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1984-03-29 第101回国会 参議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年三月二十九日(木曜日)    午後三時三十分開会     ―――――――――――――    委員異動  三月二十八日     辞任         補欠選任      竹山  裕君     河本嘉久蔵君   出席者は左のとおり。     委員長         伊江 朝雄君     理 事                 岩崎 純三君                 大坪健一郎君                 藤井 孝男君                 竹田 四郎君                 塩出 啓典君     委 員                 梶木 又三君                 倉田 寛之君                 中村 太郎君                 福岡日出麿君                 藤井 裕久君                 藤野 賢二君                 宮島  滉君                 矢野俊比古君                 吉川  博君                 穐山  篤君                 鈴木 和美君                 丸谷 金保君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 近藤 忠孝君                 栗林 卓司君                 青木  茂君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君    政府委員        大蔵政務次官   井上  裕君        大蔵大臣官房会        計課長      渡邊 敬之君        大蔵大臣官房審        議官       水野  勝君        大蔵大臣官房審        議官       大山 綱明君        大蔵省主計局次        長        平澤 貞昭君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省銀行局長  宮本 保孝君        国税庁次長    岸田 俊輔君        国税庁税部長  渡辺 幸則君        国税庁間税部長  山本 昭市君        国税庁徴収部長  兼松  達君        国税庁調査査察        部長       冨尾 一郎君        資源エネルギー        庁次長      川崎  弘君        資源エネルギー        庁石油部長    松尾 邦彦君    事務局側        常任委員会専門        員        河内  裕君    説明員        人事院給与局次        長        藤野 典三君        厚生省社会局保        護課長      清水 康之君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置  法の一部を改正する法律案内閣提出衆議院  送付) ○物品税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○石油税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○法人税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出衆議院送付) ○所得税法等の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨日、竹山裕君が委員を辞任され、その補欠として河本嘉久蔵君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 酒税法及び清酒製造業の安定に関する特別措置法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案石油税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案、以上六法案を便宜一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 竹田四郎

    竹田四郎君 まず、委員長にひとつお願いをしておきたいと思います。  きょうの審議は、六法案一括審議ということでございますが、大変たくさんな量の内容でございます。きょうは私は、直接税関係だけ質疑をいたしまして、間接税関係でも一つの大きな提案をしたいと思いますが、きょうはいたしませんので、次の機会にひとつ私にも質問する機会をお与えいただきますようにお願いを申し上げておきます。  次に、大蔵大臣に質問をさせていただきたいと思いますが、今度の国会というのは、政府予算を出すのが非常に遅かったし、それに伴いまして、予算委員会審議も大変おくれました。私ども大蔵委員会においては、法案幾つかは、幾ら予算が遅く来ようが、予算提出幾らおくれようが、三月三十一日で何とかしなければならないという特殊な法案が毎年幾つかあるわけです。今回もそのようであります。  しかも、今回の直接税関係法案には、かなり議論のある、しかも日切れでないような内容のものも随分入れられております。典型的なのは、国税通則法の百十六条の改正などであります。  しかも、今度の場合に、政府大変ごり押しをしている。そして何でもかんでもこの際減税一緒にいろいろなものを飲み込ませる。国民理解しようがしまいが、そんなことは関係ない。しゃにむにやってきた間接税三法を優先審議させて譲らない。野党が幾ら何を言っても、そういうのに聞く耳を持たない。こういうことから今日まで参議院大蔵委員会がいろいろ紛糾をし、率直に言って、十分な審議もできなかった、またできそうもない。こういうことは極めて遺憾であります。しかも、国民理解を最も得なければならない関係法案であります。  こういうふうな所得税等に関する法案にいたしましても、あるいはこの出し方も、どこのだれが一体こういう形にしたのか。今後のためにも私はその責任を明らかにしてもらわなければ困ると思います。それでなければ参議院大蔵委員会というものの存在理由もまた非常に薄くなってきて、院の改革のためにも何らか考えてみなければならない、こう思うわけであります。こういう点で大蔵大臣の所見をいただきたいと思うんです。
  5. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いわゆる歳入委員会と言 われる大蔵委員会に対して、間々日切れ法案等があって、少なくとも実質的にも精神的にもその審議期間にある種の制約を感ぜられるというのは、私も大蔵委員会に所属しておりました一人として絶えず感ずるところであります。しかし、その中にあって可能な限り、政府としては御審議を煩わすために、一つには法律の本数をできるだけ少なくするような配慮をいたします。その中には今御指摘のありましたような問題もございますが、法制局等と話を詰めまして、可能な限り一本の法律にそれを集約するような努力を今日までもしてきたことも事実であります。  ただ、国会におきまして聞く耳を持つ持たぬという議論は、これは国会のことでございますから、私が批判したり論評したり申し上げるべきことではなかろうかと思っております。  したがって、私どもといたしましては、その責任の所在はどこにあるかと言えば、法律案、なかんずく租税法定主義のもとに内閣一体になって法律案提出することを閣議で決定するわけでございますから、大きくは内閣一体ということが言えるでございましょう。しかし、少なくとも歳入歳出に関する問題につきましては、大蔵大臣にその責めが帰せられるべきではなかろうかというふうにいつも考えております。  こういう事態でございますから、率直に申しまして、私もなお絶えず疑問を感ずる一つには、財政法の中で、例えば予算は十二月中にこれを提出するを常例とすると明治以来書かれてありますが、提出されたことは一度もございません。それにはいろいろな原因があり、国会法あるいは憲法等々なかなか改正の難しい点があるから、そのようにやむを得ざる措置として残っておるというような矛盾もないわけではなかろうと思います。  しかしこのたび、なかんずく歳入法案につきましては、これを租税法定主義の建前から御議論いただくには、最も適切な機会にこれを適切な方法で提出し御審議を煩わすということを絶えず心がけていなければなりませんが、物理的な日程等からしてその時間が短かくなったということは、これは事実でございますし、また私どもができるだけ一本の法律にまとめようという努力をしてきたことも事実でございまして、その責任大蔵大臣に存在するというふうに私は理解をいたしております。
  6. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、予算を十二月に出せ、それが今けしからぬと、こういうことを私は申し上げているわけじゃないです。それは当然、私の言う前に、財政法の規定するところによって、あるいは国会法の規定するところによってそれをやってもらわにゃ困るということは、私は前々から言っているんですけれども、特にことしの事情というのは、法案を出すときからもう既にわかっていたことなんですわ。十二月には総選挙がある、その投票日が十二月の十八日であるし、それから第二次中曽根内閣をつくって、それから予算に取り組むというのでありますから、もういつもより少なくとも半月、これだけは遅くなるということは既にわかっているわけですね。  しかも、ことしの総選挙の中で、税負担をどうするのか、税金をどうするのか、歳入の不足はどうするのか、こういう議論というのが国民の中にあったことも事実ですよ。そういうときであるだけに、もっとわかりやすい、国民協力をしていただけるような形で法案審議をされる、そういうような形を出すべきじゃないですか、特に法案提出責任大蔵大臣にあるというならば。しかもあなたは非常にそういう点では、国民の心をどっちかといえばよくつかむことのできる政治家ということで評価があるわけです。そういう竹下さんがこういう出し方をされるというのは、あなたの性格に合ってない、意図的に私は感ぜられてならないわけです。もっと国民に、増税も入っているわけでありますから、よく審議内容がわかるように討議をすべきだ、こういう討議ができるようなことを考慮において法案提出をすべきである。今度は出てしまったんですけれども、この次あなたは大蔵大臣をやっているかどうかわかりませんけれども、あるいは総理大臣になっているかもしれませんけれども、このことは特に考えてもらわなくちゃならぬと思いますけれども、もう一回この点をひとつお答えをいただき、こういうことは避けていただきたい。なるべくわかりやすい、審議のしやすい、こういうふうな提出の仕方をしなくちゃいかぬと思います。  国税通則法改正にしても、ここでやらなくちゃどうしてもならないというほどの問題じゃないと思うんですよ。時間のないこともわかり切っているんですよ。それなのにあえてこれを潜り込ませる。幾ら法案の数を少なくするにしても、法案の数を少なくするというのは、審議をしやすいように統一をしていくということであって、審議をしにくくするように統一することは統一するための趣旨じゃないと思うんです。今後のことを考えながら、もう一回御答弁いただきたいと思います。
  7. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに法案を少なくするという考え方に私どもの立場はなりがちでございます。したがって、国民の前に審議過程を通じてより明らかにするためには、いささか無理をした形の中で法律案を少なくすることは避けるべきだというのは、私も貴重な意見としてただいま承らしていただきました。  で、間々一括法のごとく、あるいは一括した方が国民皆さん方にもわかりやすいこともあろうかと思いますが、このたびは、今意図的というお言葉をお使いになりましたが、言われてみれば、ある種の意図がやっぱりあるじゃないかと、私もそういう感じがいたしました。私ども政府全体の中で考えるときに、可能な限り法体系整合性を求められるものは、できるだけ少ない数の法律の中に集約して御審議いただこうという姿勢というものが、時によって、今おっしゃいますように国民審議過程等を通じてわかりにくくしておるではないかという意見は、私どもも今後とも貴重な意見として踏まえさしていただきたい、このように感じます。
  8. 竹田四郎

    竹田四郎君 話のついでですから、もう一つ私は申し上げておきたいと思うんですけれども、例えば揮発油税ですね。揮発油税という税目があるわけで、これは間接税に入るんですか、法案のあり方で申し上げますからちょっと間違わないでください。  揮発油税というのがありますね。ここには、どれだけの量が幾ら税金だというのがありますね。しかしこれを幾ら見たってわからないんですね。これは租税特別措置法の中に入っているんですね。これは私この前も言いました。こういうものこそむしろ統一して出していただければ、国民揮発油税のところを見れば、今現在の法律では幾ら納めればいいのだとすぐわかるんです。わざわざこっちは揮発油税の法文を見まして、さらに租税特別措置法の方を探して見ていかなければわからない。こういうのこそ、むしろできたら統一をすべきである、こう思うのです。そういう意味では私も本会議で言いましたけれども租税特別措置法というのも国民にわかりやすくするために一回見直してみる気はございませんか。
  9. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに毎年御審議いただく税法の中で、租税特別措置というものは、一般的に毎年必ず期限の到来するものがあったりいろいろあって、これを出すということでございますので、したがって可能な限り数を少なくするという観点からすれば、その中へ入れられるものはできるだけ入れて御審議をいただくという姿勢にあるんじゃないか、私も御意見を承りながらそのような感じを持っております。もう一つ法人の二年の問題も租特へ入れてありますわ。  それにいたしましても、これは理屈を言うようでございますけれども租特改正で通過いたしましても、法律としてはそれなりに機能するわけでございますから、私はもちろん違法性があるとは申しませんが、それなり国民理解は、毎年出す租特の中には何かあるという観点から理解はいただける問題ではないか。しかし今おっしゃいました議論は、貴重な議論で我々としても将来に わたって検討すべきものであるとは私も理解ができます。
  10. 竹田四郎

    竹田四郎君 竹下大蔵大臣大臣の間に、せっかくそういう御答弁いただきましたので、そういう面では新しく手をつけていただいて、もっと税金というものを国民にわかりやすくしていただくことが協力をいただけるゆえんであろう、こういうふうに思うわけであります。  他の問題に入っていきたいと思います。  ことしの増税案減税案、これについて結局、増税であるのか、減税であるのか、増税とは何を言い、減税とは何を言うのか、この辺の議論というのは極めてあいまいだと言わなくちゃならないと思います。これは各方面でも、例えば臨調では、租税負担率が同じであればでこぼこを修正することはいいのだ、こういう言い方もあります。では、租税負担率というのはどのくらいふえれば増税であって、どのくらいであれば増税でない、こういうことになりますと、これもまた非常に線を引くのは難しいと思うんです。  大蔵省の方では、租税負担率が、今度も幾らか上がっているわけですが、一体どのくらいのところから増税と言わなくちゃならないのか。租税負担率の話が出ておりますから、その辺はどんなふうにお考えですか。
  11. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは非常に難しい議論でございます。臨調の「増税なき財政再建」とは何ぞやというのは、いろいろ読んでみますと、定義づけとして、租税負担率を変えるような新たなる税目を設定しないということ、こう定義づけたといたしますならば、さてその幅はどうか、今年度の御審議をいただいておりますように、直接税の自然増収等からいきますと、直間比率も直の方が上がってまいりますし、そして今度も租税負担率が二三・九から二四・二になるわけでございますから、確かに租税負担率も今の見込みで言えば上がるわけでございます。そのどこまでの変化をさて増税と言うかというと、私自身にもどこまででございますと言う能力もございませんし、それを判別する能力もございません。一方、国民所得国民負担との問題等も、これからますます議論されるわけでございましょうから、その中において議論過程でおのずからそれの数値というものがおぼろげながら出てくるということが、その限界というものになるんじゃないか。常日ごろそのように考えております。
  12. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると租税負担率も、これはそのときの生活状態、文化の状態、そうしたもの全体に影響されてくるでありましようし、そのときの所得の全体の水準がどの辺にいけばどうなのかというような問題もあろうかと思うんですけれども、どのくらいを租税負担率限界最高限界考えていらっしゃるんですか。三五%ですか。そういう数字も拝見したことがあるわけでありますけれども、これはそのときの時期によって恐らく動いていくものだろうと思うんですが、大蔵省としては、現在の状態では何%が耐えられない租税負担率最高限界だと、こういうふうに認識されていらっしゃるんですか。
  13. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはまさに難しい問題でございますが、私が最初考えましたときに、例の七カ年計画のときに二六カニ分の一というのがございました。あれをかなり自分なりに念頭に入れていろいろ考えてみたわけであります。しかし、そのうち、だんだん議論をこういう形で展開していくうちに、社会保障負担一緒にした国民負担議論すべきではないか、こういう議論がだんだん出てまいりまして、そして臨調等ではヨーロッパをかなり下回る――このかなりがまた相当に難しい定義である。本院等における議論瀬島参考人なんかの議論を聞いてみますと、そういうことを議論する間には、四〇とかいう数字も出たんだということですが、これも確定しているわけじゃございません。したがってどの辺が適当であるかということについては、これも画然と申し上げる状態に今ございません。  ただ、目標数値というものは大変難しい問題でございますが、六十五年度租税負担率について、五十九年度予算の計数を踏まえて、一定仮定のもとに機械的手法によって試算をいたしますと、「中期的な財政事情仮定計算例」において、この分は、一五・一というのがいわば国税で、それから地方税が八・八で、また国の一般会計以外の税収の負担率についても同様に○・八%と仮定をすれば、昭和六十五年度租税負担率は、国税地方税を合わせると、二四・七程度と試算されるわけでございますが、これも先ほど申しましたように、いわゆる社会保障負担租税負担と合わせた形の国民負担率議論すべきものか、租税負担率だけで議論すべきものかというようなことも、これからの議論過程でおのずから定められていく性格のものじゃないかなと、こういうふうに考えております。
  14. 竹田四郎

    竹田四郎君 せっかくそこまでいろいろお考えいただいているわけでありますし、中曽根さんは何か計画というのが大変嫌いなようでありますけれども、これからどういうふうに考えてみても、どうも税金は多くなっていくんじゃないかなという点は、国民おおよそ考えているといってよかろうと思うわけであります。そういう意味でも、一体どの辺なのかなというものは、私はもちろん固定的なものというふうに考えるのはいかがかと思いますけれども、ある一定のものを示される、若干それには幅があってもいいと思いますけれども、やっぱりそういうものを示していくことも合意を得るための一つの手段ではないだろうか。こういうふうに考えるわけでありまして、その点ではひとつせっかく御努力をいただきたい、こういうふうに思うわけであります。  それから、これは中曽根さんが盛んに言っていたことでありますが、増税というイメージをなるべくなくするためにおっしゃったのかもしれませんけれども、今度の増税減税の枠内でやるということを私も何回か耳にしたわけであります。確かに、初年度といいますか、ことしは、減税が十五カ月予算ということになるわけでありますから、当然それに伴いましての増税分というのも、その十五カ月の減税の枠内にあるということはそのとおりだろうと思います。しかし来年度は十二カ月の予算ということになるわけでして、三カ月分の減税額というのは三カ月分少なくなる、こういうふうに解してよかろうと思うのでありますけれども、これはどれだけ出てくるか、私詳しくは承知しておりませんけれども減税分との割合で見ていけば一千億程度ということになろうと、こう思うわけでありますけれども、この差額は一体どうなさるつもりなんですか。これはただ差額だから、その何百億ですかわかりませんけれども、その分は一般会計へ入れちゃうというんですか。その分は、借金を返すのにこの分くらいためてもいいじゃないかという形で整理資金会計の方にあるいはこれを入れるという方針であるのかどうなのか。その辺のことがはっきりしないと、どうも総理の公約からはみ出てくる事態が来年度予算では出てくる、こう思うんですが、その辺はどういうふうにお考えですか。
  15. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは詳しく主税局長からお答えした方が適当だと思いますが、いわゆる増税でございます。それから一つ増収措置というものが、延納制度をやめたということと、それから繰り戻し還付適用停止ということから、計算上そういうふうな形で出てまいりますが、実質的に負担増には将来にかけてならない。ちょっと私この説明が一番下手でございますので、これは主税局長の方からちょっとお答えさした方が正確だと思います。
  16. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) ただいま御指摘になりましたように、五十九年度初年度減税と、それから税負担引き上げ、各種の増収措置を含めましてお示ししておりますのは、所得税減税その他政策減税を含めまして九千三百二十億円の減収でございますが、これの財源措置といたしまして、法人税酒税物品税税負担引き上げで、初年度七千八百五十億円の増収を予定しておるわけでございますが、これでは足りませんので、法人税延納制度の廃止、それからただいま大臣が触れ ました法人税欠損金の繰り戻し還付制度適用停止、それから社会保険診療報酬源泉徴収税率引き上げ増収措置によりまして一千四百五十億円、差し引き、初年度でほぼマイナス二十億円ということでございますが、ほぼ政策減税等に見合う増収補てん措置を講じさせていただいておるわけでございます。これは委員が御指摘のように、初年度ベースでございますので、平年度ベースの角度から見ました数字もあわせてお示しをいたしております。  それによりますと、初年度九千三百二十億円の減収は、ただいま委員がおっしゃいましたように、約一千億ほど減りまして八千三百六十億円でございます。それから法人税酒税物品税等税負担引き上げの部門七千九百九十億円でございまして、これで約三百七十億円ほど足りないわけでございますが、実は欠損の繰り戻し還付制度につきましては、完全平年度という考え方に立ちますと、これは増収効果はないわけでございますけれども、今回は二年間の一応適用停止ということで御提案申し上げております。そういたしますと、欠損金の繰り戻し還付制度は、現行の制度は、御案内のとおり、欠損金が出てまいりますと、法人は、それを次年度以降に繰り越しまして、後年度法人税負担の軽減で賄うか、あるいは前年度黒字で法人税を納めておりました場合はその限度の中で還付してもらえるという制度、いずれかを選択することができるわけでございますが、今回はその還付制度適用を二年間停止するということでございますので、初年度は六百億の増収でございますが、これは初年度関係で、フルで働きますと、大体千二百億円程度増収になるわけでございますけれども還付月の関係で、初年度は六百億円見込めるということで、初年度六百億と計上いたしました。ところが、完全平年度になりますと、これはほとんど次年度以降に繰り越しますので、増収効果は生じないわけでございますが、例えば想定の話でございますが、今回の制度で六十年度を想定した場合どうなるかといいますと、六十年度分につきましては、先ほど申しました次年度への繰り越し部分が恐らく半分ぐらい効いてくるだろうということで、一応今回の税制改正要綱等では平年度六百億円と計上さしておいていただいているわけでございまして、したがいまして、五十九年度の姿としてはおおむね増収減収ほぼ見合う形になっておるということが言えるかと存じます。
  17. 竹田四郎

    竹田四郎君 それからもう少し、主税局長に教えていただきたいのは、そこの法人税率の引き上げですね。これが初年度は四千三百億、次年度はこれが三千九百二十億。これはどういうことなんですか。これは技術的な問題だろうと思いますから教えてください。
  18. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは従前もそうでございますが、今回も御提案申し上げております法人税の税率の引き上げにつきましては、適用を五十九年四月一日以降終了する事業年度から適用するということでございます。したがいまして、ことしの四月末決算の法人は、現実には通常六月に法人税を納付するわけでございますが、それは既に済みましたフルイヤーにつきまして新しい税率で引き上げたところで法人税を納めるということでございますので、初年度は平年度十二カ月分よりも多く税収が入ってまいるということでございます。
  19. 竹田四郎

    竹田四郎君 わかりました。  それでは、中期展望についてお尋ねをしたいと思います。  いろいろたくさんの数字がこの中期展望の中には入っているわけでありますが、この表を見てまいりまして、いろいろ借りかえをする、しない、あるいは一般歳出の伸びが五、三、〇という形でありますけれども、大体経済成長の見通しをことしの見通しということで考えてまいりますと、一般歳出五%程度というのが常識的な線ではないだろうかというふうに思っております。  これによると、一般歳出というのは、私は今までのいろいろな財政試算から見ると大変切り込んでいると、こういうふうに思います。試みに前の中期展望ですね、そのとき、昭和五十九年度の一般歳出というのは四十二兆円を見込んでいたわけですね。それが実際の予算では、今度の一般歳出は三十二兆でありますから、これはかなりの大きな十兆を切り込んでいたと、こういうふうに私、申し上げてもいいんではないかというふうに思うわけです。また、前の中期試算に比べても二兆円弱、実際上は数字の上で言えば少なくなっているわけでありますから、ある意味では切り込んだと、こういうふうに私、見てもよかろうと思うわけであります。  そういう意味で、世間で言われているのに比べて、私はかなり一般歳出は切り込んでいるというふうに見るわけでありまして、ほかでは何か歳出削減が少ない少ないと、こう言っておりますけれども、私は大変大きく歳出を切り込んだと、こういうふうに評価していいんではないだろうか、こ一つ思うわけであります。そういうことにしても、昭和六十五年度で特例国債をゼロにするということになると、これは借換債を発行する計算例でいきますと、要調整額が十兆円になるし、それから特例債を発行しないというのにいたしますれば、十四兆ですか、このくらいの大変大きな額になりまして、それぞれ国債の発行額にしましても、あるいは公債の発行残高にいたしましても、相当な数字になると思いますし、結局、要調整額というのは、恐らく財源不足、バランスがとれていない分だと、こういうふうに見るわけでありますが、そうすると大変大きな財源不足というものが将来出てくるんだと、こういうふうに思うわけですけれども、これはどうなんでしょう。
  20. 竹下登

    国務大臣竹下登君) このようにして中期展望、それから一定仮定のもとにではございますが、仮定計算等々をお出しして議論していただく、単なる予算審議法案審議のみならず、将来の我が国のあるべき財政の姿について御議論いただく手ぐさとしていただこうというので出したわけであります。したがって、この歳出削減、これも今、一定の評価をいただきましたが、私どもとしてはかなり協力いただいたという感じを得つつも、まだまだ制度・施策の根源にさかのぼってメスを入れなきゃならぬところもあろうかと思います。  それからいま一つは、借りかえというのもその一つの方法であったわけでございますけれども、言ってみれば、直接法案には関係ございませんが、私との議論でございますから、財政全般と考えさせていただいてお答えさせていただくならば、言ってみれば、既発債というものは国民の貯蓄の現在高の中へ吸収されたものだ。そして今度は、新発債というのはこれからの国民の預金の伸び率、それを対象にしたものであるという意味においては、一応まず新発債を少なくしていくという物の考え方にまず立って、余りにも大きな影響を及ぼすから政策転換をさしていただいて、借換債は認めさしていただこう。  そういう中で、されば負担増をどこに求めるかということは、最終的にはまさに国民の合意と選択がどこにあるか、国会議論等を通じて結局それがどこにあるか、そしてそのコンセンサスを求めていかなければならないことになります。すなわち歳出削減あるいは負担増、それらの幾ばくかのどのような組み合わせ、そういうことを御議論していただくための言ってみればたたき台の一つとして山さしていただいておるわけでございますので、これからの一年間の御議論というようなものが六十年度予算につながっていき、そしてそれが六十五年度赤字国債から脱却するという努力目標に向かって、その都度都度の議論を踏まえながら進めていくしかないではないか、こういう感じで私どもは対応しておるわけであります。  したがって、そういう議論が積み重なるごとに、されば社会保障負担租税負担という問題、それから歳出削減というものは、まあこの点においてはある程度甘受し得るか、これは甘受し得ないとかいうような選択と合意というものが議論のうちに出てくる。だから、言ってみれば、このような方向で進めたいというものを出して、それで国民の 皆様方、口幅ったい言い方すれば、ついてきてくださいという感じでなくして、このような状態にするのにどういう組み合わせでいくかというのを一緒考えて、その選択と合意、コンセンサスを見きわめていこうと、こういう姿勢で対応をしたという考え方であります。
  21. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、これは仮定計算例ですから、私も実際どうなるか知りませんけれども、一応出された仮定計算例数字を見てまいります。先ほど私は一般歳出五%の伸びが適切であろうと見たんですけれども、これでずっと見てまいりますと、昭和六十一年度、再来年で見まして、要調整額が一番少ないので二兆円ぐらいですね、大きいのになりますと七兆円ぐらいにもなりますか。こういう紙の上だけで見ますと、ほかの方をどれだけ切り詰めてどういうふうにやるかというようなことは、この際この仮定計算の中には入っておりません。最小限でも、一般歳出をゼロとしても、借換債によって負担を先に繰り延べるにしても二兆円。私も先ほど評価しましたように、前の中期展望に比べて、ことしは十兆円も実際上切り込めたというんですが、もうそんなに切り込めないだろうなという気もするわけですね。そうすると、この最小限で二兆円、最大限になりますと七兆円、これはおたくの方で出された数字ですから、この数字については私は竹下さんとで違いないと思うんです、この数字は。  ところで、これを一体どうなさるつもりなのか。二兆円切り込むというのは、これは今までの毎年の実績から見たって、ここ数年の実績から見ても大変なことですね。これでこの財源不足というのを埋めるとすれば増税以外にないだろう。その前提は、六十五年にとにかく特例債ゼロにするという一つの枠で縛られているとなると、これは増税以外にないんじゃないか。私は別な考えを持っておりますけれども、この仮定計算でいけばそれ以外にないんじゃないか、こう思うんですが、どうですか。
  22. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この仮定計算でいけば、それは竹田先生おっしゃるとおりでございます。したがって、今五%ということをおっしゃいましたのは、いわば一般歳出の伸び率が名目成長率よりはちょっと低いところにあるから考えられる一つの姿じゃないか、こうお考えになるだろうと思います。しかし、それにしても要調整額から見れば容易じゃないな、ゼロということになりますと全く本当に容易じゃない、こういう感じを私自身も持っております。  一つは、おっしゃいましたとおり現行の施策・制度をそのままという前提に立っておるわけですが、もう一つ仮定に立っておりますのが、名目成長率を六と七の真ん中の六・五に見ておりますということと、それから租税弾性値をここのところ十年の平均値の一・一に見ておるということ。これもまさに仮定計算でございますから、この名目成長率を七%に仮に見るとか、そういうことになるとまた変わってまいりますけれども、どこに見るかという数値を探すとすれば、八〇年代後半の経済展望、よく私が七、六、五抜きの四、三、二、一と申しておりますが、名目成長率を一応六ないし七%程度ということを描いておられますので、それでその真ん中の六・五を見たわけでございます。したがって、この名目成長率、強いて言えば、もっと突っ込んだ議論をすれば、あるいは潜在成長力がもっとあるじゃないか、こういう議論もあるかもしれませんが、そういう仮定として六ないし七%の名目成長率の中間値の六・五に求めております形でそうなっておるわけでございます。  したがって、要調整額というものについて増税しかないではないかという前に、まだその組み合わせの中で歳出削減というものがどれだけできるのかということと、社会保障負担全体の形の中でどのような工夫ができるかということもすべて含めて、結局、国会での問答等を中心にしながら、今後の国民の合意と選択、コンセンサスをどこに求めるかということを模索していこう。こういうことでございますので、あながち現行の制度・施策そのまま、六・五%の名目成長率そのままという二つの仮定の上に立っておりますので、判然と増収分何ぼ、削減分何ぼという議論がなかなか難しいものである。しかし、こうして竹田さんに議論していただけるんですから、議論していただけるたたき台になっただけでも、私自身は少々苦労して出してよかったなと本当はそう思っております。
  23. 竹田四郎

    竹田四郎君 今のお話を聞いていますと、どうも竹下さんも、もともとそうだったのかもしれませんけれども、かなり経済成長論者の方に、河本さんとどっちかわかりませんが、どうもそっちの方にかなり姿を向けたんではないだろうかというふうに考えるわけです。これどうなんでしょうか、今までの御答弁とはちょっと趣が違ってきたなという感じが私はするんですがね。気持ちの上で何かちょっとあなたもお変わりになったという感じはないですか。
  24. 竹下登

    国務大臣竹下登君) いや、そこのところは難しいことでございまして、私はニュートラルといいますか、どちらかといえば中立ぐらいかなと、自分では自分の心に時として言い聞かせるわけでございますけれども、私の出身地が開発途上県でございますので、どうしても公共事業依存型の中の経済成長というのを考えがちな環境に自分自身が置かれておると思うのであります。したがって、こういう緊縮均衡予算を組みながら、どこかに日本人の潜在成長力は、頭のよさにおいても勤勉さにおいてもすべてにおいて世界一だから、潜在成長力というものはもっと高いはずだという期待感が私自身にあることは事実であります。  しかし、ここのところで私自身がみずからに言い聞かして、こういう渋い予算で、あるいは渋い法律案で御審議いただいておりますのは、問題は潜在成長力の見方に一つはございますが、もう一つは、財政というものだから単年度主義でございますし、今大きな減税を行い、今大きな公共投資を行っても、企業であったならば、数年後に果実を生んでもそれは全体にとっては大きなメリットになるが、しかし単年度主義の財政の中でそうした手法を取り上げたとしたら、五十六年、五十七年のような世界同時不況みたいなものがあったときに、一体取り返しがつかぬことになりはしないかというちゅうちょする気持ちも私には大変強うございます。  したがって、この間、ある人が私に増税を説くと言いましたが、顔を見りゃそう増税を説くでもないような気がしますけれども、単年度主義の問題の方に大蔵大臣をやっておりますと傾斜がかかってきたのだな。だから、今日のリスクが仮にあっても、数年後に果実を結べばというところまで踏み切るだけの私は拡大論者ではないと自分で自己採点をしております。
  25. 竹田四郎

    竹田四郎君 いずれにしても大きな問題でありますし、どうも私ども、きょうはそういうお話はなかったんですけれども、今までの予算委員会から本会議なんかの議論を聞いてますと、最近また少し大蔵大臣は違ってきたような感じがします。  どうも中曽根総理大蔵大臣との大型間接税に対する態度というのが必ずしも明確でない、何かどこか食い違っているような感じがします。最近あなたは、中曽根第二次内閣大蔵大臣をやっている間は、中曽根さんと同じように大型間接税、これはいかなるものであれそうだと思いますけれども、それはやらない、こういうふうにおっしゃっているわけでありますけれども、今のように仮定計算でありますから、こういうようになるか、ならないかは別であるといたしましても、どうもかなりの財源不足が出ざるを得ない。こういうことになると、中曽根さんが、ことしは総裁選があるんで、落ちるか落ちないか、それはわかりませんけれども、落ちて今度は竹下さんが幹事長におなりになるのか総理大臣におなりになるのか、それもわかりませんけれども、そうなると、やっぱり勉強した課税ベースの広い税金というのが頭をもたげてくるのではないか。今は土で厚く伏せられているわけでありますけれども、その辺がどうも、いつもお二人の御返事を聞いていて、ちょっとその辺が合ってないなという感じ国民もそう思っておるだろうと思うんですね。  同じ内閣でお二人のしかも枢要な方が、もう一人いらっしゃるわけですけれども、いつも何か感じが違う。今こういう財政危機の時期に当たって、いろいろ御意見を出されるのは私はいいと思うんですけれども、しかし、あなたは税制をつくり課税をしていくという、そういう一番の責任者でありますし、片一方は国政全体を運営していく執行者でありますね。そういう意味では何かお二人の意見が違う感じがしてしようがないんですが、この辺どうなんでしょうか。こういうふうに質問すると、きっとあなたは、私は総理大臣と変わっておりませんというようなお答えになるだろうとは思うんですけれども、その込もう少しこの際はっきりしておいていただきたいと思うんですが、どうなんでしょう。
  26. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この問題、一つは出発点の問題があるのかなど。ちょうど私、五十四年、五十五年が大蔵大臣でございまして、あのときいわゆる一般消費税(仮称)というものを実施するという方向ですべてが動いておったと思います、これは政府サイドのことでございますけれども。が、それが選挙の結果まあ否定されたと。あるいは言い方によっては、十分理解されるに至らなかったとでも言えるかもしれませんけれども、そのとき私自身考えましたのは、これは今国民の合意を得られる性格のものではない。しかし税というものは、結論は、所得の段階に担税力を求めるのか、消費の段階に担税力を求めるのかという議論、すなわち消費一般にかかる税制というものが、学問的といいますか、それそのものが否定されたら国民の選択の幅を縮めることだという考えを持って、極力お願いをして、いわゆる一般消費税(仮称)というものは否定されて、一生懸命ほかのことを考えなさいという決議にしていただいたわけであります。で、中曽根総理が最近おっしゃっておりますので大体整理ができたなと私思っておりますのは、いわゆる多段階に幅広くかけていく、大型間接税という手法はとらない、これは非常にはっきりしてきたんじゃないかというふうに思います。そうなると、単段階どうだという議論がまた出てまいりますが、そこまで一つ一つを今詰めて自分の頭の中で議論していらっしゃるとは私まだ思いません。だから、中曽根総理の判断というのは、俗に言われる大型間接税というのは国民のコンセンサスを得る状態にはないという考え方はきちんとしておるんじゃないかと思います。  一方、今度は、私にとっての一つの、まあバイブルという言葉は少しオーバーですが、教科書として税調答申というのがございます。税調においては、担税力というのは、結論は、所得の段階に求めるか消費の段階に求めるかという議論になるわけでございますだけに、今日の個別物品税というようなものの範囲を広げていくというような問題については絶えず検討をすべき課題であると思うと、こういう指摘があるわけでございますから、どういう事態になってもその勉強だけは続けていかなきゃならぬというふうに考えておるわけであります。だから、勉強の域を出ていないということだけは事実でございますが、勉強は絶えずこれは続けていかないといけない問題だという基本認識を私自身はしておるわけでございます。  したがって、ニュアンスとして、表現力の私の拙劣な点もございますが、間々国民皆さん方に誤解を与えるような前もないでもなかろうなと自問自答をしながら、しかし消費そのものを対象として担税力を求める税制そのものを否定していってはならぬ。国民の中にも時には、ある意味において選択の自由の幅は広いし、そして脱税とかいうようなことになりますと、間接税はすば抜けて少ないわけでございますから、そういう意味において間接税移行型の税制が好ましいという御議論をなさる人もあるものですから、やはり勉強は続けておっていかなきゃならぬ。  しかし、日本のこういういわば成熟したと申しますか、卓越した議会制民主主義というのは、大転換は結局求められるものじゃございませんので、いつのどの事態にもそれ相応に対応できる勉強だけはしていなきゃならぬということだけは心がけておかなきゃならぬのじゃないかな、こういう考え方でございます。
  27. 竹田四郎

    竹田四郎君 後の議論はまたこれからにしたいと思うんです。  そこで、今度も課税最低限というのを上げられたわけであります。私よくわからないのは、課税最低限というのは何なのか、具体的に何を指すのか、これがよくわからないんですが、これは主税局長、課税最低限というのはどういうことを言うのか教えてください。
  28. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 課税最低限というのは、委員おっしゃいますように、いろいろなケースによっていろいろな言葉の用い方があると思います。現在私どもがお示しをしておりますのは、給与所得者につきまして、給与収入のうち所得税のかからない部分というものをお示しするということで課税最低限ということをお示ししておるわけでございます。  それは基本的には、御案内のとおり、所得税というのは、基礎的な所得控除、非課税部分として控除されます部分を除きまして、残余の部分について累進構造を持った税率で税負担を求めるという税でございますけれども、その意味では、所得のうち基本的に非課税とされる部分といったとらえ方もあろうかと思うわけでございます。それはケース・バイ・ケースによっていろいろな言葉の使い方なり示し方があると思いますけれども、課税最低限を数量的にきちんと示すということと、もう一つは、所得税のいわゆる基本的に課税されない部分を示す目安として有効なのは、納税人員の九割以上を占めます給与所得者の給与収入について具体的に各家族構成に応じまして、この部分について所得税は課せられないということを金額的に表示するということで現在お示しをしておるわけでございます。  その課税最低限が一体どういう機能を持つかということについては、これはいろいろなことが言われておりまして、まず基本的には、給与所得者の場合、冒頭に私が申し上げましたように、収入のうち所得税のかからない部分を示すということでございますが、この課税最低限の機能は、家族に応じまして基礎的な人的控除があるわけでございますから、家族構成に応じて担税力を具体的に求めるという機能もございましようし、課税最低限の水準いかんによっては、いわゆる所得のある人のうち納税者の割合が一体どれぐらいになるかといったようなものを画する基準にもなるわけでございまして、基本的には収入のうち所得税のかからない部分ということでございますけれども、いろいろな機能を持っておるということでございます。
  29. 竹田四郎

    竹田四郎君 じゃ、その課税されない部分というのはどういうわけで課税されないんですか。その部分はなぜ課税されないんですか。よくわかりませんから、その込もう少し詳しく説明していただきたいと思うんです。恐らく、人間ですから世帯を持っていて、まず食べるということが非常に重要だろうと思いますけれども、そういう人間の生活の面とのかかわり合いで、ひとつ課税されない部分というのを説明してくれませんか。
  30. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 課税されない部分と申しますのは、委員もおっしゃいますように、所得税は応能負担の税でございますから、担税力に応じた課税を求めるということでございます。したがって、課税最低限、つまり所得税のかからない部分というのは、担税力のない部分ということがまず観念的に規定されると思います。  ただ、この課税最低限をしからば具体的にどういう水準で設定するかということについては、いろんな考え方があろうと思いますけれども、それはそのときどきの所得水準なり、その国の経済の状況あるいは財政の条件、いろんなものによって結局は左右されるわけでございますが、我が国の戦後における所得税の具体的な課税最低限の推移の現実を見ました場合に、大ざっぱに申しまして、昭和三十年代まで、これは税制調査会の答申等もその時代の進展に応じまして、微妙に変化といいますか、考え方が移り変わってきておるわけでご ざいますけれども、少なくとも大ざっぱに申し上げまして、税制調査会の考え方なりそのときの立法政策から考えました場合は、昭和三十年代は、課税最低限というのはいわゆる最低生活費をめどにして議論をされたということは確実に言えるかと思います。  現実に、マーケットバスケットとか、あるいはエンゲル係数等で課税最低限の水準いかんということが、当時立法政策としてもいろいろ議論された経緯がございますし、税調答申なんかでもそういうふうな考え方が示されておるわけでございます。  昭和四十年代以降は、経済の高度成長あるいは財政事情等を背景にいたしまして、率直に申しまして、最低生活費の水準というものを一方念頭に置きながら、それよりもややゆとりのある部分について具体的に課税最低限を考えるという方向に議論が進んできたということは、私は否定できないと思うわけでございます。  現実に、昭和五十二年に税制調査会の中期答申がまとめられましたが、その作業過程においてやはり課税最低限のあり方というのが議論されておりまして、恐らく私は、現時点における税制調査会なり私どもの課税最低限に対する物の考え方の基本といいますのは、先ほど申しました最低生活費の水準と、この税制調査会の議論では標準的な生活費という言葉が使われておりますが、標準的な生活費と最低生活費の間のどこかに課税最低限というのが設定されるということが、現時点の我が国における課税最低限の求め方であろう。標準的な生活費まで課税最低限ということになりますると、もうほとんどの人が、平均以上の方しか所得税を負担しないということになりますので、それは所得税の性格上も問題があるということでございましょう。  ただ、計量的に、ではその最低生活費と標準生活費の間に具体的にどういう基準があるかということは、これはこのときの議論にもございますけれども、結局は財政状況、諸般の事情により、そのときどきに位置づけが政策的に決定されるというふうに考えるべきであろうというふうに指摘があるわけでございまして、おおよそ現在までの考え方は今私が申し上げたとおりでございます。
  31. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、事業所得者の課税最低限というのは具体的に幾らになるんですか、標準世帯で。
  32. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 事業所得者について、課税最低限といったものを計量的に表示いたしまして議論するのが適当かどうかという問題があるわけでございますけれども、仮に今おっしゃいました夫婦子二人の事業所得者につきまして、基礎的な人的控除と社会保険料控除、この部分が所得税が課せられない所得部分という意味で計数を申し上げますと、五十九年度、現在御提案申し上げております改正後のベースで百五十四万六千円という数字になります。  ただ、ここで一言補足させていただきたいのは、事業所得者は結局、収入から経費を引いた所得、そこからただいま申し上げました基礎控除と社会保険料控除が控除されます。その額が百五十四万六千円ということでございまして、同じく給与所得者につきましては、収入ベースで二百三十五万七千円ということでございますが、事業所得者の場合は、それぞれの業態に応じまして収入と経費ということで、所得の算出される過程が非常に変わってまいるわけでございます。したがいまして、従来、事業所得者につきましても、仮定数字として課税最低限なるものを表示し議論した時代もあったわけでございますけれども、現在はそういった議論は余り実益がないということで、この数字は現在はお示しをしていないわけでございます。
  33. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうもよくわからぬですがね。事業所得の場合には百五十四万六千円、給与所得者の場合には二百三十五万七千円だと。どうしてそこにそんな大きな差が出てくるのか。事業所得者も必要経費は引いているわけですね。給与所得者の給与所得控除の大部分というのは私は必要経費だというふうに言っていると思うんですよね。そのほかにいろんなものがこれは若干入っていますよ。入っているけれども、大体そういうことだ。片一方は必要経費を含めて課税最低限だと言っている。片一方は必要経費を除いて課税最低限と言っている。そこに事業所得者と給与所得者の課税最低限の意味そのものに違いがある。なぜそういうふうに違わせなくちゃならないのか、ここがわからぬですね。片一方には必要経費が入っている。片一方では必要経費を除いている。  そこで、今、事業所得者の必要経費を除いた部分の課税最低限が百五十四万六千円だというお話ですが、生活保護費はどんなふうになっているんですか。そしてどんな計算を生活保護費ではなさっているんですか。
  34. 清水康之

    説明員(清水康之君) 四十九年度の生活扶助基準は、具体的に申し上げますと、年間で、これは暦年でございますが、百八十二万二千三百三十円でございまして、通常これにいわゆる住宅扶助と教育扶助あるいは期末扶助を加えまして百九十九万五千二百四十円、これが五十九年度の最低生活保障水準ということになろうかと思います。
  35. 竹田四郎

    竹田四郎君 こういう数字を出しているのを私は余りよく存じ上げませんけれども、あと人事院が給与の勧告を出すときに何か標準生計費というものを出されているというふうに聞いておりますが、五十九年はまだされておりませんから、あるとすれば去年の数字しかないと思うんですけれども、それは一体幾らで、そしてどんな計算をなさっているのか、その辺を御説明いただきたい。
  36. 藤野典三

    説明員藤野典三君) 標準生計費につきましては、総理府の統計局で行っております家計調査の結果をもとにいたしまして、いわゆる標準世帯の消費支出金額が最もありふれた階層、いわゆるこれを並み数階層と申しておりますが、その水準に換算をいたしまして出しておるわけでございます。これは費目別になっておりますが、その中でも特に支出の多い食料費につきましては、家計調査とかあるいは厚生省の国民栄養調査をもとにいたしまして、いわゆるマーケットバスケットを組んで算出しております。  これは地域別に出しておりまして、全国と東京都と二つ出しておりまして、しかも各世帯人員別に出しておりまして、一人から五人まで一応出しております。  この数字を申し上げますと、全国の場合で申し上げますと、本年の場合、一般的に、全部読み上げるのもあれでございますから四人で申し上げますと、二十一万九千百円でございます。それから東京都の場合でございますが、同じく四人世帯で二十三万三千二百八十円でございます。  この標準世帯と申し上げますのは、いわゆる四人世帯でございましてもいろいろの組み合わせがございます。いわゆる老夫婦の場合とか、そういう子供だけではなくていろいろなケースがございますから、したがってそれは夫婦と子供二人の場合でございまして、しかもそれはいわゆる世帯主のみが就業しているということで一応想定いたしまして算出しておるところでございます。
  37. 竹田四郎

    竹田四郎君 厚生省は、その基礎数字を出す出し方というのはどういう出し方をなさっているんですか。一番最初の基礎ですね。
  38. 清水康之

    説明員(清水康之君) 御案内のとおり、最低生活費を出します場合には、通常一類経費という個人経費と二類経費という世帯経費がございまして、その一類経費は四倍をいたします。一人当たりに出ますので四倍をします。それから二類経費の世帯経費は、これも若干人数によって少し加算がございますが、そういう一類経費と二類経費を足しまして一応の最低生活扶助基準ということにしておるわけでございます。
  39. 竹田四郎

    竹田四郎君 その点もう一つ、一番初めの生活の費用を出すというのは、これは私が聞いたのでは、昭和四十年のときの数字に、個人消費支出の毎年の名目的な伸びでしょう、これをずっと掛けて、それから出していると、こうおっしゃられたように思いますが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  40. 清水康之

    説明員(清水康之君) 基本的には御指摘のとおりでございまして、四十年度以降政府の出します経済見通しにおける民間最終消費支出の伸びというものに準拠しまして、それをベースにしまして一人当たりの生活扶助基準相当の伸び率を出しました。その上で一定の伸び率を掛けてやっておるわけでございます。いわゆる生活扶助基準の改定率と申しておりますけれども、そういうやり方をしております。
  41. 竹田四郎

    竹田四郎君 人事院の方にお伺いしますけれども、その家計調査、これは総理府の家計調査あたりを中心になさっているんだろうと思います。厚生省のは、私ちょっと悪口言って大変恐縮ですが、かなり昔の生活実態をやっていっているような気がするんですけれども、人事院の報告というのは、総理府の家計調査でやっていきますと、かなり今の生活の実態、こうしたものが写し出されているというふうに理解してよろしゅうございますか。  例えば、これは私総理府の家計調査をあちこち少し数字を当たってみたわけですが、こういうのを見てみますと、消費生活のシェアで見ていきますと、かなり消費生活の内容が違ってきているわけですね。例えば自動車関連費などを見ていきますと、昭和四十年に比べて五十七年ということになりますと、大体四・五倍くらいになっているわけですね。教育費はそれほどでもありませんけれども、補習教育費などというものを見てみますと、これは四倍程度にふえている。あるいはそのほかいろいろエアコンのための費用というようなものも、これは倍率でいきますと三倍近くになっている。こういう形で、米の使い方は少なくなっているとか、灯油の使用量も生活の中ではふえているとか、こういうような非常な変化が生活の中にあるわけですけれども、そういうものは人事院の標準生計費の中には含まれていると、こういうふうに見てよろしいんですか。あるいは生活の実態というのはかなり前の生活実態というようなものがまだ幾らか残っていると、こういうふうに見た方がよろしいんでしょうか。その辺ちょっと教えていただきたいと思います。
  42. 藤野典三

    説明員藤野典三君) 先生今御指摘の点でございますが、たとえば今自動車関連の費用等につきましては、費目別に申し上げますと、いわゆる雑費の中に入っておりますが、そういう意味におきまして、雑費の伸びは昔に比べまして相当程度伸びている、ほかの費目に比べましてもかなり大きく伸びております。したがって、私どもの調査にいたしましても、昔は雑費一本であったものを雑費一、二と分けまして、そういう意味で家計調査そのものが実際に支出されたものを反映しておるわけでございますから、そういう意味においてはかなり、かなりといいますか、実質をかなり反映しておるものだと理解しております。
  43. 竹田四郎

    竹田四郎君 厚生省の方と人事院の方、結構でございます。  そうしますと、今の話で、厚生省のお話ですと、最低生活費と目されるものが、住宅、教育を含めまして標準家族で百九十九万五千幾らと、こういうことになりますし、それから先ほどの主税局長のおっしゃっている事業所得者の標準世帯での最低というのが百五十四万六千円。四十五万くらい生活保護世帯の最低生活費の方が高いという、こういう数字になるわけですね。これが私どうも納得できないですね。  課税最低限という問題のあり方というものをもう少し明確にしていかないと、常に国民は、給与所得者の課税最低限の二百三十五万七千円、この前は二百一万五千円ですか、これが頭にある、これが最低生活費だというふうな形に映りやすい。私はもっと正直な形で、事業所得者の課税最低限はこれだけでございます、農業所得者の課税最低限はこれだけでございますと、こういう形で標準世帯で出していくということの方がわかりがいい。給与所得者の課税最低限というのは経費が含まれているわけですね、実際は。今度の場合、二百三十五万七千円の中の給与所得控除というのは幾らになるんですか。
  44. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 二百三十五万七千円のうち給与所得控除相当分は八十七万二千円でございます。
  45. 竹田四郎

    竹田四郎君 その八十七万二千円の中で本当の意味所得を得るための必要経費、これは幾らぐらいに見ていらっしゃるんですか。  それからいろんなことが書いてありますね、給与所得控除の内容というのは。例えば税金の前払いの金利分だとか、あるいは担税力に差があるからその分を補っているだとか、そんなことがいろいろ書いてあるし、あるいは所得の捕捉率が不足しているからその分の金額を含めているとか、こういうふうに私どもいろんな書類で読むわけであります。そういうふうに分けているものが多いと思うんですが、今の八十七万二千円でこれを分けるとすれば、主税局ではどういう分け方をなさっていらっしゃいますか。
  46. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 給与所得控除の性格なりその給与所得控除の水準については、いろんな議論があるわけでございますけれども、常々申し上げておりますように、給与所得控除というのは、勤労に伴う必要な経費の概算控除部分のほかに、いわゆる純勤労性所得とその他の所得との担税力を含めた負担力から見た負担の調整という意味合いが入っておる、こういうふうに現在まで説明をされておるわけでございます。それは例えば今、委員が例示されました確定申告で納付する事業所得者等と比べた場合の金利相当分、あるいはいろいろ議論がありますけれども所得の捕捉の格差等もこの部分に含まれるということでございます。  ただ、現在の給与所得控除の体系は、御存じのとおり、四〇%から五%までの収入段階に応じました五段階の控除率の体系になっておるわけでございますけれども、昨年十一月に中期答申がまとめられましたときに、政府の税制調査会で議論されましたのは、五十七年分の家計調査、これは勤労者世帯でございますが、各世帯分位につきまして、いわゆるサラリーマンの必要経費と目される支出項目を全部洗い出しまして、集計をいたしました数字がございました。これによりますと、各収入分位によって若干のばらつきはございますけれども、ほぼ収入に対して一〇%というのが少なくとも五十七年の家計調査を分析した限りでの係数でございます。  したがって、現在の給与所得控除は、一〇%が必要経費部分であって、実際はそれより高い数字になりますから、例えば年収三百万ぐらいでございますと控除率三五%、今の課税最低限は二百三十五万七千円でございますが、これになりますと三十恐らく七、八%ぐらいになるかと思います、控除率が。一〇%とその差がその他の負担の調整部分だというふうに私が申し上げているわけではございません。必要経費部分は一〇%であるということを確定的には申し上げているわけではございませんけれども、かなりの部分はそういう勤労性の所得に対する負担の調整という意味もございますし、もう一つは低収入のところほど担税力は少ないだろう、低いだろうということも加味されまして、現在のような控除率の体系になっておる。計量的に申し上げられるのは、ただいま申し上げましたことが限度でございます。
  47. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうもよくわからぬですね、今これだけおっしゃられても。二百三十五万七千円の方の所得を得るためのその直接の経費というのは、一〇%だと言ったら二十三万円ですか。八十七万二千円から二十三万円を引いたあとの部分は何だかわからぬというわけですね。金利の部分は計算できるでしょう。金利の部分は幾らになりますか。これは何%かで計算すれば金利の前払い分は出るでしょう。少し分析してくださいよ。幾らになりますか。少し計算さしてください。
  48. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 課税最低限二百三十五万七千円というのは、これは税額ゼロでございますから、利子部分はないわけでございますけれども、給与収入四百万円ぐらいのモデルで試算したものが今手元にございますが、それによりますと、所得が大体二百万でございます。所得の大体〇・一%弱でございます。
  49. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、この八十七万二千円は金利ゼロということですね。そうすると、二十三万五千円を除いた六十三万七千円ぐらい、これは何ですか。
  50. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 先ほども申し上げましたように、経費の相当部分が一〇%であるということを確定的に申し上げているわけじゃございません。ただ、家計調査から見たら、そういうものが一つの参考になるだろうということで申し上げたわけでございます。  今竹田委員の言うように、経費として一〇%と仮に竹田委員が割り切られたといたしますと、その残余の部分は勤労性所得に見合う負担力、担税力につきまして、他の財産性の、資産性の所得に比べまして、勤労性の所得というのは担税力が弱いというふうに見るべきでございましょうから、そういった部分が加味されておる。なかんずく我が国の場合、給与所得控除は、フランスなんかと違いまして、収入額に応じまして控除率を下の方ほど厚くしておりますから、我が国の給与所得控除の考え方としましては、必要経費の概算控除の部分プラス、収入の低い者ほど担税力の減殺要因が大きいという考え方に立って仕組まれておるわけでございますが、どの部分が必要経費であり、どの部分が担税力の減殺要因としてカウントされておるかということを計量的に、確定的に申し上げることは、非常に困難であるということはぜひ御理解を賜りたいと存じます。
  51. 竹田四郎

    竹田四郎君 それじゃお尋ねするんですが、子供三人抱えた主婦が内職やっている場合には、この六十三万七千円というのは見てくれるんですか。
  52. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは内職の場合でも、源泉徴収を受けておったり、企業の支給明細書なんかがある場合には、給与所得者として扱われる場合がございます。そういった場合はもちろん給与所得控除は適用されますけれども、事業所得者あるいは雑所得という家内労働の形態でございますと、給与所得控除というのは税法上認められないということになります。
  53. 竹田四郎

    竹田四郎君 それは同じ勤労で、片方は給与所得をとる、片方は内職――まあ内職だって今いろいろありますからね。高い内職だってありますよ。そういうのは、さっき言ったような形で低く見積もられていて、ここだけはそれだけというと、同じ勤労でこんなにも差があるというのは、私は不思議だと思うんですがね。どうもその辺は納得できない。  しかも、先ほどからお話がある中で、基本的には、給与所得控除の中で少なくともさっき言った二十三万五千七百円はほぼ必要経費と、これは主税局長も言っている。ほぼですよ、正確とは私は言いません。ほぼそれだけは経費で差っ引かれているのが積まれて、片方には積まれていない。これはわからないですね、これが課税最低限とは。  もう一つ私は主税局長に聞きますが、あなたは大変御苦労されて御答弁になっているから、それが余計わからない理由がもしれませんけれども昭和四十六年の長期税制のあり方の第二というところに「課税最低限」というのがございますね。私、古いのを拾い出したんですが、「課税最低限」というところの初めの方①に、「その時々の国民生活水準からみて通常必要とされる生計費に対応する部分を課税外におくこと」、これはわかりやすいですね。生計費がまず中心だと、こういうことですね。二番目に「納税者数を税務行政上処理可能な程度以内に保つこと」、それは「有業人口の五割程度に縮減することを目途に課税最低限の引上げを図るべきであるとしている」と、こう書いてあります。これと今の課税最低限のこととはもう全然関係ないんですか。
  54. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 幾つかの問題の御指摘がございますので、若干整理をして申し上げることをお許し願いたいと思います。  まず、委員が端的に疑問として問題を提起されましたように、給与所得者におけるいわゆる収入基準で我々が示しております課税最低限と、事業所得者の基礎的人的控除とを単に合算したものを仮に課税最低限と観念して、その計数を比較すると、非常に議論が混乱するということで、私どもがお示ししていないというのは、まさに今の御議論で私どもその問題をさらに痛感しておるわけでございます。  と申しますのは、一つは、事業所得者と申しましても、例えば奥さんが白色専従者控除の適用を受けているかどうか、あるいは青色申告が。この場合には家族給与制が認められております、相当な基準である限りは。そういった事業形態、家族労働の形態によりまして、実際の税負担の姿というのは非常に多種多様であるわけでございます。したがいまして、給与所得者のように画一的に収入基準で客観的にお示しできない。事業所得者については、そういった意味で専従者給与等、あるいは活用している態様によっていろいろ違うという問題がまずございます。  それからもう一つ、先ほど内職について例を引かれました。給与所得者と認められる場合には、給与所得控除が認められるわけでございますけれども、一般の事業所得者あるいは雑所得の場合は、給与所得控除は認められないということになりますと、一にかかって、その収入に対して経費をどう見るかということが、これは非常に難しい問題になってくるわけでございます。内職なんかの場合は、その事業に本当に必要とした経費なのか、家事関連費なのかというのは非常に混在してまいります。つまり、本来、家計部分のものなのか、事業に見合う部分なのか、こういう点につきましては、執行当局が実態に応じまして、現在、内職の事業所得の経費の認定に当たりましては、いろいろ工夫をしながら対応しておるということでございます。したがいまして、そういった非常に零細な事業所得者の場合は、家族の事業の態様とか、事業の実際の労働の提供の態様によりまして千差万別であるという、そういう実態認識に立った場合に、先ほど来議論なさっております事業所得者の場合の仮定計算としての課税最低限の議論というのは、物差しとして余り意味がないし、むしろ、かえって非常に疑問と申しますか、議論の混乱を招くという意味で私どもはお示しをしていないということを申し上げておるわけでございます。  それから、先ほど課税最低限の一つの機能といたしまして、納税者割合を画するという機能があるということを申し上げました。四十六年の答申には、御指摘のとおり、「納税者数を税務行政上処理可能な程度以内に保つこと」ということが書いてございます。私ども、この考え方が現在、否定されているということは考えておりませんけれども、この納税者割合については、税務行政上の問題のほかに、およそ市民社会でタックスペイヤーの割合というのは、一体多い方がいいのか少ない方がいいのかという非常に大きな議論もあるわけでございます。したがって、納税者割合というのは、課税最低限を議論する場合に非常に大きな問題ではあると思いますけれども、それは税務行政上の問題のほかにいろんな各般の観点から議論さるべき問題であると孝えております。
  55. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうすると、この問題は決定的に否定されているような感じでもないんですね。  先ほど資料をいただいたわけでありますけれども、この立場から見ますと、有業者の総数――私は違った計算をしたわけであります。おたくの方のこの書類の中の就業者総数ということから見ていきますと、今七六%ぐらいですか、私の計算でいくと。そちらの計算は、何かそういう計算をしておりませんから、私の計算でいきますと、就業者総数、それに源泉の納税者数、申告の納税者数、これを納税者の合計数といたします。しかし、これにはもちろんタブっているのがありますよ。だからタブっているのは当然引かなくちゃなりませんけれども、それはおたくの方の統計ができていないから私は引きようがないです。そう大きな誤差はないということで調べてみますと七六%ということで、五割台をはるかに超えているわけですね。  で、先ほどの四十六年のときの答申と今のこの数字がこれだけ変わっている。それはどういう経 緯なんでしょうか。
  56. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 給与所得者それから農業所得者、それ以外の事業所得者等全部含めましたいわゆる納税者割合、五十九年度で七六%、大体そういう数字はお示しのとおりでございます。  ただ問題は、給与所得者の納税者割合の問題と、それから事業所得者、いわゆる申告所得税の納税義務者でございますが、の割合とでは、税務行政という観点からは非常に意味が異なってまいります。御案内のとおり、給与所得者につきましては、もうほとんど大部分が年末調整で納税は完結いたしますから、税務行政という側面から見れば、むしろ事業所得者の数あるいは納税者の割合が税務行政に対してどれだけの支障を生じておるかというふうな問題であろうかと思うわけでございますけれども、五十年代の数字をずっと拾ってみましても、農業所得者の納税者割合は、年によって、不作の年等もございますので、かなり揺れ動いてはおりますけれども、大体一〇%台で推移いたしておりますし、事業所得者につきましても、五十年代に入りまして、五十七年まで大きな減税が行われませんでしたから、漸増の傾向にはありますけれども、大体三〇%台で推移をいたしております。一方、給与所得者につきましては、七割から八〇%台の水準で推移しておるということでございまして、こういった観点から見ますると、現時点で税務行政の観点から課税最低限の議論を非常に大きな要素を持って考えるという局面にはないのではないかと考えます。  しかし、お示しになりました四十六年度の答申の考え方を基本的に否定するものではございません。税務行政に重大な支障を生じる、あるいは税収に比べてコストが非常にかかるといったような課税最低限であれば、これはその観点から見直すということが当然必要な場合もあるいは生じてくることは当然予想されるわけでございます。
  57. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 今、竹田委員の質問を聞いていて、極めて初歩的なことで、こういうのはどうなるかなと感じましたので、お答えいただければと思うんですが、給与所得であればいいわけですね。  そうすると、給与所得は、だんなさんが奥さんに給料出してもいいわけでしょう。そうすると、内職の事業をだんなさんが受けてきて奥さんにやらして、だんなさんがその分の給料を払ったら給与所得控除ができないかなという、今のお話を聞いていてそういうことができないだろうかと、この点が一問。  それからもう一つ、この機会に、実はこれからの論議をする場合に、これはどうなのかなと思っているんですが、所得税法等というのがありますね。でも、これ一括して、一本の法律案として出てきている場合に、よくわからないのでまことにお恥ずかしい話なんですが、この場合に、所得税法には減税で賛成だけれども国税通則法には反対だという場合に、一本で出ている場合に、賛成、反対と両方言えるのかどうか。それによって私のこれからの質問のいろんな組み立てもありますので、何ぼ考えてもよくわからないので、あわせてひとつお答えいただきたい。
  58. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 前半の問題についてお答えを申し上げます。  委員のお尋ねは、内職等の場合に、事業をおやりになっておる御主人の方が奥さんに給料という格好で何がしかのものをお払いになる、これをどうするかということでございますが、現在の税法上の建前では、御主人が白色の場合と青色の場合で若干違うわけでございます。  白色の方は大変多うございますが、こういう方につきましては、一定の限度内で給料となるということでございます。この一定の限度内というのは、現在の税法では四十万ということになっておるわけでございます。したがいまして、四十万円までお払いをいただければ、その分は奥さんの給料ということになりまして、この分につきまして給与所得控除の適用があるわけでございます。  それから、もし御主人が青色でございますと、これは青色専従者給与ということになりますので、奥様の分は青色専従者給与として取り扱われるわけでございます。これにつきましては、これも法律上はある限度がございます。ある限度と申しますのは、同業種との比較、それからもし奥様のほかに従業員がおるという場合には、その同じ事業の中の従業員とのバランスというようなことから、相当な限度ということになっておりますが、この相当な限度が幾らということは別に決まったものはございません。とにかくその相当の限度におきまして御主人の所得からその分が経費として落ちるわけでございます。奥様の受け取りましたものは給与所得ということになりまして、これに対して給与所得控除の適用があるわけでございます。現在、この青色専従者給与は、全体といたしましては、五十七年分でお一人百二十七万円程度になっているわけでございます。
  59. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 ちょっと私の質問の仕方が悪かったので誤解しておると思うんですけれども、青色やなんかの場合ですと、だんなさんの事業を奥さんが手伝うということですね。そういう場合、同一事業ですね。  私の今お伺いしたのは、そうでなくて、だんなさんが八百屋さんをやっていて、全く違う仕事をだんなさんが外から受けてきて、それを――八百屋さんでなくて、給料生活者でもいいです。その方がわかりやすいかもしらぬね。全く別なところから仕事を受けて、それを奥さんに命じてやらせる、そしてそれに給料を払う。払いますよね。この場合は給与所得になるのか、内職とみなされるのかということなんです。
  60. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 今の例に即して申し上げますと、だんなさんが八百屋さんをやっておられる、で、何かほかの事業の、恐らく委託とかそういうことでお仕事をおやりになる、その仕事の形態がまさに問題だと思うわけでございます。この形態が所得税法上、事業所得ということになりますれば、ただいま私が申し上げましたことがそのまま適用されるわけでございます。  しかし、そのだんなさんがお持ちになった事業というのが事業所得の形態ではございませんで、いわゆる雇用関係と申しますか、雇用関係を結びまして得た所得でございますと、これはそのだんなさんの得た収入というのは給与所得でございます。これにつきましては、だんなさん御本人についてはもちろん給与所得控除の適用がございますが、これを奥様に渡して手伝いをしていただくという点につきましては、格段の控除はないわけでございます。
  61. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 時間の関係で、この問題はこれで、また後日やります。
  62. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 後段の問題の御指摘がございました。現在御提案申し上げております所得税法等の一部を改正する法律案、先ほど竹田委員からも御批判を交えて御指摘があったわけでございますが、今回御提案申し上げております背景は、所得課税の問題につきましては、実は昨年十一月の中期答申の前の五十五年の答申以来、税制調査会の中では所得課税、なかんずく申告所得税の納税環境の整備の問題は、抜本的な見直しとの関連で議論をされてきたわけでございます。したがいまして、今回私どもはそういった議論の背景も踏まえまして、適正な負担の見直し、公平な課税という観点から一体のものとして御提案申し上げておるわけでございます。災害減免法につきまして、これは前回の所得税法の大改正のときにそれと一緒に提案しておる慣例を踏まえまして、今回この部分についても所得税法等という法律で一本で御提案させていただいておるわけでございます。  部分的に賛成、反対という委員の御質も御でございますけれども、それ以上のことはどうも私からお答えする問題ではないような気がいたしますので、御了解賜りたいと思います。
  63. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それを言ってくれないとこれから質問をつくるのに困っちゃうんだけれどもね。というのは、国税通則法所得税法というのは、災害減免なんかのあれのように、そうくっついてない面がたくさんあるんですよ。国税といったらたくさんあるでしょう。所得税だけじゃない。それ の全体に及ぶ通則法が「等」ということで一括して縛り込むというのは、何か議決権に対する制約というかね。こっちの法律は気に入ったけれども、こっちは気に入らないということはあるですよ、完全にドッキングしているやつでなきゃね。それをお答えできないと言ったら困る。どっちなんですか、それは。片方賛成で、片方反対というわけにはいかないということなんでしよう。どうなんです、どっちなのか。
  64. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 私がお答えする域を出ておると申し上げましたのは、国会議員の採決権の問題でございますので、一行政官がそういうことはコメントできないという意味で申し上げたわけでございます。
  65. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  66. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記を起こして。
  67. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、今までの私と主税局長との話を聞いていて、どうもすっきりしないですね。大蔵大臣は頭がいいから、すっきりなさったですか。どうも私は頭の悪いせいか、よくわからない、何が本当の意味で課税最低限なのか。これから税金というものがもっと国民にわかるような形をとるには、これは一番基本でしょう。おれは税金がかからないけれども、それから上は税金がかかるんだと、こういうことは私は一番基本だと思うんですよ。あとどうかかっていくか、税金のかかるうちどうかかっていくかというのは、税率がいろいろあるから、これはよく調べてもらえばいいんで、申告納税制度の中で、おれは最低どれだけは税金がからないんだということがわからなければ、税金そのものがわからないんじゃないでしようか。  そういう意味で、私は、今までの課税最低限という議論が少し放置されてきた、真剣に大議論が行われていなかった、こういう気がするわけですね。それから、今までは確かに財政がよかったものですから、ある意味で理屈はどうでもいいから、とにかく割り振っていくというような形で、理屈よりも金の方が減税等において先に割り振られてしまったというきみがある結果がこういう形に私はなったと思うんですね。しかし、これからはそう簡単な時代じゃなくなってきているわけですよ。税金についてやかましくなる時代だと私は思うんですね。そういう点で、こういう点はっきりしなくちゃいかぬですね。  主税局長にお聞きしますが、基礎控除の三十三万円というのは何ですか。
  68. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 基礎控除と申しますのは、納税者本人の課税所得を算定いたします場合の基礎的非課税部分として所得控除として認められているものでございます。
  69. 竹田四郎

    竹田四郎君 その基礎的な非課税部分というのは、具体的にそれだけの金額を今度も組んでいるわけですね。この前二十九万円で組んでいるわけです。これは一体内容は何ですか。ただ三十三万円にしたんですか。これはほかの扶養控除にしたって同じですわな。基礎控除というのは、事業所得であれ給与所得であれ、これは所得を得る人の基礎の控除でしょう。それから扶養控除というのは、先ほどの生活保護のでいけば子供は九歳と三歳だったですかな、そのくらいだと思うんですね。これは一つ計算ですから、そのものはそういう計算はなさらなくてもいいと思うんですけれども、実際はそのくらいの家庭が標準家庭だとすれば、扶養控除は三十二万円です。基礎控除が三十二万円、扶養控除が三十三万、三歳の子供が三十三万で、四十歳幾つの人の働き盛りの基礎控除が三十三万、これもよく理解できないですね。  確かに昔は、基礎控除と配偶者控除、これはある程度高かった。第一子は幾ら、第二子は幾らという形で扶養控除も私はあったと思うんですね。これも何か最近は三十三万でずっといっちゃう。三歳の子供は年間三十三万の扶養控除が基礎的な非課税の部分であっていいのかもしれませんね。しかし四十何歳の基礎的な非課税の部分が三十三万という、これもとにかく納得できないわけですね。それなら世帯的に物を考えた方がわかりいい。この辺なんかも私はどうもよくわからぬですがね。主税局長、その辺をひとつ明快に答弁していただけませんか。まあ最後に百三十二万を四で割ったと言えば、それも一つの言い方ですよ。何だかわからぬけれども四で割ったんだよと言えば、それでもいいんですよ。その辺ひとつ明快にやってください。
  70. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 基礎控除、配偶者控除、扶養控除が均一の額になりましたのは四十九年の改正のときでございます。御指摘のとおりでございます。  当時の税調の答申にも触れられておるわけでございますけれども、この基礎控除と家族の控除でございますが、これの組み合わせをどうするかということについては、各国の税制を見てもまちまちである。ただ、生計費との関連から言いますれば、必要生計費というのは、規模の利益と申しますか、人数がふえるに従って規模の利益があるわけでございますので、理論的に言いますと、基礎控除に対して配偶者控除なり扶養控除なり、特に扶養控除は人数がふえるに従って逓減していくという考え方がむしろ背景にあって、従来からああいう差が認められておったわけでございますが、四十九年度の答申では、既に我が国の課税最低限もかなりの水準に来たということと、同時に制度的にも非常になじみやすい、わかりやすいということで、同じ額にそろえるという考え方が述べられております。  今委員がおっしゃいましたのは、実は所得税の基本にかかわる、仕組みにかかわる大きな問題の提起でもあるわけでございまして、これはいわゆる課税単位の問題でございます。つまり、我が国のように個人稼得者単位に割り切った税制を仕組むのか、あるいは世帯単位といいますか、あるいは夫婦単位と申しますか、そういった課税単位で仕組むのかという議論に通ずるわけでございまして、現にフランスのN分のN乗という方式でやりますと、子女の数がふえるに従いまして控除が逓減していくような、現実にそういう仕組みの税制もあるわけでございます。  いろんな取り組み方があると思いますけれども、現実の我が国の四十九年以来の税制では、この基礎的な三つの控除を同じ額にしておくということが非常にわかりやすいということと、もう一つ今度の答申では、特に多人数世帯の負担感が独身者世帯の生活のゆとりに比べて非常に狭まっておる。したがって、多人数世帯の負担の軽減ということを主眼に置く場合には、むしろ配偶者控除も扶養控除も基礎控除と同じ額で一律に上げるというのが非常に軽減効果が働くわけでございます。したがいまして、そういった観点も入れて、今回の人的控除の引き上げに当たっては、この三控除を同額とし、引き上げ幅も同額にすべきであるという答申をいただいて、現在御提案申し上げておるわけでございます。  そこで、二十九万円を三十三万円に、四万円引き上げた根拠いかんということでございますが、これは所得税と申しますのは、所得控除と税率構造の組み合わせで結局税負担が決まってまいるものでございますけれども、なかんずく人的控除の部分は給与所得者の課税最低限に密接な関連があるわけでございます。  したがいまして、私どもは今回の所得税の人的控除の引き上げに当たりましていろんな仕組み、組み合わせを考えたわけでございますが、結果として、現在御提案申し上げておるところによりますと、五十二年当時の夫婦子二人の課税最低限が二百一万五千円でございました。昭和五十九年度政府のCPIの見通しも含めますと、その間名目の物価水準の上昇は約一二〇%でございます。したがって、昭和五十二年当時二百一万五千円であった人が、五十九年度でその名目物価上昇だけ所得水準が仮に上がったと仮定をいたしまして、それで今回提案申し上げております所得税と住民税の減税部分を織り込んだ税引き後の手取りを見ますると、ほぼそれに見合うという水準になっております。  ただ、可処分所得につきましては、税引き後の 手取りプラスといいますか、それからさらに社会保険料控除を適用する必要があるわけでございますけれども、社会保険料控除は五十二年当時よりも五十九年は上がっておりますので、言葉の厳密な意味での可処分所得は若干名目をやや割り込むという結果になっておりますけれども所得税、住民税だけの税引き手取りで見ますと、ほぼ物価の上昇に見合う水準で設定されておるということでございます。
  71. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、この問題、大蔵大臣もきょうは幸いずっと聞いていただいておりまして、どうも梅澤局長としては最大限のきようは答弁をまじめにしていてくれる、こういうふうに私は理解しているんですが、どうもよくわからない。これは私は、課税最低限の今日のあり方そのものがわかりにくくなっておる、こういう気がしてならないわけですね。  それで、今はますます税に対する関心というものは非常に大きくなってきているわけでありますだけに、この問題どうなんでしようか、すぐ今どうせい、こうせいとは私申しませんけれども、相当大きな議論をこの問題でもして、もう少し国民にわかりやすいものにこの辺もしていく必要があるんじゃないだろうかと思うのですが、これはひとつ大蔵大臣の御所見をいただきたいと思います。
  72. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 確かに課税最低限というのも、経済成長の推移に従って、まさに三十年代は最低生活費という感じだったと思います。それにプラス、四十年代に入って、いわばゆとりの面がプラスされるという観点から議論をするようになったと思います。それから各種控除が違っておったものが、それを一番簡素化するために、むしろわかりやすくするためにそれを統一したという歴史的経過もあったと思います。それからさらに御議論がございますと、例えばパートの問題一つ議論しますと、あの問題はむしろ二分二乗方式でやった方が本当はわかりやすいという議論がございます。しかし、二分二乗方式でやりますと、また当然これは今度はいわゆる家庭単位という議論も出てくるわけであります。  だから、そういう問題を基本にさかのぼって、税というものは、我が国の税制の基幹税である所得税というものに特にみんなが最も痛税感を感ずることでございますので、それらを堀り下げて国会の場等で議論されていくということは、私は非常に望ましいことじゃないかというふうに考えます。  人それぞれ、また置かれた環境によって、その主張の出発点が違ってくる。特にいわゆる個人単位の税、夫婦単位あるいは家族単位、家庭単位いろいろな議論がございますので、そうした議論を私は積み上げていただいて、お互いが議論しながら国民の中に何が一番受け入れやすいかという議論は必要なことだ。ただ、今の例えば各種控除を一律にしたというのも、むしろ国民にこの方が、もうここに至ったら、わかりやすいだろうという背景に基づいて一緒にしたわけでございますので、それらの過去からの経過をもまた踏まえた基本的な議論というのは、なかんずく基幹的な税金でございますだけに、あって好ましいことではないかというふうに考えております。
  73. 竹田四郎

    竹田四郎君 あと記帳義務の問題、赤字法人に対する問題、その他税務署のあり方の問題、たくさん問題がありますけれども、私の時間、あと二、三分で新しい問題に入るにはちょっと時間が足りませんので、また次の機会に、重要な問題がありますので、ひとつ委員長にも御配慮をいただきたいと思いまして、私のきょうのところの質問は終わりたいと思うんです。
  74. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、直接税三税につきまして、主に所得税を中心といたしまして質問をさせていただきます。  質問に入るに当たりまして、まず昭和五十九年度政府予算案に対しまして、その内容政府経済見直していう実質成長率四・一%の中で内需寄与度が三・六%だと、こうおっしゃっておりますけれども、これも非常にまだ疑問でありますし、国民生活を本当に向上させ得るのかどうかも疑問があります。種々な欠陥があると指摘せざるを得ません。減税の見返りに、それと同額の増税を取りやすいところから取るという大衆増税で賄おうとしておりますけれども、これはますます国民生活を苦しいものにしてまいります。本来ならば、景気浮揚に役立つ大規模な減税という約束でありましたが、それも大分削られました。また増税はしないという衆議院選挙における中曽根総理の約束にもかかわらず、これも踏みにじられた。  今、国民生活の実態を見ますと、例えば非消費支出の伸びは、実収入に対する弾性値で見ますと、昭和四十年から四十五年が〇・九三、昭和四十六年から五十年が一・〇九、昭和五十一年から五十七年は二・〇力と、五十一年以降の非消費支出の伸び率が実収入の伸び率のもう二倍以上の増加になっております。こういう国民生活の実情でございます。  さらに、国税庁のまとめた昭和五十七年度分の民間給与実態調査では、五十二年を一〇〇といたしまして、この五年間で所得税の伸びは七一%と、収入の伸び三〇%の二・四倍にもなっております。  昨日、総理府が発表した貯蓄動向調査報告(速報)によりましても、昭和五十八年十二月末の全国のサラリーマン一勤労者一世帯の平均貯蓄残高は六百十一万円で、前年比三・三%増というのは三十七年以来の低水準であると言われておりますし、一方借金、負債の残高は一世帯二百八万円で一九・三%増と、これも五十三年以来の高い伸びになっておりまして、これも勤労者世帯の生活の苦しさを物語っていると言えましょう。  このような実情にもかかわらず、このような予算、税制改正をなしたということはどういうことであるのか、まず大臣のお考え、御所見を伺っておきたいと思います。
  75. 竹下登

    国務大臣竹下登君) まず、今御指摘なさったいろいろの御意見なり、あるいは御指摘というのは、それなりに私は、見解を異にする点もあるにいたしましても、御指摘そのものを否定するものではございません。結局は、私自身考えてみますのに、言ってみれば、高度経済成長というものに我々の体質がなれてきておる、そのことから、低成長、安定成長というものが、やむを得ず、好むと好まざるとにかかわらず求められる今日、私どもは安定成長の中でこれが普通だというある種の意識転換というものが必要ではなかろうか。これは国民皆さん方理解を求めていかなければならない課題であるというふうに基本認識をいたしておるわけであります。
  76. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、この所得税減税の見返りにこのような増税を行うということは大変不満でございます。減税の財源を求めるならば、なぜもっと税の不公平是正や、あるいは構造的赤字の洗い直し、こういったことをやらなかったのか。それから歳出の思い切った削減ももう少しできたんじゃないか。あるいは従来から言われている利子配当課税の強化とか有価証券取引税の引き上げとか、あるいは所得捕捉率の適正化とか、こういった国民の希望するものをなぜ実行できないのか、ひとつ責任ある答弁を伺いたいと思います。
  77. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 政府のこのたびの所得税の減税というものは、国会の場においての、また国民全体の中からの非常に強い要請にこたえて行われたわけであります。基本的に一つは、今回の税改正は久方ぶりだから本格改正にしろと、こういうことで、そういう趣旨の税法お願いしているわけであります。  そこで、さればその財源と、こういうことになりますと、いろいろな御議論をいただいておりますが、最大公約数として減税の財源にいわゆる特例公債を求めるということは、財政再建に逆行するということになるではないか、また後世代にツケを回すことになるではないかと、これが基本的にまず我々が踏まえなければならない一つの要件であったと思うのであります。  そこで、酒税物品税法人税引き上げお願いしたわけでございますが、酒税物品税、なかん ずく酒税につきましては、従来とも三年に一度値上がりすれば税率そのものは低くなってまいりますから、言ってみれば、一つの見直しの時期に来ておったではないかと、こういうふうに考えます。それらをお願いすると同時に、なお足りないものを法人税率の引き上げ等でお願いしたわけでありますが、言ってみれば、まさに必要やむを得ない措置であったというふうに御理解をいただかなければならない。しかし、その財源問題につきましては、今おっしゃいましたように、確かに人それぞれによりましてとにかく議論がございました。有価証券取引税の問題についての議論もございました。中には広告税という新しい議論もございました。人それぞれ税に対しての物の考え方、そのよって立つ基盤で不公平感というものがいささか個人個人によって差がございます。しかし結局、衆議院の大蔵小委員会で、いわば赤字公債を充ててはならぬ、しかし財源問題については合意に達しなかったという中間報告が出されたということは、車ほどさように合意を得る財源というものが難しかったということであろうかと思うのであります。  しかし、ただいま例示として御指摘なさいました点につきましては、我々も今後も見直しの対象として絶えず念頭に置かなければならない税目ではなかろうかと、このように理解をいたしております。
  78. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵省昭和五十九年の二月に発表した「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」、さらに昭和五十八年から昭和六十二年までの「財政の中期展望」を見ますと、先ほども詳しく御質疑がございましたけれども、六十年度の要調整額というものが、ケースAの場合を見ますと、これは特例公債の借換債を発行するケースでありますが、三兆八千七百億円の要調整額となっております。そのほかいろいろなケースが出ておりますけれども、これを全部眺めまして考えられることは、歳出カットを徹底的にやるか、あるいは、これは政府はやらないと思いますけれども、国債の増発に頼っていくのか、あるいは増税か、あるいは我々の言う不公平税制の是正か、こういった道、あるいはそれを組み合わせた考え方をとらざるを得ないと思います。  で、大蔵大臣は種々の質疑の中で、国民に公共サービスの低下を覚悟してもらうか、あるいは税負担を見てもらうか、この二者択一を述べておられるようでありますけれども、これはちょっとおかしな選択を押しつけている、このように言わざるを得ないのでございますが、大蔵大臣として今後一体どういう道をおとりになるのか、端的にお答えいただきたいと思います。
  79. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私があえて今国民皆さん方にぎりぎりの問いかけをしておるということでは必ずしもなかろうかと思いますけれども、負担をする者も国民でございますし、また受益者も国民でございますから、したがって、その公共サービスと負担のあり方というものは最終的には国民自身が選択する問題であろう。これはぎりぎりの場合、私はそこに到達する論理であると思うのであります。しかしながら今日の時点、既存の施策・制度は、その根幹にさかのぼってみましても、それのよって来る淵源というものはそれなりの理由があって今日できておるわけでございます。したがって、なかなか難しい問題も数ございますけれども、それの制度・施策の根本にさかのぼってなお削減するものがあるのかないのか。そしていま一つば、それを残すならば負担増そのものをお願いしなければならないのか。  そしていま一つは、公債政策の問題が出ましたが、基本的に公債政策というのは、国の経済全体がある意味における非常に困難な際には、財政として出動する大きな役目の一つであろうとは思います。しかし、基本的に考えなきゃならぬのは、これだけ公債費が、国債費がまさに社会保障全体を追っかけるような状態になりますと、一定の国の支出というものがいわば金利という形で意図せざるところへ送られていくという形になるわけであります。元来、予算というものがある意味における富の再配分であるとするならば、特定の方々に対して金利という形で支払っていくべきものは、ないほど結構だという立論に立ちますと、急激な変化はなかなかできませんが、とりあえずは年々の発行するものを減らしていき、そしてその第二段階として、借りかえ等の手段をも含めつつも、現在国民の貯蓄の中に消化されておる既存の既発債というものを償還していって、そして健全な姿に返していく。それをどういう組み合わせでやるかという問題になりますと、まさに私は国民の合意と選択がどこにあるかということを、結局、この国会の場等で議論をしながらそこに求め見出していく課題ではなかろうかと、こういうふうに考えております。
  80. 多田省吾

    ○多田省吾君 我々は先ほど申しましたように、増税があるいは公共サービスの低下か、そういった選択ではなしに、不公平税制の是正であるとか、あるいは歳出削減の強化だとか、まだまだいろいろ国民的な立場でやり方があると思うんです。それを私たちは強く要求したいわけでございます。  さきの予算委員会あるいは本会議等で中曽根総理は、今後大型間接税導入は避けたい、大型間接税の導入はしないとたびたび公言しておりますが、そのたびごとに大蔵大臣は、課税ベースの広い間接税は勉強するとか、また先ほども商品に担税力を求める税を否定してはならぬとか、こういう言い方で勉強するとおっしゃっておりますので、先ほどの質疑にもありましたように、総理大臣大蔵大臣の大型間接税に対する態度は非常に違っているのではないかと、そう受け取られているわけでございます。  ちなみに、きのう参考人としておいでになった木下和夫政府税調の会長代理の御意見を聞いていて、中曽根総理のおっしゃっているのは多段階に幅広くかける大型間接税、多段階にかける税で、それから大蔵大臣のおっしゃられているのは単段階にかける税ではないか、このように個人的見解だがそう受け取っているとおっしゃっておりまして、私はそれともちょっと違うようにも思えるんですが、大蔵大臣の真意をもう一回お伺いしたいのであります。
  81. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的には、私も五十四年、五十五年大蔵大臣をしておりました当時の一般消費税議論をよく頭に入れております。それは国民の今求めるところでないという結論が国会決議の形等で出されておる。  ただ、要するに、担税力は所得の段階に求めるのか、消費の段階に求めるのかということになりますと、消費一般にかかる税制を全部否定してしまったら、将来とも税というものに対して非常な窮屈な姿になるから、勉強というか学問的に、消費一般にかかる税を否定してはならぬという気持ちが私にもございました。  今回の問題は、木下会長代理がどのような御発言をなさったか定かには存じませんけれども中曽根総理がよく答弁の中で申しておりますのは、多段階に投網をかけたような形の大型消費税というのを自分はとる考えはない、こういうことをおっしゃっております。これは例示すれば、ヨーロッパ付加価値税とか、いろいろな問題が出てまいりますが、恐らく、木下会長代理が御発言なすったとしますならば、今日も物品税というのは存在しておる、それの便益性等を個々に担税力として求めていくということは、かっては奢侈品とか嗜好品とかに決まっておったのが、だんだんその意義が変化してきておる時代に、そうしたものは勉強しなければならぬぞよというのが税調で出されておる意見ではないか。それには私はたゆまざる勉強だけはしていかないことには――現実、いろいろな人それそれによって意見が異なりますが、この直間比率でもっと間接税の分野を上げた方がいいじゃないか、こういう議論をなさる人もございますし、国民にいろいろな議論がなされておる今日、我々も税調の答申等に基づいてそれなりの勉強だけは続けておかなければならない、そういう考え方を申し述べておるわけでございます。
  82. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしますと、導入するかどうか はわからないが、大蔵大臣はいわゆる大型間接税についても、あるいはEC型の付加価値税等についても勉強だけはしていく、こういうお考えなのですか。
  83. 竹下登

    国務大臣竹下登君) EC型付加価値税というのは割に国会の場でもいろいろ勉強が済んだ――済んだというとちょっと表現がおかしゅうございますが、かなり煮詰まった議論がなされたと思います。  それから大型とおっしゃいますと、いささか私も判断に困りますのは、何が大型で何が中型で何が小型かというと、それは人それそれによってその認識が違うでございましょう。概念的に、中曽根総理がおっしゃっておりますように、投網をかけたような形で消費一般にかけて、中からこれとこれはやめていくという形のものを初めから念頭に置いた勉強ということは、私もしてはならないことではないかなと、こういうふうに考えております。
  84. 多田省吾

    ○多田省吾君 もうちょっとわからないんですが、そうすると、大蔵大臣考えておられるのは、かつて導入が図られようとしたような仕入れ控除方式のようなものなのか、あるいは今おっしゃった物品税をもう少し幅広く強化するようなお考えにすぎないのか。その辺はどうですか。
  85. 竹下登

    国務大臣竹下登君) かつてのいわゆる一般消費税(仮称)というものはかなり勉強はされたわけであります。しかし国民皆さん方からはそれはヘジテートされた。したがって、今我々がいわゆる学問的にはあらゆる勉強をしなければならぬでございましょうが、念頭に置いて勉強するとすれば、それぞれの便益性等に求めていく。既存の税で言うならば、物品税でやめるものもあれば入ってくるものもあるというような、幅広い勉強はしておかなければならぬじゃないかな、こう思っております。
  86. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほども質問したのですが、大蔵省でまとめられた「財政改革を進めるに当たっての基本的考え方」、「中期展望」、それに「中期的な財政事情仮定計算例」、さらに昨年の経済審議会でまとめた「八〇年代経済社会の展望と指針」、こういったものを見ますと、どこを見ても、不公平税制の是正など既存税制の見直しでどこまで増収が得られるのか、あるいは歳出削減はどこまで実際可能なのか、国民が本当に知りたいことはほとんど示されていないわけでございます。そういった問題の徹底した分析を、また検討を行って明確にされてこそ初めて国民の納得するものがそこから得られていくんじゃないか、このように思いますが、これに対しての大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  87. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私もおっしゃるとおりであろうと思うんです。その国民の合意と選択がどこにあるか、どこにコンセンサスが求められていくかということで、今おっしゃいましたような展望と指針であるとかあるいは仮定計算等を御提示申し上げて、そこでお互い議論をしながら国民のコンセンサスというものを求めていこう。あらかじめこれでもってやりたいということをお示しするんではなく、このような状態の中でどのような組み合わせなり方法なりでやっていくかというその議論をしていただくための素材を提供した、こういう考え方でございます。
  88. 多田省吾

    ○多田省吾君 しかし、今言ったような具体的な例は全然示されていないので、これも全部国民に任せようというのは政府として非常に不親切である、このように思うわけでございます。  それから租税負担率の問題でありますけれども、五十九年度租税負担率が五十八年度補正後より〇・三%上昇するわけでございますが、大蔵大臣は、これは自然増収分だから、臨調の言う増税なき財政再建租税負担率を大きく変更する新たな措置をとらないことと定義しておりますけれども、この新たな措置には当たらないんだ、だから増税じゃないんだというようなおっしゃり方をしておりますけれども、私はこれは不正確ではないか、租税負担率が上がった以上は増税ではないかと思います。  それからもう一つは新たな措置租税負担率を大きく変更する新たな措置というものの限界ですね。どのようなものを新たな措置考えているのか。このたびのような物品税引き上げというようなものは、あるいは酒税引き上げというものは新たな措置には全然ならないんだ、こういうお考えなのか、その点をお尋ねしたい。
  89. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 既存の税目の中で経済社会情勢の変化の推移に対応して税率等が変わっていくというのは、これは新たなる措置ではないであろうというふうに考えます。が、しかし既存の税目にないものによって大きく租税負担率に影響を及ぼすというものは、これはまさに新たなる措置であろう。したがって、今回の税法改正の中にはいわゆる新税というような範疇に入るものは一応見込まれていないということは言えるではなかろうか、こういうふうに私は理解をしております。
  90. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうすると、いわゆる大型間接税のようなもの、昭和五十四年、五十五年で論議された一般消費税(仮称)というようなもの、あれが新しい税目のものであって、それ以外の小さなものは入らないんだというお考えですか。
  91. 竹下登

    国務大臣竹下登君) それは新たな措置、新税としては新たな措置であると思います。だが、もう一つありますのが、それによって租税負担率が大きく上がらないという縛りももう一つあるわけでございます。
  92. 多田省吾

    ○多田省吾君 その辺が私には非常に腑に落ちないんですが、先に進めます。  先ほど大蔵大臣は、御出身地が開発途上にあるんで公共事業依存者であるというようなことを自称なさったわけでございますけれども、今、野党を初め自民党の内部でも、景気回復のためにいわゆる公共投資の前倒し、上期の前倒しを今までのように七五%程度やった方がいいんじゃないかと、こういう強い要求があるわけでございますが、どうも大蔵省が渋っているように報道もされているのでございます。この前倒しに関しては大蔵大臣は今どう考えておられますか。
  93. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは従来から申しますと、五十四年度の下期は、これはいわゆる後ろ倒しをした時期でございますが、この前倒しというのがここ数年行われてまいりました。これから予算現額が何ぼになるかというのがぼちぼち集計で出てまいりますから、それを見てから正式には決める。そして予算審議中でありますから、そのときに決めたというわけにももちろんいかぬでございましょう。  前倒しに対する考え方としては、全体的にやや景気が上向いたときに財政がそれをさらに刺激するのか、あるいはその上向いた時期に特に地域的なばらつき等に何かの配慮を行うべきなのか、その辺いま少し議論政府部内でもしていかなきゃならぬときである。だから、弾力的な思考はもちろん念頭に置かなければならぬし、後ろ向きなんていう考えがあるわけじゃございませんが、財務局長会議等をやりますと、特に北海道を中心とする公共事業依存、私の地域もそうでございますけれども、そういうところからの景気を肌で感じたいろいろな御意見を集約すると、地域的ばらつきというものに補正予算等では配慮さしていただきましたものの、何か執行面でも配慮できる工夫がないものかと思って、折々勉強さしていただいておるところでございます。
  94. 多田省吾

    ○多田省吾君 今、大臣おっしゃったように、北海道、東北を中心に地域的な成長が進まない地域もありますけれども、関東地域なんかでも中小企業の方々から、大企業からの圧迫等によってどうもこの二年間で非常に欠損が多いと、こういうような声を方々で聞くわけでございます。政府として、公共投資の前倒しというようなことは、これは当然できるわけでございまして、河本経済企画庁長官等もそれを主張しておられるし、景気が上向きになったという傾向は見られるとはいっても、今、大臣がおっしゃるように地域的なばらつきを初め、特に中小企業の、ある面では大変な、もうこの一年二年の間に倒産も多いし、また苦しんでいる中小企業者は非常に多いわけでございま す。その辺のことを加味して、私はこの三年間行ってきたと同じような七五%あるいは少なくとも七〇%以上の前倒しは行うべきではないかということを再度要望いたしますが、先ほど御答弁もありましたけれども、もう一度ひとつお答えいただきたい。
  95. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 景気認識として、今おっしゃいましたような、私は落としておりましたが、地域のばらつきと、もう一つ業種間ばらつきというものも確かにございます。それをもちろん勘案しなければならないところでございます。こうなりますと、今御案内のように、財政が出動すると言えば、一番手っ取り早いところは公共事業の執行によって財政が出動する、いま一つは金融であろうと思うのであります。金融は比較的今緩んだいい状態にあると思いますが、幸いにして円高基調というような感じもいたしますので、その辺はある意味においては今恵まれた環境にある。するならばまさに財政がどう出動していいか。これが本予算審議中に決まれば、まさに下期が空になって、補正予算そのものが浮き彫りにされるようなものではないか。こういうようなところへ踏み込むことは今財政を扱っている者としては若干のちゅうちょを覚えることは事実であります。しかし、今のような御意見があるということは私も重々認識さしていただいておるところであります。
  96. 多田省吾

    ○多田省吾君 所得税法に入る前にもう一点だけお尋ねしておきたいと思います。  これは一昨日、二十七日に大蔵省の銀行局長の私的諮問機関である金融問題研究会が、「わが国における消費者信用のあり方」についてという報告を行っているわけでございますが、大臣としては、この結果に基づいて、大臣の諮問機関である金融問題調査会ですか、そういったものを動かしてこういったものを進めようというお考えがあるのかどうか、まずお尋ねしておきたいと思います。
  97. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 御指摘のとおり、金融問題研究会で総合的に個人金融につきましてのあり方についての報告書をちょうだいいたしたわけでございます。これは貸金業法が成立いたしまして、そのちようどいい機会だということで、今後の消費者金融のあり方、これは金融機関の取り組み方はもちろんでございますが、一般のサラ金業者の取り組み方等も含めまして全般のあり方を勉強していただく。  それからもう一つは、私どもの行政が、この面におきましては大変立ちおくれていたというようなことが指摘されておりましたので、今後の行政のあり方というものにつきましても勉強していただくということでお願いいたしたわけでございまして、そういう意味におきまして大変時宜を得た御報告ではなかったかと思っているわけでございます。  その内容につきましては、報道されているとおりでございますが、特に全般的な消費者信用に関して全体を総合して見る必要があるんじゃないだろうかということが提案されておりまして、これは行政のあり方はもちろんでございますけれども、金利の問題あるいは行為規制の問題いろいろございます。そういうことで、全体を総合した上で見直してみる必要があるというような御提案がなされておるわけでございます。  それにつきまして、私どももそういう御報告に従いまして今後着実な行政を展開してまいりたいと思いますけれども、今御指摘のような総合立法というようなことになりますと、これは非常に各省庁にも絡まる問題もございますし、また一行政的なことだけで済まされる問題でもございませんので、私どもといたしましては、当然のことながら、金融制度調査会等にも審議していただきまして、そこで妥当な結論を出していただくと同時に、またこれは各省庁にまたがった問題でございまして、大蔵省だけの問題でございません。法務省や警察あるいは経済企画庁、通産省等々、政府全体が取り組まなくちゃいけない問題でございますので、各省庁等とも十分連絡をとり合いながらこれの立法化に努力してまいりたい、こう思っておるわけでございます。
  98. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今、銀行局長からお話し申し上げたことに尽きるわけでございますが、確かに消費者金融、俗称サラ金法が議員立法でできまして、それが一つの契機になったと思うのであります。したがって、これはまさに各省庁関連の深いところでございますから、大蔵省でこれを勉強し、そしてそれの方向に基づいて一生懸命各省庁に御連絡申し上げるという意味一つと、それから今御指摘のありましたように、金融制度全体にかかわる問題の一つでございますから、当然金融制度調査会の方へもこれは御報告申し上げる課題だというふうに理解しております。
  99. 多田省吾

    ○多田省吾君 その上でお聞きした方がよろしいんじゃないかとは思いますけれども、一点、二点気になることがありますのでちょっと内容について伺っておきます。  その報告の中で、一般の金融機関に対しまして、消費者信用業者に安定的に資金を供給することは間接的に消費者に信用を供与することであると、この拡大を求めているわけです。一方、大蔵省では、現在銀行や生保などからのサラ金会社への融資につきましては、自粛を求める方向の行政指導をしていると思いますが、その辺に矛盾はないのか。それとも消費者信用健全化へ向かったときには供与してもよろしいという意味なのか。その辺どういうお考えですか。
  100. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 報告書は、先生御指摘のとおりでございまして、金融機関の消費者金融への取り組み方といたしまして、みずから窓口で小売的に消費者信用を進めていくべきだというのが一つと、もう一つは、金融機関というのは預金を集めて仕事をしているわけでございますので、預金者保護ということが大切になるわけでございます。その意味におきましては、現在のサラ金需要に一〇〇%こたえるわけにいかないんじゃないだろうかという一定限界があるわけでございまして、そういう限界部分につきましては、どうしても専門家、もちはもち屋でございまして、いわゆるサラ金専業者等にもその部分を受け持ってもらわなくちゃいけない面があるんじゃなかろうかということで、いわゆる卸金融的にそういう消費者金融会社に資金を流すことも、金融機関の一つの役割ではないかというようなことが提言されているわけでございます。  ただ、私どもが今金融機関にサラ金融資の自粛を求めておりますのは、今のサラ金業界自体が問題が多く、いろんな経営状況あるいは経営のビヘービア等々、いろいろ社会的にも批判されているわけでございまして、そういう余り好ましくない消費者金融会社に資金を流すということは、これは厳に抑制してもらいたいということを私ども当面指導しているわけでございますが、今御指摘のように、一方でそういう消費者金融業界というものの健全化も図っていくことが一般の金融機関の役割とも思われるわけでございますので、したがいまして、良質な消費者金融業者には節度を持ちつつも資金を流すとか、あるいは良質な消費者金融専門業者を育てていくというようなことも一つの役割ではないかということでございますので、今私どもが自粛を求めております考え方とその報告書の内容とは矛盾するものではないのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  101. 多田省吾

    ○多田省吾君 もう一点は、この提言の中で、消費者信用法(仮称)の制定を目指されているわけでございますが、出資法で定める刑罰金利の上限を遅くとも昭和六十三年十一月から年四〇・〇〇四%とするとともに、利息制限法の上限金利、罰則なしを二〇%まで引き上げるべきだと、こう提言しておられますが、これをやるには国会で法改正をしなければならないと思いますが、こういった方向で金融制度調査会等に大臣として諮問なさるお考えがあるのかどうか、その辺最後にお伺いしたいと思います。
  102. 宮本保孝

    政府委員(宮本保孝君) 金利につきましては、今御指摘のとおりでございまして、貸金業法に基づきます刑罰法の取り扱いによりましては、最終 的に四〇%にまで下げるということでございまして、この報告書では四〇%では本当なら足りないで、もっと下げるべきだというふうな御意見が出ております。  また、一方で、逆に一般の金融機関がもう少しみずから消費者金融をやっていきますためには、現在の利息制限法の二〇%というのでは、少しコスト的に見まして、ある金融機関の業態いかんにもよりますけれども、二〇%では少し円滑な資金供給ができないという面もあるんじゃないだろうかということで、そちらの方は少し上げるというようなことで、両者が調和するような金利をつくっていった方が消費者信用全体が健全に円滑にスムーズにいくのじゃないかというふうな御意見でございます。  この辺につきましては、またいろいろ御意見もあろうかと思いまして、ただ単に、報告書の御意見がそうだからといって、必ずしも私どもがそうだというふうな意見を持っているわけでもございませんで、今後この辺につきましては、また国会での御審議等も踏まえまして十分検討していくべき課題ではなかろうか、こう思っております。
  103. 多田省吾

    ○多田省吾君 今、私の言ったのは、局長も御存じのように、四〇・〇〇四%とするのはまだ決まっていないわけですね。昭和六十三年十一月以降別に定める日からということで、これを提言では遅くともその日からにせよ、そして銀行局長のおっしゃるように、その上にまたもう少し下げよともおっしゃっておられると思うんです。ですから、これは前向きの提言だと私は思いますけれども、その辺のことを考えてひとつお願いしたいと思います。  次に、所得税法等の一部を改正する法律案について若干質問したいと思います。  今回の税制改正は、減税に関する昨年の野党合意に基づいてなされたものでございますが、提案理由の説明に「負担の軽減を図るため」とありますけれども、一方では物品税酒税法人税増税がなされているわけでございますから、そういう増税抱き合わせのものに対しまして麗々しく「負担の軽減を図るため」というような提案理由の説明はおかしい、このように私は思うわけでございます。私は、中曽根総理増税なき財政再建、あるいは選挙中の増税はしませんという公約、こういったことを考えますと、抱き合わせ増税がなければ、ある程度「負担の軽減を図るため」と、こう説明なさってもよろしいかと思いますが、増減税の抱き合わせの中での「負担の軽減を図るため」。これで本当に負担の軽減になっているのかどうか、大臣お答えいただきたいと思います。
  104. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これは所得税減税という立場から見ますと、それはそれなり減税効果は所得税をお納めになっている方々にはひとしく及ぶわけであります。それによって消費がいささかでも拡大するならば全体の経済に影響をもたらすわけであります。しかし一方、いわば物品税等のお言葉のとおり抱き合わせで増税をしたではないか。この問題は酒一つ例にとってみますと、個々の生活形態の中で皆、言ってみれば、それぞれに異なった影響を及ぼすわけでございますので、一概に定量的に判断することは難しい課題であります。ただ、この値上げしたもの等々のそれぞれの数値で家計に及ぼす影響等から考えますならば、まだ減税によって及ぼされる効果がなお大きいということが一応私どもの資料としても出ておるところであります。
  105. 多田省吾

    ○多田省吾君 今回の給与所得控除の控除率適用対象収入範囲につきまして、給与収入が三百万円までの金額までしか拡大がなされなかったわけでありますけれども、現行の体系から見ますと、給与収入六百万円までの金額を六百六十万円までの金額とすべきではなかったのかと、このように思います。なぜならば、税負担の過重を訴える給与所得者への配慮という点から見ても、また中級所得者に対してもっともっと配慮しなければならないと常々言っていたことから考えましても、なぜこれがなされなかったのか。  もちろん、これは減税幅が大きくなるということで見合わせたのかと思いますが、もし六百六十万円までの金額まで範囲を拡大したとしますとさらにどのぐらいの減税幅になるのか、その規模をお伺いしたいと思います。
  106. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 給与所得控除の問題でございますが、これは先ほど来繰り返し御説明申し上げているわけでございますけれども、税制調査会の答申におきましても、現在の五段階の控除率の体系、これは家計調査等から見ましたときのいわゆる給与所得者の必要経費と目されるものと比較いたしまして、現在マクロ的に大体給与収入の三割ぐらいを控除する水準にございますので、基本的にはこれをさらに拡充する必要はないのではないかというのが、昨年十一月に出ました税制調査会の答申の基本的な考え方でございます。ただ、しかし、現在の枠組みができましたのは四十九年でございますので、その後五十九年まで約十年間経過しておるというふうなことも考慮しつつ若干の調整を行うということで、結局ただいま委員の御指摘になりましたように、給与収入三百万以下のところの部分を約一割拡充する。同時に最低保障額を一割引き上げるということが税制調査会での御結論であったわけでございます。したがいまして、こういった考え方に沿いまして現在御提案を申し上げておるわけでございます。  ただいま委員がおっしゃいました、仮にもう一つ上のランクの六百万のところを一割広げたらどれぐらいの財源を必要とするかという御設問でございますけれども、私どもこれを正確に計算はいたしておりませんが、少なくとも数百億円程度の財源は必要となるだろうというふうな感じを持っております。
  107. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  108. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記を起こして。
  109. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、税率の見直しについて伺いたいのでございます。  今度、所得税の税率構造について、最低税率を〇・五%引き上げて最高税率を五%引き下げるということについて多くの批判があるわけです。そこで伺いたいのは、適用対象者の数について、課税所得金額五十万円以下、改正案による一〇・五%の税率のかかる方々が何人おられるのか、また七〇%の税率のかかる方々、八千万円を超える人が何人おられるのか、そのうち給与所得だけの方が何人おられるのか、その辺お伺いしたいと思います。
  110. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず、最低税率のところでございますけれども、御案内のとおり、所得税は超過累進構造でございますから、最低税率が適用されます今回の改正案によります所得五十万までのブラケットには、実は所得税の全納税人員が入ってくるわけでございます。したがいまして、五十九年度の私どもの見積もりでは、全納税者数約四千二百万人全員がこの一〇・五%のブラケットのところに所得を持っておるということになります。  それから最高税率のところでございますが、これは所得の公示制度等から見まして、これはいわば推計になるわけでございますが、恐らく五十九年度においておよそ五千人以上の人がこの対象になるだろうということでございます。  それから給与所得者でございますけれども、実は給与所得者については、一千万円超の人が確定申告をするということで一応の税務統計はとっておるわけでございますけれども、今おっしゃいました、その最高税率以上のところで給与所得者だけで幾らという数字は、実は、甚だとりにくいわけでございます。ただ、五十七年分の調査、税務統計から見まして、五千万円超で大体所得者の数が二万二千人、それから給与収入で五千万円を超える人の数が大体三千人弱と、大体こういったところから御判断を賜りたいと存じます。
  111. 多田省吾

    ○多田省吾君 政府は、趣旨説明によりますと、最高税率の引き下げにより民間経済の活性化を図ることができるという、政府税調の中期答申というものを根拠にしておられるようでございますけれども、これまで最高税率の高さによって経済活 動が鈍化したり活性化を図ったりすることがあったのかどうか。この税率引き下げの根拠になるものですからお伺いしておきたいんですが、これはどう考えておられますか。
  112. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 最高税率の引き下げ、これは昨年十一月の政府税調の答申でその方向が示唆されておりまして、今回の年度答申で具体的に現行の七五%を五%引き下げるという御提案を申し上げておるわけでございます。  その背景にあります考え方を申し上げますと、現在の累進税率のブラケットのうち限界税率が六〇%以上のところ、所得で言いますと四千万超の部分は、実は昭和四十五年からずっと据え置かれておるわけでございます。十四、五年据え置かれておる。その間の物価の上昇、単純な物価の上昇倍率を見ましても、二・数倍ぐらいになるということでございますが、そういったことと、もう一つは、我が国の所得税の現在の累進構造を見ますると、先進諸外国の中でも最低税率は一番低い。それから最高税率は、今や七〇%台の最高税率を持っておる先進諸国の所得税制はないという事情もございまして、この急な累進構造を若干なだらかなものにすべきであるというのが、昨年の秋の税調答申の基本的な考えの背景にあったものでございます。  したがいまして、今回そういった事情も考慮いたしまして五%引き下げるということにいたしたわけでございまして、税調答申にも「民間活力の維持」というふうに書いてございますが、いずれにいたしましても、そういう最高税率の引き下げを通じて民間の活力がより発揮されるということは期待できるのではないかということでございます。
  113. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、せっかくの政府税調の中期答申にこんなことが出ておりますけれども、どうもこれは言い過ぎではないかと思います。今主税局長からのお話のように、今までも五千万円以上の所得のある方は二万二千人で、そのうち給与所得だけの人が三千人、そして八千万円を超える人が約五千人以上だとしますと、給与所得だけの人は類推、推しはかってほしいということでございますが、これは単純に七分の一なんというのはできないかもしれませんけれども、この率でもし許されるならばせいぜい七百人程度だと、このようにも言えるわけです。    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕 またそれ以下かもしれません。そういう高所得者の方々の税率を五%引き下げたからといって、民間経済の活性化を図ることができるというような言い方はちょっとオーバーではないか、こういうふうに思うわけでございます。  今回の税制改正は、年収六百万円から一千二百万程度の中堅所得者層への配慮を眼目にしたと常々大蔵省は言っておられたわけでございますが、今回の改正によってこの中堅所得者層が他の階層に比べてどのように減税の恩典が大きいのか、具体的に数値で御説明していただきたいと思います。
  114. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今回の所得税の見直しに当たりまして、ただいま委員が御指摘になりましたように、中堅所得階層並びに多人数世帯の負担の軽減というのが眼目になっております。  多人数世帯の負担の軽減ということは、先ほどの御議論にもありましたけれども、そういった観点から基礎控除、配偶者控除、扶養控除の三控除をそれぞれ一律に財源の許す範囲でかなり大きく引き上げるという手法によってそれはかなえられる問題でございます。同時にそれと組み合わせで税率構造を若干なだらかにする。その場合に中堅所得階層のところの部分に十分配意をするということでございます。  これはいろんなことから申し上げられるわけでございますけれども、例えば所得に対する実効税率という観点から申し上げますと、所得が例えば一〇%ふえたときに、上積み実効税率がどれだけふえるかという税負担の上昇のいわば弾性値でございますが、そういったもので分析をしてみますと、今回御提案申し上げておるものでは、大体所得七百万ぐらいのところの負担の軽減の弾性値が一番高くなっておりまして、それを中心に若干下の方、上の方へその弾性値がなだらかになっていくといった傾向を示しております。そういった点がただいま御質問になりました点で私どもがお示しできる一つ数値的な例でございます。
  115. 多田省吾

    ○多田省吾君 所得税の公示制度について伺っていきたいと思います。  今回所得税の公示制度所得税法二百三十三条を見直しまして、今までは所得一千万円を超えていた方々を公示していたわけでございますが、今度は所得じゃなくて、納税額一千万円超の者を対象とすることが提案されているわけでございます。税調の答申はなるほどあったわけですが、その範囲は示していなかったわけでございます。今回はどうも自民党の税調の方々の意見によってこうなったと思うんですけれども、今回の措置の根拠というものをまずお伺いしておきたいと思います。
  116. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) この所得税の公示制度の問題でございますが、現行の所得公示制度所得一千万円超の者が公示されるという制度になっておりまして、この一千万円というのは昭和四十六年からでございまして、それ以前は五百万でございました。四十六年から見ますともう既に十二、三年たっておるわけでございますが、年々この公示の数がふえてまいりまして、税務署官署側の負担も非常に大きいということで、実はこの公示制度の見直しというのは、ここ二、三年来各方面でいろいろ議論されたり懸案になっている問題であったわけでございます。  今回たまたま納税環境の整備ということを税制調査会で御議論いただくときに、この公示制度というものを申告納税制度、申告所得税の制度の中でどのように評価するかということが改めて議論をされました。その議論過程では、先ほど委員がおっしゃいましたようにさまざまな議論が出ておりまして、例えば現在の公示制度というのは、形骸化していわば興味本位になっておるから、この際廃止すべきであるというような意見もございましたし、それから所得の公示ではなくてむしろ税額の公示に直すべきである、あるいは所得と税額双方を公示する制度にしてはどうか。さまざまな議論が出まして、結局、十一月の答申の段階では結論は出ていなかったわけでございますが、いずれにしても、現在の公示限度を引き上げるということは早急に行うべきであるということが税制調査会の御結論でございました。  五十九年度所得税の改正の提案を申し上げるに当たりまして、この点もう一度私どもいろいろ各方面の意見も聞きながら議論をし、結局のところ、現在御提案申し上げておりますように、税額の公示に切りかえさせていただくということにしたわけであります。  その基本的な考え方は、元来この所得公示制度は、所得を公示することによりまして第三者のチェックといいますか、そういう牽制効果によって適正な申告水準の維持向上を図る、そういう間接的な効果をねらっておるわけでございます。したがいまして、これを税額に切りかえましても、その大きな納税額の背後に当然所得額が推認されるわけでございますから、第三者のチェック機能といいますか、牽制効果という意味では、所得公示と大体同じような効果が期待できるという面がございます。  それからもう一つ所得公示にない期待できる効果といたしましては、そういう高額納税者、今度は高額所得者じゃなくて高額納税者ということになると思いますが、高額納税者の個々の方々の税負担国民めいめいが自己の税負担考えることによって、税負担あるいは納税そのものに対していろいろ関心を深めるという、そういった機能を期待できるのではないか。  それからもう一つは、今度は、納税をされて高額納税者として公示される方々にとっては、その意味でその分だけの国家に対する貢献度といいますか、そういったものをいわば顕彰するというとやや大げさになりますが、そういった働きをする ことによって、高額の納税をしていただいている方の納税意欲にもよい影響を期待できるのではないか。  そういった副次的な機能を期待できるというふうなこともございまして、今回従前の所得公示から納税額の公示制度に切りかえさせていただくということを御提案申し上げておるわけでございます。
  117. 多田省吾

    ○多田省吾君 昭和五十九年分の公示対象者はほぼどのぐらいでございましよう。
  118. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 昭和五十九年分の公示対象者は、これはもし現行の制度をそのままといたしますと、五十七年分で四十四万人でございまして、ほぼ毎年一割ずつふえておりますから、恐らく五十万人前後の数字になるだろうと思います。今回税額公示で一千万円以上の納税者を公示するということになりますと、およそその数は七万人から八万人と見込まれるわけでございます。  ちなみに、先ほど申し上げました四十六年に一千万円に切りかえましたときの公示の数が約七万八千人でございます。ほぼ五年なり数年おきに従来は公示限度額を見直しておりまして、その都度、直前の限度額よりも二倍あるいは二・五倍ぐらいの幅でこれまで上げてきたわけでございますが、おおむね納税者の一%ないし二%ぐらいが公示されるという姿になるわけでございますが、今回も改正後そういった割合になると思います。ちなみに五十七年の実績が出ております。この四十四万人というのは、現在納税者の六・七%が実は公示されているという非常に膨大な数になっているわけでございます。
  119. 多田省吾

    ○多田省吾君 もしこの所得税法が通るとしますと、五月一日からたしか五月十五日までの間に公示すべしという法律になっておりますから、今度の公示は七万人ないし八万人に減るということになりますか。
  120. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 仰せのとおりでございます。
  121. 多田省吾

    ○多田省吾君 これについていろいろ疑問があるわけですね。今まで公示対象所得金額で、昭和三十一年分から二百万円以上、昭和三十八年分から五百万円以上、昭和四十五年分からは一千万円以上とやってきたのに、突如として今度は、いろいろ今理由おつけになりましたけれども、今度は所得税の金額でやるようになったということですね。それから昭和五十年分からは大体対象者がほぼ十八万人以上とか、あるいは二十万人、三十万人、四十万人と、その程度ずっとこの十年間ぐらいは公示されてきたわけですね。それが一挙に七万人ないし八万人に減るということ。  それから当然一千万円以上の所得税を払う方は、収入は二千五百万円程度以上ある方と思われますけれども、一千万円の公示対象所得金額からほぼ二千五百万円に一挙に引き上げるということはどうかという意見もあります。これは自民党さんの税調で長い間審議なさったんで、中には、国会議員の方々が御自分の名前が公示されないように、公示対象所得金額ないしは所得税金額を大きく引き上げたんじゃないかと、こういうような意見を申す方もおります。我々としても、余りにも対象者が減るものですから、納得いかない面もある。  また、所得税に切りかえたこの辺も納得いかない。それじゃ今まで公示対象の所得の金額でやってきたものが間違いであったのか、おかしかったのかということになりますと、どうもその辺も判然としない。これによって公示制度本来の徴税のチェック機能、あるいはいわゆる社会的監視、あるいはその他のいろいろな問題がなおざりにされものじゃないか。事務的な繁雑のみでこれを考えるべきではないのではないか。特に国会議員等は減量を強く要求されているところでございますし、二千五百万円以上の所得の方となると、国会議員なんかはほとんど公示されなくなるんじゃないですかね。  今度はあれでしよう、一千五百万円の所得の方以上が確定申告をしなければならないというふうにたしか変わるんだと思いましたがね。それならば、それに合わせて千五百万円を超える方々のみを公示対象者にすべきであるとか、その辺の改正のやり方があったんじゃないかなとも思うんですけれども、もう一点その辺お聞きしたいと思います。
  122. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今回、所得公示から税額公示に切りかえをお願いしているわけでございますが、先ほども申しましたように、税制調査会の答申でもいろいろ議論は出ておるわけでございますけれども、四十六年以降据え置かれているこの限度額については、少なくともこれを引き上げるべきであるという考え方に立っておるわけでございます。  それをどの辺に設定するかということでございますけれども、今おっしゃいました給与所得者の確定申告をする区分、これは給与所得が一千万円が一千五百万円ということでございまして、所得公示の場合は、これは所得額でございますので、直接結びつきはないわけでございます。  それからもう一つ、これも先ほども申し上げたところでございますけれども、過去何回か二倍ないし二・五倍、数年に一度引き上げておるわけでございまして、大体同じ傾向をたどっておりますのは、引き上げた直後大体一%強ぐらいの納税者に対する割合でございますが、それが年を追って、限度額を据え置いているものでございますから、それがふえていく。数%近くなりまして、そこまでまた引き上げるということで、納税者に対する割合が大体一%から二%ぐらい、そういったところが一つの目安になろうと思うわけでございます。  そういたしますと、先ほども申し上げましたように、今回税額で一千万円と申しますのは、標準四人世帯で所得に置きかえますと、二千五百万ないし二千六百万ぐらいの所得額になります。過去の引き上げ幅も大体直前の限度額の二倍ないし二・五倍の幅で引き上げておりますし、改定後恐らく公示される額、人数は七万人から八万人ということでございますので、従前のこの制度の運用から見た場合に、公示される人の人数は、おおむね従来と同じ水準といいますか、そういった規模で公示されると、そういうことを私ども目安にしたわけでございます。
  123. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、今回の所得税法等の一部改正案では、人的控除の引き上げ、また給与所得控除の拡充、税率構造の見直しという、所得税減税という大きな柱に加えまして、納税環境の整備を図るための措置が盛り込まれております。確かに所得種類間のクロヨンとかトーゴーサンとかいうものがあって、捕捉率の問題、これは大事な問題でございましょう。これは昨年十一月に出された政府税調の考え方を基本とするものであろうと思いますので、まずこの記帳制度の問題から伺いたいと思います。  前々年分の事業所得等の金額が三百万円超の者等は取引に関して簡易な記帳をしなければならないということですが、これについては罰則規定はないわけです。税調の中期答申では、記帳制度が明文化されることにより「課税処分取消訴訟において、ずさんな帳簿記録を持つ納税者は、立証責任の分配や証拠提出のあり方との関連で事実上不利益を受けることもあるので、これが実質的な担保措置となるのではないかと考えられる。」と述べておりますけれども、これはどういう効果があるのか、御説明いただきたいと思います。
  124. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 記帳義務を制度化させていただくに当たりまして、ただいま委員が御指摘になりましたように、税制調査会の中でもいろいろ議論がございました。諸外国の法制を見ますると、あるいは刑事罰、あるいは行政制裁の場合もあったかと存じますが、税法上記帳義務を課しておりまして、それに対して何らかの直接の制裁を制度化しておるという例が一般でございます。  ただ、今回の記帳義務の法制化に当たりましては、税制調査会の中での議論は、一つは、現在、青色申告制度につきましては、これはもちろん奨励制度でございますけれども、記帳を奨励し、しかもそれに一定の課税上あるいは手続上の特典を与 えておるということでございます。したがいまして、今回お願いいたしますものは、青色申告の現在の記帳水準よりもより簡易なものをお願いをするわけでございます。  それにしても、特典まで与えて制度化している青色申告とのバランスから見て、しかも青色申告とこの制度は併存させるというのが税制調査会の基本的な考え方でございますので、そういった点から、にわかに直接的な制裁を導入することはいかがかという議論で、いわば直接的な制裁措置制度化されなかったわけでございます。しかし、記帳の義務が制度化されることになるわけでございますから、いずれにいたしましても、例えば脱税等の場合には重加算税というような担保する制度が既存の制度の中にもございます。  それから今回の制度自身は、その立証責任の転換を図ったり、あるいは推計課税の現在の規定に変更を加えるものではございませんけれども、記帳の義務というものをより明確化することによりまして、訴訟等に参りました場合に、誠実な記帳をされない場合に結果的に不利になるというふうなことも、当然想定されるわけでございまして、そういった担保措置にといいますか、そうした効果も期待できるのではないかというのが、税制調査会の答申の基本的な考え方でございます。
  125. 多田省吾

    ○多田省吾君 この記帳義務の規定では、やむを得ない理由で記帳できない者等については配慮されておりませんで、このような制度が法制化されることによりまして、これを盾として税務行政面で推計課税が強化されたり、徴税面での強化が行われやすくなる懸念があると思いますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  126. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今回の制度は、先ほども申しましたように、青色申告よりもより簡易な内容の記帳をお願いするということのほかに、ただいまも委員が御指摘になりました、そういう記帳能力といいますか、そういった点にも配意いたしまして、特に零細な所得者の負担にならないようにということで所得限度を設けておるわけでございます。一定所得、三百万以上の所得のある人にお願いをする。  で、この三百万円という限度は、現在の青色申告の普及度合い等を見ますると、大体所得三百万以上のところではもう七割ぐらいの人が青色に入っておるということでございますし、これくらいの規模でございますと、いろんな見方があるわけでございますが、事業の従業員の規模が、本人を含めまして、大体三人とか四人といったぐらいのところでございます。したがいまして、これはもちろん家族の人数が入るわけでございますが、そういったところではおおむね簡易な記帳はお願いしてもいいのではないかということで、三百万円という目安を立てておるわけでございます。  それからもう一つ、先ほども申し上げましたように、特段の罰則の規定はないわけでございます。  それから今回の規定によりまして推計課税が強化されるのではないかということでございますが、これは今回の制度と推計課税の現在の位置づけ、税制における位置づけの問題、位置づけとは全然変更はないわけでございます。これは判例にも示されておりますように、記録もしくは記帳がない場合とか、記帳の内容が不正確であるといったような場合を除き、課税処分は実額課税でなければならないというのは、これはもう判例の基本的な考え方でございます。どうしてもそれ以外に合理的な手段を課税庁が持たない場合に推計課税が初めて許されるというのが、現在の推計課税の法的な規定の基本的な考え方でございまして、今回の記帳義務が制度化されることによってこの考え方なり運用がいささかも変更があるものではないわけでございます。
  127. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、今回のような記録及び記帳に基づく申告制度が確立される場合には、中期答申に次のように触れられているわけです。中期答申には、今後の具体的な訴訟の展開において納税者に立証を求める方向へ漸次進んでいくことが期待できるのではないか、こういうような言い方をしているのでありますが、これでは納税者の協力を求める一方で、訴訟面で立証責任を納税者に強く要求するということになるのではないかと思われますが、御所見を伺いたい。
  128. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) この立証責任の転換の問題は、税制調査会の御答申をおまとめになるまで非常に議論されたところでございます。    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕 諸外国の調査にも行っていただいたわけでございますけれども、諸外国の法制を見ますると、いろいろな形がございますけれども、我が国の現在の判例におきます原則として、原則としてと申しますか、租税の税務訴訟に当たりましては、立証責任は課税庁側にあるというふうな制度なり運用が行われている国は余りないようでございまして、一定の場合に課税庁と納税者の間に立証責任の配分が行われておるとか、原則として例えば納税者の方に立証責任ありとされているような例が多いわけでございます。  ただ、この点につきましては、我が国は財政裁判所とか、租税裁判所といったような司法制度も持ちません。税務訴訟といえども一般の行政訴訟と同じでございますので、税制調査会の中での専門家の御議論、これは特別の部会をつくりまして専門家にも参加していただいて御議論を願ったわけでございます、その議論過程では、税法だけで一方的にそういう立証責任の転換を図るということを今結論づけるのはいささか問題である、したがって、この点については学説なり判例の今後の展開をまって、将来の問題として対処すべきであろうということで、この立証責任の転換の問題については、今回の制度改正に当たっては税法のみでそれを規定するということは回避するということでございました。今委員がおっしゃいましたのは、そういった議論を背景に置いていただきますと、ただ、将来の問題として、そういった方への発展を税制調査会の議論過程では期待されておるというのがこの答申に出ておる考え方でございます。
  129. 多田省吾

    ○多田省吾君 また、中期答申では、課税処分取り消し訴訟においては、訴えを提起した者が税務署に対して立証がおくれたような場合は、民事訴訟法百三十九条の規定を適用すると述べておりますけれども、今回の措置で課税処分取り消し訴訟への悪影響がないと言えるのかどうかお伺いします。
  130. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 現在、国税通則法の百十六条で証拠申し出の順序の規定があるわけでございます。裁判所は、課税庁側だけで申しますと、課税庁の主張を合理的と認めたときは、その訴えを提起した者がまず証拠の申し出をし、その後に相手方当事者が証拠の申し出をするものとするという規定があるわけでございますが、税制調査会の議論の中では、この制度が実は現在ほとんど活用されていないということでございます。本来、この制度ができましたのは、二十五年のシャウプ勧告に基づいてもとの所得税法にこの規定が盛られ、それが国税通則法ができましたときにこの条文に移しかえられたわけでございます。この条文自身はその立証責任の問題ではございませんで、いわば訴訟指揮に関する規定であるわけでございます。  そこで、今回この規定の整備を図るという観点から、一つは、現在では抗告訴訟全般を問題にしておるわけでございますけれども、今回は課税処分の取り消しにその事柄を限定いたしますと同時に、従来でございますと、裁判官が課税庁の主張を合理的と認めたときにそういう証拠の申し出をさせると、こういうことでございますが、実際には課税庁の申し出だけではそういう合理的という判断をなかなか裁判官がしにくいというふうなこともあって、この制度が余り活用されてなかったという点もございますので、今回はむしろ「訴えを提起した者」、つまり納税者、原告が「必要経費又は損金の額の存在その他これに類する自己に有利な事実につき課税処分の基礎とされた事実と異なる旨を主張しようとするときは」ということで、そういうふうに事項を限定したということでございます。しかも、この点につきまして、「その責め に帰することのできない理由により」遅滞なく申し出をできなかったときは「この限りではない」と。  これらいずれも訴訟の段階で裁判官が判断されるということになるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、このことによりまして、むしろ原告側と被告側である課税庁の間の実質的な対等関係というものにむしろ近づける、かたがた訴訟経済にも資するということでございまして、このこと自身で立証責任の転換が図られるといった趣旨のものではないわけでございます。
  131. 多田省吾

    ○多田省吾君 大臣にお伺いしますけれども、記帳義務、それから総収入金額報告書の法制化、これは大型間接税あるいは仮称一般消費税導入の布石ではないかというような論調もあるわけでございますが、否定できないと思います。この点でもう一回、大蔵大臣はそうじゃないと言えるのかどうかお伺いしたい。
  132. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この記帳義務の問題は、全く今おっしゃったような御指摘考え方はございません。本来、青色申告をお勤めしてきておるわけでございまして、近時、実際問題として五二%ぐらいでございましようか。しかし、より好ましいことは、白色の人も将来青色へ移行してもらいたい。したがって、白色の方に今度は簡易な記帳義務、しかも三百万円とかいうようなものを決めましてお願いして、いわゆる納税環境としての整備を行って、それが一つのきっかけとなって将来青色の方へ入っていただく方向へある種の誘導的作用が起こったとすれば、非常に好ましいというふうに考えております。
  133. 多田省吾

    ○多田省吾君 大臣にもう一点、利子配当所得課税制度の見直しについてお伺いします。  この前グリーンカード制が凍結されたことに対しては、大変我々も遺憾に思っているわけでございますが、政府税調ではことしの夏ごろをめどにこの問題で検討を行うとおっしゃっております。見直し案として考えられるのは五つぐらいあろうと思います。一つはマル優の限度額管理の強化、二つにはマル優適用者の所得制限、三つには源泉徴収による課税と非課税分の還付、四つにはグリーンカード制を凍結の後に必ず実施する、五つにはマル優を廃止する。こういうような案が五つほど考えられると思いますけれども大蔵大臣はそれぞれについてどのような評価をされるのか、それぞれの案についての具体的なお考えをお聞きしておきたいと思います。
  134. 竹下登

    国務大臣竹下登君) これはいずれも重要な御指摘でございまして、限度管理問題というのは、元来きちんとやるべき問題でございます。そしてまた所得制限の問題ということになりますと、一方いわゆる総合課税の問題との関係もできてまいりますので、直ちに所得制限という角度からの議論というものはどうなるものかなと思います。それからいわゆる還付制度というのも、たびたび本院でも御議論をいただいておりますが、非常にそれなりに関心の強い一つの方向ではないかというふうにも考えております。それから、そのまま凍結されたものが解除されていくだろうということも、あり得る可能性の一つではございますが、現在恐らくはそういう考えの方は少数意見になっておるではなかろうかというふうにも考えます。マル優の廃止問題というのも議論としては存在いたしますが、これもいわゆる貯蓄奨励の意味をもって今日まで行ってきたということに対する大きなある種の政策転換でもございますので、それなり議論の多い問題であろうと思います。  いずれにいたしましても、それぞれの御議論が本委員会等で行われ、ことしの夏ごろでないと、グリーンカードの凍結の問題とのタイミングの問題ございますので、適正な判断がなされていくであろうということを期待をして、我々も正確に資料の提供をいたしましたり、本院における議論等を取り次いだりしながら、これに対して御審議協力をさしていただく、こういうことではなかろうかと思います。
  135. 多田省吾

    ○多田省吾君 グリーンカード制は一度法制化されたものでもございますし、それにかわるべき代案というものは政府与党としてはっきりすべきである、私はこのように強く要求しておきます。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案で二、三質問したいと思います。  今回の法人税の税率引き上げによる増税は、中曽根総理のおっしゃる増税しない、増税なき財政再建とか、こういう公約にも反するものでもあり、特に中小企業の増税は大変遺憾である、このように思うわけでございます。法人税増税は、法人の設備投資意欲を減少させることは明らかでございますし、景気回復に水を差す形になっております。特に内需への依存度が高い中小企業にとっては、まことにこのたびの増税は厳しいものでありまして、我々は強く撤回を求めているわけでございます。  それで、今回の二年間の時限立法と申しますけれども、二年後はもとに戻すというお考えなのか、二年後は絶対に本法にしないと明言できるのか、この辺お伺いしておきたい。
  136. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今度租特の方で二年間ということでお願いをしておるわけでありますが、従来ともそうした問題を二年間ということで租特お願いをしたケースはございます。結局、それがケースとしてはそのままもとに返る場合と、それからもう一つは単純にまた延長される場合と、そしてもう一つは本則の中へ入る場合とあろうと思うのでございます。この問題につきましては、これからの経済財政事情等を見ながらその時点で判断すべき課題で、今のところ予見を持っておりません。
  137. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、法人税負担を求めるにしましても、不公平税制の是正という観点から、大企業ほど利用率が高くて、実態的には雇用者のためとは言いがたいいわゆる退職給与引当金の圧縮、そういった方法を優先させるべきではなかったかと思いますが、大臣いかがですか。
  138. 竹下登

    国務大臣竹下登君) この退給の問題というのは、私がこの前五十五年のときにやらしていただきました。しかし、その後の税制の答申等におきましても、なお雇用の実態、いわゆる一つの企業に長らくみんながおるような実態が変化してきておりますので、なおこれは見直すべきであるという御意見をちょうだいしておりますので、この点は引き続き検討していく課題だというふうに理解をしております。
  139. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは最後に、法人税法の一部を改正する法律案について一点だけ大臣に御質問したいと思います。  この延納制度を廃止する点について、財源難からある程度やむを得ない点もあるとは思いますけれども、これを廃止するにしましても、企業経営に配慮をいたしまして、激変を避けて何らかの緩和策を講ずべきではないかと、このように思いますが、大臣いかがでしょうか。
  140. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 現在御提案申し上げております法人税法の一部改正案の中で延納制度の廃止をお願いしておるわけでございます。  延納制度は、昭和二十六年当時の企業の資金繰りが非常に苦しい時代、滞納が頻発するという状況でございまして、そういった状況を背景に実は生まれた制度でございます。ところが、その後今日まで状況は非常に変わってきております。  それともう一つは、諸外国の法人税制度を見ましても、このように法人側の事情のいかんにかかわらずいわば延納が自動的に認められる、もちろん利子税は負担していただくわけでございますが、そういった制度はないわけでございます。したがいまして、非常に財政事情も困難ということで、増税ではないわけでございますけれども年度増収措置の一環としてこの制度を整理させていただくというのが、今回御提案申し上げている一考え方でございます。  委員も御指摘のように、もちろん個々の納税者である法人の状況というものが十分勘案されなければならないことは当然でございますが、現在そういった一定の場合、非常に納付の困難なような状況の場合に、納税猶予の制度とか、あるいは納付委託といったふうな制度は現在でも制度化され ておりますので、どうしても納税の困難な方はそういった制度を活用願うということになろうかと思います。
  141. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今、本委員会に、どれ一つとってもおろそかにできない重要法案が係属しておりまして、その一つ一つに多くの質疑時間を必要とすると思います。私は、諸般の状況をかんがみまして、直接税のごく一部に関する質疑から入ります。  そこで、委員長に要望申し上げますけれども、今後十分な質疑時間を保証していただきたいということを要望申し上げますが、いかがですか。
  142. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 理事会でよく検討してまいりましよう。
  143. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 まず、先ほど来問題になっております所得税法等改正案、ここに大変異質なものが一緒くたになっておるということは先ほど指摘のとおりだと思います。  そこでお伺いしますけれども減税あるいは税率など、そのときどきの政策や状況によって変化することは予想されておりますね。しかし片や、申告納税制度の基本に関する問題、あるいは訴訟に関する問題、これは全く異質だと思うんです。私たちも減税あるいは税率等につきまして日切れ的な要素があるということは認めますが、しかし記帳義務やあるいは国税通則法百十六条の改正、これが日切れ的なものなんでしょうか。
  144. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今回所得税法等の一部を改正する法律案ということで、先ほど来御議論がございます。昭和四十九年以来の所得税の負担の適正化を図るための見直しと、適正、公平な所得税の課税を実現するための納税環境の整備の問題、それから所得税の負担軽減のための基本的な見直しのこの時期をとらえまして、災害減免法を実態に即して改正させていただく。これらはいずれも昭和五十年代に入りまして累次にわたりまして税制調査会でこの所得課税の問題が議論されております。特にその場合に、給与所得者と事業所得者との間のわだかまりを解消するというのが、基幹税である所得税の税制にとって緊要の課題であるということで、この負担の問題と公平の問題というのは密接な関連のもとで議論をされてまいった経緯がございます。そういった背景も踏まえまして、今回の所得税の十年ぶりの基本的な見直しを行うための提案でございますので、この所得税法等の一部を改正する法律案ということで、一本の法律案として密接不離な関係にあるものとして御提案申し上げておるわけでございます。  国税通則法の問題は、その納税環境整備の関連で、税制調査会の答申においては、申告納税制度の見直しと不可分のものとしてこの問題が答申を受けましたので、私どもはこれも不可分のものとして、この国税通則法の一部改正の部分もこの一本の法律のもとに御提案申し上げておるわけでございます。
  145. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 税調の答申を受けて大蔵省が一体不可分のものであるという、こういう解釈をされている。我々はそうは思わないんです。全く性格の違うものだ。これはまさに申告納税制度の根本にかかわる問題ですから、これはその是非については十分な議論をしなきゃいかぬと思うんですね。そこはまさに両方の意見が対立するところです。  問題は日切れなんですよ。我々もこれが十分な時間がこれから会期末までに保障されれば、こういうことは特に申しません。しかし、もうあした、あさっての話でしょう。だから、聞いたのは日切れかどうかということなんです。どうですか、申告納税制度国税通則法百十六条。
  146. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 日切れという意味をどういうふうに理解するかということでございますけれども、今回御提案申し上げておりますのは、そういった所得税法の基本的な見直しと密接不可分の関係を持つものとして、国税通則法の問題もこの法律でもって提案をさしていただいておるわけでございます。一般論といたしまして、毎年私ども税法提出させていただいておるわけでございますけれども、全体として日切れというふうに規定される法案の場合にも、個々の条文にとってはいろいろなそういったものでない場合もあるわけでございまして、私ども、部分的にここの部分が日切れであるかないかという議論は、今までも余りさしていただいておりませんし、今回の場合もそういった議論に行政庁としていろいろ申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  147. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 だって、あなたの方で提案したんじゃないですか。一緒に提案しておいて、そのことについて日切れかどうか聞いたら答弁しない。大臣、全然これは不誠実ですよ。  大臣に改めてお伺いしますけれども一つは、先ほど来説明のとおり、明らかにこれは訴訟指揮に関する問題、そして裁判官の判断を拘束するんですよ。ですから、昨日も日弁連の樋口事務総長が来まして、行政と司法の間には一線を画すべきだ、そしてこの場合に立法当事者、まさに税務署が立法当事者ですが、それに対するのが納税者、そしてその代理人である弁護士、その弁護士の会である日弁連、何の一つの事前の意見聴取はなかったというんですからね。その弁護士会の総意として、これは司法の根幹にかかわる問題だ、こういうものをこういう日切れということでわずかな時間で通しちゃうことは、これはもう大変に遺憾だということで、昨日も大変その点を強調しておったんです。公の機関がそう言っているんです。それについて大臣はどうお答えになりますか。
  148. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず、日切れであるかないかという点でございますが、私先ほど申し上げましたように、条文の部分的にそれが日切れであるかどうかという議論が、果たしてそういう議論が成り立つのかどうかという疑問を私どもは持っているわけでございます。そのことをまず申し上げさせていただきます。  それから国税通則法の百十六条の改正自身は訴訟指揮に関する部分でございまして、訴訟法規の一部であることは御指摘のとおりでございます。  私どもこの案を税制調査会でまとめていただくに当たりましては、通常の検討手続の前の段階といたしまして特別部会を設定していただきまして、ここに学者、それから法律の実務家等もお集まり願いまして、十分議論をいただき、そこで専門的な見地からの御結論を賜り、さらに税制調査会の答申もいただいたわけでございますが、立案の過程におきましては、もちろんこれは単なる税法の問題ではございませんので、訴訟法規を管轄いたします法務省当局とも十分連絡をとりながら、政府の意思としてこの案を最終的におまとめ願ったものでございます。
  149. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 こういう子供だましな答弁を委員会として認めるんでしょうか。だれだって日切れというのはみんなわかるんですよね。当委員会でも毎年、私たちは反対だけれども、関税、これは明らかに日切れということで、反対だけれども、早い時期に協力しておるんです。それから日切れの強いもの、弱いもの、これもみんなで振り分けようじゃないか、こういう話も理事会で出ておるんですね。今のはもう明らかに全く性格が違うんです。司法制度の問題ですよ。日弁連の代表はっきり言っているんですからね。こういう子供だましの答弁を委員会としてこれはそのまま認めるんですか。それはむしろ理事会で協議いただきたいと思います。
  150. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 日弁連の意見を聞く必要があるかないかという問題が従前からあることは、私どもも承知いたしておりますけれども、この点については、むしろ法務省御当局からの御見解を申し上げるのがあるいは適切であろうかと存じますけれども、先ほど来申し上げておりますように、私どもはこの法案性格をよく考えまして、法務省当局等とも十分連絡の上、今回の案をまとめさせていただいたわけでございます。    〔近藤忠孝君「そんなこと聞いているんじゃ    ないんですよ」と呼ぶ〕
  151. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 近藤君、発言を求めてください。
  152. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 そんなこと聞いているんじゃないんです。私は日切れの解釈についてなんですよね。 これはだれだってわかっている、余りはっきりしたことを本当に子供だましの答弁するから、私は、これを委員会として許せるのか、そのまま放置できるのかということで委員長の指揮を求めているわけです。
  153. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  154. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記を起こして。
  155. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私の真意はおわかりのとおり、全く性格が違うじゃないか。同じ税法の中でも性格の違うものもありますよね。それに関して、先ほど主税局長言うとおり、日切れ的かどうかということについての判断は、それぞれあるというならまだわかるんです。しかし、これは明らかに司法制度の問題ですよ。しかも日弁連というのは公の機関ですね。弁護士というのは憲法上もちゃんと職業として規定されているんですから、資格のある弁護士の弁護を受ける権利がある。その集まりの団体がああいうことを公に明確にしているのですから、もう明白なんですね。それに対して、日切れかどうかについてああいう答弁。本当にこれは委員会をばかにした答弁です。そんなものをこの委員会として聞き流すのかということを私は申し上げているんです。
  156. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  157. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記を起こして。
  158. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、もう一度伺います。  この国税通則法百十六条は日切れ的な要素があるのか。要するに三月三十一日に通さなきゃ重大な支障が出てくるのかどうかお答えいただきたい。
  159. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは先ほど来申し上げておりますように、今回の所得税の基本的な見直しに当たりまして、適正、公平な負担ということで、所得税申告納税制度の見直しといいますか、改正を四月一日から適用するということでお願いをしておるわけでございまして、その一環として、私どもとしては、この国税通則法の規定も四月一日からぜひ実施に移されることを期待しておるわけでございます。
  160. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 おわかりでしょう。要するに期待しているだけなんですよ。そうでしょう。自分たちは一体と考えると。一体かどうかの答弁です。しかし、私が聞いているのは日切れかどうかなんだからね。そうでしょう。確かに税率などについてはそれは言うとおりでしょう。
  161. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 向こう向いて。
  162. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 だけど委員長、こんなものを黙視するということは、私は、参議院大蔵委員会の権威に関する問題だから、ですから、委員長のしっかり指揮を私は求めておるんですがね。向こうへと言ったって、あんな答弁しか出てこないんだから。ですから私は委員会の権威にかけて――日切れかどうかということに対して答弁をしないんです。一体だと言うんです。一体がどうかというのと、日切れかどうかとは全然違うでしょう。仮に一体であることを認めたとしましても、日切れかどうかとはまた違うんですからね。  一体かどうかについてはそれぞれの意見があるわけですから、我々も、恐らく社会党さんも、これに反対だと思うんですね。だから、その点で、委員長、こういう答弁をそのままに放置するということは、私は名委員長の名がちょっと廃るんじゃないかと思うんで、それで申し上げておるんですが、いかがですか。
  163. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  164. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 速記を起こして。
  165. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 じゃ、委員長が引き取ったということで、私は先に質問を進めます。  そこで、この記帳義務をここで規定した意味ですが、これはあれですか、納税者が税金をごまかすためにわざと記帳をしなかったり証拠を隠したりしている、そういう例が多いんで、ここで記帳義務をやろうと。そういうことが基本にあるんでしようか。
  166. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これも税制調査会の答申にるる述べられておるところでございますけれども、申告納税制度といいますのは、結局、納税者が自分自身で課税標準を算定し、税額を確定し、自主的に納付するという制度でございますから、自分の所得の形成過程等について一番資料を持っておるのは、正しい資料を持っておるのは納税者でありますし、当然取引の過程等でそういう記録も作成するということでございますので、本来、記録あるいは資料に基づいて申告をするというのが、申告納税制度に内在している基本的な理念であるということでございます。これはシャウプ以来いろんな考え方が述べられておるところでございますが、先ほども申し上げましたように、適正公平な申告納税制度を確立する上で、この申告納税制度に内在している考え方を顕在的に制度的に確認するというのが今回の一つの視点でございます。  その中で、記帳義務につきましてはこれを義務化するわけでございますので、零細な事業所得者等については、負担にならないようにということで一定所得限度を設けますし、それから記帳の内容等についても、実際上そういう物理的にあるいは能力的に困難なものを求めるという点も考慮いたしまして、青色申告等に求めておりますものよりもより簡易な方法、内容の記帳をお願いする。しかもこれにつきましては罰則等の制裁も設けないということでございます。それからまた、誠実に記帳していただきました場合には、課税当局としても当然それに誠実に対応しなければならないわけでございますから、そういう記帳があります場合には、税務調査に参りました場合に、税務職員はまずその帳簿を検査するということも義務づけておるわけでございます。
  167. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは衆議院でも梅澤局長は答弁しましたけれども、記帳義務は申告納税制度に内在するものであるから、すべての納税義務者に記帳義務を負担させるのはこれは当然なんだ、だからこの法改正を行うんだと。要するに内在的なものであることが記帳義務を法制化しても当然であるという、こういう根拠になるんでしょうか。
  168. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 申告納税制度に内在する理念というのは、先ほど来私がるる申し上げているとおりでございます。なぜ今この時点でこの問題が取り上げられたかということでございますが、これは昭和五十五年の中期答申以来税制調査会で繰り返し議論されておりますように、所得税というのは実は税体系の基幹をなす税であるわけでございます。納税人員が四千二百万人でございますから、国民の相当多数の人が全部負担をしていただいておる税目でございます。そのうち九割以上は給与所得者でございます。この基幹税である所得税に対する公平感というものは、これを損ないますと、一所得税に対する公平感のみならず、税制全般に対する国民の公平感あるいは信頼感を失するということが懸念されるわけでございます。なかんずく給与所得者と事業所得者の間にございます一種のわだかまり、これは税制調査会の答申の文言をそのまま引用させていただいたわけでございますけれども、このわだかまりを解消するということが、今後の我が国の所得税をより国民理解してもらう上で非常に大事な点である。それは結局は、事業所得者等の所得不足に対する問題が起因でございますので、この際申告納税制度の理念をさらに明確に制度的に確認し、給与所得者もその税制を見て、なるほど、事業所得者の納税もきちんとした記録、記帳に基づいて行われるということが制度的に確認をされておるということを給与所得者等が十分理解することが、結局、将来の所得税制全般のために極めて望ましいことであるという考え方が基本にあるわけでございます。
  169. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 端的に伺いますが、私、衆議院であなたの答弁を聞いておりまして、記帳義務が申告納税制度に内在すると、こういう答弁をされておりますね。今は記帳することが申告納税制度の内在する理念と言っているんですが、そうじゃないですか、記帳義務が内在するものと、こういう 答弁をされておったのと違いますか。
  170. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これは正確にこういうふうに申し上げているわけでございます。申告納税制度の理念というものは、先ほど申し上げているとおりでございまして、納税者がみずから税額を算定する、自主的に納付するというのが申告納税制度でございます。  具体的には、今回提案申し上げております二百三十一条の二の第一項、記帳義務、これは申告納税制度に内在する理念に沿って、しかし新しく創設的な規定として、義務規定として設けさせていただくというふうに申し上げております。それから第三項の記帳、帳簿記録の一般的な保存、これは記帳申告納税制度に内在する考え方制度的に確認する規定であると、こういうふうに区分けして御説明を申し上げているところでございます。
  171. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今回の法案法律上は義務の創設だということはまさにそのとおりで、だからこそ租税法律主義だと思うんですね。  そこで、権利義務というのはこれはすべて法的なものであって、法的以外の権利義務というのは存在しないんだと思うんですね。私は内在するものということが大変気にかかるんです。これは法的なものじゃないんでしょうね。
  172. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 法的という意味をどういうふうに理解するかということでございますけれども、権利義務が実定法上で確定されたものが権利義務ということは、仰せのとおりでございますけれども、そういう実定法的な権利義務が設定される場合にある背後の理念と申しますか、それはあらゆる法が持っているわけでございます、制度が持っているわけでございます。そういう意味で内在する理念と申し上げておるわけでございます。
  173. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ですから、それは義務というほどのものでないので、要するに記帳した方が望ましいと。当然記帳しなきゃいかぬというものでこれは法的な義務になってくるんだと思うんですね。その辺どうなんですか。
  174. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) そういった理念に基づきまして義務として実定法上今回提案申し上げておるものが二百三十一条の二の第一項でございます。
  175. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 ですから、私は、内在する理念とか何かいろいろ言っておるんだけれども、それは必ずしも当然に納税者に要求できるものではない。要求できるものならこれは法的なものなんです。あくまでも今回の法律によってこれを法的な義務に初めてしたわけですね。そうでなければ義務というのは当然出てこないものだと思うんですということを申し上げたいと思います。  そこで、今度は権利能力なき社団の記帳義務化の問題、これが法人税法で今回義務づけられるわけです。この権利能力なき社団の収益事業の問題については、既に通達でなされまして、その通達に基づいていろんな措置がなされております。現に「事業内容及び給与の支払い状況についてのお尋ね」という文書が出て、各団体の定款、規約、事業報告書、収支決算書などの提出を求めておって、これは税務行政の枠を超えるものだという指摘が既にされておるわけであります。  この通達改定によって、権利能力なき社団の収益事業の範囲、これがだんだん拡大解釈されて、例えば労働組合の本体に介入するようなものになりかねないんだと思うんですね。そこに加えて、今回そこへの記帳義務ということは、新たなさらに負担、また介入、これを労働組合あるいは宗教団体、PTAその他のごくその辺に自発的に出てくる各社団、それにこれを求めることになりゃしないかというぐあいに思うんです。  そこで、これは一般の所得税の場合も、例えば建設労働者あるいは零細業者はなかなか記帳がむずかしい。それを義務化したら大変なことになるということはもう既に指摘されております。しかし、みんなそれぞれ努力はしておるわけです。例えばここに全国建設労働組合総連合「所得計算書(大工用)」ということで、ちゃんと記帳をこれによってやりなさいということで大変懇切丁寧な指導をしておる。私はこれが実態だと思うんですね。ただ、これを義務化すると大変な推計課税につながっていくということなんです。そのことはまた次回に質問します。  問題は、権利能力なき社団にこれを義務化した場合捕捉可能なのか。大体権利能力なき社団というのは無数にあるわけですよ。それがある日突然収益事業をやったということで、記帳がないじゃないかということになると大変なんですが、そういう意味では、大蔵省は、大体どの程度のこういう権利能力なき社団があり、どんな収益事業をやっているのか、この辺の捕捉が可能なんでしょうか。
  176. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 御質問の中身にいろいろなものが入っておったと思うわけでございますが、まず第一に、最初に収益事業に関します通達の件でございます。これは恐らくは五十五年度改正をいたしました点についての御覧間だと思うわけでございますが、これは五十四年の夏以来、いろいろな法人税関係の通達の整備をいたしておりまして、その総点検作業と申しますか、その一環として行ったものでございます。もとより通達でございますから、法律に定められた枠を出まして執行の方で課税を強化するとか、そういうことではございません。ただ、今までの収益事業の課税は非常に複雑でございまして、執行の第一線におきましても、ややもすれば混乱をするという事態がございましたので、この際それを整備しておこうという趣旨に基づいて出たものでございます。  権利能力なき社団につきましては、御承知のとおり、三十二年の収益事業が法人税法及びその政令において定められておるわけでございますが、そういうものを営みます場合には課税をするということでございます。そういうことを基本的に確認した通達でございまして、私どもの意図といたしましては、いささかも法律及び政令の趣旨を変えるということは考えておらないわけでございます。  それからこの通達改正によりまして、収益事業の課税というものがきちんとできるかというお尋ねでございますが、これは大変むずかしい問題でございます。ただいまちょっと数の統計は私持っておりませんが、権利能力なき社団は相当の数に達しておりますし、その中身も、あるいは労働組合でありますとか、あるいは後援会とか、そういった団体でございますとか、雑多なものが非常にたくさんあるわけでございます。これにつきましては、私どもは他の法人と同様に、申告漏れのあるという場合につきまして調査を実施いたしておるわけでございます。  また、源泉所得税がとかく問題になるわけでございます。これは収益事業におきまして、とかく支払い給与とか、そういったものにつきましての解釈の問題もございますが、脱漏といった問題があるわけでございます。そういった点から、源泉所得税につきましての調査も鋭意行っておるわけでございます。  最後に、権利能力なき社団の事業の本体と収益事業の関係でございますが、これはもとより法律に決められたところでございまして、私ども、その権利能力なき社団の事業の本体、それから収益事業にかかわりがない限り、当然何らか税務調査上介入するということはないわけでございます。
  177. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 捕捉できない可能性が大変強いということは、これは不公平な税制につながっていくと思うんですが、そういう意味じゃ私はこの収益課税自身に問題があったと思うんですね。  問題は、それがさらに記帳義務化されるというところで問題だと思うんです。個人の場合には戸籍がある、それから法人の場合には登記があって大体わかるわけですよ。まさに国民の間の自主的な活動の結果社団が構成されるわけですからね。そうしますと、本当に税務署が公平な課税をしようという場合には、そして収益課税をしようという場合はあらゆる団体に目を光らせなきゃいかぬでしょう。そんなことが可能なんでしょうか。そ れが一つ。そして、そうでないとすると、どうしてもある一定の団体、ある特定の団体、あるいはある傾向を持つ団体、端的に言いますと、税務署に協力するような団体は大体余り対象にしないですね。税務署に対して、税務署はちゃんと申告納税制度の趣旨に従って調査をせよ、こんなことを言う団体に対しては特別にふだんの収益事業を調べる。こんな恣意的なことに使われやしないかという心配が出てくるんですが、その点どうですか。
  178. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 御指摘でございますが、確かに人格なきあるいは権利能力なき社団というのは非常にたくさん雑多なものがございますし、私ども執行上これを把握するのに困難を感じているのは事実でございます。これに対処します最もいい方法は、何といいましても、各方面からいろいろな資料を集めまして、その資料に基づきましてかかる社団を把握いたしまして、それに課税をするということでございます。課税をいたします場合も、おのずから私どもも事務能力に範囲がございますので、その範囲内でやらせていただくということでございます。  ただ、今御指摘がありましたように、特定の団体でありますとか、特定の社団でありますとか、そういうものを私ども意識して調査をやるということはいたしておらないわけでございます。私どもはあくまでも適正な申告ということをねらっておるわけでございまして、申告漏れがあるということであれば、どのような社団、どのような個人でありましても、課税をするというのが建前でございますし、そういうことでございますから、特定の団体とか、その性格に着目して課税をするということはしないわけでございます。ただし、納税に関しまして申告漏れがあるといった場合は、これは調査をさせていただかざるを得ないということでございます。
  179. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これはまさに国民の自発的な行動の結果の結社ですから、私はまさに無数にあると思うんです。そのうち税務署として調査の対象にしなければいかぬものが出てくると思うんです。となると、小さくったって社団性を備えたものが幾らでもあるんですからね。そうすると一定の規模によって記帳義務など要求しない、あるいは課税を求めないというような基準があるのかどうか、これが一つ。  それからもう一つ、実際能力的に記帳できない団体もたくさん出てくると思うんです。記帳してない場合にはこれは一体どうなるのか、どういう扱いになるのかということが次の問題。  それからこれは資料要求ですが、法人税法百五十条の二に「大蔵省令で定めるところにより」、あるいは「大蔵省令で定める簡易な方法により」云々ということで、この記帳の要件が決められることになっていますね。同様の規定は所得税法の一部を改正する法律案のうちの百二十条四項、二百三十一条の二、二百三十一条の三、それぞれのところでも「省令により」ということが規定されておるわけですが、このことによって実質的にどの程度の記帳が要求されるのか、どういう要件が決まるのかということで、それが本当に過酷な記帳になるのかどうかという基準になろうかと思うんです。一体どういうものを考えておるのか、この点についてひとつお答えいただきたい。今もしすぐお答えできなければその資料を早急に出していただきたい。
  180. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) まず人格なき社団の記帳義務の問題でございますが、これは法人税法によりまして、収益事業を営む部分については普通の法人と同じく当然法人税の納税義務があるわけでございます。申告納税の義務を負っているわけでございますから、これは普通の法人、それから個人におきます事業所得と同じように申告納税義務を負っておるわけでございますから、当然記帳をお願いするというのが今回の考え方でございます。したがいまして、一定の基準を設けまして、人格なき社団について、記帳義務のある団体とそうでない団体を区分するという考えは持っておりません。  それから省令の問題でございます。二百三十一条の二の帳簿記録の具体的な内容、これが一番問題であろうかと思いますが、現在私ども考えておりますのは、ここの条文にございますように、今回の記帳の内容は「総収入金額及び必要経費に関する事項」でございまして、これはもっと端的に言いますと損益取引でございます。資産・負債取引は入らないということは法律でまずはっきりさしていただいておるわけでございます。そういう事項について「大蔵省令で定める簡易な方法」ということでございまして、これは現在青色申告にっきまして簡易簿記の制度がございますが、それよりも、まず資産・負債取引が含まれないということで、まず取引の範囲が非常に簡易になっておるということでございます。  それから記載事項でございますが、これは個々に省令で定めるわけでございますが、ただいま私ども考えております考え方は、例えば売り上げでございます。売り上げにつきますれば、基本は取引の年月日、売上先その他の相手方及び金額並びに日々の売り上げの合計額というものを記載していただくわけでございますが、簡易な記載方法というものを例外的に設けるということを考えておりまして、例えば保存している納品書控え、請求書控え等により、その内容を確認できる取引については、日々の合計金額のみを一括記載することができるといったような制度とか、掛けの売り上げの取引で納品書控え、請求書控え等のあるものは、日々の記載を省略し現実に代金を受け取ったときに記載することができるといった記載方法とか、ただいまは売り上げの例でございますが、それぞれ仕入れに関する問題につきましても、それぞれ事項別に基本的な記載事項と簡易な記載事項というものを省令で具体的に定めるというふうに考えておるわけでございます。  それから、ただいまのは所得税法と二百三十一条の二の省令でございますが、法人につきましては、現在も資産・負債取引、損益取引両方を記載していただくことにいたしております。したがいまして、そこは所得税の場合と法人税の場合は、若干記載内容を異にする場合が起こってまいります。
  181. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間が来ましたので終わります。この後また続いて次回に質問さしてもらいます。
  182. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 今の政府委員の答弁で、資料要求はよろしいですか。
  183. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 いいです。
  184. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 所得税、とりわけ源泉所得税に対する国民の重税感ということを頭に置きながら、政府考え方を伺いたいと思います。  ちょっと冒頭わき道にそれるようですけれども、学校の成績査定で、五、四、三、二、一と成績をつけるのは御存じと思うんですが、これは全国どうかは知りませんが、神奈川の場合で言いますと、中学校と高校で違いまして、実はこの間私聞いて、ああそうかと思ったんですが、相対評価と絶対評価と二つあるんですよ。中学校は大体相対評価、高校になりますと絶対評価。どう違うのかといいますと、五十人のクラスがありますと、五は一割、四は三割、三が三割、まあ何割というのは私の推定ですが、そう決めまして、どんなに成績のいい子がいても上位一割の分しか五とはつけない、そして四、三、二、一、これが相対評価というんだそうです。高校になりますと、これは絶対評価でして、ある点数以上だったら間違いなく五だ、あるいは四だ、三だと、こういうつけ方をするんだそうです。極論しますと、クラスの全員が成績五ということがあったっておかしくないのが絶対評価であります。周りを見ながら大体の割合で五が何名、四が何名と決めるのが相対評価なんです。  これと源泉所得税の税制を見比べるわけではありませんけれども、大体今の源泉所得税というのは諸控除と累進税率の組み合わせでございますね。したがって、これを見るとすると、実効税率の形に一遍直して見ていくしかない。累進税率の機能というのは所得の再配分機能等々が挙げられるわけですから、どっちかというと、さっきの私申し上げた相対評価、大体全体の中でわきを見ながらどの程度所得の人たちには何%、このぐらい だったら何%、いわば周りを見た決め方というのが一つは働いている。そうはいうものの応能負担という思想もありますから、周りを見ているだけじゃなくて、ある水準の人に負担を求めていこう。いわば両方が絡み合った、周りを見て相互関係で自分がどのくらいの所得水準なんだろうという面と所得の絶対水準と両方見ながら大体源泉所得税の控除並びに税率は決まってくる、そう考えて間違いないと思うんです。  この点で私、議論しようというのじゃなくて、問願はオイルショックのときなんです。物価と賃金が大幅に変動しました。幸いにして、この変動というのは大ざっぱに申し上げて、一過性の現象でおさまったんだけれども、問題は、この変動が実効税率の面でどういう変化をもたらしたんだろうか。平たく申し上げますと、オイルショックでどういうことになったかといいますと、賃金は大体大ざっぱに言って倍になりました。倍になったんだけれども物価の方も倍になった。ということは、賃金は倍になったんだけれども使いてを考えても、実質生活水準を考えても、とてもそれは倍になったとは言えない。ごく大ざっぱに言って生活水準は前と同じだ、名目所得の方は倍になった、こういう変化ですよね。そのときに所得税の税率構造を変えなくて済むんだろうか。私は国民はこう思うと思うんです。  なるほど、大幅な物価水準の変動が賃金水準の変動を呼び起こした。一方、国の予算考えますと、歳出を考えると、当然物価が上がっているわけだから、それは前よりも税額を多く納めてくれなければ困る。それは国民の側が納得する。とはいうものの、周りを見ながら大体自分はこのくらいの所得水準だ、したがって賃金が上がる前に仮に実効税率が一〇%だったとしたら、オイルショックの結果、物価が上がり、賃金が上がっても、実効税率は前と同じでいいじゃないか、名目賃金が上がった分だけ税額はたくさん納めましょう。それが国民の素朴な受け取り方だと思うんですが、いかがでしょうか。
  185. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) ただいま栗林委員が御指摘になりました実効税率、特に所得税の場合、納税人員の九割以上は給与所得者でございますから、そういう源泉徴収を受けている納税義務者の負担感、これを一番検討の中心に置いて所得税の負担の議論をしなければならないということは、御指摘のとおりでございます。  オイルショックを契機にいたしまして、契機といいますか、引き金になりました名目賃金の上昇、そういったことを背景にいたしまして、四十九年に大きな減税が行われたわけでございますが、そのときの財源の配分を見ますると、当時は一兆七千億円の減税規模でございましたけれども、このうち人的控除で約五千億、給与所得控除で約九千億強、税率構造の手直し。当時の税率構造の手直しを見ますと、限界税率で五五%のところまでブラケットを調整いたしております。そういった配慮もありまして、四十九年度減税というものは行われたわけでございます。  いずれにいたしましても、人的控除を含めます所得控除と税率構造の組み合わせ、究極的には実効税負担、実効税率というものを眼目に置いていろいろ議論をする必要があるということは、御指摘のとおりだと思います。
  186. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いや、今私が非常に素朴な質問で申し上げたのは、確かにそれをお考えになって今回減税を御提案になったと思うんです。だけど、これで十分なんだろうかというのが質問の主眼なんです。財源問題はしばらくおきます。  で、私は相対評価と申し上げたんだけれども、とにかくオイルショックの結果、物価も上がりゃ賃金も上がっちゃった。しかし、それは金の使いでが減っただけであって、生活水準の方はほとんど変化がない。正確に言いますと、四十九年から比べますと約一割上がったか上がらないか。名目はどうかといいますと、昭和四十九年ですと、年収百万から二百万の層が何と四五・八%、もう半分の層が百万から二百万の間にひしめいていた。これが五十七年になりますとどうかといいますと、大体百万から二百万ではなくて、二百万から三百万、三百万から四百万、四百万から五百万、五百万以上と非常に散らかりながら分布がふえてくるわけです。そのときに国民はどう思うか。なるほど、名目賃金が上がったんだから従来の実効税率で負担するのはよくわかる。ところが生活水準は上がっていない。これは物価上昇のはね返りを受けて上がっちゃっただけだ。そうなったら、実効税率は前と同じなんでしようねという感想を持つと思いますし、私もそれは正しいんではなかろうかという質問なんです。
  187. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) それは一つの見解であろうと思います。それを非常に徹底して行うとすれば、よく言われるパーフェクトなインデクセーションということになろうかと思います、控除、税率のブラケットを含めまして。  この点についてはいろいろ議論があるわけでございますが、私どもの今回提案申し上げております考え方を一、二申し上げますと――その前に、先ほど委員は財源の制約があるということをおっしゃっていただきました。私どもといたしましては、もちろん財源なり財政事情が許せば、いろんな改正の組み合わせということは考え得るわけでございますが、現在の平年度所得税、住民税、一兆円という規模を想定しました中で考えましたのは、税調答申にも触れておりますように、その負担感で今一番問題があるところは中堅所得層というところの実効税負担であろう。それからもう一つは、独身世帯と比べた場合の多人数世帯の問題であるということでございます。したがいまして、今回の税率、所得税の負担の見直しに当たりましては、そういった点で、むしろ財源的にも人的控除の引き上げに相当部分の財源を割いておるということが一つ。それから税率構造につきましては、トータルとしての財源効果は余り大きなものではございません、最低税率の引き上げもさせていただいておりますから。それにしても、中堅所得階層等を中心に累進構造をなだらかにするといったものを主眼にいたしましてやらせていただいたわけでございます。  この課税最低限の水準につきましては、五十二年当時と比べますと、必ずしもパーフェクトなインデクセーションという観点からは、やや引き上げ幅が少ないという議論もあるかと存じますけれども、現在の二百三十五万七千円、改正後の課税最低限というのは、国際的に見ても、非常にこれで高い水準になったということは客観的に言えると存じますし、先ほども申し上げましたように、五十二年当時と現在との名目物価でスライドいたしました収入額を想定して、改正後の所得税、住民税の税引き後の手取り額というのは、ほぼ名目水準のスライドに見合っておる。ただ、社会保険料控除が若干上がっておりますので、その意味では実質やや目減りが生じておりますけれども、おおむねそういった水準に軽減させていただいておるというふうに考えておるわけでございます。
  188. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 今回の税制改正減税だけで問題が解決するとは私は思っておりません。したがって、本来の課題は何であったんだろうか。今回は財源の制約もここまでしかできなかったんだ、追ってまた考えてまいりますということを率直におっしゃっていただければ私はいいんです。  ただ一つ、いつも考えておかなきゃいけないのは、オイルショックというのは一体何であったんだろうか。あれだけ物価が大きく動きますと、恐らく企業会計の方でもインフレ会計をしなければいけなかったのかもしらぬ。今、企業は利益を出しておるところもありますけれども、簿価というのは、もしオイルショックの前に取得をした設備だとすると、その償却額では更新設備は買えないんですよ。事実上償却損が起こっている。そのときにその是正をどうしたらいいんだろうか。これは償却だけじゃなくて、すべてについてそういった目で見直しをしていかないといけないほどの大事件がオイルショックだったんだなということを私はまず申し上げたい。  それから所得税になりますと、重税感はなぜなんだ。一般の営業行為をしておりますと、物価が 上がれば仕入れもかさむし、売り値がその分だけふえるかといったら、昨今御存じ、過当競争じゃないか。申告所得税も法人税の方も伸び悩んでいる。ところが、源泉所得税の方は名目に対してそのままかかってくる。そのときに源泉所得税納税者が何と思うだろうかと私は言ったんです。それは賃金は倍になったんだから、当然政府の方だって費用が倍になるのも見当がつくし、そうなれば従来と同じ実効税率だったら、負担をしたってまあまあなんだけれども、それがはね上がるというのはいかにも筋が通らないではないか。そこに向かってどう努力していくのか。将来もまたそれを見据えながら、何といいますか、オイルショックで倍に水膨れをした社会構造に見合った源泉所得税の実効税率を見つけていく、そういう課題ではないんだろうか。その意味でもう一遍御答弁をお願いします。
  189. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) ただいま委員が御指摘になりました点は、昨年の秋の税制調査会の答申にもその考え方が触れられておるわけでございます。我が国の所得税が、課税最低限あるいは所得に対する負担割合から見まして、国際的に見て、高い負担水準にあるとは言えないという認識に税制調査会は立っておるわけでございますけれども、ただ所得税の持っております宿命と申しますか、基本的な性格といたしまして、名目所得に対して累進構造を持った税率でもって税負担が決まる。この特性に着目した場合に、トータルとしての負担水準の議論のほかに、制度一定期間放置しておきますと、名目所得の上昇によって負担の累増感とか、あるいはゆがみというものが生じてまいるわけでございます。  その意味で、税制調査会ではそういう観点から数年に一度は見直す必要があるというふうに今回指摘しておるわけでございますけれども、私どももそういった基本的観点に立ちまして、数年に一度と申しますか、物価の上昇等の四囲の情勢も見ながら、絶えず所得税制の仕組みについては、そういった所得税制の持つ宿命のようなものを念頭に置いて、十分見直す姿勢を絶えず持っていなければならないというふうに考えております。
  190. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 数年に一度とおっしゃいますけれども、税制調査会がそういった答申を出したころは、減税規模は大体こんな額であるということはまだはっきりしていなかった。何がしかのぼやっとした格好で、とにかくこれは手をつけなきゃいかぬですよという指摘ですよね。財源の制約ははなっからわかっているんですからいいんですけれども、果たして今のままでいいのかどうか。これはいろんな投書を見ても、新聞論調を見ても、要するに今の源泉所得税の税構造、これがもう古い着物になっちゃって体に合わなくなっちゃったということをおっしゃる人は非常に多いんです。  例を挙げますと、賃金が大ざっぱに倍になったと言うんだけれども、大ざっぱな数字じゃなくて、大体倍なんです。仮に四十九年に年収二百万としますと実効税率は一・七。四百万になったら、今度の税改正でも実効税率は三・一%。一・七から三・一。四十九年に年収三百万、実効税率は四・〇。さあ三百万の人が六百万になったらどうかというと、実効税率は五・九。それはそうなんです。この程度減税ではとても消せないんですよ。だから本当は、それもあり、これもあって、この程度減税では足りませんよという声が、野党を初めとしてほうはいとした声で起こっているんだけれども、財源問題はまた別に議論すればいいんです。  ただ、所得税の減税として考えると、四十九年の実効税率ぴたりそのままという議論をしているわけではないけれども、大ざっぱにまずそこのところに整理をして、その上に行政サービスの要望があったら御負担をまた求めてまいりましようと。そうなれば国民はわかると思うんです。何となく減税でありますといいながら実効税率はみんなびんびんはね上がっていく。そうすると問題は財源ということになりますね。  ただ、今の話をひっくり返して言いますと、今回の減税というのは減税だったんだろうか。名目賃金に自動的に税制が絡んで税額が決まるわけですね。取り過ぎちゃった、取り過ぎたものの是正なんであって、減税ではない。したがって、インデクセーションが毎年行われていたらこんなに入ってくるはずがない税金なんです。したがって、今回の減税というのは、減税見合い増税ということを考えることがいかにも筋が通らない。しかし歳入というのは色がついているわけじゃないですから、どうこう結びつけて減税見合いと言ったって、これはあながち間違いではないでしようけれども、今度の所得税減税の見合いとして、増税というのは、今の源泉所得税の構造からいって、自動的に入ってしまういわば取り過ぎ分、それの是正なんです。  私の質問は二つあるんです。したがって今回は結構なんですが、これをさらに来年、再来年、努力を続けながら、あのオイルショックのひずみを税制の面で救済なさいますか。かたがた、今回の所得税減税というのは、見合い増税を財源として考えるというのは筋が通らないんではないですか。二つなんです。
  191. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今、委員がおっしゃいましたように、四十九年、五十九年、大体賃金指数が倍ということでございますが、この間物価の方は六割ぐらいでございますから、今おっしゃいましたように名目で見る場合と二倍で見る場合、いろいろ議論の分かれてくるところでございます。ただ、トータルとして所得税の負担は上がっておりますから、いわゆる実効税率が上がっておるということは私は否定できないと思います。  ただ、その場合にも、先ほども申し上げましたけれども、五十二年対比で標準四人世帯の課税最低限のところで見ていただきますと、税引き後の手取り額でほぼ名目に見合うというふうな水準で今回の改正案をつくらせていただいておる。これが限られた財源の中での一つの私どものとり得る一番最良の選択であったというふうに考えておるわけでございます。  来年以降をどうするかということを、今の時点で私の方からまだ申し上げる段階にはないわけでございますけれども、先ほども申し上げましたように、数年に一度というのはやや悠長過ぎるという御批判もございましたけれども、いずれにいたしましても、所得税の名目所得に対して累進構造を持った負担を求めるという税の特性に注目しながら、しかも納税人員の九割以上は給与所得者である、その大部分の人が年末調整で税務が完結するという、そういった所得税の納税者の実態を十分考えながら、今後ともこの所得税制の問題について対処してまいりたいと考えております。
  192. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 今の議論、いわゆる第一次オイルショックのときを一つの基準として、栗林さんの議論というのはパーフェクト・インデクセーションという感じでございますね。パーフェクト・インデクセーションでいけばこうなるが、なお行政サービスに対する要求が強くなったからそうはいかなかったとか、これも国民に対する一つ理解を求めるための手法としては私はわかります。  ただ、今度いろいろ議論されておったのをかいま見ておりますと、あのときの改正から今日に至り、そしてとにかく現時点が、超物価安定という言葉が許されるかどうかは別として、やや世界の中では安定した物価上昇にあるというときに、にわかに年々のパーフェクト・インデクセーションという議論は念頭に置いて勉強しておかなきゃいかぬが、必ずしもとり得るものかどうか。だから、勉強はしなきゃならぬと思いますが、そういういろんな議論から数年に一遍、ア・フュー・イヤーズなのか、もう少し長いのか。その辺これから勉強してみなきゃいかぬところでございますが、そういう答申がなされたのではないかという感じで私も受けとめてはおります。どっちかといえば、超物価安定の場合には、パーフェクト・インデクセーションのような議論は比較的声が小さいかもしれません。だから、出していただいたことが、むしろわれわれの検討においても一つの刺激を与えていただいたことになるような、素直な印象を申し述べておきます。
  193. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 私はパーフェクト・インデクセーションをしろと言っているんじゃないんです。考え方として一遍そういった目で見直すことが必要でしょう。それで、この十年間に行政サービスは全く同じであった、変化ないということは言えないわけですから、当然負担増があっていいんだけど、その負担増はこれなんです、したがって国民の皆さんと、こう分けていかないとわからないでしようと。  例えばこの六年間で源泉所得税は二兆六千億から七兆六千億、約五兆ふえているんです。この間、五兆ふえているものは一体何か。それは補助金なんです。補助金というのはずっと何となく名目所得が上がってくる中でふえちゃったんです。これを国民から見るとわからない。したがって、私の言いたかったのは、今回の減税というのは、何もパーフェクト・インデクセーションをやれというんじゃないですよ。ただ何となく火事場泥棒的に取っちゃった税金みたいな気がするんで、それは返す。全部返しちゃうとこれはできないんだけど、これはこういう理由で使わしてもらいたい。こうやって議論してまいりますと、増税なき財政再建などというたわけたことは言わなくても済むんです。  今の税構造の中で所得税が占めている比率を見てくださいよ。本当は徴税が公正で行われるんだったら所得税は一番いいんです。ところが、公正さを担保するものがないから、そこまで期待してはいかぬというのが税調のたびたびの御意見でしょう。それを考えますと、どのみち見直しはせざるを得ないんではないんでしようか。  時間がなくなりましたので、あと細かい点一つだけ申し上げます。  最近話題の単身赴任なんですけれど、これも素朴な格好でお尋ねしたいんです。今の源泉所得税を考える場合には、大体頭の中にあるのはかまどは一つ。別にそう決めたわけじゃないけど、大体かまどは一つというのは、どこのうちでもそうでしたから、ある前提になっている。単身赴任というのはかまどが二つになる。これは一つの社会現象ですよね。本来一つのかまどを中心にして家庭がなきゃいかぬというんだけど、ある事情で別れちゃった。別れたものがレアケースだったらほっといてもいいんだけれども、だんだんこれがふえていく。そのときにかまどが二つになったんで当然掛かりが違う。しかも主たるかまどに帰ってこなきゃいけない、月に何遍か。  そうすると一般企業はどうするかというと、帰ってくる方は実費を手当で出すわけです。しかも別なかまどの方は掛かりがかかるだろうというんで単身赴任手当を出すわけです。ところが、源泉所得税の方は、それに対応できる格好になっていませんから、現実はどうかというと、よく御承知のとおり。行き帰りの交通費については所得と見なされる。単身赴任手当も所得と見なされる。とどのつまりは、大分もらったはずなのに実は増税になった分の穴埋めで消えてしまう。これについて一体どうしたらいいのか。これがそういう社会の変化に対して今の所得税そのものがこたえ得る構造になっているかどうか。この点については今後いかに御研究していただけるんでしようか。
  194. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 基本的には今社会の変化という善言葉の中に埋没する議論になるかな。本当はパートという問題自身も、あれは社会の変化の中で大きくクローズアップし、いろいろな知恵を絞って、現行の給与所得最低控除とそれを足したものというものが限界の中でやや定着したかの感がありますが、これに対しても確かに矛盾は出ておりますけれども、あの中でとにもかくにも定着させた、五十五年以来ですか、一つ制度だと思うんです。ですから、社会の変化の中で単身赴任というのが多くなっておる。  現状においてどう説明するかというと、これは雇用関係の中で本来消化されるべきものである、こういう見解をとっているわけですね。しかし、その変化が国会議論が出てくるように、要するに社会の変化の中に持つ国民全体のコモンセンスの中で議論が出てきたというのは、そういう認識がある程度定着してきた問題だと思うんです。だから税調等へもこの種の議論というのを送って専門的にも議論してもらわなきゃならぬ課題だ。だが、今日時点では、今の税制上の仕組みからいえば、社会変化の大層大きに広がりつつある社会変化の一つではあるが、まさに雇用関係の中で解決すべき課題だ。今の場合はそういう考え方になっておるわけですから、当然将来の問題としては検討しなきゃならぬ課題だという事実認識は私も持っております。
  195. 青木茂

    ○青木茂君 御質問申し上げます。  まず最初おわびしておかなければならないんですけれども、私が用意してまいりました質問事項は、既に前の先生方がほとんど触れられてしまって、特に竹田先生は私の流れのとおりやられましたから、開発途上政党、発展途上政党としてはもう申し上げるあれがないわけなんで、ちょっと別な角度から申し上げます。その意味において、非常に熱心にレクをしていただきました役所の方々、大変違ったことを言うような格好で失礼ですけれども、これは意地悪をしておるわけではなしに、事情がそういう事情でございますから、お許しをいただきたいと思うわけでございます。  ただ、流れだけはもう一回確認をさしていただきたいんですけれども、私ども給与生活者の立場から見ますと、実収入の対前年上昇率に比べて勤労所得税の上昇率がいかにも大きい。例えば昭和五十五年で見ますと、実収入七・三%に対して勤労所得税の伸びが一九・一%である。五十六年は五に対して一二・九。五十七年は七に対して一八・二。五十八年が三・二に対して八・二。二倍以上のスピードで勤労所得税の伸び率の方が大きい。こういう状況を背景にいたしまして、我々はサラリーマン減税ということをお願いをしておるわけでございます。そうすると、どうしても、今度の税制改正におきましては、サラリーマン固有の控除であるところの給与所得控除というものが強く見直されなければならないんじゃないかと思っておるわけでございます。  私、昨年の十一月二十四日の大蔵委員会におきまして、給与所得控除の内容というものを御質問申し上げましたときに、主税局長でございましたか、必要経費プラスアルファであるという、そういう水準で設定しているんだという御回答をいただきました。  そうすると問題は、このプラスアルファの部分でございますけれども、いわゆる担税力控除と申しますか、給与所得は本人が死亡してしまえばパアになるけれども、その他の事業所得は相続できるというような問題、あるいは利子の金利調整の問題、あるいは所得把握の調整の問題というようなものがプラスアルファの内容だというふうに考えてよろしゅうございますでしょうか。
  196. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 給与所得控除の性格につきましては、先ほどの竹田委員の御質問についてもお答え申し上げましたとおり、我が国の給与所得控除は、勤労に伴う必要経費の概算控除に、勤労所得の担税力を考慮いたしまして、勤労所得以外の所得との負担の調整を配慮している部分によって構成をされておる。ただ、必要経費の部分が幾らで、その他の担税力の減殺要因に着目した部分が幾らかということを画一的に申し上げるわけにはいかないわけでございます。  ただ、もう一つ申し上げなければならないことは、我が国の現在の給与所得控除の枠組みというものは、五段階の収入に応じた控除率の仕組みになっておりまして、これは、フランス等のようにあらゆる収入階層に一定の控除率が適用される概算控除の制度に比べますと、収入の低い部分の担税力により配意している、そちらの方に傾斜している控除体系であるということは言えると思います。
  197. 青木茂

    ○青木茂君 ただ、私どもとしてどうしても知りたいのは、給与所得控除の中でいわゆる必要経費概算控除、その部分がどれだけあるかということがわかりませんと、本来非常に理論的であるべき税法が、このスタートの段階で理論をぶち壊してしまう。つまり課税最低限を計算をいたしますとき に、必要経費であるならば、それは所得ではございません、収入の負の構成要素だ、あるいは所得の負の構成要素だというふうに考えていいわけなんですね。そうすると課税最低限が高いか低いかということを我々が見ようとした場合に、課税最低限の中に給与所得者に限って必要経費部分が算入されるということになりますと、課税最低限自身が余り意味を持たなくなってしまうんじゃないかという危惧がどうしても残るわけなんですね。その点はいかがでございましょうか。
  198. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 現在の給与所得控除の枠組みは、四十九年に設定されたものでございまして、それ以前は、御案内のとおり、定額の控除と定率の控除との組み合わせになっておりましたけれども、ある意味では、四十九年にそういう定率控除に純化されたということで、いろいろ給与所得控除を考える場合に非常に形がすっきりしてきたということは言えると思うわけでございます。  それから必要経費部分が幾らかというのは、これは毎度議論になるところでございますが、一つの目安として私が先ほど申し上げましたのは、昨年十一月、税制調査会で答申が行われましたときの土台になりました、五十七年の家計調査による一応の集計分析によりますと、収入階層によって多少のばらつきがございますけれども、平均して、収入に対して大体一〇%ぐらいの費目が摘出された。  ただ、これも繰り返し申し上げておりますように、給与所得者の必要経費は一〇%であるということを税制当局が考えておるという意味ではございませんけれども議論の目安としてそういうものがある。  そういたしますと、現在マクロ的に給与所得者の控除の割合は大体三割でございます。年収三百万ぐらいのところになりますと三五%、ちょうど五百万ぐらいのところで三〇%。これは上にいきますとずっと低減していくわけでございますけれども、一千万ぐらいのところでも二〇%ぐらいでございます。  その意味では、税制調査会の答申にもございますように、現在の我が国の給与所得の控除率の水準というのは比較的高いといっていいのではないか。諸外国で概算控除と実額控除と選択で認めておる制度なんかと比較いたしましても、かなり高い水準になるということは、これは否定できないということでございます。  それから、そういたしますとすれば、基礎的な人的控除と並べまして、給与所得控除を加えたところで、収入基準で課税最低限を議論するということは、それなりに税制の議論をする場合の客観的な基準として必ずしも不適当であるとは言えないのではないかというのが今私ども考え方でございます。
  199. 青木茂

    ○青木茂君 私が申し上げているのは、必要経費であるべきものが――必要経費というのは収入から引いて所得が出るわけですから、それが税金を取ってはいけない金額、これが生活費であるかどうかということは、また後はどの問題でございますけれども、それに入るのはおかしい。おかしいからこそ、先ほど竹田先生の御質問にもありましたように、事業所得についてはもう課税最低限なるものは消してしまっているわけですね。それは必要経費がどうなっているかようわからぬ。またそれを発表したところで事業所得者の課税最低限が低くなってしまいますね。これは必要経費の問題だろうと思うんです。だから、私は、必要経費部分が給与所得控除の中にあるとするならば、その分だけ引いたものが課税最低限でなきゃならないんだ。これは理論的にそうなるんじゃないかというふうに思うけれども、いかがでございましょうかね。
  200. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) それは必要経費部分が幾らかというのが計量的に設定しがたいということを先ほどから繰り返し申し上げておるわけでございますが、もう一つ今の給与所得控除は、そういう必要経費部分と担税力に着目して、担税力を減殺する要因を勘案して認められておるという所得控除でございますから、基礎的な非課税部分として構成されているということからすれば、課税最低限の要素の一つとして客観的な一つの物差しになるのであろうというふうに考えております。  ただ、その話と先ほど委員がおっしゃいましたように、事業所得者の課税最低限という全く仮定数字とを並べて議論することは、議論がいたずらに混乱を招くばかりでございますので、私どもは昨今その事業所得者のいわゆる課税最低限なるものをお示ししないということにしておるわけでございます。給与所得者の税負担議論をする場合に、給与所得者の課税最低限というのは一つの客観的なよりどころと申しますか、メルクマールになるということはやはり否定できないのではないかと考えるわけでございます。
  201. 青木茂

    ○青木茂君 必要経費部分が課税最低限の中に入ってまいりますと、一体課税最低限というものは何なのかという、いわゆる性格論ですね、性格論が問題になってくるんじゃないかと思うわけでございます。  もう一つは、同じように課税最低限の中に入ってまいっております社会保険料控除ですね、これなんかも、家計調査なんかによれば、非消費支出の一つになっておるし、俗っぽく言えば、第二の税金だとも言われておるわけですね。そういうものまで課税最低限の中に入れるということになると、ますますもって課税最低限は何を意味するものなのか、果たしてそういうことの中で国際比較ということが意味があるのかどうかということに大きな疑問を持つわけなんですけれども、いかがでしょうか。
  202. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 青木委員のおっしゃる議論の中で非常に示唆深い面がございますのは、従来ただ漫然と課税最低限というふうに言ってきたものを、むしろ給与所得者の収入のうち課税されない部分という厳密な定義と申しますか、そういう共通の了解に立ってこれから議論するという意味では、非常に意味がある御提案であろうかと思います。そういうことになりますと、社会保険料の部分というのは、そういう観点に立ちますと、これは全額所得控除の対象になるわけでございますから、しかも社会保険の場合はほぼ、一種の公租公課と申しますか、一定負担率でもって負担が確定しておりますから、むしろそういうものも要素に入れて議論した方がわかりやすいということでございます。  それからもう一つつけ加えさせていただきますと、私どもは給与所得者の厳密な意味での収入基準での課税最低限の国際比較なるものをお示ししておるわけでございますが、これはそれぞれの国におきまして、我が国の基礎的な人的控除に当たる部分、それから社会保険料控除に当たる部分、これは国によっては社会保険料掛金の段階では所得控除を認めない国もございますから、そういうものはカウントしてないわけでございます。それから概算控除として税制上認められている部分、それが我が国の給与所得控除に大体該当する部分、そのほか各種の控除、ドイツなどの場合はいろんな控除がございますので、そういうものも全部足し合わせまして一応収入基準で比較する。ただ、実額控除との選択を認めておる国もあるわけですから、そういう選択の国では、一義的に給与所得者の課税最低限というものを示すわけにはいかないわけですけれども、全般的に実額控除というのは非常に限定された制度でございますので、現在私どもがお示ししております各国の課税最低限、それによっていろいろ比較して議論をしていただくのには、ある程度たえ得る物差しであると私ども考えておるわけでございます。
  203. 青木茂

    ○青木茂君 そういたしますと、課税最低限というものには、何というんですか、インターナショナルというのか、国際的に通用する定義はないわけなんですね。  で、給与所得の中で課税しない部分が課税最低限ということになりますと、もうそれを決めるのには何の実は論理的根拠もなくなってしまいまして、非常に悪い言葉で言えば、適当にああなったり、こうなったりしてしまうもので、課税最低限なるものを持ってくること自体が私にはちょっと 無意味なような気がいたします。  ずばり、じゃ伺いますけれども、課税最低限と最低生活費は無関係ですか。
  204. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これも先ほど来御議論のあったところでございますけれども、給与所得者の収入のうち、課税されない部分という意味での課税最低限という約束事に立ってこの課税最低限という言葉を使わせていただきますが、この課税最低限が、いろいろこの水準をどう設定するかということには学説上の議論もございますけれども、最低生活費に食い込むということは好ましくないということはおおむね認められておるところであろうと思います。必ずしもそうではないという議論もあるわけでございます、少数の学者の意見として。従来からの通説あるいは税制調査会の過去の答申なり、我が国の所得税制の戦後の立法の経緯をたどりますときに、少なくとも最低生活費に食い込むということは好ましくないだろうということは言えるだろうと思うわけでございます。  さて、それでは課税最低隈の水準は最低生活費との関連でどこの部分に設定するのが好ましいかというのは、これは計量的には言えない。先ほども御紹介いたしましたように、五十二年の答申をまとめられました作業段階の議論の経過では、結局、最低生活費――これは理論的な意味で使わせていただきますが、それと、いわば標準的な生活費というものがあるとすれば、これはその国の財政事情等にもよるわけでございますけれども、恐らくその最低生活費と標準生活費の間のどこかに設定されるものだろう。それはそのときどきの財政事情等によって、具体的な租税政策で決めていくということになるのではないかということでございます。
  205. 青木茂

    ○青木茂君 だんだん焦点ははっきりしてきたんですけれども、課税最低限が最低生活費というもので一応縛られるというふうに考える。これはもう日本の学者も外国の学者もほぼ一致した見解でございますし、また大蔵省出身の方がお書きになった本を見ましても、大体そういうことが書いてあるわけですから、統一的な物の考え方だと見ていいと思うわけでなんです。  そうなりますと、国税当局といたしましては、理論的に生活経済学という学問があるんだから、理論的に最低生活費の積み上げ計算をおやりになって、それと課税最低限を比較なさるという作業はこれからどうしても必要なんじゃないかと思うわけでございます。現在の課税最低限というものが果たして最低生活の枠内に入っているのかどうかというようなことは、これは学問的に詰めませんと、最も理論的であるべき税法がそこの段階においてあいまいになってしまうという批判は避けられないと思うわけでございますけれども、これからで結構でございますけれども、最低生活費の理論的な計算というものをやってくださる御意思があるかないかということをちょっとお尋ねしたいんです。
  206. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) その点につきましては、御参考になるかどうか存じませんが、昨年十一月の税制調査会の答申を取りまとめていただく前提といたしまして、延べ約一年間ぐらいの時間をかけまして、経済学者、財政学者の学者だけの専門の部会と申しますか、小委員会、作業部会をつくっていただきまして、実は総理府の家計調査を材料にいたしまして計量的、統計的な手法でいろいろな分析をしていただきました。現在、一定の仮説ではございますが、仮説に立って一応の結論は出ております。非常に興味の深い作業でございますけれども、私どもは、これを今後学問的にも、実際の租税政策の展開をする上にでも、十分にたえ得るような御研究をさらに続けていただくということを期待しておるわけでございますが、ただ、そういうまだ研究途上のものでございますので、結果は出ておりますけれども、学者諸先生方の合意によってこれは世の中に公表されていないわけでございます。  ただ、今回の答申の背景になっております独身世帯と多人数世帯の間の生活のゆとり感の問題とか、あるいはライフサイクルに応じてどのぐらいの年代の方の生活のゆとり感が大きいのか小さいのかといったような一応の分析は、実はその作業過程でやっていただいたものでございます。そういうきちんとしたものが、しかも政策展開の基礎になるようなきちんとしたようなものが早急にできるかどうか。私どもも、これは専門的な分野の話でもございますので、学者の皆様方の協力も得なければならない問題でございますから、きょうの時点でいつの時点までにそういうことをきちっといたしますというふうなお答えは、なかなかしにくいわけでございますけれども、御指摘の点については私ども常に関心を持っておる問題であるということだけは申し添えてさせていただきます。
  207. 青木茂

    ○青木茂君 それは確かに中長期の問題で結構でございますから、理論的に詰めたもので課税最低限なるものを出していただきたいと思うわけでございます。  なぜ私が課税最低限というものにこだわるかと申しますと、課税最低限というものを国際比較をすることによって、日本は結構高いのだ、日本の税金は安いのだというところへ問題が持ってこられると、つまりその一種のメルクマールにされるというところに、私が課税最低限なるものにこだわる基本的な理由があるわけでございます。  そこで、そういたしますと、今の段階ではこの課税最低限を国際的に比較するということがどうも余り意味がないような気がいたしますけれども、これはもう日本全体が、外国はどうなっているというのが大変好きなものだから仕方がないのですけれども、こういう計算はできないでございましょうか。  例えば収入五百万といたしまして、四人家族について、為替相場というものを使って邦貨換算をやることというのは問題ございますけれども、それはおくといたしまして、それぞれの国の税法に合わせて税引き後の所得を出します。それに対して、それを物価水準で調整してみるわけですよ。つまり税金が高いか安いかの問題は、税金の大きさそのものより、税金一定の条件でもって払った後の所得でどれくらいの生活ができるかということの方が、むしろ税金の高い安いを決める判断材料になると思うわけなんですね。これを私は生活余力と言っておるわけなんですけれども、むしろ税引き後の所得の生活内容でもって税金の多い少ないを判断するというようなことが、乱暴な議論がどうかということについて、私どもはやっておるわけなんですけれども、御見解を伺いたいと思うわけです。
  208. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今、青木委員がおっしゃったような議論を私ども部内でも時々議論をすることがございます。まず、そういうモデル的な家族構成の給与所得者をとりまして、税引き後の手取り額と申しますか、可処分所得と言ってもいいと思いますが、一定の約束事に立てば一応のモデル計算はできると思いますが、問題はそこからでございまして、それは結局各国での生活というのは、各国でバスケットに何が入ってくるかというのがいろいろ違ってくるわけでございまして、東京の生活費が高いとかベルリンの生活費が安いとかという話は、いろいろ言われておるわけですけれども、結局国際的な生活費、バスケットを一体どういうふうに決めるのかというのが基本的な問題であろうかと思います。  したがいまして、今おっしゃったような物価水準というのも、物価水準の中にどういうものを持ってくるのかということに関連する非常に複雑な議論のあるところでございます。非常に興味のある問題でございますけれども、我々税制当局としてそういうものを示して比較するというところまでの作業仮説と申しますか、そういう理論的な枠組みはまだないというのが率直な実情でございます。
  209. 青木茂

    ○青木茂君 私がかなり乱暴な仮説を置きまして計算をした結果があるわけなんですけれども、単純に計算いたしますと、日本の税金の絶対額は一番低い。しかしこれに物価調整をやりますと、逆 に一番高くなるという結果というものが出ておりますから、先ほど申し上げましたように、急に話の内容を変えちゃったものですから、それを本当はお示ししておくのが筋だと思いますけれども、そういう物の考え方というものも私はあるんじゃないかと思うわけでございます。  それから、そうしますと、今いみじくも局長がおっしゃいましたように、税の問題ほど非常にその国の風俗、習慣、歴史、それを反映するものはないわけなんですね。バスケットに何を入れるかが違うということでもおわかりになりますように、日本の税法は日本的なものなんです。そういう意味で、私は、税金の世界においては外国と比べてどうだこうだとか、ちょっと言い過ぎる点があるんじゃないか。国際比較というものがどれだけの意味を税の世界において持つかということに多大の疑問があるわけなんです。だから、それよりも、むしろこれから私ども税金を論じるときは、国際的に比較するよりも、日本の過去ですね、日本の過去と比較してどうだ、こうだという議論の方がより説得性があるんではないか。  時間があれですから、申し上げますけれども、ちょうど明治の暮れから大正の初めにかけまして、日露戦争で国債というのか外債をしょいまして、それから経済自体がインフレ基調で消費税の問題も出ておったようです。現在と非常に似た状況がある。似た状況がある中で、その当時の税法審査会ですか、今の税調ですね、それがある答申を出していますね。勤労所得に対しては三〇%引いてから課税しろ。それから事業所得に対しては一五%引いてから課税しろ。不労所得に対しては全然引く必要ないからオール課税しちまえ。こういうような答申が既に七十年前に出ておる。そういう物の考え方、我々の先輩がやった物の考え方を我々は今ここで考え直す方が、国際比較云々よりはるかに実りが多いんじゃないかという気がするわけなんですけれども、この点いかがでしょうか。
  210. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 税に限らず国際比較をやりたがります。私もその一人だと思います。それは仮に一人当たり所得で見てみても、この四分の一世紀の間、先進国の仲間入りをして、しかもトップのランクに出ているというときに比較対象する。ある意味においては、追いつけ、追い越せもあったでございましょう。その目標は西欧先進国であったんだろうと、そういうふうに思います。税の問題もOECD初めとしていろんな国際比較がございます。  今、主税局長から申しましたように、されば中に何を入れるか。そうすると、例えば電気洗濯機を入れれば、日本の方が安くてしかも修繕費もかからぬ。口に入れるものを主として入れれば日本の生活費が高くなってくる。為替レートまでは僕はいいと思うんですよ。  そういうことからして、それじゃもう一つユニークな発想ですが、過去にさかのぼった我が国の税制というものも、これはもちろん検討する必要はございます。が、そもそも明治二十三年の七月一日に選挙というものが始まりましてから九十五年になります。そのときを見ますと、地租十五円というものを基準に置いておりますから、東京の方が――東京は当時百七十万ぐらいです。私の島根県が六十五万人、今一千万と七十九万になっていますけれども、有権者は私の県の方が多かったんですね。その次にこの所得税というものが入ってきた段階で東京の方が多くなってくる。だから、日本の過去の税制というのは、まあ九十五年前の話ですから少し古きに過ぎるかもしれませんが、変化が激し過ぎるんですね。だから、日本税制史を研究してみて、それはそのときの支配者が決めたことでございましょう。が、それと現在我々が比較する国際的なものとの間にはかなり乖離がある。しかしユニークな勉強としては私なんかは好きですから、博士の手伝いをさせていただきます。
  211. 青木茂

    ○青木茂君 あと一言。  私はどうも、税において国際比較をやる、つまり税の模範を外国に求めるということが非常に怖いなあと思うのは、例えば間接税の問題にいたしましても、ヨーロッパ諸国のように、歴史的、伝統的に間接税中心の国と、シャウプ勧告以来の日本のように直接税中心の国に間接税を持ち込もうという場合と、歴史的、伝統的に間接税中心の国とでは物の考え方が違うんだ。その物の考え方が違うのもあえておいて、ヨーロッパで間接税中心だからもう少し上げてもいいじゃないかという議論までいくことを心配するわけなんですよね。だから、私は税の世界においては余り国際比較というものにこだわらない方がいいというのが持論だと、それだけ申し上げて終わります。
  212. 野末陳平

    ○野末陳平君 僕は、政府税調とそれから自民党の税調の両答申を比較して、相違点ですね、そういうのを中心に質問をしていこうかと思うのですけれども、別にそんなに深刻にやるわけじゃありませんで、軽いテーマでいきたいと思います。  まず、わかりいいところ、親から子供への住宅資金の五百万円までの贈与税の軽減というのが今回出てきまして、これは建設省から前もきっと出てたんだろうと思うんですけれども、今回はちゃんとここに載ってきましたが、少し内容について聞きます。  この場合の親というのは戸籍上どういうふうな立場にある親を言うのか、つまり実の父、義理の父、それから養父ですか、いろんなのがあるんでしょうが、その辺のところをはっきり書いてないんでお願いします。
  213. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 今回の贈与税の税額の計算の特例に該当いたします要件といたしまして、父母または祖父母から住宅資金の贈与を受けた者ということでございますが、この場合の父母または祖父母は、法律上の父母または祖父母に限定をいたしておりまして、したがいまして、奥さんのお父さんとか、おばあさんとかいう、いわゆる義理の父母または祖父母から贈与を受けてもこの特例の対象にならないということでございます。
  214. 野末陳平

    ○野末陳平君 これはこういうニーズのある家族だったら非常に便利に使うのではないかなとは思うんです。また実際にはしかしどの程度の効果が上がるかのところが、ちよっと想像できませんけれども、今の説明によりますと、そうすると、それぞれ若い夫婦がいて、それぞれの親からもし贈与を受けられれば、大体一千万円ぐらいの頭金がこの軽減の対象になると、こういうことでいいわけですね。
  215. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) おっしゃるとおりでございまして、それの基本的な考えというのは、今回はあくまで贈与税の税額の計算の特例でございますが、贈与税そのものが相続税の補完税でございますので、相続税の基本的な考え方というのは、民法上、本来の財産の承継者たる相続人に限って認めるという考え方を貫いておるわけでございます。
  216. 野末陳平

    ○野末陳平君 それからこの贈与税の軽減を受け、なお今度はそれを頭金にして住宅ローンを設定する、こういうのが普通だろうと思うんですが、その場合の住宅ローン減税については今までどおり何の変化もなく受けられる、こういうことになるわけですか。
  217. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 本来の今回の政策的意図は、まさに今委員がおっしゃったとおりでございまして、住宅ローンでうちを建てるにしたって頭金が要る、その頭金を親御さんからもらった場合に、そのもらった頭金で住宅ローンを組んで住宅を取得するというふうに連動させていくという考え方でございますので、贈与税の税額の特例の適用を受け、同時に所得税法上の住宅取得控除は当然要件に該当すれば受けられるということでございます。
  218. 野末陳平

    ○野末陳平君 これは考え方としては当然だと思いますけれども、片や自己資金でもって頑張ったという人と比べると、片っ方が何かダブルの特典を受けたようにも見えますが、まあそれはさほど重大な問題でないと思うんです。  問題の方は、そうしながら住宅ローンの方の返済をまた親に依存するという形もあるわけですか ら、そうすると年間幾らぐらいになるかは知りませんけれども、その場合はどうなるんでしようか。これは申告をして後に発生する問題ですね。
  219. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) もちろん住宅ローンの返済というものは起こるわけでございます。頭金としてもらったものはもらったものとして贈与税の特例が適用されるわけでございますが、その場合、この返済の場合に、毎年毎年またそれを親御さんから贈与を受けるとすれば、これは贈与税本来の課税を受けるということになります。
  220. 野末陳平

    ○野末陳平君 いや、そうなんですが、しかしながら、この贈与税の軽減を受けるためには恐らく翌年に確定申告をするわけでしょうね。そのときに確認されるわけですが、しかしその返済というのはその時点ではまだ申告をする義務がないだろうと思うんですね。つまり、あいまいなままでいけるわけじゃないんですね。その辺が非常にわからないんですよね。事務処理としてきちっとできるのかどうか。
  221. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 返済を自己資金でやる場合、これは全然問題がないわけですね。その返済を、また毎年毎年の返済の部分を改めてまたその部分も親御さんから贈与を受けると、それは……
  222. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうです。援助というか贈与というか、全額かどうかはわかりませんがね。
  223. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 部分にしても全額にしても、それは受けた年の贈与税の課税になるわけでございますね。申告期限は翌年の三月十五日ということになります。
  224. 野末陳平

    ○野末陳平君 ですから、そうなんですが、この軽減は申告によって認めてもらうからいいんですが、その後の返済は、毎年毎年そういう申告をする習慣がありませんから、そこでもって結局お金がある親子においてはその方の援助も受けながらずっといくんじゃないか。そこでまたダブルでやられても税務署としては何の捕捉もできないから、それがあり得る。あり得るというよりも、当然それをねらうと思うんですよ、お金のある人は。そこがちょっとこの問題点だと思って気にしているんですが。
  225. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) その捕捉の問題というのは、この場合に限らず贈与税一般について問題があるわけでございます。ただ、今回の仕組みは、五分五乗の考え方に立ちまして、五百万円の部分につきまして、三百万円の控除で残りの部分に五分五乗するわけでございますが、贈与を受けた年以後、新たな贈与を受けます場合は、その五分の一部分は既に贈与があったものとして、その上に上積みで課税をされるわけでございますので、そこは回避の起こらないようにはしてあるわけでございます。ただ捕捉の問題は、これはまた別の問題でございます。
  226. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうするとね、そのとおりだけども、捕捉は税務署としてはできなくて、むしろ申告をしてもらった結果、返済にかかわる部分の贈与がわかるわけだからね。そういう習慣のない人たち、あるいはそういうことをする必要があると思っていない人が多いから、その場合に、金を持っている人の方がどんどん有利に使っていけるんじゃないかということを考えているから、そこでこれはむしろ不公平な面に働いちゃうんじゃないかな。そこが心配なんで、その辺のことは考えてないんですかと、これが聞きたいんですよ。
  227. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) その捕捉が漏れるということになりますと、この問題に限らず、申告納税全般にそういう問題が起こるわけでございますが、ただ、これは住宅取得控除の適用を受けるという段階では当然確定申告をされるわけでございますし、普通、新たな住宅を取得した場合は登記簿上で、課税当局としては、不動産の移転に伴うものについては資料の収集等の面においてかなりきちんとした捕捉をしておりますから、次年度以降の資金の動き等につきまして、課税当局として関心を持って見るというふうなことで対応していくということでございまして、この制度に特有の、そういう御懸念の点に対する制度的担保というものは特にないわけでございます。ただ、先ほど申しましたように、次年度以降の仮に贈与があった場合に、これが不当な税の軽減にならないための措置は講じてあるわけでございます。
  228. 野末陳平

    ○野末陳平君 これ自体まあまあと思いますけどもね。うるさく言えば、これも一種の新たなる不公平だと思うけども、しかし政策的にこれが効果を発揮するのであればやむを得ないと思うんですよ。ただ、今僕が言ったような面は、要するにお金のある人はうまくやれば結構できそうだと思うから、そういうのが当たり前になっちゃうと嫌だなと思っているだけなんですが、その辺はひとつ現場の問題になるでしょうから、注意しておいた方がいいんじゃないかという気がしますよ。  それで、この措置によりまして、どうなんでしょうか、どのくらいの人がこれを実行しそうなのか。そして当然、これによる着工件数の増加なんというのも考えておかなきゃいけない。政策効果はわかりませんけれども、予測としてはどんなものですか。
  229. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) これはどれぐらいの政策効果が期待できるかというのは、なかなか算定は難しいわけでございますけれども関係省等ともいろいろ突き合わせまして、この点につきまして減収額を五十億円見込みで計上いたしておりますが、その基礎として五十九年度のこれに伴います見込み件数、約九万人弱を見込んでおります。
  230. 野末陳平

    ○野末陳平君 これは二年限りですから、とりあえずやってみてまた考える方がいいんだろうと思いますね。  ただ、一つ気になるのは、異なる世代間のこういう財産に関する優遇、軽減というか、これは特例だとして、それだったら同世代間の、極端に言えば、夫婦間のこういう問題についても当然考えなきゃいけないわけで、現にあるんで、居住用財産の一千万円の例の特例はありますけれども、もう六年もたっておりますから、僕は親子間のこれをやると同時に、夫婦間の例の配偶者の特例も、一千万円だったのを、ことしあたり二千万円にしてもよかったと、こう思っているんですが、これはどうですか。そういう考えは全然なかったですか。
  231. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 同世代間の問題でございますが、五十年に一千万円という配偶者控除の現行の水準が設定されたわけでございます。このときかなり大幅に引き上げられたわけでございますが、この水準につきましては、絶えず見直していくということは必要でございますけれども、現在の実際の課税といいますか、課税面での実績で申し上げますと、これは五十七年の実績で一件当たりの平均が大体七百万円でございます。したがいまして、いつまでもこれを放置するということが適当であるとは考えておりませんけれども、少なくとも五十九年度はまだ現行の水準で手直しをしなかったということでございます。
  232. 野末陳平

    ○野末陳平君 これはまだPRが行き届いてないというか、一般に知られていても実際には面倒くさくてやらないのか、そこら辺がよくわかりませんけど、いずれにせよ、今の七百万であろうがなかろうが、もう十年でしたよね、結局。それだったら少し拡大してもいいんじゃないかと、そういうふうに思ったんです。    〔委員長退席、理事岩崎純三君着席〕 ですから、親子間のがあれば、夫婦間のも似たようなものですから、これはそろそろ二千万に引き上げるという検討をしてもよかろうと思うところで、ひとつ大臣に。  後どうでしようかね。それほどこれによって税収上に実害があるとも思えないので、それほどのものじゃない、むしろ精神的に非常に喜ばすことになるから、まあこれが老後の何か配慮というほどオーバーには考えないけれども、夫婦間で定年後の人生が長い場合に、こういう措置があるとないとでは計画の立て方も大分変わってくると思いますから、この辺でそろそろ二千万という案はどうかなと思っています。
  233. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ちょっと話長くなりますが、申しわけありません。実は私も大分古くなりましたけれども建設大臣をしておって、そのこ ろから住宅問題というのに税の話があるようになりました。五十一年でございます。それまでは税という面からは余り議論されなかったわけであります。公営住宅は少ないとか多いとかという議論。  ただ私も今度今御指摘なすった点で悩みましたのは、元来、相続税というものは、非常に下世話な言い方すれば、我が国は子孫のために美田を買わずという感じの相続税制になっておる。それをまた生前において贈与して、しかもその中で五分五乗というものを取り入れるというのは、相続税本来のあり方からしておかしいではないかという、大蔵大臣というよりも、個人としてそういう意見を出したわけですね、部内で議論したときに。しかしまた建設大臣をしておる当時を思い出して、最初はとにかく何が何でも補助金のある家を建てよう。それから今度は融資制度にかわって、それで去年でございましたか、御協力いただいてあの二世代ローンというのをつくらしてもらって、それから住宅金融公庫なんかでは建て増しのときの対象にしてもらう。それで、選挙のときに僕なりに考えまして、建て増しの分は、「じいちゃん、ばあちゃんいらっしゃい、おうちが大きくなったから」、それから二世代の分は、「おまえも大人になったから、一緒におうちを建てようや」、こうやってみましたけど余り票にはならなかったと思います。    〔理事岩崎純三君退席、委員長着席〕 が、それで今度の分は、そういう感覚の住宅政策、景気をも含めた、それでやっと僕自身の心の中が割り切れたような本当は制度でございました。  したがって、今の野末さんの御提案というのは、常識的には私もわかる話ですが、世代間と同世代間の者との突っかえは僕に若干まだございます。しかし、御提言でございますから、当然のこととして検討の対象に置くべきものだとは思います。
  234. 野末陳平

    ○野末陳平君 それじゃ、次に行きましょう。  せんだって、ちょっとお答えをいただき損なっちゃった問題で、例の税務職員が非常に足りないんだけれども幾らお願いしても行革の手前もあり、あれやこれやで大臣が消極的で、ましてや総理が全く消極的だから、この人員増加というのはすぐには期待できない。そこで、機械化による人手不足のカバーがどの程度いけるのか、その辺のことなんですがね。  まず、例のグリーンカード絡みのコンピューターセンターを今後どういうふうに運営していくのかという基本方針。もう既に稼働を始めているのかどうか。その辺のことの説明国税庁の方からしてもらいたいんです。
  235. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) 国税庁といたしましては、コンピューター化を推進いたしておりまして、五十八年でございますが、全体で五百十一署のうちで三百三十二署がオンライン化しているという状態でございます。五十九年度予算でございますと、四百十二署が措置されているという状況でございます。
  236. 野末陳平

    ○野末陳平君 そのオンライン化して、どういう部分をコンピューターに任せることによって人手不足をカバーできるんですか。
  237. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) コンピューター化の具体的な事務でございますけれども、末端でございます税務署の内部事務の省力化と申しますか、合理化等のために、まず所得税、法人税などの確定申告のプリントだとか予定納税通知書の作成、それから出ました税額の検算とか、また課税事績の内容の集計、そういったのは自動的にコンピューターでやるという状況でございます。そのほか源泉所得税の事務につきましても、納付催告書の作成、それから報告書の作成等でございます。また徴収の面でございますけれども、徴収管理につきましては、納付書、督促状の作成とか、未納税額の数字的な管理というようなものもコンピューターでやっております。このためには大体、納税者ごとの名前だとか申告、それから課税事績、それから納付すべき税額とか納付された金額、こういうものがインプットされるというような状況でございます。  さらに、このコンピューターは、省力化だけでなしに、これらの基礎データを使いましていろいろな検索とか、課税の統計の作成とか、そういうものをやっているわけでございます。  こういう事務でどのくらい事務が、人員が省力化されるかという点でございますけれども、いろいろな試算をしてみているわけでございまして、現在の国税庁のコンピューターシステムは大体二つの系統になっておりまして、いわゆる都市局はバッチシステムといって、これはデータの入力を外部でやらせているようなシステムになっております。これは都市局が先行的にやりまして、新しいシステムはオンラインシステムでございますが、これは各税務署から直接にデータを送り込むシステムでございますけれども、このバッチシステムによりまして――これは導入いたしましたのは四十一年でございますけれども、順次拡大してきましたところ、いろいろの前提を置きまして試算をいたしておりますけれども、それによりますと、大体二千名というような試算もあるわけでございまして、二千名の省力化ができたというふうに考えられるわけでございます。  それからまた、オンラインシステムはこれから拡大していくわけでございますけれども、これによりますと、これもいろいろな前提を置いた全くの試算でございますけれども、六十二年までに九百名ぐらいの省力化になるんではなかろうかなというふうに考えております。  ただ、これはいずれも内部事務の省力化でございまして、現在内部事務はますます増大してきまして、その拡大のテンポがこの省力化を上回るような状態で、大体これで内部事務を何とかやりくりできるというのが現状でございます。  調査事務その他につきましては、そこまでの省力化はとても考えられないという状況でございます。
  238. 野末陳平

    ○野末陳平君 詳しいことはわかりませんから、いずれにしても、有効にコンピューターを使って人員不足をカバーしてもらいたいとは思うんですけれども、もちろんそれで機械がすべてやれるわけじゃないから、本当は人員をふやす方向を行革にこだわらずとらないと、恐らく今に行革、行革で税務署員をふやさないことがかえって間違いだというような世論も出てくるかもしれないと思ったりしているんですよ。必要なものはふやせ、要らないものを削るのが行政改革だ、こういうのが正論だと思いますが、いずれにせよ、機械化の方は今後さらに進めていただきたいと思います。  そして、たまたまその機械化に関係が出てくるかどうか、そこが微妙なんですが、せんだっての本会議でしたか、竹田先生が医療費控除の年末調整のことでちょっと触れましたけれども、あれも別に医療費控除の還付請求がふえたから人手がかかってしようがないというんじゃないんです。なぜ人手がかかるかというと件数がふえたからじゃないんですね。解釈をめぐって、要するに何が医療費がというその解釈の違いでもって適用基準が非常にあいまいな部分があり過ぎる。つまり税務署員の個人的な判断にゆだねられる部分が多過ぎるんですよね。そこがむだな時間を食っちゃうことなんですね。  そこで、政府税調答申では、足切り限度額を引き上げようというようなことがありましたね。ですけれども、確かに私もそれも必要だとは思ってはいるんですが、しかしそれ以前に大事なことは、医療費というものはこういうものだというのを、素人、つまり納税者にわかるようにきっちりと決めることの方が先だと思うんですね。  例えば現場で必ずもめているというか、おかしい、こうなるんだけれども、病院に行くのにタクシーに乗って領収書があれば認めるんですね。ところが、自家用車に乗って行けばガソリン代じゃ認めない。これは確かに認めにくいけれどもね。そうなると、タクシーの領収書を集めて行ったんだと言ったやつの勝ちだからね。一々それが病院に行ったかどうかという証拠までなくて、領収書があるかないかが問題になってしまっているんですね。あるいは医者だって領収書をくれない医者もいる。そうすると、気が弱くて領収書をもらえ なくて、家計簿を持っていった場合、家計簿を認めている係と全然認めない係とはっきりあるわけだね。年によって違う、税務署によって違っている。これでもって医療費控除というのを法律で決めて還付請求だといっても、結局こういうことでむだな時間を食っているとしか思えないんですよ。  ですから、僕は医療費控除はもちろんいいんですが、足切り限度額を引き上げたところで何にもプラスない。それよりも、タクシー代なんかもうだめならだめでいいと思うんですね。はっきり医療費にふさわしい中身を決めて、それが余り個人の主観でどっちにでもなる、マルかバツかになるというような、こういうあいまいな決め方がまずい。  薬代だってそうだからね。薬局の領収書が全部いいとは、もちろんそんなことは通用するはずないけれども、薬によっていいか悪いかと素人には判断できない。となると、これは絶対領収書が必要だ。これも条件です。そうなると、お医者さんに義務づけをするのかどうかという問題にまで発展するでしょうけれども、これも真剣に検討しなきゃだめだと思いますね。  それから医療費の枠というものをきっちりと決めて、ここまでというふうに、素人でも玄人でもそんなに解釈の相違がないというところまでやれるかどうか、やらなきゃだめだと思いますね。それができれば年末調整もそんなに難しくなかろう。もし還付請求のあの行列がなくなれば、これもまだお互いに納税者の方だって非常に便利だと思いますわ。  そこで提案ですけれども、主税局にお願いするのは、医療費控除といって、交通費からあれやこれや、付き添い、差額ベッドとか、いろんなことを言いますけれども、しかし適用基準というのが解釈の違いによってまるで違ってしまうんです。この部分が広過ぎる。これがここ五、六年いろいろな現場で聞いたり見たりして感じたことなんですね。だから、その辺をきっちり詰めて、そして次の段階は領収書の発行の義務づけか、あるいはそれを年末調整でやってもらえるのかどうかというその検討を本格的にすることも、今後の納税者に対するサービスと同時に、還付請求を生かすための大事な課題だと思うんですよ。それについてのお考えと今後の検討方針を聞いて、終わりにしましょう。
  239. 渡辺幸則

    政府委員(渡辺幸則君) 本来は、主税局からお答えをいただくべきものでございますが、執行に関連をいたしますので、一言だけ私どもの方から申し上げます。  問題は二つあろうかと思うわけでございます。一つは、現在の法律なり政令に医療費の範囲ということをきっちり書くということでございますが、これは私ども考えでは書いていただければ大変ありがたいと思うわけでございますが、いかように書かれましても、執行上どうしても疑義を生じてくる。ただいま御指摘になりましたタクシーと自家用車の件でございますが、これは法律には通院に関する人的役務の提供と書いてあるわけでございます。この人的役務というのは、大体よそからタクシーやなんかをお使いになった場合を見ておる。しかし、確かに自家用車でございますれば、これは人的役務でございますが、御自分で御自分に人的役務を提供しておる。そこのところを書こうと思いますと、これは制度として非常に複雑になろうかと思うわけでございます。私どもは執行の立場でございますから、制度について何か申し上げる立場にございませんが、基本的には事実認定の問題ではないかと思っておるわけでございます。  そこで、私ども国税庁といたしましては、税務署員に、なるべく医療費につきましては弾力的に、それで親切に、通常病気に直接関連しますような費用は見るようにと言っているわけでございますが、そうしますと今委員も御指摘のように、人によってあるいは署によって多少のバリエーションが出てくる。これはやむを得ないわけでございます。そういう点に関連いたしまして、またこの医療費の控除を年末調整でやるということはなかなか難しいという問題になるわけでございまして、いわば弾力性がこれはあだになっている面があるわけでございます。かといって非常に厳しい認定をいたしますと、これは国民の皆様の常識にもなかなか沿わない。その辺が大変苦心をいたしているわけでございます。  ただ、一点だけ委員よく御承知の点でございますが、この足切り限度を上げますれば、その上げること自体の当否は別にいたしまして、私ども執行の負担は減るわけでございますし、またその減った負担というものをさらに納税者のサービスに向けるということも可能になるという面もあるという点は御理解をいただきたいと存じます。
  240. 梅澤節男

    政府委員梅澤節男君) 医療費の問題、ただいま野末委員が御指摘になりました点、かねがね議論のあるところでございます。例えばお医者さんの領収書のような制度というふうなことになりますと、これは税制の枠外のかなり大きな問題でございます。  それから医療費の内容を厳密にしていくということも、一つの検討課題とは思いますけれども、それも国民の大方の御理解をどの程度得られるかというふうな問題にもかかわりがございますし、法律としてどれだけ書き分けていけるかというような問題もございます。  いずれにいたしましても、足切り限度の引き上げの問題を含めまして、この医療費控除の今後のあり方については、引き続き私どもとしても真剣に検討させていただきたいと思います。  それからこの機会にお断わり申し上げなければなりませんが、先ほど住宅資金の贈与税の特例につきまして、お尋ねの対象人員約九万人弱と私申し上げましたけれども、これは基礎数字でございまして、九万人のうち今回の特例に該当する見込みといたしましては、約二万五千人と見込んでおります。訂正させていただきます。
  241. 伊江朝雄

    委員長伊江朝雄君) 六法案に対する質疑は本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後九時二十五分散会      ―――――・―――――