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政府委員(
梅澤節男君) 現在の所得公示の限度額の一千万円が決まりましたのは
昭和四十六年でございます。それから十数年たっておるわけでございまして、五十七年の実績によりますと、公示された方の人数が四十四万人、
納税者に対する割合が六・七%、恐らく、現行の
制度のままでいきますと、五十八年分は、これは毎年一割ぐらい最近ふえておりますから、五十万人近くになると思うわけでございます。四十六年に一千万円に引き上げられます以前はこれは五百万でございました。当時これを倍にしたわけでございます。そのときの公示の数が約七万人でございますから、
納税者に対する割合が一・七%でございました。
過去ずっとさかのぼって御説明申し上げますと、
昭和二十四年当時から大体五年置きぐらいに倍あるいは二・五倍ぐらいに限度額が引き上げられておるわけです、それぐらいのインターバル。というのは、限度額を放置しておきますと、どんどん公示の数がふえできますから、それでずっと大局観察をすると、
納税者に対する割合が大体一%から二%、三%ぐらいの近くになりますと、従来これを切りかえておるわけでございまして、これが従来のあれでございます。
ただいま申しましたように、一千万円は、今までから見ますと、基準がそのまま据え置かれた期間としては非常に長くなっている。二、三年来この基準額を引き上げるべきであるという
議論がございまして、これは第一線の税務署も大変な手間になっておりますし、
委員からも、これは引き上げるのがいいだろうという御
指摘をいただいておったわけでございます。
これは税制調査会の中でもこの
議論をいたしまして、中期答申にも
議論の経過が書かれております。たまたま今回の納税環境の整備の一環といたしまして、そもそも現在の公示
制度の意義はどうかということから
議論をしていただいたわけでございますが、税制調査会の
意見の中でも、現在の公示
制度がいわば形骸化して興味本位になっておるから、この際こういう
制度はやめるべきであるという
意見もあるわけでございます。それからまた、この
制度を残すにしても、税額で公示すべきであるという
意見もございましたし、所得と税額ともに公示すべきであるというふうな
意見、さまざまな
意見がございました。結局、中期答申ではさまざまの
意見がありましたけれ
ども、結論が出ないままに、しかしながら、少なくとも今の限度額はこのままで放置してはいけないということが大多数の
意見ということで集約されたわけでございます。
五十九年度の
改正に当たりまして、私
どもいろんな方面の
意見も聞きながら、とにかくこの一千万円を引き上げるという
方向で
検討しなければならないということでいろいろ
議論したわけでございますが、税調の
意見の中にもありましたように、この税額で公示するという要望が現在公示されている方々の中にもかなり強い要望としてあるわけでございます。これは私
ども無視し得ない
一つの
意見であるということを従来から感じておったわけでございます。
そこで、今回税額公示に切りかえさせていただいたわけでございますけれ
ども、そもそもこの所得公示の
制度は、
一定以上の高額の所得者を公示することによりまして
第三者がチェックする、そういう牽制効果を通じて適正な申告水準を維持し、その向上を図る、つまり申告納税
制度を間接的に補強し、その水準を高めるというのが本来の
制度の趣旨でございますから、これを税額公示に切りかえてもその税額の背後にある所得というのは推認できる。そういたしますと、所得公示と同じように
第三者によるチェック機能と申しますか、牽制効果は期待できる。そのほかに所得公示にはないいろんな副次的な効果も期待できるのではないか。
一つは、そういう多額
納税者といいますか、高額な
納税者の税額を見ることによって、
一般の国民といいますか、
納税者めいめいが自己の税負担と引き比べていろいろ税負担のあり方について
考えていただくという
意味で、税負担なり納税の意欲を高める、あるいは啓蒙的な機能が期待できるという面が
一つ。それから高額の
納税者の方は、それなりに国家に貢献をしていただいておるわけですから、その
意味でそれが世の中に公示されるということはある
意味では顕彰的な機能もあるということから、結局そういう高額
納税者の方々の納税意欲を高めるという効果も期待できるのではないかということで、急激な
制度の変更でございますし、それも基準を引き上げるということと同時に、今回の
制度を
提案したものでございますから、一部今回の
制度の切りかえによって高額所得者隠しとか、いろんな誤解があるわけで、私
どもそれはこの
制度の本来の趣旨では毛頭ございませんので、少し時間かかりましたけれ
ども、政府の
考え方を御説明申し上げたわけでございます。
それから今回の税額一千万の公示によりまして、この
法案をお認め願いますと、ことしの五月の公示は新しく税額公示で行われるわけでございますが、この公示対象人員はおよそ七万人から八万人ということでございますので、四十六年当時の、前回五百万から一千万円に引き上げました当時ぐらいの公示対象人員になるということでございます。