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1984-08-03 第101回国会 参議院 逓信委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年八月三日(金曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――   委員異動  八月三日    辞任          補欠選任     梶原 敬義君      久保  亘君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         大木 正吾君     理 事                 長田 裕二君                 成相 善十君                 宮田  輝君                 片山 甚市君     委 員                 大木  浩君                 岡野  裕君                 沖  外夫君                 志村 愛子君                 新谷寅三郎君                 西村 尚治君                 山内 一郎君                 久保  亘君                 中野  明君                 服部 信吾君                 佐藤 昭夫君                 中村 鋭一君                 青島 幸男君                 田  英夫君    政府委員        郵政大臣官房長  二木  實君        郵政省通信政策        局長       奥山 雄材君        郵政省電気通信          局長       小山 森也君    事務局側        常任委員会専門        員        酒井 繁次君    公述人        元国際電信電話        株式会社取締役  肥爪 亀三君        社団法人経済団        体連合会常務理        事産業部長    内田 公三君        九州大学名誉教        授        高橋 正雄君        大幸通信株式会        社代表取締役   三村 俊隆君        全国電気通信労        働組合中央執行        委員長      山岸  章君        有限会社経済論        壇社顧問     高野 邦彦君        大阪市立大学商        学部講師     安部 誠治君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○日本電信電話株式会社法案内閣提出衆議院  送付) ○電気通信事業法案内閣提出衆議院送付) ○日本電信電話株式会社法及び電気通信事業法の  施行に伴う関係法律整備等に関する法律案  (内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 大木正吾

    委員長大木正吾君) ただいまから逓信委員会公聴会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  本日、梶原敬義君が委員を辞任され、その補欠として久保亘君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 本日は、日本電信電話株式会社法案電気通信事業法案並びに日本電信電話株式会社法及び電気通信事業法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案、以上三案につきまして七人の公述人方々から御意見を伺います。  この際、公述人方々一言ごあいさつを申し上げます。  皆様には、御多忙中のところ御出席を賜りましてまことにありがとうございました。  御案内のように、日本電信電話株式会社法案外二案はただいま参議院において審議中でございますが、その内容は、国民生活に重大な関係がございます。したがいまして、公述人方々から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  これより公述人方々に順次御意見を述べていただくのでありますが、議事の進行上、お一人十分程度でお述べを願い、公述人方々の御意見陳述が全部終わりました後、委員質疑を行うことにいたしますので、御了承願います。  なお、発言はお座りになったままで結構でございます。  それでは、まず肥爪公述人にお願いいたします。肥爪さん、どうぞ十分間の公述をお願いいたします。
  4. 肥爪亀三

    公述人肥爪亀三君) 御指名にあずかりました肥爪でございます。  私は、おわかりいただきいいようにするために、まず結論を先に申します。私の結論は、電電公社成績を上げているからこれはこのままで存置すべきだという意見であります。  それでは、電電公社ができますにつきましては、それの沿革をまずちょっと申し上げたいと思います。  日本の国が電話技術を輸入して以来百年余りたちますが、その間一貫して国営または公社経営でやってきておりまして、その最初の七十年間ほどは一般会計の中におりまして、利益はほかの方に吸収されるということであったんでありますが、昭和九年に特別会計をつくりまして、八千二百万円を限度としてそれ以上の利益電話のために使えるということになりまして、非常によくなったのであります。  続きまして、日本戦争に負けまして、アメリカが進駐してまいりました。アメリカ軍の中にはATT人間軍政要員として大分たくさん入っておりましたが、アメリカ人は大体国営主義者なんですね、理屈としては。それで、当時子会社として国際電気通信株式会社という設備提供会社があったんですが、それも人と物とを合わせて逓信省に吸収合併しろということを命じてきまして、それからまた逓信省ということで郵便と電信電話を一緒にやっておりましたが、電話の能率を上げるためには二つのエージェンシーを設けよということで、それを郵政省電気通信省に分からまして、私がその電気通信省経理局長になったのであります。  で、アメリカが来まして、まず一番電気通信にありがたいことは、納付金を出しておりましたのを、これは不合理だというので納付金を出すことを廃止を命じました。それで非常によくなりまして、そこへまた佐藤榮作電気通信大臣の時分に、公社にして人事財務会計企業並みにせにゃいかぬということで、佐藤さんも了承されまして、その省議に列席した私はほとんど唯一の生き残りでございますが、それからずっと公社にしていただいたわけであります。そこで私が見ておりましたのは、戦争に負けてから士気が阻喪しておる、弛緩しておるということを考えましたので、経理局長になりまして激しい抵抗を冒して粛正をした んでありますが、そういうこともやりまして非常に関心を持っておったものですから、今日まで電気通信事業を見ておったわけであります。  公社になりましてから三十年にして非常に成績を上げまして、経営的には、多年の積滞数を全部解消して、すぐつく電話、それからダイヤル一つ全国どこへでもつながる電話を完成し、技術はまた世界トップクラスに達しました。  技術の方は、例えば昭和三十四年ですけれどもアメリカ研究要員は一万六千四百十人あったんですが、電電公社とそれからKDD合わせまして研究関係は千三百五十一人でありました。十二分の一ぐらいであります。アメリカ人口が一億七千万、当時日本は九千万でしたから人口比から見るとますます手薄でありますが、それで一人当たりの経費はアメリカは四百七十八万円使っております。日本の方は一人当たり百六十六万円使っておるわけです。そういうようなぐあいに四分の一ぐらいしか使っていないんですが、それだけの手薄、それだけの乏しい金を活用しまして一生懸命働いて、そして三十年間技術トップクラスに立つに至ったのであります。  それから経営的に見ますれば、とにかく積滞が解消し、すぐつく電話、すぐつながる電話を完成し、そしてサービスとそれから料金は非常にすぐれたもので、料金などは世界一安いんじゃないか。例えば市内料金ではアメリカの三分の一ぐらいであります。  そういうぐあいでありますので、臨調の方でこの電電公社改革を取り上げるような雲行きになりましたので、私は昭和五十六年の十月の三十日に三十枚の上申書臨調に出しました。そして、汚職のあったことにつきましては、先ほどもちょっと申しましたが、私が激しい抵抗を冒して粛正をして会計検査院長にも褒められたのでありますが、それで工事費の一割負担金を切りまして、そしてそれは非常に協力的な技術者があったおかげでありますが、それで当時の物価年間十七億、それが最近の工事幅物価では年間千四百億の節約をして会計検査院長にも褒められたのでありますが、その私が首になりまして、悪いことをしておった者は全然一人も処分されなかったという、こういう人事のまずさが影響があるんで、これは公正にして峻厳なる信賞必罰でやればよくなるんだ、そういう人事をやっておって汚職などに関係することは木によって魚を求むるがたぐいであるということを中心にして三十枚の上申書を出しまして、加藤四部会長から有益な意見だとして褒めていただいたところであります。それから、公社真藤総裁にもそういう点は申し入れました。公正にして峻厳なる信賞必罰をやるならば公社はよくなるということを申し入れしたんでありますが、真藤総裁からは御返事は伺えなかったわけであります。  そういうことでおりますうちに、だんだん、それから民営論が出てまいりまして、民営論の根拠は、とにかくさっき言った汚職がけしからぬとかそういう人事のまずさでありまして、公社関係のないことで、そういうことと言えば三越の汚職はどうかと言いたくなるわけでありますが、そういう人事を正しくやりさえすればよくなるということ。  それから、アメリカとかイギリスが民営だから民営がいいんじゃないかという意見があるわけでありますが、それは私は三十年前にアメリカ電信電話事業調査団の団長でアメリカへ行ったんですが、アメリカは、御案内のとおり、電話というものは自然発生的にベル特許権でできた。そして非常に個人主義の強いところですから、何か民営で頑張っておるわけでありますが、ところが、特許権が切れて雨後のタケノコのごとく電話会社が九千二百までできましたので、ATTはびっくりして買収に出たんであります。私が行ったときには四千ほどに減っておりましたが、そんなに買収するんなら将来国営にするぞという契機が動いたものですから、ATT国策的見地を考えるよりは個人主義的な営利本位ですから、それならというんで、農山漁村というようなもうからないところはやらないで、大都会のもうかるところだけを全体の八〇%を占めるような状態経営をやったわけです。それでもうATTは横暴だというんで、今回分割、二十二の子会社を完全に独立させて、国家の大事なインフラストラクチャーを破壊してしまって、この通信網が非常にまずくなってきたわけです。その弊害が大分出ておりまして、例えば市内料金は非常に高くなる。たしか七億ドルの市内料金の値上げの要望ベル系会社から出ておるようであります。それから地方の関係も非常にこれでは迷惑しておるというようなことで、それからアクセスにつきましても非常に困難があって、二十二回ほど回さないと電話が通じないというようなことがあるとか、非常に困難……
  5. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 後で御質疑もございますので、十二分ほど過ぎましたので一応締めくくっていただきたいと思います。
  6. 肥爪亀三

    公述人肥爪亀三君) そういうようなことでありますので、これは成功しておるんだからつぶさないでいただきたいということで、もしこれを民営にしますと、一遍民営にしたら、これはもはや三年、五年先に民営は間違いであったからもとへ戻そうといっても、これは絶対にできないんで、これは私がKDDで体験しておるわけでありますし、それからKDDだって三十年間で二回倍額増資、四分の一増資を二回やる。一回時価発行増資をして五百円株が二万四千円、四十八倍ぐらいに上がったこともあるんですから、NTTが民営化したらこの株は物すごい値段で上がるだろうと。それで今売るということは大安売りをするということになりまして、これは政治的責任じゃないかとさえ思うぐらいであります。そういうことでありますので、それから民営にするとこんな巨大な会社が一社でおることはできませんで、分割するということがある。そうしますと、一つネットワークが破壊されまして非常に通信が不便になるというようなこともございますので、ぜひとも……
  7. 大木正吾

    委員長大木正吾君) ありがとうございました。  時間が少し超過いたしましたので、全体の関係で切らしていただきます。ありがとうございました。  次に、内田公述人にお願いいたします。
  8. 内田公三

    公述人内田公三君) 経団連常務理事内田でございます。  本日、この逓信委員会におきまして、電気通信法制度改革の問題につきまして私どもの見解を述べる機会をいただきましてありがたく存じておる次第でございます。  今後の高度情報通信時代におきまして、情報は物資、エネルギーに次ぐ第三の要素として重視されておりまして、情報を伝送する通信ネットワーク国民経済基盤として極めて重要になりつつあります。特に、産業国際競争力を考える上で産業ネットワーク化推進は不可欠の要素となってきておりまして、多様な通信ニーズの充足と通信コストの低減とが産業界の切実な要望でございます。  経団連では、このような観点から、主として通信を使うユーザー立場から、産業におけるより一層の情報化ネットワーク化推進のための方策を検討してまいってきております。特に最近におきましては、通信回線利用自由化の問題、通信事業への民間参入の問題、電電公社改革の問題、さらには民間による衛星通信利用早期実現の問題など、いわば通信分野ハードソフト両面にわたりましてその自由化要望してまいった次第でございます。  一昨年七月の臨調基本答申を受けまして政府が今国会に提出された電気通信法制度改革に関連する一連の法案には、経団連が従来要望してまいりました事項がほぼ取り入れられておりまして、産業界から見て評価できる内容法案であると思っております。この法案成立がおくれますと、厳しい国際競争にさらされております我が国産業界にとって大きなハンディキャップを負わされることになりますので、私どもといたしましては、関係法案早期成立を強くお願いする次第でござい ます。  本日はせっかくの機会でございますので、電気通信法制度改革に対する私どもの考えをやや立ち入って御説明申し上げ、御理解を賜りたいと存じます。  振り返ってみますと、戦後、我が国では基本通信網としての電話網建設に重点が置かれ、電電公社一元的体制のもとでその建設が精力的に進められてきたのであります。その結果、今日、電話網については世界でも有数の水準に到達しまして、その意味で戦後の通信政策は所期の目的を達したと言えるかと存じます。電話の架設の積滞解消及び全国即時通話化が既に昭和五十二年度に達成されましたし、また情報通信分野における技術革新が日進月歩で進んでおりまして、産業界ではこれらを活用したオフィスオートメーションあるいはファクトリーオートメーション、さらにはこれらを結びつけた企業内ネットワーク企業企業とを結ぶ企業間ネットワーク構築がそれぞれ大変な勢いで展開を見せております。  御案内のとおり、米国や英国では通信分野競争を導入することによって、通信の自由な使い方を認めるとともに、最新の技術革新成果通信分野に導入する政策をとっております。そのねらいとするところは、技術革新成果利用者に還元するとともに、独占弊害を防ぐというところにあるように思われます。我が国におきましても、電電公社がこれまで果たしてきた役割は高く評価されてよいと存じますが、多様な通信メディアをすべて一元的体制の中に閉じ込めておくということは、技術の発展の見地からも、ニーズに適切にこたえていく上からも好ましくないと考えます。民間活力創意工夫を生かしてこそ高度情報通信社会早期構築が可能になるものと確信いたします。  その意味で、今回の電気通信法制度改革の趣旨は、民営化によって新電電会社活力を十分に発揮させるとともに、全国的な役務提供義務を負った新電電会社と、それからニーズに応じて機動的にサービスを提供する民間新規参入業者とが相補完し合うことによって、我が国全体としての通信高度化を図ることにあると理解しております。私どもとしては、今回の法案によって今後の高度情報通信社会に向けて制度的な基盤が確立されることになると評価しておる次第でございます。  利用のサイドから通信分野における最近の歩みを若干振り返ってみますと、米国では一九七一年に第一次コンピューター裁定が出され、通信回線利用が大幅に自由化されました。その後、付加価値通信業ども認められ、通信ネットワーク化が急速な進展を見まして、その結果、通信分野全面自由化へと向かい、今日では通信ユーザーをして、もはやこれ以上望むものはないという状況を生み出していると聞いております。  ところが、我が国の場合、電電公社独占を守るということで通信の自由な利用が厳しく制限されてまいりました。郵政省が三年ほど前に提案されたいわゆるVAN法案も結局関係者のコンセンサスが得られないで、わずかに中小企業VANというものが超法規的な特例措置として認められたにすぎません。他方において、利用者側からの通信自由化に対する要望は高まる一方でございまして、結局、今回の改革法案において、我が国においてはハードソフト両面において通信分野自由化を一挙に行わなければならなくなったと、こういうふうに考えている次第であります。ハードソフト両面において一挙にという意味は、利用自由化と同時に、通信事業そのもの自由化、その両方が一遍に行われることになったという意味であります。通信回線の開放がおくれた結果、日本産業界通信ネットワーク化とその利用技術の面でアメリカに十年のおくれをとっていると言われております。ここで我が国通信分野自由化がさらにおくれることになりますと、我が国通信ネットワーク化の面で米国に今後追いつけなくなるのではないかと危惧しておるのであります。今後の高度情報通信時代におきまして、その基盤となる通信ネットワーク化利用技術の面、さらには通信コストの面で国際的に立ちおくれることは、単に産業活動にとどまらず、国民生活においても相対的に我が国水準が低下することにつながるものと存じます。関係法案の今国会での成立を熱望するゆえんでございます。  最後に、今回の法案内容に関連して、産業界立場から三点ばかり御配慮をお願いしたいと存じます。  第一は、新電電会社新規参入者の間の公正競争条件の確保の問題でございます。  何分新電電会社は巨大であり、新規参入者がこれに伍して競争していくことは極めて困難であろうと思われます。米国通信政策一言自由化と言われておりますが、実態を見ますと巨大で市場支配力を有するATT活動を規制することによって有効な競争状態をつくり上げるということに主眼が置かれてきたと聞いております。我が国においても、公正な競争を確保する見地から、新電電会社による内部相互補助の禁止、研究成果公開等措置が望まれます。  第二は、新電電会社による投資の問題であります。進出分野あるいは進出態様いかんによりましては問題を生ずるおそれもありますので、慎重な対応を望みたいと存じます。  最後の第三は、新規参入を促進するための条件整備であります。新規参入を、ただ法律的に可能になったということにとどまらず、現実にこれを可能にするには、電波の割り当てや通信衛星調整、打ち上げにかかわる課題、あるいは国際的な調整など、今後早急に体制を整えなければならない問題が残されております。  以上、種々申し上げましたが、今回の改革行政改革の上からも、また将来に向けて我が国電気通信のレベルをさらに高度化する上からも今をおいて時はないと考えます。ぜひとも今国会での法案成立を重ねてお願いしまして、陳述を終わらせていただきます。
  9. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 内田公述人ありがとうございました。  次に、高橋公述人にお願いいたします。
  10. 高橋正雄

    公述人高橋正雄君) それでは申し上げます。  公述人というのは身元を明らかにすることになっているのかどうか存じませんけども、私はここへ来たのは社会党からでしたけども、私はどこにも所属しておりませんで、どの党にも入っておりませんで、六十年来学校の先生を務めているわけであります。で、ふだんからこういうことを考えておりますので、きょうの問題にも関連すると考えますので、初めに申し上げます。  それは、人間歴史というのは実験歴史だということであります。個人の場合もそうですけれども企業であれ国家であれどんなものであれ、人間の生存というのは実験歴史だと。実験ですからうまくいくかと思ってやってみてもまずくいくことがありますから、その辺はまたやり直せばいい。やり直してもうまくいくとは限らないけれども、それならまたやり直せばいいじゃないか。実験の中には一度やってしまうとやり直しができない場合もあります。子供などを産んでしまうと、いい子が産まれればいいですけども、悪い子が産まれたらやり直しはできません。しかし、大体多くの場合やり直しはきくわけであります。  日本のことを――どうも講義調になってごめんなさい。日本のことを考えますと、明治維新という大きな実験をやったわけであります。それから、その後四、五十年して戦争、敗戦という実験をやったわけであります。その後四十年間たちまして、いろんな事情が重なりまして世界的にも大きな国になってしまったわけであります。  それでは何も問題がないのかというと、問題は大ありであります。褒めてくれるところもありますけども、そうばかりは言えない。そういう点で、戦後四十年の実験、あるいは明治から数えて一世紀以上に上る実験の結果をこの辺で国民みんなで再検討してみようじゃないかというのが、せんだってからの臨調が取り組んでいる問題だと思うんであります。きょう皆さんにお話し申し上げる三つの法案もそういう実験の再検討の一つだと思う んであります。  そこで、私は衆議院の方で決まりました附帯決議というのを非常に重く見るわけであります。その一つに「政府は、我が国通信主権」ということを書いてあります、「通信主権を守り、」。で、国家とか主権とかと言うと何か保守反動的な感じを持つ人もありますけども、申し上げるまでもなく、現在の世界は百七十ぐらいの主権国家と称するものが集まって、一方では和気あいあいでありますけども他方ではかなりあくどい競争対立があるわけであります。そういう中で日本という国家があるわけでありまして、その国家がどういう国家であってほしいか、どういうあり方国際状況で持つべきかということは非常に重大な問題であります。  申し上げるまでもなく、今の憲法では、国会日本国権最高審議の機関でありまして、国民から直接に選ばれた皆さん責任が重大なわけであります。その点で、附帯決議の中で、衆議院の方で、「我が国通信主権を守りこと書いてあるのは非常にいいことだと思うのでありまして、単に通信主権ではなくて、この百七十といういろんな国の間における日本民族日本国民日本国家あり方というのをぜひ考えていただきたいと。で、「国民経済、」、「国際競争力」というのもありますが、それから「競争原理を有効に機能させるため、」ということも書いてあります。  経済学の教科書になって恐縮ですけれども競争原理が有効であるためには、競争に参加するすべての企業、すべての人間がおおよそ平等の力を持っているということが前提でありまして、もしそうでないのに競争原理といったようなものをやみくもに使いますと、結局弱肉強食、優勝劣敗ということになって、国民全体としては惨たんたる結果になりかねないわけでありまして、その辺も大いに皆さんにお考えをお願いしたいわけであります。  それから、やはり衆議院附帯決議の中に「情報通信基盤整備のための法制度」の云々と書いてありまして、これも私は非常にいいことだと思うのでありまして、どういう法の制度がいいのか、法がすべて悪いとは限りませんで、いい法を皆さんがおつくりになって、今申しました我が国主権を守るという立場競争原理を有効に発揮するという状況とをどういうふうにしたらうまくいくのかということを、法の、あるいは制度の改革を通じておやり願いたいのであります。  それから、政府は、今回の事業の法案が実施された後の状況について、毎年一回報告をまとめて国会に出させるということを衆議院がお決めになったようでありまして、これも大変私は賛成でありまして、さっき申しましたように、要するに、人間のやることなどは幾ら考えて、幾ら議論してやっても実験にほかならないのでありますから、その実験がいつまでたっても何の問題もなしにうまくいくということはあり得ないわけでありますから、どんな政策、どんな制度がつくられたにしても、つくられた瞬間からどういうマイナスがあるか、結果があるかということをみんなで考えてよりいいものにするのが、人間の道ということはありませんけれども、議会政治の道であると思うんであります。そういう点を衆議院の方で附帯決議としてやっていることに大変賛成であります。  それから、「日本電信電話株式会社の自主性を尊重する」というんですけれども、参議院から送っていただいたものを見ましたら、新しくできる会社ですね、日本電信電話株式会社というのは、「国民生活に不可欠な電話の役務を適切な条件で提供することにより、当該役務のあまねく日本全国における安定的な供給の確保」と書いてあるんです。これは個別企業民間の利潤追求と言うと少し悪いですけれども、採算を考える企業に対してはこういうことは言えないわけでありまして、あまねく日本全国に安定的な役務の供給を義務づけるんでしたら、そういう義務づけによって成り立つ企業は株式企業と言おうが、何と言おうが、それは普通の意味での企業ではないわけでありまして、その企業に向かって、そういう足や手を縛られていないほかの企業競争原理と称してうまい汁だけを吸うようなことになりましたら、その結果、全体として果たして日本通信関係サービス国民全体が自由に平等に受けられるような状況になるかどうか。  私は、この日本電信電話株式会社法案の第二条を読みましてびっくりいたしまして、こういう条項をつくっておいて、新しく生まれる第二ですか、電信電話株式会社というのが競争原理のマーケットでやっていけというのは、非常に矛盾があると思うんでありまして、普通の企業でしたら、もうからない地区だったら、例えば過疎地区などは電話やめましたと言ったってだれも文句を言わないはずでありますが、この条文を読むとそうでもないらしいので、その辺のことなどもぜひ皆さんに、何といいますか、慎重審議をお願いいたしたいと思うのであります。  要するに、繰り返しになりますけれども、現在の日本では国会が最高権力者でありまして、国会が、政府はどういうことをやれ、どういうことまではやるな、民間企業はどういうことをやれ、どういうことはやるなというふうなことを政府と仮に企業にいたしますと、政府企業の役割の分担を決めて、それを国民的な立場から監視し、必要とあれば法律をつくるのもよし、撤廃するのもいいんでありますが、そういうことをなさるという重大な日本全体の最高の権力者であられる議会の方々に大いに慎重審議をしていただいて、きょうのところは電信電話の問題でありますが、電気通信の問題について、最も今の日本状況からいって理想的な制度になるような法案をつくっていただきたい、そういうふうに考えております。  これで終わります。ありがとうございました。
  11. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 高橋公述人、ありがとうございました。  次に、三村公述人にお願いいたします。
  12. 三村俊隆

    公述人(三村俊隆君) 私は、ファクシミリ並びに電話機などの通信関係の機器の販売と工事やサービスをいたしております大幸通信の三村でございます。  本日は、参議院の逓信委員会におきまして、電気通信改革法案に対し、意見を述べる機会をいただきまして、まことにありがとうございます。  私は、電話やファクシミリなど、通信機器の販売を業とする一中小業者の立場から、この際、率直な意見を申し上げたいと存じます。  まず、総論といたしまして、電電公社民営化を初めとする電気通信自由化に対しましては、基本的に賛成でございます。私どもが理解しております改革法案のねらいとするところが真に具現化されていきますならば、利用するすべての企業国民にとって、また一方、関連するすべての産業界にとって、多くの価値を与えてくれるであろうと期待しているからであります。  しかしながら、改革法案を各論としてその内容を見ましたとき、もし誤っておればお許しいただきたいと思いますが、不明確な点が幾つがあり、その明確化が先延ばしになっているという不安が離れないからであります。その中で、特に私ども通信機器の販売業界といたしましては、その将来を大変危惧せざるを得ない問題点が生じてきているということでございます。それは、新電電の営む業務のうち、端末機器を販売する附帯業務が、さきの衆議院におきます御審議、御決定によりますれば、政府原案にございました郵政大臣の認可対象事項から外された点でございます。  以下、この問題に絞って具体的に業界の実情を申し述べたいと存じます。  まず第一に、現在の電電公社体制においてすら、三年前、ファクシミリ関連業界を大混乱に陥れた事件があったということでございます。  すなわち、昭和五十六年十月二日、電電公社がトラックⅠ方式により、ファクシミリ装置の競争入札を行った際、一部のメーカーが電電公社の大量購入を当て込み、市場価格の四分の一以下という超低価格で落札いたしました。電電公社は、この落札購入価格から従来の計算方式による販売価格をはじき出し、市場価格の半値で売り出そうと したため、私どもディーラー、サービス会社、メーカー、ファクシミリ関係業界と通信機械工業会は、一体となって中小の流通業界が全面倒産の危機にさらされてしまうと郵政省御当局に対して十数回に及ぶ陳情を繰り返しお願い申し上げた次第でございます。これを受けられた郵政省御当局の公正、的確な御判断と御指導によりましてやっと最悪の事態を防ぎ得たのでございます。  第二として、新電電となってもその巨大性が変わるとは思われません。したがって、このような不当な競争入札によって、超低価格で機器購入可能な新電電が単なる再販業者として何の拘束も受けないまま自由に販売を実施していくとすれば、さきに申し上げましたような事態が再発しても、我々中小販売業者として何の防ぎようもないということになります。  ここでちょっとつけ加えさせていただきますが、新電電が附帯業務として端末機の販売を計画されている主たるものは電話機器とファクシミリではないかと思いますが、この両者には市場構成に大きな違いがあるということでございます。すなわち、電話機市場は、本電話機では電電公社一〇〇%、その他通信機器類でも大きなシェアを持った公社主導型のマーケットでございます。したがいまして、本電話機開放後におきましても、公社電話機業界に最悪な事態が生ずるような大きな混乱は起こり得ないと思います。  しかし一方、ファクシミリを中心といたしますOA市場は全く逆でありまして、民間業界が営々辛苦ここ十数年間に築き上げました民間主導の市場でございまして、電電公社のファクシミリ市場におけるシェアはわずか数%にしかすぎないものであります。  このような民間が育てたファクシミリ市場に対して、附帯業務の認可対象外ということで新電電が自由裁量による独自料金の設定を行い、その公社から引き継いだ巨大な全国二千五百に上る営業所と充実したアフターサービス網に加え、何万人にも及ぶ豊富な人材の投入によって私たちの市場に大きく進出してきた場合は不公正な競争を強いられ、その影響ははかり知れないものがあることは容易に御理解いただけると存じます。  ファクシミリを中心とするOA販売業界において、十万社に及ぶ販売会社、代理店、販売店、工事店、サービス店などの中小企業群団が築き上げてまいりました民需市場と日本伝統の販売流通経路の仕組みは根元から崩れ去り、倒産、壊滅的な打撃を受けることが明らかであります。これは、ちょうど大型スーパー店が地方進出の場合に、地元中小小売業者が受ける影響の数千倍にも当たると思われます。  第三に、見方を変えて申し述べたいと思います。  電電公社民営化は、電気通信分野への自由競争の導入であると言われておりますが、民営化となってもその巨大性は変わらず、またネームバリューのある新電電であってみれば、自由裁量の身となったガリバーとして端末機器市場での独占性の一層の拡大を招来するのみで、既に民間の厳しい自由競争下にあるファクシミリ市場などへの参入は、民間への抑え込み以外の何物でもないと思われます。  第四に、以上を総括いたしまして、政府原案では附帯業務を認可対象としていながら、これが外されてしまったことは、中小企業の販売業者に対して何らの配慮もされていないのではないかと思わざるを得ない点でございます。  衆議院における附帯決議事項のうち第二項におきまして、新規電気通信事業参入者、いわゆる第二電電、これは大企業みずからの意思で出資し、進出をしようとするものでありますが、この第二電電に対しては、その成立、存立のために特段の配慮が盛られているにもかかわらず、逆に新電電の進出によって、一方的に大打撃をこうむることが予想される被害者の立場に立つ我々中小企業群に対しては、何らの配慮もとられていないのであります。  どうか私ども中小企業の販売業者に対するガードライン並びに関連する多くの業界の健全なる発展のため御指導のお立場政府は堅持していっていただきたいと思うのであります。  よって、ぜひとも郵政大臣の認可対象外とした新電電の附帯業務に対する歯どめを、少なくとも附帯決議の中に盛り込んでいただきたいと思うのであります。あるいは駆け込み寺的調整機関を国会内に設置されることを強く強く切望する次第でございます。  最後に重ねて申し上げて恐縮でございますが、私どもは、電電公社民営化電気通信事業自由化の趣旨、そのための法改正については基本的に反対というのではなく、むしろ賛成でございます。  しかしながら、電電公社民営化、新電電はその影響するところ余りにも大でございますので、より具体的に、より問題点を掘り下げた審議を十分な時間をかけて御審議いただきたく、私ども中小企業並びに数十万に及ぶその従業員や家族の立場としても納得のいく、そして来るべき高度情報化社会に向けて、その歴史に汚点を残すことのない電気通信法の法改正であってほしいと切に願うものであります。  以上で意見の開陳を終わらせていただきます。  本日はありがとうございました。
  13. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 三村公述人、ありがとうございました。  次に、山岸公述人にお願いいたします。
  14. 山岸章

    公述人(山岸章君) 電電公社の当該企業の労働組合である全電通委員長の山岸でございます。  私は、観点を変えまして当該労働者の立場から意見を申し上げます。  第一のポイントは、電電三法案に対する全電通労働組合の基本的な考え方でございます。これは二つ申し上げます。  まず一つは、この電電三法案について我々は、本来は賛成できない、反対という、そういう立場でございます。しかし、現実には国会審議が進められまして、衆議院審議が完了しておる。言うなれば、最後の詰めの段階に来ておると私は考えます。  そういう今日的状況に則して考えるならば、現段階においては建前論は言っても始まらないと、こういう認識であります。  したがって、電電三法案の問題点について修正もしくは修正に準ずる解明を行っていく。そういう立場で取り組むべきだという認識を持っております。  二つ目に申し上げたいのは、そのことと関連いたしますが、私たちの参議院の審議に対する要請でございます。  結論のみを申し上げますと、電電三法については、衆議院における審議経過と結論を踏まえていただいて、参議院において法案の問題点の修正ないし修正に準ずる解明を行っていただきたい。その上に立って本国会の会期中に前進的な議了を行ってもらいたいというのが我々の基本的な態度であります。  次に、第二のポイントとしまして、若干の具体的な見解を申し上げたいと思います。これは三点ございます。  まず第一は、電電三法案に関する衆議院の修正、それから附帯決議を含めた結論、これを当該の労働者としてはどう評価するかという問題でございます。この点について私たちは、衆議院結論は前向きに評価をしたい、こう考えております。  それから第二として、しからばその衆議院結論について君たちはもう全面的に異論はないのかと、問題点は感じないのかということが問題になります。この点はやはり評価はいたしますが、衆議院結論についてはなお幾つかの玉虫色の部分が残されている、こう考えます。この玉虫色の部分を残しておきますと、今後いろいろトラブルが実行の段階で発生をしてまいります。したがって、参議院においてひとつ明確な御検討をいただいて、この部分についての修正、それから修正が難しいということになれば、修正に準ずるような 解明をぜひ図っていただきたいと、こう希望するものであります。  しからば、衆議院結論のどの部分を君たちは玉虫だと言うのかということが問題になります。  この点は、当該の組合の立場で申し上げますと四つあります。  一つは、公共性に関する部分。これは衆議院審議の過程における政府答弁及び高橋公述人からも先ほど御指摘がございましたが、附帯決議等によってかなり公共性の部分については明らかにはされております。しかしながら、例えば電気通信サービス提供のあり方について、従来の公衆電気通信法でございましたら、あまねく公平にこれを提供するという原則がございましたが、今度は、あまねく安定的に電話サービスを提供すると、こうなっております。私は国民見地から考えるならば、これはやはりあまねく公平にというその基本的な姿勢というものがもっと前面に出されてしかるべきじゃないかと、こう存じますし、それから、公正競争条件がうまく確立できなくて、電電は巨大だからもうがんじがらめに縛りつけろなんてな格好でやられたり、あるいはクリームスキミングでもうかるところだけ参入されてつまみ食いをやられますと経営がペイしなくなってくる。そういうまずいやり方をしますと、これは一般の消費者である国民皆さん方に電話料金の値上げというような事態も起こり得る危険性がある。こういったものに対しても歯どめをかっちりとかける必要があるんじゃないか、こういうことを考えます。そういう観点から、公共性に関する部分について、さらに参議院の段階でより明確にしていただくといいんじゃないかと、こう思っております。  それから二つ目は、スト権の問題でございます。  衆議院では、当分の間二重制限を加えると。「当分の間」というのはいろいろ与野党で御論議されまして、三年間というように限定されました。しかし、三年たてばどうするかという問題について方向性が非常に不明確であると。中曽根総理の総括質問における答弁では廃止を含めて検討と、こうなっておると。廃止を含めるということは、廃止しないこともあり得ると、こうも通ずるわけでございまして、これは争いを三年先に延ばしたというにすぎないんじゃないかというような御意見もございます。  したがって、私はこのスト権の問題については三年間で見直すと言うんだったら、三年後には二重制限は取っ払う、廃止するということをはっきり言ってもらうようにしなければいけない。こういう点、参議院でぜひ掘り下げていただければありがたいと思います。  それから三つ目は、公正競争条件の確立と関連しまして、附帯業務に関する部分でございます。  この点について三村公述人からいろいろお話がございましたが、我々の認識とは大分違います。私たちは現在の民間の事業者の方々も新電電も共存共栄できるようにしていきたいと。新電電だけが生き延びて民間がつぶれるというようなことはやめなきゃいかぬ。そのかわり、民間が生き延びるかわりに、新電電がペイしなくて、そのしわ寄せが電話料金値上げ等で加入者に持っていかれるということも避けなければいけない。共存共栄という立場に立って、そのための公正競争条件をどうつくり上げるか、ここらのところをより明確にしていただきたいと思うわけでございます。  四つ目は、当事者能力に関する部分について、衆議院の段階で政治的担保は八割方確立したと思いますが、参議院段階でさらに検討を加えていただきまして、やはりでき得れば一〇〇%の政治的担保を確立いただきたいと、こういう点でございます。  それから最後に、第三に申し上げたいのは法案の扱いの問題であります。  私たちは、衆議院ではこの法案は議了されたと。しかし、参議院では継続審議だと。そして、先行きいつ、今度この参議院で決着がつくかわからないと。そういう展望が全く明らかにならないまま、中途半端な形で、俗っぽい言葉で言いますと蛇の生殺しのような格好で電電法案が棚上げされますと、当該労働者としては非常に不安と動揺が起こることを恐れます。それからまた、企業活力というものを引き出そうというけれども、私はこれに逆行する結果がここまで来れば出てくる危険性が非常に大きいと、こう考えるわけであります。  また、国際的に考えましても、スタートがおくれると、ここまで来れば、ATT,IBMは準備態勢が十分できるけれども、国内の対応する業界の態勢がどうかというと、これは法案がまだ成立してないというので非常にもたつくと。そうすると、通信主権の問題が出ましたけれども、下手をすれば大型VANを中心にして高度情報通信の分野では、これはATT、IBMに支配、席巻されるような事態を起こす危険性があると、こういうことを考えておるわけであります。  よって、私たちの結論としては、今申し上げましたような問題点について、参議院において十分御検討いただき、常識的な決着をつけることを前提として、我々全電通労働組合としては電電三法案については本国会の会期中に議了されるよう強く要請いたしたい、こう考えるわけであります。  以上であります。
  15. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 山岸公述人、ありがとうございました。  次に、高野公述人にお願いいたします。
  16. 高野邦彦

    公述人(高野邦彦君) 高野でございます。  私は今回の第二臨調の第四部会に関係したという立場から、きょう若干の感想を申し上げたいと思います。  まず、先ほど高橋公述人が「偉大なる実験である」というふうな表現をされたのは、まさに今回の行政改革であったというふうに思います。  今さら申し上げるまでもなく、行政改革の今回の答申には二つの大きな理念が出ております。それは活力ある福祉社会ということと国際社会に対する貢献の増大ということが今後日本の進むべき一つの大きな方向であるという理念が出ております。それを行政改革を進めるに当たってどういうふうな視点から考えるかということで、「変化への対応」ということがまず第一点として挙げられておりますし、「簡素化・効率化」ということが第二番目の大事なポイントだというふうに結論づけられております。  そこで、まさにこの電電三法案に関しましても、これは臨調答申に沿うものとして今回これが成立されることは、第二臨調関係した者として大変に期待するし、できるだけ早期に法案として成立さしていただきたいというふうにも思います。  ややその点を具体的に申し上げますと、先ほど来お話がありましたように、今日の技術革新というものは、いわば従来の技術革新が筋肉系統の技術革新に対して、神経系統の技術革新であるというふうな表現がされますけれども、高度情報化社会というものの展開というものはまことに急速な進歩であります。その中で、電気通信事業というものは一つの大きな担い手として脚光を浴びているわけでありまして、こういうふうな電気通信事業の今後の発展を考えます場合に、やはりその担い手にまさに活力を持った組織体としてそれが展開されなければならないというふうに考えているわけでありますけれども、原則論的なことで大変恐縮ですけれども、結局、従来の電気通信事業というものが、いわば一元的な独占的な形で行われてきたというところに一つの大きな問題を発見したわけでありまして、第二臨調が、この公社の形というものが新しい時代に非常にそぐわないというところから改革案を提案したことは御承知のとおりだろうと思います。  そこで、今回の法案というものを見ますと、これが一つの大きな実験であるということの性格にもよりますけれども、同時に、毎年あるいは三年後あるいは五年後、幾つかの見直しということがうたわれております。これは大変に重要なことでして、この新しい日々進歩する、日々変わってい く状況の中で見直しというものをやっていただくということはこれは絶対的に必要であるというふうに思います。  したがって、まあこの法案というものもそういう変化に柔軟に対応できるような形で成立されるよう御審議をお願いしたいというふうに思います。  そこで次に、新電電の性格というものと電気通信事業の行政のあり方についての若干の感想を申し上げたいというふうに思います。  今回の公社の株式会社化、それから独占からの脱皮、つまり競争原理の導入ということは、これはまあ自由社会の基本的な基礎を強化するという意味で大変に高く評価されますし、注目すべき前進であるというふうに受け取っております。  その理由は、申し上げるまでもなく市場原理というものの大事さ有効さでありまして、それのいわば資源配分の適切な状況というものを全体としてつくり出していくということが重要なことになるだろうと思います。したがって、そこでは、また原則的なことを申し上げて恐縮ですけれども、幾つかの点が考慮されなければならないというふうに思います。  その一つは、行政もそれから新電電も、当面は競争者の出現を歓迎し、これを育成する姿勢というものをとり続けることが望ましいということであります。これは法律の運用という問題とも関係してくるというふうに思いますけれども、余りにも煩雑であり、余りにも厳しいという条件や手続というものはできるだけやっぱり避けた方がいいだろうというふうに思います。競争原理というものの導入ということは、巨大なガリバーがいる段階では大変難しい問題も起ころうかと思います。しかし、それは今後のこの三法案の運用によって漸次これを育てていくという方向がとられることが望ましいと思います。  それから、新電電について申し上げますと、まあ臨調答申に従って民営化というものは方向が打ち出されてきたわけでありますけれども、その意味は、結局公社制度では実現が非常に難しいあるいは期待できなかった当事者能力が増大するというところに一番大きな意味があるだろうと思います。それは結局、自己責任の原則が貫かれるということでありまして、それによって効率化とか合理化というものの実が飛躍的に増大するというふうに予想されるためです。これまでの我が国電気通信事業というものは確かに電電公社によってリードされてきましたし、いわゆる積滞の解消とか、それから全国の自動化という偉業を、なし遂げた公社の実績というものは高く評価するのにやぶさかではありません。  しかし、第四部会が注目したことは、既に数年前から黒字ではあっても経費の増大から収支差額が圧縮されてきたという事実であります。このために、このまま推移しますと確実に収益の圧縮と、あるいは赤字化への方向というものもたどらざるを得ないという問題点が一つありました、  それから二番目は、行政のあるいは政府あるいは政治と言いかえてもよろしいかもしれませんけれども、大きな枠がありまして、いわば投資あるいは料金その他事業計画、その他すべて予算制度、国会の決定に待たなければならなかったという意味が大きな公社の足かせになっていたということであります。したがいまして、今後進展する高度情報化社会の旗手として電気通信をリードする新電電というものは、この競争条件の整備ということでますます合理化し、さらに効率化して社会のさまざまな新しいニーズにこたえていく立場にある、あるいはそういう責任があるというふうに思います。  実際、今日電電公社の問題というものは、結局三十万人を超える巨大な企業体であるということですね。これをいかに効率化するかということが恐らくは公社の最大の課題に多分なっているだろうと思います。独占であり、それから巨大であるということ、これはまあ経営者の意識あるいは組合あるいはそれが与える社会への影響その他考えてみますと、一般的な企業的な考え方とは相当隔たっている、相当違っている面があるという問題だと思います。  なぜ巨大であり独占であることの問題があるかというと、結局行政からの過剰介入を招きやすいこと、あるいは経営者の管理の目が届かないこと、それから官僚化するとか、それから規則ずくめになるとか、事なかれ主義になるとか、労使の心の通い合いかないとか、いろんな問題があると思いますけれども、そういう問題をとにかく民営化と、それから競争の原理でこれをなくしていく方向というものが望まれるわけでありまして、まず今日のこの電電三法案、いろんな問題はあろうかと思います。あるいは第二臨調の報告とも若干違う面もあります。しかし、とにかくこれは新しい時代の新しい実験でありますから、やってみなければわからないという要素もあります。したがいまして、御審議を慎重にやっていただくことは結構でありますけれども、とにかく現在、ここまで来た段階ではその電電の対応あるいはその他事業界の対応とも考えまして、できるだけ早期の成立というものを特にお願いしたいというふうに思います。
  17. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 高野公述人ありがとうございました。  次に、安部公述人にお願いいたします。
  18. 安部誠治

    公述人(安部誠治君) 御指名いただきました安部でございます。私は、大学で安企業論という科目を教えております。本日は、三点に絞りまして私見を述べさせていただきたいと思います。  まず第一点目でございますが、御承知のように、明治二年に東京-横浜間で初めて電信が開設されたわけでございます。これをもちまして、我が国電気通信事業が始まりましたが、以来百十五年の間、電気通信事業は一貫して国または公共企業体などによりまして一元的な運営体制がとられてまいりました。実はこの間、電気通信事業あり方経営形態に関しまして、いわゆる民営化論議が私の知る限りでも戦前におきまして六回、戦後に入りまして二回ほど起こっております。  一つだけ御紹介いたしますと、明治二十七年に当時の貴族院議員によりまして、電話民営建議が帝国議会に提出されております。これは結局却下されておりますけれども、このときの当時の逓信省の反論は次に申し上げます三点でございました。  一つ目でございますが、電話民営は、営利を図るにきゅうきゅうたる結果、利益ある方面には事業を拡張するも、しからざる方面にはその利益を与うるにちゅうちょすることをもって一般電話の普及を妨ぐること、これが当時の一つ目の理由でございます。二つ目は、独占事業の弊に陥り、料金を高価ならしめるおそれあるのみならず、交換業務に確実と安全とを期しがたく、技術上の改良もおぼつかないこと。三点目が、通信の秘密と業務の公平を期しがたいこと。以上三点が当時の逓信省の反論でございます。  以上申し上げましたように、いろいろ議論は起こったわけでございますが、結局通信事業は国の責任でもって行うことがよいのだという結論に戦前の場合は落ちついているわけでございます。  戦後につきましても、現在の公社制度発足の直前に二度ばかり経営形態に関する議論が起こっております。しかし、公社発足と同時に、いわゆる経営形態論議、民営化論議は鎮静いたします。公社発足後も、御承知のように、政府は各種の審議会を設置いたしまして、経営形態に関する見解をまとめてまいりました。こうした答申ですとか、あるいは意見書は都合六回ほど出ておりますが、いずれも現行制度、すなわち公社制度の維持と国の責任ある運営という結論に達しております。  具体的に御紹介いたしますと、一番新しいのは、昭和五十三年の公共企業体等基本問題会議の電電公社部会の報告でございます。この報告は、電話事業、電報事業、データ通信事業のおのおのにつきまして、そのあるべき経営形態を検討しておりますけれども、そのうちの要点はおおよそ次のようになっております。  一つ目は、電話国民生活に不可欠なサービスになっており、その公益性は極めて高い。二つ目ですが、今後、離島や僻地などの非採算的需要にこたえる必要が強まるが、これへの十分な対応を民間に期待するのは不安が残る。三つ目、自然独占性、技術的統一性、サービスの均一性を求められるため、全国的な独占事業として営まれるのが望ましい。四つ目、電気通信回線網は、我が国経済社会全体の神経組織と言うべきものであり、その施設整備の円滑化及び管理の適正化を最大限に確保するために公的に管理することが望ましい。このように述べているわけでございます。  少なくとも六年前までは、電気通信事業に関しましては今まとめましたような内容で、ほぼ我が国では国民的なコンセンサスができ上がっていたのではないかと私は考えております。  ところが、今回の電電三法案を拝見いたしますと、ともかく、百十五年間やってきました方式と国民の間のコンセンサスを大きく変更させる内容を含んでおります。私のように少し長い目で日本電気通信事業を見てきた者にとりましては、今回の電気通信事業改正の動きは、日本の百十五年の歴史に照らしてみると余りに急過ぎる、唐突過ぎるという感を否めないわけでございます。  そこで、まず第一点目に申し上げたいことは、事柄の性格がこういう内容のものでありますので、参議院の場において十分時間をかけられて、十分な上に十分な御審議をお願いしたい、こういうことでございます。  第二点目に電気通信事業をめぐる先進資本主義各国の動きについて申し上げます。  近年、技術進歩による電気通信情報処理の技術の融合によるいわゆる高度情報化社会を迎え、情報の国際流通が激しくなる中で、通信事業自由化競争原理の導入が時代の趨勢であるかのような論調が一部に強まっております。しかし、先進資本主義国を見渡してみますと、通信自由化を積極的に追求しているのはアメリカだけであります。イギリスは、この秋に予定されているBTの民営化と、八一年に設立されたマーキュリー社の新規参入で、電電三法案の先駆のように言われておりますが、今後新たに別の参入会社が許可される計画はありませんし、国際データ回線の開設についても厳密な規制を行っております。アメリカ、場合によってはイギリスも加えてよいと思いますが、この両国を除いた他の諸国はいずれも、いわゆる自由化路線をとっておりません。国によっては政府の規制を強めている国さえございます。したがって、この間の我が国の動きは、アメリカと並んで先進資本主義諸国の中では極めてまれであるということを第二点目として申し上げておきたいと思います。  最後に、通信主権という問題について申し上げたいと思います。  戦前我が国は、この問題で大変苦労いたしました。明治の新政府は、明治三年にデンマークの大北という会社に海外通信の特許を与えました。対外通信の政治的、経済的、軍事的重要性に対する十分な認識を欠いておりました当時の政府は、海外通信の運営を一外国の会社に無条件かつ無期限に許可し、これによって国際通信の自主性を開国早々にしてなくしてしまいました。御存じのように、以後七十年にわたりまして国際通信の自主性の回復を目指して血の出るような努力を日本政府は行ってまいりました。  ところで、今回の電気通信事業法案を拝見いたしますと、今申し上げました戦前の我が国の苦い体験を十分考慮していないのではないかと思われる点がございます。今回の法案では、第二種電気通信事業への外資の参加を全面的に自由化し、第一種電気通信事業についても、外資率が三分の一以下であれば参入を許すものとなっております。そういたしますと、ハードの面ではともかく、ソフトの面やデータベースの蓄積という点では、圧倒的に強力なATTやIBMなどの外国の企業我が国において全国的規模で不特定多数を相手に情報電気通信事業を行うことが可能となります。電気通信技術が高度に発達し、しかもそれがコンピューター技術と融合しつつある現在、ある場合には全く目に見えない形で、またある場合には当事者に自覚すらされない形で通信主権が侵犯されることが起こり得ます。産業、社会、文化の中枢神経系統であり、一国の独立の基礎をなすとも言える国内電気通信事業へ外国企業の自由な進出を許すことは、我が国通信の自立にかかわる重大な問題があると思われます。  戦前の日本通信主権の喪失は、対外通信網建設に当たって不平等な免許を外国企業に与えたことが原因でありました。この、いわば第一ボタンのかけ違いがその後、政治外交上でも通商文化上でも、常に割の悪い立場日本が甘んじなければならなかった原因となりました。ただ、明治政府は、国内電気通信事業へは賢明にも外国企業参入を許しませんでした。ところが今回の法案によりますと、国内電気通信事業への外国企業参入自由化されることになります。中曽根総理によりますと、電電三法案は「明治二年以来実に百十五年目に及ぶ有史以来の大改革」ということでございますが、この大改革当たり、再び第一ボタンをかけ違えるというようなことが起こりますならば、今後の日本社会に与える影響は戦前の比ではないと思われます。  通信主権という点で大いに問題を含んでいる今回の法案に、私は大いに疑問を感じております。  以上でございます。どうも失礼いたしました。
  19. 大木正吾

    委員長大木正吾君) ありがとうございました。  以上で公述人各位の御意見陳述は終わりました。  それでは、これより公述人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  20. 岡野裕

    ○岡野裕君 公述をいただきました諸先生には、本当にありがとうございました。うんちくを傾けられた御高見を伺う思いでございましたが、おかげさまで時間をいただきましたものですから、二、三お尋ねをいたしまして、より一層理解を深めたい、こう思う次第でございます。よろしくお願いいたします。  最初に、もう前からおなじみをいただいております全電通の山岸委員長がおいででございますので、お心安立てで山岸さんからお伺いをしたい、こう思うわけであります。  ついきのうでありますが、山岸さんのお身内の方から電信レポートという新聞を私いただいて、いや委員長、この電電三法については衆議院以来、あれやこれや電電公社さんのしりをたたいたり、諸先生にお願いをしたり、八面六臂の御活躍だな、こう思ったのでございますが、きょうお話を承っておりますところでは、やっぱり原則は反対だ、だが、まあしかしという、こういうお話でありました。  原則反対だという点について一つ、二つちょっとお尋ねしたいのでありますが、今ちょうどロサンゼルスのオリンピックの真っ最中だと。私どもはお互いにロサンゼルスを知りません。ベルリンあたりから多少は知っているかな。「前畑頑張れ」、こういう実況ラジオはあのころ、鉱石ラジオというので聞いた思い出です。それから、戦争から解放されるあの玉音放送、これは三球ラジオだったと思うのでありますが、陛下には失礼でありますが、時々わからなくなるので、三球ラジオの頭をぼかんぽかんたたきながら、一生懸命耳を傾けた。ついこの間のように思うのでありますが、もう今日は各家庭ICのラジオだ。海へ行っても山へ行っても、非常にはっきりしたラジオが聞ける。おまけに、FMだ、PCM放送だ。いやいや、声ばかりじゃないぞ、テレビも白黒からカラーになった。これも高精細度テレビなんぞというものがそのうちに我々の目の中に入ってくる。  電気通信のお隣の放送の分野は随分発達したな、こう思うのでありますが、鉱石ラジオから今のあの美しいカラーテレビ、これを見ていると、やっぱりNHKだけに任せていたんじゃこんなふうにはならなかったのではないかな、民間参入等がいっぱいあって初めてこうではないか。今のこ の時点で、あれが全部NHKさんでやっておられるということになったならば、国民皆さんも、おかしいな、こう思うのだと思うのであります。  まだ、一般開放というようなことで三法通りません時点でありますので、いろいろお考えもあろうかと思うわけでありますが、今言った放送分野を眺めてみますと、これは山岸さんもこの電通世界もやっぱり、電電は民間化され、そして民間参入大いにしかるべきだ、こういうお考えになるのじゃないかと思いますが、いかがでございましょう。
  21. 山岸章

    公述人(山岸章君) ただいま岡野先生から御指摘がございましたが、私は先ほど申し上げました原則反対というのは、出発点はそうだったということを言っているんです。もう今終点に近づいているじゃないかと、終点に近づいているのに、また出発点の原則を建前論として振り回しても、これは現実の法案に対する対応にはならぬじゃないかと。だから、本来はそうだけれども、現在の段階ではやっぱり、衆議院で修正を加えて法案が可決、決定されたという現実を踏まえて、あれもこれも言うんじゃなしに、当該の労働組合として、これとこれだけはできればもうちょっと何とかしていただきたいという部分だけ遠慮がちに申し上げたらどうかというので、先ほど申し上げました。もう原則反対というのは私たちは、自分自身の意識の中では淘汰しておるというようなつもりでございます。何しろ私はしゃべるのは下手なものですから、舌足らずで誤解を招いたと思いますが、そういう立場であるということを御理解いただきたい。  それから電電民営、それから民間新規参入、公正競争をやることによってどうかということなんですが、もうくどくど言いませんが、これは本来私たちは民営反対なんです。それから、公共企業体で残るのも反対なんです。もう一生懸命それは励んで何ぼ業績上げましても、賃金、手当、労働条件の決定では、何か親戚で赤字の企業がございますわね、そこを右へ倣えでやられたんじゃそれはたまったものじゃない。それから、規制と監督は厳し過ぎる、がんじがらめだ、これじゃ自由濶達な企業活動できないじゃないか、国民ニーズにもこたえることはできない、だから公共企業体もまずい。だから、公共企業体でもない、それから株式方式の民営でもないという方式がいいんじゃないかと実は考えたんですけれども、もう今日の段階では、そんなことを言ったってこれはもう通用しませんわな。したがって、我々としてはその主張については断念をして、お願いをしたいのは、衆議院でも参議院でも議論になっておりますが、電電事業というのは国民の共有財産だと私らは思っております。ですから、株式方式はここまで来ればやむを得ないけれども、しかし株の持たせ方等については、国民の共有財産という性格にふさわしいようなやっぱり方式というものを株式というシステムの中でひとつお考えいただきたい、こういう気持ちでございます。  それから、民間の業者の方が参入される、今まで電電が独占でやっておったものを今度はいよいよ開放して公正競争でやるんだということについては、もう我々は受けて立つという考えなんであります。  しかし、ここで考えていただきたいことは、競争原理というのが前面に出ておりますけれども競争原理と公共性の調和についてどうしていくのか、これは非常に重要な課題だと思います。ですから、こういう点については、くどくど申しませんが、ぜひ先生方の方で十分御検討いただきたいし、法案が通りました後も、オペレーションの問題として相当真剣に議会として対応していただかなきゃいかぬ分野もあると思いますので、ひとつよろしくお願いいたします。
  22. 岡野裕

    ○岡野裕君 原則反対というのは今の時点ではおろしたのであるというお話でありますので、これは現時点でおろしたのではなくて、もう将来十年、二十年先、この電気通信世界を展望した上でおろされた。しからば現実にどうかというその辺についてお尋ねをしたいのでありますが、山岸さんもおっしゃいますように、競争場裏に置かれるならば、これは公正な競争でなければならないというお言葉がありました。これは内田先生、高橋先生の方のお言葉の中にもこの種の意味合いはあったと思うのでございますが、やはりこの間も福間先生のお話の中に巨獣電電というような言葉がありました。いつぞや新聞の中にもそういう言葉があるんですね。だから、民間皆さんから見ますと、電電さんやっぱりジャイアンツなのだな、こういうようなことじゃないかと思うのです。しかしながら、そのジャイアンツもそれから一般の皆さんも入れて全体の電気通信世界構築をしていくということであれば、レスリングなんかでも重量制というのがありますし、あるいは香車を落としたりという将棋の世界でもいろいろきめ細かくして全体がおもしろくだれでも入門できるようにと、こういうような配慮があると思うのです。そういう意味からしますと、今回の法律案はあるいはそれに付せられました附帯決議などなどを見ますと、ちょうどいいあんばいに、まあ井目風鈴までいったんじゃおもしろくないと思うのでありますけれども、とにかく電電さんは今やっている商売を株式会社になっても全部やれと、業務はそのまま引き継げというような非常に温かい条文もあるわけですな。そのかわりには、大きいのだから研究開発は一生懸命やってこれを民間さんにも提供をしろというようなハンディも負っている。いささか、あまねく公平でなくて安定だというのが御不満のようでありますが、しかし山間僻地にまでぜひ電話という根本的な業務というものはよろしく頼みますよと。やはり電電さんジャイアンツであればそのくらいはおやりをいただけるのだなと。そのかわり業務分離はやってもいいよ、それは自由だよ。投資は自由だよ。そのかわり製造は勘弁をしてもらいたい。あるいは単純再販などということを株式会社電電さんやられてはかなわないからそれはやめたという約款でも結構である。こう並べてみますと、あれやこれや細かな配慮があって一番妥当な線が今出ているのではないかな。ちょうど山岸さんはこれから、ひとり電電の委員長ではなくて情報通信関係労働連盟でありますか、というようなものを、二十九万人の組合員を引き具してひとつ入ろう、その中で共存共栄だというお考えのようでありますが、そうだとすればちょうどいいあんばいにこの法律案はできてきそうに思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  23. 山岸章

    公述人(山岸章君) 衆議院結論について私は先ほど当該の組合としては評価をしておると、こう申し上げました。ただし、満足度というのも一〇〇%もあれば八〇%もあれば六〇%もあれば五〇%もございますが、そうすかっとするほどの満足度は持っておりません。やっぱりちょっとまだ腹に残るようなものは持っております。それが先ほど私申し上げた四つの点でございますね。したがって、こういう点については参議院においてもう少し解明するなり、より明確にしていただければ、我々としては一〇〇%満足とは言わないけれども国会で決められた結論については謙虚に受けとめて誠実に新しい体制の中で頑張ろうと、こういう気持ちでございます。
  24. 岡野裕

    ○岡野裕君 いろいろおなかの中までさらけ出してのお話をいただいた思いでありますが、ちょうど山岸先生が反対だと言われるその辺については三村先生でありますとか、内田先生でありますとかが反対の方向から公正競争をやってくれということになっているのではないかと、こう思うのです。  経団連内田先生にお尋ねをしたいわけであります。  山岸先生のお話ではやはり今会期にぜひこれで実らせてほしい、「目出度さもちゅう位也おらが春」ですか、というくらいな気持ちだということでございますが、経団連さんとされてはこの会期中にぜひやってもらいたいというお言葉でございましたが、これがおくれます場合――いや、我々一生懸命会期中に成立の努力をしているわけでありますが、おくれます場合に、具体的にはどんな 大きな問題が残ってまいるのでございましょうか。
  25. 内田公三

    公述人内田公三君) 先ほどの冒頭の陳述で申し上げましたように、既に非常におくれているということを産業界は非常に憂えているわけでございまして、これがさらにおくれた場合、具体的にどういう弊害が起こるかという御質問でありますが、それはなかなか具体的に何がどうなるということはここで直ちには申し上げにくいのでありますけれども、しかしながら、アメリカと比べて通信の分野ではもう十年ぐらいおくれているということでありますから、このギャップがさらに広がっていけば後から追いつくということがもうほとんど不可能になってしまうのではないかと、そういう点を非常に危惧しているわけであります。  余計なことを申し上げるようでありますが、日本産業はいろいろ貿易摩擦、経済摩擦などで競争力が余りにもあり過ぎるというか、そういう点で欧米のひんしゅくを買ったりしている問題もあるわけでありますけれども、他面、通信の分野に目を向けると、なかなかこれは目で見て、手でつかんで確かめるということができないだけに、通信情報分野での日本の立ちおくれというものは非常に恐るべきものがあるんじゃないかというふうに考えております。  ちょっと御質問に十分にお答えできませんでしたが。
  26. 岡野裕

    ○岡野裕君 私どもは、今まで社会資本といえばやれ道路であり、鉄橋であり、港湾であり、鉄道でありと、こういうように概念をしていたように思うのでありますが、これから二十一世紀にかけての高度情報通信社会というものを見ます場合に、社会資本の最たるものはこの電気通信関係日本列島を覆うところの、言いますならば光ファイバー化、ディジタル化というようなものだと、こう思っているわけなのですが、内田先生がおっしゃいました条件整備を大いにやってほしいというようなお話の中から、あるいは山岸さんからも、この電電の株式がどんなふうに保有をされるのかという点についていろいろ危惧を持っておられるというお話もあったわけでありますが、これから国として、政府としてあるいは日本全体として、先生のおっしゃる条件整備というのは具体的にはどんなことをやっていきましたならば御意にかなうものでございましょうか。衛星の問題だとか、電波の調整だとかというお言葉がございます。
  27. 内田公三

    公述人内田公三君) 私が最初に申し上げた条件整備というのは、通信自由化というのは単に法律制度の面でそうなるということでは十分ではないわけでありまして、それが現実のものになるためにはその他いろいろな措置がなお必要であるということを申し上げまして、それをいろんな条件整備というふうに言ったわけでありますが、これはいろいろあるかと思いますけれども、電波の割り当ての問題もありましょうし、あるいは政府がいろいろ国際的な調整をやらないと通信衛星というようなものも使えないわけでありますし、それから新規参入業者に対していろいろ税制、金融その他の面でバックアップするというような必要も出てくるでありましょうし、目下そういう点は経団連の方では特別の委員会をつくりまして専門家を集めて法案成立した暁に間に合うように今いろいろ検討している最中でございます。
  28. 岡野裕

    ○岡野裕君 在来、郵政省のやっておりますところの電気通信行政というものは規制的な要素が多かったと思うのでございますが、今回この三法案、その中で事業法、これは電電の基本法だと思うのでございますが、これができますれば、内田先生がおっしゃいましたようなもろもろの行政の施策というようなものもみずからやっていけるようになるのではないかなと、こう思っているところでございますのでよろしくお願いいたします。
  29. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 岡野君の質疑は以上で終わりました。
  30. 久保亘

    久保亘君 公述人皆さん大変御苦労様でございます。私は社会党に所属いたしております久保亘でございます。  私の住んでおりますのは九州の南の鹿児島県でございまして、特に電気通信事業等につきましては、離島、僻地等をたくさん持っております地域でありますだけに、その公共性の確保というようなことについてかねがね強い関心を持っておるのでございまして、そういうような立場等を含めてこれから皆さんにお尋ねをいたしたいと思います。  最初に先ほどから質問が集中いたしておりまして大変申しわけありませんが山岸さんにお尋ねいたしますが、先ほどのお話で、この段階では電電三法を成立させることがベストではなくてもベターである、こういう御趣旨だと承りました。その中で、今も御質問にございましたけれども法案成立しなかった場合に生ずるマイナス、これは単に電電公社というような限定したものではなくて、これからの日本情報通信産業といいますか、事業といいますか、そういうもの及び今日の日本経済の動向等に照らしていろいろマイナスを生ずるのではないかというお立場であったように思います。その点についてもう少しお話をいただきたいことと、それから今日の段階では議了、成立させる方がベストであるという御見解であると同時に、なおこの三法案成立に当たって重要な部分の修正、または修正に準ずる解明をやってもらいたいという御要請もございました。私は、山岸さんがお述べになりました四つの問題、主として四つの問題について、この問題はかなり重要な問題であると考えております。なぜならば、通信主権にかかわる問題であり、国民全体の利益、一般に公共性と呼んでいいのでしょうか、そのことにかかわる問題であり、また労働基本権に関する問題でございました。これらの問題が未解明のまま、つまり玉虫色というような状況のままでも、今日この三法案を議了、成立させる方がベストである、こういう理解に立つべきであるという御見解なのか。参議院においてこれらの点を明確にした上で議了すべきであるという、これは議了に当たっての条件としてお示しになったものであるか、法案そのものをめぐる問題と、法案成立しなかった場合の生ずるマイナスの面と、その両面について少しお話しいただきたいと思います。
  31. 山岸章

    公述人(山岸章君) 非常にむずかしい質問でございますが、法案成立しない場合、どういう支障があるかというまず御質問でございます。  もう私たちざっくばらんに当該の労働組合の立場から言わしていただくならば、もう電電の経営形態の変更を、これはもう未来永劫にかけてやらないんだということになるんなら話は別なんです。もう廃案にしちゃって、再びこんな電電改革をやらないということであれば、それでもうすっきりいたします、それは。ところが、常識的に考えてそういうことにはならぬだろうというような判断をしております。もう衆議院で現実にこの法案は与野党で修正も加えて成立をしていると、参議院に回ってきておると、しかも最後のこれは詰めの段階だと、こう見ております。したがって、参議院で仮に継続審議になったとしても、いつかはこれは必ず電電は株式会社に切りかえられることはもう間違いないと、こういう現実的な判断をしておるわけでございます。  そういうことであるとするならば、一言で言いますと、先ほど申し上げましたように、余り時間をかけて棚上げにされますと、これはやっぱり労働者の気分としましては、蛇の生殺しに遭っているような感じになっちゃうんです。しかも、一番私が恐れますのは、そこから不安、動揺、こういったものが起こる危険性が非常に大きいということなんであります。それはいいですよ、例えば継続になるならなったと仮定しましょう。その場合に、継続になったけれども、来年の四月の切りかえは間違いないとか、四月はだめだから七月だとか、あるいは十月とか一月とか一年延ばすとか、それははっきりすればいいですよ。しかし、これは中曽根総理といえどもはっきりできないと思う。そうすると、これはいつ来るかわからないものに対して、しかも規制と拘束が非常に強い今の公社制度の中で、これは民間方々は準備されま すし、相当我々の領域に対してもアプローチしてこられる。これに対しても公社制度の制約があるから適切な対応はできないという状況の中でぶん投げられますと、労働者としてはこれはもうたまらないと、こう私は思うわけであります。  したがって、それからまた自分たちのことだけ言って申しわけないんですが、来年の春闘一つ考えましても、恐らく春闘というのは岡野先生御存じのように四月になりますよね。ところが、来年の四月ということになれば、参議院が仮に継続審議になっても、もう決まっておりますわな、法律は。ところが、準備がまだ完了しないということで民間には切りかえられない。まだ公共企業体のままでしょう。しかし民間になることは数カ月後なることは間違いないと。そういう中で春闘をやりますと、民間になるのはわかっておりながら、公共企業体ということで今までと同じような賃金決定システムで横並び論で賃金が決められるという形になると。そうしますと、やっぱり職員の労働者の士気にも僕は影響いたしますし、それから企業活力を引き出すんだと言ったって、賃金の方は公共企業体並みで抑えられて、それで国鉄右へ倣え方式でやられて、それで仕事の方だけは、十月か来年の一月か知らないが、今度は民間になるんだからそっちはもうおまえ一生懸命やれと言われたって、とてもじゃないが、それはみんなが納得してわかりましたと、一生懸命業績上げ、国民の期待にこたえるために頑張ろうということになるかというと、私はならないんじゃないかと、こう考えるわけなんでございます。要するに、もう俗っぽい表現しますと、行き先の看板のない電車の中へ二カ月も三カ月も閉じ込められた乗客と同じような精神状態になると。当該の労働者はそれはパニックが起こりますわな。パニックが起こった結果、どこへ恨みつらみが行くかというと、政府にも行くだろうし、それから使用者側にも行くでしょうし、それからかい性なしということで組合にも来るでしょうし、一番恐れるのは議会制民主主義に対する不信感になるおそれは極めて大です。もう電電の経営形態変更をやらないというんだったらいいですけれども、やるんだったら、それはもう鉄は熱いうちに打てというけれども、やっぱり今が私は常識論的に見ましてもこれは一つの転換期じゃないかと。この際にやっぱりやった方がいいのではないかと。私たち全電通の組合員二十八万人おりますが、やっぱり緊張感を持って今対応しております、電電改革問題について。それで受けて立とうという気持ちなんです。悪い点は直してもらうけれども、受けて立とうと。しかしこの緊張感は人間ですからそういつまでも持続できるものではありません。私はこの緊張感というのは数カ月しかやっぱりもたぬと思うんですよ。こういう革命的な大転換の問題はやっぱり緊張感が最高度に高まっているときに決着をつけるということにした方が、やはり国民ニーズにこたえ得る活力ある新電電をつくるという意味において、あるいは日本の高度情報社会の発展のために当該の労働者にも快く協力してもらうという意味においてプラスではないかなと、こういう判断をしておるわけでございます。  それからアメリカとの関係は先ほど申しましたように、これはもう完全に第二種事業、大型VANの分野ではATT、IBMというのはこれはもうウオームアップを何ぼでもやって乗り込んできますから、かなりの力をつけてくる。しかし、日本関係情報通信業者の方は法案成立しないと、いつから自由化されるかわからないという状況の中ではなかなか十分なウオームアップができない。それでなくてもアメリカ参入してくれば太刀打ちできないんじゃないかという国内の情報通信産業の実態から考えると、これは大変なことになるんじゃないかと、こういうふうに思いますので、だから法案がつぶれちゃうんだったら別だけれども、遅かれ早かれ成立するんだったら今が潮どきであるというのが率直な私たちの気持ちでございます。  それから先生が後段で触れられました、私が申し上げた四つの修正もしくは修正に準ずる解明をしていただきたいと言ったのは、参議院において議了するための前提条件がという御質問でございますが、我々は前提条件という意味合いで申し上げております。  ただし、あの四つの問題については今初めて突然変異のごとく出てきた問題ではございません。これは衆議院の段階からずっと論議されてきておりますし、与野党間でも相当のこれは議論をやってきた問題です。したがって、そんな長時間かけなくてもあの四つの問題は結論がでるはずだ、それはもう政府与党の決断次第である。政府与党の決断いかんによればあんなもの十分ぐらいで結論出ると、こういうふうに思っておりますから、したがって、もう早期にこれは与野党間で議論いただいて結論を出してもらって、そして八月八日の会期末までにこの法案を上げてもらうというのがベターだ、こういう気持ちで申し上げております。
  32. 久保亘

    久保亘君 二十数万の組織の頂点に立たれる委員長として非常に現実的な判断をなさっているということに対してよく理解ができますが、しかし一方、また今これは前提条件としてぜひ解決してもらいたいと言われましたこれらの点についても、なかなかこれから会期の中で、私どもも全力を挙げてまいりますけれども、難しい問題も含んでおると思っておりますが、その中の一つ、労働組合の委員長さんとしてのお立場でお聞きしたいことがございますが、スト権というのはこれは電電から新電電に変わるからスト権が問題なのではなくて、スト権というのは本来、山岸さんも全電通委員長としてこれまでもスト権回復のために闘ってこられたわけですね。これは公労協であれ民間であれ、本来労働者が持つべき基本的権利だと私は理解いたしております。しかも、なお、今回民間に移るという場合に、これに制限、規制等が加えられるということは、私ども立場からいたしますと理解のできないことでありまして、この問題については明確な決着が行われなければならぬと思っておりますが、衆議院におけるスト権にかかわる修正というのは非常に不明確であって、これは労働者の基本的権利を少なくとも三年間制約するだけではなく、三年後においても保障していない、私はこう思っておるんですが、委員長も先ほどその意味のようなことを申されましたので、そのような御理解だと思っていいかどうか。  それともう一つ民間の他の新規参入があります場合に、新電電にそういうようなスト権の規制を加えたまま出発し、同時に出発してまいります例えば第二電電の場合には一体どうなるのであろうか。新電電と第二電電との間にスト権の格差を生じた場合には労働組合の委員長としてこれはどういうふうにお考えになるのか、この点をひとつ山岸さんに伺いたいと思うんです。
  33. 山岸章

    公述人(山岸章君) お答え申し上げます。  スト権につきましては、久保先生御指摘のとおり、公共企業体であれ民間企業体であれ、私はそのいずれを問わず、労働者に対して当然全面的にはその権利を保障されるべき労働者固有の権利である、こう考えております。そして、スト権の保障というものがなされない限り本当の意味の労使対等というものは実現できないし、労使信頼関係というものをつくり上げ、維持発展させることも困難ではないか、こういう認識を持っておるわけでございます。  従来からよく官公労使関係が非常に不安定だということが社会的にも言われますが、その根源は労働者固有の権利であるスト権を制限しているというところにある、私はこう判断をしておるわけでございます。  したがいまして、先生が後段で質問されました新電電にはスト権の規制、それから第二電電には同じ第一種事業者であっても制限がないというような格差が生じた場合どう考えるかという御質問については、やはり格差が生じないようにこれは議会において考えていただくことが、日本関係労使関係を安定させ、高度情報社会へのエネルギーを引き出すという意味においてよりベターではないか、こう考えておる次第でございます。  そして、衆議院の修正を加えましたスト権の結論について不満がという御質問でございますが、全面的に不満なんでございます。ただし、衆議院においては当初の政府原案というのは当分の間二重制限をするということになっておりました。この「当分の間」というものを三年間というように条文の改正を行って明記をされたという点は私は大きな前進だ、こう評価をしております。  問題は、先ほども触れましたように三年間たったら廃止をするんだという前提の三年間であれば、これはもう私はもっとすっきりすると思うんですが、その点がやはり政府の総理の御答弁では廃止を含めて検討ということになっておりますし、その後自民党の労働調査会の方で、私もよく存じ上げておりますが、森山欽司先生が会長をやっておられる労調ですな、の方であの三年間という意味は廃止を意味するものではないというようなまた見解を衆議院結論が出た後に出されたものですから、なお話がこんがらがってきた。だから、政治的には見方によれば、中曽根総理の、廃止も含めて検討という、廃止のところも消されちゃったんじゃないかというような印象で私たちは厳しく受けとめております。  したがって、スト権の問題につきましては本来的にはあの附則というものは削除すべきである、こう考えます。しかし、どうしてもだめだということになれば、最悪の場合でも三年というのは動かないとしましても、見直す意味について、三年たてば廃止するんだということをやはり後で争いの起こらないような形で明確に参議院において決めていただく、このことが非常に大切じゃないかな、こう思いまして先ほどお願いした次第でございます。
  34. 久保亘

    久保亘君 私は今の山岸さんのお話を聞いておりましてよく理解ができますが、特に新規参入してまいります第二電電はこれは純然たる民間会社でございますから、この民間会社に従来よりも労働基本権について規制を加えるなんということは私は不可能だと。そうすると、第二電電と新電電との間に労働基本権で格差を生じてはいかぬ、こういうことになれば、第二電電を規制して格差を埋めるんじゃなくて、新電電の方を規制を解除することによって格差をなくする、こういうことでなければならない、私はそう思ってお尋ねをしたんです。  最後に山岸さんにお尋ねしたいのは、しばしばこの電電三法の問題を議論をします中で、一〇〇%当事者能力を労使に与えた場合、保障した場合、労使間の交渉による勤務条件や賃金の問題などの決着を通じて、それらのものがどうかすると料金値上げと直結してくるのではないかというような不安を聞くことがございます。私は、そういうような問題について、当事者能力を確保された場合の労働組合の委員長としてどのようなお考えをお持ちなのか伺っておきたいと思うんです。
  35. 山岸章

    公述人(山岸章君) お答えをいたします。  確かに久保先生御指摘のように、電電は新会社になればもう好きほうだいに賃金を上げて、その帳じりを料金値上げということで国民のところにしわ寄せするんじゃないかという御心配も社会的には一部ございます。しかし、私も労働運動を三十六年やっておりまして、賃金決定システムなり賃金決定原則は社会的にどうなっているかという点については体験を通じて十分承知をしておるつもりでございます。そういう観点から申しますと、賃上げをどれだけするかということのやはり重要な決定のファクターは、一つは社会的コンセンサス、国民の理解と納得が得られるかどうかということだと思います。それからもう一つはパイ、すなわち支払い能力があるかどうかということだと思います。  私は、全電通の委員長としてはっきり申し上げておきますが、この二つのファクターを無視した賃金闘争をやろうとか、あるいは賃金決定を要求しようとかいうような考え方は持っておりません。したがって、やはりパイを大きくするための企業努力、これは労働者として全力を挙げてやらなきゃいかぬ。そしてパイを大きくしたこととの関連において、ギブ・アンド・テークということは真藤総裁のこれはもう持論でございます。企業業績を上げるために一生懸命努力した、それで成果が上がった場合には、その成果の一部分は積極的に労働者に対して分配されなきゃいかぬというのが真藤さんの持論でございます。あの方は就任されてこの方一回も実現したことはございませんが、持論なんであります。したがって、これはまた社会の常識でもございますから、この真藤さんの持論であるギブ・アンド・アーク、社会の常識に基づいて正当な分配をやはり我々は要求していきたい、その中で賃金の改善も図りたいと、こう思っております。  それで、ましてや、賃金を上げたと、それで原資がないと、したがって料金値上げをするなどというふうなそういう反国民的な大それた考えは毛頭私たちは持っておりません。特に料金値上げの関係で私が危惧するのは、官公労の中では優等生の全電通ですから、新会社になりましてもそういう点は心配要りませんが、しわ寄せが労働条件や賃金の関係料金値上げに行くという心配はございません。しかし、私は、民間参入との関係でクリームスキミング、よいとこ取りをされたら、そのことが原因になって料金値上げ問題に火がつくという事態はなしとはしないと思いますので、その点についてはひとつ先生方の方で十分御検討いただきたいと思います。  と同時に、実はKDDはもともとは電気通信省でございましたし、昭和二十八年までは電電公社で我々と一緒の事業体であったわけでございます。二十九年ですか、KDDは分割をいたしまして独立しました。あそこで働いている労働者というのは、外国語を使う特定の職種を除けば、同じ仕事をやっておるわけです。学校も皆同じなんです。ところが、今非常に賃金の差がついております。昨年の実績でいきますと、三十五歳標準労働者の一年間の所定内賃金、これの支払い総額では電電とKDDとの間に百三万円の差がついております。これはKDDが高いというわけじゃありません。電電が不当に切り下げられているということですから、これは公共企業体の賃金決定システムによる横並び論で結局これだけの差がついたということであります。ですから、こういったものは二年、三年で格差をなくするということはできませんけれども、しかし、やっぱり産別同一労働同一賃金という立場に立つならば、私は一日も早くこれは是正をしてもらわなきゃ困るという気持ちを持っております。しかし、そういう問題もパイを無視してやるわけにいきませんし、それから社会的コンセンサスというものを無視してやることはできませんので、やはり社会的コンセンサスを得られるようにパイを拡大するための努力をし、その努力の中から、どれだけ時間がかかるかは知りませんが、全電通労働組合としてはその条件をつくっていきたいと、こういう謙虚な気持ちでおります。
  36. 久保亘

    久保亘君 今のことに関連してちょっと内田さんに一つお伺いしたいと思います。  先ほど産業界の要請ということをお述べになりました。産業界の要請による通信自由化国民の全体的利益というものとが今度の改革によって矛盾を生じてくる場合はないのか、その点について経団連の幹部をなさっているお立場でどういうふうにお考えになっているんだろうか。特にアメリカとかイギリスで行われました通信自由化というのは、国民の全体的利益という立場から見るならばいろいろ問題を起こしている面もございますですね。つまり、国民生活にかかわる部門では料金が上がる。それから産業利益に直結しない部分においては、公共的――先ほどあまねく公平なサービスということを言われたが、そういう面においてどうも自由化の前よりは悪くなっている。つまりサービスが切られている。そういう事実が発生していることもまた私たちは無視できないと思うんですが、こういう面で産業界の要請と国民の全体的利益というものとの関係について、内田さんのお立場ではどのようにお考えでしょうか。
  37. 内田公三

    公述人内田公三君) お答えします。  私ども意見の中で、産業界ニーズに即して、産業界ニーズがあるから新規参入を認めるべきだという表現があるのは事実であります。そういう考えは確かにございます。しかし、それは産業界利益さえ実現すればそれでよいということでは当然ないわけでありまして、産業なり企業ニーズを満たしていくことが結果において国民ニーズを満たしていくことにつながっていくと。要するに企業活動というのは究極的には国民の福祉のためにあるわけでございますので、この通信自由化の問題も結局はそういうことになるというふうに考えております。  アメリカで若干問題が起きているという御指摘がございましたが、私もその詳しいことは存じ上げませんが、アメリカの、いわゆる通信だけじゃなくて、いろんな分野でのデレギュレーションの結果、むしろ全体としては国民の福祉というか、便益というか、それが向上しているというふうに、私どもの勉強した限りでは伺っております。したがって、私どもが規制の緩和とかあるいは自由化とかということを主張しております。その真意は、それを通して、結果的に国民生活が向上するということを考えているわけであります。  以上です。
  38. 久保亘

    久保亘君 基本的な理念は、今内田さんが申されたようなことだと思うんですが、やはり産業界の要請とか、あるいは電気通信事業そのものへの新規参入とかいうことが起こってまいります場合に、企業の視野に立った場合には、利益を生まない事業に対しては余り積極的に乗り出す気持ちにはならぬだろうと私は思うんです。そうすると、先ほど山岸さんが言われた、いいところは持っていくが、どうも余り金にならぬサービス部門は目をつぶって後ろを向いておると、こういうことになれば、この電電三法の施行国民に対する全体的利益、公共性を失わせるおそれが多分にある。特に私、最初に申し上げましたように、私どもの出身地のように、離島や僻地をたくさん持っておりますところではその心配が大きいわけでございますが、その場合、今内田さんがおっしゃったように、産業界はやはり国民の全体の利益を考えてやるのである、こういうことであれば、その全体の利益を図っていくためにいろいろと仕事の面でも負担の面でも、新たな情報通信産業への進出に伴って持つべき負担、そういうものについては、産業界としてはもう当然のこととして理解をしているんだと、こういうふうに考えてよろしいのでしょうか。
  39. 内田公三

    公述人内田公三君) 持つべき負担というのは具体的にどういう意味でございましょうか。
  40. 久保亘

    久保亘君 やっぱり同じ事業をやります新電電、第二電電、こういうものがやってまいります場合に、その新電電の方には、これは国家的公共性とか国民全体の利益という要請に伴って今までのサービスは落とさない、これはやってもらわないと困る。そうなると、競争部門では産業界活動の活性化をもたらす、その結果として競争が起こりますから、そうすると、その新電電の方ではまた従来とは違った問題も出てくるわけです。だから、そういう前に、当然産業界として情報通信事業における国民全体の利益を擁護をしていくため、つまり公共的サービスを確保していくために必要な負担、こういうものについては、この事業への参入に伴って必要なものを、これはどういう形でやるのか、私は専門ではないのでわかりませんけれども、そういう負担が起こってくることは当然である、こういうふうなことを考えるんですが、それはもう全然、資本主義的企業の論理に従えば番外であると、こういうことですか。
  41. 内田公三

    公述人内田公三君) お答えします。  要するに、公共性の問題ということについて少し所見を述べればお答えになるかもしれませんので、そういうふうにお答えしますが、先生おっしゃったように、全国あまねく基本的な通信サービスを提供しなくちゃいけないという問題は、今回の法案においても、電電公社が新電電会社になってそういう社会的な責務を続行していくわけでございます。それに対して、新しく参入してくる第二電電なり第三電電なり、そういった方は、じゃ、私企業利益だけを追求して公共性ということは考えないのかということかと思いますが、そういうことではもちろん決してございません。  ちょっと書生っぽいことを言うようでありますが、やはり、参入してくる企業競争の中で採算がとれるような仕事をしていくということは、とりもなおさず、国民ニーズに即応したサービスを合理的な価格で提供できるからこそ、そういう企業企業として成り立つということなのでございまして、そういう私企業の、要するに、一応利益を追求した活動が結果として国民の福祉というか、資源の最適配分というか、そういうことになると。これはちょっと書生っぽくて先生に申し上げるのは失礼かと思いますが、基本的にはそういうことだと思います。  それ以外に、具体的には、この今回の法案におきまして、新規参入業者に対しても、公共的な使命というものが、役割というものが最小限ないがしろにされないような担保はいろいろ規定されておると。精神的にも第一条で規定されておりますし、「秘密の保護」とか「重要通信」とか、あるいは「業務の改善命令」などという、ちょっとこれは経団連あたりから見ますと少しやや行き過ぎじゃないかと思われるような規定すらもが通信の公共性ということから盛り込まれておるわけで、そういう意味で私どもは、心配されるようなことは起きないというふうに考えております。
  42. 久保亘

    久保亘君 時間がなくなりましたので、最後高橋先生にお尋ねいたします。  先生先ほど、今度のこの改革人間の偉大な実験であると、こうおっしゃいました。実験には失敗もまたつきものでございますが、この電気通信事業情報通信事業における日本の第三の改革とおっしゃったように思いますが、この改革というのは、今日の段階においては失敗を恐れずやるべきものと、こういうふうにお考えなのかどうかということと、それから、そのことに関連いたしまして、高度情報化社会というのが、私どものように余り機械に強くない者にはもう想像もできないような変わり方です。一体どこまで行くのだろう、こういう思いがするんでありますが、これだけ激しく情報化社会が進歩をしてまいりますと、一体これから先の社会をどういうふうに見通したらいいのか。そういうこととあわせて、今度の改革はこれはやっぱりやるべきことと、こういうふうにお考えなのか、先生の御意見を伺いたいと思うんです。
  43. 高橋正雄

    公述人高橋正雄君) 申し上げます。  甚だ無責任なんですけれども、世間で行われたり議論されていることは、皆実験をやっているんだと、うまくまとまるかもしれず、まとまらないかもしれないけれども、高みの見物ではないですけれども、冷静に好意を持って見ていようというのが私の立場でございます。今日の発言は、衆議院でこうなったんだから、もし、この附帯決議などがついた法案がここでも通って、今の電電公社は株式会社になるだろうと、そうなった場合を前提しての問題をいろいろ申し上げたわけであります。  今の御質問に関連するかどうかわかりませんけれども、高度情報化社会ということについてこういうことを考えております。それもこの法案とどこかで関係なくはないと思うので申し上げます。それはこういうことであります。  経団連の研究会などにも招待されてよく行くのでありますが、ごく最近アメリカの人が来て、いわば現代アメリカ論というようなことをやったわけであります。そのとき私はこういう質問をしたんです。それは皆さんも御存じだと思いますけれども、かつて、大統領だったアイゼンハワーが退職するときに、今後アメリカを支配するものは、したがってアメリカの運命を誤らせるかもしれないものは産軍複合体だと、産業界と軍部との結合体が非常に強い力を持っていて、それが大企業と大政党と官僚と結びついてというようなことを言って彼は退職したわけであります。一週間ほど前の研究会で、そのアメリカ人に向かって、あのア イゼンハワーの予言は実現しましたか、そうなっていますかと聞いたら、さすがにアメリカでも幾らか遠慮があると見えまして、まともには答えてくれなかったんですけれども、しかし私としては答えられたと思うんです。何と言ったかというと、それがあるのでアメリカの優秀な科学者、技術者のかなり多くの者がその方面に行っているんですということを言って、ある意味で嘆いておりました。それを私なりに考えますと、そこで軍備のために、国防のために、あるいは戦争のために開発される技術の中には、高度情報化技術がまさにかなり大きな地位を占めているはずであります。その技術が、アメリカでは政府としては国防のために使っているでしょうけれども、そういう技術アメリカ民間企業にも自由にと言っていいほど流れるのは当たり前なことであります。そこで恐らくアメリカの高度情報化産業に関する技術には、アメリカの軍事費という、いわば民間企業からいえばほとんどコストのかからない形で幾らでも優秀な技術を手に入れ得るんじゃないか。それをアメリカのIBMにしましてもATTにしましても、企業立場からそれを手に入れれば世界をマーケットとしてそれをどんどん発展させたいのは当然のことであります。そういうアメリカの流れに沿って、先ほどおっしゃった方がありましたが、欧米ではそれほど自由化自由化と騒いていないのに日本は特殊だということをおっしゃいましたけれども、私もそういうことを言えるほどはっきり調べてはおりませんけれども日本アメリカの圧力といいますか、そういうものをまともに受ける状況に置かれているんじゃないか。日本の大企業技術陣、科学陣は非常に優秀でありますから、アメリカのそういう技術に押されなくとも十分にやれるようになるんだろうとも思うんですけれども、その辺アメリカに負けまい負けまいということで何もかも考えないでやろうとすると、ちょうどきょうの問題にぶつかりまして、情報化産業全体をマーケットメカニズムといいますか、競争原理に任せるようなことをやるべきだというふうに考えてくるのはそんなにおかしくはないはずだと思うんであります。その点のことも考えてこのきょうの問題との関連を考えなくちゃいかぬのじゃないか。ただし、前に申しましたように、私のきょうの発言は、恐らくこの案は通るとしたらこういう問題があるんじゃないかということであります。  それから、これも御質問に関係すると思いますので申し上げますけれども、私は今度の附帯決議の中に通信主権ということを強く考えるということを申しました。通信主権通信だけでありますけれども通信だけではなくて主権国家という意味であります。私は人類が滅亡しないなら、恐らく二十一世紀の間には世界連邦のようなものができ上がって、こうやって皆さんと一緒に議論をしていることが昔話になるかと思うんでありますけれども、あるいはなってほしいと思うんですけれども、現在のところは百七十ぐらいある独立国家がそれぞれ最初申しましたように争って、あるいは妥協してやっているわけであります。その辺で日本は、日本企業からいうと、産業からいうと、アメリカとの競争に負けないためにはアメリカ技術も入れなくちゃいかぬ。アメリカも自由に参入するようにしないと、日本の自動車やその他がアメリカに入れない。その辺はよくわかるのですけれども、事高度情報化問題については考えなければいけない点があるのではないかと。それは、非常に物騒なことを申しますけれども、今アメリカと対決しているのはソ連でありますけれども、ソ連もアメリカも極めて悪い意味での自国本位の政策をとっているはずであります。私は、アメリカを白い鬼、ソ連を赤い鬼と言って、我々みんなで鬼征伐の桃太郎軍を組織しようということをまじめ冗談で言っているのでありますが、ソ連のことは別といたしまして、アメリカは、御承知のようにアメリカのドルというのはアメリカの国内通貨であると同時に世界通貨であります。日本銀行は自分の通貨を出しますとすぐ為替に影響しますのでそう勝手には出せないのですけれどもアメリカの場合だけは、今のところドルというのはアメリカの国内通貨であり、同時に世界通貨でありますから、幾ら出しても、ある限度はありますけれども、大体うまくやれるわけであります。そういう世界貨幣としてのドルとアメリカの産軍共同体で開発した技術アメリカの私企業がいわゆる競争原理というようなことでどんどん押しかけてくる場合に、それにもろに――今や世界で最も処女地的なマーケットとして残っているのは日本であり、日本は御承知のように高度情報化というのがまるで物のけにつかれたかのように宣伝、扇動されておりまして、一体人間の生活というのは高度情報で生きるのかと、毎日の食糧や衣料や住宅やそれこそその他のことはどうなるのだというようになりますと、私は競争原理というのをちっとも否定はしないのでありますけれども、高度成長の過程で過密、過疎の問題、公害の問題、環境破壊の問題というようなことをさんざん経験しているはずでありまして、その後片づけもしないうちにここで大実験をしてみようじゃないかと、大いに実験はした方がいいとも思うのでありますが、その際問題ではないかと。御質問に表から答えないみたいでありますけれども、高度情報化の問題というのは事電電などという小さい問題としちゃいけませんで、日本あり方全体が世界情勢の中にアメリカ、ソ連というべらぼうな猛烈な大実験の中でもみくちゃにされているのが実情なんで、そこで主権の問題になるわけでありまして、通信主権に限らず、日本民族の、あるいは日本国民の主体的な立場ということを考えて、アメリカともソ連ともけんかする必要はありませんけれども、大いに自主性を発揮してほしい。御質問に答えないでどこかへ行ってしまったみたいでありますけれども、そういうことを国民みんなで、特に国家権力の最高機関である議会、国会においてお考えになりながら、このきょうの問題も議論していただきたい。  そうしますと、電電公社が株式会社になることは今や避けられないらしいというのはそれはそれでいいですから、そうしておいて、今申し上げましたようないろんな問題を、世界情勢の中での日本の国際的な責任、そういうことも考えながら大いにみんなでまともに勉強したらいいじゃないか、またとない実験だから、というふうにまた実験論に参りまして……
  44. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 時間でございますから。
  45. 高橋正雄

    公述人高橋正雄君) 無責任な議論になって申しわけありません。
  46. 久保亘

    久保亘君 どうもありがとうございました。
  47. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 民社・国民連合の中村鋭一でございます。  公述人皆さん、きょうは本当に御苦労さまでございます。  初めに高野公述人にお尋ねをいたしますが、高野さんは臨調の専門委員として土光さんと一緒に立派な答申を出してくださいました。我々の立場行政改革与党といたしまして、行政改革は答申どおりにこれを実行しなければならない、この立場を堅持しながら国会審議に当たってまいりました。御存じのように、この電電三法はいわばそういった行革関遵法案の旗手と言っても差し支えのないような大切な法律案でございます。  そこで、高野さんとしては、今回のこの法律案臨調答申の趣旨におおむね合致したものであると評価をなさっているかどうか、それをまず確認いたしたいと思います。
  48. 高野邦彦

    公述人(高野邦彦君) お答え申し上げます。  概略というふうに申し上げた方がよろしいかと思いますけれども、ただいまの先生の御質問に対しては、ほぼこれは臨調答申に乗っているんではないかというふうに私は考えております。
  49. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 しかし、細部にわたっては、先ほどの公述の中にもありましたけれども、幾つかの問題点があると思いますが、例えば郵政省は、従来は許認可が非常に主たる業務内容とでも言いますか、そういう官庁であったと思うんですが、最近は郵政省も立派な政策官庁として存在をしなければならない、こういうことで、急にほかのこ とを言うようですけれども、先日も、省内では、もうサンダルばきはやめようじゃないか、スマートにいこう、こういうような通達も出されたようでございますけれども、この政策官庁たるべき郵政省が、今回のこの電電三法を見ても、いわゆる許認可にわたる事項が相当繁雑にこの案文の中に盛り込まれておる、こういう点については公述人どのようにお考えでございますか。
  50. 高野邦彦

    公述人(高野邦彦君) お答えいたします。  先ほどもちょっと触れたと思いますけれども法案の文面を見ますと、確かに許認可の項目というものがかなり多岐複雑になっているという感じはいたします。ただ、この電電というものが、先ほど来のお話のように、我が国電気通信事業というものを一手に担ってきたという、そういう歴史的な経緯、そこに、今大転換して、競争原理が入り、民間企業参入していくというふうな新しい状況が生まれてきているわけでありまして、したがって私は、この法案は、その意味では多分に経過的なにおいがというか、扱い方をするべき性格のものではなかろうかというふうに考えております。実際に競争をやってどのような結果が出るかということは必ずしも今の段階では十分に細部にわたって予想することは不可能だと思いますので、そういった事態の推移を見ながら、事態とともに動いて、手直しし、改善して、日本の新しい高度情報化の社会に向けた、しかも臨調答申に合うような形の方向に多分近づいていくのが理想的な形ではなかろうかというふうに考えております。
  51. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 そうしますと、いわゆるその省令、政令にゆだねる部分も相当にこれも多岐にわたるし、ややその点がすっきりしてないんじゃないかという印象もあるいは国民皆さんはお持ちか、こう思いますけれども、それも今後五年間に、今おっしゃったように、おおむね見直しを兼ねて見守っていけばそれでよし、こういう立場をおとりになっているわけですか。
  52. 高野邦彦

    公述人(高野邦彦君) お答えいたします。  原則的には、いわばこれから競争、つまり市場にゆだねるわけですから、規制とか行政指導的な過剰介入と思われるようなことは漸次減らしていくのがやっぱり望ましいというふうに思います。それはしかし、なかなか我が国状況の場合困難な面もあります。民間には政府依存というふうな考え方が必ずしも抜け切っておりませんし、政府は規制というふうなニュアンスをずっと引きずってきております。ですから、ここで一遍に変えるということも大変に難しいと思いますが、少なくとも行政の担当であります郵政省は、従来の許認可官庁からここへ来ましてようやく、先ほど来先生の御指摘のように、政策官庁としての産声を上げたといいますか、展望を開いてきているような感じがいたしますので、これは前向きに考えていく、あるいは対応していく方が私はいいと思います。で、漸次、競争条件の整備とともに、いわば強靱な競争あり方なり仕事のあり方、大変抽象的で申しわけありませんけれども競争の条件をつくっていかれることを期待したいというふうに考えております。
  53. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 政府は膨大なシェアをホールディングしていくわけですね、株を持っていくわけですが、この委員会でもこれまでにも再三指摘をされていることですし、私も代表質問でもお尋ねしたんですけれども、この株の処分、その売買益といいますか、あるいはそれから生まれる配当益金ですね、こういったものを、これまでの審議の過程から見ますと、大蔵省と郵政省との間に、この金をどのように運用していくのかについて見解の差異があるように思いますけれども、その辺を、国民としてこの審議をごらんになっていて、この株式の益金の使い方、それから郵政省と大蔵省との間のデリケートな差、こういうものについて高野公述人はどのような印象をお持ちでございますか。
  54. 高野邦彦

    公述人(高野邦彦君) お答えします。  この問題は、大変難しいあるいは微妙な問題をたくさん含んでおると思いますし、恐らく最後の段階で問題になるかと思います。あるいは、この法案が実現、実施した段階でどのような対応をされるか、これも大変注目されるところでありますが、紙上伝え聞くところによりますと、この益金の一部は郵政省の何らかの基金に充当して、それをもっていわば電気通信事業のインフラ整備に充てるというふうな考え方が伝えられております。あるいはその余剰がさらにできた場合には大蔵省の国庫に入れるというふうな考え方があるやというふうに聞いておりますけれども、考えてみますと、原則的にはやはりこの電電は国民の財産であります。したがいまして、この処分に関しましては、やはり国全体として最も国民の期待する、あるいは国民に必要な分野に向けた処分の仕方というものが考えられるのではないかと思います。特に、臨調の第四部会を担当しました私の考え方あるいは感じ方としては、必ずしも議論の中ではこの問題は詰めてはきておりません。一定の条件は付しておりますけれども、詰めてはきておりません。しかし、個人的な考え方から申し上げますと、こういうふうなお金があるからといって新しい機関をつくる、あるいは新しいその処分をする実行機関をつくるということは、実は今回の行政改革、特に特殊法人に関しましては否定的な立場に立つというのが恐らく臨調立場ではなかろうかというふうに私自身は理解しておりますので、こういった問題はさらに政府あるいは国会を通じまして、国全体の利益、つまり予算その他の段階において、各方面の政策のバランスの中で初めて処分ということが考えられてしかるべきだろうというふうに基本的には考えております。したがって、この点はむしろこの法案通過の後の段階として大いに御検討あるいは御議論をいただければ幸いかというふうに考えております。
  55. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 どうもありがとうございます。  山岸公述人にお尋ねをさしていただきます。  これは公述人としてよりも、私は全電通委員長としての山岸さんにお尋ねさしていただきますが、先ほどもう出口は通過して列車は走っているんだと。走っている限りは目的地に着いてもらいたいとおっしゃったと思うんですね。それで、この参議院において修正もしくは見解を明らかにしてもらいたい、こういう表現をなさいました。四点お挙げになりましたね、公共性、スト権、それから附帯業務、当事者能力。この中でやはり私は具体的にはスト権の問題に集約されてくると思いますが、ずばりお尋ねをいたしますが、国会の会期は八月の八日までであります。本日公聴会、今皆さんにお願いをしております。あとはあした土曜日、あさって日曜日です。数日しかございません。  そこで、山岸委員長としては、例えばスト権の問題について附帯決議等において、三年後の廃止を含む見通しを、廃止の方向で明確ならしむれば本法律案は断固成立すべしと思っていらっしゃるのか。それとも、四点にお挙げになった点について一点たりとも明確でない点があればこれは継続審議にしてしかるべしと、そうお考えなのか。ひとつお教えをお願い申し上げます。
  56. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 厳しい質問ですが、山岸公述人お答えください。
  57. 山岸章

    公述人(山岸章君) 難しい質問ばかり私のところへくるんですが、スト権に関して申し上げるならば、私は法律本則の修正とかいうことはまあ無理じゃないかと思いますね。したがって、中村先生御指摘のように、附帯決議あるいは総理総括答弁ないしはその併用方式で廃止という方向性を明示していただければ、政党の次元ではどうなるか知りませんが、当該の労働組合の全電通としては、委員長立場で二十八万の組合員の了承を得ることは可能であると、こういう判断をしております。  問題はその次でございまして、それさえよければよいかと、こう言われますと、四つ言っといて一つだけだと、こうなるとあとの三つはこれ消えちゃいますから、何のために四つ言ったのかわからなくなりますので、ウエートの置き方はそれは濃淡いろいろございますが、やはりスト権は重要 であるが他の三つはどうでもよいというわけにはいきませんので、ぜひ国会において真剣に御検討いただきたいと、こう思いますし、じゃどのあたりがおまえたちの納得し得る限界点かと問われれば、私は社会の常識の物差しでそれは判断するというのが妥当ではないかと、こう考えております。
  58. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 今山岸委員長の御意見伺いまして、私は、委員長は明確に、衆議院段階でから取った修正部分でおおむね良好、したがって、一層の努力は期待するけれども、全電通労組を代表する立場にある者としては今国会中にぜひ成立を願いたい、問題点等においては見解を明らかにして、例えば附帯決議等においてしかるべしと、このような理解をさせておいていただきたい、こう思う次第でございます。  これは最後の質問になりますけれども委員長は先ほど非常にわかりやすく言ってくださいました。もうかっていない仲間と同じように総予算の枠をかけられて、我々一生懸命働いてパイを大きくしているのに、そのパイの分け前がふえないようでは困る、だから、そういういわば組織からは外れたい。――私は労働組合の組織ですか、労働組合運動に余り詳しくないものですからあるいは間違いがあるのかもしれませんけれども、本法律案成立をすれば、全電通労組は官公労あるいはその上部であります総評から脱退の意思がおありと理解しておいてよろしゅうございますか。
  59. 山岸章

    公述人(山岸章君) 非常におもしろい話ですが、総評はこれは官公労とか経営システムとは関係ございません。これはナショナルセンターでございますから、これは従来どおり我々は加盟をしていく考えでおります。  で、官公労ということで私たちの場合問題になりますのは、公労協ですね。私、昔代表幹事をやっておりましたが、公労協がございます。この公労協というのは公労法下の労働組合の共闘組織でございます。今度私たちは公労法の適用を外れまして、民間と同じように労働三法の適用下の組合になりますから、これはもう自動的に公労協からは離れて、で、総評の中に民間単産部会というのがございまして、この民間の集団の中に入っていく、こういうことになるわけであります。
  60. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 時間です、中村君。
  61. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 はい。まあひとつぜひ、この法律案成立をいたしましたならば、全電通三十万近い労働者のために大いに民間活力を導入なさいまして、みんなが働いたら働いただけの利益が平等に分配されるように、誤りなき組合の指導を心からお願いをしておきたい、こう思います。  ありがとうございました。
  62. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 中村君の質疑は終わりました。
  63. 服部信吾

    ○服部信吾君 本日は、お忙しいところを公述人皆さん、ありがとうございました。公明党の服部でございます。  きょうまでこの電電改革法案においては、衆議院においては通過いたしましたし、参議院はこれからと、こういうところでございます。この制度の影響、これは大変な、各分野にもそれなりの影響を与えると思います。それを、各界あるいは各層の視点に立つならば、私は、まだまだ表に出てこない問題がたくさんあると思います。そういった意味合いからいって、きょうのこの公聴会、大変有意義な御意見をお伺いいたしました。今後の審議に当たって私も皆さん方の意見を大いに参考にし資料にしていきたい、このように思っております。  そこで、まず最初に三村参考人にお伺いしたいのですけれども、まあ総論は賛成であり各論はいろいろ問題がある。いわゆる行政改革の面からいって、また来るべき二十一世紀の情報化社会に対応するためには必要じゃないのか。しかし、その一つ一つの細かい点を見ますと、かなり問題があるように思われております。    〔委員長退席、理事宮田輝君着席〕 今私もお話を聞いておりまして、そうかなあと、本当に肌で感じた次第でございます。  そこで、まず最初に、例えば公社民営化になったと。そうなった場合に電話機器などの端末機の販売を拡大するために大手メーカーの系列販売店を利用する、こういうような考えがあるようでありますけれども、この点については御承知ですか。また、その販売業界にこれがどのような影響が出るのか。先ほどお話がありましたけれども、もう少し詳しくお伺いしたい。
  64. 三村俊隆

    公述人(三村俊隆君) お答えします。  先生のおっしゃいました大手メーカーの販売系列を利用してというお話は、私自身が確認はしておりませんが、ちらほらお聞きしております。また、それから端末附帯設備までも自由に販売ということになりますとどのような影響がという御質問ですが、今度できます新電電でもし仮に附帯機能、先ほどもお話をしましたのはファクシミリ、OA機器の製品なんですけれども、これをもしやりますと、大量購入というのが新電電では非常に可能になるわけでございます。これは、恐らく日本にもないと思うような二千五百カ所の営業所を持った大きな販売会社ができて、そこで販売をするということになりますと、我々OA機器を売っている中小の業者は、大体五名ないし十名ぐらいの営業マン、それにプラスアルファ工事、サービス部門ということでやっておりますので、これと対等に闘うということはもう競争以前の問題で、売る機種を納めるメーカーがまず低価格で今度の新電電の方に納入して、その時点ではユーザーとしてメーカーはその価格設定をしますけれども、購入後はその新電電が販売ということになりますと、我々と、まともに仕入れ原価の全然違う価格設定のもとに売り価格を決められるということは、我々業界ほとんどメーカー傘下でルート販売している流通経路がもとから全部崩れるということはもう明らかだと思います。
  65. 服部信吾

    ○服部信吾君 ただいまのお話で、いわゆる新電電、超マンモス企業どこういう企業がファクシミリ等に進出をしてくるとこれは大変な影響があると、こういうことでありますけれども電話機等については余り問題がない、こういうことだと思いますけれども、    〔理事宮田輝君退席、委員長着席〕 例えば先ほどの公述の中にも、五十六年か五十七年ですか、大手のある販売会社がばあんと大量でやってきたと。もうそれこそ競争にならないと、こういうようなことがあって、いろいろ郵政省等の御努力によってそういうものは解消と、こういうことでありましたけれども、例えば今回の法案において新電電、あるいはその皆さん方の業界といろいろ問題が起きたと。そうなったときに何ら調停機関と申しますか、そういうものがないというようなことで、先ほどの中で駆け込み寺ですか、いわゆる調整機関、こういうものが必要だなというようなお話があったんですけれども、この点についてもう少し詳しくお伺いしたいんですけれども
  66. 三村俊隆

    公述人(三村俊隆君) お答えします。  ファクシミリ事件と言われるような事件があったのは、具体的にお話をいたしますと、今から三年前、昭和五十六年ですか、当時で言いますと感熱の高速ファクシミリというのが、市場価格平均百五十万ぐらいで大体市場では商売の価格になっておったんですが、そのときの落札価格が三十四万三千円ということで、納入台数が二千台と、これだけの台数を納入するということになりますと、市場価格の約四分の一まではいきませんけれども、そういう低い価格で納入が可能になっている。また、それを自由競争という名のもとで販売をしますと、我々には考えられない超低価格の市場に出る製品の価格になってしまうわけです。  ですから、我々、今いろいろな方がお話をしておりますけれども、中小企業としては、例えがいいかどうかこれは別にしまして、ほとんど裸馬に乗って日常商売をしているという現状が我々の業界の現状でございます。ですから、馬がちょっと石に転べばほとんど落馬をするというのが現状でございまして、通常の馬にくらをつけて騎兵隊のように乗っかって商売をしているのと、我々中小 は全く基本的な認識の差があります。  そういう中で、今回のいろいろな逓信委員会でのお話の中では、今度我々が、先ほど先生もお話しいただきました駆け込み寺的な、もし何かがあったときに知恵をかり、力になってもらうということがもうほとんどいろいろな附帯決議の中でもうたわれていないし、またそういう機関もなくなって、認可事項から附帯条項が外されるということになりますと、全く我々がどこにすがって商売を今後やっていったらいいかということがもうすぐそばに現実として出てきているわけです。そういう点でぜひ、駆け込み寺のつくり方とかそういう点は先生方にお任せするにしましても、我々中小企業を守る何かを附帯決議の中にも盛り込んでいただけたらと、強く願うわけでございます。
  67. 服部信吾

    ○服部信吾君 ただいまの三村公述人のお話を聞きまして本当に大変だなと思いました。そういうことでその貴重な御意見をこれからの審議の中でいろいろとあれしてみたいと思います。  そこで、新電電と新規参入、いろいろなこういう条件、公正な競争ということでいろいろ今まで論議をされてきたわけでありますけれども、第二電電といった大企業と新電電、巨大企業との関係、こういう面にばかり目を奪われていたような気がしたんですけれども、今まで公社制度の中でそれぞれいろいろと協力をしお互いにやってきた、きょうまで築き上げられてこられたこの中小業界の立場というか、そういった業界にもまさに公正な競争原理が働かなくちゃならないとこのように思うわけですけれども、少なくとも今回のような大改革で一部に負担がしわ寄せされるようなことは避けなければならないと思いますけれども、この点についての御見解をお伺いしたいと思います。
  68. 三村俊隆

    公述人(三村俊隆君) 新電電と第二電電という問題、またはこの審議の中で私は特に感じますのは、メーカーを対象として一般企業が問題ないところの法案を通しても、そういう中でやっていますけれども、実際の我々の商売の中で電話機を開放すると、一部では電電公社の方はレンタルバックとして一兆円近いものを負担しなければならないというお話もあるようですが、現実はこの一兆円のレンタルバックというのも、恐らく十軒の家庭で電話機を開放したために四軒は新しい電話機を買いましてもう電電公社電話は返すんだというようなことを基本にそういう数字をはじき出していると思うんですが、現実に我々が電話機を、新しいしゃれた電話機を各家庭に十転売りに行きまして、子供部屋につけるとか、もう一個つけるというのは別にしまして、今使われている電話機をすぐに四軒買ってくれるかというと、現実はほとんどそれは数字としては考えられない数字じゃないかと思います。それほど電話機を開放したというために附帯業務の部分もすべて自由に今度の新電電がやってしまうということになりますと、OA市場と電話機の市場は基本的に、先ほども申し上げましたけれども電電公社が主導して通信関係の方は今日まできておりますけれども、ファクシミリを含めてOA部門の製品はほとんど民間の我々がここ十数年いろいろな形で市場がようやく花が咲いて実をこれから取ろうかという非常に厳しい競争の中でも、そういうところに今度の新しい二十一世紀を目指した高度情報社会の中での通信法の改定のもとに、附帯業務に何の裁判官も置かないで大きな巨人が自由に商売をしてしまうということになりますと、もうほとんどけんかをする前に負けだというのが我々中小の現実の声じゃないかと思います。  そういう点でも、ぜひ、駆け込み号とかいうようなことで、また、附帯決議の中でも、第二項目には、第二電電と新電電というのは、「特段の配慮をする」ということで、政府がある部分で力をかしている部分がありながら、我々中小の、実際の小さく細々とやっている企業が全く――我々の会社というのは、もうスト権だとか、賃上げたとかというのは、もう如実に、ストをすれば会社もなくなるという規模の会社がほとんどでございますので、そういうものがもし、そういうことをするということは別にしまして、やられた場合には全くそこにすがるものがないという部分が片手落ちのような気がしますので、ぜひ先生方の御協力で、我々の方にも特段の配慮をお願いしたいと思います。
  69. 服部信吾

    ○服部信吾君 できる限り御要望にこたえられるように頑張ってみたいと思います。  そこで次に、山岸委員長にお伺いしたいんですが、今度少しやさしいやつですから、余り難しくなくて。特に、今回電電公社改革される、そうなりましたときに、この職員の方たちがどういう考えを持たれているのか。現在は大変緊張感があると。確かにこれは衆議院段階、または参議院に法案が来ましたもんで、マスコミ等でたくさん論議されておりますので、どうなっちゃうのかなと、緊張感が出てくると思いますけれども。僕は随分友達がいるんですけれども、四月、法案が出る前なんだけれども、全然ぴんとこないというようなことで、かなり不安な面もあるし、これからよくなるのかなという期待の面もあると思うんですね。ある人は、要するに電電公社は、とにかくある程度、何かあれば国がやってくれるんだ、だから私は電電公社に入ったんだと。もしこれから私企業――私企業でも特殊でしょうけれども、そんなような方もいらっしゃるようですけれども、職員の方たちが今どのようなお考えでいらっしゃるか、先ほどお話聞きましたけれども、お伺いしたいんです。
  70. 山岸章

    公述人(山岸章君) 率直に言いまして、百年に一回のこれは大改革でございますから、不安とそれから期待と入りまじった複雑な心境の労働者が非常に多いんじゃないか、こう思っております。この労働者たちに一定の展望とそれからやる気を起こさせるというのは労働組合の責任でもございますし、かつまた管理者側の責任であると同時に、この法律原案を提起された政治の責任でもある、こう思っておるわけであります。率直に言って、期待感よりは不安感の方が総体的にはやや強いんじゃないかというように掌握しております。  問題は、高野さんを横に置いて言うのはどうかと思うんですが、臨調のあの答申も、電電の労使関係については誤認の連続でございまして、国鉄の労働組合と官公労の最大の優等生の全電通を並列に並べて、同じ穴のムジナのような分析をしているのは間違いである、私はそう思っておるわけでございます。  つまり、私たちは、親方日の丸ということをよく言われます。民間の労働組合の諸君と話をしても、自分たちの方が補助金をたくさんもらって親方日の丸だと思っているのに、僕たちに対して、やっぱりそういうことを言って、色眼鏡で見る方もおりますが、全電通の組合は、やはり競争ということは、これからの情報通信産業においては避けて通れない道である、独占の上にあぐらをかいちゃいかぬということは、もう十年前から私たちも組合員を教育しまして、非常に強い意識を持っております。そして、親方日の丸的な発想を克服しようということで今かなりの自助努力をいたしております。その点は、例えば電話の一〇四ございますね、あの番号案内、あれの応対態度を見ていただいてもわかりますし、電話局のあの窓口へ行っていただきましても、国鉄の窓口と比べたらどれぐらい違うかということはもうおわかりだと思うわけでございます。したがって、我々は、親方日の丸という発想は乗り越えなきゃいかぬ、これはおおむね定着した。民間との競争はやらなきゃいかぬが、先ほど来三村さんからもお話がございますが、だれかを食って、倒して自分たちが生きるということではだめだ、やはり共存共栄の体制をつくらなきゃいかぬ、やり方はいろいろこれ相談しなきゃいけませんが、そういう気持ちを持っております。と同時に、確かに長年国営できましたし、公共企業体できましたから、やはりそのかすというのは残っております。ですから、服務のあり方についても、民間と比べますと、民間はコンピューターの保守の問題でも、ユーザーの方の注文があれば、故障が起こったということになれば夜中でも行く。しかし、電電は何だ、日勤専務 になっておるじゃないか、あるいは日曜日は休みだ、だからウィークデーの昼でなきゃいけないとか、日曜日はだめだとか言うんじゃ、もうおまえたちにこの仕事を任せるわけにはいかぬというような条件もたくさん出ております。したがって、私たちは労使関係の中で、公社が提案する前に――まあ公社なんてろくな提案しませんが、民間競争に打ちかつためには、自分たちの労働のあり方についても根本的に見直していこうという立場に立って、自発的に政策なり運動を進めております。  なお、それでありましても、民間の諸君から見ると不十分な点があるかもしれませんが、その点は今度形営形態が変わったら、やはり官公労のあかを落として、そして民間の諸君と同じような気持ちで汗をかき、泥まみれになって、国民の期待にこたえ得るような電信電話事業をつくるために頑張っていきたい、こう思っております。
  71. 服部信吾

    ○服部信吾君 もう一つ、たしか臨調答申には分離、分割というのが入っておられましたけれども、今回はある程度先送りになった、こういうふうになっておりますけれども、この点についてはどのようにお考えですか。
  72. 山岸章

    公述人(山岸章君) この分割の問題につきましては、与党の先生方の中にも、これはやるべきでないという御意見も多数ございます。やはり電気通信あるいは情報通信というものの特質を考えました場合に、電力のように分割をしまして、特定の地域だけにサービスを提供するということはなじまない側面を持っております。そういう意味では、通信というのはこれは一本でございますから、やはり分割をやらないというのが国家社会的見地から見ても妥当じゃないかという意見がかなり多い、私はこう思っております。  さらにまた、新電電は、先ほど来話題に上っておりますように、参入されてこられます参入の業者とは違いまして、山間僻地、離島に対しても全国ネットワークでもって情報通信サービスを提供しなきゃいかぬ、とりわけ電話サービスをやらなきゃいかぬ、電報サービスもやらなきゃいかぬ、そういう国家的、社会的任務を持っておると思います。したがって、そういう立場からいきますと、国益という観点からいきましても――労働組合の役員が余り国益と言いますと誤解されますが、純粋なナショナリズムの立場で申し上げておるわけですが、やはり分割ということはこの国際化社会の中で果たしてベターなのかどうか考えますと、やはり分割しない方がいいという御意見も非常に強うございます。そういったことを踏まえまして、私たち当該の労働組合である全電通としては、分割についてはこれは賛成できない、これは避けなきゃいかぬ、こういう立場でございまして、電電公社の方も同じような見解を持っております。  それから分離の問題につきましては、私たちは今回の経営形態変更に絡めた分離、これには賛成はできないということでございまして、電電の労使間の議論の結論としましても、電電公社そのものが、今回の経営形態の変更に関連しての分離というものは考えないと、こういう態度をとっております。じゃそれなら、今後経営形態を変更した後、分離問題についてどう対応するかという点につきましては、どういうような新規参入業者が出てこられてどういう競争関係になるのか、これも見きわめなければなりません。したがって、今後労使間で、衆議院審議の経過を見ましても分離の是非の問題については電電の自主的選択事項であるという政府答弁もございますから、労使間でどうすることがそこで働く労働者の雇用の確保ということにとってプラスなのか、また社会的にも国家的にもベターなのかというようなことを総合的に勘案しまして、今後の動向を見て十分論議をして応対したいと、こう考えております。
  73. 服部信吾

    ○服部信吾君 じゃ最後なんですけれども、今株式の売却益というのいろいろあるわけですけれども、最近いろんな会社で持ち株制度とかいろいろあるようですけれども、それはそれとして、株の売却について委員長としてはどのようなお考えを持っていらっしゃいますか。
  74. 山岸章

    公述人(山岸章君) 本来全電通は株式方式は反対なんですね。しかしここまできたらそんなことを言っても始まらないというので次善、三善の策として今考えておりますことは、まず国民の共有財産にできるだけ近いような株の取得について御検討を国会でいただきたいと、こう思っておるわけであります。したがって、政府が今度の法律では三分の一は保有すると、こうなっておりますね。あとの三分の二をいきなり証券市場に公開するということじゃなくって、例えば地方公共団体、公共性の非常に強い、そういったところの持ち合いというものを一定限度考える。さらにはまた最近、欧米諸国においても日本においても、先進的な民間企業においてやられておりますが、社員持ち株制というようなことも考えられる筋があるんじゃないか、加えて、電話の加入者の方々に優先的に御希望があれば株はやはり持っていただくというようなことを考えるなどしまして、できるだけ投資対象にして、株で一もうけするというような要素は縮小していくことがいいんじゃないかと。そういう観点から、一部上場する流動株数というものはうんと縮小するようなことを考えたらどうだろうかというような発想など持っております。しかしながら、株式の売却については国会において論議してその承認を得て行うという政府の原案になっておりますから、国会においてその都度これは提議されて御論議されると思いますので、でき得れば私たちの意見ども参考にしていただいてひとつ対応を願えれば幸いであると、こう考えております。
  75. 服部信吾

    ○服部信吾君 ちょうど時間が参りましたのでこれで終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  76. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 服部君の質疑は終わりました。
  77. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 どうもきょうは皆さん方御苦労さまでございます。  共産党の佐藤ですが、最初に安部公述人にお尋ねをいたしますが、今回、法案の根幹であります電電民営化論にかかわる問題でありますが、既に民営化の経験を持つアメリカでは最近いろんな矛盾や批判が表面化をしてきているということを聞くわけでありますけれども、その実情について公述人として何か御研究なさっていることがあればお知らせをいただきたいと思います。  それからもう一つ、同じく民営化問題に関して冒頭のお話にもちょっとあったかと思いますが、それをいちずに進めておるのはアメリカぐらいだということのお話があったかと思いますけれども、ヨーロッパの資本主義諸国、例えばフランス、西ドイツ、そういったようなところではどういう動きになっておるのか、この二つをまずお話をいただきたいと思います。
  78. 安部誠治

    公述人(安部誠治君) お答えいたします。  先ほど高橋先生の方から実験ということが一つの話題として出されたわけですけれども、私も似たような考え方を持っておりまして、大きな実験をやる場合にはその起こり得る結果についてなるべく慎重に検討した上で、それで実験に踏み切るべきだと、こういうふうに一般的に考えております。百年に一度の実験ですので、できるだけ例えば過去に同じような事例がなかったかどうかという、そういうことを含めた上で慎重に検討した上で実験に踏み切るべきだというふうに考えております。その点で、ちょうど百年前というのは電気通信産業がちょうど興ってきた時期でもあります。現在はちょうどINSとかあるいは高度情報通信社会に突入すると言われておりまして、ちょうど百年前に電気通信事業が興りまして、その重要性がまだよく社会には知れ渡っていない、社会にとってどういう意味を持つのかというそういう時期であった百年前と、これからどういうふうになっていくのかという意味では、もちろん内容的には格段に違いがあるわけですけれども、ある意味では似たような時期が今であるというふうに言えるわけであります。そういう面で、過去の歴史もよく見ながら慎重に実験に踏み切った方がいい だろうというのが私の考えでありまして、実はそう申し上げますのは今御質問のありました点にかかわってくるからでございます。  日本の場合、戦前対外通信の面では外国の企業に任じてしまいまして大変な失敗をしたと、これで通信主権の回復に七十年もかかってしまったという苦い経験があるわけであります。ヨーロッパの場合、十九世紀の中ごろから末にかけましてちょうど通信産業が興ってまいります。その当時はイギリスが一番のチャンピオンでありました。現在はアメリカがチャンピオンであるわけですけれども、そのイギリスのチャンピオンに対して、ちょうど当時はフランスやイギリスやドイツが植民地を獲得するんだということでアジア、アフリカに出ておりました、そういう時期でありました。そういうときに結局情報――当時はまだ電気通信であり電気通信産業でありますが、これにいち早く成功して、ここで勝利をおさめたイギリスが非常に当時の勢力拡張に優位に立ちました。そのためもありまして、ヨーロッパの大陸諸国というのはイギリスに対してどう自分たちの国の通信主権を獲得していくか、こうしないと国家の独立が危ないということで、当時からその問題を深く考えたわけであります。こういう伝統がありますので、こういう電気通信産業をめぐって大きな改変の時期に来ている現在になりますと、過去の経験もありまして、この問題に対しては非常に慎重である、そういう立場からこういった問題に対して簡単に自由化だとかあるいは規制緩和に踏み切れないと、こういうことになっているわけであります。  それで、具体的な質問にお答えするわけですけれども、例えばフランスあたりは、現在はあそこは社会党の政権でありますが、一九七八年に前のジスカールデスタンという方が大統領だった時代に委員会をつくりまして報告書を出しております。その中で、新しいフランスにどう情報通信産業を打ち立てていくかということで、そういう報告であったわけでありますが、そこの中で、そういう報告に基づいてテレマティクと呼ばれている新しいそういう政策が出されているわけであります。  その場合の一番の政策の柱と申しますのは、自分の国で情報流通の主体性を確保していくんだ、そのために情報の処理分野から通信分野への参入を図っているアメリカ企業に対して、通信網の主体性を失わないように適切な対策を講じていくんだと、こういうことを一番念頭に置いているわけであります。実際にヨーロッパ市場においてIBMの力というのは決定的な力を持っているわけでありまして、これに対して国の独立、自立ということからどう対抗していくかということがこの問題で深く考えられているわけであります。西ドイツにつきましても、御承知のように電気通信設備法という法律がございまして、電気通信に関する主権は国の主権の一部であると、こういうことを言っておりまして、国の規制のもとに慎重にこの問題にも対処していると。例えばアメリカのお隣のカナダはアメリカの影響が非常に強いわけですけれども、このカナダでさえカナダの通信主権をどう保持していくかということで、投資の規制ですとか、あるいはデータ流通の規制、あるいはカナダの情報処理産業の育成等に力を入れています。こういう形でいろいろな国を見まして、どうもアメリカのような形でやっていっているような国は日本が一番何かその後についていっているんじゃないかということが非常に思われまして、通信主権という問題は非常に大事な問題ですので、私はこの点は十分慎重に検討していく必要があるんじゃないかというふうに感じております。  それから御質問の二つ目なんですが、アメリカの事情をしゃべれと、こういう御質問だったと思うんですが、ヨーロッパのことを少し中心にやっておりますのでアメリカの事情については余り詳しくは存じないんですが、ひとつアメリカという国を考えた場合に、非常に日本と条件が違うということをまず申し上げておきたいと思います。先ほどどなたか公述人の方がおっしゃったんですが、アメリカの場合は電気通信事業が始まりました時期から自由競争をどんどんやりまして、その中で生き残ったATTアメリカ通信産業を制覇していくという、こういう国で、専らそういう形で電気通信産業アメリカでは行われてきたわけであります。そういう経済的に見た違いもございますし、また地理的に見ましても非常にアメリカという国は広大で、西から東に行くまでは日本からアメリカに行くほどの時間がかかるという、こういう国でございます。オリンピックの行われていますカリフォルニア一州を見ましても、その面積は日本よりも大きいということでありますから、そういう国で分轄の問題や競争の問題が論議されているということと、日本でそれを単純に引き写していくことは非常に問題があるんじゃないかというふうに思っております。アメリカでも自由化と言われていますけれども、例えばカリフォルニア州一州を見ますと、そこは一つ会社がやっているわけであります。そういう事情がございます。  それで、具体的なその問題点は何かということでございますが、いろいろな問題があると思うんですけれども、VANの問題ですとかデータ通信の問題についてはまだアメリカ実験は始まったばかりですので、今どうなっているということで、この時点で早急な結論というのは出しにくいと考えます。ただ、聞きますのは、特に出発の時点で特に国民が一番利用しております電話の面でいろいろな不都合、不便が起こったというふうに聞いております。例えば電話料金が上がってしまうとか、市外にかけるのに非常に困ってしまって、二十ほど番号を回さないと市外にかけられないと、こういうようなことが実際に起こっているというふうに聞いておりますので、実際に電話利用していくのはしばらくの間は国民でございます。ですから、その辺の影響の点ではアメリカの今の状況というのは混乱していると言ったらいいんじゃないでしょうか。ただ、具体的にこれからどうなっていくかについてはもう少し事態の推移を見る必要があるんじゃないかと、こういうふうに考えているわけであります。
  79. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 それでは、まだ少し時間がありますので、高橋先生お尋ねをいたしたいと思いますが、少しばかり前だったかと思いますが、テレビの番組に「良い子悪い子普通の子」というのが放映をされていましたけれども、今回のこの電電民営化法案のこれが打ち出されてきた背景に臨調の答申があることはこれは言うまでもないと思いますけれども、この臨調の答申に基づいて既に国鉄に対しては分割民営化という方針が、路線が着々と進められている。この電電民営化と並んで、今回の国会にもたばこ専売事業の民営化法案が出されまして、これがついに昨日国会を通過をしたという状況になっているんですけれども、こういう一連の施策の背景になっておる考え方に、いわば官業は悪だと民業がよいんだと、こういう思想がかなりこの背景にあって、こういう一連の問題がこのまま出てきているというふうに私は見るんですけれども、もちろん私もだからといって官業がすべてよくて、民業がすべて悪いという、そういう単純に考えるものではありません。現在の官業の中にも改善をすべき多くのむだやゆがみ、こういうものがあるということは痛感をするわけでありますけれども、しかし、この官業は悪で民業はいいんだと、こういう考え方というのはこれは道理にも実情にも合わないというふうに私は思うんですけれども、その点についての先生の御所見を伺いたいと思います。
  80. 高橋正雄

    公述人高橋正雄君) 何にでもいいものもあり、悪いものもあるというのが先生の意見ですが、官業の中にも悪いやつもいいやつもある、民業にもいいやつも悪いやつもある。ただ、民営の場合は、責任は自分で負わなくちゃならぬですから、もうからなかったら没落ですから、その意味じゃ民の方が何をしてかすかわからぬとも言えて民営悪という風が強くなります。官の方は、悪いことさえしなければ食っていけるんで、何もしないでいようというのも出てくるわけですね。その 辺から官僚の中に昔、戦前ですけれども、革新官僚というのがあって、日本やり直しをしようという実験に取り組んだのもいるわけですね。ですから、あっちこっちいって申しわけありませんけれども、あなたの御質問にまともというんですか、まとめてお答えすれば、官も悪い民も悪い、官にもいいとこもあり民にもいいところがある。それを調整するのが国会責任だと、またあなた方の使命ですから。
  81. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 安部先生、冒頭のお話にそういう公営企業関係のそれを御専門に研究なさっているということでしたけれども、今の同じ問題について先生の御意見はどうでしょうか。
  82. 大木正吾

    委員長大木正吾君) なるべく簡潔にお願いいたします。
  83. 安部誠治

    公述人(安部誠治君) はい。高橋先生と全く同意見なんですが、ただ私はどうしても民の場合ですと利潤ということが一番大きな目標にされがちで、官の場合公共性等々が大きな優先ということになりますので、できればこういう性格の事業については官を優先してやった方がいいと、一般論で言えば確かに民もいいところもあれば、官も悪いところもあるわけですけれども、特に公共性の高い問題については利潤を優先とする氏よりも、むしろ官の方がなじむというふうに、こういうふうに考えております。
  84. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ありがとうございました。
  85. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 佐藤君の質疑は終わりました。
  86. 青島幸男

    ○青島幸男君 参議院の会の青島でございます。  本日はお忙しいところ公述人皆さん方大変貴重な御意見を承りまして、ありがとうございました。  私も、皆さん方の貴重な御意見を今後の質疑に反映さしていきたいと、かように思っております。  特段に御質問申し上げることはございませんので、結構でございます。
  87. 田英夫

    ○田英夫君 公述人皆さん大変ありがとうございました。貴重な御意見を伺いまして大変参考になり、勉強になりました。  私も皆さんのお話を伺いながら受けた印象をまず最初に簡単に申し上げてみたいと思いますが、いろいろありましたけれども一つ強く感じましたことは、この法案がもし成立をして新電電という形になったときに、これが大変なガリバーであると、そうなればこのガリバーの手足を縛るということが必要になるのではないか、そうでないと公正な競争ができないのではないかという、そういう観点が表裏から出てきたと思います。  確かに経済における自由競争の原理というものは活力を生みますけれども、今の官と民のお話もありましたが、今もう長年の資本主義体制あるいはそれに対置する社会主義という論議の中から完全な自由競争というものは強者優先の結果に終わってしまうということの中で、あらゆる部門で社会生活の中で何らかの手直しあるいは協調というようなことがお互いに考えられて、そこにそれが資本主義、社会主義を乗り越えた新しい体制になりつつあるんじゃないかという気が私はしているわけです。  今回のこの問題もまさにそういう感じがいたしまして、先ほどからの、実は結論は賛成、反対両方おありになるわけでありますが、ここの委員会自体もそうなんでありますけれども、実際は我々はそれを乗り越えて本当にいい形の電気通信事業というものを求めるべきではないかという気持ちを新たにしたわけであります。  例えば、野球で言えばジャイアンツばかり強いからドラフト制度をつくって、あるいはトレードということをやって、今ジャイアンツはちっとも強くないわけであります。あるいはゴルフはハンディキャップというものがあって、シングルプレーヤーとハンディキャップ三十六の人がちゃんと競技ができる。これは一つの例でありますけれども、三村さんのお話を伺っておりまして、例えば附帯業務ということにつきましても衆議院の修正がありまして認可ということが外れた結果、三村さんの御心配になるようなことが発生をする。私の結論は、どうも郵政省がそうしたガリバーの手足を縛る場合に、郵政省の介入といいますでしょうか、そういうことをまず考える。認可とか許可とか、あるいは会社法の十五条では郵政大臣が命令できると書いてあるような、そういう考え方によってガリバーの手足を縛るというのは私はまずいのではないか。きょうの皆さんのお話を通じましても、やはり駆け込み寺というお話がありましたが、そういう発想をもっと大きく膨らましていくことによって、今後この法案がどういう形になりましても、やはり私は近い将来には電気通信事業一つの変化が起きることは確実でありますから、そういうことを考えるべきじゃないか。  特段、実は御質問することはないんでありますけれども皆さんの御意見を伺いまして、強い印象を受けましたので、そのことを申し上げておきたいと思います。  ありがとうございました。
  88. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 以上で公述人に対する質疑は終わりました。  公述人方々一言御礼を申し上げます。  公述人の皆様には、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表し、厚く御礼申し上げます。  これをもって公聴会を散会いたします。    午後四時三十四分散会