っていてやらない農家がかなり出てきているというところにむしろ不安定性が若干あるのかもしれないと私は見ているのでございます。そういう状況だろうと思います。その意味においては、稲作技術についてはいわゆる国なり県の試験場をソースとして一応普及に乗った技術体系は、今日の段階においては、一応ほとんどすべての農家に情報としてアベイラブルな状態にあるということが大きな問題ではないか。  実は、お言葉を返すようで恐縮でございますが、例えば北陸等の私の知っております中核農家の方なんかでは、新しい多収性品種なんかが出て、それが紹介されたりしますと、大変どん欲でございまして、すぐ試験場に飛んでいったり、その情報をとるためのいろいろなことをやっておられる。ただ、御時世が違いますから、昔のように圃場へ行って盗むのじゃなくて、もっとスマートな形で知識の吸収をやっておられるということではないかと思います。
  19. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は稲作農家の中に皆無だというふうには思っていませんで、私の周囲にもそういう人は中にはおります。残念ながらそういうふうに申し上げなきゃならぬ程度になっているところに、やはり私は大きな問題を感じているのです。  さらに、ちょっとまた角度が変わって大変恐縮ですけれども日本の、特に本土のというか、本州の山野にはどこにでも自生をしている雑草にクズというのがありますけれども、クズがアメリカへ行って大変優良な牧草であり、そしてダム等の のり面保護のために使われる有効な植物として活用されているという事実は御存じだと思うのです。  私がこういう例を申し上げたのは、日本農薬というのは最近どちらかというと、水田耕種中心にしてかつては極めて日本的なものというものを追求していたのだけれども、最近の傾向は、例えば目標ECに置きますとか、そして、家畜を入れればホルスタインの特に搾乳世の多いものを入れます、養鶏にしてみても何にしても、外国開発された品種を外国並みのやり方でコストを下げようという、そういう方向へ行き始めているのじゃないだろうか。言ってみれば、もっともっと日本的な、例えば牧草一つにしても日本の風土に合った日本的な牧草の開発と、何もオーチャードやチモシーやそういうものを入れることだけが能ではないでしょう。そしてそういうものに見合った日本的な品種、これは家畜にしても耕種にしてもみんな私はそういうものがもっともっと追求をされていっていいのではないだろうか、そんなふうにも思うわけなのです。  この辺のところで私は技術的な側面から、もちろんそういう御努力はされてはいると思いますけれども、もっともっと日本の風土に合った、そして日本古来からのいろいろな経過、経緯もあるわけですから、そういうもののよさというものをさらに発展をさせるという方向へ目を向けていかれるようにどの程度しておられるのか。全然していないとは私は言いませんけれども、その辺のところを。
  20. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御予告もなかった質問でございますので、甚だ恐縮でございますが前の畜産局長の知識で答弁をさしていただきます、多少古いかもしれませんが。  ヤハズソウとかクズの利用ということは実は十数年前以来かなり言われた経過がございます。試験的に東北の一部でやってみたのです。結局失敗をした。どこに理由があるだろうか。御案内のようにクズの場合は非常にたんぱく質の多い飼料で、たんぱく系の飼料としてクローバー等にかわるものとして効用を発揮できるかどうかということに着目したわけなのでございます。ところが基本的な違いでどうも入ってこない。それはやはり日本で新しく投資をして草地をつくる場合は、高い地価のところで造成工費にお金をかけてつくるわけでございますから、高い単収を上げて集約的な牧草栽培をしないとペイしない。つまり、低い単収で粗放的な経営でやる場合においては、それ自体いいとわかっていてもなかなかペイしないという問題がございます。それから、それ以外にクズの場合は多少立体的に増殖していかなければならないという、そのための投資がなかなか大変であるというふうな点もあるかと思いますが、基本的にはやはり在来野草がうまくなかなか取り組んでいけないというところはそこに理由があるだろうと思います。  しかし、決してアメリカ一辺倒というわけではございません。むしろ日本の場合はある程度たんぱく系飼料は購入飼料に依存するとしても、全体としてのカロリーということに着目いたしまして、非常に単収の高いイタリアンライグラス等がやはり牧草として広く使われているというのは、私はむしろ日本型の定着の姿ではないかと思います。そういう意味で、やはりそれぞれの国の地価なり開発努力開発コストというものとの結びつきで考えないとなかなかいけない点があるだろうと思います。  また、それを前提にした蹄新法等の導入、農林省は三十年代の後半から四十年代の初めにいろいとやっていたわけですが、蹄耕放牧や林間放牧がなかなか軌道に乗らないというのも、やはり今言ったように単収が上がらないから投下コストに見合わない以外に、放牧いたしますとき非常に単収が低いわけですから、一定の頭数を広い地域に放牧しなければならない、管理農業に非常に時間がかかってくるという問題も一つございます。  そういった点で、いろいろやってみてなかなかうまくいかないというのが私どもの行政の実感でございますが、伝統的な樹種を尊重する問題、それから伝統的な車種を尊重する問題というのは、私はやはり技術基本型であると思います。特に、草地試験場等はその点について従来からもかなり努力をしておりますが、今後とも飽きることなくそのトライを続けていかなければならないだろうと思っております。
  21. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ちょっとお聞きをして御返答いただいている経過の中で、つい通告をしていないことでも気になることが出てまいりましたので伺いましたけれども、大変ありがとうございました。  それで問題は、私は今のお話を伺っても御努力をされたことはわかりましたし、それからそれがなかなかうまくいかなかったということ、それもわかります。しかし農業というのは、例えば土地改良一つやりましても、土壌改良一つやりましても、実効が上がって出てくるというのに十年ぐらいの単位というものがかかるのです。今減反をやっておられますけれども、大臣、減反をすると、一たん放置しますと、これをもとに戻すのに十年ぐらいかかる、途中でいろいろな形で管理をしていれば別ですけれども。そういう状況の中で、私は三十年代あるいは四十年代の初めにいろいろ手がけてみたけれどもうまくいかなかった、これであきらめてしまわれるのは極めて早計だというふうに思うのです。むしろ、もっともっと長い目で見て、そして体系的に取り組んでいかれる、努力をして、そこで初めて私は本当に技術体系として完成してくると思うのです。先ほど官房長からお答えをいただきましたいろいろ計数的な問題にいたしましても、言ってみれば十年なり何なりの一つの単位でしか物を見ていないということになるわけなのです。  ただ、農業はまだ、永遠にという言葉はあれかもしれませんけれども、随分長い間続けていかなければ、人類続く限り発展をさせていかなきゃならぬ、そういう課題になるわけなのであります。そうすると、もっともっと長い目で見て、日本農業のあり方というものをひとつ追求していく、そういう太い柱がつくられていかなきゃいかぬのじゃないだろうか。この辺のところを農林水産省の中では、一つはそういう取りまとめをしていくのはどういうところがそれではされるのでしょうかということが一つあります。  それから大臣、私が随分何回か大臣に、日本農業に対するイメージについて大臣のお考え方を開きたいということを申し上げたりしたことがございますが、随分何回もかかってやっと私が聞きたい意味が少しおわかりいただけたのではないだろうか、そんなふうに思います。それだけに私は、農林水産省の最高責任者として、これからの日本農業のあり方に対して、私の在任期間などというお言葉をお使いになるのではなくて、それこそ大臣の在任期間にそういう太い柱をつくり上げていくくらいの意気込みを持っていただきたいというふうに思っておりますけれども、全体としての大臣の御感想を伺わせていただきたいと思います。
  22. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 先生から本当に専門的な詳しいいろいろな御意見を伺いましたが、二十一世紀を見ますと、これは全体として食糧というものはかなり不足してくるということが言われておりますし、今先生言われましたいろいろなこと、農林水産省がまだ考えつかないようないいお知恵も拝借したようでございますので、ひとつ一生懸命勉強して御期待にこたえていくようにしたいと思います。
  23. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 困ったですね、ちょっと…。  大臣の率直な感想でお聞かせをいただいたわけでありますけれども、もちろん私の意見一つ意見でしかございません。いろいろと議論をしていただきたいと思うのですけれども、とにかくそういう日本農業のあるべき姿、行く道というものについて、もっと長い目で見た、そういう流れをぜひつくっていただきたい、そのために一生懸命御努力をいただきたい、こんなふうに思っておりますから、もう御答弁は結構です。ひとつよろしくお願いをいたします。  大体そういうことで、これでもかなり大まかな 形で日本農業方向性について伺った形になるわけでありますが、それを受けて、具体的に今度の農振法の改正土地改良法改正問題の内容に少しずつ入らせていただきたいと思います。  そこで、まず農振法の改正についてであります。労働省お見えになっておりますね。一せっかく労働省に御足労いただきましたので、まずその観点からお伺いをしていきたいと思います。順序といたしましては、法案の提出者が農林水産省でありますから農林水産省の方からその項目についてお伺いをいたしますが、それは農村地域における農業耕作者の安定就労の促進という問題についてであります。  これは農水省にお伺いをいたしますけれども、四十六年に農村地域工業導入促進法が成立をしているわけでありますけれども一つ労働力の安定的な就労先の確保ということからいけば、この農村地域工業導入促進法というのが非常に大きな役割を果たした一つの側面を持っておると思うのです。それで、これを提出された当時に予想をされたことと今日の結果、この辺のところをどのようにとらえておられるでしょうか、これが一点です。  それからもう一つは、就労のあっせんということについては、促進ということはあっせんということにもなるのかなと、なかなか言葉のニュアンスとしていろいろな解釈ができることになりますので、その辺のところがよくわかりません。いずれにいたしましても、こういう項目が今度は法改正の中に入れられたということは、関係各省庁との打ち合わせをいろいろとされたと思うわけでありますが、どういう相談をされたのでありましょうか。特に、労働省とのかかわりについてお聞かせをいただきたいと存じます。
  24. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まず、農村工業の導入の実績と計画との対比でございますが、実施計画は九百六十一の市町村で策定されまして、導入が行われたのは七百三十三市町村でございます。当初の最終目標の二千五百三十に比べれば少ないわけでございますが、市町村数としては実際の実施計画の仮定に対比いたしますと八割近い導入になっております。    〔委員長退席、理事北修二君着席〕 導入企業数が二千九百六十八社でございます。導入面積は、当初の計画一万五千ヘクタールに対して約七千五百ヘクタールになっております。  雇用従業員数でございますが、当初百万人ということを標榜したわけでございますが、現時点までの雇用従業員数は十六万四千人ということになっております。しかし、やはり地元の不安定雇用の解消、安定雇用への転換という点では、また所得向上という点では私どもはそれなりの役割を果たしてきていると思っております。  そこで、今回の法律改正の中で就労の促進という問題をうたった点でございます。基本的には第二種兼業農家所得機会の安定を図っていく。段階的に所得機会の安定を図りながら、やはり土地所有権は留保するけれども利用については中核農家利用提供を段階的にしていただく。そういう形で、いわばそれぞれが一方は農業において、一方は他産業において安定所得を維持しながら、しかも日本の今日の現状に着目、事実に即したように農村社会において両者が併存して生活していける状態をつくっていくということが私どもの標榜していることでございます。農政的に表現するならば、構造政策推進ということは安定した通勤兼業農家をつくっていくということではないかと思います。そこがやはり出発点になるだろうという認識でこの制度化を図っているわけでございます。  今回の法制は、こういう就労の問題とか生活環境整備の問題等各省にまたがる問題がございまして、就労の問題につきましては当然のことながら通産省、労働省等の御意見、あるいは国土庁等の御意見も伺いましてこのような条文になったわけでございます。この条文に即してどういう運用が行われるかは私はこれからの問題だろうと思います。  率直に申し上げますと、今回の市町村の農振計画というのは、いわゆる新しい計画事項として四項目追加しておるわけでございますが、これら追加しました項目について言うと、地域によってやはり重要度が違ってくるだろう。例えば、大都市周辺等においては就労の安定という問題を特に市町村長が取り上げる必要はないのじゃないか。逆に遠隔地等で平場農村や中山間地帯に行くと、まさにそこから問題に取り組んでいかなければならないという問題がある。だから、そういう意味においてはそれぞれ地域実態に応じてアクセントを、濃淡をつけて計画を策定していただいて取り組んでいただくということを念頭に置いておりますが、その場合、やはり就労の安定として考えられることは、一つは工場その他企業の導入という問題が第一であり、それから第二は観光事業とか、あるいは農産物の特産物を生かした農産加工というふうな地場産業の育成ということが第二のポイント。さらに、それを市町村の区域だけに限定しないで、地域としてとらえていくという視点でそういう運用を図っていくということが重要ではないかと思います。  この場合、労働省の方にもいろいろ職業のあっせんの問題、あるいは現在の日雇い等の不安定な雇用形態を解消するための指導上の御努力、雇用調整上の御努力を具体的な地域社会の要望に応じて受けとめてこれから組織的にお願いしていく、具体的にお願いしていくということではないだろうか、このように思っております。
  25. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そこで、今度は労働省の方にお伺いをいたします。  今度、今もお話がありましたように農業振興地域整備に関する法律改正案として、農業地域における農業従事者の安定的就労の促進ということが加えられたわけでありますが、こういう方針を協議を受けられた立場でどのように受けとめておられますか。極端な物の言い方をして大変恐縮でありますけれども、これは農林水産政策として進められるということであるから農林水産省の仕事の範疇であって、労働省の方は適宜協力を求められた点で協力をすればいいという形での受けとめ方でしょうか、それとももう少し積極的なものをお持ちでしょうか、その辺ちょっとお伺いをしたいと思います。
  26. 佐藤仁彦

    説明員(佐藤仁彦君) ただいまの御質問で労働省とどのような協議をしたかということが農水省の方にお尋ねがございました。私どもといたしましては、農水省として定住条件の整備でありますとか農家所得向上農業従事者の安定的な就業促進を図るという観点から私どもへの要請があったというふうに理解いたしております。  農業従事者が通勤兼業者として雇用の機会を得たいという方々に対しましては、もちろんのこと積極的に職業紹介もいたしますし、また、技能の習得が必要であるという場合には職業訓練の受講をあっせんいたしますとか、そうした施策を積極的に進めておるところでありますし、また、現に通勤兼業者として雇用労働者になっている方々については、その雇用が安定したものとなるように、企業に対する雇用改善の指導でありますとか、その他万般の施策を講じているということであります。
  27. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今の労働省の方針は大体わかりましたが、そうすると、今度こういう施策を農水省の方で出してまいります。そのためには積極的な対応策を考えていただくということになれば、例えばこのごろの新しい企業への就労というのは、未熟練労働のままであれば極めて不利な条件に置かれるということになります。安定的な職につこうということになれば、何らかの知識なり技術なりというものを身につけなきゃならぬ。そうするとそれに対する例えば教育訓練、まだそのほかにもいろいろと問題点はありますけれども、例えばその教育訓練一つをとらえてみましても、現在、職安で就労のあっせんをされるのに、今、農村それぞれの地域考えていきましたときには、やはりその求人関係というのは極めて今のところまだ地方では十分にはないということがありま す。  それからもう一つは、職業訓練校等、工場の方の離職者の対応で、例えば失業したけれども保険をもらう期間を延ばして、職業訓練校で一特技術を身につける、こういうことのところへ行く人たちでもって手いっぱいみたいな形になっているのじゃないだろうか。そうすると、せっかくそういう農村関係の、前向きに少しよくしていこうというそこの部分を受け入れていただけるような、そういうキャパシティーを余り持っていないのじゃないだろうか、そんなふうにも懸念されるのですけれども、その辺はどんなふうに御理解になりますか。
  28. 佐藤仁彦

    説明員(佐藤仁彦君) もちろん職業訓練を通じて技能の向上を図るという方策といたしましては、御指摘のような公共職業訓練もございますし、また、企業で行う訓練もあると思います。企業で行う訓練につきましては、生涯にわたる計画的な訓練を進める、入職時から段階を追って節目ごとに訓練を実施するということが必要でございますから、そうした生涯にわたる計画的な訓練に対して助成を行うとか、そうした方策も講じているわけでございます。  それから、公共訓練におきましては、最近のような雇用、失業情勢でございますから、先生御指摘のように大変受講者が多うございます。これに対応いたしましては、専修学校でありますとか、そうした教育訓練機関への委託訓練等も活用いたしまして、そういう訓練の必要な者に対する受講の機会が十分確保されるようにいろいろ配慮しているということでございます。
  29. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 いずれにいたしましても、今の農村における兼業労働者といいましょうか、そういう立場の者は農水省の調査によっても、これはセンサスですか、それの集計によりましても、やはり安定就労している者もかなりいるけれども、不安定就労部分というのは、昭和四十五年当時に比べれば減っているようでありますけれども、まだ結構おります。ということと、それから不安定就労、あるいは安定就労と言われているものの中でも、例えば建設業等に就労をしている者が結構ありまして、この建設業の方は栄枯盛衰が最近は物すごいものがありまして、大きな建設業なら別ですけれども、ほとんどが小さな建設業関係におりますので、そういう意味では極めてやはり不安定就労だ。統計の上では安定就労しているということになって数字の中に入ってきているけれども、現実問題は不安定就労と同じであるという部分がかなり大きいと思うのです。  そこで、そういった農村の不安定就労の労働対策ということに対して、これは実は昔、随分前になりますけれども、出稼ぎという、一定の居住基地を離れて就労される農村労働力について、出稼ぎ対策ということで労働省からも賃金不払いについての次官通達を出していただくとか、いろいろと御努力をいただきました。今、今度はこういう通勤兼業、農村地域での不安定労働力に対する対応策をいろいろと考えていただかなきゃならない時期に来ているのではないだろうか、そんなふうに思いますけれども、その辺どういうふうに受けとめておられますでしょうか。
  30. 佐藤仁彦

    説明員(佐藤仁彦君) 通勤兼業者が大変ふえてきているという御指摘でございます。そうしたふえているということの背景には、農工法に基づく企業の進出が進むとか、その他雇用の機会がそれなりに得られた結果ではないかと思います。そうした雇用の機会がより安定的なものになりますように、私どもとしてもいろいろな観点からの企業に対する指導も行っているわけでございますし、また、地元を離れて遠くに就職する方々もおるわけでございますけれども、できる限り地元で働きたいという方が働く、また、地元にそれだけの魅力づけが必要だという観点から、いろいろな融資制度でありますとか、あるいは農村工業導入地帯に対する特別な体育施設等の福祉施設を設置するとか、そうした総合的な施策を講じながら雇用の安定に努めているところでございます。
  31. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 労働省、いろいろとありがとうございました。これから、それこそ農村労働力の問題については、またいろいろと本委員会でも御要望申し上げたり何かしながらやっていくということが多くなってくるのではないかと思いますが、ひとつその節はよろしくお願いをしたいと存じます。ありがとうございました。  そこで、農水省の方にお伺いを申し上げますけれども、こうした労働力の問題というのは、これから既就労者に対する対応策ということで結構まだ問題になってくる点がいろいろと出てくるのじゃないか。今も話があったみたいに、景気も悪いですし、よくなってきているというけれども地域ではまだまだ、例えば私の周りなどでは倒産というのに、三年くらい前は、どこが倒産したと言うと飛び上がってびっくりしたというのです。このごろは倒産したてやというのは、そういう極めて、何というのでしょうか、感覚が鈍くなっているというくらい状況がまだ続いておりますので、それだけに既に就労している人たちの身分が極めて不安定だという問題があります。  それから、さらにその中でもいろいろな農業サイドから見て問題点が出てきております。例えば今までは企業の方も極めて大人でありました。忙しい時期が来たら休みたい、例えば田打ちの時期、田植えの時期、収穫の時期に休みたいと。一週間なり十日なりというのは休ませてくれました。朝の水管理のためにちょっとおくれました、ある程度認めてくれました。ところが最近は、極端な言い方をすれば、もう休むようだったら来なくてもよろしい、そういうところまであるわけでありまして、そういう面でいくと、言ってみれば農業にだんだんと従事できない、せいぜい捨てづくりしかできない、そういう条件というのが一方では企業の側からどんどんとつくられていくという状況の中にあります。これは農業というサイドから見ていったら極めて憂慮すべきものではないか。たくましい稲づくり運動というけれども、たくましい稲をつくるどころの余裕はなくなってしまう、こんなふうにもなると思うのであります。  きょうは労働省に特別来ていただいて、聞くつもりではなかったのですけれども、そういう企業とのかかわりでいろいろとこれから問題になるのではないだろうか。その辺のところ、例えば農家の側からの苦情が出たときに、労働省であれば大体都市労働者が中心ですから、都市で労働基準監督署があり職業安定所があり、いろいろ相談の窓口が幾つかあります。農村地域というのはうんと離れたところでそういう職安や労働基準監督署らから遠く離れたところで、しかもその周りは同じ工場であっても経営者との間は、部落へ帰れば実は経営者とはよく知り合いだ。私どもが相談を受けた中にそういうのがありました。社会党の県会議員さんの重要な後援会のメンバーになっている方のところで私は働いていますので、これがその人に聞こえるとぐあいが悪いのですけれども、どうしたらいいでしょうというような、そんな話が来たりする。というように、いろいろあっても極めて問題が持ち込みづらいという、こういう問題がある。そうすると農林水産省として、そういうことの相談を持っていき場所がないという問題をどういうふうに解決をされたらいいというふうに思っておられますか。
  32. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 低成長時代へ移行し、厳しい競争社会の中で他産業に就労した方がやはりそちらへ順化していかざるを得ないという事情があることは私は事実だろうと思います。また、そうでない場合でも、かなり高度な技能水準が要求される社会になってきて、そちらに順化する動きがかなり出てきております。  そういう意味においては、一方においては急速に、従来は兼業農業をやっていたのが、農地中核農家利用提供する動きが地域によってかなり出てきていることが一つ。それからもう一つは、逆にUターン現象ということで農業に対する希望というものが出てきていると思うのですよ。中年層でもあるわけでございます。私どもはそれはそれなりにそれぞれの場所で安定していくということは、これからの就労のあり方としては原型 ではないかと思いますが、今御指摘のような問題についても、具体的にどうこたえていくか末端での対応は要ると思います。現在、職安と農業委員会との連携ということは制度的に一応つくっておりますが、私ども農業委員会等市町村の、特に農業に熟知した組織を活用して、こういった労働関係の部局との連携を強化することについては、さらに努力していきたいと思います。
  33. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 細かくいろいろと申し上げていけばいろいろなことが出てくると思うのですけれども、例えば弁護士を必要とするようなことも結構あるわけです。そういう弁護士なんというのを頼みにしてみても、金の問題もあるし、いろいろと抵抗があるというようなときにあっせんをする、そういうあっせんと経費等についての例えば補助金を出せというのじゃなくて、そういう場合に弁護士さんの対応をどういうふうにしてもらうとか、いろいろ細かく言えばいっぱいあると思うのです。  要は、私は企業サイドからの農業というものに対する理解というものは、現実の問題として極めて薄いというのが今の実態だと思うのです。その辺のところをどうするかというのは、私はこれからの問題として大きな問題じゃないだろうかというふうに思っているわけです。その点も今後の課題として新たにできてくる項目ですから、それですぐ今すべてのことに対してこう答えてもらいたいということ自身がおかしいと思いますけれども、しかし、これで発足をしていけば、それなりにいろいろな問題点が出てくるはずでありますから、それこそ万全を期してもらいたい、こんなふうに思うのです。  それからもう一つ、就労の問題とのかかわりなのですけれども、就労というよりも農村労働、農業に従事するという、そういう観点労働力の問題になってくるのです。実は、確かにそうやって通勤兼業で安定就労するということにも問題はありますけれども、それでも就労ができていけば、それで何とかなります。ただ、本気になって農業を一生懸命やろうと、言ってみれば先ほどのお話中核農家として生きていこう、こういう意欲を持っているところに逆にいろいろな問題が出てきています。  例えば、私の周りというとあれですけれども、新潟県の蒲原平野といえば米で、それこそということで自負をしておりますけれども、その蒲原平野で、経営面積も決してそう小さいわけじゃありません。そこで私どもが受ける相談の中に嫁の相談というのがかなり多いのであります。その嫁の相談を受けるのが、何と三十代後半から四十代初めの人たちです。四十代になってまだ独身という状況というのは、これは私はもう大変深刻だと思うのです。農業というものに生きていくということに本当に見通しが立ては、こういう人たちの問題が起こってこなかったのじゃないか、むしろその辺のところに大変私は深刻さを感じているのです。ただ、私、今のこの質問の意識は、こういう状況に置いて、そして中核農家育成といっても跡継ぎの、跡を継いでやっていく意欲というものが出てこないのじゃないか。先ほどから局長の御答弁の中には、こういう人もありますという答弁もありますけれども、私はそういうのが例外になって一般的なあれにはならないのじゃないだろうか、その辺が気になるのですけれども、いかがでございましょう。    〔理事北修二君退席、委員長着席〕
  34. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) これはいろいろなケースがあることは私は事実だろうと思います。今御指摘があった嫁の問題について、全国の市町村長さんで農業問題に取り組んでいる方を、農林省に十数名毎年集まっていただいていろいろな話を聞くのですが、おととしでしたか、嫁さんの問題を特にテーマにしてディスカッションしていただいたことがあるのです。議論が実は真っ二つに割れてしまったのです。私どももうなってしまったのです。  一つは、今先生が御指摘になったような、若干中年層にかかった人も含めて嫁を確保するためにもっと都市との交流を進めることを考えていく。農村だけじゃなくて、都市の人も農家に嫁に来られるように農村見学をもっとやってくれとか、あるいは市町村にある程度公的なあっせんを応援してくれとか、こういうふうな話も一方においてありました。ところが、他方において有力だったのは、結婚の問題、嫁の問題を行政側に相談したり人に相談するというのはおかしい、こういうことはやはり本人が男のかい性で自分でやる話なので、そういうことを議論するのがおかしいという、議論が真っ二つに割れまして、私どももうーんとうなってしまった事実が、体験があるのです。  しかし、私は、専業的な農業地帯、特に大ざっぱに言いますと東日本ではこの問題はかなり広範にあることは事実だろうと思います。これは基本的にはやはり個人の問題でございましょうけれども農家の中からお嫁さんを選ばなきゃならぬという選択範囲だけではなくて、もっと幅広く農村生活を都市の方にも理解してもらう努力、田園生活を理解してもらう努力等を通じて農村への新しい血の導入という問題は私はやはり取り組んでいかなければならないと思っております。実は、ことしから都市と農村の交流事業ということを標傍いたしまして始めましたのも、こういったことも念頭の一つにあったことは事実でございます。  それからもう一つの問題は、やはりそのUターンをどうとらえていくかという問題だろうと思います。今の先生の御指摘の点は、Uターンの年齢階層をどう見るかという問題です。  確かに、中年層のUターンと三十四歳未満の方のUターンとは、例えば農村の立場で受けとめる受けとめ方が違うということは私も事実だろうと思います。そういう意味で、新しい新規の農薬の、特に中核農家の後継者の確保という問題がやはりUターンの問題にも相当大きくかかわってくる。この中で若年層を中心に当然考えていくわけで、私ども実は中核農家の後継者の補充がほぼ行われていると申し上げておりますのは、農業高校を出てすぐ就農する人と、三十歳とか三十二、三歳までの間にUターンする方の数をとらえているというわけですが、中年層のUターンをどうとらえていくか、これは農業問題というよりは農村社会で生きていく一つ立場の、一つのグループの方の問題としてトータルとしてとらえなければならない出題だろうと思います。十分これからもひとつ勉強さしていただきたいと思います。
  35. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 局長、私は、先ほどの嫁の話はいろいろと意見が分かれたという事実というのはそれはそれでわかります。しかし問題は、農業に生きがいを感じて、それで意欲を持ってやっていけるという自信が皆それぞれにあれば、それこそ後半の方のあれで片づけられる問題だと思うのです。でも、それが今はもうなかなかないものですから、むしろ農家の方がみずから自分の娘を農家へ嫁にはやらない、現実にそうなっているのですよ。むしろ今は逆に都市部から嫁はもらっているのです。そういうことを考えていきますと、都市部の人は農村のことはよくわかりませんから、逆にわからないでひっかかったみたいでまことに申しわけないけれどもというような話も聞くのです。だから、私は、一つはそういう本当に意欲が持てるという体制をどうやってつくっていくかという、またさっきの農業基本問題のところへ戻ってしまうのですけれども、そういうことと極めて密接にかかわっている。  だから、とにかくそういう現象が起こっているということは、少なくとも農業を一生懸命やっていこう、中核農家としてやっていこうという意欲を持っているところが大変不利な状況に置かれるということがあってはならない。Uターン現象というお話があったけれども、自分の子供を農業高校へやらないのですから。私ども進学の相談を受けるとき、農業高校へやろうか、普通高校へやろうかといったときに、結局親御さんが普通高校へやってしまうというような状況の中で、Uターンというのも、結局今、世の中全体が厳しいからという側面はないわけじゃありませんと、そんなこ とも踏まえていただきますと、これからのそういう農村における労働力対策は一片の農業振興地域整備法の一部改正の中の一条文でとかなんとかという形では解決できない問題じゃないだろうか、もっと総合的にこういう労働力問題というものを深刻にとらえるという対策が農水省の中で考えられる、そういうシステムが必要なのじゃないだろうか、こんなふうに思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  36. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私、冒頭にお答え申し上げましたように、やはり御指摘のような面もあると思います。そこで、今回の農振法の改正で就労問題を取り上げておりますのは、すぐそこでこうしたらいいという処方せんを考えていただくというだけではなくて、つまり工場の導入であるとか、あるいは地場産業の育成をすぐ直結して考えるというだけではなくて、やはりそれぞれが市町村長さんの立場で見て、農業従事者の就労問題でどういう点で悩んでいるかという問題を浮き彫りにしていただいて、今後行政がそれをフィードバックしていくことが大事ではないだろうかと思っております。そういう気持ちで逆用に当たってまいりたいと思います。
  37. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私の後、上野議員が御質問申し上げることになっておりまして、私は大分時間を超過をしてしまいました。しかし、まだほんのとば口的な形でとまっております。参考人の皆さんの御意見ども伺った上でまたいろいろとお聞きをしたい点でただしていきたいと思います。どうもありがとうございました。
  38. 上野雄文

    ○上野雄文君 それでは私から質問をさせていただきたいと思うのでありますが、今、稲村委員からは非常に格調の高いお話が続きました。私は実は農業問題では素人でありまして、そういう意味では非常に経験の多い皆さん方でありますから、土地改良法の問題に絞って御質問を申し上げたいと思うのであります。ひとつ素人にわかるようにお教えをいただきたいということを冒頭にお願いを申し上げたいと思うのであります。  いろいろ勉強させていただきまして、土地改良法が制定以来過去六回にわたって改正が行われたようであります。それをじっと見ていて感じましたことは、土地改良区に対して権限の拡大といいますか、土地改良区を強くしていくという、そういう一連の法制の面での力が加えられてきたのではないのかなと、こんなふうに受けとめてきたわけであります。そこでそういう一連の改正経過の中で、今日まで土地改良区がどんなふうに育ってきたかといいますか、現状をどういうふうにとらえておられるか、ひとつマクロな話で結構ですけれども、素人にわかりやすいようにお話しをいただければと思うのです。
  39. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 非常な広範な御質問でございますので、ごく私の把握しております歴史的な経過をたどりますと、御案内のように、現在の土地改良法土地改良区は戦前の水利組今ないしは土功組合を土台として新しく土地改良法で制度化されたものでございます。したがって、水利事業だけではなくて、農用地開発事業から干拓事業から、あるいは圃場整備等広範にわたる事業を実施できる公的な組織として制度化されたわけでございます。最初の段階、特に昭和二十五年から三十五年までの段階はやはりお米の増産ということを農政基本に置いておりました過程で、用水補給、湿田の解消、それから干拓、それからもう一つは比較的平場の農用地造成による開田というものに事業の重点を置いて事業が進められた経過がございます。その後の米の需給事情の変化の中から、干拓事業あるいは農用地開発事業の開田等は大幅に抑制されてきております。  一方、構造政策の進展と申しますか、要するに大型機械導入によるいわゆる労働生産性向上ということを農業基本法制定以来標榜いたしまして、従来の区画整理事業や小規模の用排水事業等を統合いたしまして圃場整備事業という包括的な制度をつくりまして、地域の自然状態に応じて用排水の分離と理想的な圃場区画をつくるという事業に三十六年以降着手いたしまして進めてきているわけでございます。  また、同時にやはり選択的拡大という方向に沿って畑作農業重点を置きまして、一つは畑地帯の農道の整備なり畑かんの実施、それからもう一つ農用地造成における草地等畑地の造成ということに主力を置いてやってきたわけでございます。こういった事業種類の多様化と事業範囲の広域化、それからそれに伴う施工技術の高度化というような問題から、従来のいわば旧村とかあるいは大字単位の土地改良区では到底問題を処理できないということで土地改良区自体も統合が進められてきているのは御案内のとおりでございます。私どもといたしましても、技術能力の確保とそれから経営の安定という点で土地改良区の統合を進めていっているのが現在の姿でございます。  現在の時点では、そういった意味土地改良区はかなり広範な範囲での組織として育成されつつございますが、一方においては混住化現象がかなり進んできている。それから、やはり従来の集落というものの総有的規律というものが大幅に変わってきている。それは事実として受けとめていかなければならない。こういう状況のもとで、やはり土地改良区だけではなかなか機能できない、そういう意味においては、土地改良区にかわって市町村が土地改良事業を実施するとか、あるいは多目的化した施設の管理等は市町村に移行するというふうに、市町村と土地改良区の間における新しい分担なり連携の強化ということが含まれてきているのが現状の姿ではないだろうかと思っております。
  40. 上野雄文

    ○上野雄文君 お話のような、大型化してきているということなのでありますが、実は私の狭い範囲での経験なのですけれども土地改良区といいますと、我が栃木県に限った話だと思うのですが、常に汚職みたいなものにつながっている話が幾つも残っているわけです。それはやはり事務処理とか、あるいは指導者理念みたいなものである特定の人がぽんと出てきて、その人が強引に仕事を引っ張っていくというようなことからそういう問題が起こりがちなのではないか、こんなふうな面も実は私は感ずるところがあるのです。  私の県会議員時代にも、これは結果的には間違っておったのですけれども、県からお役人が指導に来ました。かつどんしか食べていないのに、料理屋へ行って大盤振る舞いを受けたような決算書が出ておったなどという問題なんかも五、六年前に出てきたりしたのです。それは調べていったらそうでなくて、役人の方にすれば大変な迷惑だ、何だと、これはあの連中が自分らが勝手にやったのを変なことやったのじゃないかということで、ばれた話があったのですけれども土地改良区そのものの、まさに自治組織の中で役員が出てきて組織構成してその中でやっていくわけですから、いろいろな問題が起こってくるのだと思うのです。総体的に見て仕事をどんどんやっていけるようなそういうものにしていくについて、その辺の問題について当局の方ではもう本当に心配ないのだという感覚でとらえておられるのか、その辺の感じを教えてもらいたいと思います。
  41. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私は、やはり今日の時点でいろいろな問題が起こってきていることは事実だと思います。余り系列的でなくて恐縮でございますが、一つは平場では混住化が非常に進んできた。そういう意味においては既存の農業用施設、特に排水路等が多目的化している、こういったものをどこが管理したらいいのか、また管理区分を、費用の負担区分をどう考えたらいいであろうかというふうな問題がまず広範な問題としてあるわけでございます。今回の法改正なり、それに基づく指導の考え方もこういったことを念頭に置いているわけでございます。  それから二番目は、財政基盤を安定させていくにはどうしたらいいか。これは今日の状況では継続的な職員の人件費を支給していくという実態からいいましてある程度大型化して統合していく必要がある。その場合、やはり水系別統合と市町村単位の統合と二本立てで考えなければならないと思います。水田地帯等においてはやはり水系別統 合というのは上流と下流における水利権の対立という歴史的な問題が多くの地域でございますためになかなか難しい点がある。だから、やはり水系別を頭に置きながらできるだけ広域化した市町村単位に土地改良区を統合していく。できればそれ以上に統合していくという努力が第二の基盤の確立という点で重要ではないだろうかと思っているわけでございます。これはこの数年来とってきている指導方針でございますが、今後とも強化していきたいと思っております。  それから三番目は、単位土地改良区だけではなくて、やはり県土連の技術能力を高めていくということが重要だろうと思います。今日、補助事業等においてもかなり高度の技術水準を要する事業が、地形が複雑なところでは出てきておりますし、それからそれ以外に換地の問題等が難しい問題になってきているわけでございます。そういう意味でこういった換地問題等につきましては、あるいは大規模化した施設の管理の問題等につきましては単位の土地改良区だけではなくて、土改連の技術能力をレベルアップしてその指導のもとに事業の円滑な推進を図ることが大事ではないかと思っております。これも実は今回の法改正で建前の問題だけではございますが、制度改正をお願いしているのもそういう点にあるわけでございます。
  42. 上野雄文

    ○上野雄文君 局長からこれからまた一つ一つ教えていただきたいような事柄について触れられてしまったわけですけれども、私は総体的に言ってやはり自治組織の一つだというふうに土地改良区については思っておりますので、何といっても信頼によってそれがまとまっていかなければいけないのだろうと思うのです。そういう面ではまた農水省も、最近米の問題に象徴されるように、物を言ってみても、きのうは、猫の目農政、でも猫は見ているからいいやという話がありましたけれども、おまえの方が信頼できないのだからおれらにいろいろなことを言われたってという反発もあるいはあるかもしれません。しかし、やはり自治組織として信頼されるようなものになっていってもらわなければいけないのだろうと思うのです。  そこで、私はずっと自治体に関係をしておった一人として、日本の農村のずっと今日までの歴史的な経過の中で、また、日本の戦後の自治制度の中で幾つもの自治組織を統合してまいりました。最近では二十八、九年以降町村合併が進んでまいりまして、町村自体の力も大きくなってきたわけです。そういういわゆる地方自治体と土地改良区との関係というものについて一体どういうふうに整合させていくのか、そういう点を一遍私は聞いてみたい。  それは、またちょっと話が飛んでしまうのですけれども土地改良区だけではなくて、農水省というのは市町村を一体どういうふうにとらえているのかというようなことも一遍聞いてみたい。農水省自体の仕事をおやりになるときに、県や市町村をあたかも自分たちの手足のようにお考えになっていらっしゃるのではないのかなという、いろいろなところに実はぶつかっていくのです。  というのは、こういうメニューでなければこの仕事はやらせませんよと。自治体の固有の、その土地に合った一つ考え方をもっておれたちはこうやりたいのだけれども、それは農水省が考えていることとちょっと違うからだめだというような問題にぶつかるわけなのです。きょうは土地改良法の問題ですから、土地改良区と市町村との関係、どっちも平たく言えば自治組織であるわけですけれども、これからいろいろな事業が生まれてくるわけです。市町村長と協議しなさい、協議が調わなければ都道府県のところへ持っていけというような問題も出てくるわけですけれども、そういう問題について、基本的に土地改良区というものを自治体行政の中でどう位置づけているのかというのを一度明確にお聞きしておきたいと思っておったのですが、どういうお考えをお持ちなのでしょう。
  43. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私もただいま先生御指摘のように、公的機能を持った一つの自治組織であろうと理解しております。そこで、市町村との関係でございますが、私ども現実の行政の運営といたしましては、やはり市町村長さんと土地改良区と両方の意見を聞いて事業を採択し事業を実施するという建前を常に貫いているつもりでございます。現実にはむしろ、どういう事業をやるかという点については市町村長さんがイニシアチブをとって私どもに御相談がある、御陳情があるというケースの方が私の体験から言うとはるかに多いというふうに理解をしております。  それから二番目に、事業でございますが、小規模の事業の実施主体については、従来は団体営と申しますと土地改良区営を基本考えておりましたが、やはり今後はかなり市町村営の事業がふえてくると思っておりますし、また現にこの数年間ふえつつございます。特に今委員御指摘のいわゆるメニュー方式による総合助成でございますが、これはお言葉を返すようで恐縮でございますが、私どもとしてはやはりできるだけ地元の自主性を生かす意味でメニュー方式にした。しかし逆に言うと、メニューに入っていないものというのは、補助対象にすることについてなかなかほかの省庁の事業とのバランスもあって合意が得られないという性格のものだとむしろ御理解いただきたいと思いまして、できるだけ緩やかにしているつもりでございます。そういうメニュー方式の事業につきましては、いわば地域の総合振興的な性格を当然のことながら持つわけでございまして、市町村のイニシアチブが多くて、これらの事業もいろいろな事業に分解されますが、相当部分はやはり市町村営事業として実施されているわけでございます。  そこで、現実にどこが問題だろうかというふうに、非常に次元がプラクティカルで恐縮でございますが、私なりにプラクティカルに考えますと、むしろ都市化した地域での施設の管理の問題が一番難しい問題になってくると思います。その土地改良施設が多目的利用される場合において、その管理責任者がだれになったらいいか、費用をどう考えたらいいかという問題が常に出てくるわけでございます。  実は四十七年の土地改良法改正でも、排水路について市町村と土地改良区がこのために協議する制度をつくったわけでございます。実は、もうざっくばらんに申し上げると、なかなかこの協議制度が動かない、むしろ市町村協議にまでいかないで、一部一般都市住民の利益に属する部分を理由として市町村が一定補助金なり負担を土地改良区にするという形で片づいたところもありますが、なかなか思うようにいかない。やはり委員も御指摘のように市町村もかなり広域化しております。団地住民に対する気がねというふうな議論もあるでしょうし、開発志向型の議論等もたくさんあるわけでございます。  そういう意味でなかなか市町村長さんたちも決心がつかない事態がある。私ども、やはり協議がなかなか進まない場合は、筋道をつくって知事さんの裁定で問題を片づけることを考えたらどうかということをお願いしたわけでございますが、決してこれは直ちに知事裁定を発動するという意味ではなくて、一種の担保措置でございまして、この機会に管理の問題につきましての管理主体の問題とか費用負担のルール等については、公正妥当な客観的なマニュアルを作成いたしまして指導に当たり、その指導の中で解決することを基本としながら、やはり解決のための担保措置としてこの裁定制度を生かしてまいりたいと思っているわけでございます。
  44. 上野雄文

    ○上野雄文君 自治体の区域内のそういう公共的団体に対して包括的な指導助言といいますか、そういう機能は市町村長にあるのだろうと思うのですけれども、ただこれから予想をされる問題としては、臨調行革の折から、例えば施設の維持管理の問題にしても市町村と協議して市町村に移管するというようなことが起こった場合に、交付税上の扱いなんかは一体どういうふうになるのだろうか。この間も大須賀町の視察に行って例の排水施設を我々みんなして見たわけですけれども、あれ は交付税上どうなっているのだろうなというのが自治体に関係した人たちの一斉に出る言葉なのです。  それから、あそこの町長は、農道ができればできるだけ早く市町村道に編入して維持管理をやるように促していきますと。あの町の議長さんは、どういう感覚か私にはわかりませんでしたが、町長と土地改良理事長を兼ねていると大変人件費の面や何かで節約できるのだなんという話をしておりました。そんなことではなくて、自治体全体の運営の中でどういうふうに取り扱っていくかというのが実は重要な問題だというふうに私どもは思っているわけなのですけれども、そういうことについては一体どういう取り組みをされようとしているのか、そういう点についてもお尋ねをしてみたいと思います。
  45. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 土地改良事業自体のいわゆる地元負担のうち、市町村なり何なり自治体が負担した分をどう見るかということについては、例えば災害復旧事業と一般の土地改良事業では相当格差を設けておりますが、一般的に言うならば、起債の充当を認める。一般の例であれば、実は自治体が負担した分の八五%の起債の充当を認めております。それからそれ以外にいわゆる元利償還金をどう見るかということにつきましては、地すべり、緊急地すべり、シラス、地盤沈下等のいわゆる防災的なものについては元利償還金を五七%現在算入しているわけでございます。なお、一般公共事業の財源確保のための起債の償還自体につきましては、これは土地改良事業も他の公共事業も同様でございまして、発行を許可された地方債の額の八〇%に単位費用を掛けて算入されるという仕組みになっているわけでございます。  それからなお、管理費の問題でございますが、これははっきり申し上げますと、いわば標準的な単価というものを決めておりまして、農業の場合については農業行政経費の投資的経費として標準団体の一般財源所要額を算入することにしておるという原則のもとに、測定単位としては耕地面積とか農家戸数を頭に置く以外に、算出方法につきましては田畑、樹園地、牧野、林地等の面積比率で区分を設けておりますし、さらに農家人口比率も調整いたしまして必要な割り増しを実施しているわけでございます。  ただ端的に申しまして、先般御調査を賜りましたいわゆる湛防事業の管理費のようなものをどう見るかという問題でございますが、これについては特別の手当ては今のところ講じておりません。私どもといたしましては、この種のいわば純粋に公共性の高いものの問題については、市町村管理の実態というものをとらえまして基準財政需要額に算入する問題については今後努力していきたいと思いますが、はっきり申し上げるとまだ包括的な問題になっていない、つまり全国的な問題になっていない点もございまして、特交の中でどこまで面倒を見ることができるかということも頭に置いて、その両者の兼ね合いにおいて少しこの問題については整理をしてまいりたいと思っているわけでございます。
  46. 上野雄文

    ○上野雄文君 私は、一番最後の答弁ですけれども、あれなんかはしかし当然入っているでしょうというあのときの、調べもしないで今までの経験の中だけですけれども、入っているのじゃないかいって、こういう総括をしたのですが、それは勝手過ぎたのでしょうかね。それは入っていないと確認してよろしい…。
  47. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 制度的にはまだ入っておりませんで、実はほかの事業と一緒にもめて、いろいろ折衝を前からやっている懸案の問題の一つであります。
  48. 上野雄文

    ○上野雄文君 そうすると、それと、あと交付税上の問題なのですけれども、農道をつくりますね。今うちで大型農道が県北地帯に二本あるわけですけれども、それが入り組んでいるのですよ。従来の県道があったところと、そうでないところと、全体を見るとちょぼちょぼしか従来の県道がないのです。だから、大型農道を通っていって、県道をちょっと通ってまた大型農道で、またちょっと県道が入ってというような現状のものがあるのですけれども、私なんかは、交付税上の扱いからいってこれは県道に編入してもらって、県道の採択基準があるけれども、それにできるだけくっつけていって、従来の要らないものは切ってやったらいいじゃないかということを言うのですけれども、なかなか進まないわけです。土地改良の担当者は、もし完全に移管が終わらないうちに交通事故が起きたときの責任はどうなのだとなったときに、これは大変なのだという議論をいつもやられるわけなのです。そうすると、そういうものについての自後の維持管理の問題が絡んでくるものですから、農水省の方針としてそういう点などについての検討の経過などを、これは通告していなくて申しわけなかったのですけれども、今の湛水防除の交付税上の扱いの問題と絡んできたものですから、いまふっと思い出して一緒にお尋ねしたいと思ったのですが、どんなふうに考えておられますか。
  49. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まず最初に、田んぼの問題について関連した御説明を補足させていただきますと、準用河川に、なっております場合は市町村管理の河川管理費の中に一般的には織り込まれているわけでございます。ちょっと今ここで数字はありませんけれども、準用河川になっているケースの方が私は多いだろうと思います。ただ、それで済むかということになると、私はむしろ問題であろうと思っておりまして、だから基準財政需要額に算入する方向でいくのか、いわゆる特交の対象にできないかどうかという議論があるだろうと思います。そういう意味で、少し幅広く御協力させていただきたいと思います。  さて、道路の問題でございます。率直に言って頭の痛い問題でございまして、私ども実は、市町村道を例えば用途廃止して農道として補修し、再び市町村道に戻すということや、農道として開発したものを市町村道に移管することについては、むしろそれを基本にしておりましたわけです。ただ、県道は一体土地改良法の範疇でやるのか、それとも道路法の範疇でやるかという、私どもと建設省との間での分担の問題もございます。  私ども、お気持ちとしてはわかりますが、現実の農道を考えると、やはり市町村道に準ずるものが主力でございまして、一部開発道路的なものがあるわけでございまして、例えばこれについて有料方式をとれないかという議論も一部にあるわけでございます。道路法との関係もありますので、私ここで今即断しかねますが、管理責任をどこで追及するかというのは、その方針が決まった場合のリスクの移転の問題でございまして、その前に方針自体として難しい問題がありまして、なかなか踏み切れない事実がある。よく宿題としてこれからも勉強さしていただきたいと思います。
  50. 上野雄文

    ○上野雄文君 ぜひ検討していただきたいと思います。  実は、余分なことの議論になりますが、最上理事のいる群馬県と栃木県で、なぜ交付税で百五十億も差があるのだと議論するのです。そうすると、道路の延長面積での決定的な差があるわけです。そうすると、ねらうのは農道をねらえという議論もあるものですから、ぜひひとつ…。  土地改良の第三次長期計画が去年閣議決定をされて、四月の十四日に農林水産大臣名で公表されたわけであります。これから十年間という長い間かけてまた事業をお進めになることになるわけでありますが、全国土地改良事業団体連合会、これは土改連というのですか、これの発行については農水省は監修されるというか、ある程度まで責任を持ってもいいわけですか。持たないというのじゃ、これをもとにして議論すると大変なことになりますから。監修されておりますか。
  51. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 監修はしておりません。これはやはり団体が自分で発行されているものでございますから。一般的な意味での業務監督なり財務検査はやっておりますけれども、こういうものまで監修はしておりません。
  52. 上野雄文

    ○上野雄文君 していない。でも、事務当局に届 いているわけですね。
  53. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) はい。
  54. 上野雄文

    ○上野雄文君 中をごらんいただいて間違っていますか。
  55. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 今いただいたので、私、寡聞にして見ておりませんので、勉強いたしまして、後日でもまたお答えいたします。
  56. 上野雄文

    ○上野雄文君 これは非常にわかりやすく書いてありまして、今度の第三次土地改良長期計画の推進、三十二兆八千億円のお金をかけてやります、こういうことで、第一次長期計画、第二次長期計画、その成果——欠陥は書いてないのです。その実績がここに載っております。これだけを総計画の対比でいきますと、第一次は二兆六千億、それから第二次は十三兆円、そして第三次が飛躍的に三十二兆八千億と、こういうことになっているのですね。そうしますと、この金額だけ見ても大変な計画をお立てになったなというふうに思うのですけれども、これからのやろうとされている全体像といいますか、それらについて教えていただければと思うのです。
  57. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 第三次土地改良長期計画、三十二兆八千億でございますが、これは実は第二次土地改良長期計画を物価修正したものに若干プラスアルファをつけた程度の金額でございまして、リアルベースで申しますと第二次長期よりはプラスアルファがついているだけ大きいですが、そうけたの違う話ではございません。ただ、他の大体近接した時点でつくられました治水計画、道路計画等の実質的な伸び率には遜色のない、若干見積もりの高いものになっているということは事実でございます。  内容につきましては、これはいろいろな作業をやったわけでございます。一つは各県におろしまして、現在の新規事業の要望と計画事業の残事業を計画的に採択し、処理していくにはどれだけの金がかかっていくかという積み上げ方式をやったわけで、それをバックデータとしておりますが、作業自体といたしましては、やはりマクロ的な視点で考えておりまして、一つは、昭和六十七年度に五百五十万ヘクタールの農用地を確保していく。壊廃見込みが四十二万ヘクタールあるわけでございますから、これを前提に置いて四十七万ヘクタールの農用地造成を図っていきたい。それからもう一つは、水田、畑を含めまして、六十七年末の整備済み面積というものを七〇%の水準まで持っていきたい。水田につきましては、そのために九十八万ヘクタールの圃場整備を期待する。それから畑地の整備、畑地の整備というのは主として農道に結びついているかどうかがポイントになるわけですが、これが六十一万ヘクタール。さらに先ほど申し上げました農用地造成の四十七万ヘクタールは整備された畑地でございますから、この両方を合わせまして、水田で九十八万、畑ではいわゆる百八万、これを整備していきたいという計画としてまとめ上げているわけでございます。  これ以外に防災事業につきましては、その緊要度に応じまして事業の種類ごとに積み上げた数字をとりまして標準的な単価と地区数を掛けて計上しております。  なお、若干の予備費、調整費等は別に計上しております。
  58. 上野雄文

    ○上野雄文君 七〇%まで引き上げたいというお話ですが、ちょっと私が聞き漏らしたのか、現状は何%ぐらいまでいっているのですか。
  59. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まず、農地整備の問題でございますが、これは五十八年に作業したものでございますが、五十七年度末の数字を使っておりますが、五十七年度末の整備済み面積は、水田で九十五万ヘクタール、畑で八十二万ヘクタール、合計いたしまして百七十七万ヘクタールで、整備率は約三三%ということになっております。  先ほど申し上げましたように、今後十年間に水田で九十八万ヘクタールの整備をしていく、畑については六十一万ヘクタールの整備以外に四十七万ヘクタールの整備のされた農用地をつくりますから、これをやっていきたい。そういたしますと、六十七年末の整備済み面積は、水田で百九十三万ヘクタール、畑で百九十万ヘクタール、合計しまして三百八十三万ヘクタールで、農地面積五百五十万ヘクタールに対して約七〇%の整備率になる、こういう数字でございます。
  60. 上野雄文

    ○上野雄文君 大変立派な計画が示されることになるわけでありますけれども現状まで三三%であったものが十年間で四〇、四〇までいかなくても三七%程度進捗させなきゃいかぬということになるわけですね。今の状態の中でやはりやれるんでしょうか。というのは、こういう緊縮財政の折でもあります。大臣にお聞きすると、断固やるために全力を挙げますという御返事がくるのだろうと思うのです。そういう決意とか何かでなくて、やはり私なんかびっくりしている方なのですから、びっくりしている者がびっくりしないような説明なりお話をしていただければ、やれるのですという道筋を明らかにしていただければありがたいと思うのですが。
  61. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 実は土地改良長期計画というのはノミナルベース、つまり金額ベースで表示されました目標でございまして、今申し上げた整備率七〇%とかなんとかという数字はいわばバックデータでございます。第二次土地改良長期計画は実は金額ベースでは達成されたわけでございます。ただ、実質ベースでいきますと、その間に労賃と資材の膨大な高騰がございましたから、つまり二回のオイルショックを中心にした毎年の賃金、物価の膨大な上昇がございましたから、達成率では五割を若干切ったという数字になるわけでございます。  さて、第三次土地改良長計をどうするかという問題でございます。どうにか賃金、物価が安定した時代に入ってきたと思います。従来のように年率で十何%というふうな上昇はなくて、大体三、四%ぐらいという上昇だろうと思います。問題は予算の伸び率をどこまで確保できるかどうかということだろうと思います。率直に申し上げまして、投資的に見てやはり一〇%を若干上回る予算の伸びがないとこの目標金額の増加はできないわけでございます。しかし、ここはいろいろ考えてみまして、変な話でございますが、他の長期計四を伴う公共投資も同様な状況にあるわけでございまして、今まだ二年目だけの土地改良長期計画が、それだからといって二年の実績だけで今ここで見直すというふうなことではない、むしろ残った八年にできるだけの全力を傾注することが私どもに課せられた重要な役割ではないだろうかと思っているわけでございます。
  62. 上野雄文

    ○上野雄文君 監修をされたものではないというお話でありますけれども、去年の十一月に出されたこれで見ましても、第一次の場合が金額でいくと九五・三、それで実質は七六・九。しかしまあまあ、これはまだ第一次はよかったですね。第二次になると、金額でいくと九五・三、実質でいくと四八・八、半分だという結果が出ているわけです。これは外的な要因だけで見ていいのでしょうか。それだけではなくて、だんだん広がってくると、これはまた後の問題にも絡んでくるかと思うのであります。先ほど申し上げたような自治組織であれば、やはりその構成員の農民の皆さん方の理解がないとこれはどうしても進みがたい、そういう面が生まれてきているのではないのかなという想像をするわけですけれども、そういう問題なんか、第一次はともあれ、第二次の計画未達成のその経験からどういうものが第三次の中に取り込まれていって進められようとしているのか、そういう点ちょっと教えていただきたいと思うのです。
  63. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 財政全体がこの種の長期計画についてかなり大きなものを許容するかどうかということについては、第一次の土地改良長計をつくった時期と第二次の土地改良長計をつくった時期においては、日本の経済事情、財政環境が非常に違ったことは事実だろうと思います。私ども実は事業の推進を図る意味で、兼業化、混住化が進んでなかなか兼業農家が参加してもらえない、あるいは跡取りのない農家が参加を拒むという実態があることは知っておりますし、そういう 意味では難しい時代に入ったということを痛感しております。しかし、私どもはやはり強引に三分の二でまとめるのではなくて、やはり九割の合意、特に面的整備についてはできれば一〇〇%の合意ということで採択を行っているという事情でございます。今のところそういう厳しい姿勢で採択を行っておりますが、実は毎年地元の要請を後年度にスチールさせなきゃならぬと、継続事業についても要望どおりなかなか予算をつけられないという事情にございまして、長期計画の達成自体にいわばそういったことが足を引っ張る材料に今すぐなってくるというふうには私は思っておりません。しかし、土地改良事業の円滑な推進という視点ではただいまの上野委員の御指摘の点は、常時やはり事実をとらえて、そのための改善努力が必要ではないだろうかと思っております。  なお、事業の単価等につきましては、例えば現在で言うならば、水田の圃場整備で言うならば、地下水位七十センチにまで下げろとか、圃場区画を三反というふうな標準的な実績の単価をとってはじいておりますので、そういう点では毎年の減価はやむを得ないと思いますけれども、今後大幅なインフレがない限りそんなに大きな違いにはなってこないだろうと思っております。
  64. 上野雄文

    ○上野雄文君 局長もきのうの日本農業新聞の一面トップに出ている「秋田県能代地区国営事業」、これをごらんいただいたかと思うのですけれども、せっかく国営総合農地開発事業でこういうふうに進めておっても、これをこのままずっと読んでいきますと、なるほど大変なことになるのだなという感じで、私はこのいきさつというものを、事業が持ち込まれてどういうふうに流れてきたかというのを全く知らずに、いきなりきのう出てきまして、新聞を読むと、「事業の継続は重大な岐路にさしかかっている。」というふうに書いてあり、見出しでは、「引くも地獄進むも地獄」というのじゃこれは大変なことだなというふうにきのうは思いまして、管理課長にこれはどうなのだというふうに聞いたわけです。いやいや、それは改めてお話し申し上げますからということでありましたから、じゃそのときにお尋ねしましょうという話にしたのです。私どもは、全体が進まないというのはやはりこういう問題が絡むから進まないことの一因にもなるのじゃないのかなというふうに思いがちです。これはどういう意味か、ちょっとお話しいただければと思います。
  65. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 実は私、昨日、担当部長を通じて日本農業新聞に御説明すると同時に抗議をしておきました。これはかなり事実に反することがあるし、旧聞に属することが多過ぎるのではないだろうかと思います。新聞でございますから旧聞を書かれては困る。この農用地開発の問題につきましては、地元の方とも何回かお会いを私自身もしております。  問題は、非常に概略を申し上げますと、この能代の農用地開発地域というものは、いわば全体としてたしか千五百十五ヘクタールですが、開田面積を全地区として決めまして、それに合わして地区別配分をやって水田と畑作の営農計画をつくったわけでございます。これは実は稲作転換対策の一環として開田の抑制の基本原則に即して、能代については若干従来の経過の特殊性も尊重してある程度プラスアルファも認めながら打ったわけでございます。ところが、その受益地域のうちの一部の受益地域の方が、まだ開墾が進まないうちに地下水等のくみ上げによって自力開田をしてしまった。それで地区除外にしてくれという話があり、その水田面積を公認しろという話が出てきたということが事の起こりでございます。したがって、他の集落とその自力開田をした集落の実は利害の対立みたいな話が基本に出てきたわけでございます。  基本的には、私どもは、開田費用についてはもう自力で開田したものですから、農用地造成の費用自体を自力開田する部落に貸すことはできないと思いますけれども、水利費用については既に合意をとってやっている問題でございますから負担してしかるべきである。  さて、問題は、この開田面積をどういうふうにアカウントするかという問題でございます。原理原則だけではなかなかいかない面もあることは私も存じております。そういう意味で、農蚕園芸局とも相談しながら、東北農政局、県庁と一緒に、現在どういう調整を行うかということの調整作業中でございまして、不可能なことは言わない、しかし、不公平な結果になってもだめだぞという両点をにらみながら今調整中の問題だろうと思います。そういうふうに御理解をいただきたいと思います。新聞がどう見出しをおつけになるかということまでは私どもも存じませんが、多少そういう意味においてはこの開田面積の調整等は現に農政局、県を中心に、自力開田をした集落とその他の集落との関係を頭に置きながら今調整が進められている問題であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  66. 上野雄文

    ○上野雄文君 現地の土地カンがないものですから、私はこのことについてのいろいろな言うところの論評は避けていかなきゃいけないなと思っておりますけれども、局長の御答弁では、これからも一生懸命おやりになるということですから、ひとつ事業全体の中で、新聞の記事どおりであれば、この種のこういうことの起こらないような仕事の進め方が一番望ましいわけでありますから、そういう面でひとつ御努力を願いたいと思うのです。  そこで、実はきのうもいろいろお話を申し上げたのでありますが、全体の計画が非常におくれてくるという問題があるだろうと思うのです。冒頭申し上げたように、全国的な視野で私自身はつかんでおりませんから全国的なことは申し上げることはできませんけれども、うちの県で、農村基盤総合整備パイロット事業、総パというのが行われまして、これがたしか四十七、八年ごろから始まって、いまだに完了をしたというふうには私は見ていないし、また、完全に終わりましたというふうに聞いていないわけであります。こういうのは全国にたくさんあるのではないかというふうに想像をしておりますけれども、あれは、当初の計画をいろいろ聞いてみたり勉強さしてもらったりしますと、まさに大上段に振りかぶって始めた仕事だったのですね。それだけに農民の反発も強かったし、実は私はこれは反対農民の側に立って一緒になって粉砕でやったことがあるのです。そういう意味では経験者なのです。現状、全国的にどんなふうになっておりますか。
  67. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 予算の制約と毎年の工費の上昇の中で、実は継続事業の立ちおくれは非常に頭の痛い問題でございます。御指摘のように、特にパイロット事業、いわゆる通称総パでございますが、これともう一つは国営の事業がおくれていることは特に本院でも再三御指摘のあったとおりでございます。  総パの実態を申しますと、昭和四十七年から五十一年までに採択した地区数は二十四地区でございますが、まだ完了しておりますのはその二十四のうちの二地区だけでございます。だから大半が完了していないというのは事実でございます。これは全体として今予算が伸びていない、事業単価がかなり上がってきているということが基本なのでございますが、一部には計画変更等でかなり追加の御要請がございますものもあることは否めないわけでございます。甚だ残念なことだと思っております。私どもこういう意味では、モデル事業、総パ等のいわゆる生活基盤整備だけではございません、土地改良全体の問題として厳粛に受けとめております。そういう意味において、実は着工地区数なり着工事業量というものを、正確に申しますと着工の事業量を、五十七年以降は従来の三分の二に新規の採択を抑えているというのもそういう点にあるわけでございます。  それからもう一つは、事業の実施に当たりましては、やはり地域の自然経済的条件に応じた基準の弾力的適用、特に構造物の設計に際しての事業費の軽減等に努めているわけでございます。今後ともこういった措置を積み重ねながら工期の短縮に努めてまいりたいと思っておりますが、そうい う現状であることは甚だ遺憾に思っております。
  68. 上野雄文

    ○上野雄文君 それじゃきょうは…。この次にあとは各論でいろいろまた教えていただきたいと思うのです。大臣にはこの次お尋ねをさしていただきますので、どうぞひとつよろしく。
  69. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 両案に対する質疑は午前はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時十八分休憩      —————・—————    午後一時三十二分開会
  70. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に、引き続き、農業振興地域整備に関する法律の一部を改正する法律案及び土地改良法の一部を改正する法律案、以上両案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  71. 水谷力

    ○水谷力君 農業振興地域整備に関する法律及び土地改良法の両改正法について質問いたします。  まず、農業振興地域整備に関する法律改正に関してお伺いをいたしてまいりたいと思います。  まず、我が国農業、農村を取り巻く環境は、御存じのとおり極めて厳しいものがあるわけでございまして、特に農産物の需給の緩和や価格の低迷、あるいはまた、行財政の制約のもとでの効率的な農業施策の展開のニーズが厳しいとか、あるいはまた、さらには外国からの市場開放の要求など、まことに厳しいものがあることは御存じのとおりでございます。このような厳しい情勢に対処して、我が国農業の体質の強化と農村の発展を図っていくというには、今こそ構造政策の積極的な推進が強く要求をされるというわけでございます。そこで、今回の両法の改正案は、農業政策と豊かな村づくりを同時に進めていく見地から提案されたわけであり、今後の構造政策推進について積極的に取り組んでいただきたい、まず、こういう私の考えに対して、大臣の御所見をお伺いいたしておきたいと思います。
  72. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 今日の農業をめぐる情勢を見てみますと、農業生産の再編成を進めながら土地利用型農業生産性向上を図ることが今後の構造政策上での最大の課題考えております。特に最近におきましては、経営規模別の生産性格差の拡大、そしてまた、跡取りのない高齢農家の増加など構造政策を進めるための条件が熟してきておるというぐあいにも見られます。今後、適切な施策を進めることによりまして、生産性の高い経営によって農業生産の相当割合が担われるような農業構造を実現してまいりたいと考えております。  そのための具体的な施策につきましては、兼業農家等を幅広く包括した地域農業集団を広範に育成し、この集団による土地利用調整活動を通じて意欲のある農家中心地域農業の組織化を進め、地域全体として、生産性の高い営農の実現を図ることがまず重要と考えております。  また、第三次土地改良長期計画、三十二兆八千億という金額でございますが、これに基づきまして、土地改良事業を積極的に、計画的に推進しておるところでございます。  このほか、新農業構造改善事業そのほかの施策においても、土地利用型農業生産性向上を重視して、その推進を図ることとしております。  さらに、このような施策の円滑な推進を図るためにも、地元における安定的な就業機会の確保が必要でございます。立ちおくれている生活環境施設の整備、また混住化に伴うところの土地、水利用のスプロール化の防止等を積極的に推進いたしまして豊かな村づくりを図ることが必要でございまして、今回の法改正によりまして農業の体質強化とあわせてこれを総合的に推進してまいりたいというぐあいに考えます。
  73. 水谷力

    ○水谷力君 そこで、稲作などのように土地利用型農業の体質強化ということが大変に緊要なことは今、大臣言われたとおり。このため、政府においては今日まで農用地の効率的かつ総合的な利用の促進のために、あるいは昭和四十五年の農地法の改正あるいは五十年、さらに五十五年に至っても農地三法の改正等によって農用地の流動化対策というものを積極的に実施をされてきたわけです。これは土地利用型農業においては土地利用度の向上を図って、また単収のアップあるいはコストの削減等、あるいはまた品質の向上等を確保していくことが課題となっている。このためには農地の流動化と構造政策推進と相まって、地域農業者間の相互理解が極めて大事になってくるということは当然のことでございます。  そこで、政府においてはこの点に関連をして、昭和五十八年度から地域農業集団育成、指導を行ってきておるというわけでございますが、この地域農業集団の活動の今日までの成果あるいは今後の進め方等についてひとつ政府の御意見を賜っておきたいと思います。
  74. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のように、農用地の流動化ということを目途に置いて、五十八年度から地域農業集団育成を進めております。一万六千四百の集団が既に活動に着手しております。大体一ないし数集落ということでございまして、平均して一・五集落程度。構成員数では一固体当たり五十三戸程度になっております。  さて、問題の取り組み方でございますが、既に我々も方針として、直接流動化につながる問題だけではなくて、できるだけ幅広く農用地の流動化に資する取り組みを取り上げていこうということで、権利の設定、移転による規模拡大以外に作業受委託による規模拡大、それから機械の共同利用による作業の効率化の問題、それからもう一つは、いわゆる乳づくりに着目しました畜産農家と子牛農家の提携の問題、さらに不作付地の解消とか、あるいは里山の開発等、土地利用効率の向上という問題、四つのいわばゲートを設定いたしまして話し合いを進めさしているところでございます。  現在までの調査結果によりますと、大体運動に入っております団体のうち権利の設定、移転による規模拡大に取り組んでいる団体が五六・四%、それから機械の共同利用による作業の効率化に取り組んでいる団体が四四・三%、転作の団地化という生産調整に関連したテーマから取り組んでいる団体が四三%、それから不作付地、荒らしづくりの解消防止という点から取り組んでいる団体が三九%という数字が報告されております。したがって、一つの団体で幾つかのテーマを選んで取り組んでいるというのが実態だろうと思っております。  毎度申し上げている点でございますが、現在までのところ農用地利用増進法による利用権の設定は約十二万五千ヘクタールというところまで来ておりますし、作業の全面受委託というものも約六万数千ヘクタール、両方合わせると二十万ヘクタールという実績まで最近の時点では来ているわけでございます。私どもとしてはできるだけこの農用地、ただいまお話し申し上げましたいわゆる地域農業集団の活動を広げていく、集団の数をふやしていく、また適用範囲を広げていくということによって、こういった流動化をさらに加速していきたいと思っているわけでございます。
  75. 水谷力

    ○水谷力君 そこで、この際、もう一つ大臣にお聞きをしておきたいと思うのですが、構造政策を進めているけれども、また今後の我が国農業の、あるいは農村の発展を図っていくためにも、このたび大臣の提唱されておる豊かな村づくりは極めて有意義なことであると考えております。そこで、今回両法の改正をしてその一環を担ってやっていただく、いわゆる農業を取り巻く厳しい環境情勢の中で活力のある農村社会というものをつくっていく、こういうことであるわけなのですが、この際、もう一度大臣の豊かな村づくりに対するお考えというものを端的にお示しを願いたい。
  76. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 農村社会というものは農林業の生産活動の場であると同時に、地域住民の生活の場でもございますし、また国土保全、 そしてまた緑豊かな景観と自然環境の維持を通じて都市住民に安らぎを提供する役割も果たしておるわけでございます。今日の経済社会のもとで農村社会は兼業化そして混住化、高齢化の様相を強めてきており、このような現実に立ちまして農業の振興と住民の生きがいとの調和や、農家と非農家との協力の上に活力ある農村社会の建設に努めてまいる必要があると考えております。このような観点から、一つは若い農業者に夢を与える農業の振興、二つに、地域住民の就業の安定、三つに、地域社会の連帯感の醸成と資源の有効利用、四つに、生活環境条件の整備、五つに、都市と農村の交流の推進、これらに総合的に取り組みまして豊かな村づくりを進めてまいりたいと考えております。  今回提案しております両法案も、この改正によりまして以上のような考えに基づくことを行おうと考えております。
  77. 水谷力

    ○水谷力君 それに続いて、今回の改正条項について二、三お尋ねをいたしておきたいと思います。  今回の農振法の改正におきましては、これまでの農振計画事項のほかに農用地の効率的利用の促進、あるいは、今大臣も言われた安定的就業の促進、あるいは生活環境施設の整備といろいろ計画事項が拡充ないし追加をされております。そこで、まずこれらの追加事項はそれぞれ極めて重要な事項であり、特に地域によっては都市近郊と純農村との間に極めて大きな差異が出ておる、あるいは問題があると思うわけでございます。したがって、それぞれの市町村において農振計画を策定をする際には、今後このような各地域の実情も十分考慮したものが当然考えられるわけでございますが、今後それに対して農水省としての指導というものをひとつお伺いをいたしておきたいと思います。
  78. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 新しく追加されました計画事項等につきましては、地域によって非常に需要程度が違うだろうと思います。例えば、就業の改善という視点でとらえますと、東北等の純農村、農山村等では非常に切実な要望として問題が上がってくるだろうと思いますし、逆に大都市近郊等では、このこと自体はそう大きな問題ではない、むしろ混住化に伴う土地、水利用のスプロールの調整が問題だろうというふうに、それぞれ地域によって、また農業実態によって重心が変わってくることは事実だろうと思っております。こういう意味で計画内容につきましては画一的な内容になることを避け、できるだけ市町村長さんが地域においてぶつかっている課題を解決するため、その目標なり手だてについて記載していただくということが必要だろうと思っております。  また、当然のことながら見直しにつきましても、従来ややもするとこの種の法律では計画事項の見直しを法律改正後一斉に行うということであるわけでございますが、どうもこういうことを見ておりますと、受け取る市町村長さんたちにも問題意識にかなり差がございますし、行政の方でもきめ細かい地域実態の把握が国や県としても十分でない点もあるわけでございまして、この際、全国一律に一斉にいわゆる市町村の農振計画を見直すということは避けまして、やはり熟度の進んだところから段階的に数年かけて見直しをやる方が実効性が上がるのではないだろうか、そういう方法で運用してまいりたいと思っております。
  79. 水谷力

    ○水谷力君 今局長からお答えをいただいたわけですが、農振計画を各市町村において立案するについては大変な厳しい状況をよく考えながら、しかも活力のある農村をつくるための極めて、いわば農村にとっては一つの憲法的な大事な計画を立てるということですから、農振計画に組み入れる事項について将来にわたってその実現が当然期待をされる、しかも、ややもすると極めて近距離的に早く実現をしてほしい、こういう要望も入っている。したがって、当然のこと予算の裏づけ等が大変なことだろうと思います。これは御要望申し上げておきますが、計画事項の実現のためには積極的な予算措置等を講じていただくように、ひとつよろしくお願いをしておきたいと思います。  そこで、またさらに、特に土地利用率の問題でございますが、都市近郊農村において、特に兼業農家というものがふえてまいりました。殊にそれが冬場になると水田なんかさっぱり利用されない、そういうことから土地利用率が著しく低下をしておるというのが現実の問題でございます。そこで、土地利用率の著しい低下ということに対して、裏返せば農用地の効率的利用ということが大変に厳しくなってくる。したがって、農用地の効率的利用という計画事項の追加によって都市近郊農村における土地利用率の低下問題をカバーしていってもらいたい。ひとつどのようにお考えでございますか、お尋ねをしたいと思います。
  80. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 土地利用率、耕地の利用率の低下という問題は、やはりこれから地域農業集団の活動を通じて土地の効率的利用を図っていく場合の重要なテーマの一つだろうと思っております。ただいま水谷委員御指摘のように、都市近郊、特に平場の比較的排水の悪い地域での耕地の利用率が非常に低いという傾向は顕著でございます。問題は、やはり農業に意欲を持って土地利用できる人を確保していくこと、それから土地が効率的に利用できる物的条件をどう整備していくかという二面から取り組んでいく必要があると思っております。  私どもは、一つはやはり土地改良事業の計画的推進、特に排水改良等の推進、さらに不作付地の再利用のための小規模土地改良等の実施等に配慮して物的条件を整備すると同時に、やはり地域農業集団育成という形を通じて農業に意欲を持ち、規模拡大を図り、能率の向上を図ろうとする中核農家群に、いわば農業に積極的な意欲を持たない地域兼業農家が持っている土地利用提供していただくという条件づくりをすることが必要だろうと思っております。こういう人的、物的両面から、やはり重要な課題として努力をしてまいりたいと思っております。
  81. 水谷力

    ○水谷力君 そこで、兼業農家お話を申し上げました。あるいはまた、先ほどの大臣の御答弁の中で就業の安定というお話もございました。この就業の安定を図るということは、したがって現実的な問題として極めて重要であって、農村地域への工業導入を進め、あわせて地域資源を有効に活用した地場産業の振興ということも必要である、こう考えるわけですが、これらの問題についても今後どのように取り組んでいかれるか、お伺いをいたしておきたいと思います。
  82. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農村地域における就業の安定というのはこの十五年間にかなり進んできていることは私ども事実だろうと思います。例えば不安定兼業従事者の数も、四十五年の二百九十三万から百八十四万まで減ってきておりますし、特に出稼ぎは二割五分から三割程度というところまで減ってきています。しかし、率直に申し上げまして、特に遠隔地域では出稼ぎ、日雇いがまだ多く、不安定な兼業が多いことは重要な課題として受けとめなければならないと思います。やはりできるだけ地元の市町村あるいは周辺地域、そういった遠隔地域にどうやって安定雇用機会としての企業の導入、工場の導入を進めるかということが重要だろうと思います。農村工業導入法に基づく第三次の指針におきましても、こういう視点から広域的観点での導入、特に東北、南九州などの遠隔地域重点を置いた工場導入ということを標榜していることはこういう点からであるわけでございますが、同時にテクノポリス法も制定されたわけでございまして、新しい先端産業の育成等が地域への工場導入として結実するように各省の協力も得て努力をしてまいりたいと思っております。  こういったいわば通産省、労働省にお願いしながら、地域別の雇用調整なりあるいは工業立地政策考えていくということと同時に、やはり地場の農林水産物等の資源や産物やあるいは自然観光資源を活用して定着的な地場産業を育成するということも大きな課題だろうと思います。就業改善の問題と構造政策の取り組みが進んでいる市町村 を調べてまいりますと、やはりこういう努力が地道に結実しているところがたくさんあるわけでございます。私ども、従来構造改善事業、山村振興対策事業等、各種の事業で地域資源を活用した就業機会の確保のための施設助成等を行ってきましたが、本年度からは新農村地域定住促進対策事業というものを制度化いたしまして、地場産業の育成を特に重視するための施策を講ずるとともに、またこの予算措置の中では、いわゆる技能の習得その他ソフト面での援助活動も強化してまいりたいと思っているわけでございます。
  83. 水谷力

    ○水谷力君 そこで、農村における生活環境施設の整備の問題でございます。  何といっても、都市に比べて農村の生活環境施設の整備というものは当然のこと立ちおくれておることは御認識のとおりでございます。したがって、午前中も同僚議員からそのお話が出、いわゆる後継者あるいは後継者の確保とか、あるいは嫁不足だとかいう問題が当然出てくるということでございます。また、農村地域を定住の場として整備していくためにも農村の生活環境の整備というものは一層積極的に取り組んでいくべきであろう、こう思うのですが、これはまた後で土地改良法改正に関する質問等の中でも一部申し上げますが、ひとつ生活環境の整備というものに対して今後どのように取り組んでいかれるか、御意見を賜りたいと思います。
  84. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 生活環境の整備は、やはり豊かな村づくりを通じて農業の構造改善を進めるという視点からも、また二十一世紀を展望いたしましていわゆる活力ある田園社会を形成していくという意味からいっても重要だろう、重要な課題だと受けとめております。一般に都市に比べて生活環境整備水準がおくれているということ以外に、やはり農村であるがゆえに雪積とか過疎とか、そういう厳しい気象条件、社会条件のもとでやはり固有の生活環境施設に対する要請もかなり根強くある、こういうことを我々は受けとめなければならないと思っております。  従来モデル事業、ミニ総パあるいは構造改善事業等に続いて農道とか、集落道とか、集会施設とか、農業集落排水等の事業を実施してきたわけでございますが、今後ともやはりこれらの生活環境基盤の整備というものは農政上もまた国土政策上も重要な課題として積極的に進めると同時に、今回の法律改正を通じまして、やはり新しく計画事項に追加することによって市町村長さんに積極的な取り組みのよりどころを与えると同時に、協定制度の活用あるいは換地処分とか交換分合の措置による用地の生み出しの手法等を活用いたしまして、計画的な条件整備が行えるよう努力してまいりたいと思っております。
  85. 水谷力

    ○水谷力君 局長さんの御答弁の態度が向こうばかり見ておるので、向こうの人が…。  そこで協定制度の問題。農村地域は御存じのように、兼業化あるいは混住化等の進行に伴ってかつてのような地域共同体的機能といいますか、そういうものが低下をしておる。御存じのように、生産面あるいは生活面の双方でいろいろな問題が出ております。そしてまた、かつての農村においてはいわば道普請であるとか、あるいは農道の補修であるとか、用水路の管理であるとか、いろいろなものを農村部一同が相寄って自主的に解決をしてやっていきます。御存じのとおりです。これら問題の解決を図るためには、地区の住民が自主的にこれらの問題の解決に今後ともさらに一層自主的に取り組んでくれることが最も望ましい姿であろうと思います。そういう意味では、地域の申し合わせや取り決めやこういう村づくりや地域の活性化という観点からも、そういう有意義なものを大いに活用していったらどうかと思います。  こういう意味で、今回創設をされます協定制度は有益な制度と私は考えておりますが、その運用に当たっては地域の自主性を尊重する等の配慮が重要であろうと思うのですが、この協定制度を今後どのように運用していかれるのか、さらにまたどういうものを期待されているのか、御意見を賜っておきたいと思います。
  86. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のように、従来農業集落を支配しておりました総有的規律が経済社会の発展と個人の権利意識の浸透の中で急速に崩壊しつつあることは事実でございますし、またこの事実は事実として社会の進歩の過程として受けとめて、新しいコミュニティーをつくるということが大切だろうと思っております。そのためには教育その他各般にわたるいろいろな総合的な努力が要ると思っておりますが、やはり身近な問題で具体的に当面した課題を解決するために、地域の住民の皆さん、つまり地権者の皆さんとか共同して共益施設を利用する皆さんが話し合って問題を片づけていくということが今日の社会的状況のもとでは一番現実的であろうと判断して、今回の協定制度を仕組んでいるわけでございます。  この協定制度は、いわば法律上予定しておりますのは、営農施設の配置に関する協定、集会施設等の管理に関する協定でございますが、これは民法上の一種の無名契約でやれる問題について一つの規律を与え、ないしは特別の法律効果を与えるということで法制化したわけでございまして、私どもはこの法律に基づく協定以外に地域の必要に応じて広範な協定の締結が進められることをむしろ期待しているわけでございます。我々といたしましては、この場合両者を通じましてやはり地域住民の自主性と創意工夫が生かされているかどうか、それから画一的なものでなく、地域の実情に、即したものであるかどうか、それから条件の成熟した課題から逐次やっていくということを基本にして指導していきたい、このように考えているわけでございます。  先ほど申し上げました法律に基づく協定以外に、私どもといたしましてはそれとの類推と申しますか、アナログのもとでやはりハウスとか農機具舎の配置などの問題も協定されていっていいのじゃないか、あるいはまた集落道、樹木の維持管理、里山の管理などについても幅広く協定や申し合わせが行われてもいいのではないだろうかということを頭に置いて指導してまいりたいと思っております。
  87. 水谷力

    ○水谷力君 協定制度の問題については、今までのことが農村の美風であると言っていいかどうかは別として、今疲弊をしておる農村を盛り立てていくには大変に協定制度というのは大事なことだと思うのです。どうぞ今局長言われたように、広範な範囲にわたって協定制度を十分に活用していただく、ひとつよろしくお願いしたいと思います。  そこで、農振問題の最後の質問で、これはちょっと地元のことで恐縮です。  御存じのように私は三重県でございますが、先般稲村先生その他農水の委員さんがお見えになったときに、三重県の稲作基準単収なんかで、三重県というの一は米のとれぬところだなと思われたと思うのですが、三重県というのも今までは一種の農業県であったが、だんだん衰微をいたした。これは全国的な傾向であるとは言いながらも、三重県というのは変なことで、農家農家所得というのはいいランクにおります。全国中位におる。農業所得となると、あるときには全国最下位ないしは全国で数えて後ろからいいところ、こういう大変いびつな姿を呈しております。  そこで、今度私どもの知事と、あるいは県議会といろいろ考えまして二二八八運動というのを今年から実施しようということになりました。この二二八八運動というのは、知事が先頭に立つことは当然でございますが、各種農業団体等にひとつ御理解と協力を求めて進めていこうと。  まず二二八八とは、最初の二というのは、ちょっと先ほども意見を賜ってきた中に申し上げましたが、単収の二割アップを目指そう。いわゆる土地利用の効率化といいますか、そういうことも含めて単収の二割アップしよう。その次の二というのは、これも先ほど触れましたが、コストの二割減ということをひとつ考えてみよう。それから、八八の八は品質の向上といいますか、生産するだけでなくて、ひとつ品質の高いものを八割は総生産の中でしていくようにしようじゃないか。 さらにもう一つの八は、全国の土地利用率がたしか一〇二%ぐらいであったと思うのですが、三重県は九四・五%ぐらいに位をいたしておる。これじゃいかぬから現状を思い合わせて八%アップしてみよう、いわゆる二二八八運動というものを展開していこうということで、大変な意気込みでございます。それで、こういう意気込みで大臣提唱の豊かな村づくり運動ということを目指そうということでございます。  どうです、大臣、ひとつ御感想がございましたらお伺いをいたしたいと思います。
  88. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 二二八八、全国でやってもらえればこれは一番いいことでございますが、それにしましても、我が国農業の体質強化を図るためには構造政策を強力に展開していく必要があることはもちろんでございますけれども、御指摘のとおりに生産対策、また流通対策を講じていくことが重要であるというぐあいにも考えております。これらのような観点から、バイオテクノロジーと生産対策について先端技術開発、不良条件に耐え得るたくましい稲づくり、地力の低下に対応するための健康な土づくりを含めて各般の施策を進めておるところでございますが、流通対策につきましても、卸売市場整備、小売、これらの近代化、先端的な情報技術を駆使した食品流通の効率改善等を進め、生産流通を通じた農業の振興に努めてまいりますが、この単収の二〇%アップ、生産コストの二〇%ダウン、良質農産物のシェア、比率を八〇%、土地利用率八%アップということで、いずれも結構なことでございますので、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  89. 水谷力

    ○水谷力君 今申し上げたのは、先ほど来申し上げておる構造政策プラス生産政策というものをうまくミックスしてやっていこうということでございますから、これは大臣もお聞き願い、御意見も賜り、あるいは局長も聞いておってもらったのですが、今後ともよろしくお願いをいたしておきたいと思います。  そこで、今度は土地改良法改正に関連をして幾つかの御質問を申し上げておきたいと思います。  まず、今回の改正一つの柱とされております農村の混住化等の環境変化が農業用用排水路の管理に及ぼす影響、これへの対応の問題でございます。土地改良区が管理する農業用用排水路は旧来より農地の用排水を受けるのみならず、地域の生活雑排水等も受け入れ、地域全体の住民の生活と密接な関連を有してまいりました。ところが、先ほど来お話し申し上げて出ておるように、農村地域の混住化やあるいは市街化が進んでまいりますとともに、さらにまた、生活をされる方々の生活様式というものも随分と高度化したというか、実は変わってまいりました。それで、農業用主体に使用されてきた水路の機能が水質汚濁等の影響を受けて、あるいはまた土地改良区の管理作業や費用が増大をする、そして大きな負担となる。さらにまたもう一つ、これは地区内の住民同士である意味においては感情的なもつれさえも出てくるというのが現状でございます。  基本的には地域開発に合わせて下水道等の施設の整備がどんどん進められ、また、農業サイドでも用排水分離等の対応が十分に行われていくというのが当然望ましいわけでございますけれども、現実には農村の変貌というかあるいは混住化というか大変にスピードアップされておって、とてもじゃないがいわゆる今私が申し上げた中の整合性というものは今のところ考えられてはいない。したがって、このような状況に対処して所要の制度の措置を講じていくということが必要であって、今回の土地改良法の一部を改正する法律案においてもそのような趣旨で時宜を得たものと私ども理解をいたしておりますが、しからば、その具体的な運用等についていろいろお尋ねをいたしておきたいと思います。  まず、本問題については既に昭和四十七年の土地改良法改正で市町村協議制度というものを初めとして非農地受益者に対する賦課制度や管理規程に基づく排水の差しとめ請求制度というものが設けられておりました。しかしながら、これらの制度がどれくらい有効に活用をされておるのか、あるいはその運用状況等をお聞かせを願っておきたいと思います。
  90. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のように、昭和四十七年の土地改良法改正で市町村協議制度、それから非農地の受益者賦課制度、それから管理規程の差しとめ請求制度という三つの制度がいわゆる排水路の多目的利用に伴う現実的な問題解決のために設けられたわけでございます。  そこで、制度の運用状況を見ますに、まず市町村協議の制度につきましては、市町村、土地改良区の両者からもかなり評価されまして、話し合いがかなり行われてきたことは事実でございます。特に地域によっては汚水処理対策、生活排水処理対策、廃棄物処理対策というふうな視点から取り上げられてきているわけでございます。国としても四十七年度から市町村のこの協議を積極的に進めるため農業用排水路等利用調整対策の予算措置を講じ、協議が進められるような地区を選定してモデル的に事業を進めてきたわけでございます。しかし、やはりただいま委員御指摘のように、さらに混住化が進み、問題の発生が広域化し、複雑化していることは事実でございます。また、その発生地域が従来のように三大圏の大都市周辺だけではなくて、全国に広がってきているという点があります。こういった場合、やはりなかなか土地改良区と市町村長さんの立場だけでは問題の解決がつかない。やはり開発問題をどう考えるかとか、新しくできた団地の住民との関係をどう考えるか、こういう問題について何らかの指針なり、また確実にこの協議がゴールに到達できるような担保措置、こういったものがないとなかなか最終的にうまく稼働しないという点が問題として提起されてきているわけでございます。  それから次に、非農地受益者賦課制度でございます。これはいわば公権的な機能と申しますか、担保的機能を最終的に法は狙っている考え方でございまして、これを前提にしてどうするかということなわけでございますが、これもなかなか特定の産業、企業との関係では問題を処理できるとしても、一般住民との関係ではなかなかうまくいかないということだろうと思います。  それから、予定外の排水差しとめ請求制度あるいはその前提になる管理規程につきましては、原因者である工場というのが特定明確であり、かつ規模がまとまっている場合等についてはかなり実効性を上げている、その制度の適用をまつ前に問題の解決が図られているという事実はございますが、なかなかこれが一般住宅その他になるとうまくいかないという実態があるわけでございます。  そこで、やはり問題は、これからは土地改良区と地域住民をトータルとして代表しておられる市町村長さんとの間において話し合いを進めていただいて、問題が解決しない場合は公平中正な立場から都道府県知事の裁定を仰ぐという法律上の担保措置を一方に置き、また同時に、その協議の仕方とか手続、例えばどういう方の意見を聞くか、どういう段取りで進めるか、それからまた裁定する場合にはどういう基準で裁定するかという実態的なルールづくり等について指針を示すことによって、問題の解決をさらに一歩進めてまいりたいと思っているわけでございます。
  91. 水谷力

    ○水谷力君 そこで知事の裁定制度の導入の問題でございます。  今回の土地改良区と市町村等との協議に係る知事の裁定制度導入ということでございますが、本問題の実態地域によって相当に差異があることもあり、知事が裁定を行うに当たっては実態の評価やあるいは土地改良区と市町村等との分担方法だとかいろいろ問題がございまして、これの統一的明確な考え方あるいは基準が示されておりませんと、この制度の運用というものは大変に難しくなる。そういう意味において本制度の具体的運用方針というものをお伺いいたしておきたいと思います。
  92. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 法律が成立しました段階において、私どもこの件についてはかなり詳細 な指針を持って指導を行わなければならないと思っております。現在検討しております内容について申し上げますと、まず手続面でございますが、裁定前に市町村と十分協議を進め論点を整理してから裁定すること、それからもう一つは、当事者の意見を十分聞いて裁定を行うこと、それから三番目は、必要があればやはり専門的な学識経験者を構成員とする協議会等の意見も聞いてみること等について指導してはいかがなものかということで検討しているわけでございます。  そこで判断基準でございますが、これはいろいろな場合がございますが、やはり問題になるのは、一つは水であるとか水質汚濁であるとか原因が明確であり相手方が特定できる場合と、特定できない場合とがあるだろうと思います。原因が明確であり相手方が特定できる場合は、その原因者に負担を帰せしめることが現在の法秩序の基本だろうと思いますが、やはり不特定多数である場合は市町村が代表して問題を処理するということで考えていかざるを得ないだろうと思います。  この場合に公平な分担を図るための調整手法といたしましては、市町村の意見も聞きながら施設の例えば市町村への管理移転という問題、あるいは管理費用の市町村による分担という問題を定める必要があると思っております。一番問題になるのは、この管理費用の分担ルールであり分担基準であると思います。これにつきましては、やはり地積とか排水量等の客観的指標を基準として算定することが必要だと思っております。  率直に言いまして非常に難しいのは、こういった問題が起こるところは一方において必ず農地の壊廃を伴っているわけでございまして、いわば農地の水に対する貯留能力が失われてきている、それが溢水被害につながるというケースが多いわけでございまして、こういった問題をどう評価するか等につきましてはさらに我々としましても専門的に詰めまして、具体的な基準、参考になる基準を定めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  93. 水谷力

    ○水谷力君 今の裁定制度の問題はもめたときに出てくる。そこでさらにもう一つこの問題の対応として、土地改良区が事後的に費用分担を求めるといったことのみならず、地域開発が行われる際にあらかじめ計画的長期的視点に立った対応策を講じていくということも重要なことだと考えます。他方、このような地域開発がどんどん行われる際に調整を行おうとすれば、土地改良区と開発関係者との間に種々の摩擦が生じることも当然予想されるわけでございます。このためには種々の利用調整方針を明確にしておくとともに、これの土地改良区への啓蒙普及ということも必要であろうと思うのです。  したがって、政府としては具体的にそれをどのような方法関係者を今後指導されようとしておるのか、お伺いをいたしておきたいと思います。
  94. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まさに水谷委員御指摘のように、原因に、なる開発行為の時点で問題をどうとらえるかということは私ども非常に重要な問題だろうと思います。  そこで、実は今回の法律改正までこぎつけるまでには行政上も検討その他いろいろな経過をたどったわけでございますが、五十八年の七月に都市計画法の施行令の改正を契機といたしまして、私ども建設省と協議いたしまして開発行為と土地改良区の水管理との調整に関する運用指針を定めまして、これを示して現在施行されているところでございます。その運用指針というものは、やはり開発区域から生ずる下水の排水については極力農業用排水路を避けることが好ましいけれども、やむを得ず利用する場合においては量及び水質の面で適切な排出が行われるよう調整を図り、開発行為に伴う市街化の進展等により農業排水施設における転落事故の発生が増加しているという問題とか、あるいは維持管理費が増加しているという管理上のおそれがある問題については、あらかじめ当該事態の防止のための安全施設の整備やこれに伴う費用分担の適正化について調整を図ること等を指導しているわけでございます。  また、こういったことは開発行為者に指導するだけではなくて土地改良区に対しましても、開発行為の及ぼす影響の度合いを的確に把握して将来の営農、それから施設管理を円滑に進めるための長期的視点に立っての対応策の検討を個別に指導しているところでございます。  どうにか五十八年七月のこの施行通達を出してから、ようやく個々の案件についての処理も軌道に幾らかずつ乗りつつあるというのが現在の時点でございます。私どもはやはり基本的には、今回の法改正でもお願いしております土地改良区と市町村の協議と、それを担保する知事裁定制度を基本に置きながら、ただいま委員御指摘のように、事前の問題としては都市計画法に基づく開発行為の許可制の運用に当たって御指摘のような点を未然に防止するための努力を並行して進める必要があると思っておりまして、法律制定後も改めて都市計画法に基づく通達をリフレインして必要な指導を行ってまいりたいと思っております。
  95. 水谷力

    ○水谷力君 要は、農業用用排水路の水質保全を図るために基本的には用排分離というものを積極的に推進をして招かなきゃいかぬ、あるいはこれからも進めていかなきゃならぬということでございます。  この用排分離の今後の施策とがあり方というものもお聞きしておこうかと思いましたが、それは次に譲って、さらにまた集落の排水施設の整備等の問題、つまり農村部においては今現状において大規模な下水道整備がどうしても立ちおくれております。これはすべてを含めて日本の下水道整備がおくれておるのですから、当然のこと農村部においてはおくれておるという状況のもので、農業集落排水施設の整備を行う際の事業実施手続を法定化することとされておりますが、現状では土地改良区が本事業を円滑に推進するということは、先ほど来申し上げてきたようないろいろな問題を含めてなかなか困難なことであると考えます。土地改良区が円滑に事業を推進し得るよう、その財政面や技術指導面での充実強化等もひとつ図っていく必要があると思うのですが、その点のお考えをただしておきたいと思います。
  96. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 集落排水事業は、いわゆる農業水面とか農業用水路とかあるいは公共水面の水質を保全するために、農村自体の生活環境整備、特に婦人問題等を頭に置いた場合においては非常に重要な課題でございます。私ども、やはり結論を先に申し上げますと、長期的に見ても、この農村の集落排水整備事業が市町村が中心となっている現在の体系はそう変わらないと思います。土地改良区が行う部分はむしろ例外的であり、補完的であるということだろうと思います。そこで、実態は現在の市町村が実施する集排事業を中心考えていけばいいわけでございますが、やはり例外的には土地改良区が市町村とお互いの協力の画で協力しながら実施することが十分あり得る。現にそういう要望も出てきているということを受けとめて今回の法改正をお願いしているわけでございます。  そこで私どもとしては、やはり御指摘ような財政面、技術面での安定性の確保が重要な課題であろうと思っております。財政面では、国の補助制度がありますほかに、土地改良資金の拡充を五十八年度から図っておりまして、例えば宅地内の下部配管の融資等も対象に取り込んでおります。そういうことを考えていきたい。技術面においては、これがなかなか難しい問題でございますが、ようやく昨年、予算の独立と並行いたしまして、社団法人日本農業集落排水協会が設立されたわけでございまして、この協会と市町村の技術援助というものを強化して、土地改良区の体制整備技術面でも図っていきたいと思っております。  いずれにせよこの問題は、一つは、どういうふうな方法が一番効率的であるか、それから水質の保全をどうやって図っていくか、それからさらに、廃棄物である汚泥をどうやってリサイクルして利用するかというふうないろいろ多面な新しい課題を持っておりますので、十分留意して技術指導に当たってまいりたいと思っております。
  97. 水谷力

    ○水谷力君 今のお話の集落排水というものは、これからますます混迷化してくるというか、大変難しい問題を含んでおります。これらの各種のいわば農業外部門との利用調整措置というもの、さらに事業を推進するに当たって、今局長が言われたように、従来地区の御要望にこたえていわば市町村営式に実施をしてきておったというのが実態でございます。今回、土地改良区においてもその附帯事業として実施ができるようになったということはまことに結構なことでございますが、今後は、地域の行政主体である市町村や、あるいはまた、ずっと混住化の問題で申し上げたように非農家が随分いらっしゃる。いわゆる関係農家の本問題に対する認識というものも十分に深めてもらわにゃいかぬ。そういうための必要な調整を行っていくことが最も肝要だと思うのですが、この点について関係方面に有効な指導を行っていただきたい。ひとつ御方針をお伺いをいたしておきたいと思います。
  98. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 集落排水事業自体につきましては、実は建設省が下水道法で実施されます下水道と私どもの実施しております集落排水の間では一定の分野調整を図って進めているところでございます。その中で、やはりただいま委員御指摘のように、非農家農家との関係をどう見るかという問題等があると思います。それからまた、ベースになります、もとにあります農業用の排水路の利用管理という問題が基本になるわけでございまして、集落排水の問題もこの問題と無縁でないことは私が申すまでもないわけでございます。やはり地域全体としてこういった農業用の排水施設等を重要な資源として位置づけて、土地改良区だけではなくて、市町村とか地域住民が一体となって適正な管理を公平な分担のもとに行うということがこれからの混住化社会への対応の基本だろうと思います。  ただいま御指摘の点を頭に置きまして、私はやはり具体的逆用のためのマニュアルというものを作成して、関係自治体や土地改良団体に対して適切な指導を行う必要があると思います。時代が刻々に変わっております。そういう意味においては、そのときそのとき必要な手直しを加えながら、やはり運用の指針を着実に積み上げていくということの努力を続けてまいりたいと思っているわけでございます。
  99. 水谷力

    ○水谷力君 そこで、県土改連の問題です。今申し上げたように、農業用排水路でさらに地域の排水路ともなっているもの等の管理や、あるいは土地改良区が抱えている混住化等に起因する諸問題が頻発をいたしておる。それに的確に対応していくために、ここで県の土地改良事業団体連合会が土地改良区に対する対応策の指導やあるいは技術的な援助を強化していくということが大変重要になり、さらに今回の改正によって連合会の指導事業の明確化をされておるわけで、これを契機に県土改連も、それぞれ傘下の改良区と密接な協力をしながらそういう問題に対処をしていかなきゃならぬと思うわけですが、ひとつその指導方針というものをお伺いいたしておきたいと思います。
  100. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 土地改良事業団体連合会が行っております指導内容というものは、年々御指摘のように複雑化し、高度化しております。管理指導センターによる大規模土地改良施設の管理、補修等についての技術指導、それから農村総合整備センターによる農村総合整備についての技術の診断や指導、さらに大規模土地改良事業の構想の具体化のための準備、調査等の仕事がございますし、また、特に先ほどからも再三議論が出ております農業用排水路の利用調整の問題、あるいは集落排水施設整備の問題等についても、必要な技術的知見と経験が必要になってきているわけでございます。  私どもといたしましては、本改正を契機にいたしまして、県の連合会がさらに会員に対する有効な技術指導に努められるよう、その財政的基盤の確立、技術者の確保、それから講習等については意を用いてまいりたいと思っております。現在もこういった県土連の職員の技術研修等については、かなり国といたしましても必要な施設を提供し、スタッフを動員して実施しておりますが、こういったことを手がたく着実に強化してまいりたいと思っているわけでございます。
  101. 水谷力

    ○水谷力君 もう時間がありませんから、さらにもう一つお尋ねをして最後といたしたいと思います。  いわゆる非農用地の生み出しの問題、今大臣も言われた豊かな町づくり、あるいは村づくりを進めていくためには、公共用施設等の整備による環境改善を図ることが必要でありますが、優良な農用地を確保するとともに、あわせて施設用地をも円滑に確保する上で、圃場整備事業を通じて計画的に非農用地を生み出していくことが大変有効な手法とされております。  そこで、これに関連して現行の換地制度における非農用地生み出し手法の活用による施設用地への対応実績はどのようになっておるか。また、今回の換地制度の改善措置を講じることによってどのようなメリットが生じてくるか。また、生活環境施設等の整備がどの程度図られてまいるかというふうなことについてお考えをただしておきたいと思います。
  102. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 国民全体の生活水準向上に対する強い要望というものは、農村地域においてもやはり生活環境施設の整備に対する強い要請となってあらわれております。そういう意味でこの需要は年々増加しております。五十七年までに完了した地区について見ますと、国営、県営だけで、六百八十一地区中七十一地区で非農地生み出しをやり、面積では百六十四ヘクタール、全体の〇・〇七%の生み出しが行われた実績があります。五十八年現在の継続地区について調べてみますと、千七百十六地区中の六百三十五地区で予定されておりまして、これも面積で見ますと、総地区面積の約〇・五%程度の生み出しの計画があるという状況でございます。  私どもは、非常に大事な問題は、やはり土地、水利用のスプロール化をどう防止していくか。つまり裏返して申し上げると、生活環境施設用地をつくる場合においても、それが合理的な位置に適切な規模をもって配置されるかどうかということが基本であり、また第二には、そういった地域社会の住民の共益施設を住民の共同費用負担で、できるだけ特別の自治体の予算措置を軽減して実施できるということが、地域社会の繁栄を図る意味では大事な問題だろうと思っております。  そこで、今までは不換地の申し出者または同意者がある場合にのみ用地を生み出すことができるということにしておりましたのを、共同減歩により生み出すことができるとしたのもこういう点にあるわけでございます。しかし、同時にこういった地域につきましては、我々といたしましてはそれが土地、水利用のスプロールを防止し、適正な配置で適正な規模で行われる公的計画に基づくものを基本とし、十分土地改良区と市町村の協議を経て適切な生み出しが行われるよう、法制上も予定し指導もしてまいる所存でございます。
  103. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 私は、農業振興地域整備に関する法律また土地改良法の一部を改正する法律案につきまして若干の質問を申し上げますが、きょうも同僚委員からいろいろな問題の提起がございました。総体的にはこの法律はやはり時代に即したものということで、農振法につきましては四十四年ですか、制定以来今日まで何度かその時代の要請に応じて改善をしてきたわけであります。今回の改正も急激な社会の変化に対応しようということで、追認的な意味もあるかもしれませんが、その動向に即したものだろうと思うのであります。  しかしながら、農業全体を見まするところいろいろな法律があり、それにいろいろな計画がございますけれども、他産業に比しましてやはり大きな格差があるのは否めない事実だと思います。農業基本法制定以来他産業に化する所得をということで、総合農政ということでいろいろ施策が進められてきたわけでありますけれども、こういう厳しい現実を見まするところ、さらに強力な施策が必要であると思うのであります。  農業基本法制定以来二十三年を経過をしておるわけでありますから、その功罪は、今日までもいろいろ論じられてきているわけであります。また、今後の農業政策農業の進むべきあり方としまして、農林省からも長期の見通しや八〇年代農政方向についてとか、いろいろなそれぞれの指標といいますか、そういうものが説明されているわけであります。山村農林大臣は豊かなむらづくりということを提唱なさっていらっしゃる。ビジョンとしてはまことに農林大臣として立派な言葉ではあるわけでありますが、これを実現するためには、きのうもいろいろ申し上げましたが、非常に時間のかかることでもあり、また諸施策を総合的に進めなきゃならないということで、大臣がこれを提出なさるにはそれなりのお考えがあって発表なさったことだろうと思います。  こういうビジョンというのは、一大臣があるときに突然美辞麗句を並べるということではなくて、歴代の大臣がその方向努力をしていく。大臣がかわるたびに別のスローガンが出てくる、ビジョンが出てくるというのじゃだめなので、こういうことから、大臣も今日まで半年、いろいろ御努力なさってることは私どもそれなりに評価をいたしますが、とにかく息の長い農薬、しかも豊かなむらづくりというビジョンを打ち出す以上は、大臣としてもそれなりのお考え、それなりの施策、きょうのこの法律もその中の一つであろうかと思うのであります。  そこで、大臣の打ち出しましたビジョンについて、その施策につきまして具体的なお考えがございましたら、最初にまずお伺いをしておきたいと思うのであります。
  104. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) このたび豊かなむらづくり等を提唱いたしましたが、ちょうどこれからこの豊かなむらづくりを目指して、引き続いてこの目的完遂に向かって今後も続けていくべきものと考えて提唱いたした次第でございます。  農村社会が、農林水産業の生産の基盤だけではございませんで、いわゆる地域住民の生活の場であると同時に、国土の保全、また緑豊かな景観と自然環境の維持、これらを通じて都市住民に安らぎを与えるというような役割も果たしておるわけでございます。今日の日本の経済社会情勢のもとで農村社会が兼業化、そして混住化、老齢化の様相を強めてきておりますが、このような現実に立って、農薬の振興と住民の生きがいとの調和や、農家と非農家との協力の上に活力ある農村社会の建設に努めてまいる必要があると考えたからでございます。  このような観点から、若い農業者に夢を与える農業の振興、次に地域住民の就業の安定、地域社会の連帯感の醸成と資源の有効利用、また生活環境の条件の整備、都市と農村の交流の推進、これらによりまして総合的に豊かなむらづくりを進めてまいりたいと考えております。人口の地方定住化、また高齢化など農薬、農村をめぐる諸条件の変化が見込まれる中で豊かなむらづくり等を通じて活力ある農村社会の形成を進めることは、今後とも農政の重要な課題であると考えております。
  105. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 農振法は、「総合的に農業の振興を図るべき地域を明らかにし、土地農業上の有効利用農業の近代化のための施策を計画的に推進することを目的として、昭和四十四年に制定され」た、これは大臣の提案理由の説明の中にもございますが、端的にこういうことだろうと思います。今は大臣、我々からすれば農村がそういう姿であってもらいたいということをいろいろと列挙なさいましたが、それをいかに実現させていくかという手順といいますか、これが大事なことになるのだろうと思います。  今までも農業振興法につきましては何度か改正がございましたし、そういう中でこれが進められてきたことは御存じのとおりです。農業の近代化というためには各種の施策を計画的に推進しなきゃならぬことは、提案理由の説明の中にも大臣がいろいろ述べられております。まことに計画というものが着実に進められることが大事なのですが、経済変動の大きな波をかぶりまして、農業だけではございませんが、ほかの事業につきましても、大きく計画を変更せざるを得ないようなことがたくさんございました。  今問題になっておりますが、やはり農業の振興にもそれ相応に、土地基盤整備を初めといたしましてお金をかけなきゃならない部門がたくさんあります。臨調からは農業が金食い虫のように見られておる、しかし、やることはやらなければならない、こういうことで大臣が今申し述べたそのビジョンを実現するためには、ことしの予算におきましても相当御努力をいただきませんと、厚い壁を打ち破って予算獲得といいますか、政策推進のために御努力をいただきませんと絵にかいたもちになってしまう。  私はそういう点で、今度のこの法律施行のためにどれだけの予算がかかるか。これはこのもの自体は事業計画じゃございませんからすぐお金がかかるということじゃないのかもしれませんけれども、一般論として農業の、先ほど大臣からお話がありました一つ一つの項目実現のためには、必要なものに対しましては積極的なお取り組みが必要ではないか。こういうことで、大臣に、この五十九年度の予算も今いろいろ取りざたされておりますけれども、取り組みの姿勢とか考え方とか、こういうことについてお伺いをしておきたいと思います。
  106. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 昨日は主に米の問題でございましたが、しかし、その間にありまして総理からもいわゆる農業というもの、そして食糧というものを国民に安定的に供給するという農林水産省の立場、また国の安全保障につながる食糧の備蓄、これらについてもるる理解ある御答弁がございました。今後とも我々農林水産省といたしましては、この農林水産予算獲得に関しましては、何にしても国民生活の一番基礎となる食糧を我々が安定的に供給するのだという責任と自負を持ってこれに当たり予算の獲得に当たりましてもその基本姿勢に立って一生懸命やってまいるつもりでございます。
  107. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 さて、今日までの農業政策農業の問題を見ますと、三十年代から四十年代にかけまして高度成長の時代に差しかかって、この時点に一つまた大きな問題がありまして、またオイルショック、こういう何度か経済変動の波をかぶりまして、農業にもそれなりに大きな影響のあったことは御存じのとおりです。農産物は国民ひとしく必要とするものであるという観点から、主要なものにつきましては価格支持制度というものが設けられているわけです。そういうことで価格政策というのは重要なウエートを占めると思うのです。ところが、最近ずっと見てまいりますと、お米を初めといたしまして価格が低く抑えられ、そのことのために農家経営が立ち行かなくなる、そして農業を放棄せざるを得なくなるという姿が三十年代から四十年代、またオイルショックの時代から何度か私どもは見せつけられました。  かつては日本の人口の半分以上が農村にいた時代もありました。そういう人たちがいつまでも農村にいるようなことは、これは社会の変動とともに変わらなきゃならないことなのかもしれません。しかし、農林省としましては、やはりこういう価格支持制度というものの設定の上に立って、そして土地基盤整備ということを主力といたしまして、この効率的な合理的な営農というもののできるように最大の努力をしなきゃならぬ。こういうことを考えますと、低く抑えられた価格で営農できない農家はやはりふるいから落とされる。価格政策といいますか、価格が低く抑えられることによって、できる農家とできない農家がそこから選別されるような形が出てくると言わざるを得ない。  これは価格政策そのものだけでは決してないのかもしれませんけれども、営農努力をしながらも、また農林省としましては当然進めなければならない土地基盤整備事業の推進というものが十分に行き届かない。こういうこと等もあわせまして、こういうことから言うと、価格政策というのは農産物農業中心といたします営農の中では 非常に大きなウエートを占める、この運用というものが非常に大事な問題である。こういうことで、米価を初めといたしまして、今日まで農業団体等、また価格決定の時期に際しますと、本当にいろいろ議論が闘わされるわけであります。確かに一面から言いますと、国際競争力といいますか、外国との価格の比較ということが一つは言われるわけであります。  しかし、基盤整備をし、そしてそれなりの合理化のできる体制に進むまでの間というのは、農家にとりましてもやはり一つの大きな転換点に立っているわけでありますから非常に難しい局面に立たされる。そういうことから、従来の営農方法で便々としているということならいざ知らず、やはりそれなりの努力をしながら、こういう事業の推進がなかなか伴わないということのためにふるい落とされるようなことが今日までは何度か私どもも見てきて。おるわけであります。  こういうことからいたしますと、現在言われておりますことは、農業所得に大きなウエートをかけている農家ほど大変な苦しい立場に立たされている。言ってみれば、稲作農家で言えば専業農家ほど農業所得というものが非常に低いために、かえって兼業農家の方が安定的な営農ができるという方向に最近はだんだん流れつつある。基盤整備が進めば進むほど合理化された一面、それは労働時間の短縮ということで営農がしやすくなる。こういうことで、必ずしも当初農林省でいろいろ計画をし、考えられたものが、そういう方向に進んでいるとは言えないような実態というものがだんだん出つつあるのではないか。  水が高さから低きに流れると同じように、そのときそのときの経済情勢というものによって農家方々がどう選択してどちらの方に進むかというのは、やはり所得の得られる方向へ、自分の生活の確立のできる方向へと進むのが当然のことです。こういうことから、農業所得のウエートの大きい農家が生活がなかなか安定しないという現状というのはどこにその欠陥があるのか。こういう問題については今後農林省としてもどう受けとめて、この改善の方途というものを見出そうとしているのか。これは一般論でありますから、いろいろな立場方々もおりますので抽象的な話で申しわけないのですけれども、私どもは各地を回りますとそういう話をよく聞かされるわけであります。農林省としてもその間のことについてはいろいろ分析をし、また白書にもむなしい一文もございますけれども、どのようにこれを受けとめて、そしてまた、今後の政策の上にそれを生かそうとしていらっしゃるのか。受けとめ方、対処、これらのことについてお伺いをしておきたいと思いますが。
  108. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 高度成長時期で日本人の胃袋が膨張します時期については、国が価格支持政策を実施しておりますものについても、あるいは市場価格にゆだねられたものについても、それなりに財政の負担なり消費者の負担において生産刺激的な価格形成が行われて、これが今日の生産規模をつくり上げたことは事実でございます。しかし、御案内のような農産物の需給の緩和傾向、その背景にある日本人の胃袋の飽和状態、所得の停滞、それから価格問題に対する消費者の意識の高まり、さらに国際的交流機会の増大ということから見て、いわゆる従来のような生産刺激的な価格政策の展開は困難になっていることは事実でございます。  こういった状況から、ただいま藤原委員御指摘のように、最近数年間の動きを見てみますと、農外所得の伸びが農業所得の伸びをはるかに上回っている。この結果、トータルとしては、マクロ的に見ますとむしろ専業的な農家の家計の方が兼業農家の家計より苦しい状態になっている。第二種兼業農家がむしろ家計的には一番安定した状況になっているということは事実であろうと思います。しかし、一方において考えますと、実はこれら専業農家の中にも跡取りのない農家がかなりあるわけでございます。それから兼業所得の安定というものと時代の変遷というものが、いわば既存の中堅兼業農家等の農業に対する執着度を著しく弱めていることも事実でございます。  私ども、先ほど来大臣も申し上げておりますように、いわばそういった可能性をもたらす条件に着目しながら構造政策を進め、規模拡大土地利用の面的集積を進めることにより生産性を上げ、これによって農業所得の増大を図るという農薬政策本来の取り組みが今こそ必要であり、かつ可能な時期になったろうというふうに認識しているわけでございます。そのような意味におきまして、価格政策は今日の状況では抑制的に運用するけれども、施策の重点を従来の単なる所得均衡に着目した価格政策の展開から、いわゆる構造政策力点を置いて、土地利用調整を進め基盤整備を進めるという指針を政府としても打ち出しているわけでございます。一つの転換の時期でございます。何を先決問題として考えるかというのはなかなか難しい問題でございますが、やはり中核的な農家の中には生産性の高い、所得の高い農家がたくさん生まれつつあります。私は、そういった好ましい中核農家というものの数をできるだけふやしていく努力ということをやはり今日こそ着実に積み上げなければならない時期であろうと思っているわけでございます。
  109. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 今局長からお話ございましたけれども農業所得のウエートの高い農家ほど農外所得のある方と比べて家計としましては苦しい、そういう一面は確かにある。過日大潟村へ行って多くの方々お話ししましたが、やはり規模が大きいから必ずいいのかということで、いろいろお話を聞いていて私も感じたのですが、転作をいたしますにもああいう立地条件の中で転作をするということになりますと、水田ならいいのですが畑作ということになるとなかなか難しいようです。  しかし、面積が大きいだけに、そこでなれない畑作物を転作をする。なれないのに大きな面積でということですから、それなりの収入がございますというのですが、小さい面積では少しぐらいの失敗もそれは金額的には少ないかもしれませんが、大きな面積を持って、そして政策転換のために転作をしなきゃならない。それが麦なんかは御存じのとおり去年は大変な時期だったものですから、ことしの秋まきの麦はもう大変な被害です。被害をもろにかぶるということで、確かに規模拡大規模の大きな中核農家方々が安定した営農をするというのは、ただ規模が大きいということだけではなくて、規模が大きいということとともに、やはりその立地条件に合った営農計画といいますか、その土地に合った農作物といいますか、そういうものとのいろいろなかみ合わせというか組み合わせというものが非常に大事なことになるのだなということ。一つ失敗いたしますとそれは大きな負債となって次々におおいかぶさってくる。やはり、どんなに技術が発達したといたしましても気候に左右される面もございますし、また技術的なものも多分にあるわけでありますから、そういうことで非常に難しい二面がある。  今も局長からお話ございましたが、中核農家育成ということも、過日静岡の大須賀町に現地調査に参りましたとき、集団化を形成している地域では自立経営農家というものは非常に難しいというお話がございました。あそこの地域については、町長さんが土地改良区の理事長さんでありながら町長さんということで、農薬と、農業サイドの行政とまた自分の土地改良という立場と非常にうまくミックスしてお仕事をなさっているようであります。それだけにいろいろな今までの経験を生かしてなさっているのだろうと思いますが、やはり中核農家育成ということもそうあってもらいたいし、そういう方向に行くべきだと思います。また、集団化ということも大事なことだろうと思いますけれども、そういう形が定着するにはやはり何点かの要素といいますか、いろいろな問題があるのではないか。  そして、かつてはやはり地域に、集落にリーダー格の方がいらっしゃったわけですが、最近はだんだんそういう人間的な関係というのは変わりつつあるのではないか。また農業に非常に、特に酪 農なんかですと、一生懸命やっている方は、親代代農家をやっているという方よりも別な人が多いということで、地域農業集団、集団化を進めるという、そして生産性を上げるということはまことにそうあるべき姿だと思うのであります。こういう成功した例は私どもも何点か見ておりますけれども、なかなかやはり根づかない。苦悩しておるところもまた見ておるわけです。理想像としてこういうものを描くということは私どもはわかりますが、今日、全国的ないろいろな姿の中で、もっときめ細かに見定めていかなきゃならない問題を農林省としてもいろいろお考えになっていらっしゃるのだろうと思いますが、どのようにお考えになり、またこの育成のためにはどういう手だてをお考えになっていらっしゃるのか。その辺のことについて伺っておきたいと思いますが。
  110. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) なかなか私どもも今の集団化の問題は頭を痛めている問題でございます。  まず、事実を申しますと、例えば昭和五十五年の「農林業センサス」を見ると、農業生産組織への参加農家は四十七万戸で、そのうち十八万戸が中核農家である。特に、水稲の生産組織に参加している中心的な担い手七万戸のうち、約半数の三万六千戸が中核農家であるという事実があります。しかし、率直に申し上げまして、この間の大須賀町の例にもありますように、やはりこういった集団的な生産組織というのは、多くの場合過渡的な姿である場合が多いのではなかろうかというふうに私は認識しております。  例えば、経営作目の変化、機械、施設の新設等を契機として設立され、また、そういった事情の変化があれば壊廃していくということではないだろうかと思っています。そういう意味において、実は第二次の構造改善事業におきましては、集団的生産組織の育成ということをかなり重視したわけでございますし、三次以降からは土地利用調整を集団的に行うという、土地利用調整の集団化ということに力点を移行いたしまして、いわば集団的生産組織は個別経営の中核的担い手と並ぶ受け手の問題として位置づけ、問題に取り組んできているわけでございます。  私どもといたしましては、基本的な認識といたしましては、やはり地域社会における集団的な土地利用調整を通じて中核的農家への利用集積を図っていくということが基本であり、その中核農家一つの態様として集団的生産組織が過渡的にあるけれども、それが永久に安定する性格のものではないと。この間も大須賀町の町長さんも言っているように、へたをするとオペレーターの継続組織になってしまうという側面があることは私どもも事実として受けとめなければならないし、そういう意味合いから土地利用調整という点に着目して問題の発展を図っているということでございます。  ただ、リーダーの問題、継承の問題、これから農村社会も大きく変わるし難しい問題があると思います。従来のように、いわゆる昔の言葉で言いますと、在対地主の自営農民の中の大きい方が、いわゆる農村社会のナショナルリーダーとして技術面、経営面で指導的役割を果たしてきたという時代は既に終わったと思います。それからまた、新しい農業に従事する方々を見ていくと、確かに安定した農業経営の後継者がなる場合もありますが、全然農業以外の方が、あるいは農業にお父さんは余り重点を置かなかったが、息子さんがむしろ農業に関心を持って新しく取り組んでいるという事例もあるわけでございまして、こういう御時世でございますから、私はやはりリーダーの交代とか、いわゆる農業経営も先祖伝来の中核経営というふうな位置づけの時代は終わったのではないだろうかと思っているわけでございます。こういった課題は、ただいま藤原委員の御指摘も十分頭に置きまして、十分事態を観察し、次の課題としてこういったリーダーの問題なり後継者の問題はさらに勉強さしていただきたいと思っております。
  111. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 去年、当委員会で新潟ですか視察に行きましたとき、いろいろなお話をお聞きしましたが、あるところでは後継者がいらっしゃってアメリカにも実習に行ったりなんかしまして、たしか十五町ですか集約したということでした。自分の土地が八町ぐらいで、そのほか六、七人の方方からお借りしているということですが、その中身をいろいろお聞きしますと、事業をやっていてもうとてもお仕事はできないということでお貸ししますという方や、それから今度は、町へ出て仕事をするので農作業はとてもできませんということでお貸ししますという方。ただ、そういうことで土地が自分のところにまとまっているのならいいのですけれども、ほかの町にまで、隣の村まで行かなければならぬというようなこういうことで、土地の集約というのはなかなか難しいことだなあということを痛感しました。  それから、宮城県なんかいろいろ聞きますと、都市近郊の土地というのは地価がどんどん上がっておりますから、自分の田畑、もちろん調整区域でしょうから売りまして、そしてそのお金で農振地域、本当に水田地帯の土地を買おうということになりますと、何倍かの土地が買えるということでその町の人でない方が所有者になるという、そういうケースも私ども聞いておるわけです。土地の流動化、また集約化というのは規模拡大の上に欠かせない問題でありますけれども、いろいろなケースが最近出ている。そしてそれが実際にあるべき姿として望ましいものと、なかなかそうでないものとのそういう問題、いい方向にいっているのはそれはいいですけれども、こういう社会情勢、こういう経済情勢でありますからいろいろな難しいなあということを痛感しておるのです。  そんなことについては、一時期の土地の集約化という個人的なことよりも、集団化という方向もまたパラレルに考えていこうということでありますからそれはそれなりでよろしいのですけれども土地の流動化のことについて農林省としていろいろなケースについて御検討をなさっていらっしゃると思うんです。こういう極端な例は別といたしましても、今後集団化とともにやはり中核的な農家というものもやりたいという意欲のある人は規模拡大するのは望ましいことでありますから、それを阻害するような方向性のこういう問題について幾つかお知りになっていらっしゃるだろうと思いますし、また、いろいろ部内でも御検討なさっていらっしゃるだろうと思いますが、こういう問題についてはまたいろいろお考えがあるのじゃないかと思いますが、どうでしょう。
  112. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 規模拡大が同時に土地利用の面的集積を伴う場合、十分の効果を発揮するのは事実でございます。幾つかのサンプルの例でございますが、例えば圃場が五ヘクタールなら五ヘクタールで一カ所に集積している場合と、同じ五ヘクタールでも集積されない場合ではやはり規模拡大の効果が四割方ぐらい減殺されるということは事実でございます。これをどう実現していくか、静的と申しますか、スタティックに申しますと、圃場整備をやってその後の換地処分で面的集積をやることが一番理想的なわけでございますが、実はそこにとどまらないで、またその次の農村社会の変化があるわけでございまして、ある意味では変化は絶えずあると受けとめていかなければならないだろうと思います。  そこで、私ども実は昨年から実施しております地域農業集団育成による土地利用調整でも、四つのゲートを設けたということはこういう点にあるわけでございます。  まず第一は規模拡大でございますが、これも必ずしも利用権の設定だけではなくて作業受委託でもいい。同時に反面、私どもといたしましては、今、藤原委員御指摘の面的集積を伴う規模拡大利用権の設定には賃貸奨励措置等で優遇措置を講じてできるだけドライブをかけていく。  それから第二は、すぐ土地利用権に手をつけられない、利用関係に手をつけられない場合については、大型機械の共同作業のオペレーターを育て、その共同作業の過程でいわば合理的な作付を実現させて、その次の段階においてやはりその中 心人物に、集団化された達成可能な土地が作業受委託なり利用権の集積につながっていくいわば伏線をつくっていく、前提をつくっていくということが第二の点でございます。  それから第三の方法は、これはやはりローテーションの問題を頭に置き、あるいは有畜営農と耕種農業との連係を頭に置いて地方の維持という視点から土地利用交換をもって、所有権を利用しながら利用交換を促進していくということを進め、そういう形でいわば土地利用関係の集団化を進めていく、あるいは計画的な利用転換、ローテーションを考えていく。  それから四番目は、既耕地の表作だけではなかなか難しいわけでございますから、休耕地の解消あるいは里山の開発、さらには裏作の導入というテーマから、いわば土地利用部分的に中核農家にしかもまとめて固めていく。特に裏作の麦等では表作の場合と違って、面的にまとめて作業受委託に出すということはかなり可能な条件があるわけでございますから、そういう四つの道を選んだわけでございます。  不動産の貸付でございます。したがって対人的信用関係というものが基礎であり、その信用がなければ農用地利用増進法による利用権の設定ではなかなか行えないという実態があることは私は歪みがたいと思います。その壁を破っていくためには、やはり地域社会の社会的合意の中で中心になる農家が逐次決まってきて、この人に利用が集積され、また、その人に対する信頼関係が培われて最終的に利用権が集積され、また土地利用も集団化していくという実態をつくり出すことが非常に重要ではないかと思っております。  こういう意味で、いわばそれぞれの地域農地の需給関係の差、貸し手が多くて借り手が少ない地域、特に大都市近郊なんか、それから逆に東北等の平場等に代表されるように借り手が多くて貸し手が少ない地域、こういう地域差とか、あるいは作目の差、先ほど申し上げましたように、同じ地域でも飼料作物の導入のための畑作の利用権の設定と水田の利用権の設定と全然違う動きになっているわけでございます。こういう点に着目いたしまして、具体的にやはり地権者が話し合って中核農家に実質的に利用を集積し、その利用が機械の能率が上がるように集団化していくという実態をつくり上げていく運動を展開していくことが一番重要ではないかということで打ち出しているわけでございます。いわば農用地利用増進法法律の断面で描いている利用権の集積という問題は一つのゴールであって、それまでのプロセスを着実に踏んでいく幅の広い努力ということで努力を続けているところでございます。
  113. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 まさしく今おっしゃったようにプロセスが大事なことだろうと思います。他産業と違いましてすぐそういう結果が出るということじゃございませんから、非常にひとつ御努力いただいて、実効が上がるような施策を強力に進めていただきたいと思います。  確かに、農村の状況が変わりつつあります。これはいろいろな面で言えることだと思うのですが、さっき局長からお話ございましたが、昔のようなリーダーのイメージというのは確かに変わってきたのは事実だろうと思います。ならば、地域のリーダーというのはどういう形で育成されるのかということも実は大事なことだろうと思うのです。今は高校進学率が九〇%を超すような状況ですから、どの地域でも若い人であれば、三十代、四十前の方ですと、ほとんど高校を出た方でしょう。しかし、土壌のことから気象のことから、また作物の生理のことから、非常に広範な知識を必要とする農業に携わるということは、地域のリーダーというのはそういう知識が必要であるということとともに、やはり人の和を図っていくそれだけの人格を備えた方でなければならないだろうと思います。  そういう点で、過去にはそういう一つの歴史的な経過もあったわけでありますが、最近も各地域に行きまして中心になってやっておる方々は、必ずしも農業専門に大学で専攻したという人でもない一面もあります。しかし、確かに農業を専攻して、酪農ですとヨーロッパの方やまたアメリカに行ってきたとか、そういう方々で非常にたくましい若手のリーダーが育ちつつあるという現実も私どもいろいろ見たり開いたりしておるわけであります。  これは現在、教育ということになりますと文部省ということになるのかもしれませんけれども、今教育臨調についていろいろ言われております。この前の予算委員会でも私は文部大臣に、時間もあまりありませんでしたから一二つかつしか聞きませんでしたが、やはり自分は後継者として農業をやるのだという方々に対しましては、共通一次の過酷な試験でふるいにかけるということじゃなくて、推薦入学制という制度が農業の場合には必要ではないか。それは現在各大学で七割、八割は実施しているようですけれども、こういう面のやはりリーダーを育成するための施策として農業サイド、農林省として、それは他省にわたることもあるかもしれませんけれども、いろいろお考えになっていただかなければならないし、また、今日までもそれはやってきたことなのかもしれません。  また、農業高校ということにつきましても、最近はいろいろなことを言われております。きのうも何か実業学校についてのいろいろなことが発表になったようでありますけれども、普通高校から落ちた人が農業高校に、普通高校に行けない人がということで普、工、農ですか、こんなことが言われているようなことではこれはならぬだろうと思います。だから本当に農業学校の方々お話ししますと、やはり先生に農業に対する情熱といいますか、本当に農業というものをよく知った、経験のある方がそういう教師の立場にいないということも、いろいろなことがあるのでしょうけれども、話の中にちらちら出てくるようであります。  また、今各県ごとには農業大学校とかいろいろなことが施策としてはなされているわけであります。やはり後継者育成ということについては、未来の農業を担う方としまして農林省サイドでできることというのは限られたことなのかもしれませんけれども、総括的に農業の重要性ということについての教育現場または教育の今後のあり方について、これは是が非でも教育臨調、教育の議論の華やかなりし今日、中核農家育成ということで、そういう面からもぜひひとつこれは大臣に部内でのいろいろな御検討、そしてそれを閣議で反映さしていく。今後の教育臨調につきましても、実施の段階には農業のサイドから言うべきことはしっかり言っていただき、中核農家、リーダーの育成ということについても十分な対策を考えていただかなきゃならぬと私は思うのです。  これは今日までも何度がお話ししてきたことでもありますし、いろいろなことについても部内でも御検討なさっていることだと思います。また、大臣という立場からいいますと、文部省についても当然これは閣議等で御発言になる場もあるわけでありますから、閣僚の一員として、ぜひこれはこのことだけでもいろいろなことを申し上げたいことがあるのですが、きょうはそんな時間もございませんから端的に申し上げますけれども、大臣のお考えと今後の取り組みについての御所見を伺っておきたいと思います。
  114. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 今先生言われましたように、初等教育においての農業知識の充実、そしてまた勇退して戻ってまいりました方への教育充実、また情報化社会に備えての農業情報、これらについての徹底、ひとつこれら教育の方針としてもいろいろこれを取り入れてもらうように文部大臣そのほかへ働きかけてまいりたいというぐあいに考えます。
  115. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 教育ということとそれから実習といいますか、諸外国との交流とかいろいろなことを通しましてやはり生きた学問でなきゃならぬ、こういう机の上だけではならないわけでありますから、そういう点も総合的に加味しまして、リーダーの育成という、学問的だけじゃなくて人間的にも多くの集落の人たちをリードしていくだけの 人格者でなきゃならぬわけでありますから、そういうこと等もあわせましてぜひこれも息の長いことでありますが、お考えいただきたい。  次は、第三次土地改良長期計画についてお伺いしておきたいと思うのですが、これは建設大臣なんかはマイナスシーリング、そんな縮小経済じゃだめだぞということでいろいろ発言なさっておるようであります。だから山村大臣にも、農林省のこういう大事な長期計画があるのだから、この計画を遂行するためにはという、そういうことでしりをたたくわけでは決してないのですけれども、しかし、第二次の土地改良長期計画を見ますと、これは大変なオイルショックやなんかがございましたからなかなか計画どおり進みませんで、第一次は大体半分ぐらいですか、それから五十八年から第三次の計画が始まったのですけれども、これはもう私が長々申し上げるまでもなく、土地基盤整備というのは農業にとって最も効率的な事業でありますから、国際競争力がどうとか生産性がどうだとか何ぼいいましても、これをしっかりしなければならぬことはもう論を待たないことだと思います。  ところが、最近の経済情勢でマイナスシーリングという。十年先の長期計画なのですけれども、三十二兆八千億ですか、こういう大きな事業をしようということです。これは閣議で決定したことですからやっていただかなければならぬのです。現実的には五十八年、五十九年、ことしの予算は前年の〇・九%ということですから、スタートからこんな調子で行ったのでは一体どうなるのか。わずか二年ですからまず二%そこそこということで、やはり経済変動ですからやむを得ない一面も私ども理解できないわけはありませんが、これは農林省としての事業としては大変なかなめ中のかなめというか、大事なウエートを占める事業でありますから、これは建設大臣に負けないくらいの大きい声でマイナスシーリングはならぬぞというぐらいの、声を出すか出さないかは別にしまして、そのくらいの気持ちでこれにお取り組みをいただきませんと、他産業に比して農薬部門が非常におくれている、そのおくれているものがさらにまた大きなおくれをとる、生産性が上がらぬ、こういうことになりまして、そういうことで国際比較だけで財界のように臨調路線で見られて農業はだめだということでやられますと、やることをやった上で御批判をいただくならいいんですけれども、半分の計画しかできない、そういう中で何でも比較相対されるということではこれはならぬだろうと思います。  この点については大臣も十分に御存じになっていらっしゃることだろうと思いますが、先ほども申し上げましたように、予算編成の時期が迫っておるわけで、是が非でも農林省としても本当に強力に進めるべき大事な大事な柱であるというこの基本線にのっとりまして、予算編成の時期に当たりまして、財政事情の大変であることはわかりますけれども、これもまたひとつ強力に推し進めていただきたい。そうでなければまた農業にいろいろな批判が、批判といいますか、この計画すらも進まないということになりますと、これはますます他産業との差は開くばかりであるというふうに私は思うのです。  ぜひ大臣の力強い、決意でこれはできることじゃないのですけれども、この問題についてのお考えと今後のお取り組みについてのお考えをお伺いしておきたいと思います。
  116. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) ただいまおっしゃられましたとおり、第三次土地改良長期計画につきましては三十二兆八千億というような十年間での事業量でございますが、五十八、五十九両年で一一%ということの進捗率でございます。しかし、この現下の厳しい財政事情、他の公共事業も同様でございますので、これだけ特別にということもなかなか言えないとは思います。しかし、この土地改良事業というものはそのままこれが農業の近代化そして国際競争力をつける、そしてまた生産性向上そのものにつながるわけでございますので、いわゆる現下の厳しい財政事情で特別にまた大幅な伸びというものは期待できないということはあるかもしれませんが、しかし、今後とも長期計画の達成に向けてできるだけ多くの金額というものをとってくるつもりで努力してまいります。  何にしましても、この土地改良長期計画というものがそのまま足腰の強い日本農業というものにもつながるわけでございますから、最大限の努力を不退転の決意でやってまいります。
  117. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 今大臣からもお話がございましたが、事業の農業に及ぼす大きな影響力とともに、先ほど来問題になっておりますように、    〔委員長退席、理事北修二君着席〕 農業所得、農村の疲弊といいますか、これは地域差もいろいろあるのですが、四年連続の東北とか北海道という地域ですと、この三年、四年の間に農作物がとれておれば少なくとも収入があったであろう。こういうものはいろいろな試算の方法があるかもしれませんが、七千億、八千億、東北だけでもそんなふうに言われておりますから大変な金額だと思うのであります。こういう事業が進むということになりますと、それなりにまたその地域に仕事がふえるということにもなるわけであります。  そういうことで、近代化促進のために、また農村地域の振興のためにこの事業の推進、大幅な伸びというのは、こういうときですから伸びは期待できないかもしれませんが、つくった計画が後退しないように最低限それを最大の目標として頑張っていただきたい。不退転の決意ということでありますから、最大の御努力をなさるということなのだろうと思いますが、ぜひひとつ御努力をいただきたい。  それから次に、優良農地の問題でございますけれども、これは農振法で、そもそもこれは四十四年に制定したときに、どんどん農地が壊廃されていく、こういうことじゃならぬということで領土宣言ですか、農地を確保しようという、農業サイドからそういう意味もあって線引きというものがなされたわけでありますが、都市化の進展に任せておきますと農地がどんどん壌廃されていく。こういうことですと、一たび壊廃になりました農地がもとの農地に返るなどということはこれはもう大変なことで、不可能と言わざるを得ません。しかし、四十四年に制定されてから今日までを見ますと、優良農地、農振法に制定された農地面積、当時五百八十万ヘクタールですか、これがだんだん減少傾向にございまして、五十七年にはこれを見ますと五百四十万ヘクタールの農地が減少したという。  一方、壊廃になった農地と、それから開田、開畑ということで土地造成をしたところとございますから、数字的にはここにもいろいろございますけれども、「農産物の需給と生産の長期見通し」の中で、前提として五百五十万ヘクタールの農地が必要であるというふうになっておるのです。こういう五百五十万ヘクタールという数値から見ますと、五十七年度の五百四十万ヘクタールということになると、もうすでに十万必要な農地がダウンをしている、こんなふうに数字の上から見て危惧するのです。新しい土地農地の造成ということも相当進められてまいりましたから、今日大きな土地の造成ができるわけはもうございませんし、優良農地の確保ということは現在農林省に与えられたこれまた一つの大きな使命であろうと思うのですけれども、こういう優良農地の推移というものについて、現状私が申し上げたように必要な農地がややもうぎりぎりいっぱいというか、後退しつつあるというような現状については、農林省ではどういうふうに受けとめていらっしゃるのか、お伺いしておきたいと思うのですが。
  118. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農地の最近における壊廃、造成の動向を申し上げますと、実は四十六年から五十年までの五年間の間には、年率で十万ヘクタールの壊廃が行われた事実がございます。最近ではそれが大体四万ヘクタール前後まで減少してきております。特に転用面積の減少は著しいものがございます。  一方造成でございますが、だんだん奥地化等に 伴ってなかなかむずかしい局面もございますけれども、大体年率で三万ヘクタール前後の造成がどうにか行われているという実態でございます。  私どもといたしましては、長期的には六十五年の長期見通しに即して五百五十万ヘクタールの農地を確保してまいりたいというふうに見ておりますし、そのために必要な農用地造成を四十七万ヘクタールということで見ておりますが、今の状況から申しますと、率直な実感として申し上げますと、壊廃量も見込みより若干減って、造成量も若干減るのじゃないだろうか。しかし、そう大きなバランスは変わらないだろうというふうに見ております。  さて、問題は、そういった造成なり物的な意味での需給だけではございませんで、制度の運用をどう考えていくかという問題でございます。一つは、言うまでもなく農振法における農用地区域の線引きをどうやって確保していくか。それから、農地転用というものは適正妥当に必要最小限度に行われていくかどうかということがやはり大事な課題だろうと思います。    〔理事北修二君退席、委員長着席〕  実は、農用地区域の面積全体は毎年ふえてきておりまして、当初は五百四十三万ヘクタールだったものが現在は五百六十七万ヘクタールにまでなっております。その中の農地、いわゆる田畑、樹園地、採草放牧地等いわゆる狭義の農用地全体の面積についても、四百四十七万ヘクタールが四百七十五万ヘクタールというふうにふえてきているわけでございます。いろいろ大都市周辺等においては線引きの見直し等を通じて確かに市街化区域が増加し、農用地区域が除外されて外れていくというケースもございますが、大都市周辺でもやはり農業を長期的に継続しようとするところは、新しく農用地区域に編入される面積も一部ではございますが東京の近郊においてすら出てきておりますし、それ以外の地域におきましては、やはり土地改良事業等農業に関する長期にわたる施策を求めて農用地区域への編入を求める動きがかなり出てきております。そういう状況だから楽観しているというわけのものではございませんけれども、やはり非常に限られた国土でこれだけ稠密の土地利用をやっているわけでございます。  私どもはそれを農業のサイドで合理的にどういうふうに立地させ確保していくかという任務を担当しているものと理解しております。これからもそういった農用地全体の確保、特にスプロールの防止という問題については留意してまいりたいと思っております。
  119. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 それに伴いまして農振白地地域ですね、だんだん市街化区域、調整区域、その線引きが農地の方に押し寄せてくる。押し寄せてくるといいますか、山手の方に土地を求めにゃならぬ。農振白地地域というのは大体一千百八十五万ヘクタールと言われておりますが、そのうち農地が六十四万ヘクタールですか、採草放牧地が三万ヘクタール、山林原野が七百六十三万ヘクタール、その他が三百五十二万ヘクタール、こういうふうに言われておりますけれども、今局長からお話しありましたようにスプロール化という、人口が大きな都市から地方の中核都市にどんどん集中するような傾向にある。  仙台なんかですと本当に近郊には優良地、古川に次ぐ米の生産地が仙台だということですが、その優良農地がどんどん都市化の進行によって壌廃せざるを得ないような状況になっている。数字の上ではいろいろな数字が出るのかもしれませんけれども、土壌とかまた作付のいろいろな状況からしていい農地もどんどん、どんどんというか、都市化の波に押されているというのが現状です。  私はこの前、静岡に視察に行きましたけれども、あそこの町長さん、国道はありますが、そこの五十メートルですか、普通だったら何かもうパチンコかなんかずっと並ぶところなのかもしれませんが、ここのところはそういうほかのものが建つようなことで農地が壊廃されるようなことがあってはならぬということで、五十メートルについては、いろいろな要望があるけれどもなかなかそれは許可をしないといいますか、我慢してもらっている。六十二年までは手をつけない。それでなかったらもうどんどん進んでしまって立派な農地がだめになってしまう。農業に携わっていらっしゃった方がたまたま、またそして土地改良区の中心者の方が町長さんですから、そこまでの英断で農業を守ろうということのためになさったのでしょうが、普通の町村ならあそこまでのことができたかどうか。恐らく都市の進展のためにはある程度農地の壊廃もやむを得ないというような形でいったのかもしれません。小さい町の大須賀町でさえもこういうことがあるわけでありますから、いわんや地方の中核都市なんというのはどんどんこういうスプロール化、そしてまた人口集中に伴いましての壊廃、転用というものが進みつつある。  こういう現実を見ますと、優良農地の確保というものは非常に大事なことなのだけれども難しいことだなということを痛感するのです。大須賀町のあの町長さんのようにできればいいのだけれどもと思うのですが、これは法的に規制するわけにもいかないだろう。非常に難しいことではありますけれども、こういう優良農地の確保ということについて、これは本当に農業サイドから一度考えなきゃならないことだなということを私は痛感しました。法的な規制とか、何かそういうことで単純にできることではないのかもしれませんけれども、今後のあり方としましては考えさせられる一つのことであったと思うのです。局長さんも一緒にいらっしゃったことでもございますから、その事情はよく御存じだと思いますが、どのようにお感じになって、また、今後についての何か優良農地確保ということについてのお考えがあればお伺いしておきたいと思います。
  120. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御指摘のようにまことに難しい問題でございまして、具体的な案件の処理についても指針の策定についても、しょっちゅう自分自身が判断で二重人格で悩むようなことがある難しい問題だと思っております。  問題は、全体の日本土地利用という視点を考えますとき、特に今日非農業需要中心はやはり大都市、中都市の住宅地にあるわけでございます。これをある程度一定の範囲は農地が客観的に見て受けとめざるを得ないという事実はあるだろうと思います。逆に、新しく農用地造成する土地は、そういう平たん部の土地から傾斜地の中山間部の、主として飼料畑を目的とした農用地造成に移行するという姿は、姿として、態勢として、ある程度受けとめていかなければならないと思います。  問題は、やはり一つは仮需要、仮投機というものをどう抑えていくかということが一つと、転用された結果として、土地利用なり、水利用にスプロール化を惹起するかどうかということが、私どもは実質的に非常に重要な問題ではないだろうか。そういう意味におきまして、先般の都市計画法の政令の改正に伴う線引き見直しに当たっても、私ども土地利用、水利用のスプロールの防止ということを力点に置いて建設省と協議を進めると同時に、先ほども申し上げましたように、従来、市街化区域に編入された地域であっても、今後とも農業を永続することが確実な地域で、希望する地域については、逆に農用地区域に編入する措置も積極的に講じたわけでございます。  実は私、事の意外に驚いているのでございますが、首都圏におきましても、市街化区域の中に入ったところから農用地区域に逆に出ていったところが、地元の希望としても来ております。不動産投資に対する過熱現象も逐次さめてきておりますし、土地、水利用の合理的なスプロールをチェックするという姿勢で厳格な運営をするならば、私はそういう仮投機、仮需要というものは抑えていけるのではないだろうか。そういう努力をこれからも行政的に絶えず続けていかなければならないと思っております。  先ほど御指摘のございました大須賀町の例は、非常に町長さんは熱心にやってくださっております。実はこれに似たケースもたくさんあるわけで ございまして、こういった点も大いに参考にさしていただきたいと思います。
  121. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 先ほどお話がございましたが、造成と壊廃とのバランス、数字的に見ますとこれは確かにそういうことでしょうけれども、その造成地が、先ほどもお話がありましたが、傾斜地とかいろいろなところをだんだん平場より山手の方に行くのだろうと思いますから、そういう農耕地としての条件というものは必ずしもいいところではなくなるのじゃないかというような気がします。そういうことから、数字的なこともさることながら、今後の問題については非常に難しい面もありますけれども、優良農地を本当に確保するための農業サイドからのガードといいますか、そういうものは十分に考えていかなければならないことだろうと思うのです。  さらに、先ほど申し上げましたように、大都市から地方の中核都市に人口がだんだん集中する。そうしますと、これは優良な今までの農地がだんだん壊廃になる。都市化が進む。そういう中で、これは当然それに伴って道路とか下水道とか、いろいろな施設が伴うわけでありますから、都市化が進行するということは、相当な面積でそういう地域がどんどん都市化が急激に進行するということですね。私はそういうことから言いまして、農振地域の確保、優良農地の確保ということの上から農振地域というのは非常に重要な意味を持つと思うのですが、今後の計画等については、これは知事ですか、いろいろの計画。そしてまた、市町村の議を経てということでありますけれども、国費を投じて土地基盤の整備をした優良農地というものはしっかり確保するような施策というものがやはり必要ではないか。これはいろいろな条件がありますから一概には言えませんけれども、成り行きに任せておりますと、本当にだんだん平場の農地というものが減少して、農地が山間部の方に追いやられるようなことになる。そうしますと、効率的な合理的な営農というものも非常に難しくなる。日本の限られた面積の中での優良農地五百万前後という中でのことでありますから、難しいいろいろなこともあろうかと思いますけれども、ぜひひとつ農業振興として、そしてまた主要食糧を確保するということの上から、優良農地につきましての今後のあり方というものについては、今も局長から非常に難しいいろいろな面があるというお話、私も十分その点はわかりますが、今後の施策の上において何らかの維持していくための対策というものを考えていかなければならないのではないか、こう思うのです。  これはただ、優良農地ということだけではなくて、総合的ないろいろな施策が必要なのだろうと思います。また市町村とか県とか、そこらあたりとのいろいろな話し合いというものも必要なのだろうと思いますが、均衡ある国土の発展ということの上からも、ぜがひでもこれは重大な問題としてお考えいただきたい、こう思うのですが、どうでしょう、大臣。
  122. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 大臣から御答弁あると思いますが、基本的には藤原委員御指摘のように、やはり農振法が農用地の確保に果たす役割というものは極めて重要だろうと思っております。  御指摘のように、集団的な農地、それからもう一つ土地改良投資等、効用が長期に及ぶ投資が行われた農地の確保ということについては特に留意して、線引きの問題あるいは転用の問題に当たりたいと思っております。
  123. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 今局長から御答弁申し上げましたが、特に国費が多大に投入されておるというような農地を、軽々に他に転用するというようなことは極力避けるというような方針でやってまいりたいと思っております。
  124. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 まず、大臣にお尋ねいたします。  大臣は、機会あるごとに食糧の安定的供給、このことを口癖のようにと言っては失礼かもしれませんが、とにかく強調しておられます。ところで、食糧を安定的に供給するためには何としても外国からの輸入と国内自給向上させるという、この両面のバランスをどのように調整していくか、このことが基本的に問われなければいけないと思うのですが、その点を確認いたしたいと思います。
  125. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 食糧安定供給は農林水産省にとっての一番の大きな役目であろうと思っております。そして、どのようにして食糧安定供給をということですが、まず米につきましては、これは全量国内生産をもってこれに充てるということを基本にいたしておりますし、また、我が国生産できるものはできるだけ国内生産でこれを補い、そして足らざるものを外国から輸入して、そしてそれに充てるということを基本としてやってまいりたいというぐあいに考えております。
  126. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次にお尋ねいたしたいことは、バラ色の政策を色香を添えて実らせるためには、何としても予算の裏づけがなければいけないと思います。それで、予算の面から絶えず大臣がおっしゃることは、厳しいけれども、この厳しさを絶えず強調しておられます。だが、不退転の決意をもってというまた決意をいつも示しておられます。その言やまことによろしいと、こう言いたいのであります。  ところで、現実はマイナスシーリングあるいはゼロシーリングという状態でございます。それが隠れみのになるようなことがありますというと、結局花は咲かない、実を結ばないという結論になるわけなのです。そこで私が気になりますことは、この法律案の参考資料の一ページに明記されておりますとおり、「農業基盤整備費の推移」という項目からまず基盤整備費、これが昭和五十五年から五カ年間、五十九年まで明記されております。一目瞭然です。五十九年はマイナスとなっております。そしてさらに項目が十一項目ございますが、これを年次別に目を通しますと、結論として五十九年度は十一項目のうち四項目は辛うじてプラス、あとの七項目は残念ながらマイナスになっております。これが現状であります。  そこで私は、このことを気にしながら、皮肉と思ってお聞きにならないようにまずあらかじめ申し上げます。もちをおいしくいただくためには煮たてのほかほかしたもちがおいしゅうございますね。冷たく冷えたこちこちのもちをおいしくいただくには焼いていただくと、これまた味がよろしゅうございますね。ところで、煮ても焼いても食えないもちがあるのです。そのもちは何なのか。これは絵にかいたもちというのです。どんなに美しくどんなに色香を添えて並べ立てて積み上げてみたところで、煮ても焼いても食えないもちをいかにも味満点という、このような錯覚を起こさせるようなもちであってはいけませんよと、こういうことを大変失礼でありますけれども申し上げまして、煮ても焼いても食えないもちにならないように正真正銘本当に不退転の決意で実らせると、こういうことを喜屋武眞榮、重ねて大臣の決意をお聞きしたいと思います。
  127. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 先と言われましたように、確かに煮ても焼いても食べられないもちというようなものにはならないように、少なくとも私のできる限り努力して一生懸命御期待に添うようにやってまいるつもりでございます。
  128. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それでは基本的な問題を二、三、次回が時間が長うございますので、今回は二、三にとどめたいと思います。  まず第一点は、農振法、土地改良法改正の背景として農村社会における集落機能の低下指摘されておりますが、その実態と原因、そして今後のその問題に対する行政の対応姿勢についてまず伺いたいと思います。
  129. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農村社会の集落機能の低下ということが言われて、もう既に二十年ぐらいの歳月がたっております。言うまでもなく、経済社会の発展の中で新しい雇用機会がどんどんふえ、所得機会がふえてきたという経済的背景以外に、やはり個人の権利意識の確立ということがあって、いわば一種の総有的な規律が、法社会学者が言うマルクゲノッセンシャフトのような規律の 中で営まれてきた日本の従来の農村慣行というものは、なかなか維持できなくなってきているという事実があると思います。私どもは、それはやはり経済社会の発展であり、人間の権利意識の変化の中で生まれてきたもので、事実として受けとめていくことが大事であろうと思っております。  ただ、そういうふうにして現在の農村社会を考えると、なかなかいわゆる話し合いで従来のように問題が解決しなくなってきている。特にこれに拍車を加えておりますのは混住化現象の進展で、農村地域農家と非農家が混住するようになって、この方々生産活動や生活活動が農村の方々と異なる以上に生活意識に大きな差が出てきている。さらに、同じ農家の中でも兼業的な農家の方といわゆる通勤兼業農家で、農外所得に依存度の低い方との間には農業や資源問題の取り組みが非常に違ってくるという現実があるわけでございます。  しかし、私が申すまでもなく、農薬生産、農村生活というものは、やはり地域社会の住民の連帯と共感の上に立って営まれなければ円滑に実施できないし、豊かな社会がつくれないという事実があるわけでございます。それを今日の時点でどう受けとめるかが非常に大事な問題だろうと思います。私どもは、やはり昔に戻すということではなくて、機能を補完する意味において、今日の時代にふさわしいように地権者なりあるいは共益施設の利用者なりが対等の立場で話し合って、一つの契約関係として物を処理していくという慣行を事項ごとに積み重ねることが大事ではないだろうか、こういう意味で、今回集落協定に関する住民の協定制度の法制の審議をお願いしているわけでございます。
  130. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の御答弁、次回にまた追質問をいたしたいと思います。  次にお尋ねしたいことは、農産物需要生産の長期見通しという見地から、その前提として五百五十万ヘクタールの農地面積が必要であるという前提に立っておりますね。その維持確保のためにどのような対策をなさるのか、実施計画を持っておられるのか、その見通しについてお聞きしたいと思います。
  131. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私どもは六十五年の長期見通しに即して考えましたとき、その時点において五百五十万ヘクタール程度農用地が必要であるという見通しを持っておりますことは御指摘のとおりでございます。先ほども申し上げましたように、転用等の壊廃は、いわば安定ベースになって下がってきておりますが、事実として毎年一定量があるわけでございます。そういう意味においては、基本的にはやはり土地改良長期計画に盛り込まれたような四十七万ヘクタールという目標に、沿って農用地の造成を積極的に進めることは基本としてあると思います。しかし同時に、集団的な農地の確保、土地改良投資等の行われた農地の確保等を念頭に置きまして、やはり農振法に基づく線引き利用制度の適正な逆用、それから農地転用の的確な許可事務の励行ということに留意していく必要があるだろうと思っております。
  132. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、資料の十三ページに基づいてお尋ねいたします。  「都道府県土地改良事業団体連合会の会員数」昭和五十八年十二月現在の表でありますが、この中から二つのことが私は気になります。それは「土地改良区」という項目で、沖縄の場合八十八区となっている。そして、四十七都道府県の順位からしますと全国でも下の方にランクされておる、沖縄よりも下の方も幾分ありますが。もう一項目は、「市町村」の方として三十六という数字があらわれておる。これまた全国で下位にランクされております。それで、市町村の場合には沖縄より下位の方が二、三ありますが、これが沖縄の現状であります。  そこでお尋ねしたいことは、第一、全国的にも下位にランクされておる理由は一体何なのか、これが第一点。次に、その下位にある沖縄を引き上げていく、促進するにはどのような政策を、どのような手を打とうと思っておられるか、その二点についてお伺いしたいと思います。
  133. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) ランクづけみたいな御質問を受けまして、私もちょっとはっと思ってこの資料見さしていただいたわけでございますが、これは事実でございます。つまり、沖縄に現にある土地改良区はほとんど全部県土連に入っておられますし、土地改良事業を実施している市町村は全部入っているわけでございます。これはほかの県も比較してごらんいただくとわかりますように、やはり農用地面積農業者の数が大きい県はどうしても土地改良区の数も多いし、したがって構成員として参加している数も多いということになるわけでございます。したがって、委員御指摘のように、特に数で差があるとかなんとかというふうな御考察は私は必要がないのではないだろうかと思います。  問題は、やはり整備水準を、従来の内地に比べていた沖縄に対してどういうふうに土地改良事業を重点的に実施していくかという問題だろうと思います。この点につきましては、厳しい状況のもとではございますが、予算枠の配分等についても格段の配慮をしたつもりでございますし、また、従来どおり補助率、採択基準等については特別な配慮をしているつもりでございまして、私どもは、やはり当面こういった沖縄に対する優遇措置というものはまだ持続すべき状況にあるものと思っております。
  134. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の点も要望等もございますが、次回に譲りたいと思います。  次に、農振の立場からですが、沖縄では特に最近、村づくりじゃなく、村興し運動という呼びかけで、特に若者たちを中心として自主的に励んでおる最近の情勢でございます。それで、大臣のおっしゃる豊かな村づくりということに内容的にはつながるのじゃないかと察しておりますが、大臣のおっしゃる豊かな村づくりを進め、活力ある農村地域社会をつくり上げることは極めて重要であると考える、これは申し上げるまでもありません。今回のこの二つの法律改正もその一環と考えることができると思いますが、そのように理解してよろしいでしょうか。大臣のまず御意見を承りたいと思います。
  135. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 先生おっしゃるとおりでございまして、これは必ずできますし、やらなければならないというぐあいに考えております。
  136. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私は、沖縄の島興し運動とこう今までは聞いておったのですが、村興しという名称は初めて伺ったのです。これは地域社会の自律的な活性化運動として、今日のいわば精神的にも停滞が議論されている日本の社会では重要な運動ではないかと思って評価しております。その内容は、サトウキビ等の農作業の共同化とか、あるいは地域社会における習俗とか、冠婚葬祭なんかの共同分担という慣行であるように開いておりまして、評価しております。  私どもが今回提案しております農振法の改正等は、いわばこういった新しい村づくりにふさわしい手法なり何なりを、一応今日の状況で可能なものを準備したいということで法改正を御提案申し上げたわけでございますが、やはり基本的にはそういった村づくりというのは、地域社会の住民の皆さんが、その地域社会のリーダーの方の指導のもとに村の活性化のための相互扶助の運動を起こし、連帯を醸成するための生活活動を起こしていくということにあるだろうと思います。そういう意味で、私どもはそれは国の行政が直接介入すべき問題ではないけれども、それこそ地域社会に発言力を持ち、指導的立場にある皆さんに考えていただくことが必要だし、その場合のお助けができるということは行政としては非常に重要なのではないだろうか、このように思っております。
  137. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 これで最後の質問でありますから。  最初に、原点に返って、大臣、このすばらしい島興し、沖縄的に言えば村興し、これに芽が出、花が咲き、実が結ぶためには、何といっても予算の裏づけが大事であると思います。この予算措置 はいかようになっておりますか、お聞きして終わりたいと思います。
  138. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 村づくりに必要な予算ということで直接特掲しているわけではございません。しかし、私どもは従来のいわゆる生活基盤にかかる各種のモデル事業とかミニ総パ等の生活基盤整備事業や、さらに基盤になる土地改良事業並びに生産振興総合対策や構造改善事業等の地域総合振興施策というものを有効適切に実施してまいりたい。特に採択基準と事業進度の調整等については十分な配慮をしてまいりたいと思っております。  また、これ以外に特に就労問題に着目いたしまして、本年度から制度化しました新定住促進事業等の活用を通じて、いわゆるハード面の整備だけではなくて、ソフト面での地場産業の育成という問題にも取り組んでまいりたいと思っております。いずれにせよ、これから市町村段階でいろいろ計画ができてまいりますといろいろな要望があると思います。これをくみ上げましてやはり私ども予算措置に必要な手直しや修正を加えると同時に、新しいものをつくっていく努力も必要だし、また各省にお願いすることも必要だろうと思います。こういう意味で総合的な努力をいたしてまいる所存でございます。
  139. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 両案に対する質疑は本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時九分散会