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国務大臣(
栗原祐幸君) 新聞等の報道を通じて、そういう御質問があろうかと思います。
実は、ワインバーガー
長官と私との会談
内容というのは、ワインバーガーさんはアメリカのソ連に対する脅威というやつをずっと言われました。それは特に目新しいことを言ったとは私思いません。従来からのものを強調されたものと思います。ただ、私がこのワインバーガーさんの対ソ脅威論なるものに対してある
程度の評価をしたというのはどういうことか。その論理、説得といいますか、そういう点について私は評価をしたんです。
どうして私が評価したかというと、ワインバーガーさんの
説明は、一九六〇年代からソ連が軍備の増強をし始めてきた、一九七〇年代はアメリカの方はこのままやっていっちゃいけないからこちらの方が少しセーブしようというので、七〇年代は平均して二〇%軍備を削減した、様子を見ていたけれ
ども一向にこれに応ずるような気配がない、むしろどんどん軍備を増強している、そして現在においては御
案内のような状況であるし、特に極東ソ連軍の増強は非常に目覚ましいものがある、こういう話です。
しかも、ワインバーガーさんは、米議会において国防費が多過ぎるじゃないか、削れというようなことをいろいろ言われておる。だけれ
ども、それじゃどこを落としていくのかというと議会の方はノーアンサーだ。民主主義、自由主義の国では議会がコントロールできる。ところが、ソ連のような国においてはそういう民主的なコントロールというのはない、だから増強しようと思えば幾らでも増強できるのだ。こういう点を
考えてみると、我々としては現状を見ると非常に心配だ、そういう御
説明があったから、私は、
一つはアメリカも軍縮の
努力をした、いま
一つは自由主義諸国と共産主義国との体制の違いについて強調をされたから、それは今までと比べてみて私にとっては説得力があるということで御評価いたしましょうという話をしたわけです。
ただ、これは少し長くなりますけれ
ども、非常に重要なことですからお聞きいただきたいと思いますが、私は、あなたの方の
考えておる、あなたの国民が
考えておるソ連脅威論と
日本の国民がソ連に対して持っているものとは違うんです。あなたのところでは、ベトナムにしても、あるいは韓国にしても、あるいは最近ではレバノンにしても血を流している、金も使っている。グローバルな
意味でアメリカは絶えずソ連というものを意識している。だから、そういう
意味でグローバルで見、なおかつ血も流しているし金も出しているから、あなたの国民はソ連の脅威ということについて非常に強い関心を持っている。こういうふうに思うけれ
ども、
我が国の国民はおたくのような感覚じゃございません。それは、北方四島は占拠されておる、それからシベリア抑留等の問題もあるけれ
ども、全体的に戦後平和に来ておるということであって、ソ連に対する問題については、おたくの方々の持っているのとこちらは違いますよと。
私は、いろいろ
防衛哲学を言ったわけですが、その
一つは、国会でもいろいろ
議論があって、
防衛庁長官は戦争のことばかり
考えるな、
政治家として平和を
考えないのか、軍縮を
考えないのか、こういう質問があって、私は
政治家としては平和の問題に真剣に取り組まなければいかぬ、核の廃絶、こういう問題についても真剣に取り組まなければならぬ。ただ、私が
政治家としていろいろ
考えてみる場合に、この体制の違いというやつが非常に困る。自由主義の国では自由に物が言える、自由に行動できる、したがって軍縮をしろとか核を廃絶しろということが声を高くして言える。ところが、全体主義、共産主義の国ではなかなかそういう声は民衆の中から表面立って出てこない。全世界の国民がそういうことで声を合わせてくれればいいけれ
ども、それが出てこないところに
一つの大きな問題がある。
そういう
意味で、私は隣国にあるソ連というものが共産主義、全体主義の国であって、どういうことを
考えておられるのかよくわからない。もう
一つは、現実に軍備というものが極東において行われているということを見ると、これはそういう実態というものについて我々は正確に把握をしていかなきゃならぬ。したがって、
防衛庁長官でなくて
政治家栗原祐幸としては、そういう認識を国民の皆さんにわかってもらう
努力をすべきである。
それで、潜在的、顕在的ということがありましたけれ
ども、これは国会討論会でも言いましたけれ
ども、ソ連が今すぐにどうこうというようなことはアメリカも
考えていないと思うんです、すぐあしたからというのは。そういう
意味合いでは今までどおり潜在的脅威ということでございますので、この点は御
理解いただきたいと思います。