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公述人(高野邦彦君) 高野でございます。
私は今回の第二
臨調の第四部会に
関係したという
立場から、きょう若干の感想を申し上げたいと思います。
まず、先ほど
高橋公述人が「偉大なる
実験である」というふうな表現をされたのは、まさに今回の
行政改革であったというふうに思います。
今さら申し上げるまでもなく、
行政改革の今回の答申には二つの大きな理念が出ております。それは
活力ある福祉社会ということと国際社会に対する貢献の増大ということが今後
日本の進むべき
一つの大きな方向であるという理念が出ております。それを
行政改革を進めるに当たってどういうふうな視点から考えるかということで、「変化への対応」ということがまず第一点として挙げられておりますし、「簡素化・効率化」ということが第二番目の大事なポイントだというふうに
結論づけられております。
そこで、まさにこの電電三
法案に関しましても、これは
臨調答申に沿うものとして今回これが
成立されることは、第二
臨調に
関係した者として大変に期待するし、できるだけ早期に
法案として
成立さしていただきたいというふうにも思います。
ややその点を具体的に申し上げますと、先ほど来お話がありましたように、今日の
技術革新というものは、いわば従来の
技術革新が筋肉系統の
技術革新に対して、神経系統の
技術革新であるというふうな表現がされますけれ
ども、高度
情報化社会というものの展開というものはまことに急速な進歩であります。その中で、
電気通信事業というものは
一つの大きな担い手として脚光を浴びているわけでありまして、こういうふうな
電気通信事業の今後の発展を考えます場合に、やはりその担い手にまさに
活力を持った組織体としてそれが展開されなければならないというふうに考えているわけでありますけれ
ども、原則論的なことで大変恐縮ですけれ
ども、結局、従来の
電気通信事業というものが、いわば一元的な
独占的な形で行われてきたというところに
一つの大きな問題を発見したわけでありまして、第二
臨調が、この
公社の形というものが新しい時代に非常にそぐわないというところから
改革案を提案したことは御承知のとおりだろうと思います。
そこで、今回の
法案というものを見ますと、これが
一つの大きな
実験であるということの性格にもよりますけれ
ども、同時に、毎年あるいは三年後あるいは五年後、幾つかの見直しということがうたわれております。これは大変に重要なことでして、この新しい日々進歩する、日々変わってい
く
状況の中で見直しというものをやっていただくということはこれは絶対的に必要であるというふうに思います。
したがって、まあこの
法案というものもそういう変化に柔軟に対応できるような形で
成立されるよう御
審議をお願いしたいというふうに思います。
そこで次に、新電電の性格というものと
電気通信事業の行政の
あり方についての若干の感想を申し上げたいというふうに思います。
今回の
公社の株式
会社化、それから
独占からの脱皮、つまり
競争原理の導入ということは、これはまあ自由社会の基本的な基礎を強化するという
意味で大変に高く評価されますし、注目すべき前進であるというふうに受け取っております。
その理由は、申し上げるまでもなく市場原理というものの大事さ有効さでありまして、それのいわば資源配分の適切な
状況というものを全体としてつくり出していくということが重要なことになるだろうと思います。したがって、そこでは、また原則的なことを申し上げて恐縮ですけれ
ども、幾つかの点が考慮されなければならないというふうに思います。
その
一つは、行政もそれから新電電も、当面は
競争者の出現を歓迎し、これを育成する姿勢というものをとり続けることが望ましいということであります。これは法律の運用という問題とも
関係してくるというふうに思いますけれ
ども、余りにも煩雑であり、余りにも厳しいという条件や手続というものはできるだけやっぱり避けた方がいいだろうというふうに思います。
競争原理というものの導入ということは、巨大なガリバーがいる段階では大変難しい問題も起ころうかと思います。しかし、それは今後のこの三
法案の運用によって漸次これを育てていくという方向がとられることが望ましいと思います。
それから、新電電について申し上げますと、まあ
臨調答申に従って
民営化というものは方向が打ち出されてきたわけでありますけれ
ども、その
意味は、結局
公社制度では実現が非常に難しいあるいは期待できなかった当事者能力が増大するというところに一番大きな
意味があるだろうと思います。それは結局、自己
責任の原則が貫かれるということでありまして、それによって効率化とか合理化というものの実が飛躍的に増大するというふうに予想されるためです。これまでの
我が国の
電気通信事業というものは確かに
電電公社によってリードされてきましたし、いわゆる積滞の解消とか、それから
全国の自動化という偉業を、なし遂げた
公社の実績というものは高く評価するのにやぶさかではありません。
しかし、第四部会が注目したことは、既に数年前から黒字ではあっても経費の増大から収支差額が圧縮されてきたという事実であります。このために、このまま推移しますと確実に収益の圧縮と、あるいは赤字化への方向というものもたどらざるを得ないという問題点が
一つありました、
それから二番目は、行政のあるいは
政府あるいは政治と言いかえてもよろしいかもしれませんけれ
ども、大きな枠がありまして、いわば投資あるいは
料金その他事業計画、その他すべて予算制度、
国会の決定に待たなければならなかったという
意味が大きな
公社の足かせになっていたということであります。したがいまして、今後進展する高度
情報化社会の旗手として
電気通信をリードする新電電というものは、この
競争条件の整備ということでますます合理化し、さらに効率化して社会のさまざまな新しい
ニーズにこたえていく
立場にある、あるいはそういう
責任があるというふうに思います。
実際、今日
電電公社の問題というものは、結局三十万人を超える巨大な
企業体であるということですね。これをいかに効率化するかということが恐らくは
公社の最大の課題に多分なっているだろうと思います。
独占であり、それから巨大であるということ、これはまあ
経営者の意識あるいは組合あるいはそれが与える社会への影響その他考えてみますと、一般的な
企業的な考え方とは相当隔たっている、相当違っている面があるという問題だと思います。
なぜ巨大であり
独占であることの問題があるかというと、結局行政からの過剰介入を招きやすいこと、あるいは
経営者の管理の目が届かないこと、それから官僚化するとか、それから規則ずくめになるとか、事なかれ主義になるとか、労使の心の通い合いかないとか、いろんな問題があると思いますけれ
ども、そういう問題をとにかく
民営化と、それから
競争の原理でこれをなくしていく方向というものが望まれるわけでありまして、まず今日のこの電電三
法案、いろんな問題はあろうかと思います。あるいは第二
臨調の報告とも若干違う面もあります。しかし、とにかくこれは新しい時代の新しい
実験でありますから、やってみなければわからないという
要素もあります。したがいまして、御
審議を慎重にやっていただくことは結構でありますけれ
ども、とにかく現在、ここまで来た段階ではその電電の対応あるいはその他事業界の対応とも考えまして、できるだけ早期の
成立というものを特にお願いしたいというふうに思います。