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政府委員(澤田茂生君) 非課税
制度の見直しということについての経緯は今大蔵省の方からお話があったわけでございますが、そういう事態を踏まえまして、私
どもとしての
考え方あるいは見直しについての問題点等について整理をしたものをクラブで御披露したということでございます。
その中身でございますが、かいつまんで申し上げますと、まず基本的には、非課税貯蓄
制度見直しについて議論されている貯蓄の
重要性ということについてでございます。見直し論の根底になっているものは、どうかすれば貯蓄の
重要性というものが既に薄らいでいる、もはや貯蓄を奨励するという時期ではないというような
考え方があるやに見られるわけでありますけれ
ども、私
どもは決してそうではない。貯蓄は経済
社会発展の基礎であるということでありまして、過去におきましても、戦後の
日本の復興あるいは高度成長というのも高い貯蓄率によって得られた豊富な資金によって支えられてきたということ、また今日の国債の大量発行下におけるインフレをはねのかし、あるいはクラウディングアウトというものを生じさせないで経済の安定が図られているというようなこともこういう貯蓄によるところである。こういったことは諸外国からも高い評価を得ているというようなこと。今後の
状況を見ましても、十兆円を超え、あるいは二十兆円を超えるような国債の大量償還というものが予定されている。そういった中で借りかえ償還というのが非常に大きな財政問題になっているわけでありますから、こういったものを
考えれば、
国民の貯蓄が軽視できるような
状況はこれからも出ないであろうと思うわけであります。
なお、いま
一つ重要性を
考える場合に、
高齢化社会という我が国の
社会の特殊な
状況というものを
考えていかなきゃいけないだろうと思うわけであります。急速な
高齢化社会の到来ということで
老後に対する不安というものがふえておる、また
老後に対する備えというものを
自助努力によって行わなければならないということの
必要性というものが非常に高まっているわけでありまして、こういったことに対する対策というものをやはり
考えていかなければならないであろうということでありまして、税の
観点からの議論として、税の不公平是正という
観点がいろいろ
一つの議論になっているわけでありますけれ
ども、これにつきましても、基本は第一次所得の捕捉率の問題であろう。クロヨンとかトーゴーサンと言われる言葉にありますように、
国民の税に対する不公平感というものは、第一義的には第一次所得に対する捕捉率の不十分さということにあるわけでありまして、利子配当課税に限って見ましても、課税貯蓄の把握というものをあきらめて非課税貯蓄のみを見直すというようなことになりますれば、結局は少額貯蓄の
利用者のみに負担を強化するというようなことになるわけでありまして、こういう税の公平の
観点からの幅広い議論というものが必要であろうと思うわけであります。
〔理事
亀長友義君退席、
委員長着席〕
いま
一つの
観点から、
先生の御
指摘ございました財源確保の面という議論が出ているわけであります。非課税
制度を廃止すれば三兆円入るのだというような議論がございます。これも計算としてはそういう計算いろいろできるかと思いますけれ
ども、実態から見ましても、二百兆に七%の利子、十四兆円の年間利息の発生、それに二〇%の税金をかければ二兆八千、約三兆円の税収が入るのだということでありますけれ
ども、二〇%の税金を納めている層というのは、勤労者層におきましては九〇%が二〇%以下でありますので、それに税の還付というような問題が出てまいるわけであります。さらに、資金のシフトというようなことが当然
考えられる。かのグリーンカードの問題のときにもいろいろな資金シフトが出てまいりました。ゼロクーポン債というようなことで大変騒がれたような
状況がございます。最近の
状況を見ますと、なお一層自由化の進行と相まちまして、より高利回りの商品あるいは節税商品というようなものへのシフトということがしやすいような
状況になっておるであろうということも
考えられるわけでありまして、高額のものを持っておる者はシフトをしてしまう、結局は逃げ損なったものだけが税金を取られるというようなことにもなりかねないということであります。
なお、貯蓄率が非常に高いということが言われておりますけれ
ども、我が国の貯蓄率、時系列で見てまいりますとずっと減っています。下降現象であります。貯蓄だけを見た場合にはこの十年ぐらいで半減いたしておりますということでありますが、そのほかに、さらに
高齢化社会というものが必然的に持っておる貯蓄率の低下という構造的なものがございます。高齢者は貯蓄をするのじゃなくて貯蓄を使う層でありますから、その層がふえれば当然貯蓄率は下がっていくという計算でございます。また、貯蓄を
考える場合に、利子所得というものを
考える場合に、やはり目減りということ、物価上昇率との
関係を
考えなければならない。これを見た場合に、十年間というものを見ましても、物価上昇率の方が上回っておりまして、実質的に一四%目減りをしているということであります。利子所得というのは、第一次所得をとられた後のものの使用の仕方でありますけれ
ども、しかし利子所得というのは名目だけであって、実質的にはマイナスの所得である、これに課税をするというようなことは実質的には排除すべきではなかろうかというふうな
問題等もあるわけであります。
こういうような問題をいろいろ抱えており、我が国において
高齢化社会に対する
自助努力というようなことも
考えた場合に、貯蓄あるいは長年にわたって培われた貯蓄心というようなものに水をかけるというようなことになりますれば、これは一朝一夕に戻るようなものでもないということを
考えますれば、むしろ現時点においては貯蓄優遇策ということこそ必要ではなかろうかということで、私
どもといたしましては、現在の
限度額の
引き上げとかあるいは
高齢化社会への対応としてのシルバー
貯金というような
制度を
創設するというようなことこそ喫緊の課題であるというふうに
考えているというようなことを資料としてまとめまして御披露したということでございます。