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1984-04-17 第101回国会 参議院 農林水産委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十七日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  四月十四日     辞任         補欠選任      松岡満寿男君     浦田  勝君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         谷川 寛三君     理 事                 川原新次郎君                 北  修二君                 最上  進君                 村沢  牧君     委 員                 浦田  勝君                 大城 眞順君                 岡部 三郎君                 熊谷太三郎君                 坂元 親男君                 高木 正明君                 竹山  裕君                 初村滝一郎君                 星  長治君                 水谷  力君                 稲村 稔夫君                 上野 雄文君                 菅野 久光君                 刈田 貞子君                 鶴岡  洋君                 下田 京子君                 田渕 哲也君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農林水産大臣   山村新治郎君    政府委員        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        通商産業省基礎        産業局長     野々内 隆君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        公正取引委員会        事務局経済部調  糸田 省吾君        整課長     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月十四日、松岡満寿男君が委員を辞任され、その補欠として浦田勝君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本件につきましては、既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、ただいま審議に付されております肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案について、これから農林水産省並び通産省にそれぞれお伺いをしたい点があるわけであります。大まかに言いまして大体三つの観点からそれぞれ御質問を申し上げたいと思っております。  第一は、この臨時措置法の性格、目的役割といったものにつきましてどのように評価をしておられるのか、その辺のところを伺いたいと思うのでありますが、その具体的な御質問を申し上げます前に、今回この肥料安定法延長につきましては四回目の延長ということになるわけでございます。なぜまた延長をしなければならなかったのか、その辺のところが提案理由説明の中だけではどうもよくわかりませんので、その辺について、まず、通産省の方からお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  5. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 御指摘のように、たびたびの延長を行ってまいったわけでございますが、今回の延長に際しましては農業サイド、それから化学肥料工業サイドそれぞれから必要性が述べられておりますが、特に私ども関係いたします化学肥料工業におきましては、昨年来第二次の構造改善対策を実施をいたしておりまして、これを円滑に達成いたしますためには、この安定法に基づきます肥料取引適正化のための措置が存続することがぜひとも必要であるということで延長をお願いいたしたということでございます。
  6. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 農水省のお立場ではどういうことになりますか。
  7. 小島和義

    政府委員小島和義君) 農業の場合について申しますと、農産物全体の需給のアンバランス、御承知のようなことで、水田利用再編対策も本年度から第三期に入るという時期でございます。また、外国からの大変強い輸出圧力というものも存在いたしまして、国内農業が従来にも増してその体質を強化いたしまして、農業生産の適正な展開をしなければならない大変重要な時期に当たっておるわけでございます。その意味におきまして、農業関係者の中からもこの制度延長につきましての強い要請が出てきておる、こういう背景におきまして、ただいま通産省からお述べになりましたような要素もあわせ考えまして延長ということに決定をいたしたわけであります。
  8. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 この本法案が最初に成立をいたしました昭和三十九年当時と、それから今回四度目の提案をされる今のこの事情というものはいろいろと違いがあるのではないか、このように思うわけであります。特に四十四年の延長あるいは四十九年の延長というそれまでの時代と、それから今度は五十四年、今回の延長ということで、私は言ってみればそこでの主たる受益者とでもいいましょうか、この法律があることによりまして特に利益を受けるという階層が違ってきているのではないだろうか、こんなふうにも思うわけでございます。要するに輸出等がかなり盛んにありまして、そういう中で輸出価格国内価格アンバランスということを問題にして、農民に少しでも安い価格農業生産資材としての肥料を提供していく、そういう観点から当初の法律は大きな役割を果たしてきたのではないか、こんなふうに思います。五十四年以降はむしろ肥料生産メーカー国際競争力低下というようなことと相まって第一次の構造改善というものにまた取り組まなければならないような状況があった、そういう中で本法が果たす役割というものが結構大きなものがあったのではないか、こんなふうにも思うわけで、言ってみれば重点のかかり方の違いといいましょうか、そういうものがあったのではないかと思うのですが、その点について通産省農林水産省、それぞれのお考えを聞きたいと思います。
  9. 小島和義

    政府委員小島和義君) 確かにいまお話ございましたように、四十四年の改正と申しますか、実際には一国会延びまして四十五年に改正が行われておりますが、当時の背景といたしましてはアンモニア産業大型化の計画がございまして、現実にも鹿島のアンモニア工場あるいは日本アンモニア宇部アンモニアというふうな従来なかった大型工場減量転換を伴いながら巨大な製造設備を整備いたしまして、これから輸出産業として大き く飛躍しようという時期でございまして、それだけに農業側から見ますれば、輸出産業への傾斜を肥料工業が強めていく中において内需優先という農業側の強い希望と申しますか、これが満たされなくなるのではないかという心配が大変強かったという背景がございますので、その意味においては主たる動機が農業側にあったという言い方も当たらないことはないと思うわけでございます。  それから四十九年は、御承知のように第一次石油ショックに端を発する狂乱物価の最中でございまして、この時期においては、何びともやはり化学肥料価格安定が必要であるという考えを持ったはずでございます。その後の五十四年の延長並びに今回の延長につきまして、ただいま基礎産業局長からお話がありましたような化学肥料工業過剰設備背景といたしまして第一次の構造改善、第二次の構造改善がまさに進められようとしておる最中でございますので、その意味では生産工程自体が非常に変わってくる激動の時期でございます。それから構造改善に努める側といたしましても、適正な原価を反映した価格による取引というものを望む気持ちがひとしお強いという背景はもちろんあるわけでございますが、化学工業サイドからだけの要請によって延長に踏み切ったということではございませんで、先ほど申し上げましたように農業側からも大変強い希望があり、両方勘案して延長が必要である、かように判断いたしたわけでございます。
  10. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 今小島局長の御答弁のとおりだと思っております。  基本的にはこの法律が、御承知のように、肥料農業にとって非常に重要な資材であるということを大前提にいたしまして、それの安定供給ということを基本に置いた法律であろうかと思っております。化学工業側から見ますと、化学肥料工業自体企業のポイントというものが確かに移り変わってきていると思います。法律目的そのものともちろん関連いたしますが、従来は大型化をして世界的な需要を相手に売るという経営だったわけですが、二回の石油危機を越えまして、内需を中心とした工業という形に変わってきておりまして、これが今小島局長が御説明になりました本件法律延長目的と絡み合いながら、基本的には化学肥料の安定的な供給というものを目指して法律延長が行われ、化学肥料工業構造改善が行われてきた、かように理解いたしております。
  11. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 いずれにいたしましても、今の御答弁をそれぞれ伺っておりまして、五十四年延長以降といいましょうか、この法の運用等についての重点のかかり方というものにいろいろと変化があった、こういうふうに受け取らざるを得ないわけであります。そういたしますと、その中で、この間、参考人の皆さんの御意見をいろいろと伺う機会があったわけでありますが、硫安工業界の代表の方はかなり輸出にも自信をお持ちになっているのではないだろうか、そんなふうに私には認められたのです。特に同僚委員質問に対して、製造をいたしましたものが内需よりも多く生産もされるし、売れるということもありますから、売ります、言ってみればそういう意味合いのことを言われたと思うわけであります。そうだといたしますと、私は、同じ肥料工業界の中でも、いわゆる化成肥料工業界とそういう硫安工業界というものとではまた事情がかなり違うのではないだろうか、こんなふうにも受け取られるわけでありますが、その辺はいかがでございましょうか。
  12. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 化学肥料工業関係構造改善策といたしまして、硫安製造そのもの対象にはなっておりませんが、硫安製造の非常に重要な部門でございますアンモニア工業に関しまして、構造改善法律対象になっておりまして、過剰設備の処理その他の構造改善が行われておるわけであります。今回の構造改善につきましては、肥料につきまして原料から製品に至る一連の部分構造改善考えております。この中で硫安構造改善法律対象になっておりませんのは、硫安は御承知のように、副生硫安あるいは回収硫安という形で他の製品と一緒に生産をされるという状況がございますために、特に構造改善対象になっておりませんが、非常に重要な原料でございますアンモニアというものが対象になることによりまして、全体としての化学肥料工業構造改善の一環に入り込んでいるわけでございます。したがいまして、硫安供給側といたしましても、やはり構造改善というものが絶対に必要であるという考え方は変わりございませんし、また、アンモニアそのものが直接肥料として使われるのではございませんで、御承知のように、硫安、尿素、燐安という形で、あるいは化成肥料を通して肥料として利用されますので、これらの肥料の最終的なものが安定的に推移をいたしませんとアンモニア自体構造改善ができなくなるという状態でございます。したがいまして、同じことが硫安につきましても言えるということで、化学肥料業界全体といたしまして、ぜひ本件法律延長し、構造改善を達成したいという考えには変わりはございません。
  13. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 農業サイドの方から、最終需要者である農家にできるだけ安い肥料供給をしていく、そういう目的役割というものは極めて大きいと思うのでありますけれども、どうも今の通産省の御返答を伺っておりましても、肥料工業界の中で構造改善対象から外れているもの、それは肥料業界全体としては無関係ではないとはおっしゃるけれども、そういうところも含めて、それで今回のこの安定法延長希望しておられるということについては、どうも私は必ずしもすっきりと納得し切れないものがございます。やはり、そうした業界の中でも、対象になるものを整理してかかっていかなければならない部分があるのではないだろうか、それを「特定肥料」ということで全部一括をしてしまっているところに私は問題もあるのじゃないかという気もいたしますが、その辺はどうお考えになりますか。
  14. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 御指摘のとおり、既に化学肥料工業につきましては輸入がすべて自由化をされておりまして、能率の悪い工場を温存するということは実際問題としてできない形になっております。したがいまして、すべての化学肥料工業を温存するという考え方は私どもはもちろん持っておりませんで、今回の構造改善と申しますのは、効率のよい工場で集中的に生産をするとか、あるいは合理化によりまして効率のよい生産を行うという形で、全体として効率をよくすることによって安定的な化学肥料工業供給を目指すということでございます。したがいまして、逆にいいますと、そういう効率のいい生産に移行することができない企業あるいは工場につきましては、何らかの形で転換なり撤退ということをやらざるを得ないということも考えておりまして、そこが雇用問題が絡みまして非常にこの構造改善の難しい点でございます。しかしこれは、肥料の安定的な供給及び化学肥料工業選択的生き残りという点から考えますと、どうしてもやらなきゃならぬ、こういうことだと思っております。
  15. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そこはいろいろと議論があるところかもしれませんが、そういたしますと、とにかく、肥料工業界構造改善事業を進めていく上でこの価格安定法というものが一定程度役割を果たす、だからとりあえずまた五年延長をしてほしい、こういうことになるわけですか。
  16. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 御指摘のとおりでございまして、この指定されました肥料窒素系肥料の非常に大きな部分を占めておりますので、アンモニア以下の窒素系化学肥料工業構造改善にとっては非常に必要なことであるというふうに考えております。
  17. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 この法律がそうした肥料工業界構造改善に重要な役割を果たすということになりますと、これはやはり、三十九年発足当時の事情と大きな事情変更がある、こんなふうに言っていいのではないかと思うのです。そういう事情変更の中で、事情変更したならば、私はむしろ積極的に、そういう時点から安定法の臨時的な延長ということにとどめるのではなくて、別の法律提起なり何なりという形がとられるべきではなか ったか、このように考えますけれども、その点はいかがでございますか。
  18. 小島和義

    政府委員小島和義君) 農業側からのこの化学肥料問題に対する物の考え方は、昭和二十九年のいわゆる肥料二法の時代から一貫をいたしておりまして、肥料工業合理化を推進することによってそのメリット国内農業に均てんさせるという考え方でございます。今日の化学肥料工業が大変な過剰設備を抱えております事態のもとにおきまして、それを放置いたしまして、化学工業が俗な言葉で言えばのたうち回るということになりますれば、短期的には乱売という形で価格の安いものを取得するということがあるいは可能になるのかもしれませんが、長期的に考えてみますと、その結果として生き残る姿というものは必ずしも合理的な姿にとどまるという保証はないわけでございます。これはそういう価格面での競争を通じまして、もちろんコストの安いところもそれなり優利性はございますが、企業としても総合的な戦力においてまさるものが生き残るという場合もございますし、肥料のように大変バルキーな物資につきましては、地域的に見て工場などの配置国内需要に見合った適正な配置にとどまるという保証もまたないわけでございます。  その意味におきましては、ただいま進めておりますような構造改善を進めていただいて、その結果得られるコスト低下というものを農業側でちょうだいをする、こういう考え方の方が肥料価格の長期安定という観点から見れば明らかにプラスである、こういう考え方肥料二法以来このような対策を進めてまいったわけでございます。もちろんその合理化されたもののメリットというものは、農林通産両省で把握いたしております肥料原価というものをもとにいたしまして価格が決められるというシステムによって保証をされている、こういう理解でございまして、この問題をやや長期的な視点で考えるならば、この構造改善を進めている期間にほぼ見合います期間本法延長する方が長い目で見て農業にとってプラスである、こういう考え方から法延長したいと思っているわけでございます。
  19. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、延長してきた事情をすべて否定的に考えて申し上げているのではありません。しかし、いろいろと事情変更というものがあるわけでありますから、そうした事情変更というものもありながら、一方では臨時措置法ということで延長の回数を重ねていくというその行き方にいろいろと問題があるのじゃないか。ですから、当然恒久的な法的な措置なり、あるいは別の、それぞれ例えば肥料業界に対応するための法律と、それから農民サイドへの肥料の低価格での安定的供給、そういう観点法律というような分担の仕方もありましょうし、私はこれはただ考え方としていろいろなことが考えられる余地があったのではないか、こういうことで申し上げているのです。その辺の対応をしてこられなかったのはどういう理由であったか、お聞かせいただきたいと思います。
  20. 小島和義

    政府委員小島和義君) 農業の側におきましても、化学肥料のさまざまな商品としての特性、これは先般の参考人の口からも述べられておりますけれども農業にとって不可欠な資材でございますので価格弾性値が非常に乏しい商品でございます。また、かなりかさの張る商品でございまして、輸送という問題もございます。それから消費の季節的な集中性という問題もあるわけでございます。それらの商品としてのいろいろな特性にかんがみますれば、化学肥料についての値決め方式というものについてある程度恒久的な体制があってもいいのではないか、こういう希望的な意見農業側においても大変強いわけでございます。  しかしながら、かつての旧二法時代のように、政府が直接最高販売価格を決定するというシステムを三十九年に変更いたしまして、ただいまのような仕組みにいたしました以後の問題につきましては、何らかの形で独占禁止法の例外的な条項を伴うものでなければ法制化が仕組み得ない。ただいまの経済社会においては、独占禁止法の例外というのは必要やむを得ない理由が存在する、そういう事態のもとにおいて最小限許容されるというのが法の基本的な建前でございます。そういう建前のもとにおきましてこのような価格取り決め制度を存続するとすれば、それなりにふさわしいバックグラウンドがなければならない、こういう理由で五年間の小刻みの延長をしてきたという背景があるわけでございます。  御指摘のように、私どももこういう問題につきましてこれまでたまたま五年ごとにしかるべき背景があって延長ができてまいりましたが、さらに長期に物を考えました場合に、果たしてこういうことでいいのだろうかという問題意識は十分持っておるつもりでございます。なかなか現行のシステムにかわるべき有効適切な方法を見出しがたいということから、いろいろ検討した経緯はあるわけでございますが、この現在の方式延長さしていただくというのが最も適切であろう、こういう判断に達したわけでございます。今後長期的な問題としてはさらに勉強を進めてまいりたいというふうに考えております。
  21. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そこで、法律内容なのですけれども、ここでちょっと私は文章の意味が、大変不勉強でよくのみ込めないままになりましたので御説明をいただきたいと思う点が一つございます。それは第二条二項の五号です。「その取決めを締結しようとする者の」云々というところでありますけれども、これは具体的にはどういうことを指しておるのでございましょうか。
  22. 小島和義

    政府委員小島和義君) ただいまの法律の骨になっております部分は、今御指摘になりました第二条の第一項にございますように、特定肥料生産業者及びその販売業者は、その双方またはいずれか一方がそれぞれ共同して肥料価格取り決めができる、こういうのが二条一項の趣旨でございます。したがいまして、生産業者販売業者はそれぞれ法律の世界におきましては単数であるということは何ら定めておらないわけでございまして、それぞれが複数であるという事態を想定いたしておるわけでございます。その場合に、単数または複数生産業者販売業者は、それぞれの分野、生産業者の場合であれば生産量につきまして、販売業者の場合であればその販売量につきまして、それぞれ国内の全体量の相当な比率を占めておる、多数の論理というふうなことでございまして、ここに当該業界の多数意思というものが反映をしておるということによってこの取り決め法律上認められる、こういう趣旨規定であるというふうに考えております。
  23. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そういたしますと、ここでいう生産業者販売業者の話し合いに参画をするのは、生産業者の方は複数で、そして販売業者は一つという形に事実上はなっていますか。
  24. 小島和義

    政府委員小島和義君) ここで言っております「相当の比率」というのは、法律上の定義はございませんが、大体五割以上というものであろうと理解をいたしておるわけでございます。生産業者の方につきましては、いずれの業者をとりましても単独で五割以上のシェアを有しているものはございませんから、その意味では生産業者の連合体ということになるわけでございます。販売業者の方は全国農業協同組合連合会国内流通量の約七割程度シェアを持っておりますので、その意味では単独でこの相当比率という要件を満たすわけでございますが、法律上は全農が他の販売業者と共同をして取り決めに参加をするということを排除しているわけでは決してございません。
  25. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それから、第三条の三項に「農林水産大臣及び通商産業大臣は、必要があると認めるときは、特定肥料生産業者及び販売業者に対し、前条第一項の取決めの締結に関し必要な勧奨又は助言を行なうものとする。」、こうあるわけであります。この第三項はこうした申告があったときに必要な勧奨助言ということなのでありますが、このことは実際に行われてきていたのでございましょうか、その辺のところひとつ。
  26. 小島和義

    政府委員小島和義君) 三条三項の読み方といたしましては、この二条の第一項の規定が取り決 めをすることができるという規定でございまして、当然この価格取り決めが行われるという法律上の義務のようなものはないわけでございます。そこで、両大臣取り決め締結に関して必要な勧奨と申しますのは、取り決めをしたらどうかということを含めまして、あるいは取り決め自体の中身にわたることもございましょうが、その両大臣措置をとれるということを規定いたしておるわけでございます。また助言と申しますのは、どちらかというと価格取り決めの技術的な内容にわたりまして必要なことをお手伝いをするという意味助言という規定が入っておるわけでございます。現実に過去の経緯といたしまして、両大臣のこの法律規定に基づく「勧奨又は助言」というふうな形で行われたケースはございませんが、この条文を背景といたしまして事務的なレベルにおいていろいろ相談に乗るというふうなことはこれまでも間々あったわけでございます。
  27. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、この第三項につきましては事実上はこれで行動したことはないということになるわけですね。  そうすると、第四条の「調停」の方はこれはやったことがおありになりますか。
  28. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは条文にございますように、取り決め締結することができなかったり、あるいは双方またはいずれか一方から申請があったという場合に行う規定でございまして、これまでこのような事態に立ち至ったことはございませんので、条文を発動したケースもございません。
  29. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そこで、この法律の条文の中では、生産業者及び販売業者が話し合って価格取り決め締結するということになっておりますけれども、そうすると肥料最終需要者である農民というものは価格形成の中では関与する部分が全くない、こういうことになるわけでありますが、この辺のところは法律上の建前としてどういうふうにお考えになっておりますか。
  30. 小島和義

    政府委員小島和義君) ただいま一方の当事者になっております全農も、この法律上は販売業者という資格要件で取り決めに参画をいたしておるわけでございます。そのためにこの法律の二条第二項の第四号におきまして、「一般消費者及び関連事業者の利益を不当に害するおそれがないこと。」と明記されておりまして、この条文の中において消費者保護という問題をうたっておるわけでございます。実際には、全農は最大の販売業者であると同時に、肥料の最終消費者であるところの農民の代表という性格をあわせ持っておるわけでございまして、共同購入運動を背景といたしまして強力な交渉力を行使いたしておる、こういう事実的な関係があるわけでございます。また法律自体が、そのような団体が現に存在をするということを背景としてこのような条文ができ上がっているというふうに理解をいたしておりますので、法律上は販売業者でございますが、同時に消費者の意思をそこに結集をして交渉をしておる、かように理解をいたしております。
  31. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、全農さんが農民代表ということでこういう価格取り決めの中で農民代表ということに性格づけをするというところにはいろいろとまた問題点もあるのではないか、このように思っておりますが、そのことはまた後の方の質問に譲るといたしまして、法律建前の中で生産業者販売業者価格を決めるということだけが規定をされておって、そして最終の需要者で一番農産物の生産者である農民がこの価格の形成に全く関与することがないという形の法体系そのものに問題があるのではないだろうか。その辺も私は長い間のあれの中でいろいろと御検討をいただかなければならなかったことではないだろうか、そんなふうにも思いますので、もう一度この辺の点の御見解をお聞きをしたいと思います。
  32. 小島和義

    政府委員小島和義君) 確かに価格を決定するプロセスにおきまして、いわば消費者代表の方がいろいろな形で関与するという仕組みは考えられるわけでございまして、例えば政府が米価を決定をするという場合に、これは政府自体の意思決定ではございますけれども関係当事者またその関連する業界の方とか、いろいろな方々の意見を聞いた上で価格決定に至るという仕組みはあるわけでございます。  かつて肥料価格、あの当時は硫安だけでございましたが、政府価格を決定をいたしましたときにおいては肥料審議会という政府の諮問機関がございまして、そこの場で議論を闘わせた上で価格決定をしたという経緯もございます。ただ、三十九年に現行法に移行いたしました以降は、これは生産業者生産業者から直接買い受けをする販売業者の間の取り決め価格、つまり生産業者の販売価格というものについて価格取り決めをするということにいたしておりますので、その直接の当時者間において話し合われるというのがこの法律の仕組みなわけでございます。また、最終消費者を関与させるということを考えました場合におきましても、全農傘下には単協だけでも数千、最終消費者ということになりますと数百万の農家の方がおるわけでございまして、いかなる人が交渉参加の適格性を持っているかということになりますと、これはなかなか難しい問題でございます。また、審議会その他のように二日間とか三日間の日を決めましてその場で会議をしておしまいということではございませんで、七月以降に決定されます価格につきましてはもうこの三月か四月ごろから交渉を始めておりまして、十数回にわたってその交渉が繰り返されるという経緯もあるわけでございます。そういたしますと、各地におられる代表の方々をその都度参加させるというのも大変難しゅうございます。  また、実際問題として最終的な価格自体について高い安いという交渉をやっておるわけではございませんで、例えば為替の水準についてどういうふうに見たらいいかということについては、それぞれもっと小さなグループによって専門的な意見の交換があるわけでございます。また、硫酸なら硫酸についての今後の市況をどう見るかということについてもそれぞれ担当の者同士の間の意見交換がある、そういうことの積み重ねにおいて決定されるものでございますから、一般的な消費者の声を反映させるという仕組みとしては、これは全農の中での会員組合員の意見をくみ上げるという仕組みの中で考えていくのが最も妥当であろうということで、現在のような仕組みになっているというふうに御理解をいただきたいと思います。
  33. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 時間の方もだんだんとたってまいりますから、私、二時間の中で全部やらなきゃなりませんので、この問題でずっと余り深入りしておられませんのですが、要は私は、それは審議会の形式にしろどういう形にしろ、何かの工夫があって消費者という立場が積極的に価格形成について一定の発言をする機会がある、意思を表示することができる場所が与えられる、そういうことが非常に大事だと思うのでありまして、そのことを今まで考えてこられなかった、肥料二法の時代肥料審議会というものにかわる対応というものが何もなかったというところに私はやはり大きな問題点があるのではないだろうか、こんなふうにも思うわけであります。そのことは意見として申し上げ、次の質問に入りたいと思います。  そこで、農林水産省にでありますが、この法律が今回仮に継続ということに決まったといたしまして、五年後この臨時措置法期間が切れたときには、今度は農家の側から、農民サイドから肥料関係価格あるいは数量調整等については全く野放しの状態にされるということになりますか、その辺のところをどういうふうに見通しておられますか。
  34. 小島和義

    政府委員小島和義君) 法律の世界におきましては、五年後この法律が廃止されるということになりますと、法律に基づく措置として国が一定の関与をするということはできなくなるわけでございます。また、特にこの法律の一番の骨になっております原価に基づきまして価格取り決めをするというその骨の部分というのは、これは法律に基づく権限がなければ到底実施し得ないことになりますので、そういうことについては廃止後は手がつけられないということになるわけでございま す。  ただ、仮定の議論といたしまして、全くこの法律がなくなってしまった後どういうふうにするかということになりますれば、ただいまの全農が実際の取引社会において相当な発言力、交渉力を持っているという事実がございますから、その力を背景といたしまして、できるだけこれまでと同じように取引が安定するような努力はするだろうと思います。そのことについて政府法律に基づく権限として関与し得ない、こういう事態が出てくるというふうに理解いたしております。
  35. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、政府の方は、この法律が今度はなくなったときはもうそれこそ全農さんに全部任せる以外に方法がない、こういうことになると思うのです。しかし、全農さん今はかなり大きな力量を持っておられるように評価をしておられるようでありますが、この間参考人の皆さんにおいでいただいて御意見を伺いましたときにも、確かに、例えば肥料原価につきましても、一定程度長年の積み重ねによるデータを持っておられる、こういうことを背景にして交渉をしておられるという話もありました。だが、それは例えば化成肥料業界等に対しましては全農さんも原料提供者にもなりますし、そういう面ではいろいろと原価についての一定の力があるかとも思いますけれども、    〔委員長退席、理事北修二君着席〕 しかし、硫安業界の方は、これは私はかなり事情が違ってくるのじゃないだろうかと思いまして、全農さんの御発言を聞いておりましても、硫安価格については何か多少不安があるのじゃないかという気もしないわけではなかったのです。  それからまた、例えば副生硫安あるいは回収硫安原価につきまして土方参考人に伺いましても、それぞれメーカーによって随分原価の取り方が違ってくる、だから業界の中でもわからぬのだと、こんなふうに言われたように思っております。そしてしかも、政府の方からは生産費の調査報告を厳しく求められるから、それには正直に答えていますと、こんなふうに言っておられました。しかし、こうした硫安業界のように一定の大きな資本を持ち、そしてまた、しかも、その硫安生産なら硫安生産、採算コストの面で考えて、肥料生産を一部やっているけれども、採算が合わなければいつ撤退しても構わない、極端なことを言えばそういう肥料業界の場合というのも考えられるわけです。  そういたしますと、例えば今後、硫安生産は間尺に合わないからもう撤退しちゃうわというようなことが起こります。あるいは国際的に生産調整を少しやり過ぎてしまってぽんとはね上がりました、はね上がったからここを先途でもってもうどんどん売ってしまった方がいいやと、こういうようなことが起こったりする、そういった場合に、一体どこでどうやって調節をしますか、調整弁はありますか、その辺のところをお聞きしたいと思います。
  36. 小島和義

    政府委員小島和義君) 先般の田中参考人の御発言で、原価についてある程度自分たちでも蓄積を持っておるというふうな御発言がございました。その後で御本人からもやや訂正的な御発言があったわけでありますが、原価そのものにつきまして、役所から提供いたしますもの以外に固有の調査をしておるということでは決してございませんで、役所が提供いたしますものは、いわば過去の実績原価でございます。それを将来に向けて肥料年度の想定原価をつくります場合に、例えば資材価格動向をどういうふうに今後見るかとか、あるいは労賃とか為替の水準とか、そういったものについてどういうふうに見ていくのかということにつきましてそれなりの知識の集積を持っておる、こういう意味であったろうと思うわけでございます。  もともと肥料二法の当時から、あまたあります肥料の中で、アンモニア系の肥料だけが取り上げられてきたということにつきましては、これが一番原価がわかりにくいという商品としての特性があったわけでございます。例えば燐酸系の肥料の中で過燐酸石灰というものがございますが、これは燐鉱石の相場と硫酸の相場をかみ合わせれば、多少の加工費はございますが、おおむねの原価については想定がつく。しかし、アンモニアにつきましては、大体水素と窒素をくっつけてアンモニアをつくるというわけでございまして、その水素源が非常に多岐にわたっております。また、工場の製法、スケールによりましても原価が異っているということを背景といたしまして今日の特定肥料という考えができておるわけでございます。  現在の硫安、尿素もちろんでございますが、高度化成におきましても燐酸アンモニア系の肥料、それから硝酸アンモニア系の肥料ということで、高度化成ではございますが、いずれもアンモニアを含んでおるという肥料を指定しておるということにつきましては、それだけ原価把握の難しさがあるということであろうというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、先ほど申し上げましたように、価格取り決めについて行政の関与するところがなくなりました場合に、長期にわたって今のような価格取り決めないしは流通の秩序化ということが可能であることについては、必ずしも保証はないわけでございます。先ほども申し上げましたのは、仮にそういう事態になりました場合でも、全農としてはできるだけ流通が秩序化されますように努力をするであろうということを申し上げたわけでございまして、先般、参考人の口からも出ましたように、ただいまの仕組みというのは、関係者にとってみれば一種の空気のような存在になってしまっておりますので、それがなくなった場合に起こり得る事態というものについては、あくまで想像の域を出ないわけでございます。
  37. 北修二

    ○理事(北修二君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  38. 北修二

    ○理事(北修二君) 速記を起こして。
  39. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 次に、通産省の方に伺いますけれども、やはり同じような観点になりますが、これで仮に延長ということになりましたとき、今度再びこのような臨時措置法の延期をという雰囲気が業界の方から出るようなことはありませんか。特に構造改善計画はたしか一年のずれがあると思います、本法の切れと。そうすると、構造改善計画が実行をされた結果としてもうこの法律の延期などということは多分起こらないであろうと、こんなふうに御理解になっているのでしょうか、その辺。
  40. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 五年後につきまして今確実なことを申し上げるというのはもちろん無理かと思います。しかし、私どもといたしましては、そもそも今回延長をお願いいたしますのは、今回の延長期間の間に構造改善を何とか達成をいたしまして、こういう法律上の規定がなくても化学肥料の安定的な供給ができるように、これが私どもの第一の念願でございまして、化学肥料業界も同じような考えでやっているだろうと私ども考えておりますし、私どももそういう方向で指導いたしたいと思っております。したがいまして、五年後には再び延長をお願いするというような事態にはならないように、私ども業界も挙げて努力をいたしたい、かように考えております。
  41. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今の通産、農林水産両省の御見解を伺っておりまして、一つは、私は農林サイドからいたしますならば、それこそ肥料価格を調整するそういう法的なものが一切なくなるということは、これは大変重大な問題なのではないだろうか、そんなふうに思うわけでありまして、そういう中で今日のように肥料業界の方が、特に業界構造改善のためにもぜひとも本法の存続をという観点からの要望というものは、多分今のお話では、この次はなくなってくるであろう、そう想定をされるとすると、安心してそれこそ農民サイドから肥料価格についてしっかりとした体制をつくっていくということも可能になるのではなかろうか、そんなふうにも思います。そうすると、今までも何回も何回も指摘をされ指摘をしながら臨時に臨時にと延ばしてきているわけですから、それこそ昭和二十九年からいけば臨時を一体何回続け るのですかと、こういうことになってしまいます。だから、ここでひとつ私は、今回の延長というものを仮にしてほしいというのであれば、それなりにその間にこういうふうにいたしますという展望も明らかにしていただかないと、今回認めることがいいか悪いかという判断がつかぬと思うのです。その辺のところの御見解を承りたいと思います。    〔理事北修二君退席、委員長着席〕
  42. 小島和義

    政府委員小島和義君) 先ほども申し上げましたように、農業関係者、特に全農あたりといたしましては、この制度自体が一種の空気のような存在になっておる、こういう仕組みの中で事業をやるということにいわばなれ切っておるという問題があるわけでございます。  先ほども申し上げましたように、化学肥料自体としての商品的な特性から見ましても、何らかのそういう秩序立てがあった方がいいという問題意識を多くの農業関係者が持っているということはこれは否めないところだと思います。しかしながら、こういう独禁法に対するある種の例外を含めた法制度というのは、現行経済社会においてはあくまで例外的に認められるものでありまして、そういうものがなくても価格の安定を図っていけるような仕組みというものをみずから見出す努力をしていかなきゃいかぬだろう、かように私ども考えておるわけでございます。今回、特にいろいろ経過的な議論はあったわけでございますが、最終的に関係業界政府を含めまして延長やむなしという決定に至りました以上は、何とかこの五年間の間にその後の問題を含めまして、有効適切な施策を考えていくということが我々の責務であろうというふうに考えております。
  43. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 確認をさせていただいて大変恐縮でありますけれども、そうすると、もし今回の延長を認めてもらえれば、少なくとも五年間のうちには何らかの新しい対応策についてきちんと出すように努力をいたします、こういうふうに言われたと受け取ってよろしゅうございますか。
  44. 小島和義

    政府委員小島和義君) 多少そこは歯切れがよくないのでございますが、そういう方向に向けまして最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
  45. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 なぜ歯切れが悪いのか私はどうしてもわからぬのでありますけれども、要するに、なくなったら困るのですか、困らないのですか、このことをひとつはっきりしてほしい。
  46. 小島和義

    政府委員小島和義君) 農業関係者、なかんずく実際にこの法律に基づきまして値段を取り決め、物の売買をいたしております農協当事者におきましては、こういう仕組みが恒久的にあった方がいいという潜在的な願望を持っておるわけでございます。ただ、私どもが先ほど申し上げましたようにあくまでこういう制度というものは、現在の経済社会の中におきましては例外的な措置であるということをよく認識してもらわにゃいかぬということを常々申し上げておるわけであります。先ほど、どうも歯切れが多少よくないと申しましたのは、一方化学工業もそうでございますが、農業の側におきましてもいろいろ予想もしなかったような事態というものが出てくる場合があるわけでございまして、例えば四十八、九年のときの狂乱物価というふうな事態は、その事前におきましては想定もできなかったような状態が現に起こったわけでございます。その意味におきまして、五年たったらこうするということについて余りはっきりと申し上げにくい要素があるということも事実でございますが、ただいまの私どもの心境としては、この与えられました五年間の間にやや長期的な視点に立った肥料の流通の秩序というものを確立すべく関係者を督励し、同時に私どもも知恵を出してまいりたい、かような意味で申し上げたわけでございます。
  47. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 まさに今局長が言われたようなことが心配をされるわけでありまして、狂乱物価のようなことが起こる、そういうときに、この間の参考人の皆さんの御意見の中でも、その狂乱物価のときには本法がかなり大きな役割を果たした、こういうことも評価をされているわけでありますから、それだけに、そういう狂乱物価のときこそ歯どめになるものが法的にきちんとしていなかったら困るのではないか、そんなふうにも思うわけであります。臨時措置法という形でいろいろと繰り返してきたことにもちろん問題はありますけれども、これからの問題としても、そうした肥料価格の安定、需給の確保ということを間違いなくきちっとやっていける、そういう法的措置が、私は同じようなものを恒常的な法にしろと言っているのではありませんが、そういう姿勢で新しい法体系を考えて提起をしてもらいたい、こういうことを申し上げております。その辺についての確認をしたいと思います。
  48. 小島和義

    政府委員小島和義君) 今回の法案提出に至りますまでの過程におきまして、私どももこれだけ延長を繰り返す、また延長をしてもらいたいということにつきまして、肥料特性に基づいたそれなり理由もあるわけでございますから、恒久的な法制が仕組めないかどうかということについて検討した経過はあるわけでございます。ただ、なかなか実際に現行法にかわるようなうまい仕組みが考えにくいということのままに今回の延長に至ったわけでございまして、この与えられました五年間の間に最大限の知恵を絞ってまいりまして、実質的な意味におきまして、この法律に代替し得るようなシステムがあるかどうかはそれはわかりませんけれども肥料価格安定、流通の秩序化ということに役に立つような何らかの仕組みというものは十分研究いたしていきたいと考えております。
  49. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今の小島局長の御答弁、ぜひそうしていただきたいと思います。  それだけに、大臣、今の局長答弁を、大臣も政治的な観点から、政治家としての観点からこれをきちっと確認をして今後に対処をしていただけるということになりますか、大臣からひとつ。
  50. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 今の小島局長答弁、これを強力に推進してまいりますし、五年後、何とかまた延長などをお願いすることのないように努力してまいります。
  51. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ぜひそうお願いをいたします。  次に、今度は価格の問題に入りたいと思うのであります。  現在、肥料価格が適正であるかどうか、こういうことは一体何を基準にして判断をするのでございましょうか、まずその点から。
  52. 小島和義

    政府委員小島和義君) 私どもといたしましては、この法律の施行のために法律の条文に基づきまして特定肥料の実績原価の調査をいたしております。その原価取り決めの両当事者に提供をいたしまして、それによって話し合いが行われているというふうにこの法律の仕組みはなっておるわけでございます。  私どもとしましては、その後、年度途中におきましても、その価格取り決めの妥当性をチェックするために、原材料価格の動きなどを必要に応じて調査をいたしておりまして、取り決め当時においてはもちろん、取り決め以後におきましても、実際の取引価格原価を踏み外していないということについての監視を続けておるわけでございまして、必要があれば年度途中の価格改定という事態も起こり得るわけでございます。現実にもまたそういう事態が起こったことがあるわけでございます。
  53. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私、三十九年以来のそれぞれ議事録もずっと勉強さしてもらったのですけれども、三十九年に本法が初めて成立したときは、衆議院段階で委員会の要請に応じて各種のデータを出しております。これは我が党の足鹿委員が当時請求をされて出しておるわけであります。しかし、その後の委員会におきましては、衆参両方の委員会でそれぞれ何回も繰り返されてくるけれども原価の公表ができないということでございました。私は、そこの辺は、肥料価格が適正であるかどうかを判断をする物差しとしてはやはり原価というものがありますだけに、なぜその原価が公表できないのかということをまたこの際も伺っておきた いと思います。
  54. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは三十九年以前におきましては、農林通産両省におきまして肥料価格を決定するという仕組みでございますし、先ほど申し上げましたような政府の審議会もあったわけでございますから、審議会に対しまして価格決定のための必要なデータというものは当然提供しなければ議論にならなかったわけでございます。  この現行法に移行いたしましてから以降の問題といたしましては、これは価格取り決め当事者間の交渉によって価格が決まるという仕組みでございまして、政府が提供いたしますのはあくまで実績原価、それをもとにいたしまして両当事者間でいろいろ話し合いが行われまして、大体その原価に即したものにはなっておりますけれども、当事者間の価格が決まる、こういう仕組みでございます。  したがいまして、政府が調べております原価というのは、その価格取り決めを円滑適正なものにするために、企業にとりましては最大の秘密といってもよろしい原価を強制的に提供させましてそれを提供しているわけでございますから、これを価格取り決め以外の目的にお出しをするということについては従来からも御容赦をいただいておるわけでございまして、そういうことが今後の原価調査を円滑ならしめる上においてもまた必要な配慮であろう、かように考えておるわけでございます。
  55. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 その政府が直接報告書を出させて調査をいたしました実績原価は、企業の秘密にもかかわるので公表ができないというお話だと思うのですけれども、しかしそうであれば、この第三条によって関係者に交付される資料というのは、これは加重平均価格ですか、それと、最高最低という程度のものというようなことに過去のあれの中でいろいろ書かれておりますけれども、今の局長のお話だと、何か実績原価も提示するのですか。
  56. 小島和義

    政府委員小島和義君) 特定肥料につきましての実績原価の加重平均値を提供するわけでございます。最近におきましては、それだけではなかなか判断の材料たり得ないということで、最高最低の原価もこれに添付して交付をいたしております。
  57. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうしますと、関係者に交付される肥料原価というのは、生の実績原価にいろいろと加工が加えられているわけですね。その加工されたデータもいままでの委員会でもみんな出しておられないようでありますが、それも出せないというのはどういうわけですか。
  58. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは原価計算そのものが企業にとりましては命よりも大事な企業秘密になるわけでございますし、また、これは国内におきまして会社間の一番競争の激しい分野でもあるわけでございます。それからまた、同時に今後の輸出のウエートというものは下がってまいりますけれども、外国と輸出面で競争するという場合に、日本の企業原価が相手国企業には筒抜けにわかっておるということも競争条件を大変不利にするということになるわけでございます。そういういろいろな意味におきまして、加重平均ではございますけれども、これを公にするということについてはいろいろ問題がございます。また、今後調査を円滑にやる上におきましてもその程度の配慮はぜひしてやらなきゃいかぬ性格のものであろう、かように考えているわけでございます。
  59. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 しかし、国際的にということまで言われましたけれども硫安の方は少しあるようですけれども、ほかのものはほとんど国際競争力はなくなっているのでしょう。国際的に秘密を知られたとしても、別にもう国内需給一本でいくのであればそう大した問題はないということにもなるのじゃないでしょうか。それよりも私は、やはりこういうことがだれにでもある程度わかるということが非常に大事だという気もいたします。ここでまた四回目の延長をしてくれという提起なわけでありますから、その四回目の延長が適切かどうかということを審議するに当たっても、やはりこうした考えの一つの資料になるものがどうしても欲しいと思うのであります。そうするとその資料というのは、この資料も出せない、当事者の方で出した資料も出せないというのなら、じゃ、その中の一部なら出せるのですか。
  60. 小島和義

    政府委員小島和義君) 私どもは、外国の企業につきましてその個別の企業原価はもちろん、平均的なものとしてもこれをうかがい知ることはできないわけでございまして、わかっておりますのは国内で幾らで売っているか、海外で幾らで売っているかというふうなことだけしかわからぬわけでございます。日本の企業につきましてそういう原価の姿を公表させるということは、大変酷なことになるのではないかと思います。その意味で、かねてから御容赦をちょうだいしているわけでありますけれども、御審議の参考にという意味におきまして、原価の要素別の推移と申しますか、それと原価の要素別のウエートといったものの推移がどうなっておるかということから全体を推しはかっていただくというふうな資料でございますれば、あえてお出しできないことはないと思っているわけでございまして、御必要がございましたならば後刻提供いたしたいと思います。
  61. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 さらに、もう一つだけ資料についてお伺いしますけれども、そうすると、それでは調査をされるときにどういう調査をされるのか。その調査の要領と項目といいましょうか、そういったものはこれは資料として提出をいただけますか。
  62. 小島和義

    政府委員小島和義君) 原価調査の方式は、第一段階として、各企業から暦年につきましての実績原価の報告を求めるわけでございます。そのものにつきまして担当官がヒヤリングを行いまして、問題の箇所があれば指摘をする。さらに必要があれば工場の現場に入りまして、報告があった事項と事実関係との突き合わせをするわけでございます。もちろん突き合わせと申しましても、最近、計算業務はほとんどコンピューター化しておりますので、かつてのように帳簿その他を見るということではございませんで、実際の稼働設備の状況がどうなっておるかということについて現地で確認するという性格は持っております。そういったものをもとにいたしまして、先ほど申し上げました加重平均の原価を作成いたしているわけでございます。この場合に、報告のもとになっております報告表をつくる要領と申しますか、これが特定肥料関係実績原価報告書作成規程という農林通産両省で決めましたものがございます。この規程につきましては、必要がございますれば御提出申し上げます。
  63. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ただいま局長の方から、提出資料についての出せるものについてのお話がございました。審議を進めていく上でも必要だと思いますし、今後の肥料問題に対処していくためにも、本委員会が審議をするためにも必要な資料になるのではないか、こんなふうに思いますので、出せる資料を本委員会に出していただけるように委員長からお取り計らいをいただきたいと思います。
  64. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 今の稲村委員の要求につきましては、そのように対処いたしたいと思います。
  65. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それでは、委員長からただいまのそれぞれの資料につきまして委員会に提出をするように要請がありましたので、ぜひ早急に提出をしていただきたい、このように思います。  次に、価格を中心にいたしまして、前回の延長の際に本委員会での附帯決議が行われているわけであります。その附帯決議につきまして、当然それぞれその附帯決議が適切に実行されるように対処してこられたと思いますけれども、それぞれどのように処理をしてこられましたか、それをお伺いしたいと思います。
  66. 小島和義

    政府委員小島和義君) 五十四年の肥料価格安定等臨時措置法の審議の際に、当委員会におきまして五項目ほどの決議が行われているわけでございます。一つは、肥料工業合理化メリットの適正な配分、第二は、肥料工業構造改善による生産コストの低減と雇用の安定化等、第三には、肥料流通の改善と合理化、第四に、肥料原料の安定輸入、第五に、地力対策の強化といったことが主な内容になっておったわけでございます。  まず、肥料工業合理化メリットの適正配分という問題でございますが、これは当時昭和五十三年の産業構造審議会の答申に沿いまして、五十四年から特定不況産業安定臨時措置法に基づきましていわゆる第一次の構造改善を実施してきたわけでございます。不幸にいたしまして第一次石油危機の影響を受けまして原材料価格が高騰したために、肥料価格は結果的にはかなりの値上げになったわけでございますけれども、五十六年以降は原料価格の落ちつき、化学肥料工業合理化メリットを反映いたしまして逐年引き下げを見て今日に至っておるわけでございます。決議にございました趣旨は十分に反映されていると思います。  それから第二の、肥料工業構造改善生産コストの低減の問題でございますけれども、これにつきましても、ただいま申し上げました特定不況産業安定臨時措置法に基づく対策に引き続きまして、五十八年からは特定産業構造改善臨時措置法に基づきまして設備処理等の構造改善を現に実施しておりまして、過剰設備の処理あるいは業務提携等の対策を通じまして生産コストの低減を図っておるところでございます。また、その際に御指摘ございました雇用への配慮という問題がございますが、これにつきましては事業転換に対する税制、金融上の支援措置、それから特定産業信用基金による退職金借り入れに対する債務保証等の関連施策も講じまして、いわゆる特定産業業種、特定産業地域関係労働者の雇用の安定に関する特別措置法の制定と相まちまして雇用対策に万全を期しておるわけでございます。  それから、流通の改善と合理化でございますが、肥料生産面におきまして設備の集約化とかあるいは生産の受委託ということ等を通じまして、一面におきましては交錯輸送の是正、それから販売経費の節減というふうなことで可能な限り合理的な輸送手段を選択させまして流通改善を行っておるわけでございます。また、常々問題になります複合肥料の銘柄集約化の問題でございますが、今日のように水田利用再編対策の推進によって作物の多様化、施肥技術の向上によってきめ細やかな施肥が行われておるという事態の中でなかなか困難な問題があるわけでございますが、系統内におきましては銘柄集約化の運動が行われております。また、先般、昨年改正いたしました肥料取締法によりまして肥料の登録に当たりましての事務手続の簡素化ということも進めておりますので、そういったことが一つにはこの流通の合理化に寄与する面も出てくるのではないかと考えております。  それから、肥料原料の安定輸入の問題でございますけれども、これにつきましては、できるだけ燐酸質、カリ質肥料につきましては長期輸入契約の締結でございますとか、海外からの情報を早期に入手する体制を整備する、あるいは輸入ソースを多元化するなどの努力によりまして原材料の供給体制の整備に努めているところでございます。また、全農では昨年からフロリダの採掘につきまして直接採鉱を実施するという手だても講じておりまして、原料価格の安定に努めているわけでございます。  それから、第五の地力対策の強化の問題でございますけれども、かねてから地力の維持増進を図るというふうな観点で土壌の調査診断、あるいは農業者の啓蒙普及、さらには有機物施用等に対する共同施設助成というふうなことをやってまいりましたが、本年特に、山村農林水産大臣になりましてから健康な土づくりということについて特別強い御意思がございまして、大臣の御提唱を受けまして、私どもといたしましても、土づくりの再生整備というふうな意味を込めまして、今国会に地力増進法案を別途お出しをいたしまして審議をお願いいたしているところでございます。それらを含めまして今後の土づくりの対策強化を図ってまいりたい、かように考えております。
  67. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 四項、五項等では、それぞれ今後もこれは特に国際的な環境の中での努力をしていただかなきゃならない問題、それから農業生産全般としての体制としてそれこそ一生懸命取り組んでいただかなきゃならない問題として、継続してこれも積極的に散り組んでいただかなきゃならない問題ではないか、そんなふうにも思っております。  そこで、あとの三項目につきまして若干また御見解が聞きたいというふうに思うわけであります。  その一つは、合理化メリットの問題でありますけれども合理化メリットは、これはどのように配分をされるのが正しいと理解をしたらよろしゅうございますか。
  68. 小島和義

    政府委員小島和義君) 合理化メリットと申しますのは、端的には実績原価低下という形で反映をしてくるわけでございますし、さらに、来肥料年度に向けまして大きく状況の変わるような要素がございますれば、それも加味いたしまして来肥料年度の価格取り決める、こういうのが従来の仕組みに相なっておるわけでございます。その意味におきまして、化学肥料工業農業側と何対何でメリットを配分するというふうなルールがあるわけではございませんで、端的に言えば全部いただいておるということでございます。ただ、原価と申しましても、平均的なものをベースにして取り決めをいたしておるわけでございますから、それよりもさらに合理化が進んでおるという企業がございますれば、当然その分については企業にそのメリットが均てんをするということでございまして、特定の比率による配分というふうな意図は全然持っていないわけでございます。
  69. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、局長、いろいろとあるけれども、結局おおよそについては合理化メリット農業サイドの方がいただいているというふうな判断になるのですか。
  70. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは肥料二法成立以来の伝統的な農水省の考え方でございまして、今日におきましてもそういう考え方を貫いておるわけでございます。
  71. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 いや、いただきたいというのは私も願望なのでありまして、いただきたいということは私はそれでわかるのです。だけど、いただいているかどうかということとこれは別だと思うのです。  そこで、通産省に伺いたいのですけれども合理化はいろいろな形でやられているわけですが、特に硫安の場合、回収硫安と副生硫安という形で、今合成はないという形のようであります。そういう言ってみれば副産物、廃棄物が有効に利用されるという形でこれが生産をされる、こういうことになるわけでありますが、そうすると、それこそ原料費の見方というものはなかなか面倒じゃないか。極端な言い方をすれば、ただも同然ということになってくる場合もあるのではないだろうか。その辺のところはどういうふうにお考えになりますか。
  72. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 硫安につきましては、御指摘のように副生あるいは回収という形で出てまいりますので、原価計算につきましてはいろいろ難しい問題が起こっておりますが、基本的には企業会計原則にのっとって行うというのが基本になっております。  そこで、回収されます硫安が今七割でございまして、副生硫安が三割、こうなっております。回収硫安の場合は御承知のように硫酸が例えばカプロラクタムと一緒に回収をされてまいりまして、それに新たなアンモニアを付加することによりまして硫安というものができるわけでございまして、新たに付加されますアンモニアにつきましては、これは購入あるいは別途製造いたしますので丸々原価に算入する必要があろうかと思います。他方、カプロラクタムと一緒に回収されます硫酸につきましては、これは企業によりますが、かなり低い評価が与えられているというのが通常でございます。  逆に今度は副生の硫安の場合には、もともと例えばコークス炉ガスの中にN分が入っておりますので、そこに新たに硫酸をつけ加えるという形で硫安製造されますので、新たにつけ加えられます硫酸につきましては丸々購入あるいは製造原価というものが算入されますが、窒素分、アンモニア分というものにつきましては非常に低い評価がされているというのが通常でございます。それでこれらのものは、参考人のときにもお話ございましたが、全くただというわけにはまいりません。と申しますのは、そもそも経済価値もございますし、それからそういう形で副生あるいは回収をいたします段階におきまして、当然設備費あるいは労務費、燃料費というようなものもかかっておりますので、それらを適正に判断をいたしまして、トータルとしてのコストが計算をされるわけでございますが、今申し上げましたように、回収されます硫酸あるいは副生という形で出てまいりますアンモニアにつきましては、通常の購入よりも低い評価が与えられているというのが現実でございます。
  73. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 前の五十四年の延長のときに、当時の農林水産大臣でありました渡辺農水大臣が大変例え話でおもしろいことを何回か言っておられます。例えば、これは大豆かすと油みたいなものだ、そして大豆かすが高ければ油は安くしたって採算はとれるし、そして油が高けりゃ大豆かすをうんと安くしたっていい、そういうあれの中で、例えば繊維であれば、繊維の中で原価をどちらの方にどれだけかけてみるかというのは、それは会社の都合だ、会社の中で一つとして物を見てやっていけばいいのだ、極めて素人耳にもわかりやすい御説明をされたのです。私も専門的な説明よりはその方がわかりやすいような気がしますけれども、そういうふうに理解をしていいのですか。
  74. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 当時の御説明は大変わかりやすい言い方と思います。理論的には確かにどちらにつけるかというのは自由であるかもしれません。しかしながら、実際問題としてそう勝手にどちらに配分するというわけにはいかないわけでございます。例えばガソリンを生産をする場合を考えますと、原油を精製設備に投入いたしますと、ガソリンから灯油、軽油、重油ができるわけですが、この場合、例えばガソリンをゼロにして重油を一〇〇にするかというようなことは実際問題として不可能でございまして、これは国際競争もございますし、国内競争もございますし、それから常識的あるいは経済的にある一定の限度よりも上に値段を上げるということは実際問題としては不可能だということになると思うのです。  したがいまして、今御指摘の例えばカプロラクタムから繊維がつくられるわけですが、カプロラクタムにすべてのコストをかぶせまして、そして出てまいります硫酸を全くゼロに評価するということは、それは一時的には可能かもしれませんけれども、継続的にそういうことを行う場合には、今度はカプロラクタムから生産をされる製品競争力が失われる結果になりますので、したがいまして、おのずからある一定の限界の中で相互に原価が算定されるということかと思います。  したがいまして、現実の問題といたしましては、回収硫安の場合の硫酸は非常に低い評価ではございますけれども、それにどうしても必要になりましたエネルギーとかあるいは労務費とかいうものを加算をするとか、あるいは出てまいります硫安がいい性質のものかどうか。これは回収硫安の場合もカプロラクタムとかメタクリル酸メチルとか、それから酸化チタンとかいろいろな工程から回収されてまいりますが、その回収の過程におきましてやはりいい硫酸あるいはきれいな硫酸というものもございまして、それによりましておのずから評価も分かれてくる可能性もございます。そういうことによりまして、理論的にはどちらにつけるかというのは自由にできるのでございますが、実際の経済取引におきましては、ある一定の、限度で変化するということを申し上げるのが適当かと思っております。
  75. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 例として、今の繊維の例ということで言われました。繊維の側にコストを全部持っていくことは難しいというふうに言われましたけれども、同時にその逆のことも言えるわけですね。そして、それはどの範囲でどうするかというのは、その企業の一つの経営体全体の中での判断ということになってくると思うのです。  私がここで申し上げたいのは、言ってみれば、実際は普通であれば廃棄をされるか、そうでなければまた別の経費を使って特別な公害除去の措置をするとかそういうことをしなければならないにもかかわらず、かかわらずと言ったら言葉が悪いですか。というものを積極的にうまく生かして、そして再生をする、それによって繊維の方も言ってみれば原価一定程度の引き下げに役に立っているということになるのではないかというふうに思うのです。ということになりますと、本来はただに近いものを使っても、そこで今の繊維の価格も、それは今のようにめちゃくちゃのことはできませんけれども、一定の許容の範囲の中で繊維の競争力をつけるというような役割も果たしている。つまり、企業全体にとっては合理化メリットがそこには生まれてきているわけで、その合理化メリットをそこで吸収しているわけです。局長の言われた企業希望として全部をいただきたい、そう思ったって希望どおりにはいっていないのじゃないんですか。そういう部門もあるということになるのじゃないのでしょうか。
  76. 小島和義

    政府委員小島和義君) 私が申し上げました合理化メリットと申しますの場合には、アンモニア製造段階あるいは肥料自体の製造段階におきまして原料転換が進むとか、あるいは工場の集約化によりましてスケールメリットが出てきますとかそういったことについては、平均の姿においてはこれを全部価格の上に反映させるというのが私ども考えであるということを申し上げたわけでございます。  ただいま御指摘ございました回収硫安などにおきますところの、例えば硫酸の評価を他部門と肥料部門でどういうふうにアロケーションするか、こういう問題につきましては、前々から一つの問題としてあるわけでございます。企業の通常の場合の原価計算でございますれば、どちらにどれだけをつけましても会社の総合的な損益計算としては同じことでございますから、企業内でどのようにするかということについては相当に自由な幅があるわけでございます。物によりまして多少違いますけれども、多くの場合にはその製品の、つまり目的生産物の売上高というものが一つの物差しになっておりまして、それによってアロケーションをするということが多いわけでございます。  私どものやっております原価報告の場合におきましては、価格を決めるための材料として原価計算をするということでございますから、最終製品の売上高が何ぼになるのかということについては価格が決定しなきゃわからぬわけでございまして、その意味において、かねがねどういうアロケーションが妥当かということが議論になっておるわけでございます。実際のやり方といたしましては、企業会計原則に基づきます原価計算基準では、再取得価格が評価の基準であるということになっておるところのものを、回収された硫酸でございますから、品質的にも多少の低下があるというふうなことを考慮いたしまして、実際の硫酸の時価よりはかなり低いものに評価をして原価計算に織り込んでいる。こういうやり方で、まず、企業の実態というものを反映するのにおおむね妥当な方法ではないかというふうに考えているわけでございます。  それから、同じような副産物利用の場合でありましても、コークス炉ガスから出てまいります排ガスの中からのアンモニア回収ということになりますと、全体の目的生産物、この場合は鉄鋼でございますけれども、その製造工程の中に占めておりますウエートというものは大変小さいものでございますし、アロケーションというふうな問題も起こり得ないということで、たしかアンモニア自体の評価はゼロというふうなことで評価をいたしております。そのほかの経費はもちろん原価計算に組み入れるわけでございます。そういうことで企 業の内容とか原価計算を行います場合の目的によりまして扱いの相違というのはおのずから出てくるわけでこざいまして、先ほどの渡辺大臣の例え話をお借りいたしますと、油に幾らかぶせ、油かずに幾らかぶせるかということは自由なわけでございますが、この場合に油かずの値段を決めるという同部がございますから、その意味で、全くフリーにどちらへでもかぶせることについてはそれほど裁量の幅がないというふうに理解をいたしております。
  77. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 今の局長の答弁を伺っておりまして、やはりそれでもまだちょっと割り切れないのであります。というのは、そういう中で原価を算出していくのは、これは結局企業の側の自主的な報告という形になるわけです。それでは、立ち入りの権限があるというお話でありましたが、これは立入調査をされたことはありますか。
  78. 小島和義

    政府委員小島和義君) 特定肥料の種類がここまでふえてまいります以前、つまり硫安工場だけが対象でありました当時は、全工場を毎年立入検査をいたしております。その後、工場数も大変ふえてまいりましたものですから、現在では大体一つの工場に対しまして三年に一回ぐらい、もちろん三年に一回ずつ順番が回ってくるというわけではございませんで、必要がある都度調査をいたしておるわけですが、結果的に眺めてみますと、大体三年に一遍ぐらいの割合だということであります。
  79. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 三年に一遍ずつということでありますが、時代はいろいろと急速にエレクトロニクス技術革新の時代でありますから、かなり急速にいろいろと動いている、こういうことにもなるわけで、それだけに対応というものはかなりの機敏性が必要という側面も私はあるのではないか、そんなふうに思います。これはあくまでも、今の例え話でいけば、油かずの価格を決めるという観点でありますから、それだけに、そうした企業のペースに巻き込まれないようにということが常に念頭に置かれてされなければならないと思うのです。この点は要望しておきたいと思います。  次に、今度硫安輸出会社がなくなるわけでありますけれども、そうすると、内需一本で需給の調整ということになっていくわけでありますが、ここのところで私はやはり、今までは少なくとも企業合理化の進展ぐあいといいましょうか、そういうものは輸出価格というようなことで国際競争の場へ出されるということで、一定程度その趨勢を、その価格水準が高いか安いかということよりも趨勢をある程度つかむことがだれでもできたということだと思うのです。そういう物差しがあった。しかし、今度は硫安輸出会社がなくなりますとそういう物差しがなくなる、こういうことになるのじゃないだろうか。  今までは、その輸出会社に内需の見通しなども提供され、そして政府としてもいろいろと価格等についても指導されてきた、そういうことでありますが、言ってみれば、それは一定の政府の指導もその合理化の努力というものを評価をした上でされてきている、こういう判断ができたのだと思うのですけれども、今度は、硫安は多少輸出があるかもしれませんが、いずれにしても、そういう輸出価格というわかりやすい判断をする物差しがなくなる。そういうことが一つ。それからもう一つは、国際価格の変動に従って急にぽっと価格がつり上がったなどというときに、この間のお話のように、外へ売るという能力を持っておるという肥料会社の場合、価格が高いからということで内需の方は置いておいて、輸出の方へぽんとそのときにスポット買いにでもすぐ応じてしまうというようなことが起こり得る、こんなことも心配されるのでありますけれども、その辺のところはどういうふうになりますか。
  80. 小島和義

    政府委員小島和義君) 国内価格合理化されてきておるかどうかを比較対照する価格がなくなるのではないかというお尋ねだったと思いますが、これは日本の肥料工業輸出というものを全然できなくなるというふうな事態が仮に起こりましても、例えば、ヨーロッパにニトレックスという窒素の共同体がございますが、それが中国に対して幾らで売り込んだ、あるいはインドに対して幾らで契約したかというふうなことはわかるわけでございますから、海外での取引価格国内価格との対比というのは、最終的な数字だけとしてみれば、日本の輸出がなくなってもできないことではないというふうに考えております。  それから、輸出会社の問題でございますけれども、これは肥料全般につきまして輸出貿易管理令という政令でございますけれども輸出に当たりまして一件ごとに通商産業大臣の承認が要るという制度がございまして、その承認をするに当たりまして、あらかじめ農林水産大臣の同意が要るということになっているわけでございます。したがいまして、肥料輸出が行き過ぎになりまして結果的に内需がタイトになるというふうなことがないようにチェックするシステムは現存をいたしておるわけでございまして、輸出会社自体には輸出会社に対する承認、それに対する同意という形でやっておりましたものを、今後は一件ごとに承認、同意を与える、こういうことによりまして何とかやっていけるというふうに考えておるわけでございます。
  81. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 そうすると、その一件ごとに輸出についてはチェックをして、きちっと内需の確保を間違いなくやっていくというふうに理解してよろしいですね。
  82. 小島和義

    政府委員小島和義君) 制度の仕組みとしては、個別のまさにロットごとの承認ということになっておるわけでございますけれども、農水、通産両省間におきましては、事務の簡素化という観点から事前にこの月において与えでもよろしい枠はこれだけであるという一種の包括同意のような形にいたしておりまして、書類一件ごとに両省間を往復しなくてもいいというだけの事務の便宜は図っておりますけれども、仕組みとしては今申し上げたようなことは可能な仕組みがあるわけでございます。
  83. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 それでもやはり、それこそ内需の確保というものが間違いなくできるかどうかということについては、国際価格との関連の中で心配が残るわけでありますから、それだけ内需確保のための御努力というものを積極的にやっていただきたい、このことも要望を申し上げたいと思います。  それで、あともう一つ通産省にお伺いいたしますが、アンモニア肥料原料としての価格と、それから工業原料としての価格というものには差はございますか。
  84. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) アンモニア需要量につきましては、最近肥料用の尿素の輸出が激減をいたしておりましてかなり下がってきたわけでございますが、アンモニア肥料用と工業用の別ということになりますと、実は統計資料がそういう区別をした正確なものがつくられておりませんけれども肥料用、工業用の用途による品質上の差というものが余りないと考えております。むしろ用途別ということでなしに、ロットの大小とか流通の距離とか、そういうことによる価格差というものはあるかと思いますが、用途による価格差というものはないのではないかというふうに考えております。
  85. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 私は、問題はやはり肥料価格ということになりますときに、先ほどから出ておりますような回収あるいは副生というような形の中で肥料部門というものを抱えているもの、企業の中でいろいろなやりくりをしている、操作をしているのではないだろうか、こんなことも気になるわけでございますが、今の御答弁の中では、統計的にもちょっと分類ができないというようなお話でありますので、その辺はもう時間もなくなりましたのでその程度にとどめておきまして、次に、この法律規定をされております販売業者の立場について若干お伺いをしたいと思うのであります。  私は、先ほどから、販売業者としては全農というものが指定をされて、それが農民の代表ということも兼ねておる、こういうふうな理解で対処をしてこられたように聞いてきたわけであります。しかし、ここで私は一つ考えていただきたいと思 いますのは、農民資本、確かに全農は農民資本という形のものでありますけれども、しかし、その農民資本が、経済行為を進めていくということの中から農民の手から離れて資本がひとり歩きをする、そういう危険性というものを多分に持っていると思うのであります。この辺について私はやはり指導的立場にある農林水産省としては一定程度のチェックの機能というものをきちっと果たしていただかなければならないのじゃないか、こんなふうに思います。  例えば、今の肥料問題にいたしましても、化成肥料、東日本ではコープケミカル、それから日本燐酸というような形で二大メーカーにくくられたような格好の中で、特にコープケミカルは全農の出資をしている会社、こういうことに相なるわけであります。そのコープケミカルに例えばカリあるいは燐酸の原料を持ち込んでまいります。その購入の輸入元はこれは全農であり、そしてそれをまた港に揚げてコープケミカルまで送ってくる輸送会社、荷役会社、これまた農協系列資本のところがやっているわけであります。そして一方ではまた、経済連あたりが混合肥料などというものも手がけ始めております。こういう格好で見てまいりますと、東日本ではそうしたコープケミカルという形で化成肥料の会計が大きくくくられる。西日本では今度は宇部興産を中心にいたしまして今また大きくくくられようという動きが始まっております。これにまた農協資本がどういう形で参加するのかわかりませんけれども、いずれにいたしましても、こんなふうにして農協の出資会社ができてまいりまして、それがそれぞれ担当します。  ところが、例えばある化成肥料のあれを見ますと、工場から出る価格は二十キログラム当たりでもって九百三十三円で全農さんに渡される。ところが、それが農協の小売価格になりますと千二百四十五円、これは決してそんなに高いあれがついているわけではありません。この中にはもちろんさらに横持ち運賃というのが六十円入ってそして農協さんの手数料が一一%ずつ入っている、こういう格好になる。私がこういうことを申し上げましたのは、少なくとも農協資本、農民資本という範囲の中でいきますと、調べようと思うとすぐこういうふうにきちっと出てくるのです。それはやはり農協、協同組合というあれに従ってつくられている組織、いわゆる一般の商社とは違うということの中で私は出てくると思うのです。  ところが、こういう出資会社につきましては今度は秘密部分が出てくるということになります。例えば、先ほどのように原料についての交渉がありますと、その原料というのは結局、原料費、原価というものは公開をされないということになる。一部の秘密を持つということがこれはやはりひとり歩きをしていくような非常に危険性にもつながってくる、そんなふうにも私は思うのです。要するに農民資本がひとり歩きして、この肥料価格安定等臨時措置法が切れたころには、一大コンツェルンの基礎ができていたというような形になったのでは、私は農民のためにも協同組合のためにもよくない、そんなふうにも思いますので、その辺のところのチェック機能というものが果たしてあるのであろうか、こんなことをお伺いをしたいと思うのです。ただ、もう時間が随分なくなってしまいまして、本当に問題点がいっぱいありますだけに伺いたいことがいっぱいあるわけであります。そこで、私はこれから申し上げて、局長と大臣のそれぞれの御答弁をいただくということで終わりにしたいというふうに思うのであります。  そこで、私はこうしたことを踏まえてまいりますと、これからの肥料行政というものは今までとまたさらに違った新しい分野に積極的に展開をしていってもらわなければならないのではないだろうか、こんなふうに思うのです。  その第一は、化学肥料というものについての物の考え方ということにもなるわけでありますが、幸い農林水産省は先ほどのお話では大臣の特に希望もあって、それこそ土づくり運動というようなことに積極的に取り組んでおられるということなのであります。そういう土づくりというものを積極的に進め、有畜農業を中心にして堆肥を、有機物を土地に還元をしていく、こういう格好の農業が強力に進められていきますならば、当然そこには肥料というものの種類、需要の種類というものもかなり変わってこようと思います。  それからまた、この間も参考人から意見のありましたように、それぞれの地域に合った、土地に合った、作物に合ったそういうきめの細かい対応をしていただかなければならないという側面も持っていると思うわけでありまして、そういうきめの細かい対応策をするといたしますと、今のような県の段階ですら農業改良普及所が統合されて広い範囲で広域化するというような格好の中では、私はなかなかきめ細かい対応はできないと思う。きめ細かい対応をし、それぞれの地域に合った、この間のあれでいけば阿賀北配合なんという言葉がありましたけれども、そういう対応策というものを講じていただかなければならないのではないだろうか、そのように考えるわけであります。肥料というものは今後の農業生産にとって極めて大事でありますだけに、そうした今後への展望というものも十分に踏まえた上でこれからの肥料行政をどう展開をされるのか、お伺いをしたいと存じます。
  86. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 先生おっしゃいますように、肥料農業経営費に占める割合がかなり高いものでございます。現金ベースでいきますと一三・八%を占めると言われております。限られた農耕地で高い生産力を維持していくためには必要不可欠な資材であるというぐあいに考えております。  このために、化学肥料工業における合理化努力と相まって肥料価格の低位安定を図るとともに、国内必要量の安定的供給を確保することが重要であるというぐあいに考えております。したがいまして、本法の運用により適切な価格安定と内需の優先確保を図るとともに、昨年改正されました肥料取締法の運用を通じ適切な品質保全措置を講じてまいりたいと考えております。  また、化学肥料のみに過度の依存をすることは地方の面から見ましても問題を起こすことでございますので、別途提案しております地力増進法等の土地づくりの推進を図り、また、今先生おっしゃいましたそれぞれの土地に見合ったところの施肥の指導等にも努めてまいりたいというぐあいに考えております。
  87. 稲村稔夫

    稲村稔夫君 ちょっと済みません、大変恐縮です。さらに追加をして御要望を申し上げたいと思うのです。  それは、やはり肥料の流通改善の問題が一つでありまして、これは国鉄の合理化というものが極めて重大な影響を肥料価格に与えるであろう、こういうことが予想されますので、これがコスト高につながっていかないようにそれこそいろいろな工夫をしていただいて御指導をいただきたい、このように考えるわけでございます。  それからまた、今後の肥料業界構造改善というものが進められていくわけでありますけれども、この構造改善の推進に当たりましては、この間の参考人の御意見では、これまではこの法律があったということもあって深刻な労働問題に至らなかったように受け取られましたけれども、今後急速に進めていきますときには、それこそ今肥料業界は特に大変な状況にあります。それだけに私は労働問題、雇用問題というものが派生をしてくるであろうということを大変心配をいたします。それだけに構造改善の推進に当たっては雇用問題にはくれぐれも十分な配慮をしていただきたい、そのこともあわせて御要望申し上げ、終わりたいと存じます。
  88. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 本案に対する質疑は午前はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    正午休憩      ―――――・―――――    午後一時二分開会
  89. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  90. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私は、肥料農業生産にとって不可欠の基礎資料であるということの大前提に立って、諸般の事情考えるときに、本法案の延長はやむを得ないであろうという立場に立っていささかのお尋ねをするものでございますが、そういう立場に立ては立つほど、それだけにシビアに事実関係の確認をしておかなければならない責任があるのではないか、こういうことで質問の少々をさせていただくものでございます。  まず、基本的に気になりますことは、本法案が時限立法でスタートし、延長の繰り返しを続けてきたという実態でございます。そのときどきに目的を持ち、状況変化というものがあったということは理解するものでございますけれども、先ほど同僚委員の方からも種々御指摘がありましたように、この五年後には一体どういうことになるのであろうか、こういう問題等も勘案した上で、私は長期にわたってこの問題を考えるときに、問題意識を持たないわけではないと、先ほど局長がおっしゃっておられましたけれども、こういう言葉も大変気になるわけでございますし、また、農政全般にわたってこのことをどう位置づけていくべきであろうかという意味考え、再度確認の意味本法案の延長理由をお尋ねするものでございます。
  91. 小島和義

    政府委員小島和義君) 肥料価格安定等臨時措置法は、昭和二十九年に制定されましたいわゆる肥料二法、臨時肥料需給安定法硫安工業合理化及び硫安輸出調整臨時措置法という法律がございます。その法律がなくなりました後を受けまして、肥料価格安定と輸出の調整による内需の優先確保を図る、それによりまして、農業化学肥料工業の健全な発展に資する、こういうことを目的として三十九年に制定されたわけでございます。そのころから五年間に限ってこの法律が施行される。五年たったら廃止されるということでスタートいたしたわけでございますが、その後のときどきの状況に応じまして、これまで昭和四十五年、四十九年、五十四年の三回の延長を見まして今日に至っているわけでございます。  そのときどきの状況と申しますのは、昭和四十五年の延長のときにおきましては、当時肥料工業が、特にアンモニア工業が第二次設備の大型化計画というものを持っておりまして、輸出産業として大きく飛躍をしようとしていたときでありまして、内需の確保ということに対しまして、国内農業側においては大変大きな懸念を抱いていたという時期でございます。また、四十九年のときは御承知のような第一次石油ショックに端を発しまする狂乱物価のさなかでございまして、通常にも増して肥料価格の安定ということについて農業側要請の強かった時期でございます。五十四年のときになりますると、これは我が国の肥料工業輸出競争力を失いまして、その設備がやや重荷になってきておるという事態の中で、特定不況産業合理化臨時措置法によりまして、過剰設備の処理及び減量転換等を含めました新しい合理化計画をつくっておった時期でございますので、そういう事態の変化に応じまして、それぞれ延長の必要ありという判断をいたしまして今日に至っておるわけでございます。  なお、細かな点でございますが、昭和四十五年の延長のときにおきましては、これは政令指定といたしまして、尿素が追加され、四十九年の延長の際におきましては、高度化成肥料特定肥料として追加指定されるという措置を伴って延長されているわけでございます。今回の場合につきましては、最近の農業及び化学肥料工業をめぐります情勢が従来にも増して一段と厳しいという状況の中にございますし、また、特に化学肥料工業について見ますと、第二次の構造改善にまさに着手した直後である、今後化学肥料工業の設備の現有勢力というのは大幅に変わっていくさなかでございます。また、一面におきましては、国鉄の貨物駅の集約化ということもございまして、輸送体系も大幅に変わらんとしているところでございます。そういう事態を踏まえまして、より長期的な肥料安定供給を確保するという観点から再度五年間の延長ということをお願いいたしておるわけでございます。  この法律が成立いたしました上は、本法の適切な運用によりまして、肥料価格肥料の需給の安定を図りますとともに、化学肥料工業構造改善を円滑に推進することによりまして、長期的に低廉な価格化学肥料取引が円滑に進みますように対処いたしてまいりたい、こういうことで延長をお願いしたわけでございます。
  92. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 通産省にお尋ねするものでございますが、この業種は海外的要因に左右される部分がかなりあるわけですけれども、諸外国において、今回のこの価格安定措置法に類するようなものがあってこういうものが保護されているのかどうなのか、その実情についてお尋ねいたします。
  93. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 欧米諸国におきましては、大体肥料価格は自由な市場価格形成というものが多うございますが、一部には価格統制を行っている場合もございます。例えば自由な価格というふうな国といたしましては、アメリカ、イギリス、西ドイツ、オランダ、こういうような国が自由価格でございます。それから統制が行われております国としましては、イタリア、ノルウェー、ベルギー、これらの国が最高価格を決定するということで、あとは市場価格に任されるという状態になっております。それからフランスにつきましては、一時物価統制令の対象になっておりましたが、今現在は価格凍結が解除されております。そのほか、スイスにおきましては、生産者と需要家による年一回の交渉というものが行われております。  今のは主として先進国でございますが、地方発展途上国、特に東南アジア諸国につきましては、公定価格というような何らかの価格統制を行っている場合が一般的でございます。例えば公定価格制の国といたしましては、中国、韓国、フィリピン、ビルマ、インドネシア、インド、スリランカ、パキスタン、ネパール、バングラデシュというような国がございますが、他方、自由価格といたしましては、タイ、マレーシアの二国が自由価格をとっております。
  94. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私は、今回のこの法案の延長に当たって、何といっても目玉は通産省所轄のところの構造改善のところに一番ウエートがかかっていくのではないかというふうに思うわけでございます。この五年間の構造改善事業のいかんによって今回この法案を延長してよかった、あるいは無意味であったとか、こういうことの是非が問われていくのではないかというふうに思うわけでございまして、できれば詳しく業種別にこの構造改善の具体的な計画、こういうものをお持ちでなければ延長ということも出てこないであろうというふうに思いますので、できるだけ具体的に構造改善に関してお示しいただきたいと思います。
  95. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 現在、特定産業構造改善臨時措置法に基づきまして、五つの業種につきまして計画がつくられております。それはアンモニア、尿素、湿式燐酸、落成隣肥、化成肥料、この五つの製造業でございますが、これが法律に基づきまして、五十八年の六月二十一日付で構造改善基本計画というものを策定いたしております。その中のポイントは、まず設備の処理でございまして、アンモニアにつきまして約二〇%、六十六万トン、尿素につきまして三六%、八十三万トン、湿式燐酸につきまして一七%、十三万トン、落成燐肥につきまして三二%、二十四万トン、化成肥料につきまして一三%、八十一万トンの設備処理が計画されております。  それから、事業提携等によりまして生産の集約化を行います。それから生産合理化のための活性化投資ということがこれらの中心になっておりまして、この構造改善基本計画によりまして現在構造改善が推進されております。  現状でございますが、まず、設備処理につきましてはまだスタートした段階でございますが、アンモニアにつきましては、既に三十七万七千トンの設備の休廃止が行われておりまして、現在業界の各企業におきまして鋭意計画の具体化が検討されております。  それから、事業提携につきましては、既に日東化学、ラサ工業、東北肥料、サン化学、この四社が統合いたしましてコープケミカルを設立いたしておりますが、そのほか日本燐酸への燐安生産の集約化、それから昭和電工と三菱油化、住友化学と三井東圧、この間で尿素の生産委託が行われております。また、最近発表されましたのでは、宇部興産とセントラル硝子の間で燐酸の生産委託が行われております。  また、活性化投資といたしましては、宇部興産のアンモニア生産を石炭ガスによるということで現在既に設備投資が終わりまして、ことしの六月には稼働の予定をいたしております。  政府といたしましては、今後ともこのような構造改善の円滑な実施に向けまして必要な指導を行ってまいりたい、かように考えております。
  96. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 積み重なる累積赤字、あるいはただいまの構造改善等にかかる費用が国内向けの肥料価格に転嫁されているのではないかというような言い分があるわけですけれども、その点についてはどのようにお考えですか。
  97. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 御承知のように、肥料価格取り決めに当たりましては法律に基づきまして、政府が当事者からの要求に応じまして本法に基づいて調査した実績原価というようなものが交付されまして、それに基づいて交渉が行われております。この交付いたします実績原価の中には、当該肥料製造に要したコストというものが中身でございまして、この中には累積赤字とか、あるいは構造改善にかかわる設備処理費用というようなものは算入をされておりません。したがいまして、これらの費用が肥料価格に転嫁されるという仕組みには今現在なっておりません。
  98. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私が勉強していく過程ではこのことが非常に強調されて書かれているのです。こういう誤解はどこから出てくると思われますか。
  99. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 従来の誤解はどこにあるかというのは非常に難しい問題でございますけれども、やはり肥料化学工業の赤字が非常に大きいというような報道、それから、それを改善するために構造改善というものを行わなければならない、そのためには雇用上の問題、設備廃棄の問題、いろいろな企業としての大きな負担がある、こういうことが一般的に言われておりまして、それがまた事実ではございます。したがいまして、そういうような非常に大きな負担が肥料化学工業にかかるのであれば、それが肥料コストとして中に入ってくるのではないかという心配が起こるのは、これはもっともかと思います。しかし、そういう心配に対処いたしますために、この肥料価格安定法に基づきまして実績原価というものを交渉当事者に交付をいたしまして、それによってそういう直接的な製造の費用以外のものがコストの中に入ってこないように措置をするというわけでございまして、今後ともそういう誤解が生じないように農林水産省とも御協力いたしまして、私どもとしてもPRに努めてまいりたいというふうに考えております。
  100. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 ぜひそのようにしていただきたいと思います。  農林水産省の方にお伺いをいたしますが、最近の肥料国内需要の動向、この中長期的に見た見通しを御説明いただきたいと思います。
  101. 小島和義

    政府委員小島和義君) 最近の化学肥料需要、これは五十七肥料年度の数字でございますが、肥料の三成分、窒素、燐酸、カリ別に見てみますと、燐酸肥料が一番多うございまして年間約七十二万トンでございます。次いで窒素肥料が六十九万トン、カリ質肥料が五十八万トンとなっております。これは成分ベースで申し上げておりますので、実際の実重量ということになりますとこれよりははるかに多い重量になるわけでございます。  そこで、最近の需要の推移でございますが、三成分とも四十八年、それから五十三年末の石油危機の際には肥料価格が大幅に上昇したというふうなこともございまして、先高感から一種の仮需のようなものが発生いたしまして、大変肥料取引量というものはふえたわけでございますが、半面その後におきましては大きな反動がございまして、農家が手持ちのものを持っておるということもございますので低落をいたしております。しかしながら、その後そういう仮需及び反動がおさまります過程におきましては、水準としてはおおむね安定的でございまして、全体を眺めてみれば横ばいないし微増という傾向で推移をいたしております。  特に、三要素別に眺めてみますと、かつては窒素成分量が一番肥料三要素の中で多かったのでございますが、五十一年ごろを契機といたしまして、いわゆる燐酸質肥料の持っておりますソイルインプルーブメント的な効用というものが見直されまして、燐酸質肥料の方が成分量で窒素を上回るという状況になっておりまして、最近もそういった傾向が続いておるように見受けられます。今後の長期的な見通しといたしまして、政府が定めております六十五年の農産物の長期見通しがございます。この長期見通しの作付面積及び作付作物と申しますか、作物の種類、これに即して見通しを立てますと、これは肥料の年度の方で申しますと六十四肥料年度にほぼ見合うわけでございますが、その数字になりますと、大体年率〇・七%ないし〇・九%ぐらい、一%以下の伸びはあるであろうというふうな見通しがただいま手持ちの長期見通しといたしましてはあるわけでございます。もちろん、具体的な作物別の需要の動向というものが多少の変動を持っておりますし、また、作物別の需給事情というものも当然反映してくるわけでございますから、ただいま申し上げましたようなパーセンテージをもちまして毎年毎年伸びていくということを意味しておるわけではございません。五十七肥料年度から五十八肥料年度、まだ年度途中でございますが、この傾向として見ますと、窒素、カリはほぼ横ばいでございまして、上半期に関します限りは燐酸質肥料におきまして三%程度の伸びを示しておるというのが昨今の状況でございます。
  102. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 水田利用再編対策の実施が進められているわけでございますけれども、その関連でこの窒素肥料の使用の推移を見ますと、米で使われていく量が年々減ってきております。この水編対策肥料国内消費の割合、関係でしょうか、将来どんなふうになってきますでしょうか。
  103. 小島和義

    政府委員小島和義君) 過去の数字を眺めてみますと、例えば、本格的な米の生産調整が始まりましたのが昭和四十六年でございまして、ただいまの水田利用再編対策としては昭和五十三年からスタートをいたしておるわけでございます。そういう転作等の目標面積が設定されたり大幅に引き上げられましたときにおきましては、水田に使われます肥料は当然のことながら落ち込みを見るわけでございます。ただ土地利用という面から申しますと、その転作田におきましても、休耕時代はともかくといたしまして、今日では麦、大豆を初め多種多様な作物が栽培されておるわけでございまして、現実に例えば水稲栽培よりははるかに施肥量の多いような作物もつくられておるわけでございますから、全体を通して見ますと、一時のショック的な現象は別といたしまして、国の農耕地全体を通して見ますと、それほど大きな影響を持つものではないというふうに見ております。特にこの第三期におきまして、水稲栽培面積は前年度対比、実質的には相当大幅に引き上げられるという需給計画になっております。これは他用途米の生産等を織り込みましてそういうことになっておるわけでございますから、その意味ではこの転作面積の緩和措置というものが今後の肥料の需給にもプラスの影響を与えてくるのではないかというふうに見ておるわけでございます。
  104. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 もう一つ確認させていただきたいことは、農家経済における肥料費の支出状況、他の生産資材との比較を含めてお願いいたします。
  105. 小島和義

    政府委員小島和義君) 農林水産省の統計情報部におきまして農家経済調査を実施いたしておりまして、その数値によりまして全国の一戸当たりの平均の肥料の現金支出を見てみますと、昭和四十年度当時におきましては三万四千九百円でございましたが、五十七年度におきましては十五万七千九百円と、この期間の物価上昇、それから施肥量の増大等を反映いたしまして支出額は増加をいたしております。しかし、その農業経費の中における現金支出の額に占める肥料費の割合ということになりますと、昭和四十年度において一七・二%でございましたが、昭和四十五年には一四・六%、現時点では、昭和五十七年度におきましては一三・八%ということで四十年度の水準から見れば下がっておりますし、この十数年ということで見ますと、大体一四%前後で推移をしておるのが状況でございます。  それから、ほかの主要農業生産資材の現金支出ということになりますと、割合では農薬が八・三%、農業機械が三・七%、飼料が二六・九%ということで、現金支出ということではえさに次いで肥料が二番目ということになるわけでございます。ただいまの数字であるいは意外に思われる分があるといたしますと農業機械の農機具の分でございまして、これは現金支出というとらえ方をいたしますと、農業機械の場合には修繕費と小農具の購入費がこの費目に該当してくるわけでございますので、その意味で大変小さい数字になってくるわけでございます。現金支出ということではなくて農業経営費の中における現金、それから減価償却、それから自給部分、そういったものを全部含めました割合ということになりますと、農業機械の償却費が経営費の中に入ってまいりますので、農機具の比率というのは一九・四%ということで各費目の中では一番大きいものになるわけでございます。同じようにして、肥料を自給部分等を含めて経費の中での占める割合ということになりますと、これが九・七%ということで、この一〇%弱という比率はこのところ数年間大体変わっていないという状況でございます。
  106. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 近年、地方が低下しているという話を聞いております。そして、それに向けて大臣も土づくりということを言われておるわけでございます。先ほど同僚委員の方からもお話が出ましたけれども、この土づくりということと、それから肥料価格安定法ですか、この問題をどういうふうに関連を持たせて考えたらよろしいでしょうか。
  107. 小島和義

    政府委員小島和義君) 土づくりの問題と申しますのは、人間で申しますと基礎体力を向上させるという意味合いを持つわけでございまして、肥料の施用は人間にとって言えば栄養の摂取というものに匹敵するわけでございますので、この両者が適正に組み合わされまして農業生産を維持し向上させる、こういう性格を持つものというふうに考えております。近年の問題意識といたしましては、化学肥料の購入ということにつきまして格段大きな支障があるわけではございませんので、いろいろな社会的な要因も手伝いまして、ともすれば化学肥料の安易な施用ということのみに偏するという傾向があるわけでございまして、我が国の農業土壌につきましても、例えば作土の浅層化とか有機質の不足といった事態指摘されてきておるわけでございます。その意味におきましては、今日大いに力を入れなければならないというのは、基礎的な土壌の生産力を高めるということにより力点を置かなきゃならないという問題意識を持っているわけでございまして、大臣からの御指示のありました健康な土づくり運動を展開しろということの意味も、まさに今日の農業の分野において何となくなおざりにされがちな分野に特に力点を置くようにということの御指摘であろうというふうに考えております。その意味での具体的な施策の展開を別途考えておるわけでございますが、事柄自体の効用としては、肥料それから土づくりという問題は車の両輪のようなものでございまして、ともに大変重要な意味合いを持っているわけでございます。
  108. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 先進主要国の肥料の消費状況をちょっと調べてみたのですけれども、主要国の十アール当たりの肥料消費量、この資料で見ますと、日本は化学肥料を使い過ぎているのではなかろうかというような感があるわけでございます。これをキログラムで十アール当たりに使用されている量を申し上げてみますと、窒素で日本が十四・六、それから燐酸で十五・七、カリで十四・六ということになっていまして、アメリカではこれが窒素五・〇、それから燐酸二・六、カリで二・九というようなものなのです。これは十アール当たりに換算して日本で化学肥料のつぎ込みが多いのじゃないかというような考え方もあるのですが、これはいかがなものでしょうか。
  109. 小島和義

    政府委員小島和義君) 化学肥料の使用状況は、確かに時系列で見ますと我が国におきましても反当の使用量は増加の傾向を示してきておるわけでございますが、最近に至りましてはぼ横ばいないし微増というふうなことで落ちついてきておるわけでございます。  問題の国際比較でございますが、これは国によりましてつくっております作物も違いますし、それから技術水準なり経営形態が異なっておりますので、なかなか単純な比較は難しいわけでございます。我が国と営農形態が比較的似通っております西欧諸国とFAOの統計などで比較をいたしますと、これは窒素の使用量でございますけれども、我が国が十二・六キログラム、これに対しまして、ベルギーが二十二・一キログラム、フランスが十一・五、西ドイツ二十・七、イギリス十七・七というふうになっておりまして、これらの国に比較して我が国の化学肥料の使用量が特に多いというふうな状況ではございません。もちろん全世界ということで比較をいたしますと、発展途上国その他施肥量の非常に少ない国々であるわけでございます。先進国におきましても、例えばオーストラリアみたいな国は非常に施肥量が低いわけでございます。そういったものを全部平均して世界の窒素の使用量ということになりますと四・二キロぐらいという水準になりますので、そういう平均値と比較いたしますと我が国の施肥量は確かに多いのでございますが、先ほども申しましたように、大体似通っている国との比較で見れば、特に肥料の使用量が過剰であるという感じは余りないのでございます。具体的に個別の地域あるいは作物について見ますならば、おっしゃるような問題意識を全くなしとしないというのが私どもの認識でございます。
  110. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 最近、有機農法というようなことが叫ばれておりますけれども、有機農法における有機肥料というようなものとの関連でこの化学肥料をどういうふうに考えたらよろしいでしょうか。
  111. 小島和義

    政府委員小島和義君) 有機農法、有機農業ということにつきましてはなかなか定義のない言葉でございますが、一般的には、原則として有機質によって土壌を肥沃にすることを土台とする農業というふうに理解をされておるわけでございます。  これらいわゆる有機農業の現状に関しましては、いろいろなアンケートなどによります調査事例があるわけでございますが、化学肥料や農薬などを全く使用していないというものから、主として堆肥と化学肥料を用いまして、農薬の使用回数なんかはもう最小限度に減らすといったものなど、内容は多種多様でございます。総じて申し上げますと、栽培面積それから生産量というものが相当規模が大きくなるに従いまして、ある程度肥料、農薬を使っていくというふうな姿が多いようでございます。  農業は、もともと自然生態糸を有効に活用して営むというものでございますから、その意味で、現代農業に対する一つの反省を投げかけるという意味におきましては注目すべき点があるわけでございますが、ただ、化学肥料や農薬を全く使わない農法というのは、国民の食糧を支える経済活動として農業を見ます場合に、国民の必要とする食糧を安定的にかつ高い生産性で供給していくとい う面から見れば、なかなか難しい問題を含んでおるというふうに考えておるわけでございます。  そういった考え方に基づきまして、農水省としましては従来から、化学肥料一辺倒ということではなくて、堆厩肥等とのバランスのとれた施用、それから農薬につきましてもやたらに使用量をふやすということではなくて、適正な使用を指導していくということで対応をしてきておるわけでございまして、有機農法が投げかけた一つの問題意識というものを、日本農業全体の中でその精神を生かしていく、こういうふうな物の考え方で対応しているところでございます。
  112. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 午前中に同僚委員の方からもお話が出たわけでございますけれども、日本は南北に長くて、そして土地の条件やできる作物が違うというふうなことから、肥料というものは一律画一的なもので果たしていいものであろうかというふうなお話があったわけでございます。こういう点を勘案しながら、やはり施肥技術というのでしょうか、技術あるいは研究、指導、こういったものについて今後展望を持っていらっしゃいますでしょうか、いかがなものでしょう。
  113. 小島和義

    政府委員小島和義君) お話しございましたように、日本列島は南北にも長うございますし、地形的にも大変複雑でございます。また、当然のことながら、気象的な要素も非常に地域によって差があるわけでございます。その中でつくられております作物の種類ということになりますと、これはなかなか他国に例を見ないぐらい非常に種類の多い作物がつくられておりまして、それによって国民の食生活を豊かにしているという面があるわけでございます。それだけにまた、使われております肥料の種類、銘柄ということになりますと大変多種多様なものがございまして、そういう銘柄数の多さというものが一つの肥料の流通面にマイナスの影響があるのではないかと思われるぐらいなわけでございます。したがいまして、今後の指導といたしましては、土地、作物に合ったものを選んでいくという指導はもちろん必要でございますが、同時に、集約できるものは集約していくという努力も並行的に考えていく必要があるだろうというふうに考えております。  具体的な国、県の行政的な施策といたしましては、都道府県の農業試験場などが中心になりまして施肥の一つの基準をつくってまいりました。具体的な地域なり作物に応じた施肥の指導はそれぞれ末端の農業改良普及所あたりが担当するということで展開をいたしておるわけでございます。国といたしましても、そういう施肥の基準の考え方になる基礎的な研究というものは各種の試験場において十分にこれを実行してまいる所存でございます。
  114. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 よろしくお願いします。  終わります。
  115. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案について御質問いたします。  刈田委員と多少ダブるところがありますけれども、御了承いただきたいと思います。  最初に、本法は過去三回、昭和四十五年、四十九年、五十四年と延長されてきたわけですけれども、大体時限立法というのは、御存じのように、その時限立法の終わる時点にはすべて問題点がクリアできる、こういう予想で時限立法というものは立てられるわけでございます。この法律に関しては、肥料安定供給とかそれから価格の面でもそうですけれども輸出入の調整もできるだろう、そこですべてクリアできるのじゃないか、こういう予測のもとに時限立法というものはできるのだと私は思います。しかし、本年の六月末をもって、またこの法律が四回目の延長をされなければならないという羽目になったわけでございます。過去の延長になった際の国際的また国内的のいろいろな変化、状況等はわからないでもございませんけれども、そこで、今回のこの延長理由、また、法改正して今回延長することによってどのような効果、効力といいますか、そういうものはどういうものが出てくるのか、この辺を最初にお伺いいたします。
  116. 小島和義

    政府委員小島和義君) 確かに、御指摘ございましたように、この法律をつくりましたときから五年間の時限立法ということでやってまいったわけでございますが、過去の約二十年の期間というものを振り返ってみますと、化学肥料工業ほど環境のダイナミックな変動に見舞われた産業分野も少ないのではないかと思うわけでございます。すなわち、この二十年間の間に、非常に安かった石油価格というものを武器にいたしまして国際的な輸出産業として大きく飛躍しようとした時期と、それからそういう原材料価格の高騰の中において輸出競争力を失い、おおむね内需に見合ったように産業の体質を変えていかなきゃならない場面という、陽陰両方の局面をこの短い期間の間に経過をしたという事情があるわけでございます。そういった中で、特に狂乱物価というふうな影響もございましたものですから、過去それぞれその時点における判断として延長やむなしということで今日に至っておるわけでございます。  今回の場合におきましては、最近の農業をめぐります大変難しい諸情勢と、化学肥料工業を取り巻きます、特に過剰設備の処理による構造改善を図るというふうな局面を考慮いたしますと、長期的な肥料安定供給基盤を確保するという意味におきまして、さらに五年程度期間を必要とするというものでございます。なお、今回の場合におきましては、輸出の調整にかかわる措置につきまして、昭和五十七年の六月に日本硫安輸出株式会社が既に解散をいたしておりますので、その関係部分を削除するということが延長以外の改正事項に相なっておるわけでございます。こういうことで、本法改正延長がお認めいただけますならば、この与えられました五年間の間に肥料工業の体質の強化を図りますとともに、これに対する国内肥料の流通の秩序を確立していくというふうなことによりまして、今後の肥料の長期的な低廉安定供給の基礎づくりをいたしたい、こういうことが私どもの願いでございまして、ぜひとも五年間の延長をお願いしたいと思う次第でございます。
  117. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 通産省からも。
  118. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) ただいまの小島局長の御答弁そのままでございますが、この法律の基本的な考え方が、肥料をいかに安定的に供給をするかという点でございますが、化学肥料工業は、ただいま小島局長の御答弁にありましたように、二次の石油ショックによりまして大変苦難に陥っておりまして、このままの状態でございますと、肥料の安定的な供給ということにもなかなか難しい状態になってきております。そこで、再度お願いをいたしまして、五年間の延長期間の中で、特定産業構造改善臨時措置法に基づきまして精力的に構造改善を進めまして、五年後にはこの法律がなくても肥料の安定的な供給ができるようにいたしたい、かように考えておるのがこの法律延長をお願いいたしております理由でございます。
  119. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 次に、合理化の問題についてお伺いいたします。  我が国農業は、御承知のとおり年々厳しい状況になってきております。特に、先日決着のつけられた農産物のいわゆる牛肉、オレンジ等の輸入枠拡大に象徴されるように、今や日本農業にも、日本だけの問題ではなくなってきている、そういう時代ではなくなってきている、このような感じを持つわけでございます。加えて、化学肥料工業も御多分に漏れず厳しい国際化の波を受けている産業でもあるわけです。特に、昭和四十八年、五十四年の二回にわたるオイルショックを契機にして、肥料原料需給の逼迫や国際肥料需給の変動によって肥料工業界も大変な苦況を迎えている今日であるわけでございます。中でも、五業種、アンモニア、尿素、燐酸、落成隣肥、化成肥料が構造不況業種の指定を受け、構造改善法のもとで、国際競争力の確保を目指して抜本的な合理化に取り組んでいるわけですが、この構造改善対策は、すなわち、過剰設備に伴う稼働率の著しい低下という状況のもとで経営を続けている化学肥料工業の安定と構造改善の推進によって合理化メリット が消費者に還元される、こういうことが期待される意味では結構なことだと私は思っております。  その第二次構造改善対策でございますけれども、これは五十七年六月の産構審すなわち産業構造審議会、この答申に基づいて実施されておりますけれども、尿素製造業を一例にとると、その内容というのは、設備処理計画八十三万トン、残存能力百四十九万トン、残存能力の稼働率八七%、こういう内容になっているわけです。そこで、この産構審答申は、残存能力を百四十九万トンとした背景には、六十肥料年度における内需九十万トン、これは上限、輸出量四十万トン以下という積算の根拠を明らかにしているわけです。この答申の中ですけれども、「六十肥料年度における尿素の輸出が、四十万トンを更に下回る場合には、この需給見通しはより厳しいものとなり、アンモニアの需給にもその影響が及ぶことに留意する必要がある。」、こういうように指摘をしております。  そこで、五十七肥料年度の尿素の輸出量は既に三十万トンを切っております。これから見る限り、合理化目標の修正を考えなければならない状況が来ているようにも思われますけれども、この合期化目標の見直しを考えるつもりはあるのかないのか、この点はいかがでございますか。
  120. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 御指摘のとおり、現在の構造改善計画は六十肥料年度におきまして四十万トンの輸出ということを念頭に置いて考えたわけでございます。ところが、御指摘のように、五十七肥料年度の尿素の輸出実績が二十九万トンということになりまして、産構審の答申の前提よりはかなり下回っているという状態でございます。ただ、最近の尿素の国際市況を見てまいりますと、かなり上昇傾向に転じておりまして、例えば、昨年の七月はトン当たりアメリカのガルフで百二十二ドルから百三十ドルぐらいでございましたが、ことしの三月にはこれが既に百四十ドルから百五十ドルというように上昇に転じてきておりまして、こういうような国際的な動向というものとの関連で、我が国の尿素の輸出の先行きについて十分状況を見きわめる必要があるというふうに考えております。しかし、先生御指摘のような状態でございますので、今後輸出の動向を注意深くウォッチをいたしまして、適切なタイミングで設備処理量などの見直しというものについての取り扱いを考えていきたい、かように考えております。
  121. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 なぜ合理化目標の見直しをお尋ねするかというと、確かに企業が自主的努力を続けていることは評価いたしますけれども、今数字が示したとおり、結論から言うと、尿素の輸出が落ち込んでいるということでございます。また、この産構審の答申の中に、「今後、具体的な構造改善計画を策定するに際しては、尿素の輸出見通し等の不安定な需要要因につき、再確認を行った上で必要処理量の具体的な設定を行うとともに、できる限り高能率設備へと生産集中が進められるよう、必要に応じ、所要の調整措置を講ずることも必要となろう。」、こういうふうに指摘をしております。  第一次構造改善対策は五十三年から五十八年ですか、この第一次構造改善対策の計画策定の直後に発生した五十四年の第二次オイルショックで、その前提となる需給見通しが全く狂ってしまった。それにもかかわらず第一次構造改善が推進されてきたわけです。というよりも、どちらかというとだらだらそのままやってきたという結果になっているわけです。その結果どういうふうになったかというと、第二次構造改善でさらに追加的設備処理を余儀なくされる原因となってしまった、こういうふうになるわけです。今回の構造改善基本計画に当たっても、尿素が三六%、落成燐肥が三二%と高率の設備処理の計画になっておりますけれども、しかし私は、この達成というものは大変難しいのじゃないかというふうに思わざるを得ないわけです。構造改善期間中であっても、状況に応じて計画の内容を見直すことも大事ではないかと思うし、臨機応変にやることが必要ではなかろうか、こういうふうにも考えるのですけれども、再度確認をいたしたいと思います。
  122. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 特定産業構造改善臨時措置法の三条におきまして、先生ただいま御指摘のございましたように、「経済的事情の変化のため必要があると認めるときは、関係審議会の意見を聴いて、構造改善基本計画を変更しなければならない。」という規定がございます。尿素は、今御指摘のように、当初の計画よりも輸出が下回っておって問題が起こっておりますが、尿素以外の業種につきましても、輸出入あるいは内需の見通しというような構造的な変化が生じました場合には、当然構造改善基本計画というものの見直しを考えなければならない、かように考えております。
  123. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もう一度確認しますけれども、そうすると、見直しをする必要があると認めた場合には見直しをする、そういう用意があるというふうに受け取ってよろしいですか。
  124. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 御指摘のとおりでございます。
  125. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 次に、輸出についてお伺いいたします。  第二次構造改善対策合理化目標のうち輸出量についてはどの程度なのか、その規模は明確にされておりませんが、今後輸出量の動向が注目されるところでありますけれども輸出が少なくなれば合理化が一層進むということは考えられるのか、この点の関連性についていかがお考えなのか、お伺いいたします。
  126. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 今回の化学肥料工業構造改善の基本的な考え方は、従来のように輸出ということを念頭に置いた大規模工業あるいはフル操業というようなことではなしに、内需に中心を置いた工業ということで考えておりまして、内需に対する肥料の安定的な供給、こういうことが確保できるような産業として再活性化を図りたいというのが今回の構造改善計画の基本的な理念でございます。したがいまして、確かに尿素等におきまして一定量の輸出が継続をするということを前提に置いておりますが、この輸出が安定的な需要であるというふうには考えておりません。したがいまして、確かに輸出の減少によりまして、トータルとしての設備処理量の見直しが必要になるということはもちろんございますけれども構造改善基本計画の考え方自体は、内需に基礎を置いたあるいは内需に対して安定的に肥料供給するという、そこにポイントを置いておりますので、基本的な考え方そのものにつきましては変更がないと思っておりますが、御指摘のように、そのときどきの情勢に応じまして計画の見直しということは必要になってくるというふうに考えております。
  127. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それではお伺いしますけれども、この構造改善対策によって、合理化メリットとして確実に価格に反映され、消費者に還元されなければならないというふうに思います。また、当然そうあるべきが合理化であり、構造改善対策ではなかろうかというふうに私たちは受けとめるわけですけれども、国が出しての構造改善対策でございますから、この合理化メリットは消費者にとって、また反面不可欠の要件ではなかろうかとも思います。したがって、この合理化による今後の価格の引き下げの見通しについてはどうなのか。どうも価格の安定、価格の安定というそちらの方に力が入って高値安定のような気もしないでもないのですけれども、いかがでございますか。
  128. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 日本の化学肥料工業は、御承知のように、非常に厳しい国際競争にさらされておりまして、そういう前提で構造改善というものを進めるということでございますので、当然ながら構造改善の目標といたしましては、我が国への輸入に対して十分競争し得るような価格水準が目標ということになっておりまして、そういうことを前提にいたしまして過剰設備の処理、あるいは効率のいい設備への生産の集約化とか原料転換を進めるということでございまして、そういうことによりましてコストを引き下げ、輸入品と競合する、十分競争し得るような価格まで引き 下げる、こういうことを念頭に置いて構造改善を進めておる次第でございます。
  129. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そうすると、価格の引き下げというのは、いわゆる輸入するその価格とのつり合いを考えての引き下げであって、現実合理化して国内価格を引き下げる、こういうふうには解釈できないのですか。
  130. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 現実国内肥料価格を引き下げるというのが目的でございますが、どの程度まで引き下げることを目的とするかという場合に、輸入品と競合し得るような価格にまで引き下げたい、かように考えておる次第でございます。
  131. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、ちょっと角度が違いますけれども構造改善合理化も日本の現状に合わせてやらなければならない、これは当然でございますけれども、それに加えて、肥料の質的な面、高性能の肥料といいますか、高効果のある肥料、この開発、技術革新の面では日本の農業も今日進月歩しておるわけです。農業経営も大きく変わってきておりますし、こういうことで将来の問題としてどんなものを具体的に考えておられるか、研究は進んでいるのかどうなのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  132. 小島和義

    政府委員小島和義君) 化学肥料の品質という点でありますと、一般的に見ますならば大体出尽くしたと申しますか、特に斬新、画期的な新しい肥料が出てくるという状態ではないように思っております。もっとも長い歴史の過程で見てまいりますと、かつては化学肥料、特に窒素肥料の中では硫酸アンモニアが主体でございましたものが尿素という新しい製品が出てまいりましたり、また燐酸質肥料の中におきましても、落成燐肥という肥料は我が国が考え出した新しい肥料であったわけでございます。その意味において、将来、今使われておりますよりはもっと効果的でかつコストも安いというものが出てくる可能性を全く否定するものではございませんが、現時点におきまして特に新しいものが生み出されてくるということをねらいをつけているようなものがあるということではないわけでございます。したがいまして、肥料合理化と申します場合に、今あります肥料でもそれをいかにして能率的に安くつくるかという点に今後の努力の主眼が置かれていかなければならないと思います。  もっとも、肥料成分としては今まで使われておりますものと同様でありますけれども肥料の流通形態ないしはその施肥の形態というものについて、農業事情に合わせまして変化をしていくということはあり得るわけでございまして、過去歴史を振り返ってみますと、ただいま用いられておりますような高度化成というふうなものはほとんど実際には流通していなかったわけでございまして、今日で申しますならば、低度の配合肥料というものがせいぜい出ておったにすぎなかったわけでございます。今日では高度化成が流通の主体になっている。こういうふうな成分として違いがあるわけではないけれども肥料形態としては変わってきておる、こういう事情はあるわけでございますから、その意味においてもまた研究の余地があるものというふうに考えております。
  133. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 質的な面、成分の面、そういう面で研究はしているのか、していないのか。
  134. 小島和義

    政府委員小島和義君) 化学肥料品自体の新製品開発ということはなかなか農林省としての手に余る問題でございまして、やはり通産省サイドの研究、特に実際に肥料をつくっております人たちの開発努力というものが何といっても軸であろうというふうに考えております。農水省といたしましては、どちらかと申しますと、肥料の有効な使い方という点、ないしは先ほど来話題になっておりますような地方の維持増進ということと施肥をどう絡めて生産力を高めていくかといった点に研究の主眼が置かれる、そういう性格の役所ということに相なるわけでございます。
  135. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 通産省はいかがですか。
  136. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 肥料の種類そのものといたしましては、先ほど小島局長から御説明ありましたように、かなりもう出尽くしたという感じもいたします。ただ、従来の肥料そのものの効果をできるだけ長くもたせるような技術とか、あるいはそういう品質の肥料というような形での研究というものは現在行われているという状態でございます。
  137. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 次に、肥料輸出についてお伺いします。  この改正案では、日本硫安輸出株式会社の解散に伴い、空文化している輸出会社関連条文を削除することになっております。我が国でこれまで欧州等々の競争の中で肥料輸出を行ってこれたのは、日本硫安輸出株式会社を通じての一元輸出によってきたからだと私は思います。これに代替して、現在いわゆる貿管令、輸出貿易管理令に基づいて輸出されているところであります。  まず、五十八年度の実績で輸出はどの程度の数量になっているのか、この点をお伺いいたします。
  138. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 五十八暦年の我が国の輸出実績でございますが、硫安が四十六万二千六百三十二トン、それから尿素が十四万五千五百四十五トン、それから高度化成肥料が九万九千五百十一トン、こういうふうになっております。
  139. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 この輸出競争力が低下した事情というのはわかりますけれども、その中にあっても可能な限り輸出を確保することがいわゆる生産コストを引き下げる、量をたくさんつくるわけですから当然そうなるわけです。そういうふうに思いますけれども、この輸出会社の解散に伴い、現在輸出はどのように行われているのか。一元化ではなくなったということで輸出量は結論として多くなったのか、少なくなったのか、この点いかがでございますか。
  140. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 硫安輸出株式会社の解散に伴いまして窓口の一本化というものがなくなったわけでございますが、ただ日本の輸出対象であります、主として東南アジアへ輸出が多いわけでございますが、こういう国は輸入の窓口が一本になっておりますので、日本が過当競争いたしますと、その分取引の円滑化が阻害されますので、硫安と尿素につきましては、相手国が、輸入窓口が一元化しているそういうような国に対しましては、輸出取引法第五条の三に基づきまして生産業者のカルテルを締結いたしまして、こういう国との交渉力を強化するという体制をとっております。  そのほか、五十二年度から実施されました食糧増産援助、普通第二KRと言っておりますが、これを活用することによりまして一定量の輸出を確保するという体制をとっております。
  141. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 輸出は少なくなっているわけですけれども輸出を伸ばす方法は何かないのか、それともそういうことを考えているのか、いないのか、この点はいかがですか。
  142. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 物によって差があるかと思いますが、例えば、尿素のような場合には国際競争力が非常に弱うございますので、なかなか輸出が伸びない、今後減少していくということでなかなか難しいかと思います。同じく化成肥料につきましても同様の状態でございますので、これらは第二KR、経済協力に基づく輸出というもののウエートがかなりふえるかと思います。他方、硫安につきましては競争力も比較的ございますし、それからマレーシアのゴム園のように固定的な需要というものもございますので、ある程度輸出が可能というふうに考えております。一般的に東南アジアでは、日本の肥料につきましては納期が安定している、あるいは品質が安定しているというような価格面だけでない評価もございますので、こういうものと相まちまして、従来のような大量ではございませんけれども、一定量の輸出の確保というものは可能になるのではないだろうか、かように考えております。
  143. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 過去の肥料産業がいわゆる輸出産業時代にあったのと違って、現在の肥料輸出量は大分減ってきている。したがって、輸出によって国内需要が制約されることなど考えられないと見る のが一般的ではなかろうかと思いますけれども、反面、構造改善の振興によって我が国の肥料生産が産構審の指摘するように内需に基盤を置いたものになってきた場合、海外援助は相当な額にも達しておりますし、政府が非常に熱心に進めているわけでございますけれども、そういう海外援助等によるいわゆるスポット的な輸出によって国内肥料需要が一時的にしろ苦しくなり、円滑な供給が阻害されることが起きることも考えられるわけです。この点について危惧とか心配という点はないのかどうなのか、この点はいかがでございますか。
  144. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) まず、構造改善の問題でございますが、構造改善につきましては過剰設備の処理がポイントになるわけでございますが、この過剰設備の処理に当たりましては内需を基盤といたしまして適正な稼働率を維持するということが念頭に置かれております。  他方、内需は先ほど小島局長から御説明ございましたように、非常に緩やかな、微増という程度でございますので、当面構造改善に伴って内需の確保に問題が生ずるということはないと考えております。  他方、肥料輸出に際しましては、輸出貿易管理令によりまして一件ごとに輸出の承認を受けるということになっております。私ども輸出の承認をいたしますときには農林水産省の同意が必要ということになっておりますので、輸出の承認に当たりましては内需の動向に十分注意をいたしまして、内需確保に支障のないように考えて承認をいたしたい、かように考えております。
  145. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 肥料輸出の結論、見通しということになりますけれども、今の状況が推移していきますと肥料輸出は今後も減少傾向にある、こういうふうに予想されるわけです。しかし一面、お隣の中国を見ても御存じのとおり、広大な土地あり人口十億以上、こういうふうに現実化学肥料使用量の伸びは近い将来かなりの数量を必要とされるのではないか、これも予想されるわけです。  そこで、今日まで我が国は中国、東南アジアに肥料輸出をしてきましたけれども、今後の肥料の見通しについて通産省としてはどのような見解を持っておられるのか、これが一つと、さらに今後我が国の肥料工業が国際肥料市場の中でどのような位置を占めるのか、同じようなことですけれども、あわせてこの二点についてお伺いをいたします。
  146. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 二度にわたります石油危機によりまして、非常に原料コストが上昇いたしまして、このために先生御指摘のように国際競争力というものが非常に低下をいたしました。このために中国あるいは東南アジア向けの輸出量が減少をいたしてきておりますが、しかし、依然として東南アジアは非常に重要な輸出市場でございまして、日本の輸出実績の大体九〇%ぐらいがこれらの地域に輸出されております。今後中国あるいは東南アジアでそれぞれの肥料生産力が増強されてはまいります。しかしながら、一定量の輸入というものは引き続き行われるだろうと考えております。  すなわち、それは中国あるいは東南アジアでは価格というだけではなしに、我が国の肥料の品質あるいは納期、それから近いという、これは当然価格に反映いたしますけれども、運賃、フレートの有利性というものもございます。他方、我が国の化学肥料工業コストの低減を一層進めることによりまして、国際的な競争可能な状態に持ち込みたいと考えておりますので、従来のような輸出産業ではございませんけれども、一定の輸出量が行われるというような状態には期待していいのではないかというふうに考えております。また、LDC、発展途上国諸国は非常に外貨不足に悩んでおりますので、従来同様経済協力に基づきます支援、これは昭和五十二年度から実施されておりますが、こういう食糧増産援助というものも活用いたしまして、一定量の輸出は何とか確保できるのではないかということを期待をいたしております。  それで、国際市場において日本の化学肥料がどういうポジションになるかということでございますが、これは従来のような輸出依存型の産業ということはもう全く不可能な状態になったわけでございますので、我が国の構造改善対策内需安定供給内需優先ということを基盤にして今後活性化していくという方針で考えております。したがいまして、経済協力とか、あおいは硫安のように国際競争力があるようなものを除いては、内需依存という形での産業として活性化していくというふうに理解いたしております。
  147. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 次に、価格の決定の問題ですけれども、この問題も先ほど午前中にお話が出ましたが、通産省農林水産省両方の考え方をお聞きしたいと思います。  全農の言い分として、メーカーのコスト資料を消費者が知った上で価格交渉ができる商品は他を見回してもないのではないかというふうに言っております。先日のある参考人意見の中には、それは全く数字はわからず、コストはどうなっているのか、どういった交渉でどう決められるのか、その決められた価格が妥当な線なのかどうなのかわからないと、午前中の小島局長答弁の中では、全農の中での十分な意見を聞いてと、こういうお話もございましたけれども、いずれにしても価格決定に疑問を持たせるような制度では私は困ると思うのです。消費者が知った上でと全農は言っておりますけれども、これは私は違うと思うのです。なぜこう言うかというと、一般商品ならば高いところもあるし安いところもある、ですから自分の好みによってそれは選択できる。しかし、肥料の場合は価格が一定をしております。  さらに、この第二条の条文の中には価格取り決めについて、価格についての取り決め生産業者及び販売業者双方となっており、その販売業者は「生産業者から直接買い入れるものに限る。」というふうになっておるわけです。先日の参考人の陳述があった中で、肥料価格決定については現在全農とメーカーによって決定されているが、さらに民主的かつ肥料の消費者の立場も考え、実際に農業に携わる農民にも参加させてほしい、こういう意見があったことは御存じだと思います。この点について監督官庁として通産省農林水産省はどんな御意見を持っておられるか、考え方を持っておられるか、お聞かせ願いたいと思います。
  148. 小島和義

    政府委員小島和義君) かつて肥料二法当時に硫安の販売最高価格政府が決定するという仕組みをとっておりましたときには、肥料審議会という制度がございまして、直接の売買当事者以外に関係業界及び一般学識経験者なども含めまして審議が行われた上で政府価格決定をした、こういう経緯があるわけでございますが、三十九年に、今さら公定価格でもなかろうということで今日のような価格決定の仕組みに移行をいたしたわけでございます。そのときから決定価格の性格というのは売買当事者間で決める価格という性格を持っておりますので、取引の直接の当事者が交渉をするという基本的な性格に変わってきたわけでございます。  確かに、そういう場合におきましても最終消費者の意向というものを交渉の場において何らかの形で反映させるということについては、もっともな意見だと思うわけでございまして、交渉主体である全農自体はその組織内におきまして肥料農薬委員会でございますとか、あるいは生産資材委員会というふうな組織を設けておりまして、この中には各構成メンバーを組み入れるという形で運用をいたしております。また、当然のことながら、総代会、理事会といったものが組合員の意思を結集する場として用いられておるわけでございますから、その意味では、直接交渉する者は全農の担当の者が交渉するということでありましても、全農民的な意向のくみ上げということについては問題はないというふうに考えておるわけでございます。  また、百歩譲りまして、交渉自体に農家あるいは単協代表という者を参加させるということで考 えました場合でも、一体だれが参加適格性を持っているかということになりますと、全農の下部組織におきましては何千という単協があるわけでございますし、また農家の数ということになりますと、これは何百万人とおるわけでございますから、なかなかそういうものを参加させるという仕組みは考えにくうございます。また、交渉自体も、価格自体が高い安いというふうな包括的な議論をしているわけではございませんで、原価要素別の今後の見方というものについてかなり専門的な意見を闘わして価格は決まっていくというプロセスにあるわけでございます。したがって、その一部始終につきまして消費者が直接参加するということは、考え方としてはわからぬことはないのでございますが、実務的に考えてみればなかなか組み入れにくいという問題もあるわけでございます。その意味におきまして、私どもも決定以前はもちろん価格決定後におきましても、組織内に対して全農が、今回の価格決定の交渉経過はこうである、また、内容はこうであるということにつきまして極力必要なPRを行うということについて強力に指導いたしておるわけでございまして、現に「全農通信」その他の機関紙によりましてかなり抽象的にならざるを得ない部分もございますけれども、極力各農家の理解を得るような努力はさせるつもりでございます。
  149. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 私どもも、ただいまの小島局長の御説明と全く同意見でございまして、現在の仕組みは非常に実際的であるというふうに考えておりますし、また、メーカー側からは、非常に全農から厳しい要求を受けているというような話を伺っておりますので、小島局長の御説明と全く同意見でございます。
  150. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 私が申し上げたいのは、全農とメーカー、これは四百五十万戸の農家を全部統括しているのが全農ではないわけでありますし、また肥料の販売数量ですか、その点においても全農が全部をやっているわけではないわけなので、そういう点から言っても、また先ほど言ったいわゆる消費者、最末端といいますか、最前線、そういう方の御意見も必要ではなかろうかというふうに思うので私は申し上げたわけなので、この点も考慮して何か考えていただきたい、これは要望しておきます。  それから、国内、国際価格の二重価格でございますけれども、二重価格にならざるを得ない理由の一つとして、国際市況によることは十分私も承知はしているわけでございますけれども、最近になって国際価格の変動が見られるようであります。いわゆる高くなった。尿素は三〇%、アンモニアは三〇%、現在はそういったことで上昇ぎみである、こういうふうに推移してきているわけですけれども、実態はどうなのか。また、今後の国際市況の動きについてはどのような予測がされるのか、この点についてお伺いをいたします。  もう一つ、参考のために伺いますが、肥料というものほかって相場の上下が常に激しく変動する投機商品であったようですけれども、現在はその流通過程においても割合とスムーズになってきましたし、世界のそれぞれの国で肥料生産するように取り組んでもきております。こういう時期になって、通産省考え方として、この肥料はなおかつ投機性のあるものなのか、相場性というものはあるものなのか、どんな認識をしておられるのか、この二点についてお伺いいたします。
  151. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) まず、最近の国際価格の動向でございますが、石油ショックの後需要の落ち込みがございまして、ずっと供給過剰という状態が続いておりましたのですが、最近アメリカにおきまして需要の回復というものが著しくなってまいりまして、国際的な肥料需給はかなりタイト化いたしてまいりました。いろいろ原因があろうかと思いますが、需要の増大、それからソ連、東欧圏におきましては最近輸出余力がなくなってきたということ、それから中東でかなりの尿素の増産もございますが、インドが大量に買っているということ、あるいはアメリカにおきまして非常な寒波のために、天然ガスがどちらかといえば工業用よりも暖房用に回ったとかいろいろな状況もございまして、最近非常にタイト化いたしておりまして、昨年の秋以降、尿素、燐安が約二割、それからアンモニアは大体四割ぐらいの値上がりを示しております。  今後どうなるかということでございますが、御承知のように国際市況といいますのは、世界的な需給状況に依存をいたしておりますし、肥料の消費そのものも気象条件に左右されるという非常に不安定なものでございますが、私どもの感じでは、短期的には現状のタイトな状況が続くのではないかということで、品目により変化はあるかもしれませんが、大体現状が続いて余り大きなこれ以上の暴騰というようなことはないのではないかというふうにも思っております。ただ、御承知のように、アラブ、イラン・イラク戦争あるいはベイルートをめぐる情勢とか非常に不安定な要素もございますので、余り確定的なことは申し上げかねますが、現状で見通される限りは、当面余り大きな変化がないのではないかというふうに考えております。  それから、投機的商品であり続けるかどうかということでございますが、国際的な市況はかなり変動が激しいというのが現実でございます。しかし我が国におきましては、この法律のおかげもございまして、従来から安定的に推移いたしておりますので、現状では余り投機性があるとは言えないのじゃないでしょうか。といいますのは、かなり運送費のかかるものでもございますし、今行って今すぐ外国から日本に持ってくるというようなそういう取引も非常にやりにくい商品でもございますので、国際的な市況変動というものがございますが、国内的に投機的商品と言われるところまでは投機性はないのではないかというふうに考えております。
  152. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 簡単で結構ですから、将来の問題として確認をしておきたいのですが、アメリカにあるテネシー流域公社、テネシー・バレー・オーソリティーですか、TVAの調査によると、燐鉱石の埋蔵量が一千四百四十億トンを推定されております。そのうちの可採埋蔵量は燐鉱石が四百九十一億トン、カリ塩が五百七十七億トン、こういうふうに発表しております。最近は石油産業の急激な発展、また、その消費の増大に伴って世界の石油の枯渇が心配されているところでありますけれども、この燐鉱石、カリ塩の埋蔵量は通産省はどの程度掌握しているのか。一部の学者によると、石油の枯渇と同じように四、五十年でなくなってしまうのじゃないか、こういう一説もありますけれども、この点については簡単で結構ですからどのように掌握しておられるか。
  153. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 通産省の通商政策局長の諮問機関に一次産品委員会というものがございまして、諸外国の資源問題を勉強いたしておりますが、ただ、直接的な調査というよりも、既に行われております調査につきましての文献調査が中心でございます。それによりますと、先生今御指摘のように、燐鉱石につきましてはTVAで千四百四十億トンあるいは可採埋蔵量で三百六十億トン、それから他方、アメリカ鉱山局の資料でも別の資料がございますが、非常に判定は難しゅうございますけれども、現在の程度の予想される需要の伸びであれば、燐鉱石は今後約二百年ぐらいは利用可能ではないかというふうに考えております。  それから、他方、カリ塩につきましても、アメリカの鉱山局で確認をされております埋蔵量が七百九十億トン、可採埋蔵量が百億トンでございまして、そのほかIFDCとかTVAの共同調査もございますが、今、年間の世界のカリの生産量が二千七百万トンというふうに判断をいたしますと、大体三百年ぐらいはもつのではないかというふうに考えております。
  154. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 あともう二点だけ。済みません。  我が国の燐鉱石の輸入は五十暦年度で二百二十五万トン、一方、カリ塩は九十八万トン、こういうふうに聞いておりますけれども、この輸入価格の値動きについてお聞きしたいのと、それから、 燐鉱石、カリ塩などの輸入の確保について支障がないのかどうなのか、定期的に必ずこの燐鉱石、カリ塩等の原料は入ってくるのか心配される点があるわけです。輸入国の窓口というのはそんなに多くないわけです。例えば、燐鉱石はアメリカとかモロッコ、ヨルダン、カリ塩はカナダ、ソ連、それからアメリカ、イスラエル、西ドイツ、東ドイツ、そういうことでございますけれども、外国には海運港湾スト、局地戦争等も頻繁に起こっておるわけです。こういうことを考えるとちょっと不安になるわけでございますけれども、この点は大丈夫なのかどうなのか、お伺いいたします。
  155. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 燐鉱石につきましては、御指摘のように、アメリカ、モロッコ、ヨルダンからの輸入をいたしておりますが、輸入価格が第一次ショックのときには三・五倍、第二次ショックでは一・八倍というふうに非常に上がってまいりました。特に最近、五十八年、昨年末ぐらいからアメリカの需要が増大をいたしてまいりまして、需給がタイト化して若干上昇ぎみということでございます。ただ、将来の安定供給考えまして、特に全農が我が国の燐鉱石の大量輸入者でございますが、これが最大の生産地でございますアメリカのフロリダにおきまして開発輸入に取り組んでおりまして、何とか安定供給に努めたいというふうに考えております。  それから、カリ塩につきましてはカナダ、ソ連等から輸入をされておりますが、これも石油ショックで、第一次のときに二・一倍、第二次では二・二倍というふうに上昇いたしまして、その後変化がございましたが、やはり五十八年末から若干の値上がりということになっております。これは日ソ貿易協定の対象品目という形で安定供給に心がける等、今後いろいろ対策をとりながら安定供給に努めてまいりたいというふうに考えております。
  156. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 時間が過ぎてしまって申しわけありません。
  157. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 時間です。
  158. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もう一点だけ大臣に。済みません。  本法の精神である内需優先確保と価格の安定を守るという本質は不変と思いますけれども、今後の肥料政策の基本方針を大臣にお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  159. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 肥料農業経営費に占める割合というのは、現金ベースで一三・八%、また、実質面から見ましても九・七%と、かなり高い面を占めておるわけです。限られた農地で高い生産力を維持していくために必要不可欠なものというふうに考えております。このために、化学肥料における合理化努力と相まって肥料価格の低位安定を図るということをもとにしまして、国内必要量の安定供給を確保することが必要であるというぐあいに考えております。今先生言われましたように、内需優先、そしてまた、肥料取締法の運用等を通じ適切な品質保全等を行ってまいりたいと思います。なお、化学肥料のみに過度の依存をすることは地力面から見て問題もありますが、別途提案しております地力増進法等の活用によりまして土づくり推進を図り、また、それぞれの土地に適応いたしました適切な施肥の指導等にも努めてまいりたいというぐあいに考えております。
  160. 下田京子

    ○下田京子君 昭和三十九年に肥料価格安定等臨時措置法が制定されました。それ以来、四十五年、四十九年、五十四年の三回、五年刻みで延長されてきたわけですが、今回の法改正でさらに五年延長ということになりますと、実に法制定時から二十五年間、つまり、臨時と言いつつこの措置法が生き続けてきたことになるわけなのです。  法制定当時の大きな目的というか、柱は三つだったと思います。一つは内需優先の確保、二つ目には国内肥料価格の安定、三つ目、輸出は日本硫安輸出株式会社の一元にすると。ところが、今日にありましてはその輸出株式会社も廃止されまして輸出そのものが激減しております。内需前提の機構改善を進めていくということで大変情勢が変わっていることは私が言うまでもないと思います。ということは、つまり、この法律の大きな柱の中心は国内価格安定というところにあるのではないかと思うのです。  そこで、公正取引委員会にお尋ねしたいのですが、この国内価格安定のためにメーカーと販売業者価格取り決めの共同行為を行うわけです。それが独禁法の適用除外ということになっているわけで、こうした独占禁止法の適用除外という行為が今もそしてまた今後も必要なのだろうかということなのです。  実は、ちょうど五年前でしたか、公取の見解をお尋ねしました際に、昭和五十四年三月二十二日の当農水委員会で、当時の樋口嘉重調整課長だったかと思うのですけれども、「今後五年間延長すればそれ以上は延長する必要はないと考えられますので、今後は本法を廃止する方向で根本的に再検討していただきたい」と、こういう発言をされていると思うのです。さらに五年延長ということを公取としてどうお考えになっているのか、その辺のお考えを聞かせてください。
  161. 糸田省吾

    説明員(糸田省吾君) ただいま先生から御指摘がありましたとおり、前回の改正法案御審議の際に、私どもの方からまさに先生おっしゃったとおりの発言をさしていただいたわけでございます。  この肥料の問題でございますけれども、私ども考えますのに、現在の我が国の農業の置かれています状況とか、あるいは我が国の肥料工業が非常に厳しい構造的な今問題に直面している状況、こういったことからいろいろ考えてまいりますと、これまでこの法律が果たしてきた役割というものもそれなりには評価できるのではないかというふうに考えているわけでございます。  ただ、先生おっしゃいますとおり、私どもといたしましては、一般論でございますけれども企業の事業活動におきましては公正で自由な競争を維持する、あるいは促進するという独禁法の基本的なルールという観点からいたしますと、こういった制度につきましては例外的なものであって、必要最小限にとどまってしかるべきものではないか、そういった認識を実は持っておるわけでございます。  しかしながら一方、先生御承知のとおり、現在我が国の肥料工業につきましては累次の石油危機の影響を受けまして、先ほど申し上げましたとおり、構造的に今困難な状況に置かれているといったことから、現在特定産業構造改善措置法のもとで構造改善を進めている最中と、そのように承知いたしているわけでございます。したがいまして、この構造改善がより短期間のうちに、かつ円滑に推進するということが当面の緊急の課題ではないのかというふうに考えておりまして、そのためにこの法律がさらにもう一回延長されるということも私どもとしてはやむを得ないのではないか、そのように承知いたしているわけでございます。しかしながら、原則は先ほど申し上げたとおりでございます。この構造改善もこれは六十三年の六月までで完了する仕組みになってございますので、私どもといたしましては、今度のこの法律延長されまして、この延長期間内に構造改善が所期の目的を達成することができるように、その構造改善の徹底ということに関係方面の最大限の努力が必要であって、もうこれが最後であるといったような意識で構造改善を進められるということが一番望ましいのではないか、そのように考えている次第でございます。
  162. 下田京子

    ○下田京子君 いろいろお述べになったが、もう一回の延長はやむなしということで対応されているように受けとめました。一般論といいながらもお話ございましたが、私はやはり正直言いまして、公正な競争が阻害されているということによりまして、一般消費者であります農業者の利益が守られているかというとそうではない。これははっきりしているのではないかと私は思うのです。  そこで、農水省にお尋ねしたいのですが、法制定当時から一貫して問題になってきたのは何かといいますと、実は輸出価格国内価格の格差の問題なのです。系統農協を考える会の皆さんが、なぜに輸出価格より高い肥料を買わされるのかとい うふうな批判を挙げられております。これはほかにもお声を聞いております。  具体的に、安定法適用の十三年間、つまり昭和三十九年から五十二年の硫安価格で一体どうなのかということを見てみますと、国内価格を一〇〇とした場合に輸出価格が七一です。約三割も格差があることを指摘しているわけです。今回政府が出している資料をもって五十三年からの推移を見ても、国内価格輸出価格の比で五年平均で硫安は七一%、尿素が六八%というふうになっております。先ほども大臣お述べになりましたが、非常に農業をめぐる事情が厳しい中にあって、肥料価格の低位安定ということに努めたいというお話がございましたが、こういう格好で輸出価格国内価格の差のあることは当然だというふうにお考えでしょうか。
  163. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは輸出価格国内価格との差の問題というのは、最近出てきた問題ではなくて、下田委員も御高承のとおり、まさにそのことが昭和二十九年の肥料二法制定の一つの動機になった問題でございます。肥料工業の復興の過程におきまして、二十年代後半におきましてようやく輸出という道が開けてまいりまして、輸出が進められる過程においてどうも国内価格に比べて輸出価格の方が安いということは、輸出による損失を国内に転嫁されておるのではないか、こういう問題意識が出てまいりまして、それが肥料二法制定のきっかけとなったわけでございます。すなわち、二法の内容といたしましては、需給計画によりまして輸出の量は適正な数量にとどめる、同時に、国内価格原価をもとにして当時は政府が決定をする。反面におきましては、肥料工業につきましては、当時は硫安工業でございますが、合理化を進めると同時に輸出の窓口一元化という恩典も与えまして、輸出競争力、交渉力を強化するということで制度ができ上がった経過があるわけでございます。  したがいまして、法制は変わりましたけれども、今日におきましても輸出の赤字は国内に転嫁させない、輸出によって操業度が上昇いたしました分のコストメリットというものは当然原価に反映いたしますので、それはちょうだいをいたしますけれども輸出による損失というのは原価を構成する要素ではございませんから、これは国内価格には反映をさせないということで一貫して対応してまいりました。もっとも、今お述べになりました金額的な比較ということになりますと、単純に比較することには若干問題がございまして、国内価格の方が消費地最寄り駅までの運送費を含む生産業者の販売価格でございますが、輸出価格の方はFOB建てでございます。また荷姿におきましても、国内は大体二十キログラムの樹脂袋を基準にして決めておりますが、輸出の方におきましては、五十キロの樹脂袋ないしはフレコンまたはばら積みという荷姿の差もありますし、また為替レートの変動とか、手形サイトの差というものもございますから、単純に重量建ての価格のみで比較するということについては問題なしとしないというふうに考えております。
  164. 下田京子

    ○下田京子君 今お話しになりましたように、価格の仕組みそのものが違うということなのですけれども、実はこの輸出価格国内価格と同様の条件になった場合、一体どうなるかというデータをお持ちでしょうか。簡単にお答えいただきたいのです。お持ちでしょうか、そうでないでしょうか。
  165. 小島和義

    政府委員小島和義君) 国内価格並みの価格輸出しようとすれば売れないという事態が出てくると思います。逆に、現在の輸出価格並みで国内も全部販売をするとすれば化学肥料工業は確実につぶれるだろう、かように思います。
  166. 下田京子

    ○下田京子君 今言ったことに答えていないでしょう。ここに全農が示したメーカー側のデータをもとにまとめた資料がございます。例えば五十七肥料年度の尿素の場合なのですけれども、この資料によりますと国内価格はトン当たり七万円で、輸出価格はトン当たり四万三千七百円なのです。この比は六二%になりますが、この輸出価格国内と同様の条件で換算した場合どうなるかということで資料を示しているのです。その場合には五万八百七十八円でそれでも国内価格の七三%だ、こういうことになっているわけなのです。ですから、国内価格輸出価格よりも約三割高になっているということが示されているのです。私はデータがあるかどうか、換算したことがあるかどうかと聞いているのです。あったらお出しくださいませ。
  167. 小島和義

    政府委員小島和義君) 私どもの方でもそういう試算をしてみたことはございまして、ただいまおっしゃいました全農の試算とはあるいは多少食い違っておるかもしれませんが、私どもなりに比較したものがございます。
  168. 下田京子

    ○下田京子君 委員長、今の試算の資料を要求したいと思うのです。これは、全農は農民の皆さん方に納得いくようにといっていろいろメーカーの資料を使って説明している資料なのです。若干違うということだけれども、試算した資料があるということです。試算だから私はいいと思うのです。実は「全農通信」の二月二十五日付、これは硫安しか紹介されていないのです。実は硫安というのはこの法の対象になったのは三十九年度からです。それから尿素は四十五年度から対象になっておりますからその資料がどうなのか、試算で結構ですからそれは要求したいと思います。委員長よろしいですね。
  169. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 出せますか。
  170. 小島和義

    政府委員小島和義君) 先ほど来話題になっておりますように、原価にかかわります問題でございますとちょっと問題がございますが、そうでございませんで、現在の輸出価格国内価格に引き直せばそういう数値になるかという試算でございますれば、お出しできないことはないと思います。
  171. 下田京子

    ○下田京子君 次にお尋ねしたいのですけれども輸出価格の赤字分を国内価格にはね返らせないようにしているのだ、完全に遮断されているのだというふうなお話なのですけれども、「全農通信」でも、輸出の赤字分は国内価格の決定には完全に遮断されているというふうに述べられています。そうでしょうか。
  172. 小島和義

    政府委員小島和義君) この肥料価格取り決めは、提供いたしております原価がもとになりまして交渉によって決定されるわけでございます。原価というものの考え方でございますが、これは生産及び販売に投与されました経済的な価値ということでございますから、売買の結果として出てまいります損益というものは、これは原価を構成しないというのが原価計算の基本的なルールでございますから、輸出によって赤字が出ましても、あるいは利益が出ましても、その分については原価には一切関係のない問題でございます。
  173. 下田京子

    ○下田京子君 つまり今のお話ですと、国内価格輸出価格の赤字分というのははね返っていない、完全に遮断されているというお話のようですが、私はそうじゃないと思うのです。なぜなら、合理化メリットの還元がすべて国内価格の引き下げに還元されているわけじゃないということなのです。いいですか。この点は法制定当時も随分議論されたのです。合理化メリットがメーカーに帰属する分は実質的に輸出赤字分の補てんと区別はできないのですね。このことについては三十九年五月十九日の衆議院の農水委員会で、当時の倉八軽工業局長が答えているのです。合理化によって例えば十円のメリットが出たとすると、従来は十円そのままメーカーが取ってしまった、今度法律ができたということは、その際五円はメーカーに、あとの五円は農家に配分しようということですから、メーカーの五円分が赤字に補てんというならそうも言えないことはないでしょうと、こういうふうに言われているのです。つまり、合理化メリットのすべてが農民に還元されていないという以上は、輸出価格の赤字が国内価格に全くはね返っていないのだという論理は成り立たない。どうですか。
  174. 小島和義

    政府委員小島和義君) ただいまのお話は、合理化メリットをフィフティー・フィフティーで分 けるということをおっしゃっておられるのではなくて、コストと申し上げましたのは、これは全企業の平均的なコストをベースにして物を考えているわけでございます。したがいまして、そのコストよりも安いというコスト企業はございましても、その分だけ安い値段で国内取引するわけじゃございませんで、国内一本価格でございますから、その企業として見ればそれなりの余剰が出てくるということをおっしゃっておられるわけでございます。ですが、その分を、コストの計算上赤字部分原価計算に織り込んで考えておるということでは決してございませんで、ただいま優良企業の場合で言えばおっしゃるとおりでございますが、平均コスト考えましても、赤字であるという企業の場合には、その赤字ないしは輸出による赤字というものは当該肥料部門においては当然吸収し得ないわけでございますし、また、そういう赤字があるからといって、原価がその分だけ膨らむという性格のものではないということを申し上げているわけでございます。
  175. 下田京子

    ○下田京子君 逆に言えば、合理化メリットでメーカーに帰属する部分が赤字に補てんされているかどうかということはわからないのです。私は局長にはっきり申し上げておきたいのですが、さっき、合理化メリットはすべて農民に還元されているような、いいかげんなお話ございました。これは全く問題だと思います。そういうことであったなら全農自身だって、この「全農通信」の中で、法運用に当たって合理化メリット農業者にも全部還元されるようになどということは言わないわけなのです。法制定当時からもうこのことはわかり切ったことなのです。そういう意味で非常に局長の今の御答弁というのは事をあいまいにしているということを申し上げておきたいと思う。  コスト計算の問題なのですけれども、さっき言われました操業度の問題ですね、その操業度がアップすれば国内価格の引き下げになるのだと、こう言いましたね。確認だけ。
  176. 小島和義

    政府委員小島和義君) 操業度が上がれば、結果は当然他の要素にして等しければ下がるという性格を持っております。
  177. 下田京子

    ○下田京子君 ところが、現行の価格交渉はどうなのかということで私が聞きたいのですが、やはり「全農通信」五十九年二月二十五日付なのですけれども、実際の操業度ではなくて、適正操業度でコスト計算をしている、こういうふうに説明されています。そこでお聞きしたいのですが、単純に数字だけ、尿素について現在の操業度及び適正操業度はそれぞれ何%でしょうか。
  178. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 私どもが交渉当事者にお示しをする資料は、実際に前年にかかったコストでございますので、したがいまして、操業度は現実の操業ということで計算をされております。しかしながら、今度は現実に交渉をなさる当事者は、それから先の半年以降のコスト状況を相互に相談をし、予測をしながら交渉をなさるわけですから、その段階でそれよりも高い操業度で交渉が行われるということがあり得るかと思っております。現実の操業度がどのくらいであるかということを申し上げますと、私の今手元にございます資料では、例えば尿素につきましては、五十八年の七―十二月では稼働率が三八%ということでございます。
  179. 下田京子

    ○下田京子君 適正操業度は。
  180. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 交渉におきます適正操業度は、交渉当事者同士の話し合いにより行われますので、私どもとしては一律には提示はいたしておりません。
  181. 下田京子

    ○下田京子君 ごまかしましたね。つまり、特定産業構造改善臨時措置法に基づいて構造改善計画がございますでしょう。その最終年度が言ってみれば適正操業度じゃないですか。それは八七%です。ですから、全農の言い分を言いますと、その改善しようという目標、つまり適正操業度八七%をもって交渉に当たっているというふうにも見られるのです。そういうことになりますと、実際にフル操業しているかどうかということで、現在の輸出による操業度アップが国内価格の引き下げに役立っているのだなどということはもう論外になってしまう、こう言えることがはっきりしたと思うのです。  次に、コストの問題で聞きます。時間がないから急がせてもらいますけれども、前回の法延長のときに私やはり聞いたのですが、硫安コスト問題です。  回収硫安が今七割でしょう。副生硫安が三割でしょう。特にその回収硫安の場合でカプロラクタムの廃液の中から出てきます硫酸の評価はどうしているのですか。あるいはまた、酸化チタンの場合はどうなっているのですか。この硫酸の評価が回収硫安コスト計算にとって大きな意味を持つというのは私が指摘するまでもないと思うのです。聞きたいのは、前回の私の質問で、この原価の評価基準を策定できないかということなのです。その際に、当時の大永局長が、統一的な基準をつくるべきではないかという議論が大分出まして内部でも検討した、しかし今では難しい、こういうお答えだった。あれから五年たちました。さっきの御答弁では、回収硫安の際には硫酸の評価はかなり低く見ているという話がございました。低いか高いかではなくて、この原価の評価基準はできたのでしょうか。
  182. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 現在の原価の評価は、基本的には企業会計原則というものに基づいて行われておりますが、この企業会計原則によりますと、主産物の製造工程から生ずる副産物の評価については、当該副産物の利用によりそれを購入した場合に比し節約されるべき物品の見積もり購入価額によるべきであるということが原価計算基準第四節二十八項第三号に書いてございます。しかしながら、実際の計算に当たりましては、なかなかこれでは市場で通らないというのが実情でございます。したがいまして、硫酸におきましては非常に低く評価されておりまして、回収硫安コストは添加いたしますアンモニア、そのほかエネルギーとか、こういうあたりが中心のコストになっているというのが実情でございます。それ以上の詳細は、いろいろ検討はいたしておりますが、なかなか統一的な基準というのは難しいというのが実情でございます。
  183. 下田京子

    ○下田京子君 今もなお原価の評価基準というのが難しいというお話で、硫安の主原料ともいうこの硫酸のコストがわからないということになりますと、全くメーカーが恣意的に決めようと思えば、それは会計原則云々と言われますけれども、否定できないわけですね。  さらにお尋ねしたいのですが、副生硫安コストはどうなっていますか。つかんでますか。
  184. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 副生硫安についても企業会計原則上同様の扱いになっておりますが、現実の問題としましては、副生されますアンモニアの評価が非常に低く評価されておりまして、副生硫安の評価は、その主たる中身は、追加されます硫酸その他のものが中心になって評価されるというふうに理解いたしております。
  185. 下田京子

    ○下田京子君 五十七肥料年度で見ますと、硫安の出荷の最大メーカーはどこですか、新日鐵でしょう。出荷数量二十三万一千三百九トン、占有率は実に二三・七%となっています。新日鐵と言えば資本金が約三千三百億円の銑鉄生産メーカーです。銑鉄生産に伴って副生される硫安コストがどうなっているのか、原価がどうなのかということが非常に大きな意味を持つのです。新日鐵だけでも全体の硫安生産の約四分の一を占めているのです。原価をつかんでいますか、つかんでいないのですか。
  186. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 現在の硫安製造は宇部興産が二〇% 三菱化成が一四%で、新日鐵が一〇%になっております。それで、新日鐵からも法律に基づきまして硫安製造コストを聴取いたしております。
  187. 下田京子

    ○下田京子君 今のはまともにお答えしていないでしょう。原価をつかんでいるかどうかとお尋ねしたのです。答えられないのです。特にこれは副生硫安もそうですけれども回収硫安の場合もですが、需給に無関係生産されるわけです。ですから、コストは恣意的に決めようと思ったら幾ら でも決められるのです。  実を言いますと、ここに「わが国アンモニア化学肥料工業に関する調査研究」というのが社団法人の化学経済研究所によって出版されております。大変厚いからコピーだけ私とってきましたけれども、この中に何と書いてあるかといいますと、硫安は世界的に副産品となっているのでコストの比較は不可能である、そう断じているのです。こういう結論を出しているのはメーカー自身です。今問題になっております日本硫安協会の専務理事さんだとか三菱化成工業の副社長さんだとか三井東圧化学の常務取締役だとか住友化学工業の常務取締役だとか皆さんお入りになって、だから無理なのだ、こういうふうにお述べになっているのです。そこを私が何度もあなたたちに、原価がつかめるのですか、難しいのじゃないですか、どうなのですかということでお答えを求めているんです。どうですか。
  188. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) それらの企業につきましても、法律に基づきまして原価調査をいたしておりますので、それらの企業がそれぞれの硫安なりアンモニアをどのように評価をしておるかというのは私ども報告を受けております。
  189. 下田京子

    ○下田京子君 農水大臣、お答えいただきたいのですが、繰り返しますけれども、さっき農業をめぐる事情は大変だ、その中で肥料の占める割合というものも重要な意味を占めるのだ、だからそれが肥料価格の低安定につながるように、こういうことをお述べになったのです。とすれば、まともに聞いていたら私わかると思うのです。会計原則に基づきコスト計算は企業からとっています、こう言っているのです。企業から出されたコスト計算をもとにして、交渉のいろいろなあれに立ち会って一体本当に農民の立場に立てるのですか、どう思います。
  190. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 報告を伺いますと、メーカーからの実績原価はとってある、しかし、それを役所がチェックしてやっておるということでございますので、私は役所の方を信用しております。
  191. 下田京子

    ○下田京子君 私も大いに信用したいのです。信用に値するような仕事をやっていただきたいのです。ところが、その仕事がメーカーから届けていただいているというのです。そのメーカー自体が、コスト計算するこのコストなるものが、実際は計算できないものなのだということを認めているというところが最大の問題だと私は言いたいのです。  最後になりますけれども国内価格は限界的なコストで決定されているとずっと言っております。そして、農業を守ると言っております。しかし、実態は明らかじゃないのです。しかも、硫安のように正確な原価がつかみにくいのです。大事なのは原材料がどのくらい占めるかということで、いろいろお聞きしますと、コスト計算の際に原材料の占める割合というのは九割を占めているというのです。その原材料のうちの大事な、例えば硫安なら硫安の正確な原価もつかみにくいという問題です。しかも、硫安の主なメーカーはさきに述べましたように新日鐵が筆頭。資本金が五百四十億円の三菱化成と合わせて二社だけで四割のシェアを持っているのです。上位五社で六割のシェアでしょう。特に尿素の問題は、今回もう時間がないから申し上げませんでしたけれども、これは大手総合化学会社の寡占体制ができ上がっています。五十七年度の場合で三菱化成をトップに二九・八%でしょう、この一社だけで。それに三井東圧、三菱瓦斯、宇部興産、日東化学、この五社だけで総出荷量の八二・二%を占めているのです。輸出が落ち込んでいます。それから工業用の需要も横ばい、停滞です。需要が緩和している中で、なぜ肥料用についてだけ独禁法の適用除外をしなきゃならないのですか。本当に農民の利益を守っているというふうに言えるでしょうか。私は、これが非常に問題であるということを重ねて指摘して、質問を終わります。
  192. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 肥料価格安定等臨時措置法の前身として肥料二法というのが制定されました。これが昭和二十九年でありました。当時は海外ダンピング、さらに国内価格の割高という情勢にあったわけでありますけれども、    〔委員長退席、理事北修二君着席〕 さらに、この肥料二法が十年続いた後三十九年に肥料価格安定等臨時措置法が制定されたわけであります。  この制定の場合には、もはや肥料自由化をした方がいいという論議と、いや、やはり法制定が必要だという論議が両方あったように伺っております。しかし、このときもやはり基本は肥料内需確保の安定、さらには国内価格の安定、また、輸出の一元化ということを基本に制定されたわけであります。  それから既に二十年たっておるわけでありますけれども、この二十年の間に肥料をめぐる情勢は非常に大きく変わってきております。今日においてこの法律は、先ほどから何度も、やはり構造改善を進めておるというのが最大の理由だというふうに伺っておりますけれども、これはそのとおりですか。
  193. 小島和義

    政府委員小島和義君) 化学肥料工業構造改善というのは、現時点におきます最大の要素であるということは私ども考えておりますが、それだけをもって延長理由というふうに考えているわけではございません。農業関係事情、さらには最近の肥料の流通の変化といった事情も含めて延長理由といたしているわけでございます。
  194. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 いずれにしましても、状況が変化する中で同じ法律がそれぞれの役目を果たしながらきておるということになるわけですけれども、この法律は先ほどからも論議されておりますように、独占禁止法の適用除外を定めたものであり、あくまで臨時措置法として決められておるものであります。それならどういう状態になればこの法律が不要になると考えられるか、この点をお伺いしたいと思います。
  195. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは、先ほど公取の方からもお話がありましたように、独禁法の例外条項というのはあくまでやむを得ない場合に限って認められる。また、その期間もできるだけ短い方がいいというのが現在の独禁法の基本的な目的であろうというふうに考えているわけでございます。  したがいまして、どういう事態になれば法律が要らなくなるかということじゃございませんで、この法律期間が経過いたしました後において延長をすべき新たな理由がない、ふさわしい理由がないということになれば、この法律は廃止せざるを得ないというふうに考えておるわけでございまして、ある種の事態が出てきたら廃止されるという意味ではないというふうに考えております。
  196. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 現在既に法律の期限が来ておるわけでありまして、これを延長するというのが提案であります。それならば、現在はどういう理由があるからこれを延長しなければならないのか、構造改善の問題もその一つだと言われましたけれども理由を列挙していただきたいと思います。
  197. 小島和義

    政府委員小島和義君) この法律延長をお願いいたしております理由は、大きく分けますと三つございます。  一つは、農業自体が大変困難な局面に遭遇をいたしております。すなわち、いろいろな農産物におきまして需給のアンバランスという問題が出ておりますし、特に水稲につきまして、水田利用再編対策をこれから三期目に移行させるという大変重要な時期でございます。また、海外からの農産物の輸出圧力も強まっておりまして、それに対処して国内生産体制を整備するという段階に立ち至っておるわけでございます。農業側といたしましてはこういう非常に難しい時期でありますだけに、現在の化学肥料についての価格取り決めの仕組みを何とか延ばしてもらいたい、こういう要請があるわけでございます。また、化学肥料工業の側といたしましては、これを今後内需中心型の産業に切りかえていく。同時に、工場の集約化、あるいは原料転換等を含めまして一層コストの引き下げを図り、国際競争に耐え得るような体質に改 善をしていくという局面に立ち至っておるわけでございまして、その意味でも、価格の安定的な取引というものを望んでおることは紛れもない事実でございます。一方また、流通面から申しますと、国鉄貨物駅の集約化、長距離直行便の運送というふうなことから、長年かなりのウエートを占めてまいりました肥料の国鉄輸送という問題が物流面において大きな変革に差しかかっておるという時期でございます。ただいまの肥料生産業者販売価格は着駅オンレール渡しというのが基準でございますから、そういう物流の変化というものが、価格の形成に対していろいろな意味で影響を与えてくるという問題を含んでおるわけでございます。  以上申し上げました三つの理由を挙げまして、この法律延長ということにつきまして公正取引委員会の方とも折衝し、その御了解も得るという経過でございます。
  198. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 先日、参考人を招いてこの問題でお尋ねをしたときに、参考人の中の意見として、この法律はいわば空気のようなものだと、空気のようなものだということは、なくなれば窒息してしまうということであります。それから、臨時措置法ではなくてできるなら恒久立法にすべきものだという御意見もありました。私は、今挙げられた理由の中にも一つの共通する大きな問題として、肥料特性というものが絡んでおると思うのです。例えば非常に価格弾性値が小さい、あるいは季節的需要というものが固まって起こる、    〔理事北修二君退席、委員長着席〕 さらに輸送というのが、重量物資の分散輸送ということからして、非常に需給のアンバランスが起こりやすい物資である、同時に、これが価格の大きな変動ということをもたらす、こういう肥料特性というものがその一つの共通した原因となって価格の安定が図られないとか、あるいは輸出ダンピングが起こるとか、こういうことが起こってきたのだと思います。もしこういうものに由来するならば、いかなる状態にあっても価格の安定のためには何らかの立法措置なり行政の介入が必要だということになるわけであります。この点はいかがですか。
  199. 小島和義

    政府委員小島和義君) ただいま田渕委員お話しになりましたような化学肥料については、商品としてのいろいろな特性がございます。それに加えまして、先ほど来問題になっておりますように、アンモニア系の窒素肥料については原価のわかりにくさという問題もございますので、それらを含めて考えますならば、化学肥料価格取り決めについて何らかのルールがあった方が望ましいというのが農業関係者のおおむね一致した意見でございます。私どもも、そういう仕組みをいわば恒久化するということについてある種の願望を持っておるというととは否定するつもりはないわけでございます。ただ、先ほど公取の方がおっしゃいましたように、現在の経済社会においては取引というものは自由であるというところにあって、それについて何らかのカルテル行為があるということは、必要最小限度やむを得ない範囲にとどめられるべきであるという一つの原則みたいなものがあるわけでございますから、そういう原則の中におきまして、許される最小限の期間に限りましてこういう法制が成り立つというところにまた非常に問題があるわけでございます。  先ほどおっしゃいました空気のような存在というのは、昭和二十九年に硫安マル公制が動き出しまして以降約三十年たっておるわけでございますから、ただいまの肥料取引関係者は、こういうシステムの中になり切っておるという問題がございますので、こういったものがなくなった場合に起こり得る事態というものについて、なかなか想定することができにくいことになっておるわけでございます。その意味で、関係者側の希望としては、何らかの安定した制度というものを望んでおることは私どももよくわかっておるのでございます。また、今次法律の提出に当たりましても、何かそういう新しい仕組みが考えられないかどうかということについていろいろ研究をした経緯もあるわけでございますが、どうも現行法にかわるべき新しい仕組みというものもちょっと考えにくいというままに五年間の延長をお願いする経過、次第になったわけでございます。
  200. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 もしこの法律が今なくなったとすれば、現実にどういう弊害が予想されますか。
  201. 小島和義

    政府委員小島和義君) これはなかなか想定をしにくいのでございますが、ただ、現在特定肥料以外の肥料につきましても全農が個別のメーカーと相談をいたしまして、大体その種類と申しますか、メーカーの数はそう多くないのが普通でございますが、その価格取り決めをいたしまして、特定肥料同様に一本価格によりまして値決めを行っているということはあるわけでございます。その間に独禁法の特例ということもございませんし、また、政府原価を適用するということもございませんから、個別のメーカーを相手に手探りで交渉し、最終的には一本価格で決めておるということでございますので、仮にこの法律がなくなりますれば、全農としては今特定肥料以外について値決めを行っておりますのと同じ方式をとりまして、極力現行法下における価格及び流通の安定と同じようなことが実現できるように努力を払うだろうということは想像できるわけでございます。  しかし、その結果としまして、短期的にはともかく長期的にどんな事態が出てくるのかということにつきましては、私どももなかなか想定できにくいわけでございますし、まして、その交渉当事者である全農にとってみれば、なおさら先々についての見通しが立てにくいという問題もございますから、それだけに全く行政の関与がなくなってしまうというその事態に対して、大変大きな不安を抱いているというのが実情ではないかと思います。
  202. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 肥料化学工業の立場からは、今の点についてどう考えられますか。
  203. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 肥料化学工業は御承知のように非常に深刻な過剰設備の状態にございますので、もしも現状で肥料取引を完全に自由にするというふうにした場合には、この過剰設備背景といたしまして過当競争が多分ほぼ確実に起こるであろうと思われます。そういたしますと、せっかく五年後を目指して構造改善を行い、自由な状態になっても安定的に供給ができるような体制をつくろうとしているそういう動きが円滑に動かなくなる、こういう心配があるわけでございますので、何とか今回の延長を限りといたしまして安定的な供給が可能となるような体制づくりの方向に持っていきたい、かように考えております。
  204. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 そうすると、通産省の立場とすれば、現在の構造改善が進み、過剰設備の状態がなくなれば特にこの法律は必要としない、そういう解釈ですか。
  205. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 今小島局長申し上げましたように、本法延長をお願いするに当たりましてはいろいろ考えるべき事項があるわけでございますが、化学肥料工業構造改善という問題のみから考えますと、構造改善が進展をし、安定的な供給が可能になるという状態になれば、この法律は必要がなくなるというふうに考えております。
  206. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから、法律の第二条第二項に価格取り決めについて規定されておりますけれども、この中の適合条件の一つとして「農業又は肥料工業の健全な発展に支障を与えるものでないこと。」というのがあります。これに適合しなければ農水大臣及び通産大臣取り決め変更を命ずるか締結を禁止しなければならない、こういうふうに決められておるわけでありますけれども、この場合の価格の判断基準というのは何によって行われるわけですか。
  207. 小島和義

    政府委員小島和義君) 価格取り決めに当たりましては法第三条によりまして、農水大臣及び通産大臣がその取り決め締結のために必要な資料の交付をするということになっておりまして、その中の最も重要な資料が過去一年間におきますところの実績原価でございます。その実績原価がそのまま価格になるわけではございませんで、約 半年、厳密に言えば一年半ということになりますが、その期間のずれがございますから、その間に現に起こっている事態の変化、これから起こり得る状況変化というものを織り込みまして想定の原価をつくりまして、それがその価格のもとになるわけでございます。したがいまして、提供いたしました実績原価農林水産省及び通商産業省においてももちろんこれを保管いたしておるわけでございますし、また、その後の期間経緯に伴いまして原材料価格その他の事情変化がございますから、それも適正にトレースをいたしまして、それらに引き比べまして実際の取引価格が適正であるかどうかというものを判断する、かような仕組みになっておるわけでございます。
  208. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それらの資料あるいは実績原価というようなものもあくまで交渉のための参考資料であって、交渉はあくまでも当事者の納得で決まるものだと思うのです。その場合に、価格取り決め農業または肥料工業の健全な発展に支障を与えるものであれば大臣はその禁止を命ずる、だからその実績原価そのとおりでなくてもいいわけなのです。ただ、そういう変更を命ずる場合の、上限か下限かわかりませんけれども、それの基準はどういうふうにして決められておるわけですか。
  209. 小島和義

    政府委員小島和義君) これは数値的な物差しでこれぐらいはみ出したらということはなかなか申し上げにくいわけでございまして、そういう事態が生じました場合の具体的な判断によるよりしようがないと思っておるわけでございます。ただ、この制度発足以来この価格の問題につきましては通産、農水両省で常に関与いたしておりますので、その意味ではこの二条の第二項一号にございますような観点というのは双方において十分監視がきくもの、かように考えておりまして、これまでも特に問題を起こしたことはなく推移をいたしております。
  210. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 我が国の肥料化学工業の将来展望についてどう考えられますか。
  211. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 今回の構造改善のもとになりました産業構造審議会の答申によりますと、我が国の肥料工業は、従来輸出を念頭に置いたアジアの肥料工場という考え方で発展をいたしてまいりましたが、今後は内需に基盤を置いた工業という形で活性化を図るというのが基本的な考え方でございます。したがいまして、内需の伸びに応じて適正な稼働率で稼働し、それから効率的な設備に集中あるいは企業提携によって集約をいたしまして、輸入品と十分競争できる価格国内供給できる、そういう化学肥料工業というものを念頭に置きまして構造改善を現在進めております。
  212. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 価格が輸入品並みになるというめどは、大体いつごろを目標にしておりますか。
  213. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 構造改善が今後五年間、既に昨年から始まっておりますから四年間になりますが、これをその期間内にそういう状態に持ち込むことをめどといたしております。
  214. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから、現在でもアウトサイダーがあると思うのですけれども、アウトサイダーはどの程度ありますか。例えば生産業者の中のウエート、あるいは輸入品の占めるウエート、さらには販売業者、それぞれについてお伺いしたいと思います。
  215. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) メーカー関係で申し上げますと、硫安の単肥のメーカー十社、これは全数が参加いたしております。それから尿素の単肥のメーカー八社、これも全数が入っております。高度化成肥料につきましては、メーカー四十六社中二十七社が参加いたしておりますので、アウトサイダーが十九社、生産シェアでまいりますと一六・五%でございます。  それから、輸入につきましては、単肥の輸入というのはほとんどございませんで、化成肥料用の原料の輸入という形でございますので、取引における輸入のシェアというものは微々たるものかと思います。
  216. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 販売業者は。
  217. 小島和義

    政府委員小島和義君) 販売業者シェアということになりますと、これはただいまの価格取り決めに関与いたしております全農が大体全体の流通肥料の七割強のシェアを持っているわけでございますから、その残りが価格取り決めに関します限りはアウトサイダーということになるわけでございます。具体的には農協取引以外の肥料につきましては各肥料メーカー、つまり全然持っていないのもございますが、元売の段階の商社を有しておるわけでございまして、通常の場合では大手総合商社がその役割を果たしておるわけでございます。会社の数にしてちょっと正確にただいま把握いたしておりませんが、かなりな数に上っているわけでございます。
  218. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 現在の法律では輸入も禁止されておるわけではないし、アウトサイダーも禁止されていないわけですけれども、輸入がほとんどないというのはどういう理由からでしょう。
  219. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 今申し上げましたのは、単肥で輸入がないということでございまして、原料面では輸入が既に行われております。我が国の肥料では現在化成肥料が主流を占めておりますが、化成肥料の場合には、各需要家の非常にきめ細かい需要に応じて日本全国に配送をするわけでございますので、外国からその物を輸入するというのは経済的に引き合わないという状態でございます。したがいまして、尿素とか燐安とかいうような形の原料として輸入をされておりまして、それを二次加工メーカーが加工して日本全国に販売をする、こういう形をとっております。
  220. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 現在アウトサイダーが価格決定に与える影響というものはどうなのですか、ほとんどないのか、あるのか。
  221. 小島和義

    政府委員小島和義君) この法律が制定されましてから以降、いわば商系の元売団体と申しますか、先ほど元売商社の数をお答えできませんでしたが、十二社ございますが、十二社から価格取り決めに参加をしたいという意思表明があったことはございません。元売団体としてこれは法律に基づく団体ではございませんが、肥料商の団体があるわけでございます。その団体がいわゆる全農と並ぶものとして参加さしてくれたらいいのではないかという話が出たことがございますが、最近においてはそういうお話は出たことはございませんし、また、全農と生産業者の間に取り決めました価格におおむね右倣えいたしまして現実取引が行われているという実態もございますので、それなりに現在のシステムはいわば定着を見ておるというのが現状ではないかと思います。
  222. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 いずれにしても、こういう制限あるいは競争に対する規制というものは最小限度のものであることが望ましいわけで、したがってアウトサイダーというものもある程度ふえた方がいいのではないかという気もするわけであります。同時に、構造改善事業もできるだけ精力的に進めていただいて、できるだけ早くこういう法律がなくてもいけるような体制をつくっていただきたいと思います。  最後に、大臣に一言だけお伺いをして終わりたいと思います。
  223. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 先ほども答弁申しましたが、この法律を通していただきまして五年間、その後では再提出というようなことで延長を求めないというようなことを念頭に置きまして、一生懸命努力してまいります。
  224. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 本法案が四回延長するという意図も、結局は生産者に安い肥料、しかも安定供給の確保を確かにするという意図であるわけです。ところが、資源は有限でありますから、私はその決定的条件の一つは、絶対量がどういうふうになっておるかというこのことが非常に大事であると思います。そういう見地から、統計によりますと世界の肥料需給は過剰基調で推移しておる。ところが、その推移は肥料自給と結びつけてどのように変化していくのであるか、その見通しについてお聞きしたいと思います。
  225. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 窒素肥料につきましては、御承知のような四十八年の石油危機を契機と いたしまして発展途上国での自給度が一段と向上いたしておりますし、それからソ連、東欧圏等で天然ガスを原料といたしまして生産が大幅に増大をいたしたということで、供給が世界的に非常に増強されております。それで、今後はソ連、東欧等は輸出市場への進出を目指しまして、さらに生産量を高めていくであろうというふうに考えておりますが、他方欧米先進国ではコストの高い生産設備の休廃止が日本と同様進展をいたしておりまして、需要が片方で拡大をすると同時に、片方でそういう過剰設備の処理というものが行われることによりまして、だんだん均衡していくというふうに考えております。  今後、窒素質の肥料につきましては、輸出の余力を持つのがソ連、東欧圏が中心になるのではないかというふうに考えております。それから燐酸質の肥料でございますが、これはアメリカが世界の燐酸質肥料の三割を占めておりまして、圧倒的な輸出余力を持っておりまして、今後ともこういうポジションを維持していくだろうというふうに考えております。また、モロッコとかヨルダンというような発展途上国におきましても生産量が増大いたしますし、また同様に、東欧圏でも設備の増強が行われるということで、世界的に供給力が増大をされてきております。他方、燐酸質肥料需要の方でございますが、これは御承知のように発展途上国で着実に需要が増大をいたしてまいっておりますので、今後供給はバランスの方向に行くのではないかというふうに思っております。それから、カリ肥料につきましてはおおむね均衡状態で推移いたしておりますので、そういう状態で今後とも推移するのではないかというふうに考えております。
  226. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、今この地球上では世界的に貧困や餓死者がたくさんおるわけなのです。そのことをどのように今認識しておられるか、お尋ねします。
  227. 小島和義

    政府委員小島和義君) 確かに地球上のかなりな地域におきまして極端な飢餓状態があるということは私ども承知をいたしております。それにはいろいろな要因があるわけでございまして、人間がつくり出した例えば戦乱というふうな状況が直接の原因であるという場合もございますけれども、かなりな部分は、人口増加に伴うところの環境破壊というものがさまざまな気象的な災厄をもたらしまして、農業生産が極端に疲弊しておることに端を発しておるというふうに見ておるわけでございます。  これに対する対策としまして、短期的には食糧援助というふうなことが有効な施策になろうかと思いますが、いずれにいたしましても、発展途上国の場合には国内の配送業務ということを考えてみますと、食糧援助が長年にわたって続けられるということについては保証がないわけでございまして、それらの国々におきますところの農業生産の復活並びにその振興ということがなければこの飢餓問題は解決はできないというふうに思うわけでございます。我が国におきましても、気象条件はそれらの国々とは違っておりますけれども、いろいろな面におきまして農業の技術的な蓄積というものも持っておりますし、また、資本的な面においても応援する力を持っておるわけでございます。その意味におきまして、農業の世界におきます援助というものが今後発展途上国に対する援助の一つの決め手になっていくのではなかろうかと思いまして、現に国際協力事業団等を通じましていろいろな分野におきましてそれらの国々に対する支援をいたしておるわけでございます。  ただ、遺憾ながらもう餓死寸前というふうな状況に追い込まれました国々におきましては、そうは申しましても農業に手をつけていくというだけの余力が残っていないという悲惨な現実がございますから、なかなかそれらの国々に対して国対国の関係で技術的な援助がスムーズに入っていく環境にないということもまた悲しいことながら現実としてあるわけでございまして、そういう意味におきまして、食糧援助、医療その他の援助と農業の援助をどういうふうに絡めていくのかというのが、これらの国々に対するこれからの援助姿勢の最も難しい要素ではないかというふうに考えております。
  228. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 日本の国策の基本的な立場からしましても、今瀕死の、死の直前にさらされておるかわいそうな人々もいっぱいおるわけですが、統計によりますと、二〇〇〇年の食糧需給という見通しに対して平年作で五千三百万トンの不足がある。ところが穀物を中心とした場合に、米ソの不作が同時に来た場合に一億九千八百万トンの不足になるというデータが出ておるわけなのです。そういうことからも、食糧援助というのはこれはいわばカンフル注射的な役目であると。やはり基本的にはその国の農業技術を、そして生産を高めていくには肥料が大事になってくる。あの緑の革命にしましても思ったほど成功していないのは、肥料が手に入らぬ、また、肥料を買うお金がないということが実情であるようであります。そういった立場からも、ぜひこの肥料の安定確保の推進につきましては、さらに国策の面から考えた場合に、ますますその点を大事にしていかなければいけないと思うわけであります。  時間がありませんので、次に角度を変えまして、資源ナショナリズムの台頭と肥料原料の安定確保という面から考えた場合に、世界の石油産油国の問題も我が国に大きな致命傷を与えてきておるわけであります。特に燐鉱石はアメリカとモロッコが主体である、それから塩カリはカナダとソ連が主体であると、こうなりますと、肥料の原材料の貿易動向ということが、これは必要なときにスムーズに入れることができるかどうかといういわゆる貿易上の問題が非常に大事になってくると思うわけなのであります。それで、肥料の原材料の安定確保のためにどのような対策考えておられるか、そのことをお聞きします。
  229. 野々内隆

    政府委員野々内隆君) 御指摘のように、肥料原料といたしましては、大きなものは水素源でございます石油とそれから燐鉱石、カリ塩というものが中心でございますが、それぞれ主要な原料につきまして安定化措置に取り組んでおるわけでございます。例えば原油などの石油系の原料につきましては、これはエネルギー政策ということの一環といたしまして、輸入ソースの多角化あるいは自主開発あるいは備蓄というようなことを取り進めております。  それで、御指摘の燐鉱石につきましてでございますが、これはアメリカ、モロッコ、ヨルダンというのが主たる供給先でございますが、我が国の大量の輸入者でございます全農が中心になりまして、メーカーと協力をいたしまして大生産地でございますアメリカのフロリダにおきまして開発輸入に取り組んでおりまして、燐鉱石の安定供給コストの安定化に現在努めております。  それから、カリ塩につきましては、御指摘のようにカナダ、ソ連から輸入されておりますが、カナダにつきましては、長期の輸入協定というものを締結いたしまして安定的な供給を図っておりますのと、ソ連につきましては、日ソ両国政府間におきまして日ソ貿易支払い協定というのがございますが、これの協定品目としてカリ塩を指定いたしましてその安定供給を図っております。
  230. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次にお尋ねいたしたいことは、我が国は何と申しましても世界有数の肥料消費国となっておる。そしていわゆる多肥多農薬農業を進めておる。こうして今日に至っておるわけですが、その間に化学肥料の増等によって地方が低下しているという厳しい反省がなされておるわけなのです。  特に、山村農水大臣は、健康な土づくりのための対策ということを非常に強調していらっしゃいますが、そこでお聞きしたい。健康な土づくりのための対策はどのように考えていらっしゃるのであるか、お聞きしたいと思います。
  231. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 先生がおっしゃいますように、土壌は農業生産の基盤であり、基礎であり、農業生産の安定のためには化学肥料のみに依存することなく、地力の維持増進を図ることが不可欠であると考えております。このため私は就 任以来、たくましい稲づくり、豊かな村づくりとあわせて健康な土づくりの推進を提唱してまいったところでございます。  実はせんだって、このたくましい稲づくり、特に水田利用再編第三期対策の御協力ということで農業代表の方々にも集まっていただきました。そして全国知事会、都道府県の代表の方、それから全国市長会、全国町村会、それぞれの代表の方にお集まりいただきまして御協力方を要請いたしましたところ、いろいろ議論はございましたが、最終的には皆さんに御協力をお約束していただきましたが、そのときにやはり出てまいりましたのが健康な土づくりということでございました。たくましい稲とは言うけれども、健康な土がなくては長続きはしないということで、かえって御協力をいただいた方々に、一生懸命やれということで、健康な土づくりの方を強力に私は励まされたというような結果になりました。私どもといたしまして、行政施策といたしましては土壌の調査及び診断、また、農業者に対しましては啓蒙の普及、有機物施設のための機械施設等に対する助成など各般の施策を講じてきたところでございます。さらに、今国会におきまして別途、土づくり体制の強化等を内容とする地力増進法案を提出し、その施策の充実を図ることとしておるところでございます。
  232. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次にお尋ねしたいことは、肥料を施す施肥の基準は、その土壌の質と作物の種類によってはからなければいけない。いわ降る適当な土壌、適当な作物と肥料との関係ですね。こういう観点から特に私がお尋ねしたいことは、沖縄の土壌の特性が他県と著しく変わった土壌であるということを十分認識していただかないというといけない、こうつくづく思っておりますがゆえにあえてそれをお尋ねするわけです。  御承知かと思いますが、特に他県の土壌と著しく変わっておる点は、沖縄の土壌は隆起サンゴ礁、いわゆる古生層が主である。もっと具体的に申し上げますと、弱アルカリ性柔粘土性のジャーガル土壌というのがあります。それから酸性で粘性のある国頭マージ土壌、それから三番目に中性ないし弱アルカリ性で石灰岩を母岩とする島尻マージ土壌、そして沖積土壌と、このように他県では見られない、聞かれない土壌の特質を持っておるわけなのです。ところが、その土壌の特質としまして、非常に施した養分が流れやすい、流出が激しいということ、それから有機質も乏しい、地方が大変低い、こういう土壌の特質であるわけなのです。それを十分理解の上に適切な施しと指導をしてもらわなければいけないと思うわけです。  そこで、お尋ねしたいことは、沖縄に供給される肥料は、本当に土壌に適した成分の肥料供給をなされておるかどうか、そしてどのように施肥指導をやっておられるのであるか、そのことについてお尋ねいたします。
  233. 小島和義

    政府委員小島和義君) 沖縄につきましても、復帰直後におきまして地力保全基本調査というものを実施いたしまして、沖縄各地におきます土壌の分布状況というものにつきまして一定の情報を集積いたしております。これは沖縄復帰に先立ちまして、本土各都府県におきましてはあまねく実施いたしまして、細密な地図等が既にでき上がっている調査でございます。そういう調査をもとにいたしまして、今御指摘ございましたような国頭マージでありますとかあるいはジャーガルという大変問題のあります土壌が広く分布しているという事実も我が方としても十分認識をいたしているわけでございます。  そこで、施肥に対する指導でございますが、施肥の場合には、今申し上げた土壌の特質もございますし、また、作物もそれぞれの地域で違っておりますので、具体的な施肥基準の設定というのは、これは各都道府県にお願いする仕事であろうと存じます。沖縄の場合におきましても、サトウキビ、パイナップルあるいは野菜というふうな主要作物につきましては既に施肥基準がつくられまして、それによって普及所等を通じまして生産者に対する指導が行われておるわけでございます。農水省といたしましては、都道府県の指導が円滑に行われるようになりますために、その基礎となります土壌管理の実態把握、それから地力、施肥の改善のための対策試験の実施、さらには土壌作物栄養診断に必要な機械整備に対する助成などを行っておりまして、各県におきますところの仕事が適切かつ円滑に行われますように支援をしておるところでございます。沖縄につきましても、同様の意味におきまして今後の施肥指導について最善を尽くしてまいりたいと思っております。
  234. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 沖縄は、気候、風土も異なるという特殊性もありますし、また、戦争の被害からの立ち直りがまだまだ後遺症がある、こういった面から私が特に御配慮願いたいことは、いわゆる全国的な一般の基準あるいは法をそのまま適用した場合に、結果的には角を矯めて牛を殺すということになりかねないのであります。やはり沖縄の特殊事情に即した配慮と対策、そして実のある施策を講じていただきたい、こういうことをさらに重ねて要望いたしたいと思います。  次に、先ほど私は冒頭に、安い肥料をと、価格の問題になると思うのですが、沖縄はそういった点から問題がまだまだ残っております。基本的には、一応農協サイドからは全国プール価格ということになっておりますけれども、しかし実際は、具体的に取り上げた場合にそうなっていない結果があるわけなのです。  そこでお尋ねしますが、離島の多い沖縄に対して、肥料価格は基本的には差があってよろしいとか、差別ということはないと思いますけれども、結果的にはまだまだその格差があるという事実を私は一、二指摘いたしまして、適当な配慮をお願いいたしたいのです。  例えば、昭和五十七年度農村物価賃金統計の調査によりますと、いわゆる全国平均価格と沖縄の価格を比較した場合に、例えば硫安、樹脂袋二十キロN二一%という基準がありますが、全国平均は八百二十八円になっています。それが沖縄平均は九百二十円。九十二円差が、いわゆる高いのです。次に過燐酸石灰ですが、これが全国平均は九百三十三円、沖縄は一千九円、七十六円高になっております。それから高成分粒状複合肥料は、全国平均は二千百三十八円です。それが沖縄は二千六百五十九円、五百二十一円高になっております。こういう事実からも、やはり本土並みに扱われておらぬということが言えるわけでありますが、その点どのような配慮をしておられるか、お聞きしたいと思います。
  235. 小島和義

    政府委員小島和義君) 本法に基づきますところの価格取り決めは全国一本価格ということになっておりまして、これは本土各県の場合も沖縄の各地域の場合にも基本は同じでございます。生産業者販売価格は、本土の場合には消費地最寄り駅の着貨車の売り渡し、いわゆる着駅オンレールというベースで価格が決まっておるわけでございます。現実には、内航船も大分ふえておりますから、その場合には港渡しの価格がメーカーと全農との取引価格になるわけでございます。したがいまして、輸送距離の長短によりましてその価格に差はないということでございまして、沖縄の場合で申しますと、本島における二つの港、これは那覇と運天だと思いますが、そのほか離島では七港に配送されておりまして、それらの港渡し価格というのがメーカーと全農との取引価格ということになっておりまして、その限りでは差はないわけでございます。  問題は、そこから先ということになりますと、これは本土でも同様の問題があるわけですが、いわゆる小運搬、それから単協のマージンというものについては、これは場所によりまして運搬賃が多く、余計かかるというところもございますし、単協の手数料もまた、これは法定しておるわけじゃございませんから、単協の経営状況によりまして多少の手数料の差があるわけでございます。それから、沖縄本島の場合の特殊な事例といたしまして、琉球肥料株式会社というのが化成肥料生産をいたしておるわけでございますが、その全量を沖縄経済連が取り扱っておるわけでございます。 この場合にはすべて工場渡し価格ということに相なっております。したがって、工場以降の手数料、海上運賃、配達料というものは全部その価格に上積みされまして最終消費者の手に渡る、こういった事情が特別な事情として沖縄の場合にはあるわけでございます。したがいまして、全国の平均の小売価格、末端価格というものに比較いたしますると若干割高になっておりますし、特に高度化成が非常に多く割高になっているという感じがいたしております。  これにつきましては、つまるところは、港に渡りましてから以降の配送をいかに合理的にやるかという問題と、小売段階を扱っております協同組合の体質というものにかかわってくる問題でございますので、その辺につきましては、やや息の長い努力が必要ではないかと思っております。最終的に本土でも小売価格につきましてはある程度の差はあるわけでございますが、それにしても沖縄の場合やや高いような気がいたしますので、極力関係者を督励いたしまして、この差が少しでも縮まりますように努めてまいりたいと考えております。
  236. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 ある点は宿命的な点もあると思うのであります。ところが、考えてみますというと、もう国鉄の恩恵もない、そして離島県であり、しかも日本唯一の多島県である、こういった立場もあってきちんといかない面もあることも承知いたしております。ところが品目によっては、例えば尿素とか塩化カリウムの値段は全国平均に近い値段で、それから全国平均よりも下回る値段で配られておる事実もあるのです。これは結局流通機構との問題、生産基点とその配給拠点の問題かと思われるのでありますが、そういった点からしましてやはり配慮があれば、このような全国並みの配給も、渡しもできるわけでありますので、どうかひとつそういう点御検討くださって全国並みにいけるように要望いたしたいのであります。  以上申し上げまして、大臣に最後の結びをお聞きいたしたいと思います。
  237. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) 農林水産省といたしまして、今先生おっしゃいましたのは、余りにも差が開いておるということを勉強さしていただきまして、そしてできるだけのことはしたいと思います。
  238. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  239. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  240. 下田京子

    ○下田京子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となっております肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案について反対の討論を行います。  反対の理由の第一は、本法律が大手化学肥料メーカーの価格カルテルを容認し、その利益のために奉仕する内容を持っているからであります。前回の法延長の際にも明らかにいたしましたが、今日の肥料メーカーは、肥料売上高比率三・八%の三菱化成を初め、住友化学、三井東圧など総合的な化学工業として高度成長を遂げています。この発展を支えたのが本法による肥料の独占価格保証であり、政府の金融上、税制上のあらゆる優遇措置の結果でもございます。石油ショック後、肥料工業が不況産業に陥り、過剰設備の廃棄を迫られていますが、本法に基づく価格カルテルは供給過剰による肥料価格低落を防ぎ、設備処理をスムーズに進めるとともに、三井、三菱、住友グループの系列化を進め、肥料業界の寡占体制を一層強める役割を果たしているのでございます。  第二に、この法律のもとで農民は相対的に高い価格肥料を押しつけられてきました。今日農民は外国農産物の輸入攻勢のもとで、米を初め多くの農畜産物に過剰が広がり、生産調整を余儀なくされ、生産費を大幅に下回る農畜産物価格に苦しんでいます。こうしたもとで、独占資本が生産する肥料について輸出価格や自由競争の際に実現する水準より高い価格を法に基づき押しつけられることは、農民にとって到底納得できるものではありません。  しかも、質問の中でも明らかにしましたが、硫安のように国内市場の出荷数量のシェア第一位が新日鐵であることに示されますように、今日もはや目的生産物としての性格を失い、副産品ないし各種製品との結合生産物となっている商品について政府の言う原価調査などというものは結局メーカーの言いなりと言わざるを得ません。しかも、個々のメーカーの原価について、本法に基づく価格取り決めの際にも示されていない中で、限界的なコスト国内価格が決められるという何らの保証もありません。  第三に、今日の化学肥料工業過剰設備は、利潤追求第一主義で大型化を進め、安い資源と労働力を求めて海外に進出したことが大きな要因となっております。政府肥料メーカーは、こうしたみずからの高度成長政策の破綻の責任をあいまいにして、肥料工業の安定なくして農業経営の発展はないなどと称して、過剰設備の処理を農民や労働者、国民の大きな負担と犠牲のもとに進めようとしています。  私は、大企業への民主的規制による肥料その他の農業生産資材の安い安定的な供給が必要であり、そのためにも肥料などの原価を公表し、真に農民の声が反映される価格決定の仕組みを確立することこそが必要であることを指摘して、反対討論を終わります。
  241. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  242. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  243. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  最上君から発言を求められておりますので、これを許します。最上君。
  244. 最上進

    ○最上進君 私は、ただいま可決されました肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、最近における農業及び化学肥料工業をめぐる厳しい諸情勢にかんがみ、農薬生産の基礎的資材である肥料の需給、価格の安定対策を積極的に推進するとともに、本法の施行に当たっては、特に次の事項の実現に遺憾なきを期すべきである。  一、肥料価格の安定を図るため、特定肥料価格取決めに当たっては、化学肥料工業構造改善による合理化メリットが今後とも適正に反映されるよう指導するとともに、農業及び化学肥料工業の健全な発展に資するよう価格取決め交渉の公正と実効を期すること。  二、化学肥料工業構造改善については、産業構造審議会の答申の趣旨を配慮しつつ、その早期実現を期するとともに、海外の動向等に弾力的に対応し十分な成果をあげるよう努力すること。  三、化学肥料工業構造改善を推進するに当たっては、雇用、地域経済、関連中小企業に及ぼす影響に十分留意し、適切な対策が講じられるよう指導すること。特に化成肥料製造業の構造改善については、関係者の意見を十分に徴する等により、雇用の安定と労働条件の確保に万全を期するよう指導すること。  四、本法の運用に当たっては、国内需要の優先 確保が図られるよう、従来と同様に需給見通しを適正に把握し、それに基づいた輸出承認制度の運用を行うこと。  五、肥料の輸送体系の変化に対応し、地域需給の促進を図るよう配慮するとともに、交錯輸送の排除、販売経費の節減等による流通改善について積極的な指導を行うこと。  六、農業生産の安定、向上を図るため、施肥の改善、合理化に関する施策を強化、拡充すること。   右決議する。  以上でございます。何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  245. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいま最上君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  246. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 多数と認めます。よって、最上君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、山村農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。山村農林水産大臣
  247. 山村新治郎

    ○国務大臣(山村新治郎君) ただいまの附帯決議につきましては、決議の御趣旨を尊重いたしまして、十分検討の上善処するよう努力してまいりたいと存じます。
  248. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時九分散会      ―――――・―――――