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政府委員(石原信雄君) 私どもが、毎年度そうでございますけれども、地方財政対策の詰めに入る前の
段階で、大体八月末に概算要求を
提出しまして、それから十月、十一月と税制調査会の論議が進みまして、通常でありますと、十一月もう半ばを過ぎるころから大体何となく次の年度の地方財政収支がどうなるんだということが話題になり、マスコミからもお尋ねがあったりして、その時点での情報をもとに、ある
程度の展望のようなものを申し上げております。その時点では、私どもとしては、税収見積もりは予想される中でどうしても低目に見る、それから歳出要因は予想される中で高目に見る。その結果といたしまして、収支の不足額というのは大き日に出てくるのであります。これはいつの年もそうでございます。それがだんだん税制改正の
内容が固まり、翌年度の経済見通しが決まり、国税収入の枠が決まってまいりますと、地方税についても税収が決まり、また交付税の額が決まってくる。一方、歳出の方は、国の予算の歳出の査定の輪郭が固まってまいりますと、それに関連して歳出の枠も固まってくる、こういうようなことで、当初我々が見通しておったよりも財源不足額はだんだん小さくなってくる。これは意識的に抑えているのじゃなくて、幅を持って見ておりました不確定数字がだんだん固まってくるというふうに御
理解を賜りたいんであります。初めから小さ目に言ったのでは勝負になりませんので、どうしても私どもとしてはそういう気持ちが働きまして、大き目な数字をいつ直言っているわけでございます。
特に五十九年度について申しますと、確かに私
自身もある時期におきまして、五十九年度の地方財政収支について、五十八年度が二兆九千九百億円でありましたが、それの前後かなと言ったこともありますし、まだかなり押し詰まってから、二兆円前後かというふうなことを言ったこともございます。しかし、その当時、その時点での数字と最終の数字との間でどこが違ってきたのかといいますと、一番大きなのは実は地方税でございます。地方税の収入と地方交付税の収入見込みでございます。特に地方税について申しますと、御案内のように、五十八年度の場合には税収見積もりが最終的に前年対比でマイナス〇・一であったわけです。二百数十億円、前年度より減ったわけですが、これがどの
程度回復するのか、私ども正直わからなかったのです。しかし最終的に一兆二千九百億の増収になったわけです。これが非常に大きな食い違いでございます。初めの見積もりに対して変わってきた要素です。それから、地方交付税についても精算額の五百十億円の問題もありますけれども、それを別にしても交付税の場合、例えば五十八年度は八千五百億円の精算減を含めて二兆一千億円も前年対比で減ったわけですが、これが最終的には六千五百億円の減にとどまった。ですから、ここで一兆六千億ほどもこのように差が出てきたわけです。正直言いまして、三税の見積もりも私どもが初め考えたよりはかなりよくなってきた、こういう事情がございます。
それから、歳出につきましては、確かに一般
行政費、投資的経費を通じまして、私どもが予想したよりもかなり厳しい線で国の歳出が決まってまいりました。この点については、いろいろ地方は地方の
立場で必要な歳出増を確保すべきだという御議論もあると思いますが、今の政府の全体の立てる
方針といたしまして、増税しないで収支の均衡をとるために歳出を極力抑制するのだ、この
方針は国についても地方についても同一基調でいくと、こういう
方針が
確認されておりますために、私どもも歳出の積算に出たりましては、もちろん
大蔵省との間で随分途中の
過程では議論をいたしましたけれども、当初期待したところから見ればかなり抑制基調でおさめざるを得なかったと、こういうような経過をたどりまして一兆五千百億円という財源不足に落ちついたわけであります。
先生御
指摘のとおり、財対債だけの償還費をとっても一兆四千億あるじゃないかと、こういうことあるいは交付税特会の金利負担が三千六百億円がある、これは私どもも、特に金利負担につきましては昨年来の
経緯もありまして、最後までこれは何としても国が持つべきだという主張を私どもしたわけですけれども、最終的に残念ながら元本の処理との兼ね合いで地方の負担分に見合う利子は交付税特会が負担せざるを得なかったわけです。
そこで、もしそういうものなかりせば確かに収支は黒字になる、余りが出ちゃうじゃないか、ここは計算上はそうなると思います。ただし、そういうような状態になれば、私どもとすれば歳出を極力抑えているわけでありますから、地方
行政水準のレベルアップのために、当然、抑えたものを戻すという主張をすることになったであろうと思います。これは仮定の問題でございますけれども、いずれにしてもそういうことでございまして、収支の積算に当たりましては、当初いろいろ申し上げておった数字と最終の数字との間の違いというのは、主としては地方税収入及び国税三税の見積もりの変化に伴うものである、このように御
理解を賜りたいと思います。