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1984-05-08 第101回国会 参議院 地方行政委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年五月八日(火曜日)    午後一時開会     —————————————    委員の異動  四月二十六日     辞任         補欠選任      出口 廣光君     大城 眞順君      吉川 芳男君     浦田  勝君  四月二十七日     辞任         補欠選任      浦田  勝君     吉川 芳男君      大城 眞順君     出口 廣光君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長        大河原太一郎君     理 事         岩上 二郎君                 真鍋 賢二君                 志苫  裕君                 三治 重信君     委 員                 井上  孝君                 加藤 武徳君                 上條 勝久君                 古賀雷四郎君                 出口 廣光君                 松浦  功君                 吉川 芳男君                 小山 一平君                 佐藤 三吾君                 中野  明君                 原田  立君                 神谷信之助君    国務大臣        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員会        委員長)     田川 誠一君    政府委員        警察庁長官官房        長        太田 壽郎君        警察庁刑事局長  金澤 昭雄君        警察庁刑事局保        安部長      鈴木 良一君        警察庁交通局長  久本 禮一君        自治大臣官房長  矢野浩一郎君        自治大臣官房審        議官       田井 順之君        自治大臣官房審        議官       津田  正君        自治大臣官房審        議官       土田 栄作君        自治省行政局公        務員部長     中島 忠能君        自治省財政局長  石原 信雄君        消防庁長官    砂子田 隆君        消防庁次長    坂  弘二君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に  関する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) ただいまから地方行政委員会を開会いたします。  地方交付税法等の一部を改正する法律案及び地方公共団体関係手数料に係る規定合理化に関する法律案を一括して議題といたします。  両案の趣旨説明につきましては、前回の委員会において聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 志苫裕

    志苫裕君 自治大臣、またしても兵庫県警ですけれども、まあ警察官も数が多いですし、二十数万人もおれば、二十数万の市のことを考えると、奇妙なやつもおる生言えばそれまでの話ですけれども、なかなか警察官となるとそうもいきません、これは。このケース警察庁からも説明に来てくれたからその中のことは聞きませんが、どうなさいますね。毎回同じ答弁をここでされても困るんですが、まずは大臣の所見を伺っておきたい。
  4. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 三月に同様の事件が起きまして、引き続き短期間の間にこうした事件が起きましたことは断腸の思いでございます。  志苫さんおっしゃられたように、二十数万の警察官の中にいろいろな人がいるということは、ほかのところでは言えることができますけれども事犯罪を取り締まる者は、一人といえどもああした事件を起こしてはいけないと思っておるわけでございます。  私は、この相次ぐ事件で特に感じますことは、警察官士気の低下、士気に悪い影響を及ぼすのではないか。もう一つ警察威信警察威信が低下する。この二つを非常に心配をいたしているわけでございます。  過去の犯罪が、こうした事件が主として関西方面にあるということも一つ特徴ではないかと思いますが、いずれにしても、犯罪を取り締まるべき者がこうした銀行強盗などをやる、こういうことはちょっと従来にない事件でございまして、私は事件が起こりましてから公安委員会にも出る機会がございましたので、警察庁長官以下幹部に対しまして、今こそ根本的な警察官生活指導とかあるいは教育とか、あるいは背景とか人の問題その他、根本的にひとつ再検討すべきじゃないかということを厳しく申したのでございます。  また、警察庁長官に、私が警察庁長官ならすぐ関西へ飛んでいって、真相の究明やらあるいはまじめにやっている警察官に対する一つの何といいますか、士気の阻喪しないような処置を講ずべきではないか、こういうことを申しました。警察庁長官は直ちに大阪の方へ行ったはずでございますが、志苫さんおっしゃったようにたびたびこうして起こる不祥事件に対しては、私も申し上げる言葉がないわけでございます。  いろいろ原因はあると思いますが、私は、とにかく再発を防止することは当然でございますけれども、よってこういうふうに起こった原因というものをもっと幅広く、そして深く検討をしていくべきである、このように思っております。  日本の警察世界に誇る犯罪の取り締まり、検挙その他非常にいい成績を残している中にこうした事件が起こっておるということは本当に残念にたえないのでございまして、今回こそひとつ根本的に長期的に、こうした問題が再び起こらないように徹底的な警察の内部の見直しと申しますか、人の管理、人の教育生活指導、こういうようなことを検討すべきでないか、こういうことを申し上げているわけでございます。
  5. 志苫裕

    志苫裕君 きょうは長官お見えにならぬで官房長いらっしゃるようですが、皆さんの方ではこの問題今どんな手を打っておられるかということと、関西警察という話がありましたが、何だかあの辺はしょっちゅうこういうことをやっておるんですから、今度のが起きて改めてというんじゃなくて、今までも手は打っていると思うんですが、皆さんの方が今回どんな手を打っているのかとい うことと、どういう今まで検討なり対処を今日までやってきたのか。ここでもしばしば、今度のケースではなくて、前から触れているわけで、ちょっとお伺いしましょう。
  6. 太田壽郎

    政府委員太田壽郎君) 本年の三月一日と四月二十四日の二度にわたりまして兵庫県の警察官銀行強盗を行ったというようなことで、警察に対する信頼を大きく損なう結果になったことはまことに遺憾でございます。  兵庫県警察におきましては、昨年、遊技機賭博事案をめぐります不祥事案の発覚、それ以来各種の総合的な対策を講じてきたわけでございますが、特に個々面接とかあるいは家庭訪問というものを徹底いたしまして、規律の振粛に懸命の努力を重ねてきたところでございますが、しかしながらただいま申し上げましたような銀行強盗事件が相次いで発生したということで、これらの諸施策徹底がいまだしという状況を深く感じているところでございます。  警察庁といたしましては、警察官によるかかる事案背景あるいは内容にかんがみまして、単に兵庫県警だけが抱えている問題ではないという認識のもとに、三月二十二日に全国の警察に対して規律の振粛方を通達いたしました。  さらに、ただいま大臣から申し上げましたように、四月の二十八日には警察庁長官近畿管区内の本部長会議出席をいたしまして、この問題につきまして管区内の本部長といろいろ意見交換をし、必要な指示を行ったところでございます。  本件の銀行強盗事件につきましての現在までの調べた状況では、無理な生活設計が引き金となりましてサラ金から借財を重ね、その返済に窮して犯行に及んだという状況が明らかになっているところでございます。  今後一層、職責の自覚というものについての教養を徹底するほか、生活指導徹底福利厚生制度の改善、さらに職員生活相談制度の充実ということにつきまして、これは昨年以来もうずっとやってきておりますが、さらにきめ細かく徹底してまいりたいというふうに考えておるところでございます。  さらに、五月の七日に兵庫県警察に対しまして警察庁長官特命監察を実施したところでございますが、この結果を早急に取りまとめまして、各種施策がさらに個々人にまで十分徹底するように努力してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  7. 志苫裕

    志苫裕君 今、官房長お話がありましたように、いろんなことをやっているんだが、その諸施策徹底いまだしの感があるということでお述べになっておるんですが、何やっているかは別にして、そのやっておる諸施策というのが実は案外役に立たぬことをやっているのではないのか。実は、警察世界というんですか、警察社会というのは我々からはちょっとのぞくことができないですね。言葉は悪いんですが、閉鎖的な社会と言ったらいいでしょう。そこで何が常識としてまかり通っておるのか、どういう価値観が醸成をされているのかということはちょっと外の人ではわかりにくい。で、そこの中に住んでおる人たちだけで、かくあれかしといういろんな諸施策を講じていることが案外役に立たぬのかもしれない。もっと開放的にしていろんな人の意見を聞いてみるとか、そういう方法もあるんじゃないかなということを毎回感ずるんです。こういうことがありますと、皆さんお話は、生活指導徹底をして、いや規律を厳正にしてと言うんですが、一口に言うといかめしい社会あるいは集団というものしか我々の印象はないわけで、ロンドンのお巡りさんのような印象はちょっと受けないですね。そういう社会でありますだけに、ちょっと我々でも、何か言ってみようもありませんけれども、何かそういう息苦しい閉鎖社会という、さっき言いましたように、例えば兵庫の今回のことについて言えば、あちこちで借金して無理な暮らしがたたっておるというんですが、無理な暮らしをしておる人だったらうんといますよ、これは。あるいは苦しい生活をしている。問題は、善悪区別というふうなものがこれだけ年長でそういう仕事のある人につかなくなってくるのはなぜなのかということを考えると、およそ結局、それも最近価値観多様化していまして、あんまり人にぐずぐず言われるのは嫌いですね、最近の若い者は。そういう若い者がやっているのかと思うと、これはそうでもないんです。そうすると、そこにそれだけ長い暮らしをしていながら善悪区別というふうなものがちょっと鈍るというのは一体何なのかというふうなことなどになりますと、私どもはなかなかわかりにくい。たまたま朝日新聞に「なぜ兵庫県警なのか?」という記事ございましたね。私もこれ読んでおりまして、前にも言ったことがあるんですが、例えば警察社会には労働組合もありませんし、いわば横の秩序というものが少なくて、上下の秩序が恐らく警察社会の中心なんでしょう。そうすると、同僚の相互関係というふうなものとか、ちょっとおれこんなことで困っているんだわいというふうなものが気楽に出せないのかもしれないという意味での、その縦の秩序一点張りというふうなもので、士気を高揚させようにしてもこれは無理なのではないか。事が起きると、本人の処罰はもちろんだけれども、上司はメンツにかかわりますから、先ほど大臣言葉警察威信という言葉がありました。それは威信も大事ですけれども、その威信のためにますます垂直の秩序をきつくする。そうするとますます息苦しいという悪循環があるいは起きているのかもしれない。  それと、ここのところでは、もう一つはその閉鎖性と出世の問題にもなっておるんです。これくらいの年になって犯罪を起こすのは、あるいは四十ぐらいになりますと、次のやつがどんどんどんどん偉くなっていくんで、おれは落ちこぼれたのかなというところで沈んでいるのかもしらぬけれども、何かそういうところにそういう問題点がないのか。皆さんだけでこの問題を考えないで、もうちょっと開放的になって問題の所在を探してみる手法がないかという気もするんですが、これどうですか。
  8. 太田壽郎

    政府委員太田壽郎君) ただいまお話しのような明るい職場づくりの推進というような問題につきましては、これはもうこの種の事案対策の大きな柱の一つでございます。  そういうことで、既に昨年の一月でございますが、警察庁次長通達を出しました際にも、大きな項目といたしまして、職員相互意思疎通を図り、強いきずなで結ばれた人間関係を確立して、職務上または生活上の困難や悩みを持つ職員に対してはその心情を酌み取った指導を行うというようなことで基本的な考え方を示しているところでございます。  それから、この種の問題につきましては、各府県におきましてはそれぞれ公安委員会制度等もございまして、外部の先生方の御意見、有識者の御意見というようなものもいろいろな形で取り聞かせていただきまして、その対策に当たっているという状況があるわけでございます。
  9. 志苫裕

    志苫裕君 私も、だからこうやったらいいということでもないんですが、やっぱり我々のうかがい知ることのできない集団なのです。もちろん、ほかだってあるのですよ。ある県庁を私調べてみましたら、一年に七、八人くらいサラ金でへまをしてやめていますね、これ。そういうのもおるということですが、銀行強盗に二十四万人の集団から二人出るというのは相当な確率ですよ、これは。一億人から何人出ているということを勘定してみたら、これは相当なものですよ。そういう意味で、これはもっと深刻に考えると同時に、やはり皆さん方監督者価値観だけではない何か手法を考えないと繰り返すのではないかということだけは指摘を申し上げて、参考にできたら参考にしてもらいたい。  現に幹部訪問生活指導というのをおやりになるそうですが、受ける側のお巡りさんの方は、偉い人が来るというので身構えるのであって、こういう機会におやじさん来たから気楽に何でも甘えて相談しようかということにはなっていないんじゃないかという感じもするの。ですね。だから、 そういう点についてもよく注文をつけておきたい。  とにかく世の中は、自律であるとか多様化であるとか、集中よりも分散であるとか分権であるとかいうのを世の中の動きとしておるのですから、警察官といえども警察のしゃばから抜け出て地域へ戻ればそこの価値観で暮らそうとするわけですから、そのギャップが余りにも大きいのではないかという感じもしますので、意見として申し上げておきます。  次は地方財政対策に入りますが、いろいろといきさつがあって、ここでも一般調査などでやりとりをして伺っておったのですが、五十九年の地方財政対策は新しいルールをつくった、制度改革を行ったことに特徴なり意義があるのだと、こうおっしゃるように聞こえるのですが、大臣、一体どの部分が新しいルールなのか、どの部分制度改革なんでしょうか、これ。
  10. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 御承知のように、今の地方財政が相次ぐ借入金あるいは地方債、こうした額が巨額に上りまして、こういうことをこのまま放置していけば、これはやがて地方財政の根幹にかかわる、基盤にかかわる大きな問題になってくるというようなことで、従来の借入全体質というものをここで打ち切っていく、そうしてそれにかわって当分の間、法律によって足りないところを特例措置をしていこう、そして既往の借入金については国と地方との負担区分を明確にして今後やっていかなければならない、こういうようなところが一つ制度改正であると、このように考えているわけでございます。
  11. 志苫裕

    志苫裕君 いや、それは演説としてはわかるけれども演説としてはわからぬわけじゃないが、ちっともこれ制度でも何でもないじゃないですか。制度という意味でならば、現行の交付税体系では、長期的な視点に立って地方財政の総額を保障するあるいはそれの配分の機能を持たせるという法律があるわけですから、制度としては確立をしておるわけでしょう。この制度についてだれも保直接の異論は唱えてないですよ。これは大体いい制度だ、よくできている制度だと私も思っていますよ。その制度、そのルールはあるわけです。それが何で今度が新ルールなんですかということを聞いているんです。
  12. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 地方交付税法第六条の三の二項によりまして、非常に大きな穴があくというような状態になれば交付税率を引き上げるという、そういうことをやるか、あるいは制度改正するというような、どちらかを選ばなきゃならぬというようなことになっておりますが、今の国の財政からいって、交付税率をこの際上げるということがなかなか困難であるというような立場から、見解から、交付税率はとても上げられない、こうした考え方から先ほど申し上げたような措置をとらざるを得ないと、このようなことになったと、こういうことでございます。
  13. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと念のために申し上げておきますが、私は、きょうは原則論はするつもりないんです。ずっといろんな方がやってましたから、ちょっと具体的に聞いているわけです。  ルールだ、制度だという部分は、じゃ局長、どの部分ルールでどの部分制度ですか。それと交付税体系、基本的なルールがありますね。それとの相互関係はどうなんですか。
  14. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 今度制度改正を行おうとしているわけですが、どの部分制度改正なのかということでございますが、従来、地方交付税法本則規定によって当面の地方財政に対処し得ないということで、交付税法附則三条、四条、五条、ここに特例措置規定されておりまして、五十三年度の改正によりまして、当分の間交付税特別会計において借り入れを行い、その借入金償還額の二分の一を国が負担をすると、こういうルールが設けられておったわけであります。この方式によりまして五十八年度まで必要な財源確保措置を講じてまいったわけでありますが、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたように、こういうやり方を実質的には昭和五十年度以降すっと続けておった結果、交付税特会借り入れ残高が十一兆五千二百億円にもなってしまった。これ以上この方式を続けるということは国にとっても地方にとってもこれは大変な問題になるということで、この方式を今回改めまして、新たに交付税法附則第三条及び第四条に規定を設けた次第であります。  その第三条及び第四条の規定考え方は、第三条におきましては、当分の間、地方交付税安定確保のために必要がある場合には法律の定めるところによって特例措置を講ずるという原則を定めまして、そうして具体的なその内容については附則第四条におきまして、各年度、法律でもってその内容を定める、五十九年度の場合には千七百六十億円の加算措置を講ずる、こういうことを決めたわけであります。三条及び四条が一体となって新たな制度地方財源を、地方交付税を安定的に確保するための制度というふうに規定しているところでございます。
  15. 志苫裕

    志苫裕君 そうすると、足りないお金を従来は借りておった。今度は特例措置、額は毎年決めていくんだそうですが、特例措置ということで国から借りることになった。もらうことになったというんならこれは大分違うんですよ。国から借りることになったんです、そうでしょう。従来も借りておったわけです。その半分は国が持っていてくれた。今回も借りることになるわけです。それは全部返すわけだ。どこが違うのかというと、利子がつくとつかぬの違いがあるようですが、そうすると、借り先は違うが、借りるということにも変わりはないし、しかもことしの三百億という額で見ますと、従来借り入れというのは、ときには何兆円という単位もあったし、ときには何千億という単位もありましたが、ことしは地方財政よくなったかどうか別としまして三百億ですが、額はだんだん詰まっていくんじゃないかと思うんですが、そういう意味で、なるほど借金する先が変わったということしか何か違いがないような気がするんですが、そのほか何かどこか、私の勘違いでしょうか、どこか違いがありますか。
  16. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 今回の特例措置具体的内容は千七百六十億円の加算でございますが、そのうち三百億円については昭和六十六年度及び六十七年度において減額精算する。そういう意味で、将来精算されるという意味では、借りという今先生のお言葉でございますけれども、そういう表現が当たらないわけではありませんが、今回定めようとしております特例措置は、あくまで一般会計の範囲内でその安定確保のために必要がある場合には加算もすることがある。特例措置でありますから、言葉意味としては、それは減額もあり得る。いわゆるこれまでのように交付税特別会計借り入れをして特例措置を講ずる、これとは違うわけであります。一般会計との間でやりとりする。特例措置を講ずる。それはもちろん特例措置でありまして利息はありません。借りじゃなくてあくまで特例加算、あるいは状況によっては特例減額言葉意味としてはあり得るわけでありますが、とにかくそれはあくまで特例措置でございます。  従来は交付税会計が具体的には資金運用部から借り入れをして加算をするという方式であったわけですけれども、今度は交付税会計一般会計との間のやりとり、こういう形になるわけであります。したがいまして私どもは、それはあくまでも特例措置で、将来精算を前提とした特例措置、したがって借り入れという観念ではないわけでございます。
  17. 志苫裕

    志苫裕君 いや、それは専門家はそういうやりとりでもいいですが、もっと素人が見れば、地方財政の側からしますと、足りない分を今までは特別会計借り地方財政が受け入れたわけですよ。今度は足りない分を国の会計からもらったような顔をして受け入れたわけでしょう。しかし、地方財政の側は、いずれそれは減額精算措置にするか借金としてお返しするか、どっちにしろ地方財政から出ていくわけです。そうでしょう。実入りの点からいうとそれは同じことなんです。  しかも、若干いきさつに触れれば、こういう仕組みが始まった最初のころは、不足分が出た、そうすると約半分ぐらいは地方債増発で賄って半分ぐらいは借り入れと、そのほかに今度の特例措置と言われるものに似たようなもので臨時がありました。財対臨時だとか利差臨特とかそういうものであったんですが、今度の割り振り見てもわかりますように、ほとんど従来は特会借り入れ地方債増発、今度は地方債増発が主で、特会借り入れはないが一般会計から一時的に融通してもらう。しかも利差臨特とか財対臨時とか、いわゆるもらいっぱなしの特例措置の分だって保証があるわけじゃないんですね。  しかも利差臨特はもう来年以降やめる、こう言うのだし、財対臨時の方はそのときそのときの腕ずく力ずくみたいなもので、五百億になったり千億になったり伸び縮み自在というようなものだ、これは、ということですから、これが足りなくなったら特例措置を講じますよという空証文をもらったという意味では、それを法律に書いたという意味では一つ制度です。中身は毎年詰めていかなきゃならぬ問題になりますね。だけれども地方財政の側から見ると、かつては借りた分の半分は国が持つ、利子は国の方に責任があるんだから全部国が持つと言っていたのがいつの間にかこうなりましたけれども、今度は借りた分の全額は何年かたつとみんな返さなきゃいかぬ。しかも、いろんな形で財対臨持分、利差臨特分というようなものがだんだんだんだん限りなくゼロに近くなっていきますと、従来の臨特に当たる分というのはそっくり返すという金に振りかわってしまうでし一よう。  そういうことになると、損か得か考えてみようという仕儀になったら、メリット、デメリットちょっと言ってみてください。五十三年ルールと今度のルールでの損得勘定とでも言うんですか、地方財政の側から見たメリット、デメリットというようなものをちょっと挙げてみてください。
  18. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 地方財政のサイドだけから申しますと、従来の特別会計借り入れによって交付税を上積みするという方式、これは率直に言いまして、一般会計財源の枠の外で議論が行われますから財源がとりやすいと言うんでしょうか、そういう面は確かにあったと思います。否定できないと思います。また、それなるがゆえに五十三年度以降、率直に申しましてかなり大きな額を交付税として上積みしてまいりました。五十三年度、五十四年度と交付税の総額が大幅に伸ばし得たのは、まさにこの特別会計借り入れによる特例措置に負うところが大きかったと思うのであります。しかし、その結果として、実質的な財源というよりも運用部からの借り入れによってこのような措置が可能となった、その結果十一兆五千二百億円の借入残高になってしまった。結局、これはこれ以上続けるということになるとその償還費の負担が国にとっても地方にとっても大変なことになるということで、これを切りかえることにしたわけであります。  したがいまして、これからは、新しい方式一般会計財源の枠内での勝負になりますから、従来よりも地方財政にとっては、率直に申しまして厳しくなると思います。ですから、メリット、デメリットということになりますと、地方財政の立場から交付税の量的な面での評価としては厳しくなる、このように言わざるを得ないと思います。  しかし、また同時に、しからば従来のような方式でこれから行けるのだろうか、国、地方を通じて我が国の財政という見地からこれ行けるのだろうか、そうしてまた、そのことは地方財政の立場からも果たしてそれが正しい行き方なんだろうか、こういう議論も当然起こってきておったわけであります。  したがって私は、今回の措置は量的な面では確かに厳しくなるが、これからの財政を健全化していく、こういう見地からは評価されてしかるべきじゃないかと、こういう感じを持っております。
  19. 志苫裕

    志苫裕君 それで、地方財政の先行きの見通しにもよりますが、ここしばらくそう急激に好転をするということもちょっと言えないけれども、ことしは少し税収を余計みたり、あるいは国の税収も少し強気に見て交付税も余計来るとか法定分が余計になるとか、あるいは何か景気も上向いたとかそういうこともありますが、それだからと言って一遍によくなるというような楽観はできませんから、これからも不足額はやっぱりほどほどに出てくるという見通しを持つのが一番無難でしょう。  そこで、しばらくは不足額が続く。そうすると、なるほど借り入れはやめるわけですから、交付税会計借り入れ、そこらがストップする。しかし、地方債増発分はやっぱりふえてくるわけですよ。特例措置というのは大蔵と自治省との折衝で決まっていくわけですから、面倒を見ますよという法律は書いたけれども、その額が幾らになるかは毎年の勝負なんですから、大体その地方債増発分と特例措置分のバランスを決めているわけでもありませんし、従来みたいに何となく半々といったわけでもないんですから、ことしのでんでいけば、大体地方債増発分にウエートがかかっていく、八二ぐらいになるか九一ぐらいになるのかわかりませんが。  そうしますと、自治体の側からすれば、このワンクッションを置いた特別会計からいわば融通をしてもらうという分がなくなって、ストレートに地方債だけが、地方債という借金が遠慮なしにふえていくということになるでしょう。だから、借金がかさんでいくということでは、局長、同じことじゃないですか。それのどこに違いが出てくるのかな。
  20. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 確かに、五十九年度の地財対策におきましてもいわゆる財源対策債として一兆二千五十一億円を予定しております。そういう点では五十八年度と余り変わりばえがしないじゃないかという御指摘になろうかと思うのですが、ただ私どもは、折衝の過程では、せっかく交付税特別会計借り入れをやめる、借金体質からの脱却を図るということでありましたので、なるべく地方債への依存を引き下げたい、せっかく今度新しい方式をつくるわけですから、新しい方式による特例措置の方を多くしたいということで折衝に臨んだわけであります。しかし現実問題として、国の方は御案内のように財源難から建設事業については一〇〇%建設国債を充当して、なおかつ足りないために特例公債を発行しているわけでありますが、それとのバランスにおいて、国庫当局からすれば地方ももっと建設事業に対して建設地方債を活用してしかるべきではないか、こういう主張があったわけであります。  これに対して私どもは、せっかくこの新方式に移行するのであるから、地方債への依存が従来と同じであったのでは、先生御指摘のとおり、何をやったんだ、結局、交付税特会借り入れというものを個々の団体の地方債に振りかえただけじゃないか、こういう議論になってしまうじゃないか、こういうことで、私ども地財対策を構築するに当たりまして、地方債への依存を極力引き下げたい、こういうことで折衝したわけであります。で、最終的には、いわゆる財源対策債の充当率、依存度、五十八年度の場合には九〇%だったわけです。地方負担額に対して九〇%を財対債で賄うという措置であったものを五十九年度の場合には八五%に引き下げる、五%だけとにかく借金依存を引き下げるということで最終的に決着を見たわけであります。  私どもは、気持ちとしましては地方債への依存をこれからもできるだけ引き下げていきたい、五%ぐらいじゃ変わりばえがしないじゃないかという御批判もあろうかと思いますけれども、私どもとしては今年度の、五十九年度の財政環境の中で精いっぱい地方債への依存度を引き下げる努力をした結果今回の対策になったと、このように御理解いただきたいと思うのであります。
  21. 志苫裕

    志苫裕君 これは物にはいい面と悪い面があるわけですから一概には言えないんですが、ちょっと次に進めてみましてまた戻りますが、結局新しいルールというのか、新しい措置というのは、い ろんな節約の工夫をしたりやりくりをしたりして、不足額が出ますと後は三つのファクターで決まることになりますね。建設地方債の充当率を幾らにするか、これが一つの要素ですね。それによって現ナマの部分地方債部分に分かれますから、これが一つ。それから、従来約束事になっておる返さぬでもいいただもらいの臨特に相当する分、これが一体幾らになるのか。そうすると、自動的にその残りの分がことしの三百億に相当するいわば特例分というふうにおのずから決まっていくようです、  そこで、この機会にひとつ証言をしておいてもらおうと思うんだが、建設地方債の充当率を幾らにするかというのは、ことしは八五%でした。将来はどういう見通しを持っているのですか。
  22. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 六十年度以降の地方財政対策の際の議論になるわけでありますが、私どもといたしましてはこの充当率を極力引き下げてまいりたい。地方債への依存を下げてまいりたい。六十年度のこの率をどういうふうにするかということを今の段階で具体的に御答弁申し上げ得る状況にございませんけれども、私どもの気持ちといたしましては、これをできるだけ引き下げてまいりたいと、このように思っております。
  23. 志苫裕

    志苫裕君 まさかそういうこととは別に、充当率はもう最大限に上げられてそれでもまだ充当するものがないんで、赤字国債じゃないけれども地方債を発行するなどということはないんでしょうね。
  24. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 実は過去におきましても昭和五十一年度が一番シビアだったと思いますけれども、五十一年度の場合にはこの財対債の充当率を九五%にいたしたわけです。  実は、当時大蔵省は一〇〇%にしてほしいという要求があったんですけれども、私どもはいろいろ技術的な事情もありまして九五%にとどめた。それでも財源が足りなかったために特例債、実際には建設事業に充当したのですけれども地方財政法第五条の特例地方債として四千五百億円を発行いたしました、一回だけ。その後も予算折衝の段階では、こういう特例債を地方も出すべきだと、国も特例債出しているんだから地方も出すべきだという議論が何回かありましたけれども、私どもはその後は頑としてこれはお断りして、五十一年度一回発行しただけで、後は一切発行しないで今日まで至っております。ですから、財源不足の状況いかんによっていろいろな議論が出てくると思いますけれども、私どもの気持ちとしてはこれ以上上げたくない、できればなるべく引き下げていきたいと、こういう気持ちでおります。
  25. 志苫裕

    志苫裕君 その点は伺いました。  二番目は、いわゆる充当率を引き下げていくというと、不足額から見ますと特例措置分が大きくならないといかぬわけで、大きくなることを期待するわけですが、その特例措置分の中で、いわゆることしのあれでいきますと、財対分と利差分というのがこれはあるわけですが、利差は、ことしは地方債ずっと政府資金の充当率を五〇%まで持っていったから来年以降はないとこう書いてありますから、そうすると今までの分だけですね。今までの分の利差というのはこの計算どおり、いわゆる今までの扱いどおり、毎年これからそれが残っておる分は見ていけるという約束は取りつけられているわけですか。
  26. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 今回の特例措置を講ずるに当たりまして、いわゆる臨特は廃止したわけであります。臨特というのは今度はやりません。あくまで交付税の特例措置一般会計交付税会計との間のやりとりで交付税そのものの特例措置として今後対応していこうと、こういうことにしております。  そこで、六十年度以降の特例措置内容とも関連して臨特の扱いをどうするかということでございますが、臨特という制度はもうなくなってしまったわけです。しかし、その根っこになりました利差臨特とか地域特例臨特、これについてはそれぞれの年度において覚書があります。自治大臣、大蔵大臣の覚書がありまして、具体的にはそのときの地方債の政府資金と市場公募債の金利との差の分を各償還年度においてそれぞれ見ていくと、こういう内容の覚書が交わされております。地域特例臨特については、やはり補助率を引き下げた分を補てんするための地方債の元利償還金の二分の一をその各償還年度において臨特として繰り入れるという、こういう約束がなされております。したがって元の覚書は生きているわけです。  それで、今度はしかし臨特というものはなくなってしまったが、これからの特例措置の中でこの覚書の趣旨を生かしていくと、こういうことになるものと私ども考えております。したがいまして、六十年度以降も今年度と同じような特例措置が講じられる場合においては、その特例措置の中の中身としてこれまでの約束に基づく臨特相当額といいましょうか、これは精算対象から除外すると、こういう扱いになるものと考えております。
  27. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、臨特はなくなったが、特例措置の内訳として従来のいきさつを引きずったお金もあれば、新しい純然たる不足額に対する対応するものもあるわけで、だから従来の覚書に基づいて、もっとわかりやすく言えば、返さぬでもいい特例措置だ、精算減額の対象にならない特例措置と言ってもいいですか、そういうものが年々歳々動いていって、私はその次に言う例えば財対臨時というのは去年は一千百億あった、ことしは五百億になった。去年どことしの間に何も違っておらぬのに、経済の仕組みもそう変わっておらぬのに何で総合課税にかかわる分があっという間に五百億円に変わったんだろうか。恐らくこれは説明がつかぬのじゃないかと思うが、そういうふうに絶えずえたいの知れぬことで変わられても困るのです。  覚書生言いますけれども、そんなこと言えば、五十三年の覚書で交付税の借入金は二分の一だ、利子はただだと言っていたはずなんだけれども、五十八年にころっとやられたでしょう。だから、今あなたがおっしゃる特例措置の内訳としての従来の臨特に見合う分、従来の約束事に当たっている部分というのは大蔵省は確かに守っていくのか。これは大蔵大臣呼んで聞かなければなりませんが、その点は自治大臣、あなたは大蔵大臣との折衝のときにここのところは念を押してあるんですか。
  28. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 五十九年度の地財対策の折衝に当たりまして五十九年度の取り扱いを決める際に、今のように臨特として金額的に確定しているものとそれから毎年度の勝負で決める部分と、臨特に二色あるわけです。それで、これまでいわゆる利差臨特とか地域特例臨特は金額決まっているわけです。毎年度の金額、計算してあるわけです。それについては当然今年度と同様の措置が講じられる場合には同様の扱いにすると、こういう議論をしております。ただ、六十年度以降の特例措置内容が決まらないものですから、そういう決まらないものを前提にして扱いを決めるというところまでは議論は詰めておりません。  それから、いわゆる財対臨特は、これははっきり申しまして毎年度の折衝の勝負になっております。だから将来の各年度の金額というのはないのであります。ただ、あるのは、源泉分離課税を選択した利子所得について住民税が課税されないというこの事実に着目して特例措置を講ずるのだと、こういうことだけは確認してあるわけです。ですから、私どもの気持ちとしては、六十年度以降も源泉分離課税に対する住民税の扱いが変わらない以上はこの議論は常に出てくる、我々は主張しなければならないと、こう思っておりますけれども、そちらは金額的には全く将来の金額は決まっておりません。  しかし、利差臨特と地域特例臨特については将来の金額は決まっております。決まっておりますが、その扱いをどうするかはその年度のいわゆる今回ルール化する特例措置内容によって確定していく、こういうことになると思います。
  29. 志苫裕

    志苫裕君 何かだんだん寂しくなってくるんです、話は。じゃ、まああなたの言うことをひとつ信用して、利差臨特に相当する部分は覚書もあるこ とでもあるし、これはまあ大体こうですわ。これがなくなるまで継続されると一応して、こっちにおきましょう。  そうしますと、残ったのはことしの区分けで言うと財対臨時分と純然たる特例措置分の三百。五百プラス三百の八百億相当分ですね。八百に相当する部分というのはこれから問題になるわけです。その五百相当額というふうなものは、これからも源泉分離を選択した場合の住民税、選択しなきゃ住民税が入るはずだからよこせという主張は続けていくことはわかりました。続けていくことはわかりましたが、何さまそれは何百億であるのかというふうなことは、千百億のときもあったし五百億のときもあったしというので、これは何か伸縮自在の頼みたいでしょう。でも、源泉分離課税を選択した場合、住民税がどれだけ入るかというようなのはこれ正確にはわからないのかしらぬけれども、過去に千百億と言ったんだから千百億の何か根拠があったんです。そのうちの百億ぐらいは別のものだといえば千億ぐらいの根拠はあったんですよ。それがことしになって半分に減るというのはどんなこと考えたって説明がつかないという感じが私はするんですが、ともあれ五百と三百、八百億のお金のうち五百と三百という線引き、これは何で決まったんですか。
  30. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 議論の順序から申しますと、八百が先に決まってそれを五百と三百に分けたんではありませんで、従来のいわゆる財対臨時を幾らにするかの議論を初めにやったわけです。この点につきましては、前年度の場合は千百億円、いわゆる財対臨特当額は借入金ではありましたけれども、千百億円ということで合意しておったわけです。もともと分離課税を選択した利子所得に対して住民税を課税したならばどれだけの額になるかということは、これはもう厳密な計算としては不可能なのであります。利子所得の人の元の所得、総合所得はどうなっているのかがわかりませんし、その所得段階によって税率が変わってくるわけでありますから、これはあくまで推計しかしようがないのであります。  ただ私どもは、かつて千百億円という財対臨特を決めたときには、住民税相当額がその見当ではないかという理解のもとにこの金額で決めたと理解しております。ただ、もちろん大蔵省の方はそれがその分だとはっきり言っておりません。あくまでこれはまさに文字どおり財対臨特であって、そういう事情を背景にして五十八年度の地方財政対策として、その額を自治、大蔵両大臣が決めたんだと、こういうことになっております。まさに正式にはそういうことなんであります。しかしその背景に、分離課税を選択した利子所得について住民税が課税されていないという事実があることだけは両省確認しているわけです。  そこで、金額を五十九年度にどうするかということでありますが、私どもは当然、前年そういう実績がありますから、それをベースにしてこの金額を決めるように議論いたしました。一方、国庫当局の方は、五十九年度の国の財政状況が大変厳しい状況になっているということから、財対臨特まではもうとても対応できないという主張を当初しておりましたけれども、しかし事柄が事柄でありますので、やはり何らかの金額は出さざるを得ないということで最終的に五百億という金額に歩み寄ったわけです。  ですから、この五百億について、じゃどういう根拠だと、積算基礎いかんと、こういうお尋ねになりましても、説得力のある根拠というのはないのでございまして、五十九年度の財政状況のもとで、これまで申し上げましたような税制上の問題があるということを背景に五百億ということで両大臣決着を見たということでございます。  したがいまして、初めに千七百六十億円という特例加算額が決まりまして、それから過去にこれまでの経緯で金額的に確定しております利差臨特と地域特例臨特を差し引いた残りが八百億になるわけですが、そのときに、いわゆる財対臨時については今申しましたような議論の結果五百億円にすると、こういうことに決まったわけでございます。そうしますと、最後に残ったものが三百億円と、この三百億円については新しい方式に沿って六十六年度以降減額精算する、このような決着に立ち至った、そういうふうな結論に落ちついたわけでございます。
  31. 志苫裕

    志苫裕君 大臣、今局長の答弁お聞きになっていたと思うんですが、私は積極的な意味で、果たしてこの新ルール地方財政対策としてのメリットがあるのかどうなのかは若干疑問なんですよ。これは消極的な意味でならわからぬわけじゃない。国家財政地方財政が相撲をとるとか大蔵省と自治省が相撲をとる、幾ら覚書を結んでもちくちくちくちく寄られていますから、二分の一といったって将来またこれはどうなるかわからない。利子半分持つとうまいこと言っていたけれども、全額持つと言っていたけれども、こんなものは最初から二分の一とか利子持てと言うのなら別ですよ。ただだと言って金貸しておいて後から利子よこせというような話なんですからわ。でも、そういう大蔵省の無法が通ってきたわけでしょう。この調子だとだんだん押されるかもしらぬから、まあ現状維持で、国境不可侵で、この辺でもう法律で決めてこれ以上押しまくられぬようにしようという意味でなら、これは若干意味がわからぬわけでもないが、余りこれは積極的でないんだ。  ですから、今聞きますと実は特例措置を講ずるといっても、さっき言いましたように、地方債増発分の充当率をどうするのか、あるいは約束事になっておる従来の臨特相当分の特例措置額をどうするのかということによって随分動いてくるし、特に私がその八百の中の五百、三百の線引きを聞きましたのは、この八百という数字は六百、二百でもよかったわけ、五百、三百でもよかったわけ、逆の四百、四百でもよかったわけですね。違いが出てくるのは、その残った分は将来精算減額の対象になると、これが違うわけなんですよ。ですから、八百とゼロならよかったわけだ、八百とゼロなら。今度これ逆に、どうして分離するんだ、なぜ特例措置分は一体精算減額の対象になるのか。もともと考えてみると、交付税法の六条の三の二項に根拠を置いて特例措置が講じられて、それに基づく特例措置分なのだから返さぬでもいいじゃないか。現に五十八年補正のときには一足お先に先取りをして、皆さん特例措置という言葉を使って、来年の言葉がと言ったらああそうですと言うのだから、来年の言葉を去年の補正でお使いになって、三百二十何億でしたか、これは何も将来精算減額の対象にならないでしょう。何でことしの三百億円相当分、来年は幾らになるかわかりませんが、力関係ならことしの八百億が六、二とか七、一ぐらいになっているかもしらぬけれども、あべこべにね。これはどうして償還というのでしょうか精算減額の対象になるのでしょう。これ理屈に合わぬじゃないかな。
  32. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 新しい方式考え方というのは、交付税率三二%は変えない、そうして各年度その三二%で足りない場合、余る場合といろんな事態が想定されるわけですけれども、その現実の所要額と三二%から計算される法定額とのギャップというものを特例措置によって増減していこう、こういうのが新しい方式でありまして、特例加算してもこれは三二を変えないわけですから、特例増額したものは将来必ず減額する、精算する。また逆に、状況によって特例減額という事態があってもそれは必ず後で増額する。いずれにしても三二%は変えない、こういう考え方なんでございます。  もちろん、五十年度以降、正確にルール化したのは五十三年度以降ですが、五十三年度以降の特例措置は外から借りてきて上積みして、そのかわりその半分は国が持とう、こういうルールだったわけですけれども、今度の分はもう借り入れはやめて一般会計との間のやりとりをする。しかし、それは三二の元を変えないわけですから、やりとりは後で必ず精算する。しかし、五十九年度について言いますと、千四百六十億円については、過去の経緯などにかんがみそれは精算対象から除外する、こういうおさまりにしたわけでございます。  ですから、なぜ返すんだと言われますが、これは三二を変えないわけですから、変えないという考え方に立ちますと、特例措置を講じたものはプラスの場合は後でマイナス、マイナスの場合は後でプラス、要するにもとに戻す、こういう考え方でございます。
  33. 志苫裕

    志苫裕君 いや、あなたは三二、三二と言うが、自治体に渡っている分は別に三二行っているわけじゃないんで、あの利子だこの利子だと引かれて、自治体の方に行っているのは三二も行っていない。私は、そういう意味では、交付税法に総額を配分しなきゃならぬと書いてあるのに、どこだか知らぬ利子引かれちゃって総額が行ってないのは法律違反じゃないかなと思うくらいです、どうも今の説明は。それなら去年の五十八年補正の三百二十何億でしたか、あれはどういういきさつで返さぬでいいのか。あれは三二以下だったのか。あれはどうですか。
  34. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 五十八年度の補正のときの扱いでございますが、所得税の減税とそれから減収と両方の事情から年度途中におきまして交付税の減額を生じたわけです。八百三十二億の減額でございます。そのうち約五百十億円は五十七年度分の精算増額を使って、残り三百二十二億について特例措置を講じたわけです。これはもちろん議論としてはこの三百二十二億の特例措置については後で返せという議論もあり得たでしょうけれども、このときは折衝の結果、五十九年度から新しい方式に移行しようということをこの補正のときに同時に議論しておりましたので、五十九年度から新ルールに基づいて措置を講ずる、五十八年度についてはいわばそれまでの過去の、過去のというかそれに移行する前の措置でありますから、三百二十二億は全額国が持とう、こういうことにしたわけでございます。  もちろん地方財政の立場からすれば、特例措置分は全部地方がもらいっ放しの方が望ましいと思います。私どももそういう気持ちがないわけではございませんけれども、今日の財政状況のもとでは、遺憾ながらそうはいかなかった。特例措置についてはあくまで後で精算する、こういう結論にならざるを得なかった次第でございます。
  35. 志苫裕

    志苫裕君 少し細々やりとりをしておりましたのは、安定的に確保したいという趣旨でいろいろ聞いてきたんですが、どうも局長お話を聞いていると、やっぱりそのときそのときで値段が決まっていくというのは、こういうのをルールと言うのかな、やっぱり単年度折衝みたいな性格の非常に強いルールだ。毎年変わるものは、普通はルール生言わないんですね。ルールというのは大体先のわかるものをルールと言うんで、毎年やってみぬとわからないというやつは、これは余りルール生言わないと思うんです。  どうもそういう点で私は不満なんですが、しかしともかくそういう方式でこれからの地方財政対策を講じていくんですが、改めて聞きますが、五十九年以降原則として特会借り入れをやめて、当分の間特例措置を講ずる。この「原則」と「当分の間」を説明してもらえますか。
  36. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) まず「原則として」というのは、先ほど来御答弁申し上げておりますような経緯から借り入れはしない、特会の借り入れ方式による交付税の増額措置は行わないということを今回決定したわけであります。したがって、これからは多少の状況変化がありましても借り入れはしないでこの新しい方式特例措置を講ずる、それが原則という意味でございます。したがって、少々の状況の変化ですぐこの方式原則を崩すということでない、よほどの状況でない限りはこの方式でこれから行くんだと、こういう意味でございます。  それから「当分の間」でございますが、これはあくまでやはり暫定措置といいましょうか、文字どおり特例措置でありまして、それなるがゆえに交付税法の本則ではなくて附則規定した次第でございます。望ましい姿とするならば、交付税法本則で将来とも自動的に地方交付税総額が決まるようなそういう方式制度化が望ましいのでしょうけれども、今の財政環境のもとでは到底それができないということから、今回交付税法附則で、文字どおり当面の措置としてこういった方式規定しようとしたところでございます。
  37. 志苫裕

    志苫裕君 予期せぬ事態というものがあるので原則があれば非原則もあるわけで、非原則というのは予期せぬ事態というふうに考えていいでしょう。予期せぬ事態がついこの間あったのです、五十七年。あれはあなた、法案をここでやりとりしておるときから予期せぬ事態になっておったのにあなたたちは一生懸命頑張って、法案を通したら翌日からおかしくなっちゃった。そういう事態もあったわけで、そういう予期せぬ事態がないとも言えないわけですが、そういうときには例えば地方債の充当率が引き上がる、それも満席を越せば赤字地方債の発行もあり得る、あるいは借り入れ制限の復活ということもあり得る、あるいは六条の三の二項に基づく新たな制度改正や率の引き上げ等々、考えられることはいろいろあるんですが、今のところ予期せぬ事態をそういうことで想定はしていないんですね。
  38. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 今後、五十九年度もそうですけれども、六十年度以降の地方財政をめぐる環境がどのように展開していくか、もちろんたくさん不確定要素がありますので、この段階で確定的な決定的な御答弁は申し上げかねるわけですが、ただ、今の我が国の経済の展望、先般政府が決めました八〇年代の我が国の経済社会の展望と指針が描いておりますような我が国の経済の姿というものを前提にして考えますと、この原則を覆すような事態にはならないのじゃないかという見通しを持っております。その見通しを具体的な数字として一応計算してみたものが「地方財政参考試算」でございます。もちろんこの参考試算の読み方についてはいろいろ前提を置いて見なきゃいけない。その数字をそのまま使うと非常に問題も生じかねないわけでありますけれども、ただ、一つの見通し、一つの計算結果としてこれを見ますというと、少なくともこの原則を崩さなきゃならないような事態にはならないのじゃないかと、このように考えております。
  39. 志苫裕

    志苫裕君 参考試算もいただきましたが、参考にならないですね。というのは、前提が一つ狂うとみんな狂っちゃうということになっていますから、私は余り——これも見ようによっては厳しいんだなという見方もできますし、割合に順調に推移するんだなという見方、二様の見方ができるようになっていますから今のところこれ参考にしませんが、いずれにしましても、そうしますと、それこそ当分の間地方財政はそう大幅な不足を生ずる、とんでもない予期せぬ事態になるという前提には立っていない、将来は特例措置ども必要がなくなるという地方財政展望に立っておるものと。だから根性をよくして、今特例措置を講じた分は六十六年ぐらいになったら返します、精算減額しますということを言ったのだろうと思うんですが、そんな見通しは率直に言って私は立てられないと思うんですよ。そのときにどんな状況になっているかわかりませんよ。自治省にも相当腹の太いやつがおって、そのときはそのときだ、そのときは踏み倒すというくらいの腹でも持っていなさるのかな。
  40. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 私ども参考試算でお示ししましたのは、昭和六十二年度まででございます。今回の特例措置減額精算が行われるのは六十六年度、六十七年度でございます。六十六年度、六十七年度の地方財政がどういう状況になっているのか、これはもちろん今の段階で的確な見通しを申し上げられないわけでございますが、いずれにしてもそのときに減額精算をして、その結果として地方財政がたえられないような状況になれば、当然それに対して必要な措置を講じなきゃならない。その償還がたえられるようであれば、これは法律で決めるわけですから予定どおり減額精算していく。いずれにしてもそのときの財政状況に応じて、地方財政の運営に支障がないような必要な措置は講じなきゃならない、このように考えております。
  41. 志苫裕

    志苫裕君 地方財政専門家皆さんがそろっておって、先行きはもうかれこれ十年近く先のことですからそのときのこともわからないわけで、それをしかも財政の建前からいけば単年度主義、そういうものをとっておるわけで、その前後の調整はあるにしましても、十年間にもわたるその精算措置というふうなものまで持ち込んでくるということになりますと、地方財政の扱いが大分認識の上で変わっているんじゃないかなという感じが私はするのだけれども、これはどういういきさつがあって十年たったら返すよという話になったんですか。
  42. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 今回の特例措置減額精算を六十六年度以降にいたしましたのは、政府として六十五年度までに何とか財政の立て直しをしたいと、こういう気持ちでいろんな検討を行っておるわけでありまして、したがってその再建完了までの期間の間を置いて、その完了後に精算する、こういう気持ちで六十六年度以降にしたところでございます。
  43. 志苫裕

    志苫裕君 先のことはわからぬですから、毎年相談しているんですからとても先のことはわからぬので、図太く、何なら踏み倒すぞと言うくらいのことでもいいんじゃないかと思うんですが、それはともかくとしまして、特例措置というのは将来特例減額になるわけですね。三百億なり五百億、これから幾ら借りていくかわかりませんけれども特例減額になっていく場合は、これは交付税率の引き下げに連動していきませんか。
  44. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 私どもの気持ちといたしましては、地方交付税率は何としても守っていきたい。で、今後の地方財政を展望した場合に、当面は地方財源がしばらく不足の状態が続きますと思っております。しかし、さらに将来になった場合に、その単年度の収支計算として、あるいは税収が非常に伸びるというふうな事態になれば、収支上は特例減額が可能なような環境になるかもしれない。そのときは、交付税特別会計が返さなきゃならない残高が五兆七千億あるわけでありますので、そういうことも念頭に置いて、特例減額ということが法文上はあり得るわけであります。しかし私どもは、その場合の特例減額というのはあくまで交付税率三二を守るという前提で特例減額をする、特例減額をしたものは将来必ず増額精算すると、こういう前提で特例減額ということが理論的にはあり得ると考えております。  したがって、今回の特例措置の発動として、具体的に特例減額というような事態が将来仮に起こったといたしましても、それは交付税率を引き下げないために、交付税率を守るために、単年度としてはそういう調整措置を講ずるというふうに理解しております。  これが交付税率の引き下げの突破口になるということを絶対避ける意味でこのような措置をとらなきゃならない事態もあり得ると、このように考えております。
  45. 志苫裕

    志苫裕君 この点、自治大臣、率直に言って自治省の気持ちのほどは、いろんなところで発言なさったり、また物に書いたり談話を出したりということでよく承知をしています。しかし、この地方財政の展望について大蔵省と自治省との間に感覚の違いのあることも、これまた否めません。それぞれまだ自分の職分に一生懸命ですから、大蔵は大蔵の言い分をとるんでしょう。それにこっちは振り回されても困るわけで、この点はひとつ自治大臣の所見を伺いたい。いずれ大蔵大臣も呼びますので抑えておきたいところですが、大臣の所見を伺っておきます。
  46. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 国の財政も非常に厳しゅうございますので、大蔵大臣は国の財政の立場からいろいろと自治大臣との折衝について主張をされましたが、私ども地方の立場で、今の地方財政の厳しい立場の上に立って主張してまいりました。これからも地方財政の運営に支障を起こさないように、十分大蔵当局に対して主張をしてまいる決意でございます。
  47. 志苫裕

    志苫裕君 これは自治大臣、大蔵大臣の折衝の過程では、双方それぞれ言い分の違ったまま推移してきているんですか。それともちっとは何か息の通ったような約束事でもあるんですか。
  48. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 五十九年度の地方財政対策内容につきましては、当然自治大臣、大蔵大臣の折衝の結果、合意を見ております。見た結果として御審議をいただいたような内容になったわけであります。  ただ、六十年度以降の地方財政の展望については、国の方は国の中期財政収支試算を発表しておりますし、私ども地方財政参考試算というものを当委員会に御提出申し上げているわけでありますが、それぞれの数字の読み方、理解の仕方については、立場上若干ニュアンスの違いがあることは否めないと思います。ですから、そういったものの読み方、理解の仕方についてまで合意を見ているわけではございません。
  49. 志苫裕

    志苫裕君 この点はわかりました。  なお、今度は特会の借入金残高の処理のことについて少し伺いますが、    〔委員長退席、理事真鍋賢二君着席〕 私は、例えば二分の一利子負担分なんというのも、去年が特例だと言いながら結局はそれをまるまるのみ込んでしまってきたりしまして、非常に不満があることを表明しておきますが、ともあれ償還方法を変更をして、六十六年以峰でしたか、償還方法も変更したわけですが、これはちょっと今償還額の年次別推移わかりましたら数字を言っていただけますか。五十九年が今の会計のままだと約二千五百八十億、これを半分ずつ持つんでしたかね。このちょっと推移、大きな点だけとってもらってもいいですし、五十九年、六十年、六十三年、六十五年ということでちょっと数字わかりますか。
  50. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 交付税特別会計借入金の償還でございますが、今回御提案申し上げております改正をしないという仮定に立ちますと、現行どおりでいきますと、五十九年度が二千五百八十億円、それから六十年度が五千四百八十億円、六十一年度が六千五百九十億円、六十二年度が七千三百五十億円、六十三年度が九千三百六十億円、六十四年度が一兆一千六百九十億円、六十五年度が一兆二千七百六十億円と、六十五年度にピークになります。それ以降はだんだん減ってまいります。
  51. 志苫裕

    志苫裕君 だから、この返済額もばかにならぬのですが、それを先へ送るという点では楽にはなるんですが、そこから先は苦しくなるという意味で、苦しさの先送りという感じでしょうかね、どういうことになります、これ。
  52. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 今回の御提案申し上げております改正案によりますと、今の償還額は六十五年度までいわば棚上げしまして、六十六年度から七十五年度までの間に返済していくということになります。  先送りした理由というのは、先ほどもちょっと申し上げましたように、六十五年度までに何とか国の財政を立て直したいと、その後でこれを償還していく、こういう考え方でございます。したがいまして、六十六年度以降この償還が入ってまいりますから、その時点で確かに苦しくなるということは否めないと思います。
  53. 志苫裕

    志苫裕君 それから、これは前から言われていることですが、やっぱりことしの国の一。般会計ちょっと見まして、国債費、それから一般歳出、地方財政と、こう三つ並べて置きますと、地方財政の分が二割一分も伸びちゃって、何か随分余計使っているなという印象を与える。そこへあっちの団体月給が高いの安いのというようなことになると、随分風当たりも強くなるという環境に置かれていることは確かなんですが、そこで直入方式を前々から言っているんですが、これはどうなんでしょう。直入方式の可能性とか障害とか、また、直入方式になった場合のデメリットとか、ちょっとそんなもの話してくれますか。
  54. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 地方交付税地方公共団体の共有の財源である、固有の財源である、こういう性格をより明確にするためには国税収納金整理資金から交付税特会に直接繰り入れる、これ が望ましいと思います。私どもは毎年度その実現方を要求し続けているわけでありますが、残念ながらいまだに実現しておりません。  これは大変歴史が古くて、昭和十五年の地方配付税制度創設以来の懸案なんでありますけれども、残念ながら実現を見ていない。なぜ実現を見ていないのかというと、結局、地方交付税という国の歳出の中でも非常に大きなウエートを占めるものが一般会計の歳出から丸々落ちてしまうということになると国の財政の全貌がわからなくなる、予算審議の場で国の財政の全貌がわからなくなると、こういうような意見もあるようでございます。  私どもは、そういった議論があっても、交付税の性格をより明確にする、これは本来地方財源なわけですから、初めから地方に入れてしまった方がすっきりするじゃないかと、こういう気持ちをずっと持ち続けているわけでございます。  そこで、具体的なメリット、デメリットですけれども、私は、メリットから言えば、今申しましたように、地方の固有財源としての交付税の性格をすっきりさせるという意味で非常に大きなメリットがあると思います。それから最近、国の予算編成の際のシーリングのときにいつも国債償還費と地方交付税と一般歳出と三つ並べまして、国債費それから地方交付税が非常に大きく伸びて一般歳出が同額あるいは若干マイナスというような姿が示されますと、何か交付税ばかりが国の財政難の原因であるかのような錯覚を起こさせるという意味で、それがなくなるという意味でメリットがより大きくなると思います。  それから、デメリットですけれども、これは運用の仕方にもよると思いますが、特会直入にして完全に地方財源ということになれば、今の譲与税などと基本的には同じ形になりますから、入ってきた分をそのまま交付税として配分するということになりますので、四月—六月、九月—十一月とそれぞれ四分の一ずつ普通交付税を現在交付しておりますが、これはできなくなると思います。年度後半にずれ込むと、そういう意味地方の資金繰りの面ではちょっとつらくなるんじゃないかと、このように思っております。    〔理事真鍋賢二君退席、委員長着席〕
  55. 志苫裕

    志苫裕君 これは確かにことし交付税特会出口のベースで見れば三・九%も減っているのに、一般会計の繰り入れ、入り口の方から見るというと二一・幾らですか、五ですかも伸びて、それはそれぞれ専門家が見れば理由があることなんだけれども、やっぱり人様が見ると余計使っているなというような感じがしないわけじゃないんで、若干のデメリットがあっても、何のことはない、地方財源を国から取ってもらっておるというだけなんですから、という感じがしますが、これも大蔵大臣にもたださぬといかぬことですが、大蔵省が言っているように、別枠にしておくと国の財政の全貌がわからないといったって、じゃ国の財政をいろいろ切るとき地方財政の総枠あるいは中身について議論するかといったら議論もしないわけでありまして、ふわっと横によけているだけなんですから、余り意味のないことを言っているのですが、自治大臣のひとつ所見をこの点伺っておきます。
  56. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 私も、この特会の直入は本来なら実施をした方がいいという考えで今日まで来ております。私どもの方の党もこういうことを主張してまいりましたので、今局長から言われましたような関係でなかなか実現の段階に至っておりませんけれども、我々理想としてはこの方がいいというふうに思っております。
  57. 志苫裕

    志苫裕君 次に、ちょっと基準財政需要の算定の方に行きますが、いわゆる財対債——建設地方債増発分あるいは減収補てん債、言うならば財源を全部起債に振り向けた分ですが、これは今総額幾らになっておって、その償還費の算入額は幾らになっておるか、ちょっと計算していますか。
  58. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) いわゆる財源対策債の残高でございますが、五十九年度末で七兆四千億円程度になると見込んでおります。それから、償還額でございますが、五十九年度の金額は一兆四千百六十二億円と、このように見ております。
  59. 志苫裕

    志苫裕君 減収補てん債の方わかりますか。なければ後でいいです。これの算入割合はわかりますか。
  60. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 財源対策債は、基本的には基準財政需要額の投資的経費を起債に振りかえておりますので、基本的な考え方としては、トータルとしては一〇〇%需要算入という考えてありますが、計算の技術上の都合がありまして、流域下水道、産炭三就労、それから義務教育施設、一般廃棄物、これは事業債については一〇〇%算入であります。それからそれ以外の公共事業関係の財対債については八〇%算入いたしております。
  61. 志苫裕

    志苫裕君 これは基本的な議論にもなってきたところなんですが、結局財源の不足が出る、交付税の特例措置等であるいは制度で見ないものですから、その分を建設地方債増発で賄う。で、その償還費は交付税で算入する。ですから、言うなら地方の自治体の首長あたりも議会も、何どんどん借金したって交付税で面倒見てくれるんだというふうに、案外気楽に考えている向きもないわけではない。しかし、よくよく気がついてみるというと、償還費をそうやってどんどん交付税に算入していけば、それのウエートがどんどん高まっていくわけであって、交付税がだんだん硬直化をしてくる、結局余裕がない、こういう羽目に陥る。これは減収補てん債も似たようなものだし、それからこれからも、さっき言ったように特例措置の方が少なくて地方債増発に依拠する分が多くなっていきますと、この方はどんどん進んでいくという問題点はもう既に指摘をされているんですが、これに関連をして、これは自治省財政局交付税課長遠藤安彦さんの「自治研修」に載った論文「三〇周年を迎えた地方交付税制度」という論文によりますと、この交付税の弾力化を図るために基準税率、留保財源、これを見直していかなければならぬだろうという所説が載っております。これはこれで一つの問題提起でしょうが、また別の面ではいろんな意味を持ってまいりますが、これに対する所見はどうですか。
  62. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 地方交付税の算定に当たりまして税収入をどの程度カウントするか、これは基準税率、基準財政収入額への算入率の問題であります。この問題は私はあくまで交付税の配分技術上の問題として考えらるべきじゃないかと思うんです。  一部に、何か基準税率を上げるとその分だけ交付税が浮くから減らせるんじゃないかというような議論、総額論と絡めた議論があるんですが、これは大変な間違いだと思うんです。交付税の総額というのはあくまで地方財政計画ベースでその適否を判定さるべきであって、今の基準財政収入額の計算の算入率をどうするかは、いかに適正に各団体の財源不足を補足していくか、こういう配分技術上の問題であると思うんです。  自治省といたしましては、現状では基準税率を引き上げるべきでないと、今の状態では引き上げるべきでないと考えております。  具体的には都道府県が百分の八十、市町村分が百分の七十五と、こういう率になっております。実は、これはもともとは県も市町村も百分の七十だったわけですが、道府県分につきましては平衡交付金から交付税に移る際に百分の八十に引き上げたわけです。市町村分については、三十年代の末期に清掃関係費などの都市的経費の基準財政需要額を大幅に充実強化するときに、都市と町村の配分の公平を期するという意味から百分の七十から百分の七十五に引き上げたという経緯がございます。したがいまして、今後都市的な経費の算定内容を大幅に引き上げるというような事態が起こる場合には、基準税率の問題、当然あわせて考えないというと公平な配分ができないという意味でかえって不公平になってしまうということで、将来の検討課題として私はあり得ると思うのです。その一つとして遠藤君の論文が指摘しているのも、まさにその投資的経費の算定につきまして、 従来、人口とか面積とかその他のそういう客観的な指標で計算しておった投資的経費を現実の実施事業に着目して財源対策債のようなもので振りかえていきますと、結果として都市的な財政需要の大きい団体の需要がふえていくことになるんじゃないかと、そうなると私は、基準税率をそのままにしておくと非常に不公平な結果になるということをとらえて論じたのだと思います。  いずれにしても、この問題は基準財政需要額の算定内容と裏腹の問題として常に私ども検討しなきゃならない、いかにして公平を保つかという意味検討しなければならない課題と思いますが、現時点では基準税率の引き上げは考えておりません。
  63. 志苫裕

    志苫裕君 遠藤論文は、財政力のある団体とない団体との差といいますか、それに着目をしているようですが、一つの所説ではあってもいろいろ問題を醸し出す感じはいたします。でも、言論、出版自由ですから、どうってことは言いませんが、やっぱりこれは慎重であるべきだという感じはいたします。  大体、この留保財源というのはいろんなときに論じられまして、選択と負担のときにも盛んにこれに着目をして論じられたいきさつがあるのです。税率を上げて、一方で需要でも膨らませぬでおこうものなら差がなくなっちゃいますから、交付税下げたらいいなんというばかばかしい議論に行ってもつまらぬですから、そういう点はひとつ慎重を求めておきたいと思います。  次に、給与の適正化指導、これは自治省の言っている言葉で私の言っている言葉ではないですけれども、その問題に少し後半触れたいと思うんですが、まずその前に、これはいつだったか、どの大臣のときだったか、盛んに自治体の一部の団体で高い給与が問題になって、住民の直接請求で条例を直したり、議会で修正、否決があったりしたようなこともございました。そういうときに、私の方からも問題を提起したんですが、地方公務員の給与、労働条件というのはいわば団体交渉事項だと、この団体交渉というのは憲法にも由来をする基本人権でもありますし、また国際的にも承認された原則だという指摘をまずして、同時に、条例事項のわけでして、条例主義をとっておるわけです。条例主義というのは、思うに使用者の恣意に任せない、法の支配を受けるという意味なんでしょうが、同時に公務という特性から見て、住民や議会の関与をさせるということも含まれているんでしょうが、少なくともこの条例を中心に見ますと、団体交渉の結果が条例に出てくるという側面、議会はそれに同意もできるし修正もできるし反対もできるという側面、それから住民は直接請求で上げたり下げたりするという権利も持っている。職員の、労働者の労働条件、給与等の問題について三つの要素がこれに絡んでくるという性格を持つわけです。どっちの権利が優先されるべきだろうか。団交の権利はある、またそれに基づいて提案する義務がある、議会は修正権もあれば否決権もある、住民は直接請求権がある、いずれもこれは立派な権利です。一つの問題に三つの権利が絡んでくる、こういう問題にしばしばぶつかってくると、一体これをどうすべきか、これを一体どうやって調整すべきか、調整規定はどこにもない。私は、何というんですか、基本権、生存権が優先されるべきであって、そのことが優先されたからといって地方自治の本旨とかあるいは自治の原則というようなものを何ら否定するものじゃない。公務員の特性とかそういうようなものは当然に当事者の自律の問題だというふうに申し上げたんですが、いずれにしてもこういう問題はひっ絡まっておるわけです。これの問題点というのは後ほど指摘をします、少なくとも外圧によってこの権利が不当に制限を受けるべきでないという問題意識から提起をしたわけで、そうなってくると、自治省が余計なことを言っておるのも邪魔になってくるわけですが、まずこの問題についてその後どなたか検討してみましたか、三つの権利の調整というのは。どこか自治省やってみましたか、一遍。
  64. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) 地方公務員の給与というのをどういうシステムの中で決めるかということについては、今までもいろいろな議論があったように記憶しております。私もそれほど経験が深いわけではございませんけれども、例えて言いますと、今からちょうど二十年前の第一次臨調のときにはホイットレー方式というのが議論されまして、団体交渉とホイットレー方式というものの併用でひとつ考えてみたらどうだというような意見の提示もあったように思いますし、かつて衆議院の地方行政委員会で活躍されました山口鶴男先生もそういう議論をされたことを私は記憶しております。  ただ、そういうようないろいろな議論があった中で現在の制度というものを眺めました場合に、今先生お話しになりましたように、現在の制度というのは職員団体と執行当局が団体交渉をしていく、そしてその結果を執行当局としてはできるだけ尊重していくというのが制度のシステムだと思いますけれども、そのときに、先生が今お話しになりましたように、住民の監視というものもやはりあるということだと思います。そういういろいろな要素がかみ合わさるわけですけれども、今の制度というのは最終的には議会が条例で決めなさいというのが勤務条件の法定主義の意義じゃないかというふうに思いますし、私は今の制度を眺めました場合に、そういう制度というのは、民主的な地方自治制度の中においてはやはり非常に価値のある制度ではないかというふうに思います。したがって、この制度をもう少し地方団体の中で習熟させていくというか慣熟させていくというか、そういうような努力というものもまた必要じゃないかという気が現在いたしておるわけでございます。  そういう観点から考えますと、先生お話しになりますような新しい提案というものもそれなりに吟味をしていく必要があると思いますけれども、我々が現在法律によって与えられました今の制度というものをもう少し地方住民の中に定着させていく努力もまた必要じゃないかというふうに現在考えておるところでございます。
  65. 志苫裕

    志苫裕君 なるほどその自治権、条例を決める、人を雇う、働いてもらう、これ全部自治権の中ですが、同時に、私は、労働基本権あるいは基本的人権との調整をほったらかしていいというものではない。それぞれが持っておる権利ですから、それは対等なのであって、それの調和をどうするか、そういう意味では、労使の団体交渉というものがそういうさまざまな問題に配慮をして合意を形成することができれば、それも調和をとれるわけですというふうには思うのだが、いずれにしても、何らかの権限ないし力をもって強制されるものではない。どの権利が優先して、どの権利を一等下にしておかなきゃならぬというものでもあるまいという意味で、それを調和できるのは結局は団交ではないかという感じを私は持っているのですが、そういう提起をひとつ申し上げておきます。  私はそういう面から見ても、自治省が特に五十六年以降いろいろと地方財政を取り巻く環境のことを頭に入れて、一部団体の少し飛び出た給与について随分神経を病んでいる。で、くだらぬ議論をしているうちに地方自治の基盤がなくなっても困りますから、それはそれで気にしなければならぬ諸状況ではありますが、考えてみると、それは本当は異質のことなんです。給与を交渉とかそういうもので決めていくというルールのことと、一部高いんだ、それで地方財政全体が影響も受けるがというものとは本来異質のものであって、できれば自律的にそういうものが決まりがつけば一番望ましいでしょう。しかし、何らかの権限をもって圧迫を加えるというふうなのはとても正当とは思えないという意味で、しばしばここでも議論になりますし、この間、佐藤委員からも問題を提起したわけで、まずそこのところのけじめを踏まえておきませんと、この指導というのは自治省からずっと行って、係のところから地方課へ行ってと、こう行くわけですから、そこの大原則を踏まえていかないと、とんでもないあたりでやたらと権力をかさに着て、余計なことを言うたりやったりす るのも出てくるわけであって、ここはきちっと踏まえておかなきゃならぬというふうに思うんですよ。やっぱり原則的には労使が決める、自治体が決める、それはそれでちっとも間違いはないんです。自治体の状況、全体の置かれた状況で、もう少し自律的に全体の調和を回らぬかという問題は次元の別の問題なんです。それに協力することは望ましいでしょう、きっと。だけれども、強圧を加えられるべきものではないというけじめをはっきりしておいて、以下私も細かいことに入りますが、このけじめはつけておいてもらいたい。原則論はこれ以上やりませんので、その点大臣どうですか。
  66. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 原則志苫さんおっしゃったとおりでございます。
  67. 志苫裕

    志苫裕君 そこで、この間から議論のありました起債の許可制限の問題、ちょっと時間も詰まってきたので簡潔に答えてもらえばいいですが、五十八年にも一部起債の保留というんですか、制限、事実上は不許可になったわけですが、それはそれなりに起債の許可方針の中にそれを適用する条項があったわけです。ところが今度、改めていわばそういう制限条項というんですか、給与条項を方針に盛り込んだ。従来の条項でも五十八年の措置はとった。五十九年は、改めて盛った。一般的に考えれば、従来の措置よりも強化拡大をしたというふうに解するのかどうなのか、この点はどうですか。
  68. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 昭和五十八年度の地方債の許可に当たりまして、一部の団体についてその財政状況の判断要素の一つとして、給与の適正化が進んでない個別指導団体について地方債の額を制限したわけでございますが、それは先生御指摘のとおり、このような措置を講じたのは、許可方針の中で、一般事業債について各団体の財政状況を踏まえて許可を行う、こういうことでこのような措置を講じたわけでありますが、五十九年度におきましては地方財政を取り巻く環境が一層厳しくなっている、こういうようなこともあり、このような地方債の取り扱いについては、これは明文をもって規定することの方が適切である、このように判断して許可方針の中にいわゆる給与条項を挿入したわけでございます。  その給与条項の適用の基本的な考え方につきましては、五十八年度にとった措置と基本的な考え方としては同様に考えております。明文の規定を置いたということのゆえをもって従来よりも一層厳しい対応をするという、必ずしもそういう考え方でございませんで、このような取り扱いになるということを明らかにしたということでございます。
  69. 志苫裕

    志苫裕君 この措置についての基本論議はずっとありました。ですが、大臣がいみじくも、一部の団体のために地方財政余裕論が台頭して法制面での制限の動きまで出るような状況だと言う、そういう状況があることを私も非常に困ったことだというふうに思います。  で、そんなことをやりとりしておるうちに、とてつもない力で自治の根底までもぎ取られるような潮流にのみ込まれるのは、これは非常にみんなして考えなければならない問題だというふうに私も思いますが、しかし、それはそれでもやりようがあるということは先ほど申し上げたんですが、そういう認識は認識で述べておきまして、この地方債許可方針の「著しく適正を欠き、かつ」「必要な努力を払わないもの」とは一体何だと言って聞くと、それはそのとき出たとこ勝負だと言うに決まっているんです、いろんな衆議院の返事聞いていますと。  だから、これからのことを聞くには五十八年のことを聞いておく方がわかりやすくていいと思うので、ちょっと五十八年のことについて聞きますが、五十八年にこの制限を受けた団体が二十三プラス十ですから三十三。二十二と十はおのずから性格が違う。これは十というのは東京で、人事院勧告並みに上げるなというのに上げたというので何かやったみたいですが、ちょっとこれはこっちに置きまして、あとの二十二、これは追加申請のあった団体に対する措置だ。したがって全団体から申請があったわけじゃないですね。もし、仮定の問題ですよ、もし全団体から申請があったとして、これと横並びの措置をとったら河団体ぐらいになったのでしょうね。
  70. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 実は、五十八年度の地方債の許可に当たりまして、上半期にすでに起債配分を終わってしまったものはそれはもう済んでおりましたので、それ以外の起債申請団体について、先ほど御答弁申し上げたような考え方で一部抑制措置を講じたわけであります。したがいまして、それ以外のいわゆる個別指導団体の中で、もし地方債を申請すれば抑制されたであろう団体がどこになるか、これは実は個別の検討はしておりません。具体の起債の申請に着目して、その団体の給与是正計画の実施状況を調査の上で処置を決めたわけでございまして、具体の申請のなかった団体については検討しておりませんので、河団体ということは申し上げられないのが実情でございます。
  71. 志苫裕

    志苫裕君 そうすると、公務員部長、これは給与適正化指導にはずっといきさつがありまして、例えば給与改定のたびにもやるだろうし、古くは現在の新等級制の導入のときにもいろんな指導もしておるし、いろいろいきさつがあるようですが、今ここで問題にいたしますのは、五十四年の退職手当についての指導とか、あるいはそれらも全部含めた五十五年のいわゆる適正化通達、それから臨調、行革大綱が出て、五十六年の個別指導通達と、こう推移をするんですが、その個別指導内容について聞きますが、個別指導団体は幾つですか。
  72. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) 現在百五十三団体でございます。
  73. 志苫裕

    志苫裕君 百五十三というのは、何か物差しがあったんですか。
  74. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) そんな科学的な物差しというのはございませんけれども、大体私たちの方で個別指導団体というふうに当時指定いたしました場合には、その団体の個々の状況というのをそれぞれ都道府県に把握していただかなければならないだろう。どういう原因で給与水準が上がっておるんだろうか、その団体が抱えている給与行政上の問題というものを把握していただかなきゃならない。そして、その上に立って適正化計画というものをつくっていただかなきゃならないというようなことを考えまして、そういう過程におきまして私たちの方もそれなりに指導していかなきゃならないということを考えますと、やはり事務的な能力ということから考えまして、おおむね百五十ぐらいが対応できるんじゃないかということで、給与水準の上位から百五十をおおむね選ぼうということで選んだところが、最後の方で同じような水準のところがあったから百五十三団体と、こういうことになったというふうに理解しております。
  75. 志苫裕

    志苫裕君 五十六年十一月二十八日のいわば次官通達、いわゆる個別指導の通達ですが、これによると是正計画を出すことになっていますが、百五十二団体は全部是正計画を出したんですか。
  76. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) 現在、全部提出済みでございます。
  77. 志苫裕

    志苫裕君 現段階で——いつの現段階にしましょうか、まあことしの年度の始まりでもいいですが、あるいは一番新しいところでもいいんですが、その百五十二団体が全部是正計画を出した、この是正計画が実行されないので去年の暮れにやっつけたと、こういう段取りになっているようだが、五十八年当初でもいいんですが、計画どおりに実行していないと認められるのは何団体ですか。
  78. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) 計画というふうに一言で申し上げましても、実はそれぞれの団体の長がお考えなさって出されたものでございますので、私たちが一応の基準をつくってその基準に基づいて計画を出していただいたということでございませんので、その計画に従ってやったかやらないかという判断をするというのは、この際私たちの方で厳格にはやっておりません。  ただ、お尋ねでございますので、それに従ってお答え申し上げますと、計画どおりやってない団体というのは相当あるということを申し上げておきたいと思います。
  79. 志苫裕

    志苫裕君 相当あるじゃだめなんだな。  で、ちょっと内側のぞくようで悪いけれども、察するに、そういう方針を立てる、そこで五十八年下期に起債申請がありましたね、起債申請のある団体について自治省の内部の、中の仕組みで言えば財政局がそんなのわかるわけないんだから、そうすると公務員部がどっかへ、この団体の中に悪いやつがおるから調べてくれやと、こういうふうに必ず文書が回ってきたに決まっていますよ。そうするとあなたの方が、ああこれだめ、これいい、これだめというようなことを言うたに決まっていますよ。ですから、これだめといいがあるわけだ、これだめといいが。率直に言って、そうですね。これだめというチェックになったのは今回は二十三だった。しかし追加申請のなかった団体もあるわけだから、百五十二の全部追加申請があるというと幾つぐらいバツがついたんだろうというのを知りたいのは当たり前でしょう。横並び幾らと聞いたら、財政局は知らぬと言うんです。それはそうでしょう、出てきたものしか見てないんだから。皆さんの方ではそれはわかっているんですよ。おおむね皆さんで言うところの計画を出して、いろいろ努力しているというのでないやつは河団体ぐらいですかと、こう聞いているんですよ。
  80. 中島忠能

    政府委員(中島忠能君) 作業の過程におきまして私たちと財政局の方で当然協議がございます。そのときに、今財政局長からお答え申し上げましたように、追加申請があった団体について協議の対象にいたしましたので、先生が私たちの方にお尋ねいただきましたその団体数が幾つかということは、やはり財政局長がお答え申し上げましたように、私たちの方でも把握し切っておりません。  ただ、どういう団体が先生の言われる起債の制限団体になったかということにつきましては、やはり個別指導団体のうちで五十七年度の適正化措置が不十分な団体で、しかも五十八年度中に給与に関する是正措置を全く講じなかった団体、あるいはまた、講じたけれども、例えて言いますと、管理職だけの昇給延伸をしたとかあるいは現在の職員に関係がない初任給だけの引き下げをしたとか、まあ不十分な団体といいますか、当該団体が抱えておる給与行政上の問題から判断いたしますと不十分な団体について、一応私たちの方で考えたわけでございます。
  81. 志苫裕

    志苫裕君 それで財政局長、じゃ具体的に聞きましょう。  私は、起債制限の対象事業は何で、不許可の対象事業は何で、給与の適正化努力の程度と起債制限の間にどういう相互関係があるのか、そこに基準があるのかということを個々に聞きたいわけですが、時間も詰まってきたんで、給与適正化の努力の程度と起債の制限の程度ですね。全部切ったんじゃないでしょう、一割とか二割とか三割とか切っていったんでしょうから、この相互関係はどういうものなんですか。
  82. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) まず、団体につきましては、先ほど公務員部長から御答弁申し上げましたように、個別指導団体で五十六年に御提出いただいた給与適正化のための計画について実効ある適正化措置がなされていない団体、起債申請のあった団体について、そのなされていない団体がどこかということを公務員部の意見も聞いて二十三団体としたわけですが、そこの起債の抑制措置につきましては、まず対象事業ですけれども、単独事業及び地方債計画の区分上はいわゆる厚生福祉関係の事業、会館とか図書館とか、いろんなたぐいのものがありますけれども、いわゆる住民生活にとって緊急性がやや劣ると思われるような事業について抑制措置を講じました。  それから、抑制措置の金額でございますが、各団体によって規模とかいろいろ事情がありましたが、一応申請額に対して四分の一程度を目途に抑制額を決めたわけでございます。
  83. 志苫裕

    志苫裕君 そうすると、言うなら努力不十分な団体についておおむね四分の一ぐらいを、先ほど述べたような単独事業のうちで会館とかそのようなもので当たりさわりのないものは切った。当たりさわりはみんなあるけれども、これは命に直接かかわらぬようなものは切ったという言い方をするかしらぬが、しかし私らが聞いたところによるとそうではないんであって、昇給延伸どれどれやったものはカットなし、初任給の一号くらいの調整したやつは一割、もっと怠けているやつは三割とか、そういうふうに全く恣意が働いた。不十分だから努力せよというんでちょっとずつおきゅうを据えたというものとは少し違って、この努力の程度というものと不許可の程度というものか、そういうふうなものに何か相互関係があったというふうに調査で承知しているんだが、そういうことはなかったのですか。
  84. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 私どもの基本的な考え方としましては、個別指導団体の中で追加申請のあったものについて、適正化努力がなされたがなされないか、効果的な適正化措置が講じられたかどうか、その判定については公務員部の方の御意見を拝聴した上で具体的な金額の決定をしたわけですが、それに当たりましては、一応四分の一程度を抑制するという目途のもとに金額を決定したわけです。  ただ、もちろん一律に四分の一掛けて端数までつけたわけじゃございませんで、その団体の財政状況等によって、また起債の金額の状況によって、その範囲内で抑制措置を講じたことでございます。  個々の団体の努力の程度によって差をつけるという、そういうことをやったわけではございません。一応、枠として四分の一程度を目途に抑制措置を講じたということでございます。
  85. 志苫裕

    志苫裕君 大臣、私がこういうことを聞いていますのは、私はこれを認めているんじゃないんですよ。認めているんじゃないんだが、地方自治体が置かれている諸状況で、みんなが時には辛抱してでも自治権を拡大せにゃならぬ、そういう大目的のために知恵がないか、力がないか、そういう意味で提起しておるというのは一面でわからぬわけでもないという前提を置いて、百歩譲ってそれを認めたにしても、それは個々の自治体をとっつかまえて、幾らだから幾ら金やる、幾らやったから幾らというものではない。これは異質のものなんですから。  自治体の給与の高い低いにはそれなりの歴史を持っています。そういう意味では、全体として仮に制裁措置があることを百歩譲って認めても、これは自治省の恣意によるべきではない。個々の団体の顔色を見たり、気分のよしあしでやるものじゃない。何らかの基準というほどでもないにしましても、四分の一なら四分の一、二分の一なら二分の一でも構わないけれども、やはりそういうものになるべきであって、全く恣意が働く、行ったやつの、見たやつの気持ちで上がり下がりするというふうな性格のものではない。これなどになりますとまさに制裁であり、個々の自治体に対する個別干渉ですよ。これは自治省にはそんな権限はない、一般的な指導助言というものは与えられていますけれども。そういう意味局長に聞いたらおおむね四分の一くらいをということですが、私の聞いたところでは、どうもそうでもなかったようだというふうな感じがします。そういう意味で、私は百歩譲って制限を認めるにしても、そういうふうに信賞必罰のような自治省の恣意が働くべきではないという点について、自治大臣、どうですか。
  86. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 給与に関する自治省の指導は、あくまで愛情を持って地方財政全般の立場から指導をすべきであって、少なくとも権力的なやり方はやるべきではないというふうに思っております。  前にも申し上げたかもしれませんけれども、また先ほど志苫さんがちょっと触れましたように、ごく一部の団体のために、地方財政全般が豊かであるというような印象を非常に最近強く持たれて いるわけでございまして、特に私は法制化の動きばっかりじゃなくて、このごろ経済界の人やあるいは官界の中にも、もう私どもがびっくりするほど、給与の問題あるいは立派な市役所を建てたとかいうようなことを一つの口実にして、地方財政に対する大変な誤解といいますか、そういうような気持ちを持っている。そういう意味からこういうような処置をとらざるを得なくなった。これが目的でございますので、あくまでも指導指導として、各団体の個別事情を考慮しながらひとつ愛情を持って指導をしていかなければいけない、このようにしていくべきである、このように思っております。
  87. 志苫裕

    志苫裕君 財政局長、そこで一体、私も実は一部例えば八王子であるとか三鷹であるとか、そういう具体的な市の名前を挙げて追加申請額が幾らだ、不許可額が幾らだ、対象事業は何であったか、適正化努力の程度はどの程度だったかということを一々聞けば、あなたの先ほどおおむね四分の一くらいというふうなことが本当であるかどうかも立証できるのだけれども、そこまではきょうはお伺いをいたしません。  ただ、自治体によっては起債の保留が年度の途中にぽかんと来た、これじゃうっかり仕事もできないというふうなところにまで行って、もう計画的に——行政執行を阻害をするのが皆さんの目的でもないでしょうが、ある程度のやはり来年についての「著しく適正を欠き」、「必要な努力」というのは何なのか、大まかでもそれを見たらどういうことになるのかというのがわかるようにしておかないと、努力をしてみたが、出したら努力が足らぬというので二割切られた、これじゃとてもじゃないが計画的な仕事もできませんので、そういう意味では先ほど来の答弁も踏まえていただいて、いずれまた締めくくり質問もございますから、そのときに答弁をできるようにしておいてもらいたい。  伺うところによりますと、起債の不許可についてその理由や根拠を明示していないと聞いています。あなたのところ幾ら、こう言っただけであって、これはまた不親切な話だという意味でも非常に困る話でありますから、その点を要望をしておきます。  次に、消防のことで一つ二つお伺いをいたしますが、これは小樽ですね。五月十九日、小樽ではしご車が折れて消防士が亡くなった、落っこちた後二、三日しまして、という事故があったようなのですが、これ消防庁の方と、事故ですから警察の方、どういうことになっているか報告いただけますか。
  88. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) ただいまお話がございました北海道の小樽市の消防本部におけるはしご車の屈折事故につきまして、北海道からの報告によりましてその概要を御説明いたしたいと存じます。  事故が発生をいたしましたのは、ただいまのお話のとおり、昭和五十九年の四月十九日午後四時二十分ごろでございます。小樽市の消防本部の塩谷出張所前において発生をいたしております。  事故の概要は、はしごを八十度にして上げたわけですが、全部伸ばすとこれは大体三十五メートルになるはしごでありますが、それにリフターに二名の隊員を乗せましてはしごの先端部まで上昇をさせました。その後伏梯操作、はしごをおろすわけですが、伏梯操作を行ったところ六十八度で注意ランプが点灯いたしまして、さらにブザーが鳴りましたので自動停止装置が働き、これが停止をいたしたわけであります。その後、はしごの上段部が左にねじれまして徐々に傾き、屈折をしたというのが事故の概要でございます。  被害状況は、お話のように、人的被害が、一人の方が死亡しまして、これは事故の発生後四日目でございます。さらに一人の人が顔面と腰、背中等の打撲によりまして全治二週間ないし三週間の負傷を受けておりましたが、本日の午後退院をいたしております。なお今後二、三週間の通院が必要だということのようであります。  物的被害といたしましては、はしご車の梯体部分が折損をいたしまして、隣家の屋根が破損をいたしております。  事故の原因につきましては、現在小樽市の消防本部あるいは北海道の警察で調査を進めているところであります。
  89. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 事故の概要につきましてはただいま消防庁の方からお答えがあったとおりでございます。私どもの方といたしましては、事故の原因の捜査を現在やっておる最中でございますが、ただいまの段階で考えられますのは、はしご車の操作ミス、それからはしご自体の材質の問題、それから点検整備の不良があったかどうか、こういった問題等がありますので、現在、関係者、目撃者、それからはしご自動車の購入先、こういった関係につきまして事情聴取を行いまして、捜査を進めておるところでございます。
  90. 志苫裕

    志苫裕君 そこで、ちょっと原因に入るんですが、操作ミスか、あるいは機械そのものが悪かったか、材質その他を含めまして。あるいはオーバーホールをしていなかったかどうかというふうなことのお話なんですが、これは消防庁、まずこういう消防機器の、人間の方じゃないですよ、機器の安全というか、これはどんなシステムでやっているのか。
  91. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 一般的には、消防自身が専門的に使うものというものにつきましては安全基準を定めてはおりません。JISなどで定められているものはありますが、一般的にはないわけであります。ただ物によりまして——物によりましてというのは消防が使います一般の機器の中で補助をしておるものにつきましては、これにつきまして補助要綱の中でその規格を定めておりまして、その規格に従いまして、安全に関するものにつきましてはただいまのはしごでありますように、自動停止装置でありますとか各種の安全の装置あるいは油圧の装置、あるいは積載の荷重をどうするか、あるいは自動噴霧の装置がどうなっているのか、あるいはリフターがどうかというようなものを定めまして、消防検定協会におきます検査を受けまして、その形状、構造、機能につきまして検査を実施いたしておるところであります。
  92. 志苫裕

    志苫裕君 それで、はしご車にはメーカーが二つ、森田というのと日機というのがあって、日機というのが今度の事故につながったようですね。それで私、素人でわかりませんが、ここで使っておる日機の方は軽量の鋼材で、森田のものよりも四百キロぐらい軽いようだ。で、この日機というところのやつは、五十二年の十一月ごろに長野県飯田市でも、二十八メートルほどずっと伸ばしたところでやっぱりこれに近いようなことがあったと言われていますが、承知していますか。
  93. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 今お話がございました日本機械のメーカーに係るはしご車が五十二年に飯田市で事故を起こしたというのは、その後の報告で承知をいたしております。
  94. 志苫裕

    志苫裕君 しかも一方の方には、仕様書はもちろんどこのもあるんですが、注意書き等があって、こうしなければならぬとか、この角度にしちゃならぬとか、振り回してはならぬとか、いろいろなことがあるが一方の方にはないとか、いずれにしても二社といえば独占ですね、率直に言いまして。そういう状態でありますので、あなたは補助要綱で規格を定めておると言っていますが、その補助要綱等を読んでみますと、はしご車について今私が問題にしているような意味での規格のようなものはないわけでして、やっぱりその辺にもちょっと手抜かりでもあったのかなという感じはしますし、検定協会が果たしてそういうものまで検定する能力を持っておるのかどうか、その辺もよくわかりません。いずれにしましても、はしご車についてはその性能文とについて規格がない、欠陥製品であってもチェックする能力がないというあたりに一つ問題点があるような気がしますが、いかがですか。
  95. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) お話のように、検定協会が補助要綱に従いまして適正に検査をしたものだと私たちは承知をいたしておりますが、現在、お話のようなはしご車につきまして全体的に見る 基準というのがないわけであります。ただ、こういうものにつきましてどういうふうにやるかというのがやはり今後の問題であることは確かでございまして、既に全国消防長会の技術委員会におきましてもはしご車のオーバーホールをどうするかという検討委員会を発足させることになっています。  さらに、現実にそれではどういうふうにはしご車に対して各消防が注意を払っているのかということを端的にいろいろ聞いてみますと、例えば東京消防庁のようなところでは、半年に一回、実ははしご車の点検なり車の点検をいたしております。これは自分のところで工場を持っているということもございますから、割合にそういうことが可能なのであります。そのほかのところにつきましては、これの受注を受けた製作会社が年に一度チェックをしまして、油漏れでありますとか、あるいははしごに入る亀裂でありますとか、ワイヤでありますとか、そういうものを検査をすることによって安全を図っているということでありますが、いずれにいたしましても、こういうことが起きたというのは極めて遺憾なことでありますし、今後やはり十分研究をしていかなければならぬ問題だと思っております。
  96. 志苫裕

    志苫裕君 これは、はしご車のみならず消防車については、公的な車検とでもいいますか、そういう制度がない。これは、例えば我々マイカーを持ちましても、半年に一遍来いとか三年に一遍見ろとかという仕掛けになっていますが、消防車についてはそれがきちっとしたものがないということもありますし、とりわけ、はしごやポンプなどの特殊艤装についての点検制度もないというところに一つ問題点があるようです。業者の方では五年間という基準を置きまして、それぞれ自主的にやっておるというんだけれども、しかしそれは使用度の関係もありまして、一遍オーバーホールをすると千五百万円はかかる。自治体で千五百万というとちょっと二の足を踏むという問題点もあるのではないかという感じもしますが、そういう点についてのオーバーホールの義務づけ、あるいは必要であれば予算についての物の考え方というようなものは示されていいんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  97. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 先ほど申し上げましたように、オーバーホールの問題は全国消防長会の方の技術検討委員会でも検討することにもうできておりますので、そういう形でやると思いますが、全体的に基準をどういうふうに、オーバーホールの基準をどう決めるかということもやっぱり私たちに課せられた一つの仕事でもあろうと思っております。そういう点で少し内部で検討してみたいと思っております。
  98. 志苫裕

    志苫裕君 これに関連をしてこの間、私、例の消防の促進法のときにもちょっと指摘をしたんですが、ここまでいかなかったんですが、皆さんの方が安全管理要綱、安全管理規則のようなものをお出しになっているんですが、そこで一見をしてはっきりしますのは、例えば施設とか消防機材の安全についてのくだりが率直に言って何もないんですね。その他のものの安全規定ありますけれども、もう少し機材機器の安全を考えてみれば、大変なときに出動していろんな機材を使うわけで、そっちの方に瑕疵でもあればひどい目に遭うということになりますので、その点はもう一遍見直してみたらいいんじゃないかということを指摘をしておきます。  で、警察庁、クレーン車などは特殊車両に入っておって、操作をするには国家試験が要りますね。ところが、あの例の規則の二条読んでみると、消防車とかはしご車というのはあの区分けていくと普通の自動車になって、大型か中型かに入るだけなんじゃないの。これはどういう取り扱いになりますか。これは何車ですか。
  99. 久本禮一

    政府委員(久本禮一君) 通常、消防用の自動車につきましては、先生御指摘のとおり、大型特殊自動車という扱いを受けるものがあるとは承知しておりません。普通の大型自動車あるいは普通自動車というふうに承知をしております。
  100. 志苫裕

    志苫裕君 そうかな、しかし普通の概念で考えてごらんなさい。あんな三十メートルも五十メートルも長く角を出すようなでっかい装備をしたものが普通自動車ということはないだろう、これは。余りはしご車がはやらぬころの法律じゃないか、これは。
  101. 久本禮一

    政府委員(久本禮一君) 先生の御指摘でございますが、そういうわけではございませんで、はしごを積んでおるということも現在の道交法上では評価をいたしているところでございます。  その理由は、確かに消防自動車は特殊な装備をつけて走っておりますので、その限りでは通常のトラック等とは違った面があることは事実でございます。ただ、特殊自動車か普通自動車がということにつきましては、もっぱら道路を走行する道路交通上の立場から評価をしているわけでございまして、そういう意味から申しますと、消防自動車はいわば赤く塗ったトラックがはしごを担いで走っているということと実質的には変わりないと、そういうことでございますので、普通自動車の扱いであるということでございます。
  102. 志苫裕

    志苫裕君 いや、まあそれは赤く塗った自動車がはしごをつけているが、スキーかなんか上に乗せているのとわけが違うんですよ。まあ、そのことはそう言われてみればそうかな。しまって走っていれば、道路走る分には道交法上そうなのかもしれぬけれども、しかし、長い角を出して操作をするとか何とかとなりますと、やっぱり何か普通の感覚でいきますと、操作の資格とか何かそんなようなものが必要なんじゃないかなという、もちろんそれを日常訓練とかそんなものでおやりになっているんでしょうが、これは訓練をして何か資格取らせるのですか。消防庁、はしご車の操作みたいなものはどうなんですか。
  103. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) これは資格はございません。
  104. 志苫裕

    志苫裕君 じゃ、私でも行ってはしご出せるのか、そうではないでしょう。——できるの。その辺のこれは全体を含めて、安全管理の面についてひとつ見直す余地があったら一応再検討してみてください。しかも、こういうものはどんどんふえていくんでしょうし、活躍する舞台も多くなるんじゃないかと思うし、また高層化していけばだんだん足も長くなるというような趨勢にもあるんでしょうし、これは長野の例をあなたしばらく知らなかったということですから、あるいはそのときにもっと徹底しておけば、ちょっとは何か気がついたのかもしらぬし、そういう意味でひとつこの点は要望をしておきます。  最後に、通告を満足にしてなかったので恐縮ですが、いわゆる国鉄が景気が悪くなって、もうけにならぬ線を全部やめて下請なり第三セクターに回すとか、あるいは監理委員会の方では、建設中のものも先行き見通しのないものは建設中止をして、第三セクターがやってくれるというのであればそれを続けるとかということで、三陸鉄道を例にしまして幾つかそういう動きがあるようです。  しかし、一般的に考えれば、国鉄がやって商売にならぬのでやめたのでありまして、それをいろんな工夫をして民間なり第三セクターがやる。しかし、それは地方自治体がかんでいくとなりますと財政的なリスクというふうなものも十分に想定をできるわけです。そういう問題について、これから幾つか出てくる状況にありますだけに、地方財政のありようから見て、自治省の所見を伺っておきたい。
  105. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) いわゆる赤字ローカル線の廃止問題などとも関連いたしまして、第三セクターによって鉄道を運営するという動きがあちこちにあることは承知しております。  ただ、先生御指摘のとおり、専門家の国鉄が経営してもうまくいかない、赤字が非常に大きくなるという理由で廃止される路線について、第三セクターがこれを引き受けて経営採算が成り立つことは、通常はなかなか期待できないと思うんであります。よほど別の要素があってそれまでと違った交通需要があるという場合は別でしょうけれども、一般的には非常に難しいと思います。しかも、 これらの赤字ローカル線が問題になるような地域の地方自治体というのは押しなべて財政力の乏しい団体であります、したがって私どもは、いわゆる第三セクター方式による鉄道経営に地方公共団体が関与するということについては、基本的に慎重でなきゃならない。その団体の財政に及ぼす影響というものを十分検討した上で対処すべきである、このように考えております。
  106. 原田立

    ○原田立君 地方交付税法改正法案に入る前に二つ、ちょっと臨時でお伺いしたいと思うんであります。  山口県宇部市で、御承知のように協和発酵宇部工場のタンクが破裂いたしまして、一名が亡くなり、九名が重軽傷を負ったとのことでございますけれども、概要の説明と、また事故の原因についての調査は一体どんなふうな状況になっているんですか、御説明願いたいと思います。
  107. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) お尋ねの協和発酵宇部工場の事故の概要でございますが、五月二日の昼過ぎにおいて発生をいたしまして、場所は宇部市所在の協和発酵宇部工場内、炭酸ガスのホルダータンクに亀裂が入りまして水漏れをしておる、こういうことで作業員が溶接により修理をいたしております最中にその亀裂が広がりまして、このホルダーの中に入っておりました、これは炭酸ガスのシールド用の工業水なんですが、二千キロリットル、これが突然流出をいたしまして、作業しておりました作業員が押し流されました。一名が死亡、これは溺死でございます。そのほか九名が負傷する、こういったのが事故の概要でございます。現在、山口県警の方で今関係者等からの事情聴取を含めまして捜査中でございます。
  108. 原田立

    ○原田立君 このタンクは三十一年に製造され、三年前から使用されていなかったという報道でありますけれども、防災上の点から、このような古い使用されていないタンクが全国にも数多く放置されているのではないか、こう心配するのでありますけれども、実態はどうなのか。また、実態調査を実施すると同様に防災上万全を期すべきだと思いますが、いかがですか。
  109. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 今回破裂をいたしましたガスホルダーですが、これは今お話ございました昭和三十一年に製造されたものでございまして、現在は使っていなかったということでございます。ただ、全国的にこういったガスホルダーであるとかガスタンクであるとか、これが一体どのぐらいあるのかという点につきましては、私どもの方では現在ではちょっと手元に資料を持っておりませんし、なかなか完全に把握しているかどうかについては詳細承知をいたしておりません。  ただ、事故の防止という観点からいたしますと、これは私ども例えば今回のこの事故事件につきまして捜査をやっておりますが、この捜査の結果得られましたその原因、こういうところにつきましては関係機関、関係方面とよく連携をとりまして、今後の事故の再発防止、これには十分に努めてまいりたいと思います。また、現在あちらこちらにありますような危険な場所につきましては、できるだけそういった情報を警察として把握した場合には、これも関係方面とのいろんな連絡をとりまして、未然防止にも努めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  110. 原田立

    ○原田立君 こういう化学肥料生産用のタンクだとかあるいはその後製薬用に切りかえられたタンクとか、こういうふうなタンクは通産省が所管する事項だろうと思うんです。だけど、実際こういう事故が起きてしまうとこれは全く大変な話で、水に押し流されたということが原因ではありますけれども、一人の人が亡くなられた。人が亡くなるような事故がやっぱり繰り返されたのではならぬと思うんですよ。で、通産当局あるいは消防庁、所轄の消防署あるいはまた警察署、ここら辺三位一体になって、何か事故が起きないように何とかならぬものかどうか。  実は岡山県の水島工場、あそこでタンクに亀裂が生じて重油が物すごくどっと流出して瀬戸内海の四国の沿岸に至るまで油が行って大変な非難を受けたということがあります。あのタンクも同じような平型の円形のタンクです。同じような形のタンクなんです。だから、こういうような事故が起きました、さあその原因は何でしょうかといって警察はそれしか手は打てないだろうと思うんだけれども、それじゃちょっと手ぬるいような感じがするんです。で、岡山県警で一体何基あるのかとかあるいはまた福岡県警で何基あるのか、こう言ったらば大変数が多くて困るだろうと思うんですけれども、宇部署とか福岡西署だとか、そういう所轄の中でタンクは幾つあるかぐらいのことはわかっているはずだと思うんです。そうして、それは十分に使用されている、あるいはまだ大変に古い老朽物があるとかというようなこともわかっているはずだと思う。それらに対する指導とかというようなことを十分にやって、こういう事故が再発しないように私は強く求めるんですけれども、これは警察の方と消防の方と両方御答弁いただきます。
  111. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) 各警察署の段階におきますと、自分の管内にこういったタンクなりいろんな危険物を貯蔵いたしますような施設がどのぐらいあるかというようなことにつきましては、これは各署とも把握をしておることと思います。ただ、その施設がどの程度老朽化して危険の度がどの程度になっておるかということにつきますと、これはなかなか専門の行政官庁のいろんな調査ということが一番大切なことではないかというふうに考えておりますが、できるだけの実態を警察としては把握をしておりますし、また把握をしていきたいというふうに考えております。  それと過去の、今お話のありましたようなあちらこちらのこういった事故事件の教訓というものは私どもの方も十分に承知をしております。そういった事故の原因につきましてはこれは捜査の過程でわかりますので、その状況につきましてはこれは関係官庁に今までも十分に連絡をとってまいっておりますが、今後この山口県の事故につきましても、十分に捜査の過程で知り得た状況原因、これをよく連絡をいたしまして今後の再発防止、未然防止ということに努力をしてまいりたい、こういうふうに思います。
  112. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) ただいまお話がございましたが、御承知のとおり、このタンクは三十一年にアンモニアの製造用でつくった窒素ガスのホルダーであったわけであります。そういう関係上、高圧ガスの取り締まりの適用を受けて規制を受けておりましたから、それなりの点検を受けておったものと思っておりますが、四十八年にこれを転用いたしまして現在の炭酸ガスのホルダーに切りかえたわけであります。そのためにこのホルダー自身の規制をする法律がなくなった、炭酸ガスは危険物じゃないということになっておるものですから、これに対して規制を加えるというわけにはなかなかいかなかった、おっしゃられるように岡山のようなああいうところでもやったんだからというお説もありますが、そういうことでやらなくなったわけですが、実は今全国に危険物と称せられる容器、その施設というのが六十万基ほどあるわけであります。  これは三十四年に危険物の規制をいたしましたときの約六倍にふえているわけです。これは六十万基を今の消防職員の予防査察でやるというのは大変な困難なことでございますが、ともかく今何とか予防査察をやっているわけでして、そのほかにも危険物でないという施設をやろうということになりますと、また膨大な人員を要しなきゃならぬということも考えられないわけじゃないわけですが、それが危険物であります限りは、私たちの方の許可行政庁といたしましても、許可を受けて完成検査を受けて使用されることになりますから、使用開始後におきましても日常点検をするということはもちろんですし、危険物に関する政令によりまして、毎年一回これは自主検査をしなきゃならぬということになっておりますから、これは当然やるべきで、さらに、ある一定の期間が過ぎれば開放検査をするということで、危険物については御案内のとおりただいま大変ないろんな形の中で検査をしながら保安の確保を図っており ます。  ただ、ただいまのようなこういう形のものについてどういうふうな規制が加えられるか、その点は今後の一つの宿題としてというよりも、いろいろ考えてみなきゃならぬ点があるいはあるのかもしれません。おっしゃられるように、こういうものが突然破裂をして水が流れていろんな点で害を及ぼすことはあり得るわけですので、そういう点をどういうふうな取り締まりの対象にするか、関係省庁との間でもよく話をしてみたいと思っております。
  113. 原田立

    ○原田立君 長官、ちょっと認識が違いますよ。まだこれが炭酸ガス使用のためのタンクだと、こういうふうに御認識のようですけれども、三年前からこれは使われてないんですよ、三年前から。で、雨水が高さ八メートルのタンクの中の三分の一たまっているんですよ。そういうタンクなんです。だから、普通使用されている危険物に指定されているタンクは通産当局の方で調査するでしょう。それはそれでいいんですよ。だけれども、老朽化したものとかあるいは使用していないものとかというものについては人員が足りませんから調査できませんなんて、そういう後追いの姿勢でなくて、しっかり使っている方は通産にやらせりゃいいんですが、そうでない部分についての調査というのはこれはできるはずなんですから、それはぜひ積極的な姿勢でやってもらいたいと思うんです。  それでお話しの、三年前から全く使われていないその亀裂が出たそのときに、初歩的な話ですが、水抜きをしてから溶接をすればいいんですよ、問題は。それを水抜きしないのにやるんですから、このやり方の作業も非常に乱暴だと思うんです。それはそれでまた別の問題だと思うんですけれども、こういう老朽化したものについての調査ぐらいはもっと真剣にやってもらいたいと思うんです。人手が足りないからあんまりよくできませんなんていうことを言われて、はいそうですかと引っ込むわけにまいりませんよ。
  114. 砂子田隆

    政府委員(砂子田隆君) 今申し上げたのは、本来危険物についてはやっておるわけですが、これ危険物じゃないものですから、消防が立ち入る権限が何もないわけであります。そういう点で申し上げたわけです。  それからもう一つは、あるいは先生の方の御報告と私の方に対する山口県の報告が違っておるのかもしれませんが、三年間使っていないのではなくて、窒素ガスに使わなくなったときからすぐ転用して、実は炭酸ガスのタンクに使っておる。しかも、水は炭酸ガスの封入用として入れているという報告を受けておりますので、若干新聞報道の記事と違っている部分があります。これは私たちの方も山口県の方に確かめましたので、あるいは山口県の報告が間違っておれば大変申しわけございませんが、そういうことでございますので、事情は御了承願いたいと思います。
  115. 原田立

    ○原田立君 私も実際現場へ行って見てきたわけではないんで、それはよく今後の調査を待ってお聞きしたいと思います。  それから、またこれ警察問題ですけれども、とにかく困った話で、最近特に金融機関に絡む強盗事件が多発しているわけでありますけれども、私は福岡県福岡市内に住んでおりますが、隣の政令指定都市の北九州市の小倉北区の西日本銀行三萩野支店、これが午後二時半ごろ銀行強盗があってとられちゃった。そうしたら、その約三時間後には今度はサラ金のローンズギンチョウというところでまた盗難に遭っている。これは両方とも大体同じような格好をした、そして刺身包丁を持ってきてやっているという、こういう事件が実は起きている。  警察庁の方では警察庁登録十五号事件といって、八件今ございますね。その八件のほとんどが刺身包丁持って白いずきんかぶってやあっとやっている。大体同じような人間がやっているんじゃないかというように想像される。こういうようなことがあって、実は大変心配しているんです。昔は我々は郵便局しか使わなかったけれども、もう最近、銀行はどこでも使うものです。その一番安全であるべき銀行でそんな強盗に入られて、これも柳屋さんという御婦人が首筋のところに刺身包丁を突きつけられておどかされている。で、お金をとられた。その間、逃走するのにたった一分間でその事件を起こしている。たった一分間。三分とか四分かかったらあるいはつかまえられたのかどうか知らないけれども、一分間でその事件があった。こういうようなことがあって大変心配をし、不安を持っているわけなんです。こういうようなことに対する対処の仕方。  私が特に言いたいのは、同じ銀行で一年間に二回も三回も銀行強盗事件があるわけないと思うんですよ。やっぱり転々として、そうして二月目とか三月目ぐらいに転々としてあるということだと思う。だから、一つの銀行では十年に一遍か二十年に一遍か三十年に一遍ぐらいだと思うんです。だって一遍起きるとなかなか大変な問題だ。だから、やっぱりこういう銀行強盗が多発しているときにはもう百年を一日のごとく思って、毎日そういう面での緊張した体制というものがつくられてしかるべきだと思うんですが、これは警察の方で十分指導していってもらわなきゃいけないし、銀行自身もそういう警戒心を持たなきゃいけないと思うんですが、それらについて御所見をお伺いしたい。
  116. 金澤昭雄

    政府委員(金澤昭雄君) ただいまお話しの事件につきましては、五月二日に北九州小倉区で発生をいたした銀行強盗サラ金会社が襲われました強盗事件でございます。  お話のように同じ五月二日でございましたし、また、時間も三時間後に相次いで襲われるといった、距離も一・五キロぐらいの離れたといいますか、近いところでございます。そういったところで相次いで凶悪事件が発生したということで、現在鋭意捜査中ということでございます。  この種の事案が最近非常にふえておりますので、特にこの事件は、覆面をしまして。刺身包丁を持ちまして、いきなり入ってきて女性のお客を人質にして金を強奪する、こういった凶悪な手口でございますので、警察庁の広域重要事件の捜査要綱というのがございますが、それの警察庁の登録事件ということにしまして、これは発生しました都道府県警察はもちろんのことでございますが、それ以外の全国の都道府県警察が自分の事件と同じょうにこの種の事件についての情報収集、捜査協力ということで、警察庁が中心になりまして捜査の調整を行う、こういうことで現在やっておるわけでございます。大体今八件から九件ということでございますが、残念ながらまだ逮捕されておりません。捜査中でございます。  この種の事案につきましては、今お話しのように、一つは防犯措置の問題がございます。銀行自体の、金融機関自体の防犯措置の問題がございます。もう一つは、発生をしましたならばできるだけ初期段階で検挙する、初動捜査の段階で検挙するということの両面で現在いろいろやっておるということでございます。  状況は以上でございます。
  117. 原田立

    ○原田立君 警察へ通報するコールサイン、警察直通のコールサインボタン、これを押すとか、これを押すと一一〇番に行くんだろうと思うんですけれども、この事件は一分間以内にやってさっと逃げちゃったというんですけれども、これは対応できるのかどうなのか。あるいはまた防犯カメラの作動であるとかカラーボールとか木刀とかバットだとか、そういうものを整備していたとかいうようなことが報道されていますけれども、これがもし本当なら大変残念に思うんですけれども、これは調べられたかどうか、お伺いするんですけれども、カラーボールは行員の机の引き出しに入れられてとる暇もなかったとか、木刀は手の届きにくいところに置いてあったので使えなかったとか、四人の行員が追っかけていったけれども、自動車の取っ手まではつかまえたけれども振り切られて落っこっちゃって逃がしちゃったとか、こうなるとどうも銀行の警備体制というか、それが非常に不十分なんじゃないかと心配するんですけれ ども、どうでしょうか。
  118. 鈴木良一

    政府委員(鈴木良一君) この銀行におきましては、警察指導等によりまして、先ほどお話しの非常通報装置、警察へ一一〇番に連動する装置でございますが、これであるとかあるいは防犯カメラ、それから防犯ベル、それから今お話しの犯人の識別のカラーボールというものの設置をしておりまして、毎朝のミーティングでもいろいろ注意の喚起を図っていた。また、月に一回ないし二回、任務分担の確認等の自主訓練も実施してきたということで、かなりの努力を払っていたと思います。  ただ、またこの事件に対しましては、今お話しのように非常通報装置のボタンをすぐ押しまして警察に連絡がありました。それから、防犯カメラでの写真撮影も行われました。また、行員による犯人の追跡も行われておるわけでございますけれども、残念ながらこの防犯態勢、措置の問題の一つとして、店内における警戒員の配置がなかったということで実はこういう犯人の侵入に気づくのにおくれたということが一つございます。それから、カウンタースクリーンというものがございませんで、多額の現金をカウンター上に出していたためにこれを容易に強奪されたというような問題があるわけでございます。  この事件が起きてからさらに責任者を呼んで指導をしておるわけでございますが、今後やはり警戒員を配置をして店内あるいは周辺地域に対する警戒を怠らないようにすること、それから防犯設備、先ほど申しましたようなカウンタースクリーン等がないというような問題もございますので、こういう面の改善あるいは訓練により、そういう迅速な対応ができるような形に持っていくということが必要ではなかろうかということで、一緒になって私ども指導をし、銀行の方も努力をしているという段階でございます。
  119. 原田立

    ○原田立君 警察直通のコールサインボタンをばっと押して、さっと作動して警察官の人が来てくれるのは何分ぐらいなんですか。
  120. 鈴木良一

    政府委員(鈴木良一君) ちょっと今手元に正確な数字を持っておりませんが、警察が近ければすぐに駆けつけられるわけですが、平均いたしますと大体三分程度ではなかろうかなという感じでございます。ちょっと正確なデータを持ち合わせておりませんので失礼いたします。
  121. 原田立

    ○原田立君 銀行の入口のところに時々、この銀行は警察官が常時巡回に来るところであります、こういう掲示がしてあります。あれは見る人が見れば一種の畏怖の感、恐怖の感を持つんだそうですけれども、我々はそんな銀行強盗する気はないんですから、あんなのを見ると何かちょっとおかしいねというような感じを実は持つわけなんです。そういうことよりも、もっと内部の態勢をしっかりしてもらいたい、こう要望したい。特に長崎、鹿児島、福岡、福岡が一番多くなっていますもので、自分自身が福岡に住んでいる人間として非常に心配でもありますし、全国的にこんな事件が多発したのじゃ大変な問題でありますので、せっかく御努力願いたい。お願いします。  それでは法案の方に入りたいと思うのでありますが、先ほども志苫委員の方からずっと御質問ありましたから、多少重複する点もあるだろうと思いますが、御答弁はきちっとしていただきたい。先ほど答弁しましたからなどというような簡単なやり方でないようにしていただきたい。  五十九年度から、財源不足に伴う補てん穴埋めとして、特別会計借り入れをやめ、特例措置で補うこととしておりますが、特金借り入れを中止した理由に、「地方財政の健全化に資するため」、こう言っておりますが、具体的には、健全化というのは一体どういうことなのか。まあ、いろいろわかりますよ。今まで五十八年度まで十一兆五千百億円もいわゆる借金という名目であった、だからこれを精算するんだ、こういうふうなこと、これもわかるんです。だけれども、これは例のオイルショック以後特会の方が借り入れして、そして何とかしておけば景気がまた回復するであろうというのが、実際は景気が回得しなかったものでずるずると今日にまで至った。だから、親心でやったのが借金が重なっちゃった、こういうふうなことにもなるのじゃないかと思うのでありますけれども、そんなところを十分承知しながら「地方財政の健全化に資するため」という今回の法改正、これは一体具体的にはどういうふうなことを意味するのか、伺いたい。
  122. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 今回の改正は、これまで交付税に不足を生じた場合には必要な額を外から借りてくると申しましょうか、運用部から借り入れ加算するという方式をとっておったわけですが、その結果借金が十一兆五千二百億円にもなってしまったと、こういうことを今後続けた場合にはその償還の負担のために国の財政地方財政も大変な問題を抱えることになる、そういうことで借り入れ方式をやめたわけです。  新しい方式は、言うなれば一般会計財源の枠の中で必要な特例措置を講ずるということにいたしております。借金方式をやめて一般会計との間のやりとりによる特例措置、こういうことにしたわけであります。ですから、そういう意味ではどうしてもこの地方の歳出について徹底した見直しがその前提になると思います。そういった意味で「地方財政の健全化に資するため」と、こういうように申し上げているところでございます。  繰り返しますけれども、別の財源をたくさん持ってきて健全化するというのじゃなくて、やはりこの借金をやめて一般会計との間のやりとりで必要なものは措置しますけれども、しかしその前提として歳出の徹底した見直し、こういうことを考えているわけです。これが全体として地方財政の健全化を志向していると、こういうことでございます。
  123. 原田立

    ○原田立君 大臣、よかれかしと思って改革なさる考え、それは僕は結構だと思うんですよ。だけれども、急激にばっとやった場合には、やっぱりいろいろ混乱が生じますね。やっぱりそれは漸次行われていくということにしないといかぬと私は思うんですよ。だけれども、今度の場合にはばっとやっているような感じを私は持つんです。大臣、所見いかがですか。
  124. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 今財政局長説明をしましたように、五十年の初期から特会の借り入れが行われるようになりまして大変な額に借入金が上ってきた、こういうことをこのまま放置しておきますと地方財政の基盤を揺るがしかねない状態になる。これまでもこういういろいろ話は出ていたようでございますけれども、いつかは借入金依存体質を断ち切るような処置をしなければならないということで今回このようなことになったわけでございまして、いずれにしても何らかの形で従来の借入金方式というものを見直していかなければならぬということでやらざるを得なくなったというのが現状でございます。
  125. 原田立

    ○原田立君 五十九年度の地方財政対策を見ても、一兆五千百億円の財源不足に対して八〇%の一兆二千五十一億円を建設地方債、それから残りの三千四十九億円についても千二百八十九億円は交付特別会計の償還分を先送りにする、あるいはまた三百億円にしても先送りにする。結局千四百七十六億円のものについてはいわゆる財源不足に対する地方交付税の対象になっている。八〇%の建設地方債をもって対処するというのはちょっとこれはひどいじゃないでしょうか。
  126. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 五十九年度の地方財政対策におきまして一兆五千百億円の財源不足に対して一兆二千五十一億円の地方債措置を講じた。結果的に確かに八割程度が地方債ということでございますが、これは初めから財源不足に対して何割を地方債によって補てんするというそういう考え方で臨んだんしゃなくて、これまでもそうでありましたが、財源不足に対する措置として、まず建設事業について建設地方債がどこまで活用できるか、どこまで地方債で対応できるかという議論をいたしまして、その残余について交付税の特例措置を講ずる、こういうことにした結果、五十九年度の場合は地方債措置が一兆二千五十一億円になった、こういうことでございます。  過去の地方財政対策を見ましても、財源不足類 の総額が非常に大きくなった場合においては、地方債の活用というのはおのずから対象事業の総量によって限界がありますので、財源不足のトータルが非常に大きくなった場合には交付税の特例措置が大きくなってきている。それから、財源不足の額が小さくなった場合には交付税の特例措置が小さくなっているというのがこれまでの傾向でありまして、それは建設地方債の活用をまず検討して、しかる後、交付税の特例措置を決める、こういうやり方をしてきたからでありまして、初めから何割を地方債によって措置すると、こういうやり方をしたわけではないのでございます。
  127. 原田立

    ○原田立君 ですから、一兆五千百億円の赤字でしょう。財源不足でしょう。これを交付税の増額が三千四十九億円、建設地方債増発一兆二千五十一億円、こういう処置の仕方が健全化とは余りに遠いんじゃないですかと聞いているんです。もしもこんなのを、これ毎年毎年でしょう、これは。今回は五十九年度ですよね。じゃ、六十年度はどうするんですか。六十一年はどうするんですか。同じようなことをやっていったら大変な問題になるんじゃないでしょうか。しかも、この三千四十九億円のうち千二百八十九億円は六十六年以降に先送りでしょう。それからあとの千七百六十億円についても三百億円は六十六年からの先送りでしょう。    〔委員長退席、理事真鍋賢二君着席〕 実際手当したというのは千四百六十億円だけじゃないですか。そうなると、こういうシステムは健全化のために資する手段であると、こういうふうにうたいとげておりますけれども、自治省、これは健全じゃなくて、さっきも話があったけれども、お金をもっと突っ込んでやるわけにいかないんでこうやったんだと、こういうようなことですから、だけど、それじゃ余り健全化にならないんじゃないですかと言っているんです。
  128. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 私どもも、五十九年度の地財対策の具体的な詰めの過程におきまして、極力地方債への依存を下げたい、できるだけ新しい方式による交付税の特例増額で対処したいという基本の姿勢で臨んだわけでありますけれども、国庫当局の立場からしますと、国の財政におきましては建設事業を一〇〇%建設国債に依存している、そういうこととのバランスといいましょうか、均衡から、地方財政についても投資的経費については極力地方債を活用してもらいたい、建設地方債を活用してもらいたい、どういう主張があり、その過程で私どもとしては、少なくとも新しい方式を今回採用しようとするわけでありますから、地方債への依存、建設地方債の活用といいましてもそれへの依存は少しでも下げたいという主張をいたしまして、最終的にいわゆる財源対策債の充当率を五十八年度は九〇%であったものを八五%にする、五%だけ引き下げたということでございます。私ども気持ちとしてはもっと引き下げたかったわけでありますが、五十九年度の財政状況全体の中でこういった形で決着せざるを得なかったわけであります。  したがいまして、六十年度以降の地方財政対策考え方、我々の基本的な姿勢としては、やはり地方財政の健全性ということを達成するためにその地方債への依存度は極力引き下げていきたい、少しでも下げていきたい、このように考えております。
  129. 原田立

    ○原田立君 交付税特会借り入れを廃止、それから八〇%の建設地方債の発行、その他残りは特例措置で補てん、こういうシステムは、従来の特金借り入れは二分の一国庫負担という措置、そういう面から比較してみると前進していませんね。後退していますね。それは借金財政の体質を変えさせるのだという手段としては、これはある程度私もわかりますよ。だけれども、先ほど言ったように急激な変化というものは地方財政全体に大きな混乱を起こすから、だから漸次行われていくべきである。こういう面からいきますと、これは非常に混乱する手段である、大幅な後退であると、こう私は指摘せざるを得ないんですが、どうですか。    〔理事真鍋賢二君退席、委員長着席〕
  130. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 従来のやり方ですと、財源の不足を生じた場合には交付税会計がいわば外から借りてきて、その返済の二分の一を国庫が負担する。この方式に比べて今度の方式は、特会の借り入れはやめて一般会計との間の特例措置に切りかえるということでありますから、地方財政のサイドだけから見ますと確かに厳しくなっていると思います。外から借りてくるに比べれば、一般会計の枠内での特例措置ですから財源的な制約が強まりますので、どうしてもこれは地方財政にとっても厳しい状況になる。それは後退ではないかとの御批判だと思いますけれども、私どもとしましては、今の国、地方を通ずる財政環境のもとで、やはりこれまでのように外から借りてきて上積みするという行き方をこれ以上続けるわけにいかないと、このように判断して、地方財政にとっても厳しい内容ではありますけれども、外から借りてくる方式はやめて、本当に必要なものについては一般会計交付税会計との間のやりとりで対応していく、必要な額は確保していく、こういう方式に切りかえていきたいと、こういうことでございます。
  131. 原田立

    ○原田立君 じゃ、五十九年度は先ほど来提示されているんですからわかりますが、六十年度はどうなさるんですか。六十一年度はどうなさるんですか。同じようなシステムになるんですか。それは先の話だからまた今のところ考えてないと言えばそれっきりなんだけれども、どうですか。
  132. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 六十年度、六十一年度の地方財政がどういう状況になるのか非常に不確定な現段階で、具体的にどういう措置を講ずるかについて御答弁申し上げられる状況にないんですけれども、ただ私どもとしては今回御提案申し上げている方式で対処していきたい。すなわち、今の状況からすれば、ある程度は建設地方債の活用はせざるを得ないと思いますが、しかしその建設地方債の活用に当たりましてもその依存度はできるだけ下げていきたい。気持ちとしては下げていきたい。そして、なお不足する財源については今回御提案申し上げている方式による交付税の特例措置で対応していきたい。したがって、基本的なパターンとしては五十九年度と同様の形になるであろうと、このように考えておりますが、その場合の基本的な私どもの心構えとしては、地方債への依存は極力下げていきたいと、このように考えております。
  133. 原田立

    ○原田立君 地方債の方の依存度は下げていきたいということは、交付税の方面で多少増額をしていくようにしていきたい。これは逆に言うとそういうことになりますね。
  134. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 財源不足額を一定とすれば地方債を下げた分だけ交付税の特例措置がふえていく、それはそのとおりでございます。ただ、実際の特例措置の絶対額がふえるか減るかということは、これはまさに六十年度の地方財政の歳入歳出全体を詰めてみないと何とも申し上げられない。必ずことしよりもふえるかどうか、これはわかりません。しかし、その特例措置を講ずる中で地方債の依存は少しでも下げていきたい、こういうことを申し上げているわけでございます。
  135. 原田立

    ○原田立君 公債費の問題あるいは地方債の問題、もうちょっと先へ行って議論しますけれども地方交付税法第六条の三の二項で、この前も質問したんですけれども、「普通交付税の総額が引き続き」、また「各地方団体について算定した額の合算額と著しく異なる」云々、その場合には「制度改正又は」「率の変更を行うものとする」と、こうなっておるわけでありますが、この中の「引き続き」と「著しく異なる」とは具体的にどうなのか。現状はまさにその時期である、まさにその対象の存在であると、こう思うんですが、どうですか。何かこの前、大臣は、いやそんなことを言ってもないそでは振れないんだという意味合いの答弁をなさっているんです。だけれども、それじゃこの法律が空文化してしまう。だから「引き続き」云々と、それから「著しく異なる」場合と、こういうのは現状がまさしくこの法律を適用すべき段階では ないかと思いますが、どうですか。局長が答弁したら大臣答えてくださいよ。
  136. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 初めにちょっと。  これまでも本委員会で幾たびか御答弁申し上げたわけですが、「引き続き」という言葉の解釈は、二年間にわたって財源不足の状態が続き、三年度目以降も財源不足の状態になるであろうと、そういう状況のときが「引き続き」だと、こういう趣旨の答弁を申し上げております。それから「著しく」というのは、地方団体全体の財源不足額が普通交付税の額に対して一割以上になる場合が「著しく」だと、こういう趣旨の御答弁を申し上げてきております。  五十九年度の地方財政の状態はまさにそういう状態、そういう事態になっている。したがって、私どもは五十九年度の地方財政交付税法第六条の三第二項の規定に該当すると考えております。
  137. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 私が先ほど申し上げましたのは、言葉が足りなかったのかもしれませんけれども、今局長が申しました六条の三の二項に今の財政状態が当たる。しかし、その中で交付税の税率を上げるということはなかなか国の財政上困難であるということを申し上げたわけでございます。そのために、先ほど来御説明申し上げておりますように、特例措置を講じてこれをカバーしていかなきゃならぬ、こういう措置を講じようとしているわけでございます。
  138. 原田立

    ○原田立君 私は、地方債がどんどん増発されて借金額がふえていくような、そういう状態は地方においても余りよくないと思うんですよ。あるいはまた、逆にそういうふうにしていい場合も、いい団体もあるはずなんです。両面があると思うんですね。だから、今も大臣地方交付税率三二%を上げるわけにいかないんだと、こういうふうにもう最初からぱっと断定しておられるけれども、この場合には率の変更をやらなきゃならないんだと、こういうふうに法律では書いてあるわけなんです。だから、それをぱっとやれないのだということを言ってほかの方法を講ずるんじゃなくて、やっぱりやれるように御努力願いたいと思うんですが、どうですか。
  139. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) 結果を申し上げたわけでございまして、本来なら税率をこういう際には上げるべきであるということは当然私どもは思っているわけでございまして、国の財政との関係がございましてこうした結果になったのでございまして、最初から決めつけて、上げる必要はないというふうに思っていたわけでは毛頭ございません。
  140. 原田立

    ○原田立君 じゃ局長、もし制度改正になるならば、財源不足に伴う国、地方負担ルール、それはどうなりますか。先ほどは、五十九年度の場合には建設地方債八〇%、交付税特例措置が二〇%、じゃ六十年度はどうするんだと言ったらば、地方債はできるだけ少なくしていきますと、こう言われている。少なくしていきますというのはわかるけれども、じゃ一体どのぐらいを目安にしていこうとなさるんですか、負担ルール
  141. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 結局、財源対策としてどの程度地方債を活用するかという問題は財源状況が明らかにならないと決まらないわけです。結局、例えば六十年度の場合でありますと、六十年度の歳入歳出をそれぞれ詰めて、財源不足の額が具体的にどの程度になるのか、そうしてその場合に地方債の活用の対象となり得る投資的経費の地方負担額がどの程度になるのかなと、そういったいろんな要素を全部見きわめないと、具体的に、じゃ地方債の充当率を幾らにするかというようなことは決められないわけでございますが、ただそれは、私どもの心構えとしては、地方債への依存度、具体的にはいわゆる財源対策債の充当率をできるだけ引き下げてまいりたい、このように申し上げている次第でございます。
  142. 原田立

    ○原田立君 自治省が試算として五十九年四月十二日に発表しておられます「地方財政参考試算」、六十年度は一兆九千七百億円の不足額があるが、六十一年は一兆六千四百億、六十二年度は一兆七百億と、こういうふうな試算を公表なさっておられるけれども、先ほどもちょっと局長言っておられたけれども、何か六十五年にはゼロにしていきたいというふうな意味のことを言っていましたね。それとこの試算との関係性はどうなりますか。
  143. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 今回御提出申し上げました参考試算におきましては、国の中期財政試算の前提に合わせまして、例えば六十年度以降の名目経済成長率を六・五%と見るとか租税の弾性値を国税三税については一・二、地方税については一・〇とすると、こういうような幾つかの前提を置いて計算し、かつ、ただいま先生が引用されました数字は、いわゆる一般歳出につきまして予備枠を考慮した場合の数字でございますが、そういう国の中期財政収支試算、これは六十二年度まで国が計算しておりますが、それと全く同じ条件で計算した場合こういう数字になるということなんであります。  一方、六十五年度までに国の財政を立て直すという趣旨の御答弁申し上げましたが、これは「八〇年代の経済社会の展望と指針」におきまして、六十五年度までにいわゆる特例公債依存体質から脱却するということが示されておるわけであります。したがって、今回お示しした私ども参考試算は、六十五年度までに赤字公債依存体質から脱却するという、長期といいましょうか、中長期の見通しと直接的な関連はございません。あくまで国の方が国会に御提出申し上げました中期財政収支試算と同じ条件で六十二年度まで計算するとこういう姿になるということでございます。
  144. 原田立

    ○原田立君 財政の健全化をはかるバロメーターとして公債費負担比率というのがあるんですが、その実態は一体どんなふうになっていますか。
  145. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 私ども地方財政財政構造の健全性を見る一つのバロメーターとして公債費負担比率というものをとっておりますが、この公債費負担比率の最近の推移を申しますと、五十五年度が地方財政全体として一〇・七%でございます。五十六年度が一一・七%、五十七年度の決算、最近わかりまして、これですと一丁七%というように逐年上昇を続けております。
  146. 原田立

    ○原田立君 私もその数字を教わっているわけでありますけれども、じゃ五十八年度は一体どうなるのか、五十九年度はどうなるのか、六十年度は国全体が一五%以上になってしまうんじゃないかというふうに言われているんですけれども、そういう心配はありませんか。
  147. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 公債費負担比率は五十七年度までは決算上の確定数字がございますから、先ほど申し上げたようなことになっておりますが、これは五十八年度以降どうなるのか、最終的な確定数字は私どもまだ把握しておりません。しかし、地方財政計画上の公債費の推移、一般財源の推移というものをベースにしてこれから将来を展望いたしますと、大体年率で公債費比率にいたしまして一%程度の上昇傾向を続けております。ですから、これでいきますと恐らく昭和六十年度には一五%程度のラインに到達するんではないかと、こういう予測を持っております。
  148. 原田立

    ○原田立君 要するに一五%になるとそれはどうなんですか。いいんですか、悪いんですか。
  149. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 私ども、いわゆる公債費負担比率のあるべきあり方といいましょうか、一つの見方としまして、若干計算式が違うのでありますけれども地方債の許可に当たりましては、これは地方債の許可の方では制限比率と申しておりますけれども、基本的な考え方は同じですが、その公債費負担比率と同様の概念でとらえた地方債の制限比率が二〇%を超しますと、これはもう財政上非常に危険だということで特定の地方債の許可を制限いたしております。で、それより下の段階で、具体的に数字を示してはおりませんけれども、ただ私ども財政運営の指導上の一つのラインとして、警戒ラインと申しましょうか、経験的にこの線を超したら危ないなというように考えるラインとしては、公債費負担比率が一五%を超すということは非常に問題だと、このように考えております。
  150. 原田立

    ○原田立君 私もそう思って、大体承知して質問 しているんです。局長の口から言われた方がいいと思ったのであえて答えてもらったわけでありますけれども、五十七年度で一五%以上の団体数が千四百八十四団体ある。そうすると、これは全体の四四・九%、約半分になっているんですよ、約三千三百団体あると言われていますから。この一五%以上の千四百八十四の中に二〇%以上の団体が実に五百四十五団体もある、一六・五%。そうすると一五%以上二〇%未満の団体が九百三十九と、これは非常に重要なことじゃないかと思うんです。警戒ラインは一五%以上でしょう。先ほど局長は二〇%になればぎりぎりで危ないんだと言われたけれども、そうじゃないんですよ。一五%以上は危ないんですよ。現実に今はもうそのように四四・九%、半分にもなっているんです。これはゆゆしき問題だと思うんですけれども、どういうふうにとらえられていますか。
  151. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 公債費負担比率の現状に対する認識といたしましては、私ども先生と全く同様の気持ちでおります。今のような状態で公債費負担比率が上昇を続けるということは、地方財政の弾力性を著しく失わせまして地方公共団体が必要な行財政活動がしにくくなると、こういう意味で非常に憂えているわけでございます。したがいまして私どもは、先ほど来御答弁申し上げておりますように、今後の地方財政対策への取り組み方としましては、こういう公債費の現状をも踏まえて極力地方債への依存を引き下げてまいりたいと、このように考えているところでございます。
  152. 原田立

    ○原田立君 結論はそうなんですよ。  それで、歳出に占める公債費の構成比は、五十年度が九千六百六十四億円で四・五%、五十七年度が四兆二千六百十五億円で九%、倍増していますね。それから五十九年度が五兆一千六百三十四億円で一〇・七%、一〇%以上を出ておりますけれども、これも非常に危険な状態であるというふうに私は思うんです。  それで、歳出に占める公債費の構成比、公債費負担比率の拡大など、地方財政はこういうふうに、局長も言われるように厳しい状況にある。その上、今まで指摘してきたように、財源不足に伴う地方債増発を考えると最悪の状態を予測せざるを得ない。で、結論は地方債増発を抑制していきたいんだというようなことになる気持ちはわかるけれども、ただそれだけの精神的なものじゃなくて、明確なガイドラインというものがあってしかるべきだと思うのですよ。いかがですか。
  153. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 我々は過去の経験から、地方公共団体の公債費負担比率が一五%を超すような事態というのは非常にこれは危険だと、こう考えておりまして、そのような事態が地方財政全体としてそういう状態に近づきつつあるということは、実は大変なこれは問題であると思っております。そういった意味で、地方債の発行は全体としては抑制していかなきゃいけない。特に地方財政対策として地方債を活用するということについてはそういった事態も十分踏まえて対応していかなきゃならないと、このように考えておりますが、ただ、そういう気持ちを持って地方財政対策に臨んでいるわけですけれども、これからの具体的なガイドラインといいましょうか、方針として、歳入における地方債依存度を具体的に幾ら以内にとどめるとか、あるいは歳出における公債費の割合を何%以内にとどめるとか、そういうことを数字的に確定的に今申し上げられる状況にはない。六十年度の具体の地方財政状況に即応して、今申し上げたような気持ちで、基本的な考え方で対応していきたいと、こういうふうに申し上げているところでございます。  今この段階で具体的な数字をもってこうだということは御答弁いたしかねる点を御理解いただきたいと思います。
  154. 原田立

    ○原田立君 そういうふうに言われたのでは質問がしにくくてしょうがないのだけれども、実は私は、今度はこういう質問をしたかった。  長期化する財源不足に対処するため、今後は建設地方債増発による補てんがますます増加することになる。あなたは極力抑制すると、こう言っているけれども、じゃ、この補てんの限度額はどのくらいに見ているのか、また歯どめはどうするのかということを実は聞きたかったわけです。  あなたは建設地方債については極力抑制すると言うだけで、今ここで数字的なことは言えないと、こういうふうに言われると、もうそれ以上何にも言えなくなっちゃう。だから、これはこれで、こういう質問したかったのだけれども、これはこれだけにします。  実は、地方交付税率の推移について五十年度以降すっと資料をちょうだいして調べたんでありますけれども、実質的な交付税率は五十年度が四三・二%、五十一年が四二・九%、五十二年が四三・六、五十三年度が四二・七、五十四年度が四三・四、五十五年が三八・三%、五十六年が三四・七%、五十七年が三八・九、五十八年度が三五・二、そして五十九年度が一一・三と、こういうふうな数字の表をちょうだいしているんですけれども、これは間違いないのだろうと思いますが、これは五十年からはずっと五十四年に至るまで四〇%台、実質的なものは。ただ、交付税の特会によって借り入れがあって、それが加算されてこういうふうなことになったのだろうと思うのです。  私は、借金という性格のものでふえたのは、ふえたこと自身はうれしいけれども、金まりうれしくはない。これは、地方交付税率は三二%から三三に行って三四に行ってと、こういうふえていってのことであるならば、これはこれで最もよかったなと思うのでありますけれども、実際は借金でふえているんですからちっともうれしいとは思わない。だけれども、それがぱちゃんとちよん切られた場合に、今度は、五十九年度は三丁三%と、三二%を割るところまで来ているわけですね。これはちょっと局長にも大臣にもお聞きしたいんですけれども、余りがくんとやり過ぎるのじゃないかと思いますけれども、どうですか。
  155. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 過去におきまして、特に五十年度以降いろんな特例措置を講じました結果、本来の国税三税に対する現実に地方へ配分された交付税の率が三二%をかなり大幅に上回ってきたことは御指摘のとおりでございます。この率を見ますというと、景気の後退その他によりまして国税三税が落ち入んだときに特例措置による上積みが行われて、その結果、分母が小さくなって分子が特例措置で大きくなるわけですから率は大きくなる。一方、五十九年度は幸い国税三税も五十八年度に比べますとかなりふえまして、本来の交付税法規定に基づく交付税の額が前年度に対比しますと相当ふえたと、こういうような事情もあり、また御審議いただいております法案の中にありますように、特別会計借り入れ利子のおおむね二分の一を負担すると、こういう前提に立った結果、最終的な交付額を三税で割り返しますと三・三%となったわけです。ですから、非常に率で計算しますと大きな変動があるわけですけれども、結局これは国税三税の分母の方が大きく変動しておりまして、分母が小さくなったときには特例加算で交付額をある程度安定的に確保しておりますから、率としては上がる。逆に、五十九年度のように三税がある程度ふえてまいりますと特例措置は当然に小さくなります。その上に、さらに利子負担という問題がありまして三二を若干割り入むと、こういう状態になった次第であります。  もちろん、私ども地方財政の立場からしますと、利子負担については何とか国の方で従来どおり負担してもらいたいという折衝を最後まで重ねたわけですけれども、五十九年度の財政環境のもとで、残念ながら五十八年と同様に利子については、元本の地方の持ち分に対応する利子交付税会計負担せざるを得なかったということで、結果的に三二%を割り込むような状態になったわけでございます。その点は私どもは非常に残念に思っておりますが、ただ、今回御提案申し上げております新しい方式によって、特例措置を講ずることによって、地方財政の運営には支障を来さないように必要な措置は講じたつもりでございま す。
  156. 原田立

    ○原田立君 交付税の基本にかかわる問題として、借入金利子充当分が交付税総額三二%の中から減額されておりますけれども、五十九年度の場合は三千六百三十八億円となっておりますが、これは交付税制度の趣旨に反するのじゃないか、交付税法第六条の条文からも完全に反しているのじゃないかというふうに理解するのですが、どうですか。
  157. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 私どもは、この交付税特別会計借り入れが行われた経緯あるいは交付税制度の趣旨、いろんな見地から、特会の利子は全額国が負担してしかるべきだという主張を五十八年度以来続けているわけでありますけれども、御案内のような国の大変厳しい財政状況のもとで、結局最終的に、これまでの借入金の元本の国と地方負担割合に応じて地方負担分に見合う利子交付税会計負担することになったわけでございます。そういう意味で、この制度の趣旨といいましょうか、本来の望ましい姿から見ますと、私どもは大変残念な結果であったと思っております。  しかし、法律論といたしましては、これを交付税法附則規定する、言うなれば本則の特例として、利子負担した残りが現実に地方に配分される交付税の額であるという規定を今回置いたわけでございまして、法律上はその両方で読んでいくということでございます。ですから、望ましい姿といいましょうか、私どもの本来の希望からすれば後退した結果になっておりますけれども法律論としてはそれを差し引いた残りが現実に地方に配分さるべき交付税である、そういうことを交付税法附則規定しようとしているところでございます。
  158. 原田立

    ○原田立君 特例措置を、附則じゃなくて法律上の条文の中に入れるような考えはないですか。というのは、今度のように三二%を割り込むようなことがありますから、ただ附則でちょいちょいとやるようなやり方じゃなくて、三二%の確保はからっとやるのだと、こういうふうなことを法律上、本則の方に入れるべきではないだろうか。いかがですか。
  159. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 今回御審議をお願いしております法律案内容は、まさに今の異常な財政環境のもとで必要な交付税総額を確保するための特例措置について規定しよう、こういうことで御審議をお願いしているわけであります。したがって、これはあくまで当分の間の当面の特例措置でございます。したがって、これは交付税法本則に規定するようなものではない。あくまでこれは当分の間の措置でありますから、附則規定することが適当だ、このように判断しているところでございます。もし本則に規定するということになれば、やはり将来にわたってその制度でずっと行くのだという恒久的な改正でなきゃならない。そうしてまた、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、私どもの希望とするならば、例えば交付税率の引き上げとか、その他恒久的に地方財源の不足に対処し得るような改正が望ましい。そういうものができるならば、それは当然本則で規定されることになっておりますが、残念ながら、今の財政状態のもとではそういった本則で将来にわたって規定するようなことができる状態でなかった。そのために附則で必要な特例措置を定めることをお願いしているところでございます。
  160. 原田立

    ○原田立君 それでは、法律上の中に入れられるような状態になるには、一体何年ぐらいかかるんですか、予測は。
  161. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) この点につきましては、まさにこれからの国の財政地方財政がどういう状態で推移するかということと関係があるわけでありまして、国の財政について大蔵省の方からお示ししているような中期財政収支試算あるいは私どもが御提出申し上げました「地方財政参考試算」、こういったものからすると、今申し上げましたような交付税法の本則を手直しできるような状態がすぐには来そうもない、そういった状態を政府としては、何とか六十五年度までに国の財政を根本的に立て直したいということを申し上げているわけですが、そういう状況にならなければ交付税制度についても本則で根本的に規定を整備するというようなことができないんじゃないか、このように考えております。
  162. 原田立

    ○原田立君 もうやりきれないですね、局長の答弁を聞いていると。本則に入れられるような状況が近いうちに実現することを私は希望します。  この改正案によりますと、地方財政の健全化に資するため「交付税特別会計における新たな借入れは原則として行わず、」としておりますが、「原則として」というのは一体どういうことなのか。これは、ただ単に新たな借り入れは行わないというふうに書いてあれば、理屈としてはわかるんですけれども原則として行わない。じゃ、変則的には行うということがあり得るのか、この点どうですか。
  163. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 私どもは、国、地方を通ずる今の財政環境のもとで地方財政の健全性を達成するために、今回借り入れ方式をやめまして一般会計との間の特例措置方式に切りかえようということを御提案申し上げているわけであります。  そこで、原則として借り入れを行わないということは、今の財政状況を踏まえて、ある程度将来の財政をも展望して、これ以上借金財政交付税特会借入金による方式は行うべきでないというふうに判断して今回の特例措置をお願いしているわけでございます。したがって、今の財政状況が、こういった財政状態が変わらない限りは借り入れはやらないということを「原則として」ということで表現しているわけでございます。  原則ですから、じゃ、例外はどうだというふうに御指摘があるんだろうと思いますけれども、私どもはもちろん、予測し得ないような大きな経済の変動によって財政が大きく変わるというような事態が起これば、それに応じて必要な措置を考えなければいけないと思いますけれども、少なくとも私どもは、現在見通し得るような財政状態のもとでは借り入れはしない、こういうことでございます。
  164. 原田立

    ○原田立君 それでは、今まで関連してずっとやってきましたけれども、ちょっと角度を変えて、年度間調整という問題についてお伺いしたいと思うんですが、五十九年の一月十七日、「地方財政対策制度改革が固まった。」こういう報道がなされているわけでありますが、そして「交付税を一定の限度内で増やす「年度間調整」という考え方を採り入れ、」云々というようなことがことしの正月ごろあったわけでありますけれども、こういう考えはもうやめたのですか。
  165. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 今回御提案申し上げております交付税法改正によって具体的に五十九年度に講じようとしております特例措置、これはまさに年度間調整措置と言うことができると思います。ある年度で財源が足りない場合には特例的に加算する、そして、それは将来それを減額精算する、これはまさに年度間の過不足を調整する措置でありますから、年度間の調整措置と、このように言えると思います。  ただ、新聞等が一時報道したのは、年度間調整制度をつくる、制度化をするというような報道がなされましたが、私どもは、いわゆる年度間調整の制度化とは考えておりません。  いわゆる年度間調整制度というのは、国会の御審議を経ないで、いわば政府の責任で、交付税の総額について一定の範囲内で増額をしたり減額したりする権限を政府に付与していただく、政府の責任で増減をする、こういうことを私どもは年度間調整制度、このように理解しております。そういうものではない。いわゆる年度間調整を制度化するものではない。しかし、個々毎年度法律をもって御審議をいただいて、法律によって特例措置内容を決めるわけですが、その内容は年度間の財源の過不足を調整するわけですから、年度間調整措置ではある、このように理解しております。
  166. 原田立

    ○原田立君 そうすると、五十九年度のこの提案されているのについては、いわゆる年度間調整と いうふうに目して見ていい項目はどれですか。
  167. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 今回御提案申し上げております改正法律案の中で、年度間の過不足を調整するという措置に該当するものは三百億円、これは今回加算して、かつ将来減額するわけですから、これは年度間調整措置に該当すると考えております。
  168. 原田立

    ○原田立君 だけれども、三百億円は六十六年ないし六十七年に百五十億円ずつ返さなきゃいけないんでしょう。それでも年度間調整と言うのですか。  それと、もう一つ、千二百八十億ですか、あれも六十六年度以降に返済を延期する、償還を延期するということがありますね。これも年度間調整というのに当たるのですか。
  169. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 年度間調整の調整措置というものの理解の仕方にもよると思いますけれども、典型的なものとしては、ある年度で財源が足りない場合には特例的に加算する、そして将来それが返済可能になったときに、これを返済するというか減額する、それが典型的な年度間調整措置であろうと思うんです。  そういう意味では、今回御提案申し上げておりますうちの三百億がまさにそれに該当する。それから、それ以外のものでも、交付税特別会計がこれまで借り入れたものの中で今年度返済予定しておりました千二百八十億円ばかりのものを、その返済を将来に繰り延べた。これも確かに今年度の交付税の増額という効果を生じ、将来返さなければいけない、返済を先に延ばしたという意味では、それは年度間調整という見方もできると思います。それからさらに、今回特例措置の中で、将来減額はしませんけれども、千四百六十億円については、今回この段階で加算しておりますから、その限りにおいては年度間調整措置として広い意味では入ってくると思います。  ですから、年度間調整措置というものを、特定の年度で講じた特例措置全部を年度間調整措置というふうに見ることもできますし、それから非常に狭く解釈すれば、ある年度で加算しある年度で減額するというものが典型的な年度間調整措置だと、このような見方もできると思います。
  170. 原田立

    ○原田立君 これは新聞に出ている情報なんですけれども、最大限交付税の一割あるいは国税三税の三%ぐらいが年度間調整の具体的内容であるとか、こう言われておりますけれども、じゃ、こういう考え方はやめたということですね。
  171. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 五十九年度の交付税制度改正の論議の過程で、いわば政府の権限で、法律改正をまたずに一定の枠内で交付税総額を増額しあるいは減額できるようにしてはどうかという議論があったことは事実です。そのことを新聞が報道したのではないかと思いますけれども、そういうことは私どもは採用しない。あくまでこの特例措置は、必要があれば特例措置を講ずるということは、今回御提案申し上げておりますように法律に、附則第三条で規定します。しかし、具体的にどういう内容特例措置にするかは、附則第四条で書いておりますように、毎年度、法律によって国会の御審議を経て決めていく、政府の責任だけでやってしまうのではなくて、国会の御審議を経て決める、こういうふうにいたしたいと考えているわけです。そういう意味で、新聞等が当初報道したようないわゆる制度化は私どもは採用しなかったわけでございます。
  172. 原田立

    ○原田立君 採用しなかったということでよくわかりました。  ところで、行政改革に関する第三次答申で、これは七十二ページにあるんですけれども、「地方交付税の年度間調整は、従来からある程度行われてきているが、」云々、こういうふうに書かれているわけでありますけれども、これは一体具体的にどういうことを指しているんですか。
  173. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 臨調答申が述べておりますことは交付税制度の過去の運用の実態を踏まえた表現であろうと思いますが、これまで幾たびかその年度で交付税が不足した場合に特例措置を講じ、それを後で減額する、返済するということは行われてきております。例えば昭和三十九年度に給与改定財源が不足したために交付税会計で百五十億円借り入れをして上積みいたしました。しかし、それはその後三十億円ずつ五年間で返済しております。これなども典型的な私は年度間調整措置であろうと思うんです。  そういったことはその後も幾たびかある。例えば昭和四十三年度、四十四年度、四十五年度の場合には、当初の段階では交付税を減額いたしました。しかし、これらの減額したものはその後増額措置を講じている。昭和四十六年度のニクソンショックのときの交付税財源が不足したときに、それまで減額したものは全部戻している、こういうような過去の経緯があります。それから四十七年度にも特例措置がありました。四十九年度にも特例措置がありました。それから五十年度以降は、御案内のように交付税特会借り入れという形で特例措置が講じられておりますが、これはいずれも、そのある年度の交付税の不足を補うために増額が行われる、また年度によっては減額が行われる、そういう意味で年度間の調整措置は幾たびか行われた、このように考えております。
  174. 原田立

    ○原田立君 今度の予算の中に、自治省は今年度のいわゆる目玉として「まちづくり特別対策事業」というものを行おうとして三千億円の予算を計上しておりますが、この目的及び実施方式、それから地方と国との財源負担、これらについて御説明いただきたい。
  175. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 今回「まちづくり特別対策事業」というものを考えておるわけでありますが、これの考え方は、最近の厳しい地方財政環境のもとで、五十九年度の場合で申しますと、地方交付税の算定上投資的経費を十分に措置できない、しかし地方公共団体はやはり地域の整備を図るために多くのニーズを抱えている、こういうような状況のもとで何とかこれに対応したい、対処したいということで考えたものがこの「まちづくり特別対策事業」でございます。  この事業は、各地方公共団体が主体となりましてその地域を整備するための計画をつくっていただく、各団体が自主的に創意を生かして計画をつくっていただく、それに対して地方債財源措置を講じようということでございます。もちろんそう言っても財源には限りありますから、具体的には各地方団体に対して、例えば今の過疎債とか辺地債の配分を行っていると同じように、一定の客観的な指標でもって総枠を配分しまして、その中で各団体の具体的な事業についてその枠内で地方債を許可していく、そして魅力ある町づくり、地域づくりをやっていただこう、こういう考え方でございます。  しかし、単なる地方債では、こういう厳しい財政環境でありますから、地方団体もなかなかこれを活用できない。特に財政力に恵まれない団体では一層その傾向が強いわけです。そこで、この「まちづくり特別対策事業」のための地方債については、その元利償還金について一部交付税の基準財政需要額に算入していこう、そうしてその算入に当たりましては財政力の乏しい団体ほど算入率を高めよう、こういう基本的な考え方で臨んでおります。  そういうことで、現在その具体的な配分の仕方あるいは事業の内容のガイドラインといいましょうか、ひな形といいましょうか、そういったものを検討中でございます。
  176. 原田立

    ○原田立君 それで、おたくの方から資料でもらったんだけれども、今もお話がありました一般財源三〇%、地方地方税、地方交付税等自前の財源、一般財源で三〇%持ちなさいと、あとの七〇%については地方債の発行はよろしい、地域総合整備事業債ということでやりましょうと。問題は、今も話がありましたけれども、この地方債の七〇%については元利償還金の一部を算入する。それは地方交付税措置で行いますよと、四分の一から二分の一ぐらいはやりますよということのようなんですね。  そうすると、地方交付税というのは総枠が決まっちゃっているわけです。だからやるところは 厚くいって、やらなかったところは薄くいってという、同じ一つの器の中でああだのこうだの、薄くなったり厚くなったりしているという、そういう措置なんですね。だから三千億の財源を、町づくりの予算を計上したのは、それはそれなりに結構だけれども、一般財源三〇%、地方債七〇%、これについては地方交付税措置で二分の一から四分の一の手当てしますよと、こういうところまで行くと、何だかおかしくなるんですけれども地方交付税というのは一つのコップの中の争いで、薄くなったり厚くなったりするような、そういう措置というのは余り自慢のできる対策ではないんじゃないか、こう思いますけれども、いかがですか。
  177. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 御指摘の点は、各地方団体の投資的経費の財源措置のあり方との関連でのお尋ねだと思いますけれども、もちろん、交付税の望ましい姿とするならば、地方団体の財源というのは基準財政需要額で、言うなればべたに人口とか面積を指標として算定することが望ましいと思います。今まではそういうことでやってきたわけですけれども、今の地方財政の現状では投資的経費の財源をべたにふやすほど余裕がない、残念ながらそういう状況にない。  しかし、そうかといって、交付税の投資的経費を抑えっ放しては本当に意欲を持って地域をよくしようとする地方団体が何にもできないということが果たして地方財政全体としていいんだろうか、こういうようなことも考えまして、本当に地域をよくするために意欲を持って自主的にいろいろ計画を立てているところについては財源措置をしていくということの方が地方財政全体のレベルアップの道につながるんじゃないか、その財源措置を将来、地方公共団体の共有財源である交付税によって賄っていく、これについては、国の二足の政策意図で決めてしまうということになるといろいろ議論が出てくると思うんですけれども、そこは各地方団体が自主的にいろいろ知恵を出してもらって、一定の枠内で、地方団体同士の調整によってこれが進められるならば決して不公平にならないんじゃないか、地方がイニシアチブをとってこの事業を進めていく限りにおいては、共有財源によって最終的な財源措置をするということがこの交付税制度の本質に反することにならないのじゃないか。むしろ地域のレベルアップを進めるという意味では、地方交付税制度の本質にも沿うのじゃないか、このようにも考えているところでございます。
  178. 原田立

    ○原田立君 ですから、地方団体が三〇%分を自分たちのひもつきでない地方税、地方交付税地方譲与税等の一般財源でやる、これはいいんですよ。だけれども地方債七〇%についての補助を地方交付税の中へ新たに算入いたしますよというのは、これはおかしいのじゃないですかと言うのです。というのは、本事業は地方交付税という一般財源を特定財源化するものになるというふうに私は思うんです。  本来、一般財源は全国あまねく普遍的な財政需要に対処するための財源であるんだし、このような「まちづくり特別対策事業」に適用することは、この地方交付税法の趣旨に反するんじゃないか。局長も衆議院の方で言っているが、その財源については地方債を予定しておる、「その地方債の配分につきましては、例えば過疎債とか辺地債などのように、一定の客観的な基準でもって各団体ごとの総枠を配分」する、こういう答弁をしておりますけれども、過疎債にしても辺地債にしても地方交付税法に明記されている。この新規の「まちづくり特別対策事業」というのは明記されておりません。となると、特定の事業に対して一般的財源であるべき地方交付税を入れるというのは法律上違反しているのじゃないですか。
  179. 石原信雄

    政府委員石原信雄君) 結局、投資的経費の財源措置をどのような形で行うかということでありますが、先ほど来申し上げておりますように、今の地方財政状況のもとでは、初めから一般財源で十分な投資的経費の財源措置について基準財政需要額で投資的経費の額を算定し得ない、こういう状況にあるものですから、地方債を活用して当面必要な町づくりを進めていただく、その償還費をこれから、いわゆる基準財政需要額の算定に当たって投資的経費の算定の一つとして事業費補正、投資補正というものがありますが、その中で措置していこうということでありまして、私どもは投資的経費の算定方法の一つとしてこれを考えているわけでありまして、交付税制度のねらいというものの、すべての地方団体について一定の行政水準を保障していこう、こういう基本理念には沿うと考えております。国が、こういう仕事をやれ、ああいう仕事をやれということをひもつきで指示していく場合は、おっしゃるとおり交付税制度の本質との関係で問題が起こると思いますけれども地方団体が一定の枠内で自主的に事業を決めていくということであるならば、私は、交付税制度の基本に反しない、このように理解しております。
  180. 原田立

    ○原田立君 そこは見解の相違ですね。  では次に進みます。  手数料の問題でありますけれども、今回の改正では、手数料の額は「実費を勘案して政令で定める額」としておりますけれども、政令をすべて地方公共団体手数料令とするのか、それとも個別政令は残るのか、あるいはまた限度額、定額のいずれを政令で定めることにするのか、この点はいかがですか。
  181. 津田正

    政府委員(津田正君) 今回、手数料の関係の改正をお願いしておるわけでございますが、私どもとしましては、なるべく地方公共団体手数料令に統一してまいりたい、こういうような基本方向でおります。  ただ問題は、手数料でも、いわゆる地方団体が取る手数料と国が取る手数料、これを一つ法律で書いておるものにつきましては、国の手数料が政令に載っかっていて地方団体の手数料が載っかっていない、地方団体手数料令の方を見なければいかぬというようなことではやはり使いにくい点もございますので、こういうものはやはり個別法の政令の中に国の手数料と地方団体の取る手数料を一緒に書かなければならないのではないか、かように考えておる次第でございます。  それから額の決め方でございますが、地方団体の手数料の個々の実態というものに即するように、なるべく上限で定めたいと考えでございますが、全国的な統一的にやらなければならない要請が強いものにつきましては、やはり政令の段階におきましても定額で書くものも残ると思います。
  182. 原田立

    ○原田立君 定額については地方公共団体の規則、個別政令、個別省令、地方公共団体手数料金、地方公共団体の条例、個別法律の六項目に分かれているようであります、おたくのほうからもらった資料によりますと。それぞれについて手数料の性格によって明確なる分類基準があるのだろうと思いますが、いかがですか。
  183. 津田正

    政府委員(津田正君) いろんな各般の手数料がございますわけでございますが、きっちりとした原則が実はないわけでございます。しかし考え方としましては、先ほど申しましたように、なるべく今回の法改正をやるに当たりましても行革本部等でもいろいろ議論されたわけでございますが、行革本部におきましても、なおもっぱら地方公共団体に関係するものについては地方公共団体手数料令に統一する方向で検討する、こういう方向が示されておりまして、この方向でやってまいりたい。ただ、先ほど申しましたように、一つ法律の中で国の取るものと地方団体の取るものを規定しておるような場合には必ずしも地方公共団体手数料令に統一することが得策とも考えられないわけでございます。
  184. 原田立

    ○原田立君 これまでは、手数料の改正については三年ごとに行われてきたんでありますが、今回から政令に移行した場合の見直しについてはどのような形をとるのか。  私は、この法律については実は反対なんです。というのは、政令で定めると各行政の側が自分の都合でどんどん値上げをするようなことをやられるおそれがある。それは国鉄の場合がそういう実 例として残っている。だから、そんなようなことがあってはならないということと、それから、我々立法府の手が全然届かなくなってしまう。そんなものわずかなものだからそのぐらいやってもいいじゃないかと、こういう九種類の十二項目ですか、出ておりますけれども、それも理屈としては行革という面でわからないことはないんですよ。だけれども、余り政令に委任する事項が多くなると我々の手の届かないところへ行ってひとり歩きをする、どんどん値上げをされていく、こういうようなおそれがあるんです。そういうものに対する歯どめとか限度額とかいうものがあるのかどうなのか、そういう点はまた考えているのかどうなのか、その点はどうですか。
  185. 津田正

    政府委員(津田正君) 今回の法案は三年ごとに見直しを行ってきて、前は五十六年度に法改正をお願いしたわけでございますが、その段階におきましては定額ないしは上限額という格好でお願いいたしました。その際の議論にもございましたが、そのように定額ないしは一定額、上限額ということだと適時適切な見直しということが不十分ではないか。しかし、そうかといって政府に全面的に委任するということも問題ありということで、今回の改正におきましては「実費を勘案して」という言葉を入れまして政府に枠をはめておる。実費というのはまさしく消耗品費、物件費あるいは直接人件費、こういうようなもので、当然のことながら縛りがかかっておる。そして、そもそもこの手数料が特定の者に対する特別な地方団体が負担する経費でございますので、その経費を特定の者に負担していただく、実費という縛りがかかっておるわけでございますので、完全な意味で立法府の枠を外れたわけではないわけでございます。そういう意味におきまして、基本原則は実費を勘案して、行政コストというものを基本に置いて政府にお任せいただきまして、適時適切な受益者負担の適正化を図ってまいりたい、かような改正趣旨でございます。
  186. 原田立

    ○原田立君 そうすると、ひとり歩きしてどんどんどんどん値上げされるようなことの心配はありませんよと、こういうことになるんですか。これはひとつ大臣に答えてもらいたい。  それから、機関委任事務にかかわる地方団体の手数料と国の手数料の算出方法は同一基準によって行われているのかどうか。また、算定の基礎となる費用の範囲については統一的な基準をとる必要があるのではないかと思うんですけれども、これはそちらの方で答えていただいて、なお、委員長、僕もこれで答弁を聞いて終わりにしますけれども、あとまた中野委員に時間の配分等はお願いしたい。
  187. 田川誠一

    国務大臣田川誠一君) この手数料は、先ほど来説明がありましたように「実費を勘案して」という歯どめもございますから、ひとり歩きをしてどんどん値上げをするというようなことはまずないことを申し上げておきます。国鉄の運賃とはちょっとこれは性格も違うんじゃないでしょうか。そういう実費を応分に負担していただくというようなものでございますので、御心配されることは、確かにそういう御意見もあると思いますけれども、御心配はないものと思っていただきたいと思います。
  188. 津田正

    政府委員(津田正君) 今回、手数料の関係の法案としましては、もう一本大蔵委員会の方での御審議をいただいておるものもございます。全体的にその算定基準でございますが、実は大蔵委員会で、国の取ります特許料等につきましては、これはいわば特許ということを取ることによって独占的な経済的地位を得る、こういうような性格のものでございます。それにつきましてはコスト以上の、要するに受益する額というものを基準としてこれは法律で定めるということにしてございます。そのほかの大蔵委員会にかかっておるもの、その他のいわゆる受験手数料、試験手数料、免許手数料、それから本委員会でお願いしておるものでございますが、これはいずれも「実費を勘案して」ということでございまして、算出基準は国の場合と異なることはございません。
  189. 大河原太一郎

    委員長大河原太一郎君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時十七分散会      —————・—————