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1984-08-06 第101回国会 参議院 逓信委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年八月六日(月曜日)    午前十時開会     —————————————   委員異動  八月四日    辞任          補欠選任     久保  亘君      大森  昭君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大木 正吾君     理 事                 長田 裕二君                 成相 善十君                 宮田  輝君                 片山 甚市君     委 員                 大木  浩君                 岡野  裕君                 沖  外夫君                 志村 愛子君                 新谷寅三郎君                 西村 尚治君                 山内 一郎君                 大森  昭君                 中野  明君                 服部 信吾君                 佐藤 昭夫君                 中村 鋭一君                 青島 幸男君                 田  英夫君    政府委員        郵政大臣官房長  二木  實君        郵政省電気通信        局長       小山 森也君    事務局側        常任委員会専門        員        酒井 繁次君    参考人        東京大学工学部        助教授      斎藤 忠夫君        日本労働協会顧        問        芦村 庸介君        東海大学教授   矢加部勝美君        大阪市立大学経        済研究所助教授  増田 祐司君        一橋大学経済学        部教授      関  恒義君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○日本電信電話株式会社法案内閣提出衆議院  送付) ○電気通信事業法案内閣提出衆議院送付) ○日本電信電話株式会社法及び電気通信事業法の  施行に伴う関係法律整備等に関する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 大木正吾

    委員長大木正吾君) ただいまから逓信委員会を開会いたします。  まず、委員異動につきまして御報告をいたします。  去る四日、久保亘君が委員を辞任され、その補欠として大森昭君が選任されました。     —————————————
  3. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本電信電話株式会社法案電気通信事業法案並びに日本電信電話株式会社法及び電気通信事業法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案、以上三案の審査のため、本日の委員会東京大学工学部助教授斎藤忠夫君、日本労働協会顧問芦庸介君、東海大学教授矢加部勝美君、大阪市立大学経済研究所助教授増田祐司君及び一橋大学経済学部教授関恒義君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。     —————————————
  5. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 日本電信電話株式会社法案電気通信事業法案並びに日本電信電話株式会社法及び電気通信事業法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案、以上三案を便宜一括して議題といたします。  この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  本日は、日本電信電話株式会社法案外二案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜りまして、審査参考にいたしたいと存じます。どうかよろしくお願い申し上げます。  次に、議事の順序について申し上げますが、斎藤参考人、芦村参考人矢加部参考人増田参考人及び関参考人順序でお一人十分以内、時間が短うございますが、御意見をまとめてお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を求め、また答弁は簡潔にお願いをいたします。  それでは、斎藤参考人からお願いいたします。斎藤参考人、どうぞ。
  6. 斎藤忠夫

    参考人斎藤忠夫君) 御紹介ありました斎藤でございます。  私、電気通信研究に大学の工学部で従事しております者の立場から、新しい電気通信制度について見解を述べさせていただきたいと存じます。  最近の電気通信を特徴づけるものは、まず第一にサービス多様化ということでございます。最近のエレクトロニクス技術発展というのは大変著しいものがあるわけでございまして、特に御案内のように、大規模集積回路技術というのがそれを代表するものであるということができるかと思います。ここ二十年にわたって、一つ集積回路の上に実現できるトランジスタの数というのが毎年ほぼ二倍という速度で上昇しています。それが約二十年にわたって続いておりますから、百万個のトランジスタ一つ集積回路の上に実現するなんということもできるようになっているわけでございまして、こういうような技術進歩というものは、ほかのいろんな技術を考えてみましても、歴史上類を見ないものであるということができるかと思います。  こういうような技術進歩に裏づけられまして、通信サービスも非常に多様化してきているということが言えると思います。特に、データ通信サービスなどの新サービスが新しくいろいろ発想されているということでございます。既に小規模ながら行われている中小企業VANのようなものにおいても相当に効果を上げているものが少なくないのでございます。こういうような多様な発想、従来の電信電話のみならず、多様なシステムができるようになるというためには、従来のような一元的な運用ということでは限界があるということは指摘されているとおりでございまして、多元的な通信体制というものをおつくりいただくということが非常に重要ではないかというふうに思われます。  第二に申し上げたいことは、従来電気通信というものは一元的に運用されていたということでございます。これは電気通信システムが安定であった過去においては有効な制度であったということでございまして、この間の一貫した御努力によりまして我が国においては非常に立派な通信網がつくられたということは、こういう安定した通信制度というものに基づくものであるということで評価することができるわけでございますが、この間の技術発展というのが著しいものがあるわけでございまして、そういうものにこれから新しく対応していくような制度をおつくりいただかなくてはいけないというふうに考えるわけでございます。  我が国においては、過去三十年にわたって一貫した通信制度がとられておったわけでございますが、この間の技術発展というものが著しいわけでございまして、これに合わせて制度及び料金の若干の見直しというのが行われたわけでございますが、本質的には、電電公社発足以来、料金及び制度の考え方は根本的には変わっていないと言うことができるわけでございます。このために、料金技術あるいは制度技術というものの隔たりというのが次第に大きくなってまいっております。  電話の例で申しますと、御承知のように市内の技術というのが余り変化しなかったにかかわらず、市外通信技術というのが著しく変化したわけでございまして、市外技術による市外通信のコストの低価格化というのが著しいわけでございますが、それが料金に必ずしも反映していないということでございます。本来ならば、市外通信というのはより安くできるわけでございまして、それによってより多くの市外通話が実現される。そうしますと、市外技術によって新しいシステムを新しくたくさんつくることができるということができるわけでございますが、それが料金に反映されないために、せっかくの技術国民のために生かされない、そういうことになっていると言うことができるのではないかと思います。  電信電話以外の多様なサービスということについても、現在の制度上いろいろな問題があってできない、せっかくの技術国民のために生かされないという点が多々あるということは指摘されているとおりでございます。  第三に申し上げたいことは、我が国技術というのは、おかげさまをもちまして今や世界トップグループに来たと言うことができます。通信網技術というのは、従来のアナログ通信技術からディジタル通信技術に大きく変貌しようとしているわけでございますが、こういう変革我が国世界トップグループに立って実行していると言うことができます。過去においては、我が国通信技術というのは世界先進国の例に見習って実現していけばよいという点があったわけでございますが、今では学ぶべき絶対的な先例というのは世界のどこにも存在しないと言うことができます。自分でいろいろ工夫をして正解を見つけていかなければならないということになるわけでございます。  技術を健全に発展させていくためには、こういう事情にかんがみてニーズに見合った発展を実現するということが必要であり、独善的なシステムを構成しないようにするためには、競争原理に基づく有効な競争というのが非常に重要ではないかということになるわけでございます。技術発展国民のために生かす、我が国通信技術優位性を一層進めるということのために、競争原理というのは有効に働くであろうというふうに考えられるわけでございます。  しかし、このような事情でございますから、新しい制度というのもまた世界的に手探りで進められているというのも実情でございます。大きな変革に伴う過渡的な問題というのもいろいろ心配されるところではないかと思います。最近ではアメリカにおける先例というのがあるわけでございまして、いろいろな混乱というようなことも伝えられております。こういうような問題がいろいろある中でどれが過渡的な混乱であるか、どれが本質的な問題であるかということをよく見分けていただくということが重要ではないかということでございます。効率性公共性調和ということがここで求められているということでございます。制度の面でいろいろな御配慮をお願いしなければならない点がたくさんあるかと思います。  我が国の新しい制度というのは、アメリカの新しい制度とは違い、通信会社分割ということを含んでおりませんから、その問題も本質的にはかなり違うであろうと思います。新規参入においても、当面新規参入のシェアは一〇%程度を超えないというふうに多く予想されているかと思いますが、それによりましてクリームスキミングの問題というのも通信業者公共性が大きくは損われないという程度にできるであろうというふうに考えられるわけであります。若干の問題が生ずる可能性がありますが、それにまさる民営化による効果が得られるというふうに期待されるわけであります。  しかし、予想される問題の防止、通信事業健全性の確保のために政府の関与の余地を残しておくということも重要ではないかというふうに考えられるわけであります。新規参入業者については、これは従来確立している電電公社に対して大きなハンディキャップをしょって参入するということになるわけでございますから、できるだけ自由に仕事ができるというふうに御配慮いただくことも重要ではないかと思います。特に、第二種業者は、多様な業務、例えば新しい電電公社卸売業に例えるならば、いろいろな小売事業を多様にできる、高付加価値のバリュー・アデッド・ネットワークから単純再販までも含めた多様な組み合わせの仕事ができるというふうに御配慮いただくことが重要ではないかと思います。  もう一つ最後に申し上げたいことは、これから一元的体制から多元的体制になるに従って、標準化とか機器認定とかいう問題がますます重要になる。相互接続をどうやって確保するかということがますます重要になるかと思います。こうした業務は従来電電公社業務であったわけでございますが、これから多元的な運用になるに従って国の業務としていかなければならない。これに伴う多大な費用、必要となる人員をどのように御確保いただくかということも重要ではないかというふうに思います。昨今の財政事情あるいは公務員の定員等制約があるわけでございまして、その中でこういう体制をどのようにおつくりいただくかということがこれから非常に重要な問題だというふうに伺うわけでございますが、国の通信網が有効に形成され、国民がそれを有効に使うことができるように標準化機器認定に対する新しい体制をおつくりいただくということに格段の御配慮をいただきたいと思うわけでございます。  伺うところによりますと、電電公社の株式の売却その他により幾つかの財源が得られるということでございますが、この金は国の一般財源とするというふうにも伺っておりますが、その一部を新しい制度で必要になるこのような新しい国の業務にお使いいただくということは、そもそも電電公社の資産が通信利用者によって形成されたということから考えれば当然のことではないかと思う次第でございます。  以上、時間でございますが、一技術者立場から技術発展をより有効に国民のために生かしていただくということに対して御意見を申し上げた次第でございます。我が国通信技術がより一層国民の役に立つようになりますために、本法案を早急に御可決いただくことが役に立つというふうに考える次第でございます。  以上でございます。
  7. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 斎藤参考人ありがとうございました。  次に、芦村参考人にお願いいたします。
  8. 芦村庸介

    参考人(芦村庸介君) 私は、長年労働関係研究に携わってきた者の一人として、電電法案に対する意見を申し上げてみたいと思います。  まず第一に、この電電法案視点でございますけれども、ややもすればこの三法案はいわゆる行政改革関連法案として位置づけられておるやに承るものでございますけれども、私は、やはり電電事業という事業そのものが極めて公共性の高いものである、そういう点から、やはり公共福祉という視点をまず第一に考えていくべきではないかと思うわけでございます。  御承知のように、既に有線電気通信法あるいは公衆電気通信法、それから日本電信電話公社法、いずれをとりましても、その第一条の目的には、公共福祉を増進することを目的とすると、このように規定しておられるわけでございます。したがいまして、今日、もちろん電電事業というものが新しく改革されなきゃならぬという状況になりました背景には、無論、行革というよりももっと大きないわゆる電気通信事業そのもの高度化という世界的な流れというものがあることは認めなければなりません。そういう面における効率性の追求ということは大変重要でございますけれども、先ほど斎藤参考人も申されましたとおり、やはりこの電電改革に当たっては、何といいましても公共性の問題とそれから効率性の問題との調和が大変重要な視点ではないかと思うわけでございます。  それから第二番目でございますが、新しく生まれます新電電でございますけれども、この新電電業務は、現在日本電信電話公社が実際に実施せられております諸事業をそのまま継承する、これがやはり一つ基本でなくてはならないと思うわけでございます。そしてそれは、やはり何といいましても電電改革が従来とはまるっきり異なった形で急激に行われるということになりますとそこに無用混乱が生じる可能性もあるわけでございますから、したがいまして、その無用混乱は、国民一般に対して混乱を与えるだけでなく、さらにここに働く労働者職員層に対しても非常に大きな雇用の不安を与えることになるのではないかと思うわけでございます。したがいまして、電電公社改革に当たりましては、何といいましても職員層に与える雇用の問題について十分な配慮をすべきことが重要ではないかと思うわけでございます。  次に、細かい点に立ち入りますけれども、まず第一に、この電電法案の問題につきましては、我々は、何といいましても新しい電電経営自主権拡大といいますか、当事者能力拡大強化をまず第一に念頭に置かなければならない問題だと考えるわけでございます。もちろん、現在の電電公社労使関係につきましては、長年にわたる労使双方の御努力によりまして、他の公社、現業よりもはるかにすぐれた極めて良識ある労使関係を維持しておることは私が申し上げるまでもないところでございます。しかしながら、この労使関係を引き続き新しい会社で維持していくということになりますと、何といいましてもその経営自主権拡大ということが何よりも優先さるべき問題だと思います。そういう意味におきまして、その労働条件に関する制約などはやはりできるだけ取り払うべきでございまして、そういう意味におきまして事業計画認可制衆議院附帯決議によりまして改められたという点については、その点は非常に高く評価しなければならぬと思います。  それから次には、何といいましても、附帯業務につきまして認可制になっておりましたのが衆議院修正になりました。このことは、やはり新電電が新しい業務拡大することによって雇用の不安というものを解消できる余地を残したものとして、これも大変立派な修正ではないかと思うわけでございます。  次に、人事の問題が盛んに言われておりますけれども、人事の問題は、やはり関西新空港の例もございまして、代表取締役選任規制を残すだけで、あとの取締役は自由とする、こういう制度にすべきではないかと思うわけでございます。なお、役員に関しましては、監査役制度がございますが、これにつきましても、できる限り職員層あるいは事業者からの選任ということも考えるべきではないかと思うわけでございます。  それから次に、公正競争条件設定でございますが、公正競争条件設定ということは、新しい新電電の将来の事業にも重大な影響を及ぼすだけに、極めて慎重を期さなければならない問題だと思います。したがいまして、新規に参入する事業がいいところだけつまみ食いにして、ただ利益のみ追求すると、こういうことであっては、やはり電気通信の持つパブリックの精神に反するものだということにもなりかねない。したがって、これにつきましては念には念を入れての規制が必要ではないか。例えば、接続料などにいたしましても、これは契約条項とすべきだという意見もあるようでございますけれども、できる限り本法においてこれを明らかにするのが筋道ではないかと思うわけでございます。  それから次に、労働基本権の問題でございますが、労働基本権の問題については、衆議院において、一応「当分の間」、つまり三年後に見直すという事項が挿入されまして、一応廃止を含めて三年後に見直すという規定が設けられましたけれども、しかし我々はかつて、昭和二十七年に電気事業及び石炭鉱業におけるスト規制法の制定に関しまして、三年後に国会の議決にまつということでございましたが、三年後にこれが恒久法となったという例も承知しております。このスト規制につきましては、既に労調法の本則が全面的に適用になるわけでございますから、できる限りこのような二重の制限は撤廃することといたしまして、まあ三年間は新電電独占状態が続くと、非常に心配であるということであるならば、三年という期限はともかくとして、とにかく三年後にはこれは撤廃すると、廃止するという項目を明示すべきではないかと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、本法においては、例えばこの会社法については五年、事業法については三年の見直し規定がございますけれども、これなども分離分割の問題と関連して非常に不安定ではないかと思うわけでございます。でき得るならば、見直し規定は結構でございますけれども、年限についてはこれは削除すべきが筋合いではないかと考えるわけでございます。  以上申し上げましたが、私は、やはり衆議院において修正されました点を踏まえながら、さらに参議院においても国民の疑点を晴らす立場から必要な修正を施され、この新しい電電改革というものが真に国民のための電電事業として発展するよう期待するものでございます。  以上、参考人としての意見を終わります。
  9. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 芦村参考人ありがとうございました。  次に、矢加部参考人にお願いいたします。
  10. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) 矢加部でございます。  私は、公社制度労使関係を専攻してきました立場から、いかなる立法化が望ましいかという点に絞って意見を申し上げたいと思います。  まず、現行公共企業体制度は、昭和二十二年、米軍占領下にGHQの指令によって創設をされたという歴史的な経過がございますが、そのために従業員争議権を禁止する特別労働立法という性格がむしろ強かった。言いかえますと、本来の公企体は、業務公共性を尊重しつつも経営的には文字どおりに企業体として運営をさせ、かつ円滑なその発展を図るというそういう育成策がとられなければならなかったんですけれども、必ずしもそのような対策、政策がとられてきていない。したがって、先ほど来御意見も出ておりますように、情報通信産業多様化あるいは新しい発展、変化とも関連をいたしまして、今や長年にわたって公企体限界あるいは欠陥といったものが露呈し始めている。それだけに、一般論として考えてみましても、公共企業体制度改革は必要であり、かつ望ましいと私は考えております。  我が国現行公社の中で、それにしましても電電公社はまだしも業績に恵まれておりますのは、先ほど申し上げましたような新しい情勢、条件に乗っておるということもございますが、しかし、それにしてもさきに申し上げましたような企業体としての条件整備ということについては、長年その対策はむしろ放置されてきている。電電公社もまたその例外ではないと申し上げたいのであります。  端的に言ってその最大のものは、芦村参考人も先ほど触れられましたけれども、第一には経営側当事者能力の欠如であり、さらに第二には労使関係制度上のゆがみが続いているということでございます。これは後でも触れますけれども、現在の電電公社全電通労組電電公社当局との関係を批判しているわけじゃございません。制度としてゆがみがあるために、良好なかつ安定した労使関係を樹立せずに今日に至っていると、こう言わざるを得ないと思います。  そこで、今次の電電公社改革に当たりましては、この是正に力点を置いていただきたい。一定の制約はいずれにしても免れないと思いますけれども、できるだけ民間企業並みにやっていく、あるいは改善をしていくという視点が望ましいと思います。すなわち、経営者はその責任と能力を十分に発揮できるような、また、これに相応する体制を整備させる。さらに、これに見合うものとして、団体交渉及びその保障措置たる争議行為などの労働関係制度に関しては、一般民間企業に比べて格段の制限を設けるべきではないと考えます。これは、以上に申し上げました昭和二十年代以来の経験によって痛感されることであるということをあえてつけ加えたいと思います。また、労働法制から判断をしましても、最小限公益事業たる民間私鉄とほぼ同様の扱いにとどめるのがベターではないかと考えます。  他方、経営そのものに関しましては、万が一にも角を矯めて牛を殺すような結果を招かないように、そのためには、政府郵政省による介入と規制必要最小限にとどめるべきであるということは申し上げるまでもありません。そして、これまでの公企体の欠陥である経営の活力を十分に引き出すような配慮をこの際はむしろ優先させるべきではないだろうか。このことは、もちろん電電事業の持つ公共性を否定するものでは決してありません。その反省から出ている考え方であると了解していただきたいと思います。  次に、電電改革法案の審議に当たりましては、以上のほかにあえて次の三点を要望いたしたいと思います。  第一は、法案の成立には労働組合、これは関係の労働組合ですから特に全電通労組を指しておりますが、関係労組とその組合員の協力、了解を得られるかどうかが最も重要なことでありまして、今後長きにわたって新電電の前途を左右する要素にもなりますので、その点を十分に御配慮願いたいと思います。  第二に、全電通労組は、一般の官公労組及び公労協の中では、私の見るところでは最も良識に富んでおります。かつ電電改革に関しては以前から真剣に取り組んできている。何も今次の行革その他に関連をして特に取り上げたということじゃない。一貫してこれと取り組んできておる。したがって、今次の法案に関しても、いたずらに反対を事としたり実力行使によりこれを廃案化するといったような方針をとっていないのは御存じのとおりであります。具体的に対案を提示し修正を求める、こういう態度をとっておりますので、この誠意と努力を十分に評価されるべきである、私はそのように考えます。  第三に、電気通信事業は広義においては、これまでも御意見が出ておりますように、情報化社会の基幹産業として二十一世紀へ向けてますます強化充実かつ発展すべきものだと考えられます。しかし、情報に関するプライバシーや人権の保障を初め、産業政策ないし産業立法上の点から考えてみましてもまだまだ未解明の課題が多く、十分に明らかにされていない、そのような分野であることも間違いございません。したがって、今次の電電改革法案の立案に当たりましては、そのすべてをこの三法によってカバーしたり規制をするというようなことを期待すべきではなく、将来はむしろ情報通信にかかわる基本法といったこときものを考えて、これを三法施行後の一定の経験を得て制定をするということを同時に考えていただきたいと思います。したがって当面は、多年にわたりこれまでも申し上げましたような公企体制度運用経験からその是正と改善を図ることに重点を絞る、これが一つでございます。  さらに、情報通信の新産業分野には一定の民間企業の参入を認めざるを得ないのは、これはもう時代の趨勢から申し上げても当然でございますから、これに関連する必要な立法措置をとることはやむを得ないけれども、何もかも参入の拡大その他を考えるべきではない。外資規制についても一応のことを念頭に置いておく必要があると思います。  結論としまして、参議院においては既に修正事項が採択をされ、附帯決議も採択をされておりますので、これは十分に参考にできると考えますので、参議院においてもこの趣旨をお酌み取りいただく方がよろしいのではないだろうか。一言私見を申し添えて終わりといたします。
  11. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 矢加部参考人の末尾の項にございました修正等の問題につきまして、衆議院の誤りと委員長は推察いたします。そのように改めさせていただきます。  矢加部参考人ありがとうございました。  次に、増田参考人にお願いいたします。
  12. 増田祐司

    参考人増田祐司君) 私は産業経済、産業技術に関しまして研究をしている者でありますが、今回の電電法案について意見を申し述べさせていただきたいと思います。  今回の私の申し上げたいと思います意見は、大体二つに分かれています。  まず第一には、現在の産業社会がどのような段階にあるかということに関しまして考察を加え、そして、かつ電電三法の持つ意味を考えてみたいというふうに思います。それから第二には、それに関連しまして、これまでの電気通信制度に関しましての考察と、さらにあるべき電気通信制度について考えてみたいというふうに思います。  まず第一の現在の産業社会のことでありますけれども、これは今我々高度情報化社会に入りつつあるというのが私の認識であります。高度情報化と申しますと、これまでの単にコンピューターを活用しました情報処理の問題ではありません。むしろ情報及び通信というものがあまねく社会の中に浸透しまして、それが社会に大きな影響を与えるという意味を持っているわけであります。特に、技術的な面から見まして重要なことは、情報処理とそれから通信というものが今密接に関係しつつあるという事態であります。これまでは情報処理はコンピューターの世界でありまして、競争原理が貫徹している世界でありました。これに対しまして、通信の世界はいわば規制下の世界にあると言うことができると思います。ところが、その両者の技術がますます接近して、それが分からがたくなってきているのが現状であります。  一体、ある情報通信サービスは、これは情報の領域であるか通信の領域であるかということを検討することは非常に難しいのが現状であります。これについてはいろいろな議論があるわけでありますけれども、ここではそのことについて深く立ち入りませんが、いずれにしましても、この問題が現在の産業社会に与えている影響あるいはその投げかけている問題というのは非常に大きなものがあるわけであります。アメリカにおいては、既にこれまで規制下にありました通信の世界が今非規制下の状況に置かれまして、競争原理が導入されているわけであります。競争によりまして産業の効率化を図るということが大きな政策的な目標になっているわけでありますが、日本においてもこの電電法案によってそれが今現実に実施されようとしているのであります。  さらに第二の問題としまして、これまでの通信制度それからこれからのあるべき通信制度について考えてみたいと思います。これまでの通信制度というものを三つの点から考えてみたいと思います。  第一には、これは公共性の論理と言うことができると思います。これまでの通信制度というのは公共性の論理のもとに運用されてきたというわけであります。すなわち、電気通信公共サービスであるということが言えます。公共サービスというのは、国内全域にわたりあまねくかつ等しいサービスを行わなければならないということが大前提になります。このためにはサービスの提供者がコストに関して内部相互補助をする必要があるわけでありますけれども、この内部相互補助は、競争市場で営業を行っている企業にとっては非常に不可能なことであります。  内部相互補助と申しますのは、他のコストのサービスを受ける顧客、例えば都市間の顧客からコスト以上の料金を徴収しまして、高コストのサービスを受ける顧客、例えば都市内の顧客からはコスト以下の料金を取るというようなことをしまして全体のバランスをとるわけであります。これが今まで行われてきました特にアメリカにおいては、このような料金徴収制度が長い間実施されてきたわけであります。  それから第二番目の問題でありますけれども、それは経済学的に申しますと電気通信が自然独占であるということであります。自然独占と申しますのは、これは生産を行うに当たり、規模の経済が市場の大きさに比べて余りに大きいために、その産業の全産出高を一つの企業だけで生産する場合最も効率がいいというようなことであります。これによりまして自然独占が許されることになるわけでありますが、電気通信の分野においてもそのような論理に基づいてこれまでは電電公社の一元的運用のもとに行われてきたわけであります。  なぜこのような形で効率的になるかと申しますと、まず第一には、ネットワークが一元的にそれから統合的に運用することができて、ネットワークの能力の最適化が図られるということであります。それから第二には、ネットワークのコンポーネントを標準化できるということであります。もし標準化が不十分でありますれば、それはインターフェイス、その接続に余計なコストがかかるということになります。これがこれまでの電気通信事業を支えてきました論理でありますけれども、現在この論理というものが大きく転換しつつあるわけであります、  それで、これからあるべき電気通信の論理と申しますのは、これに対応して三つ申し上げられるというふうに思います。  つまり、電気通信はまず第一に自然独占ではないということであります。これは、特に現在の技術革新によりまして、そのさまざまな技術のコスト、特にコンポーネントのコストが急速に低下しておりまして、多様なサービスを低料金、低コストをもって供給することが可能になり、規模の経済が必ずしも作用しないということになるわけであります。  それから第二には、内部相互補助は必ずしも効率性は高くはなく、むしろ効率性が悪いというわけであります。つまり、コストに基づかない料金体系というのは消費者に誤った情報を与えることになるわけでありまして、コストと料金関係をゆがんだままで放置することは、これからの産業社会の発展のために非常に大きな問題となります。つまり、資源の有効な配分が阻害されるということであります。  それから第三番目でありますけれども、これは特に公共性の問題、今申し上げましたのは公共性の問題と産業の問題でありますけれども、第三番目に申し上げたいことは、それはある意味電気通信が国のセキュリティーに関係している、あるいは経済発展に不可分のものであるということであります。つまり電気通信というのは、三つの意味で国家的、社会的使命があるわけであります。第一には、高品質のサービスを国内全域に提供することによって地域発展を促すというわけであります。それから第二には、電気通信サービス技術革新を遂行し、その波及効果を含めまして、その国の産業の国際競争力を高めるということが重要であります。それから第三番目としまして、信頼性が高く性能のよいネットワークを提供し、災害時、緊急時の通信に役立てるということであります。このような国家的、社会的な要請にこたえるためには非常に膨大なコストがかかるわけであります。  今申し上げましたことをまとめますと、これは公共性の論理、産業の論理そしてかつセキュリティーの論理という三つの面から電気通信というものが考えられるわけであります。これまでは公共性の論理というものを前面に出しまして、これをもとに電気通信が運営されてきたわけでありますけれども、ここに産業の論理、つまり効率性の論理を導入しまして公正な競争を実現するということが重要になるわけであります。  私の最後に申し上げたいことは、この参議院で現在審議されております電電法案に関しましては、限定つきではありますけれども、これからの産業社会の発展のためにしかるべく措置をとられるように希望する次第であります。  以上であります。
  13. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 増田参考人ありがとうございました。  次に、関参考人にお願いいたします。
  14. 関恒義

    参考人(関恒義君) 関でございます。  私は、この電電法案、特に電電公社民営化につきましては基本的に反対という立場から発言させていただきます。  実はことしの予算委員会の公聴会、三月二十九日に開かれました際に、私、経済と景気の動向と関連させましてこの問題について発言したことがございます。  そこで、例えばこれは会議録第一号に載っておりますが、この中で、現在大変な経済の困難の時期にある、あるいは私どもは構造的危機と呼んでおるわけですが、そういう大変な経済危機の時代にある。この一つの理由といたしまして、国民購買力が非常に低下してきている、それに対して資本の側の過剰蓄積が非常に激しい、そういう意味での不均等発展一般化してきているという点についての御指摘をしたことがあります。したがって、国民購買力を一層充実する方向で現在の経済的な困難を克服していくべきではないかという意見を述べると同時に、したがって三公社五現業——現在四現業ですが、そういったものの民営化というのには賛成できない。つまり過剰蓄積をさらに加速化する危険性を持っている。そういう意味で、直ちに民営化に踏み切ることについては慎重な御検討をお願いしたいということをあわせて述べたことがあります。  衆議院の方では若干の修正つきで、既に参議院の方に送られてまいりました。あと数日、八日までの間にこの電電法案についての最終的な決着がつくというような剣が峰に立っているわけですが、そういう時期で、かつて予算委員会で述べましたその立場から私は賛成いたしかねる、そういう立場から意見を述べさせていだだきまして御参考に供させていただきたい、そしてまた慎重な検討をお願いしたいということです。  反対の理由といたしましては、電電民営化というのは現在の資本の過剰蓄積を一層促進する危険性を持っている、この点をあえて再び強調せざるを得ません。特に、先ほど来参考人の方々からも御指摘がありますように、電気通信事業というのは高度産業社会の基軸となる、そういう事業ないしは産業となっていくようであります。これは政府及び財界が既にそういう方向をはっきりと打ち出しているわけでして、情報産業を軸としての産業構造の転換あるいは構造転換というものが八〇年代の戦略の基軸に置かれている。そういうことになりますと、こういう部門の民営化というのは、産業全体に過剰蓄積を一般化する危険性を持っているということを特に強調せざるを得ないわけです。この件につきましては、予算委員会の公聴会の席でも政府発表の統計資料に基づきまして多少の検証を与えておきましたので、ここでは繰り返しません。  一般的に見ますと、ことしの国会は大変な国会のようでして、専売の民営化が既に方向としては決まったようですし、国民は大分反対しましたけれども、健保法案もどうやら修正つきで可決されそうな気配。そこへもってきて電電法案ということで、やはり国会の皆さん方も長期の国会で大分いろいろな議論をされてお疲れではございましょうが、最後のこの時点におきましても、電電法案につきましては慎重な検討をそういう意味ではお願いしたいと重ねて申したいわけです。特に、健保法案の成立などによりまして国民負担の増大は明らかですし、そういう意味での国民購買力の低下ということも必至なわけでして、国民購買力の増大に基づく景気の上昇ないし経済的効果が高いということに一つの焦点を置いていただきたいと、願望を含めて申し述べたいと思います。  それが第一の理由ですが、第二の理由といたしましては、参考人の方々も言われましたように、電気通信事業あるいは電信電話事業というのは公共性が高いものである。これは現在の電気通信事業法案の中でも、「電気通信事業公共性にかんがみ」という言葉もうたわれております。前の、現行法案でも、「公共福祉を増進することを目的とする。」ということが繰り返し強調されているわけでして、公共部門の充実ということを通して検討する余地があることを強調しておきたいのです。  公共性効率性ということが問題になっておりますけれども、現在問題になっている効率性というのは、民間活力の導入、いわば利潤機能の観点からの効率ということになるわけですね。しかし、利潤機能の効率性だけではなくて公共性そのものの効率性というもの、これはこれとしてまた追求しなければならない問題であると思うんです。公共部門にいろいろな問題点が山積していることは十分私も承知しているつもりです。しかし、そういう問題点の打開を含めて、直ちに民営化し、利潤の機能のもとにこれを従属化させるということでこの問題の打開の方向が出てくるとは私は思いません。  特に、現在推進されようとしている民営化はいわゆる第三セクターの方式でして、国家が幾らか株を持つ、これに民間が参入してくる。今度の新電電会社法案でも、三割は国家が所有する、あとは民間の所有と。最近、こういう第三セクターのやり方というのがいろいろなところに出てきております。大阪新空港もそうですし、国鉄の再建との関連でつくり出されました山手開発株式会社ですか、こういうところもそうなっております。公共部門と民間部門との接合という形で新しい会社をつくる、つまり純粋な民間会社じゃないわけですね。つまり、従来の公共部門を利潤機能へ従属化するというそういうやり方です。このことは、少しきつい言葉で表現しますけれども、一般的には資本の寄生性というものが一層強まるということを示すものです。なぜ、その公共部門として効率を追求するということにもう少し主力を注ごうとしないのかということにやはり依然として私は疑問を持つものです。  さらには、こういう方向を通して、恐らく数十兆円の資金を要すると言われるINSづくり、こういったものが推進されようとするわけですが、この資金源も相当強く国民負担に依存せざるを得ないという実態があるわけなんでして、そういう意味では、国民的な観点からはあくまでも非常に大きな疑問が残り続けることをやはり強調しておきたいんです。したがって、私の意見といたしましては、国民本位の、住民本位の公共部門という視点をあくまでも堅持する方向でこの問題については検討していただきたい、少なくとも基幹部門についてはそうあるべきだというふうに思います。つまり、そういう点からやはりこの問題については反対せざるを得ないということです。  それから第三番目の問題は、プライバシーないし人権の問題、さらには通信主権を守るという問題、こういう観点から公共部門という形を通してこの主権の維持を、あるいは人権の維持を検討するということが非常に重要であろうというふうに思います。資本主義圏におきましても、国際的、国内的な電電仕事民営化されているのはアメリカだけでして、カナダは、国内は民営化ですが、国際的な方は公共になっているわけですね。ほかの国々はすべて国家ないしは公共の形態をとっているわけなんでして、そういう意味で日本にとっても、従来公共でやってきたんですから、やはり世界の大勢として公共的な方向というものがある以上そういう方向で検討していただきたい。  特にアメリカについて言いますれば、アメリカのIBM及びATTというのは、やはり資本力として圧倒的に強いわけでして、そういうところにも電電を開放するということが大きく日本の経済主権の侵害につながる危険性があることをやはり強調しておきたいんです。  以上、三つの理由によりまして、依然として私は反対の態度をとらざるを得ない。仮に今国会で通ったといたしましても、この問題はやはり三年ないし四年の大問題として残るであろう。そして、その過程においてもしお呼びがあればまた意見を述べさしていただくというつもりでおりますので、ひとつ御参考にしていただきたいと思います。
  15. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 関参考人ありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。  質疑者、答弁者ともどもにお座りのままで結構でございます。
  16. 宮田輝

    ○宮田輝君 参考人の皆様には、大変お忙しいところを御出席いただいて、本当にありがとうございました。  まず、斎藤参考人矢加部参考人に質問させていただきます。  お話しのように、電気通信は極めて技術革新の激しい分野でございまして、既に世の中はその自由化に向けて大きく動きを見せているというのが現状であろうかと思います。新規参入の計画としても国鉄、建設省、道路公団、また京セラグループなどが名のりを上げております。また、VANの事業化の動きも急ピッチのようでございます。一方、回線の自由化、端末自由化も大いに期待をされているところでございます。  このように、当事者以外にも関係業界等広い範囲の国民がこの法案の早期成立を希望しており、今国会で法案成立ができないとその混乱ははかり知れないものがあろうかと思うわけであります。したがいまして、法案成立がおくれた場合の影響また問題についてどう考えておられるか、この点を初めにお伺いいたします。
  17. 斎藤忠夫

    参考人斎藤忠夫君) 私の意見を申し上げさしていただきます。  先ほど申しましたように、世界的に電気通信事業はエレクトロニクスの新しい進展を受けまして進展し続けているわけでございますが、特にアメリカにおいてはその進歩は著しいわけでございまして、我が国においても早急に新しい多様なサービスを実現することによって、新サービスの経験を積むことによって世界的なそういう進歩と歩調を合わせた進歩を遂げていく、そういうような制度をおつくりになるということが希望されるわけでございます。  特に、米国におきましては多様な試みが既になされておるわけでございまして、先ほどからお話があるようなIBM、ATTを初めとして、いろいろなネットワークが現実に動き始めようとしているわけでございます。第一種事業的な新規参入においても同様でございまして、新しいネットワーク、ディジタルネットワーク、衛星を使ったネットワーク、光ファイバーを使ったネットワーク、そういうようなものが次々とつくり出されて、競争原理のもとにますます低廉なサービス国民に提供するということができつつあるようになるわけでございます。  先ほどから外資規制の問題、その他についての問題もございますが、私は、現在我が国技術はかなり進んでおりまして、直接アメリカから日本に持ってきて日本で圧倒的に強みを示すような技術アメリカにはないというふうに思っておりますが、それも日本でこういうものの実現がおくれれば日本はそれだけおくれるわけでございますから、日本の高度情報化社会への対応がそれだけおくれるということになるわけでございまして、おっしゃいましたように、現在いろいろな企業が新規参入努力しておられるということでございまして、我が国のこれからの産業社会にとって最も重要であると考えられる高度情報化社会への対応を進めるために、できるだけ早く新しい制度が実現されることを希望している次第でございます。
  18. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) 今の点についての意見でございますか。——私は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、現状においては、衆議院で審議された結果採択をされている修正の部分と附帯決議と双方含めまして、恐らくこの附帯決議の中ではさらに法案修正に取り入れた方がいい部分がかなりあるのではないかというふうに考えますので、そういう審議を早急にやっていただいてなるべく早く成立をさせるというふうにされるのが望ましいのではないかと思います。
  19. 宮田輝

    ○宮田輝君 それと、つまり法案成立がおくれた場合の影響、問題についてどうお考えか、お伺いしたいんです。
  20. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) 法案の成立、これは時間にもよるんじゃないでしょうか。何カ月おくれるとか、あるいは一年以上延びるとかということによっても違ってきますので、多少のおくれが決定的なことになるとは思えません。
  21. 宮田輝

    ○宮田輝君 それから斎藤参考人にお伺いいたしますけれども、技術的に見て今回の法案におきまして問題点は特にないと考えているものでございますけれども、いかがなものでございましょう。  新規参入業者と新電電との接続に当たって、ダイヤルのけた数がよく話題になります。二十けたも回さなきゃならないとか、あるいは何けたプラスしなければならないとか、そんなことも話題になっておりますけれども、こういう心配も技術的に相当程度解決できるのではないか、専門家の斎藤先生に御意見をお聞きしたいと存じます。
  22. 斎藤忠夫

    参考人斎藤忠夫君) 現在の法案の立案に当たっては、大変よくお考えになっておられて、技術的な問題も多方面から御検討になっておられるということでございまして、おっしゃいましたように純技術的な問題というのはほとんどないというふうに考えております。  今お話がありましたダイヤルけた数の問題でございますが、アメリカにおきましては、今般の制度の改定によりまして多数の新規参入業者ができたわけでございまして、その間の過渡的な問題として二十けたのダイヤルをしなくちゃいけないという事情も一部に発生しておるわけでございますが、アメリカにおきましてもそれはあくまでも過渡的な問題でございまして、新規参入業者の数が幾つあるかによるわけでございますが、アメリカにおいては三けたの数まで許される、千まで許されるということになっております。  どれを選ぶかということは加入者の自由意思でございますから、私はどれを選びたいということは言っていただかなくちゃいけないわけでございまして、そのために三けたまでの増加ということはあり得る、アメリカにおいてはあり得るわけでございますが、現在九けたでございますから、それが三けたふえるということはあり得るわけでございますが、それは幾つまでの新規参入業者を想定するかということにもよるわけでございまして、現在のような過渡的な問題としての二十けたと、そういうような話はあくまでも技術の途中段階での問題である、そういうシステムが完成するまでの問題であるということでございます。  我が国におきましても、新規参入業者が幾つあるか、どれを選ぶかということに対して十まで選択できるようにするのか、百まで選択できるようにするのかということでございまして、最終的には一けたないし二けたあるいはふえるということがあるかもしれません。それはそれほど困難な問題ではない。ほかのダイヤルは全く同じでございまして、今これを選びたいですよということを言えばいいわけでございます。アメリカの場合でも最終的に三けたでございますが、私はどれを使うということを、ふだんAT&Tを使うのか、ふだんMCIを使うのかということをお客さんごとに登録することにすれば、そのいつものやつでいいですよというときには一けたを選ぶと、そういうようなことになるはずでございます。ですから、普通の場合は一けたの増加ということが必要になるかもしれませんが、それ以上の問題が生ずると二十けたなんというむやみなことになるということはあり得ないことでございます。  もう一つ心配されている問題としては、標準化ということで、今まで電電公社が中心に行われてきたということが基本的には国の仕事になるということでございまして、それは従来の仕事が一部ある部分から別の部分に移る、そういうようなことがあろうかと思います。それに関連しては、従来の標準化のやってきた方法を御参考に新しい体制を新しいところでつくらなければいけないということが将来検討の課題になるであろうと思います。そういうことに関してまたいろいろ御配慮いただかなければいけない点が多々あるかと存じますが、技術的に本質的な問題ではないというふうに考えております。  以上でございます。
  23. 宮田輝

    ○宮田輝君 先ほどのお話でも、百万個のトランジスタ一つ集積回路にすることができるようになったと、あるいは一千万個なんという話も聞かないわけではございませんけれども、つめの四分の一の大きさの中にトランジスタが一千万入るなどということは、まあちょっと前には考えられないようなことでございました。この科学技術発展国民のために役立たせるというところは非常に大事な点であり、先生もおっしゃっていたところでございますが、今のお話を伺いますと、相当程度新規参入が受け入れられる、そういう土台でもあるというふうには考えてよろしゅうございますか。
  24. 斎藤忠夫

    参考人斎藤忠夫君) 新規参入がどの程度できるかという問題に関しては、純技術的な問題以外にいろいろな点を考えなければいけないだろうというふうに思うわけでございます。とりあえずは、従来から通信事業を独占的に運営しておられる電電公社に対応して新規参入するわけでございますから、第一の新規参入業者というのはかなり強力なものであるということが期待されるわけでございまして、また望ましいわけでございます。  現在の市外通信と申しますのは、先ほどからいろいろなお話がある事情もございまして、技術的に実現できるよりはかなり割高になっている。多くの国民は、市内の通話はほとんど料金のこと、お金のことを考えないでやっているかもしれませんが、例えば地方から東京に出てきておられる方は、実家に電話をするのを毎日電話したいのを一週間に一遍で我慢するとか、一カ月に一遍で我慢するとか、そういうことで随分倹約して通話しておられるに違いないわけでございまして、そういうことを考えますと、新技術がより生かされ、より安価な市外通話ができるようになるとしますと、市外通信の量というのは格段に増大するであろうというふうに考えられるわけでございます。  ですから、現在の新しい制度が有効に作用して市外通信料金がより低価格化が進むと、そういう何年か先を考えれば、市外通信の量というのは相当にふえるであろうというふうに期待されるわけでございまして、新しい技術を利用して新電電市外通信網の拡充を当然なさると思いますが、それとともに複数個の——まあ私の感じでは一けたであろうというふうに考えておりますが、複数個の新規参入業者が出て、そして新しい市場を創成していく、新しいマーケットをつくっていく、そういうことが十分期待できる。それには、しかし時間がかかります。それまでどういうふうにそれを育てていらっしゃるかということに関していろいろなハンディキャップが新規参入業者にはあるわけでございますから、そういうことを御配慮の上、それを生かし、育成していかれるということが重要ではないかというふうに考えております。
  25. 宮田輝

    ○宮田輝君 最後にもう一つ、芦村参考人に御質問申し上げます。  今回の法案成立がおくれることはその事業体に働く人の労働条件の改善がそれだけおくれることになるのではないか、こういうことは労働運動全体の立場から見ても決して好ましくはないという意見もございますけれども、労働問題の専門家としてこの点をどうお考えでいらっしゃいますか。
  26. 芦村庸介

    参考人(芦村庸介君) この電電改革法案が時期的にどうかという問題とそれから電電公社職員の労働条件、直接結びつけて考えることはちょっと短絡ではないかと思いますけれども、しかし究極的には、この新しい電電会社ができることによって今まで制約されておりました諸条件が解消するということによって、新しい電電の職員の労働条件あるいは賃金、こういったものはやはり前進するであろうということは間違いないと思います。
  27. 宮田輝

    ○宮田輝君 ありがとうございました。
  28. 片山甚市

    ○片山甚市君 参考人の先生方、どうもありがとうございました。  矢加部先生と芦村先生にお聞きを申し上げますが、三つあります。  一つは、今までの電電公社が一元的に行ってきた電気通信事業に対して、これからどのような改善がなされたらいいかということについて希望とか期待を持たれておるかどうか。二つ目に、この三法案が成立することによって国民が期待する福祉などを含めたサービスの向上や料金値下げなどがなされると思うかどうか、同時に、どのような不安を持たれるかどうか。三つ目には、産業論理に基づく公共性よりも効率、より利潤を求める株式会社民営化による商法の適用によって公共性が担保されないという心配はないか。まず三つのことについて矢加部先生、芦村先生からお聞きをしたいと思います。
  29. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) 第一の点ですが、私は電電公社改革については、先ほども申し上げましたけれども、本当の意味でのやはり利用者、国民のための電気通信事業、これができるような体制を実現するということが基本でなければいけないと思いますね。だから、先ほど来もおっしゃっておりますような民間の参入その他新しい情勢に適応する云々というような、これは当然考えなければなりませんけれども、一番基本は、何といっても国民共有財産である電信電話事業が現状までの公社制度では必ずしも満たされていないということが第一ではないかと。あとは先ほど申し上げましたので繰り返しません。  それから二番目の点ですが、確かに、果たしてサービスの向上になるのか、市外通話は値下げできるはずだという御意見もあるようですけれども、しかし果たして参入した民間の企業によって値下げが確実に実現できるか、それはむしろ不安の方が多いというのが、私だけじゃなくて国民全体がそうではないかと思うんですよね。したがって、私は政府の原案そのものでいいと申し上げているのではなくて、あくまでも衆議院での審議経過をもう一度この参議院で正確にトレースをしていただきたい。  それから三番目の公共性と効率の問題ですけれども、この法律でいけば、おっしゃっている商法の全面的適用でも何でもないんですね。仮に商法が全面的に適用されるような民間企業にするというなら、これはそれなりにすっきりするんですけれども、この法律では必ずしもそうはなっておりません。しかし、それは現状において考えましても、電気通信事業の本来の性質からいっても全面的な適用というのは確かに無理ではないだろうかと。けれども、どちらかといえば最初に申し上げた、本当に国民や利用者のための電信電話事業という観点よりも、民間の効率性競争原理の導入という観点の方が少し強過ぎはしないかと、この原案にはですね。その点で不安を持っているということは申し上げたいと思います。
  30. 芦村庸介

    参考人(芦村庸介君) まず第一の問題でございますが、従来電電公社が果たしてきた電気通信事業は、やはりパブリックサービスとしての立場から推進してこられたことはこれは否定できません。それだけに、公共福祉ということを念頭に置いてのいろんな事業をやられてきたと思うんですけれども、しかし、これからの通信事業がどのように変革されるにいたしましても、やはりそれは何といいましても公平であり、しかも正確であり、そして迅速であり、かつ親切であり、しかも低廉なサービス、こういう条件というものが当然要請されると思うわけであります。  したがいまして、そういった条件を維持しながらやはり今後の電気通信事業というものも約束されていかなきゃならぬということでございまして、もちろん、先ほど申し上げましたように、いろんな従来の電電公社が果たし得なかった分野における進出ということが今後ますます拡大されていくということは、我々利用者の立場としては大変結構なことではないかと思います。と同時に、先ほども申し上げましたように、何としても経営自主権拡大、これが大変重要なテーマでございます。  それから、この三法案が成立しまして、期待するようなサービスの向上あるいは料金の値下げというものができるかどうか、あるいは不安は何かと、こういう御質問でございますが、この三法が成立することによって国民が期待するようなサービスの向上あるいは低料金というものが直ちにできるかどうかは、この法律自体、本法自体ではどうも私どもにはよくわからないところが多いと。つまり、非常に重要な肝心な点はほとんど政令あるいは省令にゆだねられておる部分が多くあるように承っておりますので、したがって、そういう点において今後もしこれが成立した場合、これからできるであろう政令、省令においては、十分にこの国民の声を反映しながら、できるだけ配慮した政令、省令というものができることが望ましい。そうすることによって、例えば無原則的な新規参入と、こういうことも避けられますし、そういうことが避けられれば、やはり電話料金の値下げということも可能である。しかし、無制限にむやみやたらに新規参入ということで出てくるならば、そんなに数は多いとは思いませんけれども、出てくれば、あるいはこの料金が逆に値上げになる地域も出てくるかもしれないという憂慮はやはりつきまとうのではないか。そういうような点に非常に一つの不安といいますか、そういったものがあるんじゃないかと思います。  それから第三の御質問でございますが、効率性あるいは利潤追求と、こういった商法の適用ということでございますが、むろんこの電電三法すべてが効率あるいは利潤追求と、こういうことを意味しているわけではないと私は受けとめたいと思います。したがいまして、やはり公共性ということと同時に、効率あるいは利潤、この二つがやっぱり並立的にとらえられるべきであって、どちらか一方だけということになれば、これはやはり心配すべき点が出てくるのではないか。したがって、そのための歯どめというものは何らかの形で残しておく必要があるのではないか、こういうように考える次第でございます。
  31. 片山甚市

    ○片山甚市君 ありがとうございました。  それで、矢加部先生に次のことを聞きたいんですが、先ほどもお話がありました、産業界が第一種事業者として入り、主な通信業である事業電話及び通信が電電からなくなっていくということになれば、当然クリームスキミングされることですが、大体今日加入者が四千三百万加入がございますが、そのうちの約七割、三千万が一般家庭用電話であります。結果的に収入が足りませんから料金の値上げが起こらないか、収入が足りないから人件費節減ということを、大体資本の論理でやってくると思いますが、そうすると、サービス雇用労働条件に大きな影響を与えるということにはならないだろうかという心配がありますが、どうでしょうか。  産業界の都合のよい制度改正であっても、勤労国民、なかんずく生活保護者やあるいはハンディを持つ人々にとってどうなっていくのかであります。例えば、アメリカではクリームスキミングをすることで利益を上げておる会社、MCIなどによって、アメリカの地方会社ではこの一月以来料金を二倍、三倍に引き上げざるを得なくなっている現状があるんですが、それについてどのように受けとめられているでしょうか。
  32. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) 最初の御質問ですが、私が一貫して懸念材料として一番恐れておりますのは、需給調整とかいろんな言葉が使われておりますけれども、おっしゃっているように、あるいは新電電が成り立たない、あるいはまた新規に参入してくる民間企業も成り立たなくなる、それが皆利用者に押しつけられるとか、事によれば新電電だけじゃなくて、参入する企業にも同じようなことが起こるかもしれませんね、これ。その点極めて不安であるのは、一体だれがそのような調整を行うのか、あるいはそのようにならないための、言うならば民主的な規制といいましょうか、最初の御質問のときに申し上げましたような国民の共有財産としてもともとでき上がっているものですから、それがより活用されるような形になるためには何かの歯どめが必要なんですね。  だから、それが言うならば一にも二にも郵政省の許可であり認可である。郵政省の許可や認可があればそのことがいかにも達成されていくというような傾向がこの原案にあることを私は恐れているんですよ。だから、その分はできるだけそうではなくて、この新しい産業が成り立つような、それをまた規制できるような、計画化できるような、単に郵政省とか政府とかいうんじゃなくて、国会の役目も重要ですし、何らかのそのような機関ができるのならこれにこしたことはありませんし、あるいは監査役会も構成をされるわけですけれども、監査役会にしましても、もう少し権限の大きな監査役会にされていくとか、何かいろいろなことを通じてそういうことをやっていただかないと、現状においては御質問のような懸念、不安があると思います。  それから、アメリカの例も先ほどから何回も出ておりますけれども、二つあると思うんです。確かに我が国分割をされないからアメリカのようなことは起こらない、それから先ほども別の参考人もおっしゃっておりますように、今は過渡期であるからいずれは解消されるだろう、こういうお話ですけれども、しかしそれはそれじゃ我が国においても分割というのは絶対に起こり得ないのか、これも今度の衆議院での取り扱いだけでは必ずしも確定しているとは言いかねるんじゃないだろうか。それから、たとえ過渡的であっても、現にアメリカにおいてある種の混乱が起こっていることは間違いないんですから、我が国でこれから新しい制度をスタートさせようと思えば、やはりそのようにならないようにしていかなければならない、それは立法化に当たって十分に考えなければならないことではないだろうかというふうに考えます。
  33. 片山甚市

    ○片山甚市君 そこで、高度情報化社会を迎えると言われていますが、その結果情報の集中と脆弱性などによる社会不安が起こると思われます。  そこで、日の当たる多彩な花の咲く高度情報化の問題は礼賛されますけれども、今申しました陰の部分になるところについてはどうも目を覆っておるように思います。その最たるものは、情報基本法の制定について確たる返事がなく検討を続けてきました。昭和五十四年以来私は提案してきたんですが、何らしないでこのような法律案だけ出しておるんですが、そこでぜひとも情報基本法を制定さして、人権を中心に産業全体も通信全体も調和を図りながらやるべきだと思いますが、それについての御意見はいかがでしょう。
  34. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) これは私自身も持論でございますし、まさにおっしゃっているとおりです。  それで、先ほど申し上げましたように、仮に政府の原案を修正してこの国会でこれが成立をするというようなことを想定しましても、それだけではやはり不十分であって、いずれはおっしゃっているような基本法が必要ではないだろうか。例えば、新聞紙上でも伝えられておりますような産業行政としての通産省と郵政省との管轄争い云々というようなこと、これも問題でありますし、単に情報通信というようなものを産業分野とか産業政策の面だけから規制をするということにも問題があるんです。  たまたま今片山委員が触れられましたように、実は情報というのは、もともとプライバシー、基本的人権に最も関係がありますし、それからもちろん、他面においては国の主権にも大いに関係があるんです。だから、情報基本法というのはそういうすべてを含んだものが一つきちんとでき上がると、本来から言うなら、今度の三法案より先にそれがまずでき上がっておれば、これが一番望ましかったと私は考えるんですけれども。しかし、今後のことを考えていくにしましても、今後何年かごの法律に基づいて新しい実験が行われるわけですから、この見直しの時期には必ずおっしゃっているような新しい基本法を考える必要があるのではないだろうかと私は考えます。
  35. 片山甚市

    ○片山甚市君 力強い激励をいただきまして非常にありがたいんですが、私は同時に成立させたいと思うし、少なくとも成立させる時期を明確にしなければ、この三法案は通すべきでないと思っておる立場です。  さて、国家主権のことについてお聞きしますが、特別第二種事業者は全国的な規模でVANを実施することができるようなことになっております。その業者に対して郵政省は当初外資規制をしておったのですが、それをやめました。これは、聞くところによると、中曽根さんがアメリカと約束して政治取引をしたと言われております。そこで、私たちの国ではハード面では確かにある程度アメリカと互角にやれるように見えますけれども、データベースを含めてソフトについては全面的にアメリカに依存をしておる状態です。この流れの中で外資規制を外すことについてはいかがなものかと思うんですが、先生いかがでしょう。
  36. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) この第一種については制限を設けて、第二種について確かに当初の考え方が変わったのかどうか知りませんけれども制限を外されたというのは、これは私も全く納得いきません。だから、第一種同様に——同様にという意味は、何らかの形において第二種に関しましても外資については一定の規制を設けられると、それが、特に今度のようにいろいろなまた不確定な要素を内包しながら新しい産業分野、新しい事業をスタートさせる場合においては、特に重要な配慮事項ではないだろうかというふうに思います。
  37. 片山甚市

    ○片山甚市君 そこで芦村先生にお聞きするんですが、先ほど先生もおっしゃいましたように、労働基本権に関する労調法附則三条についてのお話がございました。今度四条を加えて二重規制をすることになりましたけれども、これについては、先生がおっしゃるように、規制をされるべきでなくて排除されるべきだと思います。  電電公社が株式会社になる場合、国の規制を取っ払っていけということについてはなかなか進んでおりませんと同時に、今申しますように、労調法附則三条が残ることは、他の電気、炭鉱などを含めて、規制をされておるものについての悪例を残し、法律的には私たちはこの際はきっぱりと自由社会のスト権を認める体制にすべきだと、一方では自由社会だ競争だと言いながら、片一方ではひもをつけて、鎖でくくりつけるようなやり方については納得できないのですが、いかがでしょうか。
  38. 芦村庸介

    参考人(芦村庸介君) ただいま片山先生の御質問ありましたが、新しい電電会社、これは日本電信電話株式会社という呼称になるそうでございますけれども、これらの職員に対して労働基本権がいわゆる労調法に言う公益事業並みに付与されるということは、これはもう当然の原則でございまして、これは付与されるわけでございますから、当然労調法の本則は完全に適用になるということでございます。  しかしながら、政府原案は労調法の附則に第三条を設けて、その第四項で、労働大臣が職権による調停の請求をしたときには、その公表の日から中央労働委員会が当該事件の調停を完了した日まで、十五日を超える場合には十五日間その争議を禁止すると、こういう規定が付与されておったわけでございます。衆議院修正によりましてさらに第四条が追加されまして、三年後に見直しをするということになりました。  この点を考えてみますのに、労調法には既に第十八条におきまして、労働大臣の職権調停の条項が明白でございます。それは、公益事業またはその事件の規模が大きいため、もしくは特別の性質の事業に関するものであるために、公益に著しい障害を及ぼす事件について、労働大臣または都道府県知事が労働委員会に調停請求できる、こういう規定になっておるわけでございまして、その規定があり、しかもなおかつこの原案附則第三条におきましては、「日本電信電話株式会社に関する事件であって、争議行為により当該業務が停止されるときは国民経済又は公衆の日常生活に相当程度の障害を及ぼすおそれがあると認められるものについて、労働大臣が」云々と、こうなっている。そうしますと、労調法十八条においては、「公益に著しい障害を及ぼす事件」、こう規定されておるわけでございますけれども、附則第三条においては、「公衆の日常生活に相当程度の障害を及ぼすおそれがあると認められる」ということになりますと、「相当程度」というのが果たしてどの程度かということが大変問題になってくるわけでございます。  さらにまた、労調法の第三十五条の二に規定されております緊急調整制度でございますが、この緊急調整制度は、昭和二十七年に労調法が改正になりまして、たまたまその年の二十七年の石炭、電気のあの争議の際に、石炭事業の争議について正式に発動が決定されましたが、しかしこれは発動直前に当時の炭労が争議を中止いたしまして、実質的には発動にはならなかったというものでございますが、自来我が日本の労働運動あるいは労使慣行が次第に成熟してまいりまして、今日、産業状況あるいは労使関係の状態を見まして、この緊急調整制度を発動するような事態が急にあるかどうか。これはほとんど皆無に近いと言ってもいいんじゃないかと思うわけでございます。  つまり、この緊急調整制度に指摘するような「争議行為により当該業務が停止されるときは国民経済の運行を著しく阻害し、又は国民の日常生活を著しく危ぐする虞があると認める事件について、その虞が現実に存するときに限り、」総理大臣が職権調停の緊急発動ができるわけでございます。そういうところを見ますと、緊急調整制度にしても非常に強く焦点を絞っておるわけでございます、対象を。  ところが、附則第三条の方は、先ほども申し上げましたように「公衆の日常生活に相当程度の障害を及ぼすおそれがある」でありますから、これは「相当程度」の解釈いかんによって、どのような事件についてもこれは適用可能という……
  39. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 芦村参考人、済みません、簡潔にお願いいたします。
  40. 芦村庸介

    参考人(芦村庸介君) はい。  状況があると思いますので、そういう点については、やはりある程度こういう条項を規定しなけりゃならぬという理由はよくわかるわけでございます。つまり新電電に移行して、例えば三月三十一日までは公労法の適用であった、四月一日からは途端に、一夜明ければ労調法の適用ということで、政府としては確かに法基盤になじまないという状態が想定される。したがって、この項を設けて、とりあえず「当分の間、」つまり三年間はということになったと思いますが、私はそれはそれといたしまして、三年後になった場合にはこの条項の廃止ということをやはりこの時点で何らかの形で明らかにしておかないとこの問題は後を引くことになるということを考えるわけでございます。
  41. 片山甚市

    ○片山甚市君 私は、何らかじゃなくて、明確にしてもらわないとこの法案は通らないという立場で質問しましたから、念のため申し上げておきます。  そこで、株式の問題ですが、発行額一兆円とのかかわりですが、現在ある電電公社の全財産は国民共有財産として政府は認めておりますが、それは加入者がつくった財産であって、大蔵省など行政が独占的に支配すべきものではないと思います。しかし大蔵省は、国民共有の資産として大蔵省が国益にかなうように一般財源として財政赤字の穴埋めに使いたいということでありますが、これは納得できません。国民に直接利益が還元される方法をとるべきだと考えるところです。  その株式を利権とさせないためには、例えばアメリカのATTのように株主三百万人、一人平均二百二十八株、その株主のうち女性株主が男性の二倍というふうな状態で、株式の性格が資産株、いわゆる老後の生活保障をするようなものになって投機の対象になっておらないという状態を見て、なるほど立派だと思いました。そのためには加入者、公共団体、関係職員などに優先的に株式が割り当てられて、これが利権にならないようにすべきだという主張を持っておるんですが、それについて先生の御意見を承りたいと思います。
  42. 芦村庸介

    参考人(芦村庸介君) 株式の売却益の問題あるいは売却の方法その他については、これからいろいろと問題になるところだろうと思いますけれども、私どもは、やはり国民共同の利益、特に加入者が財産をつくり上げたという点にかんがみ、特にその有効活用については非常に注目していかなきゃならぬと思います。  したがいまして、今先生がおっしゃいましたような、要するに投機株ではなくて資産株にするという方向は最も有効ではないかと思います。特に、労働側につきましても従来から持ち株制度というような形で一般の民間にはかなり普及しておるところでございますし、新しい日本電信電話株式会社の職員に対して、あるいはまた利用者に対して優先的に株式が割り当てられるという方向は歓迎すべきことではないかと思います。
  43. 片山甚市

    ○片山甚市君 これで質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  44. 中野明

    ○中野明君 参考人の先生方大変御苦労さまでございます。二、三お尋ねいたします。  まず、増田先生にお尋ねをいたしますが、この法案の提出に当たりまして、郵政大臣は、民営化が実施できれば経営の合理化等によって安い料金国民の皆さん方に電話その他を利用してもらえる、こういうような意見を述べておられるわけですが、問題は、先ほど先生が申されました料金のコスト主義ということになってまいりますと、方法は二つしかないんじゃないかと思われます。  すなわち、遠距離料金を下げれば市内料金にはね返ってくるんじゃないか、こういう不安、それを解消しようとすればアクセスチャージの問題で何とかしなきゃならぬじゃないかということで、今アメリカでもこのアクセス料の問題が非常に大きな問題として浮かび上がってきているように聞いておるんですが、最近先生は向こうへも行っておられたということを聞きましたので、そういうことを含めてこの料金設定原則、そしてアクセスチャージの問題等アメリカの実情を含めて御説明いただければありがたいと思います。
  45. 増田祐司

    参考人増田祐司君) 今の御質問についてお答えしたいと存じます。  今お話がありましたように、私、この一月下旬から二月初めにかけましてアメリカに参りまして、アメリカ電気通信事情に関しましていろいろ調査をしてまいったわけであります。特に、この時期と申しますのは、ATTの分割によって新しい制度アメリカが変わったわけでありますので、その辺のところを興味深くいろいろ調査をしてまいったわけであります。  問題になりますのは、今中野議員から御質問がありましたように、やはり料金の問題が特に重要になっているわけであります。もちろん、そのほかにいろいろな問題があるわけでありますが、さしあたり直接影響を与えるのはこの料金の問題であります。アメリカ料金制度、特にATT分割によってその料金がどのように変わるかということに関しましては、これは結論を先に申し上げますと、ローカル料金は高目になる傾向があります。それに対しまして、長距離料金が低下するというようなことであります。なぜこのようなことになるかと申しますと、これはいろいろ長い説明になるわけでありますが、若干かいつまんで申し上げたいと存じます。  まず、先ほど申し上げましたことでありますけれども、それは実は内部相互補助に関係することであります。これまでATTは、長距離通話の収入によってローカル通話料を低く抑えてきたわけであります。つまり長距離料金で稼ぎまして、それをローカル料金の方に補助をしていたというわけであります。ところが、この体制が崩れることになるわけであります。  昨年FCC、連邦通信委員会が発表しましたレポートによりますと、ローカル料金は一九八四年に月額約四ドル、そして一九八九年までに約八ドルの上昇が見込まれるということであります。これは年平均の上昇率では七%に当たるわけであります。さらに、この予想の中には入ってないわけでありますが、例えば電話機の買い取りの問題、それから定額制から従量制への電話料金のシフトの問題というような、こういうふうなファクターについてはここでは考慮されてないわけでありますので、またこれ以上に料金が上昇する可能性はあるわけであります。  例えば、カリフォルニアではパシフィックテレホンという会社が長距離通話料金の減少と、それからこれまでの人為的な低料金政策、低料金に抑えられていたということから、約二倍に上る料金の値上げを申請したわけでありますが、これに対しましてカリフォルニア州の公益委員会は、本年一月から約一〇%の値上げをさしあたり許可したということであります。ところが、これに対しまして長距離料金に関しましては、ATTは昨年十月に一〇・五%の値上げを申請しました。さらに、本年一月にはそれ以上の値上げが可能であるというようなことをFCCに申請したわけであります。  このようなわけでありまして、現在長距離料金あるいはローカル料金に関しましてさまざまな動きが見られるわけでありますが、実はこれに関しましてはアクセスチャージという問題が深くかかわっているわけであります。このアクセスチャージと申しますのは、これは一般的に申しますとエンドユーザーの回線を、キャリアですね、通信業者の他のネットワークに接続するための料金であるというふうに解釈されるわけであります。  ちょっとおわかりにくいかもしれませんけれども、要するにこれからは新しい制度に変わったわけでありまして、アメリカの場合にはATTが分割されまして、七つの地域持ち株会社、リージョナル・ホールディング・カンパニーに分割されて、そしてそのリージョナル・ホールディング・カンパニーのもとにBOC、ベル・オペレーティング・カンパニーが、つまりベル系の電話会社がつくことになったわけであります。これはATTとはもう直接関係がなく、先ほどお話ありましたように、すべてそれぞれの地域の会社になりまして、それぞれの持ち株が設定されているわけであります。  そうしますと、それぞれ全く別々の会社でありますから、例えばアメリカの西海岸から東海岸に通話しようとしますと、それは大体二つかないし三つぐらいの会社を経由することになるわけであります。そうしますと、実は長距離の場合には接続の問題が出てまいるというわけであります。ここでそのアクセスチャージ、接続するための料金というものが設定されなきゃならない、つまり先ほどの内部相互補助ということがなくなったわけでありますので、そういう問題が浮上してくるわけであります。  これに関しましては、当初住宅用及び一回線のみの業務電話については一回線について月額二ドル、そしてそのほかの業務用につきましては月額六ドルを八四年一月から徴収することをし、そして次第に増額しまして、一九九〇年には、加入線のコストが非常に高い地域を除きまして、このようなコストを利用者からアクセスチャージという形で徴収することになっていたわけであります。しかし、これに対しまして反対が出てまいりました。と申しますのは、これは大変不公平であるというような、特に貧しい層にとっては急速な負担増が見られる。ところがもう一方では、長距離料金を利用する大口の利用者であります大規模企業にとってはこれは利益になるわけであります。全体の料金は低下する傾向にありますから利益になるわけであります。こういうわけで不公平であるという議論が高まりまして、さしあたり延期ということになったわけであります。  こういうふうなアクセスチャージの実施というものが延期されたことによりまして、ここで最も大きな利益を受けますのは、さしあたりATTと競争をしておりますMCIであるとかスプリントであるとかいう長距離通信業者であります。つまり、ここではさしあたりATTはアクセスチャージの延期によってBOC、ベル・オペレーティング・カンパニーの減収分をまず補助しなければならないというような問題であります。そのために、予定しておりました長距離通話料金の値下げが行えないというようなことでありまして、このようなことで他の業者、今申し上げましたMCI、スプリントというような企業は料金上の優位をさしあたり保てるというようなことであります。  ですから、この例でわかりますように、恐らく日本の場合でも、新しい制度に移行しますと、この料金の問題が大変大きな問題になってまいるだろうと思います。つまり市内料金が若干高目になる可能性、それに対しまして市外料金、つまり長距離通話に関しましては、これは競争上値下げせざるを得ないような状況が出てまいるわけでありますので、ここで問題が、先ほど申しました公共性の論理とそれから企業の論理というような問題、これをいかにバランスをとるかという問題で非常に大きな問題が出てくるわけであります。  そして、これに関しましてまたアメリカで注目されますのは、いわゆるバイパス問題であります。このバイパスと申しますのは、大体主として大企業が専用回線を利用しまして電話会社を直接に介せずに通話を行うというようなことであります。これに関しましてはアメリカでは最近非常に大きな動きが出ているわけでありまして、大きな問題になっているわけであります。  例えばアメリカの場合、ベンチャービジネスがこの分野にも進出しているわけであります。バイタリンクという会社がカリフォルニア州のいわゆるシリコンバレーの一角にあるわけでありますが、この会社は通信衛星のトランスポンダーを二個買い取りまして、それを使いまして、特に中小企業向けの、つまり長距離通話をサービスしているわけであります。西海岸から東海岸に直接サービスをする、単に通話だけではありません、画像であるとかデータであるとか、そのほかいろいろなサービスを行う。さらに、そのネットワークの問題に関しまして、その保守サービスをもサービスをするというようなことを行っているわけであります。  御質問ありましたように、今ここで新しい制度に移行しますと、そこの公共性をいかに確保し、あまねくそうした平等なサービス、特に国民のためのサービスを行い得るかということが料金設定の問題に関して浮上してきているというのが現状であります。  以上であります。
  46. 中野明

    ○中野明君 どうもありがとうございました。  それで、日本はアメリカとちょっと事情は違いますので、その点はこれ料金設定の問題として私どもも気にかけておかなければならないところだと思っておりますが、先ほど来話が出ておりますように、アメリカと比べますと、日本はやはりこの世界では十年はおくれているだろう。特に、お話がありましたように、ソフト面では著しい立ちおくれをしているわけなんですが、当初郵政省は特別第二種も外資規制をするべしという考え方でおられたようですが、国会審議を通じて、何ら客観的な状況は変わってないんですが、規制は要らぬだろうというふうに判断が変わった。ただ判断が変わったというだけのことのようです。  そこら辺でいろいろ私どもも心配するわけですが、日本とアメリカの差というものは急に縮まるという問題ではないでしょうから、一挙に日本が第二種の特別まで外資規制を外して自由化に踏み切るというところに我々は不安とそしてまた無理があるんではないか、このように心配をして、そういう過渡期でございますからそれなりの手当てが必要じゃないか、こう考えておるわけです。この点につきまして、外資規制の問題について増田先生とそれから斎藤先生にも御意見がありましたらお教えいただきたい、こう思います。
  47. 増田祐司

    参考人増田祐司君) 先生からの今の御質問は非常に大きな問題を含んでいると思います。私が先ほど申し上げましたように、電気通信、これからは情報通信という形に移行していくわけでありますけれども、そこの持っている論理は三つあると思います。つまり公共性の論理、それから産業の論理、それからもう一つはセキュリティーの論理ということであります。この論理が複雑に情報通信の世界では絡み合っておりまして、これをいかに調整し運用するかが今後の重要な課題になってくるというふうに思うわけであります。これを公共性の論理だけで押す、あるいは産業の論理だけで情報通信を運用するということは非常に問題があるわけでありまして、特にセキュリティーという面からここで考えてみる必要があるわけであります。  先ほど来から御意見がありますように、この通信主権、特にセキュリティーに関しまして通信主権ということが非常に大きな将来課題になってくるわけであります。特に、アメリカとの関係で考えますと、アメリカは既にこの通信主権に関しましては世界に圧倒的な優位を持っておりまして、特にATT、IBMがそれを主導しているわけであります。本年一月のいわゆるATTの分割とそれから規制緩和ということは、実はアメリカ国内の情報通信の緩和だけではありません。これは世界に向かってのいわゆる情報通信政策の展開であるということが言えるわけであります。  このように見た場合にATT、IBMの動き、あるいはそれに関連するさまざまな企業の動きを厳密にフォローしてみる必要があるわけであります。IBMは、御承知のようにSBS、サテライト・ビジネス・システムという会社を持っておりまして、これは三社共同で今まで持っていたわけであります。IBM及びエトナ生保、それからコムサット・ゼネラルということでありますが、コムサットがこの資金負担に耐えかねまして、今株式をIBMに売却するという動きに出てきますから、これはSBS自体がIBMの完全な子会社、必ずしも完全ではありませんけれども、子会社化して、新しいいわゆる情報通信の政策の展開の一つの手段になる可能性は十分であります。現実に、この一月にアメリカに参った場合に、SBS自体が国際的な展開を図るということを話しておりまして、既にその法制的な面までを、各国の法制面ということを厳密にやはり調査研究をしているわけであります。  問題は、これに関しましてやはりアメリカが既にグローバルなネットワークを構築しているということであります。つまり、現在日本の例えばよく言われますニューメディアとしてVANですね、付加価値通信網ということがよく言われるわけでありまするが、これは既にアメリカにおいてはいわゆるコンベンショナルなメディアになっているわけであります。決してニュー、新しいメディアではないわけであります。  例えば、タイムシェアというVAN業者のところへ行ってみますと、大体この部屋の半分ぐらいのところでいわゆる付加価値通信サービスを行っているわけでありまするが、そこは国際的なサービスを行っているわけであります。ですから、壁には世界の時刻が、時計があるわけであります。ロンドンの標準時を中心にしまして、各国の、例えばシンガポールであるとか、あるいはパリであるとか東京であるとか、それからもちろんアメリカ国内の時間ですね。これは地域別に時間が違いますから、そういうふうな時刻がかかっておりまして、ネットワークが正常に動いているかどうかを絶えず監視しているわけであります。  このように、アメリカの場合には既にグローバルなネットワーク・サービスを行っているのが現状であります。ところが日本の場合には、このVANに関しましては、これからVANを構築していくということが大きな課題になっておるわけでありまして、先ほど先生から御質問ありましたように、ほぼ推定されるところは十年の時間差があるということが言えるわけであります。  特にアメリカが問題にしておりますのは、日本がこれから成長する情報通信市場であるということでありまして、ここにいかにして参入するかということが大きな課題になっているわけでありますが、これに関しましてやはり何らかの規制的な措置をとる必要があるのではなかろうか。これはセキュリティーの立場からとっていかざるを得ないのではないかというようなことであります。確かに純技術的な視点からは日本とアメリカの彼我の格差はありませんけれども、そのようなグローバル性という問題から見ますと、やはり格差があるというのが現状であります。この問題は非常に大きな問題でありますので、先生の御質問のように何らかの対策を講ずる必要があるというふうに私は考えます。  以上であります。
  48. 斎藤忠夫

    参考人斎藤忠夫君) 今の外資規制の問題は大変難しい問題かと思います。我が国アメリカの間でソフトウェア技術にかなりの差があるということも事実でありますし、それから特にバリュー・アデッド・ネットワークについては、バリュー・アデッド・ネットワークの資本が形成されるという意味では日本は非常におくれているわけです。しかし、今、増田先生からもお話がありましたように、バリュー・アデッド・ネットワークに対応するものは、技術的には例えば電電公社のパケット網であるとか、あるいは全銀システムであるとか、そういう形で既に動いている。ですから、違いは、日本では電電公社を主導にそれが行われたけれども、アメリカでは民間の主導でそれが行われたというのが非常に違いではないかというふうに思います。しかし、多様性という面においてはアメリカがかなり先を行っているということも事実であります。  そういう場合に日本でどういうふうに対策を施すべきかというのは、非常にいろいろな対策があろうかと思います。法律で規制をするというのは非常に近道であるということも事実かと思います。しかし、一般に第二種事業と申しますのは、お話のとおりソフトウェアを中心としたものでございまして、どちらかというと産業向きのものでございます。産業向きソフトウェアの技術において、これはコンピューター全般に言えることでございますが、アメリカは日本より進んでいるという面がかなりあるわけでございますが、コンピューター・ソフトウエアの面において必ずしもそういう外資規制をやっているわけではなくて、日本はまあとにかくやっていると言うことができます。  コンピューター・ソフトウェアの面の連想で考えますと、アメリカのソフトウエア産業というのは日本に進出を努力しておりますが、いわゆるパッケージ、アメリカでできたソフトウェアを日本にそのまま持ってくると、そういう形の業務を除いてほとんど成功例がない。日本で新しいソフトウエアをつくってお客さんに提供すると、そういうサービス、これが産業向けのソフトウエア産業のかなりの中心部分になるかと思われますし、いわゆる付加価値通信業務においてはそういうような行き方をしなければお客さんを得ることはできないわけでございますが、そういう日本のお客さんにソフトウエアを合わせるということにおいてアメリカのソフトウエア産業は必ずしも今まで成功していないということが言えるかと思います。  ですから、もちろん絶対安全というわけではありませんが、特にエキスプリッシトな規制をしなくても、できるだけ早く新しい制度を日本でおつくりになってそういう産業をお育てになると、そういう努力をなさることによってかなりのところまでいくのではないかと、そういうふうに期待しているわけです。もちろん、法律で何らかの規制をすれば安全であるということは確かでございますが、長い目で考えますと、日本の産業もアメリカに行ってそういうような分野へ進出するということも望ましいわけでございますし、それから若干の外資の進出というのがいい意味で日本の刺激にもなるであろうというふうに考えますと、必ずしも法律で明確にそれを排除するということは、長い目で考えてマイナスの面もあるのじゃないかということでございまして、今までのコンピューター産業全般の話、ソフトウェアが日本でおくれているということを言われながら、とにかく頑張っているということでございますので、そういうことに期待をすると、そして、それはそれほど危なくないというふうに私は考えたいと思います。
  49. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 中野君の質問は終わりました。
  50. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 どうもきょうは御苦労さまでございます。  まず、関先生にお尋ねをしますが、臨調の答申でも今回の電電民営化政府提案につきましても、先生もちょっと触れられましたが、この考え方の基礎に民間活力論というものがあると思うのでありますが、私は、この民間活力論の本質は、最近数年の事実が示しますように、大企業の徹底した合理化、減量経営、片や独占価格による国民収奪、こうしたことによって大企業が高収益を上げると、これが本質だというふうに見ているわけでありますけれども、したがって、既に始まっております国鉄の民営化法案が通りましたたばこ専売の民営化、そして今最後の焦点になっております電電民営化、いずれにしましても、そういった大企業高収益のこの原理をこうした公営企業の分野に導入をすると、ここに事柄の本質があるのではないかというふうに見ているんですけれども、先生の御所見はどうでしょうか。
  51. 関恒義

    参考人(関恒義君) お答えします。  先ほどの私の報告の中でも利潤機能と公共機能ということについて触れたわけですが、特に現在の経済というのは、やはり基本的には寡占状態にある、あるいは独占的な状態というのが非常に強いわけでして、例えば情報分野につきましても、先ほど来出てくる有名企業というのはATTであり、IBMであると、こういう大変な巨大企業の動きがどうであるのかということが主として問題になる、そういう時代です。  したがって、民間活力論というものも、本来の意味国民の活力という形でこれを大いに活用していくと、あるいはこれを大いに充実していくということでしたらこれは異論がないところなんですが、実際には臨調行革路線の推進以来、民間活力論というのは、まさに大企業が直接的に利潤源泉を公共部門の中に求めてくるという方向になっていることは言うまでもないと思います。そういう意味ではやはり新しい収奪の体制をつくりつつあると、そういうところに本質があるという佐藤さんの御意見にも私は基本的には同調するものです。  ですから、むしろ逆に、こういう独占利潤ないしは寡占的な動きをいかに民主的に規制するかということの方こそが重要なんでして、これはアメリカとの関係においてもそうです。そうすることによって大企業が持っている巨大な生産力を文字どおり国民奉仕の形に持っていくことこそが基本でなければならないというふうに考えております。ですから、やはり公共機能としての充実という問題、これを単に民間活力論の導入ということだけではなくて、公共機能としていかに充実していくのかということをもっと全面的に検討すべきではないかということが私が直接的に申し上げたい点なんです。  日本の技術世界のトップレベルになったというお話もございました。情報問題につきますれば、あるいは電電技術について見れば、やはり電電公社公共性というものを基軸に据えでこのような水準に達したという見方もあり得るわけでして、こういったものを一面的に民営化という形で切り捨てていくということにはやはり大問題が残ると。  技術の開発につきましても、先ほど来いろいろ御指摘がありましたが、やはり公共機能の枠内で日本の場合には特に技術開発というものが推進されてきているわけなんでして、こういったものをもう少し国民に奉仕する形で充実していくという方向を公共機能としてどうして考えないのかということを強調したいわけです。  それで、私自身は別に利潤機能を否定しているわけじゃありません。やはり、この利潤機能と公共機能とをいかにうまく調和させるかというところに現代の根本問題があることは言うまでもありません。したがって、この利潤機能と公共機能とをいかにうまく統合するのかということについては、私も前向きの姿勢で臨んできているはずです。  しかし、長い資本主義の発展過程の中で、これは自由社会という言い方もありますが、やはり資本を中心とした社会ですから、あくまでも私は資本主義社会というふうに限定して使いますけれども、この資本主義社会の発展過程の中でも、例えばパーキンソンの法則にあるように、発展すればするほど公共部門が拡大するということが一般的に言われているわけです。そして、この利潤機能の持つ限界ということについても、ピグーの厚生経済学以来、これを矛盾が出、問題が出たときには規制するという方向が確認されたはずです。  特にケインズの場合、公共部門の充実ということがケインズ経済学以後非常に発達したわけですが、このケインズの哲学の中には利子取得者階級の自然消滅という考え方さえあったわけですね。利子が低くならないということに投資の限界があるということを、つまり利子の硬直性ですね、こういうことをケインズは強調していたはずです。ところが七〇年代以降、ケインズ経済学の破綻とかあるいは経済学の危機とか言われるようになりましてから、こういう民間活力論というものが新自由主義系の考え方を基調として出てきているわけですね。  例えば、レーガノミックスがそうですし、日本の臨調路線がそうですし、サッチャー路線がそうですが、こういう形で、むしろ利潤機能ないしは民間活力の方向だけを強調する方向で公共部門を圧縮するということが、その結果としてどういうものをもたらすのかということについては、私自身も十分に検討しなければならないけれども、やはり非常に問題を感ずるわけですね。直ちに公共部門の問題点を民間活力の導入で克服できるというふうにみなすみなし方は、これは非常に安易な解決であると。あるいは利潤源泉が枯渇してきている大企業にとって非常に有利な道かもしれませんが、このことによって現在の経済的な困難が打開できるというふうには直ちには断言できないわけです。  したがって、私自身もまだ命のある限りこの問題を追跡いたします。そして皆さん方も政治の場で、政策の場でこういう問題をもう少し真剣に検討していただきたいということがきょう私自身が主張したい点です。そういう意味では、利潤機能と公共機能との統合というものをどのようにしていくのか、これを国民的な合意でどうしたらいいのかということについでは、もっと幅広い検討がなされてしかるべきだというふうに思います。
  52. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ありがとうございました。  もう時間ですから……。
  53. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 参考人の皆さん、御苦労さんでございます。  本日の意見陳述をここまでお伺いしてまいりまして、少し確認をさせておいていただきたいんですが、関先生は、先ほどからるる申しておられますように、一言にして言えば、本三法案が成立をすれば資本の過剰蓄積を招く、それが収奪につながるおそれなしとしないという点から、反対を明確に意見として陳述なさいました。増田参考人斎藤参考人は、条件はついておりましょうけれども、本三法案の成立を期待する、希望する、賛成の立場から意見をお述べになりました。  そこで、矢加部参考人と芦村参考人にお伺いいたします。  時間がございませんので簡潔にお答えをお願い申し上げますが、まず、矢加部参考人は本電電法案の成立を希望なさいますか。
  54. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) 原案のままでは希望しません。
  55. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 修正を付すれば……
  56. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) 修正も……
  57. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 委員長の許可を得て発言をしてください。
  58. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) はい。
  59. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 矢加部参考人は、最初の意見陳述では、衆議院段階で付されましたところの修正ですね、それから附帯決議等々にかんがみて、おおむねそれを良好として、参議院でもさらに、例えばスト権等につきましては論議を深めた上でこの三法案の成立を期待すると、このようにおっしゃったと理解してよろしゅうございますか。
  60. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) それ以外に、この附帯決議の中で法文の修正の方で採択できるものを採択していただくということを含めてなら、おっしゃっているとおりでございます。
  61. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 賛成でございますね。
  62. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) はい。
  63. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 芦村参考人、いかがでございますか。
  64. 芦村庸介

    参考人(芦村庸介君) 私は本院で衆議院修正条項あるいは附帯決議を踏まえまして必要なる修正が施されるならば成立に賛成します。
  65. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 そうしますと、本日の参考人の皆さんの中で、お一人は明確に反対、四人は原則として、条件はついておりますけれども賛成と、このように理解をさしておいていただきたい、こう思います。  芦村参考人にお伺いいたしますが、最初に、この三法案行政改革関連法案と報じられているが、必ずしも行革関連法案という考え方にはなじまないというふうにおっしゃったように私はお聞きしたんですけれども、とすれば、どういう点が行政改革に、すなわち土光さんがおつくりになったあの答申案に具体的にどういう点がなじまないとお考えなんですか。
  66. 芦村庸介

    参考人(芦村庸介君) 私が冒頭になじまないと申し上げましたのは、多少これは舌足らずで、誤解があってはならぬので修正しておきますが、そもそもの改革視点が、行革と関連した形でなされるというよりも、むしろ情報産業の一つの革命状況が今日進展しておると、そういう中で、これはもう行革にかかわらず、当然これは電電事業自体としてなさねぱならぬ問題であると、こういう観点から実は指摘したかったわけでございまして、行革関連と全く無縁であるという意味ではございません。
  67. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 そうしますと、重点の置き方は、おっしゃいましたように、例えば雇用の確保の問題でありますとか公共福祉を優先させねばならないとかいうことは当然あるんですけれども、その結果としてアディショナルに、付随的にこれが行革関連法案であると、行政改革になじむ、そのように理解してもよろしゅうございますね。
  68. 芦村庸介

    参考人(芦村庸介君) よろしゅうございます。
  69. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 このストの二重規制は全く必要ない——先ほどるるお教えいただきまして大変わかりやすく私も拝聴した次第でございますが、この三年後の見直しですね、これは廃止を含む見直しというのは撤廃せよというふうにおっしゃいましたけれども、参考人としては、じゃ、このもう参議院の審議においてもしこの撤廃が明確な形でから取られないならば本法律案は成立をさせるべきではないと、そのようにお考えでございますか。
  70. 芦村庸介

    参考人(芦村庸介君) 参議院においてこの項目について明確な答えが出なければ成立させるべきではないと思います。
  71. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 矢加部参考人はその点についてどのようにお考えですか。
  72. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) 基本的には私もそう思います。
  73. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 基本的にはといいますと、じゃ、まあ審議日数は現実もうあと二日しかないわけですね。それで、結果としてその三年後の廃止を含む……
  74. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) これに加えて、例えば総理大臣の国会答弁その他とか、いろいろな方法があり得るんじゃないでしょうか。
  75. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 とすれば、国務大臣の明確なそれについてのある程度のギャランティーが得られれば、本法律案修正は強く希望なさいますか。
  76. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) はい、そうです。
  77. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 全電通労働組合について言及をなさいましたが、この全電通がこれまでよき労使の慣行が保たれていたのか、それとも公労協の枠内にあって問題とすべき点があったのか、これは芦村参考人でございましたかおっしゃいました、その点について。
  78. 芦村庸介

    参考人(芦村庸介君) 全電通の場合には、現在労働関係においては公労法の適用下にございますから、当然公労法の制約という条件がございます。したがいまして、これは全電通労働組合自身の意向にかかわらず、やはり公労法という制約を受けてきたことは間違いないと思います。
  79. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 矢加部参考人、全電通は公労協、官公労の中では非常に勇気と誠意に富んだよき組合であるというふうにたしかおっしゃったと。したがって、全電通の誠意と努力を評価せよと、こうおっしゃいましたね。この間、山岸委員長の公述人としてのお話も伺ったんですが、全電通は、まあ四点お挙げになりましたけれども、特にスト権の問題について前向きの見解が示されるならば本法律案の成立を期待すると、こうおっしゃったんでございますが、改めてお伺いしますが、矢加部参考人その点について何か……。
  80. 矢加部勝美

    参考人矢加部勝美君) その一点だけではなくて、私が申し上げているのは、全電通労組は対案を示し、修正によってこれを成立をさしたいと、こういう態度をとっているからその点を評価されたらどうだろうかということを申し上げているので、それ以上の細かいことを申し上げておりません。
  81. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 終わります。
  82. 青島幸男

    ○青島幸男君 参議院の会の青島でございます。お忙しいところを参考人の方々には貴重な御意見を御開陳いただきまして、心から感謝申し上げます。私は、今後の審議に皆さん方の御意見を反映さしていただこうと決心している次第でございまして、特段に質問申し上げることはございませんので、ありがとうございました。
  83. 田英夫

    ○田英夫君 参考人の皆さんの御意見、質疑応答のお答えを大変貴重なものとして勉強させていただきました。私も特に御質問することはありませんので、御礼を申し上げておきたいと思います。ありがとうございました。
  84. 大木正吾

    委員長大木正吾君) 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々に一言御礼申し上げます。  本日は、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただき、また貴重な御意見を賜り、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十一分散会      —————・—————