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1984-04-05 第101回国会 参議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月五日(木曜日)    午後一時一分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月四日     辞任         補欠選任      青木  茂君     木本平八郎君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         伊江 朝雄君     理 事                 岩崎 純三君                 大坪健一郎君                 藤井 孝男君                 竹田 四郎君                 塩出 啓典君     委 員                 梶木 又三君                 倉田 寛之君                 竹山  裕君                 中村 太郎君                 福岡日出麿君                 藤井 裕久君                 藤野 賢二君                 宮島  滉君                 矢野俊比古君                 吉川  博君                 穐山  篤君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君                 木本平八郎君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵政務次官   井上  裕君        大蔵大臣官房会        計課長      渡邊 敬之君        大蔵大臣官房審        議官       大山 綱明君        大蔵省主計局次        長        平澤 貞昭君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省関税局長  垂水 公正君        国税庁間税部長  山本 昭市君        国税庁調査査察        部長       冨尾 一郎君        資源エネルギー        庁次長      川崎  弘君        資源エネルギー        庁石油部長    松尾 邦彦君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        環境庁大気保全        局大気規制課長  加藤 三郎君        厚生省環境衛生        局食品衛生課長  玉木  武君        厚生省環境衛生        局食品化学課長  市川 和孝君        農林水産省農蚕        園芸局農薬対策        室長       岩本  毅君        農林水産省畜産        局衛生課長    今井 正夫君        通商産業省貿易        局検査デザイン        課長       野口 宣也君        中小企業庁小規        模企業部小売商        業課長      佐藤 英一君        労働省職業安定        局高齢者対策部        企画課長     佐藤 勝美君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置  法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院  送付) ○物品税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○石油税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、青木茂君が委員を辞任され、その補欠として木本平八郎君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案及び石油税法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、既に他の先生方からも御質問があったと存じますが、まず第一に原則的なことをもう一度お尋ねしておきたいと思います。  政府税制調査会中期答申及び酒税問題懇談会座長報告などによりますと、最近の低税率酒下級酒への需要のシフトを踏まえて、酒類間の税負担格差縮小ということが必要であるという旨が指摘されております。このことは、昭和五十六年度税制改正の際、国会においても附帯決議で取り上げられたところであります。ところが、今回の政府案を見てみますと、税負担格差縮小が行われていないと見受けられます。とりわけビールについては他と比べて不公平が拡大しているように私は思うのでありますが、これらの答申報告が反映されなかった理由などについて、原則的でございますが、お尋ねをしておきたいと思います。
  5. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 五十九年度のただいま御審議をお願いいたしております酒税法改正酒税税率引き上げに当たりましては、ただいま鈴木委員が御指摘になりましたように、五十六年度の税制改正の際、国会での御議論もございました。それを受けまして、酒税問題懇談会、約一年間にわたって御審議をいただきました。それを受けまして、昨年十一月におまとめいただきました税制調査会中期答申におきまして、酒類間、それから同じ酒類の中の級別間税負担格差縮小すべきであるという御指摘をいただいておるわけでございます。私どもはこれを受けまして、五十九年度のただいま御審議いただいております税制改正におきまして、各酒類ごと税負担見直しを行ったわけでございます。  その場合、基本的な考え方といたしましては、現在、各酒類ごと小売価格に占めます税負担割合グループに分けますと、大体四つぐらいのグループに分けられると考えるわけでございます。つまり小売価格に占めます酒税負担割合の高いもの、具体的にはビール、それからウイスキー特級等でございますが、これが小売価格に占めます割合が大体四割台でございます。これが第一のグループでございます。第二のグループといたしましては、小売価格に占めます酒税割合が三割台のものでございまして、これは例えば、酒類で申し上げますと、ウイスキーの一級、清酒特級でございます。それから二割台の酒類でご ざいまして、これは清酒の一級それからウイスキーの二級。それからもう一つグループは、二割未満の酒類でございまして、これは清酒の二級、合成清酒、しょうちゅう果実酒類等でございます。  この四つグループに分けまして、今回の酒税引き上げの基本的な考え方は、何と申しましても、これは酒類課税数量の三分の二、酒税額で申し上げますと半分以上を占めておりますビール税率を一体どこで決めるかということによって、そのときどきの酒税法税率改正性格づけと申しますか、軸が決まるわけでございます。今回は、このビールにつきまして、税負担額で前回と同じ二十五円の引き上げ、おおむね引き上げ幅で申しますと一九・五%、二〇%弱でございますが、これを軸に置きまして、ただいま申し上げました税負担割合の低い酒類ほど引き上げ幅を大きくするという観点に立ちまして、具体的には先ほど申しましたしょうちゅう等でございますが、この低負担酒につきましては一番引き上げ幅を大きくする、これを三五%ぐらいを目安にする、それからその次のものを三〇%ぐらいを目安にする、その次のものを二五%ぐらいを目安にするということで引き上げ幅を設定さしていただいたわけでございます。  五十年代に入りまして、今回で実は四回目の税負担引き上げをお願いしているわけでございますが、過去三回はいずれもむしろ今回とは逆でございまして、ビール等引き上げ幅を一番大きくいたしまして、その他の酒類負担引き上げ幅を低減していくという手法をとったわけでございますが、今回はむしろビール引き上げ幅をベースにいたしまして、その上に負担割合に応じまして負担引き上げ幅をだんだん大きくしていくという、従来の手法とは全く逆の方向をとったわけでございます。ただ、酒類によりましては、消費の動向とか、あるいは原料事情等関係がございまして、典型的には清酒につきましては、清酒特殊事情がございますので、むしろそういう清酒特殊事情から、今私が申し上げました原則的な考え方を修正いたしておりますけれども、基本的には各酒類間のむしろ負担格差縮小するという格好で税負担引き上げ幅に差等をつけたということでございます。
  6. 鈴木和美

    鈴木和美君 今お話を聞いておりますと、酒類間の税率縮小ということは、主税局長お話でまいりますと、現在決まっているものから増税をするというか、そうして調整したというか、そういうふうに私受け取ったんですが、この答申の趣旨はただそんなことだけではないんじゃないかと思うんです。つまり、下げるも上げるもそういう角度から抜本的に検討すべきであるという答申だと私は受けとめているんです。だから、今回の増税のときにそういう考え方を取り入れたということは、それなりにはわかりますけれども、根本的にこの答申の中身の受けとめ方について私は不満である。その受けとめ方についての基本的なところをもう一度簡単で結構ですからお願いします。
  7. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 中長期的には、ただいま鈴木委員がおっしゃったような方向酒税懇なり税制調査会答申は示していると思います。私どももそういうふうに受け取っております。  ただ、これを一挙に絶対的な水準格差縮小を図るというのは、これは何段階かの作業を経ながら、しかも現在の紋別問題の今後のあり方とか、あるいは酒類ごとの区分のあり方をどうするか、あるいは課税方式をどうするか、つまり従量税方式でいくのかあるいは従量税従価税の組み合わせと申しますか、従価税の範囲をもう少し広げていくとかといった、そういった総合的な体系の中で将来の方向を目指すべきでございまして、これは御指摘のとおり、五十九年度の税制改正におきまして、ただいま御審議いただいておりますこの案におきまして、酒類間なり紋別間の負担格差の絶対的な縮小が図られておるという段階にまでは至っていないということは御指摘のとおりでございます。
  8. 鈴木和美

    鈴木和美君 持ち時間が少ないので掘り下げることができませんので、私は特にビールの問題だけに限って御質問します。  現在のビールに占めている税率割合ですね、つまり四四・四%が今回四八・九%になるというような税率でございますが、ビール担税能力というか、負担能力というか、この限界というものを主税局としてはどういうふうに考えておられますか。
  9. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) この絶対的な負担水準をどこに求めるかというのは非常に難しい御設問でございまして、計量的に何%が限度でございます、あるいは何%ぐらいが適正な水準でありますということを一義的になかなか申し上げることは困難でございます。と申しますのは、これはビールだけには限りませんわけでございますが、酒税負担水準を各酒類ごとに一体どう設定するのか、あるいは総体として酒税にどれくらいの税負担を求めるべきかということは、これは我が国酒税のこれまでの沿革を見ましても、あるいは各国の酒税負担状況を見ましても、それはそのときどきの財政状況なり、あるいは酒類消費態様の変化なり、あるいは酒類を供給する側の、生産側態様変化等でいろいろ態様が考えられるわけでございます。  ただ、ビールにつきましては、先ほど申しましたように、課税数量から見ましても、税収額から見ましても、我が国酒税体系の中では中核的な地位を占めておる商品でございますし、過去の税負担率を見ましても、三十七年に大幅な減税が行われました時点、これが現在の酒税体系の枠組みを成しておるわけでございますが、このときのビール負担率は五二・三%でございます。その後逐次引き下がってまいったわけでございまして、それが、五十年が恐らくボトムであると思いますが、このときの割合が三十七年の五二・三が五十年で三七・三まで引き下がっております。五十年代に入りまして今回を含めて四回の税負担見直しをさせていただいておりまして、今回の改正をお認め願いますと、ただいま御指摘になりましたように四八・九、これはほぼ昭和四十五年ぐらいの水準までに戻させていただくということでございます。  ただ、ビールにつきましては、そういった酒類の大宗を占めておる商品であるということのほかに、その消費態様を見ますと、いわゆる業務用消費される割合つまり直接家計だけではなくて、いわば会社の交際費等で示されるような分野での消費のされ方が、酒類の中でもビール割合は比較的大きいというようなこともございますし、それから我が国ビールというのは、寡占的な産業構造の中で極めて効率的な生産性の高い供給条件を持っておるということから見ますると、いろんな酒類の中で少なくとも現在までのところ担税力の高い酒類であるということは言えると思うわけでございます。  ただ、繰り返しになりますけれどもビール酒税負担率限界が何%であるとか、あるいはこれぐらいでとどめておくべきであるとか、あるいはこれが適正な負担割合であるということを計量的に画一的に申し上げられる性格のものではないというふうに考えておるわけでございます。
  10. 鈴木和美

    鈴木和美君 衆議院でのこの議論のときの主税局長答弁議事録などで拝見させてもらっているんですが、私は今の説明では納得できないんです。つまりビール家庭用業務用という言葉を使われますが、主税局には、どのくらいが業務用で、どのくらいが家庭用消費されているかというデータがございますか。データがあったら示してください。
  11. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは販売実績からの分析でございますけれども総体業務用による消費割合というのが、各酒類を通じまして二八・九%でございます。これは五十七年度の酒類小売業実態調査からの数字でございまして、これは計数は五十六年の計数でございます。それを五十七年度に調査したというものでございますが、その中でビールは三二・七%ということでございます。
  12. 鈴木和美

    鈴木和美君 三二・七%が業務用ということですか。
  13. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 仰せのとおりでございます。
  14. 鈴木和美

    鈴木和美君 その業務用という用に使われている、購入されているその使途というものが、追跡調査をしてみますと、必ずしも業務用というように言える面だけではないんですね。そのことを通じて、またそれぞれの従業員とか寮とか宿泊所とか、そういうところに使われていることも、私のデータでは大変多いんでございます。つまり今私が何を言いたいかというと、ビールに対する担税能力というか、税率というものは四八・九というようなことになれば限界である、私はそういうふうに考えるんです。  そこで、なぜそういうことを言うかというと、もう一度お尋ねしますが、全体の消費傾向というものをつかまないと、せっかく税率は上げても、その税率に見合った税収入が行われないというような消費との関係も私は出てくると思うんです。したがって、担税能力というものは単なる税金が負担できるかできないかというだけではなくて、将来の販売数量との関係を見ながら適正な税率を考えなければいかぬなと私は思うのです。  そこで、お尋ねするんですが、これからのビール消費量ですが、五十九年で消費されると見込んでいるのは五百二十四万キロリッターでしょうか、それが五十八年との比較においてはどういう数字になるのか示していただきたいと思うんです。
  15. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) ただいま五十九年度の消費見込みといたしましては、御指摘にございました五百二十四万二千キロリッターと見込んでいるわけでございます。この見込みのいわば根拠と申しますか、基本的な見込みを立てましたときの考え方でございます。  御承知のとおり、五十八年度におきましては猛暑の関係がございました。それから値上げの仮需等がございまして、当初の見積もりよりも相当ふえたわけでございます。その実績見込みに対しましておよそ二%の消費伸びるであろうという想定に立ちまして、ただいま申し上げました五百二十四万二千キロリッターというものをはじき出しておるわけでございます。  これは五十年に入りまして過去二回の増税を行いましたとき、それぞれ、五十三年度におきましてはビール小売値上げ額増税の結果一〇・三%でございましたし、五十六年度も一〇・四%でございました。この両年度増税が行われました直後の課税数量伸びを見ますと、おおよそ二%伸びておるわけでございます。  今回の増税によります値上げ引き上げ幅は、過去に比べまして八・七%でございますので、そういった状況等から見ますると、およそ五十九年度におきまして、五十八年度の実績見込みに対して二%ぐらいの課税数量伸びは見込めるのではないかということでございます。  ただ、お断わり申し上げなければなりませんのは、ビールの場合は、特に天候によって課税数量が大きく左右されますので、その点は留保条件として考えなければなりませんけれども、よほど夏の天候に異変がない限り、私ども二%ぐらいを見込むというのはそう無理な見込みではないのではないかというふうに考えております。
  16. 鈴木和美

    鈴木和美君 天候に左右されることは十分わかりますけれども、そのことを見込んだ上で年々の消費傾向というものははじか札でいるんだと私は思うんです。この前の参考人お話じゃありませんけれども、また私が五十六年の税制改正のときにもお話し申し上げたときに、業界からもまた主税局からもお話があったのは、もう伸び率限界に来ていると思う、二%、三%伸びれば本当にいいと思うと。業界はもちろん努力はされるでしょう。けれども、私はこの税率の約五〇%にならんとするというような状況の中では大変先行き不安だと思うんです。ですから、今数字一つ一つ当たっていますと時間がありませんから述べませんけれども、その見込み数字においても、どうも主税局の方の見方は甘いんじゃないのかということを指摘しておきたいと思うんです。  それからもう一つお尋ねするのに、今度は一本二十五円の増税となりますから、小売価格では約八・八%上昇ということになりましょうか。そういう上昇が行われるということになりますと、毎日一本消費する家庭では増税分だけでも年額九千百二十五円の負担増になるんじゃないかと思うんですね。そこで、五百万ぐらいの平均の人の収入のところを見ますと、今度の減税でいろんなのを合わせまして四万六千八百円。ところが、ビールを一本飲む人が年間五万五千二百四十二円払わなきゃならぬのですから二割が帳消しになってしまうというようなことで、今回の増税というものはいかに庶民いじめのものであり、また取りやすいところから取っているかということを指摘しなきゃならぬと思うんです。そういうことについてどういう見解をお持ちでございましょうか。
  17. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今回の酒税税負担引き上げは、一つ所得税減税財源特例公債に依存することを許さないという現在の財政状況のもとで、既存税制の中から所得税減税財源を何とか捻出するという考え方に立ちまして、その一つといたしまして、酒税は過去五十六年の税負担見直し以降、価格上昇に応じまして、従量税でございますので、税負担が実質的に低下しておる。その辺も兼ね合わせて考えながら税負担引き上げをお願いしておるということでございます。したがいまして、その意味では、所得税減税による家計負担減少部分が今回の酒税引き上げ、なかんずくビール課税数量の三分の二を占めておるわけでございますから大変大きなウエートを占めておりまして、その部分だけ減税部分が減殺されるということは、これは否定できないところでございます。  ただ、ビールも含めまして、私ども家計調査で五分位のもので、今回の減税、それから酒税引き上げということで試算をいたしてみたわけでございます。その結果、低所得階層の方に負担引き上げ影響がやや大きい。これは酒税性格上避けられないところでございますけれども、いずれにいたしましても、減税部分に対しまして負担の増を試算いたしますと、酒類全体につきまして、大体家計消費支出の今回の増税分が約〇・一%強ぐらいの影響率でございます。  したがいまして、ただいま委員がおっしゃいましたように、今回の減税額も考慮に入れた場合に、ビール税負担引き上げによりまして家計それなり負担増をお願いする結果にはなるわけでございますけれども、トータルの負担ということになりますと、若干の酒税負担引き上げによりまして減税負担減の効果が相殺はされますけれども、この程度の負担の増は現在の財政事情から見て私どもは何とか御理解をいただきたいと考えておるわけでございます。
  18. 鈴木和美

    鈴木和美君 今までのやりとりで最終的に、局長にそんなに長い答弁じゃなくて結構ですから、はっきりしていただきたいと思うんです。  まず一つは、もうビール税限界であるということをはっきり答えていただきたい。  それから二つ目は、数量伸びもこのままの税率でいったんではもう限界だということを答えてもらいたい。  三つ目は、とにかくどうあなたが説明しようと、取りやすいところから今回の減税財源を取っている。取りやすいところに増税をかけたということは間違いない事実だと思うんです。ですから、今お話しのように、理解していただきたいというお話してございますけれども、私は理解できません。  そういう意味で、この三つの問題について端的に答えていただけませんか。
  19. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず、負担水準につきましては、増税後、今回四八・九%になるわけでございますが、先ほど申しましたように三十七年、現在の骨組みができました酒税法改正で当時大減税を行ったわけでございますが、そのときのビール負担水準が五二・三、この辺のバラン スをどう考えるのかということもございます。  それから消費伸びにつきましては、ビール消費につきましては、三十年代の後半から四十年の高度成長にかけまして、所得水準上昇によって大幅に酒類、特にビール消費量伸びたということでございますが、考え方によりますと、ここまで所得水準上昇してまいりますと、ビール消費が過去の高度成長期のようにどんどん伸びるということが期待できるかどうかということに問題を提起する向きもございます。私どもはそういう点も十分承知しておるわけでございまして、ビールの今後におきます負担水準なり、消費伸び等につきましては、十分慎重に検討をしながら今後対処していかなければならないという問題点は持っておりますけれども、現時点での負担水準限界であり、これ以上ビールはもう伸びないんだというふうに断定できるかどうかということになりますと、いささか留保をさせていただかざるを得ないということでございますけれども委員の御懸念の点は、私ども問題点としては持っておるということだけは申し上げたいと存じます。  それから取りやすいところから取った税制改正ではないかという御批判でございますけれども既存税制の枠内の中で、繰り返しになりますけれども所得税減税財源を何ほどか見つけるとするなれば、現在の税収構造の中で大きな割合を示します法人税、それから間接税の中ではやはり酒税物品税というものに依存せざるを得なかった。その他の間接税につきましては、石油諸税等はこれは目的税で特定財源でございますし、それからもう一つ大きな流通税でございます印紙税につきましては、五十六年度にそれまでの税率を一挙に二倍にするという大幅な税率引き上げをやりまして、五十九年度それをまた調整するということは、言うべくして不可能なようなそういう状況の中で、非常に選択の幅が狭まれた中で今回の酒税なり物品税負担引き上げをお願いしておる。取りやすいところからという御批判もあるかと思いますけれども、そういった事情をぜひ御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  20. 鈴木和美

    鈴木和美君 また後ほど大臣にもお尋ねする時間もあるようでございますから、ビールの問題はこの辺にしておきたいと思います。  なお、本委員会の皆さんに御了解を得たいと思うんですが、委嘱審査などの問題などもございますので、私の持ち時間との関係で残された時間を税関の手続などについて質問することをお許しいただきたいと存じます。  私は、九十六国会で税関の通関手続につきましてこの委員会の席上でお伺いしたことがございます。そのときは非関税障壁の問題が大変議論をされているところでございまして、外国から、通関手続が非常に長い、つまり積みおろしから流通のところまで、自由流通に入るまでの間が非常に長いというような指摘がございまして、その改善策について過般お尋ねしたことがございます。そのときに、直接的な税関の手続ということになりますと、先般も塩出先生の御質問にお答えがあったと思うんですが、一日ぐらいのやつを〇・四ぐらい縮めて大体〇・六ぐらいだというようなことで、あとはほかのところが詰まっているという御説明があったと思うんです。その実態に現在でも間違いございませんでしょうか。
  21. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) ただいま御質問の輸入手続、これは貨物の種類等非常に多種多岐にわたっておりますので、一義的に何日でございますと申し上げにくい面があることは御了解いただけると思うのでありますが、先日もお答えしましたように、一般的なめどとしての御質問であろうという理解で申し上げますれば、海上貨物全体について見ますと、最近の調査では、入港いたしましてから税関で審査終了に至るまでは七・一日を要しているわけでございます。これも平均的な意味で、海上コンテナについてはどうかというような御疑問もおありになるかもしれませんが、コンテナがどんどん物流の近代化の要請に沿って導入をされておりまして、したがいまして、コンテナに限って見ればこれよりは若干短いのではないかと、かように思っております。
  22. 鈴木和美

    鈴木和美君 私の理解はそうでないんです。  同時に、五十七年だったか質問したときに、ここに私は「日経ビジネス」というのを持っているのですがね、この「日経ビジネス」を示しましてお尋ねしたことがあるんです。全体を通して十五日間というふうに書いてあるんです。つまり貨物の取りおろしから他法令関係の承認等申請まで約四日かかるというんですね。それから他の法令の規定により輸入に関しての許可とか承認を得るために五日から七日かかる。税関だけは約一日である。それから今度は、輸入貨物が他の法令の規定によりまして規定されている貨物の手続、これをやるのに二日から三日かかるじゃないかというようなことで、締めまして約二週間ぐらいかかるということについて間違いないかと尋ねたところ、おおむねそんなところだというようにお答えをいただいておるんですが、七・一日とはどういうことの関係になりましょうか。
  23. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) ただいま七・一日と申し上げましたのは、お手元にある「日経ビジネス」の図表によりますと、おおむね一番左の端の「貨物の取おろし」というところから、ちょうど右の方に「審査終了」というところがございますが、その間が最近の調査では七・一日というふうに結果としてはなっておるという意味でございます。したがいまして、税関そのものの申告を受け付けましてから審査終了までというのは、先般もこの質疑で申し上げたとおり、短縮をされて〇・三日になっておるということを申し上げたわけで、したがいまして、逆に申し上げれば、いわゆる他省庁の法令に適合するような手続を踏むという通関前手続に要する期間が必要でございますという意味でございます。
  24. 鈴木和美

    鈴木和美君 税関の方にそういう意味からお尋ねしますと、約一日かかっておったものが今のお話では〇・三ということになりましょうか、その〇・三になった。そういうふうに改善されたということはどういうやり方をしたためにそれだけ縮まったことになりましょうか。
  25. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 国際物流の大量化あるいはその物流の迅速化の要請が高まっておることは、先ほど鈴木委員も御指摘になったとおりでございまして、そういう需要にこたえるために、手続の面で申し上げれば、五十七年の四月から輸入通関手続について改善五項目というのを実行いたしましたし、それのみならず、もう少しその分野を広げて申し上げますと、航空貨物につきましては電算化を実施いたしまして、その電算化も逐次効果を上げてきておるというのが実態であろうかと思います。そのほか具体的な税関実務に当たりまして、検査をいわば不必要な分野についてまで手を及ぼすことなく、重点的に行うというふうに業務の上でも改善を図ったと、かような点が原因であろうかと思います。
  26. 鈴木和美

    鈴木和美君 厚生省にお尋ねしますが、私の五十七年の質問のときにも、厚生省関係の食品衛生法であるとか薬事法とか毒物及び劇物取締法というようなものがあって、通関の手続の中でこのことによって時間がかかる、日にちがかかるというような批判があるが、これに対しての改善策は考えておるかと聞いたときに、税関のみのチェックで通関できるように今協議中、検討中であるというようなお答えをいただいたんですが、現在はどこまで進行しているのかお尋ねをいたします。
  27. 玉木武

    説明員(玉木武君) 食品衛生法に基づいて輸入検査手続の合理化をやっておりますことをお答え申し上げますと、厚生省としましては、昭和五十七年四月に新たに輸入食品等検査実施指針を作成しまして、検査対象品目、項目の明確化、継続的輸入における検査の免除、輸出国の公的検査機関分析表の受け入れ、個人用試験研究用食品等の届け出不用、ウイスキー等特定品目に対する手続の簡素化、生鮮食品輸入届け書の貨物到着前の仮受付等、輸入食品の安全性の確保を損なわない範囲で手続の合理化及び迅速化を図ったところでございます。なお、その後も表示にかかわる誓約書の廃止等、食品の安全確保に支障を生じない範囲で 改善措置を講じてまいっております。  以上でございます。
  28. 鈴木和美

    鈴木和美君 次に、農水省にお尋ねしますが、農水省についても取り上げまして、家畜伝染病予防法であるとか植物防疫法、こういうものについてどういうような検討が進められているのかということをお尋ねしたときに、携帯品として持ち込み証明書を簡素化するというようなことを検討中だということを当時聞いたんですが、現在はどうなっていますか。
  29. 今井正夫

    説明員(今井正夫君) 携帯品として個人用の物を持ち込む場合には、輸出国の政府機関の証明書を簡素化するということを申し上げておったわけでございますけれども、そういったものにつきまして相手国側といろいろ相談いたしまして簡素化を進めました。同時にそういった国を順次ふやしてまいっておるわけでございます。ただ、家畜伝染病を持ち込まないという法の目的で実施いたしておることでございますので、一定の限度はあろうかというふうに考えておりますので、その辺は御理解を賜りたいと思う次第でございます。
  30. 鈴木和美

    鈴木和美君 それでは通産省にお尋ねしますが、同じように高圧ガス取締法とか化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、計量法、家庭用品品質表示法などについてどういう検討が進められておりますか、お尋ねします。
  31. 野口宣也

    説明員(野口宣也君) 先生御指摘の通産省関係の四本の法律につきまして、輸入検査手続の合理化、効率化の観点から鋭意改善に努めておりますが、まず高圧ガス取締法につきましては、輸入エアゾル容器の肉厚に関します規定につきまして、昭和五十七年九月、高圧ガス取締法の省令及び告示の改正を行いまして、国際的規格に準拠した性能規格に変更したところでございます。またエアゾル製品等を継続輸入する場合につきましては、昭和五十八年一月に通達を改正いたしまして、第一回目の輸入時に確認を受けました試験成績証明書を第二回目以降の輸入につきましても有効なものとして取り扱うように変更いたしております。また同じく個人用貨物、商品見本など一定の少量輸入エアゾル製品等につきましては試験成績証明書を免除するという措置もとっております。  さらに、外国検査データの受け入れにつきましては、昭和五十八年二月以降オーストラリア、アメリカ、イギリスの三カ国につきまして、我が国の高圧ガス保安協会と相手国検査機関の間に容器検査に関します委託契約を締結いたしまして、検査データの受け入れに踏み切っております。  二番目に、化学物質安全審査法でございますが、これにつきましては、輸入に際しまして外国の輸出者が輸出する化学品に関する組成、成分等の機密の保持を希望する場合に、それを可能とするような手続様式の改善を行っております。  また、外国の検査データの受け入れにつきましては、データ受け入れに関します考え方につきまして欧米各国と歩調を合わせるべくGLP、グッド・ラボラトリー・プラクティスという考え方がございますが、それの採択に本年三月末に踏み切っております。  三番目に計量法でございますが、計量法につきましては、今先生御指摘の五十七年四月以前でございましたが、五十七年二月にヤード、ポンド法表記の並記されたものにつきましてのヤード、ポンド法表記の抹消をしなくても差し支えない旨の通達の改正を行っております。  それから検査データの受け入れにつきましては、本年二月外国事業者に係ります特殊容器製造事業者の指定に際しまして、通産大臣の指定いたします外国検査機関の検査データをもって実地検査にかえるように改善をいたしております。  最後に、家庭用品品質表示法でございますが、これにつきましては、通関時のいわゆる確認は行っておりませんで、国内流通におきます表示の規制でございますが、去る五十七年六月でございましたが、繊維製品の名称につきまして英語表示を認めるように改善をいたしておるところでございます。
  32. 鈴木和美

    鈴木和美君 今三省にお尋ねをしたのでありますが、私が各省にお尋ねしたところによりますと、いろんな改善の項目が述べられておりますが、実際そのために何日短縮されたかということになりますと、皆さんの省でもなかなかはかり切れないというようなお答えでございまして、必ずしも日数において縮まったというふうに私は認識をしていないんでございますよ。ですから、そういうことについても、大蔵省の関税局が、各省の手続がおくれているために何か税関手続がおくれているみたいな感じを持たれることは大変心外だと思うんですね。そういう意味で各省との関係も十分私は進めていただきたいと思うんです。いかがでございましょう。
  33. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 鈴木委員のただいまの御指摘はごもっともでございます。他省庁の所管の他法令規制のチェックと申しましても、外国から見ますと、これまた税関でやっているんだろうというふうに理解されやすいということはもう否定しようもありません。したがいまして、第一は他省庁手続自体を簡素化していただく、あるいは迅速化していただくということでありますが、同時に私どもとしましては、他省庁との間で相談をいたしまして、従来は他省庁のまず第一次チェックがあって、それを税関の通関の機会に再度確認をするというプロセスを短縮できる措置はないかなということで、それについては既に努力をしてまいりまして、第一は薬事法、毒物及び劇物取締法に関する一部につきましては昭和五十七年の五月から、食品衛生法については五十七年の四月から、それから高圧ガス取締法については五十八年の三月から、それぞれ従来の第一次のチェック、つまり他法令所管の省庁への手続を税関がお引き受けをする、いわば他省庁に依頼を受けて税関がかわって行うということをしております。  これを具体的に申し上げますと、我が国の全申告のうち約三五%のものが他省庁所管の法令の通関前手続を必要としているものであります。したがいまして、この部分を他省庁から税関に委任をしてもらって手続を一元化し、簡素合理化していくということをやっておる。というわけでございます。
  34. 鈴木和美

    鈴木和美君 厚生省にもう一つお尋ねしますが、今関税局長お話しの中で薬事法の問題が一つ提起されたわけですが、私の聞いている範囲では、厚生省が抵抗してなかなか進まないんだということをよく耳にするんです。この日経ビジネスにもこういうことが書いてあるんです。もしもこんなことがあったら私は大変だと思うんです。食品衛生法とか薬事法の二つの法律をとっただけでも全体の三四%強に達するわけです。ところが、指定検査機関というようなところを食品衛生法で見ると全国で三十六カ所の検査機関がある。つまり厚生省からこういう出先機関に天下りのポジションというかポストというか、そういうものをどうしてもつくっておきたいというために、いろんなところを逆に複雑にしておるんだ、複雑にしているというために税関との間に話が進まないというようなことを聞いているんですが、そんな事実はございますか。
  35. 玉木武

    説明員(玉木武君) そのような事実はございません。
  36. 鈴木和美

    鈴木和美君 ここであると言うたら大変なことでしょうから、いずれ私も事実をもってまた後日にお話をしたいと思います。三省の方、御苦労さまでございました。  そこで、今度は関税局長にもう一つお尋ねいたしますが、先ほど通関手続の簡素化ということにおいて関税法を改正して、言うならば五つの改善策というものをとられたというお話を承りました。そのことは、五つということはこういうことであるというふうに理解してよろしゅうございましょうか。事後審査制の導入と包括審査制の新設、それから輸入申告添付書類の簡素合理化、検査体制の改善、分類の不統一の防止という五つであるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  37. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 御指摘のとおりでございます。
  38. 鈴木和美

    鈴木和美君 さて、その税関手続の簡素化ということの方針というか対応というか、それ自体に私は基本的に反対ではありません。けれども、例えば事後審査制の導入ということが行われたために、税関の検査というか、麻薬とか、けん銃とか、そういうものについてのチェックが、何か放任と言っちゃ語弊がありますが、前よりはおかしくなっちゃったというような問題が提起されていると聞きますが、そういう事実はございませんか。
  39. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 私どもといたしましては、ただいま御指摘のような事態があってはいけないということは十二分に認識をしておりまして、事後審査制を初めとして新しい通関手続の改善五項目の運用に当たっても、先ほども申し上げたとおり、検査の重点化、必要な検査はきちんとするということについては留意をしておるつもりでございます。
  40. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、この五つの方式をとったために、事実まだはっきりしていませんけれども、心配な点として、そういう覚せい剤とかけん銃だとかというようなものの放任が行われているというように心配をしているわけですよ。  同時にもう一つ心配な点は、包括審査制の導入ということが行われたために、つまり包括審査制というのは経常的に同じものであれば最初にチェックした後は今までの実績を見て省略するとか、それから敏速にするとかというようなことが代表的にとられている制度だと思うんです。しかし、それは言ってみればサンプルですね、早い話が。サンプルの総合審査なものですから、関税という税金をかけるということの方じゃなくて、そうでない面では問題点が残っているんじゃないのかなと今でも思うんですが、そのことについての見解はいかがでございましょう。
  41. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) ただいま御質問のありました包括審査制の導入は、同一貨物について反復取引が行われるというケースについては、当初の申告の際に包括的な審査を行いまして、以後の輸入についてはそれを土台にいたしまして通関を簡略化する、そういうことでございますから、鈴木委員のお言葉のとおりサンプルであるというような面があると思います。  しかし、それは、私どもといたしましては、どのような輸入者についてもいいというように認めているわけでもございませんし、御指摘のような過去において犯則の事実があったとかあるいは疑いがあったというようなケースについては、それを認めるわけにはまいらないということになっておるわけでございまして、先ほども申し上げたとおり、そのサンプル方式を導入したからといって、私どもとしては、その審査、検査というものについて全く不安が生ずるということがあってはならない、かように思って運営をしておるつもりでございます。
  42. 鈴木和美

    鈴木和美君 それはそうでしょう、そんなことがあっちゃならぬわけです。あると考えられるんであれば、こういう方法をとっちゃいかぬのですわね。しかし私は、早い話が、一日をこれだけやってみたって、つまり率からいえば半分にもならぬのですよね。通関手続という非関税障壁の批判にこたえるためのものから見れば微々たるものですよね。先ほど申し上げた各省庁の調整によって通関手続と言われるようなもの、それの改善は必要だと思うんですが、このことにおいて微々たるものをやったことと完全な検査が行われないというための弊害とを比べっこすると、私は後段の方が大変心配なんですよ。だから、あってはいけないということで進められているんだとは思いますけれども、現にそういう事実というものに現場の職員が大変不安を持って仕事をしているということに関しては局長もお認めになると思うんですよ。現場の職員は大変不安を持って今仕事をしていますよ。そういうことに対して、現場の職員の感情とか空気とか、そういうものについて局長としてどういうふうに把握されているのか。垂水さんは現場で仕事をなさってきた方ですから、税関のことについてはもう大体現場の職員の空気というのをつかんでおられると思うんです。そういう意味ではどんな空気に把握されているのかお尋ねをしたいと思うんです。
  43. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 率直に申し上げまして、税関職員の中に、検査体制がいわば重点化するということに伴って、その間隙を襲われるのではないかという不安を持つ向きがあるということは私も承知しております。しかしながら、他方、そこに不安があるからということで、国際物流の迅速化と申しますか、あるいは通関手続の簡易化という、いわば内外の需要に対して鈍感であることは許されないというふうに思っておるわけで、したがいまして、その両者をどういうふうに調和するかということが税関職員に課された課題でもあり、私に課された課題でもあるというふうに思っておるわけで、その点は御指摘のとおり、今後においても十分気をつけてまいりたいと思っております。
  44. 鈴木和美

    鈴木和美君 私はまた委嘱審査のときに財務局とか国税の問題を取り上げますが、局長ね、確かにおっしゃるとおりだと思うんですが、実際の問題として、税関の手続等の簡素化というものは、実は関税局が手をかけたときの発想は、非関税障壁の方からこういう検討が行われたのか。もしくは大蔵省の中で、臨調行革を進めるに当たって各省から一つずつ持ってこい、つまり改善されるものですね、人的なものとの兼ね合いにおいて持ってこいというようなときに、この問題が関税局の方から持ち上がった話ではないんですか。つまり、職員との関係においてこの問題が行われたために、総定員法の枠内の中でみんな苦労が逆に多くなっちゃって、神経をぴりぴりさして仕事をしているというような状態が私は今の現場の状態だと思うんです。だから、その発想が実はどっちだったんだということを、この機会にその真相を聞かしてほしいと思うんです。
  45. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) ただいま二つのケースをお挙げになっていずれであるかという御質問でございますが、それにつきましては結論から先に申し上げれば前者でございます。すなわち、私どもとしましては、積極的に関税及び非関税障壁全体をあわせていわば輸入障壁というふうに外から映る場合もあると思いますが、そういうものについて軽減、撤廃をしていくのが現在の我々に課せられた使命であると、かような認識でございます。したがいまして、関税障壁については、先般も御審議いただいたとおり、関税の軽減、撤廃の措置を講じておりますし、非関税障壁については、先ほど来ここで御質疑いただいておりますような通関手続の簡易化もその一つとして実行しておる、かように考えております。
  46. 鈴木和美

    鈴木和美君 この件でもう一つお願いをしておきたいんですが、この五つの簡素化というものが行われたために、もう一つ職員の不安として今でも残っておるんでございますが、例えば事後審査制であるとか包括審査制というものをとったために、例えば品物が流通に出ちゃってから、後から今後は逆に問題が起きるというようなことが起きたときに、その責任というのはどこにあるのかということがいつも問題にされるんですね。つまり、そのときに担当した者であるとか当事者の者が後から責任を追及される。そのとき、おまえ何をやっておったのかというようなことがあったんではたまらぬというのが職員の感情としてたくさんあるんですよ。これは今でも現にあるんです。そういうものに対して関税局としてどういうふうに対処されるのか見解を聞きたいと思います。
  47. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) 不幸にして御指摘のような事態が起こるという場合のことを仮定しての御質問でございますが、それはもちろん、そういうことが発生したからといって、その関係の職員その者だけに責めを帰することはできないというのが私の認識でございます。すなわち、そういった種類の行政の方針を決めておりますのは私どもでございますし、したがいまして、その責めは私にあると、かように理解をしております。
  48. 鈴木和美

    鈴木和美君 どうぞそこの点は局長も全職員に明らかに申しておいていただきたいと思うんです。みんなそういう心配を持っておりますから、 何らかの通達でもいいし、あなたの訓示でもいいし、そういうものをぜひ徹底していただきたいと思います。  さて、最後に職員の数の問題ですが、これは塩出委員からの質問に対して局長が答えられておりましたが、もう一度、現在はびこる一番社会的な悪と言われるこういう覚せい割とかけん銃とかというのがまかり通っているときに、現状は、港があんまり多くなっており、それから港湾検査をする場所が前に比べると非常に広がっていると思うんです。広がっている割にはその辺に対する人員の配置というものがないと思うんですね。そのためにこれもまた心配で、せきとめなきゃならぬ問題がせきとまらぬというようなことがあっちゃいかぬと思います。  これは同じ総定員法の中でも大蔵の関係のこういう従事者というものは、我々が附帯決議をつけるまでもなく、実質的に省内ではっきりしてもらいたいと思うんです。かつて私が渡辺大臣のときに質問したときに、渡辺大臣があるところで私にこういう話をしたことがあるんです。大蔵省の幹部というのは最初から整合性を考えて要求をして来るから大臣の出番がないということを聞いたことがあるんですわ。つまり、それぞれの部署部署の方々が、どんなことがあったとしても、必要なものはそれこそ必要な定員要求というものをやって全体の調整を図られるというようなことがあってしかるべきだと思うんです。そういう意味で、職員についての見解を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  49. 垂水公正

    政府委員(垂水公正君) ただいま御質問の過程にありましたように、税関の業務は、日本の貿易の伸長あるいは出入国者の数の増加あるいはその他、先ほど来お話の出ております社会悪事犯の発生の可能性等に伴いまして、年々増大かつ複雑化していると思っております。こういう状況に対処するためには、先ほども申し上げましたように、私どもとしては、もちろん事務の合理化あるいは必要な場合には機械化というようなことを進めてまいっております。また業務の実施の上でも重点化、効率化も図っておるわけでございますが、それにかてて加えて、御指摘のように、要員の確保というものは大変必要なことだと思っておるわけでございます。  したがいまして、今回の五十九年度の予算におきましても、私どもとしましては増員の要求をきちんといたしました。重点部門である例えば輸入の通関ラインあるいは監視の取り締まり部門、そういうものがいわば重点の部門だろうと思われますけれども、そういうものを中心に要員の確保のためのいろいろな話し合いをしてまいりました。しかし御承知のとおり、行政を取り巻く環境というのは大変厳しいわけでございますし、かつ公務員の定員事情というのはかてて加えて非常に厳しい状況にあるというのも紛れもない事実でございます。したがいまして、いろいろ話し合いの末に、先般の三十一日の質疑のときにもお答えしたと思いますが、税関については三十三名の増員が認められたわけでございます。しかしながら、計画削減等の大幅な人員縮減がございますので、その結果としては純減五十一ということになっておりますけれども、私どもは今後におきましても、ただいま申し上げた業務運営に支障を来さないための最小限度の要員の確保ということについては、引き続き最大限の努力をしてまいるつもりでございます。
  50. 穐山篤

    ○穐山篤君 私は、石油税にかかわる問題について幾つかお尋ねをします。  最初に、エネルギーの需給の見通しの問題でお伺いしますが、最近の歴史から言いますと、昭和五十四年の八月に長期エネルギー需給の見通しが発表になった。これは東京サミットの直後だと思います。その後昭和五十七年に長期見通しの改定が行われた。それから昨年、一年経ずして新しい中間報告というんですか、そういうものが出たわけですが、こういうものを常に見直しをするのは当然だとは思いますが、昨年中間報告をまとめた意義といいますか、経済的な政治的な背景というのは何だったんでしょうか。
  51. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 昨年の十一月、長期エネルギー需給見通しを改定いたしましたが、これの最大の背景と申しますと、実は五十四年から五年にかけましての第二石油危機、この石油危機が日本の産業構造に与えた影響、それからエネルギーコストが非常に上がったということもございますが、省エネルギーの進展が進んだ、そういった動向が非常に顕著にあらわれてまいりました。したがって、我々としては、こういった現実的な動きというものを踏まえた需要見通し、それに応じた供給のあり方ということを検討するということで、昨年の春からエネルギー政策の総点検、それからもう一つは、このエネルギーの長期需給見通しの改定というのを総合エネルギー調査会にお願いいたしまして、昨年十一月に長期エネルギー需給見通し中間報告としてお取りまとめいただいたものでございます。  この中身といたしましては、現在のエネルギーの総供給量、これは五十七年度をベースにいたしますと三億八千八百万キロリッターぐらい、これは原油換算でございますが、この数字昭和六十五年度には四億六千万キロリッター、それから七十年には五億三千万キロリッター、このぐらいになるであろうというふうに見込んでおります。ただ、この見通しは、五十七年の四月につくりました前回の見通しに比べますと、全体としてのエネルギー需要の伸びが停滞していること、あるいは省エネルギーが進展しているというふうなこともございまして、前回見通しの昭和六十五年度の五億九千万キロリッターという数字に比べますと約二二%の下方修正、そういうふうな形になっております。  主要なポイントだけを申しますと、まず石油でございますけれども、五十七年度で日本は石油を二億四千万キロリットルほど使っておりますが、この数字はこれから六十五年度、七十年度にかけまして、大体横ばいから若干の増加、つまり六十五年度で二億四千万、七十年度で二億五千万、このくらいの数字になるだろうというふうに考えております。それから石炭の方は、これは電力用の一般炭、これを中心にいたしまして着実に供給がふえていくであろうというふうに考えております。それから原子力でございますが、これは電力供給の中核的な役割を今後とも担うものとして供給シェアも着実にふえていくだろう、六十五年度で三千四百万キロワット、七十年度で四千八百万キロワット、この程度になるんじゃなかろうかという見通しが立てられております。なお、LNGでございますが、この天然ガスにつきましては、都市の周辺用の火力発電所、これは無公害エネルギーということで、都市周辺の火力発電所の燃料としては非常に重要な意味を持っておりますが、このほか都市ガス原料として着実に導入が進んでまいろうかと思います。しかしながら、もう少し長期的に眺めますと、現在のLNG、これは価格の決め方であるとか、そういった点で問題がございまして、やや供給の伸びは鈍化するというふうに見込んでおります。  以上が今回の長期のエネルギー「需給見通しのポイントというところでございます。
  52. 穐山篤

    ○穐山篤君 原油価格が五ドル下がったということもありますし、それから石油の需要が低下をした、あるいは代替エネルギー、新エネルギーの開発というふうなものが計算をされて出たんでしょうが、それにいたしましても、前回発表しましたものと、それぞれのエネルギーのウエートが相当変化しているわけですね。これはどういうふうな想定のもとにこういうウエートの違いを位置づけたのか、その点いかがでしょう。
  53. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 手元に前回との比較表が参っておりませんのであれでございますが、全体としての感じを申し上げますと、一つは石油のウエートが、つまり石油依存度が前回の見通しては、六十五年度で五割を割るという見通しがございましたけれども、今回の見通しては六十五年度で五二%ぐらいになるだろうというふうな感じでございます。この大きな原因は、石油自体の需要 も前回の数字に比べて今回は減らしておるんでございますけれども、それ以上にほかの代替エネルギーの需要の見通しが落ち込んだということが一つございますことと、石油というのは非常に汎用性のあるエネルギー、それから固有の需要分野を持っているということもございまして、ただいま申し上げましたように、石油の全体としてのエネルギーに占めるシェアが従来より少し高いというふうな感じになっております。  それから先ほどもちょっと触れました天然ガスにつきましては、六十五年度までは非常にふえる数字になっておりますけれども、その後の見通しにつきましては、現在のような石油と等価で価格が動く、あるいはテーク・オア・ペイといっておりますけれども、非常に引き取り条件が厳しい。こういった点を踏まえますと、将来的には今のままでは大きな伸びが六十五年以降も期待できないんじゃなかろうかということがございます。  それから原子力はウエートとしては大体前回の見通しとほとんど変わってないと思います。つまり、シェアとしては変わっておりませんけれども、原子力の発電のキロワットは、前回は四千六百万キロワット、今回は三千四百万キロワットというふうに下方修正いたしておりますが、これは一つには、電力需要の伸びが下方修正されたということと、原子力の開発を進めます上での地元調整の問題、こういったところが影響してきているということでございます。
  54. 穐山篤

    ○穐山篤君 数字の上で見ますと、今も少しお話がありましたが、日本の場合、原力子というものに非常にウエートをかけたといいますか、持つような計画になってますよね。それから水力とか地熱、そのほかの新エネルギー、これは後で議論しますが、そういうもののウエートは非常に少ないけれども、天然ガスの需要というものはかなり強くなるだろう。そういう意味でいいますと、原子力に非常に力を入れているのは、意味はよくわかりますけれども、天然ガスとかあるいは石炭についても、これからのことを考えてみた場合に、もっとふえるのではないか。我々素人目でそう思うわけですが、この点、中間のまとめのときにはどういうような想定のもとにこの展望がつくられたんでしょうか、その点お伺いします。
  55. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 先生御指摘のとおり、原子力は着実にウエートをふやすような数字になっておりますが、私どもといたしまして、あるいは総合エネルギー調査会という審議会の場において非常に議論になりましたのは、もちろん過度の石油依存度を減らしていくということが全体としてのエネルギーのセキュリティーの確保に役立つ、そういうことで代エネ導入を積極的に推進していく必要がある。これは意見が一致したわけでございます。  それとともに、今回のエネルギー総合需給見通しの中でも非常に強調されておりますのは、大変高くなりましたエネルギーコストをいかにして低減するか、つまりセキュリティーの確保とコストの低減とをいかにバランスをとっていくか、これが今回の総合エネ調でも大変大きな議論になったわけでございます。そういう意味でセキュリティーの確保を基本としつつも、一方においてエネルギーコストの低減を図る努力をする。したがって、代替エネルギーの導入促進につきましても、そういった面で経済性の高いエネルギーの導入を図っていかなければならない。現在のところ原子力あるいは先生御指摘の石炭、これがエネルギー価格から見ますと、石油に比べて相対的に安いものでございますから、そういった意味で石炭、原子力というのは着実に伸ばしていこう。今回の見通しでも、石炭につきましては、昭和六十五年度で全体の中で一七・五%、七十年度では一八%というふうに着実にその比率を伸ばしていこうと考えております。原子力も一〇・八から一四%へと伸ばしていく。  天然ガスの方も、実は昭和六十五年度までは、先ほど申しましたような近郊型の火力発電所の燃料であるとか、都市ガス需要というところで相当な勢いで伸びていくわけでございますが、ただ、そういったところが一巡いたしますと、無公害エネルギーとしての天然ガスについてまだコストの非常に高いというところが一つ問題になってくるだろう。そこで七十年度にかけましては、伸びが鈍化するというふうな見通しになっております。ただ、この報告書の中にも書いてございますけれども、仮に今問題になっておりますような硬直的な価格の決定方式であるとか、あるいは石油等価の価格決めであるとか、引き取り条件であるとか、そういったところが改善されますと、また天然ガスについても需要が伸びていく可能性はあろうかと思います。ただ、一応、この見通しては、そういった努力をするけれども、現状として天然ガスは、中期的には伸びるけれども、長期的には伸びが鈍化するであろう。そういうふうな判断を総合エネ調の需給部会でも下しておるということでございます。
  56. 穐山篤

    ○穐山篤君 従来、それぞれの大臣あるいは総理大臣も、この石油とか原油という話になると、これは戦略物資であるというふうな位置づけを常にやられておったんですが、今のお話からいきますと、戦略物資には違いないけれども、市場性というものを今回は大いに取り入れたというふうに思想の変化があったのかないのか、その辺はいかがでしょうか。
  57. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 過去のエネルギーの見通しというのをちょっと考えてみますと、第一次のオイルショックの以前、まだ石油が安定して豊富に供給されておりましたときには、むしろこの低廉な石油への傾斜という形でエネルギーコストの低減なり安定を図るというのが、エネルギー政策に一つ貫いておった柱じゃなかったかと思います。ところが、石油危機になりまして、この石油への傾斜というのが非常に過度になったおかげでエネルギー供給に不安定さを非常に増した。したがって、こういった過度の石油依存体質から脱却して、量的なセキュリティーの確保を図るというのが、オイルショック以降のエネルギー政策において大きな重点である。そのために、代エネヘの政策でございますとか、あるいは供給源の分散化であるとか、そういった施策が強力に進められてまいったと考えられます。  ところで、最近になりますと、確かにそういった施策の結果、例えば石油依存度はピークの七八%から六二%に落ちてまいりました。あるいは供給源の分散化というのもある程度進みました。しかし、まだ日本におけるエネルギーの供給構造は、脆弱と申しますか、非常にもろいところがございます。したがって我々としては、今後ともそのセキュリティーの確保、これは基本的なエネルギー政策の大前提と申しますか、ポイントだろうと思いますけれども、一方においては、エネルギーコストの低減というのが国民的な要請でもある。したがって、これも十分配意していかなければならない。したがって、両者のバランスのとれた需給構造をそういうことで目指していきたい。これが今後の長期的なエネルギー政策の一つ方向であろう。それが昨年の総合エネルギー調査会の基本的なトーンになってきたということでございまして、決してセキュリティーよりも市場メカニズム、あるいはセキュリティーよりもコストというふうに大きく力点を移しかえたということではございません。
  58. 穐山篤

    ○穐山篤君 中間報告書を読ましてもらったんですけれども、これをいろんな方がいろいろに評価をしているわけです。電力屋さんなりガス屋さんなり、あるいはアルミニウムもそうですが、それぞれの業界によっていろんな評価があるんですけれども、今回特に、今お話がありましたセキュリティーとコストの問題が非常に議論を深くされたといいますか、そういう印象を私は持つわけです。従来になくそこの部分が熱心に取り上げられた。理屈の上からわかるような感じがするわけですが、従前、こういうセキュリティーとコストという話は余りなかったんですね。どちらかといえば薄かったんですが、今回これが特に重視されたというのはどういうことでしょうか。
  59. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 第一は、これは一次、二 次のオイルショックの結果でもございますけれども、エネルギーコストが非常に高騰した、これが日本の産業、経済あるいは国民の消費生活に直接、間接非常に大きな影響を与えた。したがって、エネルギーコストの安定あるいは節減といったところが国民的な要請になっております。そういうことでこのコストの問題というのを取り上げたのが最大の理由であろうと思います。  もう一つは、五十五、五十六、五十七という第二次オイルショックの結果があらわれたその経済活動の中身を見ましても、例えば素材産業を中心にいたしまして、いわゆるエネルギー多消費産業に対してこの石油危機を中心といたしましたエネルギーコストの上昇というのが非常に大きな影響を与えた、甚大な影響を与えた結果、日本の産業構造、そういったものが非常に急激なトラスチックな変化を遂げた。こういった中を見まして、コストの安定あるいはそれの低減への努力というのが我々エネルギー対策の中でも非常に望まれているということを認識いたしまして、このセキュリティーの確保とコストの低減とのベストミックスと申しますか、バランスのとれた需給構造をつくり上げていくということが重要だと、これが今回の総合エネ調なりエネルギー政策の方向づけをいたしました原因なり理由でございます。
  60. 穐山篤

    ○穐山篤君 その意味はわかりました。  さてそこで、その問題に関連をして、電灯、電力あるいはガソリン、灯油など、種別によって価格が問題になるわけですね。リッター当たり一円の勝負というふうな言葉さえも出るほど価格の競争というものは非常に重視をされるわけですが、ごく最近の数字がありましたならば発表をお願いしたいと思うんです。価格の問題です。
  61. 松尾邦彦

    政府委員(松尾邦彦君) 今お尋ねの最近の石油製品の末端価格の動向でございますけれども、レギュラーガソリンでございますと、一番新しい数字は、ことしの三月の東京都の区部の速報値でございますけれども、リットル当たり百五十円でございます。五十七年の夏場ごろ百七十七円ぐらいでございましたところから見ますと、かなりの大幅な低下になっているかと思います。  それから、今もう一つおっしゃいました民生用の灯油の値段でございますけれども、これにつきましても、東京都区部の小売物価の速報値で見てまいりますと、三月、配達料込みで、十八リットル当たり千六百三十一円となっております。ちなみに、同じように五十七年の秋口には、同じ条件で見ますと千八百八十二円ということで、これまだかなりの低下を見ているのが現状でございます。
  62. 穐山篤

    ○穐山篤君 わかりやすく二つお話を受けたわけですが、比較をするために、例えば石炭それからLNGあるいはC重油、それから形は変わりますが電力と電灯、こういうものの数字がわかりますか。
  63. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) ちょっととりあえず計算した数字でございまして、全部はございませんけれども、それぞれの単位が違いますので、一応私ども今千キロカロリーで計算をいたしましたものがございますが、輸入の一般炭、これは千キロカロリーで一円九十三銭、それから原油は千キロカロリー四円六十二銭、それからLNGでございますが、このLNGは千キロカロリーで四円四十八銭。今ちょっとカロリーベースで統一いたしました数字はこれだけでございますが、そんな感じになっております。
  64. 穐山篤

    ○穐山篤君 さてそこで、先ほど私は、長期見通しの際に、日本は原子力を非常に重視していると申し上げた。アメリカの最近の状況を見ますと、原子力はどちらかといえば放棄して、再生エネルギーの方に政策がずっと変わってきているわけですね。日本の国内の場合でも、最近民間の仕事を少し調べておりますと、相当の分野で技術の開発というものをやっているのが多いわけですね。例えば電力利用におけるヒートポンプなんかの技術の開発というものにも手をつけていますね。それから都市ガスの場合にガスエンジン技術というものの開発もしておる。それからその両方をセットするといいますかね、そういう技術も開発されていて、民生用のものとしてはこれの開発・導入というものがかなり強くなってぐるというふうに私ども思うわけです。  そういうことになりますと、私は前にもう一度戻るわけですが、長期見通しを行う場合にいろんな技術の開発というものが行われるわけですから、固定的に資源をあるいはエネルギーを固める必要はなかろうというふうに思うわけです。逆に言いますと、需要がどんどん下がりつつあるわけですし、石油産業の場合に構造改革というものを当然やらなければならない宿命にあるわけですね。それから景気対策という意味から言いますと、自主開発原油というものについても相当政策的に力を入れなけりゃならぬと、こういう問題も出てくるわけです。そうしますと、ざっくばらんに言いまして、石油産業を中心にしまして、いうところの行政改革といいますか、構造改変、体質強化といいますか、そういうものを余儀なく急速にされると思うんですね。こういうものについての研究はされていると思うわけですが、その点はいかがでしょう。
  65. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 幾つか御質問の点があったかと思いますのでお答えいたしたいと思います。  先ほどヒートポンプのお話であるとかガスタービンのお話であるとかありましたけれども、こういった省エネルギー、あるいは負荷の平準と申しますが、要するにエネルギーの需要をなるべく平たくなべて使ってもらう問題、あるいはガスタービン等で熱併給といいまして、別途熱も供給するということで非常に効率的なエネルギーの利用を図る問題、これらは我々も重視いたしておりまして、それぞれ例えばムーンライト計画であるとか、いろんなRアンドDが工業技術院あるいは民間の機関で進められておりますが、そういったものに対して助成をいたしましたりあるいはいろんな形で奨励をするということで、こういう省エネルギーあるいは代替エネルギーの効率的な使用の問題というのには今後とも努力を続ける所存でございます。それとは別途にいろんな形での新エネルギーもございますが、そういった新エネルギーについても今後充実をしてまいりたいと、対策の充実を図ってまいりたいというふうに考えております。  先ほどのエネルギーの需給バランス表の数字を固定的にとらえる必要はないんじゃないかという点でございますけれども、実はこの総合エネルギー調査会の報告書自体におきましても、その最終段階におきまして、こういったエネルギーの長期的な見通しというのは、これを全く不変のものとして理解すべきじゃない、むしろいろんな実態に合わせて常に見直していく柔軟な姿勢と、それからこの数字自体がある程度一定の幅のもとにあるんだということを考えて取り扱うべきだということを言っております。私どもも、まさしくこの報告書に言われているとおりでございまして、この数字自体をそのまま全く動かない不変のものというふうに考えているわけじゃございませんで、そういった一定の幅のあるフレキシブルなものとして考え、現実の変化に応じて施策を対応させていきたいと、そういうふうに考えております。  最後に、石油の点につきましては、確かに先生御指摘のとおり、原油の方が重質化、つまり重いものになっていくのに対しまして、製品の方は中・軽質化、つまりガソリンであるとかA重油、灯油、軽油といった中間産品、こういったところの需要がふくらんでいくという傾向にございます。伸びていくという傾向にございます。そういう中で最少の原油を使って必要な石油製品を得ると、これは省エネルギーにもなるわけでございますが、そういった意味においての石油の精製、分解関係の設備の高度化ということが必要でございまして、これは既にいろんな形でその対策を進めていくことにしておりますし、来年度の予算におきましても設備高度化のための要求を出さしていただいております。そういうことで、石油につきましても、いろんな形で効率的な使用というもの を図るべく努力してまいりたいと考えております。
  66. 穐山篤

    ○穐山篤君 それから石油の備蓄の問題ですが、民間・国家備蓄につきましては従来の方針は変わらない、変えないという考え方でいいんですか。
  67. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) この石油の備蓄、これは我が国の経済安全保障の見地からいたしまして、いわゆる緊急時の対策といたしましては大変重要な施策でございます。これは総合エネルギー調査会の指摘に基づきまして、民間の備蓄は九十日、これは法律にも定められておりますが、それから国家備蓄を三千万キロリッターということで従来から推進しているものでございます。  で、この備蓄につきまして、昨年のエネルギー調査会でも備蓄政策の点検ということで大変活発な議論がございました。しかしながら最近、一時的には確かに石油の情勢は緩和基調に推移しておりますけれども、なおその石油輸入に占める中東の依存度が高くて、その中東自体が非常にまだ不安定である。こういう状況下におきましては、現在の備蓄目標、これを達成・維持することが要請される。こういう旨の答申をいただいております。  したがって、私どもといたしましては、民間九十日備蓄を引き続き維持する、それとともに現行の国家備蓄目標の三千万キロリッターについて今後とも引き続き着実に推進を図ってまいりたいと、そういうふうに考えております。
  68. 穐山篤

    ○穐山篤君 次に、今度は直接税にかかわる問題についてお尋ねしますが、これは大蔵省と通産省にお伺いします。  臨調答申の中に、エネルギー対策として二つのことが指摘されていますね。第一が、「石油税の石炭・石油等特別会計への繰入れについては、石油国家備蓄基地建設費の原資の一部の借入金への切換え、石油探鉱投融資の対象事業の厳格な選定、市場機能を活用した代替エネルギー導入対策の実施等により、特定財源制度に安易に依存することなく、繰入額の圧縮を図る」。それから二つ目は、「石炭対策についても、石炭鉱業の自立をめざすとともに、事業の効率的実施により経費の節減を図る」。これがまあ一つの壁ですね。  それから大蔵大臣提案説明の中で、「このような状況に顧み、石油及び石油代替エネルギー対策の歳出内容を厳しく見直した上で、石油に係る税負担状況等に配意しつつ」税率を若干上げさしていただきます。こういう縛りがあるわけです。  さてそこで、昭和五十七年度の決算、五十八年度の予算、それから五十九年度、今審議しております石特会計を調べてみますと、ここの部分がどういうふうに配慮されたのか。大蔵省はどういう点を考え、通産省はどういうことに配意をしたのか。あるいは労働省関係につきましては、こういう分野で創意工夫を凝らしたというものがなければならないと思うんですが、その点それぞれから答弁をいただきたいと思います。
  69. 平澤貞昭

    政府委員(平澤貞昭君) 今お話がございました石特会計の歳出につきましては、最近のエネルギー需給の緩和の状況や、御存じのような大変厳しい財源事情等もいろいろ踏まえまして、通産省あるいは労働省とも十分御相談しながら各種施策の見直しを行ったところでございます。したがいまして、この関係の歳出については大変厳しい抑制を我々としては行ってきたと、このように考えているわけでございます。  具体的には石油備蓄、石油開発その他について数字は通産省の方からお答え申し上げると思います。
  70. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) それでは具体的にどういうところで節約を図ったかということを申し上げたいと思います。  まず、先ほど先生御指摘の臨調答申との関係でございますが、臨調答申の中では「石油国家備蓄基地建設費の原資の一部の借入金への切換え」ということでございますが、私どもは五十六年の中ほどから国家備蓄の建設原資につきましては出資金からすべて借入金に切りかえております。それから「石油探鉱投融資の対象事業の厳格な選定」ということでございますが、この点につきましては、昭和五十九年度の石油公団の探鉱投融資の事業規模、これは五十八年度の規模に比べまして五十億ほど減らしました。それとともに、石特からの公団への出資につきましても、つまり特会の予算でございますが、繰入額を千百七十八億から千百四十億というふうに数字を減らしまして対象事業の厳選というのを進めているところでございます。  「市場機能を活用した代替エネルギー導入対策の実施」、これは特に石油代替エネルギーの開発、導入の関係に関しまして、第一は経済性が乏しいようなプロジェクト、これは思い切ってステージアップを打ち切る。具体的に申しますと、水素製造プラントのステージアップを打ち切るということをやりました。  それから石炭の液化、これは重要な代エネ導入対策でございますけれども、この石炭液化のうちの歴青炭液化事業につきましては、従来の三万式から一方式に一本化いたしまして重点化、効率化を図ることにいたしております。それ以外にもいろいろな形の技術開発、例えばオイルシェール等の技術開発につきましては、なるべく民間資金の導入を図っていくと、そういう形で市場機能の活用ということをやってまいる所存でございます。  石炭対策につきましても、全体としての五十九年度予算、これは対前年度比石炭勘定はマイナス四・五%ということになっておりますが、そういうことで全体としての歳出の圧縮を図るとともに、予算の中身といたしましては、重点化、効率化で従来どおりの国産の石炭の生産を維持していくということを進めてまいりたいと考えております。  また、石油の備蓄に関しましては、これは先ほど申しましたように、現行の備蓄の方向というのは堅持いたしますけれども、例えば国家備蓄の基地を完成する年度を六十二年度から六十五年度へ二年延期する。あるいは国家備蓄として積み増しをいたします量を当初の予定の三百万キロリットルから二百五十万キロリッターへ縮減する。それから相対的にコストの高いタンカー備蓄、これの陸揚げを促進する。そういうことで備蓄コストのできる限りの削減を図っていく努力をしているところでございます。
  71. 佐藤勝美

    説明員佐藤勝美君) 労働省の所管分について御説明申し上げます。  石炭勘定の労働省所管分におきまして、炭鉱離職者に対します就職促進手当の支給、それから炭鉱離職者緊急就労対策事業の実施、産炭地域開発就労対策事業の実施というようなことを行っているわけでございますが、最近におきますこの関係の予算の推移を見ますと、五十七年度におきましては百八十七億円、それから五十八年度につきましては百八十四億五千万円、五十九年度の予算案におきましては百八十一億七千万円というふうになっております。  まず五十八年度でございますが、対前年度二億五千万円の減となっているところでございますが、その具体的内容についてまず申し上げます。五十七年の十月に北炭夕張炭鉱から大量の離職者が発生いたしましたことに伴いまして、その再就職の促進を図るために、五十八年度におきまして、就職促進手当の支給に必要な経費を対前年度四億八千万円増額いたしておりますが、その一方で五十七年六月に緊急就労対策事業の就労者に対しまして自立引退のための援助特例金の支給ということを行いました。その結果、五十八年度におきますこの事業の吸収人員が減少いたしましたので、緊急就労対策事業費の補助金が対前年度八億四千万円の減となっております。こういうことで、差し引き、五十八年度におきましては、対前年度二億五千万円の減というふうになっております。  それから五十九年度の予算案でございますけれども、対前年度二億八千万円の減少でございます。これは緊急就労対策事業費につきまして、この事業が労働政策としての事業として適切に維持運営できるようにするために必要な見直しを行いまして、その結果、この事業の月間就労日数を減少させております。こういうことに伴いまして、緊急就労対策事業費の補助金が対前年度三億八千万円減少ということになっておりますし、さらに、先ほどちょっと触れました北炭夕張炭鉱離職者の再就職も進んでまいりまして、その関係の再就職促進手当の支給対象者が減少いたしましたために、この関係の予算も対前年度七千万円の減となっております。そういうことの結果、総額では、五十九年度予算案におきましても、対前年度二億八千万円の減となっている次第であります。
  72. 穐山篤

    ○穐山篤君 私は、調べてみて、必要なものを削ってもらっては困る、不必要なものについては節約をするという、そういう考え方に立っているわけですが、ただ、予算の組み方として、大蔵省、最後にこう書くんでしょうが、ほかのものは全部、言ってみれば、シーリングにかかって下がっているわけです。ところが事務費だけどんとふえているんですね。これは中の選別がよくないんですと私は見ているわけですが、御承知だろうと思いますから、意見だけそこの部分は申し上げておきます。来年からそういうことがないように費目のところはきちっと整理をしてもらいたいというふうに思います。時間がありませんので恐縮です。  それから環境庁にちょっとお伺いしますが、先ほどから需給見通しで議論されておりますように、御案内のように、メーンが原子力で、次いで石炭ということになるわけですが、石炭のウエートも当分の間変わらないわけですね。そこで、電力用火力として石炭が使われることになりますと、当然のことでありますが、環境問題にいささか影響が出るわけですね。大気汚染あるいは石炭殻の処理の問題というふうなことにつきまして、従来もやっておったわけでしょうが、これから石炭利用が拡大することに伴いまして、環境庁の政策としても重点を置いてもらわなければなるまいというふうに思います。その点いかがですか。
  73. 加藤三郎

    説明員(加藤三郎君) 先生御指摘のように、石炭の利用はかなり大幅に増加することが見込まれております。昭和五十八年十一月に改定されました長期エネルギー需給見通しによりますと、燃料として使用されます一般炭が、五十七年度の実績が二千八百四十万トンに対しまして、六十五年度では四千三百万トン、七十年度には五千八百万トン、このように大幅に増加することが見込まれているわけでございます。御指摘の大気保全の観点から見ますと、石炭は、石油に比べまして、燃焼した場合に硫黄酸化物あるいは窒素酸化物あるいはばいじんといったものがいずれも発生量が多く、また貯蔵や運搬に伴いまして粉じんが飛散するといったような問題があるわけでございます。  環境庁といたしましては、大気保全の観点から、地域の環境の悪化を防止し、それから環境基準の維持、達成を図るように万全の対策を講じてきたわけでございますが、まず、ばいじんにつきまして、昭和五十七年の五月に大気汚染防止法に基づく排出基準を強化いたしました。例えば石炭燃焼ボイラーについて見ますと、従前の石油燃焼ボイラー並みに規制を大幅に強化したところでございます。また昨年の九月でございましたが、石炭等の固体燃焼ボイラーにかかわります窒素酸化物の排出基準をおおむね二倍に強化いたしたところでございます。さらに粉じんの構造、使用、管理基準でございますが、これにつきましては、今年度、五十九年度から二年計画で、粉じん対策の現状あるいは防除技術の動向等について調査検討を行いまして、粉じん発生施設の構造、使用、管理基準の強化についても検討いたしたいというふうに思っております。  このように、環境庁といたしましては、石炭の利用の拡大に伴いまして、環境問題、中でも大気問題を惹起しないように万全を尽くしてまいりたいと思っております。
  74. 穐山篤

    ○穐山篤君 この石油税の創設は、昭和五十三年に提案があったわけですね。三・五%の税率でした。その当時、エネルギーの供給の推移からいきますと、五十四年の数字がここに出ているわけですが、三億一千七百万キロリッターであったわけですね、五十四年が。それから五十七年が、先ほどもお話がありましたように、二億四千万キロリッターですね。それから中間報告でいきましても二億四、五千。昭和七十年度で二億四千万キロリッターから二億九千万キロリッターぐらいで横ばいか、若干の増加であります。したがって、この石油税収を考えてみますと、石油税で税収を考えるとするならば、将来、税率を上げていかなければ税収としての機能を十分に果たさない、こういう理屈になりそうでありますね。その点が将来的に心配になるわけですが、石油税の将来展望というものはどうお考えですか。
  75. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) それでは私どもの立場からお答えいたします。  今後の石油の税収、これがどういうふうになるだろうかという点でございますが、ただいま先生おっしゃいました原油の輸入量、これが一つの要因でございます。それに加えて、今後の原油価格がどうなるか、あるいは為替レートがどういうふうに動くだろうか、こういった幾つかの要因が複雑に絡むということでございまして、そういうことで現時点で、どういうふうに石油税収がなっていくかという点につきまして確たる見通しを申し上げることは大変難しいというふうに考えております。  しかしながら、現在の原油の値段でございますけれども、国際的に言われておりますことは、中長期的には発展途上国を中心にいたしまして石油の需要も伸びる、一方、石油の方の供給能力というのは、OPECを中心といたしましてその余力にも限界がある、したがって石油需給というのは中長期的には逼迫化の方向に向かうだろう、そういうふうに一般的に見られておりますし、私どももそういうふうに考えております。したがって、中長期的には価格上昇傾向に向かうであろうというふうに予想されます。したがって、確かに、石油の消費量、こちらの方は、昨年十一月に私どもが改定いたしました見通しにおきましても、昭和六十五年度まで横ばいないしは若干の増加と見込んではおりますけれども価格の動きとあわせて考えますと、今後その税収がどんどんと落ちていく、そういうふうなことにはならないんじゃないかというふうに考えられます。  私どもといたしましては、今回お願いいたしております石油税の増税財源といたしますこの石油特会のお金と、それから現行の石油の需給見通しあるいは施策体系等を前提といたしまして、できる限り長期間の間の歳出というのを今回のお願いいたしております増税案で賄ってまいりたいと、そういうふうに考えております。
  76. 穐山篤

    ○穐山篤君 大蔵省が答弁する前にあわせてお伺いしますが、今回四・七%の税率を乗ずるわけですが、原油一リッター当たりに直しましてどのくらいになりますか。四・七%を乗じてどのくらいになりますか。
  77. 松尾邦彦

    政府委員(松尾邦彦君) 今回の増税をお願いしております一・二%分でキロリットル五、六百円という感じでございます。
  78. 穐山篤

    ○穐山篤君 そうしますと、為替のこともあるから計算が非常に難しいんですが、昭和五十三年、三・五%で計算して百十円の調整をしたとして、大体七百円前後であったというふうに私は記憶をしているわけですね。そこで、今回三・五プラス一・二にして、その合計でどのくらいですか。合計でどのくらいになりますか。
  79. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) これは五十八年十二月の数字で石油税が千五百五十円になっております。したがって、先ほどの五百五十円程度をこれに足しますと二千百円程度になろうかと思います。
  80. 穐山篤

    ○穐山篤君 そこで、時間がありませんから最後に二つ申し上げておきたいんですが、五十三年の石油税の創設のときに私は質問に立ちまして、最後に大蔵省に二つの問題について念を押した議事録があるわけです。一つ価格への転嫁の問題です。今一・二%の分が五百五十円としますと、五十三年から見まして二千百円という勘定になるわけですね。価格への転嫁についてはできるだけし ないように最大の努力をするとその当時は言われておったわけですが、これだけ税が上乗せになりますと、価格への転嫁、価格への影響が全くなしとはしないというふうに思います。しかし消費者の立場からいいますと、その点非常に危惧をするわけですが、この点についての考え方一つ。  それからもう一つは、石油税という消費税が五十三年からあるわけですが、そのほかに石油製品に対します各種の税が一般消費税の形で現存をしているわけです。そこで私は、この石油税と石油製品に対します各種の税について幾つもあるのは好ましくない、もう少し整理整とんができないものだろうかということを注文つけたわけですが、その当時、大蔵さんでしたか、勉強さしてもらいますというふうに答弁がなっているわけです。予算委員会、大蔵委員会でこの石油製品に対します説あるいは自動車諸税に対します税金の体系というものについてしばしば指摘があるわけですが、研究の結果が一向に発表になったことがないんです。まあ検討していないわけではないと思いますけれども、もうこの辺で明確にしてもらってもいいんじゃないかなというふうに思いますので、この二つの問題について最後にお尋ねをしておきたいと思うんです。
  81. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) ただいま二つの問題の御指摘があったわけでございます。まず石油税の価格への転嫁の問題でございます。  新税創設当時、委員から当委員会で質疑が交わされたということでございますけれども、石油税本来の性格は、消費税と規定されるべきものであるというふうに私どもは考えるわけでございまして、最終的には石油の直接の利用者なり、あるいは石油を原料としてつくられた製品の利用者が最終的に負担する税であろうということでございますが、新税創設当時、価格への急激なる転嫁は避けるべきであるということでそういった議論が行われたことと承知いたしております。  ただ、今回の場合は、五十七年当時と原油値下がり後の価格というものとを比較してみますと、今回一・二%さらに税負担の上積みをお願いしているわけでございますけれども、それが丸々価格に転嫁されたといたしましても、末端の価格というのは五十七年当時と理論的に計算いたしましても相当な開差になるわけでございますので、その辺の価格転嫁の問題というのは、五十三年、税が創設された当時と若干情勢が変わっておる。これをどういうふうに理解するかということであろうかと思います。いずれにいたしましても、新税創設当時そういった議論の経緯があるということは私どもも十分承知しているわけでございます。  それから二番目の御指摘でございますが、石油関係諸税は非常に複雑になっておりまして、国税のみならず、地方税も含めますと相当な種類の税になっておるわけでございます。しかも特徴的なことは、この石油関係諸税が全部特定財源であるという点でございます。現在の構成から見ますと、石油関係諸税、地方税も入れまして総体の八割までが道路財源でございます。二〇%弱がこの石油税それから原重油関税を含めましたエネルギー対策に使途が特定されておる。あと二%前後が航空機燃料税でございまして、これは空港整備というものに使われておるということでございまして、私ども税制の観点からいたしますと、特定財源というのは一般論として資源の効率的な配分をゆがめる、あるいは財政の硬直化を招きかねないということで、この石油関係諸税の問題は現在の特定財源あり方と密接に私どもは関連しておりますし、個々の問題を整理して考えませんと、現行の石油諸税をどういうふうに整序していくかという問題、根本問題にはなかなか手がつけられないというのが現状でございます。  その意味で、ここ一、二年の間に早急にこの種の税をもう少し整序していくというふうな環境にあるかといいますと、現在の道路財源需要とか、あるいは先ほど来御議論になっておりますエネルギー対策の財源需要、あるいは財政需要の観点から見ますと、今のような条件はなおしばらく続くということは考えられるわけでございまして、さて、そういった状況のもとで現在の石油関係諸税を整理していくということ、あるいはもう少し簡単な税組織にしていくということが果たして可能であるのかどうか。税制調査会の中でもこの議論は毎年の年度改正のとき、あるいは三年ごとの中期答申のときにも議論をしていただいておるわけでございますけれども、いまのところ、税制調査会の中でもさまざまな意見がございまして、まだ明確な結論が得られていないというのが今日の率直な現状でございます。ただ、この石油関係諸税の税制全体をどういうふうに将来整序化していくかという問題意識は私どもも常に持っておるということだけは申し添えさせていただきたいと思います。
  82. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、最初に税調の中期答申の十ページにあるわけでございますが、「サービスについては近年その消費が急増しているが、国税としてはほとんど課税対象になっていないという問題がある」、そういう観点から、課税ベースの広い間接税につき、避けて通ることのできない検討課題であると、こういうようなことがあるわけでございますが、このサービスというものは、消費が急増しているサービスというものはどういうものでございますか。    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕 そのうち、特に国、地方を通じて現在課税の対象になっておるのにどういうものがあるのか、お尋ねをいたします。
  83. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) サービス消費というものをどういうふうにしてとらえるかというのは、いろいろな角度からの議論があるわけでございますが、税制調査会でこの御議論をいただきました一つ議論の手がかりといたしましては、例えば国民所得計算上の最終消費の中での個人の消費支出のうちサービスに向けられるもの、この割合昭和四十年代の半ばから五十年代にかけて非常にふえてきておる。消費のサービス化あるいはソフト化という現象でございますが、そういったものを背景といたしまして、消費税のあり方として、個別消費税の場合、あるいは一般的な消費税の問題も含めまして、今後消費担税力を求めるとした場合に、このサービスに対する消費というものをどう考えるかという問題は避けて通れない。税制調査会の問題意識の大ざっぱな要約をすればそういうことになろうかと思います。  ところで、今お尋ねの、現在サービスに着目した消費税目として一体どういうものがあるか。我が国は国税、地方税を通じまして、個別消費税の建前をとっておりますので、個別サービス消費税ということになるわけでございますが、その税目の数は非常に限られております。国税の場合で申し上げますと、入場税、それから通行税、この二つだけでございます。それから地方税は、一般的なものといたしましては、娯楽施設利用税、これはゴルフ場とかパチンコ場の利用等の場合の定額の税率が決められておりますが、それとか、それから料理飲食等消費税、いわゆる料飲税でございます。これが代表的な地方税のサービス税でございます。そのほか特殊なものとして入湯税、お湯に入る税でございますが、こういったものがございます。
  84. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 現在、そういうのは、例えば入場税の場合、通行税の場合、あるいは料飲税等の場合、大体どの程度の税収があるのか。いろいろ控除のラインがあるわけでありますが、そういう点から配慮して、消費の中での税率が現在どのようになっておりますか。大体の線はわかりますか。
  85. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず、入場税でございますが、今、委員がおっしゃいました免税点のことだろうと思います。映画の場合は千五百円以上の入場について課税される。同じく我々は空ものと言っておりますけれども、演劇の場合は三千円というのが免税点でございまして、税率は一〇%でございます。五十九年度の税収見込み額が九十億円。それから通行税でございますが、これは寝台料金だけには免税点がございます。寝台料金には免税点がございまして、これは普通の通行税の場合は国鉄のグリーン車、それから飛行機の航空 券でございますが、これも税率は一〇%でございます。それから寝台料金の免税点は、現在五千五百円でございますけれども、これは近々国鉄運賃が改定されまして、これはB寝台の料金を基準にして決めておりますので、この免税点はごく最近引き上げる予定にいたしておりますけれども、現在五千五百円でございます。五十九年度の税収見積額が七百二十億円。  それから地方税の方は、私ども直接の所管ではございませんのであれでございますが、五十九年度の地方税の計画ベースでの数字で申し上げますと、娯楽施設利用税は免税点はございません。先ほど申しましたように、ゴルフ場、パチンコ場、それぞれこれは率ではございませんで、定額の課税になっておりますけれども、五十九年度計画ベースで約一千五十九億円、    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕 それから料飲税でございますが、これは税率は一〇%でございまして、それぞれ飲食する場所等によって免税点がございます。例えば飲食店でございますと、一人一回二千五百円といったような免税点が定められております。五十九年度で自治省の計画ベースで四千四百八十億円でございます。
  86. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 政府あるいは大蔵大臣が予算委員会等でも課税ベースの広い間接税というものをいろいろ研究しておると。これは具体的にはどういうものがあるんですか。例えばでいいと思うんですけれどもね。一応いろいろあるでしょうけれども我が国消費から見て比較的消費の金額の大きいものというのはどういうものが考えられますか。
  87. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 課税ベースの広い間接税の具体的な類型に関する御質問と承ってよろしゅうございますか。――課税ベースの広い間接税というのは、税制調査会で今後検討することが避けられないというふうにされておるわけでございますが、税制調査会におきましても、具体的に五十四年の「一般消費税大綱」がまとめられました以降、あれとは別の形での具体的な課税ベースの広い間接税議論がされておる段階ではございません。  ただ、この答申が取りまとめられましたときに、諸外国の立法例等から見まして、幾つかの類型に分けたものを資料として大蔵省の方から提出申し上げたものがございますが、それは通例よく言われますように、単段階課税のものと多段階課税のものに分けまして、単段階課税のものとしては製造者段階のもの、これはカナダに立法例がございます。それから卸売段階のいわば売上税、これは現在オーストラリアとかスイスに制度の実例がございます。それから小売段階の売上税、これは現在のアメリカの州税で行っておるものが典型的な例でございます。  それから多段階のものといたしましては、かつてEC諸国でやりましたし、それから戦後我が国でもごく短期間やりました取引高税、それから現在EC、西欧諸国でやっておりますEC型の材価価値税、それからもう一つ理論的なパターンとしては、五十五年の国会の決議で問題にされました五十四年の政府税制調査会で取りまとめられた「一般消費税大綱」としての一般消費税(仮称)と言われるもの、こういったものが外国の制度例とか、あるいは具体的に今まで議論された課税ベースの広い間接税の類型になるかと存じます。
  88. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 しかし、今税調が言っておりますサービスという――今言われたのは、私は主として物に対するいろいろ課税の方法じゃないかと思うんでありますが、税調が言っておる方向というものはかなりサービスに着目をして、そのサービスの部分消費が拡大しておる、そこをねらっていかなければ課税ベースの広いものにはならないんじゃないかと思うんですがね。そういう点で税制調査会等で言っているのは、こういうサービスに対する課税を広げていけという、こういう意図ではないかなあと私はそのようにとるんです。その点はどうなんですか。
  89. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは、先ほど私が御説明申し上げました点、やや説明不足であったのかもしれませんが、あのとき申し上げましたように、税制調査会が、消費の中でのサービスのウエートが高まってきておる、あるいは消費のサービス化現象の中で消費税がどう対応するかということを考える場合に、二つの方途が実はあるわけでございまして、一つは課税ベースの広い新しい間接税、一般的な消費税というものを仮に構築いたしますと、当然その中にはサービス消費は課税の対象として入ってくるわけでございます。そういう道が一つ。そうではなくて、個別消費税の中で、例えば先ほど申し上げましたように、国税で通行税あるいは入場税というのが現在個別サービス税としてあるわけでございますけれども、そのほかにそういう個別のサービスに着目してどういった税が考えられるかという二つの方法があるわけでございます。  で、後者の例といたしましては、例えばある時期我が国でも一部で議論されましたけれども電話利用税とか、そういったサービス、個々のサービスに着目して消費税を課するという考え方が当然出てくるわけでございます。  ただ、個別のサービス消費税につきましては、検討の課題として税制調査会答申で指し示されておることは事実でございますけれども、今日までのところ、こういう具体的なサービスについて課税することを検討してはどうかという、そういう具体的な議論にまではまだ至っていないわけでございますし、私ども税制当局といたしましても、個別のサービス課税について具体的にまだ検討しておる段階ではございません。
  90. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 物品税で、非常に高級品でありながら物品税が免税になっているものにどういうものがあるのか。先般、本会議におきまして、我が党の鈴木委員は書画骨とう等を例として挙げたわけでございますが、そういうものがほかにはあるでしょうか。そうして、そういうものがなぜ免税となっておるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  91. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 物品税につきましては、現在の物品税考え方が主として奢侈品とか、あるいは高価な便益品、趣味娯楽品を課税対象にするという考え方に立っておるわけでございますが、にもかかわらず、世上いわゆる高級品と言われるような物品で物品税の課税対象になっていないのはいかにもアンバランスであるという議論があるわけでございまして、そういうときにいろいろ例示されますのは、ただいま委員が言われました書画骨とうのほかに、例えば高級な織物とか、あるいは桐製とか漆塗りの家具でございますね、こういったものがしばしば議論になるわけでございます。  高級織物でございますけれども、これはかって昭和二十四年に織物消費税が廃止されまして、その後二十九年度と三十四年度に現実に課税案として国会に提出されたわけでございますけれども、結局、成立を見るに至らなかったという事情がございます。そのときに高級織物についてこれを課税対象にすることについての問題点として挙げられたのが二つほどございまして、一つは、一品ごとには非常に高級品で高価なものではございますけれども、実際は非常に零細な幾つかの加工段階を経てその品物ができてくる、つまり、それをつくっているのがたくさんの零細な業者であるという点。それから例えば西陣等の織物になりますと、これはこの次に申し上げますものと同じでございますけれども、伝統的な製作技術を保存するというふうな問題も提起されまして、結局そのときにはこういうものは課税の対象とするには至らずというふうになった経緯がございます。  それから桐製とか漆塗りの家具でございますが、これらはいずれも伝統的な産品でございますし、先ほどの高級織物と似ておるわけでございますけれども、それぞれが零細な業者の一品製作的な品物であるということのほかに、その伝統技術の保存という観点もございまして、これは昭和四十一年度に課税が廃止されました。これはそのときまでは課税対象になっておったわけでございますけれども、四十一年度に課税が廃止されたとい う経緯がございます。  それから書画骨とうでございますが、これは昭和三十七年度に課税が廃止になっております。そのときの廃止の理由といたしましては、およそ美術品とか芸術家の創作品に課税するというのが文化政策上いいかどうかという議論があったのが一つと、もう一つは執行の問題といたしまして、書画骨とうのようなものは、個人間の相対取引が非常に多いものでございますから、なかなか捕捉が難しいというふうな問題もございます。課税上、手間がかるという問題もございます。そういったことを理由に廃止されたわけでございます。  それはそれなりの経緯がございまして現在の姿になっておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、一般論といたしまして、高級なそういった商品に対する課税というものについては、今後とも積極的な関心を持って検討の対象に取り上げていただかなければならならないというふうに、一般論としてはそういうふうに考えております。
  92. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それぞれ免税である理由はそれなりにわからないわけではないわけですけれども、ただ、そういう点、本当に公平かというと、不公平の感もあるわけでありまして、そういう意味でこれは大蔵省としては、こういう問題はもう今の現状で将来ともやむを得ないものであるのか、あるいは現在検討課題の中には入っているのかどうか、そのあたりはどうなんでしょうか。
  93. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 現時点におきまして、今申し上げました具体的な例で申し上げたものについて、具体的に差し迫って課税の方向で検討しておるという事情にないわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、こういったものも含めまして物品税の課税対象を、私どもは少なくとも物品税制というものを今後とも税制の中で持っていく限りにおいては、課税範囲の拡大について積極的に検討しなければならないと考えておりますので、やはり検討の課題としては取り上げていかなければならないという問題意識は持っております。
  94. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは税制調査会にも、いわゆる税というものが消費と資産ですか所得、そういうものに余り偏らないでバランスも必要であると、こういう趣旨があったと思うんでありますが、もしいわゆる消費段階での課税が非常に難しいようであるならば、私は前の委員会でもちょっとフランスの例を挙げたわけでありますが、そういう非常に高級品を持っている人に対する資産課税というか、税率はずっと低くなると思うんですけれども、そういうもので不公平を是正していく。こういうことも税調の方針からいって検討すべきではないかな。こういう点はどうでしょうか。
  95. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今の委員の御指摘の問題、これを考えるのはどういう形になりますか、消費税として私どもは考えていくべき問題であろうと考えておるわけでございます。  で、フランスの場合、確かに外形的な標準で課税をし、あるいは申告義務を課するということをやっておりますけれども、あれはフランスの場合の非常に特殊な税制上の沿革によるものでございまして、フランスの伝統的な税制というのは間接税的な物の考え方でずっと税制が発展してきたわけでございますけれども、そういった発想が所得課税の中にも入ってきたということでございます。フランスの外形標準の課税は、実は所得税の課税のあり方として特別のああいった制度を持っておるわけでございますが、我が国の場合、その公平というような観点も含めて、今委員がおっしゃいましたような問題を税制の中で消化していくとすれば、今後の消費税というものをどのように構築していくか、そういう中で検討していく問題であろうと考えております。
  96. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、先ほど、入場税、通行税につきまして、入場税が九十億、それから通行税が七百三十億ということでございますが、これは国全体の消費支出から見た場合には大体どれぐらいになるんですか、通行税の場合、入場税の場合。数字はありませんか。
  97. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 現在、非常にマクロの数字で恐縮でございますけれども、現在のGNPベースで最終消費支出の規模が大体二百兆円でございますから、その二百兆円と、今の税率で言いますとこれは一〇%でございますので、約八百億といたしまして八千億ぐらいの消費、サービス消費が、二百兆のうち八千億ぐらいの消費が対象になっておるというふうな感じになろうかと思います。
  98. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は今回のお酒の値上げは、これからお酒の値上げの質問をしたいわけですけれども、本来ならばもうちょっとほかから取るべきところが、なかなか政治的ないろんな諸般の情勢から結局お酒に非常にしわ寄せされた、こういうような感じがしてならないわけであります。そこで、まず最初にお酒の消費動向についてお尋ねをいたします。  私が理解をしておりますのは、清酒は減っておる、しょうちゅうやワインが伸びておる、しかも清酒の中でも特級、一級の減り方が大きくて二級等は多少ふえておると、こういうような状況と理解をしているわけでございますが、この理由はどういう点にあるとお考えでございますか。
  99. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 最近の酒類消費動向につきまして、課税数量から全体をまず御説明申し上げまして、その上で伸び悩みの原因につきまして御説明申し上げたいと思います。  まず、酒類全体でございますが、昭和四十七年度が五百七十万キロリッターでございまして、五十七年度が七百二十七万キロリッターでございます。十年間で一・三倍でございまして、年平均の伸び率は二・五%でございます。ところで、このうち最近の五年をとってみますと、昭和五十二年度が六百五十三万キロリッターでございましたものが五年間で一・一倍、年平均伸び率にいたしまして二・二%ということでございます。まあ五十年代後半が若干伸び悩みというような形になっているわけでございます。  次に、主要な酒類につきまして申し上げますと、清酒はこの十年間で約一割減でございます。したがいまして、年平均の伸び率はマイナスの一・〇と、こういう数字でございます。その中におきまして二級酒が若干伸びている、その分特級が減っている、一級はほぼ横ばいと、こういう感じでございます。  次に、しょうちゅうでございますが、これが最近非常に消費の動向著しいわけでございますが、十年間で一・四倍という数字になっているわけでございます。年平均の伸び率は三・六%でございます。特に最近のこの五年間におきましては、伸び率が六・八%というようなことでございまして、かなり急激な伸び。実数で申しまして、昭和四十七年度が二十二万キロリッターでございましたが、五十七年度は三十一万キロリッターということでございます。  次に、ビールでございますが、この十年間で約一・四倍、年平均三・三%の伸びでございます。  次に、ウイスキーにつきまして申し上げますと、この十年間で二・四倍にふえておりまして、年平均伸び率は九・〇%でございます。最近五年間の平均伸び率は四・三と、伸び率は高こうございますが、若干これも過去よりは、五十年代前半よりは数字を減らしていると、こういう感じでございます。  次に、この伸び悩みの原因についてお尋ねがございましたが、特にこの中で清酒伸び悩んでおりまして、その理由は何かということでございますが、なかなか明確なことは申し上げられないわけでございまして、いろいろなものを読みまして研究してまいりますと、結果でございますが、まず一つは食生活の洋風化ということの影響があろうかと思います。特に新しく飲酒人口になってまいります若い世代が、これは戦後生まれでございまして、食生活の洋風化ということが一つ挙げられます。  それから消費の高級化志向の影響でございまして、所得水準が上がってまいりますと、しゃれたものを飲みたいというような感じがあるようでご ざいまして、その点古い清酒と申しますものが相対的にイメージダウンを来しているということでございます。  それから三番目が生活の簡便化と申しますか、生活志向が変化してまいりまして、特に最近におきましては、家庭におきまして主婦がなかなかおかんをつけないというような傾向もあるようでございます。したがいまして、酒、さかなの用意の煩わしさがないところのビールとかウイスキー伸びると、こんな感じも言われておるようでございます。  それから、これと関係いたしますが、マイホーム志向の影響、食事のときには団らんが中心になりまして、どうしても御主人が酒を飲むというような雰囲気はだんだん減ってきているようなことが消費動向の調査でうかがわれております。  それから最後に、これは実は大きいと思うんでございますが、健康への関心の高まりでございまして、どうも清酒が健康によくない、甘い感じが翌日の頭に残るとか、あるいは場合によっては糖尿病によくないというような、これは間違った見解でございますが、これはアルコール健康医学協会の調査によりますと決してそうではないのでございまして、アルコールすべてに共通をしているということのようでありますが、そういったようなことが挙げられておりまして、全体として特に清酒伸びの鈍化が見られるということでございます。  なおまた、先般も参考人でございましたか、清酒業界の一部には原料米が高いということで、それに伴いますところの相対価格の不利を主張する向きもございますが、この点につきましては基準点をいつにとるかという問題がございます。最近五年間で見ますと、税率面におきましてかなりの配慮が行われております。今回御審議いただいております改正案につきましてもそういうことでございまして、これはそれほど大きな理由にならないのかなという感じを持っているわけでございます。  以上でございます。
  100. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 五十八年度は酒税の税収の見込みは大体予定どおりいきそうですか。
  101. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 現在判明いたしております税収、一月末の税収でございますが、対前年の同月比で四・二%の水準にございます。これは予算の見積もりは五%ぐらいでございます。したがいまして、その限りにおいて、現在の税収の水準というのは予算の見積もりにやや届かない水準で推移をしておるわけでございます。  今後どういう見込みに相なるかということでございますけれども、一月の税収は、実は蔵出しベースで言いますと、昨年の十一月の移出になるわけでございます。これは十一月の時点でビール、それからウイスキー値上げ後の仮需の反動がございまして、かなり蔵出し量が低調であったということでございますが、この基調はなお若干続くというふうに考えるといたしますと、酒税という一税目だけに限定いたしますと、五十八年度の税収、これは決算をしてみないとわからないわけでございますけれども、予算の水準に達するかどうかということについては予断を許さない状況にあるというふうに率直に申し上げた方がよろしいかと存じます。
  102. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 五十六年と五十七年は、五十六年がマイナス九・一、五十七年がマイナス九・七、当初予算と税収の実績をそのように私は理解しているわけで、それで正しいのかどうか、またこの二年かなり大幅に一割近い減収というのは誤差のうちには入らないと思うんですが、この原因はどう考えておりますか。
  103. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 五十六年度、五十七年度の予算の見積もりと決算の差につきましては、ただいま御指摘のとおりでございます。五十六年、五十七年、これは委員も御案内のとおり、五十六年度で当初予算の税収見積もりを決算では約三兆円以上下回ったわけでございます。五十七年度はさらに六兆円以上それを下回ったわけでございます。いずれの年も八割までは法人税所得税の減収でございますけれども、各間接税の税目につきましても、ほとんどの税目におきまして、ただいま御指摘のありました酒税も含めまして、当初の見積もり額に対して決算額がかなり下回ったわけでございます。  これの背景といたしましては、五十六年、五十七年、今から振り返ってみますると、第二次オイルショックの調整過程ということでございまして、経済活動が非常に低迷するという過程の中で所得が伸びない。したがって、消費一般の伸びも非常に鈍化するといいますか低調でございまして、その限りにおきまして、当初の予算で見積もりました酒類消費の鈍化の結果として当初予算の見積もりに対して決算が大きく下回ったと、こういう背景でございます。  なお、先ほどの関連で、五十八年度につきまして予算額に酒税税収額が達するのに予断を許さないというふうに私、申し上げましたけれども、それは計数のオーダーからいきますと、全体の予算額の一%にも満たないような誤差の範囲ぐらいの見込みでございますので、五十六年とか五十七年のような大きな減収というふうな事態ではないということだけは申し添えたいと思います。
  104. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 五十九年度は自信はございますんですか。増収は、値上げをして大体予定どおりふえると、この点はどうですか。
  105. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 五十九年度の酒税の税収でございますが、これは酒類ごと消費課税数量の見積もりを立てまして積み上げの計算をやっておるわけでございます。例えば清酒等につきましては、最近の消費の動向等を勘案いたしまして、清酒総量では五十八年度の実績見込みをやや下回る水準で積算をいたしております。なかんずくその中でも特級それから一級、特に特級酒についてはかなりの数量減を見込んでおります。ビールにつきましては、これは税収額の五割以上を占める非常に大きなウエートを占めておるわけでございますが、これにつきましては、先ほども説明申し上げましたように、五十三年、五十六年のビール税率引き上げ、そのときの価格への上昇率が大体一〇%を超えておりました。今回は九%弱ということでございますが、そのときにおきましても増税後おおむね年間二%課税数量がふえておりますので、今回もビールにつきまして二%の伸びを見込んでおるということでございます。これはよほど天候に異変がない限りそう無理な見込みではないというふうに考えておりまして、各酒類についてそういった積み上げ計算をいたしておりますので、私どもといたしましては、増税後、増税をお願いいたしました後、ただいまの五十九年度の酒税の見積もり額、現時点でこれを大幅に下回るとか、あるいはこれを変更するというような事情にはないと考えております。
  106. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、この国税収入に占める酒税割合は、我が国の場合は今回の値上げでたしか六・一%になる。これは先進国では世界最高ですね。それから衆議院大蔵委員会の論議の中でも、一本例えば六百三十三ミリリットル、ビールの大瓶当たりの税金にしても、これはある一つの試算として百二十六円六十六銭だと。ところが、その次の英国が五十七円、米国が十八円、西ドイツは八円、フランスは二円と、こういうように我が国が飛び離れて酒税、酒に対する税金が重いし、財政の中で酒の占める割合が非常に高い。こういう事実は認めますか。
  107. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 我が国酒税の国税収入に占めます割合が先進諸外国のそれと比較いたしまして必ずしも低い水準にはないということ、それから酒類別に税負担水準はいろいろございますけれども、例えばビールにつきましては先進諸国の中で高い水準にあるといったようなことは、御指摘のとおりであると存じます。  この酒税税負担をどのように位置づけるのか、その国の税体系の中でどういうふうに酒税の税収なり税負担を設定するのかというのは、これはその国のさまざまな事情によって影響されるところでございます。一般的に申し上げまして、酒税は特殊な嗜好品といいますか、致酔飲料とし て、いわば財政物資として税負担を求めるという側面と、消費一般に対して税負担を求めるという側面と、二つあるわけでございます。これも必ずそういった傾向になるということではございませんけれども、端的に言いまして、例えば西欧諸国のように付加価値税という一般的な消費体系を持っております国では、各商品について相応の税負担を求めますから、ある財源を確保する、同じ財源を確保するとした場合に、そういう一般的な消費税の体系を持っている国と、我が国のようにそういうものを持たない国との場合では、他の物品との関係におきまして酒税税負担が相対的に高くなる傾向を持っておるということは、これは否定できないのではないかと私どもは考えておるわけでございます。  現実に個人消費に占めます酒税割合を見ましても、我が国の場合、これは五十七年の計数でございますが、諸外国に比べまして必ずしも低くないわけでございます。それは我が国の場合は、国税収入に占めます酒税のウエートが高いということからもわかりますように、我が国の税体系あるいは財政の仕組みの中では、酒税に相対的に高い税負担を求めておるという形になっておることは否定できないと思います。
  108. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで今回は、減税に見合う形でその財源として法人税あるいは酒税物品税、こういうものが上げられたわけでございますが、特に間接税というのは逆進性がある。特にその中でもお酒というのは逆進性が強いんじゃないかと思うんですけれどもね。収入の少ない人も酒の飲み方においては、むしろ余計飲む場合もあるかもしれない。ただ、特級とか、クラスに違いあるかもしれませんけれどもね。そういう意味で、大蔵省は第一分位の人の場合は一・八%、第五分位のときには一・二%、平均一・五%が消費の中でお酒が占める割合だと、こういうように発表していると思うんですけれども、極端に言えば、課税最低限以下の人たちは減税の恩恵はなくて、お酒の増税の恩恵ばかり受けるわけですよね。そういう意味でお酒の増税というものは逆進性を強める税である。そういう点はお認めになりますか。
  109. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 一般的な傾向としては御指摘のとおりだと思います。これは毎年私ども国会に御提出申し上げておるわけでございますが、家計調査による各税目の負担状況、これは十分位に分解いたしまして御提出申し上げておるわけでございますけれども、その中で、間接諸税の中でも逆進性と申しますか、低分位の所得階層負担率が一番大きくあらわれますのは、何といってもたばこでございます。たばこでございますと、第一分位と第十分位の間で負担率で約四倍強の差がございます。その次が酒税でございまして、酒税では第一分位と第十分位の間の格差が大体負担率で二倍強でございます。その意味で、酒税がいわゆる逆進的な傾向を持った税であるということは否定できないと思います。  ただ、御理解を賜らなければならないのは、これは釈迦に説法になるわけでございますけれども、税体系というのは各種の税目の組み合わせでできておりまして、特に税負担の逆進性とか累進性、あるいは所得再分配の議論をします場合には、全部の税目を重ね合わせたところでトータルとしてどうなっているのかということでございまして、これまた我が国の顕著な特徴といたしまして、我が国所得税は先進国の中でも非常に際立った累進構造を持っておりますから、これを重ね合わせますと、先ほども申しました第一分位と第十分位の税負担の差は、大体第一分位は三倍ぐらいの負担水準になっておりますから、その意味ではトータルとしては累進構造を持っておるし、所得再分配の機能を税制全体としては果たしておる。したがいまして、酒税なら酒税という個々の税目だけを取り上げまして逆進、累進を議論するのはやや問題があるというふうに考えておるわけでございます。
  110. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、お酒というのはそういう逆進性が非常に強いわけで、そういう点から言えば、例えば通行税、まあ通行に税金をかけろということを言っておるわけではございませんが、例えば通行するという点ではかなりその人の所得にも関係しているのじゃないかと思いますしね。そういう意味で今後、酒税というのは一番税も取りやすいし、徴税の費用も非常に少ないからといって、余りお酒の税金ばかり上げるということは、税全体として非常にひずみが出てくるんじゃないか。そういう意味でも、余り酒の税金はこれ以上上げないようにしてもらった方がいいんじゃないかと思うんですが、その点はどうですか。
  111. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 我が国酒税が先進諸外国等とも比較いたしましても相対的に高い負担を税体系の中でお願いしておるということは否定できないと思います。現在の負担水準をマクロ的に見ますると、昭和三十七年当時の負担に比べますと、まだそこまでには達しておりませんけれども、今回の税負担酒税引き上げをお認め願いますと、恐らく昭和四十年代の半ばぐらいの水準に戻させていただく結果になると思います。将来、酒税について現行の負担をこれ以上引き上げるべきではない、あるいは引き上げないということを申し上げられる状況にはございません。やはり今後の財政状況等も考えなければならないわけでございますけれども、これは先ほど申し上げましたように、我が国のように一般的な消費税の体系を持たない国では、どうしても酒税に対する相対的な税負担水準は高くならざるを得ないという問題があることは事実でございますので、そういった点も含めまして、余りゆがんだ税負担の姿にならないように、消費税全体をどう将来構築していくかという問題等も含めまして、この酒税税負担の将来のあり方というものを考えなければならないというふうに思うわけでございます。
  112. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、今回の値上げにつきまして、これは一昨年十月七日に酒税問題懇談会がいろいろ検討した結果を発表しておりますし、また今回の値上げに対する税制調査会報告書を読みましても、いわゆる高級酒、大衆酒といった類の分類の意味が薄れ、今お酒の種類間、あるいは紋別間の税負担格差が拡大していることに触れて、そのために下級のお酒へのシフトが非常に起こっておる、それが税収の不安定にもつながっておるわけで、そういう点から、酒税問題懇談会あるいは今度の税制調査会は、その格差縮小する方向で検討すべきだと。  今回、大蔵省としても格差を是正するために料率の改定を行ったと、このように言っておるわけです。ところがいろいろこれを見てみますと、私は格差を是正するということは一番税率の高いビールとかあるいはウイスキー特級とか清酒特級とか、そういうところの税率を上げるのをやめて、そうしてもっと下級の方を上げてこの差が少なくなるのかなと思っておったわけであります。ところが、現実に小売価格に占める酒税割合というものを見てみますと、今までよりはさらに拡大していますね、清酒の場合にいたしましても、ウイスキー特級と二級との間にいたしましても。これは結局、看板と中身が違うんじゃないでしょうか。
  113. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今回お願いしております税負担引き上げに当たりまして、酒類間それから級別間税負担格差縮小をする、縮小すべきであるという税制調査会なり酒税問題懇談会の示されました方向に沿って、私どもこの改定案の作業をさせていただいているわけでございます。  それはただいま委員の御指摘にあったわけでございますけれども、例えばビール税負担引き上げ幅が一九・五%でございます。しょうちゅうの甲類は三四・四%、乙類でも二四・四%ということでございまして、税負担割合の低い酒類につきまして引き上げ幅を大きくしておるということでございまして、その限りにおいては従来の税負担格差が少なくとも拡大はしていない、縮小方向に向かっておるということは、これは事実であろうと思うわけでございます。ただし、その縮小の幅がはかばかしくないという御指摘はあろうと」思います。  それからもう一つ清酒の一級、二級とを比べていただきますと、清酒の場合は原料を食管制度のもとで比較的高い国産米で手当てしなければならないといったような事情も考慮いたしまして、清酒だけにつきましては引き上げ幅を低く抑えることにいたしましたので、その限りで清酒の特に一級、二級とビール負担につきましては、むしろ負担格差が拡大している傾向にあることは事実でございます。ただ、清酒という特殊事情の問題であるということも、これまた御理解願いたいと思うわけでございます。  いずれにいたしましても、基本的には、酒類間、級別間負担格差縮小するということで今回の税負担引き上げはお願いしているわけでございますが、これは三十七年に現在の酒税負担の基本的な枠組みができ上がりましてから今日まで、むしろ従来、下級酒あるいは大衆酒と言われました税負担の低い酒類につきまして、税負担引き上げ縮小するかあるいは見送るかという作業をずっと累積してきたものでございますから、この今日の格差を一挙に縮小することにつきましては、単年度限りの税制改正ではなかなか難しい問題でございます。したがいまして、今後また税負担水準見直しをする機会がこれ以降起こってまいることは当然予想されるわけでございますが、私どもは将来ともこの方向の努力を重ねながら、各酒類間の税負担格差縮小という問題を中長期的な観点から達成していきたいということでございます。
  114. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それからお酒のいわゆる級別区分の問題ですが、清酒の場合は特級、一級、二級、このように分かれているわけですね。これが、先般もこの委員会でお話がありましたように、客観的な基準は何にもない。いわゆる少数の鑑定官の判断によって特級、一級、二級が決められていく。これはどういう意味を持つとお考えでございますか。
  115. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 酒税法上の取り扱いとしては、清酒につきましては、級別区分は官能審査をもちまして決定をするということになっているわけでございます。  ただいま先生からのお尋ねは、少数の鑑定官による客観的な基準によらざるところの判定、こういうことでございますが、実務面でもう少し申し上げますと、この級別審査を実施いたしております地方酒類審議会と申しますのは全国に十一ございまして、その中には、御指摘の私どもの鑑定官の職員が入っておりますが、そのほかに、これは三名でございまして、当該地域の農芸化学の大学の先生、あるいは県等の技術指導機関の職員、さらには酒類関係業者、あるいは民間の有識者という、かなり公正な判定能力を持った方々を委員としてお迎えしておるわけでございます。  また、この清酒の格付につきまして、化学的、物理的にこれを客観的に機械でもって決めるというのはなかなか難しゅうございまして、現在私どもの許される限りでの最も公平な判定だろうというふうに執行の機関といたしましては考えておるわけでございます。立法論としていろいろ問題があろうかと思いますが、執行におきましては、現時点での許された最高の手段をもって審査をさしていただいているというふうに考えているわけでございます。
  116. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 二級でも一万円以上もする、それでも売れるお酒もあるわけですね、一方では。そういう中で、じゃ特級、一級、二級、こうなりますと、特級が非常によくて、その次が一級で、その次が二級という、そういう格付になりますね、お酒の。  ただ一方、やっぱり国民の嗜好というのは、先ほど言ったように、特級はどんどん減ってきておるわけです。お酒も減ってきておる。そういう意味で、お酒に対する嗜好というものも変わってきておる。例えば純水酒が本当のお酒だと言うけれども、しかし今の若い人から見れば、純水酒よりもある程度アルコールを混ぜた方がいいんだ、そういうことで、本当に純粋な酒よりも酒でない酒の方が嗜好に合うという、そういう問題もあるわけで、そういうものの中で政府がランクづけをする。それにはあくまで一つの基準、例えばアルコールの含有量がどうであるとか、あるいはどういう種類のアルコールを混ぜているとか、あるいはどこの酒米を使っているとか、むしろ消費者に対してはそのお酒の内容がどういうものであるかということを正確に知らせることが大事であって、今の特級、一級、二級というのが、国民全体の嗜好から見れば、ごく一部を代表した人によって決められるというやり方は、私は非常によくないんじゃないか。これは確かに酒税問題懇談会においても一つの検討課題にはなってきているし、三年前の値上げのときにも、当委員会においても問題になったことなんですけれども、こういう点もうちょっと改革をしていかないと、国税庁のそういう古い感覚が逆にお酒の消費を停滞させるおそれがあるんじゃないか、こういう気がするんですけれどもね。だから、ある程度こういうものを改革しないと、余り意味がないんじゃないかと思うんですがね、今の基準は。その点はどうでしょうか。
  117. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 酒類の級別制度、なかんずく清酒の級別制度については、さまざまな議論、それからさまざまな問題が提起されておることは御指摘のとおりでございます。酒税問題懇談会あるいは昨年十一月の税制調査会答申にもこの問題は触れられておるわけでございます。  この問題の難しさ、いろいろあるわけでございますが、この清酒、特に清酒の級別制度は既に四十年の歴史を持っておるわけでございましてそれなり我が国清酒消費なりあるいは生産の中で定着した制度になっておるわけでございます。つまり級別というものが消費者の選択の基準にもなっておりますし、同時にそれが清酒業界の分野調整と申しますか、業界の生産構造にも根強く定着しておるという問題があるわけでございます。  元来、考えてみますると、これは委員が御指摘のとおり、級別というのは酒類の品質の高低を意味する指標でもございますし、だからこそそれの裏打ちとして級別ごとの税率水準もかなりの格差が設けられておるわけでございます。現在問題になっておりますのは、特に清酒の級別が、先ほど国税庁から御説明申し上げましたように、それなりの制度的な沿革があって、現在のような任意出品制と官能審査によって格付けるというのは、それなりの過去の長い積み重ねの中ででき上がってきたものでございますし、現行制度の中で国税庁としてはこの級別制度について適正な執行を心がけておるわけでございますけれども、反面、この官能審査といったものよりももう少し客観的な基準を設けるべきである、級別の区分を明確化すべきであるという議論も実はあるわけでございます。  酒税問題懇談会のそういった問題の御提言も受けまして、その後国税庁なり私ども関係業界ともいろいろ勉強してまいったわけでございますけれども、現在の級別区分をまずそもそも今後とも維持していく必要があるのかといった問題、あるいは仮に級別を設けるとした場合に、それが二段階であっていいのか、三段階の方がいいのかといったような問題、それから今委員がおっしゃいましたように、客観的な基準といたしまして、例えば原料米の使用の度合いとか、あるいは米の精白の度合いとか、あるいはアルコール添加の度合いとか、そういったものによって格付といいますか、客観的な基準を設けるべきであるというふうな議論もいろいろしてみたわけでございますけれども酒類の、特に清酒のようなこういう微妙な嗜好品になりますと、そういう一つの物理的な基準で品質を決定づけるというものはなかなか難しいということで、現在のところ、はかばかしい結論が得られていない状況にあるわけでございます。  また、級別と申しますか、品質に応じた税負担ということを求めるという観点からいっても、現在のような一級酒、二級酒につきましては、従価税の方式を持っていないわけでもございまして、そういった課税方式を今後とも踏襲していいのか、さまざまな問題があるわけでございまして、 私どもは常日ごろ国税庁とも十分話し合いをしながら、問題点は十分念頭に置いて今後この問題に対処していかなければならないと考えているわけでございまして、現行の級別制度、特に清酒の紋別制度なり課税方式は、このまま将来ともこれを墨守していくというふうな考えてこの問題に対応しているわけではないわけでございます。
  118. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 消費者の好みというのは人によっていろいろあると思うんです。だからそういう意味で、むしろそういう嗜好に合わせて、特級、一級じゃなしに、A分類、B分類、C分類、辛口、甘口、中口とか、そういうような種類にして、あと税率従価税というか、一万円もするのにはそれ相応の税金をかけていただくという方が非常にいいんじゃないか。これは今後ひとつぜひ検討していただきたいと思います。  それで、今回特に酒造業界は、私の理解では、もう大半が赤字もしくは税引き前の利益が五十万円未満でありまして、ビールウイスキー等の大きな資本に比べれば非常に小さいわけでございますが、今後の値上げ等が経営状態にどういう影響を及ぼすのか、これを非常に心配しておるわけでございますが、お伺いいたします。
  119. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) お答え申し上げます。  清酒メーカーその他、特に清酒メーカーの経済的な困窮の問題につきましては、ただいま先生御指摘のとおりでございまして、そういった事情もございまして、今回の増税案の中におきましては、十分に勘案された内容になっているわけでございます。そういう中におきまして、特に二級酒を中心に製造いたしております中小メーカーにつきましては、今回の税率のアップの幅が特級、一級よりは低いということによりまして、それなりにかなりの競争力がついたものというふうに理解をしているわけでございます。しかしながら、基本的にはかなり厳しい状況にございますので、いろいろと産業政策的な措置を今後講じていく必要があるというふうに考えております。
  120. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今回は転廃給付金事業をやる、それから近代化事業を進める、こういうことが言われておるわけでありますが、今までの第一次、第二次、第三次の近代化事業等を見ましても、現在の制度で果たして効果があるのかどうかという、そういう点を私は非常に憂慮するわけでございますが、今回の転廃給付金事業は第三次と聞いておるわけでございますが、大体どの程度合併等が進むのか、これはどうなんですか。
  121. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) このたび第四次の近代化が実施される中におきまして、第三次の転廃給付金事業を開始すべく、ただいま清酒業安定法の改正の御審議をお願いを申し上げているわけでございます。この転廃給付金事業の内容といたしましては、五十九年の七月一日から六十四年の十一月三十日までの間に清酒製造業を廃止するものに対しまして転廃給付金を行うということを内容といたとしておりまして、その給付金の原資につきましては、二分の一を清酒業安定法に基づいて行われております日本酒造組合中央会の信用保証事業の運用益から、残りの二分の一を清酒製造業者納付金によって調達をする、こういう内容で御審議をいただいておるわけでございます。  そこで、この転廃給付金の基本的考え方でございますが、決して今後とも生き残っていこうという清酒製造業者を整理するというものではございませんで、意欲と能力のあります業者につきましては十分に近代化の手を差し伸べておりまして、にもかかわらずどうしても経営が立ち行かないという方につきまして、やむなくこの清酒業界を去っていくという方に対しまして所定額の給付金を行う、こういう思想でございます。  その給付金を出します趣旨は、残存業者が、こういう需給の非常に緩んだ時期におきまして転廃が出ることによりまして、例えば投げ売りが起こるとか、そういったことによりますところの市場の軟化を防ぐために、ある程度やはり資金が要るわけでございます。それからまた転廃業者が滑らかに新しい事業を行います場合に、何らかのお役に立つということでそういう給付を考えておるわけでございます。  ところで、どのくらいの転廃が予想されるかということでございますが、前回の第二次の転廃給付金の際におきましては、四百六の業者の転廃を見たわけでございます。それがどのぐらいになるかということでございますが、これはあくまで任意に転廃する方に対しまして給付するわけでございますので、どうなりますか非常に難しいのでございますけれども、前回におきましては、ちょうどオイルショックの直後でございまして、かなり経済状態が厳しい状況にございまして、清酒業界につきましてはその中で見通しが難しいということでございまして、比較的多い方が転廃をしたのではないかなというようなことが考えられるわけでございます。  そこで今回はどうかということでございますが、そういう事情はございませんものの、なかなかやはり難しい状況にあるということでございまして、仮に前回の転廃率、これは一二%でございましたが、これを適用いたしますと、約三百者程度、こういう数字が出るわけでございます。そういったことでいろいろ予算措置その他の計数をはじいておりますが、これはあくまでも見込み数字でございます。  なお、法案を成立させていただきました暁におきましては、この点につきましては、今後の業界でどれほどの金額を負担していただくかという問題とも関連をいたしますものですから、そのところにおきましてさらに詰めていくべき問題でございます。
  122. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、お酒の業界は、いろいろ原料がお米であり、ほかのビールウイスキー等に比べればいろんな条件は悪いわけでありますが、しかし、だからといって、業界としてもそれだけの努力をしていかなければいけない。例えばおしょうゆの業界等でもかなり共同仕入れとか、そういうように共同化をしコストを下げる、そして大手に対抗していくというところもございますし、そういう点では酒造業界というのはややその対応がおくれておる、そういうような気がするわけでございます。  そういう意味で、今のような厳しい財政情勢の中ではいろいろな助成にしても限界があるわけでございまして、それはもちろん力を入れていただかなければいかぬわけでございますが、業界としてもそういう体質改善ができるようにひとつ積極的にバックアップをしていただきたい、その点を強く要望しておきます。  これは、きょうは大臣がおりませんので、次官にひとつお願いいたします。
  123. 井上裕

    政府委員(井上裕君) 先生の仰せのとおりです。大臣も参ることですが、努力したいと思います。
  124. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから売掛代金が貸し倒れした場合の酒税相当額の還付の要望があります。石油ガス税の場合は還付が認められているのに、酒税の場合は認められないのは不公平であるというような、こういう要望があるわけでございます。私は筋が通っておると思うんですが、その点は検討の用意はあるかどうか。
  125. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 酒類の売掛代金が貸し倒れになった場合に、酒税相当額を還付してほしいという議論が従来からあるわけでございます。ただいまおっしゃいましたように、石油ガス税とか、あるいは地方の料理飲食税等にそういうふうな例があるものでございますから、そういうことがよく引用されることは私どもは承知しております。  ただ、この問題につきましては、御承知のとおり酒税は、酒類が製造場から移出されるとき、あるいは輸入酒でございますと、保税地域から引き取りますときに、酒税が課税されるわけでございます。その課税された場合の酒税相当分は、当然その酒類が流通段階に入っていくわけでございますが、販売代金として回収されるということでございます。したがって、基本的な考え方としては、販売代金の回収あるいは貸し倒れの処理というのは、それぞれの企業の責任において行われるべき ものでございまして、これを税の立場から、特に間接税でございますので、それを間接税の還付という形で対応すべきものではないというのが私ども考え方でございます。  特に御留意願いたいのは、酒税の場合には、そういったことも考慮に入れて、制度的には製造免許から販売免許に至ります手厚い免許制度でもってそれが裏打ちされておるわけでございます。例えば地方の遊興飲食税等については、貸し倒れの場合の還付等の制度がありますけれども、それは一般の料理飲食店の場合と酒税法におきます酒類の製造業者なり、それから流通段階をも網羅いたします。そういう免許制度でもってその酒税の保全が図られておるという、そういう制度的な背景をお考え願いますと、この酒税につきまして、その貸し倒れ分を還付するというのはなかなか私どもとしてこういう考え方は容認できないというのが私どもの立場でございます。
  126. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 なかなかいい答弁ではなくて非常に残念でございます。  次に、前回の値上げのときに、歩みりんの問題について質問いたしました。御存じのように前回はみりんも値上げをされまして、そうしてそのみりんがほとんどもう九九%が、これはいわゆる調味料に使われるわけでございまして、一方ではみりん風というものができ、売られている。ところが、本来このみりんを扱うものは、一つは免許のないところでは売れない、それから酒税がかかっておるだけ高くてなかなか売れない。そういう意味で、この五十一年から五十七年の伸び率で見ましても、みりんは四・八%ですけれども、みりん類似調味料は一四・九%と、こういうことで、調味料に使われるみりんの酒税はもう廃止すべきだと、こういう主張をしたわけですけれども、それは廃止はしてないわけで、これはやむを得ないと思うんです。  そのときに、スーパーとか、そういうところでもこのいわゆる歩みりんが売れるように、例えば限定的な販売免許を検討すると、そういうようなお話だったんですが、これはどうなんですか、お酒の販売でなしに、みりんだけの販売を認める、そういう限定免許というのはもうできておるんでしょうか。
  127. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 五十六年三月十九日の当委員会におきまして、委員からの御質疑に答えまして、国税庁の政府委員から、みりんの限定免許の形でみりんの販路の拡大につきまして検討さしていただくということを御答弁申し上げたのは事実でございます。その後、当庁といたしましては、鋭意その方向で検討したわけでございますが、まことに恐縮でございますが、今日この時点でよいお答えをできる段階になっていないわけでございます。  その理由といたしましては、現在の十七万店ございます酒販店、しかもこの大部分が零細でございまして、その経営との関係の問題があるわけでございます。仮に、みりんは酒類でございますが、特にスーパーにおきまして特別に酒ではあるがそれを売ってよろしいと、こういうようなことになりますと、そういう事情にない状況におきましても、かなりのみりん風の、みりん以外のものが伸びておりまして、ただいま委員の御指摘数字伸びております中におきまして、さらに小売店、販売店経由で売られますところのみりんの売れ行きが落ちるというような危惧感が一つございましたことと、さらにまた酒販店よりも力のあります大手の食材業者等が仮にみりんを扱うことになりますと、業務用のみりんというものを扱っております酒販店にとりましてのまた死活問題というようなこともあるようでございます。  そういった状況でございますが、当委員会におきますところの政府委員答弁もございますので、一つ一つそういった問題点を解決しながら努力していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  128. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあ余り説得力のある説明ではないわけでございます。いろいろ反対もあるかもしれませんけれども、物事には筋論というのがあると思うんですよね。また一方では消費者ということも考えていかにゃいけないと思いますし、そういう意味で、これはもうちゃんと三年前の委員会で検討するということを言っておるわけですから、もうちょっとひとつ前向きに――我々国会で論議したことを誠実に努力していただかないと、ここで時間を費やす意味はないと思いますので、これはぜひ前向きに検討していただきたいと思うんです。どうしてもそれはこうこうの理由でだめだというんであれば、それはやむを得ないことだと思うんですけれどもね。この点を一つ要望をしておきます。  それから特に酒販の免許制度の問題ですね。これは業界は強く要望いたしております。また酒税の確保という点から見ても、この免許制度というものを大蔵当局も支持してきたこともよくわかるわけでございますが、臨調路線というような中で、ただその免許制度の維持を叫んでいるだけではこれはいけない。我々消費者の動向に対応し、酒販店といたしましても、その免許制度を維持するならば、それなりの努力をしていかないと、ある意味では消費者の協力も得なければ、僕はこの免許制度の維持はできないんじゃないかと思うんですがね。そういう意味で、国税庁とし、また大蔵省として今後酒販店等に対する指導はどういう心構えで臨んでいくのか、これをお伺いをしておきます。
  129. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) ただいま委員指摘のとおり、免許制度は酒税保全のために酒税法上規定されている制度でございます。しかしながら、免許制度の運用に当たりましては、それが多数の国民の消費者の皆様に非常に関連の深い酒販店でございますので、消費者の便宜といいますことにつきましても十分に考えていかなきゃならないというふうに考えております。  それからもう一つ、ただいま委員指摘のとおり、酒販店の免許業者としての社会的責任の自覚といいますか、致酔飲料を扱いますがゆえに、例えば青少年の健全育成問題あるいは交通安全問題、いろいろその責任の中において果たすべき分野があろうかと思います。そういうことにつきまして、単に酒税保全という見地ではなしに、広い意味で社会的責任を全うしていただくように、そういったことにつきましては、私ども重々小売酒販組合中央会を通じまして御指導申し上げておりますが、当中央会におきましても十分に自覚をしておりまして、その内部的ないろいろな会議等におきましても、その徹底を図っているというような状況でございます。ただいま委員から御指摘ございましたので、さらに一層、私どもその方向で鋭意努力さしていただきたいと考えております。おかげさまで先般の臨調におきましても、酒販免許制度の存在意義というものをお認めいただいたわけでございます。その中におきまして、消費者の便宜というものを十分に考えるようにということでございますので、ただいまの先生の御質疑をさらにまた心に刻みまして、十分に努力してまいりたいと考えております。
  130. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大蔵当局の方。
  131. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今、国税庁から御説明申し上げましたように、販売業の免許制度の制度本来の趣旨、これは酒税の保全のほかに致酔飲料という特殊な嗜好品でございますので、これは諸外国の制度を見ましても、過度の消費を抑制する等の観点から、何らかの格好で社会的な管理のもとに置くという基本的な考え方に出ておる制度でございます。したがいまして、私どもは今後とも酒類の販売業の免許制度を堅持するという考え方で臨ませていただきたいわけでございますけれども、ただいま委員のおっしゃいましたような観点も含めまして、執行の場面におきまして適切な指導にも配慮しながら、この制度を今後とも適切な姿で維持させていただきたいと考えておるわけでございます。
  132. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 次に、石油税の問題についてお尋ねをしたいと思います。  余り時間がありませんので、答弁の方もひとつ簡潔にお願いしたいと思うんでございます。  今回石油の輸入量減、それから価格の低下、そういう点から石油税の収入が減り、したがって石特会計、石油の探鉱あるいはいろいろな備蓄、研究等の資金が足りない、こういうことで今回値上げを行ったように理解をしておるわけでございますが、五十四年、五十五年と石油の価格が高騰して大幅の増収のときには税率を下げるというような処置をとらないで、下がったときにだけ値上げをする、税率上げる、こういう点はいかがなものか。これに対してどう考えますか。  それから将来、これはこういうことはあっちゃいけないんですけれども、先般アメリカの報告等ではホルムズ海峡が閉鎖されると油が上がるとか、高騰するとか、こういうような場合には税率を引き下げるということを考えているのかどうか。その点はどうでしょうか。
  133. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 確かに先生御指摘のとおり、五十四年、五十五年、第二次オイルショックで石油価格の高騰ということがございました。ところで、この石油税は、石特会計法に基づきまして、当該年度の石油税の収入予算額とそれ以前の一般会計にたまっております繰入未済額、この合計から予算におきまして石油及び石油代替対策に必要な金額が石特会計に繰り入れられるということになっております。そういうふうに考えますと、この毎年度の石油税収に相当する金額、これは結局、私どもは石油対策あるいは石油代替対策にいずれ充当されるというふうに考えておりますし、そういうことで今後運用されていかれるというふうに理解しております。  ところが、今回の石油の価格の値下げに伴います石油財源の不足、これはかなり中期的にも続くというふうに考えておりますけれども、私どもはエネルギー対策というのは、一方において中長期的に計画的、着実に進まなきゃいかぬ。そういうエネルギー対策に対しまして、ここにございますような繰入未済額の最大限の取り崩し、それから先ほどからいろいろ御指摘もいただきましたようなエネルギー対策そのものの最大限の歳出の節減努力、そういうものを踏まえた上で、なお不足すると見込まれる財源不足分につきまして必要最小限の財源措置として今回の石油税の増税をお願いしているところでございます。そういう意味で、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。  で、将来、原油価格が大幅に高騰した場合はどうかという点でございますけれども、この予期せぬ変動というのに対してどういうふうに考えるか。お答えするのが大変難しい問題でございますが、一般論として申し上げますと、そのときの原油の価格あるいは為替レートの動向、それから石特会計の歳出そのものの見通し、この辺を慎重に見きわめまして対処していくことになるだろうと、そういうふうに考えております。
  134. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほど穐山委員の質問でもありましたように、石油の需給の見通しが、エネルギー調査会でもかなり下方修正されたわけですね。そういう点で政府は六十三年三千万キロリットルの備蓄、それは当時と比べれば――私の理解では、IEAの勧告等で、国家備蓄が三十日、民間備蓄九十日、こういう方向だと思うんですがね。だから、その当時では三千万キロリットルが三十日であったにしても、それは今のような状況になればもっと減らしてもいいんじゃないか。この点が一つです。  それと、今民間の石油精製会社等にもかなりタンクが余っておるわけですね。この備蓄の費用というのは、そういう今ある民間のタンクを使うのが一番安い。その次に新しくつくる。一番高いのが、あれでしょう、タンカー備蓄でしょう。そういう点考えれば、私はもっと節約して、最も最小のコストで備蓄ができるような態勢を考えるべきではないか。そういう意味で、備蓄基地の建設等はもうちょっと先へ延ばすなりすべきではないか。この点についての御答弁を求めます。  それと、備蓄の費用というのは、タンカー備蓄と、新しくつくった場合と、それから民間を活用した場合、大体単価はどのぐらいになるんですか。この三つについて御答弁を求めます。もう時間がないから簡単に。
  135. 川崎弘

    政府委員(川崎弘君) 備蓄につきましては、確かに需給緩和期あるいは石油の輸入量が減っているから備蓄水準を下げてもいいんじゃないかという御指摘もございましたが、これまでもいろいろ御説明申し上げておりますように、日本のエネルギー、特に石油の供給構造が持っておりますもろさからいたしまして、私どもとしては、できるだけヨーロッパや他の先進諸国が持っております百六十七日という水準、これに近づけるべく努力をしたいということでございまして、三千万キロリッターの国家備蓄、これはぜひとも維持達成したいというふうに考えております。ただ、先生御指摘のように、その備蓄のコストをできるだけ安く上げるように、我々といたしましても国家備蓄の建設を二年間後倒しする、後におくらせるということ、あるいは御指摘のタンカー備蓄は総体的にコストが高いものですからそれを早期に繰り上げて陸揚げする、そういった努力を行いまして、なるべく備蓄のコストを下げるようにいたしたいと思います。  大体、値段でございますが、タンカー備蓄が、五十八年の数字でございますが、約六千三百円。これはキロリッター当たりでございます。民間備蓄が、これは民間タンクを活用した場合でございますが、四千八百円ほど。それから国家備蓄は、今できている施設について計算したものでございますが、約四千円。こういうふうな計算になっております。
  136. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今あるやつは四千円でも、これからつくるやつは高くなるわけですし、石油業界において現在一千から千五百万キロリットルも余剰タンクがあるわけでありますし、そういう点をある程度活用することがまた石油価格の安定にも役立っていくんじゃないか。そういう点をひとつよく検討していただいて、石油税収の増加に、石油税による資金というものを効率的にひとつ使うようにさらに努力をしていただきたい。このことを要望いたします。そして大蔵省としてもそういう点にもひとつ大いに目を光らして頑張っていただきたい、このことを要望しておきます。それについての次官の御答弁を求めて質問を終わります。
  137. 井上裕

    政府委員(井上裕君) 先ほどは失礼いたしました。先ほどの問題は清酒業者の問題、先生仰せのとおり行いたい、このように考えます。  ただいまの御質問でございますが、通産省の方からお答えありましたが、私どもといたしましても、そのような方向に進みたい、このように考えます。
  138. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 きょうは酒税の問題にしぼって質問いたします。  酒税引き上げの国民生活への影響を大蔵省が少し軽く見ているんじゃないかということをまず指摘をせざるを得ません。今回の「酒税問題懇談会における検討の概要」、これを見てみますと、酒税引き上げの理由が幾つかありますが、一つ酒類全体として見れば、税負担水準は長期的には低下している、二番目には、国税収入に占める酒税の地位低下という点、さらにはこれも先ほど議論がありました消費者の嗜好多様化、高級酒・大衆酒の分類の意味合いが薄れる傾向というようなことだと思うんです。  しかし、少なくともこの資料を見る限りは、税負担水準が長期的に低下しているというんですが、たしか戦前もしくは戦後の国税収入に占める酒税割合が一七%か一八%、それに比較すればだんだん減ってまいりまして、昭和五十五年で五%、しかしその後は、五十六年五・五、五十八年も五・五、これは補正後ですが、五十九年にはこれも先ほど指摘あった六・一ですね。それから酒税負担率も、五十年が三〇・一%、これは一番低いんで、その後は五十五年三四・六、五十六年三七・五、五十八年三八・〇、五十九年は恐らく四〇%に達している、こう思うんです。となれば、国民生活への影響が大変大きくなるし、値上げの根拠にしているこれらの統計資料にむしろ反しているんじゃないか、こう思うんですが、どうでしょう。
  139. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 酒税負担水準の推移なり、国税収入に占めます酒税のウエートの推移でございます。これは今委員が引用なさいました酒税問題懇談会報告にも触れられておる問題でございますが、御案内のとおり、酒税は戦中戦後の増徴、ずっと増徴の時代が続きまして、昭和二十五年から、酒税問題懇談会報告にも触れられておりますように、減税の局面に入っておるわけでございます。  昭和二十五年当時の酒類消費総量に対します酒税収入割合、端的に言って酒税負担率でございますが、これが六一・三でございます。その後ずっと減税の局面に入りまして現在の酒税負担の基本的枠組みができました。これはたびたび引用させていただいておりますが、昭和三十七年の酒税減税のときの水準が四一・二%でございます。その後ずっと負担水準の低下傾向が続きまして、ただいま委員がおっしゃいましたように、昭和五十年が三〇・一、これがボトムでございます。五十年代に入りまして、今回までで実は四回の酒税負担引き上げをお願いしておるわけでございます。その限りにおきまして、五十年代から現在の財政事情等も勘案しながら、酒税負担の調整局面に入ったということでございますが、今回提案申し上げております酒税負担引き上げを仮にお認め願いました場合に、マクロ的に見まして、恐らく昭和四十年代半ばぐらいまでの水準に復帰するということでございます。  私ども酒税負担水準が高ければ高いほどいいというふうなことは毛頭考えておるわけではございませんけれども、今回のお願いと申しますのは、これもたびたび申し上げておりますように、所得税減税を行います場合に、特例公債に依存することは避けるべきであるという観点から、現行税制の枠内という非常に狭い選択の範囲の中で、しかも酒税従量税を基本といたしまして長い間の価格水準を放置いたしますと、自然に負担率が下がるというふうな点にも着目して、今回最小限度の引き上げをお願いをしておるということでございます。  なお、所得税減税総体に占めます今回の酒税引き上げの規模から見まして、私ども家計調査等から見ましても、もちろんその限りにおいて減税の効果が相殺される、減殺されることはそのとおりでございますけれども、トータルとして今回の減税はそれぞれの各課税世帯に行き渡っておるというふうに考えておるわけでございます。
  140. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 戦争中は酒税税率が高いのは、戦費調達ですから、それはそれなりに理由はわかります。そして終戦直後というのは、産業構造であって、ほかの産業が余りないのですから、どうしたって酒税からたくさん取るというのですが、これほど高度成長をしまして産業構造が変わっているのですから、国税収入に占める酒税割合が下がったっていいし、下がるままでも構わぬ、こう思います。そして実際には下がったかと思ったら五十六年以降上がっているのですから、この点は十分配慮しなければいけないことだと思います。  それからもう一つは、これも懇談会の中に出ておるのですが、消費下級酒、低価格酒シフトの状況が顕在化している。こんなことも税負担格差是正の必要性の理由にしておるのですが、しかし、これは先ほども議論がありましたし、また衆議院で我が党の正森議員が指摘しておりますように、所得階層別と飲酒の関係を見れば、低所得者層ほど安い酒を飲んでおるわけで、それは生活が苦しいからそうなっておるということで、むしろこれは酒税引き上げの理由にはならない、逆のものだということを指摘したいと思います。これは指摘だけで次の質問に入りたいと思うのです。  それから次に、酒税をかけている根拠あるいは、これも先ほど議論がありました免許制が合憲である理由、これについて見解を求めたいのですが、これについては先ほど来議論があるとおり酒税保全のために必要である、それはそのとおり言われておるのです。しかし先ほどの、最近それだけで果たして合憲性が論拠づけられるのだろうか、こういう議論が出ています。一つは、例えば自家用酒をつくることは幸福追求の憲法十三条に反するとか、あるいは免許を特定業者だけに与えるのは、憲法十四条とか、あるいは二十二条の職業選択の自由に反する、あるいは財産権の二十九条に反する、こういう指摘がされております。お断りしておきますが、私自身は免許制は合憲だと考えております。そういう点で大蔵省と珍しく一致するのですね。しかし問題は単に酒税保全というだけではなかなか納得できないわけですね。なぜ酒税保全ということが合憲の根拠になるのだろうか。その点についてもう少し詳しい説明をすべきだと思うのですが、どうですか。
  141. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これはただいま委員が御指摘になりました前段との関連もあると思います。つまり酒税の課税の根拠にも結びつく問題でございます。酒類という特殊な嗜好品、致酔性の飲料と申しますものは、広く国民が消費するものでございます。人類の歴史とともに非常に古い飲料でございますが、これはいわゆる主食等と違いまして生活必需品そのものではないということでございますが、非常に多量に使用されるということで、古来世界各国におきましてこれにかなり高い税負担を求める。そういう意味で財政物資として位置づけられてきているわけでございます。  したがいまして、酒税の保全という観点は、他の消費税と異なりまして、そういういわゆる財政物資という位置づけを持ち、しかも財政の中で、国家財政の中で非常に大きな地位を占めてきたという歴史的な背景もございます。そういった観点から酒税の保全ということで製造の免許、それから販売の免許の制度がとられておるわけでございまして、例えば憲法二十二条との関連で言えば、その観点から、公共の福祉という観点で合憲であるという考え方にも通じるわけでございますが、同時に、世界各国のいろんな制度を見ましても、国によって制度のいき方はいろいろございますけれども、やはり財政物資という観点のほかに致酔飲料ということでございますので、国民の健康の保持とか、あるいは社会の秩序の保持というふうな観点から、過度の消費をコントロールするというふうな観点もございまして、この酒類につきましては、何らかの格好で社会的に管理をするという考え方がある。こういうことでございまして、酒類の保全のほかにそういった観点も背景にある。その限りで憲法に言う公共の福祉に合致している制度であるというふうに考えておるわけでございます。
  142. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 酒類の保全のために必要だというのですが、ただ、考えてみますと、実質的な担税者は酒類の一般消費者ですね。それにもかかわらず、酒税酒類製造者から徴収する。要するにこれはあくまでも徴収の合理化、便宜と効率のためなんですね。じゃ、なぜその酒類の製造業者に徴収することが憲法違反でないのか、この説明、単に酒類の保全だとこれはわからないんですよ。  もう一つ、じゃ酒類製造業者の場合にはまだわかる。例えばたばこで言う専売に該当すると思うんですね。ところが、今度酒類販売業者の場合には納付義務がないのに免許制を設けられているというのは、これはいかなるわけか。最近そういう議論が大変強くなっておるんです。そこで私は思うに、こういう場所に携わる人の営業を守るというそのことが酒類保全になるんじゃないかと思うんですが、そういう点はどうでしょうか。
  143. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず、我が国の現在の酒税が蔵出し課税の制度をとっておりまして、原則として酒類製造業者に納税義務を課しておる。間接税はいろんな組み方があるわけでございます。製造段階で課税するやり方、卸売段階で課税するやり方、小売段階で課税するやり方、多段階で課税するやり方、いろいろあるわけでございますが、現在の我が国酒税の課税の考え方は製造業者に納税義務を課す。その基本的な考え方は、委員も御指摘になりましたけれども、非常に効率的で、徴税コストの観点からも非常に能率的な制度である。その限りで、そういう課税制度を採用するということは憲法上の問題は別にないわけで ございます。  そこで、制造業者の段階で課税されるわけでございますけれども、これは消費税でございますので、最終消費者に転嫁が予定されている税でございます。したがいまして、製造業者の段階で課税された酒税相当部分は究極的には販売代金の格好で回収される。つまり流通過程を通じましてそれが画一的に転嫁していかなければならないということになりますと、流通の段階におきまして過度の販売業者が乱立する、あるいは過当競争を行うというふうな格好で需給関係が崩れたり、市場関係が乱れますと、終局的にその酒税の転嫁が行われないという観点から、これは製造免許の場合と異なりまして、時代はかなり後になるわけでございますけれども昭和十三年当時現実にそういう過当競争が行われ、貸し倒れが発生し、販売業者が多数倒産するという事態を背景にいたしまして、現在の販売免許の制度が採用されたという歴史的経緯に照らしましても、酒税の保全というのが販売免許の基本的な考え方の基礎にあるというふうに考えるわけでございます。
  144. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 要するに、二兆三千億円もの税収を確保する、そのことに、その徴収の合理化、すなわち便宜と効率のために協力する製造メーカーなり製造業者なり、あるいは販売業者だから、その経営が乱立等によって乱れたらば、それは酒税も確保できない、そういう意味でそれを免許によって保護する、こういうことだと思うんですね。私は、そうだとすれば、そこに携わる業者に一定の適正な利潤なり経営の安定が保護されてしかるべきだと思うんです。  ところが、これはもう既に指摘されておりますように、そして私も資料をもらいましたが、清酒メーカーについて見ますと、赤字企業が三五・二%、低収益企業、これは税込みで五十万以下、これが二〇・八%。要するに大変経営の苦しいのが五六%になるわけであります。それから酒販業者も大多数が中小企業ですが、赤字企業が六・一%、低収益企業が一七・八%。これは随分前の資料で、しかも政府の統計資料ですので、実際もっと大変なんだということを私は実際の酒販業者から聞いておるわけであります。となりますと、免許を設けている趣旨から見まして、こういう状況を放置しておくということは、これは大蔵省としても責任を十分果たしてないんじゃないか、こう思うんです。  そういう観点から、酒販業者及び酒造業者のそれぞれについて聞きますが、まず最初に酒販業者の状況についてお伺いします。通産省としてこれが中小企業育成という立場からどういう対応策をとっているか、これも簡単に言ってください。
  145. 佐藤英一

    説明員佐藤英一君) 酒の小売関係につきましては、現在中小企業施策一般で講じているさまざまな施策のほかに、特段に現在、連鎖化事業と称しておりますが、ボランタリーチェーンという制度の中に乗って、仕入れの共同化を中心といたしまして、経営コストの低減を図るというような事業を推進しておりまして、現在そういった形でボランタリーチェーンというものを組織しているようなグループが全国に三つほどございます。私ども、今後もこういった酒の小売店の経営の近代化のために、ボランタリーチェーンのような形での共同仕入れ、これを推進することを非常に重要だと思っております。
  146. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 中小企業庁の方の対応としては、今言ったような指導とか融資とかあるんですね。大蔵省としては何かこれはあるんですか。
  147. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 酒類販売業者の私どもの行政の面から見ましての非常な重要性、それからまた同時に私どもも産業行政をやらしていただいておりますので、中小企業対策ということで、酒類の知あるいは小売業界につきましての経営の近代化につきましていろいろな施策をとらしていただいております。まず、業界自身が経営近代化のための委員会というものを設けておりまして、例えば各種の近代化のための諸施策の実施を行っておりますけれども、私どもといたしましては、こういう委員会活動に対する支援、これは全面的にいたしております。それからまた、私どもといたしまして、そういう販売業界の経営の改善に資するためのいろいろな調査をいたしております。そういった資料を、経営指標を積極的に提供いたしますとか、あるいはまた商品知識を高めようというような、勉強したいという機運がございますが、そういう動きに対しましては、私どもの専門家、鑑定官等を派遣いたしまして、十分に支援をいたしておるというようなことを行っているわけでございます。  以上でございます。
  148. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、そういう立場から取り組んでおられるんですが、せっかくやっておるんですから、そこに魂を入れてほしい、こう思うんです。  その一つとして酒有連――酒販業者が集まって今言った近代化のために努力しているボランタリーチェーンがあります。各地にあるんですが、その一つの問題は、せっかくみんな集まって、先ほど中小企業庁も言いましたように、継続的連鎖関係を結んで、共同仕入れ等々でその規模の利益や分業利益を図っていく、こう言いながら集まり、会社組織にしているわけですね。ところが、この酒有連に卸の免許がないんです。そうしましたら、共同仕入れと言いながら、一番肝心のところで大蔵省が邪魔しちゃってるんじゃ、せっかく先ほど部長が言ったような効果が出てこないじゃないか。その点どうですか。
  149. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) ただいま御指摘の酒有連が、全国で小売酒販店二千四百五十店の加盟者を持ちまして、本部が一カ所、地方本部が三十四カ所という形で運営されていることは私どもも十分承知いたしておりまして、そのうち三カ所につきましては卸の免許を差し上げているわけでございます。  ところで、こういう者に対して卸免許の実態がなかなか厳しいではないか、こういう御指摘でございますが、実はいろいろ問題がございまして、私どもも、そういう中小企業者でございます酒販店が共同仕入れによりまして経営を改善したい、こういう動きに対しましては十分に理解を持っておりまして、例えば中小企業等協同組合法に基づきまして酒類の酒販協同組合というのをつくっておりますが、そういう協同組合につきましては百四十六の卸売免許を差し上げているわけでございます。そういったところの構成員があるわけでございます。  それからもう一つ、各県段階に各県の製造者、それから酒販店を会員といたしますところの卸売の協同組合というのがございまして、各県の酒類卸売協同組合、県知と言っておりますが、そういうところに小売屋さんがいろいろ入っております。そういう中におきまして、この酒有連に加盟しておられます小売屋さんがあるわけでありまして、中には競合関係にある、こういうような実態があるようでございます。  そこで、私どもといたしましては、そういう実態をよく分析しながら、各地区地区におきまして必要な場合には差し上げている、こういう体制でございまして、決してそういった共同購入によりますところの経営の近代化というような動きに対しまして何ら障害をするという意図はございません。結果的にそうなっているわけでございます。そしてまた、この酒有連の卸売免許を申請しております数といいますものが、早速勉強させていただきましたけれども、必ずしも現時点でそう多くはないという実態でございます。そういったことは恐らく今まで申し上げました事情が反映されているのではないかと思うわけでございますが、例えば共同仕入れのメリットと申しますのもある特定のメーカーと契約をいたしました場合にはあるようでございますが、例えば灘、伏見といった全国ブランドの有名ブランドにつきましては、必ずしも共同仕入れのメリットがないというような実態もあるようでございまして、いろいろ勉強いたしまして、その辺につきましては、あくまでも中小企業でございます酒販店の経営改善ということはいささかも私どもの頭から去ってはいないわけでございますので、その辺の事情をひとつ御了解 いただきたいと思います。
  150. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、まず確認しますが、そういう条件があり、必要があれば、それに対して卸の免許をおろすことも十分考えられるということですか。
  151. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) ケース・バイ・ケースのことでございまして、そういう実態で当該地域の酒類の需給関係――これは小売屋さんにあらざる卸屋さんでもかなり中小企業の方もあるわけでございます。全国で千百余りの全酒類卸売業者がおりますけれども、そういった地域の方々との需給調整といいますか、そういったことを勘案いたしました上で、官側としましては、それは差し支えなければ免許は付与するという方向で御理解いただいて結構でございます。
  152. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 先ほど部長から話があった酒販協同組合あるいは県知ですね、中にはそれなりの活動をして会員がかなり密接な連合体を持っているというところもあるようですが、実体は有名無実になってしまってほとんど会員のために役立っていない。こういうところも逆にかえって多いようです、実際はね。これは調べればわかるんですがね。そういうことから、例えば一つの例として酒有連のようなところに自発的に集まって、そしてこれがむしろ実際には機能しているわけです。  そこでお伺いしたいのは、いろいろな状況というんですが、それは県知や酒販協同組合に現に入っているから、各小売業者が、それと競合するからぐあいが悪いんだと、こういうことなのかどうか。もしそうだとしますと、じゃ酒有連に加盟している会員が、現在所属する各協同組合から抜けて、そして酒有連一本で卸をひとつやろうと、そういうことになれば、その条件ができた。要するに今までの業者とのいろいろな競合関係、利害調節だと思うんですね。そういうことで、そういう交通整理ができ、そしてこんなぐあいでひとつやりますよと、青写真でも持っていけば、これが具体的に進むのかどうか。その点どうですか。
  153. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) ただいまの競合関係のほかに、当該地域におきますところの卸売業者との需給調整の問題がございます。それから、それができました場合のその地域におきますところの小売業界に与える影響というのもございますが、これは抽象的な意味で申し上げているわけでございまして、そういったものを総合勘案いたしまして、差し支えなければ免許は付与するということでございます。
  154. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今私が言ったのは、これは具体的にそちらの国税庁の方から具体的に聞いて、そういう交通整理などができて青写真でもできれば、それは道は開ける可能性がありますと、こういう答弁というか、そういう話があったもんだから、私具体的にこちらから申し上げたわけなんですね。その点どうですか。
  155. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) これはあくまでも個別な話でございまして、的確なお答えができますかどうか、またそれが適当かどうかという問題もあるわけでございますが、いずれにしましても、当該地域におきまして無用なトラブルがないようにということがまず前提として必要だろうかと思います。
  156. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 当該地域といいますが、これは税務署単位で大体卸なんか考えているようですね、現在は。これも確認したところによりますと、卸の免許をおろす条件としては十年以上の経歴、それから大都市では七百二十キロ以上の販売見込み、さらに販売場があること、それからあと税務署単位で一定数量と、大体四つの基準のようですが、今申し上げた酒有連、酒有連に限らないのですが、こういう自発的なボランタリーチェーンなんかの場合、地域を超えて、例えば東京なら東京、神奈川なら神奈川ということで広く集まっていますから、余り地域的な関係はこれはないんではないかと思うんですね。そして問題は、これに免許をおろしてくれというのは、何も一般的な免許じゃなくて、参加している、そこに対する限定的な免許、こういうことなんですよ。だったら、十分道は開けるんではないか。今言った地域的な問題というのは、そう理解すべきじゃないんでしょうか。
  157. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) その地域の問題でございますが、この酒有連がかなり規模の大きなもので広域的にそういった取引が行われます場合におきましては、その広域に及ぼす影響というものもあるわけでございまして、そういったところの検討の結果、支障がなかったものにつきましての現在免許がおりているかという問題でございまして、ただいまお尋ねの問題につきましては、これはあくまでも私も、その具体的な案件がわかりませんものですから、お答えはできかねるわけでございます。
  158. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、また今後具体的に詰めていきたいと思います。  で、あとわずかですから清酒製造問題について一問だけ質問したいと思います。  三倍増醸酒の製造は若干減りつつあることは数字上わかりました。しかし、まだ三十二万キロリッター清酒製造全体の二六%以上を占めておるわけであります。これに加えて現在問題だと思いますのは、白ぬか糖化液の大量使用で、これは約三万二子キロリッター使用されている。これもいろいろ議論がありますが、米を精米するほどよい酒ができるというのは基本的な考えで、ただあとは技術の問題がありますから、必ずしも精米をよくしたからといってそのままつながらないけれども方向としてはそういうもので、多くの業者がまさに中身で勝負しようということで大変な努力をしております。私も幾つかのメーカーを見せてもらって、その努力に敬意を表しておるんですが、ただ問題は、精米したそのぬかを利用して安くつくられますと、せっかくいい酒をつくって、今困難な状況にある清酒を、日本の酒を守っていこう、そういう努力がそこから崩れちゃうわけですね、自分でつくった白ぬかで安い酒をつくられちゃうんですからね。  そこで、これは大蔵省の方でも一定の制限を、白ぬか糖化液を使う割合を決めておると思うんですが、この点については大蔵省としても歯どめをきちっと行うということ。それからそういうことについての調査を常時行って、これが不当に広がっていかないようにするということ。しかもこれはメーカーの中では核兵器と言われているんですね。一定の高いものを出さぬとこの機械を買えないもんですから、その秘密核兵器を買われたらとてもかなわぬ、こういう恐怖が今本当に熱心にいい酒をつくろうという業者の中に広がっておるんですよ。これに対して私は、大蔵省としてしっかりした態度をとるべきだと思うんですが、答弁を伺って、質問を終わります。
  159. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) まず、その基本認識でございますが、先生白ぬかとおっしゃいましたが、私どもは米粉糖化液というふうに申し上げております。これが果たしてどういうものであるかという基本認識でございます。  これはまず、ぬかとおっしゃいますが、一〇%程度の表の赤い部分は落としまして、それより中の、例えば吟醸酒ですと六割削りまして四割を残す、平均的に七割を残して三割削るわけでございますから、かなりその実態は、ぬかとおっしゃいますよりは米粉でございまして、米である、こういうことでございます。この米を酵素を加えまして糖化をいたしましてイオン交換樹脂で精製したもの、これが米粉糖化液でございます。  これは最近開発された技術でございまして、コストの低減効果があるわけでございますが、大量に使用いたします場合には若干危倶がある。管理が不十分でございますと品質劣化のおそれもあるというようなことでございまして、私どもといたしましては、この米粉糖化液の使用数量といいますものを制限をいたしております。清酒製造者に総玄米重量の原則一〇%、一部経営上支障があります場合には一五%というのを認めておりますが、そういう制限をしておるわけでございます。  この米粉糖化液と申しますものは、コストが安くなるという効果がありますものですから、そうしてまたこれを使用いたしていますメーカーが大 体中小企業でございますので、一概に、急に減少というわけにまいりませんが、その基準につきましては十分に守っていきたいというふうに考えております。
  160. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 酒類課税数量の推移をずっと年を追って眺めてみますと、既に指摘されたことでありますけれども、幾つかの特徴があります。  一つ特級の減少傾向、あるいは低迷を含めて言った方がいいかもしれません。これは清酒ウイスキーも両方なんです。特級は減少もしくは低迷。二番目が二級の増加傾向、これは清酒ウイスキーも同じです。三番目がしょうちゅうがふえてまいりました。ビールが引き続き増加傾向をたどっております。果実酒、ワインが倍率で見ますと目覚ましく伸びましたというのが、酒類課税数量を眺めてみますとすぐ気がつく特徴点だと思います。  そこでお尋ねしたいのは、何で特級が減少するんだろうか。これは何も税だけが問題だということを言うつもりはありませんけれども、今の酒の流通実態を見ますと、一般に日本酒だったら一・八リットル、ウイスキーだったら七百二十ミリリットル、こういう流通形態があるんですが、それに即して負担している税額の順番に並べてみますと、一番上がウイスキー特級千三百三十四円、その次が清酒特級九百十七円、ウイスキー一級五百八十四円、清酒一級四百四十一円、二級百六十九円、ウイスキー二級百五十九円、ビール百二十七円、しょうちゅう甲百五円、乙七十四円、ワインが三十二円、こんな順番に並ぶんです。消費者とすると、大体こんな順番で税の重みというのを受けとめていると思う。  そこで、特級がとにかく目立って減ってきたんだけれども、これはたび重なる増税が大きな要因の一つであったんではなかろうか、こう見ているんですが、御所見はいかがですか。
  161. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 酒類ごと課税数量の推移でございます。これの傾向をどう考えるかということは、いろいろな分析の角度があると存じます。例えば同じ特級でも清酒特級が長期間にわたって非常に課税数量といいますか、消費が低迷しておることは御指摘のとおりでございますけれども、一方ウイスキー類の特級ウイスキーにいたしましても、ブランデーにいたしましても、この種のものはかなりの税負担をお願いしておる酒類でございますけれども、この辺の伸び割合高いということでございます。一方、ただいま御指摘になりましたように低負担酒でございますいわゆるしょうちゅう類の伸びは、果実酒等を含めまして、昨今非常に目覚ましい伸びを示しておるということでございます。  基本的な背景といたしましては、私どもは、所得水準上昇、それから所得の平準化という背景の中で、酒類におきましても消費の多様化と均質化が進行しておるということは言えるのではないかということでございまして、その限りでは、いわゆる高級酒と下級酒といったような区分が従前ほど消費者の選択基準として指標として意味が薄れてきておるという、一般的な背景があると思います。それから下級酒と言われるものにつきましても、非常に醸造技術等が進歩いたしまして非常に品質のいいものができておるということは言えると存じます。  ただ、清酒につきましては、これは清酒全体の伸びが非常に鈍化しておりますから、これ自身の特別の問題があるとも思いますけれども清酒につきましては、その清酒特級伸びが非常に悪いというのは、税負担水準に全然無関係であるというふうなことはあるいは言えないのではないかということは申し上げられると思います。
  162. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうだと思います。  ウイスキーの方も数字を見ておりますと、五十六年ががくんと落ちているんです。これは輸入酒それから国産の酒含めて両方とも同じ傾向です。五十七年に若干戻しているんですが、どうもでこぼこしている。従来は、ウイスキー特級というのは昭和四十七年から眺めますと毎年ずっと伸びてきたんです。ところが、五十六年がくんと落ちて、五十七年ちょっと持ち直して、そして今低迷状態。これも何も五十六年の増税があったからと短絡して申し上げているつもりはないんですけれども、税の重みというのがウイスキーでもきいてきたんではあるまいか。それは全部とは言いませんよ。そう見ておくのが一応自然な見方ではないか、こう思いますが、いかがですか。    〔委員長退席、理事大坪健一郎君着席〕
  163. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) そのウイスキー類でございますが、五十六年、なるほど前年度に比べまして特級消費量伸びが絶対水準で落ちております。五十七年度また持ち直しておるわけでございますが、同じ年次を見ますと、これは数量的にはウイスキー特級の規模ではございませんけれども、ブランデーの特級などは、当時税率引き上げ幅同じようなことでやったわけでございますけれども、これも伸びておるということでございまして、酒類ごとにそれぞれ嗜好の変化と申しますか、そういうものが背景にありますから、一概には言えないわけでございますけれども酒類によっては税負担水準というものが消費と場合によっては深いかかわりを持ってくる局面があるということは私どもも今後も注意していかなければならないと考えております。
  164. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 確かに日本の酒税というのは特級に非常に負担がシフトしてかかっている印象ですよね。それが今の特級の減少もしくは低迷と直接つながっていると私は短絡して言いません。ただ、昭和四十七年の清酒の場合、特級は十万キロリットル課税対象になっている。昭和五十七年は何と五万キロリットル、半分なんです。その間、税率アップ分はキロリットル当たり二十八万五千四百円が五十万九千三百円、約一・八倍になりました。  ここで、ひとつ仮定の話なんだけれども税率を全然上げなくて、そうしたら特級の方も十万キロリットルが五万キロリットルに落っこちなかった。そうなると、少なくとも清酒特級だけを抜き出しての話になりますけれども、その特級にかかわる酒税の額というのは、国庫収入はむしろふえたんではないか。これは今さらどうしようもないことなんだけれども一つの可能性としてはあったんではありませんか。
  165. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) その辺の問題は非常に難しゅうございまして、ただいま清酒だけについて言いますと、税収の圧倒的部分を担っておるのは一級でございます。特級はもちろん税率は高いわけでございますけれども、絶対消費量が現在では一級の十六分の一ぐらいになっておるわけでございますが、そういうことでございますので、なかなか今御指摘のような問題にすぐにお答えする用意がないわけでございますが、こういう問題があるわけでございます。  酒類消費価格、プライスでございますが、それとの関係につきましては、一般に統計的にはっきりした相関関係説明できないということを言われておるわけでございます。むしろ所得の水準酒類消費というのはかなり結びつく。それからビールのような酒類になりますと、これはむしろ天候のようなものが非常に大きな影響を持つということでございます。したがいまして、税負担水準というものも結局は価格に反映するわけでございますが、委員がおっしゃることで非常に示唆的なのは、そうはそうでございますけれども、同じ酒類の相互間の相対価格の問題になりますと、例えば特級から一級へ、一級から二級へと、同じ清酒の中でもシフトというのはかなり価格に対して敏感であるということは、ここの十年ぐらいの数字で見ますと、私どもよほど注意していかなければならないというふうに考えます。
  166. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それで、消費、嗜好の多様化ということをおっしゃるわけですけれども、角度を変えて払お尋ねしたいんです。  特級が減ってまいりまして、清酒だけを例にとって結構なんですが、特級が減ってきて、一級はまあ横ばい、二級がふえる。この変化というのは歓迎すべき変化なんだろうかということをお尋ねしたいんです。  どういったことかといいますと、特級、一級、二級というのは、簡単に言うと上、中、下という感じの紋別されたことですよね。上、つまり特級というのはどういったものなんだろうか。素朴に考えますと、最も良質な日本酒の味を代表するものが特級です。そのはずですよね、そのために紋別審査もやっているわけです。その代表が減ってしまって、より質の低いそれがふえるということは――酒というものを文化ととらえているんですよ。そのあり方としていい変化なんだろうか。  どこの国だって主食を種にした国酒を持っているわけです。本来は特級、一級、二級とクラスファイした理由というのは、特級が一番、最も良質、最も日本酒の特質を備えているということであるはずですよ。そうでなかったらこんな紋別審査はやめりゃいいんだ。であるはずなのに特級が減って二級がふえている。これは文化現象としていいことなんだろうか。しかも、この酒は課税を媒体にして生産から流通から大蔵省が一手扱いをしている業種なんです。その点でこの変化をどうごらんになっておりますか。これが実はお尋ねしたい点なんです。
  167. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは大変難しい問題の御指摘でございますが、結論から申しますと、大変問題を含んだ現象として考えなければならないということでございます。その場合に、問題としては側面が二つあると思います。  一つは、ただいまおっしゃいましたように特級、一級、二級がそれぞれ品質の格付ということであるとすれば、その特級が相対的に一級なり二級の方ヘシフトしていく現象は、これは好ましい現象ではないということははっきり言えると思います。ただ、もう一つの問題現象と申しますのは、それはそういう前提で議論した限りのことでございまして、現在の紋別制度が実際の酒類消費のあるべき姿と何らかの格好でずれを起こしているとするなれば、紋別制度そのものを見直すという問題を提起しているのかもしれない。そういう意味での問題現象でもあるということだと思います。
  168. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 おっしゃった後段の部分ですけれど、その紋別制度というのが実態とずれているかもしらぬということになると、紋別を前提にして税率を決めている今の酒税そのものが問題だということになりますよ、それは。ですから、三つあると思うんです、理由はね。一つは、日本人が味に鈍感になっちゃって、いい酒も悪い酒も区別がつかなくなっちゃった。味覚力が衰えた、これが一つ。もう一つは、今言われた紋別制度、格付というのが実体を失ってきた。三つ目は、国民の経済力が衰えた。この三つのどれか、全部か。だれが考えてもこの三つですよね。  そこで、今おっしゃったんだけど、紋別審査というのが必ずしも実体を反映してない。二級でもいい酒が出てきた。となりますと、今の酒税全体の組み立て方、それもやはり抜本的に見直すということを示唆されておられるんですか。
  169. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今問題になっております現象について今委員三つおっしゃったわけでございますが、私はあるべきといいますか、問題の所在としては、最初におっしゃいました二つだと思います。所得水準が頭打ちになったために、所得の上昇が頭打ちになったために下級酒へシフトしているという方向は、客観的にはそういうデータは私は出てまいらないと思うわけでございます。  そこで、これは酒税問題懇談会でも将来の酒税あり方としてまさに指摘されておりますのは、現在の紋別制度のあり方、特に清酒の紋別制度のあり方、それからこれは各酒類について、各酒類と申しますか、紋別のある酒類について言われておることでございますが、紋別間の税負担格差縮小という問題が指摘されておるわけでございます。その限りにおきまして、今回私どもが御提案申し上げております酒税税率引き上げに当たりましても、そういった観点を含めて御提案申し上げておるわけでございますけれども、今具体的に問題として提起されております清酒につきましては、もう一つ食管制度のもとにおける割高の国産米で原料を手当てしなければならないという極めて特殊事情がございます。そういったことから、むしろ税負担格差縮小という格好には、清酒については、紋別の負担の今回の引き上げはその姿になっていないわけでございます。そこが清酒自体の非常に難しい問題と、それから清酒自体のその紋別のあり方特有の難しい問題があるということでございまして、今後この問題に制度面においてどういうふうに対処していくのかということは、私どもは大きな検討課題であると考えておるわけでございます。
  170. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 ですから、本当のことを言いますと、こういう酒税増税案を出す前に抜本的な検討をして、その上で、ではこれからの酒税はこういたしましょうという御提案をすべきだったなと、調べれば調べるほど思うんです。といって、清酒特級を据え置いて、じゃ二級だけ上げようといったら、これまた問題になりますので、よっぽどそこまで掘ったところで問題を出してこないとそれは納得を得ないでしょう。だから、減税見合い財源という格好で、いわばおっ取り刀でやってしまう増税は、今度は本当は避けるべきではないのだろうか。  ところが、清酒のことをおっしゃいましたけれどもウイスキーでもあると思うんですよ。ウイスキーでも、昭和五十四年あたりから一級、特級に二級がふえている。ですから、ここでも特、一、二と格付されたことが、税率にはね返っているということが流通にいろんな現象をもたらしている。このウイスキーで二級がふえてくるというのは、私の想像ですけれども、どういったことになるかというと、酒税が差別税だとかという格好でECから言われるに決まっているんです。輸入酒というのは特級酒ですよ。二級酒というのは国産ですよ。そうすると二級と特級の税格差というのは事実上のNTBではないかと。目に見えている。それからいっても、基本的な見直しをした上でどうするかという御提案を私はすべきではなかったのかな。御所見を伺います。
  171. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 酒税酒類ごとあるいは紋別の区分、それから現在の税率水準につきましては、中長期的に見ていろんな検討あるいは改善の方向を模索すべき問題を含んでおるということは、酒税問題懇談会なり、税制調査会中期答申でも御指摘を受けているところでございます。  今回、五十九年度の税制改正に当たりまして、そういった中長期的な問題の抜本的な改善の方向について幾多の問題を残したまま税負担引き上げをお願いしておるということは、所得税減税財源との関連もあるということはぜひ御理解を賜りたいわけでございます。  ただ、今回成案を得なかったわけでございますけれども、例えば清酒の一級、二級の課税方式につきましては、    〔理事大坪健一郎君退席、委員長着席〕 私どもはある段階従価税の導入等も検討をいたしました。ただ、そこで問題になりましたのは、現在の特に二級酒につきましては、圧倒的多数の零細業者が清酒二級をつくっておられるという状況とか、あるいはこれから不振の清酒業界の中で付加価値の高い商品を開発していこうという時点で、この従価税をもってきますことは、そういう企業努力をそぐという、いかにもタイムリーでないといった問題もございます。  私どもは、そういった問題を通じまして、特に清酒の問題につきましては消費者サイドだけの話ではなくて、生産側状況といいますか、大変難しい問題を抱えておるという事態に実際に直面したわけでございますが、そうは言いましても、この問題をいつまでも先に延ばすわけにはいかないわけでございまして、今回の改正の経験をもとにいたしまして、将来、今委員がおっしゃいましたような問題提起も含めまして、精力的に現在の酒税税制そのものを将来どういう方向に持っていくべきかということを勉強し、検討しなければならないということを痛感しているわけでございます。
  172. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 同じようにいろんな零細企業を抱えてどうやっていくかというものの一つに果実酒があると思うんです。私は関税のことをお尋ねするつもりはありません。ただ、果実酒をつくっているあの零細な人たちをどうするのかということは、酒税を取っているわけですから、当然大蔵省の所管として考えていかざるを得ない。  そこで、清酒と同じように非常に気になるんですが、非常に零細が多いんですね。五百キロリットル以下、二百キロリットル以下なぞなぞというところにえらい固まっていて、六キロリットル未満が全体の二二・五、工場数にして七一。問題は、こういった分野に対して対策を私が急ぐべきではないかと申し上げている理由は、ワインの関税というのは米国が四%、ECが六%、日本は五五%または二百八十円のいずれか低い方云々と書いてあるんだけれども、こんな高い関税がいつまでももつわけないですよ。そのときに一体零細なワイン業者をどうしていくのか。これは話が飛ぶようですけれども、専売公社があの問題をきっかけにしてにわかに浮かび上がってきた葉たばこ耕作者の話も一緒でして、伺うとみんな中長期とおっしゃるんです。しかし、これもあんまり中長期と言ってもだめなんで、酒税のことに話を戻して言いますと、今回は増税するんでしょう。だけど大至急これの見直しをしていかないといかぬと思いますよ。ですから、中長期とは言いながら、なるべく早い御検討をぜひお願いを申し上げたいと思います。  この件はどういたしましょうか、担当局からお答えがあればそれで結構ですが。
  173. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 産業行政を所管しております国税庁からお答え申し上げます。  確かに先生おっしゃいますとおり、ワインのメーカーは非常に零細な方が多いわけでございます。片や、それに比べまして、同じような事情にあります清酒、これにつきまして手厚いいろいろ産業政策面の保護があるという観点から、ワインはどうかという、私どもといたしましては非常に厳しく受けとめざるを得ない御質問でございまして、正直申しまして、清酒ほど実は真剣な努力が足りなかったというような感じも合いたしておるわけでございます。十分に問題意識を受けとめまして、引き続き国税庁におきまして検討さしていただきたいと思いますので、よろしく御了承賜りたいと思います。
  174. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 ほんとはここで大臣がいるとぐあいがいいんですけれどもね。問題は、意見だけ申し上げます。  今たまたまワインのことを申し上げたけれどもウイスキーの関税も一体いつまでもつんだろうか。だから、そういったことをしていかないと、世界の中の日本ですからね。それは国内産業は守らなければいかぬことはわかり切っているけれども、今のままで守り抜けないこともわかり切っているんですよ。  だから、対策というのは早くしていった方がいい。そのときに例えば酒の業界だったら、各級別の税負担格差を圧縮することが実は近代化のために不可欠だということになったら、まずそれを急ぐべきである。近代化資金でつぶれるところは面倒見ようというんじゃ、これは本当の近代化対策ではないんですよ。ぜひお考えいただきたいと思います。  この問題、あしたまた大臣に伺うことにして、きょうは結構です。
  175. 木本平八郎

    木本平八郎君 私もまず酒の税金の問題からお聞きしたいんです。  皆さんもうお聞きになっているように、この問題についてはもうみんな各委員とも同じことを言っているわけですね。しかも、国税庁及び大蔵省は、お答えになるときに、衆参両院で過去何年も同じ質問をされて同じように答えておられると思うんです。  そこで、まず一番初めにお考えいただきたいのは、この酒の税の問題というのは根本的に何か大きな問題を含んでいる、だからみんなこうなっていると。しかも、私に言わせれば、不毛の議論を何年間もみんなやってきたという感じがするんですがね。その辺まず簡単にお答えいただきたいんですが。
  176. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは五十年代に入りまして今回で四回目の酒税税率引き上げをお願いしておるわけでございまして、この酒税法改正案のたびに当委員会等を中心にさまざまな議論をちょうだいし、それを受けまして私どもは検討を重ねながら何らかの方向を見出すべく努力をしてきたつもりでございまして、今までの議論が全く不毛であるというのは、いささか私どもは事実にも反するということで、これも繰り返して申し上げておりまするように、今回の税制改正に当たりましては、いろいろな問題をはらんでおりますけれども、例えば酒類間、紋別間の税負担格差縮小というものは、当委員会等でもしばしば御指摘をいただきましたものを、やっと今回何らかの格好でそういう方向づけをさせていただいておる。あるいは先ほどの清酒の紋別等の議論にも若干関連はするわけでございますけれども、過去のそういった議論を踏まえまして、今度は清酒につきまして、基準アルコール分を十五度にそろえるとか、漸進的ではございますが、それなりの改革の努力を進めておるし、今後ともそういう方向で進んでいく所存でございますので、その点は何とぞ御理解を賜りたいと思います。
  177. 木本平八郎

    木本平八郎君 多分そういうお答えだと思いますけれども、ぜひこの問題については今後とも固定観念にとらわれることなく、フレキシブルに検討していただきたいと思うわけです。  それでまず、先ほどの同僚議員の質問にありました清酒の級差の問題からもう一度問題を蒸し返したいんですけれども、私の計算で、計算の過程を省きますけれども特級、一級、二級というのを小売価格から酒税相当分を引きますと、はしょりますけれども特級酒一升当たり、一・八リットル当たり千五百円、それから一級は千三百五十円、それから二級は千二百円になるわけです。ほとんど差がないということですね。だから、特級、一級、二級の差は酒の税金の差であるということなんです。この税金を言いますと、特級が約千円、一級が五百円、二級が二百円という差なんですね。酒の税金がもうほとんど決めてしまっているという感じです。  ここで普通、消費者といいますか、素朴な国民の二級、一級、特級というこれのイメージでいきますと、私の感じではこの税金の格差で、二級が仮に千円としたら一級は大体二千五百円ぐらいじゃないか。特級は非常に高級酒だから五千円ぐらいするんじゃないかという感覚が国民の級差の感覚だと思うんですね。それに対して、実際の裸値の差はわずか、いいですか、二級酒が千円なら一級酒は千百五十円、特級が千三百円、これだけの差しかないんですよ、品質の差というのは。これはどういうことになったのか。まあだんだんだんだん崩れてきたと思うんですね。昭和二十年ぐらいにはちゃんと格差があったのが、どんどんどんどん長年の間に崩れてきた。それで、もうこういうふうになると国民は何か、欺瞞というか、だまされているという感じになるんですね。実際はそんなに品質の差のないものをいかにも大きな差があるように思い込まされて、それで高い金払わされているという感じがするわけですね。その辺はどういうふうにお受けとめでしょうね。
  178. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今委員のおっしゃいましたのは、メーカーの税抜き価格とそれぞれの酒税負担していただいております酒税額を比較した場合に、その税抜き価格格差よりも税額そのものの格差がかなり大きい、その乖離がだんだん進行しておるということは、もう御指摘のとおりでございまして、特に清酒についてその傾向が強いということがございます。これは、先ほど来御議論がございましたように、現在の清酒の紋別のあり方なり、税負担あり方というものを見直すという問題につながるわけでございます。  それから、そういった問題意識を私ども持っておりますけれども、これは四十年間定着してきた制度でございますし、繰り返して恐縮でございま すけれども、現在の清酒業界に深く根をおろした制度でもございます。したがいまして、一挙にこれの改革を図るというのはいろんな点で問題があるわけでございますが、私どもは、特に清酒の紋別制度のあり方については今後とも、税負担格差縮小も含めまして、真剣に検討すべき問題であると考えております。
  179. 木本平八郎

    木本平八郎君 先ほど栗林議員からありましたように、要するにどんどんどんどん二級酒に移っているということなんですね。それは要するに国民の方が――先ほど、まず一番大きなのは、酒の値段が高くなってきているからだということがあるんですけれども、一方で二級酒と特級酒の差がなくなっているということをもう国民の方は見透かしているわけですね。だから、何を飲んでも同じじゃないかという感覚でどんどん二級酒に移っていっているという感じがするわけです。これでお答えを求めてもまた繰り返しになりますから、答えはやめて次にいきます。  それで、私は、どうも紋別その他に大蔵省は思い込みみたいなものがあるんじゃないか。もう時代が変わっているということなんですね。だから、環境が非常に変わってしまっているということを、まず例で申し上げますと、昔は例えば特級酒というのは上流階級が飲んだ、二級酒は貧乏人が飲むという感覚があったわけですね。少なくとも私なんかはそういう経験があるわけです。ところが、もう今はそういうことじゃなくて、必要に応じて飲むということで、ここの議員の方が二級酒を飲んでいても決して不思議じゃないですね。それほど日本の上下の格差がなくなってしまったわけです。そういうことで二級酒に非常に移行していると思うんですけれども、いかがでしょうね。
  180. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 一義的にいろいろこの種の議論というのは難しいわけでございますけれども、底流として、清酒あるいは酒類全般と申し上げてもよろしいかと思いますけれども所得水準が上がり、しかも我が国のように所得の平準化が急速に進行しているという状況の中で、ただいま御指摘になりましたようなそういう多様化の中での均質化のようなもの、あるいは上級酒と下級酒の区別といったようなものが過去ほど意味を持たなくなってきている、消費者の選択基準の物差しとして、従来のままでいかないようなそういう状況になってきておるということは、御指摘のとおりだと思います。
  181. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、この問題についての結論は、もう紋別を廃止してすべて従価税にしたらどうだ。特にメーカーの出し値に対して税金をかける。例えばメーカーの出し値が千円なら千円のものについてはまた千円かけて、メーカーの出し値が二千円になる。それで後の流通段階はもうほうっておくというのが自然じゃないかと思うんですね。これは後でまた議論します。例えば一万円の二級酒でも、この中に含まれている酒税は二級酒だから百九十四円しかないわけですね。こういう矛盾というのが国民に非常に大きないら立ちを与えていると思うんです。この辺を検討するかしないか、まず簡単にちょっと御意見を伺いたいんですがね。
  182. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 先ほども申しましたように、五十九年度の税制改正に当たりまして、清酒の一級、二級に、一定の価格帯に従価税を導入することを検討したわけでございますが、結果的に成案を得るに至らなかったわけでございます。その問題の難しさというものを例えば端的に申し上げますと、現在の酒税清酒から上がっております税収額がございますが、これを従価税でやるためには一体どういう現象が起こるかということになりますと、これは圧倒的多数の中小メーカーがつくっております二級酒の税率が非常に高くなるという問題が起こるわけでございます、急激に。だから、その辺の問題をよく考えてやりませんと、あとは流通段階に任せるといっても、そこは従来の清酒という民族の酒でございまして、それは市場の成り行きに任せるというふうな形でもし済むなら、もっと話は早く片づいておった話なんでございます。その辺の難しさはぜひ御理解を賜りたいと思いますけれども、私どもはしかしそういうことを口実にしてこの問題から逃げようという気持ちはないということを再々申し上げるわけでございます。
  183. 木本平八郎

    木本平八郎君 酒だけは特殊な業界かもしれませんけれども、普通どんな業界でも、小企業は小企業なりに安いものをつくって、それで競争していっているわけですね。だから、零細企業というのは決して酒の業界だけじゃなくて、ほかの業界もみんな同じ問題を抱えながらうまくやっているという点をぜひお考えいただきたいと思うんですがね。  実は、メーカーの問題が出ましたので、メーカーも自由化すべきじゃないか、国税庁としてはとんでもないとお考えでしょうけれども、私はそういう感じを持っているわけです。今酒の業界で零細企業というか、小メーカーの存立が大問題になっていますね、存亡が。私はこれは大蔵省の長年の統制の結果だと思うんですよ。例えば農家が農業で自立てきなくなったというのは、これは農林省の指導が極めてある意味じゃ過保護な面もあったわけです。農家をああいうふうに自立てきなくしたのは私は農林省だと思いますし、酒造メーカーを立ち行かなくしたのは私は大蔵省の責任だと思うんですけれども、これを聞いたって、そんなことないとおっしゃるのに決まっているから返事は求めませんけれども、あんまり統制されると個々のメーカーが工夫の余地がなくなるわけですね。  それからもう一つ、これは意見を言いますけれども、統制が長く続くと寡占状態というのが起こってくるわけです。特に酒の業界でも、例えば灘の生一本、あのメーカー、伏見の。あのメーカー、それから例えばウイスキーのサントリー、ビールのキリンというふうに、どうしてもこういう格差ができてきて、清酒の場合は下の方がどんどん淘汰されていくという状況にあるわけですね。それに対して、先ほどの清酒業転廃給付金ですか、三十三億円出しておられるけれども、三十三億円じゃしょうがないかもしれぬ。私はそういうこそくなというか、そういうなにを続けてくると、永久にこの問題は解決しないと思うのですね。だからどこかで思い切って自由化するということが必要なんじゃないか。  それからもう一つ、こういう統制を続けてくると、外国との競争力が弱くなっちゃうんですよ。農業もそうですね。これはほかの工業でもそうです。その辺をどういうふうにお考えになっているか、ちょっと御所見を伺いたいのです。
  184. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 確かにおっしゃいますとおり、清酒業者二千六百一ございまして、七割が非常に零細であるということで、なかなか経済的には立ち行きがたい状況にございますが、しかし経営者の皆さんはなかなか意欲的でございます。したがいまして、第四次近代化におきましても、基本的には自助努力と申しまして、自分たちでやっていこう、それを中心にいたしまして何とか頑張っていこうと、こういうスタンスで実は第四次近代化を考えているわけでございます。  そういう中におきまして、先ほど転廃給付金三十三億は余り意味がないということでございましたが、これはその三十三億をもって次の仕事につくというお金ではございませんで、とりあえず別の仕事に移るための残存市場の安定のための資金、並びに転廃しやすいための資金でございまして、その三十三億ですべてを解決するという趣旨ではございません。  なお、御指摘の効率化、自由化という問題につきましては、かなり第四次近代化が進みますと清酒経営者の考え方が変わってくると思うわけでございます。
  185. 木本平八郎

    木本平八郎君 次に酒税の件についてお伺いしたいんです。今度税が上がるということなんですけれども、私どうしても民間的な感覚がまだ抜けないからかもしれませんけれども、どうも理解できないわけです。ということは、税率を上げれば税収がふえると簡単に思っておられるんですけれ ども、先ほども同僚議員のなににもありましたように、下げるということも、税収をふやす、消費をふやして税収を多くするという手段だと思うのですね。まさか大蔵省が厚生省の片棒担いで、国民の保健上酒をなるべく飲まさないようにというお考えでもないと思うのですけれども、そういう点で本当に税収の極大化を目指して模索してシミュレーションを何回かやられたかどうか。  多分やったとおっしゃられるだろうと思いますけれども、私一つだけ例を申し上げますと、国鉄の問題でブルートレーンが空で走っているよりも、一万円でもいいからやれば、飛行機との競争にしたって、どんどん博多なんかはブルートレーン、夜行寝台を使えばいいんじゃないかと、こう言ったことがあるわけですが、そういう発想、民間的な発想を少々取り入れられる必要があるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  186. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 恐らく、委員がおっしゃっておりますのは、税率を上げると価格上昇をもたらす、そうしますと消費が減退して、税率引き上げをしても、税率引き上げない場合に比べて減収が起こるのではないかというようなことを今御指摘になっているんだろうと思います。  酒類消費につきましては、ただいま委員がおっしゃいましたように、いろいろなシミュレーションがありますし、それぞれ酒類業界でもいろいろな過去のデータに基づいてそれぞれの酒類の分析もやっております。私どももやっておるわけでございますが、その酒類によりまして、例えばビールのように気候に非常に影響されるような酒類のものもございますので一概に言えないわけですが、ただ酒類のような特殊な嗜好品と申しますか、致酔飲料ということでございますので、価格弾力性と申しますか、価格消費量にきちんとした統計的な説明がむしろつきにくいというのが一般論でございます。  それから過去の我が国酒類消費の実態を見てまいりましても、一番相関関係の高いのは所得水準でございます。それはもう現実に、昭和三十年代の後半から四十年代にかけて大変なスピードで酒類消費がふえたわけでございます。その背景にありましたのは所得でございます。  したがいまして、今回の場合も、もちろん過去の場合もそうでございますけれども税率引き上げますと、ある時期仮需が起こります。それから引き上げ後はしばらくの期間その反動がございます。しかし、一年間なら一年間にならしてみますと、その税率引き上げ幅にももちろんよると思いますが、いかに価格に対する反応度が低いといいましても、べらぼうに価格が上がりますれば、それだけ消費をヒットするということが考えられるわけでございますけれども、今回でございますと一番高いところで九%前後でございます。いわゆる大衆酒になりますと一%から四%ぐらいの小売価格に対する影響でございますので、委員が御懸念になるようなことは私どもは起こらないというふうに確信を持っております。
  187. 木本平八郎

    木本平八郎君 いや、端的な例が、例えば値段が高くなってきているから、しょうちゅうだとか、ちゅうハイだとか、ああいうものに移っていっていると私は思っているわけです。これまたこういう議論に巻き込まれると時間がなくなっちゃうんでちょっとやめます。  今ビールの話が出ましたけれどもビールの場合は、あれはおかしなことが行われているという感じなんですね。もう非価格競争だけで、それで容器の競争がありますね、ああいうこと。それから一斉値上げなんか、もうどう考えてもあれはおかしいわけですね。もう税が半分近い。酒の税金が半分超えると暴動が起こるという何か一般的なうわさもあるようなんです。うわさというか、経験則みたいなものが存在するというふうに聞きます。要するに、ビールの場合、仮に価格競争をやろうと思ってもできないわけですね。メーカーサイドで十円下げても小売段階では五円しか下がらない。五円じゃ、今度三百十円になりますが、こんなもの五円下げたって競争にならない。したがって、もうみんなずるずると高い方へ高い方へ寄せていく。これのしわ寄せが全部消費者にきちゃってるわけですよ。こういうことがいつまで続くかということを非常に懸念するわけですね。  要するに、これだけ高くなってきますと、少々なにしても流通段階でみな取られちゃうわけです。この問題は後でやりますけれども、外国のように強い酒には高い税金をかけて、それで弱い酒には税金を少なくするというのが本当だと思うんですね。その辺日本の場合めちゃくちゃだという感じがするんですけれども、どうしてこういう税体系、取れるものから取るということでこういう税体系になっているのか、ちょっとその点簡単にお聞きしたいんですがね。
  188. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 現在の酒類ごと税負担の基本的な枠組みができておりますのは、三十七年の酒税法改正でございます。これはたびたび申し上げておるわけでございます。  ただ、酒税負担酒類ごとに一体どういうふうに設定するかというのは、これは画一的に、一義的に、計量的に申し上げられるという性格のものではないと思います。これは過去におきます我が国酒税の沿革を見てもそうでございますし、各国の酒税負担を見ましても酒類ごとにいろいろなばらつきがあるわけでございます。  それは結局は酒類ごとの品質と申しますか、もちろんそれにはアルコール度数も関係はあると思いますが、それだけじゃございませんで、それの消費態様、例えばビールを例にとりますと、我が国の場合、ビールが先進諸国の中でもかなり高い負担をいただいておるということがございますけれども、その飲まれ方が、我が国の場合はまさに致酔飲料として、しかも明治以後入ってきた新しい酒でございます。西欧諸国なんかで見ますと、致酔飲料という側面のほかに止渇飲料と申しますか、飲料水がわりに飲むというような側面もあるわけでございますね。そういたしますと、その国の酒類消費の習慣なり生活様式全体の中から、そういったおのずからの負担水準というのが出てまいるわけでございまして、もちろん今の税負担体系がそれだけで極めて適正なものであるということは毛頭申し上げるつもりはございません。そのためにこそ酒類間なり紋別間の負担格差縮小を図るという問題が提起されておるわけでございますけれども、そういったふうに酒税負担を考えます場合には、単にアルコール度数のようなものだけで割り切るというふうなことではなくて、その酒類の品質の問題もございますし、消費態様と申しますか、飲まれ方、消費のされ方、その国の生活様式の中でその酒類の持っている意味、それからもう一つ酒類を供給する側の生産側の条件、これもやはり無視できないと思うわけでございます。非常に効率のよい体制で供給できれば商品そのものの担税力は高いという結果が出てくる場合もあるんでございますね。したがって、そういったものの総合された結果として酒税負担というのはお願いしておるんだと、こういうことになると思います。
  189. 木本平八郎

    木本平八郎君 この議論は、私も過去、議員になってからもう何回大蔵省の方とやったかわからぬ。同じことなんですけれども、ちょっとこの酒税の問題について一つだけ最後につけ加えておきたいんです。  要するに、今、中曽根総理は、大型間接税なんか全然考えないとかなんとかっておっしゃっていますけれども、今の財政の状況ではこれは不可避だろうと私は思うわけです。国民が全部見透かしているわけですね。ああいうことを言っていてももう六十一年には必ずやるよと見透かしているわけです。そのときに間接税の中で酒税というのは非常に大きなウエートを占めてくるんじゃないかと思うわけですね。そういうことになると、まず増税するためには不公平を是正しておくということはまず第一歩じゃないかと思うんです。不公平があるままこれをやりますと国民のふんまんが爆発する。したがって、今農民所得だとか漁民所得に一生懸命大蔵省はやっておられるわけですね。これは当然のことだと思うんですけれども、酒の 税金の問題も、みんなが納得する体系であるということは絶対必要だろうと思うんですよ。  ところが、はっきり言って、私の感じでは、何回御説明をいただいてもどうもゆがんでいる。おかしいんで、どんどんどんどん何か既成事実を積み重ねてきた。初め、昭和二十年くらいですか、あの辺ぐらいはまだよかった。あるいは特殊な事情があって皆が納得できたけれども、それがだんだんだんだん納得できない変な方向にゆがんできている。したがって、これは来年以降の間接税という点からも、もう一度原点に戻って、本当に日本の税体、酒税体系というのはどういうふうにあるべきかという点から検討される必要があると思うんですけれども、その辺いかがでしょう。
  190. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず大型間接税と申しますか、その問題は一租税政策の選択の問題ではございませんで、今までこの議論がされました経緯で極めて政治的なレベルの議論でもございますので、その辺になりますと私の答弁の域を出ます。そういうことではなくて、純粋な租税政策論ということで申し上げさせていただきたいわけでございますけれども酒税負担というのは、文字どおりこれは消費税でございますから、個別消費税でございます。したがいまして、その国の税体系で、例えば西欧のようなEC型付加価値税といいますか、一般的な消費税を持っているかどうかによって、酒税負担が、他の消費に対して相対的に、つまり同じ財源を確保するために、相対的に負担水準が一般的な消費体系を持っている場合と微妙に異なってくる、そういう傾向を持つということはもう明らかだろうと思うわけでございます。  したがいまして、将来の酒税負担をどういうふうにするかということは、その問題と切り離しては議論はできないわけでございますけれども、ただ、酒税につきましては、致酔飲料としての消費という側面と消費一般という側面がございます。したがって、ヨーロッパ等におきましても、アルコール課税としての酒税と付加価値税とが合わさったものが、現実のお酒という商品税負担になっておるということでございますので、将来の消費体系がどうなるかということによりましていろんな対応の仕方が考えられるわけでございますが、酒税に対して、その消費なりあるいは市場そのものに余り干渉をするような税体系でないということは、個別消費税であっても望まれるところでございます。したがいまして、そういった観点も含めて将来の課題であるということでございまして、現時点ではいろんな対応が考えられるということでございます。
  191. 木本平八郎

    木本平八郎君 時間がないんで、酒の問題については、最後に小売免許の廃止の問題について、ちょっとお聞きしたいというよりも、意見を申し上げたいんです。この問題は今まで、致酔飲料だとか、担税物資だとかいうことで、どうしても小売段階まで統制、免許が必要なんだという御説明を何十回となくお聞きしたんですけれども、最近地酒屋さんから私のところに、何というんですか、手紙が来まして、要するに、今の小売免許の制度だと、小売商はどうしても一流のブランド物、あるいは広告のよく効いているものしか扱わない、それでなかなか地酒を売ってもらおうと思うと大変なんだ、したがって、これは免許をぜひ廃止してもらいたいというなにがあるわけですね。  これをまた議論していると長くなりますので、その議論はちょっとやめます。  それで、どう考えても、これは酒税というのはメーカーから取るわけですね。ただ、小売や卸がつぶれるとメーカーがまた連鎖倒産しちゃ困る。したがって、全部コントロールしてメーカーの債権の回収を保証しているということなんですけれども、こんなことはどう考えても、我々の感じでは、国がメーカーの債権回収まで保証してやっている、こんなありがたい業界というのはないんじゃないかという気がするわけですね。この問題はもう何回も同僚委員からも出ておりますけれども、どうしても納得できないわけですね。それを致酔飲料だとかなんとか言って非常に強行にやっておられるんですけれども、私はこういうことが業界をゆがめていくんじゃないか。税金を取る方はいいですよ。取る方はいいけれども、国全体としてはゆがめているんじゃないかという気がするんですがね。あと一つほかの質問がありますので、これは簡単にお願いしたいんですがね。
  192. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 法制面のお答えにつきましては、主税局長が申し上げておりますので、実態面から申し上げますと、清酒メーカー二千六百一ございますが、小さいところはかなり直接小売店と取引がございまして、小売店の倒産が即メーカーに響くというような実態もございます。  それから酒税の納期が前月分は一月おくれの月末ということでございまして、かなり流動性が高い状態に置く必要がございますので、そういった実態の問題があるわけでございまして、酒税保全のために小売段階まで免許が必要であるということをこの際申し上げておきたいと思います。
  193. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで最後に、印紙税と料飲税の問題についてちょっとお聞きしたいんです。最近、代金の支払いが銀行振り込みになったために、例えば料理屋も公給領収証を出さない。そして大企業の場合は、前はいわゆる交際費の非課税限度があって、それは交際費であるということを証明しなければいけないので、みんな我々も伝票を書かされて、公給領収証を後でもいいから必ず添付させられたわけですね。ところが最近は、大企業については交際費は全部損金算入ということで、交際費であろうが何であろうが構わない、支払ったという事実があればそれでよろしいということで、国税庁も公給領収証の添付を要求しないしチェックもしないわけですね。そのために公給領収証を取らないというケースが非常にふえているわけです。私なんか行きますと、公給領収証を要りますか、要りません、それじゃ五%引きましょうなんということを平気で言っているわけですね。私もそういうふうがいいんだろうなという感じもするわけです。やっているというと後で問題が起こるからこれは何ですけれども……。  それで、印紙の問題もそうなんですね。銀行振り込みで払ったという事実が確認できるからわざわざ領収証をつくらない。そうすると印紙を張らないわけですね。こういうことで、銀行振り込みによって料飲税とか印紙税が取り損なっている。これは料飲税は地方税だからといって、そういう無責任なことを言われちゃ困るんで、これもちゃんと取るということ。それから公給領収証を押さえるということはその料飲店の所得も押さえられるわけですね。逆に押さえていけるわけですね。彼らは必ず帳面をつけなければいかぬということになるわけですね。そういう点で非常に漏れているわけです。  私ぜひお願いしたいのは、税務署でも税務監査をやりますね、各企業の。そのときに、ちゃんと領収書があって印紙が張られているかどうか、それから交際費についてはちゃんと公給領収証を添付しているかどうか、そのチェックをする。これは各企業にも要求できるし、料飲店にも要求できることだと思うんですけれども、その辺そういう指示を徹底される用意があるのかどうかということを伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  194. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) 私ども所得税法人税の調査を行う場合には、経費の支出につきましては、必ず証拠となるべき領収証があるかどうかということをチェックするわけでございまして、交際費につきましては、この領収証をチェックするということで基本的に事実関係の確認をし、所得の把握に努めているという実態でございます。  ただ、私どもとしては、法人税の課税におきまして損金算入を認められる交際費としての場合に、必ず公給領収証がなければこれは損金に認めないという立場をとるということではなくて、実質的に交際費として支出されたことが公給領収証を含めてもろもろの証拠書類で確認できれば認めるという立場をとらざるを得ません。  逆に申しますと、もしも損金算入をされない交際費について、損金算入されないんだから公給領 収証は要らぬじゃないかということで言われますと、これは交際費課税ということで現在法人税が租税特別措置法で、やっておりますことの執行が私どもとしては事実上できなくなるということで、私どもの立場としては、先生の御意見は確かに私どももおっしゃることはわかりますが、税務調査という立場から、必ず交際費に公給領収証がなければだめだということでは、ちょっと申し上げられないという実情だけは御理解いただきたいと思います。
  195. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  196. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記を起こして。
  197. 鈴木和美

    鈴木和美君 竹下大臣、私、午後の冒頭にビールの問題と通関手続の問題についていろいろなお話を承っておりまして、通関の手続の問題などについてはまだ委嘱審査のときにでも見解を聞かせていただきたいと存じます。    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕  そこで、お酒の関係につきまして主税局長の御答弁をいただいたものを、もう一度大臣との間でお話を聞きながら見解を賜り確認をしてまいりたいと思います。  そのまず第一は酒類間の税率格差縮小の問題でございますが、主税局長お話によりますと、今回の酒税税率引き上げの際に、それぞれ高いものと低いものと均衡をとるように縮小した、こういうお話がございまして、私は、それは税制調査会中期答申や懇談会の座長報告と趣旨が違うんじゃないかと思う、つまりあの答申は抜本的にあらゆるお酒の種類の問題を再検討して、上げるも下げるも、そういう適正な税率というものを考える、そういう意味縮小ということがあるんじゃないんですかというお尋ねをしたのでございますが、それは原則はそうだと思うというお答えでございました。これに間違いがあるのかないのか、大臣のまずお答えをいただきたいと思うんです。
  198. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 基本的には私、間違っていないと思います。
  199. 鈴木和美

    鈴木和美君 そうしますと、この問題が今大きな議論を呼んでおるわけでございますけれども、これからどういうようなスケジュールでどういうような展望でこの問題の取り扱いというものが具体的に俎上にのって今後検討されるという時間帯みたいなものの展望について、お考えがあれば聞かしていただきたいのであります。
  200. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 大臣のお答えになる前に、税制調査会答申には「酒類間及び級別間税負担格差縮小を図ることが適当である。」、これは昨年の中期答申でございますが、そのときに「酒類について適正な税負担水準を確保するための見直しを行う際には」と、こう書いてございます。五十九年度まさにその見直しを行う、負担水準見直し所得税減税財源との関係でさせていただいたわけでございます。今後、酒税税負担見直しの時期がいつまいりますかということに一つは関連してくると存じます。したがいまして、それが来年とか再来年とかいうふうなことで現在申し上げられる問題ではないというふうに御理解を賜りたいと思います。
  201. 鈴木和美

    鈴木和美君 それは財政当局としては大変都合のいい答弁ではないでしょうか。つまりお酒の問題が議論されるときにお答えがいつも同じなんですね。そして必ず検討するということが約束され、また勉強するということも約束されているわけです。五十年以降三年サイクルのようにいつも動いているわけですけれども、何か税率改正というか、税を上げるというときだけ取り上げられておって、根本的に平常時において適正な税率が幾つか、どんなものかというようなことを税率を上げるときでないときにしっかりした検討を私はすべきだと思うんですね。それが全然やられてないというのは財政当局の怠慢だと思うんですが、いかがですか。
  202. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) そういう御指摘でありますとすれば、これはもう御指摘のとおりでございまして、今回の税負担引き上げについてもしお認めいただきました後、私どもとしては、来年度以降にかけまして、この酒税だけに限らず、各税目につきまして、税制調査会が検討の方向を示されている問題について具体的に勉強し、検討を続けるということでございます。
  203. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は認めるわけにはいかないのであります。私は酒税値上げに対して反対であります。反対という態度をまず前段に明らかにしておきますが、あなたが、お認めしていただければ検討しますという答えと、若干ニュアンスが変わってきてますから今言うんですが、今のお話は、この法案が処理されたときというように理解してよろしゅうございますか。
  204. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 立法府でお認め願った場合ということで申し上げました。
  205. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一つ、大臣の答弁をいただく前に局長で結構ですが、先ほどのお話の中にも、ヨーロッパとか、アメリカとか、いろいろな外国の事例がたくさん出されまして、印象として日本のお酒は決して高くないというような意味のことのお話があったんでございますが、それは私に言わせますと、先ほどの文化論ではございませんけれども、それぞれの国々の特殊性がありますから、日本の所得水準とか、それから生活の態様などなどを考えてみた場合には、余り外国の例というのは参考にならないんじゃないかというように私は思うんですが、いかがですか。
  206. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) おっしゃるとおり、酒税のような個別消費税の問題につきまして、特に酒類ごと税負担は各国の歴史あるいは沿革によりましてまちまちでございますので、各国の例がそのまま参考になるということではないということは御指摘のとおりでございます。  それから先ほど私が外国の例を引いて申し上げましたのは、外国の例に比べて日本の酒税負担水準が低いんだというふうなことを申し上げたんではございませんで、まさに例えばビールのようなものは高こうございますし、蒸留酒のようなものは我が国のよりも高い国もありますけれども、低い国もございますし、果実酒のようなものでございますと、我が国の場合は低いというふうなことも申し上げながら、ただ、特に西欧諸国のように一般的な消費税を持っている国とそうでない場合、酒税に対する他の消費との関係で相対的に負担水準が高くなる傾向は否定できないというふうなことを申し上げたつもりでございます。
  207. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一つ、今度は大臣にお尋ねいたしますが、私の間違いであれば訂正していただきたいんですが、衆議院段階で大臣がお答えになった中で、アルコール中毒との関係答弁の中に入るんですが、日本の平均寿命の長さと知識水準の高さはアル中が少ないことに起因していると思う、こういう御答弁が載っているんですが、これはどういう意味でございましょうか。
  208. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 私、そういうお答えをいたしましたのは、いろんな質問がございましたのです。要するに日本の平均寿命が今世界一になった、男性が七十四・二二歳、女性が七十九・六六歳。それが昭和二十二年が五十歳でございますか、昭和三十三年が六十三歳と六十九歳、そういうスピードでこの平均寿命が伸びていったということは世界一になった、世界一のお話をいろいろしまして。それからもう一つは、知識水準が、例えば文盲率に見るところ〇・二%ないし〇・三%、第二番目がアメリカで一%で、その次が先進国、大体三、四%等々。高等学校進学率で見れば、九四・五%でこれも世界一になった。そういう世界一になったというのは、いわゆる飲んだくれというのが、アル中患者、アル中がいないというのもその一つの証左ではないか、こういうような意味で、日本がいろんな意味で世界一になってきたというところにアル中がいないというのは、それだけに健康を大事にするという摂生というものが、日本国民の中に徹底したからそういう世界一になったということで申し上げたわけであります。比較して税金が高いからそれで酒飲まないからアル中が少ないというような意味で申し上げたわけでは必ずしもございません。
  209. 鈴木和美

    鈴木和美君 私は、今大臣が後の方に付記されましたけれども、前後の質疑の経過などから見ると、大臣のお答えになった部分は、今後段に述べられたニュアンスが大変強いと実は議事録で拝見させていただきました。つまり、高い、余り飲まない――別に私は糖尿病の議論をするつもりじゃございませんけれども税率がむしろ高いことが、健康、摂生という面に作用しているんじゃないか、あの文字面からいうと明らかにそう読めるんです。これはたばことお酒というものがいつも議論になって、この税の問題のときに中心のテーマになるわけでございますね。ですから、大臣のその考え方というものは、後ほど直間比率のこともお尋ねしますが、たばことか酒とかというものは税金が高い方がむしろいいんだと、これはそういう論も現実にあるんですよね。その方を大臣は志向されているのかということにうかがえる答弁のように私は伺ったわけですよ。もう一度その点の関連性について明らかにしていただきたいと思うんです。
  210. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは非常にまじめな議論であるかどうかは別といたしまして、従来、大体田舎のお酒屋さんとお医者さんというのは地方にあっては田んぼをたくさん持っておった。それはどういうことからそうなったかと申しますと、必ずいわゆるアル中が農家におりますと、それは自作農から小作へだんだん転落していって、結局酒屋へ払う酒手がないから、酒屋へだんだんだんだん田んぼが集まっていった。もう一つは、肺病持ちがおりますと、今のように健康保険なんというのはございませんから、したがってお医者さんというのは地主がだんだん多くなる傾向にあった。そういう古い歴史のお話を念頭に置きながら、そうして今日見てみますと、したがって物すごく古くから、足利時代からいわば財政物資として酒というものが位置づけられておる。そして終戦後は、私ども国会へ出た当時もまだ恐らく酒税が全体の税の二〇%ぐらいを占めておった。したがって、財政物資としてのシェアはうんと落ちておるけれども、日本の国の税体系の中で、間接税の中の非常に大きい部門に酒税というものがあった。そのことが考えようによっては、日本人がその後知識水準の向上と相まって、健康になったゆえんのものかもしれないと、こういうような趣旨のことをお話をいたしたわけでございます。
  211. 鈴木和美

    鈴木和美君 くどいようですが、そのお答えは別に税金が高いから健康が保持されているというような意味ではないということに改めて伺ってよろしゅうございますか。
  212. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 結構でございます。
  213. 鈴木和美

    鈴木和美君 先ほどの私の質問の中で、主税局長から、家庭用のが今回二十五円上がるということについて、三百十円になる、三百十円になるということは、減税の効果が非常に相殺される、二割強、とにかく年収五百万の人で五万五千二百円取られる、減税効果で四万八千六百円でございましょうか、そんなことで大変庶民泣かせの酒税値上げではないのかということでお尋ねしたところ、いや、そういう面もあるかもしらぬけれども業務用というのが三七%というお答えだったでしょうか、二八%だったか、ちょっと忘れちゃったんですが、そういうお答えがありましたですね。つまり家庭だけにそう負担がかかっていることにはならないんじゃないかという意味のお答えがあったんですが、もう一度主税局長、ここのところをお答えいただけませんか。
  214. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) ビール業務用、これは五十七年のケースで申し上げますと、三二・七%という数字をたしか申し上げたと思うわけでございます。これはどういうことかといいますと、全国の小売店が売るビールの売り先が料飲店向けのものが三二%あるという意味でございます。  それから、それとの関連で私が申し上げましたのは、まさに委員がおっしゃるように、所得税減税も行ったとしても逆進的な傾向を持つ、しかも酒類消費量の三分の二を占めておるビール税負担引き上げるわけだから、それが逆進的と申しますか、税負担を相殺する、減税効果を減殺するということの御指摘に対しまして、その減殺するということは否定できませんけれども、私ども家計調査によって試みの試算をいたしましても、今回の税負担酒税負担引き上げによりましても、各階層に所得税減税効果が及ぶということを申し上げたのと、もう一つは、ビールの点につきましては、ほかの酒類と違いまして、直接家計消費されるほかに料飲店で消費されるものはもちろん、家計の小遣いから出る部分もございましょうし、会社の交際費から出る部分もあるんでございましょうけれども業務用割合が大きいというのは、酒類消費のいわゆる担税力商品の持つ担税力という点から言えば、専ら家庭消費される度合いの大きい酒類よりもある程度御負担をいただけるということではないのかということも申し上げたわけでございます。
  215. 鈴木和美

    鈴木和美君 もう一度事務当局にお尋ねしますが、三二・七%という業務用と言われている中で、今局長がおっしゃったみたいに、つまりお小遣いから消費するという部分と会社の交際費から出ているというような部分が何%ですか。焼き鳥屋とか居酒屋とか赤ちょうちんとか、そういうところの方に消費されている方が大部分だと私は思うんですが、その割合がどういうことになりますか。
  216. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) それは、私どももそういうデータがもしあるとすれば、非常に今後いろんな問題を考える場合に興味深いと思うわけでございますけれども、残念ながらその辺はつかめないわけでございます。  それから会社等で、例えば職員の福利厚生のような観点からお買いになって、例えば慰安会なんかで消費されるというような場合もあるわけでございましょうけれども、その場合には先ほど申しました業務用には入ってこないわけでございます。その辺を一体、全体としてどう考えるかという問題はあろうかと思います。
  217. 鈴木和美

    鈴木和美君 つまり大臣、お聞きのように、どんなに強弁をされたり事務当局として苦肉の答弁をされても、今回の酒税値上げというものは、業務用というような言葉を使っても、これは大衆の負担に、消費者の負担にということが私は当然だと思うんです。それを余り言い回しをしないで、率直にお願いするならお願いするような言い方をすればいいと思うんですね。それをああ持って回った言い方をするから、結局、腹立ってくるというような感じにならざるを得ないわけですね。私はそう思うんです。  そこで大臣にお尋ねしたいんですが、そういうことから考えますと、酒税全体の、先ほど申し上げました酒類間の税率の均衡を図るための検討というのを急いでいただかなきゃならぬと思いますが、何といっても一番高いのはビールだと思うんです。先ほど主税局長に、もうビール税率限界に来ているんじゃないですかというお尋ねをしましたら、昭和何年かの例を出されて、いや五十何%のときもあったというお答えです。しかし私は、今多く問題にされている中で、税務当局もまた大臣も、酒の税に関する哲学というか基準というか、そこのところをはっきりしないといつも問題になると思うんです。  つまり、アルコールの度数ということが先進諸国でとられているみたいな基準であるなら基準であるというような、つまり前提を置いてどうするかというような議論をしてみればいいし、そういうものがないままで、ただコントロール、調整だけの、結果として、みそもくそも一緒になって出てくるというようなやり方に対しては私はおかしいと思うんですが、大臣がこれから財政当局の責任者としてそういうところに臨む場合の物の考え方、哲学というようなことについてお聞きいたしたいと思います。
  218. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 酒税というのはその国によって、例えば日本酒は俗に言う国酒と申しますし、あるいはヨーロッパ諸国での、フランスなんかブドウ酒がいわば国酒であるかもしらぬ。そういう俗に言う国酒というような位置づけをされる酒というのは、大体そこの農業と大変関連性が深 いと思うわけであります。したがって、農政の問題と付随して成長してきておりますから、各国によってそれぞれ税率に大変な差があるというふうに私も理解をいたしております。  そこで、まず酒税の哲学ということになりますと、およそかつては税収の二〇%ぐらいを酒税そのものが負担しておったという時代もあります。しかし、いずれにしても間接税でございますから、だからある種の逆進性があることは、これは事実でございます。  それで、一つ議論としては、従価税従量税の問題が必ず最初の議論としてあり得ると思うわけであります。その従価税従量税ということになりますと、私も勉強させられたことがございますが、非常に興味本位の言い方をいたしますと、    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕 結局私は、なぜ従量税かということになると、お互いの生活の中で、酒を千円買ってこいと言う者はおらぬから、酒は一升買ってこいとか、何本買ってこいとか言うから、やっぱり従量税だなと、百円酒を飲むと言う者もいませんし、必ず一杯飲むと言いますから、それで従量税なのかなと、こういう素朴な割り切り方を私自身してみたことがございます。そこから議論をして、しかし従価税従量税議論は、まだこれはあるいはエンドレスに続くかもしらぬ。今でも従価税の方がわかりやすくていいじゃないかと、こういう議論をなさる方がいらっしゃいます。そういう一つの問題があると思います。  それからビールの場合は、最初は、経済が今のように成長していない時期は、ビールというのはハイカラな飲み物だったというふうに思います。そして専ら致酔性ということに焦点を置いて考えますと、ビールにはもう一つ、いわゆる止渇性というんですか、渇きをとめる止渇性という要素がある。無かんの酒を飲んでのどの渇きが直ったというのはありませんから、やっぱりビールは止渇性というものがある。そういうところに着目されて、相対的に私は税が高かったと思うわけであります。  それと、今度は国民の嗜好がだんだんだんだんビールの方へシフトしてまいりまして、だから酒税自体から見ても五五%もビールにお願いをしておると、こういうことになったわけでございますので、そうするともう一つ議論として、ビールは一物一価でございますから、特級、二級がないと申しますか、そうすると日本酒の場合、特級、一級、二級、これは必ずしも標準を示すものじゃございませんけれども、オールドとかいろいろな問題もあ一でまいりますと、一つは――今聞いてみますと、かつて三十七年まではアルコールの度数によって非常にこれが切られておりました。これは考えようによれば、致酔性ということを対象にしたかもしらぬなあと思うのでございます。  かれこれの歴史をずっとたどって今日に至りますと、高級料亭でしょうちゅうを飲む人が多くなったというだけでなく、所得の平準化と一緒にだんだんそういう級別間格差というものが普遍的になってきておるという事情はあろうかと思うのであります。そういうことをもろもろ総合的に考えて、まだまだ議論を残しながら今日提案しておるわけです。  今日の提案の分は、今鈴木さんからも御指摘を受けましたが、ある意味においては、仮に減税ということがなかりしといたしましても、三年目でございますから検討の対象にはなっておったと私は思います。それは要するに、諸物価の末端価格が上がっただけ率が落ちておりますから、それの手直し程度のことは当然考えたかもしらぬ。たまたまそこに減税というものがありましたので、その増減税見合いで、これと間接税法人税と上げさしていただいて見合いにしたわけでございますから、したがって、これは上げない方がよかったではないかと言われればそのとおりだと私は思うのです。したがって、たまたまそういう時期に到来しておったと認識できる対象を今度は減税財源としてこれをお願いしておる。そういう認識の上に立っておった方が正直じゃないかなという御指摘は私も同感でございます。
  219. 鈴木和美

    鈴木和美君 あと私の残り時間一、三分しかございませんので、意見だけ述べておきます。  私は今の議論を通じながら、後ほど今度はたばこの法案がここへかかってくるものですから、税の問題についてアルコールとたばこの問題との兼ね合いで深刻にまた真剣に考えているつもりです。同時に、先般も大臣にハイライトは幾らですかとお尋ねしたときのように、高給者も汗水流しているサラリーマンも、また年金生活者も、この間接税という意味からすると、逆累進課税の大変強いものですから大変不公平が生じてくると思うのです。そういう意味では、これからの税の検討に当たって本当に直間の比率というものは一体どれぐらいがいいものかということの正しい審議議論と、もう一つは何といっても、この六十年、六十一年の財政状況を見たときに大変なことがくるわけですから、もっともっと率直に国民の前に述べておかないと、政治への不信というものが助長するように思うんです。  そういう意味で、もう答弁要りませんから、どうぞ検討をしっかりお願いを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  220. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) ありがとうございます。
  221. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 まず最初に、二十三日に本会議場で御質問申し上げたことを中心に論議を深めさせていただきたいと思っております。  今も再三御質疑がありましたけれども、もう一遍、日本とサミット各国との酒税の比率についてお伺いいたします。  というのは、記録を読んでみますと、大臣は、「少なくともサミット先進国における酒税は日本が高い」と、こうおっしゃっておるんです、ここで。ところが、すぐその後に、しかしビール我が国は高いけれど、何はどっちが高いと、こういうふうなことで、薄めた論議を進めておられる。ですから、明らかにしておかなければならぬのは、私が御質問申し上げておるのは、国税収入の中における酒税割合が、日本はサミット先進諸国の中で一番高いですね。これには、高いですとか、高くないです、だけを言ってくださればいいんです。しかしながら、というやつは要らないんで。
  222. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これはおっしゃるとおり高いです。
  223. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 論議を薄めてしまいますんでね。  この酒税の問題を論議する場合の一番基礎に、日本は酒の税金が、いろんな発展途上国もありますから日本より高い国もあるかしらぬけれども、少なくとも我々の生活レベルなり、論議の対象になる諸国の中では日本が一番高いんだということを、薄めない論議の中ではっきりしておきませんといけないと思うんです。日本が一番高いんです。いいですか。  それからもう一つあるんですが、実は「今のお話にもありましたように、まさに嗜好品としての性格に着目した税でございます」、こう大臣は答えておられるんです、そのすぐ後で。ところが、私は何にも話してないんですよ、嗜好品というようなことを。私が全然お聞きもしていないことを、上手に御答弁の中では大臣自身の考えをはめ込んで、いかにも私が嗜好品と言ったような調子の記録になっているんです。これは大変お上手なのに感心したんです、読み返してみまして。私はそういうことを言っていません。  むしろそういう点で、一体酒というのは単なる嗜好品だろうか。私は、大臣がそういうふうに考えているとすれば、まさにこのことから考え方を新たにしていかなけりゃならぬ。私は、酒というのは嗜好品であると同時に、それぞれの民族あるいは国、そうした歴史と文化を反映して今日に至った、いわば文化的な所産であるというふうに理解をしておるんです。単なる嗜好品じゃないんだ。そういうものに世界一高い――世界一は言いませんが、少なくても先進国では高い税をかけているんだ、この認識を二つ目に持っていただかないといけないと思うんです。単なる嗜好品でなくて、それぞれの文化的な所産でもあるというこ とについて大臣のお考えをまず伺いたい。
  224. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 特に国酒というものは、私はまさに文化の所産であると思っております。しかし、致酔性があるということにおいては嗜好品であるということを否定できないではないかと思います。
  225. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 ですから、私は嗜好品ということを決して否定はしていないんです。嗜好品というのはたくさんあります。たくさんありますけれども、その中で酒というのはそうした歴史と文化の所産であるという一面も持っているということを御認識いただきたい。国酒というふうなことには多少問題があると思うんです。例えば日本酒、民族酒だと。確かにかつてそうであったでしょう。しかし今は交流が非常に深まってきまして、そういう特性が薄れてきております。第一、外国から入ってくる粗製アルコールを蒸留して三倍増酒にしたのがこれが国酒と言えるだろうか。伊勢の皇大神宮で今でも上げている黒御酒とか白御酒というふうな昔からのつくり方でちゃんとやっているんだったら、これは国酒と言えるかもしらぬけれども、今ちまたにはんらんしている日本酒、これが国酒とは言えない。そういう側面ももう出てきている。この認識も持っていただかないと酒の紋別格差とかいろんな論議に入っていけないんです。簡単に大臣が清酒は国酒だというふうな状態では今やなくなってきている。それをもとへ戻そうというふうな動きもあります。だからこそそれをもとへ戻そうというまじめな日本酒のメーカーに対してはできるだけ応援しなきゃならぬと思っておりますけれども、一般論としてはちょっと問題があると思いますが、いかがでしょうか。
  226. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは酒の歴史から来る国酒という言葉であって、今、日本の国酒は何ぞやと言えば、またそれは日本酒と言うでございましょうけれども、いわゆる歴史的な経過からする国酒であって、国民全体が命これこそ国酒だという認識をしておるとは私も思いません。嗜好の大変な変化もあっておるというふうに理解しております。
  227. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 お米でつくった酒が確かに日本の歴史と伝統、生活文化の中から出てきたものであるということは、そのとおりだと思いますけれども、だから現状がみんなそういういいお酒ばかりかというと決してそうではない。ここに、今お酒の問題、税の問題を考える場合に、我々としては十分留意しなきゃならないこともあるんで、そこら辺の言葉遣いというものは、厳密にしながら委員会の論議は深めさしていただきたいと思っておるわけでございます。  なお、私は先日の本会議の席上で、茅台だけが中国を代表する酒でないですよと。時間の関係でそのあと申し上げることができなかったんです。  酒の文化論の中で論議を深める上で少し言及さしていただきますと、大体貴州を中心にした茅台酒、これは紅軍が西の方へ移動したとき、茅台というあたりに長期間駐留したんです。そうすると当然そこにある酒を飲みます。若き日の毛沢東とか周恩来、これらが若き日に痛飲した酒が懐かしくて、北京に行ってからも茅台、茅台。これは無理はないと思うんです。しかし、杜牧の詩にある牧童が、酒のあるところはどこだと言って指さす方を行ったら、杏花村というところへ着いたと、こういうふうな杏花村には汾酒という酒があります。ここの人がたまたま貴州へ行って、ここでも我が郷里のような酒ができるんではないかといって始めたのが茅台酒なんで、そういう意味でいろんなそういう歴史的な形の中からいろんなものが出てきて、今茅台、茅台と言っておりますけれど、私は舌足らずにこの間は茅台だけが中国を代表するものではないと言ったのです。  それはそういう歴史的なすべて所産だ、文化の所産だと、こういうふうに理解をしていただかないと、単なる致酔飲料とか、あるいは嗜好品というふうな低次元の論議の中で酒税の問題を片づけたくないと思うんです。その点について、ひとつ私の今申し上げたことに対する御理解いただけたかどうかお答えいただきたい。
  228. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これは日本にあっては歴史的に、概念的に国酒と言えば日本酒を指すと。そうなった場合、日本酒にはそれはいろいろな文化というものがずっと続いてきております。強いて致酔性ということを一番先に酒に求めたのはヤマタのオロチ退治と聞いております。あれはヤマタのオロチに酒を飲ましてそれでやっつけた。これは酒をいわば相手を酔いつぶらすという戦闘の手段に使った。だが、酒は百薬の長とか、いろんな言葉がございますが、酒というものにまつわる故事というのはすべてその国の文化というものと一緒にずっと今日まで来ておるという認識は私もひとしくしております。したがって、清酒の場合は、まあ正宗とか、いろんなのに正宗なんてつけているのもやっぱり祭政一致とか、いろんなそういう歴史とか文化の所産ではないかなと思っております。
  229. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大臣のお国の方の物語ですからヤマタのオロチが出たんだと思います。しかし、あれも見方によれば、酒という文化を持っている民族が、酒という文化を持っていない民族の方が酔いつぶれやすいんで、上手に懐柔するのに使ったという見方もあるわけで、あれだけ酔いつぶれてしまうということはきっと初めて飲んだんでしょう。そうすると、酒を持ってない、そういうものの比較神話学の中における比喩だと思うんですよ。ですから、そういう意味でも、お酒というのはそういう大事な、同じ嗜好品でも、今大臣がのんでいるたばことは大分違うんで、たばこは百害あって益なしという、酒は決してそうじゃないんで、致酔飲料だ、致酔飲料だと何か悪いもののような言い方はちょっと非常に遺憾だと思うのです。そこら辺はひとつ十分酒税を担当する大臣として、常に心しておいていただかなけりゃ困るということを申し伝えて先の方に進みます。  それから流通問題について大臣はこう言っているんですがね。輸入ボトルの逆ざや問題、その他ですがね、「この流通段階の問題等については今の制度ではいかんともしがたいということになろうかと思われます」と。これは答弁になってないんですよね。これは「いかんともしがたい」ということになれば、これは矛盾はお認めになっているからいかんともしがたいという表現になったんだと思うのです。これは主税局長も先ほどから再三同僚議員の質問に対して、表現は違いますけれども、現行制度の中でいかんともしがたいというような意味のことを再三お答えになっていましたね。お答えになっていましたね、言葉の表現は違うけれど。
  230. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今御指摘をいただきました問題は、前国会の当委員会での丸谷委員の御質問に対しまして、いかんともしがたいと申しますか、現行の酒税法の課税標準というものが、国産酒につきましてはメーカーの蔵出し価格であり、それに対応するものとしては国内の流通段階に入るときの価格つまり輸入酒につきましては保税地域からの引き取り価格、CIFプラス関税が課税標準になる。そういうことからいたしますれば、その後の価格展開といいますか、流通マージンとの差等によりまして、末端価格に対する税負担の逆転が生ずるということを解消するともしするなれば、小売段階課税方式とか、あるいはヨーロッパのような付加価値税のような課税方式とかいうものにいたしませんと、この問題は解決できないというふうに従来からお答え申し上げているところでございます。
  231. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、主税局長答弁としては私了解したんです。しかし、大蔵大臣の答弁としていかんともしがたいということでは納得できないんです。いかんともしがたかったらどうするんですか。これはやはり大蔵大臣が主税局長と同じような現行制度でいかんともしがたいというだけでしまったんでは、ちょっと私はいけないと思うんです。大臣なんですから、じゃどうするんだと。矛盾は認めているんですから、これは何とかしていかなきゃならぬとかなんとかという御答弁がなければ、本会議は言いっ放し、聞きっ放しなので私は万やむを得ないと思いましたけれども、きょ うはそういうことではいかんともしがたいんです。(笑声)〇国務大臣(竹下登君) これは要するに、私はこの問題いつも、サミットでは必ずしもございませんが、よくアルコール飲料と申しますか、酒の関税問題、関税問題を外国の方からいつもよく言ってまいります。そうすると現実、末端価格というものは本当はマージンの問題さえあなた方が考えられれば十分競争できるようになっているんだよということを絶えず私なりに説明しておるわけですね。それは向こうの商慣習からきて末端における付加価値税にでもすれば別ですが、そういう制度でないわけです。向こうから輸入をいたします。それが一つの契約に基づく流れによって末端の小売店にも行く。歴史的には最初はまさによそ物は高級酒だという感覚で、本当に高いから贈答品その他に売れたという歴史があったんだろうと思います。今でも若干ございますよね。我々のところへ本当はサントリーを持ってきてくれりゃいいんです、わざわざジョニ黒なんか持ってこなくても。我々一同に味がわかるわけじゃございません。今でもその傾向がありますが、流通段階のマージン問題は、我が国既存の契約している方と向こうさんとの話し合いをもう少し詰めていけばいいんじゃないかなあということは、常日ごろ感じておりますから、そういうことを絶えず相手方さんには私も言っておるところでございます。  要するに、関税は関税として、それもだんだんだんだん下がっているよ、そうして酒税酒税としてちゃんと日本の酒より特別余計かけているわけでもないんだよ、ただ、末端において贈答品等にしか使われてないというのは、その間の各段階のマージン問題じゃないですかと。その辺は自動車の大型の外車も若干似た傾向ございますけども、絶えずこれだけ貿易問題が議論されるときに相手方さんに注意は喚起してきておるつもりでございます。
  232. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 この問題は関税以降の問題なんです。ですから、私はこれは外国との関係において云々すべき問題じゃないと思うんです、入ってからの問題ですからね。そして関税がかかって、それで蔵出し価格と同じように扱っているところから起こる問題で、まさに国内問題なんです。国内の問題の中で逆ざや現象が顕著に出てきておる。このままでいくと、また今度の改正でこれは広がると思います。ですから、大臣はいかんともしがたいと突っぱねるんでなくて、そうした矛盾に対しては前向きに善処をしていただかないと困るんじゃないかと思いますよ。
  233. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは毎度同じことを申し上げているわけでございますけれども、蔵出し課税という建前をとっております。これは酒税のみならず物品税もそうでございます。したがいまして、国内のまさに問題であるということは御指摘のとおりなんでございますが、国内の流通段階に入りますときの価格ということになりますれば、国内製品についてはまさにメー力ーから出るときの価格、輸入品につきましては保税地域から引き取るときの価格、そこで内外の差別ということになるわけでございます。  したがいまして、末端の小売価格に占めます税負担を実はそろえるのが望ましいんだということでございますと、繰り返しになって恐縮でございますけれども小売段階の課税とか、あるいはECタイプの付加価値税のようなかっこうの課税方式にさせていただくとかというふうにいたしませんと、この問題は解決できないわけでございまして、先ほどの大臣の答弁とも若干関連するわけでございますけれども、仮に今の課税標準の扱いを変えました場合、恐らく日本に酒を輸出している国、これは物品でも同じでございますけれども、恐らくむしろ内外差別という誤解をあるいは持つ問題でもございます。大変難しい問題でございます。
  234. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 これは今の税法の矛盾がこういうところにもあらわれてくるんだと思います。そうかといって、一方では国内産業をある程度守っていかなきゃならぬという点で大変苦しい問題も含んでおると思いますし、その点では今の牛肉やオレンジと同じような意味での問題も含んでおります。そういうことから考えまして、これは政治の分野の問題で、何といいますか、行政の技術的な、あるいは法律をつくるということだけで解決のできないいろいろな問題を含んでおる。ここら辺を、大臣、御理解いただきたい。そういう牛肉やオレンジと同じような要素も入ってくるし、国内の今の税制の矛盾も入ってくるし、ほかの酒との関連も出てくるし、関税との問題も出てくる。そこで、いかんともしがたいでなく、一歩踏み込んで大臣にしていただかないと困る。主税局長の御答弁としてはそれより踏み込めないと思うんです。あとは政治家としての大臣の判断の中で、これはしようがないんだと言ってしまったんではね。  もう少しこちらの方から申し上げますと、酒税問題懇談会、そこの中でも指摘している事項なんですから、その指摘をしている事項くらいの御答弁は私はきょうはいただけないと困ると思うんですね。本会議場ではいかんともしがたいで突っぱねられたけれども、きょうはそうはいかない。この問題の矛盾、そうしてこういうのに対して酒税問題懇談会ですか、あそこの答申でもちゃんと出ているんですから。
  235. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 酒税問題懇談会でこの問題が議論に出ておることは御指摘のとおりでございまして、そこでの書き方は、私が先ほど申し上げたことと同じことが書いてあるわけでございますが……
  236. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 もうちょっと突っ込んでいるでしょう。
  237. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 「流通市場に入る際の価格として国産品の製造者販売価格に輸入品の保税地域からの引取価格を対置させる仕組みは現行の間接税に共通する考え方であり、この点は、基本的には間接税制度全体のあり方として慎重に検討するほかない」というふうに書かれておりまして、大臣の答弁にございます、現状ではなかなかやむなしという気持ちもにじみ出ているような文章にもなっているわけでございます。
  238. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 しかし、いかんともしがたいと突っぱねてないんですよ。検討しなきゃならぬと。だから、大臣の御答弁をいただけるように私は一生懸命申し上げているつもりなんです。この本会議のこれじゃ困るんだということですよ、私は。懇談会の答申の方がもうちょっと踏み込んでいるんです、一歩。そこまでは大臣が答弁できないことないと思うんですがね。いかがですか。
  239. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) これはなかなか難しい問題でございます。だから結局、そうなると、間接税制度全体のあり方として検討していかなきゃならぬ課題ではないかなという感じがしますですね。
  240. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そう言っていただかないとね。この本会議場の記録のように突っ放されたままでは困るので、今のお答えはまあ一歩踏み込んでいただいたので結構だと思います、それ以上はお答えできないだろうから。ただ、前回のように、いかんともしがたいということでは困るので、今の御答弁をもう一回確認する意味で、もう少し歯切れよく言っていただきたいと思うんですが。
  241. 竹下登

    ○国務大臣(竹下登君) 基本的には間接税制度全体のあり方として慎重に検討すべき課題であると認識いたしております。
  242. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 はい。  それで、その慎重に検討してもらう課題で実は申し上げたいことがあるんです。先ほどから酒類間の税に非常にでこぼこがあると、こういうことが再三議論になっております。多少認識の違いがあると思いますので、主税局長から御答弁願いたいと思うんです。ワインの税金は三十何円というふうなことを言っておりましたけれどもね。例えばサントリーのシャトーリオンとか、それからマンズのカベルネ、こういうのが二千円で、七百二十ミリリッター、四百五十三円なんですよ。三十何円じゃないんですからね。これはどういうんですか。どうしてこんなにとられるんですか。
  243. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 御案内のとおり、果実酒については極めて特徴的な税率構造になっておりまして、まず従価税制度が採用されているわけでございます。リッター当たり九百三十円を超えますと従価税が適用されるわけでございますが、その場合の税率は、従価税でも一番低い税率で五〇%でございます。それ以下の部分従量税率でございますが、これも従量上位と従量下位と、リッター当たり四十四円九十銭のところで従量税率の上位、下位というふうに区分はされておるわけでございます。  で、果実酒につきましては、御案内のとおり、そもそも課税になりましたのが歴史的にも非常に浅うございます。かたがた、従来から先ほど来議論が出ております米を原料といたします清酒などに比べまして、いわばわきのお酒という位置づけでもございましたし、それから地域的に非常に当時限定されておりました。それからブドウの栽培農家がいわば副業的につくっておられたというふうな経緯もございまして、経緯的には税負担水準酒類の中では一番低く設定してあるということでございます。  ただ、今御指摘になりましたように、従価税のものが適用されるものにつきましては、従量税適用のものと当然負担割合は変わってくるわけでございます。
  244. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そこのところは、先ほどは何か同僚委員の質問に対してうなずいて、ちっともそういう御答弁がなかったんですよね。ですから、聞いている者にしてみると、ああ、ワインは三十何円なんだなと、こういう認識しか持たなくなっちゃうんです。ワインの場合も、従価税の制度の中で日本酒の特級が高いように値段が高くなれば税がどんどんと上がっていく。こういう仕組みになっているんで、必ずしも全部従量税でないんだよと、ここまで御答弁していただかないと皆さん誤解しちゃうんですよ。二千円で四百何がしですからそんなに安くないんですよ、ちょっとした酒になると。そうでしょう。そういう点もう少し親切に御答弁をしていただかないもんだから余計に酒類間の格差というふうなことを言うことになるんです。  酒類間の格差ということになりますと、先ほども話が出ておりましたけれども、大企業のつくる酒とワインのようなごく零細な企業のつくる酒と比較することがどだい無理だと思うんです。外国の例を引くのが大蔵省はお好きのようですから、ある国々のように、あれじゃないですか、酒税にも累進課税を採用したらどうですか。そうするとまことにうまくいくと思うんですよ。いかがなもんでしょう。
  245. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今、酒税に対して累進課税とおっしゃるのは、基本的には従量税率がありまして、それを価格分別に税率を高くしていくということであるいはおっしゃっているんだろうと思いますが、それは実質上は極めて従価税に近い形での従量、従価の組み合わせという考え方にも通ずるわけでございまして、酒類課税方式につきましては、我が国の場合は従量税率が基本でございますけれども、非常に価格帯が広い酒類になりますと、高価格酒について従量税率では負担の公平上問題があるということで従価税が今設定されておるわけでございます。  しかし、この従量、従価の組み合わせについては、酒税問題懇談会報告なり、昨年十一月の税制調査会答申にもございますように、今後の我が国におきます酒税課税方式の基本的な検討を要すべき問題点一つでございまして、税制調査会考え方は、従量税従価税を適宜に組み合わせなきゃならない、その場合においても基本的な方向としては、価格帯の広い酒類については従価税の範囲を広げていくべきだというふうに示唆されておるわけでございまして、その場合の一つの行き方として、今おっしゃいました累進税率という言葉がいいのか、あるいは価格分別の税率構造といった方がいいのかもしれませんけれども、そういうものとして直ちに構築するのかどうかとは別にいたしまして、一つの検討の方向といいますか、検討する場合の一つ問題点であるということは御指摘のとおりだと思います。
  246. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 私の方もちょっと説明不足だったと思いますが、私の申し上げますのは、例えば同じビールならビール酒類の中で一定量を超えた分については累進課税にしていく。こうしますと零細な企業というのは非常に弱いんですから、大企業でうんともうけた人からはたくさん税金をいただいてもいいことになるんじゃないかと、こういう形で申し上げているんです。  それから酒類間の格差、これはそういう考え方に立ちますと、各酒類間における原価というのは一体どうなっているんだということも見ませんと、ただリッター当たりあの酒とこの酒、高い、安いと言いましても、これは比較することがどだい無理なんです、本質的に。例えば昔から日本酒の場合はおおよそ酒一升、米一升と言ってましたわね。今、酒米でも三百五十円、もっと高いのもある。二級酒の一万円なんというやつは四百六十円ぐらいの越後の亀の尾とかという原料を使っているそうですから高いのもありますけれども、まあ大体三百五十円くらい。これで水を入れて一升になるんです。ところが、ワインの場合には水を入れるわけにいかないんです。今、「甲州」なんというのはキロ当たり三百円なんです、原料価格が。キロ三百円で、しぼって七五%にとめており引きしますと、大体七百二十cc一本ですよ。そうすると七百二十ccで原料だけで三百円かかっているものと、原料代三百五十円で一升、二倍半とれるのと、これらをぶっつけ合ってどっちの税金が高いか安いか。ビールなんか特にそうですよ。トウモロコシを入れて古来を入れて、原料代をうんと安くしてつくっている酒とでは酒類間で原価が違う。そういう点のコストの計算もしながら論議をしませんと、私は論議としてはかみ合わないと思います。ところが、その点が抜けているんですよ。この点についてはいかがです。
  247. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず最初、前段の御指摘でございますが、私ちょっと御質問を取り違えたわけでございます。  委員おっしゃるのは、いわゆる規模別段階課税と言われている問題でございます。これは現実にドイツがビール等で採用しておる課税方式でございまして、酒税問題懇談会でもこれが議論をされております。  ただ、酒税もこれは個別消費税ということで、当該酒類担税力を求めるというわけでございますので、同じ酒類のものがつくられ方によって、あるいはつくられる量によって税負担を異にするというのは、消費税の一般的な考え方にはなじまないということ、これははっきりしていると思うわけでございます。  それで、委員がおっしゃるように、それは例えば零細企業に対する保護というふうな観点からそういうものを考えたらどうかという御提案であるとすれば、それは一つの政策税制と申しますか、そういう位置づけになると思いますが、消費税に対するそういう規模別の政策税制という問題につきましては、従来からもそういう議論はございますけれども、私どもとしては、これはよほど慎重に考える必要があると考えております。一つの御提言ではございますけれども、よほど慎重に考える必要があるということでございます。  それから後段の方の問題でございますが、これは酒税税負担を考えます場合に、先ほど来しばしば申し上げておりますように、酒類の品質なりアルコール度数のほかに、消費側の事情とそれから生産側の事情、これを総合判断して税負担を設定しなければならないという観点からいたしますと、当該酒類の原価なり、あるいは税抜き販売価格といったものと税負担とを生産側としてはぶつけて検討してみるという作業はぜひ必要なわけでございます。  現実に、例えばビール等にきましては、それぞれの原価等は一応捕捉いたしておりますし、洋酒等につきましても、これは個々のメー力ーの秘密にも属するものでございますが、国税庁等において原価等は把握しておるわけでございます。問題 は、生産者の非常に多い清酒とかあるいは果実酒とか、しかも零細なメーカーが多い、そういったものについてもう少しきちんとしたデータをそろえて今後議論すべきであるというのは、まさに御指摘のとおりだと考えております。
  248. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そこで、流通の問題につきましては、私は今非常に心配しておるのは、税金が上がってきた。今回の場合もできるだけ価格は上がった税金だけにしようということで、いわゆる便乗値上げをさせないような行政指導をやっておりますわね。やっていくお考えなんでしょう。それはどうですか。
  249. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) この法案をお認めいただきまして増税額が決定いたしました暁におきましては、それぞれの企業がその税額を価格に反映していくことになると思われます。その場合におきまして、国税庁といたしましては、便乗値上げは厳に慎むように従来とも指導しております。免許関係業者につきまして、その業界団体を通じますとか、あるいは特に規模の大きなものにつきましては、直接そういう指導をするということを前回いたしました。今回も同じことを考えておる次第でございます。
  250. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、例えばビールで言えば三百九円何がしになりますわね。そうすると、その端数を三百九円八十何銭を三百十円にするというのは便乗値上げでないですわね、例えばですけれども
  251. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 増税額を各それぞれの業者が価格に反映いたします場合におきましては、従来から慣行価格というのがございまして、比較的低額の酒類につきましては五円刻み、比較的高い酒類につきましては十円刻みということになっております。したがいまして、例えば今のビールの御説明でございますが、現在二百八十五円でございますが、増税額が二十四円六十九銭でございますと、これをそのまま転嫁いたしますと三百九円六十九銭になるわけでございますが、それは恐らく従来の慣行から見まして三百十円になるんじゃないか。  あるいはまた清酒二級でございますが……
  252. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 いや、それでいいです。  それで、三百二十円にすれば便乗値上げということになりますか。そういう判断が出てきますか。そこら辺をひとつ。
  253. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 慣行的な価格を上回る額に上げます場合には、便乗値上げになるというふうに考えております。
  254. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大体そういうお考えで御指導なさるんだろうというふうに思うんですが、そうしますと、小売価格は三百十円になりますでしょう。ところが、小売マージンは全然前と同じなんですよね。上がらないんです。そうするとマージン率は下がるんです。ビールはいいですよ。ビールがわかりやすいから例にとったんですが、ほかの酒にしましても同じような行政指導をなさると思うんです、ビールだけやるわけじゃなくて。そうすると小売屋さんの方からは、小売マージンがちっとも直らないじゃないかという意見が出てくるとは思いませんですか。
  255. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 確かにそういった問題が起きるわけでございますが、全酒類につきまして、慣行価格に対しまして端数を丸めるという中におきまして何がしかの部分が生じますが、そういったものは小売業界におきましても、値上げに伴います金利負担その他がかかりますので、その分はそのために充てられることになろうかと思います。  以上でございます。
  256. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、そういうことになると、考えられる問題が一つあるんです。リベートなんです。小売屋さんが、おれたちの方は多少税金が上がった分上がったけれども逆に利潤のパーセントは下がったじゃないか、どうしてくれる、リベートもっとよこせと。強い酒はそういうことはないけれども、零細な企業を中心にしてリベートの問題が出てくるのを大変心配するんです。これがいわゆる流通市場を混乱させる、あるいは時には乱売の一つの兆しになったら大変なんで、ここいら辺に対する行政指導はどういうふうにやっていくんですか、リベートに対して。
  257. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 確かにマージン率は低下をいたしますが、小売業界にとりましての実額としてのマージンの額は変わりませんので、増税後におきましても、比例的に小売流通部門の経費がふえるわけではないわけでございます。したがって直ちにそれが全面的に小売業界負担をこうむるということにならないと思うわけでございますけれども、ただ、価格が上がりました場合に、一般的にこういった需要低迷の時代でございますので、確かに過当競争の問題が生じやすい環境になろうかと思います。酒の値段は自由価格でございまして、行政指導にもおのずと限界があるわけでございますけれども、こういった新しい事情を踏まえまして、できる限りの市場の安定ということにつきましては努力をするつもりでございます。
  258. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 これは十分注意していただかないと、自由価格だから限界があるとおっしゃっても、その自由価格一つの希望価格として申告させて、今部長さんのおっしゃったような従量税の問題よりも、従価の方へ行くと随分出てくるんです、相当の税率が今度上がることによって。そうすると必ずぶつぶつ出る。そうすると、高くなって売りにくくなったのに利益率が下がったんじゃかなわないという声が出て、既に中央酒類審議会は三百億くらいのリベートが現在でも動いているという報告をしていますね。これがこれ以上のことになると、これは流通機構に対しては大きな影響が出てくると思いますので、便乗値上げよりも、むしろこうした面での行政指導をしっかりやってもらいたいと思うんですが、いかがですか。
  259. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 確かにおっしゃいますとおり、酒類業界におきましては、基本的にそういうリベートの基調があります上に、今回のようなまた価格改定が行われます場合には、十二分に注意して行政指導をするつもりでございます。  しかしながら、繰り返して恐縮でございますが、市場安定問題につきましては独禁法の制約があるわけでございまして、ベストの努力はいたしますが、おのずとその枠内での努力ということにならざるを得ないわけでございます点を御了承いただきたいと存ずるわけでございます。
  260. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 「しかしながら」から後を言うと、それだけでまた一時間二時間やらなければならなくなるんだよね。それは独禁法、公取の問題ということになってくると、もうこれはとてもじゃないけれども今晩の話にならなくなるので、一応おたくの答弁として承っておくけれども、あえてここで反論しません。そこへ本来は切り込まなければならない問題がたくさんあるんです、表示の問題から何から。だけども、流通問題の方へ進ましてもらいます。決して今の答弁に満足したわけではない。そこからむしろ問題が発展するんだということだけ一応申し上げておいて、流通関係の問題にまた戻りたいと思います。  手持ち品課税の関係なんですが、これは毎回、増税のときには手持ち品課税で小売屋さんは大変苦労するんです。非常に面倒なんですよ。五十六年少し楽になったというけれども、ちょうだいした資料によると、なかなか書くといったら大変なんです。そうするとどういうことが起こるかというと、面倒だから千八百リッターの内部だけでもって、あとは卸屋さんの方にみんな小売屋さんは返品しちゃうんです。これがまた卸屋さんの方としても大変なんです。もう少しこれを簡単にしていただけば、小売屋さんだってそう一々千八百まできりきりにして返品する、こんなことにならないと思うんですが、ここら辺はもう少し簡単になるようなお考えはございませんですか。
  261. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 御指摘のとおり、この手持ち品課税につきましては、酒類の販売業者の方々に負担をおかけしておりますことは重々承知いたしておるわけでございます。  そこで、今回法案をお認めいただきました暁に おきましては、この実施日におきます手持ち品課税につきましては、なるべくこういった方々の御負担を減らすように、かつまた酒税の適正な確保という見地からも支障がないように、こういう両面で十二分に努力をいたしまして、今後法案成立後におきまして、関係業界の意見を踏まえながら鋭意検討してまいる予定でございます。  ただいま考えておりますことは、増税時前後におきますところの酒類小売業者の毎日記帳の期間というのがございますが、その記帳期間を短縮する方向一つ考えております。  それから第二点でございますが、酒類小売業者の在庫調整のための返品処理があるわけでございますけれども、その簡素化につきまして伝票処理をできる酒類の範囲を拡大する方向で検討したいというふうに考えております。
  262. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 今、毎月のやつ、あれ十日ですか。
  263. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 前回の例でございますと、五月一日が増税の日でございましたが、前五日、後が二週間、十四日でございますが、合計十九日間でございます。
  264. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、伝票整理の分なんですが、あれは赤伝票という意味ですね。
  265. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 仰せのとおり赤伝処理にかかわるものでございます。
  266. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それはどうも。これは大分楽になるし、前回もこれはやってもらったですが、中身についてもひとつできるだけ。簡単になれば小売屋さんは多少税金を払っても返さないですよ。まあそういうわけにもいかぬか……。  それから次は表示の問題なんですが、これについても大臣は、「酒類の表示につきましては、酒類業組合法に基づく表示のほか、公正競争規約に基づく適正な表示を指導しておるところでございます」と、こういうふうになっておるんです。  ところが、この表示と添加物の関係について非常に適正でないと思う問題があるんです。例えば合成保存料としてのソルビン酸、これは昔認めてなかったんですよ、本会議でも私申し上げましたように。ところが、ヨーロッパから入ってくる、特に西ドイツから入ってくるワインについて非常にこれを皆使い出した。日本では認めてなかったけれどもこれは認めざるを得ないだろう。これは日本の表示の規定からいうと合成保存料というのは表示に入れなければならないんです、適正にですよ。大臣、そう答弁してるんです、「適正な表示を指導」してやっていくと。ところが、これを表示しなさいという規定は入ったんですよ。当然入らなきゃならぬですからね。ところが、「当分の間」表示しないでもいいと。この「当分の間」がもう何年続いてるんですか。
  267. 市川和孝

    説明員(市川和孝君) お答え申し上げます。  現在加工食品に使用されております添加物につきましては、七十六種類の添加物につきまして表示を義務づけておるわけでございますが、ソルビン酸につきまして、先生ただいま合成保存料の表示という御指摘でございますが、これにつきましては現在表示義務がかけられております。
  268. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 表示義務はかけているけれども、当分の間、表示しなくてもいいんでしょう。それを聞いているんです。
  269. 市川和孝

    説明員(市川和孝君) 現在ソルビン酸につきましては、現行の表示規則では、合成保存料という用途名か、あるいはまたソルビン酸という物質名か、いずれかを書けばよろしい、こういう規定になっております。
  270. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それじゃ、お酒には全部それが書いてありますか、輸入酒に。
  271. 市川和孝

    説明員(市川和孝君) これが使用されておりますならば必ず表示が行われなければいけないことになっております。行われておりませんですれば表示義務の違反ということになるわけでございます。
  272. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それはおたくの方では確認して検査しておりますね、厚生省。
  273. 市川和孝

    説明員(市川和孝君) この表示等につきましては、都道府県に配置されております食品衛生監視員が監視をしておるわけでございます。もし表示がされていない、しかも入っているというようなものが発見された場合には、表示義務違反として処理されるわけでございます。
  274. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 建前はおたくのおっしゃるとおりなんです。しかしソルビン酸が入っているか入ってないかということを輸入ワインやなんかについてどこでチェックしているんですか。入ってれば規制しなきゃならぬということでしょう。入ってきたやつをどこでチェックしているんですか。
  275. 玉木武

    説明員(玉木武君) お答えいたします。  ワインも含めて輸入食品につきましては、全国十九の海空港で食品衛生監視員がその監視に当たっております。これらは金品について書類審査を行いますほか、必要に応じまして、例えばワインではソルビン酸及び亜硫酸について検疫所もしくは国立衛生試験所における行政検査を行っております。その結果、食品衛生法に違反したものについては、廃棄または積み戻し等の処分を行っております。  なお、厚生大臣指定の検査機関におきまして、輸入業者の自主的検査をやったもの及び輸出国の法的検査機関の検査結果はこれを受け入れておりまして、それを貼付しているワインについては原則として検査はやっておりません。
  276. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 ということになっているんですよね。しかし実態はどうです。実態はできますか、そんなに。  例えば輸入食品の検査の実態はどうかということについては、こういうあれがあるんです。全国十九の海空港の検疫所に合計六十二人の食品衛生監視員を配置しているんです。いいですか。酒だけじゃないんですよ、これ。六十二人に対して、日本に入ってくる要検査品目というのは何千万トンですよね。それこそ膨大な数字です。できますか。できないでストレートに入ってきちゃって、確認できなかったやつがそのまま流れているのを、一体国内でおたくのわずかな監視員で検査できるんですか。法では、例えば一年間に十二回検査しなさい、あるいは六回は行きなさいと。できっこないですよ、そんなもの。私は、ちなみにあちこち電話かけて聞いてみたけれども、大体一年に一遍ぐらい。水際で入ってくるときにほとんどチェックできなくて、入ってきてからもチェックする機能が極めて少なくて、食品添加物は野放し状態に近くなっている。これはもう大変な問題だと思うんですが、大臣、こういう状態なんです。  法のたえまえは全部そういうことになっているんです。実際には何にもやってないですよ、ほとんど。やっていないというよりも一生懸命やろうと思ってもできないんです。これはつい先日の日本テレビでもってくしくもおたくの何とかという方が言っていますよね。とてもそんなものできないと言うのですよね。私も本会議でやりましたけれども、マラソンやスミチオン、こういうものは基準がないから調べられないし、基準をつくるのも二人じゃどうにもならぬ。どうにもならぬと言われても、それじゃ大変無責任じゃないか。そんなことを言ったら怒られるかしらぬけれども、とてもできる仕組みじゃない。添加物、食品関係、ワインに限らず、これらについては一事が万事、こういうような厚生の行政なんです。  それで大臣、酒の問題くらい厚生省よりも大蔵省でちゃんとやってもらわないと困ると思うんです。これだけ税金を上げて、税金を取っていて、安全性の問題については厚生省だ、表示の問題については公取だと。大蔵省はそういう点について責任がない仕組みになっているんです。ところが、今度はそういうことをやる厚生省やなにかにしてみれば、予算が足りなくて人もいなくて、実態はできないんです。それはもうかわいそうなくらい大変なんですよ。これは大蔵省がやれば私はできると思いますよ、財布を握っているのですから、必要なだけは。だから税を上げる以上、そういう国民の健康に直接影響のあるいろいろな酒に対して、こういうことについてもう少し大蔵省自体がやれるような仕組みを大臣にこの機会にお願いしておきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  277. 山本昭市

    政府委員(山本昭市君) 確かにおっしゃいますとおりに、酒につきまして統一したそういった添加物規制あるいは表示を決めた法律はないわけでございまして、それぞれ私どもは酒団法の上での表示、そしてまた食品衛生法関係は厚生省で所管されておられますし、消費者保護のための表示につきましては公正取引委員会でございます。非常に大事な問題でございますので、私ども平生こういった関係官庁と十分な連絡をとりまして、法律こそ一本ではございませんが、実態としてそういった効果が発揮できますように努力をしてまいりたいと考えております。
  278. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 実はこの問題、例えば二酸化硫黄にしても三百五十ppm、これも本会議で私申し上げておるように、肝臓機能が違うのにヨーロッパと同じように、向こうが認めているだけストレートに認めるというふうな何の定見もないやり方に問題があるし、それから農薬の問題なんかも野放しなんです、現在。日本の国内でも、これは農林統計によると、農薬散布におおよそ十時間以上、十アール当たり労働力がかかっているんです。そうすると、一反歩十時間かけるといったら、何十回やっていると思います。しかも最近非常に、何といいますか、晩腐という病気がはやってきまして、これは土地が弱くなって除草剤だとか有機質の堆肥や何か余り使わぬものだから木も弱くなる、病気が出るんです。病気が出るやつを、そういうことでどんどん薬で抑えつけていくものだからだんだん余計やらなきゃならぬ。大変なんです。これについては一応の基準をつくってやっていると言うんですが、残留農薬についてはどういうふうに考えていますか。
  279. 岩本毅

    説明員(岩本毅君) 農薬の登録に当たりましては、私どもその農薬の持っております毒性を厳重に評価いたしますとともに、散布された農薬が農作物にどの程度残留するかといったような実態を、これはブドウの場合で申しますと、皮をつけたまま、水洗しない状態で分析をいたしまして、その残留値を把握するわけでございます。そういった両方のデータを十分検討の上、残留使用基準というものを定めておるわけでございます。
  280. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それはあれでしょう、食べるブドウの問題でしょう。
  281. 岩本毅

    説明員(岩本毅君) これは加工用のものを含めて、そのような措置をとっております。
  282. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それでね、しかし実態は、そういう基準値はつくっているけれども、これも厚生省と同じことで、どんどんワインについてぐるときに、これは残留農薬が基準値以上だとかどうだとかというチェック機関はほとんどないですわね。専ら生産者自体の良心にまっているわけでしょう。
  283. 岩本毅

    説明員(岩本毅君) 私どもは農薬の適正使用を確保するために、使用回数とか、あるいは使用時期というものをそれぞれの農薬について定めておるわけでございまして、こういった基準が農薬の使用者に十分守られるような指導を常々実施しておるわけでございます。
  284. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 きょう時間ありませんので、あしたにまたこのあとは譲りたいと思います。  私は、今、日本の国できちんとやっていかなければならないのが添加物の問題、農薬の問題。日本の農業を守るためにはこれしかないんですよ。例えばこちらが三百円のとき、カリフォルニアなんか原価キロ三十五円、約十分の一でつくった酒がどんどん入ってくる。しかも向こうの農業というのは薬づけの農業です。これらを規制することを日本の生産者自体がきちっと今から組み立てておかないと大変なことになる。今からちゃんとそこら辺やっておかなきゃいかぬという意味で、あしたこの質問を続行しますので、そういうつもりでひとつ準備をしてきていただきたいと思います。  以上で終わります。
  285. 穐山篤

    ○穐山篤君 丸谷先生の質問の締めくくりのところで関連質問をするつもりでおったわけですが、あしたにそれが回りましたので、実はその取り扱いにちょっと苦慮しておるわけでありますが、時間が来ておりますから明日に譲りたいと思います。
  286. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 三案に対する質疑は本日はこの程度にとどめ。これにて散会いたします。    午後八時十二分散会      ―――――・―――――