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政府委員(
石川弘君) 牛について申し上げますと、まず御
承知のように、
日本の牛の七割は酪農から出てくるわけでございますが、酪農につきましては、先生も御
承知のように、今や生産を若干でも需要以上に伸ばしますと、この前起きましたような過剰を起こす。そういう
意味では、酪農の世界には常に需要を見ながら生産をしていかなきゃいかぬという枠がございまして、これにつきましては、私
どもは常に生産者に対しましても需要を見ながら適切にふやしていく、これはふえることは間違いないのですが、必要以上にふやしますと暴落をするという
可能性を持っているわけです。
今度特に、この前の法律で酪農及び肉用牛生産の振興に関する法律というので一本の考え方にしましたのは、酪農家というのは、乳をつくると同時に牛肉をつくる大変大事な分野だと、酪農と肉用牛生産というものを一体に考えまして、例えばヨーロッパで行っておりますような、乳肉複合経営という考え方をしますれば、御
承知のように、酪農でもし乳が余りそうなときは駄牛を淘汰して肉として生産してやれるということでございます。私は、そういう
意味で酪農についてはそういう需給ということをしょっちゅう考えた生産をしているわけでございますが、実は肉の生産については、何と申しましても国内で
努力しながら、七割を国内でつくっていくことが、今なかなか大変、むしろ感じからしますとかなり頑張ってもらわないとその水準で肉が出てこないということでございます。
東京ラウンドのときの結果を申しましても、実は東京ラウンドで協定を結びました直後に、我々が想定したほど国内生産が出てこなくて、結果的には輸入量をふやしたという苦い経験を持っております。ですから、私
どもは日米、日豪の
交渉をしておりますときに、一方では輸入量というものをなるべく合理的な水準に抑えるという
意味の
努力をすると同時に、頭に置いております国内生産が真にその水準に達するようにという
努力、その両方の
努力をしながら実は
交渉をしているわけでございます。
今先生御指摘になりましたような、そういう
意味で肉そのものの生産を調整しなきゃいかぬときが来るかどうかということでございますが、私は、現在私
どもが協定を結び、あるいはこれからも結ぼうとしている水準の中で、肉に関して国内生産を調整しなければいけないという事態は全く起こり得ないだろう、むしろ肉の生産についてはかなりの
努力と申しますか、それ相応の
努力、これは高ければ幾らでもつくるというのでは困るわけでありまして、やはり今のような価格水準の中で国内供給を
確保するというようなことを考えております。少なくとも今後四年間におきまして、何か特段に肉の方について国内生産の調整を要するというような事態はないと私
どもは考えております。
それから、御
参考までに申し上げますと、例えば
昭和五十七年の割り当てでございますけれ
ども、五十七
年度の割り当ては前年に対して減らしたことがございます。なぜ減らしたかと申しますと、それは
先ほど申しました酪農の方の駄牛淘汰が進みまして、我々が今まで経験したことのないような、要するに国内生産が生産見通しを上回るほどのものが出てまいったことがあります。そういう場合には、国内との調整を考えて前の年に比べて輸入量を減らしたということもございます。
これは、かつての協定の中にもそう書いてございますが、不測の事態があるときには限られた範囲内で変動することあり得べしということになっておりますし、今度私
どもが協定を結びます場合にも、そういうことは中に織り込んで、これはどこの国でもそうでございますが、見通しに基づいてやるということでございまして、現に世界じゅうの牛肉生産がそうでありますように年々の変動ということはあるわけでございますから、そういう場合にはそういうことも含めております。したがいまして、何トン何トンと今言われておりますけれ
ども、その何トンというものはあくまでもそういうことを想定してやって、具体的な毎年の割り当てにつきましては、やはりそういう
状況に応じてやるということでございますので、私は現在日米でほぼ合意を党かかっている事項とか、あるいは今後日豪と結びますような中では、肉の生産に関して国内生産を積極的に調整しなければいかぬというような要素は全く考えておりません。