○
参考人(
増田祐司君) 今の御質問についてお答えしたいと存じます。
今お話がありましたように、私、この一月下旬から二月初めにかけまして
アメリカに参りまして、
アメリカの
電気通信事情に関しましていろいろ調査をしてまいったわけであります。特に、この時期と申しますのは、ATTの
分割によって新しい
制度に
アメリカが変わったわけでありますので、その辺のところを興味深くいろいろ調査をしてまいったわけであります。
問題になりますのは、今中野議員から御質問がありましたように、やはり
料金の問題が特に重要になっているわけであります。もちろん、そのほかにいろいろな問題があるわけでありますが、さしあたり直接影響を与えるのはこの
料金の問題であります。
アメリカの
料金制度、特にATT
分割によってその
料金がどのように変わるかということに関しましては、これは結論を先に申し上げますと、ローカル
料金は高目になる傾向があります。それに対しまして、長距離
料金が低下するというようなことであります。なぜこのようなことになるかと申しますと、これはいろいろ長い説明になるわけでありますが、若干かいつまんで申し上げたいと存じます。
まず、先ほど申し上げましたことでありますけれども、それは実は内部相互補助に
関係することであります。これまでATTは、長距離通話の収入によってローカル通話料を低く抑えてきたわけであります。つまり長距離
料金で稼ぎまして、それをローカル
料金の方に補助をしていたというわけであります。ところが、この
体制が崩れることになるわけであります。
昨年FCC、連邦通信
委員会が発表しましたレポートによりますと、ローカル
料金は一九八四年に月額約四ドル、そして一九八九年までに約八ドルの上昇が見込まれるということであります。これは年平均の上昇率では七%に当たるわけであります。さらに、この予想の中には入ってないわけでありますが、例えば
電話機の買い取りの問題、それから定額制から従量制への
電話料金のシフトの問題というような、こういうふうなファクターについてはここでは考慮されてないわけでありますので、またこれ以上に
料金が上昇する
可能性はあるわけであります。
例えば、カリフォルニアではパシフィックテレホンという
会社が長距離通話
料金の減少と、それからこれまでの人為的な低
料金政策、低
料金に抑えられていたということから、約二倍に上る
料金の値上げを申請したわけでありますが、これに対しましてカリフォルニア州の公益
委員会は、本年一月から約一〇%の値上げをさしあたり許可したということであります。ところが、これに対しまして長距離
料金に関しましては、ATTは昨年十月に一〇・五%の値上げを申請しました。さらに、本年一月にはそれ以上の値上げが可能であるというようなことをFCCに申請したわけであります。
このようなわけでありまして、現在長距離
料金あるいはローカル
料金に関しましてさまざまな動きが見られるわけでありますが、実はこれに関しましてはアクセスチャージという問題が深くかかわっているわけであります。このアクセスチャージと申しますのは、これは
一般的に申しますとエンドユーザーの回線を、キャリアですね、
通信業者の他のネットワークに接続するための
料金であるというふうに解釈されるわけであります。
ちょっとおわかりにくいかもしれませんけれども、要するにこれからは新しい
制度に変わったわけでありまして、
アメリカの場合にはATTが
分割されまして、七つの地域持ち株
会社、リージョナル・ホールディング・カンパニーに
分割されて、そしてそのリージョナル・ホールディング・カンパニーのもとにBOC、ベル・オペレーティング・カンパニーが、つまりベル系の
電話会社がつくことになったわけであります。これはATTとはもう直接
関係がなく、先ほどお話ありましたように、すべてそれぞれの地域の
会社になりまして、それぞれの持ち株が
設定されているわけであります。
そうしますと、それぞれ全く別々の
会社でありますから、例えば
アメリカの西海岸から東海岸に通話しようとしますと、それは大体二つかないし三つぐらいの
会社を経由することになるわけであります。そうしますと、実は長距離の場合には接続の問題が出てまいるというわけであります。ここでそのアクセスチャージ、接続するための
料金というものが
設定されなきゃならない、つまり先ほどの内部相互補助ということがなくなったわけでありますので、そういう問題が浮上してくるわけであります。
これに関しましては、当初住宅用及び一回線のみの
業務用
電話については一回線について月額二ドル、そしてそのほかの
業務用につきましては月額六ドルを八四年一月から徴収することをし、そして次第に増額しまして、一九九〇年には、加入線のコストが非常に高い地域を除きまして、このようなコストを利用者からアクセスチャージという形で徴収することになっていたわけであります。しかし、これに対しまして反対が出てまいりました。と申しますのは、これは大変不公平であるというような、特に貧しい層にとっては急速な負担増が見られる。ところがもう一方では、長距離
料金を利用する大口の利用者であります大規模企業にとってはこれは利益になるわけであります。全体の
料金は低下する傾向にありますから利益になるわけであります。こういうわけで不公平であるという議論が高まりまして、さしあたり延期ということになったわけであります。
こういうふうなアクセスチャージの実施というものが延期されたことによりまして、ここで最も大きな利益を受けますのは、さしあたりATTと
競争をしておりますMCIであるとかスプリントであるとかいう長距離
通信業者であります。つまり、ここではさしあたりATTはアクセスチャージの延期によってBOC、ベル・オペレーティング・カンパニーの減収分をまず補助しなければならないというような問題であります。そのために、予定しておりました長距離通話
料金の値下げが行えないというようなことでありまして、このようなことで他の
業者、今申し上げましたMCI、スプリントというような企業は
料金上の優位をさしあたり保てるというようなことであります。
ですから、この例でわかりますように、恐らく日本の場合でも、新しい
制度に移行しますと、この
料金の問題が大変大きな問題になってまいるだろうと思います。つまり市内
料金が若干高目になる
可能性、それに対しまして
市外料金、つまり長距離通話に関しましては、これは
競争上値下げせざるを得ないような状況が出てまいるわけでありますので、ここで問題が、先ほど申しました
公共性の論理とそれから企業の論理というような問題、これをいかにバランスをとるかという問題で非常に大きな問題が出てくるわけであります。
そして、これに関しましてまた
アメリカで注目されますのは、いわゆるバイパス問題であります。このバイパスと申しますのは、大体主として大企業が専用回線を利用しまして
電話会社を直接に介せずに通話を行うというようなことであります。これに関しましては
アメリカでは最近非常に大きな動きが出ているわけでありまして、大きな問題になっているわけであります。
例えば
アメリカの場合、ベンチャービジネスがこの分野にも進出しているわけであります。バイタリンクという
会社がカリフォルニア州のいわゆるシリコンバレーの一角にあるわけでありますが、この
会社は通信衛星のトランスポンダーを二個買い取りまして、それを使いまして、特に中小企業向けの、つまり長距離通話を
サービスしているわけであります。西海岸から東海岸に直接
サービスをする、単に通話だけではありません、画像であるとかデータであるとか、そのほかいろいろな
サービスを行う。さらに、そのネットワークの問題に関しまして、その保守
サービスをも
サービスをするというようなことを行っているわけであります。
御質問ありましたように、今ここで新しい
制度に移行しますと、そこの
公共性をいかに確保し、あまねくそうした平等な
サービス、特に
国民のための
サービスを行い得るかということが
料金設定の問題に関して浮上してきているというのが現状であります。
以上であります。