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1984-05-10 第101回国会 参議院 地方行政委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月十日(木曜日)    午前十時二分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長        大河原太一郎君     理 事                 岩上 二郎君                 真鍋 賢二君                 志苫  裕君                 三治 重信君     委 員                 井上  孝君                 上條 勝久君                 古賀雷四郎君                 出口 廣光君                 松浦  功君                 吉川 芳男君                 秋山 長造君                 小山 一平君                 佐藤 三吾君                 中野  明君                 原田  立君                 神谷信之助君    国務大臣        自 治 大 臣  田川 誠一君    政府委員        郵政省電気通信        政策局次長    富田 徹郎君        自治大臣官房長  矢野浩一郎君        自治大臣官房審        議官       田井 順之君        自治大臣官房審        議官       津田  正君        自治大臣官房審        議官       土田 栄作君        自治省行政局公        務員部長     中島 忠能君        自治省財政局長  石原 信雄君        消防庁長官    砂子田 隆君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君    説明員        国土庁長官官房        防災業務課長   松本 和雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に  関する法律案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  地方交付税法等の一部を改正する法律案及び地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に関する法律案を議題といたします。  前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 きょうは交付税法審議でありますが、私の場合、四月十九日の委員会経緯もございますから、したがってそこから入らしていただきたいというふうに思います。  そこで、公務員部長にまず聞いておきたいんですが、四月十九日の委員会時間切れになった段階で、私は締めくくりとして自治大臣答弁をもらおうと思って質問をしたわけですが、横合いから公務員部長が出てきて、そして何かラスパイレス指数金科玉条のように言いながら、議事録を見ると私の熱弁がどうかとかラスの低いところは物価指数も低いとか、言いたい放題少し言っているような感じがするんですが、何が言いたかったのか、きょうは冒頭だから時間があるわけだから、ひとつはっきりさせたい。
  4. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 前回の御質問をいただきましたときには、時間切れぎりぎりのときに突然非常に難しい御質問いただきましたので、私も早口で十分意を尽くせずにいろいろなことを申し上げたように思います。私の考えていることが正確にお伝えできなかったことが非常に残念に思っておりますが、きょうは先生の方からいろいろ御質問いただくということでございますので、十分御説明させていただきたいというふうに思います。
  5. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いや、そうじゃなくて、何が言いたかったのか、その続きを言いなさいよ。熱弁が何とかいろいろ言っておるね。どういうことなの。
  6. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 先生の方から、一つラスパイレス指数の低いところの話があったように記憶しております。私がそのときに申し上げたかったのは、ラスパイレス指数が低い団体というのは、団体数にすると非常にたくさんございますけれども、それらの団体給与決定をめぐる諸条件というのが種々ございますが、そういう諸条件をそれぞれの地方団体の方でいろいろ勘案されまして決定される。そして、その決定されたことの結果に対して地域住民からの批判もなければ、また、国民世論もそれをおおむね是認している、そういう現状ならばそれでいいんじゃないか、国としてあえて指導に乗り出すこともないんじゃないかということを申し上げようとしたわけでございます。
  7. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そういうふうにあなたは言うから、ひとつそれなら言わしてもらいますが、私があのときに言ったのは、ここに議事録ありますよ、私は二百五十条のただし書きの問題に触れて、そして一番大事な点は、地方自治を侵害するようなことについてはこれはやっぱりやるべきじゃない、三千三百の自治体の中でわずか百五十とか二十三とか、そのために残りの三千三百を規制するような給与条項を入れるべきではない。人件費がいろいろ言われておるけれども、しかしそれはラスパイレスそのものがそんなに金科玉条のものではないと私は思う。一つ統計であっても、しかしそれを金科玉条のようにすることはいかがなものか、もしそこまであなたが金科玉条と思うなら、大臣、ひとつこれをこの委員会に出したらどうか、こういうことで、ポイントは二百五十条の解釈の問題、そして今のそのことを理由にして百五十自治体のために三千三百を一遍に投網にかけるような給与条項を入れるべきではないじゃないか、こういう意味のことを僕は強調して大臣答弁を求めたわけです。そこに横合いから出てきて、ラスだけ取り上げてあなたが言ったことは何ですか、熱弁を振るったとか何とかくだらぬことを言って。僕はたから言った。そんな要らぬこと係を言ってるんじゃない、公務員部長立つならちゃんと立つように、出すのか出さぬのかはっきりせいと、こう言っているわけだ。それが今あなたの答弁を聞くと全然そこら辺の反省はないんだ、どうなんです。
  8. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 私が御答弁申し上げましたのは、先生から御指名があったから御答弁申し上げたように記憶しておりますが、別段、大臣答弁を横取りしてというようなことではなかったかと記憶いたしております。間違いでありましたら、それは間違いであることをおわびしなければならないと思いますが、一応そういうふうに記憶をいたしております。  それから、今先生お話しになりましたラスの一〇〇未満のところを出せと、こういう話につきましては、そのときも御答弁申し上げましたけれども、一応、一般の市町村についての給与指導というのは現在都道府県の方にお願いしておりますので、都道府県の方にはその資料をお渡ししております。そこで、都道府県の方ではそれぞれの管下の市町村の実情というもの、実態というものを判断しながら、公表されるところでは公表されておりますし、公表されないところでは公表を差し控えているところがあるようでございます。今までのそういう方針といいますか、そういう取り扱いで私たちはいいのじゃないかというふうに考えておりますが、ただ、ラスパイレス指数の一〇〇未満のところにつきましては、例えて言いますと、九五以上一〇〇未満のところが何団体であるとかあるいは九〇以上九五未満団体河団体であるとかいうふうに、そういうふうな数といいますか、そういう数は私たちの方で整理いたしまして、これだけの団体が一〇〇未満でございますということは公表する取り扱いをしておるわけでございます。
  9. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 この議事録を見てもわかるように、このときの質問ポイントは何かというと、地方債給与条項を入れるか入れぬかの問題が僕の質問したすべてなんですよ。そこにラスパイレスの問題が出てきた。公務員部長もここにおるけれども、しかし田川大臣はちゃんと言っているじゃないか、こういう問題で自治権を侵害するようなことがあってはならぬと私は思うと。だから認識を新たにし直して、もう既に給与条項を入れておるという前提に立ってこの運営に当たってどうするのかと、こういうことでただしたわけだ。そこにあなたが立ってそういうことを言ったわけだけれども、しかし僕はそのやりとりはその程度でとどめますが、しかしあなたの今の態度、聞いておると、一体公務員部長なのかどうなのか僕は疑問持ち出した。あなた自身適格性を問われるような判断のような気がするんですが、公務員都ができて今あなたは部長になっているけれども、そのときの、四十二年八月十八日の衆議院における三つ確認というものをあなた知っておるのかどうなのか。
  10. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 三原則があるという話は聞いておりますけれども、今それが何々かということは、しかと申し上げるほど確かでざいません。ただ、私のおぼろげ記憶で申し上げますと、自治省が直接地方団体のことについて何か介入しないとかなんとかというような、そういうことがあったかと思いますけれども、しっかり記憶いたしておりませんので、御勘弁願いたいと思います。
  11. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 しっかり記憶してないとはどういうことかね。余り国会をばかにしなさんな、あんた。これ院で確認したことですよ。そんな感覚であなた行政に携わっているんですか。ここでいろいろ確認したり質問することについては、おぼろげながらで行政やるのか。そういう姿勢なのか、あなたは。  このときに確認しておるのはこういうことですよ。  第一が、地方公共団体労使双方に対し公正中立立場行政指導を行うこと。二番目に、地方公務員待遇改善定員確保権利擁護のために注意を払うこと。第三に、労使紛争については自治体主体性を侵すような介入指導を行わないこと。  地方自治法二百四十五条に基づいての確認をやって公務員部が生まれたんですよ。その確認がなかったら公務員部はなかったんだ。あなたのその部長の職はないんだよ。それをおぼろげに覚えておる程度。どういうことだ、それは、部長
  12. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 今先生お話しになりました三つ確認というのをしっかり覚えていなかったというのは、確かに私が不注意だったと思います。そういう確認があるということはかねがね聞いておりましたし、私自身もそのことに留意して今後仕事をしていかなければならないというふうに思います。
  13. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 留意して今後行うというが、あんた全然反省してないね。そんな態度でよく公務員部長が務まるね。僕はあなたの答弁聞いておるともう質問する気にならぬよ。あなたが十九口に答弁したこの答弁内容は、この三つ条項のどこに沿っておるのかね。あなたがさっきから答弁した内容は、この三つ条項のどこに沿っておるのはっきりしなさいよ。しかもおぼろげとは何たることかね。
  14. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 先ほども御答弁申し上げましたように、そういう確認事項というものをよく念頭に置きながら、これから仕事をしていきたいと思いますので、御了解いただきたいと思います。
  15. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それなら先ほどの答弁はどうなるの。十九日の答弁はどういうふうになってくるのか。
  16. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 十九日に私が答弁申し上げましたことと今の三点とは基本的に食い違っているというところはないのじゃないかと思いますけれども、もしそういうところがございましたら、私自身の今考えていることを御説明させていただきたいと思います。
  17. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 何、もう一遍。
  18. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 私自身が今考えているところを御説明させていただきたいと思います。
  19. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 中島公務員部長に申し上げます。  引き続いて答弁の一環であれば、続けて御答弁願います。
  20. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 十九日に私が御答弁申し上げたことと今先生お話しになりました三つの点につきましてどういう点が矛盾しておるのかと、どういう点が反しておるのかということにつきまして私自身よくわかりませんので、御指摘がございましたら私自身の考えているところを御説明させていただきたいと思います。
  21. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたが十九日に答弁した内容は、ラスが低いところはその地域物価指数も低いんだから当たり前だという論理、そういう展開をしたんですよ。逆に言えば、地域物価指数が高いところは賃金が高いことは当たり前だと、こう言わなかった、十九日の答弁、ちゃんと出ていますよ、ここに。それはどういうことなの。
  22. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 私が申し上げたかったのは、ラスパイレス指数が低いというか、給与水準の低いところは、例えて言いますと民間賃金地域差指数が低いとか、あるいは地域物価指数実態がどうであるとかいうような給与決定の諸要素をめぐるものをいろいろ考慮しながらそれぞれの地方団体でお決めになっておる、そのお決めになっておることについて住民国民から特段の批判もないということだったら中央官庁指導に乗り出すというのはいかがなものだろうか、それで了解されておるのならばそれでいいのじゃないかというふうに私は申し上げたように記憶しております。
  23. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そういうことになると、例えば私がそのときも言ったように、ラスというのは国家公務員賃金を基礎にして比較しておるわけでしょう。その国家公務員賃金基準になっておるわけだけれども、地方公務員の場合には国家公務員にない職種がたくさんあるわけだよ。同時にまた、市町村段階の中には比較にできない内容を持っておるわけだ、規模の面も含めて。そういうものであることが一つと、もう一つは、その町村から県の職員も出ておれば国家公務員も出ておる、勤務しておる。そういうところだってある。そういう賃金比較等いろいろ考えてみると、ラスそのものというのは必ずしも金科玉条的に判断すべき性格のものじゃない。これは過去、今まで自治省との交渉の中でもその点は確認して、一つ統計にすぎないと、こう言っておるわけだ。そういう種類のものに対して、あなたが十九日の議論の中では、地域物価指数が安いところは云々とか、そこで住民が問題がなければいいじゃないかとか、こういう論理というものは、それで理解がいくと思いますか。  現在、例えばあなたたちが高いと指摘するところも、逆に言えばそこも議会の承認までもらって、そして地域住民もそれで納得しておる、そういう経緯に対して、あなたたちが百五十三団体をやり玉に上げてやっておる。地域じゃ問題がないのに国の方からやっておるという経緯でしょう。そうじゃないですか。どうですか。
  24. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 私たち個別指導団体といいますか、百五十三の団体というものを対象にいたしまして指導しておるのは、給与水準が非常に高いこと、そしてその給与水準を非常に高くしておる原因というものが、渡りの話とかいろいろございますけれども、そういうものが現在の給与決定原則に照らしてやはり問題があるということで指導しておるわけですけれども、その指導に至りました背景というのは、やはり何といいましてもそういう非常に給与水準の高い団体に対して国民から非常に強い批判があるというそ批判というものに、指導官庁としての自治省責務を果たしていくためには、やはりこの際個別指導していかなければならないということでございまして、国民の厳しい批判があるということを背景にして私たちがやっておるという現状を御理解いただきたいというふうにお願いします。
  25. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いや、その批判についてはまだ後でやります。しかし、今あなたが言ったのは、公務員部設置のときにおける三つ確認に基づいて、地方公務員待遇改善定員確保権利擁護、このために注意を払うことという確認もやられておる、それから労使紛争について自治体主体性を侵すような介入指導を行わないこととなっておる、今行おうとしておることはまさにこの二つに反するわけです。そういう面から見れば、公務員部長としては、むしろ公務員部設置経緯からいっても、逆に、そういうことをすべきでないという立場に立たなきゃならぬのじゃないですか。どうですか。
  26. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) そういう精神に立って仕事をしなければならないというのは仰せのとおりだと思いますが、私が先ほど申し上げましたように、今の地方公務員給与現状というものに対しては、昭和五十五、六年ごろ、ちょうど臨調の審議が始まりましたころから非常に厳しい批判というものが寄せられまして、その批判というか国民の考えといいますか、世論というものにこたえていくということも行政組織としての非常に大きな私は責務だというふうに思います。その責務を果たす過程におきましては、今先生がおっしゃいました三つ確認というものを念頭に置きながらやっていかなきゃならないというふうに思いますけれども、何といいましても、そういう国民批判というものにこたえていくということを行政官庁としてはやっていかなきゃならないというふうに考えます。
  27. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それなら当然、そこを言うならば、公務員部長としては、ラスよりも低いところはこの際ひとつ一〇〇に上げてもらわなきゃ困る、こういう立場に、同時に三つ確認念頭に置いているなら、ならなければうそでしょう。そうじゃないですか。それが全然あなたにはないじゃないですか。だから私は十九日のときもそれを言ったわけだよ。そこを言うなら、三千三百自治体の中で百五十三を言うなら、残された約三千二百の自治体のその中で五〇%近いものは一〇〇以下じゃないか、九〇以下もある、こういう実態にどう対処するのか。当然ここにも引き上げの指導をすべきじゃないか。それをやってなくて、そうして部分だけとらえて誇大に、しかも地方債というところに、本来ラスとは関係ないところまで介入の手を伸ばすというのはけしからぬじゃないか。この立場は、この三つ確認に立つならあなたと私は同じでなきゃならぬと思うんです。そうじゃないのか。むしろあなたがそれを主張せねばうそじゃないのか。
  28. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 私たち仕事を進めてまいります場合に、一般的というか原則的な考え方というのは、三つ確認事項に基づいてやっていかなきゃならないと思いますけれども、その過程におきまして、やはり今の公務員給与をめぐる諸情勢といいますか、諸条件というものにもこたえていかなければならない立場に立たされておりますので、必ずしもそこは先生のおっしゃるような方向ではかり仕事をするわけにいかないというのが私たちの今の立場じゃないかというふうに思います。
  29. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それでは、この三つ確認は放棄するということか。守れないということですか、今の情勢からいって。それならそれではっきりしなさいよ。あなたの今までの答弁をずっと聞くと、この三つ確認についてはよく記憶に覚えてない一覚えてないんじゃない、初めからもう守るという意思がないんだ。そう受け取らざるを得ない。そうじゃないですか。それならさっさとやめなさいよ。
  30. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 先ほど来御答弁申し上げていますように、院における三つ確認というのは私たち仕事をするときの基準だというふうに考えておりますので、そういう考え方といいますか、そういう精神というのはこれからも堅持してまいりたいというふうに思います。
  31. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 堅持をすると言いながら、もう今の政治状況からいって放置できない-逆なことを言ってみたり。どうやって堅持をするんですか。僕は、大蔵には大蔵立場があり、自治省には自治省立場がある、そこから主張するのはわからぬでもない、わかりますよ。同じように、自治省の中でも公務員部公務員部立場があるはずだ。同時に財政局財政局立場があるはずだ。それを議論しながら行政執行をやっていくというならわかりますよ、大臣の裁断でもって。しかし、あなた自身がまるでもうそういう公務員部長部長たるゆえんの任務はないじゃないか、頭の中に。それだったら部長の資格ないじゃないか。守るなら守るで、きちっとここで約束しなさい、もう一遍。そして、今後はその方向に基づいて指導に徹しますということをきちっと言いなさいよ。
  32. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 幾度も答弁申し上げるようですが、私たちが現在置かれている条件といいますか、環境といいますか、そういう中において我々も仕事をしなければならないわけでございます。したがいまして、公務員給与というものをめぐりまして非常に厳しい批判がある、その批判というものがこの国会でもよく議論されますように、やはりそのことによりましていろいろ地方自治に対する批判が出てくるとか地方自治に対する誤解が出てくるというような条件の中に置かれておりますから、そういう誤解を取り除くということも我々がやらなきゃならない仕事一つでございますので、そういう誤解を取り除くためにも、地方公務員給与というのが法律決定原則に基づいて行われるように、やはり私たち指導していかなければならない立場にあるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  33. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたと質問やっているとやる気なくなる。これは大臣要らぬですね。立派な大臣ができたじゃないですか。あなたの存在もないに等しいじゃないですか。そういう政治的ないろいろな意味判断大臣がやるんだよ。あなたはあなたの立場をきちっと守るか守らぬかと聞いておるんですよ。この三原則を守るのか守らぬのか、それに徹するのか徹しないのか、そこを聞いておるんだからきちっとしなさいよ。何か大臣みたいなことを言いなさんな。
  34. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 公務員部長として院の確認三つというものを守っていかなければならないというのは当然でございますけれども、やはり政府委員といたしまして、私が先ほど申し上げました行政を取り巻く諸条件、特に地方自治に対する現在の厳しい批判というものにこたえていかなければならない立場もございますので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。
  35. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣、これはもうやりとりやってもしょうがない。やっぱりこれは不適格ですよ。私は、大臣のこの問題に対する見解を聞いて、時間がないですから、これ以上議論しておって二時間とられたらたまったもんじゃないですから、ひとつあなたの見解を聞きたい。
  36. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 先日の公務員部長佐藤さんに対する答弁の中で失礼な言動があったとすれば大変申しわけないことでございまして、私からも厳重に注意をいたして、これからそうしたことのないようにひとつ戒めてまいりますので、ひとつ私からおわびを申し上げます。ひとつそういうところで御勘弁をいただきたい。もちろん、公務員部としては、先ほど御指摘がありましたように、また院の方針に基づくように労使円滑化を図る、あるいは地方公務員勤務条件についての適正な指導をしていく、また労使紛争介入しない、こういうようなことは常々考えて執務をしているつもりでございます。  そういう面で、ひとつこのところ御審議を続けていっていただきたい。私からお願いを申し上げる次第でございます。
  37. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 私は、公務員部長のあれはなかなか許すわけにはいかぬのだけれども、大臣がそうおっしゃるから議事進行という観点で協力していかなきゃならぬと思いますが、しかしそういう意味でこの問題はまたひとつやる機会もあるでしょう。  ラスパイレスは、私はここに委員長に要求して出せと、こう言ったところが、なかなか出さないということなんですが、これは秘密にかかわることですか。
  38. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 法律秘密に属する事項かというふうに考えますと、そうじゃないというふうに思います。  私たちも、自治省の方で直接対象にしております県分とかあるいは指定都市分というのは公表しておりますので、そういう秘密に属する事項じゃないと思いますが、最初に御答弁申し上げましたように、市町村分につきましてはその指導というのを都道府県の方にお願いしておりますので、都道府県の方で取り扱いというものをお決めいただくのがいいだろうということで、都道府県の方にその取り扱いを一任しておるという現状でございます。
  39. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 都道府県に経由して云々と言うけれども、そうじゃなくて、こういうものを個別に自治省が直接調査をして公表したりすることは自治権にかかわりはしませんか、どうですか。
  40. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 最後の方、自治権にかかわりはしないかという御質問でございますか。――私たちの方でラスパイレス指数というのを計算しておりますのは、私たちが面接指導いたします都道府県及び指定都市、あるいは県を通じて指導をしております一般の市町村につきまして、その指導のときの参考資料として役立てようということでございまして、先生が先ほどお話しになりましたようにこれが金科玉条だとかいうような考え方は持っておりません。それは、やはりその計算する統計上の限界というものもございますので、その限界というものを踏まえながら利用していかなければならないという考え方でございます。
  41. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 結果的にそういうことできょうは提出をしてもらえないんだけれども、中身ちょっと聞きますが、一一五以上の団体というのは五十七年度現在でどのくらいあるのか、一〇〇以下というのは一体どのくらいあるのか、平均はどうなっているのか。
  42. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 五十七年四月一日現在で、一一五以上が百六団体でございます。一〇〇未満が一千六百四十二団体ということでございます。そして、全地方団体平均で一〇六・一ということでございます。
  43. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 一〇〇以下が何団体
  44. 中島忠能

    政府委員中島忠能君) 一〇〇未満が一千六百四十二でございます。一一五以上が百六でございます。平均が一〇六・一ということでございます。
  45. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうすれば、これは大臣ラスの問題であなたがこの地方債給与条項を導入する際にどうしても入れなきゃならぬという問題じゃないような気がするんですが、もう一つ聞きましよ一つ。  財政構造の弾力性を判断するのに経常収支比率というのがありますね。これは五十年以降の推移がどうなっておるのか、またその中で人件費分と公債費分はどうなっておるのか。これは財政局長ですか。
  46. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 決算統計によります経常収支比率の推移を申し上げますと、昭和五十年度以降について申しますと、昭和五十年度が八六・六、五十一年度が八三・七、五十二年度が八三・三、五十三年度が八〇・七、五十四年度が七八・二、五十五年度が七八・四、五十六年度が七八・九、五十七年度が七八・四と、こういうことになっております。  そのうち、人件費のウエートを申し上げますと、五十年度が五六・五、五十一年度が五三・六、五十一一年度が五一・七、五十三年度が四八・三、五十四年度が四五・五、五十五年度が四四・三、五十六年度が四三・五、五十七年度が四一・八と、こういう傾向をたどっております。
  47. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 公債費は。
  48. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) それから公債費は五十年度が七・六、以後各年度で申しますと、七・六から八・六、九・四、一〇・二、一〇・九、一二・〇、一三・二、一四・三、五十七年度は一四・三となっております。
  49. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうしますと、経常収支比率の五十五年以降若干上がっておる部分というのは人件費じゃないですね。むしろ公債費が上がったからそれをせり上げておると、こういうふうにとっていいんじゃないですか、どうですか。
  50. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 最近の経常収支比率の推移を見ますというと、全体としてはほぼ横ばいでありますが、その内容を見ますと、人件費のシェアが少しずつ下がって公債費のシェアが少しずつ上がってきております。
  51. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 一五%下がっていますね、人件費は五十年から見ると。そうでしょう。公債費が約二倍に上がっていますね。そうなるでしょう、今あなたの言った数字で言えば。このことから見ると、そうでしょう。局長、今私の違いますか。
  52. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 私、五十年度からの数字を申し上げましたが、御案内のように、第一次石油ショックの影響で五十年度は急速に経常収支比率が上がった年でございます。そのとき、同時にまた人件費の割合も四十九年度四九・七から五十年度が五六・五と急速に上がった年でありますが、五十年代の数字を申し上げるという意味で今ずっと申し上げたわけです。確かに、五十年度を起点に考えますと、公債費がほぼ借というシェアに上昇しております。
  53. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ですから、そういう観点から見ると人件費は確実に下がってきておる。大臣がよく言う財政構造の問題とか自治体財政全体が厳しい、こう言うけれども、その一番大きな主因は何かというと公債費になってきている。人件費の方は確実に下がってきている。そういうことが私はラス段階でも言えるんじゃないかと思うんです、ラス段階でも。ですから、そういう状況にあるだけに、今回この問題を改めて起債条件の中に入れたということについては、どうしてもやっぱり理解できないんです。順調に、今あなたが言う、一番懸念する部分がなくなってきつつある。その段階の中でなぜ入れなきゃならぬのか。それが今までは、逆に言って給与条項は入ってないんだ。入ってなくても急傾斜で下がっている。この中にはいろいろな要素があると思いますよ。地域の皆さんなり政治的な動きなりもあるでしょう。要素はあるでしょうが、もっとあなたの立場から言わすなら、正常化の方向に走っておる、正常化の方向に進んでおるその過程になぜこれを入れなきゃならぬのか、それがどうしても私は理解できない。大臣、実はここら辺の状況というのをつかんだ上で判断したのかどうか、いかがですか。
  54. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 確かに財政構造の上から見ますと、例えば神奈川県、東京都、こういうところから見ますと、人件費の占める率というのは御指摘のとおりだと思うし、私どもが今度のこうした給与条項を入れざるを得なかったというのは、一番大きな理由は、地方財政を守っていかなければならないということが一番大きな主眼であると言って差し支えないと思うんです。  先ほど来お話しのように、ラスパイレスというのは一つ基準であって、これが絶対的なものではもちろんないことは御指摘のとおりでございまして、しかしたくさんの自治体の中にはやっぱり極端に国家公務員に比べて著しく高い給与を出している自治体がこれはもうあることは否定できないと思うんです。そういう一部の団体、しかもそういう団体がなかなか適正化に努力をしていただけない、こういうことのために地方財政全般が非常に誤解を受けている面がある。私は自治省を受け持つようになって、これほど地方財政に対して大きな誤解がしかも相当のところにまで広がっているということは憂うべきことじゃないかと。地方事務官制度の問題が臨調で逆転された、これは私ども想像できないことだったですね。そういう臨調の中でも相当議論があったようでございます。  それから、私どもは余り経済界に接触ございませんけれども、最近、与党になりましてから経済界の人に接触する機会が割合に多くなってまいりましたが、これは別の意味でありますから誤解のないようにお願いしたいんですが、そういう経済界の人たちの話というのは聞いていられないくらいですよ。全く私ら、もうけんかする、けんかしなきゃならぬくらいのひどい状態です。これは全くひどいですね。それから各省はどうか。各省の地方財政に対する見方も随分違う。  私は、こういう状態から見ますと、やっぱりここで自粛をする、自粛というか、一部の心なき自治体の方にはやっぱりどうしてもここでひとつ我慢を、自重をしていただかなければならない。それから、自治省としてもそういうような措置をとるような一つの行動を起こさなきゃならぬなということを実は感じたわけでございまして、本来なら、通達を出して、こうした給与その他財政支出の状況が著しく適正を欠く、そうして努力をしない団体には何らかの措置をしなきゃならぬ、規制をしなきゃならぬというふうなことはやらない方がいいに決まっているわけです。しかし、この程度のことをやらないと今に法制化してくる、法制化すべきじゃないか、こういうような議論だって国会の中に出てきているわけです。こういうことをやられることを防ぐということも我々自治省は考えていかなきゃならぬ。こうしたことで今度のこういうような措置をとらざるを得なかったというのが私どもの真意でございまして、決して、地方団体に威圧をかけたり、また地方団体に対して何らかの制裁処置を講ずるというようなおどしをかけるようなことでは毛頭ないということをひとつ御理解をしていただきたいのでございます。
  55. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 大臣のその真意というものはわからぬでもないんですけれども、これは、ある意味ではつくられたものもありますね。作為もありますし、それから政治的な意味での側面もございます。ですから、そのことが真っ当であるかどうかということは私は測定できないと思うんですよ。むしろ、逆にいってそのことによって地方自治そのものを損なう、こういうふうな現象になることを一番恐れているわけです。  そこで、今あなたは、威圧とかおどしとか、そういうことは慎まなきゃならぬと、こう言っておる。ところが、現実に今回のこの五十八年度の措置を見ると、そのおどしと威圧になっておるわけです、やっておることが。一昨日の石原答弁では、基準じゃないけれども抑制は四分の一程度基準にして、そうして福祉厚生関係が主体で、そう急につくらなきゃならぬというようなものでないものに限ってやったんだ、こういう言い方を、答弁をしておったわけですけれども、決してそうではない。私どもが現地をいろいろ調査をしてみると、それと全く反対の内容ですね。例えば東京都かの場合を見ると、これは率直に言って具体的に名前を挙げてもいいでしょう。三鷹であるとか八王子であるとか調布とか、念書をとったり、それから議長の連署をとったり、要求したり、これはとれなかったけれども、こういうやり方をやってきておるし、それから大阪を見ると別個に基準をつくっていますね。例えば三カ月延伸は、これはカットをしないとか、もしくは初任給調整は一〇%カットであるとか、全然やってなかったら二〇%のカットであるとか、こういうような基準をつくってやっておる。こういうことは石原さん、あなたの方で指示を具体的にしてやっておるんじゃないですか。
  56. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 先日の本委員会での御答弁でも申し上げましたように、私どもは五十八年度の起債の最終処理の段階で、五十六年に御提出いただいた給与の是正計画について五十七年度までに全く是正措置を講じていない団体、それから適正化措置を講じておりましてもその内容がほとんど適正化の上で実効が上がると考えられない団体について申請額の四分の一を目途に抑制措置を講ずる、こういう考え方で各都道府県指導申し上げたところでございます。その際に、そのときにも、御答弁申し上げましたように、一律に二五%乗じて端数まで計算したわけではございませんで、各団体の状況によって、それを上限にしてその範囲内で抑制措置を講じた。その際に、各都道府県の具体的な適正化措置の中である程度評価できるものについては多少これを抑制額を緩和する、こういうような措置が行われたものと承知しております。
  57. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたのそういうそ答弁は八日も聞きました。しかし、現実はそうじゃないじゃないですか。私どもが調査した限りではそうなってないんです。ですから、例えば三鷹の市議会が国の自治体への過度介入に反対する意見書を採択しておる。これはあなたの方は承知しておるはずですね。そうでしょう。三魔の市議会でそういうことが意見書を採択されたことは知っておるでしょう。そういうことをやるということは、よほどのことがなければ私はそうやるものじゃないと思うんですよ。起債の許可というのは三月三十一日にやりますでしょう。ところが、自治体の場合には単独事業を含めて当初予算で出し、そして事業執行にかかる。大方事業ができ上がったころは金を払わなきゃならぬ時期で、それを起債許可しない、こういうことがやられることになりますと、これは異口同音に言っておるように、安心して事業できないと、こう言っておる。住民にサービス事業やるにしても一々自治省にお伺いして、そうして頭を下げていかなきゃもう自治体ができない、やってみてもいつ不許可になるか、それが終始一年間づきまとうと、こう言っておる。これは大臣の言うように、脅迫、おどしじゃないと、こう言うけれども、事実はそうなっておるじゃないですか、違いますか。
  58. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 五十八年度の地方債の許可に当たりまして、たしか秋十月ごろ、十月か十一月ごろの段階だったと思いますけれども、そのときまでに起債配分を済んでいないもの及びその後追加申請のあったものにつきまして、いわゆる個別指導団体については、その団体の財政状態の将来を考えますと、かねて御提出いただいておりました適正化計画に沿って効率的な実効ある措置をぜひ講じてほしい、こういう御指導公務員部の方で申し上げておったわけであります。  私どもも、財政上の見地から、これらの団体が全く適正化措置を講じない、計画を実施しない、あるいは実効ある措置を講じないということになりますと、それらの団体の財政の将来について非常な不安が出てまいりますし、また他面、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、一部の地方団体公務員給与に対して大変厳しい世論批判が出てまいりまして、それがたまたま五十九年度の税制改正の論議あるいは地方財政対策の論議の時期でもありましたが、これらについて、これらの団体が的確な対応をしていただかないというと地方財政全体にも大変なこれは影響が出てくる、こういう気持ちからぜひ計画を実行してほしい、こういうことをお願いいたしたわけであります。そうして、その段階で追加申請のあったものなどにつきましては、もし適正化措置が講じられない場合には、私どもとしては財政上の見地から許可方針の中で各団体の財政状況を勘案する、この考え方に沿いまして抑制措置を講ぜざるを得ないということを申し上げた次第でございます。そうして、最終的には二十三団体がどうしても的確な計画が御提出いただけなかったということから、先ほど御答弁申し上げたような抑制措置を講じた次第であります。  確かに、財政運営の望ましい姿からするならば、年度の当初から地方債についてどういう扱いがなされるのか、これを明らかにすることが本筋であろうと思います。私どもは、実は五十七年度は例の給与改定が全面凍結になってしまった、こういう異常事態のもとで適正化計画を実行しにくい事情があった、このように私どもも財政上の立場からも考えたわけです。しかし、五十八年度は二・〇三という率ではありましたけれどもともかく給与改定が実施される、そういう際に何らかの適正化措置が同時に講じていただけるものと、こういう考え方をとっておったわけですけれども、抑制措置を講じた団体におきましては給与改定は実施したけれども適正化措置は実行されなかった、こういうために最終的に一部抑制措置をとらざるを得なかった、こういう事情でございます。  したがいまして、五十八年度の経緯なども踏まえて、やはりこういった扱いをするということであるならば、これは年度初めから地方債の扱いとして許可方針の中で明らかにすることが財政運営の指導上も必要である、このように考えまして五十九年度の許可方針にはこの旨を明示した次第でございます。
  59. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 あなたは衆議院段階でも拡大する考えはないんだと。大臣は今言うように脅迫とか威圧とかおどしをすることがあってはならぬといろいろ強調しておるんですが、しかし五十八年度の場合には追加要求に限っての措置ですね。五十九年度は、冒頭からもう給与条項を入れちゃったわけだから、これは三千三百自治体を全部対象にしていくわけでしょう。あなた方は、限って言うなら一一五以上の百五十二団体か、これはもう全部マークしていくわけです。そういうことになると私は思うんですよ。  そうなると、これは五十八年度のような局限した問題よりもむしろ拡大していかざるを得ない、冒頭から。そうして、しかもさっき言ったように、あなたは四分の一程度ということで説明しておりますけれども、現実は何かと言えば、それぞれの府県の実態の中でそれを拡大解釈して具体化してやられておる、こういうふうなことを考えてみますと、これは私は、やっぱり法律でも、こういう制度というものでも、つくった人の意図と違ったひとり歩きをすることは必至なんですよ。そこは、そうでないと言うなら、やっぱりきちっとした基準というかそういうものがあってしかるべきだ。しかし、それは何もない。給与適正化努力の程度と起債の制限の考え方というか基準というか物差しというか、そういうものは一つもないじゃないですか。あなたはここでそういうことを言うけれども、また大臣大臣で、脅迫や自治権を侵すようなことがあってはならぬということを、心配することを言っておるけれども、現実は全くひとり歩きしておる、五十八年度の追加要求の事例見ても。ましていわんや今度、五十九年度これは全部に適用になるわけですから、こういう心理的なまた実際的な波及というか影響というか、そういうものをどう除去していくのか、この点について何か考えがあるならひとつはっきりしてください。
  60. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 五十八年度におきましては、ただいま御答弁申し上げましたように、私ども当初、各団体が御提出いただいた計画をそれぞれ実施していただけるものという考え方に立っておりましたけれども、一部の団体において最終的には実施がなされなかったということで、やむを得ず一部の抑制措置をとった次第でございますが、ただ、確かに先生指摘のように、そういうことを行うのであるならばそれがあらかじめ明らかにされなきゃならない、これは御指摘のとおりだと思います。  それからまた、この対象団体につきましても、どこまでが対象になるのか、これが漢としているということは、多くの団体、まじめに行政を行っている団体も心配するということではいけないと思います。したがいまして、このいわゆる給与条項の適用される団体及びその適用の仕方についてはできるだけ早くしっかりした基準を定めてまいりたい、本委員会における御議論なども踏まえ、また各都道府県の御意見なども聞きながら、基本的な考え方は先ほど大臣が御答弁申し上げたような気持ちの上に立って、具体的なこの適用の仕方については基準を明らかにしてまいりたい、このように考えております。
  61. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 それは今ここでは答弁できませんか。
  62. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 今、細かい細目についてまで、事ここで御答弁申し上げるまでまだ詰めてございませんが、衆議院でも御答弁申し上げましたように、私どもの気持ちとしては、五十八年度にとったような措置をあらかじめ許可方針の中に明示するという考え方でございまして、例えば対象団体について言えば、五十八年度対象にしたいわゆる個別指導団体、こういったものを一応五十九年度の場合も対象団体として考えていったらどうであろうか、このように思っております。  それから、具体的な対象事業、抑制対象事業についてでございますが、これはやはりこの措置の性格にかんがみまして、例えば義務教育施設でありますとか災害復旧とか、こういう住民生活に非常に不可欠の緊急性のある事業は抑制対象にすべきでないと思います。  そうでなくて、一般事業の中で例えば庁舎でありますとか会館のたぐい、あるいは特別地方債の中で言えばいわゆる厚生福祉施設系統のもの、まあ立場によっていろいろ評価は違いましょうけれども、私ども財政上の見地から、緊急性という点では他の事業よりも優先度を若干後にしてもいいと考えられるような事業を五十九年度も対象事業にしてはどうか、このように考えております。  それから、抑制措置の基準でございますけれども、これについては五十九年度の財政状況も踏まえて具体的に定めていかなきゃならないと思いますが、どの程度、細目といいましょうか、細かい基準までつくるのがいいのかどうか、この辺も含めて、これから御意見も拝聴しながら詰めていきたい、このように想っております。
  63. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは大臣、私は、さっき局長の答弁の中にも言っておりましたが、不急不要というか、不要じゃなかろうけれども、不急を基本に置いてやるというけれども、今度の抑制された二十三団体の中身を見ると臨時地方道も含まれている。それとか国の補助金のついたものも抑制の対象になってきているんですね。そういうことは、地方自治体が財源が乏しいだけに、私はやっぱり自治体から見れば最も陰湿なやり方じゃないかと思うんですね。一番欲しいところを抑えていくという、こういうことも思うんですけれども、ここら辺のありようというか、基準をつくるという場合には、私は、やっぱり先ほど大臣答弁したような趣旨を基本に置いて、制裁じゃなくて、自治権というものをしっかり踏まえて、そしてつくるような方向でなきゃいかぬと思うんですよ。  それからもう一つは、やっぱりあなたのおっしゃったように、やりたくないんだと、すべきじゃないと思うと、しかしやむを得ぬと、こういう言い方をしましたが、それほどであるなら、どの程度にきたらこの問題については解除するのか。たとえば一一五以上百五十三団体というのが現実には百六団体、さっきの公務員部長答弁みたいに百六団体になっておる。そうすれば、その残された、いわゆる一一五以下になったところについてまだ目くじら立ててやるのかやらぬのか。むしろこれはやるべきでないものをやらざるを得ないという立場に立つならなおさらのこと、直ちにそこら辺は対象から外していくとかすべきことでもあろうと思うんですがね。ここら辺の問題について大臣見解を聞いておきたいと思うんです。
  64. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 基本的な考え方につきましては大臣から御答弁いただきますが、今、やや具体的な例示がございましたので、初めに私から答弁させていただきますが、五十九年度においてどのような団体対象として考えているかということについて、私どもは今の時点で、例えば五十八年度に対象として考えだ個別指導団体ということを申し上げた次第でございます。しかし、先生指摘のとおり、この個別指導団体の中でも適正化措置を講じた結果がなり給与水準が適正化されている団体もございます。ですから、その内容によっては当然対象から外れていくものがある。私ども固定的に、五十八年度に対象になった団体は五十九年度も自動的にということではございませんので、適正化の内容によって当然これは見直しがあるものと考えております。
  65. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 御質問の趣旨がちょっとよくわかりませんでしたけれども、こういう抑制措置というんですか、給与条項、恒久的なものじゃなくて、やりたくないものをやらなきゃならぬということであるから、早くこういうものをいつかはやめるようにするんだろうと、こういう御質問ですね。これはもう当然でありまして、こういう事態がなくなればこういうことをやる必要はないことでございまして、結局こういうことによって特殊な例が避けられる、あるいはまた国民世論も地方財政を随分理解するようになってきたと、そういうことになればあえてこういう条項を入れておく必要はないことでございますから、これはやっぱり様子を見て考えていかなければならないことだと思います。  それからもう一つ、誓約書とかいろいろ言われておるようでございますけれども、私は一、二の団体でそれに似たようなことをじかに自治省指導しているのを見ましたけれども、そういう是正措置をとるという、計画を出させるという、そういうことは、むしろなるべく抑制措置をさせないようにするために一つの計画を出しなさい、こういうふうにしてやっているところを私しかに見聞した一つ二つの例がございます。ですから、決してそういうおどかしとか脅迫とかというようなことではない。このことをひとつ御理解していただきたい。もし仮にそういう非常におどかし的なものがあるとすれば、それはやめさせるように我々から言わなければならないことでありまして、やはり自治権を尊重しながらこういうような措置をやっていかなきゃならぬ。ただ、全然何にも地方自治体が抑制されないようなことでは指導にあれが入っておりませんから、これは多少は起債を制限しなきゃこれは何にもならないんですから、その辺はひとつ御了承をしていただきたい。自治省もいじめるのが生じゃないんですから、私は抑制措置をやっているのを時々見ますけれども、やっぱり自治体側の立場も考えながら、考慮しながらやっていますよ。それはひとつ御理解をしていただきたいのでございます。
  66. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 いろいろございますが、また次の機会に質問もあるようですから、この問題はこの程度でひとつとどめて次に移りますが、さっき大臣も、何というのですか、与党になったら経営者側とっき合いが始まったようですけれども、やっぱりあなたがそういうふうに権力の側におって大したことないと見ても、自治体の側から見たら大変なんですよ、これは、率直に言って。そして、自治体の場合には、私がこの前も言ったように、ちゃんと選挙によって首長も議員も選ばれてきておるわけですね。そこの声もあるわけです。それを声を声としてやってなきゃリコールされるわけですね。また改選で落とされる、そういう二重三重に加えて今度は上からやられるという、こういうことは僕はやっぱり自治権の圧殺以外の何物でもないと思うんですよ。だから、そこら辺はひとつ、あなたの言葉を聞いておると必要悪だというような、やむを得ずやったんだと、こういうような言い方をしていますが、私は基本的には、やっぱりラスパイレスなどをこういう起債という本来の目的から外れたものに活用すべきじゃない、そのけじめはやっぱりきちっと持って、そしてできるだけ早くこの条項をひとつ撤回していただく、そういうことをひとつ要請をして次に移りたいと思います。  八日の志苫質問を聞いておって私もつくづくそう思ったんですが、交付税の問題で二点ほど聞いておきたいんですよ。志苫質問はすっきりしてわかるんですけれども、どうも石原答弁が何かしどろもどろでよくわからない、そういうような感じがして、石原さんにしては珍しいなと思いながら聞いておったんですけれども、きょうはひとつそこら辺をすっきりしてもらいたいと思うんです。  一兆五千億の不足財源の問題ですが、一兆五千億が今度は不足したと、こういうことなんですが、これがどうもその算定根拠がよくわからない。当初は二兆円だと、こう言っておった。いつの間にか一兆五千億になった。それを今度は地方債と特例措置で充当したと説明しておるわけですね。ところが、既往の財対債の五十九年度償還分が一兆四千百六十二億でしょう。それに特会の借入金の地方負担利子が三千六百三十八億、合わせると一兆七千八百億なんですね。そうすると、一兆五千百億という不足財源から見ると二千七百億がはみ出てくるわけですね。これが既往の借金返済を除外すれば、それでは地方財政は財源超過になるのかということにもなるわけですね。そうして私は、地方の財政需要の算定、そこに無理があるのかなという感じもしておるんですけれども、ここら辺の問題、もう一遍ひとつ胸に落ちるような説明をしていただけませんかね。
  67. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 私どもが、毎年度そうでございますけれども、地方財政対策の詰めに入る前の段階で、大体八月末に概算要求を提出しまして、それから十月、十一月と税制調査会の論議が進みまして、通常でありますと、十一月もう半ばを過ぎるころから大体何となく次の年度の地方財政収支がどうなるんだということが話題になり、マスコミからもお尋ねがあったりして、その時点での情報をもとに、ある程度の展望のようなものを申し上げております。その時点では、私どもとしては、税収見積もりは予想される中でどうしても低目に見る、それから歳出要因は予想される中で高目に見る。その結果といたしまして、収支の不足額というのは大き日に出てくるのであります。これはいつの年もそうでございます。それがだんだん税制改正の内容が固まり、翌年度の経済見通しが決まり、国税収入の枠が決まってまいりますと、地方税についても税収が決まり、また交付税の額が決まってくる。一方、歳出の方は、国の予算の歳出の査定の輪郭が固まってまいりますと、それに関連して歳出の枠も固まってくる、こういうようなことで、当初我々が見通しておったよりも財源不足額はだんだん小さくなってくる。これは意識的に抑えているのじゃなくて、幅を持って見ておりました不確定数字がだんだん固まってくるというふうに御理解を賜りたいんであります。初めから小さ目に言ったのでは勝負になりませんので、どうしても私どもとしてはそういう気持ちが働きまして、大き目な数字をいつ直言っているわけでございます。  特に五十九年度について申しますと、確かに私自身もある時期におきまして、五十九年度の地方財政収支について、五十八年度が二兆九千九百億円でありましたが、それの前後かなと言ったこともありますし、まだかなり押し詰まってから、二兆円前後かというふうなことを言ったこともございます。しかし、その当時、その時点での数字と最終の数字との間でどこが違ってきたのかといいますと、一番大きなのは実は地方税でございます。地方税の収入と地方交付税の収入見込みでございます。特に地方税について申しますと、御案内のように、五十八年度の場合には税収見積もりが最終的に前年対比でマイナス〇・一であったわけです。二百数十億円、前年度より減ったわけですが、これがどの程度回復するのか、私ども正直わからなかったのです。しかし最終的に一兆二千九百億の増収になったわけです。これが非常に大きな食い違いでございます。初めの見積もりに対して変わってきた要素です。それから、地方交付税についても精算額の五百十億円の問題もありますけれども、それを別にしても交付税の場合、例えば五十八年度は八千五百億円の精算減を含めて二兆一千億円も前年対比で減ったわけですが、これが最終的には六千五百億円の減にとどまった。ですから、ここで一兆六千億ほどもこのように差が出てきたわけです。正直言いまして、三税の見積もりも私どもが初め考えたよりはかなりよくなってきた、こういう事情がございます。  それから、歳出につきましては、確かに一般行政費、投資的経費を通じまして、私どもが予想したよりもかなり厳しい線で国の歳出が決まってまいりました。この点については、いろいろ地方は地方の立場で必要な歳出増を確保すべきだという御議論もあると思いますが、今の政府の全体の立てる方針といたしまして、増税しないで収支の均衡をとるために歳出を極力抑制するのだ、この方針は国についても地方についても同一基調でいくと、こういう方針確認されておりますために、私どもも歳出の積算に出たりましては、もちろん大蔵省との間で随分途中の過程では議論をいたしましたけれども、当初期待したところから見ればかなり抑制基調でおさめざるを得なかったと、こういうような経過をたどりまして一兆五千百億円という財源不足に落ちついたわけであります。  先生指摘のとおり、財対債だけの償還費をとっても一兆四千億あるじゃないかと、こういうことあるいは交付税特会の金利負担が三千六百億円がある、これは私どもも、特に金利負担につきましては昨年来の経緯もありまして、最後までこれは何としても国が持つべきだという主張を私どもしたわけですけれども、最終的に残念ながら元本の処理との兼ね合いで地方の負担分に見合う利子は交付税特会が負担せざるを得なかったわけです。  そこで、もしそういうものなかりせば確かに収支は黒字になる、余りが出ちゃうじゃないか、ここは計算上はそうなると思います。ただし、そういうような状態になれば、私どもとすれば歳出を極力抑えているわけでありますから、地方行政水準のレベルアップのために、当然、抑えたものを戻すという主張をすることになったであろうと思います。これは仮定の問題でございますけれども、いずれにしてもそういうことでございまして、収支の積算に当たりましては、当初いろいろ申し上げておった数字と最終の数字との間の違いというのは、主としては地方税収入及び国税三税の見積もりの変化に伴うものである、このように御理解を賜りたいと思います。
  68. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 なるほどそういうこともあるかもしれません。対大蔵省との関係経緯はわかります。  それで、もう一つ聞いておきたいんですが、一兆五千百億についての特例措置と財対債の案分について見ますと、五十年からずっと押さえてみると大体半々で来ておるんですね。今度は七九・八と二〇・二になっておるわけですね、五十九年度は。この根拠は何ですか。
  69. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 昭和五十一年度以降、地方財政収支が毎年度巨額の財源不足が出てまいりまして、その財源不足についてどういう形で補てんをするか、この基準と申しましょうか、考え方でございますが、確かに年度によっては財源不定額を半分に割って、半分は財源対策債、半分は交付税特例措置と決めた年もござ、います。  たしか五十二年度でしょうか、そういう年もございますが、ただ、その場合もやみくもに半分にしたのじゃなくて、大体、財対債の対象事業、具体的には公共事業等の地方負担額に対して充当率を初めのころは九五まで上げたわけですが、九五ぐらいまで上げる数字がほぼその辺であるということで、初めから半分に割って交付税と起債措置をしたというそういう対策を論じた年もありますが、大部分の年は初めに財源不足を前に置きまして、その対策として公共事業の地方負担額等について建設地方債をどこまで活用できるか、その詰めを先にやっておるわけでございます。と申しますのが、財源不足額の計算の前提としては、公共事業の地方債の充当率は原則二〇%と計算しているのです。ほとんど起債は使わない。この二〇%というのはどういう率かというと、昭和三十年代の初めのころ、地方財政の健全化を図るために一番公共事業の充当率を下げたときの傘なんですけれども、その率でもとの計算をしておきまして、そしてあと残りの分を起債の活用で埋めていく、こういうやり方をしているわけです。そこで、どこまでが建設地方債で対応できるかというその方を読めまして、その残りを交付税で処理する、こういうやり方で大部分の年度はそういう処理をしておるわけであります。  したがいまして、財源不足がうんと大きくなりますと、投資的経費の裏負担はほぼ決まっておりますから、財源不足全体が大きいときには起債による措置は率としては小さくなるわけです。五十三年度、五十四年度がその典型でございますが、そのときは率としては起債が少なくなって、残りの方が多くなりますから交付税措置が大きくなっていく。それから、財源不足が小さくなりますと公共投資の裏負担について地方債の活用部分が相対的に大きくなる、交付税措置が小さくなる。これは例えば昭和五十六年度などがそういう例でございます。  基本的には五十九年度の場合もそういうやり方で、まず公共事業等の地方負担について原則二〇%の充当率となっておりますものをどこまで上積みして補てんするかということで、大蔵省との議論を御披露申し上げますと、そのときも大蔵省は当然、かつて九五まで充当率を上げたことがあるんだから九五にしてくれ、そうすれば交付税はゼロでいいじゃないかという議論もあったわけですけれども、私どもはやはり地方の借金体質を改善したいという基本の立場に立っておるわけですから、なるべく起債への依存を下げたい、こういうことで議論をして、最終的には前年の充当率九〇を八五に下げる、五%だけはとにかく下げるということで計算しますと一兆二千五十一億円という数字が建設地方債の活用で補てんできる、そして残りの三千四十九億円を交付税の特例でいく、こういうふうに決めた次第でございます。  したがいまして、あらかじめ八割方を起債で二割方を交付税でというやり方ではなくて、具体的な積算によりまして建設地方債の活用がどこまで可能かという方の議論を先に詰めまして、そして残余を交付税の特例措置で対応した、こういう経緯でございます。
  70. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 そうだろうと思うんですが、そうなれば、あなたが八日の答弁の中でも強調しておりましたが、今度の特例措置を含めて前向きに対処したとかいう表現があったように私は記憶しておるわけです。しかし実際は、例えば交付税特会の処理の仕方にしましても、五十八年度に限って利子半額負担というのをずうっとさかのぼって折半負担になっちゃった、そういう事例もございますように、決してこれは前向きではなくて自治体にとっては後ろ向き、こういう措置に追い込められてしまった、こういうことの方が表現が適切じゃないかと私は思うんですよ。  一説によりますと、何か田川自治大臣は新自由クラブから出たので、この際にひとつ自治省を一気に攻め落とせということで、そして大蔵省が遭いまくってしたと、こういう説も私の耳にも入っておる。まあ大臣首をひねっていますが、否定していますが、そういうふうに聞こえるんです。やはり私はこういうことを繰り返したところに問題があるのです。どうしても本則に戻って、六条の三第二項があるわけですが、それでもってきちっと処理していくという基本姿勢を崩して、便法でやってきたそのツケが今度逆に一挙に自治体にとってのっぴきならぬところに追い詰められてしまった、こういう評価をしておるんですけれども、そういうことに尽きるんじゃないですか。これはまあ大臣、首を横に振っておるわけだから、そうでないならそれでも結構ですけれども、どうですか。
  71. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) これまでの経緯にも関連するお尋ねでございますので、初めに私から答弁さしていただきますが、確かに、今日の事態に立ち至って振り返ってみますと、財源不足について交付税特別会計で借り入れという方法で当面の処理をしたこの積み重ねが十一兆五千二百億円の借金残高になってどうにもならなくなったというこういう批判、これは私どもも甘んじて受けざるを得ないと思います。  ただ、この交付税特会の借り入れによって当面の対応措置を講じた、これをルール化したのが御案内のように昭和五十三年度でございます。ちょうど五十三年度のあのルール化のとき、私は財政担当審議官としてあの方式を決める責任の立場にあったわけですが、当時の事情を申し上げますと、実は五十三年度、大変財源不足になりまして、国税の方では御案内のように会計年度の所属区分を変更して、国税収入、主として所得税、法人税については十三カ月分を歳入に組んでようやく予算を組んだ年なんです。そのような状況でありまして、地方財政も非常な財源不足になりました。一方では景気浮揚のために歳出は積極的にふやせというムードでありまして、地方財政計画上も歳出を大幅に伸ばした年なんです。そのときに、財源不足を特会で借り入れして、その返済の二分の一を国が持つというルール化を図ったのですが、その当時の気持ち、国会答弁もそう申し上げたわけではありませんし物に書いたわけではございませんが、関係者の気持ちとしては、遠からず、恐らく五十四年度あるいは五十五年度までには抜本的な税制改正が実現して収支の不均衡が基本的に解消されるのじゃないか、またされるべきだという期待を込めてルール化を図ったわけです。  当時既に政府の税制調査会におきましては、EC型の付加価値税を我が国に導入するという前提に立って相当詰めた税制改正論議を行っておりました。その当時の私どもの気持ちは、新しく生まれるであろう消費税、これをいかにして地方財源に取り込むかということで、例えば独立税としてどう取るか、府県税に取り込むべきであるというような議論、例の外形標準課税を我々は長年主張してきたのだから当然その新しい税は地方の独立税として入るべきだ、それからまた、これは当然国税三税プラス新税ということで交付税の対象税目に加えられるべきだ、こういう主張を我々はしておりました。そしてまた、その実現を願っておったわけです。  そういうものを背景にして五十三年度のあの特金借り入れのルール化を図った。その当時の気持ちとしては、こういうやり方というのは二年か三年で卒業できるのじゃないかという気持ちで取り組んだわけですが、しかし御案内のように、その税制改正の方は、五十四年の総選挙の結果、大改正はやらないということになってしまって実は宙に浮いてしまった、しかし財源不足の状態は一向に改善されないままにずっと今日に至った、こういう経緯でございまして、私どもも財政担当者として先が見えなかったという点については反省をしなければならないと思います。
  72. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 今回の措置の評価は、これはもう少したってみないと私はわからないと思うんです。私自身は御承知のように何らの知識もございませんし、四カ月前にこうした立場に置かれるようになりましたから、そんなに自信を持ってここで、おれはこう思う、おれはこうだということを申し上げるのも僭越でございますから申し上げませんけれども、今回のこの措置は、相当大蔵、自治の間で昨年の秋ごろから論議した結果でこういうふうになったものと思うのです。もちろん私に最終責任がございますから、何も責任逃れのことを申し上げません。私も知識はありませんから、自治省のOBの人や、かつて親しかった人たちの意見もそれとなくお聞きしましたし、また野党を支持していらっしゃる地方行財政に通じた人たちの話を聞きますと、やっぱりここで借入全体質をぶった切るというこの措置をとった、こういうけじめをつけたということは、皆さん思想信条のいかんを問わず評価してくれているようでございます。  ただ、中期的に見てこれが地方財政の健全化の方向に行くかどうかというのは、これは結果を見てみないとわかりません。しかし、私の素人なりに見ますと、やっぱりいい方向へ行くのじゃないかというふうに見ております。  さっき佐藤さんが連立とうのこうのおっしゃいましたけれども、連立のことから見れば、相当政府の方が気を使って、むしろ連立だから税率を減らさないで防げたというふうにさえ私は思っているんです。もしそういうことが働いているとすればですよ。私はそういうことは働いてないと思います。もしあるとすれば、私が非常に力がない、個人の資質が非常に大臣としてなかったということにあるというふうに思いますし、そういう政治的な背景はない。あるとすれば、むしろいい方向に作動していたというふうに思っております。
  73. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 なかなか大臣も強気だな。将来見てみないとわからぬじゃなくて、もう現実にわかっておるわけですよ、これは。五十九年度交付税率三二%を死守するんだ、特例措置いろいろあるけれども死守するんだということを八日の日には石原局長強調していましたが、もう現実に五十九年度は三二%を割られたわけだ。そういうことを見ると、私はやっぱり危惧にたえぬのです。地方財政は、見通しを誤ったとか、そこら辺は確かに不覚の至りということを言ってみても、取り返しのつかないことになるんじゃないか。私は、これは懸念であれば幸いだと思うんですけれども、私はそういうふうに思います。確信できるのじゃないかと思う。そこを私はやっぱり大臣も認識をひとつきちんとしてもらって、そして今あなたおっしゃったように、自民党さんの方で連合を非常に大事にしてくれるという素地があるという確信持つならば、むしろその強みを生かして今後頑張ってもらわないと一これだけじゃないですよ、地方事務官問題もそうだし、そしてとうとう起債に給与条項を入れる状況にまで来ておる。一事が万事、見ると私は非常に今重大な時期にあると思うんですね。確かに特会制度を取っ払ったということはいいことだとおっしゃるけれども、いいことじゃない。取っ払い方が問題なんだ。これがさっき私が言ったように逆になってしまっておるわけだ。だから自治体にとってはたまらぬし、そのツケが今度住民に転嫁されていくわけです。そこら辺はひとつ私は、大事な時期であるだけに認識をきちんとしていただいて、よくわからないでは困ると思うんです。よくわかって、そしてやっぱりやってもらわなければ困ると思うので、内容については志苫質問で八日かなり尽くしておりましたから、私は若干懸念になった点だけつけ加えて、しかとひとつ要請しておきたいと思います。  それで、ちょっと時間ございませんから若干駆け足になりますが、基準財政需要額でちょっと意見だけ聞いておきたいと思うんです。  市町村の分でございますが、この公園費の中に、用地費の分についてはどうなっておるかということが一つ。  それから下水道関係で、下水道の経常の分と、その他の土木費の投資の分と、公害防止対策事業債の償還分、これは公債費ですが、こういう三つに分かれたやり方をとっておるわけですが、これは一本化する必要があるのじゃないかと思うので、これはどういう見解なのか。  それから社会福祉関係で、保健所費用について費用の特定財源を一般財源方式をとってきておりますが、算定根拠というのは公開できないのかどうなのか。なかなかよくこの中身がわからない。  それから、小学校費の中の学童保育費を算入する必要があるのじゃないか、これは小さな問題ですけれども。  それから補正係数の問題で、人口急増補正Ⅰのケースの問題で、三月三十一日から九月三十日という仕組みになっておりますけれども、やはりこの時期は人事異動が非常に多いんです。ですから、そういう意味で、これを四月三十日から十月三十一日に改める必要があるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。  それから、これは私はいつか二、三年前に質問したことでもるるんですけれども、沖縄へ行ってみると、沖縄は特別措置法がございますね。そのことを理由にして補正がずっと、本土というか内地というか、それと対比してみますと随分落とされておるわけです。それに対する不満が非常に強い。本土の中では、例えば新産都市であるとか人口集中規模によってそれぞれかさ上げがついていますにもかかわらずそれらは落とされてない、そういう不満が強いわけです、沖縄へ行ってみると各地区とも。こういった問題に対してどういう御見解なのか。ちょっと細かい問題で恐縮なんですが、お聞きしたいと思うんです。
  74. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 公園の問題と保健所の問題につきましては審議官から後で御答弁さしていただきますが、初めに、学童保育に要する経費の算入の問題です。  こういった新しい行政需要を単位費用の上でどのように扱うかについてでありますが、私どもは基本的には、全国を眺めましていわば通常の団体、平均的な団体においてもあまねく実行されるような状況になれば、これを取り上げていかにゃいかぬ。標準的な行政需要として認知できる程度まで一般化した場合にこれを取り上げていくべきものと、このように考えております。  学童保育について確かに今非常に強いニーズが存在することは事実でありますけれども、これは交付税上の標準経費として認知するまで一般化しているかどうか、この辺は今後の研究課題とさしていただきたいと思います。  それから、人口急増補正の住民登録人口の押さえ方でありますけれども、確かに三月、四月というのは非常に時期として年度がわりで人事異動の時期でありますから、一部の団体で四月をとってほしいと、その方が有利だという御意見もあることは事実ですけれども、ただ、住民基本台帳の公式の統計といいましょうか、全団体について一律に人口統計として集計できるのが三月三十一日のものしかない。四月三十日は、実は事実上それを押さえている団体ありますけれども、全国の権威ある統計としてこれが把握できないと、こういうような事情もありまして、今の時点ではこれを採用することは困難ではないかと考えております。  それから、沖縄の地方団体につきまして、一部の補正係数について法律上の特例を踏まえた率を採用しております。本土の通常の団体について財政負担がないという事実に着目して割り落としをかけております。実はこのような扱いは北海道につきましても、いわゆる公共事業の北海道特例がありますので、やはり割り落としをしております。これは例えば道路の管理費などについてはもう明らかな違いがあるものですから、これを無視することは公平な配分の立場から正しくないということで、従来からそのような扱いをしております。しかし、それはそれとして、それとは別に、法定の負担割合とは別にその地域の独自の財政負担もあるという事情もありまして、五十八年度の算定に当たっては沖縄県の御意見も十分拝聴しながら、かなりの程度是正をしたつもりであります。これからももちろん状況の変化を踏まえた見直しは続けてまいりたいと思っております。ただ、一般的にいわゆる特別の法律によって補助率のかさ上げ等が行われるものについて補正の面でそれを配慮していないことは確かです。これは、もし例えば後進地域の補助率のかさ上げを交付税の方で差し引いちゃいますと何やったかわからない、地域の格差を是正するためにそのような法律ができているのを、それを交付税から棒引きしちゃったのでは、その制度そのものをやめたらどうだという大蔵省あたりの意見にそのまま乗ってしまうようなことになりますので、これはちょっとできないと思うんです。むしろ沖縄とか北海道の特例補正率が今の現状に照らして妥当かどうかという見直しをすることが筋じゃないか、その面の努力はこれからも続けてまいりたいと、このように思います。残余については審議官から答弁さしていただきます。
  75. 津田正

    政府委員(津田正君) まず、公園費の用地費関係でございますが、これは単位費用の積算の中に算入してございます。それで、かつ種地の高いところには態容補正で割り増しをしていると、こういうような扱いで算入をしておる次第でございます。なお、県分の公園費の問題が言われることもあるわけでございますが、公園事業というものが市町村事業でございまして、県の方は補完というようなことで、交付税上ではその他の土木費の中で算入しておる次第でございます。  それから、保健所職員の職員設置補助金が交付金化されるに伴いまして交付税上どのように扱うかという問題でございますが、これは金額としては従前の考え方と同様でございます。ただ使途が、いわゆる補助金が交付金になったということで、都道府県知事の裁量が効く範囲が広くなったわけでございますが、交付税上のいわゆる金額の算入は従前と同様でございます。  それから、下水道でございますが、下水道の算入につきましては、御指摘のとおり、経常経費につきましては下水道費、それから、いわゆる投資的経費につきましてはその他の土木費、それからさらに、いわゆる公害防止事業関係の起債の元利償還金につきましてはまたその費目で見ておると、こういうふうに複雑な算入にしておるわけでございますが、まず経常経費につきましては、測定単位でございます人口集中地区人口に見合ってかなり的確に算定できておるわけでございます。ところが、投資的経費につきましては、これはなかなか人口集中地区に比例して入れるというような事業の性格上、地区が小さくても非常に大きな事業をやる場合もありますし、地区がでかくても事業費、その年度の投資的経費が少ないというような事情もございまして、これは経常経費と切り離しまして、その他の土木費の中で事業調整として見ておるわけでございます。それから公防財特法の対象事業としての公防債の下水道分の元利償還でございますが、これが公防債は御承知のとおり清掃施設等も見ておるわけでございます。それで、特別法でもございますし、こういうような清掃施設等とやはり一体的に見た方が算定しやすいと、こういうようなことでございまして、公防事業は公防事業ということで、清掃施設とくくって下水道関係を見ておると、そういうような建前がございまして、ちょっと算入につきましては複雑でございますが、それぞれ的確に算定しておるつもりでございます。
  76. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 かなり私が回った中では要望が強いようですから、ひとつぜひここら辺の問題も研究、検討して期待にこたえていただきたいということをひとつつけ加えて、最後になりますが、一つだけ伺っておきたいと思います。  地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に関する法律案の問題ですが、これを見ると、大臣もそうだと思うのですが、これは本当に地方自治体のまさに移管を急がなければならない代物でもあるような感じがするのですけれども、時間がございませんからまとめてひとつ質問しておきたいと思いますが、この「実費を勘案」と定めておるのですけれども、どのように算定するのか。それから、経済情勢の変化に対応して調整するとしていますけれども、この改定の目安は何なのか。政令でやるわけですが、どういう手順で行うのか。それから、警察関係が全然これは対象になっていないのはなぜなのか。この三つの点についてお聞きしたいのが一つ。  それから、これは全然手数料改正法案とは違うのですが、これと関連してお聞きしておきたいと思いますのは、自治体が今独自に徴収している料金、この格差が非常に大きいのですよ。大体私は常識的に、例えば飲み水、上水道にしてもそう自治体に差があるものではないと思っておったのですが、私が調べてみますと、自治体個々の格差が、例えば上水道の五十一年度決算を見ると十四・五倍という格差になっておる。それから、下水道料金を見ても、これも長野県と兵庫県の実態を見ると十六・三倍になっている。それから、国民健康保険を見ますと、これはちょっと大き過ぎるのですが、二十・六倍になっている。工業用水になりますと二十三倍になる。電気が五・一五倍、それからガスが二・四四倍、保育料が二・二七倍、こういうような実態になっておるわけです。これはそれぞれの自治体で議論して定めたのでしょうけれども、ちょっと余りにも住むところによって格差が違い過ぎる。しかも、上水道とか下水道などというのは、これは日常住んでおれば避けられない料金です。こういうありようが一体どうなのか、私も疑問に思うのですよ。まさにこういうときにこそ自治法の二百四十五条ですか、適切な助言指導をやってしかるべきじゃないかと思うのですが、これはいかがですか。
  77. 津田正

    政府委員(津田正君) 手数料法の関係でございますが、まず実費という点でございます。  手数料につきましては、特定のために提供する役務に対しての費用を償う、こういう観点でございますので、当該事務を行うために必要な消耗品費であるとか印刷製本費、あるいは現地調査等に必要な旅費、それからそれに絡まります人件費、こういうものを基礎として定めるわけでございます。ただ、この場合に実費そのものとしますと、それぞれの案件一件ごとに実費が異なる、こういうようなことがございますが、これは私ども全国的な実態調査をしまして客観的な額というもので、もちろん関係省、地方団体の意見も聞いてでございますが、そういうもので定める。そういうことで、実費そのものではなくて、やはり全国的な基準で考えた客観的な実費と、こういうような考え方でございます。  それから、どういうような場合に変更するのか、あるいはその手順はどうかということでございますが、消費者物価指数あるいは従事する職員の給与改定の問題、そういうようなものに応じまして改定を、見直しをしていかなければならない、かように存じます。手順としましても、先ほど申しましたように、実態調査をし、地方団体の意見あるいは当該事務の所管省庁と私どもで協議して定めてまいりたい、かように考えております。  それから警察関係の手数料が今回含まれておらないわけでございますが、古物営業法外四法律に定められております手数料につきましては、当該手数料にかかります事務自体の性格につきまして、まだ関係省ときっちり整理がついておらないような状況でございます。そういう意味におきまして、今後この手数料の問題におきましても検討事項として、引き続き関係省庁と検討を進めてまいる所存でございまして、今回の改正法からは一応外しておるような状況でございます。
  78. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 次に、地方公共団体が独自に定めております上水道料金とか下水道料金あるいは高水料金等の格差についてのお尋ねでございますが、確かに、例えば上水道料金について見ますと、非常に条件の恵まれた、自然水をそのまま使えるようなところでは非常にトン当たり単価が安い。一方、離島で海水の淡水化など非常にコスト高になる水しか得られないところでは大変な高い水になってしまう、こういう関係で非常に大きな格差があるのは事実でございます。  上水ですと、先般の先生指摘のとおり、先般私も御答弁申し上げたように、十四・五倍という差がある、これをそのまま放置していいのか、これはそういかぬ。そういう点については、その団体の責めに帰すべからざる事由で高い料金になっているような団体、その地域、立地条件等で高くなっている団体については、やはり料金を下げられるような手だてを講じなきゃならないと思っております。現に水道料金等については、いわゆる高料金水道対策ということで交付税算定上もこれまで配慮をしてまいりましたが、この点については常に最近の実態を踏まえて見直しをしていかなきゃならぬと思っております。ただ、十四・五倍というのは、極端に低いところと極端に高いところそのままですから、それをそのままというわけにいきません。やはり私どもは常に全国平均をにらんで、平均に対して物すごく高いところは何とかせにゃいかぬだろうと、こういう考えております。そして、かつその団体の経営努力ということに関係なしに高くなっている要素というのは資本費であろうと思いますから、資本費が全国平均よりも非常に高い団体、そして、かつかなりの努力をしているにもかかわらずなお高くならざるを得ないようなところは、やはり交付税その他で補っていかざるを得ないと思います。そういう、今やっておりますけれども、この点は今後とも努力してまいりたいと思います。  同じように、まだそれほど深刻になっておりませんが、これからの問題は下水だと思います。三鷹市などのように早くからできちゃったところはもう減価償却済んでおりますから非常に料金が安くて済む。しかも町がコンパクトな町は効率がいいですから安く済むけれども、田舎のこれから下水をつくるところというのは資本費が物すごく高いし、また運転費用、経常経費も非効率になります。下水の原則で一応、雨水は公費で汚水は私費でと、こういう原則ではありますけれども、やはり大変な差が出てまいりますと、これについても一種のナショナルミニマムとしての何らかの対応が必要ではないか。下水については今いろいろ研究会などでも御審議いただいておりますが、そういったものを踏まえて、これから対応策を考えていかなきゃいけないと思っております。  国民健康保険は、これは確かに大きな差があることは事実でありまして、それは問題だと思います。これについては厚生省所管の国保の調整交付金の調整機能の向上によって対処すべきではないであろうかと、このように思います。  いずれにいたしましても、私どもといたしましては、その団体のいろんな経営努力にもかかわらず料金が非常に高くならざるを得ないようなたぐいのものについてはできるだけの対応をしていきたいと、このように考えております。
  79. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時二分休憩      ―――――・―――――    午後一時三分開会
  80. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから地方行政委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、地方交付税法等の一部を改正する法律案及び地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  81. 中野明

    ○中野明君 基本的な問題からお尋ねいたしますが、五十九年度の地方財政対策として、五十年度以降これまで続けられてまいりました地方財政対策の手法を改められたわけですが、その理由を最初に改めてお聞きしたいと思います。
  82. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 昭和五十年度以降の地方財政は、平均して二兆円を超える財源不足の状態が続いております。で、これに対する措置といたしまして、建設地方債の活用を図るほか、地方交付税の特例増額によって財源補てんを行ってまいったわけでありますが、その地方交付税の特例増額の具体的な裏打ちとして、その大部分を交付税特別会計の借入金によって賄ってまいったわけでありますが、このような措置を五十年度以降、五十八年度まで継続した結果としまして、交付税会計の借り入れ残高が十一兆五千二百億円にも達した。これ以上この借り入れを継続するということは、国にとりましても地方にとりましてもこれは大変なことになるというように判断し、借入金方式をこの際改める必要がある、このように考えた次第でございます。
  83. 中野明

    ○中野明君 地方の借金が五十数兆円に達しておるわけですが、これまでたびたび指摘されてきたように、このようになることはわかり切っていながら借金政策が続けられてきたわけなんですが、やはりこの責任というのはどこにあると思っておられますか。
  84. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 五十年度の時点では、第一次石油ショックの後の我が国の経済の激変の結果として大幅な財源不足になった。そのために、いわば応急措置として、財源対策債の発行でありますとか交付税会計の借り入れを行ったわけであります。で、私どもとしては、こういう状態は一日も早く脱却しなきゃならないということで、あるときは交付税率の引き上げを要求し、また抜本的な税制改正を含む制度改正を主張したわけでありますけれども、残念ながら我が国の経済、財政状況全体が制度の抜本的な改革を実現できないような状態が続いて、結果的に今日まで借入金依存の財政を続けざるを得なかった次第でございます。したがいまして、この責任はどこにあるのかというふうに問われれば、結局こういった事態を打開できなかった政府全体がこれについて責めを負わなきゃならないことではないか、このように認識しております。
  85. 中野明

    ○中野明君 そうしますと、私たち非常に不満足でございますのは、今回の手法を改められたということは、一応それなりに意味があると思いますけれども、借入金の二分の一の元利まで負担するということになって、これは大変な金額になるわけですが、この点について先日来の議論で大臣もあるいは局長も、一応最後まで頑張ったんだけど遺憾なことだったということをおっしゃっているわけなんですが、当初これはどういうことになっておったのですか。私も前のことをよく知りませんが、当初、利子というものはどういうふうに考えられておったのですか。
  86. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 交付税会計が借入金をして交付税の特例増額を図ったというのは昭和三十九年度が初めてでございます。  その当時の考え方としては、交付税の不足を補うために特別会計で借入金をするわけでありますから、当然国の責任で借金をする、したがってその利子は国が負担する、これはいわば当然のことという考え方に立っておりまして、三十九年当時は、この利子負担の問題は余り論議されずに国が負担してスタートしたわけでございます。それからまた、事実問題としても、当時は国の一般会計の資金繰りがまだ非常によかったものですから、交付税特会で借り入れはしましたけれども、この借り入れはいわゆる長期の借り入れでなくて短期の借り入れでありまして、年度内は国庫余裕金の繰りかえ使用で対応した。そのために、実際には利子は余りかからなかったわけです。いわば利息の要らない国庫余裕金の繰りかえ使用という形で交付税会計の借入金が賄い得た、そういうふうな事情もありまして、利子負担については余り論議もされない。いわばこれは当然国が負担すべきもの、こういうことでスタートしたわけであります。  そうして、その後何回か交付税会計の借り入れが行われ、特に昭和五十年度以降はずっと交付税特会の借り入れが続いたわけでありますけれども、五十六年度ぐらいまでは、大蔵省の中にも一部、地方の借金だから地方が利子を負担すべきだという主張をする人もおりましたけれども、大勢としては、やはりこれは交付税の不足を補うために国が借り入れするのだから利子は国が負担するのはしようがない、こういうことで余り財政対策上の論議にまで発展しなかったわけです。  しかし、特に五十七年度ごろから国の財政が、御案内のように大変収支が厳しくなってまいりました。それから、交付税特会の借入金もずっと累積しますと金額が大きくなりましたので、利子も大変な額になってきたわけです。急速に利子負担がふえてまいりました。そういうこともあり、かつまた国の財政も非常に厳しくなったということもありまして、そもそもこの交付税特会の借り入れというのは地方の財源を賄うための借入金じゃないか、だからその利子は地方が持ってしかるべきではないか、こういう論議が大蔵大臣の諮問機関である財政制度審議会の場などでだんだん強まってまいったわけでございます。  そういうことを背景にしまして、五十七年度の補正予算の段階で一兆五千億余りの交付税の落ち込みがありまして、それを埋めるために交付税特会でまたまた巨額の借り入れをしなきゃならない、こういうことになった際に、利子負担について今までは国の方はいろいろ言い分はあったけれども、自治省の主張どおり持ってきたけれども、現実問題としてこんなに大きくなったら地方にも持ってもらわなきゃ困るのだという主張が出てまいったわけです。で、五十七年度の補正予算のときに実は持ってもらえないかという話が出てまいりまして、私どもはそれはとんでもない、こういう特会の利子を負担するかしないかというのは、いわば交付税制度の根幹にかかわる問題だから補正予算で論ずる問題じゃない、こういうことで断りまして、国庫当局はその点は了承して、五十七年度はもうわかった、じゃ五十八年度の問題として議論しようというので、五十八年度の予算編成の際にこれもまた最大の争点になったわけであります。  そうして私どもは、当然、事柄の性質上、国が全部持つべきだという主張を強くし、大蔵側は、全部地方が持つべきだ、地方の借金だから地方が持つべきだという主張をして、結局最終的には、この借入金の元本の国と地方の負担割合に応じてそれぞれ利子も負担するということで五十八年度は決着したわけです。その際に、国庫当局の方は、本来地方の借入金だから当然恒久的に地方が持つことを決めたいという気持ちがあったようでありますけれども、私どもは、この問題は地方財政のあり方の根本にもかかわるからということで、ともかく五十八年度の予算編成では現実問題として国が負担できないということで、残念ながら、元本の負担割合に応じて五十八年度についてはそれぞれ負担しよう、しかし五十九年度については白紙でいこう、我々はもう一遍これは根本から議論し直すぞということで五十九年度に立ち至った、こういう経緯でございます。  五十九年度につきましては、御提案申し上げておりますように、元本の方を国の負担分はそっくり国の一般会計の負債として、借入金として振りかえてしまう、こういう根本的な処理をすることとの関連におきまして、交付税特会の方に残る借入金については地方が負担するということで決着を見たわけでありまして、この結論に至るまでには私どもも何遍も議論をし、大臣にも何回か大臣折衝でこの点については主張していただいたわけでありますけれども、今の国の財政状況からどうしても全部を持つわけにいかないということで、今回借入金の最終処理との関連において、地方の借入金については地方が利子を負担するということに落ちついたわけであります。しかし私どもは、交付税制度の持つ財源保障機能というものを全うするためには利子を負担しても、その負担した上で、利子負担後の手取りの交付税によって地方財政の運営に支障が生ずるようであれば必要な特例措置を講ずるという今回の御提案申し上げております新しい仕組みをつくるということとの兼ね合いにおいて、この利子負担の問題についても最終的に合意をいたした次第でございます。
  87. 中野明

    ○中野明君 今の御説明、経緯はよくわかるのですが、そうしますと、当初は利子のことは全然考えないような状態で暗黙のうちにそれは国の持つものだということが途中から急に変わってきて、今回利子まで持たされるというのですか、そういうことになったようですが、そうすると私が思いますのは、今までの分はそのままにしてこれからのものについて認めるというような、そういう方法はとれなかったのかということです。こう遡及して利子まで取られるということになりますと、今まで当初の経緯を説明されたそれが結局消えてしまって、最初からもう地方も自分の持たされるという基本にかかわるようなことまで認めてしまったのじゃないかという心配をするわけなんですが、その辺はどうもならなかったのですか。これ今までの分はもう経緯から言って国が持ってくれ、しかしこれからの分はこういう国の財政事情ならば万やむを得ず、それも筋は違うけれども考えましょうというようなところに落ちつく方法はなかったのかと、今、後になって私も思うのですが、その点いかがなんでしょう。
  88. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 確かに、少なくとも五十六年度までの借入金についての利子は国が持つという前提で借り入れが行われたわけですから、既往分について持つのはおかしいじゃないかという議論はありました。私ども、もともと持つべきでないという立場でございますから、当然その点は主張したわけです。しかし、にもかかわらず実質半分を地方が持たざるを得なくなった背景というのは、先ほど申しましたように、理屈はともかくとして、国の予算編成ができない、持ってもらわないと予算編成ができないのだというところまで追い込まれてきてしまった、そういう国の非常な財政難というものが背景にあってこういう結論に到達したということを御理解いただきたいわけです。  それから、少し技術的な議論になりますけれども、今の交付税特会の借り入れは実は長期債務じゃない、長期の借入金じゃないわけなんです。毎年度借りているわけです。毎年度十一兆五千二百億円借りまして、そうして毎年度十一兆五千二百億円返している。要するに短期借りなんです。ですから、借入金の性格としますと、要するに昔の借りた分ということじゃなくて、ことしまた借りるわけなんです。そのことし借りる分について利息を持つ、こういう形なものですから、その辺もちょっと議論がしにくかったわけです。長期債務であれば、借り入れのときに借り入れ条件も全部セットして、それでずっと来ているわけですから、昔の分までさかのぼるのはおかしいじゃないかという議論ができるのですけれども、今の交付税特会の借り入れというのはいわゆる短期借りなものですから毎年度の勝負だと、こういう事情もあって、ともかく今先生指摘のような結論にはなり得なかった。しかし、それはいわゆる技術論でございまして、やはり基本は、とにかく国の台所がもう負担に耐えられなくなったということが実態でございます。
  89. 中野明

    ○中野明君 先日来、大臣、この問題についてはいろいろ御答弁になっているわけですが、大臣就任早々でございまして、過去のことも余り、どういうのですか、熟知せぬうちに押し切られだというようなニュアンスで物をおっしゃっでおったように、私そういうふうに答弁されたような記憶があるのですが、それから何カ月かたったのですか、現在の大臣の気持ちとして、今の利子負担の問題、これについて大臣として率直にどうお考えになっておるか、それをお聞きしたい。
  90. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 先にお話しになられたことはちょっと私の言葉遣いが適切でございませんで誤解を受けたように思っておりますが、十分、前のことがわからなかったから私が何か責任を回避するような、決してそういうことを申し上げたのでは毛頭ございませんで、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。  現在どういうふうに思っているか、やはり国の財政と地方の財政が相関連するものでございまして、よく言われるように車の両輪でございますから、やはり国の財政のことも私ども考慮していかなければならない、そういう意味からすれば、いわゆる借入金の既往の分の国と地方との負担の区分を明確にして国にも半分持ってもらうというような経緯からすれば、今回とった措置のように、利子の分は負担しなければならないのではないかと、現在はそういうふうに思っております。もちろん、これは先ほど申し上げましたように、国の財政がこんなに危機に瀕するようなことになってなければ別でございますけれども、今の国の財政を見ればやむを得ないのではないか、こういうふうに思っておるわけでございます。
  91. 中野明

    ○中野明君 いや、大臣立場でそうおっしゃるのはある程度私もわかるんですけれども、国の財政が苦しいことは、もうそれは御承知のとおりで、苦しいんですけれども、筋を通すところは通して、そして他の方法というか、それで国の財政に協力するというのは協力するという、そういう筋道だけはきちっとしておかれた方がいいんじゃないかという感じがこっちもするわけですから、何でもかんでも国の方が苦しいから筋を曲げてでも一切承知しなければならぬと、そういうことではちょっと困るという感じがあります。確かにこういう結果が出たのですから、その時点において皆さんが努力されたもう最終の線だろうというふうに理解はしますけれども、何かしら当初の経緯から考えたら、当然国が持つべきものを国の財政が苦しくなってきたから無理やりに持たされているのじゃないかと、そういう気がしてしようがないものですからお尋ねをしているわけです。  それで、どうなんでしょう、この問題については、将来国の財政が好転するという、ちょっと近々にそういうことは望めないかもしれませんが、国の財政がよくなったりそういう時点では、大蔵大臣とお話なさったときに、再交渉といいますか、もう一遍、利子はそっちが持ってくれというような再交渉の余地は残しておられるんですか、大蔵大臣との話し合いで。その辺はどうなんでしょうか。
  92. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 今のような国、地方を通ずる財政環境のもとでは、今回御提案申し上げておりますような形で必要な交付税の総額を確保してまいりたいと考えております。したがいまして、交付税特別会計の借入金の元金については、国が持つべきものはもう一般会計の借り入れとして振りかえてしまいますから、ことしの十月以降は地方とは関係なくなる、完全に国の債務になってしまう、そちらの方は全く心配がないわけであります。保交付税会計の借入金として残っている分の扱いですが、これの利子を再び状況が許せば国に持てという要求をするのかというお尋ねでございますけれども、そのような将来についての確認大蔵省とはもちろんしておりません。私どもの気持ちとしては、税財政全体を通じまして今のような構造的な収支不足状態を脱却することによってこの借りたものは早く返してしまう、借金は返してしまうような状態になることが本筋ではないかと、このように考えております。
  93. 中野明

    ○中野明君 そこで、利子のことまで問題になって、借金が基本になっているからそうなんですが、こういうことになるというのも、結局この交付税率の引き上げがきちっと法律どおりに行われておったら、こんなに借金も重ならなかったんじゃないかというふうに思うんですが、先日の当委員会での答弁でも出ておりますように、現在の財政の状況から見て、地方交付税法の六条の三の二項ですか、これに該当するといってとを局長もおっしゃっているわけです。でしたら、こういうようなやり方といってとでその場しのぎをしておったのでは根本的な解決にならぬと思うんですが、いつ、この六条の三の二項ですか、それをもとにして交付税率というものを変えられると、このように考えておられるんですか。現在やっていることは、どっちかというと法律に示していることをまじめにやってないということですわね。便法でやっているような感じがするので、いっそれじゃこの法律が示しているような状況をつくろうというのか、状況になるというふうに思っておられるのか、その辺ちょっと。
  94. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 今の国・地方を通ずる財政環境のもとでは、いわゆる抜本改革というんでしょうか、地方財源の不足が生じないようなそういう歳入歳出の状態に持っていくということが残念ながらできない。そういう改革ができない。そのために私どもは交付税法第六条の三第二項に言う財政制度の改正として今回の新しい特例措置の方式を御提案申し上げているわけであります。  先生の御指摘は、そういう当分の間の暫定措置ではなくて、附則に書くようなことではなくて、本則ですっきりとした形で改革ができるのはいつか、こういうお尋ねであろうと思いますけれども、率直に申しまして、今の財政状態で何年度にそういう改革ができる、交付税制度の理想に基づくような制度改正が何年度にできるということは残念ながら申し上げられないのが現状でございます。  御案内のように、政府は「一九八〇年代経済社会の展望と指針」の中で、昭和六十五年度までに国の財政が特例公債から脱却するような状態に持っていくという目標を持って努力中でございまして、結局、この抜本改革というものができるためには、これは地方だけでは無理でありまして、国もあわせて、国、地方を通じて財政全体の健全化が図られるような状態を早く実現すると、そのときに本当の意味での制度改革というものができるのではないかと、このように考えております。
  95. 中野明

    ○中野明君 今の局長の答弁でもわかるのですが、これは法に違反しているとまでは私どもも言う気もありませんし、そうは思いません。だけれども、本来、法六条で予定しているというのですか、示しているのはこのような改正ではないだろうと思うんです。  過去のこの当委員会における記録を私も読ましていただきましたけれども、古い話をしますと、五十三年の八十四国会で、現在も当委員会におられますが、加藤自治大臣のときもこういうふうに答弁しておられますね。あくまでも暫定的な臨時的なものでございまして、やはり早い機会に基本的な改正はいたさなければならないと、このように歴代の自治大臣もやっぱりそういうふうに答弁しておられるのじゃないか。だから、本来の趣旨はこの基本的な改正であることは間違いないと思うんです。ですから、こういう気持ち、これは今でもやはり持ち続けておられると思うんですが、その辺はどうですか。
  96. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 五十三年当時もお答え申し上げたことでありますけれども、私どもの気持ちとしては、交付税法第六条の三第二項の規定による制度改正というのは、もうその改正を行うことによって財源不足が生じないようなそういう状態がつくり上げられるような改革、これが立法の趣旨であろうと思うのです。しかし、残念ながら五十三年度当時も、また今日もそういう理想的な制度改革ができ得るような状態にない。そこで、法律の許容する限度でともかく当面の地方財政運営に支障なからしめるような、そういう制度改革として今回の方式を御提案申し上げているわけであります。したがって、私どもの気持ちといいましょうか、理想的な姿として私どもが描いているもの、これはやはり立法の精神どおり、本来地方財政の収支不足が生じないようなそういう制度改革を一日も早く実現したいということ、この点は五十三年の当時も今日も全く変わっておりません。
  97. 中野明

    ○中野明君 それで、この予算要求のときには交付税率の引き上げを要求されたのですか。それとも、もう初めからあきらめて、だめだと思って要求されなかったのか。その辺の事情はどうなんですか。
  98. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 実は五十年度以降の財源不足を前にしまして、初めのころは五十二年度、三年度あるいは五十五年度、このころは率は五%のときもありましたし六%のこともありましたが、そのころは交付税率の引き上げを要求いたしました。私どもは、税制改正等を前提にするならば交付税率の引き上げは可能であるという気持ちの上に立って要求を行ったわけであります。しかし、残念ながらとてもそれはできる状況になかった。しからば五十九年度はどうしたのかということでありますが、もちろん、気持ちとして地方財政の立場から交付税の率の引き上げというようなことができないかという論議はいたしましたけれども、正式の予算要求として何%の引き上げというようなことは行っておりません。  と申しますのが、五十八年度も、また五十九年度もそうでありますけれども、余りにも国の財政状態が深刻でありまして、現実問題として、交付税率の引き上げによって、交付税率の引き上げを行うということは国の財源がそれだけ減るわけでありますから、それによって国の予算編成がどうなるかというのはすぐわかるわけでございます。そういうその両方を見ますと、何%引き上げようという要求ができるような状態ではなかった。とにかく安定した交付税の確保のための方策というものを、現実的な方策というものを何としても確立しなきゃいけない、獲得しなきゃいけないという方が先行いたしまして、交付税率の具体的な要求というのは五十九年度の場合はいたしておりません。そういうことができるような状態でなかったという点を御理解いただきたいと思います。
  99. 中野明

    ○中野明君 事情はよくわかるのですが、やはり法で示されているのですから、一応は、けさほども答弁なさっておったように、大蔵と折衝するときには云々ということを局長もおっしゃっておったのですが、やはり一応は法で示されているのですから要求はして、そして交渉していかれるということが本来の筋ではないかというふうに思うので、余りにも自治省自体が国の財政のことを先に心配をして、本来の法で示されている手続といいますか、それすら控え目にしているという、そこら辺に少し弱気があるのじゃないかというような気がしてならぬものですからお尋ねをしているわけです。  それでは、新しいルールと言われるこの内容についてちょっと二、三お尋ねしたいのですが、交付税特別会計の借り入れをやめるということ、これは結構なことです。しかし、現状何ら状況変化がないんですから、将来ともに借り入れなしで済ませるというような見通しは私はあるように思われぬのですが、その辺はどう考えておられますか。
  100. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 私ども今回、借入金方式を廃止して新しい特例措置による対応の方式を御提案申し上げたわけでありますけれども、もちろんこういった借り入れ方式をやめるという決意をする以上は、それなりの将来展望というものを持ってこの論議を行ったわけであります。  先般、当委員会にも資料として御提出申し上げましたが、国の中期財政収支試算と同一の前提に立ちまして地方財政の姿を概算いたしてみますというと、前提の置き方によって差はありますけれども、私どもは、傾向的には収支は若干ずつ改善される方向が示されるんじゃないか。もちろん、たびたび申し上げておりますように、その数字の読み方についてはいろんな前提がありますから、非常に注意を払っていかなきゃいけない。特に歳出を極力抑えての上での収支計算でありますから、この点は十分考慮に入れなければなりませんけれども、しかし、いずれにしても今私どもが入手し得るデータでもって、また、国と同一の基調に立った前提で将来展望を行いますと、今回御提案申し上げておりますような方式で対応していけるのじゃないか、かつてのような借入金に逆戻りしなくてもやっていけるのではないかという、それなりの見通しというものをバックにして今回の方式を御提案申し上げているところでございます。
  101. 中野明

    ○中野明君 今お話が出ましたが、先日来私どもも要求はしておりましたのですが、この「参考試算」ですか、これを出されたわけですが、今もちょっと答弁の中で触れておられましたが、どうもこれを見せていただいて、私、これは「参考試算」ですが、何を参考にしろとおっしゃっているのかちょっと理解に苦しむところがあるのですが、五十五年の試算以来出されたわけです。今までは出してなかったのを、出したらどうかということで要望したら出されてきたわけなんですが、どうも不親切なものしか出てきてないんであきれているのですが、まず今まで出されなかったのは、五十五年以来出されなかったというのは何か理由があるのですか。
  102. 津田正

    政府委員(津田正君) 地方財政につきましての収支試算は、五十一年から五十五年度までは国の収支試算と同様に出しておりました。その場合の計算の仕方は、当時「経済社会発展計画」というのがございまして、それを毎年度、経済審議会でフォローアップしております。それで、六十年度の暫定試算、その場合には、公共投資がどのくらい、租税負担率がどのくらい、社会保障移転支出がどのくらいと、こういう具体的な数字を掲げた試算があったわけです。それを基礎にいたしまして、大蔵省、また私どもも試算を出しておった。  ところが、五十六年度からは、国の方はそういうものではなくて各省の個々の経費の積み上げで将来推計を行った。そういたしますと、その中身がわかればよろしいわけですが、中身が出せないというようなこと。そういたしますと、例えば同じ百億の国費があっても、これが義務教育に回っていますと二分の一でございますから地方負担は百億とわかる。それがたまたま今度は保育所の方の経費あるいは生活保護の方の経費に回っていると、これは八割補助ですから地方負担は少なくなるということなんで、個々の経費の内訳がわかれば私ども作業ができるわけでございますが、それが出せない、こういうことで技術的な対応ができなかったわけでございます。  それから、基本的に国と同様に、三千三百ある地方団体の財政運営を拘束するようないわゆる財政再建計画というものが本質論としてどうかという議論がございます。  それから、現実問題としては、御承知のとおり国の試算を出しましたが、それについての税収は非常に大きな伸びを見込んでおったわけです。ところが、実際ふたをあけてみますと、五十六年度には約三兆円、五十七年度には六兆円の歳入欠陥を生じた。国会でもそれぞれの時期にいろいろ御意見があったわけでございますが、私ども、大蔵省が出しておるものですから、大蔵省なりの見解出されておるわけですが、果たしてそのようなちょっと私ども見ても過大ぎみのものを地方財政の試算の中にそのまま機械的にやるのは非常にまたミスリードをする危険性がある。こういうような状況のもとにおきまして五十八年度まで出さなかったわけでございます。  五十九年度に至りまして、国会からの御意見もございましたし、新たに「一九八〇年代経済社会の展望と指針」というようなことで、七ないし六%の経済成長率の一応計画が出されたわけでございますので、それに応じて出したわけですが、依然としまして個々の費目の内訳というものが出せない。大蔵省サイドとしては出せないわけでございますので、非常に機械的でございますが、国の試算、展望のマクロの数字などを機械的にこちらへ活用いたしまして今回、参考試算をお示ししたわけでございます。もちろんそういうような前提要件が非常にございまして、いわば機械的な試算というようなことで、大蔵省のような中期展望というものと性格的には異なるものと、かように考えておる次第でございます。
  103. 中野明

    ○中野明君 そうしますと、参考試算として出してこられたのですが、これで何を参考にしろとおっしゃるのか。ちょっと非常に五十五年度のと比べてみても全然中身が粗いといいますか、立て分けが粗っぽくて、これで特に公債費と一般歳出の二つにしか分けてないんですね。そうしますと、一般歳出というだけでは、これからの地方財政というものがどうなっていくのか、あるいはどのような施策を行ってどういう裏づけをこれによって得ていくのか、全くこれはわからないわけです。とてもこれでは地方自治行政の姿の将来のことを議論する参考になるのだろうかどうか、非常に機械的な、もう単に出すようになったから出さなければしようがないというようなことで、これが本当にこんなものを出していただいて参考になるのだろうかという気がしてならぬのですが、その辺はどうお考えになりますか。
  104. 津田正

    政府委員(津田正君) 先生指摘のとおり、五十五年度当時の収支試算よりも粗っぽい、こういう御指摘でございます。それで、この粗っぽさが出てこざるを得なかったのは、先ほど申しましたように、五十五年当時の経済審議会の昭和六十年の暫定試算というのは、先ほど申しました社会保障移転支出が幾ら、何%、それから公共投資が何兆円、こういうような数字が出ておったわけです。これを各年度に割り振るという作業ができたわけでございます。  ところが、今回の経済計画でございます一九八〇年代の展望におきましては、いろいろ議論もございましたが、余り数字というものが出てない。先ほど申しました成長率を七ないし六とか、物価上昇が二%ぐらいというような数字が出ておるわけですが、公共投資の総枠などが出されておらないということ、そういう意味におきまして、私ども、マクロの数字を引き延ばしてくるにも、その材料と申しますか、もとになる経済計画自体に数字がなくなってしまった。それからさらに、若干細かいことを申し上げますと、国の方の「中期展望」につきましては道路特別会計みたいなものは載っかっておりません。一般会計ベースです。ところが、道路特別会計から出されます地方の負担金などはこの収支試算に本当はカウントすべきなわけでございますが、国の方はあくまで一般会計ベースというようなことでそれも使えないというようなことで、もう一般歳出にくくらざるを得なかった、こういうようなことでございますし、国の中におきましても、経費の性格の内容によって地方財政に影響することはわかっておるのですが、それがフォローできないというような状況でございます。  こういうような性格のものでございますが、国の「中期展望」の中におきまして将来の地方交付税の試算も一応行っておるわけでございますので、そういうような関連から、今後の地方財政がどのように推移するかという何らかの展望をすることは意味があるであろう。技術的に以上申し上げましたような非常に難点があるわけでございまして、粗いものでございますが、何らかの展望の手がかりに、御審議等の参考にさせていただきたい、こういう趣旨で出した次第でございます。
  105. 中野明

    ○中野明君 それじゃ、この試算では給与の改善費というのはどの程度見込んでいるんですか。
  106. 津田正

    政府委員(津田正君) まず国の「中期展望」におきましては給与の改善費は、現在でも予算上、給与改善費として毎年一%組んでおりますので、その一%分を展望の試算におきましても組んでございます。  それでは、私どもお示しいたしましたこの「参考試算」でやはり給与改善賢一%を組んでおるのかおらないのかということでございますが、先ほど来申し上げておりますように、私どもは国の一般歳出の内容というものがそれぞれ分解できない、それに応じます地方負担というのはできないわけでございますので、一般歳出総体としてとらえておるわけでございまして、その総体の中に国が一%盛り込んでおるからこちらも入っているということは言えるわけでございますが、私ども、はっきりとと申しますか、はっきり給与関係費として幾ら盛り込んでおるというような計算にはなっておらないわけでございます。
  107. 中野明

    ○中野明君 実際、この国の方もそうなんですが、一%しか国の方は見てないということで、それに追随してそうなっているとおっしゃっているんですが、実際にベースアップが一%で推移すると思っている人はだれもおらぬと思います。そんなことはあり得ないことですから、そういうふうになってきますと、何かの参考になるでしょうというふうにさっきからおっしゃっているのですが、これは参考にも何にもならぬ。  この際ちょっとお尋ねしておきますが、ベースアップ一%ということになりますと、一般歳出の財源はどれだけさらに必要になりますか。
  108. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 義務教育費国庫負担金などを除きまして、ネットの地方負担として約千百億円でございます。
  109. 中野明

    ○中野明君 それで、そういうことになりますと、先日も志苫委員がおっしゃっておったように、これ参考にならぬから議論の対象にならぬとおっしゃっておったが、まさにそのとおりだと私も思います。そんなものを出してこられるというのは本当に不親切だなという感じがしてならぬのです。これだったら自治省でなくても、国の試算をそのままちょっと頭のいい人ならできるのじゃないかというような気がするのです。自治省として私たちが望んでいるのは、期待しているのは、自治省として将来の地方財政の展望というものを、こうあらねばならないというものをやはり自治省として考えているものがなかったらおかしいのじゃないだろうかという意味でこの展望を出してもらいたいと言っているのでありまして、国の方の、どういうんですか、そのまま試算を丸写しにしてくるのなら、これは自治省としての意味はないわけですから、先ほどから局長も答弁なさっているように、将来の展望というものを、財政も開けてくるだろうという展望もある程度持っての処置だというふうにおっしゃっているわけですから、そういうものを期待を含めて何かの形で、自治省としてはこう考えていると、それは数字ですから、将来のいろいろの状況の変化で違ってくることもあってそれはやむを得ぬと私は思いますけれども、自治省としては地方財政をこういうふうに持っていかなければいかぬと思っていますというものをやはり出してこられるべきじゃないか、こういうふうに思うのですが、その点もう一度御答弁願いたい。
  110. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 実は、私どもが政府の一員として、役所として公にデータを提出申し上げるということになりますと、どうしても前提要件等については政府部内の意見調整が必要になってまいるわけであります。経済成長率でありますとか租税弾性値でありますとか、あるいは歳出全体の伸び率でありますとか、こういった点は、自治省はこう思う、大蔵省はこう思うというのでは、事は財政に関する問題でありますから、どうもそういうことはできない。全く政府の一員としてではなくて、研究者としてならいろんな議論もできるわけですけれども、政府部内の一員としての自治省という役所としてのデータとなるといろんな制約がありまして、最大限、今御提出申し上げている程度のものしかできなかったわけであります。  先生、御指摘のように、内容的に非常に不十分なものになっている非常に大きな原因は一般歳出の内訳が示し得ていない、五十五年度のときには一般歳出の中身がそれなりにあったわけですけれども、今回はそれが出し得ていない。それは国の方の収支試算の中で一般歳出の内訳を示していないということに尽きるわけであります。私ども、できればその中身を示していただければそれなりの推計の仕方ができるのでありますけれども、この内訳は、どうしても大蔵省の方のお考えで、これは示されていないわけです。そこで、マクロとして、一般歳出全体として同じ伸び率で計算したらこうなるというものしかできなかったわけであります。   しかし私どもも、地方団体のいろんな御要望、御意見もありますし、我々財政をあずかる者としてのいろんな研究活動、検討活動はそれなりにいたしております。直接政府の責任で行っているわけでありませんけれども、財政学者などともいろいろの場で研究して、地方財政の将来展望がどうなるか、これまで開発いたしました一般歳出のマクロモデル及びこれと連動する歳出モデルというようなものを使いまして、今後の地方財政の展望などはそれなりに勉強いたしております。これらについては、これは役所のものでありませんから、かなりフリーに学者の先生方の意見も踏まえて、地方団体の皆さんに参考にしていただけるようなものは別途研究しております。しかし政府として、役所として御提出申し上げるということになりますと、残念ながら国の収支試算と違ったものを出すわけにいかないと、こういう事情がございまして、お手元に御提出申し上げたようなものしか出せなかったという点を御理解賜りたいと思います。
  111. 中野明

    ○中野明君 そういうふうにおっしゃると、それなりの理由はわかるんですが、ただ、私の心配しますのは、これが発表されたときにマスコミの論調も、大臣がけさほどもおっしゃっておったように、何かこんな安易なものを出されると、結局これによって地方財政、これ均衡するじゃないかとか、地方はやっぱり裕福じゃないかとか、そういう論調が出ましたね。あらぬ誤解を与えてしまう。かえって、これだったら出したことがマイナスに作用しているのじゃないか、地方の人たちも迷惑だということになるわけです。そういうふうに、要調整額にしてもあるいは公債の発行額にしましても、そのまま横滑りになっているというようなことは考えられないことなんですが、そういうことを含めて、こういうものを発表されますと、要するに財界が言っていることにこの参考試算を出したために手をかしたみたいなことになってしまったのじゃないかというふうに、かえって逆効果に思えてなりませんですが、大臣も出すと言って答弁されたから出さなきゃしようがないということぞ出されたのかもしれませんが、これをごらんになった大臣の感想を聞きます。
  112. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 大変な私の責任もあるので、この国の中期試算が出たその後で国会の方から、地方も以前出していたじゃないか、だからなぜ出さないのかという御意見がございまして、ちょうど衆議院の予算委員会の総括質問の当時でございましたけれども、自治省としては今、中野さんがおっしゃられたような御意見が出るということは当然承知していたと思います。今財政局長が説明されたように、なかなかそう簡単にできるものじゃない、国と地方との尺度も違いますから、自治省自体としてはこういうものはなるべく今出せないというような考え方でございました。ところが私が、まあいいことだから、正直に申し上げますと、やれるものならやった方がいいというようなお約束をしたのが発端でございました。ですから、実際に出すとすれば今御指摘になったようなことになるということはある程度承知をしていたわけでございまして、できることなら出さない方がいいというような考えでいたわけでございます。しかし、国会での論議を通じまして、交付税の審議までの間に出すべきだというようなお話もございましたので、こうした案を出したというのが偽らざる実情でございまして、これは私の責任もあるわけでございますが、もっと時間をかけてやればまた出しようもあったと思います。これはもう私の責任でございます。
  113. 中野明

    ○中野明君 時間をかけたらもっとかっちりしたものが本当に出るのですか、局長とうなんですか。かえって中途半端なものを出したらマイナス面に作用したんじゃいけませんのです。私ども願っているのは、そうじゃなしに、やはり地方公共団体がある程度それを参考にして行政が行われるというか、将来の展望が立つというようなものでないといけませんので、かえって今回、今申し上げましたように、マスコミからはこんなだったら地方は割合に裕福じゃないかというような反論まで出てくるような資料だったら、これちょっと困りますので、その辺大臣、一遍お約束どおりお出しになられたのですから、時間をかけたらかなりのものが出てくるのかどうか、その辺はどうなんでしょう。
  114. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 結局、一般歳出の内訳というものを細かにできるかどうかということになると思うんですが、この点については、大蔵省や各省の態度が内訳を示していいということであれば、私どもは時間かければそれぞれ地方負担額を積み上げて計算できるわけです。ただ、これをつくるときも、何とか内訳が示せないかということを私ども、国庫当局に折衝したのですけれども、国の方もいろいろ立場があって、将来に対するお考えもあってでしょう、この内訳についてはどうしても示せないということで御協力をいただけなかったわけです。ですから、それは単に時間的な制約だけではなくて、大変この方針のようなものもあるやに私ども感じております。ですから、そういう意味で一定の制約がどうしてもつきまとうということではないかと思います。
  115. 中野明

    ○中野明君  確かに、役所が正式に出されると、そのとおりならなかったら、ならない香うて文句言われるし、なかなか苦しいことはわかりますけれども、やはり自治省として責任を持って将来の展望というものを示されることができるならば、時間をかけてでもなさった方が親切ですし、地方公共団体もそれによって何らか一つの参考になってくるわけですから、せっかくの努力をお願いしておきます。  それで、この問題はこの程度にしまして、特別交付税のことでお尋ねをしたいと思います。  大臣も御承知のように、ことしは大変な豪雪で、特別交付税ということで、この一番の基本は、災害があったり、あるいは豪雪も災害の一つととらえていいでしょう、そういうことがあったときに全国の地方の公共団体が、いわゆるその地域以外のところ、昨年で言えば長崎で大変な災害があった、そうすると特別交付税をそれにとられてしまって自分たちの方に回ってこぬのじゃないかというような心配で、すごい陳情というのですか、要請が来るわけです。  そういうことで私お尋ねをしたいわけですが、まず、ことしの豪雪に対する除排雪の経費に対して特別交付税の措置、一般交付税でもある程度雪の分のところはあるわけですから、見ておられたと思うんですが、地方団体に対する財源措置は全体としてどういうふうになったか、概略御説明いただきたい。
  116. 津田正

    政府委員(津田正君) ことしの豪雪に係ります除排雪経費につきまして、御指摘のとおり普通交付税でも見ておるわけでございまして、普通交付税で措置した額を上回る除排雪経費が必要となった、こういうような団体について措置したわけでございますが、その所要額の報告を求めたところ、大体八百二十億円になっておりました。それで、八百二十億円かかっておるわけでございますが、そのうち普通交付税で五百四十億円措置しておる、それで今回、先ごろ決定いたしました特別交付税におきましては百八十億円、これを措置してございます。そして、御承知のとおり、国の方におきます予備費というものも出していただきまして、かかりました大体八百二十億円の除排雪経費について財源措置ができたと、かように存じております。
  117. 中野明

    ○中野明君 特別交付税の性格といいますか、結局、国税の三二%、その中の六%というのが特別交付税と、こういうふうになっているようでございますが、これでいきますと、この三二%というのは、先ほどの議論で、まだまだ今の状況ではふやしてもらわにゃいかぬのですけれども、現時点では三二%ということになっているわけですが、それは当然、地方の固有の財源ということに当たるわけです。そうしますと、豪雪とか災害とか、こういうのは特別交付税で見るということよりも――なぜ私がこういうことを言うかといいますと、最初に申し上げたように、何か特別のことが起こったときに、平清時ならば当然特交で措置してもらえるはずなのが、雪が多かったとか災害が多かったために外される。もう乙としはだめですよ、豪雪でそれに金をとられるから特交では見られませんよというふうにどうしても抑え込まれると、そういうことで陳情とか要請が来るのだろうと思うんです。この経費と労力だけでも大変なものです。  そこで、私が思いますのは、そういうものは特殊の災害としてもう国の予備費で措置する、そういうふうな制度的なものをつくる必要があるのじゃないだろうか。財源が決まっている、その六%をみんなで、災害があったときによそへとられてかなわぬからというんで、もう競争のように取り合いになっている姿というのは、これは制度的におかしいのじゃないだろうかと、そういうふうな気がするのでお尋ねをしているわけです。交付税の総額というのは決まっているわけですから、特殊の災害が出たときには、もうこれは予備費であるいはその他の国の方の経費で措置をするというふうなことを制度化することができぬのだろうかと、こういうふうに思うのですが、大臣、何かそういうことで努力していただきたいと思うのですが、どうでしょう。
  118. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) ちょっと財政制度の問題とも絡みますので、初めに私から御答弁さしていただきます。  確かに災害というようなものは特定の団体に集中的に参りますから、年度によって変動が非常に大きいわけであります。ですから、それはもう全部国で別途措置したらどうだ、こういうような考え方もあり得ると思います。  かつてシャウプ勧告の時代においては、災害復旧費は全額国庫負担であるべきだ、全部国が持てということで、二年間だけでしたけれどもそういう制度が行われたことがあります。しかし、やはり災害といえどもその施設を設置し管理する者が何がしかは負担しなきゃならないという、その方が実情に合うということで、結局この全額国庫負担制度はその後廃止されまして、今の災害復旧制度ができております。それで、その際も公共施設の災害復旧については基本的に高率の国庫負担がある、さらに激甚災害の場合にはその負担率をさらに引き上げるということで、相当手厚い措置がなされております。そしてまた、その災害復旧費の地方負担額につきましては地方債の充当、原則として現年度一〇〇%の地方債充当があります。その地方横の元利償還金がまた九五%まで交付税の基準財政需要額に算入される、こういうことで、率直に言いまして、災害復旧制度についてはかなり制度的には整備されていると思うのであります。  ただ、それにもかかわらず制度に乗らないようないろんな細々とした経費、あるいは豪雪の除排雪経費というようなものは後に残りませんものですからなかなか補助金になじまないというのでこれまで補助金制度ができていない、臨時的に予備費から支出がなされておりますけれども制度化されていない、そういった国の補助制度、負担制度になじまないような財政需要というものも現実にあるわけであります。そういうものに地方団体が対応し得るようにあらかじめ財源を地方の分として取っておこう、これが今の地方交付税制度だと私は思うのであります。そのうちの特別交付税であろうと思うのです。  ですから、特別交付税制度というのは、これは平衡交付金ができた当初からこの制度はあるわけですけれども、こういったものが必要なゆえんのものは、やはり年度初めには予測できないような歳出増加要因というのがどうしてもあります、三千三百団体のことでありますから。それについてある程度までは対応できるだけの財源を共有財源として、地方の分として取っておこう、これが今の交付税制度、特に特別交付税制度ではないか、このように理解しております。  したがいまして、私どもは、東北に災害があったり九州に災害があったりということで、全国どこかに必ず何がしかの災害がありますが、それは地域によっては変わりますけれども、それにある程度対応できるような枠を特別交付税で持っておく、これが必要だと思いますし、そういった運用をしてきているわけです。  ただ、そうではありますけれども、確かに全国的にも非常に大きな災害に見舞われることがあります。典型的な例で言いますと、伊勢湾台風があったときだとか、それはこれに当たると思いますが、そういう非常に対応しにくい年があることは事実でありますが、通常であれば今の特別交付税の枠の中で本当に災害に遭ったところに重点的に特別交付税を配分するということで対応してきましたし、また、それが今の財政制度としてはそれなりの合理性があるのじゃないか、このように思います。  そういうものを一切除いてしまって、交付税をその分減らしておいて、国費で全部プールしているところから出すという行き方、これも一つのわかりいい行き方でありますけれども、そうなれば、そういったときは常に中央政府に頭を下げにゃいかぬ、お願いに行かなきゃいかぬという形にもなりますし、ある程度までは地方の財源で対応できるような備えをしておくということも、私はそれなりの合理性があるんじゃないか、それが今の特別交付税制度ではないかと思うのであります。  ただ、確かにことしのように年度末に豪雪があって、特別交付税の総額が減っておる中で豪雪があったものですから、そういうなかった団体については、通常、事情が許せば見たであろう特別交付税の要因をかなりの程度御遠慮いただいた、御協力いただいたということは事実でありますし、この点は担当者としては大変つらかったのでありますけれども、しかし、そうだからといって、それは別枠にして国の方から直接出すというそういう方式がいいのかどうかは、私はどうも疑問があります。やはりある程度までは地方の財源として対応できるようなシステム、これは必要なんではないか、このように思います。
  119. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 財政局長が詳しく御説明いたしましたが、ことしの豪雪の状態を見まして、私も中野さんおっしゃったようなことも考えないではありませんでした。これは大変なことだと、政府の方も予備費でかなり面倒を見るような措置も講じまして、こうした異常な災害に対しては国が特別な助成措置を講ずるのは、これは当然のことだ、必要なことだと私も思っております。  お尋ねの、制度化したらどうかということ、これは簡単にはいきませんけれども、大変傾聴すべき御意見でございまして、そういうことにつきましては、またこれはすぐできることとできないことはありますけれども、関係省庁と、こういうことはどうだという程度のことはやっぱり話してみなければいけないんじゃないかなというような感じを抱いております。
  120. 中野明

    ○中野明君 今局長の答弁にもありましたように、結局こういうことが起こったときに、本来ならば地方の公共団体も当然特別交付税の対象にしてもらえると期待しておったのが、ことしは雪が多かったからもう辛抱してくれというふうに実際泣かされると言うたらおかしいけれども、辛抱したところがあるわけです。現実にそういうことがあるものですから、何かあるとすごく陳情が来るわけですね。何とかこれだけは対象に入れてもらいたいというような陳情を過去からもずっと受けております。  私も四国の高知県ですから、高知県は災害の多いところですから、自分のところがやられているときにはよそもそれだけ減っているのだろうし、自分のところがないときは、ことし陳情に行かにゃいかぬというようなことで、非常に地方公共団体としても仕事をするのに、これ計画しているけれども外されるかもしれない、特交でもらえないかもしれないということになると、仕事するのにもやっぱりちゅうちょするという面も出てきましょうし、そういうことがありますので、一応の今までずっと統計があるわけでしょうから、今回の雪のあれでもちゃんと普通の交付税で見ている分もあるわけですから、特別交付税というものが災害の穴埋めといいますか、災害の後始末をするだけが特別交付税じゃないと私も思います。ですから、災害というのは予想をせぬことですので、そういうことについてはやはり国の責任でやってあげる方が、そして特交は特交としてもう一度特別交付税の精神というものを見直していただいて、そしてこれは特別交付税で見てあげなければならないというものだけに絞っていった方がいいんじゃないだろうかなという気がしましてね。そうでなくてもことしは減っているわけでしょう、全体の。その上あれが来たわけですから、そうなると、地方の人たちがもう心配をして随分来るものですから……。  国土庁は今度何か新しく機構ができるそうなんですが、災害ですか防災ですか、そういうことで、そこの方では一体どういうふうに今私が議論している問題についてお考えになっているか、ちょっとお考え聞かせてください。
  121. 松本和雄

    説明員(松本和雄君) お答え申し上げます。  先ほど自治省財政局長からもお答えございましたように、一般的には、災害が起こりました場合の地方団体の出費につきましては、国庫補助金、地方交付税、地方債をもちましてかなり手厚い措置が講じられる仕組みになっております。  また一方、災害の場合、同じような雨、雪でも被害の起こり方がそのときどきによってまちまちですし、また地方団体によりましてもそれぞれ自主的な団体でございますので、対応の仕方も異なります。したがいまして、御指摘のように、災害一般につきまして地方団体の出費がかさんだことのゆえをもって、あるいはその年の特別交付税の伸びが低いことなどのゆえをもって自動的に国からの別途の補助制度を発動するという仕組みに持っていくということはなかなか難しいのじゃなかろうか。基本的にはそれぞれの省庁において実情をよく把握していただいて、それらの制度の適切な運用をもって対応すべきものではないかというふうに考えております。  しかし、先ほど例に出されましたような今冬の豪雪のような非常に特異な災害のときにつきましては、その災害の実態ですとか地方団体のいろいろ物入りの内容をよく見極めまして、臨時特例的に国が補助制度を発動するということはあり得るわけでございまして、先ほど御指摘になりました市町村道の除排雪経費に係る助成制度もそうでございます。そのほかにも、あるいは御案内だと思いますが、この冬、融雪が遅延しておりまして、苗代づくりに著しく支障を来しておる地域がございます。これらの地域につきましては、水稲苗確保事業という特別の補助制度を発動する方向で検討しております。  また、道路の災害で、いわゆるガードレールなどの防護柵だけが被害を受けた場合には、一般的には国庫負担法の対象にしないのでありますが、ことしの冬の豪雪の特殊性にかんがみまして、これをも対象とするというような措置も講じております。  いずれにいたしましても、国土庁といたしましては、それぞれの災害の実態に応じましてよく各省庁と打ち合わせまして、災害の実態地方団体の財政事情の動向を個別具体的に判断いたしまして、適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  122. 中野明

    ○中野明君 じゃ、参考までに、先ほど自治省の方で答弁がありましたが、ことしのこの豪雪で国の予備費はどれくらい応援をしてくれたことになりますか。
  123. 松本和雄

    説明員(松本和雄君) お答え申し上げます。  国県道分につきまして道路特会の予備費から十六億円、一般会計の予備費から二十三億円を出しました。また、市町村道分の除排雪経費につきまして、これは全額予備費をもちまして措置をいたしました。その金額は四十三億円でございます。
  124. 中野明

    ○中野明君 今申し上げたように、それだけ特別に処置をしてもらったからある程度助かったということにはなるわけですけれども、この処置がなかったら、それこそまだ特交の事業はそれだけしわ寄せを食ったということになるわけですので、その辺を踏まえていただいて、さっき大臣答弁いただきましたので、今後の課題として一応頭に残しておいて検討をしていただきたいと思います。  それじゃ、手数料の問題に入りたいと思います。  今回の手数料の改正でけさほども議論が出ておりましたが、「実費を勘案して政令で定める」ということになっております。これにつきまして、私ちょっと気になりますので聞いておきますが、今回の改正で九つ出てますね。九つ出ているんですが、今回この法律を改正したことによって、直ちに値上げといいますか、手数料を上げなきゃならぬ、あるいは現状のままでも当分行けるとか、この立て分けはどういうふうに解釈したらよろしいですか。
  125. 津田正

    政府委員(津田正君) 今回お願いしております手数料法案で対象となります法律が九本でございます。そのうち大麻取締法、家畜商法、漁船法、水洗炭業に関する法律、建築基準法、宅地造成等規則法、これにつきましての増収を図っております。狂犬病予防法、建築士法、都市計画法についてはさしあたって改定しない、このような方向でございます。
  126. 中野明

    ○中野明君 それで、「実費を勘案して」ということになっておりますが、これは今までは法定であったのが政令に変わるわけなんで、金額の算出で「実費を勘案して」というのはどういうふうになさるつもりなのか、それをちょっと将来のために確認をしておきたいわけですが、まず建築基準法で、申請をしようとする者は、いわゆる「合計が百平方メートル以内」とかあるいは「その他の場合にあっては三十六万円を超えない金額」というふうに今までなっておったのを「実費を勘案して政令で定める」と、こういうふうになっているんですが、この辺、実費を勘案する原則をちょっと示していただきたいのです。
  127. 津田正

    政府委員(津田正君) 手数料は特定の者に対するために提供する公共サービスの負担をしていただくと、こういうようなことでございますので、当該事務を行うために必要な消耗品費、印刷製本費、旅費等の物件費、そしてまた、そういう仕事に従事する職員の人件費、あるいは機械等の償却費と、こういうものを積み上げまして実費として計算するわけでございます。ただ、この場合、実費そのものでございますとそれぞれ一件ごとに違うというようなこともございますし、これでは運用できませんので、全国的に統一してと申しますか、一定額あるいは限度額で個々の地方団体決める場合がございますが、やはり客観的な実費というようなことで「実費を勘案して」という言葉を使わせていただきます。その場合には、事務に要する事業につきまして私ども地方団体の協力を得ながら実態調査をし、事務を所管する各省等とも協議してまいるわけでございます。  それで、一つの例といたしましてお示しの建築確認申請手数料などの決め方でございますが、まずこれにつきましては、この確認をするための書類審査に要する時間が何分ぐらい要るか、あるいは現場に実際行って調査するのに何分かかるかと、その合計を出しまして、それが人件費当たりどの程度かかるか、それからまた旅費が、何回調査行くために標準的な旅費で計算すると何回分の旅費が幾らかかるか、そして印刷製本費、そういうものを積み上げて決めるわけでございます。  したがいまして、今後におきましても、物価等が上昇する、変動がある、あるいは給与改定等が行われまして給与の単価が変わる、こういうようなときには適時適切に今申しましたような算出過程を経まして実費というものを計算しでまいりたい、かように存じております。
  128. 中野明

    ○中野明君 そうしますと、ベースアップは毎年あるわけなんですが、ベースアップがあるたびに変えるということですか。
  129. 津田正

    政府委員(津田正君) そのベースアップの上昇の内容というものに応じてやるわけですが、反面、ベースアップ分全部コストを出せというのじゃなくて、私どももそういう事務処理の能率化というような点も考えて、それを反映して実質を計算いたしたいと、かように考えております。
  130. 中野明

    ○中野明君 そうすると、今までは大体三年に一遍ぐらい改定されておったのですかね。それを今後はどうしますか、基本的な原則として。
  131. 津田正

    政府委員(津田正君) 今後の経済変動等にもよりますが、やはり非常に多くの手数料がございますので、私どもとしましてはやはり三年程度のローテーションで見直しというのが原則ではないか、特殊な事態あるかもわかりませんが、そういうような考え方でおります。
  132. 中野明

    ○中野明君 それで、確認しておきますけれども、ここで僕ちょっと例を挙げましたように、今まで「五千円」とか「三十六万円を超えない金額の範囲内において」ということですね。その五千円なら五千円という算定の根拠と、今回法律が改正されて実費によるというのと計算の根拠は違うんですか、一緒ですか。
  133. 津田正

    政府委員(津田正君) 基本的に同じでございます。
  134. 中野明

    ○中野明君 わかりました。それじゃ結構です。  次の問題に移りたいと思います。  去年の行革法案で、地方道路譲与税あるいは石油ガス譲与税、自動車重量譲与税ですか、それぞれ改正して、交付額の算定の基礎となる当該年度の四月一日付の道路現況調書から、地方交付税の算定と同様に前年度の道路台帳を使うことになりました。これはそれだけ行政改革で事務が簡素化されたと私も理解をしているわけなんですが、しかし道路台帳の不備の団体がまだかなりあるように聞いておりますが、これは現在どれぐらいあると掌握しておられるのですか。
  135. 津田正

    政府委員(津田正君) 道路台帳につきましては、道路法の規定に基づきましてすべての地方団体、道路管理者と、法的な地位はそういうようなことでございますが、整備が義務づけられておるものですが、その整備状況については所管の建設省において公表されたデータというものはございません。ただ私ども、御指摘のとおり、交付税の算定におきまして道路延長の把握というものをしておるわけでございまして、そのような点での交付税の算定におきます把握で申しますと、道路台帳が完全に整備されております団体の割合は道府県で三四%、市町村では四一%と、五十八年の四月一日現在でございますが、そういうふうに把握しております。
  136. 中野明

    ○中野明君 そうしますと、道路台帳の不備な団体の扱いですね、これをどうなさるつもりなんですか自
  137. 津田正

    政府委員(津田正君) 交付税におきます道路費の基準財政需要額の算定におきまして道路の面積及び延長というものを使っておるわけでございますが、この面積及び延長の数値につきましては道路台帳に登載されている数値と、このように基本がそうなっております。しかし、今御指摘のとおり道路台帳の整備が進んでない実情もございますので、道路台帳が整備されていない路線につきましては昭和五十二年四月一日現在の従前の道路現況調書に登載されている数値、道路現況調書、こういう書類がございますので、この調書に記載されております数値によるという、こういう特例措置がされておりまして、現在これで対応しておるわけでございます。
  138. 中野明

    ○中野明君 そうしますと、五十二年のものでやるわけなんですから、道路台帳が整備されないと不利な扱いを受けるということになるのですか。
  139. 津田正

    政府委員(津田正君) いわば私どもとしましては、道路台帳というものが整備推進さるべきものだと、その整備されたもので交付税を客観的公平に配分すべきものだと、かように思っておるわけでございますが、残念ながらまだそれに至っておらないで現況調書を利用しておるというような点もあるわけでございます。そういう意味におきまして、やはり本来の建前でございます道路台帳に全面的に移行することが必要でございますし、また、やはり現況調書でございますと、実際の検査等をやってみますと若干誤りが出ておるというような点もございます。そういう意味におきまして、地方団体に対しましては、現在道路台帳の整備を急ぐよう指導しておるところでございまして、現在のところ、六十二年度までは現況調書の数値をそのまま使うわけでございますが、六十三年度以降につきましては、現況調書によります数値というものについては若干調整を図らなければならない、かように考えています。要するに趣旨とするところは、逆に六十二年度まで余裕期間がございますので、その間に道路台帳を整備していただきたい、こういう方向地方団体に指示しておるところでございます。
  140. 中野明

    ○中野明君 これは、道路台帳が整備できているところは非常に少ないというふうに先ほどの答弁でわかったわけですが、これはどこに隘路があるんですか、そんなに地方自治体に能力がないということじゃないでしょうね。どのように理解しておられますか。建設省じゃないとわかりませんか。
  141. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) この道路台帳の整備問題というのは随分古い話でありまして、交付税制度始まって以来この議論が続いているわけです。  なぜ整備がおくれているのかといいますと、初めのころはその実測を行う技術者が足りないとか金がかかり過ぎるとかという事情があったのですけれども、最近は非常に技術も進みまして、団体としてやるという気持ちになればやれる、ネックはない。ただ、経費がかかる、実はこれが一番ネックになっているわけです。私どもも、道路台帳の整備ができるような前提で、道路の維持管理費の中には台帳整備の経費もあらかじめ算定しているわけですが、どうもこれまでは団体によって、現況台帳で済ませるならばそうしておきたい。それで、道路台帳整備のための財源を道路の舗装に使っちゃうというような傾向があったわけです。結局、道路管理者の姿勢、その団体方針というものがかなり影響したように思います。地域的にも、県が非常に熱心に道路台帳整備を指導している県は整備が進んでおる、それから県が余り熱心でないところは進んでないというような地域的な偏りも若干ありました。  そんなわけで、おくれた理由というので共通的なものとしては、相当これは実測をしてきちっとした資料をつける、特に官民境界というものを全部つけなきゃいかぬわけで、道路敷の官民境界は全部台帳の上に記される、これを一回つくれば後、道路の拡幅なんかのときに非常にそれがすぐ使えますからいいのですけれども、それを一遍に整備するときに金がかかるというのがネックになっているわけです。  しかし、やはり交付税制度の公平性ということからいきますと、ある団体が非常に不正確な資料のままで交付税配分を受けるというのは、これはどうしても交付税制度としては困るわけであります。ですから、私どもはともかく金がかかるという点は承知をしておりますけれども、しかしこれは基本でありますし、一遍整備すれば後はずっとそれでいけるわけですから、とにかく六十二年度までに整備を完了していただきたいということで指導を申し上げているところでございます。
  142. 中野明

    ○中野明君 行政改革の一環としてこれはやっているのでしょうけれども、かえってそれが年限をつけられて、もちろん法の精神からいったら整備するのが本当なんですけれども、地方自治体がせかされるというと仕事がそれだけ急激にふえるというようなことになって、じくじたるものを感じているわけですけれども、わかりました。  最後に、郵政省のテレトピア構想ということで、全国の四十六都道府県から百カ所も希望が出ているのですね。これ、こういうことが発表されると競争になるのか、見事な申請なんですが、それだけ関心も高いということでしょうけれども、テレトピア構想の概要をちょっと説明してくれませんか。
  143. 富田徹郎

    政府委員(富田徹郎君) テレトピア構想の概要について御説明さしていただきます。  テレトピア構想は、実用を前提といたしまして、双方向CATVあるいはキャプテンなどの通信インフラストラクチャーをモデル都市に集中的に導入いたしまして、それを集積することにより、ニューメディアが家庭、経済、地域社会に及ぼす効果や影響、問題点を実体験を通じて把握して、そしてこれにより制度的な諸問題、例えばCATV網と公衆網とのアクセスの問題やあるいは技術的な諸課題、例えば端末機器の標準化の問題、あるいは経済的な諸課題、例えば家庭において可処分所得内に占める通信費、情報費等の問題についての対応策、あるいはどのようなニーズがあるのか、そのニーズに応じたニューメディアの普及方策を明らかにして、向かうべき高度情報社会への諸課題を事前に克服することを目的としたパイロット的な構想であります。  この構想を踏まえまして、ニューメディアを活用した活力ある快適な地域社会の形成発展を推進すること、モデル都市を拠点としてニューメディアの全国的な普及を促進すること、そのようなことを目的としておるわけであります。
  144. 中野明

    ○中野明君 これはそれで予算がどれぐらいつけておられて、この指定を受けるとどういう利点があるのですか。
  145. 富田徹郎

    政府委員(富田徹郎君) テレトピア構想を実現していくための郵政省サイドの予算措置といたしましては、昭和五十九年度予算においてはテレトピア建設に関する調査費といたしまして約五百万円を計上しております。これは指定事務に必要な事務費あるいは助言指導費などでございますが、またこのほかに、ニューメディアの振興を図るという一般的な施策としまして約二億五千万円ほどの予算を計上しております。これは新しいデータ通信システムの開発とかなんかありますが、ニューメディア一般の予算であります。それから、VAN――付加価値通信網サービスあるいはCATV等に対しまして八十億円ほどの財政投融資の枠を確保しております。これらがテレトピア構想を推進するに有機的に活用していく予定でありますが、さらに電電公社の方では一般的な予算、電電公社の建設費の中におきまして、ディジタル化関係予算としまして三千八百億円ほどのお金がありますが、これを本構想の実現のために優先的に活用するということも考えております。  今後、各種ニューメディア事業への財政投融資の充実を図るほか、債務保証制度等、各種優遇措置について検討していくということにしております。
  146. 中野明

    ○中野明君 それで大体、地域を何カ所ぐらい指定をされるつもりなんですか。それで、いつごろそれは決定されるのですか。
  147. 富田徹郎

    政府委員(富田徹郎君) モデル都市の指定のために昨年末、指定を希望する地方公共団体地域実態調書というものを出していただきました。これが全国で四十六都道府県百二地域に現在のところ上っておりますが、大都市、地方都市、農村地域、過疎地域などの多様な地域にわたっております。これからさらに五月中旬、もうそろそろでございますが、モデル都市構築の基本計画策定指針というものを郵政省でつくりまして、これを受けて、さきに地域実態調書を提出していただきました地方公共団体から、この指針をもとに基本計画を策定していただきまして、八月から九月にかけてこれを郵政省に提出していただくこととしております。さらに、本年秋を目途としまして、郵政省において最終的な指定基準を定めて、これに基づく上記基本計画の内容を精査いたしまして、五十九年度中に全国で約上地域程度を指定する予定にしておるところであります。
  148. 中野明

    ○中野明君 それで、沖縄県ですが、これは県全域ということになっているんですか、どういうふうに理解したらいいんですか。
  149. 富田徹郎

    政府委員(富田徹郎君) 指定の対象としましては、大体一市町村程度の単位を考えておりますが、その市町村が連合してという考え方も地方の要望としてはあることは事実であります。その量大なものが沖縄県から出ました県全域という考え方であります。
  150. 中野明

    ○中野明君 それも構想の対象の中に入るんですか。私の理解は、いわゆるモデル都市として出発するというような理解だったんですが、県全域という、そういう構想でも構わぬのですか。
  151. 富田徹郎

    政府委員(富田徹郎君) 私どもの希望としましては、一市町村程度を中心に考えておりますが、必要やむを得ないところでその連檐した幾つかの市町村を並べたもの。現在のところ、まだはっきり最終的な指定基準というものは確立しておりませんが、懇談会等を通じて各方面の御意見を伺っている段階でありますが、県全部というのはちょっと地域が広過ぎて、非常にその後の施策の展開にやや支障が来るのじゃないかというふうに考えております。
  152. 中野明

    ○中野明君 大臣、何か新しいことをやるいうと、こんなにもうびっくりするほどいろいろ資料をつくったりなんかするので地方団体も大変だと思うんですが、それなりの時代の要請としてあるのでしょうけれども、こういうことがあるということを一応御承知おきをいただきたいと思います。せっかくの構想ですから、何とか時代の流れに沿って順調に進むことを要望しておきます。  それで、もうちょっと時間がありますで、最後に一つだけ。大臣、臨時行政調査会の、このいわゆる臨調の答申を最大限尊重するというのが中曽根内閣の基本だと思うんですけれども、けさほどの大臣答弁も率直な答弁がありまして、私も同感なんですけれども、地方の行財政に対する、経済界はもちろんですけれども、認識不足というのは確かに偏見としてあります。  それについて一点だけ、これ確認をしておきたいんですが、臨調の地方行政に対する考えの中でこういうことを言っているんですね。これはこのままではちょっとぐあい悪いと思うんですが、臨時行政調査会第三部会報告ですか、「国と地方の機能分担等の在り方について」という報告書の中で地方財政の仕組みを一応うたっておりまして、「こうした地方財政の仕組みを通じて地方行政が運営されてきた結果、今や地方公共団体の標準的な行政サービスについては、全国的にみてほぼ同程度の水準に達したものと考えられる。今後は、地域の独自性に基づく行政サービスについては、基本的には、受益者である地域住民の選択と負担によって行われるべきものと考えられる。」、これは私はわかるんです。「地域の独自性に基づく行政サービス」、これは地域住民の選択と負担でやれと、これはわかるんですけれども、この前提として「地方公共団体の標準的な行政サービスについては、全国的にみてほぼ同程度の水準に達したものと考えられる。」、こういう認識を臨調が持っておられるようなんです。これをこのまま黙って、さようでございますというわけにはいかぬのですよ。もう格差はひどいものです。これはそこから「標準的な行政サービス」という、この標準的な行政ということからいわゆる基準財政需要額というものが出てきているんだろうと思いますから、そうなりますと、こういう認識では困るわけです。  私先ほどから申し上げているように四国なんですけれども、下水道なんか人口十万ぐらいのところでまだゼロというところがあります。それが「全国的にみてほぼ同程度の水準に達した」というふうに臨調の先生方が理解をして、その上に立って国と地方の云々ということになってきますと、最終的には結局国の方が手を抜いて、そして全部地方へしわ寄せがきたときに、基本になっている考え方が、大体標準的なものは全国もう同じレベルになったんだと、こういう考え方でやられたらもう地方の公共団体はたまったものじゃないですね。この辺を大臣どういうふうにお考えになるのか、ここをはっきりしていただかないと、この行政改革の名前のもとに結局国がお金をなるたけ使わないようにして、そのしわ寄せは全部地方へかぶってくるという考え方にこれはつながっていくんじゃないかと心配をするわけです。この辺の大臣のお考え方を。
  153. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 臨時行政調査会のメンバーの中には地方行財政に対して私どもとは認識が相当隔たった人たちもかなりいるわけでございまして、そういう中からいろいろな議論が出てきたことは事実でありまして、私は今後行革審その他に、やっぱり私どもの地方自治に対する理解のある人をできるだけ例えば参与とかいろいろな形で送り込んでいく必要があるんではないかというふうに考えております。やはり人の問題ではないかと思います。  それからもう一つは、たびたび申し上げますように、やっぱり世論指導していく人たち地方自治、地方行財政に対してのもう少し理解を深めていく努力をしていかなければいけないと、こういうふうに思っております。  臨調の答申はあくまで尊重する。全体的には尊重しなければなりませんけれども、しかし個々の問題で、今御指摘のような問題で認識のかなり違っている事柄につきましては、私どももこれからそれを指摘しながらやっていかなければならない、このような姿勢でいるものでございます。
  154. 中野明

    ○中野明君 私どもも行政改革はこれはせにゃならぬということはわかっておりますし、これは当然のことだと思うのですが、基本的な認識を間違って行政改革をされたらこれはもう大変なことで、迷惑するのはやっぱり国民ですから、行政改革本来の考え方というのは、やはりたびたび議論されておりますように、高度成長のときに肥大化した行政の簡素化なんでして、基本的にこの認識を間違って、何か地方が全部もう整ったんだというような感覚で、国と地方の機能分担だとかそういうことで押しつけられると、これは間違った行政改革になりますので、今大臣の御返事を聞いて私もそのとおりだと思いますので、あらゆる機会にそういう点の基本的な認識の違いは、いかに臨調といえども間違いは間違いだということを強くおっしゃっていただいて、せっかくの御努力をお願いしたいと思います。  では、以上で終ります。
  155. 神谷信之助

    神谷信之助君 前回、四月十九日の当委員会における私の質問に対する田川自治大臣の極めて不穏当な発言につきまして、五月八日の理事懇談会の協議に基づいて、地方行政委員長の方から、改めて削除の意思の有無を確認をすることになりました。本日の理事会で委員長の方から、大臣に削除の意思がないという報告がありました。遺憾至極であります。大臣発言は我が党の名誉にかかわる重大発言でありますから、理事会の承認を得まして、事実と私の見解を明らかにしておきたいと思います。  当日、私は二階堂副総裁問題につきまして政治倫理確立という角度から、新自由クラブの代表でもある田川大臣の政治姿勢、政治的見解をただしたのに対し、個人的なことに答えるのはいかがかと思うと述べながら、突如、おたくの党でも、ある代議士がサラ金からお金を借りて、そして指弾をされたという例がごく最近あるはずでございますと、質問に直接関係のない、かつ我が党にとって重大な問題が提起されました。  そこで、私は具体的な事実を明らかにするよう求めたのでありますが、結局その席上では明らかにされないまま、委員会終了後、私に五十七年の三月一日付の朝日新聞のコピーをお示しになりました。その記事は我が党の中川利三郎衆議院議員にかかわるものであります。それは単なる事務上のミスによるものでありましたが、我が党の秋田県委員会として委員長談話を発表し、しかるべき措置をとった決着済みのものでありました。すなわち、報道にあるごとく、五十六年の十一月、中川氏らの呼びかけでサラ金対策協会が労働組合や消費者団体、弁護士などで結成をされまして、そして数多くのサラ金被害者の救済に当たってきたわけであります。しかし、この協会は自主的組織で手弁当による奉仕でありますから、たまたま事務所を中川事務所に置いていたわけであります。ところが、年末恒例の支持者への募金の依頼状を出すときに事務上のミスでこのサラ金の業者にも発送し、それに対して三社から五万円の募金が銀行口座に振り込まれていたのであります。で、五十七年の二月の二十八日になって「朝日」の記者の指摘で初めで事務上のミスに気づいて、直ちに返金の措置をとると同時に、翌三月一日、秋田県委員会としてミスの原因を追及し、同時に談話で党の見解を明らかにしたものであります。ロッキード社から五百万円の金品を受領し、法務省もいわゆる灰色高官として国会に報告し、裁判所も認定をした二階堂氏にかかわる問題とは全く無縁のものであることは明白であります。  大臣は、五十七年三月一日付「朝日」の記事をお示しになりましたが、翌三月二日付の同紙の記事はごらんにならなかったのでしょうか。そこには、サラ金対策協会の顧問を辞任をし、もちろん五万円は返済したこと、同時にまた、行政の無策の中でサラ金被害の救済に当たったところのサラ金対策協会が果たした役割を報道し、批判というより、むしろうかつさを惜しむ関係者の多いことを伝えているわけであります。  以上、私は真相を明らかにし、ためにするがごとき大臣発言に抗議の意思の表明をまずして、あと法案の審議に移りたいと思います。  今回の交付税の法案ですが、私はこれは今までの地方財政対策の根本路線を大改悪をする重大な内容を含んでいるというように考えるわけです。以下、逐次その中身、その根拠を明らかにしていきたいと思うのです。  そこで、まず、従来の方式をやめて、今度は交付税総額についての特例措置に変えるということでありますが、この特例措置というのは一体何に当たるわけですか。
  156. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 御提案申し上げております新改正法案の附則三条及び四条は、今後この方式によって必要な地方交付税の安定確保を目指す制度改正と、このように理解しております。
  157. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、いわゆる六条の三の2にいうところの制度改正に当たるという理解でいいんですか。
  158. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) そのように理解しております。
  159. 神谷信之助

    神谷信之助君 それじゃ、財源不足が生じた場合に、その穴埋めはこの特例措置でどこまでやるわけですか。朝からの話を聞いていると、建設地方債でまずできるだけ穴埋めをしていって、そのあと残ったものを特例措置というか特例加算というかで埋めるんだというように聞いたんですが、そういうことなんですか。
  160. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 財源不足が生じた場合に、具体的にこの新しい方式による特例措置をどうするか、またその前提として建設地方債の活用をどうするか、これは各年度の状況、財源不足の多寡、これらを勘案して決めてまいりますが、その具体的な内容につきましては、附則第四条の規定による法律の定めによりまして、毎年度御審議をいただくことになると思います。そこで、これまでもたびたび御答弁申し上げてまいりましたが、私どもの気持ちとしましては、地方財政の現状からいたしまして地方債への依存を極力引き下げてまいりたいと、こういう考え方を持っております。しかしながら、国の財政状態、これを度外視して議論はできません。私どもの気持ちは気持ちとしまして、今の状況では建設地方債の活用も、現実問題としてある程度は前提とせざるを得ないと考えております。極力これを下げたいという気持ちを持っておりまして、そういう方向でこれからも努力したいと思っておりますけれども、建設地方債をなして財源不足をすべてこの特例措置で対応するということは現実問題として困難ではないかと、このように認識しております。
  161. 神谷信之助

    神谷信之助君 それから、この特例措置によるいわゆる加算の部分ですね、これは限度はあるわけですか。
  162. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 法文上は限度はございません。ただ、現実問題として特例措置の内容が非常に大きな額になるということになれば、この方式だけで対応できない、さらにさかのぼった国、地方を通ずる税制改正その他の制度改正というものもあわせて考えなければならない。事実上そういった意味での限度というものは考えられますけれども、御提案申し上げております今度の制度の上でどこまでが限度ということはございません。
  163. 神谷信之助

    神谷信之助君 当初の自治省の説明を受けたときには、大体加算の限度は一〇%ぐらいがめどやというように聞いたんですが、そう理解していいんですか。
  164. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) この法文上、どこまでが限度ということは書いておるわけではありませんし、前提としておるわけじゃありませんが、今申しましたように、現実問題としてその額が非常に大きくなればこの特例措置だけでは対応できないであろうと、このように申し上げているところでございます。  そこで、それじゃその線がどのくらいかということになりますと、例えば交付税総額の一割ぐらいというのが一つのめどになるかなと、こういうことは議論としては行っておりますが、それが制度としてそうなっているということではございません。
  165. 神谷信之助

    神谷信之助君 それから、附則の四条の3、ここで三百億については六十六、六十七年両年度で返済するといいますか、返還するということ、これは今後そういう特例加算があると必ずそうやって返還をするということになるのか、あるいは返さなくてもいい場合もあり得るのか、この点はどうですか。
  166. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) その辺のことは第四条の規定による特例措置の内容を定める法律の中で今後御審議いただくことになるわけでありますけれども、ただ、私どもといたしましては、今後特例加算があった場合に、原則的にはその特例措置というのは、交付税率三二は変えないでその各年度の状況によってそれに対する特例措置を講ずる、加算の場合、減額の場合両方が理論的にはあり得るわけですが、当面、今の状況で私は加算しか考えられないと思っておりますけれども、その場合の加算分の扱いについては今年度処置したように、いわゆる利差臨特とか地域特例臨特のように、過去において自治、大蔵大臣の間で覚書が交わされて一定の臨特を交付税会計に入れるという約束が過去にあったわけでありますから、そういう事情を踏まえてその特例加算分の後年度における精算の範囲を決めていくということになろうと思います。  ただ、いわゆる財対臨特の分につきましては、これはあらかじめ幾らということが決まっているわけでありませんので、各年度の財政状況によって両大臣の間で決めていくということになろうと思います。したがって、そういった意味で、特例加算が今後あった場合に、そのうち幾ばくが将来減額精算されるかということはこの段階で明確には御答弁できないんでありますけれども、少なくとも、考え方としては五十九年度の処置と同じような考え方で対応していきたいと、このように思っております。
  167. 神谷信之助

    神谷信之助君 しかし、考え方としていわゆる今度の五十九年度の三百億にかかる分、これは返していくという、六十六、六十七で返すのだと、結局六十六、六十七年の交付税の先食いになるわけでしょう。だから、これからも大体そういう考え方でいくなら、これからも加算は、いわゆる既往臨特は別にして、財対臨特は別にして、プラスアルファという分は、特例加算という分は、これは今年度と同じことでいくというと将来は返す。それは将来の交付税の先食いになるわけでしょう。そういうことをやるということですか。
  168. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) そういうことでございます。
  169. 神谷信之助

    神谷信之助君 そうすると、結局ことしやる方式は、国としては交付税法で決まっておる三二%分とそれから既往の臨時、これは覚書で約束だからしようがない。それであと三百億つけ足してもらう、それだけだ、いわゆる財源不足の処置については。残りは全部交付税の先食い、この三百億も交付税の先食いですから、言うたら交付税の先食いと自治体自身の借金でやりなさいということになってしまうと思うのだけれども、そういうように理解していいですか。
  170. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 今度御提案申し上げております新しい方式は、交付税率三二というものは変えない、これを基本にいたしまして今後の各年度の財政状況によってその法定額に過不足が生じた場合は特例措置で増減する、そしてその増減したものは、基本を変えないわけですから、将来プラスの場合はマイナスで精算する、マイナスの場合にはプラスで精算する。要するに、通じて見ればもとは変わらない三二であるということでございます。
  171. 神谷信之助

    神谷信之助君 これがどうして今の交付税法の六条の三の2の条項の趣旨からいって合致することなんですか。
  172. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 六条の三第二項におきましては、引き続き著しく地方財源の不足が生じた場合においては、地方行政制度、財政制度の改正または交付税率の変更を行いなさいと書いてあるわけです。その趣旨は、財源にとにかく不足の状態が生じた場合には地方財政の運営に支障が来るわけですから、その不足の状態に対応できるような措置をとれと、こういう趣旨であります。その措置はたびたび御答弁申し上げておりますが、立法の本来の趣旨は、そういう引き続き著しい不足が生じたようなときには、そういうことはもう将来なくなるような基本的な改正を行うというのが本来の立法の趣旨であります。  しかし、残念ながら五十年度以降もそうでありますが、今日も、将来に向かってもう財源不足を生じないようなまさに抜本改正というものができる状態にない、国の財政も御承知のような状況でありまして、そういう抜本改正ができない。しかし、地方の財源不足の状態を放置はできませんから、これに対する何らかの手当てが必要である、手だてが必要である、そのための制度改正として今回御提案申し上げているような特例措置を講ずる新しい仕組みをつくっていただこうと、こういう趣旨であります。その新しい仕組みというのは、各年度において不足が生ずれば特例加算する、将来それは精算するのでありますけれども、とにかくその時点では財源不足を補てんできるようなそういう制度を今度つくると、こういう趣旨でございます。  ですから、これもたびたび本委員会でも御議論があったわけですけれども、そういったものが制度の名に値するのか、こういう御意見もありますけれども、私どもは、それは五十年度以来たびたび議論があり、法制局とも論議した結果、その制度改正というものは、立法の趣旨、立法の当時の考え方からすれば抜本改革を想定しているようであるけれども、しかしそのときの状況によってさらに幅広い選択を認めていると解すべきだと、だから今私が申し上げたような当面の財源不足に対処するための仕組みをつくるということもその制度改正の中に含まれると、こういう法制局の見解もちょうだいして、今回の改正を御提案申し上げているところでございます。
  173. 神谷信之助

    神谷信之助君 いみじくも局長言ったように、六条の三の2の規定の趣旨は、局長の言葉で言うと、本来こうあるべきだというそれを言っているわけです。だから、引き続き著しく財源不足が生じたときには、結局それは地方財政の、財政制度の構造的欠陥があらわれてきたんだから、したがって制度改正なり税率引き上げなりやって、二度と起こらぬように、少なくとも当面は起こらぬようなそういうことをやりなさい、そうしなかったら交付税の財源保障機能も調整機能も果たすことができないじゃないかというのが僕は六条の三の2の立法の趣旨だと思うのですよ。  だからその点は、五十年以降、我々はそう言うし、あなた方の方は法制局の見解、これは都合のいいようによく考えられるから、それで拡大解釈してこれでも結構なんですということで来たわけだと思うんですよ。だけど、私はこれが問題で、本来は根本的な改革をやるべきだったのだ。しかし今局長至言うように、また当時の自治大臣答弁をしておりますように、国の財政事情から結局やむなく二分の一ルールとか、いろんな方法で最低何とか財源は確保しようということで切り抜けてきたと思うんですが、五十二年に二分の一の方向をとり、五十三年にそれがルール化されたという当時、自治省の方は、あのルール化されたことをもって実質的に将来の交付税率が三二%を超えることを意味するものであって、地方財政制度の改正に該当する措置と言い得るものだという評価をしているのじゃないですか。
  174. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 五十三年度のいわゆる特会借り入れ方式のルール化に当たりましては、これは確かに借り入れで加算、将来返すんですが、半分はとにかくもらい切りになりますから、少なくとも半分の分だけは三二に上乗せになる、そういった意味で、このルール化は交付税率の実質的な引き上げを意味する改正である、このような評価をいたしたこともございます。
  175. 神谷信之助

    神谷信之助君 それで、先ほどの局長の答弁ですと、恐らく一般消費税ができて、それに応じて地方財源もふえるだろうし、その二、三年後には、そういうときには三二%を引き上げることも可能だし、あるいは地方税源自身がふえるからそういうことはないだろうというような希望的観測を持っていたというわけでしょう。そこで当時は、少なくとも、二分の一ルールというのは国が半分持つんだから、それからその三二%プラスその持っている分は国が出しているわけですから、交付税という名前をつけて一般会計からは入ってないけれども、こっちの財投資金から借りているという形ではあるけれども国が持っているんだから、三二%プラス数%の状態だったという評価をしたわけね。ところが、今度は二分の一ルール、これをやめるわけね。消えてなくなっちゃう。だから交付税率は実質は上がったのだと言うたのが実質下がるわけだ、こういうことになるわけですね。
  176. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 今回の改正によりまして、五十年度以降借り入れた額のうちの二分の一、交付税会計の借り入れのうちの二分の一を国の一般会計が引き取ってしまうわけですから、少なくとも国の一般会計が引き取ってしまった分だけは、過去においてそれは交付税として使われたものを、それが負債として残っているものを国が引き取ったわけですから、その分だけは確実に、過去において交付税が実質三二に上乗せになったことは事実であります。  これからはどうなるかというと、これからはそういうことをやらないわけですから、過去の負債だけが残っているわけですから、それを返していかにゃいかぬ。そういう意味では、三二の中から返していかにゃいかぬという意味では、手取り額で三二を切るという事態になることは否定できないと思います。
  177. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから僕は、今のは二重に下がっていると言うのだ。五十三年度からルール化して五十八年まで二分の一国が持ってくれていたわけだ。だから三二%プラスアルファ%になっておるのだ、交付税率は。そしてこれは、もうこれからは二分の一出さぬ。だから三二%プラスアルファのうちアルファは消えた。それからあと今度は、今まで利子を持つと言っておったやつが利子分だけ持たされるのだから、そういう意味では二重に、今度は三二%からさらに利子分だけ減っていきますよね。元の借金を返すという分、交付税会計から二分の一の借金は返すという分、いわゆる五兆円余りのものは、これは初めから、二分の一ルール決めたときからそう言ったわけだ。我々はそれはけしからぬと言っておったのだけれども、これはまだ続いているわけですよ。返すのは先になっていますから、まだ今は五十九年度の三二%に影響しているわけじゃない。今年度の三二%に影響しているのは、利子分だけ下がったことは事実である、こういうことになるわけでしょう。だから二重に五十八年に比べたら五十九年度は交付税率が引き下げられている、そういう状態にあるということは言えるわけでしょう。
  178. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 二重にと申しましょうか、はっきり今年度の三二%に食い込む要因となるのは三千六百億円余りの利子負担額でございます。  それから、今回特例措置としての三百億円を将来減額精算するというのは、六十六年度以降減額精算される、今年度としてはいわゆる加算としてしか働いていない。そこのところをどういうふうに見るか。将来まで見通して二重というのか。私どもは、それはプラスしたものを将来精算するわけですから、差し引きゼロと、プラスマイナスゼロと、このように理解しているのでございます。
  179. 神谷信之助

    神谷信之助君 違うんですよ。  いずれにしても二分の一ルールで国が二分の一持つと言っていたのです。これは年によって額が変わりますから何%と固定的に言えぬけれども、仮にわかりやすく言うたら五%なら五%。だから去年までは実質三七%分の交付税率、そういう状況だった。ことし、五十九年度から三二%へ戻ったわけだ。言うたら引き下げられた。その上に利子を今まで国が持っておったやつを今年度から持たにゃいかぬというので、十月以降の分で三千億ですか、引かれるわけです。三二%から引かれるわけだ。そうすると三二%以下になる。前年度までに比べたら交付税率を、あんた方の論理で言えば、実質二重に引き下げられたということになるんでしょうと言っている。
  180. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 確かに五十八年度までの方式で特別会計が借り入れて、その分は実質半分だけは上乗せになる。それが今度なくなるわけですから、それは引き下げというのか、なくなったことは間違いありません。そして、実質増というその状態から見れば、それは下がったことは事実でございます。  それから、利子負担についてはまだ議論があり、我々も随分主張したんですけれども、残念ながら今の国の財政状態のもとで我々の主張が一〇〇%は通らなかったわけですが、この扱いは五十八年度から利子の二分の一を特会が負担するという方式に変わりまして、それを今度の改正で、いわば交付税特会の借金として残る分の利子はこれから交付税会計が負担するということにいたしておりますので、確かに地方財政の立場からいたしますと、その点は従前よりも厳しい内容になっているということはもうこれは否定できないと思います。
  181. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで、ことしも六条の三の第二項の、いわゆる引き続いて著しい不足額を生じでおる状態にある。だのに実質交付税率が引き下げられるという結果を生み、そして五十八年度一年だけと思ったら、これから後はずっと交付税特会に残された分五兆円についてはもう利子を負担せにゃならぬ、こうなってくるわけでしょう。すると、これは交付税法の六条の三の二項に言う状況と変わっていないのに、税率の引き上げどころか実質税率の引き下げになるような、そういう結果になるようなあなた方の言う制度改正がやられる。明らかに六条の三の二項とは違う措置になっているのじゃないか、異なる措置に。六条の三の二項が期待をしている措置とは違う、全く相反する措置を五十九年度以降はやろうと、こういうことになるわけでしょう。違いますか。
  182. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 六条の三の第二項のケースに今日の事態が該当しておると、そしてそれに対処するために制度改正を今回御提案申し上げているということでございますが、その制度改正のその内容が、確かに地方の側からしますと全部プラス要因だけで構成されているような内容であれば非常に説得力もあるし、わかりもいいわけですけれども、今回御提案申し上げております特例措置の内容というのは、まず初めに過去に交付税に上乗せした額の利子分を負担しなきゃいけない、それがマイナスに働く。しかし、それもいろんな経緯からそうせざるを得なくなった。それを前提にしてその利子を負担した、いわば利子を差し引いた残りの交付税で地方財政の運営に支障が生ずるようなことのないように、その不足分については特例措置で対応すると、こういう制度を御提案申し上げているわけです。ですから、その利子を差し引くというのが前にあるものですから、非常に地方の側からすれば不十分といいましょうか、いろいろ議論を呼ぶような内容になっておりますけれども、しかしポイントは、この新しい制度によって地方財政の運営に支障なきようにできているかどうか、財政運営に支障がないように交付税制度の持つ財源保障機能というものが全うできるようなそういう仕組みになっているかどうか、これがポイントであろうと思うのであります。  私どもが御提案申し上げております内容は、確かに利子は負担することになっておりますが、その利子を負担する前提のもとで計算される交付税で不足を生ずる場合には特例措置でこれを補っていく、こういう立て方にしておりまして、私どもはこれによって地方交付税はトータルとして安定確保する、そうすることによって地方財政の運営に支障なきを期すると、こういう制度になっていると考えております。したがいまして、そういった意味交付税法第六条の三第二項の規定による財政制度の改正という範疇に入り得るものと、この範囲内に入っていると、このように理解をしているところでございます。
  183. 神谷信之助

    神谷信之助君 大分無理な理解ですね。本来はこうなんだけれども、国の財政がどうにもならぬから法制局の拡大解釈をもらってそしてそう理解をしているという。  そこで、利子の問題出ましたけれども、本来交付税は、地方交付税法上、全額地方交付税として地方団体に配分しなければならないものだ。だから交付税特会で借り入れを行って、利子を払えと言われても利子に充てるものがもともとない、だから利子は全額国庫負担するのは当たり前の話だというのが、今の交付税法の趣旨から言うとそういう論理になるというのが今までの自治省考え方と違うんですか。
  184. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 従来は、交付税法及び特別会計法の規定におきまして、借入金をそのまま配分すべき交付税の総額に加算しておりまして、利子については、いわば歳出上、出場所がない、そういうような規定になっておったわけです。したがいまして、いわば法律の構成から、当然一般会計が持つしかないようなそういう規定の仕方をしておったわけであります。内容のよしあしは別として、ともかくそういう立て方にしておったのです。それについて五十八年度の改正の際に、いろいろ議論の末、結局、地方の借金のうち地方の負担する部分についての利子を持つことになりましたので、その分だけ地方に配分すべき交付税総額から減額したわけです。いわばそのための利子を支払う財源をつくった、そうして出せるようにした。これは不本意でありましたけれども、そういう改正を五十八年度いたしたわけです。今度の改正では、附則におきまして、六条の第二項の交付税総額から利子は初めから引くというふうに規定をしておるわけです。御提案申し上げているわけです。私どももこれは、大変こういう形というのはつらい提案でございますけれども、今の財政状況のもとでこういう形で合意せざるを得なかったということでございまして、従来であれば出場がなかったのです。今度は、はっきり利子を負担できるように法律構成を改めまして御審議をいただいているところでございます。
  185. 神谷信之助

    神谷信之助君 だから、交付税制度が始まって以来、とにかく今は三二%と決められた国税三税三二%分というのは、これは全部地方団体にばらまくものだというのが法律の建前で、それでずっと来ておった。去年初めてちょっと穴あけられて、今度はとうとうそれを制度化する。それは今局長直言うように、交付税制度の従来の路線がそういう意味ではごろっと変わってくるんですよ。総額から幾らでもピンハネができるようになってくる。三二%がちゃんと地方公共団体の固有の財源で、これは指一本さわらせぬぞと言って今までとりでを守ってきたのが、去年まず一つ抜かれ、とうとう今度は総額からパーンと減額して、残りを分けたらいいんだと、こうなってしまう。この道をあけていくと、どんどん減額する分も、これはこれ以上減額したらいかぬというやつはありはせぬのだからね、将来は。そういう事態になってきている。だから局長は、どうしても三二%をこれからは死守するんだとこの間から言っていたのもその意味だろうと思うんですけれども、その意味では、交付税制度というのは今までの根幹が揺らぎつつあるというように私は思うんですけれどもどうですか。
  186. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 確かに、五十七年度の補正、五十八年度、五十九年度と、この経緯をたどってみますというと、私どもは、それまでは常に前向きといいましょうか、上積みといいましょうか、そういう議論をしてまいったわけでありますけれども、ここに至って、過去において特例措置を講じたもののアフターケアを交付税会計自身でせざるを得ない、こういう改正を御提案申し上げなきゃならない状態に立ち至ったわけです。これは正直に申しまして、大変つらいところであります。しかし、そういった特例措置で対応すると、過去に特例加算があったものの利子あるいは元本について、その一部をこれからの交付税の中から返していかなければいけない、そういう意味の特例措置、これは見方によっては確かに三二%に食い込んでいる、こういう御指摘もできましょうけれども、私どもとしては、過去特例措置で上乗せしたもののアフターケアとしてこれは最終的にのまざるを得なかった、こういう理解でありまして、本来のといいましょうか、三二%についてそういう過去の特例措置と関係なしに食い込むということは、これは絶対防いでいきたい、こういう気持ちでおります。  実は、私が三二%を何としても守らなければいけないということをいろいろな機会に申し上げておりますのは、先ほど大臣も御答弁申し上げましたように、臨調その他の場では交付税率そのもののあり方についても引き下げ論がかなりあるわけでございます。私どもは、地方財政の現状から全くこれは問題にならないと思っているのですけれども、実はそういった議論すらある。そうした中で、やはり本体を守るために、ある程度特例措置の面では折り合わざるを得なかった面も率直に言ってあるわけでございます。  いずれにいたしましても、いろいろ弁解がましくなりますが、五十九年度の対策を講ずるに当たりましては、やはり我々の当初の主張からしますと大変残念であったわけですけれども、利子を負担せざるを得なくなった、この点が何としても大きく響いているわけでございます。しかし、私どもとしては、その利子を負担した上で地方財政の運営に支障を来さないような特例措置を別途確保していく、こういうことで今後に臨んでまいりたいと考えております。
  187. 神谷信之助

    神谷信之助君 ちょっと、ついでになりますが、これは附則の五条の三項ですが、これは今までの現行でいくと「支払に充てるため、必要な金額は、」と、こうなっているんですね。今度はそれが「必要がある場合においては、」と、こう変わって、それから最後のところ、現行は「繰り入れるものとする。」というのを、今度は「繰り入れることができる。」と、こうなってきていますね。この趣旨はどういうことですか。
  188. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 従来、特別会計法の附則第五条、第六条の規定の仕方として、一時借入金につきましては従来から「繰り入れることができる。」と、こういう規定をしておりました。そうして、一借りではなくて、いわゆる年度越しの借入金の方は「繰り入れるものとする。」と、このように書き分けてきたわけです。しかし今回、何と言いましょうか、単年度だけの話じゃなくて、将来にわたって年度越しの分についても交付税会計が負担しなきゃならないということになりますと、利率の変動等がありまして、金額的に、するものとするときちっと書くよりも、「繰り入れることができる。」と、従来の一借りと同じ規定の仕方の方が適当であろうということで、表現を一借りと同じような表現に改めたわけでございまして、実体的な変更を意味するものではございません。
  189. 神谷信之助

    神谷信之助君 いや、実体的な変更じゃないか、これは。それは今までは利子払わぬでよかったのだけれども、今度から利子を払うことになるのだから。今までだったら、支払いに充てるために必要な金額は繰り入れるものとするんだが、今度は、必要がある場合においてはできるということなんで、何というか利子が入りにくくなってきたわけだ。もらいにくくなっていることは事実だ。しかしこれ、「できる」ものにするといったら可能性はあるわけですか、利子を一般会計から繰り入れることができるわけですが、利子分に必要な金額は。
  190. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) もちろん、その大前提として従来の一般会計が持ってしまったものは負担するものとすると、ぴしっと予算で決めておりましたから、それで動かないわけですけれども、今度はそれが変動要因があるということで「できる」にしたんですが、それじゃ少しでも手伝ってもらえるのかと、こういうことですが、これは今年度も、実は規定どおり借入金について年間を計算しますと四千億ほどかかるわけです。それについてできるだけ先行繰り入れ、一般会計からの国税三税が入ってこない段階でも、事情の許す限り先に交付税会計に入れてもらうことによって利子負担を軽減してもらう措置を講じております。四千億の利子、理論計算で四千億要るのに対して三千六百億円の利子負担にしておるその差額というのは、実は先行繰り入れによる利子の軽減措置なんでございます。これは私どもは、実は今後とも現実の大蔵省との折衝の問題になりますけれども、この点は今後とも努力していきたいと考えております。
  191. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこで大臣、今お聞きのように、地方自治を保障すると言っても、あるいは確立すると言っても抽象的にはどうにもならぬので、実際にはその自主財源がどれだけあるかということになる。そういう点では、地方税をどれだけ確保するかということと、それから交付税制度をどれだけ守り抜くかというのが自治省に期待されていたし、それで、できるだけ特に交付税の枠を拡大をするためにいろんな努力をされてきた。ところが、法制的にもそういう仕組みになっていたのを、五十年度以降の財源不足が膨大に毎年続くという状況の中で二分の一ルールが入れられ、そしてだんだんこうやって、先ほどあったように、今度は、ことしからはさらにもう一歩後退する。だから、三二%、これをとられぬように守らなきゃいかぬというところまで来ている。しかし法律的には、交付税法なら交付税法の全体を流れるもの、部分的には例えば今言ったように利子を払うことができるように今度改正をしてやるけれども、全体から言うと、それは若干矛盾する規定になってくる。交付税制度、今までぴしっと一貫したやつにちょこちょこっと穴があいてきているわけですから。それは結局言うと、六条の三の二項を拡大解釈をする、そういう状態がさらに国の財政の逼迫の中で、我々から言うたら違法の状態に遂に追い込まれてきたというように思うのです。  国の財政がどうにもこうにもならなくなったら、それは法律国会がつくるのだし、だからその情勢に応じてどうでも法律は変えられると言えばそれまでのものだけれども、制度そのものの形だけは残ると言うけれども、実際にはだんだん形骸化してきているという、そういう状況に立ち至ろうとしているように私は思うのですよ。これは法律制度、法体系といいますか、その制度自身に対する重大な私は変更になってくるという、そういう危惧を感じているのですけれども、大臣の御認識はいかがですか。
  192. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 私は、今度の特例措置が六条の三の二項、法律に反しているとは思わないんです。やはり従来の借入金を継続してきて、この借入金方式によって歳出要因をどんどんどんどん繰り延べるばかりで、こういうことを続けていったらそれこそ地方財政の基盤を損なう重大な問題になってくるわけでございますから、そういう意味で、この辺でやっぱり一つのけじめをつけて、借入金方式から脱却するということを考えていかないと大変なことになる。そういう意味で、多少地方の皆さんには我慢していただかなければならないこともある程度やらなきゃいかぬじゃないかと、こういうふうに思っております。決して胸張ってこれでいいと言うわけじゃないけれども、今の国、地方の置かれた厳しい財政状況から見れば、今回の措置はひとつ御理解いただけるのではないか。公式論から言えば交付税率を上げてやるべきだ、しかしもう皆さんも御承知のように、今交付税率をここで上げるなんていうことは、これは言うべくしてなかなかできないことでございまして、そういう意味でこうした措置をとらざるを得なかったというのが私の認識でございます。
  193. 神谷信之助

    神谷信之助君 大臣、だけど、こういう状態に追い込んで、国の財政もそうですし、それから地方の財政もそうなってきておるというところに追い込んできている政府の政治責任というのは私は重大だと思うんですよ。この点は一体どうお考えですか。
  194. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) こういう状態になったというのは、先ほども財政局長が言われましたように、やはりこれは政府が責任の地位にあるんですから、国、地方とも急になったのじゃない、長年続いてきた結果こういうふうになったのですから、これはもう政府の責任と言わざるを得ない。ただ、神谷さんがおっしゃったように、今の時点で見て、じゃ、どうかと。私どもは今の時点だけじゃなく、これから二年、三年、五年、中期的、に立って、ここで地方財政の健全化のスタートを切らなきゃならぬ、そういう考え方に立って今度の措置を講じたわけであって、もう少しひとつ長い目で見ていただきたいというのが私どもの気持ちでございます。
  195. 神谷信之助

    神谷信之助君 私は、長い目で見ても先への展望ないじゃないかと思うんですよ。だから五十年当時、いわゆる第二次オイルショック後の不況をどう乗り切るかという当時、五十年になってから財源不足がどんどん出たときに我が党が提案をいたしましたあの時点なら交付税率を四〇%まで引き上げるとかいったような方法ができたし、そういう状況がありました。我々はそれに必要な、政府の予算案に対して、組み替え予算案を出しました。しかし今年度、五十九年度では交付税率引き上げまではできないですよ。ただ、こういう措置をしなくて、借金ではなしに財源を保障するということは可能だという組み替え案を出しました。もちろん、軍事費の削減とかいろいろなことやりますよ、その点は全然違うんだから。だから、我が党の提案どおりやっていれば、こんな泥沼のような状態にならずに早く済んでいる。結局あの不況乗り切りのために赤字国債まで発行して、そして公共事業をふやし仕事をふやして、先ほど石原局長が言っておりましたけれども、国も地方団体の方も歳出規模をふやして、そしてやったためにどんどんつけはふえてきた。で、いまだにどうにもこうにもならぬという状況になっているし、そういう手法を続けている限りはなかなか解決しない、そういう展望を持つことができないというのが私は現状だと思いますよ。長い目でとおっしゃるけれども、何遍やっても財政再建の計画の目標は次々と引き延ばさざるを得ぬわけです。私はそういうように思っているのです。それはそれとして、次の問題に移ります。  次に、先ほどからもありましたけれども、加算の特例もあれば減額の特例もあると局長言っていますね。確かに大蔵省の予算説明資料では、法律で定めるところにより減額措置もあり得ると明記をしています。この減額の場合の幅も、先ほど一〇%ぐらいめどかなとおっしゃるけれども、減額の場合もやっぱり一〇%ぐらいがめどになるわけですか。
  196. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 先ほど御答弁申し上げましたように、特例措置の幅について法文上特に明定しておりませんので、ここまでということはありませんが、ただ現実問題として、こういった当分の間の特例措置という性格上、その金額が交付税総額の一割を超えるような事態ということになれば、それは増の場合でも減の場合でも、もっとさかのぼった税制改正を含めた議論にならざるを得ないであろう。そういう意味で、総額の一割程度の範囲内での特例措置ということにならざるを得ないと、このように思います。ただ、減額ということでございますが、法文上は確かに特例措置ですから、これは増も減も特例措置であります。しかし私どもは、今の地方財政の状況、ここ当分の間の状況からするならば、そういう事態は考えられないと思っております。しかし、地方財政の環境が非常に好転するというような事態が来れば、交付税会計が借金しておりますから、借金を返さなきゃいけないと、こういう事態ももちろんあり得ると思います。しかし現時点では、減の方がすぐに具体的な話題になるということはないんじゃないかと私どもは見ております。
  197. 神谷信之助

    神谷信之助君 いや、なかなかそう楽観は私はできぬと思いますよ。大体、地方税の方で見ても、来年は固定資産税の見直しでしょう、来年はたしか。それから、住民税の税率を変えたやつも、所得税の変わったやつが来年平年度化されてきますから、住民税に来るでしょう。ある意味では若干の景気上昇も言われていますし、賃上げも、公務員でも、おととしゼロだけれども五十八年は二%やったりする。そして今度は五十九年何%やるかわかりませんが、そうなってくるでしょうから若干の税収の増は見られるでしょうし、逆に歳出の伸びは、今の現状だったら国の方の歳出はますます抑制するでしょう。    〔委員長退席、理事真鍋賢二君着席〕 だから、そういう意味でいえば、いわゆる財源不足額というのは、歳出の規模をずっと抑えていけばいいんだから、抑えようと思えばいい、また歳入をふやせばいい、そういう意味では不足類減らすことは可能になってくるし、そうすると、それだけは建設地方債に同していけば特例加算せぬでもいける。あるいはさらに状況がもっと厳しく、ぐっと締めていけば、歳出と歳入の関係を考えた場合、理論的には減額も、これは二、三年先にはあり得るかもわからぬ、こういう状況が今の仕組み、今のやり方をずっとやってくれば出てくる。私は、だからそこでもう一つ問題があるのは、そうやって加算もあれば減額もあるということになると、実質上の交付税率の変動制ということになってしまうのじゃないかというように思うのだけれども、この辺はどうですか。
  198. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 今回の改正内容につきまして、これがいわゆる変動相場制といいましょうか、年度間の調整の制度化ではないかという見方をする人もいますけれども、私どもの理解では、交付税制度の年度間調整制度化というのは、いわば予算措置でもって三二%の法定額が一定の範囲で増減できるような制度、そういうのがいわゆるこれまで言われた年度間調整制度だと理解しております。そういった意味では、今回私どもが御提案申し上げている内容は年度間調整の制度化ではありません。それは、もう毎年度附則第四条の規定に基づく法律をもって具体的な内容決めていただくわけでありまして、予算措置で、政府の責任で一定の範囲内で増減をするというものではございません。毎年度決めていくと、こういうものです。しかし、ただその効果といいましょうか、法定額がその特例措置によって、年度によって増があったり減があったりするというそういう意味では年度間調整措置ではある。年度間の交付税の過不足を調整する措置ではあります。いわゆる制度化ではないと思いますけれども、調整措置ではあると、このように理解しております。
  199. 神谷信之助

    神谷信之助君 なかなかうまいこと言う。措置であって制度化ではない。そう言わなきゃならぬ、従来からの自治省のとっている方針からいえばそう言わざるを得ぬというそういう意味ではわかります。しかし、いずれにしても、この交付税制度というのはある程度長期的観点に立って財源をちゃんと保障するということになっておるんですから、そういう増減が予想されるということになってくると、そういう意味でも、年度間調整制度になったのではない、措置なんだと言っても、措置であっても変質を意味しないのかという問題です。長期的展望に立った交付税制度というこの制度が、それが年によってふえたり減ったりする、それは年度間調整の措置だと。だけれども、長期的展望でずっと固定をするといいますか、一定のものを保障する、総額は減らしませんというのは、総額はこれから利子によって減らされてくるのだし、という状況できますから、両面から見ても交付税制度の変質を意味しないのかというように思うんですが、どうです。
  200. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 変質という意味がどういう意味なのか、確かに今度の御提案申し上げております附則三条四項の規定を発動することによって、各年度の過不足に対応するような一つの仕組みというものをつくった。そういう意味では、そういう制度が全くなかった一番初めの交付税制度と比べますと、異なった仕組みを導入したということは事実でございます。    〔理事真鍋賢二君退席、委員長着席〕  ただ、御承知かと思いますが、昭和二十九年に交付税制度が制定されましてことしで三十年になりますけれども、法定額のままでいった年というのはないんであります。毎年度必ず多い少ないかの、微調整か大きな調整がは別としまして、どの年度においても必ず何らかの調整措置が講じられてきております。時によって、昭和四十年代の中ごろのように減額特例を何年か続けて、当委員会で大変おしかりを受けたようなときもありますし、五十年代に入って、特例加算が続いた年もありますが、いずれにしても今のようにまだ地方財政をめぐる財政環境が安定しないもとでは、法定額だけでずっと突っ走れるような時期は残念ながらなかったのであります。どの年度でも何らかの特例措置が講じられてきた、それはその年度間の過不足を調整するための措置という意味では、財源調整措置が単作度の立法をもって講じられてきたということは過去の事実でございます。  今回御提案申し上げておりますのは、そういった今の地方財政をめぐる環境のもとで、やはりここ当分の間はそういった調整措置を講じなければ交付税の安定確保が難しいであろうと、こういう認識のもとに、そのための仕組みをここでつくっていただいて、具体的内容は毎年度の法律でもって御審議をいただいて決めていく、こういうことでございます。
  201. 神谷信之助

    神谷信之助君 臨調答申に言うところの年度間調整制度化の検討という問題については、既に同僚議員の質問に対して、反対だという態度をとっ ておられるし、したがって制度ということを認めるわけにいかぬという立場はそれはそれでわかる。したがって、措置だという言い方をなさっているのだけれども、ただ今度でもこうしてまた、しかもそれは毎年法定化するので国会審議を経るのだから制度ではない、こういう言い方ですけれども、ただ、今までにそういうやつがあったけれども、今度の場合、三百億も六十六年度、六十七年度にかかわるわけです。で、もし仮に、来年はどうなるか知りませんけれども、それのまたその先かもう一つ先になるか知らぬが、利子の支払い条件やらを考えてどこかの年度で取っていく。やっぱり毎年そうやって決めるといっても、制度化というそういう評価をされる危険というのは十分あるというふうに思うんですね。  自治省のOBの鹿児島県知事の鎌田さんが「地方財政」のことしの四月号ですか、そこで、特例措置が年度間調整にほかならないという指摘をしながら、   このような慎重な配慮やルールを欠いたまま、単年度収支の見積りに基づいて特例措置を講ずることとするときは、とかく国の財政の一方的都合によって所要財源の確保が図られず、交付税総額の決定をめぐって毎年度国・地方間の紛議が絶えず、その安定的確保が困難となり、地方財政の円滑な運営に支障を生ずる等、不測の事態を招来するおそれがある という指摘をなさっているんですね。ベテランの自治省出身の方ですし、我々心配するのは、やっぱり交付税制度がそういう形で崩壊していく危険が多分にあるんじゃないかというように思うんですが、この辺はいかがですか。
  202. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 実は、今回御提案申し上げております改正法案の内容に落ち着くまでの過程におきましては、今の国、地方を通ずる財政環境にかんがみてこういう措置を講ずるんだというような議論もあったわけですが、私どもは、これはやはり交付税法でありますから地方財源の安定確保という見地で制度は考えられるべきだと、そういうことで、この三条にも地方交付税の安定確保を図るということをうたって四条の特例措置を定める、こういう法律構成にしたわけでございます。ですから、私どもの先輩OBが非常にこういった事態を心配しておられることは十分承知しております。我々、その制度を預かる者として、交付税の本来の趣旨が損なわれないように最大限頑張っていかなきゃいけない、こういう意味で、今日の財政環境のもとで交付税の理念を実現するための制度改正として今お願いをしているところでございます。
  203. 神谷信之助

    神谷信之助君 そういう心配を抱かざるを得ないようなところに追い込まれてきているんですね。それで、本来は六条の三の二項に基づいて、今日まで私も、口酸っぱく、早く抜本的に改革をやるべきだということを言っていましたけれども、見送られてきて、とうとうにっちもさっちもいかぬところへ来でこういう状況になってきた。  それで、その経過を今まで考えますと、自治、大蔵大臣の覚書をつくり、そしてそれを法定化し、ルール化し、制度化してきても、やっぱり国の財政がどうにもこうにもならなくなると、それはもうほごにされて次のルールができてくる、そのときはますます後退せざるを得ぬ、そういうのを繰り返してきているんだというふうに思うんですよ。  例えば利子は国が持つという問題でも、去年の八三年五月の「ファイナンス」で、大蔵省ですか、地方財政対策の概要について述べているその中に「交付税特会の借入金及び一時借入金の利子については、従来、毎年度の予算措置により全額国が肩代わり負担してきた」と、我々は――先ほど石原さんも認められた、また石原さんの交付税法の逐条解説にも書いていますね、今井さんと共著になって――総額を配るのに何で利子を払う金があるかということで、肩がわりもくそもあるか、払う者が払えばええやないかと言う。ところが向こうの方は肩がわりだと。だから五十八年度は実質的には地方の借金なんだから、しかも利子が七千億に達したのだから二分の一負担にしてもらったんだという解説をしているわけですね。本来は大体地方団体の払うべき利子だという、そういう見解を片一方ではやっておるわけです。だから、覚書をつくり、法制化してずっと五十七年まで来ていても、大蔵省の方はそういう理解をし、そしてそれを五十八年度にやり、それで五十九年度以降はこれを持たぬ、制度化してくれと。だから今の年度間調整の問題の場合も、加算、減額の場合も、ことしはそうやっているが、しかし来年また国の財政がさらに厳しくなるという状況になったら、それを制度化しよう、ルール化しようと。だから毎年、今はそうやっているけれども、局長はそう言っているけれどもという事態が起こり得るわけでしょう。  それで去年は、五十八年度一年度限りですと、山本自治大臣も当時、これはことし限りで来年は違うのだ、ことしは特別だと言って、異例だと言って一生懸命答弁した。異例どころか、今度はもうそれが固定させられた。だから、今おっしゃる分もそういうことになりかねぬと思うんですよ。大臣、だから国の財政が厳しかったら、いかに両大臣が約束をし、あるいは法律決めてみても、結局国の方がしようがないんだからということで押し切られていくという状態がますます続くのではないかと思う。だから、交付税制度ではいわゆる年度間調整という制度はなじまないし、それは今までとってこなかった。そういう立場をとらなかったけれども、結局はそういう方向にまで行く危険が多分にあるのではないかと思うのですが、この辺はいかがですか。
  204. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 確かに、利子負担の問題などについては、私どもは当初から、これは当然に国の責任で特金借り入れを行い、その地方財源の保障という国の責務を果たすためにこのような措置を講じたわけでありますから、その利子は当然に国が負担すべきだと、こういう考え方で従未来たわけであります。これに対して国庫当局の人たちの中には、しかしそれは地方財源を賄うための借り入れなんだから地方の負担でしかるべきだという主張をしておったことは事実であります。それは立場立場で物の考え方がそれぞれ出てくるのはしようがないと思いますが、しかし、ただ五十八年度、五十九年度のこの予算の決着内容が、率直に申しまして、私どもの当初の気持ちからすれば残念な結果になった部分が少なくない、これは否定できません。しかし、結局その背後には、理屈はともかくとして現実に国の財政がもう大変な危機的な状態に陥っている、そういう事実を背景にして予算折衝が行われ、我々の当初の要求が必ずしも実現できなかった、これまた事実であります。  ですから私どもも、制度を改正し仕組みを考えていく場合に、将来の国と地方の財政状況によって、特に国の財政の危機が深まれば深まるほどいろんな意味で心配なことが予想される、これはもう否定できないと思うんです。したがって私どもは、そうした状態のもとにおいても、最小限度とにかく地方公共団体の安定した財政運営を確保するためにどうしたらいいか、そのための手当てをどう講じたらいいかということでいつも制度改正を考え、そのための努力をしているところでございます。率直に申しまして、財政の話、予算の話というのは、結局国の財政状況と無関係決めるわけにいきません。向こうが苦しくなればどうしても不本意な決着を見ざるを得ないような事態が起こることは、これは否定できないと思いますけれども、しかしそういった事態になっても、最小限度、法令の規定によって地方公共団体が義務づけられた仕事をしていく上で支障のないような、それだけの財源は何としても確保しなきゃならない、そのための制度的な裏打ちをしておかなきゃいけないと、こういう基本の考え方で今回の制度改正も御提案を申し上げているところでございます。
  205. 神谷信之助

    神谷信之助君 盛んに地方団体の必要な財源は保障しなきゃならぬということをおっしゃっているんですけれども、これは一つは、先ほども言ったように、歳出を抑えたらいい、一つは歳入、入る方をふやしたらいい、そうしたら可能になってくるんです。  それで現実に見ますと、例えば四十年度の国の歳出総額、それを一〇〇として、そのときの地財計画の歳出総額を一〇〇としてずっと見てみますと、五十七年度で国の方は一二九九、地方の方は一一七一という指数になっているように、国の財政規模の伸びよりも地財計画の財政規模の伸びの方がぐっと抑え込まれてきていますね、特に最近は。だから歳出では、そうやって幾らでも歳出をまた抑制することができるわけです。老人医療費の無料化制度やっていても、それはもうやめいといってやめさせていけば、それはそれだけ減っていくんですから、そういうことが可能になってくる。歳入の方でも、これは五十七年の十二月二十五日の当委員会で私が神奈川県の具体例を出して、いわゆる法人関係税の水増しの問題やったわけですが、五十年度にもそういうことがあったという話もありました。だから、国に合わして、国の税収見積もりに合わしてせざるを得ぬから、実際の地方の実態とかけ離れた状態が起こり得るということも、当時局長も認めておられる。だから、国の方がそういうふうにやればそれに合わさざるを得ないという、そういうことで歳入がふえる水増し歳入計画というやつが出てくるんですね。  だから、ある意味で言うと、地方自治が推進されておる、あるいは前進しておると言うけれども、実際はこういう形で、一体どこに地方自治があるのかというほどぐっと絞られて、入れられているおり自身がだんだん狭くなってくる、そういう状況が起こる。しかも、今度は建設地方債で全部肩がわりしできますから、それがふえてくるのですから、いやなら借金せんかったらいいということになってきます。やりたかったら借金しなさいと、こうなってくる。しかし、その借金も自由にはできぬし、ちゃんと許可ですから、許可されなけりゃ借金自由にできない、こういうふうになっていますから、私は、この財政危機の中で、交付税制度もそうだけれども、地方自治そのものも重大な危機的状態に来ておるのじゃないかというふうに思うんですが、その点、大臣の認識はいかがですか。
  206. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) これまでもしばしば述べてきましたように、財政的に見たら、国も地方も大変な厳しい状態に置かれております。ただ、先ほど来神谷さんが言われておりますように、地方自治が逆行しているというふうには私は見ていないのでございます。財政状態は厳しい状態に置かれてはおりますけれども、私は地方自治の進展というのは、徐々であるけれども少しずつ伸びておるというふうに見ております。
  207. 神谷信之助

    神谷信之助君 その点が認識が違うんですね、我々と。限られた枠の中での地方自治であって、その限られた枠が今だんだん財政の面からも絞られてきているというように我々は見ているんですよ。だから、例えば、先ほどもありましたが、公債費率の一五%以上がどんどんふえてきていますね。五十五年度では二六・八%が五十六年度三六%になり、五十七年度が四四・九%というように、半分近く公債費率がずっとなってきている。そういう状況が起こってきております。これは、公債費がどんどんふえるということは財政の硬直化を意味しますから極めて重大問題だし、同僚議員の質問に対して財政局長も、一五%以上というのは危険ラインだというようにお話しになっておりましたけれども、そういう状態が起こってきているということについてどういうようにお考えですか。
  208. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 昭和五十年度以降、毎年度の財源不足に対して一部は地方債の活用、一部は交付税の特例、その交付税の特例措置も交付税特別会計の借り入れというものが主体でありまして、いずれにしても借入金を主体とした財政措置が続けられた結果として、今日地方財政も非常に大きな巨額の借入金を抱えるに至っております。その一番端的なあらわれが、今先生指摘のとおり、公債費負担比率の逐年の上昇であります。私どもは、地方財政の健全性を守るという見地からしますと、大変これは憂うべき状態に立ち至っていると思います。したがいまして、今後の地方財政対策を考える上におきましては、そういった地方財政の体質になっているということを踏まえていかなきゃいけない、具体的には、極力地方債の依存を引き下げていかなきゃいけない、こういう認識でおります。
  209. 神谷信之助

    神谷信之助君 しかし、午前中の同僚議員の質問に対して、例えば五十九年度のなにするのにまず建設地方債でどこまで持てるかと、それで大蔵省の方は適当に充当率を上げろと言うし、抑制するということでこっちの方はできるだけ充当率を下げようとする。それで、まず地方債でなにして、残りを埋めていくというそれが従来のやり方だと、こうおっしゃっておられたでしょう。だから、地方債抑制をするといってもやっぱり地方債に頼らざるを得ないという、こういう状況が起こるのですね。  これは地方債現在高の状況を財政白書からちょっと見たら、いわゆる地方債全体のうちで、普通ならば交付税としてもらう分が、言うならば減収補てん債とか財政対策債とか財源対策債、減収補てん債はいろいろ年度が違いますが、そういう形で残っている分ですね、それを見ると、都道府県の方が五十七年度で二九・七、三〇%近くなっているし、市町村で一〇・五%という、全体合わせましても約二〇%近い、そういう状況なんです。だから、それだけ分は、言うたらいや応なく強制された借金だから、本来なら交付税でもらって借金でないはずの分がそれだけになったということは、五十八年度、五十九年度、特に五十九年度は一兆二千億からばらまくわけですから、これは相当ひどい状態になってきていると思うのです。だから、抑制すると言っても、これは財源不足ができた場合にまず地方債で穴埋めをしてという手法自身に、技術的にはそれで済むかもしれぬ、やれるかもしれぬけれども、今の地方債のふえる状態その他を見れば、そのやり方自身に問題があるのじゃないかと思うのですけれども、この点どうですか。
  210. 石原信雄

    政府委員(石原信雄君) 午前中の御答弁でも申し上げたわけですけれども、現実問題として、今の国、地方を通ずる財政状況のもとで、仮に六十年度に財源不足が生じたとした場合に、その補てん措置について地方債を全然活用しないで、全部交付税の特例措置で対応するということはなかなか難しい。やはり従来やってきたと同じように、ある程度建設地方債の活用というものを前提にして特例措置を考えざるを得ないであろうということを申し上げたわけです。とにかく、そういう現実である。しかし、その場合におきましても、なるべく地方債を活用する部分、そのシェアを下げていきたい。その方式を一切やめて、もう起債は出さずに全部交付税の特例措置でいくということであれば非常にわかりはいいんですけれども、今の財政環境のもとではそういった形はとても難しいであろう。ある程度建設地方債を活用せざるを得ないであろう、このように思いますけれども、しかし気持ちとしては、その建設地方債を活用する部分というか、そっちのシェアというものを少しでも下げていきたい、こういうことを申し上げているところでございます。
  211. 神谷信之助

    神谷信之助君 地方の里狭小葉の方もなかなか決算との間の乖離が起こっていかぬとおっしゃるのだけれども、実際は結局自己負担、自分のところの自主財源自身が少ないという状況からもそう簡単にはいかぬというので、思うように期待に沿って単独事業をふやすということを自治体ができない状況というのも僕はあると思うんですよ。それは公債比率自身もこうやってどんどんふえできますからやむを得ぬじゃないかと思うのです。  以上、大体、私自身は、今年度の地財対策というのは、従来なら曲がりなりにも、財源不足に対して国が一定の責任を持たなきゃいかぬが、国の財政も無理なんだから二分の一ぐらいは持ちましょうとかいうことになってきたけれども、今度は何もない。三二%とそれから既往臨時だけ。あとは三百億もこれは先食いだし、残りは自分たち自身が借金をするんだと、だから、言うたら財源不足ができたときに国がそれに対して制度なり何なり改正をしてやっていく、国が責任を持ちますよという状態が少しでも残っていたものが完全に今度はなくなってしまう。そういう点で私は根本的な路線変更だというように思うんです。こういう点を一つ指摘をして、もう時間ですから、あとのやつは次の機会にします。
  212. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、次回の委員会を明十一日午後三時に開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十二分散会