運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-04-10 第101回国会 参議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十日(火曜日)    午前八時三十分開会     —————————————    委員異動  四月六日     辞任         補欠選任      河本嘉久蔵君     竹山  裕君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         谷川 寛三君     理 事                 川原新次郎君                 北  修二君                 最上  進君                 村沢  牧君                 藤原 房雄君     委 員                 浦田  勝君                 大城 眞順君                 岡部 三郎君                 熊谷太三郎君                 坂元 親男君                 竹山  裕君                 初村滝一郎君                 星  長治君                 水谷  力君                 森田 重郎君                 稲村 稔夫君                 上野 雄文君                 菅野 久光君                 刈田 貞子君                 鶴岡  洋君                 下田 京子君                 田渕 哲也君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農林水産大臣   山村治郎君    政府委員        農林水産政務次        官        仲川 幸男君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産大臣官        房審議官     中野 賢一君        農林水産大臣官        房予算課長    京谷 昭夫君        農林水産省経済        局長       佐野 宏哉君        農林水産省農蚕        園芸局長     小島 和義君        農林水産省畜産        局長       石川  弘君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○農林水産政策に関する調査  (日米農産物交渉等に関する件)     —————————————
  2. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る四月六日、河本嘉久蔵君が委員を辞任され、その補欠として竹山裕君が選任されました。     —————————————
  3. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 農林水産政策に関する調査を議題といたします。  この際、山村農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。山村農林水産大臣
  4. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 今回の交渉に当たり絶大な御支援と御協力をいただくとともに、国会開会中にもかかわらず、私並びに経済局長農蚕園芸局長及び畜産局長訪米と、再度にわたる滞米延期の格別の御配慮をいただきました本委員会皆様方に厚く御礼申し上げます。  過去二年半にわたり日米間の重大な懸案であった牛肉かんきつに関する日米農産物交渉は、四月四日から四月七日まで米国ワシントンにおいて行われた私とブロック米通商代表との会談決着を見ました。本決着内容は次のとおりであります。  オレンジ、四年間毎年一万一千トン増。オレンジジュース、四年間毎年五百トン増。グレープフルーツジュース国内需要に即した輸入割り当てを二年間行い、以後は輸入割り当て制度を撤廃。高級牛肉、四年間で二万七千六百トン増。なお、いわゆる十三品目についても決着を図るべく今後事務レベルで集中的な協議を行う。  今回の交渉に当たっては総理からの全権委任を受け、本委員会の一昨年五月の決議及び本年一月の申し入れの趣旨を踏まえ、今後とも我が国農業を着実に発展させていくということを念頭に置き、我が国農業を守り、農業者が犠牲にならないように対処するとの決意のもとに、すべて私の最終的な責任のもとに判断を下しました。  最後に、私及び三名の関係局長国会開会中の海外出張に関しまする本委員会委員各位の御理解に対し、私から再度深い感謝の念を表しまして私の帰国報告といたします。(拍手)
  5. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 村沢牧

    村沢牧君 大臣大変御苦労さまでした。大臣は、日米間の主張に大きな開きがある段階では訪米しない、こういう言明をしておったわけでありますが、急速訪米して政治折衝を行った。国会開会中、しかも予算最終審議という段階大臣農水省の主要三局長を帯同して外国へ行くということはまさに異例であり、そのために予算委員会なりあるいは農林水産委員会審議に支障を来したことも事実であり、国会軽視の批判は免れないというふうに思います。  そこで、大臣にお伺いいたしますが、この時期に訪米決意したこと、また、一たん決裂した交渉を日時を延長して再交渉をしたこと、さらには決着内容について、総理指示によってやったものであるのか、それとも大臣全権委任され、大臣責任決断においてやったものであるのか、お伺いいたしたいと思います。
  7. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 本委員会並びに予算委員会に対し、いろいろな御迷惑をかけたことをおわびいたします。しかし、私は日米のこの空白状態、これがこのまま続くことは好ましくないことと考えましたし、また、出発前に申し上げましたとおり、いろいろな資料を取り寄せようと思いましたが、アメリカ側に私が訪米しなければどうしてもそのようないわゆる弾力的な姿勢が見られないと、私が行くことによって弾力的な姿勢が見られ、解決が得られるというようなことを感じまして、私は少なくとも何とかこの妥結をしたいという決意のもとに出発したわけでございます。  ブロック通商代表との会談におきましても、誠心誠意日本国内農業事情というものも説明いたしましたし、そしてまた先と言われましたように、一遍は決裂したというようなこともこれは事実でございます。そのときには余りにも幅が大きく、私どもがこれを決着をするためにのむということはとてもできないと思いまして、帰国をして再度四月中にもう一遍協議という状況になったわけでございます。しかし、もしこれを、一遍帰国いたしますと、国内の世論というものも反米感情というものが高まってまいりますでしょうし、また、アメリカ国内においても反日感情というのが 高まるのではないかというようなこともいろいろ配慮いたしました。そして決裂日米双方で、このままこれを決裂させるということは双方の国にとってどれほど大きな損であるかというようなことがひとりでに出てきたわけでございます。そういうようなことでいろいろ水面下運動等もございましたが、しかし、その間におきまして総理大臣から指示等は一切ございません。決裂後、私は直ちに総理電話をいたしました。総理からは、それは御苦労さまでした、本当に感謝します、大変でしたという御返事をいただきました。しかし、それに対しまして、ああやってくれ、こうやってくれ、もう一遍交渉してみてくれというようなことは一切ございません。私が最終責任において判断を下してこの結果を得たものでございます。
  8. 村沢牧

    村沢牧君 大臣全権委任されて交渉に当たった。大臣アメリカに行ったその日、ニューヨークタイムズ記事によると、  中曽根首相特使東力氏によれば、日本農水相が今週、牛肉と柑橘をめぐる日米間の険悪な論議に決着をつけるために、「権限と柔軟性」をもって、ワシントンにやってくる。  南部日本みかん産地選出の代議士である東氏は、論争が米国の報復をまねくかもしれないという日本側の懸念によって、会談が切迫したものであることを強調した。  山村農水相会談のために、火曜日には到着する予定である。農水相は不承不承国会農水委員会によって支持されているにすぎないと東氏は言った。  「首相農水相に、懸案解決するまで帰国するな、と言った。」と東氏は米国議員との会談のあいまのインタビューで語った。東氏はまた、農務長官ジョン・R・ブロック、そして米国通商代表ビルブロックとも会った。以下云々の記事が載っておりますが、大臣は恐らくアメリカにおりまして、こういう記事を見たときにはどういう感じを受けましたか。
  9. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 東議員が滞米しておったことは事実でございます。しかし、これは我々今度の日米農産物交渉団とは何らの関係もございません。そして、彼の選挙区がかんきつ関係するものが多く、私のところへ朝晩毎日連絡をしてよこしました。しかし、それは彼の少しでも日米農産物交渉をよくしたいという気持ち電話をよこしたと思います。そして私は、その情報は一応伺いました。しかし、これは私のところへ、総理がこんなことを言ったからとかそんなことは一切ございませんで、アメリカの情勢はこうです、こんなことはこうなっておりますというようなことの電話をよこしただけでございまして、当交渉団と一遍でも御飯を食べたこともございませんし、また、当交渉団のメンバーでだれも接触した者はおりません。私は恐らく一人じゃないかと思います。それはただ単に個人的に、私としてはいろいろな資料を提供したいということで来ましたので、これはありがたくお聞きはいたしました。しかし、お聞きをした程度でございまして、それ以後東氏と私が御飯を食べたこともなければ何にもございませんし、また彼から中曽根総理がどうこうなどというようなことも一切ございません。  彼は、帰国直前に私のところへ参りまして、とんでもない新聞社だ、私が行って厳重に抗議をして私は帰りますから、大臣が私がどういうようなことを言ったのか一番よくわかっていると思いますと言うから、それはわかりますと。しかし、あなたは当団とは一切関係なく、私が個人的にあなたの持ってきた資料を聞かしていただいたという程度にすぎないのですよということで、彼もそのとおりですと了解しております。
  10. 村沢牧

    村沢牧君 東氏がどういう立場で行ったか私は知りませんが、しかし、この新聞記事で見る限り、見逃すことのできない問題があります。それは、農水相は不承不承国会農水委員会によって支持をされているにすぎないと東氏は言っている。また、この翻訳の仕方が若干違う面もありますが、東氏によれば、国会農林水産委員会消極的支持を得ているにすぎないと語ったと。このことは、当委員会決議もあり、当委員会あるいは衆議院の委員会もそうですが、これほど熱心に取り組んできた当委員会を余りにも侮辱するようなものだと私は思うのです。  そこで、委員長にお願いしますが、このことが真実であるかどうか当委員会として確かめていただいてしかるべき措置をとってもらいたいと思う。お願いします。
  11. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまの村沢君の要求につきましては、その取り扱いを後刻理事会協議いたします。
  12. 村沢牧

    村沢牧君 大臣が汗を流して交渉に当たった努力は認めるにいたしましても、結果がよくなければ、よくやったという高い評価はないというふうに思います。  結論的に言って、決着内容について私は不満であり、ふんまんにたえない。日本農業展望から見て甚だ遺憾であります。交渉に当たった皆さんは努力したけれども、結局はアメリカの圧力に屈してしまったと言わざるを得ない。大臣は、当委員会決議や各党の要求農民団体の切実な要請などにこたえた決着であるという自信をお持ちなのですか。
  13. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生のおっしゃるのはもっともでございます。私は、今回の交渉に当たりまして、何とかそれこそ妥結したいという一心では参りましたが、しかし、先生御存じのとおり、途中では一たん中断いたしました。これは余りにも双方の差が大きく、そして私が日本農業を守るという立場に立ってと申し上げましたことをとても達成できないと思いまして、決裂というような状況になったわけでございます。しかし、この日米間というものを考え、そしてまた、我が国の国益というものを考えた場合に、これをどうして守っていくかというときに、双方から自然に起こりまして、もう一遍交渉ということで、これは恐らくアメリカ側においても譲歩できるぎりぎりというよりはもっと下がったかもしれません。しかし、私は我が国農業を守るという立場を堅持するという意味で許容できるぎりぎりの線がこれであったということで、私が最終的な決断をいたしましてやったような次第でございます。
  14. 村沢牧

    村沢牧君 大臣は、日本農業を守るためのぎりぎりの線だというふうに言われておりますが、私に言わせるならばぎりぎりの線を超えている。日本農業発展展望に立った取り組みではなく、努力はしたけれども政治的妥協数字になってしまったと言わざるを得ませんが、どうなのですか。
  15. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生のおっしゃられるのももっともでございますが、私といたしまして、妥結できるぎりぎりの線、そしてまた我が国農業を守る許容のぎりぎりの線ということでこの決断をいたしたものでございます。  今後とも、あらゆる面をもちまして我が国農業を守るということに努力してまいりたいと思います。数字的には御不満はあろうと思いますが、何とか御理解いただきたいと思います。
  16. 村沢牧

    村沢牧君 日本は世界一の農産物輸入国であります。輸入農産物の四〇%はアメリカであり、牛肉に至ってはアメリカ輸出の七割を日本が買っている。かんきつ類は四割を買っている。また、農産物枠拡大したとしても、今言われている貿易摩擦の解消に寄与するものはほとんどわずかである。しかし、今回輸入枠を大幅に拡大して四年先までの約束をした。アメリカ要求が高圧的であること、理不尽なことを言っていることは私も承知をしています。しかし、日本農業の将来を思うならば、今回無理をして政治的な焦りの中で決着をすべきではなかったのではないか。一たん帰国してゆっくり相談をし、再交渉すべきではなかったかというふうに思いますが、どうなのですか。
  17. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 私もそう思いまして、一たんは帰国決意いたしまして、そして四月中にもう一遍交渉をしようということで決めたわけでございます。しかし、考えてみますと、こ れは帰りまして、次に私がもしアメリカへ参りますとしますと、これはかなりの妥協案を持っていかなければならないのじゃないかというようなことも考えました。そしてアメリカ側の方も、もし日本側アメリカに対する反米感情というものが高まってくるような事態がきたらどうなるかというようなものも、私はこれは推察でございますが、感じたようでございます。  そこで、双方いろいろ水面下での動きはあったようでございますが、これによりまして再交渉ということになりまして今回の結果になったわけでございます。私はやはり、あのとき帰ってきたらこれだけの数字というものは出なくて、もっと多くとられてしまうような結果が出たのじゃないか、そういうようなことを考えまして、最終的に私の決断であの交渉妥結いたしました。
  18. 村沢牧

    村沢牧君 今回の牛肉オレンジ輸入枠拡大は、一時的には自由化を阻止したけれども、将来の農産物自由化に道を開いたものであり、自由化の一里塚であると言っても言い過ぎではないというふうに思うのです。将来に大きな禍根を残した、一時しのぎの政治的な妥協によって市場開放の外圧はおさまらないでしょう。この交渉によって農産物自由化は将来にわたって絶対阻止することができる、そういう自信をお持ちなのですか。そのように判断しますか。
  19. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 農林水産省といたしましては、国内で生産可能なものはできるだけ生産をし、そしてまた、不足する分を輸入するというのが原則でございます。今後も、今先生がお話しになられましたように、妥結の期間は四年間だけでございます。四年に至りますと、私はますます厳しい農産物開放要求が来るのじゃないかと思うのです。その間には何といっても日本農業体質の強化、足腰の強い農業という方に向かって農林水産省としても政策的にも全力を挙げてまいりたいと思っております。
  20. 村沢牧

    村沢牧君 決意はよくわかっています。決意はよくわかっていますけれども牛肉オレンジについては四年間は枠の拡大協定をした。しかし、これでおさまったものではないと思うのです。これでアメリカ日本に対して農産物自由化要求しない、そのことは言い切れないと思うのですが、その辺は交渉の中でどういう判断をしたのですか、どういう話をしたのですか。
  21. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 交渉が終わりましてから、米側の方から、我々は農産物自由化というものを放棄したわけではないというよりも、私が感じましたものは、農産物自由化というものをとりあえず棚上げにするということは大変な譲歩をしたというような感じを持っているように受けとめました。  我々が参りまして、日本で考えておるようなそのような状況ではございませんで、やはりかなり厳しいものを感じて帰ってまいりました。先と言われるように、四年後というものにはやはり自由化というものを迫ってくるような気配でございます。しかし、そのときにおいてこれに対応するためには、先生決意だけと言われましたが、決意でなく現実的に政策的な面でもこれらに対応する農林水産省としての政策というものを打ち立て、実行していかなければならないと思っております。
  22. 村沢牧

    村沢牧君 今回の交渉によって、今私が指摘をしたように、アメリカはしかしなお一層日本自由化を求めてくるでしょう。ですから、交渉に当たるならば、これだけ譲歩するならば、日本農産物はこれから自由化できませんとはっきりした決意アメリカに伝えるべきだったように思いますけれども、そのことについてはまた後ほど伺いましょう。  いわゆる十三品目については今後の交渉にゆだねるということになっておりますけれども牛肉オレンジ日本がこれだけ譲歩するならば、十三品目についてはガット提訴は取り下げる、このぐらいな確約が大臣交渉の中で行われてしかるべきだと思いますが、そのことはどうなりました。
  23. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 実は、十三品目も一括して解決するつもりでやってまいりました。先生御存じのとおり一日日程は追加されました。そして、その日程が終わりましたときに、両方の主張が隔たりが大き過ぎるということで、これは四月にもう一遍ということで、今回の会談はやめにしようということになったわけです。それが先ほども申し上げましたように、急転直下次の日に再交渉ということで二日目の延期になったわけでございます。そして、そのときにも実は十三品目に及びまして、それぞれ細目を詰めてということでしたが、この牛肉かんきつの二品目だけで実は朝の十時から午後の三時過ぎまで、約六時間近くになります間これで時間を終始してしまいまして、十三品目については時間的にこれを詰める余裕がございませんでした。しかし、近々のうちにこれは閣僚ベースでなく実務者レベルでこれを全部詰めるというようなことの話し合いはついております。
  24. 村沢牧

    村沢牧君 短い時間の中で十三品目個々内容について大臣が詰めることができなかったことは、それは無理がないと思う。しかし閣僚交渉ですから、十三品目についてアメリカガット提訴しているが、これだけ牛肉オレンジで譲ったのですから、これについても考えてください、提訴を取り下げてください、そのくらいな交渉大臣レベルですべきではなかったのですか。
  25. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) そういうことで、十三品目閣僚レベルでなく実務者協議をして、そしてこれを詰めようということで、何と申しましょうか、ガット提訴というものを絶対しないということではない、取り下げないというわけではないけれども、少し譲るべきものは譲ってもらいたいというような気持ちもあったろうと思います。そこで、閣僚レベルでなく、実務者間でということでございますので、これはこの四月中にでも何とかそちらの方でガット提訴いろいろ話をしまして取り下げていただくというような方向で進んでまいりたいと思います。
  26. 村沢牧

    村沢牧君 佐野局長がこれから交渉するでありましょうが、今回の大臣交渉を見ておって、十三品目交渉についてどのような感触を受けておりますか。
  27. 佐野宏哉

    政府委員佐野宏哉君) アメリカ側の十三品目に対する態度は依然として厳しいものがございますので、私どもとしては牛肉かんきつ閣僚レベルでの協議決着にもかかわらず、十三品目の問題の前途を決して楽観しておるわけではございません。ただ、せっかく牛肉かんきつという農産物貿易の分野での日米間の緊張の主たる原因になっておりました問題について大筋の合意ができたわけでございますので、十三品目の問題について、解決を図るには今が一番適切な時期であろうというふうに考えておりまして、そういう意味ではこの機を逸することなく妥結を図ってまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  28. 村沢牧

    村沢牧君 牛肉にしてもオレンジにしても、今回の協定によって国内農業に与える打撃ははかり知れないものがあるというふうに思います。政府がこのような取り決めをする限りにおいては、国内農業を守り発展をさせるため、具体的な積極的な対策を畜産やあるいは果樹の体質改善等も含めてやらなければならないというふうに思いますが、大臣決意と基本的な施策について伺いたい。
  29. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 私は、今回の日米農産物交渉に当たりましては総理大臣から全権委任を受けたわけでございますが、その際に申し上げましたことは、今後のいわゆる牛肉そしてかんきつに対する、はっきり申しますと、予算そのほかの措置というものはこれは破格なものにしてもらわなくてはこの交渉はできないということを言いまして、その約束はとってあるつもりでございます。
  30. 村沢牧

    村沢牧君 この交渉の結果によって、農水省として振興対策なり、あるいは補助金なり必要な財政上の措置については考慮する、そういうことが総理とも約束ができていますか。
  31. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) これは全権一任と、委任をするということを言われましたときに、総 理からははっきり約束はついております。
  32. 村沢牧

    村沢牧君 わかりました。それではそういうふうにやってください。  大臣は閣議のようでございますので、あとは内容について担当局長から伺ってまいりたいと思います。
  33. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 済みません。それではよろしくお願いします。
  34. 村沢牧

    村沢牧君 牛肉でありますが、牛肉は四年間で二万七千六百トンの増、年平均にして六千九百トンの増であります。信頼すべき報道によりますと、日本はこの交渉の中で六千四百トンを主張し、アメリカは七千五百トンを主張して折り合いがつかず物別れになった、こういうように言われております。その後の再開交渉によって六千九百トンに落ちついたわけでありますが、六千四百トンと七千五百トンを足して二で割ればちょうど六千九百トンになる。これは余りうがった見方といいますか、一体六千九百トンという数字は何を基準にして出したのですか。
  35. 石川弘

    政府委員石川弘君) 御承知のように私ども主張は、まず牛肉の総量が問題でございまして、これにつきましては、今後の日豪交渉を待ちまして全体の量を決めるわけでございますが、その全体の量の中で、いわゆるハイクォリティービーフと言われておりますもの、これは御承知のように必ずしも米国からの輸入意味するものではございませんで、現実におきましても米国それから豪州等からも輸入されるわけでございますが、このハイクォリティービーフの水準をいかがなものにするかということを、国内の需要の問題その他を考えましていろいろ考えていくわけでございます。一般論としましてはハイクォリティービーフの比重が高まってきつつあることは事実でございますが、いかなる水準であれば全く問題がないかということにつきましては、これは詰め方次第ではいろいろと方法といいますか、考え方が異なってくるわけでございます。  先生御指摘のように、私どもは六千トン台のある水準でほぼいいのではないかということを主張しておりまして、向こうは御承知のように、私どもからは到底考えられないような、一万トンを超えますような水準から要求をいたしておりまして、今回の交渉におきましてもなかなかその差は詰まらなかったわけでございます。一定の水準までまいりまして、いわばデッドロックになりまして、その後一体双方主張がどこまで縮められるかということを、かなり時間をかけて交渉したわけでございます。先生御指摘のように、何か足して二で割ったかどうかというような御判断でございますが、私ども双方詰め合えるだけ詰め合って、そしてこの水準ならば辛うじて双方が満足できる、満足と申しますか、不満ながら合意ができるということになりました水準がこの水準でございます。
  36. 村沢牧

    村沢牧君 その基準はあくまで日本国においては需給の見通しから出さなければならないというふうに私は思います。局長の答弁で言うと六千九百トンは双方が満足する水準だというふうにお話がありましたけれども、一九七九年の東京ラウンドにおける日米合意事項は、日本政府牛肉の需給関係の見通しに基づいて一九八四年以降の輸入の方途を決める、ということになっておりました。輸入枠を決める基準は、今申し上げましたように、需給の見通しであることは当然のことであります。農水省の六十五年度の長期見通しから推定をするならば、上限で年間九千トンくらい、あるいは中間値で六千五百トンくらいの輸入拡大することができると私は思います。最高九千トンの輸入可能数字と見ても、アメリカへ六千九百トン割り当てをすれば、残りは二千百トン、オーストラリアとの交渉も目前に控えておりますけれども牛肉の最大輸入国であるオーストラリアに対してはどういうふうに対処しますか。
  37. 石川弘

    政府委員石川弘君) 長期の需給見通しを、いろいろなことを決めますときの重要な参考にしていることは事実でございまして、今回も我々がそういうことを主張しますことについて、アメリカアメリカ独自でこれは大変なことではございますが、日本の需給見通しをもっと大幅に高いものにした数字などを持ち出したりいたしましたけれども、私どもは今の長期の需給見通しと、それからこれは結果的には四年間ということでございますので、その四年間という中間地点までにおけるいろいろな需給の見通し等を勘案いたしまして、まず総枠を頭に置いたわけでございます。それからその総枠の中で、ハイクォリティービーフがどのくらいのシェアまでならば可能かということを推算しているわけでございます。誤解のないように申し上げておきますが、六千九百トンはアメリカ向けの枠ではございませんで、ハイクォリティービーフ全体の大きさでございます。現在におきましても、このハイクォリティービーフの中にオーストラリアも参入をいたしているわけでございます。もちろん、今後豪州と交渉いたします際に、ハイクォリティービーフの水準が高まれば高まるほど交渉が困難になるということは事実でございますけれども、これは今後の日豪間の交渉の問題でございます。それから先ほど申しましたようにハイクォリティービーフというのは、決してアメリカだけを意識したわけではございませんので、このようなことも頭に置きながら豪州とは、これはつらい交渉ではございますが、豪州の現在輸入しているものを何かつぎ込むということではございませんので、そういうことを頭に置いて今後交渉を進めるつもりでございます。
  38. 村沢牧

    村沢牧君 需給の見通しは、その年度あるいは期間における生産なり需要なりによって変動がありますから、皆さんも長期見通しを持っているけれども、これが決定的なもの、絶対的なものとは言えない。私もありますけれども、それも絶対的なものだとは言えない。しかし、私が申し上げた数字は、九千トンだとか、中間値が六千五百トンというのは、これは余りけた外れに外れたものではないというふうに思っていますが、そのことを御否定になるならば否定してください。
  39. 石川弘

    政府委員石川弘君) 長期見通しの水準で申しますと、先生が御指摘になっております水準はけた違いとかそういうものではございませんで、むしろそういうものを頭に置いていろいろと検討すべきものだと思います。私どもが申しますのは、そのことが一つの要素でありますし、もう一つ比較的短い期間、四年なら四年という期間で考えますと、私どもが毎年やっておりますように、現在日本におります牛の頭数というものははっきりわかるわけでございます。こういう牛の数がどのように展開をしていくかということも推算可能でございます。そういう両方の面でいろいろと今後の将来の需給というものを、今より、長期見通しよりはもっと具体的に推算が可能なわけでございますので、それに基づきまして総枠を決め、その中で現在約束をします六千九百トンがどのように需給の中に織り込められるかということを決めてまいりたいと思います。
  40. 村沢牧

    村沢牧君 日本牛肉輸入は、オーストラリアが七〇%、アメリカが三〇%の比率であります。なるほど六千九百トンはアメリカの分だけのものではないということは承知をしていますが、アメリカ輸入枠を倍にもふやした、アメリカ産のものをこれだけふやしたのだから私の方もアメリカと同じようにふやしてくださいとオーストラリアから要求が出たら、また、出ることを予測しなければなりませんが、農水省はどのように対応するのですか。中曽根総理はこの秋オーストラリアを訪問するということも言われているのですけれども、そうだとすれば、なおさらいろいろ問題が絡んでくるわけなのです。どうなのですか。
  41. 石川弘

    政府委員石川弘君) ハイクォリティーのボリュームをある程度ふやしながら交渉してきたわけでございますので、そういう過程の中で、豪州との関係で起こるべきことは既に我々も十分承知をいたしております。そういうことを頭に置いて交渉をし決定をしてきたわけでございますから、今先生御指摘のように、豪州は、極端に申しますとシェアを維持しろ、シェアを維持しろというのは 同じ割合ではございません。今の割合だけふやせというなら、ハイクォリティーよりももっと大きなボリュームを要求するわけでございますが、私どもはそういうことはできないということをここ一年以上の交渉ではっきり申してきております。それから私どもの、全体の需給を考えて、それで国内生産に不足するものを輸入をするという輸入総枠の考え方は、ここ数年ずっと主張を続けてきているわけでございますから、そういう主張に基づきまして今後の日豪交渉をやるつもりでございます。
  42. 村沢牧

    村沢牧君 いずれにしても、六千九百トンという数字を出したということは、今後の対象交渉にとっては大変なことになるというふうに思いますが、その点は日本農業を守るためにしっかりやってもらいたいと思う。アメリカ輸入枠もふやす、オーストラリアもふやすことになるだろう、日本は酪農振興法に基づいて六十五年までの牛肉生産の長期見通しを立てたけれども、これによれば牛肉を三〇%ふやすのだということになっている。そのための予算も対策も講じておるわけなのです。輸入をこんなにふやすならば日本畜産振興の長期計画は崩壊してしまうのじゃないですか。牛肉一トンは御承知のとおり肉牛五頭分に相当するのです。六千九百トンで三万四千五百頭がふえる。そして、今六千九百トンを決めたことによって四年間で十三万八千頭の牛の輸入がふえたと同じことになるのです。こんなに輸入がふえて、今までも厳しい畜産経営をやっている農家に対して、深刻な事態に陥るというふうに私は思うのですけれども農水省我が国畜産に与える影響をどういうふうに判断するのですか。
  43. 石川弘

    政府委員石川弘君) 毎度申し上げますように、総枠の輸入枠の決定が私どもについて最大の関心事でございます。この大きさが、国内需給をどう決めるかということ、国内需給に基づいてどのように決めるかが国内影響にどう与えるかということでございます。したがいまして、私どもは何度も申しますように、国内の生産も拡大しながら輸入もある程度拡大をする。輸入拡大国内生産のテンポ、若干最近におきましては国内生産より輸入拡大が多うございますけれども、そういう両立する形がどこかということでやっておるわけでございますので、私どもは、それは何も輸入をしないということであれば輸入の影響度はゼロかもしれませんが、やはりそれは国内の価格の安定と、そういう安定した価格で肉を供給するという必要性からいうと必要なこととして今までもやってきておるわけでございます。今後もそういう基本的態度を崩さないでやっていくつもりでございます。
  44. 村沢牧

    村沢牧君 次はオレンジについて伺います。  オレンジについては毎年一万一千トンの増加を決めた。一万一千トンの増加を決めたということは、四年後には十二万六千トンとなり、伊予カンの出荷数量とほぼ匹敵する数量になるんです。これはまさに自由化水準に近づいてくるのです。何でこんなにふやしたのですか。
  45. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 私どもも温州ミカンを初め国内かんきつ状況が大変厳しいということはだれよりもよく承知しているつもりでございます。ただ、アメリカ側の基本的な要求というのは、この種の農産物の貿易は自由であるべきであるというのが向こう側の強い主張でございまして、これを回避して新しいパッケージをつくるというふうな観点からすれば、やむを得ざる合意であるというふうに考えておるわけでございます。  ちなみに、前回の合意は、四年間、つまり昭和五十五年度から五十八年度までに三万七千トン輸入をふやすという約束でございました。今回の合意は四年間で四万四千トンふえるということになるわけでございまして、その意味では最小限の増加にとどめ得たものというふうに考えておるわけでございます。もちろん、こういう出回りがふえるわけでございますが、先ほど御引用になりました例えば伊予カンのようなものの出回り期間がせいぜい二カ月前後というものに比べますれば、輸入オレンジの出回り量は周年でございまして、特に国産かんきつの出回りの少ない時期の出回り量が多いという関係に従来もあるわけでございます。そのような関係を維持してまいりますれば、国内産に対する影響を最小限にとどめ得るものというふうに考えているわけでございます。
  46. 村沢牧

    村沢牧君 局長の御答弁を聞いておると、これだけふやしたとしても大したものじゃないというような感じを受けるのですけれども、しかし結果から見れば、一万トンの枠拡大と言ったのが一万一千トンにしたと。オレンジで譲って牛肉を何とか下げようとした、そのことも交渉の中身の中でうかがわれるのですが、局長、御承知のようにかんきつ類全体の消費量が減少し、特に温州ミカンは五十四年から二万一千ヘクタール、五十九年からはさらに一万ヘクタールの転換を余儀なくされておるのです。このために使った国の補助金は五十九年度までに六百九十億円、国内の生産が過剰で国民の税金を使って減反をしておるのです。そしてまた輸入をふやしてくる。輸入のために生産調整を強いられている。全くたまらぬではないですか。納得いかないのじゃないですか。どういうふうに判断するのですか。
  47. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 温州ミカンの過剰の量と申しますのは、かつて生産の多かったときには年間三百五十万トンほどの生産があったわけでございます。昨年の場合に二百八十数万トンという量でございますが、その差を眺めてみますと、それだけでも六十万トン以上の消費の減退があるわけでございます。それにかわりまして、中晩柑類が多少なりとも生産がふえておる。これはどういうことかと申しますと、温州ミカンが消費者に嫌われて消費が減っておるということでは私は決してないと思います。むしろ消費の多様化あるいは出回り時期の長期化ということによりまして消費が支えられておるということから、温州ミカンの消費の減退、中晩柑類の消費の増ということになっておるというふうに理解をいたしているわけでございます。  先ほど申し上げましたように、我が国かんきつの出回り期間に比べますれば、輸入オレンジの出回り期間ははるかに長いわけでございます。特にまた、そのかんきつという観点から見れば、その出回る時期というのは非かんきつが出回る時期に非常に多いわけでございます。最近の例で申しましても、大体輸入量の六割前後のものは六月から八月までというかんきつの出回らない時期に集中をしておるという状況にございますので、そういう季節枠の運用でありますとか、あるいは先ほど大臣がお述べになりましたような国内体制の整備というものを並行して考えていきますならば、我が国に対する影響を最小限にとどめ得る、かような理解でおるわけでございます。
  48. 村沢牧

    村沢牧君 局長の答弁を聞いていますと、何か言いわけみたいなことだけです。こんなに減反して国費の補助金を出してやっているのです。それに対してなおかつ輸入をしてくる、これは私が言うだけではなくて、国民から見ても何としてもわからないのです。やはりこの反省がなくちゃだめだと思うのです。ですから、温州ミカンを転換をして中晩柑類に栽培を持っていくという方針を出して現実にやっておるわけでありますが、この中晩柑類も生産調整の兆しがもう見えてきているのです。時期的に中晩柑類と競合するオレンジ輸入枠拡大するなれば、こっちの方も経営が成り立たなくなってくるのではないですか。今までの栽培面積の転換の努力が水の泡になってしまう、これはどうするのですか。
  49. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 先ほど申し上げましたように、中晩柑類の需要というのは、温州、ミカンよりもうまいからたくさん食われておるということでは私は決してないわけだと思います。むしろ消費の多様化傾向というものにうまく乗っておるということだろうと思います。その出回り期間というものも、温州ミカンの出回り期とはまた多少異なった時期に出回るということからその消費があるわけでございます。したがいまして、中晩柑類につきましても、これまで以上に優良な品種をつくり出していくと同時に、品質の向上を進めて まいりまして、その振興を図っていくということが可能であるというふうに考えておるわけでございます。
  50. 村沢牧

    村沢牧君 どういう対策を立てていくかということについてはまたいずれ伺ってまいりますが、今の局長の答弁は私は余り納得はできません。  時間がありませんから次に進みますが、オレンジジュースは毎年五百トンの増加、日本ではミカンの調整のためにミカン果汁にかえて在庫にしている。オレンジジュース輸入がふえれば日本のこのオレンジ果汁との競合が当然生じてくるのですが、これはどういうふうに考えますか。
  51. 小島和義

    政府委員(小島和義君) かんきつ関係で三品目あるわけでございますが、その中で国産品との競合の度合いの強さという点から言えばオレンジジュースが一番であるというふうに私は理解をいたしております。その意味で、今回の妥結いたしました内容におきましても、オレンジジュースにつきましては過大な要求もあったわけでございますが、前回の同枠、同程度にとどめたというふうになってきているわけでございます。このオレンジジュースにつきましては、今後とも国産とのブレンド用という考え方は貫いておるつもりでございますので、品質の多様化と申しますか、ジュース類につきましてもいろいろなものが出ております。これはかんきつジュースに限りませんで、多種多様のものが出回っておりますし、また、ジュース類以外の飲料というものも多種多様なものが出回っておるわけでございます。したがって、ジュースにつきましてもこういった輸入品を加えた形で多種多様なものをつくっていく、さらには、国産につきましてもさらに品質のいいものをつくっていくということによりまして、輸入の増加いたしましたものを含めて消費の拡大を図っていくということによって対応いたしたいと考えております。
  52. 村沢牧

    村沢牧君 大臣が閣議でまだ来ておらないようですから、私の質問をちょっと中断さしてもらいます。
  53. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 今度の交渉に当たりましては、局長さんには大変御苦労さまでした。問題については今同僚委員からお話がございましたそれらの問題が主要な問題だろうと思います。大臣がいらっしゃったらまたお聞きするといたします。  今日まで二年半にわたりまして佐野局長交渉に当たっていらっしゃったわけです。長きにわたっての交渉経過、一番身をもって体験していらっしゃるわけです。そこで、一般国民からしますと、ちょっと日本の国情、アメリカの国情を知っている方ですと、国際収支の経常収支からいうと、ことしは目標の二百三十億ドルですか、上回って、三百億ドルの黒字じゃないかというようなことが言われております。今度の予算委員会におきましても、日本の景気浮揚ということが大きな問題になっているのですが、アメリカの景気に支えられてということでなくて、やはり内需というものが大事だということも随分議論になっているわけです。こういうことから、日本の黒字幅が大きいということが一つの矢面に立たされていることだろうと思うのです。しかし、アメリカ農業も残存輸入制限品目があり、またウェーバー品目、酪農品等があるわけです。またアメリカでは、食肉輸入法という法律で食肉の輸入についてもいろいろ規制をしておる。二年半にわたりまして、日本の国情やそれからアメリカの問題についても熟知している局長、今まで当委員会におきましては、数量的なことは差し控えるということで我々に数字が入らないものですから、本当にはっきりとした議論がなかったのでありますが、結論が出たわけですから、この際そういうこともあわせてお話しをいただきたいと思うのです。  今まで長い間、お互いに理解し合うための交渉、それは妥結が一番いいのですけれども事務レベルでの交渉と、このたび大臣がいらっしゃったということはもちろんありますけれども決着に至るこの三日、四日の交渉というものとは質的にはもちろん違うのだろうと思います。今までの交渉の中で、決着を見るに至る今日までのアメリカの態度、アメリカの言い分、そしてまた、なぜこの時期に、たかだかこの農産物輸入にいたしましても三億ドル程度ということですから、黒字を埋めるなどというのはとてもできるわけではございません。こういう中で、農産物が矢面に立たされる。この後には金融の自由化やVANやいろいろなものがある。そういうことももちろんありますけれども、これは今までの交渉の中で農産物が息切れになるみたいな、矢面に立たされるようなこういう姿になぜならなければならなかったのか、こういうことに対して非常に私どもは不信感を持つ。今までの交渉の経過の中でどういうことがあったのだろうかということに対して、これはもっと実質的なものが矢面に立つべきであって、農産物も決してそれは逃れるものではないだろうと思うのですけれども、長い交渉の経過を含めまして、局長からひとつ、現時点でどうお考えになっていらっしゃるのか、その辺をちょっとお伺いしておきたいと思います。
  54. 佐野宏哉

    政府委員佐野宏哉君) 今藤原先生から御指摘がございましたような論点につきましては、実はアメリカ政府部内におきましてもわかる人はわかっているわけでございまして、例えば本年年頭に発表されました大統領経済諮問委員会の報告を見ましても、日米間の貿易収支の赤字に言及をしたくだりを読んでみますと、実に理性的な分析が行われているわけでございます。その中で特に牛肉かんきつ問題に言及をして、牛肉かんきつについての日本輸入制限が決してアメリカの貿易収支の黒字の主要な原因ではないということを立ち入って解説をいたしております。したがいまして、アメリカ政府日米の貿易収支の問題と、牛肉かんきつの問題を結びつけて論ずべき性格のものではないということは熟知しておるわけでございまして、その点はよくわかっているにもかかわらず、こういう議論がやかましくなっているというところが実は問題であろうかというふうに存ずる次第でございます。  今藤原先生の御指摘になりました、アメリカがやっておりますウェーバーとか食肉輸入法の問題について申しますと、これはそれぞれ大変不届きなことでございますが、アメリカの身になって考えてみますと、アメリカとしては不届きなことをするにふさわしい工夫をいろいろしておるわけでございまして、農事調整法二十二条について言いますと、不届きなことを合法化するためにウエーバーという手続をとっておるわけでございますし、それから食肉輸入法の場合について言いますと、不届きなことであるということを十分自覚しておりますから、食肉輸入法そのものを発動して輸入制限を行うかわりに、輸出国の自主規制によってみずからが手を汚さないようにする、それなりに大変工夫をいたしておるわけであります。  アメリカの目から見ますと、それに引きかえ日本の場合は、アメリカの考えによればガット上非合法であると考えられておる輸入制限を大手を振ってやっておるということ、それで倍として恥じるところがないというのが、アメリカから見ると大変不公平な行為であるというふうに見えるようでございます。それからアメリカ国内世論から見ますと、そういう公正さの論争に持ち込んで攻撃をするということが一番攻撃しやすいという事情がございますので、そういう意味ではアメリカ側が、金額的にあるいは貿易収支上の意味が大きくないということを承知の上でなおかつ非常に大きな声で言い募るというのは、先方の国内事情としてはそれなりの理由があるように思っております。
  55. 村沢牧

    村沢牧君 大臣が見えましたので、藤原委員の御了解をいただきまして、私の残り時間質問をさせていただきます。  この内容については、先ほど来申し上げておりますように不満がある。不満があるけれども、決めてしまったのは取り返しがつかない。したがって、これからの対策をどうするかということなのです。一つは消費者対策もあります。牛肉輸入しても消費者の価格は下がらないという場合もある、あるいはまた、果実については食品添加物の 問題もあります。国内の生産はこれによってますます苦しめられております。  そこで、両局長に、時間がありませんので簡潔でいいですから御答弁願いたいのですが、消費者対策、国内畜産なり果樹の振興対策をどういうふうにするのですか、簡単に答弁してください。
  56. 石川弘

    政府委員石川弘君) 消費者対策がないとか、あるいは消費者に利益がないというようなことを私どもは耳にしているわけでございますが、これはアメリカでも何度も言ってまいったわけでありますが、実は日本の食肉の価格安定制度ができました昭和五十年以来五十八年までを見ますと、輸入牛肉関係します乳雄中の卸売価格は、昭和五十年を一〇〇にしまして昭和五十四年に一度一〇〇を超えました以外は全部一〇〇以下でございます。五十八年もたしか九十幾つかの水準でございます。といいますことは、この間卸売物価指数が一三五に上がっておりますので、牛肉の方も卸売の価格で見ておりますから実質的には三五%の引き下げをしています。この間、生産者は努力をしてそういうコストに耐えるような生産をしてきた。もちろんこれに耐えられない者は離脱したわけでございますが、私どもはそういうことを通じて、生産者も生産を拡大しながら消費者も結果的により安い牛肉を得られるようなシステム、これが日本の価格安定制度なのだと。これを、例えば無理に極端に一斉に下げてまいりますれば消費者の利益はあると思いますが、逆に生産の継続ができなかったということになります。  今回の輸入につきましても、私はそういう考え方でございます。この輸入量を確保しますこと、確保というか、輸入量がある程度ありますことは消費者のためにプラスが当然あると考えております。しかし、そのことで生産者が崩壊するようなことではいかぬということでございますので、私どもは今度の輸入量が直ちに何かそういう生産の継続を不可能にするとは思っておりません。しかし、これは将来の問題も含めまして、万が一それが再生産確保とかいまの価格安定制度を維持することが困難になるような事態が生ずるということでございますれば、これはもちろん価格安定法の発動という形で買い入れその他の措置もやりますし、それから先生が御指摘のように、その基本となる生産の基盤の充実につきましては草地の整備のことも当然でございますし、それからことしやりました無利子資金の融通制度、それから子牛価格の安定制度というものをフルに活用いたしまして、生産者には決して御迷惑をかけないという方針でございます。
  57. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 果樹につきましても、我が国の果実の出回り量並びに種類と申しますのは、一年じゅうを通じまして国産果実を主体といたしましてそれに輸入果実、さらにはいわゆる果実的野菜を加えまして、周年多種多様なものが出回っておりまして消費者の希望にこたえておるわけでございます。今回オレンジが増枠になりますれば、当然オレンジそのものの出回り価格というのは安くなってくることは明らかでございます。しかしながら、先ほども申し上げましたように、消費者の嗜好というものは大変多様化いたしておりますし、より高品質のものを求めておるという傾向にもあるわけでございます。したがいまして、今後国内対策の基本といたしましては、外国産に負けないような高品質のものをできるだけ長い期間にわたって供給をしていくということが基本であろうというふうに考えております。  ちなみに、五十九年度予算におきましても、国産果実につきましての新しい製品の開発、あるいはより高品質なものの普及ということを内容とする予算を計上いたしておりますが、それらに加えまして、先ほど大臣がお述べになりましたような今後の国内振興対策をさらに強力に遂行してまいりまして、国内産果実に対する影響を最小限度にとどめ、さらに国内産果実の発展振興を図っていきたいというふうに考えております。
  58. 村沢牧

    村沢牧君 今食品添加物については答弁がなかったわけですが、これについてもしっかりやってください。後日またその質問をやりましょう。  時間が参りましたので、大臣に最後に私は要請いたします。  今回の牛肉オレンジ協定議決を契機として、あるいはまた、それ以前から起こっておりますいろいろな外圧が日本農業に押し寄せてくるだろう、大変今重要な時期になってきておる。こういう時期に対しまして農水省そのものも畜産行政の転換というか、やはり新しい時代に対応する行政のあり方を考えなきゃならない時期だというふうに思います。同時に、畜産と申しましたが果樹もそうです。農水省の行政のあり方もここでしっかり見直す必要があるのではないか。  と同時に、大臣、このように協定はしたけれども、国民の皆さん、生産者の皆さん、大丈夫です、政府としてもこの協定はしたけれども、皆さんに御負担をかけるようなことはしません、総理もその必要な資金は出すというように言っています、こうした安心をさせるような対策を早急に今国会中に立てる、そして国民に対してはっきりした方針を示してもらいたいと思います。いつまでもぐずぐずしているのじゃなくて、必要な金は出します、こういうふうにしますと、その方針を今国会中にぜひ出してもらいたいと思いますが、どうですか。
  59. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 御答弁とそれから御報告をさせていただきます。  今ちょうど閣議が開かれる前に懇談の席で、総理、大蔵大臣一緒でございましたので、今参議院の農林水産委員会村沢先生から質問を受けました、私は、総理がおっしゃいましたように、全権委任を私が受けるときには、心配のないように予算措置をすると言ったことを私は委員会で答弁してまいりました、総理よろしいですねと言ったら、はい、そのとおりです、大蔵大臣忘れないようにということで言ってありますので、これはひとつ御安心いただきたいと思います。  それにしましても、先生の言われましたように、国民がそして農業者が心配しないような施策というものはこれは立てなければなりませんし、そしてまた、これによって安心して農業経営ができるというところでまた安定した農業が行われるものと私は思いますので、先生が言われるのをもとにしてひとつ早急に諸施策を立ててまいりたいというぐあいに考えます。
  60. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 大臣初め局長さん、昨晩帰られて、時差もあり、お疲れのところだと思うのですが、先ほどもちょっとアメリカの問題、今日までの交渉経過を踏まえましての局長からのお話をいただいたわけです。大臣の話の中にもございましたように、アメリカもぎりぎりの努力をしたのだというお話ですけれどもアメリカもそれはいろいろなバックがあり安易じゃないだろうと思います。それからアメリカ農業事情の中で、日本に七千トンじゃだめで六千九百トンでなきゃならぬという、一万トンでなきゃならぬとか九千トンでなきゃならぬとか、アメリカアメリカの事情があっていろいろそういう交渉の中での数字が出てきたのだと思いますけれども、我々は今まで、当委員会ではそういう数字的なことは表には出ませんから、本当に歯がゆい思いできたわけです。もうこれは決まったわけでありますから、今までの経緯をも含めてお話しいただきたいと思うのです。  アメリカが本当にぎりぎりの努力をしたのだというふうに大臣がおっしゃるにはそれなりの御認識があるのだと思いますけれど、日本の国情については今もいろいろ話がありました。我々もまた大臣もよく御存じのとおりです。アメリカがこの数字を出すには、ここまで踏みとどまるには、六千九百トンというには相当なぎりぎりの努力だったのだ、そういうことはどういうことから言えるのか、その努力というのは、農家に対して云々ということよりも政治的な配慮ということの方が強いのじゃないかと私は思うのですけれども、どうですか。
  61. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) アメリカの場合は、御存じのとおり、大統領選を直後に控えております。先生の言われるように、政治的なものがかな りあったと私は思っております。しかしその前に、この交渉決裂する前のときに、余りにも大きな数字だということで、そして私がアメリカもぎりぎりの線でここまでというようなことを申し上げましたのは、その大きいときに少なくとも交渉決裂するというような状況になれば、もう少しまけるからどうだとか何とかという話があると思うのですが、それがございません。それで、我々のここまでという線を出しましたときに対する反応がそのまますっと、それではもうこれ以上話し合ってもしようがないというようなぐあいで、私も余りの差の大きさにたまげたのですが、それをあえて引き下げもしないで、それてそのまま、我々は我々の国内の事情がある。ということでございますので、それで私は本当に今後どうなのだろうかと心配しておったのです。それが大幅に差を縮めてきたというところで、私はアメリカアメリカなりの努力をしたのだなというのをそこで感じたような次第でもございます。  また、これは今度随行していただきました自民党の議員さんもおりましたが、またきょうおります三局長等もそこに同席しておるわけです。それからまた、大河原大使も同席しておるわけです。これらの皆さんの意見もみんな伺いながら、そういうようなぐあいに感じて、アメリカもぎりぎりの線ということを申し上げたような次第でございます。
  62. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 そういう政治的な配慮というものが非常に大きい、私どももそう感じざるを得ない。しかしながら、国内畜産農家の現状というものは大臣及び三局長はよく知っている。そういうものが、テレビとか写真、新聞に出ておりますのを見ますと、妥結をしたというその瞬間、安堵感のような顔をしている大使と、それから渋い顔をしている三局長大臣、これはもう政治的なもの以外にないだろうと思うのです。日本も今日まで六割、七割アメリカから輸入しておるわけですから、そういう政治的なものと国内農業というものとのこれは次元が違うわけです。それは数の上でどうだこうだと縮め合うという交渉ですから、そういうことはもちろんやるのでしょうけれども、そういうところの努力ということと、今日本が抱えておるこの農業問題というのは、畜産農家というのは、これから育成しようとして計画を立てておるという現状とは大きな次元の違う話なのです。  そういう点からいうと、今日まで大臣が口をきわめて本当に日本畜産を守る、決議を守りますとか、犠牲にいたしませんとかと言ってきたことは一体どうなのか、こう思わざるを得ないのです。それから先ほど局長からもお話がありましたけれども、やはりガットとか国際世論に、アメリカとの交渉ですからアメリカが大事なのかもしれませんけれども、やはり日本は外務省が表に立つのかもしれませんけれども、国際外交、国際世論というものに対しての働きかけというか、認識の与え方というのは非常に弱いのじゃないかと私は思うのです。  やはり日本農業、地図なんか見ますと、日本なんてあるかないかみたいに思っているかもしれません。その中で最小必要限度のものを、現在そんな無理なことをしているわけじゃ決してないわけでしょう、そういう現実というのはやはり国際世論、いろいろな公の場で、特にガット等におきましてのその関係者に対しましてはそれなりの認識を与える、こういう常日ごろといいますか、日本の現状というものを、今回交渉相手ですから二年にわたっていろいろ話し合ったのかもしれませんが、これからそういう努力が絶対必要である。私はこれは絶対ひとつ今後ふんどしを締め直して、今ふんどしはしていないというから、パンツを締め直して頑張ってもらわなければいかぬ、こう思うのですけれども大臣、どうですか。
  63. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生のおっしゃることはごもっともでございます。ただ、今回の交渉は、私も向こうで写真を見まして、ああこれぐらい認識が違うのだなと思いましたのは、確かに大河原さんはにこにこ笑って本当にうれしそうでございました。私と両局長はもう本当のところを言って、これから帰ってどうしようかというような気持ちでおったわけでございます。しかし、今回の少なくとも農産物交渉に当たりましては、外務省そのほかの主導権というものは一切ございません。これは本当に我々が言うことをそのまま大使が代弁するというような形で言っておるような状況でございました。しかし、今先生の言われた国際的にも日本農業立場というものをこれはよく知らせなければならない、これは我々も身をもって今回感じた次第でございます。今後ともそちらの方の面でも努力してまいりたいというぐあいに考えております。
  64. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 先ほどお話がございましたけれども、東氏の動きというのは我々も非常にどうだったのかという疑念を持つのです。最初は総理も知っておったということですから、これは何事かということで、指示した覚えはないとか、個人的な、私的なというふうなことで話がどんどん変わっていったわけですけれども、まあ影響がなかったと。大臣は東氏には直接お会いになったわけですね。どういうことでお会いになったという、その辺のことをちょっとお聞きしましょう。
  65. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生のおっしゃるように、実は私どももたまげたわけです。ニューヨークの空港へ着きましたら、その前に特使が来ているという話でして、私より前に特使が来てしまったということです。それで実は、ワシントンへ着いてからですが、電話がかかってまいりまして、私は実は選挙区が、和歌山だったと思いますが、和歌山だと、このかんきつの問題で心配だし、私もちょうどアメリカには知人も多くおるし、いろいろな情報を集めて大臣に申しますからと言うから、それは結構です、ただし、あなたはこの団には関係ございませんよ、ああ、もちろんそうですということでございまして、お会いいたしましたのは帰る前でございましたか、今から何か新聞社に抗議に行くのだというようなことを言っておりました。ただ、朝晩熱心に私のところに電話だけは入れてくれました。ただそれだけの関係でございますので、その点は新聞に書いてあるような、また、そんなにアメリカの方も相手にしていなかったのじゃないかと思いますが。
  66. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 それは大臣がそう思うだけのことであって、東氏というのはアメリカには知己があり、また、向こうにもずっと長くいた方ですから、これは影響力のあることは事実です。交渉の場に臨めば、それはこの東氏の話というのは表には出ないかもしれませんけれども、向こうの交渉相手の人たちの認識にどれだけの大きな影響力を与えたか、それははかり知れないものがあるだろうと思うのです。  今あることについて、これを今度は理事会でどうするかという処理を決めるようでありますから、これ以上は申し上げませんが、今後こういう交渉事に当たりまして、誤解を生むようなことのないように、大臣は行ったということは知らなかったと言うけれども総理の話や新聞などを見ますと、大臣よりも先に行っておったということが言われているようだし、総理は知っていたみたいなことがマスコミなんかに書かれておりますから、そんな大事な人だったら一緒にいらっしゃるメンバーの中に入ればいいのであって、そうでもない、何となしその辺をうろうろして歩いているなんていうのじゃ、これは本当にこんな大事な交渉事に大変な迷惑であると思います。今後の問題として、内閣の一員ですから、こういうことについてひとつきちっとさしてもらいたいと思います。
  67. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 藤原先生、これはおわかりいただきたいのですけれども、私もあの人が行っているなどというのは全然知らないわけです。また、総理からも、こういうのをやっておるから話を聞いてくれとも言われておりません。私も、何であなたそんなに一生懸命なのだと聞きましたら、かんきつの問題でおれの選挙区なのだというようなことでございまして、ああそうかということで、いろいろな電話だけはよくお話を伺い ましたが、会いましたのは最後の日でございます。そのときに新聞社へ抗議に行くと言うから、あなたが言われるなら、これはもう行ってそれをするべきだ、しかし我々の団とは一切関係ないから、それはわかってもらいたいよと言いましたら、それは承知しておりますということで別れまして、きょうの朝、党の総合農政調査会の方へ行ったときにあそこで会っただけでございまして、それ以外のつき合いはございません。ただ、先生おっしゃいましたように、あらかじめそういうのが出されているというのでしたら私の方も、そんなものを出されちゃ困るということを言うのですけれども、全然知らないで、向こうへ私よりも先に行ってしまったということですから、これはひとつ先生もおわかりいただきたいと思います。
  68. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 それらも含めて、ひとつよく情報をつかんで、これは大臣だけに言うのは酷かもしれませんけれども、内閣としてそういう国際的に誤解を生み、国内的にも、アメリカは政治的な判断かもしれません、こっちは畜産農家がどうするかという農家の人たちが泣き叫ぶ声の聞こえる中で大臣がいらっしゃるわけですから、こういう問題については、今後のこともあるだろうと思いますから、十分に配慮してもらいたいと思うのです。  今、過日来の委員会で問題になっているのは、政治決着、そういうことがあってはならぬということで、あくまでも日本の農家を犠牲にするようなことがあってはならぬぞということですけれども、どこまでならば政治的な決着でなくてという、数量的にこれをあらわすということはなかなか難しいことでしょう、現在、国際協調とか、また、金融を初めとしまして自由化問題が表に立っておるとき、この農産物が矢面に立たされているということですから。しかし、その一つの指標といいますか、私どもの考えの基礎になるのは「農産物の需要と生産の長期見通し」、この閣議で決定しました農産物の長期見通し、これはだれかが勝手につくったのじゃなくて、農政審のもとに閣議で決定をしたわけでありますから、この線を踏み外すようなことでは、これは国内農家、畜産農家を無視して政治的な判断のもとに決定したと言わざるを得ない。  金子前農水大臣も、枠の拡大の必要はないということを何度も言っておりました。それは、私どももいろいろデータを見ますと、牛肉の消費も五十八年度を見ますと決して伸びていない、小牛の価格も非常に低迷をしておる。前年対比で見ましても、牛肉は五十八年四月からずっと低迷状態です。こんなこと等もあわせまして、また金子大臣は金子大臣としての見識があったのだろうと思いますが、枠の拡大は必要はない、こういうことを何度も当委員会で言っておったのでもあります。大臣は、農家を犠牲にするようなことはあってはならぬし、また、この当委員会決議、申し入れを尊重しますということを何度も言っておったわけです。  こういうことを数量的にあらわして六千九百トンだと、それを超えるのか超えないのかという、こういう議論は非常に難しいことだと思うのですけれども、しかし、こういう閣議決定というようなものをバックとしまして、こういうものがきちっと定まっておる中で、どのくらいの輸入ならば許されるのかという、これは当然限界点というのは出てくるだろうと思うのです。こういうことも十分に勘案した上で六千九百トンというのが出てきたのだろうと思うのです。単に足して二で割るなどという、こんなことではないだろう。数字的に見るとどうも足して二で割ったみたいな感じもしないではないのですが、そんなことではない、やはりあくまでも日本畜産農家を守るのだという、大臣が再三再四言っておったあのことを私どもは心から信ずるならば、そんなことではないだろうと思うのです。  自分が乗り込んでいかなければ結論は得ない、こういうことで、出発するに当たっていろいろなレクチャーをなさったと思うのですけれども、その当時から大体これぐらいのことならばという数字的なものはもう腹の中におさめていったのか。これ以上は譲らない、これ以上はだめだぞというものがあったのか。しかし、現場に行ってみたらなかなかそうはいかなかったということなのか。その辺の数字的なことについては、今までは当委員会では論じられませんでしたけれども、もう決着した段階ですから、率直にひとつ大臣の腹の内を言ってもらいたいものだと思うのです。
  69. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) ずばり申しまして、渡米する前はもっと少ない額ということを思っておりました。しかし行って、とてもどうにもならぬということで一たんは帰国決意したわけでございます。しかし、先ほど来申し上げましたように、この農産物交渉決裂いたしますと、今後の日米間に及ぼす影響というものを考えまして、そしていろいろ向こうでも大きく譲歩をしてくるというようなこともございましたので、特に先生方に御迷惑をおかけをいたしましたが、畜産の最高権威者である畜産局長かんきつの最高権威者である農蚕園芸局長、両局長に同行していただきましたので、その局長等の意見を聞きまして現地においていろいろ私は私なりに考えまして、この決断をしたような次第でございます。  あと詳細につきましては、両局長からひとつお聞きいただきたいと思います。
  70. 石川弘

    政府委員石川弘君) 牛肉の枠の決定につきましては、先生御指摘のように、長期見通しというものは、決定をいたします場合に重要な参考といたしているわけでございます。ただ、これは先ほどから申し上げておりますように、総枠の大きさの話でございまして、その総枠の大きさの中でハイクォリティービーフをいかがにするかということは、もう一つ別の判断が働くわけでございます。  大臣も御指摘のように、そういうものの中で、我々として比較的合理的に説明し得る水準というものは頭にあったわけでございます。そういう水準に対してどれくらい超えるかというものが大変大幅でございますと、私どもは説明とかあるいは合理的な判断が不能になるわけでございますが、それに至らない水準で何とかこれから工夫ができるかどうかということをいろいろ考えましてこの水準としたわけでございます。
  71. 小島和義

    政府委員(小島和義君) かんきつ関係の合意でございますが、オレンジにつきましては、輸入増加のテンポは、さきの東京ラウンドの合意の延長線上におきまして、さほど大きな差のない範囲にとどめ得たというふうに考えております。  また、国産品との競合の度合いの最も激しいと思われますオレンジジュースにつきましては、前回の伸びと全く同じ範囲にとどめ得たわけでございます。  なお、グレープフルーツジュースでございますが、さきの東京ラウンド合意におきまして、昭和五十五年度の三千トンから始まりまして、五十八年度におきましては六千トンの割り当てをするということになっておるわけでございます。昨今の実際の輸入状況を眺めてみますと、政府の割り当ていたしております数量をかなり下回った数量、大体三千トン台の輸入にとどまっております。そういうところから眺めてみますと、国内消費の伸びはほぼ頭打ちになっているという状況にあると理解されるわけでございまして、今後増枠を続けるというよりは、全体のパッケージのために一定期間後に自由化するということでやむを得ないというふうに判断をいたしたものでございます。
  72. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 農業団体の方々はこれが一つのステップになって自由化への大きな一歩を踏み出したということになるのじゃないかということを非常に危惧しております。これは六十二年までですから、それ以降の当面する問題としては豪州との交渉が始まるわけです。それから長期的に見ますと、六十二年以降どういうことになるかという、こういう問題が山積するわけです。こういうことについてはどのようにお考えですか。
  73. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 豪州とは現在協議中であります。協議に当たりましては、やはり牛肉輸入というものは、国内生産で不足する分についてこれを総枠で行うというような基本姿勢で私 はやってまいりたいというぐあいに考えます。  しかし、今後六十二年以降ということになりますと、これに対する問題と、これは今ここでこれをこうというぐあいに申し上げるまでいきませんが、しかし、早急にこれにどういうぐあいに対応していくかということを考えてまいりたいと思っております。
  74. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 先ほど大臣それから局長のお話をお聞きしますと、大臣も今閣議で総理や大蔵大臣にくぎを刺したということのようですが、現在景気の跛行性といいますか、業種や地域別によって景気が非常に波があるということが言われております。そういう中にありまして、ことしの豪雪や何かでどうしても東北、北海道、北陸、こちらの方はそういう被害といいますか現状にあるわけですが、政府の基本的な方針として財政再建のうちは特別な処置をとらない。いろいろな法律があるのですけれども、財政再建ということでまた農林省予算も、この前委嘱審査で私もいろいろ申し上げましたけれども、マイナスシーリングの線を大きく割り込んでいるということで、これは大蔵省の役人にもがっちり言ったのです。そういう農水省に対する物の見方というのは、これから山村大臣に大いに頑張っていただけるのだと思います。  何でも金で解決するということじゃないと思いますけれども、基盤の弱い農業に対してはそれがちゃんと立ち上がれるまではやはり面倒を見なきゃならぬ。どこの国だって保護政策をとっているのはもう御存じのとおりです。そういうことからいって、財政再建の最中とか、また限られた予算の中でとかそういうことで、それは当然野方図に何でもしなきゃならぬということじゃないかもしれませんが、基本的に畜産農家の再建のために必要なことであるならば大胆に政策を推進する、こういうことで、大臣、ひとつしっかり取り組んでいただきたい。  時間がありませんから、言うことだけ言っておきますが、さらにまた、去年酪振法が改正になりまして、長期見通しを基といたしまして、「酪農及び肉用牛生産の近代化を図るための基本方針」、去年法律をつくって法律に基づいて基本方針をつくっておるのです。今酪農は別といたしましても、肉用牛については、農水省としても最大の努力をしようという現時点にあることをぜひひとつお忘れなく。  そうしてまた、有畜農業ということが今言われております。土地がどうもやせておる、肥料ばかり入れて。これはやはり堆肥を入れなきゃならぬ。有機肥料を入れなければならぬ。有畜農業ということで肉牛というものが奨励され、そうしてまた、その方向に今進みつつある。今回のこの大幅な輸入牛肉によって市場価格がどう動くかということは、あすあさってすぐということじゃないかもしれませんが、長期的に見てこれは規模の小さいところ、規模の大きいところそれぞれに影響を受ける。さっき局長のどなたかがおっしゃっていましたが、その時代の時流に合わない方々は離れた方もいらっしゃるということですが、そんなことでこのたびのことは済まされません。本当に今、後継者がなかなかいないというのも農業に将来性が、見通しがないからです。くるくる変わる。長い目で見てこうなのだという長期ビジョンに立った希望の持てる産業であるということならば、後継者もいらっしゃるでしょう。  過日の予算委員会で、大臣がいなかったからあれですけれども、五十七年の統計を見ますと、基幹農業従事者、十六歳から二十歳の一年間百五十日働く青年のいないところがあるんです、データに出てこない県が。女子が三十幾つかの県でその統計上に出てこない。こういう若い人たちというのは非常に世の中に敏感ですから、長い目で見てその農作業というものが自分たちに希望が持てるものでないということだとつく人がいない。大臣は何年なさるかわかりませんが、十年も大臣をしていらっしゃらないでしょう。そういうことから考えますと、農家の方々はそれで自分の一生をということですから、ぜひひとつこのたびはいろいろな事情のあることもわかりますが、農家を犠牲にしない、こういうことで大見えを切って出発なさった、そうしてお帰りになってもその決意である大臣、ぜひひとつ、何とかしようとして必死になって頑張っていらっしゃる悲痛な農家の方々の声をお聞きいただきまして、この日本農業の自給率の低下傾向にある、それにまたさらに拍車をかけるようなそんなことを山村大臣のときに絶対にしてはならない、しない、こういうことについての強い決意のほどを聞き、これからの最大の努力をしていただきたいものだと私は最後に申し上げたいと思うのです。
  75. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生のおっしゃるのももっともでございまして、私の選挙区も農村がほとんどでございます。農家の実態というものはよくわかっておるつもりでございます。今後国会で御決議いただきましたように、自給力の向上というものを目指して将来の希望のある農業というものに向かって少なくとも私は全力を尽くしてまいるつもりでございます。
  76. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  77. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 速記を始めて。   暫時休憩いたします。    午前九時五十九分休憩      —————・—————    午前十一時四十分開会
  78. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農林水産政策に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  79. 下田京子

    ○下田京子君 大臣、このたびの日米農産物交渉の合意内容というものは非常に大きな問題を残したと、私はまず率直に申し上げたいのです。  そこで、確認したいのですけれども、これは大臣談話の中にも述べられておりますし、先ほどの当委員会の報告でも冒頭お述べになりましたけれども、今回合意の問題について、農家経済の安定に大きな支障を及ぼすものではないと確信している、こういう表現をなさっております。このことは、一定の影響はやむなしなのだ、我慢していただきたいということを言われているというふうに受けとめてよろしいですか。
  80. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 私が申し上げましたのは、今回不満な点は多々ございますが、しかし農政の推進、そして農家経済、この安定に厳しいものではございますが、大きな支障を来すものではないということでございまして、もし不測の事態等が起きれば直ちにこれに対応する考えでございます。
  81. 下田京子

    ○下田京子君 不測の事態が発生したらということをあわせてお述べになっておりますけれども、大きな支障を及ぼすものでないというこの御認識がいかがなものかと私は申し上げたいのです。  大臣国内生産十二年間の長期見通しでどうなっているか御存じだと思います。部分肉換算で五十三年二十八万四千トン、それが六十五年になると四十四万一千トンで、十二年間の間に一・五五倍ということをお立てになっております。ところが、今回の合意内容というものを見ますと、五十八年三万八百トンベースに今後四年間で六十二年に五万八千四百トンにするということですから、わずか四年間で一・九倍です。これではまさに国内生産を圧迫しないというふうな認識が立たないと思うのです。しかもオレンジの場合ですと、今後毎年一万一千トンずつで四年後に四万四千トンですから、合わせて十二万六千トンでしょう。これは今国内で生産されている晩柑類の中の特に伊予カン、五十七年の出荷量十二万五千六百トンと匹敵するものじゃないですか。一方、温州ミカンだって過剰の中で今後三年間で一万ヘクタール、約八万トンの減産をしようということでしょう。これが深刻でないと言えるのでしょうか。私はこの認識は非常に甘い、問題だということを申し上げたいのです。  そこで、具体的にお尋ねいたします。オレンジ自由化が仮になされたとした場合に、業界の見方でありますとおよそ十五、六万トンというふう に言われておりますが、その辺どう見ておりますか。
  82. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 十五、六万トンという見方は、既に自由化しておりますグレープフルーツの輸入量が、年によって変動はございますが大体十五、六万トン程度である。そういうことから見ての一つの類推であるというふうに考えております。実際に自由化いたしました場合どれぐらいのものが入るかということにつきましては、日本輸入商社の過当競争体質もございますし、一概にその程度とは言い切れないというふうに考えております。
  83. 下田京子

    ○下田京子君 一概に言い切れないということなら、農水省自体で試算されましたか。
  84. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 果実の場合には、先ほど申し上げましたように非常に多種多様なものが年間を通じて供給されておるわけでございまして、その中で単品だけを取り上げてみまして、そのものの消費のマキシマムがどれぐらいであるかということを見通すことにつきましては大変難しい問題がございます。現に各種のシミュレーションを使いまして学者その他の者が試算をいたしておりますけれども、なかなか一定の水準であるということについて的確な見通しを立てることは難しいわけでございます。また、そのことが自由化ということについて私どもが心配をしている理由でもあるわけでございます。
  85. 下田京子

    ○下田京子君 試算もされないで、先ほど来からのお話聞いていますと、一定の不満を持ちつつもよう頑張ったみたいな御認識をお持ちではないかと思うのですけれども大臣、さっき申し上げたような状況の中にあって、今回の内容は決して甘いものではない、大変深刻なものであると私はそう受けとめているのですが、どうなのですか。
  86. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 厳しいものである、これは私もそのとおりでございます。しかし、頑張ったものじゃないと言いますが、これは頑張るだけ頑張ってとってきたものでございます。
  87. 下田京子

    ○下田京子君 頑張ったかどうかは別にいたしましても、国内に少々の影響で我慢いただくのだという御認識は甘い。これは深刻な事態だという受けとめ方があってしかるべきではないでしょうかということを私は申し上げているのです。  ついでに申し上げますけれどもオレンジの場合、毎年一万一千トンでしょう。四年後が十二万六千トンになるわけです。その後さらに同じような増加枠で行ったら、一体その後さらに四年間延長されたらどうなりますか。さっき試算されていないと言われましたが、業界筋では十五、六万トンということを言われています。それから、外務省が唯是教授に委託をされたと思います。その委託レポートによりますと、外務省の研究レポートで、オレンジの毎年の枠拡大が、自由化の場合に十六万トン水準になるということを指摘しているのです。とすれば、こういうベースで行きますと実質自由化につながるということになるじゃないですか。大臣、そういう大きな意味を持っているのです。どう受けとめますか。
  88. 小島和義

    政府委員(小島和義君) 唯是教授の試算につきましては、私どもも全幅の信頼を置いておるわけではございません。また四年後にいかなる取り決めが行われるであろうかということを現段階で申し上げることは適当でないというふうに考えております。
  89. 下田京子

    ○下田京子君 長期見通しなるものを立てているわけですから、どうなるかわからないというのはいかがなものか。それは相手がいますから交渉の中身がどうなるかということはいかがなものかというのはわかります。でも、さっきから御答弁を聞いていますと、東京ラウンドが一つのベースであります、こうおっしゃっているじゃないですか。ではその東京ラウンドが一体どうだったのかということなのです。東京ラウンドの合意で、オレンジは年間五千トン増だったと思います。それが今回は一万一千トンでしょう。約倍でしょう。高級牛肉についても、東京ラウンドの合意の内容というのは約三千三百トンだったと思います。それが今回は六千九百トンでしょう。そういうことになりますといずれも二倍強です。このテンポで行ったら一体四年後にどうなるかという点は、非常に楽観できないことであるというのはもうはっきりしているじゃないですか。しかも大臣も言いました。さっき頑張ったぞと言われたお話なのですけれども、頑張ったけれどもアメリカ自由化の旗はおろしていない。これは大臣もお認めになっていますね。自由化というのは一時棚上げしたに等しいものであって、この次の交渉はさらに厳しいものになるでしょう、そういう感触をお述べになっております。ですから、実質自由化にも等しいような枠の拡大をのんできたというこの点は将来に大きな問題を残しているのだと、私はそれを申し上げているのです。
  90. 小島和義

    政府委員(小島和義君) ただいまの増加数量でございますが、オレンジの場合で申しますと、東京ラウンドの取り決めの行われましたのは五十三年でございますが、五十三年の輸入総枠は四万五千トンでございます。最終年の五十八年度の枠が御承知のように八万二千トンということでございますから、三万七千トンの増になっておるわけでございます。今回が四万四千トンでございますから、確かに多いと言えば多いわけでございますが、アメリカ側の本来の主張自由化であるということに対応するためのパッケージとしてはやむを得なかった、かように申し上げておるわけでございます。
  91. 下田京子

    ○下田京子君 ですから、私が何度も言っておりますけれどもオレンジは年間五千トン増でしょう。総枠の話で三万四千トンということはあったと思うのですけれども、それに比べれば云々というお話ですが、高級牛肉の場合につきましてもテンポが二倍増だというのは事実だと思うのです。そうですね、否定されないでしょう。
  92. 石川弘

    政府委員石川弘君) 高級牛肉につきまして、上がってまいりますテンポは御指摘のように高いわけでございます。ただ、私どもが何度も申し上げておりますように、需給操作の観点からいたしますと、我々が最大の関心を抱いておりますのは総枠の問題でございます。総枠についてこのような高いテンポの伸びを想定していることは全くございません。
  93. 下田京子

    ○下田京子君 総枠の話を幾らに組んでいるかというのは、私は時間がないから次回に譲ります。しかし、総枠で大体目いっぱいでも九千トンぐらいしか入らないだろう、こういうふうに言われております。そういう中で六千九百トンともうアメリカと合意しているのですから、今後豪州との関係がどうなるかということになっていったら大変なものなのです。ですから、大臣いいですか、私が言いたいのは、さっき大臣も言われたのですが、アメリカ自由化の旗をおろしていないのです。そうですね。この次はさらに強硬にやってくるだろうと言っているのです。これを本当に抑えていくための手段は一体何かということです。私は枠の拡大をやはり譲らないという姿勢こそが必要ではなかったか、この辺はどう説明されてきたのですか。
  94. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 私だって何も好んで枠の拡大をしたわけではございません。先と言われますように、これだけをとらえてどうこうと言うわけにはいかないわけです。日米全体のものを考えなければならない。日本農業全体のものを考えなければならないという段階で今自由化などということになって、そんなことになると大変なことになってしまいます。それからすべてを総括的に考えまして、ここまではやむを得ない、許し得る最高のものであるということで、我々も満足して帰ってきたわけではございません。
  95. 下田京子

    ○下田京子君 残念ですが、時間なのです。
  96. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 まず初めに、大臣我が国農業に大きな支障を及ぼすものではないと確信しておる、こういう発言をされておりますけれども、その根拠をお伺いしたいと思います。
  97. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) この場合は牛肉かんきつについてでございますが、畜産局長農蚕園芸局長に、当委員会にも随分御迷惑をおかけしましたが一緒に行っていただきまして、向こうでいろいろな両局長の意見も伺いまして、そしてこ こまでならばということで最終的に私が決断をいたした次第でございます。内容等については両局長から申し上げます。
  98. 石川弘

    政府委員石川弘君) 高級牛肉の枠の問題につきましては、国内生産の状況、それから総需要の伸び方というものを想定しましてその差額について輸入を行う。その中で、我々としてどこまでがハイクォリティービーフの配分として考えられるかというぎりぎりの線を考えまして、こういう数字をやむを得ないものとしたわけでございます。
  99. 小島和義

    政府委員(小島和義君) かんきつにつきましては、御承知のように三つの品目が含まれておるわけでございます。  まず、生鮮のオレンジにつきましては、前回四年間で三万七千トンの増ということにいたしたわけでございますが、今回は多少それを上回っておりますが、四万四千トンの増ということで、最小限の伸びにとどめたというふうに考えております。  それから、国産品との競合の最も近いと思われますオレンジジュースにつきましては、前回の総枠のテンポと同じものということで合意をいたしたわけでございます。  最後に、グレープフルーツジュースでございますが、これは我が国の果汁の大宗を占めておりますミカンジュースとは多少品質的に異なるものでございます。  また、最近の輸入状況を眺めてみますと、昭和五十五年度の三千トンから始まりまして、五十八年度では六千トンという割り当てをいたしておるわけでございます。しかしながら、実際の通関実績を眺めてみますと、多少増加はいたしておりますが三千トン台にとどまっておる、こういう状況から眺めてみまして、今後増枠を続けるということよりは、全体のパッケージのために二年後自由化ということで、これによって大幅な輸入の増加はないというふうな考え方から妥結をいたしたところでございます。
  100. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから、協定期間を我が方の主張が五年を要求したのに対し、四年ということになりましたけれども、この次の四年後の交渉がまた大統領選挙とぶつかる。今回のアメリカがあれほど強硬な要求をしてきたのも、大統領選挙に重なっておるという政治的な要素がかなり大きかったと私は思うのです。したがって、この四年後もまた大変なことになるということが想定されるわけであります。恐らく四年後は牛肉オレンジとも自由化要求を突きつけてくるであろうと思いますけれども、この辺はどうですか。
  101. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生のおっしゃられるとおりでございまして、大統領選挙が絡んでこれだけ強硬なアメリカ姿勢と、それからまた、自由化要求を突きつけてくるのじゃないかということでございますが、実は当初、我々交渉団は五年ということで終始したわけでございます。御存じのとおりに、最終日が実は朝十時から夕方、午後の三時過ぎまで六時間近くの間やりましたが、実はその問題等も含めていろいろ議論をいたしました。しかし、最終的にはやむを得なしということでこの四年というものを我々はのんだわけでございます。先ほど申しましたようにアメリカ側の態度というのは、少なくともこの自由化を棚上げにしてやったのだというのが大きな譲歩なのだということも、これは我々が想像を絶する大きなものを譲ったのだというように考えております。しかし、特にこの高級牛肉の場合は、我が国のいわゆる畜産農家というものを考えました場合に、自由化などということは絶対できないということでございますので、今後とも我々のできる施策というものは、あらゆるものを通じて畜産農家の体質強化というものに向けてやっていきたいと思っております。
  102. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、四年後は恐らく自由化要求を突きつけてくる、それで我が方がそれをのめないとしても、自由化の時期についての確約は求めてくると思われるわけです。そこで私は、今度決まったことはこれはやむを得ないと思うのですけれども、これからの対策が重要ではないか。この四年間に何をやればいいか、これについてどう考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  103. 石川弘

    政府委員石川弘君) 御承知のように、国内生産振興のために体質を強化するということにつきましては、昨年の法律改正によりまして一つの考え方はでき上がっておるわけでございますが、もう一つは対外的な国境措置の問題がございます。これにつきましては、現在のIQと畜産振興事業団の一元輸入を併用する形で、これはある意味では我々もガットの上でも主張し得る体制であるとは思っておりますけれども、今回のいろいろな交渉の経緯を見ます場合に、やはりこの対外措置のあり方、国内生産振興との絡み合いというようなことも装備をするといいますか、防備態勢を強めるとか、そういうこともいろいろ検討していかなければならないと思います。  この時点で直ちにどうこうということを申し上げているわけではございませんけれども牛肉につきましては、御承知のようにオーストラリア以外のほとんどの国が何らかの制限措置を持ちながら国内生産を振興しているわけでございまして、そういう物の考え方ということは国際的に直ちに否定されているわけではないわけでございます。問題は、そういう考え方がどの程度他の諸国家に受け入れられるかということにも絡んでおると思いますので、我々は国内生産の安定のための各種の施策と、それから国境措置のあり方というものについて十分検討を深めていくつもりでございます。
  104. 小島和義

    政府委員(小島和義君) かんきつの場合におきましても、基本的な考え方は畜産と同様でございますが、ただ、牛肉の場合と違っておりますのは、我が国の年間の果実並びに果実的野菜の消費量というものを眺めてみますと、大変多種多様でございまして、また、全体として見れば高級化の方向に向かっておるという状況にあるわけでございまして、日本かんきつ及びその他の果物を含めまして今後さらに体質を強化いたしまして、輸入果物にやすやすとはやられないという体質をつくり上げていくことが、今後の対策の基本であるというふうに考えておるわけでございます。  また、輸入の問題だけにとどまりませず、今後におきまして、我が国もまた、この国産果実を輸出にも振り向けていくという努力も並行して行う必要があろうというふうに考えております。
  105. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、自由化が事実上もう秒読みに入ったと言っても過言ではないと思うのです。永久に自由化が拒否できるものならいいのですけれども、なかなか最近のアメリカ姿勢からするとそれは困難ではなかろうかという気がします。なぜならば、アメリカは輸出の基本戦略はやはりハイテクノロジーと農業というふうにしておるわけでありますから、農業を世界的にどんどん輸出して開放化を迫ってくるということは当然考えられるわけであります。  我が国の基本的な姿勢として、アメリカとの関係を無視してもよければ防げますけれどもアメリカとの貿易を維持する、あるいは安全保障面での協力を維持するとするならば、この自由化は不可避ではないかという気がするわけであります。したがって私は、やはりこの自由化に耐え得る体制というものを早くつくらなくてはならない。それから牛肉の場合でも、国産の肉牛の生産コストをやはりできるだけ早期に引き下げていく努力をしなければならないし、また、そのための援助というものが必要ではないか。それと同時に、価格の安定帯というものがあるわけですけれども、この安定帯の中でも、国産の肉牛のコストと見合って引き下げていく努力を続けなくてはならないのじゃないか、もちろん、そのテンポがどの程度できるかというのが問題でありますけれども、この自由化が秒読みに入っておるということを前提にして急がなくてはだめだという気がするわけですが、いかがですか。
  106. 石川弘

    政府委員石川弘君) 先ほどもちょっと申し上げましたように、八年間で乳雄の卸売価格がほとんど変わっていないということは、実質引き下げをやっておりますし、それから農家の方もその厳 しい要請にこたえてきたのだと思います。私どもは生産費を下げるため、いろいろな努力をするためにこの前の法律改正をしたわけでございますが、四年なら四年というタイミングを考えましたときに、何ら国境措置なしに対外的に競争できる状態を想定することは不可能だと思います。そのことは、アメリカ自身がそれでは何年か後に豪州との関係で全く自由にできるかということと同じ問題でございまして、私は何らかの国境措置は要ると思います。ただ、そのあり方について、より強力など申しますか、より国際的世論に耐えられるような方法はどういうことかというような検討もあろうと思いますし、それから事と次第によりましては、現行の制度の中においても十分説明できるような、やり方もあろうかと思います。問題は、やはりそういう四年なら四年という時間を無にすることなく、国内生産を強めるということ、それから対外関係をより円満な形で調整する手法を検討する、この二点に尽きるかと思っております。
  107. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 大臣は、日本農業を守るという御決意で頑張ってこられたわけです。結果的には、率直に申し上げまして、多くの国民、わけても生産者農民、また消費者の立場の国民は大変な不満と不安を持っておるというのが、その交渉の結果の反響だと私は思っております。そこで問題の、外交面では一応決着がついたということになりますが、国内体制という面からすると、まさにそれこそ暗い厚い壁が立ちはだかっている、こう思われてなりません。でもそれはほっておく問題じゃありませんので、そういう気持ちを今持ちながら、牛肉に関して六千四百トンという数量を提示して、もうこれ以上は譲れないと交渉を中断したにもかかわらず、さらに譲歩して六千九百トンで妥結をしたということであるわけですが、一体その理由は、率直に語っていただきたいのですが、どこにあったのでございましょうか。
  108. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) この六千四百トンというのは、これが正確か正確でないかということは、実は交渉相手側とも、会談内容については言わないということになっておるので、これはひとつお許しいただきたいと思います。  ただ、我々が、これまではということで決めまして、そして、私どもといたしましてはこれがぎりぎりだということでいろいろな数字が出てきたわけでございます。ただ、アメリカ側からは、また出てきたのは、これがぎりぎりというのが余りにも差が大きくて、とてもそんなことではもう我々はできないということで一応交渉を打ち切り——特に、先生からも、日本農業を守るというのを堅持してこい、我が国主張が入れられなければ帰ってこいというメッセージもいただきました。それも考えまして、一時は交渉が、中断というよりも四月中にもう一遍開きましょうということで、物別れのような状態になったわけでございます。しかし、これが決定いたしまして、我々が明日帰国という段取りになりましたときに、日本側といたしましても、またアメリカ側といたしましても、このままでいいだろうか、決裂した時点で何が起きてくるか。恐らくこれは、米側は直ちにガット提訴ということにもなってまいりましょうし、農民に与える不安もどれぐらい大きいものがあるだろうかということを考えまして、ひとりでに双方から、何とか妥結の道はないかということでいろいろな動きがございまして、そして最終的に二万七千六百トンという数字が出てきたわけでございます。我々といたしましても決して満足する数字ではございませんが、しかし、何とかこれならば我が国農業を守ることが、基本線のぎりぎりではあるができるということで、これを妥結をしたというのが真相でございます。
  109. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 牛肉にしましてもオレンジにしましても、二年ないし四年後期限が来れば、好むと好まざるとにかかわらず、自由貿易への路線に向けての足音がもう聞こえるような気がいたすわけですが、自由貿易を意図してのこの現時点の交渉であったわけですか、あるいはまた、そうではありませんでしたか。
  110. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 今回の交渉は、まず前提といたしまして、アメリカ側が、自由貿易というものは、自由化というものは一応棚上げをするということを前提にしてこの交渉に当たりました。そして、自由化の期日をいつにしろとか、そういうようなことではございませんで、一応自由化はもう言わぬということを前提にしての交渉でございます。
  111. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、アメリカとの交渉は、四年間はこれで一応片がついたということです。ところが、オーストラリアとの関係ですね、この結果がさらにまた、アメリカとの評価が見直されるのであるか、さらに重圧になるのであるか、そういった私は因果関係があると思っております。そういうことで、オーストラリアに対してはどのようにお臨みなさるつもりですか。
  112. 石川弘

    政府委員石川弘君) 豪州との関係は、牛肉輸入総枠につきまして、実は既に昨年協定期間が切れておりまして、豪州と我々はいろいろと協議をしてきたわけでございます。日米間に行われております高級牛肉交渉は、何度も申し上げておりますが、これはアメリカの枠ということではございませんで、高級牛肉をどのように設定するかという協議をしているわけでございますが、これが終わりますまで豪州としては協議に応ずるわけにいかないという態度でございました。したがいまして、今回高級牛肉の枠につきまして日米間の合意がされたわけでございますので、今週中にも向こうから協議を再開するということで参る予定でございます。私どもはかねがね申し上げておりますような立場で、総枠についての協議もいたしますし、豪州は総枠以外にもいろいろと具体的な要求をしてくると思われますので、そういうことにつきましても協議をしたいと思っております。
  113. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 アメリカとの交渉の結果というのは、先ほど申し上げましたように、非常に消費者の立場からも、より安い牛肉を容易に手に入れたいというのが多くの国民の願いであります。また、生産者からすれば、やはり再生産意欲をさらに燃やしていくという希望と夢がなければいかぬわけです。それでアメリカの結果からすると、先ほど申し上げましたが、不安と不満を持っておる。ところが、オーストラリアとの協定の結果によっては、この不安、不満がそれによって少しでも救われるのであるか、それとも二つかてて加えて重圧になるのであるか、そういった、結果的にはどうなるだろうというまた不安があることも事実であると私は思っております。そこで、ぜひひとつオーストラリアについては、願わくばアメリカ協定の結果からくる不安と不満を、オーストラリアとの協定によって少しでも国民に喜んでもらえるように、ほっとできるような交渉にひとつ力を入れてもらいたい、こう思うわけでありますが、大臣いかがでしょう。
  114. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 先生の言われるのはごもっともでございまして、私も、我が国農業を守るという限度におきまして、オーストラリアに関しましても我が国農業事情等を説明しながら、できるだけのことはしたいという基本姿勢では考えております。
  115. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 大臣日本農業を守るという、こういう決意で行かれた。そうして対米交渉をされた中で、相手は日本の実情をよく理解しておるという感触のもとに向こうと交渉を接してこられたので、相手に対する大臣の見方ですね、日本立場を、農民の立場を現状よく理解の上に立っての交渉であったかどうか、どうですか。
  116. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) 私も行きまして、日本農業の実情をよく説明もいたしました。しかし、佐野局長以下、二年半にわたってこの交渉をやってきたわけでございます。私は、少なくとも相手が日本農業内容を知りながらもやはりあれだけの要求をしてきたというぐあいに、私の感触としてはそういうぐあいにとりました。
  117. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 それで、ずばり申し上げたいと思います。孫子の兵法に、敵を知りおのれを知れば百戦危うからずと教えております。敵味方ということはこれは今日では言いたくありません、と ころがそれが言葉としてあるわけですから。そこで、結局勝負に行かれたわけですから、勝負には私は三つの結論があると思うのです。いわゆる勝負は、勝ったのであるか、負けたのであるか、引き分けであったのか、どっちでしょうか。
  118. 山村新治郎

    国務大臣山村治郎君) こういうような問題は、うちの佐野局長が得意でございます。
  119. 佐野宏哉

    政府委員佐野宏哉君) 私どもは選手でございまして、審判ではございませんので、今の御質問にお答えすることはいささか僭越かというふうに存じますが、私の偽らざる心境を申しますと、この種の交渉は、双方とも勝ったわけでもないし負けたわけでもないというふうになるように妥結しなければ妥結できないものというふうに存じておりますので、妥結できたということは、すなわち勝ったわけでもないし負けたわけでもないということであろうというふうに存じております。
  120. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 本件に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十六分散会      —————・—————