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1984-04-26 第101回国会 参議院 内閣委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十六日(木曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月二十四日     辞任         補欠選任      下村  泰君     前島英三郎君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         高平 公友君     理 事                 亀長 友義君                 小野  明君                 太田 淳夫君     委 員                 板垣  正君                 岡田  広君                 源田  実君                 沢田 一精君                 林  寛子君                 桧垣徳太郎君                 堀江 正夫君                 野田  哲君                 矢田部 理君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 柄谷 道一君                 前島英三郎君    国務大臣        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)       中西 一郎君    政府委員        北方対策本部審        議官        兼内閣総理大臣        官房総務審議官  橋本  豊君        総理府恩給局長  和田 善一君        運輸大臣官房長  松井 和治君        運輸大臣官房総        務審議官     西村 康雄君        運輸大臣官房審        議官       丹羽  晟君        運輸省鉄道監督        局長       永光 洋一君        運輸省自動車局        長        角田 達郎君        運輸省航空局長  山本  長君        労働省労働基準        局長       望月 三郎君    事務局側        常任委員会専門        員        林  利雄君    説明員        公正取引委員会        事務局審査部第        一審査長     河村  穰君        警察庁交通局審        議官       八島 幸彦君        警察庁交通局交        通企画課長    広谷 干城君        海上保安庁警備        救難監      森  孝顕君        郵政省電波監理        局無線通信部陸        上課長      大瀧 泰郎君        日本国有鉄道常        務理事      太田 知行君        日本国有鉄道技        術開発室副技師        長        立松 俊彦君        日本国有鉄道旅        客局総務課長   本田勇一郎君        日本国有鉄道工        作局機械課長   岡田 圭司君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○運輸省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二十四日、下村泰君が委員を辞任され、その補欠として前島英三郎君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 高平公友

    委員長高平公友君) 次に、運輸省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 峯山昭範

    峯山昭範君 今回の設置法案につきましては、もう既に同僚議員太田委員や、また他党の委員皆さんからも随分質問が行われておりますので、できるだけ重複しないように質問をしたいと思っております。  しかし、きょうは初めてですから、今回の設置法案の概要について、初めに御説明願います。
  5. 松井和治

    政府委員松井和治君) 今回、運輸省は、省始まって以来の大きな行政改革計画いたしたわけでございまして、その改革本省外局地方局というようなほとんどすべての組織にわたっておるわけでございます。  このうち、今回の運輸省設置法改正案中身になっておりますのは、そのうちの地方海運局地方陸運局統合いたしまして地方運輸局設置するというのがこの運輸省設置法中身でございまして、本省並びに外局機構改革につきましては、それぞれ政令で手当てをいたすことになっております。したがいまして、今回の運輸省全体の大きな行政機構改革のごく一部だけがこの設置法改正案中身ということにさせていただいた次第でございます。
  6. 峯山昭範

    峯山昭範君 私が見ましても、この改革中身、相当今までにない、言うたら大改革に見えるわけでありますが、今の説明ですと余りわからないんですが、もう少しわかりやすく、意図するところはどういうところにあるのか、陸運用海運局統合ということはわかりますが、運輸省が何を意図してこういうふうにやろうとしていらっしゃるのか、そこら辺のところをもう少し突っ込んで御説明願いたいと思うんです。
  7. 松井和治

    政府委員松井和治君) 運輸省は、昭和二十四年に旧逓信省の一部と鉄道省とが合体をいたしましてでき上がった組織でございまして、その設置以来、いわゆる交通機関別縦割り部局を設けまして、この局の数が七つでございますが、これまで主として戦後の日本経済の立ち直りに備えまして、各事業のそれぞれの発展に努めてきたわけでございます。その限りにおきまして、この縦割り組織というものは非常に有効に機能しておったというふうに考えられるわけでございます。  しかしながら、日本経済全般環境が著しく変化をしてまいりました。これに適切に対処するには若干問題も出てきてまいったわけでございまして、運輸省といたしましては、既に三十年代の終わりごろから横割り部局の導入ということについての検討を進めてきたわけでございます。今般、思い切って七つの局のうち五つの局を再編整備いたしまして横割り部局を設ける、こういうことにいたしまして、従来の許認可中心行政と言われておりました運輸行政政策中心組織改革をしよう、これが本省改革中心課題でございます。  また、先ほど申しましたように、逓信省鉄道省の流れをくみます陸運局海運局という組織が、それぞれ九つブロック機関として合計十八の地方局が置かれておったわけでございますが、この陸運局海運局統合いたしまして九つ運輸局に再編することによりまして、陸、海を通じました地方交通行政の一元的な仕事ができるようにということで今回地方の思い切った統合を考えた、こういう次第でございまして、地方局統合に際しましては、陸運局海運局に置かれておりました総務系統仕事合理化いたしまして、それを企画部門の強化に充てるということを中心改革中身にいたした次第でございます。
  8. 峯山昭範

    峯山昭範君 大体意図がわかってまいりました。確かに、私たちがいただいた資料を見てみましても、運輸省それこそ近来にない大改革と言えるのじゃないかと思います。今、官房長から御説明がありましたように、縦割り組織横割りに、従来の許認可型から政策誘導型というふうな組織に改めるということですから、これは大変なことであろうと思います。  そこで私は、いろいろ問題があるわけでありますが、運輸省という組織は私たちもこの委員会で何回か議論をしてきたことがございますが、許認可の数が一番多いですな。現在、運輸省には許認可はどのくらいあるんですか。
  9. 松井和治

    政府委員松井和治君) 約二千二百件ございます。
  10. 峯山昭範

    峯山昭範君 二千二百の許認可の数、これは許認可二千二百を受けるために、国民皆さん方がそれぞれの地域で相当の数が申請をし、また待っている人もいると思うんです。そういうふうな意味では国民と非常に関係の深い省は、いろいろ私も建設省とかそのほかのところの方がもっと深いのじゃないかと思っておりましたんですが、先般調べたところ、運輸省国民と非常にかかわりの多い省なんですね。そういうふうな意味では、今回の縦割り組織から横割りにして、そして許認可型から政策誘導型にするということは、国民にとりましては大変生活に密接に関係のある改革になってくるわけです。  そういうふうに考えてみますと、大変なことだろうと私は思うんですが、端的に言いますと、この二千二百の許認可が、今回の政策誘導型の横割り組織に変わることによりまして、多少は合理化し、整理できる見通しといいましょうか、そういうことは考えていらっしゃるんですか。
  11. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) 御指摘のように、運輸省許認可件数というのは非常に多うございます。ただ、許認可と一口に申しましても、いわゆる免許行政事業監督というものにかかわります部分と、それから実際に交通の安全なり環境の保全というような見地からいたしております許可というのも非常に係数が多うございます。そういう点で、今回、運輸省設置法を変え、そして新しく機構改革をして合理化し、政策官庁を目指していくという面では、主として事業に対する免許行政、この扱い方を変えていくということでございます。  その面では、私ども許認可というものは簡素化していくことになろうというように思っているわけですが、実際にどんなふうになるかということを、今この場で申し上げるのはなかなか難かしい。現在、いろんな意味で検討しておりますが、特にこれからの運輸行政の問題の処理の仕方としますと、これまで免許行政というのは、事業の安定的な経営によります国民生活国民経済に対する安定的なサービス供給体制確保ということに力点があったわけですが、今日のように非常に変化の多い経済社会の中におきますと、むしろこれからの経済社会がどう変化していくかということをまず我々は予測し、そしてそれへの適切な対応を各事業がしていくというようなことをまず第一に考えていかざるを得ない。と同時に、各事業時代変化に対応しまして新しいサービスをつくり出していく、そういう意味での活性化ということがまた要求されてくるわけで、そういう見地からも、事業規制が現実に障害になっている部分があればこれは極力取り除いて新しい時代要請にこたえていくということをさせていこうかと思っているわけでございます。  また一つは、既に免許制度として意味を失いつつあるいろいろな形式的な規制というものを極力減らして国民負担を減らすということで、これらの課題は一体として行っていかなきゃならない。新しい組織は、新しい時代要請を考えながら、総合的な見地から免許制のあり方というのを抜本的に取り組んで簡素化していくということにしたいと考えております。
  12. 峯山昭範

    峯山昭範君 大分、抽象的なことばかりおっしゃっていますけれども、今回の大改革の裏には、第二臨調答申を受けて、行政改革の一環としても行われるわけであります。そういうふうな意味で、許認可とは切り離して、今回の新しい改革によって経費の削減といいましょうか、そういうふうないわゆる行革という面から見ればどういうふうな効果があらわれるのかというのが第一点。  それからもう一つは、それとは別に、今の許認可の問題については、許認可は数が多いということはそれだけ問題も多いわけですから、当然必要なものかもしれませんが、やっぱり許認可件数というのは整理合理化するというのがこの行革の基本的な考え方になっているわけです。そういうふうな意味では、少なくとも今回の政策誘導型の官庁に脱皮するというからには、許認可整理合理化というのが重要な課題になってくるわけです。そういうふうな意味では、ある程度のめどが必要なわけです。どの程度減らせるか、そして合理化できるか、そしてなおかつ国民負担軽減になるか。  これは多少相反するところがあるかもわかりませんが、そういうことも含めて今まで十分検討していらっしゃると思うんですが、この二点についてお伺いしておきたいと思います。
  13. 松井和治

    政府委員松井和治君) 地方陸海運局統合によります地方運輸局設置によりまして、予算定員がどのように変わるかということでございますが、この両局を合体いたしまして、直ちに大きな予算額の減になるということではございませんが、五十九年度を五十八年度予算と比べてみました場合に、地方運輸局予算一般会計ベースで三億六千六百万円の減ということに相なっております。  また、定員につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、総務部系統等合理化によりまして七名の減を立てておりますが、これと別に、部門間配転と申しまして、別の省庁からの人間の引き受けをいたす面がございまして、これが六名農水省その他、他の官庁からの受け入れがございまして、差し引きいたしますと一名の減にとどまるというようなことになっております。
  14. 丹羽晟

    政府委員丹羽晟君) 許認可関係につきまして、補足してお答え申し上げたいと思います。  いわゆる五十五年行革というところで許認可整理ということをまず最近では行ったわけでございますが、これが運輸省関係では全体で二百五十件ということでございまして、そのうち国際的問題がございます六件を除きまして、残りの二百四十四件は既に処理済みでございます。  それから今回の第二臨調でいろいろ許認可関係につきまして御指摘を受けているわけでございますが、運輸省関係は二十件ございます。このうち十五件につきましては既に処理済みでございまして、残りの五件のうち一件は港湾運送事業法の一部改正という形で今国会法律案を提出してございます。  以上でございます。
  15. 峯山昭範

    峯山昭範君 先ほど説明がありました二千二百件という許認可件数からいいますと非常にまだ少ないですな、少ないというのか、それだけしかしようがないのか。二百件ぐらいぽんと何とかならぬかという感じもするわけですが、非常に問題もありましょうから、そこら辺のところも十分御検討いただきたいと思います。  それで、今回の改正案によりますと、先ほど説明がございましたように、海運局陸運局統合する。それで、いつも私たちはここで議論しながら考えるんですけれども、二つ合わせて一つにするというときに、今まで何カ所もありました。予算も減らないし、定員も減らないし、看板だけ書きかえて、局長さんが一人減って、次長さんが一人ふえて、プラス・マイナス・ゼロでというのが今まで随分ありました。そういうような意味で、ただ単に看板の書きかえに終わらないかということも一つ心配な点ではありますけれども、それとは別に、もう一つ大事な問題として、この陸運局海運局というのはそれぞれ長い伝統がありまして、それぞれの地方でそれぞれの役目を今まで果たしてきたわけです。  例えば北海道なんかの場合は、小樽に海運局がありまして、陸運局は札幌にありましたですね。また、東北でも、海運局は塩釜ですか、それで陸連局が仙台というふうに二つ場所が離れてある。今度はそれを一つにする。こういうふうになるわけですが、それで結局場所一つにする、統合するわけじゃございませんから、庁舎も皆ばらばらにあるわけです。そういうふうな場合に、今までは海運局長さんと陸連局長さんがおってきちっと責任を持って運営をしておられましたけれども、今度はそれが庁舎ばらばらになって、責任者地方運輸局長さん一人になってしまう。そういうふうになってきた場合に、従来以上に行政事務が停滞するのじゃないかという心配一つありますのと、それからもう一つは、国民立場から見て少しは便利になるのか、やっぱりプラスになるのか、メリットがあるのかということがあるわけです。これはどうでしょうか。
  16. 松井和治

    政府委員松井和治君) 御指摘のように、地方陸運局海運局所在地が異なっておるところが数カ所ございます。また、同一市内にある場合も、庁舎が別個になっておりますことは御指摘のとおりでございます。私ども、今回の改正行政サービス低下につながらないようにということに十分配慮をいたし、考えておるところでございまして、例えば海運関係事務というのはかなり現地性の強い仕事も多うございますので、そういうものにつきましては局長がすべてを決裁しないでも済むように内部委任制度を大幅に取り入れるということを考えております。  また、同一市内に存在する、例えば広島でございますとか、名古屋でございますとか、高松でございますとか、そういうような陸・海運局につきましては、今後合同庁舎計画等をにらみ合わせながら、できるだけ同一庁舎統合することによって事務合理化をさらに一層進めるというような計画を立てておるところでございます。ただ、庁舎のぐあいが、直ちに同一庁舎に入るというわけにはまいりませんので、それまでの間は二つ庁舎に分かれて仕事をするわけでございますが、極力サービス低下を招かないようにいたしたいと思っております。  また、陸運局海運局仕事は、車検、登録、あるいは船舶の検査、船員関係事務というようにかなり細かい現場的な仕事がございまして、これらはそれぞれ支局で行う事務が多うございますが、これらの支局につきましては、陸・海運局統合によって全くその所在地、数を変えないということによりまして、行政サービス低下を招かないようにという配慮をいたしたつもりでございます。今後とも、ただいまの行政サービス低下を招くことがあってはならぬという御指摘を守りまして、そのように努めていきたいというふうに考えております。
  17. 峯山昭範

    峯山昭範君 ぜひ、行政サービス低下にならないように、お努め願いたいと思います。そこで、きょうは、設置法の問題はそのくらいにしまして、関西国際空港の問題について、この機会をおかりしまして、幾つ質問をしておきたいと思います。参議院の方にこの法案が回ってまいりましたら、運輸委員会の方で審議が行われると思います。その運輸委員会の席上で私はいろいろと質問をさしていただきたいと思っておりますが、きょうは、この機会をおかりしまして、もう既に審議衆議院の方で始まっておりますし、そういう点も踏まえまして、幾つかお伺いしておきたいと思います。  初めに、航空局長さんに、飛行場というのは何で必要なんですか。
  18. 山本長

    政府委員山本長君) 飛行場は、航空機の離発着のための施設でございます。そのための直接離発着に必要な施設と、それから離発着に伴う旅客、貨物の取り扱いが便利になるような施設を総合した施設で、要するに航空輸送確保のために必要不可欠な施設でございます。
  19. 峯山昭範

    峯山昭範君 大変失礼しました。  あなたの何代か前の航空局長さん、五、六代前でしたか、航空局長さんが私に、先生飛行場は何で必要か御存じですか、こう聞かれまして、突然私も開かれて非常に困りまして、それで今、局長おっしゃったようなことを言うたんです。そうしましたら、先生、そんなことじゃだめですなとさんざん言われまして、飛行場というのは非常に大変大事なものだということを延々一時間にわたりまして私は講釈を聞きました。  そのときに、いわゆる都市発展日本空港歴史等から始まりまして、それで特に広島とそれから九州の福岡飛行場の例を引かれまして、戦前は広島都市の方が福岡よりずっと大きかった、それがなぜ向こうの板付の方のあの福岡の町が栄えて広島が落ちたかということを、それは空港だというところからその当時の局長さんが説き始められまして、僕はだんだん聞いているうちに、なるほど都市発展とか、そういういろんなものに飛行場というようなものがどれだけ貢献しているか、それだけじゃなくて産業の発展とか地元の教育、文化、あらゆる面にかかわっているということをさんざん聞かされたんです。そういうことがありましたので、一遍逆に聞いてみなければいかぬと思うておったわけです。えらい済みません。失礼しました。  実は、本当に私も、空港というものはいろんな意味でいろんな面があるということをわかっているわけであります。  そこで、いよいよ関西国際空港が、法案もできまして、それこそ構想以来二十年、航空審議会昭和四十九年八月の第一次答申から始まりまして十年、五十五年九月の第二次答申から三年半を経まして、ようやく今回の関西国際空港株式会社法案が今国会に提出されたわけであります。本法案が成立いたしますと、いよいよ十月以降着工準備に動き出すということになると私は思うのでありますが、そこできょうは、関西国際空港建設意義あるいは必要性等について、もう既にこの問題については何回も議論をしている問題ではありますが、私はこの問題についてきょう初めて取り上げるわけでありますので、そういう点について担当者皆さんの御意見を聞いておきたいと思います。
  20. 山本長

    政府委員山本長君) 建設意義必要性についてでございますけれども、御存じのように、我が国全般を見まして空港の整備は立ちおくれておる現状でございます。中でも大阪地区におきまして、実質、定期航空路として、国内国際を問わず、役割を果たしておるのは現在の伊丹空港一つと言ってよいわけでございます。ところが、この伊丹空港は、やはり首都圏と並ぶ近畿圏中心空港でございますけれども、そしてまた二大拠点の一つとなっておるわけでございますけれども、先生御存じのように、環境対策上の問題から厳しい運用制限を余儀なくされておるわけでございまして、国際航空路開設要望あるいは増便国内的に見ましても新しい地点からの乗り入れ、増便といった内外からの要請には現在においては全くこたえられないといった現状でございます。  こういった現状を解決いたしまして、将来における近畿圏において中心的な空港役割を果たす。この空港役割を果たすという意味では、先ほど先生の御質問の中でございましたように、空港役割というのは機能的に飛行機を発着させる施設だと私申し上げましたけれども、その背景には、さらに国際化社会の中にあって国際的な玄関口としての役割を果たす、あるいは近畿圏日本国内において中心的な経済活動あるいは文化活動中心になるというためにはそれなりの人及び物の交流が必要なわけですから、それに必要な空港施設としての機能を将来にわたっても維持する必要がある。こういう観点から、現在の空港を拡張し整備していくということは現在の地形から見て困難でございますので、どうしても新しい空港建設する必要があるということでございます。  計画は、環境面等について十分配慮した計画でございまして、したがってこういった立地上の利点というものをフルに活用いたしまして、現在日本におきましてはどの空港も二十四時間ではございませんで、外国から開かれた空港日本が持っていないといった非難もございますし、そういった点も考慮し、二十四時間の運用空港というものをつくってまいりたい。これは国の全体の立場から見ましても、また近畿圏国際的な立場国内的な立場というものを将来にわたって維持し、またその役割を果たしていくということからも不可欠であるというふうに考えておる次第でございます。
  21. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは一遍どうしてもどこかで議論しておかなければいかぬ問題であると思いますし、きょうぐらいしか言う機会もないでしょうし、私たち関西国際空港、私地元ですから、何とか早く法案を成立さして一日も早く着工して、今、局長おっしゃったように、二十四時間開かれた空港が一日も早くできることを念願しているわけであります。したがって、今の空港の問題についてはできるだけちゃんとできるように私たちも頑張りたいと思っております。しかし、この機会をかりてちょっとだけ議論したいことがあるんです。  局長空港というのは、大阪で言えば大阪の市役所から考えて何キロぐらい離れている方がいいのか。諸外国でも、その町の中心のお役所とか中心街からどのくらいの距離が最適であるとお考えですか。
  22. 山本長

    政府委員山本長君) 空港一つ都市のいわゆる都市施設として機能しておるところもございますし、複数の都市をあわせ持った都市機能施設として機能しておる空港もございますので一概には申しかねますけれども、そういった都市機能の中心地点から近ければ近い方がいいということは言えると思います。ただしかし、近ければ近いほどいろんな障害があることも事実でございます。諸外国におきまして、ニューヨークでございますとか、ロンドン、パリ等の主要空港というのは、いろいろございますけれども、距離は違っておりますけれども、都市中心から二十キロ台というのが比較的多うございます。普通の道路で一時間足らずで行けるというところというのが多うございます。  それに引きかえまして、御存じのように、日本空港は、成田にいたしましても六十キロでございます。大阪は、現在の伊丹空港は非常に近うございます。しかし、国内空港を見ましても、鹿児島空港あるいは大分空港、長崎空港、秋田空港、新営空港というふうな空港は、やはり都市の近くにつくりにくい、立地条件から考えまして四、五十キロ離れるということがどうしてもこれはやむを得ないという事情がございます。  しかし、その点につきましては、これは物理距離よりはやはり時間距離の方が重要だと思います。そういう意味におきまして、アクセス等の整備でもってその辺はカバーをしていくというふうなことでもって空港の機能を損なわないようにしていくという努力が必要だろうというふうに考えております。
  23. 峯山昭範

    峯山昭範君 大阪の国際空港、今さらこんなことを言うたって始まらないし、時期的にも遅いから私は余り言うつもりはないんですが、環境対策という面で考えまして大阪の中心街から四十キロ、やっぱり距離が遠過ぎる。僕も実は空港問題について相当研究して、とにかく大阪湾のヘドロの堆積状態から全部調べまして、航路から何から調べて、今のところでは遠過ぎるからもうちょっと真ん中の方へ持ってこい、そういう資料をつくった。場合によったら私案を発表しようというところまでいったことがあるんです。  もちろん、局長がおっしゃるように、環境対策も十分考えた。しかし、これは決まっちゃったからしようがないですが、よそのいろんな空港、大阪の地下鉄とかアクセスの問題から考えても、これはアクセスの問題を相当ちゃんとしないとえらいことになってしまう、そういう考えがあるわけです。したがって、私としては、本当はこれは願望として、要するに今の泉州沖からもう少しあと五キロでも十キロでも大阪寄りの方へ移せなかったかということがあるわけです。これは答弁要りません。こんなことを言っていると、また大臣に怒られそうですから、おまえ、そんなこと言うているとまたおくれるぞと。それじゃ困りますのでね。しかし大臣、やっぱり願望としてはあるんですよ。それはもういいです。  ですから、局長、諸外国のいろんな例を見ても、四十キロをオーバーする空港もあります。ありますけれども、それはよほどのところですね。ですから、そういうような意味では、もう少し交通網とかそういう問題も整備して、それでもう少し近いところに空港をつくる。そういうような意味では、僕はそうした方がいいのじゃないかなという気持ちがあるんです。僕は、鹿児島ですから、鹿児島空港もようわかっています。昔は鴨池にあって、それが今の空港できたわけですから、鹿児島県はあれで大分もうけたわけです、等価交換をやって。あれも調べた、物すごく資料も。金丸さんの知事の時代ですからよう知っています。しかし、空港というのは、そういうような意味で、そういうことが私たちの考えの中に多少はあったということだけ頭の片隅に置いておいてもらえば結構です。  そこで、その問題は別にしまして、いよいよ空港建設が始まるわけでありますが、これも何回も言い尽くされている問題でありましょう。国際交流の足となる重要な意義を有する第一種空港建設というのは、これは安全性、公共性の面からいいましても当然国の責任建設されるものである、そういうふうに私たちは認識をいたしておりますし、そうじゃないかと思っております。ところが、実際、今回の場合は、関西国際空港建設主体が、国、それから地方公共団体、そして民間の三者出資による株式会社方式を採用することになったわけでございますが、運輸省は昨年の半ばにはこういう考えではなかったわけです。もうちょっと違う考え方で説明をしておられましたですね。ですから、そういうような意味も含めまして、今回のこういう方式になった理由、経緯等を御説明願いたいと思います。
  24. 山本長

    政府委員山本長君) 御質問のように、空港整備法におきましては、いわゆる国際空港の用に供する第一種空港は国が設置、管理する、こういうことになっておるわけでございます。しかしながら、国が直接工事を行い、管理するというときには、やはり事業が大きくなりますとどうしても直接行うというわけにはいかなくなってまいります。資金調達の面におきましても毎年毎年の国の歳出の中でやっていくわけにはまいらない、借金をするとかいうふうな資金調達を多様化していく必要があります。また、事業の運営につきましても弾力的にやっていくというためには、国家公務員のこの行政組織の中であるいは行政定員の中でやっていくということについてはなかなか効率的に弾力的にはやれないというふうな面もございますので、事業が大きくなり、かつ急いでやらなきゃいかぬ、こういう仕事になりますと、国とは別個の事業主体を設立いたしまして、これに事業を行わせるということが必要になってまいりまして、こういった例はたくさんあるわけでございます。  御質問のように、私たちが八月に予算要求いたしましたときには、空港の基本施設部分につきましては全額政府出資の公団でもってこれを担当していこう、機能施設あるいは利便施設と申します空港の機能をサポートしていく施設につきましては、第三セクター、会社方式でもって建設し、運営していくというふうなことを要求したことも事実でございます。その予算折衝の過程の中でいろんな議論がございましたわけでございますけれども、最終的に議論の結果は、やはり臨調答申がございまして、公共事業部門におきましても極力民間活力の積極的な導入を図っていくべきだというふうな臨調答申の趣旨、あるいは空港は地域社会と調和し共存していかなきゃなりませんので、従来の方式よりは地方公共団体、それから民間の経済界というものも入って、国と一体となった協力責任体制というものが望ましいというふうな観点、あるいは事業の効率的な運営、弾力的な運営というものを確保いたしますためにも、民間の積極的な参加を得てその知恵、活力というものも活用していった方がいいだろう、こういうふうな議論がございました。  そういった議論を踏まえまして、この空港が将来については一応の収支採算性もとれていくというふうな見通しも踏まえまして、この空港を一元的に管理運営する事業主体として、御質問のように、三者一体となった会社方式、しかし会社と申しましても特殊会社たる株式会社でございますけれども、設立してこれに当たるということが適切であるというふうに判断をいたしまして、法案のごとき形になって提出させていただいた、こういう経緯でございます。
  25. 峯山昭範

    峯山昭範君 空港整備法という法律がありますが、この空港整備法という法律の趣旨からいきますと、要するに当然一種空港というのは国の責任建設される。なぜ、それじゃこの一種空港を国がつくらにゃいかぬのか。今回みたいに民間あるいは地方自治体と一緒になってやらなくちゃいけないのか。そういうふうにうたわないで、例は幾つもあるというのはわかるんです、それも。何で一種空港というのは国がちゃんとつくらにゃいかぬのか。そういうふうにうたわれた根源は、やっぱり信頼性だと思うんです。国がきちっと責任を持って全部つくる。だから、安全性とか公共性とか、いろんな面にきちっと、ぱっちりいける。だから、民間とか地方公共団体には任せないという強烈な指導性というのがこの法律の中には流れていると私は思うんです。  ところが、今回はそうじゃなくて、この法律の中からいきますと、ある面で言えば、民間とか地方公共団体に任せるとやっぱりちょっと安心できないところがある。そうなっていませんよ。そんなこと書いていません。書いていませんが、そういう意図がある。しかし、今回は民間や地方自治体を信用していただいて、それで活力なんて非常にいい言葉が出てきまして、三者一体でやる、そういうことになった。  局長、これは僕は余り深いことは言いませんが、本当はここら辺のところは、もう少し理論的裏づけ、理論構成というのを、ただやっつけ仕事でぽっというのじゃなしに、もう少しやっぱり深いきちっとした理論構成をしておく必要があるのじゃないかなという感じがするんです。私が言うているのが間違っていたら間違っていたで結構なんですが、そういうような意味ではきちっとそうしてもらいたいなという感じがするわけです。答弁は結構です。  その次の質問に入りたいと思います。  現実の問題として成田空港の三倍余りの約一兆円という予算をつぎ込んで今回のプロジェクトが始まるわけであります。そういうふうな意味で、先ほど局長がおっしゃったように、いわゆる民間の経営方式とか、あるいは活力とか、そういうものを導入してそして今回の空港をつくる、これは当然私はそうなければいけないだろう、そういう方向もいいだろう、そう思います。しかし、いろんな問題がやっぱりあるんです。これは例えば旅客の需要の見通しとか、あるいは工事費の見積もりの甘さとか、あるいはコスト意識とか、収益を上げるための創意工夫とか、こういうふうなものは結局民間企業でなければ期待できない点だろうと私は思います。そういうふうな意味では非常に大事な点だと思いますが、局長、具体的に民間の活力が生かせるような体制という問題についてはどういうふうな点に力を入れてこれから運用していこうと考えておられるのか、ここら辺のところをちょっとお伺いしておきたいと思います。
  26. 山本長

    政府委員山本長君) 御質問の中の、いわゆる民間の活力を生かす、効率的なあるいは能率的な経営をやっていくという必要性と、それから先生先ほど言われました公共性の確保というものがやはり両立する必要がございます。  ただいま活力の面についての御質問でございますから、それにお答え申し上げますけれども、この公共性の確保という観点につきましては、国の資本の割合とか、あるいは国の監督制度というものを通じて確保してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  そこで、民間活力が生かせるような体制ということでございますが、これにつきましては、そもそも事業主体というものの形態といたしまして株式会社方式というものを採用したということによりまして、そこにやはりコスト意識の導入といった、株式会社それ自身が持ちます制度の仕組みとしての企業的な原理が働いてまいる、それが空港の運営に機能していく、こういうことを期待いたしておるわけでございます。  また、出資を通じまして民間が業務運営に参画するということになりますので、人材の確保にいたしましても、広く民間からも適材適所を配置するということによりまして、この株式会社形態を採用して活力を活用するというねらいの実効を上げるようにしてまいりたいというふうに考えております。  また、この法律の中にもございますのですが、責任者につきましては、政府が任命するとか、あるいは政府が任命する人をまた認可するというふうな制度ではございませんで、今度の法律におきましては代表取締役というものが会社の中の仕組みとして選定されてまいります。それを大臣が認可する。代表取締役、ヘッドを行政的に認可という形で国がチェックをいたしますけれども、会社の中の体制というものにつきましてはそのヘッドに任せるというふうなことに、法律的にもそういう制度にしておるわけでございます。  そういった面につきましては、制度だけではなくて運用面というものは極めて重要なことであろうというふうに考えております。趣旨を生かせるか生かせないかということは制度の面での問題もございますけれども、同時に、運用面ということでもって配慮していかなければならないというふうに考えておる次第でございます。
  27. 峯山昭範

    峯山昭範君 それからもう一つ心配なことだけ全部言うておきますと、会社ですから、会社というのはやっぱり利益を上げるためにあるわけです、早う言うたら。損するために会社できるわけないですから、当然利益を上げるために一生懸命頑張るわけです。そういうふうな意味で、空港建設あるいは管理という面で、環境保全とか、あるいは住民や職責あるいは利用客の安全性というふうな問題が軽視されないかという心配があるわけです。そこで、効率性という問題と安全性の確保という問題は、これは言葉ではこう言っていますけれども、実際は相反する問題かもわかりません。この二つをどう調和させるかということは大変大事な問題だろうと思います。こういう点について、やっぱりきちっとけじめをつけておく必要があると私は思います。  それからもう一つは、監督官庁である運輸省が、先ほど局長からも御答弁ございました、いわゆる空港の公共性、安全性という問題をどういうふうな形で保障するのかという問題があるわけでありますが、この点についてのお考えもお伺いしておきたいと思います。
  28. 山本長

    政府委員山本長君) 確かに安全性、公共性という面と効率性という面とは両立しなければなりませんが、具体的な問題になってまいりますと相反するということが出てくる可能性はあると思います。しかし、この点につきましては、大臣も常常申されておるのでございますけれども、両立させなければいけないけれども、何はともあれ安全性、公共性の確保ということがやはり第一だ、こういうふうに私たちも考えておる次第でございます。その中で効率的な、弾力的な運営というものを図っていくというふうな考え方で対処していかなければならない、特にこの事業の性格上そのように考えるべきであるというふうに思っておる次第でございます。  その安全性、公共性の確保につきましては、法の中にも諸手当てがしてあるわけでございますけれども、会社の基本的な運営につきましては、運輸大臣が定める基本計画に従って空港設置し、管理していかなきゃならぬというふうな義務を会社に課している、あるいは所要の法規によりまして安全性については監督、担保をしていく、それからまた会社の運営につきましてはこの法律によりまして政府が少なくとも二分の一以上は株式を持っていなければならないという義務を課しておる次第でございます。この点につきましては、実際の運用上の資金計画といたしましては三分の二を政府が保有するという計画にしておりますが、法律的には過半数以上ということになっております。こういった面でもって国の意思というものを反映さしていく必要があると思います。  さらに、事業計画でございますとか、諸般の監督規定、報告聴取、あるいは最後は運輸省からいろんな事業運営についての是正の命令を出すことができるような措置がございます。それは最後の最後の制度でございまして、やたらに使うべきものではないと思いますけれども、そういった会社の運営につきまして安全、公共ということの確保のための措置ということは必要不可欠でございまして、この面についての法的な措置及びそれに基づく行政的な措置というものを私たちも心して運用していかなきゃならぬというふうに考えておる次第でございます。
  29. 峯山昭範

    峯山昭範君 次に、民間からの出資金についてお伺いしたいと思います。  六十七年末開港までの第一期工事に、資料によりますと、約一兆円が見込まれているようでございます。これを賄うために、国から八百億円、地方公共団体から二百億円、それから民間から二百億円、合計千二百億円の出資金に財政投融資及び民間からの借入金八千八百億円の資金計画を立てておられるわけであります。  そこで、民間からの出資の見通しについてお伺いをしたいわけでありますが、本当に関西の財界の皆さんもこれに対して、また関西だけではないと私は思うんですが、それぞれ検討を進めておられると思います。しかし、運輸省の試算によりますと、配当の開始年度が開業後九年だったですか。そうしますと、五十九年に例えば出資した民間の企業のケースでいきますと、開港までに既に大体八年ぐらいかかるわけですね。これに開業後九年間ですから、十七年間これは無配が続くわけです。そういうふうに考えますと、十年以上、十七年というのは非常に長いと私は思うんですけれども、そう簡単に民間企業が出資に応じられるかどうかという問題があると私は思うんですが、ここら辺の見通し、また運輸省としての考え方、これはどういうふうにお考えでございましょうか。
  30. 山本長

    政府委員山本長君) お尋ねの民間の協力を得られるかどうかということが、やはりこの構想が実現できるかどうかのポイントでございました。そういったことでございますので、私たちこの特殊会社たる株式会社構想というものを各方面に打診いたしましたときも、この点の見通しが得られるかどうかということが最重要点の一つでございました。これにつきましては、予算がセットされます以前、昨年の十二月からことしの一月の初めにかけましてでございますけれども、関係者の方方と協議、調整をいたしました。その結果、当初、やはり先生がおっしゃるような収支採算、あるいは配当の時期が相当先だというところからこれについて難色を示す意見もございましたけれども、最終的には運輸省が示しました資金計画、それによるところの出資計画というものにつきましては、関西の経済五団体が中心になられまして、その出資の実現について協力をいたします、またさらに中央経済界におきましてもそれをバックアップして、この特殊会社構想によるところの資金計画が実現するように協力をしていく、こういう意思表明が得られましたものですから、したがってこういうふうな構想ができ上がったということでございます。  今後につきましては、こういった法案審議の状態でございますから、表立ったそういった活動というものは差し控えるべきだというところで、表立った動きではございませんけれども、ちょっと御質問の中にもございましたが、経済界の中におきまして出資促進の委員会というふうなものを実は設けまして、そして民間における引き受けの準備体制というものをつくっていきつつあるという状態でございます。私たちは、この法律ができますまでの過程と、それからその後こういった非公式ながらも準備体制というものが発足しておりますので、法案をお認め願いました暁には、急遽関係者と資金計画の割り振り等につきまして協議をしてまいりたいと思っておりますが、今までの経緯からいたしまして、この民間出資の調達につきましては確保できるという見通しを持っておるところでございます。
  31. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、この会社がスタートするまでの大体プログラム、これは局長、どういうふうにお考えですか。
  32. 山本長

    政府委員山本長君) 会社がスタートされるまでに諸般の手続がこの法律によって要るわけでございますけれども、法律が御承認願えた後、関係政省令の公布が必要でございます。同時に、できるだけ早くこの空港と、それから保安施設設置、管理の基本となる基本計画を運輸大臣が作成する必要がございます。同時に、運輸大臣はこの会社設立のための設立委員を任命いたします。この設立委員が会社の定款を作成いたしまして、大臣の認可を受けるという手続になっております。設立委員につきましては、諸般の会社設立のための仕事をやっていただくわけでございますけれども、最終的には設立委員が株主を募集をするということになります。そして、株主の払い込みがなされ、創立総会が招集される、この辺の手続は商法の手続になります。そして、創立総会が取締役とそれから監査役を選任する。そして、選任された役員のうち、先ほど私申し上げましたが、代表取締役の選定とそれから監査役の選任の会社における決議は運輸大臣の認可を要するということになっておりますので、その手続をしていただく。そして、登記がなされまして設立される、こういう手続になるわけでございます。私たちといたしましては、法案の成立の時期にもよりますけれども、秋、十月ごろを目途として進めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  33. 峯山昭範

    峯山昭範君 会社を設立して、スタートはいつごろをお考えなんですか。
  34. 山本長

    政府委員山本長君) ただいま御説明いたしましたような手続を経まして、そして十月一日ということを目途として進めてまいりたい。もちろん、法案のあれがございますけれども、御承認願いました後、急ぎ準備をし、十月一日を目途として進めてまいりたいというふうに考えております。
  35. 峯山昭範

    峯山昭範君 そうしますと、先ほど説明ございました、この設立委員というのが非常に重要な任務また役目を持つことになると私は思いますが、これは法案が成立してからいろいろやられることでしょうから余り細かくおっしゃれない点もあるかもわかりませんが、設立委員の任命はこれは運輸大臣がやられるわけですね。
  36. 山本長

    政府委員山本長君) 運輸大臣が任命するということになっております。
  37. 峯山昭範

    峯山昭範君 そのめどは、大体いつごろを想定しておられますか。
  38. 山本長

    政府委員山本長君) その会社設立の手続というものは、案外時間ございませんので、法案が成立いたしました後、できるだけ早い時期に設立委員の任命という行為をやってまいる必要があるというふうに考えております。
  39. 峯山昭範

    峯山昭範君 これから先は非常に難しい問題でありますから、局長じゃなしに大臣になるかもわかりませんが、確かに大臣、この会社の運営の成否のかぎはやっぱりトップ人事でしょうね。そういうふうな意味で大事な問題であろうと思いますが、まず大臣、いわゆる設立委員長あるいはその中心者は大臣の頭の中には大体幾つか入っておられるんですか。
  40. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 具体的な名前において入っておるわけではございませんが、どのような方の中から選ぶかというようなことについてはいろいろ考えておる次第でございます。
  41. 峯山昭範

    峯山昭範君 設立委員の代表と新しい会社の社長とが同じであるかどうかというのは、必ずしもそうではないと私は思うんですが、大臣の頭の中はどうですか。
  42. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) これは法規上同じくある必要はございませんけれども、会社のトップというのを、会長制をどうするか、社長は当然あるわけでございますが、そういうこともまだはっきり決めておるわけではございません。スムーズにそういう候補者ができるならば、そういう方にやってもらうというのも一つの方法である。しかし、必ずしもそれがそうである必要はないと考えております。
  43. 峯山昭範

    峯山昭範君 それじゃ大臣、多少抽象的になりますけれども、初代の中心者、社長ですね、この資格要件とか基準というのは多少はあると思うんですが、そういうような抽象的なことしか言えないと思うから私こう言うておるわけですが、大臣どうですか。
  44. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 形式的に言いますと、まだ考えておりませんと言えばそれまでのことでございますが、そう言ったのではこれはいかがかと思いますので、やはりいろいろ考慮はいたしておるところでございます。何にいたしましても、トップになる方がどなたになっていただくかということが、この会社の運営、設立自体にも重大な関係を持っておりますから、そういった点で最適任者を選ばなければならない、かように考えておるわけでございます。  したがいまして、あるいは少し言い過ぎかもしれませんけれども、地元との関係が非常に大切ではなかろうか。大阪府、和歌山県、兵庫県との関係、あるいは今後株主になっていただくところの方々との関係、そういったことや、また周辺整備その他でいろいろ地元の御協力を得なければできません。そういう意味で、何らかの形で、唯一のトップと言えるかどうかは別としまして、地元関係の深い方の中から適任者をやはり選ぶ必要があるのではなかろうか、かように思っておる次第でございます。しかしながら、率直に申しまして、会長、社長制をとるかどうかということが考慮のうちの一つにございますので、そのコンビネーションをどうするかということもあわせて考えるということになるわけでございます。
  45. 峯山昭範

    峯山昭範君 大臣からそこまでおっしゃっていただければ結構です。それはその程度にしておきます。その程度お伺いすれば、大体わかるような気がします。  それで次に、環境監視体制の問題についてお伺いしたいと思います。  この問題をやっておりますと相当時間がかかりますから、はしょってやる以外ございませんが、運輸省がやられました「関西国際空港環境影響評価案」、これによりますと、第一に、「空港設置及び運用が環境に及ぼす影響の予測及び評価」についてという項目で全部で八項目、それから二番目に、「空港建設工事が環境に及ぼす影響の予測及び評価」についてというのが全部で四項目、それから第三に、それをもとにしまして瀬戸内海環境保全審議会が作成した「埋立てに関する基本方針」について、そういうふうなものに、それぞれ、表現の仕方は違いますけれども、オーケーを出しております。  そこで、「埋立土砂の採取・運搬に係る環境保全の方針」については、空港計画が決定された後、事業主体が関係自治体と合意の上決定することと、ただし、土砂採取地、運搬経路決定の段階で環境評価を実施するよう勧告しております。そして最後に、これを総括いたしまして、環境基準達成、維持に支障ない、地域住民の日常生活に支障ないと認めているわけでありますが、これはいろいろ、そういうふうに大丈夫という勧告をしているわけでありますけれども、実際問題として、全体計画で五億一千万立米の土砂を埋め立てて、千二百ヘクタール、第一期工事だけですと五百ヘクタールですけれども、大規模な海上空港建設するわけでありますから、実施の段階で従来の環境調査では予測できなかった何らかの影響が出てくるのではないかと心配をしているわけであります。  実際問題として、運輸省が五十一年からずっと百数十億円というたくさんの資金を投じて運輸省が調査したわけでありますから、これを信用しないわけではございませんけれども、最近の科学技術の進歩、あるいは限られた調査費、そういうふうないろいろな面からいいまして、この環境調査が完璧であったかどうかということになりますと、これは後々問題が出てくるのじゃないかと思います。  そこで、きょうは二、三点ちょっとお伺いしておきたいと思います。  一つは、この法案が成立した後、いわゆる環境調査あるいは環境監視、これは一体どこがどういうふうな体制でやるのかということが一つ。  それから環境監視の問題につきましては、この新しい会社のほかに、関係市町村を含めた地方公共団体、それから地元関係住民を加えた監視体制が当然必要になってくると思いますが、この点についての見解。  それから三番目に、この環境監視の結果というのはこれはやっぱり定期的に公表すべきであると思っておりますのですが、この三点についてのお考えをお伺いしておきたいと思います。
  46. 山本長

    政府委員山本長君) 過去、長年にわたりまして多額の費用を投じて環境影響に関する調査を実施してまいりました。私たちといたしましても、いろいろアセスメントの手法というのは確立されているようでまだまだ確立されていないところがございます。しかしながら、この関係の権威の意見を聞きまして、現在においては最高水準と言われる程度のアセスメントをやったつもりでございます。しかしながら、私たちがやりましたアセスメントというのは、いわゆる計画アセスメント、事業を実際にやるという前の段階の計画前における、こういう計画をやるとすればこういうことになるであろうというアセスメントでございます。したがいまして、このアセスメントというものは、事業を実施する前に、もう少し具体的な工程あるいは工事の計画というものを前提としてアセスメントというものを実施する必要があると思っております。これは当然、埋め立てをするとかいう公有水面埋め立ての手続をやりますときにも必要でございます。地元の理解を得ていく上におきましても必要でございます。  それから、そういったアセスメントをやりまして、それはあくまでも予測でございますから、実際に工事を実施するその段階において、あるいは運用段階において、それと予測と合致しているかどうか、予測と食い違ったところが出てくるならばそれを是正する措置を講じていかなきゃならぬわけでございますから、それをどうするかというのがいわゆる環境監視の問題でございます。私たちも、そういった環境保全というものについて十分な配慮をして計画をし、かつ実施をしていくというのが基本的な考え方でございますから、当然この環境監視というものもやっていかなきゃならないというふうに考えております。  ただ、具体的にだれがやるのかということになりますと、環境監視のためには、相当ずっと継続的な仕事でございますし、それはそれなりの施設なり、それから金がかかるという面がございます。それからまた、環境監視というのは地域の理解を得つつ事業を進めるというための事業自身の必要な仕事でございます。そういった意味から、その環境監視の仕事というものの責任はやはり事業主体にあるというふうに考えております。ただ、事業主体がやりますときに、その環境監視の公平性というものをやはり担保するというためにも、地元地方公共団体等も参加されたところの一つ組織が、この会社が行う環境監視というものの仕事を見守ると同時に、その結果をもやはり見ながら場合によっては意見を言う、こういうふうな仕組みというものが必要であるというふうに考えております。  公表制度というものも確かに一つの方法でございます。公表するのがいいのか、そういった仕組みの中で学識経験者あるいは関係者に結果をお知らせしながら仕事を進めていくという方法がいいのか、この辺についてはもう少し検討してまいりたいと思います。思想といたしましては、そういった思想で会社を指導してまいりたいというふうに考えております。
  47. 峯山昭範

    峯山昭範君 前段の、これから環境監視は大体事業主体がやるということですから、そのことは私が聞かなくても当然だろうと思うんですが、運輸省が相当長期間かけて、百八十億ですかかけてやりました環境影響調査、これの調査資料あるいはそういういろんな原本、そういうふうなものは私はこの新しい会社に当然引き継がれるものだろうと思うんですが、これはそうですね。
  48. 山本長

    政府委員山本長君) 当然、私たちが調査いたしました資料、ノーハウというものは引き継ぐ予定でおります。
  49. 峯山昭範

    峯山昭範君 それから次に、環境問題はそのくらいにしまして、あと空港周辺整備についてお伺いしたいと思います。  これも大臣に一言。やっぱり空港建設の成否というのは、これは何やかんや言いましても、地元住民の理解と協力というのがこれは一番大事だろうと私思うんですが、ここら辺のところは当然そういうふうに私も思っておりますんですが、大臣はこの点どうお考えでございましょう。
  50. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) それはお説のとおりでございまして、一番大事なことだと言ってもいいぐらいではなかろうかとさえ思っておる状態でございます。
  51. 峯山昭範

    峯山昭範君 実は、この問題、僕も昔議論したことがあるんですが、空港建設で一番ネックになる問題は地域住民の皆さんになかなか賛成を得られないということでありまして、例えば、当たっているかどうかは別にいたしまして、感覚の問題として聞いていただければいいと思うんですが、羽田に飛行場ができると、羽田の飛行場はいいんですが、とにかく羽田空港の周辺がいわゆる騒音等いろんな問題でなかなか栄えない、結局ゴーストタウン化する。十キロ、二十キロ離れてようやく何とかなる。また、成田も同じですね。そういうふうな意味で、空港周辺の住民との関係というのが非常に大事になってくる、そういうふうに考えているわけです。したがって、地元の人たちにどうプラスになるかということは、これから非常に大事な問題であろうと思います。  そこで、この問題については非常に大事な問題でありますので、これからもいろんな計画等がどんどん出てくると私は思っております。そこで、局長にもお伺いしておきたいんですが、空港の整備計画というのと地域整備計画というのは、これはやっぱり両方が相互に密接な連携を保ちながら策定されなければならないと私は思っております。そこで、現実の問題として、こういう問題をきちっと解決するための方法、手段、方策、こういうことについては運輸省としてはどういうふうなことを考えていらっしゃるのか、一遍これもちょっと聞いておきたいと思います。
  52. 山本長

    政府委員山本長君) 空港の立地に伴いまして生じてまいります関連施設の整備の進め方につきましては、去る二月、関係閣僚会議が開かれまして、その中におきまして、空港のアクセスとして根幹となる交通施設については、国が地方公共団体等の協力を得て計画面の調整を行い、国を含む関係の機関及び地方公共団体等が相互に協力して整備を行う、また空港の立地に伴い必要となる関連公共施設に関する計画の策定及び推進については、今後、国と地方公共団体との間で協議、調整を図っていくという基本的な考え方がこの会議の場において了承されたところでございまして、今後とも関係機関の間で協議、調整を図りつつ具体策を検討していくことにしておる次第でございます。  具体的な地域整備につきましては、基本的にはやはり地域の町づくりという性格を持つものでございますので、関係する地方公共団体がその地域の特性を生かしながら、みずからの創意によって計画の策定、推進というものがなされるべきものであると考えておりますが、これらの面につきまして国ができるだけ協力をしていく、こういう進め方が妥当であるというふうに考えております。個々の事業の項目につきましては、その緊要性、それから熟度等を勘案の上、関係省庁のもとで必要な措置が講じられるということになってまいりますけれども、運輸省といたしましても、関係省庁に対し積極的に働きかけてまいりたいと考えておる次第でございます。
  53. 峯山昭範

    峯山昭範君 局長、時間がなくなってきましたので、端的にお伺いしておきたいと思うんですが、まず土砂の採取の問題です。  これは先日の新聞報道によりますと、第三セクターをつくって採取をするというような報道がなされておりますが、この点についてのお考えと、それから場所は決まったわけですから、土砂を採取するところ、これは実は非常に重大な問題で地元では相当ないろんな意見も出ておりますし、いろんな話が飛び交っておるわけでありますが、いわゆる採取地あるいは運搬の経路、こういうような問題については現在どういうふうになっているのか、これもちょっと聞いておきたいと思います。
  54. 山本長

    政府委員山本長君) 土砂採取地の決定それから運搬ルートの決定というのは極めて重要な事柄でございまして、また地域の関心が高く、これまた地域の整備の計画とも関連をしてまいるというふうなことで極めて重要なことでございます。  土砂採取地及び運搬ルートについては決定されたのではないかというふうな御質問でございますけれども、私たちは、五十八年度、昨年度からことしにかけまして、和歌山の北部、大阪の南部の丘陵地帯を中心といたしまして、土砂採取地の候補地を選定するための基礎資料を得るための調査というものをやっておるところでございます。この作業は現在も継続中でございまして、会社が成立いたしますと、その会社に引き継がれるという性格のものでございます。その調査の結果を見まして、そしてやはり地域と極めて関係の深いことでございますので、関係地方公共団体などの意見を十分聞き、もちろんそのためには、防災面、あるいはその取りやすさ、採算面というものも十分に考慮に入れながら、それからまた跡地の計画などをも頭に入れながら場所を決めていかなければならないというふうに考えておる次第でございます。そういった意味におきまして、なお採取地及び経路につきましては決まっていないということでございます。  それから新聞に出た土砂採取の事業主体についてのことでございますけれども、新聞に出たことを私も存じておりますが、何か土砂採取の仕事につきまして、この会社と違った第三セクターでやっていくのを運輸省が決めたというふうな報道でございますが、運輸省がそういう方式でやることを決めたというふうな事実はございません。土砂採取、運搬につきましては、第一義的にはこれは当然、この空港建設のための仕事でございますから、この空港事業主体が当たっていくというのが第一義的な仕事であろうと思います。  ただ、先ほども申し上げましたように、土砂採取の仕事というのは地域と極めて密接に関連する仕事でございますし、またその後を受けまして地域の整備の一つの土地としていきたいというふうなこともございますし、さらにまた計画といたしまして、空港計画とは別個にまた、関連をする要素がございますけれども、大阪府において前島構想というものがございます。そこにも土砂が要るということがございます。これも、それぞれ別個にそういう仕事をやっているというのも非効率ではないか。そういった意味から、地方公共団体とそれからこの会社というものが中心となって土砂採取、運搬というものを総合的に行う、跡地の整備管理も行う、その土は空港だけではなくほかにも使う、そういうような仕事をするような事業主体ということも考えられるのじゃないかというふうな意見があることも事実でございます。この点につきましては、非常に重要な問題でございますので、なお関係者とよく協議をしていきたいと思っておりますけれども、おっしゃるような新聞報道というふうな面から見まして、今決めているというふうな事実はないということだけはお話ししておきたいと思います。
  55. 峯山昭範

    峯山昭範君 あと端的に幾つかお伺いします。  今の土砂採取のための基礎調査、これは運輸省がやっていらっしゃるんでしょうが、いつごろ終わる予定ですか。
  56. 山本長

    政府委員山本長君) 六十年度の初めごろまでにはその調査を終えたいというふうに考えております。
  57. 峯山昭範

    峯山昭範君 六十年度の初めといいますと、新しい事業主体がスタートしていると私は思うんですが、その基礎調査というのは、これはずっと土砂採取地の候補地をきちっと決めるまで運輸省がやるのか、あるいは新しい事業主体が決まれば途中から新しい事業主体に受け継がれるのか、これはどっちなんですか。
  58. 山本長

    政府委員山本長君) 事業主体ができますまでは、当然これは運輸省がやっていかなきゃなりません。事業主体ができますと、それに引き継ぐという考え方でございます。
  59. 峯山昭範

    峯山昭範君 そうすると、事業主体ができるまでは運輸省がずっと続けまして、そして事業主体ができた段階で、基礎調査そのものの内容とかそういうものを含めまして、すべて新しい事業主体に受け継ぐ、こういうことでよろしゅうございますか。
  60. 山本長

    政府委員山本長君) そのように理解していただいて結構でございます。
  61. 峯山昭範

    峯山昭範君 あと、いろいろと問題がたくさんありますけれども、私の持ち時間が終わりましたので、私の質問は以上で終わっておきたいと思います。
  62. 内藤功

    ○内藤功君 まず、国鉄の問題からお聞きしたいと思います。  国鉄ができてから百十一年という長い歴史であります。現在は、国鉄のほかにも陸、海、空でそれぞれの交通手段の発達が非常に顕著に見られております。しかし、なお国鉄は国民の足である、さらにもう一歩進めて国鉄はやはり今の時世でも国民の共有の重要な財産である、こういうふうに言われております。私も、そういう面は確かにやはりある、否定はできないと思うんです。細田運輸大臣は、ずっと鉄道省以来の国鉄のことにはみずからもタッチしてこられた御経験もあり、これについていろいろな御見識もお持ちだと思いますので、冒頭から失礼でございますが、細田運輸大臣に、国民の共有の財産であるというこの御認識についてどのようにお考えになるか、多少理念的な問題になりますけれども、お伺いしたいと思います。
  63. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 国鉄の状態は、モータリゼーションと飛行機の発達で随分と変わってまいっておりまするけれども、今日といえども非常に重要な国民の足の役割をしておることはおっしゃるとおりだと思います。また、JNRと言っております。ジャパニーズ・ナショナル・レールウエーズと言っておりますが、国民の鉄道ということにしております。国民の貴重な財産であることもそのとおりだと思います。国民の鉄道であると思います。
  64. 内藤功

    ○内藤功君 今のお答えで、国鉄は国民の財産だ、ナショナルレールウェーだというお話がございました。であるとするならば、国鉄については、国民の選出した代表で構成される日本の政府が全体としてその問題について、細かいことは別ですけれども、全体として責任を持ってこの再建をやらなくてはならぬというふうに論理的には帰結されると思いますが、この点については、大臣はどうお考えになりますか。
  65. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 国鉄の財政再建、そういったような問題につきましては、国鉄独自が全力を挙げなければならぬことは当然でございます。国民皆さんの協力を得ながらやらなければならないことは当然でございます。しかしながら、政府がやはり重大な最終的責任をしょっておる問題である、私はかように認識しております。
  66. 内藤功

    ○内藤功君 ところで、一昨日、当委員会での審議におきまして、大臣は、私は臨調へも出かけていって民営化を主張している、民営ではなく民営化を主張したのだ、スト権の問題も含めてそういうことを言った、民営ではなく民営化を主張したと、こうお話しになったように私はここで承ったわけです。私も余り勉強をしておりませんので、この民営ではなく民営化だ、この言葉の含蓄を御説明願いたいと思います。
  67. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 私個人のことを申し上げて大変恐縮でございますが、私は、日本国有鉄道は昔のような国有国営の方が本当であったのではないかと実は考えておる国有国営化論者であったわけでございます。しかし、今ごろ国有国営といいましても、これは時代おくれでございまして、どうにもなるものではございません。  そこで、今お尋ねの民営化という問題でございますが、なぜかと言っておるかといいますと、民営といって純粋の民営にこれをしていくということにはいろんな点で非常に問題が多いということでございます。そこで、民営化の化の字に意味があると私は理解をしておるのでございます。何を民営化と言うかというと、これは図式的に言いますと等式になるかどうかは別として、公共企業体でなくするということでございます。今の公共企業体というものを変えるということでございます。今の公共企業体というものは特徴がどこにあるかというと、私をして言わせますと二点あるのでございます。  一点は、国有鉄道の予算が政府関係機関予算という形で国会審議をされるということであります。予算は、国有鉄道がつくり、運輸省と大蔵省とが相談をして、政府関係機関予算としてできることになっております。そして、国会審議をされる。予算委員会予算三案と言われておる政府機関予算の中の一番大きなものが国鉄ではなかろうかと思っております。この予算案という形で国有鉄道の予算があるということ、これが公共企業体の一つの大きな特徴でございます。私は、これを外すべきである、予算三案の中から外すという形にすべきであると考えておるわけでございます。言葉をかえて言いますと、関西国際空港株式会社じゃありませんが、何らかの形の株式会社というような形のものにすること、これは理由はいろいろ詳しいことは申し上げると三十分ぐらいたっちゃいますからやめますが、そのことが一点でございます。  もう一点は、労働関係、公労法というものによっておる。御承知のとおりでございます。公労法によることをやめる。今度、電電公社や専売公社がそうなるというふうに承知しておりますが、公労法によっているということをやめて労働三法による。しかし、調整法その他、公共の福祉のためにストライキに対してある程度の制限がつけられるということはあるでしょう。  この公労法を外すというところはどこに意味があるかといいますと、最近有額回答というものが行われ、今公労委で調停、仲裁の段階に来ておりますが、この形式によりますと、国鉄の経営状態いかんということは関係なしに調停、仲裁が行われるわけでございます。予算との関係はどうなるかというと、予算上、資金上支払いができない場合は公労法十六条によって国会が決める。したがって、経理のいい電電と悪い国鉄とがずっと大体同じにベースアップもできております。賃金は、年度末手当等が多少違うぐらいなことで、同じになっております。  私は、これは公労法を外すべきである、こういうふうに思っておるので、私の見方からしますと、その二つを外したもの、つまり公共企業体でないものを民営化と称しております。できれば民営の方があるいはもっといいのかもしれませんが、民営と言い切るには、単純な株式会社にするには余りにもいろいろな問題が多過ぎるというふうに私は理解しておる、こういうことでございます。余り詳しく申し上げると長くなりますけれども。
  68. 内藤功

    ○内藤功君 一昨日の御答弁の趣旨は理解いたしました。第一点は、非常に問題のあるところで私は別の考えを持っていますが、二点目の労働関係についての所見は、大臣のお考えと私は比較的近いなという感じをいたします。  ところで、国鉄の巨額の赤字の問題でございます。この原因はどこにあるか。客観的なものもあるでしょう。政府の対応の問題もあるでしょう。また、国鉄自身の問題もあるでしょうが、一番大きなものについてどういう点にあるとお考えになるか。また、一昨日の当委員会で、大臣は長期債務の問題解決が経営形態をどうするかの問題の前に解決しなきゃならぬ課題だと答弁されましたが、その赤字体質からの脱却の基本的な方向をどうお考えになるかということについてお伺いしたいと思います。
  69. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 国鉄の長期債務は二十二兆円に本年度の末で達するということになっておりますが、この利息の支払いという問題が非常に大きな赤字の原因になっておるということは、数字の上からいうと間違いがないところだと思っております。  そこで、この前の当委員会で申し上げましたが、分割民営化をいたす前にというよりも、同時にといいましょうか、長期債務をどうするかということを考えなければ、いわゆる民営化、分割をすると言いましても、その借金の利払いをどこがしょうのだという問題にぶつかりますから、前にといいましょうか、同時にといいましょうか、その問題をどうするということを考えなければ経営形態の問題を解決することはできない、こういう意味で実は申し上げたわけでございます。  赤字の原因は、しかしそれだけではない、いろいろなものがございます。私は、やはり一番大きな原因は何だ、二つあると思います。  一つは、先ほどちょっと申し上げましたが、モータリゼーションと航空機の発達、あるいは貨物における水運、内航海運の発達、港湾がよくなりまして船もスピード化される、こういうことのために鉄道の貨客が非常に減ってきた。これらに対応する対応の仕方が、ある意味では、今になって考えてみますと、十分でなかった、あるいは見通しを誤った点もあると思います。その間にはやむを得ないものもあります。例えばエネルギーの問題で油等をどう考えるかというようなことで、相当今後窮屈になるのじゃないか、したがって鉄道の貨物はふえるのじゃないか、鉄道の貨物の施設をふやさなきゃいかぬじゃないかといったような場合もありますが、とにかく経営の赤字、収入が伸びないということ、つまり早い話が三公社のうちで国鉄だけが激甚な競争にさらされておる、こういう中にあったこと、これが一点。それから労使関係。これは私ども遺憾な点があったことを否定することはできません。それらのことが経営上の赤字になっておると思います。  それからもう一つの赤字の原因は、国鉄の投資。これが累積債務につながっておる。累積債務の半分以上そういうものにつながっておると思うのでございますが、投資というものが借入金で行われておる。全部が全部ではありませんけれども、ほとんど借入金で行われておる。しかも、インフラがかなり物騰その他で高くなっておる。これは新幹線が一つのいい例でございます。相当高いものをつくっておる。そのほか、一部は地方ローカル線ができておるけれども、これが所期の収益を上げていないといったような点、それから先ほどの貨物設備がむだな設備投資に結果的になっておるというような点、そういうものができておる。  大体この二つが重なって国鉄の現在の赤字状態、そして赤字が累積していく姿、そういう姿になっておる、こういうことでございます。
  70. 内藤功

    ○内藤功君 昭和三十九年以降赤字が累増したことは、数字の示すとおりです。私があえて挙げれば、青函トンネルを初めとして、東北、上越新幹線、成田新幹線、貨物ターミナルというのがでかいのをつくりました。大井の貨物ターミナル等等、国会でも取り上げられました多くの例は枚挙にいとまがありません。こういうものが借金でやられ、見通しも甘くやられた、ここに最大の原因があるというふうに思うわけなんであります。ですから、今の国鉄の赤字の原因が、例えば世の中で言うように、労働者が働かないからだ、ストライキが多いからだとか、それから地方交通線が採算が合わないからだというところに持っていく動きが一部にありますが、私はこれは数字からいっても納得できない。  そこで、いろいろ聞きたいことがあるんですが、私の限られた時間ですので、地方交通線の問題について伺います。  一昨日も当委員会議論がありましたが、赤字というけれども、AB線の赤字は私の聞くところ八百数十億だろうと思うんです。これこそ国がやらなきゃならぬ鉄道の仕事だと思うんです。この地方線というのはそれなりの国民の声があってつくられているわけです。東京でも、大臣お話しのように、通勤線をもっとつくれという希望があるんですね。中央線に複々線をつくれとか、それから赤羽から上野の方へ乗り入れる線をつくれとか、いろいろあります。私は、数年前たまたまイギリスヘ行きまして、国鉄の当局の常務理事に当たる方ともお話ししてきましたが、イギリスでは、地方線が赤字になってもそれはやっぱり残すのだ、ただあそこは線区別の運賃を採用しているようですが、そういうことを明確に答弁していました。これが本当の政治の責任のあり方だろうと思うんです。  そこで、法律の理解の仕方なんですが、大臣、地方線の廃止について協議を開始して二年たって、これは仮定の問題ですが、協議が調わないというので、国鉄が廃止の許可申請を法律の第十条ですかによってやってくる。この場合に、私は法律の解釈としても、国民の足をつかさどっていただく政府の責任としても、この場合に、待てよ、国鉄はやってきたけれども、その土地の子供たちの通学はどうなるか、文化的な交流はどうなるのか、お医者へ通うという問題はどうなのか、中小企業の発展はどうなのか、いろいろこれを考えて、そしてこれは廃止を許可しなくてもいいのだ、この場合はもう一つ大乗的な見地で、この法律の十条と国鉄法の五十二条ですか、そういうもので廃止しないこともある、政府はやっぱり国鉄の地方線の問題といったら、これくらいの覚悟で、また法的な解釈で臨むという腹が基本的に必要じゃないのか。私は、そういう法的な面と政治的な政府の責任という面で、大臣どんなふうにお考えか、お伺いしたいんですが。
  71. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 前回、小野委員質問にもお答えしたところでございますが、白紙で議論をいたしますことと、それから特別措置法という法律をもとにして議論をする場合と、議論が違うわけでございます。  この法律が制定しておるところは、これはやめてバスにするか、それともその他の経営方式にするか、そういうことをやる必要のあるものを政令で決めて指定をして国有鉄道が申請してくる、運輸大臣が都道府県知事に聞く、協議会を開く、二年間協議が調わないときには国鉄が出す、これは法律にそう書いてあるわけでございます。したがって、法律に書いてありまするので、二年間協議がまとまらない、もうどうにもならない、国鉄が出したものを運輸大臣がこれを、昔で言うと自由裁量といいましょうか、やめるなと言うことは法律上許されておるとは思わないです。法律上、やはりある制肘を受けておると思います。ただ、行政というのは法律をそのまましゃくし定規に使うものじゃありませんから、法律に合うような方法でもっと何とか相談ができないかということは、これは言えると思うんです。しかし、いや、言ってきてもそれは認可しないのだということには法律がなっておらないわけです。そういう、つまり経営形態を変えるというものを指定して出してくる、その指定をよろしいといって運輸大臣が認めておる、こういうことになっておるわけでございます。  どうも答弁の仕方がまずいからおわかりにくいかもしれませんが、そういうふうに法律がなっております。ということは、もっとはっきり言えば、この法律が通るときに、今おっしゃっておるような修正案が野党から出たわけです。その案は否決をされて、この案になった。つまり、もっと相談しろと、いつまでも。いわゆる見切り発車と称せられるもの、あるいはやめるという決定を下すのじゃないのだ、あくまでも相談するのだという案が出たんですね。ですから、それはそうじゃないのだ、やはりやめるなり何らかの形に変えるのだ、相談をまとめてもらうのだ、あくまでもそういうふうにやるのだという法律になっておるということなんです。  ただ、私はローカル線については、先ほどの御質問の中にもあったように、いろんな意味を持っておるわけですから、地元の意向を全然無視したり、相談途中で二年たった、はいさようならというようなわけにはこれはいくものじゃないということは十分承知しておるつもりでございます。行政というものはそういうものであってしかるべきなんだ、しかし行政に限界がありますということだけを御承知願いたいと思うんです。
  72. 内藤功

    ○内藤功君 大臣の言わんとするところは何かわかっているような気がするんですが、私は、ですからあえて法律解釈上の点と政治的な判断の点と分けて今御質問をしたわけです。ただ、法律の解釈というものはしゃくし定規で法律の解釈がこうだから行政はそのままいくものじゃない、そこにもう一つ別の観点があるという御答弁を今伺いました。これをどういうふうにこれからの地方線を含めた国鉄全体の運営に生かしていくかということは、これだけの知恵のある人がそろっているんですから、考えていただかなければならぬ。大臣にもお考えをいただきたいということを申し上げておきたい。  次に、国鉄の技術研究体制でございます。  運輸大臣は、一昨日、この委員会で青函トンネル問題に関連をいたしまして、国鉄の技術力は世界に冠たるものだ、こういう表現で評価をなさったと思うんです。卑近な例で、あのリニアモーターカー、私も実際見てみましたが、ああいう技術、それから最近におけるアメリカ、中南米、アジア等々におきます海外での技術協力の需要、国鉄の技術者の方に私ら個人的にお会いしましても、とにかく技術の点は世界的に評価していただいているのだから、これは先生、やっぱり大きく盛り上げてもらいたいとみんな言っております。最近でも、この間、予算委員会で問題になった東海道新幹線、米原付近で雪害対策、非常に困っている。ここにシェルターをつくるかどうかというような問題も、この国鉄の技術陣の力をもってすればこれはやれるのだろうという安心感を持って我々臨める。ただ、財政が大変だということですけれども、技術的にはそういう水準にある。私は、技術の面で、国鉄の今の研究機関、研究者というのは非常なこれは宝に匹敵するものだと思うんです。これをもっとPRし、また財政上もこれをできる限り保護して、安んじて皆さんが研究に打ち込める体制をつくってやるということは、非常にこれは大事なことだ。特に、国鉄の場合、大事なことだ。これについてのお考えを、これは国鉄当局でも大臣でも結構ですが、お願いしたいです。
  73. 立松俊彦

    説明員(立松俊彦君) ただいま御指摘のありました、国鉄の技術は相当の蓄積を持って生かしていけるものだと考えております。当面、今お話がございましたように、社会のニーズは変わっておりますし、また技術も大いに進展しておりますので、従来に増してこれを生かしていくための技術開発は非常に重要だと考えております。したがいまして、これを実施するための研究機関の活動も非常に効果的に行えるように体制を整備していくということに努めております。  一方、今お話がありましたように、財政事情も非常に厳しいものですから、これらの内容が十分生かせ、かつ効率的に仕事が運べますように努力をしているというところでございます。
  74. 内藤功

    ○内藤功君 そこで、そういう国鉄の世界に冠たる技術を発展させるという観点から質問をしたいと思うんです。  東京都の国分寺市にある鉄道技術研究所、これは今までにどういう実績を果たし、また今の人員と組織、機構は概要どんなふうになっているかということを御説明願いたい。
  75. 立松俊彦

    説明員(立松俊彦君) 技術研究所は、本社の附属機関として従来から国鉄の進歩改善に寄与しております。職員は、現在では六百八十名おりまして、組織といたしましては、研究所長以下研究室等三十六の機構を持っており、それぞれの技術の開発推進に努めております。  以上であります。
  76. 内藤功

    ○内藤功君 この研究室、いろいろ聞いてみますと、工学博士、理学博士という博士号を持った人がたくさんいるんですね。それで、研究室を三十六持ってやっておられる。私は、今余りPRされなかったけれども、やはり国鉄の唯一のこれは総合研究所でしょう。我が国で鉄道について総合研究所はこれしかないでしょう。そして、国鉄のやっぱり技術開発の中核であると私は思います。  そこで、研究室には今そういう研究者が安んじて研究に専念できる体制をつくるために、各研究室に一人ずつ、これは女性の方ですが、臨時雇用員という方が配置されていて、そして試験研究に伴うデータ整理の手伝い、それから庶務的な仕事、コピー、伝票の整理から出張旅費の手続からいろんな対外的な応対等あらゆる庶務を一手に引き受けてやっておられるということを承っております。そういう人が各室に一人ずついる。こういう人が結局、研究の表に出ないが縁の下の力持ち的な役割を私は果たしてきたと思うんです。  ところが、私この問題をあえてここで取り上げるのは、昨年末来、こういう方々に対して、経費節減の理由をもちまして、全員やめてもらいたい、こういう話が出てきておる。この方々は、勤続年数で言うと、十五年以上二十年勤めている人が三人もいる。十年から十五年の人が十四人、五年から十年の人が十一人。臨時雇用員という名前ですけれども、実際は長期にわたってやってきて、その仕事の裏表に精通している人が多い。こういう人がいなくなると、理学博士、工学博士が自分で図面を焼いたりコピーをとったり、そういう雑務をしなきゃならぬ。私は、これは不可欠な方だと思うんです。やっぱりこういうところにきちんと労働対策の面では目を向けていかにゃならぬと私は思っています。  ところで、このやめてもらいたいという問題についていろいろあって、私はこの細かい問題を今この委員会で取り上げるつもりはありませんが、公労委の地方調停委員会におきまして最近勧告が出されたと聞いておりますが、その勧告はどういうような勧告が出されたのか、この点御説明願いたい。
  77. 太田知行

    説明員太田知行君) 口頭勧告でございますが、本件臨時雇用員の配置に関し、両当事者間に了解事項が存在しているが、国鉄の現状にかんがみ、この際労使双方は本件を円満に解決する立場で臨時雇用員の転職問題その他必要な事項について誠意を持って協議されたい、以上であります。
  78. 内藤功

    ○内藤功君 今、太田常務からお話しのような、そういう口頭勧告が出された。当然のことだと思うんです。誠意を持ってこういう問題については協議せよということは労使問題では当然のことだし、特に科学技術の中心である研究所においては、こういう問題は話し合いで円満に解決しなきゃならぬと思うんです。労働側にも切実ないろんな要求があるようです。ここで引き続き働きたいという要求、それから一時金というものが欲しいという要求、それからもし仮に転職するのであれば現在と同程度のところについていろいろと面倒見てほしいという希望、いろいろあるようです。こういう細かいところは労使の誠実なる協議に任せればいい問題です。  ただ、長い人でやっぱり二十年もの間働いていて、しかも国鉄の科学技術をこういうふうに下から支えてくれた人に対して、もし協議を打ち切って一方的に解雇するというふうなことをやるとすれば、これは非常に間違ったことじゃないか。私は、本当の国鉄の再建、経費の節減というのはこういう弱い人のところにしわ寄せを持っていくことは絶対に慎むべきものだ、さっきの口頭勧告の言葉にありますように、基本的態度としてあくまで納得ずくで、話し合いで合意で決める、途中で一方的に協議を打ち切ったりなんかしないということに本当に文字どおり徹してもらいたいと私は思うんです。  少しくどくなったようですけれども、私はここのところを特に強調をしたいということを申し上げておきたいと思うのであります。科学研究というものを本当に国鉄の中心に据えるという観点から再度このことを強く国鉄当局に要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  79. 太田知行

    説明員太田知行君) この臨時雇用員の問題は、なるべく簡潔に申し上げますが、国鉄の要員配置の基本的なあり方といたしまして、中核的ないしは恒常的な業務には直接職員をもってこれを充てる、波動的、冬でありますとか夏の多客期でありますとか、あるいは補助的な業務については臨時雇用員をもってこれに充てるという基本的な対応でずっとやってまいりました。技研においても例外ではなくて、まさに先生おっしゃいましたように、補助的業務について臨時雇用員をもって充ててまいりました。補助的業務のありようは、やはり絶えず変化してまいります。技研においての補助的業務のあり方も、かつて臨時雇用員を必要とした時代よりはコンピューターその他いろいろな手段が発達した今日において様相が変わってまいりました。かつまた、全体に余剰人員も発生するような状況にある国鉄において、この臨時雇用員の雇い方、あり方についても根本的な見直しが必要でございまして、全般的に臨時雇用員の削減、雇いどめも余儀なくされております。技研においても例外ではございません。  そういう状況の中で、昨年の十二月以来、技術研究所における臨時雇用員の雇い方、あり方について見直しをし、当局から提案をし、団体交渉をやりましたが、意見の一致を見るに至りませんで、かつ組合側から先ほどお話があった公労委関東地方調停委員会にあっせん申請があったという経緯を経て、第三者機関に問題をゆだねられ、口頭あっせんを経た経緯がございますが、当初私どもの提案は、今申しましたような背景のもとで、三月三十一日、年度末をもってこの臨時雇用員の雇いどめをいたしたいということでございましたが、今のような経緯もございましたので、その期間を延長いたしまして五月三十一日をもって雇いどめをいたしたいということを既に組合側にも話をし、関連する事項についての協議を重ねております。  協議回数は既に十五回以上にわたっております。かなり突っ込んだ論議を誠意を持って交わしております。しかしながら、幾つか具体的な要求はございますが、なかなかルールの問題、あるいは国鉄の置かれた状況その他からいきまして、御要望どおりにはならぬ面があるわけでございます。しかし、少なくともこの臨時雇用員の三十六人の皆さんについて本人の意向を十分に聞きながら、プライバシーに属することでございますので、詳細は省略さしていただきますが、さらに就職いたしたいとか、それからまたこういうところに就職したい、通勤の問題、収入の問題、職種の問題、その他いろいろ勘案いたしまして今対応してまいりつつあるところでございます。
  80. 内藤功

    ○内藤功君 大臣、初めてお聞きになる問題かもしれませんが、科学技術研究所でこういう側面から研究者の本来の任務を助けてきた方々に対して、やはり文字どおりの慎重な、また誠意ある話し合いで、こういう方々を一方的に路頭に迷わせるというふうなことなく協議をすべきだと私は思っているわけです。この点について、大臣の聞いておられての御所見ございましたら、ひとつお願いをしたいと思います。
  81. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 御案内のように、国有鉄道は三十万人以上の人間を抱えておるわけでございまして、いろんなところにいろんな問題が起こってまいっておると思いますが、臨時職員という形ながら長い間技術研究所で働いておられたという客観的な条件がございますので、今、太田常務から申しましたような十分な配慮をいたすべきだというふうに考えておる次第でございます。  具体的にこれをどうするかということについては、これこそ国有鉄道にやはり自主的にやってもらうべきことでございまして、私どもはその詳細なところまでについて命令をしたり干渉したりするということはとらない。ただ、十分話し合いをしていただくし、公労委の調停も非常に重要に扱わなければならぬ。ここまでは私どもはっきり申し上げることができる、かように思っております。
  82. 高平公友

    委員長高平公友君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時十分まで休憩いたします。    午後零時五分休憩      ―――――・―――――    午後一時十一分開会
  83. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、運輸省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  84. 内藤功

    ○内藤功君 まず、海上保安庁につきまして、三点ほど質問したいと思います。  第一に、一昨年、昨年とかけまして日米の海上保安当局間会議と言われる会議が開かれたようでございますが、この会議がいつ、どこで開かれ、どういう参加者で、またどんなことがここで討議をされ、どんなことが決まったのかという点について御説明いただきたい。
  85. 森孝顕

    説明員(森孝顕君) お答え申し上げます。  この日米の海上保安会議でございますが、海上保安庁といたしましては、適切かつ効率的な仕事を進めるという意味で、米国コーストガードとの間で五十七年度から、先生指摘のように、海上保安業務に関する情報交換あるいは捜索救助活動等に関する協力につきまして話し合いを行っております。  会議の内容といたしましては、五十七年度は十一月の十五日から十七日までの三日間でございますが、ホノルルで行いまして、日米両国の海上保安組織現状、海洋環境保全の問題とか、あるいは両国の海上保安にかかわる教育制度、あるいは巡視船艇などの運用などに関しまして意見交換を行っております。  また、五十八年度でございますが、九月の五日から七日までの三日間、東京で行っております。この際は、海上における捜索救助の実施に関しまする技術的ないろいろな問題、それから日米の船位通報制度の問題。これはアメリカでは既に従前から船位通報制度を行っておりますが、日本におきましては来年、六十年の十月から運用開始という前提で現在整備を進めておるところでございます。このような日米両国の船位通報制度の問題、その他海上保安業務にかかわります各種の技術開発等に関しまして意見交換を行った。  このような状況でございます。
  86. 内藤功

    ○内藤功君 第二点目としまして、海上保安庁と自衛隊、防衛庁との間の警備救難に関します協定の内容、これはどういう内容かということをお話しいただきたい。
  87. 森孝顕

    説明員(森孝顕君) 先生指摘の海上保安庁と海上自衛隊との協定でございますが、災害救援等の協定、通信に関する協定その他ございますが、御指摘の協定は海上における警備行動または治安出動に関する協定であろうかと存じます。  この協定は、昭和三十五年の十二月二十六日に、海上保安庁長官と防衛庁の事務次官の間で取り決めております。  その内容の主なるものを申し上げますと、これは海上自衛隊が海上における警備行動等を命ぜられた場合におきまして、海上保安庁と防衛庁との協力に関する基本的な事項を定めるということが目的でございます。  その内容につきましては、警備行動などに際しまして、人命財産の保護等にかかわります海上自衛隊と海上保安庁との任務の分担、言いかえますと、おおむね海上保安庁の能力で担任し得る場合、この場合には海上自衛隊は主として海上保安庁の支援後拠として行動する、また海上保安庁の能力が不足するといった事態には海上自衛隊は海上保安庁と協議をいたしまして、逐次後方から任務あるいは行動区域といったものを区分いたしまして行動する、このようになっております。  このほか、この協定では、警備行動の際におきまして、海上自衛隊と海上保安庁とは人命財産の保護などに関しまして必要な情報を相互に密接に連絡交換する。  このようなことが、協定の主な内容でございます。
  88. 内藤功

    ○内藤功君 三点目としてお伺いしたいのは、報道によりますと、最近進水した三千トンの巡視船「せっつ」に放射能測定機器が装置される、こういうことが報道をされております。事実とすれば、この大型巡視船に初めてこういう装置をつけるに至った今の必要性というのはどのように考えておられるか。また、従来、私の知るところでは、東京湾、佐世保、それからホワイトビーチ、これには小型の放射能調査艇が各一隻ずつ配備されてあったと理解しますが、これとの関連などについてお答えいただきたい。
  89. 森孝顕

    説明員(森孝顕君) 先生指摘のとおり、ことし就役いたします巡視船の「せっつ」、これはヘリコプター搭載型の三千二百総トンの巡視船でございますが、これに放射能測定装置を搭載するという計画でおります。  この放射能測定装置を取りつけます目的でございますが、海上保安庁はそもそも海難救助を行う機関といたしまして海上における救助活動を行う責務を有しておるところでございますが、いわゆる外洋で放射線にかかわります船舶などの海難が発生したといった場合には、放射線の危険性を十分考えまして、まずとりあえず危険なエリアを設定する、あるいはほかの船がここに立ち入らないようにということで航行の規制を行うといったことによりまして第三者に対する被害というものを防ごう、あるいはまた事故の状況とか放射線の検出の結果、こういったものから判断いたしまして、現場でできる範囲で人命の救助救出、こういった作業も私ども行わなければならない、このように考えております。このような業務を行い、また現場でこのような救難作業、救難活動に当たります海上保安官みずからの安全を図るというためにも、放射線を連続してはかることのできますこのような放射線測定装置というものをつけるということが有効ではないか、このように考えておるわけでございます。  なお、先生指摘の放射能調査艇は、ただいま三港に配備いたしておりますが、極めて小型でございまして、ただいま申し上げましたように外洋で事故が発生した場合には到底対応できないという実情でございます。
  90. 内藤功

    ○内藤功君 海上保安庁に対する質問は以上です。  次に、本年二月十日付で認可をされて、二月十八日より実施されているタクシー運賃の値上げに関連して、幾つかの問題点を御質問したいと思うのであります。  まず最初に、今回の値上げを認めた中には、タクシー乗務員、タクシー労働者の労働条件を改善して、そして国民が安心して利用できる、こういう公共輸送機関としての社会的使命を立派に果たす、このことを前提にして認可がされたと思いますが、運輸大臣の御見解いかがでございますか。
  91. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) ただいま先生指摘のように、本年の二月十八日から東京、横浜地区タクシーの運賃の値上げを実施したわけでございますが、その際に所管の東陸局長からも傘下の業界に対して通達を出しております。  その通達の中身は、まず第一がサービスの改善、それから経営の改善でございますが、それとあわせて労働条件の改善を図るように改めて通達をしているところでございまして、私ども、今回の運賃の改定の一つの大きな柱は、タクシー事業で働いておられる労働者の方々の労働条件の改善というものが一つの大きな柱であるというふうに認識しておるわけであります。
  92. 内藤功

    ○内藤功君 そこで、お尋ねいたしますが、今回の値上げは各社平均で一四・五%前後の申請でありましたが、運輸省当局の厳格な査定作業が行われまして、東京特別区――二十三区、武蔵野、三鷹地区は九・五%、多摩地区が九・九%、一けた台に圧縮された。当初心配された大幅な客減りという現象は余りないというように私どもも現場の方から聞いております。  そこで、まず最初に、初歩的なことで恐縮でございますが、タクシー運賃の原価構成、項目はどんなものがあるか、お答えいただきたい。
  93. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) タクシーの運賃の原価の中身でございますが、一番大きいウエートを持っておりますのは人件費、その次に大きなウエートを持っておりますのが燃料油脂費、そのほかは車両修繕費、車両償却費、その他経費、それから営業外費用等でございます。
  94. 内藤功

    ○内藤功君 今回認可されました九・五%の査定の概要を御説明いただきたい。
  95. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 査定の概要でございますが、簡単に申し上げますと、査定はまず五十七年度の実績に対して平年度、平年度と申しますと、五十八年度が翌年度、五十九年度になりますが、五十九年度で収支が相バランスするようにということで査定をしております。  それで、五十七年度からしからば五十九年度に収入なり原価がどういうふうになるであろうかということで御説明したいと思いますが、まず収入面につきますと、これは最初にお断りしておきますが、原価計算対象事業者三十五社というのを選定いたしまして、その数値をもとにして査定するわけでございますが、まず収入で申し上げますと、五十七年度に対して五十九年度、平年度は六千七百万円ばかりの収入減になるであろう。これの原因は、小型車の導入による売り上げの減でございます。そういう想定をしております。  それから支出につきましては、人件費で三十三億九千六百万円の増、それから燃料油脂費で二億九千五百万円の増、車両修繕費で三千二百万円の増、車両償却費で八千万円の増、その他経費で三億一千万円の増、営業外費用が一千六百万円の増、トータルで支出の増は四十一億二千九百万。  こういう査定でございます。
  96. 内藤功

    ○内藤功君 道路運送法の第八条によりますと、タクシー料金は「能率的な経営の下における適正な原価を償い、且つ、適正な利潤を含むもの」と規定をされております。したがって、今回の九・五%の値上げには経営者にとっても適正な利潤を得るようになっている、かように理解をしてよろしゅうございますか。
  97. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) そのとおりでございまして、私が申し上げたのは五十七年度の実績に対する平年度の増加分だけの数字を申し上げましたので、適正利潤は増加分ゼロということで御理解いただきたいと思います。
  98. 内藤功

    ○内藤功君 今回の値上げを認可するに当たりまして、運輸省は二月十日付で東京陸運局長名による団体長、これは個人タクシー組合あるいは法人を意味するのだと思いますが、団体長あて「タクシーサービスの改善等について」という通達を出されております。その中に、法人における「労働条件の改善について」という一項目が設けられております。そこで、このような項目を特に設けられた趣旨、あわせてその内容のポイントを明らかにしていただきたい。
  99. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 先ほども申し上げましたように、今回の運賃改定の一つの大きな動機というのは、やはり労働者の労働条件の改善でございます。  それで、この運賃の改定の実施に当たりまして、先生がただいまおっしゃいましたように、それぞれの業界の幹部等を呼びまして通達を発したわけでございますが、その東京陸運局長から発しました通達の大きな柱は三本ございまして、一つは「サービス改善について」ということでございます。これは内客を省略いたします。それからもう一つは「経営改善について」ということでございまして、これも内容については時間がかかりますので省略いたしますが、その二つの柱のほかにもう一つの柱といたしまして「労働条件の改善について」という柱を設けて通達しております。  中身を読んでみますと、「2 労働条件の改善について 労働条件の改善を図ること。タクシー事業の健全な経営、良質なタクシーサービスの提供のためには、良質な乗務員の確保が必須条件であることを十分認識し、特に賃金制度上労働強化を強いることがないよう配慮するとともに、関係法令の遵守に努めること。」、こういう内容の通達でございます。
  100. 内藤功

    ○内藤功君 さらに、同趣旨の内容で二月十一三日付で、これは労働省の労働基準局長名による「タクシー運転者の労働条件の改善について」、こういう通達がタクシー会社加盟の全乗連、全国乗用自動車連合会へ出されております。  この内容は、タクシー運転者の労働時間等の労働条件は全般的に立ちおくれが見られる、過労等に基づく交通事故の防止に寄与することはもとより、サービス向上の観点からも極めて重要な意義を持つものだ、これまでのタクシー業に対する監督指導実施結果を見ると、依然として法違反が少なくない、運賃改定の趣旨を踏まえた労働条件の改善の特段の指導方を要請すると、こういうのが労働省から出ておるわけであります。  運輸省は、これは労働省の通達でありますが、これについては十分理解し、承知しておられるというふうに承っていいですね。
  101. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) そのとおりでございます。
  102. 内藤功

    ○内藤功君 今読みました通達の内容からも明らかなように、このタクシー業界の労基法違反は、東京労働基準局が発表した数字を見ますと、八一%を超えているようです。ここ十年来、全産業のトップである。こういうのは大変不名誉な立場だと言わざるを得ません。私は、この原因を解明して、直すべき点は直すという姿勢が今非常に大事だと思うんです。労働問題は労働省というのではなくて、使用者であるタクシー業界を指導監督する責任運輸省、現場の陸運局にあることは当然なんですが、これが余り改善が進んでいないということは重大な問題だと思うんですが、もし大臣、これについての御所見ございましたら、お伺いをしたい。
  103. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 乗用自動車の運転者の問題につきましては、しばしば国会でも問題になっておるところでございます。戦後、一時非常な悪い状態がありましたときよりは大分よくなっておると思いますが、なかなかいろんな施策が行き届かない。それからこれを万全を期そうとするとかなり手数をかけなくちゃいけないというような難点がありまして、なかなか十分にいっておらないというのが、正直なところ、実情であると私は存じております。
  104. 内藤功

    ○内藤功君 その実情でありますので、ひとつ大臣、この点でも気持ちを引き締めてやっていただくように要望したいと思います。  そこで次に、少し各論になって恐縮ですが、タクシー経営者の非常に顕著に私がひどいなと思う例を御参考までに、大臣、局長に申し上げたいと思います。  まず最初に、自動車運送事業等運輸規則にある二十一条三項の規定はどのような趣旨で設けられたものか、簡単にこれはお答え願いたい。
  105. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) ただいまの運輸規則二十一条の三は、昭和三十三年の四月の一日に、内閣の交通事故防止対策本部が決定いたしましたタクシー事故防止対策要綱に基づきまして、著しく刺激的な給与とかノルマのために事故が多発することを防止することを目的としたものでございまして、当時、神風タクシー等による事故が多発したという背景、事情があったわけでございます。そういうような背景、事情に基づいて運輸規則の改正を行い、二十一条の三項を設けた、こういうことでございます。
  106. 内藤功

    ○内藤功君 一つは、私は都内の具体的な例をちょっとお話ししたいんですが。  これは名前を挙げた方が正確になると思うので、東京コンドル、それから第三コンドル、こういう具体的な会社があるんですね。先ほど説明された二十一条に関係があるんですけれども、両社とも同じ岩田寿氏という方が社長をしておられます。ここに写真があるので後でよくごらんいただきたいんですが、この会社は配車室の前に大きな紙に毎月の成績を張り出してベスト三十、それからワースト二十を名前入りで掲示しております。ワーストに入った社員に対しましては、明け番の日に呼び出して傍系の会社へ行かせて教育というものを二時間ぐらい行い、水揚げを増すように個別的に指導している。言葉で言うときれいごとなんですけれども、これが本人に対する大変なあおり的な効果、強制的な効果を与えるのが非常に大きいんですね。  また、ちょっと続けますが、東京コンドルというところでは、たまたま組合の委員長をやっている人が橋本寿さんという人ですが、この人に指導勧告書という内容証明郵便を送りつけているんです。これも、今読む時間がありませんけれども、営業成績が悪いのでほかの産業に転職をしろとか、あるいは、ある組合員の奥さんに対して、あなたの御主人の成績は芳しくない、奥さんから力を引き出してもらいたい、教育など大変費用もこれからかかるということであろうが、御相談があれば会社へ連絡くださいというぐあいに、いろんな手紙や内容証明で、こういう直接家庭の中にまでやってくる。この袋の中に入っているのが全部内容証明郵便で、よほどこれは手紙が好きな人です。これだけあるんですよ。これだけ私のところに、こういうものがあります。このようなやり方になりますと、多数の人命を預かる公共輸送機関としてのタクシー経営者の資質上も大きな問題があるのじゃないかと思うんです。  それから第三コンドルの方でも、野球部の監督をやっている方に対して、あなたは辞任しろと内容証明を送りつけているというようなことも出ております。これらは、私は総括して言いますに、やたらと内容証明を乱発する。内容証明というのは、その道の専門家でももらうといい気持ちはしないので、普通の人がもらうとやっぱりぎくりとするんですね。労働者に心理的な圧力をかけることによって精神的な負担をかける、そして運転という職業の安全性が脅かされる、これはひいては交通事故なんかが起きる遠因にもなりかねない、私どもはそこまでやっぱり考えざるを得ないと思う。  そこで大臣、局長でも結構ですが、これは自動車運送事業等運輸規則第二十一条三項に反するあおり行為そのものじゃないかと私は思うんです。ぜひ、こういうような指摘をされた経営者については、運輸省当局としても実情をよく聞き出していただいて、要すれば改善措置をとるように厳重な指導を行うべきだと思う。たまたま私は、この二つは非常にひどいものだと思ったので当委員会で申し上げましたが、ほかにもあると思います。また、乗務員側の代表も適時適切に呼んで参考意見を聴取する、こういう努力をしていただくことを要望したいと思いますが、いかがでございましょうか。
  107. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) ただいま先生の御指摘の成績表の表示だとか、それから内容証明の文書を送りつける、こういうことにつきましては、これが直ちに二十一条の三項に反する行為になるかどうか、その辺はその掲示の形態、それから文書の中身等をよく判断しなければならないわけでございまして、直ちに二十一条の三項違反になるとは断定できないわけでございますけれども、通常の場合、そういうような行為に付随してあおり行為が出てくる場合が可能性としては非常に大きいわけでございまして、そういうような成績表の掲示だとか、あるいは内容証明の文書の送付とか、こういうような行為は差し控えるように東京陸運局でも指導しているところでございまして、今後ともその辺のところは十分に留意して関係陸運局で業界を指導するようにさせてまいりたいと思っております。
  108. 内藤功

    ○内藤功君 やはり重要な資料だと思う、あおり行為の一つの資料として。  大阪でも、大阪の事例を一つ私聞いたんですが、成田交通という、こういう会社がある。この会社では、運転日報を運転手に書かせる際に、鉛筆で書かせる。それから日報用紙そのものを余分に持たせる。これは運転日報を改ざんさせている疑いが強い。そうでなきゃそんなことをやるわけがない。日報の改ざんというのは、一般的に見て違法行為そのものだと思いますが、どうですか。
  109. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) その場合には、自動車運送事業等運輸規則の二十二条の二の違反になると思います。
  110. 内藤功

    ○内藤功君 ここに日報の現物がありますから、ごらんいただいて結構です。私は、ここに持ってまいりましたけれども、日報用紙、それから運行成績日報、それから給料明細書、そういうのを全部証拠で持ってきましたが、この書類を見まして私が驚いたことは、給料がオール歩合制になっているのじゃないか、こういう疑問を私は持ったんです。それから運行成績日報を見ますと、運転者の氏名欄が空白になっているところがあるんです。これはなぜかというと、いわゆる連勤ですね。連勤というのは、休みをとらないで連続勤務をする。これをしているので、氏名を書くのはばれるからまずい、後からつじつまを合わせるということだと私はこれを見て判断をいたします。連勤につきましては、これは労働者や乗客の安全を考えると疲労が重なって大きな事故を生じやすい、こういうことで労働省からも運輸省からも業界に指導されていることだと私は思います。  したがって、この会社もそのことは十分に承知しているために、こういうふうに運転者のところを空欄にして、系列の別のタクシー会社の運転手に登録してある人を連れてくる、こういうようなこともやっているということを私は聞いております。しかも、この給料明細書というのをよく見てみたんですが、これを見ますと、給料総額の中に連勤の分を含まないで、欄外に過納金という名目で当日分の労賃を書き足す、こういうこれまた極めて不可解な給料の支払い方法をとっております。給料というのは労基法その他でやっぱり厳格に規定されているものですから、労働者にとって一番大事なものです。運輸省地元陸運局、陸運事務所等を通じてかような実態は御存じでしょうか。局長、お耳にされたことございますか。
  111. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 正直申しまして、ただいま御指摘の事例につきましては、私は耳にしたことはございません。もしそういうような事態があれば、大阪の陸運局の方にも連絡をして、至急調査して善処するように指示をしたいと思っております。
  112. 内藤功

    ○内藤功君 一般論として当然のことですが、いわゆる連勤は違法行為ですね。それからオール歩合制、これもいけないことですね。
  113. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) オール歩合がよいか悪いかということでございますが、その辺のところは労働基準法を預かっておる労働省所管のことでございまして、はっきりと私から御答弁申し上げるわけにはいきませんけれども、私どもが承知しておる限りにおきましては、いわゆる二七通達で歩合給のことを規定しております。  それで、その二七通達でどういうふうに規定しているかと申しますと、歩合給制度を採用する場合には「労働時間に応じ、固定的給与と併せて通常の賃金の六割以上の賃金が保障されるような保障給を定める」、こういうことを二七通達で規定しておりまして、それに沿って私どもも労働省も業界を指導しているわけでございますから、全く固定的給与や何かがない歩合そのものというような給与というのは、これは私どもとしては違法ではないかというふうに考えます。
  114. 内藤功

    ○内藤功君 連勤の点は。連勤、お答えあったかな。
  115. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 連勤の問題につきましてでございますが、これもやはり二七通達で、タクシーの勤務の形態につきまして具体的に連続拘束時間等について指導通達を出しておりますので、それに反すればやはり私たちあるいは労働省の指導の対象になるということだと思います。
  116. 内藤功

    ○内藤功君 この取り寄せた資料で、私なりに時間をかけて十分読んで非常に疑いが強いと思いましたので、今提起をしたわけであります。ぜひ、調査の上、その結果を私の方に報告していただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
  117. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) そのようにしたいと思います。
  118. 内藤功

    ○内藤功君 タクシーにつける運転乗務証の問題についてお伺いしたいと思います。  これは、一度発行されると三年間有効という点では運転免許証と同じ期間なんですが、これは大阪の事例を申しますと、乗務証の有効期間が一年も二年も過ぎても平気で走っている事例があるということを私、報告を受けておるんです。乗務証を発行する近代化センターでも二年も経過したものについては会社に連絡するそうでありますが、運輸省としてはそういうものはあってもなくてもよいという立場なんですか。そうじゃないでしょうね。どのようにお考えになっているか。私は、この点の指導を強めて、こういうことが一日も早く是正されるようにすべきだと思いますが、局長の御答弁、明確なところをひとつお願いしたい。
  119. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 運転乗務証の有効期間が二年も三年も過ぎてなおかつそのままというのは、私ただいま初めて聞いたわけでございますが、これは東京、大阪に近代化センターをつくり、その近代化センターを中心にして、東京と大阪のタクシーの運転手のサービスを改善する、その一環としてこういう運転乗務証というものが定められたと思います。したがいまして、その運転乗務証の有効期間が二年も三年もたってそのままほったらかしにされておるというのは非常に遺憾な事態だと思いますので、そのようなことのないように、それぞれのセンターなりあるいは陸運局なりに連絡して注意を喚起するようにしたいと思っております。
  120. 内藤功

    ○内藤功君 今ここで審議をしております法案は、陸運局海運局統合に関する法案であります。この機会に、やはり陸運業務について働く人たちのこういう問題、多くの問題はここで指摘して初めて御存じになった問題、たくさんありますから一つ一つ全部知れと言っても無理でしょうけれども、こういう非常に極端な例を今挙げたわけであります。まだここに至らない事例はたくさん報告を受けていますが、これはひとつ運輸当局の大きな御努力にまつしか方法がないわけでありますから、ぜひひとつ一層の努力を強く要望して、今出された問題についての調査と、しかるべき強力な是正を要望いたしまして、質問を終わります。
  121. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいま審議されておりますこの法案は、大臣の趣旨説明にもございましたように、輸送需要の構造的変化等に対応して総合的な運輸政策を推進するために組織の再編整理を行うところにあろうと思います。  現在、山形県と秋田県は新潟陸運局の管轄区分となっております。しかし、実態的には、両県とも経済圏としてもまた交通圏としても仙台を軸として活動いたしておりますことは実態御承知のところであろうと思います。したがいまして、現在の管轄区分は明らかに不合理であり、実態に乖離しているとして、私の手元にも多くの苦情や、また改善を求める陳情が寄せられております。今回の統合一つの契機として、新設される東北運輸局に管轄を移すことが現状に最もマッチするものではないか、こう思いますが、大臣いかがでございましょうか。
  122. 松井和治

    政府委員松井和治君) 今回の運輸局設置に関しまして陸運局海運局統合いたします際に、管轄区域の異なる面があるというところでこれをどうするかというのが一つの問題点でございました。  ただいま御指摘ございましたように、秋田、山形両県は、陸運局は新潟陸運局の管轄であり、海運局は東北海運局の管轄でありまして、その限りにおいて管轄区域が異なっておったわけでございます。これをどちらに合わせるかということでさまざまの議論がございましたが、陸の面で申しますと、これまで同様の南北の交通の流れというものが非常に強うございまして、一つの幹線をなしておるということが言えようと思いますし、また海運の面につきまして海運の物流を調べてみますと、秋田、酒田の港と新潟、同じ日本海でございますので、海運関係の物流はむしろ表日本とのつながりよりは裏日本相互間のつながりの方が強いというような要素が認められたわけでございます。  また、地域的に見まして、この秋田、山形、新潟、長野と申します四県は本州内の豪雪地帯の三分の二を占めるというようなことで、地域的な状況といたしましては、これを一体的に見ていくということが非常に意味があるのではないかという観点から、今回は新潟運輸局の管轄に属するということにいたしまして、従来の陸運局の管轄区域に合わせて海運局の従来管轄しておりました秋田、山形を新潟に移管する、このような措置をとらしていただいた次第でございます。
  123. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、海のことを言っているのじゃなくて、従来、新潟陸運局に管轄の区分をしておったこと自体が問題があったということを指摘いたしておるわけでございます。実際の自動車を中心とする陸上運送の実態を見れば、経済圏は明らかにこれは仙台を中心とする東北経済圏でしょう。しかも、営業の実績等を見ましても、貨物輸送量を見ましても、いずれもこれは仙台で管轄することの方がより合理的な運輸行政を展開できるのではないか。ここでなかなか変更するということは言えないと思うんです。  そこで、大臣、この問題については、いま一度現地の業者ないしは陸上運送の実態を見て、最も適当な管轄区分を決めるために検討するということだけをお約束いただきたいと思うんですが、いかがですか。
  124. 松井和治

    政府委員松井和治君) 大臣の御答弁の前に一言申させていただきます。  実は、私どもの今回の改正は、九つ陸運局九つ海運局を合わせて九つ地方運輸局にするという内容でございまして、現在、陸、海と分かれておりましたものを統合するというのはかなりの大きな事業でございまして、九つのまま統合するということが最も現実的だということでこの措置をとったわけでございますが、実を申しますと、臨調答申ではできる限りブロック機関は八つを目途に整合性をとるようにというような指摘もございまして、今回の措置では、運輸省だけではございません、ほかの省庁もあわせてでございますが、九つのブロックは一応認めるけれども、さらに時間をかけてこのブロックの数の問題について検討すべし、こういうことになっておりまして、本年一月の閣議決定におきましても引き続き検討する、こういうことになっておりますので、私どもといたしましては、統合後の実態等も踏まえまして、さらに検討させていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  125. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 秋田、山形両県の御意見を十分聞きたいと思います。
  126. 柄谷道一

    柄谷道一君 ぜひ、より合理的な運輸行政を執行するために、各般の意見を十分聴取されて、改むべきは改めていただきたい、このことを要望として申し添えておきます。  次に、参議院運輸委員会は、昨年四月二十一日、「政府は、最近における貨物自動車に係る道路運送秩序の確立の緊要性に鑑み、道路運送法その他関係法令の厳正な運用を図る等により、所期の目的が達成されるよう、遺憾なきを期するとともに、特に次の措置を強力に推進すべきである。」といたしまして、公正競争の確保、悪質な法令違反行為に対する厳正な処分、過積載による交通事故や公害防止の徹底、自動車運転者の労働時間等の改善基準遵守の徹底、荷主と貨物自動車運送事業者及びそれぞれの団体相互間の協力体制の確立等々について決議し、行政当局に強力な措置をとるよう求める決議を行っていることは、大臣御承知のとおりであろうと思います。  運輸大臣、この運輸委員会があえてこのような特別決議を行ったそういう背景について、現在の業界の現状について、どのような認識をお持ちか、まずお伺いいたします。
  127. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 私は、過去数年間、全日本トラック協会会長も実はいたしておったことがございます。この参議院運輸委員会の決議というものは非常に適切なものであるというふうに、私ども本当にさように思っておるのでございます。  トラックの問題は、大変難しい問題でございまして、大きい業者につきましてもいろいろ問題はございますが、特に中小のが非常に多いというところからの問題が大きい問題でございます。新規参入をある程度制限しておりますけれども、全体として非常な過当競争といったような状況がございます。お互いに足を引っ張り合っている。そのことが、また労働問題、その他環境問題等にも悪い影響を及ぼしておる。そこへもってまいりまして、もう一つ非常に難しくしておりますことは、荷主さんがあるわけでございますが、この荷主さんがやはり非常に、言葉はよくないかもしれませんが、えげつないといいましょうか、例えば認可運賃料金をもらいたいと言いましても、業界を競争させまして実質運賃を引き下げるという方向に行くということが起こってまいっております。  そういうことが絡んでおりますために、いろんな点がなかなか思うように解決がいかないということでございまして、この決議にございます項目、これは一つ一つ実は徹底的にやらなくちゃいかぬ問題なんでございますが、一番基本のところにあるのは、これは役所で言えば通産、農水、建設、いろんなところがありますが、御協力を願ってやはり運賃というものをちゃんとするということ、そして業界がこれを自分でみずから破るということを自粛するという体制ができなければ、やや言葉が過ぎますが、百年河清を待つのたぐいである。大変困難な問題で、全日本トラック協会はもとよりですが、各県のトラック協会も非常に苦心をしておる問題でございます。
  128. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣はトラック業界の実態をよく熟知されておる方でございますが、今、大臣が申されましたように、トラック輸送は国内貨物輸送の約九〇%を分担いたしております。したがいまして、経済活動国民生活に大きな役割を占めているわけでございます。ところが、大臣もただいま申されましたように、過当競争による輸送秩序の乱れによって危機的な状況にある、このような認識があえて参議院運輸委員会でこの決議を行った背景でないか、こう私は理解いたしております。  そこで、ちょっと運輸省にお伺いしますが、運輸省はかつて貨物自動車輸送秩序の確立について、輸送秩序の確立は道路運送法の発達、ひいては公共の福祉を増進するための根底であって、定額運賃料金制度確立のためにも本方策達成に一段の努力を払う必要があるといたしまして、一、自家用車の営業類似行為発生要因についての探究と自省。二、自家用車組合による使用車の遵法精神の徹底。三、使用届け出に際し、自家用輸送需要の確認に努め、名義借り、無免許運送、虚偽登録、その他道路運送法及び道路運送車両法違反の予防を図る。四番に、営業類似行為自家用車の輸送対価に対しては、所得を課税対象として追求されるよう、業界から関係機関に対し積極的な連絡を行い、総攻撃を展開する。最後に、事業者自体の問題として、荷主に対するサービス欠如、不信行為、また事業の名義貸し、分離経営等の排除、自家用車利用の排除、事業者相互間の協調体制による不当競争の排除、従業員給与体制の適正化を十分チェックする監査の励行と、違反者に対する処分を強化する。  文章は略しましたが、これが通達の要旨であると思いますが、この通達はいつ出されましたか。
  129. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 昭和二十九年八月十二日、自貨第四百五十一号によりまして、自動車局長から各陸運局長あてに通達をしたところでございます。
  130. 柄谷道一

    柄谷道一君 今御答弁がございましたように、三十年前に出された通達でございます。しかし、この通達は、今出しても不思議でない通達内容であると私は思います。ということは、この三十年間、トラック輸送に関する背景は一向に改善されていない、そのことを示すものではないか。これはもちろんトラック業界の体質が非近代的であることや、運輸行政に対する不信感が根強いということにも由来いたしますけれども、この三十年間、通達を出した運輸省はこれを遵守させるためにどのような努力を一体してきたのであろうか、改善の跡が見えないわけですから、率直にそのように申さざるを得ない残念な現状でございます。  そこで大臣、この運輸委員会の決議を受けて、三十年間改善の跡が見られなかった、こういう事態を踏まえて、今後、大臣としてはどのような決意と抱負を持って運輸行政を展開するのか、大臣の所信をお伺いいたしたいと思います。
  131. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) おっしゃるとおりですが、この三十年間にトラックの状況というものが大変な変わり方をしたということも、これは頭に入れておかなきゃいかぬ問題だと思います。量的にも質的にも非常な変化があるということでございますから、その間、努力はある程度した、してもなおかついろんな問題が残っているということであることは、これは間違いがないことだと思います。何しろ陸上貨物の九割を運ぶというような状態でございますので、問題がなかなか後を絶たないということでございます。  しかしながら、この三十年前に出た通達と、それからそれをさらに最近の状態を考えながら参議院運輸委員会の決議ができておるのでございまして、これは一項目一項目お答えをもし必要があれば自動車局長からいたさせますが、いずれにいたしましても、この問題は特に力を入れてまいらなければならぬ問題だと思っております。ということは、私は率直に言いまして、今の日本のトラック輸送というものは、非常な危機的状況といいましょうか、そういうものが来ておると思います。それは、一つは、皆相互に関連がありますけれども、経営面の問題、それから事故、環境、振動、騒音の公害、この問題、労働者のいわゆる労働基準の問題といいましょうか、条件なりあるいは勤務の態様の問題、こういう問題で改善をしなければ、九割を受け持っておる自動車が大変な影響を国家、国民の生活に与えるという、そういう危機的状況に今あるというふうに思っております。  そういうことでございますので、先ほど申し上げましたような一般の御協力も得ながらこの問題に対処していかなければ、これは本当に、そう申してはなんですけれども、いろんな点で大きなことが起こるのではなかろうかというふうな心配を実はいたしておる、かような次第でございます。
  132. 柄谷道一

    柄谷道一君 今、大臣の申されました危機的な状況を迎えている、それには多くの要因がございます。  その要因の一つに、違法行為を繰り返しながら急成長を続けてまいりました佐川急便グループの問題について、我が党の佐々木委員長の紹介者として、運輸省に対してその調査と適正な行政措置を求める陳情が寄せられていることについては、大臣も御承知ではないかと思うわけでございます。  それによりますと、佐川急便グループは、全国的には路線免許がないにもかかわらず、路線類似行為を全国的に大々的に行っておる。これは明らかに道路運送法の違反を繰り返しているのではないか。  第二には、荷主も乗務員もなく、正当な増車理由がないにもかかわらず、佐川急便と業務提携を行っております株式会社ほくさんの傍系会社であるほくさん運輸株式会社に対して、五十五年三月、一回に七十七台という異例の大量増車が認可された。しかも、その認可された車は、認可後十一カ月も札幌いすゞモーター株式会社の車庫に領置されたままであり、そしてその車が他社の乗っ取りとして使用されたという指摘でございます。  第三点は、佐川急便の傍系企業である北海道貨物株式会社は、路線事業者でありながら正常な事業を行わず、営業免許のないほくせい物流株式会社に名義貸しを続け、そのほか関東地区佐川急便にも数十台の名義貸し車両があるという指摘でございます。  第四は、佐川急便とほくさん運輸の合弁会社でありますほくせい物流株式会社、これは本社は札幌でございますが、他社を乗っ取り、北海道貨物株式会社所有のトラックを名義貸しとして使用し、二年九カ月も無免許営業を続けている。  そして、佐川急便は、和歌山で区域外営業を行っているにもかかわらず、運輸省は一年四カ月以上も実質上これを放置しておる等々の指摘でございます。  もし、これが事実とすれば、問題は重大でございます。これを放置して道路輸送秩序の確立を語りましても、問題の解決は到底できないと私は思うわけでございます。しかも、業界紙は、具体的名前を挙げて、特定政治家が行政機関に圧力をかけた結果ではないかと報道いたしておりますし、この問題を放置するということは、国民運輸行政そのものに対する不信感をすら招きかねないと思うわけでございます。運輸省はこうした問題について徹底的な調査をされたのか、調査をされたとするならば、その結果、具体的にどのように改善が図られたのか、この点について明確にお答えをいただきたい。
  133. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) ただいま先生指摘の佐川急便の問題でございますが、たしか昨年の十月ごろ、私どもあてではございませんが、私どももその陳情書を入手いたしましてその中身を検討いたし、その結果、関係陸運局にも連絡をとったわけでございますが、自来、私どもがやりました調査、それからその結果につきまして、ただいまから御説明申し上げます。  まず、第一の北海道貨物株式会社、それとほくさん運輸の関係につきましては 札幌陸運局が五十八年の十二月から五十九年の二月にかけまして北海道貨物、それからほくさん運輸、この二社に立入監査等を実施したところでございます。その結果、北海道貨物につきましては、その事業用トラックをほくさん運輸に貸し渡していた事実、これは道路運送法で言いますと事業計画の無認可の減車に当たります。それからまた、ほくさん運輸につきましては、北海道貨物からその事業用トラックを借り受けていた事実、これは道路運送法で言う事業計画の無認可増車でございまして、これも違法でございます。  それともう一つは、ただいまも御指摘ございましたが、トラック事業、運送事業の免許を持たないほくせい物流株式会社に対してほくさん運輸が、先生ただいま名義貸しと言っておりましたが、これは同じ道路運送法の三十六条の、名義貸しは一項でございますが、これは二項の事業の貸し渡しを行っていた、こういう事実が認められたわけでございます。  これらは、いずれも道路運送法の違反でございますので、近く札幌陸運局におきまして厳正な処分を行う予定にしております。  それからもう一つ、大阪の関係でございますが、大阪佐川急便関係につきましては、大阪陸運局が五十八年十二月から五十九年三月にかけまして、大阪佐川急便及びその関連会社に立入監査等を実施したところでございまして、その結果判明いたしましたのは路線事業の無免許営業、こういう事実が認められたわけでございます。このため、大阪陸運局におきまして、五十九年三月二十九日付で車両の使用の停止処分を行ったところでございます。  運輸省といたしましては、今後ともトラック運送事業に係る運送秩序の改善を図るために、適切な監査を実施し、違法行為につきましては、先ほど先生がおっしゃいました参議院の決議にも照らしまして、違反があれば厳正な処分を行ってまいりたい、かように存ずる次第でございます。
  134. 柄谷道一

    柄谷道一君 さらに、お伺いいたしたいと思いますが、ただいまの局長の御答弁では、一言で言えば差別行政は行っていない、厳正な行政を執行しておる、こういうお話でございますし、通産省の調べでは、五十六年度九件、五十七年度十五件、五十八年度、これは昨年十一月十六日まででございますが、十三件、合わせて三十七件の車両停止または文書警告を行っておる、こういうことでございますけれども、私はこれは氷山の一角にしかすぎない。佐川急便グループが今日まで法の違反、処分、これを繰り返しながら急成長を続けてきておるということは、これは業界の常識でございます。ほくさん運輸に対して行政処分を行うとともに業務改善勧告を行ったというふうに言われておりますけれども、しかし三年間も、しかも現在に至るも名義貸しが続けられているという指摘がございます。その事実を確認していらっしゃいますか。
  135. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 先生がおっしゃいましたように、北海道のほくさん運輸関係につきましては、たしか三年前の五十六年にも事業の貸し渡し等の違反事実がございましたので、厳正な処分はその時点でやったはずでございます。しかし、私どもが入手しました陳情書に書いてございますように、また先生がただいまおっしゃいましたように、その後も違法行為を続けてやっておられるというお話でございますが、それはその陳情書を受けまして私どもが札幌陸運局に通報し、札幌陸運局が、先ほど説明申し上げましたように、立入監査等を実施して違法事実の内容をつかんだ、こういう状況であります。
  136. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは確認を願いたいと思いますが、現在もその行為は続いております。そんなことでは、警告や改善命令は出しても依然としてこれが改善されないということでは、これは運輸行政の権威にかかわります。  また、ある業界紙の記者が、大阪陸運局に参りまして、いろいろ質問をしております。これは新聞に出ておるんです。真偽は私はわかりませんよ。しかし、そのときに、大阪陸運局責任者が、五十六年度以降佐川急便には行政処分はしていない、佐川の営業実態は全国にわたり経営形態が複雑なため、区域外輸送とか積み合わせ違反など簡単に決めつけるわけにはなかなかいかぬ、佐川の場合、本省行政指導もあり、根本的な問題から取り組まなければ効果が上がらないと記者に語った。これは新聞の報道です。本省は、各陸運局に対してどういう指導をしておられるんですか。
  137. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 私どもの方から各陸運局に対して、佐川急便に対して特別の措置をというような指導はしていないはずでございます。私は、五十七年の六月から自動車局長をやっておりますが、そういうような指示を陸運局にした覚えは全くございませんし、それ以前にもそういうようなことはなかったというふうに私は信じております。
  138. 柄谷道一

    柄谷道一君 すると、これは私はこの新聞記事を書いた責任者に改めて確認をいたしたいと思いますが、本省管轄であり、地方陸運局は手をつけるなということを言った事実はありませんね。
  139. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 私は、ございません。
  140. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、もう一つ質問しましょう。  さきにも指摘いたしましたが、運輸省はほくさん運輸の大量増車認可について、これは申請は百六両の増車申請であったと思うんです。これに対して陸運局は、輸送の効率化を指導して、荷主からの輸送依頼書等を確認の上、申請より二十九両減の七十七台を認可した、いわゆるチェックしたのだ、こう言っておられます。しかし、指摘されておりますように、その認可された七十七台の増車が、ナンバープレートをつけて、しかも大半の車両が十一カ月も札幌いすゞモーターの車庫に領置されていた。これは認可に際して、輸送依頼書に記載されている荷主が本当に需要があるのかどうかということをチェックし、それを確認の上認可したとすれば、十一カ月も車庫に遊ぶはずはないでしょう。私は、申請と事実が異なっているというこの実態からすれば、申請書は作文として整っておれば、虚偽の申し出をしてもこれは認めざるを得なかったということに通じませんか。十一カ月放置の事実を陸運局は確認していらっしやいますか。
  141. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 確かに、ほくさん運輸からの申請に基づきまして、五十五年の三月に七十七両の増車の認可をしたことは事実でございます。ただ、その車が認可を受けた後十一カ月放置されていたかどうか、私ども陳情書を受けて、早速、札幌陸運局に調査を命じたわけでございますが、その辺の事実がどうであったかということは、今の段階でははっきりとつかんでおりません。
  142. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは現実にそれを立証する人が多くあるわけでございますから、この点は再度厳正な確認を行って、この認可の適否というものについて、やはり納得のいく説明をしなければ、これまた運輸行政が誤解を受けるということになるであろう。私は、再調査を依頼いたしておきます。  さらに、北海道貨物株式会社に対して立入検査をしたというただいまの御答弁でございますけれども、この会社は、五十四年三月に佐川急便に買収されまして以来、路線事業は行っておりません。大型車は区間輸送、小型車は全車名義貸しを行っております。しかも、それが五十四年三月ですから、既に五年を経過しております。一体、札幌陸運局、何を見ておるんですか。
  143. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 北海道貨物というトラック運送会社は、北海道に路線を持っておる会社でございます。ただ、先生がおっしゃいましたように、幹線部分は大型車、それから支線部分は小型車というようなお話でございますが、私どもの札幌陸運局の調査によれば、この路線事業は五十四年以隆行っております。ただ、集配は、これは北海道貨物からほくさん運輸という会社に集配の事業を委託しておるということでございまして、この関係につきましては運送法の違反ではない、こういうことでございます。
  144. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、運輸省関係、時間があれば一々具体的事実をもって反証したいわけでございますけれども、こればかりやっておるわけにはいきません。しかし、ただいまの答弁では私は釈然といたしません。  佐川急便が、違法行為を会社経営のシステムとして急成長してきた、そして佐川急便グループ約七十社全部が違法行為を行っている、これは業界の常識です。ただ、後にも申しますけれども、特定政治家を恐れ、暴力団を恐れ、ただ口をつぐんで物を言わないだけです。しかし、運輸行政というものがこうした最も悪質な法違反に対して手をこまぬいておって、業界秩序を確立せよと、どうして言えますか。  これも報道でございますが、佐川清社長は、わしは天皇であり、憲法だ、わしの言うことを守っておればよい、わしにはいつも田中角榮先生がついてくださっている、心配するなと、いつも公言されると言われております。また、ただいまの七十七両の車両増加のときに、あえて氏名は申しませんが、元運輸大臣の政治的圧力があったということは札幌の業界がみんな薄々知っておる事実でございます。そして、業界紙に、差別的行政指導を行ったとされる元自動車局長で元参議院議員、名前はあえて申しません。その方が金と女にまつわるスキャンダルというものが新聞に報道されている。  こういう問題を逐一解明して、厳然たる運輸行政の姿勢を示すことこそ、私は運輸委員会の決議に沿う行政当局の姿勢ではないか。私は、別に佐川急便に対して恨みを持つものではございません。ただ、業界の秩序を確立しなければならぬ。確かに中小零細企業はいろいろ問題もあるでしょう。しかし、今や急成長した、しかも最も悪質な違法行為を繰り返していると言われるこのグループに対して運輸省が物が言えないという誤解を与えては、私は大変なことになると思うのでございます。  私は、改めて運輸省に私の持つ具体的資料を提示しながら、運輸省の実態を今後も引き続き究明し続けたいと思います。そして、その結果いかんによりましては、私は責任者を参考人として招致することも検討せざるを得ないと思います。大臣の決意を、この際、伺っておきます。
  145. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 業界はいろいろございまして、まじめにやっておる者でいろいろ憤慨しておる者がたくさんおることもよく承知しております。したがいまして、今おっしゃったように、厳重に道路運送法その他関係法規を施行していかなければ大勢の者が迷惑する、大勢の者が結局信頼を失うということになると思います。厳正にやってまいらなければならぬことだと考えております。相当数が多いのと、先ほど申し上げました競争激甚、いろんなことがあることを私どももちょいちょい耳にいたしておりまして、まことに残念に思っております。
  146. 柄谷道一

    柄谷道一君 労働省にお伺いいたします。  労働省の労働基準局は、本年二月、昭和五十九年度労働基準行政の運営に関する方針を決めたと承知をしております。私の承知するところによれば、その内容は、   自動車運転者の労働条件の確保については、「自動車運転者の労働時間等の改善基準」の自主的な履行を促進するため業界団体に対する指導に努めるほか、春秋の全国交通安全運動実施時期に集中的な監督指導を実施することとする。  なお、重大又は悪質な法違反が認められた事業者に対しては、関係行政機関との通報制度の実効性の確保に努めるほか、司法処分を含め厳正な措  置を講ずることとする。これが方針の内容だと思いますが、間違いございませんか。
  147. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 先生のおっしゃる内容の通達を、二月に、全国の労働基準監督機関に対しまして、指示をいたしているところでございます。
  148. 柄谷道一

    柄谷道一君 佐川急便では、朝六時より夜十二時ごろまで、遅いときは深夜一時、二時まで就業を強制している。後ほど申し上げます交通事故の犠牲は、深夜二時に起こった二名の即死事件でございます。  私は、労働省にお伺いしたいんですけれども、立入検査をやられましたか。
  149. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 労働省といたしましては、第一線の労働基準監督機関を使いまして、毎年、今、先生おっしゃるような春秋の交通安全運動の期間を重点にいたしまして、約五千の事業所に対して監督指導の立ち入りをやって監督をしておるわけでございます。  そこで、今のは事故との関係の問題ですが、実は私その点についてはまだ調べてございませんが、この会社について過去に送検したことは私もつかんでおりますが、どうもその事故との関係ではないようでございますので、今ちょっと具体的には申し上げられない状況でございます。
  150. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは警察に聞いた後、もう一度労働省の御所見を伺います。  警察庁、いらっしゃいますね。――佐川急便がこの隔地間輸送に路線免許事業者を使っていないというのは、最初からスピード違反を前提とした運行計画を組んでいるからではないか。一例を挙げますと、東京―大阪を約六時間から七時間で走らせる、場合によっては深夜二時の出発、早朝六時の到着、こういう運行計画があれば時速八十キロでは到着できないのは当然でございます。労働組合もない小さな区域事業者を下請にして、違反を強要し、時速百キロから百四十キロで東名、名神高速道路を走り抜けている。見るに見かねたある業者が、昨年十二月二日から十二月二十四日の間、自主的に名神高速道路及び中国高速道路で佐川急便グループの車両の運行実態について追跡調査を実施いたしております。車両登録番号、会社名、日時、場所を明らかにした上で追跡調査を行った計六十三件すべてについて、時速百キロ以上、百四十キロで暴走しておるという事実を指摘いたしております。もちろん、これは一会社の追跡調査でございますから、法的な裏づけにはならないと思いますけれども、小規模な区域業者に法違反を承知の上で全国的に運行さしていることを裏づける一つの資料であろう、こう思います。  私は、仮に時速百四十キロで走行していた場合、事故に遭遇して急ブレーキをかける、その場合は車両は蛇行して分離帯を飛び越すか、直進しても数百メートルは停止できない、したがって大事故に発展することは明らかでございまして、この追跡調査の結果が事実とすれば、これは慄然たる思いがいたします。  さらに、私は新聞報道をいろいろ調べました。例えば四国佐川急便は、五十八年二月九日から五十九年三月三十一日の一年二カ月の間に、愛媛県だけで四件、死者五名の交通事故を起こしております。五十八年二月九日、国道五十六号線で老人をひき殺した事件。五十八年七月二十七日、深夜のひき逃げ事件。五十八年九月二十九日、自動車に乗った老人を死亡せしめた事件。そして最近は、本年三月三十日、午前二時二十分、業務の途中で二名を轢死さしております。このうちの一件はひき逃げ、二件は全く深夜の事故でございます。これは深夜明らかに従業員を働かしていたということを物語ると思うわけでございます。  私は、こういう事故を起こした場合、通常の場合ですと、事故を起こした運転手だけが検束される、これが常識です。ところが、四月十八日午前六時ごろ、愛媛県警は、車両の出入り、電話を全部遮断した上で強制捜査を行われたと承知いたしております。捜査の結果は、今聞いても捜査中ということで言えますまい。しかし、これは会社ぐるみで法違反の行為を強制していた疑いがある、ゆえに強制捜査に踏み切ったのではございませんか。お伺いします。
  151. 八島幸彦

    説明員(八島幸彦君) お答えいたします。  御指摘のように、交通事故等が発生いたしまして、それが運転者の責任追及は当然でございますが、その背景といたしまして会社側にも責任がある場合におきましては、道交法のいわゆる下命容認がなされていた結果、酒飲み運転とかスピード違反とかあるいは過労運転等の事故になったと認められる事件につきましては、会社側の責任を追及することがあるわけでございます。
  152. 柄谷道一

    柄谷道一君 今回は、そういう疑いがあったから強制捜査されたわけですか。
  153. 八島幸彦

    説明員(八島幸彦君) 現在、三月三十日の深夜の事故につきましては、管理者等の責任についても目下捜査を進めておるところでございます。
  154. 柄谷道一

    柄谷道一君 これは旧聞に属しますが、五十六年二月、名神高速道路関ヶ原インターで、三十三台の車両の追突事故が起きまして、死者四名、重軽傷十六名という痛ましい事故がございました。この三十三台の中に佐川急便グループの車両が数台含まれておることは警察も御承知だろうと思うんです。いずれにしても、労働省と警察庁に私はお伺いしますが、走行計画、運行計画自体が労働基準法を無視し、二七通達を無視し、道交法を無視した業務計画が組まれている、これは問題重大でしょう。その運行計画の中で働かざるを得ない労働者の罪というよりも、むしろ大もとにメスを入れなければこうした事故を根絶することはできない、こう思うんです。ひとつ立入検査でもして徹底的にその事実を究明する、両省のそういう決意をお伺いいたします。
  155. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 私どもは、改善基準ということで、先ほどもお答えいたしましたように、全体の監督の重点を、トラックについてはともかく最重点にして相当投入しているつもりでございます。  それで、今の点につきましては、改善基準ということでこれを守っていただくということで鋭意この徹底をやっておるわけでございますが、きょう先生の御指摘の点もよく頭に入れて、きょうの議論をひとつ現地の方へ反映するように、さらに一層徹底をしたいというふうに思っておるわけでございます。
  156. 八島幸彦

    説明員(八島幸彦君) 警察といたしましては、その運行計画等につきましては一般的にはチェックをしたりすることはございませんけれども、先ほど指摘のような具体的な事故が発生いたしまして、その事故の捜査に関連いたしまして必要がある場合には運行計画その他を捜査するということはございます。
  157. 柄谷道一

    柄谷道一君 警察にもう一つお伺いいたしますが、佐川急便グループの場合、しばしば暴力団の組とか会、具体的な名前もこれは挙げてでございますけれども、それが出てまいります。そして、その裏には多額の金銭が動いているということを証言する人もございます。例えば、これは会社の名前を言うのはきょう避けたいと思いますが、五十八年の五月、佐川急便の社員が鉄棒を振り回して、ある会社の社員三人に次々と暴力を働き、営業車両の窓ガラス等をたたき割るなどの暴挙を行ったとか、私の方にはいろいろ暴力事件について泣きがあるんです。しかし、背後に暴力団ありということで、被害を受けた人の大部分は泣き寝入りでございます。警察は、こうした事実をつかんでおられますか。
  158. 八島幸彦

    説明員(八島幸彦君) 御指摘のような事実は現在までのところ把握しておりませんけれども、いずれにいたしましても、お尋ねのような不法事案があるとすれば厳正に対処してまいる考えでございます。
  159. 柄谷道一

    柄谷道一君 警察が身辺警護について保障してくれるならば、これを証言する人は幾らでもおります。こうした問題について、具体的に今後警察庁とも話し合いまして、運輸行政と暴力団とのつながりを断つ、このことについて警察当局の十分の御配慮をお願いしておきたい。私がこの質問をすると言ったら、あなたの身辺危ないよと言う人が多いですね。大臣、言論の府で国会議員がそんなことを頭の片隅に置いて質問しなければならぬ、こんなことを許していいんでしょうか。私は、そのことを指摘だけしておきたいと思います。  公取に聞きます。  佐川急便は、同業他社と競合する場合に、サマーセール運賃は半額で結構です、こういうことで他社が取引している荷主と話をして、極端なダンピングを行っている。他社が競争に耐えられないということで手を引きますともとの運賃に戻す。また、あるときは、荷主にあなたの取引しております会社は一カ月先に不渡り手形を出しますよ、今のうちに我が社に品物輸送をかえてはどうですか。これは証言する人があるんです。これは、独禁法第五章第十九条、「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」。そして、不公正な取引方法についての公正取引委員会告示第十五号の第六項には、不当廉売に関する規定を設けております。第八項には、欺瞞的顧客誘引の禁止を求める条項も明らかに定められております。公正取引委員会は、こうした不公正な取引の実態について把握をされておりますか。
  160. 河村穰

    説明員(河村穰君) ただいま御指摘の件につきましては、事実関係の詳細を現時点では把握いたしておりません。
  161. 柄谷道一

    柄谷道一君 正確な情報を提供する者があれば、公正取引委員会は手を入れられますか。
  162. 河村穰

    説明員(河村穰君) 提供されました情報につきましては、事件の端緒ということで、独禁法の規定に照らしまして、違反被疑事件として調査すべきかどうか検討いたしたい、そういうふうに思っております。
  163. 柄谷道一

    柄谷道一君 法の規定に照らし、私は厳正な公取の行政を期待いたしておきます。情報は、追って申し上げます。  郵政省にお伺いします。  佐川急便では、同業他社の無線に周波数を合わせまして、他社の営業実態を傍受し、営業妨害を行っている。これは元佐川急便社員が証言しているところでございます。これが事実とすれば明らかに電波法の違反になると思いますが、いかがですか。
  164. 大瀧泰郎

    説明員(大瀧泰郎君) 私どもといたしましては、現在までのところ、そのような事実は正確には把握していないわけでございますが、その内容によりましては、厳正な処置を考えてまいりたいと思っております。
  165. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、時間の関係もございましたが、私の入手し得る範囲の資料に基づきまして、客観的にただいままで佐川急便の路線類似行為、名義貸し、無免許営業、区域外営業等の道路運送法違反、労働基準法及び二七通達違反、道交法、独禁法、電波法違反の疑いについて指摘をしてまいりました。  繰り返しますが、もちろん私は、この会社とは別段の関係もなければ、特段の感情を抱くものではございません。しかし、こうした法違反というものがまかり通り、そして運輸行政なり労働行政なり他の行政がここに手が及ばない、それが事実上黙認されておるということでは、私は貨物自動車に係る道路運送秩序確立という院の決議も実効を期することはできないと思うわけでございます。院の決議は、重大または悪質な法違反が認められるときは司法処分を含め厳正なる措置をとることを行政当局に求めております。  ところが、佐川急便は、事実上の本社は清和商事株式会社でございます。これは運輸省の管轄にないんです。その下に、独立会社でありながら主管店という名を使うこと自体も不思議なんですが、主管店と呼ばれる東北、東京、中京、北陸、大阪、四国、九州の七つの会社を配置しております。業務命令、経営戦略はすべて清和商事から出されておるわけでございますし、清和商事はこの主管店の株を保有いたしておりますし、人事、営業、すべて一つの意思のもとに動いているわけでございます。そして、そのさらに下に約七十社の子会社を配置しております。主管店からは営業利益に一定の比率を掛けての上納金を入れさしておりますし、佐川社長は主管店の取締役を兼ねております。  こういう複雑な営業形態を持っているわけですから、トカゲのしっぽばかり幾ら押さえてみてもなかなかその本質が解明されない。私は、その根源である清和商事そのものにメスを入れて、万般の行政の対応を考えるという毅然たる行政の姿勢を持たない限り、この問題の解決はできないと思うし、こういう問題を放置することによって、輸送秩序の確立を幾ら説いてみても、他の業者は佐川をほっておいて一体おれのところにどうしてそういうことを言うのか、それが私は現在の運輸行政の不信の一つの大きな要因だろうと思うんです。  私は、これから、場合によれば決算委員会にも差しかえて出ます。運輸委員会にも差しかえて出ます。きょうの質問はいわば第一弾でございますけれども、大臣、私のただいままでの質問を聞いていただいておりまして、運輸大臣として他省庁と十分連携をとりながら問題の根源に対して切り込んでいく、この決意をお示しいただきたいと思うんですが、いかがでございますか。
  166. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) おっしゃいました資料について、私は確認しておるわけではありませんけれども、そのような事実があるとしますれば、これは許しがたいことでございます。また、相当根が深い問題であると思っております。お説のように、これは行政が全体として対処しなければならない、かように思っておる次第でございます。
  167. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、できる限り感情を交えないで問題を客観的に述べたつもりでございます。私も、これから引き続いて問題点を明らかにしてまいりますけれども、運輸省自体も、私の言ったことが真実なのかどうなのか、このことに対しては本腰を入れて調査を願いたいし、また私の今後要求する資料についても積極的に御提示を願いたいと希望しますが、よろしゅうございますか。
  168. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) ただいま先生からいろいろとお伺いいたしましたが、私どもで入手できる限りの資料はできるだけ入手いたしまして、お求めに応じて提出なりあるいは御説明なりをしたいと思っております。
  169. 柄谷道一

    柄谷道一君 問題をちょっと転じますが、大臣に率直にお答えいただきたいと思うんですが、整備新幹線問題です。  これは各方面から大変注目を集めておりますし、関係する地域の期待もまた極めて大きいわけでございます。私の聞くところによりますと、環境影響手続も一応終わった、そして五十九年予算で調査費の裏づけがされた、そしてそれらを背景として、現在、青森、富山、石川、長野に建設準備作業所が開設されているというふうに私は聞くわけでございます。  そこで、こういう建設準備作業所の開設位置から考えまして、私は、今後の第一順位は北陸と東北に置かれている、こう読み取るしかないと思うんです。私の判断が誤りがないかどうか、そして調査費はついているんですが、具体的に着工される時期について政府全体としてどうお考えになっているのか、お伺いいたします。
  170. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 整備新幹線五つのうち、今おっしゃった東北の盛岡―青森間と北陸新幹線と称せられておるものとが先行をいたすということについては、そのとおりでございます。  それから余すところは、本当に工事を始めるということ以外は一切の準備は終わっております。駅の位置等も大体決まっておるということでございます。環境影響評価はもとよりでございます。でございますから、あとは、問題は予算の問題ということになっておるわけでございますが、御承知のような国有鉄道の財政状態、そして一般会計の財政状態も非常に苦しい、こういうことでございますので、そこに隘路があるというだけでございます。私としましては、少なくとも昭和六十年度からとにかく本格的な着工をするように最善の努力をしたい、かように考えております。
  171. 柄谷道一

    柄谷道一君 また、運輸問題に逆戻りいたしますが、私は、業界の秩序を確立して健全な発展を図っていくためには、一つは業界の自助努力、一つ行政役割、これが大きいということは当然のことだと思うのでございますが、いま一つ重要なことは事業法が適正でなければならぬということではないか、こう思うわけでございます。  その事業法である道路運送法につきましては、私がくどくど申し上げるまでもなく、戦後の復興期に制定されたものでありまして、その後の輸送環境の著しい変化に対応できなくなってきているのではないかと私はしばしば指摘を行ってまいりました。また、臨調答申でも、現行法は実態から乖離し、全般的な見直しが必要である旨の指摘も行われているわけでございます。したがって、臨調答申等も十分尊重しながら、速やかに道路運送法、通運事業法、港湾運送事業法について全面的な見直しを行い、その抜本改正を急ぐべきではないか、こう考えますが、運輸省の御所見をお伺いいたしたい。  その際、あわせて、私の持論でございますけれども、参入問題、また運賃問題などの根幹をなすべき部分は、輸送秩序を確保するという立場からこれを存続させ、その他軽微な許認可については思い切って簡素化する、それが見直しの基本的方向であろうと思いますが、認識をお示しをいただきたい。  以上でございます。
  172. 丹羽晟

    政府委員丹羽晟君) 私の方から、臨調答申との関係の事柄につきまして、お答え申し上げたいと思います。  臨調の最終答申の中に、「貨物運送事業」という部分がございまして、先生指摘のとおり、通運事業の場合ですと、鉄道集配の事業につきましては、拠点駅を中心とした集配圏の複数駅について営業できるようにするとか、それから免許事業の種別の統合を図るようにするとか、そういった御指摘を受けております。  それから道路運送法の関係では、トラックの事業につきまして、一般区域トラックの事業区域につきましての拡大、それから一般の区域限定のトラック運送事業につきまして事業範囲の限定による制約をできるだけ除くとか、それからもう一つは、宅配便の運賃の問題につきまして輸送サービスの内容等に対応したものになるようにそのあり方について検討する、それから事業計画の変更認可の場合に届け出制を軽微なものについては入れていくとか、そういった御指摘を受けております。  それからもう一つ港湾運送事業法関係につきましても、船内荷役事業と沿岸荷役事業統合というようなことがまず指摘を受けておりますが、これが当面の対応ということでまずはございまして、あと長期的には、今の通運事業法、道路運送法による縦割り事業規制の見直しを行い、総合的な物流事業規制のあり方について検討する必要がある、こういう御指摘を受けております。  それで、先ほど来御説明いたしました当面の対策につきましては、今私が申し上げた部分につきましては、港湾運送事業法の法改正は今国会に提出してございますが、それ以外のは既に全部実施してございます。  それから今後の長期的な問題につきましては、私ども七月一日から大組織改正をさしていただきたいと思っておりますが、その新しい組織の中でこういう問題についても検討を進めていきたいと考えております。
  173. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) おおむねおっしゃったとおりなんでございますから、簡単にお答えしますが、再検討しなきゃならぬ。それから新規参入並びに運賃問題以外のものについては極力簡素化する、これが今度の中央、地方を通ずる機構改正一つの大きなやっぱり目玉だ、かように思っておる次第でございます。
  174. 柄谷道一

    柄谷道一君 総合交通政策の必要性ということはしばしば各方面から指摘されているところでございまして、大臣もその言葉については全く御異論はないと思うわけです。そして、行政機構につきましては、本法案によっていわゆる改革に大きく一歩前進したということだろうと思うんですが、事業規制とか財政制度等は依然としてまだ縦割りでございます。私は、この三者が一体になることによって初めて総合交通政策というものの確立ができるのではないか。こう考えてまいりますと、統一的な調整原理を確立すること、それから総合交通政策の根拠法令として各事業法に優先する総合交通調整法などを新しく制定すること、また個別の特別会計制度の利点を生かしながら、これを調整する会計制度について検討を深めること、この三者が実現することによって初めて総合交通政策の樹立ができるのではないか、こう思いますが、いかがでございますか。
  175. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 法律みたいな格好でいろいろ御質問なんかがありまするけれども、名前はともかくとしまして、中身についてはおっしゃるとおりだと思います。今度、地域交通局あるいは物流局というものをつくるということは、まさにそういうことをねらいにいたしておる、かように申すことができると思います。
  176. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、その他通告いたしましたのは、交通関係のいわゆるインフラの費用負担の問題、特に青函トンネル、関西新空港、本四架橋というような巨大なインフラの費用負担の問題など、数点を通告いたしておりました。しかし、時間が参りましたので、質問時間は守りたいと存じます。これらの問題、運輸行政の基本にかかわる問題につきましては、また改めて機会を得て大臣の御所見を承ることとし、私の質問を終わります。
  177. 前島英三郎

    前島英三郎君 今回の機構改革に当たりまして、今後の運輸行政のあり方をどういう方向に持っていこうとしているのか、基本的な姿勢をまずお尋ねしておきたいと思います。  きょうは、いろいろな形で運輸行政につきまして先輩諸氏の御意見を伺っていたところでありますけれども、運輸を取り巻く諸情勢の大きな変化、経済の安定成長への移行、あるいは国際化、経済のソフト化の進展等々、大変大きく変化しておりまして、これらに伴って輸送サービスの質的向上への要望が強まっているという認識についてはそのとおりであろうと私も思います。  そして、今回の機構改革におきまして、そうした変化に対応していこうという見地から、縦のものを横にするといった再編を中央、地方ともに行うのだという点は、私も理解のできるところでございます。しかし、過去の大きな変化に対応するという点では、いかにも後追いという感じがしてなりません。むしろ、遅きに失したという面すらあるような気がいたします。そして、これからの展望という点では、どうもいま一つはっきりしないという感じを持たざるを得ません。  例えば運輸行政のあり方でしばしば指摘される点は、許認可官庁から政策官庁への脱皮ということでありますけれども、政策局を設置しただけでそれが実現するわけではないはずでありまして、この辺の体質をどう改善していくのか明確にしていただきたいと思うのでありますが、まず大臣の御答弁からいただければと思います。
  178. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 今、遅きに失したというお話がございましたが、そういう感じだと思います。これは随分前から省内では検討しておったんですが、なかなかうまくいかなくて、ようやく臨調答申を受けて今度やるということになったわけでございます。  御案内のように、地方運輸省設置法で出しまして、中央は前の国会で通りました国家行政組織法による政令で変えるわけでございます。  運輸省という役所は、もともと逓信省鉄道省が一緒になったものなんでございます。その中から通信が抜けまして、それから国営鉄道の仕事が公共企業体として抜けた、その残り運輸省ということで、今の形は昭和二十四年にできたものでございます。でございますから、ある意味では逓信省時代あるいは鉄道省時代のものをそのまましょってきておるということでございます。それから関係事業法など修正をその後いたしておりまするけれども、これは戦争直後に大体今のものの大半はいたしておるということでございますので、どうしてもそういう点ではやっていけない問題が起こった。  そこで、しばらく前になりますが、何とかして総合調整というようなことをやりたいということで、官房の強化とか、あるいは総務審議官を置くとか、政策課をつくるとか、いろんなことをやったわけでございますが、何としてももとの縦割りの局が強過ぎるということではこれがやれないということで、今度は一遍壊しまして、そして再編成をしていくという形にいたしたわけでございます。  私も運輸省昭和三十五年までおったんですが、私がいた時代でもまだそれどころじゃないんです。あの人は逓信省出身だ、あの人は鉄道省出身だというようなことがございまして、とてもとても足してごっちゃにしてというようなわけにいくようなものでなかったのでございます。そのことは、単にそういう人事や例え話だけじゃなくて、それぞれの局がそれぞれのものをしっぽを引いて皆ずっと今日まで来ておる、もちろんいろいろ改善、改正はしておりますけれども。ですから、そういう意味で今度思い切って、言うならば、考え方によりますと、明治以来やっておったやり方を変える。  それから事情が今、私の提案理由の説明のような点について御質問の中にもありましたが、例えば一つの地域交通をとりましても、鉄道と自動車と別なところでやっておるのでは話にならないんです。ローカル線のことを一つとってみてもそうでございます。あるいは通勤輸送一つとってみましてもそうでございます。また、物流を考えるときに、海は海、陸は陸、自動車は自動車、鉄道は鉄道、それでは物流にならない。そこへもってきて倉庫というような問題がある。港湾荷役というような問題がある。港の問題がある、港をつくる方は別にやりますけれども。  そういうことでございますので、今度の組織ではそういうものをひとつやっていこうということなんです。ただ、御心配のように、これができたからすぐこれだけで能事終われりというわけにはまいりません。これをつくった後、本当に政策官庁としての魂を吹き込まなければこれは役に立たない。しかし、それができるような入れ物をつくろう、新しい皮袋をつくって新しい酒を盛ろう、こういうようなわけなんでございます。これからが大事なんでございます。
  179. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう意味では十年一日の感もありましたし、だからといって、立っていたものが横になって、人間も横になるといい知恵がわいてくる場合もありますけれども、果たしてその部分が正しく国民の期待にこたえるような状況になっていくか。そういう意味では運輸行政にいろんな人たちがかかわり合いを持っているわけなんですけれども、またその中における運輸行政のあり方という問題に関しましては、利用者の中には障害者や老人がいることも自然なこととして、今、大臣が地域交通の問題も取り上げられましたが、きょうはそういう細かい問題も幾つ質問をしてまいりたいと思うんですが、この点を配慮した総合的、体系的な運輸交通の実現を私も過去一貫して主張してきたところでございます。  最近では、建前としては、この面につきましては、かなりの理解が得られるようになってまいりました。大臣の所信表明におきましても、「身障者対策等の推進を図る」という一言ではありましたけれども、大変重要なお言葉に言及していただいております。今回の機構改革によってこうした点についても一層拍車がかかるものと私は期待をしているんですけれども、期待してよろしいのかどうか、その辺も承っておきたいと思います。
  180. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) ただいま大臣から申し上げましたように、今度の組織改革では、政策をともにするセクションを集めまして一つの局をつくっていくということが組織原理になっております。そういう意味では新しい政策を生み出すということについて非常にやりやすい仕組みにもなりましたし、また部内の職員もそのようなことに心を一にするということが可能なわけでございます。  今まではともすればなかなかそういう点、各局の間でいろいろな交渉があって、共通の意識で政策をつくるということが困難だったわけですが、今回はそういう政策的な流れができまして、全体の問題につきましては運輸政策局というところが全般を見ていくということでございますし、各地域地域の交通機関の乗り物等の問題につきましては地域交通局というところが中心になってきめ細かな問題に対処していくという仕組みができているわけでございますので、私どもは、新しい組織ができました後は、今まで以上に十分な対応をやっていけるのじゃないかと考えている次第でございます。
  181. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう意味では、障害者や老人に対する配慮運輸行政の中でも大変これからも我々は期待したいところでありますし、大きなウエートを占めているというように思うんです。そういう意味では、今、政策局がその部分を受け持つ、また政策局が今まで縦割りでやりにくかったものが非常に前面に押し出されてかえってやりやすい状況になっていくという、こういう御答弁をいただいたんですけれども、これは当然政策局が交通弱者の問題は積極的に取り組んでいく、こういう理解でよろしいわけですね。
  182. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) 運輸政策局が全般の問題の取り組みをいたします。具体的な問題処理につきましては、今回の組織におきますと、陸上交通機関については地域交通局というのがございます。それから航空については航空局が対処いたします。それから国有鉄道については官房国有鉄道部が対処するということになっております。
  183. 前島英三郎

    前島英三郎君 障害者の移動、交通問題につきましては、障害者対策に関する長期計画でもその方向が示されているわけなんですが、私たちが以前に考えていたよりも余りにもあっさりとした表現でございまして、実はこれで、かなりあのときは一年ぐらい検討されたと思うんですが、一年検討した結果がこういうことなのか、また、これからまたこんな形なのかという心配もあるわけなんですけれども、その記述の部分、短いですからちょっと読み上げますと、「公共交通機関の改善、整備を進めるとともに、公共交通機関と住居との間、又は、市町村の区域内の移動、交通等については、リフト付バス、改造自動車等の特別手段、ガイドヘルパーの派遣等のサービスを考慮し、また、道路、交通信号等についても障害者の安全な歩行や通行が行われるよう必要な整備、改善を行うものとする。」、これが運輸省の長期行動計画の一節にあるわけなんですけれども、この後、経済的負担の軽減について触れているんですが、今読み上げた部分について言いますと、実はその句読点のところで所管省庁の担当分野をちゃんと区切ってあるわけなんです。  最初の区切りは運輸省です。「公共交通機関の改善、整備を進めるとともに、」、そこまでです。次のところになってきますと、今度は厚生省と自治体の担当に変わっていきます。「公共交通機関と住居との間、又は、市町村の区域内の移動、交通等については、」云々という形になっていきます。終わりのところは、建設省と警察庁ということになっていくわけですね。  移動、交通問題というのは、運輸行政ばかりではなく、他の分野にもまたがる問題であることをおのずから物語っていると思うんですけれども、同時に注意しなければならないことは、文章の区切りが行政実態の区切れになってしまっているのじゃないかということなんです。移動、交通は連続した流れでございますから、それが途中で切れてしまうのは大変困ってしまうわけです。この交通体系の連続性、総合性の確保という点は、障害者等の場合だけではなく、運輸行政が常に直面している課題でもあろうと思います。そういう全般的な問題として、特に建設行政との連携をどのように進めようとしておられるのか、それから障害者等の移動、交通対策の面での連続性の確保をどうするのか、厚生省あるいは警察庁あるいは地方公共団体、そういう確保をどのようにしていくのか、この二問にわたりますことにつきまして、一つの政策局としてのこれからの抱負などを伺えればと思いますが。
  184. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) この長期計画の記述は、御指摘のとおり、各省の分担がおのずから浮かび上がるような形で書いてございます。ただ、私ども、関係省庁の考え方としますと、まず第一には、こういうふうに並べられた各省の分担を十分にその中で果たすように最大限の努力をしていく。それはそれぞれの分野で努力をしていくということでございますが、先ほど指摘がありましたように、実際に公共交通機関が整備されましても、その公共交通機関を利用するところまでの道路その他が整備されていなければこれはやっぱりいけないという問題もあるわけでございます。そういう点では、むしろ今度は一般的な中央での計画の問題よりは実施上の配慮ということが何よりも考えなければならないわけでございます。  そういう点で、建設省、警察庁というところとの連携、特に建設省との連携が一番重要なポイントでございまして、例えばバス等の改良をいたしましても、実際に歩道と車道との間の段差があれば、それはバスを非常に使いにくいものとするというようなことでございますので、身体障害者用のバスが整備されるようなときには、そこら辺の停留所の構造等にも配慮するというようなことが重要になってくる。  そういった問題につきましては、これは具体的な対策を実施する陸運局なり陸運事務所あるいは現地のバス事業者等が具体的にその計画を実現化するときに関係の道路管理者とよく事前に連絡をするということが必要だと思います。そういう形での連絡調整というのをよくやっていくということですし、またそういう連絡をするための基本的なあり方についてこれから各省と少し問題を詰めて連携していきたいと考えております。
  185. 前島英三郎

    前島英三郎君 今回の機構改革で縦のものが横になって、その結果地域交通というものがクローズアップされることになるわけなんですけれども、本省にそういう局ができますし、地方運輸局が各地域にできるわけでありますが、これは単に並べ直すということで終わったのじゃ意味がないと思うんです。行政のむだがなくなるということも重要なんですけれども、同時に、政策面で新しい展望が開かれてくることが重要であると私は思います。  特に、地域交通ということになりますと、自治体あるいは民間企業あるいは第三セクターといったものが交通の実質を担う分野でありますけれども、今お答えになったように、建設省初め各省庁との連携も当然必要になってくるでしょう。許認可権という権限でそれらの担い手との関係運輸省が考え続けるとしたら、やはり地域交通政策の新しい展開は期待できないのじゃないかというふうにも思いますので、そうではない何か新しい方向を打ち出すとしたら、政策官庁への脱皮という意味からもいいきっかけになると私は思っております。  今いろいろと御説明をいただきましたが、地域交通についてどんな展望を考えておられるのか、伺いたいと思います。いかがですか。
  186. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) 地域交通につきましては、一般的な課題としますと、私ども、まず身体障害者対策以前の地域交通の問題としますと、非常に各地域で公共交通機関というものの重要性が今後一層増してくる。特に、中小都市等では自動車の交通の混雑ということとの関連で公共交通の見直しということが必要でございますし、そういう点ではその整備というものを中心にやっていく必要があるだろう。ただ一方、公共交通の維持ということは、利用者の運賃等の問題があり、なかなか経営の維持が困難になっているという基本的な課題があるわけでございます。  そういった中で、今後身体障害者対策として公共交通機関がどのようなサービス確保できるかということが新しい課題として出てきているわけでございますが、その問題につきましては、社会連帯の中で身体障害者が必要な公共交通機関をぜひとも日常的に使用できる状況をつくり上げていくということが基本的な課題でございます。そういう点では、運賃改定その他、施設の改良というような場合に、身体障害者の利用ということを十分に念頭に置いたような施設改良ということを考えていくように、これまでも行政指導してきておりますが、これをもっと前面に出してやっていくということがこれからの身体障害者問題、地域における交通の基本的な課題だと考えております。
  187. 前島英三郎

    前島英三郎君 地域交通の中におきましても、当然交通弱者対策の推進を図っていただきたいと思いますし、今またその情熱の一端を何となく感じ取ったところですけれども、障害者は遠距離の旅の方は割合便利になりましたけれども、近いところの方は不便といいますか、不可能というか、より大きな困難が幾つかございます。そういうものを解決していくために、いろいろな知恵が出されて新しい足というものが模索されているんですけれども、最近五十㏄の原付自転車の四輪車が出てまいりました。これは一つの地域交通の中にかかわるものだと思いますが、一方、通産省では百㏄から三百㏄ぐらいの小型の自動車の開発をしていると聞いております。  これらについて私が感じておりますことは、自動車交通の中に一つの新しい分野の幕があいたのではないかということであります。行政側の見方は、運輸省では安全基準的な目で見ますし、警察の方では免許制度上どうかという目で見るわけであります。しかし、利用する側からの見方はもっと違った目で見詰めておりまして、上田篤さんという方が提唱されたツボクルマというのがございます。これは「くるまは弱者のもの」という本の中に出ておりまして、実に現代の自動車文明のゆがみを的確に分析しておりまして、新しいタイプの自動車像としてツボクルマのイメージを提示されたんです。  ツボクルマの発想の根底には、車は弱い人のものであるという本の表題の考え方がありまして、例えば昔は箱根峠はなかなか女の人は越えることはできない、かなり健康な人でないと箱根峠は越えられなかったけれども、そこにかごが生まれたり、馬が生まれたり、交通の弱い立場の人々のものがいろいろ考案されてきて、それが今日の自動車への一つの歴史的な経過であるというようなことも引用されておりますけれども、本の表題の中に、こういう場合、弱者とは、障害者や老人ばかりというよりも、お母さんを中心に考えているんですね。お年寄り、子供という弱者を日常的に保護する役をしているのはお母さんであり、また物を運ぶという点でも家庭の物はほとんどお母さんが運んでおりますから、お母さんを主体に考えるという思想なんです。そして、お母さんに限らずというわけで障害者にとってもいいものではないか、こういう意見の進め方をしているわけなんですが、交通弱者をこのような形で論理構成をして考え出したのがツボクルマなんですけれども、原材四輪あるいはコミュニテイーカーといったものは、実はツボクルマに相当するものが現実に走り始めたという考え方でいいと私は思うんです。  マイカーの増加が大きな問題となっておりますが、マイカーの相当部分がこうしたツボクルマ的なものに置きかわっていく。アメリカなんかでも、大きな排気を必要とする車ではなく、日本の小さい車が非常に重宝がられているというようなところにもそうした傾向があるのかもしれません。言ってみれば、世界的な傾向かもしれません。こういう将来を私は考えたときに、こうしたツボクルマ的なものに対する運輸行政の姿勢、考えというものもしっかりとなされなければならないというように思うんですけれども、その辺はいかがでございましょう。
  188. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) ただいま先生お話しの五十㏄未満の、私どもの道路運送車両法の種別で言いますと第一種原付でございますが、この第一種原付の安全基準につきましては、現在の安全基準は二輪車を想定して今運用しておるわけでございます。これが三輪、四輪になってまいりますと、おっしゃいましたように、三輪、四輪の五十㏄未満の車が少しずつ走り出しておりますが、この三輪、四輪を想定した安全基準ではないものですから、三輪、四輪に合わせた安全基準をただいま運輸省としては検討しておる、こういうところでございます。
  189. 前島英三郎

    前島英三郎君 当面の運輸行政の物の見方からすれば、単なる原付自転車の一種にすぎない、あるいは軽自動車の一種にすぎないとしか見えない部分があるのも当然だと思うんですが、どうも夢も現実もない、あるいは規則だけだという感じでちょっと悲しい気もしたんですけれども、実は五十㏄原付四輪に絞って伺いますと、これにはちょっとした歴史がありまして、今はかなりの台数が走っております。恐らく六千台ぐらいは走っていると思うんですけれども、私が直接この原付四輪の件に触れましたのは、富山県の車いすの友人が、この原付四輪を地元の自動車工場の人につくってもらったというケースにそもそもの発端があったわけです。  といいますのは、非常に北国ですから雪深いわけでありまして、車いすでは雪の日には表に出れない、滑る、そこで転倒でもしたら大変だ、雨の降ったときは困るということで、普通の二輪車に一つのサイドカーのようなものを考え始めまして、それからさらにそれに屋根をつけたというところからそもそものスタートがあったわけです。それから非常に今それを生活の中の新しい足として、特に冬、寒風の中での移動にはこのツボクルマ的原付の二輪車を非常に生活の糧としているわけですが、これを利用する立場の人たちの問題を考えますと、単に行政的なサイドの中で安全基準とか何とかという物差しではかられてしまうとなかなか難しい問題があるんですが、やっぱり現状、法的な取り扱いというのは、運輸省とすると、四輪であるという先ほどの答弁になってしまうということになりましょうか。
  190. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) ただいまは五十㏄未満の三輪、四輪でございましても、それ相応の安全基準がないものですから、二輪を想定した安全基準に基づいて三輪、四輪の車が走っておられる。ただ、これはただいま先生おっしゃいましたように、それはそれなりの要請があってそういう車にお乗りになっている方が多いわけでございまして、その車を私どもとしてはやはり安全な構造にしていただかなければならない。二輪用の安全基準そのままでは視界の問題、それから座席の問題、そのほかいろいろ、四輪なら四輪相応の安全基準をつくらなければ乗っている方の安全を確保できない。こういう見地から私ども検討しておるわけでございまして、そういう安全基準を検討しているから身障者の方あるいは老人の方がそういう車を利用できないようにするのだという観点からではございませんので、より安全に乗っていただくためにそれ専用の安全基準を今検討しておる、こういうことでございます。
  191. 前島英三郎

    前島英三郎君 それが原付免許で乗れたわけですけれども、いよいよ今度はそれは四輪車であるという立場になってきますと、当然、免許を交付する警察庁といたしますと、やっぱり原付免許で走るのは適当ではないのだというような、先般、衆議院の方でもこの問題は取り上げられたらしいのですけれども、そういうような答弁のようですけれども、私が今申し上げましたような見地も含めて考えていく必要があるのじゃないか、こう思うんですが、その辺は警察庁ではどういうふうに解釈をし、考えておられるでしょうか。
  192. 広谷干城

    説明員(広谷干城君) お答えいたします。  免許行政の観点から申し上げますと、それぞれの車につきまして、どういう技能を持った人に乗っていただくかということが私どもの物の考え方でございまして、その車が運転を難しくするとか、易しくするとかという問題では基本的にないことは運輸省の方からお答えがあったとおりでございます。  したがいまして、これだけ多量の車がひしめき合っておる世の中で、自分も安全であるし、それから他人に対しても安全であるという観点から考えてみました場合に、この原付、ミニカーというのは、基本的には形も運転技能も普通の自動車と変わらないし、また技能的にもそれ相応の技能を必要とするという観点から、現在のような原付免許、すなわちこれは技能試験がございませんけれども、そういう方に運転をしていただくよりも、普通の免許を持って運転をしていただくことが妥当であろうということで、現在普通免許を持って乗っていただくというふうな方向で検討をいたしておるところでございます。
  193. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう意味では、こうしたミニカーが誕生したことによりまして、各メーカーもこぞってミニカーの生産に拍車がかかってまいりました。したがって、町の中で障害者の本当のニーズにこたえようとしてつくったものが、結果としては運輸行政の中におきましても、いわゆる免許行政の中におきましても非常にブレーキをかけてしまった、そういう一つのきっかけであろうと思うんです。ただ、利用者の安全ということを考えますと、これは当然そうした門戸は必要だろうというふうにも思いますけれども、ただ申し上げておきたいことは、五十、六十、七十、こういう高齢になった人たちが、今まで家の中に閉ざされておって、こうした簡単に取得できる許可的な原付自転車のその原点の中でそれが運転ができなくなる、これからまた教習所へ通わなくてはならない、多額の教習料も払わなければならないということを考えますと、何となくその部分に少々の心はないものかなという期待を込めまして今申し上げたところでございますけれども、その辺もぜひ配慮をしていただきたいということを申し上げておきます。  次に、運賃割引について伺いますけれども、きょう特に申し上げたいのは、国鉄運賃の身障者割引から内部障害者が除外されているという点でございます。この問題は再三お願いしているわけでありますが、国鉄の再建のことに絡められてしまいまして一向に解決をいたしておりません。これまでの運輸省の答弁は、運賃上の公共負担の軽減対策については関係省庁で検討を進め、早急に結論を得ることになっているから、その結論を待ってからということに尽きるわけでございます。この検討はどのように進んでいるのか、またいつ結論が出るのか、その見通しなどを伺っておきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  194. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 国鉄の公共負担の問題につきましては、昭和五十四年に閣議了解で、いわゆる国鉄の構造的問題の一つとしまして、長期債務の問題等も含めて公共負担、具体的に申しますと、通学の割引の問題及びいわゆる身体障害者に対する割引の問題等につきまして国鉄の負担をどの程度までするか、あるいはそれぞれ文部省なり厚生省の政策官庁においてどの程度負担していただけるかというような問題を議論するために、五十五年に第一回の検討会議を開きまして、それ以後、確かに三年以上四年近くたっておりますが、八回にわたりまして関係省庁集まりまして担当者いろいろ議論をいたしておるわけでございますが、何分経緯が非常にありまして複雑な問題でもございますので、やはりどの程度まで公共的な、強制的に国鉄が負担すべきその範囲がどうであるかという点でなかなか話が煮詰まりませんで、特に厚生省さんとの話だといたしますと、確かに心身障害者対策基本法の趣旨もございますし、片や国鉄のいわゆる財政という問題もございますので、その間にありまして関係省庁との話し合いをなおまだ現段階においては進めておるところでございます。
  195. 前島英三郎

    前島英三郎君 四年も五年も同じ答弁が繰り返されると何となくこちらも白けてくるのですが、もうそれはだめです、厚生省に話してもだめです、どこどこにやってもだめですと、むしろはっきり結論をそれなら出すなら出す方法があるんですけれども、結論を出す前にやはりその検討も必要なのかもしれません。国鉄の再建はしなければならない、それももちろん確かでございます。そして、その再建にも関連して財政上の問題を政府内で調整する、それも必要だと思います。  しかし、その内部障害者に対する差別的扱いというのは、それらとは別の次元の問題ではないかと思うんです。今回、身体障害者福祉法の改正案が提出されておりまして、成立をいたしますと人工臓器の造設者が法の対象になってまいりますけれども、この方々は運賃割引の対象にはそうするとなりますかどうですか。その辺はいかがですか。
  196. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 今申しましたように、公共負担の問題につきましては、現在国鉄が負担をしておると思われる公共的な割引につきまして、それをどういう形で関係省庁持っていただけるか、こういうような御相談をいたしておるわけでありますが、今後新しくそういう内部疾患等の問題について取り組むかどうかという問題は新たな公共負担の問題でありまして、むしろそれは現在において国鉄としては財政上関係省庁で負担していただけないだろうか、こういう話を進めておりますので、そういう身体障害者の新たな分野におきますところの割引につきましては、それはそれぞれの政策官庁においてもし必要があるならばお取り上げ願うということでお願いをしたいということでございます。
  197. 前島英三郎

    前島英三郎君 法の対象になって国鉄に乗りやすくなると思っている人だっていると思うんです。そう思っている人は恐らくこんな不合理な、こんな差別が堂々とまかり通っているとは思っていないからでございまして、当然そうなるのだと思うのは当たり前だと思うんです。ところが、今の答弁では非常に消極的なんですが、昭和二十四年に身体障害者福祉法ができたとき、国鉄運賃法も一部改正されまして五条の二が加わりました。それによりますと、身体障害者の範囲を政令で定めることになっておりますが、それに対応する政令というのはないわけですね。これはなぜですか。
  198. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 昭和二十四年に福祉法ができましてから以来、関係省庁で当時運賃法の問題として議論をしたようでありますけれども、十分な合意が得られなかったということだと思いますけれど、実際上は国鉄の約款におきまして一種、二種という形で、事実上は長期にわたりましてその法の趣旨に基づいた形での割引をいたしておるところでありますので、特段この問題、政令に明定をしなくても運用上は約款で行っておる、こういうふうに思っております。
  199. 前島英三郎

    前島英三郎君 政令で定めてあったら、身障福祉法が改正されるごとに連動して範囲も改正されたに違いないと思うんですがね。それが要するに、そういう形はないわけですから、してみると、法律とはちょっと矛盾しているのじゃないかというような気がするんですが、その辺はいかがですか。
  200. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 政令を定めますときに、やはりそれぞれ関係省庁なりあるいは国鉄等の考え方等も含めてつくるわけでございまして、そこのところは政令で決まり、あるいはそれぞれの追加のあった場合にまた政令を改正するかどうかという問題は、政令がありましても同様の問題はあるのではないかと思いますが、当面、国鉄の約款で一種、二種で現在割引を実施いたしておりますので、その方向で現時点におきましては特段この政令を明定するというところの考えまでまだいっていないわけでございます。
  201. 前島英三郎

    前島英三郎君 ちょっとよくわからないんですけれども、国鉄運賃法五条の二、これは昭和二十四年当時の物の考え方で書かれておりますから、今日から見ると極めて問題のある条文となっております。すなわち、障害者が介護者に伴われて鉄道を利用することを前提としているということですね。そして、国鉄運賃割引の規則においても、障害者本人が単独で乗車する場合、百一キロ以上でなければ割引を適用しないという形で、今日に至るまで古い時代の考え方を引きずってしまうという形になっているわけなんですけれども、言ってみればこれは悪い影響を残しておると言ってもいいかもしれません。次の法改正機会には適切な表現に改めていただきたいと思いますし、また本人百一キロ以上という制限をこの際取り外していただきたいというのが多くの国鉄を利用する障害者の意見なんですけれども、いかがですか。
  202. 本田勇一郎

    説明員本田勇一郎君) お答え申し上げます。  現在、身体障害者に対する割引距離を百一キロ以上御利用の場合としておりますのは、主として他の類似の割引制度、例えば学生割引あるいは勤労青年割引等におきましても百一キロ以上としておりますという沿革的な理由が一つございますのと、それから特に近年のように券売機で発売を行っておりますが、この際、百キロまではほとんど券売機で行っておるということであります点と、それから先ほど先生からも御指摘がございましたように、国鉄の財政の危機的な状況から、現在国鉄では公共負担を他の実施官庁負担していただくようにお願いしておりますので、このような状況の中でさらに新たな公共負担を国鉄の負担において実施することは、大変申しわけないとは存じますが、非常に困難であるということで、このような身体障害者旅客運賃割引規則第五条の中にそういうふうに決めさしていただいております。
  203. 前島英三郎

    前島英三郎君 確かに同じ手帳を取得していながら割引を受けている人、また割引の対象にならない人、いろいろさまざまな部分がまだ残っておりますし、それが昭和二十四年の一つの形の中で引きずられて今日まで来ているわけなんですけれども、内部障害者並びに本年新たに福祉法対象となる人工臓器造設者、これらの方々に対するこれは大変な差別だというふうにも私は思うんですけれども、ぜひ細田運輸大臣に何とか決断していただきたい、こう思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  204. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 十分研究させましょう。
  205. 前島英三郎

    前島英三郎君 確かに国鉄は非常に赤字であるということは国民周知のことなんですけれども、例えば私この間オーストラリアヘ行きましたら、オーストラリアもやはり公共交通機関は赤字だということでした。しかし、考えが若干違っておりまして、一日どんなに込んでいるときも十両の車両は出す、しかしがらがらのときもやっぱり十両の車両を出す、そこに人間が百人、五百人と単位が変わっても一向に経費的な部分ではマイナスはないということで、一番人々の利用する午前七時から十時までは障害を持った人々は半額の運賃を徴収しておりますが、それでもすいている通勤以外のときには十両編成はがらがらになるわけでありますので、そのがらがらの中で障害者が利用する場合には無料であるというような非常に思い切った交通施策をしております。  今百一キロ以上でなければ割引ができない。地域交通の中で障害を持った人たちは二十キロ、三十キロという一つの行程の中で国鉄を非常に利用したいという願望があるわけなんです。長距離になりますと飛行機あるいはまた車ということに移動が転換されていく時代でありますけれども、やはり通学、通商、あるいはいろんな生活の中におきましては五十キロ範囲ぐらいまでこの際は拡大をしていただいて、むしろすいているときに障害を持った人たちが乗るということは、確かにそれは国鉄の負担というとらえ方もあるけれども、言ってみれば逆に半額であろうと増収になるのではないかという計算も成り立つような気持ちを持つわけでありますから、その辺も距離の拡大ということも思い切ってぜひ検討の中に加えていただきたいと思うんですが、大臣いかがでございましょうか。
  206. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 身体障害者の法律改正をしたのは随分古い話でございまして、その後非常に事情が変わっておりますから考え方を変えていかなきゃならぬと思うんです。ただ、一番問題になっておりますのは、国鉄の財政がこういう状況なものですから一般会計で見たらどうだ、これが国鉄の年来の主張なんです。その問題が解決しますと、よほど拡大が可能になるわけで、それにしたって大した予算じゃないと思うんですが。ですから、そういうことを含めまして、検討してまいりたいと思います。
  207. 前島英三郎

    前島英三郎君 ぜひ、政府部内でも話し合っていただきたいと思います。  次に、公共交通機関の障害者等の利用が可能かどうかの問題について、お伺いをしたいと思います。  まず、具体的な問題に入ります前に、鉄道営業法の解釈について二、三確認をさせていただきたいんですが この営業法の第四条の二項に、「附添人ナキ重病者ノ乗車ハ之ヲ拒絶スルコトヲ得」、こうあるんですが、この場合、「重病者」とはどのような状態の人を指すのかという点でございます。昭和五十五年九月十九日付の社会党村沢議員の質問主意書に対する答弁書は、「付添人なくして乗車した場合には運送上の支障が生ずるおそれのある程度に症状が重い者をいう。」ということでありまして、これが拡大解釈されてしまいますと、障害省もそういう中に線引きの仕方によっては入ってしまうというおそれもあるわけです。障害を持つ人とかあるいは体の弱いお年寄りとかを指しているわけではないと、やっぱりこの際はっきりさしておきたい気がするんですけれども、言葉というのはなかなかとり方によってはいろいろな違いがあるものですから、この際、確認しておきたいと思うんですが、いかがでございましょうか。
  208. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 重病者というのはどういう範囲かというのは、具体的にどうということをちょっと御説明しかねると思いますが、法の趣旨は、やはり鉄道を利用されるときに非常に重病で、途中どんな変化があって運送中容体が非常に悪化するというようなことを前提に、そういう方々についてはということだと思いますので、当然、老人の方とかあるいは身障者の方ということを予定している規定ではないということでございます。
  209. 前島英三郎

    前島英三郎君 含まれていないということですね。  鉄道営業法の第六条の第一項二号には、「貨物ノ運送二付特別ナル責務ノ条件ヲ荷送人ヨリ求メサルトキ」、非常に文言が古い旧仮名遣いなものですから、なかなか営業法も読みにくくてちょっと間違いがあるかもしれませんが、「特別ナル責務ノ条件ヲ荷送人ヨリ求メサルトキ」は運送を拒絶してはいけないとあります。これは旅客運送にも準用することになっているんですが、旅客の場合は「特別ナル責務」とはどのようなことを鉄道側に求めることを指すのか、その解釈をちょっとお示しいただきたいと思うんですが。
  210. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) 鉄道側の責務と申しますのが、例えば損害賠償債務だとか、そういうような民事的な債務のこともありましょうし、ある一定の事実上の負担という問題もあると思いますが、例えば天災地変があっても損害賠償してほしいというような条件を旅客なり荷送り人が申し出た場合とか、あるいはこの荷物なりあるいはこの運送される旅客につきまして特段の付き添いといいますか、監視を頼むというような、一般的に鉄道というのは運送はそうでございますが、多数の旅客なり多数の貨物の契約を履行するわけでございますので、そういう意味で特別の負担になるような条件を付される場合にはこれはお断りすることがある、こういうことではないかと思います。
  211. 前島英三郎

    前島英三郎君 六千駅あるそうですけれども、私も全国いろいろ国鉄を利用させていただきますと、積極的に介添えをしてくださる方、あるいは介添え者が必ず必要というふうにおっしゃって介添えを拒絶する駅、いろいろさまざまございます。この辺は東高西低といっても、割合関東近県の駅ではそういうことはめったにないんですが、私が確認したい点は、障害者やお年寄りが駅員の皆さんの手をかりる、もしくは施設設備の改善を要請するといったことは特別の責務には当たらないという点なんですが、この点ははっきりしていますでしょうか。いかがですか。
  212. 永光洋一

    政府委員(永光洋一君) もちろん、お客さんの中にはお年寄りもおられますし、いろんな方がおられます。このサービスの提供のために、一般的に鉄道事業者としてはやれることはやるべきだと思いますので、今お話しのようなことにつきまして若干の事例であるかもしれませんけれども、我我としましては、そういう方々に対してはできるだけのことをやるようにということで指導いたしております。  先生御案内と思いますけれども、私鉄でもできればあらかじめ若干事前に連絡をしていただきたいというようなことは言っております、急に見えても駅員がたまたまそこにいないとかいうような話もありましょうから。ただ、できるだけそういう方々の運送の申し込みなり、あるいは運送の遂行につきまして鉄道営業としてはできるだけ対応をする、こういう指導をいたしております。ただ、一般の方々と違うサービスだということでそれを拒否するとか、そういうことはやっていないと思いますし、またそれに対してはそれ相当のサービスで対応すべきだと我々は思っております。
  213. 前島英三郎

    前島英三郎君 我々も利用する場合に、なかなか自分たちの意気込みとは別に、障害を阻む一つの壁が特に国鉄の中には多々ございまして、それもまたいろいろな形で改善されているということは評価もできるんですけれども、そこで具体的な話に入りますが、障害者等を配慮した鉄道、自動車あるいは航空につきまして、今日までの施設設備の改善状況についてその概略を伺っておきたいと思うんですけれども、まず鉄道の関係から。
  214. 本田勇一郎

    説明員本田勇一郎君) お答え申し上げます。  現在、五十八年度の状況につきましては目下集計中でございますので、五十七年度につきまして申し上げさしていただきます。  まず、目の不自由な方のための対策でございますが、五十七年度に実施したものから申し上げますと、点字ブロックが八十一駅実施いたしまして合計五百七十一駅になります。点字テープが五十七駅実施しまして三百八十四駅。点字運賃表、三十一駅実施いたしまして百三十五駅。点字案内板、十五駅実施しまして五十七駅。点字時刻表、二駅実施しまして十二駅。誘導チャイム、十四駅実施いたしまして三十五駅。  次に、車いす利用者のための対策といたしまして、トイレの改良、二十四駅実施いたしまして百二十駅。改札口の拡大、三十二駅実施いたしまして二百三十二駅。エレベーター、十九駅新設いたしまして四十一駅。スロープの改良、三十五駅実施いたしまして九十七駅。それから新幹線の車両でございますが、これは御案内のとおり東北、上越は全編成でありますが、東海道・山陽新幹線につきまして合計で百二十三編成でございますから、合計百五十九編成実施しております。車いすを常備することにつきましても、二駅実施いたしまして現在二十八駅に実施しております。  今後の改善につきましては、大変予算事情の厳しいところでございますが、最大限の努力をしてまいる所存でございます。
  215. 西村康雄

    政府委員西村康雄君) 私鉄あるいは営団の地下鉄等におきます整備状況を申し上げますと、車いす用の通路等が、これは五十八年度についてはまだできておりませんが、八百十三駅に、私鉄大手十四社で。それからエレベーター及びエスカレーターの利用につきましては九十八駅でございます。それから身体障害者用のトイレの設置に、つきましては百六十四駅。自動券売機に点字テープを貼付したものが千四十九駅。誘導警告ブロック等の設置をしたのが五百九十八。前年度に比べまして私どもの評価ではかなりのテンポで整備され、進んでおりますし、営団、公営地下鉄等もこれに準じて逐次整備されております。  また、乗り合いバスでも、低床広ドアバスの導入につきましては、五十六年度から五十七年度にかけまして約二千三百台余りがふえております。  それから航空関係でございますが、空港に車いすを常備しておくとか、エレベーターを設置するとか、身体障害者用のトイレの設置をするとかいうようなことが逐次進められておりますが、また搭乗者用の、航空機に搭乗するためのリフトをつけておりますバスが羽田等に用意してございます。  全般に逐次、決して御期待のスピードとは言えないかもしれませんが、それなりに各交通機関の整備を進めさしていただいております。
  216. 前島英三郎

    前島英三郎君 それなりに改善はかなり進んでいると思いますし、私も、ああこの前はこんなだったのに今度はこうなったのかなというところで大変感激する場面にも遭遇しますけれども、「技術的な開発研究も私どもとして力の及ぶ限りやりたい」、これは五十六年三月三十日の参議院予算委員会分科会でのお尋ねに対しましての御答弁だったんですけれども、そういう意味ではいろんな技術開発などもやっておられると思うんですけれども、最近は垂直移動とか、あるいはまた最近新聞でも報じられました、エスカレーターの改良型を新宿駅西口に設置するなんというのが報道されております。  いろんな知恵を出すことによって、障害があろうとなかろうと、お年寄りであっても若い人であっても、みんなに使われる一つの公共の輸送機関として大きく変わっていく、進展していくというふうにも思うんですけれども、そういう技術についての開発研究、あるいはまたエスカレーターの改良型といいますか、非常にエレベーターよりも安くて、そして費用がかからなくて、今あるエスカレーターよりも一千万円ぐらい、普通よりもちょっと高いということのようですけれども、これから設置されるエスカレーターがみんなこういうタイプになっていくようなことになりますと、費用の問題はほとんど考慮に入れなくてもいいようになるかもしれないし、新しい一つ運輸省のあり方として、輸送機関のあり方として、国鉄はこうしたアイデアに本格的に取り組んでいただきたいと思うんです。  日本の国鉄では、陸橋というのが大変大きな障壁になっております。西ドイツなどへ行きますと、駅のプラットホームの端々はトンネルになっておりますから、全部スロープで次のプラットホームに行けるようになっていますけれども、日本の場合は大方が三十五段平均の陸橋になっておりますので、こうしたエスカレーターの開発取り組みは大変重要だと思います。その辺はいかがでしょうか。
  217. 岡田圭司

    説明員岡田圭司君) 国鉄でございますが、御質問の件にお答えいたしたいと思います。  既に製品化されております車いす用の階段昇降機を国鉄の駅のホーム等の階段に併置するということにつきましては、何分多数のお客様が上りおりいたします場所であるという観点から、まず一つは安全性の問題がございます。  まず、この問題につきましては、身障者の方々とそれ以外の方々の安全を同時にお守りしなければならないという一つの技術的な難しさがございます。それから駅構内におきますお客様の流動の状態、これがかなりランダムな動きが入っておりまして、しかも大きく言いますと一種の乱流であるということで技術的な難しさが一つ考えられます。それから駅の構造上による設置条件が一つございます。これにっきましては、基本的にはその駅そのものの立地条件までさかのぼらないとという問題等がございまして、非常に制約条件が多いため、幾つかの問題点が考えられます。  そこで、まず私どもといたしましては、新幹線の「ひかり」停車駅と東北、上越新幹線の各駅につきましては、身障者の方々の御利用可能なエレベーターを整備いたしました。それから残る新幹線の駅につきましては、年に一駅程度のピッチではございますけれども、整備を進めてまいりたいと考えております。改善のテンポが遅々たるものであることにつきましては大変申しわけないことと存じておりますが、何とぞ国鉄の厳しい財政事情をごしんしゃくいただければと思います。  また、在来線の各駅等につきましては、前回先生から御指導を賜りましたように、既設の荷物用エレベーターを御利用いただくべく、昇降機の安全を管理しております関係省庁と、設備条件でありますとかそれから運用条件等につきまして具体的に話を詰めつつあるところでございます。  さらに、近い将来の課題といたしまして、国鉄のこれらの問題に対する一番大事な問題というものが、こういう垂直移動システムと申しますか、そういったものが非常に重要であり、それが解決のキーポイントではないかという観点から、まず国鉄の駅には非常に多数のエスカレーターが設置されてあるわけでございますが、これをうまく利用することによりまして、安全かつ取り扱いが容易で、かつ安価な垂直移動装置といいましょうか、そういったものの研究を進めているところでございます。いましばらくお時間を拝借いただければと存じております。  いずれにいたしましても、スロープ、エスカレーター、エレベーター、簡易昇降機等々の垂直移動手段の中から駅によってどういうものを導入していくべきかということの検討が一番大事でありまして、限られた駅空間の中で健常者の施設とのバランスもよく、かつ最小のスペースという空間的な条件、それから走行性能、建設費、ランニングコスト、安全性、使いやすさ、こういったものが一番技術的に難しいところでございまして、現在鋭意研究を進めておるところでございますので、どうかひとつよろしくお願いいたしたいと思います。
  218. 前島英三郎

    前島英三郎君 施設設備の改善は、利用を可能にするという面を持つ一面、運輸行政の柱の一つである安全ということも重視されなければならないと思います。そういう見地からすると、点字ブロックの場合、何か視覚障害者のためというよりも、むしろ安全という面で非常に重要な役割を果たしているように思うんですね。プラットホームからの転落事故もたび重なっているわけでありますから、高い優先順位を与えるべきだというふうにも思います。そして、その際、視覚障害者の皆さんからの要望を生かして、ホームの両側に線路のある島式ホームについて特に点字ブロックの設置を急いでいただきたいと思うんですけれども、これは余り国鉄の厳しい財政というよりも、これはむしろ健康な人たちの安全をという意味も絡めますと、これはそう多額な予算ではないような気がするんですが、ぜひ頑張っていただきたいと思うんです。いかがでしょうか。
  219. 本田勇一郎

    説明員本田勇一郎君) 駅におきまして、相対式ホームより危険度の高い島式ホームを優先して点字ブロックを設置することにつきましては、利用者の実態等を勘案しまして、御要望の趣旨に沿いますよう最大限の努力をしてまいりたいと考えております。
  220. 前島英三郎

    前島英三郎君 時間も残り少なくなりましたので、最後に、交通事故の被害者救済について伺いたいと思います。  自動車事故対策センターは、発足してから満十年を経過いたしました。私は、同センターの業務につきまして、外からでありますが、注目してまいりました。植物状態患者と言われる重症の被災者の救済策など見るべきものがあると評価しております。しかし、交通事故は相変わらず多くて、亡くなる方もけがをする方も依然高い数字のままでございますけれども、事故のための悲劇は人ごとではございません。センターの存在が、事故防止、被害者救済のためにいかに寄与するか真価が問われるのは、十歳になったこれからだと言わなければならないと思います。  そこで、きょうは重度後遺症害者の救済策の状況につきましてお伺いするとともに、センターの今後の充実策について承っておきたいと思います。いかがでしょうか。
  221. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 自動車事故に遭われた方の救済でございますが、これは強制保険でカバーする、そういう仕組みは当然あるわけでございますが、事故対策センターはその自賠責の保険料の運用益で運営をやっております。  それで、重度の後遺症害者に対しましては、介護料の支給とか、そういうようなことで救済をやっておるわけでございますが、そのほかに、千葉療護センターというものが、これは自動車事故対策センターの附属機関として本年の二月に開業したわけでございまして、これは自動車事故による重度の意識障害者を専門に収容いたしまして、治療並びに養護を行う施設でございまして、これらの方々を抱えておられる家庭の経済的、精神的な負担を軽減することに役立っているものと期待しております。  このセンターは、計画病床、ベッド数が五十ベッドでございますが、本年の二月は二十ベッドで開業いたしまして、四月に三十ベッド、それからさらに本年の十月に四十ベッドにふやす予定にしております。  大体、概況は以上のとおりでございます。
  222. 前島英三郎

    前島英三郎君 とても現状交通事故の増加にはそのセンターも追いついていかないというのが率直なところだと思うんですが、千葉のほかに、次にというような予定などはいかがでしょうか。
  223. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 千葉の療護センターは、ただいま申しましたように、最終的には五十ベッドにしたいというふうに私ども考えております。ただ、今後どういうふうにこの種の病院を拡大していくか、この辺のところは、この千葉の療護センターの施設の運営状況を見まして、それを十分検討してからやってまいりたいというふうに考えております。
  224. 前島英三郎

    前島英三郎君 自賠責保険につきまして、障害のある人が事故によって同一部位に後遺症害を受けた場合、保険金額を差し引くことは不合理である、この指摘を五十六年の質問でいたしました。そのとき勉強するという大変御丁寧な答弁をいただいたんですけれども、勉強の結果も踏まえて伺いたいと思うんですけれども、運輸省が編集している「トランスポート」という雑誌に「交通事故と賠償医学」という連載記事が載っておりますが、その執筆者である先生中心に、文部省の特定研究の一翼として本年度から等級表の検討なども始めるそうであります。運輸省が本当にやはり私たちの提起した問題に取り組んでいただいて、こうした研究班に検討を頼むということは当然なことだというふうにも思うんですけれども、労災との関係もあるかもしれませんが、労災保険は対象が働いている人に限定されておりますけれども、自賠責の場合は子供から老人まで不特定の人を対象にしているという違いもございます。いろいろ難しい問題があるかと思いますけれども、この辺の見解、それからそれに対する取り組みにつきまして伺いたいと思います。
  225. 角田達郎

    政府委員(角田達郎君) 確かに、五十六年の三月三十日に、先生の御質問に対して当時の自動車局長が勉強をするという答弁をしております。その後、いろいろ労災保険その他の制度との整合性等いろいろ検討をしたわけでございますが、ある部位に障害のある方がさらに交通事故によって悪くなったという場合には、やはり以前の悪かった部分の障害についての補償というものは、これは理論的に控除しなければならないということでございます。  ただ、五十六年の三月のときの先生の御質問の中に、一級の障害の方が死亡した場合とか、それから知恵おくれの方が脳障害になったとか、こういうような場合にそれぞれ前に悪かったところが控除されるようなお話が載っていましたけれども、そういうようなケースについては私どもは論理的にも控除されるべきではない、かように考えております。  したがいまして、一つの賠償制度の論理としては私が今申し上げたとおりでございますが、個々のケースにつきまして、具体的に被害者の保護に欠けることがないようにこの自賠責制度というものは運用してまいりたい、かように考えております。
  226. 前島英三郎

    前島英三郎君 以上、質問ですけれども、最後に運輸大臣の答弁を得たいものですから、ちょっと待たせてもらいます。――では、全般に対しまして運輸大臣の答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  227. 細田吉藏

    ○国務大臣(細田吉藏君) 先ほどもちょっと申し上げましたが、身体障害者問題については何といっても古くて新しい問題でございます。いろんな点で日本交通機関が立ちおくれておることは御案内のとおり、御質問の中にもあるとおりでございます。私といたしましては、今後、機構改正がございますのを一つのチャンスにいたしまして、全力を上げてやってまいりたい、また関係の各省とも十分連絡をとって進めてまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  228. 高平公友

    委員長高平公友君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。――別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  運輸省設置法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  229. 高平公友

    委員長高平公友君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  230. 高平公友

    委員長高平公友君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  231. 高平公友

    委員長高平公友君) 次に、恩給法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。中西総務長官。
  232. 中西一郎

    ○国務大臣(中西一郎君) ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案は、最近の経済情勢にかんがみ、恩給年額を増額するとともに、戦没者の遺族、傷病者等の処遇の改善を図るほか、長期在職の老齢旧軍人等に係る仮定俸給の改善等の措置を講じ、恩給受給者に対する処遇の一層の充実を図ろうとするものであります。  次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。  この法律案による措置の第一点は、恩給年額の増額であります。  これは、昭和五十八年度における公務員給与の改善を基礎として、昭和五十九年三月から、恩給年額を増額しようとするものであります。また、公務関係扶助料の最低保障額、傷病恩給の基本年額等については、同年八月からさらに増額を行い、公務扶助料については、遺族加算を含み年額百三十七万円を保障することといたしております。  その第二点は、普通恩給等の最低保障額の増額であります。  これは、長期在職の老齢者に係る普通恩給の最低保障額を昭和五十九年三月から八十万六千八百円に引き上げ、その他の普通恩給及び普通扶助料の最低保障額についてもこれに準じて引き上げるほか、さらに、同年八月からは、長期在職者に係る普通扶助料の最低保障額を五十三万三千五百円に引き上げ、その他の普通扶助料の最低保障額についてもこれに準じて引き上げようとするものであります。  その第三点は、長期在職の老齢旧軍人等に係る仮定俸給の改善であります。  これは、長期在職の七十歳以上の旧軍人等に係る仮定俸給の格付を、昭和五十九年十月から一号俸引き上げようとするものであります。  以上のほか、扶養加給の増額等所要の改善を行うことといたしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  233. 高平公友

    委員長高平公友君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  本案についての質疑は次回に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十六分散会      ―――――・―――――