運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-05-10 第101回国会 参議院 内閣委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十日(木曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員の異動  五月十日     辞任         補欠選任      源田  実君     海江田鶴造君      野田  哲君     久保田真苗君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         高平 公友君     理 事                 亀長 友義君                 坂野 重信君                 小野  明君                 太田 淳夫君     委 員                 板垣  正君                 岡田  広君                 海江田鶴造君                 沢田 一精君                 林  寛子君                 林  ゆう君                 桧垣徳太郎君                 堀江 正夫君                 穐山  篤君                 久保田真苗君                 矢田部 理君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 柄谷 道一君                 前島英三郎君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       中西 一郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       後藤田正晴君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   禿河 徹映君        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        人事院総裁    内海  倫君        人事院事務総局        給与局長     斧 誠之助君        内閣総理大臣官        房管理室長    菊池 貞二君        北方対策本部審        議官        兼内閣総理大臣  橋本  豊君        官房総務審議官        総理府人事局長  藤井 良二君        総理府恩給局長  和田 善一君        総理府統計局長  時田 政之君        臨時行政改革推        進審議会事務局        次長       山本 貞雄君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        大蔵省主計局次        長        兼内閣審議官   保田  博君    事務局側        常任委員会専門        員        林  利雄君    説明員        行政管理庁行政        管理局管理官   八木 俊道君        防衛庁経理局監        査課長      渡邉 正身君        外務省アジア局        外務参事官    瀬崎 克己君        大蔵省主計局共        済課長      坂本 導聰君        大蔵省主計局主        計官       小村  武君        厚生省援護局庶        務課長      加藤 栄一君        厚生省援護局業        務第一課長    森山喜久雄君        厚生省援護局業        務第二課長    石井  清君        郵政省貯金局第        二業務課長    神岡 篤司君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○昭和四十二年度以後における国家公務員等共済  組合等からの年金の額の改定に関する法律等の  一部を改正する法律案内閣提出衆議院送付  )     —————————————
  2. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 峯山昭範

    峯山昭範君 先日の委員会におきましてもお伺いをいたしましたが、きょうもまた初めに総理府の方にお伺いをしておきたいと思いますが、恩給法審議のときにいつも問題になっております、例の「かつて日本国籍を有していた旧軍人軍属等にかかる戦後処理の未解決の諸問題については、人道的見地に立って検討すること。」という附帯決議でありますが、先日も一遍御答弁いただいたことがありますが、きょうもこの問題について、実際問題としてどういうふうに政府としては取り組んでこられたか、この点についての御答弁をいただきたいと思います。
  4. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 先般も若干お答え申し上げたのでございますが、ともかくこれは真剣に取り組まなければいけないということで、事務当局も私も含めて検討を続けております。丹羽総務長官からも引き継ぎを受けたということでございます。  そんなことでやっておるのでございますが、一つの中国というような関係になった経過もありまして、日台間だけで解決はできないという問題もございます。そんなことと、それからほかの地域、韓国とか北朝鮮の問題もございます。そういう地域とのバランスの問題、そういったようなことをどう解決するか。ともかく解決したいという気持ちには変わりはないんです。今申し上げたような問題をクリアしていかなければならない。先般、先生から大変詳細にわたってのお話がございました。そういったことについても、我々は重大な関心を寄せておるところでございます。附帯決議もございますし、いろんな諸問題をクリアしながら何とか早く結論を出したい、かように思っております。
  5. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは長官、五十七年度から二回にわたりまして当委員会附帯決議にもなっていることでもありますので、ぜひともこれは、簡単で結構ですから、この問題解決のためにもう一回よく検討するというふうなきちっとした御答弁をいただいておきたいと思います。
  6. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) これは総理府総務長官だけとしてでなしに、諸先生方もそれぞれ何とかしたいという御希望、熱意をお持ちだと思いますので、私も一生懸命取り組んでまいりたいと思います。
  7. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、これは外務省にお伺いをしておきたいと思います。  先日もお伺いをいたしましたが、欧米各国がかつて自国の軍隊において勤務負傷もしくは疾病にかかった外国人または戦死した外国人遺族に対しいかなる措置を行っているかという問題につきましては、これは外務省でも調査をするということで当委員会質疑のところで出ております。大体の概要調査が終わっているようでございますので、ここでその調査概要について御説明願いたいと思います。
  8. 瀬崎克己

    説明員瀬崎克己君) お答えさせていただきますが、欧米等におきまして外国籍を持っている兵隊さんあるいは軍属の方が従軍中に戦病死された、こういった事例につきましてはその国によりましていろいろ方法は違うわけでございますが、年金あるいは一時金を支給しているということが調査結果判明しております。  この一時金、年金につきましては、同じ国籍方々に対する補償よりかも若干額が少ない場合あるいは全く同額の場合というようなことで各国の対応はばらばらでございますけれども、国籍の相違によって何らの補償がなされなかったということではございませんで、国籍は違っておりましてもその国のために戦死をされたというような方につきましては、何らかの形で補償がされているというのが私どもの調査の結果でございます。これにつきましては、アメリカイギリスフランスイタリア西独等事例を調べたわけでございますが、ただいま申し上げましたような形で処理されているということでございます。
  9. 峯山昭範

    峯山昭範君 ただいまの問題につきまして、これは参事官、私、資料をいただいているわけでありますが、具体的にそれではこの資料に基づいてお伺いします。できましたら、これは、この際、会議録にも残しておきたいと思いますので、詳細にお伺いしておきたいと思います。  それでは、各国別に、年金等支給対象、自国民に対する取り扱いとの差異所管官庁受給者認定年金等支給及び根拠法令等について、まず米国から詳細にお願いしたいと思います。
  10. 瀬崎克己

    説明員瀬崎克己君) アメリカの例でございますが、米国につきましては、米軍構成員でありまして、戦時中その職務の遂行に際し、負傷し、もしくは疾病にかかったことにより、一九五七年一月一日以前に死亡した者の遺族または機能障害等を生じた者につきましては、国籍いかんを問わず遺族年金障害年金等支給されております。  さらに、第二次大戦中のフィリピン連邦政府軍構成員、これは米軍司令部によりましてゲリラ部隊認定されている方々も含まれるわけでございますが、フィリピン偵察部隊員であって同様に死亡した者の遺族または機能障害等を生じた者に対しましても遺族年金、それからフィリピン連邦政府軍構成員である場合には埋葬料支給されているということでございまして、遺族年金または障害年金支給されております。  それから支給されております年金の種類、額につきましては、その者が米国国籍を持っているかあるいは外国国籍かによりまして、特に差別はないのがアメリカ制度でございます。ただし、フィリピン連邦政府軍構成員及びフィリピン偵察部隊員につきましては、先ほど申し上げました遺族年金または障害年金以外の通常の恩給等支給されておりませんで、支給される遺族年金または障害年金の額もアメリカ軍構成員の場合の二分の一になっております。  所管官庁は、退役軍人局でございます。  それから認定につきましても、退役軍人局またはその権限を委任されました地方の事務所が請求者申し立てに基づいて受給資格の有無、受給額認定を行っているということでございます。  それから支払い方法でございますが、これは小切手または受給者が指定し、退役軍人局長官同意した方法支給されております。フィリピンの場合について申し上げますと、フィリピン在住者に対しましては現地通貨のペソで支払われているというのが実情でございます。
  11. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは次に、イギリスはどうなっているか、イギリスについてお伺いします。
  12. 瀬崎克己

    説明員瀬崎克己君) イギリスの場合でございますが、イギリスの場合につきましては、第一次大戦、それから一九三九年九月以降、いわゆる第二次世界大戦でございますが、英国軍隊任務に従事し、その任務に従事したことによりまして障害者となりまたは死亡した場合には、戦争年金制度によりまして本人または遺族障害年金または寡婦年金支給されております。年金受給要件には国籍は入っておりませんで、英国の旧植民地、旧領土住民はもちろんのことでございますが、例えばアメリカ国籍を持っている方でありましても英国軍隊に従軍した方につきましては、障害または死亡と認定される場合には年金または一時金が支給されております。  それからイギリスの場合も、年金、一時金の額は、国籍いかんによりまして差別がないということになっております。  それから第一次大戦中及び第二次大戦中に英国軍隊等任務中に負傷し、または死亡した者に係る支給につきましては、所管官庁保健社会保障省が所管しております。ただし、インド独立以前のインド軍将校及び下士官として勤務中に負傷または死亡した者に係る支給外務省が所管しております。  受給資格認定につきましては、保健社会保障省または外務省請求者申し立てに基づいて行っている模様でございます。  支払い方法につきましては、本人あて銀行小切手ポンド建てが郵送されている模様でございます。  根拠法といたしましては、一九七七年に制定されました社会保障法、それから一九七八年に制定されました陸海空軍等戦傷病者戦没者年金枢密院令がございます。  以上でございます。
  13. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは次に、フランスの例をお願いします。
  14. 瀬崎克己

    説明員瀬崎克己君) フランスにつきましては、御案内のように、外人部隊というのが制度的に確立しておりまして、この面で法制もかなり整備されていることがわかっております。  アルジェリア、モロッコあるいは旧仏植民地でありましたブラックアフリカ仏軍隊軍人軍属として勤務し、負傷しました旧領土住民または戦死しました旧領土住民遺族につきましては、その国が独立しました後も原則として軍人恩給年金等支給が行われております。  額の算定につきましては、物価、公務員給与軍人給与等を考慮いたしまして年金額の再評価を行っておりますが、独立後の対象となる旧仏国民に対しましては、それぞれの国の事情が異なるものでございますので、その都度個別に協議しておりまして、支給される額はフランスの場合よりかも少ないということでございます。  それから所管省庁でございますが、予算省恩給局在郷軍人省等の協力を得て所管しております。  受給者の範囲、認定につきましては、フランス人の場合と同様に書類審査により決定しておりまして、給付金支給方法は、フランス各国との協議により定めております。  根拠法につきましては、傷病軍人及び戦争犠牲者恩給に関する法典がございます。  以上でございます。
  15. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは次に、イタリアについてお願いします。
  16. 瀬崎克己

    説明員瀬崎克己君) イタリアにつきましては、一九四七年に連合国との間に締結いたしました平和条約第十四条附属書第八項の規定に基づきまして、割譲地域における継承国国民文官または軍人恩給支払いに引き続き責任を負うことになっております。この結果、ソマリアエリトリア及びリビアの旧植民地住民でございまして、イタリア軍人軍属として勤務負傷し、または疾病にかかった者または戦死した者の遺族に対しまして年金支給されております。  年金支給されている額は、国籍要件になっ ておりませんで、イタリア国籍の人及び外国国籍の方につきまして全く差異はございません。  所管省庁は、外務省でございます。  受給資格確認上必要がある場合には、在外公館におきまして特別の委員会を設けて処理しているということでございます。  なお、年金支給につきましては、在外公館を通じて支払われております。  法律につきましては、一九五五年法律第千百十七号、旧リビア及びエリトリアイタリア行政機構に所属していたリビア及びエリトリア出身文官及び軍人に対する年金及びその他の補償措置に関する支払い、それから一九五七年に制定されました旧イタリア属領ソマリア政府のもとで従軍したソマリア出身軍人に対する一九五五年法律規定の適用に関する法律、それから一九五七年に制定されましたイタリアに移送され、イタリア国家行政機構において雇用された旧属領軍人に対する年金及びその他の退職手当支給に関する法律。  以上でございます。
  17. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは最後に、西ドイツについてお願いします。
  18. 瀬崎克己

    説明員瀬崎克己君) 西ドイツでございますが、西ドイツにつきましては、一九五九年にルクセンブルク、一九六二年にベルギー及びスペイン、それから一九六三年にはオーストリアとの間で戦争犠牲者に関する条約を締結しております。したがいまして、今申し上げました国の国籍の方方でありまして、ドイツ軍勤務負傷し、または疾病にかかり、あるいは戦死しました方々遺族につきまして、関係条約規定に基づきまして年金支給されております。ベルギーにつきましては、西ドイツベルギーに対しまして給付金を一括して交付しておりまして、ベルギー側受給者認定し、毎年給付金支給しております。  なお、条約が締結されている場合以外につきましては、一般に外国に居住する外国人につきましては、西独国内法がございまして、これは連邦援護法という法律でございますが、この連邦援護法による援護を受ける明文の権利は与えておりません。しかしながら、各州におきまして連邦援護法第八条に基づく裁量行為といたしまして、連邦労働社会大臣同意を得まして外国に居住する外国人に対して援護を与えております。援護の内容につきましては、基本年金のほか、場合によっては、さらに機能回復患者処置手当戦争犠牲者扶助がございまして、具体的な金額につきましては、それぞれの方が居住をされております国の生活レベルを勘案いたしまして、一九七〇年の連邦援護調整法金額を基準に支給されております。  援護認定及び実施は、各州政府連邦労働社会大臣同意を得て行っております。  なお、援護を受けるため、申請者各州援護局に対しまして、軍務、戦死負傷等に関する書類を提出いたしまして申請しております。各州援護局は、例えばハンブルクの援護局について見ますと、米国担当というぐあいに局ごと国別の管轄が定められておりまして、傷病者申請者である場合には、その疾患及び負傷が直接に戦争に基づくものかどうかを当該国にある西ドイツ大使館の委託を受けた医師によって診断させまして、その診断書に基づいて認定しているようでございます。  支払の方法でございますが、これは銀行口座または郵便口座に振り込んでいるということでございます。  なお、法律につきましては、戦争犠牲者援護に関する法律、一九五〇年に制定されたものがございます。  以上でございます。
  19. 峯山昭範

    峯山昭範君 総務長官欧米各国外国人傷病者に対するそれぞれの調査の結果を見ましても、相当いろんな角度から、法律を制定し、あるいは援護をしている様子がよくわかります。そういうふうな意味で、私たちも、この間の裁判の結果から見ましても、現在法律がないわけですから、これは何らかの法的措置をしなければならないと思うわけです。したがいまして、これから私が質問をいたします。  この間もちょっと質問いたしましたが、これは台湾の元軍人軍属皆さん方の問題とか、あるいは北朝鮮皆さん方問題等たくさんあります。そういうような問題もやっぱりきちっと解決しなけりゃならない、そういうふうに私は思うんですけれども、今の諸外国法律等様子を聞かれまして、まず総務長官の御感想を一遍聞いておきたいと思います。
  20. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) ともかく各国がそういった配慮をしておるということは、国としての責任を踏まえての措置だろうと思います。そういう意味では、日本国も国としての責任を感じておると思うんですけれども、今までそれが解決されていないという状態でございますので、制度的な困難があるかもしれませんが、それを克服する努力をいたしたいと思います。
  21. 峯山昭範

    峯山昭範君 どうも総務長官、本当に歯切れが悪い。やっぱり総務長官は、少なくとも今ここでは政府の代表なんですから、諸外国様子を見ても責任を感じておると思うんですけれどもと言うのじゃなしに、何か第三者が、どこかよその人が思っているみたいな感じじゃなしに、責任を感じております、これはまことに申しわけない、何とかせにゃいかぬということだけで本当はいいんです。そのことは、またこれからおいおい質問していきたいと思います。  そこでまず、具体的に幾つかお伺いしておきたいと思いますが、台湾の元日本軍人軍属皆さんのことについて具体的にお伺いしておきたいんですが、いわゆる日本軍人として召集された人、これは軍人軍属、両方あると思いますが、どの程度の人数だったんですか。
  22. 森山喜久雄

    説明員森山喜久雄君) 厚生省で把握しております数を申し上げますと、陸海軍合わせてでございますが、軍人が八万四百三十三名、それから軍属が十二万六千七百五十名、合計二十万七千百八十三名でございます。このうち、亡くなられましたのが三万三百六名でございます。したがいまして、残りの復員された方が十七万六千八百七十七名ということになっております。
  23. 峯山昭範

    峯山昭範君 厚生省は、これらの数については現在もずっと調査しておられるんですか。
  24. 森山喜久雄

    説明員森山喜久雄君) これは、私の方で名前も把握しております。
  25. 峯山昭範

    峯山昭範君 払お伺いしましたのは、今まで委員会ではお亡くなりになった方が三万三百四人と聞いていました。今の御答弁、六人とおっしゃいましたね。二人ふえています。これはふえたんですか。
  26. 森山喜久雄

    説明員森山喜久雄君) はい、ふえたんです。
  27. 峯山昭範

    峯山昭範君 それで、軍人の方が二千百四十六人、それから軍属の方が二万八千百五十八人と今までの委員会では御答弁いただいておりますが、どちらの方が二人ふえられたんですか。
  28. 森山喜久雄

    説明員森山喜久雄君) これはその後また調査をやっておりまして、その結果、亡くなられた方でございますが、軍人が二千百四十六、軍属が二万八千百六十ということで二名ふえたわけでございます。
  29. 峯山昭範

    峯山昭範君 もう一回確認しますが、お亡くなりになった方の名簿というのは、これは三万三百六人についてはきちっとしているわけですね、厚生省の方で。
  30. 森山喜久雄

    説明員森山喜久雄君) ございます。それで、このうちの二万数千名は、これは日中国交回復前に台湾政府とすり合わせもしてございます。
  31. 峯山昭範

    峯山昭範君 それから傷病者の数、これはどうなんですか。
  32. 森山喜久雄

    説明員森山喜久雄君) 傷病者の数でございますが、これは残念なことでございますけれども、私の方に記録の保管がございませんので、つかんでおりません。  ただ、これはやはりつかむということになりますと、各個人の方からいろんな資料を出していただいて、それを私の方でいろんな資料と照合して調査するということになろうかと思います。
  33. 峯山昭範

    峯山昭範君 先ほど戦没者の方がふえたという ことですが、これはどういういきさつでふえたんですか。それで、その手続とか、やり方とか、調査方法はどういうふうになっているんですか。
  34. 森山喜久雄

    説明員森山喜久雄君) これは、実はその後、また台湾の方から交流協会を通じまして名簿が出てまいりまして、それを私の方の資料といろいろ照合したり、それから私の方で把握していない方でも、個人でいろんな資料をお持ちの方がございまして、そういう資料をまたそれに添付されて出してこられまして、そういうことで厚生省はこれは間違いないなと認定したわけでございまして、そういう関係で二名動いたということでございます。
  35. 峯山昭範

    峯山昭範君 ということは、亜東協会、それから交流協会を通して厚生省申請をするなり、そういう書類等を送ってくれば日本としては正確に確認ができる、そういうことですか。
  36. 森山喜久雄

    説明員森山喜久雄君) 確実に確認できる方もございますし、資料が不足でちょっとどうかと思うのもございますけれども、大体は認定できるのではないかというふうに考えております。
  37. 峯山昭範

    峯山昭範君 それから元軍人軍属皆さん未払い給与の問題というのが時々取り上げられますのですが、この未払い給与ですが、その人数とか金額とかいうのは大体どういうふうになっておりますか。
  38. 森山喜久雄

    説明員森山喜久雄君) この未払い給与でございますけれども、これは復員されるときに、外地から日本を経由してお帰りになったというような方は全部そこで精算したわけでございますけれども、南方なんかでは終戦後、台湾人だけ別に収容されまして、別途台湾の方にお帰りになったというような方がございまして、これは給与の精算ができていないわけでございます。  それで、私の方で、昭和二十六年ごろから二十九年ごろにかけまして、東京法務局未払い給与を全部供託したわけでございます。これは旧軍関係の仕事でございますので、なるべく早くそういうものは整理しようということでやったわけでございます。  件数を申し上げますと、生存者の分が四万七千百六十九件、金額にいたしまして六千五百五十八万二千八百四十四円。それから死没者の場合、これは給与と遺骨の引き取り、埋葬経費というようなものが入っているわけでございますが、これが一万四千九十三件の千六百三十四万三千四十六円でございます。これを合計いたしますと、六万一千二百六十二件の八千百九十二万五千八百九十円でございます。  それで、供託ですから還付ということが必ずあるわけでございますけれども、この問題につきましては、やはり請求権の問題なんかがございまして、これは私どもだけではなくて、郵政の方にも軍事郵便貯金とかそういったものがございますので、そういう関係各省とも御相談しながら、どういう処理をしていくか検討してまいりたいというふうに考えております。
  39. 峯山昭範

    峯山昭範君 今の六万千二百六十二人、これらの方々のお名前はみんなわかっているわけですね。
  40. 森山喜久雄

    説明員森山喜久雄君) 供託してございますのは、全部名前もわかっているわけでございます。
  41. 峯山昭範

    峯山昭範君 供託されたのは、いつでございますか。
  42. 森山喜久雄

    説明員森山喜久雄君) 昭和二十六年から二十九年にかけまして、たしか八回ぐらいの回数で供託してあると思います。
  43. 峯山昭範

    峯山昭範君 三十年以上も供託しておられるわけですね。いずれにしても、この問題も早急に解決しなければならない問題です。  それでは次に、軍事郵便貯金の支払いの問題があるわけでありますが、これは口座数とか金額等はどういうふうになっておりますか。
  44. 神岡篤司

    説明員(神岡篤司君) お答え申し上げます。  台湾住民方々が持っておられます軍事郵便貯金でございますが、これは決算がまだ終了しておりませんので、五十八年三月末で申し上げますと、口座数にいたしまして約六万口座、金額一億九千九百万円が現在高、こういうことになっております。
  45. 峯山昭範

    峯山昭範君 六万口座と今おっしゃいましたが、口座の内容、これは個人別に名前は全部わかっているわけですね。
  46. 神岡篤司

    説明員(神岡篤司君) この軍事郵便貯金全体で申し上げますと実は七十三万口座ございますが、この台湾の軍事郵便貯金につきましては私どもで原簿を持っております。熊本なんでございますが、そこで預金者の氏名あるいは住所あるいは旧所属部隊名というふうなことから七十万口座を全部調べまして、調べましたものを多分これが台湾方々のものであろうということで推測をした部分がございまして、そういった意味では完全に六万口座が台湾方々に一致するということにはまいらない部分もあろうかと存じます。
  47. 峯山昭範

    峯山昭範君 そうしますと、この際ですからお伺いしておきますが、軍事郵便貯金口座、いわゆる七十三万口座というのは、これは現在でも大分未処理になっているんですか。
  48. 神岡篤司

    説明員(神岡篤司君) 軍事郵便貯金、日本人の方のものにつきましては、今でも支払いの請求がございまして、請求のある方については少しずつでございますが払っているところでございます。
  49. 峯山昭範

    峯山昭範君 現在、未処理の分がどのくらいあるんですか。
  50. 神岡篤司

    説明員(神岡篤司君) 同じく五十八年三月末現在でございますが、口座数として七十二万口座、現在高といたしまして十七億九千五百万円、こういうことになっております。
  51. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは軍事郵便貯金ですから、すべて戦時中の金額ですね。それにずっと利子を足してきた分がこうなるわけですね。
  52. 神岡篤司

    説明員(神岡篤司君) この軍事郵便貯金は、先生も御承知のとおり、通常貯金でございまして、終戦時の金額に通常貯金の利子を加えまして、俗な言葉で申し上げますと利盛りと申しますが、年年利盛りをした金額が先ほどの台湾方々では約二億円、全体として申し上げますと、先ほどの十七億九千五百万円というふうな数字に相なるわけでございます。
  53. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは国籍が違っても一般郵便貯金と同じなんでしょう。ですから、台湾の人が日本で請求したら返さないといけない分ですか。
  54. 神岡篤司

    説明員(神岡篤司君) 先生のおっしゃるとおりでございまして、外国の場合でありましても、貯金通帳をお持ちになればお支払いするということは可能なわけでございます。ただ、台湾の問題については、先ほど来先生もおっしゃっておりますような非常に難しい方向に事実関係もなっているわけでございます。この軍事郵便貯金も、日本台湾の間の全体的な財産請求権との関係がございまして、この特別取り決めをいたしますといっているうちに、昭和四十七年に日中国交正常化といいますか、そういったことになりましたものですからそのまま未解決になっておる、こういうことでございます。
  55. 峯山昭範

    峯山昭範君 いずれにしても、この問題も解決しなければならない問題であろうと思います。  それから元台湾総督府に勤務しておられました官吏あるいは教職員、警察官、いわゆる文官皆さんに対する恩給の問題、これは現実の問題としてどういうふうになっているのかということ、あるいは年金、一時金等との程度と見込んでおられるのか、人数等も大体どういうふうになっているか、現状を御説明願いたいと思います。
  56. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 台湾出身の方の恩給の問題でございますが、昭和二十七年の平和条約の発効までは台湾に本籍を有する方もなお恩給権を有していたわけでございますが、平和条約の発効によりまして日本国籍を失われましたので、それ以後恩給権は失われたわけでございますが、失権するまでの未支給分というのがございます。  これにつきましては、中華民国の住民が有する債権の処理は、「日本国政府と中華民国政府との間の特別取極の主題とする。」、御承知のとおりそういうことになっておりましたのが日中共同声明でこの日華平和条約が効力を失いましたので、以 来その未支給分の処理が問題となるわけでございますが、これは先ほど厚生省の方から御答弁あるいは郵政省から御答弁がありましたような未払い給与あるいは郵便貯金等と歩調を合わせていかなければならない、こう考えている次第でございます。  それで、その人数あるいは所要額等でございますが、終戦時に台湾総督府等の文官として年金たる恩給を受けていた方、既に権利が発生しておられました方が、普通恩給が八百十五人、扶助料が二百六十二人、増加恩給五人ということで、一千八十二人おられたわけでございます。このほかに、まだ恩給の請求をなさっておりませんでしたけれども、終戦時に既に資格があったろうと思われる方の推計が、普通恩給につきまして三千五百四十一名、一時金につきまして五千二百九十二名という一応の推計がございます。以上、これらを全部合わせまして、推計の所要総額は約二億五千万円であろう、こういうふうに考えております。
  57. 峯山昭範

    峯山昭範君 これも早急に解決しなければいけない問題だと思います。  それから台湾記号郵便貯金というのがあるんです。これは現在どういうふうになっているのか。その口座数とか金額等は現在どうなっているか。これもお伺いしておきたいと思います。
  58. 神岡篤司

    説明員(神岡篤司君) お答え申し上げます。  台湾記号の郵便貯金につきましては、実は我が国に原簿がございません。ございませんで、これは当時の決算の資料、そういったものから計算をいたしておるのでございますが、同じく五十八年三月末現在で口座数が二百四十二万口座、現在高では九千八百万円、こういうことになっているわけでございます。
  59. 峯山昭範

    峯山昭範君 この原簿は、どこにあるんですか。
  60. 神岡篤司

    説明員(神岡篤司君) 原簿は、台北の貯金管理所というところにございます。
  61. 峯山昭範

    峯山昭範君 いろいろとずっとお伺いしてまいりましたんですが、これは総務長官、こういうふうな一つ一つの問題を考えてみますと、総務長官がおっしゃいますように、総理府だけの問題でないというのも事実であります。各省にまたがっております。  そこで、これは当委員会でもこの問題について何回か質問が行われているわけでありますが、そのときに政府側の答弁としまして、民間団体であります交流協会とそれから台湾側の亜東関係協会を通しまして、これらの問題をどういうふうに処理するかということを台湾側の意向を照会している、そういうような答弁がずっと続いて、交渉はそれなりに続けているというふうな答弁があるわけでありますが、これは亜東関係協会あるいは交流協会を通しての交渉のぐあい、最近の折衝の状況、これはどういうふうになっているのか、これはどちらの方が担当かわかりませんが、お伺いしておきたいと思います。
  62. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 現在、いろんなルートで、今答弁ございましたような調査もできておるということでございます。私どもの方としては、その情報は的確につかんでおりますが、それだけで解決ができるのかどうか、もう一つ先の話について、私どもは先ほど来申し上げた手続的にクリアしていくための方策というものを今模索しているというのが現状でございます。
  63. 峯山昭範

    峯山昭範君 模索しているというだけではこれはどうしようもありませんし、我々も、各党大体賛成の皆さんが多いわけでありますので、それなりの法的措置もきちっとしなければいけないと思います。  戦後四十年になろうとしております。そういうふうな意味で、そういう関係方々は大変高齢になっているわけであります。先日もお伺いしたところによりますと、特に恩給問題等につきましては、そういう方々も非常に高齢に達しておりまして、しかも同僚の皆さん方が、戦争に駆り出されて、それで死ぬときには天皇陛下万歳と言って死んでいった、日本人として、日本国民として戦って死んでいった、皆さん方どう考えておりますか、こういうふうに詰められますと、これは本当にどうお答えしていいかわからない。  それで、実は裁判所で判決がどうのこうのとかごじゃごじゃ言ったにしても、結局、そういうようなことよりも、日本政府はこういう問題についてやる気があるのかないのか、どっちなんだ、やる気さえあればどうにでもなるじゃないかというふうなことが返ってまいります。確かに言われるとおりでありまして、これは総務長官を先頭にして、関係大臣と早急に話し合いを進め、行政府側、立法府側力を合わせて、それぞれいろんな難しい問題もありましょうけれども、何とかこの問題を解決する、そういうふうにきちっとした方がいいのじゃないかというのが一つ。  それからもう一つは、亜東関係協会との話し合いについても、こちらの方も窓口をある程度絞って、それでそれなりの進め方をきちっとした方がいいのじゃないか、そういうふうに思っているわけでありまして、総務長官のこの問題に対する御所見をお伺いしておきたいと思います。
  64. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 峯山委員おっしゃるとおりに理解をいたしています。  まだ、こうしておるということをこの場で申し上げるわけにはまいりませんが、それなりにいろんなルートを通じて、模索というような漠然としたようなことを申し上げましたが、具体的にも接触はしている、道を開きたいという努力をしておるということは申し上げることができます。一昨日もお答えしましたが、日本人の心が問われておるという理解をいたしておりまして、努力をいたしたいと思います。
  65. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは次に、シベリア抑留問題についてお伺いをしておきたいと思います。  この問題につきましては、一昨日も水上参考人の方からお話がありましたし、また先日の衆議院における議論もお伺いしているわけでありますが、これは衆議院における議論並びにシベリア抑留に関する現在までの経過について、おわかりになっているところだけで結構ですが、御説明願いたいと思います。
  66. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) シベリア抑留者の問題につきましては、繰り返しで恐縮でございますけれども、戦後の処理といたしましては、恩給法上倍の期間の計算をするとか、あるいは戦傷病者戦没者遺族援護法等の措置でやってきたわけでございますけれども、ソ連のああいう国際条約違反の行為でシベリアの非常に悪条件のもとに抑留されて重労働に服した、こういうふうな事情がございまして、関係方々のこれに対する補償等々の御要望が出てまいったわけでございます。  そういう状況を踏まえまして、政府としては四十二年をもって戦後処理問題は終結したとしておりましたけれども、他の恩給欠格者の問題、さらに在外財産の問題とあわせまして、戦後強制抑留者の問題も戦後処理問題懇談会におきまして御検討を願っておるということで、現在この問題につきましても戦後処理問題懇談会におきましていろいろ意見の交換が行われておるというところでございます。  関係方々いろいろ御要望がございまして、その労働に対する補償をやるようにとか、あるいは遺骨の収集だとか、あるいは参拝とか、そういうふうなことも政府として措置してもらいたい、こういうふうなことが関係方々から出ておるわけでございます。  全体の状況といたしましては、五十七万五千人の日本人がシベリアに抑留をされまして、約五万名の方が亡くなられて、六万人余りの方が一たん入ソいたしましたけれども、健康上の理由等からまた旧満州等に送り返された、こういうふうなことでございまして、実際上向こうで抑留をされまして日本に帰還されました方は四十数万人ということであろう、かように把握いたしております。
  67. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは事務的な問題として結構ですが、この戦後処理問題懇談会の結論というのは、これは大体六月いっぱいぐらいをめどにしておられるんですか。
  68. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) いつまでにということ はなかなか申し上げにくいわけでございます。というのは、現在いろいろ意見交換をしておられる段階でございまして、ぴたりいつまでにという状況ではございません。  ただ、初めの開催のときから大体二年ぐらいで懇談会としても意見を出そうではないか、二年ぐらいはかかるのではなかろうかということで参っております。したがいまして、この夏ぐらいまでには御意見がちょうだいできるのではなかろうか、かように期待をいたしております。六月末といいますと、ちょうど丸二年ということにもなるわけでございますし、それからさらに委員先生方の言っておられますのは、それくらいまでに出ればちょうど現在の総理府総務長官に意見も出せるしというふうなお気持ちはあるようでございますけれども、いろいろ意見を交換しておられますと、非常に難しい問題、それから関連するいろんな問題がございますものですから、今の時点でも六月末までにぴたり意見が出せるかどうかなかなか難しい、こういう感触をお持ちの先生もおるようでございます。
  69. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは予算の問題もありましょうし、七月一日から総務庁が発足する関係もありますし、そういうふうな意味でどういうふうになるのかなというふうに感じていたわけであります。それで、これはどういうふうになるんですか。七月一日以降に持ち越しになった場合には、新総理府長官を官房長官が兼任されることになるんですね。そういうふうになると、今度は担当大臣またかわられるわけですか。そこら辺のところも含めまして、これからの取り扱い等含めてお伺いしておきたいと思います。
  70. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 確かに、総理府総務長官の私的諮問機関、こういうことで始めていただいたわけでございます。仮に七月一日以降に御意見の出されるのがおくれるというふうなことになりました場合には、新総理府の所管大臣は今度は官房長官ということになりますので、技術的にぴしゃっとどういうふうにすべきか、六月中にお寄せいただけるかもしれないということもありまして、まだ事務的にも十分詰めておりませんけれども、そういう仮に七月一日以降ということになりました場合には、各メンバーの先生方の御了解を得ながら新総理府を所管される官房長官に御意見はお寄せいただくように改めてお願いをし直すとかいうふうなことが必要か、こういう感じはいたしております。
  71. 峯山昭範

    峯山昭範君 そういうことになってきますと、やっぱりこの問題はいろんな問題をはらんでいますから、きちっとした審議会にしておいてもらいたいなという気がするわけです。何となく、そこら辺のところを抜いては物が言いにくいような感じがしましてね。答申とか結論とかいうことになると、やっぱり法律的なことになるわけですから。ですから、いずれにしても、そういう問題は別にしましても、これは非常に大事な問題でありますので、政府としても本気になって取り組んでいただきたい、こういうふうに考えております。  そこで、このシベリア抑留者の問題というのは、これは本当に当委員会におきましても相当長期間にわたって取り上げられておりますし、私たちの衆議院の瀬野さんも相当前から取り上げておりますし、参議院におきましても質問主意書でうちの二宮団長が出されたいきさつもありますし、そういうようなものを全部見ましても、非常にソ連の強制抑留者の方々の要求の切実さというのをしみじみと感じるわけでありますが、きょうはここで幾つかの点を確認し、また御見解をお伺いしておきたいと思います。  まず初めに、過去の政府側の答弁でも、当時の宮澤官房長官答弁等もあるわけでありますが、政府側の本問題に対する基本的な認識として、ソ連側が国際法上認められている法規、慣例に違反しておったということは私は明白な事実であろうと存じます、こういうふうに官房長官はお答えになっているわけでありますが、ソ連側の条約違反というこの認識については現在も変わらないと思うんですが、この辺の御認識はどうですか。
  72. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 国際法上の問題でございますので、ちょっと私どもの方からお答えするのが適当かどうか存じませんけれども、戦争捕虜に関しますところのヘーグの陸戦法規等の国際法ないし国際慣習法、そういうものに明らかに反した行為である、こういう認識は変わりございません。
  73. 峯山昭範

    峯山昭範君 したがって、抑留者の方々は、不当な抑留あるいは苦役に対し、補償請求権をソ連に対し持っていたわけであります。それが、昭和三十一年十月の日ソ共同宣言で国交回復した際に当時の日本政府が請求権を放棄したわけでありますから、たしか六項だと思いますが、いわゆる請求権の相互放棄条項で。そこで、私の判断では、その放棄した責任日本政府がこれはとるべきである、私はそういうふうに思っているわけでありますが、ここら辺の問題についてお答えできる人はいるんですか。
  74. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) まさに外務省所管の条約上の問題でございますので、あるいは私からお答えするのが適当でなく、また完全に正確なことであるかどうか存じませんが、いろいろ私ども勉強したあれで申しますと、日ソ共同宣言によりまして、相互に国としての請求権の放棄は行っておるわけでございます。ただ、シベリア抑留者の関係方々、その方々個人としての請求権というものは残るけれども、国といたしましては、そういういわゆる国民に対しますところの外交保護権というものの行使、これを今後しない、そういう意味での請求権の放棄、こういうふうな条約上の考え方によるもののようでございます。
  75. 峯山昭範

    峯山昭範君 実は、外務省お見えになっておりましたけれども、急な用事がありましてお帰りになったそうですから、この問題は別の機会にいろいろ質問したいと思います。  いずれにしましても、これは総務長官、この問題もほっておけない問題ですし、この問題も早急に解決できるように総務長官としても御努力をいただきたいと思うんですが、どうですか。
  76. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) お気持ちはよくわかりますし、私としてもいろんなことを考えていますが、ともかく今七名の委員方々に真剣に御議論をいただいておりまして、私が今ここで予断を持って申し上げるというのも失礼でございますし、私の個人的な見解を申し上げるのもいかがかという気がいたしますが、経過はよくわかっておりますので、御趣旨を体しながら結論を出したい、かように考えております。
  77. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、恩給法そのものの問題についてお伺いしたいと思います。  五十八年度予算編成時における大蔵大臣と総務長官との間でのいわゆる了解事項、これについてお伺いしたいんですが、昨年の恩給ベアは遺憾ながら見送りになったわけであります。これは五十七年度の給与勧告が凍結されたことに伴う措置でありますけれども、本年度の恩給ベアについては、この大蔵大臣と総務長官との了解事項がありますし、今回の改善はその方針に沿ったものと思われますが、中西総務長官は丹羽前総務長官からどういうふうな受け継ぎをしておられますか。また、それに対してどういうふうに対処していかれるのか。そこら辺のところをお伺いしておきたいと思います。
  78. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) お話の大蔵大臣と丹羽前総務長官との間の了解事項、これは簡単でございますので申し上げますが、恩給ベアの取り扱いについては、昭和五十八年度の人事院勧告が出された場合、恩給の取り扱いについても人事院勧告の取り扱いとのバランスを考慮しつつ誠意を持って検討する、こういう了解事項でございます。  そこで、五十九年度の予算編成に当たりまして、私としましては、この了解の趣旨に沿いまして、誠意を持って検討の上、現在御審議いただいておる改正法案を提出さしていただいた、こういうことでございます。
  79. 峯山昭範

    峯山昭範君 五十九年度恩給予算の折衝に総務長官は当たられたわけでありますが、どういう点に特に重点を置いて折衝をされたのか、そこら辺 の折衝された経過等を含めましてお伺いしておきたいと思います。
  80. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) お話のとおりの了解事項がございます。それを念頭に置きながら、経済事情の変動に伴って年金恩給の実質的な価値をできるだけ維持しなければならないということを柱にしまして、公務員給与の改善を基礎として恩給年額を増額するということが一つでございます。そのほか、戦没者の遺族支給します公務扶助料についてもかねてから問題がございました。十分とはいきませんでしたけれども、数歩の前進はできたのではないか、予算折衝の過程ではさような理解をして法案をつくったということでございます。そのほか、戦病者の恩給の改善、処遇の一層の充実を図る。さらに、普通恩給、普通扶助料の最低保障額、毎年問題になりますが、その改善等について、これは経済的に弱い立場にある方、特に老齢化ということもございます、ということで配慮をいたした。こういうことでございます。
  81. 峯山昭範

    峯山昭範君 五十九年度恩給予算の概要について御説明願いたいのでありますが、今回かなりな改善措置がとられているわけでありますが、恩給費の対前年度比では六十九億七千二百万円減となっています。これは、そこら辺の理由もあわせまして御説明願いたいと思います。
  82. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 昭和五十九年度予算におきます恩給費の総額は一兆七千二百八十八億円でございまして、対前年度の恩給費予算額に比べまして約七十億円、〇・四%の減となっております。対象人員は、二百三十六万二千人ということでございます。  前年度に比べて減となりました理由は、前年恩給のベースアップがございませんでしたこと、それからベースアップ以外の個別改善につきましても長期在職の旧軍人の仮定俸給の改善等の真にやむを得ない懸案事項に限って措置いたしましたことから、五十九年度の平年度化増というものが少額でございました。一方、年金恩給受給者数につきまして、かなりのお亡くなりになる等の失権、減少がありました。そういうことで、本年度はいろいろ個別改善あるいはベースアップ等いたしましたが、総額といたしまして約七十億円の減となった次第でございます。
  83. 峯山昭範

    峯山昭範君 恩給受給者の今後の推計の見通し等についてお伺いしたいのでありますが、恩給受給者は、昭和四十四年の二百八十二万五千人をピークといたしまして毎年少しずつ減っているようでありますが、受給者は、五十六年末の推計で七十歳以上の者が文官恩給で八三・四%、軍人恩給で三四・六%というふうな資料が私の手元にはありますが、七十歳以上の皆さん方の占める比率というのが非常に高い比率を占めているようであります。  そこで、今後の受給者の推計は大体どういうふうになるのか、また高齢者の多い実態を重視した恩給改善のあり方という問題についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、あわせて御見解をお伺いします。
  84. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 今後の受給者数の推移でございますが、先生お示しのとおり、高齢者が非常に多いというわけでございます。しかしながら、その減少等をどういうふうに見込んで推計するかということはなかなか困難な問題でございますけれども、昭和五十九年度予算におきまして見込んだ人員等を基礎にして推計いたしますと、昭和六十五年度には約百九十九万人、昭和七十五年度は、七十五年度と申しますのは二十一世紀に入った年でございますが、そのときには約百二十九万人というような推計が一応できるわけでございます。高齢者の方がお亡くなりになりますと、その御遺族に普通扶助料がいくというようなことで、まだかなりの期間受給者数がありまして漸減はいたしますが、かなり長期間続いていく、こういう推計でございます。  それから高齢者につきましてのいろいろな施策につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、ことしの恩給改善におきましてもいろいろ配慮いたしまして、普通恩給、普通扶助料の最低保障額の改善等いたしましたし、また七十蔵以上の長期在職の旧軍人の仮定俸給を一号上げるというようなこともいたしておりまして、こういうような考え方は今後とも持ちまして対処していきたいと感じている次第でございます。
  85. 峯山昭範

    峯山昭範君 この七月一日に総務庁が発足することになっているわけでありますが、恩給局はことしの一月で開局百周年を迎えるわけです。恩給に関する事務というのはこれは大変大事な事務なんでありますが、今後はこの総務庁の所管になるわけですね。したがって、総理大臣直属の部局から離れることになるわけでありますが、これは予算要求はもとより、事務の停滞とか、いろいろな問題が出てきてはならないと思うわけでありますが、七月以降、総理府恩給局というのは、どういうふうに改編されまして、どういうふうな執行体制になるのか、今までとどういう点が違ってくるのか、そういう点もあわせて御説明願いたいと思います。
  86. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 七月一日から総務庁に恩給局が移行するわけでございますが、もちろん恩給制度そのものは変わるわけではございません。恩給の意義や制度については全く変更ございませんし、その運用につきましても変更はないわけでございますので、恩給局の組織等が移行そのものを理由として変わる、また運用が変わるということはございません。現在の体制のままで、総務庁に組織、人員、そのままで移行するわけでございます。  しかしながら、これは恩給局だけに限りませんが、臨調の答申で行政改革が進められておりまして、恩給局につきましても、さしあたっては当面は事務の機械化等を推進し、管理共通部門を含む内部組織の整理統合を行うということになっておりますので、事務の機械化に現在鋭意努力中でございますし、またこの事務の機械化の結果を見まして合理的な内部体制というものについても検討を続けていきたい、このように考えております。
  87. 峯山昭範

    峯山昭範君 今回の三月改定の理由をお伺いしたいんですけれども、今回の恩給改正の実施時期を五十九年三月分からということになっているわけでありますが、五十八年度の恩給ベアが見送りされたことを若干これは補うというふうな意味もあるかもわかりませんが、私たちは四月実施より三月実施の方がいいわけでありまして、そこら辺はそれなりの評価をするわけでありますが、今回三月改定とした理由と、それから来年度以降これはどういうふうな対応をしていくのか、そこら辺のところの関連性を含めて御説明願いたいと思います。
  88. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 本年、特に前年度までさかのぼりまして三月実施としたということは、前年度恩給のベースアップがなかったという特別な事情を配慮いたしまして、実施時期を一カ月特例的な措置として繰り上げたわけでございます。恩給のベースアップの実施時期につきましては、昔は十月実施というようなことがございましたが、次第に前進させまして、昭和五十二年度から原則四月実施ということで参っております。これが原則であろうと思います。三月までさかのぼらせましたのは、今申し上げましたような特殊事情に着目しての本年度限りの特例的措置であるというふうに御理解いただきたいと思います。
  89. 峯山昭範

    峯山昭範君 今回の恩給ベアは、五十八年度の公務員給与の改定を分析した結果に基づき平均二%の改善を行うということになっておりますが、今回の恩給ベアは、今特例的な措置とお話ございましたが、五十九年の三月から六十年の三月までの十三カ月分、そういうことですね。理論的には、五十九年の三月分と五十九年度の十二カ月分とでは、その改善率は普通は違うというのがこれは当たり前なんですけれども、今回特に十三カ月分について同一の改善率をとった理由、これは先ほど多少説明がございましたが、そういう点もあわせまして再度御説明願いたいと思います。
  90. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 本年度のベースアップの率は、従前からやっておりますように、前年の 公務員給与の改定を回帰分析いたしまして二%アップということを決めたわけでございます。これが前年度まで及んだのはどういうことか、前年度は率が違ってしかるべきではないかというお尋ねでございますが、前年度につきましては、その前の年の公務員給与のベースアップがございませんでしたために、これを機械的に適用いたしますと前年度はベースアップ丸々十二カ月なしということになるわけでございますが、それではいかがか。恩給受給者等の特殊な御事情等を参酌いたしまして、本来支障がないところをさかのぼらせるということでございますので、本年度の二%をそのままさかのぼらせました次第でございますので、この点どうか御了解いただきたいと思います。
  91. 峯山昭範

    峯山昭範君 恩給引き上げの根拠というのは、大体何を根拠にして引き上げていらっしゃるわけですか。
  92. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 恩給引き上げの根拠は、恩給の実質的な価値を維持するということが根底にございまして、ここ十年以上、前年度の公務員給与の改定に基づいて、それを指標としてベースアップするということでずっと一貫してまいっております。
  93. 峯山昭範

    峯山昭範君 恩給の引き上げにつきましては、確かに公務員給与が今ほぼ中心になっているようでございますが、しかし恩給法の二条ノ二を読んでみますと、「年金タル恩給ノ額ニ付テハ国民ノ生活水準、国家公務員ノ給与、物価其ノ他ノ諸事情ニ著シキ変動ガ生ジタル場合ニ於テハ変動後ノ諸事情ヲ総合勘案シ速ニ改定ノ措置ヲ講ズルモノトス」、こうなっているわけでありますから、何も国家公務員の恩給だけでなくてもいいわけです。そういう点からいきますと、最近はほとんど機械的にそういうふうになっているような感じがするわけであります。そういうようなことからいえば、もう少しそこら辺のところを考えてもいいのじゃないかという感じもするわけですが、そういう点も含めまして、もう一遍お伺いしておきたいと思います。
  94. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 根拠条項は、先生お示しのとおりでございます。経済上の諸事情を総合勘案して改定を行うべきであるというこの二条ノ二の規定に基づきまして、今まで私どもの考えといたしましては、結局公務員給与の改定ということがいろいろな経済事情の集約されたあらわれであるというふうに考えまして、これに基づきまして恩給を改定してまいったということでございまして、十年以上この方式で定着してまいっておりますし、また恩給と申しますものが公務員を退職された方々年金であるという点から考えましても、現職公務員のアップを指標としてやっていくのが最も適当であろうと考えて措置している次第でございます。
  95. 峯山昭範

    峯山昭範君 扶助料の改定時期の問題についてお伺いしておきたいんですが、今回、扶助料及び傷病恩給につきましては、最低保障額を五十九年三月から改定するほか、八月から再改定する、こういうふうになっているわけでありますが、八月からの改定は特別の加算によるものでありますが、これも本来は年度当初または五十九年三月から行うべきであると思います。今回、仮定俸給の引き上げを従来より繰り上げたことを踏襲して、次年度以降、特別の加算による改定時期も八月より前に繰り上げるよう努力をすべきである、本当は同時というのが一番いいわけでありますが、そういう点も含めましてお考えをお伺いしておきたいと思います。
  96. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 先生お示しのとおり、なるべく前に繰り上げて同時にやるというのが私どもも好ましいというふうに考えておるわけでございますが、何せ極めて厳しい財政事情のもとでその改善の中身をできるだけ充実したものにする、限られた財源の中で改善内容をできるだけ充実させる、その二つの要請の接点と申しますか、それによりまして今回八月となったわけでございます。  なお、今後この種の改善措置につきましては、その実施時期をどうするか、厳しい財政事情等種種の制約もありますので、諸般の情勢を勘案しながら慎重に対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  97. 峯山昭範

    峯山昭範君 今回、公務扶助料の最低保障額は八月から二万四千円の加算を行う、こういうことになっているようであります。この特別加算につきましては、従来から積算に特別の根拠はない、こういうふうに言われているわけでありますが、五十五年度は八万五千円、五十六年度が五万二千円とかなりの額になっておりましたが、それが五十七年度が二万一千円、今回が二万四千円、従来の半額以下になっているわけでありますが、月額十二万円の公務扶助料とするためにも従前並みの加算を要望したいと思いますが、今回八月から二万四千円を加算することになった経緯、それから次年度以降の対処方針についての御見解をお伺いしておきたいと思います。
  98. 和田善一

    政府委員(和田善一君) お示しの公務扶助料につきましては、かねてから旧軍人恩給再出発時以来の経緯、それから他の恩給とのバランス等を考え、また御遺族からの御要望等をも踏まえまして、その特殊事情にかんがみまして、できるだけの増額を図ってまいった次第でございます。  昭和五十九年度におきましては、極めて厳しい財政事情を踏まえつつも、戦没者の御遺族に対します処遇といたしまして、まず一般のベースアップのうちの最も率の高い部分、兵の二・一%というものを持ってまいりまして、まず三月にベースアップをいたしまして、しかしそれにできるだけの上積みをしたいということで努力をいたしまして、八月からお示しのように月額で二千円、年額で二万四千円という上積みを、努力の結果、私どもとしてはできるだけのことをしたということでございます。まだ、いろいろ御意見等ございますと思いますので、今後とも、この点につきましては御遺族の御要望等十分承りながら対処していきたいと思っております。
  99. 峯山昭範

    峯山昭範君 それから次に、今回の傷病恩給の改善についてでございますが、改正後の増加恩給及び傷病年金の等級間間差は、今回の改正によりまして、昭和八年の水準を上回る改善ということになっているようであります。そこで、今後のこの傷病恩給の改善策につきましては、戦前の制度との関係でいかに改善していくのがベストであるかという間差間の問題も検討する時期に来ている、こういうふうに思うわけでありますが、そういう点も含めまして、この点についての御見解をお伺いしておきたいと思います。
  100. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 傷病恩給の年額につきましては、公務傷病者に現存いたします障害についての評価あるいはその障害の与えます影響等によりまして決定されるべきものであるというふうに考えておりまして、年額の策定に当たりましては、従来の間差率が常に固定的なものとして先行すべきではなくて、そのときどきにおける妥当な年金額がまず決定されまして、間差率はその結果の指数として出てくる、結果的には御指摘のとおり昭和八年間差を上回るというような結果に現在なってきたわけでございます。  なお、この傷病恩給のこれからの取り扱いにつきましては、社会経済的諸事情の推移を考慮しながら今後とも十分に研究してまいりたい、このように考えている次第でございます。
  101. 峯山昭範

    峯山昭範君 増加恩給と公務扶助料の関係について、お伺いしておきたいと思います。  公務員が公務により傷病となった場合に支給されるのが増加恩給でありますし、その遺族支給されるのが公務扶助料であります。したがって、両者の関係は密接なものがあるわけでありますが、それぞれ目的は違っていてもバランスのとれた関係があることが望ましいわけでありますが、この点についての御見解もお伺いしておきたいと思います。
  102. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 先生御指摘のとおり、両省のバランスをとることが望ましいわけでございますので、御指摘のとおり、まずベースアップをいたしまして、その後のベースアップ以外の上 積み、要するに特別改善につきましても両者をできるだけ平仄をそろえて行うよう努めてまいった次第でございます。
  103. 峯山昭範

    峯山昭範君 増加恩給受給者の妻の救済の問題について、お伺いをしておきたいと思います。  増加恩給受給者が早病死した場合、増加非公死扶助料というのが支給されることになっているわけでありますが、しかしながら、この額は普通恩給を併給された増加恩給年額の二分の一よりはるかに低額であり、問題が多いとされております。普通恩給を併給されております増加恩給が公務扶助料に転給される場合も全く同様の問題が存在するわけでありますが、その改善を要望する請願や陳情というのがたくさん寄せられております。  重度戦傷病者のため、その生涯をささげた妻に、受給者死亡後、特別の措置を講じてほしいとの請願に対して、かねがね政府は、重度戦傷病者遺族であるということだけでその扶助料の年額に特別の措置を講ずることは適当ではない、そういうふうな答弁でありますが、この問題には、増加恩給が扶助料に転結された途端に急減してしまうことによって残された遺族の生活が激変してしまうことがないようにする観点から救済の必要がある、こういうふうに思うわけであります。そういう点を考えてみますと、これはぜひ再検討をお願いしたい問題でありますが、この点についてのお考えをお伺いしておきたいと思います。
  104. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 増加恩給を受けておられます方が平病死なされましたときの増加非公死扶助料の年額につきましては、これは原則は、普通扶助料の年額だけでなくて、それに一定の割り増しをして普通扶助料よりも割り増しをした扶助料を差し上げるという原則があったわけでございまして、これは増加恩給という比較的多額の恩給を受けておられました方がお亡くなりになりまして、死亡と同時にすっかりそれがなくなってしまうのはいかにもお気の毒でありますので、普通扶助料よりも割り増しをするという配慮から行っておるわけでございます。これが生前の増加恩給の二分の一に比べてまだ非常に低いという御指摘もまたあろうかと思いますが、生前の増加恩給の年額に扶助料の方が一律に比例するというのも適当ではないと思います。現在のように普通扶助料に一定の割り増しをする、しかも昭和四十八年一月からは最低保障制度を設けまして、現在では九九%の者が最低保障の適用者でありまして、本年の改正におきましても二・一%のべースアップ以外に特別の上積み改善を行うことといたしておりますが、今後ともこの最低保障額の改善ということにつきましては、公務扶助料等との均衡を考慮しながら検討してまいりたい、このように考えている次第でございます。
  105. 高平公友

    委員長高平公友君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時三十分休憩      —————・—————    午後一時一分開会
  106. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、恩給法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  107. 内藤功

    ○内藤功君 まず、戦後問題の処理、この問題についてお伺いをしたいと思うのであります。  最初に、いわゆる戦後問題の処理、あるいは戦後処理問題と言っておりますが、これはどういうことを言うのか。特に、この戦後問題処理の際の基本理念、行政が当たり、政治が当たる場合の基本理念、基本精神というのはどうあるべきと考えるのか、ここらあたりから御見解を伺いたいと思うんですが。
  108. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 戦後処理問題と申します場合、これをどうとらえるかによりまして、その範囲というものが非常に広くなったり、また人によりましてかなりの差異が出てくるというふうなことはあろうかと存じますが、昭和四十二年に引揚者に対しますところの特別交付金の支給をもって政府といたしましては戦後処理問題についてこれでピリオドを打つという方針が決められた際におきますところの戦後処理と申しますのは、当時の国会におきますところの総務長官答弁におきましても、この戦後処理といいますのは、さきの戦争による犠牲に対しまして国がとるべきであると考えられる措置というふうにお答えをいたしておるところでございまして、私ども戦後処理の問題というのがそういうことであろうかと存じております。  ただ、その際におきますところの基本的な考え方といたしましては、御承知のとおり、さきの大戦に関しましてはすべての国民が何らかの形で多かれ少なかれ犠牲を余儀なくされてきておるところでございまして、これに対しましてすべて政府がその犠牲を償うというふうな措置をとるということは、実際上、財政上不可能でございまして、大変お気の毒な面はあるかと思いますけれども、そういう犠牲につきましては、国民の一人一人の方にそれぞれの立場で受けとめていただかざるを得ないということだろうと存じます。  ただ、その中にありまして、特に国が特別な対策をしなくてはならない、その必要があるというものにつきまして、やはり政府としてこれに所要の措置を講じていくという考え方で参ってきたわけでございまして、それが戦後におきますところの政府がとるべき措置ということであろうかと存じております。例えば、戦没者の遺族であるとか、あるいは戦傷病者、さらに生活の基盤を全く失いました引揚者等々の方は、一般の国民も何らかの形で犠牲は負っておられますけれども、それを超えまして、特に政府の施策を必要とする方々であろうというふうなことから、戦後、政府としてそういう措置を講じてまいってきたところでございまして、戦後処理の基本の理念というものは、そういう点にあるのであろう、かように考えております。
  109. 内藤功

    ○内藤功君 こういうふうにお考えになったらどうでしょうか。  これは、やはり二度と戦争が起きない、日本が二度と戦争に巻き込まれない、もちろん日本戦争を起こさない、ここのところに強い政治の念願、理念の基礎があるのであって、その上に国家があの戦争の犠牲者、被害者の方々補償する、こういう考え方がその上に立っていると私は思うんです。そして、日本の政治のよりどころである日本国憲法では、前文の、再び政府の行為で戦争の惨禍を招かないようにする、九条の、戦争は絶対しない、十三条の、人間の命の尊重が政治の上で最大に尊重されなければならない、こういうような基本的な原則原理というものがその戦後処理問題の私は基本的な骨格だ、こういうように思っているし、今あなたの言葉にはそういうことは出てきておりませんが、根底において私が今言ったようなことをお考えになっているのじゃないかと思うんですが、そういうふうにお考えになっていくことができると思うんですが、この点いかがでございましょうか。
  110. 禿河徹映

    政府委員禿河徹映君) 二度と戦争を起こさないということが戦後におきます大きな政治の目標であるということは、私ども事務方からそういう問題につきまして申し上げるのは、大きな政治の問題でございますので不適当かと思いますけれども、そういう大きな政治の目標、流れというものがあるという事実は私どもも存じております。  ただ、それを避けるために戦争による損害を補償するというのが戦後処理の基本ではないかという点につきましては、この戦争に関連し、あるいは敗戦の結果いろいろ受けました国民のほとんどの方のそういう犠牲なり損害というものを国が補償するということは、先ほども申し上げましたとおり、実際問題として不可能に近いわけでございますので、いろいろ政治的な目標というものはあろうかと存じますけれども、政府として対策を講じます必要のある点は、やはり一般の国民方々より以上に大きな犠牲を払われ、それによって生活の基盤等々を失われた方に対して特別の措置を講じていく、こういうことが現実の問題として起 こってきます政府の戦後処理の考え方であろう、かように考えられます。
  111. 内藤功

    ○内藤功君 そういう前提に立ってお伺いしたいんですが、先般来、軍人恩給についてのいろんな事例も取り上げられて御論議がございました。また、私もいろいろ取り上げてまいりましたが、特に銃を持って戦った軍人と、それから銃は持たないが日本の本土で空襲のときにバケツを持って戦ったおれたちにはどうしてくれるのだ、こういう声もあります。  それから日赤、旧陸海軍従軍看護婦さんの問題、これは私はしばしば取り上げてきたわけですが、あるときには軍人と同様あるいは軍人以上に危険なところで生命を危険にさらして活動した、こういう看護婦さんたちの慰労給付金が実現されたことは、大きな私は戦後処理問題の中での前進面だと思うんです。問題は、これが増額の問題です。やはり一たん出された以上は、これはこの経済情勢の中で一つの生活を支える貴重なやっぱり生活の糧になると思うんですよ。この増額の問題が見送られていることは、こういう恩給法の論議を私が実際に担当してこの委員会の一員としてやるときに、甚だ片手落ちの感を常に禁じ得ないのでございます。しかも、毎国会の両院の内閣委員会の論議におきましても必ずと言っていいぐらい附帯決議で取り上げられ、歴代の国務大臣総務長官はこれに対して常に尊重を当委員会で約束しておられる問題であります。本年度もこれが見送りにされているということは本当に遺憾なことであります。  現在、何人くらいの方に、どのくらいの金額を支出をしておるか、数字をお示しいただきたい。
  112. 菊池貞二

    政府委員(菊池貞二君) 最近の数字でよろしゅうございますか。——五十八年度の慰労給付金支給いたしました対象者並びに金額を申し上げますと、旧日赤の救護看護婦が千百二十九名、慰労給付金の額が一億四千三百六十九万四千円、それから旧陸海軍従軍看護婦の方々が千百二十七名、慰労給付金の額が一億五千九十六万五千円、合計いたしますと支給の人員が二千二百六十六人、慰労給付金の総額が二億九千四百六十五万九千円ということでございます。
  113. 内藤功

    ○内藤功君 国の予算の額をそのくらいの額ならという言葉を私はできるだけ慎みたいと思いますが、それにしてもこれは一〇%としてわずか二千九百万、私はこの数字を見るときに、ぜひこの恩給における改善措置だけではなく、戦地で軍人と同様、戦火のもとで命を危険にさらして活動してきた方々のささやかな要求には、ぜひ政治としてこたえていただくように強く要望したいと思うんです。  総務長官には繰り返しの質問になりますが、これに対するあなたの姿勢を、大体答弁を私は想像はできるんですけれども、しかしこういう姿勢で取り組むということを、この戦後処理の大きな問題としてお示しいただきたいと思うんです。
  114. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 御指摘の問題は大きな問題であり、また何かの方策をできるだけ早い時期に講ずべきである、そういった性質の問題であるということはよく理解できます。金額のお話も出ましたが、このことだけとらえますとわずかでございますが、類似の問題がたくさんあるというようなこともございます。しかし、といって、ほっておくわけにいきませんから、引き続いて検討をさしていただきたいと思います。
  115. 内藤功

    ○内藤功君 次に、もう少し後の方で聞いてもいいんですが、ここでちょっとお聞きしたいのは、いわゆる上薄下厚問題です。  これも先般、同僚議員からの質問に恩給局長のお答えがありました。私は、それでもまだ納得できないものがあるんです。いろんな人に私は当たってみて聞いてみたんですが、国民感情として、確かに戦争で苦労し、犠牲になった軍人あるいは軍人以外の方に対して国の補償はこれは仕方ない、当然であろう、一般国民が税金で負担をしてそういう方に恩給がいくのはある程度わかる、しかし背の軍隊というものが解散をし、解体して今四十年近くになるのに、この別表に大将から兵までの一覧表があって、その差がこれだけだというのを見せますと、多くの人はびっくりするんです。しかも、その差は十六倍あったのが六倍まで減ったということは、この前進は認めます。しかし、なおかつこういう国民感情があるんです、上級の者ほどその責任は重いという面はないか、はっきり言うと。この格差をもっと縮小するために、政府なり行政当局がもう少し工夫がここにできないのかという声は確かにあるんですね。これは受け取っている方というよりも、それを実際に税金で負担している国民の中にあります。この点について、旧軍人の階級による格差の是正はこの程度で十分というふうにお考えになっているのか、さらに検討研究をなされておる状況であるのか、どうお考えになっているか、局長にお伺いしたい。
  116. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 恩給側度と申しますものが、そもそも公務員の退職当時の俸給を基礎にしまして年金額を算定するという基本構造がございます。この基本構造、恩給制度としてその根本を変えるということは、これは全く別のものになりますからできませんのですが、今、先生お示しのように、例えば大将と兵の上下格差十六倍を六倍にしてきたというような努力はいたしてまいりましたし、過去のことを申し上げればいろいろやったことがあるわけでございます。今後も、またベースアップ等におきましては、行政職俸給表の改善傾向、要するに上薄下厚の傾向を分析して同じように取り入れていくというような努力は続けるつもりでおります。  それからまた、特に申し上げておきたいことは、最低保障という制度を取り入れましたこと、例えば公務扶助料、戦死した方々の御遺族に差し上げます公務扶助料につきましては、これは全部の方が少佐の階級まで上がってきている。増加非公死扶助料についても同様でございます。これは増加恩給を受けておられるような重度傷病の方がお亡くなりになりましたときに、その御遺族に上げる扶助料でございますが、これも最低保障によりまして少佐の階級まで皆が上がってきておる。それから普通扶助料、普通恩給等とってみましても最低保障の制度がありますので、例えば普通扶助料、普通の御遺族恩給でございますが、これをとってみましても、実在職年が最短恩給年限以上ある方々の御遺族に上げます普通扶助料は、最低保障によりまして少佐の階級まで底上げされている。それから普通恩給につきましても、最短恩給年限以上で六十五歳以上の方々をとってみますと、大尉のところまで底上げになっているというような措置をとりまして今日まで参りましたことは御理解いただきたいと思います。
  117. 内藤功

    ○内藤功君 この点のさらに一腰の努力を要望しておきたいと思います。  そこで、行管長官がおいでになりましたので、早速御質問させていただきます。  五月七日に行革審の会議が開かれまして、報道によりますと、行管庁長官が出席されて、行政改革の将来の検討課題として四点、問題提起をされた。一つが危機管理のための政府の仕組み、それから二つ目は先導的科学的技術の研究開発の体制、三番目は縦割り行政の弊害を除くための総合調整機能の強化、四点目は特殊法人の活性化でございますか、これを問題提起されて行革審による検討を求められたと伝えられております。この事実と、後藤田長官の御発言はペーパーになっているのか、あわせてお伺いしたいと思います。
  118. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 七日の日に第四十回目の行革審の会議がございましたので、その席に出席をさしていただきまして、今、内藤さんの御質疑の中にありましたような項目につきまして行革審で私が発言をいたしました。それは諮問するとかなんとかという形ではなくて、御検討を一層深めていただいて御意見を承りたいという前提のもとに、したがってまた私の発言は文書によるものではございません。私が立ったまま発言をしたというのが事実でございます。
  119. 内藤功

    ○内藤功君 そういうことでありますだけに、この御発言はこれだけでは極めて抽象的で、何かあ るのだとは思うのだが国民にわからない。  そこで、この際、どのような要請発言をされたのか、特に私は、この四点のうち、一番目の危機管理のための政府の仕組み、このあたりに絞ってどういうふうに発言されたのか、お答えいただきたい。
  120. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) それでは、簡単にその日の経過をお答えいたしまして、その後御質疑の中心点についてお答えいたしたいと思います。  最初に、第二臨調の御答申について、臨調御答申のままでないものもあって御意見等もあろうかと思うけれども、現実を踏まえながら最大限の努力をして実現に努めております。この国会も、行革関連法案三十本国会の御審議をお願いしているのですが、だんだん会期も迫っておりますが、政府としては全力を傾けて、国会に御審議をお願いし、成立に向けて精いっぱいやってまいりたい。  こういう一般的なお話をした後、御案内のように、そろそろ六十年度の予算の編成に入りますから、その際には、財政当局は財政当局なりにシーリングの問題があるわけでございます。八月の末日までに各省は概算要求を出さざるを得ない、こういう時期でもございますので、来年度の予算の編成作業に入るのと相並んで、かねがね第二臨調からお示しの増税なき財政改革、この具体的な方策を、大変厳しい財政状況にございますから、そこで行革審としてもいま一段と御検討をして、できる限り具体的な御意見をちょうだいできればありがたい。  第二番目は、何といっても全体の統治機構の上から見て、行政改革を進めるという場合には地方行革というのが大変重要だ、三千三百のうちどんどんやっていただいておるのもあるけれども、遺憾ながら手のついていない団体もある、これはやはりある程度歩調をそろえてやっていただかなければ成果が上がらない、しかし同時に、この問題は地方分権、地方の自治権の尊重、こういう立場も十分お考えの上でひとつ地方行革についていま一歩踏み込んだ御意見をちょうだいできればありがたい。これは予算編成に絡みますから大体七月の十五日ごろを目安にして御意見をちょうだいできれば大変ありがたい。こういうお話をしたわけでございます。  その後で、臨調の御答申を読ましてもらいますと、国政全般にわたって、深浅の度合いの差はありますけれども、大体各方面にわたっての御意見をちょうだいしておるのだけれども、私自身考えてみまして、この上とも一層深めた御議論をしていただきたいと思う点が四つございますということで、先ほど内藤さんがおっしゃったような、一つは先導的技術の研究開発について、これは日本の先行きを考えた場合に、せっかく御答申はいただいておるのだけれども、もう一歩深く、そして広く御検討を願えれば大変ありがたいように考える。  それからもう一点は、最近いろんな問題が起きたときに、例えば対外経済の問題が起きると必ず四つ五つの役所が大変な深刻な争いになる。なかなか日本政府全体としての方針がまとまりにくいということがしばしば見られる。あるいはまた、行政改革を進める場合にも、これはそれぞれ各省の立場がありますから、当然それだけの熱意を持って各省おやりになる。これは非常に結構だけれどもまとまらないという面がある。そういった際に、内閣全体としての統制あるいは総合調整、こういう面について何か今までの御答申以上にこれも御検討願えぬであろうか。  それからいま一つは、国の行政を進めて経費の効率化を図るといった場合に、御案内のように、各種の公社、公団、特殊法人、これらは本来の設立の趣旨は政府のいいところと民間のいいところをとる予定であったのだ、ところが世間の批判にもありますように、それぞれ勉強はしてもらっておるけれども、いま一歩活性化ということについて何か打開をするといいますか、改善をするといったような点がありはしないかという点を私はしみじみと感じる、ここらについても御検討いただきたい。  それからもう一つが御質問の点でございますが、これは私の過去の経歴上からくるのですけれども、大体突発的な重要事件に私の生涯はほとんどぶち当たってきたわけでございますが、たまたま昨年官房長官のときに大韓航空機事件が勃発をしたわけでございます。これが国際緊張を増し、出先機関の無思慮な行動いかんによっては、これは大変危険な状況も予想せられないではないわけでございます。こういった際に、日本政府として間違いのない方針を決めなきゃならない。あるいはまたハイジャック、これはいつ起きるかわかりません。今度起きたときに、人命は地球より重いといって殺人の刑事犯を国外に出すといったようなことが今日の国際情勢の中で、日本が主権国家として本当に国際社会の中で許されるのかどうか。それじゃどうするのだといったようなことになると、なかなかこれは決断の非常に難しい点がある。しかも、これはいつ起きるかわからぬではないか。あるいは大災害がいつ起きるかわからない。仮に東京なんかで本当に手のつけられないような大災害が起きたときに、日本の国のように一点集中、つまり東京を中心の国柄の場合に一体どのようなことになるのだろうか。  それぞれ、こういった問題については所管官庁があるわけですから、みんな今勉強しているのです。しかしながら、それらの所管官庁の枠を超えて政府全体が対応しなきゃならぬときの政府の基本の物の考え方はどうするのだといったようなことで、国際的にも今、いつ、どこで何が起きるかわからぬ状況でございますから、こういったときの対応に間違いのないように、結局は幾ら制度をつくっても人であることは間違いありませんけれども、しかし、さればといって人任せではいかぬのではないか。やはり仕組みというものを真剣にここは考えておかないと、国民の本当の意味での命と財産を守らなきゃならぬという政府の職責が十分いかぬのじゃないか。ここらをひとつ、せっかく国政全般について、行政の改革、これは何も削ってしまえばいいという問題でありません、後ろ向きだけでなしに、先行きを見てやらなきゃならぬ仕事についてはこの審議会で何とかひとつ御勉強していただければありがたいのだ、したがってこの問題については私は時間を切るとかそういったことを一切申さないで、ともかく御検討をしていただきたい、かようにお願いをしたのが私の真意でもあるし、経緯でございます。
  121. 内藤功

    ○内藤功君 今の危機管理の問題ですが、そういう対応の中には、いわゆる有事法制、これも含むというふうに理解をしてよろしいのか。それからもう一つは、重ねて聞きますが、総合安全保障閣僚会議、いわゆる総合安保閣僚会議とはどういう関係にあるのか。もう一つ、外務省内部で検討している総合安保体制づくりとはどういう関係があるのか。つまり、それをどういうふうにまた超えて、あるいはカバーしていくものなのかという点を承りたい。
  122. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 今の有事法制の問題、新聞に、何新聞でしたか忘れましたが、書いてありました。そんなことは考えておりません。有事法制は既に防衛庁が中心になって検討しておる問題でございます。これは別問題でございます。  その次の、外務省でいろいろ勉強もしておるし、防衛庁ももちろん勉強しておりましょうし、あるいは消防庁も勉強しておるでしょうし、国土庁も勉強しておりますし、あるいは警察庁も勉強しておる問題がある。こういったような問題、先ほどお答えしましたように、各省それぞれ対応は考えているわけです。それらについては、これは行革審の御勉強の私は対象になるのじゃないかと思いますけれども、これはまた行革審御自体で御判断をしていただければありがたい、こう思っておるわけでございます。  有事法制の問題は、これはもう既に防衛庁でやっておることでございますから、私自身の頭の中には入っていない。これが現時点における私のお答えでございます。新聞の記事は行き過ぎでございます。
  123. 内藤功

    ○内藤功君 総合安保閣僚会議との関係
  124. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) これらはやはり行革審でどのようにお取り上げになりますか、これは行革審の御勉強次第であろう、かように考えております。
  125. 内藤功

    ○内藤功君 これは第二次臨調の中でもかなり突っ込んだ研究がやられたと承っております。相当細かくいろんな項目ごとに、何々省は何をやる、何々庁は何をやるということまで検討されたと私は承っておるわけですが、これをさらに行革審でおやりになるという問題は、単に私はハイジャックとか大韓航空機とかいう問題にとどまらない、やはり国内の体制、行政機構のあり方というもの、特に戦時体制というものとの関係を私は否定できないんです。そこがちょっとあの記事のどうかという問題以外に、さっきから言っている何かあるのじゃないか、納得できないというその点なんですが、重ねて伺いたいんです。
  126. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 恐らくそういうことをお聞きになるだろうと思っておった。  私は、第二臨調で私が先般お願いしたようなことをある程度勉強せられたことは承知をしています。ところが、必ずしも明確な結論があの中には出ていない。何でそうだということは、私は承知をしておりません。しかし、恐らくああいうことの勉強を始めると、今、内藤さんがおっしゃるようなことをすぐ言うのだ、これは。しかし、それは私は議論が余りにも短絡過ぎる。  国民の命と財産を守るという場合に、日本が今、戦なんてやるわけないじゃないか。やっちゃいけない国柄なんだ。何としたって平和を守らなきゃならないのだ。その平和を守るための手段の中にはいろんなものがあるだろう。しかし同時に、大災害が起きたときに、一体どうして国民の命と財産を今のままの体制で守ることができるのだ。これはやっぱり勉強してもらわなきゃ困るし、政府としても私は勉強しなきゃならぬ問題であろう、私はそう思うんです。  あるいはまた、ハイジャックだって同じだと思います。数百人の人間が飛行機の中に乗っておる。しかし、さればといって、日本の殺人刑事犯まで国外に出すというようなことは本当に許されるのだろうか。許されないとするならば、その三百人の命と国の主権の尊厳という面と一体どうはかりにかけていくのだといったようなことについての検討というものは私は本当にやっておかないといけないのじゃないか。  そうすると、今あなたのおっしゃったような、その点すぐに軍事体制の強化に結びつける。もう少し視野を広くして考えていただきたい。本当に日本の国の将来というものを考えなきゃいかぬ。私は、そういう先行きの日本の国のことを考えて、いろんなそういう特別の立場からの批判はあるだろう、しかしその批判は批判としてそれを乗り越えて考えなきゃならぬ時期が来ておるのではないか。どうぞひとつ、行革審としてもせっかく勉強を始めておったのだから、何とかこの際、いま一歩突き進んだ御検討をいただきたい、これが本当の私の真意でございます。
  127. 内藤功

    ○内藤功君 私も、第二臨調のいろんな状況を私なりに調べておりますが、どうも警察限りの問題より越えたところに問題があるように思えてならないんです。ただ、この問題は、いろんな資料に基づき時間をかけてこれからやらなきゃならぬ問題だということでありますし、長官、何か所用があるということでございますので……。  次に、事務局にお聞きしたいと思います。  行革審の事務局にお伺いしたいんですが、危機管理のこの仕組みの検討に当たって、行革審としては小委員会などの作業チームをつくる予定かどうか、この点をお伺いしたい。
  128. 山本貞雄

    政府委員(山本貞雄君) 行政改革推進審議会におきましては、去る七日、行政管理庁長官から御検討の上御意見をいただければありがたいというお話のございました幾つかの問題のうち、六十年度予算編成に向けまして、七月半ばまでに緊急に意見をいただければありがたいと求められました二つの急を要する問題につきまして、早急にこの検討に着手いたしまして、とにかく間に合わせよう、そういうことでございます。  危機管理を含めました四つのその他の課題につきましては、この二つの緊急の課題を処理した上で今後取り組みにつきまして協議をいたしたい、そのようなことでございます。
  129. 内藤功

    ○内藤功君 立ち入った話ですが、小委員会を発足させるとすれば、いつごろ、どんなメンバーで発足させますか。
  130. 山本貞雄

    政府委員(山本貞雄君) ただいまの危機管理を含むその他の四つの問題につきましては、ただいま申し上げましたように、二つの緊急課題を処理した上で一体どう取り組むのか今後協議をしようということでございますので、小委員会云々の点につきましては現段階では全く白紙の状態にございます。
  131. 内藤功

    ○内藤功君 重ねて伺いますが、後藤田長官が先ほども言われましたが、六十年度予算編成に向けての当面の行革の課題として増税なき財政改革の方策の検討を行革審に要請した、これは臨調答申に基づく制度改変を歳出削減だけでは予算編成ができない、こういうことを意味していると考えますが、行革審としてのお受けとめ方を伺いたい。
  132. 山本貞雄

    政府委員(山本貞雄君) ただいまの、六十年度予算編成に向けまして、増税なき財政再建の基本的な考え方のもとにおいてどのような行財政改革を進めたらいいのか、これに関する具体的な方策について意見をちょうだいできればありがたい、こういうことが行政管理庁長官の御要請でございまして、行革審といたしましては、小委員会をつくりまして、そこでひとつ具体的に検討をしようというふうなことでございまして、歳出削減だけではできないとか、あるいはだけでできるとか、そういった判断は現段階では行革審としてはいまだ加えておらない、白紙の状態でございます。
  133. 内藤功

    ○内藤功君 今までの臨調の動き、それからこれが実際の国会の審議にあらわれているものを見ますと、これはやはり国民に対する犠牲は非常に一日一日と大きくなってきているということを私は痛感をいたします。また、それにとどまらないで、さっきの後藤田長官の表面上のお言葉にもかかわらず、軍事費の方は温存されていく、そして危機管理の名のもとに戦時体制への指向を、私は長官のお言葉にもかかわらず、非常に感じるのであります。私どもの立場は、行革審のことを立ち入って聞きましたが、このような行革審の審議については即時中止をしてもらいたいという考え方を私たちは持っておりますが、この点は引き続き今後も質問をしていくことを申し述べまして、行革審のこの問題についての質疑はこれで終わりたいと思うんです。  次に、問題を移しまして、さっき後藤田長官がお見えになったので順序が多少狂いましたが、もう一度恩給の問題に戻らせていただきたいと思います。  私が次にお聞きしたいのは、改定実施時期の問題でございます。今回の改定措置では、仮定俸給の引き上げの実施は三月、増加恩給や傷病年金の改定の実施につきましては八月、長期在職旧軍人の仮定俸給一号俸アップの実施は十月というように、それぞれ改定の実施時期がばらばらになっております。これまでにも衆参両院の内閣委員会におきまして改定実施時期の一本化を図るという附帯決議がしばしば行われておりますが、なぜこの時期を一本化しないのかと私は率直に思うんです。私は、速やかにこの改定の実施時期の一本化というものを図るべきである、これは附帯決議どおりに行うべきであると思いますが、恩給局長の御答弁を願いたいと思います。
  134. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 先生御指摘のように、改定時期の一本化ということ、これは私どもも望ましいことであるというふうに思っておりますが、何せ極めて限られた厳しい財政事情のもとにおきまして、どれだけ多くの改善を実施するかということとの兼ね合いの問題でございます。したがいまして、まず全般に及びますベースアップにつきましては、とにかく今までは四月でございました。ことしは特に特例として三月でございます が、まず真っ先にやりました。その後、これはその他の改善も一本化できればそれにこしたことはございませんけれども、なるべくその中身の厚い改定を本年度じゅうに制度として実施するために、限られた財源のもとで、それらにつきましては実施の時期をおくらせるということ、これはやむを得ない措置であったというふうに私どもは考えております。
  135. 内藤功

    ○内藤功君 これはぜひ、こういう財政事情のお答えもありましたが、やはり道理に合わないことでありますから、改定の実施時期の一本化を強く要望をして善処をお願いしたいと思うんです。  次に、今回の改定措置では仮定俸給の引き上げなどの改定実施期日を一カ月繰り上げて三月実施とされた。恩給改定は公務員給与改定よりも一年おくれで実施をされておりまして、衆参両院の内閣委員会でも、これまでのいろんな附帯決議でこの一年おくれの実施の是正の決議をこれまたしばしば行ってきたところであります。今回、今お話がありました一カ月の繰り上げ実施というのは、これは附帯決議の趣旨に沿って行われたものなのでしょうか、それとも、圧力団体というと言葉は悪いですけれども、かなり多くの方々のそういう団体の声、こういう不満を、言葉は適当でないかもしれませんが、なだめるためにこれが実施されたものか、立ち入った聞き方でありますが、そこらあたりの真意を率直にお答えいただきたい。
  136. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 一年おくれの問題でございますけれども、これは一年おくれたという考え方もあるかと思いますが、私どもといたしましては、べースアップの指標を何にとるかという問題でございまして、指標として前年度の公務員給与の改定をとる、これが経済諸事情のいろんな変化を総合勘案した結果の目安として一番適当であるということで、前年度の公務員給与の改定を指標としてとる、そうしまして当年度のベースアップを行う。前年度の公務員給与を指標といたしまして、とにかく当年度ベースアップを、去年は例外でございますが、ずっと行ってきたわけでございますので、恩給の水準そのものが必ずしも一年おくれとは言えないのじゃないかというのが私どもの考えでございます。この点は、なお検討を続けていきたいところでございます。  本年、実施時期を前年度の末の三月までさかのぼりました理由は、これは前年度ベースアップが恩給につきましてなかったという特殊事情を考慮いたしまして、特に本年度限りの特例的な措置としてさかのぼったわけでございまして、これは一年おくれというような考えとは別の観点からの措置でございます。
  137. 内藤功

    ○内藤功君 そういうふうに特例でやったということになりますと、これは私の考え方かもしれませんが、いろんな恩給関係の団体の不満を抑えるためのものでやったのじゃないか、国会の附帯決議の趣旨に沿ったものじゃないということになると思うんです。私は、やはりこの一年おくれ改定実施の是正ということも各党一致の国会の意思でありまして、これにこたえて速やかにそういう部分的といいますか、一時的な措置も大事ですが、こういう附帯決議に正面から応ずることを何か一つやってもらえないか。何のために附帯決議するのだかわからないでしょう。きょうもこれからあるんでしょう。附帯決議というのはそれなりにやっぱり、必ずやると大臣が立って頭を下げて、ああ、やってくれるなと思うけれども、一遍もやられたことないでしょう、と言ったら極端ですか。今、私はとりあえず二つだけ言いましたが、ぜひ附帯決議の尊重をお願いしたいと思うんですが、どうですか。
  138. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) かねて何回も附帯決議をいただいておりますし、歴代、尊重すると申し上げています。その気持ちは変わりはございません。ただ、まことに異例な財政事情がここ続いておるという特殊な事情もこれは御理解を賜りたい。可能な条件さえ整えば実現をしなければならない、かように考えております。
  139. 内藤功

    ○内藤功君 では、この恩給法に絡みまして、臨調との関連を次にお伺いしたいと思うんです。  行革審の事務局長来ておられますが、今度の第百一特別国会に提出した臨調行革関係法案の数は、政府は三十本といつも言っております。ことし一月二十五日、閣議決定の行革実施方針では関連二十三本、こう言っております。三十本と言ったり、閣議決定では二十三本と言ったりしております。この差の七本というのは具体的にはどれとどれを言うんでしょうか。
  140. 山本貞雄

    政府委員(山本貞雄君) 政府が行政改革関連ないしは関係法案三十本あるいは当初行政改革法案二十三本というふうに言っておられましたことは私ども承知はいたしておるわけでございますが、それをどのような基準で分けておっしゃっておられるか、これは政府の方のお考えをお聞きいただく方がいいかと思いますが、私ども行革審として承知いたしておりますところでは、まずこの一月二十五日の行政改革計画閣議決定におきまして具体的に指摘されておる事項に直接関係しておるものが二十三本である、しかしながらいわゆる行政改革の趣旨に即した改革内容を持っておるものが七本あるというふうな関係である、こういうふう に承知いたしております。
  141. 内藤功

    ○内藤功君 具体的に聞きますが、人勧の値切り実施に連動させられた恩給法案、横並びの各種年金法案、戦傷病者戦没者遺族援護法案、それから原爆被爆者特別措置法改正案、これをいわゆる臨調行革関連法案としてカウントしないのはなぜでございましょうか。
  142. 山本貞雄

    政府委員(山本貞雄君) ただいまも申し上げましたように、行革関連法案のカウントの仕方は、政府において御判断のもとにカウントしておられるわけでございまして、私ども行革審でこれこれをカウントすべきだとか、そういった立場にはないわけでございまして、ただいま先生御指摘の法案がなぜ行革関連法案にカウントされないのか、これは私ども行革審としては御意見を申し上げる立場にはないわけでございます。
  143. 内藤功

    ○内藤功君 それでは、行革審としては今国会に提出された臨調行革関連法案は何本と見ていらっしゃいますか。
  144. 山本貞雄

    政府委員(山本貞雄君) 行革審として、特にこれこれの法案が行革関連法案であるというふうに審議会で意見をまとめたことはないわけでございまして、政府が、当初二十三本について行革法案であり、それに加えて七本の行革関連法案がある、合計三十本の広い意味の行革関連法案があるというふうに言っておられまして、行革審としてはそれをお聞きしておるということでございます。
  145. 内藤功

    ○内藤功君 私がこういうことをなぜ聞くかといいますと、行革審の事務局では臨調の指摘事項を千三百数十項目に整理をしてその実施状況をチェックしている、こういうふうに私は伺っておるのであります。これは事実ですか。
  146. 山本貞雄

    政府委員(山本貞雄君) 臨時行政改革調査会の答申事項は、これは正確に数えたことはございませんが、おおよそ細目ベースでは一千以上の項目があるであろうというふうに見ております。  なお、臨調答申の実施状況につきましては、ただいま各省等に問い合わせまして、その実施状況を伺いつつ、これについて審議を進めることにいたしておりまして、実は当初こういったことを行う予定にしておったわけでございますが、先ほど後藤田長官からもお話がございましたように、何か当面の緊急の二つの課題につきまして検討の上、七月半ばまでに意見をちょうだいしたいというふうなお話がございましたので、当面それを中断しておるわけでございます。  したがいまして、臨調答申全体につきましての詳細な実施状況につきましての検討は、これら二つの緊急課題を処理した上で今後検討したい。現在、そのような段階でございます。
  147. 内藤功

    ○内藤功君 これは、新しいことをきょう初めて伺いました。  そうすると、その中断する前はこの臨調の指摘事項一千項目以上というのをお認めになりましたね。一千項目以上、各省庁別の実施状況をあなたの方の事務局でチェックをしておられた、これは 間違いないですね。
  148. 山本貞雄

    政府委員(山本貞雄君) 行革審における審議の素材とするために、臨調答申全体についてのその推進状況を各省に問い合わせながら、その取りまとめを行いつつあったわけでございます。しかしながら、ただいま申し上げましたようなことで、とりあえず緊急課題を処理した上で、その上でこの推進状況の審議に取り組もう、そういうふうなことでございます。
  149. 内藤功

    ○内藤功君 今の臨調の指摘事項と、その実施状況をチェックした表になりますか、資料になりますか、それを資料として私に御提出いただけますか。
  150. 山本貞雄

    政府委員(山本貞雄君) ただいま申し上げましたように、臨調答申の実施状況につきまして審議をいたしますために、各省からその推進状況を事務局でヒアリングをしながら取りまとめつつあった段階でございますが、先ほどのような緊急課題が入りましたので、現在中断いたしておりますので、作業は完了いたしておりません。
  151. 内藤功

    ○内藤功君 提出していただけますか。今の段階での中間的なものでもいいんです。御提出いただけるかどうか。
  152. 山本貞雄

    政府委員(山本貞雄君) ただいまの私の御説明から御了解いただけますように、関係省庁から事務局職員が個々にいろんな形で事情聴取をいたしておりますので、現段階で先生に御提出できるような形の資料にはまとまってはおらないわけでございます。
  153. 内藤功

    ○内藤功君 私がこれをあえて聞きますのは、国民不在で、密室の中でやられてはいけないということです、この行革というものが。  それから今やられている中間の状況でも私にということは、これは国会にということであります。内閣委員会にということであります。やっぱり示すべきものだと私は思うんです。ただ、形ができていないというのであれば、これは形のないものを要求してもいたし方ありませんから、私はきょうはこれ以上言いませんが、また別の方で申し上げたいと思います。何かありますか。
  154. 山本貞雄

    政府委員(山本貞雄君) ただいまの点でございますが、臨調答申の実施状況の審議が終わりました段階で行革審としてこれに関する意見が取りまとめられますれば、これは当然公表いたしますし、また会議で決定された資料につきましても、行革審に諮りました上で差し支えない限り公表していくというのが行革審としての基本的な立場でございます。
  155. 内藤功

    ○内藤功君 別の問題に移ります。  法制局、来ておられますか。——人事院の勧告というものが恩給引き上げの基礎になっておりますが、この人事院勧告の重要性は、最高裁判所の四十八年四月二十五日、最高裁大法廷判決で強調されているところであります。私は、既に昨年八月九日の当委員会でも質問いたしましたが、この中で特に、代償措置が生存権にかかわるものであって、もしその代償措置が機能を果たさないで実際上画餅になったような場合に、は、争議行為をしてもそれは憲法上保障された争議行為であって、制裁などを科すことはできないのであるというのが、岸盛一、天野武一、この両裁判官の追加補足意見として出されておるわけでございます。  ところで、この追加補足意見の一番最後のところに、「以上のことは、多数意見においてとくに言及されていないが、その立場からは当然の理論的帰結であると考える。」、こう結んでおるわけです。そうすると、多数意見と同視すべきであるということになりますと、この追加補足意見というものは、並みの補足意見と違って、多数意見の論理的な帰結だという意味において非常なウエートを憲法判断上持つ意見だと思われるのであります。この点につきまして、前回聞きましたが、突然の質問だったものだから前回は答えがはっきりしなかったんですが、いかがでございますか。
  156. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 今、御指摘の昭和四十八年四月二十五日の最高裁判所の判決の岸、天野追加補足意見といたしまして、今、委員がお読み上げになりました部分と、もう一つ後段の方に、「当局側が誠実に法律上および事実上可能なかぎりのことをつくしたと認められるときは、要求されたところのものをそのままうけ容れなかったとしても、この制度が本来の機能をはたしていないと速断すべきでない」、この部分もございまして、この両者を含めまして、「以上のことは、多数意見においてとくに言及されていないが、その立場からは当然の理論的帰結であると考える。」というふうに述べられているわけでございます。  そういう追加補足意見を前提として申し上げますと、申し上げるまでもないかと思いますが、最高裁判所の裁判官の意見の表示といたしましての追加補足意見は、多数意見に加わられました裁判官が多数意見に付加して述べられました補足意見、これにさらに付加して述べられたものであるというふうに承知をしております。  このような意見の表示方法を前提として申し上げますと、御指摘の両裁判官の追加補足意見をそのまま多数意見と同視するということはできないのではないかというふうに考えますが、両裁判官の御指摘の追加補足意見につきましては、それなりに傾聴すべきものというふうに考えております。
  157. 内藤功

    ○内藤功君 なおこの論争をしたいんですが、ほかのテーマがありますので、これは私の言った多数意見の論理的帰結であるということを言って、それに対して多数意見の石田、岡原、下田、こういう方からは反論がないということからもそれがうかがわれると思うんです。そういうところから、また内容からいっても傾聴すべきものだ、こういう意味ですね、あなたの言ったのは。
  158. 前田正道

    政府委員(前田正道君) この判決につきましては、多数意見が申し上げるまでもなく八人であるわけでございます。八人の中で一人除かれました七裁判官が補足意見を述べておられるわけでございます。さらに、そのうちでお二人が追加補足意見を述べられておるわけでございます。多数意見に加わられました裁判官が八人あるわけでございますが、この裁判におきましては、それぞれ多数意見、補足意見、追加補足意見という形での意見の表示がされておりますので、追加補足意見をそのまま多数意見と同視することはできないでございましょうということで申し上げたわけでございます。
  159. 内藤功

    ○内藤功君 しかし傾聴すべきものである、こういうふうに言われたわけですね。
  160. 前田正道

    政府委員(前田正道君) 傾聴すべきことは、そのとおりでございます。
  161. 内藤功

    ○内藤功君 次に、恩給関係のあります総理府統計局の問題につきまして、一点お伺いをしておきたいと思うのであります。  私の調査によりますと、総理府統計局、ここには、他省庁の統計部門の職員に比べまして、六等級以下の職員比率が非常に多い構成になっております。昭和五十七年に内閣委員会で安武委員がこの点質問しておりますが、当時、統計局長は、五等級昇任のため、できるだけ主任の数をふやす、あるいは専門職等をふやす、こういう努力をしている、こういう答弁をなさっておりますが、現在もこの方針には変わりございませんか。
  162. 時田政之

    政府委員(時田政之君) お答えいたします。  二年前に前統計局長がお答え申し上げましたように、主任ポストの増加につきましてその後極力努力してまいったわけでございます。五十八年、五十九年度におきまして、主任のポストあるいは五等級の等級別定数等につきまして、それぞれ十数名ずつの増加をしてまいっておるわけでございます。今後ともそのような努力を引き続き続けてまいる、このように考えている次第でございます。
  163. 内藤功

    ○内藤功君 いろいろ組合の方からのお話を私承る機会があるんですが、そういう場合に、五等級へ昇任する、主任に昇任させるということは、六等級以下の方が非常に多い、その頭打ちの解消ということが一番大きな人事上のねらいだと思いますし、また職員の要求だと思うんですが、そういう場合に、例えば労働組合の活動に非常に熱心な人だとか、それから労基法上その他の権利主張を 非常に熱心にやられると見える方だとか、それから女性、こういう方を昇進の場合におくらせているというようなことは、これはあってはならぬことであります。  だけれども、例えば係長発令者の入局年次で見ると、男性と女性では十四年から十八年の差があるというようなお話を私聞いたことがありますし、主任発令の十一名のうち、組合員が非常に少なくて二人ぐらいだ、こういうお話も聞いたことがあるんです。これは念のために伺っておきますが、そういうことはされていないでしょうし、また今後ともあってはならぬことだと思いますが、この点、明確にひとつ局長さんのお答えをいただきたいんです。
  164. 時田政之

    政府委員(時田政之君) 五等級問題につきましては、現在の制度で申し上げますと、係長あるいは主任にならなければ五等級になれないという制度がございます。なおかつ、そういったポストの数といいますか、数の枠があるわけでございます。当然、枠がある以上、主任なり係長に昇任させます場合におきましては、人事上の要素もございますので、それぞれ種々の要素を総合的に勘案いたしまして昇任さしているわけでございます。当然、組合活動をやったから、あるいは女性であるから、こういった関係差別待遇といいますか、差別の扱いをするようなことは今までもやっておりませんし、今後もやっていくつもりは毛頭ございません。
  165. 内藤功

    ○内藤功君 今、明確にお答えいただきましたので、ぜひそのとおり実行していただきたいと思います。しかし、一面においては、私のところにいろいろそういう御意見も寄せられているものですから、そういう意見が出てくるということは、何かまた、あなたの方では差別はしていないと言っていても、そのようにとられる背景的なことがあったのかと思いますので、くれぐれもひとつ御留意いただくことを要望しておきたいと思います。  最後に、人事院にお伺いしたいと思います。  残りの時間がわずかでございますので、私の質問は、現在民間の給与調査をしておられると聞きますが、この概況、これは局長です。それから総裁には、私、最近国家公務員の職員の方の組合でつくっている「国公労調査時報」という雑誌をたまたま読んでおりましたら、三月号ですが、職員の方々のアンケートがありまして、公務員の賃金決定方式をどうしたらよいかというアンケートで、人事院勧告の実施を法的に義務づけるようにしろ、こういう意見がかなりなパーセンテージを占めておりました。私は、毎年毎年人事院制度の根幹にかかわるようなことを、実施します、実施しませんでしたということをここ何年も繰り返しておりますが、人事院が積極的に研究をして、必要な法改正、人事院の勧告を義務づけるというような例えば法制の改革、私は、これ一つに限りませんけれども、こういう何か完全に実行のできる仕組みについて、今までの二十数年の経験を生かして政府機関に提言をすべきものじゃないか、こう思うんですが、この二点、お伺いをしたいと思います。
  166. 斧誠之助

    政府委員(斧誠之助君) 第一点の民間給与の実態調査の現状でございますが、今週の初め、つまり七日から調査に取りかかったばかりでございまして、まだ幾らも進展しないという状況でございます。  ただ、内容といたしましては例年と同様でございまして、企業規模百人以上、事業所規模五十人以上、そういう事業所を対象にいたしまして七千六百社程度を調査することにいたしております。内容といたしましては、基本給、諸手当、ボーナスの状況、こういうものが内容となっておるところでございます。  それから第二点でございますが、国家公務員の給与を含みます勤務条件、これは法定主義でございます。先ほど、先生、最高裁の判決を引用されましたですが、その中でも厳しく法律でもって制定されているということが保障の一環であるという判示があるわけでございますが、したがいまして、最終的には国会で公務員の勤務条件というものは御判断をいただくというのが筋合いでございまして、しかも給与ということになりますと、通常の場合は予算審議も伴うということでございます。そういうことを考えますと、人事院勧告に法的拘束力を持つということにいたすと一体そういう関係はどういうことになるのであろうか、そこら辺が私たちといたしましては若干疑問があるのではないかという感じがしておるところでございます。
  167. 内藤功

    ○内藤功君 このアンケートでは、「労使の団体交渉」というのが三一・七%、「組合代表が参加する公正・中立機関」で決定するというのが一六・二%、「人勧完全実施の法律的義務化」というのが四五・五%、一番パーセントで多いですね。私は、この義務というのは非常に広い意味かもしれない、ただ、これが一番多かったということを職員の勤務条件を取り扱われる人事院総裁と担当局長は十分御留意いただきたいと思うんです、ここに入っている真意というものを、やっぱりここでかなえの軽重が問われているというときだと思いますので。  私は、人事院は勧告を出して、後は国会に任せる、それはそうでしょうけれども、それ以上に、やはりこの際アクションも考えなければならないのじゃないかと思う、私自身もこれという名案があるわけじゃないけれども。そういうことで積極的にやるというひとつ意気込みで作業をやっていただきたいということを強調いたしまして、これは答えは要りませんが、質問を終わりたいと思います。
  168. 柄谷道一

    柄谷道一君 恩給受給者でございますが、現在、本人の普通恩給百十六万二千人、同じく傷病恩給十二万二千人、遺族の普通扶助料四十五万七千人、公務関係扶助料五十二万九千人、傷病者遺族特別年金一万二千人、合計二百二十八万二千人が受給対象者となっております。そして、その支給総額は、五十九年度予算で一兆七千三百九十三億円、こうなっているわけでございます。このうち、旧軍人関係が九四・一%を占めております。  そこで、一昨日、同僚委員からの質問にも取り上げられましたが、受給者が逐年高齢化していることにかんがみ、恩給の将来展望が一体どうなるのかということは非常に大きな関心事であろう、こう思うわけでございます。そこで、恩給局長は、恩給の将来推定について、公務員のベースアップに伴う恩給の改善や制度の改正が予測しがたいということを前提として、もし恩給支給金額制度が現状のまま推移するならばという仮定を置かれた上で、昭和七十五年度には百二十四万人、七千六百億円、七十九年度には九十三万人、五千四百億円、八十五年には四十七万人、二千五百億円、九十三年には九万人、五百億円、そしておおむね今後四十年を経過すれば恩給受給者はゼロになるのではないか、こういう推定を発表されたわけでございます。しかし、公務員のベアが今後ないということはあり得ないわけでございますし、今申されましたような数字では的確に年金の将来推定を行うことはどうもいたしがたい。  そこで、仮定の問題でございますが、公務員のベースアップが今後三%上昇ということを続けた場合、四%の場合、五%の場合を仮定いたしまして、恩給がそれに準じて仮定俸給を改定する、これは一種の仮定の問題でございますが、その場合、一昨日述べられました数字がどのように変化をするのか、お示しをいただきたいと思います。
  169. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 将来推計は、今、先生お示しのように、恩給改定の将来のあり方、あるいは受給者の失権数等なかなか推定に困難な面がございますので、先生今お示しの仮定を置きまして、旧軍人恩給費がどうなるかということを、一昨日の答弁に対比いたしましてお答え申し上げたいと思います。  まず、ベースアップが三%と仮定いたしましたときでございますが、昭和七十五年度には一兆二千二百億円、昭和七十九年度には九千七百億円、昭和八十五年度には五千四百億円、昭和九十三年度には一千二百億円というふうに一応推計されます。  それから次に、四%と仮定いたしました場合でございますが、昭和七十五年度には一兆四千二百億円、昭和七十九年度には一兆一千七百億円、昭和八十五年度には七千億円、昭和九十三年度には一千七百億円、このように一応推計されます。  それから次に、五%と仮定した場合でございますが、これは昭和七十五年度には一兆六千五百億円、昭和七十九年度には一兆四千百億円、昭和八十五年度には八千九百億円、昭和九十三年度には二千四百億円、かように一応推計される次第でございます。
  170. 柄谷道一

    柄谷道一君 大蔵省にお伺いをいたしたいと思うんですが、大蔵省は、去る四月九日、本院の予算委員会で、五十九年から六十五年の財政収支の仮定計算をもとにいたしまして、社会保障費、いわばこれは移転支出です、これを例外的に伸ばした場合、他の経費の伸びがどのような姿になるかということを示した試算結果を提示されております。  それによりますと、政策的経費である一般歳出の伸び率を六十五年まで各年度ゼロに抑えた場合、社会保障費だけを六・五%伸ばしますと、公共事業費を除く他の経費は六十五年度に七・三%削減しなげればならない、簡単に申しますと、これが仮定計算の結果でございます。もちろん私は、この仮定計算の内容そのものについては精査を要する問題だとは思いますけれども、マスコミはこの仮定計算の結果を評して、財政当局が、増税または社会保険料の増徴という負担増か、それとも公共サービスの低下かという二者択一を国民に求める意図を持ってこの資料が提示された、こう論評いたしておるわけでございます。  私は、恩給は官吏、旧軍人等の公務員が相当年限忠実に勤務して退職した場合、または公務による傷病のために退職した場合、さらに公務のために死亡した場合に、国が公務員との特殊な関係に基づいて使用者として給付するもの、いわば国家補償制度でありまして、公務員の退職後または遺族の生活の支えになっているという事実にかんがみまして、その処遇を改善することは当然のことであろう、こう思います。そして、今回の改善措置に要する所要額三百四十億円につきましても、これはたびたび他の委員からも指摘されておりますように、国家公務員に対して人事院勧告を完全に実施しなかったという前提には非常に大きな問題はございますけれども、公務員が二・〇三%現実にベースアップして現在に至っておる、こういう現状からすればその改善との間に均衡をとろうとする結果でございまして、そう受けとめて差し支えない、こう思うんです。  しかし、私は、この恩給制度も社会保障制度全般、特に民間の年金制度や労災補償制度と無関係ではあり得ない、こう思うわけでございますが、大蔵省としては、この恩給というものを聖域として見ておられるのか、それとも他の財政全般とのバランスというものを配慮して、ここにも見直しが行われてしかるべしというお考えを持っておるのか、この点について端的にお示しをいただきたい。
  171. 小村武

    説明員(小村武君) 私ども現在進めております財政改革におきましては、あらゆる経費を見直す、聖域を設けることなく見直すという方針で臨んでおりまして、恩給もその例外ではないと存じて栄ります。
  172. 柄谷道一

    柄谷道一君 総務長官、公務員の給与改善については総務長官としては今後人事院勧告を尊重して完全実施するように努めると、再々この委員会で述べておられるところです。ということは、恩給も公務員のベースアップ、すなわち人事院勧告完全実施を前提としてその改善を図っていく、そのようにお考えと受けとめてよろしゅうございますか。
  173. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 人事院勧告については、四月四日でございましたか、労使いろいろお話し合いをいたしました。そのときにも申し上げましたが、勧告制度を尊重するという基本姿勢を貫く、完全実施に向けて誠意を持って取り組むと申し上げたと思います。その考えは、今も同じであります。  人事院勧告で結論として出ましたパーセンテージというものについて、今二・〇三%を御引用なさいましたが、そういった数字は幾らになるかは別として、出ました上はそれをべースにして恩給の方も考えたいと考えておるところでございます。
  174. 柄谷道一

    柄谷道一君 冒頭、私が指摘いたしましたように、三%、四%、五%のベースアップを続けても、事恩給に関しては受給対象人員の減少によってその総額はどんどんこれから減少してくるわけです。したがって、事恩給に関する限り財政上の問題はない、こう理解してよろしゅうございますか。
  175. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) これは直に財政上の問題と関係がないと言い切るのは、臨調答申との関係もございますし、他の年金とのバランスを考慮しろというようなこともおっしゃっております。だから、そのことを念頭から外すわけにはまいらないと思います。
  176. 柄谷道一

    柄谷道一君 しかし、公務員の給与は、完全実施に向けて取り組むと言うのでしょう。そうしたら、総務長官恩給についても完全実施に取り組んだ公務員のべースアップの結果に従う、これは当然の論理じゃないですか。
  177. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 私のと申しますよりは、総理府総務長官といいますか、人事院の勧告を尊重するという給与担当の国務大臣としては、そういったことを強く念頭に置いて、そういう願望を持ちつつ対処してまいるということでございます。
  178. 柄谷道一

    柄谷道一君 これ以上論議しませんけれども、これは総理府総務長官の決意じゃないんです。本委員会で、前総務長官が官房と協議をして、人事院勧告については完全実施に向かって取り組む、こう約束されたわけですから、これは中西長官個人の決意ではなくて内閣の決意である、これは当然でしょう。
  179. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 簡単に申し上げますが、他方、臨調答申ということもございます。それぞれ念頭に置きながら善処をしてまいりたいと思います。
  180. 柄谷道一

    柄谷道一君 臨調の精神につきましては、共済年金法のときに臨調の精神はここにあるということを指摘しておりますので、臨調の精神もこれありという発言はいただけませんということだけは申しておきます。  問題を次に移しますが、行政管理庁、いらっしゃいますか。——臨調の第一次答申、これは五十六年の七月十日に出されておりますが、恩給制度については、「五十七年度においては、恩給費の増加を極力抑制し、新規の個別改善は行わない」、こういう答申が出ております。それから五十七年七月三十日の基本答申、これでは前段で公的年金制度の統合一元化を強く求めておりまして、それに続いて、恩給については、「当面第一次答申の趣旨を尊重するとともに、年金制度とのバランスをとるために必要な見直しを行う。」、これが基本答申でございます。そして、その基本答申の出る前に、臨調第二部会報告が行われております。その第二部会報告には、「恩給制度は、現在年金制度と別個の体系のものとされているが、実際には、年金制度とのバランスをとる必要があるので、前述(3)の年金制度の改革と同時にこれについても改革を行う。」、こうなっておりまして、「前述(3)」とは、「五十八年度末までに成案を得て、速やかに実施に移すものとする」、これと関連づけておられるわけです。非常に簡単な答申でその真意をどうもつかみかねるのでございますが、臨調がこの答申をされました精神はどこにあったわけですか。
  181. 八木俊道

    説明員(八木俊道君) 臨時行政調査会に関するお尋ねでございます。  臨時行政調査会は、御承知のとおり、五十八年三月十五日に解散をいたしておりまして、答申のまさに成文の文言、これが政府に寄せられたわけでございまして、立案の背景等につきまして権威を持ってと申しますか、責任を持って十分なお答 えを申し上げる立場には必ずしもないわけでございますが、関係者の話でございますとか、当時の説明資料などを眺めてまいったわけでございます。意識をされました問題点と申しますか、ポイントはおよそ三つほどあったようでございます。  一つは、まずこの恩給制度なるものが明治八年以来、文官軍人等、いわば官吏制度の発達とともに生成してきた百年の歴史を持つ極めて特別な制度であるという点が一つ。  さはさりながら、第二点といたしまして、これは実質的に公務員OBに対する年金でございますから、公的年金の統合一元化もしくは制度の見直し、こういった情勢のもとにおいては、やはり社会保障の側面を強く持つと思われる恩給につきましては、公的年金の全体のあり方といわば類似した問題の見方をするという必要もまたある、給付水準でありますとかあるいは制度改善等につきましても公的年金とのバランスを考えつつ取り扱うべきである、これが第二点だったようであります。  第三点といたしましては、増税なき財政再建、こういう状況が、五十六年度におきましては五十七年度予算編成を目指しましていろいろな形の歳出の適正化、合理化、この方策を探しあぐねていたところでございまして、当時の予算規模では恩給総予算一兆六千億、こういうことでございますので、これもまた国の歳出の一環として特別にここだけを聖域というふうには扱えないのではないか、すなわち、そういう国の財政事情から見た制度のあり方、こういう視点もまた重要である。  この三点ほどが当時の立案の基礎であったようでございまして、ただいま御指摘の答申になったようでございます。
  182. 柄谷道一

    柄谷道一君 総理府にお伺いしますが、公的年金には、今後、段階的ではございますけれども、各制度を横断する基礎年金が導入されるわけでございます。既に厚生年金国民年金はその構想が明らかにされ、国家公務員等共済昭和六十一年からの基礎年金の導入ということが閣議で決定されております。  そこで、これと恩給との関連でございますが、現在の恩給受給者はおおむね既裁定年金受給者でございます。したがって、基礎年金導入という発想とこの恩給というものが果たして論理的、現実的に結びつくものかどうかということについて私は一つの疑問を持つものでございますが、恩給局はどうお考えでございますか。
  183. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 恩給におきましては、その対象者がすべて既裁定者でありまして、これは一応過去の制度でございますから新規参入者がないということでございます。これが、これから対象が生まれてきます他の公的年金とはまず全く違うところであろうと思います。それからその対象者の大部分が旧軍人という特殊な職務に服した者あるいはその御遺族である、また当然のことながら高齢になってきておられるというようなことがあります。そして、もちろん他の公的年金のように保険数理の原則によって運営されるものではないという、他の公的年金制度には見られない特殊性を有しているわけでございます。  したがいまして、既裁定年金であります恩給受給者の既得権の保障の問題を含めまして、恩給制度と他の年金制度とのこういう基本的な相違を前提としながら、しかし臨調御指摘のように、他の年金制度とのバランスをとるために必要な見直しについて、御指摘もありますので、検討を行っていくわけでございますが、現在、具体的にこの点をこう直さなければいけないというような点まで煮詰まったものがございません。さしあたって恩給制度と最も密接な関連を有しております国家公務員等共済組合制度について現在具体的な改革案が検討されているところでございますので、それらの動向などを見きわめながら検討を続けていきたい、このように思っている次第でございます。
  184. 柄谷道一

    柄谷道一君 臨調は、これは百年の伝統を持つ国家公務員に対する保障制度であるという側面と、もう一つの側面は社会保障制度の一環であるというこの側面と、二つの側面があります、そこでバランスを図るべく見直しをやりなさい、こういうことです。しかし、その見直しの中でも基礎年金制度の導入というのは既裁定年金者ばかりですからなかなか難しいということになると、今検討中ということなんですけれども、いつまでにその検討を終えられるんですか。そして、どういうところの面でバランスをとろうとしておられますか。
  185. 和田善一

    政府委員(和田善一君) いつまで、どういうところをという御質問に現段階ではお答えがまだできる状態になっておりません。ただいま申し上げましたように、国家公務員等共済組合制度の検討の結果等を見守りながら今後検討を続けていきたい、このように考えております。
  186. 柄谷道一

    柄谷道一君 これ以上責めませんが、長官、臨調の思想は、五十八年度中に成案を得て改革に、他の年金同様移しなさい、こういうことです。いまだ出ておりません。目標も定かでないということですね。これはやはり臨調の答申ですから、きょうお答えをいただくことは難しいと思いますけれども、一応民間の年金制度の改革のピッチ、これははっきり出ておるわけですから、それから公務員の共済制度のスケジュールというものも出ておるわけですから、これと見合いながら恩給も臨調答申を受けて時期的な目途も定め、検討内容についてもピックアップして作業を進めていくということでないと、臨調尊重中曽根内閣、泣きますよ。長官、そういうことを念頭に置いて当局を指揮されますか。
  187. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 念頭に置いております。事務当局と十分打ち合わせをしたいと思います。
  188. 柄谷道一

    柄谷道一君 大蔵省にまた一つお伺いしますが、大蔵省は、恩給も聖域ではない、こう言われたんです。昭和六十五年赤字国債依存体質の脱却、できるかどうかはいろいろ問題ありますけれども、総理がそう言っておられるんですから、当然そういう前提に立ちますならば、明年以降もマイナスシーリングが続いていくと思うんです。ところが、現在のマイナスシーリングの基本は、各省庁一律マイナスシーリングが建前です。そうしますと、例えば厚生省年金、健保等の法律補助金がその大部分ですから、どうしても画一的なマイナスシーリングを課せられると、制度の根幹にメスを入れてその手直しをしていかなければマイナスシーリングに達するわけにいかぬということで、これは健保だ、年金だと、いろんな問題法案が今国会に出てきておるわけです。総理府も、その予算の大半は恩給費です。ここで画一マイナスシーリングをかけられましたら、総理府は他に削るところがないということにもなりかねないんです。マイナスシーリングの総理府に対するお考えはどういうふうにしてかけていかれるわけですか。
  189. 小村武

    説明員(小村武君) 来年度以降のシーリングも恐らく厳しいものになるだろうということは予想されるわけでございますが、まだ具体的な内容についてはこれから検討を行っていくという段階でございます。私どもといたしましては、各省にシーリング、いわゆる要求の枠を設け、その中身については各省いろいろ工夫をしていただくということで今お願いしているわけでございます。  先生御指摘のように、厚生省等は年金、医療費等につきまして自然増が多いということで、そのシーリングの枠内におさめるというような大変困難な作業がございますが、これは各省とも同じような御苦労を願っているわけでございまして、総理府においても新たにシーリングが設定された段階ではその枠内でいろんな工夫をお願いするということになろうかと思います。
  190. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは大臣に言わないとしようがないのかもしれないですけれども、画一的マイナスシーリングを進めていかれますと、よほど無理がかかる官庁と、何とか知恵を働かせばその枠内におさまるという官庁が出てくることはこれは必然です。たまたま恩給費というのはこれから受給者が減っていくということで、長期的に見れば何とかバランスはとれるでしょうが、来年、仮に人 事院勧告で六%以上の勧告が出てべースアップした、そして恩給もこれに準じて上がるということになれば、これはことしより増加です。プラスに転じてきます。そういう問題について実態というものをよく把握した上でのシーリングのあり方というものを大蔵省でも検討していただかないとこれは大変なことになりますし、長官も閣僚として、そういう面については、十分に省庁ごとの実態の相違というものを踏まえた適正なシーリングのあり方について、ひとつ御発言を閣内で願いたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  191. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 確かに問題はあると思うんです。それをどういうふうに各省全体としておさめていくかという課題は、場合によっては避けられないわけでございますから、そういったような事態になった場合には、私一人で決めるわけでもございませんですけれども、いろいろ全閣僚と相談をしなければならないということはあり得ることだと思いますし、その節にはいろいろとまた主張もいたしたいと思います。
  192. 柄谷道一

    柄谷道一君 次に、問題を転じまして、旧軍人と自衛官の処遇のバランスの問題について、まず防衛庁にお伺いいたしたいと思います。  私が要求いたしました資料によりますと、昭和四十九年以降、最近十年間における殉職自衛官の事故に対して訴訟の提起された数でございますが、航空機事故五十七件、艦船事故はなし、車両事故が三十件、訓練事故が二十四件、その他十七件、この十年間に百二十八件の訴訟が提起されているわけでございます。これは防衛庁の資料ですから間違いのないところだと思います。このうち、現在審理中のものはどのぐらいございますか。
  193. 渡邉正身

    説明員(渡邉正身君) 御説明申し上げます。  昭和四十九年度以降五十八年までの十年間におきますところの訴訟提起件数百二十八件のうち、現在も裁判所で審理中のものは二十件でございます。
  194. 柄谷道一

    柄谷道一君 既に解決した問題、まだ審理中の問題を含めて、この訴訟になっております事件は、それぞれ事故の態様、原因、責任の有無、被害の程度、これが異なっておりますから、裁判所より提示されました判決が一見類似の事案でありましても、その判決内容を比較検討してその傾向を推論するということが非常に困難だということは私もよく承知いたしております。ただ、十年間百二十八件もの訴訟が起こされたということは、現在の補償制度の内容に問題があるということではないかと思うんですが、防衛庁の認識はいかがでございますか。
  195. 上野隆史

    政府委員(上野隆史君) お答え申し上げます。  防衛庁職員の災害に対します補償につきましては、防衛庁職員給与法第二十七条の第一項の規定によりまして、一般職の国家公務員、警察官等と同様の補償が行われるということになっております。また、その補償の内容も逐次改善されてきているところである、こう理解をいたしております。しかしながら、自衛隊員の公務災害の実情を見ますと、若年の隊員の比率が高いということでございますので、現行制度上は若年隊員の場合にはこれは補償額が低く算定されるという仕組みになっておりますので、ある意味でやむを得ないというところもございますけれども、しかし私どもといたしましては、これが改善につきましては何とか今後とも勉強し、また努力もしてまいりたいと考えております。
  196. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは旧軍人に対する恩給法と現在の国家公務員の災害補償法、この立て方が全部違いますから、なかなか両者を対比するということは難しいわけでございますが、私は両省に依頼いたしまして一つの仮定を置いて計算してみました。  これは、国家公務員災害補償法による補償、それから国家公務員共済組合法の規定による遺族年金の給付、この二つがあるわけですけれども、後者の方は共済組合員相互の互助共済ということが目的でございますから一応横に置きまして、国家補償による補償金額、特に年金を対比してみますと、現在の自衛官、これは二士一号俸の方が死亡いたしますと、一士一号俸の待遇になりまして、年金額は百十二万四千八百円。以下申し上げますのは全部妻と子供二人を仮定いたしております。三曹一号俸の方が殉職されますと、二曹一号俸の扱いになりまして百十九万七千円。三尉一号俸の方が殉職されて、一尉一号俸の扱いを受けるとして百五十六万八二百円。三佐二号俸の方が殉職し、二佐一号俸扱いを受けるとして二百十五万六百円。これが遺族補償年金額でございます。  ところが、今度は逆に、恩給法による旧軍人の扱いをこれに対比してみますと、兵、軍曹、中尉の場合は、全部最低保障にひっかかりまして百四十万四千円、ただし中尉の場合は、在職四十年以上の場合は百四十九万三千三百円、こうなるというんですね。それから中佐の場合は、在職年によって違いますが、二十年の者で百八十四万一千五百円、四十年になりますと二百四十二万四千五百円。  人間の命、しかも国のために殉ずるということは同じでも国家補償金額はこれだけ違う、私はバランスを失しているのではなかろうか、こう思います。いかがでございましょう。これは防衛庁と恩給局と両方に聞きます。
  197. 上野隆史

    政府委員(上野隆史君) お答え申し上げます。  旧軍人の公務死亡に対します公務扶助料が恩給法規定により行われておりますのに対しまして、自衛官の公務死亡に対しましては、国家公務員災害補償法の規定による遺族補償等と国家公務員等共済組合法の規定による遺族年金等が併給されております。したがって、恩給法規定による公務扶助料と国家公務員災害補償法の規定による遺族補償等のみをこれを単純に比較するということは、制度の面から見て必ずしも適当と考えられませんということが一つと、またこれによりまして旧軍人と自衛官の公務死亡に対する補償等のバランスについて判断するということは困難ではなかろうかと存じております。  なお、恩給法と国家公務員災害補償法とでは補償額の算定方法などが異なっておりますので、恩給法による補償の方が高いと一概に言うことはできないのではなかろうかと存じます。    〔委員長退席、理事坂野重信君着席〕
  198. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 恩給の場合は、先生御指摘のように、最低保障が多くの面にかぶっておりまして、受給者が妻で、扶養遺族が二人いるというケースにつきましては、最低保障はお示しのように百四十万四千円ということでございます。  それで、これと防衛庁の国家公務員災害補償法適用の場合とはバランスが悪いのじゃないかという御質問、これは難しい御質問でお答えするのに非常に困るわけでございますが、ただ私どもも、自衛官等現職の公務員が殉職した場合の国の補償のあり方についても、バランス上の一つの目安として配慮はいたしておるところでございます。それから今、防衛庁の方から御答弁がありましたように、共済年金関係あるいは一時金の関係等、恩給制度にない給付が自衛隊の方にあるというようなことも考えますと、必ずしも恩給と自衛官とがアンバランスであるというふうにも言えないのじゃないかというふうに私は考えておるところでございます。
  199. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは長官、ひとつ宿題として私ここで言っておきますけれども、共済というのは性格が違うんです。国家補償を対比しますと、例えば私挙げました同じ兵の殉職の場合、恩給によると百四十万円です。現在の場合は百十二万円です。それはどうかといいますと、恩給にある最低保険制度が国家公務員災害補償法にはないということです。恩給の方も上薄下厚という発想に基づいてげたを上げていくわけですから、同じような発想がこの国家公務員災害補償法というものにも生きてきませんと、恩給と現在の自衛官というものに対するバランスということが問題になってくる。これも内閣全体としての私は重大な一つの検討課題ではないか、こう思います。  さらに、国家公務員災害補償法二十条の二には、「百分の五十を超えない範囲内で人事院規則で 定める率を乗じて得た額を加算」するという加算制度がございます。これを受けて、人事院規則第三十二条にはそれぞれ加算のケースと率を明記いたしておるわけでございますが、人事院規則には自衛官に対する規定は含まれておりません。そして、防衛庁職員給与法二十七条でその準用をうたい、加算については、特例の取り扱いにつきましては政令で定められているにすぎないわけでございます。しかも、その政令を眺めてみますと、防衛出動による死亡、傷病という場合のケースは全然規定されていないわけでございます。別に法律で定めると書きながら、現在の現行法にも国のために殉じた自衛官に対する処遇について大きな穴があるというのが実態であるわけです。こういった面を内閣として総合的に検討して法的な整備を図っていくということでないと、専守防衛の立場に立って日本の平和と安全を守ろうとしている自衛官に対して片手落ちだと言われてもやむを得ないし、それは行政府及び立法府の大きな責任ではないかとも思うわけでございます。こういう面に対して早急な検討を求めたいと思いますが、いかがでございますか。
  200. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 自衛官についてのお話がございましたが、栄誉の問題についてもあるいは災害のときの対応、やはり欠けるところがあると私は思います。私、直接の所管ではございませんが、しかし内閣の一員としてはそういった点に関心を持って対処してまいりたいと思います。
  201. 柄谷道一

    柄谷道一君 これはひとつ国務大臣として、防衛庁長官とも十分お話し合いの上、こういう法的な不備についての整備をこの際求めておきたい、こう思います。  次に、板垣委員からの御質問で取り上げられたところでございますが、昭和十六年五月以降の中シナ地域の加算年を一カ月について三カ月に改定することにつきましては、第百国会で本院で請願が採択されているところでございます。この採択されました請願について、内閣から本院の議長に対して処理要領が回答として示されております。これによりますと、   戦地戦務加算年の取扱いは、戦時、事変の状況を掌握していた旧陸海軍省を中心として、加算事由の生じた当時において種々検討の上、加算の程度、加算の期間及び地域並びに戦務の範囲を勅裁によって定めていたものであり、これを現時点において見直すことは、加算制度の基本的な在り方を変更することとなり、また、制度内部の均衡という点からみても問題が多く、困難であるが、  なお、慎重に検討いたしたい。こういうことで、これは正式な回答文です。他の処理要領を見ますと、だめなやつはだめだと書いてあるんです。採択されたけれども、こういう理由でこの請願はなかなか行政府としては難しゅうございますと答えていますが、本件に関しては困難ではあるけれども慎重に検討したい、こうなっておる。  そこで、その必要性は、板垣委員が触れられておりますので、私は重複を避けます。「検討いたしたい。」というのであれば、一体何が必要かといいますと、私は請願者の湘桂作戦の実態に関する認識と旧陸海軍の意見を受けて今恩給局がとっておる認識との間に差があるということだと思うんです。検討しますということは、当然総理府厚生省に対して実態の調査を依頼する。そこで客観的な事実をつかんで、公正にそれを判断する中から初めてこの請願に対する取扱いの結論が出る。これをやらないと検討できないわけでしょう。認識が違っておって検討、検討と言ったって前へ進まぬわけですから、少なくとも厚生省に対してこの湘桂作戦の実態に対する調査を依頼し、この請願の成否というものを客観的に分析するという姿勢があってしかるべきだ、こう思うんです。長官厚生省調査を依頼されませんか。しないというのであれば、この内閣の処理要領というのはうそをついているということになります。いかがですか。
  202. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 閣議で全員で合意をしてその回答をしたわけでございますので、厚生省も当然その内容は御存じでございますし、なおこれから事務的にももっと詰めてまいる必要があるとは考えておりますが、先生の御意見のとおりの作業を我々としてはしてまいりたい、かように思います。    〔理事坂野重信君退席、委員長着席〕
  203. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは恩給に関する請願ですから、まず走り出す、スタートを切るのは恩給局ですが、ボールを投げないと、厚生省も投げてこないボールを受けるわけにいかないわけですから、今、長官が言われましたように、これは速やかに実態の調査厚生省に依頼をしていただきたい、そして厚生省調査を待ってこの問題の請願の処理を図る、そういうことをぜひやっていただきたいとお願いをいたしておきます。よろしゅうございますね。——うなずかれるのは速記録に載らないんです。うなずかれましたので、承知したというふうに議事録にとどめておきます。  それから次に、これは峯山委員から指摘があったわけですが、台湾人日本軍人軍属に関する問題でございますが、この問題が国会で取り上げられてから既に相当の期間が経過いたしております。我が党だけでも、衆議院内閣委員会で五十七年四月一日に木下委員が、五十八年四月十九日には和田一仁委員がこれを取り上げておりますし、私も五十七年の四月二十日、本委員会でこの問題について詳細な質問を行っております。  この際、繰り返す必要もないと思いますが、台湾は明治二十八年から敗戦まで日本領土として統治し、台湾住民に対して皇民化教育を行ってきたところでございます。そして、昭和十三年からは中国大陸の戦線に送るための台湾人軍夫の徴集が始まりました。昭和十六年十二月以降は、軍夫のほか、軍農夫、労務奉仕団、農業義勇団、高砂義勇団、通訳、俘虜監督、そして昭和十七年には陸軍特別志願制度、十八年には海軍特別志願制度がしかれまして、昭和十九年からは徴兵制度が実施されてきた地域でございます。  調べたところによりますと、日本の国策のもとに日本国民として召集されました台湾人の方は二十万七千百八十三名、これは前回の質問で厚生省が明らかにした数字でございます。同じくそのうち、厚生省調べでは、戦死者三万三百四名、そのうち二万三千名については名前すら確定をいたしております。戦傷病者につきましては、その数は確定されておりませんけれども、これは通常、戦死者の約三倍というのが戦傷病者の数、これが一般常識だと私は思っておりますから、傷病者の数は約十万人に達すると推定されるわけでございます。  しかも、本件につきましては、東京地裁の判決によりまして、立法府の方にこの問題の処理がゆだねられてまいりました。そして、国会が本委員会でたびたび附帯決議を行っていることは長官も御承知のところであろうと思います。  そこで、私、一昨日、外務省のお役人の答弁を聞いておりまして、どうも腑に落ちないんです。その答弁を要約しますと、日華平和条約が失効して外交関係がないとか、日本国民の台湾に対する残置財産等を含め日台間全体の請求権問題が未解決である、他の分離地域の人々との公平を配慮する必要があるとか、他にも元軍人軍属に対する未払い給与問題、元文官に対する恩給問題、軍事郵便貯金問題、台湾記号郵便貯金の支払い問題等の懸案を抱えておる、そして我が国の財政が苦しい、こういうことで、私が五十七年に質問したときの答弁も一昨日の答弁も何らこれは変わっていないわけでございます。  そこで、私は思うんですけれども、確かに文官恩給未払い給与、軍事郵便貯金、台湾記号郵便貯金、さらに我が国の残置海外資産、これは全部金の問題です。お金ですよ。この問題を私、軽視しろとは言いませんけれども、それはそれでトータルとしての話し合いが行われなければならない。しかし、この台湾人軍人軍属の問題というものはお金じゃないんです。命の問題です。  私も、南方戦線に参戦した経験を持つ者の一人でございます。戦友にも台湾人の方がおられまし た。しかし、その戦死された方は、台湾人として死んだのじゃないんです。日本軍人として我々とともに戦い、そして戦時の教育もそうでございましたけれども、天皇陛下万歳を叫んで死んでいっておるんです。こういう人々に対して、金の問題と絡めて、相当長い期間この問題が放置されているということは、私は大きな人道問題、道義問題であると同時に、国際信義の問題であって、これは政治家として許されるべき問題ではない、こう認識いたしますが、私の認識について、長官、異論がございますか。
  204. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 異論はございません。  一昨日も申し上げましたが、この問題については、元軍人軍属であった、今は台湾におられる方方にとっては日本人の心に訴えておられるわけでございます。我々としては、それにやはり何かこたえなければならないということは、日本人としての義務ではないかというふうにも思います。金額云々というような話になりますと、またいろんな問題が起こるかもわかりませんが、こたえはしなければならない、いつまでもほっておいてはいけない、かように思います。
  205. 柄谷道一

    柄谷道一君 そこで、これは歴代総務長官答弁を私、速記録から皆とってきたんです。  五十七年四月二十日、これは私の質問に対する当時の田邊長官の速記録です。私個人としては大変お気の毒と思っている。この問題については何らかの対応をしなければならない。台湾人日本兵の問題は、確かに日本のために戦場に出て、そして亡くなられた方または遺族の問題については、できるだけ何らかの解決を図りたい。また、これを図るべきだと考えている。大変困難な問題は横たわっていることは事実であるが、私も誠意を持ってこの解決に当たるべく努力する決意である。まことに立派な御答弁でございます。  前丹羽総務長官、五十八年四月十九日、これは衆議院の我が党和田一仁委員の質問に対する答弁でございます。事務当局事務当局としての考えはあるが、私どもは互いに政治家として先生の提唱はよく理解できる。戦後処理問題懇談会にこの問題を押し込みはしないが、御指摘の気持ちが伝わるよう努力したい。検討、研究の結果を踏まえてひとつやっていきたい。これが御答弁です。  そして今、現中西長官の御答弁がこれに加わりました。三代続く総務長官の決意の表明でございます。  そこで、端的に伺いますが、行政府はこの処置をあきらめて議員立法にゆだねられておるんですか、議員立法はせぬでもいい、我々が責任を持って解決するというお考えなんですか、お示しをいただきたい。
  206. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 私就任した直後、議員立法でいくのだという一部の自民党議員さんのお話もございました。それなりの期待も実はいたしておるのでございまするけれども、まだ話が煮詰まらないということでございます。ただ、この問題を処理するについては外交上の問題もある。それをどうクリアするかということが問題であるわけですが、それを数名の方々が今熱心に実は糸口を探していただいています。恐らく御期待に沿えるような方策が見出せるのではないかというふうに私自身は希望を持っているんです。その中身については申し上げる段階までに参りませんが、何とか早い時期に我々の希望がかなうようにしてまいりたい。その筋道のでき方いかんによっては議員提案でも結構ですし、そこは国会の御意思にお任せしたいと思います。
  207. 柄谷道一

    柄谷道一君 どうしても政府が動きがなければ、これは国権の最高機関たる立法府が、全党一致になるかどうかはわかりませんけれども、議員立法を提出して問題解決を図るしかない。何年も何年も同じことを質問し、歴代総務長官が同じことを答弁し、それで二年、三年そのままの状態で実態が静止しておるわけですから、これは問題だと思うんです。ぜひ、この点については、我々も真剣に考えますが、長官として、また再び前中西長官がという質問を私にさせないように、宿題を残さず、長官の任を果たしていただきたい。このことを希望いたしておきます。  それから次に、これは穐山委員が取り上げられました従軍看護婦問題でございます。  これは私も質問に取り上げまして、昭和五十四年に旧日赤従軍看護婦、五十六年度から旧陸海軍従軍看護婦に慰労給付金支給されましたことは、これに携った一人として評価をいたしておりますけれども、本院は引き続きまして五十五年、五十六年、五十七年、五十八年、この四回にわたって慰労給付金の増額を検討する附帯決議を行っているわけでございます。  私はくどくどくど申しませんけれども、長官も御経験されたと思いますが、これらの人々は、戦時中日赤救護看護婦または国直属の従軍看護婦として軍の命令によって戦時衛生勤務に服された方でございます。しかも、軍人と生死をともにして戦傷病者の救護に献身されました。そして、敗戦後も外地で長期抑留生活を余儀なくされて、このために婚期を逸したり、現在一人でやっと生活している方、ないしは体を悪くして就職も思うに任せないという方など、高齢化や社会構造や環境の変化の中で老後の不安が非常に増大いたしておることは、長官もよく御承知のところだろうと思うわけでございます。  ところが、本院のたび重なる決議、これは一言申し上げますと、立法府は軍人に準ずる者として物価上昇に対応して慰労金の目減りを防いで実質価値を維持するために心の通った改善措置をとりなさいということを求めたのがこの決議の精神であったと私は思います。ところが、五十九年度予算でも何ら配慮されておりません。この改善措置についてどうお考えになっておるのか、お伺いします。
  208. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) できることならば附帯決議を一番初めいただいたときに対処できておれば一番よかったのではないかと思います。しかし、気持ちはあるけれども、不如意だ、財布の方がうまくいかないというような事情も何回か続いてまいったと思うんです。そういうようなことを考えるんですが、だからといってこの問題をいつまでも放置しておっていい問題とも思いません。どこで、どういうふうに工夫するか、知恵を出したいと思います。
  209. 柄谷道一

    柄谷道一君 昨年は公務員給与の改正が凍結されたということで恩給法手つかずだったですから、ことしは苦しい財政の中で恩給を改善するんですね。そういう状態の中で、やはり軍人に準ずる働きをしてきたこれらの従軍看護婦に対しても温かい目を注ぐというのが公平な政治のあり方ではないか、こう思うんです。長官、何らかの方法でと、こう言われるわけですから、その努力に期待をかけたい、こう思います。  そこで、恩給局長が内藤委員の御質問に対してお答えになった答弁で私どうも納得いかないんですけれども、恩給が公務員に対して一年おくれではないかという質問に対して、一年おくれとは必ずしも言えないという趣旨の御答弁をされたんです。ところが、立法府は附帯決議の第一項で、一年おくれなんだからこれを近づけて同一時期に実施するように努力しなさいということを求めているんです。これは全党が賛成した附帯決議ですから、我々内閣委員会の意思は、現恩給は一年おくれであるという認識なんです。この趣旨を曲げずに素直にとっていただきたいということが一つです。  それからもう一つは、附帯決議をそんたくして十二カ月おくれを十一カ月おくれに近づけたんですかということに対しては、昨年凍結された事情もこれあり特例措置である、こうお答えになりました。ということならば、国家公務員共済年金の方も、昨年は凍結です。片や特例措置がとれて、どうしてことし特例措置が共済年金に配慮されないのか、この点の説明にはなりません。  この二点について、納得のいくお答えをいただきたい。
  210. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 附帯決議の御趣旨、そのお考えもよくわかるわけでございますが、私ども今まで考えております考え方は、毎年のベース アップを、前年の公務員給与を指標としてことしのアップをするということで毎年アップを続けてまいりました。したがいまして、必ずしも水準が一年おくれではないのではないかというふうに考えておりますが、なおこの点は他の公的年金制度のあり方等も参考にしながら検討を続けてまいりたいと思っておる次第でございます。  共済組合のことにつきましては、私ちょっとお答えする立場にございませんので、お答えできないところでございます。
  211. 柄谷道一

    柄谷道一君 大蔵省、来ておられますか。——大蔵省は、恩給の方は昨年凍結の見合いとしての特例措置をとった、こう言われるとすれば、大蔵省所管の共済年金は同じ昨年凍結でありながらどうして特例措置は考えられなかったんですか。
  212. 坂本導聰

    説明員(坂本導聰君) 国家公務員共済組合につきましては、御案内のように、旧法部分につきまして恩給と合わせて三月実施、それから新法部分につきましては四月実施、こういう措置になっているわけでございます。  お尋ねの、恩給になぜ合わせないかという点は、旧法部分につきましては、恩給公務員等の期間でございましたので、特例的に恩給の三月実施に合わせている。しかし、新法期間につきましては、御案内のように、共済年金も社会保険でございまして、労使の負担で原則として賄われるというものでございますので、現役の公務員の厳しい給与状況の中で、卒業生である年金受給者についてのみ従来以上に有利に取り扱うということは負担をする現役との関連からどうか、さらにもう一つは、一般的な民間を対象とする厚生年金の時期が四月であるということ、これも勘案して四月としたところでございます。
  213. 柄谷道一

    柄谷道一君 議論してもしようがないんですけど、恩給局長は、昨年恩給は凍結されたままだ、だから一カ月早めたんです、特例なんです、こうおっしゃる。我々これを受けるかどうかは別です。そういう政府の御姿勢ですね。ところが、今度は公務員の方も、新法部分についてはこれは昨年ベースアップ凍結です。条件は同じじゃないですか。民間の方とのバランス、これも考えなきゃなりません。しかし、民間の賃金は去年上がっておるんです。だから、この諭旨の立て方が、一年おくれを双方近づける、恩給は近づける、十一カ月にし、将来は十カ月にし、九カ月にし、これは財政状況にもよりますが、そういう姿勢でいくという発想ですというなら、これはまた別の理解の仕方があろうと思うのだけれども、ストップだから特例だといえば、公務員だってストップだから特例があってしかるべきじゃありませんか、民間の年金との差は民間の賃金は凍結ではなかったということで説明がつくじゃないですかという、素直な、率直な問いに対して答えようがないじゃないですか。
  214. 坂本導聰

    説明員(坂本導聰君) 説明が繰り返しになりますけれども、今御指摘のように、現役の公務員の給与は一昨年凍結されてベアがなかった、そういう中でOBの方々についてのみ、従来は四月以降の実施でございましたが、それを早めるということは現役とOBとの関係の均衡を失する。特に、現在の公的年金制度全体を通じて言えることでございますけれども、現在の公的年金制度を、このまま制度を維持してまいりますと現役の負担が非常に上がり過ぎるということから、むしろ現役とOBとの関係では年金の給付水準を適正化していかなきゃならないという状況にあるわけでございます。したがって、そういった面も考慮いたしますと、やはり新法期間について三月にするということはバランスを失するのではないかと考えたわけでございます。
  215. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは共済法の法案の賛否にかかわる問題でございますから、これ以上議論しておってもしようがありませんので、これは賛否の態度をもってこの問題に対する意思を表示いたしたい、こう思います。  ただ、恩給局長に言っておきますけれども、附帯決議の第一項をよく読んでください。恩給の実施時期については、現職公務員の給与とのおくれをなくするよう特段の配慮をするとともに、各種改善を同時期に一体化して実施するよう努めることということですから、恩給局は立法府の一年おくれだというこの認識をやはり重視してもらわないと、これは他の委員も言いましたけれども、一体何のためにこの附帯決議しているのだろうかということになりますから、この点は注意を喚起いたしておきたい。  私は、そのほかにも、恩給の年齢に対する停止問題ないしは他に収入がある場合の減額方法、いわゆる停止額の方法、これも、恩給と共済年金と厚生年金とこれを対比しますと相当の違いがあるんです。これはもちろん停止年齢、減額される年齢が、恩給は死ぬまでだとか、共済は七十までだとか、厚生年金は六十五歳までだとかいう差もあります。それから恩給給与外のあらゆる総所得を対象にしているということと、共済及び厚生年金はいわゆる給与所得を対象にしているという、制度、立て方の違いもありますけれども、恩給で言いますように二百五十万円の年金、そしてそれ以外の収入一千万という場合は、厚生年金は全額カットです。月額十五万五千円以上は六十五歳に達するまで厚生年金は全額停止です。やはり国家、国民のために、また長年公務員として働き、かつ死亡した人に対して国が手厚く見る、それは当然そうあらなければならぬ。しかし、国民の目から見ると、それが公平であるか、公正であるかという国民感情を無視することもできない。なるがゆえに、臨調はバランスを見ながら見直しなさいということを答申いたしておるわけでございますから、私はこの面についても十分な検討を求めておきたい。  そして、人事院勧告問題については、私は共済年金制度のときに詳しく申し上げましたけれども、やはり大もとをその場その場でいじれば他に波及するところは極めて大きい、そして矛盾が矛盾を拡大していく、こういう事態を深刻に御反省になりまして、五十九年度人勧問題につきましては、大臣の申されましたこと、そして内閣の我々に約束されました姿勢を堅持して完全実施に向けて取り組んでいただきたい、このことを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  216. 前島英三郎

    前島英三郎君 二日間にわたりまして、先輩委員、それから政府とのやりとりをいろいろと拝聴してまいりました。  初めに、恩給制度の性格につきましてお尋ねしたいと思うんですけれども、今日の恩給の実態を見ますと、受給者の構成の面から見ましても、また公務員の共済制度が整ってきているという制度的な面から見ましても、旧軍人軍属恩給制度といっても差し支えのない実情に近いだろうと思うんです。一兆数千億円の九十数%のそういう形の制度の中身を見ましても、そのようにとられるわけです。  ところが、恩給制度の歴史的な経緯を見てみますと、太平洋戦争の終結後、GHQの指令によりまして、一部の傷病者恩給を除いて数年間空白の時期というものがございました。その後、昭和二十八年に再出発したわけでありますが、その前にもう一つ曲折がありまして、すなわち、昭和二十七年に戦傷病者戦没者遺族援護法が制定されまして、いわばサンフランシスコ条約後、第一歩として戦傷病者戦没者遺族援護対策というものが出発したわけであります。その翌年に恩給制度が改正されまして、いわゆる軍人恩給の復活を見たわけでございますが、その際、前年に制定された援護法の対象者の中から恩給の方に相当数の方々が移行していった経緯もあるようでございます。  恩給の立場から見ますと、旧軍人軍属は同一の制度のもとで扱われるのが当然という考え方があるかもしれませんけれども、援護法制度当時の考え方から見れば、一本の制度体系が二本立てになってしまったと見ることもできるのじゃないかというふうにも思います。その後の経過を見ておりましても、恩給制度援護法は大体におきまして横並びで改善が図られてきておりますし、国家補償という基本的な考え方も、戦傷病者戦没者に対 する補償という面に限っていえば大きな違いはないと思うのでございます。恩給制度は、戦傷病者戦没者のみを対象としているのではなくて、一定の年数以上軍人軍属として勤務した方々対象としておりますから、援護法とはもともと性格が別だと言ってしまえばそれまででありますけれども、戦後史の上では援護法が先だったことを思い起こしますと、恩給とは一体何であるのか、改めて考えてみなければならないという気がするのであります。  私、兵役の経験がありませんし、終戦のときが小学校二年のときでございました。総務長官の、そういう意味での恩給とは一体何であるのかという基本認識をまず承りたいと思うのでございます。同時にまた、恩給制度厚生省でやっている援護行政との関係につきまして、どのような考え方で調整を図っているのか、あわせて伺っておきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
  217. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 恩給の性格というお尋ねでございます。  これは、恩給法にもその性格云々ということは実は明記してございません。通常、我々が考えておりますことは、国家公務員が相当年限長期にわたって忠実に勤務して退職した、戦前の言葉になりますが、官吏服務紀律というのがありまして、忠実、無定量の義務を負うというようなことが書いてございました。一般の民間に比べて給与水準も低うございました。そんなことが一つの背景にある。そのほか、公務によりまして傷病のために退職された人もある。死亡した方もある。そういったことを基礎的に共通した考え方としては、先ほど官吏服務紀律のお話をしましたが、国と、当時は役人ですが、公務員との関係は、普通の雇用関係とは違うのだ、そういう考え方がございました。そういった特殊な関係にある公務員と遺族に対して恩給という制度があったのだ、かような経過でございます。  そこで、援護法との関係云々のお話がございましたが、これは恩給局長から答弁させます。
  218. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 恩給というものの本質につきましては、今、大臣からお答え申し上げましたとおり、国と特別の雇用関係にありました文官それから軍人、これを対象として年金等の給付をしてきたわけでございます。ところが、お示しのとおり、戦後、第六項症以上の増加恩給を除きまして、軍人恩給昭和二十七年から廃止されました。昭和二十七年に戦傷病者戦没者遺族援護法が制定されましたので、廃止された部分でこの援護法が適用できるような戦傷病者につきましては援護法が適用になっていたわけでございます。一方、このときに、軍人恩給を復活すべきかどうかという検討もあわせて行われておりまして、結論といたしまして、昭和二十八年に恩給法軍人恩給が復活いたしました。これは戦前の制度にある程度制限を加えた形でございましたが、復活いたしてまいりましたので、従前から恩給対象であった軍人につきましては復活しました恩給法の方で取り込んでいく。したがいまして、戦傷病者戦没者遺族援護法の処遇対象となる者は、軍人以外の者で、戦傷病者及び戦没者遺族のうち、陸海軍部内の雇傭人、あるいは軍属や徴用者、動員学徒等が対象になったというふうに理解しております。軍人恩給が復活しましたので、軍人につきましては全部また恩給が適用になる、こういう経緯でございます。
  219. 前島英三郎

    前島英三郎君 大体、経緯はわかりました。  「わかりやすい恩給のしくみ」というパンフレットを読みましたんですけれども、最初のところに、「恩給制度とは」というのがございまして、その見出しに、(1)「公務員の忠実な勤務に対する年金制度」、今、総務長官もそうおっしゃっておりました。(2)として、「我が国で最も古い年金制度」、こうございまして、説明では、「公務員の退職又は死亡後における生活の支えとなるものです。」、こう書いてございます。生活をどこまで支えるのかについては書いてはございませんけれども、恩給といえども一つの年金制度であり生活の支えでありますから、当然社会保障的な制度の性格を持つというふうにも私は理解しているわけです。  先ほど来、これは特殊なとか、いろいろな言葉が交錯はしておりますけれども、公務あるいは戦争でけがをする、あるいは一家の柱を失う、当然社会的な弱い立場に追いやられます。あるいは長年勤め上げて老後の生活を恩給に依存する、これも弱い立場であると思うのであります。ですから、社会保障的な面をしっかりさせていかなければならない、こう私は思っております。  恩給制度のこうした側面について、恩給局とししはどう認識しておられるのか、また今後こういう面に対する充実はどのように取り組もうとしておられるのか、承っておきたいと思います。
  220. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 恩給制度の本質そのものは、先ほど大臣からお答え申し上げましたとおり、拠出によって相互に貢献するような社会保険あるいは公的扶助というものとは本質的に違うわけでございますけれども、年金制度といたしまして、社会保障制度、社会保険制度に類似する面も多々あるわけでございまして、また恩給というものが受給者の生活の重要な支えになっているということも事実でございます。  したがいまして、個々の問題の取り扱いにつきましては、例えば最低保障制度を導入していく、遺族加算あるいは寡婦加算制度を導入するというように社会保障的な考え方を取り入れてきておるわけでございます。本質は違うけれども、こういう手法は必要な場合に取り入れてきておる。今後とも、恩給の性格からきます基本的な相違はございますけれども、このような社会保障的な考え方を必要に応じて取り入れていくことは必要であるというふうに考えております。
  221. 前島英三郎

    前島英三郎君 社会保障的な側面に着目する形で取り組んでいきたいという局長からの御答弁ありましたが、社会保障として客観的に見てそのあり方が十分なのかどうかということは、これまた今後常に見ていく必要があるだろうと思うんです。  恩給審議会があるわけですが、別に社会保障制度審議会というのもございます。しかし、恩給法あるいはさきに述べました援護法等はこの制度審に諮ることはないわけです。なぜ社会保障制度審議会にかけないのか、またその理由。非常に厚生省とまたがっておりますのに何となく奇異な感じがするんですけれども、そしてまた制度審にかわるような何らかの方途を講ずる必要はないのか。この二点についてお伺いしたいと思うんですが、いかがですか。
  222. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 恩給制度改正につきまして、社会保障制度審議会にかけておりません。これは、先ほどから申し上げましたように、社会保障とは本質的に違うということが根っこにありまして、従前から社会保障制度審議会の対象とはしていないということで一貫して取り扱ってまいってきております。  社会保障制度審議会に諮らないわけでございますが、ただいま申し上げましたように、必要な社会保障的な考え方は随所に取り入れてきておるということでございまして、公的年金制度の今後の動向等にも配慮しながら、その辺注意深く適切な処遇改善に努力してまいりたいと考えている次第でございます。
  223. 前島英三郎

    前島英三郎君 恩給制度の中で私が最も関心を持っておりますのは増加非公死扶助料というのでございますけれども、恩給の社会保障的側面がこの扶助料のあり方の中に極めて端的にあらわれているのじゃないかという気がするんです。戦争や公務で比較的重い後遺症害を負った方々は増加恩給を受けられるわけでありますが、その方が亡くなった場合は、公務傷病が原因である場合はその遺族に公務扶助料が支給されます。また一方、平病死というんですか、公務傷病によらずに亡くなられた場合に遺族に対して支給されるのがこの増加非公死扶助料ということでございます。  今日でもなおそうでありますが、一家の働き手が重い障害を負った場合は単にマイナス一ではあ りませんで、一足す一はマイナス二になるなんというようなケースも間々あるわけなんですけれども、多くの場合はその奥さんも含めて、少なくとも二人が家に拘束されますから、障害を負った夫にかわって働きに出るというわけにはなかなかまいりません。そして、やがて重症の夫が亡くなったときに、公務上のけがが原因ではないから後は知りませんと言われたら、残された遺族は本当に途方に暮れてしまうわけなんです。そうならないようにというのがこの増加非公死扶助料であると私は思うんです。  遺家族の生活実態に目を向けたまことに適切な制度であると私は思うんですけれども、この制度は戦前からあったと聞いておりますが、どういう考え方に基づいて創設されて育ってきたのか、その沿革、それから制度の性格、目的、私も勉強した一部分を申し上げた程度ですから、例えればと思うんですが、いかがですか。
  224. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 増加非公死扶助料の性格につきましてまず申し上げますが、これはただいま先生がおっしゃいましたことと同じでございます。  長年、重度障害の公務員の介護に御遺族の方が従事したという特殊事情がありますが、それだけではなくて、そういう重度障害の方が、生存中に比較的多額の増加恩給という恩給を受けておられまして、それが死亡と同時に全くなくなってしまうということは余りにもお気の毒でありますので、これは普通の扶助料よりも割り増しをする必要があるという考え方からできてきたものでございますが、大正十二年に現行恩給法ができました当時は普通扶助料と同じ額で特別の割り増しがなかったわけでございます、こういう方々につきまして。  しかし、昭和八年に改正がございまして、五年間に限りまして年額の三割相当額を加給するということにいたしまして、さらに昭和十三年の改正によりまして普通扶助料の年額に対して一定の倍率を掛けるという方式に改めました。公務扶助料の方も、やはり普通扶助料に一定の倍率を掛けるわけでございますので、それとのバランスを考慮しながら運用してまいったわけでございます。  昭和二十八年の軍人恩給の再出発に当たりまして、増加非公死扶助料の年額は公務扶助料の年額の七五%相当が適当であるという判断に立ちまして、そういう割合になるように制度をつくりましてまいっておりました。一時、増加非公死扶助料の方が兵の階級において若干この率が低くなってしまったということがございますが、これも昭和四十五年に公務扶助料の七五%というふうに再度引き上げまして、その後増加非公死扶助料につきましても、先ほど申し上げましたような最低保障制度を取り入れてまいりまして、初め公務扶助料の最低保障額の七五%相当額ということでこの最低保障も設定してまいったわけでございますが、遺族加算制度昭和五十一年に創設いたしまして、ベースアップ以外の上積み改善をいろいろいたしたというようなことで、現在は遺族加算を含む額で比較しました場合、公務扶助料の最低保障額の七九・三%の水準になっているというのが現状でございます。
  225. 前島英三郎

    前島英三郎君 最低保障ということ、それがその意義を大変大きくしたというふうにも思うわけですけれども、増加恩給の平均年額というのは、五十八年三月末の数字で見ますと約二百三十七万円でいいわけですね、増加恩給の場合。一方、増加非公死扶助料の最低保障額は百四万七千円、今回改正で増額しましても百八万六千円、五十八年三月末の平均年額で見ましても百六万円、ごく大ざっぱに言うと、増加恩給の半分以下、四割ちょっとという水準でございます。平均年額で比較するのは適当でないかもしれませんが、これでは遺族の暮らしは随分苦しいのではないかというような気がするんですけれども、最低保障の額をもっと引き上げるべきだと思うんですが、その辺はいかがですか。
  226. 和田善一

    政府委員(和田善一君) いろいろな見方があると思います。先生のような見方もあると思います。  私どもといたしましては、今申し上げましたように、公務扶助料とのバランスということが一つあるわけでございます。しかし、通常のベースアップ以上に上積みをしていくという努力も続けてまいりました、公務扶助料あるいは増加非公死扶助料につきましては、相互のバランスを保ちながら、通常のベースアップ以外に、今回におきましてもさらに上積みをしていくというような努力を続けてまいりましたことを、どうか御了解いただきたいと思います。
  227. 前島英三郎

    前島英三郎君 これからのいろんな推移の中でぜひ最低保障の増額を、ちょっとその差があり過ぎるという感じがいたしますので、御検討いただきたいと思います。  恩給受給省が平病死した場合の遺族の受ける扶助料は、普通恩給の場合は普通扶助料、公務傷病者で増加恩給の場合は増加非公死扶助料ということになっておりますけれども、昭和五十一年にもう一つ別の年金ができました。これが傷病者遺族特別年金、通称傷遺特でございます。これは比較的軽症の方が受けている傷病年金なんですけれども、もしくは特例傷病恩給受給者が平病死した場合にその遺族支給されると聞いておりますが、この傷遺特年金につきまして、その性格、目的を伺いたいと思うんですが、いかがですか。
  228. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 増加恩給対象となっている方々に比べまして、傷病の程度が軽い傷病年金対象となる方、あるいは公務そのものではなくて公務に関連する原因によりまして疾病にかかられました特例傷病恩給対象方々、これらの方々がお亡くなりになりましたときには、御遺族に対しまして従前特段の措置はなかったわけでございますが、増加恩給に比べまして傷病の程度あるいは因果関係の程度が希薄であるということだったのだと思いますが、ただ、そういった方々の御家族も傷病者を抱えまして長年御苦労なさいまして、また本人の生存中は年金支給されて、死亡と同時にそれが全くなくなってしまうというのは適当でないという観点から、その御遺族に対しまして特例措置として年金支給することにいたしまして、昭和五十一年の法律改正によって設けられた制度でございます。  その年額も、当初は年額十万円ということで出発いたしましたが、その後逐年増額を図っておりまして、現行は二十五万九千円になっております。さらに、昭和五十八年度におきましては、年額四万八千円の遺族加算制度というのを設けまして、この額に定額をプラスするという措置も講じた次第でございます。
  229. 前島英三郎

    前島英三郎君 それにしましても随分低額だと思うんです、十万から二十五万九千円、そういう経過は経過として評価できるわけですけれども。受給者が一万二千人近くということを伺っておりますけれども、今後はもっと増加しそうな気がいたします。そして、年齢分布を見ましても、高齢化の傾向を増しております。社会保障的な面を重視したいという先ほどの御答弁もあったんですけれども、その社会保障的な面を重視するとするならば、ちょっと低額過ぎると思うのは私ばかりじゃないと思うんですけれども、せっかくつくった年金ですから、もっと引き上げて生活の支えになるようにしてはいかがか、こう思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
  230. 和田善一

    政府委員(和田善一君) これは、先ほど申し上げましたように、新たに設けられました制度でございますので、しかもその制度の趣旨が、御本人の死亡と同時に全く年金がなくなってしまうのも適当でない、また傷病者を抱えて長年御苦労されたというようなことから、全く年金のない方についての措置でございまして、御本人の御経歴によりまして扶助料が出るとか、あるいは御本人の御経歴によりまして遺族年金が出るというような方々年金があるわけでございますから、その方々にはここまでは必要でない、何も出ないという方に差し上げた制度でございます。  それで、十万円から引き上げた経過は申し上げましたが、さらに年額四万八千円の遺族加算制度 も設けるというようなことをいたしてまいりましたが、今後とも普通扶助料の最低保障額との均衡などを考慮しながらその改善に努力してまいりたいと考えている次第でございます。
  231. 前島英三郎

    前島英三郎君 最低保障額に戻りますけれども、いろいろな種類の恩給や扶助料における最低保障額は、普通恩給の最低保障額が一つの基準といいますか、目安にされているようでございます。  そこで、普通恩給の最低保障額の算定の考え方がどうなっているのかということを伺っておきたいんですけれども、一つは最低保障の性格という点、もう一つは引き上げを図る際の考え方、この両面について恩給局はどういう見解をお持ちなんですか。
  232. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 普通恩給の最低保障額の考え方について申し上げますが、本来、恩給制度にはこういう最低保障制度というものはなかったわけでございますけれども、勤続年数が長いにもかかわらず、恩給というものは俸給を基礎に計算いたしますので、俸給が低いというような理由によりまして恩給額が余りにも低いというものもあったわけなので、これを改善する趣旨で、最初、長期在職者、長期在職者と申しますのは、実在職年が兵、下士官の場合は十二年、准士官以上は十三年という必要在職年数を丸々持っている方、そういう長期在職者につきまして余りにも低い年金ではいかがかということで、最低保障制度昭和四十一年に設けたわけでございます。それから逐年それを増額してまいりましたために、短期在職者と申しまして、十二年あるいは十三年に実在職年数は達しませんけれども、加算年等によりまして達したことにみなされます短期在職者につきましてもこの制度を取り入れて、昭和四十九年から短期在職者にも広げたというのが基本的な考え方でございます。  これの改定の考え方でございますけれども、公務員給与の改定とか物価上昇率等を勘案してその額を決めていたところでございまして、本年はそれらを総合勘案いたしまして、昭和五十九年三月から兵の仮定俸給の増額に準じまして二・一%引き上げるということにした次第でございます。
  233. 高平公友

    委員長高平公友君) 恩給局長、正面に向かって大きい声で発言願います。
  234. 前島英三郎

    前島英三郎君 大分お疲れでしょうが、私が最後でございますから、ひとつ頑張ってください。  恩給法による障害の程度の表について伺いたいと思うんですが、私ども身体障害者の場合は、身体障害者福祉法の施行規則にあります等級表によりまして、一級から六級まで手帳に記載されております。恩給法の場合は特別項症という、これは初めて聞く言葉なんですが、特別項症から第七項症まで、それから第一款症から第四款症まで、こう続いているわけなんですけれども、その等級のありようは身障福祉法とはかなり違っているんです。私の見たところによれば、恩給法の等級表はかなり現実的ではないというか、日常生活上の不便さ、困難さを余り正確に反映していない、こういう指摘をせざるを得ないわけなんです。  考えてみますと、恩給法障害等級、症状等差と呼ぶのだそうですけれども、これは一部の手直しを除けば、基本的な構造は大正十二年に制定されたものがそのまま今日まで引き継がれているのでありますから、その後の医学の目覚ましい大きな進歩を考えれば、現在において合理性を欠くと思われる点があるのは当然なことだというふうにも思うんです。昭和四十一年から四十二年にかけて、この問題点について全面的に見直すために、症状等差調査会というのを設置して検討してもらい、その答申を受けているんですけれども、その答申は部分的には反映されたものの、全体としては採用さなかったようでございます。その理由は、どうして全体が採用されなかったのか、お伺いをしたいと思うんですが。
  235. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 傷病恩給症状等差調査会の報告が、先生御指摘のようにございました。各障害の全般にわたる大幅な格付の是正を指摘したわけでございます。これをそのままの形で法律化するということはいろいろ非常に問題が多かったわけでございまして、症状等差を、要するに症状、障害の格付をそのときの現行制度よりも引き上げるべきとされたものはともかくといたしまして、等差を引き下げるべきであるというようなものもありました。引き下げるというようなことになりますと、既得権ないしは期待権との関連で極めて困難な問題もございました。  そこで、いろいろ検討しました結果、調査会の報告において、おおむね現行よりも症状等差を引き上げるように指摘している肺結核とか精神障害等の内部疾患につきましては、できるだけ報告の趣旨どおりに取り上げることといたしました。症状等差を引き上げるものと引き下げるものとがまざっているような視聴覚障害とか肢体障害につきましては、一部の例外を除きまして原則として手をつけないということで、そのときは改正を行った次第でございます。
  236. 前島英三郎

    前島英三郎君 引き上げるものと引き下げるものとが混在していて、なるほど、引き下げに該当する方々にとってはそれはとんでもないということになりますし、しかし当然引き上げられるべきだと思われる方々にとっては非常に心外だという声もきっとあったろうと思うんです。不公平感というのはやっぱり相変わらずそれ以後も残されているのじゃないかというふうにも思うんですけれども、旧時代の表を使っていて私は不都合を感ずることは当然あるのじゃないかというような気がするんですけれども、将来これを見直すなり、再検討するなり、是正を図る意思がおありかどうか、その辺はいかがでしょうか。
  237. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 恩給法の症状等差の規定でございますけれども、これは割合に簡単な規定でございまして、その備考欄で、本則に掲げる各症に準じる者はまたそれぞれの等級に格付するという規定がございまして、査定いたしている次第でございまして、この症状等差表が進歩した今日の医学の目で見た場合に不合理な面があるから改正したらどうかという御指摘でございますれば、現在傷病恩給はほとんど全員が既裁定者で既に裁定されてしまっている、現時点でこれを改正することは非常に既得権、期待権等の問題が絡む困難な問題でございますが、新規にまた請求がある、あるいは事後重症で症状の等差を改定する請求が出てくるというようなことで現在でも格付の判断をしますが、その節は先ほど申し上げましたような大体各等級に相当するものについては各症に準じて格付するという一般的な規定によりまして、現代の医学で判断いたしましてそれぞれ妥当な等級に、顧問医の意見を徴しまして格付しているという操作を行っておりますので、その顧問医の意見、もちろん現代医学の一番進歩した意見を採用しているわけでございまして、まずこの査定については運用上別に不都合な点はないのじゃないかというふうに考えております。
  238. 前島英三郎

    前島英三郎君 二日間いろいろな話を伺っていますと、仮定ではありますけれども、やがてその受給者がゼロになっていくという部分まではなるべく新たなものには踏み込みたくないというような消極姿勢が恩給局にはあるような思いがいたしまして、ちょっと残念に思っているわけですけれども、年金制度といったものは、ある時点においては公平でなければならないと同時に、時間経過といいますか、歴史経過といいますか、そういう面からのバランス、公平さというものも無視できないであろうと思うんです。しかし、特に恩給制度は過去について国家補償という性格があるわけですから、なおさらその問題は重要だと思うんです。しかし、恩給受給者は今日生きておられるわけでありますし、今日の生活にとってどうなのかという点について十分必要な配慮がその時代に即応してなされなければならないというふうに私は思っております。そうなりますと、戦傷病者特別援護法に恩給法障害等級が援用されていることの是非について検討してみる必要もあるのじゃないかというような気がするんですけれども、なかなかその辺は踏み込みづらいところなんでしょうか。いかがでしょうか。
  239. 加藤栄一

    説明員(加藤栄一君) ただいまのお話でございますが、戦傷病者特別援護法は、いわば使用者的な立場にあります国家が、軍人軍属等でありました方の公務上の傷病に関しまして、国家補償の精神に基づきまして、療養の給付でありますとかあるいは補装具の給付等の援護を行うことを目的としております。この場合にその対象になります方を特定いたすわけでございますが、その場合に、かつて軍務に服しておった軍人でありますとかあるいは軍属でありますとか、そういう身分関係を見るとか、あるいは公務傷病にかかっておるかどうかという公務性を判断するというようなものと並びまして、その対象範囲を確定いたします一つの基準として、公務傷病に対する国家補償という点で給付をいたしております恩給法障害等級表を使用しているわけでございます。  戦傷病者特別援護法の基本的な給付といたしましては医療の給付でございますけれども、この場合は障害等級の最低限が問題なわけでございまして、その後一たん対象になりますと、公務傷病でありますれば現在の医療の給付は健康保険法の診療の方針等を準用しておりますが、それに基づきまして、特に格差を障害等級によりましてつけているわけではございませんので、その点につきまして特に現在問題はないのではないかというふうに考えております。  そのほか、国鉄の乗車船の無賃扱いというのがやはり特別援護法にございます。これは等級差によって給付内容が異なりますけれども、これは非常に大きなまとめ方をしておりますので、特にその面で現在の等級表で不都合な点はないように考えております。
  240. 前島英三郎

    前島英三郎君 いろんな御説明をいただきましたが、例えば国鉄の乗車船の無料扱いという問題にいたしましても、障害等級によって回数のランクがあるわけです、二回まではいいとか十二回まではいいとかというような。何か基本的な考え方が妙なんですけれども、この特別援護法にとって必要なのは、症状等差というランクではなくてその対象者の範囲であろう、私はこのように思うんです。昭和三十八年にこの法律は議員立法でできたそうですけれども、厚生省は何となく押しつけられたようなつもりでいるかもしれませんけれども、法律の体系を見ると、今私が申し上げたように、対象者の範囲、しかもそこには差別があってはならない、こういう気がするんですけれども、厚生省の今後の努力はそういう点に着目をしそうですか。いかがですか。
  241. 加藤栄一

    説明員(加藤栄一君) 私どもは、できるだけ給付につきましては需要に対応いたしまして必要な給付をいたしたいというふうに考えておりますので、適用に関しまして必要な場合は、この国鉄の乗車船の無賃の取り扱いにつきましては、沿革的な問題もございまして重度の方には回数を多くする、これも診療等に行かれる場合が多いとか、いろいろな理由が考えられるわけでございます。また、介護者をつける必要があるとかいうこともございますので、全く無差別にその等差に関係なくやるというのも必ずしも合理的ではないと思いますけれども、それ以外に不合理な取り扱いというものがもし御指摘ありますれば、私どもとしてもそれを検討いたしまして、合理的な取り扱いにできるだけ改善していくということは、もちろんやぶさかではございません。
  242. 前島英三郎

    前島英三郎君 戦傷病者方々の相当数の皆さんは、同時に身体障害福祉法の対象者にも該当しているわけです。したがって、戦傷病者手帳を持ち、あわせて身体障害者手帳を持ちまして、税制とかあるいは厚生省の一つの福祉法の中に必要に応じて各制度を活用できるようになっているわけなんです。法目的はそれぞれ異なっているとはいえ、対象となるお一人お一人にとりましては身は一つでございますから、両方が円滑な関係になっていなければならないと思うんです。援護局として身体障害者福祉法との調整は今後どのようにしていくおつもりなのか、それも伺っておきたいと思うんです。
  243. 加藤栄一

    説明員(加藤栄一君) 戦傷病者特別援護法によります援護のうちで、身体障害者福祉法と同種の援護といたしましては医療の給付の一部が同じところがございます。それから補装具の支給などございます。今も先生おっしゃいましたように、考え方の趣旨は違うわけでございまして、軍人軍属等の公務上の傷病に関しまして、使用者的な立場にあります国が国家補償の精神に基づきまして全額国の負担においていずれも給付しているわけでございます。身体障害者の方の福祉の観点から社会保障制度といたしまして制定されております身体障害者福祉法によります給付とは対応が違う場合もあろうかと思いますが、ただ、私どもの方では、身体障害者福祉法の改正あるいは議論といったものにつきましては逐一私どもの方でも把握いたしまして、取り入れられるべきものは取り入れたいという態度でおります。  また、戦傷病者特別援護法によります援護とこれらの身体障害者福祉法によります援護との両方が受けられる、重複するというような場合には、一般的には戦傷病者特別援護法の方の給付が優先適用されるというようなふうに調整はそれぞれされておるわけでございます。
  244. 前島英三郎

    前島英三郎君 その調整にいたしましても、身障手帳の人には対象になっていて、戦傷病者手帳の人には対象にならないという制度も幾つかあるわけです。高速道路の通行料の割引制度なんかがその一つだろうと思うんですけれども、しかし手帳を二冊持てばこの問題は解決されるわけです。ところが、戦傷病者手帳を持つ人でも身障手帳をとれる人ととれない人とがあるわけです。一方、身障手帳だけを持っている人から見ると、戦傷病者手帳を持つ人がうらやましいような感じを持つことも間々あるわけです。  こういう点が細かく申し上げるといろいろあるんですけれども、妙な不公平感が広がっては大変困るというふうにも私思うんですけれども、逆の見方をすると、二冊の手帳を持って双方のそれぞれ必要な制度を活用してよいのだということを戦傷病者手帳の所持者がみんな知っているかというとそうでもない、こういう部分もあるのじゃないかと思うんです。知らずに窮屈な暮らしをしている方がおられたら、それは大変お気の毒だと思います。制度は十分に活用していただきたいという点、そして前に申し上げました妙な不公平感を生まないための配慮、この両面において工夫していただくよう、ぜひ援護局の方に要望しておきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  245. 加藤栄一

    説明員(加藤栄一君) 戦傷病者手帳を保持される最低限の障害といいますのは、確かに身体障害者手帳の資格の最低限に比べますとかなり低目になっておりまして、これはやはり戦争で犠牲になられて戦傷病者になられたということに対する対応として合理的なものであろうと思っております。また、それを持つことによりまして、戦傷病者相談員によります相談でありますとか、あるいは各種の団体の会合等でも戦傷病者であることが明らかになるとか、いろいろな戦傷病者に固有のメリットというものは、これは不公平なものではないというように考えております。また、今、先生おっしゃいましたように、そのほかに身体障害者という面での側面ももちろんあるわけでございますので、その点についての広報といいますか、周知徹底にっきましては私どもも十分に留意いたしたい、かように考えております。
  246. 前島英三郎

    前島英三郎君 次に、恩給の新規請求並びに新規裁定の状況について伺いたいと思います。  戦後約四十年、恩給の新規請求というケースは余りなくなってきていると考えられます。しかし、恩給制度の改定は、昭和四十年代後半まで対象者の範囲にかかわるものがありましたし、また今日でも戦後処理問題を新たな問題として検討しなければならない面が出てきているように、解決したようで解決されていなかったケースもいろいろあると考えられます。その議論も二日間にわたってなされたようでありますけれども、そこで過去五年につきまして、恩給別に新規の請求及び裁定の状況を報告していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  247. 和田善一

    政府委員(和田善一君) 過去五年間にわたりまして、恩給種類別に受け付けました件数、それからそれを処理いたしました件数、新規のものにつきまして御報告申し上げます。  昭和五十四年。普通恩給、受け付けが一万四千四百三件、処理が一万三千百九十九件。普通扶助料、受け付けが二万四千三百五十七件、処理が二万二千七百六十五件。公務扶助料、受け付けが一千四百四十一件、処理が一千二百五十五件。傷病恩給、受け付けが九千七十二件、処理が一万一千百三十件。処理の方が多いのは前年から引き継いでいるからでございます。  昭和五十五年。普通恩給、一万一千六百四件、処理が二万一千六百十五件。普通扶助料、受け付けが二万六千三百三十八件、処理が二万五千五百八十一件。公務扶助料、受け付けが一千九十件、処理が千四百九十九件。傷病恩給、受け付けが七千百八十一件、処理が七千四百七件。  昭和五十六年。普通恩給、受け付けが六千五百五十件、処理が三千百八十二件。普通扶助料、受け付けが一万七千八百七十一件、処理が一万七千六百六十件。公務扶助料、受け付けが一千二百三十八件、処理が六百八十九件。傷病恩給、受け付けが五千六百九十四件、処理が六千六百四十四件。  昭和五十七年。普通恩給、受け付けが五千七百二十三件、処理が四千六百十一件。普通扶助料、受け付けが一万三千六百九十一件、処理が一万三千九百八十五件。公務扶助料、受け付けが一千三百八十五件、処理が六百五十五件。傷病恩給、受け付けが四千七百九十六件、処理が四千六百七十二件。  昭和五十八年。普通恩給の受け付けが三千八百五十九件、処理が六千七十四件。普通扶助料、受け付けが一万七千百二十一件、処理が一万五千三百四十四件。公務扶助料、受け付けが千二百八十二件、処理が千七十四件。傷病恩給、受け付けが七千百五十二件、処理が四千二百十七件。  以上でございます。
  248. 前島英三郎

    前島英三郎君 いろいろな受け付けが、たくさんの方々が受け付けが終わり、そしてまた処理もされ、それが繰り返し繰り返し一つの願いを持って皆様の方に届けられているわけですけれども、さてその中で、いろいろなケースがあるだろうと思いますけれども、私はかねてから三浦清重さんという方から相談をお受けいたしまして、何とかならないものか調査を始めていた件がございます。  三浦さんは、戦時中、海軍におられまして、ある事故に遭いまして、今日では車いすで生活しておられますが、今なお恩給を受けることができず、苦しい思いを強いられております。恩給の裁定そのものにつきまして、この場でどうというわけにはまいらないだろうと思うんですけれども、いろいろ事情を伺うにつけまして、何かいら立つような思いに駆られてなりません。それは一面戦争というものの非人間性がここに浮き彫りにされていることにほかなりませんが、三浦さんが一人で苦労されている姿を見ますと、政府は間違うはずはないが民や兵の言うことには間違いがあるものだというような、いわば官尊民卑の姿勢がかいま見られてならないという面も打ち消しがたいのでございます。  三浦さんの経過を御報告申し上げますと、事故は昭和二十年八月十六日に起こりました。終戦の翌日のことでございます。高知県夜須町手結というところの住吉海岸でその事故は起こりました。大戦の末期、神風特攻隊の名は知らぬ人はいないほどであろうと思いますが、特攻隊は空からばかりではありませんでした。人間魚雷回天の名を知る人は多いでしょう。しかし、震洋艇となりますと知る人は大分少ないようでございます。震洋は、一人乗りのモーターボートのような艇のへさきに二百五十キロ—三百キロの火薬を詰めまして、敵艦に体当たりをしようという特攻兵器でございます。終戦近くになってから、本州の南海岸沿いを中心に南はフィリピンまで配備したようでございますが、出撃の機会も少なく、終戦を迎えたようでございます。しかし、死を決意し、各基地で出撃を待ったことには他の特攻隊と変わることはありませんでした。  ところが、高知県住吉海岸にいた第一二八震洋特別攻撃隊第二三嵐部隊は思いもかけぬ運命に出会ったのであります。初めての出撃命令が終戦の翌日に出されたのであります。基地には二十五そうの震洋艇がありました。トンネルの中から隊員たちが艇を引き出して海岸に並べます。ところが、一そうが火を噴き出しました。数人がかりでこの火を消しとめます。誘爆すると危険ですから、一時全員が退避させられ、様子を見ます。待つこと十五分、あるいは三十分、もう大丈夫ということで再び配備についたわけなんです。そのときであります。震洋艇が次々と大爆発を起こしまして、二十二隻が吹き飛んだのであります。燃料だけならまだしも、火薬が詰められておりますから、それは物すごい爆発だったと証言をしている方がおります。この爆発表故で百十人以上の方々が亡くなりました。実は、正確なところはわかりませんが、もともと基地に何人いたのかということも実はわかっておりません。当時十六歳だった三浦さんもこの爆発で吹き飛ばされたのでありますが、部隊の三分の二の方々が亡くなりまして、また各地からの混成部隊であったこと等もありまして、三浦さんは当時そこにいたことの証明すらひどい苦労をしなければならない羽目に追い込まれたのであります。  一説によりますと、当局はこの事故の公表を避けたとも言われているのでありますが、なるほど事故の記録は極めて少ししかありません。当時、アメリカ軍は本土上陸、そのときの一億総自決的な教育を私どもも幼心に思い返すわけでありますが、そのため、三浦さんは苦労して数々の資料を以後集めまして、少しずつ判明した生存者を探しては証言をお願いして、当時の状況の再現に努めているわけであります。終戦の翌日にこのように散っていった若い命は一体何であったのか、改めて胸が詰まってまいります。そしてまた、この事故で傷を受け戦後を生き抜いてきた方々、まして三浦さんのような立場に置かれたとしたならば、戦後が終わらないのは当然であるというふうに言えると思います。厚生省は、この事故の実態をどのように把握しているのか、どのような調査をしたのか、伺いたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  249. 石井清

    説明員(石井清君) お答えします。  ただまい先生が申し述べられたほど当局は承知いたしておりません。現状を申し上げますと、本件に関します事故報告書というものは当局に保管されておりません。そこで、保有資料等を見ますと、昭和二十年八月十六日の午後七時ごろ、今、先生のお話のありましたように、敵艦が土佐湾に侵入の疑いがある、よって震洋は即時待機せよというような命が出たようになっております。今お話のありましたとおり、発進準備中に機関に火災を起こし、燃料タンクが爆発して、四回にわたる誘爆によって百十一名が亡くなられたという程度の事故を承知しているだけでございます。
  250. 前島英三郎

    前島英三郎君 調査というのはそういうものかもしれませんが、終戦時の混乱の中とはいえ、余りにもわからな過ぎるという感じがしてなりません。事故の全体像の調べ方、取りまとめ方に不自然なほど空白があるような気がするんです。再度徹底した調査をしていただきたいと思います。  こうした状況でありますから、三浦さんは御自分の力の及ぶ限り資料や証言を集めて頑張っておられるわけでありますが、個人の力では当然限界がありますし、また四十年近い歴史の壁にもぶつかっておられます。厚生省の把握した答えもわずか数秒程度の答えで片づけられてしまうのには、余りにも残念で仕方がないわけであります。  三浦さんに限らず、時間がたってから当時の状況を証明しなければならない場合、同じような困難にぶつかってしまうケースというのは少なからずあるのではないかと思うんです。幾つか恩給局にそうしたいろんなお願い事、先ほどの数字もありましたけれども、その中にはいろんなドラマが 私は秘められていると思います。こうした方々のために、やはり厚生省は十分に適切な協力援助をしてきたかというと、何となくやはり割り切り方は官尊民卑といいますか、先ほども言いましたように、役所の言うことは正しい、しかしそうした人々の、民や兵の言うことには疑いが多過ぎるというような冷たさの中にそういう姿勢がかいま見られるような気がしてならないわけであります。国家補償の見地と言うならば、こうした方々のために行政機関が奉仕するという姿勢で協力しなければならないと思います。厚生省は、過去そういう意味での協力は非常に怠慢であったと私は思うんですけれども、今後はしっかりと戦後処理という立場を踏まえて協力していただくようお願いをしたいと思うんですが、そのつもりがあるかどうか伺いたいと思いますが、いかがですか。
  251. 石井清

    説明員(石井清君) 私どもといたしましては、各種恩給請求者に対しまして、請求者の老齢化ということも考慮いたしまして、できるだけ意に沿うような対応はしているところでございます。  特に、今お話のございました傷病恩給請求者に対しましては、老齢化に加えまして受傷以来の年月が経過しているということもございまして、非常に公務の立証という資料は入手するのが困難であるということも十分承知いたしております。私どもに保有資料もございますので、それらをまず見まして、例えば当時の現認証明書があればその保管しているものの写しを交付する、あるいは資料がない人に対しましてはその状況をお聞きいたしまして、海軍病院等に入院しているならば、その海軍病院、そして終戦後引き継がれました継承機関の病院、大体国立病院が多いわけでございますが、そこの病院名、あるいはそこには病床日誌等があるかもしれないというようなこと、またそれも難しいというような場合におきましては、受傷当時の上司であるとか同僚の方のお名前をお聞きしまして、その人に私の方あるいは御本人からも当時の状況の裏づけをしてほしいということで、点を結んで一つの線にしようという努力はいたしておるところでございますが、請求者の方の置かれている事情を十分考慮しながら今後も請求指導に当たっていきたいと思います。また、より一層親切丁寧な指導を行いまして、御指摘の行われないよう努力したいと思います。
  252. 前島英三郎

    前島英三郎君 念のため伺いますが、軍籍に関する記録のうち、伏せられているものというのはあるんでしょうか。例えば、ある特定の任務に関するものは本人の特別な事情がない限り見せられないとか、そういう意味で取り扱い注意的なものがこの四十年たった今日も存在しているのかどうか。それはいかがでしょうか。
  253. 石井清

    説明員(石井清君) 私どもが保管していますのは、人事記録でございます。主として履歴原票でございます。これにはいろいろのことが書いてあるわけでございます。したがって、御本人または御本人の委任状をお持ちになった方にはお見せいたしております。また、必要ならコピーも差し上げております。それ以外の方に、何もなく来て、だれだれのを見せてくれと言っても一応御遠慮していただいている状況でございます。
  254. 前島英三郎

    前島英三郎君 傷病恩給に関しては、一つとして原因、それから二つとして経過、三として現症、この三大要素によって給否が決定されるわけでありますが、戦後の時間経過が長くなってまいりますと、二の経過の面でも申請者に困難が降りかかってまいります。よく老化による障害の増進が問題となるようでありますが、これにつきましては既にある程度のノーハウがあるようにも承っております。しかし、これについてもよく考えてみますと、現症が老化によるものであると国が認定することによって棄却の裁定になるわけでありますから、公務以外の原因を国が証明したことになってしまう危険もあるわけです。  やはり私は、そういう意味でも、三浦さんのケースは今もって戦後四十年間車いすである、その原因は、いろんな方々の証言を集めている、しかしその経過の中には若干結びついていかない、模索しなければならない点もある、しかし現症という部分は決して老化のための現症ではなくて、その原因というものははっきりしているということが既に幾つか証言されているわけですから、ぜひお役所的な感覚の中で卓上で結論するのではなくて、今後も、この四十年間の苦痛を思うならば、しっかりと厚生省でその人に成りかわって調査するような意気込みを私はお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  255. 石井清

    説明員(石井清君) 請求者に対しまして、十分その裁定に当たって裁定できるような資料の収集をできるよう私たちも努力したいと思います。
  256. 前島英三郎

    前島英三郎君 時間が余りありませんので、最後に、恩給事務について二、三お尋ねいたします。  現在五月でありますが、今回の増額改定の実施は三月からとなっております。受給者に対しては一月から三月分の恩給が通常は四月に支給されるわけでありますが、既に五月になっております。恩給証書の書きかえという作業もありましょうし、事務的にどんなふうに進めて、受給者のもとにいつごろ届くことになるのか、伺っておきたいと思います。
  257. 和田善一

    政府委員(和田善一君) まず、今回のベースアップ等の改善にっきましては、御審議いただいておりますこの法案が国会で成立させていただきましたならば、速やかに新証書をまず支給庁である郵政省に発送いたしまして、郵政省で必要な支給通知をつけまして、末端の各郵便局の方へ送るというような作業を急いで行いまして、大半につきましては六月中にもお手元へ届くということができるような体制で準備しております。法律を通していただき次第、大至急そういう作業を開始する予定でおります。
  258. 高平公友

    委員長高平公友君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。     —————————————
  259. 高平公友

    委員長高平公友君) 委員の異動について御報告いたします。  本日、野田哲君及び源田実君が委員を辞任され、その補欠として久保田真苗君及び海江田鶴三君が選任されました。     —————————————
  260. 高平公友

    委員長高平公友君) 本案の修正について内藤君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。内藤君。
  261. 内藤功

    ○内藤功君 私は、本案に対し、修正の動議を提出いたします。  その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。  これより、その趣旨について御説明申し上げます。  恩給法等の一部を改正する法律案に対する修正案趣旨説明。  政府提出法案は、恩給年額等の改定を公務員給与改定に際しての人事院勧告値切り実施に連動させるという不当きわまりないものであります。五十八年度の給付改善凍結に引き続くこの不当措置は、国民の生活水準や公務員の給与、物価その他の諸事情の変動に対応して恩給額を改定すると定めた法の趣旨に反するばかりか、国民生活犠牲の臨調路線を最優先させて、二百二十三万人の恩給受給者に一方的犠牲を強いるものと言わなければなりません。  政府原案の改定実施時期の一カ月繰り上げは、到底法案全体の反国民的性格を変えるに至るものではなく、その是正のためには、近年定着してきた人事院勧告完全実施による公務員給与改定を基礎に給付改善を図る必要があります。  これが本修正案を提出する理由であります。  次に、修正案の概要を説明いたします。  第一は、恩給年額計算の基礎となっている一般文官及び旧軍人のすべての仮定俸給年額を、五十八年度人事院勧告による行政職俸給表(1)の改善傾向を恩給局の従来方式で回帰分析した結果に基づいて引き上げるものであります。  なお、長期在職の七十歳以上の旧軍人等に係る 仮定俸給については、政府提出法案どおりその格付を一号俸引き上げることとしております。  第二は、普通恩給と普通扶助料、公務扶助料、増加非公死扶助料、特例扶助料の最低保障額及び増加恩給と傷病年金、特例傷病恩給の年額並びに傷病賜金を、恩給局の従来方式によりそれぞれ仮定俸給の最高の引き上げ率六・八%と同率の引き上げを行うことであります。  傷病者遺族特別年金についても六・八%の引き上げを行います。  第三は、扶養加給を五十八年度人事院勧告による扶養手当増額の例により引き上げることであります。  第四は、高額所得制限に係る改定以外の改定の実施期日を本年三月からとしていることであります。実施期日については一年おくれの是正を求めてきた従来からの本委員会附帯決議の趣旨からいえば、昭和五十八年四月からとすべきではありますが、恩給局の従来方式による修正を行うとの前提で修正案を取りまとめることとしたため、これをあえて本年三月からとしたのであります。  以上が、本修正案を提出する理由と修正案の内容の概要であります。  なお、本修正に伴う必要経費は八百九十億円と見込んでおります。  恩給年金生活者の切なる願いにこたえるべく本修正案への委員各位の御賛同をお願いいたしまして、趣旨説明を終わります。
  262. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまの内藤君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取いたします。中西総務長官
  263. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) 本修正案については、政府としては反対であります。
  264. 高平公友

    委員長高平公友君) それでは、修正案について質疑のある方は御発言願います。——別に御発言もないようですから、これより原案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに恩給法等の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、内藤君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  265. 高平公友

    委員長高平公友君) 少数と認めます。よって、内藤君提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  266. 高平公友

    委員長高平公友君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  坂野君から発言を求められておりますので、これを許します。坂野君。
  267. 坂野重信

    ○坂野重信君 私は、ただいま可決されました恩給法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党・国民会議日本共産党、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     恩給法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の事項について速やかに検討のうえ善処すべきである。  一、恩給の改定実施時期については、現職公務員の給与改定時期を考慮し、均衡を失しないよう配慮するとともに、各種改善を同時期に一体化して実施するよう努めること。  一、恩給の最低保障額については、引き続きその引上げ等改善を図ること。  一、扶助料の給付水準については、さらにその実質的改善を図ること。  一、戦地勤務に服した旧日赤救護看護婦及び旧陸海軍看護婦に対する慰労給付金の増額を検討すること。  一、恩給受給者に対する老齢福祉年金支給制限を撤廃すること。  一、外国特殊法人及び外国特殊機関の未指定分の件について、速やかに再検討を加え適切な措置を講ずること。  一、かつて日本国籍を有していた旧軍人軍属等に係る戦後処理の未解決の諸問題については、人道的見地に立って検討すること。  一、旧満洲国軍内の日本人軍官の処遇問題について検討すること。  右決議する。  以上でございます。
  268. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいま坂野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  269. 高平公友

    委員長高平公友君) 全会一致と認めます。よって、坂野君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、中西総務長官から発言を求められておりますので、この際、これを許します。中西総務長官
  270. 中西一郎

    国務大臣中西一郎君) ただいま御決議になりました事項につきましては、御趣旨を体し、十分検討してまいりたいと存じます。
  271. 高平公友

    委員長高平公友君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  272. 高平公友

    委員長高平公友君) 速記を起こしてください。     —————————————
  273. 高平公友

    委員長高平公友君) 次に、昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の質疑は、既に四月十九日の委員会で終局いたしております。  この際、本案の修正について小野君から発言を求められておりますので、これを許します。小野君。
  274. 小野明

    ○小野明君 私は、本案に対し、修正の動議を提出いたします。  その内容は、お手元に配付されております案文のとおりでございます。  これより、その趣旨について御説明申し上げます。  本法律案は、恩給法等の改正内容を参酌して、共済年金の額の引き上げ等を行おうとするものでありますが、その引き上げ率は平均二%という低率でありまして、老後の生活のすべてを年金に託している共済年金受給者の処遇改善という点において、ほど遠い措置と言わなければなりません。  恩給及び共済年金は、五十八年度にその引き上げが見送られていることは御承知のとおりでありますが、今回、例年と異なり、恩給の改定実施時期を三月としていることは、わずか一カ月とはいえ、現職公務員の給与改定時期とのおくれを取り戻すという当委員会の従来からの附帯決議に沿うものと思うのであります。  この恩給措置に倣い、本法律案では、国家公務員等共済組合法及び旧公共企業体職員等共済組合法の施行前に係る期間の年金額については本年三月から改定することとしているのでありますが、これらの法律施行後に係る期間の年金額の改定は本年四月からとなっているのでありまして、両者の改定実施時期についてことさら差異を設けていることは、まことに理解に苦しむところであります。国家公務員共済組合審議会においても同趣旨の答申を行っているのであります。  このことは、恩給の改定実施時期に倣ってきた従来の経緯にかんがみても、処遇改善の後退と言わざるを得ず、これを認めることはできません。  私たちは、このような立場から修正案を提出するものでありまして、その内容は、国家公務員等共済組合法及び旧公共企業体職員等共済組合法の施行後に係る期間の年金の額の改定実施時期を一カ月繰り上げ、三月から実施しようとするもので あります。  以上が、修正案の提出理由とその内容の概要であります。  なお、本修正により必要とする経費は約七億九千万円と見込んでおります。  委員各位の御賛同をいただき、速やかに可決されるよう要望して、修正案の趣旨説明を終わります。
  275. 高平公友

    委員長高平公友君) まだいまの小野君提出の修正案は予算を伴うものでありますので、国会法第五十七条の三の規定により、内閣から本修正案に対する意見を聴取します。竹下大蔵大臣。
  276. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ただいまの修正案に対する国会法第五十七条の三に基づく内閣の意見要旨について申し述べます。  この修正案につきましては、政府としては反対いたします。
  277. 高平公友

    委員長高平公友君) それでは、修正案について質疑のある方は御発言願います。——別に御発言もないようですから、これより原案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案について採決に入ります。  まず、小野君提出の修正案の採決を行います。  本修正案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  278. 高平公友

    委員長高平公友君) 少数と認めます。よって、小野君提出の修正案は否決されました。  それでは、次に原案全部の採決を行います。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  279. 高平公友

    委員長高平公友君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  小野君から発言を求められておりますので、これを許します。小野君。
  280. 小野明

    ○小野明君 私は、ただいま可決されました昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議日本社会党、公明党・国民会議、民社党・国民連合及び参議院の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。  昭和四十二年度以後における国家公務員等共済組合等からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、本法律の施行に当たって、次の事項について一層努力すべきである。  一、昭和五十八年度において退職した公共企業体職員の公共企業体共済組合法に基づく退職年金の額について、今後、共済年金額改定の際に、昭和五十七年度において退職した職員に係る今回の措置と同様の調整措置を講ずること。  一、共済年金への基礎年金制度導入等に当たつては、共済年金制度の沿革、性格をふまえ検討を行うとともに、共済組合員の意向を反映させるよう努めること。  右決議する。  以上でございます。
  281. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいま小野君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  282. 高平公友

    委員長高平公友君) 全会一致と認めます。よって、小野君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、竹下大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。竹下大蔵大臣。
  283. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましては御趣旨を体しまして十分検討いたしたいと存じます。  ありがとうございました。
  284. 高平公友

    委員長高平公友君) なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  285. 高平公友

    委員長高平公友君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十六分散会      —————・—————