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国務大臣(
後藤田正晴君) それでは、簡単にその日の経過をお答えいたしまして、その後御
質疑の中心点についてお答えいたしたいと思います。
最初に、第二臨調の御答申について、臨調御答申のままでないものもあって御意見等もあろうかと思うけれども、現実を踏まえながら最大限の努力をして実現に努めております。この国会も、行革関連法案三十本国会の御
審議をお願いしているのですが、だんだん会期も迫っておりますが、
政府としては全力を傾けて、国会に御
審議をお願いし、成立に向けて精いっぱいやってまいりたい。
こういう一般的なお話をした後、御案内のように、そろそろ六十年度の予算の編成に入りますから、その際には、財政当局は財政当局なりにシーリングの問題があるわけでございます。八月の末日までに各省は概算要求を出さざるを得ない、こういう時期でもございますので、来年度の予算の編成作業に入るのと相並んで、かねがね第二臨調からお示しの増税なき財政改革、この具体的な方策を、大変厳しい財政状況にございますから、そこで行革審としてもいま一段と御検討をして、できる限り具体的な御意見をちょうだいできればありがたい。
第二番目は、何といっても全体の統治機構の上から見て、行政改革を進めるという場合には地方行革というのが大変重要だ、三千三百のうちどんどんやっていただいておるのもあるけれども、遺憾ながら手のついていない団体もある、これはやはりある程度歩調をそろえてやっていただかなければ成果が上がらない、しかし同時に、この問題は地方分権、地方の自治権の尊重、こういう立場も十分お考えの上でひとつ地方行革についていま一歩踏み込んだ御意見をちょうだいできればありがたい。これは予算編成に絡みますから大体七月の十五日ごろを目安にして御意見をちょうだいできれば大変ありがたい。こういうお話をしたわけでございます。
その後で、臨調の御答申を読ましてもらいますと、国政全般にわたって、深浅の度合いの差はありますけれども、大体各方面にわたっての御意見をちょうだいしておるのだけれども、私自身考えてみまして、この上とも一層深めた御議論をしていただきたいと思う点が四つございますということで、先ほど内藤さんがおっしゃったような、一つは先導的技術の研究開発について、これは
日本の先行きを考えた場合に、せっかく御答申はいただいておるのだけれども、もう一歩深く、そして広く御検討を願えれば大変ありがたいように考える。
それからもう一点は、最近いろんな問題が起きたときに、例えば対外経済の問題が起きると必ず四つ五つの役所が大変な深刻な争いになる。なかなか
日本に
政府全体としての方針がまとまりにくいということがしばしば見られる。あるいはまた、行政改革を進める場合にも、これはそれぞれ各省の立場がありますから、当然それだけの熱意を持って各省おやりになる。これは非常に結構だけれどもまとまらないという面がある。そういった際に、内閣全体としての統制あるいは総合調整、こういう面について何か今までの御答申以上にこれも御検討願えぬであろうか。
それからいま一つは、国の行政を進めて経費の効率化を図るといった場合に、御案内のように、各種の公社、公団、特殊法人、これらは本来の設立の趣旨は
政府のいいところと民間のいいところをとる予定であったのだ、ところが世間の批判にもありますように、それぞれ勉強はしてもらっておるけれども、いま一歩活性化ということについて何か打開をするといいますか、改善をするといったような点がありはしないかという点を私はしみじみと感じる、ここらについても御検討いただきたい。
それからもう一つが御質問の点でございますが、これは私の過去の経歴上からくるのですけれども、大体突発的な重要事件に私の生涯はほとんどぶち当たってきたわけでございますが、たまたま昨年官房
長官のときに大韓航空機事件が勃発をしたわけでございます。これが国際緊張を増し、出先機関の無思慮な行動
いかんによっては、これは大変危険な状況も予想せられないではないわけでございます。こういった際に、
日本の
政府として間違いのない方針を決めなきゃならない。あるいはまたハイジャック、これはいつ起きるかわかりません。今度起きたときに、人命は地球より重いといって殺人の刑事犯を国外に出すといったようなことが今日の国際情勢の中で、
日本が主権国家として本当に国際社会の中で許されるのかどうか。それじゃどうするのだといったようなことになると、なかなかこれは決断の非常に難しい点がある。しかも、これはいつ起きるかわからぬではないか。あるいは大災害がいつ起きるかわからない。仮に東京なんかで本当に手のつけられないような大災害が起きたときに、
日本の国のように一点集中、つまり東京を中心の国柄の場合に一体どのようなことになるのだろうか。
それぞれ、こういった問題については
所管官庁があるわけですから、みんな今勉強しているのです。しかしながら、それらの
所管官庁の枠を超えて
政府全体が対応しなきゃならぬときの
政府の基本の物の考え方はどうするのだといったようなことで、国際的にも今、いつ、どこで何が起きるかわからぬ状況でございますから、こういったときの対応に間違いのないように、結局は幾ら
制度をつくっても人であることは間違いありませんけれども、しかし、さればといって人任せではいかぬのではないか。やはり仕組みというものを真剣にここは考えておかないと、
国民の本当の
意味での命と財産を守らなきゃならぬという
政府の職責が十分いかぬのじゃないか。ここらをひとつ、せっかく国政全般について、行政の改革、これは何も削ってしまえばいいという問題でありません、後ろ向きだけでなしに、先行きを見てやらなきゃならぬ仕事についてはこの
審議会で何とかひとつ御勉強していただければありがたいのだ、したがってこの問題については私は時間を切るとかそういったことを一切申さないで、ともかく御検討をしていただきたい、かようにお願いをしたのが私の真意でもあるし、経緯でございます。