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参考人(
田中啓一君) まず第一点の点でございます。
先生の御指摘のとおり、国の
財政難によって
地方財政施策が一貫性を欠き、あるいはまたそれが
地方財政にしわ寄せしているという御指摘は、私もまさしく同感でございます。これは、ある意味ではだれもこれを否定する人はいないわけでございます。しかも、このまま現行のシステムにおいては、今後もこのような状態が本質的に続いていくんだということも否定できないと思っております。こういう
背景には、まず本質的に
財政事情が非常に悪化している、しかも
財政の見積もりが困難であるという本質的なものもあるわけでありますけれども、それと同時に、システム的にも、
制度的にもこういうしわ寄せをせざるを得ないという現状もあるということがまず考えられなければならないと思います。
こういう中で、じゃ今後どうしていったらいいかという点であろうかと思います。そのためには、先ほど申しましたように、こういう問題は各国とも、国とか連邦
政府と
地方自治体とが、いわば対立点というような形で多くの
課題を残しているということではありますけれども、我が国の
実情から考えますと、まず次の点がささやかな解決策に寄与するのではないかと考えているわけでございます。まず認識としては、とにかく国の
財政の悪化も
地方財政の悪化も、ともにそれを解決するのは国民であり、国民はすなわち
住民であるという発想でございます。
財政的に言うならば、いわゆる同じ財布であるということでございまして、
配分の違いだけであるということも指摘できるわけでございます。そういう前提のもとでまず考えなければならないのは、限られた
財源ということの中で国のやるべき仕事と
地方のやるべき仕事、これをいかに効率的に
配分していくかということが必要であろうかと思います。とりわけ今我が国の
財政構造では、
地方自治体が多くの仕事をやっているわけでございます。多分、先進国の中ではトップグループであろうかと考えております。こういう中では、特に
地方自治体のなすべき
役割、その仕事、その
財源、そういうのは、国からの補助金を多く得る現行
制度がいいのか、あるいはまた自主的な
財源でやるべきなのかという点は、おのずから答えが出るところでございます。
次に、こういうような
財政の中では今日の
財政の
経済安定
機能が余り期待できないという現状を振り返ってみますと、第二点として、ともに一応長期
財政計画を立てることによって、できるだけ単
年度予算主義の弊害を除去するシステムというものが必要であろうかと思います。しかも、我が国のようないわゆる固定的な長期
財政計画ではなくして、欧米のやっておりますようなローリングシステムを導入することによって、少しでもPPBSとかいろいろな手法を導入しながら、こういう長期
財政計画を考えていくということも必要であろうかと思います。
次に三番目の手段として、御
承知のとおり
国税三税に今
地方交付税の原点があるわけでございますけれども、この
国税三税は非常に景気に変動されやすいものでございます。この三税で国
税収入の約七割から八割近くも占めていると思いますが、この三税はとりわけ伸縮性が高いものでございます。景気のいいときにはある
程度の伸長が期待できるわけでありますけれども、悪くなりますと当然、とりわけ法人税を中心として
財源ががた落ちするわけでございます。これに対しまして、
地方財政というのは
住民の
行財政サービスをやっていくためには、また
行財政サービスの
内容からいきましても、非常に安定的な
財源を必要としていることは否めないわけであります。そう考えてみますと、本来ならば安定的な恒常的なアップの期待できるような
財源が
地方自治体としては欲しいにもかかわらず、いわば伸縮性の非常に高い
国税に大きく依存するというこのアンバランスが、今日のようなこういうしわ寄せという問題の生ずる原点にあるという感じがいたすわけでございます。
このための当面の対応策としまして、三二%というのをある意味では三二%から三五と、これをできるだけ四〇というような形に伸ばしていくことが望ましいわけであります。数年間においてバリアブルな率にする、そして幅を持たせながら絶対額は
確保していくというようなことも考えられる
一つの手段であろうかと考えております。
さらにまた、例えば所得、法人、酒税の三税をある
程度一括して三二とやっておりますが、これを例えば
地方住民との
関係の強い、あるいは自治体と
関係の強い所得税の
比率を高めるとか、あるいはまた大
都市の集積のメリットを享受している法人企業を対象とした法人税の
比率を大
都市財政にはとりわけ高くする、そういうような
地域間の税制
配分ということも、これのしわ寄せを少しでも薄めていくということには必要であろうかと思います。こういうのが考えられるのではないかと思っております。
次に、第二点の御指摘でございます。
地方自治体の自主
財源の
強化であろうかと思いますが、御指摘のとおり、これから自主
財源強化をするということが、
地方交付税制度をある
程度脱皮させるということからも必要であるわけでございます。例えば
地方自治体が
行財政サービスを今後提供していくためには、まず第一番目に自主
財源のアップということが必要であり、次には国からの
財源調整のアップということが必要であろうかと思います。さらに三つ目としては、起債でもって
充実するということも
一つの手段であるわけでございますが、最も望ましいのは、言うまでもなく自主
財源のアップであろうかと思います。
こういう現状の中で我々は、例えば既存の法律の中で
財源を見ていくということも
一つのまず第一にとるべき手段であろうかと思います。宅地開発税やなんかは、税法でありながら現実には行われていない幻の税制であるというようなことも言われておりますが、こういう
一つのいわば既得権をもう一度見直す。いわゆる中央
政府から非常に
制約を受けている、とりわけ課税権では
制約を受けている日本の自治体でございますけれども、その与えられた中で課税自主権というものができないかどうかということも考える必要があるかと思います。例えば事業税などでも
負担範囲の免税
措置が非常に行われております。何百億円の収益を上げながら事業税がほとんどかかってない、全くかかってないというようなことも果たして許されるのかどうか、あるいはその必要があるかどうかというようなことも考える必要があろうかと思います。少なくとも、無税であるのを減税するというような
措置によりまして、得べかりし利益、得べかりし課税権というものもできるのではないかと思っております。
さらにまた、土地課税というようなものにおきましても、余りにも減免
措置が行われておるのではないかというようなことも言われております。日本の地価は世界一高いわけでありますから、当然担税力があるわけでございます。こういう中で、既存の固定資産税の中でも、
見直しで十分その
財源措置ができ得る、あるいはさらにまた土地増価税というような、一八九〇年代末にドイツで行われた土地増価税というような発想も、世界一の高地価である日本ではそういう発想も必要であるというような感じがいたすわけでございます。あるいはまた、サイモンズの言うような包括的な課税ベースというような形で、日本の場合にはいわゆる水平的な公平さというのが曲がりなりにも充足してこれたわけでありますけれども、しかしこの中にももちろんクロヨンとかトーゴーサンピンというような不公平税制が指摘されておりますが、それよりももっと資産を中心とした資産課税のいわば垂直的な公平さが今後さらに求められるべきである。それがまた
負担の公平にもなり、ひいては自主
財源の
確保にもなるということが言えるわけでございます。
今後
行財政サービスをさらに
充実していくためには、同時に
住民も、我々がその
財源をみずから
負担するという姿勢が今後必要であろうかと思います。そのためには、その
財源がどのように使われているかということについても、今後
住民としての認識の高まりを期待しなければならないと考えるわけでございます。
最後に、第三点の
都市の整備という御質問であろうかと思います。
御
承知のとおり、我が国は世界一の
高齢化が進むわけでございます。私どもの今研究でやっているところでは、中国とともに二十一世紀には世界一の
高齢化が進んでまいるわけでございます。そういう中で我が国の場合、欧米先進国と違いまして、二十世紀までに少なくとも
都市の整備を相当水準までに高めていくという必要があるわけでございます。欧米では既にそれが終わり、今はストックの
確保、修理保全というところに重点が置かれておりますが、我が国の場合には、下水道
一つとりましても今後、社会資本の
充実という形で、
地方の時代になればなるほど
都市整備
財源を必要としてくるわけでございます。そういう、とにかく我々は二十世紀までに、
高齢化社会を迎える以前に
都市の整備を進めていくという認識が必要であろうかと思います。そのためには、まず
都市整備の現状とニーズを明確にするという必要があろうかと思います。
そういうもとで、それはだれがどのように
負担していくのかというようなことも必要であろうかと思います。そういう
地方自治体と
住民との対話が何もないことは非常に残念でございます。いわばそういう
財源の中では、いわゆる受益と
負担というものをできるだけ、これはなかなか大変難かしいわけでありますけれども、計量化を図っていくというようなことも必要であろうかと思います。もちろんこのときには社会的弱者に対する格別な
配慮をすると同時に、受益者には適正な
負担を求めるというのが
負担の公平にもなりますし、それはひいては、メリットを得ている人が
負担しないということは他の人にも迷惑をかけることでありますから、そういう発想が、特に
地方自治体のように受益がある
程度地域的にも限定される場合には、こういう発想もある
程度は
住民の納得する範囲内で必要であるということが指摘できるかと思います。その際には、例えばその
財源確保にしろ
地域間によってある
程度差があってもいい、税率の違いあるいは税制自体の違いがあってもいいという感じがいたすわけでございます。
大
都市は、我が国も最近では東京ですら、世界の繁栄する
都市の象徴でありました東京ですら衰退現象が見られるようになっております。こういう大
都市の中でこれまでの集積のメリットを得ていたところがだんだんと集積のデメリットを受けるようになってきたわけでありますけれども、こういう中でストックの活用、再開発というようなことをしながら、同時に、例えば集積のメリットを得ているところがあるならば、それに対して適正な課税をしていくということも必要であろうかと思います。例えば、これはある
程度企業課税の
適正化あるいはまた、日本の企業は半分近くが赤字でございますけれども、そういう
行財政サービスを赤字企業でも得ているわけでございまして、たまたま企業会計
原則だけが赤字のために法人税あるいは法人事業税を
負担してないというのも、これ
負担の理論からいってもおかしなわけでありまして、この外形標準課税という問題も考えていいという感じがいたすわけでございます。あるいはまた、先ほど申しましたような土地資産というものに対する、いわゆる資産メリットを中心とするものに対しても外国の
地方財源が非常に高率であると同じように、そういう発想に似たようなこともこれからは必要であるということが考えられるわけでございます。
しかしながら今日、自治体では現行
制度のままではいわば非常に横並びの発想があるわけでございます。横並びの発想がありますと自主的なものもできない、そういう発想じゃなくして、その
地域にふさわしい
町づくりというものを
住民みずから自分の町をつくっていくんだという姿勢も、
住民とともに
地方自治体にも必要であるという感じがいたすわけであります。そのための
都市整備の
財源をどうするかということは、おのずからそういう中から、プロセスの中から期待することができると考えております。例えば、ここで言う対話がないと、要綱
行政と言われるようなものによって
住民に過度の
負担をかえってかけるというようなこともございます。そういう点をできるだけ削除していくということにも、先ほど申しましたように、
地域住民とそして自治体との、そしてまた、ある意味では国との三者の
関係で、今後の二十一世紀に向けての
都市整備というものもこれからの
地方自治体にとって大きな
課題であるという感じがいたしております。どうもありがとうございました。