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丸谷金保君 これは私の部屋でアサリの実験をやったんです。公社の人の立ち合いでやりまして、こういうことが出ているのです。当時、私の部屋でやったことも新聞に出ています。私は当時、北海道新聞で見たんです。そのくらい地方にもその記事は流れました。
これは塩化ナトリウム一〇〇%に近い化学塩と、私たちはそう称しているんですが、それと、幾分の微量要素、にがりなんかを入れた微量要素を含む塩化ナトリウム九一%の自然塩と称するものと、この二種類を入れた約三%の濃度の水溶液にアサリを浸しての実験なんです。三分後には最初の変化があって、いわゆる自然塩の方では八割のアサリが足を出した。入出管というんですか、伸ばして自由に水を噴き出したりするようになったんです。これに対して化学塩、イオン塩の方ではわずかしか出てこなかったんです。これを何回やってもそういう結果が出たんです。三十分たちますと両方とも出る。片っ方は早くに出ていますけれ
ども、イオン塩の方も全部呼吸をするようになりました。しかし、どうしてもイオン塩の方が見ていると元気がないんです、呼吸の仕方が。これは明らかに違う。海水に近いのは自然塩の方だということがこれでわかると思うんです。
それから金魚もそうなんです。金魚を水道の水の中に入れると、これは塩素なんかが入っているので弱って死んでしまう。しかし、その死にかけた金魚を同じように三%の塩水の中に入れると元気を取り戻す。これは常識的に皆さん覚えていることですが、これも先ほどの二種類の塩で一%濃度の塩水をつくって実験してみましたら、いわゆる高
純度の塩水につけた方は六日目で死にましたけれ
ども、一方の自然塩の方のやつは活力を得てずっと生きている。こんなのは家庭でも簡単にできることでよくやります。私がやっただけでなくて、至るところで消費者団体がこういうのをやっているんです。
ですから、こういうふうに食品としての塩というものについて、果たして塩化ナトリウム九九・五%、純化したものだけを食していくことがいいんだろうかどうだろうか。私たちはできるだけ自然をあるがままに受けとめて、自然界のバランスをなるたけ壊さないで次の世代に生命体そのものを移していくという責任があると思うんです。しかし、残念ながら、こうした問題については、塩の問題も経済性だとか
自立だとか、いろんなことは
論議されますけれ
ども、こういうことが真剣に
論議されないんです。白米が悪い、こういうことは言われるようになりました。白砂糖より黒砂糖がいいということも
一つの常識になってきましたけれ
ども、塩の問題はどういうものか、そういう国民的なコンセンサスを得ないままここに来ているんです。
しかし、味が違うということだけは皆さん気がつき出しているんです。これはある有名な料亭の主人が言っている言葉です。味の専門家です。塩は食べ物の風味の中心ですから、その微妙な味わいは大きく食物を左右します、料理において塩は命と申せます、
純度の高い精
製塩では味が直線的で丸みがなく、風味が生かされません。
しかし今、どちらかというと、そういう
特殊用塩というのは高いんです。大体今、家庭で使う塩が三十万トン、人口一億で割りますと、一日に八グラム程度ですよ。四人家族でも三十グラムで、月に一キロは使わないんです。この月に一キロしか使わない塩は、百円なら安いから買おう、三百円なら高いから買えないというような商品ではなくなってきているんです。塩の問題は、イオン塩、それでもって
外国の塩とぶつけて勝負ができればいいんだ、安けりゃそれで
自立できたんだという論点だけでやることに対して私は大変心配を持っているんです。イオン塩というのは
日本でしかやってないんです。そうすると、これを何十年か何百年がこういう塩だけ食わされることによって、国民の体位なり何なりに影響する。今はあらわれてないけれ
ども、食品添加物の中にそういうのがたくさんあります。
そういうことに対する、科学万能でない、生命の神秘とか、そういう命に対する恐れというふうなものを、食品を扱う者としてはいつでも忘れてはいけないことだと思うんです。どうも塩の
論議をずっと聞いていましても、そういう視点が
一つ抜けたまま行ってしまうような気がするんで、特にこれは
大臣にだけはどうしてもこういうふうな問題もあるんだという観点で国民全体のために
考えていただかないと、国民がモルモットになるようなことはやっぱりしちゃいけないと思いますんです。
大変長くなりましたけれ
ども、そういう視点のとらえ方に対して、まあ確たる御返事もなかなか大変かと思いますけれ
ども、御感想がありましたらお聞かせいただきたいと思います。