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1984-04-06 第101回国会 参議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月六日(金曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  四月五日    辞任          補欠選任     前島英三郎君      秦   豊君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         高平 公友君     理 事                 亀長 友義君                 坂野 重信君                 小野  明君                 太田 淳夫君     委 員                 板垣  正君                 岡田  広君                 源田  実君                 沢田 一精君                 林  寛子君                 林  ゆう君                 桧垣徳太郎君                 堀江 正夫君                 野田  哲君                 峯山 昭範君                 内藤  功君                 柄谷 道一君                 秦   豊君    国務大臣        国 務 大 臣  栗原 祐幸君        (防衛庁長官)    政府委員        内閣法制局長官  茂串  俊君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁参事官   西廣 整輝君        防衛庁参事官   友藤 一隆君        防衛庁参事官   冨田  泉君        防衛庁長官官房        長        佐々 淳行君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁人事教育        局長       上野 隆史君        防衛庁衛生局長  島田  晋君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛庁装備局長  木下 博生君        防衛施設庁長官  塩田  章君        防衛施設庁次長  小谷  久君        防衛施設庁総務        部長       梅岡  弘君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        防衛施設庁労務        部長       大内 雄二君        郵政省電気通信        政策次長     富田 徹郎君    事務局側        常任委員会専門        員        林  利雄君    説明員        外務省北米局安        全保障課長    加藤 良三君        文部大臣官房総        務課長      川村 恒明君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件昭和五十九年度一般会計予算内閣提出、衆議  院送付)、昭和五十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付)、昭和五十九年度政府関係  機関予算内閣提出衆議院送付)について  (総理府所管防衛本庁防衛施設庁))     ―――――――――――――
  2. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨五日、前島英三郎君が委員を辞任され、その補欠として秦豊君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 高平公友

    委員長高平公友君) 去る三日、予算委員会から、本六日及び明七日の二日間、昭和五十九年度総予算中、皇室費国会所管会計検査院所管内閣所管及び総理府所管のうち総理本府、青少年対策本部日本学術会議、宮内庁、行政管理庁、総務庁、防衛本庁及び防衛施設庁についての審査の委嘱がありましたので御報告いたします。  この際、昭和五十九年度総予算中、総理府所管のうち防衛本庁防衛施設庁議題といたします。  予算説明につきましては、去る三月二十七日の委員会において既に聴取しておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 野田哲

    野田哲君 まず、防衛庁長官にお伺いをいたしたいと思いますが、アメリカ国防長官が近く来日されて栗原防衛庁長官と話し合われるという報道があるわけですが、具体的にはいつごろ日本に見えられることになるんですか。
  5. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) ワインバーガー国防長官がかねがね早く私と会いたい、そういうお話がございました。しかし、国会等都合もございまするし、向こうの方でも御都合があるので、なかなかいつごろというような具体的な話が進んでいなかったわけでございますが、最近になりまして、これは公式ではございませんが、ある種の打診といいますか、内意といいますか、そういうものの中で五月の初旬から中旬にかけて場合によっては会えるのではないか、こういうような話が参っておるわけでございます。したがいまして、まだ日時は決まりませんが、五月初旬から中旬の間で特別なことがない限りはお会いをするようになるのではないかと、こういうふうに今考えております。
  6. 野田哲

    野田哲君 課題については、どういうものを予定されているんですか。
  7. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 最近、日本マスコミ等では具体的な案件を上げてワインバーガー長官が私と会談をするのではないかというような報道がされておりまするけれども、私のところにはそういったことは一切伝わってきておりません。ある特定の問題につきまして話をするということならば、もう既にこれこれの問題についてひとつ話し合いたいというようなものが来ておってもいいと思うのでございますが、それが一切ない。また、私の方の気持ちといたしましては、いつもいつも会うときに特別のイシューといいますか、問題をひっ提げて会う、そういうことは必要ないのではないか。場合によっては、顔を合わせてざっくばらんに世界情勢あるいは軍事情勢といいますか、そういったいろいろの問題につきまして忌憚のない話をする。特別の議題にこだわる必要はないのではないか。むしろ、どちらかといえば、それぞれの国防あるいは防衛担当責任者政治哲学といいますか、防衛哲学といいますか、そういったものを話し合うところに意味があるのではないかと考えておりますので、私の方といたしましては、ワインバーガーさんがどういうお話をするかちょっとわかりませんが、気持ちといたしましては、特別の課題というものを構えずに、自分考え方を述べ、相手方の考え方を聞きたいと、こう考えております。  ただ、先ほど申しましたとおり、まだいつになるかわかりませんし、また何時間日本で話をするかわかりませんから、そこら辺はまことにもって漠たるものでございますが、気持ちといたしましてはそんな気持ちでおります。
  8. 野田哲

    野田哲君 これはどうなんでしょうか。日本防衛庁長官だけに会いに来られるということなのか、それともあるいは周辺諸国を前後に図られる予定があるのかどうか、その辺はいかがなんですか。
  9. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 私は、アメリカ国防長官の日程について承知しておりませんので、そこら辺はわかりませんが、今申しました特別の議題を構えて私にお会いになりに来ると、そういうものではないというふうに考えております。
  10. 高平公友

    委員長高平公友君) 長官、私があなたを指名しないうちに立って答弁しているのはおかしいですよ。これから注意してください。
  11. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) はい、どうも済みません。
  12. 野田哲

    野田哲君 それでは、長官の方は今年中ぐらいを考えてみて、訪米の計画はお持ちですか、どうですか。
  13. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) まず最初に、委員長に御無礼をおわび申し上げます。  私といたしましては、ここでワインバーガーさんとお会いして、その後私自体が今度はワインバーガーさんとまたお話をする、こういうことになるかどうか決めておりませんが、今までの例からいいますと、日米の首脳ができるだけ話し合って意見を交換するということは非常に有意義であると考えておりますので、そういう機会が得られるならばお会いをいたしたいと、こういうふうに考えております。
  14. 野田哲

    野田哲君 長官は、特定課題を持ってということでなくて、ざっくばらんに日米防衛責任者が話し合うということに意義があるのだというふうなことを言っているけれども、私どもから見ると、ワインバーガー国防長官が来日されてどんな問題を栗原防衛庁長官に持ち込んでくるかというのは、おおよそ想像がつくわけなんです。  それは、ことしの二月のアメリカの議会に出された国防報告、あるいは軍事情勢報告、それからここ二、三年ずっと毎年アメリカ国防総省が「共同防衛への同盟諸国貢献」というようなレポートを発表しておりますが、これらのレポートを見ると、これは間違いなくアメリカ国防長官が持ち込んでくるのは、もっと日本防衛費増強しろ、これが持ち込んでくる課題であろうということは、私どもレポートを読んだだけでわかるわけですね。そのことについて、去年の夏にアメリカ国防総省が出している「共同防衛への同盟諸国貢献」というこのレポートの中から日本にかかわる問題について、まず長官の基本的な考え方を承りたいと考えているところであります。  これによると、冒頭の「序論と概説」というところでは、NATO諸国日本に対しては、同盟国として「負担を公平に分かち合うことが必要条件となる。」、こういう形でまず述べて、そして、「本報告書で取り上げる唯一のNATO加盟国である日本は、本来分担すべきシェアをかなり下回る貢献しかしていない。」、こういうふうに言っています。そして、「防衛分担に関する過去一年の重要な変化は、第四章で触れる。日本の場合、中曽根首相防衛努力強化約束している。」、こういう形でNATO並み負担日本に求めて、それに向かって日本総理も一定の約束をしたかのような記述になっているわけであります。  そして、日本の箇所について言うならば、まず一つは、五六中業、こんなものは非常に低いレベルで話にも何にもならないような評価をしております。「弾薬はほんのおしるし程度」にしか持っていないというふうに書いていますね。そして、「一九七六年の防衛計画大綱は、日本防衛力持久力という重大問題、シーレーン防衛の必要に対応しておらず、その他の点でもきわめて時代遅れのものになっている。中曽根首相は、増大するソ連脅威に対する日本国民の強い関心をはっきり再確認した。」、こういうふうに述べているわけでありますけれども、一体こういうアメリカのいたけだかな、NATO並みに上げろ、今の日本防衛計画大綱あるいは五六中業、こんなものは話にもならぬというような決めつけ方、これは明らかに私に言わしめれば内政干渉に等しいものだと思うわけですが、恐らくこういう立場に立った話が、日本の今度は六十年度に向けての防衛費増強の強い要求が出てくると思うんですが、長官としてはこのようなアメリカのいたけだかな態度に対して一体どういうふうに考えておられますか。
  15. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 今いろいろ御指摘がございました点、私も防衛庁長官になりましてからアメリカ側の言動というものを、これは防衛問題に限らずずっと見ておりますけれども、非常にアメリカ側は、国民性のいたすところでございましょうか、直截に自分たちの考えている願望といいますか、そういうものを強い調子で言う国民である。単刀直入に自分願望なり要望を言う国民性があると思っております。そういう意味合いで、アメリカ日本に対しまして、日米安保で結ばれておるけれども自分の国は自分で守る、その点に重点を置いてさらに防衛力整備をしろという意味でいろいろの要望をされることはこれは当然だと思うのであります。ただ問題は、アメリカ側の方の要望なりあるいはいろいろな意見開陳に対してこちらの方がそれに直ちに応ぜられるかというと、これまた我が国憲法あるいは我が国の基本的な防衛政策観点に立って対処しなきゃならないということでございます。  そういう観点からいたしますと、アメリカの強い要望は頭の中に置きながらも、日本日本独自としての防衛力整備をやっていかなきゃならぬ、そういうことで対応すべきだと思います。したがって、ワインバーガー国防長官がどのような御発言をされるか私は知りませんが、私自体といたしましては、日本立場として憲法の許す範囲内で日本の自衛のために最大限の努力をする、その決意を申し述べる以外には道はないと思うんです。また、そういうことでいきたい、こう考えております。
  16. 野田哲

    野田哲君 今のレポートを見ると、「中曽根首相は、増大するソ連脅威に対する日本国民の強い関心をはっきり再確認した。また、中曽根首相は「ソ連軍備増強に対し米国その他NATO諸国が行っている努力にかんがみ」、日本も「適切で必要な防衛努力を行う」必要について率直に発言した。」、こういうくだりがあるわけでありますけれども、一体、総理としてはNATO努力に対応した形で日本も適切で必要な防衛努力を行う、こういうことをアメリカ約束したというような印象なんですけれども、どういう約束アメリカにしているのか、この点いかがですか。
  17. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 私ども承知をしております限りでは、昨年の一月十八日に中曽根レーガン会談がございまして、レーガン鈴木共同コミュニケはこれを守っていくということをお話しになった経緯があるわけでございまして、それは五十六年の五月八日の鈴木レーガン会談におきましてこういうことを言っておられるわけであります。鈴木総理大臣は、日本は、自主的にかつその憲法及び基本的な防衛政策に従って、日本の領域及び周辺海・空域における防衛力を改善し、並びに在日米軍財政的負担をさらに軽減するため、なお一層の努力を行うよう努める旨述べた。」。これが当時の共同声明第八項にございまして、それを受けまして、先ほど申し上げました昨年一月の中曽根レーガン会談におけるこれを守っていくというふうな御発言になったものと承知をしておるわけでございます。
  18. 野田哲

    野田哲君 ワインバーガー国防長官日本防衛庁長官との話は、きょう聞く限りでは特に課題特定のものではないということでもありますし、日本立場をしっかり踏まえてということでありますから、これでおきたいと思いますけれどもアメリカがいろんなレポート発言をするのはアメリカの勝手でしょうけれども、私はやはり余りにも内政干渉的な立場で物を言う、それを持ち込んでくるというようなやり方に対しては日本防衛庁長官はしっかりと今の日本憲法というものを踏まえて対応していただきたい、このことを要望しておきたいと思います。  次に、極めて具体的な問題についてまず外務省に伺いたいと思うんですが、沖縄の読谷にグリーンベレーと通称呼ばれているアメリカ特殊作戦部隊がすでに駐留を始めているというふうに聞いているわけですが、このグリーンベレーアメリカ特殊作戦部隊配備の話はいつどういう形で持ち込まれてきたわけですか。
  19. 加藤良三

    説明員加藤良三君) お答え申し上げます。  外務省といたしましては、ことしの三月一日に、米陸軍特殊部隊グリーンベレーを三月十七日に公表された内容のところに従いまして沖縄に再配備するという旨の内報を受けた次第でございます。
  20. 野田哲

    野田哲君 これは最終的には何人ぐらいが駐留することになるのか、そしてそれはいつごろまでに全部の駐留が完了するのか、この点いかがですか。
  21. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 最終的には一個大隊規模、約二百五十名ないし三百名が本年の後半ぐらいまでにトリイ通信施設配備されるというふうに承知いたしております。
  22. 野田哲

    野田哲君 このグリーンベレー特殊作戦部隊駐留ということについては、これは二百五十名ぐらいのことだから事前協議対象外だということで極めて事務的に処理されているように受けとめられるわけなんですけれども、私はグリーンベレーという部隊性格から見て、事務的な扱いでなくて、もっとこれは高いレベルで判断をされるべきものではないのか、こういうふうに考えるわけなんです。  そこで、栗原長官にお伺いするわけですが、あなたはこのグリーンベレーという特殊作戦部隊、この部隊性格等について外務省なりあるいは防衛庁当局側から事前に何か報告を受けられましたか。
  23. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 外務省の方から防衛庁の方に連絡があった段階で承知をいたしました。
  24. 野田哲

    野田哲君 このグリーンベレーと呼ばれる部隊がかつて十年前に沖縄駐留していた、そしてベトナム戦争の中でどういう作戦行動をやってきたのか、ベトナム人民にどういう恐怖を与えたか、あなたはそれを承知されておりますか。
  25. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 詳しくは承知しておりません。
  26. 野田哲

    野田哲君 長官、ここに「世界特殊部隊」という本があるわけです。土井寛という方が書いた本です。これは防衛庁の制服のOBです。これを読むと、大体グリーンベレーという部隊の概要というものがわかるわけなんです。言うならば、これは忍者部隊みたいなものですよ。今、沖縄の二つの新聞が連日この特殊部隊配備についての報道をやっているわけです。この報道を見ると、悪魔部隊、こう書いているんですよ。沖縄県民から悪魔部隊と呼ばれる、そういう性格を持ったグリーンベレーという特殊作戦部隊、これが今の時期にこの北東アジアになぜ、どういう目的で配備されたのか、そのことについて外務省は具体的に説明を受けているわけですか。
  27. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 私どもも、特殊部隊というものについての米国における動向というものはそれなりにフォローしてまいったつもりでございます。すなわち、特殊部隊グリーンベレーと言われるものは、いろいろな技術的分野、例えば空挺、偵察、通信兵器の取り扱いといったような分野で十分に訓練されました優秀な人員によって組織される、いわゆる部隊運用効率化観点から組織される少数精鋭部隊だというふうに承知しているわけでございます。そして、こういう部隊についての見直しということが近年米国内において高まってきた、その有用性についての認識が高まってきた、その結果再編が進められて沖縄に今年じゅうに一個大隊配備されるという運びとなったというぐあいに承知いたしております。
  28. 野田哲

    野田哲君 どういうねらいを持って今回沖縄配備されることになったのか、それを正しくアメリカ側からあなた方は説明を受けているのかどうか、これを聞いているんです。
  29. 加藤良三

    説明員加藤良三君) お答え申し上げます。  私ども米側との平素の意思疎通というものを通じまして、またいろいろな米側資料等によりまして、米国国防政策防衛的な性格のもので抑止を旨とするものだというふうに承知いたしておりますが、グリーンベレー特殊部隊というものもその抑止力というものに穴をなくする、抑止力というものの実効性を高めるという見地から再編が進められたものであるというふうに承知いたしております。
  30. 野田哲

    野田哲君 抑止力としてのグリーンベレーという、そんなことはこれは通用しないのじゃないですか。そんなことを言ったら、沖縄県民はこれは怒り心頭に来ますよ。  長官、あなたは余り十分な説明を受けていないようですけれども、このグリーンベレー、かつてケネディ大統領のころにこのグリーンベレーという部隊編成をされているわけです。そして、沖縄駐留したこのグリーンベレーというのは、ベトナム戦争の中で非常に重要な役割を果たしたわけです。その役割というのは、抑止力なんというものじゃないんですよ。ベトナム内乱あるいは心理作戦ゲリラ戦、こういういわゆる正常の戦闘ではないゲリラ戦あるいは心理作戦を尋問にした部隊なんです。この本によると、物すごい訓練をするということが書いてあります。暗やみの中でも二十種類以上の兵器を自由に分解したり組み立てたりすることができるとか、降下訓練についてはこれは地上に着地する寸前に落下傘を開いて、そして地上に置いたコインを目標にして降下訓練をやっているのだ、こういういろんな忍者もどき訓練をやっていることがこの本にも書かれているわけです。  同時に、この沖縄駐留したグリーンベレーベトナム戦争で果たした役割というのは、ベトナムグリーンベレーのような部隊ベトナム人によってつくって、それを訓練する役割というのを非常に重要な任務として果たしているわけです。そういう性格部隊。これはベトナム戦が終わってからいっとき解体されたわけですね。それがまたレーガン大統領の指示によって再編強化されて、そしてことしの国防報告の中ではその強化策優先順位のトップに上げているというふうに言われているわけです。  これがなぜ今沖縄配備されなければならないのか。これは非常に重要な意味を持っていると思うんですが、それを防衛庁長官が十分な説明を受けていないとすると、外務省としては余りにもこれは事務的に処理し過ぎているのじゃないか、あるいは意識的にこのグリーンベレーという部隊性格を隠して処理しようとしているのじゃないか、こうとしか思えないんですが、外務省、そんなことでいいんでしょうか。
  31. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) この特殊部隊が、今外務省の方からも話がありましたとおり、非常に精強な訓練戦術等を駆使してやるという部隊である。また、今、野田さんからもいろいろ御披露がございましたが、こういう部隊についてこれは甚だけしからぬじゃないか、こういうような御評価もあろうかと思いますが、同時に、戦闘といいますか、有事の際にどのような戦術、戦略を使うかということは、それぞれの国々のまた大きな基本的な国防政策から発するのだと思います。したがいまして、この部隊そのものについて特に我々の立場からいいとか悪いとか、そういう有権的な断定を下すことはできないと思います。  また同時に、この部隊は、安保条約の第六条だと思いますが、それによって配備をされておりますので、そういう意味合いで今までの外交ルートを通じてきたものと承知をしております。そのように御理解をいただければ大変ありがたいと思います。
  32. 野田哲

    野田哲君 この安保条約の六条、そしてこれは人数も二百五十名程度だから事前協議対象にならない、そういうことで私は事務的に処理されていることに非常に問題があると感じているわけなんです。確かにこれは人員は二百五十人ですけれども土井さんという方が書いたこの本によっても、十二人編成一つのチームが、これが数百人の部隊と対抗できるだけの能力を持っているのだと、こういうふうに書かれているわけですよ。  そして問題は、一番私どもが考えなければならないのは、これは正規の戦闘部隊ではないということなんです。ジョン・ケネディ特殊戦争センターというところでグリーンベレー訓練を受けているわけですが、そこのコースを見ると三つのコースに分かれているわけです。一つ内乱の鎮圧、もう一つ心理戦争、そしてもう一つは非通常戦争、いわゆるゲリラ戦、こういうことにコースが分かれていて、そういう心理作戦とか、ゲリラ戦とか、あるいは内乱を起こす、内乱を鎮圧する、こういうことを専門訓練を受けているわけです。ですから、派遣される地域の言葉を完全にマスターする、そしてそこの国の民族の習慣に習熟するとか、そういう訓練をずっと受けているわけでしょう。  そうして、今このグリーンベレーと言われている部隊派遣をされている地域というのは、ホンジュラスとか、あるいはエルサルバドルとか、あるいはレバノン、モロッコ、リベリア、ソマリア、コロンビア、こういう地域派遣をされているわけです。今挙げた地域長官、ずっと国の名前を挙げればすぐわかるでしょう。全部これは内戦が起こったりなんかして大変な地域なんですよ。そういうところにこの部隊派遣をされているんです。  そこで、私が一番心配するのは、もう一つこのグリーンベレーという部隊がやってきたことは、駐留したところで現地の部隊訓練する、このことが今までやられてきているわけです。ベトナム戦争でもやられてきているんです。アジア地域ではグリーンベレーという部隊も直接内乱あるいはゲリラをやりにくいわけですね。人種が違うし、幾ら言葉に習熟し、民族の習慣に習熟しても、白人がアジア人に姿を変えることはできないですから。私が一番懸念するのは、アジアにおいてアジアの国々のこういう性格を持った部隊訓練に当たるのじゃないか、こういう心配をするんですが、そういうことになってきたときにはこれは国際的にはどういうことになるんでしょうか。手続的にも私はあり得ないことだと思うんですけれども外務省いかがですか。
  33. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 特殊部隊グリーンベレーがその任務といたしまして、例えば非通常戦でございますとか、テロリストに対する作戦でございますとか、安全保障に対する支援、情報任務、直接行動、いろいろな任務を行うことは事実だろうと思っております。  しかし、その具体的な内容と申しますものは、要するに先ほど申し上げましたような技術的分野、空挺、偵察、通信兵器の操作といったようなものについて十分に訓練された優秀な人員によって組織される部隊ということで、これがいろいろな紛争のいろいろな段階において柔軟に運用される部隊であるということに尽きるのだろうと思っております。  なお、その第三国の訓練ということでございますけれども、御案内のとおり、米軍は安保六条のもとで日本における施設区域というものを日本及び極東の平和と安全の維持のために使用することが認められるということになっておりますので、その活動というものはこれに照らして判断されることになろうと思います。ただ、いずれにいたしましても、例えば第三国人が第三国人の訓練の目的で我が国の施設区域を使用するというようなことはこれは認められませんけれども、それ以外の態様による訓練といったようなものをすべて排除するということではないと承知いたしております。
  34. 野田哲

    野田哲君 そうすると、やり方によってはそこにどこかの国の軍隊が派遣されてきて訓練を受けるということについても容認する場合があり得るということを今の説明では言われたわけですか。
  35. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 私が申し上げましたのは、日本の施設区域を第三国人が訓練の目的で使用するということは安保条約及び関連取り決めに照らして認められない、またそのことは沖縄が復帰いたしました七二年五月の当時のマイヤー駐日大使の声明の中でも明確にされているところである、こういう次第でございます。
  36. 野田哲

    野田哲君 つまり、できないということでしょう。  そうすると、防衛庁の方はどうなんですか。アメリカとの合同演習、共同訓練というようなものが大分頻繁にやられるようになってきておりますが、自衛隊がこのグリーンベレーと共同訓練をやるとか合同演習をやるとか、そういうことは想定されますか、どうですか。
  37. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えいたしますが、特殊部隊ゲリラ戦において非常にすぐれた能力を持っておるということは、先生御指摘のとおりでございます。なお、そればかりでなくて、この特殊部隊は正規軍との通常戦においても非常に重要な役割を果たすというように我々は理解をいたしております。  そこで、自衛隊と特殊部隊との関連でございますが、先生御案内のように、自衛隊は国土防衛戦をやるわけでございますから自衛隊自身がゲリラ戦を行うとかいうようなことはほとんど考えられませんし、強いてゲリラを相手に戦うとすれば日本に対するコマンドウ攻撃に対応するといった程度でありますので、その種の訓練というものはほとんど必要がないと私どもは考えております。  したがいまして、我々としては、正規軍の侵攻に対する戦闘、その際のこういった部隊の活躍というものについて着目しておるわけでございまして、具体的に申せば、例えば敵陣に潜入して偵察をするとか、あるいは敵陣の裏に回り込んで兵たんを攻撃するとか、そういった正規軍同士の戦闘における特殊部隊戦闘行動というものは当然考えられるわけであります。したがいまして、我々がかねがね米陸軍でやっております国土防衛のためのもろもろの共同訓練、そういったものの中にそういった場面というものがあればこの部隊も参加することもあるのではないかというように考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、この部隊派遣されて間もないということで、私ども具体的な計画とかそういったものは全く持ち合わせておりません。
  38. 野田哲

    野田哲君 これは、やはりこういう部隊性格からして国際的にも非常に非難を受けた部隊なんです。だから、一遍はアメリカベトナム戦争が終わって以降解体をしたわけです。この当時は大変重要な意味を持っていたと思うんですが、私はこういう性格部隊とは絶対に共同訓練などをやるべきでないと、こういうふうに思うんですけれども長官いかがですか。
  39. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 長官のお答えになる前に若干補足させていただきますが、先生御指摘のように、この種部隊ゲリラ戦に先ほど申したようにすぐれた能力を持っておるということは当然でございますが、先般の軍事態勢報告等にもございますように、この部隊が大規模なそういう通常戦、正規軍との戦闘においても非常に重要な部隊であるということは御理解いただきたいと思うわけであります。
  40. 野田哲

    野田哲君 長官沖縄沖縄タイムス、琉球新報を、防衛庁にもあると思うんですが、一遍よく読んでください、毎日どんなに沖縄県民の不安、怒りが報道されているか。なければ、私がこれを提供しますから、一遍読んでもらいたいと思うんです。これは安保条約六条があるからとか、そうして人数が少ないから事前協議対象にならないからということで事務的に済まされる問題ではないと思うんですよ。こういう沖縄県民の県民感情というものを私はしっかりと踏まえていただきたい。沖縄の自由民主党さえも好ましいことではないということで困り切っているということが報道されておりますよ。  そこで、もう一つ私が伺っておきたいのは、韓国、大韓民国の制服の上層部の人たちと日本の自衛隊との交流が非常に最近ふえておりますが、仄聞するところによると、沖縄での米軍の演習あるいは自衛隊との合同演習に際して、韓国、大韓民国の人たちがその訓練に参加をしていた、こういう情報があるわけですけれども、この点は具体的なことを承知されておりますか、防衛庁あるいは外務省
  41. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 韓国の軍人が日米の共同訓練とかあるいは自衛隊の訓練に参加をしたという事実は全くございません。
  42. 野田哲

    野田哲君 見学でもないですか。
  43. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ございません。
  44. 野田哲

    野田哲君 グリーンベレー沖縄駐留して、先ほどは日本の自衛隊も通常の戦闘行動の訓練等についてはあるいは行うことがあるかもわからない、こういう重大な答弁があったわけですが、問題は、沖縄のトリイ・ステーション、ここに駐留をして、この部隊が韓国へ今度は新たにそこから派遣をされて、韓国で韓国兵の訓練に当たる、こういうようなことは一切懸念をしなくてもいいのかどうか、この点どうですか。
  45. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 先ほど申し上げましたとおり、米軍は安保条約六条のもとで日本における施設区域を日本のみならず極東の平和と安全の維持という目的で使用することが許されているわけでございますが、今、先生がおっしゃられた点、現実の問題として私どものところに来ているわけではございませんし、そういう仮定の問題について具体的に申し上げますことは差し控えさしていただきたいと思いますが、今の施設区域の使用目的、安全保障条約の立て方というものに照らして判断されるべき問題かと存じます。
  46. 野田哲

    野田哲君 この施設区域の使用目的として、安保条約によってはこのグリーンベレー特殊作戦部隊沖縄から韓国に移動してあるいは派遣されて韓国で韓国の部隊訓練に当たることはこれは手続上は可能なのかどうかという点、これはいかがですか。
  47. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 一般的に、軍隊の属性といたしまして移動ということがあるわけでございます。この点は、今御指摘になられましたグリーンベレーでございましても、またつとに沖縄駐留いたしております例えば第三海兵水陸両用部隊といったようなものについても同様であるというふうに私どもは考えております。
  48. 野田哲

    野田哲君 結局、そういうことができるのだということなんですが、この問題、最後に栗原長官、やはり部隊性格性格ですから、これは安保条約上、あるいは地位協定上、交換公友の上でも、外務省なり防衛庁の事務方だけの判断で事務的に処理されるということであってはならないと思うんです。政治的な判断というものが私は非常に重要だと思うので、これからの対応についてはひとつ政府の高いレベルでの慎重な対応をしてもらいたい。特に、沖縄においてはこれは大変な政治問題になっているんですよ。そういう点について長官考え方を承って、この問題から次の問題に移りたいと思うんです。
  49. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 今いろいろとお述べになりました御意見については、よく留意をいたしたいと思います。  この問題に対する我々の考え方は、大きな観点から申し上げますと、日米安保条約の有効な円滑な運用をどうするか、そういう観点から基本的には考えなきゃならぬと思います。それと同時に、私はやはり沖縄はいろいろの要望といいますかあるいはいろいろの問題が言われておるところでございますので、私みずからが、この問題に限ってということでなくて、一遍、沖縄の自衛隊あるいは米軍基地等について視察をいたしたい、こう考えております。
  50. 野田哲

    野田哲君 次の問題について、長官並びに、外務省防衛施設庁に伺いたいと思うんです。  まず最初に、昭和五十九年度の予算案においても計上されておりますが、いわゆる思いやりと称せられている予算、これが五十三年度以降今日までどういう金額で推移しているのか、五十三年以降毎年どういう金額が計上されているのか、まずそれから説明をしていただきたいと思います。
  51. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 五十二年度は労務関係費だけでございますので、先に労務関係費の方から申し上げますと、五十三年度に六十一億八千七百万、五十四年度が百三十九億六千四百万、五十五年度が百四十七億二千九百万、五十八年度百五十八億七千六百万、五十七年度百六十三億八千八百万、五十八年度百六十八億九千五百万でございます。なお、五十九年度にお願いいたしておりますのは百七十九億七千四百万であります。  次に、施設関係は五十四年度から始まりました。五十四年度が百四十億二千四百万、五十五年度が二百二十六億九千九百万、五十六年度が二百七十六億四千万、五十七年度が三百五十一億八千二百万、五十八年度が四百三十九億一千二百万で、五十九年度にお願いしておりますのは五百十三億三千四百万であります。
  52. 野田哲

    野田哲君 これは毎年大変な伸び率ですね。施設費について言えば、昭和五十九年度でも前作比一六・九%、五十八年度については二四・八%、大変な伸び率になっているわけですが、具体的な施設費の中身について伺いたいんですが、まずこれが始まって以降の施設費の中で五十四年度で貯油タンク二基の改築というのがありますね。これは長崎県の佐世保の庵崎ですか。それからサイレンサーというのは、これは嘉手納のサイレンサーの新設だと思うんです。そうですね。
  53. 高平公友

    委員長高平公友君) 先ほどの野田君のグリーンベレーの質問の中で、西廣参事官から答弁漏れがあるので答弁したいということでありますから、どうぞ。
  54. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほど、韓国の軍人が見学をしていないかというお尋ねに対して、私簡単に、していないというお答えを申し上げましたが、在日の大使館の武官が他国の武官団と一緒に武官団として招待をされて見学をしたことがございます。  補足して御説明申し上げます。
  55. 塩田章

    政府委員(塩田章君) ただいまの点は、二件とも御指摘のとおりであります。
  56. 野田哲

    野田哲君 五十六年度の中で、施設費で管理棟というのがありますね。これはどこの場所なんですか。具体的に言えば、どういう使用目的の建物なんですか。
  57. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 場所は今調べておりますが、いわゆる隊舎と言われますものが隊員の起居するところであるのに対しまして、管理棟といいますのはいわゆる事務をとったりするところでございまして、いろんな態様があるかと思いますが、一番典型的なのを言えば司令部なんかの建物は管理棟ということになります。  五十六年度の管理棟は富士の営舎地区であります。
  58. 野田哲

    野田哲君 車両整備工場というのは、これはどこの施設ですか。
  59. 塩田章

    政府委員(塩田章君) キャンプ・シュワブでございます。
  60. 野田哲

    野田哲君 五十六年度で航空機掩体というのがありますね。それから航空機用燃料給油施設、それから岸壁、これは具体的に言えばどこの施設ですか。
  61. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 航空機掩体は嘉手納でございます。  それから航空機用燃料給油施設は普天間でございます。  それから岸壁は那覇でございます。
  62. 野田哲

    野田哲君 五十七年度にも航空機掩体とか格納庫というのがあるんですが、これは継続のあれなんですか、それともまた新たに別のところをやったんですか。
  63. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 掩体につきましてはいずれも嘉手納でございますが、五十六年度に六基、五十七年度に六基ということで、全部で十二基でございます。  それから格納庫は普天間でございます。
  64. 野田哲

    野田哲君 五十八年、五十九年にユーティリティーというのが出てきますね、提供施設の整備で。ユーティリティーというのは、普通の住宅の場合は作業場みたいなところなんですが、この部隊の中でのユーティリティーというのは、具体的にはどういう目的で使われている場所ですか。
  65. 塩田章

    政府委員(塩田章君) ユーティリティーと言っておりますのは、施設の中の建物とかあるいは工作物等へ水、電気等を供給するわけでございますが、その供給するための施設、あるいは施設内の雨水を排出するための符路とか、そういうもの及びその関連施設といったものをユーティリティーと称しております。
  66. 野田哲

    野田哲君 この五十八年、五十九年のユーティリティーというのは、これは場所はどこですか。
  67. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 五十八年は厚木飛行場と佐世保海軍施設でございます。  それから五十九年にお願いしておりますのは、三沢、横田、キャンプ座間、厚木は継続になりますが、横須賀海軍施設、それから岩国飛行場、それに佐世保の継続ということでございます。
  68. 野田哲

    野田哲君 五十八年に整備工場というのがありますね。これはどこですか。
  69. 塩田章

    政府委員(塩田章君) キャンプ・ハンセンでございます。
  70. 野田哲

    野田哲君 五十九年度に計上されている管理棟というのは、これはどこですか。
  71. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 五十九年度にお願いしております管理棟は、三沢、それからキャンプ・コートニー、キャンプ・ハンセン、嘉手納、キャンプ瑞慶覧、以上でございます。
  72. 野田哲

    野田哲君 栗原長官、今事務的にずっと伺ってきたんですが、お聞きのように、これは部隊の司令部とか、あるいは航空機の掩体とか、あるいは軍事用の岸壁とか、あるいは格納庫、こういうふうにまさにこれはアメリカが使う軍事施設そのものが日本予算でつくられているわけなんです。  そこで、こういうふうな防衛施設庁予算で計上している思いやり予算と言われている提供施設の施設費、これは一体どういう手続を経て場所やら金額やらあるいは規模が決まっているんですか。アメリカ側から、これだけのものをやってくれということで、これは持ち出してくるんですか。その手続は、どういうふうな経過を経て決まっているんですか。
  73. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 手続でございますから私からお答えいたしますが、三つの段階があります。  つまり、我々が毎年八月に概算要求を出すわけですが、それ以前に米側と話をしながら、我々としましてはどういう概算要求を出すかという詰めをしてまいります。これが一つの段階。具体的には、米側在日米軍司令部、それと我々の間で話をしております。  それから第二の段階は、政府としての予算案が決まりました段階で合同委員会にかけまして、予算が成立した場合にはこれこれのことをするという意味での合同委員会の合意がございます。  それから第三の段階は、政府案が実際に成立しました後、個々の具体的な実施細目についての合同委員会がございます。  そういう段階で決めていくわけでございますが、具体的には、来年度で言いますと今ごろからでございますけれども、今ごろからこの夏の概算吸水にかけまして在日米軍司令部の方から希望するものは我々一応聞きます。また、我々の方も各基地のいろんな周辺の状況といったようなものを考えまして、我々なりにまた判断をいたします。また一方、概算要求までの時点で財政状況といったようなものを当然考えなきゃなりません。そのようなことを考えて、私どもとしましては、先ほど申し上げました概算要求以前、七月から八月にかけて個々の施設について採用するかしないかを決めていくというやり方をとっておるわけであります。
  74. 野田哲

    野田哲君 外務省に伺いますけれども、地位協定の二十四条の一項がアメリカ負担の手続ですね。「日本国に合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費は、2に規定するところにより日本国が負担すべきものを除くほか、この協定の存続期間中日本国に負担をかけないで合衆国が負担することが合意される。」。二項が日本側の負担分でしょう。「日本国は、第二条及び第三条に定めるすべての施設及び区域並びに路線権をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供し、かつ、相当の場合には、施設及び区域並びに路線権の所有者及び提供者に補償を行なうことが合意される。」。これを普通に、国民がたれが聞いてもわかるような形でちょっと経費の負担区分を説明してもらいたいんです。
  75. 加藤良三

    説明員加藤良三君) お答え申し上げます。  この点につきましては、今まで累次の国会における御議論があったかと存じますけれども、まず地位協定の二十四条の二項について申し上げさしていただきますと、これは今、先生がおっしゃられましたとおり、すべての施設区域をこの協定の存続期間中合衆国に負担をかけないで提供する、これを日本国の義務として定めているわけでございます。したがって、この規定の内容に合致する実態がございますれば、それは二条一項に基づいて合同委員会を通ずる日米両国政府間の協定を締結することによって我が国の経費負担において施設区域と観念されるものを提供するということになります。  他方、地位協定の三条と三条に関する合意議事録がございまして、これは米国の方が個々の施設区域を使用するに当たって一定の範囲で工事等の措置をとることを認めているわけでございまして、こういう措置が必要だということで米国がみずからの判断でこういうことを行う場合にはその経費は米側負担すべきものであるということでございますので、特定の事案について申し上げれば、それを我が国が今申し上げた施設区域の提供として行うという場合と、合衆国、すなわち米国が行う地位協定の三条に基づく措置、いずれでも実施し得るという場合はあり得るだろうと考えております。
  76. 野田哲

    野田哲君 これは外務省になるんですか、それとも施設庁長官の方から答えてもらうことになるんですか。二十四条一項の「合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」、これは一体具体的に言えばどういうことなんです。  私がお伺いしたいのは、今いろいろ施設の名前を具体的に聞きました、日本側が予算に計上しあるいは既に実施した施設の名前を。そういたしますと、例えば貯油タンクであるとか、あるいはサイレンサー、私も見ました、嘉手納で工事をやっている場面を。サイレンサーとか、あるいは特に私がいかがなものかなと思うのは管理棟ですよね。部隊の司令部が入っている建物、あるいは車の整備工場とか航空機の掩体とか、こういうものはまさにこれは二十四条一項の合衆国軍隊を維持することに伴う経費、これに該当するはずなんです。従前のこの二十四条一項、二項の解釈では、これらは二十四条一項に該当する施設ではないかと思うんです。したがって、当然これは米軍が負担をするべき性格の施設だと思うんですが、どうですか。
  77. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 日本が地位協定の二条で提供いたします施設区域というもの、これは内容といたしまして建物、工作物等の構築物及び土地、公有水面をいうということは政府が累次申し上げてきたとおりでございまして、今御指摘になられましたようなものであればこれが施設区域に該当しないということにはならないと存じます。
  78. 野田哲

    野田哲君 こういう私が今指摘したような施設がこの二十四条一項の施設ではなくて二項に該当する施設だ、こうなってくると、合衆国の軍隊を維持するための経費というのは一体これは何なのかと聞かざるを得ないと思うんです。極端に言えば、あなたのような説明でいくと、米軍が払うのは合衆国軍隊の兵隊の給与、衣食住の費用、住はこれはどんどんつくっているわけですから、衣食の費用だけというようなことに極端に言えばなってしまうのじゃないでしょうか。  そこで、私はもっと振り返って伺いたいと思うんですが、古い話ですけれども、かつて、今の防衛施設庁の前身の調達庁時代に「占領軍調達史」という本を出しているが、あの中では、この二十四条の二項で日本負担をするのはこれは施設区域の借り上げ料それから補償費に限定をしたものだと、こういう説明をしておりますが、この説明はうそだということになるんですか。
  79. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 現在私どもが考えておる考え方は、先ほど外務省からお答えがあったとおりでございます。今御指摘の点は、当時の運用の実態がまさにそういう状況でありましたので、当時の運用の実態としての御説明をしたということでございまして、地位協定の解釈といたしまして現在我々が考えているのは先ほど外務省からお答えになったとおりでございます。
  80. 野田哲

    野田哲君 いや、これは実態の説明ではなくて、二十四条の一項と二項について解説をしているのであって、私はちょっとその説明は納得できないんですよ。これは、二十四条二項は借り上げ料、補償費に限定をしたということであるからこそ、その後四十八年に岩国と三沢の住宅をつくったときにいろいろ問題になりまして、栗原防衛庁長官の尊敬する今は亡き大平さんが外務大臣当時にそのことについての見解を出された。じゃ、この大平さんが外務大臣当時に答えられたこともうそだということになるわけですね。大平答弁というのは外務省防衛施設庁それぞれ承知されていると思うんですが、この点どうですか。
  81. 加藤良三

    説明員加藤良三君) お答え申し上げます。  今、先生がおっしゃられました大平答弁と申しますものは、既存の施設区域内において日本側が構築物を新築してこれを追加提供するというようなことは地位協定上認められるのである、認められるところであるけれども、特に代替を理由とする建築提供については、その代替という性格にかんがみまして、代替される構築物の規模を超える建設は原則として行わないということを述べたものでございます。その意味で、これは政府としての地位協定の運用上の方針を述べたものでございまして、その中でも地位協定上日本側が構築物を新築して米側に提供することがあるということを述べている次第でございます。
  82. 野田哲

    野田哲君 そうすると、外務省の見解としては新規に提供するものも追加の提供もすべてこれは日本側の負担すべきもの、こういうことになるということなんですか。
  83. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 若干私の説明が誤解を招いたとすれば恐縮でございますが、先ほど申し上げましたように、日本が施設区域の提供として経費を負担するものと、それから米軍が地位協定三条の管理権の範囲内において行う工事というものと、両方があるというわけでございます。この場合には、我が国が行います施設区域の提供、合衆国が行う三条に基づく措置、いずれによっても理論的には実施し得るというケースがあるということを申し上げたわけでございます。
  84. 野田哲

    野田哲君 ちょっとわかりにくいんですがね。  そうすると、この米軍の施設区域の中でいろんな施設をつくっていく。どこで線を引くんですか。どこでけじめをつけるんですか。これはアメリカ負担、これは日本負担というのは、どこで区分するんですか。どうなんですか。
  85. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 先ほども外務省からお答えしましたように、要するに平たく言えばオーバーラップしている部分があるわけでございますから、その区別をどこで引くかということは地位協定の文言から出てまいりません。二十四条の二項からいえばすべての施設区域の提供は日本負担、こうなっておりますから、我々の方としましては、例えばはっきりした建物の維持修繕みたいなものはこれは別でございますけれども、施設区域の提供ということになりますと、我が方から建物の種類に区別をつけて、こういうものは日本側が持つとか、こういうものはアメリカ側が持つとかということを一概に決めるということはできないわけでございまして、そういう意味での区別はございません。一等最初に私がお答えしましたように、そのときそのときの判断におきまして、日米安保体制の有効な運用という点から緊要度といったようなものを考えながら個々に判断して決めていくということになろうかと思います。
  86. 野田哲

    野田哲君 今の長官の答弁、そのときそのときの判断によってという、そのときそのときの判断によって二十四条の一項、二項が決められるということではこれはちょっとおかしいのじゃないですか。二十四条の一項がアメリカ側負担、二項が日本側の負担で、あなたがそんなことをおっしゃるのなら、もう一回私はあるレポートを引用せざるを得ないと思うんです。  昭和五十三年当時、私もこの問題で初めて労務者の法定福利費を日本側が負担することになったときにいろいろこの問題の説明を聞きました。この問題の口火を切ったのは金丸さんでしょう。金丸さんの書いた本があります。「体験的防衛論」という、防衛庁長官当時の体験を書いた金丸さんの本です。これを見ると、いろいろ日本側が新たに、何かアメリカが円高、ドル安で困っているので日本側でお助けをする方法はないかということでいろいろ考えた結果、知恵を絞ってやったのが駐留軍労務者の法定福利費、これを日本側で負担しようということで、五十三年に初めて踏み切ったわけです。  そのときに私も、この本の中を見ると、社会党の石橋さんなどにもいろいろ根回しをした、公明党の矢野さんにも根回しをしたと、こう書いてある。私どもが根回しを受けた。私もその一人だろうと思うんです、などの中の。そのときの説明では、駐留軍労務者の法定福利費、いわゆる使用者側が負担をする年金の使用者側負担分とか、こういうものはこれはやむを得ないだろう、しかし地位協定の解釈からいえばこれが限界でそれ以上はできない、こういうことであったわけです。それから、その後アメリカにはなかなか理解しにくい語学手当とかなんとか、それらにまで範囲が広がっているわけですが、その程度のことは私も説明を受けた。根回しということになったんでしょうか。しかし、施設費は当時はできないということで、労務費だけまず日本で、地位協定上理屈が立つものは受け持ちましょう、こういうことじゃなかったんですか。私は、その当時の説明としてはそうであったと思うんですが、どうでしょう。
  87. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 労務費については、今御指摘のとおりの経過であったと思います。五十二年に一部始まりまして、五十四年度にあと語学費等の追加がございまして現在に至っております。したがいまして、労務費関係につきましては地位協定上現在やっておりますことがとにかく限度であるということで一貫してずっと参っております。ただ、そのときに施設関係費については持てないのだという今のお話でございましたが、その点はちょっと私ども見解を異にしておりまして、先ほど来申し上げておりますように、五十四年度から実施しておるということでございます。
  88. 野田哲

    野田哲君 金丸さんの本にはこう書いてあるんですよ。  私は、この後、園田外相、村山蔵相にも非公式の根回しを行い、大蔵省の事務方にも内々の打診を行い、ほぼ「二百億円分担増」を固めたのだった。あとは中身と地位協定上の理由づけだが、これは亘理君に全面的にまかせた。亘理君はじつによくやってくれた。彼は、国会答弁で「在日米軍への施設提供は、地位協定が〝新規〟を禁じたということはない」と四十八年の大平答弁に新しい解釈を付し、地位協定上、在日米軍への施設などの新たな提供は〝制限を受けることなく行える〟との運用方針を提示したのである。  さらに、亘理君は「条約上、日本として非義務の支出であっても、予算案に計上し、国会の承認が得られれば、歳出しても違法ではない」という財政法上の強気の解釈をも示し、分担増実現の道を開いたのであった。  一方、私も野党側の協力取り付けに全力をあげた。社会党は石橋政嗣君、公明党は矢野書記長ら、民社党が永末英一君、新自由クラブは西岡幹事長らと非公式に懇談して、協力を要請して回った。こういうふうに述べておられるわけですね。二十四条の一項、二項の解釈について、それまでは施設費についてはこれは無理がある、四十八年の大平答弁もあり、そこを新たな地位協定上の解釈を当時の亘理さんが考え出して、根回しをして新たな分担に踏み切ったのだと、こういうふうに述べられているわけです。  そうして、五十三年に労務費が始まり、その後次に施設費に入っていった。だから、この時点で地位協定の二十四条の解釈をここでは柔軟解釈、あるいは亘理さんが財政法上の強気の解釈をも示して、そしてこれに持っていったのだと、こういうことですから、この時点で二十四条一項、二項の解釈が全くこれは変わってしまった。実質的にはこれが地位協定の二十四条一項、二項の解釈がここで崩れてしまった、こういうことになるのじゃないですか。  それが今の外務省防衛施設庁の解釈のような形で初めからいっているのであれば何もこんな根回しをしたり――五十三年には労務費を出した。しかし、施設費の方はさらに遠慮をしていたんですよね。初めからやっていたはずなんです、五十三年以前でも。そうでしょう。そうじゃないですか。それまでは施設費についてはできないという解釈があったから、労務者の法定福利費に踏み込んだときにも施設費の方は手をつけていないんです。全部これは米軍負担だと、こういう解釈であったわけなんです。  それを新たな解釈に踏み切って、五十四年以降施設費までもどんどんふやしていった。初めはそれでもささやかだったですよね。五十四年は貯油タンクとサイレンサー、それだけだった。それが今では部隊の本部が入る管理棟までも日本がつくってやる、あるいは格納庫や掩体までも日本がつくってやる。これは全く二十四条一項、二項の解釈が根本的に変わってきているのじゃないでしょうか。どうですか。
  89. 塩田章

    政府委員(塩田章君) いろいろ御指摘ございましたが、五十三年以前に今やっておりますような施設費をやっていなかったことは事実でございますが、それはできないということでやっていなかったということではなくて、先ほど外務省からも答弁がありましたように、大平答弁は現在でも我々は生きておると思っております。政府の運用の方針を示したものとして大平答弁は現在でも生きておるわけでございまして、従前の大平答弁をやめてその時点で新しい解釈をとったということではないというふうに我々は考えております。やはり代替を趣旨とする場合の提供につきましては大平答弁は現在でも生きておるわけでございまして、私どもの解釈は、先ほど来申し上げておりますように、できないのではなくて、確かに五十三年以前はやってはいませんでしたけれども、解釈としてできないからやっていなかったのではなくて、現在の解釈のように、できるのであるというふうに我々は考えておるわけでございます。  今、先生が、五十四年度はほんのわずかであった、貯油タンクと消音施設だけであったとおっしゃいましたが、五十四年度にも隊舎の七棟あるいは住宅の四百二十戸等ございまして、五十四年度から始まりましたときに百四十億ばかりを実施さしていただいておるわけでございますが、いずれにしましても、我々の解釈としましては、先ほど来外務省並びに私どもの方からお答えしておりますような解釈で一貫してきたつもりであります。
  90. 野田哲

    野田哲君 今までこの問題、何回か国会でやりとりされておりますが、そのやりとりの中では、アメリカ側の発意でアメリカ側がやろうとするものについてはそれは二十四条一項でアメカ側が負担をするのだ、そういうことになっているのだと、こういうくだりがあるわけですが、今どういう経過でこういう施設を日本側が負担することが決まるのですかということの説明を聞くと、これは来年度予算については今の時期にアメリカ側からいろいろ申し出てくるのだ、こういうお話ですが、そういうことならこれはアメリカでやる、今までの解釈からいえばアメリカ側がやりたいことはアメリカ側にやってもらえばいいのだ、こういうことになるのじゃないでしょうか。何も日本が、やりたいことはアメリカ計画をする、費用は日本負担をする、こんなことにならなくていいのじゃないんですか。どうですか。
  91. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 現在でもアメリカもいろんなことをやっておるわけでございます。先ほど私が申し上げましたのは、事務的な折衝の段階でアメリカとしてはこういうものを日本側でやってくれないかという希望は確かにしてまいります。それに対しまして、我々も先ほど申し上げましたような判断をいたしまして決定していく、こういうことを申し上げましたが、当然アメリカ側自分でやるものもあるわけでございまして、先ほどの先生の御指摘にありましたように、アメリカの発意で二十四条の一項でやるというものも当然あるわけでございます。
  92. 野田哲

    野田哲君 これは、いろいろあなたの方で説明をされておりますけれども、やっぱりだんだん二十四条一項、二項の解釈が、ずっと今までの議事録をひっくり返して読んでみますと、変わっているんですよね。一体どこで歯どめをするのかということになってくるわけです。三沢にF16の配備が要請されて、決まればそれに応じた施設を三沢にもつくっていかなければいけない。今までは大体住宅の代替ぐらいは、大平さんが外務大臣当時、三沢、岩国の老朽化したものの代替ぐらいはしようがないのだ、こういうようなところから出発したものが、飛行場の整備工場やら格納庫やら部隊の本部までつくるようになってきたのではどこかでけじめをつけなければこれは際限なくなるのじゃないですか。  例えば今の五十七年のガイドラインですね、ガイドラインによっていろいろ検討されている。そうすると、行く行くはあれによると提供施設も広がってくることが想定をされる。そうすると、今までは米軍が使っていないところにも新たに、米軍が希望して駐留することになっていくというと、またそこに兵舎とか部隊の本部とかあるいは格納庫、いろいろつくっていかなければいけない。これでは一体歯どめはどこにあるのか。極端に言えば全部施設については日本が持つ、こういうことになりかねないのじゃないか、こういうふうに考えるんですが、これは外務大臣の担当だと思うんですけれども防衛庁長官も無関係ではないと思うんですが、これは歯どめを決める必要はないんですか。
  93. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 先ほど来申し上げておりますとおり、日本アメリカ負担配分についてオーバーラップする部分があるということでございますが、その場合でも我が国がやはり米国に対して米国の方で措置しなさいというふうに求めることもございますし、また米国の方から我が国に提供してくれということを言ってくることもそれはあり得るわけでございます。  その場合には、当然日本アメリカとの間で協議と調整を行っていずれかがこれを行うということになりますけれども、そしてまたそこに区別の基準ということについて一概に論ずることができないという点はございますけれども、そういう提供に我が国が応ずるかどうかというのは、その個々の事案に即しまして日米安保条約の目的達成との関係でどうであろうか、それから我が国にも財政事情がございますからその財政負担との関係はどうであろうか、それからまた社会経済的な影響といったようなものはどうであろうか、こういったもろもろの要素を総合的に勘案して提供の可否を決定するということになっておるわけでございます。
  94. 野田哲

    野田哲君 いや、私はそういうことでなくて、安全保障条約に基づいて合衆国軍隊の日本への駐留を認めている。そして、駐留を認めているについては、地位協定によって経費の分担も二十四条一項、二項で取り決めている。この二十四条一項、二項の解釈が、今全く私に言わせると崩れてしまっている。五十三年以前と五十三年以降では変わってきている。しかし、そういう状態のままで要求があったからということでどんどん応じていった。毎年二十何%ずつの伸び傘なんです。まさにこれは大変な伸び率ですよ。二十四条一項、二項の解釈をきちっとして、どこかで歯どめをしなければこれは際限なく膨れるのじゃないか。それは、だからそのときどきの情勢を勘案してなんということでなくて、これは国会で承認を受けた協定なんですから、その協定の解釈がそんなにあいまいでいいんですか、統一的な見解もきちっと示してもらわなければいけないのじゃないですかと、こう言っているんです。  特に、もしこの亘理さんが言ったという、地位協定の解釈はどうあろうとも、予算案に計上して国会が認めればそれでいいのだと、こういうふうなことでやっているのだとすれば、私はなおさらこれは明確にしてもらわなきゃならぬと思うんですよ。金丸さんのこの本によると、「条約上、日本として非義務の支出であっても、」、非義務の支出、つまり私どもは、今ある施設費なんというのはこれは二十四条一項で米軍が負担すべきものだと、こう思っている非義務の支出ですよ。その「非義務の支出であっても、予算案に計上し、国会の承認が得られれば、歳出しても違法ではない」、こんな解釈で防衛施設庁あるいは外務省がおられるとするならば、地位協定は何のために国会で批准を受けたことになるんですか。そこを明確にすべきじゃないですかということを私は言っているんです。
  95. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 私どもは、今やっております提供施設の整備は地位協定に基づく日本側の義務の遂行であるというふうに考えております。その根拠は、もちろん二十四条の二項であるというふうに我々は考えております。  その際に、先生の御指摘の今のようなやり方では無限に広がっていくではないかという点につきましては、二十四条の二項が施設提供と言っているだけでございまして、その提供施設の中身を区別しておりませんので、この協定上どういう施設であればどちらの負担だというふうな区別はできないわけでございます。そうでなくて、先ほど来私どもがお答えしておりますように、個々の事案につきまして、日米安保体制の効果的運用といった点から緊要と考え、また私ども自身の立場からすればその基地の周辺のいろいろな社会的状況ということも考え、またあわせておのおのの財政事情というものも考えて決めていく。もちろん、それは当然のことながら最終的には国会の議決をいただいて実施する、こういうことになるわけですが、そういったところで運用していくということではなかろうかというふうに考えております。
  96. 野田哲

    野田哲君 そうすると、塩田長官、あなたの方では、亘理さんが言ったかどうかそれは知りませんよ、国会にはそういうあれはないんですけれども、「非義務の支出であっても、」云々ということではなくて、これはこの地位協定の二十四条二項に基づく義務を持った支出だと、こういうふうにあなたはおっしゃっているわけです。そうすると、私が何回も今指摘したような部隊の管理棟、部隊の本部が入るような建物とか、あるいは専用の岸壁とか、あるいは掩体とか、格納庫とか、こういう施設までもこれは一項に規定する合衆国軍隊を維持する経費ではない、こういうふうに考えられるわけなんですか。私は、部隊の本部が入る管理棟とか格納庫とかいうのは、まさにこれは合衆国軍隊を維持するための経費そのものではないかと思うんですが、そうではないんですか。
  97. 塩田章

    政府委員(塩田章君) これは外務省の方からお答えするのがいいのかもしれませんが、結局は安保条約六条に返ってきまして、米軍は日本の施設区域の使用が認められておるということになるわけでございますが、その場合の施設区域というのは結局地位協定二十四条の二項で日本側の負担である、一項のものを除いて日本側の負担である、こういうことになっておりますから、先ほど来私が申し上げておりますように、現在やっております施設提供の整備費は二十四条の二項に基づく経費である、日本側の義務的な負担経費であるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、申し上げましたように、米側との間のオーバーラップという点は確かにありますけれども、提供施設の整備という点で申し上げればこれは日本側の義務であるというふうに私は言えるのじゃないかというふうに思います。
  98. 野田哲

    野田哲君 私は、これは従来国会で議論した経過からして、どうしてもそれは納得できません。これは、あなた方の方の二十四条の一項、二項の解釈が変わったというふうにしか思えない。本当ならば外務大臣にも出席してもらって聞きたいわけですけれども、ここに外務大臣の出席を求めるわけにいきませんから、これは長官にお願いをしておきたいと思うんですが、昭和五十九年度の予算審議が終わるまでにぜひきちっとした見解を外務大臣と協議されて政府として示してもらいたい、このことをお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  99. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 先ほど来御論議の中で申し上げた次第でございますが、政府の地位協定二十四条一項、二項に関する解釈は一貫しておりまして、これまで国会の場で明らかにしてまいったとおりでございます。
  100. 野田哲

    野田哲君 いや、一貫していないから、まず「占領軍調達史」、あそこに書いてあること、その次の四十八年の大平答弁、それから外務省の大河原さんとか、施設庁の山上さんとか、金丸さんとか、いろいろ国会で答えておられる。あなたは一貫していると言うけれども、一貫していないですよ、大平答弁と今の考え方は。一貫しているのなら、こんな施設の費用を日本側が負担するはずはないんですよ。また、あなた、金丸さんの本に書かれておるように、ひそかに根回しなんということは必要ないんですよ、一貫しているのだったら。一貫していないと私どもは受けとめているから、過去のそういうのを一々、もう時間がないから申し上げませんが、そのときどきで政府が発行された資料や国会で答弁されたことを一遍整理して、どこが一貫しているのか、一貫しているのなら一貫していると、前の大平答弁やその前の「占領軍調達史」などを全部一貫したように説明してください。一貫していないから私は聞いているので、だから、あなたじゃなくて栗原長官の見解を聞きたいんです。
  101. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 地位協定の条文に関する問題でございますので、恐縮でございますが、私から若干敷衍さしていただきたいと存じます。  先生が御指摘になられました大平答弁と今とが違っているというような点について申し上げれば、例えば大平答弁の冒頭のところでも、地位協定第二十四条の解釈については先般来御説明申し上げたところでありますが、という部分がございます。これは大平答弁に先立つ政府答弁の中で、地位協定の二条に基づく基地の提供、施設区域の新規提供ということは排除されていない、そのような施設区域の提供を行う場合には二十四条に基づいて日本側は経費を負担するのだ、そういうことになるのだという条約解釈をまさに述べているわけでございまして、それは五十三年度、五十四年度以降の予算につきまして、関連いたしまして政府が御説明してまいりましたところと軌を一にするものであるというふうに考えておるわけでございます。
  102. 野田哲

    野田哲君 それなら、もう一遍調達史に返るわけですが、調達史では一九五六年に日本側が負担するのは借り上げ料、補償費に限定しているのだと、こういう記述をしておりますが、これは実態を述べたものではないでしょう。二十四条一項、二項の区分を、その前の行政協定時代からの経緯に照らして区分を述べたものでしょう。どうですか、塩田さん。
  103. 塩田章

    政府委員(塩田章君) この点は、先ほども申し上げましたように借り上げ料と補償費が問題になっているわけですが、この「占領軍調達史」の記述は、占領軍調達の推移を記述したものでありますが、その過程で行政協定時代の運用の現状を述べたものであるというふうに私どもは理解しておるところでございます。
  104. 野田哲

    野田哲君 その運用の現状であろうと何であろうと、日本側の負担というのは借り上げ料と補償費に限定されているのだという実態の説明であると同時に、これは当時の解釈じゃないんですか。
  105. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 当時の実態がまさにそのようであったことはそのとおりでございますけれども、行政協定の解釈を行ったものではないというふうに私どもは理解しております。
  106. 野田哲

    野田哲君 あなたがあくまでもそういうことであれば、これ以上の論争をやってもしようがないんですがね。  そうすると、当時と、五十三年以前と五十三年以降と地位協定の二十四条一項、二項の負担区分については一切政府の考え方は変わっていない、こういうことなんですか。あなたはオーバーラップしたという部分があるというのは、どういう部分がオーバーラップしていると考えておられるんですか。
  107. 塩田章

    政府委員(塩田章君) 私どもは、五十三年以前と五十四年以降で解釈は変わっていないと先ほどから申し上げております。ただ、実際は五十三年以前は出しておりませんから、五十四年以降出しておりますから運用は変わっております。それは、先ほど来申し上げておるとおりであります。  オーバーラップしている部分につきましては外務省から先ほどお答えしたとおりでございまして、外務省からのお答えの方がよろしいかと思います。
  108. 野田哲

    野田哲君 私は長官に、外務大臣と相談をして、施設庁の長官外務省の方はオーバーラップという言葉を使っているんですが、実態としても、これはどう見ても、金丸さんの述懐にもあるように、地位協定の曲解ですよ、二十四条の一項、二項の。当時、この思いやり予算の口火を切った金丸さんは柔軟解釈という言葉を著書の中では使っておられますけれども、今日ではかなり無理がありますよ。私どもはどうしてもこれは無理があると思っているので、あなたに、外務大臣と相談をしてこの地位協定の二十四条一項、二項の見解をもう一遍明確に示してもらいたいと言うのだけれども、あなたは全部答弁を事務方の方に振ってしまって、あなたとしては何の見解も示されないが、あなたは無理と思いませんか。
  109. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) あえて事務方に答弁を振り分けているわけじゃないんです。私といたしますと、今までの経過をよく承知した上でお答えをしなきゃならないということでございますので、この点は御了解いただきたいと思います。  要するに、地位協定二十四条の一項、二項の解釈の問題でございます。この解釈に対する有権的な省庁は御案内のとおり外務省でございます。したがいまして、外務大臣に対しまして、私から野田さんの強い疑問というものがあったということをお伝えいたしたいと思っております。
  110. 高平公友

    委員長高平公友君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十四分休憩      ―――――・―――――    午後一時三分開会
  111. 高平公友

    委員長高平公友君) ただいまから内閣委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十九年度総予算中、総理府所管のうち防衛本庁防衛施設庁議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  112. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 私に与えられました時間は三十分だけでございます。そこで初めに、五十九年度の防衛庁予算の中で何点かについて御質問をさせていただき、時間が余れば、今大変問題になっておりますシーレーン防衛の問題、ジェーン海軍年鑑で指摘をしました北海道侵攻の問題、こういう問題に触れさせていただきたいと思います。  まず初めに、五十九年度予算についての栗原長官の全般的な評価というものを承りたいわけでありますが、私は五十九年度予算はこの厳しい国際情勢、そして自衛隊の現況を踏まえて防衛庁も本当に精いっぱい努力された。政治的にもいろいろと配慮した、そういうような意味においては十分に評価さるべきものだと思いますが、個々の内容を見ますと大変問題が多い、このように考えておるわけですが、長官いかがでございますか。
  113. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 五十九年度の予算につきましては、予算委員会あるいはその他の委員会におきましてもいろいろ御論議のあったところでございます。あるいはこの防衛予算は非常に突出しているじゃないかという御意見もございました。しかし、総体的に申し上げますと、私は現下の国際情勢下において、また極東のこういう事態におきまして、日米安保条約を締結しておりまする我が国といたしましては必要最小限の防衛費をお認めいただいたと、そういうふうに認識をしております。いろいろの見方はございまするが、私どもの認識としては必要最小限の予算要求を一応お認めいただいた、そういう予算案だと考えております。  しかし、ただいまも御指摘になりましたとおり、内容を見ると十分でないじゃないかという御指摘、これもまた事実でございます。特に、正面と後方とのバランスというのがとれているかとれていないかというようなことが御論議の中に今までございましたけれども、私は後方という方面につきましては、率直に申し上げまして、まだまだ私どもの希望するところまで来ていない、そういう感をぬぐえないわけでございますが、しかし日常の教育訓練部隊の錬磨等に関します諸経費は、こういう状況下ではございましたけれどもまあまあお認めをいただけたのじゃないかと思っています。  いろいろと御指摘を受ければ、あれも足らない、これも足らないというところがございますが、こういう厳しい財政状況下でお認めいただいたことについて、全般的には大変感謝をしております。一日も早く予算が成立いたしまして、その執行につきましては厳正を期していきたい、これが私の現在の心境でございます。
  114. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 これからは個々の問題につきまして私、意見を交えながら御質問させていただくわけでありますが、まず最初は、今、長官の正面と後方とのバランス、随分と予算的には長官にそのバランスをとることに御努力いただきまして、確かに教育訓練の面におきましても辛うじて現体制を維持することが可能かな、こう思う程度にはなったわけでありますが、まず最初にお聞きしたいと思いますのは、防衛庁も政府も防衛計画大綱の水準をなるべく早く達成しなきゃならぬ、こういう基本的な方針は一貫して主張しておられるわけです。  ところが、ことしの予算、去年、ことしと二年度目に五六中業が入ったわけですが、この計画大綱の水準の達成状況を見ますと、正面兵力に予算的には一番重点を置いていますが、これも今のペースでいくと三年ぐらいはおくれるのじゃないだろうか。それから特に継戦能力、即応態勢、抗堪性、これを見てみますと、これは最初から一%の枠という規制があったために目標の設定そのものも大変低い。その低い目標の達成が、去年、ことしとこの二年間の予算を見る限りにおいてはどうも四、五年はおくれてしまうのじゃないか。  そもそも計画大綱は、これは五十一年に決めたときには数年間でその水準を達成しようと、こういう意図を持って発足した。今もう既に八年目に入っている。しかも、これから先、今申し上げましたような見通しだということになるのじゃないか。これは大変な問題だと思っておりますが、どのようなお感じでおられるか、承らしていただきたいと思います。
  115. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 防衛計画の大綱の水準の達成ということにつきましては、確かに御指摘のとおり、量的な面が一つございますと同時に、質的な面でも配慮していかなきゃいけないということもございますし、あるいは継戦能力、抗堪性、即応性ということを重視していくということが基本的な考え方でございます。それを一つの基本的な骨組みといたしまして、具体的な実施のために防衛庁としては五六中業を作成してやっておるということでございます。  そのうちの正面については、確かに期間中の契約予定額が約五兆三千億円というものに対して、現在までの五十八年度及び五十九年度の二年間の進捗率が約二七%であるということで、私どもといたしましては必ずしもこれで十分満足だというものではございませんけれども、これは今後さらに一層の努力を払って、ぜひ中業の目標達成に全力を挙げていきたい、こういうふうに思っております。  それからまた、即応性の問題、あるいは抗堪性、継戦能力の点につきましても、今後とも一層の努力を払いまして諸施策を進めていきたいというふうに考えております。
  116. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 今、GNPの一%の枠がいろいろ論議されております。ここではその問題については私触れませんけれども、よっぽど腹を据えてやっていただかなければならないということだけは数字の上でも極めてはっきりしているわけです。その点を指摘して、次に即応態勢の問題に入らしていただこうと思います。  今、防衛局長からお話がありましたように、正面兵力の近代化の問題と同時に、即応態勢、抗堪性、継戦能力を防衛庁は重要な柱としてやっておられるわけです。即応態勢についても努力しておられることは、私はよく承知しております。ことしの予算でも、特に従来問題になっておりました魚雷、機雷、こういうものの運河管理のための施策が推進をされておりますし、ミサイル関係についても航空自衛隊でやはり前進を見ておるわけです。しかし、総じて言いますと、この即応態勢、どうも重点の置き方が大変鈍いのじゃないか、私はそのように感じられてなりません。  いろいろございます。例えば、ことしもですが、海、空の定員増は遠慮されたわけです。これは大変なことだと私は思います。従来、海、空は装備品が実戦配置につく、それに間に合うように必要な定員をちゃんと準備するということで一貫してきたわけです。ところが、現実的には、その物は入る、ところが定員増が国会で認められない、大きな穴があいております。そこで、実際は船がまともに動かせない、いや、動かしておるけれども、あっちこっちの機能を果たすための人員を欠いたままで動かしている。そういうことになりますと、訓練も本当の意味訓練はどうなんだ、まして即応性ということになると問題がある、こういう防衛庁としては大きな問題を抱えておると思います。国会としては、当然そういう事態から、海、空の定員増の問題はもっとその事態に即応するように的確に措置しなきゃならぬと思います。同時に、防衛庁も、私は何でそういうような全般情勢にあるにもかかわらず定員増を遠慮されたのかなと、このような疑念を持つわけです。  また、陸の充足率がこの参議院の予算委員会でもいろいろと取り上げられてまいりました。八六%で一応訓練に必要な最小限だと、こう言われておった時期がございます。しかし、このごろは大分防衛庁も認識を改められたと思います。全部で八六%です、新隊員の教育中の者も入れて、管理業務についている者も入れて。第一線はもう六〇%から七〇%。こういう状況でまともな訓練ができるはずもないし、こういうようなことから五十七年度に〇・三三%の充足率のアップを見ました。ところが、ことしの〇・四一五%の充足率のアップもこれは達成できなかった。せめて北海道だけは五六中業の期末ぐらいまでには目標としておるところの第一線の主要部隊一〇〇%という目標を達成するための努力というものがもっと真剣に考えられなければならぬのじゃないか、私はそう思います。  さらに、乙類の装備品というのは即応態勢上大変大事な問題でございます。ところが、これにつきましても、二師団、充足率がアップされたものについて若干の充足向上がことしの予算で見られました。大変結構だと思います。ところが、実際、乙類、車両類とか通信機材とか施設機材、これは平均の充足率が非常に低い、八〇%欠けていますですね。しかもこれが例えばことし予算の要求をして今審議しておりますものは五十七年度に落としたやつですね。それを五十九年度予算でもって予算づけようとする。一年ブランクがある。調達をして、やろうということになると、もっとブランクができます。それが歳出予算額の枠の中で従来よりもペースダウンしておる、要求そのものが。こういうようなことは、やっぱり即応態勢というような面から見ますと大変問題があるのじゃないかと思うんですが、いかがでございますか。
  117. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) まず、第一点の定員の問題でございます。  確かに海、空の定員と申しますのは、装備品の就役、艦艇とか航空機等が就役してまいりますから、それに伴いまして必要な人員というものを本来定員化して装備品の十全な活用を図るということが原則でございます。そういうことで例年努力はしてきているわけでございますが、五十九年度の場合どういうことになったかと申しますと、結局現在の厳しい財政状況の中で全体としての防衛予算をどれだけふやせるかということが一番大きな基本的な問題としてあったわけでございまして、その中におきましてどういう点に重点を置いて経費を獲得していくかということは非常に苦しい選択であったわけでございます。先ほど大臣からも申し上げましたように、訓練練度の維持、これは現体制維持のために最小限確保しなければいけないということが基本的な私どもの要請でございました。したがって、そういった最終調整をしていく過程におきまして、海、空の増員のための経費をこの際我慢せざるを得ないのではないかというような判断をしたわけでございますが、これはことしのような厳しい財政事情等も考えた特殊異例の措置ということで我慢をせざるを得なかったわけでございます。したがいまして、今後の六十年度以降につきましては、こういう増員の確保についても精いっぱいの努力をしてまいりたいというふうに考えております。  それから第二点の充足率の問題につきましても、先生御指摘のように、これはやはり即応態勢をつくっていくという意味から現在の水準をさらに充実さしていく、引き上げていくということが基本的な私どもの目標でございます。この点も、五十九年度におきましては増員について申し上げましたのと同様な最終的な選択の結果としてあきらめた経緯があるわけでございますが、これもやはり今後ぜひ重要問題といたしまして積極的に取り組んでいきたいと思っております。  それから、なお第三点で御指摘のございました陸上自衛隊の乙類装備品、これは車両等が中心でございます。通信機器もございます。いずれも損耗更新等を必ずしも十全に実施し得ないというのが現状であることは御指摘のとおりでございまして、これはかねてから私ども自衛隊にとっての一つの大きな問題でございます。この点も五十九年度予算におきましてはぎりぎりの努力はしたわけでございますけれども、六十年度以降におきましてもこの点もやはり私どもとしては十分重要事項として配慮していかなければいけないというふうに考えております。
  118. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 大変厳しい予算枠の中でぎりぎりの選択をされたと十分私も理解しておるわけですが、やはり現情勢を考えてみますと、もちろんもっと予算をふやす努力をしなきゃならぬ、これは全部が。同時に、全部の中で優先度を、本当にもう少し発想の転換をやりながらやっていく必要もあるのじゃないか、防衛庁費全部の中で。そのような感じもしておるわけです。  次に、もう一つ抗堪性の問題につきまして申し上げます。  もちろん飛行機をふやさなきゃいけませんが、この飛行機を一回の銃撃によって使えないようにしてしまうというわけにはまいらぬわけです。そのような意味において、基地防空の火器の問題、航空機の掩体、これがやっぱり現情勢から見ますと喫緊を要する施策の一つであると、このように考えて間違いないと思いますが、どうもこれらが、ほかが平均しまして三〇%前後の進捗率にあるにもかかわらず、一〇%から十数%の進捗率にとどまっておる、これなんかも私は本当にしっかりやってもらいたいものだなと、こう思えてならないわけです。  さらに、ここで一施設整備の問題につきまして、私少し意見を言わしていただこうと思います。  私も今まで、予算がだんだん厳しくなってまいります、自衛隊の諸君にも苦しくなったときにまず我慢しなきゃならないのは施設整備だよ、それも作戦用に関連した事業、施設はこれはやらなきゃいけないということになると生活関連の施設整備は我慢せざるを得ないだろう、そういう考え方でいくべきだと、こう言ってまいりました。予算を見ますと、やはりしわ寄せが施設整備に一番大きく来ておるわけであります。これは五十七年度、陸、海、空合わせて施設整備費が五百四十億であったのが、五十八年度四百九十六億になり、五十九年度は三百七十二億である。特に、生活関連の経費、これが五十七年度百九億が、五十八年度六十三億、五十九年度は四十一億である。  ところが、この生活関係の経費も私は限度があると思います。例えば木造の建てかえを要するような施設が防衛庁はほかの官庁と比べて非常に多いですね。保安度が三千点以下というのが他省庁は全部合わせて十一万平米、防衛庁が三十九万平米ある。その中で陸が二十八万平米だ。保安度が三千一点から三千五百点、これは他省庁が四万平米に対して防衛庁が十七万平米だ。陸はその中の九万平米だ。四千五百点までの老朽木造建物は、他省庁が五万平米に対して防衛庁は三十一万平米だ。陸はその中で十八万平米ある。こういう実態にある。ところが、ことしの予算でもたった二棟分しか予算がつかない。現に朝霞は、昭和の初めのころ急造でつくった木造隊舎をそのまま使っている。例えば新発田は、明治時代につくった建物をそのまま現在でも使っておる。さらに、体育館で言いますと、どこへ行ってみても体育館のないところはない。町としてもありますし、学校という学校は全部ある。ところが、雪の多い地帯でもまだまだ体育館が整備されておらない。その体育館も、おととしまでは二棟ないし三棟ずつつくっていましたね。ところが、去年、ことしともうゼロだ。  私は、やはり限度があると思います。隊員の士気をやはり確立しなきゃならぬ、こういうことから考えますと、こういう面においても努力しなきゃならない。そうなりますと、防衛庁予算というものについて理解してもらう以外ないじゃないかと、こう思うわけですが、それらについて御見解を承らしていただきたいと思います。
  119. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 今の御指摘の点は私もごもっともだと思います。実は、五十九年度の予算編成に当たりましてもそのことは非常に心の痛いところでございましたが、先ほど申し上げましたとおり、予算は財政的、経済的、政治的にどうしても一定の枠の中でやらなきゃならぬということになりますので、それらに対する配慮がなかなかできにくかったということで、この点は大変遺憾に存じております。  ただいまもお話のありましたとおり、この防衛費というもの、あるいは防衛力整備ということは、究極的には国民の皆さんの御理解をいただく、その御理解をいただく中でやっていかなきゃならぬと思っておりますので、国民の皆さんの御理解をいただくような方途をさらに積極的に講ずるとともに、ただいま御指摘のあったような点につきましても配慮をしてまいりたいと、こう考えております。
  120. 堀江正夫

    ○堀江正夫君 ぜひひとつそのような努力をしていただきたい、私どももしなきゃならぬと思いますが。  もう一つ、今の施設整備につきましてつけ加えて言わせていただきたいわけですが、老朽隊舎という面から特に生活環境ということについて言ったわけですが、隊員の居住施設の基準そのものが、私、同じ公務員であります警視方の機動隊員の基準と比べますと、基準そのものが初めから自衛隊の場合は半分以下になっている。その上に、現実はその基準の七五%ぐらいだ。したがって、実際には本当に窮屈な状況下に置かれている。長官、これはぜひ一度見ていただきたいんですがね。例えば、初めからそういう基準でやった。ところが、その後必要上部隊配置を変えた、新しい部隊をそこに突っ込んだ、さらに充足率が上がった。それによって施設をふやして環境を――初めから低い基準ですよ、それを保持することも今はできないような施設整備費の状況である。その辺は、本当によくこれは現状認識をして、今後に対処していただきたいと思います。  三十三分まででございますから、あと教育訓練につきまして、ちょっと私は最後に述べさしていただこうと思います。  教育訓練につきましては、本当にことしの予算編成過程におきましては五十八年度の訓練基準も達成できないのじゃないかということを私ども自身も非常に心配しました。おかげさまで、どうやら維持できた。中には若干前進したものもあるわけです。しかし、御承知のように、現在の訓練のための裏づけとなる基準そのものがやはり問題が多いわけですね。  例えばジェットパイロットの訓練時間、これなんかが修理費、燃料費の算定の基準になるわけですが、それ自体がほかの国々と比べればはるかに低い。例えば護衛艦。護衛艦の年間の訓練のための航行の時間にしてもはるかに低い。あるいは燃料を食う戦車、修理費を食う戦車にしても同じだ。私は、そういうような意味の改善もしなければ本当は精強の部隊というのはできない、現在程度維持するのが精いっぱいだ。確かにことしの訓練演習費も上げていただいていますですね。それは大変な努力だったと思います。  ところが、四十八年のオイルショックのときに大変な大きな穴があいてしまった。それがその後の物価上昇に対してまだまだ大きな幅がある、追いついていないということになりますと、当時の訓練すらもまともにはできない。ことしはまた国鉄の値上がりが行われるということになりますと、ストレートにとは言いません、いろんな工夫をしていますから。けれども、教育訓練面においても問題がたくさんあるのだということを指摘せざるを得ないわけです。  私は、このようなことを具体的にいろいろ申し上げました。防衛庁の苦しさも十分わかっています。大変努力されたこともわかっていますが、あえて申し上げましたが、そういう実態を踏まえて、本当に国民にも先ほど言われたように理解をさす努力をもっと積極的にやる、これは政治家の皆さんにもやはり理解をさすようにしていただく、そういう上に立って防衛庁としての本当の要求というものを、これを今後も積極的に打ち出していただきたい、このように願ってやみません。もし御所見いただければいただいて、私の質問を終わります。
  121. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 御激励のお言葉と承りまして、今後施策に生かしていきたいと思っております。
  122. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 きょうは、それでは防衛問題のいろんなことについてお伺いしたいと思っていますんですが、まず長官に、日本防衛の基本的なあり方、かかわりについてお伺いしたいと思うんです。  私は、これからの日本防衛整備の基本になっておりますのは、一つは御存じのとおり国防の基本方針、これが一つ、それからもう一つはこの基本方針に基づいて現在適用をされております防衛大綱、この二つがやっぱり基本になるのじゃないかと思うんですが、これはどうですか。
  123. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 同感でございます。
  124. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 五三中業、五六中業と、この大綱決定後いろいろと運用されておりますが、五六中業にしましても五三中業にしましても、少なくともその根っこにありますのは防衛計画の大綱、これが根っこになければならないと思うんですが、これはどうですか。
  125. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 私も、そう思います。
  126. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで、その防衛計画の大綱と、これは防衛局長で結構ですが、いわゆる第三次防衛力整備計画、第四次防衛力整備計画というのがありますね、この二つの計画防衛大綱とのかかわりについてどういうふうな関係になるのか、お伺いしておきたいと思います。
  127. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 防衛計画の大綱の前の第三次防衛力整備計画あるいは第四次防衛力整備計画と申しますのは、これはその期間中、すなわちそれぞれ五カ年間でございますが、五カ年間の防衛力整備計画を定めたという期間のある計画であると思います。それに対しまして、防衛計画の大綱の場合は、我が国が限定的かつ小規模の侵略に対して原則として独力で対処し得るというふうなことを考えた場合に、我が国防衛力としてどの程度のものを最小限持つべきかということを別表に規模を示しまして、それを一つの目標水準として決めているという性格のものであろうかと思いますが、この大綱の場合はそういう意味から一定の期間を定めてはいない。そこら辺は三次防、四次防とは姿が違っておるというふうに考えております。
  128. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 現在の時点でいきますと、少なくとも大綱を根っこにして、その後のいわゆる五三中業、五六中業で具体的に決定されていると、こういうことですね。そうしますと、いわゆる三次防、四次防の策定の仕方とは根本的に違ってきたわけですから、現在の時点では少なくとも大綱と五三中業、五六中業が生きていると、こうなるわけですね。
  129. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 峯山先生御指摘のとおりでございまして、現在は、つまり五十一年に大綱を決めまして、五十二年度以降の時代というのは防衛計画の大綱というのが基本的な枠組みでございまして、その中で五三中業なり五六中業なりというものを防衛庁の内部資料として作成をいたしまして概算要求等の参考にしている、こういう性格のものでございます。
  130. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、現在の防衛力整備のやっぱり基本となるのは大綱ですね。
  131. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 御指摘のとおりでございます。
  132. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこまで確認をしまして、さて、そうしますと、大綱の中に、この間から問題になっておりますシーレーン防衛というのはどこでうたわれているわけですか。
  133. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) シーレーン防衛と申しますのは、しばしば御説明申し上げますように、その目的とするところは、我が国の生存の維持あるいは継戦能力の確保というものを図るために有事におきまして海上交通の安全を確保していくということが基本的な目標でございまして、そのためにいろんな作戦を実施していこうということでございますが、その作戦と申しますのは、例えば港湾の防備あるいは海峡の防備あるいは哨戒、護衛等々の諸作戦を実施していく、これらの諸作戦の累積効果によって海上交通の安全の確保を図っていくということを考えているものでございます。  そういったようなことを達成するために、防衛計画の大綱におきましては一定の体制をつくっていこうということで別表に海上自衛隊におけるいろんな勢力の整備目標を定めておるわけでございます。そういった別表の整備目標をどういう海上自衛隊の体制でつくっていくかということがこの本文の中の五というところに書いてございまして、そこに「陸上、海上及び航空自衛隊の体制」というのがございます。その二番目に、「海上自衛隊」という項がございます。  そこで四つに分けて書いておりまして、一はこれは護衛艦隊のことでございますが、ここには「海上における侵略等の事態に対応し得るよう」ということで書いてございます。  それから第二番目は、地方隊の艦艇のことを書いてございますが、ここには「沿岸海域の警戒及び防備を目的とする艦艇部隊」というふうに書いてございます。  それから三番目には、これは潜水艦部隊とか回転翼対潜機部隊、掃海部隊のことでございますが、そのところには、「必要とする場合に、重要港湾、主要海峡等の警戒、防備及び掃海を実施し得るよう」というふうに書いてございます。  それから四番目には、これは固定翼の対潜機部隊の項でございますが、ここには「周辺海域の監視哨戒及び海上護衛等の任務に当たり得る」というふうに書いてございます。  つまり、こういったような四つの類型に分けて示してございますが、これらのところに書いてありますような諸作戦というものがただいま申し上げましたような海上交通安全の確保のための諸作戦の類型ということで御理解を賜ればいいのではないか。こういったようなものの力を総合しまして、いわゆるシーレーン防衛と申します海上交通の安全確保のための作戦を実施していくということになるというふうに理解をしております。
  134. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 防衛局長ようけ言うてはりますけど、これは長官、もう全部ごまかしなんですよ。今ようけ言いましたで。例えば、海上自衛隊の項目を今四項目ある中で言いましたが、沿岸警備の云々とかいうやつは国会で今まで問題になっているいわゆるシーレーン防衛と違うでしょう。違いますね、これは長官。その次の重要港湾とか主要海峡等云々という、これも従来から言うているいわゆるシーレーン防衛と違いますね、言うたら。本当のやっぱり我々が今問題にしているシーレーン防衛というのは四項目目でしょう。これは違うんですか。何かほかにそれ以外にあるんですか。防衛局長、どうなんです。
  135. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいま御指摘の四項目目に書いてございますのは、固定翼対潜機部隊の項でございまして、確かに固定翼対潜機部隊におきましても、そういう監視哨戒とか海上護衛等という目的を達するための活動はいたします。ただ、毎々申し上げておりますように、いわゆるシーレーン防衛と申しますのは、先ほど申し上げましたようないろんな作戦の累積効果によりまして海上交通の安全を確保していくというのが最終の目的でございますから、海上自衛隊のいろんな作戦がそういったシーレーン防衛という目的に寄与していくということが現在におきます私ども考え方でございます。そういう意味で、しばしば御説明申し上げておりますように、例えば港湾の防備なり海峡の防備ということも、全体の諸作戦の一つとしてこれはシーレーン防衛の目的に寄与するというものであろうと私どもは理解をしておるわけでございます。
  136. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、そういうこともそれはシーレーン防衛に入るとしましょう。しかし、実際問題になっておりますのは、やっぱり海域の範囲をどうするかということが一番大きな問題なわけですよ。ですから、その点については私はきょうは、どうせ予算の総括でこれは統一見解を出してもらうということにしていますから、それはそれでいいです。  それとは別に、私きょう議論したいと思っておりますことは、やっぱり海域の範囲という問題が非常に重大でありますし、そういうふうな意味でいきますと、それは港湾のいわゆる護衛とか、あるいは掃海とか、警戒とか、いろんな問題がありますね。そういう問題は別です。それもあるでしょう。それもシーレーン防衛一つとおっしゃれば、私もそれは違うとは言いません。しかし、今私が問題にしようとしていますのは、やっぱり千海里先ものいわゆる海域を防衛すること、あるいは船団を護衛すること、そのことが大綱の中のどこにうたわれているかということを私はきょうは一遍聞いておきたいし、どの文言の中に入ってくるのかということを聞きたいわけです。これはどうですか。
  137. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ここでいわゆる私どもシーレーン防衛のための防衛力整備の際の考え方として申し上げておりますのは、周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね一千海里程度の海域で海上交通の安全を確保し得るような能力ということを目標にして現在の防衛力整備の目標を定めておるということを申し上げておるわけでございますが、その際にどういうところでということでございますが、その機能として申し上げれば、海上自衛隊の体制の中の艦艇部隊というものが「海上における侵略等の事態に対応し得るよう」にということで書いてございます。そういった海上における侵略等の事態に対応するための活動ということでございますと、それはここでは「一個護衛隊群を即応の態勢で維持し得る一個護衛艦隊を」最小限持っていたいというふうに書いてございます。これは、したがってその海上防衛力整備の目標数値の算定、隻数の算定の基礎としては、ここでは千海里とかなんとかいう距離そのものが算定要素にもちろんなっていなくて、要するに一個護衛隊群が常に出動できるという態勢をつくろうということでこの護衛艦隊の考え方ができておるわけでございます。  そこで、そうやってできた護衛艦隊が有事におきましてオペレーションをするわけでございますが、それは航路帯が設けられた場合には必要に応じて護衛のためにそこに派遣をされるということはあり得るというふうに私どもは考えているわけでございます。
  138. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 局長、二つ疑問があるんですよ。一つは、「海上における侵略等の事態に対応し得るよう」となっておりますが、これは侵略に対応するということですから、海上における侵略というのは、領土、領空、領海と我々しょっちゅう言いますが、要するに領海に入らないと侵略にならないんでしょう。どこら辺、例えば経済水域二百海里ぐらいに入ってきたら侵略なんですか。あるいは皆さん方がしょっちゅう言う周辺海域の五、六百マイルのところ、ここに入ってきたら侵略になるんですか。そこら辺の限界をきちっとしていただきたいですね。
  139. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいま御指摘の問題は、いわゆる自衛権発動の地理的限界に関する問題であろうかと思います。  この問題につきましては、かねてからしばしば申し上げておりますように、自衛権の発動の限界は領土、領海内に限られるものではないということでございます。もちろん、この自衛権の発動される場合と申しますのは日本が武力攻撃を受けたときということでありますから、武力攻撃を受けた後の話という前提でお聞きいただきたいのでございますけれども、そういう武力攻撃を受けた時点におきまして我が方が自衛権を発動していくという場合の実力の行使の場所というのは、我が国の領土、領海にとどまらず、公海及びその上空に及び得るということはかねてから申し上げているわけでございます。  しかし実際に、ではどの辺まで活動できるだろうかという現実の問題になってきた場合には、私どもは、先ほど来申し上げておりますように、防衛力整備の目標として周辺数百海里、あるいは航路帯を設けた場合にはおおむね一千海里程度ということを目標にしてこういう防衛力整備をやっている関係上、能力的に限界がございます。したがって、そういった限界が事実上はございますから、無制限にかなり遠方まで行って行動するということは実際問題としてはなかなか難しい話であるというふうに従来から申し上げているわけでございます。
  140. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 だんだん大変なことになってきますね。  私も、自衛権の発動が領土、領空、領海に限らない、それはわかりますよ。わかりますが、その地理的限界の問題からいいますと、あなたはそのことからどういうふうにおっしゃったかといいますと、要するに今整備目標として自衛艦のいわゆる能力整備を進めておる、だからそれがいわゆるシーレーンの千海里と大体一致すると。だから要するに、結局あなた方はそれを目標にやっている、能力的に見てそこまでが限界だと。そうすると、それじゃそのことといわゆる自衛権を発動する範囲内。あなた方が我々に国会で説明していることは、結局これだけの能力があります、この艦船はここまで守ることができますよと、艦船のその能力と守るということと同じになってイコールですな、防衛局長説明を聞いておりますと。要するに、航空機が侵略等に対して守る限界、飛行機が五百海里まで行けます、そこまでは能力があります、そこまで発動できますということは、結局今あなたがおっしゃっている自衛権発動の領土、領空、領海に限らない、結局千マイル先でもやっつけることができる、あるいは守ることができる、自衛権を発動して何なりすることができる、もちろん攻撃された有事の際ですけれども。そういうことになるんですか。
  141. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) どうも二点問題があろうかと思いますが、一つは千海里以遠についての御疑問かと思いますけれども……
  142. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いや、そんなことない。千海里以遠なんて言っていませんよ。千海里以内ですよ。
  143. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 千海里以内の話なんですね。
  144. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 以内ですよ。
  145. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 以内の問題でございますと、これは私どもかねてから申し上げておりますように、防衛力整備考え方として周辺数百海里、それから航路帯を設ける場合は一千海里程度ということで申し上げているわけでございますから、そこはその能力の限界が当然あるわけでございます。そして、航路帯と申しますのは、これは一千海里の海域をべたにそういうふうにしているというのではございませんで、そのときの様相に応じまして特定の海域をある一定期間安全にして航行がしやくするということで考えているものでございますから、常時千海里の海域をべたにそういうことで海上自衛隊が防衛できるというふうなことで考えているわけではもちろんないわけでございます。
  146. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そんな常時なんて私、常時だって片時だって同じなんですよ。いざとなれば、常時だろうと片時だろうと日本の船がいるところまで行かなければいかぬわけですから同じことですわ。私が言うているのは、局長、あなたの答弁をずっと聞いておりますと、自衛力整備考え方、それが即自衛権発動の限界と同じになっているんですよ。自衛力の整備をこういうふうに別表のとおり進めています、艦船をこうしています、だからこれだけ行けるんですという考え方と、自衛権発動のどこまで守れるかということとイコールなんだな。違いますか。能力とその整備のあれとは一緒ですよね。だから、能力即自衛権発動の限界、同じになっているのじゃないですか。  だから、私が言うているのは、今の「海上における侵略等の事態に対応し得る」というこの「海上における侵略」というのは、先ほどから私聞きましたように、あなた、自衛権発動の限界というのは、領土、領空、領海に限らない、公海にも及ぶ、その公海はどこら辺までだ、それはやっぱり千海里ぐらいだと、早く言うたらそう言うているわけでしょう。違いますか。
  147. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 第一点は、自衛権の発動の地理的な限界というのは一つの理論の問題でございまして、これは領土、領海に限られないで、公海及びその上空に及び得るということでございます。  第二点は、しかしながら実際にどの程度のオペレーションが可能かという現実の問題だろうと思いますが、その点については、先ほど来申し上げておりますように、海上防衛力整備に当たりまして、周辺数百海里、航路帯を設ける場合には一千海型程度の海域におきまして海上交通の安全を確保できるような能力ということを前提に考えておりますから、当然に能力的な限界がそこで生じてくると考えておりますということを申し上げておるわけでございまして、両者は別の問題かと思います。
  148. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これはやっぱりごまかしていますよ。だから、あなたの言っていることと私の言うことは全く食い違っていないんですよ。要するに、自衛権発動の限界というのは公海に及び得ると、私もそうだろうと思うんです。及び得るけれども、あなたが一生懸命さっきから言うているのは、海上自衛隊の整備を一生懸命進めている、その前提となっている能力が大体ここら辺まである、そう言うているだけで、それが即そこまで守るということなのか、自衛権を発動するということの限界がそこまでなのか、それはちゃんとそこで認めているのかと。だから、大綱で言う「海上における侵略等」というこのことは千海里先を言っているのかということを私聞いておるわけです。
  149. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいまの御疑問は「海上における侵略」と言われているものの実態に関係があるかと思いますけれども、私どもが自衛権を発動し得るケースとして考えておりますのは、もちろん日本の領域が侵略されたということもございますけれども、それだけではございませんで、海上におきます我が国船舶に対する攻撃というようなものがあった場合に、そういうものが組織的、計画的な攻撃であるということになりますればそれで自衛権を発動し得るということも毎々申し上げていることでございまして、そういったような意味でそういう海上におきます侵略行為に対抗するための海上防衛作戦というものが当然あるわけで、そのことをこの護衛艦隊は任務としてつくられているというふうに私ども考えておりますから、そういう部隊がただいま申し上げましたような能力を持って、能力の範囲内での活動をしていくということは御理解いただけるのではないかというふうに思うわけでございます。
  150. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは非常に大事な問題を含んでおりまして、これは私は予算委員会でも議論している問題なんですが、これから例えば艦船にしても航空機にしても、その能力の範囲内でというのが今局長が答弁しているような結局範囲内なんですよ。例えば千海里先まで守れる能力のある艦船を購入するということになれば、そこら辺までは守るということと一致しているわけですね。ということは、逆に言えば、我々内閣委員会で、こういういろんな装備を購入する、五十九年度の予算でも相当いろんなものを購入しますね。例えば一万キロ飛べるから、一万キロ先まで行けるからそこまで守るということとは違うと私は思うんですよ。能力があるからそこまで全部守るということとは違う。違うと思うから我々は安心してその艦船の別表まではチェックしないわけですよ。  ところが、今、防衛局長の答弁ですと、能力的に見て、能力の範囲内で守る。そういうことになりますと、我々は国防会議でいろいろ決定される装備の中身について、本当にその中身がどこまで守れるかどうかということを、これは内閣委員会で詳細に資料を出していただいて一つ一つ厳密に検討しないといかぬということです。これは本当に我々は、今までは別表とか、こういう装備の中身についてはある程度任せていましたね。  ところが、実際は、長官、今話を聞いていましても、私何回言うても局長はわかりにくい答弁していますよ。わかりにくい答弁していますが、少なくともその能力の範囲内で守ると。ということは、能力即自衛権の発動の限界なんです。要するに議論が逆さまなんですよ。ここまでは守りますという自衛力の限界があって、それに合わせて装備を買うのであって、あなた方の今の議論は、飛行機の能力はここまで行けるからそれだけ守るんですと、こう言うておるのじゃないですか。そんな議論が逆さまになったような考え方なんて私はとんでもない。頭かしげていますけれども、あなたそういう説明ですよ、ずっと説明を何遍聞いたって。違うのなら、もう一回説明してみてください。
  151. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) これは先ほども申し上げましたように、現在の防衛計画の大綱におきます防衛力整備考え方といたしまして、周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の海域において海上交通の安全を確保し得るということを目標にしているということを申し上げたのが第一点でございまして、それから第二点として、したがってどのような実際の作戦行動になるだろうかという運用の問題になろうかと思いますけれども、その場合にはやはりそういった能力を持った海上自衛隊でございますから、その能力を超えたような活動まではこれはできないということを申し上げているわけでございまして、それは私どもが従来から申し上げていることでございまして、特段におわかりにくいのではないように私は思いますけれども、御理解いただきたいと思います。
  152. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 だから、あなたの言っているとおりなんだよ。何も否定しませんよ。  まず第一点の、あなたが言った周辺数百海里、シーレーンを設けた場合は千海里なんというのを私たちは認めた覚えは一回もない。ないんです、一回も。あなた方は何回も説明していますよ、ここで。シーレーンを今仮に設けるとすれば千海里ぐらい守れます、今の能力でと、こう言うておるわけです。だから、それでいいとは一回も言ってない。そのことなんというのは大綱の中のどこにも書いてないじゃないか、そんなことは。そんなこと書いていませんよ。  しかも、二項目目のあなたの言うていることは、あなたの言うとおりなんだよ。能力を超えて防衛はできない、そのとおり。当たり前じゃないですか、そんなことは。そんなわかり切った説明をするなよ。千海里までは守れます、それから先は、有事の場合安保条約の発動で要するに米軍と共同でお願いする以外ない。能力はそうやということで、だからそこまで守るということとは違うだろうと言うておるわけだ。だから、周辺数百海里、シーレーン千海里というそれがあるのなら、それは初めにどこにあるかと、私はこう聞いているわけだ。大綱のどこにあるかと聞いておるわけだ。それをごちゃごちゃ言うから回っておるわけでね。そんなこと大綱にもないし、そんなことどこにも決めてないじゃないですか。  また、海上自衛隊の装備をこれからいろいろやるにしても、私はこれからいろんなそういう一つ一つの装備については細かく、もしも能力とそれが自衛力と同じことになってくるのであるとすれば、航空機一つ買うにしたって何一つ買うにしたって、そこをきちっとチェックしないとだめだ、我々としては。そうなってくるのじゃありませんか。
  153. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいまの大綱のどこに数百海里ないし千海里について書いてあるのかという御質問ございまして、この点は先般予算委員会でも御指摘があったことでございますので、この点については私ども考え方をまとめて御説明申し上げる機会を別にいただくことになっているというふうに私理解をいたしております。  したがいまして、その点については改めてまたその機会をつくっていただくということだと思いますが、ただいまの御指摘につきましては、先ほども申し上げましたように、海上防衛力整備の目標の考え方というものが一つございまして、それが周辺数百海里、航路帯を設ける場合にはおおむね千海里程度の海域における海上交通の安全を確保し得るということを目標にしておるわけでございます。それからまた、もう一つ、理論的な問題としての自衛権の発動というのは、領土、領海に限られず、公海及びその上空に及び得るということがございます。それからさらに第三点として、実際のオペレーションとしてはどうなるであろうかということになりますと、海上自衛隊が持っている能力の範囲内で自衛のための必要最小限度の防衛活動をするということになるわけでございますから、そこには能力上おのずから限界が出てきます。こういうことを分けて御説明をしているつもりでございますので、どうかひとつ御理解を賜りたいと思います。
  154. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 理解できませんな。結局、自衛力の整備の能力、その限界と自衛力の限界とが同じですな。あなたの説明、同じです。同じだと困るんですよ。あなたがさっきから説明しているのは同じじゃないですか。
  155. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 今申し上げましたように、海上防衛力整備上の一つ考え方というのと、それから自衛権を行使する場合の地理的範囲の問題と、それからさらに実際のオペレーション上にどのくらいの能力があるか、こういう問題と三つに分けてお考えをいただければいいわけでございまして、そこのところは、ただいまの御質問が防衛力整備上の目標と自衛権の限界とを同じように言っているのではないかということであれば、私はそういうふうには申し上げていないわけでございます。
  156. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 じゃ、もう一回逆にいこう。  自衛力の限界というのはどこら辺に設定しているんですか。
  157. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) これは基本的に我が国憲法上の考え方といたしまして、自衛のため必要最小限ということで従来から一貫して考えているわけでございます。それが基本的な考え方だろうと思います。それを、じゃ具体的に地理的範囲としてどこまでと、そういう問題から御説明申し上げますと、それは領土、領海に限らず公海、公空上にも及び得る。しかしながら、それはあくまでも自衛のための必要最小限の限度でなければならない。こういうことになっているわけでございます。
  158. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 また、さっきと同じことをもう一回やらにゃいかぬからやめておきますけれども、今の発動の限界というのは、先ほどから何回も申し上げておりますように、私もわかるんですよ。領土、領空、領海に入らないで公海上に及ぶということもわかります。しかしながら、それはどこら辺までかということになると、結局あなたの先ほどの説明だと整備の目標の能力の限界、そこから先は守れませんから大体そこら辺までですと。だから、私は同じじゃないかと言うておるわけですよ。それは一たんおきます。  これは法制局長官、あなたに質問するの嫌なんですけど、一遍どうしても聞いておきたい。先ほど言うていますから、場所わかりますね。今議論しているところです。  まず、文部省来ていますか。
  159. 川村恒明

    説明員(川村恒明君) はい。
  160. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 文部省の国語に堪能な先生ということでお願いしましたからね。  どういう担当の方ですか。
  161. 川村恒明

    説明員(川村恒明君) 私、文部省官房で総務課を担当している川村でございます。  官房業務でございますので、本省の全体的ないわゆる調整業務を実施しております。
  162. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それで十分なんです、能力あると私思いますので。  防衛白書というのは、御存じのとおり国民の皆様にわかりやすく防衛というものを御理解いただくためにつくった本ですから、少なくとも一般の中学生、高校生が理解できればいいわけです。少なくとも文部省のそういう国語に堪能な課長さんに御出席いただきたいと言うてお願いしたわけですから、素直に読んでいただければいいわけです。  七十七ページ、ア、イ、ウ、工、オ、カ、キとありますね。まず、オの方からお願いしたいと思うんですが、「必要とする場合に、重要港湾、海峡等に敷設された機雷の除去、処分などに当たるため、」とありますね。この意味をちょっと説明してくれますか、素直に読んで。
  163. 川村恒明

    説明員(川村恒明君) 突然のお尋ねでございますので確信を持って申し上げることは困難でございますが、ただいまお示しの点はそこに表現されたとおりのことではなかろうかと思います。
  164. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 まさにそのとおりやね。  じゃ、もう一ついくわな。そのカのところの後半にいきます。「わが国周辺海域の監視哨戒及び護衛等の任務に当たり得る」というところがありますね。ここをちょっと一遍、あなたなりに解釈してくれませんか。
  165. 川村恒明

    説明員(川村恒明君) ただいま御指摘の点につきましても、前後の文章の配列がいろいろあろうかと思います。私、今走りながら読んだばかりで理解が的確でないと思いますが、すべてこれ体言どめになっておりますので、前の方あるいは後半の方に関連する文章があって、こういう表現になっているのかと思います。でございますから、この部分だけという説明というのはちょっとにわかに御説明申し上げることは困難でございますので、何でしたら後ほどお時間をいただきまして、もう少し研究をさせていただきたいと思います。
  166. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 後からちゃんとしたやつを教えてもらうことにします。ただし、これは前後の文章も全部読んでいただいて結構です。  私が言うポイントは、こういうことです。「わが国周辺海域の監視哨戒及び護衛等の任務」というここのところは、「わが国周辺海域の監視哨戒及び護衛等」という「護衛等」のこれは同じく我が国周辺海域の護衛等の任務に当たる、こういうふうに読むべきではないか、これ、違うていますか。
  167. 川村恒明

    説明員(川村恒明君) 先生御指摘のポイントがそういうことであるとすれば、この文章を拝読する限り、ただいま先生御指摘になりましたように、「わが国周辺海域の」というフレーズが「監視哨戒」と後半の「護衛等」に等しくかかるのかというお尋ねかと存じますけれども、この文章を拝読する限りはそういうふうにも言えますし、あるいは「わが国周辺海域の監視哨戒」というのが一つのフレーズで、「及び護衛等」がまた独立のフレーズというふうにも、いずれにも読めます。
  168. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうすると、この「護衛等の任務」というのは、これは要するに海における地理的範囲が全く明確になっていないから世界じゅうの海のどこでも護衛できる、こういうふうに読むんですか。私は、「周辺海域の監視哨戒及び護衛等の任務」ですから、我が国周辺海域の監視哨戒と我が国周辺海域の護衛等の任務と読むのが普通であって、要するに、これをあなたが言うように、もう一つの読み方というと、「わが国周辺海域の監視哨戒」は我が国周辺海域であって、「護衛等」というのは世界じゅうの海の護衛に当たる、こういうふうに読むんですか。国語というのはそういうふうに非常に難しいんですな。どっちなんですか。そんなに難しく読むんですか。
  169. 川村恒明

    説明員(川村恒明君) 御指摘の点でございますけれども、御案内のとおり、日本語は大変にそういう意味では含みの多い多義的な言語でございますから、日本語の純粋の読み方としては私はいずれにも読めるかと存じます。  こういう場合に、それではどういうふうに我々普通の日本人が理解をするかといえば、それはここに表現されております「周辺海域」でございますとか「護衛」とかいうものは、やっぱり特定一つの概念がそこに入っているのだろうと思います。それはやはり結局この防衛白書全体の中で護衛なり周辺海域というものの理解がおのずから全体の文筆の中にあらわされて、それがここに出ているというふうに理解いたしますので、この文章だけで日本語としていずれが正しいかと言われましても、にわかにはお答えすることは困難かと存じます。
  170. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 あなたも大分お役人としてへそ曲がりだな。前もってちゃんと言うと、やっぱりいかぬですな。結構です。  さて法制局長官、これはどう読むんですか。
  171. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) お答え申し上げます。  これは防衛白書でございまして法令ではございませんから、どういうふうに読むかということになりますと、本来はこの白書をおつくりになりました防衛庁が一番その真意を知っておるのではないかと思います。ただ、御質問がございましたので、私、いわば一般論と申しますか、これを仮に法文として解釈したらどうなるかというような御質問かとも思いますので、その意味でひとつ御答弁を申し上げたいと思います。  これも委員に対して釈迦に説法でございますけれども、法令の解釈には、いわゆる文理解釈と、それから論理解釈というか趣旨解釈というか、いろいろ解釈の手法がございます。それで、法文を読む場合におきましても、まず文字をなぞってその通りに何を意味するかということを探究するということが第一にあろうかと思います。ただ、その場合に、法文の規定の趣旨というものは必ず文字をなぞってそのとおりに解釈すればいいかといえば必ずしもそうではないのであって、いろいろのニュアンスがございます。それからまた、その規定の果たすべき目的、趣旨、あるいはまた全体の法令の中でその規定がどういう地位を占め、また機能を果たしているかという点を総合的に勘案する必要があるのではないかと思うのでございます。  そこで、ただいまの御指摘の防衛計画の大綱の説明に当たります海上自衛隊のところの説明のくだりでございますけれども、これはあくまでも防衛計画の大綱でまず大筋を示しまして、それを裏づけるべき防衛力整備の具体的な目標と申しますか、そういうものを掲げているのではないかと思うのでございます。そういう意味で、この言葉を解釈する場合には、あくまでも防衛計画の大綱にのっとって解釈をすべきではないかと思います。  そこで、防衛計画の大綱を見てみますと、ちょうどここにある、このカに当たるようなことに類似することが定められておりまして、すなわち固定翼対潜機部隊の関係の記述がございます。そこでは「周辺海域の監視哨戒及び海上護衛等の任務に当たり得る固定翼対潜機部隊」を意味しているというような表現がございます。そこで、その防衛計画の大綱をいわばブレークダウンした、これが基軸だといたしますれば、やはり総合的に、それと矛盾しないようにそういった大綱の趣旨を考えてこの点は解釈をすべきであると思います。そうしますと、先ほど文部省の方が言われましたように、非常に文脈的にあるいは国語的に読みますれば両方の読み方があるというふうな御答弁がありましたが、今私が申しましたような趣旨を体して考えますれば、やはりこれは防衛計画の大綱にありますような「わが国周辺海域の監視哨戒」と、それから「海上護衛等」、この二つの任務をここに掲げているのではないか、かように考える次第でございます。
  172. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 さすがにやっぱりあれだな。  要するに、「周辺海域の監視哨戒」というのは、周辺海域ということですからよろしいわな。また、別々に読むとすれば海上護衛の任務と、こうなっておるわけですな。防衛大綱というのは、それじゃ海上護衛等の任務に当たるというんですから、これは海上護衛というのは、場所を決めていないわけですから世界じゅうの海、ホルムズ海峡までいいわけだな。そうですな、これ。これは法制局長官に聞いているんです。よその人の顔を見なくていい。
  173. 茂串俊

    政府委員(茂串俊君) その点はまさに防衛計画の大綱の基礎をなします考え方が那辺にあるかということでございまして、そこはまさに防衛庁の方の御判断によって御答弁をいただきませんと、私はただ文字面だけで御答弁をするわけにはまいりませんので御了承いただきたいと思います。
  174. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 防衛庁長官、今議論したように防衛白書自体がわかりにくいわけだ。文部省の課長でもこれは二通りあると言うんです。こんなややこしいのを何で出すの。もうちょっとわかりやすく。総務課長でもこれは両方あるなんて。そうしたら、結局こんなもの何のためにやっているのかわからないじゃないですか、こんな誤解を生みやすいような。これはもともと防衛庁はごまかしているわけですよ。防衛大綱の中にいわゆる千海里とかそういうことがきちっと埋まっていないのを、後で埋めようと思って一生懸命やっているからこういうふうになるんです。  僕は、実はきょうのお昼休みに法制局長さんのもとの課長さんとか下の方の人たちに全部聞いてきた。全部聞いてきましたよ、どういうことやといろんな人に。全部私の言うたとおりや、大体これ。みんな大体これは、「わが国周辺海域の監視哨戒及び護衛」といった場合は我が国周辺海域の監視哨戒と護衛を指すのであって、我が国周辺海域の監視哨戒と、護衛というのはどこにもひっかからないで世界じゅうの護衛と、そんなとり方をする解釈というのはない。  それはもちろん文脈とかいろんなものを考えて、あれこれ考えて、勘ぐって、防衛庁立場もあるからということになれば、それは今おっしゃるようになるのかもしれませんが、これはやっぱりそういうところはもう少し、我々でもわかりにくいわけですから。これは現実にそういう二通りの解釈があるわけや。そんなわかりにくい防衛大綱とか防衛白書なんというのは何のために結局出しているのかわからないじゃないですか。いや、これはこっちですよ、こっちですよと何ぼ言っても、少なくとも私ども読んで、これはそういうふうに素直にやっぱり文脈というか、文字面を読みますがな。これはまことに法制局長官には申しわけないけども、我々は一たんこの文字面を読みますよ、何やかんや言っても。そういうことをはっきりしないで、要するにわかりにくくわかりにくくやるなんというのは非常によくない。私はそういうことはやっぱりきちっとすべきだと思うし、そういうことをきちっとしておかないといつまでもこういう問題がひっかかってくる、いつまでもこういう問題は解決しないと私は思うんです、実際問題として。  ですから、そういうふうな意味で、きょうはそのほかのことをいろいろやろうと思っていましたけれども、もう時間なくなりましたからやめますけれども、いずれにしても、きょう防衛局長と議論をいたしました問題を多少整理いたしますと私の主張だけ言っておきたいと思いますが、防衛大綱の中にはこれは少なくとも千海里の防衛あるいは航路帯を設けてのいわゆるこの千海里先までの防衛なんということはもともと考えていなかったのじゃないか、そういうふうに私は感じられます。仮に今航路帯を設ければ千海里云々なんというのは、これは後からひっつけた理屈であって、だから防衛大綱の中には――この大綱なんというものも、これは大臣、もう少しわかりやすいものにしておかぬと、いろんな解釈ができるなんという大綱はよくない。我々が内閣委員会で議論するにしたって、根本がおかしいわけだからこれから先全然進まないわけなんです。それでは困る。これが一つです。  それから、防衛局長が先ほどからさんざん言いましたいわゆる艦船の能力の問題です。防衛力装備の問題です。防衛力の装備、いわゆる艦船の能力、その範囲が即自衛権の範囲というふうな考え方、頭ひねってますけれども、我々に対する説明は全くそのとおりです。こういう考え方は発想が逆転しておる。そういうことを言うのなら、我々は艦船や航空機の能力というものについてもうちょっと一からチェックをやり直さないといけないと思うんです。  それから、シーレーン千海里については予算委員会で明らかにしてくれるでしょうけれども、これも私は、仮に航路帯を設ける場合は千海里という、その千海里の説明を国会で説明したことがいわゆる了解しているということであるならばそのこと自体がまた問題になる。また、文字面に出さないで国防会議で理解をしてもらっている、そのことがこう問題になっているわけですから、そういうふうに説明するのなら、今度は国防会議で了解してもらっていることを全部出していただきたい。そうでないと議論ができない。問題に詰まってくると、ああ、そのことは内々であのときに国防会議説明さしていただきましたと言って逃げるのでは困るわけです。今まで国防会議でどういうことを了解していただいて、どういうことを我々国会で説明して、どれだけどういう内々の了解事項というのがどのくらいあるのか、それも全部出していただかないと困るということになります。したがって、そういうふうな意味で非常に問題点をこれははらんでおります。したがって、そういう点を私はきちっと指摘をいたしておきますから、そういう点についてきちっとこの次のときにお答えできるようにお考えいただきたいと思います。  それから、長官には、今のいろんな議論を聞いて、長官のお考えを最後に聞かしていただきたいと思います。
  175. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 今いろいろと御意見を承りました。率直に申し上げまして、例えばシーレーンという問題、このシーレーンの概念、これが議論をする両者でしっかりどういうものがシーレーンだと、そういうことをお互いに同一の土俵で確認をし合う、確認した上で論議をしなければ論議はなかなかかみ合わない、そういうような感じを受けます。  それからもう一つのあれは、それとの延長線上でございますが、御指摘のありましたとおり、防衛白書の記述その他が、ある場合には右の方にとれる、ある場合には左の方にとれる、そういうことでは論議のしようがないじゃないか、その御指摘に対しましては、今後防衛白書等の記述について無用の誤解を招かないようにこれは配慮をしていかなければならぬ、こう考えております。  その他いろいろの問題につきましては、よく承って対処してまいりたいと思います。
  176. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 もう一言。  確かに大臣おっしゃるように、ぜひ白書の問題も直していただきたいと思いますが、白書だけじゃないんですよね。白書を直したって、大綱が直らぬと直しようがないわけやね、大綱がおかしいわけですから。大綱がそういうあいまいな表現になっているわけですからね、言うたら。ですから、そういうことも含めまして、やっぱりこういう問題はもう少しわかりやすく。余りわかりやす過ぎてもいかぬのかもしれませんが、それならそう言ってもらえばいいんですよ、それなりに我々は理解しますから。だから、そこら辺のところも含めてぜひ御検討いただきたいと思っております。答弁は結構です。
  177. 内藤功

    ○内藤功君 日米共同演習及び日米共同訓練の問題につきましてお伺いをしたいと思います。  我々がこの問題を重視するのは、今、日米安保条約下における自衛隊の機能、あり方と、日本の平和と安全のためにこれをどう認識をするかという上で、我々国民が表から見るには共同演習の問題を見ていくのが一番現実的であると考えるからであります。  そこで、まず防衛庁に伺いたいのは、日米安保条約締結以来、海軍、空軍の面での共同演習は頻繁に行われておりましたけれども、我が陸上自衛隊と米陸軍、これは海兵隊をあわせてもいいと思いますが、こういう地上部隊の共同訓練が私の見るところ、実動部隊は昨年、通信訓練やCPX訓練は一昨年まで行われなかった。これはなぜでございますか。
  178. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 陸上自衛隊と米陸軍との訓練が余り行われなかったという理由のお尋ねでございますが、御案内のように、自衛隊が発足いたしましてから米陸軍が日本駐留しているものが少なかったということが一番大きな理由であろうかと思います。さらに、つけ加えますれば、かつても陸上自衛隊と米陸軍の個々の機能別訓練といいますか、あるいは自衛隊発足当時の、米側でどちらかといえば指導したという立場訓練等はございましたけれども、その後、駐留すべき実動部隊がいなかったということもありまして、長い間中断しておったわけであります。その後、最近の国際情勢の厳しさ、その他を加えまして、さらには陸上自衛隊が逐次整備されてきたということもあわせまして、最近において日米間の共同訓練が行われるようになったということでございます。
  179. 内藤功

    ○内藤功君 私は、少しく異なる所見を持っております。それは米陸軍の性格は二点特徴があって、一つは、健国以来、建軍以来と言っていいでしょうか、外征部隊であります。米合衆国の本土内で防御に当たったことは独立戦争のとき以後はないはずであります。もう一つは、この陸軍の部隊戦術核を中心とする核兵器を保有してこれを行使する部隊である。この二つの性格から、私は日本の自衛隊は少なくとも今防衛庁が言われておる専守防衛その他のこういう制約のもとで共同訓練は決して安易に行うべからず、これがやはり基底にあったと見なけりゃならぬと思うんです。  長官に伺いたいと思うんです、これは政治判断ですから。かような米陸軍の部隊との共同訓練の場合に、あなたが自衛隊の責任者の一人として、何でもやっていい、どんな訓練でもやっていい、どんな規模、あるいはどんな想定、どんな内容の訓練でもやってよろしい、こういう御見解に立っておるのか、それともやはり米陸軍の性格にかんがみてこういう点を国の政治の上で考えなきゃいかぬというお心構えがあるのか、その点を伺っておきたい。
  180. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 我が国の自衛力を整備増強する、そういう意味合いで必要な共同訓練はやるべきだと、こう考えております。
  181. 内藤功

    ○内藤功君 非常に言葉少なですが、私の今言ったことについて、ぜひひとつ今からでも遅くないですから深く考えていただきたいと思うわけです。そういう単純なものではないと私は思います、米軍の性格から見て。  さて、この問題に深入りすることは避けまして、防衛庁に伺いたいんですが、昨年の十月に北海道で行われた日米陸上合同演習、いわゆるヤマト演習と称せられておりますが、この合同演習の内容、参加兵力、それから想定、両軍の部隊の指揮調整関係などにつきましてお話しいただきたい。
  182. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 昨年十月に北海道で行われました日米の共同訓練でございますが、陸上自衛隊からは、北部方面隊の十一師団、これの中の一個連隊戦闘団が基幹になりました約千五百名が参加をいたしております。一方、米側は、第九軍団の中の第九師団、この中のさらに一個大隊基幹の者が参加をして、約九百五十名でございますが、その両者が訓練をしたわけであります。  訓練内容は大きく分けて二つに分かれておりまして、一つは、機能別訓練と申しますか、例えば戦場における移動訓練であるとか、あるいは射撃の訓練であるとか、そういったものをやっている。さらに、ある演習場内の地域について日米が共同をしてそれを攻撃する訓練、そういったものを行ったわけであります。  なお、これらの指揮関係は、日米それぞれの指揮系統に従ってやったということで、日米間の関係は調整関係にあったものであります。
  183. 内藤功

    ○内藤功君 私どもは、こういう演習につきまして、当委員会で御質問申し上げる以外には市販の出版物で理解するほか由はないのでありますが、これは昨年の十月二十八日付の「アサヒグラフ」、当時の時節を反映しましてこういう表紙になっている。これには河川、これは漁川、茂漁川という川だと思うのですが、これを挟んで南の恵庭、千歳演習場から北の島松演習場の方向に向かって米、日両部隊がそれぞれ攻撃する、こういう「本訓練実施要領」という文書の写真が載っております。  図面によりますと、右側つまり東側は米軍の部隊、西側は、地図で言うと左側は自衛隊の部隊がそれぞれ攻撃目標を持って両軍の部隊が並行して北の方を攻める、こういう想定になっています。  今言われたそれぞれの演習場内の区域に目標を定めて攻撃するというのは、今私の言ったようなことで理解してよろしゅうございますか。
  184. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 大体、先生のおっしゃるようなことでよろしいと思います。
  185. 内藤功

    ○内藤功君 ところで、この日米の合同演習におきまして、コンタミネーテッドエリアという区域がこの演習場内に指定されたのであります。今御答弁になっております西廣参事官も、昨年十一月二十六日の当委員会の私の質問に対してこの指定が行われたこと自体は認めておられます。私のごく一般的な英語の理解力で見るところ、コンタミネーテッドエリアというのは、核、生物兵器、化学兵器、これらによって汚染された区域と、これは私の常識的な理解ですが、こういうふうに見ざるを得ないわけであります。そうすると、この日米の合同演習の中で、演習場内において核を含む汚染区域がつくられた。私は、非核三原則を持っている日本国民としてこれはやはり軽視すべからざる問題だと思います。  まず、この点について、どういう訓練がここで行われたか。演習の中におけるコンタミネーテッドエリアの設定ということ自体がどういう意味を持つのか。私は、これは核戦争あるいは核戦闘あるいは核兵器の行使ということが一つの想定をされた演習だとこれはごく常識的に見ざるを得ないわけであります。国民はこういう雑誌を通してしか知りませんが、こういう事実は広く国会を通して国民に明らかにしてあげなくちゃならぬ問題だと思いますから、防衛庁の御見解を詳しくお聞きしたいと思います。
  186. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 最初にお断り申しておきますが、私はそのコンタミネーテッドエリアというものを設定したというふうに申し上げたことは一度もございません。先般、先生の御質問だったと思いますが、その種の雑誌が出ておるということは私も認めた次第でありますが、その図を拝見いたしまして、その地域はどうも私どもの方の理解からすると当該演習場の弾着地域と非常に全く重なっておると、この弾着地域についてはこの共同訓練を始める前に米側に対してここは弾着地域であるから不発弾等が残存をしておるのでここには入らないようにということで指定をした地域であります。その地域について、あるいは米側がコンタミネーテッドエリアということで立入禁止区域を指定したかどうか知りませんが、私どもはそういう図をつくったこともございませんし、この訓練において核とか化学兵器を使った訓練は全くいたしておりません。
  187. 内藤功

    ○内藤功君 あなたはしかし、ここに議事録を用意してきましたが、西廣政府委員の御答弁は、最初の方では「米側としてはコンタミネーテッドエリアということで指定をしたのだろうと思います。」と、こういうふうに言っておられて、再度の私の質疑に対して西廣さんは、「不発弾等がありますから、今回の実動訓練に際してはここは立ち入ると危ないからということで米側と設定をした行動不能地域であります。」と、こう答弁しておられますね。したがって、コンタミネーテッドエリアというものが客観的にこれが設定されたということはお認めになっているんです。私の言うのはそういう意味であります。  それから、今あなたの言われた雑誌に出た図面というのは、これは当時の「週刊宝石」という去年の十一月四日付の雑誌でございます。私どもはこういうもので判断するしかないんですよ、資料が。防衛庁はなかなかこういうのは出してくれない。我々はこういうものから勉強せざるを得ないんです。これですね、あなたの言われたコンタミネーテッドエリアは。確認してください。(資料を示す)  そこで、私は今度は言葉の面からお伺いしたいんですが、コンタミネーテッドエリアというのは私のさっき言った核兵器等によって汚染された区域だと、このことはお認めになりますか。
  188. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほどのお答えの補足を少し先にさせていただきたいと思いますが、私は今回も全く同じ答え方をいたしておりまして、このコンタミネーテッドエリアと書いてある図が米軍がつくったものか我が方がつくったものかということで、我が方が少なくともつくったものではない、しかしながら、この図を見ると、先ほど申したように弾着地域、いわゆる不発弾等がある危険な地域がコンタミネーテッドエリアと記されておるので、したがいまして米側が我が方から注意して立入禁止区域にしたところをそのように名づけたものではなかろうかというお答えをしたので、それは前回と全く同じお答えをしているつもりであります。  なお、コンタミネーテッドエリア、私、英語に堪能でございませんけれども、汚染地域というふうに、例えば伝染病の汚染地域とか、そういう形で使われるのが通常であろうかと思っております。
  189. 内藤功

    ○内藤功君 軍隊において、もっと極言しますと米陸軍において伝染病による汚染地域というふうに使っておりますか。米軍においてはコンタミネーテッドエリアというのはやはり核兵器、生物兵器などによって汚染された区域と、これは間違いないですね。
  190. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私も米軍の言葉遣いはよくわかりませんが、そういう場合も使うでありましょうし、仮に今、先生のお示しの雑誌の図ですが、米軍がつくったものであればそのような不発弾等がある立入禁止区域もコンタミネーテッドエリアというのであろうと思っております。
  191. 内藤功

    ○内藤功君 あなたの言うような弾着地域であるならば、これはインパクトエリア、こういうふうに呼ぶものだと私は思います。  ここに私持ってきましたのは、そういうこともあろうかと思って、アメリカの統合参謀本部発行の国防用語辞典、それからそれを我が国で邦訳をしたのが最新軍事用語辞典、これで私調べました。これによりますと、単なる弾着地域はインパクトエリアと、こういうふうに表現している。コンタミネーテッドエリアというものには単なる弾着という意味はない、汚染であります。あくまで汚染地域です。私は、普通の英和辞典だけじゃなくて、こういうものを見るしかないと思ってこれを調べた。いかがでございますか。重ねて伺います。
  192. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私が先ほどから御説明申し上げているように、そこが通常自衛隊が訓練、演習をする際の弾着地域であって不発弾等で立ち入りが危ないからということで、その意味で弾着地域そのものというよりも、当該訓練中ではそこは不発弾等があって危ない地域であるという意味であると私は考えております。
  193. 内藤功

    ○内藤功君 米軍がつくった地図であろう、そして米軍はコンタミネーテッドエリアをこの演習において設定したであろうというところまではようやくお認めになったと思うんですが、私はさらにアメリカ陸軍の教範、これに当たってみたんです。これはNBCディフェンス、アメリカの陸軍省によってつくられた教範であります。NBC、つまり核、生物、化学防御教範、この中にさらに明確にこのコンタミネーテッドエリアというそのもの自体を書いております。コンタミネーテッドエリアというものを設定するということが明確に書いてあるわけであります。私は、アメリカ軍が地図によって地域を設定して、そしてその前提のもとにこの演習に参加をした場合に、日本側に対してこういう想定を全然知らせないというふうには思えないんです。いかがでございますか。
  194. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 訓練計画につきましては、細部につきましてまで私ども米側と十分調整をいたしておりますので、そのような例えば核を使用するとか化学兵器を使用するというようなことがあれば当然わかるわけでございまして、私どもは共同訓練を実施した者として、また実施についてかかわりある私としましてそういうことは全く存じておりませんから、そのふうな実態はないということを申し上げておるわけであります。
  195. 内藤功

    ○内藤功君 先走った御答弁ですが、何も私は我が島松演習場で米軍が現実に核兵器を使う演習をしようとしたとか、したなどと、そこまで私は言っておりません。そんなことは絶対にできないわけです。  問題は、島松演習場の中においてコンタミネーテッドエリアというものをいやしくも米軍が設定をしてそして演習をするということについては、演習のパートナーである我が国の自衛隊の部隊、これに当然これは通報あってしかるべきものじゃないかと思いますね。そういうこともあり、逆に今度はそういうことは全然しないで米軍は勝手にコンタミネーテッドエリアをつくって彼らは核戦争を前提とした戦争をやっている、何も知らない自衛隊はその近くでやっておるということなんです。それはそれでまた問題になると思うんですが、この点はどういうふうに、こういう想定は我が日本の自衛隊側にはどう知らされるのかという問題を重ねて伺いたいんです。
  196. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 先ほどからたびたび申し上げておりますように、その地域は立入禁止区域ということで私どもの方から米側に通報した地域とぴったり重なっておりますので、そういう意味で表示をしたものだということで、私どもはそういう理解をいたしております。  また、先ほど先生が弾着地域というのは別の英語を使うとおっしゃいましたが、仮にその地域を、そのようなインパクトエリアでございますか、そういう言葉で表示しますとすると、その訓練中に訓練射撃でそこに向かって撃ち込むということになりますから、また違った使い方になろうかというふうに私は考えております。
  197. 内藤功

    ○内藤功君 押し問答になりますから、こう聞いてみましょうか。このようなことが少なくとも私ども国民にはこういう演習の後に発行された週刊誌によってはっきりした。米軍が少なくとも地図上においてコンタミネーテッドエリアを設定して演習をやっていた。それと並行して自衛隊の部隊が同じ方角での攻撃訓練をやっていたことも明らかになった。北海道では、特に地元で強力な反対なり抗議なりあるいは非常な不安も広がったというふうに私は漏れ承っております。  そこで、これを見た後、防衛庁としてこの点について米側に対してどういう態度をおとりになったんでしょうか。
  198. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 今までのところ特段の申し入れしておりません。公式な申し入れしておりませんが、そういった形で誤解を与えるようなことになっては困りますので、次回から表示の仕方をどういう形にするかというようなことは当然ながら考えて変更されるものと思います。
  199. 内藤功

    ○内藤功君 これは米側ではそういうような表示をしたということは間違いないですね。  そうなりますと、長官いかがでございましょうか。初めてお聞きになったかもしれませんけれども、これは初めてお聞きになりましたか、この話は。
  200. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 初めてです。
  201. 内藤功

    ○内藤功君 防衛庁長官としてはこれは今初めて聞いたんでしょうが、このやりとりを聞いて、北海道で行われた日米両軍の陸上の演習で、少なくとも米側、私は日本側も知っていたと思いますが、今の西廣さんの話では。少なくとも米側は地図上においてコンタミネーテッドエリア、核汚染区域と判断されるような区域を持っていた、こういう問題です。西廣参事官は誤解を与えるようなことについてはやってもらっちゃ困ると思っておると言う。思っているだけじゃだめなんです。これについてどういうふうに長官としてお考えになり、今後米側に対してどう対応されるおつもりか。大きなところを伺いたいです、基本姿勢を。長官いかがです。無理ですか。
  202. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) コンタミネーテッドエリアということで先生はこれを核染汚区域というようにおっしゃいましたけれども、それを正確に出すために、例えば核染汚区域、核というもの、ニュークリア染汚区域、あるいは実弾のそういう不発弾染汚区域という考え方もあると思いますので、明確にわかるように表示するよう今後米側とも協議をしてまいりたいと思っております。
  203. 内藤功

    ○内藤功君 米側に対してはこれだけはできるでしょう。米側に対して、いやしくも地図上であれ、米側の設定であれ日本の演習場では核染汚地域というようなものをつくってもらっては困る、そういうような演習をしてもらっては困るのだということは言えないですか。
  204. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) それはそういう表示をするしないという以前に、訓練内容そのものでそういうことは行われることがないので、そういう御心配は要らないと考えております。
  205. 内藤功

    ○内藤功君 しかし、現実の核兵器がそこで爆発、炸裂をしないだけであって、例えば防毒面をつけたり、それから防護服をつけたり、それから洗浄、洗うことをやったり、いっぱいありますよ。これも私、教範を見てみますと、大変なことですね。  これはNBC防御の教範の部隊の基本作戦基準というところにこう書いてあるんですよ。部隊の第一義的任務を実行するための高度の防護の訓練、補給品装備の洗浄の実施等々極めて具体的に書いてある。そうして、核、化学、生物兵器攻撃下においての作戦を完遂するために要求される任務を遂行する能力を開発し、維持する。それから友軍ですね、自分部隊の友軍による核攻撃の支援の場合、あるいは染汚環境下での作戦の場合も同様だ。つまり、相手が撃ってきた場合だけじゃないんです。相手が撃ってきた場合でなくて、友軍が撃った場合の核汚染に対する対処。だから、コンタミネーテッドエリアを設けるということの意味は重大であって、この近くで相手が撃ってくるだけではなくて友軍も撃つという、核の戦場、核の飛び交う戦場を前提としたこれは区域であり、そういう演習なんだということが私がさらに重視したい問題なんですよ。それで、私はこれだけ時間を使って今伺ったわけなんです。いかがですか、さらにこれについてお答えになる点は。特に、私は長官に聞きたいんですが。
  206. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 前々から核防護につきましては、非常に基本的なこと、基礎的なことについては教育訓練をしているということはお答え申し上げておると思いますが、これはあくまでも非常に基本的な基礎的なことでございまして、このために米軍と特別の共同訓練をするというような必要性を私どもは感じておりません。年に一回か二回しかできない日米の共同訓練に際しましては、より我々として重要視している訓練というものをやるということでございまして、防護訓練をわざわざ共同訓練の中でやるというようなことは今のところ全く考えておりません。
  207. 内藤功

    ○内藤功君 幾ら言ってもすれ違いなんですけれども、私はなおこのコンタミネーテッドエリアというのは、いわゆる表示のマークの色が決まっているんですね。例えば核兵器の場合は白、それから生物兵器の場合はブルー、化学兵器の場合には黄色と、そういうふうにして設定自体が非常に厳格に決められているんです。日本側は弾の落っこってくる地域だと言ったのだけれどもアメリカが勝手に決めたというようなものでは私は性格上なかろうと思うんですね。  私は、西廣参事官は制服組の部隊の隅々まで気を配っていると思うけれども、なおこういうような問題というものが絶対に起きてはならぬ。核兵器を使うなんという問題、核兵器を使うことを前提にした演習も自衛隊が一緒にやるということは絶対に私は好ましくない、許せないと思うんですよね。こういうことを、私は特にこの問題を強調しておきたいと思うのであります。特に、私は諸般の状況から見て、米ソ両軍、あえて名前を言いますが、アメリカの最大の仮想敵国軍隊であるソ連軍との核兵粋の応酬のその近くに自衛隊の部隊が行動している、こういう演習に踏み込むことは従来の政府見解からも大きく私は逸脱するものだと思うんです。  防衛庁に伺いますが、従来このように米ソといいますか、外国軍隊が核を持って交戦している、攻撃防御している、その付近でもって一方の軍隊に協力をして自衛隊の部隊が演習する、訓練をする、こういうことが許されるという見解を今までとっておられたんですか。今までの政府見解から見ると、私はそれはうかがえないんですが、いかがなんですか。
  208. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 余り許す許されぬというようなことを私ども現実に考えたことはなかったんです。と申しますのは、私どもは、先生御案内のように、核につきましてはアメリカの核の抑止力、そういったもので十分抑止をされるという前提でコンベンショナルな形の侵攻に対してどうするかということを中心に考えておりましたので、そういうことはいたしてもおりませんし、する考えもなかったわけであります。
  209. 内藤功

    ○内藤功君 こういうようなアメリカ側がコンタミネーテッドエリア、核汚染地域と解釈されるような区域をつくっておった。それについては自衛隊側は何にも知らない。防衛庁長官も知らない。何にも知らない間に日本の自衛隊のパートナーである米軍はそこまでの演習をやっている。私は、知らない間に我が自衛隊あるいは日本国民がこういうアメリカの核戦争に引きずり込まれていくということは非常に危険だと思います。これは今このぐらいだからいいんです、まだ雑誌の話なら。これがだんだんエスカレートしていった場合、非情に危険だと思う。私は、こういう考えを持ちまして今の質問をしたわけであります。これは押し問答になりますから、私は次の質問に移りたいと思いますが、何かございますか。
  210. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 今、断定的な所論をお述べになりましたけれども、そういうのはいささかいかがなものか思います。ただ、先ほど西廣政府委員から申し上げたとおり、コンタミネーテッドエリア、これについては米側に話をするということでございますので、それはそのとおりしたらよかろう、こう思っております。
  211. 内藤功

    ○内藤功君 これは佐々官房長、有事法制の問題を伺いたいんです。  先般来、予算委員会その他におきまして有事法制の作業の現況についてのお話がございました。いわゆる三つの分類のうちの第二分類について七〇%ぐらいの回答があった、こう言われておりますが、少しく具体的にお聞きしたいんですが、防衛庁のこういう照会を出した省庁はどういう省庁であるかということ、それから項目がどういう項目であるかということ、回答のない項目はどういう項目があるか、こういう点を伺いたい。
  212. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) ただいまのお尋ねは、いわゆる第二分類についての各省庁との交渉の状況はどうなっておるか、こういう御趣旨であろうかと存じますが、この第二分類、すなわち他省庁の所管にかかわる法令につきましては、五十七年の七月ごろ約十の省庁に対しまして八つの項目について整理をいたしました問題点約七十項目を照会いたしました。八つの項目と申します区分は、部隊の移動、輸送に関連する法令、二番目が土地の使用に関連する法令、三番目が構築物建造に関する法令、四番目が電波、通信に関する法令、五番目が火薬類の輸送、貯蔵に関連する法 令、六番目が衛生、医療に関連する法令、七番目が戦死者の取り扱いに関連する法令、八番目が経理、会計に関連する法令の八つでございます。  自来、これらの諸問題についてそれぞれ所管の省庁の有権解釈を求める、あるいは除外例、例外規定等の有無等を照会いたしまして、先般御報告をいたしましたように、おおむね七〇%程度の回答を得るに至りました。この関係省庁の名前とその回答状況につきましては、現時点におきましてまだ最終的な回答に接しておらないという段階でございますので、省庁間でこの種の問題を協議いたします場合のいわば不文律と申しましょうか、まだ交渉中のこと、未調整の問題、これについては公表を差し控える、結論が出た段階において両省庁、関係省庁合意の上で公表をする、これが基本的なこの種調整作業の原則でございますので、どの省庁がどういう返事をしてきたかということにつきましては、それが明らかになりました時点におきまして、従来から国会に対して申し上げておりますとおり、有事法制の研究につきましてはある程度まとまり次第まとめて御報告を申し上げたいと考えておりますが、現時点まだちょっと未調整の問題が残っておりますので、具体的な省名あるいは具体的な進捗状況についての御答弁は差し控えさせていただきます。
  213. 内藤功

    ○内藤功君 これは国民の自由、権利にも関する部分が非常に多うございますから、我々としては常に中間報告を当委員会等で求めたい、求める我々は資格があり、責任があると思っておるわけです。  省庁はどうですか、こういうふうに聞いたら答えられませんか。私は、まず厚生省、入っていると思うんです。運輸省、建設省、郵政省、通産省、法務省、自治省、労働省、科技庁、環境庁、これで十省庁ですが、どうですか。当たりでしょう。
  214. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 当たっているのもございますし、ちょっと違っておるのもございます。
  215. 内藤功

    ○内藤功君 外れているのはどれですか。当たる率はいいでしょう。
  216. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 当たっている率はかなり高うございますが、具体的な省名はしばらく差し控えさせていただきます。先生おっしゃるとおり、ある程度まとまった段階でもちろん当委員会にも御報告を申し上げたい。防衛庁といたしましては、現在鋭意作業中でございます。
  217. 内藤功

    ○内藤功君 有事の名のもとに何でも許されるという風潮は、私は許せないと思うんですね。そう言うと、防衛庁長官はまた断定的にと言いますが、我々はやっぱり断定的に言わなきゃならぬと思うんです。昭和二十年の帝国議会で、東京が空襲になっているときにも帝国議会の中であの国防関係法規についての審議が行われて、多くの我々の先輩は帝国憲法の条章に照らした論議をやっているんですから、我々はそういうところに自由と権利というのはとうといものだとつくづく思います。私は、そういう意味でこれは今後も、この回答は非常に不満ですので、なおいろんな機会を通してあなたにお聞きしたいと思うんです。そういう何割当たったかなんという、そういう細かい議論にならないことを望みますね。  次に、私は最後に中央指揮所の問題、ほかにもいっぱいあるんですが、この問題について伺いたい。  この中央指揮所というものが三月三十一日から限定運用開始したと報道されております。我々もこれを拝見したいと思っているんですが、なかなか機会をいただけませんので、この場でお伺いをしたい。中央指揮所の規模、それから機能、建設に要した価額、米軍各司令部との通信連絡関係、それから抗堪性、これだけについてお伺いしたい。
  218. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) まず、中央指揮所の機能についてでございますが、これは防衛出動等の自衛隊の行動に関しまして、防衛庁長官が情勢を把握いたしまして適宜に所要の決定を行って部隊等に対して命令を下達する、そういう一連の活動があるわけでございますが、そういった一連の活動を迅速かつ的確に実施し得るようにしたいということを目的として整備をしたわけでございます。  したがいまして、こういった事態が発生いたしますと、直ちに内局とか統幕あるいは各幕等の関係者が中央指揮所に集まるわけでございます。そして、情勢の把握とか長官への報告を迅速に行いまして、さらに部隊との連絡、関係部局間の調整といったようなことを緊密に行っていくというような活動を集中的にそこでやるわけでございます。これによりまして、迅速かつ的確な初動対処を組織的に実施したいということでございます。  そういうことを目的といたしましてこの中央指揮所の建設を進めてきたわけでございますが、この整備に要しました経費は約八十六億円でございます。  それで、米軍との関係につきましては、これは横田に在日米軍司令部がございまして、そこと電話回線は設けたいなというふうに思っておりますが、まだそれはついておりません。  それから抗堪性の問題についての御質問でございますが、これは地下主体の構造といたしておりまして、それから地上部分もなるべく窓は少なくするといったようなことを考えまして、普通の建物に比べますと抗堪性については特に配慮をしているということでございます。
  219. 内藤功

    ○内藤功君 これは米軍との作戦調整機関というものの一つの本拠地、つまりこの中央指揮所の建物自体が、施設自体が米軍との将来作戦調整機関になり得るということを前提としておりますか、あるいはそれは考慮の外ですか。
  220. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 中央指揮所自体は、先ほど申し上げましたように、防衛庁長官の指揮命令活動を迅速、的確にやるということが目的でございますから、今御指摘のような、これを日米調整機関にしていくという考え方を持っているわけではございません。
  221. 内藤功

    ○内藤功君 最後に、三月三十一日から限定運用を開始したという報道が見られるんですが、本格運用というのはいつからなのか、本格運用というものはこの今の限定運用とどういう段階に変わるのか、この点だけ伺います。
  222. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) この中央指揮所の整備は逐次いろんな機材を入れてやってきたわけでございますが、一番大きな機能といたしましてSFシステムという自衛艦隊のシステムがございます。それから航空自衛隊のバッジシステムというのがございます。こういうものとの連接をすれば大体機能が完成していくということでございますが、まだそこが済んでおりませんで、したがって三月三十一日に限定運用と申しますのは、その建物自体としては一応できたものですから、そこでいろんなテストなり習熟なりということができるということでございます。今御質問の本格的な運用ということであれば、五十九年度の半ば以降ぐらいになりますとSFシステムとかバッジシステムとかとの連接ができ上がりますので、そういう段階に移行できるのではないか、こう考えております。
  223. 柄谷道一

    柄谷道一君 先ごろ、ソ連空母ノボロシスクが日本海を北上しつつあるということが報道されました際、衆議院予算委員会でこれに対する防衛庁の見解が問われておりますが、当時、防衛庁としては現配置ミンスクとの単なる交代であるのか、極東ソ連海軍の増強ということに結びつくのか、いまだ不明確であるのでということで回答を留保されております。その後、ミンスクは日本海を南下いたしました。今ミンスクはどこへ行ったんですか。
  224. 古川清

    政府委員(古川清君) お答え申し上げます。  ミンスクは、お供の船を従えまして三月二十八日に対馬海峡を通過いたしまして、南下をして南シナ海に向けて出ていったわけでございますけれども、現時点における所在の場所については私ども実は承知しておりません。
  225. 柄谷道一

    柄谷道一君 カムラン湾にいるかどうかの確認もできないわけですか。
  226. 古川清

    政府委員(古川清君) 残念ながら確認はいたしておりません。
  227. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、今回の意図は一体那辺にあったと防衛庁は分析をされておられますか。
  228. 古川清

    政府委員(古川清君) 先般御質問がございました際に、交代をするのか、あるいは追加の配置になるのか、まだ様子を見ないとわからないというふうなお答えをした記憶がございますけれども、お供の船とともに出ていったわけでございまして、交代の可能性が非常に強まっているということは言えるかもしれませんのですけれども、まだもう少しミンスク及びノボロシスクにつきましてはお互いの船の行動がどうなるかということを見きわめる必要が私どもはまだあると思っておりまして、今の時点において断定的なことはちょっと申し上げにくいという状況にございます。
  229. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、防衛庁長官にお伺いしますが、私は去る三月三十日の予算委員会で、国際的にも権威のあるジェーン海軍年鑑五十八年版及び新防衛論集一月号に掲載されましたリットン・ウェルズ・ジュニア米海軍中佐の論文等を引用いたしまして、現在我が国の国会では総理の訪米以来シーレーン防衛の問題が特に大きく取り上げられているが、シーレーン防衛が現実化する脅威の事態が発生するときは同時にまた北海道の脅威も発生するという指摘、いわゆる海上航路帯の防衛と北海道防衛は同一時点で考慮されねばならぬというこれらの指摘に対する総理の見解を伺いました。総理は、その際、我が国はいかなる国も仮想敵国とは位置づけていない、こう前提を置かれましたけれども、その可能性を肯定され、いかなる態様の侵略にも対応し得る防衛体制を整備する必要があるという旨の答弁をなされたわけでございます。これらの軍事専門家の分析、指摘に対する長官の御見解をお伺いいたします。
  230. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) アメリカの軍事専門家の御意見、それに対する総理のコメント、軍事専門家のコメントについて私がどういう認識をするかということでございますが、私は総理が言うようにいかなる場合にも対処できるようにしておく、これは当然だと思います。ただ問題は、我が国でシーレーンをやるという場合には、御案内のとおりシーレーンというものに対する政府といたしましての一貫したこれは考え方があるわけでございます。それはたびたび申し上げますとおり、我が国の生存を維持する、有事において継戦能力を確保していく、そして護衛をする、あるいは哨戒をする、あるいは港湾等の防備をする、そういう各種の戦力といいますか、戦術といいますか、そういうものを総合して海上交通の安全を確保する、そういうのが我々のシーレーンの基本的な考え方でございます。それに基づいて具体的にどう対処するかということを考えていかねばならぬと、こう考えております。
  231. 柄谷道一

    柄谷道一君 昭和五十一年十月二十九日の閣議決定による防衛大綱の中にも、「いかなる態様の侵略にも対応し得る防衛体制を構成し、」云々という字句が含まれております。いわばこうしたことが戦争、紛争を未然に防止する一つ抑止力になると私も思うものでございますが、ただいまの長官の御見解を聞きますと、間違っておるかもしれませんが、私は政府が日米会談以降シーレーン防衛を重視して、自衛隊の海、空両面の正面装備、またその後方支援体制の整備に力を入れておって、いわゆる陸の問題がやや軽視されているのではないか。特に、一部には防衛予算の多くが人件費で占められているということにかんがみまして、人件費軽減のために、GNP一%という枠がございますから、陸上自衛隊を縮小する、ないしは充足率を高く見ない、こういう傾向があるのではないかという指摘がされているのが現状でございます。  私は、自衛隊の防衛力というものは正面装備とこれを操作する優秀な人によって形成されるものでございます。したがって、防衛費の増大を抑制する手段、方法として人件費の削減を念頭に入れるということは誤りであり、どの程度かということは与野党いろいろな議論はございますけれども、少なくとも外国のこうした指摘ということはその可能性を含んでいるわけでございますから、陸、海、空二つの自衛隊のバランスのとれた防衛力整備ということに意を用いなければならない、こう思うわけでございます。長官の御所見をお伺いします。
  232. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 認識において同じでございます。私は、やはり防衛力整備というものは陸、海、空のバランスをとっていく、正面と後方とのバランスをとる、それが非常に重要だと思います。一時、海とか空の方を重視して陸の方は削ってもいいのじゃないかというような意味にとれる御議論もございましたけれども、私は我が国防衛は最終的には我が国国民が他国から侵略を受けたときに自分の国は自分で守るという、そういう精神的に立ち上がる気力、これが最後の一番大きな抑止力だと思います。その場合には、陸上自衛隊というものの意味が極めてまた重要になります。ですから、国民全体として戦うのだということになりますと、陸の重要性を少なくとも低く見る、そういう考え方には反対でございます。
  233. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、五十九年の防衛予算はバランスのとれた予算であると認識されておりますか。
  234. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) そういうように御質問を受けると大変心苦しいわけでございます、それは率値に申し上げまして。先ほども申し上げましたとおり、私ども我が国防衛力をとにかく憲法の枠の中で必要最小限の防衛力というのは持たなきゃならぬ、そういう観点からいろいろやっておりまするけれども、御案内のとおり財政、経済情勢等ございまして、なかなか私どもの考えているようには現実問題として予算の配分を受けるということは非常に難しい。しかし、少なくとも教育訓練、練度、そういうものを落としちゃならぬというような意味合いにおきまして、最後の段階になりまして、これは総理の裁断も仰ぎましてまあまあの後方の費用も獲得できたということでございまして、それは文字どおりまあまあでございまして、決して満足しているものではございません。
  235. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいままでの答弁を総合いたしますと、理念点には、陸、海、空バランスのとれた防衛力整備、これが基本である、しかし五十九年の予算に関する限り財政上の制約もこれあり、海、空ないしは正面装備が重視されて、陸及び抗堪性、継戦能力という点についてはそのために後ろに位置づけられた、こういう認識でいいんですか。
  236. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 必ずしも明確にそういうふうに意識しているわけじゃございません。全体の予算の中でやはり陸等の充足率ができなかったということは、大変遺憾だと考えております。
  237. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、もう一つ問題を進めましょう。  私は、同じくさきの質問で極東ソ連軍に戦術核の配備ありやと、こう問いましたところ、その詳細は把握し得ないが戦術核は配備されていると思われると、こう防衛庁は答えました。そこで、ただいまさきの委員の御質問もあったわけでございますけれども我が国の本土ないしは北海道において陸上戦闘が不幸にして行われるという脅威が発生しましたときに、ソ連軍の戦術核の使用は絶対ないという担保はないわけでございます。したがいまして、その場合はそれによる核汚染という問題が出てまいります。一般住民は避難するとしても、北海道に多数駐屯いたしております自衛隊はこの汚染地域での防衛活動もまた余儀なくされるということが予測されるわけでございます。米軍との共同訓練とかいうことは一応横へ外しまして、我が国の自衛隊独自としてこれらの汚染防衛対策というものについて防衛庁はどのように研究し、今装備その他で対処いたしておりますか。
  238. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいま戦術核の使用の問題を御指摘でございますが、これは仮定の問題でございますので、具体的に北海道にどうのということについて議論をすることは私どもとしては差し控えたいと思っております。  ただ、一般的に申し上げまして、我が国に対しますいかなる核攻撃も日米安保に基づく米国の核抑止力に強く抑制をしてもらっておるということでございます。したがって、我々としては我が国に対する武力攻撃をそもそも生ぜしめないということがまず基本だろうというふうに考えているわけでございます。ただ、自衛隊ではその問題について全く無関心であるかという点の御質問でございますれば、それは防衛庁といたしましても文献等による研究というようなことはやっておりますし、いわゆる汚染からの防護等のためのいろいろな線量率計とかいったような、そういう装備を保有はいたしておるわけでございます。
  239. 柄谷道一

    柄谷道一君 今抑止力ということが言われました。我々も、誤解のないために言っておきますが、核軍縮問題につきましては縮小均衡、すなわち相互的、段階的に核軍備を縮小いたしまして最終的には核兵器を廃絶せしめる、これが基本方針でございまして、さきの国連軍縮総会に対しましても、中道各党とともに膨大な署名簿を集めて国連当局にも提出したところでございます。しかし、現実に米ソ両大国が核武装しており、そしてその均衡というものが核戦争を抑止しているという現実もまた否定しがたいわけでございます。そこで、戦略核及び戦域核につきましては、確かに日米安保条約というものがこの使用を抑止する機能を果たしていると私は思います。しかし、戦術核については、これが我が国の国内で使用されるという場合、一体何が抑止力たり得るのかということでございます。この点に対して、長官はどうお考えでございますか。
  240. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 核抑止力の問題でございますが、いわゆる戦術兵器でございましても、一たび使用されますと大規模な核戦争にエスカレートしていく可能性というものは常に否定できないわけでございます。したがいまして、いずれの核保有国も核の使用は強く抑制されているというのが現在の国際関係ではないかということでございます。我が国の場合は、日米安保条約に基づきます米国の核抑止力によりまして、我が国へのいかなる核攻撃も抑止されているというふうに私どもは考えておるわけでございます。そういう意味で、日米安保体制の信頼性の維持向上ということに努力をいたしまして、このアメリカの核抑止力によりまして日本に対する核攻撃というものが十分に抑止されるよう期待をしているということでございます。
  241. 柄谷道一

    柄谷道一君 どうも私わからないんですがね。抑止力でしょう。戦略核、SS20等の戦域核を使用すれば、これはアメリカといえども安保条約に基づいてこれに対抗する兵器を使用せざるを得ないよということが核戦争を今抑止しているわけでしょう。今の局長の答弁からしますと、我が国の国土で戦術核が使われたという場合、戦域核をもって対抗するということで抑止力をきかそうということですか。
  242. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) アメリカは、かねてから非核三原則を堅持しているという我が国の政策を十分理解した上で、核兵力であれ、通常兵力であれ日本への武力攻撃があった場合には日本防衛するということを確約しておるわけでございます。そういった場合の米国の核抑止力というものの実態と申しますのは、そのアメリカの核兵器我が国防衛のためにいつでも使用され得るという可能性自体に基づくものでございまして、こういった米国の核抑止力というものが働く上におきましては、核兵器そのものが必ずしも日本の国内に存在するということは必要としないというふうに私どもは考えておりますし、それはアメリカもそのように理解をしているわけでございます。
  243. 柄谷道一

    柄谷道一君 我々も非核三原則を守れという立場に立っております。しかし、私がこの前の予算委員会で質問しましたのは、有事、我が国土において戦術核が先に使用されたという場合、来援米軍が戦術核を持ち込むことについてどう対応するのかと言ったら、すべての場合、国益がどうであれ、状況がどうであれノーでございます。一体、我が国の国土を守ることが重要なのか、有事の場合教条的にただかたくなに態度を維持することが国益なのか。私は、そういう場合は協議なんですから、あらゆる情勢を判断してその是非を決定していく、これが私は抑止力になるのではないかという趣旨の御説明をしたんですが、どうも総理も外務大臣も、何を配慮されておるのかわかりませんが、オールナッシングである、こうお答えになったんです。長官も、お考え一緒ですか。
  244. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) これは核の問題は私が有権的にお話を申し上げるというのは適当かどうか知りませんが、総理や外務大臣の申し上げているのは今までの一貫した政府の方針でございます。ですから、この方針は当然我々としても守っていかなければならぬと思っています。  ただ、今お話のありますとおり、戦術核が使われる、その場合どうするのだというのは、観念上の問題として当然これは考えられるわけですね。しかし、我々の立場というのは、そういうものも使われないようにアメリカの核抑止力に頼っておる、言うなればアメリカに核の問題についてはすべて頼っておる、それが前提であるということを御理解いただきたいと思います。
  245. 柄谷道一

    柄谷道一君 局地における戦術核の使用に対して戦域核ないしは戦略核が抑止力の機能を果たしておるという発想は、これは世界を場合によっては核戦争の中に陥れていくという極めて危険な面を私は持っていると思うんです。我が国においては戦略核、戦域核の問題は大いに議論されますけれども戦術核に対する対応というのは余り議論されたことが少ないんですね。こうした問題こそ、防衛庁長官国防会議において我が国防衛政策はいかにあるべきかというこのテーマの中で真剣に議論する値があるし、そしてその結論が戦術核というものに対する大きな抑止力を果たし得ることになると、こう思うんですが、国防会議等で問題提起をされるお気持ちはございませんか。
  246. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 今のお説は、私自体が頭の中でよく消化をした上で対処すべきものは対処していきたいと、こう考えております。
  247. 柄谷道一

    柄谷道一君 郵政省、来ておられますか。  電電公社のあり方につきましては、電電公社の独占業務の自由化ないしは行政改革という視点から今政府を中心に民営化法案が検討されております。しかし、その検討の中に通信と安全保障という視点からの検討はされておりますか。
  248. 富田徹郎

    政府委員(富田徹郎君) きょうの閣議決定で、電気通信事業法案とそれから日本電信電話株式会社法案の閣議決定をいただきました。その中で安全保障という観点がどうかは別といたしまして、非常通信の重要性ということにかんがみまして、非常通信体制が万全の形で行えるよう配慮していることは事実であります。
  249. 柄谷道一

    柄谷道一君 まだ法案を見ておりませんので、それでは確認いたしますが、自衛隊法百一条、百四条、公衆電気通信法六条、十五条、四十九条及び六十四条、有線電気通信法十五条、電波法七十四条等々はいずれも非常の場合を想定した公社としての対応がうたわれていると思うんですが、民営化された場合もこれらの対応は後退はしない、こう理解していいですか。
  250. 富田徹郎

    政府委員(富田徹郎君) 自衛隊法百一条、百四条に規定しております電電公社の責務につきましては、これは新しい事業法に置かれる第一種電気通信事業者、つまり電電公社の後裔に当たります会社を含めまして、そういう通信事業者がその責務を引き継ぐよう改正すべく今法案を提案中であります。  なお、公衆法六条、十五条、四十九条、六十四条等につきましては、公衆電気通信法そのものが廃止になりますので、新しい電気通信事業法第八条におきましてほぼ同趣旨の体制がとれるように非常通信の確保に努めるような条文になっております。  さらに、有線電気通信法十五条、電波法七十四条につきましては、改正せずにそのまま維持されます。
  251. 柄谷道一

    柄谷道一君 かつて太平洋戦争時代は国家公務員であったわけですね。したがって、有時と非常の際に、これらの職員がそのために殉職したという場合は国家補償の対象たり得たわけでございます。今は公社でございますね。公共企業体でございますね。今度は民間、株式会社でございます。防衛出動等が発令された時点で、業務命令としてそうした危険な状態の中で、自衛隊法百一条、百四条に基づいて通信義務を守れという業務命令は現実に行い得るものかどうか。また、不幸にしてそのために死傷された人に対しまして、これは防衛庁長官が郵政大臣に要請し、郵政大臣が株式会社に指示するわけでしょう。その株式会社の社長が今度は従業員に、社員に命令するわけでしょう、仕組みは。その場合の国家補償という問題についてどうお考えですか。
  252. 富田徹郎

    政府委員(富田徹郎君) 電電公社が民営化されまして株式会社になりましても、電気通信事業者であることには変わりございません。電気通信事業者として各種法令に基づいた公的な業務を遂行するに当たりまして、その限度ではその人たちに対して業務上の指示、命令を出すことは当然可能である。もし仮にその危険な業務におきまして事故が起こりました場合には、一般的に申し上げて労災法上の災害給付と、それから新会社になりましても共済組合制度はそのまま存続されることになっておりますので、共済年金の給付の双方によって救済措置が可能だと考えております。
  253. 柄谷道一

    柄谷道一君 国家の要請に基づくそういう犠牲者に対して、ただ労災と共済の補償だけでいいというお考えですか。
  254. 富田徹郎

    政府委員(富田徹郎君) 電気通信事業者として電気通信事業を行って、電気通信の業務を執行していくという限度でそういう観点の救済も考えておるわけでありまして、特に国家的な任務を遂行させるという観点ではそういうふうな措置を考えているわけでは決してありません。
  255. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣、これはこういう場合は国家的要請ですね。内閣総理大臣防衛庁長官がいわゆる通信網を維持するということに基づく指示に基づいて会社が業務命令を下すわけですね。防衛庁みずからがまだ防衛出動に対する自衛隊員の補償の規程はつくっておりませんね。私は、今後の検討の中でこうしたものも含めての検討がなされなければならない。この問題は既に有事法制研究の一項目になっているのかどうか私は知りませんけれども、当然これはその検討の対象たり得る問題だと、こう思うんですが、いかがですか。
  256. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) お答えいたします。  有事法制の第一分類の研究の中で、いわゆる防衛出動を命ぜられた場合の隊員の災害補償について、防衛庁職員給与法第三十条の規定によって、出動手当の支給であるとか、その他の補償の問題を「別に法律で定める。」となったまま、これがまだ制定されておらないことは先生も御承知のとおりでございます。これは第一分類において御報告をいたしましたように、研究の十一項目の課題一つでございます。  なお、百三条というのがございまして、これも先生御承知のとおり、これは都道府県知事が第一次的な命令権者になっておりますが、有事に際しまして医療業務関係、土木建築関係、輸送業務関係の者たちに対して戦闘地域以外で業務命令を出せるようになっております。これも先生ただいま御指摘のような問題に共通した問題であろうかと存じますけれども、この問題はまだ十分研究されておらない。まして百四条、従来は電電公社という公務員に準じた身分のものでございましたので、それぞれの、先ほど郵政省から御答弁ございましたように、労災等の対象になるということで救済をされる、あるいは共済組合法の対象になるということであったわけでございますが、今回性格が変わります。その意味で、従来まだ未着手であるところの百三条の対象業者に準じた立場になるのではなかろうか。何分、本日法案がようやく閣議にかけられたという段階でございますので、これは新しい課題として今後やはり勉強してみなければいけないだろうと考えておりますが、現時点はまだ検討いたしておりません。
  257. 柄谷道一

    柄谷道一君 長官、これを検討の項目に加えるということはお考えございませんか。
  258. 佐々淳行

    政府委員(佐々淳行君) 第一分類でやるべきなのか第二分類なのか、その点新しい課題としてもう少し関係省庁とも勉強してみまして、第二分類のまとめがまだまとまっておらないという状況でございますので、将来課題として勉強してみたいと考えております。
  259. 柄谷道一

    柄谷道一君 長官は、衆議院予算委員会で二月二十五日、これは我が党の木下議員の質問に対する御答弁でございますが、防衛計画の大綱は五九中業が終わる昭和六十五年度までは見直さない、五九中業防衛大綱の水準を達成することを基本目標にする、こうお答えになった。速記録にも出ております。ところが三月十三日、同じく予算委員会で我が党の小平議員が行いました質問に対しては、五九中業防衛大綱の水準を超えるとか超えないとか論ずる段階にはなっていない、いわゆる白紙である、こう述べられたわけですね。この二つの答弁は明らかに違っておりますけれども、どちらが真意でございますか。
  260. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 要するに、木下さんのときに前後にどういうやりとりがあったかということも見なきゃいけないと思いますが、私は今、五九中業というのはまだ具体的に長官の指示も出していない、そういう段階でいろいろ申し上げるということはできないと。ただ、我が国防衛力整備の問題については、防衛計画の大綱、そういうものをできるだけ早く水準に達するように努力する、そういう延長線上のものであるという意味を込めて両方とも話をしているつもりでございます。
  261. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、さらにお伺いいたしますが、長官は同じ木下議員の質問に対しまして、五九中業策定についての長官指示は並み外れた時期になるようなことはない、こうお答えになっていますね。通常、中業策定の長官指示は四月に出されたことが多いわけでございます。また、これは新聞報道でございますが、四月中旬以降に国防会議を聞き、了承を得た上で長官指示を出す意向を防衛庁は持っている、こう述べております。いずれにしても、長官指示が出される時期はそう遠い将来のものではない、これだけははっきりしておりますね。一体、いつごろ長官指示を出されるんですか。
  262. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) それはそのとおりでございまして、まだ長官指示をいつ出すかということは決めていないんです。なぜ決めていないかといいますと、国会の御論議、これを私は予算委員会が終わった後で一応私なりにまとめてみたい、どういう意見があったか。それから、五九中業となりますと昭和六十五年になりますから、だからそこら辺の展望もしなきゃならぬし、いろいろな要素、国内的な要素、そういうものをやらなきゃならぬので、あれやこれやよく考えた上でひとつしなければならぬ。しかし現実問題として、中業といったって五三と五六と二回だけですから、五六で言えば四月の下旬だというだけのことなんですよ。しかし、四月の下旬というこの前の日時を大幅に超えてどうのこうのと、あるいは並み外れるというようなことはこれは考えていない、そういう意味でございまして、今でもそういう考え方でございます。
  263. 柄谷道一

    柄谷道一君 大体四月中であり、もし五月に持ち越してもそう大きなずれはない、こう理解していいんですか。  なお、もう一点あわせて聞きますけれども長官、三月二十九日、これも衆議院で、五九中業もGNP一%枠を念頭に置くと、こう言っておられるんですね。これはある程度固まっていなければ、一%枠が守れるかどうか、これはお答えになれないはずで、この一%枠を念頭に置いてやるということは確信に基づいた御答弁なんですか。あわせてお伺いします。
  264. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 四月なのか五月なのかというのは大変御関心があるようでございますが、私自体はそういう日程について余り関心はないんです。ただ、並み外れたことはしない、それで私の考え方を詰めていく、部内の意見も聞いてまとめていく、そういうことでございますから、四月、五月という、そういう日時については私としては確たることは申し上げられない。  それからもう一つ、一%云々ということは、御案内のとおり、今度の国会でGNP一%というのが非常に大きな課題になっております。また、これは三木内閣以来ずっと来ていることでございますから、五九中業を考える場合にGNP一%という問題をどう扱うか、そういうこともございますので、そういうGNP一%ということ、それは念頭にございますということでございます。
  265. 柄谷道一

    柄谷道一君 中曽根総理も、三月五日、これは衆議院決算委員会でございますが、我が党の神田厚議員の質問に答えまして、現時点では防衛大綱を見直すことは考えていないと、こう明確に述べられたんですね。防衛庁長官も、防衛大綱の水準をなるべく早く達成することを基本目標にする、こう述べられた。私は頭が悪いせいかもしれませんが、素直にこの二つの答弁を継ぎ合わせてみますと、大綱水準達成のために最大の努力はする、しかし五六中業でその水準の完全達成は困難であるから五九中業で引き続き努力を継続する、こうとしか読み取れないんですね、大綱は変えないというんですから。  ここで確認を求めたいんですが、大綱の付表、これは五九中業でも変えないんですか、変えるんですか。
  266. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 先ほどから申し上げているとおり、五九中業をどうするかというのが固まっておりませんので、今ここで確たることは御答弁を差し控えさせていただきたいということでございます。
  267. 柄谷道一

    柄谷道一君 空白だとすると、この三月五日の総理大臣の答弁は間違いであったわけですか。
  268. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 総理大臣の答弁が間違いであるなどと言うほど私は偉くないわけでございます。ただ、総理大臣の言う意味の中で、総理大臣はただいま防衛計画の大綱を見直すつもりはないと、そういうふうに言ったのじゃないかと思います。私も、そういう意味ではただいまそういうことは考えていないと、こういうことでございます。
  269. 柄谷道一

    柄谷道一君 防衛大綱というのは文章だけじゃないんですよ。非常に大きな意味を持っているのはその付表なんですね。防衛大綱を変えないということは、付表を五九中業でもそのまま掲載するということだと思うんですね。防衛の衝にある内閣総理大臣防衛庁長官が大綱を変えないと言うことですから、付表は変える気はないということ以外に答えはないのじゃないですか。どうして空白なんですか。
  270. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) ですから、五九中業についてはまだ考えていないわけですよ、具体的に。したがって、ただいまのところ防衛計画の大綱、これを変えるつもりはございません、こう言っているわけでございます。
  271. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいまのところ考えていないということで、検討の結果見直しもあり得るということですか。
  272. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) そういうことを含めまして、申し上げるわけにはまいりません。
  273. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、焦点を変えましょう。  総理の私的諮問機関であります平和問題研究会は、三月中旬に経済協力の推進などを盛りました中間報告を行いました。そして、マスコミの報ずるところによりますと、防衛大綱の見直しを初め防衛力整備のあり方について本格的検討に入る、こう言っております。これはもちろん私的諮問機関でありまして、大いに問題のある機関ではございますが、この平和問題研究会に対して防衛庁長官はどのように対応されるのか、これだけをお伺いいたしまして質問を終わります。
  274. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) この機関は、私的とは申しましても相当著名な方々が参加をされております。私は、防衛問題というのは広く国民全体からいろいろの御議論が出ることが好ましいと思っております。そういう意味からいたしますと、それぞれの有識者の中から日本防衛問題についていろいろの御議論が出る、それは大変結構なことでございまして、私ども参考になるものがあればこれは参考にいたしたいと、こう考えております。
  275. 秦豊

    秦豊君 防衛庁、四十分のテンポで答弁してくださいね。  改装戦艦ニュージャージーというのは、今までの運用のされ方が異常で、レバノンとか中米とか、いわば緊急対策用であった。しかし、私見によれば、本来的な運用というのは、例えば北東アジアを定位置にして対ソ抑止力を形成するというのが本来的なニュージャージーの運用であろうと思うが、どう考えていますか。
  276. 古川清

    政府委員(古川清君) 確かにおっしゃいますとおり、このニュージャージーは、太平洋艦隊に所属しておるわけでございますけれども世界最大の戦艦の機動性というものを生かしまして、必要に応じまして世界各水域に柔軟に運用されているというところに特徴がございまして、北東アジアを定位置とするというものではないというふうに私ども承知をしております。    〔委員長退席、理事坂野重信君着席〕  しかし、こういった柔軟な運用を通じまして、米海軍のプレゼンスというものが強化されているわけでございます。それを通じてアメリカ抑止力の信頼性というものが維持強化されるということは、大変抑止力として機能するところが極めて大きいというふうに私どもは理解をしております。
  277. 秦豊

    秦豊君 アメリカ海軍のホステットラー巡航ミサイル計画部長、彼の下院での証言などを見ると、今年六月からは射程の長い核巡航ミサイル、つまりTLAM―Nの艦船配備の装着が始まる。こうなると、その巨大なプラットホームとして抗堪性の強いニュージャージーの運用というのは非常に魅力があるわけだ。したがって、古川さんも私の質問を一部肯定されたけれども、やはり北東アジアにおけるINFのバランスというのはまだまだソビエトに傾いている、急速に回復しなければならないという場合の運用として、私はニュージャージーの北東アジアを定位置化するという運用がだんだん強まるのではないか。例えば佐世保、時によっては横須賀をというローテーションがかなりリアルになるとは考えませんか。
  278. 古川清

    政府委員(古川清君) その点はアメリカの全般的な戦略ということにも関係するわけでございまして、私どもはまだ確たることは判断をしておりません。
  279. 秦豊

    秦豊君 外務省には、まだニュージャージーの寄港要請は参っておりませんか。
  280. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 外務省としては、ニュージャージーの寄港予定というものについて現在承知いたしておりません。
  281. 秦豊

    秦豊君 栗原長官、さっきから同僚議員とのあれを聞いていまして、同じような答えしか返ってこないとは思います、あなたは非常に苦慮して考えていらっしゃるからね。それはわかるのだが、どうしてもわからないことは、五九中業を策定するに当たって、一%も超えない、大綱も修正しないという二つの前提と仮定を置いて一体五九中業なるものが策定できますか、考え得ますか。
  282. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) これは論理の上のいろいろ御議論はあろうかと思いますが、私ども現実に政策をつくっていくという段階で、この段階ではこれしか言えないということもあるわけでございます。そういう意味総理や私どもが国会で答弁をしておると、こういうように御了解いただきたいと思います。
  283. 秦豊

    秦豊君 このことは、もう聞きません。  具体的に防衛局にもこれは聞いておきたいのだが、五九中業の概念じゃなくて具体的な中身。シーレーンの防空体制をどうするかというのは、私は大きな課題になってくると思うんですよ。くるではなくてなっていると思う。例のユニホームが考えたミニ空母論はおきますがね、論外ですから。おきますけれども、例えば、一つの大きな流れとしましては、私もいつか質問主意書を出したけれども、個艦防空から艦隊防空へという流れは否定できませんね。その場合にAEGISシステムの導入ということは五九中業の中ではどのような位置づけになり得るのか、なろうとしているのか、これはどうです。
  284. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 海上自衛隊の防衛力整備をやっていく場合に、基本的な考え方といたしまして、空を経てくるいわゆる経空の脅威というものに対処をする能力をふやしていかなきゃいけないという考え方は従来から持っております。そういう意味で、ミサイル護衛艦、いわゆるDDGといいますが、そういうものの整備もやっているわけでございます。  したがいまして、一般的にこういった能力の向上を図るという必要があるわけでございまして、従来からAEGISシステムも含めまして調査検討をしているわけでございますけれども、じゃ具体的にどうかと言われますと、現在、今御指摘のありましたAEGIS艦を導入するという計画を現在持っているわけではございません。  いずれにいたしましても、五九中業の問題は、ただいま長官からもお語ございましたように、まだ長官指示もいただいていない段階でございまして、全く具体的なことはやっておりませんので、これは五九中業の中身がどうなるかというのは今後の問題でございます。
  285. 秦豊

    秦豊君 アメリカも、例えばタイコンデロガなんかはちょっと八千トンを超えて大き過ぎる、六千トン級のこのAEGISシステム艦をという発想が芽生えつつある。これは恐らく現実化するでしょう。どういう艦を持つかは、それは確かにあなたの言い方はわかるけれども、例えばAEGISシステムを検討するための準備室、これぐらいはつくろうとしているのかどうか、これはどうです。
  286. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 現在、そういうことを考えてはおりません。
  287. 秦豊

    秦豊君 それから、どうせこれ、国防長官もやってきますが、これは単なる表敬訪問じゃ済みませんよ。  その防空体制の強化に絡みまして、硫黄島の話は必ず出てくる。そこで、硫黄島にF15やP3Cを短いローテーションで配置をする。長くフィックスするのじゃなくて、短いローテーションで配置する。例えば本土から基地を選んで一カ月以上何カ月というふうな交代配備をまず考えるというふうなことは頭に入っていないのかどうか。
  288. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 今配備の問題を御指摘になりましたが、私ども前々から申し上げておりますように、硫黄島の基地は訓練基地として整備をいたしておるものでございます。したがいまして、当面はP2Jとか、あるいは航空自衛隊の方はF4の訓練にそれを使いたいということを考えておるわけでございます。将来の問題としては、海上自衛隊で言えばP3Cとか、あるいは航空自衛隊のF15の移動訓練にも使うことはあり得るかと思いますが、まだ現在そこまで考えておりません。そこから先のさらに配備という問題については、現在私どもはそういう計画を持っておりません。
  289. 秦豊

    秦豊君 衆議院と今までのうちの方の論議を聞いていて、やっぱりぼやけっ放しなのは空中給油機ですよ。結局、五九中業では給油機の問題はどうするつもりなのか。例えばKC10の導入を目指すのか、135じゃなくて、あるいは国産に挑戦するのか、全く考えないのか、この辺はどうなんですか。
  290. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 前々から申し上げておりますように、最近の航空技術の発達ということを念頭に置いて考えますと、今後空中給油機能を活用いたしまして空中警戒待機をとる必要性が増大していく可能性が大きいということは十分に認識をしておるわけでございます。しかしながら、現在のところ、それを例えば今御指摘のような空中給油機を持ってやっていこうという現在計画を持ってはいないわけでございます。
  291. 秦豊

    秦豊君 西廣さんに伺っておきましょう。  例えば、嘉手納にはKC135が常駐している。給油機の導入、それはなかなか難しいからね、これ高いし、なかなか内部が固まらない、それもわかる。    〔理事坂野重信君退席、委員長着席〕 では、例えばCAP体制の強化を考えても、嘉手納に常駐しているKC135と我が国が装備しているファントムでもいい、あれはまだついていないけれども、イーグルでもいい、これの訓練を始めるための話し合いを始めようとする考えもないのかどうか。これはどうです。
  292. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) ただいままでのところ、米側と給油訓練についての話し合い、あるいは話し合いをする計画、どちらもございません。
  293. 秦豊

    秦豊君 五十九年度あるいは六十年度を展望した場合に、こういう空中給油訓練というのは、例えば訓練担当参事官のあなたの脳中ではどういうふうに処理されようとしているのか。
  294. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 私まだ十分勉強しているわけじゃございませんが、担当者の方から聞いているところでは、空中給油そのものについては大して難しい訓練ではないということで、そのために特別の訓練計画をつくって前広にそういうことを実施するという必要は余りないのではないかということでありまして、ことしあるいは来年以降にそういうものを行いたいという計画は現在のところございません。
  295. 秦豊

    秦豊君 それから、在来から問題になっているんだが、矢崎さん、ファントムの空中給油装置、これも復活は簡単なわけだ。技術的には全く問題がない。いつごろ復活をする考えなのか。それはどうなんですか。
  296. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 簡潔にお答え申し上げますと、現在特段の計画は持っておりません。
  297. 秦豊

    秦豊君 特に国会中だから、しばらくそういう答弁を続けた方がいいでしょう。  次の対地支援戦闘機FSX、この問題を少し聞いておきましょう。  近く防衛庁としては調査団を特定の国に送る計画はおありですか。
  298. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) FSXの問題は、御承知のように、五六中業期間中に選定をしていこうということで予定はいたしておるわけでございます。ただ、現在の段階は各種のデーターの収集中でございまして、今御指摘のような特定の機種というものを念頭に置いて調査団というところまで話が進展している段階ではございません。ただ、一般的な外国出張は専門家である航空自衛隊でも始終しておりますから、そういうプロセスでいろんな情報が逐次入ってくるということはありますけれども特定のそういった的を絞っての調査団という段階までまだ進展はいたしていないわけでございます。
  299. 秦豊

    秦豊君 それじゃ、こう聞きましょうか。  F4改、F16、トルネード、バリア、F15改、F18、以上の六つの機種についての基礎的なデータ集めを並行してやっている、単にその段階でやると、こういう理解になりますか。
  300. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) ただいま特定の機種をお挙げになってのお尋ねでございますけれども、まだ防衛庁といたしましては特定の機種名を候補として挙げて検討をしているというふうに申し上げ得るような段階にまで至っておりません。
  301. 秦豊

    秦豊君 これは冨田さんの分野かな。国産化というのは、あなた方の中ではどの程度のウエートなんですか。
  302. 冨田泉

    政府委員(冨田泉君) ただいま防衛局長から答弁申し上げましたように、現在のところはまだ国産化につきましても同様に白紙の状態でございますが、御承知のように、航空技術は非常に進歩の激しい技術分野でございまして、その意味におきましては将来の航空技術についての研究の芽といいましょうか、そういうものについても我々はフォローしておく必要があるという意味で若干の研究はやっておりますが、まだそれをどういう形にまとめていくというところまでは至っておりません。
  303. 秦豊

    秦豊君 例えばF1の寿命を延ばすとか、F4ファントム攻を充当するとか、それは非常にリアルなわけだ。あるいはF15を買い増しするとか、いろいろなチョイスがあるんだが、しかし国産というものも可能性としては否定できない路線でしょう。しかも、技術的な能力もある。そうじゃないですか。
  304. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 先ほど申し上げましたように、まだ基礎的なデータ収集の段階でございますので、国産とか、あるいは輸入とか、あるいはライセンス国産とか、いろんな問題の御指摘ございますが、まだそういった仕分けについてのコメントをなし得る状態ではございません。
  305. 秦豊

    秦豊君 中央指揮所、さっき同僚議員も聞いたんですが、観点を変えてちょっと確認をしておきたいんですが、今部分運用、やがて本格運用になった場合に、例えば三自衛隊の一元的な運用、一元的な指揮への要請というのは当然格段に強まってくると私は思うんです。その基本的な方向について栗原長官はどう受けとめていらっしゃいますか。
  306. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 確かに御指摘のとおり、有事におきまして自衛隊が能力を十分に発揮いたしますためには、陸、海、空の自衛隊がその特性を生かしながら、かつ統合的見地に立って効果的に運用されるということが非常に重要なポイントであろうと思います。したがって、私どもといたしましては、かねてから統合演習を実施するというようなことにも配意しておりますし、それからさらに、先ほどもお話が出ました中央指揮システムの活用によりまして統合運用の実を上げていきたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  307. 秦豊

    秦豊君 長官はどうなんです。
  308. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 今、政府委員から話がございましたが、陸、海、空の統合的な指揮をするということが非常に重要だと思います。そのためには、私の感想から言うと、この中央指揮所というものを使いこなせなきゃいかぬと、施設を。そういう意味合いでは、この施設を使いこなすための習熟といいますか、そういう訓練といいますか、そういうものをしっかりやらないといかぬというふうに考えております。
  309. 秦豊

    秦豊君 そうだと思います。つまり米軍は、アメリカ四軍は統合軍の実態等に習熟しているわけだ。こちらの方は三軍ばらばら。そうすると、共同対処や有事対処を考えた場合には、当然この自衛隊の指揮命令系統そのものをかなり抜本的に見直さなきゃならないのじゃないか、その必要については感じていらっしゃるでしょう。
  310. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 先ほども申し上げましたように、我が国防衛のためには三自衛隊の特性はそれで生かしながらそれを統合的に運用していくというのが基本的な考え方でございまして、現在の指揮命令系統そのものを変えていかなきゃならないというようなことは考えておりません。統合部隊の設置ということも必要に応じてやれるような仕組みもございますので、現行制度を弾力的に運用していけば十分に対処していけるのではないか、こう考えております。
  311. 秦豊

    秦豊君 これは長官、答えてくださいね。  有事立法に絡みまして与党の中でやっている作業を見ると、例えば海上警備行動は強化すべし、統幕議長の権限は強めるべしという方向がもうほぼ出ているんですよね。まだ固まっていませんよ。出ている。こういう方向、基本的な路線ですね、目指すもの、これは政治家長官としてはどうです。
  312. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) それに対して今具体的にどうコメントするかということは、私がすべきじゃないと思う。ただ、問題点をいろいろ出す。今までは問題点も出ていなかったですから、問題点を出して、こういう問題がある、ああいう問題がある、それについていろいろと論議を盛んにしていただくということがまず最初に必要じゃないかと思います。  それから、先ほどの中央指揮所の問題にかかわりますけれども、陸、海、空の指揮系統はそれはそのままあるわけです。それはあるわけでございますけれども、私の言う意味は、中央指揮所というものを使いこなすためには、そういう訓練といいますか、習熟を経た中でいろいろと補完すべきものは補完していく、こういう格好にしていかないと意味をなさぬと、こういう考え方でございます。
  313. 秦豊

    秦豊君 これは長官、よく練ってくださいよ。私見では僕は反対ですがね。  いわゆる隊法と設置法の自衛隊二法、これを改めないで現行法令の中で運用として軍制と軍令は矛盾なく運営できる、バランスさせ得るというふうに考えていらっしゃるんですか。
  314. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) ですから、先ほど申し上げたとおり、私は具体的な問題についてこれはこうだ、あれはこうだというふうに私の私見を述べる今立場にない、むしろ私の立場からすると、何が問題なのか、そういう論議を盛んにしていただきたい、こういうことでございます。
  315. 秦豊

    秦豊君 長官、一言申し上げますよ、そんなことをおっしゃるのなら。少しスタディーの時間が長過ぎる、そろそろ御自分意見を持っていただきたい、そのことを申し上げておきます。  それから中央指揮所、本格運用がSFとかバッジとか、さっき話は聞いたばかりだから繰り返していただきたくないが、これをさらに視野を広げると、例えばあり得べき理想的な中央指揮所の運用としては、在日米軍司令部とのホットラインだけではなくて、米軍がやっている軍事指揮管理システム、WWMCCSというふうなグローバルな指揮通信管制システムとのジョイントもなし得て初めて完璧な運営と、こう言えるのじゃありませんか。
  316. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 私どもが知る限りでは、ただいま御指摘のWWMCCSというそのシステムは、アメリカの全世界的な通信網であろうというふうに理解をいたしております。私どもとしては、在日米軍とは共同作戦等の問題の研究もありますので、これは連絡ルートとして電話回線等をつなぐというようなことは必要があろうかと思いますが、ただいま御指摘のようなアメリカの全世界的なそういう通信網との連接とということは考えていないわけでございます。
  317. 秦豊

    秦豊君 栗原長官、これはあなた御自身の答弁ですから回避しないでいただきたいのだが、二月十七日の衆議院予算委員会、公明党議員に対する答弁、シーレーン防衛、「主体は日本です」、「いわゆる非常に強い攻勢的な戦力、作戦というものについてはアメリカに頼る。」と、こういうように答弁されていますが、その「非常に強い攻勢的な戦力、作戦」については、長官としてはどうイメージされていますか。
  318. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 私のそのときに言った意味は、シーレーンのまず概念というもの、それを明確にしないと論議にならない、シーレーンというと何か知らぬけれどもえらい大きなことを考えるようだけれども、そうではなくて、我々の言うシーレーンというのは海上交通の安全を確保する、そういう観点からいろいろやっているのだと、したがって周辺数百海里とか、あるいは航路帯を設ける場合は一千海里とか、それは作戦上の一つの用法として考えていいのだというようなことを言いまして、そしてその一千海里の外ではアメリカが攻勢的なやつをやる、攻勢的なことについては一千海里の中でも攻勢的なものについてはアメリカがやってくれると、そういう意味で言ったわけです。日本の海上自衛隊、航空自衛隊で処理できないものはアメリカにやってもらう、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  319. 秦豊

    秦豊君 例えばカムチャツカとか、マガダンとか、あるいは沿海州とか、いわゆる策源ですね、基地群、これに対するアメリカのいわゆるやりの機能、核攻撃能力ないし作戦、そういうものは含まれますね。
  320. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 我が国防衛作戦の中におきまして基本的に仮想敵国を持たないということが基本でございますから、具体的にどこの地域というふうに特定をして御説明申し上げるのは必ずしも適当ではないというふうに思いますが、基本的に大臣からお話を申し上げましたように、一般的な攻勢作戦というものを米軍に期待をしているということでございます。
  321. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 私も、そういう趣旨で答弁をしようと思ったのです。特別のところを考えて論議をしていない、理論上の問題として論議をしていると、こういうことでございます。
  322. 秦豊

    秦豊君 シーレーン共同研究の範囲の中に、あるいは項目の中に攻勢作戦を担当する七艦隊への護衛、これは含まれておりますか。
  323. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) これは米艦護衛の問題といたしまして昨年の予算委員会でも御議論があったわけでございまして、その際に政府としての統一的な考え方を申し上げた経緯がございます。  その趣旨は、我が国の自衛のため……
  324. 秦豊

    秦豊君 含まれているかいないかだけにしていただきたい。
  325. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 必要最小限度におきまして、これはアメリカの艦隊が攻勢作戦をなす場合に、それが日本防衛のために必要な限度ということで、日本有事に個別的自衛権の発動として護衛をすることは理論的にはあり得ないことではない、しかしながら具体的な態様は千差万別でありますから、そこのところはその事態を個々に慎重に判断をする必要があろうと、こういう考え方をとっているわけでございます。
  326. 秦豊

    秦豊君 少し言い方を、日本語を変えますが、シーレーン防衛の共同研究、どこまで進んで、何が残っているのか。
  327. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) シーレーン防衛の共同研究は、御承知のように既に進行をしておるわけでございますが、現在の段階は、脅威の分析あるいはシナリオの設定等基礎的なものについて研究を行っている段階でございます。
  328. 秦豊

    秦豊君 これはたしか外務省でしたな、極東有事研究。そうでしたね。これは加藤さん、どの辺まで作業が進んでいるというか、煮詰まっているというか、どういうふうに課題としては、目標としては何が残っているのか、この辺もあわせお答えいただきたい。
  329. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 率直に申し上げますと、六条事態研究につきましては、引き続き作業が継続中ではございますが、全体として必ずしも大きな進展が見られていないという状況にございます。
  330. 秦豊

    秦豊君 こういうふうな聞き方をすると、あなたはどう答えたくなるかな。極東有事研究の範囲と主な項目、例えばその中に、エグザンプルを挙げますよ、軍事物資の緊急調達や輸送が入っているのかいないのか、あるいは出動する米軍あるいは作戦中の米軍への海上補給等は研究のアイテムに含まれるのかどうか、あるいはアメリカ海軍艦艇や軍用貨物船、つまり輸送船ですな、あるいは航空機の護衛行動も研究の対象範囲か、これだけをお答えいただきたい。
  331. 加藤良三

    説明員加藤良三君) 従来から国会で御答弁申し上げてまいりましたとおりなんでございますけれども、六条事態の研究は米軍のオペレーションに係る機微な側面もございますし、また便宜供与という枠内においてなされる日米間の協力体制というようなものがあらかじめ明らかにされるということとなりますと日米安保の効果的な運用に支障を来すという側面もある、こういうことを考えまして、作業の内容についてはこれを公表しないということで米側との間で合意ができておりますので、この点御了解いただきたいと思います。
  332. 秦豊

    秦豊君 七八年の十一月の例のガイドラインですね、長官ももうレクは受けていらっしゃると思うのだが、八一年の三月に第一段階終わったんですが、大きなカテゴリーが五つある。繰り返していると時間がないからやめる。  そこで、今その作業というのは一体どこまで進んだのかについては、それも答弁ができませんか。
  333. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) このガイドラインに基づきます共同作戦計画の研究につきましては、幾つか手がけておるわけでございます。  一つは、五十六年夏に一つの設想に基づく研究が一応概成をいたしておりまして、現在それを補備する研究を続けておるというのが一つでございます。  それから二番目は、昨年の三月にシーレーン防衛の共同研究を開始いたしまして、先ほど御説明申し上げたような途中になっておるということでございます。  このほか、日本有事の場合の想定ということになりますと、これはいろいろな事態が考えられますので、最初に申し上げました一つの設想だけで必ずしも十分ではないということから、新たな設想に基づく研究も開始したいということで準備をしておるという、これはまだ準備段階でございます。  研究といたしましてはその程度でございまして、そのほかに日米の調整機関の問題とか、あるいは共通の作戦準備とか、いろいろテーマはあるわけでございますが、この辺はまだ余り進展は見ていないという状況でございます。
  334. 秦豊

    秦豊君 そうすると、米軍の有事来援計画なんというのはまだ海とも山ともつかない、茫漠としている、こういう段階ですか。
  335. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) その点は、ただいま申し上げました第一の一つの設想に基づく研究というもの、この中では当然にそういう日米共同作戦の一環としてどういう米軍の行動があり得るかというようなことは一つのテーマでもちろん含まれているわけでございますし、次のシーレーン防衛の共同研究の中でもそういう事柄は当然に含まれてき得る問題でございます。
  336. 秦豊

    秦豊君 少し具体的な答弁だと思うけれども、じゃ、その有事来援等のところまでは段落がついたんですか、固まったんですか、シーレーンは別として。
  337. 矢崎新二

    政府委員矢崎新二君) 具体的に共同研究の内容を御説明申し上げるということになりますと、これはやはり有事の場合の作戦そのものの手のうちをも明かすというふうなことになりますので、内容の点を具体的には申し上げ得る状況ではございません。
  338. 秦豊

    秦豊君 防衛庁長官にそろそろ今ごろから御判断を固めていただきたいことが、今の質問に関連して、あります。それは、シーレーンの共同研究、ガイドラインに基づく日米両国政府がオーソライズした共同研究、それから極東有事研究、三つの研究がありますね、お互い絡み合って。これが一定の段階に達した場合には、我々国会に対する中間報告をぜひ実行していただきたい。何を聞いても、いや、これはオペレーションに触れますからマル秘です、これは答弁のらち外です、これでは国会が一体何をチェックできるのかという問題にも基本的にかかわってくるので、今申し上げたお願いは政治家栗原長官の御判断の中でぜひ濃縮して、完熟さして実行していただきたいと思うが、この点だけ長官に御答弁願いたい。
  339. 栗原祐幸

    国務大臣栗原祐幸君) 私自体も、シーレーンの問題について報告を詳細に聞いておる、有事法制の問題についても聞いておる、極東有事の問題につきましても。そういう問題についてまだ十分に承知しておりませんので、この段階でどうこう言うことはできません。私が責任を持って報告をいたしましょう、中間報告をいたしましょうというのには、私自体の研究といいますか、検討というものが熟していない。ただ、政府委員が申し上げておりますとおり、いわゆる事は有事に関するいろいろの問題でございますので、今までからいいますと、なかなか公表しにくいというのはそういう場面があるということを前提として申し上げておるということを御了解いただきたいと思います。
  340. 秦豊

    秦豊君 塩田さん、ワインバーガー氏とはさりげないグリーティングですということを言いたいかもしれぬが、なかなかそうはいかないんですね、会う機会が少ないから。  例のNLPの問題は、三宅島一本に絞った回答ができる状態なのか、三宅島と百里をあわした運用をちょっと予備的に回答できる考えなのか、その点だけ聞いておきましょう。
  341. 塩田章

    政府委員(塩田章君) そのどちらでもございません。三宅島も百里も含めた回答はできません。
  342. 秦豊

    秦豊君 それから、今最後に申し上げることは、いささかならず旧聞に属する護衛艦「くらま」の事故の問題。現代のテンポからすると、いかにも古色蒼然たる問題ではあるが、どうしても調べてみると納得がいかない。したがって、あえて聞いておきたい。  これ、長官、「くらま」が、五十六年に竣工した直後、側面からばちっと撮ったアップの艦橋付近の中枢部分、この高いところ、マストの。これがそうですね。これが大きな事故によって無残にもこういう形に完全にぶっ飛んだ。吹き飛んでいる、明らかに。これはプラモデルではない、「くらま」の本体。  そこで伺うんだけれども、事故はいつ起こったのか、どんな事故なのか、明らかにしてもらいたい。
  343. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) お答えいたします。  本事故は、昭和五十七年の十月十三日午前五時五分ごろというふうに聞いておりますが、佐世保港の岸壁に停泊をしておりました「くらま」、これは第二護衛隊群所属の護衛艦でございますが、これを岸壁から係留がえをするということで、いわゆるボイラーのベースバーナー、ベースバーナーと申しますのはふろで言いますと点火用の、バーナーでございますが、これから第二バーナーに切りかえるというときに、第二バーナーに点火をしてそのベースバーナーを消す際に、どういうわけか両方消えてしまった。消えたとき、直ちに燃料パイプをオフにすればいいわけですが、それが若干おくれたものですから、ある程度の燃料がボイラー内に入ってしまって、ボイラーの熱で爆発をした。その結果、ボイラーとか、あるいは排気管、そういったものが破損をしたということでございます。
  344. 秦豊

    秦豊君 さりげないちょっとしたボイラーの操作ミスでこんなに艦橋の中枢部分が見事に吹っ飛ぶような大きな事故になぜ結びつくのか。これはそんなにか細い艦なんですか、四百数十億もかけて。また、修理にはどれぐらいの期間を要したのか。幾らかかったのか。それからさらに、時間がないから質問を重ねるけれども、年度がまたがっているが、決算はその修理費用をどう処理したのか。それをまとめて答えてもらいたい。
  345. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 今その写真のお話がございましたが、事故が起こりましたときには一部煙突の部分が膨らんだだけでございます。今ごらんになっている写真は、事故の修理と同時に年次修理を実施いたしまして、年次修理を実施いたします過程で外した状態のときに撮った写真をごらんになってそういうふうにおっしゃったのだと思います。  事故の修理の関係でございますが、五十七年十一月十五日から五十八年の四月十日までやっておりまして、今申し上げましたように、ボイラー関係の事故の修復を行うと同時に、五十八年一月から並行いたしまして年次修理を実施しております。  それで、事故の修復関係の契約は約二億円でございまして、年次修理のための契約は別途いたしまして、約二・五億円でございます。
  346. 秦豊

    秦豊君 しかし、あなた、おかしいとは思わないかな。「くらま」より一年早く就役している「しらね」は健在で任務についている。一年後にできた最新鋭護衛艦たる「くらま」が大きな事故を起こして、あなた方によればさりげないと言っているが、これは専門家が三千ミリの望遠で撮影した直後の写真なんですよ。冗談ではない。したがって、あなたの言い方は成立しない。  残り時間をにらみながらやっていて、こういう質問は気が急ぎますが、恐らくきょうはこういうことで時間切れになるかもしれないが、今後ともこの問題についてはあなた方のきょうの答弁ではとても納得がいかないから、もっと納得のいくような、「くらま」の事故のすべてについて、そしてあわせて今「くらま」はどういう状態にあるのか、どこに配属され、すべてのDDHとしての機能を完全に回復しているのかどうかについても正確な資料を提出していただきたいし、そのことは委員長にもぜひお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  347. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 事故の直後に撮りました写真はここに持っておりますので、お見せしてもよろしゅうございます。
  348. 秦豊

    秦豊君 私のも見せましょう。
  349. 木下博生

    政府委員(木下博生君) それから事故に関連して修理をどういうふうにしたかにつきましては、別途また御説明をさしていただきたいと思います。
  350. 秦豊

    秦豊君 まだ二分ありますから、私がここで申し上げたいのは、これをいたずらにいきなり欠陥艦船ではないかという決めつけ方はまだいたさない。いたさないが、本来ならばこういう護衛艦というのはつくった造船所に返すのが決まりであるにもかかわらず、それならば東京だ、IHIだ、なぜ長崎の三菱で厳重な警戒下に修理を続けなければならないのかなど、私にとっては解けない疑問がたくさんある。したがって、きょうはやや言いっ放しの感で終わろうとしているけれども委員長の御配慮によって、当委員会また私に対して正確な資料を提出するという約束だけはしてもらわないと困るが、長官も含めて、いかがでしょう。
  351. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 事故に関連しましたその修理に関する資料は、つくりまして提出というか、先生にお見せするということでよろしいわけでございますか、委員会提出するということでございますか。――提出さしていただきたいと思います。
  352. 西廣整輝

    政府委員西廣整輝君) 事故調査報告等については、先生に御説明したいと思います。
  353. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 御質問でございましたからお答えいたしますと、「くらま」は佐世保の第二護衛隊群に所属しておりますものでございますから長崎の造船所で修理したわけでございます。修理できる造船所は全国幾つかの土地にありますので、それの一番近いところで修理したわけでございます。
  354. 高平公友

    委員長高平公友君) 大体時間になりましたけれども、木下局長、ただいまの秦君の意見は、これらの詳細について委員会でやっぱり皆さんに知っていただく必要があろうと思いますので、資料の提出をお願い申し上げます。  本日の委嘱審査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後四時三十二分散会      ―――――・―――――