○出口
廣光君 私は、
地方行政をめぐる当面の課題について二、三お尋ねをしたいと思います。
まず第一点は財政問題についてでありますが、先般
自治省でまとめられました全国の都道府県の五十九年度の当初
予算の編成状況、これを見ますと、四十七都道府県で総額二十八兆六百八億五千八百万円となっております。五十八年度の当初
予算に比較しますと二・七%増になっております。しかし、これはあくまでも平均の話でありまして、多くの道府県では昨年よりも減額、あるいは増額しても一%前後ということになっておるわけでありまして、依然として超緊縮型と言っていいのではなかろうかと思います。歳入の面を見ますと、多くの
自治体で景気回復を
期待して、
地方財政計画の六・八%よりもやや高く見積もっておるような傾向がございますが、一方、歳出の面におきまして公債費の伸びが九%ということで、突出をしていると言わざるを得ないと思います。そしてまた、歳出に占めるこの割合も昨年の八・五%から九・一%と上昇をしております。依然として都道府県財政の重圧となっていると言わざるを得ないと思います。一方で、
地域の経済の
活性化をねらって、地財計画での三・三%減という単独事業を逆に三・三%増というふうに計上しているわけでございますが、非常に厳しい財政の中で、財調の取り崩しを予定しているところも多いようでございます。大変苦しい
予算編成となっておりますことを、最近まで
予算編成に携わってきた者の一人として、うかがい知ることができるわけでございます。
このような五十九年度の当初
予算を見ましても、
地方財政の置かれている厳しい状況というものは歴然としておりますが、私は、このような実情そしてまた本質というものをよく見きわめないいわゆる
地方財政余裕論といったものが相当広い範囲に流布されていることを非常に残念に思っておるわけでございます。こういった議論の論拠となっておりますのは、国債の借入金が五十九年度で百二十二兆にも達する。一方、
地方の借入金の方は、
地方債残高それから交付税特会の借入金、普通会計で負担をしなければならない企業債の残高、全部合わせても五十四兆にしかならないではないか、つまり借金が国の半分にも達してないではないかと、これを根拠にしておるわけでございますが、こういう
考えというものは、国と
地方の財政
制度の根本的な違い、また国、
地方それぞれの債券発行能力と申しますか、その質的な差といったものを無視した議論であると私は思います。
端的に申しまして、国債については
日本銀行、
地方債については主として地元の金庫銀行というものが引き受けに当たるわけでございますが、その引き受け能力というものには天地雲泥の差があるということが
一つございます。そしてまた、国債のうちの建設国債が六十年、また赤字国債につきましても今度の特例措置法によりまして借りかえということが行われることになりますと、ますます
地方債と国債との償還条件の差というものが大きくなってくると思います。そういう大きな相違がございまして、何年か前に、
地方側が国の直轄事業に対する負担金を払えないとか、あるいはまた公共事業を返上したいといったことがございました。いまだに記憶に新たなところでありますが、
地方債の増発によりまして、
昭和四十年代にはずうっと横ばいで来ましたのが五十年代に入りましてから極端に上昇してまいりまして、毎年一%ぐらいずつ償還のための負担というものが増加してきております。これは財政力の脆弱な
地方団体にとりましては大変な問題、深刻な事態でありまして、もはや限界に到達していると見ても差し支えないのではないかと、このように思われます。このままでまいりますと、本来、
地方財政の運営というものも国の財政と同じように、中期、長期の展望に立って、弾力的な運営というもの、またビジョンを持った運営というものをなさなければならない、こういうことから著しく外れてしまいまして、
住民のニーズに的確にこたえることすらできない。そしてまた、国の施策と共同していくということがついにはできなくなって、その面で国の施策自体が遂行できなくなるという危険性をはらんでおると思うのであります。
このような
地方財政の深刻な
現状、財源不足に対する補てん措置として借り入れで賄ってきた結果としてのこういう状況というものについて、
自治省として
基本的にどのような
認識をお持ちなのか。そしてまた、さしあたって五十九年度の
地方財政計画でその点どのような配慮をなさったのか、お伺いしたいと思います。