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1984-05-10 第101回国会 参議院 農林水産委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  五月十日     辞任         補欠選任      岡部 三郎君     出口 廣光君      上野 雄文君     山田  譲君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         谷川 寛三君     理 事                 川原新次郎君                 北  修二君                 最上  進君                 村沢  牧君                 藤原 房雄君     委 員                 浦田  勝君                 大城 眞順君                 熊谷太三郎君                 坂元 親男君                 高木 正明君                 竹山  裕君                 出口 廣光君                 星  長治君                 水谷  力君                 森田 重郎君                 稲村 稔夫君                 菅野 久光君                 山田  譲君                 鶴岡  洋君                 下田 京子君                 田渕 哲也君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農林水産大臣   山村治郎君    政府委員        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君                       農林水産大臣官        房審議官     中野 賢一君        農林水産省構造        改善局長     森実 孝郎君        農林水産省構造        改善局次長    中川  稔君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        農林水産省畜産        局長       石川  弘君        農林水産省食品        流通局長     小野 重和君        農林水産技術会        議事務局長    関谷 俊作君        食糧庁長官    松浦  昭君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        厚生省環境衛生        局水道環境部環        境整備課長    小林 康彦君        建設省都市局下        水道部下水道企        画課長      黒川  弘君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○地力増進法案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  地力増進法案を議題といたします。  本案につきましては、既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 菅野久光

    菅野久光君 地力増進法案は、先ごろ大臣提案理由説明の中でも、「農地土壌は、農業生産の基礎であり、地力増進を図ることは、農業生産力増進農業経営の安定を図る上で不可欠」であるということで提案をされておりますし、まさに日本の今後の農業をどう持っていくのかということにかかわって、私は農業の根幹にかかわる極めて大事な問題だというふうに思いますので、そういう観点でこれから質問を申し上げたいと思います。  戦後の農業における生産力向上のための土壌保全対策として今日までの歩みを見てみますと、昭和二十二年から二十四年の間に実施された低位生産地一般調査によって、酸性土壌、そして秋落ち水田等不良土壌が広範に分布していることが明らかになったわけであります。そこで、農業土木的な手法によって農地生産条件を改善する土地改良事業と並行して、農芸化学的な手法によって不良土壌化学的性質を改善する必要性が高まって、昭和二十七年に議員立法によって現在の耕土培養法が制定されたわけであります。今回は、三十四年度から五十一年度にかけて行われた地力保全基本調査に基づいて耕土培養法の手直しということでは土壌管理実態等に適切に対応し得ないので、新たに地力増進のための制度と、そして土壌改良資材品質表示適正化のための措置を講ずべく本法律案を提出した、こういう趣旨だというふうに思うわけであります。  今回の法律案では、特にその中で営農上の方法により不良土壌改良して地力増進するということだというふうに思うわけでありますけれども地力増進ということを営農上の方法ということだけで図ることができるのかどうか。さっきの耕土培養法では、先ほども申し上げましたように農芸化学的な手法ということで、酸性土壌秋落ち水田というような特定土地についてですから、こういったようなことだったというふうに思うわけですけれども、今度の地力増進法では「営農上の方法」というふうにはっきりうたわれているわけです。そういうことで、本当に地力増進を図ることが営農上の方法だけでできるのか、そのことについてまず初めにお伺いをしたいというふうに思います。
  4. 小島和義

    政府委員小島和義君) 御指摘のとおり、地力増進を図るための手法と申しますのは、営農上の方法によるというものだけに限定されるわけではございませんで、土木的な手法、例えば客土でございますとか、場合によりましては排水対策といったことも地力増進大変貢献をする事業でございます。ただ、私どもといたしましては、現在既に土地改良につきましての一般的な法規でありますところの土地改良法が存在をいたしまして、それぞれ独自の体制を持って進めておるわけでございますから、私ども守備分野といたしましてはそういう土木的な手法によらないところの営農的な方法、その中には堆肥でありますとか肥料でございますとか、あるいは狭い意味土壌改良資材でございますとか、そういうものの施用もございますし、また、耕うん整地あるいは作物作付方法といったことを含めたいわゆる日常の営農活動一つ努力として行われる、そういった手法による改良のみを本法の対象として取り上げたわけでございます。国全体といたしましては、土地改良の施行ということとあわせてそれぞれの分野効果を発揮しながら全体的な効果をねらっていく、こういう仕組みに考えているわけでございます。
  5. 菅野久光

    菅野久光君 今回の担当農蚕園芸局担当ということで、土地改良事業構造改善局ですね。そうすると、それぞれの局の担当が違うから、同じ地力増進を図るための作業をやるにしても、土木的な手法構造改善局の方で担当する、いわゆる営農的なことでの地力増進農蚕園芸局担当してやる。今回の地力増進法はまさにそういった意味農蚕園芸局担当するというかかわりで営農上の方法によるということで規定をした、こういうふうに理解をしてよろしいのですか。
  6. 小島和義

    政府委員小島和義君) おっしゃるとおりでございます。これは各国それぞれ行政手法が歴史的に少しずつ違っておりまして、例えばアメリカ合衆国におきますところの土壌保全法といいますか、土壌保全対策は一部の土木的な手法も取り入れた形で実行しているような国もあるわけでございます。我が国の場合には、私どもの局の中で土壌改良と大変密接な関係がございます資材行政肥料でございますとか、今の土壌改良資材でございますとか、そういう資材にかかわります行政でございますとか、作物にかかわる行政でございますとか、あるいは農業改良普及事業といったそれぞれ親近性のあります行政を所管いたしておりますものですから、その意味で局の仕事としての一体性というものは必ずしも土木所管の局と一体でなくてもそれなりに効果を上げ得る。横の関係ということでは従来からも連絡を取り合いながら進めているところでございます。これからも両局間の密接な関係を持って進めていきたいと思っております。
  7. 菅野久光

    菅野久光君 同じ農水省内ですから、お互いに密接な連絡、調整をしながらやるという今の段階でのお考えというふうに受けとめておきたいと思います。  農地の中では不良農地といいますか、そういうものが相当生まれているというように思うわけでありますけれども不良農地を生むに至った理由といいますか、そういったようなことについてはどのように把握をしておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  8. 小島和義

    政府委員小島和義君) 我が国農業土壌と申しますのはそもそもが非常に火山灰地帯が多いとか、あるいは地形が非常に急峻でありますとか、非常に雨が多いというさまざまな自然的な条件がありまして、もともと農業土壌としては非常にすぐれたところばかりではございませんで、むしろ畑地を中心にいたしましてどちらかといいますと土壌としては余りよくないところに農業が営まれておるわけでございます。そこへもちまして、かつてはそれぞれの農家の知恵によりまして、経験的な農法によって土壌生産力を何とか維持してきたわけでございますが、近年、特に三十年代以降の農業機械化の進展の過程の中において無畜化が進むとか、あるいは単一作物経営が進むとかいったこと、さらには労働力の不足といったことが関連いたしまして、従来経験的に、伝統的に行われてまいりました土づくり農法というものが大分廃れてきております。  また、農業機械化、特にロータリー耕といったことが作土の浅層化をもたらすといった、最近の社会情勢から起こってまいりますさまざまな問題が土壌の地方という点にも反映をいたしてきておりまして、過去いろいろな調査で時系列的に眺めてみましてもそういったことがかなり目立ってきておるという状況でございます。したがいまして、かつての酸性土壌でありますとかあるいは秋落ち水田でありますとか、大変鋭角的に顕著に問題が起こっている地域特定のところにあるということではございませんけれども、そういう地力低下傾向がかなり目立ってきておるというところが現実に存在するわけでございまして、そういったものに対して行政が積極的に関与をして是正を図っていく、その制度的な枠組みをつくる必要があるだろうというふうな考え方で今日の法制を考えるに至ったわけでございます。
  9. 菅野久光

    菅野久光君 土壌については、自然的な要因といいますか、土をつくるに至った母材関係といったようなことはありますし、また一方、営農の中でいわゆる人為的な不良土壌、例えば連作障害ということが今非常に大きな問題になっていると私は思いますし、それからハウス栽培などでは特に塩害の問題があります。そういったような問題が出ているということに対して、今までどのような対策といいますか、そういうものを講じてきたのか、その辺がありましたらお聞かせいただきたい。
  10. 小島和義

    政府委員小島和義君) 近年特に顕著な問題として起こっております例えば連作障害というような問題は、これはすべてが土壌要因に起因するわけではございませんで、病害虫の多発といったような面もございますが、中には土壌の状態が悪くなりまして、そのことが特定病気をもたらす要因になっているというふうな絡みもあるわけでございます。また、土壌の中の特定成分が欠乏いたしまして、そのために作物生産力が非常に落ちているといったケースもあるわけでございます。  私どものやっております対策は一般的に申し上げますと、全国につきまして二十年かかってつくりました地力保全基本調査一つの地方問題を考える際の基礎的なデータになるわけでございます。それに加えまして、実際に問題が起こっておりますところの土壌診断、これは行政が積極的に行う場合もありますし、依頼によって行う場合もあるわけでございますけれども、そういうものによって現在の土の病気の原因が何であるかということを把握いたしまして、それに対する適切な処方せんを提供する、こういうことが一般的な対策としてはやっておるわけでございまして、そのために必要な農業試験場体制、さらに農業改良普及所体制整備というものを過去十数年かかってやってまいっておるわけでございます。そのほかに、ある種の事業的なものを実施する必要があるというもので国の助成になじみますものがあります場合には、土壌改良関係の若干の予算をちょうだいいたしておりますので、そういったものの実施といったことを通じましてその対策を講じてきているわけでございます。  ハウスの中の塩類集積の問題というのは、これはなかなかそういった一般的な事業対象にはなりにくいわけでございますけれども、その要因等につきましては現在でもわかっていることが多いわけでございますし、また、それに対する対策というものも比較的容易に講じ得るものが多いものでございますから、それにつきまして適切な助言指導をするという形で問題を解決しているわけでございます。
  11. 菅野久光

    菅野久光君 答弁のときに、もうちょっと大きい声ではっきり答えていただくように、どうもやはり聞こえないのじゃないかというふうに思うんです。いかにも自信がないような答弁のように聞こえるので、そういうことでは局長の立場もあると思いますから、ひとつ自信を持ってみんなに聞こえるように答弁をしていただきたいというふうに思います。  野菜連作の問題は、今指定産地制度生産の拡大と価格変動に対応するためにつくり出された。非常にそういう面では効果を持ったわけでありますけれども、しかし、このことがブランド商品のような形になって、それをつくらなければ農家の経済が成り立たないというような状況等もあって、連作障害をなくすために例えば土壌消毒だとか何かいろいろなことがなされるわけです。その土壌消毒は相当な創業を使うというようなこと等があって、私はいつも質問のときに申し上げるわけでありますけれども農業というものはいかに安全な食糧を安定的に国民に供給するかということが最大の課題であるわけであります。そういう意味で、安全という面で土壌における農薬の残留基準などというのはまだはっきり決まっていないわけです。そういう点で、こういったことも今後の中ではやはり見逃すことのできない問題だというふうに私は思っておりますので、きょうの段階では、そのことについては一応指摘だけにとどめておきたいというふうに思っております。  いわば、今度の地力増進法は、今までの土壌保全地力増進にかかわって施策を施してきたその集大成的な任務を持った法律だというふうに私は思いたいし、そうでなければ、今日的な法の役割というものがないのではないかというふうに思います。そういう意味で、今日まで土壌保全関係について幾つかの施策実施されてきたわけでありますが、そのことについてお尋ねをいたしたいというふうに思います。  今回廃止される耕土培養法についてでありますけれども、この耕土培養法昭和二十七年に制定されるときに、その会議録を見ますと、当初は七カ年計画、三十七億何千万円かで何か計画をされたようでありますが、それが四十六年度まで延びた。延びたということは、結局それだけやらなければならない、そういった事業があったのだろうというふうに思いますが、四十六年度で終わったということは、そういった酸性土壌あるいは秋落ち水田に対する耕土培養法としての事業がなくなったというふうに解釈をしていいのか、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  12. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは、耕土培養法対象といたしまして対策調査実施いたしました地域全国で約六十六万ヘクタールほどございます。実際にこの法律によりまして対策実施いたしましたのが四十四万ヘクタール強ということでございますが、残りの地域につきましては、さまざまな理由によってその対策事業実施するに至らなかったわけでございます。  ただ、この事業を始めました当時、各地で現象として起こっておりました秋落ち水田とかあるいは酸性土壌につきましてどういう資材を施用すれば問題が解決するかということについて、当時は少なくとも農家の間においては余りよく知られていなかったわけでございますが、事業実施のいわば波及的な効果と申しますか、こういう対策を講ずれば問題が解決するということがだんだん浸透してまいりまして、約二十二万町歩につきましては、具体的な国の事業としては実施をいたしませんでしたけれども、問題といたしましては解決をいたしております。その後におきましても、この耕土培養法対象となっておりますような問題が地域としては起こり得る可能性は持っておるわけでありますが、地域営農的な努力によりまして実際に現象として起こってくるという事態にはならなくて済んでおる、かように見ておるわけでございます。
  13. 菅野久光

    菅野久光君 耕土培養法が四十六年で事業がすべて終わって、それ以降今日まで全く何らの事業もないままにずっと法律が置かれていたということなのですね。そういうことで、そのままにしておいた理由といいますか、必要がなくなればやはりその法律をなくすといいますか、新しい法律に取りかえるとか、あるいはその法律を没にしてしまうとか、そういうことがあっていいのではないかというふうに思うわけですけれども、今日まで放置した理由をお聞かせいただきたいと思います。
  14. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 我が国農地土壌基本的性格を明らかにするために、昭和三十四年から昭和五十三年にかけまして実施いたしました地力保全基本調査の結果、土壌改良資材検定法開発状況など、これらを踏まえまして、本件の重要性にかんがみまして、制度、そしてまた技術の両面から慎重に検討を行いまして、今日のこの提案に至ったというような次第でございます。
  15. 菅野久光

    菅野久光君 四十六年からもう十二年なり三年なりそのままになっているわけですね。こんなことは本来ちょっと私どもとすれば理解ができないといいますか、また、議院としても全く生かされていない法律をそのままにしておいた責任はやはりあるのじゃないかというふうに思うのです。そのほかにまたこういったようなものがないかどうか、もう一回法律というものを精査をしてみる必要があるのではないかというふうに私は思うわけです。  次に、土地改良事業でありますけれども、この状況です。きのう、実は土地改良長期計画昭和五十八年四月十二日閣議決定のこれをいただきました。これを読まさせていただいたのですが、「農業生産の再編成及び食料自給力維持強化に資することを目的」にする、その「食料自給力」という文字であります。「食料自給力」というのがこの中に三カ所書かれているのですが、この字でいいのかどうかということをちょっと初めにお伺いをしたいと思います。
  16. 中川稔

    政府委員中川稔君) 先生の御質問ちょっとよくあれなのでございますが、自給力確保を図るということについてでございますか。
  17. 菅野久光

    菅野久光君 「食料自給力」という五つの漢字が書かれているのですが、そういう字でよろしいのかどうかということをお伺いしたいと思います。
  18. 中川稔

    政府委員中川稔君) 私どもはこの自給力の字を使っているわけでございますが、現在の日本農業自給力というものが非常に落ちてきておりますので、これをやはり確保し、また拡大していかなきゃいかぬ…
  19. 菅野久光

    菅野久光君 いや、それはいいのです。それはまた次の段階ですから。  どうも字のことで、本質的なことじゃないというふうに思われるかもしれませんけれども、名は体をあらわすとかなんとかという言葉がありますから、やはり用字の問題については慎重に扱うべきだというふうに私は思うのです。閣議で決定されたわけですから権威のあるものだというふうに私は思いますが、「しょくりょう」というのは、この長期計画にあるような手と、もう一つはこの糧ですね、両方あるわけであります。この米、麦など主食を中心とする食べ物は糧の方を書くわけですね。それから、ここに書かれているこれは、一般的には野菜だとか、それから魚、肉など副食中心とする食べ物のときにこの料を使うわけなのです。  しかし、農水省がどういうような考え方で使われたのか私はわかりませんが、この使われ方が正しいとすると、後から来るその四十七万ヘクタールをこれから十年の間で造成をするというのは、少なくとも米、麦をつくる水田や畑ではなくて、野菜をつくるために四十七万ヘクタールの造成をするということにつながっていくのではないかというふうに私は思うものですから、それでちょっとお尋ねしたわけですが、その辺いかがでしょう。
  20. 中川稔

    政府委員中川稔君) 私どもとしましては、その「りょう」の字が二つあるのはよく存じているわけでございますが、かての糧の方は穀物類をあらわすのじゃないか。これで使っております料の方は、もう少し広く全部を包含するのじゃないか。ですから、この中には穀物も入っているというふうに解釈して私どもは考えております。それでこの字で今統一しておりますので、これを使っております。
  21. 菅野久光

    菅野久光君 全体的にそういうことで統一されているというのであればいいのですけれども、たとえば角川の「漢字の用法」というのが出ておるのは御存じでしょうか。あれには明確にそういうふうにやっているのですね。社会一般にやはり通用するような形で用字というのは使われないと、誤解を招くおそれがあるのではないかというふうに思うものですから、初めに私はそのことを指摘させていただいたわけでありますが、食糧全般として穀物もそれから副食も全部ひっくるめたものをこの字であらわしていると。それは農水省としての統一見解というふうに考えてよろしゅうございますか。
  22. 中川稔

    政府委員中川稔君) そういうようにお考えいただいて結構でございます。
  23. 菅野久光

    菅野久光君 それじゃ包括的な食べ物という場合には全部この字を使うということで、それは農水省統一見解だということで私の方では受けとめさせていただきます。  それで、土地改良事業状況、これはまた十カ年計画がこれでなされているわけでありますが、この現況、状況といいますか、今日までの計画計画どおりほぼいっているのかいないのか。それから、この十カ年計画はまだ昨年決定したばかりでありますから、どうこうということはちょっと言えないのかもしれませんが、その見通しについてお伺いいたしたいと思います。
  24. 中川稔

    政府委員中川稔君) この第三次土地改良計画を行います前の、第二次土地改良計画は五十七年で終わったわけでございますが、この五十七年までで終わりました第二次土地改良計画につきましては、大体名目ベースではほとんど達成いたしております。しかし、実質ベースではこの間の物価変動等がございまして五〇%程度の達成率という形になっております。  それで、今度の計画につきましては先生指摘のような計画でございますが、三十二兆八千億円という形で昨年閣議決定が行われましたわけでございますが、この目標といたしますところの食糧自給力維持強化を図るために必要な農地面積確保、これは五百五十万ヘクタールを考えておるわけでございますが、また農業用水確保ということを考えております。また、農業生産性向上を図るための農地整備率をおおむね七〇%まで引き上げるということを考えております。それから、農業生産の再編成とか土地利用高度化のための水田汎用化の推進を考えております。それからまた、活力のある農村社会の建設のための農村環境整備の充実、また、国土資源の効率的な利用及び保全等をねらいといたしております。  そしてまた、この計画事業量につきましては、都道府県の農業基盤関係長期計画に盛り込まれている事業量及び市町村の農振整備計画の中で計画量として地元が計画いたしております事業量を受けとめるものという形で、三十二兆八千億を一応積算いたしております。  そしてさらに、先生の御指摘のございました計画が達成できるかどうかということでございますが、第三次土地改良長期計画計画事業量は、これは農政の課題に対応いたしましてそのように決めたわけでございます。現下の財政事情は極めて厳しいものがございますので、国の公共事業関係長期計画はいずれも進捗がおくれぎみに推移しておりますが、農業基盤整備事業計画的推進につきましては、構造政策の基礎部分でございますので、第三次土地改良長期計画計画事業量は農政の課題にこたえていくために必要な投資規模であるというふうに私どもは考えておりますので、この計画の達成について今後とも最善の努力をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  25. 菅野久光

    菅野久光君 時間がございませんので先に進まさしていただきますが、戦後行われたいろいろな施策の中で、施肥合理化対策事業、これは昭和三十三年度から五カ年で行われたわけでありますが、これの五カ年で行われたその総括といいますか、そういったようなものをどのようにとらえられておるのか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  26. 小島和義

    政府委員小島和義君) 農家の施肥技術と申しますのは、大体父祖伝来と申しますか、それぞれの農家によりまして経験的な知識の集積をもとにして従来やってまいったわけでございまして、それはそれなりに合理性を持っておったのだろうと思います。しかしながら、戦後化学肥料の普及等によりまして施肥のやり方がだんだん変わってまいりましたが、そこには単純な経験的な勘に頼る施肥だけではいろいろ問題がある、むしろ肥料の過剰という問題さえ起こしかねないわけでございます。その意味におきまして、最新の知見をもとにいたしましていかに施肥を行うかという技術の伝習を目的といたしましてこの予算を計上いたしたわけでございまして、主として土壌の状態を把握いたしまして、そこに一番マッチした施肥をいかに行うかということの対策として講じたものでございます。
  27. 菅野久光

    菅野久光君 これは施肥合理化現地研修会の開催費の一部に対して五年間助成を行った。それで五年間やった成果はあったというふうに受けとめておられるのかどうか。その五年間というのが、これは初めからそういう計画でやられたのか、やったけれどもそれほど効果がなかったから五年間でやめたということなのか、その辺はいかがですか。
  28. 小島和義

    政府委員小島和義君) その当時といたしましてはそれなりの目的を達成いたしまして五年間で終了いたしたわけでございまして、その効果が今日にどういう形で残っておるかということになりますと、かなり以前のことでございますから的確には申し上げられませんが、当時としては十分目的を達成したというふうに理解をいたしております。
  29. 菅野久光

    菅野久光君 次に、昭和四十一年度から地力保全対策診断事業というのが行われておりまして、これは当初、診断施設の利用農家土壌診断に対する認識が十分でないこと等によって必ずしも活発ではなかったが、畑作物の依存度の高い地域中心土壌診断の成果が認められ、現在では水稲作地帯でも活発に利用され、農業改良普及員の普及指導に不可欠なものとなってきている、そういう事業だというふうに思っているわけでありますが、この地力保全対策診断事業は四十一年度から今日までずっと継続されておるわけですね。しかし、不可欠なものにはなっているけれども、予算額は最近減ってきている。この減ってきたのはそれは何を減らしたのか、何がどうだからここの予算額を減らしたのか、その辺をわかればお知らせいただきたいと思います。
  30. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは土壌診断等を行います県の農業試験場でございますとかあるいは農業改良普及所に抽きましては、この事業を始めます以前からそれなりの機械機具を用いまして土壌の診断を行ってきたわけでございますが、ちょうどこの事業を始めました四十年代から土壌診断に用いますいろいろな機具機械のたぐいに大変な技術の革新がございまして、従来に比べますれば極めて容易に土壌の状態をはかれるいろいろな機械が出てきたわけでございます。御承知のことと存じますが、例えば分光光度計といったような大変手軽で便利な機械、あるいはぺーハーメーターといったものができてまいりまして、そういったいわば最新の機械機具というものを県の農業試験場はもちろん、それから普及所にもあまねく配置をしていこうということで始めたわけででざいまして、県の試験場はもちろんのこと全国の普及所にも一応これらの機械機具は整備をされておるわけでございます。  ただ、これらの機械というのは日進月歩でございますし、また、ある期間を経過いたしますると機械自体が老朽化するとか陳腐化するという問題もございますので、一巡いたしました後におきましても引き続きその機械機具の整備を進めてきておるわけでございます。その意味では、必要なものを逐次補充をしていくという内容のものになっておりますので、予算といたしましては傾向的に減ってきておりますけれども、足りないものを補うということで運用いたしてきておりますので、具体的に何を対象から落としたということではございませんで、それぞれの普及所なら普及所における現在足りないものを重点にして補充をしていく、こういう考え方で運用をしておるわけでございます。
  31. 菅野久光

    菅野久光君 昭和五十一年に土づくり運動というものが全国的になされたわけでございますが、このときには五千二百四十五万一千円、前年の五十年では三千七百五十五万六千円ですが、ここでは一挙に一千五百万円ほど増額をした。それがまた年々減って、そして今年度の予算では三千三百四十二万九千円、実に千九百万もこの土づくり運動を始めた五十一年度から見ますと減っているわけです。本当に真剣に土づくりというものをやろうとしたのかどうか、あるいは政府全体がそういうことで意思統一がされたのかどうなのか。  そして今日、地力増進法というものが新たに提案をされている。こういうものとのかかわりを考えますと、何か一つの行事といいますか、何か思いつきみたいにばっと花火を上げて、そのときには予算をつけるけれども、年々その予算は減っていく。本当にこの土づくりというのは一年や二年で私はできるものじゃないと思うのです。やはり長い間かかってつくらなければこれはできないものです。それがこの地力保全対策診断事業でそのときにぼんと上げただけで後だんだん減っていく ことについて、私は本当に真剣にこの土づくりというものを考えたのかどうかということで非常に疑問を感じております。時間がございませんので、この点はそういうふうに私が感じているということだけを申し上げておきたいと思います。  次は、昭和四十五年に土壌汚染防止等に関する法律がつくられました。この法律について、現在までにこの法律を適用したことがあるのかどうか、あるいはこの法律をつくったことによってどんな状況にといいますか、どういうようなことになってきているのか、その辺についてありましたら簡潔にお答えいただきたいと思います。
  32. 小島和義

    政府委員小島和義君) 農用地の土壌の汚染防止等に関する法律ができまして以降、この法律対象として指定いたしました地域全国で五十四地域ございまして、面積で四千八百九十ヘクタール、その指定の理由となりましたものは大部分がカドミウムであったと記憶をいたします。この中で対策計画が策定されております地域は、一部分割した分もございますから、五十四のうちでダブっておりますもの二地域を含めまして四十七地域でございます。うち二十一地域につきましては対策事業が完了いたしておるわけでございます。  この事業につきましては、やや大型の事業構造改善局担当し、その採択基準以下の小規模のものはいわば非公共事業として農蚕園芸局担当するという分担になっております。現在まだその計画ができていない地域が五地域ほどあるわけでございますが、それらにつきましては現在その工法、技術それから土地利用問題について調査検討を進めておるという一段階でございまして、できるだけ早い時期に計画策定、事業実施に持っていきたい、かように考えております。
  33. 菅野久光

    菅野久光君 これは現在で実際に対策事業等が完了した面積は、いただいた資料によりますと五十九年四月一日現在で三六・四%ということでありますが、まだ相当なものが残っているということでありますから、私が先ほど申し上げましたように、安全な食物を安定的に供給するという意味からいってもこれは早急にその対策事業が完了するように特に要請を申し上げておきたいと思います。  次は、四十七年度に行われました地力保全対策指導事業でありますが、これは米の生産調整に関連して、転作後の土壌管理、施肥改善の指導ということを大体主な目的にして出されてきたわけでありますけれども、これは五十二年で終わっているわけです。それで、この六年間指導事業をやられた総括的な農水省としての考え方があればお伺いいたします。
  34. 小島和義

    政府委員小島和義君) 水田転作を行います場合に、水稲栽培と転作物栽培が年ごとに交代をするという一種の田畑輪換という形で行われますものにつきましては、それほど畑転換によるところの土壌問題というものは生じないわけでございますが、転作田の中で、転換畑と呼んでおりますが、恒久的に畑地として利用するという形態のものにつきましては、水田の時代と違った土壌問題が生ずる可能性があるわけでございます。つまり、水田は一般的に申しますと還元状態になりがちでございますが、畑利用ということになりますと今度は酸性化の可能性が出てくるといった問題。さらには耕うん整地方法自体も違ってまいりますので、従来とは異なる土壌問題が出てくるわけでございます。それに対しまして、この耕うん整地上の問題あるいはその施肥の問題等々これまでと違った営農を仕組んでいかなければ、従来と同じような土地利用のままで作物だけ変わるということでは生産力が上がらないというそういう問題意識があったわけでございます。  そこで、転作が本格的に始まりましたのはたしか四十六年からでございますが、その直後におきましてこの転換畑の土壌管理技術指針をつくっていくというふうなことと、それからそれの普及指導ということを念頭に置きまして予算をちょうだいいたしまして実施をいたしたわけでございます。一応六カ年の事業でございますが、ほぼその目的を達成をいたしましたので、と申しますのは、転換畑という形でその転作が行われます地域というのは全国至るところということでは必ずしもございませんで、大体地域的にほぼ見通しがついておるような地域でございますから、それらの地域における事業を一巡いたしまして事業を終了した、こういう経過でございます。
  35. 菅野久光

    菅野久光君 次は、昭和四十九年度に発足をしました全国的な土づくり運動を目指した米主産地地力培養推進実験事業、これが四十九年度から五十三年度まで行われたわけでありますが、これについての総括的なものがあればお聞かせいただきます。
  36. 小島和義

    政府委員小島和義君) この事業の問題意識といたしましては、先ほども申し上げましたように、米づくりにつきましての従来の伝統的な農法というものがだんだん変わってまいりまして、どうも堆肥その他の有機物施用というものがなおざりになりがちであるという問題意識があったわけでございます。そういうことで、米の生産地におきまして昔ながらの堆肥づくりを農家にやってもらうということはなかなか難しいものでございますから、新しい堆肥づくりの方法を考えながら、それを実際に施用いたしまして、そのことの実証展示的な効果をねらうという目的を持って始めたものでございます。四十九年から五十三年までの間に四十一のモデル地区を設置いたしまして、おおむね米生産県につき一県一カ所ぐらいの割でございますが、そういうことでその実際の進め方を確かめる。同時にその実証展示効果をねらう、こういうことでやったものでございます。
  37. 菅野久光

    菅野久光君 これは四十九年度から五十三年度までの間で、五十年度だけが一億三千二百九十八万九千円、ここの年度だけ予算が突出しているわけです。これを特に突出させた理由についてわかればちょっとお聞かせいただきたいのです。
  38. 小島和義

    政府委員小島和義君) これはその年におきまして、今まで助成の対象として見ておりませんでした恒久的な施設のようなものをそのモデル地区に設置をするということになりましたものですから、一地区当たりの単価が膨れ上がったということで予算額がふえておるわけでございます。
  39. 菅野久光

    菅野久光君 そうすると、これは実験事業ということで、一応予算的には五カ年、五十三年度で終わっておるわけでありますけれども、そういったような施設等の関係でお金がかかったということは、まだその施設等を使ってこういったようなことについてこれからも機会があるごとにやらなければならないような、あるいはやるべきだというような、そういうお考えはあるのでしょうか。
  40. 小島和義

    政府委員小島和義君) 今のモデル地区事業といたしましては終了いたしたわけでありますが、ほぼ同様の手法をもちまして同じようなモデル事業実施するという予算は、本年度予算においても実は計上をされているわけでございまして、予算のテクニックといたしまして、多少その採択の要件とかあるいは目的というものにつきましては変化はございますけれども手法としては大体同じような手法をもちまして進め得るような予算をいただいておるわけでございますので、同じように施設なり必要な事業費というものを補助してまいる仕組みとしては持っておるわけでございます。
  41. 菅野久光

    菅野久光君 それでは四十九年度には米の主産地、それから五十年度には今度は米の水田関係が終わったということからでしょうか、主要畑地帯等で同じような事業がなされているのですが、それも同じように考えてよろしいのでしょうか。
  42. 小島和義

    政府委員小島和義君) おっしゃるとおりでございまして、一年おくれで畑地帯についてスタートをしたという経過でございます。
  43. 菅野久光

    菅野久光君 次に、五十三年度に耕土改良事業が発足したわけでありますが、それはすぐ次の年に地域農業生産総合振興対策に統合されたということで、それは発展的にその中でやるということになったのだろうというふうに思います。五十四年度に発足をいたしました地域農業生産総合振興対策、これらの事業についてはずっとこれは続いているわけでありますけれども、現在続けている中で、農水省としての現在までのこの事業に対する総括的なものがあればひとつお聞かせいただきたいと思います。
  44. 小島和義

    政府委員小島和義君) 北海道の畑地帯におきましては、全国的に眺めてみましてもかなりな不良土壌地帯が存在をいたしておりまして、昭和三十年代におきましても、土層改良事業というふうな名称だったと記憶いたしますが、深耕土層改良ということで、そのための機械の導入助成をした経過があるわけでございます。一応その機械が整備されましたので、それをもちまして事業は終了いたしたわけでありますが、五十年代に入りましてから同じような問題意識のもとに、重粘土地帯でありますとかあるいは泥炭地帯でありますとか、そういった畑地帯の中でも非常に土壌の状態が悪くて、単なる土壌改良資材とかあるいは施肥の指導ということだけではなくて、機械を用いた深耕とか心土破砕といったことをやらなければならなくなってきた。こういう問題意識から、五十三年にその機械の導入と若干の施行料と申しますか、そういったものを含めまして予算を仕組んだわけでございます。その翌年に地域農業生産総合振興対策ということで生産関係の予算をいわば統合メニュー化するということになりましたものですから、その中に吸収をされておるわけでございますが、予算としましては、その統合されました予算の中で発足当初の九億強、九億三千万ばかりの予算を一応織り込んで実施をいたしておるわけでございます。年によりまして多少の変動はございますが、メニュー事業でございますので、その中で対応するということで運用をいたしておるところでございまして、それなりの効果を上げつつあるというふうに考えております。
  45. 菅野久光

    菅野久光君 この中で地力培養モデル地区設置事業があるわけでございますけれども、これは全国的に何カ所ぐらいあるのでしょうか、お伺いいたします。
  46. 小島和義

    政府委員小島和義君) この予算におきましては五年間の事業ということで仕組んでおるわけでございますが、単年度十四カ所、五年間で七十カ所ということを想定いたしております。
  47. 菅野久光

    菅野久光君 それでは、いよいよ今回の法案の基本的な調査になりました昭和三十四年から五十一年にかけて十八年間地力保全基本調査が行われ、そして五十二、五十三年度でその調査結果が取りまとめられて、今後の土壌保全対策の重要な基礎資料とされるわけでありますので、この際、幾つかの点についてまたお尋ねをいたしたいというふうに思います。  この調査に十八年間かかっているわけです。調査だけで十八年間、取りまとめ二年間で合わせて二十年間ということでありますから、こういうふうに長い期間がかかったという第一の理由は何だったのでしょうか。
  48. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは全国の農用地大体二十五ヘクタールにつき一カ所の調査地点を設けまして調査をいたしたわけでございます。結果的にその対象になりましたものが五百十二万ヘクタールでございますので、二十万カ所の調査実施いたしたわけでございます。必ずしも平均的にいたしたわけじゃございませんが、一年間について見れば一万点以上の調査をやってまいったわけでございますから、かなりな速度で実施をしたと申し上げてもよろしいのではないかと思うわけでございます。  これはちなみに、規模がまるで違いますので参考にはならないかもしれませんが、アメリカ合衆国の場合、今でも一年間に二千万ヘクタールほどの調査実施いたしておりますが、まだ全体は終わっていない。これは森林とか自然草地も含めて対象にしておりますので、対象面積は非常に多い、数億ヘクタールという対象面積でございますが、毎年二千万ヘクタールずつやっておってまだ完了していないということでございますので、そういう点では比較的コンパクトにできております国土でございますので、早く一応の完了を見たと私どもは思っているわけでございます。
  49. 菅野久光

    菅野久光君 一般的に取りまとめまで入れて二十年間かかりますと、最初に調査したものと現時点、二十年たった今日的な時点で調査時点と違う、変化があるのではないかというふうに一般的に思うわけでありますけれども、その辺はいかがでしょうか。
  50. 小島和義

    政府委員小島和義君) これはおっしゃるとおりでございまして、一番その代表的な事例といたしましては、その間に例えば土地改良事業が行われたということによりまして圃場の条件とともに土壌条件も大幅に変わったということがあるわけでございます。その場合には、土地改良施行跡地について随時捕捉の調査をいたしておりまして、その調査結果を補正をしてきておるところでございます。また、そういった土木事業が行われないところでありましても、土壌の管理方法とかあるいは作付方法等によりましていろいろな動態変化が行われるという場合があるわけでございます。したがいまして、調査終了時点以後におきまして、その後の変化を総合的に把握いたしまして適切な土壌管理対策なり土地利用方式を明らかにするという意味で、この調査の終了いたしました翌年、五十四年からだったと記憶いたしますが、土壌環境基礎調査というものを全国二万点の場所におきまして、これは単年度ではございませんで、何年かに一巡する形でその後の追跡調査をずっとやっていくという調査を仕組んでおりまして、土壌の状態の経年変化と申しますか、そういったものを把握することにいたしております。
  51. 菅野久光

    菅野久光君 今お話がありましたが、取りまとめが終わって五十四年度にソイルウォッチングと言われる土壌環境基礎調査、いわば土壌の国勢調査とも言うべきものが発足したわけでありますが、そういうものによって特に環境的に変化があったところについては調査をしているということでありますが、そういうものが的確になされるような体制というものは現在確立されているのでしょうか、その点をお伺いしたいと思います。
  52. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは、実は先ほど申し上げました地力保全基本調査の場合におきましても、その前身と言ってもよろしい先ほど御指摘不良土壌の一般調査というものをやったわけでございますけれども、それらの調査をやりながら県段階におけるところの調査担当者を育ててきたという経過があるわけでございまして、二十年かかって行いました調査の結果といたしまして、土壌の基本図でありますとか総合報告書でありますとかという印刷物も整いましたけれども、同時に、この期間を通じて県の調査マンの頭数及びその資質の向上ということを図ってきたわけでございます。それで一昨年以来、補助職員という形では打ち切りにいたしましたが、各都道府県の仕事としては十分定着していると考えておりますので、その体制はおおむね維持されているというふうに考えておりますので、これらの調査を継続するに当たりまして人的な面からの支障はないものというふうに理解をいたしております。
  53. 菅野久光

    菅野久光君 これは、事業の予算の主たるものは人件費というふうに考えてよろしいのでしょうか、それをちょっとお伺いいたしたいと思います。
  54. 小島和義

    政府委員小島和義君) ただいまの調査費の中身をなしておりますものは、実際には、調査地点まで行きますところの旅費でございますとか、実際にそこで穴を掘りまして土壌の状態を調べるための人夫賃でありますとか、あるいは試薬でございますとか、そういったものが予算の中身でございまして、その中には、当然サンプルを持ち帰りまして試験場の中で測定いたします費用等も含んでおるわけでございます。
  55. 菅野久光

    菅野久光君 同じく五十四年度に発足した土壌保全情報管理事業というのがありますが、これは五十五年度と五十六年度二年度で終わっているわけであります。これは二年度で目的は達したというふうに考えてよろしゅうございますか。
  56. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは、実は先ほど申し上げました地力保全基本調査によりまして膨大な全国土壌に関するデータを持っておるわけでございますが、これを印刷物の形で保管をいたしておるわけでございまして、必要な、例えば普及所のようなところには当該地区分を配付をいたしておるわけでございます。しかしながら、——環境調査の方でございますか。
  57. 菅野久光

    菅野久光君 情報管理事業です。
  58. 小島和義

    政府委員小島和義君) 集めましたデータをいかにして活用していくかということをこれから考えなきゃいかぬわけでございまして、そのための一つ方法といたしまして、これまでまとめました調査結果をコンピューターに入力をいたしまして、必要に応じて常時引き出すことができる、また、将来の方向といたしましては、土壌情報だけではございませんで、ほかの気象情報でありますとか作物情報というものを組み合わせまして、総合的に営農指導を行うための必要データを容易に入手できるという体制に持っていこうというねらいでございまして、その一環としてスタートをいたしたわけでございます。現在におきましては約千百図ほどのインプットが完了をいたしておるわけでございまして、今後も引き続きましてこの事業は進めていくという考えを持っておるわけでございます。
  59. 菅野久光

    菅野久光君 そうしますと、今の土壌保全情報管理事業ということではなくて、一般経費の中で別に持ってやるということなのでしょうか、そこら辺をはっきりさせておいていただきたいと思います。
  60. 小島和義

    政府委員小島和義君) 失礼いたしました。これは実は途中で予算の名称が変わっておりまして、土壌保全情報管理事業という名前で二年間実施いたしまして、その後農業生産環境情報システム整備事業ということに引き継がれておりますので、やっておりますようなことは、先ほど申し上げたようなことでございますが、途中で名称変更がありましたので、二年間で終了いたしたわけではございません。
  61. 菅野久光

    菅野久光君 わかりました。  それで、あとは五十五年度発足の土壌改良資材等品質管理事業、これは今回の法案とも関係があるわけでありますが、この中では、品質管理開発システム検討会というものを大学だとか民間等の学識経験者等をもって開催をするというようなことや、土壌改良資材等の検定方法、品質基準等を確立するための調査及び試験を実施するということで、これは五十五年度からやられているわけでありますが、これの現況についてお知らせいただきたいと思います。
  62. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは、土壌改良資材の中には、経験的に土壌に施してどういう効果があるかということが大体わかっておるわけでございますけれども、その特定の物資につきまして、そのものの効果を判定しようといたしますと、何年間か実際に土地に施してみてその結果を見るしかないわけでございます。そこで何とか、資材自体をさまざまにテストいたしまして、施用をした場合の効果というものをあらかじめ測定できないかということが問題になるわけでございます。この点、肥料の場合には、三要素を初めといたしまして肥料の有効成分がございますから、成分測定をいたしますれば大体その成分が効くということが物資の検査によってわかるわけでございますが、土壌改良資材の場合には今までそういう方法がなかったわけでございます。そこで、五十五年から五カ年ということで予定いたしておりまして、本年度まだ続いておるわけでございますが、主要な土壌改良資材につきましてその検定方法を確立する、そのことが今回の法制で申しますと表示の中身についての物差しになってくるわけでございます。その意味で、この事業を進めてまいりまして、今日までに主な資材につきましては大体その検定方法の確立を見ておるわけでございます。ただ、若干問題があるといたしますと、微生物資材ということで呼んでおりますが、これについても一応の検定方法はできてはおるのでございますが、実際にその土地に施用をいたしました場合に、その効果が、実験室段階で把握されたものとどうもかなりなギャップがある。これは微生物の働きでございますから、実験室の中での微生物の働きを活発にすると申しますか、そういう結果と、現実のさまざまな条件土壌のもとにおいての資材の働きとの間にどうしてもいろいろなずれが出てくるわけでございます。この点についてはさらに時間をかけてみたいと思っておりますが、予算といたしましては、五カ年という約束になっておりますので、五十九年度をもって終了するということにいたしております。
  63. 菅野久光

    菅野久光君 随分長い時間をかけていろいろお尋ねをいたしましたが、言えば、戦後だけでも先ほどからいろいろ私がお尋ねしたような数々の土壌保全あるいは地力増進といったようなことについての施策がなされてきたわけです。しかし、それでもなお今日いろいろな問題がある。まさに地力の問題については農業にとっては永遠の課題ではないかというふうに私は思うのです。何回も申し上げますけれども、安全な食糧、食物を安定的に供給をするということが我々にとって最大の任務であるわけでありますけれども、残念ながら、日本食糧自給力というものは非常に低下をしてきている。そして米は除いて穀物のほとんどがアメリカに依存をしているというような状況が現在の状況でありますので、言えばアメリカの農地がどうなっているかということは日本食糧にとって非常に重要な意味合いを持っているわけであります。そのアメリカの現在の農地状況というものをどのように把握しておられるのか、食糧輸入大国として大いにそこのところは関心のあるところでございますから、農水省として把握しておることがございましたらぜひひとつお話しいただきたいというふうに思います。
  64. 小島和義

    政府委員小島和義君) アメリカの場合には、地力問題として一番大きいのはエロージョン、土壌侵食という問題でございまして、最近の報告によりましても、大体アメリカに農耕地が一億六千五百万ヘクタールほどございますが、その約四分の一の四千万ヘクタールが許容量以上の表土流失を招いておるというふうに言われておるわけでございます。この許容量と申しますのが一ヘクタールについて十一・三トンということでございますので、よくジャーナリスティックに言われておりますことといたしましては、アメリカが大豆を一トン輸出をいたしますと表土を四トン輸出していると同じだというふうなことが言われておりますのは、まさにこのことを意味しておるわけでございます。表土流失の激化の要因といたしましては、大豆、トウモロコシ等の単作が増加をしておる。これは、アメリカにおきましても、やはり、生産の能率という観点から見ますとどうしても単作に偏る、このことが一番大きな理由であると言われております。したがって、こういった状態がもし五十年も続けば、アメリカの生産力は二〇%から三〇%ぐらいは低下するのじゃないかということが言われております。したがって、アメリカにおきましても、農務省がこの事態を重視いたしまして、さまざまな対策を現実に講じております。アメリカの場合には、例えばテラス工をつくるというふうなこととか、あるいは用排水路整備といったやや土木的な手法、それから等高線栽培とか不耕起栽培というふうな栽培管理の方法にわたります問題、こういったことも含めて対策を講じておりまして、全国で約三千の土壌保全地区というものを指定をいたしまして、そこを中心にして事業を進めておる、かように承知をいたしております。
  65. 菅野久光

    菅野久光君 まさに日本食糧を依存しているアメリカの農地状況は今局長が説明なされたような状況で、ある物の本によれば、これは真実かどうかは別にしても、あと二、三十年ももつのかどうかというような話さえある。これは、ああいう大規模農業になっていきますと、事細かに地力向上させるだとか、そういったようなことがなかなかできにくいという状況があるわけですね。そういう意味からいえば、やはり略奪農業的な要素というものは非常に強い。言えば地力のある間はとれる、しかし、一たん地方がなくなったときにはこれはもう収入が大幅に減ってしまう。そのときに一体日本はどうなるのかという問題があるのではないかというふうに思うのです。アメリカでは、今お話しのように、土壌保全局という土壌をまさに守るための役所、一つ土壌だけにかかわってのそういう仕事をする局を持っているわけであります。これは一九三三年ですか、ダストボウル、砂あらしがあって、あそこの表土が舞って大変な状況になったときに、時の大統領でありましたルーズベルトがたびたび国民に、土を滅ぼす国家は国家自身を滅ぼす、だから土を守らなければだめだということを呼びかけた。今の日本土地状況というのは、今手を本当にしっかり加えていかなければやはりそういったような状況が生まれる可能性があるのではないのかというふうに心配せざるを得ないし、アメリカが一たんそういったような状況の中で穀物がとれなくなってきた、あるいは去年あたりも熱波ということで相当な減収がある、こういったときに、一体日本穀物、麦だとか、それからトウモロコシだとか、家畜の飼料なども含めて、そういったようなものの自給力というものをしっかり高めていく、そのためにも今我々が何をなさなきゃならないか。NHKの「日本条件」の中で「食糧」という、食糧穀物争奪の時代というのが出されておりまして、大臣は忙しいからあるいはお読みになっていらっしゃらないかもしれませんけれども、そこの土地の問題、豊かな土が消えていくということで大変なことが書かれているので、そこのところだけでも読んでいただければ、私がこうやって言っていることについては一応の理解はしてもらえるのじゃないかというふうに思います。ただ、今回の地力増進法の問題については、きのう来られた役所の人も、大臣が、とにかく大事な法律だからひとつこの法律を通すために全力を上げて頑張ってくれと、これは当然のことでありますけれども、特に大臣からもそう言われているということで一生懸命説明をされておりました。そういう意味で私は、今まで散発的と言っていいのかどうかは別にしても数々の施策がなされてきたけれども、それはまだ継続されているものもありますけれども、その時点その時点で何か消えてしまっている。こんなことでは、とぎれとぎれの政策では、本当の意味日本農業土地地力増進するということにならないのではないかというふうに思わざるを得ないわけです。これは先ほども言いましたように、今後の日本農業の根幹にかかわる問題である。だから、これが今回農水省提案をするに当たって省内でいろいろな論議がなされたというふうに思いますが、先ほど私が質問しましたように地力増進する、土壌を保全するというかかわりでは構造改善局、そして農蚕園芸局両方にかかわりがあるわけですけれども、それらの間でどのような論議がなされたのか、その辺をお伺いしたいというふうに思います。
  66. 小島和義

    政府委員小島和義君) いわゆる土壌改良という問題と土地改良という問題は、既に耕土培養法がスタートいたしましたときから当時の関係局間で一定の合意ができておりまして、目的を等しくするものではあるけれども手法の相違によりまして一応の仕事の分担関係ができ上がっておるわけでございます。もちろんその前提となっております土壌調査という問題は、かつての開拓地の土壌調査というふうな問題を別にいたしますと、一貫いたしまして作物原局の方が担当するという仕組みで来ておりますので、その両者の間に意思のそごはないというふうに考えておるわけでございます。また、その仕事の進め方につきましても、アメリカ的な国が直接一定の機構をもちまして土壌調査なり管理のための事業を進めるというシステムもございますれば、日本の場合には農林行政は特に地方公共団体との関連が深いものでもございますから、都道府県の役割を重視しながら仕事を進める、こういう仕組みとしても大体でき上がってきているというふうな感じがいたすわけでございます。    〔委員長退席、理事北修二君着席〕 したがいまして、今後こういう法制ができ上がりましたならば、その法制を軸といたしまして関係農水省局はもちろんでございますが、都道府県、さらには市町村、農業団体等との連携をとりながら、こういった土づくりのための対策を一段と強力に進めてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  67. 菅野久光

    菅野久光君 特に構造改善局の方で何かこの法案について特段のお考えがあればひとつお聞かせいただきたいと思います。
  68. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 私ども構造改善局の仕事の上で土づくりの問題にどういうふうな分担なりアプローチをしているかということについてまず申し上げたいと思います。  二つの面があるだろうと思いますが、まず第一は、土地改良事業実施に伴い土づくりの問題にどういうふうな稗益を果たしていくかという問題だろうと思います。これは基本的には、土づくり自体は農家自体の営農努力の中で解決されなければならないことでございますけれども、やはり非常に劣悪な条件にある場合、あるいは工事に伴って状況が変化した場合、それをどうやって改善していくかという問題があるわけでございます。  簡単に申し上げますと、大体四つの手法というものが現在取り込まれております。まず第一は、いわゆる土壌改良資材の投入等の問題でございます。これは農用地造成の際、あるいは農地保全事業の際に一定の範囲で盛り込まれております。それから二番目の問題は、有機質肥料の投入を一定の範囲で認める。これは農用地造成の場合につきまして表土をすっかりはぎ取ってしまいます改良山成り工の場合については、土壌改良資材以外に有機質肥料の投入ということを事業自体の補助対象として認めております。今実はそれ以外にちょっと検討しておりまして、本来重粘土地帯等とかあるいは火山礫の土壌で非常に悪いところで農用地造成をやる場合は、一定の範囲では有機質肥料の投入を認めた方がいいのじゃないか、認めざるを得ないのじゃないかということで、この点については今改善措置を検討しておるところでございます。それから三番目は、いわゆる客土事業でございます。これは土壌自体のある意味では物理的性状を高めていく、物理的性状を改善していく効果を持っているわけでございまして、これは圃場整備事業の一貫として広く行われておるところでございます。それから四番目は、工法、工事に伴うマイナスのカバーだという視点でございまして、そういう意味では、例えば農用地造成は、先ほど申し上げましたように、山成り工の場合は問題ありませんが、改良山成り工の場合はどうしても表土をはいで工事をしてしまう。それから圃場整備の場合でも非常に大規模な圃場整備実施しておりますので、レベリングの関係上表土をはぎ取って工事をするという問題が起きてくるわけでございます。こういう問題につきましては、現在表土扱いという、変な言葉でございますが、表土扱いというルールを決めておりまして、一回はぎ取った表土を復元することを事業対象として認めるわけでございます。これが事業的な側面からのアプローチでございます。  あとは社会的な制度の問題でございまして、昨年来本格的な土地利用調整として進めております地域農業集団の育成という視点でも、この地力維持問題ということを取り上げてそれを土地利用調整のテーマにする、いわゆる社会的仕組みの面でのアプローチをやっているわけでございます。
  69. 菅野久光

    菅野久光君 よく私は例え話で言うのですけれども、今教育の問題で幼保一元化ということ、子供が一人なのだけれども、片方は厚生省、片方は文部省ということでやるわけですが、土地の問題も、地力増進という、あるいは土壌の保全という面では構造改善局農蚕園芸局両方にかかわりがあるわけです。どうも役所というのは、一つの機構ができるとそれぞれの機構の中で自分の縄張り、縄張りと言ったら悪いのですが、それを守ろうとしている。これじゃ私は効率的な行政というものができないと思うのです。私が先ほど言いましたように、農業にとっては何といっても今土壌の保全、地力増進するということが一番基盤になるわけであります。アメリカでは土壌保全局というものをつくっていますけれども、本当に重要なそういうかかわりについて、機構を改革してでも一元的に効率的にやることが私は大事なことじゃないかというふうに思うのですが、大臣、お考えがあればひとつお伺いしたいと思います。
  70. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生のおっしゃるのもごもっともでございますが、ただ、現在臨調関係でもいわゆる縮小の方向でこれは動いておりますので、これは構造改善局農蚕園芸局一体となりまして、特に農林水産省の場合は縄張り争いはございませんもので、一体となってやってまいります。
  71. 菅野久光

    菅野久光君 大臣がそのようにお答えになることは結構でございますけれども、臨調が言っている行革というのはむだを省くということです。しかし、本当に必要なものまで全部縮小するということは私は本来的には国民の要求にこたえるものじゃないというふうに思うのです。それだけにこの問題は今後真剣に考えていただきたい。やはり一元的なものでやっていくことがより効率的にしかもむだを省いてやっていくことができる、それこそ私は臨調の精神ではないかというふうに思いますので、そのことを特段申し上げておきます。  最後に、ちょっと稲村委員の時間になっておりますが、御了解いただきたいと思います。  片方では地力増進するということでこの法案ができました。片方では米がとれ過ぎるからということで減反ということになりました。この整合性はどのようにお考えでしょうか。
  72. 小島和義

    政府委員小島和義君) 土づくりの問題は、長期にわたる農業生産力の維持発展ということでございまして、端的に特定作物の増産を目的とするというものではございませんし、また、短時日の間に目に見えて効果が出てくるというものでもございません。ただし、この過去四年間、米の問題に関して申し上げますならば気象的な要因等によりまして不作が続いておるわけでございます。ただ、その中におきましても、立派な土づくりその他の基本技術の励行をしております農家においては冷害等の被害を最小限に食いとめているという実態があるわけでございますので、その意味では、今後予想されますさまざまな気象的な変動というものに対しまして、土づくりを励行いたしました場合にその影響を最小限に食いとめまして、米の場合で申しますと、自給計画上予定いたしておりますような米の生産量を確保しようということが結果的に期得ができるということでございまして、直ちに米の単収を増加させる、絶対量をふやすというふうなことを目的としてこの制度を仕組んでおるというわけでは決してございません。
  73. 菅野久光

    菅野久光君 時間がございませんので、あと細かいことについて質問することはできなかったわけでありますけれども、今後の日本農業の一番基盤になる法律でございますから、今回提案されているそういうことだけにとどまらず、さらにもっと充実したものにするように今後とも一層の努力をしてもらいたいし、私どももまたそういう面では積極的に提案をしながら、みんなでどうやって日本農地土壌を守っていくのか、あるいは地力増進していくのか、そういうことではともども努力をしていきたいという私の気持ちを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
  74. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 ただいまは菅野委員の方からいろいろと基本的なものを踏まえながらの質問がされたわけでございますから、私は、主として技術的な側面から地力増進法について政府のお考えを聞きたいというふうに思っております。  しかし、それにいたしましても菅野委員も大分質問をしたい点、もっと詰めて聞きたい点等がおありになったと思うのであります。それだけに時間が足りなかったと思いますので、私の方でまたその辺は菅野委員にかわってさらに伺いたいというふうに思っている面もございますので、よろしくお願いをいたします。  特に、今の質疑を伺っておりまして、最初にこの点だけはどうしてもきちんとしていただきたいというふうに思いますのは、先ほど耕土培養法による事業が四十六年に終わって、そして今度の本地力増進法を提起をするまでの間極めて長い時間その法律がたなざらしになっているような形になっていたではないか、これはどうしてそうなったのかというのに対して、大臣のお答えは、これは極めて私はイスカのはしの食い違いだったというふうに思うのです。しかし、これは私は大臣の御答弁がおかしいというふうに思うばかりではなくて、大臣にこういうふうに答弁をさせて黙っておられる担当局長に対しても何か不満が出てくるのです。当然菅野委員が聞いておられたことの内容はわかるのでしょうから、そうしたらすぐに補足の説明でも何でもしていただくということにならなければおかしいのじゃないか。その辺のところがありますので、まず最初に、なぜこの期間耕土培養法が棚上げ状態にあったのか、そのことについての見解をお聞かせいただきたいと思います。
  75. 小島和義

    政府委員小島和義君) 耕土培養法昭和二十七年に、当時としては議員立法という形式が普通でございましたものですから、議員立法の形で制定をされまして、約二十年の期間を経まして事業の目的としては一応終了いたしたわけでございます。当然、その段階におきまして、目的を終了したのであるからこれを廃止すべきであるという意見が省内でもございましたし、また、確かに外部の場におきましてもやや同じような問題提起をされたことがあったというふうに記憶をいたしております。たしか地方財政法の改正に絡みまして、この法律をどうするのだということが国会の決議でも言われておったような記憶があるわけでございます。  ただ、私どもといたしましてはこれにかわるべき土づくりの法制を持たないままに既存のものを廃止してしまうということに大変なためらいがございまして、何とかこれにかわる土壌一つの基本的な法制をつくりたいという潜在的な願望があったものでございますから、なかなかこれを廃止するということに踏み切れない。しかしながら、かわるべき制度をどのように仕組むかということになりますと、酸性土壌とか秋落ち水田というふうに大変わかりやすい鋭角的な現象として起こっている問題をとらえて、それをつなぐというふうな手法ではなかなか新しい法制ができないという事態もあったわけでございます。あわせて、新しい法制を仕組みます場合に、耕土培養法におきましては単に農水大臣の指定する資材ということで耕土培養資材が規定されておりましたけれども、何らかのやはり品質管理制度が必要であろうという問題意識もあったわけでございます。これについては検定の手法等も持ち合わしていないというふうな中におきまして、やはり制度面、それから技術面両面の準備をしなければ、新しい法制に踏み切れないということで、過去数年来内部的にも検討会をつくったりいたしまして、かわるべき法制を検討模索をしておったわけでございます。今回お出しいたしました法律案につきましても、そういう検討のプロセスから申しますと、必ずしも百点満点というふうには私どもも考えていないわけでございまして、もう少し内容を濃密にした制度ができないかということで種々検討いたしましたけれども、御承知のような財政事情にもあるわけでございますし、また世の中の機運といたしましては、土の問題についての認識が大変に高まってきているという環境としてはいい環境にあります。また山村大臣御就任以来、土づくりの問題については特に力を入れるという御指示もございましたので、決して百点満点とは思っておりませんが、法律をお出しいたします絶好のチャンスであるという問題意識で、今後さらに内容を充実することはまだ後の時代において考えるということにいたしまして、とりあえずこの法律を提出するということで踏み切ったわけでございます。
  76. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そういうふうに初めから答えていただければよかったと思うのであります。  大臣は今までの経過をいろいろと御勉強になっていると思いますけれども、やはり細かい点ではおわかりになっていない点もあるわけでありますから、特にそのことは今後の答弁の中でもそのようなことがないようによろしくお願いをいたします。  それで経過はわかりました。それでは、耕土培養法は大体四十六年でその事業が、これによるものは終わったという形になりますけれども、その法律的な効力とか手続上の問題とか、いろいろそういうことは別にいたしまして、技術的な側面から見て、この耕土培養法の果たしてきた役割と、そして四十六年に終わったが、もうそういう点ではこうした耕土培養法では手当てをする必要は全くなくなっていたというふうに理解をしてよろしいのですか。まず評価と、それから今の四十六年以降どう考えたかということについてお聞きいたします。
  77. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは釈迦に説法でございますが、例えば秋落ち水田の問題一つとらえてみましても、なぜこういう現象が起こるのかということについてその原因並びに対策が解明されましたのが、昭和十九年に東大の塩入松三郎という先生が初めてそのことを解明した。当時とすればしたがって最新の知識だったわけでございます。農家はもちろん秋落ち水田ということに困ってはいたけれども、どうすればそれが直るかという知識も持ち合わせておりませんし、また、肥料以外の資材を投与するという慣習を持っていなかったわけでございます。その時期におきまして、当時の食糧増産という機運を背景といたしまして、これを事業化するということにこの法律のねらいがあったわけでございまして、土壌の問題を国の法制の面において取り上げたいわば最初のものであるという意味においては、大変歴史的な大きな役割を果たしておったわけでございます。  ただ、内容といたしておりますのが、秋落ち水田酸性土壌とアカボヤといった不良火山灰土壌といったものを対象にいたしまして、それのいわば対症療法ということに重点を置いておった法律でございますから、それが効果を上げて事業目的を達成した段階では空洞化してしまった。実際の事業といたしましては、当時対策調査実施いたしましたすべてについて事業をいたしたわけではございませんで、約六十六万ヘクタールの調査に対して四十四万町歩ぐらいの事業実施をいたしたわけでございますが、そういうことが耕土培養資材の投与によって解決できるということを周辺に知らしめたという効果は絶大でございまして、国として事業対象にしなかったところにおきましても同じような方法によりまして問題を解決したというふうに考えておるわけでございます。酸性土壌というふうなことになりますと、これは放置すれば同じような事態が起こり得るわけでございますけれども、その療法というものにつきましては大体周知徹底が図られましたので、今日似たような事態が起こっておるということは聞いておりませんので、その意味では歴史的な役割を終了したということになろうかと思います。    〔理事北修二君退席、委員長着席〕
  78. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、耕土培養法の果たしてきた役割、これは一つは、局長の御答弁にもありましたように、言ってみれば歴史的な役割を果たしてきたとも思います。そして今度こうした地力増進法案を提起するまでの間、一応事業が終わって今日までの間というものも、私は言ってみればこの法律に基づく手当てというものはやはりやってきてもよかったのではないか、その辺の判断の問題が一つあるわけです。そのことをさらに発展させて考えてまいりますと、ではなぜ今新たにまた土壌地力が問題になってくるのか。要するに、地力培養法で一定程度は手当てしてきたにもかかわらず、なぜまた今ここで地方を問題にしなければならなくなってきているのか、私はその辺のところをどう判断しておられるかを伺いたいわけです。  これは、例えば酸性土壌の問題一つにいたしましても、私は酸性土壌がなくなったとは思いません。むしろ場合によってはふえておる場所もあるということにもなるわけであります。このときの理論が間違っていたというわけでもありませんので、言ってみればその手当てをすることで一定程度酸性土壌の解消に役立ってきたわけでありますから。でもまだそれは減ってもいない、いや、それ以外にさらに新たな問題がいろいろと出てきているというのが今の地力問題だろうというふうにも思うのです。そこで、どうしてこういう地力問題が起こってきたのか、その背景をどういうふうに考えておられるのかということの御判断を聞きたいと思います。
  79. 小島和義

    政府委員小島和義君) 我が国土壌をめぐります問題には大きく分けますと二つの要因があるというふうに考えております。  一つは、もともと我が国農業土壌は必ずしも大変恵まれた条件下にはないということでございます。すなわち、大変地勢が急峻でございますし、また雨が多い、それから火山灰土壌が多いという条件にございます。地形が急峻で雨が多いということは、ヨーロッパあたりに見られますように、大変ゆったりした川が沖積層を形成するという条件にはないということでございます。また、雨が多いということは、雨の中に含まれております炭酸が土壌をとかく酸性にするという可能性を持っておるというふうなことでございます。そういったことから、放置をしておきますと、特に畑の場合におきましては土壌の状態が劣悪化するという可能性をそもそも持っておるということがまず一つあるわけです。  いま一つの問題は、社会的な要因と申しますか、かつてこういう不良土壌の中におきましても営農的な努力の積み上げによりまして何とか地力を良好な状態に維持しておりましたそういう農法が、農業労働力の減少ということを一つの社会的なきっかけといたしまして農法が変わってきたということであろうと思います。その最たるものが機械化ということになるわけでございまして、このことはロータリー耕によるところの作土の浅層化ということと合わせて無畜化ということによりまして、各農家の中において最も良好な堆厩肥をつくる基盤を失った、この二つの面におきまして我が国土壌に大変マイナスの影響を与えてきた。そのほか農法の変化によります影響というものはさまざまございまして、簡単には申し上げられないぐらいいろいろな面に影響が出ておるわけでございます。  そういった中におきまして、そもそも潜在的に持っておりました土壌悪化の要因というものが次第次第に顕在化してきているということであろうと思います。そのことはかっての秋落ち水田とか、あるいは酸性土壌の弊害というふうに鋭角的にあらわれてくるわけではなくて慢性的に効いてきているということでございますので、簡単な対症療法ですぐ治るということでは実はないのではないかと思います。その意味におきまして、この法律の中に予定をいたしております対策指針というものは、何とか資材を施用すればすぐ治るということばかりでは決してございませんで、さまざまな営農努力の積み上げ、それも従来の農法に戻るというふうな単純なことではございませんで、社会的変化に対応した新しい工夫をして解決をしなければならない問題を含んでいる、かように考えておるわけでございます。
  80. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 今の御答弁で、自然的条件の方については私もそれなりに理解をしているつもりであります。しかし、社会的要因の問題は、御答弁のあったそういう側面も確かに私は大事な一つの面だと思いますけれども、同時に、そういう今の農業経営あるいは農業技術体系が変化をしてきたという経緯の中には、農水省技術的な経営的なそういういろいろな指導だとかがやはり大きな役割を果たしてきている、そのことを私は今改めて考えなきゃならない時期ではないかというふうに思うのです。かつて松島理論とか松島農法とかというふうに言われて、それこそ米づくりの場合には、水田に施肥を極めて合理的に時期と量と計算をして施していくという科学的なやり方をやりました。これが一般的にかなり喧伝をされて普及をしていった時期がありました。しかし、これはいわゆる機械化とか何かという形の省力化とは関係なしに、それこそ稲との対話、作物との対話をやっていかなければならない、そういう極めてきめ細かい管理をしなければならない、そういうものに基づいて完成をする理論だというふうに私は理解をしてきました。  しかし、そういう行き方が例えば集団作業とか、そういう形でいろいろと一般化をしていく過程の中で今のように機械化農法がだんだんと浸透してくる、そして農村の状況というものが水田なら水田の単作ではやっていけない状況になり、朝・晩・休日農業になっていかざるを得ない。こういう中で、それまでのそうした施肥技術作物づくりの技術というものの形だけ残ってしまう。だから、きめ細かに対話をして、適時に適量の肥料を施していくというやり方ができなくなってくるから、結局収量が落ちることが心配になれば、一定量の肥料をどんとやってその解決をしよう、言ってみれば過剰施肥も農村地帯、実は水田地帯ではかなりやられていると私は私の目でも確かめているわけであります。この過剰施肥というものも地力の低下にはやはり重大な影響を与えてきていると私は思うのです。  それから、もちろんそういう科学的、合理的な施肥方法で増収をという観点からの土づくりをきちっとやっていこうと努力をした農家の皆さんの中に、例えば野菜地帯だとか、何か畑の中では逆にそのことが今土壌中の塩基類のアンバランスをつくってしまっているというような傾向もあちこちに生まれてきております。このことは私は言ってみれば、この理論をそれこそ根本から理解をして農家が取り組んでいけるような状況に実はなっていなかったにもかかわらず、社会体制の方がずっと変わってきてしまったという中で出てきている弊害の一つである、こういうふうに考えていきますと、農水省がその当時行ってきた技術面についても、あるいは経営についての指導というようなことについても今農家の側からすれば改めて、あのときにどうしてああいう指導をしたのか、その後こうだったらこう言ってくれればよかったじゃないか、こういう指導をしてくれればよかったじゃないか、そういうことになるのじゃないだろうか。その辺の責任についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  81. 小島和義

    政府委員小島和義君) 戦前はもちろん、それから戦後におきましても、大体三十年代の前半ぐらいまでの間は農業全体につきまして労働生産性ということがあまり問題にならなかった時代だろうと思います。何とかして土地生産力を高めていくということに主眼が置かれておったわけでありますが、農業労働力の流出をきっかけといたしまして少ない労働力でいかにして農業生産を維持し高めていくか、こういうふうな対策がつけ加わってきたということは否めないところでございまして、先ほど申し上げました農業機械化を進めたということももちろんそうでございますし、機械化を可能ならしめるための圃場条件をつくっていく、さらには農産物の需要の爆発的な増大ということに対応いたしまして、野菜でありますとか、あるいは果樹でありますとか、畜産物でありますとか、そういったものについて相当まとまった供給力をつくっていかなきゃならぬということから主産地形成が進められたという、さまざまな角度で農業に変化をもたらしたわけでございます。  その過程におきまして、土地生産力を維持し高めるための対策がなおざりにされておったかというと、必ずしも私はそうではないと実は思っておるわけでございますが、その労働生産性重視ということのとがめのようなものがいろいろな形で出てきておるということは、結果的には否めないところでございます。地力の問題というのもそういった大きな農業の流れということでとらえてみますと、まだまだやらなけりゃならないことがたくさんあった、こういう認識を持っておるわけでございまして、その意味で今回、地力増進法の制定に踏み切ったということも、これまでに起こってきております問題の解決、そのことが単に在来の農法に戻るということを意味するわけではございませんで、社会的な変化を踏まえて新しい工夫をしてこの問題に対応していくという意図の一つのあらわれというふうにお考えをいただければ幸いだと思います。
  82. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 どうもその肝心なところが私ははっきりしないのです。といいますのは、いろいろと今言われたこと、それも事実でありましょう。ですが、例えば労働生産性を高めることをなぜそれだけにみんな集中してしまったのかということになりますと、やはり農産物の価格、特に米の場合でいけば価格問題も一つの大事な要因になっています。それだけを言うのじゃありません。私は、今の農政全体の中でそうせざるを得ないところへ農家が置かれていたというそのことが大きな問題だというふうに思うのです。この点をやっていけば、今までやってきた農水省施策そのものについてすべての角度からいろいろと批判的に申し上げるということになってしまいますから、それこそこれで議論をしている時間はきょうはありませんけれども、しかし、いずれにしても地力が低下をしてきているというそのことの中に、私は農水省の指導というものの責任が、これはないということは言えない。その責任というものを十分に踏まえてこれからの対応をぜひしてもらいたい、こんなふうに思うのです。  そこで、もう一点、これはちょっと私は通告をしていませんでしたけれども農蚕園芸局関係でいけば耕土培養法とのかかわりの延長線で議論になったわけでありますけれども土壌地力増進するというためにはやはり物理的変化の方もかなり重大な問題になります。この物理的な問題に対しては土地改良等によって取り組んでこられたわけでありますが、これは全体としてどの程度の効果が、効果と言ったらあれですけれども、今の地力低下を防いできたのか、それとも地力低下とはかかわりが余りなかったのか。その辺のところをどういうふうにお考えになっているか、伺いたいと思います。
  83. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは、この法律の中で取り上げておりますところの土壌の状態の中に、従来の耕土培養法がもっぱら土壌化学的性質に着目をいたしました対象地域なり対処方針なりを定めておったわけでありますが、今回の法律におきましては、土壌の性質といたしまして、化学的性質、物理的性質及び生物的な性質を全部含めたものとして土壌の性質をとらえておりますので、土壌の物理性という意味においては対象にしているわけでございます。具体的に申し上げますと、例えば土壌のかたさでありますとか、あるいは通気性とか通水性といったことは、これは土壌の物理的な性質というふうに考えております。  今御指摘の問題は、そういう土壌の問題というよりは、むしろ圃場の物理的な形態という意味でおっしゃったのだろうと思いますが、確かに機械化を前提としましたいわば大圃場区画整備というものを始めました初期の段階におきましては、できるだけその圃場の大規模化と均平化を図りました結果、せっかくの表土が失われてしまうというふうなことで、一時的にはむしろ生産力が減退をするという傾向があったということは事実でございます。そのことが大規模圃場整備というものにつきまして、農家側から必ずしも全幅の信頼が寄せられてこなかったということの一つの原因でもあったと思うわけでございます。先ほど森実局長がお答えいたしましたように、その後圃場整備それ自体につきましてもいろいろ工法上の工夫が行われまして、最近におきましては圃場整備の結果生産力が低下をするということは余り耳にしなくなってきておるわけでございまして、その意味においては、先生のおっしゃったような意味での圃場の物理的な形態変化ということに伴う生産力低下という問題はほぼ問題にならなくなったのじゃないか、かように理解をいたしておるわけでございます。
  84. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、過去に幾つもこういう苦い経験をつい近い時代まで見てきております。せっかく例えば圃場整備事業をやったけれども、圃場整備事業をやったときにちょうど、表土の流出というばかりでなくて、この機会に自分の土地を見て、土地状況はこれでいいのだろうか、土壌状況はこれでいいのだろうかというような疑問を提起をした農家の疑問が全然無視されまして、そしてそのまま、言ってみれば作付には差し支えありませんというような形で、本人が納得できるような説明が十分されないままに事業が進んでしまったというようなケースというものは今までは幾つもございました。今後そういうことがあってはならないと思いますので、まずその点は十分に配慮をしていただきたい、こんなふうに思っております。  次に、時間がなくなってきますのでちょっと急いで恐縮でありますが、土壌調査をやられて、言ってみれば全国土壌マップができているということになっていると思うのですけれども土壌図をそれぞれつくられまして、この性質に沿った適切な指導というものができるという体制に今あるだろうか。この辺のところをどういうふうに御判断になっていますか。
  85. 小島和義

    政府委員小島和義君) 土壌の基本図及びそれに附帯をいたします土壌生産力分級、この二つだけでは、これは大体調査自体が二十五ヘクタールに一件というかな力きめの粗いものでございますから、一つのよりどころにはなりますけれども、これをもって直ちに指導のもとにするというにはいささかきめが粗過ぎるということから、例えば土壌改良資材の施用にいたしましても、あるいは施肥設計にいたしましても、あわせて土壌診断を行う必要があるだろうというふうに理解をいたしております。さらに、欲を言えば一枚一枚の田畑それぞれみんなこれまでの耕作の歴史の積み上げでございますから、一枚ずつに多少ずつは変化があるわけでございまして、その意味で実際にも農家が持ち込んでまいります土壌診断の依頼にいたしましても、あるいは農協等が作物栽培指導に関連して実施いたしております土壌診断にいたしましても、もっときめの細かい単位でやっておるわけでございます。その場合にベースになります。その地帯の一般的な土壌の性質というものについては既に調査ができておるわけでございますから、それを一つの参考にしながら必要な部分を追加的に調べていく、こういうことによってその目的が達成されるのではないかというふうに考えております。
  86. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 それぞれの今度さらに細かくは土壌診断でというふうに言われたと思うのですけれども、そうするとその土壌診断というのはどの程度にされるのですか。今私は技術的なことで伺っておりますので、技術的にどういう範囲でやられますか。
  87. 小島和義

    政府委員小島和義君) 通常の場合の土壌診断は大体その土壌のPH度、それから主要な養分、燐酸、カリ、苦土、それから石灰ですか、大体そういった主要成分につきましての分析ということが通常の場合ですと行われる方法であるというふうに考えておりますが、そのほか各種の微量成分の豊否と申しますか、そういった問題でありますとか、それから場合によりましては土壌の通水性、通気性と申しますか、そういう耕作に直接関係あります要素についての診断が一般的であるというふうに理解をいたしております。もちろんその土壌診断の中におきましても、そういう通常の診断ではどうも思わしい結果が出ないという場合に県の農業試験場あたりに診断が持ち込まれまして、さらに広範な分野にわたって診断が行われる、こういうケースも間々あるわけでございます。
  88. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 今のお話でいきますと、極めて簡易な診断程度にしかならないわけです。しかし、土壌対策というふうに先ほどから言われている基本の中に見ていきますと、化学的性質と物理的性質、それからさらに微生物的な生物的な要素も含めて土壌というものについては総合的に判断をしてやっていかなければならぬということになると思うのです。そうすると、今の簡易診断というものが極めて部分的、表層的なものにしかすぎないことになりますが、これで指導というものがうまくいくのでしょうか。
  89. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは土壌の基本図をつくります際の本格的な土壌調査、先ほど申し上げました二十五ヘクタールに一件の調査の場合に、項目のとり方にいろいろ数え方があるわけでございます。先般、私が私なりに勘定をいたしてみますと、全部で二十八項目ぐらいの調査項目があるわけでございます。ですから、本格的にやれば幾らでも調べることはあるわけでございます。  今御指摘のございました微生物の状態の調査が実は一番難しゅうございまして、スプーン一杯の土壌の中に通常でも数百万匹、どうかすると数億匹の微生物がいると言われておるわけでありますから、それを取り出して数を勘定するということは非常にできにくいわけでございます。むしろその土壌の例えば有機物の含量というふうなものから、土壌の微生物の生息に適したような状態にあるかどうかという別な要素を調べて生物学的な性質を知るというふうなやり方がとられておるわけでございまして、そういう意味調査項目としては含まれておるわけでございます。また、さらに手の込んだ調査をする、これを学問的な興味で調査をするということになりますれば、土壌中の微生物も呼吸をいたしておりますから、その炭酸ガスの排出量を測定するというふうな方法によっても調べられるわけでございます。通常の場合にはそこまでの調査はいたしておりません。
  90. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は学問的な観点からの調査が必要だというふうには申し上げているわけじゃないのです。それこそ微生物の数を勘定するのも、余りそういう意味でいったら意味のないことだと思うので、今おっしゃったような有用な微生物をいかにして少ないところにはふやしていくか、あるいは多過ぎるところはどうして減らすか、そういう逆の害になる場合もあるわけでしょうから、というような観点からの検討というものが必要なのだと思うのです。  私は、問題は、農家の皆さんかどういう観点からということはそれぞれ違いがあるかもしれないけれども、少なくとも自分の土地をある意味でただ科学的に正しく知って、それに適した土づくり、営農をやろうという意思を持ったときに、これが容易にそういう農家の要望にこたえられ得る体制に今あるだろうか、その辺のところに若干疑問があるのですけれども、その辺はどうでしょうか。
  91. 小島和義

    政府委員小島和義君) 私どもの方で各都道府県の農業改良普及所に補助をいたしまして、土壌の比較的簡単な診断用の器具器材の整備をいたしております。それで、その施設が年間にどれぐらい利用されておるかというものを調べたことがございまして、それによりますと、確かに四十八万件ぐらい年間に診断が行われております。一件平均にいたしますと、一万点余の診断が行われているわけでございます。その意味では農家側の需要に比較的容易に、制度は別といたしまして、こたえられるだけの体制はでき上がっているというふうに考えておりますし、最近では農業協同組合も資材の購買との関係におきましてさまざまな診断サービスをしているという事例もございますものですから、そういう技術的なサービスの需要は一応充足しておるというふうに考えております。ただ、本格的な土壌調査ということになりますると、やはり専門家のおります試験場に依頼をするということが欠かせないことになってまいりますので、そこまですべてのものが持ち込まれるということになりますれば、なかなか需要に応じかねるということになろうかというふうに考えておりますので、できるだけ末端のサービス体制を充実していくことが必要だろうというふうに考えております。
  92. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 重ねてで恐縮ですけれども一つ農業改良普及所に器具を配置して、もちろんそれを扱う人の問題もあるでしょうけれども、ということで対処しておられる。でも、実際は、私の周りばかりかもしれませんけれども改良普及所へ持っていくよりも、今お話がありました農協がやってくれますので、そしてその農協の単協で簡単なペーハーメーターなど若干置いてやっているところがあります。そうするともう農協で済ませる。農協は単協で手に負えなければ、県の経済連 の肥料農薬室へ持っていって分析をしてもらう。こんなやり方のものがかなりやられているのです。ところがそれに対して、普及所へ持っていって見てくれというのは本当に量的には少ない。そうすると、私は指導体制の方としては非常に問題があるのじゃないかと思う。  それは、一つ改良普及所も統廃合によってどんどん拾う範囲が広くなってきましたから、人の問題としても普及員の皆さんが対応するのになかなか大変だということが一つあります。それから、農家の方も遠くなりましたから持っていくのも面倒だということもあります。両方にそういうあれがあると思います。  ところが、農協がやる場合は、これはやはり一つの問題があると思うのです。といいますのは、農協は営農指導という面でも重大な役割を果たしているのですけれども、同時に農薬も売りますし、肥料も売りますし、土壌改良資材も売っているわけです。ですから、その分析をしてもらった結果の話題としてよく聞くのは、例えば燐酸分が不足している、何々が不足しているという、その化学肥料として入れていくものの対象になるような、その結果についての関心は非常に強く出てきていますけれども、総合的な土壌の地方についての判断というような形のものにはなっていっていない。  私は、これはやはり農協さんの方も指導していけば、ちょっとでも例えばマグネシウムが足りないところであればマグネシウムをここへ売ったら売れると、そういうふうに計算するでしょうから、どうしてもその辺は私はやはりいろいろと起こると思うのです。そういうことを考えていったら、適切な土壌の性質に合ったきめ細かな施肥を初めといたしまして、土壌改良方法等についての指導というものは非常に大事ではないか、こんなふうに思うのです。そこのところは私は今必ずしも体制が十分でないと思いますので、ここをぜひ具体的にきめ細かな指導ができるようにしていただきたいというふうに思っておりますけれども、その点については特に人と金が伴うことになります。このことは、ことしはこの法律つくるばかりだからということかもしれませんが、これからこのことを考えるときには、人と金のこともあわせて考えていただけますか。そこのところをひとつ…。
  93. 小島和義

    政府委員小島和義君) この普及所におきますところの土壌の診断体制整備昭和四十年代に開始をいたしたわけでございまして、これは農業改良普及所の広域制ということとほぼ時期をひとしくいたしておるわけでございます。それまでは御承知のように中地区制という方式でございまして、数人程度の普及員の配置でございましたから、その中において土壌診断を分担をする普及員をあまねく配置するということも不可能でございました。また、普及所に特定の目的を持った設備を置くということも、簡易なものは別でございますけれども、余りできなかったわけでございます。そこで、できるだけいろいろな専門分野の人を集めてあらゆるサービスをできるようにしょうというのが広域普及所のねらいでもございましたので、広域普及所を整備しながら、一面においては土壌診断体制もつくっていくということでやってまいったわけでございます。したがいまして、現在一万人の農業改良普及員がおるわけでございますから、人的な頭数として不足をするという事態にはなっていないわけでございまして、問題は各普及所の中でいろいろなその分野の専門知識を持った人の活動が有効に組み合わされて農家側の需要を十分充足しているかどうかという点にかかってくることになろうかと思います。その意味では、普及所の具体的な活動につきまして、さらに能率な指導をやらしていく必要があろうというふうに考えております。  また、御指摘がございました農協の活動でございますが、農業協同組合法上農協はさまざまな指導活動ができることになっておりまして、その経費につきましては賦課金をもって賄うことができるということになっておるわけでございます。しかし、現実にはそういう無形のサービスに対して賦課金を払うということは、なかなか農家側においてものみ込みにくい点がございまして、実際の農協のいろいろなサービス活動は、すべて販売、購買事業の附帯的な事業として、いわば農協の手数料収入の中から経費が賄われているという実態がございますので、販購買事業と無関係事業活動をするというのはなかなかできにくいという農協としての一つの宿命みたいなものはあるわけでございます。そのこと自体が決して悪いというわけじゃございませんで、とかく売らんかなということで技術的なサービス自体がねじ曲げられるというふうなことがあるのかないのかということによって判断すべき問題であろうと思います。改良普及所の役割といたしましては、みずからがサービスをするということももちろんございますけれども、傘下の各地域内の各機関の行います技術的なサービスにつきまして一つの貢献的な役割を果たすという役割もあるわけでございますから、各団体等の行っております土壌診断サービスにつきましても、そのレベルの向上と同時に内容の的確さということにつきまして、普及所としても意を用いていくべきものというふうに考えておるわけでございます。
  94. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 私は、農協が自主的にいろいろとやられている土壌分析と土壌診断等についても、悪いというのではなくてこれについては一定の評価をしているのです。しかし私が申し上げたいのは、こうした民間のいわば体制というものもそれこそ適切に、しかも、政府が指導をするそういう土壌診断の方向と合わせて、それらのところも総合的に協力体制として組み上げられていくという形がつくり上げられていかなければ、農協は農協で勝手におやりなさい、そして改良普及所は改良普及所でこれは政府の方針に従ってやっていますよと、こういうことでばらばらでやっていたのではだめだ。そういう協力できるところはきめ細かく、現実の問題として農協はきめ細かく対応しているのですから、そうしたらきめ細かく対応できるというものをやはり的確に活用していくという努力も一方では必要なのではないだろうか、そんなふうに思うのですが、その点はいかがでございましょうか。
  95. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは昨年国会で御審議をお願いいたしました農業改良助長法におきましては、農林水産大臣農業改良普及事業につきましての基本的な指針を定めまして、それに基づきまして各県がそれぞれ普及事業の運営の方針を決めるということになっております。そういった国の定めます指針なり県の方針なりの作成の段階におきまして、国側からと同時に県側からのいろいろな接触があるわけでございまして、また協議も行われるわけでございます。たしかその基本指針の中におきましても、各普及所段階で普及事業を円滑に進める、同時に、関係の諸機関の連携を密にするという意味におきまして、普及事業の推進協議会という名前だったと思いますが、そういう現地段階におきますところの農業改良普及事業関係あります諸団体、諸機関の連絡の場を持つということを定めておるわけでございます。そういった場を通じまして、お互いの役割り分担と同時に連携強化ということを一段と進めるということを考えておりますので、そういったことを通じまして農協の活動と都道府県、市町村の活動とそごを来たさないように努めてまいりたいというふうに考えております。
  96. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 大体そういうふうにお答えになるだろうと思いながら伺っておりましたが、もう時間もありませんから私の結論を申し上げますと、言ってみれば、せっかくこういう法律をつくられても、その法律に沿って具体的に仕事を進めるところは、責任を持って進めていく体制づくりをやっていくところは都道府県になって、行政のルールからいけば、都道府県は市町村の意見を聞いてというようなことになってやるのでしょう。そういう中で、結局農林水産省、政府は大きな点で訓示はやりますけれども、訓示はやって具体的な仕事は都道府県が責任を持ってやりなさい、こんな 形で、そしてそれに具体的に金と人というような形になれば、これはまさに今臨調の時代でもあるしというようなことで、結局何かかねと太鼓の部分だけになってしまって、なかなか実態が伴わないということになるという恐れを感ずるのです。土壌というもの、土づくりというものの重要性を痛感すればするほどかねと太鼓で終わってはならないと思うものですから、特にその辺のところの念押しをしたかったわけです。  時間もありませんからあれですけれども、先ほどの答弁の中で、地力が低下してきたことの要因の中の一つに、厩堆肥の施用が落ちてきたということがありましたけれども、これはなぜ厩堆肥の施用というものが落ち込んできているというふうに理解をしておられますか。
  97. 小島和義

    政府委員小島和義君) 一番大きな問題は、やはり労働力の問題であるというふうに考えております。それから第二には、個々の農家がおおむね家畜を飼養しておりました時代から、機械化によって育畜が置きかえられたということから、身近に良好な堆肥源がないという、そういった事情と、さらに化学肥料に対する過度の信頼というふうなことが絡み合って今日のような事態を招いたというふうに理解をいたしております。
  98. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 そうしますと、手近なところにそういう優良な堆肥をつくる資材が出てこない、言ってみればこれはやはり畜産とのかかわりということになってくるわけなのですけれども、今の畜産、私の回りを見ていきますと頭数はそんなに減っているというわけでもありません。だが、飼養農家は大幅といっていいほど減少をしてしまっています。その辺のところが、実際はこうした堆肥を手に入れること自身がなかなか難しいという状況をつくっていると、私もそう思うのです。それじゃなぜ有畜農業というのでしょうか。今まで家畜を飼っていたものがいなくなった、後退をしたということになるのでしょうか。有畜農業の振興対策というものについて何かお考えになっているのでしょうか。
  99. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 御承知のように、畜産自身が生産の合理化をやりながらい。きます過程では、非常に規模の小さい畜産経営というものはなかなか畜産で生計を立てることは困難なわけでございます。御承知のように、比較的早い時期に大型化しましたような酪農は別にいたしましても、特に肉用牛経営につきましては、かつては肉用牛経営というものも育畜という形で各戸にあったわけでございますが、合理化のプロセスの中で、例えば牛の数は五十一年で申しますと百九十一万頭ぐらいございました。それが五十八年では二百四十九万頭まで数はふえているのですが、その間に飼養農家数というのは四十四万戸から三十三万戸ぐらいまでに減っているわけでございます。したがって、二戸当たりの飼養頭数はふえておりますが全体の戸数は減る、これは畜産の合理化の観点からはやはりやむを得ないことだと考えております。例えば高齢者の方の肉用牛飼育のような非常に特殊の場合につきまして、小規模な畜産が、これはもちろん畜産だけではやれませんから、他の分野と複合でやるということは今後もあると思いますが、畜産に相当大きな比重をかけます方にとりましてはやはり頭数の増と。この間つくりました近代化計画で肉用牛の繁殖経営は特に複合経営が多うございますので、一番小さな目標としても五頭前後は飼っていただきたいということを申しておりますが、こういうことはやはり畜産の合理化の観点からは必要ではなかろうか。  今申されました土づくりとの関係でございますが、これは御承知のように、飼っております家畜全体の数は減るどころかふえておりますから、家畜の腹を通すなりあるいは家畜の敷きわら等を通じて出ます堆厩肥の原材料そのものは決して減っていないわけでございます。それがどのように利用されているかということを私ども調査をいたしておりますが、これは事例調査でございますが、大家畜の酪農なり肉用牛におきましても九十数%という非常に高いものが利用をされている。酪農等につきましては草地を持っておりますので、自分たちの持っております土地へ還元しますが、肉用牛につきましては、御承知のように複合経営でございますので、自分たちの持っております水田なり畑地に戻すものが多いわけでございます。養豚になりますと、その比率が下がってまいりまして、自分の方で使うと言っておりますものは八〇%台になりますが、ふん尿等につきましては販売とかあるいは無償交換というふうなことをやっております。養鶏はさらに低うございまして、自分の家で使うのは二〇%台でございますが、これは御承知のように果樹園なりあるいは桑園等へ販売するとかあるいは交換するというのが多うございます。  畜産の側から申しましても、実は酪農のようにみずからが使うという場合もありますし、それから他の場合でもそういう資源自身は有効に還元をする必要がございますし、これはふん尿処理とかそういう面でも必要でございますし、また周辺の耕種農業にとりましても、そういうものは欲しがっているというのは実態でございます。畜産の側で例えば敷きわら等を非常に要望していることも事実でございますので、戸数は減ってまいりますけれども地域全体として有無相通ずると申しますか、そういう形で今後とも土づくりに貢献するように、また畜産のサイドから言いましても、ふん尿の処理その他の公害対策の観点からも非常に望ましいということでいろいろな助成事業等を私どもの助成事業の中にも組んでおります。これは耕種サイドからもそういう要請がございますので、今申し上げたような姿で絶対量は減っていない、むしろふえてくるわけでございますので、これを有効に土へ戻したいというのが私たちの考えでございます。
  100. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 こういう表現は大変失礼でございますけれども、机の上ではそういうふうにうまくいっていると集約をされているのでしょうけれども、しかし現実の問題は、やはり家畜のふん尿公害などということを言われたり何かする事象というのはいっぱいあるのです。例えば、私の町の話で恐縮ですけれども、水道の水源地に上流の畜産の養豚農家からのあれが流れ入っていって、BODがばかにふえたとかいうような事件が起こったりというようなことがある。やはり今の多頭飼育のところからもらってきて田んぼへ、あるいは畑へ入れるという努力をしている農家というのは全体の農家の中では数が残念ながら少ないのです。それが現実なのです。そうすると、片一方では今度は集中的に出るわけですから、それの処置に困っているという部分もかなりあって、私らの近くにもそれのために焼却をする施設をつくったりしたところもあります。  だから、そういう意味でいきますと、私は計画としては確かにお話のようにうまくいっているのかもしれないけれども、現実はなかなかそんなふうに動いていない。その辺はなぜかというところにやはり私は一つ大きな問題点があると思うのです。これも先ほど菅野委員から指摘もありましたけれども、私は各局間でいろいろと協議をしながらやっておられるということは評価をします。しかし、そこをもう一歩進めて一本化した指導体制というものを掌握する、そういう体制ができる機構を土づくりを中心にして考えていただかないと、形は下ろしていくけれども、実態がそれに沿ってなかなかうまく動いていかないことになるのではなかろうか、そんなふうに私は思うわけであります。この辺は意見であります。  最後に、もう時間もなくなってまいりましたから、大臣の御所見を聞くことをとっておきまして、それはぎりぎりに伺いますので、あとは土壌改良資材について若干伺いたいと思います。承知しておいてください。  その前にもう一つだけ、先ほどちょっと出ておりましたが、アメリカあたりで不耕起農法、ノーティール農法がかなり喧伝をされるようになってきております。これはソ連の土壌学者のマリツエフの理論がソ連では失敗してアメリカで今大いに見直されているというふうな皮肉な見方もできる、こんな状況なのですけれども、この不耕起農法というものについて我が国での土壌流出防止対策、特に西日本関係は土質も余りよくありませんし、それから傾斜地等も随分あって、それこそ耕土も浅いとかいろいろな問題もありますけれども、特にこの辺のところではこうしたアメリカのそのままの技術のまねではなくて、日本的な観点からのこういう技術の研究等がされてもいいのではないだろうか。その辺はやっておられるかどうかということをちょっとお聞きしたいと思います。
  101. 関谷俊作

    政府委員(関谷俊作君) お尋ねのございました不耕起農法でございますが、これは先生の御指摘にもございましたようなそういう土壌の流出防止という面でも意味がございますが、ほかにも作業の省力化とかエネルギーを省くとか、そういういろいろな面の効果を非常に持っております。  日本での研究でございますが、具体的には五十四年度から当面転換畑の利用ということで関係研究機関が一つのプロジェクト研究体制を組みまして、転換畑を主体とする畑作技術の確立ということで、その中に例えば麦の跡地に大豆を導入する場合に不耕起栽培を使う、あるいはイタリアンライグラス草地の間作としてトウモロコシに不耕起栽培を使う。また、不耕起栽培における収穫、施肥、播種の一種の作業面での機械も日本的なものが必要だというようなことで取り組んでおります。全体不耕起栽培、古くは麦でいいますと穴まき栽培というふうな形もあったようでございますが、最近の私ども技術開発面での一つの研究の言葉としましては、ミニマムティレッジというような言葉がございまして、いわゆる耕起を最小限にして種まきなり栽培管理をやるという面での研究について、日本的なそういう意味での技術開発に積極的に取り組んでいるという状況でございます。
  102. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 特に先ほどから触れているように、この技術我が国に合った形でかなり有効な形になる可能性を持っていると思いますので、ぜひこれが早く結論が出ていきますように、そうしてよければ普及ができますように、そういう努力をしていただきたいと思います。  次に、土壌改良資材についてでございますけれども、もう時間がほとんどなくなりましたので私の意見を申し上げて、最後にちょっと見解を伺いたい。  ということは、土壌改良資材には非常に多様な側面がありまして、特に地域ごとにそれぞれこういうのがいいななどというものを、商売人がまたいろいろなものをつくって持ち込んだりいたします。そうすると、それで慌てて農協さんの方がそれとそっくりなものを売る対応をしなきゃならぬなどというようなことが起こったりしております。  そういうローカル的な側面も出てまいりますし、いろいろな格好で多様なものを持っているわけで、それだけに公的機関でこれをきちっと試験研究をしてチェックをするということが非常に大事なのじゃないだろうか。それがないと結局、例えば資材であっても、肥料取締法の対象にもなるもの、それからこの地力増進法だけの対象のもの、それから外れるもの。その外れるものの中で、これが果たしていいものかどうかというようなものも、公的機関からのきちっとしたあれがないと農民が大変な迷惑を受けるということもあり得ると思うので、その辺のところをぜひ考えていただきたい。特にそれは科学的な尺度というものがはっきりしておりませんので、それだけにいろいろと問題性があると思うのです、  それからもう一つは、これを利用するに当たって、例えばこれは珪カルの場合ですけれども、農協さんあたりの指導方針に従っていけば、十アール当たり幾ら入れなさいと極めて画一的なのです。土壌の性質とかそういうものに一切関係なしにそういうものが施用されるというような状況にもなります。そこはやはりきめ細かい対応ということになりますと、こういうことを改めていただけるように、要するに土壌診断とあわせて的確な使用というふうに指導をしていただきたい、こんなふうに思うんですけど、その辺のところを簡単にお答えいただきたい。
  103. 小島和義

    政府委員小島和義君) 土壌改良資材の中には、肥料取締法で言うところの普通肥料に該当するもの、それから特殊肥料に該当するもの、それから肥料に該当しないもの、それから、おっしゃいましたように、本法によりましては、土壌改良資材の中で表示制度対象といたしますものを政令で逐次指定していくという考えでございますから、当座はその対象にならないもの、こういったものが出てくるわけでございます。それは何といいましても、その表示についての科学的な物差しができるかどうかというところから制約をされておるわけでございまして、研究面の充実とあわせまして、おいおい野放しのものがなくなりますように努めてまいるつもりでございます。しかし、表示制度がございましても、しょせんはそれを見ていかに使うかという問題と絡むわけでございますから、資材面の規制ということだけではなくて、利用面での指導というものとあわせて行わなければ効果が十二分に発揮できないということは御指摘のとおりでございまして、そういう面の指導もこの制度発足とあわせて考えてまいるつもりでございます。  また、施肥面の指導につきましては、これはかねがね問題になっておるわけでございますけれども、例えば複合肥料の銘柄等にうかがわれますように、余りきめ細かくなり過ぎまして、肥料の銘柄が非常にふえてくるという逆のマイナス面もございますけれども、逆にまた余り大まかで過剰の施肥ないしは過剰の資材投与ということは、経済的にも大変マイナスでございますから、その辺がまさに施肥指導の一番の根幹であるというふうに考えております。
  104. 稲村稔夫

    ○稲村稔夫君 大臣、そういうことで、私は特に地力増進については総合的な機構というものを将来志向して工夫をしていただきたいということと、有畜農業と結合した日本農政の発展ということを考えたビジョンが必要なのではないか、そう思いますが、その辺を大臣はどうお考えですか。
  105. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 総合的にこれは考えてまいりたいと思いますし、そしてまた、有畜農業との結びつきということで、個々の農家につきまして、耕種と畜産をうまく組み合わせて成功している例というのは聞いております。しかし、これを一般化するということは、労力の配分とかまた生産の効率化等から、なかなか難しいじゃないかと思いますが、ただ、地域複合と申しますか、一定の地域内で耕種部門と畜産部門をうまく組み合わせて、そして有機的な結合と申しますか、畜産廃棄物を有効利用、そしてこれを地力増進に結びつける、これは極めて重要であろうと思いますし、今後もこの施策は推進してまいりたいというぐあいに考えます。
  106. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 本案に対する質疑は午前はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      —————・—————    午後一時四十分開会
  107. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、地力増進法案を議題とし質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  108. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 地力増進法の審議に関連して、最初に何点か気象についてお伺いをいたします。  今冬は異常気象というか気象変動というか、全国的に冷害で農作物に甚大な被害が出ております。特に米の場合はここ四年間冷害ということで大変な被害を受けているわけでありますが、農水省は今冬の豪雪によって融雪おくれの被害が出ているために水稲の苗確保の補助事業実施するなど対策を講じてはおります。例えば、融雪促進であるとか共同苗代設置事業であるとかやっておりますけれども、ことしの今後の長期予報では、一つは、梅雨は顕著で大雨が降るというおそれがある、二つ目は、盛夏期は短かくて早冷傾向がある、夏は短いのじゃないか、こういうふうに予報されております。したがって、稲作の冷害対策も考えておかなきゃいけないというふうに思うのですけれども、この点はどのように考えておられるか、最初にお伺いいたします。
  109. 小島和義

    政府委員小島和義君) この三月に発表されました暖候期長期予報によりますれば、本年の夏につきましてもそれほど天候がいいという見通しにはないようでございます。気象庁の説明によりますれば、この長期予報でも昨年に比べれば気象庁の発表分自体ではまだ少しはいいのだという解説もあるわけでございます。いずれにいたしましても、長期予報の性格上、それがそのまま実際の気象になってあらわれるという保証はないわけでございますが、いろいろ変動が多いということは想定をしておかなきゃならないというふうに考えております。
  110. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 昨年の冷害対策の失敗としてある地域の話でございますけれども、指導員の指示によって追肥をした結果はどうなったかというと、刈り取り時期に稲が倒伏して収穫に影響したというところも聞いております。化学肥料をたくさん使えば土が冷え、冷害に拍車をかけるという結果にもなるわけです。先日四月二十五日ですか、全農のシンポジウムで「異常気象とこめ」、こういうことで和田元函館海洋気象台長は、「異常気象はまだ五、六年続く」であろうというふうに席上で言っているわけです。冷害にも強い米づくりの検討を必要と考えるわけですけれども、この点は展望はいかがなものでございましょうか。
  111. 小島和義

    政府委員小島和義君) 過去四年間の米の不作につきましては、いずれも気象上の要因が相当顕著であるというふうに見ておりますし、また、過去の気象との対比におきましてもそれは十分説明のできることでございます。しかしながら、農業生産のサイドにおきましても気象そのものがコントロールできません以上、できるだけいろいろな事態に備えた稲づくをりやっていくという必要があることは否めないわけでございます。また、実際問題としても、栽培管理を徹底することによりまして気象変動の影響を最小限度に免れておるという事例も少なくないわけでございます。そういったことを踏まえまして、本年は山村大臣の御提唱によりまして、たくましい稲づくりということを官民一体となって全国的に展開をするということによりまして、気象の見通しがいま一つはっきりしないこの時代を何とか乗り切りたいというふうに考えております。  具体的な問題といたしましては、適品種の選定、健苗の適期移植、それから適時適切な肥培管理を行うといった基本的な技術を励行するということ、それから地力の増強を図ること、生産組織の育成と技術の高位平準化を図るということ、さらに最新の科学技術を動員いたしまして、適正な生育診断と技術情報の伝達の迅速化といったことを軸といたしまして技術指導の徹底を図っていく。本年の場合にそういったことを主たる項目といたしましてこの運動を全国的に盛り上げてまいりたいというふうに考えております。
  112. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もちろん気象が相手ですから、決定的な対策、具体策というものはなかなか難しいと思いますけれども、いずれにしても先ほど言ったようにここ四年間冷害で不作が続いているわけです。そういった意味で、より以上にこの対策は考えていかなきゃいけないのじゃないか、こういうふうに思いますので、その辺を強化していただきたいというふうに思います。  なぜ私が今気象問題を最初にお聞きしたかというと、昨年は北海道を除き盛夏期に一時猛暑の時期がございました。まともに作付をしていれば不作にはならなかっただろうと言う農業の専門家もおります。その証拠に気象条件のずっと悪い東北地方の作況指数が平均が九八、気象条件が比較的よい関東地方で軒並み作況指数が九五以下である。これは数字で出ております。なぜ気象条件のよい関東地方で作況指数が悪いのかという点。また、冷害により作物の不作が起こるのはどういう現象から起こるのか、気象だけではないのじゃないかなというふうにも思われるのですけれども、この点はいかがでございましょうか。
  113. 小島和義

    政府委員小島和義君) 昨年の不作は、全国的には遅延型の冷害であるというふうに性格づけられておるわけでございますが、その影響というのは、単に生育段階におきます低温だけに由来するものではございませんで、地方によりましてさまざまな現象が絡み合いまして収量の減少をもたらしておるわけでございます。例えて申しますと、北海道はもともと夏季の天候に恵まれなくて生育がおくれておったわけでございますが、例年になく早い時期に雪が降りまして、それが根雪化したということもございます。また、今お話がございました関東の事例で申しますと、早場米地帯等におきましては東北地方の一部と同じように六、七月の低温ということが非常に大きく影響いたしたわけでございますが、その他の地域におきましても、台風五号、十号、さらには秋雨前線の停滞による日照不足、長雨、それから九月上旬の異常高温による一種のフェーン現象のようなものが起こったということなどがいろいろ絡んで、登熟不良ないしは病害虫、倒伏といった現象が起こっているわけでございます。したがいまして、五十八年稲作につきましては一口に言えば遅延型の冷害であるというふうに申し上げておりますけれども地域単位に見ますならば、さまざまな気象条件が絡み合って減収を招いておるということで関東の場合の減収も説明できようかと思っております。  ただ、先ほども申し上げましたように、気象要因と同時に人間の努力というものが絡み合って生産確保できるわけでございますから、人的な努力といいますか、それによってカバーできる点も多々あったのではないかという理解をいたしておりまして、それが先ほど申し上げたような新稲作運動の発端になったというふうにお考えいただければよろしいかと思います。
  114. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 いろいろ理由はあると思います。今人間の努力というお話がございましたけれども、私は農家が兼業のために農作業に手を抜いたというふうには思いませんけれども、そのほかの理由として、商品として売れる銘柄米を無理して高冷地や北方限界地域に作付しているからではないかという心配もあるわけです。先ほど対策と言いましたけれども対策対策として適地に合った作付指導、この辺は農水省として十分にやっておられるのかどうなのか、この点はいかがでございましょうか。
  115. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは稲に限りませず、作物を植えつける場合に品種の選定ということがまずイの一番に重要なことでございます。近年、米の品種別の作付動向を見ますと、消費の動向を反映いたしまして一類及び二類の産地品種銘柄が全体的には増加傾向にあるということになっておりますが、品種の選定に当たってはあくまでも適地適品種の原則に立って行うよう指導いたしておるわけでございます。  その結果、昨年の例でございますけれども、三年続きの冷害という事態も踏まえまして、耐冷性、耐病虫性の品種が増加する傾向がうかがわれますし、また標高別に適品種の栽培指導を強めるなどによりまして、特に高冷地における良質米品種の作付、いわゆるササニシキの山登りと言われましたような現象は、極力減らすように努めておるわけでございます。実際の数字を眺めてみますと、これは宮城県の場合でございますけれども、宮城県で今一番の良質米と言われておりますササニシキが昨年の場合には若干減少いたしまして、これに比べますれば耐冷性品種と言われておりますサトホナミが約五千ヘクタールほど増加しているという傾向もあるわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、今後とも気象の変動がやはり相当あるのではないかという見方があるわけでございますので、作柄の安定向上を図るためには何といっても品種の選定が大事でありますし、また、災害に対する危険分散とか労力配分というふうなことから考えましても、品種の選定と組み合わせということが重要であるというふうに考えておりますので、本年の場合におきましても 従来以上にその点の指導は強化してまいるつもりでございます。
  116. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そこでお聞きしたいのですけれども、米の量なのですが、先ほど言いましたように気象予報でいくと六月のこれから梅雨季には雨が多い、夏は短いのじゃないか。そうなると冷夏ということになります。したがって、米の不作がまた心配になってくるわけです。過去四年間連続不作となっておりますけれども、米の過剰と言われながらことしの政府の持ち越し在庫量はどの程度確保できるのか、この点が非常に心配なのですが、これが一点。  また、本年の需給見通しと、不足の事態が生じるおそれはそこでないのかどうなのか、これが二点目。  この点について農水省として今どういう見解を持っておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  117. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) まず、政府の持ち越してございますが、昨五十八年の十月末をもちまして終わりました五十八米穀年度につきましては、予定を大体十万トンの在庫ということで想定をいたしまして需給の操作を行いまして、五十九米穀年度には、前年度から十万トンの在庫の持ち越しをいたした次第でございます。  そこで、五十九米穀年度でございますが、御案内のように、四年連続の不作で五十八年産米は一千三十七万トンという生産の量でございました。これに先ほどの十万トンの持ち越し等を含めまして供給量として大体一千六十万トンという供給量になるというふうに考えております。他方、需要量は一千五十万トンと見積もっておりますので、五十九米穀年度末、つまりことしの十月末の現在におきますところの政府在庫は五十八米穀年度の末と同様に十万トン程度というふうに考えている次第でございます。これが第一点でございます。  それから、第二点の今後の需給の見通してございますが、ただいま申し上げましたようなことで、供給量が一千六十万トン、需要量が一千五十万トン、持ち越し十万トンというふうに考えますると、本米穀年度につきましては、再三申し上げておりますように、米の需給は基本的には問題はないというふうに考えている次第でございます。特に一番心配なのは端境期でございますが、端境期におきましては新米、五十八年産で申しますと十月末までに大体四百万トン程度は新米が出てまいりました。したがいまして、五十九米穀年度の端境期におきましてもこのような新米の早食いと申しますか、さようなことを若干余計にしなければいかぬかなというふうに思っておりますが、それによりまして供給に問題なくこれでいけるというふうに考えている次第でございます。  ただ、実態から申しまして、決して米の需給はゆとりがある状態じゃないということは事実でございまして、販売業者の方々にも御協力をお願いしながら、計画的な需給操作ということに努めておる次第でございまして、地域的あるいは時期的に米が偏在しないように供給していくという体制を現在とっているわけでございます。かようなきめ細かな対応を行ってまいりますれば、御指摘のような事態は生じないものと考えている次第でございます。
  118. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 基本的には心配ないということです。  大臣にお伺いしますけれども、昨年はわずか十万トン、これは日にちにすれば四日間分ですか、非常に綱渡り的な需給状態であったわけです。このように米の需給が不安定になってきたという遠因というか、その原因は一体どこにあるのか。基本的には心配ないとおっしゃっておりますけれども食糧というものはいわゆる戦略物資、このように世界で今騒がれているわけです。この食糧安保や自給率向上を目指す政府の方針からすれば、いささか気がかりな兆候のように私には思われます。日本は、御存じのとおり、米の消費量は多少ずつ減ってはきておりますけれども、いずれにしても米は日本の国民の主食であります。したがって、米のできふできと需給バランスは我々の食糧事情に大きな影響があるわけです。そこで、大臣から今後の米の需給のあり方の基本方針を、これは食糧庁長官が今御答弁になりましたけれども大臣として基本方針はどうなっているのか、お伺いいたします。
  119. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 米は我が国農業の基幹作物でございます。そしてまた、国民にとりましても最も重要な食糧でございます。この国民の食生活の変化に対応しながら、需要に見合ったところの生産確保して、そして安定供給をしていかなければならないと思っております。  米の需給につきましては、五十五年産米から四年連続不作ということでございました。しかし、基本的にはこれはやはり生産過剰基調にあるわけでございまして、その均衡を図るために水田利用再編対策をお願いしているところでございます。そしてまた、一方では最近の在庫状況を踏まえまして、水田利用再編第三期対策の期間中におきまして、適正な在庫水準を確保するためにゆとりを持たせた生産計画いたしております。  最近の生産状況にかんがみまして、確かに四年連続不作というものの一番大きいのは天候不順ではございます。しかし、同時にまた、たくましい稲づくり運動というものを目指して新稲作運動を官民一体となって展開しておるところでございます。せんだっても農業代表者の皆様方、そしてまた都道府県の知事会の代表、そして市長会の代表、町村会の代表、これらの皆さんにお集まりをいただきまして、そして御協力方をお願いしたところでございます。今後も作柄の安定、そして米の安定供給を図るということに全力を振るってまいりたいと思います。
  120. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 不作の原因は、今の答弁の中に異常気象ということが大臣からもお話ありましたけれども、確かに異常気象という要因も否定はできません。しかし、一方、農業研究者や学者の間では農地生産力、すなわち、今法案に出ております地力、この地力の低下が大きな原因ではないかというふうに指摘する人もおります。その原因として、何が地力を低下させたのか。それは長年にわたる化学肥料や農薬の多用、地方が年々そういうことで低下している。ちょっとの冷害にも耐える力を失っている、こういう影響が出ていると私は思うのです。  現実に耕地土壌の現状を見ても、農林水産省の方から出された資料によると、例えば水田の場合三百一万ヘクタールを対象に、分類として第一等級がよいということで、第二等級が普通、第三等級が不良、第四等級が極めて不良というふうに分類してみますと、水田の場合三百一万ヘクタールで、よいというのは〇・一%、それから普通が六〇・六%、不良が三八・九%、極めて不良というのは〇・四%、こういう数字がそちらから出ている資料に出ております。それから畑の場合、普通の畑の場合百二十四万ヘクタール、よいというのがこれも同じく〇・一%、それから普通が三一・三%、不良が六三・二%、極めて不良が五・四%。それから樹園地五十七万ヘクタール、これがよいのが〇・五%、普通が三五・二%、不良が五二・七%、極めて不良が一一・六%。これを一〇〇%と総合計していくと、よいというのが〇・一%、それから普通というのが四七・九%、不良が四八・八%、極めて不良が三・二%というふうになっているわけです。これはちょっと信じがたい数字でございますけれども、現実にはこういう数字が出ています。  農業技術の進歩により生産量は各年度とも維持されていますけれども、耕地土壌の低下は今申しましたように確かに低下しておりますし、深刻であることは間違いございません。不良土壌がこのような数字を示してきたのは大体いつごろからなのか、また、地目別の主な阻害要因というのは何なのか、この二点についてお伺いいたします。
  121. 小島和義

    政府委員小島和義君) 地力保全基本調査によりまして生産力可能性分級というものを行ったわけでございまして、これは大体十一ぐらいの項目をもとにいたしまして、それらの項目の総合判定によって一等級から四等級まで分類をいたしたわ けでございます。その三等級、四等級の比率が過半を占めておるわけでございますが、これは土壌生産力として見て余りいい土壌ではないということを言っているわけでございまして、現実にそこで作物の成育阻害その他の現象が起こっておるかどうかという問題とは多少趣を異にいたしております。すなわち、そういう不良な土壌でございましても、人間の努力の積み上げによりましてそういう自然本来の土壌生産力を改善いたしまして、それを農耕に有効に利用しているということはあるわけでございますから、三等級、四等級に分類されたものがいかんともなしがたいという状態になっているわけではないということはひとつお酌み取りをいただきたいと思います。  そこで、本来そういう土壌の構成を持っているわけでございますけれども、それに加えまして自然現象の進行ということもございますし、人間の努力の怠りということもございますし、そういうことからこの調査を行いました時点に比べましてもなおいろいろな面で問題がだんだん膨れ上がってきているという状況があるわけでございます。それらを含めまして一口に申し上げますならば、水田の場合には還元状態に非常になりやすい状態にある、また土地の性質その他から見て耕うんがしにくい状態にある、作土が浅いといったことが顕著になってきております。普通畑の場合で申しますと、これは日本の農耕の歴史といたしましていいところが先に水田になったということがございますから、畑はおおむね自然条件が悪いわけでございますが、自然肥沃度がもともと低い、それから、当然のことながら土地土壌の構成から見て乾きやすい性質を持っておる、それから侵食を受けやすいといった問題がございます。樹園地の場合には、それに加えまして養分が非常に少ない、また、普通畑と同じように乾きやすいとか、あるいは侵食を受けやすいといった問題が出ておるわけでございます。  そういったことを含めまして、調査期間中もそうでございますが、土壌の状態というのは年を追うて変わってまいるわけでございますから、基本調査終了後におきましても、土壌環境基礎調査ということで何年かに二度は全国の定点につきまして調査を継続して、土壌生産力の移り変わりを眺めているという仕組みをとっておるわけでございます。いつから急にということではございませんが、年を追うて土壌の状態が悪い方に変化をしておるというふうに見ておるわけでございます。
  122. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 ことしの四月に出た「地力増進法案参考資料」、この中でも出てますように、いわゆる不良土壌生産力阻害要因として、水田の場合は一番は作土の厚さですか、それから耕うんの難易、それから酸化還元性がある、これがワーストスリーということになっておるわけです。この三つはいずれも地力向上に最も大切な要素であるわけです。にもかかわらず農水省は今日まで手をこまねいて、こまねいたというか、手を抜いたというか、いわゆる化学肥料重視の農政を推進してきたということは、私は非常に遺憾だと思っております。地力が低下した最大の原因は何であったのか、どうしてこうも地力が減退し低下してきたのか、ここで農水省にもう一遍はっきりと、理屈は理屈として、実際にそういう怠慢というのですか、化学肥料重視の農政を推進してきたと私は思うのですけれども、現実にはどうなのですか、はっきりお答え願いたいと思います。
  123. 小島和義

    政府委員小島和義君) 先ほど申し上げましたように、我が国農業土壌というのは必ずしも大変恵まれた状態にはないわけでございますが、藩制時代この方、そこに人間の経験的な知識の集積によりましてさまざまな農法が築き上げられてきたわけでございます。端的に申し上げますならば、土地に対する有機物の施用ということを中心にいたしまして、明治以来になりますとそれに化学肥料を追加をいたしまして土地生産力を高めながら作物の栽培をしてきたわけでございます。それの一つの軸になりましたものが、各農家で主として役畜として飼われておりました家畜の排せつ物あるいは敷きわら等を利用いたしましてそれを土壌に還元をするという、土壌の方の学問で申しますと、土壌を通じましての窒素循環とかあるいは炭素の循環とか、そういうことが非常に巧みに行われておりまして、不良土壌の中にありながら何とか生産力をもたしてきたわけでございます。  しかしながら、昭和三十年代後半ぐらいを境にいたしまして農村の労働力が急激に減少してまいりまして、その過程におきまして機械が家畜に取ってかわったというふうなこと、さらには、労働力が非常に払底してまいりましたので、もともと堆肥づくりの労働というのは大変な重労働でございますし、また汚れる作業でもございますからとかく敬遠されがちである。堆肥源としても身近には家畜ふん尿等が得られないといったことが積み重なりまして土地に対する有機質還元というものがなおざりにされてきた。また、機械の作業そのものが必ずしも悪いわけではございませんが、我が国の場合にはどうもロータリー耕中心でございまして余り深耕が行われない。外国の場合ですと畑地が中心でありますからプラウの作業というのが一般的なわけでございますが、我が国の場合にはどうも水田中心であるということの影響もございましてロータリー耕中心でありますので、勢い耕うんの深さが非常に浅くなりまして、そのことが作土の浅層化をもたらしている。そういった農村社会をめぐります社会経済的な変化が農法の変化をもたらしまして、そういった新しい農法の中でこれまでの農法がカバーしてまいりました地力対策がどうもゆるがせにされてきた、こういったことが今日の地力低下の一つの原因ではないかというふうに見ておるわけでございます。
  124. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 今ロータリー耕運機に関係があるような話がございましたけれども、昔は一寸一石といったようないわゆる話がございましたけれども、最近ではそういうことを無視して能率本位ということに変わってきたからそういう結果になってきたのだ、土のかたさも確実にかたくなって、下層十五センチ以下はもう指も入らない、こういうかたくなっているところも大変多くなっております。  そこで、今後ますます農業者の高齢化が進む中で機械化の導入による弊害は出てくるのではないか、これは心配なのですけれども、現在改良されている農業機具の性能から見て作土の深さを維持することは構造上無理なのかどうなのか、それとも農業者の使用法が間違っているのか、この点についてはどんな見解を持っておられますか。
  125. 小島和義

    政府委員小島和義君) 水田におきましては、深耕に適さないロータリー耕によりましてどうも耕深が浅くなりがちであるということは先ほど申し上げたとおりでございますが、やはり水田におきましてもその深耕の必要があるという認識はだんだん深まってきておるわけでございます。現在使われております機械によりましても、これを減速耕うんいたしますと十五センチ程度ぐらいまでの耕うんは可能であるということがわかっておりまして、県によりましてはロータリー耕の速度を落とすということによって深耕を勧めているところもあるわけでございます。もちろんこれは、単にその方が能率が上がるということだけではございませんで、その後の田植え機を使います場合に比較的移植作業がスムーズにできる、ないしは刈り取りの際に、落水後に収穫期の逆転が簡単にできるというふうなことと絡んでおりますので、そういう意味で機械だけのせいではございませんで、全体的な農法がそうなっているというふうに申し上げた方がよろしいと思います。  そこで、これを昔に戻すということはなかなか容易ではないわけでございまして、やはり現在の農法のもとにおいても機械の改良等によって今以上の深耕が可能になるということを考えていくべきものだと思うわけでございます。その意味で、最近いろいろな行政上の必要を反映いたしまして、農業機械メーカーの側でも深耕用の機械というのが逐次開発されてきておりまして、同じロータリーでありましても深耕が可能になるようなロータリーが開発される、また、駆動ディスクと呼んでおりますけれども、通常のディスクプラウのプラウ部分が回転をする、その回転方向につきましても逆回転とかいろいろな回転をつけまして、通常のロータリー耕よりは相当深く耕せるということが機械の側からも可能になってきつつございます。  また、田植え機の方につきましても、これは御承知のように耕うんの深さとは関係なしに、深く耕した場合でも確実に移植ができるような田植え機の性能改善といったことが並行して行われてきておりますので、深耕の必要性の認識の深まりとともに、こういったものが使われることによりまして従来のロータリー耕の欠陥というものは補正できるというふうに考えておるわけでございます。
  126. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もう一つ不良土壌の阻害要因として酸化還元性が挙げられます。この酸化還元性は地力に大きな影響を持つことは言うまでもありませんけれども、最近の土壌条件の変化を見ても、作土の厚さ、有機物の含有量、それから緻密度、どれを見ても四十年前後と五十年前後では明らかに五十年前後の方が土壌が荒廃していることははっきりしているわけです。これも先ほど申しましたように、化学肥料の多用による後遺症である、化学肥料の使用で土は酸性土壌に変化してしまって、その結果地力が低下をしてきたということで、今現在もそうですけれども、これは将来の問題としてこれ以上地力の低下ということは見過ごすわけには私はいかない、こういうふうに思うのです。  昨年の五月でしたか、肥料の法案のときに、私は当委員会で地力について小島局長質問いたしましたけれども、そのとき小島局長答弁は、有機質の増投を促進する、そのためには機械、施設等の導入についての助成を実施する、二つ目は、未利用の有機物を活用した省資源的な地力増強の仕組みを考えていく、こういう答弁が確かにございました。あれからちょうど一年でございますけれども、具体的に何をやられたのか、また、実績はどうなったのか聞かしてください。
  127. 小島和義

    政府委員小島和義君) 有機物の増投促進のためには有機物増投事業というのが行われておりまして、昭和五十八年度の場合でございますが、百七十二市町村、二百十二の地区におきまして有機物の投与を容易ならしめる、これはマニュアスプレッダーという機械とかあるいはトレンチャーという機械、さらには農家が各戸で堆肥をつくるというのは難しくなっておりますので、地域集団ないしは農協等で堆肥舎等をつくる、こういった中身の事業でございますが、予算額にいたしまして十一億円ほどの計上をいたしておるわけでございます。五十九年度におきましてもおおむね同額の予算を計上いたしております。  それから、省資源の農業技術開発でございますけれども、これは現在土地に還元されていない未利用の資源を有効利用するということでございまして、具体的には五十八年度の場合、これは福島県の郡山市でございますが、屠畜場の汚泥あるいは食品工場の汚泥、さらには桑の焙焼といったものを原料にいたしまして堆肥をつくるという施設と、それからそれを利用いたしまして実際に肥培管理を行う実験的な集落の設置をいたしております。予算額にいたしまして六千四百万円ばかりでございまして、決して十分なものではございませんけれども、こういったことを軸にいたしまして、これまでの個別農家の対応ということではない新しい工夫をした有機物の施用というものを試みておるわけでございます。
  128. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 耕地土壌地力農業経営者にとって、また、生産性の面からいっても、経済的な面からいっても大きな意味を持っているわけです。先ほどの数字で示しましたように、日本の耕地面積の約五三%は不良土壌になっておる、いわゆるがん症状になりつつあるような気がするわけであります。もはや土地の健康を維持するということは、個別農家の土づくりが個々の農家の責任においてやる段階は終わったのではないか、また、そうはできない状況下に世の中は変わってきてしまっている。したがって、それほどまでに日本の耕地は今荒廃しているわけです。母なる大地という言葉がございますけれども、何としても土を大事にしなければならないというのは農家経営のみならず、国民全体への影響を考えて深刻に考えていかざるを得ないというふうに思います。  それで、前後しますけれども、このたびは地力増進法を、従来の耕土培養法を廃止して、そうして新たに制定しようとしているわけでございます。耕土培養法は四十六年までは効力があったけれども、その後ほとんど進んでいなかったように思われます。なぜもっと前に耕地を保護するような法律提案はできなかったのか、遅きに失したという感があるのですけれども、この点はいかがでございますか。  また、地力増進法というのですから、逆に考えれば地力が低下したから増進法ということになるわけです。この時期に地力増進法を提出した背景というのはどこにあるのか、この二点についてお伺いいたします。
  129. 小島和義

    政府委員小島和義君) 耕土培養法が制定されました昭和二十年代と申しますのは、食糧増産の要請が非常に強かった時代でございまして、現実にその農地生産力が化学的な要因によりまして非常に阻害されておるという地域に対しまして、当時の言葉で言う耕土培養資材を施用する、それに対する助成を内容とした法律であったわけでございます。この実施期間を通じましてこのときの法律の目的としては達成されたということで、その後はその法律が形式的には存在をしておりますが、実際には動いてないという状態に相なったわけでございます。  実は、この法律の機能が事実上停止しましてから以降、何とかして新しい土づくりの法制を考えたいということが私どもとしても懸案であったわけでございまして、省内におきまして検討会をつくったりなどいたしましていろいろな角度から検討をしてまいったわけでございます。それで、具体的なテーマというのは大きく分けますと二つございまして、耕土培養法対象としておりましたような特定の阻害要因を持った農耕地だけを対象とするという法制ではなくて、いろいろな問題に対して多面的に対応できるような法制をいかにして仕組むかという問題が一つでございます。それからいま一つは、土壌改良資材の問題でございますが、その当時におきましては、耕土培養資材は単に農林大臣の指定する資材といだけございまして、具体的にそういう資材の内容を検査測定をいたしましてその効用を把握するという技術的な手法に欠けておったわけでございますが、その後いろいろな品質管理をするための研究活動を行いまして、どうやら資材そのものを検定することによってその効果を予測できるという技術的な見通しが立ってまいったわけでございます。  以上二つの問題を踏まえまして法律の制定を考えておったわけでございますが、御承知のように、大変国家財政も窮迫をいたしておりまして、なかなか新しい法制をつくるということについては環境は厳しいさなかでございます。しかしながら、昨今、土づくりの問題についての一般の世論といいますか、機運が大変盛り上がってきておりますところへ加えまして、山村大臣御就任以来、特に土づくり問題に力を入れるようにという御指示もございまして、内容的に一〇〇%自信を持ってということではございませんが、やはり土づくりの基本的な法制を持つこと自体がこういった対策を進める上での一つの原動力になるという理解のもとに、今国会に法案を出した次第でございます。
  130. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もちろん、耕地面積、耕地土壌一つは広範囲である、それから地域差もある。さらに、午前中もお話ありましたけれども、年がたつに従って土壌は変化をしていくということはもちろん当然でございますけども、それではこの地力増進法によって荒廃している耕地の地方は一体いつごろを目指して、またどのくらい回復を見込んでいるのか、この点はいかがですか。
  131. 小島和義

    政府委員小島和義君) この法律を準備するに当たりまして、この法律で予定いたしておりますような地力増進地域の要件を満たすところがどれぐらいあるであろうかということを地図上で拾ってみたわけでございます。これは面積要件といたしまして都府県の場合約百ヘクタール、北海道で二百ヘクタール程度のもので、かつその土壌の性質が不良であるといった地域でございますが、土壌基本図の上から拾ってみますと、大体地区数で二千六百地区、面積にいたしますと九十万ヘクタール弱といったものが地図上では拾えるわけでございます。これらの地域の中から、都道府県が農業振興上の必要性に応じまして順次指定をしていくことになるわけでございますが、さしあたりの計画といたしましては、一県三地域程度、全国で百四十地域ぐらいを想定をいたしておるわけでございます。  その後におきまして、これをどの程度の速度で進めていくかという問題につきましては、都道府県とも十分意見調整をする必要がありますし、また、その後の対策効果ということ等も並行して考える必要があろうと思います。ただ、こういう制度のもとで進めることでございますから、長期的な計画なしでというわけにもまいりませんので、法律施行後におきまして各県とも意見調整の上、速やかに長期の年次計画のようなものをつかんでいきたい、かように考えておりまして、現時点で何年ということはちょっと申し上げかねるのでございます。
  132. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 何年ということがわからないので、勝手にやるというわけにはこれはいかないと思いますけれども、その土地の培養のサイクルというものもあるでしょうから、そういうこと等も含めておおよそ大体どのぐらいで回復させるのか。これを大きな目標にして順次進めていくというのが行政のあり方だと思うのですけれども、いかがですか。
  133. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは確かにおっしゃるとおりでございまして、行政を進めます場合にそういう長期計画を持たないということは、これは許されないことだと思っておるわけでございます。ただ、この法律制度自体は、内容をごらんいただきますように、一種の一般手続法になっておりますので、この制度ある限り、また問題のある限りいつまででも作動ができるという法律内容になっておるわけでございます。ちょうどその意味では土地改良法があるというのとやや同じようなものになるわけでございますが、この土地改良の場合でも、やはり今後十年なら十年の長期計画というものは持っているわけでございますから、同じような意味におきましてこの制度を今後十年なり二十年なりにどういう形で運用していくかという意味での、ここでゴールという意味ではございませんが、そういう意味での長期計画というものは、当然これは策定していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  134. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そこで私は、地力増進とはいわゆる地力の維持、土に永久に若さと力を保たせることであると考えております。土づくりの基本は、大地そのものをどう守っていくかということに通じるのではないかと思います。農水省も、今年度から五年間に全国土地区ですか、地力培養モデル事業を進めようとしているわけですけれども、このマスタープランの構想と今後の実施計画を簡単で結構ですから教えてください。
  135. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは、具体的に問題が起こっておりますところにつきまして、土壌診断実施とこれに基づくマスタープランを作成いたしまして、そのマスタープランに沿った堆肥製造施設でございますとか、土壌改良あるいは土層改良の機械等を整備する、またはそれらの組織的事業運用によりまして、堆肥をつくったり土壌管理適正化を進めることを地域の実態に応じて総合的にやっていくという意味で、その地力の土づくり推進の一つの拠点というふうな性格づけをいたしておるわけでございます。計画といたしましては、単年度に十四地区ということを考えておりまして、五カ年計画で七土地区ということが全体の計画になっておるわけでございます。
  136. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 この構想と今回の地力増進法一体となって農水省が土づくりに本腰を入れることは、私は結構だと思います。  大臣にお聞きしますけれども、この事業日本農業の将来の命運を担う大役であるわけでございます。一日も早い結果と対策が急務ではなかろうかというふうに思うのですけれども大臣の決意、先ほど午前中には、一生懸命やるという話を聞きました。また、やらせるということでございますけれども、御決意はいかがですか。
  137. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 農地土壌というものは、これは農業生産の一番の基礎となるものでございます。そしてまた、農業経営の安定のためには地力増進を図ることが不可欠であるというぐあいに考えております。私は就任以来、たくましい稲づくり、そして豊かな村づくりとあわせて健康な土づくりの推進をいたしてまいりました。ただいま局長からお話がございましたように、行政施策といたしましては、かねてから土壌調査及び診断、農業者に対する啓蒙普及、また有機物施用のための機械施設に対する助成、これらの施策を講じてきたところでございます。さらに、昭和五十九年度におきましては一層土づくり対策を強化するために、新たに土づくりの模範となるモデル地区を設置し、土づくり対策の拡充強化を図ってまいりますし、また、今回、土づくり体制の強化等を図ることを内容とする本法案を提出した次第でございまして、この法制的な面からも施策の一層の充実を図るということに力を入れてまいりたいというぐあいに考えております。
  138. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 農林水産省は食糧安全保障ということを大前提として、国内の農地は五百五十万ヘクタールを確保する、こういうふうに聞いておりますけれども、この方針は変わりございませんか。
  139. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 六十五年度長期見通しに従いまして、五百五十万ヘクタールの農用地を確保する前提で施策を進めております。
  140. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そこで、優良農地確保することは農政の基本課題であることはこれは間違いないことであります。優良農地にしても、市街化の進む中でこれ以上つぶされては困るわけですけれども、現実に減っているような感じがするわけです。この五年間において土地改良、農用地の造成の進捗状況、いわゆる優良農地と言われる農地は結論としてふえているのかどうなのか、この辺はいかがですか。
  141. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 農用地の問題を考えます場合、農振法に基づく農用地区域の面積と、その中に含まれます農地面積が主力になるわけでございます。これにつきましては、毎年線引きの見直し等を行うとともに、一方におきましては厳に転用を抑制するという姿勢でおりまして、総面積につきましても、農地面積につきましても若干ではございますがふえております。
  142. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 次に、土づくりについてお伺いをしたいのですが、土を守る運動が始まってから十年になるわけですが、土づくりの運動の成果というか、予算の面であるとか実績の面であるとか、効果はどうだったのか、この辺はいかがでございますか。
  143. 小島和義

    政府委員小島和義君) 土づくりの問題は突き詰めて申しますと、やはり個々の農業者が対応する問題になるわけでございますから、農業者の方方にその問題の重要性を認識してもらうということが何よりも大切なことになるわけでございます。その意味昭和五十年からだったと記憶いたしますが、ささやかながら事務費をちょうだいいたしまして、それをもとにいたしまして各県に都道府県の土づくり運動推進協議会というものをつくらしておりまして、そこが中心になりましてさまざまなPRを進めておるわけでございます。  各県のやっておりますことは、少しずつニュアンスの差はあるのでございますが、一概に申し上げれば、一つは、ポスターとかパンフレットとかそういったPR資料をつくりましてそれを配布する。中には優良事例でありますとか指導者用の手引といったものをつくっているところもございます。  それから第二には、広報活動でございまして、これはラジオ、テレビあるいはその他のスライド、広報車等を用い、あるいは垂れ幕をつくるといったことによりまして広報活動をやっておるものが第二の活動でございます。  第三といたしましては、各種行事の開催でございまして、これは農家の方々、あるいは指導者の方々にお集まりいただきまして研修会とか講習会を開催する、ないしは実際に土づくり運動をやっている方々のコンクールでございますとか、あるいは講演会といった行事でございます。それらの一環といたしまして、例えば標語の募集でございますとか、あるいは土の日とか土の月間を制定するといったことをやっておる県もございます。そういった事務的な経費が中心でございますので、予算額としては五十九年度の場合で三千百万円程度の補助金を配っておるわけでございます。
  144. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 今局長の話ですと、土づくりは農家の人ということで長年土づくりをやってきたけれども、私は余り効果が上がっていないというふうに見るわけです。そうなると、これは農家が怠慢だからというふうに聞こえるのですけれども、そう思っているのかどうかわかりませんが、どうもそう思わざるを得ない。  例えば、全農から安い化学肥料を購入して堆肥、厩肥の施用が減少し、化学肥料偏重が今日の地力低下につながって、農機具などでも先ほど申しましたように能率能率という観点から効率重視の指導に走ってきたのではないか、こういうふうにこれも先ほどお話がありましたけれども、いずれにしても地力の低下ということは間違いない事実でございます。  今言った例からいって、農水省としてこうした点に反省すべき点は全くなかったのかどうなのか、この点はいかがですか。
  145. 小島和義

    政府委員小島和義君) 今申し上げました運動の成果というのは、これは一種の教育普及活動でございますから、この運動の結果目に見えて何かが急に変わるということはないわけでございますが、事柄の重要性を繰り返し繰り返し植えつけていくということがやはりそのスタートであるわけでございまして、そんなことが一つのきっかけになりまして土づくり問題に対する重要性の認識というものが大分徹底をしてきたという感じがいたしておるわけでございます。  もちろん、運動だけですべてが終わるわけではございませんで、それらの運動に加えまして国が予算の面において応援すべきもの、これとてももちろん国から押しつけるわけではございませんで、現地の盛り上がりというものがありまして初めて国の予算が生きるわけでございますから、そういった予算措置、さらには今回お出しいたしておりますような法制的な措置、こういう運動と予算と法制との一種の三つ重ね弁当みたいなものでございまして、三位一体となりましてこの対策は進めるものであろうというふうに考えております。  それから、今御指摘ございました過去のやってきたことに対する反省はないかということでございますが、この土の問題につきましての仕事というのは、昭和二十年代以降大変地味ではございますが根気よく続けてきておったわけでございます。昭和三十年代以降におきまして農業労働力が減少する過程の中で、労働生産性の向上ということが大変大きな政策上の眼目となってまいりまして、そのことがきっかけとなって日本農法についても非常に顕著な変化があらわれてまいりました。そのこと自体がすべてマイナスであったと申し上げるつもりはないわけでございますが、その過程の中におきまして、従来重視されてきておった土づくりという基本的な技術がともすればなおざりにされがちである、こういう問題が出てまいりまして、そのことがまた五十年代になりましての土づくり運動のきっかけでもあったわけでございます。  そういったことを踏まえまして、今回土に対する法制の整備ということが一つのきっかけとなりまして、この問題に対する関係者の関心というのがますます高まってまいりました。予算措置等とあわせまして大きな成果を発揮する、かようなことを期待いたしておるわけでございます。
  146. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 要するに、土づくりは作物に適した土をいかに効率的につくるかが大事であり、そのためには土壌診断が必要になるわけです。  そこで、地力の診断の目的はどこにあるのか、これが一つと、検体の診断項目には地力に欠かすことのできない微生物が入っておりません。土壌は生き物であり、そのために検体の診断項目に微生物調査を入れて本格的な土づくりをすべきであると私は思いますけれども、いかがでございますか。
  147. 小島和義

    政府委員小島和義君) 通常の場合には、土壌診断は施肥量の判断基準として行われる場合が多いわけでございまして、PHを初めといたしまして、燐酸とかカリ、あるいはカルシウム、苦土といった主要養分につきましての圃場の土壌を分析して、その足らざるものを補っていくという考え方で行われておるわけでございます。この土壌診断につきましては、改良普及所で行っております件数などから見ましても、大変重要性が認識されてきたような気がいたしております。過去一年間の診断件数で申しましても四十八万件余になっておりますので、その意味では農家の側においても、土の問題についていろいろ関心の度合いは高まってきておるというふうに考えておるわけでございます。ただ、そういう農業改良普及所段階でできます地方診断と申しますか、土壌診断というものは、おのずから機械、設備、能力等の関係から制約があるわけでございますから、さらに精密なものということになりますと、その県の試験場を煩わすということになろうかと思っております。  その土壌診断の中で、今お話のございました微生物の賦存状況を調べるという問題は確かに重要性があるわけでございますが、これは非常に数が多うございまして、文献等によりますと、スプーン一杯の土の中で通常でも数百万匹、非常に活発な場合には数億の単位の微生物がいるということが言われておりますので、これ自体を簡便に測定し得る実用的な手法がまだ開発されていないという問題がございます。そこで現在は、微生物が活発に活動できるような環境に土壌があるかどうかということを調べまして、それによってその土壌の微生物学的な性格というものを測定をしておるわけでございます。今後の方向といたしましては、微生物の地力に果たす役割とその評価方法についての試験研究の成果を待って、実用に供し得るよい方法があればこれ自体もストレートな形で診断項目に加えていくことを期待していきたいというふうに考えておりますが、現時点においてはなかなかそこまでいっていないということでございます。
  148. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 次に、地力増進法では、「土壌改良資材の品質に関する表示の適正化のための措置を講ずる」という法律になっております。これまでいろいろな土壌改良資材を使い地力の維持向上に努めてきたところではありますけれども、この土壌改良資材の中にもよい品質、悪い品質といろいろあって、必ずしも農業者にとって喜ばれる結果とはなっておりません。この法律が施行されると、この表示の適正化、使用等について農業者は期待もしていると思うわけです。しかし、この土壌改良資材も百五十種類以上にも及ぶ資材がありますけれども、表示方法についても、だれが見てもわかりやすい表示が望まれるところであります。例えば泥炭、ベントナイト、ゼオライトというものの表示はどうするのか、これが一点。それから関連して、微生物資材についての表示はどのようにしていくのか、この二点についてお伺いします。
  149. 小島和義

    政府委員小島和義君) 土壌改良資材につきまして、こういう表示方法を定めるということを思いつくに至りましたのは、近年農村で使われております資材につきまして、この効果というものはおおむね経験則によっているということがございますものですから、実際に使う場所、土壌の状態によりましてその効果にいろいろなむらがあるわけでございます。中にはほとんど効果のないものもあるといったことから紛争の種になる場合があるわけでございます。こういう問題につきまして、例えば改良普及所のようなところが、問題であるというふうな指導をいたしまして、売っている方の側からは、営業妨害だということで問題になったりするというケースもございますので、やはり行政関与の一つのルールを決めていくことがよい物の普及という意味においては効果を発揮するのではないかと思っております。その意味で、できるだけ正しい表示ということにいたしたいと思いますので、そのためには、表示のもとになりますところの、特に効果について測定する物差しがなけりゃならないということで、五十五年度以降、土壌改良資材の品質管理事業ということで土壌改良資材の検定方法の確立を進めてまいったわけでございます。おおむねその大部分のものにつきましての表示について自信を持つに至りましたので、今般法制化に踏み切ったわけでございます。  今お尋ねの具体的な中身の問題でございますけれども、ただいま予定いたしておりますことでは、例えば泥炭類の場合、これは主としてその効果というのは、土壌の団粒の形成促進あるいは適気性の改善といったことが主な目的になるわけでございますが、一般的表示事項としまして、資材の名称、資材の種類、それから表示を行った者の住所、氏名、それから製造業者の名称、所在地、正味重量、標準使用量、ここまでは共通の一般的な表示事項でございます。それからそのほかの資材特有の表示事項としましては、塩酸不溶解物の含有量の最大量、水分の含有量の最大量、粒度、産地、原料名、それから効果の種類、これが一番大事なわけでございますが、団粒の形成促進、通気性改善、透水性改善、それから保水性改善といったことにつきまして、どの程度の効果があるかということの表示をさせてまいるつもりでございます。  それから、ベントナイトになりますと、これはその効果が、ベントナイト、ゼオライトとも養分保持力を増強するということがその効果の主なものでございますが、この場合でございますと、一般表示事項は共通でございますが、塩基置換容量の最小量、それからその効果の種類、この場合には漏水防止効果とかいうものも水田では附帯的に期待できますので、そういったものと、先ほど申し上げました養分保持力の増強効果が表示事項になるわけでございます。ゼオライトの場合には、大体ベントナイトと同じようなことになろうかと思います。  そこで、最後の微生物資材でございますが、これにつきましても、多年にわたる検討の結果、一応の検定方法というものは確立をいたしておるわけでございますが、ただ、土壌の状態が異なりますと、施用した場合の実際の効果と実験室段階での検定上あらわれた効果との間にどうしてもかなりな食い違いが出てくる。それは、土壌中にはもともとある種の微生物が当然おるわけでございますから、その微生物の影響によるものなのか、あるいは土壌の種類によって反応が違うのか、その辺まだ解明されておりませんので、微生物資材につきましては、政令で指定する時期をしばらく猶予さしていただきたいと思っております。検定方法を確立次第、追加的に表示すべき土壌改良資材として追加をいたしたいと考えております。
  150. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 この法律土壌改良資材が選別されるということは大変私はいいことだと思います。しかし、この法律土壌改良資材が、これは土壌改良資材だということで正当化されることによって、今度は逆に反面、特殊肥料である堆厩肥の施用がますます減少をしてくる傾向になるのではないかとの心配があるのですけれども、この心配の点についてはどのような見解を持っておられるか、また、土壌改良資材と堆厩肥との施用バランスはどういうふうに農水省としては指導されていくのか、この二点についてお聞かせください。
  151. 小島和義

    政府委員小島和義君) 農業というのはもともと自然の生態系を活用した産業でございますので、土づくりの問題につきましても、自然の物質循環を中心に据えるというのが本来の姿であろうというふうに考えておるわけでございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、現在の農家の諸事情の中におきましてそういった自然の物質循環のみに頼った土づくりというのが制約があるという中で、現実に各種の土壌改良資材が使われてきておるという実態があるわけでございます。別にこの土壌改良資材の施用を促進するとか応援するという意図はないのでございますが、流通し使用されております以上はできるだけこれはいいものが使われるように、また農家の使う側に必要な十分な判断が与えられるような仕組みというものを考えていかなきゃならぬ、こういうことでこのような法制にいたしたわけでございます。したがって、あくまで土壌改良資材を使う場合には、土壌改良資材の中には広い意味の特殊肥料とか普通肥料の一部も含まれておりますけれども、専ら土壌改良資材として使われますような資材というのは補充的なものであるというふうに考えております。具体的に都道府県が策定をいたします地力増進対策指針の中におきましてもそういう理念が十分生かされますように、対策指針の中で定めております資材は必ずしも政令指定資材だけでございませんで、一般の堆肥のようなものから普通肥料のようなものまで含めた幅広い概念がございますから、その辺の物の考え方はきちんと整理をして臨みたいというふうに考えております。
  152. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 次に、コンポストのことについてお伺いしたいのですが、厚生省と建設省、廃棄物、生ごみの監督官庁は厚生省です。厚生省は来ていますか。建設省もいますね。  肥料取締法の分類では、堆肥、厩肥は特殊肥料となっておりますけれども土壌改良資材の普及で堆厩肥の存在が忘れがちになるおそれもあるわけです。私がここで堆厩肥の効用について申し上げるまでもなく、土壌保全にはこれは欠くことのできない肥料であり、大切なものであるということは言うまでもないことでございます。  そこで、今各地方自治体で注目されておりますコンポストでございますけれども全国の自治体のうちコンポスト化の実験または実用化の段階に入っている自治体はどのくらいあるのか、厚生省、建設省それぞれどのぐらい掌握しているのか、その点が一点。また、その内容としてどういう点を承知しておるのか、成功しているとか不成功に終わったとか、また、予算面ではどうなのか、できぐあい等々を含めて両省からお伺いをしたいと思います。
  153. 小林康彦

    説明員(小林康彦君) お答え申し上げます。  ごみからのコンポスト処理につきましては、五十六年度末におきまして全国で十五施設、能力にいたしまして一日当たり四百十二トンの施設を持っております。この施設によりまして昭和五十六年度中に三万五千トンの処理をいたしまして、全体のごみ量に対しまして〇・一%に相当する量でございます。ごみから出ますコンポストにつきましては、肥料取締法におきまして特殊肥料としての取り扱いを受けておりまして、その基準に合致をするような製品は十分生み出しておる状況でございます。ただ、全国的に今後大きく伸びる傾向にあるかどうかといいますと、それほど伸びる傾向はございませんで、ここ数年来横ばいの状態で推移しているというのが常態でございます。
  154. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 下水汚泥関係のコンポスト化でございますけれども、現在東京都、福岡市など十六の都市で施設が稼働中でございます。そのほか民間企業に汚泥を引き取っていただいてコンポスト化している都市が二十一ございます。  農地への下水汚泥の還元につきましては、有機肥料がいろいろ見直されていること、そのほか資源の有効利用にも資するということ、それから今後下水道の普及率の向上に伴いまして下水汚泥が相当程度出て多くなってまいります。建設省といたしましても、下水処理施設の一環といたしましてそれらの施設の建設について地方公共団体に補助を行うなど、今後とも積極的に推進していきたいと考えておるところでございます。
  155. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 今後の推進ということについては、肥料というのは農水省管轄で農水省側で使うわけですから、厚生省や建設省に聞いてもこれは無理かと思いますけれども、このコンポストに関して今御報告がありました。厚生省側、建設省側として推進についてはどういう考えを持っておられるか、この点おわかりになればお聞きしたいと思います。
  156. 小林康彦

    説明員(小林康彦君) お答えいたします。  ごみのコンポスト処理につきましては、廃棄物の処理の一つ方法として有効なものでございますし、その結果が有効に資源として活用されるということも非常に歓迎すべきことでございます。ただ、そのコンポストの先の状況でございますとか、あるいは安定してコンポストがさばけるかどうか、途中でとまりますとごみ処理の上で非常に支障がございますので安定した市場が確保できるかどうか、多少の問題はございますけれども、市町村が整備をし、これによりましてごみ処理をしていこうという場合には、厚生省としても積極的にその施設整備に対する補助でございますとか技術的な指導でございますとかに取り組んでまいりたい、こういうふうに思っております。
  157. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 建設省は。
  158. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 下水汚泥の関係のコンポストでございますけれども、先ほどお答えいたしましたように、具体的に推進そのものにつきましては当然特殊肥料などにつきましては肥料取締法がございますし、それから具体的に実施する際には当然利用者でございます農家の方々の御理解を得ないとできないものでございますので、農家の方方あるいは農政関係の方々とも十分連絡をとりながら進めていくわけでございます。方向そのものといたしましては、下水汚泥が今後とも非常に多くなるということもございます。それから地力の回復などについての社会的な意味でのいろいろな御意見もございますので、施設の整備につきましても、建設省としましては今後とも積極的な意味で推進してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  159. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、次に農水省の立場からお答え願いたいと思いますが、農水省はこのコンポストに含まれている重金属の含有量を心配しているようでございますけれども肥料取締法の規定値でいくと水銀が二ppm、それからカドミウムが五ppmとなっているわけです。この数値の根拠は何なのか。さらにこのコンポスト、汚泥肥料の中にある重金属の含有量の実態、また今後肥料として心配なく使用できる範囲にあるのかどうなのか、これが二点目。それと、当然自然界にも多少なりとも水銀、カドミウムというものは含有しているわけでございますので、農水省の承知している数値はどのぐらいなのか、参考のためにお聞かせ願いたいと思います。
  160. 小島和義

    政府委員小島和義君) お尋ねの点についてお答えいたします前に、農水省として今の汚泥肥料とか都市ごみコンポストについてどういう考え方を持っているかということをちょっと申し上げておきますが、これは実は汚泥肥料とコンポストとちょっと様相の違う点がございます。つまり、汚泥の場合には必ず一定量出てきてしまうわけでございますが、ごみの場合には通常は焼却処分をいたしておりまして、コンポストにするためには一定期間熟成させましてこれを堆肥として供給をするという出発点の違いが多少ございます。それから供給面でも、生産は周年行われますけれども、使う方の農業の側ではこういう堆肥類というのはシーズンがあるわけでございますから、そういう供給サイドの周年性と使う側の季節性というものとをどうやって調整していくのかという問題がうまく連絡をされませんと、なかなか伸びていかないという性格を持っているということをまず御承知を願いたいと存じます。  それから、お尋ねの点でございますが、今特殊肥料として扱っております汚泥肥料等につきましては、水銀の場合で二ppm、カドミウムの場合で、これはいずれも乾物でございますが、五ppmという基準を設けておりますが、この基準の設定に当たりましての考え方といたしましては三つほどあるわけでございます。  第一は、従来の試験研究の結果から見まして作物の生育を阻害することがないという数値であること。第二に、土壌中の天然賦存量に比較して余り多くならない、大体天然賦存量の倍ぐらいのところということに置いてあるということでございます。それから第三には、外国の規制基準を参考にした。これらの三つの点を参考にいたしまして規制基準を決めておるわけでございまして、これらはいずれも外国の規制値に比べますと、かなり低い水準で決めておるという意味においては、安全性の確保ということには問題がないというふうに考えております。  それから、実際に出回っておりますものの数値がこれに対してどんな割合であるかということになりますと、これは幾つかのものにつきましての平均値でお答え申し上げますが、汚泥肥料の場合にカドミウムが三・四五、それから水銀が一・五五、それから都市ごみコンポストの場合にはカドミウムで一・三八、水銀〇・六七ということが実際に出回っておりますものの平均的な数値に相なっております。もちろん平均でございますから、多少高いもの、低いものがあるわけでございまして、いずれも問題としてはないというふうに考えております。  それから、天然界に存在をいたしております数値でございますが、これはクラーク数というのがございまして、これは地球表層部の元素の所在推定値でございまして、それがカドミウムの場合でございますと〇・五ppm、それから水銀の場合でございますと〇・二ppmということが知られておるわけでございます。
  161. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 大臣にお聞きしますが、この堆厩肥の使用もなかなか難しく、これにかわるコンポスト、汚泥肥料の普及は大変だと思いますけれども、私は非常に大切なものであるとも思います。  過去の営農営農として、時代の進歩、社会機構の複雑化、近代化、さらに農法のいわゆる変化、こういうことを考え合わせて、地力増進のためには農水省はコンポストの普及に積極的に取り組み、地力の回復を目指すべきではなかろうかというふうに思うわけでございますけれども大臣からこのコンポスト、汚泥肥料利用推進についての所見、それとあわせて、今都ではコンポストをつくるために多摩市に下水処理の関係施設をつくっておりますし、江東区の夢の島には生ごみの施設をつくっております。聞くところによると、成果も上がっているように聞いておりますけれども、百聞は一見にしかずということでございますので、大臣、一遍御視察なされたらどうかなというふうに思うのですけれども、いかがでございますか。
  162. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 都市ごみコンポスト、そしてまた汚泥肥料、これらにつきましては重金属を含むという可能性があるなど、いわゆる無条件でその利用を強力推進ということには問題があろうと思います。しかし、資源の有効利用を図るということでこの活用につきましては重大な関心も持っておりますし、そしてまた、今おっしゃられましたが、私としても国会でも終わりましたら早速見せていただきたいというぐあいにも考えております。今後とも土壌の状態に応じたこれらの資材が適切に利用されるよう、生産者とも、指導しながらひとつこれを研究してまいりたいというぐあいに考えます。
  163. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 私の最後の質問に、農水省にぜひ聞いていただきたいし、また認識してもいただきたい点を含めて二点ほどお伺いをいたします。  これまで私が述べてきたことは、地力という概念についての一般的常識というか、通念をほぼ肯定して、それを前提とした上で質問をしてまいりましたし、現実に地力が低下し減退している事実の上に立って地力増進は図るべきだというふうに思います。しかし、世間にはこれまで常識とされてきたような地力に依存しない生産方式というか農法というものも現に存在していることはこれは事実でございます。    〔委員長退席、理事北修二君着席〕  例えば、最近よく知られるようになっているハイポニカもその一つでありますし、また、これは一部専門家の間でしか知られていないものと思われますが、かつて九州大学農学部の福島栄一教授によって提唱されたものに砂栽培の理論というものがございます。これは一般的に知られている礫耕栽培とか砂耕栽培とかいう場合の砂耕栽培とは異なるものでありまして、また、単に砂の上で栽培される場合に限らず、すなわち一般の土においても応用できる農法であります。詳細な説明は避けるとして、これは明らかに既成の地力という考え方とは異質な新しい農法でありながら、高い生産性を発揮すると同時に、良質の作物生産するものであります。私も見てまいりましたし、食べさせてもらいました。非常においしいものもできるし、すばらしい農作物ができております。  また、この際、より具体的な例を通して申し上げておくならば、農水省は石ころなどの礫はこの法律からいきますとできるだけ少ない方がいい、ない方がいいというふうになるわけですけれども、外国では石肥、石の肥料といいますか、石肥と言って、石があった方が物ができるという考えさえあるわけです。現に世界的に有名なお茶、ブドウ等が岩場でつくられている事実もございます。  そこでお尋ねしたい点は、こういった事実は農水省としてよく承知していると思うけれども、この事実を踏まえての上の地力増進法の推進であるのかどうなのか、これが一つ。  もう一つ、本法案の第七条二項の解釈や運用にかかわる問題ということになるものと思いますが、このように行政サイドや一般的通念で言われているところの地力という基準に適合していなくとも、独自の農法でもって良質な作物を高い生産性で生産しているような場合、これが知事の定めるいわゆる地力増進対策指針に即した営農に当たらないとして当該農業者に勧告するようなことがあり得るのかどうなのか、これが二点目。  そして最後に、またこれと関連することでございますけれども、七条二項で言ういわゆる「地力増進が著しく阻害されていると認められるとき」とは具体的にどういうことを意味しているのかということも含めて明確に御答弁を願いたいと思います。三点お願いします。
  164. 小島和義

    政府委員小島和義君) ただいま御指摘になりました、常識的に言えば余り地方がよくない、高くないという条件のもとにおいて、非常に高い生産を上げている農法があるということは承知をいたしております。恐らく緑健農法と呼ばれている農法のことではないかと思いますが、これは作物の性格にもよりますが、同時に、特殊な肥料利用との組み合わせによりましてそれなりに非常に高い生産を上げている、こういうケースであろうと思います。そういう土壌の性質をいわば逆手にとりまして作物生産をうまく誘導しているという農法につきましては、これは地力増進対策指針を定めます場合に、そういうものにつきましては十分配慮してまいることにいたしたいと考えております。  それから、そういう特別な農法を行っているがゆえに農家が勧告を受けるようなことがあるのかどうかというお尋ねでございますが、問題は、土地生産力が低いことによって農業生産がうまくいかないということを想定いたしまして制度を考えておるわけでございますから、実際に農業生産が円滑に行われている場合におきましてこういった勧告の対象になるということはないと理解をいたしております。  それから、第三の点でございますが、この勧告制度をなぜつくったかということでございます。先ほども申し上げましたように、これは農家の問題ではございますけれども農地生産力というのは単に私的なものではなくて民族の共通の財産といいますか、長きにわたって国民の食糧生産を支える基盤である、こういう意識のもとに行政が必要最小限の関与をしていくという法制であるわけでございますから、国が方針を定め、県が調査をして対策指針を定め、その上で指導助言をするというだけでは制度としての一つの完結性がなかなか保てない。さればとて、命令とか罰則をもって強制するという筋のものでもない。そういう意味で、やや厳しい指導という意味の勧告という制度を置くことによりまして一つの法制度としてのまとまりを保った、こういうものとして理解をいたしておるわけでございます。  したがって、勧告が発動されるような事態というものは通常はほとんど想定をされないわけでございまして、法律に書いてございます「地力増進が著しく阻害されている」ということは、放置し得ないような大変大きな問題が出てきた場合というふうに御理解をいただきまして、この制度自体がそういう法制的なまとまりを持つための制度でございまして、通常は指導助言という域を出ないものと理解をいたしております。また、今御指摘のような通常とは異なった土壌条件をむしろ有効に使っているという場合には、当然これは対象にならないというふうに御理解いただければよろしいと思います。
  165. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 加えて、地力農法という問題は、作物という大変複雑な要素を持った生き物、生命体の働きに密接にかかわるものであるだけに、いまだそのメカニズムについては科学的にも未解決な問題が多くでいろいろな考え方があり、それに基づいてまたいろいろな実践方法というものも生まれてくると思われるわけです。したがって、農水省地力増進法、これももちろん私は賛成ですから結構でございますけれども地力とか農法についての試験研究については、植物の生理、生態を直視しながら今後とも常に謙虚な姿勢でもって既成の地力農法についての観念を見直してみる、洗い直してみる必要も私は大きな立場から将来の問題としてあるのではないか、こういうふうに考えますけれども、この点についてはいかがお考えでございますか。
  166. 関谷俊作

    政府委員(関谷俊作君) 地力も含めまして土壌の問題等の研究の問題でございますが、これは従来のところは各作目別の研究、それから地域ごとの条件に応じました研究のほかに、昨年十二月に設けました農業環境技術研究所の非常に中心的な課題になっております。そこでは、御承知とは思いますが、例えばきょう御議論になりましたような土壌微生物のようないわゆる環境生物、環境の中に置かれました生物の機能の増進の問題、それから土壌と気象等の条件も含めました農業環境の問題、こういう問題につきまして非常に基礎的な面での研究も進めておりますし、それから従来の問題と違いまして、いろいろ農業経営の実態なりそれから土地利用の内容が変わってまいりますので、そういう諸般の因子を総合的に組み合わせましたような一つ作物の成育の何か管理していく総合的なモデルをつくりまして、そういうものを実態に適用して総合的な作物管理を進めていく、こんなような観点を加えながらこれから鋭意研究を進めていきたいと考えております。    〔理事北修二君退席、委員長着席〕
  167. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 最初に大臣の御意見を固くことになるのですが、大臣もお疲れのようですが、まず、この法律に非常に意欲を燃やしているというお話が先ほど来いろいろございました。地力増進というものは非常に大事だということは私どももそれなりに認識をいたしておりますが、大臣からまず冒頭に、この法律に取り組む決意というのですか、就任以来いろいろ農林水産業についてのお勉強をなされまして、この法案に特に強い意欲を持たれておる、その辺のことをちょっとお聞かせいただきたいと思うのです。
  168. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 農地土壌というものは農業生産の基礎でございます。そしてまた、農業生産力増進農業経営の安定のためには地力増進というものが不可欠であるというぐあいに考えております。ちょうどたくましい稲づくり、そしてまた豊かな村づくりを大臣就任以来提唱してまいりましたが、同時にまた、健康な土づくりというものも提唱いたしてまいりました。  実は、このたくましい稲づくりのときに、各界、これは都道府県の代表でございます知事会の代表の方、そして市長会の代表の方、そしてまた町村会の代表の方、そして農業者の代表である農協関係の幹部の皆さん、この皆さんをお招きいたしまして、そのときにたくましい稲づくりの協力方をお願いしたわけでございますが、そのときも、稲づくりの前にまず一つあるのは健康な土づくりであるということの御提唱もいただきました。地力増進というこの法律を今回お願いしておるわけでございますが、これを通じまして、今度法制的な面でも施策の一層の充実を図るという意味で力を入れてまいりたいというぐあいに考えております。
  169. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 鶴岡委員からもお話がありましたように、どんどん視察をして現場を見ていただきたい。開会中ですから今行くわけにいかないけれども、勇しい大臣だからその辺駆けずり回って視察に歩くだろうと思うのですが、農業は本当に三年とも言わず大きく変貌しつつある。そういう中にありますから、ぜひ精力的にお取り組みいただきたいということをまず申し上げておきます。  さて、今も大臣が声を大にして叫んでおりましたが、地力増進法、これは実に重要であることは論をまたないのであります。何でも予算の金額で推しはかろうというわけじゃないのですけれども、五十九年度の予算を見ますと総額二十七億ほどの金額である。その中で、今まで二十年かかって調査をしたということであればそれまでですが、これをコンピューターとかに組み込んで利用しやすいようにするためには、最近いろいろなシステムがあるわけであります。こういう土地調査とか診断とかに対して二億、三億近い金額ですか、それから基礎的な技術開発関連というのが一億六千万ですか、こういう基礎的なものをどうも軽視されがちである。軽視という言葉が適当かどうかはわかりませんが、まだまだ先ほど来午前中からの同僚委員質疑を聞いておりますと、わからない問題というか解明されていない問題もたくさんあるようです。そういうことから言うと、やはり技術開発というのはまだまだ農業部門につきましてもあるのではないか。  一つは、地力とは何ぞやなどということになりますと、先ほど同僚委員からもお話がございましたように、土がなくても作物が育つなどという農法が非常に最近あちこちでもやられておるようです。こういうことを考えますと、基礎的な技術開発という関連の予算というものも非常に少な過ぎる。実際に土づくりをする対策の点については二十二億ということになっておりますが、総体的に言って重要性が叫ばれておる割には基礎部門についても非常に少ないような感じもしますし、今後大いにひとつ大臣、このたびの予算は大臣が就任したときにおおよそ決まっていたので、おれが組んだ予算じゃないという顔をしていますけれども、来年度の予算は、大臣が今回の百一国会を通しましていろいろ論議をされた中で、何を最重点にするかということで積極的に組まれる。しかし、財政的に非常に制約がある。しかし農業は非常に重要なのだ、土づくりが大事なのだということでお取り組みいただきたいと思うのです。特に技術開発関連というのは非常に低いように感じてならないのですけれども、この点は局長さん、どうですか、満足をしておるわけじゃないのだろうと思うのだけれども、次にはもっともっと力を入れていくという、一つ一つやる時間はありませんからあれですが、基本的な考え方を伺っておきたいと思います。
  170. 関谷俊作

    政府委員(関谷俊作君) 農業関係技術開発全般につきましては、五十九年度予算におきましても、御承知のようにバイオテクノロジーと先端技術の開発、活用ということを中心に今大変内容的な充実強化を図っております。それから、特に研究体制という面では筑波に主力の研究機関を全部集中いたしまして、昨年十二月にはその中で生物資源研究所、また農業環境技術研究所というような非常に基礎的な、これからの技術の先端的な部門を担当するような機関をつくっておるような次第でございます。  そういうようなことで、技術開発全般のこれからの問題を考えますと、非常に農業の内容が経営面なり農業労働力の面なり、それからこれからの農業生産の再編成、そういうような課題の中で大変多様化しておりますので、これからの我々の心がけとしましては、御指摘のございましたような予算面の充実ももちろんのことでございますが、同時に各専門分野での研究を非常に深めますと同時に、全体を総合して、一つの組み立てたこれからの農業の発展の面で役立つような総合的な技術を開発していく、こういうことに重点を置いてさらに一層推進してまいりたい、かように考えております。
  171. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 大臣、土が要らない農業というか、こういうのがどんどん今開発されておるのですが、これは茨城とか、それから北海道の釧路でも野菜工場を、人工の光でやろうということで今工場も建設中で六十年にはもうできるのです。それからバイオテクノロジーの農業への利用ということや、バイオを使っての新しい微生物の土壌改良剤、こういうものも先々考えられていくのじゃないかと思いますが、技術開発部門というのは、これから本当に日進月歩といいますか、非常に対応を迫られ、そしてまた重要な部門であると思うのです。  こういうことで、大臣、ぜひこの技術開発、今こういうことをします、ああいうことをしますということですが、より充実した研究ができるようにという予算獲得ということになると、これは大臣の政治力にかかるわけであります。その点について十分に御理解をいただいていると思いますけれども、どうでしょう、来年度を目指してしっかりお願いします。
  172. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 今回御審議をお願いしておりますこの地力増進法、一〇〇%満足すべきものとは思っておりません。今後も足らざるところはどんどんこれを補いまして、今何はともあれ予算ということでございますが、予算の面でも全力を出して頑張って獲得してまいるつもりでございます。
  173. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 大臣は、頑張ります、頑張りますで息が切れるのじゃないかと思って心配するくらいだけれども。  土づくりのことについてもいろいろ議論がありました。私はそれを繰り返すつもりはないのですが、三十年代、四十年代に単収がすごく伸びましたが、伸びた要因一体何であったのかということです。それで、余りとれ過ぎたために今度は減反ということで、四十六年から始まりました。そして五十年代は非常に停滞。異常気象ということから言えば気象条件は大きな要因であるのですけれども、そういう中で、やはり神経を使って、そして水管理から全体の管理をきちっとしたところについてはそれなりの作物をつくっておる。こういうことから言いますと、四十年代、社会も高度成長という時代、技術革新、品種改良とかいろいろな技術的なことが総合されて単収の大きな伸びになったのだろうと私は思うのですけれども、ここらあたり農水省としてはどのようにお考えになっていらっしゃるのか、簡単で結構です、もう時間ありませんから。
  174. 小島和義

    政府委員小島和義君) 今お話がございましたように、米だけの生産力で申しましても、昭和三十五年が平均単収四百一キロということで、三十年代の半ばで初めて四百キロを超えたわけでございます。昨年の場合に、全国的には不作でございますけれども、その平均収量というものは四百五十七キロということでございますから、昭和三十五年に初めて四百キロを超えたというこの水準から見れば、平均的な水準というものは非常に高くなってきておるわけでございます。  ただ、そういう高い生産力を上げてきました背景といたしまして、品種の改良を初め、農業基盤整備とかあるいは機械化の促進とかいろいろな要素が作用いたしまして、それが結実をいたしておるわけでございますが、反面にまた、労働生産性の向上ということに特に力点を置いてまいりましたことのいろいろなひずみというものも生まれておるような感じがするわけでございます。  ただいま問題になっておりますような地力の問題というのは、在来の農法から三十年代以降の農法に変わってまいりました過程におきまして出ております現象でございまして、これに対する対策というものも、単に昔に帰るというだけではございませんで、新しい工夫によりまして、現在起こっておる問題を補ってくるという手法でなければならないというふうに考えておるわけでございます。  御提案いたしております法律の中身でございますが、大臣からも申し上げましたように、すべてにわたって百点満点というふうには考えておりませんが、こういう制度を軸にいたしまして今後対策を進めまして、御指摘のような問題に対処してまいりたいというふうに考えております。
  175. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 土づくりということが農業で大事だということは、これは今までも議論がありました。それを前提としてお話ししますと、この法律は、それなりの私どもは評価をするものでありますが、さっきの局長のお話のように、四十年代、そういうときには余り土づくりということについても、それは軽視したわけでは決してないだろうと思いますが、ほかの技術的なことがどんどん進み出しますと、そっちの方にどうしてもウエートがかかる。それで、ここ五十五年からずっと冷害、五十一年、五十五年から三年、四年、五年、続いている。こういうときになりますと、またたくましい稲づくりとか土づくりとかということが始まる。何か周期的にやっているみたいである。皆さんからすると、それは二十年間のデータが五十三年にまとまってそしてこういうことだということなのかもしれませんが、やはり一貫した一つ農業の基本施策としてどっかりそめ底に据えておかなければならない問題ですね。  そういうことからいって、今回の法律をつくって、そして地域指定をして進めていこうということですから、一過性のものではないということは私どもは十分わかるわけであります。これがたゆまざる研究を怠るとか、それからまた諸外国の研究におくれをとるとか、また再び同じような問題が提起になるというようなことであったならば、今回のこの法案の提出というのは土づくりという言葉はもっともらしいけれども、懐古趣味的な言葉としてあるのではないかとしか見られないと思うのです。  こういう点で、今局長がおっしゃっておりましたが、新しい技術を取り入れる、新しい技術の進歩の中で土づくりを進めていくのだというお話でありますけれども、まさしくこれはこれからこの法律を本当に生かして進めていかなければならない大事な問題だろうと思います。  時間がありませんから、あのことこのこと聞きたいことがあるのですが、まずそういうことだけ申し上げて、次は、さっきもちょっと私の話の中に含まれているのですけれども、このたびの新稲作運動、土づくりということと、三十年代増産運動を一生懸命やりました。戦後、こういう運動がかってあった。今農民というのは政治に対する不信、特に農政不信というものが非常に根強い。先ほど同僚委員にも答えておりましたが、これによって単収が上がったからといって、また減反面積をふやすなどということじゃないのだということをおっしゃっておりました。またそんなに急激に増収になるものじゃないというお話ですけれども、これは大臣、一方では単収が上がりますと、増収になるということになりますと、再び再編対策を考えなきゃならぬということにまた何年かすると行きつくのではないか。とにかく、ここ十年、十数年の間を見ますと、基本農政以来ずっと農業政策というのは変わり、時代の推移の中でやむを得ない面もあるのですけれども、そういう変化を遂げてきた中で非常に政治に対する不信感と農政に対しての不信感というのは非常に強い。  そういうことで、このたびの新稲作運動というのは、今までのそういうものとは違って農業の本来の基本になるものをしっかりと据える、そして、恒久的なものであるためにこのたびの法律としてそれを体系づけたのだということを明確にいたしませんと、一生懸命やったわ、今度は減反を強いられるわじゃ、そして他用途米云々ということも在庫がだんだん減ってきたということで、うがった見方で見ますといろいろな見方がある。農民の方々もそういうことで非常に困惑をしておる。ひとつ大臣から明確にその辺のことについて御答弁をいただきたいと思います。
  176. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) このたびの地力増進法は、いわゆる我が国農地生産力を将来にわたって維持向上させるということでございまして、また今回の水田利用再編第三期対策、この利用再編対策にいたしましても、積み増しにいたしましても四十五万トンということでございまして、それがそのまま今度はとれたからまた減反だということにはつながらないというぐあいに私は思っております。
  177. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 思っていないじゃなくて、大臣としてはそうはっきりおっしゃるわけですね、明言する。大臣がもうたまたま思ったのじゃなくて、そういう方針というか、基本的な考え方というか、そういうことですね。
  178. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) これは、今度の三期対策の四十五万トン積み増しということでございますから、この程度の積み増しというものはこれはやはり備蓄として持っておらなきゃならないものでもございますし、それによってまた減反というようなことはないというぐあいに考えております。     —————————————
  179. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、上野雄文君が委員を辞任され、その補欠として山田譲君が選任されました。     —————————————
  180. 下田京子

    ○下田京子君 大臣は、機会あるごとに豊かな村づくり、たくましい稲づくり、そして健康な土づくりということを話されておりますから、土づくりに対する意欲というものは大きいのだというふうに理解したいと思うのです。また、地力増進法提案理由の中でも、有機物の施用の減少とか作土の浅層化地力の低下が大変心配だということでお述べにもなっておりますが、こうした地力低下ということに対して、改めて聞くのもどうかとは思うのですが、大臣の心の痛みも含めた御認識を伺いたいと思うのです。
  181. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) この四年連続の不作ということもございました。その中でやはりこれは天候不順によるものが一番大きなものではございましたが、と同時にまた、この地力の低下ということを実はせんだって来何遍もお話ししておりますが、たくましい稲づくりの御協力方を各界各層の皆さんにお願いいたしました、知事会代表、市長会代表、町村会代表、そしてまた農民の代表である農業団体の幹部の皆さん。そのときにやはり出ましたのは、天候不順もあるけれども、また一面で地力の低下というものがあるのじゃないかということも指摘されました。ちょうど今回のこの法律の審議をお願いしておるわけでございまして、これによりまして、いわゆる狭い我が国の国土におきましての国民の食糧というものを安定供給をするという農林水産省の役目も果たしてまいらなければならない。それには今回の法律の御審議もよろしくお願いしたい、こういうぐあいに考えております。
  182. 下田京子

    ○下田京子君 今お話ありましたが、稲づくりとのかかわりなのですが、水田の中で地力の低下現象というものが広がっているということが大変深刻さをあらわしているのじゃないかと思うのです。二十年間にわたって五十三年にまとめられた地力保全基本調査によりましても、我が国水田土壌の三九・三%、約四割が不良土壌だと。県別に見ますと、いろいろありますが、最も不良土壌の比率が低いのが福岡県、一〇・三%、私の地元福島県は二七%で全国平均よりは土壌状況がいいということになるわけです。ということは、各県ごとの状況に合わせた対策が大変重要だなということを感じました。同時に、問題なのは、こうした不良化が年々進行しているのじゃないか。  そこでお尋ねしたいのですけれども、好ましくない水田の実態がどうなっているのか、四十年前後と五十年以降を比べて、作土の浅層化、作土の緻密化、有機物の減少、微生物活性の低下、養分保持力の低下と、それぞれ好ましくない土壌変化が調査全体の中でどの程度の割合に認められておるのでしょうか。
  183. 小島和義

    政府委員小島和義君) 水田地力低下の状況は、大体四十年前後と五十年前後と比較をいたしますと、これは同一の地点について調べたものでございますが、作土の浅層化しているものが大体四五%、作土が緻密化しているのが四〇%、それから有機物の減少しておりますのが三二%、養分保持力の低下しているのが三九%、微生物につきましてはなかなかそれ自体としては測定いたしかねますので、有機物の減少等は一つの指標としてお考えいただいたらいいと思います。こういった数字は土壌の性質の変化が平均値などでは顕著ではない場合でも、子細に見れば、多数の地点で悪化しているということの状況をあらわしているというふうに見ております。
  184. 下田京子

    ○下田京子君 調査した地点で水田の半分近くが問題の土壌だ、それが局地的じゃなくて全国に広がっている、これは本当に深刻な事態であるということが明らかになったのではないかと思うのです。本来目に見えて進行しないはずの地力がたった十年前後の間に目に見えて低下した、本当に大変な事態だなと思うのですが、そういう状況の中で、この地力低下とそれから最近の連続する米不足の一つ要因にその関係が不可分に結びついているのではないかと思うのですが、その辺はどうでしょう。
  185. 小島和義

    政府委員小島和義君) ちょっとただいまの御質問意味を取りかねましたが…。恐れ入ります。
  186. 下田京子

    ○下田京子君 地力の低下ですね、こういう地力の低下も、最近の言ってみれば米の不作という点で関連があるのじゃないでしょうか。
  187. 小島和義

    政府委員小島和義君) 最近の米の需給事情は若干タイトになってまいりましたけれども、これは直接の原因といたしましては、昭和五十五年の大不作に引き続きますところの三年連続の不作、こういったものが影響をいたしておるわけでございまして、その原因というのはいずれも気象の面から説明のできることばかりなわけでございます。ただ、子細にながめてみますと、それぞれの地域の中で相当作柄が低下しております場合にも、基本技術を励行しておる農家においては周辺農家に比べてそれほど作柄は悪くなっていないという農家が相当見受けられる、これも事実でございます。したがいまして、そういう品種の選定から始まりますところの農業の一番大事な技術を着実に、忠実に履行いたしますならば不作の原因というものも相当程度に緩和できたのではないか、こういう見方があるわけでございまして、その一つの要素といたしまして土づくりというふうな問題は、これは地力、地質の問題と関係もいたしますけれども作物抵抗性を強めるということにおいて大変大きな働きを持っていると理解をいたしております。
  188. 下田京子

    ○下田京子君 四年連続の冷災害ということで米不足問題が非常にあれになっていたもので、その一つの原因になった不作ですね、地力の問題と関係がある、ただし、そういう冷災害の中でも土づくりに励んでいるところでは一定のいい結果が出ているとお話がありました。福島県の中でも、大玉村というところの玉井農協とか、あるいは会津の坂下町、そういったところでいろいろすぐれた実践が報告されていることは私も承知しております。ただ、一般的に、ほとんど多くの農家というのは土づくりの重要性というものについては十分理解していても、やはり経済性だとかあるいは労働力という関係からなかなか真剣に取り組めないというのが現実だと思うのです。  そこで、例えば堆厩肥と、それから稲わらの施用量がどうなっているかということで見てみたいのですが、稲わら一キログラムは堆厩肥二キログラムに相当するということなので、そう換算しまして、昭和四十年当時、十アール当たり平均で六百九キログラムありました。それが五十七年度は二百十六キログラムということに落ち込んでいるわけです。この原因はどういうところにあると思いますか。
  189. 小島和義

    政府委員小島和義君) 通常の耕種農業におきまして、堆厩肥の材料と申しますのは作物の茎葉とそれから家畜のふん尿といったものが主力をなしておるわけでございます。従来の稲が手刈りの時代でございますると、当然そのわらにつきましても、収穫のプロセスにおいて圃場から持ち去られるというケースが多いわけでございますが、コンバインの普及とともに稲わらがそのまま圃場に置き捨てられる。そのことが場所によりましては自然の有機物施用となりまして翌年の稲作にプラスの影響を与える場合もあるわけでございますが、東北地方などになりますと、自然のわらのままではそれが分解しない。翌年の田植えのときに浮き苗を生ずるというふうな問題もございますものですから、これを圃場でそのまま焼却してしまうというケースが出てきておるわけでございます。そういったことが、わらの施用量として見て大変低下してきておることの大きな原因ではないかと思っております。
  190. 下田京子

    ○下田京子君 それなりにお話がございましたが、これは規模別区分で見てみますとどうなるかということなのですが、五十七年度では、三十アール未満が二百二十キログラム、三十から五十アールが二百三キログラム、それから五十から百アールが二百三十二キログラム、それから百から百五十アールが百八十七キログラム、それから百五十から二百アールが百八十キログラム、この規模層が最少量になっているのですけれども、最高量は三百アールで二百五十九キログラムということになっています。四十年との比較で見ますと、最も減少率が低いのが三十アール以下の層で四九%なのです。逆に、大変減少率が高くなっている、減少傾向がひどいのが百五十から二百アール、それから二百から三百アールで二七%。つまり、このことは何を物語っているかといいますと、規模拡大による生産向上ということでやってきた、それが逆に土づくりという点がおくれてしまったという結果を物語っているのではないかと思うのです。
  191. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは確かにおっしゃるような傾向があると思います。規模の小さな階層になりますと、なかなかコンバインまでは入らないので、例えばバインダーを使うとか、甚だしいものは、少量ではございますがまだ手刈りの地域も残っておるわけでございますから、そういうところにおきましてはわらの活用ということが比較的容易にできる。それに対しまして、ある程度の規模になりますと、それを維持するために相当労働生産性ということを考慮しなければならない。勢いわらの利用までは手が回りかねるという傾向が出てくることは十分想定されるわけでございます。
  192. 下田京子

    ○下田京子君 生産向上という農政の方向と土づくりが実は相矛盾している結果であるということをお話しになったと思うのですが、根本的な問題は、やはり今もお話がありましたか手間暇かけて堆肥などをつくって水田に施用する、そして長期的に水田生産力増強を強めていくのだという土づくりがだんだん後退していった。その問題点なのですが、それはやはり減反政策あるいは低米価という中にあって、とにかく当面、特に稲作に依存している農家であればこそ、経済性を考えないでやれないわけですから、勢い採算ということをまず考えて、収量をいかにして上げるかというふうな結果生まれたのだと思うのですが、どうでしょう。
  193. 小島和義

    政府委員小島和義君) 土づくりの問題というのは、長期的に土地生産力を維持し向上させるものでございますから、そのことが経営法則に反するとは必ずしも考えないのでございます。ただ、現実の問題といたしまして、何が経済性にかなうかという判断になりますと、個々の農家によりまして、例えば一俵減少をいたしましても、その分だけ手間を省いた方がいいという経済的な考え方もございますれば、逆に、出稼ぎに行くぐらいだったら、むしろ一俵余計にとった方がいいという経済性もあるわけでございまして、農家の態様によりましてその経済性の考え方がいろいろ分かれてきておるという傾向があるだろうと思います。したがいまして、総論として経済性にかなっておる土づくり問題を、その地域全体の問題として具体化し、実行していくためには、そこに個々の農家のいろいろな都合というものと地域全体の生産力という問題とすり合わせまして新しい地域の知恵のようなものが働かなければ、単に昔ながらの農法に返れということでは事態は解決されない。その意味におきまして、今回制度化いたしました都道府県の定めます地力増進対策指針の中におきましては、単に特定資材を施用するということだけではございませんで、さまざまな営農的な努力とそれから地域の社会的な努力と申しますか、そういったものを組み合わせて指針を定めていく、その過程におきまして各地域の実際の工夫というもの、努力というものも吸い上げまして対策指針を定めていく、かような考え方を持っているわけでございます。
  194. 下田京子

    ○下田京子君 私は昔の農法に返れなどということを言っているのではなくて、実際に、特に稲作依存の農家ですととにかく収益性ということを考えなかったらやっていけない。そういう結果、こういう一方では減反があるし、米価が抑制されているというところからいって、何といっても土づくり云々の前にまずどれだけ収量を上げてどれだけ経済性をということに走っていく、そういう現状がやはりあるというのは否定できないのじゃないかと思うのです。特に米価算定の際にそれがよくあらわれていると思うのです。家族労働費の評価が米価抑制のつじつま合わせのためにいろいろと変えられてきたわけです。かつては全製造労働者の平均賃金というものを採用していたときもございました。次には米販売数量をウエートとする平均賃金ということを採用したときもありました。ところが最近五十七年、五十八年では、対象農家を一ヘクタール以上のものにするということで根本から算式を変えた、私たちに言わせれば改悪したと思います。その結果が物語っていると思うのですが、十アール当たりの農業所得、これが五十年には九万一千五百三十四円でありました。それが五十七年には七万一千五百九円と大幅に落ち込んでいるわけです。そういう状況ですから、やはり土づくりという点で実際に号令だけかけてもなかなか大変だと。同じ田んぼでつくっているのにこれだけ所得が減るわけですから、その辺をしっかり押さえてかからなければならないのじゃないかということを私は申し上げたいのです。
  195. 小島和義

    政府委員小島和義君) ただいまの米価につきましての御指摘、私はお答えする立場にないわけでございますが、毎年の米によります所得につきましては、これは作柄の変動というものも伴っておりますので、昨今の不作ということを念頭に置きますならば、必ずしも御指摘のような意味において単位当たりの所得が減少しているということばかりではないのではないかというふうに考えております。また、お米の需給の問題ということもあるわけでございますから、価格対策の面だけでお米の問題を扱っていく、価格の生産刺激効果だけを期待していくという時代ではなくなっているのではなかろうか、かように考えております。また、その意味でこそ農家が安定した生産を上げて所得を確保していくということのためにやるべきことがいろいろあるのではないかという意味で、先般来進めておりますたくましい稲づくりという問題もそうでございますし、農業の基本技術一つであります土づくり対策を新しい手法によって進めていくということもそういう努力一つのあらわれというふうにお考えくだされば、全体を通じて農業をいかにして発展向上さしていくか、こういうことの一つのあらわれであるというふうにお考えいただきたいと存じます。
  196. 下田京子

    ○下田京子君 全体的に安定した営農ということですから経済性の問題を外せないという、それははっきりしたと思うのですが、もう一つ、今までも何度か御答弁にありましたが、米づくりは米づくり、あるいはまた畜産は畜産という、専作化というか単作化というか、そういう状況の中で有機物の資源である稲わらだとか家畜ふんだとかそういうものが偏在してして得にくいということもあるでしょうし、また、堆肥づくりの省力化だとか機械化という点で現にいろいろやってきたと言いますけれども、おくれているのは事実ですから、力を入れてこなかった。こういう言ってみれば構造上の問題ですね、これらに一つ一つ、今局長もお述べになりましたが、総合的に安定した営農をどうするかということを考えていく上で、農家が土づくりに本当に真剣に取り組んでいけるような条件整備を国が責任を持っていくということが大事ではないかと思います。
  197. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは国だけの問題ということでは必ずしもないわけでございまして、営農の問題というのは主体性はあくまで経営の担い手にあるわけでございます。ただ、土壌の問題というのは大変すぐれて専門的な知識を必要とする分野でございますし、また、土壌の持っております生産力というものは非常に広い意味で見まして国全体の自給力というふうな問題にかかわることでございますから、行政といたしましても必要最小限の関与をしていくという、こういう世界であろうと思っておるわけでございます。その意味で、今回の制度というものも国が行政的に積極的に関与していくための一つの枠組みをつくったものと御理解いただければよろしいわけでございます。  もちろん、これは一般手続法というふうな性格を持っておりますから、具体的にそれぞれの地域において土づくりを進めるためにどういう地域的なシステムを考えるかという問題は、法律にはじかにあらわれておりません。都道府県の対策指針を策定する過程におきましてそれぞれの地域の実情に合ったような、例えばその地域複合の仕組みをどうやって考えていくのか、堆肥づくりの仕組みをどうやって考えていくのか、こういう具体的な対策づくりの過程におきまして今御指摘のような趣旨が生かされてくるものと考えております。
  198. 下田京子

    ○下田京子君 必要最小限ということじゃなくて、一方で積極的にというお話もありましたから、積極的にやろうとしたから大臣も決意を述べ、法案の提案をしているわけでしょうから、そういう点で紹介したいのですが、そういう積極的な優良事例というか、そういうものが何かないかということでお問い合わせしたら、政府ではまとめたものがないと言ってこういう「圃場と土壌」というものをいただきました。これは財団法人日本土壌協会なのです。  この中には東北は宮城県の実践が出ております。私も現地に伺いました。五十五、五十六年と大冷害を契機にいたしまして、基本に忠実な稲づくりを進めよう、特に土づくりを県農政の重要な課題にしようということで五十七年から土づくり運動を展開した。私は詳しく申し上げたいのですが時間がないから言いますが、一つポイントを言いますと、とにかく「一・二、一・二運動目標」ということで耕起深ですか、これが第一期目標を十五センチに置く、運動の開始時は十・九だったけれども、それを年々一センチぐらいずつ深くしていくということだとか、あるいは土壌改良資材の問題だとかいろいろやっておりますが、その中で注意したいのは、円滑に推進するために各市町村にそういう生産のリーダーになっている人の中で特に土づくり推進員というものを委嘱しているのです。五十八年の三月現在で四百五人にそれがなっております。しかもその上に実証展示圃の設置をしたり、それからただ目標を掲げるだけでなくて、その目標に照らして実態がどうだったのかということでの検証もするという、すぐれた取り組みをやっているところが出ております。  私の申し上げたいのは、さっきから局長も言っていますけれども地域地域でその農家の人たちが積極的にかかわった優良事例をつくっていきたいのだ、また国もそのためには応援するのだと。とすれば、こういう優良事例を国としてまとめて紹介し普及していくということをもっとやっていいのじゃないだろうかと思うのです。
  199. 小島和義

    政府委員小島和義君) その前にひとつ弁解だけさしていただきますが、行政的に最小限の関与と申しましたのは、農家営農活動に対しまして行政がどこまで容喙をするかということにつきましては、やはり国、都道府県のやることは助言、指導という付随手法でございまして、権力的な介入をするものではないという意味で最小限と申し上げたわけで、積極的に進めるということと決して矛盾しないということをお断り申し上げておきます。  それから、優良事例の問題でございますが、土づくりの問題については、大変ローカルカラーのある問題でございますので、なかなか全国的にまとめてというのはこれまで余りやっていなかったわけでございます。各県におきましてはいろいろな優良事例をまとめまして、そのことをいわば教材として運動を進めるということをやっているようでございます。国の段階におきましても、今後心がけまして各県の参考になるようなものをできるだけつくっていきたい、かように思います。
  200. 下田京子

    ○下田京子君 農家のこういう積極的参加の問題で法律的にどこにどう位置づけられているのかということで聞きたいのですが、第六条の三項で、地力増進対策指針を進める場合に、あらかじめ関係市町村及び関係農業者の組織する団体の意見を聞くというふうに述べられてはおるのですが、具体的にはあとどういうふうになるのでしょうか。
  201. 小島和義

    政府委員小島和義君) ただいまのお述べになりました条文でございますが、これは、関係市町村はその地域農業振興につきまして大変関心を持っておる、また資料的にも把握している機関として意見を聞くわけでございまして、関係農業者の組織する団体といたしましては、その地域を含んでおります農業協同組合及び土地改良区というものを想定いたしておりまして、それらの意見を吸い上げながら対策指針を定めていく、かような考えを持っております。
  202. 下田京子

    ○下田京子君 さらに、この法律の運用に当たって今のような形で位置づけていくということなのですが、農家が積極的に参加できるように、さっきもちょっと弁解だといってお話ありました。助言、指導していくのだという話ですが、一方でまた勧告をするということも今度入っております。それがいわゆる上からの行政的な指導、援助に終わらないで、本当に農家の実態に合って心を揺さぶってやっていくということが大変大事だと思うのです。  この点、五十年からスタートした土づくり運動の推進要綱の中でもうたっているわけです。これはいただいたものを見ましたところ、農林事務次官の依命通達ということなのですけれども、もう十年前ですね。「この運動は、」、「国、地方公共団体、農業団体等が一体となって、農家の積極的な参加を得て相互に緊密な連絡・協調を確保しつつ、次により適正な地方培養対策の普及・啓発及び助言・指導に当たるものとする。」と述べてあるのです。だから、これは逆に言うと、十年前から同じように言ってきたのですが、逆に地力は低下してきたという点で、よほど心を据えてかからないとだめだと思うのです。
  203. 小島和義

    政府委員小島和義君) 私どももその点は同感でございまして、よほど本腰を入れましてかつ息長く取り組まなければならない問題であると考えております。
  204. 下田京子

    ○下田京子君 本腰を入れる点で具体的に聞きたいのですけれども、やはり土づくりを科学的に進めるという点で、ここは本当に本腰を入れて国がやっていただきたいのですが、一つは試験研究体制の強化もあるでしょうし、それから土壌の実態に対する正確かつ精密な情報をいかに整備するかということも大事でしょうし、そういう意味では二十年かかって五十三年にまとめた地力保全基本調査というものも一定の大きな意義を持つと思うのですけれども、同時に、土壌というのは絶えず変化するものです。ですから常に最新の情報を補って、しかも、より精密なものにしていくということが大事だと思うのです。そういう点からして、土壌環境基礎調査というものがこれは補助事業でやられているのですけれども、県任せにしないで統一的にやるという手法が今必要になってきているのじゃないかと思うのです。
  205. 小島和義

    政府委員小島和義君) この地力保全基本調査自体が、最初の設計の段階から実行段階、取りまとめの段階、すべてこれは国のイニシアチブのもとに国の助成事業として進められてきたわけでございまして、このこと自体、国の力が非常にあずかって大きかった事業でございます。ただ、これはあくまで基礎的なマップでございますので、これだけをもって直ちに指導のよりどころにするというには少々きめが狙うございまして、具体的な対策を仕組むに当たりましてはやはり対策調査といったもっときめ細かな調査を必要とする、かように考えております。また、その基礎的なマップ自体も時の経過とともに変わってまいりますので、今御指摘土壌環境基礎調査は大体全国二万点ぐらいを輪番で調査をしていくというものでございまして、時の経過とともに地力がどのように変化していくかということを大局的にとらえていこうというものでございまして、これをもとにいたしましてそのもとの資料を補正をしていくという考えでおるわけでございます。
  206. 下田京子

    ○下田京子君 その土壌環境基礎調査中心をなす全国二万点の観測定点、これは五年で全地点を一巡するということだと思うのですが、実は一県当たりの単価ですけれども、五十六年が二百万だったものが五十七年が百七十一万、それから五十八年が百六十二万で、五十九年は百五十四万と年年低下の一途をたどっているのです。しかも、調査職員の人件費補助を見ましても、どうかといいますと、最高時が昭和四十三年度三百十七名、これが年々削減されて、五十七年には二百七十名ということで四十七名削減されております。これはやはり問題ではないかなと思うわけで、さっき大臣が予算の面でも決意を持ってやるというお話がございましたが、安定的に継続的な調査ができるようにするために、また都道府県任せにならないように、補助事業だということであれば、実施主体が都道府県でございますから、やはり国がもっと積極的に今度の法案提出と相まって対応していくべきじゃないかと思うのです。
  207. 小島和義

    政府委員小島和義君) 御指摘のように、予算的にはこのところ数年、これも補助金の一部でございますので、毎年若干ずつのカットを受けるという傾向にございます。ただ、事業の実行面から申しますと、この種の土壌調査を行いますために必要な機具機械といったものにつきましては近年大変目覚ましい進歩がございまして、かつてのように人海戦術によりまして調査測定をするということの必要性は以前に比べればかなり低下をしておるわけでございます。そういったことによりまして、何とかこの調査は問題なく続けられるものと考えております。  それから、職員の問題でございますが、補助職員につきましても私どもは国家公務員と同様に内閣の統一的な方針のもとに定員削減を受けておりまして、この結果だんだんやせ細ってきておるわけでございます。五十七年度予算をもちまして補助職員を打ち切りにいたしましたのも、こういうことで予算面で毎年削減を受けていくということになりますれば、なまじ補助職員であることがかえって縮減の結果をもたらすという問題意識もございましたし、実際の仕事としては各県の業務にいわば完全に定着をしておる。仕事の枠組みさえがっちり組み立てておけば、その都道府県の事業必要性によりまして国のレベルにおけるような画一的な削減を受けることもなくなる、こういう問題意識から大変議論があったわけでございますが、補助職員としては打ち切りにいたしたわけでございます。その後の経過を眺めてみますと、約二年ほどたっておりますが、この二百七十名前後の数字が今でも大体保有されておるということでございますので、結果的には人員減をもたらしていないと考えておるわけでございます。
  208. 下田京子

    ○下田京子君 予算は削られた、人員も減った、でも支障ないように頑張っているというお話なのですが、診断、普及事業というのは非常に重要なものだと思います。特に調査の問題なのですが、個々の農家にとっては自分の圃場がどうなっているのかという点での土壌分析による情報というものが大変望まれているわけです。そのことによって初めて肥料をどんなものを使ったらいいのか、あるいは施用量はどうするか、それから効果的な土壌改良資材の投与をどうするかというふうな一つの大きな材料になると思うのです。ところが、実際に診断に対する予算がどうなのかということなのですけれども、これもまた対前年比で言えば一割削減されているのです、地力保全対策診断事業費が五十四年に四千六百四十七万円だったものが、五十九年は三千三百四十二万九千円、ざっと一千三百万近くも削られているのです。これはやはり大変問題だと思います。それから同時に、これは保全対策の重要な柱の一つにもなると思うのですが、汚染防止の問題でカドミ汚染発生防止対策事業費、これも対前年比で一割カットされております。暫定的にカドミ汚染米の発生を防止する事業であって、これは大変農家から喜ばれているのですけれども、こういったものも一律カットと、これは大変やはり問題だと思います。大臣、既に来年度の予算要求では絶対頑張るという決意が述べられておりますから心強く思うのですが、ただ、今までの局長答弁を聞いていますと、人も削られ予算も削られ、でも頑張っているという話です。頑張っているのはよくわかるけれども、本当に今必要な土づくり、法案の提出に相まった国の責任というものが果たせるのだろうかということなのです。  そこで、これは土壌保全の担当班長さんが論文の中で次のように指摘しております。最後です。「専門家による正確かつ、精密な調査実施営農の場での土壌診断、土づくりの基本的条件整備する対策事業、これらが一体となった土壌保全行政の強力な推進が、農業者自身の生産意欲とあいまって日本農業の未来を作ると確信する次第」であります。全く私も同感です。これは大事なところだと思うのです。この精神で本当に、頑張るという決意だけでなくて、実効ある行動を期待したい。その点で決意をお聞かせください。
  209. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 地力対策関係予算、これも御存じのとおりの厳しい財政事情で伸び悩んでおります。しかし、今回地力増進法をお願いしておりまして、特にこの地力増進重要性は我我はよく認識しておりますが、今度は大蔵省の方にもよく認識させて予算獲得に一生懸命頑張ってまいります。
  210. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 今回の地力増進法我が国土壌の力の低下を回復するためのものでありますけれども、しかし、最近は、世界的な土壌の荒廃が進んでおるということが言われております。先ほども答弁の中で、アメリカでは表土の流失問題が起こっておるということでありますけれども、アメリカのみならず、発展途上国においても焼き畑農業その他によって、またあるいは人口の激増によりましてどんどん荒らされ、砂漠化が進みつつある。農水省の仕事は日本農業のことでありますから外国のことまで心配するのは守備範囲以外かもわかりませんけれども、しかし、今日本人の食糧というものは多くの部分を海外に依存しているわけであります。これはやはり重大な関心事でありますし、また、日本の農政を考える上においても世界の食糧事情というものを踏まえてしなければならないと思います。したがって、最近のこの世界的な土壌荒廃の状況、さらにそれが今後の世界の食糧需給に及ぼす影響についてまずお伺いをしたいと思います。
  211. 小島和義

    政府委員小島和義君) 世界的な土壌の荒廃状況につきましては、幾つかの外国政府及び国際機関の指摘があるわけでございますが、アメリカ合衆国政府の特別調査報告、これは「西暦二〇〇〇年の地球」という題名でございますが、これによりますると、土壌荒廃の原因といたしまして、第一に砂漠化、第二に湿地化、塩類集積、アルカリ化、第三に森林の伐採、第四に一般的な土壌侵食と有機物の流亡、第五に農地の転用、こういう五つの例を挙げておりまして、西暦二〇〇〇年に予測される土壌資源の状態は、今後の政策変更のいかんにかかわりがあるけれども、大きな政策変更がなければ、農業生産水準が地力の低下によって少なからず妨げられるだろう、こういう指摘をいたしております。  それから、国連砂漠化防止会議は一九七七年に、現在の傾向が続けば西暦二〇〇〇年までに砂漠化等によって世界の耕地適地の三分の一を失うだろうという予測をいたしておりましたが、このほど、その実績評価に関する報告をまとめまして、砂漠化の勢いはその後七年間ほとんど衰えを見せていないという指摘をいたしております。  こういった状況から見まして、今後、世界的な規模で起こっております土壌の荒廃ということが、長い目で見て食糧生産の将来に暗い影を投げかけるのではないかという指摘は当たっておるというふうに考えておりまして、我が国におきましてもそういう問題が起こらないように、地力の問題に対し事前に適切な手を打っていくということが必要であるというふうに考えておるわけです。
  212. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 我が国地力低下が言われておるわけでありますけれども、これはどの程度のものなのか、あるいはそれぞれの現状についてお伺いをしたいと思います。
  213. 小島和義

    政府委員小島和義君) 我が国の場合には、アメリカあるいはアフリカ等で起こっておりますような砂漠化でありますとか、あるいは土壌の流亡でありますとか、こういうことについて非常に顕著な例が起こっておるというふうな事態ではございません。むしろ、大変慢性的に土壌の地方を構成しております幾つかの要因が進行していっているという状況でございまして、例えば土壌中の有機物が減少していっている、作土が浅くなって、またかたくなっている、それから土壌中のカリとか石灰、苦土等のいわゆる塩基バランスが失われているといった形で静かに進行していっているというふうな状況でございます。こういう状況にかんがみまして今後の対策をいろいろな形で仕組んでいく、そのための一つの法制的な手法といたしまして今回のこういう制度を提出したというふうに御理解いただきたいと存じます。
  214. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 我が国土壌の性質悪化の状態が幾つか挙げられておりますけれども、それぞれについてその原因をお伺いしたいと思います。
  215. 小島和義

    政府委員小島和義君) 先ほど申し落としましたが、日本農業土壌の場合に、もともと自然の生産力がそれほど高くはないという要因があるということをまず申し添えておきたいと思います。  そこで、今申し上げました幾つかの要因でございますけれども、例えば有機物の減少というのは、その原因というのは極めて明らかでございまして、堆肥その他の有機物施用量が著しく減少しているそのことのあらわれであるというふうに考えております。それから、作土が浅くなって、またかたくなっているということについては、昨今の耕うんがロータリー耕中心とする浅い耕うんにとどまっておる、深耕が行われていないということが要因であるというふうに考えております。それから塩基バランスの問題でございますけれども、これにつきましては、土壌の中におきますところのカリとか石灰とか苦土といったものにつきましては、三要素を中心とする化学肥料の多投といいますか、そういうことによりまして基本的な土づくりがなおざりにされておるといったことの一つのあらわれであるというふうに考えております。大体そんなことで今申し上げました三つのファクターにつきましては原因を御説明できるかと思います。
  216. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 具体的な原因は以上述べられたことだと思います。しかし、私はさらにそれの背景があると思います。その背景というのは、農業自体が粗放化しておるということが言われておるわけでありますけれども、それならなぜ農業の粗放化が起こってきたか、この点はどうお考えですか。
  217. 小島和義

    政府委員小島和義君) 粗放化という言葉が当たるかどうかわからないのでございますが、少なくとも三十年代以降におきまして我が国はかつてないような農業労働力の流出という現象に見舞われておるわけでございまして、その少なくなりました労働力でいかにして農業生産を維持し、発展させるかということにどうしても政策の主眼が置かれてきたわけでございます。先ほども申し上げましたが、この間において土地生産力向上ということがなおざりにされたということは決してないわけでございまして、昭和三十五年におきますところの米の収量がこの年において初めて四百キロを超えたわけでございます。昨年の場合に、作況指数から見ますと九六ということで不作でございますが、全国平均で四百五十七キロということでございますから、単位当たりの生産量というものもこの期間におきまして著しく増加を遂げておるわけでございますから、土地生産力が決してなおざりにされたということではございませんけれども、この期間におきまして社会経済的な情勢変化に対応する農法の変化が行われたということが今日の土壌の問題については大変暗い影を投げかけておるわけでございます。  端的な要因として申し上げますならば、労働力不足によりますところの機械化という問題から、浅層、浅い耕うんが行われる、あるいは従来の役畜がいなくなり、そのことによって身近に堆厩肥源がなくなってきたというふうな問題、さらには市場の需要にこたえまして主産地形成、単一経営の進行が見られまして、その結果、在来のいわゆる複合経営の持っておりました強みというものがだんだん損なわれていくといったようないろいろな要因が絡み合いまして、今日のような農業面の現象をもたらしておるというふうに考えておるわけでございます。
  218. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 今言われた原因も確かにあると思います。農業自体がやはり構造的に変化してきたということも大きな原因だと思いますけれども、私はもう一つ心理的な問題として減反政策というものがかなり大きな影響を与えておるのではないかと思うのです。米が過剰になって生産を今度は減らしていく、そのために減反政策がとられる。これは米の食管制度と絡んでの一つ生産調整だと思いますけれども、こういうものがやはり農家そのものの心理に大きな影響を与えておる。それから同時に、食管制度と減反政策というものが特に米について第二種兼業農家というものを、これがそのままの形で存続をさせてきておる。それで第二種兼業農家というのはもう農家所得の部分が非常に少なくなっておるわけでありますから、本当に農業は片手間にやらざるを得ない。また片手間にやれるようなやり方というものを選択するわけであります。私はこれが心理的な問題として大きな影響を与えておるような気がしますけれども、いかがですか。
  219. 小島和義

    政府委員小島和義君) 農業からの労働力の流出というのは、必ずしも人自体がいなくなるわけではございませんで、投下される労働量が減っておるということでございまして、兼業の進展ということも一つの側面であるというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、その少なくなりました労働力をフルに活用いたしまして何とかこれまで同様、ないしはこれまで以上の生産を上げていくというために農法上のいろいろな変化、工夫というものが行われてきているわけでございまして、そこにどうしても目先の効率ということが重視される傾向があるということはこれは否めないところでございます。  ただ、兼業農家でありますから当然に土地生産力がダウンするというふうには必ずしも考えていないわけでございまして、今日のさまざまな技術を駆使すれば少ない労働力をもって十分に保有する土地の耕作ができるというふうな体系もでき上がっておるわけでございまして、現に、水田利用再編対策が開始されました昭和五十三年という年は四百九十九キロという史上最高の豊作を記録した年でもございます。したがいまして、水田利用再編対策自体が水田全体の生産力というものに着目をいたしまして、一面においては必要な水稲生産を行うとともに、他面におきまして余剰の水田をもって我が国において不足しております作物をつくっていくという、需要にマッチした生産を行うという大きな政策でございますから、水田生産とあわせて他作物生産ということを余儀なくされるという意味においては、労働生産性の面から言えば多少その犠牲にされる面があるわけでございます。  したがいまして、そういうマイナスを補うためにできるだけ転作というものは集団化、団地化いたしまして能率を損なわない形で推進をしていく、そのことがまた水田生産力を高い水準に維持するためにも非常にいい道である、かように考えてただいまそのような対策を進めておるわけでございますから、水田利用再編対策水田生産力を低下さしておるという御指摘は必ずしも当たらないのじゃないかと考えております。
  220. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、土づくりの問題と労働生産性の問題は、目先的に見た場合にはこれは相入れざる面があると思います。しかし、農業というものはそう目先を考えてやるものじゃない。非常にやはり長期的に物を考えるべき経済活動だと思います。そういう点から私は長期的に見た場合、労働生産性と土づくりというものは決して矛盾するものではないと思うのです。ただ問題は、いわゆる減反が行われる、それから、そんなに広い土地を持っていない二種兼業農家農業というものの将来についての自信がだんだん持てなくなる、転作もやる。しかし、その中でやはり農業の粗放化といいますか、そういうものが起こってくる心理的な要素があるのじゃないかと思うのです。そんなに十年先も二十年先も考えながら農業をやるというような考えは失われている。また、その農業から得る所得というもののウエートがこの兼業農家においてはだんだん低下してきている。私はそういうことが一つの心理的要因として大きなものがあるのじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  221. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは御指摘のとおりだと思います。農家も大変多様化しておりますので、私どもはその土づくり問題と農業の経済性というものは決して相入れないものではないと考えておりますが、個々の農家の判断としてみれば違った判断もあり得るわけでございます。そこで、そういう個々の農家の非常に変化しております意識というものと、その地域全体として長期にわたって必要な経済的な対策というものをどこで、どういう形で折り合いをつけて対策を進めるかということが大変重要になってくるわけでございます。個別の農家においてやれることとやれないことというものがあるわけでございますから、その辺の見きわめをつけまして、それぞれの地域で、経済的にも技術的にも無理なく実行できるような対策をつくり、それぞれの地域にマッチしたシステムを考えていく、これが今後の土づくり対策の重要な眼目であるというふうに考えております。
  222. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、地力増進のために国がやるべき範囲は先ほども少しお聞きしましたけれども、これについてもう一度お伺いしたい。
  223. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは、法律の中におきましては農林水産大臣という言葉は、土壌改良資材の十一条以下は別でございますが、地力増進地域にかかわります条文の中には余り出てこないわけでございます。国は、地力増進の基本指針を定めるということだけしか法律の世界ではできておりません。  実際問題といたしましては、各都道府県で実施しております土壌調査あるいは土壌診断、さらには対策指針といったものの策定に当たりまして、国がそのもとになります技術を開発をする、さらには診断方法を統一する、あるいは土壌診断等に用いますところの機械器具の開発を進める、さらには最新のコンピューターの技術利用いたしまして、土壌に関する蓄積されました知識を容易に引き出してこれを利用するというふうなシステムづくりをやるといったことが国の責任であり、また、都道府県が行います仕事につきまして、必要なものについて助成を行っていくということが国の責任である、かように考えておりますので、法律の条文だけから見ますとあたかも都道府県だけが働いておるように見えますけれども、決してそういうことではないわけでございます。     —————————————
  224. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、岡部三郎君が委員を辞任され、その補欠として出口廣光君が選任されました。     —————————————
  225. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 法律の中に、農林水産大臣が定める地力増進基本方針に「土壌の性質の基本的な改善目標」というものを定めるということがあります。都道府県が地力増進地域に指定する場合は、この農林水産大臣が定めた「基本的な改善目標」に該当するものについて指定するということになりますか。
  226. 小島和義

    政府委員小島和義君) 農林水産大臣の定めます地力増進基本指針におきましては、これは都道府県が定めます対策指針のガイドラインであると同時に、その地力増進対策地域以外の一般的な農業関係者に対するテキストという両面の性格を持っておるわけでございます。したがって、その基本指針において定めますことは、いろいろな不良土壌に対する一般的な目標ということにどうしてもなるわけでございますので、それを受けてそれぞれの地域にマッチした具体的な改善目標を都道府県知事の段階でお決めいただくということになろうかと思います。
  227. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 都道府県知事は、地力増進地域の指定は第四条第一項の基準に適合するものの中から「指定することができる。」ということになっております。「指定することができる。」わけですから、指定しないこともあり得るわけであります。そうすると、この基準に該当するところでも指定されたりされなかったりする、これは都道府県ごとに行われるわけですから、ばらつきが出るおそれはないですか。
  228. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは「指定することができる。」という規定になっておりまして、指定しなければならないという書き方になっておりませんのは、四条一項の一号、二号に該当するものにつきましても必ず全部指定するということではございませんで、その中から逐次指定をしていく、つまりそこに優先順位の判断のようなものが都道府県にある、こういう意味において「できる。」という規定になっておるわけでございます。法律的に申し上げますならば、一つ法律上の権限として付与したという形になっておるわけでございますから、決してそのする、しないは全く自由であるという意味の条文ではないわけでございます。  そこで、都道府県が実際に指定いたします場合に、もちろんそれぞれの都道府県の不良土壌の分布の状況にもよるわけでございますが、多少の濃淡の差は出てとようかと思いますが、全国的に見ましてある程度の足並みをそろえるということも必要だろうと思っております。ただいま考えております。その進め方といたしましては、一都道府県でおおむね三地域ぐらい、全国で百四十地域ぐらいをさしあたり指定をいたしまして、その後の経過を見ながら逐次これをふやしていく、できますれば十年とか二十年を単位とした年次計画のようなものもつくりまして、全体的な歩調が余り乱れないように都道府県を指導してまいりたいと考えております。
  229. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 全国で農林水産省が想定しておられる対象地域は先ほど二千六百というふうに伺いましたけれども、当面そのうちのたった百四十ぐらいしか指定されないということになりますか。
  230. 小島和義

    政府委員小島和義君) この二千六百という箇所数は、その土壌基本図の上で、地図上で拾ってみると、都府県百町歩、北海道二百町歩という単位で拾い得るものがそれだけある、面積にいたしますと八十七万ヘクタールぐらいでございます。ただ、そのすべてにつきましてこれを片っ端から指定していくということになりますと、それぞれの地域におけるところの濃密な行政的なサービスというものが勢い希薄になるわけでございますから、その具体的な地域の指定の成果というものを見ながら逐次ふやしていくということでございまして、二千六百がこれは地図上で拾ったものでございますから、全部指定の要件を完全に充足しているかどうかということもさらに詰めて考えなきゃならぬわけでございます。その辺は最初の指定を行います前の段階で、各都道府県の意見も十分聞きました上で今後の進展度合いというものを考えていきたいと思っております。
  231. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 これは指定されなかったところ、指定地域以外でも、土壌保全のための助言や指導が必要とされる場合があると思うのですけれども、これはどうなりますか。
  232. 小島和義

    政府委員小島和義君) それは現在でも、こういう法律がないわけでございますが、各地域におきまして、主として農業改良普及所あるいはその都道府県の農業試験場が、農家あるいは農業団体からの求めに応じましていろいろな形の技術的なサービス、その中には土壌の診断調査ということもございますし、あるいはその対策を進めるに当たりまして必要な指導、助言ということもあるわけでございまして、それはそれなりにやっておるわけでございます。今回、法律上規定いたしましたことは、いわば法律上の制度といたしまして特定地域について都道府県が積極的に濃密に関与していく、そのための仕組みをつくったというふうなことでございまして、それ以外の地域は全く相手にしないという意味ではございませんので、御了解願いたいと思います。
  233. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 地力増進対策指針に基づく助言、指導の具体的内容はどういうものになりますか。
  234. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは対策指針の中身によるわけでございまして、第六条におきましては大変抽象的、一般的に書いておりますが、その軸になっておりますものは六条二項二号の「土壌の性質の改善目標」、それから三号の「土壌の性質を改善するための資材の施用に関する事項」、それから四号の「耕うん整地その他地方の増進に必要な営農に関する事項」、この辺が対策指針の中心になる部分でございます。対策指針自体は公表するわけでございますが、その指針を受けまして各農業者あるいは農業団体でこういうことを進めていったらいいのではないか、その中には三号で言っておりますところの資材の問題、これは狭い意味土壌改良資材だけではございませんで、堆肥のようなものからあるいは肥料のようなものを含めてここでは資材と呼んでいるわけでございますが、そういったこと、さらには心土の破砕、肥培管理というふうなやや機械を利用いたしました高次的なものと申しますか、そういったもの、あるいは作物の輪作というふうな極めて作物栽培的な部分、そういったものを全部含めましてこれら指導、助言の中身になっている。かように考えます。
  235. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 地力増進するために大事なことは、土壌の変化というものを早めにとらえてその土壌の性質に適した対策営農技術の中に組み込んでいくことが必要だとされております。しかし、土地のそれぞれの要因が決して単純なものではない。したがって、高度かつ精密な土壌調査に基づく的確な処方せんというものがないとこれはできないと思います。果たしてそういうものをつくり対応していくだけの体制があるのかどうか、この点はいかがですか。
  236. 小島和義

    政府委員小島和義君) 都道府県の段階におきましては、過去の地力保全基本調査以来、土壌問題については大変すぐれた技術水準を持っておりまする多数の職員を養成し、確保してきておるわけでございます。これらの職員は、具体的な調査活動を通じましてそれぞれの技術的な水準も非常に向上してきておりますし、今日日本国内で実際に活用できますスタッフとしては大変すぐれた水準にある方がそろっておるわけでございます。したがって、人員とか技術水準という点におきまして問題があるというふうには考えておりませんけれども、何といいましても問題の解決というのが二、三年という短時日の間にすべて片づいてしまうという問題ではございませんから、一カ所の地域を指定いたしました場合に相当な年月を費やしまして問題を解決していくということになりますれば、やたらに対象地域をふやしていくということは地域に対する指導の希薄化をもたらしかねないという問題もあります。その辺両にらみで今後の進展を考えたらいいのではないかというふうに考えております。
  237. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 確かに過去の経験を積んだ優秀な方がおられると思いますけれども対象地域が百三十ぐらいしかできない、つくれないというのもやはり人員の数が非常に少ないということがあるのじゃないでしょうか。だから、将来は対象地域をもっとふやしていく必要が出てくるのではないか。そうすると人員も増強しなければならないのではないかと思いますが、いかがですか。
  238. 小島和義

    政府委員小島和義君) とりあえず指定するものとして全国で百四十ぐらいと考えておるわけでございますが、これは最初の指定でございますから、その百四十にしばらくとどまるという意味を申し上げたわけではございません。何といっても最初の指定地域においてある程度の効果を上げまして、そのことの波及的な効果をねらって次の対策に進んでいくということが筋であろうと思いますので、やたらとその数をふやしていくということは余り得策ではないのではないかと思っております。ただ、百四十が完全に終わりませんければ次の指定に入らないということではございませんで、その成果を見ながら逐次数をふやしていくという進め方がいいのではないかと思います。  各県の具体的な状態、規模といったものもあるわけでございますから、その辺は都道府県の意見もよく聞きながら、今後のテンポを考えていきたいというふうに考えております。
  239. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから、地力増進に対する国の援助として「助成」という表現がされております。これは、具体的な財政上の援助ということはどういうことがありますか。
  240. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは都道府県に対するものでございますので、補助金という形で行われる場合が普通であるというふうに考えておりますが、法律にも書いてございますような対策調査あるいは対策指針の策定、改善状況調査というふうな都道府県が直接に行います仕事についての補助、そのほか地力増進に関する施策実施に必要なもの一切を含んでおりますから、都道府県からさらに市町村、農協という段階に交付されます補助金、それに対する助成というものも含んでおるというふうに理解をいたしております。
  241. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 最後に、土壌改良資材の問題について質問いたしますが、これは品質の表示制度を設けるということであります。しかし、これは必ずしも全部が表示の対象となるとは限らないわけでありますし、また、その資材効果とか安全性についての情報も十分ではない。したがって、この表示制度だけで果たして実効性を期待できるのかどうか疑問だと思いますけれども、この点はいかがですか。
  242. 小島和義

    政府委員小島和義君) 土壌改良資材につきまして、近年その種類も量も大変ふえてまいりましたし、地方によりましては若干のトラブルも起こっているというふうな状況でございますので、何らかのこれに対する行政的な関与をする必要があるだろうというふうに考えておったわけでございます。  ただ、肥料の場合は有効成分量の保証ということが非常に簡単にできるわけでございますし、その分析によりまして保証どおりの成分があるかどうかという調査もできるわけでございますが、土壌肥料資材の場合にはこれまではその効果につきまして、経験的にはいろいろなことはわかっておりましたが、実験室の中での検定によってこれを調べるということがなかなかできなかったという意味におきまして、第一次的にはそういう品質管理のための手法を開発するということに時間を費やしたわけでございます。  第二に、どの程度の強さを持って国がさわるかということでございますけれども肥料の場合には保証成分とあわせまして有害成分の最大量というものもあわせて登録事項、規格事項になっておるわけでございますが、土壌改良資材の場合は大部分が天然の鉱物等でございますので、これまで調べた限りにおきましては有害成分という問題がほとんどない。それから肥料に比べまして、肥料は明治以来の取り締まりの歴史を持っておるわけでございますが、土壌改良資材はこれから始めるわけでございますので、昨今の情勢からすれば、できるだけ行政の関与する領域は最小限にとどめるべきであるという社会的な要請もあるというふうに考えておりますので、それらを勘案いたしまして、これは生活物資等につきまして先例のあります立法形態でございますが、そういう品質表示の適正を図るという手法が一番なじむのではないかという理解でこういうことにいたしたわけでございます。  その表示事項の中におきまして一番問題になりますのはやはり効果ということでございまして、この法律におきましては効果を含めた表現といたしまして「用途」ということを書いておりますが、この「用途」と書いております中において何にどの程度使ってどういう効果があるかということが当然含まれるという理解をいたしておりますので、そこが表示制度の一番中心になる部分でございます。これの適正を図れば非常に品質上問題があるものを排除することも可能でありますし、また、農家側の選択を容易にするという効果もあろうというふうに思っております。
  243. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、農水大臣が絶えず日本農業を守る、あるいは健康な土づくりをと強調しておられます。その心を受けとめまして、質問をいたしたいと思います。    〔委員長退席、理事北修二君着席〕  まず、地力というものに対する考え方ですが、地力というのは、主なる母は、人間を含む生物の生きる生命を培う食べ物を生み出すところの母体である。ですから、その母なる土は、病気をしたから治療するという考え方じゃなくて、絶えず健康でなければいけない。その健康を維持するために、地力が減退したから活力を持たせるという考え方じゃなくして、絶えず向上化して、さらにそれを増進させるという基本的な考え方を持たなければいけないのではないかと思うのですが、いかがですか。
  244. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生おっしゃるとおりでございまして、体のぐあいが悪くなったから治すということではなくて、健康でいるというのは、これは一番であると思います。
  245. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 その認識の上に立って、昭和三十四年以来五十三年まで二十年間にわたって地力の基本調査診断をされたわけなのですね。私からしますと、余りにも長かりし二十年、二年ならばいざ知らず、二十年も診断に歳月を費やされたというその意図はどこにあったのでしょうか。
  246. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは、全国で五百万町歩以上の農地につきまして、二十五ヘクタールに一点、したがって全体として二十万点ばかりでありますが、その二十万点につきまして、その母材及びその断面の構造、それから地方を構成しておりますさまざまな要素についての調査を行いました。それを土壌基本図及び土壌保全調査の総合報告書というふうな形でまとめたわけでございまして、二十年がかりの大事業であったわけでございます。  ただ、その二十年というのは大変長いではないかということでございますけれども、実はこの製品、でき上がりましたその土壌の状態把握といたしまして世界に冠たるものであるというふうに私どもは思っておるわけでございます。現に、アメリカ合衆国、これは国が大変広いものでございますからなかなか日本のようなわけにはまいりませ んが、毎年二千万ヘクタールの調査実施してまだ終わっていないという状況でございますから、そういう意味では決して遅きに失するということはない、非常に時間のかかる根気の要る調査であったというふうに御理解いただきたいと思います。
  247. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 二十年の歳月は、見方によっては無関心過ぎたじゃないかという評価もできましょうし、あるいは怠慢過ぎるのじゃないかという見方もできるわけでありますが、ともかく二十年の歳月を費やして調査された実績、その分析の結果はどうなったでしょうか。
  248. 小島和義

    政府委員小島和義君) この分析の結果というのはなかなか一般的には一口に申し上げにくいのでございますが、まず、我が国土壌の分類をいたしておりまして、これは先ほど申し上げました母材と断面構造によりまして三百二十の土壌統に分類をいたしておるわけでございます。さらにそれが類似のもので集約をいたしますと五十三の土壌統群になりまして、さらにそれを似たもの同士を集めまして十六の土壌群に分類をいたしておりまして、いずれもこれを地図上においてどういう土壌統に属するかということが判明することになっているわけでございます。それぞれの地域につきまして、先ほど申し上げましたような土壌生産力可能性分級という、つまりその地方の実態を明らかにする調査をいたしておりまして、それによりまして、それぞれの地域を一等級から四等級まで、地方を構成します要素の総合的な得点によって分類をいたしておるわけでございます。  それで見てまいりますと、日本水田の場合で申しますと、比較的不良な分類に属しますもの、つまり三等級とか四等級に分類されますものが水田の場合で全体で約四割弱、それから畑の場合で申しますと六九・二%、約七割弱、樹園地の場合で六四・三%、全体通しますと三等級、四等級のものが五二%あるということがわかっておりまして、それぞれの場所別にもどういうファクターが劣っているために、どういう要素が劣っているために三になっているのか、四になっているのかということがすべて要素別に明らかになっているわけでございます。
  249. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 実はこれが立法されました場合に一番救われるのは沖縄の土壌じゃないか、沖縄じゃないかとぐらいに私は期待をしておるわけなのです。  それじゃ、今大まかに日本全体の分析をされましたが、沖縄の特殊事情にある土の分析はどのようになっておるのでしょうか、答えてください。
  250. 小島和義

    政府委員小島和義君) 沖縄県の場合で申しますと、土壌群で申しますと、赤、黄色土、暗赤色土、灰色台地といったものの分類になるわけでございまして、特にサンゴ石灰岩に由来するアルカリ土壌でありますところの島尻マージという非常に不良な土壌が分布するなど、非常に不良な土壌が多いわけでございます。沖縄はもともと水田が少なくて畑地が多いわけでございますが、沖縄の全耕地土壌の九九・一%が三等級ないしは四等級に分類されるということでございますので、その意味では、日本全国各都道府県を並べてみますと一番問題が多い土壌であるというふうに考えております。
  251. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 沖縄自体の細かい分析はきょうはやめまして、先ほど言われました日本全体の物差し、いわゆる一等級から四等級までの分析がございましたね。その物差しを当てた場合に、今大まかに言われましたが、これは私にとりましても非常に重大な問題であります。一等級が〇%ですね。二等級が〇・九%、これが良の部で、良に値するものは〇・九%。三等級が七五・一%で、四等級が二四%、合わせて九九・一%、これが不良グループなのですね。    〔理事北修二君退席、委員長着席〕  そこで、お尋ねいたします。この極めて低い位置づけにある沖縄の地方を、土を本土並みに持っていくためにはどのような計画を持っておられるか、いつまでに本土並みに持っていこうとしておられるのか、承りたいと思います。
  252. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは先ほど来申し上げておりますように、制度発足の当初におきましては大体各都道府県三地域ぐらいをとりあえず指定をいたしまして、その成果を見ながら逐次地域はふやしていくという予定でございます。全国で申しますと百四十ぐらいの地域をさしあたり指定をいたしまして、その後の進度についてはその成果を見ながら、また各都道府県の要望を見ながら逐次ふやしていくというのが一番現実的だろうと思っておるわけでございます。  現在沖縄で起こっておりますいろいろな土壌の問題について、これを例えば本土並みにするというふうな具体的な年次目標を持つものでは決してございませんで、例えば四等級のところであれば三等級ぐらいのレベルまでは何とかして持っていく、三等級の中でできれば二等級に持っていく、こういうふうなことでございますから、平均のレベルをどこかにそろえるという形での年次計画を持つことは非常に難しいと思っております。  また、沖縄の場合で私ども非常に感じておりますことは、今回の地力増進法は主として営農的な手法によって地力の問題を解決するという仕組みなわけでございますが、かなりな部分につきまして、いわゆる土地改良的な手法とあわせて行わなければなかなか営農的な手法だけでは効果が期待できないのではないかと思われる地域も多いわけでございます。その意味で、今後具体的な対策指針を定めます段階でそういう土木的な手法によるもの、それから営農的な手法によるもの、その辺の見きわめをつけながら計画をつくっていきたいというふうに考えております。
  253. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 成り行きを見きわめながらということは至って非科学的であると私は言いたいのであります。やはり科学的にここまでは持っていかなければいけないという目標を設定すべきである、そうすることによって国の施策も指導も軌道に乗るのでありまして、極端に言うならば、これはもう思いつきで、あなた任せで成り行きに任せるということにも聞こえるわけでありますから、それではいけないと思います。ですからこれはできるだけ早く具体的な目標を、ここまでは持っていきたいというめどをつけてもらいたいと思いますが、いかがですか、大臣
  254. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 中央、地方の実態に即しまして、できるだけ着実にその目標を定めていきたいというぐあいに考えております。
  255. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今大臣のおっしゃることを私は心から信じますよ、信じております。  それから、もう一つ大事なことをお聞きしますが、先ほど調査の結果、沖縄自体各種別には一等級から四等級の分類はできましたが、その受け皿の類型ですね、グループ、そういう立場から面積がどうまとまっておりますか。例えば本土の場合、北海道が二百ヘクタール、あとはその他は百になります。そうすると百に沖縄も含むわけなのですね。その物差しで沖縄をはかった場合にその結果はどうなっておりますか。
  256. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは等級別の面積という形で御説明申し上げたいと存じますが、先ほど申し上げました三等級に所属いたしますところが地区数で六十四地区、面積にいたしますと一万五千四百二十五ヘクタール、それから四等級に属しておりますところが二土地区で八千四百五十一ヘクタール、こういうふうな分類になっておるわけでございます。それから二等級につきましては残りというふうにお考えいただきたいと思います。
  257. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 後で見てくださいね、私がまとめたのは、三等級、四等級、いわゆる不良グループが全体で三万八千ヘクタールになっているでしょう。そのうち指定枠で百ヘクタールにたたむというと該当するのが二万四千ヘクタールになります。それが類別にしますと八十四地区にたたまれています。そうしますと、次が問題なのです。その物差しで当ててもどういう結果が出るかというと、約一万四千ヘクタールの落ちこぼれ、漏れが出てきています。この一万四千ヘクタールはどうやって適用させるのかということを私は今聞いておきたいのです。
  258. 小島和義

    政府委員小島和義君) 先ほど申し上げました数字は、今回の法律の基準によりまして地図上で対策地区になり得る可能性の場所、面積を拾った数字でございまして、御指摘のように全体の面積との間にはギャップがあるわけでございます。これはあくまで地図上で拾った場合にこういうことになるということでございまして、全国の二千六百という地区数もこれがすべて対象になるというわけでは必ずしもございませんで、そのほかの経済的な要件もございますし、関係市町村、農業団体といったところの意向もございますし、都道府県における優先順位といったこともございますから、二千六百というのはあくまで地図上で私どもが拾った個所数及びその面積だというふうに御理解いただきたいと思います。  そこで、今の都府県の場合の百ヘクタールという採択基準と申しますか、物差してございますが、これにつきましては一応北海道二百、都府県百ということにいたしておりますけれども、離島あるいは山村というところになりますと、なかなか百ヘクタールのまとまった不良農地の存在というのはむずかしいという場所が実際には出てくるだろうと思います。そこで、そういった地域につきましては一律百ヘクタールということではなくて、何らかの特例的な扱いをしなければならないのではないかという問題意識を私どもは持っておりまして、これから具体的にその基準を定めます前の段階で各都道府県の意見も聞きまして、百ヘクタールということでは何ともならぬというところにつきましては何らかの特例を考えたいと思っております。  ただ、それにいたしましてもある程度まとまったところが対象地域になりますので、それ以外の地域というのは当然出てくるわけでございます。これは対策地域につきましてのさまざまな対策というものの波及的な効果をねらっていくという物の考え方でございまして、日本全国を地方増進対策地域で埋め尽くすということでは考えておらないわけでございます。
  259. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今のところが大事でありますので、私はまた要望を兼ねて申し上げたいのですが、沖縄の狭い土地を軍事基地に接収されておる。そういう立場からも細切れの部分が多いということなのです。だから、その漏れをどうしても特別の配慮で適用してもらわなければ救う道がないということなのです。そこを私は沖縄の特殊事情に即した配慮ですくい上げてもらわなければいけない、適用させてもらわなければいけないということを強く要望しておきたい。大臣、いかがですか。
  260. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 今局長から申し上げましたとおりいろいろな各県の事情もあるようでございますので、それらを十分参酌してやってまいると局長も申しておりますので、そのとおり局長にやらせます。
  261. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、やはり空手形に、アドバルーンにならぬためには予算の裏づけが物を言うわけでありますので、その面からお聞きしたいのですが、地力増進中心とした予算の裏づけの前年度と現年度との比較はどのようになっていますか。
  262. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) これだけ熱心に重大な問題をやっておるわけでございますから、来年度の予算はプラスになるというぐあいに確信しております。
  263. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は具体的に開いておるのです。これは決意では解決しません。具体的に言ってください。
  264. 小島和義

    政府委員小島和義君) 五十九年度の予算におきましては、土壌保全関係の予算は大別いたしますと三種類になるわけでございまして、一つは、土壌調査並びに地力保全対策診断事業ということで、主として調査のための機械器具の整備にかかわります予算、これらを合わせますと二億九千万ばかりいただいておるわけでございます。それから技術の開発に関係いたしましたものが一億六千六百万ぐらい、それから土づくりのための実際の村々までおりていきます対策、この中には土づくり運動の推進指導といったもの、さらに地力培養モデル地区の設置、これは五十九年度新規でございますが、そのほか有機物供給センターの整備、有機物増投対策、耕土改良事業、それらを含めまして二十二億三千五百万程度、合計いたしますと二十七億弱、これが地力関係の予算でございます。もちろん、これは私どもの局に計上いたしております予算を申し上げたわけでございまして、例えば先ほど来御議論になっております畜産の側から見まして、畜産の環境整備という意味でふん尿等処理対策をやるというふうな予算は別途畜産局に計上されておるわけでございまして、これも実質的には農耕地に還元されるということによりまして地力増進に貢献をいたしてくるわけでございます。そういったものも別途予算額といたしまして三十億余計上いたしております。  それから、先ほどちょっと触れましたように、この法律に基づく対策ではございませんが、土づくりに関係いたします事業というものは土地改良の中にもあるわけでございますから、それらもすべてあわせまして今後の対策を進めるということになろうかと思っております。来年度予算につきましては、今大臣からお答え申し上げましたようにせっかくこういう制度的な枠組みができたわけでございますから、そのことを一つの武器といたしまして強力に推進をいたしたいと考えております。
  265. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今の予算に関してさらに申し上げたいのは、今までの大臣を初め皆さんの論法からすると、足りない面は決意で補うのだということになりかねないのですが、そうではなく、私は具体的に申し上げます。現年度予算は、私の調査によりますと二十七億五百四十九万二千円、前年度の五十八年度が二十七億二千百一万八千円。そうすると、差し引き千百五十二万六千円のマイナスということになっておるのです。ですから私は思うのです。行革、財政再建、いろいろなしわ寄せで苦しい予算の中でこれだけ取ったのだ、さらに足りない面は決意で補うのだと、こうおっしゃるお気持ちもわかります。ところが、行革、財政再建を隠れみのに埋没して何もかも切り捨てる、縮小する、このことがいけないと言うのです。本当に農業が、土づくりが日本国民の命の母であるという前提に立つならば、どんなことがあっても、切り詰めるべきものは切り詰めても広げるべきものは広げていくというこの判断がなければいけない、私はそういうことを申し上げたかったのです。そういうこともひとつ含めてさらに頑張っていただかなければいけない。要望を申し上げておきます。  次に申し上げたい点は、この土壌づくりということは、地力増進ということは日本だけの問題ではないと思います。それが重大であるとするならば、その国の行政組織の中に、具体的にその機構の中にあらわれてこなければ、生かされてこなければいけないと私は思うわけなのです。それでお聞きしますが、わかっておるようでわからない点があります。それは農林水産省におけるこの土壌問題の担当はどこで、どのようにやっておられるのですか。
  266. 小島和義

    政府委員小島和義君) 農蚕園芸局農産課の中に土壌保全班という班がございまして、班長以下五名でございますか、担当いたしております。
  267. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そこに頼りなさを聞いても感じますが、そのように土づくりということが本当に大事ならば、国の機構改革の中にどっしりと位置づけていくというこのことがあって初めて、私はいつも、もと立ちて末興る、この原点がどっしりと構えないというと末は細々と流れてしまう、雲散霧消してしまうということを私は指摘したいのです。御案内のとおりこの農蚕園芸局の中の一部で今料理しておられるのでしょう。ところが、本当に命のもとである土、このことに本当に徹していくならば、必ず私は大きな勇気づけになると思うのです。アメリカはどうなっていますか。
  268. 小島和義

    政府委員小島和義君) アメリカの場合には日本制度の仕組みが違っておりまして、連邦行政と州行政というのが完全に分離しているわけでございます。土壌問題につきましては、これすべて連邦行政といたしまして末端に至るまでことごとく連邦政府の役人が扱っておるわけでございます。したがって、農務省の中に、土壌保全局という局がございまして、総員は末端職員を含めまして一万四千人ほどの職員を抱えております。これは農務省の中では森林保全局、農水省で申しますと林野庁みたいなものでございますが、これに次いで第二の組織でございます。
  269. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 だから私は要望したいのです。農水省の中にやはり土壌改善局を広げて位置づけてくださるぐらいの熱意がなければ、私は本当に日本の土に国民を支える命の生産は期待できない、こういう気持ちから申し上げておるわけであります。  次に、指導体制の独化という面からお聞きしたい。  土づくりにはやはり専門的な高度の技術も知識も指導力もいろいろとマッチして成果が上がるわけなのです。ところで、その観点から見た場合に、国には国の試験場がある、県には県の試験場がある、農協にはまた農協傘下のそれぞれの組織があり指導員がいるわけです。それを国の立場からどうするかということは先ほどのお話でわかりましたが、その総力を結集して、そして土づくりなら土づくりの指導強化、啓蒙啓発、それを一元化していくように指導力を最高度に発揮していく、こういうことでなければ、お互いに縄張り争いをしててんでんばらばらで足の引っ張り合いをしたのじゃ成果が上がるはずはない。えてして日本の政府のあり方も省間における何かしら縄張り争いがあるやによく聞かされ、あるいはそうまた思うこともあるわけなのです。そういうことからも考えて、この際ひとつ殻を抜け出して、持っておるそれぞれの分野における指導力を農水省が、農水大臣が旗を振ってもらってそれぞれの分野で最高度に活力を発揮していくという、こういう方向に持っていってもらいたい。そのためにはやはり農水省にそれだけの位置づけの部局がなければいけないと私は思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  270. 小島和義

    政府委員小島和義君) 行政の組織をどのように仕組むかということにつきましては、できるだけ重点的なものを独立させた方がいいという考え方と、関連する分野を密接に連絡をつけながらやっていった方がいいという考え方とあるわけでございます。  私どもの局の組織で申しますと、確かに地力保全の問題も担当いたしておりますが、これと密接不可分に関係ございます例えば肥料の取り締まりでございますとか農薬改良普及事業でありますとか、各種の作物にかかわります行政でありますとかそれらを所管いたしておるわけでございますから、地力保全の問題もそういった関連する分野と連携を保ちながら進められるという利点があるわけでございます。したがって、アメリカ合衆国におきますように土壌保全だけを独立いたしまして、かつ末端に至るまですべて直轄でやるという仕組みがいいのか、日本のように都道府県が一番地域に密着した行政をやっておるわけでございますからそれとの協力関係を持ちながら、かつ横の部門と協力関係を持ちながら進めるのがいいか、こういうことについてはいろいろ議論のあるところだと思っております。現にアメリカ合衆国の場合におきましても、土壌保全局は土壌調査及びそれに対する対策づくりというところまでは所管をいたしておりますが、具体的な事業に対する補助金ということになりますと、これは農業安定・保全局というふうな役所が別にございまして、具体的な事業の面はほかで担当しておるという役割分担があるわけでございますから、どのように仕事の役割を分担するかということついては十分考えさせていただきたいと思っております。
  271. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 最後になりますが、私として締めくくりたいと思います。地球的な規模、そして全国的な規模、地域的な立場、いろいろの角度から集約しましても、結局は日本の立場からいった場合にも、開発と保全のバランスの問題がもう限度に来ておると言われておるのです。そうすると、やはり方向は地力増進維持していくこと以外にはないという結論にならざるを得ない、またなるべきである。同時に、狭い日本国土において国民の食糧安定供給を確保するあるいは農業経営を安定させるという立場からも地力の維持培養が極めて重要であるという結論になるわけでありますから、どうかそういう観点に立って本質的に掘り起こしていただいて、さらに今までの、殻と言えば表現がまずいかもしれませんが、その殻を破っていく気概がなければ日本農業は救えない、発展しない、こう思われてなりません。  時間が来ましたので、私は以上要望申し上げまして、大臣のコメントをお願いして終わります。
  272. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生の言われましたように、土壌というものは農業生産の最も基礎的なものでございます。そしてまた、この狭い日本の国土の中におきまして食糧の安定供給、そしてまた農業経営の安定ということを考えました場合に、地力増進というものは不可欠のものであるということを考えております。今回の法案審議に当たりましてもいろいろ貴重な御意見も伺いましたし、これがすべてであるというぐあいには考えておりません。今後も足らざるところは足して全力を挙げてやってまいります。
  273. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  274. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  地力増進法案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  275. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  北君から発言を求められておりますので、これを許します。北修二君。
  276. 北修二

    ○北修二君 私は、ただいま可決されました地力増進法案に対し、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党・国民会議日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。案文を朗読いたします。     地力増進法案に対する附帯決議(案)   政府は、農業生産力向上農業経営の安定  を確保する上において、土壌の性質を改善し、  地力の維持増進を図ることが極めて重要である  ことにかんがみ、近年の地力低下問題に積極的  に対処し、農業生産の増強に資することとなる  よう、本法の施行に当たっては、次の事項の実  現に遺憾なきを期すべきである。  一、農業生産の基礎である地力増進確保する   ため、農業者等に対する啓もう普及、土づく   りの推進体制等の必要な条件整備が図られる   よう総合的な諸施策実施すること。  二、地力増進の実効性をあげるため、土壌関係   の試験研究内容の拡充、研究体制整備に努   めるとともに、科学技術向上に対応し、都   道府県における土壌調査地力診断体制の整   備、土壌調査職員の資質向上に必要な措置を   講ずること。  三、地力増進対策の適切な推進が図られるよ   う、予算の確保に積極的に努めること。  四、地力増進地域については、土壌条件に対応   した適切な地域指定が行われるよう指導する   とともに、地力増進対策指針の策定に当たっ   ては、地域土壌特性、営農条件等を十分反   映させ、農業者にとって真に実行可能なもの   となるよう配慮すること。    また、地力増進対策実施に当たっては、   農業者等に対する助言、指導を基本とし、画   一的な勧告がなされることのないよう慎重に   対処すること。  五、土壌改良資材品質表示制度の運用に当た   っては、適正な表示が行われるよう製造業者   等に対し十分な指導を行うとともに、土壌改   良資材生産、流通の的確な把握に努めるこ   と。    また、最近における土壌改良資材の種類の   多様性にかんがみ、施用方法等についての技   術指導に万全を期すること。   右決議する。  以上であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  277. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいま北君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  278. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 全会一致と認めます。よって、北君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、山村農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。山村農林水産大臣
  279. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。
  280. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  281. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十二分散会