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1984-04-06 第101回国会 参議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月六日(金曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  三月三十日     辞任         補欠選任      竹山  裕君     河本嘉久蔵君  三月三十一日     辞任         補欠選任      水谷  力君     安井  謙君  四月二日     辞任         補欠選任      安井  謙君     水谷  力君  四月五日     辞任         補欠選任      稲村 稔夫君     松本 英一君  四月六日     辞任         補欠選任      松本 英一君     稲村 稔夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         谷川 寛三君     理 事                 川原新次郎君                 最上  進君                 村沢  牧君                 藤原 房雄君     委 員                 大城 眞順君                 岡部 三郎君                 坂元 親男君                 高木 正明君                 初村滝一郎君                 星  長治君                 水谷  力君                 森田 重郎君                 稲村 稔夫君                 上野 雄文君                 菅野 久光君                 刈田 貞子君                 鶴岡  洋君                 下田 京子君                 田渕 哲也君                 喜屋武眞榮君    国務大臣        農林水産大臣臨        時代理        国 務 大 臣          (総理府総務長        官)       中西 一郎君        農林水産大臣官        房長       角道 謙一君        農林水産大臣官        房総務審議官   塚田  実君        農林水産大臣官        房審議官     中野 賢一君        農林水産大臣官        房予算課長    京谷 昭夫君        農林水産省構造        改善局長     森実 孝郎君        農林水産省食品        流通局長     小野 重和君        食糧庁長官    松浦  昭君        林野庁長官    秋山 智英君        水産庁長官    渡邉 文雄君    事務局側        常任委員会専門        員        安達  正君    説明員        大蔵省主計局主        計官       寺村 信行君        厚生省環境衛生        局食品衛生課長  玉木  武君        厚生省環境衛生        局食品化学課長  市川 和孝君        農林水産大臣官        房技術総括審議  山極 栄司君        官        農林水産大臣官        房審議官     谷野  陽君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十九年度一般会計予算内閣提出、衆議  院送付)、昭和五十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付)、昭和五十九年度政府関係  機関予算内閣提出衆議院送付)について(  農林水産省所管及び農林漁業金融公庫) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る三月三十日、竹山裕君が、昨五日、稲村稔夫君が委員辞任され、その補欠として河本嘉久蔵君及び松本英一君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) この際、御報告いたします。  去る四月三日、予算委員会から、六日及び七日の二日間、昭和五十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、農林水産省所管農林漁業金融公庫について審査委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  中西農林水産大臣臨時代理から説明を求めます。中西農林水産大臣臨時代理
  4. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 昭和五十九年度農林水産関係予算について、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十九年度一般会計における農林水産関係予算総額は、総理府など他省庁所管分を含めて三兆四千五百九十七億円で、対前年当初予算比四・一%、千四百七十億円の減額となっております。  本予算におきましては、厳しい財政事情のもとで、財政及び行政の改革の推進方向に即し、限られた財源の中で、優先順位の厳しい選択を行い、質的充実に配慮しつつ、予算のより重点的な配分に努め、農林水産行政を着実かつ効率的に展開するよう努めたところであります。  以下、予算重点事項について御説明いたします。  第一に、国土資源を有効に利用し、生産性の高い農業を実現するため、構造政策推進することであります。  今日、土地利用型農業規模拡大生産性向上を実現し、その体質強化を図ることが緊急の課題となっております。  このため、土地利用型農業経営規模拡大に資するよう中核農家中心兼業農家等を幅広く包摂し、農用地の利用調整活動等を行う地域農業集団を広範に育成するとともに、土地利用型農業生産性向上重点を置いた新農業構造改善事業後期対策等関連施策推進することとしております。  第二に、需要の動向に応じた農業生産の再編成生産性の高い農業生産体制整備を図ることであります。  まず、水田利用再編対策につきましては、五十九年度以降の三カ年を期間とする第三期対策を発足させることとし、奨励補助金等として二千七百二十九億円を計上しております。  次に、耕種部門統合メニュー事業である新地域農業生産総合振興対策につきましては、土づくり稲づくり等重点を置き、三百七十一億円を計上しております。  また、畜産関係統合メニュー事業である畜産総合対策につきましては、畜産振興資金供給事業を発足させる等肉用牛生産振興重点を置き、二百八十一億円を計上しております。  第三に、農林水産業食品産業等生産性飛躍的向上等に資するため、官・産・学の連携強化による総合的なバイオテクノロジー先端技術開発を拡充する等農林水産技術試験研究推進することとしております。  また、引き続き普及事業の的確な推進を図るとともに、一九八五年農業センサスを実施することとしております。  第四に、農業生産基礎的条件である農業生産基盤整備につきましては、食糧自給力強化生産性向上及び農業生産の再編成に資する事業等重点を置いて推進することとし、八千九百十九億円を計上しております。  また、農業農村整備計画の策定、生産基盤生活基盤との一体的な整備推進、新農村地域定住促進対策発足等農林漁業基盤とする活力ある農山漁村の建設を進めることとしております。  第五に、健康的で豊かな食生活確保を図るため、農産物の需給と価格の安定に努めるとともに、日本型食生活中心とする望ましい食生活定着促進を図ることとしております。  また、食品産業近代化流通合理化を進めてまいります。  以上申し上げましたほか、国際協力備蓄対策推進するとともに、農業者年金制度の適切な運営農林漁業金融充実災害補償制度の円滑な運営等に努めることとしております。  第六に、森林・林業施策に関する予算について申し上げます。  木材価格の低迷、経営経費増高林業生産活動停滞等林業情勢が厳しさを増していることにかんがみ、林業地域活性化を図るための対策推進することとしております。  また、国土保全対策充実林業生産基盤整備を図る観点から、治山、林道造林林野関係一般公共事業について二千八百五十八億円を計上しております。  さらに、木材産業体制整備国土緑化対策等充実を図るほか、新林業構造改善事業間伐促進総合対策林産集落振興対策、松くい虫対策等推進いたします。  第七に、水産業振興に関する予算について申し上げます。  水産業振興水産物安定的供給確保を図るため、漁業生産基盤としての漁港の整備を計画的に進めることとし、千六百四十一億円を計上しております。また、「つくり育てる漁業」の展開を図ることとし、沿岸漁場整備開発栽培漁業沿岸漁業構造改善事業等推進いたします。  また、漁業経営をめぐる厳しい状況にかんがみ、各般の漁業経営対策推進するほか、水産物消費拡大対策充実等を図ることとしております。  さらに、新資源・新漁場開発、漁海況情報サービス事業漁場環境保全対策等推進いたします。  次に、特別会計予算について御説明いたします。  まず、食糧管理特別会計につきましては、米の政府売り渡し価格の引き上げ、管理経費節減等食糧管理制度運営改善合理化に努めることにより、一般会計から調整勘定への繰入額を三千九百五十億円に減額しております。  また、五十四年度から計画的に実施している過剰米の処分に要する経費として、一般会計から国内米管理勘定へ千四百五十二億円を繰り入れることとしております。  国有林野事業特別会計につきましては、国有林野事業経営改善対策強化することとし、事業運営改善合理化等の一層の自主的努力とあわせて、国有林野における造林及び林道事業並びに職員の退職手当に要する財源について資金運用部資金借り入れを行うほか、一般会計から所要の繰り入れを行うこととしております。  このほか、農業共済保険等の各特別会計につきましてもそれぞれ所要予算を計上しております。  最後財政投融資計画につきましては、農林漁業金融公庫等による総額八千四百八十七億円の資金運用部資金等借り入れを予定しております。  これをもちまして、昭和五十九年度農林水産関係予算概要説明を終わります。
  5. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 村沢牧

    村沢牧君 最初に、日米農産物交渉について現時点でわかっている内容について説明してください。
  7. 塚田実

    政府委員塚田実君) お答えいたします。  日米農産物協議は四日から始まっておりますが、山村大臣ブロック米通商代表との間の第一回協議は、現地時間四日午前九時三十分より、日本時間で言いますと四日午後十一時三十分から約二時間米国通商代表部において行われております。同席者は、日本側から大河原大使農林水産省から佐野、小島、石川各局長、外務省から村田経済局長ほかであります。米側からは、通商代表部ネルソン代表補農務省アムスタッツ次官、国務省のウォルホビッフ次官補ほかでありました。  第一回協議につきましては、農産物に関する各種の問題、いわば一般論について意見の交換が行われております。  それから、第二回の協議につきましては、前日に引き続いて山村農林水産大臣ブロック通商代表との間で行われたわけですが、現地時間五日午前十時、東京時間で本日の午前零時から一時間二十分行われまして、その後一たん休憩し、東京時間の午前六時二十分ごろから先ほど午前八時まで行われたそうであります。協議内容につきましては、山村大臣ブロック代表との間で明らかにしないということの約束がありますので申し上げることができないのを御容赦いただきたいと思いますけれども、この閣僚協議は非常に難しく、かつ厳しい交渉になっているという報告を聞いております。このようなことから、山村大臣としては国会の御承認が得られれば当初予定を一日延長いたしまして、そのための協議を行いたいという御希望を有しているそうであります。  以上でございます。
  8. 村沢牧

    村沢牧君 山村農相交渉の日程は二日間というふうに聞いておったのですが、協議の結果一日延期をするというような説明があったわけです。そうすると、国会の了承を得て農相は、例えば交渉が妥結しようが妥結しまいが八日には日本に帰ってくる、そのように理解していいですか。
  9. 塚田実

    政府委員塚田実君) 大臣の御意向を先ほど伺いますと、日曜日、八日には協議を終えて帰国したい、このように申しておるそうでございます。
  10. 村沢牧

    村沢牧君 マスコミはいろいろの数字を挙げて報道しているのですけれども、この数字については農水省としては現段階で明らかにすることができない、そういうことですか。
  11. 塚田実

    政府委員塚田実君) 私どもマスコミでいろいろ数字が出ておることは承知しておりますけれども交渉内容については明らかにしないということ等もございますし、御説明できないのを御勘弁いただきたいと思いますが、少なくとも私ども農林水産省としてあのような数字に関与は一切いたしておりません。
  12. 村沢牧

    村沢牧君 数字を挙げることはできないけれども交渉は順調に進んでいるということなのですか、なかなか難航しているということなのですか、その辺の感触はどうなのですか。
  13. 塚田実

    政府委員塚田実君) 今の御質問は順調か難航かということでございますが、明確に二つに分けてお答えするのはどうかと思いますけれども、率直に申し上げて順調よりは難航に近いというふうに私は思っております。
  14. 村沢牧

    村沢牧君 そこで、山村農相日米農産物交渉について日米間に大きな開きがある段階訪米はしない、こういうことを何回も言明をしており、去る三月二十九日の当委員会で私の質問に対しても同様な答弁をしておったわけです。ところが、その三日後の四月二日には訪米決意した。このように急遽訪米決意せざるを得なくなった背景には、中曽根総理指示によるものということは明らかであるわけであります。農相の意思にも反して、そしてまた、この段階で行くべきではないという意見は私一人ではなかったというふうに思いますが、こういう強い意見の中で訪米に踏み切った理由はどこにあるのか、これはひとつ大臣の方から御答弁を願いたいと思います。
  15. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 御承知のように、三月末でもって無協定状態に相なるわけで、そういった意味では日米両国にとってもこのままでじんぜん放っておくわけにはいかないというぎりぎりの大詰めには来ておったのではないかと思いますし、その点については与野党皆さん方の御理解を賜ることだと思います。  そういった情勢のもとで、政府・与党いろいろなやりくりがあったと聞いておりますが、見込みが立たなければ行かないという考え方もございましょうし、しかし、見込みが立たなくてもこの際行くべきだという議論も当然あり得るわけでございまして、そういった中で与野党決意をして、山村農林水産大臣も、それならば行こうというところまで踏み切っていただいた、かように理解をいたしております。
  16. 村沢牧

    村沢牧君 農林水産省としては、御承知のように、大臣はそういうことを何回も言っていたのです。日米間で隔たりがあるうちは私は行きたくないということ、大臣もそういう決意であったし、農林水産省もそういう方針だったというふうに私は承っておるのです。それが大臣が急速行かなければならなくなったということは、これは総理周辺指示だというふうに思いますけれども農林水産省も行くべきだ、その段階に来たという理解でもって農相訪米に踏み切ったのですか。
  17. 塚田実

    政府委員塚田実君) 大臣訪米に踏み切りました背景は、私ども事務当局として御説明申し上げるところは幾つかあるわけでございますが、まず第一に申し上げたいのは、日米間で牛肉、かんきつに関する協定が御案内のように三月三十一日で期限切れになっております。そこで、私ども日米間の協定期限切れになったままいりまでも放置していくというのは適当ではないというふうに考えておりまして、たまたま先週の末にブロック通商代表から大河原大使を通じまして、山村大臣とひとつ胸襟を開いて建設的に政治家同士で話し合いたいというようなメッセージも届けられてきたわけであります。  そのような状況の中で、山村大臣が、また確かに私ども事務当局から見ても、米側弾力性について具体的な見通しが立っていないということを思いましたけれども、しかし、大臣といたしましては、私みずからが渡米して交渉することによって米側弾力性を引き出したい、また、そうでなければ引き出し得ないというようなお考えを持って御出発になったというふうに私は考えております。そのような幾つかの事情があることを御理解いただきたい、このように思います。
  18. 村沢牧

    村沢牧君 大臣は、日米間にこんなに隔たりがある段階では私は行く気持ちがないというふうに何回も言っておったのですが、それを踏み切って行ったということについては、それは期限の問題もあるでしょうけれども、明らかに総理の方の指示だというふうに私は理解しておるわけであります。そこで、中曽根総理山村農相全権一任して訪米させたということが報道されておるわけでありますが、全権一任中身について少し聞きたいと思うのです。すなわち、輸入枠拡大するということを示唆して早期決着を図ってこいというこういう一任なのか、それとも、日本農業をこれ以上困らせるようなそういう内容ならこれは決裂してもやむを得ないと、そういうことも含めて、いずれにしても拒否も妥協もすべて山村大臣一任をする、そういう一任なのですか、この一任中身はどうなのですか。
  19. 塚田実

    政府委員塚田実君) お答えします。  日米農産物交渉につきましては、御案内のように、従来より所管大臣であります農林水産大臣責任のもとに対処したところであります。今回の交渉におきましても、中曽根総理全権委任を受けて、農林水産大臣責任において最終的な判断を下して対処していただくということで現在訪米中でありますが、この全権委任中身は、交渉の仕方、交渉内容等、すべて農林水産大臣内閣として委任しているというふうに理解しております。本問題につきましては、山村大臣はかねがね、我が国農業を守る立場を堅持して、本委員会の御決議あるいは申し入れの趣旨を踏まえて対地されるというふうに言われております。ですから、交渉を妥結するも、また妥結しないという事態についても、どちらについても一任されているというふうに私は考えております。
  20. 村沢牧

    村沢牧君 交渉の結果がどういうふうになるとしても、すべて農水大臣責任において行ったことである、そういうことですね。
  21. 塚田実

    政府委員塚田実君) さようでございます。
  22. 村沢牧

    村沢牧君 中西大臣にもう一度お尋ねいたしますが、大臣農産物自由化あるいは枠拡大について、国務大臣としてどういう見解をお持ちなのですか。
  23. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 先ほど来お話も出ていますし、当委員会の御決議もございます。農業というものは、国民的視野から見ても大変重要な分野であるということは疑う余地もございませんし、それが崩壊するとか壊滅するということになったら、これは民族的な大問題になるわけでございます。そういったような意味で、日本農業を守るという基本的な態度は堅持すべきだし、また、守る場合にいろいろな知恵を出して、総力を挙げて、農業皆さん方総力はもちろんですけれども技術分野の発展もこのごろは目覚ましいものがございますから、いろいろな角度から日本農業を守るということに大きな盛り上がりを見せつつあるのが現状だと思います。そういった意味合いにおきまして、かねて農林水産大臣が言っておるような路線を踏まえてこれからも頑張っていかなければならない、かように考えておるところであります。
  24. 村沢牧

    村沢牧君 国会開会中に大臣が外国へ出かける、しかも、農水省主要局長を三人も連れていって判断をする、これは重大な事態だと思います。きょうは予算委嘱審査ですけれども局長が三人もおらない、こういう事態で開かれるわけなのです。そこで、当委員会は四月九日の午前九時から委員会を開催いたして、一般質問ということになっておりますが、大臣報告を受けて徹底的な審議もいたしたいと思いますので、私は、きょうの段階ではこれ以上この問題については触れません。しかし、これからいろいろと農水省に対しても連絡はあると思うし、また首相周辺にも、あるいは臨時大臣にも連絡はあると思いますから、毅然たる態度をもって最後まで交渉に当たるように私の方からも強く要請をしておきたいと思います。  次に、早速委嘱審査関連をする問題に入りますが、まず私は、今後の農政基本政策について以下質問してまいりたいと思います。  山村大臣は、先ほどの所信表明の中でも、農林水産業を取り巻く情勢は大変厳しいが、その役割は一層重要になってくるので、二十一世紀に向けて、夢のある明るい農林水産業農山漁村の実現を図るため、農業生産の再編成を図る必要があるというふうに述べております。農業を取り巻く情勢の厳しいことはきょうに始まったことではありませんけれども、なぜそんなに農業が厳しくなってきたのか、この厳しさを克服するような農政が行われてきたのかという、こういう反省があり、その上に立ってこれからの農政の再編成方向が出されなくてはならないと思います。農業基本法が制定されてから二十有余年たちましたが、いわゆる農基法農政は、農業と他産業との格差の是正、自立経営農家の育成あるいは選択的拡大生産などを政策目標に掲げて、その推進手段として補助金行政農林省行政を行ってきたわけであります。  しかし、農業現状はどうか。農業所得と他産業との格差はますます拡大をしてきておる。専業農家中核農家は減少をしてきておる。成長作物と言われた果樹や畜産は過剰で、生産調整を行っておる。これが農家を苦しめており、農業を今日まで縮小させておる。一体、今日まで進めてきた自民党農政農水省農業施策はこれで十分であったのかどうか。ただ経済変動があったからやむを得ないという、そんな答弁では済まされぬ問題がありますが、どういうふうにこれを判断しますか。
  25. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 今御指摘のように、農業をめぐる内外の情勢は、非常に厳しい状況にございます。我が国農業農業基本法制定以来、御指摘のように、農業生産をできるだけ需要方向に見合ったように選択的拡大を図っていく、むろん、農業本来の基本でございます食糧安定供給という線をベースにしながら、そういう方向農政を展開してきたわけでございますが、この基本法農政は、昭和三十五年以降日本経済がいわゆる高度成長を遂げます過程におきまして、地価高騰あるいは農業労働力流出とかいうふうに、農業をめぐる情勢が非常に変わってまいったことが、農政上に影響を与えた大きな問題であろうかと思います。  また、この過程におきまして、国民食生活も大幅に変わってきた、そういう食生活に対応するような農業生産をやはり展開していかなければいけない。と同時に、農業につきましても農業従事者が他産業と均衡のとれるような所得をというようなことで、従来まで施策を展開してきたことも事実でございます。その面におきましては、農政も一定の成果を上げたというように私どもは考えております。しかしながら、先ほど申し上げました地価高騰農業労働力の特に若年労働の他産業への流出というような大きな問題もございまして、また一方で食生活の面では、やはり畜産物の方に相当程度国民食生活が動いていった。それを反映いたしまして、米等につきましての需要が落ちてきておるというようなこともございまして、なかなか農政につきましても私どもの志向していたように正確にその方向には行かなかった点につきましては、十分反省はいたしておるわけでございます。  特に、麦、大豆、飼料作物等、土地利用型の農作物につきまして大幅に自給率が低下したという点が、私どもとしては非常に大きな問題であろうというふうに考えております。反面、畜産物でも中小家畜あるいは野菜、果実等、施設利用型の作物につきましては、相当程度合理化も進み、外国に、完全に競争ということはまだまいりませんけれども、比肩できるような生産水準まで来ているというような状態でございまして、私どもは今後の問題といたしましては、土地利用型の農作物につきまして何とか合理化を図り、また、自給率も上げていくという方向に、やはり全力を注がなければいけないと考えておるわけでございます。  また、この担い手といたしまして、特に経営規模拡大という問題があるわけでございますが、先ほど申し上げました地価高騰というところから、農地価格につきましても急騰をしておる。そのために、他産業流出する方も農地を手放さないで、しかも、完全に離脱しない形で農村に残っておられます。また、特に米などにつきましては機械化等が進みまして、容易に兼業の状態におきましても米作が可能であるという、ある意味では喜ばしい、ある意味では非常にまた問題のあるような状態になってきておるわけでございまして、この辺につきましても、今後の農政の展開に当たりましては、十分そういう点も反省をして農政の展開を図らなければいかぬというふうに考えておるわけでございます。
  26. 村沢牧

    村沢牧君 私が聞いたことは、この農業をめぐる情勢が、経済情勢でもあるいは食生活情勢も変わってきたことは事実なのです。それに対応する農政が今まで行われてきたのかどうか。私は今日に至るまでこの委員会に七年間おります。その間に大臣が八人がわりました。その都度大臣に対して、農基法農政がこういうふうに進めてきたけれども、これでよかったのかという質問もしてきたわけなのです。なるほど、私は全部悪いとは言いません。言いませんけれども農基法農政の目的としたことが今日そういう形になっていないじゃないか。これは明らかに政策の失敗なのです。それは、大臣は八人もかわったかもしらぬけれども農水省皆さん方はそんなにかわっていないじゃないですか。そのことについてどういうふうに反省しておるかということです。
  27. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 確かに御指摘の面もございますけれども、三十五年当時から見ました場合、例えば需要の伸びております畜産物あるいは野菜、果実等につきましては相当程度の大幅な拡大をしてきておるわけでございますし、また、自給率につきましても、近年小麦あるいは豆類、飼料作物等につきましても、私どもの意図している方向に徐々には上がってきているかと思います。現在、私ども昭和六十五年を目標といたしました農業生産の長期需給見通しというものを念頭に置いておりまして、その方向に従って農政を展開していくつもりでございます。確かに御指摘のように、即効的なものはなかなかまいりませんけれども、徐々にそういう方向には効果を上げているというように考えているわけでございます。
  28. 村沢牧

    村沢牧君 私が幾ら今まで何回質問しても、今までの農政について官房長自身が反省がない。やはり反省がなければ、これからの農業の再編成といったってどう進めていくかという方向は出てこないと思うのです。それじゃ、これからの二十一世紀を目指す農林水産業基本的課題は何か。それから農業編成の主要政策は一体何か。今官房長が、これからこういうふうにしますというような答弁をしておった。ですから、このことは重ねて私は時間がありませんから質問いたしませんが、次に、じゃ具体的に伺ってまいりましょう。  まず、需要の動向に応じた農業生産の再編成を図るというふうに言っているのですけれども、一体今後どんな作物を選定して誘導していこうとするのですか。私ども現地を歩きますと、農林省のおっしゃるとおり今までやってきた、ところが、あるものは過剰になって生産調整をしなきゃならない、これをつくってもらっては困るということになっていると。じゃ、農民は一体何をつくればいいかということですね。農水省としては、地域の特性に合わした作物を選択していくなんという、そんな抽象的なものじゃなくて、一体、今お話があったような農政を進めてきて、これからの農業の再編成を図っていく中においてどういう作物を誘導していくのですか、具体的に言ってください。
  29. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 農作物そのものにつきましては、各地域の土地条件であるとか気象条件等によりましてやはり適作物はございます。今御指摘のような農政方向からいたしますと、全般的には全国的に今後どういう作物が不足するのか、あるいは生産を奨励するのが望ましいかというところが私ども基本的な農政の原則でございまして、今お話がありました「農産物需要と生産の長期見通し」というものを昭和六十五年度を目標にお示しをしております。これは閣議で了解した一つの線でございますが、これをさらに各地方農政局ごとに、地域別にどのような方向がとられるかということを具体的に検討させてみまして、昨年の春、農政局別に各農政局でどういうような農業、農村の展望ができるか、あるいはどういう農作物が望ましいかということを各地域別にお示しをしているわけでございます。それをさらに受けまして、各都道府県におきましても、地域都道府県の実情を反映した方向がいろいろ検討されておるように承知しておるわけでございます。  具体的な作物につきましては、私どもとしては全国的なベースで申し上げますと、今後生産の拡大を図る必要のある作物といいますのは、先ほど申し上げましたように、やはり小麦、特に日本めん用の小麦につきましては完全自給ということを一つの目標といたしまして全国的に奨励しているわけでございますし、また大豆につきましても、食用大豆の約六割程度のものを六十五年ぐらいまでには自給する。油脂用の大豆につきましては、やはり日本では適作ではないというふうに考えております。また、飼料作物につきましては、特に最近の畜産物自給率の低下の大きな原因はえさの問題でございます。特に大家畜、中小家畜のいずれにつきましても、トウモロコシ、メーズ等、日本では必ずしも適作でない。また、収量の低い、生産費も高いというようなものに相当程度依存しているわけでございますので、中小家畜は別といたしましても、できるだけ大家畜につきましては自給飼料に転換をしていくという方向で考えているわけでございます。  なお、その他の作物につきましては、具体的にいろいろ地域の動向等もございましょうし、そういうできるだけ地域の実態に即して生産を進めるというふうなことを各県にもお願いしているわけでございますし、大分県とかその他の県におきましては、例えば一村一品運動というふうな形で、各土地土地に適した作物の生産を奨励しているという状況にあろうかと考えております。
  30. 村沢牧

    村沢牧君 極めて簡単な質問ですが、例えば地域の特性に即して作物は選択をしてくれた。そういうことで、養蚕地域がいいということで桑を植えたわけです。そうしたら、今度は三割減産だというのです。それで、畜産がいいということでやったけれども、ブロイラーも豚肉も牛乳も、これも計画生産になってくる。それでは果樹がいいかといえば、果樹だってそうなのです。ミカンはもう減産をしている。ですから、地域で特性を生かしてやりなさいと言ったって、みんな過剰になって生産調整になってしまうわけでしょう。そうすると、今官房長答弁を聞くと、小麦と大豆と飼料作物がこれからいいのだということになるわけです。それをつくれば、今度はつくった人たちの、農家の保障がされるのですか。日本じゅう、それじゃこれから小麦と大豆と飼料作物をやりましょうと、そういう方に誘導するのですか。
  31. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 今申し上げました小麦あるいは大豆、飼料作物というものにつきましては、全国的に国として奨励すべきものということでございますし、五十三年から始まりました水田利用再編対策におきましても、特に特定作物ということで特別の優遇措置をとっているわけでございます。また、制度的にも、小麦につきましては食糧管理制度、あるいは大豆につきましては大豆交付金、また、畜産につきましては迂回生産のあれもございますが、畜産物におきまして価格安定制度をとるという形で政策的にも十分な裏打ちはしているわけでございます。ただ、養蚕その他の問題につきましては、また担当局からも御説明申し上げますけれども、やはり需給上見通しに狂いがあったということもございまして、特に養蚕の方々につきましては非常に難しい問題が若干出ているわけでございます。酪農等につきましては、やはり生産の増加の方が需要よりも大幅に上回っているという点で計画生産をお願いをしていたわけでございます。それぞれ、物によりましてその辺の事情は変わっているかと思いますが、私どもは、そういう全国的な奨励作物と同時に個別作物につきましても、需要見通し等をできるだけ見直しをしながら指導をしてまいりたいと思っているわけでございます。
  32. 村沢牧

    村沢牧君 もうちょっとそれじゃ具体的に伺いましょう。例えばリンゴ、ナシ、ブドウ、ミカン、酪農、牛肉、ブロイラー、これはこれ以上つくっていいですか、どんどんふやしていいですか、主要な農作物ですが。
  33. 中野賢一

    政府委員(中野賢一君) 今具体的に、リンゴ、ナシ、ミカンについてお話があったわけでございますが、リンゴにつきましては、最近の価格の動向を見てまいりますと、比較的堅調に推移したわけでございまして、そういうこともございまして、私どもが果樹農業振興特別措置法に基づきまして決めております果樹農業振興基本方針、この見通しの線よりは若干高い植栽が続いておったわけでございます。そういったこともございまして、昨年、五十八年でございますけれども、これは豊作ということもございまして、五十八年からことしにかけましてのリンゴの市況が低落をいたしております。そういったこともございまして、やはりリンゴにつきましても植栽が思いのほか進んでいるということもございます。一方で、想定されておりました廃園の方も余り進まないということもございますので、リンゴの植栽についてはセーブするように今現在指導いたしておるわけでございます。いずれにいたしましても、リンゴにつきましては品種を多様化するということでこれまでも対応してまいりましたし、そういうことがリンゴの需要拡大にもつながるということで、消費者の多様化に応じました産地の方の体制をつくるということで指導してまいりたいと考えております。  それから、ナシにつきましては、長十郎等の在来品種につきましては若干需要が落ちておりますが、いわゆる幸水等の三水系の需要はまだ堅調でございます。したがいまして、ナシにつきましては今後の需要の動向を見ながら慎重にやる必要がございますが、まだまだ植栽を続けてもいいのではないかというふうに考えております。  それから、ミカンでございますが、これは御案内かと思いますが、先般来三万ヘクタールの減反を実施したところでございまして、その懸命な努力にかかわりませず、需給のバランスという点からまいりますとまだ危ないということで、さらに五十九年から一万ヘクタールぐらいの減反が必要ではないか。いずれにいたしましても、産地の体質強化、特に先ほどリンゴで申し上げましたように、消費の多様化に対応いたしましていろいろな品種を植えるということが必要かというふうに思っております。産地の体質強化の方に力を注いでまいりたい。一方、特にミカンにつきましてはやはり需要拡大というものも考えなければなりませんので、五十九年の予算につきましても、そういった方向予算を実はお願いをいたしておるわけでございます。
  34. 村沢牧

    村沢牧君 答弁中ですが、時間もありませんし、その現状は知っていますから、これ以上つくっていいのかどうかということについて、一言でいいです、ブドウについても答弁してください。これ以上どんどんふやしていいのか。
  35. 中野賢一

    政府委員(中野賢一君) 簡単に申し上げますと、ブドウにつきましては転作等で伸びたわけでございますが、やはり需給の問題を考えますと控え目にする必要があるのではないか、慎重に進める必要があるというふうに考えております。
  36. 谷野陽

    説明員(谷野陽君) 畜産物についてのお尋ねでございますが、酪農につきましては、私どもは、我が国における牛乳、乳製品の需要は、それほど高い伸びではございませんが、なおふえ続けていくというふうに考えておるわけでございます。したがいまして、長期的に見ますれば我が国の酪農の計画的な増強を図っていかなければならない。ただ、最近の水準は、大変生産力も高い水準に達しておりまして、過剰を起こしやすい体質となっていることもございまして、内容充実しつつ、さらに計画的にこれを進めていく必要があるというふうに考えております。  また、肉の関係につきましては、養豚及びブロイラーにつきましてはそれぞれかなり生産の近代化が進んでおります。また、需要の方も国際的に見ましても相当の水準に近づいてまいっておりますので、これらにつきましても体質の改善を進めつつ、着実かつ計画的な増強をしていくというのが今後の方向ではないかというふうに考えているわけでございます。
  37. 村沢牧

    村沢牧君 今お聞きをしてみると、地域の特性を生かしてやりなさいといっても、リンゴもナシもブドウもミカンも酪農も養豚もこれ以上やっては困るということなのですね。需要の動向に合わして、今つくっている人はやめろということじゃない、これ以上ふやしちゃ困るわけですね。ということになると、官房長、小麦と大豆と飼料作物を重点にしてずっとやっていくという誘導方向なのですか。日本農業はこれから伸ばすのはこれしかないということなのですか、どうでしょう。
  38. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 今御指摘のものは果樹園、樹園地帯でございますので、その樹園地におきましてどういうものが考えられるかということにつきましては、やはりその土地条件等を見ないと私どもとしてはお答えはできないわけでございます。全国的に水田利用再編の方向としてはそういうことを申し上げたわけでございますから、各県ごとにどういうものがいいかということは、それぞれの地域地域で見てまいりたいわけでございます。やはり全体としては需要動向に応じて物を考えていくと……。
  39. 村沢牧

    村沢牧君 需要動向に応じてというと、みんな過剰になってしまうじゃないですか。何がいいのだ。
  40. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 畜産物につきましては、今担当の谷野審議官から御説明申し上げましたように、やはり需要は伸びている、それに対しまして生産の伸びがそれ以上に上回っているという状況でございますので、需要にバランスをしたような伸びを確保していくというようなことかと考えております。
  41. 村沢牧

    村沢牧君 非常に何か自信のないような答弁なのですが、そこを本当は聞きたいのです、一体農水省としては何を誘導していくのかということを。大臣所信表明を見ても、皆さんの答弁をいつ聞いておっても、農業の再編成を図っていくなどと言っているけれども、どういう再編成を図っていくのか全然わからないわけです。それをよく聞きたいのですから、ひとつわかるように、また統一見解でも、時間がないからきょうでなくていいですから、示してください。  それにしては、私は五十九年度の予算を見ても、これも全く農林水産予算というのは、五十九年度の予算の中でも、他省庁と比べて一番減額されている。しかも、この予算の推移を見ると、昭和三十五年以降伸び率の鈍化さした年はあっても下回ったことは一遍もないけれども、農林水産予算は五十八年度マイナスが二・五%、これに続いて五十九年度は四・一%も減っている。また、予算総額に占めるシェアも昭和四十五年には一一・五%であったが、年々低下して五十九年度は六・八%になっている。何でこんなに下がったかといえば、これは中曽根内閣のもと防衛費だけ伸ばして福祉や教育予算なんかにしわ寄せをした、農水予算もその大きな犠牲を受けた、これは一口にそういうように言うことはできるのですけれども、こういうふうに予算も低下した中で農業の再編成を図っていく、明るい二十一世紀に向けた農村を築いていくなんて、一体予算が伴っているのですか。こんなに減額された原因は一体何ですか。
  42. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 予算につきましては、私どもはできるだけ農林水産施策推進上必要な予算確保ということに全力を注いできたわけでございます。残念ながら最近の財政事情等を反映いたしまして、予算総額におきましても、ゼロシーリングあるいはマイナスシーリングというように予算総額全体につきまして抑制のような状況にまいっておりますし、特に農林省の政策の一番重要な施策である補助金等につきましても、臨調等から補助金の硬直化あるいは合理化というようなことに一般的な抑制の勧告が出されておりまして、そういうことを受けまして農林水産予算はこのところ二年続きの減額ということになっているわけでございます。  また、今御指摘のように、予算総額に占めるシェアも落ちております。これも事実でございますが、ただ実額につきましては、例えば五十七年等をとりました場合には、昭和五十年に比べまして約七割増の、当時二兆一千七百億が五十七年度では例えば三兆七千億でございまして、約七割の増加でございます。この間の物価等を考えました場合には、物価の伸びがその間に約二割五分の増加でございまして、相対的な価額との関係におきましては、実額においては伸びは示しておるわけでございます。  ただ、農林水産予算の姿勢という意味で、やはり一般会計予算でのシェアが落ちているということにつきましては、私どもは非常に残念に思っております。しかしながら、その中におきまして、やはりこういう世の中、時世でございますので、できるだけ予算の配分に当たりましても優先的に必要なもの、政策的に優先しなければならぬものにつきまして、そういう配分を図っているというのが実情でございます。今後とも私どもはそういう予算確保に努力はいたしますが、こういう財政事情でございますので、その範囲におきまして必要な予算確保し、また、予算の執行に当たりましてもよくその効率的な配分ができるように、十分効率的な配分に努めていくというふうに考えているわけでございます。
  43. 村沢牧

    村沢牧君 官房長、あなたたちが予算編成するについて努力したことは私は認めています。認めてはいるけれども、官房長のように言いわけばかりするのじゃなくて、これだけどんどん農林予算が減っているのですから、減らないように努力をしていくのだと、その熱意がなくては。あなたの答弁を聞いていると言いわけばかりじゃないですか、そんなのはだめです。それはいろいろ努力したと言うけれども、例えば補助金、奨励金も軒並み減額されている。特に、農業生産の再編成を図ろうということで発足した新地域農業生産総合対策事業、あるいは土地利用型農業にするなどと言うけれども、新農構も減っている、一昨年発足したばかりの畜産振興対策の費用も減っている。農業生産の再編成をしていくという大事な予算だってみんな減っているじゃないですか。時間がありませんから一々弁解を求めませんけれども、もっと素直に答弁したらどうですか。  次に、それではそういうこれからの農業をやっていくために、担い手は一体どういう形態を考えているのか。なるほどこの農政審答申は中核農家を誘導している。そして中核農家経営像として稲作は五ヘクタール、酪農は八ヘクタール、肉牛は五ヘクタールぐらいの面積を目標としている。あるいは臨調も土地利用型農業の体質改善をして、中核農家へ農地の集積をするような構造政策をしなさいと言っている。一体これからの農業を担っていくのは、中核農家というものの位置づけと、それからやはり零細農家もたくさんあるのですけれども中核農家に全部集約していくのですか、その辺の基本的な考え方を。
  44. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 我が国農業生産性向上という視点から言いますと、中核農家、規模の大きい生産性の高い農家のシェアをどう上げていくかということが大きな課題であろうと思います。御案内のように、六十五年の長期見通しにおきましても、現在の中核農家が作付割合あるいは農用地の利用割合、さらに生産割合に占める比率を大幅に上げていくということを目標として設定しているわけでございます。その意味におきまして、私どもはやはり中核農家の育成を図るための施策農政重点を置いて展開を図るべきだと考えておりまして、その意味において、一つはやはり規模拡大あるいは農用地の高度利用につながる農用地の集団的利用調整の施策強化すること、あるいは関連する基盤整備事業の施策強化すること、もう一つは、資質の向上を図るための施策強化することに現下の重点を置いているということは御案内のとおりでございます。
  45. 村沢牧

    村沢牧君 私は規模拡大を否定するものじゃありませんが、それでは零細農家をどうするのですかということなのです。日本農業は御承知のとおり、零細な面積でさまざまな作物を組み合わして農業生産を営んでいるという特質を持っている。また、最近は高齢者の農業へUターンというのが多くなって、小さな農地でもやはり自分で守って、そこで生活していこうという傾向もあるわけです。そういう農村の雇用状態等から見ても、中核農家へ土地をだんだん集積さしていってしまったら、零細農家や農村の雇用はどういうことになりますか。
  46. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 二つの側面から見る必要があると思います。一つは、現在の農業に対する新しい労働力の補充の実態と中核農家の関係をどう見ていくかという問題だろうと思います。最近の新規学卒者の就農状況、それからもう一つは今御指摘のございましたUターンの中で、若年階層の就農状況というものが、見ておりますと大体長期見通しで考えております七十万戸の中核農家の育成という形に合った補充が行われ、それが少しずつ定着しているのではないだろうかと思っているわけでございます。  反面、まさに御指摘のように、中高年層が率としては上がってきておりますが、数としては大体最近の農村の実態では絶対数はほとんど変わっておらないわけでございます。ある意味では日本の社会の中で老齢化が先に進行したという実態だろうと思いますが、この方々の雇用なり生き方をどう考えていくかということが重要だろうと思います。端的に申し上げるならば、こういう方々に生きがいを与えて活力ある農村地域社会をつくっていくという側面と、こういった方々の生活の安定、生き方の安定を考えながら構造政策のさらに推進を図っていくという二つの側面から問題を取り組む必要があると思います。端的に申し上げると、日雇いとか出稼ぎをできるだけ少なくするための雇用機会の確保ということが、私はそれぞれの地域で重要な課題になるだろうと思っております。従来も各般の施策を講じておりましたが、やはり市町村レベルでこういった就業問題とか構造政策の問題に統一的に取り組む取り組みをしているところが、客観的に見ると、経験的に見ますと成功しているわけでございます。  そういう意味で、今回国会で御審議を願うことにしております農振法及び土地改良法の改正、これは村づくりを標榜して、その手法の整備を図るものでございますが、従来の農振計画というものを線引き計画から改めまして、いわゆる就業の改善という問題と生活環境の整備という問題をそれぞれの段階における振興計画の中に位置づけまして、組織的に取り組んでいくという体制を整備していく。また、これに対応いたしまして、今後地場産業の育成なり、あるいは工場を中心にした企業誘致の問題というものについて組織的に取り組むための施策重点的に実施していきたいと思っているわけでございます。
  47. 村沢牧

    村沢牧君 農政審の答申は、昭和五十六年から十年間に農地の流動化面積は九十万ヘクタールと見込んでおるわけですが、このように動いてまいりますか。と同時に、このように流動化して中核農家を育成をしてくる。中核農家の現在の全農家数に占めるシェア、将来、六十五年をめどとするなら六十五年までにどのぐらいな中核農家の数にしようとしているのですか、そのシェアについて。
  48. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 御案内のように、中核農家の育成目標というか、確保するべき中核農家の数は、六十五年見通しては約七十万戸ということを考えているわけでございます。また、その生産のシェアと申しますか、具体的にそれぞれの農業生産に占めるウエートでございますが、例えば作付面積という問題で考えていくと、米は四割弱、現在より水準は高いわけでございます。それから野菜等は六六%、あるいは飼料作物等は八八%。それから牛でございますね、乳牛の飼養頭数については九三%、肉用牛は八割というふうなシェアを目標にしているわけでございます。  問題は、まさに今村沢委員指摘のようにこのために必要な農用地の流動化が進むかどうかということにあることは御指摘のとおりだろうと思います。まず、農用地利用増進法を制定し、賃貸奨励金の措置を制度化し、さらに一昨年以来地域農業集団の育成という形で、地権者の話し合いによる規模拡大政策を進めているわけでございます。五十八年十二月末現在の流動化面積は約十三万三千ヘクタールということでございまして、大体ここのところ三万ヘクタールぐらいの水準で増加してきております。それからもう一つは、作業受委託も、特に水稲を中心にした平場等における全面作業受委託も大体六万五千ヘクタールぐらいという形になっておりまして、そういう意味においては、量的に言うとこの十年間に大体九十万ヘクタールの農地の移動を予定しているわけでございますが、そのうち、従来の実績をベースにして、所有権移転で約四十万ヘクタールということで、利用権では四十万ヘクタール、農地法賃貸借では従来の実績で十万ヘクタールということを考えておりましたが、今までのところはこの四十万ヘクタールの利用権の集積に見合う流動化が一応進んでいるのではないだろうかと見ております。  その場合、出し手と受け手の関係をどう見るかがまさに御指摘のように質的に重要になるわけでございますが、はっきり申し上げますと、これにもかなり顕著な傾向が出ておりまして、下位階層から上位階層への移動が約七割になっております。一ヘクタール未満の農家が出し手になっている量が約七割、逆に受け手の方は一ヘクタール以上が約七割という形になっております。また、実際に中核農家借り入れたものがその中でどれくらいあるだろうかということを、今度は農家の態様に応じて試算してみますと、約七八%になっている。そういう意味においては、確かにいろいろな御議論はありますけれども中核農家への利用権の集積を中心にした規模拡大は進みつつあると思います。ただ、現時点におきましては、例えば露地野菜で地方が低下する問題とか、西日本の酪農経営等でやはり非常にこういう飼料の輸入依存度が高かった農家が、できるだけ地元で畑地に利用権を設定する動き等が中心になっておりまして、まだまだ今の段階では三ヘクタール以上の階層というもののウエートがそう大きくなっていないことは否定できません。私どもといたしましては、ここに非常な重点を置かなければならないと思いまして、先ほど申し上げました地域農業集団の育成等を通じまして、やはり規模拡大、農用地利用の集団化ということ、さらには農用地の利用率の向上という問題を目指して施策を集中してまいりたいと思っているわけでございます。
  49. 村沢牧

    村沢牧君 農水省のこれから進めようという施策の中で、明るい農村をつくるために地域農業集団の広範な育成を図ってまいりたい、こういうことを強調しているのですけれども、具体的にどういうことをするのですか。これまた簡潔に答弁してください。
  50. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 地域農業集団の育成と申しますのは、やはりそれぞれの地域社会において、中核農家も通勤兼業農家も含めた地権者の話し合いの場所を通じて構造政策推進を図っていきたいという考え方でございます。  具体的には、全国で農業振興地域内の農業集落が約十二万集落ございますが、当面、この半分の六万集落について、大体三万五千の集団を三年間でつくっていきたいということで施策を進めているところでございまして、現在まで一応二万九千集団の育成についての必要な指定なり予算の準備措置を講じているわけでございます。  この考え方の幾つかの特徴は、一つは、出し手はやはり通勤兼業農家中心として集落単位に考えていく。もちろん平場で水がかり等が統一されているところは数集落ということになるわけでございます。逆に、受け手は地域の実情に応じましてかなり広範に参加を求めていく。また、取り組む内容につきましては、やはりそれぞれの地域の実情、農用地の需給事情、それから作物の事情等を頭に置きまして、すべて利用権の設定による規模拡大だけに短絡いたしませんで、一つは利用権の設定もありますが、もう一つは作業受委託という形での規模拡大を頭に置く。それからもう一つは、大型機械の共同利用の体系等を軸にいたしまして、やはり面的集積ということを重視していく。それからもう一つは、やはり地方問題が共通の地域の課題になっておりますので、地方の維持、培養を頭に置いた有畜農家と耕種農家の連携の強化とか、あるいはローテーションの実現ということを頭に置いていく。もう一つは、里山の開発とか裏作の不作付地の利用率を上げていくという土地の効率的利用ということに着目して、四つのゲートと申しますか、道筋を考えまして、先ほど申し上げました地権者の話し合いによる農用地の効率的利用の体系をつくってまいりたいと思っているわけでございます。
  51. 村沢牧

    村沢牧君 それも抽象的な答弁ですが、今度また新しい法律も出ることを検討しておるようでありますから、地域農業集団というのがより具体的になるように、その法律の中で生かしてもらうように、またその法律を審議するときに論議をいたしましょう。  そこで、農業の果たすべき役割の基本的なものは、国民に必要な食糧を安定的に供給するものである、したがって、そこに当然のことながら食糧の自給率を高めていかなければならないわけなのです。政府も自給率強化は常に口では言っていることでありますが、この自給率の推移を見ますると、総合自給率は昭和三十五年には九〇%であったが、昭和五十七年には七三%になっている。穀物自給率は八二%が三三%になっている。さらに低下をしようとしているのです。  こういう事態の中で、国会でも食糧自給力強化に関する国会決議を行っている。決議は行ったけれども自給率は全然上がってこない。一体、日本農業というのはこの程度の自給率しかやむを得ないという情勢なのですか。なるほど中身はわかります、飼料穀物を輸入しているからということになりますけれども農水省としてはわが国の穀物の自給率は六十五年見通しのように三〇%で、これ以上どうしようもない、手の打ちようがないということなのですか。
  52. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 国土資源に制約のありますわが国におきましては、土地利用型、特に穀物につきましては食用を中心に行っていくということはやはりやむを得ないことでございまして、私どもは食用穀物としての自給率は現状を維持している。特に、米につきましては完全自給、小麦につきましては先ほどお答え申し上げましたように、日本めん用のものを全量自給ということで、六十五年度には現在の一〇%ずつから一九%程度まで持っていくというふうに考えているわけでございますが、残念ながら今御指摘のように、トウモロコシ等の飼料用穀物というものにつきましては、今後の食生活がやはり畜産物消費の増大という方向に向かうということは、これも避けられないと考えますので、それに伴いまして飼料穀物の需要が増加する。そのために全般的に総合的な自給率ということを考えました場合には、穀物自給率としては三〇%程度になるということは避けられないというふうに考えているわけでございます。  ただ、一方におきましては、中長期的な課題といたしましては、やはり片方に日本農業の基幹をなします水田農業というものがあり、現に水田利用再編対策等も実施しているわけでございます。中長期的な課題といたしまして、この水田の持っております生産力をどのように生かしていくかという意味では、水田に農家の方々からもいろいろ御要望もございますが、飼料用の米というものが実際に定着することはできないだろうかというようなことも私どもは考えておりまして、まずそのためには多収穫、また、日本におきましても定着性のある、耐病性あるいは耐冷性等、きちっとした米というものを技術的に育成をしていくというようなことも考えております。こういうことが可能になれば飼料穀物の自給率も上がっていくというように考えているわけでございます。これは中長期的な課題といたしまして、まず当面は技術問題から始めておりますが、特に飼料用の米の場合には、価格問題をどのようにするかという点が一番の大きな問題でございます。私どもとしては、そういうことで必ずしも現状ではやむを得ないと考えておりますが、今後の目標といたしましてはそういうことも検討しているわけでございます。
  53. 村沢牧

    村沢牧君 改めて申すまでもありませんが、穀物自給率が三〇%などというところは先進国の中でも最低の自給率で、これを維持していかなければならないという日本農政は、今まさに最低の農政だと思うのです。これ以上ふやすことはできないというような、そんなことであってはいけないと思うのです。やはり自給率を高めていくためには、一つは輸入を抑制して国内で生産をしていかなければいけない。輸入の問題については、いずれまた、もっと徹底的に質問もし、要請もいたしましょう。  そこで、国内において自給率を高めていくためには土地利用型農業中心になってくる。私は土地利用型の農業の中でもその中心になるのは水田農業であり、あるいは畜産の飼料対策等であろうというように思います。  そこで、今官房長からも水田の問題が出たのですけれども、私は従来から米の減反政策ということについては疑問を持っていたし、むしろ反対的な立場をとってきたわけでありますが、今日顧みまして転作も余り定着しない、そうして米が不足になってきて、またこれを緩めてくるという、こういうやり方に対して、私たちが今日まで長い間主張してきたことが間違いでなかったというふうに私は思うのです。そこで、この際発想の転換をしたらどうか。基本的に申し上げますが、日本の全水田に稲を植える、米をつくる、できた米を人間の食糧に供するもの、加工用にするもの、家畜のえさにするものと振り分けていく。もちろん今の法律制度の中では簡単にはできませんが、そういう制度も改めていく、そのくらい思い切った発想の転換をしなければ自給率の向上なんて上がってこないのではないかというふうに思いますが、こういう発想は成り立ちませんか、どうですか。
  54. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 全体的に現在の転作をやめて米を全水田に植えるというのも一つのお考え方かと思いますけれども、問題は、先ほど申し上げましたえさ等を考えた場合には、特に品種の問題もございますが、そういうことを一応捨象するといたしましても、米の価格が特に大きな問題でございまして、現在えさ用で外国から入ってまいりますものは、トウモロコシ、メーズ等で大体トンで四万円弱、三万六千円ぐらいと見ております。また米が、現在米そのものの国際価格も大体七万円弱、いっとき十万円ぐらいに上がったこともございますが、これは非常に異例でございまして、最近では六、七万というのが大体の相場でございます。  一方では、国内での米の生産費といいますのはトン当たり約三十万円近くかかる。これを今後合理化してまいりましても、一次生産費だけで考えましてもやはり十数万、十二、三万、ちょっと数字を今手元に置いておりませんが、二次生産費、地代なり資本利子等を考えました場合にも、能率的な経営におきましてもトン二十万円程度までの生産費はかかるというように考えますと、農家の方々にそういう価格で、先ほど申し上げました米の国際価格あるいはえさ相当価格というもので生産をするということは非常に難しいわけでございます。それをしからば国が全部財政負担をして買うかということであれば、それが可能であればそういうことも一つの方法がと思いますけれども、現在の財政事情等から見ましてそれだけの財政負担を行うということは非常に大きな問題もあろうかと思いますし、私どもとしては現状でそれがとれるというふうにはなかなか考えていないわけでございます。
  55. 村沢牧

    村沢牧君 私の時間が参りましたから質問を終わりますが、官房長にきょうほとんど答弁していただいたのですが、官房長答弁内容、こういうふうになっていますというようなことは私は承知しているのです。くどくど御答弁を願わなくても、価格の問題も全部承知をしている。承知をしているけれども、やはり穀物の自給率を上げたり日本農業を再編成していくためには、もう少し農水省としては発想の転換を図っていかなきゃだめじゃないかと私は申し上げているのです。時間がありませんから、きょうは私の質問はこれで終わりますけれども、ひとつまた改めて論議をいたしましょう。皆さん方の発想じゃ日本農業の再編成はできない、需給の動向に照らした農産物の生産の向上を図っていくなどということはできないと思うのです。そのことを強く申し上げまして、私も、大変失礼ですが、農林水産委員会にずっと所属して今日までこういう論議を続けてきたのですから、またもう一回やりましょう。  以上で終わります。     —————————————
  56. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、松本英一君が委員辞任され、その補欠として稲村稔夫君が選任されました。     —————————————
  57. 菅野久光

    ○菅野久光君 私は、最初に水産の関係について大臣にお伺いをいたしたいと思います。  世界で最大の遠洋漁業国でありました我が国が、二百海里時代を迎えて既に七年が経過して八年目に入っております。この間我が国漁業の生産量は、総生産量で見る限り依然として一千万トン台の大台を保って一千百万トン、このようにふえる傾向にあることは、食糧の安全保障の面から見てまことに喜ばしいことだというふうに思っております。しかしながら、我が国漁業が二百海里体制を迎えてから今日まで、カツオ・マグロ漁業や北洋漁業など遠洋漁業分野の大幅な縮小を初めとして、その漁業構造は大きく変化をしてきております。今後も、アメリカやソ連、さらに中国、南太平洋フォーラム諸国の動向を見る限りでは、これらの水域に依存せざるを得ない中小漁業や大手の大規模漁業の存続はまだまだ予測を許さない厳しい情勢下に置かれていると判断しなければならないわけであります。  しかも、我が国の総漁獲量の約四〇%はイワシで占められておりまして、その大半は養殖ハマチのえさにしか使用されていないということであります。このため海外よりの水産物の輸入量はますます急増する傾向にあります。要するに、我が国漁業はその生産態勢もその漁獲量も、言えばぶくぶくに肥え太った肥満児のような状態で、多くの難問を抱えているというふうに私は指摘せざるを得ないわけでありますが、大臣はどのようにお考えか、お伺いをいたしたいと思います。    〔委員長退席、理事最上進君着席〕
  58. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 客観情勢についていろいろ御指摘がございました。確かに二百海里に入ってから今日までの変遷、漁業の実態は大変厳しい状況のもとに入ってきたということは御指摘のとおりでございます。そういった条件のもとでこれからどういうふうにやっていくかということが大きな課題になるわけですが、いずれにいたしましても、沿岸漁業等の我が国の周辺水域の漁業振興が一つの柱でございましょうし、また漁業外交、先ほどのお話の海外漁場確保の問題、そのほか新資源あるいは新漁場開発というようなことも課題になるのではなかろうか。生産構造の問題もございます。漁種によりましてアンバランスが起こっておることも見られますし、そういった意味では漁業生産構造の再編整備。それから燃料の問題、燃費が高くなってから省エネあるいは合理化の問題が課題に上っていますが、そういったようなこととも真剣に取り組んでいく必要がある。なお、伝統的な長い歴史的な問題でございますが、流通加工面についての合理化ということも大きな課題ではないか、かように考えます。イワシの話も出ましたが、何とか水産物消費拡大ということには新しい道を模索しなければならないと思うのですが、なかなか難しい問題がたくさんあります。しかし、技術の進歩もございますし、何か明るい、もっと需要拡大できれば幸いだと考えておるところでございます。
  59. 菅野久光

    ○菅野久光君 ただいまこれからの漁業の問題についていろいろ御所見を承りましたが、言えば数々の問題を抱えている。この難問を解決するためにはもはやその場限りの対症療法を繰り返すだけでは問題を今いたずらに複雑にするだけで問題の解決にはならない、やはり抜本的な体質改善を断行する時期に来ているというふうに考えているわけでありますが、いかがでしょうか、大臣の忌憚のない率直な御意見を承りたいと思います。
  60. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 確かに政治家の立場として考えるともう先生御指摘のとおりで、抜本的な何物かが求められておると思います。しかし、その抜本的な何物かというものについてきちっとした定義と合意といいますか、そういうものを、漁業ももちろんですが、農業についてもそういったものが今緊急に求められて、解決するといいますか、要するに問題の核心を明らかにしてほしいということだと思うのですけれども、先生の御指摘もそうじゃないかと思います。その点については全く同感でございます。
  61. 菅野久光

    ○菅野久光君 第一次産業を、農業、林業、漁業、それから山の鉱業も含めて、どれも本当に抜本的な解決策というものを我々が今講じなければ大変な状況になっていくなということでの認識は完全に一致できるというふうに思いますが、二百海里時代を迎えて、今数多くの難問を抱えるに至った我が国漁業を今後安定的に維持していくために、これまでにこの委員会においても多くの諸先輩議員がさまざまな提言をされて政府の見解をただされ、国政面で我が国漁業を守る懸命の努力がなされてきたわけでありますが、それらの議論を総合して要約いたしますと、遠洋漁業を適正規模で維持していくことももちろん重要でありますけれども、やはり我が国周辺水域、すなわち二百海里水域内での漁業である沿岸・沖合漁業を発展させていくほかにないということに私は尽きると思うわけでありますが、これについて大臣、御確認していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  62. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 要するに、先ほど申し上げました遠洋から沖合、沿岸いろいろあると思います。どこに目をつけていくかということでございますが、先生御指摘の点も非常に重要な立脚点である、かように考えます。
  63. 菅野久光

    ○菅野久光君 こういったようなことの大方の御認識の中で、昨年の五月二十五日、この委員会において単独決議として「資源管理型漁業の確立に関する決議」が全会一致で採択されました。そして五十九年度の予算案にはこの決議に基づいて二億一千四百一万七千円、沿岸域漁業管理適正化方式開発調査、これに二億六百三十五万九千円、資源管理モデル事例調査七百六十五万八千円が計上されているわけであります。率直に言って少し予算額が少ないといううらみはありますけれども、しかし、政府委員会決議に基づいてこのような予算措置をなされたことについては、私は敬意を表するとともに評価をするものであります。  そこで、大臣、この予算は今後も継続をし、拡大していかなければならないというふうに思うわけでありますけれども大臣はどのようにお考えでありますか、その決意のほどをぜひお聞かせいただきたいと思います。
  64. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) この問題の重要性については先生御指摘のとおりでございます。予算をどういうふうにしていくか、これについても大勢の皆さん方の御意見を伺いながら、線香花火のように消えてしまっては困ると思います。そういったことで努力は当然すべきだと思います。
  65. 菅野久光

    ○菅野久光君 せっかくこういったようなことで委員会決議に基づいてやられる仕事でございますから、ぜひ今後ともさらに増額をしていくという方向で努力していただきたいと思います。  次に、水産庁長官にお伺いをいたしたいと思います。  政府は、これまでに漁業再建整備特別措置法、略称漁特ですが、これに基づいてカツオ・マグロ漁業中心に生産構造の再編整備に取り組んでこられました。この漁特による再編整備の目的は、第一条に明記してありますように、国際情勢の変化と経済情勢の変化に対応してなされたものでありますけれども、しかしながらその第六条において、資源状況を勘案しなければならないわけでありますが、長官、この理解は間違っていないですね、確認したいと思います。
  66. 渡邉文雄

    政府委員(渡邉文雄君) 再建整備法をつくりました、あるいはそれ以降の運用におきましても、要は資源量に見合った漁獲努力量を設定するということでなければ漁業経営の円滑な維持はできないというのがベースにあるわけでございますので、先生が御指摘の点は私も十分に理解をしているつもりでございます。
  67. 菅野久光

    ○菅野久光君 つまり、漁特による減船効果の判断は、経営面と資源面との両面から判断が要求されるというふうに思うわけでありますが、どうですか、ひとつ明確に答えてください。もちろん私は、その減船効果が現象として直ちにあらわれるとは思いませんけれども、現在までその効果があらわれているのかどうか。経営面、資源面で答弁できる範囲で結構ですので御答弁いただきたいと思います。
  68. 渡邉文雄

    政府委員(渡邉文雄君) 法律をつくりました前後の出来事としましては、二百海里の突然の設定という問題があったわけであります。特に北洋漁業中心にして一連の減船措置が行われたわけでございますが、その場合も、ここ二年ほどの間に行われましたカツオ・マグロの減船におきましてもベースの思想は同じでございます。結局失われた漁場、逆に言いますと利用可能な資源量の減と、そのとき存在いたします漁獲努力量とのアンバランスというものを是正する。その具体的な手法といたしまして、減った時点におきます資源量に見合う漁獲努力量まで現時点の努力量を減らす、結局船を減らすわけでありますが、減らすことによって残りの船が適正な漁獲を上げられ、どうやら経営が維持できるというバランスの試算をいたしまして、残りの船が減船をいたしました方たちに対しまして、私どもは共補償と言っておりますが、そういった負担をいたしまして船の数を減らしていく。結論といたしましては、利用可能な資源量と漁獲努力量の適正なバランスをとるということに相なるわけであります。
  69. 菅野久光

    ○菅野久光君 効果があらわれているのかどうかという点について、ちょっと抜けておりますので……。
  70. 渡邉文雄

    政府委員(渡邉文雄君) 失礼いたしました。  これはなかなか難しい話でございます。例えば、もう六、七年前にやりました北洋につきましてはかなりの船の減船をいたしたわけでありますが、現時点で残された船の経営が当時よりは苦しくはなっておりますが、どうやら維持できているということからいたしますれば、それなりの効果はあったというふうに判断できると思います。  カツオ・マグロにつきましては、その時点におきましていろいろな試算をやって減船数を決めて、まだやったばかりでございますので魚価へのはね返り、あるいは経営の改善にそれがどのように役立ったということを検証するまでには、具体的な数字は積み上げがなされておらないわけでございます。
  71. 菅野久光

    ○菅野久光君 つまり、現在の生産体制の再編整備は、建前としては資源状況を勘案しなければならないが、現実には経営状況に対処して計画が立てられ、減船が行われていると言っても過言でないわけでありますね。しかし、長官、これは矛盾しているとは思いませんか。現在行われている再編整備計画は共補償制度であって、いわば自主減船、自主補償として行われていますが、漁業生産は資源があって初めて成り立つ産業であります。残存業者が減船計画によって廃業していった者に対する補償を負担するという共補償が成立するその条件は、資源面での減船効果が十分に勘案されなければ残存業者の経営は必ずしも安定することにはならない。したがって、補償の負担はおろか、あすは我が身となる可能性もあるわけであります。つまり、資源状況を勘案されない減船計画は、特定の漁業をなし崩しにする効果しかないというふうに考えるのが常識だと思うわけでありますけれども、長官、どうでしょうか。    〔理事最上進君退席、委員長着席〕
  72. 渡邉文雄

    政府委員(渡邉文雄君) カツオ・マグロの特にマグロの例をとって具体的に申し上げた方がよろしいかと思いますが、一つは、二百海里の前からずっと漁獲努力量が資源量に対してやや多過ぎたという経過が毎年積み重なってまいりまして、私どもは釣獲率と言っておりますが、一隻の船がある期間操業することによって得られる漁獲数量が年々減ってまいりました。裏返して言いますと、出港してから港に帰ってくるまでの期間がだんだん延びていくという事象がこれはもう十年ぐらい前から徐々に進んできたわけであります。それは国内におきますマグロの消費が年々ふえてきたことに供給を合わせるということでもあったわけであります。そういうベースとして資源量に見合う漁獲量が合っていなかったということで、資源量に見合う漁獲努力量に減らす、結果的には供給量を減らさなければ資源量の回復を長期的に望み得ないという姿があったところに加えまして、諸外国の二百海里規制で操業水域があちらこちらで少しずつ削られるということがそれに加わって、そのことが利用可能な資源量を人為的に減らされたということにつながるわけであります。結果的には利用可能な資源量、その時点におきます資源量の利用できるものが二つの原因によりまして重合した形で今日の減船の必要性を生んできたわけであります。御指摘のように、両者矛盾するかと、これは考え方でございますが、いずれにしましても資源量に見合った漁獲努力量にしなければ、長期的にその漁業は衰弱せざるを得ないわけであります。  それから、資源量に見合った漁獲努力量にすることを裏返して言えば、漁船を減らす、減らされた漁船の漁業をやめざるを得ない人に対する負担をだれが負担するかということになれば、やはり仲間内で負担し、そこが自主的な減船ということに相なるわけでありますが、そういう過程で、これはまさに試算でございますので、結果的にぴったり合うかどうかというのはやってみなければわからないという要素もございますが、いろいろな議論をし、試算をして業界内部で自主的に相談をし、二割なら二割の減船をしよう、残った人たちの共補償の負担の限度というのも、その場合に勘案されるのは当然でございまして、そういう形でマグロの減船をやってきたわけであります。先ほど申しましたように、その効果が具体的に経営の面でも資源管理の面でも上がったかと言われますと、その数字を検証するほどの時間の積み重ねがまだないわけでございますので、もうしばらく御猶予をいただきたいと思います。
  73. 菅野久光

    ○菅野久光君 今の状況から言えば、私はやはり矛盾に満ちていることではないかというふうに思いますが、もう少し状況を見てということでありますから、それは今後にまつといたします。  つまり、私が長官に申し上げたいことは、先ほど大臣に御確認いただきましたが、今我が国漁業が当面している課題はたくさんあるわけですが、いわばその最重要課題として資源管理型漁業の確立の問題があります。これの解決が急務となっているとの観点から、昨年の五月二十五日の委員会で単独決議をされたわけであります。そして今年度予算に計上をされている。このことは十分に評価するわけであります。しかし、この問題に対する政府の問題意識は、この問題を少し矮小化して受け取られているのではないかという疑問が私にはあるのです。つまり、資源管理という課題を沿岸漁業のみに限定し過ぎているのではないかという疑問であります。長官、どうでしょうか。沿岸漁業における資源管理型漁業の確立ももちろん重要でありますが、むしろその確立を急がなければならないのは、漁時法に基づく指定漁業種類や沖合底びき漁業など、我が国二百海里水域内で操業して沿岸漁業と競合する関係にある沖合漁業においてであると思うものでありますけれども、どうでしょうか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  74. 渡邉文雄

    政府委員(渡邉文雄君) 資源管理型というのは、言葉の定義は文字どおりそういう資源を管理しながら漁業を継続するという意味合いでございます。特に農業などと違いまして漁業の場合にはつくる産業ではございません。有限な資源を、自然の生態系の中で繰り返し生まれてくる魚をできるだけ適正にとって、持続生産力を最大に維持していくというのがそのテーマであるわけでありますから、その意味では国際漁業といいますか、遠洋も沖合も沿岸も共通のテーマだろうと思います。  ただ、それが国際の場合には、国際間の話し合いということによって資源管理が行われる。ところが、沖合とか沿岸の場合には、日本国内だけでそのことが可能になるという違いがあるわけであります。さらに沿岸の場合には、資源管理型漁業を進める場合に何としても大事なことは、資源量を適正に把握するということが第一段階に必要なわけてありますが、これが可能なのはやはり沖合からの方が難易度は低いわけでありまして、国際的なもの、特に回遊魚につきましての資源量の正確な把握というのは、これは日本国だけのデータで国際的に回遊するものの正確なデータをつかむというのは至難のわざでございます。  そういう意味におきましても、御指摘のように、来年度私どもが考えております資源管理型の漁業として手がけていこうとしておりますのは、まず、沿岸型から始めていきたいとは思っています。資源管理型漁業をそうするがゆえに矮小化して考えているのではないかという点につきましては、必ずしもそうではなくて、国際漁業、遠洋漁業につきましても資源管理の重要性という問題につきましてはもちろん十分認識をしておるわけでありますが、日本国だけではなかなか処理し得ない問題もたくさん内包しておりますので、その点につきましては御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  75. 菅野久光

    ○菅野久光君 遠洋の方までちょっとあれでしたが、私は沿岸漁業における資源管理型漁業の確立はもちろん重要だけれども、今急がなければならないのは、漁時法に基づく指定漁業種類や沖合底びき漁業など、我が国の二百海里以内で操業しているいわゆる沿岸漁業と競合する関係にある沖合漁業においてであるというふうに思うけれども、そこのところはどうでしょうかというふうに尋ねております。
  76. 渡邉文雄

    政府委員(渡邉文雄君) 沖合漁業といいましてもいろいろあるわけでありますが、特に先生が御指摘なのは恐らく底びき関係の漁業ではないかと思います。それにつきましては、各県とも漁獲努力量がその資源量に対して過剰であるという指摘が数年前からなされておるわけでありまして、そういったことも念頭に置きまして、実は予算措置におきましても従来はカツオ・マグロというような遠洋漁業に主として力点を置いておりました。漁業生産構造の再編整備事業というものが予算措置でございますが、その事業を今年度は遠洋漁業だけに限らずに、御指摘のような沖合あるいは沿岸の問題につきましても、関係の漁業者からきちんとした計画が出てくるならば、それを受けて立つという意味での対象の範囲の拡大というものはやったつもりでございます。
  77. 菅野久光

    ○菅野久光君 沿岸漁業はもちろん大事だけれども、沖合漁業についても同じように急がなければならないものについては取り組んでいくということで確認はさせていただきたいと思います。  次に、漁時法による減船と共補償制度が、結局は廃業者に支払う補償金が経営を圧迫し、その経営圧力から逃れるために廃業者も含めて大目流し網漁業や海外まき網漁業、さらにはイカ流し網漁業など、より効率的な漁業に転換していき、これが資源の乱獲につながって、乱獲が資源を悪化させ、資源の悪化が経営にはね返って倒産するといういわば現在の堂々めぐりの図式はやはり断ち切らなければならないというふうに思います。そのためには水産資源保護法の第九条から第十一条の適用も前向きに検討すべきではないでしょうか。少なくともこの法律の背後に流れている思想なり考え方なりはもっと前向きに検討してしかるべきだし、また、減船という事態を回避するための協業化、共同化への移行を資源管理型漁業の確立の一環として取り組むべきではないのか、私はそう思うわけでありますが、長官の御見解を承りたいと思います。
  78. 渡邉文雄

    政府委員(渡邉文雄君) 減船をいたしまして結局当該漁業、例えばカツオならカツオ、あるいはサケ・マス流し網ならサケ・マス流し網を廃業せざるを得なくなった人が、その後その船を使いまして、当時自由漁業でありましたイカ流し網などに転換といいますか操業を始めまして、それがうまく技術的に成功いたしまして、従来の釣り以外のイカに対する漁獲努力量がふえたということは御指摘のとおりあるわけであります。  これは、水産庁といたしましても当時予想をしなかったような現象でございまして、同じ流し網でございますので、技術としましてはサケ・マスの流し網もイカの流し網も技術的には共通であるということで、言うなれば試験的にやってみたらうまいぐあいにイカがかかった、しかも、従来日本では利用していなかったアカイカというものがたくさんかかるようになったということで漁場も新しく開発された。ある意味では喜ばしい点もあるわけでありますが、反面、それが従来のアカイカのみならず、沿岸に寄って流し網をやることによって、既存のイカ釣り漁業の対象となっておりますスルメイカの資源に大きな影響を与えるという事態に数年前から問題が広がってまいりました。そういったことを踏まえまして、正確に記憶しておりませんが、たしか三、四年前に、イカの流し網につきましても規制を強化するということで承認漁業ということをいたしたはずでございます。現在、それによりまして若干の違反事件がございまして困惑はしておるわけでありますが、従来の無秩序なイカの流し網の漁業は規制を強化して、適正な資源とのバランスをとるような指導をするということにはいたしたわけであります。  いずれにしましても、御指摘のように、そういう資源保護法を使うかどうかという問題、いろいろ検討すべきことはあろうかと思いますが、それはそれといたしまして、あるいは予想しなかった漁業種類が出てまいりまして、資源に見合った漁獲努力以上のことが行われるというようなことは大変まずいことでございますので、今後とも、もちろん御指摘をまつまでもなく大いに努力をしてまいりたいと思います。  この際、ひとつ申し上げさせていただきたいのでありますが、事はそれだけではなくなりまして最近広がってまいりまして、イカの流し網につきまして、台湾と韓国と日本の船が同じ漁場で競合するという事態が二年ほど前から、また新しく出てまいっております。これはもう沖合というよりもやや遠洋に近い方になろうかと思いますが、日本のイカ釣り漁業もそこに行っております。公海上でございますので、韓国とか台湾にそれをやめさせるわけにはまいらない、二百海里外にございますので。そういった事態も生じてまいりまして、この場合の資源管理を共通の話題として各国間で話し合いをするとすれば、やはり資源問題しかないわけでございますので、現在韓国、台湾と私どもの民間の業者の話し合いの場をつくるようにいたさせまして、第一回目の会合を終わったばかりでございます。何とかそういう意味で、国際間の話し合いも進めながら、資源に悪い影響のない形での漁獲努力が続けられますように努力をしてまいりたいと考えておるわけであります。
  79. 菅野久光

    ○菅野久光君 玉突き減船、そういう状況がいろいろある。そういったようなことを回避するために先ほど協業化とか共同化というのが、北海道で今そういうような動きがあるわけでありますが、それも資源管理型漁業の確立の一環として取り組むべきではないかというふうに申し上げておるわけですので、その点についての御見解をぜひいただきたいと思います。
  80. 渡邉文雄

    政府委員(渡邉文雄君) 先生御指摘のように、漁業の場合には、農業における共同化というような、土地とか大型機械というようなものを共通に使う場というものがございません。施設の共同化というよりもむしろ漁場利用の共同化といいますか、あるいは操業の共同化といいますか、そういうことによって資源管理に非常に役に立つ、寄与するという意味での協業化あるいは共同化の推進というのはもう大変大事なことだと思っております。  例えば、漁業漁業の中に共同漁業権というような言葉があるのもその証左でございまして、特に沿岸の場合にはそのことが大事になってくるわけであります。先生が御指摘の問題は、沿岸よりもむしろ沖合につきましても同じ思想でそういった指導を進めるべきではないかという御指摘だと思いますが、私もその点は十分理解をしておるつもりでございますので、精いっぱい努力をさせていただきたいと思っております。
  81. 菅野久光

    ○菅野久光君 中型のサケ・マス漁業団体の全国組織であります全国鮭鱒流網漁業組合連合会、全鮭連ですね、ここが五十二年からの二百海里規制に対応して七十五隻の減船を実施し、二百五十人の組合員が七十八隻の漁船で斯業に従事しております。しかし、この減船対象船は廃船したわけではなくて、輪番で出漁し、休業船に対しては出漁船が補償する、いわゆる共補償の仕組みをとっていたのでありますが、その休漁補償がかなりの高額になる上に、最近は裏作のマグロ漁やサンマ漁が不振のため、所属組合員の漁業経営は極端な赤字経営に陥っております。全体の負債総額は約六百億円にも達していると言われているわけです。  このため、経営合理化対策として現在の組合員二百五十三人を二十から三十人程度の生産組合に組織して、各組合で漁船を共同経営する協業化方式に踏み切る、漁具なども全鮭連で一括購入するということが伝えられております。そして、五十二年の減船分七十五隻を完全に廃船にし、魚礁として国に買い上げを要求し、また、約六百億円の負債も長期低利の政府系資金に借りかえることを検討中だと伝えられていますが、水産庁としてはこの問題にどのように対処されるのか、承りたいと思います。  この団体は、昨年大量の違反操業もあったようでありますが、事の善悪はともかくとして、現行の共補償制度の問題が経営を圧迫していることが、このような大量の違反操業を引き起こしたとも考えられるのでありまして、現在検討中だと言われている協業化方式は、先ほど、資源管理型漁業の一つのあり方というふうに理解できるということであります。したがって、そのための条件を整備してやるべきだというふうに私は考えるわけでありますが、いかがでしょうか。
  82. 渡邉文雄

    政府委員(渡邉文雄君) 基地独航とも言われておりますが、中型鮭鱒の団体が五十二年に大幅な減船をいたしました際に、内部の話し合いがつかずに、許可は返上はしたけれども、かつて許可を持っておった人で操業を続けたいという人が船の数以上に残ってしまいまして、輪番制で協業し、休んだ人にはその年操業した人が何がしかの補償をするという形で今まで全く自主的な内部の話としてやってきたということは、私ども承知をしておるわけであります。  御案内のように、昨年、大変残念なことでございますが大量の違反事件を起こしまして、私どももかなりきつい処分をせざるを得なかったわけでありますが、そういったこともございまして、内部で、今後そういった違反をしないで適正な操業を続けるためにもどういう方法が考えられるかということでいろいろな相談が行われているということは、私も十分承知をしております。その中の一つに、従来のような輪番制で休んだり出たりという形をとるのではなくて、むしろ船の数と経営者の数と合わない点は、複数の共同経営という形にしてしまう方が合理的ではないかという案が検討されていることも承知をしておりますが、まだ具体的な案として私どもの手元には上がってきておりません。私どもの方は、団体の方に、よく考えていい案ができたら持ってくれば我が方も受けて立つということは申しておりますので、そのうち具体的な案が出てくれば十分に検討させていただきたいと思っております。
  83. 菅野久光

    ○菅野久光君 政府系資金の借りかえの問題を含めてよろしくお願いをしたいと、ここのところはお願いをしておきたいと思います。  なお、近々ソ連とのサケ・マス交渉もありますことですし、御苦労ですけれども、ひとつ頑張っていただきたいと思います。  以上で水産庁関係についての質問は終らせていただきますが、引き続いて食糧の安全問題についてお伺いをいたしたいと思います。  我が国食糧の自給率は年々低下をして大変な状況になっている、極めて憂慮すべき事態になっていることはもうみんなで認識できているところであります。反面、食糧の輸入は年々増大をしている、今や世界一の食糧の輸入大国となっているわけであります。そして、今の食糧の生産あるいは加工といったようなものが、科学の発達あるいは生産の効率化といったようなことがありまして、輸入される農畜産物、そして国内産の農畜産物についても、残留農薬だとか、あるいは食品添加物等の問題についても多くの問題があるわけであります。  そこで幾つかの問題についてお尋ねをいたしますが、まず最初に、けさの新聞に、ことしの食糧需給の関係で、 「超古米問題で安全点検迫る 消費者グループ」ということで朝日新聞に出ておりましたが、昨日消費者グループが訪れて、「「五十三年産の超古米に使われている殺虫剤が、コメの中に残留していないか分析してほしい。安全なことを確かめるまでは販売しないで」——東京や千葉の消費者グループが五日午後、農水省を訪れ、申し入れを行った。同省は「安全性に問題はないはず」としつつも、厚生省と協力して分析調査することを約束した。」と出ておりますが、この点について作業はもう既に入っているのでしょうかどうか、お伺いしたいと思います。
  84. 市川和孝

    説明員(市川和孝君) お答え申し上げます。  ただいま仰せの調査につきましては、現在食糧庁と協議も進め、準備を進めているところでございます。
  85. 菅野久光

    ○菅野久光君 準備を進めているということで、実際にやるということになれば、どのくらいの時間がかかるのか、わかればお知らせいただきたいと思います。
  86. 市川和孝

    説明員(市川和孝君) 既に試験機関で試薬等の準備も大体終わり、それから検体も一部搬入された状況でございますので、何日ぐらいかかるかということは、私ここの席で直ちには申し上げかねますが、そう長い期間を要するものではないと考えております。
  87. 菅野久光

    ○菅野久光君 そう長い時間がかからないということでありますが、これは非常に危険だという指摘の中でのこういう要求でありますから、チェックするまではこれは出さないということに常識的にはなるというふうに思うのです。食糧庁の関係者の方はいらっしゃいますでしょうか。——いなければ、後からそこら辺の考え方について私に知らせていただきたい。また、今実際に私は指摘しているのですが、超古米がまだ在庫しているのかどうかということも含めて私の方にひとつ知らせていただきたいと思います。  次に、食糧が大量に輸入されてくる、その輸入の手続について最近変えられたという報道がなされているわけでありますが、これについてどのような点を変えられたのか、ちょっとお知らせいただきたいと思います。
  88. 玉木武

    説明員(玉木武君) お答え申し上げます。  輸入検査手続の簡素化が一昨年以来求められてきておるわけでございますが、市場開放要求の一環として輸入食品検査の手続の改善を厚生省としましては、昭和五十七年四月に実施いたしております。その一つは、検査対象品目、項目の明確化、輸出国公的検査機関の分析表の受け入れ、個人用、試験研究用食品等の届け出を不要とする等の食品の安全確保に支障を生じない範囲で手続の合理化及び迅速化を図ってまいったところでございます。  以上でございます。
  89. 菅野久光

    ○菅野久光君 この改変のやり方というのは、局長通知ということでやったというふうに理解をしてよろしいでしょうか。
  90. 玉木武

    説明員(玉木武君) さようでございます。
  91. 菅野久光

    ○菅野久光君 先ほど、改善された点についていろいろありましたが、そういうことによって輸入食品の検査について何か問題が起きるような心配がないかどうかということについてお伺いをいたしたいと思います。
  92. 玉木武

    説明員(玉木武君) 一昨年十月一日から検疫所の組織を改正しまして、従来の十六の海・空港に加えて、新たに三海・空港で輸入食品監視の業務を実施することにいたしております。また、食品衛生監視員の増員も図りまして、監視体制は強化されてきております。  今後とも検査機器の整備、監視員の技術研修の実施等を行いまして、監視体制の一層の強化に努めて、食品の安全対策に万全を期するという対応をいたしております。
  93. 菅野久光

    ○菅野久光君 万全を期するのは当然なのでありますけれども、五十三年三月六日付の朝日で、「これでよいのか輸入食品検査」という、こういうのを御存じだと思うのですけれども、ここで幾多の問題が指摘をされております。例えば、「製造年月日の不明のものは輸入年月日を表示すればよいことになっている」、「古いものは故意に製造年月日を隠して輸入年月日のみを表示する」という、そういったようなこともこれによって可能になる。「また、輸出国の公的機関が検査を行っている場合は、その分析表を国内での検査成績と同等に扱い、輸入通関時の検査を省略することにした。しかし、検査する食品のサンプリングの手法や試験基準が国際的に確立されていないことを考えると、外国の検査データをそのまま受け入れるのは問題である。」という指摘がなされております。  そしてまた、「そのデータはあくまでも輸出時以前のものである。バナナ、穀物、大豆などは船積みされてから臭化メチルなどの農薬でくん蒸されているが、その残留状態や、輸送中の変質は全くチェックされていないことを忘れてはならない。」ということが指摘されております。また、言われている中で、「個人用、試験研究用、及び一〇キロ以下の輸入食品については輸入届け出が不要になった。この緩和策は事実上の法改正にも等しく、これを一枚の局長通知で行ったことは大きな問題である。今後貨物を故意に一〇キロ以下に細分化したり、個人用と称したりして検査を免れようとする業者が増えることは十分考えられる。」、こういったようなことですね。ある例として、「「デンプンの継続輸入」と称して一回目の検査を受け、二回目から覚せい剤の原料を輸入していた事件」、こういったようなものがあったということが出されておりますが、このような輸入食品検査の改変に私は問題がないかということを言ったわけであります。万全を期するということだけで具体的な問題がありませんでしたけれども、今私が言ったような具体的な問題、こういうことについてはどうでしょうか。
  94. 玉木武

    説明員(玉木武君) 御指摘の第一点の製造年月日または輸入年月日の日付の件でございますが、原則的には製造年月日をつけさせるということで、それが十分にわからない場合には輸入年月日、ただし腐敗、変敗するようなものにつきましてはそういう輸入時の時点での表示という形はとらしておりません。あくまでも製造年月日がわからないために腐敗、変敗のおそれのあるものは流通は差し控えさせるということになろうかと考えております。  また、輸出国の検査機関のデータの受け入れは先ほど申し上げたわけでございますが、世界的にAOAC法という検査法が公的に了解されております。このAOAC法に基づく検査能力を持っている施設という形をとっておりますので、各国の政府機関がここなら大丈夫と言いましても、もう一つの歯どめがかかっておりますので、検査施設のある程度のレベルは確保されていると考えております。  また、残留農薬関係は我が国におきまして厳重なチェックをいたしております。したがいまして各国で農薬を、例えば殺菌剤、殺虫剤を使いまして、我が国におきましてそれがそのまま入ってくるということはあり得ないわけでありまして、各国でどのような使い方をしようと、港の検疫段階におきましてチェックをいたしておりまして、その基準に合うものしか入れないという形をとっております。  また、十キログラム以下に小分けをするということは、これは税関である程度チェックいたしますので、十キログラム以下でたくさん入ってくるということになりますと、同一製品のものであれば当方に連絡されます。これは不当な輸入のやり方ということで輸入業者に対して対応は可能であると考えております。  以上でございます。
  95. 菅野久光

    ○菅野久光君 今の答弁の中で、いわゆる我が国で認めていないものは検疫所でチェックされるから入ってくる心配はないと断定されましたね。それは断定できるのでしょうか。
  96. 玉木武

    説明員(玉木武君) そのようなシステム、組織をもって対応しているという意味でございます。
  97. 菅野久光

    ○菅野久光君 先ほど、入ってくる心配はない、チェックされているというふうに断定をされているわけです。だから私はあえて言っているのですが、それでは輸入されてくる食品の件数、あるいはトン数といったようなものを含めて検疫所でどのぐらいのものが検査をされて、どれぐらいのものが不合格であったのか、最近のものについてひとつ数字を出していただきたいと思います。
  98. 玉木武

    説明員(玉木武君) 輸入件数は五十七年度で約三十二万件でございます。検査しましたのは一万七千件でございます。検査率は五・三%でございます。これは検疫所の段階で検査した件数でございます。これに加えて輸入業者の自主的検査というものが同じく五%余ございますので、入ってまいります一〇%余りが検査をされているということになります。  検疫所段階での不合格率は三・三%ということになっております。そこで一〇%、大体一二、三%から一五、六%の年平均の自主検査を含めまして検査実数を持っておるわけでございますが、これはいわゆる全数検査ではなくて、統計的に見てこのような検査をすればまず大丈夫であるというような観点から必要な検査のやり方をやっておるというのが現状でございます。  以上でございます。
  99. 菅野久光

    ○菅野久光君 不合格の件数、そしてそれの輸入総量から見たトン数のパーセンテージはどのくらいになりますか。
  100. 玉木武

    説明員(玉木武君) トン数のパーセンテージは現在手元に持っておりませんので、また、先生の方に書類で御連絡申し上げたいと思います。
  101. 菅野久光

    ○菅野久光君 先ほど五十七年度で言われましたが、私は五十六年度でやりますと、輸入件数が三十四万六千七百件余、そして輸入総量が二千三百六万トン。そのうち不合格が検査をした件数の四・六%、九百六十四件、不合格が全体の件数に比べて〇・三%の九百六十四件。そして輸入総量に対して〇・二%、五万四千七百四十九トン、これが不合格になっているわけです。わずか四・六%しかやらなくて、それは勘である程度確率の高いものであるかもしれませんが、そういう中でこれだけのものが出ているわけです。ですから推計でいきますとどうでしょうか、七、八十万トンから百万トン近い不合格なものが国内に食品として出回っているという推測です。それは確認できないわけですが、推測が成り立つと言ってもいいのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  102. 玉木武

    説明員(玉木武君) 今先生の御指摘は、検査をした分に対して四・六%ということでございます。したがいまして、五十六年度は全体の六%を、これは検疫所段階でございますが、やっております。今申し上げました自主的検査を含めますと一三%から一四%になっておるわけでございますが、これは国が行った検査が六・〇ということでその検査件数は先ほど御指摘ありました約二万一千件。その不合格件数は約一千件、九百六十四ということでございます。  そこで、今の御指摘のような予測は、不合格、いわゆる一般的に見て問題がある輸入食品が国内に出回っているのじゃないかという御推測は、我々としては考えていないわけでございます。現在、我が国に入っております六〇%ぐらいは穀類とか、雑穀類が多いわけでございまして、その辺はトン数からいいますと膨大な数になってまいります。それは例えば船で入ってまいりますと、輸入業者が何軒かございまして、船に積み込んでおるわけでございますが、輸入業者別に例えば麦類は検査がなされております。ですから、量そのものからいきますと非常に大きな量が検査されておるということになってまいります。またこの中には、例えば酒類、ウイスキーとかブランデーとかブドウ酒とか、そういうものが件数として入ってまいりますが、酒類、ブドウ酒関係は、その輸出する国におきましてこれはAOAC法に合わした検査をやっておる。まず大丈夫であるというような形で持ってこられるものは、先ほど申し上げましたように受け入れておりますが、これは原則として受け入れておるわけでございまして、我々としましては、従来であれば十検体に一検体ぐらい検査をやっておったものを、今は数十検体に一検体ぐらいの割合で再チェックもいたしております。それでまず問題はないということで入れておりますので、そういう意味からいきまして、相当確信を持って輸入されている食品の安全性は確保されていると、考えておるわけでございます。
  103. 菅野久光

    ○菅野久光君 仕事をやられる場合には責任を持ってやられるということについては、私はそれなりに大事なことだというふうに思うわけですけれども、しかし、こういったようなことについて国民の疑惑を解くというわけにはやはりいかないと思うわけです。検査体制そのものも極めて——きょうは時間がございませんので余り詳しく指摘するわけにはいかないわけですけれども、例えば東京検疫所なんかも、この前ちょっと私は行ってみました。検査の機器があるのですけれども、場所が狭いために、新しい機器が入るとその機器は横の方に置いて、すぐ使えないようなことになっているわけです。そんなことで、本当にやろうと思ってもすぐ使えないようなところで、しかも朝から晩まで少ない人数の中で、大変忙しい中で大変な仕事をされている。それだけに責任感を持ってやっておられるあの方々に対しては私は本当に敬意を表するのです。しかし、それに対して人員の配置、それから検査をする部屋なり施設といったようなものが完備されていない。むしろ何かそういうところが放置されているのではないか。  私はよく言っているのですけれども日本の国を守るというのは、何も軍備だけをやることが日本の国を守ることじゃない。今、日本の国民の健康がいろいろ、がんが余計発生している。あるいは変異原性などということで先天性障害が出ているというような状況、以前よりもそれがずっとふえているような状況があります。きょう具体的にちょっと申し上げるわけにいきませんけれども、そういう中で、今農畜産物の輸入の自由化の問題でアメリカの態度が私は極めて問題だというふうに思います。  一九八二年の十二月に、国連総会において、「「健康と環境に対して有害な製品の輸出についての防護措置」に関する決議についての投票がおこなわれた際に、参加百四十七カ国中百四十六カ国が賛成し、アメリカ一国だけが反対票を投じています。」そして、「またアメリカのカーター政権が退陣する四日前に議会で成立させた、「自国で有害とされている製品の輸出禁止に関する法律」を着任直後のレーガン大統領が取消して、「自国で有害とされている製品であっても、相手国が承認した場合には輸出してもよい」」と、こういう法案を成立させているわけです。それだけに、私どもはこういったような特にアメリカから多くのものを輸入しているだけに非常に心配ですし、四月六日の朝日ジャーナルの「銃に守られた薬づけバナナが日本に輸出されている!」、こういったようなことですね。「薬害糾弾は実際に被害が出てから?」などというようなこともあるわけです。  こういったような問題についてはまだ別な機会にやらせていただきますが、いずれにしろ一線でこの検疫関係に従事されている方々の御苦労を私はこの前行ってみまして本当に思いました。
  104. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 時間になりましたから……。
  105. 菅野久光

    ○菅野久光君 ぜひそういった点で私も次回にやらさしていただきたいと思いますが、これらの問題についてはなお一層真剣に取り組んでいただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  106. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 本件に対する質疑は午前はこの程度とし、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時十一分休憩      —————・—————    午後一時十六分開会
  107. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、農林水産省所管及び農林漁業金融公庫を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  108. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 きょうは養鶏農家、養鶏経営の実情についてお伺いをしたいと思います。  特に最近の鶏卵生産農家経営状況は非常に厳しくなっております。例えばやみ増羽というか潜り増羽というか無断増羽というか、大企業、商社、それから大資本、大飼料メーカー等が関係して、その反面、まじめな鶏卵農家経営を圧迫している状況が顕著になっております。したがって、こういった状況から鶏卵価格は低迷し、中にはもうこれ以上経営は続けられないという人も出てきておりますし、実際四十年以降急激に養鶏農家が減っております。中でもやみ増羽の問題ですけれども、今日は特にその状況が以前と形が変わっております。既存の養鶏農家が何百羽か何千羽か増羽するだけではなくて、最近のは、先ほど言ったように、大資本とか商社とか、また大飼料メーカーの後押し、それを背景にして直接介入するものもございますし、何十万羽、何百万羽というところが出てきているということを聞いております。特に東北方面に多いということでございます。そこで、順次この点に絞ってお伺いをしたいと思います。  最初にお伺いしたいのは、例年では既に決定している卵価基準でございますが、まだことしは決定をしておりません。昨年はたしか三月二十八日に決定いたしたわけでございますけれども、いわゆる卵価安定基金の補てん基準価格、昨年はキロ当たり二百四十六円、一昨年は二百六十五円、こういうことで決まっておりますけれども、五十九年度についてはこの基準価格がまだ決定しておりません。そこで、このおくれている理由と、五十九年度は価格は上がりそうなのかどうなのか、その見通しをお伺いしたいと思います。
  109. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 卵価につきましては、今御指摘のように、五十五年、六年は非常に堅調でございましたけれども、五十六年以降軟調に経過をいたしまして、五十八年一月にはキログラム大体二百円というような状況になったわけでございます。昨年の三月には一時三百円を超えた状況でございますけれども、以降九月まで卵価の保証基準価格であります二百四十六円を下回ったような状況でございます。この低卵価の原因につきましては、鶏卵の需要がほぼ横ばいで推移しているということに対しまして、五十五年、六年は高卵価のために生産者が非常に刺激を受けまして生産を増加し全国的に増羽された、また、気象条件にも恵まれまして鶏病等の発生がなかったということが大きな原因であったと思います。そこで、本年につきましても三月末までに卵価の保証基準価格を決めたいということで鋭意検討していたわけでございますが、なかなか最近の卵価低迷が長期また異常なものでございますので、私どももいろいろデータを集め、また、関係者の意見を伺っております。現段階においてはまだ決めるに至っておりませんが、既に四月に入りましたので、できるだけ早い時期に基準価格を決定したいと考えております。
  110. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 早い時期というのは、大体どのぐらいを今見当をつけておりますか。
  111. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 具体的にいつ何日までということを正確に申し上げるあれはございませんが、できるだけもう早い時期にというお答えをいたす以外にはないと考えております。ちょうど、今関係者も日米畜産協議であるとかそういうことでいろいろ手がとられておりますので、もう少し時間をいただきたいと思っておりますが、鶏卵生産業者の方々のあれもございますので、できるだけ早い時期に決めたいというように考えております。
  112. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 日米の方も大変でございますけれども、こちらも例年からいけば三月の末に決まるわけでございますから、早急に決定をしていただきたいと思います。  次に、鶏卵の需給調整対策についてでございますけれども、鶏卵の国内生産量を数字で見てみると、昭和五十七年、一昨年は二百五万七千トン、五十八年、昨年は二百八万五千トン、二年連続して増加傾向にあるわけです。しかし一方、この卵価の方は五十七年以降、五十七年、五十八年とずっと低下し続けているわけです。いわゆる価格の長期低迷といいますか、こういう状況になっております。五十九年に入って少し上昇ぎみだというようでもございますけれども、五十七年、五十八年の二年間卵価が低迷した原因はどこにあるのか、先ほどもちょっとお話がございましたけれども、その原因は、何のために長期低迷しておるのか、その辺をお伺いいたします。
  113. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 五十五、六年が確かに高卵価でございましたのは、やはり五十四年以降の景気回復というようなこともございましたし、また、生産、需給の関係も若干好転したように私どもは見ておりますけれども、高卵価のために逆に刺激をされまして、自後、増羽、生産がふえたというところに七年以降の価格の低迷があろうかと考えております。また、鶏病等につきましても、最近ではほとんどニューカッスルその他のいろいろな鶏病も発生を見ないということも、この生産を順調に伸ばしていった大きな原因であろうかと考えております。
  114. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 そうすると、今おっしゃったように、五十六年から五十七年になって急に下がっているのです。五十六年の、いわゆる価格が上がったということで、端的に言えば、もうかるからうんと羽数をふやそう、そういうことで、それが今度は原因して価格が下がってきた、これもあるかもしれませんけれども、消費の低迷ということを聞いておりますけど、その辺はいかがなものでしょうか。
  115. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 御指摘につきましては、やはり消費につきましても、日本の現在の消費水準そのものが世界的にも最高の消費水準に達しておりますし、そういう意味では消費の伸びというのは今後なかなか期待しにくい状況だと考えております。
  116. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、今後の鶏卵価格安定対策について、農水省としてはどんな対策を講じようとしておるのか、お伺いいたします。
  117. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 鶏卵につきましては、ほかの畜産物に比しまして生産のサイクルが非常に短かい、そういう状況でございますが、特に近年、今申し上げましたように、需要の伸びがほぼ頭打ちになっている、半面、生産が容易に拡大ができる、また、えさ価格が一たん安くなりますと非常に生産費も安くなるということもございまして、ともすれば供給過剰になり、卵価の低迷を招きやすいわけでございます。そこで、卵価を安定させるためには、需要に見合った生産ということを確保するために、やはり計画生産ということを進めることが必要だと考えております。そういう意味で、今後とも、計画生産というものにつきましては、私どもは一層の指導に努めたいと考えておるわけでございます。また、卵価が低迷いたしました時期には、従来設けておりますが、卵価安定基金によりまして生産者の経営安定のための価格補てんということを行いますとともに、また、液卵公社によりまして、卵を液状にしまして保管をするという形での需給調整、これによります液卵公社の鶏卵の買い入れ、あるいは、生産者団体等によりまして自主的に調整保管をお願いするというようなことをあわせ講じまして、卵価の安定に努めたいと考えておるわけでございます。
  118. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 もちろん調整保管もいいし、それから液卵公社の買い上げもやらなきゃならない、こういうふうに思いますけれども、この対策の中の一つとして、今おっしゃった計画生産ですけれども、生産者団体等による鶏卵の計画生産は、四十九年から御存じのように農水省の指導で進められてきたわけです。しかし、その実効が余り見られないというふうに感じるわけです。この生産調整が十年間経過した今日、この十年間の生産調整の実効、成果はどうだったのか、私もよくわからないのですけれども、その辺具体的におっしゃっていただけますか。
  119. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 鶏卵につきましては、時期的に、夏場、冬場等によりまして生産あるいは需要に相当の変動がございまして、年々の変動があろうかと思います。しかしながら、全体的に通観をいたしまして、四十九年以来の計画生産につきましては、年々の変動はあるにいたしましても、おおむね需要に見合った生産が行われておる、ただし、この一、二年先ほど申し上げましたような状況もございますが、大観をいたしまして、健全な発展を遂げてきたというように考えている次第でございます。
  120. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 四十九年のこの指導で進められてきたけれども、実際はその実効は余りなかったような感じがするわけです。それを受けて、今度、五十六年九月に「鶏卵の計画生産の推進について」という通達が改めて出されておるわけです。それでは、この通達を出した背景は、経緯というものは、どんな理由で五十六年にこれは出されたわけですか。
  121. 谷野陽

    説明員(谷野陽君) 鶏卵の計画生産につきましては、四十九年度以降、ただいま御指摘がございましたように、各年度の単年度の事業といたしまして実施をしてきたわけでございます。しかしながら、それを経まして、数年間たちまして、そのときの需給実勢というものを当時考えたわけでございますが、そういう今後どのようにするかという問題につきまして、基本的な検討会を持つ必要があろうということで、昭和五十五年の十月から鶏卵需給安定対策検討会というものを設置をいたしまして、この問題の中長期的な観点からの検討を行ったわけでございます。  その結果、鶏卵につきましては、御案内のように我が国の生産、消費の実態を見ますと、消費水準で申しますと、西欧先進諸国の中でも最も高い部類に属するような一人当たりの消費の段階に達しておるわけでございます。また、生産につきましては、これが非常に多数の農家養鶏その他で実施をされておる。また、技術水準も大変進んでおるわけでございまして、構造的に申しまして、中長期にわたりましても供給過剰を起こしやすい生産構造にあるのではないかというように判断をされたわけでございます。  このような観点に立ちまして、中長期的な観点から単年度の問題としてではなく、いわば長期的な観点から、こういう計画生産の進め方を検討する必要があるというのがこの報告であったわけでございます。  私どもはその報告を受けましていろいろ検討したわけでございますが、この問題につきましてはいろいろな関係もございまして、やはり具体的な生産を担当していらっしゃいます生産者の方々と行政というものが一体となって計画的な生産を進めていくことが重要であるというように考えまして、各都道府県に、そういう両者で構成をいたします協議会を設置をする。また、いろいろなものを進めますに当たりましても、生産者の皆さん方行政とが相携えてこれに当たっていくというような形にしていくのが適当であろう。また、今までは個別の生産者の羽数についての一つの計画的な進め方というものをしておったわけでございますが、やはり各県の中におきまして、いろいろ流動的な対応が必要な場合も出てくるわけでございますので、そういうような実際のやり方につきましても多少の変化をつけまして、五十六年の九月に局長通達を発出をしたというような次第でございます。
  122. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 現実の問題として、今いろいろおっしゃいましたけれども、計画生産というのは計画生産ですから、増羽がないように、要するに生産過剰にならないようにということで、計画生産というものをお互いが話し合ってやっていこうということでやったわけですね。しかし、現実はそうではないわけです。五十二年、三年ごろにはこういう事態が起きて、それで一部養鶏業者の大規模なやみ増羽があった。こういうことで全国的な問題になって、そこで御存じのように国会で五十三年の六月に決議をした。いわゆる鶏卵の生産調整強化等に関する決議が採択された。その中で、「養鶏業の安定的発展を期す」ということがはっきりと書かれているわけです。しかし、現実には今言ったようにそうではないわけです。そういう経過をたどってきている。  それはそれとして、それでは養鶏業者の実際の経営実態はどういう状況になっているのか。この計画生産のこともございますけれども、負債の面であるとか、後継者の面であるとか、それから養鶏ですから公害を発生させる、こういうことでいろいろ状況は厳しくなっていますけれども、その状況農水省の方ではどういうふうにとらえているのか、この辺をお伺いいたしたいと思います。
  123. 谷野陽

    説明員(谷野陽君) ただいま御指摘がございましたように、五十三年には国会の議決もいただいておるわけでございまして、私どもは先ほど申しました計画生産の実施の中で、国会でいただきました御議決につきましても十分その意を体して実行していかなければならないというふうに考えておるわけでございます。  ただいま御質問の採卵鶏、卵をとります鶏の経営の実態でございますけれども、御案内のように鶏に卵を産ませます採卵鶏の経営は、その支出と申しますか、費用のかなりの部分がえさでございます。えさの比率が非常に高い。また、鶏卵につきましては価格形成がある意味では非常に短いと申しますか、間にいろいろなものが入らない、比較的単純な姿、形になっておるわけでございます。そういう関係でえさの価格の上がり下がり、それから卵の価格の上がり下がりというのは採卵鶏経営に直に非常に密接な形で影響を与えてくる、こういうのが採卵鶏経営の実態になるわけでございます。そういうことがございまして、昭和五十六年ごろには鶏卵価格が比較的高い水準で推移をいたしました。その値段もそれ相応の値段であったわけでございますので、比較的採卵鶏経営は収益性が高かったわけでございます。  しかしながら、五十七年から五十八年の前半にかけまして、御案内のように卵の価格がかなり低迷をいたしまして、一方飼料の価格も五十八年の半ばごろからアメリカの熱波その他の影響で非常に高騰したわけでございます。そういう関係で採卵鶏経営につきましては、五十七年から五十八年の半ばごろまでにかけまして、大変厳しい実態にあったというふうに承知をしておるわけでございます。それを反映いたしまして、いろいろな指標につきましてもその間にはかなりの低下が見られるものもあるわけでございます。  しかしながら、昨年の秋の後半以降に至りまして鶏卵価格が徐々に回復をしてまいりました。また、えさの値段につきましても上がったわけでございますけれども、飼料価格の安定の基金がございまして、これによる補てんが行われたというようなこともございまして、五十八年後半以降につきましては、次第に安定の方向に向かっておるのではないかというふうに思っておるわけでございます。  大変厳しい情勢にありました五十七年と五十八年につきましては、卵価安定基金から五十七年には百二十五億円、五十八年には八十六億円のてん補を行っておるというような実態でございまして、そういう非常に厳しい情勢につきまして、卵価安定基金の発動をする、あるいは液卵公社の対応を講ずるというようなことで、私どもといたしましてもその影響の緩和に鋭意努力をしてきたということでございます。
  124. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 要約すれば、価格の低迷というのは養鶏業者にとって一番困ることでもありますし、特に小規模養鶏業者にとっては大変なことになるわけです。  この原因というのはいろいろあると思いますけれども、要するに需給のバランスがとれないから、いわゆる生産過剰になるからそういう結果になるわけでございます。そのために計画生産をやる、その計画生産をやるためには一番基本になるのはそれでは何なのかというと、これは生産羽数、何羽生産するかということになってくるわけです。その基本になる生産羽数の基本の数が非常に不正確であるということになると、すべてが狂ってくるという結果になってくるわけです。それがまた価格の低迷にも影響してくる。これはこの理屈のとおりだと思うのです。  ところで、いわゆる基礎羽数ですか、これが非常に不正確だということを私は聞いておりますけれども、この養鶏調査はどういう方法で行われているのか、具体的におっしゃってください。
  125. 谷野陽

    説明員(谷野陽君) ただいまお話がございましたように、卵の場合には消費がかなり高い水準に達しておりまして、価格が下がりましてもそれによって消費が非常にふえるというような実態にはないわけでございます。価格問題につきましては、我が国の鶏卵と申しますのは国際的に見ましてもそれ相応の価格でございまして、私どもといたしましては、消費者の皆さん方にもそういうことは十分御理解をいただいておるというふうに考えておりまして、そういう前提に立ちまして、今先生が御指摘のように、羽数を把握をいたしましてそれによって需要に見合った生産を進めていくということを基本的な考え方の一つとしておるわけでございます。  ただいま御質問にございました計画生産の基本となります飼養の状況調査でございますが、これにつきましては、毎年五月の下旬に百羽以上の経営について全数調査を行っておるわけでございます。しかしながら、全体の飼養戸数の非常に大きな部分が五千羽以上の鶏卵生産者で占められておるという実態もございまして、その影響を把握するために、五月の調査に加えまして、五千羽以上の鶏卵の生産者に対しましては八月の下旬、十一月の下旬、二月の下旬ということで、五月を加えますと四回にわたって調査をいたしております。この調査は鶏卵の需給調整協議会の調査員がすべての養鶏場に出向きまして調査をしておるわけでございまして、この調査の際には、でき得る限り正確を期したいということで、調査に当たります担当者といたしまして、市町村、場合によっては県の職員のほかに、生産者の方々にも調査に御参加をいただきましてその調査を行っておるということになっておるわけでございます。
  126. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 調査方法はそういう方法ということですけれども審議官も御存じだと思いますけれども、それは文部省の教科書であって、実態は全然違っているわけです。聞くところによれば、物理的にも私は大変だと思いますけれども、年四回、これは二回より三回、三回より四回の方が結構でございますけれども、四回やっておる。協議会の職員と生産者と一緒になって調査をしておる。ですけれども、出てくる数字は基礎羽数に大体同じような数字が出てくる。その内容を実際に現地へ行って聞いてみると、電話一本で、前回と同じですね、ああそうですかと、こういう話も私は聞いております。そういうことで、実際に今あなたのおっしゃったように協議会の職員と生産者が本気になっていわゆるやみ増羽をなくすためにこれをやっているのかどうなのか。あなたの言うとおりにやっていれば、これは出てくる数字は間違いない、こういうふうに理解してよろしいですか。
  127. 谷野陽

    説明員(谷野陽君) 生産されております鶏卵生産者の数は大変多数の数に上るわけでございまして、私どもといたしましてはこの制度を仕組みます際も、これは生産者の皆さん方行政とがやはり一体となりまして相互に協力をして調査をしていかなければならないということを考えたわけでございます。今御指摘がございましたが、私どもといたしましては、県その他を通じまして調査に的確を期するように常々努力をしてきておるわけでございますが、末端におきまして一部に全くトラブルがなかったというわけでは過去においてもないわけでございます。場合によりましては、調査に行きまして断られたというようなこともあるわけでございまして、そういう問題点につきましては、それぞれ事態の生まれました際に県等とも連絡をとり、場合によりましては農政局等の機能も活用いたしまして、できる限り正確に近い数字の把握に努めてきているわけでございます。
  128. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、あなたは国の、いわゆる中央の方です。上がってくるのは地方の協議会から上がってくるわけですから、そういうことになると、いわゆる調査方法もこれで間違いない、それから出てくる数字も間違いないと、このようにあなたは確信できますか。
  129. 谷野陽

    説明員(谷野陽君) ただいま申し上げましたように、私どもは過去におきましてもいろいろこの調査につきまして御注文、御批判があったことは十分承知をいたしております。先ほど申しましたように、私どもはそういういろいろ御注文でございますとかあるいは情報につきましてはそれぞれ誠実に受けとめまして、それなりにさらに県等と連絡をとりまして追加的な措置を講じてきておるわけでございまして、今後もそのようにしてまいりたいというふうに、考えております。
  130. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 じゃ、しつこいようですけれども、御注文、御批判があったと言いますけれども、それは認めているわけですから、これから具体的に、今までのその年四回立入調査、断られたときはしようがない、こういうことで今までどおりにやるのか、それとも、なおそれを強化するためにどういうふうにしていくのか、この点はいかがですか。
  131. 谷野陽

    説明員(谷野陽君) ただいま申し上げましたように、過去におきましても立ち入りにつきまして断られたというような案件もございまして、これらにつきまして県あるいは農政局と連絡をとりましてさらに調査を実施したというような例もあるわけでございます。私どもは現在の仕組みというものの中で、ただいま申し上げましたようなことをさらに徹底して実施をすることによりまして調査の精度というものを上げてまいりたいと考えておるわけでございます。
  132. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは、私は一つの例として、私のところにいろいろ陳情が来ておりますけれども、今あなたのおっしゃっている調査では非常にずさんさがあり数字の面からも非常にでたらめである、こういうふうに断定してもいいような数字が出てきているわけです。  そこで、ある団体が調べた。調べる方法は、もちろんこれは前提として皆さんの調べるのと多少は違っているかもしれませんけれども、専門家ですからそんなに私は違いはないと思います。そこで、資料によりますと、茨城県内の六十カ所を調べた資料でありますけれども、実態は想像以上にひどい。例えばAというところは、協議会の調査羽数が四万羽、記載羽数が四万羽、これは当然数字が合うわけです。ところがその団体の調べた調査羽数は十五万羽です。ということは十一万羽の差があるわけです。Bというところは調査羽数が三万七千羽、記載羽数も三万七千羽、実際に調べてみると十万羽、ここに六万三千羽の差があるわけです。  これは全県全国調べれば大変なことになると思うのですけれども、例えばその団体が調べた五カ所だけを取り上げてみても、協議会の調査羽数が二十四万八千羽と、こうなっております。記載羽数は二十四万五千羽、この多少の差はこれは出ても仕方がないと思います。ところが実態調査羽数は六十五万羽、何とこの較差というのは四十万羽、こういう数字が出てきているわけです。これもたった五つの農場から出てきている数字です。この実態はそれじゃ農水省としてどういうふうに受けとめておりますか。
  133. 谷野陽

    説明員(谷野陽君) ただいま御指摘のありました数字につきましては、具体的な内容につきましてさらにお教えいただきまして検討いたしたいというふうに考えておりますが、私どもといたしましては、全国的な鶏卵の需給の実態、これは鶏の数と卵の数というものがあるわけでございますから、そういうような実態から申しまして、ただいま御指摘になりましたようなその二十四万羽が六十五万羽、三倍あるいは二倍半というようなものが全国的な現象であるというふうには考えていないわけでございます。ただ、今御指摘のありました数字は、それはそれなりにお調べになって出てきた数字であろうというふうに思いまして、部分的にそういう問題があるということの御指摘があったわけでございますが、それにつきましてはさらに調査をさしていただきたいというふうに考えております。
  134. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それでは念を押しておきますけれども、私の方で実際に今言った、この調べたところを後で申し上げますので、その辺を調べて反省の上に立ってきちっとこの点について対処していただきたい、よろしいでしょうか。
  135. 谷野陽

    説明員(谷野陽君) 資料をちょうだいに参りまして検討をさしていただきます。
  136. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それから、今あなたのおっしゃった、これは一部ではないかという話でございますけれども、私はきょうこの委員会の始まったときに一番最初に申しましたように、私の今挙げたのは茨城県の例ですけれども、やみ増羽というのですか、この形態が最近は大きく変わってきている。ただ、今までの既存養鶏農家が百羽とか千羽とかこの程度をふやしたということではなくて、今出てきている形態はいわゆる大企業、大商社が何十万羽、何百万羽と、特に東北方面に多いということを申し上げました。数字は申し上げませんけれども、実際にこれは一県だけではなくて全国的なものに広がっている。それも状況はまさしくひどい状況になっているということは、これは私は確信を持って申し上げられますし、その点についてもよく調査をしていただいて対処していただきたい。こういう状況でございますから、全国的に大規模なやみ増羽が行われているとすれば、養鶏農家は今後ますます苦況に追い込まれていくということに当然なってくるわけです。潜り増羽か無断増羽かやみ増羽がわかりませんけれども、それに対する指導、いわゆる監視、これについては農水省としては今までどうなさっておられますか。
  137. 谷野陽

    説明員(谷野陽君) ただいま御指摘のございましたいわゆるやみ増羽の対策でございますが、私どもといたしましては、こういうものが非常に多くなるということになりますと、計画生産の実施そのものに対して非常に影響があるということで、その是正につきましてまず指導をしておるわけでございます。しかしながら、中には指導に対しましてなかなか是正をしてもらえないというような経営者の方もいらっしゃるわけでございまして、それに対しましては私どもといたしましては、この鶏、卵の関係では二つの基金がございます。  一つは、卵価の安定基金でございまして、これは先ほど申しましたように、一昨年から昨年にかけまして約二百億円の価格補てんをやっておる基金でございますが、これに加入をお断りするということでございます。  それからもう一つは、養鶏にとりましては飼料は大変重要な資材でございまして、この飼料につきましても配合飼料価格の安定基金というものがございまして、昨年の秋以来価格補てんが行われておるわけでございますが、これにつきましても、いわゆるやみ増羽の是正をされない生産者に対しましては加入を認めないというような措置をとっておりますし、また、その他制度融資、補助事業につきましても同様の措置を講じておるわけでございます。これらの措置を通じまして何とか計画生産に従っていただくようにということで行政的にもやってきておるわけでございます。
  138. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 それじゃ、具体的に農林水産省は、このやみ増羽に関連、関係していると思われる商社または大手の飼料メーカーについて調査したことはございますか。
  139. 谷野陽

    説明員(谷野陽君) この問題につきましては、先ほど先生からもちょっと御指摘がございましたが、東北地方を中心にいろいろな問題が提起をされたわけでございます。私どもといたしましては、先ほど申しましたようないろいろな価格安定制度に対します措置に加えまして、その背後関係と申しますか、関連の問題につきましてもそれなりに調査をしたつもりでございます。もちろん全部というわけではございませんが、幾つかの大きなものにつきましては調査をしたということがあるわけでございます。その調査の結果でございますけれども、やはりそういうところに飼料を供給をしている飼料業者は確かにあるわけでございます。それにつきましては、それぞれおおむねどこからどういう飼料が流れておるということにつきましては概要は把握をいたしております。
  140. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 具体的にお聞きする時間がございませんので、これでこの点はやめますけれども、そのやみ増羽の支援をしているというか関係しているというか、そういう商社、それから飼料メーカー、こういうことについて我が党の吉浦衆議院議員が昨年ですか、お伺いしましたけれども、そのときに石川局長の方から「卵価安定基金それから飼料の安定基金から排除する」、こういう御答弁がありましたけれども、私はそんなことでは非常になまぬるいのじゃないかなと思うわけです。そういったことで具体的にはどこの商社がどうのということは申し上げませんけれども、それが元凶になって増羽される、したがってその延長線上に価格の低迷がある、したがって、小規模養鶏農家がもう大変な苦しい目に遭っている。これはただこれだけの問題ではなくて、日本食糧の問題にも関連してきて大変な問題でございますので、この点については厳重に対策を立てていただきたい、こういうふうにお願いを申し上げますけれども、いかがでございますか。
  141. 谷野陽

    説明員(谷野陽君) ただいま御指摘のございました件でございますが、お話がございましたように昨年御指摘があったわけでございます。私どもはその当時も含めましてその是正に努力をいたしてまいりました。今申しました二つの基金に加入を認めないという措置に加えまして、飼料の供給状況その他につきましても調査をいたしまして、飼料メーカーに対しましてもこういう実情にある養鶏業の実態であるということを具体的に申しまして、私どもの政策に対する協力を求めたわけでございます。残念ながらまだ全部直っておるというわけではございませんが、その後の調査では、そのときに問題になりましたやみ増羽者の数もその後是正されまして減っておりますし、また、そのとき固有名詞を挙げられまして御指摘になりましたうち、一社につきましてはやみ増羽をほとんど解消するという実態になっております。また、もう一社につきましても、これはまだ完全にいっていないということでございますけれども、最近に至りまして一歩前進を見ておるということでございますので、今後ともそういう努力をさらに続けてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  142. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 この養鶏農家経営について最後大臣にお伺いいたしたいと思います。  今までいろいろと何点か指摘してまいりましたけれども、第一次の大規模やみ増羽があったのは先ほど申しましたように五十二、三年ごろ、当時全国の養鶏農家農水省の指導どおり守ってきたにもかかわらず、やみ増羽の実態が明らかになり国会決議まで行われたという経緯があるわけです。最近は、先ほど申しましたように第一次といいますか、そういうやみ増羽が出てきたときをしのぐような大変なやみ増羽が行われているときになってきているわけです。これでは国が農政基本として力を入れている、また、力を入れてきた自立養鶏農家の存在も非常に危うくなっておるわけです。この養鶏農家にとって業界の秩序が取り戻せることを期待しながら、大臣は兵庫県の御出身でもございますし、この養鶏農家の数からいくと、全国のベストテンにも入りますし、また、大臣の経歴からいって農政に非常に熱心な大臣であられるということも承知しております。そういうことで、大臣として今後のやみ増羽対策、養鶏農家経営育成についてどういう御所見を持っておられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  143. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) ここまできて、言ってみればEC諸国のみならず世界的な水準といいますか、随分養鶏も発達してきました。需要は停滞しておるというような現状にもなっておるのですけれども、といってルールをつくってそのルールを守れない人が出てくるというのは甚だ困ったことでございます。  そういう意味で、先ほど来御指摘がありましたが、制裁措置といいますか、そういったものにも工夫を加えまして計画的な生産というものが一層円滑に行われるようにいたしたい、これが何よりも大切だと思います。その上に飼料穀物の供給の安定といいますか、配合飼料価格の安定、それらにも配慮をしてまいりたい、かように考えるところであります。
  144. 鶴岡洋

    ○鶴岡洋君 あと一点だけ。これに関連して、野菜や草花を工場で今大量に生産しているという新聞記事が最近非常に多いわけでございますけれども、この人工栽培が話題になっております。本来、植物の成長はもともと自然条件に大きく左右される宿命を持っております。従来の野菜や草花づくりは環境に大きく左右され、勘とか経験によるところが多いわけでございますけれども、こうした従来の野菜づくりのネックを科学的に見直して栽培しようとしたのがいわゆる植物工場です。  幾つか最近の新聞を見てみますと、例えば日立製作所の中央研究所では、今完全制御型の植物工場を目指して実用化への見通しが明るいという記事も出ております。そこでつくっているのは、サラダナとかピーマンとかレタスとかホウレンソウとか、それから東洋エンジニアリング、これは全天候型の大規模な野菜生産工場の建設を目指してやっている。これは北海道のようですけれども、サラダナをここでつくっている。住友電工では横浜市の戸塚に野菜栽培実験をしている。ここでもセロリとかコマツナとかをつくっている。それから鹿島石油、ここでは中東のアブダビで砂栽培の実用化を進めている。キュウリとかトマトとかメロン。また、松下電器産業中央研究所では、これはモルジブ共和国ですか、水耕栽培を実験プラントで成功させている。このように各社の野菜栽培が今新聞をにぎわしているわけでございます。  今後将来的問題として、大企業、大資本が、これはやってはいけないということを私は言っているわけじゃないのですけれども日本の野菜栽培業に進出することも当然考えられるわけです。今養鶏農家のことを申し上げましたけれども、近い将来にはもしこれが進むということになると、これもまた、養鶏農家と同じような轍を踏むようになるのではないか、こういう心配もなきにしもあらずでございます。こういった農外資本の企業進出についての農水省の見解としては、今どういう見解を持っておられるのか、この点を最後にお聞きをしたいと思います。
  145. 小野重和

    政府委員(小野重和君) 農作物一般がそうでございますが、野菜につきましても各生育ステージごとに人手によるきめ細かい管理作業というものが必要であるというふうに考えております。したがいまして、今いろいろ研究段階でのいわゆる大企業系列の事例が御指摘がございましたが、私どももいろいろと大変注目しております。やはり光とか温度とか炭酸ガスとか、いろいろなそういう環境を機械的に制御するということは非常に困難であるというふうに思います。研究段階でいろいろやっておることはよく私たちも承知していますけれども、これが実用化するというのはなかなか難しいのじゃないかというふうに考えております。  ただ、例えばカイワレダイコンというのが今大変出回っておりますが、ああいうものは別に栽培管理などというものは必要ない、もう一週間ぐらいですぐできてしまうというようなものでございますから、ああいうものは工場生産に合うものでございます。したがって、相当の量の出回りがありますけれども、一般の野菜につきましては、そういうことは当面ないのじゃないかというふうに考えております。いずれにしても、現に技術開発を進めていることは事実でございますし、それにつきましてはよくその状況を私どもも見守っているところでございます。  いずれにしても、将来、仮に今御指摘のようなことがあり得るとすれば、これは例えば野菜の場合ですと品目ごとにいろいろ違いますが、そういう野菜の需給事情、あるいはそれが農業経営にどう影響を及ぼすか、見込みにつきましてはよく十分な関心を持って見守ってまいりたい。また、そういう事態になれば適切な措置をとる必要があるというふうに考えております。
  146. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 最初に、今佳境にあります農産物交渉ですが、毎日同じことを聞いて本当に申しわけないのですが、刻一刻とその状況を私どもは心配をするからお尋ねを申し上げるわけであります。日を一日延ばすということですから何らかの手がかりがある、見通しがある、こういうことで連絡があったのだろうと思います。この委員会では、公の場では交渉数字的なものについては差し控えたいというものですから、靴の上からかゆいところをかくみたいなものでさっぱり話が通らない。こういうことの押し問答が今日まで繰り返されておるのですが、中西臨時大臣といいましても農政に明るい方でもございますから、また、閣僚の一員ということですから、これはもう閣僚の一員としての責任はあるわけであります。当然、その問題については強い御関心を持っていらっしゃることだろうと思いますが、全権を委任されたということは、政治的な判断という決着じゃなくて、あくまでも当事者であります農水大臣が現場に行ってその交渉の衝に当たるということであって、そういう話の中で今進展している、このように受けとめてよろしいわけですね。
  147. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 内容につきましては、藤原先生御指摘のとおり、私どもとしても今交渉が最終段階に来ておりますので御了承をいただきたいと思っておりますが、日本時間でいきますと、きのうの夜からけさにかけまして、現地でいきますと五日の午前から午後にかけまして非常に内容に立ち入りました厳しい議論が展開されておりますので、できるだけ両行政責任者、ブロック通商代表、こちらの山村農林水産大臣とお二方でお話し合いできる機会というのはそうあるものではございませんので、この機会にできるだけ議論を詰めたいということで、最終段階に入ったためにもう一日延ばしたいということになった次第でございます。明日、現地でまいりますと六日の十時、日本時間でまいりますと本日の真夜中からまた会合が始まりますので、その状況につきましては時期を見てできるだけ早い時期に御報告を申し上げたいと思いますけれども、そういう意味で最終段階に入っているということで御了承をいただきたいと思っております。
  148. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 いつもこういうお話で今日まで来ておるわけでありますが、私は前から言っておりますように、需給調整という厳しい日本農政の中にありまして、アメリカの圧力に屈して政治的な決着とか、日本農業の現実をゆがめるようなことがあってはならぬということを主張し、大臣もまた、委員会決議というものについての強い決意が述べられて今日まで来ているわけでありますから、その点を特に強調し、その線から踏み外すことのないようにということを言っているわけです。大臣も同じ認識にあろうかと思いますけれども、どうでしょう。
  149. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 御指摘のとおり、全くそのとおりに思っております。また、期待に沿って山村農林水産大臣現地で頑張っておってくれることだろうと思っております。
  150. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 本日は、予算委員会から委嘱された農林水産関係予算審議ということでありますから、その問題について触れたいと思うのでありますが、最初に、大蔵省、農水省を担当していらっしゃる主計官という担当の方でございますから、日本農業の現実についてはそれなりの御認識があろうかと思います。財政的に大変だということはもう我々も十分承知であり、私ども公明党も、行政改革はこの際やはり断行しなきゃならないだろう。いろいろな問題がありますけれども、やはり大所高所から行政改革を推進するということについては、これは野党ではありますが、それなりに賛意を表してきたわけであります。  そういうことですから、財政的な問題については十分に認識をしておるつもりでありますが、日本農業の現実はどの本を見ましても、だれの話を聞きましても非常に厳しい現実にある、危機的状況にあるということが言われております。大蔵省の担当官といたしまして、日本農業をどのように御認識していらっしゃるのか、その辺からひとつお伺いをしたいものだと思うのですが。
  151. 寺村信行

    説明員(寺村信行君) ただいま御指摘がございましたように、現在の財政は、歳入の四分の一以上を国債に依存せざるを得ないような厳しい状況がもう十年間にわたって継続いたしているわけでございます。そうした中で五十九年度予算編成を行ったわけでございますが、こうした厳しい財政事情のもとであらゆる経費、歳出につきまして、制度の基本にさかのぼりまして徹底した節減合理化を図ったところでございます。  御指摘のように、現在日本農業をめぐる内外の情勢というものは大変厳しいものでございますが、農林水産関係予算編成に当たりましては、基本的には農政審の御指摘にもございますように、国民生活の基礎的な物資でございます食糧の安定的な供給の確保を図るということ。それから同時に、農業産業でございます、産業として自立し得るよう体質の改善を図っていかなければいけない。そういう基本的な今後の農政の考え方に立ちまして、それぞれの農林水産関係の予算編成にそういう考え方から対処したところでございます。
  152. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 高度成長の時代から、加工業を初めといたしまして他産業はそれなりに合理化、または成長の波に乗ることも容易だったのかもしれませんが、一次産業はどちらかというと非常に時間のかかる、そしてまた、合理化といいましても、どうしても土地利用型産業の問題を初めといたしまして、人の問題、技術的なこと、もうあらゆる角度から加工業とは比較にならない、人材の育成や、また構造改善、いろいろな問題については段違いのテンポのおくれといいますか、こういうものがあるのは否めない事実だろうと思います。農業も今日まで手をこまねいてきたわけではありません。やはりその時代に即応して基本法農政、三十六年以来その線に沿ってということで努力してきた担当の方々には敬意を表するものでありますが、しかし、他産業と同じようなテンポではいかないそういう現実、しかも二度にわたるオイルショック、こういうことでありますから、当初の計画も大きく狂わにゃならぬということでありますので、大変な苦難の中にあることは御承知のとおりであります。その点については私ども以上によく認識していることだろうと思うのであります。  しかしながら、単純に国民の立場から考えますと、これだけ多くの補助金を出していながら農業は一体どれだけ進歩したのか、また、どれだけ目標に近づいたのかということになりますと、確かにいろいろ批判のあるところだろうと思います。また、洗い直さなきゃならない面もあることは事実だろうと思います。しかし、私ども農家の方々にお会いしまして農業の現実を見ますと、補助金の適否ということよりも、やはり中身のことがいろいろ問題のようであります。そのことはまた後からいろいろお話ししたいと思うのであります。  最初にお伺いしておきたいことは、今年度の五十九年度の予算、農林関係予算三兆四千五百九十七億円、前年対比で四・一%、一千四百七十億減少しておるということです。これは昨年の七月の十二日閣議了解で、各省庁が大蔵省に提出する概算要求、これは例外事項を別にしまして投資的経費については五%削減というマイナスシーリングを設けて作業を進めた、こういうことですね。これは各省庁こういうことでやろうということですから、その線に沿って進められたのだろうと思いますが、最終的に政府のでき上がったものを見ますと、農林水産の予算の既算要求、各省庁概算要求の段階から申しますと、前年対比で八百十六億の減ということで大体横並びといいますか、そういうことなのだろうと思います。しかし、さらに六百五十四億も食い込んで現実的には千四百七十億、前年度よりも予算がカットされておったという、こういうことですね。  非常にこれは総枠的な論議だけではいかないのかもしれません。個々の問題をいろいろ論じなきゃならないかもしれませんけれども農業農業で今なさなきゃならないことが農林水産関係についてはたくさんあるわけでありまして、また、直さなければならないものもたくさんあります。金額が一概に減ったからけしからぬということを言っているのじゃないのですけれども、しかし、その施策として推進するにはその裏づけとなる予算というものもやはり非常に大きなウエートを占めることは間違いありません。こういうことから、この概算要求からさらに六百五十四億も食い込むということになったのは、担当官としてこのお仕事に携わったのだろうと思いますけれども、その辺の理由といいますか、どういうことでこういうことになったのか。我々としましては、この大事なときに農林予算だけが随分食い込んだのじゃないかというような感じがしてならないのですけれども、どうでしょう。
  153. 寺村信行

    説明員(寺村信行君) 予算要求が提出されました後、例えて申しますと、人事院勧告の取り扱いについての決定がなされるとか、その他のいろいろな一方ではやむを得ない歳出の増加要因がございまして、結果的には全省庁を通じまして、シーリングの段階よりもさらにその要求を削減せざるを得ないような状況になったのでございます。  それがお答えでございますが、ただその場合に、先ほど申し上げましたように、各省の特にどこということではなくて、ありとあらゆる経費につきまして特に聖域を設けることなく、制度の基本にさかのぼってそれぞれ節減、合理化を図るという過程で今回の最終的な予算案ができ上がったということでございますことを御理解いただきたいと思います。
  154. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 最後の方の声が小さくて、御理解という言葉だけしか聞こえなかったのだけれど、それは理由のあることである、また、皆さん方のお考えがあったことだろうと思いますが、聖域を設けないといっても、現実に防衛費には聖域があるのだし、私どもはそういう中で食糧安保という観点からしますと、特に農林予算に概算要求のラインよりもさらに食い込んできたということについては、やはり当委員会の一員としまして、また、日本農業を憂える者としてこれは納得のいかないところです。  今日までの推移を見ましても、五十八年から伸び率がだんだん減ってまいりましたし、それから一般歳出の中で占める割合というものもどんどん落ちておる。私どもは実際に農家を回ってみまして、補助金ということになるとすぐ農林省というふうに言われるのですけれども、適正な補助金というものが農業振興農業の発展のためにどういう役割を果たしておったのかということから言いますと、いろいろ問題があったということは私どもはこの委員会でも提言をいたしております。  過日も申し上げたのですが、補助金ということですからそれは厳格でなけりゃなりません、国民の税金を使うのですから。しかし、山の中に建てる牛舎に三階や四階のビルの建つような鉄筋コンクリートの基礎が何で必要なのか、もっと現場に合った姿であるべきではないか。もっと安くできるはずだ。この前、NHKでもやっておりましたけれども、電電公社の廃材または選挙に使いましたベニヤ板、電柱などを使って安くできたというのがありました。私も岩手県で実際にそれを見たことがあります。自分でつくればもっと安くできる。ところが、補助金をもらいますと建築基準法にのっとらなきゃいかぬ。ですから、役所の中でも農業を担当する人は、これはもっと安くできるのじゃないかと思うのだけれど、建築関係の方は、やはり建物としてはちゃんとしなきゃいかぬと。補助金をいただきますとそれなりに監査はあるわけでありますから、きちっとしなきゃいかぬ。  避難、誘導、牛に避難、誘導の矢印をつけたところでわかるわけはないだろうと思うのですけれども、そういうことまでお金をかけなきゃならぬ。そうでないとしかられるというか、許されない。これはもう構造改善でも何でもそうです。現在までの構造改善で学者などのお話を聞きますと、もっと半分ぐらいでできる、二割ぐらいでできる、三分の一でできると、いろいろなことで、工事のやり方とかそういうものについてのお話があります。実際使うのは農家の方が使うのであって、自分たちがこんな弱いものでは、こんなことでは長くもたぬぞということは十分わかるわけでありますから、いいかげんなものをつくるわけはありません。国民の税金ですからある程度の基準がなければなりません。しかし、余りにも教条主義的過ぎるというこんなことがもう各所にあります。そういうものをもっと変え、もっと現実的なものにしなきゃいかぬ。そしてその補助金によってより農業が安定的なものに推移していくということでなきゃならぬ。  最近、農家の中には、補助金ほど高いものはない、補助金といっても全額出るわけじゃありませんから自己負担がある、その自己負担の方がかえって高くなると、こんなことが言われるようなことで、最近いろいろ見直されて、今度は酪農の資金につきましても、無利子のものを出そうなどということで変わられたようでありますけれども、そういうことでいいのかどうか。今まではとにかく補助金をもらいますと高いものを、頑丈なものを、耐用年数というのがありますから一応の規格はなきゃならぬでしょうけれども、そういうことでもっと現実的に合ったものを、農家の方々の使いやすいものを、こういう農村の長い歴史的な蓄積というものに合致したものを、こういうことが現場で今言われておるわけであります。補助金が忌みたいなことで、それをカットするということが行政改革に決してそぐうというのじゃない。その出したものがより産業振興に生きていけばいいわけでありますから、そういうことで中身の問題についていろいろ農業団体または当事者の方々も研究していらっしゃるようでありますけれども、そういう中身のことでぜひ見ていただく。  一部の方々の言われておりますように、とにかく補助金というのはもう切らなければならないみたいなそういう観点でなくて、ぜひひとつ農業、それも今一つの大きな転換点に立ち、その危機から脱出しようということで真剣に農業従事者が取り組んでおるという現実も御認識をしていただきたい。そういうことで昨年に続いてことしさらにまた農業予算だけがどんどん削り取られるようなことになりますと、国会で自給率向上ということを五十三年ですか、決議したのです。こういうことでこの国会決議ということが、国民の意思というものが果たして達成できるのかどうか、こういうことを私は非常に危惧するわけであります。農業を担当なさる大蔵省の方々につきましても、ただ切り込むということだけじゃなくて、中身をもう少し見ていただいて、そしてことに農業の発展、農業の進展のためにそれが大きな役割を担うことのできるような形での施策というものに対してぜひ目を見開いていただきたい。そうでなければ、このままどんどん推移してまいりますと農業は打つ手がない。  最近、農林水産省もいろいろ考えていまして、土地づくりとか明るい農村をつくるとか、何かまたいろいろなキャッチフレーズでほかのことを言っております。そういうことも大事なのですが、やはり人、基盤が何といっても根本になるわけですし、最近は中核的な農家ということですから、牛でも五十頭も百頭も、農地もまた十町、こういう大型の農家をということですから、多くの費用のかかるのは当然でございます。そういうことで農林水産省当局の農業に対する認識というものを、今日までも十分にあろうかと思いますけれども、さらに現実を直視していただいて、今後の農業の発展のためによりよき御判断をしていただきたいものだと思うのです。今日までずっと推移してまいりました農林予算の減額、金額だけのことで私は云々しているわけじゃないのですけれども、端的にこういう形にあらわれるわけですから申し上げるわけであります。ぜひこの農業予算の今後のあり方についてこういういろいろな角度からひとつ御賢察いただきたい、このことを申し上げたいと思うのですが、いかがですか。
  155. 寺村信行

    説明員(寺村信行君) 全く藤原委員指摘のとおりだと考えております。ただ、ことしの一般歳出が年金ですとか人件費のやむを得ない増加を含めまして財政全体として三百億減額されているというような状況でございますので、そういった面で農林水産関係予算は御指摘のような減額になったわけでございますが、ただ、全体の枠がこれだけ厳しいわけでございますから、従来にもまして、ただいま藤原委員指摘のような内容の質的な改善に意を注がなければいけないと存じております。ただいま御指摘のようなお話は私どももいろいろなところから聞いておりますけれども農水省と十分協議をして少しでもいい予算、補助金を今後とも引き続きまして、五十九年度におきましてもいろいろな質的な改善の努力をしたところでございますけれども、さらに今後ともそういった努力を継続してまいりたいと考えている次第でございます。
  156. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 農林水産予算の中で大きく分けますと公共事業費、食糧管理費、その他の一般事業費、これは前年対比でずっと落ち込んでおります。それぞれに理由はあるのですが、第三次ですか、構造改善事業が去年からですか、ことしからですか、始まることになってますね。農業はやはり人と基盤というのが最重要なことであろうかと思います。きのうも予算委員会で舌足らずで時間が余りありませんで、そこまで入れなかったのですけれども、構造改善事業の事業費というのは前の第二次では大体当初の目標の九割ぐらいは行ったのじゃないかと思います。事業そのものは半分ぐらいしか進んでいなかったのじゃないかと思いますが、前の事業のことについてちょっと経過をお話しください。
  157. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 第二次の土地改良長期計画は、金額ペースで申しますとほぼ一〇〇%の達成になっております。しかし、事業量につきましては、御指摘のように、この間における賃金、物価の急上昇がありまして、大体四割台から五割台、事業種目によって違いますが、五割弱の達成率になっていることは事実でございます。
  158. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 経済変動というものは予測できませんからあれですが、今度の事業につきましても厳しい財政の中ですから、大体金額的に満足までいくかどうか大変厳しいのだろうと思いますが、今回も公共事業費は大分削られています。こういうことで当初の計画どおりいくかどうか、始まったばかりですから今から予測するわけにはいかないだろうと思いますが、構造改善は農業の一つの大きな柱でありますから頑張っていただきたいと思うのです。  その中で、農地の流動化ですが、最近は随分進んでいるというお話で、去年私どもも新潟ですか、委員会としまして視察に行きました。しかし、土地の流動化が中核農家に流動しませんと本当の目的が達しないといいますか、こういうことで最近の統計の中から権利移動、政府が政策的に推進しようとしている中核農家にどのくらい農地の移動が進んでいるのか、最近のもので何かそういうものがありましたらお示しいただきたいと思いますが。
  159. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) 利用権の設定面積につきましては、五十八年の暮れ現在約十三万五千ヘクタールの利用権の設定が行われております。このほかに水稲の作業の全面委託が大体六万五千ヘクタール、約二十万ヘクタールという姿が生まれております。そこで、これがどういう移動の形をとっているかにつきましては、約七割弱がやはり一ヘクタール未満の通勤兼業農家等からサプライが行われる。逆に借り手は一ヘクタール以上のものに七割以上が集中している。これをいわゆる中核農家という定義に従っていろいろ調査をしてみますと、中核農家の中で借り入れた者が全国で約七八%という数字になっております。ただ、現実は、水稲については作業受委託がまず平場においては進行するという実態があること、それから、特に利用権の設定がまず最初に進んだのは野菜の連作障害回避のためとか、あるいは西日本における大規模な畜産経営で耕地面積が比較的小さい人が限界地利用という形で進んできたという実態があることから、経営規模階層としては必ずしも上位階層にまだ集中しているところにはいっておりませんが、私は流動化の実態というのはやはり段階的に進む本質があると思いまして、その意味においては今までのところはある種の実績をおさめてきているものと思っております。
  160. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 きょうは時間も余りありませんから、このことだけを話しているわけにはいかないのですけれども、やはり規模拡大は、農地も下がっておりまして、それがいい方に働くのかどうか、貸す人、借りる方、両方の立場がありますから、地価との関係ということでいろいろ複雑なものがあるのです。それにしましても、最近秋田とか岩手とか、向こうに参りますと、売りたいといってもなかなか買う人がいない。そういうことで、また借金で大変で手放したい、これまた買う人がいないというようなこと。規模拡大はやはり借りる人にもメリットがあり、また貸す人にもそれなりの、貸した人は農作業にかわる雇用の場とか、それから社会保障とか、そういうもので安心して生活ができるような条件がなければこれはなかなか貸し出すことはできないだろうと思います。そういうことで、各部落にはそれなりの地域農業集団、農用地利用改善団体とかなんかみんな団体はあるのですけれども、そういうものがよりそういう土地の流動化を機能させる、それから県などで公社とかいろいろなことでやっている農業団体でもそれなりに配慮はあるのですが、いずれも枠が少ないために売りたくてもなかなか売れない。こういうことで土地の流動化というのは実際、農家の現場に行ってみますと、我々が机の上で数字をはじいているみたいなわけにはいっていないのが現実です。いろいろな隘路があるようです。  そういうことで、ぜひ大きくしたいという立場の人は、そういう中にあってそれを調整し、そういう安心して貸せるような条件を整備する人や仲立ちする人、それからまた、そういうときにそれを売りたいという人に対しては、それが本当に中核農家のためになることであるならば、それが売られるような条件整備というのは非常に大事なことじゃないかというような感じするのですけれども、どうでしょう。
  161. 森実孝郎

    政府委員森実孝郎君) まさに御指摘のとおりだろうと思います。特に、地域の実情に即して問題を考えることが大事だろうと思います。まず、受け手の方から申しますと、例えば大都市近郊の平場地帯等においてはむしろ受け手がいない。したがって、先ほど申し上げました地域農業集団の活動等においても、受け手をかなり広域に参加を求めるという措置を講じているのもそういう意味でございます。逆に、今御指摘のような東北地方の平場等においては受け手よりも出し手が少ない、そこに問題の難しさがあるということは事実でございます。そういう意味においては、やはり就業改善にそれぞれの地域社会において村ぐるみで取り組んでいく、つまり兼業農家の安定雇用機会を確保するという総合的な地域での努力ということが基本にあることは事実だろうと思います。そういう意味で、実は今回御提案申し上げます農振法、土地改良法等の改正におきましても、やはり就業問題というものを農政の一つの重要課題として取り上げて、市町村の計画として織り込んでトータルとして取り組んでいける法制の整備を考えているわけでございます。これについては、地場産業の育成とかあるいは工場の導入等をどう組織的に進めるかという問題と当然結びついてくるわけで、そういった各般の施策はさらに強化してまいらなければならないと思っております。  なお、所有権の移転の問題の御指摘がありましたが、実は先生御指摘のように、まさに北東北の二県においては地価が下がりまして所有権移転という形が出てきております。私はトータルとして見ればそう大きく持続的なものとは思っておりませんが、所有権移転による規模拡大はそれはそれなりに受けとめ、重視する必要があると思っておりまして、実は五十八年度予算においても土地取得資金の追加を行うと同時に、今年もある程度こういった地域については必要な手当てを講じているところでございます。
  162. 藤原房雄

    ○藤原房雄君 また、後日お話しすることにします。もっとも、林業、漁業全般にわたって予算のお話を聞かなきゃならないと思うのですが、時間がございませんから、一つだけ最後に今度は漁業関係のことですが、沿岸漁業、特に最近は育てる漁業といいますか、こういうものが盛んになってまいりました。そういう予算もいろいろ組まれているようで、これを一々お話を聞く時間もございませんから一つだけ。  今年は非常に寒波で大変だったのですが、利尻とか礼文とか、また厚岸とか今まで流氷のないところに流氷が参りまして昆布がすっかりやられたというのです。稚内なんかは氷なんか来るところじゃないのですけれども、流氷が参りますともう根こそぎやられます。これは最近は養殖もやっておりますから、根つきのものじゃなくて、こういう養殖の相当な被害、これは水族それから施設両方が相当な被害を受けておるということであります。当然天然のものも相当な被害額になっているわけです。  こういう被害があった場合には、共済に入っている場合には共済金が当然出るのだろうと思いますが、やはり早急な復旧ということから、被害は相当な広範囲にわたっていますので、しかも、今回はいまだかつてないような状況の中にあるということが言われておりますので、ぜひ早期の支払いとか、再生産のできるような対策現地の実情に合わして進めるべきだと思います。せっかく沿岸の養殖漁業ということに対して本気になって、生産が上がりつつある中での被害でありますから、    〔委員長退席、理事最上進君着席〕 この点については十分な配慮をすべきだと思います。水産庁としてもいろいろこの現状についてはお調べになっていると思いますけれども、今後とられる対策等についてあわせて御報告をいただきたいと思います。
  163. 渡邉文雄

    政府委員(渡邉文雄君) 御指摘のように、流氷は例年でございますとオホーツク海だけであったわけでありますが、本年は二月から三月にかけまして強い東の風が吹いたということがありまして、オホーツクから利尻、礼文の方へまで、あるいは太平洋の日高、十勝の方までかなり広範にわたって流れてきたわけであります。  被害状況でございますが、現在、道庁を通じましていろいろ調べていただいているわけであります。現在までのところ数字にはなかなかならないわけでありますが、昆布等を中心にあるいは一部貝類につきましても、あるいは養殖施設につきましても被害が確認されているようであります。被害額の認定自体は、御案内のように海中におきます被害の調査ということもございますし、大変流氷のせいで海が濁っておるというようなこともあるようでございまして、もう少し時間がかかるようでございます。いずれにしましても今後道庁の調査の結果を待ちまして、その対策につきましても、大体災害対策にはいろいろ従来にたくさん例がございますので、今そういったことも念頭に置きながら必要な対策につきましても道庁とよく協議をしてまいりたいと思っております。  それから、御指摘の共済金の支払い関係でございますが、御案内のように共済金は、通常の年の漁獲金額等を基準としまして定められました限度額と当該年の収入金額との差について共済金が支払われるということになるわけでありますが、昆布等につきましての収穫期はまだ先でございます。そういう意味では、なかなか通常の形ですとどうしても一月ぐらいの支払いになってしまうわけでありますが、今年の特殊性にもかんがみましてできるだけ早く調査をいたし、また、必要があれば仮払い等につきましても工夫するようにということで、現在指示をしているところでございます。
  164. 下田京子

    ○下田京子君 日米農産物交渉問題でまずお尋ねしたいのですけれども、報道によりますと、山村農相現地で記者会見をされているというふうに聞いております。その際に、交渉見通しについてお話をされていると思いますが、どのように語っておりますでしょうか。
  165. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 現地五日、日本時間でまいりますときょうの朝の九時十五分からでございますが、五日午前、午後にわたりました二回の会議を受けまして大臣が記者と懇談をした状況につきまして、——ただいま御指摘の点だけでよろしゅうございますか。
  166. 下田京子

    ○下田京子君 はい。
  167. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 交渉見通しにつきましては、これは私どもは公電が入っておりませんので電話で聴取しただけでございますが、USTRの方のスポークスマンが、楽観はしていないが希望がなくもないと言ったということについては、自分も同感であるというような発言をしていると承知しております。
  168. 下田京子

    ○下田京子君 さらに記者会見で、アメリカ側が、日本の提示はノーチェンジだと言って不満を述べているというふうに伺っているのですが、その点について農相はどうお答えになっておりますでしょうか。
  169. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) この辺のとり方は、ちょっと電話でございますので、私の聞いた感じでは、ノーチェンジというのは日本側の提案ということじゃなしに、USTR自体についてはノーチェンジであると言ったのではないかというふうに解釈をしております。USTRはノーチェンジと言ったらしいが、協議継続と言うしかないというようなことを大臣が話した、その中にはかくかくとして日本の提案が変わっていないかを含めて協議継続と言うしかないというふうに聞き取った方のあれがございます。正確にはそんなことではないかと考えております。
  170. 下田京子

    ○下田京子君 日本の提案が変わっていないかどうかということについては、協議中だからということでコメントしていないということですね。実は交渉中身について数字は言えないということなのですが、昼のニュースで聞きますと、牛肉について四百トンほどの差が報じられております。日本側は六千トン台で米側が七千トン台で四百トンの差ということになりますと、これはざっくばらんに言って六千六百トンから六千八百トンの間でということは推計できるわけなのです。  今回、農相訪米するに当たりまして国会で何度も言っていたことは、譲歩するとすれば日本ではなくてアメリカなのだ、こう言っていたと思うのです。同時にまた、さっきも同僚議員の質問に対して、訪米に当たっての最大の目的は何かといったら、アメリカの強圧的な対応を農相訪米によって幾らかでもやわらげること、つまりアメリカ側の譲歩がから取れるのではないだろうかというふうなことで行ったと思うんです。とすれば、明確に日本の提示は譲らずというか、基本的な点で押していってしかるべきではないかと思うのですが、そこをどうして明確にお述べにならなかったのか、大変その辺の対応に問題があると思うのです。    〔理事最上進君退席、委員長着席〕
  171. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 報道関係の方もきょうは傍聴席にお見えでございますので、ちょっと申しわけないのでございますが、この日米交渉内容につきましてはいろいろな新聞報道関係におきまして推測の記事が出ております。特に数字につきまして私どもは関知をしないわけでございますが、かえってそれによりましていろいろ交渉事につきまして不利益を受けておる面、あるいは混乱をさせている面があろうかと思います。  これは、無論下田先生から今御指摘のように、私ども交渉内容につきまして、数字等につきましてもお話をできればいいわけでございますが、これは全く物の取引あるいは本当の国と国の真剣勝負でございますので、なかなか数字を一たん出せば、それが表に出た場合お互いに返らないということがあろうかと思います。これが本当の首脳同士の会談だろうと思います。数日前もアメリカ側の提案というものが一斉に各紙同じような数字が出たために、米国側で、新聞に報道されている米側の案はツーローであるというような会見で発言がございました。そういう意味では現在の段階でいろいろな数字が乱れ飛んでおりますが、これについては一切私どもは関知をいたしませんし、むしろこれが交渉につきましてあるいは先方側に過大な期待を与え、また、国民の方々には非常に危惧を与えているというようなことがございますので、私どもは報道関係の方にはその点はよくお願いをしているわけでございます。  ただ、報道関係につきましてはそういうことで、交渉内容につきましては最終段階に入っておりますので、ひとつ御容赦をいただきたいと思いますが、農水大臣としては、従来から何度もこの席で申し上げておりますように、農林水産委員会決議の趣旨というものを踏まえまして、みずから行くことによって局面を打開し、相手側の理解と譲歩を求めるという態度で今回訪米したものでございますので、ひとつここは御理解をいただきたいと考えております。
  172. 下田京子

    ○下田京子君 数字のことは仮にということで私は出しておりまして、なぜ記者会見の席において、農相が明確に今お述べになったような態度をお示しにならなかったのかということで、私は非常に疑問を感じているわけなのです。今もお話がございましたけれども委員会の趣旨にのっとり、あるいはまた申し入れの線にのっとりということになれば、少なくとも今言ったようなことでの譲歩ということはあり得ないと思うわけです。  これは繰り返し申し上げておりますけれども、現在牛肉を三万八百トン輸入していて、仮にも六千トン台あるいは七千トン台でいくということになりますと一体どういうことになるかというと、年間に伸びてもせいぜい二万トンだと言われていますでしょう。仮に七千トン台だということになれば、同じ枠を今度は豪州からも一半で入れなきゃならないということになりますから、国内で唯一と言われてもいいほどに今振興策を進めている中で、片や子牛価格の低迷で自殺者まで出しているという状況の中にあって、私はどうしても、交渉の途中であればなおのこと、日本が譲らずということを明確に記者会見の席でも言ってしかるべきではなかったかと思うのです。なぜなら、これは三日ですか、ブロック米通商代表がプレスクラブで貿易政策で講演しているのです。牛肉問題で不満がある、場合によっては、日本が譲歩しなかったならば制裁も云々だみたいなことで、悲劇的なことが起きることもあり得るなどということまで言われているわけです。よほど毅然たる態度で臨まなければならないのだということを、私はあえてここでまたもう一度指摘しておきたいと思います。  次に移ります。  二番目に、米の需給問題についてなのですけれども、大変米の需給問題で米不足ということで心配の声が出されてきております。それに対しまして政府としては、特に食糧庁長官は、心配ないと、こう何度もお答えなのですが、心配ないと言われている最もその論拠になるものを見てみましたら、今度いただきましたけれども、三月末決定の「米穀の管理に関する基本計画」の中でも述べられていますが、十万トン程度の政府在庫は最近においては低い水準ではあるけれども、需給については例年十月末までは三百五十万トン以上の新米の集荷があるので問題はないと、こういうふうに言われていると思うのです。しかし、これははっきり言えば、つまり新米の早食いで何とか心配なく食いつなぐことが、できますよというふうに考えてよろしいわけですね。
  173. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 新米の供給ということだけを申し上げているわけではございませんで、基本的には、当委員会でも何回か御答弁を申し上げましたけれども、需給に不安がないと申し上げましたのは、五十八年産米が一千三十七万トン、これに前年産からの持ち越しが十万トン、さらに加えまして五十三年産米も十万トンないし十五万トン、あるいはもう少し需要があるかなという感じでございますので、さようなことで需要の方も一千五十万トンという推計で考えてみますれば、十万トン程度は年間の在庫というものを持ち越せるのじゃないかということで不安はないと申し上げておるわけです。  さらに加えまして、端境期が問題じゃないかという御質問でございますので、その際には約四百万トンぐらいの新米の早食いもいたせる状況になっている。そのマキシマムの数字が四百万トンあり、その中で五十万トン程度のものは毎年早食いをしてきたという実績もございますので大丈夫でございますと、こう申し上げている次第でございます。
  174. 下田京子

    ○下田京子君 具体的に、お尋ねしますけれども、五十九米穀年度の政府管理米の見通しのことで、つまり昨年の十一月一日からことし五十九年十月末までのお話ですから、これを今度いただいたこの計画によりますと、需要が七百三十五万トンとなっております。これは政府米、自主流通米を含めて政府管理米の中身なのですが、今お述べになったように、七百三十五万トンの内訳というのは、五十三年産米、超古米でおよそ十五万トン、そして五十七年産の持ち越し米が約十万トン、五十八年産米は七百十万トンということを言われていますが、実際には新米早食い六十五万トンほどを充てておりますから、これは六百四十五万トン。さらに五十九年産米、つまりこれから生産されるお米六十五万トンを含めて供給していくのだと、こういうことに理解してよろしいですね。
  175. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) ここで述べております五十九米穀年度の政府管理米の見通してございますが、需要につきましては、ただいま先生のおっしゃいました七百三十五万トン、それから政府米は主食用として三百七十万トン、酒造用が十五万トン、合計三百八十五万トン、自主流通米が主食用二百九十万トン、酒造用三十五、モチ米二十五、計三百五十万トンということでございまして、六十五万トンを差し引かれるということを先ほど申されたわけでございますが、それは基本的に申しまして新米の早食いをした分だろうというふうに私は考えるわけでございます。しかし、これはたまたま米穀年度が十月末ということでもって締め切るという形になっておりますものですから、その時点における瞬間風速を言っておるわけでございまして、五十万トン程度の早食いをおおむね毎年やってきておるわけでございますから、その分を差し引いてしまうということは計算上私は適当ではないと思う次第でございます。つまり年間を通しての供給量と、年間を通しての需要量というものを見まして、その結果が差し引き翌年に持ち越されているということでございます。
  176. 下田京子

    ○下田京子君 今のは一つの理屈でしょうけれども、米穀年度が十一月の一日から始まって十月の末で終わるわけですから、それを早食いしているということになれば、逆にこれからの分を充てなかったら、それだけの数は満たないというのは、これは事実でしょう。要するに、五十九米穀年度に供給するために、五十八年産米は計画に対して六十五万トンほど早食いしなきゃ不足するわけで、五十九年産米六十五万トンの早食いが出てくるということになると思うのです。  次に、お米の集荷状況についてお尋ねしたいのですけれども、五十八年産米の集荷状況は、計画では七百二十万トンとなっておりますけれども、現在どのようになっていますか。
  177. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 五十八年産米の集荷状況でございますが、冷害等の影響によりまして生育の遅延もございまして、集荷がおくれているということは事実でございまして、現在の集荷量がほぼ昨年並みの約七百万トン、正確に申しますと六百九十五万トンでございます。五十八年産米の生産量と集荷量の現状を考慮いたしますと、なお集荷力はあると考えておりますので、私どもとしては通年集荷という体制をとりまして、今後とも適正集荷に努めていきたいと思っております。
  178. 下田京子

    ○下田京子君 二月末で六百九十五万トン、大体今は七百万トンぐらいまでいっているだろうということですが、四月十五日が予約限度数量に基づく出荷期限ですから、まあ七百二十万トン何とかなるよ、それまでやりたいといってもそれはまさに不確実であって、今の時点ではどんなにやっても二十万トンほど不足するのではなかろうかなというふうに思います。  さらに、需要の面で聞きたいのですけれども、これは主食用に限って聞きます。五十九米穀年度で六百六十万トンとしておりますけれども、実際に五十八年の実績は六百八十三万トンあったと思います。とすると、昨年並みの需要があれば二十三万トン減るというふうになるわけですね。これはどうなのですか。
  179. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 確かに先生のおっしゃいますように、食用のウルチ米の売却数量が五十八米穀年度で六百八十三万トンあった、これは事実でございます。これはその前の五十七米穀年度に比較しますと、そのときは六百七十一万トンでございますから一二%ほどふえておるわけでございます。  これはなぜかということでございますが、正確に申しまして、まず一つは、集荷の努力を非常にいたしまして不正規米というものの防止に努めてまいりました。実際、五十七米穀年度の供給の大宗でございました五十六米穀年度におきますところの五十六年産米の農家の消費が三百四十九万トンだったかと思いますが、これに対しまして五十七年産米の農家消費等が三百二十八万トンでございますから、約二十万トンのギャップがございます。これは恐らく不正規の分が相当抑えられた、したがって、その分が先ほどの六百八十三万トンの中にシフトしてきているということが考えられるわけでございます。それからいま一つは、五十八米穀年度の端境期においてやはり玉不足があるのじゃないかということを去年の今ごろからも大分言われておったようでございまして、さような意味で、かなり流通段階の在庫がふえていたということが考えられます。さような意味で、六百八十三万トンというのは必ずしも実需につながらない形で政府の売却が行われたのじゃないかというふうに考えられるわけでございます。  そこで、翻って現状の実際の実需というものがどうかということを考えてみますると、やはり昭和五十年以降、米の消費量は残念なことに年々十四万トン程度は減少しておりますし、直近の五十七年度の実績も大体同様でございます。さようなことから、私どもは総需要量を一千五十万トンに置きまして、これから農家消費等も考え、酒造用、モチ用等も考えまして六百六十万トンという数字を考えているわけでございます。したがいまして、さらに最近の米の実際の消費の状況というものを見ましても、総理府の家計調査あるいは私ども食糧庁の調査によりましても、残念なことに各月ほとんど前年よりも減少している状況でございまして、先ほどの流通段階の在庫ということもあわせて考えてみますると、政府売却の六百八十三万トンというのはかなり高めに出た数字でありまして、実需ということを考えてまいりますと、六百六十万トンというのが決しておかしくない数字であるというふうに考えている次第であります。
  180. 下田京子

    ○下田京子君 いろいろ御説明がございましたが、いずれにしても昨年は需要面で六百八十三万トンあったわけです。仮にお米の消費がどうかということは、例えば夏場の気候なんかでも随分変動するわけです。冷夏だとお米の消費がふえる、つまり、今お話しになったように不確実な要素が大きいということだと思うのです。逆な意味で実績がふえれば私は政策的には喜ばしいことだと思うのです。現実に六百八十三万トン、これは五十八年にあったわけですから、昨年並みに消費がそれだけふえるとなれば二十三万トンの不足が出るというのは、これは論理的には成り立つわけなのです。  そこで、長官、よく聞いてください。集荷の時点で二十万トン集まるだろうかどうか、私はまず集まらないと思う。そして需要が昨年並みになればここで二十三万トンほどまた不足になってくる。しかも、さっき申し上げましたように、五十八年産の政府管理の中で既にもう六十五万トンを早食いしていますから、実際の計画よりもトータルでざっと百八万トンもお米が不足することになるじゃないか、こういうことになるわけです。しかし、そこをどうするかということになると、ことしの生産するお米で十月末までこの百八万トンを充ててやっていくから心配ないよというふうな理屈になるのでしょうが、これは非常に問題があると思うのですが、どうですか。
  181. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 私が御説明申し上げたことと全く違ったことで御理解をいただいたので残念であるわけでございますが、まず二十万トンの部分が集荷において不足するのじゃないかと、おっしゃっておられますけれども、これは集荷の努力をしてみなきゃいかぬ、それは私どもで今後最大の努力をするということでございます。
  182. 下田京子

    ○下田京子君 否定しない。
  183. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) しかし、決して否定をしないということを申し上げておるわけじゃございません。最善の努力を尽くしますということを申し上げておるわけでございます。  それから、その次に、六百八十三万トンの実需があるのではないかとお思いになっておられるわけでございますけれども、これは先ほどから申し上げておりますように、実際の需要量は残念ながら下がっているわけでございます。去年並みに実需はない、つまり需要量そのものも下がっておりますし、かつ流通段階の在庫がふえている、これは実需ではございません。したがいまして、この二十三万トン分をそのままお足しになることも私はおかしいと思うわけでございます。  それと、六十五万トンの部分というのは、これは毎年五十万トン程度は早食いをしてきたわけでございまして、決して急に五十八米穀年度において途端に六十五万トン分を全部早食いをしたわけではございません。したがいまして、その分は毎年五十万トン前後は当然ある状態でございまして、これは四百万トン程度の早場米というものがあればこれに対応できるということを申し上げておるわけでございますから、それを積み上げて全部これが不足の量であるというふうにお考えになっていただくと、これは私の御説明理解していただけなかったということで、甚だ残念であるというふうに思う次第でございます。
  184. 下田京子

    ○下田京子君 理解するしないでなくて現実のことを言っているので、集荷については努力します、これは努力は大いに結構でおやりいただきたい。やみの問題はやみの世界ですから不明、農家が持っているだろうなどということになっても、それは強制力は働かない。努力の範囲でしかないから二十万トンがちゃんと来るということは今の段階で言明できません。それから需要の面でも、六百八十三万トンお食べくださいよということは政策的に言えても、食べちゃいかぬよとは言えないわけです。そういう点からいって、また六十五万トンの早食いのことですが、早食いが年々ふえてきているのです。そして基本計画を立てる時点でその早食いを前提にしているということになると、これもまた需給操作上だんだん厳しくなるだろう。はっきり申し上げまして私が述べました百八万トン、この数字というのは政府管理米にしますと二カ月分に相当します。ですから、九月、十月は早食いで操作しなきゃならない。生産、出荷、たあっとこういう格好になって、非常にこれが大変なことは事実であるということは御認識ください。  次に、六十米穀年度の問題なのですけれども政府は水田再編第三期対策で、これから四十五万トンの在庫積み増しをするというふうに言われておりますが、この四十五万トンの積み増しの前提になるのが何かということなのです。その第一、それは五十九年産米が単収四百八十一キロという平年作で保障している、これが一点なのです。それからその二、転作が目標どおり実施されるということ、つまり超過達成しないということなのです。その三、需要は全体量で昨年より五万トン減るということを前提にしているのです。この三つの前提が満たされて初めて四十五万トンの在庫積み増しができるという論になるのです。そうですね。
  185. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) おっしゃられることはそのとおりでございまして、単収についても平年の単収というものを前提にして、それがとれるような天候と、また、それに対応できる技術というものが十分にあるという状態が前提でございますし、それから超過達成ということがなくて、できるだけ一〇〇に近い状態での目標を達成できるということがございます。  ただ、需要の面につきましては実際上減っている傾向があるわけでございまして、五万トンの減りというのはむしろ安全を見ているというふうにお考えをいただきたいと思います。
  186. 下田京子

    ○下田京子君 今言ったような三つの前提が条件ですから、長官、もう芸術的なのですよ。今までの転作のことを見ましても超過達成というのが多いのです。だからこそ米づくりなどということまで一生懸命声をかけているのです。過去の例から言いましても考えていただきたいのは、昨年三月末の基本計画はどうでしたか。五十八年産米の生産量を一千九十五万トンと見ていたでしょう。ところが需要量は一千五十万トンで、そこで四十五万トンの在庫積み増しができるのだと、こう言っていたでしょう。しかし、実際の生産量は一千三十七万トンです。ですから在庫積み増しどころか、超古米でコケコッコーなんて言われるような五十三年産米を使うようなことになった。ですから、お天気が非常に関係するわけです。はっきりしているのは五十万トン前後のぶれというのが出てくるのだということなのです。そういうことを織り込んで、つまり、豊凶の差をきちっと織り込んだ形でもって対応していくというのが、本当に今国民から心配されている米不足問題について対応していく政府責任じゃないかと思うのです。
  187. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 二つのことを申し上げておきたいと思います。  一つは、私も決してゆとりのある需給操作をしているということを申し上げているわけではございません。私どもは万全を期しながらきめ細かな需給操作によって本米穀年度を越えたいということを申し上げている次第であります。  それから、いま一つは、四十五万トンの在庫の積み増しということを考えておるわけでございまして、これは当然天候が必ずしも良好でない状態においてはある種のバッファーになるということに相なるわけでございます。そしてまた、四十五万トンの状態を実現するための要件ということを先ほど申し上げたわけでございますが、一つは、ただいま生産当局の方で一生懸命やっていただいているわけでございますけれども、できるだけ転作目標面積に限りなく一〇〇%に近づけていくということを実施していただいているわけでございます。もちろん、この成果がどうなるかということはこれからでございます。しかし、私どもとしては、ただいま五十八年産米のことをお触れになりましたけれども、その当時におきましては……
  188. 下田京子

    ○下田京子君 もういいです、長官、時間がないので。
  189. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) いや、ちょっと申さしてください。そこで、私どもとしては三期の対策の前の状態とは違っているということを申し上げたいと思います。  いま一つは、生産対策につきまして、いわゆるたくましい稲づくり運動というものも実施しているわけでございまして、さような意味でこれからの天候の若干の変動というものにも対応していきたいということを申し上げている次第であります。
  190. 下田京子

    ○下田京子君 要するに、お認めになりましたが、ゆとりある需給計画ではないと、もう頭を下げられています。綱渡り的だ、芸術的だと。長官、私は他用途米で聞きたかったのです。だから、二点だけ聞きます。  一つは、基本計画上の位置づけ、これも三月末に決まった「米穀の管理に関する基本計画」の中で、他用途米は管理する米穀の数量に位置づけられておりません。おりませんよ、首をひねっても。だめだ、そんなことでまたやっていたら。ちゃんとここを見たら、これはいただいているところの「第五 政府の管理すべき米穀の数量」のところに入っていないのです。それはもし入れれば食管法が働きます。そして食管法が働くということは、管理すべき米穀の中に入ると、食管法第三条一項で売り渡しの義務がかかります。そしてその買い入れ価格は、三条二項で再生産を確保するを旨としたそういう価格の面での責任も負わなきゃならない、そういうことでない米なのだということが一つですね、他用途米の性格。  それからもう一つ。ところが、かつて五十年、五十一年、五十二年、三年までですか、ちゃんと「管理すべき米穀」の中に入れて、主食用と同じように買っていたことがあったと思います。  この二つをお述べいただきたいと思う。それで私の質問を終わります。
  191. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 確かに今回導入いたしました他用途米につきましては、これは「管理すべき米穀の数量」ということの中には入っていないことは事実でございます。ただし、これはあくまでも基本計画の中にある種の位置づけをしているわけでございまして、これは御案内のように、今回公表いたしました基本計画の中で位置づけをいたしておるわけでございます。ただ、その場合に、食管法一条に基づく「国民食糧確保及国民経済ノ安定ヲ図ル為食糧ヲ管理シ英ノ需給及価格ノ調整」ということを書いてあるわけでございますが、この「管理シ」というのは何も直接にこれを買い入れる米ということを述べているだけではないと思います。「管理シ」というものの中にはしからざる管理、すなわち、食糧管理の立場からする一定の必要な行政的規制を加えつつ流通を認める管理というのも入っているはずでございます。  それからまた、第三条にお触れになったわけでございますが、第三条の場合には、一条の目的を達成するために必要な米は政府が生産者から買い入れをすることができるという権限付与の規定でありまして、これは生産された米穀の全量を買い入れる義務を負うという規定ではないというふうに私どもは解釈をいたしております。したがいまして、一条の目的を達成するために、政府責任を持って米の需給や価格を調整する上で政府買い入れ等を行って管理する、そういうお米について買い入れ等を行うということが規定されているというふうに思うわけでございます。  一方、他用途米につきましては、これは導入の趣旨から申しまして、生産者と実需者との自主的な取り組みということを前提にして、その御協力によりまして導入するということでございまして、その導入の趣旨からいたしましても、また、国民食糧としての位置づけから申しましても、政府買い入れの対象とならない生産、流通というものが行われるということを予定して導入したそういう米でございます。したがって、他用途米について三条には入っていない、これが食管法に何ら触れるような問題でないというふうに思っております。  それから、第二の……
  192. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 簡潔に願います。
  193. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 御質問でございますが、これは五十年から五十三年にかけまして、加工原料のお米につきまして確かに需給計画上全量国内産古米で充当していた時代がございました。ただし、現在はこのようなことがなかなか制度として仕組むのが難しいと考えまして、先ほどのような考え方の他用途米を導入したということでございます。
  194. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 昭和五十九年度農林水産関係予算というものに関係をして、数点にわたって質問をしたいと思います。  まず、食糧安定供給というのが極めて重要な問題でありますけれども政府食糧に対する基本政策基本的考え方というものをお伺いをしたいと思います。
  195. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) お答え申し上げます。  食糧政策につきましては、国民の需要の動向に即応しました食糧安定供給、安全保障を確保するということが私ども食糧政策の最も重要な課題であると考えております。そのために、まず第一に、生産の面におきましては国土を有効利用し、生産性向上を図力ながら、国内で生産可能なものにつきましては、生産性向上を図りながら極力国内生産で賄うという方針のもとに食糧自給力の維持強化を図るということであります。  また第二に、国内で生産できないもので輸入に依存せざるを得ないものにつきましては、安定的な輸入の確保を図るということと同時に、輸入障害の発生など不測の事態に備えて備蓄を行うということでございます。  また、食生活の面におきましては、農林水産省といたしましては、栄養バランスのとれたいわゆる米を中心といたしまして畜産物、野菜、果実、点その他非常に多様な日本型食生活というものが現在定着しつつございますので、これの普及定着に努めるということと同時に、主要な食糧の自給と価格の安定を図るということが基本的な方向でございます。
  196. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 食糧の安定確保、さらには安全保障のためにはできるだけたくさんのものを自給した方がいいということはこれは当然だと思うのです。ただ、問題は、それなら国内で生産できるものはすべて自給すべきかというとこれもなかなかそうはいかない。それはどういうところに問題があるかというと、いわゆる競争力といいますか、生産性の問題が絡んできまして、自給率を高めようとすればするほど財政負担がかさむとか、あるいは国民、消費者に高い食糧を食わせるということになるわけであります。したがって、ただ単に自給率が高ければ高いほどいいということではなくて、自給率を高めるということと財政負担、さらには国民の負担というもののバランスということが必要ではないか。その辺のことについてどのようにバランスをとっていかれるのか、お伺いをしたいのであります。
  197. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 御指摘のとおり、我が国農業生産につきましては、特に土地条件が非常に恵まれていないということがございまして、日本の農地を前提にしました場合、農家二戸当たりの農用地面積はわずか一・二ヘクタール、アメリカは、極端な場合を考えますと一農家当たり百八十二ヘクタールというように百五十倍程度。また、農地価格につきましても、田につきましては日本が十アール当たりでございますが百二十万、畑が八十四万、平均しまして仮に百万といたしました場合、アメリカの場合には十アールで三万四千円というように約三十分の一と、こういう農業生産基本でございます地価に大きな差がある。したがって、またそれを反映いたしまして、経営基盤経営規模も小さいということもございまして、今御指摘のように、特に土地利用型作物につきましては、米国、豪州、カナダというようなところと競争するということは非常に難しい問題かと思います。  片や、やはり御指摘のとおり、国民の食糧安全保障というためには自給が望ましいということも事実でございます。その辺のバランスをどうとるかというのは非常に難しい問題でございますが、私どもは、国内でどこまで生産性向上を図りながら自給生産力を伸ばしていけるか、また逆に、日本人の食生活というものを見通した場合、どういう農業生産のパターンが必要であるかというようなことをいろいろ勘案をいたしまして、昭和五十五年に、各作物別に六十五年におきます自給の目標、国内生産の目標というものを一応立てているわけでございます。  また反面、消費者の方々の立場から申しますと、やはり安い物がいいということも事実でございます。そういう意味で私どもは、生産の合理化を図りながら、中長期的には先ほど申し上げました米豪並みにはまいらないといたしましても、EC程度のものに近づけていくというような方向によりまして、消費者の方の立場も十分反映をさせていきたいというように考えておるわけでございます。
  198. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 土地利用型作物というのがどちらかというと基幹的な食糧になるわけでありまして、そういう面で日本の与えられた条件が非常に不利だからそういうものを放棄するというわけにもまいらない。それから今言われました一戸当たりの耕地面積が狭いというのは、これは構造上の問題でありまして、日本にもともと農地に適する土地が絶対的に少ないということとは別のことだと思うのです。それから土地の価格が高いというのも、これまた地価、土地政策とかそういう問題でありまして、同じような農作物をつくる土地の価格日本の方がアメリカに比べて価値が高いというわけでもないと思うのです。したがって、私はそういう構造上の問題とか政策上の問題はやはり克服されるべき問題であって、それが宿命的な問題とは考えられないのであります。ただ、私が指摘したいのは、何でもかんでも自給率を高めるということはこれは不可能である。だから、作物によって食糧の安全保障上重要なものと重要でないものとあると思うのです。この優先順位を決めて、そして自給率の問題についても考えていかなければならないのではないかと思いますが、この点はいかがですか。
  199. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 作目別に何が重要であるか、何が重要でないかということにつきましては、むしろまた、国民の食生活内容をどのように考えていくかということにも関係するわけでございまして、現在の日本農業条件あるいは国民の方の食生活ということを考えました場合には、まず何をおいても米が中心であるということは異存がないと思うわけであります。しかしながら、現在の日本人の食生活あるいは将来を見越した場合には、米だけでやはり食生活を律するというわけにはまいりませんし、先ほど申し上げました日本型食生活というようなものが、戦前に比べまして、ようやく戦後四十年近くなりまして米を中心に野菜、畜産物、果実あるいは魚というようなもので非常に多様な、栄養価もいい、またPFC比率といっておりますが、たんぱく質、脂質あるいは糖質のカロリーという面からもバランスがとれた食生活、むろん平均的なものでございますから年齢層によってはいろいろ違うかもしれませんが、そういうものがやはり望ましいということを考えております。  したがいまして、そういうものを全体的にバランスよく持っていく。と同時に、先ほど先生も御指摘のとおり国内で無理をして、生産性も非常に低い、価格もむちゃくちゃに高い、そういうようなものにつきましてはやはり外国に依存せざるを得ないということもありましょうし、その辺のバランスを考えながら、先ほど申し上げました「農産物需要と生産の長期見通し」というものにおきまして閣議の了解を得ながら、米を中心にしまして、米は今後とも完全自給、そのほか小麦、大豆、野菜、果実、畜産物、飼料というものにつきましてそれぞれの一定の自給率を設けたというのが総合勘案しました結果と考えております。
  200. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、食糧の安全保障というものと自給率、それから自給率を高めるための保護政策、こういうものとそう簡単にストレートに結びつくものではないと思うのです。食糧の安全保障というのはむしろ危機管理、危機が起こったときにどうするかというそういう計画を持っておることが大事なのであって、現在日給率が高いから食糧の安全保障度が高いと思うのは大間違いではないか。このことはまた別に論議をしますけれども、米が何といいましても一番主軸になる食糧であり、また、一番厳しい統制も行われておるわけであります。ただ、米のこれから将来にわたる需給予測並びに日本の国民の食生活における米のウエートの見通し、この点についてお伺いをしたいと思います。
  201. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 米の消費につきましては、畜産物あるいは油脂の摂取が増大しておりまして、食生活も多様化しているということで、御案内のように残念ながら一貫して減少を続けている状況でございます。今後とも食生活の変化に伴って米の消費量が減少するのは避けられないとは見ております。  しかしながら、一方におきまして、畜産物やあるいは油脂等の消費につきましても日本人の体格、体型といったようなことを考えてみますると、消費水準もかなりの水準に来ておりますし、また同様に、日本食生活を見直していこうという日本型食生活といったような考え方も出てまいっておりますので、各種の米の消費拡大の努力ともあわせまして、その減少テンポは旧来よりは低下するというふうに考えております。このような考えのもとにおきまして、農林水産省が作成いたしました「農産物需要と生産の長期見通し」というものがございます。この中におきまして、六十年度における一人一年当たりの消費量は基準年の五十三年が八十一・六キログラムということでございましたが、これに比べまして約二割減、六十三ないし六十六キログラムの程度になっている。総需要量で五十三年が千百三十六万トンということにしまして、約一割減の九百七十万トンないし一千二十万トンというふうに見込んでおるのが現在の我々の持っておる唯一の予測でございます。
  202. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 食生活の中における米のウエートというのは、これは今後の農政基本方向の中にも触れられておりますけれども、だんだんやはり下がっていくだろう。それから六十五年度では大体必要カロリーの二五%程度ということになると言われているわけです。だから、米だけ非常に厳しい統制で一生懸命守っても、四分の一のものを守るにすぎないということになるのではないかと思うのです。  それから、米を守るためにも私はやはり米の需要をふやすということを考えなくてはならないけれども、それなら現在の食管制度というものは果たしてこれからもそういう役割にたえられるのだろうか、若干疑問を持つわけです。もちろん食管制度は米が中心でありますけれども、俗には三Kの一つと言われて財政負担のウエートが極めて高い。しかるに、先ほど申し上げましたように、国民の摂取するカロリーの中のわずか四分の一のウエートを占めるにすぎない。そういう中で米中心の食管制度が果たしてこのままでいいのだろうか、この点はいかがですか。
  203. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) ただいま先生がおっしゃいましたように、米の国民食糧の中に占めてきているウエートが下がりつつあることは事実であるわけでございますが、私どもは、我が国農業の米というものは基幹の作物であるということも考えておるわけでございますし、また、米等中心にした日本型食生活というものもその認識がだんだん高まりつつあるというふうに考えているわけでございます。さような意味で、今後ともこのような日本人の食生活におけるお米というものについての認識が変わらない限り、依然として米はやはり主食の座というものを保っていくものだというふうに考えておるわけでございまして、さような中におきまして、食管制度というものは米を中心に今後とも運用してまいらなきゃならぬというふうに考えるわけでございます。  ただ、食管制度そのものにつきましては、先生も御案内のように、昭和五十六年の六月に全面的な改正をいたしておるわけでございまして、かつての厳格な配給制度、戦時にできました統制をもとにいたしましたような考え方を改めまして、需給の動向あるいは流通の実態に即応しまして、過剰ないしは不足のいかなる事態にも対応できるような食管制度というものに直してまいりましたし、また、かつては自主流通米制度というものを取り入れまして、品質に応じた価格形成を図るということも昭和四十四年以来やってまいりました。  また、今回の改正におきましては、消費者の利便に資するように、また、そのニーズに合うように販売店、ブランチ制度の導入とか、あるいは新規参入に関するチェーンの整備といったようなことも図りまして、活発な商業活動が行われるように考えてまいっておるところでございます。その中におきましていろいろと換骨奪胎をしている状況であろうというふうに思う次第でございます。やはり、基本的に日本農業の根幹である自作農を安定させ、かつ国民食糧確保と安定的な供給ということを図ってまいりまするということを前提にいたしまして、しかも、世界の食糧需給というものが今後どう展開するかということについて、必ずしも楽観を許さないということでございまするならば 食管制度というものは今後ともやはり運用面において留意しつつも重要な意義を持っておるものでございまして、これは堅持してまいりたいというふうに考えている次第であります。
  204. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 米に対する需要が減ってきておるとはいいながら、しかし、国民の食生活のカロリー的に四分の一を占めるわけですから、ウエートの高いものには違いありません。しかも同時に、国際的な競争力も非常に弱い。そういう意味から考えますと、食管制度のような何らかの管理制度というものがないといけないということは私も同感であります。ただ、今までのやり方が果たしてそのままでいいかどうか、これは若干疑問があると思うのです。  ここでちょっと問題が違いますけれども、需給の問題ですが、五十三年の古米、超古米まで持ち出さないといけないように現在の需給は逼迫してきておるわけです。この原因は、一つは天候不順ということがあった。もう一つは、栽培管理の不徹底が原因だというふうに言われておるわけであります。ところが、天候不順という問題は、三月二十二日に出された気象庁の異常気象白書によりましても、今後十年ぐらいは異常気象が続くだろうというような長期予測をしておるわけであります。そうすると、この影響がかなり米作にも強く影響を及ぼすと思うのですけれども、この見通しはいかがですか。
  205. 山極栄司

    説明員山極栄司君) 先生御案内のように、先般三月に、「近年における世界の異常気象の実態調査とその長期見通し」というものを発表しておるわけでございます。これは四十九年と五十四年に発表されまして、続いて三回目ということになるわけでございます。  これによりますと、今先生御指摘のように、日本の平均気温というものは、年によりまた地域によりまして差はございますけれども、一般的な傾向としては北日本等の一部に見られる低温傾向はしばらく続き、その後全国的に上昇すると見られておるわけでございます。また、世界的に見ますと、天候の変動は大きく異常気象が発生しやすいという予想をされているわけでございまして、農業生産にとりましては、今後必ずしも良好な気象条件が続くというふうには言えないというのも御指摘のとおりでございます。  もとより、農業生産というのは、御案内のように気象条件に左右されるところが極めて大きいわけでございます。現在の技術水準でございましても、気象の影響を完全に克服することは困難な面もあるわけでございますけれども、これまでの技術進歩も大変大きかったわけでございまして、不良な環境条件に遭遇しましても、適切な対応によりましてその影響はかなりの程度軽減し得るようになってきているわけでございます。  ちなみに、昭和五十五年でございますが、これは気象的には明治以降の三大冷害年に匹敵するというふうに言われた年でございましたが、この年におきましても単収は四百十二キロで、作況指数は八七ということでございます。こういう年でも昭和四十年前後の豊作年の単収水準を実現したというのは、やはり技術水準の進歩によるところが極めて大きかったのではないかというふうに思っておるわけでございます。いずれにいたしましても、こういう問題もございますので、特に本年から四年連続不作の傾向を踏まえまして、不良条件を克服し得るようなたくましい稲づくり運動を官民一体となって全国的に展開しておるところでございまして、今後とも気象の推移に十分注意しながら、基本技術を初め適宜適切な技術対策を励行するようにいたしたいというふうに思っておるわけでございます。そういうものを通じて作柄の安定に努めてまいりたいと思っておるわけでございます。
  206. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 今もお話のありました新稲作運動というものが始められておるわけでありますけれども、これの目的、ねらいは何ですか。
  207. 中野賢一

    政府委員(中野賢一君) 今気象のお話もございましたのですが、ここ四年ばかり不作が連続しておるわけでございます。この不作の原因は、基本的には気象条件でございますけれども、地域によりまして、また農家によりまして子細に見ますと作況に違いがございます。やはりしっかり稲作に関する基本技術を励行した農家、地方もちゃんと維持いたしまして、水管理も徹底してやる、そういった農家につきましてはそれなりに不良の条件を克服しているわけでございます。したがいまして、先ほど気象のお話もございましたのですが、これからの気象の変動に対応いたしまして、しっかりした稲づくりをするということが何より重要でございますので、そういった技術を官民一体になって奨励していきたいということで始めたものでございます。
  208. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 ということは、要約すると、現在の米の需給が逼迫しておる原因は異常気象にある、だからこの需給関係というものをより安定化させるために異常気象に耐えられるような目的でこれをやろうということですか。
  209. 中野賢一

    政府委員(中野賢一君) 現在進めております水田利用再編対策でございますが、これは今御指摘のありましたように、米は構造的に過剰基調にありますので、需給の均衡を図るためにやっておるわけでございます。同時に、今お話がございましたように、米は国民の主要食糧でございます。当然安定的に生産が行われなければならないわけでございまして、安定的に生産を行うためにはいろいろな不良条件を克服して、しっかりした技術で生産が行われるということでございまして、御指摘のような点から新稲作運動を推進いたしておるわけでございます。
  210. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それは非常に結構なことだと思いますけれども、ただ、一方で水田利用再編対策によって大幅の減反政策をやっているわけです。これで米の生産を減らそうとしながら、一方では新稲作運動で米の生産を確保しようというのは、ちょっとこれは矛盾はないのですか。
  211. 中野賢一

    政府委員(中野賢一君) 先ほど申し上げましたように、構造的に米の供給は需要をオーバーしておるわけでございます。したがいまして、その需要の均衡を図るということは必要でございます。同時にその米は、先ほど申し上げましたように国民の主要食糧でございますので、安定的に確保しなければならない。一方、農家経営から考えましても、作柄が安定いたしますことは農家経営にとって非常に重要でございます。当然一定の収入があるわけでございますので、農家経営から考えましても安定させる必要があるということで、決して今の減反政策といわゆるこの新稲作運動が矛盾しているというふうには考えておりません。
  212. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 今回の水田利用再編第三期対策において、他用途利用米という制度が導入されたわけであります。これは、もし米の需給が逼迫した場合に、この他用途米を食用に転ずる可能性もあるわけですか。
  213. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 他用途利用米につきましては、これはあくまでもいわゆるみそとか、あるいはせんべいとか、そういう加工原材料用のお米の需要というものに対応いたしましてこれをつくっていくという考えでございます。基本的に申しまして、私どもはこのような需要があるということを前定にいたしまして導入いたした制度でございますから、もちろん当面の需給については先ほどから不安はないということを申し上げておるわけでございますし、また、基本的にこの制度といたしまして、ただいま先生から御指摘のようなことを想定してこの制度を導入したわけではないということでございます。
  214. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 もちろん想定してできたものではないと思いますけれども、もしまた、猛烈な異常気象で足りなくなった場合、そういう可能性はないわけではないわけでしょう。
  215. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) そういう事態が生じた場合に考えられることがどうなるかということを、今ここでちょっと想定をいたすわけにはまいりませんので、ただいまの政府としては、そのようなことを想定してつくったものではないということで申し上げておきたいと思います。
  216. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 他用途米といっても品質的にそれほど差のあるものではないと思いますが、これが流通段階食糧の方へ転用されるという可能性はないわけなのですか。
  217. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) その点が、この他用途利用米導入に当たりましての一つの大きなポイントであったことは事実でございます。もしも先生が御懸念なさるようなことで、これが一般主食用に横流れというようなことに相なりますると、これは食管制度の根幹を揺るがす問題になるというふうに思います。したがいまして、私どもはまず生産の段階から、検査、集荷、これらにつきましてきちんと行政上指導をいたしまして、横流れがないようにいたしますと同時に、ただいま御懸念の流通段階の問題につきましては、原則としてこれは砕米で流通させるということを考えております。したがいまして、横流れは流通段階ではないというように考えております。
  218. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 なお、この他用途米の配分ですけれども、大体転作面積の一割ということで指導されるというふうに聞いておりますが、こういう一律に配分するというやり方は果たしていいのかどうか、この点はいかがですか。
  219. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) この他用途利用米を導入いたしました際に、どのように各県への配分を勧告するかということはいろいろと考えたわけでございますが、一つは、御案内のように、この他用途利用米というのは転作の一種ということで考えておるわけでございます。この転作というのは全都道府県に御協力を願いまして導入をしているということでありますので、やはりある程度までこれは一律的にせざるを得ないのじゃないかということがあったことと、いま一つは、各都道府県におきまして、やはり他用途利用米をつくるというような営農の条件と申しますか、あるいは土地の条件といいますか、こういうものはどこの県にも多かれ少なかれあるわけでございまして、さような意味でこの他用途利用米の指導は一応転作目標面積の一割ということを目途といたしまして導入するということにいたしたわけでございます。  ただ、各県の実情によりましては、率直に申しまして、実はお米どころの県を中心にいたしまして若干の県につきましては、もっとつくりたいというところもあるわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、そのような余計つくりたいという県と、その目標まではつくれないという県の間では、県間調整をするということも実は考えている次第でございます。
  220. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、先ほどから言っておりますこの食管制度、こういう厳しい統制方式のやはり限界というものがあるような気がするわけです。一つはこの減反ということでありますけれども、これも各都道府県に一定の基準で強制的に割り当てられる、しかも、強制するからそれに対して補助金を出すというやり方そのものが非常に不自然であるし、おかしなことである。そこへ持ってきて、今度は他用途利用米という新しい制度が導入されました。これも大体コストも品質もそれほど変わらないものについて、人為的にその価格を違える、こういうこと自体が私は一つの破綻のあらわれではないかという気がするわけです。もう少しうまいやり方はないのだろうか。  例は、市場原理とか価格政策、あるいは生産性とかというものが競争原理を通じて働くような形で、自動的に調整されるような方法をもう少し入れてもいいのではないか。つまり、この統制をもう少し弾力的にしたらどうか。そういう方が米の生産についての競争力も強まるし、それから品質の向上価格の低減にもつながるのではないか。そして、品質の向上価格の低減が実現されれば、需要増ということも考えられるのではないか。だから、現在のような厳しい統制方式や人為的な調整とか価格設定というものが、逆に米の需要というものを減らしてきているのではないかという気がするわけであります。この点はいかがですか。
  221. 松浦昭

    政府委員(松浦昭君) 現在、お米の恒常的な過剰基調のもとにおきまして、国は多額の財政負担を伴うやり方をいたしまして、需給均衡対策を講じているところでございますが、このような需給調整というものを、ただいま先生のおっしゃられるような市場原理だけによりまして実施していくということは、なかなか難しいのじゃないかという感じがいたすわけでございます。しかし、やはり食管制度の枠の中で品質保持、また消費者のニーズ、選択に応じまして価格形成とかあるいは適正な流通を図っていくということは私は必要じゃないかというふうに考えておる次第でございます。  したがいまして、食糧庁といたしましては、先ほども若干御紹介いたしましたけれども昭和四十四年からは自主流通米制度というものも取り入れまして、品質に応じた価格形成を図るということもやってまいりましたし、また、五十七年の食管法の改正では大幅に従来の統制的な色彩を薄めまして、いわゆる配給制度をやめる、あるいは過剰、不足のいかなる事態にも対応して的確に米を供給できるように、販売店いわゆるブランチ制度の導入、あるいは新規参入に関する規定の整備を図るといったようなことをやってまいっておるわけでございまして、食管制度の基本は維持しながら、市場原理の活用にも留意するということで今後運用してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  222. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 終わります。
  223. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 官房長、以心伝心という言葉がございますね。そのことが真実であるなら、私のただいまの心境は、アメリカで頑張っておられる山村農水大臣に、この声、気持ちよ届けよ、時既に遅しならば、何とか今からでもあなたを通じて伝える方法はないものかと、こういうことなのです。それはどういうことかといいますと、農水大臣がアメリカに行かれるまでの過程において、私におっしゃったこと、また、皆さんにおっしゃったことを私は受けとめてこのことを申し上げたいのです。アメリカに振り回されることなく、初心を忘れずに毅然たる態度で対話し、日本農業を守ることということを遠いアメリカにいる山村農水大臣に届けたいのですけれども、その気持ちを、いかがでしょうか。
  224. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 非常にありがたい御激励の言葉をいただきまして、最終会談は日本時間のきょうの十二時からの予定でございますので、まだ十分時間もございますので、電話で至急に大臣に御伝達申し上げたいと思います。
  225. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 あえて私がこれを冒頭に申し上げましたのは、いつぞやの質疑の中で、そのつもりで頑張ったけれどもどうにもならなかったという報告はいけませんよと私は念を押しましたら、そのとおりと、こうおっしゃいましたから、よもやこのお言葉には間違いがあってはいけない、弁解があってはいけないと、こう私は期待し、信じておるからです。  では、次に基本的な問題、ただいま質問された田渕先生との問題にも何かがみ合うような、あるいはかみ合わないような、そういった気持ちも持ちながら、当たらずとも遠からず、また、結論は一緒であるというふうに私は自分で受けとめて、次の問題をお尋ねしたいと思います。  中曽根総理もよく、戦後政治の総決算だとかたびたび言っておられる。ならば、やはり戦後の日本の社会情勢あるいは国際情勢とのつながりにおいていろいろと変わってこなければいけない、また変わってきておる。ところが、そういった時の流れの中で変わってくることも必然ですけれども、ただいまのこの日本農政のあり方が、いわゆる農政の誤りから手当てがおくれて、あるいは極端に言うならば失政、こういったことからのただいまの状態であるとするならば、これは厳しく反省し、今からでも遅くはない、こう受けとめて頑張ってもらわなければいけない。こういうことを私は感じながら、矛盾を感じますことは、農は国のもとであるとどなたもおっしゃるのです。農は国のもとである。そういった点から、そうして今までの政府答弁からも、常に国内自給を向上させる、国内自給の向上ということを一貫して述べてこられたと私は思っております。  ところが、二、三の問題に突き当たって、例えば畜産の問題を取り上げた場合に、いわゆる需給の、これは後でまた触れますが、自給の立場からすると、牛乳にしてもあるいは乳製品にしましても八四%という国内自給のデータが今出ておるわけです。そうすると、これでいいのであるのか、行き過ぎであるのであるか。いわゆる国内自給を高めるというが、現状はどこまで高まっておるのか、見通しはどこまで持っておるのであるか。それは二、三後で具体的に聞きますが、一応そういった観点から酪農の問題の中でまだ八四%の域を低迷しておるわけです。ところが現実はピンチに来ておるわけです。酪農経営農家のどうにもならない壁にぶち当たって、それをどう救済するか、赤字補てんするか、立て直すかという厳しい壁にぶつかっておるこの現状を見た場合に、さらにはまた、伝統産業であります養蚕の振興ということも、国内自給を高めていくということは、これは基本方針である、政策であるべきでありますにもかかわらず、現状は二五%減産の生産調整というこの厳しい現実があるわけです。それも矛盾を感ずるわけなのです。  それで、米の問題にいたしましても、つくればもっとつくれる。ところが、減反政策という形でどんどん今日に至って、今苦悩しておられるということ。あるいはミカンにしても、ミカンの木を切り倒すといった減反調整もかつてなされたわけです。こういうことを思うときに、一体国内自給のめどというのは、自給率というのは、現状はどうであって、それでどこまでということは、その、時点時点で先取りをして示さない限り、いつでも苦労してひどい目に遭うのは生産者の農民である、こういうことになるわけでありますが、それをどのように今受けとめておられるか。
  226. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 具体的な数字にわたる点もあるのですが、六十五年を目標にしてどこまで自給を上げていくかという数字が、たしか農林水産省にあるはずでございますので、官房長から説明させます。
  227. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 今御指摘の品目につきましての需給につきましては、確かに農業生産の帯といたしまして、養蚕は一応別といたしまして、若干の供給過剰というようなものもあることも事実でございますが、農産物を大観して見ました場合には、私ども昭和六十五年を目標といたしまして、閣議で了解をいたしております品目別の需給の目標がございます。それを、毎年変動はあることを一応前提でございますけれども、単純に基準年次から六十五年の一つの趨勢線をとってみた場合、大半の作物はおおむね現在その趨勢線上にあるのではないかというように私どもは今見ております。  それから、米につきましては、今御指摘の品目につきまして若干申し上げますと、五十五年以降の四年間の異常気象によりまして、最近は私ども予定しておりました以上の落ち込みがあることは事実でございますが、流れといたしましては六十五年の方向に大体沿っているというように考えております。  また、牛乳、乳製品につきましては、私どもの趨勢線で見た場合におおむねその線上にあろうかと思いますが、現実には生産の伸びの方が消費よりも上回っているというところに計画生産をお願いせざるを得ないような状況になってきたわけであります。これも近年大体需給は均衡の方向に向かっているというように考えております。  問題は生糸でございますが、養蚕農家につきましては、やはり私どもの見通しからば相当現時点におきまして食い違いがあるということは事実でございます。これにつきましては、五十四年以降の特に景気の低迷によりまして生糸に対する需要というものが非常に落ちているというところに基本的な問題がございまして、むしろこれは単純な需給の見通しということでなしに、生糸に対します基本的な構造的な問題にもなろうかというように現在考えておりますので、既に蚕糸事業団におきましても十七万俵を超えるような異常な滞貨ということもございますので、基本的に生糸につきましては、需給のあり方あるいは制度そのものをどうするかということにつきましても、現在関係局におきまして検討を進めているという状況でございます。
  228. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もっと突っ込んで言わしてもらうならば、いわゆる日本農業問題あるいは食糧問題をとらえた場合に、終戦以来今日まで一貫してその背景になったものは、よく言われております国際分業論という背景があるわけです。それは、国際分業論に対するよりどころが現時点でも同じ比重で考えておられるかどうか、いかがですか。
  229. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 事農業生産のように、自然、土地を基盤として成り立っています産業におきましては、やはりこの国際分業論というのはなかなかとりにくいように私どもは考えております。特に、食糧というものは国民生活の基本になりますし、また、国際分業といいます場合には、その前提になります資本であるとか労働であるとか、そういうものの移動は自由であるということがあって初めて完全な国際分業論というものは成り立つわけでございますので、土地のようにまず移動はできない、また、労働にしましてもなかなか移動もできないというようなものを前提にいたしまして国際分業論を考えるということは、大きな間違いがあるのではないかというように私どもは見ております。  ただ、反面、先ほど来いろいろ御指摘もございましたように、その上にあぐらをかいて、ただ何でもかんでも食糧の安全保障という意味で自給を目指すということも、これもまた誤りだろうと思います。やはり国内で生産性を上げながら国際競争力を培っていくことも基本的には必要であろうと思いますし、その辺自給ということと、海外依存というか、輸入依存ということのバランスをとるというところはなかなか言うのは難しいわけでございますが、やはりそういうことに配慮をしながら農業生産を進めていくということが大事であろうというように私どもは考えております。
  230. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 国際分業論に対してこういうことがストレートで言えるかどうか知りませんが、いわゆる国内分業論という内容は、日本のように細長い、寒帯あり、温帯あり、亜熱帯、いわゆる三帯に大きく分けてまたがります。だから、国内分業論という立場に立ってその地域で生産し得るものは一体何であるか、こういうことをまずとらえていく。そして、それが国民要求と結びつきにおいて、その地域ブロック別に農業形態を打ち立てて、そこでできるものを国民要求と結びつけて最高度に生産をしていくというふうに考えた場合に、寒帯、温帯、亜熱帯と、この亜熱帯という分野は、これは今沖縄、鹿児島を一応入れてもいいと思うのですが、いわゆる純然たる亜熱帯というのは沖縄県です。そういうとらえ方においてひとつ亜熱帯を、無限の豊富な太陽エネルギーを資源にして、亜熱帯農業、あるいは温帯用、寒帯用どこうして、国土開発の一環という前提に立って、寒帯、温帯、亜熱帯をとらえていくと、こういうことにして最高度にその生産を上げていくという基本的な考え方、これはいかがでしょうか。
  231. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 基本的に申しますと、喜屋武先生のお示しのとおり、そういう地域の特性を生かした、そこできるものをできるだけやること自体がやはり農業基本でございます。例えば今お話しの沖縄につきましては、亜熱帯というところで、国内では通常の時期にはできないような花であるとか、あるいは甘蔗糖とか、そういうものを沖縄の亜熱帯地方の特産物として日本では最もすぐれたものでございます。反面、米のように温帯から寒帯まで、亜寒帯地区になりましょうか、どこでも適作であるというようにどこの方もおっしゃるような作物もありますので、この辺につきましてはまたそれぞれの品質等を考えながら生産を進めていかなきゃいかぬわけであります。  全国的に見ました場合、非常に今言われた三つの地域区分がありますけれども、亜熱帯地方を除いた場合には、おおむね九州から北海道まで、一部のものを除きましては、土地利用型の作物については共通するものが多い。そういう場合には、全国的な視野から需給調整という観点をとりませんと、やはりこれが生産過剰になるというようなこともございますので、完全な分野調整といいますか、地域分業ということもなかなかこれは現実問題としては難しい。これは米などを特に頭に置いた場合には、その問題は私どもは非常に難しい問題があるというようにも考えております。
  232. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 今生産過剰ということをおっしゃったのですが、いわゆる日本一億一千万の国民の食糧資源ということからしますと、生産過剰ということが、米は事実があるわけなのですが、その他でも生産過剰ということはそう多くは考えられぬじゃないかと私は思うのです。ならば、なべてひとしく国民の台所に消費させるには、それを解決するものは一体何か。生産が絶対量は過剰ではない。それを生産過剰みたいにさせるには、これは一つの盲点があるわけなのです。それを解決すればいいと思うのだ。そこで、生産過剰にならないためにはどうすべきであると思いますか。
  233. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 生産過剰といいますか、結局需要が不足をしているということでございますので、いかに需要開発をしていくかということが重要なことかと思います。ただ、現在の日本人の食生活あるいは体格、体型等から見ました場合、やはりカロリーでいきますと大体二千五、六百カロリーというのが一つの限界であろうというように考えておりまして、かつてのようにカロリーあるいは食物の摂取量をふやしていくという方向にはなかなか今後は向きにくいというように考えております。むしろその一定のカロリーの中で、ある一定の食糧の摂取量の中でどういうものが望ましいのか、あるいはどういう方向に変わっていくのかというようなことになっていこうかと思います。そういう意味では、現在はでん粉質が過去より相当摂取量が減ってまいりました。畜産物あるいは砂糖というような糖分あるいは脂質というものの摂取量がふえてきたというようなことは事実でございます。そういうように需要開発ということにつきましても、やはり国民の食生活からくる一定の限界があるということは御理解をいただきたいと思っております。
  234. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いや、さっきの問題でもう一つ大事な点は、流通機構の問題が基本的な問題であるということを私は言いたいのです。そこで今、日本人の食生活ということをおっしゃいましたが、その問題に結びつけてお尋ねしたいと思います。  いわゆる日本型食生活のあり方という立場からお尋ねしたいのですが、まず何といっても主食は米の問題です。その米が超古米として今ストックしておるのは、超古米の中身は何年からありますか。
  235. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 食糧庁の関係で、正確にお答えはできませんが、五十一、二年ごろのものはまだ残っていようかと思っております。
  236. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私が聞きたいことは、五十一年といいますともう十年近いのです。もう古米、古々米、古古古古古古古と言わなければ終わらないぐらいの古米、古い米があるわけです。その超古米の安全性ということがはっきり立証されないということ、ここにまた重大な問題が出てくるのです。その点についてはどのように考えておられますか。
  237. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 今喜屋武先生のお話の、米としていつのものがあるかというお話でございますので、私どもは現実にあるのはそういうものがある、五十一年産米もあるということを申し上げたわけです。実際の食用に供します場合には、そういう五十一年のものまで通常の流通に、消費に出るかということになりますと、やはりこれは非常に問題があろうかと思います。におい、味、あるいは場合によれば変質というようなこともございましょう。ただ、現在私どもは、五十三年産のものを一部食用に供することも、希望によってはあろうかと考えておりますが、これにつきましては十分品質保持という観点から、国民の方々に食品衛生上問題がないようにということをまず基本に置いておりますし、過去におきましても、仮に薫蒸ということがございましても、その残留性等については十分私どもは配慮をいたしております。また薫蒸剤につきましても、極めて揮発性の高い、残留性の少ないものというものを使ってきておりますし、また、これを実際に精米にする場合には、例えば搗精歩どまりを上げるということによりまして食味等につきましても、あるいは衛生上の問題等につきましても十分な配慮をしていくということによりまして、決して国民の方々に食品衛生上不安を与えるというようなことは私どもはしないというふうにしております。
  238. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 聞くところによりますと、超古米に対する安全性の立証は、間違いなく安心して食べてよろしい、食事に供してよろしいというところまで確認をされておらないと私は聞いておりますが、その点、厚生省の方がみえておりますが、いかがですか。
  239. 玉木武

    説明員(玉木武君) 私はこの問題を直接担当しておるわけじゃございませんが、従来までのいきさつを聞いておりますと、食糧庁の方の協力を得て近いうちに検査をするという形になっておるようでございます。
  240. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 じゃ、農林省はどうですか。
  241. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 今厚生省からもお話がございましたが、私どもは米の保管管理というものにつきましては、日常から倉庫内での通風管理であるとか環境整備ということを行いながら、品質保持と病虫害の発生予防に努めております。今時に問題になっておりますのは、害虫発生状況によります薫蒸の問題というところにあろうかと思いますが、従来食糧庁で使用しております薫蒸用農薬というものは、メチルブロマイド、エキボン、あるいはホストキシンというように、非常に低温で揮発をする、非常に揮発性の高いものでございますので、残留性につきましてはほとんど問題はないというふうに従来からも言われておりますし、また、それにつきましては厚生省の方にも十分御相談を申し上げておるところでございまして、私どもはこの五十三年産米を食用に供します場合には、十分そういうような安全性については問題はないというふうに考えておるわけでございます。
  242. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いや、問題がないというのは、これは観念論です。超古米を倉庫にストックしていますね。そうすると、毎年の梅雨が明けますというと必ず毎年のように高度の殺虫力、虫を殺す効力のある薬品でこれを薫蒸されております。それを数年も十年近くも繰り返していく、このことから、この毒素が、これは強力な殺虫剤だと言われておりますが、それを繰り返し使っておる、それが米に影響しないということ自体がおかしい考え方です、観念論です。ですから、本当に実験をして、これは食べてよろしいという立証がなされない限りにおいてこれを食用に供さしてはいかぬ、こういうことを私は厳しく申し入れたいのですが、この点いかがですか。
  243. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 先ほど申し上げましたように、繰り返しになりますが、薫蒸用の農薬といいますのは、臭化メチル薫蒸剤等、非常に沸点が低くて揮発性の高いものである、また、密閉期間も一年間に三昼夜程度というようなことでございます。また、薫蒸実施後も十分な換気を行っておるという点で私どもは安全と思っておりますし、この問題につきましては十分厚生省とも御相談をしながら、こういう不安がないようにまた申し上げたいと思っております。
  244. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 では、日本型食事、食事と簡単に言いますけれども、こういうことを私は聞いておりますが、確かめたいと思います。  日本型食事の中でも、添加物と関係をした食品が六割を占めておる、このことが一つです。そして、これもある場所で笑い話として聞いたのですが、新宿のある食堂で、おぜんにのせられた食事をその生産国ごとにその国の国旗を立てた。例えばエビですが、そのエビは日本のエビではない、台湾のエビ、あるいは韓国。そば、そばも、そばと言えば日本のそばかと思ったら、案外そうでもなく、韓国やよその国から来た。その例に漏れず、十近い食皿がおぜんにのせられたが、我が国の日の丸を立てる食事はお米ぐらいのもので、あとはみんな外国の国旗がその食事に立ったというのです。こういう笑い話みたいなことも実は聞きましたが、それほど私たちは、日本型食事の定着定着と言っているけれども、その中身はほとんどよその国、お隣の国から来た食事である、食糧である。こういうことと思い合わして、いわゆる国内自給の問題とも、この目標をどこに持っていくべきであるか、そういうこととも結びつけて私は考えてみなければいけない、そうしみじみ思うわけなのです。  それで、今申し上げた食糧自給の目標を、現状はどこまでいっておるか、どこまでそれを伸ばし得るのであるか、このことを明確に持たぬと、それがまた転ばぬさきのつえならず、転んでからまだ大騒ぎしなければいかぬということになりかねません。  それでは時間が参りましたので、結びとしまして、日本型食事の定着に対して矛盾する六割の添加物の関係ですね。それから、今はほとんど外国からの食糧日本食のおぜんにのせられておる。
  245. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 喜屋武さん、時間が来ました。
  246. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 こういうことを私は強く申し上げまして、ひとつコメントしてください。
  247. 角道謙一

    政府委員角道謙一君) 今御指摘のございました添加物につきましては、六割のものに添加物が使用されておるのか、私も申しわけありませんがここでは確認できませんが、添加物につきましては、食品衛生法等によりまして通常食に供しても安全であるということが実証されているものでないと使用できませんので、その点については、私どもは今後十分厚生省とも御協議しながら心配ないようにしたいと考えております。  また、自給につきましては、既に申し上げましたように、自給目標というものがございますので、これに従いまして私どもは今後の農政を進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  248. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 他に御発言もなければ、これをもって昭和五十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、農林水産省所管及び農林漁業金融公庫についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  250. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  肥料価格安定等臨時措置法の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  251. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  252. 谷川寛三

    委員長谷川寛三君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次回の委員会は四月九日午前九時三十分開会とし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十三分散会      —————・—————