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1984-06-19 第101回国会 参議院 大蔵委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月十九日(火曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員異動  五月十七日     辞任         補欠選任       矢野俊比古君    西村 尚治君       倉田 寛之君    岡野  裕君  五月十八日     辞任         補欠選任       松岡満寿男君    宮島  滉君       山本 富雄君    中村 太郎君       西村 尚治君    矢野俊比古君       岡野  裕君    倉田 寛之君       中野  明君    多田 省吾君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         伊江 朝雄君     理 事                 岩崎 純三君                 大坪健一郎君                 藤井 孝男君                 竹田 四郎君                 塩出 啓典君     委 員                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 倉田 寛之君                 中村 太郎君                 福岡日出麿君                 藤井 裕久君                 藤野 賢二君                 宮島  滉君                 矢野俊比古君                 吉川  博君                 赤桐  操君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君                 青木  茂君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵政務次官   井上  裕君        大蔵大臣官房長  吉野 良彦君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        小野 博義君        大蔵大臣官房総        務審議官     吉田 正輝君        大蔵省主計局次        長        平澤 貞昭君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局長  西垣  昭君        大蔵省理財局次        長        志賀 正典君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        自治省財政局地        方債課長     柿本 善也君        日本専売公社総        裁        長岡  實君        日本電信電話公        社総裁      真藤  恒君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和五十九年度財政運営に必要な財源確保  を図るための特別措置等に関する法律案(内閣  提出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る五月十八日、山本富雄君、松岡満寿男君、中野明君が委員辞任され、その補欠として中村太郎君、宮島滉君、多田省吾君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 昭和五十九年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案を議題といたします。  この際、竹下大蔵大臣から発言を求められておりますので、これを許します。竹下大蔵大臣
  4. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 去る五月十五日の当委員会において承りましたいわゆる六項目につきまして順次お答えを申し上げます。  第一項目は、政策転換具体的内容とは何かと、こういうことであります。  従来、五十九年度までに特例公債依存から脱却すること及び特例公債借りかえは行わないこと、これを政府方針としてまいりました。これは特例公債発行が本来望ましくなく、残高もできるだけ早く減少させることが望ましいという基本的考え方によるものであります。  しかしながら、第二次石油危機という予期せぬ事態の発生を契機として、我が国経済成長率が大幅に低下し、税収の伸びも急激に鈍化するなど、我が国経済財政を取り巻く環境が大きく変化したことは周知のとおりであります。こうした中で、遺憾ながら、従来のまず五十九年度脱却、この実現は不可能となり、昨年八月、「一九八〇年代経済社会展望指針」の中において、六十五年度までの対象期間中に特例公債依存体質からの脱却に努めるとの目標が示されたところであります。  中期的に見た我が国財政事情は、中期展望仮定計算例から予想されますように、極度に厳しい状況に置かれております。このような厳しい財政事情のもとで、特例公債について借換債発行によらずに、全額現金償還しつつ、六十五年度までに特例公債依存体質からの脱却を図るためには極端な歳出カットや極度の負担増が避けられません。経済国民生活等への影響を考慮しつつ、新たな努力目標に向けて財政改革を進めていくために、遺憾ながら、特例公債償還について借換債発行考えざるを得ません。今後は、財政改革を推進することにより、特例公債発行をゼロにしていくことに全力を傾注するとともに、その残高についてもできるだけ早く減少させていくことが適当であると考えられます。  これらの点については財政審からも報告をいただいたところであります。政府としては、長年にわたるこれまでの国会の御論議及び今回の御指摘十分心に受けとめて、臨調答申財政審報告税調答申等を踏まえ、財政改革を推進するとともに、また六十年代の大量の国債償還及び借りかえという新たな状況を迎えるに当たり、国債の一層の多様化等適切な国債管理政策の遂行に努めることとし、特例公債の速やかな残高の減少に最大限努力を行う所存でありますので、御理解を賜りたいと存じます。  第二項目、六十九年に全面償還できない理由は何か、第三項目、六十五年に特例債新規発行をゼロにするというが、六十五年前と後でどう異なるか、これの御指摘であります。第二及び第三の項目につきましては、六十五年度特例公債依存体質脱却後の財政事情に関するものであり、特に密接に関連した問題でありますので、あわせてお答えを申し上げます。  従来の五十九年度特例公債脱却という方針が、経済財政を取り巻く環境の大きな変化により達成できなくなったことに伴い、我が国財政特例公債大量償還を行いつつ、一方で新たな特例公債発行せざるを得ないという新たな事態を迎えることとなりました。このような財政事情のもとでは、まず一般会計特例公債に依存している体質から一刻も早く脱却し、財政対応力の回復を図ることが何よりも重要であると考えられます。このような観点から、政府としては、六十五年度特例公債依存体質脱却という財政改革努力目標達成全力を尽くしてまいる所存であります。  しかしながら、国会にお示ししておる中期展望等を前提として国債償還等の見通しを試算してみますと、特例公債依存体質から脱却した六十六年度以降においても特例公債の要償還額は六ないし七兆円と引き続き多額に上ることが明らかであり、これをすべて借換横の発行によらずに償還することを現時点で約束することは困難と思われます。  このようなことから、六十九年度償還期の到来する五十九年度特例公債について借換債発行は行わないとする禁止規定努力規定に変えさしていただくことをお願いしているものであります。今後はこの努力規定趣旨に沿って、できるだけ借換債発行によらないで特例公債償還を行うよう最大限努力してまいる所存であります。  第四項目法案二つに分けることのできない理由は何か。本法案における財源確保の大宗をなすものは特例公債発行に関する規定であります。特例公債については、従来各年度において、財源確保を目的として発行根拠規定を定めると同じ法律の中で、借りかえを行わないという借りかえ禁止規定を同時に定めてまいりましたが、今回五十九年度特例公債発行の授権をいただく法案を提出するに際し、この借りかえ禁止規定取り扱いをどうするかにつき、「一九八〇年代経済社会展望指針」を踏まえつつ、慎重に検討を行ってまいりました。その結果、結論的には、十年後においても要償還額多額に上るという今後の厳しい財政事情等にかんがみれば、借換債発行を行わない旨、現段階で約束することは極めて困難であります。しかし、長年にわたる国会の御論議を真摯に受けとめる必要があるとの考え方のもとに、従来の禁止規定にかえて、今回努力規定特例公債に関する規定として置かせていただくこととしたものであります。  この場合、五十八年度以前に発行した特例公債についての取り扱いですが、これについては法案二つに分けるという考え方一つ考え方としてないわけではありません。しかし、慎重に論議を重ねた上で、主として次に述べるような理由から、過去の特例公債についても、本法案において一括して努力規定に変えさしていただくことをお願いすることとしたものであります。  すなわち、五十九年度特例公債よりも前に、つまり、より財政事情が厳しいと見込まれる時期に償還期の到来する過去の特例公債について、財政運営上、借換債発行は行わないとすることはできない。また、借りかえ禁止規定を存置したままにしておき償還期が到来するごとに逐次削除していく場合には、毎年度発行計画等に不確実な要因をもたらし、市場不安定性を増大させるおそれがある。したがって、過去の特例公債についても軌を一にした努力規定に改める必要があること。  今回の政策変更は、特例公債一般償還に関するものであり、この重要な政策変更を、転換期としての五十九年度特例公債に関する本法案において、五十年度から五十九年度を通じて、同一法案の中で明らかにした方が適当であると政府は判断したこと。  以上によるものであります。  第五項目、歯どめの具体的な方策は何か。  経常的支出を賄うための特例公債については、見合い資産のないまま後代へ負担を転嫁するおそれがあり、その意味でも残高をできる限り早く減少させることが必要であることは、当委員会において御議論があったとおりであります。  このため、まず第一に、新たに特例公債残高をできる限りふやさないことが必要であり、そのための歯どめとしては次のとおり考えております。  すなわち、財政ができるだけ早く特例公債依存体質から脱却することが必要であり、政府としては、六十五年度特例公債依存体質脱却という努力目標達成全力を傾注し、歳出歳入構造の見直しにより財政改革を推進するとともに、特例公債発行については、これまでと同様、毎年毎年特例法という形で国会にその権限の授与を求め、財政改革及び公債問題について厳しい御批判、御叱正を受けつつ対処してまいる所存であります。  第二に、特例公債の借換債発行を行う場合において、本法案努力規定趣旨に沿って特例公債残高をできる限り早く減少させるための歯どめとしては、次のとおり考えております。  すなわち、今後の財政事情の中で、六十年間を待たず、できる限り償還努力するとともに、そのためにも何らかの方法により、特例公債残高建設公債と区分して明らかにすることを通じ、国民の前にその進捗状況をお示しすることを考えております。  第六項目中期試算展望など仮定計算というものを発表するが、こうした仮想的計算というものではなくて、これ以外にはないという計画を出すべきではないかということであります。  中期的展望を持って財政運営考えていくことは必要であると考えており、そのような観点から、このたび国会に「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」及びその背景となる「財政中期展望」をお示ししたところであります。  さらに、今回は六十五年度までの財政収支状況について、機械的手法による「仮定計算例」もあわせて提出し、審議の御参考に供しております。  今後は、このような財政事情展望等を踏まえながら、「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」に沿って財政改革を着実に推進していく考えてあります。  この場合、まず、歳出面において、政府と民間、国と地方間の役割と責任を明確にする見地から、既存の制度・施策についても改革を行うなど、その節減、合理化に取り組む必要がありますが、同時に、各種公共サービス確保国民負担により裏づけられるものであることに顧み、歳入面においても、社会経済情勢変化を踏まえ、公平・適正な税制のあり方について検討を行う必要があります。  いずれにせよ、財政改革の推進に当たっては、具体的に歳出歳入両面を通じ、どのような施策の組み合わせによって財政改革を進めるかについて国民の選択がどのようなものであるのか、各方面の御議論を伺いながら、幅広い角度から検討を進めていかなければならないと考えております。  なお、経済全体が流動的である中で、経済の一部門である財政の将来についてのみ、あらかじめ具体的な計数を織り込んだ厳密な実行計画を策定することは極めて困難であります。  したがって、「中期展望」等を参考としつつ、毎年度経済情勢財政状況を踏まえ、一歩一歩着実に財政改革を進めてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  5. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) それではこれより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 赤桐操

    赤桐操君 先般の六項目の野党の要求に対しまして御答弁をいただいておりますが、私は、時間の関係もありますので、この中の二ないし三点についてお尋ねをしておきたいと思います。  第四項目法案二つに分けることのできない理由の中で、まずその第一項では、五十九年度特例公債については借りかえ禁止規定を置くことが困難になったので、これにかえて努力規定を置くんだと。しかしその努力規定の中身は何も示されておらない。言葉だけの努力規定であって、財政再建という面から見るならば、遺憾ながらこれは国民皆さん方が納得できるものではない、赤字国債の歯どめ役にもならない、こういうように受けとめざるを得ないんですが、この点はいかがですか。
  7. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の努力規定の問題でありますが、赤桐委員の御覧間の背景にあるものを我々なりに推測いたしますと、よしんば努力規定そのものを仮に是認するとしても、その努力規定というものはまさにこれは精神規定であって、すなわちある数値に根拠を置いてこれ以上をしてはならないとか、そうした形の具体性のあるものを背景に期待していらっしゃると思われますし、またそういう考え方の上に立っての御質問ではなかろうかとも思えます。が、現実問題として、流動した経済情勢、その一部の財政問題について、いわば大きな政策転換を行った現時点において、極めてリジッドな形でその努力規定内容を詰めていくということ、これは現実問題として非常に困難なことであります。  したがって、されば努力規定精神規定に対する歯どめはどこにあるかと言えば、結論から言えば、年々の国会審議それそのものが、当面我々の努力規定を裏づけし、またそれに対しての御批判なり御鞭撻をいただくもとになるものではなかろうかというふうに考えております。
  8. 赤桐操

    赤桐操君 十五日から今日まで時間があったわけでありますから、私は内容的にかなり期待するものがあるかと思っておりましたが、全体を通じまして余り前進していない。言ってみれば、先般の答弁された内容の要約、この程度にしか私には感ぜられないのであります。  そこで、今の単なる努力規定ではなくて、これはいろいろこれからの考え方もあるのだということを示されておりますが、よく大臣の言っておられることをじっと考えながら受けとめてみますと、結局はやはり先般の答弁に尽きているんですね。私どもが言っていることは、将来の歯どめとして、少なくともせめて政府を拘束する、あるいは実行の面からいって責任を課する、そういう形のものにすべきじゃないかということが私どもの言わんとしているところであります。  そういう意味合いからすれば、この法案というものは当然二つに分けてそれぞれを提案し、それぞれの変わった立場に立った論議がなされるべきだと、こういう提案に実は及んだわけでありますけれども、この点は私ども依然として残念ながら大臣の誠意ある御答弁として受けとめられないのですが、この点はいかがでございますか。
  9. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいまお答え申し上げました内容は、これまでの本委員会における御議論を踏まえて、再度部内検討を行った上で現時点お答えし得る最大限のものであるという考え方で臨んでおります。しかし本委員会において交わされました議論については、従来と同様、可能な限り今後とも参考とさせていただく考えでありますことには変わりありません。  で、私と赤桐委員との問答を部内でも整理をいたしました。ただ、私が申しておりますのは、その瞬間は比較的言語が明瞭でございますけれども、読んでみると意味不明のことが時たまございます。これは私自身に対する反省をも含めて、常日ごろそういう気がいたしておりますので、それを念頭に置きながら冷静な事務当局の諸君と部内の打ち合わせをして、随分推敲いたしましてきょうのお答えに至ったわけであります。結局、この国会議論というものが、言ってみれば、その議論に対して我々が可能な限りの努力をするというのが、結局のところ私どもの基本的な考え方であり、それが精神規定等をチェックする一番大きな力として作用するものではなかろうかと、こういう認識をいたしております。
  10. 赤桐操

    赤桐操君 私が当初から申し上げているのは一貫しているんですよ。五十九年の財政運営支障がないように、純粋な意味における財源確保部分、すなわち本法案の一章、二章、これについてはこれを分離しなさい、これはひとつ私どもの方も積極的に協力しながら決着をつけましょう。そのかわりに三章以下の赤字国債借りかえ分については、これは六十年度までに成立すれば五十八年度までの赤字国債の対策については支障がないわけでありますから、これを分離して提出すべきではないか。こういう私どもの方の要求に対してこれでは答弁にならないと思うんですよ、この答弁では。二つに分けろということが一つでなきゃならぬという理由にはならないと思うんです、この答弁では。  大臣の今御答弁なされたことで私の質問への答弁が尽くされているというふうに私には理解されないのですが、私が間違っておるか、あなたの方が例によってまたうまい御答弁かよくわからないけれども、ちょっとその辺のところ私には理解できないんですがね。
  11. 竹下登

    国務大臣竹下登君) そこで、五十八年度以前に発行した特例公債についての取り扱いですが、これについては法案二つに分けるという考え方一つ考えとしてないわけではありません。こういうことをまず私どもも肯定しておるわけであります。そういう考え方を一方に持ちながら、まさに慎重に議論を重ねた上で、私どもは本法案において一括して努力規定に変えさせていただくことをお願いすることにしたという考え方でございますので、この問題につきまして言うならば、私はお答えでも正確に申し上げておるように、赤桐さんの考え方を否定はしておりません。が、しかし、私ども考え方についても、なお現状認識からすれば、この方が適当であるという認識の上に立って授権方をお願いしておるわけでございますから、私は赤桐さんの考えが間違いで、私どもが言っておることが正しい、あるいは私どもの言っていることが赤桐さんの考え方を完全に否定しておるというものではない。いわばそれらの考え方を総合いたしました上でこのような法律を提出するに至った、こういうことでございます。
  12. 赤桐操

    赤桐操君 五十九年度赤字国債発行について借りかえの禁止規定が置けなくなったから、これはもう一切合財一括してやるのだというのがあなたの言われることなんですよ、結局は。そうでしょう、はっきり申し上げれば、簡単に言えば。そういう言葉ではまたいろいろ差しさわりがあるので、大変難しくいろいろ言葉を並べておるわけだけれども、一言にして言えばそういうことじゃないですか。五十九年度赤字国債発行について借りかえ禁止規定があったのじゃ困るから、一括して全部ひとつ取り払ってしまおうという考えじゃないですか。それはおかしいじゃないですかというのが私の主張じゃないですか。これは性格が異なるものでしょう。その私の主張は否定しないというのなら、肯定されるわけだから、あなたの方の言っている方が無理なんですよ、大蔵省が提案している方が無理なんです、これは扱い方として。私が言っている方が自然なんですよ。  過去十年にわたって論議してきたことをそのまま私は踏襲しながら申し上げておるだけの話なんです。だから大蔵大臣、御答弁が大変苦しくなってきておると思うんです。私の言っていることも認めておるのだからわしの言っていることも認めよと、こういうことだと思うけれども、私は国民皆さんがどうこれを受けとめるかということで判断すべきだと思うんですよ。私の言っていることを恐らく国民皆さんは支持していると思うんです。そして、私が言っているような形に五十九年度分は別にして、五十八年度分、前のはこれまた別にして、それぞれを論議しながら対処していく、これが財政民主主義の原則ではないか。  特に、過去の問題についてはずっと積み重ねの中で毎年毎年論議をし、御叱正をいただきながらと、こう言っているじゃないですか。それで決めてきたものでしょう。そのこと自体価値があるんだと歴代大蔵大臣は言っておるじゃありませんか。あなたもこの間の予算委員会でそういう姿勢で答弁されているわけだ。だとするならば、少なくとも今までの分と今度の分は違うんですから、これはそれぞれの立場に立って論議をすべきだという私の言っていることが一番自然だと思うんですがね。むしろそれを乗り越えてしまって、東に丸めて一遍にひとつ解決してしまおう、一気がせいにひとつやってのけようという大蔵省考え方ですよ。大臣がその上に乗っかってやっていることがおかしい。私は、竹下大蔵大臣が私の言っていることについて理解されているというならば、この際きちんとみずから行政部門に対する指導をすべきだと思いますが、どうですか大臣
  13. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、今赤桐委員の御指摘のような考え方を私自身部内で問題提起して、したがって議論を積み重ねた結果でございますので、明らかにしておりますように、考え方一つ考え方としてないわけではありません――こう申しておるわけであります。しかしながら、五十九年度特例公債よりも前に、より財政事情が厳しいと見込まれる時期に償還期の到来する過去の特例公債について、財政運営上借換債発行を行わないとすることにはやっぱり不自然さがございます。したがって、この償還期が到来するごとに逐次削除していく場合には、毎年度の今度は発行計画等においていわば不確実な要因をもたらして、例えばの現状でございますが、六月債を休債したわけでございますけれども市場不安定性を増大させるおそれがより大きい。  したがって、過去の特例公債についても軌を一にした努力規定に改める必要がある、こういう結論に達したわけでありますから、赤桐理論を十分私ども立場から土台に置いて種々検討を重ねて、この一つの原案として御審議をいただいておるわけでありますから、私はこの問題は、赤桐理論が間違っておるということを申し上げる考えはございませんが、私ども考え方もまた間違っておるという御指摘は必ずしも当たらないではないか。だから、言ってみれば、もとへ返るようでございますけれども、この重要な政策変更であるだけに、その点を明らかにするために五十年度から五十九年度を通じて同一法案の中で、すなわち五十九年度特例公債発行の授権をいただく本法案の中で一つ努力規定を置くということが適当であるという考え方に到達したわけでございます。  したがって、私は赤桐理論は間違いであるとは申しておりません。しかし、それを議論した結果、このきょう整理したお答えの中には書きませんでしたが、たびたび申しました法律の整合性等をも踏まえて、これが一番現状においては適切であるという政策選択をした。その前には五十九年度脱却をギブアップしたということと、そして借りかえざるを得ないという二つの大きな政策転換というものが、この機会に行われるという意味でこのような形で御審議をいただくということにしたわけであります。
  14. 赤桐操

    赤桐操君 私が提案した幾つかの問題の中の大きな提案で、骨組みとしての提案であったわけでありますが、どうも大臣の御答弁では、残念ながら、私の申し上げていることにぴしりと答弁していただいていると受けとめられません。また私を納得させることもできないし、また国民皆さん方も大変大きな疑問のままでこの答弁を受けとめておかなきゃならないだろうというように考えます。  次に、第五項目の歯止めの具体的な方策について御回答いただいておるわけでありますが、この中で「ポイント」のところにございますが、「特例公債は、見合い資産のないまま後代へ負担を転嫁するおそれがあり」、「残高をできる限り早期に減少させることが必要であることは、委員会における御論議のとおり」だと、こう言っておるんですが、私はこの「御論議のとおり」だということで述べられただけでは困るんでありまして、少なくともそこから何が一体出されてくるのかと、こういうことが問われていると思うんですよ。具体的には赤字国債の管理政策はこういうようにしたいとか、そういう特徴のある対策がここで出るべきであろう、示される必要があると思って、実は感じているわけでありますが、この点はいかがですか。
  15. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに、お答えしておりますことは、見合いの資産のないまま後世代へ負担を転嫁するおそれがあって、その意味でも残高をできる限り早く減少させることが必要であるというたびたびの当委員会における議論は、まさにそのとおりであると思っております。したがって、この特例公債換債発行に伴い、「今後の財政事情の中で、六十年間を待たずに、できる限り償還努力」する、そのためにも、確かに御指摘なさっておりますように、何らかの方法によって特例公債残高と建設国債とが区分して国民の目にわかるようなことを検討いたしまして、その年度年度の進みぐあいというものはお示しすることをやらなきゃならぬ。されば具体的にどのような形で示すかということにつきましては、今後検討さしていただきたいという課題であるというふうなお答えをいたしてきておるわけであります。
  16. 赤桐操

    赤桐操君 そこで、この委員会における議論のとおりだと言っておるんですけれども、私どもはこれは政府自身が言ってきていることを指摘しているんです、率直に申し上げて。こういうことをあなた方の方が、政府自身が言ってきているじゃないのかと、こういう指摘を再々してきているわけなんであって、これは私ども論議をしてきていることであってなんという、そんな他人ごとではないと思うんですよ。これはもう明らかに大臣、そういう立場で理解しておいてもらわなければ困るわけなんだ。少なくともこうした歯どめ策の問題をずっと見ましても、政府がしばしば政策変更ということを言っておりますが、少なくとも従来の基本的な方針が変わるというならば、もっと例えば具体的な次善の策がどうだというように示されるべきだと私は思うんですね、こういう抽象的なものばかりじゃなしに。その点がないので、こういうことであってはこれは我々としては歯どめにならないだろう。結局、あるのは努力規定だけでしょう。これは精神規定だけじゃないですか。何にも具体的なものないじゃないですか。何遍もこういうことを言わざるを得ないんですよ、こういうやり方で出てくれば。国民もそう言っていると思うんです。私はそう思うんであって、少なくともこの努力規定だけしか示されていない、こういう姿勢は誤りだろうと言っている。国会がこういうことを指摘しているわけなんであって、これに対する答弁がないということは、何通も同じことを繰り返されることについては私どもはいただけませんね、ある意味においてはいささか失礼ではないかと言いたくなってくる。
  17. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 国会に対して、努力規定があるにしても、もろもろの具体的な背景がそれに付随して国会論議の場に示されるべきだというお考え方は、これまた私は可能な限りそうあるべきだというふうに考えております。しかしながら、現状において考えてみますときに、私どもがいわば借りかえをしないという一つの歯どめ、その歯どめを取った場合に、全部取ってしまう場合に、我々の考え方の中で残るのは、今御指摘のとおりすべて今後の国債管理政策をも含めてイージーに流れてしまう、そのイージーに流れないための歯どめというのが、たびたび精神規定だとおっしゃいますが、ある意味においてそうでありましょう。訓示規定として残すところに、言ってみれば、行政府国会に対する一つの良心というと少しオーバーでございまして、適当空言葉が必ずしもございませんが、厳しく年ごとに御叱正をいただく一つのてことしても残しておくべき姿であるというので、この訓示規定というもので御理解をいただくべくただいま一生懸命お答えをしておると、こういうことになろうかと思うわけであります。
  18. 赤桐操

    赤桐操君 いいですか。十年で現金償還するというこれまでの赤字国債の歯どめ、これが実行困難になった。償還は六十年で建設国債と同じにするんだということですよ、これははっきり言えば。精神規定だとか努力規定だとな言っておりますけれども、こういうものは、今まで十年というきちんとした償還の原則が決められてきたにもかかわらず、法律で決まっているにもかかわらず、これは実行されなかった。この次は六十五年だと言っておりますが、これもなかなか困難だと思うんですね。そういうぐあいに次々と実に延びてきているわけだ。  これは言いかえてみれば、これができなかったときに根拠法は何になるんだと言ったら、この建設国債と同じ形になってしまうんじゃないですか。六十年で建設国債と全く同じにやりましょうということですよ、はつきり言ってみれば。借金が返せなくなったら、今まで十年の約束で来たのだけれども、これを六十年に延ばしてくれということですよ、端的に申し上げれば、これは財政運営上に大変な紊乱を引き起こすだろうということを主張しているわけですよ。これは将来、国の大きな大変な問題に、取り返しのつかない問題になるのではないかという考え方で私たちは主張しているわけですよ。これは国民の声だと思うんですね。だれが考えたって、十年で返済するという約束で来たものを、これは努力します、六十年かけて、そんなばかなことはいたしませんと言いながら、結局はできなかったら六十年になるんですよ。これは六十年で返済するということになっているんですよ。だから、そこまではっきり国民皆さんにきちんと言えば、これは大変な問題だということになるんですよ。しかし、その間精神規定とかいろいろなことでごまかしているから、こういう言葉が適切かどうか知らないが、そういう言葉に置きかえられているからわからないだけであって、それが事実行われなかったときにどうなるかといったら六十年になっちゃうんじゃないんですか。これは私は大変な問題だと思いますよ。大臣、そういうことをあなたは今おっしゃっているというように私は思うんですが、いかがなんですか。
  19. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは私どもがたびたび申し上げておりますのは、最小限、現行の総合減債制度のもとで減債資金の積み立てが六十年償還財源に見合うよう行われてきておること等にもかんがみ、例えば十年債について六十分の十程度は借換債発行によらずに現金償還することを考えている、こういうふうにお答えをしているわけでありますが、いわゆる最小限というものが、それが最小限ではなくして、それがまさにそれそのものに定着する危険性があるというところに我々もいわゆる努力規定というものを置いておるわけでございますが、さればとて今後の厳しい財政事情考えたとき、今の時点で例えば三十年とかあるいは四十年とかという具体的な数字を上げるということは、これまたなかなか困難な問題でございます。したがって、本委員会の御議論を踏まえながら、本法案努力規定趣旨に即して、まず、特例公債依存体質からの脱却後においては、毎年度財政事情の中でできる限り予算繰り入れに努めて、六十年間を待たずにできる限り早く特例公債の減債に努めてまいるという基本的な考え方には立っていかなければならぬと思っておりますので、ぜひ御理解を賜りたいものだというふうに考えて、いささか赤桐さんの方から見ればすれ違い答弁のようでありますが、誠意と真心を込めてお願いをしておる次第であります。
  20. 赤桐操

    赤桐操君 これは大臣、私には大変一生懸命御答弁いただいておりますので、余り汚い物の言い方は御遠慮させていただきますが、率直に申し上げていささか納得できませんよ、これはどう考えても。  そこで、私は歯どめという問題について少し基本的にもう一遍考えてみたいと思うんです。  この中にも出ておりますね。「特例公債発行については、これまでと同様、毎年毎年特例法の形で国会に授権を求め」云々と、こう出ているのですね。しかし、これは実際は歯どめというよりも、財政法で認めていないところの赤字財政の穴埋めのための国債発行のいわば法律上の手続なんですよ。そうでしょう。歯どめ歯どめと抽象的に言っていますが、もう一遍よく言ってみればそういうことになるんじゃないですか。これは歯どめというより基本的な法律なんですよ。これは根拠法なんです。これがなければ出せないんだよ。そうでしょう。特例法がなければ赤字国債を出せないじゃないですか。これが根拠法じゃないですか。これが根拠なんですよ。単なる歯どめとかなんとかというようなものではない。もっと基本的なものだ。だから、歯どめなるものをちょっと抽象的にして精神規定にするんだなんというものではない。きちんとセットになったものが根拠法なんですよ、これは。私はそう思うけれども、どうですか。
  21. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは私どもが五十年にお願いいたしましたときは、借りかえ禁止規定はつかないままでお願いをしたわけであります。が、国会論議等――当時大平大蔵大臣です。さようなもので国会議論を通じ、五十一年から歯どめとしての借りかえ禁止規定をつけて授権をいただいてきたというのが今日まで継続してきたという状態にございますので、法律そのものからして借りかえが――失礼しました。  五十年の十月でございますが、特例公債法案特例公債借りかえは行わない方針を大平大蔵大臣が述べられ、それに対して特例公債法に借りかえを行えるように明記すべきではないかと。そこで、五十一年度特例公債法案立法時までに財政審に諮り検討する。そうして財政審において、「公債発行の特例措置等についての報告」で、「これを法定する必然性はないが、立法政策の問題として財政の節度を示すという観点からこれを法定するものであれば、あえてその意義を否定するものでもない」という御答弁をいただきまして、したがって五十一年度特例公債以後、第二条の規定により発行する公債については国債整理基金特別会計法第五条の規定による償還のための起債は行わないものとするということを明記して今日に至ったものであるということであります。  それから五十八年の二月、理論的には要償還額に対しては歳出カット負担増、あるいは借りかえということも含めてのいわゆる公債発行の三つの方法が考えられますというのが、五十八年の二月、これは私のお答えとなって今日に至ったということでございます。
  22. 赤桐操

    赤桐操君 私は、さっきも申し上げたとおり、少なくともこの特例法によって行われているわけでありまするから、歯どめという問題はただ抽象的ではいけない。歯どめのための特例法じゃないんであって、これがなければ赤字国債発行できないんですから、この点をもっと基本的に踏まえて考えなきゃならぬということを今主張しているわけですよ。そういうことで歴代大蔵大臣も対処してきたんじゃないですか。そのことを私は今言っているわけですよ。ややもすれば歯どめ歯どめで、十年を外してあとはこれをこういう形にすればいいんだと。それではだんだんだんだん基本的なものが変わっていってしまうことになる。そういうことであってはならない。もう一遍これを考え直してもらうべきだということを私は今主張したわけだ。これもあなたが違うというなら平行線だ。そういうことになりますね。  それからこの五項の中の、大分あるんだけれども、一々言葉のあやを言うわけじゃありませんが、「御批判、御叱正を受けつつ対処」すると、こう書いてありますけれども、率直に申し上げて、国会批判を一体本気で受けとめてくれているのだろうか。こういうように今私自身も疑念を持ってこの文書を読んでいるんです。また、あなたのお答えを聞いていたわけですが、野党の建設的な今日までのいろいろの提言があると思うんですけれども、この国債の十年の枠をつくるについても、社会党は社会党としていろいろの提起をしてきたつもりでおります。建設国債と同じように十年なんだから十年に見合う積み立てをすべきじゃないか、こういうことも主張した。そういうことも全部葬り去られている。六十年の一・六も、もうおととしから積み上げもやらなくなってしまっておる。これもやらなくしたんじゃ大変なことになるだろうということを我々は声を大にしてきている。そういうことを言ってきているけれども、みんなこれはけ飛ばされているんですよ、一つ一つ。御批判、御叱正なんていうのは受けたためしないんじゃないですか。こういうことをまじめに受けとめられていれば五十兆円なんていう赤字国債にはならなかったと私は思う。大変きれいな美辞麗句で並べられておりますし、御答弁も大変されいになされておるけれども、そこには本当の意味における国民が納得できるような誠意が示されていない。こういうようにどうしても感ぜざるを得ないんですが、大臣いかがですか。
  23. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、御批判、御叱正、確かにその都度異なった意見が述べられ、それがいろいろな意味における政策執行上の、行政府もそれを体しておるだけに、大きな行政執行上の精神的歯どめになって今日に至っておると思うわけであります。したがって、私も引き続き第二次中曽根内閣で大蔵大臣をやるであろうとかというような前提でなく、あるいは五十八年二月に御覧間がありましたときに、近い将来、ちょうど今ということになりますが、借りかえ禁止規定というものを外さざるを得ない可能性もあるかもしれないということで、いわば歳出削減が、負担増か、借りかえを含む公債発行がということを検討、理論的に言えば三つがございますということをお答えしておったということは、今日がくあることを幾らか、御議論、問答を繰り返しながら、予測しておったと言うとちょっと表現がおかしいんでありますが、そういう事態の可能性を予見しながら気をつけてお答えをしてきたわけであります。  とはいえ、借りかえしか方法はないじゃないかと皆さん方がおっしゃったからそうしましたというほど、私も便乗して政策転換を行ったわけではなく、まさに自発的に政策転換を行ったわけではありますが、そのような指摘というものが、議会制民主主義の中でそれぞれの与党とか野党とか、あるいは今たまたま私は行政府の一員でありますが、行政府国会の中においてないがしろにして聞く耳を持たないで、そのときだけの、その場しのぎのお答え等で済むものではないじゃないかというのは、日本の成熟した議会制民主主義の中でおおむね確立した一つの慣行になっておるではなかろうかというふうに私は考えております。したがって、言葉を選びながらお答えしておりますが、相当にこたえておるから言葉を選びながらお答えしておるんでございまして、これを決してその場しのぎのお答えで済ましておるなどというほど私も愚かであってはならないというふうにみずからに言い聞かしております。
  24. 赤桐操

    赤桐操君 一生懸命御答弁いただいていることはわかりますが、この間の予算委員会までの竹下大蔵大臣の姿勢、あるいは基本的なこういう問題に対する態度と、この大蔵委員会におけるあなたの言っていることは違っているんですよ。今の言われたことと大分遣うんじゃないですか。  それからこの五項目目の二の①になりますが、「今後の財政事情の中で、六十年間を待たずに、できる限り償還努力」と、こう言っております。「六十年を待たずに」というこの言葉なんですが、これは実は私は文書で前もってちょうだいしましたけれども、この文書は拝見しましたが、大蔵大臣がみずからこの委員会で冒頭にこれに若干の肉をつけ衣をつけて御答弁あると期待したんです。だからこういう抽象的に出ているところについてはもっと具体的なものを口頭でお述べになると期待したんですけれども、どこの項についても抽象的なものはそのまま過ぎてきておりますね。したがって、六十年を待たずにというけれども、これでは何の法律上の縛りもなければ、実行を担保する手当ても見当たらないということになるんですよ、このままでは。あなたのせめて御答弁があればここに速記録で残る。しかしそれもない。そういうことになってくると何一つ担保はないんですよ。こういうことになってしまう。六十年を待たずに返す具体的なものをもし先ほど落とされているとするならば、もうちょっと具体的に御説明ください。
  25. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは六十年を待たずできる限りの償還努力すると。言いかえますならば、十年債については六十分の十程度は借換債発行によらずに現金償還することを考えておりますということと、そして、先ほども申しましたが、より具体的にお答えするといたしますならば、例えば五十年とかあるいは四十年とか三十年とか、そういう具体的な数字を挙げるということになれば、それなりの具体性が出てくるんではないかと私も思います。が、しかしながら、今の厳しい財政事情考えて、現時点で三十とか四十とかという具体的な数字を挙げるということは、事実上それは困難である。したがって、今のような御議論を踏まえながら、この努力規定趣旨に即して特例公債依存体質脱却後において、なかんずく脱却後において毎年度財政事情の中で可能な限り予算繰り入れに努めていくということでお答えする以上の、一つ努力規定具体性ある裏づけというものを今明確にお答えするのは非常に困難な実態であるというふうにお答えすることが精いっぱいではなかろうかというふうに考えるわけであります。
  26. 赤桐操

    赤桐操君 それから次の②のところにも、「何らかの方法により」と書いてある。私はこういう物の言い方はないと思うんですよ。これこれの方法によってというのはわかりますよ。「何らかの方法により」「できる限り償還努力」。すべて精神規定だ、これは。法律審議とか国会における論議とか、こうしたものの国民の期待に対するところの扱い方というものは、私はもっと具体的でなければ意味がないと思う。「何らかの方法」というのはこれは一体どういうことなんですか。これも抽象的にここには書いてあるけれども大臣のみずからの御答弁の中でこれこれこういうことなんだというお話しぐらいは承れると考えておったんですが、これもなかった。いかがですか。
  27. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 技術的な問題でございますので私からお答え申し上げます。  財政再建と申しますか、特例公債を減らしていく道程として、新規の特例公債発行をできるだけ早くやめる、第二段階として、特例公債あるいはその借換債残高をできるだけ早く減らしていく、こういうことが想定されているわけでございますので、特例公債及びその借換債残高が幾らあるかということを常に明らかにしなくちゃならない、こういうことでございます。  で、技術的にはいろいろと難しい問題がございますので、私どもといたしましては、この指摘財政審からもなされておりますので、来年度に間に合うようにその検討をしたいということでやっておりますので、「何らかの方法」というのはそのことを言っているわけでございまして、六十年度に間に合うようにその検討をしていきたいというふうに考えております。
  28. 赤桐操

    赤桐操君 この委員会、この国会に提案するのに、これから検討して来年までの間にいろいろのそうした具体的なものをつくり上げていくんだという物の言い方はないと思うんですね。これは理財局長、あなた、そんな無礼な話はないですよ。こういう具体的な方法でやりますと言うなら話はわかるけれども、「何らかの方法」という言葉でもって、今のような答弁ではましてや納得することはできない。要するに建設国債赤字国債、これを区分して償還実態を明確にしていくということぐらいは、これは当然もう今日までこれを提案するに当たっての大前提であったと私は思うんですね。最小限度国会に対して答弁によってこれを補足するとか、そういうことぐらいがこの我々の審議までの間にとられてくるというならまだ話もわかるけれども法律にも入っていない、明確な答弁も出てこない、ただ法案を通すだけに全力を挙げている、こう言われても仕方がないと思うがね、今の答弁を聞いているというと。私も余りいろいろのことを申し上げたくないんだけれども、残念ながらどうも大蔵当局の今日までの提案に対する姿勢、大蔵大臣の御答弁、こういうものを通じて遺憾ながら私はそちらの方から具体的なものが誠意ある形で国民を納得させる形で示されたということには受け取ることができない。  私は、以上私の考え方を申し上げて質問を終わりたいと思います。
  29. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大蔵大臣、しばしばこれは政策転換だという御答弁をなさっているわけでございますが、私もまさに政策転換だと思います。しかし、その政策転換というのは、戦前戦後を通じてこれほど大きな政策転換というのは戦時国債を出したとき以来でないか。財政法にこれだけ風穴をあける政策転換が戦後行われたというふうには思わないんですが、戦前にはありましたね。そういう認識のもとに大臣政策転換と言っておられるんでしょうか。
  30. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 日本の幕府時代は別として、いわば近代国家になった明治以後とでも申しましょうか、そういう際にいろんな政策転換がございますが、私は一度国会議論を踏まえ、少なくとも借りかえ禁止規定をつけたものを借りかえ禁止規定を外し、そして財政の節度としてこれを訓示規定に移したということ、それから五十九年度脱却から六十五年度への脱却努力目標を変えたということ、この二つは大きな政策転換だと思っております。が、その政策転換が戦時国債発行と同じであるか、あるいはそれ以上のものであるかどうかは批判する角度によって異なるでありましょう。しかし、大きな政策転換であるという認識は私もいたしております。
  31. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 戦時国債を出したとき以上とは言わないんです。戦時国債を出したとき以来のというふうに私は申し上げたはずなんです。これは意味が違うんで、上手にすりかえて御答弁なさっていますんで、もう一度そこのところは間違いなく私の御質問を理解していただいた上で御答弁を願います、御答弁が間違っておりますので。
  32. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 戦時国債発行して以来の国債政策についての大きな政策転換であるという認識は私も持っております。ただ、戦後の財政史全部ひもといてみますと、それ以上のものと認識できる政策転換があったかないかというのを直ちに私が言える状態には必ずしもございませんので、戦時国債以来の大きな政策転換一つであるという認識は私も持っております。
  33. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 その認識の上に立ってこの法案審議いたしませんと、本当に私どもが心配していることの意味が御理解されないままにすれ違いになるんじゃないか。  あともう一つ、いいですか、この次に歯どめを外すとすれば日銀に引き受けさせることですわね。そうすると、まさにこれは戦時国債と同様な形が出てきます。歯どめ論がいろいろ言われておりますけれども、建設国債を出したときに歯どめの論議をやっていますわね。それから特例債のときも随分やっております。今度定率繰り入れ停止、こういうときも歯どめ論がありました。ところが、その歯どめ論が何遍やられてもちっとも歯どめになってこないんですね、一つも。そしてずるずると今日に及んで、あと日銀引き受けになったら戦時国債と同じになる関頭に立っているんだ、そのことを私ども心配いたします。  国債の上で戦後それほど大きな政策転換がなかったかといえば、私は政策転換ではないけれども政策としてはあったと思うんです。石橋大蔵大臣のときインフレによる戦前の国債をただ同然で完済しましたね。これがありました。今一番この問題で歯どめ諭その他で心配なのは、そうした過去を私どもは持っているからなのです。このことは大蔵当局も十分認識していることと思いますが、それほど重大な法案なんです。  ところが、意外どここへ来るまですうっと来てしまいました。私も最初これはしようがないなと思ったんです。どうしたって金がないんですし、払わなきゃならないんだしね。払う金をどうかせい、それじゃほかにいい方法があったら聞かせてくれと言われても、なかなか出てまいりません。だから、そういう意味ではことしはしようがないと思うんですよ。しかし十年はひどいじゃないですか、十年は。どうですか大臣。そのためには分けて、赤桐委員の言われるように、大転換の分だけはもっと百家争鳴の議論を十分国会として国民の負託にこたえてやる期間が必要ではないんですか。なんで「等」という言葉二つのものを一つにして出さなきゃならなかったのか。今じっと聞いておりましても私もわからないんですよ。そこのところについてひとつ、大変御苦労した答弁の蒸し返しになりますけれども、もう一度私なりの御質問に対してお答え願いたいと思います。
  34. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私ども国債政策というものを振り返ってみますと、戦後三十九年のポスト・オリンピックとでも申しましょうか、戦後最大の不況、その際四十年度の補正予算のときに公債政策というものに踏み出した。そのとき本院等において行われた議論を振り返ってみますと、インフレに対する歯どめ論というようなものがその中心でありました。いみじくも今おっしゃいましたように、私どもが最も気をつけなければならないのは、あの戦隊国債がいわば超インフレの中で帳消しされた。この問題がえてして、丸谷さん、私どもの年輩からしますと、精いっぱいヨーロッパに追いつけ追い越せという以前の、食うに精いっぱいであくせくし、我々がみずからの生活を守り、あるいは祖国再建のために一生懸命で働いておったときでございましただけに、その超インフレが犯した罪悪というものに余り気がつかないうちに過ぎ去ったかの感がございます。  したがって、私ども国債政策に関して持つ考え方の中に、えてして調整インフレ政策というのが議論の話題に上る場合があり得るわけであります。私個人としては、その調整インフレなるものがかつて我々は気がつかないままに、言ってみれば、先輩の蓄積を食いつぶしてしまったあの犯した罪悪というものが、我々があくせく働いておっただけに余り気がつかなかった。しかし、今の若い世代の皆さんは、いわばインフレなき持続的成長というものを念頭に置いて人生設計を立てておられる限りにおいては、あの悪夢というものを犯してはならぬというのは、財政当局にたまたま身を置いておる私としていつもみずからに言い聞かしておらなきゃならぬ課題だという問題意識は持っております。  そして、その後建設国債が本格化して、四十一年からでございますが、いわゆる特例債が五十年から出されていくわけであります。その特例債の際にも、いわば建設国債との性格の相違からして、子孫のためにツケを残すということとインフレ論と二つから、物すごい財政節度論議が行われて今日にきておるわけであります。そして赤字公債の脱却期限が定められながら今日に至って、五十九年から六十五年に延ばしていった。そういう経過をずっと見ますと、絶えず議論されておる問題は、国民の側に立ったインフレ懸念と放漫財政とでも申しましょうか、そういうものに対するチェックの議論がなされてきて今日に至っておる。それを大転換して借りかえを認めていただきたい、こういうことになるわけですから、したがって今おっしゃいました二つに分けるという議論は、一番最初むしろ私から提起して議論をしてきた問題でございます。だから私は、この二つに分けるという議論を否定するという考え方は持っておりません。  しかしながら、先ほど来申しておりますように、今五十九年度発行するものが、この借りかえ禁止規定をつけないままに授権をいただくということに際して、より苦しいときに償還期限の到来する既発債そのものをそのままにしておくことに対する政策の整合性から言うならば、ここで一挙に一本の法律として御理解をいただくのが政策転換に当たってのより正直な姿勢とでも申しましょうか、そういうものではないかということの結論に達したわけでございますので、この問題は、私どもも今のような考え方を前提にして議論をしたことがあるだけに、私はある種のずれ違いかもしらぬ。しかし、ある種のずれ違いというものは、双方ともにまたある種の理解も共通していただける課題ではないかということを期待しながら、一生懸命お願いしておるということであります。
  35. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大臣の御答弁趣旨も、一面においてはなるほどと思う点もあるんです。私自身は、建設国債赤字国債を分けること自体が、公債というものの性格からいいまして、いろいろ議論の分かれるところもあろうかと思うんです。色をつけるか、何かいろいろ変えるかというふうな工夫もあるようでございますけれども、ただ、私は先日、テレビの十二チャンネルで主計局長さんがお母さんたちを集めて答弁しているのを聞いていて、非常にわかりやすく聞いたんです。そういう論議が、そうしたところがもっとわかるように我々にどうして答弁してもらえないかなと思っているんで、今の大臣の御答弁もどうしても抽象的になる。先日、主計局長さんは、もう少しするとお年寄りが毎年三%ずつふえる、そして主要国の中では、予算の中に占める国債の比率が二五%で一番高いんだ、だからこれはどうしても下げていかなきゃならぬし、利息も九兆円も払うようになってきた、大変なんですよというふうなことを実にわかりやすく言っていたんです。聞いていたお母さんたちも、いや、それは本当に困ったね、このままで行くと若い人たちは困ってしまうね。主計局長さんは、そうなんです、それだからこれ以上ふやさないための工夫が要るんですと。歳出カットというか、歳出を抑えていくことを中心にしたお話だったような気もいたしますけれども、とてもわかりやすい。あの主計局長さんが出てきて、ここで答弁してくれれば、あんなにわかりやすい話のできる人なんだから、大変いいんじゃないかと思って出席要求したんですが、どういうわけか、大蔵委員会には主計局長は出てこないことになっているんですね。これはどういうわけなんでしょう。
  36. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 次長で申しわけございませんが、主計局長、きょうどうしても所用がございましてということであります。
  37. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 ということは、主計局長さんのようなわかりやすい答弁は次長さんでも十分できる、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  38. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 主計局長と経験年数等が違いますのでその自信はございませんが、もし答弁を求められれば、できるだけ努力したいと思います。
  39. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 基本的な問題をもう少し進めないといかぬと思っているんですけれども、実は私は、建設国債六十年、いろいろ調べてみたけれども、余り根拠ないみたいなんですが、どういう根拠から出たんですか。どうしてもわからないんです。わかりやすくひとつ。
  40. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) この定率繰り入れを一・六%にするということでございますが、結局この一・六というのは、六十年でほぼ償還するということになると、毎年一・六%ずつ積んでいけばちょうど六十年でいっぱいになるということで一・六という数字を決めたわけでございます。  それではその六十年と考えるのはどういうことかということでございますけれども昭和四十一年当時に新しい公債政策を導入することになったわけでございます、先ほど大臣の御答弁にもございましたように。その際に、建設国債につきましては、建設国債で調達されたお金は公共的な資産に使われる、したがってその見合い資産の平均的な効用発揮期間、これがどれぐらいになるかということを調べまして、さらに詳しく申しますと、その。中身をいろいろ計算したわけでございます。例えば永久資産である土地等の耐用年数は仮に百年と置くとか、その他個々の資産等につきまして、主として税法等の耐用年数に従って一応数字を出しました。これを加重平均いたしますと、ほぼ六十年ということになりましたので、六十年というのを建設国債償還期限というふうにしたわけでございます。その後、同じような計算をまた五十一年でございますか、やりましたときもやはりほぼ六十一年ということでございますので、引き続きその年数で来ているということでございます。
  41. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 加重平均したというんですが、どんなふうなやり方なんですか。例えばコンクリートの建物なんかでも、大体六十年たたぬうちにこの辺でもみんな壊していますわね。こういうものは六十年で計算できないでしょう。土地のように永久のものありますわね。どういう積算の方法をやったのか、どうもわからないんですよ。
  42. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) まず土地について申し上げると、土地はおっしゃるように永久資産でございます。したがって永久ということでいいわけでございますけれども、そうしますと数学的に答えが出ませんので、仮にこの部分は百年というふうに置いたわけでございます。それからコンクリート製の物その他につきましては、物によっていろいろ違いますけれども、そういうものにつきましては、原則として大体六十年より長い年数が耐用年数になっております。木造等の物につきましては二十年とか三十年というふうになっておりまして、これらのものを先ほど申し上げましたように加重平均いたしますと、当時の計算で六十・一年という数字が出たということであります。
  43. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 自衛隊で使っている戦車だとか大砲だとか、ああいうものは何年で計算していますか。
  44. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 戦車、大砲等は公共投資ではございませんので、この対象には入っておりません。具体的にそれでは戦車、大砲の耐用年数が幾らかということにつきましては、私ちょっと今存じませんので、後ほど調べて御答弁いたします。
  45. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうすると、自衛隊の予算の中で建設公債の対象になるような財産というのはあるんですか。どんなものがありますか。
  46. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 自衛隊関係の資産につきましては、建設公債の対象に入れておりません。
  47. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうしますと、自衛隊の予算というのは、もちろんそうすれば赤字公債の方の対象にも入っていませんわね。予算のときに大体原資を起債で求めていくのか、それから税から何%いくのかという細かい資料というのは、それぞれ主計局ではあるんでしょう、我々見たことないけれども。この財源は、どういう歳入をどこどこにどういうふうに充てるんだというのはありますね。それはどうなんですか。
  48. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 国の予算の中で、特定の費目をとりまして、この財源が何であるかということは非常に特定しがたいわけでございます。例えば会社の事業を行う場合に、投資を行ったとき、このお金は借入金から出たのか、収益でたまったものから出たのかということが、これはなかなか特定しがたいのと同様でございます。
  49. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうすると、歳入と歳出というのはそれぞれどんぶり勘定で、歳入は歳入、歳出は歳出ということですよね。  そうすると、今おっしゃったように建設国債の分が入っているかもしらぬし、赤字国債の分がどこかへ入っているかということの区別はどこでつけるんですか。
  50. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 建設国債の部分は、一応限度といたしまして、公共事業費の範囲内で限られるということになっておるわけでございます。したがいまして、建設国債発行限度の面からとらえているということでございます。
  51. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうすると、建設国債は公共事業費の歳出の枠内でしか歳入としては見込まないと、こういうことですね。
  52. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 原則としてそのとおりでございます。  ただ、若干の何といいますか、アローアンスがあるわけでございます。率で申しますと、ごくごくパーセントの低いアローアンスがございます。しかし、原則としてはほぼその範囲内にきちっとおさまっているということでございます。
  53. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 実は、それで私がよくわからなくなるんですが、自治省来ておりますね。  私は、公債も地方債もそれぞれ公共的な借金であることにおいては間違いないと思うんです。そして地方債の場合には償還期限六十年というのはないんですよ。一方で、国と地方とはできるだけ同じような制度のもとにやらなきゃならない。財政についても、ですから当然、財政法の精神的な原則というのは地方財政の中でも尊重されなきゃならぬというふうなことがうたわれているんですが、地財法の二条ですね、たしか。どうだったですか、自治省。
  54. 柿本善也

    説明員(柿本善也君) お答えいたします。  国と地方の場合、御承知のとおりでございますが、財源の構造がかなり違っておりまして、先ほどの質問でもございましたように、地方の場合は、特定の事業をする場合に、それにいろんな補助金がつくとか、地方債を財源に充てるとか、その他のいろいろな財源を充てるという関係で、どちらかというと地方債を考える場合に事業ごとに物を考えるような仕組みになっております。したがいまして、特定の財源に地方債を財源の一部として充てる場合には、その事業の中身によりましてある程度地方債の償還年限も変わってくる、こういう事情にございます。現実にはその最高限といたしましては、その充てます施設の耐用年数を考慮いたしまして、その耐用年数の範囲内で、あとはその原質の状況なり財源状況に合わして地方債を充てていくという姿にしているのが現実でございます。
  55. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 相互尊重の精神から言いますと、例えば私いつもそう思うんですが、地方自治体で土地を買っても、ある分では起債対象になりますよね。これ百年なんて計算しないでしょう。国は今言ったように百年で計算しているんですよ。  これは大蔵省にお聞きしたいんですが、自治省といってもそういうことは大蔵省の御意向によってやっているようなんです。というのは、起債の場合にも必ず自治大臣というのは大蔵大臣と協議しなきゃならないんですよね。そうでしょう。両方へ上げなきゃならないんです、協議の対象になっていますわね。地方債なんかの方は理財局長さんのところですか。理財局長さん、そうですね、どうなんですか。
  56. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 今自治省からお答えがありましたように、国の場合と地方の場合と取り扱いを異にしているというのは事実のようでございますが、基本的な考え方として耐用年数というものを基礎に置いて考えているという考え方は全く同じでございます。  土地をどうするかという点につきましては、地方財政の健全性を守るとか、そういった角度からの考え方もそこに反映されているんではなかろうか。私どもといたしましては、それで差し支えないのではないのかなというふうに思っています。  それから私どもの方といたしまして、資金運用部資金の貸付期間の問題がございますけれども、これは預託の期間、これが最長七年ということもございまして、そんなに長く貸すわけにいかない。そういう性格のものでございますけれども、地方債につきましては耐用年数の長いものには長く、短いものには短くということで、無理がないような対応をしているつもりでございます。
  57. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 どうもそれぞれの都合で……。  国、地方をなるたけ同じようにやっていかなきゃならぬといういろんな法律があります、例えばラスパイレスなんかもそうですがね。そういうふうないろいろなことがありながら、この公債の問理を勉強してみますと、六十年というのはめっその話であって、余り確たる根拠がないような気がするんですよ。今のように、例えば地方の場合には資金運用部のあれが七年ということを言っていますけれども、公債だって資金運用部資金のうちから二十何%ですか、三〇%弱ですわね。そういうものを使っています。その方は六十年でしょう。どうしてそういうふうに違うんですか。
  58. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 誤解を招くような先ほど御説明をしたかもしれませんが、私が言いましたのは、預かっている方のお金は一番長い約束が七年なもんですから、あるいはそれより短い期間の約束でお預かりしている金もあるもんですから、貸し出す方もそう長くするわけにいかない。こういう事情がございまして、一番長いものでたしか三十年という貸し出しをしていると思います。  それから国債の六十年ルール、これと別に今資金運用部で引き受けております国債の期間は十年でございまして、十年たったところで乗りかえるかどうか。乗りかえるに当たりましては資金運用審議会の御審議を経てということになっておりまして、契約といたしましては十年の貸し出しと、こういうことになるわけでございます。
  59. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 十年で、しかし借りかえしていくでしょう、六十年まで。そうしたら地方債だって借りかえさせたらいいじゃないですか。借りかえさせないんですよね。どういうわけなんですか。
  60. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) それはケース・バイ・ケースのニーズに応じてということでございまして、地方債の場合には三十年というような長期の貸し出しもしているわけでございます。国債の場合には十年ということでございまして、国の方を優遇して地方を優遇しないというふうな扱いではありません。やはりケース・バイ・ケースでそのニーズを見ながらと。ただ、資金の性格としては、最長が七年の契約でお預りしておりますのでそう長くするわけにはいかぬと、こういうことでございます。
  61. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、私がこの地方債の問題をなぜ問題にするかというと、私たちが今論議しておる公債は、全体としては国、地方一体の中で地方債も当然問題にしながら論議しなきゃならないのが、それが欠けているという気がするんです。ですから、百兆円大変だと言うけれど、実際には国、地方合わせて――もう地方債だって五十兆超えましたでしょう。だから、今の借金行政というのは国、地方を通じて大変なところへ来ている。  そして、この間、参考人の先生が、精神規定のほかに市場の、何というか、シグナルがあると、こういうこともおっしゃっておりましたわね。それで私、大変だ、これはもうとことん詰めておかなければならないと思うのは、シグナルは私、五十六年に一遍出たと思うんですよ。暴落して、銀行が、極端に言えば、粉飾決算まがいの公債の評価のし直しをして、あるいは相互に売り買いをしたというような形で乗り切ったことがあります。あのときに僕は明らかに一遍シグナルが出たと思うんですよ。この間の参考人の先生がおっしゃっておりましたように、シグナルを読み取れるかどうか。今までうまくいっていたからこれからもうまくいくという保証はないんです。その読み取るのはどこがやるんだということなんですよ。どうなんでしょう大臣、読み取るのはどこがやるんだ。  私は、まさにそれは毎年毎年の国会論議の中でやらないとね。大蔵省だけに読み取るという責任を全部しょわせるわけにもいかないし、私たちもそれはしょっていかなきゃならない。そういうときには国債、地方債全体として見る。これはもう完全に圧迫しますからね、地方債だって。今地方債非常に厳しいんです。というのは、これは国債の方が大変だから地方財政計画なりを抑えていかなければ資金が出てきませんわね。そういう全体の論議を毎年やらない。だから、この法案というのは、私はそういう点で非常に危険だというふうに思うんですが、いかがでしょうかね。今までないからこれからないということにならないし、あのインフレをくぐってきた私たちとしてみれば、奥さんたちが極めて素朴な形で、困るわね、それじゃ若い人たちのときにどうなるんでしょう、何とかしなきゃならぬと、この論議ができなくなっちゃう。こういうことについてもう少し、大臣、これは深めた論議をしていかないと、先ほど御答弁いただいたようなことだけで、はい、そうですか、ということにならない。それでは国会としての我々の責任が果たせないという感じがだんだんしてきたんです。  それから、とにかく、ないものは払えないんだからこれはしようがないということはわかりますよ。ことしの分についてそれは何とかしなければならぬでしょう。だけど十年間ということはちょっとね、シグナルをその間読み取れなかったらどうなりますか。このことについて、大臣、どうお考えになりますか。
  62. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の丸谷委員の懸念を持っての御質問というのは、まさに国債政策の基本的な論議ではないかと思うわけであります。  で、今日、先進諸国がそれぞれ財政赤字を抱えておる。その財政赤字は、当然のこととして、短期であれ長期であれ、俗称借金で賄っておる。その借金というものが金融市場というものを圧迫して高金利をもたらしておる。我が国は、比較的他の国と比べて、今日国債政策というものにおんぶしながら、クラウディングアウトとかそういう問題を起こさないできたということは、我が国国民の貯蓄率に支えられたものであるというふうに私ども理解をしております。したがって、そこのところで対GNP比とかあるいは貯蓄残高とか、そういうものと国債のおのずからの限界というものがあるわけであります。  だから、本来は国債に依存する体質から脱却するのがまずは最初の問題でございますけれども、この発行に当たりましては、したがって、市場実績等を絶えず勘案しながら、今の丸谷委員お話しになりました例の原価法、低価法というような形で銀行の決算に対応していくという措置がとられたことが、決算方式を変えてきたときもございましたが、現在ほかの国に比べて国債がそれなりに消化をされ、しかも他の国に比べその条件がいい条件、発行する側にとっていい条件とでも申しましょうか、それが保たれておるのは、これはまさに他の国に比べますとおよそ三倍と言われる貯蓄率に支えられて今日あろうかと思うんであります。  したがって、国債政策というのは、その国の貯蓄、今日アメリカの場合は、あるいは我が国とは必ずしも特定しませんが、諸外国からいわば移動した資本が原資になって借りられればなおのこと、この金利を上げていったということにもなっておるでございましょう。手持ちのいわば民族預金のようなものが比較的日本と比べて比率が少ないわけでございますから、そういうことを総体的に考えて、この発行に当たっては市場実績等を見ながら発行して、いわば金融市場全体に赤信号がつくような状態になったら、これはある意味においては私はおしまいだと思うんであります。  それだからこそ、対GNP比に対しても、高い貯蓄率に支えられておるものの、まだ対GNP比に対してアメリカ、イギリスが比較的高うございますが、それよりもまだ高いところにあるわけでございますから、いかに高い貯蓄性向に支えられたとはいえ、これを滅していくというのが、そういうシグナルというものを、いわば赤信号というようなものを絶えず念頭に置きながら、この発行というものにも措置していかなきゃならぬ問題だと。  だから、地方債あるいは国債によらず、いわゆる財政赤字というものは金融市場全体とのにらみの中でシグナルが、赤信号が出ないという範囲内のものでなければ当然いけないし、だからこそとりあえずは六十五年までに赤字公債からの脱却体質を整えて、そしてあとは対GNP比に対するものを徐々に徐々に減らしていくことによって健全な財政体質に帰ろう。だから国債政策を論ずるときには、そういう貯蓄率とか、あるいは資本の移動とか、そういうものを総合した金融市場の赤信号というものを絶えず念頭に置いて対応していかなきゃならぬことは、これは国債政策の基本の一つだという事実認識は、おおむね私共通しておるんじゃないかというふうに承りました。
  63. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 時間ですから、まだシーリングの問題とかいろいろ問題ありますが、後日に譲りたいと思います。
  64. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後三時まで休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      ―――――・―――――    午後三時二分開会
  65. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十九年度財政運営に必要な財源確保を図るための特別措置等に関する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  66. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは最初に、今回の法案の中にあります電電公社からの臨時国庫納付金の問題についてお尋ねをいたします。  たしか前回、昭和五十六年、四千八百億円の納付金を電電公社からいただくときには、時の大蔵大臣は、こういうことは二度とやらない、こういうように当委員会でも言明をしたと思うのでありますが、これを繰り返すということは約束違反ではないか。その点はどのようにお考えでございますか。
  67. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 五十八年度財源確保法によります電電納付金の前倒しの御審議の際に、臨時納付金については軽々に対応すべきものではないと申し上げました。これは私が申し上げたわけであります。しかし五十九年度予算編成におきまして、徹底した経費の節減合理化とあわせて税外収入等の見直しを行って、もって財政改革のあかしとしての公債減額を最大限に行う必要があるという考え方から、私どもといたしましては、電電公社の経営状況等を勘案いたしました上で、公社に対して二千億円を国庫に納付することをお願いしたという経緯になるわけでございます。したがいまして、この問題につきましても、私も五十八年度財確法を議了していただきました後、機会をとらえて、御覧間に対して、私どもとしてはいささか表現が適切を欠くわけでございますけれども、のどから手が出るほど欲しい税外収入でお願いしたいものだなあという感想のような答弁をいたしまして、そしてその後、今回本格的にお願いをしたという経緯をたどったわけであります。
  68. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今回も、特例公債借りかえはやらないということも約束を破る。大体今まで公定歩合の変更とか、解散をやるとかやらないとか、そういう場合は、政治家あるいは日銀総裁等がうそをついてもいいということでございますが、余りにもそれ以外で大蔵大臣が言明したことに反することをすると、私は大蔵大臣の言うことを余り信用できない、こういうことになりますので、この点、意見を申し上げておきたいと思います。  そこで、電電公社の総裁にお尋ねをいたしますが、たしか臨調答申等においては、電電公社もこのままいくと第二の国鉄になる心配がある、今は経営は黒字でも将来このままいくと人件費がふえる、また営業の売り上げはだんだん伸びがとまって、そうして第二の国鉄になるという臨調答申が出され、その方向で改革が進められておるわけであります。  率直に言いまして、電電公社の場合は、いろいろ諸物価高騰の中で長距離を値下げしてきた、また近く中距離も値下げをする、こういうことでまた五十八年度においても当初の予測よりも多くの余剰金を出してきておるわけでございますが、これはどういう点に原因があるのか、歳出カットであるのか、あるいは増収によるのか、そのあたりのお考えを伺いたいと思います。
  69. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) 私が着任しましたときには、収入の伸び率と支出の伸び率を比較してみますと、支出の伸び率の方が収入の伸び率よりも多かった。その傾向がずっと続いておりますので、このままではどうせ赤字になってしまってどうにもならなくなるということがはっきり見えておったわけでございますが、その後いろんな世の中の空気の変化もございましたが、私どもが一番先に始めましたのは、支出の伸び率を収入の伸び率以下に抑え込むということを各通信局通信部に強く要求いたしました。その方法として、民間の企業と同じように月次の決算を強行いたしまして、毎月毎月の支出の金額をその組織の責任者が正確に把握するということで、お金の使い方というものに責任を持たざるを得ないという形に持っていきました。  それは二つ目的がございまして、例のあの当時問題になっておりました不正経理を防止するということと、それから支出の合理化をやらせるということで、これは皆非常に努力してもらいまして、その後だんだん時間がたつにつれまして月次決算の手法というものがだんだん高度化いたしまして、まだ今でも支出の伸び率は漸次低下いたしております。努力いたしましたので、現在におきましては、支出の伸び率と収入の伸び率というのはほとんど平行線になっております。  平行線というのはどういうことかといいますと、長距離料金を主体としてどんどん値下げしておりますので、そのマイナス・エフェクトを乗り越えてなおかつ支出と収入の伸び率が平行、あるいは支出の伸び率がまだそれよりも少し下に下がるという力を残しながら今推移しているのが現状でございます。そういうことで収支差額は、毎年ほとんど絶対額は変化のないような姿でその後推移いたしておりますので、そういうことで現在は動いております。要するに健全財政、財務の基盤の確立ということに主力を注ぎながら現在は動いておるということでございます。
  70. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 電電公社も国際化に対応していく上でいろいろ研究投資もしていかなければいけないと思いますが、また同時に職員の士気に影響があってはいけないと思うわけでございます。今回の二千億円の臨時国庫納付金等がこのような研究投資の削減につながらないのか、あるいは職員の士気に影響はないのか、この点をお伺いいたします。
  71. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) 前の四千八百億の四年間の納付は資本勘定から納付するということになっておりまして、収支差額に何らの影響のないような手続になっておったのでございますが、これは非常に危険でございまして、資本勘定からということになりますと、どこまででも資本勘定から出甘とおっしゃいますと、収支差額にも毎日の皆の努力にも何ら関係ない数字がどんどん出ていくことになっていくわけでございまして、財務の基盤をどんどん悪くしていく。その影響が直接経営に及ばないという危険性がございますので、今度の二千億の分は、どうしてもお取りになるなら収支差額の中から、いわゆる利益の中からでないと私としては出せませんということをはっきり申し上げまして、最後の二千億は五十八年度の利益の申からということで納付することになったわけでございます。  そういうことで、二千億という数字にどうして決まったかということなんでございますけれども、私の方としては、収支差額の面から見まして、二千億がぎりぎりいっぱいの限度額であるというふうに考えましたので、二千億でこらえていただきたいということをいろいろお願いいたしまして、ここへ落ちついたというふうに了解いたしております。
  72. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから今私がお話ししましたように、今回また新たな値下げを近く行うということでございますが、我が国の料金体系で遠近格差というものをかなり少なくするように今までやってこられていると思うのでございます。将来の料金体系はもちろん新しい電電公社で行われることになると思うんでございますが、将来の料金体系としてはいろいろなことが言われておるわけです。遠近格差とか、あるいは単一料金の区域等については大体どういう方向を考えておられるのか、これをお伺いしておきたいと思います。
  73. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) この問題は、今からいろいろ長い時間をかけながら努力していかなければならぬ問題でございますが、まず私どもが今さしあたりどうしてもやらなきゃならぬ問題は、財務の基盤に余裕ができたら、それを全部当面の間長距離料金の値下げに持っていくということをやらなきゃ、いろいろなこれから先の高度情報通信網とかいうものをつくりましても、あるいは高度情報社会と申しましても、世の中の実際の生活にお役に立つようにはなりかねるだろう、またできないというふうに考えておりますので、その高度情報社会に日本の国が発展していくための前提条件として、この長距離料金の値下げは絶対必要なものだという認識のもとにこういうふうに考えておるわけでございます。  で、よく世間では、長距離料金を下げれば市内料金を上げるんだろうという風説が流れておりますが、確かに市内料金は外国のどの国に比べましても半分以下で、飛び抜けて非常に安いんでございますけれども、現在、残念なことに、市内料金が明らかにどういうふうな動きで利用されておるのか、市内料金と近隣の市外料金との通話の使い方というふうなものが科学的にきちっとした数字が出ておりません。で、そういうこともございますし、将来の設備の増強の合理化という点からも必要なものですから、アメリカのAT&Tが使っております通信線の瞬間瞬間の通話料を自動的に記録する方法がございますので、そのソフトとハードを買い込みまして、今その整備を急いでおるところでございます。  それで、この近距離料金につきましては、来年、あと二年たちますとかなりはっきりしたデータがそろいますので、そこでどういうふうにこの近距離料金を考えるかということは、そこから数字をベースにしたことが考えられますので、その時分まではまだ近距離料金というものに対して私どもが直接さわる考えはございません。  近距離料金といいましても、東京みたいなところでは、三分十円でかけられる相手が四百万くらいあるのでございますけれども、地方に参りますと、これが五千とか一万とか二万とかというものが大部分でございまして、三分十円で話のできる相手の数というものが非常に少なくなってまいります。隣の局にかけるとすぐ市外料金で、かなり高い料金に飛び上がります。ところが実際、地方でも具体的な生活圏というものは車社会がだんだん進んでまいっておりますので、昔の市内料金という概念ではなかなか実際生活に直結しないような形の傾向もだんだん出てまいりますので、この辺のことも考えて区域を広げながら何らかの修正をしなきゃならぬのじゃろうというふうにも考えられますけれども、何様、基本的にその基礎データが科学的にございませんので、またその基礎データが出ていろいろ論議をしていただくまでには、そう急いで市内料金にとやかく手をつけなくても、まだまだ私ども何とか努力すれば、市外料金を、遠距離料金を下げながら健全に動いていけるだろうというふうに考えております。これはまだずっと先の問題というふうに御了解いただきたいと思います。
  74. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今回国会にいろいろ電電公社の改革法案が出されまして、第一種の業者にはいろいろ新規参入が行われる、こういうことで国鉄とか建設省関係とかあるいは民間とか、こういうものが名のりを上げておるわけでございます。これは新しい電電公社の競争相手となり得るのか、そのあたりのお考えを聞きたいと思います。  それともう一つは、いわゆる第二電電、新規参入の電電公社が非常に通話料の多い都市部だけをやって、その結果地方の値上がりがあるんではないか、こういうことが労働組合等からも提案されておるわけでありますが、総裁の御答弁では、全体の需要が伸びるからそういう心配はないんだと、こういう御意見のようでございますが、私はやや楽観し過ぎはしないのか。地方の値上げ等を招かないために、あるいはまたいろいろなサービスを維持していくためには、新しくなった電電公社としてもかなりの改革をしていかなければできないんではないかと、こういう気がするわけでございます。  この二点についての御見解を承りたいと思います。
  75. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) 今の第二、第三、第四電電の構想というのは、建設省、国鉄あるいは京セラというふうにいろいろ具体的に動き始めておるようでございますが、こういう計画できちっとした一番新しい技術で、それに必要な最小限度の人員配置で新規参入が始まって、それが幹線部分に入ってくるということになりますと、確かに私どもの今の長距離料金をそのまま置いておいたんでは相当なコストの差が出てくるということは十分予想できます。そういう意味からも、さっき申しましたように、私どもは競争力をつけるという意味で、今の間から長期にわたって長距離料金の値下げをまず急ぐという考え方も必要になってくるわけでございます。それにいたしましても、なかなか何年たって具体的に新規参入の設備が稼働するかということはまだこれから先の問題でございますが、相当の時間がかかることだけは確実だろうと思います。その時代までには何とか競争になるところまで持っていきたいというふうに考えておるわけでございます。  もう一つの私ども努力の方でございますが、今度の法案ではそういうふうに競争しなきゃならぬ。そうすると競争して入ってくる企業というのは株式会社で入ってくるから、私どもも株式会社で向こうのできることは私どももできるというふうな企業の性質ということにしていただくことに法案が大体できておりますので、私どもも、その法案の範囲が決まりますと、今までの公社とはかなり違った経営のあり方が考えられますと、合理化もずっと速く、ずっと大きなスケールでできるということになろうかというふうに希望を持っているわけでございます。みんなが本気になればできないことじゃないなという感じはいたしております。  それともう一つ、御質問の中にありました世の中の通信、通話料といいますか、通信料の増加傾向といいますのは、新しい法案ができますと、かなり長足に伸びてくることは確かだと思います。これはアメリカの現在の状況を見ますと、そういうふうに日本もならざるを得ないというふうな動きが十分ございますので、通話の伸び量というのは、今度の法案が通りますと、かなり今までと違って伸びは速いんじゃないかというふうに考えられております。
  76. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから特に第二種業者へのIBMとかATTとか、こういうアメリカの進出が日本の業界に対して非常に脅威になるのではないかと、こういうことを心配する意見もあるわけでございます。しかし一方では、日本の技術レベルは非常に高い、こういう例もあるわけでございます。特に日米の技術のレベルと比較した場合に、日本が非常に強い分野とか、アメリカが非常に強くて日本が弱い分野とか、こういうものはどうなのか。日本としてはかなり技術的な面でも努力は必要なのではないかと思うのですが、そのあたりはどうでございますか。
  77. 真藤恒

    説明員(真藤恒君) 磁気通信を総合的に考えますと、二つに分けて御説明申し上げた方がいいかと思いますが、電気通信の設備の性能、物理的な設備の性能ということと、その性能をフルに生かして世の中の目的にどう使うかという使い方の技術、二つに分けて御説明いたします。  この電気通信設備の物理的な設備の状況、それからまたその性能ということに対しては、日本のそれとアメリカのそれと今のところほとんど同じレベルにおるというふうにお考えになっていいんじゃないかと思っております。ある面では向こうが進んでおりますが、ある面ではこちらが進んでいるというふうなことで、しかしその違いもほんのわずかなものでございまして、技術屋の世界では大きな問題でございますけれども、世の中にとってそう大きな問題ではないというところまできておるわけでございます。  ところが、使い方の方ではかなり大きな差がございまして、日本の方はうんとおくれております。これだけは間違いございません。どうしてそういう差ができたかというと、これは法体系がアメリカの法体系と日本の法体系で今日では非常に大きな差がございまして、日本の現在の法体系では通信線の使い方の制限が非常にきついんでございます。これは電電公社が一元的に運営するという建前でどうしても制限が強く出ておるわけでございまして、その線でおくれたんじゃないかというふうに考えるのが現在の常識でございます。今度の法体系ではそれが完全に非常に根本的に改良されるわけでございまして、日本の社会も、アメリカ式の電話の使い方あるいはさらに日本式の電話の使い方というものが急速に発展していくのは確実ではなかろうかというふうに考えておるわけでございまして、そういうふうに使い方がアメリカよりも日本がおくれているために、アメリカのIBMなりATTが入ってきたら日本のマーケットを席巻されるのじゃないかという一つの心配もございますけれども、実は私どもが今日までやってまいりましたデータ事業本部という仕事がございますが、これが実はいわゆる今度の法体系でいう第二種業種の仕事を現にやっておるわけでございまして、これがかなり現在技術的にも仕事の量的にも強く大きくなっておりますので、これをもとにいたしましていろいろな施策をやっていけば、新しい法体系でやっていけば、かなりIBMあるいはATTというところから日本のマーケットの大事な仕事を席巻されてしまうということにはならぬのではなかろうかと思います。  と申しますのは、現に、私どもの方で一番国として大事な電線の使い方、電話線の使い方というのはもう既にほとんど軌道に乗っておりますし、また軌道に乗りかけているものが非常にたくさんございますので、そういうところを押さえながら、日本の新しい業者と協調しながら、競争しながらいけば、入ってきましてもマーケットを席巻されるということにはならぬのじゃなかろうかというふうに考えております。かなり楽観過ぎる見通しかもしれませんけれども、私どもはそういう自信は持っております。
  78. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、新しい電電公社は資本金が一億円で、その三分の一は国が持たなきゃならぬ、将来はこの三分の二は売ってもいい、そういうことでございます。この株の処分をめぐっていろいろ新聞や雑誌等では、これにプレミアムがつくとか、あるいはまた大変な利権争いがあるようなことが言われておるわけでございますが、どういう点が利権を生むおそれがあるのか。大蔵大臣はどのようにお考えでございますか。
  79. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる新電電の株式会社の株式売却、これは今御審議いただいております日本電信電話株式会社法案が成立してからのことになります。六十年度以降の問題であるわけでございますけれども、いずれにしても、利権の対象となることのないような厳正な対処をしなければならないという基本的な認識は持っておりますが、どういう場合に利権の対象になるだろうかということになりますと、今日の時点でこのような場合が予測されるというようなところまでは竹下登、不勉強でございます。
  80. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、こういう話が出るということは余りよくないことでございまして、恐らくこの株を処分するときにどういう証券会社を使うとか、いろいろそのあたりから利権のような話が出るんじゃないかと思うんですけれどもね。この株は国が持つということで大蔵省が恐らく責任を持って扱うわけですから、いやしくもそのような話が出ないように対応というものをはっきりさすべきじゃないかと僕は思うんですけれどもね。そういう点はどういうところに利権を生む危険性があるのか、私もすべてはよくわかりませんけれども、そういう点についてはきちっとした対応をしていただきたい。非常に抽象的な要望ですけれども、その点をお願いしたいと思います。
  81. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはまさに御審議いただいております日本電信電話株式会社法案では、「予算をもって国会の議決を経た限度数の範囲内」で行う、こういうことになっておるわけであります。今抽象的意見とおっしゃいましたが、抽象的という御表現をなさいましたものの、これについては殻も厳正に対応していかなきゃならぬ問題であるという基本的認識は持っております。  まさに具体的には今後の検討課題ということになるわけでございますが、従来まで国が保有しておりました株式を市場で売却した場合における経験等もございますが、しかしながら、何としても、これほど大きな規模のものでございますだけに、まさに「予算をもって国会の議決を経た限度数」というものが決まったといたしましても、それは同法案で新会社の株式は政府すなわち一般会計が保有するということになっております。すなわち、まさに国民の財産でございますだけに、これについては厳正に対応しなければ、今までのいろいろな経験をも踏まえてではございますものの、今までの経験にはないほど大きな規模のものでございますだけに、具体的に検討をしなければならない課題である。もとよりこれは六十年度以降の問題でございますだけに、各方面、国会議論等を承りながら厳正に対処していかなきゃならぬという、抽象的表現ですが、厳正な対処をすべきであるという観念だけは私もきちんと持っておるつもりでございます。
  82. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから将来の話ですけれども、株を処分したその資金をどうするか。これは電話の加入者の総意によってできたお金だから、特別会計をつくれとか、あるいは地方の知事さんからもいろいろな要望が出ているようでありますが、大蔵大臣としてはどうするお考えでございますか。一般会計のこういう累積する債務の穴埋めに使うお考えであるのかどうか、その点はどうでしょうか。
  83. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 原則的に申しますならば、一般会計に帰属するものでございますだけに、財政当局としてこれを対象として考えた場合には、売却収入もまた一般会計に全額帰属して、そして財政需要全般の中でどのように使われるかということで、いわゆる財政需要全般に充当されるべき性格のものであるというふうな財政当局としての一つの理解は、論理的に一応成り立ち得るものであるという考え方は持っておりますが、今も委員おっしゃいましたように将来の問題でございますので、まさに各方面の意見を聞きながらこれに対応すべきものではなかろうかというふうに考えております。
  84. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今国会審議しているこの法案の中身は、現在の借金を六十年後の子孫にまで残すという、こういう内容法案でありまして、そういう点から見れば、電電公社の株を処分したものを一般会計に使うということの方がはるかに矛盾は少ないんじゃないか、こういう意見もあるわけであります。そういう意味で、これは私の個人的な意見でもあるわけですけれども、三十年、四十年も後代に借金を残すよりは、むしろこういうものを使って後世に残す借金をできるだけ少なくする、そういうことの方が、いろいろ矛盾はあるにしても、これはより妥当性があるんじゃないかと、このように考えるわけでありますが、そういう点はどうですか、大蔵大臣の御意見は。
  85. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一般会計が保有する、原則的に申しまして。したがって、財政当局としては、それが将来の問題として、売却されて収入が上がった場合には、全額が一般会計に帰属して、そしてその財政需要全般ということを考えますと、その財政需要全般の中に今御指摘なさいましたところのいわゆる公債残高を減少せしめるための需要というものが当然考えられる一つ考え方であろうという事実認識は私も持っておりますが、何分法案をこれから審議していただくさなかの問題でございますので、財政当局としての、一般会計に帰属するものであるだけに、財政需要全般に充当さるべき筋論というものを申し上げ、その中で今お話のありましたこの財政需要の中の大きな部分を占めるところの公債償還財源ということは十分検討に値する御提言ではなかろうかというふうに考えておるわけであります。  ただ、まさにこれから御審議いただく法律案の中身でございますので、各方面の意見を聞きながらおのずから財政需要全般の中で帰趨する方向が模索されていくべきものではなかろうかというふうに考えております。
  86. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、大蔵省の「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」という資料の中で、「公債依存度は特例公債発行が始まった昭和五十年度以降の実績と対比すると、最低水準の二五%となっている」、このように言っておるわけでございますが、今の国の財政というものはいい方向に向かっているのか。どうもこの文章を読むと、最低水準の二五%だからかなりいい方に向かっているような気もするわけですが、あるいは悪化をしているのか。このあたりはどういう認識でございますか。
  87. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはなかなか難しい問題でございます。我が国財政が、公債残高累増に伴いまして、利払い費の急増によってかつてない窮状にある、これは事実であると思っております。このまま放置すれば今後の社会経済変化に対応できなくなってしまう、したがって財政改革を推進しよう、そうして財政の持つ対応力を回復していこう、こういうのはまさに緊要の政策課題であります。  で、今御指摘になりました点は、五十九年度予算については財政改革の緊要性にかんがみて歳入歳出両面においてぎりぎりの努力を行った、最大限の公債減額を図った。したがって、この公債依存度は、五十年度以降決算べースあるいは五十八年度は補正後ベースでございますが、最も低い水準にとどまったということは事実でございます。しかし、今これが二五%と申しましても、実際問題、先般サミットに参りましても、一般会計全体の中に占める財政赤字――公債発行あるいは借入金でつなぐ、それぞれの国によって多少の会計上の相違はございますけれども財政赤字としてこれを総合して見た場合、先進国の中で残念ながらまだ最高ということになるわけでございますので、だからまだまだ努力が必要だ。したがって、私は胸を反らしてよくなったということの言える状態ではないではなかろうか。言ってみれば、大変なより悪化した傾向を辛うじて支えながら、将来に向かって歩みつつあるというような事実認識の方が正しいんではないかという基本認識でございます。  ただ、諸外国と比べましたときに、なるほど単年度一般会計に占める比率も最高、そうしてそれがまた単年度の金額がGNPに占める比率も残念ながら最高、残高もまたGNPに占める比率も最高、こういうことでございますが、経済全体の動きの中で世界の先進国からやや羨望の眼をもって見られるというのは、結局、日本人のいわゆる貯蓄率の高さということに支えられておるということではなかろうか。したがって、財政そのものはいわば大変いい方向に向かっておるということを胸を張って断定するような環境にはないではないか。これからこそ一層の不断の努力を払っていかなきゃならぬ課題ではないかな、こういう認識をいたしております。
  88. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあ悪化をしておるわけでしょう、悪化の度合いが多少減ったかもしれないけれども、やっぱり我が国財政はまだ悪い方向に進んでおる、こう私は理解すべきじゃないかと思うんです。その点はどうでしょうか。
  89. 竹下登

    国務大臣竹下登君) だから、これからのことを考えてみますと、今財政が、いわゆる公債依存度という形で今申し上げてみましたが、なるほど二五%、世界では高いが、従来から見れば多少減っておる。ところが、一方また一般会計の中に占める国債費、すなわち利払いというものは年々ふえてきておるわけであります。ある時点においてその年の財源としての公債以上に利払いの国債費というものが出て、言ってみれば、金利を払うために金を借りているんじゃないか、こういう批判も受ける状態になるわけでございますから、その点から見れば、私は確かに依存度だけで見れば下がりつつあっても、そうした点から見た場合に非常に苦しい窮状にあるということは言えると思うんであります。したがって、「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」で申しましたように、まずは特例公債発行を六十五年度努力目標としてなくして、そうしてその第二段階として、対GNP比で計算するかどうかは別といたしまして、残高そのものを滅していくという二段構えということで進んでいかなければならないではなかろうか。経済でございますと、あるいは成長率とか、あるいは私がよく申し上げます七、六、五抜きの四、三、二、一ということを申し上げますが、そういう一つの指標によって尺度が存在するわけでございますけれども、私は財政の場合公債依存度だけでそれの尺度になるものかどうか。  一方、国債費というものも存在しておるというところに、非常に難しい問題だが、いずれにしても、窮状にあるということだけは総じて言えるではなかろうかというふうに考えております。
  90. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 臨調の第五次答申、最終答申では、「予算に中長期的視点を与えるとともに将来の財政の在り方についての情報を国民に提供し、その合意の下で現在の危機的状態にある財政の再建を着実に進めていくためにも、財政の中期的な展望を明らかにすることが重要である」。私は国民の合意も必要ですし、財政現状をもうちょっと国民に示すべきではないか。赤字国債発行する当時は、赤字国債というのは、これは生活費が足りなくて借りるようなものですから、本来借りるものではない。いやしくも借りたならば、すぐ返さなくちゃいかぬ。そういうものがだんだん麻癖して、政府が発表いたしました特例公債の借換債発行するケースAというのも、これは昭和六十年度に要調整額が約四兆円ぐらいあるわけですから、これを増税なり歳出カットで穴埋めをする、六十年度予算で。そういうものをちゃんとやったとしても、国債残高は、昭和七十二年には約二百兆までどんどんふえ続ける。利払い費も八兆七千億がだんだんだんだんふえて、昭和七十二年には十二兆九千億になる。こういうような状況で果たして――昭和七十二年といえばこれから十三年後ですけど、それでも財政は悪化しておるという。  こういうような状態をもうちょっと国民皆さんにPRするというか、そういう努力は私は必要なんじゃないかと思う。どうも大蔵省の姿勢を見ると、できるだけ見せかけをよくして本当の姿を国民に示そうとしない。四兆円の要調整額を来年は埋めなければならない、そういうことになっておるわけですが、これを歳出カットした場合にはどの程度のカットが必要なのか、あるいは増税になった場合にはどの程度の増税になるのか、そういうような点をもうちょっと国民にPRする必要があるんじゃないか。大蔵省が出している資料は、数字ばっかりでなかなか私たち読んでもよくわからないわけでありましてね。かつてある時代に、大蔵省が何年か前に非常にわかりやすいそういうものを出して、いろいろ国民批判を受けたこともあったわけですけれど、そういう努力をしていかなければいけないんじゃないか。この点はどうですか。
  91. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはお説のとおりでございまして、かつて漫画やらいろんなものを入れた資料をつくった。大蔵省出先を含めて、総動員して財政再建ということの一大キャンペーンを張ろうという努力は、今日も出先の財務局とか財務部の諸君等はそれが一つの大きな仕事になっております。  ただ、今塩出さんおっしゃいましたように、どうしても財政ということになりますと数字が多くなります。確かに数字ばかりだと非常にわかりにくい点があります。したがって、今は、ある一定の仮定を置いたもので歳入を予測し、そして現行の制度・施策そのまま後年度負担の推計をして、その差額等をいわば要調整額として、それをどうして埋めるかということにつきましては、これはまさに負担する者も国民、受益者も国民でございますから、それはどうしていくかということを国民皆さん万全体と相談して、そのコンセンサスのあるべきところをこれから模索してまいりましょうということで要調整額をお示ししておるわけです。それを例えて申しますならば、今の御議論借りるならば、これを所得税の仮に増税ということで考えたら、一人一人個々に多少の相違はあろうが、今の何倍になりますとか、何%増しになりますとか、あるいはそれを間接税で考えたら何倍になりますとか、そしてまた歳出カットでそれを社会保障に当てて考えたら生活保護費はこのようになりますとか、あるいは公共事業に当てて考えたならば今までの予算どこれだけ減ってまいりますとかいう、いろんなケースをお示しして理解を得るというのもやっぱり一つの方法だと思って、今御意見を交えての御質問に対して、私も耳を傾けておったわけであります。  今は、いずれにしても、これだけの要調整額が要ります、これを負担増か歳出か、どういう方法か国民皆さん方と相談しようじゃないですか、その中でコンセンサスを得ていきましょう、最後は国民の皆様方の選択でございますと、こういうやり方で去年、ことしとやってきたわけです。それをもう少し色づけをした具体的なもので選択肢を羅列して、国民皆さん方との対話をしていくということは、私も必要であろうと思っております。  したがって、できるだけ茶の間にも入ろう、入りたいという気持ちもないではございませんが、茶の間へ入りましても、勢い私どもが話をしておると数字が出たり、あるいは財政の専門語が出たりして、国民皆さん方に理解をいただけるにはいささかなじまない表現になったりする場合もございますだけに、そういうことは大蔵省一体となってPR研修会でも開いて、だれか話の上手な人にでも来てもらって勉強するのも手かなあというような感じもしております。例えば私の前の大蔵大臣でありました渡辺美智雄大蔵大臣などは非常に茶の間へ入りやすい、幾らか発音の方は別といたしましても。だから、そういうことが全体の中に、国民に理解を求めていくための我々の日常の行政執行上の大きなウエートを占める要因ではあるだろうという認識は私もひとしくしておりますが、なかなか思うに任せないということが実態でございます。
  92. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあ大蔵大臣は前々から、歳出カットによるかあるいは増税によるかというのは国民の選択だと言われるうちにもう何年かたっちゃって、しかし結局、選択してきたのはどっちでもないわけですわね。もちろん歳出カット努力をやってこられたことは認めますけれども、しかしその大半は借換債を認めるとか、結局は公債を発行して借金を後世に残す、そういう道を選択しておるわけですよね。だから、それは一番安易な選択の道であり、これは圧力団体も文句は言わないでしょうし、増税もなければ納税者も比較的文句は言わない。しかし結局は、後世の、六十年といったら、ここにいる人はだれもいないわけでありますが、そういう我々の知らない後世代に残すという、そういう安易な道に流れておる。  だから、これは本当に増税かカットかという、この二つの選択、それ以外にあっちゃいけないんじゃないかと思うんですけどね。そのためには、国民の声を聞くといっても、国民は一億何千万おるわけですから、ある程度大蔵省が、歳出カットはこの程度でいく、足りないところはこの程度の税負担増もやむを得ないと、こういう具体的なものを出さないと、いつまでたっても問題点は後に残されちゃうと思うんですね。いろんな交渉において二つの意見の違う場合に、仲裁する人が一つの案を出してこれではどうかと、こうやっていかないと話はまとまらないんじゃないかと思うんですけれどもね。  そういう意味で、財政計画というきちっとしたものでないにしても、今ゼロシーリング、マイナスシーリングについてはいろいろな意見も出ているわけですけれども、予算のカットはどの程度でいくとか、足りないところはある程度税収増で賄う以外にないわけですから、そのあたり大蔵省として、また大蔵大臣としてある程度の方向を示さないと、結局流されて第三の道へずるずる行ってしまうんじゃないか。このように思うんですけれども、その点はどうでしょうか。
  93. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはある意味において今おっしゃいました議論はいわゆる公債麻薬論だと思うんです。一度その道へ入った場合、安易な道としてその道を選んでいく。ただ、その道が今日まで続けられたのは、まさに私は日本国民の他の国民に比べての貯蓄率の高さというものに支えられてきたと思います。それも限界だという表現はいささかきつ過ぎるかもしれませんが、もとよりそれそのものを慎むべきことは、今重ねて御主張なすっておる後世代に対するツケ回しと、それから多額の利払い費というのは予算の持つ一つの性格である富の再配分ということで意図せざるところへ富を偏在さすという二つの点からしても、これはどうしても避けなきゃいかぬ課題だというふうに私も思っております。  そこで、今日まで私どもは要調整額を示して、それも精いっぱいでありました。その中で、これを負担するのも国民、受益者も国民、そのコンセンサスはどこにあるかというのを国会議論等を通じながらその方向を見定めていこう。しかしそれが進めば進むほど、国民全体の中に、厳しい歳出削減の中に真に必要なものと必要でないものとがおぼろげながらわかってくる状態になりはしないか。そうすればそこに一つのコンセンサスの方向が、歳出削減というものはこのような形で構造を変えていきます、あるいは負担増というものは他の国々に比べれば今こういう状態でありますだけにこれを年次的にこの辺まで持っていきます、こういうようなことが言える段階に今至っておるかというと、私はもう一たびあるいは二たび、国民の中でコンセンサスを得るだけのPRの努力の段階が続くんではないか、こういうような感じがしております。  そのうち死んでしまったら申しわけないことでございますので、できるだけ健康にも留意しながらお互い後世にそのことを問いかけて、生きとし生ける者の自覚の中でそこにコンセンサスが出ていく方向を見定めなければならないのかなと自問自答をしながら、あるいはおれについてこいとまで言えなくても、一つの方向を明示して、しかし国民全体の知識水準が世界一高い国民であるだけに、むしろ少しは回り道になっても国民の理解と協力を求め、そこにコンセンサスが得られるような方向がより民主主義社会においては現実的ではないかなと日ごろ悩んでおるところでございます。
  94. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 来年の予算編成につきましては、いろいろマイナスシーリングをやめるとか意見が出ているわけでありますが、五十九年度は経常経費マイナス一〇%、それから投資的な部門はマイナス五%、こういう方針であったわけですが、六十年度も大体そういう方向でいくように私は理解をしているわけですが、それでいいのかどうか。
  95. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いずれにいたしましても、厳しいものにならざるを得ないという基本的な認識は持っております。  ただ、御案内のように、例えば五十九年度予算編成の際の手法としてとりました今おっしゃいました五%一〇%、最初の人件費、年金、ODA、国際取り決め等々ある種の当然増を認め、そしてその後、俗に言うゼロシーリングと申しました中に医療費あるいは生活保護費等、それからその次の一〇%が総額四兆数千億になりますいわゆる今おっしゃいました対象経費、それから八兆数千億から人件費部分の七千億を引きました七兆数千億がいわゆる投資的経費として五%を掛けてきた、こういうことであります。  シーリングというものは昭和三十六年の予算から使ってきております。ただ三十六年を見ますと、いわば高度経済成長に入らんとした、安保の翌年、所得倍増論、だから無限に伸びるのを抑えるために五〇%を上限としたシーリングでございますから、プラス五〇%シーリングということでございます。したがって、本当にシーリングという言葉が、概算要求枠というものが国民の中に厳しいものだという認識を与えたとすれば、私が前回大蔵大臣に就任しておりまして協賛して通していただいた五十五年度予算の概算要求はプラス一〇%でございます。それから五十六年がプラス七・五、五十七年が○、それで五十八年が五、あるいは五十九年が五と一〇、こういうふうになっておりますから、ある意味においては五十五年からシーリングというのが国民の中に厳しいものだというのがわかったのか、あるいは五十七年からかもしらぬという気もするのでございます。  だから、シーリングというのは要するに予算編成作業の一つの手法であると私は思います。したがって、その総枠の中で、大蔵省の方がこの予算はもっと切るべきだという指名手配方式をやらないで、専門的な各省庁の創意工夫の中におのずから政策選択の順位が決定されて、それが要求予算となってくるという内なる改革を期待してのものが今日続いておるというふうに思います。  そうすると予算編成の手法として、例えば各省庁ともにやりたいものは皆出してくださいというようなことになれば、これはむちゃくちゃな放漫財政になるでございましょうが、予算編成の手法として考えるとすれば、私は概算要求枠すなわちシーリング方式というものはあってしかるべきだ。ただそれを五にするのか一〇にするのか、それはいましばらく勉強さしてくださいませ。いずれにしても、安易なものではないというだけを今申し上げておるわけでございますので、これはいずれ、法律、政令等で決まっております八月末日までに概算要求をお出しいただくわけでございますので、したがってそれに間に合うような形でシーリングを決定していかなきゃならぬということになるわけでありますので、そうのんべんだらりとしておるわけにもまいらぬ、ここ一月くらい本気に衆知を絞って勉強して、少なくとも概算要求までに至る一つの手法ではあっても決めなきゃできないわけでございますから、それはまさに勉強最中というような現状ではなかろうかというふうに思っております。
  96. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今、景気回復あるいは成長率を、潜在成長率を引き出すために財政投資の要求もある一方、新聞報道等では金融機関とか、あるいはハイテク関係とか自動車産業等は空前の利益を上げておるわけであります。しかも、最近はハイテク、財テクという言葉があるようですが、高利益は本業ではなくて金融資産の運用によるものが非常に多い。こういうような現状をどう考えているのか。それと、五十九年度の税収予測はどうなのか。私の理解しているんでは、税収は予想よりは、予算よりは多いようにお聞きしておるわけですが、そのあたりの御答弁をいただきたいと思います。
  97. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 御指摘の金融収益がどうなっているか、それからそれについてどう考えるかという御質問でございます。  最近の企業収益の動向を見ておりますと、全体としましては、売り上げは好調でございますし、原油価格の低下を背景にして好調を続けております。先生御指摘のハイテク関係と申しますと、例えば電気機械とか精密機械とか、そういうようなものが挙げられますし、それからたしか金融関係もそれぞれ高収益を上げていると、こういうことでございます。  その中でいわゆる金融収益を上げている、つまり本業ではないところで金融収益を上げているのはどういうことなのかということでございますけれども、その金融収益というのは、いわば経常収益を分けますると、営業利益と営業外利益というふうに分けられていますが、金融収益はその中で営業外利益ということになると思いますけれども、ハイテク関係の電気機械とか精密機械を見ておりますと、営業利益が大体経常収益の中で大宗を占めておりまして、金融利益を含む営業外利益の割合はむしろ小さい。電気機械、精密機械ではむしろマイナス、つまり金融収益はマイナスというふうになっているのが実情でございます。ただ、そういう兆候が出てきておることは確かでございますけれども、大体金融収益を上げているところはおおむね本業で高収益を上げているわけで、経営努力によって営業利益を上げました上で、その後で営業外利益を上げている、あるいは金融費用を抑えまして、つまり金融のコスト、支払い利息なり配当を抑えまして金融収益を上げているというようなことで、資金の調達運営方法がいわばうまいと申しますか、というようなことではないかというふうに考えております。  そこで、こうした企業の経営努力で、本業で利益を上げる、あるいは資金調達で工夫を凝らして金融収益を、費用を減らしつつ金融収益をよくしているというようなことのやり方にっきましては、いろいろの考え方があろうかと思いますけれども、基本的には営業の自由というプリンシプルの中での行動でございますので、全体として、役所としてこれの適否を論ずるということはいかがかな、控えたいと存じておるわけででございます。  先生御指摘は、恐らくその場合に、例えばインフレ期待を生じるような投機的な問題があるんじゃないかというようなことではないかと思いますけれども、幸いにして、今我が国の物価は全体として安定基調にございますので、特にインフレ期待があるとは思われませんで、いわば企業の財務担当者が企業の責任において本業にも励みつつ金融収益を上げている場合には、特に評価を加える立場には私どもないというふうに考えているのが私ども考え方でございます。
  98. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この税収予測でございますが、梅澤主税局長参っておりますので正確にお述べいたしますが、きょうちょうど閣議後、総理、官房長官に御報告をいたしまして、五十八年度のいわゆる授権していただいた特例債を出納整理期間に赤字が出そうな場合は発行していいことになっておるんですが、それだけは、三千億円発行をしなくて済んだとでも申しましょうか、発行をしないということにしたわけで、そのことを決めまして、記者会見でその旨を申し上げたわけであります。  これは五十八年度の話でございまして、五十九年度は、法人税は二けたの伸びを予測しておりますし、まだ歩いておりますのが四、五、六月も歩いてはおりますけれども、まだ閉まっておりませんが、そういう状態でございますので、歩いたばかりでございますからどういうことになるかはわかりませんが、大変に楽観をするような情勢にはないというだけのことで、少しく正確に主税局長からお答えをさせることにいたします。
  99. 梅澤節男

    政府委員(梅澤節男君) 五十九年度の税収の見込みにつきましては、ただいまの大蔵大臣答弁に尽きるわけでございますけれども、五十八年度の決算が確定いたしますのは来月の上旬でございますので、恐らくその段階で若干五十八年度は補正後の予算を上回る税収があるいは期待できるのではないかという感触を持っております。  ただ、五十九年度につきましては、年度の本格的な税収が始まりますのは六月分の税収からでございまして、これの計数が判明いたしますのが実は夏以降でございます。したがいまして、現時点で、ただいま大臣答弁にもございましたように、五十九年度の税収について確たる見通しを申し上げるという段階にはないわけでございます。ただ、申し上げられますことは、五十九年、六十年を通じまして、税収の動向を大きく左右するのは恐らく法人税収であろうということでございます。最近、日銀の短観を初め各種の民間機関から上期、下期を通じました五十九年度の収益予想がいろいろ出ておりますけれども、そういったものを子細に検討いたしましても、これも先ほど大臣答弁でも触れられておりましたように、五十九年度の法人税収の予算の見積もりは、増税分を除きまして、自然増収だけで久方ぶりに二けたの伸びを見込んでおるわけでございます。従来、民間の収益予想と税収との相関関係でございますが、特に景気の上昇局面におきましては、民間の収益予想と法人税収の自然増収の関係、特に顕著な特徴がございますのは、実際の法人税収の伸びは、例えば収益予想が二けたの段階のときでもおおむね税収は一けたという傾向になる。  これは一つは、法人税収に関係いたしますのは、言うまでもなく黒字企業でございますので、二けたの収益予想が立てられておる局面におきましても、特に景気の上昇局面では黒字企業だけをとりますと、大体一けたというふうな傾向にございます。したがいまして、五十九年度の税収につきましては、全体として景気回復の基調にあるということは否定できませんけれども、そういったものは五十九年度の私どもが行いました税収見積もりに既に大部分織り込み済みであるというふうに私どもは現段階では判断しておるわけでございます。
  100. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 わかりました。  私は、結局、国債が余り多量に発行されますとどうしても金利が上昇する。そうすると企業としても、民間設備投資をするよりも金融を動かした方が収入がある。そうなってくると、民間の設備投資意欲を減退させ、それが中長期的には我が国経済体質を弱くするおそれがあるんではないかと、そういう意見もあるわけで、そういう意味からも、もちろんそういう方面で運用することは決して悪いことではないわけですが、もっと設備投資に向くように、また国債発行も減らすように政府としても大いに努力をしていただかなければならないんではないかと、このように思います。  そこで、もう時間がございませんので次へ進みますが、いわゆる国債管理の弾力化の問題について、特に大蔵省の先輩である金子太郎氏は、短期の国債を、一年未満の国債をもっと発行してはどうか、我が国における長短金利差というのは平均すれば一・五%あるわけで、そういう意味で、金利の高いときにはできるだけ短期の国債発行して、そういうふうにすれば、短期、短期でつないでいけば、それだけでも年間四千億ぐらいの利払いは節減されると、このように言っております。  そういう意味で、百二十兆にもなる国債残高借りかえとか新規債の発行においても、できるだけ金利の安いように運用していくことが国民を守ることになるんじゃないかと思うんですね。もちろん、余り短いやつを出すと、それは金融機関はいろいろ反対するかもしれませんが、金融機関よりも国民全体を守るべきである。こういう意味で、これはいろいろ国債借換問題懇談会等でも審議しておるようでありますが、こういう弾力化を速やかに実行に移すべきであると、このように思いますが、その点はどうでしょうか。
  101. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 今お話がございましたように、五十八年度末で百十兆、五十九年度末では百二十二兆というような国債の大量発行を続けているわけでございまして、殊に六十年度以降は新規債の発行だけではなくて、借換債につきましても相当額の発行をしなくちゃならない。したがいまして、国債発行消化を円滑にやっていくためには国債管理政策を弾力的に進めなくちゃならない、これはもう御指摘のとおりでございます。私どもといたしましても、国債の弾力化の一環として国債の多様化を図ってまいりまして、五十年度当時は十年利付国債だけだったわけでございますけれども、五十三年度には三年の中期債、それから五十四年度には二年の中期債、五十五年度には四年の中期債というようなことで、これらの中期債を公募発行するというようなことをいたしてきております。それから昨年度には、十五年の変動利付債あるいは二十年の超長期債というようなものも発行するようにいたしております。  今後の問題といたしましては、今至言われました国債借換問題懇談会におきましても、短期債の発行も含めて、国債の多様化についてはさらに弾力的に対応すべきであるというふうな意見も出ておりまして、私どもといたしましては、こういった御意見も踏んまえまして六十年度以降に対処してまいりたい。ただ、その懇談会においても議論になりましたけれども、確かに通常状態におきましては、短期債の方が金利水準が低いということで財政負担の軽減になるわけでありますが、満期構成が短期化いたしますと借りかえ量がそれだけふえると、こういう問題もございますので、財政負担の軽減を図りながら、満期構成を適正に維持していくというようなことも考えながら、さらに金融・資本市場にマイナスの影響も及ぼさないようにというようなことも考えながら弾力的に進めていきたいと、こういうように考えております。
  102. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 国債残高が非常にふえますと、国債の利払いを通して所得配分の効果が逆進的になる、こういう心配も出てくるわけであります。また、先ほど申しました企業が非常に金融資産で利益を上げているということも、国債あたりが大分それによって利益を上げているように聞いておるわけでありますが、そういう点の所得配分の逆進性についてはどう考えておるのか、これをお伺いいたします。
  103. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 今委員がおっしゃいましたように、公債の所得階層別の保有状況、これは多くの場合お金持ちが割合保有している可能性が強いわけでございます。片方、この保有者に対して元金あるいは利息が支払われるわけでございますけれども、その財源を仮に税収によって賄ったという場合には、税は一応各国民階層からいただくということになっておりますので、その間にずれがあるという場合には、おっしゃるように意図せざる所得再配分が行われ、結果的にはそれに悪影響を与えるというおそれは十分にあるわけでございます。そういう可能性があることも事実でございますので、我々としては国債費の増大という問題については、たびたび申し上げておりますように、非常に神経質になっているわけでございます。
  104. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に大蔵大臣にお尋ねいたしますが、今年度発行する特例公債償還は十年後でございますが、昨年まであった借換債発行禁止の規定を変更しようとしておるわけでありまして、もう財政再建をあきらめたのかと、そういう印象であります。十年後ですからね。しかし、この政府答弁を読みますと、この借換債発行ということについて極端な歳出カットや極度の負担増が不可避である。もし借換横を発行しないで財政再建するとすればこういう極度の負担増が不可避である。だから緩やかにしていくためにこのように借換債を認めだというような御答弁でございますが、こういう赤字国債の問題がそういう緩やかなことでいいのかどうか。  私のおやじはもう亡くなって、おりませんが、生きているときに、商売に失敗したら家をかわれと。それはなぜかというと、今までの家におるとどうしてもつき合いとか、そういう意味で出る金が余り減らないから、商売に失敗したら家をかわって、小さい借家に住め、そうすれば生活が切り詰められるんだと、そういうような話を苦しておりましたが、もちろん個人の家計と国の家計は一緒にはいかないと思うんです。  私は特に赤字国債のようなものについては、本来できるだけ短期間にそういう要因を直していかなければいけないんじゃないか。それを昨年までやったのを一度に十年後の財政にまで特例公債借りかえをやらないという禁止を外すということは、もう財政再建をあきらめたと。こういう姿勢で果たしていいのかどうか、この点大蔵大臣のお考えをお聞きして質問を終わりたいと思います。
  105. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはもとより、今塩出委員もおっしゃいましたように、こういう今日の状態から考えてみますならば、借りかえ禁止規定をそのまま置いた形において財政運営を行うということは、財政はもとより国民全体のものでありますだけに非常にショッキングな対応しかないということになります。  今、例を引いての御発言でございましたが、家庭経済も国の経済も私は本質的には本当は変わったものではないと思っております。お互い先人が残した教訓というものは、失敗したら家をかわれと同じように、今の財政事情考えた場合には受けるサービスが低下してもやむを得ないという一つ認識も必要かと思うのでございます。  しかし、私ども考えますのは、現在世界の中でどこから見ても、それこそ実質成長率からあるいは消費者物価の上昇率、失業率等々世界の中で経済に関する諸指標は一等いいという状態にある。したがって、国民そのもの経済成長力を何ぼに見るかという見方の相違はあるにいたしましても、世界のどの民族にも変わらないところのいわゆる質的なものを持っておる。その上に労使の関係等先進国の中でずば抜けて日本がよくできておると思うのであります。そういうことからすれば、国民全体が財政改革というものに対しての認識を深めたならばこれは不可能な問題ではないという、言ってみれば、国民の持つ質的な問題を含めた潜在成長力等に期待をしながら、それをどうして全面的に発揮さしていくかという行政のかじ取りの中でこれに対応していかなきゃならぬ。いかに苦しかろうとも後世のことを思えば、現世生きとし生ける我々が厳しく対応していかなければならない課題だ。だから、確かに約束をしたことをこういう情勢の変化政策転換をせざるのやむなきに至りましたという答弁を繰り返しつつも、私ども全体としての責任の中に、できるだけ健全な財政に戻して後世にこれを送っていかなきゃならぬという一つの歴史的使命感というものは絶えず感じておるところのものでございます。
  106. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今まで各議員から財政危機の状況に関して大臣認識について質問がございました。それについて、今も答弁ありましたが、財政が窮状にあるということは認めたんですが、より悪化した状況を辛うじて支えながら将来に向かっているとか――これは塩出議員に対する答弁。あるいは丸谷議員に対する答弁としては、戦時の国債発行以来の大きな政策転換一つという認識は持っていると。こういう答弁でありましたが、果たして現状はその程度の認識でいいんだろうか、もっともっと厳しく見ないといけないんではないか、こう思うんですが、いかがですか。    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕
  107. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 厳しく見ておるからこそこのようなお答えもし、また法案に対する御審議方もお願いしておるわけであります。だから厳しい度合いということになりますとなかなか難しい問題でございますけれども、表現の仕方からいえば、最大限厳しく受けとめておるという言葉に尽きるんではなかろうかと思います。
  108. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは「公債残高累増と我が国経済社会」、財政制度審議会の議論の途中の未定稿の文書があります。その第一ページの一番下の方によりますと、「この困難は」、というのは財政状況ですね、「諸外国にも類例を見ない、また戦時を除げば我が国の過去においても、かつて経験したことのない事態であるだけに」云々、こう言っておりますが、大臣、これと同じような認識はお持ちでしょうか。
  109. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 事、財政に関する限りの諸外国と比較した諸指標によれば、私はそういう認識であってしかるべきだと思っております。
  110. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 しかし、「なお当分の間、相当多額の公債発行は避けられず、公債残高の累増も続かざるを得ない」、こういう指摘もあるし、実際だと思うんですね。だから公債累増の問題を的確にとらえる、そしてそれに対する必要な措置を講ずる必要があると、こういう指摘であります。ところが、果たして政府あるいは大蔵省自体がそうなっているんだろうかということが、単に今度の赤字国債借りかえをやるということだけにとどまらず、財政全般の運営について私は聞くんですが、全体の問題として依然として国債発行について楽観的な考えがあるんではないかと思うんです。その一つとして、例えば負債に見合う資産がめどがついていれば少々借金をふやしてもいいんじゃないか、あるいは短期国債を思い切って出さなきゃいけないんではなかろうかとか、さらには資金運用部資金についても借りかえ窓口を設ける、要するに借りる方の議論が一面がなり主張される向きがあるんですが、こういう考えについては大臣考えはいかがでしょうか。
  111. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは資産に見合う負債という論理というのは、仮に特例債建設公債と分けた場合の建設公債性善説に基づく一つの理論でございます。建設国債による公共投資とかいう問題というのは、全体の経済運営の中でこれは一時的に効果を持つものであるという評価は私もいたしております。しかし、それにしても、先ほど来の議論のように利払い費を考慮すれば、意図せざるところへ所得が再配分されていくということは、これは否定できないと思います。ただ、それが個人でなくていわば金融機関という場合は、金融機関が個人に対しての――直接個人でないだけに幾らかの感じとしては違うかもしれません。しかし、そのことは、公債政策の持つ一番の欠点として意図せざる所得再配分というものがある、この認識にはまず立っておって、そしていかに見合う資産があるからとはいえ、それは恒常的な政策手段であってはならぬ、一時的な不況等に対応する手段としては私は否定はしない、しかし、恒常的なものであるべきではないという認識はほぼひとしくしておるんじゃないかと思っております。
  112. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今の私が紹介した意見というのは、この法案審議の際に大臣がいないときに与党議員から出された意見でもあったんですが、大臣としてはそういう意見には余りくみさないと。今の答弁必ずしもはっきりしなかったんですが、いかがですか。
  113. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 特例債と建設債と比較して建設債の性善説を論ずる場合には、いわゆる負債といえども見合う資産があるという意味において性善説が唱えられるわけであります。しかし国債そのものを持つものは恒常的なものであってはならない。まさに一時的な、即効薬という表現はおかしいんですが、そういう機能を私は否定はしないということをかねて申し上げておるわけであります。恒常的になったら、これは借金は借金でございますからという考え方を持っております。
  114. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 国債発行についての先ほど紹介したような楽観論の基礎にあるのはいわゆるドーマー理論というやつですね。「公債発行額の伸びがGNPの伸びと同等なら財源不足に陥ることはないし、公債残高の対GNP比や利払費のシェアーも無限に拡大していくわけではないから、財政破綻を心配しなくてよい」という理論。これを大臣はどうお考えですか。
  115. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ドーマー理論、ちょっと後から事務当局から正確にお答えするのが適切かと思うんでありますが、国内経済そして国内財政だけ考えた場合の一つの論理としてあり得るのかなあと。が、私ども感じますのは、言うは言ってもこの利払い費というのがかさむ。それは全体の金融市場に対するいわば金利高に結びつく。国内のみならず、日本は世界の中においては大変な資本輸出国でございますわね、今。そうすると、それから来る金利等は、全人類のうち、サミット、サミットといったって、なるほどGNPは五十数%ありますけれども人口は一三%しかいないわけですから、先進七カ国。その六億の人間以外の四十億の、すべてが開発途上国じゃございませんけれども、その多くの人が先進国のよって立つ金利高に影響を受けて、そして一人当たり所得にしても日本の我々のまだ四十分の一、あるいは極端なところは八十分の一というようなところがあるわけですから、全人類的な考え方でもって立った場合にも、一国の中の公債政策、それが与える高金利というのは、国際社会の中では通用しない議論になっているんではないか、こういう認識を持っております。
  116. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そこで、大蔵省ではこの修正ドーマー理論というのを考えているというぐあいに聞いております。また、先ほどの財政審議論でも、この未定稿の中でもそういう議論があるということを承知しておるんですが、これはGNPの伸び率より利子率が高いときには国債発行額及び残高の対GNP比は無限大に発散する。要するに、まさにこれは前回私と大臣議論した国家破産、破綻の状況だと思うんですね。  問題は、今の場合には、GNPの伸び率より利子率が低ければいいんだという逆に議論になっていくんですが、この未定稿の中の議論でも、成長率と利子率が同じだとすれば財政が破綻するという方向が出ていくんだと思うんです。そうなりますと、現在これは成長率より利子率の方が高いと思うんです。これははっきり数字が出ていますね。そうなると、これはまさに今のまま――先ほどから大臣いろいろと思い切ったことをやろうと言っているんだけれども、具体的なものが出てこないんで、具体的なものが出ていないという前提のもとに質問するんですが、理論的には現実に成長率より利子率が高いとなれば、このまま進めばこれは無限大に発散してまさにパンク、破産という事態になってしまうんじゃないか。だから、何らかの打開策を立てなけりゃいかぬですがね。打開策の問題は別として、それはこの後議論したいと思うんですが、その認識については大臣いかがですか。
  117. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) ドーマーの理論は学問的なお話ですので、私は方からお答えさせていただきますが、今委員がおっしゃいましたように、最初ドーマーが言いましたのが、一九四四年の「アメリカン・エコノミック・レビュー」で言ったわけでございます。そのときのドーマーの理論は要件を二つ決めておりまして、仮定要件ですけれども一つがGNPは毎年一定率で成長、それから公債発行額はGNPの一定割合と、こういう単純な仮定を置いてやったわけでございます。その場合に、結論といたしましては、公債残高のGNP比は一定値に収束していくという極めて単純な問題、結果を指摘したわけです。これに基づきまして、先ほど委員がおっしゃいましたように、楽観的な答えが出てくるわけでございます。  それに対しまして、その後このドーマーの理論を修正いたしまして、それではもう少し現実的な考え方はないかということで利子率の利払い費の問題を加えたわけでございます。その仮定は、先ほどおっしゃいましたように、GNPが毎年一定率で成長という点は同じでございますけれども、利払い費を除く歳出はGNPの一定割合、税収はGNPの一定割合というような要件を加えまして、その結果といたしまして、先ほどおっしゃいましたように、この結論として、利子率が経済成長率を上回ると、結局、拡散してしまうという計算が出るわけでございます。  これは非箱に示唆に臨んだ理論ではございますけれども、しかしこの修正ドーマー理論におきましても、先ほど申し上げましたように、税収はGNPの一定割合ということは租税の弾性値が一というふうに置いているわけでございます。これを一・一といたしますと、これは無限大でどこで収束するかということになって、一・一でも無限大でいくと突き抜けてしまいますので、やむを得ず一に置いてやっているわけでございまして、こういう点もいろいろ問題がございます。それからGNPは毎年一定率で成長という点もいろいろ変化がございますから、その点でも現実性が若干欠けるというようなこと等々がございますので、結果としては、極めて示唆には富みますけれども、極めて単純な前提のもとにやっておりますので、財政赤字の問題がそういうことで極めて重大であるという点の指摘は、我々としては極めて示唆に富む、しかしそれで完全に答えが出ているわけではないというふうに思っておるわけでございます。
  118. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私もこれで完全に答えが出ていると言うつもりはないんですが、ただ新聞記事によりますと、これは大蔵省が利上げの圧縮を目指す意図で出したんではないかというようなことが言われておりますね。その意図は私は別に問いません、ここでは。しかし問題は、そういう意図があるかないか別として、大変示唆に富んだ理論、そこから示唆に富んだ対処をしなければいけないんだと思うんですね。しかし、少なくともここで言えることは、現在の成長率よりも利子率が高いというての現実ね。そして今後成長率が上向いていく条件とか、これは果たしてあるのかどうか。逆に利子率の方が高まる可能性は金融自由化によってますます強まってくる。いろいろな条件を考えますと、ここで示唆されたことのとおりに進んでいく可能性があるんじゃないか。さらに地方債を加えますと、地方債と国債を合わせますと、ことしの発行が対GNPで八・五、残高ですと六三・三%になって、先ほど四〇%台の話ですが、地方債も含めますと六三%以上なんですよ。そういう事態ですと、この速度はもっともっと速くなっていくんではないか、こういう心配がこれは現実にあるわけです。  そこで、さらにお伺いしますが、これに対して打開策を講じなければいかぬ。打開策となりますと、これも先ほど議論になっている一つ国債発行の歯どめの問題です。あとは、もう一つはいろんな政策の問題がありますが、国債発行の歯どめについては、これは赤桐議員が大分前回以来論じていますけれども、具体的なものは何も出てこないわけであります。これはもうぺケと。  それで、もう一つ、今の打開策の一つとして、辛うじて具体策と見られるものはたった一つあるんです。あとは先ほどの議論のように抽象的、これから国民のコンセンサスを得るという段階のものです。現在あるものはただ一つ、六十五年赤字国債依存脱却、これは確かに具体的なものですね。その裏づけがないんじゃないかと私思いますけれども、しかし具体的に言っています。  そこで、まずこの問題を聞きます。その前に大臣にお伺いしたいのは、六十五年赤字国債依存脱却がもし実現しなかった場合、その場合には、もう既に現在が財政危機状況ですから、そうしたら、その場合これがもう一歩進んだ財政危機の状況に入っていくんではないか。その場合には大臣大蔵大臣でおられるのか、総理大臣でおられるのか、あるいはほかの役職におられるのか、それはわかりませんが、もしもそのとき竹下さんが大蔵大臣であれば国民に対して宣言なり何らかのことを言明しなければいけませんね。そういう場合には大臣としてどういうことを言われるおつもりですか。
  119. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今それを努力目標として一生懸命その努力目標達成するように御協力をいただかんとして努力しておるところでございますから、イフ・シュッドできなかったときということを考えたらそれ自身が敗北主義じゃないかな、こう考えます。
  120. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 しかし日本では昔から、大変な決意で臨む場合には、できなけりゃ切腹するとか、首差し上げるとか、こう言うものですよ。私は大臣がこの問題、六十五年赤字国債脱却ということにどれほどの決意で臨んでおられるのか。単に大蔵大臣をやめるだけの問題では済まないくらいの、まさにそれこそ内閣自身が政権を投げ出すくらいの問題だろう。それほどの重大な問題だと思うんですが、それほどの決意を持ってお臨みになるかどうか、そういう質問だったら答弁できるでしょう。
  121. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 五十九年度赤字国債脱却のために政治生命をかけます、こう言っておやめになった総理もいらっしゃるわけですね。責任のとり方、具体的にそうであったかどうかを私は問いただしたことはございませんけれども、それなりに立派な進退ではないかというふうな認識は私もいたしております。
  122. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そういう大臣の決意の一端であろうかと思うんですが、ところが六十五年赤字国債脱却というのは無理ではないか、成功しないんじゃないかということをおっしゃる人がおるわけですね。これは前回五月十六日に当委員会参考人として出てまいった一橋大学の石弘光教授でございます。  この方は比較的大蔵省に理解のある方だと私は見ておるんですが、私の質問に対して、「六十五年までに特例公債脱却は難しいという私の考え理由は何かという御質問だと思いますが、理由は簡単でございまして」二点あると。「一つは、日本経済が昔みたいに実質成長率で一〇%も伸びるようなそういう状況は来ない。したがって自然増収的な意味での神風は吹いてこないだろう。そういうことになりますと、財政面の自力によってのみ財政赤字を直すほかはない。」。  第二点として、そうなると「歳出カットというのは総論賛成でありますが、各論反対である、これは目に見えております。それから負担増というのも、これまたなかなか難しい」ということをずっと言って、その後、「要調整額あたりでも、歳出を伸ばして借換債をやりつつ三%の一般歳出を伸ばしていっても五兆円ほどの要調整額が六十五年にはあるし、五%に伸ばすと九・九兆円ほど出てくる。私はまあ一、二年はゼロシーリング、マイナスシーリングで恐らく予算編成はいくと思いますが、それをいつまでも続けることは、恐らく公共事業、公共サービスの必要度から見ても無理であろうという項目がいっぱい出てくると思います。」。そして、過去のいろいろ財政運営を見てみますと簡単にいかないよということで、現に与党である自民党の中からも公共事業をもっとふやせという、それから厚生省の予算はこれ以上削れないということも出ていまして、まさにそれこそ前途多難。  そうなりますと、現在のところ私たちの目に映るのは、先ほど申し上げたとおり利子率はもっと増加する可能性がある、まさにこれが今の情勢ですね。それから成長率はそんなにふえる見通しはない。それから依然として増税なき財政再建はうたっておる。そうすると歳出削減もままならない。そして今のところあくまでもこれはもう危ないぞよ、このままいったら破綻だよという方の材料はいっぱいありながら、それに対してただ一つ具体策として、対応策として出ておる六十五年赤字国債脱却も難しいとなり、ますと、私は、今ここでこの法案審議の中で大蔵省がこれこれしかじかで具体的にそんな新ドーマー理論を打ち破る事実があるのだということが出てこない限り、これはまさに破綻に進んでいくのじゃないか。今のところこのままいったら破綻だよという方の主張と立証はあるのですよ。ところがそれに対して、そのままいきませんよ、こういうところで打開策がありますよというのは主張さえないのです。これがもし裁判なら、主張さえないのだからそのまま判決で負けなのです。そういう事態であると私は客観的に見て言えるのですが、先ほど来のように国民にコンセンサスを得てなんて言っておったのでは間に合わぬのじゃないか。こういう事態大臣としてはどうとらえますか。
  123. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは実質成長は「八〇年代の展望指針」でも四%程度、こういうことを言っておりますよね。したがって、かつての高度経済成長のような二けた成長なんていうのは、私もこれはなかなか望むべくもないことだと思います、実際問題として。それは仮に一時的に何かの方法であり得たとしても、その反動がより大きいということ直言えるでありましょう。そして一方、負担増といったって、お言葉をかりればままならぬ、歳出削減もままならぬ。そういうことになればアウトじゃないか。これも単純な論理でございますが、だから国民の理解、いかなる立派な政策といえども国民の理解と協力なくしてこれは実行することはできないわけですから、世界一賢い国民なんですから、したがってやっぱりいわゆるコンセンサスを得る努力をするというのが政治家としての一番大事なことじゃないか。そして今日までの歴史を振り返ってみれば、かつての不可能を可能にした日本国民であるという国民自身の持つ能力を信じながら、その中にコンセンサスを求めていく努力を続けていかなきゃならぬのじゃないかなというように私は考えます。    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕
  124. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは先ほど塩出議員も指摘したように、コンセンサスを得る得ると言っているうちにいつの間にか時間が過ぎちゃって、それで具体的には六十五年赤字国債脱却が今で言えば唯一の具体策ですよね。それさえだめになってしまう。そうなりますと、前回以来当委員会議論しておるのは、まず節度は全然保たれないじゃないか、歯どめはないじゃないかというのと同じように、もうだめになる状況ばかりたくさんありながら、それに対してそれの打開策が何もないとなりますと、もうまさに破綻が見えてくるのですよね。そしたらこれ以上審議していって本当にどうなっていくのだろうか。無意味なのじゃなかろうか。まさに今出さないと国会に対する大蔵省としての責任も果たせないのじゃないか。少なくとも方向を、賢明なる国民と言ったって、その賢明なる国民大蔵大臣竹下さんなのですから、竹下さんが出さずして一体だれが出してくるのか。その点はどうですか。
  125. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それは要するにその一つがいわゆる中期展望であり仮定計算であるのじゃないか、こういう数値になりますよと。したがってこれをどうしてやるか。じゃ制度・施策の根源にさかのぼってもっと歳出削減をすればいいじゃないか、いや、それだけのサービスを受けるならば負担をすべきではないか、こういう議論の中でコンセンサスは得られるものであって、余はこの方向を志向する、国民やいかにというほど私は――この危機的状況国民の理解と協力を得なければできないことであるだけに、そういう姿勢で臨むべきではなかろうかというふうに私は考えます。
  126. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 もし私が大蔵大臣なら、軍事費を削り、それから大企業への補助金を削るとか、ちゃんと具体策があるんですよ。ところが全然出てこないので、恐らくこのままいくと破綻するんではなかろうか、恐らく切腹ものではなかろうかと私は思うんですが、時間の関係であと最後の質問に入りたいと思います。  これも先ほど来の議論で、国債の利払いがまさに所得再配分、逆の機能を果たすという指摘がありました。この点で現在でも財政の機能は、ジニ係数を見てみますと、決して再配分効果が大きくない。むしろ逆に小さくなっていく方向なんです。ちょっと時間がないので数字は挙げませんけれども、私が数字を調べたところではそうなんですね。それに加えて今度さらに、この利払い費が先ほども答弁あったようにともかくも大資産家の方へいく。問題は、どういう施策をこれからやっていくかという場合に、この国債の利払いが一体どこへ行くのかということは、日銀の極めて不十分な調査しかないですね。  私がここで求めたいのは、大蔵省という力があるんですから、一体それが具体的にどこへどのように行っているのか、その間どこへ行くのか、それが具体的にわかりませんと、じゃ今度ほかの一般財源でどういう施策をやっていくのかということが出てきませんよね。そのままですと、まさに富める者はますます富み、貧乏人はますます貧しくなっていく。これはさらに税収にも響いてくるということになるんだと思うんです。  そこで、これは大蔵省として、階層別の国債保有状況、これは調査できないんですか、また調査をやる気はないのか、やる気があっても実際上難しくてできないのか、その辺どうなんでしょうか。
  127. 西垣昭

    政府委員(西垣昭君) 所得階層別の国債の保有状況についての統計は私ども持っておりません。  それからさしあたってそれをつくろうということも、実はこれいろいろと困難な問題がございまして考えておりません。と申しますのは、国債は有価証券でございまして、有価証券としての本券が転々流通している。こういう状況でもありますので、具体的にその流通している有価証券がだれの手元にあるのかということにつきましては正確な統計をとりにくいということがございます。それから発行者といたしましては、まずそれを把握する必要がない。こういったこともございまして、私どもといたしましては、御指摘のような方向でさらに詳しい統計をとるようにするというふうなことにつきましては、今考えておりません。
  128. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは間もなく利払いが十兆円規模ですね。そうしますと、一兆円規模の減税やるかどうか、これはまさに国民が求めるところですが、それを二兆円にしようとかというその程度の議論をしているのに、十兆円規模、一けた違う金が全く減税とは別の方向に流れていき、しかもそれがおおよそ見当はつくにしても、大多数がともかく大資産家の方へ行くことはもう間違いないんですがね。しかし、それに対して別の方向へ行く可能生もあるんじゃないかという議論もありましょうし、そこが明確でないままですと、先ほどの指摘もあったように、的確な対処ができないまま、まさに国全体がそれこそ思わぬ方向へどんどんどんどん進んでいって、そしてそれがさらに税収などへ響いてきて財政再建がますます困難になってくるんじゃなかろうか。私は財政再建を的確に進めるためにも、この辺はどんな苦労があってもできる限りのことをやっていくということはやるべきじゃないかと思うんですが、最後に大臣の所見を伺って質問を終わります。
  129. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは確かに転々と流通する有価証券の所在を突きとめるというのは、それは難しいことだと思います、率直なところ。だから公債を基本的には滅していくということ。だから、第一段階は少なくとも六十五年を努力目標年次として特例債からの脱却を図り、以後、対GNP比で計算をするかどうかは別として、残高を滅していくということがオーソドックスな考え方ではないかと思います。
  130. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 終わります。
  131. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 けさ方、六項目についてのお答えがございましたので、重複するかもしれませんが、その内容に沿って二、三お尋ねをしたいと思います。  大臣、私こんな気がするんですけれども、まず政策転換とは何かということを考えてみますと、従来は具体的な約束をしました、今度はもう何も言わないことに決めました、というような転換のように我々としては受け取りがちなんです。そこで、何とか言わせようというので四苦八苦してきたのがこの委員会質疑だと思うのですけれども、別に大臣を困らせようと思って伺うわけではありません。従来は全額償還というまことに明快な具体的な約束がございました。それが外れた。では一体どうなるのか。  そこで、重複するかもしれませんが、お尋ねしたいのですが、言葉議論になるかもしれませんが、「転換」というのはどういった意味なのかと思って実は辞書を引いてみたんです。そうしたら「物事の性質・傾向などがそれまでとかわること」を「転換」と言うのだと。お答え内容を見ますと、政策転換とは何ぞやというと二つありました。五十九年脱却が六十五年脱却になりました。もう一つ特例債借りかえを行わないということが借換債発行することになりました。この二つあるんだけれども、中を分けていきますと、五十九年脱却が六十五年に脱却になったというのは、これは転換ではないんですね、目標年次がずれただけですから転換ではない。従来と全く同じ質の政策であります。そして二番目の特例債発行するかしないか、まさにこれが政策転換です。  そこでまず初めとして、実は今の同僚委員質問に続くわけではありませんが、六十五年脱却、これは従来と同じ次元の議論ですからここから入っていきたいと思うのです。  そこで、六十五年に特例債発行依存体質から脱却するためにはどうしたらいいだろうか。これも大変手探りの議論でして、中期展望があるではないかと言うんですけれども中期展望は数字はありますけれども、これちょっと見て信用してはいけません。なぜかというと、一言で言うと努力規定が書いてあるんです、あの中期展望には。この法案も肝心な場所は努力規定。そうなると本当に雲をつかむようで、若干立ち入ってお尋ねをしたいんですが、定率繰り入れを何でしないのかと伺いましたら、赤字公債を発行してまで定率繰り入れをやる性格のものだろうかと大いに悩みながら今回繰り入れをしないことに決めました、こういうのが前回のお答えでございました。私も考えてみたんですけれども、なるほど特例債発行してまで定率繰り入れをするものなんだろうか、確かに迷いました。そこで御答弁立場に立って考えてみますと、特例債発行している間は定率繰り入れはできない。六十五年脱却ということになると、六十四年までは定率繰り入れはできない。まずこれが確かな一つの線ではないかと思いますが、この点いかがですか。
  132. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この定率繰り入れ、減債制度の根幹は財政の節度からしてもきちんと守りなさいと、こういう指摘をいただいておるわけです。先ほどおっしゃった定率繰り入れをするための赤字公債の発行をより多くするということに対するいろいろな議論がございましたものの、減債制度そのものは守りなさい、そしてその都度の財政事情によってやむを得ないという、そのやむを得ない措置が今繰り返されておる。だから、私はにわかに、赤字公債脱却の期間までは定率繰り入れはいたしませんという、言ってみれば、踏み切ったところまでお答えをする勇気を持たないというのが実態でございます。
  133. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 ですけれども特例債発行してまで定率繰り入れをするというのは、    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕 一見節度を守っているように見えていてやっぱり問題を残す。そう考えてみますと、特例債発行している間、定率繰り入れはしばらく休眠をしていただくしかない。六十年償還というような枠組みから考えると大変けしからぬことではあるんだけれども、特例措置としてしばらくちょっとお休みをいただく、そういう立場をとる方が首尾一貫するんではないだろうか。で、六十五年になったらやります、それ以降は全部やるんです、ただ脱却するまでは定率繰り入れだけはこれはちょっと控えておこうではないか。  そうなりますと、余計な議論一つ私は減ると思うんです。で、定率繰り入れは当然財政の節度としてしなければいけないんですよ。しかし特例債発行してまで繰り入れをやるのか、そう考えてみたら、それはちょっと幾ら何でもぐあいが悪い。恐らく六十年度も定率繰り入れは繰り延べになる、六十一年もそうだと思う。それは結局ここのところでみんな悩むからです。したがって、六十五年脱却が早いか遅いかという議論は別にしまして、六十五年脱却というんだったら、六十四年までは定率繰り入れはしばらくお休みをいただくというぐらいのめどは立てておかないと中期的な議論が何もできない。私が言っているのはおかしい議論でしょうか。
  134. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今のような意見が確かにたび重なってある。私どもがそうした問題に対しての答申、御意見をいただく場としては財政審がある。そこで財政審議論をずっとつまびらかに読んでみましても、今栗林さんがおっしゃった議論が厳然として存在しておる。が、一方、存在しておりますのが、いわゆる減債制度の根幹は守れ、これ自身一つの節度であると。が、そのときの財政事情に応じてやむを得ないというときには、国会議論をしていただいて、国会にかけてと申しますか、それだけの、これは表現がちょっと適切でないかもしれませんが、それだけの国会議論していただくといういわば痛みを受ける立場に立つことが、節度そのもの政府立場に立った者に対して再自覚する一つの機会であるというふうな認識として受けとめようかなと思って、従来そのようなお答えを繰り返してきたわけであります。おっしゃいますように、一挙に赤字公債脱却までは定率繰り入れなしよということも一つの論理としては私通ると思うんですが、節度と論理の問題を調和した御答申が結局、財政審の答申になったではないかというふうな理解の上に立っておるわけであります。  もとより公社債市場の国際化とか自由化とか、そういう進展に伴って、国債整理基金というものがある程度の資金を保有していなきゃいかぬという問題ももちろんございますが、それは直ちには今の論理の反証には私もならないというふうに理解しております。
  135. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 財政の節度ということで考えますと、結局、特例債残高をふやさないのが最低の条件ですよ。ふやさないというのは財政の節度から見るとまず一番大切なことだ。ふやさないためには特例債発行しないのが一番よろしい、新発債を。そこで、片方では減債制度がある、それを維持するために特例債発行する。どっちの方が一体節度なんだろうかという議論に恐らくなっていくんだろうと思いますね。  で、私が申し上げたかったのは、六十五年償還ということを一応前提に置いて、当然それを目標に立てて仕事をされておられると思うんですが、そうなってみると、例えば定率繰り入れは六十四年まではあきらめます、その間はもう減債制度はしばらく休眠をしていただく、休眠をすることはいいことではないけども、そういった道を通ってでも残高をふやさない道を我々はひた走りに駆けるんですと、こうおっしゃっていただけますと、ああ、なるほど、それはわからないではない、一つのアプローチだな。こんな気がするんです。  で、今の議論はちょっとおきまして、では六十五年の要調整額を見ますと、さて、これをどうやって消化するんだろうか。大臣は、それはその数字を見た上で国民のコンセンサスを求めるんでありますと、そうおっしゃっているんですが、「増税なき財政再建」というのはあれだけの大きな労力をかけた第二臨調が生み出した言葉でありまして、ある程度国民のコンセンサスに近い重みを持った数字ですよね。普通は要調整額というと、歳出で調整するのか歳入で調整するのかとなるところですが、増税なき財政再建の方は歳出で調整をしてもらいたい、こうなっているわけですね。歳出で調整してもらいたいという道筋をでは一体大蔵省はこれからどうやってつけていくんだろうか。  ここで本当にわからない文章がこれなんです。第六項目に、中期展望のところで、「中期的展望をもって財政運営考えていくことは必要」ですと。これはもっともであります。その一番最後のところで、「経済全体が流動的である中で、経済の一部門である財政の将来についてのみ、あらかじめ具体的な計数を織り込んだ厳密な実行計画を策定することは極めて困難。」、これももっともです。問題はその二番目です。「したがって、毎年度、一歩一歩財政改革を推進」するんです。片方で、「中期的展望をもって財政運営考えていくことは必要」としながら、実際には「毎年度、一歩一歩」です。こう言われてしまうと、本当にだれもわからないです。  したがって、本当に六十五年に赤字公債依存体質から脱却するんだということは、要調整額をゼロにするということでしょう。ということは、今しなければいけないのは、より具体的な六十五年度に向けた長期的なマイナスシーリングを組むということです、具体的に。組んで初めて、この努力をしていけば六十五年に脱出できるんです。もともとマイナスシーリングというのは私も知恵のない話だと思います。    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕 だけれどこれは必要悪でしてね、だれもマイナスシーリングがいいと思ってないけれども、ああいった手法じゃないと現実の削減は進まない。同じように、六十五年度の要調整額に向けても、知っているのは各省庁ですから、個々具体的な削減率を掛けて、はい、あと六年間勉強せいと、こういうのと、毎年毎年同じ努力をやっていくのと、どっちが有効なんだろうか。片一方は単年度ですよ。あと五年以内、六年以内と言ったら、こっちの方がよほど懐が広い。あとは各省庁のやる気だけです。そういった意味では、六十五年度脱却というんだったら、六十五年度要調整額を各省に配分したらこうであります、あと数年間勉強してらっしゃいという方針もあわせてお出しにならないと、なかなか国民も我々も納得しないと思うんですが、この意見についてどうお考えですか。
  136. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは一つには、いつでも国家財政、なかんずく予算と財政、そして経済等の議論をする場合に、我が国の予算の単年度主義というものが壁にぶち当たる一つの要素だと私は思います。したがって、仮にこの六十五年度までに至る要調整額の中でいわばシーリングを設定して、その中で各省専門の役所でございますから、そこで内なる改革なり工夫なりをしてもらうということも、総枠としてそういうものを念頭に置きながら、単年度主義の中で、シーリングの中で政策の優先度を決めてきてくださいと、どういう手法を今やっておるわけですから、全然中期的な要調整額等々が念頭にないままでやっておるわけじゃ必ずしもございません。  ただ、その間、それが全部歳出削減によってやれるかという問題と、いま一つは、歳出歳入両面においてのというところに、今度はこれは各省で歳入まで考えてこいということになると、本院で審議していただきました例えば特許特会、これも一つの知恵でございますね、私もそれなりに立派な知恵だと思うんです。そういうものはあり得ても、それが一つの特定財源方式で各省に考えられた場合、また財政の統一性を失うということになりますので、それらは御審議いただいた特許特会のようなものは別として、それぞれのものがみんな特定財源的方向へ傾斜していってはいかぬというところに悩みがあるわけです。  それと、いつも感ずることでございますが、議論に対する必ずしもお答えにはなりませんが、仮に企業であったならば、今一つの設備設資を行って、数年後それが果実を生むということが考えられる。それが国家財政であるだけに、車年度主義という予算の中に、また仮にそれが失敗に終わったとき一企業の責任で済まない、国民全体の負担としてかかってくるというところにある意味においてちゅうちょせざるを得ないという状態がある。  必ずしも今の私の後段の部分は御議論に対するお答えにはならないと思いますが、そこで中長期的なものを念頭に置きつつ、結局、単年度主義の中で一つの予算編成作業の手法として昭和三十六年以来、マイナスになったのは五十七年からでございますけれども、予算編成作業の手法としてのシーリング方式が今日続いてきておるというふうに私は考えます。
  137. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 確かに歳入面を無視した議論はできないんですね。増税なき財政再建がコンセンサスだからという理由、荒っぽい議論はできないんでございまして、歳入面ということになりますと、ここでももう一つ私は大蔵省の御努力の不足があると思いますのは、なぜ五十九年度特例債脱却が六十五年度にずれ込んだのか。理由としては、「第二次石油危機の発生を契機に、経済成長率、税収の伸びが急激に鈍化」したと、こうあるんですが、では一体今の経済は第二次石油危機の後の混迷のままなんだろうか、脱出し始めたんだろうか。もしかすると我々は、高度経済成長期じゃないですけれども、あそこまではいかなくても相当高原状態の景気が中長期で期待できるんだろうか。これが恐らくサミットでも一番関心のある話題だったと思うんです。  で、金庫を預かる大蔵省とすると、なるべく将来は厳しく見ておきたいという気持ちはわかりますけど、これから本当によくなるんじゃないかなということを感じ始めた人は私はふえてきたと思う。また事実、よくなり始めだということを大蔵省が引用されて、だから公共事業は要らないんだと、そこで使うんですけどね。では本当にこれからどうなるんだろうか。ある見直しをしなければいけませんし、仮定計算例の税収の弾性値はあの数字でいいんだろうか。そのことも見ておかなきゃいけないし、あくまでこれはめどですよ、めどだけれども、そこをきちんと見直しておいて、しかも増税なきとはいいながら、恐らく来年度になりますか、その次になりますか、わかりませんけれども、例のグリーンカード問題は決着をつけざるを得ない。これは増税を図るための議論ではありませんけれども、結果的には増税に結びついていく。ではマル優に対して一体幾ら税収が期待できるかという議論、これはあるでしょう。だけど、あれだけまとまった税収というのはほかに考えられそうもない。そうすると、これから経済がどうもよくなりそうだ、弾性値も上がりそうだ。今抜けているマル優の部分については、結果として税収がこれくらいふえるかもしれないというめどを置いたとしても、相当の減額をお願いしなきゃいかぬ、支出削減をお願いしなきゃいかぬというのが今ありていに言って姿だと思う。  そこで、中期的な課題をあてがわないといかぬというのは、例えば今度の健保がそうですよ。あれが予算に組み込んで予算関連になっているからこんな不正常な国会になるんですよ。ある程度の期間を与えて、厚生省に悩んでこい、国会も悩めとなれば、こんな無理な国会運営にならなかったかもしれない。  そこで、最後に一つだけ大臣に伺うんですが、よく補助金が問題になりますね。補助金をどうやって減らすかなんですけれども、こういった面でお尋ねをしたいんです。  五十九年度の補助金、各省庁にお伺いして整理してみました。私が聞いたのは、補助金を出した結果、物になるのか、資産として残るのか。二番目は、補助金を出したけれども懐に入るのか、結果として。三番目は、国庫負担金とも言うべき筋合いであって、これはやむを得ない。国庫負担金としては義務教育の国庫負担金だけ考えたんですけれども、そうすると補助金を出して総額十五兆。物になるというお答えが省庁から返ってきたのを合計しますと三兆六千億。そこで、仮定は抜きにして、結果として懐に入ってしまうのが十一兆。問題はこの十一兆をどうやって減らしたらいいんだろうかというアプローチの仕方も私はあると思う。  そこで、伺いたいのは、これも単年度ではなかなかだめでしてね、この手のものは、ちょっと長期で、その間に全部ゼロにしろというようなアプローチができないだろうか。農業補助金だったら、英国も日本も大体似たようなことで出しているんです。違いはどこにあるか。日本の補助金はポケットに入るんです。英国の補助金は土地に残るんです。  ですから、必要な補助金は出していいんだけれども、結果としてポケットに入るものはあと十年以内にみんなで負担しようじゃないか、そして国の財政負担を減らそうじゃないかという議論もできるんですが、これも単年度主義では私はだめだと思うんです。そういう中期の取り組みを、補助金なら補助金について、仮に例として挙げましたけれども、やる必要があるんではないか。この点について意見を伺って私の質問を終わります。
  138. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今おっしゃいました弾性値の問題等、まさに過去十年間の平均値ということで使っておるわけでございますが、物価が超安定しておる今日、あるいはもう来月の初旬になりますと主税局長の方でわかってくる税収からいえば、弾性値は高くなるでございましょう。そういうことを考えますと、そういう点のいろいろな差異は出てまいります。  と同時にまた、今御指摘なさいましたように、私のような別に役所の生活をした者でなくても、役所に入った場合、つつましやかに見込むという習性にいつの間にか体質がそうなってしまう。私自身もそう思います。それではいかにも財務省ではないかと思うわけであります。  だが、それとは別に、今補助金問題になりますと、私はそういう中長期的な見方の中に、言ってみれば、サンセット方式というようなものが一応模索されてきたんではないか。さらに、この間のサミットに参りましても、公共支出を削減しようと言うと、これは岩崎理事も同行しておられましたが、僕がそういう報告をすると、あ、公共事業ですかと、日本人は比較的そうとりたがる。じゃイギリスの諸君はどうかといえば、今おっしゃいましたが、言ってみれば、いわば補助金というような国庫の支出というようなものが、企業内でなかなか努力をしませんから、ばっさり首を切ったりすることによって国庫支出の方へ失業手当の形で移行していく。そういうものを切るべきだという認識に立ってくる。  おのおのそれぞれ、いわゆる公共支出の削減に対しては、第一義的受けとめ方の感触としての相違はあろうと思うんですが、総合的に小さい政府という意味において、私は、公共支出の削減というのは、世界全体のためには、それによって財政赤字がなくなれば良質な資金がサミットを除く四十億の国々にも流れていきますので、人類全体にとってはそれはいいことだろうと思います。  そこで、そういうことを考えながら、補助金の問題に対して今私どもは、その奨励的意義を失ったものとか、あるいは何年間でサンセット方式を設定するとか、そういう工夫はしてみましたが、絶えずやっぱり見直していかなきゃならぬ課題ではある。義務教のお話がございましたが、それとて対象経費を一つ一つ見た場合は、あるいは見直しできるものがあるじゃないかという感じが私自身にもございますし、物になるもの、言ってみれば、まさに消費そのものになるものというような角度からの分析というものも私は検討に値するお考え方ではないかというふうに考えております。
  139. 青木茂

    ○青木茂君 別の角度から定率繰り入れの問題について御質問申し上げます。  五月十日の本委員会におきまして、私は大臣並びに平澤次長どこの定率繰り入れの問題について一問一答をしたわけなんです。その中の議事録を見ていただけばおわかりいただけると思いますけれども、定率繰り入れの問題について大蔵当局の御見解は、できるだけこれを守っていきたい、基本的にはこれを維持する方向でいくように頑張っていきたい、そういうような御答弁があったということでございます。これは議事録に書いてあります。これは五月十日です。これに対して、五月十三日の朝日新聞におきましては、「大蔵省は十二日までに、国債償還財源となる国債整理基金への定率繰り入れを六十年度も停止する方針を固めた。」と、こういう記事があるわけなんです。そうすると、仮に朝日新聞のこの記事が火のないところに煙は立たないということであるならば、あると仮定するならば、我々のこの委員会における質問に対して全く逆の御答弁があったということになってしまうわけなんですね。委員会とは何なんだというふうに思わざるを得ない。この点はいかがでしょうか。
  140. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) この朝日新聞の記事につきましては、我々としては、こういう事実につきましてまだ検討しておりませんので、そういう意味ではこのような事実はないわけでございます。
  141. 青木茂

    ○青木茂君 朝日新聞の記事について検討をなさっていらっしゃらない、こういうことですか。
  142. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) ここにございますように、国債整理基金への定率繰り入れを四年連続停止するということを大蔵省が決めたり、あるいは現在決める方向で検討しているということはないということでございます。
  143. 青木茂

    ○青木茂君 そうすると、この記事はある意味において全くの誤報であると、こういうことですね。
  144. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) これは私の推測でございますけれども、恐らく例の中期試算がございますが、あれには、国会へ提出したわけでございますけれども、要調整額というのが出ておるわけでございます。六十年度の予算編成が大変厳しいということもあるわけでございまして、そういう中で、要調整額の処理の仕方といたしまして、定率繰り入れの停止も考えられるのではないかというふうに想定してこういう記事になったのではないかというふうに推測、あくまで推測でございますけれども、しておるわけでございます。
  145. 青木茂

    ○青木茂君 この記事は、固めた模様であるとか、固めたらしいというような表現じゃないんです。「停止する方針を固めた。」と明らかにあるわけですね。もしこれがこの時点において――とにかく私が御質問申し上げたのは五月十日でこの記事は五月十三日。十三日というのは大体十二日までに書いた記事ですからね。もしこの時点において大蔵当局が全く検討なさっていないことが記事に出た、しかも当局として、委員会に対して、私個人に対してというより委員会に対して、国会に対して、国民に対してはっき力そういうことはまだないという御答弁があったんだから、これが出たら、新聞社に真意をただして、この委員会に対して真相を積極的に当局の方から釈明なさるというのか、御説明をいただくのが、行政府の立法府に対する私は誠意だと思うんですよ。とにかく一日か二日しかないんだから、間はね。そうすると、私どもとしては、これはひがみでなしに、我々が一生懸命勉強して質問したって、当局の答弁というのはその場逃れになっちゃってしまって、とにかく時間さえ終わればいいんだということになってしまうんじゃないかと思わざるを得ないんですよ。どうなんでしょうかね。
  146. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 新聞は天下の公器であると同時に、まさに商業新聞であります。そうなりますと、私は国会論議を非常に尊重しなきゃならぬ、これは鉄則です。先ほど塩出さんからもお話しなすったように、これは昔の人の言った話ですけれども国会解散の時期と公定歩合だけはうそをついてもいいそうですが、あとはうそをついてはいかぬというように私も教わりました、幼少のころ。(笑声)幼少のころじゃありません。佐藤榮作さんという人はその点徹底しておりました。が、しかし、また一方、取材の自由というものがございまして、その議論を展開すると私もいつも思います。  最近一番困りますのは、竹下蔵相は何々局長にだれだれを充てることを内定したとか固めたとか書いてありますが、一遍も外へ言ったことのないものがもう固めたといって書かれても、それは取材源の秘匿という、いわば出どころは言わないというのがまたプレスの人の哲学でもありますし、それ以上追及するわけにもなかなかまいらぬ。それからもう一つ、我々の選挙のとき、まだ投票が済まないのにあれは当確だと、こう書いてある。そういうことから言えば、商業紙の取り上げられる筆先そのものに対して、仮に青木先生に不愉快感があったとしても、これはある程度許容せざるを得ないじゃなかろうか。これだけマスメディアの時代でございますから。  ただ、私ども考えますのは、あれだけの要調整額があると、うん、そうすると自然増収でどれぐらいだなとか、されば当然増がどれぐらい食うな、そうするとまだ足りないから、ことしもそれじゃ結局は減債制度の基本を維持するという姿勢は貫きつつも、結局、定率繰り入れをやめれば、あと要調整額が何ぼに縮まるなんというようなことは、常日ごろのお話の中でよく出る話でございます。  だから、その経済記者の方が専門的な知識を持って、そういう感覚で物を進めていかれれば、それはそうした記事もあり得るかもしらぬ。しかし固めたわけではない。固めたということは全くありませんという、ここで速記録をつけて答弁することが正しいというふうに御理解をしていただかざるを得ないではなかろうかな。こういう感じがして、平素、時にはいら立ち、そしてまた私は早稲田大学ですから、石を投げれば早稲田に当たるほど新聞記者たくさんおりまして、それだけに、その人たちの職業体験の中でそういうこともあり得るのかなというので、心の中でみずから調整をとっておる、こういう感じでございます。
  147. 青木茂

    ○青木茂君 私が言っているのはそういう意味じゃないんです。だれが当確でだれが落選確実であるとか、だれを人事、例えば平澤さんを次長の次を取って長に、局長にしたとか、そういう問題じゃないんですよ。いいですか。この委員会の中で定率繰り入れについて一問一答をして、やらない方向でございます、絶対ではないけれども、やらない方向でございますという御答弁があったんです。これは国民に対する答弁ですね。それが一日か二日を置いて新聞に逆の報道がなされたんだから国民は迷っちゃうわけですよ。迷ってしまうから、国民に対する念には念を入れた正確な答弁をもう一度この委員会でやるだけの行政府の立法府に対する誠意があっていいんじゃないか、ここを言っているわけなんですよ。
  148. 竹下登

    国務大臣竹下登君) だから、私はその新聞記事にたまたま気がつきませんでしたが、きょう指摘されて、その指摘に対してまた平澤次長から考え方を正式にお述べすれば、それそのもの国民に対する答弁としてオーソライズされるものだという認識に立つしかないではないかなという感じがします。ただ、時にどこから見ても仮に、大新聞にそういうことはございませんけれども、ノルマルでないことが書かれた場合、積極的に政府側から発言して、そういう事実のあるなしについてのことを明らかにするということは、これはあっていいことではないかなと思います。
  149. 青木茂

    ○青木茂君 もう一つ申し上げます。  六月の十四日でございます。これは静岡新聞ですから共同通信の提供記事なのか時事通信の提供記事なのか、これは知りません。知りませんけれども、もうはっきり「国債費の定率繰り入れ来年度も停止」と非常に大きく出ているわけなんです。いいですか。五月の十三日の朝日新聞にやはり停止である。一月置いた六月十四日に、共同か時事か知りませんけれども、はっきり停止である。国民はそう思いますよ。国会の中でどういう議論をしたってそれは国民の中に出てこないのだから。昨日総理が何とおっしゃったか。答弁漏れがありまして補足答弁をなさいましたね、昨日総理が。国民の皆様にはっきり理解していただくのが議会政治の基礎だというふうに総理自身おっしやっておりますし、それから本日大臣自身が、努力規定は年々の国会審議でその成果が国民報告されることになる、したがって委員会にしろ本会議にしろ、その成果というものを国民の皆様に伝えていかなきゃならぬ義務が我々にあると思うのですよ。新聞の方は先に伝えてしまって、それに対して国会の方は国民に真相を伝える義務を怠ったということになれば大変申しわけない。民主政治の基礎なのだから、国民皆さんにはっきり理解をしていただくということは。  だから、そういう意味において私は国会の論争というものに対してもう少し真摯なアフターケアが必要じゃないか。それがなければ、その場だけ逃げちまえばいい、後は何が起きてもですね。委員会一生懸命やったって、その場逃がれに終わってしまうんじゃないかという危惧と不満を持たざるを得ないわけなんですよ。だから、そこら辺のところどうですかね、委員長。むしろ委員長の御見解を伺いたいですね。
  150. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  151. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記を起こして。
  152. 青木茂

    ○青木茂君 どうも観点が違うんです。新聞にああいうふうに一つだけでなしに二つも載るということになりますと、国民皆さんはそう思いますよ。新聞はオープンで、国会はどちらかと言えば密室なんだから。だから、そういうことではないんだということを、国会そのものとして、当委員会そのものとして国民皆さんにオープンにする何らかの方法はとられていいんじゃないか。私は、当局が悪いとか新聞が悪いとか、それを言っているんじゃないんです。国会のこの委員会論議というものが国民皆さんにもう少し明らかになるようなスケジュールとプログラムというものをやっていかなきゃいけないんじゃないかということを申し上げているわけなんですよ。
  153. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 一つは、官報等々に速記録が掲載されて、市町村役場へ行ったり、官報を売っていますところ等に行くわけですから、それなりの公的な措置はとられておるわけですよね。しかし、それをもっと一億一千八百万人が前日の国会の討論を全部読むというのもなかなか難かしいことでございましょう。が、さらに国会内における一間一答の要旨等が国民に理解されるような方法をとるというのは、国会自身の問題でもあるし、また政府の問題として検討に値するといいますか、そういう議論ではあると思いますが、急にどうしろと言われましても、まあ一億一千――生まれしなの子供はわかるわけじゃございませんが、その世帯当たり全部に直ちに前日の国会論議が普及徹底されるという状態をつくるというのはなかなか難かしいことであろう。だからニュースペーパーはニュースペーパーとしての役割、それとは別に、読む人にとってはあるいは無味乾燥であるかもしらぬが、正確な専門用語を使った国会議論が普及される方法というのは、これは検討すべき問題でありますが、今の場合、官報とか、そういうものを売っているところにおいて一応その意思あれば求めることができるシステムはできておるということではなかろうかと思います。
  154. 青木茂

    ○青木茂君 私は、昨日の総理の、国民の皆様にはっきり理解していただくこと、これが議会政治の基礎だというお言葉と、きょうの大臣の、努力規定は年々の国会審議でその成果が国民報告されることになっているというお言葉を、もう少しアクティブに実施されなければ、私は国会自身が本当に国民の方々から浮いてしまうんじゃないかという懸念が依然として強いわけなんですね。しかし、与えられた時間がだんだん過ぎていきますから、ここで三点ほど申し上げたいんです。  今私が問題にいたしました、国会に対する、委員会に対する当局の御答弁と逆方向の報道がなされた場合、事実関係を委員会に積極的にアクティブにおっしゃっていただく習慣というものをこれからおつけになる意思ありやなしやと、これをひとつ第一点としてお伺いしたいんです。
  155. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 天下の公器である大新聞等に著しく国会答弁と背馳するような記事があった場合、いわば受け身でなく、積極的に物によってこの国会の場等で弁明するということは勉強してみる課題ではないか。しかし、それもまた判断が非常に難しくなりまして、基準をどうするかということになりますと、また小委員会でもつくってやるということになると大変時間もかかりますが、ハウスに対してそういう姿勢を政府が持っておるべきであるというその訓示規定は私もよく理解できます。
  156. 青木茂

    ○青木茂君 どうも大臣は勉強なさるという御表現が大変お好きだし、それから御意見を交えてのという言葉が好きで、よくわからないんですけれども、とにかく国会に対する行政府答弁は事実をひた隠しにするその場しのぎのものであってはならない、これだけははっきりひとつ念を押しておきます。そんなような形が仮に形式的にしろ出た場合においては、はっきりと次の委員会で御釈明を願いたいと、これだけお願い申し上げておきます。  そうすると、第二点は、この定率繰り入れは復活する方向なんですか、来年度、提出する方向なんですか、一体どっちなんですか。これを第二点でお伺いしたいのです。
  157. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 前回の委員会で御答弁申し上げたとおりでございますが、もう一度答弁させていただきますと、財政審報告にもございますように、国債償還の制度の基本は、できるだけこれを守っていくという方針で今までもきているわけでございます。したがいまして、そういう方針を念頭に置きながら今後とも努力してまいりたいというふうに考えております。
  158. 青木茂

    ○青木茂君 大変よくわからないんです。私が伺っているのは、定率繰り入れというものはもう迫ってきているんですからね、時間が。今までどおり六十年度もとてもやれないんだ、また先ほどの御質問にもありましたように理論的にもやる必要はないんだと。とにかくやめる方向なのか。いや、やるんだと。とにかく出していただいたこの中期展望の資料ですか、これはやることで計算されているんだから、僕らこれで物をいろいろやってきたんだから、もしこれをやめるということになれば、我々は幻の資料でもってむだな時間をかけちゃったということにもなりかねない。どうなんですかね、復活させるのか、昨度と同じように提出するのか。どの方向をお考えになっているのか、もう一回。
  159. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 現在の法律的な仕組みでございますけれども、ただいま御審議を願っております法律におきましては、五十九年度はいろいろの理由から定率繰り入れの停止を法案の中でお願いしているわけでございます。したがいまして、六十年度以降は、現段階におきましては、法律的には定率繰り入れということで本則に戻るということでございます。したがいまして、そういう制度にっきましては、先ほど来御説明いたしましたように、財政審から、その基本的な考え方はできるだけこれを守っていくべきであるという御答申もいただいておりますので、それを念頭に置きながら、六十年度の予算編成の際もそういうことで対処してまいりたいというふうに患っておるわけでございます。
  160. 青木茂

    ○青木茂君 そうすると六十年度は本則に戻るわけですね。戻る方向を大蔵当局は基本に、ベースに置いていらっしゃる、こういうことですね。
  161. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) この問題につきましては、六十年度の予算をこれからシーリングその他で編成してまいるわけでございますが、その場合に、それでは税収の状況はどうなるか、それから税外収入がどのようになるか、あるいは歳出面でどのような削減措置がとれるか等々、いろいろ不確定要素、かつまた困難な問題等もございますけれども、そういうものを念頭に置きながら最終的には予算ができ上がるわけでございます。その場合には、財政審の答申にございますように、できるだけ定率繰り入れの問題につきましても制度の基本を念頭に置きながら考えていきたいというふうに思っておるわけでございます。ただ、従来もそういうことで参りましたけれども、過去三年間は残念ながら定率繰り入れを停止せざるを得なかったという状況があったこともまた事実でございます。
  162. 青木茂

    ○青木茂君 本則に戻るというのが前の御答弁で、今の御答弁は何かまたちょっと後ろへ下がって、今は白紙だ、これから考えるんだというふうに受け取れたんだけれども、そういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。どっちにするかまだ白紙だ、これから諸般の情勢を考えて決めるんだと……。
  163. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 先ほど申し上げましたように、制度としては、六十年度は定率繰り入れという制度が現在は残っておることになるわけでございます。したがいまして、くどいようでございますけれども財政審の答申も、この減債制度の仕組みはできれば基本を維持した方がいいというお話でございますので、それも頭に置きながら六十年度予算編成の際に検討していきたいというふうに考えておるわけでございます。
  164. 青木茂

    ○青木茂君 くどいようでございますけれども、よくわからぬ。  質問を終わります。
  165. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時五十九分散会      ―――――・―――――