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1984-05-11 第101回国会 参議院 地方行政委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十一日(金曜日)    午後三時二分開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月十日     辞任         補欠選任      出口 廣光君     岡部 三郎君  五月十一日     辞任         補欠選任      岡部 三郎君     出口 廣光君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長        大河原太一郎君     理 事                 岩上 二郎君                 真鍋 賢二君                 志苫  裕君                 三治 重信君     委 員                 井上  孝君                 上條 勝久君                 古賀雷四郎君                 出口 廣光君                 松浦  功君                 吉川 芳男君                 秋山 長造君                 佐藤 三吾君                 中野  明君                 原田  立君                 神谷信之助君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君    参考人        全国市長会相談        役盛岡市長    太田 大三君        立教大学教授   野呂 昭朗君        日本大学教授   田中 啓一君        法政大学講師   中西 啓之君        名古屋学院大学        教授       西村 暠夫君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○地方交付税法等の一部を改正する法律案(内閣  提出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  地方交付税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として全国市長会相談役盛岡市長太田大三君、立教大学教授野呂昭朗君、日本大学教授田中啓一君、法政大学講師中西啓之君、名古屋学院大学教授西村暠夫君、以上五名の方々の御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、皆様方には極めて御多忙中のところ、本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございます。心から御礼を申し上げます。  本案につきまして皆様からの忌憚のない御意見を拝聴し、本案審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  なお、議事の進行上、参考人方々にはそれぞれ十五分程度意見を順次お述べ願い、陳述がすべて終わりました後に各委員の質疑にお答えを願いたいと存じます。また、発言の際は、その都度委員長の許可を受けることになっておりますので、あらかじめ御了承をお願いいたします。  それでは、まず太田参考人お願いを申し上げます。太田参考人
  3. 太田大三

    参考人太田大三君) ただいま御紹介をいただきました全国市長会相談役をいたしております盛岡市長太田大三でございます。  参議院地方行政委員会の諸先生方には、地方行財政の諸問題につきまして日ごろから特段の御理解と御尽力を賜っておりますことを心から厚く御礼を申し上げます。  本日は、御審議中の地方交付税法等の一部を改正する法律案につきまして意見を申し述べる機会をいただきましたので、直接都市行政に携わっております市長立場から、若干の意見を申し上げさせていただきます。  昭和五十九年度地方財政は、さきに策定されました地方財政計画におきまして、おおむね国と同一基調により、歳出面においては、財源重点配分経費効率化に徹し、経常経費投資的経費を通じて厳しい抑制を行い、歳入面では住民税所得割の減税があるものの、地方税制改正による増収措置自然増収のほか、受益者負担適正化を行い、収支の不均衡の是正が図られたところでありますが、なお一兆五千百億円の財源不足額が生じ、昭和五十八年度財源不足額二兆九千九百億円の約半分となったものの、引き続き厳しい状況となっているのでありまして、その補てん措置として、地方交付税増額三千四十九億円及び建設地方債増発一兆二千五十一億円により対処することとされているところであります。その結果、昭和五十九年度地方財政計画規模は、総額で四十八兆二千八百九十二億円、前年度対比伸び率は一・七%の増となり、公債費を除く一般歳出は〇・九%の増にとどまり、実質的には昭和三十年度以来の低い伸び率となっておりますが、国の一般会計伸び率〇・五%を上回るものとなっております。  その内容を見ますと、地方単独事業につきまして地方財政計画計上額を圧縮し、前年度対比三・三%城となっておりますが、「まちづくり特別対策事業」を設け、地域実情に即した個性的で魅力ある町づくりを積極的に推進することとされておりますし、財政構造において一般財源比率が六〇・八%、地方債依存度が九・九%と、それぞれ前年度よりも改善を見ております。  また、地方債資金に占める政府資金比率が前年度の四一・一%から四八・五%になるなど、現在の状況下では所要配慮がなされておりまして、地方公共団体といたしましては、一応の評価をいたしておるものでございます。  特に本年度は、御承知のとおり昭和五十年度以降、毎年度にわたる交付税特別会計借入金残高が十一兆五千二百億円の巨額に達し、これ以上借入金に依存することは、今後の地方財政基盤を揺るがせかねない状況となりましたため、本年度地方財政対策において、交付税特別会計からの新たな借り入れ原則としてやめ、当分の間、これにかわる各年度地方財政措置として、地方交付税総額について安定的確保を図るための必要な特例措置を講ずることとされ、この既往借入金約十一兆五千二百億円については、その元利償還につき、国と地方負担区分により、今後それぞれの責任を明確にされたところであります。  さきに述べましたように、交付税特別会計巨額借入金累積額個々地方公共団体においては借り入れとして意識されがたいという一面もありますので、将来の地方財政を展望し、その健全化を図る見地から今回とられました種々の措置につきましては、当面やむを得ないものと考えております。したがいまして、今回御審議中の本改正法案につきましては、現時点の我が国における経済環境、国、地方を通ずる厳しい財政状況を勘案するとき、その内容につきましても基本的に賛意を表するものでございます。  しかし、昭和五十年度以降、地方財政は、毎年度にわたる巨額収支均衡状況が続き、交付税特別会計からの借り入れ建設地方債増発により収支均衡を保つという、いわば臨時応急的な措置がとられてきたわけでありますが、本年度地方財政対策においては、特別会計からの新たな借り入れ原則としてやめることとされましたものの、昭和五十九年度末には、地方債残高既往交付税特別会計借入金残高等を合わせますと、地方公共団体借入金は実に五十四兆四千億円を超えるものと見込まれておりますし、加えるに、地方交付税総額昭和五十八年度に引き続き二年連続減額となりましたことは、地方公共団体にとりましては、その財政運営が従前以上に厳しい状況となっております。そのため、地方財政基盤を確立することが緊急の課題となっておりますことは、今さら多言を要しないことと存じます。もちろん、地方公共団体におきましても、この危機を打開すべく、事務事業見直し組織機構簡素化職員給与、定員の適正化経費節減合理化改善に努め、みずから対応しているところであります。引き続き一層の行政の徹底した簡素合理化財政の効率的な運用を積極的に推進してまいりますが、地方自主性自律性確保する観点から、地方財政の長期的、安定的な財源確保するため、先生方に特に御配慮を賜りたい三点に絞って申し述べさせていただきたいと存じます。  まず第一点は、地方税源充実強化についてであります。  地方公共団体行政事務は、住民福祉の向上、公共施設維持整備など、住民に身近な経常的なものが多い上、さらに今日、人口高齢化、国民の価値観多様化など、地方公共団体に対する住民の要望はますます増大し、行政需要は増加の一途をたどっております。住民のニーズにこたえ、魅力ある地域づくりを進めるためには安定した財源が必要であり、さらに地方財政健全性を回復するためにも、地方公共団体収入の中心をなす地方税源拡充強化がぜひとも必要であります。特に、中長期的な観点から、適正な租税負担あり方、国、地方を通ずる税源の再配分に関して抜本的な検討を行い、地方税源の増強を図っていただきたいのであります。  また、都市立場からは、都市的税目である法人所得課税市町村への配分強化個人所得課税における市町村への配分割合拡充、なかんずく利子配当所得について地方税として課税できる方途の検討都市における人口の流動、消費実態等による消費流通課税等間接税充実を図るとともに、地方道、特に市町村道整備促進のための道路財源強化を推進する必要があります。さらに、地方財政の厳しい状況及び負担公平確保見地から、非課税等特別措置につきましてはなお一層その整理合理化を行っていただきたいと思います。  第二点は、地方交付税総額安定的確保についてであります。  御承知のとおり、地方交付税制度は、地方公共団体自主性を維持しながら、地方財源均衡化及び必要な財源確保保障により、地方自治の本旨の実現を図ることをその目的としております。また、地方交付税は、その総額国税所得税等の三税にリンクされておりますものの、私ども地方公共団体は、これは国が便宜的に一括徴収する形態の地方税とも言うべきもので、共有の独立財源と認識いたしておりまして、地方税とともに大きな柱となっております。  言うまでもなく、地方公共団体財源措置としてはみずから徴収する地方税によることが最も望ましいのでありますが、税源が偏在する実情により、地方税充実強化のみによっては行政需要に対応できないことから、地方交付税所要額安定的確保がぜひとも必要であると考えております。しかしながら、地方交付税総額昭和五十八年度以降、二年連続して減少したことにつきまして、地方公共団体としては今後の地方交付税総額確保につきまして一抹の不安を抱いているのであります。  現在御審議中の改正法案におきまして、昭和五十九年度から地方交付税総額について当分の間、特例措置を講ずることとされておりますが、従来の交付税特別会計からの借入金方式よりも、地方公共団体にとりましては厳しい方式と受けとめております。しかしながら、現在の国の財政状況及び地方財政健全化観点から見ますと、当面やむを得ない措置と考えておりますが、諸先生方におかれましては、中長期的な地方財政健全化に配意しつつ個々地方公共団体の各年度財政運営に支障を生じないよう十分御留意賜り、地方交付税総額を安定的に確保していただきますようお願い申し上げる次第であります。  第三点は、国庫補助金等整理合理化についてであります。  この問題につきましては、地方自治体の自主的財政運営資金効率的運用を図る見地から、全国市長会を初め地方団体におきまして、機会あるごとにその推進を要請してまいったところであり、徐々にではありますが、その合理化が進められております。昭和五十九年度には、保健所運営費補助金につきまして給与費における超過負担改善を図った後、交付金制度に移行いたしたところでありますが、地方公共団体自主的財政運営見地から、今後もこのような方向での御検討をさらに進めていただきたいと存じます。  国は、昭和五十八年度、五十九年度にわたり補助金等の一割削減を実施するなど、従来にも増して積極的に整理合理化を推進し、補助金等総額を厳しく抑制されておりますが、地方公共団体側から見ますと、このような一律削減方式で行われますと、地方への負担転嫁となりはしないかと危惧いたしております。したがいまして、補助金等整理合理化に当たりましては、まず事務事業見直していただきまして、地方自主性補助金等効率化観点に立って、一般財源化統合メニュー化総合化を推進していただきたいと存じます。この合理化を推進していく過程におきまして、事務事業の縮小なしに補助金等を縮小する、いわゆる地方への負担転嫁だけは行うことのないよう、特に御留意賜りたいと存じます。  なお、補助金等にかかる超過負担解消につきましては政府おいで毎年度合同調査を実施し、その解消措置がとられてきておりますが、引き続き十分な御配慮を賜わりますようお願いいたします。  以上、当面する地方行財政の諸問題につきましてお願いかだがた私の意見を申し上げましたが、現在の経済情勢や、国、地方を通ずる財政環境のもとにおきましては、本改正法案はやむを得ない措置と考えておりますので、この上は、速やかにこの法案が成立いたしますよう、何とぞよろしくお願い申し上げまして、私の公述を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  4. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ありがとうございました。  次に、野呂参考人お願いいたします。
  5. 野呂昭朗

    参考人野呂昭朗君) ただいま御紹介いただきました立教大学野呂でございます。  財政危機と言われて久しいわけですが、最近の地方財政を取り巻く環境は以前にも増して厳しいものがあり、地方財政がいつになったら健全さを取り戻して、安定的で自主的な財政運営が可能になるのか、非常に不安を感じている者の一人でございます。  本年度地方財政運営の指針となっております五十九年度地方財政計画を見ましても、昭和三十年度以来の厳しい抑制型となった昨年に次いで低い規模のものであり、超緊縮型の地方財政姿そのものであると言っても言い過ぎではないと存じます。また、毎年歳入の一割前後の率で発行されてきております地方債普通会計における累積残高も、五十九年度末には四十兆五千四百億円にも達し、公債費の前年度比伸び率も八・五%増と、他の支出項目の中でも突出した伸び率を示し、歳出全体に占める公債費割合も一〇・七%へと急上昇しており、地方財政危機借金の面からも一段と深まりつつあるように思われます。さらには、第二次臨時行政調査会の提唱する「増税なき財政再建」、行政改革路線基調とした行財政見直し政策地方団体行財政政策にも深く浸透しつつあり、これによる支出抑制負担増地方財政に深刻な影響を与えつつあります。このような厳しい財政環境が五十九年度地方財政対策地方財政計画に反映し、また今回の地方交付税制度改正背景をなしたことも事実であろうかと存じます。  しかしながら、御承知のように、地方交付税制度に関しましては、制度本来の趣旨からいいましても、国の財政の都合でありますとか、またそのときどきの変化の激しい財政事情に、簡単に追随したり左右されるものであってはならないことを尊重することは、今さら申し上げるまでもないことと存じます。このことは、例えば地方交付税制度一つ存在意義が、経済の停滞などで減収となった税収を補てんじて、ナショナルミニマムとしてのあるべき標準的行政を維持するための財源保障する役割を果たすところにあることを見ても明らかであります。そして戦後、シャウプ勧告に基づいて創設された地方財政平衡交付金制度を踏襲した地方交付税制度は、当然、今日でも地方財政平衡交付金制度財源保障機能財源調整機能を備え、また自主的性格を持った一般財源地方団体保障する制度として明確に位置づけられなければならないと存じます。これらの機能性格を実際どのように堅持するかが地方交付税制度の重要な課題でありますが、これが解決されてこそ、戦後三十年間にもわたって地方財政構造のかなめとして位置づけられてきた地方交付税制度地方財政の安定的、自律的運営に資するという制度目的を達成できるものと確信するものであります。そして、地方交付税あり方制度改正検討するに当たりましては、今述べたようなことを念頭に置いて判断することが今日でも非常に重要なことだと存じます。  さて、今回の地方交付税制度改正についででありますが、私はこれについては三つの視点に分けて意見を述べたいと存じます。第一点は、地方交付税制度の本来的な視角から最近の地方交付税特徴を述べることであります。第二点は、本年度地方交付税改正が最近の地方交付税動向から見てどのように位置づけられるべきか、その改正意義を述べることであります。第三点は、地方交付税制度の今後の展望と課題について若干触れてみることであります。これらの課題にこたえるためには、地方交付税総額決定方法地方団体への配分の仕組み、地方交付税の使途など、制度の仕組みと運営全般にわたって検討を加えるべきだと存じますが、時間の制約もありますので、地方交付税総額に焦点を当てて意見を述べてみたいと存じます。  まず第一点の、最近の地方交付税動向特徴についてでございます。  地方交付税総額に的を絞って述べるわけでありますが、地方交付税総額といえば、いろいろな段階で取り上げることが可能かと存じます。第一は、国税三税の三二%、つまり法定繰入額であります。第二には、国の一般会計に計上した段階での総額であります。第三には、交付税特別会計から地方団体配分される額、すなわち当初予算では地方財政計画に計上された地方交付税額であります。地方団体にとって重要なのは実際に地方団体配分される地方交付税額でありますが、最近では、これが国税三税の三二%とどういう関係になっているかが大きな問題点であります。  さて問題なのは、この国税三税の三二%の地方交付税額地方財政計画に計上される地方交付税額とがここ十年間にもわたって大きく乖離してきたことであります。この乖離は、最高でありました五十四年度には後者の地方交付税総額国税三税の四七%にも達しました。このようなことがどうして可能であったかといいますと、交付税特別会計における借り入れ多額であったことと臨時地方特例交付金の加算があったことであります。そして、交付税特別会計における借り入れ多額に上ったのは、毎年の地方財政対策において巨額財源不足額が生じ、この補てんのために交付税特別会計借り入れを前提とした地方交付税額措置されたことであります。このことは何を意味するかと申しますと、第一には、国税三税の三二%の地方交付税額が、あるべき行政水準確保するための財源として現実に必要な地方交付税総額に著しく不足したということであり、言ってみれば、国税三税の三二%を交付税総額とする制度が長期にわたって形骸化しでしまったということであります。第二には、この穴埋めを交付税特別会計における借入金措置したわけでありますが、借金という臨時的財源で急場をしのいできたために毎年多額借入金交付税特別会計に残り、この償還のための負担地方交付税をますます圧迫することになったということであります。  次は、第二の、今回の改正意義についてであります。  改正の要点の第一は、交付税特別会計における借り入れを今後は原則として行わないことにしたことであります。まず、この交付税特別会計における借り入れ停止背景には、借入金巨額に上り、その償還のための負担が毎年多額になり、これ以上借り入れに依存することは国税三税の三二%の大部分を償還に充てることになってしまうのではないかという危惧すらあったことも一つ要因がと存じます。この意味では、借り入れ停止地方財政健全化に役立ったと思いますが、しかしこの借り入れ方式は、五十年代の低成長による税収入の減少と巨額赤字公債の発行という未曾有の財政危機のもとで必要な地方交付税総額確保する手段であった点で評価すべきであろうと存じます。また、この借入金については、その償還責任地方にだけ負わせることなく、国の責任も明らかにし、しかも地方財政不足財源一般財源補てんする役割をも果たしたことは当時としては評価すべき点だと存じます。  改正点の第二は、借り入れ方式停止にかわる措置として、当分の間、地方交付税交付金特例措置を講じたことであります。これによって国は必要な地方交付税額確保することを示唆していますが、国の財政は六十五年度までに赤字公債からの脱却を目標とし、また増税なき財政再建行政改革という臨調路線を踏襲される限り、よっぽどの経済財政状況の好転でもないと、地方財政不足財源を国の一般会計から補てんするだけの余裕が国の財政にあるとは考えられません。むしろ臨調路線地方財政余裕論、国と地方の車の両輪論国依存の安易な地方財政運営批判論が優勢を占める現状では、国の財政への協力、つまり地方交付税減額のための特例措置の採用の危惧すら存在していると思われます。しかも、今度の改革では、国が地方交付税増額するために特例措置を講じた場合でもこれを後に精算することにしております。このことは、地方にとっては利子のつかない借金をしていることと同じであり、将来の地方交付税制約要因にすらなる可能性もあるということでございます。  改正の第三点は、交付税特別会計借入金償還方法を変更し、第一には六十五年度まで借入金元金償還を行わないこと、第二には既定借入金のうちの国負担額一般会計借入金に振りかえること、第三には借入金地方負担分利子については地方団体負担とすることを確定したことであります。したがって今後、地方団体配分される地方交付税額国税の三二%から毎年確実にこの利子が差し引かれた金額となるばかりでなく、繰り延べられた元金償還が六十六年度以降から始まり、この償還方法の決め方によっては地方交付税決定圧迫要因となる可能性があることだけでなく、地方財政巨額財源不足に見舞われるおそれすらあることであります。  次に、今回の地方交付税制度とは直接関係はございませんが、五十九年度地方財政対策について若干述べてみたいと存じます。  五十九年度地方財政財源不足額は一兆五千百億円と見込まれ、このうち三千四十九億円は地方交付税補てんすることとし、残りの一兆二千五十一億円は建設地方債増発補てんされました。地方交付税分は、借入金償還方法変更分一千二百八十九億円と五十九年度地方交付税交付金特例措置分の一千七百六十億円の合計額であります。元金返済分の一千二百八十九億円は償還繰り延べによって生じた財源であって、実質的な国の財源不足補てん措置は一千七百六十億円ということになります。この補てん額では不足財源総額の一割程度にすぎなく、従来、地方財政対策において財源不足額の少なくとも半分は地方交付税増額補てんしていたことに比べ、余りにも低い金額であります。これは地方交付税特別会計借り入れ停止されたことと関係があろうかと存じますが、これによって五十九年度地方交付税地方への配分額国税三税の三二%よりも二千億円も少なく、また前年度に比べ三・九%も低い状況にあります。このように五十九年度地方交付税借り入れ方式停止、低額な特別措置によって、二年連続で前年度を下回るというかつてない事態となったことは、今回の改革の今後を象徴しているかのようにも思われてなりません。また、建設地方債増発についてでありますが、財源不足額地方債増発補てんした割合は、五十年度以降について見ると四〇%ないし五〇%程度であったが、今回の場合は八割にも達しており、五十九年度財源対策の異例さを示していると思います。建設地方債措置された分は本来財源対策債でありますが、大蔵省によると、地方債の発行による金利負担を軽減するための臨時特例交付金は五十九年度発行分について予算計上しないことのようでもおり、地方財政負担要因がまた増大したことになります。  最後に、地方交付税制度の今後の展望と課題について若干述べてみたいと存じます。  まず第一には、地方財政財源不足は当分解消しないだろうということであります。  その理由について述べますと、第一には、経済の著しい好転はここしばらく期待できないだろうということであり、第二には、これまで生じた巨額財源不足額補てんするためにとられた交付税特別会計による借り入れであるとか地方債増発は緊急避難としての臨時の財源措置であったために、根っこからの不足要因は今でも何ら解消されないで残存していることであります。第三の理由は、国の財政再建対策のしわ寄せによる地方負担増借金増大による公債費の急増によって地方財政の窮迫状態は以前にも増して深刻化していることであります。  また第二には、今回の地方交付税制度改正によってもこのように巨額に上ることが見込まれる財源不足額補てん措置の主役は建設地方債であろうということであります。その理由は、交付税特別会計における借り入れ停止、臨時特例交付金の解消、国の一般会計から支出される特例措置が極めて少額であることに見られるごとく、従来にも増して国の負担は少なく、国の責任の回避が先行していることであります。また、増発されるであろう建設地方債地方交付税の肩がわり財源性格を持っており、これは言ってみれば地方交付税が建設事業債にかわることによって償還すべき特定財源に変質したものと同じことなのであります。したがって、またこのような建設事業債の増発がある限り、国税三税の三二%の地方交付税額と現実に地方団体配分される地方財政計画上の地方交付税総額とが表面的、数字的にはたとえ一致することがあったとしても、これは決して地方交付税の現実の必要額を満たしていることを認めることにはならないということであります。  以上で私の意見を終わります。
  6. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ありがとうございました。  次に、田中参考人お願いいたします。田中参考人
  7. 田中啓一

    参考人田中啓一君) ただいま御紹介にあずかりました日本大学の田中でございます。  まず、このような機会をいただきましたことを深く感謝いたします。  時間の制約もありますので、私が気づいた点を五点ほど述べさしていただきたいと思います。  まず、本法案関係することが二点、長期的な視点からが三点でございます。  地方財政の増大化あるいはまた健全化のための手段といたしましては、まず第一番目に受益者負担の増大を含めた歳入増を図ること、二番目に歳出減を図ること、三番目に国の財政補助の増大を受けることなどが考えられますが、今年度改正法案といたしましては、一番目の歳入増を図って財政規模の拡大を賄っだということが指摘できるかと思います。しかも、その財源は、一、地方税の増収と、二、受益者負担の増大と雑収入の増大によって地方交付税、国庫支出金の絶対的減少を賄っていることであります。このことは、現象的には地方税を中心とした自主財源確保によって財政規模の拡大を図ったので、中央集権化傾向を少しでも食いとめるものとして一応の評価を得ることができる地方財政計画とも言い得るわけでございます。  しかし、問題はそのように簡単ではありません。まず第一に、国家財政悪化のしわ寄せが地方財政に来ていることでございます。すなわち、地方交付税借入金の返済、精算分などにより、対前年度比三千四百五十八億円、三・九%も減少し、また国庫支出金も公共事業補助負担金の減少を中心として、同じく八百五十一億円、〇・八%の減少となっていることであります。第二に、この国家財政のしわ寄せが住民負担増によって賄われようとしていることであります。しかも地方税、とりわけ普通税は一兆二千三百三十三億円、七%もアップしておりますが、それが果たして実現可能なのか、この不況時代においては甚だ疑問の残るところでございます。第三に、手数料及び使用料の、いわゆる狭義の受益者負担が確実に増大していることであります。額はまだ小さいが、顕著な傾向として注目されることであります。しかも、受益者負担あり方検討されないままに増大しているので、将来に大きな懸念が残る点でございます。地方債は二千四百億円の減少となっておりますが、財政悪化を少しでも食いとめるものとして一応の評価ができると思います。しかし、結果的には、これらの状況から地方債増発によってカバーすることになりかねない懸念も強いわけでございます。  歳出面では、給与関係費のアップ分を投資的経費の減少でカバーするというパターンが最近では定着してきております。これはイギリスの地方財政が陥っている財政構造に酷似するものでありまして、先行きの不安が見られるわけでございます。都市整備をまだまだ進めていかざるを得ない日本の方がイギリスの地方財政よりもはるかに深刻であるとも言い得るわけでございます。また、地方債は、地方債残高の急増を反映し、四千六十億円増の五兆一千六百三十四億円となっております。この結果、歳入面で公債収入の占める比率は九・九%でありますが、歳出中の公債費が占める比率は一〇・七%となっており、前年度の一〇%よりもウエートを高めてきております。公債費が公債収入を上回る現象が定着しつつありますので、この面からも、ある意味では国家財政よりも抜本的な対策が急務であります。しかも、地方財政法では公債発行の枠が財政法第四条の制約よりもはるかに緩やかでありますので、何らかの歯どめも考慮する時期にあると思われます。  次に、第二点として今年度改正法案でも不公平税制がほとんど改善されなかったことであります。とりわけ垂直的な公平さが資産課税を中心としたものに見られないのは残念なことであります。また、得べかりし税収源を失っていることも不満が残る点でございます。例えば事業税などの非課税の範囲などについても見直しの時期にあるというように思われます。  さて、これ以下では長期的、大局的な視点から述べさしていただきたいと思います。  すなわち、まず第三点として、地方財政が大きな転換期を迎えているという認識が必要不可欠であることであります。このことは、高齢化社会の到来、財源難などによりまして、地方財政がなすべき役割り、すなわち行財政サービスと住民負担とのあり方とを再検討さしていることでございます。  まず、歳入面では七対三、歳出では三対七に逆転する現在の財政構造改革が必要不可欠であろうかと思います。このことが国、地方政府間の政策の不整合、中央集権化、ひいては国民、住民サービスの低下、経費のむだ使いなどを生み出しているのであります。このため、当面は歳入でも五対五ぐらいになることを目標として、地方財源充実を図っていくことが望ましいわけであります。これには、まず地方税を中心とした自主財源の確立と地方交付税を中心とした国、地方間の財源調整のあり方の再検討が必要不可欠であります。もっとも、地方自治発祥の国イギリスでも、地方政府の課税権を制限する中央集権化が一段と進められたり、アメリカではプロポジション十三事件以来、その不足分を連邦補助金に依存せざるを得なくなったり、あるいはフロストベルト都市――衰退都市でございますが、そこでは財政悪化のためにますます連邦依存度を高めているというように、欧米先進国では地方自治の確立よりも、むしろ最近では中央集権化の波が強くなっていることも事実であります。  このような状況下で、日本は地方の時代を迎え、どのように対応していくべきかを今から真剣に考える時期にあると思います。そのためにも、良識の府である参議院のリードのもとで、長期検討委員会などを設置して、あるべき地方自治検討すべきであると思っております。  ここでは、地方交付税の、国税三税の伸縮性と安定性を重視する地方財源とのアンバランス、あるいは地方交付税制度の利点である地域間格差の是正を図るという点は残しながらも、中央集権化の手段として使われるという弊害を少しでも除去するシステムの確立、さらには国庫支出金などでも、余りにもその使途などが細か過ぎる、いわゆるひもつき財源のマイナスを除去し、いわば電源三法に見られるような緩い制約などを検討すべきであります。これはイギリスの地方財政における特定補助金よりも一般補助金をふやしていくという姿勢が注目されますが、具体的には、我が国の場合には国がもっと自治体を信頼し、起債や単独事業などについても信頼するという、あるいは自主的な判断を信頼するという姿勢が大前提であろうかと思います。  次に、第四点としまして、長期的な視点から地方自治地方財政を考えていくという姿勢が不可欠になってきたことであります。このためにも自治体みずからが姿勢を正すといいますか、時代が大きく変わったという認識が必要であろうかと思います。すなわち、自治体といたしましては、これまで以上に多くの制約の中でも自主財源確保に努力したり、歳出合理化に努めるべきであります。また、大都市財源がこれまでは豊かであり、それが地方財源に回っておりましたが、大都市にも外国と同じように衰退現象が出てきた以上、これまでのパターンは変わってきたという認識が特に地方の自治体には必要であろうかと思います。地方の自治体みずからが財源確保し、都市整備を進めていく必要が増大してきているのであります。地方自治体の方が一面では国家財政よりも改善が求められるという点はこのことでございます。このため、少なくとも国から補助金をできるだけもらった方が苦労して自主財源確保するよりも容易であるという姿勢は反省していく必要があろうかと思います。このためにも現行の基準財政需要の算定方法なども再検討の余地があろうかと思います。自治体の自主努力をよりカウントするシステムの確立とともに、既存の財政指標が財政健全性をあらわす指標であっても、その行政効果や行政効率をあらわす指標に改良していくことが、これから何よりも必要であろうかと思います。すなわち、既存の財政指標以外に、労働生産性とか、あるいはまたその地域に与えた厚生関数的社会指標等の多様な指標をもって、この財政援助をするという考え方が必要であろうかと思います。  最後に、五点でありますが、納税者であり行財政サービスの受益者でもある住民側も時代の変化を認識する必要があり、そのためにも自治体は積極的なPRを行うことが必要であろうかと思います。すなわち、不公平税制の是正をより強力に図るとともに、住民行財政サービスにはコストがかかり、だれかがその負担をしなければならないことを再認識することであります。その際、最も重視すべきは、だれがどのように公平に負担すべきであるかという点でございます。また、財源的にも一層制約される今後にありましては、住民は何が何でも公共部門に依存するという、いわば公共サービスのただ乗りという姿勢は強く反省されなければならない点であります。特に、クワジパブリツクグッズと言われます準公共財の分野では、このことが強調される必要があろうかと思います。このためにも、地方財政では受益と負担との関連をもっと積極的に考えていく必要がございます。この際には、社会的弱者の負担増に留意しながらも、能力説的な考え方も加味した財政負担が考えられるべきであります。また、財源調達の多様化のためには住民も、いわば租税だけではなくして、あるいは起債だけではなくして、コミュニティーボンドというような点にも協力していく必要が今後の課題となってくるでありましょう。今まさに、国と地方関係とともに、地方自治体と住民とが行財政サービスと住民負担とをめぐって建設的な検討をすべき時期にあると言わなければならないと考えております。  以上でございます。
  8. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ありがとうございました。  次に、中西参考人お願いいたします。
  9. 中西啓之

    参考人中西啓之君) 御紹介いただきました中西でございます。  私は、ことしの交付税問題の中で最も重要な問題は、今回提案されております交付税法の附則第三条、交付税の総額に係る特例措置の問題であるというふうに考えております。したがって、この問題に絞って意見を申し述べたいと思います。  今回提案されております内容につきましては、既にことしの一月十九日、五十九年度の予算編成に向けて出されました「昭和五十九年度地方財政対策の概要」で次のように述べられたところであります。一つは「地方財政健全化に資するため、昭和五十九年度以降、原則として、交付税特別会計における新たな借入れはやめる。これに代わる各年度地方財源措置として、当分の間、地方交付税交付金特例措置を講ずることとする。」、第二には「国は、一に伴い、既往交付税特別会計借入金約十一兆五千二百億円のうち、国負担額約五兆八千三百億円を一般会計借入金に振替整理する。」、第三には「上記の措置に伴い、昭和五十九年度以降、交付税特別会計に残る借入金(約五兆六千九百億円)の元利償還地方負担とする。」、これがその内容であります。  私は、今回の措置は単なる運用上の手直しといった部分的な事柄ではなくて、地方交付税あり方全体あるいは地方財政あり方全体にかかわる大変重大な変更措置ではないかというふうに考えております。  御承知のように、現行の地方交付税法では、その第六条の三の二項で「毎年度分として交付すべき普通交付税の総額が引き続き第十条第二項本文の規定によって各地方団体について算定した額の合算額と著しく異なることとなった場合においては、地方財政若しくは地方行政に係る制度改正又は第六条第一項に定める率の変更を行うものとする。」というふうに定めております。すなわち、現在の地方交付税制度というのは、財政調整機能と同時に地方自治体の財源保障機能をも持っており、交付税の総額財源不足額と著しく異なる場合には、交付税率を引き上げるか、あるいは財政制度改革を行うか、どちらかということが明瞭に決められているわけであります。この趣旨に沿いまして、昭和三十二年から四十一年にかけまして、逐次交付税率が引き上げられてきたということは御承知のところであります。  今回の措置関係いたしまして、今問題になっております交付税特別会計による資金運用資金からの借り入れ方式というのは、第一次石油危機以降の不況によって生じました歳入欠陥、昭和五十年の年度途中での国税及び地方税収の著しい不足、これを補てんするための暫定措置として、交付税の不足分を資金運用資金から借り入れるという措置がとられたんですね。これ以来、毎年こういう方式がとられてきたのが経過であります。私は、本来ならば、この五十年あるいは五十一、二年の時点で、交付税法の規定に従って交付税率を引き上げるか、あるいは地方財源の抜本的な拡充をやるべきであったというふうに考えております。しかし、それが行われずに暫定的な措置が続けられまして、結局、この不足額については国が財源保障責任を持たねばならないという立場から交付税特別会計に貸し出しを行い、元金については国が二分の一、利子は全額国が負担するというルールが曲がりなりにも守られてきたというのが今までの経過であったと思います。  なぜこういうルールが決められたかと言いますと、交付税法第六条の三の二項の趣旨に基づいて、当然不足する場合には国が財政措置をするべきだという暗黙の前提に基づいてこういうルールが確立されたというふうに私は理解しております。ところが、昭和五十年度以降、恒常的に地方財源が不足いたしまして、一方では交付税特別会計が毎年資金運用資金から借り入れを行い、他方では財源対策債をどんどん増発していく、そういういわばその場しのぎの暫定措置が繰り返えされてきました。で、五十七年度まではともかくこの措置がとられて、利子分は全額国が負担するというルールが守られてきたわけでございますが、五十八年度になりまして、国の財政難を理由に、五十八年度限りの特例ということでもって、利子負担を国と地方で折半するという措置がとられたわけであります。これは、今日から考えますと大変重大なルールの変更であったというふうに考えております。このため実質的に交付税を減額するという結果になったというふうに私は考えるものであります。  今回、交付税会計の借り入れ方式を廃止して、これまでの借入金十一兆五千二百億円のうち五兆六千九百億円の元利償還地方負担する、こういう措置をとられたわけですが、これは何を意味するのかと申しますと、これは交付税率の引き上げあるいは地方税源拡充という抜本的な制度改革というのは今後行わないということを宣言したに等しいんですね。つまり、交付税法六条の三の二項の趣旨に基づいて財源保障を行ってきたこの暫定措置までも取りやめてしまったと、こういうことを意味するのではないかと考えるものであります。つまり、交付税法第六条の趣旨に基づいて考えますと、一層後退をした。交付税法で定められている税率の引き上げあるいは財源拡充という方向からますます遠ざかるということを表明したというふうに考えるものであります。  これにかわりましで特例措置を講ずるということが打ち出されておりますけれども、しかしこれもまた大変大きな問題を含んでおります。この特例措置というのは、財源が不足した場合加算をするということと同時に、地方財政余裕が生じた場合には減額をするということをも含んでいるわけであります。ところで、加算をするという場合に、何らかの形で交付税を増額しなきゃいかぬ。ところが、現在国の財政は御承知のように多額の累積債務を抱えておりまして、とても加算をするだけの余裕はない。つまり、極力加算をしなくてもいいようなそういう国からの圧力が今後加えられてくることは必至であります。どういうやり方でそれがやられるかといいますと、恐らくそれはこの地方財政計画における歳出そのものを少なく見積もらせるという方法がとられてくるというふうに予想されます。  ここで皆さん方にお配りしております地方財政計画と国の一般会計予算の伸び率の推移を表にしてございますが、ここ何年かの地方財政計画歳出総額と国の一般会計予算の歳出総額を比較いたしますと、昭和五十五年以降、地方財政計画歳出総額伸び率が国の歳出総額を下回っている。ほとんど下回っているということに気がつくわけであります。例えば昭和五十五年、国の一〇・三%に対しまして地方は七・三%の伸び、五十六年が国の九・九%に対しまして七・〇%の伸び、五十七年が六二一%に対して五・六%の伸び、こういうふうに、一貫して地方財政計画歳出総額が非常に低く抑えられております。  国の予算は、御承知のように昭和五十五年以降ゼロシーリング、マイナスシーリングでもって極度に圧縮されているわけですが、それ以上に地方財政が圧縮されてきている。すでにこの地方財政計画歳出を極度に圧縮するという作業が進んでいるわけであります。その結果、いわゆる算出される財源不足額というのが相対的に近年少なくなってきているというふうに受け取れるわけであります。例えば、この右の財源不足額の表にありますように、かつては三兆五百億、四兆一千億というかなりの不足額があったのが、五十五年以降になりますと二兆円台で推移をしております。五十九年度についても二兆円から三兆円の不足と言われていたわけですが、結局一兆五千百億円にとどまっている。これは結局、地方財政計画歳出を低く抑えることによって財源不足額を少なくしたのではないかというふうな想定ができるわけであります。結局、この地方財政計画歳出抑制されますと、いろいろな影響が地方自治体に出てまいります。例えば地方自治体の独自施策のための地方単独事業伸び率、これが五十八年度はゼロ、五十九年度は史上初めてマイナスの三・三%減というふうな結果をもたらしております。  こういうふうにいたしまして歳出抑制を進めていくならば、形の上で地方財政余裕が出るという形をとりながら、実質は地方財政が大変窮迫するという結果をもたらしてまいります。しかも、そういうふうになった場合に、形の上で地方財政余裕があるということを理由に特例措置減額措置が適用されて、交付税が増額されるどころか、逆に減額されるという結果を生み出すというおそれがあります。つまり、無理に歳出抑制して地方財政余裕を生じさせておいて、それで交付税を減額する。これは地方自治体の側からいいますと大変困ったことになるわけでございます。この地方財政計画規模を縮小した場合、その影響をストレートに受けるのが地方自治体そのものであります。  ここで私は、昭和五十七年に出されました第二次臨時行政調査会の基本答申の第四章「国と地方機能分担及び地方行財政に関する改革方策」の中で次のように述べられているのを思い出すわけであります。その第一は、地方交付税について、地方交付税年度間調整、これは従来から行われているわけですが、この年度間調整の充実について、この制度化を含めて検討しなきゃいかぬということ。それに絡みまして、現行の地方財政計画というのは単年度のものだ、これじゃいけないので、年度間の収支年度途中の増減が反映されるように改善しなきゃいかぬということが述べられております。第二には「地方行政の減量化と地方財政関係費の抑制方策」といたしまして、「国の一般会計における地方財政関係費の見直しを行う」、「地方財政計画における歳出については、国の歳出抑制に準じて抑制する。その際、国の歳出抑制に連動しない地方単独事業については、効率化合理化観点から見直すものとする。」というふうにはっきり述べられております。一方では地方財政計画歳出総額抑制する、他方では地方交付税制度年度間調整という名のもとに減額措置を行えるようなシステムをつくり出し、実質的にそれが交付税に対する国の支出を減らしていく、こういうふうな意図がここで提起されているように思われるわけであります。  今回の交付税における特例措置というのが単に増額のみならず減額措置も含んでいるということ、現に五十九年度増額措置一千七百六十億円のうち三百億円については六十六年度以降減額措置をするといったことが決められているということを考え合わせますと、将来、地方財政計画歳出総額抑制することによって実質的に交付税を減額していくということは十分に考えられるように思います。これは結局、交付税法の趣旨に基づきまして交付税率を引き上げ、あるいは地方財源拡充するというオーソドックスな制度改正に道を閉ざすということばかりじゃなくて、逆に、今後実質的に交付税を減額していく制度に道を開いた、こういうふうなことを私は大変危惧するものであります。  したがって、今回の交付税法の改正は重大な問題を含んでいるということを申し上げまして私の意見を終わりたいと思います。
  10. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ありがとうございました。  次に、西村参考人お願いいたします。西村参考人
  11. 西村暠夫

    参考人西村暠夫君) 西村暠夫でございます。  地方財政昭和五十年度以降、国と同様に大幅な財源不足に陥っております。対応策として、建設地方債増発と、国の一般会計からの臨時地方特例交付金交付税特別会計資金運用借入金による地方交付税の増加措置財源補てんをしてきたわけであります。その結果、昭和五十九年度末の地方債の現債高は四十兆五千四百二十一億円と見込まれ、それに交付税特別会計の借入残高五兆六千九百四十一億円と公営企業債残高の見込み額八兆二千九十三億円を足しますと、五十四兆四千四百五十五億円になります。この額は昭和五十九年度地方財政収入予定額の四十八兆二千八百九十二億円を上回りますし、その償還地方財政の将来に大きな負担となる状況にあります。今回の地方交付税法の改正となったわけであります。  改正について若干の感想を述べたいと思います。  改正が意味するところは、昭和五十年度から続いてきた財源不足対策の変更であります。従来財源不足額の約二分の一を穴埋めしてきた資金運用部からの借り入れ原則として廃止し、今後の財源不足建設地方債増発と国が地方交付税に上積みする特例加算で賄おうとするものです。同時に、これまでの交付税特別会計における借入金十一兆五千二百十九億円のうち国が負担することとなっていた五兆八千二百七十八億円は、昭和五十九年十月一日に国の一般会計借入金に振りかえ整理されます。それ以降は、この借入金償還は元利ともに国債費として国が負担します。他方、地方負担する五兆六千九百四十一億円につきましては、そのまま交付税特別会計借入金として残ります。しかし、国と地方償還についての責任が明らかになったことによって、昭和五十九年十月一日以降は元利ともに地方負担になります。昭和五十三年度地方交付税法第六条の三第二項の規定による制度改正として、同年度以降の交付税特別会計における借入金については、地方財政負担軽減のため、その償還に際しては国が実質的に二分の一を負担することが決まりました。しかし、この二分の一負担原則は、地方財政状況などによって変更できると規定されていますから、不安定な面も残していたわけです。それが今回の改正によって、これまでの借入金を国と地方負担区分に応じて明確化し、同時に固定化したわけですから、上述の不安定さを解消したわけで評価されるべきことであります。同時に、交付税特別会計借入金利子負担につきまして国と地方の間で対立があったわけですが、借入金そのものの負担責任が明確化されたことによってこの問題も結論が出たわけです。  これまで資金運用部からの借り入れにつきましては、借金でありながら交付税交付金として配付されていたために、地方自治体に借金としての意識が薄かったわけです。そのことは、ひいては地方財政健全化を妨げます。地方財政における財源不足補てんするのは国の責任であるといった国への依存意識を修正する点で意味があります。地方財政健全化への刺激効果があると言えましょう。  私は、かねがね地方財政の主体性を生かし、活力を与えるために交付税制度の理念や制度を再検討する時期に来ていると感じていました。今回の改正は、そのための一段階であると言えるかもしれません。しかし、改正によって多くの問題も発生するわけです。  第一に言えることは、地方交付税法第六条の三第二項の規定の精神を生かして、制度改正を速やかに行って抜本的な対応策を講ずべき状況に早くから入っているのに、その場しのぎの技術的対応でしのいでいるという状態が続いていることです。  第二の問題としては、今回の改正によりまして、毎年法律によって一般会計からの特例措置を講ずるわけですが、それによって、国と地方の間で一般会計財源確保をめぐって争いが生ずると危惧されます。かつて地方財政平衡交付金制度における財源不足額の算定をめぐって国と地方意見の対立をもたらしたり、地方団体財政運営の中央依存の風潮を生んで、現行の交付税制に移行したことを思い起こしていただきたいのであります。さらに、これは当然地方交付税総額安定的確保を困難にいたします。  第三の問題としては、地方財政が不安定となることは、各自治体が中長期的に安定した計画性のある財政運営ができなくなるおそれがあります。また、地方財源不足に対応するため、いわゆる財源対策債を発行することになるわけですが、これはつまり利子付き交付税の性格のものとなり、苦しい地方自治体の財政運営にさらに負担を課すことになります。  第四の問題としては、今回の改正によって、資金運用部からの借入金地方負担分償還昭和六十六年度以降に繰り延べられます。そのことは地方利子負担が強まることになり、地方交付税率が実質的に切り下げられたのと同じ結果をもたらします。  第五の問題として次の点も気になります。今回の改正で、特例措置として「当分の間」という条件を置いています。「当分の間」とは、地方財政が好転しまたは地方税制度の基本的改正が行われ、地方財政健全化が図られるまでの間とされています。しかし、こうした期待される状態は、「当分の間」においてはとても期待できそうにないと思われます。  次に、地方交付税制度あり方について若干の意見を申し述べます。  我が国の地方交付税制度は、財源保障目的とした財政調整制度としてきめ細かくつくられた制度であります。しかし、検討すべき問題を抱えています。  一、地方財政保障するという性格が強くなり、財源均衡化機能が低下して地方行政の画一化が進み過ぎた嫌いがあります。国と地方財源配分に当たって、地方税増額によって各地域負担とそれに伴うサービス水準とが、ある限界内という条件において地域間に差異を認めてもよいと思います。そのことによって地方特徴を生かしたサービスの提供の効率化が期待できると思うからであります。このことは地方交付税制度による制度的硬直化を防ぐというねらいを意味します。  二、交付税の額が景気変動に応じて変化する点を補うための措置がとれぬものかと思います。臨時行政調査会の答申でも指摘している地方交付税年度間調整措置制度化を図ることもその一つであります。固有財源としての性格を失しないようにして、計画的な運営を確保したいと期待します。もとよりこの考え方は地方交付税の基本的な性格にかかわりますから、地方交付税の本質を考えて、自主的な地方財政を維持するという観点から検討すべきであります。  三、基準財政需要額の算定に当たって地方実情に、より適合した方法がとれぬかという印象を持ちます。測定単位、単位費用、補正係数の適用など、余りに精緻に技術的手法を講ずることによって、かえって地方の実態から乖離する危険があります。  四、常に要請され続けてきたことですが、地方交付税法第六条の三第二項の規定の精神を生かす措置をとるべきであります。普通交付税の総額が引き続き著しく財源不足額と異なる場合は、制度改正または交付税率の変更を行うと規定されています。財源不足の状態は、昭和五十年から引き続いて著しく不足しています。地方交付税総額の算定の基礎を見直すべきです。例えば、地方行政住民行政需要を満たすのに最適な財政規模を算定し、それを全国的に総計して必要な交付税を計算するという算定の基礎の見直しの作業を考えたいと思います。もとより地方財政平衡交付金制度がもたらした弊害を避ける必要があります。また、交付税率が国税三税総額の三二%になってから、これは一九六六年度昭和四十一年度でございますから、十八年が経過しています。税率の改正を考えてしかるべきであります。  五、国庫支出金については前年よりわずかに減額されていますが、運国策を工夫することで地方財政に益します。特定の施策の普及奨励を行いながら、地域実情に合った弾力性を持たせたいと思います。つまり、A、国庫支出金を余り細分化することなく、より広範囲な行政項目ごとに分けて、その範囲内での事業目的のものであれば地方自治体に自主的運営を任せる包括性に富んだものが望ましいわけです。B、補助金の使途を複数のものにして、地方はその中から地域実情に応じた使途のものを選ぶメニュー方式も有効であると存じます。零細な特定補助金を総花的に支出する時代は完全に終わったわけであります。  六、地方財政健全化に取り組む地方の士気を損なわぬように、きめ細かい制度配慮を期待します。例えば、地方交付税不交付団体に対し、義務教育教職員給与費国庫負担金や地方道路譲与税などについて財源規制が行われていますが、これは本来当該地方公共団体収入となるべき財源減額措置であると思います。不交付団体になりますと地方道路譲与税は大幅にカットされます。地方譲与税は、譲与を受けた団体が主体的な判断によって、自主的に工事箇所や工事内容などを決定して使用できるところに意義があります。それだけに、こうした規制イコール減額措置は、不交付団体に対し財政健全化へのやる気に悪影響を与えるわけであります。  以上でございます。
  12. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ありがとうございました。  以上で各参考人意見陳述は終了いたしました。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  13. 岩上二郎

    ○岩上二郎君 非常に御多忙のところ、わざわざおいでをいただきましてありがとうございました。  この際、それぞれ先生方意見を拝聴いたしましたが、最初に太田参考人に、地方の実態から見て、今回の改正問題と絡んでどうすべきかということについていろいろと御意見を承りましたが、さらにこういう角度での御検討はいかがなものであろうかという私の意見も踏まえて、ちょっと御質問したいと思っているところであります。  元来、制度とか法律というのは、一度できますとそれぞれひとり歩きをするものであります。そして、全体の問題を考えて自治省がいろいろと制度的に具体的な地方財政の確立問題を熱心におやりになってくる中で、非常に今日国家財政ということが破綻を来しているために常に大蔵とけんかもし、そして地方住民立場に立っていろいろと制度改正その他をやってまいりましたが、思うに任せず今日に来てしまっておる。しかし、地方の側から見た場合に、例えば交付税率三二%ではとてもやっていけない、こういうことで特会の借り入れというようなものを行って地方財源不足を補ってきたけれども、住民の側から、いわゆる地方団体の側から見ると、それは当然国がやるべきものだ、こういうことで、元利その他はすべて国の責任であるというような安易さというようなものがそこにおのずから生まれてきている。いわゆる甘えの構造というようなものがここに出てきたためにとんでもない一つ借金を背負い、それでは容易ではないということで、あるときには折半、あるときにはこれを改正をしなきゃならない。  今回の問題も、まさしく改正問題の中に地方自治をどう守っていくかということで政府が出されている改正案、これは皆さんそれぞれお述べになったので詳しく申し上げることもないんでありますが、しかし、それにしても、それぞれの批判もあるし、これにそのままついていったとすれば、この特別の財政措置を講じますよと言うけれども、ほかの先生方からも、一体これは果たしてうまくいくのであろうかというおそれなきにしもあらず。それでも、しかしまあまあやってみようというその場限りのびほう策と言えば言えるかもしれないようなそういう措置を講じて、今回何とか交付税の改正というようなものをやってみよう、こういうふうな自治省の苦しみみたいなものを我々は理解できるわけです。  やはりほかの皆さんが述べておられるように、ここまで来た以上、この交付税というもの、いわゆる国税三税との絡みにおけるこの制度というものは、これは抜本的に見直してみる必要があるのではないか、さらに地方税というようなものをもう少し充実する方法がないものだろうかというような考え方がひしひしと述べられているように感じているわけであります。  そこで、私もかつて昭和二十二年から町長を二期やり、しかも知事も四期ほどやってきて、平衡交付金の時代からずっと経験をしている、いわゆる受ける立場から、この全体の法律の今日までの流れというものを肌で感じながら国会に出て、この問題の審議に入っているわけであります。そこで、我々自己批判もするわけでありますが、いわゆる国税三税に基づいた交付税であるがゆえに、この三税という土台になるものが実はだんだんと少な目にならざるを得ない。そうすると、やはりこの機会に痛み分けも必要じゃないか、あるいは受益と負担の区分というようなものをもう少し明確にしたらどうかというような意見等も臨調等では盛んに論ぜられ、また、それを受ける方の側からすれば、そういうものの財源がないからだんだんとしわ寄せが住民に与えられるのではないか。軽量化というか、あるいは減量化というか、効率化というか、合理化というか、そういうふうにだんだんと迫ってこられるような危険性があるということで反対だと、こういうふうな意見だってないわけではないし、それだけの論理ならば我々も十分に理解できるわけですが、しかし国、県それぞれ、いわば普通の民間会社ならば破産法の適用を受けなければならないようなそういう状態に置かれているわけです。  そういう現実の中で今後どう生きるべきかという、そういうふうな場合に、一つの考え方として、やはり住民とともに今の地方自治をどう確立したらいいのかという行政的な一つあり方というものを十分に御検討いただいて、これはそれぞれのブロックごとでも結構ですし、あるいは全国市長会でも結構ですし、知事会でも結構でありますけれども、それらの問題を、いろいろと太田さんお述べになっているような三つの課題、その課題でぼんと政府に投げかけるだけではなくて、もっと具体的に問題を詰めて、そして自分でできるものはやる、できないものはむしろ国に対して要求をしていくという、そういうふうな自主性あるいは創造性というか、そういうようなものをこの際つくり上げていく、そういうふうな努力が必要ではないか。そういう計算というか、計画というようなものをみずからつくり上げて、そして政府に訴えていくというふうな姿勢がまず大事なことではないか。むしろそのことが地方自治を確立させる一つの大きな柱ではないだろうか。こういうふうに私は感ずるんです。  従来、超過課税負担の問題の解消とかいろんなことを言われておりますけれども、しかしそれは、お手並み拝見といったようなものであり、あるいはまた、いろんな行政ニーズに何とかこたえてもらうためには、やはり東京事務所に場所を移して陳情これ努めるというこの体質、これから脱却をしないと本当の地方自治の確立にはならないんじゃなかろうか、こういうふうな感じがするわけであります。  今の制度というものは、民主主義あるいは自由主義、そういうようなものの背景の中からつくられた地方自治法であるし、地財法であるし地方交付税法である。そういうふうな一つ制度的には確かに、地方を守る、地方自治を確立させるという国の姿勢がずっと交付税を中心にして進められてきたものの、もうここまで来ると、とてもじゃないけれどもびほう策を考えざるを得ない、こういうふうなところまで追い詰められてきているわけでありますから、やはり我々もそれらの問題について真剣にこたえなければなりませんし、また、そういう問題について、将来の地方財政はどうあるべきか、地方自治というものはどうあるべきかということを真剣に考えていかなければならないけれども、一番大事な問題は、住民がそれらの問題についてどうこたえたらいいのかという意識を掘り起こす、いわゆる意識改造の問題というものが非常に大事な時期に来ているんじゃないか。特に日本人の性格は縦に弱いというか、縦社会的な社会構造の中にあるだけに、横につながりを持つ住民個々の意識の総体というようなものがつくられにくい体質というか、そういうようなものがある今の縦社会の中で地方分権と言ってみたところでこれはそらぞらしい言葉にしか受け取れないわけでありますけれども、しかし、もうそういう時期は過ぎて、もっとおれたちの力で何とかやり抜くという、そういうものが必要ではないだろうか。何も私はその考え方を、今の体制を賛成するために言っているわけじゃなくて、むしろ今の中央集権の体質をできるだけ改めさせるという別個な角度からの問題提起でもあるわけでございます。  したがいまして、例えば補助金問題、先ほど補助金の統合化とかメニュー化とか言われておりますけれども、そういうものもまず最初のはしりではあるでしょうが、補助金そのものというのはやっぱり国家の縛り、そういうようなものの一つになっていることも事実だと思うんです。だから、補助金よりもむしろ長期低利の融資に切りかえるとか、あるいはどうしてもやむを得ない場合には交付税に織り込ませるとか、交付税に織り込ませて地方自主性なり主体性というものを確立させるような方向に向かわせるべきではないだろうかと思います。いわゆる地方自治の原点というようなものがこの際どんどんと追い詰められてきているだけに、それをはね返すものがむしろこういう機会に必要ではないだろうか、こういうふうな感じを持っておりますので、そこらあたりの具体的な問題の迫り方というものを、むしろ市町村長さんなりあるいは知事の側からひとつ問題提起をされて真剣にお取り組みいただいた方が、この危機というか、国家的な危機でもあるし地方財政危機でもあるその危機を切り抜ける一つの道ではないだろうか、こんなふうな感じを持っておりますので、一言、太田参考人にちょっとお伺いしたいと思います。  それに、田中先生の話でございますが、とてもいい話をいただきました。コミュニティーボンドといったようなものをつくってみたらどうか。やはり我々の地域というものは、地方行政というよりむしろ我々がねらっているものは住民自治である。住民を主体に置いた地方行政でなければならないはずであります。今まではどうも国の行政地方行政というこの二つの絡みで問題が論議されておりますけれども、もう一つその下側にある、あるいはそれが一番主人公でなければならない住民のサイドまでそういう考え方がぐっと出てくるような、そういうものが必要ではないだろうか。  もう一つは、先ほど野呂先生も、それから中西さんもおっしゃっているように、地方財源確保という問題です。むしろ地方交付税よりも地方財源というようなものにウエートを置かせるようなそういう道を求めるべきではないだろうか。その補完的なものとして、シビルミニマム的な一つの要素として交付税というものがある。その交付税がいろんな政府の施策によってうろちょろする、そういうようなことがあってはならないように、ある一つの路線だけは確実に守らせる。そのかわり、我々の主体的な身の回りにいろいろとあるところの問題というものを我々自身の中で解決していくんだ。こういうふうなことでないと、常に依存体質、それから屈従体質というものから抜け切ることができない、こういうふうに思いますので、そこら辺、ひとつ田中先生の御意見、非常に参考になりましたので、またさらにお伺いしたいと思います。  西村先生の御意見も非常にいい御意見を拝聴いたしましたし、野呂先生、それから中西先生、交付税に絡んだこの現実の改正あり方というものに一つの大きな批判を加えておられました。それはそれだけの問題としては我々も十分に理解できるわけです。我々、それだけの問題ならば理解できます。しかし、そういう論議の時代はもうだんだんと――論議のことはそれ自身非常に我々理解できますし、修正させるということも一つの考え方でありますけれども、しかしその中で我々がねらっているものは一体何だろうか、地方分権なり地方自治というものの姿勢というものをもっと明らかにさせる中で、総合的な検討の中で今の地方交付税というものはどうあるべきかという問題を逆に考えていくべきではないだろうかと思いますので、そこらあたりの御感覚も、それぞれ皆さん方、私の問題提起をしている点について御意見があれば承りたいと思いますが、まずもって太田さんの御意見をひとつお伺いしたいものだと思います。
  14. 太田大三

    参考人太田大三君) ただいまの御質問は、国と地方とにかかわります最も基本的な問題であろうというふうに存じます。  御意見といたしましては、地方自治の確立のためには地方も努力が必要であろうし、そういう組織をつくりながら国の方にいろいろ折衝することが必要であろう。また、住民の意識の革命と申しますか、そういうことも必要ではないかというような御意見、御質問でごございますが、まことに基本的にはそのように私も存じます。ただ、従来からも、国、地方を通ずる問題につきましては、随分地方団体といたしましても論議して今日に至っておりますので、直ちにこれがすぐ改められるかということは非常に難しい問題であろうというふうに存じます。基本的には、こういう国も地方も非常に厳しい情勢でございますので、お互いに事務事業等を見直しながら、ただいまの御意見のとおり進むべきものだろうというふうに存じます。  住民の意識ということにつきましても、非常に住民というのは、一つの仕事につきましても、私らの経験から申し上げましても、国であろうが地方であろうが、とにかく自分らが要求したものをやってくれればいいというような、率直に申しまして考えが時々あるわけでございます。一例をとりますと、私らの町の中にも国道、県道、市道というのはございますけれども、実際問題といたしましては、どこでやろうがとにかく道路を早く直してくれというような議論もあるわけでございますから、そういう住民の意識なりそういうものを改めながら進むということは、また一方では、今おっしゃいましたように、補助金制度の問題にも絡んでくるだろうというふうに存じます。補助金制度の問題あるいは、一番先に申し上げましたように、税源充実、そういうものに絡みながら今回の交付税制度の問題もまた出てくるわけでございます。抜本的に改正されることが非常に望まれるわけでございますけれども、現在のこういう厳しい状況の中では、ともに国も地方も苦しみながら最善策を探していくのが必要だろうというふうに現在のところ私は存じております。
  15. 田中啓一

    参考人田中啓一君) 岩上先生から御指摘がごさいました点についてお答えさしていただきたいと思います。  まずその前に、我々はとにかく大前提といたしまして、地方財政は、我が国は、いずこの国よりも、欧米先進国よりも非常に大きなものであるということでございます。そういう認識が必要であろうかと思います。国家財政よりもはるかに、比率としましては、地方財政が欧米先進国よりも大きいのだという認識が必要であろうかと思います。そのためには当然効率性とか、あるいはまた我々住民とが非常に密接な関係にあるのだという認識が必要であろうかと思います。  そういう前提の中で、今御指摘のありましたように、確かに我々は公共部門に対してある程度依存体質といわれるようなものもありましたし、地方自治体自体がまた国の財政に依存するという体質も、確かにこれまであったと思います。それをまた許してきた、許すことができた高度成長、財源の豊かさがあったわけであります。それが最近では到底期待できなくなってきたというわけでありますから、とにかくいわゆる依存するという、そういう体質が許されない。しかしその財源は、よく考えてみますとみんな同じ財布なんだ。住民であるということは国民であるということでございます。だから、国の財政から取ってくるということは、同時に自分が回り回って、いわゆる住民である国民が負担する。いつかは負担し、それが起債であれば当然我々の子孫が負担しなければならないということであろうかと思います。  そう考えてみますと、今、今日の中では、地方自治体はどうしても、ある一面では、限られた財源を有効に使うという考え方が非常に重要であるということが指摘できるかと思います。それに合わせまして、いわゆる公共財のただ乗り論といわれておりますけれども、そういうような住民がいろんな要求をしてきたそれらのものでも、確かに絶体に公共サービスとして提供しなければならないものもあるわけですが、そうじゃないものまでもあるいは民間財、準公共財というところまでも、残念ながらこれまで要求してきたことは反省しなければならぬと思います。その峻別をすると同時に、そのための必要のある、どうしてもこれは公共財として提供しなければならぬ、そうしたときに、今までのように租税でやるべきなのか、あるいはまたそれがないときには起債を発行してやるべきなのかという二つの公的負担財源調達手段じゃなくして、今後はやはり地域住民という、地域が非常に限定された場合、受益者が非常に限られた場合には、そういう租税ではなくして、こういう公共施設というものをみずからが金融面からも負担していくのだという、いわゆる財源調達の多様性が必要となってくるかと思います。  この一つの手段が私はコミュニティーポンドであろうかと思います。今日日本ではまだ数自治体しかやっておりませんけれども、こういうものもこれから積極的に考えていくことが、住民が自治体に参加する、そしてまたその財源の効率、そして公共部門がやるべき行財政サービスは何ぞやということを国民みずからが認識し、納得した上でそれを納税していくということにもなる一つの道であると考えております。
  16. 志苫裕

    志苫裕君 どうも大変貴重な御意見ありがとうございました。社会党の志苫です。実は全体の時間が短いので、一括お尋ねをいたしまして、順次お答えをいただきたいと思います。  いろいろ御意見もございましたように、この委員会でも私どもの議論の中心は、果たしてこの五十九年地方財政対策、自治省の方では、これは新しいルールだとこう言うのですが、それが交付税制度の根幹である財源保障機能を持ち得るものなのかどうなのかということが中心的に議論をされておるわけです。言いかえれば、財源確保の手段なのか、あるいは付則三条あるいは四条の改正というのが果たして本則の六条の三の二項のいわば代替手段なのか、あるいは全く別の論理を持ち込んだものなのかということが一つの議論の焦点なわけです。その点についての所見を先生方にお伺いしたいということと、特例措置というのは理論的には、特例減額、事実上の交付税の引き下げというものがあり得るという解釈なんですが、実は本則の方では、不足財源がある場合には税率の改定、制度改正を行う、ここでは足す方しか考えていないわけです。こうなってまいりますと、これが制度の趣旨なんですから、付則においてこの本則を否定をするということが法体系として可能なものかどうかという点についても御所見があれば伺いたい。  それから、うたい文句は地方財政健全化に資するということなんでありますが、地方財政健全化といってもさまざまな視点がございますが、五十九年ルールというものが果たしてどんなメリットがあるのか。これは特に太田参考人にお伺いをいたしておきたい、このように思うわけであります。  言うまでもありませんが、五十九年ルールというのは、五十年代に入っての過去のたまりたまった借入金を折半にするという過去の金の処理と、新しく出てくるであろう不足財源というのは建設地方債、いわば地方債特例措置でやるといいましても、御意見ありましたように、特例措置というのはやることができるといっておるのであって、するとは書いてないわけで、幾らするかは毎年の勝負なんです。ことしの実例でいけば事実上、仮に特例措置があれば、それは将来返すお金ですから精算減額の対象になるのですから、一時借り入れみたいなもんです、これは。将来腕ずく、力ずくで大蔵と自治でやっておれば、大部分は地方債の方へどうぞというふうになっていきますと、従来の借入金どこの建設地方債というものが、これから建設地方債一本というふうになってくる可能性も十分あります。  御指摘もありましたが、借入金というのは直接自分が借りたわけではありません。会計が借りて現ナマがおりてくるので自分で借りたという印象は薄い。したがって、おれは幾ら借りているのかなというような認識が薄いということはあります。ありますが、一面では、個々の自治体のインパクトというのは、これは変わってくるわけです。この点も太田参考人に、これは金のあるところとないところとか、地方債増発に適した仕事をやるところとやらぬところとか、こういうところによっては個々の自治体のインパクトも随分変わってくると思う。こういう点について太田参考人は当局者ですからお伺いをしておきたい。  それから、最後になりますが、これは私の意見も含めてですが、国への依存体質が諸先生から御指摘ありました。地方のぶら下がり根性というものは我々もっとに指摘をしておるところで、一部の御発言に同感ですが、ただ、現状のままにおいて自治体側からそれを改めるというのは実際上は困難なんです。というのは、それを支えておる、より基本的な問題というのは、やっぱり国、地方を通ずる補助金行政といった行政の仕組みにあるわけであって、補助金問題が論じられて全体が縮小してまいりますけれども、国が補助金を出して、それに目の色を変えるという自治体の行政姿勢という構造は変わっていかないわけなんですね。そういう問題をそのままにしておいて、地方にぶら下がり根性やめろと。実はぶら下がり根性やめれば来る金もこなくなっちゃうわけです。というふうなことになれば、損か得か考えてみようということになれば、十円の金を出して百円の仕事ができると、こういっちゃうわけなんですね。この仕組みはなかなか自治体だけではできるものじゃないという点等についても、私の若干の見解だけを幾つか申し上げましたが、特に今度の地財対策の各自治体へのインパクトあるいは健全化に寄与するという点については太田参考人、その他の諸問題につきましてはほかの先生から、簡単でよろしゅうございますけれども、御意見いただければありがたい、このように思います。
  17. 太田大三

    参考人太田大三君) 私に御質問ございましたのは、地方財政健全化にどんなメリットがあるかということでございます。  ただいまも御質問ございましたように、私らといたしましても、六条の三の二項にございますような抜本的な制度改正なり交付税率の改正というものが望ましいわけでございますし、また、従来の交付税特別会計におきます借入金の問題、これも今お触れになりましたように、我々にとりましてはかなり安易さがございますし、認識がかなり薄いというように、厳しさが少しないわけでございますから、今回のような措置はかなり地方にとりましては厳しい措置であるというふうに存ずるものでございます。しかし、それはそれなりに、今回の措置によりまして不足分を補っていただいているわけでございますので、お互いに国も地方も厳しい段階におきましてはやむを得ないというふうに存ずるものでございます。将来につきましては抜本的ないろいろな改正が必要であろうと思いますけれども、今回の措置につきましてはやむを得ない措置というふうに存ずるものでございます。  また、この補てん措置につきまして、特例加算と建設地方債措置によりまして補てんになっているわけでございますが、確かに地方債補てんするということは、地方債は特定財源でございますし、交付税は一般財源でございますから、そういう点におきましては、かなり個々地方団体におきましてのインパクトは異なるというふうに思いますが、いずれそういう総枠の中で配分できるものというふうに存じておりますので、特に大きな支障はないんではなかろうかというふうに存ずるものでございます。
  18. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまの志苫委員の御質問に対して各参考人野呂参考人から順次願います。
  19. 野呂昭朗

    参考人野呂昭朗君) 先ほども少し申し上げましたけれども、特例措置の問題についてであります。  特例措置の今度の金額は、新しいものというのは三百億円と言われています金額的にもわずかなものです。しかも、これが返済の義務がある。そういうことというのは、先ほど中西参考人からもおっしゃったように、将来、地方財政状況によってはむしろ減額措置一つ要因にもなり得るものだと、そういう可能性を持ったものとして見れば、今度の新しい改正というものは余り評価できないんではないかというふうに考えているわけでございます。  それから、それではどうあるべきであったのかということになってくるわけですが、もちろん先ほど来、抜本的な改正についてもお話がありましたけれども、まず、この改正という意味では、一つには交付税特別会計借入金をやめた、あるいは臨時を今度特例措置に吸収するんだという話もありますけれども、これも大蔵省あたりによりますと、建設地方債増額分の元利償還分、これはどうも予算措置をしないようでございます。そういう面から見ましても、既成のいろいろな臨時特例交付金であるとか、あるいはこれまで五十年以降、交付税特別会計借り入れて、それの地方負担の義務を負っておるもの、こういうものについでは今まで臨時的な措置として暫定的に措置されてきたわけですけれども、これをもう少し恒久的なものとして、地方負担を軽減するという意味では、交付税率の引き上げの問題であるとかあるいは制度改正の問題にまで発展すべきではなかったろうか、少なくともそこまでは行っておく必要があったんではなかろうかというふうに感じている次第であります。
  20. 田中啓一

    参考人田中啓一君) 第一の点はほぼ野呂参考人と一緒でございますので割愛さしていただきたいと思います。  第二点の、国への依存体質の点でございますが、やはりこれは、ある意味では国への依存体質をせざるを得ないような、御指摘のとおりの体質があろうかと思います。それを制度的に今後どうあるべきかという問題は、大前提ではあるわけでありますけれども、当面はこの自主財源をどのように確立していくかという点であろうかと思います。今日、世界の各国でも、この財源調整問題はいわば永遠の課題でもありまして、それぞれの国が苦慮しているわけでありますけれども、なかなか現実には明快な答えが出ていないというのが現状であろうかと思います。我が国の実情に合いました解答を早く模索しなければならないわけでありますけれども、当面はとりあえず、地方交付税のやっぱり利点というのも認めながらも、自主財源をどのようにしてアップしていくかというウエートの問題に政策的課題の重点が置かれるべきであると考えております。
  21. 中西啓之

    参考人中西啓之君) 特例措置につきまして今後これがどういうふうに運用されていくのかということが非常に重要な問題になってくる、もし成立したとしてですね。その場合に、先ほども申し上げましたように、特例措置ということになりますと、増額する場合にストレートに国が財源措置をしなきゃいかぬ、つまり資金運用資金というプールがもう今後なくなるということになりますと、直接国の負担になってくる。そうすると、それを極力避けるために、地方財政計画内容について国の側から干渉というふうな形のいわば介入がいろいろ出てくるんじゃないかなというふうな気がいたします。  現に、五十九年度地方財政計画の策定過程で大蔵当局から出されている意見として、例えば給与費について国並みというのを一般行政職員だけじゃなくて、その他の職員についてもこれを考えるべきであるとか、あるいは一般行政費の予備費、これをもっと減額すべきであるとか、あるいは地方単独事業費、これを削減するべきであるとか、言ってみれば地方団体地方財政計画に対して意見を言うのよりもよほど迫力のある形で大蔵当局からこれに意見が出されて、実質的に地方財政計画内容が左右されていく、こういう兆候が既にもう出てきているわけですけれども、これがもっともっとすさまじいものになっていく。これは現在の国が置かれている財政状況から見てそうなるような気がするわけです。そうなってくると、私はこの特例措置というのが、いわば増額よりも実質上減額というふうな意味合いを持ってくる。そうなると、法律論としてもこれは大変疑問が出てくるということを感じております。
  22. 西村暠夫

    参考人西村暠夫君) ただいま地方の国への依存体質とか、あるいは甘えの構造とか甘えの姿勢とか、そういうのがしみついているのではないかということに対して、そうは言っても自治体側からだけの力でこの問題が解決できないじゃないかという、そういった志苫先生からの御指摘があったわけでございます。まさにそのとおりでございます。  私は、やはり短期的な対応策といたしましては、他の参考人もおっしゃいましたように、自主財源拡充と確立ということ、あるいは三二%の率を上げるということしかないだろうというふうに思っております。ただ、中期的な対応策といたしましては、それぞれの地方経済力の向上策を図る、そのことはひいては、その地域のいわゆる自主財源としての地方税そのほかの収入が増大するということになるわけでございます。  私は愛知県の尾張旭市という小さな市からきょう出かけてきたわけでございますが、その隣に瀬戸市というのがございまして、瀬戸というのは窯業を中心にしました典型的な単一地場産業都市でございます。瀬戸、尾張旭を一括いたしましていろんな通産省絡みの統計資料なども出されるわけでございますが、私どもがやはりこういった瀬戸あるいは尾張旭の地方財政の問題を考える場合に、すぐには間に合わないかもしれない、しかし従来から非常に大きなウエートを持っております。その地域の地場産業の発展策を図るということで中期的な対応策を考えるべきではないかということを、そういった機会によく発言しておる次第でございます。  さらに、長期的な対応策としましては、先ほど岩上先生が御指摘なりましたことでございますけれども、やはりこの際、地方分権とか地方自治の精神の根本から地方交付税あり方を考えるという時期に来ておるということ、そのことに関連しては、意識改革ということが必要だとおっしゃいましたが、そのとおりであると思います。私自身は、先ほどの中期的な対応策の一環といたしまして、いわゆる地場産業の発展を考える場合に、地方行政、それから業界、さらに市民レベルの三位一体的な協力関係がないと地域としての活力を取り戻すことが極めて困難である、そのことによってまた、この地方財政の苦しさという問題、厳しさから逃れ出ることもできないんだということも言っておるわけでございます。その意味で、大変迂遠であるという印象は率直に言ってあるのですけれども、やはり市民の意識改革をする、そして住民個々の意識を横につないでいこうというそういう考え方が大事である、こういうふうに考えております。
  23. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっとあと二、三分あるようですから、一つだけでいいです。野呂先生、特例措置というのは、これから可能性としましては不足財源額ゼロから百までの間にあるわけなんですが、そのゼロから百のどこに落ちつくのかというと、経済財政の展望から見て、限りなくゼロに近いということに我々はなるだろうと見ます。そうしますと、建設地方債が主流になるということは容易に想定できる。そうなりますと、法律のうたい文句は六条の三の二項の代替手段というふうに読めないこともないが、実体的には代替手段にはならないということになると、これは実質的な本則の否定にならないかという意味で、一言だけで結構です。
  24. 野呂昭朗

    参考人野呂昭朗君) ただいまの御意見でございますけれども、私もこの特例措置がこれから今後どういうふうに運営されていくのかということについては非常に危惧をいたしているものでございまして、先ほども述べたように、やはりこれが限りなくゼロに近いという意見もありますが、場合によっては、経済変動であるとかそういう場合に、やはり交付税総額あるいは税収源等の落ち込みを補完するという意味では、あるいはまたもう少し大きな額になる可能性もあります。しかしながら、そういう可能性があるにかかわらず、例えば何千億という数字がそこに措置されたとしても、それがまた返済の可能性があるということであれば、いつかの時期にまたその措置を通して地方財政がいろんな制約を受けるというようなことにもなってくるという意味では、非常に大きな問題点ではないかと思うわけです。
  25. 原田立

    ○原田立君 田中先生に三点お伺いしたいと思います。  第一点は、先生は先ほどの陳述の中で述べられておりましたが、今回議題となっておりますこの改正法案によって国の財政難がいわゆる地方財政に大幅にしわ寄せされておる、このことについて私は、国の財政難によって地方財政施策が一貫性を欠いて、かつ地方財政にしわ寄せすることは地方財政の安定的伸展から見て好ましくないと、こういうふうに思うのでありますけれども、この点についての御意見をお伺いしたい。  第二点は、地方の自主財源強化についてでありますが、近年の経済財政状況では、地方財政に対し国から財源を補強することは、そうあるべきだと思うんですけれども、なかなか困難のようであります。しかし、地方にはまた地方独自の行政サービスの向上など、財政需要が高まってきていることも事実であります。こうした傾向から地方自治体の自主財源強化が叫ばれておるわけでありますが、この点についての御意見をお伺いしたい。  最後に、これからは世界的に見ていわゆる都市の衰退が明らかでありますが、また我が国にとっては、経済の活性化という点からも都市整備が緊要の課題となってきておるわけであります。この都市整備の方策とその財源対策、これらについて、以上三点について先生の御意見をお伺いしたい。
  26. 田中啓一

    参考人田中啓一君) まず第一点の点でございます。  先生の御指摘のとおり、国の財政難によって地方財政施策が一貫性を欠き、あるいはまたそれが地方財政にしわ寄せしているという御指摘は、私もまさしく同感でございます。これは、ある意味ではだれもこれを否定する人はいないわけでございます。しかも、このまま現行のシステムにおいては、今後もこのような状態が本質的に続いていくんだということも否定できないと思っております。こういう背景には、まず本質的に財政事情が非常に悪化している、しかも財政の見積もりが困難であるという本質的なものもあるわけでありますけれども、それと同時に、システム的にも、制度的にもこういうしわ寄せをせざるを得ないという現状もあるということがまず考えられなければならないと思います。  こういう中で、じゃ今後どうしていったらいいかという点であろうかと思います。そのためには、先ほど申しましたように、こういう問題は各国とも、国とか連邦政府地方自治体とが、いわば対立点というような形で多くの課題を残しているということではありますけれども、我が国の実情から考えますと、まず次の点がささやかな解決策に寄与するのではないかと考えているわけでございます。まず認識としては、とにかく国の財政の悪化も地方財政の悪化も、ともにそれを解決するのは国民であり、国民はすなわち住民であるという発想でございます。財政的に言うならば、いわゆる同じ財布であるということでございまして、配分の違いだけであるということも指摘できるわけでございます。そういう前提のもとでまず考えなければならないのは、限られた財源ということの中で国のやるべき仕事と地方のやるべき仕事、これをいかに効率的に配分していくかということが必要であろうかと思います。とりわけ今我が国の財政構造では、地方自治体が多くの仕事をやっているわけでございます。多分、先進国の中ではトップグループであろうかと考えております。こういう中では、特に地方自治体のなすべき役割、その仕事、その財源、そういうのは、国からの補助金を多く得る現行制度がいいのか、あるいはまた自主的な財源でやるべきなのかという点は、おのずから答えが出るところでございます。  次に、こういうような財政の中では今日の財政経済安定機能が余り期待できないという現状を振り返ってみますと、第二点として、ともに一応長期財政計画を立てることによって、できるだけ単年度予算主義の弊害を除去するシステムというものが必要であろうかと思います。しかも、我が国のようないわゆる固定的な長期財政計画ではなくして、欧米のやっておりますようなローリングシステムを導入することによって、少しでもPPBSとかいろいろな手法を導入しながら、こういう長期財政計画を考えていくということも必要であろうかと思います。  次に三番目の手段として、御承知のとおり国税三税に今地方交付税の原点があるわけでございますけれども、この国税三税は非常に景気に変動されやすいものでございます。この三税で国税収入の約七割から八割近くも占めていると思いますが、この三税はとりわけ伸縮性が高いものでございます。景気のいいときにはある程度の伸長が期待できるわけでありますけれども、悪くなりますと当然、とりわけ法人税を中心として財源ががた落ちするわけでございます。これに対しまして、地方財政というのは住民行財政サービスをやっていくためには、また行財政サービスの内容からいきましても、非常に安定的な財源を必要としていることは否めないわけであります。そう考えてみますと、本来ならば安定的な恒常的なアップの期待できるような財源地方自治体としては欲しいにもかかわらず、いわば伸縮性の非常に高い国税に大きく依存するというこのアンバランスが、今日のようなこういうしわ寄せという問題の生ずる原点にあるという感じがいたすわけでございます。  このための当面の対応策としまして、三二%というのをある意味では三二%から三五と、これをできるだけ四〇というような形に伸ばしていくことが望ましいわけであります。数年間においてバリアブルな率にする、そして幅を持たせながら絶対額は確保していくというようなことも考えられる一つの手段であろうかと考えております。  さらにまた、例えば所得、法人、酒税の三税をある程度一括して三二とやっておりますが、これを例えば地方住民との関係の強い、あるいは自治体と関係の強い所得税の比率を高めるとか、あるいはまた大都市の集積のメリットを享受している法人企業を対象とした法人税の比率を大都市財政にはとりわけ高くする、そういうような地域間の税制配分ということも、これのしわ寄せを少しでも薄めていくということには必要であろうかと思います。こういうのが考えられるのではないかと思っております。  次に、第二点の御指摘でございます。  地方自治体の自主財源強化であろうかと思いますが、御指摘のとおり、これから自主財源強化をするということが、地方交付税制度をある程度脱皮させるということからも必要であるわけでございます。例えば地方自治体が行財政サービスを今後提供していくためには、まず第一番目に自主財源のアップということが必要であり、次には国からの財源調整のアップということが必要であろうかと思います。さらに三つ目としては、起債でもって充実するということも一つの手段であるわけでございますが、最も望ましいのは、言うまでもなく自主財源のアップであろうかと思います。  こういう現状の中で我々は、例えば既存の法律の中で財源を見ていくということも一つのまず第一にとるべき手段であろうかと思います。宅地開発税やなんかは、税法でありながら現実には行われていない幻の税制であるというようなことも言われておりますが、こういう一つのいわば既得権をもう一度見直す。いわゆる中央政府から非常に制約を受けている、とりわけ課税権では制約を受けている日本の自治体でございますけれども、その与えられた中で課税自主権というものができないかどうかということも考える必要があるかと思います。例えば事業税などでも負担範囲の免税措置が非常に行われております。何百億円の収益を上げながら事業税がほとんどかかってない、全くかかってないというようなことも果たして許されるのかどうか、あるいはその必要があるかどうかというようなことも考える必要があろうかと思います。少なくとも、無税であるのを減税するというような措置によりまして、得べかりし利益、得べかりし課税権というものもできるのではないかと思っております。  さらにまた、土地課税というようなものにおきましても、余りにも減免措置が行われておるのではないかというようなことも言われております。日本の地価は世界一高いわけでありますから、当然担税力があるわけでございます。こういう中で、既存の固定資産税の中でも、見直しで十分その財源措置ができ得る、あるいはさらにまた土地増価税というような、一八九〇年代末にドイツで行われた土地増価税というような発想も、世界一の高地価である日本ではそういう発想も必要であるというような感じがいたすわけでございます。あるいはまた、サイモンズの言うような包括的な課税ベースというような形で、日本の場合にはいわゆる水平的な公平さというのが曲がりなりにも充足してこれたわけでありますけれども、しかしこの中にももちろんクロヨンとかトーゴーサンピンというような不公平税制が指摘されておりますが、それよりももっと資産を中心とした資産課税のいわば垂直的な公平さが今後さらに求められるべきである。それがまた負担の公平にもなり、ひいては自主財源確保にもなるということが言えるわけでございます。  今後行財政サービスをさらに充実していくためには、同時に住民も、我々がその財源をみずから負担するという姿勢が今後必要であろうかと思います。そのためには、その財源がどのように使われているかということについても、今後住民としての認識の高まりを期待しなければならないと考えるわけでございます。  最後に、第三点の都市の整備という御質問であろうかと思います。  御承知のとおり、我が国は世界一の高齢化が進むわけでございます。私どもの今研究でやっているところでは、中国とともに二十一世紀には世界一の高齢化が進んでまいるわけでございます。そういう中で我が国の場合、欧米先進国と違いまして、二十世紀までに少なくとも都市の整備を相当水準までに高めていくという必要があるわけでございます。欧米では既にそれが終わり、今はストックの確保、修理保全というところに重点が置かれておりますが、我が国の場合には、下水道一つとりましても今後、社会資本の充実という形で、地方の時代になればなるほど都市整備財源を必要としてくるわけでございます。そういう、とにかく我々は二十世紀までに、高齢化社会を迎える以前に都市の整備を進めていくという認識が必要であろうかと思います。そのためには、まず都市整備の現状とニーズを明確にするという必要があろうかと思います。  そういうもとで、それはだれがどのように負担していくのかというようなことも必要であろうかと思います。そういう地方自治体と住民との対話が何もないことは非常に残念でございます。いわばそういう財源の中では、いわゆる受益と負担というものをできるだけ、これはなかなか大変難かしいわけでありますけれども、計量化を図っていくというようなことも必要であろうかと思います。もちろんこのときには社会的弱者に対する格別な配慮をすると同時に、受益者には適正な負担を求めるというのが負担の公平にもなりますし、それはひいては、メリットを得ている人が負担しないということは他の人にも迷惑をかけることでありますから、そういう発想が、特に地方自治体のように受益がある程度地域的にも限定される場合には、こういう発想もある程度住民の納得する範囲内で必要であるということが指摘できるかと思います。その際には、例えばその財源確保にしろ地域間によってある程度差があってもいい、税率の違いあるいは税制自体の違いがあってもいいという感じがいたすわけでございます。  大都市は、我が国も最近では東京ですら、世界の繁栄する都市の象徴でありました東京ですら衰退現象が見られるようになっております。こういう大都市の中でこれまでの集積のメリットを得ていたところがだんだんと集積のデメリットを受けるようになってきたわけでありますけれども、こういう中でストックの活用、再開発というようなことをしながら、同時に、例えば集積のメリットを得ているところがあるならば、それに対して適正な課税をしていくということも必要であろうかと思います。例えば、これはある程度企業課税の適正化あるいはまた、日本の企業は半分近くが赤字でございますけれども、そういう行財政サービスを赤字企業でも得ているわけでございまして、たまたま企業会計原則だけが赤字のために法人税あるいは法人事業税を負担してないというのも、これ負担の理論からいってもおかしなわけでありまして、この外形標準課税という問題も考えていいという感じがいたすわけでございます。あるいはまた、先ほど申しましたような土地資産というものに対する、いわゆる資産メリットを中心とするものに対しても外国の地方財源が非常に高率であると同じように、そういう発想に似たようなこともこれからは必要であるということが考えられるわけでございます。  しかしながら今日、自治体では現行制度のままではいわば非常に横並びの発想があるわけでございます。横並びの発想がありますと自主的なものもできない、そういう発想じゃなくして、その地域にふさわしい町づくりというものを住民みずから自分の町をつくっていくんだという姿勢も、住民とともに地方自治体にも必要であるという感じがいたすわけであります。そのための都市整備の財源をどうするかということは、おのずからそういう中から、プロセスの中から期待することができると考えております。例えば、ここで言う対話がないと、要綱行政と言われるようなものによって住民に過度の負担をかえってかけるというようなこともございます。そういう点をできるだけ削除していくということにも、先ほど申しましたように、地域住民とそして自治体との、そしてまた、ある意味では国との三者の関係で、今後の二十一世紀に向けての都市整備というものもこれからの地方自治体にとって大きな課題であるという感じがいたしております。どうもありがとうございました。
  27. 神谷信之助

    神谷信之助君 共産党の神谷でございます。  参考人先生方、本当に御高見を聞かしていただきましてありがとうございました。  私は、五十九年度の今度の交付税制度改正というのは今までとは根本的に違う転換だと見ているんです。それはどういうことかというと、今までは少なくとも財源不足額の一部は交付税特会が借り入れる、そのうちの二分の一と利子は国が持つ。だから、財源の足りなかった分は交付税法の六条の三の二項に基づいて国が責任を持つんだというその立場を若干なりとも維持し続けてきた。ところが、五十九年度になりますと、国が持つのは三二%の交付税とそれから既往の臨時特例交付金、これは今まで約束してきたんだからもう削るわけにはいかぬ、それだけなんですね。あとは自治体自身が自分で借金をしなさいと。それから、プラス三百億、これは六十六年、六十七年の交付税の先食いですよ。だから国は一銭も痛まない。だから国が一文も責任を持たないわけだ。法律で決まっている三二%分と、それから今までの約束だからしようがないという既往の臨時特別交付金、これも大体七十年ぐらいで終わっちゃうわけです。そういうように根本的に変わっているんです。だから、これから財源不足が六十年、六十一年とずっと出てくると自前で処理せにゃならぬ、その分は。その場合にどういう処理をするんだというと、今までから自治省が言っているのでは、財源不足額をまず建設地方債でどれだけ埋められるかと。大蔵省の方は、九〇%ぐらいの充当率でうんと借金をせい、こう言う。自治省の方は、できるだけ借金を減らそうとしている、それで足らぬ前を今の二分の一ルールで交付税特会から借りる、こういう仕組みでやってきたというわけです。そうしますと、これからそれをやらにゃいかぬわけです。六十年度にまた例えば一兆五千億の財源不足が出たら、これタコの足食いで、先食いするか結局自治体に借金をばらまいて押しつけるか、こうならざるを得ぬのです。  ところが、一方、公債費比率はもう危険ライン一五%を超えている団体が四四・九ですから約四五%、半分に近づいています。そういう状況だし、それから地方債残高を見ましても、都道府県で言うと、そのうち財源対策債という赤字の穴埋めで借金を押しつけるたぐいが三割、市町村でも一〇%を超えてきている。そういう状況になってきていますから、自治省当局としては、もうこれ以上借金づけにするわけにいかぬ、できるだけ建設地方債を使うということで、やらぬところをつくる。そうすると、どうしなきゃいかぬかというと、歳出規模を抑える以外にないわけですよ。だから、歳出規模をこれからますます抑えていきますよということをやらざるを得ないわけです。だから、自治体にとってはますますことしは今までと違って厳しくなっていくが、さらにそれ以降はもっともっと厳しくなるであろうと、こういうのがきのうまで当委員会で議論している中で明らかになってきているんです。  そういう意味では、今までの地方財政制度の根本的な転換がこの五十九年度はやられようとしている。だから僕は、よっぽど腹を決めてかかってもらわないかぬというふうに思うんですが、時間がありませんから、そういう意味でひとつ太田先生と中西先生にお聞きしますが、そこで結局こうなってくるんですね、財源不足をできるだけ縮めようとすると歳出規模を抑えにゃいかぬ。逆に歳出規模をふやすんだったら、借金をふやすあるいは交付税の先食いをする、どっちかを選ばされるということになってくる。選択を迫られる、もう国は面倒見ませんよということになったんですから。そういう状態になってきているんですが、実際に自治体を担当している太田参考人としては、自治体の運営の面からいうと、どっちをとるということになるでしょうか。どちらの方が、借金多い方がましか、あるいは先食いの方が先に回すんだから、先は先のことだ、できるだけ加算の方をふやしてくれ、それで地方債の方は減らす方がいいという、そういうことになるのかどうか。その辺のちょっと見解を聞いておきたいと思うんです。  それで、中西参考人に聞きたいのは、そういうようにこれから歳出規模抑制か、いわゆる地財計画全体を抑制をするか、あるいは財源対策債といいますか、建設地方債の活用ということになっていくか、どっちかの道あるいは両方かぶせてやる以外なくなっていくと、これがこれからの自治体運営にどういう影響を与えていくだろうかという点についてお答えいただきたいというように思います。
  28. 太田大三

    参考人太田大三君) ただいまの御質問につきましては、今後歳出規模を非常に抑えられるのではないかというようなこと、歳出をふやすのであれば、地方債かしからずんば交付税の先食いかというようなこと、どちらがよいかということでございますが、これはなかなかお答えしにくい問題でもございます。  建設地方債の場合におきましては、将来の住民にも負担させ得るものにつきましてはある程度借金もこれはやむを得ないものでございますけれども、ただ現在、御承知のとおり公債費比率がかなり多くなっておりますので、やはり危険信号が出ております。それ以上に借金するということはかなり危険なわけでございますから、そこを起さない程度借金であればよろしかろうと存じますけれども、それを超すということになりますと、我々地方といたしましても抵抗を感ずるものでございます。  また、交付税の先食いということになりますと、先食いしてお返ししなければこれはいいわけでございますが、先食いしたものは、これはまた返すわけでございますから、結局は借金に似たものにもなりますので、なかなか判断のしにくいものでございますが、いずれ非常に国も地方も厳しいわけでございますけれども、この特例加算の問題は先ほどから随分と、将来なくなるのじゃないかというような議論もありますけれども、我々地方といたしましては、この特例加算はなくならないように、地方団体あるいは自治省等に大いに呼びかけまして努力しなければならないだろうというふうに存ずるものでございます。
  29. 中西啓之

    参考人中西啓之君) 例えば五十九年度、今年度地方財政計画で一兆五千百億円の財源不足額が出まして、そのうち一兆二千五十一億が財源対策債で措置をされると、このあとが三千四十九億ということで、建設地方債の比重が非常に高くなってきている。こういう傾向が今後も続きそうな気がするわけです。したがって、一方じゃ歳出を極度に抑制をして、他方では建設地方債を一定程度発行するというふうなやり方がとられるように思われます。その場合、地方自治体にどういうふうな影響が出てくるかということですが、これは今までよりも増して地方自治体が予算を組むときのいわば予算が非常に窮屈になってくるわけですね。最初からもう予算に組まない、そういう傾向がどんどん広がってくるんじゃないか。  例えばここに、ことしの一月二十日に出されました「武蔵野市行財政改革の方策」という、これはいろいろ報道された武蔵野市でありますが、この「行財政改革の方策」を見てみますと、これは市民の立場から見まして大変問題だと思われるような改革方策も込められております。例えば市内六カ所に設置されている出張所を統廃合する必要があるというふうな提言でありますとか、あるいは公共施設の管理について民間委託を大幅に進めるとか、あるいは職員定数を削減するとかいう形で、結局、市民の行政サービス水準をどんどん下げていくような内容の提言がやられております。したがって私は、こういう地方財政措置の大もとが抑制をされると、各地方自治体でこういう形の歳出抑制による行政サービスの水準低下、これがどんどん広がっていって、これが本当の意味で 効率化するんならよろしいわけですけれども、市民にとって必要なものまでどんどん切り捨てていくという結果で広がるというふうなことを大変危惧しているわけであります。
  30. 三治重信

    ○三治重信君 私、民社党の三治ですが、時間が大分たったもんですから、ごく限られたところで御質問したいと思うんですが、野呂先生、この改革によって、利子を差っ引かれるために交付税の総額が減るということで、二千億円も交付税の総額が減ってしまうんじゃないか、そういうことをおっしゃったんですが、これを特別措置で補充してくれればいいというお考えですか、または、これは別の特別の措置をとるべきだということか、その点をひとつお願いしたいと思うんです。  それから、西村さんには、基準財政需要について、実態と自治省のやっているやつが少し乖離しているんじゃないか、こういう御意見があったような気がするんですが、私もそういうふうに、地方財政計画というのがマンネリ化しちゃって、どうも地方の実態に合っていないと思うんですが、そういう実態に合うような財政需要の計画というものについて特別ないい措置があるかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  31. 野呂昭朗

    参考人野呂昭朗君) 利子補てんをしないということは結局、先ほどもちょっとお話がございましたけれども、例えば建設地方債というのがこれからふえるだろうというような御意見もございましたけれども、建設地方債がふえた段階で、これがいわゆる財源不足額補てんするものとして措置されたとすれば、それは即財源対策債であるわけですね。財源対策債であれば、今までだと、ある程度利子補給が臨時特例交付金でありました。今度何かそういうものが措置されないというようなことも大蔵省方面では言っているそうでございますので、それがなくなるということは、例えば元利償還分を基準財政需要額に算入したとしても、これはやはり建設地方債という特定財源を交付税で財源措置することによって交付税そのものに減額ということで影響を与えたと、そういうような考え方にたどり着くんじゃないかと思うわけです。
  32. 西村暠夫

    参考人西村暠夫君) どうも基準財政需要額の算定に当たりまして、非常に事細かに決められているが、かえってそれが地方の実態と乖離しておるのではないかということを申し上げたわけでございまして、それについて三治先生も同じように思うと、じゃ一体どうしたらいいだろうかということですが、これから申し上げることは随分勝手な言い分かもわかりませんが、例えば自治省とか道府県、市町村間の相互の話し合い並びにその話し合い過程とその結果についての公開をするといった、随分時間とエネルギーがかかる方法ですが、一度やってみる必要があるのではないか。と申しますのは、そのことによりまして、何だかんだといってもやはり国依存の体質から脱却することができないじゃないかという現在の地方財政状況から見まして、地方に本当の意味での主体性の確立を求めるということのためには、先ほど申し上げましたような形での住民の意識の改革ということももちろんその基本的前提でございます。  しかし、それを踏まえまして、じゃ具体的にどうしたらいいかという場合に、従来とは全く違った発想の転換ということに基づいた努力をする、そういう時期に来ているのではないかというふうに思います。もちろん、いわゆるトレードオフの考え方といいますか、AかBかというような考え方でこれから経済政策の運営に関連しまして考えていかざるを得ない時代に入っておりますけれども、つまり、今申し上げましたようなことは実際にできるんだろうかというお気持ちが皆様方強いとは思いますが、それによるメリットも相当あるはずだ、それは一つの試行錯誤の方法によって解決の方法が見つかるんではないかというふうに思うからでございます。そうでないと、今の国並びに地方財政事情の悪さというのはもう泥沼に入っておりまして、なかなかこれから脱却することは困難ではないか、このように考えます。
  33. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、長時間にわたり本委員会に御出席を願い、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。重ねて厚く御礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十八分散会