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1984-05-15 第101回国会 参議院 地方行政委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十五日(火曜日)    午前十時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長        大河原太一郎君     理 事                 岩上 二郎君                 真鍋 賢二君                 志苫  裕君                 三治 重信君     委 員                 井上  孝君                 加藤 武徳君                 上條 勝久君                 古賀雷四郎君                 出口 廣光君                 松浦  功君                 吉川 芳男君                 秋山 長造君                 小山 一平君                 佐藤 三吾君                 中野  明君                 原田  立君                 神谷信之助君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君        自 治 大 臣  田川 誠一君    政府委員        大蔵大臣官房総        務審議官     吉田 正輝君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵省主計局次        長        平澤 貞昭君        大蔵省国際金融        局長       酒井 健三君        自治大臣官房長  矢野浩一郎君        自治大臣官房審        議官       津田  正君        自治大臣官房審        議官       土田 栄作君        自治省行政局公        務員部長     中島 忠能君        自治省財政局長  石原 信雄君        自治省税務局長  関根 則之君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君    説明員        厚生省保険局国        民健康保険課長  阿部 正俊君        建設省都市局下        水道部下水道企        画課長      黒川  弘君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に  関する法律案内閣提出衆議院送付) ○昭和四十二年度以後における地方公務員等共済  組合法年金の額の改定等に関する法律等の一  部を改正する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  地方交付税法等の一部を改正する法律案及び地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に関する法律案を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 神谷信之助

    神谷信之助君 前回に引き続いて、法案に直接関係する問題で、既往臨時問題で確認をしておきたい点を三つお聞きしたいと思うんです。  まず一つは財対臨時ですが、これはいわゆる分離課税が続く限りは残っていくというように理解をしておいていいんですか。
  4. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) いわゆる財対臨時につきましては、毎年度金額については、その年度財政状況を踏まえて自治大蔵大臣が協議して定めることになっております。しかし、その財対臨時のもとといいましょうか、そういった臨時をこれまで交付税会計に繰り入れた背景というものは、御案内のように分離課税を選択した利子所得について住民税が現在では課税されてない、こういう事情がありますので、この事情が続く限りは私どもはこれを要求していきたい、金額をどうするかは別としまして要求していきたい、このように考えております。しかし、この問題は、制度のあり方としては税制で解決されることが望ましい、そういった意味税制の面でも引き続き解決に努力していきたい、このように考えております。
  5. 神谷信之助

    神谷信之助君 その次はいわゆる利差臨時の問題ですが、これは五十九年度以降はもうなくなるということになるわけですね。これはなぜなくなっちゃうんですか。
  6. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 利差臨時扱いにつきましては、六十年度以降の問題としては二つの面があると思います。  すなわち、これまでに既に利差臨時として確認されているもの、自治大蔵大臣の間で確認されているものについては、六十年度以降についても、一応金額というのははっきりしておりますから、これは過去の覚書の趣旨にのっとって新たに御提案申し上げております特例措置に基づく精算の際に、今後ともその金額ベースにしてこれから反映さしていく、このように考えております。  それから、新たな利差臨時の問題でございますが、五十九年度については地方債計画における政府資金比率あるいは公庫資金を含めた低利資金比率が前年度よりも大幅に上昇したという状況を踏まえて、五十九年度はいわゆる利差臨時についての確認はなされておらないわけであります。  六十年度以降これをどうするかということは、六十年度以降の地方債計画における政府資金扱いとも関連する問題でありますけれども、現状においては、六十年度以降はこの利差臨時の問題を新たに持ち出すということは考えておりません。
  7. 神谷信之助

    神谷信之助君 昔は政府資金が七割、八割も充当されておったけれども、最近はずっと六割に下がってきて、しかしその六割を割っても六割を保証するということで大体利差臨時というのが生まれてきたと思うんです。それがいつの間にか今度は五割切らないと利差臨時がつかない。五十七年度ですか、この場合は正式には五〇%強あったからということで新規の分がゼロになっておりますね。今度五十九年度の場合はまた五〇%切っている、四八・五%ぐらいのところで新規のやつはゼロ、こういう状況になっているんですけれども政府資金を確保する、そういう低利の特に市町村に対する資金を確保するという点からいうと、これはずっと後退をしてきていることになってくるけれども、実際上の支障はどういうことになっておりますか。
  8. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) いわゆる利差臨時を含めてこれは交付税会計に繰り入れられるわけでありますから、利差臨時相当分を含めたものが交付税総額になるわけであります。そうして、交付税総額というものが前提になって地方財政対策全体が組み立てられている、こういう関係でありますから、将来、ほかの条件を一定とするならば、利差臨時相当分があるかないかによって、言うなれば今度御提案申し上げております特例措置の額が大きくなるか小さくなるかという問題に響いてくるのではないかと思います。いずれにいたしましても、私どもがいわゆる利差臨特を要求いたしましたのは、五十一年度地方債計画をつくる際に、当時の政府資金事情から政府資金比率が大幅に落ち込んだということを踏まえて、四十八、四十九年度政府資金比率が六〇・三%である、これはその前よりも高かった、いわばその当時としては一番高い水準のところをベースにして、その差相当分交付税会計に繰り入れていただくという措置を講じたのですけれども、率直に申しまして、この扱いについては五十七年度の際に、政府資金比率がその前落ちておったものが五〇%まで復活した際に、国庫当局としてはもうそこまで戻ったのだからいいではないかという議論もあったのですけれども、それ以前にそういう措置を講じたのだからということで種々論議の結果、五十七年度については五〇%までの差についていわゆる利差臨特を繰り入れることにした。しかし、五十九年度については五〇%に至っておりませんけれども公庫資金まで含めますと、いわゆる縁故資金比率が相当下がっておりますので、五十九年度財政状況全体をにらんで最終的には要求を取り下げた、こういう経緯でございます。したがいまして、利差臨特があるなしにかかわらず各年度交付税所要額は確保していきたい、新しい方式によって確保していきたい、このように考えております。
  9. 神谷信之助

    神谷信之助君 次に地域特例臨特のことですが、これは五十九年度まで特例措置がやられていますからそれでいくんだということで、六十年度までは継続するということですけれども、五十九年度でいわゆる地域特例法律がストップになっておりますね。これ六十年度以降も仮にそれが続くとすれば地域特例臨特も続くということになるのか、その点はどういうことになっておりますか。
  10. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) いわゆる地域特例臨特のもとになりました各種の補助率かさ上げの六分の一カットの法律は五十九年度までとなっておりますから、当時はその後の延長ということはないものと私どもは理解しておったんですけれども、六十年度以降この扱いをどうするか、六十年度予算編成とも関連して恐らくこれが論議されることになるであろうと思います。したがいまして、私ども立場としましては、六十年度以降もこれは継続されるという前提に立って、ああするこうするということはちょっと今申し上げにくいわけであります。ないものとして私どもは考えておったものですから、しかも延長されるということは地方財政にとってはマイナスなわけですから、どうもマイナスの話を前提にしてここで我々の考え方を申し上げるというのはちょっと申し上げにくい事情にあります。  ただ、もちろん、その問題が具体的に論議される時点になれば、私ども地方財政状況を踏まえて、地方財政の運営に支障なからしめるという前提に立って延長そのものの当否及びその内容への対応策というものを考えていかなきゃならないと思っております。
  11. 神谷信之助

    神谷信之助君 延長はあり得ないという立場に立っているからなかなか答弁しにくいと思うんですけれども、仮に延長ということになれば、それについての対応というものを考えなきゃならぬ。その中にはやっぱりこの臨時措置もその一つとして考えざるを得ないことになるということは、これは間違いないわけでしょう。
  12. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) もし延長という事態になった場合に、そのときの対応が現在の財対臨特のような方法になるのかどうか、これも今そうするとかそうすべきだとかということを申し上げる立場にございません。六十年度予算編成時点で、地方財政を取り巻く環境はどういうふうになっているのかによっていろいろまた対応があり得ると思いますから、もちろん今回の特例法の制定によって財対臨特というような対応がなされたというのは一つ実績といいましょうか、先例にはなるでしょうけれども、同じ方式でいくのかどうかは、これはこの段階ではちょっと御答弁を勘弁していただきたいと思います。
  13. 神谷信之助

    神谷信之助君 それならそれでいいでしょう。  それじゃ次に、今度は地方財政に大きな影響を与える問題として、国民健康保険の問題で質問したいというふうに思います。  今回の改悪では、退職者医療制度創設と、それに籍口した大幅な国庫負担金補助金切り下げが行われようとしている。したがって、自治省としては、この制度改悪市町村に与える影響、これをどのように考えておられるか、まずその点をお聞きしたいと思います。
  14. 津田正

    政府委員津田正君) 今回の国保制度改正につきましては、全体として国民健康保険加入者保険料負担水準は上がらない、このように私ども理解しておる次第でございます。もちろん、退職者医療ができるわけでございますが、これは個々団体によって影響はやはりばらつきがあるかと思います。そのばらつきにつきましては、厚生省の方におきまして財政調整交付金配分において所要措置が講ぜられると、このように理解しておるわけでございます。
  15. 神谷信之助

    神谷信之助君 これは国保中央会要望書を出しておられて、補助率の大幅な切り下げが行われることは市町村に大きな不安を惹起しており、今回の制度改革の結果、国保保険税引き上げざるを得ないような事態となりはしないか、したがって、それに対する万全の対応というものを要望しているんですけれども、今のように、調整交付金で処理されていくだろうという厚生省任せという態度はいかがなものかと思うんだけれども、いかがですか。自治省としては、もう心配無用、厚生省を信用しておりますということなのか。
  16. 津田正

    政府委員津田正君) 法案作成の際に私ども種々の面で協議を受けておるわけでございますが、そのときの計算におきまして、先ほど申しましたように、全体としては国保税の大幅な引き上げがないものと、このように理解しております。  今後実態が出てまいりました際に、その実態を的確に把握いたしまして、また関係団体の意見というものも十分聞きまして適切に対処してまいりたい、かように存じております。
  17. 神谷信之助

    神谷信之助君 結局、そうしたら何といいますか、厚生省の言い分をとりあえず信頼をして、そして後進んでみて、その上で結果待ちということですね。自治省としては実態を把握した上で適切な措置をとりたいと、これちょっと無責任だと思うんだけれども厚生省市町村国保財政には全く影響がないということで試算をつくっておられるわけですが、私は二つほど無理があると思うんです。  一つは、マイナス要因である国庫補助切り下げはこれは確定的ですね。しかし、プラス要因になっている医療費適正化などはこれはやってみにゃわからぬという不確定要因。それを無理やりバランスがとれるようになさっているというところに一つは無理がありはしないか。  もう一つは、退職者医療制度によって従来の高齢者保険料不足額九百九十六億円が軽減されるというようにはじいているんだけれども、その現実性に問題はないのかどうかというような点を思います。  そこで、ちょっと厚生省にお聞きしますが、退職者医療制度に伴う財政試案で、医療費総額、七月実施ということで出されている資料を見ますと、医療費総額が五千三百七十六億ですか、それのうち医療給付費で八二%、一部負担金で一八%というようにはじいておられるんですけれども、これは医療費総額の五千三百七十六億が将来ふえていってもこの八二%と一八%という割合というのは変わらないことになるのか、変動するということなのか、この点はどうですか。
  18. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) 退職者医療制度創設に当たりまして私ども試算をしているわけでございますが、現在の状態の中から推計いたしますと、先生、今挙げられましたような医療費総額で五千三百億余の退職者医療関係費用になる、こういうことでございますが、じゃ、これが将来どういうふうに変わっていくかということになりますと、率直に申し上げまして、医療費といいますのは相当いろんな要素で変動いたしますので、確かなことはなかなか推計するのは困難ということでございますけれども、ただ、私どもといたしましては、市町村財政影響というふうな観点からいたしますと、退職者医療制度対象者といいますものは、年金受給者がふえますればその分だけ増加していくということになりますので、将来の財政影響といいましょうか、退職者医療制度がなかった場合と実施した場合と比較いたしまして将来を展望いたしますれば、国保財政に与える影響といいますのは、その効果といいますのは、将来だんだんふくらんでいくというふうに考えておるところでございます。
  19. 神谷信之助

    神谷信之助君 今、最後のだんだんふくらんでいくというのはどういう意味、もうちょっと。
  20. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) つまり、このままでまいりますと、国保の被保険者の中に占める年金受給者の数といいますのはだんだんふえていくわけでございます。現在、全体で約一割程度というふうに踏んでおりますけれども、これが数年先になりますと一割五分になり、大体二割強になるんではないかというふうに推計しておりますけれども、そういったふうな場合の財政的な状態と、退職者医療制度を実施いたしまして、退職者の分につきましてはいわば財政的に国保財政から切り離していく場合との効果を比較いたしますと、だんだんふくらんでいくというふうに見ることもできるということでございます。
  21. 神谷信之助

    神谷信之助君 私が言うのは、その医療費総額を今あなたのところの試算でいけば、給付の方で八二%、一部負担金で一八%という割合なんでしょう。これは、医療費総額がずっとふえようが何しようが、この分け方、配分率は変わらないのか変わるのかと言っているんです。例えば医療費総額ふえてくれば、一部負担金の方は現在一八%だけれども、例えば一五%になって医療給付費の方は八五%にならざるを得ぬということになるのかどうか、この辺について。
  22. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) そこは、現在の退職者医療制度に加入するであろう方々の納めておる保険料、これとそれから医療費全体との相対的な関係になってまいるのだと思うのでございますけれども、そうしますと、なかなか将来の推計というのは、現在の時点で推計するのは難しいというふうに考えるわけでございまして、そういう意味で私、制度全体として、退職者医療制度全体が国保財政に与える影響というふうな観点から先ほど来のことを申し上げた次第でございます。
  23. 神谷信之助

    神谷信之助君 結局、結論から言ったら変動することもあり得るということでしょう。そうすると、現在、医療給付費が八二%、すなわち四千三百九十六億を保険料拠出金分担をすると、こういうことですね。その分担割合は、保険料が一四・五%で拠出金が六七・五%だと、こういう率になっているんだけれども、例えば医療給付費が今言ったように八二%でなく八五%になってきて、一部負担金は一五%になり、片一方医療給付費の方で八五%負担をせざるを得ぬ、こうなってきた場合には、例えば保険料拠出金のこの割合、一四・五%と六七・五%というのは動くのか動かないのか、これはどうですか。
  24. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) 退職者医療制度につきましては、今回の改正法案が成立いたした後には、いわばその部分が直接国保財政とは関係ない形になるわけでございますので、そうしますと、国保財政とは別な観点から、その本人保険料医療費というのはどうなるかということでございますけれども、これは医療費年金受給者の納める保険料実績というものの相関関係になるわけでございますけれども、仮に保険料実績医療費全体の実績よりも伸びが低い場合には被用者保険の方から出します拠出金の方のウエートが高まってまいるということになりますし、医療費全体が、退職者医療制度加入者の納める保険料よりも医療費の方の伸びが低い場合には拠出金の方の割合が減ってくる、こんなふうな関係になるんだろうと思います。
  25. 神谷信之助

    神谷信之助君 今はとにかく四千三百九十六億を保険料で七百八十一億、拠出金で三千六百十五億と、こういうふうに分担をするわけですね。この医療給付費が将来ずっとふえてくるという場合に、拠出金というのはそれに応じてどんどん比例してふえることができるのか。いわゆる保険料の方は据え置いて七百八十一億、これはもう上げない。だから、片一方部分は、保険料の率が下がって拠出金の方の率はうんと上がっていくということになるのか、それとも率としては両方を等分に負担をしていくということになるのかというように聞いたんです。
  26. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) 退職者医療制度費用の賄い方でございますが、制度的に見まして、まず給付というものは、これは法律で決まってくるわけでございます。現在八割給付ということを前提にしておりますけれども、それの給付費をどうやって賄うかということになりますと、御本人が納められる保険料と、それで足らざる部分被用者保険からの拠出金で賄うということになっています。したがいまして、御本人が納付する保険料といいますのは、私ども考え方といたしましては、もし仮にその方が国保に入っていたであろう場合に納める保険料を納めてもらうということになっておりますので、これが所得状況だとかということで、経験則的に言えば、若干ずつ上がっていくであろうと思われます。したがいまして、給付費伸びがその保険料伸びよりも多い場合には、拠出金の方が現在の割合より、より高まっていくというふうな関係になるだろう。これまでの経験からしますと、やはりそういう場合の方が多分可能性として高いんではないかというふうに考えておるわけでございます。
  27. 神谷信之助

    神谷信之助君 保険料国保全体の保険料と同じだから、それに連動しているわけですが、しかし医療費がふえてきた場合に、こっちの方は上がらないというと拠出金の方がふえていくが、これも限度があるんですよ。どっとふえる、何ぼでもふえるというわけのものではない。保険料国保の方は据え置いてずっといく、これから先数年、あるいはずっともう保険料は据え置くという場合、医療費はどんどん年間三割ぐらいふえてきよるわけでしょう、二、三割もね。これを抑制するかは別にして、大体今のままでいくと相当ふえていく。そうすると、この拠出金はそれに応じてどんどんどんどんふえる。これでは拠出する方の団体がたまったものじゃない、こうなってくるでしょう。そうすると、国保全体の保険料引き上げをこれとの関係で考えざるを得ないという状況が起こってくるということはどうなんですか。
  28. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) 先生指摘のように、医療費の動向とそれから保険料、いわば所得伸びを超えて医療費が増加いたしますれば、先生の御指摘のようなことにもなりますし、さらにそういう傾向が、これから特に高齢者が多いわけでございますので、高齢者医療費といいますものの伸びといいますのがやはり全体的な伸び以上に伸びております関係から、将来を予測いたしますと、退職者医療費というものは所得伸びを上回って伸びるということが予想されるわけでございます。  そうなりますと、先生の御指摘のような状態も予測されるわけでございますけれども、私どもといたしましては、やはり退職者医療制度というものは本来、御本人の納める保険料で足らざる部分現役の被保険者事業主さんで賄ってもらうのが一つの合理的な保険制度編成の仕方として当然ではないかというふうに考えておるわけでございますので、そういったふうな将来の拠出金増加見込みというものもやはり被用者保険全体で負担してもらわなければいけないのではないか、そこに国庫補助をどうするとかあるいは国保財政との絡みという問題は、私どもは生じないというふうに考えておるわけでございまして、逆に言いますと、これをもしそういったふうな退職者医療制度というものを財政的な意味国保財政から切り離しませんと、そのふえる分というのは、ほうっておきますと、本来の国保の被保険者といいましょうか、もともと被用者保険と紋のなかった国保の被保険者人たち負担国庫負担でこれをカバーしていくということになるわけでございますので、そこを将来の国保財政を展望いたしまして、今回退職者医療制度を切り離そうということにしておりますことからしましても、それはやはり退職者医療費の増分といいますのは拠出金の増にはね返るわけでございますが、これにつきましては現役被用者保険の被保険者事業主さんでカバーしていただくというのが合理的な医療保険制度編成の仕方としては正しいのではないか、こんなふうに考えておるわけでございます。
  29. 神谷信之助

    神谷信之助君 退職者医療制度そのものを今私は問題にしているんじゃないんですね。今この制度をつくることによって国保に対する国庫補助を減らすということになってきているわけでしょう。今までのが四五%で、五%が調整交付金だ。今度は四〇%にして調整交付金を一〇%にして、退職医療制度創設に伴う個々国保団体ばらつきを一〇%の調整交付金で調整していこうということになるわけですね。  そこで、その一〇%の調整交付金ですけれども、これは調整ですからゼロのところもあれば二〇%のところもあるというように、こうなるんだろうと思うんですけれども、この場合の交付の基準というのはどういうふうに考えるんですか。
  30. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) 国民健康保険における財政調整の方式といいますのは、詳しく申し上げますと大変時間を要するわけでございますが、大ざっぱに言いますと、いわば財政の需要額と、それから、見込まれる所得額といいましょうか、保険料額といいましょうか、というふうなものを全国一本のある基準を決めまして、それを基準にいたしまして、財政がより豊かなところには少ない調整交付金、大変なところには多い調整交付金というふうな関係の調整の仕方をしているわけでございますが、ただ、今回の退職者医療制度の発足という別な要素も若干あるわけでございます。  現在の調整交付金の仕方に加えまして、退職者医療制度の加入者の多い少ない、これによりまして国保財政における影響も変わってまいるわけでございますので、全体的に申し上げますと、全国的に見ますと、退職者医療制度の加入者といいますのは市町村国保の加入者の大体一割でございますので、一割程度の加入者がもし仮にない市町村、これも結構多いわけでございますが、例えば五%しかいないとか四%しかいないというふうな市町村もあるわけでございますけれども、そういったふうなところにつきましても、国庫補助制度といたしましては、一割前後の退職者医療制度の加入者がおるという前提国庫補助の引き下げをしておりますので、一割程度までおるであろうというふうなことを前提にいたしましたときの効果額というものは、やはり調整交付金でカバーしていくというふうな考え方で調整してまいろうというふうに考えております。  ただ、いずれにいたしても、調整交付金の調整のやり方といいますのは、法案成立後に政省令で定めるということになっておりますので、これについてはより細部を目下検討中ということでございます。
  31. 神谷信之助

    神谷信之助君 この調整交付金、今度は退職医療制度創設で、そっちへ移行する人の多少によって配分の基準は変わってくると思いますが、従来、調整交付金配分について厚生省のやり方というのは無理があるというか、権力的な、画一的なやり方というのがあったんではないかというように思うんです。  それは、例えば国保税国保料の収納率に応じて調整交付金に差をつける、こういう方式をとってきておられますね。「調整交付金の額の算定等に関する特例」の第七条ですか、そういうやり方をとってきておるわけですね。一面、徴収成績の悪いところといいところと同じようにするわけにいかぬということで、悪いところにはカットするぞということで、合理性があるように見えるんだけれども、実際には、現実の問題としてはそういう保険料保険税がどんどんと上がってきて、これは市町村によって非常にばらつきがありますけれども、納められないような人がふえてきている。そこで結局どういうことが起こっているかというと、これは当委員会でも問題になりましたように、市町村では苦肉の策として、収納率を高めるために被保険者資格の対象から外していくといいますか、保険証を交付しないとかそういういろんな方法というやつが出てきたりしている、こういう傾向が生まれてきていると思うんです。  だから、こういうペナルティー方式というのは、実際上の市町村国保の努力いかんにかかわらず保険料保険税自身の高くなってくるのに応じて収納率が悪くなるという実態が生まれてくるというここのところをもう少し弾力的に、実態的に考えるということが必要ではないのか。これを強化すればするほど悪循環になってきて、いろんな苦肉の策を考えざるを得ない。そうなれば、交付金カットされれば一般会計の繰り入れが必要になるし、それがますます国保財政を困難にする、一般会計自身も困難になってくるという状況になっているんだと思うんですが、こういう点はどういうようにお考えですか。
  32. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) まず、保険料の徴収というものと被保険者証の交付というふうな関係の問題でございますが、これにつきましては、私どもといたしましては保険料が滞納されておるというふうな理由だけをもちまして被保険者証の交付を拒否するということはあってはならぬというふうな指導をしておるところでございます。ただ、現実問題といたしまして、保険料の滞納者の場合には、その住所地に住んでおられなかったりとか、あるいは被用者保険の方に既にもう移行しておった方であったとかというふうなケースが多いわけでございますので、やはり保険者といたしましては、被保険者の資格を十二分に確認した上で被保険者証を交付するというふうなことが当然の責務と考えておりますので、滞納者の場合にはそういったふうな資格が十分把握されてないケースが多いわけでございますので、そういったふうな方々については十分資格を確認した上で被保険者証を交付するようにというふうに指導をしておるところでございます。市町村といたしましては、一方で保険料の滞納というのはこれはやはり望ましいことでは決してございませんし、最大限の努力をして被保険者から保険料の納付をいただくというのは当然の行政努力として行うべきことでございますので、滞納者について被保険者証の交付をする場合には、市役所の窓口に来ていただきまして、そこで被保険者証の交付をするときに保険料の滞納状況等を説明し、早期の納付方を要請するというのは、やはり保険者として当然の責務ではなかろうかというふうに考えておるところでございます。  それからもう一つ調整交付金配分に当たりまして、保険料の収納率に応じまして調整交付金の交付率というものを若干減額しておるわけでございますけれども、これはやはり保険制度といいますのは、極端なことを言いますと、お互いの相互扶助といいましょうか、お互いの連帯ということを前提にして成り立っている制度でございますので、やはり一〇〇%の保険料の納付というものが理想なんでございますけれども、そういう意味で非常に大事な保険料の徴収というものは、それがあるからこそ保険制度が成り立っておるわけでございますので、保険料の収納及びその収納率の向上というものは非常に大事な根幹であるというふうに考えておるわけでございますので、最大の経営努力の一つの柱であるということになるわけでございます。  したがって、非常に努力いたしまして高い収納率を維持している市町村と、それからいろんな事情がないとは申し上げませんが、結果としてかなり低い収納率で終わっている市町村との間で、経営努力の促進というふうな観点から、高い収納率の維持を図っている市町村と同じ調整交付金配分をしたのではやはり全体の公平を欠きますし、かつまた経営努力の促進にもならないというふうな観点から、そういったふうな収納率の特に低い市町村に対しましては、収納率の向上を促すというふうな観点から一定程度の調整交付金配分の減額を行っているというふうなことでございますので、制度全体の健全な運営という観点から、こういったふうなこともやり方といたしまして正当性を持つというふうに考えておるわけでございます。
  33. 神谷信之助

    神谷信之助君 収納率を上げなければそれぞれの単位国保財政というのは困難になるわけですから、おっしゃるように理想的には一〇〇%の収納率が望ましいわけで、その点でそれぞれは努力をしているわけですけれども、現実にはそういう収納率の低いところもできてきているのも実態なんです。  そこで、例えば助産費なんかの支給をする場合に、滞納している場合はそれは渡しませんと言うわけにはいかぬと、しかし助産費、今十万円くらいですか、渡してその中から滞納費を払ってくださいと言って相殺をする、一たん渡した形式にしてというような指導がやられるようですが、これはそういうやり方をやっておるわけですか。
  34. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) 保険といいますのは、やはり拠出があって給付が出るというのが常識的に考えまして当然の形だろう、こう思います。少なくとも、仮にこれが一般の私保険でありますれば、保険料を納めなければ医療給付も何もかにもみんなストップというのが本来の保険理論からの当然の要請ではないかと、こんなふうに考えるわけでございます。  したがいまして、市町村の窓口では、先ほど言ったふうな趣旨を徹底する意味で、保険料の滞納者について、現金給付だとか助産費とか、あるいは高額療養費とか、そういったふうな給付をする際には、被保険者に対しまして滞納の整理というふうなことを要請し、被保険者の合意を得た上でそれの中から保険料の納付をしていただくというふうなケースも、実際的な窓口の処理としてはあり得るというふうに考えておるわけでございます。
  35. 神谷信之助

    神谷信之助君 ただ、国の財政でも赤字国債発行しなきゃならぬような状態ではなかったわけだが、今現在は赤字国債も発行し、累積の国債も百二十兆からになってくるという状況になってくると、そうすると地方財政に対しても交付税法で決められた措置もぴちっとはできないような状況になってきているわけです。それは一般の家庭でも保険税保険料を納めなきゃならぬということがわかっていてもそういう状況が起こる。しかし、病気になって高額医療費の補助が出るとか助産費だとかいう、そういう困難なときにそういう金が入ってきて、生命が守られるというところに保険制度のなにがあるんで、そこから滞納分は先に払いなさいと言うこれは、保険制度そのものの、何といいますか、お互いに助け合って、そして生命の尊重、健康の保持というものを確保するというこの保険制度の根幹からいうと、私はそれはおかしいと思うんですよ。きょうはそれを論議するつもりはありませんからなんですが、一〇%の調整交付金は、今度は退職医療制度創設を含めての配分になるのか。それから四〇%の方は、これはどうなんですか。各単位国保に一律に、これはもう四〇%というのは一定の計算方法に基づいて分けられるのか。これも国保財政のそれの状況に応じて四五%いくところもあれば三五%というところもあるのか、この辺はどうですか。
  36. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) 改正法によります国庫補助につきましては、療養給付費の全体として五〇%の国庫補助率、その中で、先生お話しのように、原則として定率で四〇%は全国どこの市町村へも配分する、残る一〇%分はいわば財政調整ということで、市町村財政力、医療費状況等に応じまして傾斜配分をするというふうな全体的な枠取りになっているわけでございます。  ただしその中で、原則的には全国どこの市町村も四〇%分につきましては配分をするというのを本則にしておりますけれども、ただ、経過的に考えまして、今回の国庫補助制度改正といいますのは退職者医療制度創設等を前提に行うわけでございますので、しかもその退職者というものの存在というものが市町村間で相当のばらつきがある、全国的には一割程度の退職者医療対象者の数でございますけれども市町村によりましては、先ほど触れましたように四%、五%、小さな村等になりますと国鉄の駅をやめた方と役場の方しかいないというふうなケースもあるわけでございますので、そういったふうなところの市町村、特に小さな町村部になるわけでございますけれども、そういったふうな町村部につきましてはしっかり財政調整をして全体の公平を確保するというふうなことを前提に、国庫補助制度合理化といいますか、削減ということを行ったわけでございます。  その趣旨から考えますと、退職者の数が全体のその市町村の被保険者全体に占める割合がで仮にこれが三割とか四割というふうなことになりますと、そこについても原則的に全部ほかの市町村と同じような補助金配分したのでは、全体的な公平というのは確保できないのではないかというふうなことが生じることも予想されるわけでございます。したがいまして、原則的にはどこの市町村にも同じように配分することを原則にしつつ、四〇%分につきましても、極端に退職者医療制度の加入者が多いというふうな市町村につきましては経過的に、ある基準をもちましてこれを減額することができるということにしているわけでございます。  ただ、これを一方的に国庫負担として吸い上げてしまうということではございませんで、これもさらに、先ほど申しました財政調整交付金の原資として組み入れまして、全体の公平な配分に資するというふうなことにしておるわけでございます。これをやりませんと、例はそう多くはございませんけれども、いわば企業城下町というふうに言われる市町村におきましては、国保の被保険者の三割とか四割の人たち退職者医療制度の対象になっておるというふうな市町村もないわけではございませんので、そういったような市町村につきましてだけ財政的な効果を及ぼすというのはいかがなものかということでございますので、そこを若干減額いたしまして全体的な調整交付金の中に組み入れまして、退職者医療制度による効果というものをより全体的に公平に均てんさせるべきではないかということを考えまして、今回、当分の間の措置といたしまして、定率四〇%分につきましても例外を設けたというふうな考え方でございます。
  37. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、これは四〇%が上限で、それで、今おっしゃるような企業城下町のように三割、四割の人がそれから減って、それで余った財源は調整交付金の方に繰り入れると、こういう趣旨ですか。
  38. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) 考え方としては先生のおっしゃったとおりでございます。
  39. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで、自治省の方に聞きますが、今度のやつで、市町村のいろいろ形があります、タイプが違うんですけれども、そういう類型別で試算をしてみたことは、自治省自身やってみたということはありますか。
  40. 津田正

    政府委員津田正君) 自治省としてはございません。
  41. 神谷信之助

    神谷信之助君 その辺がどうなるのかという点がもう一つよくわからないので、非常に皆不安になっているんですが、これは千葉県の八日市場市で試算をしてみたら、結局国民健康保険税を一・四倍引き上げざるを得ないという結果になったということで、非常に心配をしているんです。だから、市長の方からも厚生大臣あてに、四月十四日ですか、法案の撤回を求める要望書というものを出しているということになっているんですけれども、この八日市場市は首都圏の典型的な農村都市で、被保険者並びに扶養者を含めて一万九千三百二十三人、国保財政の規模が約十四億、五十九年度の予算で、こういうことになっている。それから、退職者の推定が約三%、これは六十から六十九歳の人口から国民年金の受給者、これを除くと約三%。これに扶養者を加味して退職医療制度に吸収される分の比率が五%、約千人と見ております。それから、調整交付金は一応一〇%ということで、それをもらえるという計算をする。それから、医療費伸び率は毎年度三%程度と、こういうことで、これを前提試算をしたら、五十九年度で、制度改正前の国庫支出金が七億五千九百万、改正後は五億九千二百万になって、一億六千七百万円の減になる。そのうち退職者医療制度効果というのが二千九百万あるから、最終的には財政に対する影響というのは一億三千八百万。これが五十九年度試算で、同じような形で六十年ずっとこう計算していくと、だんだんこの財政に対する影響というものがふえていく。これを保険料で補うというと、六十年度では医療費の自然増その他差し引いたりしてやっても結局三八・四%、こうなってきて、この不足分を五十九年度は、年金基金の総額一億八千万円、これと五十八年度の繰り越し公約五千万円分で補うとしているけれども、六十年度以降は三億からの赤字を見なければいかぬので、結局、先ほど言ったように丁四倍ぐらい引き上げざるを得ないという、そういう試算をしているんです。これは純農村地帯です。  それで、京都市も聞いてみたんですけれども、ここはでかいものですから不確定要素が多くて試算は困難だと言ってますが、十分の一、一割の抽出調査をした結果では、退職医療制度の対象が約五%。調整交付金が来ればいいけれども、来ないということになったらば四、五十億の減額になってくるということで、実際の退職医療制度による軽減というものは約五億程度ぐらいではないかということで心配をしているんですけれども、こういった点、動いてみなければわからない、結果を見てからという対応自治省は考えているようですけれども、こういう大きい制度改革で、国保財政そのものも非常にばらつきの多い事業ですけれども、それぞれの類型に応じた試算もし、それに対する対応厚生省の方でどういうようにするのかということもちゃんと詰めて、そして仮に制度が変わるとしてもそういう不安を持たなくても済むような対応というものを自治省としてはやる必要があったんじゃないかというように思うんですが、この点はどうですか。
  42. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 先ほど審議官からも御答弁申し上げましたように、今回の医療保険制度の大規模な改正について厚生省の方から御相談がありました。当然、国民健康保険財政というのは地方財政の中でも非常に大きな部分であり、市町村財政全般に及ぼす影響が極めて大きいわけでありますから、今度の改正によって具体的にどういう影響が出るのか、事項ごとに論議をいたしました。先ほど来の御論議にもありましたように、ポイントになります医療費そのものの将来の動向がどうなるのか、厚生省の御指導のもとに医療費適正化についていろんな措置が講じられる、今回の制度改正前提として医療費適正化による軽減効果というものがかなり見込まれておるわけでありますけれども、それが具体的にどこまで可能なのか、あるいはどういう不安要素があるのか、こういった点も十分論議いたしました。あるいは薬価基準の改正とか診療報酬の改正とか、あるいは保険で扱う薬の制限でありますとか、こういったものについてもいろいろ改正が予定され、その影響についても承りました。  それから、一番ポイントになります退職者医療制度創設によって国民健康保険財政がどれだけの軽減効果を受けるのか、これが中心的な問題であろうと思いますけれども、その辺の見通しについても厚生省の方から詳しく承ったわけであります。ただ、これについてもあくまで所管省としての一定のデータをもとにしての見通しを我々は承ったわけです。それ自身について自治省としていい悪いは言えない。私どもは、やっぱりそれは所管省が責任を持っていろいろ推計されておるわけでありますから、それを前提にして、基本は制度改正によって国民健康保険財政がしわ寄せを受けることがないかどうか、そこをポイントにして論議もし、また将来の問題も承ったところであります。その結果として、厚生省の御説明では、今回の改正によって現行制度がそのままいった場合における国民健康保険料、保険税負担の増はない、制度改正による増というのはない。現行制度のもとでも医療費の増に応じてある程度ふえていくわけです。それは当然増でありますから別としまして、制度改正による増はない、こういう前提で話を承ったわけであります。  ところが、実際に制度改正が論議され始めますと、確かに各市町村はもともと国民健康保険財政いろいろ問題抱えておりますので、今度の改正がどういう影響が出るのか非常に不安を持っております。果たして厚生省の方で言われているように医療費の適正効果というものが出てくるんであろうか、あるいは退職者医療制度創設によって国保財政負担軽減効果があると言われるけれども、自分の町を調べてみると該当者がほとんどいないじゃないか、そして補助金だけが削られるんじゃないか、こういう心配をしている市町村もたくさんあります。私どもも、そういった事情は決して手をこまねいて見ているわけではありません。話は聞いております。ただ、所管省がいろいろ調査もされ、検討もされていることについて、同じように自治省が類型別の市町村の将来推計を行うというような、積極的といいましょうか、そういうことはやっておりません。あくまで厚生省の方でいろいろ検討されている事柄を細かく我々なりに検討し、また見通しも伺う。  それからもう一つは、この問題については当然、全国市長会でありますとか全国町村会あるいは国保中央会などの関係団体も非常に重大な関心を持って、またそれぞれの組織の中で専門の調査検討の機関などもつくっておられるようであります。その検討に当たりまして当然、厚生省当局ともいろいろ接触されて、影響調査なり対応策なりについての論議をされていると思います。我々もその話は聞いております。  したがいまして、自治省としましては、やはり政府部内において地方財政をあずかる立場に立って、関係団体がいろいろ検討される場合には必要な情報を厚生省当局からもいただくし、また厚生省にも御協力いただく。それからまた、自治省として物を申さなければならない状況があれば当然物も申し上げる、こういう態度で今臨んでいるところでございます。  いずれにいたしましても、この問題は厚生省の問題で自治省とは関係ないということで傍観しておるわけではございません。極めて重大な関心を持ってその成り行きを見詰めておりますし、その影響等についてはその状況把握に努めておるところであります。
  43. 神谷信之助

    神谷信之助君 では厚生省、類型別の試算はなさったんでしょうか。もしなさっておるとすれば、その資料を出してもらいたいと思うんですが、いかがですか。
  44. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) 市町村における今回の改正影響がどんなふうに出るのかということでございますが、私どもの方として全体的な推計はしているわけでございますけれども個々市町村状況といいましょうか、これがどう出るかということは、類型でしますけれども、問題は結局、退職者の数の見込みがどうなるのか、あるいはそこの市町村における医療費の見込みというのはどうなのかということと、それから保険料状況というのがどう見込まれるのかということで変わってくるのではないかというふうに考えておるわけでございまして、市町村におきましては、医療費なりそれから保険料なりにつきましてはそれぞれ見込み得るわけでございますが、問題なのは退職者の数というものをどういうふうに見込むかというのが、これは年金受給者を対象といたしますので、各市町村ではなかなか見込みにくいという点がございます。  したがいまして、現在私どもとしては、各市町村における退職者医療制度の加入者の見込みというものをできるだけ早く各市町村に連絡いたしまして、それぞれの財政状況の見込みを立ててもらうというふうなことを考えております。  この退職者の数でございますが、これは率直に申し上げまして、一方で現在衆議院におきます法案審議が行われておる最中でございますし、そういったふうな法案審議の動向というものを余り無視して、市町村にその制度の成立というものを前提にしていろんなデータの試算をするというのもいかがなものかということもありまして、その辺、各市町村における退職者の数、医療費の動向等につきまするデータの送付ということにつきましては、現在、法案の審議状況を見た上でしかるべく連絡をしたいというふうに考えておりまして、私どもとしては特段、各類型別というものの試算というものは、必要が現在のところはないんではないかというふうに考えております。
  45. 神谷信之助

    神谷信之助君 あなたの方は法案提出するんですから、トータルでやって別に地方財政あるいは現在の国保財政に大きな影響はないという、そういう試算をつくっているわけです。それはそういうことになるでしょう。しかし、実際に個別の国保団体は皆千差万別で、国保税なり国保料の格差は物すごく開いているわけですから、財政状況というのは非常にばらばらになっています。そこへ今度退職者医療制度創設すると、退職者の数も、先ほどおっしゃったように企業城下町と言われるところと純農村地帯とではうんと違ってくる。それから国保財政の規模によってこの影響もまた違ってくる。それの穴埋めは財政負担四〇%の分はこの上限を上回らぬ、四〇%を超えて四五%もくれるわけではない、削る方はあるけれども四〇%が上限。それで、調整交付金は一〇%でしょう。それに若干余ったやつが仮に組み入れられても、個別のやつに、そういう保険税なり保険料引き上げなくても済むような、そういう財源が一体ちゃんと配れるのかどうかというその辺の見通しがなかったら、それぞれの市町村は、現在よりも財政が厳しくなる、もらえる金が来ぬじゃないかと。来ない金はちゃんと医療制度のいわゆる拠出金で来て、それで相殺されて、あと一部負担金が残ったりしてプラスになるはずだと、こう言っていろいろ説明されるけれども、実際には、計算をしてみたらそうはならぬというのが先ほど言った八日市場市の例ですよ。  だから、この辺は、法案を提案をしながら、実際にそれが執行されればどういう状態になるのかということがわからないで、そして全体としてはこうなりますと幾らおっしゃっても説得力を私は持たないというように思うんです。その点を一つ指摘しておきたいし、自治省の方もひとつそういう意味では、これは結果を見てからということではなしに、やっぱりもう準備をして、しかるべき対処を研究してもらうということをお願いをしておきたいというように思うんです。その点はいかがですか、よろしいですね。
  46. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 先ほど厚生省当局からも御答弁ありましたように、法案が現在国会で審議中であるという事情もありますので、その対応の仕方についてもいろいろな配慮が必要であると思いますが、いずれにしても私どもは、この今回の制度改正影響というものは市町村国保にも大変なものになるわけでありますから、そのいろんなケース、ケースについてどういう問題があるのか、どういう対応が必要なのかという勉強は常にしておかなきゃいけない。その場合に、先ほども申しましたように、全国市長会やら全国町村会あるいは国保中央会は非常にこれを重要視しておりまして、いろいろ検討し、議論をしております。私どもは、この関係団体の検討には積極的に協力してまいりますし、またその結果として問題が予想されれば、それについては厚生省御当局にもいろいろ地方財政立場から検討方をお願いするというような意味で、法律が成立して問題が生じてから対応するというんじゃなくて、大きな問題が予想される場合にはなるべく事前にその対応策についても論議をしておく、検討しておく、こういう基本の姿勢でこの問題に取り組んでまいりたいと思っております。
  47. 神谷信之助

    神谷信之助君 次の問題に移りますが、厚生省、例の軽減費交付金の問題ですが、この軽減費交付金は、国保税については地方税法の七百三条の五、国保料については国保国庫負担金等の算定に関する政令四条と国保調整交付金の交付額の算定に関する省令五条の二、これに基づいて国保税国保料の減額分についてその十割を国の調整交付金で補うという、そういう仕組みになっていると聞いているんですが、これは衆議院の地方行政委員会で我が党の経塚委員が問題にしたんですが、ことしの二月九日の厚生省が招集した主管課長会議でこの十割補てんを八割にするという話が出たというんですが、なぜそういう引き下げを考えておられるのかどうか、この点はいかがですか。
  48. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) 保険料を軽減いたす軽減の基準というものを決めておるわけでございますけれども、税も同じでございますが、これを軽減した場合に、この軽減分について国の財政的な補助制度の中で手当てをするというふうなことが軽減費交付金に対する国庫補助制度でございますけれども、今回私ども考えておりますのは、この軽減費交付金の、今まではそれの軽減した分そっくりそのまま十割分を自動的に国の方からの補助金として流していくということで、現在まで運用してまいったわけでございます。その結果といたしまして、財政調整交付金といいますのは、現在の制度前提といたしますと、全体的な医療費の五%ということで限りがあるわけでございます。財政調整交付金といいますのは、こういったふうな軽減費交付金を交付するというふうな制度を本来の機能に期待されているというよりも、むしろ市町村の基本的な財政力の強弱、医療費等の支出と見合いまして財政力の強弱というものを調整していこうというふうな考え方に基づく財政調整交付金なのでございますけれども、この軽減費交付金の割合といいますのが、率直に申しまして、ここ数年相当伸びてきておりまして、五十七年度で申し上げますと、調整交付金全体の中で二四、五%近い額が軽減費交付金として全体の保険者に、財政力のいかんにかかわらず自動的に交付されるというふうな結果になってまいったわけでございます。  これでは、やはり本来の財政調整交付金の機能でございます市町村財政力の格差是正といいましょうか、というふうな機能の発揮ということからしまして、相当程度制約されてこざるを得ない。四分の一近くが、こういったふうな財政力の豊かな市町村にも大変な市町村にも同じ割合で自動的に国の補助金が行くというものはいかがなものであろうかというふうなことを考えたわけでございまして、したがいまして私どもとしては、五十九年度から考えておりますのは、ただしその大宗はやはり崩してはいかぬ、八割程度は自動的に財政力の豊かな市町村も大変な市町村も見ましょう、ただし、二割につきましては、財政力の豊かかどうかというふうな基準でございます財政需要額といいましょうか、というふうなものに組み入れまして、それで財政力に応じて調整交付金の対象にしていこうというふうなことなのでございます。  いわば軽減費交付金というものをどう扱うかということで、補助金の補助の対象にはもちろんするわけでございますけれども、十割するわけでございますけれども、それの補助の方法というものを多少改めるというふうなごとでございまして、これいかんによりまして、税及び料の軽減のやり方というものには一切これによりまして変更というものは生じないというふうに考えておりまして、やはり財政力の豊かな市町村には結果的に八割相当ぐらいしか行かなくなるケースも出てきましょうけれども、全体の財政力に応じた調整機能はむしろ強化されるということになりますので、そういったふうな方向で今年度の実施を考えたいというふうに思っているわけでございます。
  49. 神谷信之助

    神谷信之助君 これは自治省、衆議院の地行で経塚さんが聞いたときには、自治省は全然聞いておらぬと、自治省に協議はあるはずだけれども協議もされてないと、そういうことはないという趣旨の答弁が出ているんだけれども、今聞くと、ことしからこれをやると言うんだけれども、そういう相談はあったんですか。
  50. 津田正

    政府委員津田正君) 今厚生省から御答弁ありましたように、厚生省内で検討していると、検討しようという意向があるのは聞いておりますが、私どもへの正式な協議というものは受けてない状況でございます。
  51. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから衆議院の地行で吉住さんが、そういう十分の八ということは実は私どもも耳にしていないと、だからそれに対して田川大臣も、厚生省からよく聞いて善処をしてみたいという答弁をなさっていますが、今の話を聞くと、厚生省の方はもう五十九年度からやると言うんですよ、これ。厚生省はまた自治省とも相談をやるということは、今の話ですと、決めているわけでしょうか。
  52. 阿部正俊

    説明員阿部正俊君) この軽減費交付金の交付の方法というものをどうするかということにつきましては、私ども予算の策定の段階で、それ以降におきましても、いわば事務的な形で自治省の窓口の方にはいろいろお話は申し上げておりますけれども、多分自治省令申されましたのは、調整交付金の算定省令というのがございまして、これでもちまして最終的に決定をするということになるわけでございますので、こういったふうな算定省令につきましては、地方財政等の影響もございますので、私ども従来から自治省さんにお話しをした上で決めるというふうな取り扱いになっていますので、正式には、その省令の制定につきましてお話しを申し上げるというところで正式協議ということになるんだろうと思いますが、私どもとしては現在そういったふうな考え方によりまして、いずれもう少し詳細に詰めた上で自治省さんに算定省令の制定方につきましてお話しを申し上げる予定にしたい、こんなふうに考えて、現在その細部につきまして検討を進めておるところでございます。
  53. 神谷信之助

    神谷信之助君 これは自治体にとって大変重大な問題になっていまして、減額の基準というのは先ほど言いました地方税法やあるいは政令、省令の中で決めてあるんですが、結局、二十六万プラス十九万掛ける扶養者数、ですから四人家族で八十三万円以下が対象者になるという極めて厳しい基準になっているわけです。国保料や国保税がどんどん上がってくるにつれて軽減措置というのをそれぞれの単位国保で独自に考えざるを得ない、こういうことで上乗せをしているのが実態になってきているんです。だから、所得減少世帯の減額の措置とか、倒産世帯の減額の措置とか、高齢退職者の減額の措置とか、あるいは被爆者の減額の措置とか、いろいろそれぞれの自治体によって形態が違いますけれども、そういうことをやらなければ、片一方でまた同時に就労率は下がってくるし、そうすると調整交付金をカットされる、こうなってくるわけですね。だから、実態に応じて、本来ならば減額の基準というのをもっと緩和をして、そして自治体が独自にそういう上乗せをしなくても済むようなところまで考慮しなきゃならぬけれども、そっちの方はしない、逆に今度はこれを理由にしてそういうところについては二割カットと、こうなってくるとこれは大変なことになるんで、例えば京都市でも軽減費交付金が五十八年度予算で三億六百万ですね、このほかに単独で三億五千百万というものを出してやっているんですが、 〔委員長退席、理事真鍋賢二君着席〕これがさらに二割減ってくるということになってくるとなかなか重大なことになってくるんだけれども自治省、これはそれぞれの自治体としても非常に困る問題なんですが、結局二割分は財政力の豊かなところという判断でと、こういうことなんだけれども、そういうことをやってこられればそれぞれの自治体に対して負担が転嫁をされることになるんだけれども、この点について自治省はどういう態度で臨むわけですか。
  54. 津田正

    政府委員津田正君) 軽減費交付金の問題、それの基本となります国民健康保険税の減額の問題は、これは国民健康保険という制度が国民皆保険を維持するのに非常に大きな役割を果たしておるわけでございますから、そういうようなところから結びついてきて出てきておるものと、このように基本的に理解しております。そういう意味におきまして、法定軽減の基準額につきましては低所得者の負担状況等を勘案しまして、やはり適宜的確に措置をしてまいらなければならない、かように思うわけでございます。それで、これの問題に絡みまして調整交付金配分厚生省で検討されておられるようでございますが、その問題につきましてもやはり保険料軽減という制度の性格というようなものから議論しなければならないのではないか、かように存じております。
  55. 神谷信之助

    神谷信之助君 やっぱり保険料軽減の性格ですね、国民皆保険制度を維持する上でそういうものが必要になってきているんですから、その点ひとつ自治省も十分考えて慎重に対処してもらいたい。厚生省の方は大体決めているようですから、これは自治体にとってもあるいは単位国保にとっても重要な問題ですから、慎重な対処をお願いをしておきたいというふうに思います。  もう時間がありませんので、児童扶養手当の地方負担問題もやりたいと思うんですが、時間がありませんから、せっかく来てもらってますけれども、ちょっと割愛します。厚生省はもう結構です。    〔理事真鍋賢二君退席、委員長着席〕  それから次、手数料問題ですが、法案に関して、これは今まで同僚議員もいろいろ質問をされておりましたが、政令を定める際の実費の問題ですが、実費の範囲というのは法定化されているわけですか。
  56. 津田正

    政府委員津田正君) 実費の範囲につきましては、これは社会通念上の観念で対処しておるわけでございまして、これは法令上決めておるものではございません。しかし、いずれにしましても当該事務を行うために必要な消耗品費、印刷製本費、旅費等の物件費のほか事務従事者の給与、人件費等を考えておるわけでございます。
  57. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、法令に定めがないわけですから、今おっしゃるように事務その他の経費ということになるんだけれども、その幅というのはどういうようにも解釈できるんで、いろいろ問題があると思うんですが、そこで自治省が手数料について「地方公共団体手数料解説」の中でこういうように説明をなさっているんですが、「手数料は、特定の者のためにする事務ないしサービスの反対給付であり、財政収入を直接の目的とするものではない。手数料は、この意味において、地方公共団体財政収入を目的として住民一般に賦課徴収され、対価的な意義を有しない地方税と区別される。」ということで、手数料と租税との関係、違いというのをおっしゃって、ただ例外的なものとして「手数料の額が当該事務に要する経費を超えて決められる場合には、財政収入を目的とする部分のあることを否定できない。」と述べて、収益主義の手数料も例外的にはあると、こういう手数料についての考え方は現在も変わっていないのですか。
  58. 津田正

    政府委員津田正君) 手数料には、財政収入の面から申しますと、御指摘のとおり二つあると思います。それで、今回の法律改正におきましては、当委員会に審議をお願いしているもののほか、大蔵委員会サイドでお願いしておるものがございます。それで、大蔵委員会サイドの手数料の改正の中には特許料等が入ってございます。いわば特許ということによって独占的な経済的利益を得ると、これにつきましては実費を超えて額で定めてございます。それ以外の大蔵委員会にお願いしております法案、それから当委員会にお願いしております法案につきましては、かかった実費を勘案していただく、こういうような手数料でございます。ですから、二つございますが、今回提案しております手数料関係はまさしく実費を勘案して決める、そういう性格のものでございます。
  59. 神谷信之助

    神谷信之助君 ただ、今おっしゃった大蔵委員会に付託されている各種手数料の改正法案の中には、今までは実費を限度としてやっておる、限度として、こうあったのを、今度は「実費を勘案して」なんですか。それで、当委員会で出てきている法案も「実費を勘案して」と。だから、実費を限度としてではなく「実費を勘案して」というように変わってきているということは、これは財政収入の確保というもの、その意図も含まれているのではないかという点はいかがですか。
  60. 津田正

    政府委員津田正君) 「実費を勘案して」という法文の規定で提案しておるわけでございますが、この「勘案して」というのは、確かに実費そのものと申しますと恐らく一件ごとに事務処理によって変わってくるのかと思います。それでは対応できないわけでございますので、いわば客観的統一的な基準によりまして算定した実費、ただ、それがその当該事務の実費ではないんで、客観的な意味での実費というものを勘案して決めたいと、こういう趣旨でございまして、先ほど申しました独占的な経済的利益を受けるようなものの手数料等とは性格を異にしておるものということでございます。
  61. 神谷信之助

    神谷信之助君 いや、同じことですよ。一件ごとの実費というようなことを言っているんじゃなしに、客観的なやつで実費を限度と。だから、今までも実費を限度というのはそういう趣旨でやったわけだ。だから、それが「勘案して」ということに変わったことに一つ重大な問題があるように思う。例えばことしの一月三十一日の財政課長名の通達でこう言っているでしょう、「使用料・手数料の適正化等を推進し、財政収入の確保に努められたいこと」と。使用料等については「受益と負担関係の明確化及び歳入の確保の観点から使用料等の」——「等」ですね、手数料も含めて「使用料等の適正化が強く求められている」、だから、それぞれの自治体の手数料、使用料、これの指導については収入の確保を考えなさい、実費主義ではありませんよ、実費さえ取ればいいということではないですよと。だから、実費を限度としてというのを今度は「実費を勘案して」というように変えられている意図というのは、現に自治省が各自治体に対して指導されている財政収入の確保ということが含まれている、ねらいはそこだというように思うんだけれども、これはどうですか。
  62. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 財政課長内簡やあるいは毎年度財政運営通達におきまして、使用料、手数料等の徴収について、これを適正に金額を定め収入の確保に努めていただきたいという御指導を申し上げておりますのは、決して実費を上回ってでも取れと、こういうことを言っているわけじゃございませんで、多くの使用料、手数料について、現状はその原価と申しましょうか実費と申しましょうか、それに比べてまだかなり下回っているものがある、そこを適正に引き上げていただきたいと、こういう意味合いでございます。  今回御提案申し上げております法律改正案で、従来、物によって実費を限度としてというような表現があったものを国の場合も地方の場合も統一して「実費を勘案して」と、こういうふうに改めましたのば、決して実費を上回ってでもという意味を込めているんではございません。基本的に手数料等の性格から受益に見合った適正な負担を求めると、こういう性格でございますから、やはり一つ金額の目標としては実費というものがあるわけであります。その表現、限度としてを「勘案して」に改めだということが、直接実費を上回ってでも収入を確保しなさいと、こういう意味ではございませんので、手数料や使用料の基本的な性格に対する理解というものは従前と変わるものではございません。今回の法律の表現が若干変わったということをもって、その基本的な性格に対する我々の認識、理解が変わったわけではございません。
  63. 神谷信之助

    神谷信之助君 そういうおそれなきにしもあらずということで警告をしておきます、この問題は。  もう時間がありませんから、厚生省は帰ってもらいましたけれども、児童扶養手当の地方負担問題ですが、これは、自治省は今までは国から地方への負担を転嫁するだけだといって強力に反対をされてきました。九十五国会の当時の安孫子大臣の答弁などあるし、また、五十九年度の概算要求で厚生省に対する要請の中にも明確になっているんだけれども、今回、十一月から新たに認定する者について地方負担の二割を受け入れることにしたというこの理由は一体何ですか。
  64. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 私どもは、児童扶養手当制度創設の経緯からいたしまして、これはもともと母子福祉年金の補完的なものだということでありましたので、それに地方負担というのはあり得ない、年金については地方負担がないわけでありますから、地方負担というものはあり得ない。したがいまして、制度を変えないで、制度をそのままにしておいて単なる国の財政上の見地から地方の負担を求めるということは、これはあってはならないということで、一貫して反対してまいったわけであります。  今回、児童扶養手当制度改正に関連して、新たに認定されも者について二割の地方負担をすることに我々同意したわけでありますが、それは、この今回の改正によりまして児童扶養手当の認定要件といいましょうか、支給の要件、これが変わるわけであります。例えば離婚する前の夫の所得によって支給対象を制限する、あるいは支給額そのものについてもその各世帯主の所得の段階によって差を設けるなど、全体として社会福祉施策としての制度改正が今回なされている、こういう考え方に立ちまして、他の児童福祉施策とのバランスも考え、例えば児童措置費などについては御案内のように二割の地方負担があるわけでありますが、こういったものとのバランスも考えまして、今度の制度改正によって、新たに認定される者からは、いわば児童福祉施策としての制度に対する地方の責任分担、こういう意味で二割負担に同意をいたした次第でございます。
  65. 神谷信之助

    神谷信之助君 私は、そんな制度が変わったというように理解をするわけにいかぬというように思っているんですけれども、これは時間がありませんからなにしますが、これを承認したことに伴う地方負担というのはどのぐらいになりますか。
  66. 津田正

    政府委員津田正君) 五十九年度におきましては五千四百万でございます。今後の見込み、これは厚生省試算した数字でございますが、六十年度は四十億円程度にふえます。平年度化いたしますと大体三百五十億円程度の規模のものでございます。
  67. 神谷信之助

    神谷信之助君 これは当面、制度改正に伴って若干予算は減る時期がありますけれども、離婚がずっと増加する傾向が強まっていますから、将来ずっとふえていくかもわからぬということも予想されるんですけれども、これに対する財政措置としてはどういうことを考えているのか。
  68. 津田正

    政府委員津田正君) 本年度におきましては交付税において手当てしておるわけでございますが、今後におきましては当然、地方財政計画上の必要経費ということで、こういうものを織り込んだ上で地方財政の運営に支障がないよう必要な措置を講ずる、こういうことでございます。
  69. 神谷信之助

    神谷信之助君 もう時間ありませんから、大臣も御答弁結構ですけれども前回に続いて今回も言いましたが、児童扶養手当もそうですし、これから国保の問題もそうですが、どんどん地方財政に転嫁されるやつがふえてくるわけです。それは結局、交付税措置しなきゃいかぬ、あるいは地財計画全体として見なきゃならぬ、こうなってきます。しかも、国の方は、もうこれからは一切面倒を見ない、法定化された三二%と、それから既に約束済みのやつだからしようがない、既往の臨時分だけやると、こういうことになってきていますから、これは大変厳しいものになる。それから、去年の概算要求時期には、大蔵大臣は、今度は生活保護の負担率、これも地方負担をふやそうという話も出ています。これは六十年度になって出てくるかもわかりません。こういう状況があって、大変地方財政というのはますます尻ふきをさせられて財政状態が厳しくなってくるという状況になると思うんで、もう時間がありませんから答弁は要りませんが、ひとつ自治大臣に、ちょっと腹をくくってこの地財対策というのは考えてもらいたいということだけ申し上げて、終わりたいと思います。
  70. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午前十一時三十分休憩      —————・—————    午後一時三十一分開会
  71. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  72. 三治重信

    ○三治重信君 できるだけ重複を避けた御質問をしようと思うと苦心の存するところなんですが、入るに当たって、財政計画に述べられております、歳出面で非常に経常経費や投資的経費を徹底した抑制を行ったと書いてあるんですけれども、経常経費で、五十八年度以前の経常経費に対して、五十九年度は歳出面でどういうところの抑制を徹底さしたか、投資的経費でどういうところをやったか、財政計画の中で具体的に示されるものがあったらひとつお示し願いたい。
  73. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 地方財政計画の歳出の積算に当たりましては、国の補助事業、国庫負担事業などとの関連において積算しているものと地方独自の立場に立って積算しているものと、二つの系統があります。これは経常経費についても投資的経費についても同様になっております。  そこで、まず国庫補助負担金に関連する経費につきましては、当然のことでありますけれども、国の予算におきまして、御案内のように徹底した抑制措置が講じられております。これとの関連において、地方財政計画上の歳出額につきましても、これに連動する形で抑制措置が講じられております。  それから、地方の独自の、地方の単独の経費につきましては、例えば一般行政経費などについては、最近の実態ども勘案いたしまして、福祉関係の経費、教育関係の経費を全部合わせまして、従来であれば物価上昇率など以上に伸びを見たのでありますけれども、五十九年度の歳出の積算に当たりましては、物価上昇等に関連してどうしても必要になるものだけ最小限度に限って所要額を積算いたしております。  それから、例えば追加財政需要等につきましては、従来四千五百億円積算しておったわけですが、これを四千億円に減額する、こういうような措置を講じております。  それから、投資的経費につきましては、これは厳密な意味での削減ではありませんけれども、最近の決算額と地方財政計画との比較におきまして計画額の方が決算をかなり上回っている、こういう実態がありますので、五千八百億円ほど、いわば規模是正という形で削減措置を講じております。しかし、また別途、各地方公共団体が自主的に地域整備を図り得るようにするための経費は積算いたしておりますけれども、全体として地方の単独事業につきましては、公共事業と同様、三%程度の前年対比では減という積算を行っているところであります。
  74. 三治重信

    ○三治重信君 各行政項目別単位費用算定基礎というのが、これは都道府県も市町村も大体標準のモデルをつくって、モデルの単価を出しておるわけでしょう。それに都道府県だと四十七掛ける、市町村だと三千三百掛けるということではないんですか。
  75. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 私がただいま御答弁申し上げましたのは、地方財政計画上の歳出について積算の基本的な考え方、仕方を申し上げたわけでありますが、ただいま先生指摘の点は、その地方財政計画上の歳出をさらに具体的に地方交付税の算定の上で反映させるために、都道府県、市町村それぞれについて、標準団体についてのいわば標準経費の計算をいたしております。それを単位費用という形でお示しをしているわけであります。当然、ただいま申し上げましたような考え方で各費目ごとの単位費用を積算し、その単位費用に基づいて道府県、市町村それぞれの基準財政需要額が算定されるわけであります。したがいまして、その単位費用の増減傾向というものは、原則的にはそのまま基準財政需要額の総額に反映するという仕組みになっているわけでございます。
  76. 三治重信

    ○三治重信君 この標準のやつを市町村なり県の単位の数だけ掛けるというわけではないわけですね。この算定基礎というものを再検討するとか、また、臨調が言うふうに、同じ補助金でも終期を決めてやるとか、それから統合メニュー化の推進をやるとか、いろいろ個別の補助金をできるだけ一括した補助方式を導入して、地方公共団体等が自立性を高められるような方向で補助金の統合化を進める、こういうふうな臨調の最終答申があるわけなんですが、こういうことからいっても、地方交付税の交付金のやり方も、具体的には各補助金が細かく各省によって分かれておっても、皆さんの交付税の基準単価としての標準のやつには、そういう補助金なり行政のメニュー比とか統合化というような工夫があってしかるべきだと思うのですが、そういういわゆるグループでまとめて算定基礎をつくっていくというふうな考え方というものは、従来の個別の積み立て式だとなかなかできぬのですか。
  77. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) ただいま先生指摘の点は、補助金制度そのものの合理化のあり方として私ども、臨調答申が示しているような方向、すなわち、できるだけ統合化する、メニュー化するということであるべきだと思います。ただ、地方交付税の単位費用の積算に当たりましては、これはあくまで現行制度前提にして、その年度の必要な経費を積算するわけでありますから、もとの補助制度が分かれている以上は交付税の方だけまとめて計算してしまうというわけにはいかないと思うのであります。もちろん、奨励的補助金等については、幾つかの同系統の奨励補助金をまとめて特定財源として差し引くということはこれは可能だと思いますけれども、いわゆる国庫負担金系統のものは法律との関係もありまして、各負担金ごとにそれぞれ単位費用の積算上、これを表示する必要があると思います。  ですから、先生指摘のような方向というのは、交付税の積算の仕方の面で工夫するというよりも、その大もとの補助金そのものの交付の仕方、補助金のあり方の改善を通じて、そちらの方に力点を置いていくべきじゃないかと私どもは考えております。そういった方向で、自治省としてはかねてから関係省庁にも協力を要請しているところでございます。
  78. 三治重信

    ○三治重信君 そこで、具体的なことなんですが、五十八年度では農業改良普及職員の設置に対する補助金が交付金に、五十九年度では保健所運営費補助金が交付金に改められたということなんだが、この交付金化というのは地方財政計画上どういうふうに違うことなのか。
  79. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 農業改良普及事業費補助金という補助金が従来あったわけでありますが、これは農業改良普及員の設置に要する経費について国がその三分の二を負担する、それから、関連して農業改良普及員の活動経費について三分の二ないし二分の一で補助金を交付する、こういう制度であったわけです。その当時におきましては、当然、補助金そのものは一定の基準で計算された人件費に対して一定割合補助金が交付される、あるいは一定の事業について一定の基準で活動費の補助金が交付される、こういう仕組みになっておったわけですが、五十八年度改正によってこれがいわゆる交付金方式になりました。交付金方式になりましてからは、農業改良普及所の数でありますとかその他客観的な指標でもって、一定の単価で関係の交付金を交付する、従来は補助金で、何人いるからその人件費に対して何分の一として補助金幾ら、そういう交付の仕方をしておったんですけれども、五十八年度からはいわゆる交付金となりまして、普及所の数などについて一定の単価を乗じたものを交付する、そしてその交付金の範囲内で都道府県はこれを農業改良普及員の人件費に使ってもよし、またこの活動費に使ってもよし、協同農業普及事業の振興のために都道府県が自主的にこれを使うことができるという選択の範囲が広くなった、地方の自主性が強く発揮できるような仕組みになったということでございます。  したがいまして、私どもの方の地方財政計画の積算あるいは単位費用の積算に当たりましては、従来であれば職員何人分の人件費に対して何分の一という、そういう積算をしておったわけですけれども、五十八年度からは交付金になったわけでありますから、交付金の計算式に従って、財政計画であれば交付金が全国総額で幾らというものが歳入の方に上がってまいります。歳出の方はいわゆる補助事業、補助金負担金を伴う経費として上がるんではなくて、地方の単独の一般行政費の中に必要な経費を計算する、こういう方式に変更いたしております。  それから、交付税の方でも、従来は単位費用の中の歳出で、農業改良普及員が何人でその人件費が幾らというものをまず示しまして、それの何分の一として歳入に補助金を計算する、それを差し引く、こういうやり方をしておったんですけれども、交付金になりましたから歳入の積算基礎と一応関連を断ち切りまして、全国的な基準で、標準団体に交付されるであろう交付金の額を歳入にまとめて計上する、歳出の方の人件費とリンクさせないで計上する、このように切りかえております。これはあくまで交付金については地方の自主性を尊重するという趣旨で制度改正が行われたわけでありますから、私どもはこれは非常に望ましい改正の方向であると考えております。  ただし、そのことによって、従来の制度に比べて農業改良普及員の設置に要する経費に対してこの交付金が少なくなる、そのために、制度改正のために地方の手取りが減るということではいけないわけでありまして、必要なものは、ベースアップがあればそれに相当する交付金の増額を行うとか、物価上昇があればそれに応じて交付金の増額を行う、こういう意味で必要な事業を遂行するに足るだけのものは確保する、こういう考え方で、ただ、その配分の仕方あるいは地方団体の使い道について地方の自主性を高める、こういう改正と理解しております。そういう考え方交付税の積算も行っております。今度、保健所運営費につきましても保健所職員のいわゆる人件費補助が交付金化になりましたので、これにつきましても農業改良普及事業と同様に、私どもは地方団体の選択の幅は広まったものと考えております。  しかし、この改正によって国の持つべきもの、国の負担すべきものが減らされるということであってはならない。あくまでこれは補助金制度の交付に伴ういろんな手間暇を省略する、地方の主体性、自主性を高める、こういう改正だ、このように理解しております。
  80. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、補助金だと、やれ人件費だ、事業費だ、それから物件費だといって分けて補助していたのを、交付金だと一括して幾ら、こういうことになるから地方も使いやすいし、それから財政計画を立てる場合でも、細かく積み上げぬでも農業改良普及事業なら普及事業とか、保健所運営費用として一括して積み上げられるから便利だし、地方も使いやすくなっていいことだ、こういう説明でしたね。  そうすると、こういうようなものに該当して、自治省としてもまた地方自治団体でも、特にその補助金の交付金化を願っているような事業というものはまだ相当あるんですか。
  81. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 今回交付金化したものはいわゆる補助職員関係のものであります。もともと私どもは、地方公共団体が設置する特定の職員の人件費について国がその経費の一部を負担するといういわゆる職員費補助というのは、どうも地方自治の見地から、地方財政の自主性という意味から余り望ましくないという考え方を持っております。これはシャウプ勧告以来そういう考え方を一貫して持っているわけでありまして、でき得べくんば、こういったものはいわゆる一般財源振りかえする、補助金をやめて地方の一般財源で賄うようにすべきだという見地に立って制度の改革を要請してまいったんですけれども、しかし補助金の所管省にすれば、関係の事業の水準の確保のためにどうしても補助金制度が必要である。しかし、同時にまた事業そのものが地方公共団体の事務として相当同化してきた、普及の目的も達してきたということになれば、細かいところまで一々補助条件をつける必要はないということで、このいわゆる補助職員の中で一番大きなものであります農業改良普及員関係と保健所職員関係について交付金化が実現した。関係省庁の御理解も得られてそのような改正がなされたんです。  実は、補助職員についてはまだほかにも小さなものがあります。私どもはこれらについても同じような方向での改革が望ましいと考えておりまして、毎年度予算編成に当たりましては、そういった面での協力を得られないかという話をしております。ただ、細かい補助職員になりますとそれなりにまたいろいろ実情も違いまして、全部が全部、この交付金化が実現していないわけでありますけれども、私どもは基本的な考え方として、この農業改良普及員あるいは保健所職員にとられたと同様の措置が他の補助職員に対する補助金についてもとられることを希望し、そのような努力をしていきたいと考えております。
  82. 三治重信

    ○三治重信君 補助金から交付金に変わるのは、どうも御説明だと人件費の補助を含む事業費の系列のようなんですが、職員の補助を一々指定されて、事業費と結びつけて補助金にされていると地方はそれだけ拘束を受けるという意味において、それはそれで改善だという御説明はわかりました。  ところで、それと補助職員と絡めてではない、一番地方で大きな公共事業費関係補助金も一括して、できるだけ地方に第二交付金的な立場として公共事業費は大きくくくって、どうせ補助事業で公園をつくろうが児童遊園地をつくろうが、その点は地方にある程度任せた方がいいんじゃないか。また道路でも、どの道路がここからここまで幾らで、また河川がこの地域の何百メートルがこうでというような細かい補助のやり方というものは直すべきだと、こういうことを我々は多年主張しているわけなんです。だから、河川の改良に幾ら、道路の改良に幾ら、それから公園とか緑地とかいうものに幾らというようなグループ別に分けるようにでもそういう補助金をまとめて、地方の自主性に任せた方がいいような感じがしているんですが、そういう問題についてはどういうふうにお考えですか。
  83. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) いわゆる第二交付税制度という御提言があり、一定の広い幅を持った目的を設定して、その交付金の使い道については各地域の実情に応じて地方団体の判断に任せる、こういうようなお考え、私どもも地方自治立場から非常に共鳴を感ずるわけであります。ただ、現行制度は、御案内のように、道路にしても河川にしても、その公共施設の整備について国と地方の一種の共同責任という立場に立って、一定の計画、国が定めた全国的な整備計画に沿ってこれらの施設の整備を行う場合に、その経費の一定割合をいわば国がその責任分担としてこれを持つんだと、こういう考え方に立って公共事業補助金というのは交付されております。  そこで、今先生指摘のようないわゆる第二交付税制度のようなものになって、いろんな公共事業をまとめて、公園でも河川でも道路でも地方の実情によって自由にお使いなさいというのは、考え方としては共鳴を感ずるんですけれども、やはり今の補助制度そのものを根底から変えることを意味いたします。  今の公共事業補助金というのは、一定の道路なり河川なり、そういう特定の公共施設について国が定めた一つの整備計画に沿って整備を進める場合に、その経費の一定割合を国が責任分担として持つと、こういう基本の考え方を全部変えなければならない。それを全く変えて、新しい立場に立って国庫金を地方に交付するということでありますから、これについては、やはり制度そのものにさかのぼった論議が出てまいると思います。したがって、今直ちにそういう方向に我々賛成と申し上げかねるわけですが、しかし基本の考え方、なるべく補助金の交付に伴ういろんなロスをなくしていく、そうして地方の自主性を高めていく、これはもう非常に大切なことでありますから、補助金制度そのものの改革、補助金の交付その他の面での改革を通じてその理念に近づけていくということが必要ではないかと考えております。
  84. 三治重信

    ○三治重信君 そういう国が地方へいろいろの事業費や経費を分配する。それに対して地方が一々、道路は道路、河川は河川、また学校は学校で、各省にそれぞれ予算になると陳情団を繰り出して陳情する、その費用のためにどこから地方は旅費やなんかを出しているかわからぬような、結局事業費からやりくりしてそういう陳情団を引き連れて毎年毎年やっているわけなんですが、これをある程度やめぬことにはいわゆる国の財政再建も地方の財政再建もまた事務の簡素化も僕はできないと思うんです。そういう意味において、地方のいわゆる予算獲得の陳情合戦に対して抑制手段や、そういうものの自粛を図るような運動、またそういうことを提唱するという気は自治省にはございませんですか。
  85. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 私どもはかねてから、この補助金制度の運用あるいはさらに国と地方の関係のあり方という面で、補助金の獲得のために地方公共団体が奔走するという姿は決して望ましくないと思っております。いわゆる陳情行政といいましょうか、そういったものは決して望ましいものではない。そういった意味で、制度的には、先ほど申しましたように、補助金の交付決定についての何といいますか、事務的な手続、これをなるべく簡素化する。さらに言えば、事業採択について二足の客観的なルールというものを確立することによって個別の陳情行政というものを排除していく、これが大切ではないかと思います。  それからまた、このようなことがいろいろ社会的にも非難されるような場合には、やはり陳情を受け入れる側の方にももちろん反省しなきゃならない点がありますが、陳情する側にもいろいろ問題があると思います。そこで私どもは、毎年度財政運営の指導に当たりましては、そういうことを避けるように従来も指導してきておったつもりでありますが、これからも財政全体厳しくなるわけでありますから、当然その経費の支出のあり方という面でも世間的に非難されるようなことのないように指導してまいりたいと思っております。
  86. 三治重信

    ○三治重信君 そこで、自治大臣、今我々のところでも一週間に一遍ぐらいずつ何々期成同盟会、何々環状線期成同盟会というやつを各県知事さんや市町村長の代表者名になって、あれはもうほとんど何とか期成同盟、道路やそれから鉄道とか空港とかいうやつもほとんど県や市町村が主体の期成同盟で、経費もみんなそこから出ていて、そしていろいろ会合やる場合にみんなどこも国会の周りのホテルを使って、そして我々国会議員が呼び出されて、そうして一生懸命で陳情、まあぜひ実現するように頼むと、こういうようなのが盛んなわけなんだが、こういう問題について、本当にこれが民間の運動ならばまだわかるんだけれども、公共事業だから県知事や市町村長が音頭をとらぬことにはどうにもならぬというのかしらんけれども、やはりどうもこれは地方の官製運動になり過ぎていて、本当の地元の住民のそういうものが本当に必要なのかどうかという、あればよりいいに決まっているんだけれども、立派なものができればそれにいいに決まっているんだけれども、その費用をだれが負担するのか、そういう問題から、どうも官製のああいう一つずつ一つずつプロジェクトの期成同盟会づくるというものは少し再検討する必要があるんじゃないか。もっと関西空港とか本当にもう広い地域で、本当にその地域の経済、生命、国民生活に大きな影響を与えるというようなやつならばまたそういう問題はいいと思うんだけれども、どうも一本の河川、一本の道路、一本の鉄道というものに一つ一つ全部期成同盟会というのが、しかもこれは県や市の予算を使っての何々会合、もう分担金もみんな関係市町村が全部負担する、この経費と人件費等は大変なことだろうと思うんだが、こういうことについて少し自粛するようなことを指導されたらどうかと思うんですが、どうなんですか。
  87. 田川誠一

    ○国務大臣(田川誠一君) 地方の陳情については三治さんが御指摘になったことと私も全く同感でございます。こういう陳情政治というのはできるだけもう少し合理的にしていかなければならないと思っております。そのためには、先ほど御指摘がありましたように、補助金をできるだけ交付金化するような形に持っていくこともこれは大事な要素だと思います。  私も前から、先ほど御指摘になりましたような予算のシーズンになりますと、あるいはまた何か問題が起こりますとホテルに陳情団が一つの根拠地をつくってやっている姿を見て、こういうのは一刻も早くやめさせなきゃならぬと思ったこともしばしばございます。いろいろ検討してみますと、中央の省庁の側の方で、これはすべてとは言えないけれども、逆に地方に対して、少し動けよというようなことをやっている傾向もかなり見られるんですね。ですから、制度の問題と同時に、地方の皆さんにも自粛を促さなければならないし、また各省庁にも、それは主として我々自治省の側から、そういうようなことを少しやることを自粛させるようなことをやっていかなければならないということを痛切に感じております。
  88. 三治重信

    ○三治重信君 大臣のその善言葉は非常に私も同感なんで、ひとつそれを今度の、来年度六十年度予算編成も年内に行われることなんでしょうが、その過程で自治大臣にひとつ閣議で発言していただくなり、それから自治省の事務次官が事務次官会議で各省に要望を出すなりして、何かひとつ具体的に、どうせ国もえらい赤字だし地方もえらい赤字でやっていて、そう金がないんだからお互いにそういう分捕り合戦や何か自粛しようじゃないかというムードを、自治省でひとつぜひつくるような行動を起こしていただきたいということを特に希望しておきます。  それから、歳入面では地方税制改正、受益者負担適正化、地方債の抑制、地方債の抑制というのはこれはかえって膨張しちゃったですが、というふうなことで歳入面の確保を図るというのだが、もう国の方は来年度税制改正についていろいろ新聞に出て、やっている。その中でマル優制度改正から利子課税問題、これが大問題になっているんですね。地方税の中で一番すったかもんだかになっているのも、一部聞くと、いわゆる利子課税で源泉課税をやると地方税がないというようなことで大蔵省からおすそ分けをもらうというようなことのつじつま合わせみたいな交渉が行われておるようなんだが、今から来年度財政改革で、ことに利子課税の問題を大検討するわけなんだから、そういうふうないわゆる利子課税で源泉徴収するやつについて、地方税の方にもいわゆる地方分与税のような格好なり何なり、源泉徴収を再検討する場合に検討しろというような問題もひとつぜひ出して、地方にも配分を要求するというようなことをやってしかるべきだと思う。  また、地方税法の改正の場合においてもいろいろ論ぜられたようにあるわけなんだが、国民のいわゆるだれからでも、利用しない者からでも税金を取り上げるような、いわゆるドライバー免許税なんというようなつまらぬものを考えるよりか、そういう方面を考える。免許税なんというのは、お嫁さんの道具として、自動車持とうが持つまいがひとつお嫁さんの道具として免許を取っておく、その免許を取っておくということによって税金がどんどんかかるというような地方税の税金の取り方というのはどう考えてもおかしい。それほど税金を取ることに一生懸命ならば、もっと国が国の不公平税制の是正なり何なり、税制改正というものをやる場合に、地方税制においてもそれに一枚加わるような積極的な姿勢や、それから事業税の外形課税とか、また、大臣が特に主張されておったいわゆるマスコミなんかの事業税の免除、医師会の免除というようなものも、とにかくおとなしくしているといつまででもそのままにされてしまう。声を大にして、税制改正をやるならこれこそ不公平税制だと、いうことであれば、だれもみんな賛成せざるを得ぬようになるわけなんで、そういう不公平税制の是正ということについて、またこれは適用外だ、これも適用免除だといういわゆる税の課税の平等から逃れたようなやつを是正する努力というものをも一としかるべく——これはやっておられて新聞に出ぬだけだと、こういうことかもしれないけれども、そういうことについてどういう計画を持って臨まれようとしているのか、ひとつ御説明願いたい。
  89. 関根則之

    政府委員(関根則之君) 利子配当課税のあり方につきましては、政府税調において既に昨年から論議が進められてきているところでございますけれども、できればことしの八月ごろまでにある程度の結論を持ちたいということで既に審議に入っているわけでございます。その過程におきまして、これは単に国税だけの問題というふうな取り上げ方をしているのではございませんで、当然に、分離課税が仮に残るといたしました場合におきます住民税の課税の仕方、現在課税されておりませんけれども、これを何らかの形で地方税として課税すべきではないかという問題につきましても私どもから検討課題としてお願いを申し上げ、税制調査会におきましても十分認識の上で現在審議が進められているところでございます。  私どもとしては、長い間のこれ懸案事項でございますし、今回仮にグリーンカード制度というものが最終的に取りやめになるというようなこと、したがってその後彼に分離課税が残るということになりますと、ここで一つ制度の変わり目の節目になるわけでございますので、こういうときに地方の住民税につきましての利子配当に対する課税のあり方についてきちんとした制度を確立しておきませんと悔いを後に残してしまうという心配がございますので、本腰を据えて、地方団体サイドの意見等も税調に反映しながら努力をしていきたいというふうに考えておるところでございます。  それから、運転免許税等につきましてのお話がございましたが、これにつきましては現実の税制改正として私ども持ち出したわけではございません。一つの検討課題といいますか、研究課題として内々検討させていただいたものでございます。税の性格その他につきましては引き続き研究はしなければならない問題であろうというふうに考えております。  不公平税制というお話でございますが、もちろん税のあり方におきまして公平性の確保というのは極めて重大な要因でございますので、できるだけ公正な税制を確立していくということのために私ども努力をしていかなければいけないというふうに考えております。  地方税におきます非課税等特別措置につきましては、年々、昭和五十年代に入りましてから特に財政の窮迫等を背景といたしまして、私どもも積極的に取り組んできたつもりでございます。来年度税制改正におきましても、さらに徹底した見直しのための努力をしていきたい、具体策につきまして税制調査会にも御審議をお願いをしていきたいというふうに考えております。その中で、特に事業税におきます非課税措置等につきましてはことしの税制改正でも大きく問題として取り上げられたところでございます。特に、その中での医師の社会保険診療報酬に対する課税が実質上非課税扱いになっているという問題、マスコミに対する課税が非課税となっておる、こういった問題につきましては、一つの中心的な課題といたしまして、できれば来年度税制改正で何とか解決を見たいというふうに私どもは考えております。そのための最善の努力を尽くしていきたいと考えております。
  90. 三治重信

    ○三治重信君 これは歳入増をやっても、増税じゃなくて不公平税制の是正の方でも随分増収が図られる、大臣もやる気でおられるわけなんだから、新聞に最近国税の方ばかり出てて地方税の方余り出ないものだから心配になってそれを申し上げたんで、ひとつぜひ頑張ってやっていただきたいと思うわけなんです。  それから、サンケイの五月五日の新聞に、退職手当債というものが自治省で「33自治体、126億円自治省 申請通りほぼ許可」、こういうふうになっているんですが、退職手当債というものは地方財政計画の地方債計画の中に載っていないような気がするんだけれども、それはどうですか。
  91. 津田正

    政府委員津田正君) 地方債につきましては、御承知のとおり地方財政の基本的な考え方としては建設地方債に限っておるわけでございます。それで、建設地方債でないそのほかの経費に充てられる起債の一つとしまして退職手当債がありまして、それの根拠は地方財政再建促進特別措置法第二十四条第一項の規定に基づいて許可するものでございます。そういう意味で特例的なものでございますので、地方財政のいわば恒久的な財源というような考え方ではございませんで、地方財政計画等には載せておりません。毎年度年度末各団体の条例改正による定員減、あるいは最近におきますと、定年条例の制定に伴います退職者の増加というものに対処するため、特別の措置として認められる地方債でございます。  五十八年度実績は、先生指摘のとおり、三十三団体、百二十五億九千三百二十万円をこの三月に許可した次第でございます。
  92. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、それは制度として行われているというのは、数年前から現実に退職手当債というのは発行されているわけなんですか。
  93. 津田正

    政府委員津田正君) この制度昭和三十年ぐらいからございます。
  94. 三治重信

    ○三治重信君 そういう抜け穴というんですか、三十年からというと地方の財政再建の前からなんだが、そういうふうな退職手当債を出さなくちゃならぬ県市で、退職金がこれでいくというと広島県の福山市なんかは助役が六千万円というふうになっておるわけなんだが、そういうのを自治省が全部退職手当債で見るということは、こういうような退職手当というものの  この間、佐藤さんの御質問のときも、何か地方の一般給与の高いところは抑制するのはけしからぬという問題もいろいろ出されたところなんですけれども、給与の高い以前に、この退職手当というのは非常に抜け穴だと思うんですね。それで、しかも三十年からやっているとなると、そういう給与の問題はラスパイレスで問題が割合にはっきりわかるわけなんだけれども、退職金というのは個別的になって、しかもこれは何か見るというと、条例で決めたやつのほかに五割増し、三割増しの加算をどんどんやるようになっている。それをみんな自治省が退職手当債を見るということでは、これは非常にしり抜けだと思うし、それからきょうのサンケイ新聞では、青年会議所が全国の自治体の総点検といいますか、「ウォッチ・ザ・行政」というものを展開している中の中間報告で鹿児島市の例が出ているわけなんですが、鹿児島はどうも五十八年の退職手当債の対象にはなっていないようなんですが、駆け込みで総額四十三億円も独自の加算方式によって支給している、こういうようなのがサンケイの第一面に出ているわけなんですが、そうすると、自治省みずから必要なものは、退職手当幾らあっても条例やなんかで決めであることは出すんだと、認めてやるというような制度になっている。どうもこれは一般給与を抑えるより先のような気がするんだが、この点はどうなんですか。
  95. 津田正

    政府委員津田正君) まず退職手当債の設けられている趣旨につきまして御説明申し上げたいと思いますが、通常のベースの退職につきましては、それぞれの団体におきまして計画的な財政運営ができるわけでございます。ところが、定数削減、組織の改廃等によりまして一時的に退職者が増高する、そのために退職金がふえるというような場合におきましては、将来それだけ人件費が軽くなりますので、それを償還財源としまして地方債でつなぐ、こういう趣旨でございまして、むしろこの制度自体は財政の健全化を図る、そういうようなねらいを持っておるわけでございます。そういう意味におきまして私ども運用しておるわけでございまして、国の退職手当支給率を上回るような退職の場合におきましても、この退職手当債の算定におきましては、国の支給率、これによって算定して許可をしておる次第でございます。  鹿児島市につきましては、御指摘のとおり退職手当債は許可しておりません。
  96. 三治重信

    ○三治重信君 一般の民間企業でも企業合理化をやるために人を二割削減とか三割削減するためには退職金が必要だと、そのために特別、銀行から融資をするというふうなことは通常行われている。それと同趣旨の御説明なんだが、しかしこれは後を絶たぬわけだ。全部、何というんですか、国の退職基準で起債を認めているというけれども、実際は国の退職基準より倍額、二倍半というものをどんどん支給して行われているという、これは一部の報道かもしれぬが、実績というものに対して、これは一般の給与のラスパイレスの上のやつで、一般の給与の財源というより以上に、これは退職手当債という保証によって出すというのは、これはいかがなものかと思うわけなんです。  これはあなたの方の言い分は、政府のきちんとした退職金と同じ額の、必要の金額だけしか認めない、こういうことだけれども、実際は、それだけ五割増しのを出しておけば、それはほかの一般の財源のどこかに食い込んでいるにすぎないんで、もとを直さぬことにはどうにもならぬわけだ。今の退職給与条例というものは自治省じゃはっきりわからぬのか。やみで加算しているやつ、やめるときにやみで二割増し、三割増しというやつは我々よく聞くが、それにしても条例に何か根拠があるわけだ。そういう場合には特例で市長の権限で五割増しをしなくちゃならぬ。これは名古屋市が市長の権限で三割、五割も割り増し金をつけられるような条例を、厳しく言って市長の権限を削ったわけだ、条例から。そうすると規定どおりの退職金しか払われない。もとの退職条例を削らぬことにはそれは従来の慣行どおりでどんどん出ていく、こういうことなんだが、それの指導はどうなっているんですか。
  97. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) 私たちの方では県から給与の実態についてヒアリングをしておりますが、この鹿児島の件についてもそのヒアリングの際に県から話を聞いておりました。それで、是正していただくように指導しておったわけですが、今先生がお話しになりましたように、ことしの三月に是正されたわけですが、条例に根拠があり、そして規則で定めて加算するというのが普通一般的な方向でございますけれども、それ以外の加算の方式もございまして、県でも実態をしっかり把握していないことも実はございます。私たちの方では、県に実態を把握していただきまして、そういうのを是正していただくように現在指導しておりますので、鹿児島におきましても是正ができましたし、そういう是正というのをこれから順次していただかなければならないというふうに考えております。
  98. 三治重信

    ○三治重信君 それでは最後に、ひとつ御意見をお伺いしておきたいんですが、今、地方の議会の議員の定数の削減運動というものが方々で、新聞に出たりなんかして、行われているんですが、これは自治省として、地方議会の議員定数は何か基準が法律であるとすれば、今や行われているのはみんな基準よりかカットして少なくしようという運動だろうと思うんですが、こういうことについて自治省は、地方の議会の議員の定数を削減するとか議会の費用を節約せいとかいうような特別の指示、指導というものが行われているんですか。
  99. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) 現在私の所管ではございませんが、前そういう仕事をしておりましたので申し上げますと、自治省の方で特段の指導はいたしておりません。議員の定数を削減するというのは、住民の意思の反映とかあるいは執行部に対する監視というような機能の面からも、慎重でなければならないというふうに一般的には考えておりまして、それぞれの地方団体の方で地域の実情に合わせて現在条例で削減することができるようになっておりますので、それぞれの議会の方で十分議論してお決めいただきたいという基本的な姿勢で臨んでおるというふうに記憶しております。
  100. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、地方の議会の議員の定数の是正の問題は、自治省は中立的立場でおって、別にどうのこうのは言わぬと、こういうふうに理解していいんですか、大臣
  101. 田川誠一

    ○国務大臣(田川誠一君) 消極的ということよりも、今御指摘のように、地方が自主的に随分やっておられるんですね。今も公務員部長から話がありましたように、地方自治法では減らすことはできるように規定しているわけでございます。地方自治の本旨からいって、自主的に地方自治体がやっているということから見ますと、今ここでその基準の法律改正するのはどうかなというのが感じなんです。消極的じゃないのです。私は、個人的には、地方でもやっているのだから基準を減らして、基準の改正をやってもいいとも思うのですけれども、しかし国会がやらないでそうして地方に基準を減らせと一律言えますかね。なかなかその辺が非常に苦しいわけでございます。国会が議員定数を減らすということになれば、これは地方自治法の議員定数は思い切ってやっぱり減らすべきだと私は思っております。
  102. 三治重信

    ○三治重信君 最後にしておきますが、地方交付税率は国税の三二%と決まっているわけなんだが、どうも複雑怪奇になって、財政計画との関連で、本来からいけば僕は、地方交付税は国税の三二%ですんなり決めて、あとは足らぬ分は地方債でやれ、節約せい、こう言っておればいいと思うのだけれども、それを自治省が一生懸命になって地方財政計画につじつまを合わすために交付税を借り入れをやったり、何だかんだと複雑怪奇なことをやっておるから、実際の地方交付税における交付比率というものは、ちょっと調べてみると、五十五年では三九・八%になったがことしは三一・三%になる、五十七年は三二・三%だけれども去年は三五・二%というふうに、地方に交付をする金額交付税率に対して上がったり下がったり余り激し過ぎるのじゃないかと思うのだが、こういう問題は余りつまらぬ加工をしない方がいいと思うのだが、それを基本的な姿勢だけ聞いて終わりにします。
  103. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 地方公共団体に現実に交付された額を各年度の国税三税の額で割り返しますと、御指摘のとおり年度によって非常に大きな変動があります。毎年度の地方交付税の法定額に対していろんな特例措置を設けて総額をふやしてきたわけですが、結局、法定額ではその年度財政運営に支障が生ずる、必要な額に満たない、こういうことで特例措置を講じてまいったわけであります。そうして、その特例措置も単純明快に、足りない分だけ交付税率を引き上げるとかあるいは足りない額だけ臨時交付金を繰り入れるというようなことで対応できれば一番わかりもいいし、私どももそれが望ましいと思っているのですけれども、残念ながら国の財政が単純な形での対応を許さないほど詰まってきております。そこでいろんな方式で、これまでは交付税特別会計の借り入れを基本としながらいろんな形での特例措置を講じた、結果として非常に複雑な措置になってきたということではないかと思います。  世の中が安定して、地方の財政需要に対して国税三税の三二%の交付税額及び地方税、こういったもので財政運営ができるようになれば、そしてまた、多少の増減差額というものは地方団体自身の年度間の財源調整で対応できるようになれば、余り手を加えないことが望ましい、そういう状態になることが望ましいと思うのであります。現在の地方交付税法でもそういう事態を想定して、いわゆる年度間の財源調整は基本的には地方団体自身が行うという前提で、地方財政法四条の三という規定が置かれているわけです。  しかし、最近の地方財政は、地方財政法第四条の三の規定による地方団体自身の年度間財源調整ではどうしても対応できない、それほど変動が激しい、こういうことではないかと思います。したがって、少なくとも五十年度以降今日までのような地方財政状況、この変動要因のもとでは、特例措置なしては対応できなかったと思います。これまで講じた措置は必要やむを得ざるものであったと思います。しかし、将来に向けてはこの変動要因がなるべく少なくなるように、基本的には経済の運営がポイントであろうと思いますけれども、経済を安定させ、さらに、何よりも地方税制というものを充実強化することによって、交付税特例措置による対応というのが余り大きくならずに済むようにすることが基本であろうと、そういった気持ちで税制改正その他の努力が必要ではないかと、このように考えております。
  104. 小山一平

    ○小山一平君 下水道事業は大都市、地方都市、さらには農村に至るまで住民の最も要望の強い事業でございますから、地方団体にとりましては緊急な重要な事業の一つでございます。ところが最近、下水道事業がもたらす財政問題というのが大変憂慮すべき状況になってきているわけでありますので、この財政問題について若干お尋ねしたいのでありますが、その前に、下水道整備事業の進捗状況などについて、建設省から二、三お聞きをいたしたいと思います。  第五次下水道整備五カ年計画は、昭和五十六年から六十年の五年間で投資規模が十一兆八千億と予定されておりますが、五十九年度の予算が実施されますと、投資実績金額にしてどのぐらいになりますか。
  105. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 現在、第五次の下水道整備五カ年計画が進捗しているわけでございますけれども、今年度、五十九年度が終わりますと四年目が終わります。投資額累計で約六兆五千二百七十六億円、金額におきます進捗率は五八・二%の予定でございます。
  106. 小山一平

    ○小山一平君 そうすると、五年間に十一兆八千億と予定したものから見ると、六十年度が終わっても到底その水準に達しない額に終わることになりますね。
  107. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 現在非常に厳しい財政事情のもとでございますけれども、いろんなやりくりの中で予算をつけていただいておりますけれども、今申し上げましたように、四年目で五八・二%でございます。今後いろんな意味で、財政上厳しい中でございますが、努力してまいりたいと思っておりますが、その辺のことにつきましては今後の問題ということで努力してまいりたいと考えております。
  108. 小山一平

    ○小山一平君 そうすると、第五次計画で、普及率を一四%伸ばして四四%まで高めようという計画は全く遠いものになるわけですね。五十九年度の予算が執行された場合に、今の六兆五千何がしの投資額で一体何%伸びますか。
  109. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 現在の五カ年計画では、下水道の人口普及率を昭和五十五年度末の三〇%から四四%にする予定で整備を進めてまいったわけでございますけれども、現在確定的に出ております五十七年度末では三二%でございます。五十九年度につきましては、まだ暫定的な見込みでございますが、三五%程度になるのではないかというふうに現在のところ考えております。
  110. 小山一平

    ○小山一平君 そうすると、一%普及率を伸ばすのに、計算すればすぐわかるんですが、どのぐらいですか。
  111. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 毎年一兆五千億程度の事業費を、地方単独事業も含めてでございますけれども、実施させていただいております。それによりまして毎年一%ないし二%の進捗を得ております。なお、下水道につきましては、御承知のとおり、トイレの水洗化ということもございますけれども、都市の中の市街地の雨水対策というようなところにも金額が相当程度回っておりますので、その全体が人口普及率に結びついていない部分も若干ございますけれども、なべて申しまして、雨水対策と汚水対策を区分して考えますと、大体一%上げますのに、一%と申しますのは人口にしますと百万でございますが、七千億程度ではないかというふうに考えております。
  112. 小山一平

    ○小山一平君 あなたは今の説明では六兆五千何がしになると言ったでしょう、五十九年度に。そして、五十五年度末の普及率が三〇%であったものが三五%になるというから五%伸びるんでしょう。どうして一%が伸びるのに七千億でできるんですか。
  113. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 今の私の説明で雨水対策と汚水対策を込みのような説明をしたところは訂正さしていただきたいと思います。汚水対策分だけに限定いたしますとそういうことになるという説明でございます。
  114. 小山一平

    ○小山一平君 そういうことになるって、どういうことだね。
  115. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 下水道の整備につきましては、汚水対策としましてトイレを水洗化するということなどで、大体、これは各事業によっていろいろ差がございますけれども、七割程度がそういったものに使われます。それから、三割程度が大都市の中のいろいろ雨水対策としましての市街地内の浸水排除に使われるということでございますので、汚水対策分について申し上げるとそのぐらいになるという御説明をさしていただいたわけでございます。
  116. 小山一平

    ○小山一平君 私はそんな中身を、いろんなことを聞いてないんですよ。この五カ年計画を見ると、十一兆八千億、五カ年で投資をして、そして普及率を一四%伸ばす。そして、六十年度の終わりには全国規模で見た普及率は四四%になるのだと書いてあるから、その書いてあることに基づいて聞いているのに、ようでもないことを言いわけみたいにぐずぐず言うことないじゃないか。わかりやすく言いなさいよ。
  117. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 五カ年計画そのものの設定の際の考え方でございましょうか。
  118. 小山一平

    ○小山一平君 そうです。
  119. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 五カ年計画そのものを設定いたします場合の増加普及率、人口普及率一%当たりの投資額はほぼ七千八百億円程度というふうに見込んでおります。
  120. 小山一平

    ○小山一平君 私の言うのは、十一兆八千億の投資をして一四%伸ばすと、こういう計画になっているんですね。それで、五十九年の末にはどのくらいの投資が行われたかというと六兆五千何がした。それで、普及率の伸び率はどのくらいかと聞いたら三五%になると言うから、五%ふやすのに六兆五千億かかったということでしょう。そうすると、一%の普及率を伸ばすには少なくとも一兆三千億のお金が要ったというそろばんが出るでしょう。そういうふうにわかりやすく説明してもらわないと、あなたの言ってることはさっぱりわからない。
  121. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 今先生指摘のように、雨水対策ということは別にいたしまして、それも含めた六兆五千二百七十六億円を、五%ということで、五で割りますと、今御指摘のとおり一兆三千億円に相なるわけでございます。
  122. 小山一平

    ○小山一平君 これは私が前にも議論したことがあるんだけれども、十一兆八千億の投資で一四%の普及率を伸ばすことができるかどうかと言ったら、伸ばすことができて四四%にすることを目標にしているんだと建設省は言っているんですよ。それを、この事業の内容をあっちへ分けこっちへ分けして、できないことを何かわかりやすく説明しないで、わからなく説明してごまかそうなんというのはよくないですよ。書いてあることに従って私は聞いているんだから、私の聞いていることに合うように答えなきゃだめじゃないですか。まあ、いいでしょう。  いずれにいたしましても、今私が指摘したように、計画と実績の間には大きな開きを生じているわけです。そうでしょう。十一兆八千億投資をすれば一四%の伸びを実現することができるということでこの計画ができておる。ところが、財政状況で六兆五千億ほどしか四年間で投資ができないということであったとして、この六兆五千億を今言った割合で割り出せば五%ということでは数字が合わなくなる、こういうことを私は指摘しているわけです。わかりましたか。
  123. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 数字は先ほど御指摘いただいたとおりでございます。
  124. 小山一平

    ○小山一平君 欧米諸国では古くから下水道の整備が進められまして、その水準は日本に比べると非常に高い。統計などを見ても、イギリスは九七%だというし、アメリカは七二%だというし、ドイツは八八%といったようなぐあいに既に高い水準に達している。ところが日本は、今お話しのように、順調にいっても五十九年の終わりになってようやく三五%、こういうことです。  それで、私が問題にしていることは、第一次の計画から第五次の計画に至るまで、今申し上げているように、これだけの投資をすればこれだけの普及率が伸びてトータルでこのぐらいになりますと、こういうふうに明らかにしておきながら、一次から五次に至るまで一回もその計画に近い実績を上げておらない、これはおかしいではないかということを私は言いたいんです。  私は、五次の計画ができたときに、五十六年に建設委員会にいて、かなり突っ込んだ議論をいたしました。第四次の場合は投資計画は七兆五千億、投資実績は六兆八千六百七十三億でありましたね。それで、かなり投資実績は計画に近い数字であったのに、一七・二%伸ばして四〇%にしようというのが、伸びたのはわずかに七・二%で三〇%でとまっちゃった。これは計画がおかしいではないかと私が指摘をしたわけです。そして、この実績からいくと、一%の伸び率に要する経費はおおよそ一兆円、こういう数字が出てまいります。ところが第五次の計画で見ると、一%の伸びに要する経費は八千四百億となっている。第四次で一兆円かかったものがどうして第五次で、経費や物価が上がっているのに、それよりも低い八千四百億でできるはずがないじゃないか、こう私が指摘をしたわけです。そうしたら、できると言うんだ、局長だかだれか出てきて、できると言うから、できたらよく見ているからやってごらんなさいと言ったらこういうありさまでしょう。これ一体どういうことになってるんだろう。
  125. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 第五次の五カ年計画の計画を策定する際に、建設委員会で先生から御質問がございました。そういう趣旨だったろうと思います。現在の第五次五カ年計画が全体として非常に進捗率がおくれていることは、それは事業そのものの問題でございますけれども、今先生から御指摘いただきました事業量と関係なく、単価そのものの中で、そういったところが見通しどおり今いっていないではないかという御指摘でございますけれども、いろんな諸要因が重なっていることかと思います。これらにつきましては、見通し等の問題もあったかと思いますけれども一つは、先ほど申しましたことも若干関係ございますけれども、最近都市部におきます浸水被害というのが非常に顕在化する箇所が多くなっておりまして、雨水対策の事業費について少しウエートをかけざるを得なかったということ、あるいは二番目に、管渠の投資額と処理場の投資額によって事業がなされるわけでございますけれども、前の計画の段階では処理場の投資に割とウエートを置かせていただいて、今度の計画では管渠の投資額ということを伸ばせば全体として事業費がふえるなということで進まさしていただいたわけでございますけれども、管渠そのものもなかなか投資額がふえないというような実態が二番目でございます。  それから、都市の中心部から郊外へ向かった人口流出などがございましてそういった面が出てきている。あわせまして、若干でございますけれども物価の上昇などによる実質投資減があるというようなことによって、現在先生が御指摘いただいたような状況にならざるを得なかったんではないかというふうに考えております。
  126. 小山一平

    ○小山一平君 私は、その議論のときにも指摘をしたんですが、都市部の工事のやり方にいろいろ計画と違ったことをやらなきゃならぬようなこともあったとか、いろんな要因が生じたと、こういうことを言いましたけれども、皆さん専門家でしょう。専門家がこういう事業計画を立てるときには、都市部はどういう工法でどういう工事をやっていくのか、管渠の部分は一体どの程度やっていくのか、処理場はどうやるのか、こういうものを細かく積み上げて全体の計画ができるんでしょう。専門家がやってみたが、来る年も来る年もいろんな要因ができて計画のようにいかなかったなんという、そんなずさんなことをやっていたら、民間の会社なら一年で倒産してしまいますよ。それを何かわからぬような説明、言いわけをしてごまかしている。これはよくないですよ。これは私は、初めから日本の下水道整備がおくれているから一日も早く西欧並みに達するようにしたいと、こういう強い意識があるものだから、願望的に目標ばかり高く掲げて、下の作業がそれに見合っておらないと、こういうように思えてならぬのですよ。非常に私はずさんだと思うんです。  第三次までのことはおくとして、第四次においては、今申し上げたように七兆五千億の投資で一七・二%伸ばそうと言ったのに、実質投資はかなりいったけれども、七・二%しか伸びなかった。一七・二%の目標が七・二%で終わっちゃった。今度五十五年になったら一四%伸ばそうと言っていたのが、その半分にも達しないで終わっちゃった。こんなことを繰り返しているのはおかしいじゃないですか。もう少しこういう計画というものを、私に言わせれば、正確に、まじめに積み上げて計画というものを示すべきだ。国民の大きな期待をそこへ持たせておいて、結果を見たら半分にもいかぬと、こういうことの繰り返しというのはいけません。今のあなたの説明というものでは、とてもこれは納得のできる説明じゃありませんね。これからこういう計画と実績というものの大きな差というものに対しては、一体どういうふうに考えて、これからどうやるつもりですか。
  127. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 第五次の五カ年計画を策定する際の経済計画のベースになりましたのは、御承知のように前の七カ年計画でございます。その際の事業費で位置づけられました十一兆八千億が毎年ある程度の伸びをもってずっと伸びてまいりますと、先ほど申しました五カ年計画をつくる際の、環境的なところに重点的に物を、金額を投資する、あるいは既にでき上がっているもので、もうちょっと手を加えればいくというような場所に重点的、効率的に金額を投資するということで、そういう見通しを立てていたわけでございますけれども、御承知のとおり、国費についてはその後ずっと横ばい、全体の事業費につきましては、五十六年度に一兆八千億強あったものが現在一兆四千億円台というふうに下がってきている、そういうところの中で、その辺のひずみというものを吸収し切れなかったということかと思いますけれども、具体的な事業の執行に当たりましては、そういったことができるだけ回復できるように、重点的、効率的な執行に今後とも全力を挙げて努力してまいりたいと考えております。
  128. 小山一平

    ○小山一平君 大臣、今のやりとりでもおわかりだと思いますけれども、この第一次から第五次、六十年で終われば今度は第六次に入るわけです。ところが、その五カ年計画はその都度、今私が指摘したように、財政的に予定した実質投資ができなかったために伸びなかったというならこれは了解いたしますけれども、実質的投資も行ったのに、計画で示しているような普及率というものとは半分にも満たぬというようなことの繰り返しということが今行われている、こういうことをひとつよく認識をしていただきまして、この下水道事業というのは、これは自治省にとっても極めて重要な事業でございますから、今後お考えおきを願いたいというふうに思います。  それから、今度は財政問題に若干触れたいと思いますが、下水道の建設と管理運営の財源はそれぞれ決まりがあるわけですね。下水道は、種類によって若干違いますけれども、建設費は国庫補助金、企業債、受益者負担金自治体の一般会計からの繰出金、これで建設経費は賄う、こういうことになっていますね。管理運営については使用料と繰出金、こういうことになっていて、地方の繰り出し分については地方交付税措置される、こういう仕組みですね。そこで、国、地方団体、住民の負担区分をいかにすべきかというのがいつも議論になるところです。特に財政力の弱い市町村では、この繰出金というのは耐えがたい重荷に今なってきて問題になっているわけですけれども、現在の建設省の補助金のルール、それから繰出金に対する地方交付税措置額、こういうようなものは、皆さんはおおむね妥当なものというふうにお考えになっていられますか。
  129. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 補助金につきましては建設省の方から御答弁があると思いますが、これは御案内のように、昭和四十九年度予算編成の際に相当大幅な建設費の補助率引き上げが実現いたしております。それで今日までに至っているわけでありまして、その補助率前提にして、その裏負担について地方債及び一般財源の措置を講じております。これにつきましては、これまで四回ですか、下水道財政研究委員会が持たれて、そのときどきの環境条件の変化に応じて、下水道整備のあり方、下水道財政のあり方について答申をいただき、その答申の線に沿って現在具体の財源措置を講じてきております。したがいまして、全体としては私どもは妥当な財政措置を講じていると、このように考えております。ただ、個々団体について申しますと、立地条件の差によっていろいろ問題を抱えているところもあると思います。特にこれまでの下水道の普及している地域というのは大都市を初め人口密集地域であり、下水道経営が比較的効率的になし得るような状況のところであったと思いますが、これからは地方の中小都市にだんだん下水道が普及してまいりますと、建設段階はともかく、これが運営の段階になりますと非常に問題が出てくるんではないか。これに対してどう対応するか、その実態を踏まえた検討が必要であると、そういう問題意識は持っております。
  130. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 現在の下水道に対する国庫補助制度におきましては、今石原財政局長からもお話ございましたように、四十九年度に現在の補助率引き上げられております。その前に、四十二年にもそういった段階がございました。現在の典型的な下水道でございます公共下水道の国庫補助率は管渠などについては十分の六、それから終末処理場については三分の二ということでございまして、一般的に建設省所管でいろいろ公共事業やっておりますけれども、全体として見ますと、ほぼ他の公業事業に比し得るものだというふうに考えているところでございます。
  131. 小山一平

    ○小山一平君 そういうふうに言われると聞かなくちゃならぬですが、なるほど十分の六の補助金。十分の六の補助金は建設費総額に対する十分の六じゃないでしょう。補助対象率四五%じゃありませんか。一千億かかればその四五%だから四百五十億、これに対して十分の大掛けているんだよ。堤防をつくろうが道路をつくろうが橋をかけようが、こんな補助対象率なんというものをやって、対象額は減らしておいて、そこへ十分の大掛けたから高率の補助をしておりますなんという話は、これは通用しないんですよ。地方都市だってこの補助対象率というのは七五%じゃないですか。百億かかる事業に対して十分の大掛けるんじゃなくて、七五%、七十五億円に対して十分の六を掛けて、十分の六だから高率だなどということを言っても、これは私はおかしいと思いますよ。  きょうはその議論をやらぬつもりでいたんですけれども、今、かなり高率の補助でいい線にいっているようなこと宣言うものですからこういうことを言わなければならないんです。大臣、こういうありさまです。  これはまたの機会に譲るとしまして、それでは、下水道事業に対して地方団体が繰り出している額の総体、それから地方交付税措置している額、これは決算で見ると言えば五十七年度以外はないと思いますが、五十七年度決算から見て地方の繰り出しの総額交付税措置額、幾らになっておりますか。
  132. 土田栄作

    政府委員(土田栄作君) 五十七年度の決算におきます地方団体の繰り出しの実績は七千二百七十二億円でございます。  ちょっと間に説明を入れさしていただきたいわけでございますが、これに対します地方財政計画の計上額は五千三百八十三億円でございまして、その間には千八百八十九億円の乖離がございます。この乖離は、実は下水道事業に要します経費につきましては、雨水分は全部公費で負担する、それから汚水分については使用料で回収するという建前をとっております。それで、処理原価で計算いたしますと、一立米当たり五十七年度で百十六円ほどちょうだいいたさなきゃいけないわけでございますが、それに対しまして実際の全国の平均の単価の設定は六十八円ということでございまして、処理原価の六〇%ぐらいしか全体としては取れてないということから、何といいますか、一般会計で、個人が負担するのにかわって負担している分が約二千億近くあるということでございます。  それから、今度は地方財政計画計上額は五千三百八十三億円でございまして、これに対しまして同年度交付税算入額は三千四百六十三億円でございます。この間につきましても、大体交付税の算入率は六割ぐらいになっているわけでございますけれども、差の分につきましては、委員御案内のとおり、都市計画税というのは、実はこれは交付税の単位費用のときに都市計画費で特定財源として入れておりますけれども、これの収入が全国で大体五千五百億円ほどあります。それの相当程度の部分というのは下水道事業の元利償還金の財源に使うことも可能でございますので、マクロ計算としては大体バランスがとれている。ただ、先ほど局長からお答え申し上げましたように、つくって今、供用を始めたというようなところにつきましては非常に高くつきますので、繰り出しが大変だという実態がございます。これらの問題につきましてはよく検討して対応策を今後立てていく必要があると、このように思います。
  133. 小山一平

    ○小山一平君 赤字決算をやっている団体はありますか。
  134. 土田栄作

    政府委員(土田栄作君) 公共下水道事業と、それから流域下水道事業と全部通じて申しますと、現在建設中のものを除きますと四百五十事業ございますけれども、四百五十事業のうち赤字を出しておりますのが百三事業でございまして、黒字を出しておりますのが三百四十七事業と、こういうことになっております。
  135. 小山一平

    ○小山一平君 この赤字決算をしている団体の赤字総額はどのくらいになっていますか。
  136. 土田栄作

    政府委員(土田栄作君) これは法適用企業と、それから法非適用企業と二つに分けて、要するに複式経理と単式経理に分けて申し上げなきゃいけませんが、百三事業のうち法適用企業、複式経理の分が団体数にしまして七団体赤字でございまして、赤字額は三十五億円でございます。  それから、単式経理の法非適用企業、これが赤字が九十六でございまして、その赤字額は二百八十九億円と、こういうことになっております。
  137. 小山一平

    ○小山一平君 わかりました。  先日、この委員会でも下水道の使用料についての質問がありましたけれども、もう一度お尋ねいたしますが、かなり差があることは承知していますが、一番高いところ、一番低いところ、平均、どんな数字になりますか。
  138. 土田栄作

    政府委員(土田栄作君) 最高は、これは二十立米当たりの家庭用の使用料でございますが、最高は三千二百五十円でございます。これは白樺湖の下水道組合というのが三千二百五十円でございます。  それから、最低は兵庫県の高砂市でございまして、二十立米当たり二百円ということでございます。  それから、全国平均は九百七十円ということに相なっております。
  139. 小山一平

    ○小山一平君 白樺湖なんて特定の旅館、企業のためにやるなんという、こういう特殊なものはこれは例外に考えていいと思いますけれども、地方団体が一般市民を対象にする下水道というのは、私はやっぱり一定の水準、目安というようなものがあってしかるべきだと思うんです。今まで大都市などで既に早くから整備ができてストックがあるところはこれはいいと思うんだけれども、何しろようやく三五%程度に達したのを西欧並みといえば八〇にも九〇にも引き上げなくちゃならないというんで、これからいよいよ地方へ事業が普及していく段階ですから、こういう使用料などというのも、すでに整備が進んでいるところと同じような水準でできるわけがない。そうかといって、今お話しのようにこんなに大きな差があるのは適当でない。ある幅を持たせた範囲に入るぐらいにできるような財政の仕組みというものをつくる必要があるのではないかと私は思うんですよ。どうですか。
  140. 土田栄作

    政府委員(土田栄作君) 白樺湖は特別の例でございますが、そのほかに栃木県の栗山村とか滋賀県の近江八幡市というのは三千二百円ということで、こういうふうに非常に高いところにつきましては将来、高料金対策としての何らかの財政措置というものを考えてまいる必要があろうかと思いますけれども、実は今のところ、現在平均いたしまして水道料金の大体下水道料金は六割弱という見当になっておりますので、水道料金の立米当たりと比べてどうかということが将来の検討課題になろうかと思います。  それからもう一つ、先ほど申し上げましたように、下水道の事業をやっておりますのが現在四百ちょっとでございますけれども、これが千とか、上水道みたいに二千何百という数字になってまいりますれば、そこに非常なでこぼこが出てまいる。でこぼこが出てまいりますときは、高料金対策としての一般会計での対応というものも当然考えなきゃいかぬというふうに思っております。  現在のところは、起債におきましてその資本費平準化債というのを設けまして、これは地方公営企業法の適用のあります企業と、それから将来地方公営企業法を適用するということが確実に認められる事業だけでございますが、これは資本費平準化債というのを借りまして、元利償還金が非常にかさみますけれども、それを一応借りかえて資本費を安くするということで、余り人が使わないときに料金の軽減を図っておりますけれども、将来的には下水道財政研究委員会でいろいろ御検討いただきまして、一般会計との対応関係というものを考えてまいる必要がある、そのように思っております。
  141. 小山一平

    ○小山一平君 下水道財政研究委員会というのがありますね。この第三次の提言ではこうなっていたんですが、「使用料によってまかなうべき経費の範囲は、一般排水については、当該汚水に係る維持管理費とすることが適当である。」、これは、建設費分は使用料に入れるべきではない、こういう提言があったわけです。ところが、六年たった第四次計画に当たってこの研究委員会が、今度は、一般排水についても汚水に係る維持管理費のほか「資本費についてもその対象とすることが妥当である」と、全然百八十度の方向転換をしたわけです。 〔委員長退席、理事真鍋賢二君着席〕これは思うに、資本費を使用料に加算していかないと地方団体の繰り出しが多くなり過ぎて、地方財政が大変問題になるということに対処するために住民にそのツケを回した、こういうことだと思いますね。この提言に基づいて自治省もその方向で指導をされたわけです。  そこで、私が心配をいたしますのは、これからこういう人口の密集している大都市、主要都市から地方の小都市、場合によれば町——村まではなかなかいかぬでしょうけれども、下水道ということはもう避けて通れない、こうなってくると資本費が極めて効率的でなくなる。当然のことですね、人口が密集していないんですから。そしてまた集落が点在をしているというようなことになれば殊さらでございますが、そうなってくる場合に巨額な資本費まで使用料に加算をするということであれば、今度は住民の方でその使用料の高さに耐えかねる。それじゃ一定の水準でとめておいてその分は繰出金で賄おうと自治体が対処をいたしますと、今度は地方団体財政負担で大変なことになるという、こういう関係になっているわけです。  私は、さっき言ったように、既存のストックのある大都市などは別として、これからやるであろう地方都市などの場合には資本費の部分まで使用料の中へ含めるという使用料の徴収の仕方というのは無理があるのではないかというふうに思うんです。    〔理事真鍋賢二君退席、委員長着席〕  そもそもこの研究委員会は、あるべき姿というものを、きっと財政なんということを考えないときには冷静な頭で正当な判断を下して、それを使用料に転嫁してはならないとやったんだと思いますよ。だから、やっぱり私はその原点に立ち戻る時期ではないかというふうな気がするんですが、いかがでしょうか。
  142. 土田栄作

    政府委員(土田栄作君) 古いことは委員の方が御存じであると思いますけれども、私ども承知いたしておりますのは、実は、下水道事業につきましては先にいろいろな施設をつくったところは非常に資本費が安いということでございまして、これは資本費を入れましても十分採算性のある下水道事業ができるということでございます。  で、大阪について申しますと、資本費を込みにいたしまして立米六十六円で、五十七年度決算で賄えるということですから、これは資本費を込みにしてやれる。それから横浜は二百十二円でございまして大阪の大体三倍かかっております。これは資本費がこの中に百五十七円入っております。で、普及率で言いますと、大阪はもう九八%、それから横浜は五〇%ということでございますが、横浜はこれから普及率を上げていくために、またさらにかなりの多額の投資をしなければいけない、どんどん資本費が上がっていくということになろうと思いますので、やはり大都市の中でもかなり差があるわけでございます。  それから、これから新しくつくります町村の部分につきましては、現在普及率が大体二%ぐらいであると言われておりますから、残り九八%やらなきゃいかぬということになりますが、これはその人口の密集のぐあいとか地形とか、そういうことによりましてその工事費はものすごく差が出てまいるだろうと思います。それをどういうふうに財源的に調整するかというのは非常に難しい問題でございますけれども、私どもといたしましては、一つは大都市地域以外の町村地域でつくりますときには、やはりその地域に見合ったような効率的で経済的な小規模下水道的なシステムというものを入れて工費を安くするということが肝要でございますけれども、それとあわせまして、今委員御指摘のような資本費が著しく高くなる下水道事業というものにつきましては、その資本費に対する財政対策というものを今後真剣に検討してまいる必要がある、そのように思っております。
  143. 小山一平

    ○小山一平君 いずれにしても、これからどんどん普及されていく段階ですから、こういう財政問題というものを固定したもので対応できるはずがない、変化に応じて対処をする、こういうことが必要だと思うんですが、建設省にしても自治省にしても、下水道財政というものについていろいろ改善策なんかについて検討されていると聞いているけれども、やっていらっしゃるんですか。
  144. 黒川弘

    説明員(黒川弘君) 現在、下水道の使用料につきましては、下水道法二十条によりまして条例の規定で取っているわけでございますけれども、先ほどの第四次の下水道財政研究委員会の提言において、資本費も取るべきだという指摘が本文としてございますけれども、実際上、ただし書き的に言いますと、国庫補助金あるいは受益者負担金に係るものは除くというのが一つ、それから使用料が著しく高額となるときは公共的な役割を勘案して資本費の範囲を限定する、そういう条件つきで先ほどのような指摘が第四次の財政研究委員会でなされたわけでございます。  現在の第五次の下水道財政研究委員会でいろいろ検討していただいておりますけれども、私たちの基本的な建設費についての考え方は、やはり現在三二%という非常に低い普及率をどうしても行政の責任で、ある程度のシビルミニマムが普及できるようなところまではぜひ推進したいということで、具体的には、やはり原則的には地方公共団体がつくられるわけでございますけれども、国、地方公共団体、それから具体的にそれを使われます使用者の三者の間でどのような適切な負担の区分というものを設定するか、従来の経緯も踏まえながら、今後も見通しながら、自治省の方ともいろいろ相談しながら今後検討を進めていきたいという段階でございます。
  145. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 下水道財政の今後のあり方につきましては、現在第五次の研究委員会においていろいろ御検討いただいております。ことしの秋ごろまでにはレポートをいただけるようでありますから、これを踏まえて具体の措置を考えていきたいと思っております。  ただ、先生も御指摘のように、下水道財政に対する考え方というのは、第一次から第四次までずっと追ってみますというと少しずつ変わってきております。早い段階では、とにかく下水道の普及を急ぐ必要があるということ、それから下水道整備というのは、これはナショナルミニマムとしていわば国の責任でこれを行う必要があるんだという意識が非常に強かったように思います。したがって、財政負担の面でも本人負担よりも公的負担というものを非常に重視する考え方が強かったわけでありますが、次第に普及が高まってまいりますと維持管理の問題意識が強くなってまいりまして、理想論ばかり言っていても現実には市町村は困ってしまう。そこで、やはり市町村財政の置かれている客観条件というものを踏まえながら現実的な下水道財政のあり方を検討する必要があるというようなことで、先ほど例示がありましたように、汚水については資本費も含めて使用料の原価にカウントするべきだと、こういうことが表現されてきたように思います。  第五次におきまして、恐らく財政の置かれている環境は一段と厳しさを増しております。増税をしないで財政を建て直す、こういう環境のもとでなるべく受益に見合った負担適正化していくべきだというのが地方財政全体を貫く要請になっておりますから、下水道財政についても、この研究会のレポートは、従来に比較してやはり住民にとっては厳しいものになるのではないかという感じがいたしますが、いずれにいたしましても私どもは、第一線の市町村が下水道財政の運営上困らないような手だてを考えていかなきゃいかぬ。その場合に、何といいましても使用料負担が一番ポイントでありますが、使用料につきましては原価に対する適正な負担はしていただく。率直に申しまして、現在の使用料負担水準はこれまでの研究委員会の提言から見てもまだ低い水準にありますから、これをさらに適正化していただかなければならない。しかしながら、それと同時に、先ほど来御指摘のように、団体によっては資本費が非常に高くなってしまう団体がある、そういった点についての検討がまだ今まで十分なされていなかったことも事実でございます。そこで、これらにつきましては、先ほど審議官からも御答弁申し上げましたように、具体的な対応措置というものを研究していきたい、このように考えております。
  146. 小山一平

    ○小山一平君 大臣、今のお答えのように、これからいろいろ改革について検討されていく段階のようですが、五十四年八月に都市計画審議会から「今後の下水道整備のあり方について」という答申があったわけです。これを書き抜いてきたんですが、これによると「昭和七十五年頃までに、大都市、地方都市のへだてなく市街地については下水道を完全に整備するとともに、農山漁村の中心集落、自然環境を保全すべき湖沼等についても下水道整備を進め、下水処理人口の対総人口普及率をおおむね九〇%まで引き上げる。」、こういう大変壮大な構想が出ているわけです。ところが、現実の状況は今お聞きのようなことで、遅々として進まないお寒い状況にある。こういうわけでございますから、大都市や主要都市は何とか対応できるとしても、財政力の弱い市町村では、この事業というものはよほどの制度改革、思い切った財政投資がなされないとこの事業の進捗というのは非常に難しい、こういうふうに思います。  何しろ西欧諸国に比べて今まで、社会資本、特に下水道事業などに対する投資が非常に少なかったわけですから、それをこういうぐあいに、できるだけ短い期間にレベルアップをして先進国の水準に追いつきたい、こういうわけですから、思い切った対応というものがどうしても必要だし、今のやりとりでおわかりのように、大変きちっとしておらない部分もたくさんある、こういう中でございますから、大臣には、ひとつこの事業に対してこれから積極的な改善、対応、こういうことに取り組んでもらいたい、こう思うんですが、大臣の御見解を聞いておきます。
  147. 田川誠一

    ○国務大臣(田川誠一君) 小山さんの非常にわかりやすい御質疑で、下水道の事業の置かれている立場というのは私はよくわかりまして、非常に感銘を受けました。しかし、内容は大変厳しい状態で、御指摘のような状態でございます。下水道の問題は、我々の生活環境をよくする意味で非常に重要な事業でございますので、非常に厚い壁に取り組んでいかなければなりません。でありますから、私どももひとつ、お言葉のように、今後の下水道の普及率を少しでも高めていくために努力をしてまいる所存でございます。
  148. 小山一平

    ○小山一平君 建設省は大変御苦労さまでした。もう結構です。  次に、時間がわずかになりましたけれども、公営ギャンブルのことについて少しお尋ねしたいと思います。  この問題はここで再三やりまして、松浦先生がそっちの方に座って御答弁されたとき、ここでやりとりしたことと今になっても余り中身に変化がないような状況だというふうに私は思いますけれども、若干お尋ねをしていきたいと思います。  この公営競技の収益金の均てん化というのは、これはいつでも議論になってなかなか進まないと、こういう難しい問題でございますが、最近この公営ギャンブルが大分景気がよくない、こういう傾向にあるようですけれども、各競技の売上高の推移といったのはどんな状況になっていますか。
  149. 津田正

    政府委員津田正君) 公営競技の売上金あるいは収益金を傾向的にまず申し上げますと、昭和四十年代につきましては、毎年度、対前年二けたの伸び率を示しておったわけでございますが、第一次石油ショックが起きて以来、昭和五十年代前半におきましてはそれが一けたの伸びになり、さらに五十五年をピークにいたしまして、それ以降は、現在の決算わかっておりますのは五十七年度でございますが、売上額、収益金ともに、連続、前年度に比べて減少しておるわけでございます。五十七年度で申し上げますと、合計で売上額が三兆六千九百五十一億円でございまして、収益金額が二千五百二十億円、こういうような状況になっております。種類ごとに申しますと、特に地方競馬が最近経営が苦しい状況でございます。
  150. 小山一平

    ○小山一平君 そういたしますと、売り上げが少なくなるから収益も少額になるのは違いありませんが、二千五百二十億円こういうことのようであります。  そこで、当然のことですが、各公営競技というのは、監督官庁といいますか、それぞれ競輪は競輪、競馬は競馬といったようにみんな違うわけですけれども、この運営などについては、自治省というものはどんなような関与をしているわけでしょうか。
  151. 津田正

    政府委員津田正君) 競技の運営につきましては、先生指摘のとおり、競馬でございますと農林省、競輪でございますと通産省、競艇でございますと運輸省と、こういうふうに分かれてございますが、いずれにしましても地方団体が経営する事業でございますので、その経営関係につきまして私どもとしては指導しておるような次第でございます。
  152. 小山一平

    ○小山一平君 今お聞きしたように、近年大分不振傾向にあるわけですけれども、それでも二千五百二十億と、こういう巨額な収益金を上げているわけで、いろいろ団体もたくさんあるからさまざまだと思いますけれども、その地方団体の歳入の総額に比較してこの収益金が非常に多いというのは、一体数字で言うとどんな姿になっているんですか。
  153. 津田正

    政府委員津田正君) 団体財政状況に対する大きさというといろんな尺度があるかと思いますが、まず端的に絶対額で申し上げますと、収益金としまして五十七年度におきまして尼崎市が百九億円、次に府中市が九十五億円、こういうような状況になっております。ただ、財政への影響という点から申しますと、私ども普通いわゆる客観的な基準になります基準財政需要額というもので比較しておるわけでございますが、それら基準財政需要額に対する収益金の大きさという点から申しますと、広島県の宮島町が基準財政需要額の三・九二倍、福岡県の芦屋町が丁六四倍、こういうようなかなり収益規模が大きい団体がございます。
  154. 小山一平

    ○小山一平君 そういうことですから均てん化という議論が出てくるわけです。  そこで、こういう基準財政需要額を上回るような別枠の歳入がある。これがその事業を始めたときから今日まで累計すると巨額になって、そういうもののない団体に比べると、今まで大変うらやましがられるような財政投資が行われてきたはずですね。だから、行ってみなくちゃわからぬけれども、町がどんな姿になっているのか、かなり恵まれた環境づくりもできていると思うんですけれども、大体こういう団体の今まで上げてきた収益金の累計額なんというのは、多いところはどれくらいになっているんですか。
  155. 津田正

    政府委員津田正君) 個々団体におきます累積収益額というのはちょっと私ども把握しておらないわけでございますが、全体的に申しますと、四十八年度から五十七年度までの十年間で、累積しまして約三兆円でございます。
  156. 小山一平

    ○小山一平君 とにかく四百幾つかの団体が三兆円、その他の団体よりも余計にお金が入って余計な投資ができたということになるんですけれども、これは皆さんから見て、こういう都市はこういう金をどんなふうに使われて、どんなふうな成果を上げているというふうに見ておられますか。
  157. 津田正

    政府委員津田正君) 具体的な資料ちょっと手元にございませんが、先ほど来から問題になっておりまして、非常に地方財政にとって重荷となっておる下水道整備などは、これらの団体は非常に進んでおる、このように理解しております。
  158. 小山一平

    ○小山一平君 地方財政が全般的に大変困難な状況にある時期でございますから、これらの団体も、均てん化だなんといってむしり取られるということになると、なかなか抵抗が強いというふうに思うんですけれども、しかし大変これは不公正の典型みたいなものですから、一層均てん化という意見が強まってくると思うんです。今まで、こういう不公正に対する抜本的な改革は大変困難だ。大体、これを基準財政収入額にある部分を算入するというような意見もあったけれども、それは余り適当でないというふうに自治省は考えてきたと私は思うんですけれども、できなかったというよりも適当でないという考えがあったんじゃないかと思うんですが、どうなんですか。
  159. 津田正

    政府委員津田正君) この収益事業収入を交付税の仕組みの中に入れまして、例えば基準財政収入額に算入する、こういう問題でございますが、やはり地方交付税制度というのは地方税の身がわり財源、こういうような性格を持っておるんだと思います。そういう意味におきまして、基準財政収入額に算入すべきものは地方団体に普遍的にある財源を中心とすべきである、こういうことが言えると思います。また、反面からいえば、たまたまその収益が減ったときに交付税で補てんするというようなことも、これもやはり交付税制度の趣旨にはなじまないのではないか、かように考えておる次第でございます。
  160. 小山一平

    ○小山一平君 それにしても、基準財政需要額の三倍も別枠の収入があって、それは普遍的なものでないから大いに使いなさいというのも無責任のような気がするんですが、それはさておいて、今日まで公営企業金融公庫への納付金だとか、特別交付税あるいは地方債なんかで調整をするとか、あるいはその地域レベルで若干の均てん化の方策をやるとか、こういうふうなことを言われてきましたけれども、今申し上げた幾つかの項目などで実施されている実態というものはどういうことですか。
  161. 津田正

    政府委員津田正君) 先生指摘の均てん化の方策でございますが、特別交付税につきましては、いわゆる減額項目ということを立てておりまして、収益金の一定部分を特交の額から差っ引いておるわけでございます。それから地方債につきましても、通常、充当率を引き下げでこのような団体には配っておるという状況でございます。  それから、考え方としまして、いわゆる金で均てんするという方法と施行権自体を均てんする、こういう二つの流れがございまして、施行権で均てんするという意味におきましては、特定の団体だけで事業をやるのではなくて、一部事務組合、なるべく広範囲の団体が施行権を持つというようなこともしておるわけでございます。  それから、当該県あるいは当該競技場近辺の局部的な交通対策という問題も含めて、周辺市町村に対する均てん化ということもかなりの県で行われておるわけでございます。  それから、全国的な意味で結局、今申しましたようなローカルな均てん化というのは競技の性格上、全国でも現在百十一場程度でございますが、これは全国的にどこの地域でもその競技場が成り立つというものでもない、そういう意味ではローカルな均てん化ということも限界があるわけでございますので、公営企業金融公庫に納付していただきまして、上水道であるとか下水道であるとか、そういうような国民生活基盤の整備の推進に役立てるため金利の引き下げを図って、それらの事業におきます公庫資金は大体政府資金よりも〇・一%程度高い、高いと申しますか、その程度の低い資金をこのような公共施設整備をする団体に均てん化しておる、こういうような状況でございます。
  162. 小山一平

    ○小山一平君 公庫に納付してその金で公庫の貸出金の金利を下げる、こういうことをやってきておる、私もよく承知していますが、今までに公庫へ納入された金額の総計はどのくらいになっていますか。
  163. 土田栄作

    政府委員(土田栄作君) 昭和五十八年度までの公営競技納付金の累計額は三千九十七億円でございまして、五十九年度は三百八億円を予定いたしております。
  164. 小山一平

    ○小山一平君 この納付金制度が一応来年、昭和六十年で期限が切れるわけですね。したがって、次の通常国会にはこの期限延長法案を出さなきゃならぬ。中身はどういうふうにしていくのかという検討も必要だというふうに思うんですが、地方団体、特に財政力の弱いところでは企業債の借入額というのはふえることがあっても減る気遣いはない、こういうことですから、この納付金の制度というものはかなり重要な役割を果たしてきたし、これからも果たしていかなきゃならぬと、こういうふうに思うんですけれども、聞くところによると、不景気でどうも収益金も減る傾向にあるから、納付金なんてものを出さないで済ませるようにしたいなどという反対意見もかなりあるというふうに聞いていますが、この期限切れに対応する自治省の準備、あるいは内容というものはどうなっていますか。
  165. 津田正

    政府委員津田正君) この公営競技の収益金は、その性格上、いずれにしましても特定の団体に限られるわけでございまして、やはり均てん化、特に先ほど申しました国民の生活基盤の上水道、下水道等の整備を進めていく際に公庫への納付金による均てん化ということが必要と考えております。そして、この点は、五十四年に出されましたいわゆる吉国意見書というようなものにおきましても「さらに進めるよう検討すること」というような御意見をいただいておるわけでございまして、期限切れ後におきましてもさらにこれを延長充実してまいりたいと、かように考えております。この具体的な内容につきましては現在検討中でございます。
  166. 小山一平

    ○小山一平君 関係団体の反対などはあっても、ぜひともこれを継続して内容を充実したものにしていきたいと、こういうことで今準備をされていると、こういうふうに了解していいわけですね。
  167. 津田正

    政府委員津田正君) これから関係省庁あるいは関係団体とも十分協議しながら、先ほど申しましたように、延長充実してまいりたいと、かように考えております。
  168. 小山一平

    ○小山一平君 わかりました。  どうもこの問題ではここで何度やりましたか、二度か三度ぐらい議論をしているんですが、松浦先生石原さんのところに座っていたときとさっぱり議論が進展しないわけですね。しかし、ちょうどこの納付金制度の切りかえのチャンスですから、この機会に、難しいごとはわかっていますけれども、改善できるようにお願いしたいと思うんです。今、関係団体との間で何か話し合いなどはされているんですか。
  169. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 審議官からも御答弁申し上げましたように、私どもは、基本的にはこの納付金制度は六十一年度以降も継続すべきものと、そういう前提で継続するとした場合にその内容をどういう形で継続していくのか、その辺のことを種々論議をしておる、内部でも検討し、論議もしているところでございます。そして、また延長ということになれば、当然、関係団体からすれば、引き続き負担させられるというわけでありますから、最近の公営競技の経営実態からいたしましても、先生が心配されるような動きがないわけではございません。しかし私どもは、公営競技に対する世間一般の支持、公営競技を持たない地方公共団体の支持は、こういったものはやはり相当程度これまで均てん化措置をしてきたという事実の上に立って支持がなされていると、このように思います。そういった点も申し上げながら、関係団体との間では、基本的にとにかくこれを延長するという前提に立って論議を行っております。  まだ詰めた話まで至っておりませんけれども、ともかく経営環境非常に厳しくはなっておりますけれども、これは基本的に存続していくんだと、そしてでき得べくんば少しでも内容を改善していくんだと、こういう前提で議論もしておりますし、これからもさらに、余りぎりぎりの段階までいかないように、早い段階で延長前提とした御理解が得られるように努力をしてまいりたいと、このように考えております。
  170. 小山一平

    ○小山一平君 大臣、今お聞きのように、全国で市町村が三千三百、そしてこの事業を、公営ギャンブルをやっている団体が四百四十ほどでしたかね。そして、この一割何がしかの団体が今までに三兆円も別枠の収入で恩恵を受けて、今の説明の中にあったように、下水道事業なんていうのは普通の団体であれば大変困難な大事業なのに、こういう制度があるところは容易にできて住民サービスをすることができる。この不公正な姿というものを是正をしていこう、均てん化していこうと、これは長い長い議論が積み重ねられてきているんです。何しろ基準財政需要額の三倍もの収入があって、そして地方交付税はもらっているなんていう——もらっているんですよ、こういう団体も地方交付税。ほかの税金があるというなら不交付団体になりますけれども、このギャンブル収益が幾らあったからといって、ほかの収入、地方税が少なければ地方交付税ももらうわけですから、均てん化、改革というのが議論になるのは当たり前ですけれども、しかし、これはなかなか既得権利みたいになってますからそう一朝にできませんけれども、今も申し上げたように、納付金制度の期限延長をする、こういうチャンスも今到来してきておりますから、この問題に大臣も積極的に取り組んでもらいたい、こういうふうに思います。ちょっとお考えをお聞きします。
  171. 田川誠一

    ○国務大臣(田川誠一君) 小山さんの御意見を踏まえて、この公営競技の均てん化、納付金制度の継続を含めて、延長を含めて、ひとつ均てん化の実現に向かってまいります。     —————————————
  172. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 次に、昭和四十二年度以後における地方公務員等共済組合法年金の額の改定等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。田川自治大臣
  173. 田川誠一

    ○国務大臣(田川誠一君) ただいま議題となりました昭和四十二年度以後における地方公務員等共済組合法年金の額の改定等に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  この法律案は、地方公務員の退職年金等について、別途本国会において御審議をいただいております恩給法等の一部を改正する法律案による改正内容等を参酌し、その額の引き上げ等を行うとともに、掛金及び給付額の算定の基礎となる給料の最高限度額の引き上げ等を行うほか、地方団体関係団体の職員の年金制度についてのこれらに準ずる所要措置及び地方議会議員の退職年金等についての増額改定措置を講じようとするものであります。  次に、この法律案の概要について御説明申し上げます。  第一に、地方公務員共済組合制度改正に関する事項についてであります。  まず、その一は、恩給等における措置を参酌し、地方公務員等共済組合法に基づく退職年金等について、その年金の額の算定の基礎となった給料を昭和五十八年度の公務員給与の改善内容に準じて増額することにより、同法の施行日前の期間に係る年金額については昭和五十九年三月分以後、同法の施行日以後の期間に係る年金額については同年四月分以後、それぞれ平均約二%増額する措置を講ずることとしております。  その二は、恩給における最低保障額等の改善に伴い、長期在職者に係る退職年金等並びに公務による障害年金及び遺族年金の最低保障額を引き上げることとしております。  その三は、昭和五十九年四月分以後の掛金及び給付額の算定の基礎となる給料の最高限度額を公務員給与の改善内容を考慮し、四十五万円に引き上げることとしております。  以上のほか、全国市町村職員共済組合連合会が行う短期給付に係る財政調整事業の対象に、都市職員共済組合の短期給付に係る事業を加えることとする等の所要措置を講ずることとしております。  第二は、その他の年金制度改正に関する事項であります。  すなわち、地方団体関係団体の職員の年金制度について、地方公務員共済組合制度改正措置に準じて所要措置を講ずるとともに、地方議会議員共済会が支給する退職年金等について、その額の増額改定を行うこととしております。  以上が昭和四十二年度以後における地方公務員等共済組合法年金の額の改定等に関する法律等の一部を改正する法律案の提案理由及び内容であります。  なお、本法律案については、衆議院において、施行期日について「昭和五十九年四月一日」を「公布の日」に改め、これに伴う所要規定の整備を図る内容で修正可決されております。  何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  174. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 本案に対する質疑は後日に譲りたいと存じます。  暫時休憩いたします。    午後四時一分休憩      —————・—————    午後五時二分開会
  175. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  地方交付税法等の一部を改正する法律案及び地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  176. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵大臣、わざわざおいでいただきまして、たまには人の委員会もいいでしょう。  まず地方財政についての大臣の認識といいますか、所見を一、二お伺いしたいと思うんですが、国も地方財政もともに巨額の赤字を抱えておりますことから、地方財政対策に当たっては、国も苦しいんだから地方も我慢しろよという論理が使われるんですが、一見もっともなようですけれども、しかしよく考えてみると、これは国と自治体との性格あるいは制度、機能などの違いを故意に見落としているのではないかと、こういう感じがいたします。早い話が、国の財政という場合には現実の予算のことですけれども、地財計画の場合には、何せ三千三百に及ぶ大小の自治体あるいは財政力強弱の自治体、さまざまの団体の標準的な集合でしかないわけでして、実はそれが実体ではないわけです。  したがって、共通の物差しを当ててみたり、あるいはまた平均的に論議をしてみても、個々の姿を言いあらわしていることにはならないという状況にあるわけです。あるいはまた、国は特に財政制度を自分で企画をして立案をして実行することができますが、あるいはまた通貨、金融調整などでも広範な機能を持つわけですが、自治体にはそれがございません。税制でも、国、地方を通ずる枠組みはもう国が決めてしまうわけでありまして、しかも税源配分は、ことしの例でも見ますように圧倒的に国が大きいわけであります。担税力もしたがって違ってくるでしょう。要は財政の底力がまるっきり違うわけでありまして、単純に言って、公債負担率はまだ地方の方が低いじゃないかというようなことを言ってみても、それは無知に近いのであって、現に依存度が一五%も超えるような市町村が半数に近いということは、自治体にとってはそれは破産を意味するわけでありまして、しかもそれは多分に国の景気政策のツケを背負ったものでもありまして、こういう事実をよく見ないで、目を覆って共通の物差しを地方公共団体に求めることはやっぱり無理だ。地方分権の潮流にさお差すことになるし、自治の基盤を圧殺しかねない、こういうことをひしひしと感ずるわけでありますが、まずこの点について、ひとつ大臣の所見を伺っておきたいわけであります。
  177. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 国も赤字で困っておるから地方も我慢してくれと、よく単純な論理としてそういう言葉は、私どもも慎んでいないと使いがちな言葉であります。なるほど今御指摘なさいましたとおり、公債依存度等から言えば確かにそういう論理の展開が必ずしもできないわけではないかもしれませんが、自治体というのは三千三百二でございます。御指摘のとおりでございますので、その中で、例えば私の出身地は国税還付倍率が恐らく四四〇あるいは四一一〇ぐらいございましょう。東京都は九%ぐらいでございますか、そうした都道府県間のそういう担税力の格差というものももとよりございますし、それぞれにいわばよってもって立つ特殊性がございますので、一概に平均値とかあるいはトータルベースだけで比較するのは、私も安易にそのベースだけで議論するのは為政者の一人として慎まなければならないことではないかという基本的理解は持っておるつもりでございます。  今御指摘なさいましたとおり、地方分権の潮流に逆らってはなりませんし、地方自治の本旨にもとってはならぬという基本認識は私もおよそひとしくいたしておるつもりでございます。
  178. 志苫裕

    志苫裕君 もう一つ、俗に言う地方財政余裕論というんですか、地方財政裕福論というものもよく聞くわけでありますが、何をもってそれを言っておるのかちょっとわからぬところもありますが、国の一般会計予算と地財計画の規模を比べてみますと、特に五十五年以降、いずれも地方財政の前年伸び率の方が下回ってきておりますし、あるいはまた規模も小さくなってきております。給与その他の財政運営がしばしば指摘されるのでありますが、しかしこれも給与費の総額が占める比率などは年々低下をする。その意味では健全化の姿になるんでしょうが、これにかわって公債費がどんどんと高まってきて硬直化要因にのし上がっておる。こういう事実を見ますと、この裕福論というのも、これは随分と見当違いだという感じがいたします。また、交付税総額はことしで前年に比べて三・九%ぐらい減ってはおるんですが、一方で国の一般会計からの繰入額、入り口で見ますと二一・五%も大きくなっている。そんなことから、随分これは大きいなという大きさが目立つのですが、しかしこれも一々言えば理由のあることなんですが、仰せこの種の問題は専門的過ぎましてわかりにくい。それをいいことにして余裕論の口実にされがちだと、そういう節もないわけではない。  したがいまして、いわゆる余裕論、裕福論というものに対する大臣の所見も伺いたいし、同時にこの際、前々から出ていることですが、本来は地方財源たる交付税の直入方式とでも言いますか、というふうなものをすればその辺の誤解も避けられるという感じもするんですが、しばしば言いながらこれはなかなか実現をしていないんですが、どんなところに障害があるのか、あわせて所見を伺っておきたいと思います、
  179. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 基本認識といたしまして、地方の方が裕福だとかいうような議論が行われますのは、間々、ラスパイレス指数でございますとか、そういうものを承るときにそのような議論が展開されてきておるではないか。ただ、個々によって、自治体でございますから、すべて差異なり相違なりがあることは事実でございます。ただ、一つの基本認識として考えなきゃならぬのは、私はまさに公経済の車の両輪というものが国の財政であり地方の財政であるということを考えますときに、方向として、いわば国民負担を可能な限り上げない努力を図っていくためには、やはり歳出抑制等、基本的には相互が同一歩調でもって臨まなければならない課題ではなかろうかという基本的な理解をいたしております。  それから、交付税制度等、沿革的にいわゆる平衡交付金の時代からいろいろ議論を積み重ねられて、いわば定着をして今日に至っておるという考え方の中で、相互が理解と協力をすることによって同じ財政改革の基調のもとに進むならば、公の経済の車の両輪としての機能は果たし得るではなかろうかという基本認識を持っておるものであります。
  180. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと直入方式のことについて。
  181. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 地方交付税につきまして、現在一般会計から交付税特会へ繰り入れてさらに地方へというふうになっておりますけれども、この制度は、もう委員も御存じのように、昭和十五年に創設されました配付税制度のもとにおいても同様でございますし、それから今大臣からもお話がございましたように、二十九年度の地方交付税制度創設以来、これはとられている制度でございます。言うならば、非常に制度として沿革もあり既に定着してきている方式であるわけでございます。したがいまして、これを改めて、直入方式にするという問題は、予算制度あるいは会計制度の上でいろいろ大きな影響を及ぼす問題でもございますので、慎重に考えていくお話ではないかと思っております。
  182. 志苫裕

    志苫裕君 それは影響がないとは言わないですよ。早い話が、自治体の側だって、直入方式をとれば入ってくるまでは交付税おろせないんですから、時期がおくれるとかいろんな問題がありますけれども、もともと国に御苦労願って地方のお金を徴収してもらっている、国のお金を地方が徴収していることだってあるわけですから、これはお互いさまでしてね。それが直接交付税会計に入ったからといって余り支障はないがなと、かえって一般歳出に占める交付税の額が大きいとかいってやり玉に上げられる分がないだけすっきりしていいんじゃないかという気がするんで、特に障害になることがあったら言ってみてください。
  183. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) この仕組みは、いろいろ今申し上げましたように沿革もあるわけでございますけれども、この仕組みによりまして、歳入面から見ますと、所得税、法人税等の税負担状況、これがどういう状況になっているかということが一覧してわかるわけでございます。直入いたしますとその部分だけが、国民の皆さん方からごらんになられても一体税負担がどうなっているのかということがはっきりしないという問題もございます。それから、歳出面の方、これは国の一般会計の歳出面の方でございますけれども、中央、地方相互間の財源配分状況をやはりそれによりまして一覧性のある姿で示すことができるわけでございます。一般会計の上で地方交付税の繰り入れというのが当然出てまいりますので、どの程度地方とのつながりがあるかということもはっきりいたすわけでございます。したがいまして、この歳入歳出両面にわたって国及び地方を通ずる財源運営の総合的調整を行うための有効なメルクマール、資料がこれで提供できるという問題もあるわけでございまして、この点はやはり非常に重要なポイントではないかと思うわけでございます。  それから、今委員もおっしゃっておられましたように、この交付税特会へ直入いたしますと、交付時期についても実際に収納されたものしか支払えないというような問題等々もいろいろ出てまいりまして、地方財政に与える影響もやはり大きいのではないかというふうに考えられるわけでございます。そういうようなことから、先ほど申し上げたように、直入方式につきましてはやはり慎重に検討する必要があるというふうに思っております。
  184. 志苫裕

    志苫裕君 慎重に検討して何十年も来ているわけだけれども財政の全体の姿がわからなくなっちゃうとか、あるいは財源配分がぱっと見てわかりにくくなるとか、そんなのは幾らでもあらわす方法はあるわけでして、どうも余りそう理屈にかなっていない。これは長いいきさつを伴うものですから、きょうここでイエスかノーかというのを求める気もありませんが、いつまでも慎重に検討してないで、やっぱりこれは決まりをつける方が望ましいと要望をいたしておきます。  時間も余りありません。次に参りますが、五十九年度のこの地方財政対策、これをだれが言っているんだか新しいルールだと、こう言うんですが、実は五十年度以降、地方財政対策は毎年のように自治省大蔵省、自治大臣大蔵大臣の激しい折衝の対象になってきまして、いわゆる五十二年ルールというようなものもあるんですが、総じて言えば、地方財源の不足額は建設地方債、財対債の増発で賄って、残りのものは国と地方が半々だと、折半方式とでも言いますか、という処理をしたと言うこともできるんですが、しかもこのルールは両大臣の覚書によりまして、あるものは法定されたし、あるものは申し合わせのレベルで予算措置もとられたというようなものもありますが、一面ではしばしば約束がほごにされたり、あるいはほごにされないまでも地方財政の脅迫材料になったりしないわけでもなかったわけで、社会党としては、我々はもともと交付税の本則による財源対策というふうなものを主張をしておりましたから、折半主義も不当だという立場をとってきたんですが、とにかく今日まで五三ルールでやってきましたが、ことしになりましてがらりと変わったわけです。  大蔵大臣はどこかで、制度改革といいますか、制度合理化ができたことはいいことだというふうなことを言って手放しで喜んだことのようでありますが、一口で言えば、過去の累積分は折半にして会計上の処理をしよう、今後の財源対策は特例措置を講ずるということを法定しようと、こういうんですが、しかしその特例措置を講じようというその中身はわからないわけでありまして、年々の折衝で行われる。実は年がら年じゅう大蔵自治がやり合ってその年の財政がどうなるかわからないという不安にさらされるので、ルール化とか制度化というふうなものを自治体側からすると希望するわけですが、新しい制度になったといっても毎年のことはそのときにならないとわからないよと、こういう点ではちょっと実体がないかなという感じも私はいたします。しかも、財源不足額を賄う地方債と交付税特例措置とのバランス、配分割合というようなものにも定めがないわけでありますから、可能性の問題として言えば、特例措置の額というのは不足財源の一〇〇%からゼロまである。こういう幅の広いものであって、下手するというと限りなくゼロに近い、こういうことになっていくわけです。したがって、財政需要の算定とも絡みますけれども、やっぱり激しい攻防が続くだろう。地方財源の安定確保のための制度というにしては、より不安定にさらされたのかなという感じもいたします。  そこでこの際、具体的に一、二を明らかにしておきたいんですが、まず大臣、今度のルールといいますか、制度改正は、交付税法の六条の三の二項には本則があるわけですが、それによって講ずべき事項の当面の暫定措置というふうに解してよろしいのかどうかということが第一点と、したがってその趣旨はあくまでも交付税総額の安定確保ということなんだというふうに確認できるかどうかお伺いいたします。簡潔に、確認できるかできぬか言ってください。
  185. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 今回の特例措置につきましては、これは御存じのとおり、交付税法の六条の三、二項の規定によりまして、地方行政に係る制度改正ということで行っているわけでございます。したがいまして、委員が恐らく言っておられますのは交付税率そのものの改正と違うではないかということで暫定的というお話かと思いますけれども、この六条の三、二項のただいま申し上げました地方行政に係る制度改正につきましては、やはりこれは中期的な展望に立って行っておるわけでございまして、そういう意味での制度改正でございます。したがいまして、暫定的なものということではないわけでございます。  それから、二番目のお話は、この制度の仕組みができますことによって、地方交付税の特例加算した額も含めて安定的に今後地方財政のためにという御質問かと思いますが、これにつきましては、やはり国の財政状況、それと地方の財政状況等を勘案しながら、今回の法律案の中にもございますように、毎年度自治省と十分相談しつつ地方財政が円滑に運営できるように考えていくという仕組みでございますので、そういう意味から言いますと安定的であるということも言えると思います。
  186. 志苫裕

    志苫裕君 あなた簡潔に言ってもらえばいいんです。前段は暫定措置ではない、これはしかし約束事では当分の間ということですね。本則で言えば、ある程度恒久的なあるいは中期的なそういう制度改正等を行わなきゃならぬのだけれども、先行きもよくわからないし、いわば当面の措置としてこれをやろうというふうに我々は解しておるし、それから後段の方も、何かあなたのを聞いていると、安定的に確保するどころか不安定的に−そうじゃないんで、法そのものの、地方交付税総額の安定確保に資するためというのを額面どおりやっぱり我々は読みたいと思う。だから、その点を大蔵省にも確認を求めた。そのとおりでいいですね。
  187. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) それにつきましては第三条の後段の方にございますように、「交付税総額の安定的な確保に資するため必要な特例措置を」ということが書いてございます。
  188. 志苫裕

    志苫裕君 前段は暫定でなくてどうなんですか。
  189. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) それから前段につきましては「当分の間」というふうに書いてございます。しかし、私が申し上げております暫定という意味は、毎年毎年一つ制度を新たに考えていくという意味ではなくて、中期的展望に立って今回の仕組みを考えておりますので、そういう意味で申し上げているわけでございます。
  190. 志苫裕

    志苫裕君 暫定措置が中期的展望に立ったものだということになりますと、この「当分の間」は長いなという感じもしますね。これは「当分の間」というふうに書く場合には、むしろ「当分の間」が早く終わるように、そういう財政状況財政環境、展望が持てるようにというのがそれは普通で、中には「当分の間」と書いて戦後四十年もたったものもありますけれども、しかしこれは基本的には、次長、あなたの読み方はだめだよ、それは。恒久的にこんなもの書くというと大騒ぎになるんで暫定的という表現でというのじゃ、法律書いた方は自治省の方だけれども、有権解釈はそっちにあるかわからぬが、これはどうもあなたのはいただけない。これはやっぱり額面どおり暫定措置というふうに読んでいいですね。大臣、どうですか。
  191. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) この御議論は衆議院の地行委員会におきましても行われた議論でございますが、この三条というものがまさに交付税総額についての特例措置という意味におきまして、先ほど次長から申し上げましたように、中期的な物の考え方に立ってこのような特例的な措置を講じたということで、先ほどのお答えでも申しておりますように、言ってみれば、ことし限りの暫定的な措置であるという性格のものではないという意味において、今暫定という言葉を特に避けまして次長が答弁したものというふうに御理解を賜りたいと思います。
  192. 志苫裕

    志苫裕君 暫定と中期の間だということだな、これは。それはわかりました。  そこで、先ほども言いましたけれども特例措置を講ずることができると、これはできるんであって、法定しても中身は今のように毎年やりとりしようということになるわけですから、ルールかどうかというのも問題ですが、それはともかくとしまして、従来の覚書による臨時特例交付金に相当する暫定措置額、これは六十年以降も当然に継続をされると確認してよろしいですね。あなた、長く言わぬでもいい。そうですと言ってもらえばいい。
  193. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) はい、わかりました。  今おっしゃっておりますのは、例えば六十年度で千四百六十億円のお話かと思いますけれども、これにつきましては、御存じのように、今回、特例措置の中で精算不要の額として調整額で入ってくるわけでございます。これにつきまして、それでは今後どうかということでございますけれども、今回の措置と同様、今後の予算折衝の過程において精算額として調整する扱いになると考えております。
  194. 志苫裕

    志苫裕君 特例措置額の内訳を言うと、極端に言うと、従来約束事で国が持ちましょうというような部分が将来精算を要しない額ですね。そうでない純然たる足りない分というんですか、それが精算を要する額、ことしは三百億円とその他に分かれていますね。あなたの言うのは、そうすると従来の覚書やそういうものがあるにもかかわらず特例措置額は総体として将来精算の対象になるという今の答弁なの。
  195. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 六十年度において処理したと同様の処理になるというふうに考えております。
  196. 志苫裕

    志苫裕君 そこで、この五十九年度において見ますと、例えばその中の俗に財対臨特分というのがございますね。これは五十八年度の半分以下に減額されているでしょう、この五十八年千百億が今度五百億になっていますからね。そうしてみますと、これは源泉分離課税を選択したことによる住民税の非課税相当分なんだと、こう言うんですが、この状況が変化をした事情もないのに去年の半分になるということはどうも理解できないことでして、交付金がこんなどんぶり勘定のつかみ金のように扱われることも納得のいかぬ話なんですが、早い時期にそれに対する地方税の課税が実現をすればそれではっきりするんです。そうすればその分は当然に地方税の収入になるわけですから、それが実現するまでの間は将来精算を要しない額として特例措置を講ずるべきだというのが理屈になってくるわけで、その点もよろしゅうございますね。
  197. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) この五百億円につきましては、五十九年度地方財政が非常に財源不足が見込まれる厳しい状況にあるということを勘案しまして、それで、かつまた源泉分離課税が選択された利子所得等について住民税が課税されないこと、これも考慮に入れております。それから、地方財政対策の改革に伴う激変緩和のための事情その他を総合的に考慮して、この五十九年度についてとった措置でございます。したがいまして、これにつきましては六十年度以降、引き続き予算折衝の過程でこの問題についても自治省と相談しつつ考えていきたいというふうに思うわけでございます。ちなみに、過去の例を見ましてもいろいろの金額の場合があるわけでございます。
  198. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、今その点は年々の、あれは五十二、三年ごろからですか、年々、覚書の中にそれの相当分として幾ら幾らというふうなことを書いてきておったわけですが、それは別に法律に書いてあったわけじゃないんです。  私が今申し上げたのは、いわば税制というふうなものを、その総合課税制度というふうなものをきちっと整理をいたしますと当然に地方税収入にはっきり区分けされるわけで、毎年、あるとき二千億になって、あるときに三百億になるというような、こんなことはないわけですよ。それだけに、やっぱりもらう側からすると、地方の側からするというと、年々変化のあるものでもあるまいと。その額を幾ら自治省に聞いても幾らだとわかりにくいようですけれども、しかし、あるときはこれぐらいだろうと、それが財対臨時の大方はこれだという説明もかつてあったことにかんがみると、そんなに伸び縮み自由というものでもあるまいがというのが地方側の言い分になるわけです。で、今お話がありましたように、年々の自治省との話し合いで額が決まるということですが、私はそんなに変化のあるべきものでもあるまいという認識を持っているんですが、大臣、その点はどうですか。
  199. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 毎年度特例措置の具体的内容というものは毎年度決めて、それを年度ごとに法定すると、こういうことにいたしておりますのは、やっぱり地方財政の収支見通しというものをきちんと毎年度行ってみないと、いわゆる地方交付税総額が決まらない。そこで、特例措置の実施の要否あるいは程度というものが、それが決まらないことには判明しないという意味におきまして、やはり私は毎年の法定で決めていくというのが正確ではないかというふうに理解をしております。
  200. 志苫裕

    志苫裕君 それは毎年決めることになっているんですけれども、それがあるときゼロ、あるとき一千億ということはない、理屈から言うたって。何でそういう額がはじき出されるかというと、こういう性格を持ったものだということがずっと伝統的に承認されてきているんだからということをこの際は指摘して主張をしておきます。  ところで、それが五十九年度にそういうものを講じて、最終的に三百億が将来精算を要するものとして決まったわけです。どうでしょうね。五十九年度に講じた三百億を六十六年と六十七年の二年にわたって将来精算する、こういう長いロングサイトの年度間調整措置がとられている。随分と地方財政扱いの基本が変わったなという感じもします。  ところで、こう言っちゃ失礼だけれども、来年のこともようわからぬのに七年も八年も先のことを決めておくというようなことはいかがなものかという気持ちが率直にいたします。一体そのときの財政状況をどう見ておるのか、あるいは財政状況のいかんにかかわらず地方財政を拘束をするというのであると問題は残りますし、少なくとも中曽根内閣がそこまで続くわけでもないし、両大臣それまでいるなんというのはまず奇跡的にもあり得ない、これは。そういうことを考えますと、先のことは先に考えればいいよというように無責任にもとれないこともないんですが、そんなわけで六十年度以降の経済、財政の展望をどのように見るのか、あるいはその時期の財政状況のいかんによっては当然にこのルールも含めて見直すこともあり得るという前提を置かないとこれは成立しない話だと思うのですが、その点はいかがですか。
  201. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 今の御質問は、この三百億円について六十六、六十七年度に減額精算となっているが、なかなか先のことはわからないので、これについては今回は決めないで弾力的にと、こういう御質問がと思いますが、これにつきましては今回の予算編成に当たりまして自治省とも十分相談いたしました。その際に、国の方からいたしますと、非常に財政事情が苦しいものですから、できるだけ早く精算していただきたいという気持ちが非常に強いわけでございますけれども、地方の方の財政事情も苦しいということで、六十五年度までは精算をこちらから申し上げないで、六十六、六十七、二年度にわたってそれではお願いしようということで話が決まったわけでございます。したがいまして、それに従って法案にも入れてお出ししているということでございます。
  202. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、そんなこと書いたって、あしたのこともわからないのに七年、八年先になってまたどんな状況になっているかもわからないわけですよ。国がばかによくなって地方がばかにひどくなっているか、全体としてみんなが沈没しているかあるいは回復しているかそれはわかりませんが、雨が降ろうがやりが降ろうと六、七年先を拘束するというのにはやっぱり少し無理があるような気がするので、それにはある程度、それはそのときにおける財政、経済の状況などによって、場合によっては見直すという前提を置かないとこれは成立しない話ではないかということを私は言っているわけで、今、そのときにそうしますと言ったら、これはもう無責任にみんな前倒ししますから言わぬだろうけれども、これはやっぱりそれぐらいのことにしないとそれはやっていけませんよ。今から前借金で自治体はもう拘束されるなんというようなことはなかなか耐えがたいことである。また一面こういうものがあると、それでそれなりに節約じゃないですが、いろいろと工夫しながら財政運営をするというメリットがあるかもしらぬけれども、しかし先食いというのは概して無責任ですね。そういう意味で、これはやっぱりそのときどきの状況に応じて再検討を行うべき性格だ。  時間が来ましたので、最後に一問だけで結構ですが、大臣、これは論議になっているところですが、特例措置というのは従来の特例加算とは違って、理論的には特例減額というものもあり得るんだという立場をとっておるようで、今の交付税法の六条の三の二項もそのように読めるんだと言う人もおるんですから、あるいはそういう解釈があるのかもしれません。しかし、実態として、経済展望もさることながら、およそ地方財政がこれほど借金を抱え込んでどうにもこうにもならないというふうなことから見て、特例減額などということが言えるような状況じゃない。したがって、実態として特例減額は想定に入っておらない、このように解してよろしいですか、大蔵大臣
  203. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは、各年度においての所要の地方交付税総額を確保するため法律で定めるところによって必要な特例措置を講ずるということになりますと、その中期的健全化を図る観点から、法律で定めるところにより減額措置もこれはあり得るという、法律上読めば、まさに減額措置もあり得るということであろうと私は思っております。  だが、実際問題どうだ、こうおっしゃいますと、将来にわたる特例措置の内容というものを現時点で足かな分析を行うことは、これは実際問題としては難しいことではないかというふうに考えておるわけであります。
  204. 原田立

    ○原田立君 大蔵大臣、二月六日の大臣財政演説及び四月十三日、閣議後で発表なさった言葉の中に、六十年度の概算要求については厳しいものにせざるを得ず、各省庁とも政府と民間、国と地方の間の役割と責任を明確にする立場から、これまでの制度、施策についても根本的に踏み込んで改革を行う、こういうふうな旨のお話があったのでありますが、特に国と地方に関してこれまでの制度、施策についても引き続き根本にまで踏み込んで改革を行おうとしているが、一体具体的にどんなふうな検討を進めているのか、これが一つ。  それから、マイナスシーリングの方針からいきますとかなりの歳出削減を検討しなければならないということでありますが、今回の五十九年度の場合もそのしわ寄せが地方財政年金、医療等に行われたわけですが、六十年度については一体どのようなものを対象として検討なさっておられるんですか。
  205. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 六十年度予算についてもマイナスシーリングの方針ということは、私が、予算が本院で成立いたしました次の閣議のときに、予算が通過したに際して、いずれにしろ六十年度予算編成というものも厳しい対応をせざるを得ないというふうに申し上げたわけであります。  具体的に、五十五年度予算がプラス一〇%シーリング、あるいは五十六年度がプラス七・五%シーリング、そうして五十七年度がゼロシーリング、五十八年度マイナス五%、五十九年度マイナス一〇%、そういう数字を申し上げることについてはいましばらく勉強さしてください、しかしいずれにしても厳しいものとならざるを得ません、それに際しましてはやっぱり制度、施策の根本にさかのぼって御勉強をいただきたいということをお願い申し上げたことは事実であります。  されば、抜本的改革というものには何が念頭にあるかとおっしゃいますと、これやっぱり参考になりますねと直ちに言えるとすれば、臨調とそれから財政審の指摘事項というものが一応言えるんではないか。じゃ、それの具体的に残されたものは何かとおっしゃいますと、これは私の立場で申し上げることでございますからそれぞれの役所の考え方との相違は多少あろうかと思いますが、考えられるとすれば、義務教育教科書無償給与制度の問題あるいは児童扶養手当制度の問題、それから補助金総額の八割を占めます地方公共団体等に対する補助金等の問題、それからあるいは国鉄の合理化、これはもちろん継続する問題であります、それからあるいは食管における売買逆ざやの問題というようなことが予算編成に際して今日までも議論され、そして指摘された事項で残っており、あるいは継続しておる問題というふうに理解をしておるところでございます。
  206. 原田立

    ○原田立君 余り時間がないもので、予定しておった、通告しておったのを若干飛ばしながら御質問いたしますけれども、公共事業の前倒しという問題について、内需拡大の一つの柱にこれはすぎないと私は思うんでありますが、景気は着実な回復基調にあるとは言っても国民生活からは実感の伴わない、そういう感じであります。そこで、経企庁長官が公共事業の前倒しだけでは不十分だ、大幅な所得税減税、投資減税など、思い切った内需関係景気対策の必要性を強調なさっておられますけれども、国内の景気拡大の上からも思い切った景気の浮揚策を検討する必要があるんじゃないか、これは大蔵大臣どうですか。
  207. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 今も御指摘がありましたが、景気対策ということについて随分議論をいたしました。要するに、ことし見込んでおりますものが経済成長率実質四・一%程度見込んでいるわけであります。ところが、三%、四%台の成長ということになりますと、我々いわば高度経済成長時代に体そのものがなれてしまっておりますので、それでは景気が回復基調に乗ったという肌でなかなか実感を感じないことは事実であろうと思っております。  しかし、世界全体がこういう状態の中で、いわば経済の諸指標を見れば何もかも世界一の我が国でございますけれども、やはり世界の中で日本だけが例外であるわけにはいかない。したがって、いわば八〇年代の経済社会の「展望と指針」に書かれてありますように、七、六、五抜きの四、三、二、一と申しております。すなわち六ないし七%程度の名目成長率、五はありません、五抜きでございますが、四%の実質成長、三%の消費者物価、二%の失業率、一%の卸売物価。七、六、五抜きの四、三、二、一というのが大体これからの日本経済の一つの指針として念頭に置いて、これが普通の姿であるというある種の意識転換も必要ではないか。しかし、少なくとも四・一%の実質成長より確実なものにしなければならないというところに公共事業の弾力的執行と、こういうものがあり得るわけでございます。そうして、それをなかんずく地域のばらつきに配慮いたしまして、先般その方針を決定したところであります。  さらに原田先生は、もっと例えば減税とかそういうものによって景気刺激を与えるべきだと、こういう御意見でございますが、経済理論としては、私は存在し得る理論であるとこれは思っております。ただ、私どもが仮に今減税ということを考えたといたしますと、その減税の及ぼすいわゆる景気に対する乗数効果というものと、いま一つは、企業経営でありますならば、今借金をして設備投資をして数年後に果実を結べば、それなりに私は立派なことだと思いますが、国家財政は単年度主義であるということが一つ。そして、仮にもしそれが思うように乗数効果が出なかった場合、その責任は国民全体でかぶらなければならぬということになると、勢いやっぱり消極的にならざるを得ないというのが実態でございますだけに、今後とも、河本長官からも御指摘が我々にもあっておりますように、財政の出動する範囲外の金融、税制の問題について、やっぱりこれは不断の勉強をしてもらいたいという御指摘が経済運営の責任者としての立場からの御表明もあっておりますので、それらの点において引き続き勉強をさしていただこう、こういうことで、普通ならば政府税調も、予算が通りますとどちらかといえば開店休業になりますが、たまたまグリーンカードの後始末の問題もこれありというところで、早速国会において行われた議論等を整理して、去る昨月二十七日でございましたか、税制調査会をまた開いていただいて勉強をせっかくお願いをしたという状態になったばかりのところでございます。
  208. 原田立

    ○原田立君 我が国の貿易収支は、五十七年度、二百一億四千百万ドルに対して、五十八年度は三百四十五億九千七百万ドルが見込まれている。今後、海外からの我が国に対する輸入増大の要求は非常に高まってくると思うんでありますが、六月に予定されているロンドンサミットでも大きな問題になると思うんでありますが、いかなる経済政策で臨まれるのか、大臣のお考えをお聞きしたい。
  209. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは百も御承知での御質問でございますが、サミットの議題は、今一生懸命で各国から個人代表が出かけて、集まって協議をしておるところでございますが、本来エコノミックサミットというところから始まったものでございますだけに、我々、経済の一部門とはいえ、財政を預かる者として関心を持っていなければならないことは当然のことでございます。  したがって、昨年のウィリアムズバーグのサミットにおいて最大公約数として確認されたことは、それぞれの国々がいわゆるインフレなき持続的成長というものを目指して、おのがじしその所に従い、財政赤字と果敢に闘っていこう、こういうのが最大公約数でございます。したがって、今おっしゃいました、これだけ貿易収支なり経常収支の黒字が出ておると、おまえのところがむしろ機関車のような役割をして、そして内需の振興によって世界全体の経済にこれは貢献すべきじゃないかという趣旨のいわゆる景気刺激策というものは、昨年からの合意の継続の状態の中においては、私は強い議論として出ることはなかろうではないか。むしろ、サミット参加国人口六億でございますから、世界の人口の一二%にすぎない人口で世界の富の五七・数%を占めております経済先進国の集まりでありますだけに、やはり当面はいわゆる財政赤字の縮小に個々が立ち向かうことによって持続的成長というものを目指したならば、それが南北問題等々においても金融その他の面に対して貢献することもあるであろうという基調が結局サミットの経済議論の基調になるではないかなというふうな、私個人のと、こうおっしゃいましたので、個人としてはそのような考え方で今日ここにおる、こういうことでございます。
  210. 原田立

    ○原田立君 先ほども志苫委員からもお話がありましたが、今回の地方交付税法の一部改正では、五十年度以降、毎年大幅な財源不足が生じてきたそのため、地方財政対策として交付税特会の借入金で対応してきたわけですが、国の財政状況が厳しいという、そういう大前提を置いて、もちろんそうではありますけれども、特会の借り入れをやめ、その補てんに地方債八〇%、残りの二〇%については特例措置として加算する、こうなっているわけでありますけれども、過日も参考人の先生方にお聞きしたところ、今回の改正は、本来国が負担すべきものを財政事情が厳しいという理由から一方的に地方に負担を肩がわりさせたにすぎない。ちょっと言葉はきつかったですけれども、国の責任逃れではないかとまでも言っておりました。そうなると、この点は私も同感なんでありますけれども、今後、五十九年度財源不足一兆一千五百億、その処理の方法が地方債八〇%、残りの二〇%が特例措置と、こういうパターンは今後も続くんですか。これはゆゆしい問題なんですよ。これは次長の答弁じゃなしに大臣の答弁を聞きたい。
  211. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 原田委員は、今回の本法の改正は、言ってみれば国の責任逃れであって、それで負担を地方に転嫁するものではないか、あるいはそういうおそれのある措置ではないか、こういうお考えの上に立った御意見を交えた御質問ではないかというふうに理解をさせていただいたわけでございますが、やっぱり国と地方の財政運営の中期的な展望というものに立ちましたときに、今回の措置というものは地方財政の健全化に資することになりますとともに、国、地方の円滑かつ着実な財政再建を確保するための措置であって、まさに国と地方の厳しい財政状況下のもとで交付税総額の安定的な確保に資するためという目的そのものであるではないか。したがって、私どももいろんな制度、施策の根本にさかのぼって議論をしなければならないものでございますけれども、あくまでも国民も公経済の車の両輪としての立場を理解し、しかも国は国として地方自治の本旨をまた生かすということを十分に念頭に置きながら対応してまいる所存でございますので、何もかにも国が責任を逃れ、地方に負担を転嫁する、それでもって事終われりというような心がけを持った途端に私どもは国民全体から征伐されるであろうというふうに、厳しくみずからの心に言い聞かしておるわけであります。
  212. 原田立

    ○原田立君 私は今の御答弁いただいたのは後段の話でありまして、前段のところの一兆一千五百億のそれを建設地方債で八〇%、特例措置で二〇%という、こういう比率のアンバランスが地方債に非常に高くかかっている、こういうふうな方式が私はよくないと思っているんですよ。だけれども、これをなさったその真意はいかんということと、それから今後もこういうふうな形が続くんですかと聞いているんです。
  213. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 数字にかかわる問題ですので、私の方から答弁させていただきたいと思いますが、この財源不足額が交付税措置とこの起債措置とどう絡んでいくかということでございますが、御存じのように、これまでのこの過去の対策を見ましてもいろいろの場合がございます。それは一にかかってこの財源不足額が幾らになるか、あるいはその結果、地方の財政事情がどの程度苦しいか、あるいは国の財政事情もある程度考えていかなければならないかと思いますけれども、そういう中で自治省と十分話し合いながら決めてきたわけでございます。その結果として財源不足額としては措置されているわけでありまして、今後につきましても、そういう中で地方財政の円滑な運営に支障のないようにやっていくというふうにおとりいただけたらと思っております。
  214. 原田立

    ○原田立君 次長、地方財政支障を来さないようにという、それは結構なんですよ。だけれども、一面では地方財政の健全化のために起債なんかは余りやらないようにしようというのが、これは自治省の方針でしょう。田川大臣のそういうふうな言葉と、実際今度の措置で全体の八割も建設地方債にやるということは、これは私は不健全だと思うのです。だからどうなんですかと聞いているんです。
  215. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 具体的な数字を申し上げますと、五十八年度の建設地方債の増発額は一兆三千二百四十六億円でございました。それに対しまして五十九年度は一兆二千五十一億円で、九%落としているわけでございます。これは起債充当率でいきますと、同じように、九〇%であったものが八五%というふうに落ちてきておりまして、その意味で、地方団体のいわゆる起債の苦しさ、これについても配慮しながら決めておるということでございます。
  216. 原田立

    ○原田立君 大蔵大臣、地方交付税三二%は地方固有の財源と、こういうふうにとらえて、それだけは何としても面倒見てやろうというのが自治省の方針でもあるし、大蔵省、大蔵大臣の方針でもあると、こう思うんですが、それがどうかというのが一つ。  現実には、今回の場合に交付税総額が二年続きの減額であり、五十九年度の場合、実質的な交付税率は三一・三%、すなわち三二%を割り込んでいるわけです。今日のような地方財政の現況から判断しても、この地方交付税法第六条の三、二項で言われている、むしろ率の変更という方向に持っていかなければいけないんじゃないかと、こう思うんでありますが、先ほど次長の答弁では、制度改正という方向でもってやったのだというんだけれども、これが三二%以上の額で制度改正というんならばわかるんだけれども、三二%を割り込んでおいて制度改正というのは、これはおかしいんじゃないですか。どうですか。
  217. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) まず一つは固有財源論の問題でございます。いわば固有財源論に角度を変えれば二つの見方がございまして、まさに国が交付する交付税としては、これは地方固有の財源である。しかし一方の見方の中には、地方の固有財源を地方にかわって国が便宜これを徴収しておるという意味における固有財源論と二つございまして、これは百年議論——百年というと少し長うございますが、絶えず地方制度調査会も、また国家財政から言えば財政制度審議会も両方の見方で、ただ地方のまさに固有の財源という意味の点においては共通しておりますが、見方の相違によってその性格づけは若干の相違があると思っております。私自身この議論は、公経済の車の両輪という立場から考えれば、余り目くじら立てる議論ではなかろうというふうな感じでいつも受けとめておるところでございます。  そこで、交付税率の改正ということになりますと、今日の厳しい財政事情等を勘案いたしますならば、まさにいわば交付税率の引き上げて恒久的に国の財源を地方に回すという余裕は全くないというのが実情でございます。交付税率の変更という国と地方との間の基本的な財源配分にかかわる問題は、国と地方の行政事務配分費用負担のあり方、また地方税、地方譲与税制度、さらには国庫補助金、そういうものを総合的に勘案して、慎重にこれは検討していくべきものである。ある意味においては、すべての問題を制度、施策の根本にさかのぼって議論をしていくべきものではないかという事実認識を私はいたしておるものでございます。
  218. 原田立

    ○原田立君 時間がありませんもので、簡単に言いますけれども、地方が持つ借入金五兆六千九百億円の利子負担金は四千億円あるわけです。これはずっとこれから続いていくわけだ。そういうようなことで、非常に圧迫されるおそれがあるんですけれども、これは一体どういうふうに救済措置を講じてもらえるのか。あるいはまた、今回の改正に伴って千七百六十億円の特例加算が行われておりますけれども、先ほどもありました三百億円については六十六年、六十七年に返すようになっているんですが、大蔵省の「財政の中期展望」、自治省の「地方財政参考試算」、これら等から見ても当分余りよくならないようなことが試算されております。そうすると、今回行った三百億円のような手法がまた六十年度も行われていくのか。いかがですか。
  219. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) まず第一の四千億円の利子の負担の問題でございますけれども、これにつきましては、先ほどもお話がございましたように、今回の地方財政制度の改革におきまして、国と地方とで既存の特会の借入金を割り振って負担を明らかにしたわけでございます。それに従って利子の負担も同じく地方、国に分けたわけでございます。したがいまして、この問題につきましては、やはり今後ともそのように元本の帰属が明らかになったわけでございますので、引き続き地方で負担をお願いしたいと考えておるわけでございます。  その結果として、じゃ地方財政上どういう問題があるかといいますと、これにつきましては地方財政収支見通してこの四千億円はカウントされます。したがいまして、その収支差額である財源不足額の中には入ってきておりますので、これについては今回の新しい制度で、当然に特例措置等を含むこの財源措置によって補てんされますので、所要の財源は確保されるということでございます。  それから、例の三百億円のお話でございますけれども、これにつきましては、今回の特例措置によって三百億円精算をお願いをすることになったわけでございますけれども、今後同じようにしていくのかということでございますが、これは今後毎年毎年、予算折衝の段階において自治省と御相談しながら検討していくことになろうと思います。
  220. 神谷信之助

    神谷信之助君 時間が限られておりますから、端的にお答えいただきたいと思います。  まず第一の問題は、今まで同僚議員からも質問ありましたけれども、五十九年度の財源不足に対する対策の問題です。一兆五千億の財源不足に対して結局、国が面倒を見ているというのは、いわゆる今まで約束をした既往の臨時特例交付金、いわゆる臨時、この分だけだということになったというように思うんですね。五十八年度までは我々は、本来交付税負担をすべきものですから、国が全面的に持つべきだと言ったけれども交付税特会の借り入れ、そのうち二分の一は国が持つ、あるいはまた財源対策債で埋めるとかいうようなことをやりましたけれども、少なくとも二分の一は国が負担をし、利子は全部持ちますということで、二足の国の資金で財源不足を補うと、そういう措置をとられた。五十九年度はころっと変わって、もう一切面倒を見ませんよと、まあ、言うたら地方財政は三二%の交付税分と、それから今まで約束した分だから仕方がないからその臨特分と、これでやりなさい、あとはもう国は一切面倒見ない、こういうことに今年度大きく転換をしたというように思うんですが、この認識は間違っていますか。
  221. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) その最初のお話の中で、従来、資金運用部からお貸ししていたわけであります。これはまあお金でありますから国のお金でもあるわけでありますけれども、もとをたどれば国民の皆さん方のお金でございまして、それをお貸しすることによって地方交付税の支給額がふえてきているということであったわけであります。したがいまして、やはりこういうことを今後続けていくのがいいか悪いかということを自治省とも十分御相談して今回のような仕組みにしたわけでございます。その意味で、それは国のお金であるという点は、私たちとしてやはり借金という意味も含めて、ちょっと問題があるのではないかと思うのでございます。  それから、今回の財源不足額一兆五子百億円につきまして、御指摘のように地方債で一兆二千五十一億円、その他が交付税特会借入金の償還方法の変更と、それから特例措置千七百六十億円で財源措置をしているということはおっしゃるとおりでございます。
  222. 神谷信之助

    神谷信之助君 国のお金と言うけれども財投資金からそれは借り入れているんだと、こういう言い方ですけれども、今国の財政がこういう異常な状態になっているからそういうことになっているんだけれども、本来、正常な状態であれば、交付税法の六条の三の二項に基づいて、制度改正交付税率のアップということになるわけでしょう。ただ、風の資金自身もどうにもならぬから交付税率の引き上げということもできぬし、しかもこういう困難な状態だから制度改正というのもそう簡単にはいきませんと。それで、国の方も金を持っているわけじゃないから、財投資金からとにかく借りるということにしましょうと、こういうことですから、本来は国がちゃんとそういうことを面倒見なきゃいかぬ。いわゆる六条の三の二項に言うような引き続いて著しい財源不足を生ずるというのは、地方財政制度の構造的欠陥というもののあらわれですから、それについてはそういうように、これは自治体自身でやれるわけはないんだから、制度なり税率を法律そのものを変えてやりましょうと、こういうことなんだ。普通ならそうなんだ。だが、今はそれができないから交付税特会の借り入れというような形をとって、個々自治体に借金を背負わせるというのを回避したわけなんです。  だから、それは一面で言うと、本来はそうやって国が責任を持って面倒見なきゃいかぬのだけれども、火の車だからしようがないんでそういう措置をやりましたよと。しかし今度は、五十九年はそうじゃないんだ。直接的にもうそれ以上国も面倒見られません、どんどんどんどん二分の一が、交付税特会借り入れすれば、今十一兆になってしまった、これがどんどんふえていけばいずれにしても半分はこっちが面倒を見なくちゃいかぬ、半分は交付税特会で面倒見るといったって、実際また全体で財源不足額に入ってきますから、カウントされてくるんだから、その場合に不足がふえればそれまた国が面倒を見なきゃならぬ、こうなってくるんだから、もうこれ以上はたまらぬということになって遮断したわけですよね。だから、そういう点から言うと、本来あるべき交付税制度、あるいは六条の三の二項に規定している状態が今の異常な国の財政状況のために実際にはやれない状態になってきていも。だから、逆の言い方をすれば、私は六条の三の二項というのはもう空文化しているとさえ言えるように思うんだけれども、この点はいかがですか。
  223. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 六条の三の二項は、御指摘のように、そういう場合には地方のこの制度の仕組みを改正するか、あるいは交付税率の規定を改定するかどちらかの措置をとるというふうになっているわけでございます。今回の措置はその前者の方でございまして、その意味では法律規定に従って今回の特例措置をとっているわけでございます。
  224. 神谷信之助

    神谷信之助君 そう言って自治省の方も強弁してきているんですよ。今までのルールも制度改正ですと、そして今年度からやるやつも制度改正ですと、こういうわけですね。しかも、その制度改正と言うことができるかどうかというのは、先ほどもちょっとあったけれども、中期的な展望を持った上での制度改正だと言ったら、いやそうじゃないんじゃないかという指摘を受けたら結局、暫定とその間ぐらいかというようなことを言わぬならぬような、わけのわからぬことになってくるわけだ。だからこの点は、私は今重大な事態だというふうに思うのです。  そこで、もう一つお聞きをしておきますが、三百億の件です。六十六年度、六十七年度に百五十億ずつ返しますと、こういうことになります。大蔵省としては早く返してもらいたいけれども自治省の方が先にしてくれというのでそうなりましたという説明ですが、私は、何しろ六十五年を目指して国の財政の再建は完了することを目標にして今やっておるわけでしょう。そうすると、六十五年になったら国の財政は再建されておるのだから、六十六、六十七年まで辛抱したら、地方の方のこっちはまだ再建されていないんだから、大体そのときは面倒見てもらえるという希望的観測を含めて理解をしていいわけですか、この意味は。
  225. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 今の御質問の問題は、今後国の財政あるいは地方の財政がどういう状況になるかという予想、見通しの問題に非常に絡んでくるわけでございます。それにつきましては、国の財政状況については「仮定計算例」ということで国会にお出ししているように、六十五年度になりましても非常に厳しい状況が続きますし、その後もそういう状況が引き続きあるというふうに予想されるわけでございます。そういう意味では大変厳しい予想に立っておるわけです。したがいまして、六十五年度までに赤字国債に依存する財政から脱却いたしました後も苦しいことはやはり非常に苦しいのではないかというふうに考えられるわけであります。  そこで、じゃ地方の方はどうかということでございますけれども、これにつきましてもその見通しが非常に見通しがたいわけでありますけれども、やはり苦しい状況は続くと思います。そういう中で、今回のように三百億円について二年間に分けて精算ということをお願いしているわけでございまして、楽になるということはないんじゃないかというふうに、これは私見でございますけれども、考えております。
  226. 神谷信之助

    神谷信之助君 時間がありませんから、今のも言い分がありますが、もうじょうがない。  それで、あなた方の地方財政の運営に支障のないようにいたしますというのを、これは大蔵省も自治省も同じようにおっしゃる。地方財政の運営に支障のないようにということなんだけれども地方財政というのはこれだけのものが最低必要であるといって固定しているわけでないので、切り込もうと思えば幾らでも切り込めるし、やっている仕事をやめれば金を使わぬでいいわけだ。この点では大蔵大臣の方も、制度の抜本的な見直しを含めてこれからもやっていくのだと、こうおっしゃっているのですから、地方財政の規模それ自身を抑え込んでいけば財源不足額は減っていきますから、それなりのことはできる。こうなってくるということなんですが、そんなことをしたら大蔵大臣は国民から総攻撃されるとおっしゃるのだけれども大蔵大臣は上の方であって、からくりがありますから、直接被害を受けるのは、攻撃されるのは市町村長なり知事なり地方議会なり、いわゆる自治関係者なんです。そこで今までやった仕事を抑えたり削ったりするということが行われるわけだが、これは大蔵大臣が金庫番でぎゅっと締め上げたからそうなったというようには、直接的にはとらないという状況になるのですよ。だから大蔵大臣は左うちわでおれるけれども、問題は、それぞれの地方自治体を預かっている関係者が住民の要求にこたえられない、自治体本来の任務を果たせない、そういう状況に陥らざるを得ないという危険をわれわれ感ずるんですが、大蔵大臣、この点はもう最後ですから認識を聞かしておいてください。
  227. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これはやはり地方自治の本旨に照らし、今日まで各地方自治体においてそれこそ創意工夫され、独自のいろいろな施策を展開しておられるわけでございます。その施策の中にも、厳しい財政事情の中で、あるいは住民がいわばサービスを受けるのか、あるいはそのサービスを受けることなくいくのかといういろいろな選択の場面は私もあろうかと思います、率直に申しまして。これは国ももちろん例外でございません。したがって、負担するのも国民、受益者もまた国民でございますので、国会で今のような議論を聞かしていただきながら、国民のあるいは住民のコンセンサ又はどこにあるかということを見定めながらこれに対応していなかければならない課題ではなかろうか。  決して大蔵大臣は地方自治体に対して別に優位な立場にあるものでもございません。ひとしく国民であり、たまたまそのつかさつかさ、与えられたものが違っておるだけでございますので、また、大蔵大臣がどなたでありましょうとも、あらゆる面で国からあるいは地方からサービスを受ける国民の一人であるという考え方の上に立った場合、左うちわでいられるものではないし、左うちわなどでおりましたら自由民主党政権などというのは直ちになくなってしまうのじゃないか。絶えず自粛自戒をして対応しなければならない課題であるという基本認識を持っております。
  228. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、次回の委員会を五月十七日午前十時に開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十二分散会      —————・—————