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1984-04-12 第101回国会 参議院 商工委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十二日(木曜日)    午前十時二分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月七日     辞任         補欠選任      浜本 万三君     対馬 孝且君  四月十一日     辞任         補欠選任      市川 正一君     橋本  敦君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         斎藤栄三郎君     理 事                 降矢 敬義君                 森山 眞弓君                 高杉 廸忠君     委 員                 石井 一二君                 岩本 政光君                 亀井 久興君                 佐藤栄佐久君                 杉元 恒雄君                 鈴木 省吾君                 松尾 官平君                 松岡満寿男君                 山本 富雄君                 対馬 孝且君                 福間 知之君                 田代富士男君                 伏見 康治君                 橋本  敦君                 井上  計君                 木本平八郎君    国務大臣        通商産業大臣  小此木彦三郎君    政府委員        通商産業政務次        官        大木  浩君        通商産業大臣官        房長       福川 伸次君        通商産業大臣官        房審議官     棚橋 祐治君        通商産業大臣官        房審議官     前田 典彦君        通商産業省通商        政策局長     柴田 益男君        通商産業省貿易        局長       杉山  弘君        通商産業省機械        情報産業局長   志賀  学君        通商産業省生活        産業局長     黒田  真君        資源エネルギー        庁長官      豊島  格君    事務局側        常任委員会専門        員        野村 静二君    説明員        外務省中近東ア        フリカ局審議官  英  正道君        文部省学術国際        局ユネスコ国際        部国際教育文化        課長       草場 宗春君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○輸出保険法及び輸出保険特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出衆議院送付) ○機械類信用保険法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する  法律案内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨十一日、市川正一君が委員辞任され、その補欠として橋本敦君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 輸出保険法及び輸出保険特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 福間知之

    福間知之君 本法案の一部改正が提出された背景につきましては、これからいろんな角度で質疑をしたいと思うわけでございますが、この種の法案改正がやはり強く世界的な経済動向変化にかかわっていることは言うまでもないところと思います。したがって、まず、昨今の我が国をめぐる海外経済状況についてお伺いをしたいと思うわけでございます。  先週でございましたか、河本企画庁長官とも、特にアメリカ経済状況、あるいはまた先進国、そしてまた開発途上国等経済の現状と見通しについて議論をしたところでございますけれども小此木通産大臣もそのときにいろいろお聞きをいただいておったと思うんですが、通産当局として当面の特に先進国経済状況についてどういう見通しを持っておられるか、お伺いをしたいと思います。
  5. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 一九八〇年以降、世界経済は連続して大変な停滞に見舞われたわけでございますが、現在は緩やかなテンポではございますけれども回復基調にあるということは数字が示しているところでございます。この背景といたしましては、八二年以降にインフレが鎮静化いたしましたし、金利もやや低下したということもございますが、八三年のアメリカ経済回復の動きあるいは石油価格低下等、そういう情勢変化があると思うのでございます。  今後につきましては、世界経済先進国中心に当面現在の回復基調というものを持続していくと見ておりますものの、やはり高水準実質金利、あるいは保護貿易主義的な傾向が非常に高まってきています。そういう意味では多少の懸念材料があると認識いたしております。
  6. 福間知之

    福間知之君 特にアメリカ経済の現況ですが、一般的に報じられるところによると、ややこのところ景気過熱ぎみではないか、こういうような見方がされておるわけでございます。もともと昨年後半からアメリカ景気回復はかなり底がたいものがあると、こういう見方が出ておりましたし、現にまたその上に立ってやや過熱ぎみじゃないかというふうな事態に到達しているとするならば、もともと財政とか、あるいは貿易の入超、そしてまた貿易収支経常収支の悪化、さらに雇用というふうな点で問題を抱えながらこのところ推移してきたアメリカ経済であるだけに、果たしてその過熱ぎみというのはどういう背景でそういうことになってきたのかということであります。今のままでいけば、今年度八四年度のアメリカ実質経済成長率が恐らく五・五%ぐらいの水準に達するんじゃないか。一昨年八二年はマイナス一・九%だと、こういうふうに言われておるわけですから、大変なこれは様変わりだと思うわけです。果たしてそれでこれから先、そういうテンポで順調に回復していくのかどうか、こういう点、どういうふうに判断をすればいいんでしょう。
  7. 柴田益男

    政府委員柴田益男君) アメリカ景気見通してございますが、確かに先生指摘のように、アメリカの現在の景気は非常によくなってきておりまして、一部では確かに過熱ぎみのような事態も出ていることは事実でございます。アメリカ景気がよくなってまいりましたのは、昨年来まず自動車の売れ行きが非常によくなりまして個人消費が伸びてきた。それに続きまして、住宅投資が非常に伸びてきたわけでございます。昨年の後半に入りまして、個人消費住宅投資だけではなくて、本格的に設備投資が出てまいりました。非常に現在設備投資伸び率が高くなっているわけでございまして、いわば景気がいよいよ本格化したということは言えるんだろうと思います。  ことしの八四年の第一・四半期のGNPの成長率を年率でみますと七・二%増ということでございまして、ことしの八四年の年間での経済成長見通しは、従来のアメリカ政府見通しては五・三%でございましたけれども、この四月に上方修正されまして、五・九%というのがアメリカ政府の現在での、ことしの成長率見通してございます。そういうことで設備投資が非常に出てまいりましたので、景気回復景気拡大が非常にかたいものになってきたというのは我々の見方でございますけれども先生指摘のように、他方、財政赤字、あるいは依然としての高金利とか、あるいは貿易収支赤字というような懸念要因もございまして、必ずしもすべて楽観的に今後景気が続くとも言えない状況であろう、そういうふうに見ておるところでございます。
  8. 福間知之

    福間知之君 今御指摘のように、設備投資あるいは個人消費住宅投資等がかなり好転をしているということに今日の景気回復背景が、下支えがあるんだろう、こういうふうに考えられるわけであります。ところが、やはり御指摘されたような財政赤字というものがかなり大幅であって、昨年度は千九百五十四億ドルの赤字、これが今年度から来年にかけて約二千億ドル水準に達するんじゃないか、こういうふうに言われています。これがしからば民間の資金を圧迫しないだろうか、そして景気に水を差さないだろうかということが懸念されますね。設備投資の盛り上がりに水をかけないのだろうか、こういうことが一つ懸念されるわけであります。それから、貿易収支赤字一つ問題視されるんじゃないかと思っております。特に昨年、八三年には農産物やら兵器、武器、これは主としたアメリカ輸出の商品であるんですが、これがいささか不振だった、余り振るわなかった。加えて、景気回復に伴って逆にガソリンとか自動車あるいは通信機器等輸入拡大をした。結局貿易収支がここで赤字につながっていく要因になっているわけであります。昨年、八三通年の赤字幅が商務省の予想どおり七百億ドルぐらいに達するのじゃないか。とりわけその中で対日貿易赤字が二百十六億から二百二十億ドルぐらい予想されておる。とすればそれは史上最高の対日赤字、こういうことになりそうなんですけれども貿易収支一つとってもそういうふうな見通しがあるわけでありまして、だとすれば、やはり景気のこれから先に、今指摘したような要素はマイナスとして判断をせざるを得ない。結局、今の住宅投資とか設備投資というのは一面でこれは循環的な一つ回復を示しているのであって、より根源的には、あるいは構造的にはアメリカ経済というのは今回復を続けているような状況で一本調子で順調にこれから先上昇を続けていくというふうには考えられないんじゃないだろうか、こういうふうな危惧を持っているわけであります。  先般、その点で河本長官と私とは見解がかなり違っておりまして、河本長官は非常に楽観的な御説明でありました。その後私も調べてみましたけれども、どうもそんなに楽観視できないんじゃないか。それはそのようにいけばまたそれは結構なことなんですけれども、心配するのは、そうでなかったときに我が国の今日の景気回復の足取りも大きく挫折をする、つまずいてしまう。特に、国内の需要というものの回復が決して旺盛じゃないということから、アメリカ景気は今のような調子で続いていかないとするならばそのリアクションというものが非常に危惧される。こういうことで考えてみなきゃならぬ問題があるんじゃないかと思っているわけであります。大統領の選挙が十一月の初旬に行われる。そこまではかなり無理をして景気を引っ張っていくという政策がとられるんじゃないかと思うんですけれども、問題はそれ以降なんだということで、これは御意見もお聞きをしますけれども、問題は最悪の場合に日本がつまずいてしまうようなことがあれば大変だということで、政策的な配慮諸般の面でやっていかなきゃならぬ、やってもらわなきゃ困る、こういうふうに思うわけです。
  9. 柴田益男

    政府委員柴田益男君) アメリカ景気がこのままどんどん伸びていくことは非常に問題があるだろうという御指摘でございますが、確かにそのような要因はございます。  一つは先ほど来話が出ております財政赤字の問題でございますけれども、まずこの財政赤字につきましては現在のレーガン政権、先般赤字を数年にわたって約千五百億ドル縮減するという発表もいたしておりまして、歳出の削減あるいは増税というような形で数年にわたりまして千五百億減らしていくと。先ほど御指摘がありましたように、去年の赤字が千九百五十四億ドル、これを今後少しでも減らすという努力をしていくということで赤字問題についてはある程度抑えがきくということだろうと思います。  もう一つの問題であります貿易収支の問題でございますが、これも確かにおっしゃるとおりでございまして、現在非常にアメリカ景気がよくて国内生産では間に合わなくて輸入に期待しているというようなこともございます。ただアメリカ貿易構造を見ますと、貿易収支赤字であっても貿易外の黒字あるいは資本流入が非常に多うございまして、国際的な収支面でまいりますと貿易赤字貿易外あるいは長期資本流入ということで補っているわけでございまして、その辺で相償っているということでございます。そういう意味におきまして、問題は貿易収支だけでなくて今後も従来どおり資本流入があるかどうか、その辺も注目していくべき点ではないだろうかと思っているわけでございます。ただアメリカ景気がこのまま伸びていかないで将来縮小した場合、日本経済に対して影響が出てくるんじゃないかというような御指摘でございますけれども、ことしの経済成長見通し四・一%の中での外需依存度が非常に小さくなっておりまして、そういう意味でのアメリカ景気日本景気に対する影響というものは従来よりも小さい形で受けとめるということになっているんじゃないだろうか、そういうふうに考えております。
  10. 福間知之

    福間知之君 いずれにしましても、当面力強い回復を見せているアメリカ経済でございますが、それがまた行き過ぎますと幾つかのボトルネックにぶち当たります。例えば稼働率が今までの統計でいくと、八四%ぐらいになれば、これはフル操業だと言われておるわけでありまして、最近の研究ではこの稼働率八一%がマキシマム、それ以上になることは危険だ、こういうふうなことが言われておるようであります。また失業率も七%前後が自然失業率、変な言い方ですけれども、自然的な失業水準だと、こういうふうに言われておりますが、現に既に七%台に下がってきておりますので、そこらが一つのこれからのアメリカ景気ボトルネックになっていくんじゃないかと、こんな見方が一面あるようであります。いずれにしても、それらを適切にやはり対応をして景気が長続きすることを私どもとしては期待をする立場にあるわけですけれども、十分これは注意を要する。一概に楽観的であることがいいとは思わない、こういう点を申し添えておきたいと思うわけであります。  それから昨日の報道によりますと、国会も予算が終わったということもございますのでしょう、いよいよ六月のサミットに向けまして我が国としても諸般対外経済政策といいますか、そういうものを準備していかなきゃならぬ、こういう事態に入っているようであります。報じられるところによりますと、先般難航した結果、牛肉、農産物輸入枠拡大が一応決着を見た。関係大臣初め政府の御努力に対しては敬意を払うにやぶさかじゃありませんけれども、特にまたこれからは通産当局関連の深い工業製品あるいは電子機器関係あるいはまたVANなどという情報通信分野課題カラーフィルム陰面紙木材製品等々の関税引き下げや撤廃、こういう課題があるようでありまして、政府通産大蔵、外務、農水、経済企画庁関係省庁でこの対外政策について議論をして、サミットに向けて準備をしようと、こういうようでありますけれども通産当局としては最近のアメリカのこの種、この自由化促進の強い要請に対してどういうふうな心構えで対応しようとされているのか。特に、毎日のようにVANについては新聞紙上をにぎわしておりますけれども、この際御意見を一遍拝聴しておきたいと思うわけです。
  11. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 世界経済は、昨年来の原油価格低下であるとかインフレ鎮静等中心にしまして、米国経済が先ほども申し上げましたように回復しておるわけでございますが、欧米における雇用情勢というものは依然として厳しいことも私どもは十分認識いたしておるわけでございます。さらに、貿易赤字等背景といたしまして、アメリカ等においては保護主義的な色合いが非常に高まっております。我が国に対して一層の市場開放であるとか輸入拡大等を要求されているわけでございます。しかし、自由貿易体制というものはどうしても日本といたしましても、またアメリカにとっても欠くべからざるものでございますから、我が国としては何としてもこの保護主義台頭というものを排除していかなければならない。今後もこの防止に努めまして、世界経済の再活性化を図るべく大いに努力していかなければならないと思います。そのためにはいろいろな施策を行っていかなければなりませんけれども、まず、産業協力であるとか先端技術協力であるとか、世界経済の再活性化のための国際協力に積極的に通産省政府といたしましても取り組んでいく所存でございます。
  12. 福間知之

    福間知之君 関税問題では、アメリカは強く要求してきている合板などの木材紙製品、お酒類、こういうものが関税引き下げの対象の中で重要視されておるようであります。それからさらに、最近は日本国内における弁護士業務、この門戸開放ども言ってきているようです。  ところで、通産当局関連の深い通信衛星の購入問題ですね。これについては通産当局はどのようにお考えかということ。御案内のとおり、日本も宇宙開発事業団を通じて、先般もBS2放送衛星上げたりしていますけれども、あるいはまた去年はCS2を上げて通信衛星初めて実用化に入ったんですけれども、小さいですね、まだ三百五十キロ程度のものでございますから、収容回線は四、五千回線しかない。今アメリカは一トンクラス、五万回線のものを上げていますから、それは大変な違いなんですよ。日本の今関係部門では、経団連なども、もうアメリカにひとつ衛星を打ち上げてもらおうかというふうなことを考え出すような時代なんです。国内では、開発事業団あるいはまた大型衛星促進というふうなものをやっておるけれども、まだかなり先になると。ところが、欧州その他はやっぱりもう大きなやつを上げまして実用化しているわけですよ。そういうようなところから、日本でも通信衛星アメリカから購入してはどうかというような議論が出てきていると思うんですけれども、これについてどうひとつお考えかということ。  それからもう一点、これも重要なアメリカからの要求ですが、いわゆる金融資本市場開放ですね。これは大蔵当局のマターでございますけれども、しかし、これは単に役所は管轄が大蔵だというだけで、日本経済金融に大きな影響があるんですけれども金融資本市場開放について通産当局はどういうふうにお考えか、その二点お聞きしたいと思います。
  13. 柴田益男

    政府委員柴田益男君) 今先生の御質問、多分に当省所管でなくて他省所管にかかわる問題でございますので、お答えにくい点もございますが、まず、通信衛星の問題の御指摘でございますけれども、今関係各省の間で鋭意検討が進められておりまして、今月末にも一つの結論を得る方向で努力が続けられているわけでございますけれども通信衛星につきましては、当省といたしましては一方において通信衛星自主技術による開発、これを堅持する必要がある、ただ、それと両立する形で海外からの輸入ということも認めていくべきではないか。特に将来民間部門通信事業に参入してまいりますので、そういう民間部門中心通信衛星輸入が行われるということは結構じゃないかと、そういうような立場で今関係省庁との間の意見のすり合わせをやっているところでございます。  また、金融資本の問題でございますけれども、これは大蔵省さんの問題でございますので、通産省として申すべきことはないわけでございますけれども、ただ、我々の貿易を所管している立場から申しますと、貿易は非常に自由化してきた。それに伴いまして決済もそれ相応の自由化というのは必要でございまして、貿易自由化投資自由化技術交流自由化、これに相応するような形での資本取引金融自由化ということが進められていくのは結構じゃないか、そういうような認識でございます。
  14. 福間知之

    福間知之君 もう一点、思いつきで恐縮ですけれども、先般来VANをめぐる扱いで国内的には通産郵政のいささか縄張り争い的なにおいを醸し出しながら議論が沸騰いたしましたね。それはともかくとして、一応の決着はついたと、政府自民党内部でもけんけんがくがく議論の末一応の決着はついたと。一方アメリカ要請その他もにらみながら、決着が図られたあの中身ですね、許可制とか届け出制とかあるいは最終的には外資規制を外すというようなところまできましたけれども、これについての感想を一言お聞きしておきたいと思います。
  15. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 何かこう通産省郵政省のやりとりが、見方によって仕方ないんでしょうけれども、いかにも縄張り争いのようなことにとられてしまったんですが、両省としてはお互いに格好いいことを申し上げれば、国益ということを中心にして議論してそれなりの私は成果が上がったと思います。それぞれ郵政省側言い分通産省側言い分も通りまして、率直に言って格好よくまとめてもらったと思っております。と同時に、アメリカに対してもアメリカ言い分もかなりそんたくしてこれはでき上がったのではないかと私自身は考えております。  この十四日か十五日に私はブロックさんとも会う機会がございますので、そのことについてアメリカ側意見も、あるいは日本のまとめたことに対してアメリカ側がどう言うか、それも聞いてこなくてはなりませんけれども、しかし、いずれにしろ、委員指摘日本アメリカとのいろんな懸案の事項、例えば関税引き下げにいたしましても、ソフトウエアの問題にいたしましても、今申し上げたVANの問題にいたしましても、通信衛星の問題にいたしましても、さらには資本市場交流の問題あるいは投資交流の問題、農産物がああいうぐあいにおかげさまで決着つきましたけれども、残った問題は、河本経済企画庁長官中心といたしまして我々経済関係閣僚が集まりまして、最終的な日本側考え方のまとめを今月末までに行うことになっておりまして、委員がいろいろおっしゃった他省との関係の問題も含めて我々は精力的にこれを行っていく方針でございます。
  16. 福間知之

    福間知之君 ぜひひとつ大変でございますけれども関係省庁との協議を十分になさって対応をしていただくことをお願いをしなきゃならぬと思います。報道されますように、この中旬にはブロック代表おいでになる、あるいは五月の連休明けにはブッシュ副大統領おいでになる、一方欧州からもトルンEC委員長が来日される、五月中にはパリでOECDの閣僚会議理事会が開かれる、それからロンドン・サミットが六月、こういうふうに軒並み経済関係国際会議というものが、あるいは折衝が予定されているようであります。非常にそういう意味通産当局の責任も大きいと思います。今大臣おっしゃったように本当にVANの問題などは国内決着がついた途端にIBMは日本に進出するというふうなことを新聞で発表できるほど準備が進んでいるということに目をみはらなきゃならぬと思うわけであります。しょせん、私は、郵政主務官庁であって、通産はそうでないとかというふうなことではなしに、現実にこれが動き出しますと、例えば京セラやソニーが一つの第二種事業VANをやろうなどというふうなことをかつて発表しましたけれども、そうなりますと、これは国内ですぐれて民間事業活動として、産業活動として通産当局がいろんな政策的な配慮も、場合によっては後ろ盾もしなきゃならぬというふうな事柄ではないかとこういうふうに思っておるんです。まして開放度が進んでアメリカからもより自由に参入できるということになりますと、この種の情報通信分野のこれからの社会的な大きなインパクトを考えますと、それこそナショナルインタレスト立場からも配慮をしていかなきゃならぬ、そういうふうに思っておりますので、当局としてもまたこれからの勉強等御尽力をお願いしたいと思う次第でございます。  次に、法案関連いたしまして質問を進めてまいりたいと思うんですけれども海外の、いわゆる諸国における累積債務が今大きな問題として国際的にもクローズアップをしております。昨年の世界銀行の報告によりますと、開発途上国全体の債務は毎年一〇%程度ずつふえている。それが十年後には約二兆ドルに達するんじゃないかと予測されております。ちなみにIMFによりますと、昨年末の非産油開発途上国、非産油発展途上国全体での累積債務残高は六千六百四十三億ドルと指摘されておりまして、これは七三年、十年前の約五倍の規模に達しているようであります。ある資料によりますと、非産油発展途上国以外の累積債務を抱えている国も合わせまして全部で八千億ドルという数字もあるようですけれども、私今ここに指摘したのは六千六百四十三億ドルでございますが、それが約十年後には二兆ドルになるだろう、先進国が累積債務国へ資金を継続的に出すことができなければ世界経済自体が破綻をすることになるんじゃないか、非常に今後楽観できない厳しい事態考えられる、さらに現在の累積債務問題の大きな特徴といたしまして、低所得国よりもむしろ工業化をある程度促進してきた、国民所得も幾らかは高くなってきた中進国と呼ばれる国々に累積債務問題が深刻になりつつある、こういうことが言われております。こういったこれからの世界経済の発展の一つの核にならなければならない中進国等の経済的な挫折というものが顕在化いたしますと、これは世界経済全体に非常に大きな悪影響を及ぼす、こういうふうに考えるわけです。しかし、今提案されている種の保険の法案の根本的な哲学といいますか、考え方というのは世界経済回復するまでのつなぎというふうなものではないかと一面考えるわけでありまして、とすれば、現実とかなり大きなギャップが生じていると言わざるを得ない。そのつなぎというのは二年や三年という短期のものでは済まない、こういうふうに思います。  もし累積債務の解消というのがおくれればおくれるほど輸出保険制度にかなり長期にわたって多額の予算をつぎ込まざるを得ないという事態考えられるわけであります。そこでこのような点も踏まえながら累積債務問題の今後のより確かな見通しというものをお聞きをしたいのですが、総括的にまずお伺いをする次第です。
  17. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 先生から今御指摘ございましたように、発展途上国の累積債務につきましては世銀が一九九五年までの推計もやっております。御指摘のように年率にしますと一〇%程度の伸びになるようでございます。特に最近におきましてこの債務累積問題が非常にクローズアップされてまいりましたのは、同じ世銀の資料によりますと八〇年から八二年の間につきまして発展途上国の対外債務の残高は約一四%弱でございますけれども、年率でふえてきております。  それに対しまして、一方LDCへの資金流入がわずか二%台の年率の増加でしかなかったというところに基本的な原因があるようでございますが、同じ世銀の見通しによりますと一九九五年までには年率で一〇%程度対外債務残高も増加をいたしますが、一方ではLDCへの資金流入につきましてもほぼ同じ一〇%台の増加が見込めるということのようでございます。  したがいまして、ここ数年にございましたような、一方では資金流入が非常に低いレベルの増加にとどまりながら、対外債務だけが一〇%台に上る、増加する、こういうようなことは避けられるという意味では一応危機的な側面は当面避けられるんじゃなかろうかということでございますが、基本的な解決が図られるのかというあたりにつきましては、むしろこれからの課題ではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
  18. 福間知之

    福間知之君 御指摘のように余り大きな支障を招来しないで、しかも当然これはかなり長期にわたって金をつぎ込んでいかなければならぬということは一面また避けられないというふうに考えますので、できればそう御説明のとおり推移することを期待したいんですけれども……。  きのうでしたか、IMFの暫定委員会の議長のドクレルク・ベルギー大蔵大臣がIMFのいわゆるSDRを創出してこの累積債務問題打開のために前向きに対処してはどうかというふうな提言があったと一部新聞で報道されましたけれども、まさしくそのような措置をも必要とすると考えなきゃならぬのじゃないかというほど、これはやはりこの累積債務問題というのは国際的な重要な事態に到達をしているというふうに考えられるわけであります。  ところで、この輸出保険の問題というのは先ほど来から申しているように、世界経済の動向と裏腹の関係があるわけでありまして、したがって、我が国としては言うならば大口債権国といいますか、こういう立場でもあるわけですし、さらに、世界経済一つの有力な牽引車と、こういうふうな立場からしましても、一つ経済成長を維持していくという上で、あるいは二つは市場をより相互に開放的にしていく、三つは途上国への公的な資金の継続的な供給というふうな立場、それらを怠ってはならない、そういうふうに思うわけです。  特にASEANの諸国の中に大口のこの累積債務を抱えている国も存在をしておるわけでありまして、それらの国に対する救済は急務だ、こういうふうに言われております。通産当局は今後対外政策、先ほど来申し上げたような対外政策の策定に当たってやはり輸出保険についてもどういうふうに対応を強化していくのかということをお伺いしたいと思います。
  19. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 先生指摘のような債務累積国の債務の累増という事態を前に輸出保険、これにどう対応していくのかという御質問でございますが、今回私ども御提案申し上げております保険法の改正というのはそのためのかなり重要な部分というふうに考えております。カントリーリスクが増大をしております際にやはり輸出保険につきましてはその機能の充実ということが求められているわけでございまして、そのために今回御提案申し上げております輸出保険法改正の中におきましては、特にカントリーリスクの増大に伴いまして大きな影響を受けておりますプラント輸出、それと中小企業性製品の輸出、この二つの点に関係のございます輸出代金保険と輸出手形保険につきまして、輸出者のリスクを若干なりと軽減をしようという意味におきましててん補率の引き上げということを御提案をいたしているわけでございます。  また、債務繰り延べ国がふえてまいりますと、これに対応して輸出保険というのは保険金のお支払いをしなければなりません。最近数年間にわたりましてもこういった債務繰り延べに対応する保険金の支払いが増加をいたしておりますが、特に五十九年度におきましては今まで以上に保険金の支払い額がふえるという状況にございますので、このための資金の手当てということもいたさなければならないと思います。こういった資金の手当ては主として借り入れに頼らざるを得ない状況にございまして、こういった借入金の返済というのはリスケジュールの性格から申しまして短期にはなかなか返済できないものでございますので、ある程度こういったものにつきましては借りかえというようなことをお願いをせざるを得ませんので、こういった点につきまして輸出保険特別会計法改正ということを御提案申し上げております。  それと同時に、今申し上げましたような保険金の支払い業務が膨大化いたしますので、やはり私ども事務手続の簡素化、合理化というものを進めなければこういった保険金の円滑な支払いができないという情勢にございますので、こういった観点から特に政策的な意義が少なくなり実際の御利用の程度も少なくなっております保険、海外広告保険及び委託販売輸出保険の二種の保険につきましては、この際事務合理化、簡素化の観点から廃止をさせていただきたい。  以上申し上げました三点を今回の法律改正の中で御提案をいたしているわけでございます。ただ、これだけではもちろんございませんで、今お話のような状態に対応いたしまして、実際の保険の運用面でどういう対応考えなきゃいけないかという運用面の問題がございます。これにつきましても各方面からいろいろな要望が出ておりますので、私どもそういった要望につきまして謙虚に耳を傾けながらこれからの運用の弾力化、機動的運営といった問題についても努力をしてまいる考え方でございます。
  20. 福間知之

    福間知之君 ちょっと前後しますけれども、今大きく三つに分けて御説明があったんですけれども、私がお聞きしたいと思ってた一部入っているんですけれども、改めてカントリーリスクによる我が国への影響という観点で輸出にどういうふうな影響を及ぼしているか、特に触れられたプラント輸出の現況あるいはこれからの見通し、それが一つ。  それからやはり中小企業の輸出、特にこれはデペロピングカントリー向けの輸出ですね、この現状、それからそれが非常に厳しさを加えているだけに中小企業の今後の輸出振興策というものについて当局はどういうふうに配慮されていくのか、この二つをお聞きしたい。
  21. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) ただいまの御答弁の中でも申し上げましたカントリーリスクの増大がプラント輸出及び中小企業性製品の輸出影響を与えているということにつきまして、少し数字を挙げまして御説明を申し上げたいと思います。  まずプラント輸出でございますが、これは最近時点での動きを見てまいりますと、五十六年度に総額で百七十五億ドルという数字を記録をいたしましたが、これをピークにいたしまして五十七年度は百三十五億ドルということで前年度に比べまして約二三%程度の減少になったわけでございます。五十八年度はまだ全体の数字は出ておりませんが、一月までの承認実績を見ますとやはり相変わらず減少を続けております。前年の同期に比べまして約三七%程度の減少になっておりまして、年度全体の数字はまだ手にいたしておりませんが、年度全体といたしましても約四割ぐらいの減少になるのではなかろうか、総額では約六十億ドルぐらいといふうに見ているわけでございます。  それから中小企業性製品の輸出でございますが、中小企業性製品の輸出につきましては昭和五十七年以降減少をしてきたわけでございますが、世界経済全体の動きに明るさが出てまいりました昨年の後半から回復基調となってきております。ただ、大企業性製品と比較をいたしてみますと、その回復の足取りは中小企業性製品の場合には一段と弱くなってきております。  若干数字を御説明申し上げますと、大企業性製品は五十八年の下期五十六年の水準を一〇〇といたしますと一〇四%の水準まで回復をいたしてきておりますが、中小企業性製品は昨年の下期の段階で一〇〇・六%とようやく五十六年の同じ期間の水準に達したという状況でございます。この中小企業性製品の先進国向け、発展途上国向けに分けて内容を眺めてみますと、先進国向けはアメリカ向けが一〇五%、これは五十六年を一〇〇としてでございますが、一〇五%ということでかなり五十六年の水準を上回るレベルまで回復したわけでございますが、発展途上国向けはまだ九二%ということで五十六年の水準をも回復していない、こういうような状況でございます。これは先ほど来種々御指摘のございましたような発展途上国の債務累積、それを背景といたしました国内経済の引き締め、開発計画の見直し、こういったものがその原因となっているというふうに私ども考えているわけでございます。
  22. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) ただいまの御質問の中で中小企業向けの輸出の振興策についてお答えを申し上げます。  第一にジェトロを通じまして中小企業を対象といたしまして商品動向あるいはマーケティングというような海外調査事業及び海外の見本市の事業がございます。それから税制面の優遇措置といたしましては中小企業等海外市場開拓準備金制度というのがあることは御案内のとおりでございます。金融の補完的な措置といたしまして信用保証協会によりまして中小輸出商社向け及び輸出関連の中小メーカー向けというのに輸出運転資金借り入れの円滑化を図るための信用保証制度というのを講じております。輸出保険につきましては特に大企業向け、中小企業向けと分けた制度はございませんが、手形保険を初めといたしまして中小企業の健全な輸出取引の振興に役立っておるものと考えております。
  23. 福間知之

    福間知之君 今の御両所の説明よくわかりました。ことしの五十九年といいますか、五十九年度といいますか、どちらでもいいんですが、この回復基調がそのまま一本調子で期待できますか。
  24. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 今年度の問題につきましては、プラント輸出の方はやはり依然として情勢に大きな変化はないと思われますので、これまでのような低迷、不振というような状況が継続するのではなかろうかと考えられます。中小企業性製品の輸出でございますが、先ほども説明申し上げましたように、昨年の秋以降、大企業性製品に比べますと緩やかではございますが、回復の傾向をたどっておりますし、世界経済全体につきましても今年度はなお明るさが増してくるような感じかと思いますので、回復の傾向は依然として持続をするということに考えられますが、やはり大企業性製品との関係で見ますと、そのテンポは中小企業性製品の場合にはなお緩やかなものにとどまるというふうに考えられると思います。
  25. 福間知之

    福間知之君 ありがとうございました。  では次に、保険の方の質問に入りたいんですが、いわゆる今も議論になっていますカントリーリスクというものの増大がいろんな面で保険運営にも支障を来すというふうなことから、いわゆる引き受け制限の対象になっている特定国というのがありますね、その国の数はこれは輸出保険の種類によって違うのでしょうが、それぞれ何カ国ぐらい現状存在をしているのかということと、この特定国については常時見直しを行いまして、保険の健全な運用という立場あるいは利用者のニーズにできるだけ適切にこたえようと努力をされていると思うが、最近はどういうふうな悩みといいますか状況判断をされているか、その二点お伺いいたしたいと思います。
  26. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) 御案内のとおり、輸出保険は独立採算の原則で運営をしなければならないということになっておりますので、取引上の危険が極めて大きな国というようなところにつきましては保険の引き受けを制限せざるを得ないわけでございます。したがいまして、例えばリスケジュールを実施して、つまり払ってこないような国でございますとか、あるいは戦争、内乱等によりまして国内経済が非常に混乱をしておるような国というようなところには引き受けを制限あるいは極端な場合には停止をせざるを得ないわけでございます。現在引き受けを停止しておるところは約二十カ国ございます。それからただいまの特定国でございますが、これは輸出代金保険の包括関係あるいは手形関係というようなものにつきまして大体六十五カ国程度のものを特定国としております。ただこの特定国というのは、先ほど申し上げました非常にリスクの高いところからそれほどでもない、しかし十分にウォッチをしておかなければならないというところまで含めておりまして幅があるものでございます。したがいまして、その特定国の中でも引き受け停止をしなければならないというようなところをもう少し弾力的に引き受け得るようなところに動かすとか、あるいはもう特定国として監視をする必要がなくなったようなところは外すというようなことはいわゆるカントリーリスク・スタディーといいますか、そういうものを機動的に行いまして、弾力的に外すべきものは外すというような努力をしておるわけでございまして、今後も続けてまいりたいと思います。
  27. 福間知之

    福間知之君 この改正案の背景は、保険金支払いの急増に伴う資金の不足という点にあるわけでありまして、経理の内容は別にまた後ほど触れますが、この資金不足の面で五十九年度約千五百億円余りと報じられております。かなり大きなものでございまして、この不足はいわゆる累積債務国の急増ということだけに起因するものかどうか、この累積債務の問題が五十年の通商白書におきましても既にいずれ極めて厳しいものになるであろうという記述があります。そのことに見られますように、きのうきょうの問題では必ずしもない。今日の状況をある程度見越した対策が今までに必要だったのじゃないかというふうにも思われますが、これは少し酷な見方でしょうか。保険の審査に今までいささか甘さというものがなかったかどうか、これはあえて指摘しなきゃならないものかどうですか、そこらあたりの御見解を伺います。
  28. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) この発展途上国の累積債務問題というのは比較的最近急速に起こってまいったわけでございます。特に今まで、先ほどの御質問の中にもあったかと思うんでございますが、どちらかというと、中進国あるいは石油が出てお金持ちの部類に分類できるような国が急速に悪くなったというようなことが累積債務問題の非常に大きなありようでございます。  若干数字を申し上げさせていただきますと、私ども輸出保険の支払いで御案内だと思いますが、やや繰り返させていただきますと、相手国のバイヤーが払えなくなったというこれを通常信用危険と申すわけでございますが、一方相手国の国が払えなくなる、バイヤーは現地通貨で支払いをするわけでございますが、それを交換可能なハードカレンシーにかえて送ってくるということができなくなるというのが非常危険、いわゆるカントリーリスクでございます。それを国際的に債権国が集まりまして債務繰り延べをするわけでございます。そういういわゆるリスケ分の割合というのは五十五年度ではまだ四割弱、三六%というような数字であったわけでございますが、五十六年度にそれがふえ始めまして、五十七年度には七割、それからことしの見込みは八割、来年度の見込みは九割、つまり一般の保険事故でなくて、そういう特殊な保険事故というのが急速にふえてまいったというのが現状でございます。また、こういう国際約束に基づきます債務繰り延べ措置というものにつきましては国と国との約束で返すということになっておりますので、通常の保険金支払いとは違う。そういう意味で特に私どもが何と申しますか、緩い保険引き受けの結果このようなことになったというわけではないと考えております。ちなみに、諸外国の輸出保険機関、まあ私ども相互に情報交換をしておりますが、大体大きな輸出保険機関というのは私どもと全く同様のパターンをとっておるわけでございます。
  29. 福間知之

    福間知之君 今の御説明で必ずしも具体的にわからないし、私も直接担当してきた経験もありませんからわからないんですけれども、まず結論的には諸外国に比べてもそんなに不当に悪い状況ではない、こういうふうに判断していいんですか。
  30. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) さように御判断いただいてよろしいかと思います。
  31. 福間知之

    福間知之君 伝えられるところによりますと、五十九年度の当初の資金不足の額は七、八百億円だと言われておったのが、概算要求のときにはこの不足の見通しが千五百億円に倍増をしておるわけであります。短期間でかなり大幅な増加が見られた原因は一体何か。また、財政投融資からの千百四十四億円の借り入れが決定される前に大蔵省との間でかなり深刻なやりとりがあったと言われているんですけれども、どういう経過がございましたんでしょう。二点についてお伺いしたいと思います。
  32. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) 昨年の八月時点、いわゆる予算の当初要求の時点でございますが、私どもは七百五十三億円の借り入れを要求したわけでございます。その時点ではそれだけあれば五十九年度において予想される債務繰り延べに対しまして十分な手当てができるというふうに、そういう国際情勢であったわけでございます。ところがその後、例えばこれは既にパリ・クラブ――これはパリで正式な債権国会議というのが、パリ・クラブというのがあるわけでございますが、そこで合意されたのはモロッコでございますが、そのほかでも新聞等では御案内だと思いますが、この債権国会議というのは何といいますか、企業で言えば債権者会議のようなものでございますから、公になるまではちょっと私どもから国名を挙げて申し上げるわけにはまいりませんが、非常に大きな債務を持っておる国がそれ以後の時点でパリ・クラブで債務救済を要求するということがほぼ明らかになってまいったわけでございます。  そういうことで数字が大きくなったわけでございますが、千五百億というのはある時点で内部でもそういう計算をいたしましたし、それから新聞等にも出ておったわけでございますが、債務国の債務が実際に、繰り延べ対象の債務が実際にどれぐらいになるかというのは、パリ・クラブに出た後でもなお動くというくらい確定しないものでございまして、極端に申しますと発展途上国の一部には大体自分ところの借金がどれぐらいあるかはっきりつかめてないような国というのもあるわけでございます。そういうことで、年末ぎりぎりになりましてその計算をしますと、大体千百四十四億程度あれば五十九年度には十分である、こういうことでございまして、私どもそういう要求をしたわけでございます。この数字につきましては大蔵省も何と言いますか、十分に理解をいたしまして、特に私どもの要求数字を削って千百四十四億になったというわけではございませんで、こういう数字が政府として共通の見通し、現段階における共通の見通しということでございます。
  33. 福間知之

    福間知之君 今のパリ・クラブの会合というのは、これは何年に一回ぐらいやるんですか。
  34. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) パリ・クラブの会合は、特にこういうふうに債務救済を頼むような国が多くなったものでございますから、ほとんど月に二回ぐらいは最近やっているんではないかと思います。その中で私どもが非常に大きな、大きなといいますか、債権を持っておる場合には出てまいりますし、それから、例えばアフリカの小さな国のように私どもが余り債権を持ってない場合には出席をしない場合もございますが、パリ・クラブはほとんどしょっちゅうやっておるという感じに、前はそうじゃなかったんですが、最近はそういうことになっております。
  35. 福間知之

    福間知之君 要するに、少ない国でも個別にやると、極論すれば。そういうことで回数はもう常時やらなきゃならぬという現状だと、こういうことですな。
  36. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) 相手国にそれぞれ応じまして、今週はどこどこの国に対するパリ・クラブというようなこともございます。それから同時に一般問題を論ずる場合もございまして、例えば債務救済の一般的なあり方というようなことの議論をする場合もございます。
  37. 福間知之

    福間知之君 それは大変御苦労さんでございます。  保険制度の改正について次にお伺いしたいと思うんですけれども、保険利用者の側からの要請は、大別しますと、一つは引き受け制限の緩和でありましょう。二つは付保対象を拡大するということでしょう。三つ目は運用そのものの弾力化を進めてほしいということでしょう。これらの点のうちで特に付保対象の拡大につきましては、現在対象となっていないところのリース物件、この付保対象化を図ることが必要だと思いますが、いかがでしょうか。さらに、運用そのものの弾力化ということにつきましては、包括特約の加入対象の拡大あるいはクレーム処理の機構の迅速な運営等が必要だと思いますが、こういうふうな面での改正が果たして可能なんでしょうか、どうなんでしょうか。
  38. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) ただいまのリースに対する保険というのを拡大をせよと、対象にせよというような御意見というのは以前から伺っております。それで、私どもも鋭意検討いたしまして、煮詰まれば今回の改正にもお願いしようかというようなことで、中で検討したわけでございますが、非常にいろいろな問題がございます。現実にリースにいろいろな形態がございますし、それから海外で、これは建設工事でございますとか、プラント建設あるいは土木建設というような場合に、工事用の機械、土木機械等をリースで持っていくというようなケースがございまして、現実に責任がどこにあるのか、それから保険でカバーすべきリスクがどういう状態にあるのか、そういう技術的な問題が非常に多うございまして、現在私ども委員会を設けてなお検討を続けておるという段階でございまして、まず第一に法改正をする必要があるのかどうか、現在の法律の範囲でもやれるかどうかという点も含めまして検討しておるわけでございまして、現在お願いする段階までは煮詰まってないわけでございます。  それから、もう一点のクレーム処理という点でございますが、ちょっと御質問の趣旨がよくわからないんでございますけれども、保険金支払いに対するクレームという点でございますと、今まで特にそういうことを必要とするというような状態にはなかったというふうに理解しておりますけれども
  39. 福間知之

    福間知之君 今御説明がありましたけれども、クレームそのものあるいは保険対象になすべきクレームは果たしてどうなのかというふうなことで何か技術的なことで少し検討が難しいというような趣旨ですけれども、これは法改正するかせぬかというところまでまだ詰めていられないようですから無理はないんですけれども、検討されて一応そういう改善をやろうという心構えではあるわけですね。来年ぐらいまでには一応結論を出されて何らかの方針が決まりますか。
  40. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) まず、リース契約を保険の対象にするかどうかという点につきましては、現在その委員会で調査をしておりますので、その委員会がいつを目途に答えを出すかというのはまだ確定をしておりませんが、非常に技術的に難しい問題があるというふうに理解をしております。それで、ちょっといつまでというようなお答えはいたしかねますが、必要があれば次々と改正をしていくというような前向きの方向で検討しておるということだけは申し上げられると思います。
  41. 福間知之

    福間知之君 運用の弾力化という点は包括的な特約の加入対象を拡大してはどうかということ、それからクレームは処理を迅速にしろと。何か機構は面倒くさい面があるのかどうか知りませんけれども、要するに結論的には、クレーム処理というものを円滑に、さらに迅速化しろと、こういうふうな趣旨でございますか。
  42. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) 失礼をいたしました。  保険事故が生じた場合の保険金の査定、支払いにつきましては私ども約款でもきちんと書いてございますし、それから不服があればしかるべき不服申し立てをするというような制度もございますので、その点については問題ないかと思います。  それ以外の、保険の運用その他一般につきましては、いろいろと私ども鋭意やっておるわけでございますが、人手が足りないというようなこともございましていろいろ御要望が多いということは伺っております。それは例えば、輸出保険協会でございますとか、あるいはもろもろの輸出組合でございますとか、そういうところで意見交換を十分にやりながら、できる限り御要望に沿うというような方向で改正をしてまいりたいと考えております。  それから包括の対象の拡大という点、ちょっと御質問のお答えを落としたわけでございますが、包括の対象につきましても、確かにある種類の製品、特にこれは今、カントリーリスクの少ない先進国向けの一部製品につきましてその包括に御加入いただいていないという部分が若干あるわけでございますが、そういう点につきましても、私どもも、何といいますか、輸出保険の営業努力といいますか、なるべく今後お客さんになっていただくというような方向で努力をしてまいりたいと思います。
  43. 福間知之

    福間知之君 今申し上げたような点がユーザーの側から見れば改善を期待しているような点でございまして、御答弁のように、せっかくさらに改善には努力要請しておきたいと思います。  次に、いろんなそういう保険制度あるいはその運用について注文も出されているわけですけれども、もう一つ、その種の注文の中に、経済のソフト化への対応に伴う制度運用という面が一つあると思うんです。ソフト化の進展によりまして、ソフトウェアの技術だけの輸出も近時盛んになっていると思われるんですが、現行の保険制度におきましては、普通輸出保険技術提供契約、包括保険により船積み前のハードの費用については保険が掛けられていますが、ソフト費用についてはカバーされていないようであります。むしろ、これから本当に重要なのはこのソフトの部分でございまして、その輸出拡大するという見通しに立った場合にやはり対策が必要と思われるんですが、その点についてはどうですか。
  44. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 先生指摘のように、いわゆる技術ソフトの提供の船積み前のリスクについて付保の対象にすべきではないかという御指摘があり、各方面からそういう御要望があることも十分存じておりまして、これまで大分専門家の方々にお集まりをいただきまして検討もさせていただいたわけでございますが、結論から申しますと、残念ながら今の段階では、ソフトの提供について、船積み前の損害というものが技術的に確定しにくいという点に難点でございますので対象とできない状態にございます。  ソフトの提供の具体的な形といたしましては、例えば設計図、図面のような形で相手方に渡す、ないしは、技術者が先方に出向くというようなことが実際に起こりますと、その部分については契約書類その他によりまして対価は幾らであるかということが確定できるわけでございますが、実際に、図面、設計図等の提供に至りません段階、技術者の派遣に至りません段階で費用がかかるのは事実でございますが、その費用が一体幾らかかっているかということは技術的になかなか確定することが難しいというのが専門家のほぼ一致した御見解というふうに承知をいたしております。  したがいまして、そういうふうに船積み前の損害の額が確定できませんと、これは保険の対象として事故が起こった場合に保険金をお支払いすることができないということになりますので、残念ながら、現在までのところ積極的に付保の対象にできないでおりますが、また、こういう御要望につきましては、引き続きましてわれわれとしては今後検討を続けてはいきたいというふうに考えております。
  45. 福間知之

    福間知之君 おっしゃるとおり、これは私ども考えても、いろんな態様でソフトウエアというものが組み込まれておると思うんです。テープもあるかもしれませんし、ディスクもあるかもしれませんし、受像も中にはあるのかもしれませんし、いろんなことが考えられるので、その委員会でもせっかく御審議されて、難しい面があるというようでございますけれども、私もそんな疑問を持ちながらもお聞きしているんです。どんどんふえていくだろうと、抽象的に、観念的には私も言ったんですが、思っていますからね、現在、どの 程度これは掌握されていますか、ソフトの輸出というのは。そのこと自体はなかなかつかめないかもしらぬですね、かなり秘密の部分が多いから。
  46. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) ちょっと今手元に数字がございませんので、後ほどまた御答弁の際に御返事させていただきます。
  47. 福間知之

    福間知之君 中小企業の利用率について次にお伺いしたいと思うんです。  確かに、この輸出を行う企業は比較的大きな規模の企業ということが考えられますが、依然として大企業との力の差が存在している中小企業にとって、この保険制度が本当に利用しやすいものであるのかどうか。輸出手形保険における中小企業者の利用率はどの程度になっておりますか。また、使いやすい制度にするために、現在問題点がないことはないと思うんですけれども、どういう努力をされようとしておりますか。
  48. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) ただいま御質問の中小企業の手形保険にかかわる利用率でございますけれども、これは中小規模の事業者ということで、製造業資本金十億円以下、流通業三億円以下というところでしか統計をとっておりませんが、それで見まして、輸出手形保険につきましては、引き受け件数で、五十七年度につきまして約五五%、それから保険金額で約三三%でございます。これは貿易のウエートから見ますとかなりな利用率ではないかと思うわけでございますが、私ども、ユーザーにより使いやすく使っていただくためにどういう努力をしておるかという点につきましては、一つは、輸出保険協会を通じましていろいろと講習会をいたしますとか、パンフレット、解説書を出しますとか、そういうようなことをやっておるわけでございます。今年度からは、さらに協会にコンピューターのターミナルを置きまして、海外のバイヤーに関するような情報というのもなるべく即座に提供できるというような改善を進めてまいりたいと思います。もちろん、私ども自体の窓口でもいらしていただければできる限り御説明をする、あるいは御要望に応じて制度の改善というようなことを進めるということもやっております。それから通産局にできる限り権限委譲を行いまして、そして地方の中小企業の利用の便宜を図ってまいったわけでございますし、これも最近さらに委譲する事務の範囲も一層拡大したわけでございます。
  49. 福間知之

    福間知之君 努力をされていることは十分に認められると思うんですが、リスクは最近は世界じゅうで広がっていますからね。逆にそういう面からも意識が高まってきているというふうにも考えられます。いずれにしても、制度そのもののやはりさらに効果的な拡大運用というものを目指していかなきゃならぬだろうと、そういうふうに思います。  時間の制約がありますので、ちょっと先を急ぎます。    〔委員長退席、理事降矢敬義君着席〕  もう一つ、審査基準、引き受け基準の公開に関してお聞きをします。  この制度の運用面で一つの難点というのは、保険金の支払いまでの期間が長いということ、あるいは審査基準、引き受け基準が公開されてないこと等が挙げられております。聞きますところによると、支払いまでの期間が長いという範疇には中小企業者の側からのエビデンスの提出が遅いというふうなこともあるようでございますけれども、特に引き受け制限国が明確に公表されてないようでございますので、どの国向けに保険料の支払いが行われているか明らかにされないというふうな面があるんじゃないでしょうか。いずれにしろ、国相手の信用問題でございますから、丸々公表できないという事情はあるにせよ、何らかの基準のようなものを作成して利用者の便宜を図るというような考えはないでしょうか。
  50. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) ただいま先生から御指摘のございましたように、審査基準なり引き受け基準というものをできるだけ公表できないかという点でございますが、先生の御質問の中にもございましたように、やはり通産省自身が一般的に公表するということになりますと、これははばかられるような問題もございます。例えば国別のカントリーリスクの度合いでございますとか、また相手方のバイヤーの信用度といったような問題になりますと、これは通産省の方が一般的にこうなっておりますといって公表することははばかられると思いますが、そういった問題を除きまして、公表に差し支えない部分につきましては、これまでも我々十分に公表をするための努力はしてきたつもりでございますが、なお民間の方でごらんになりまして役所側の態度に十分でない点があるという御指摘があるようでございましたら、こういった点につきましては、民間の方々の御意見も十分に伺いまして、我々これからの問題としてさらに検討をさせていただきたいというふうに考えます。  それから、先ほど先生からお尋ねのございましたソフトの技術の提供について、現時点でどのくらいの状況になっているかという点でございますが、私ども技術提供につきましては、技術提供等保険という保険種別でお引き受けをしているのがございますが、これにつきましては五十七年度は引き受け実績が約三千億円でございまして、五十八年度はまだ年度全体の数字は出ておりませんが、五十八年度の上半期だけで五十七年度とほぼ同額の三千億円の引き受けを既に実施をいたしておりますので、年度全体といたしますと五十七年度を大幅に上回るのではないかと思います。先生指摘のように、こういった技術等の提供での保険の御利用というのも最近非常にふえている状況にございます。
  51. 福間知之

    福間知之君 大臣にちょっとお伺いしますけれども輸出保険の制度を種々の観点で検討をしてみますと、ユーザーの広範な要望というものが胚胎をしておるような気がするわけであります。我が国の通商政策におきましても大きな意味合いを持っていると考えられるわけですけれども、この制度が時代の流れに十分対応をし得ないでユーザーの不満がだんだん高まってきているんじゃないかという懸念も感じているわけであります。したがって、このユーザーの声をくみ上げながら、より適切な運営努力を行っていくということが必要だと思うんですけれども、そういう一つの機構といいますか話し合いの場といいますか、そういうようなものの設置、そしてトラブルの解消というふうなことを例えば第三者機関で行うというふうな考え方、これはいかがなものですか。
  52. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 御指摘のユーザーの要望、すなわち輸出保険の引き受け等の輸出保険制度の運用に関する関係者の要望ということにつきましては、従来からその案件に即して個別に対応いたしておるわけでございます。それは輸出保険審議会において保険に対する各界からの要望を取りまとめて、随時、制度の運用、その改善を実施いたしているということでございます。カントリーリスクが非常に高まっている中で、輸出保険制度に対するニーズはますます増大いたしておるのが現状でございますけれども、今後とも利用者の要望を踏まえまして、制度の運用の改善に大いに努力してまいる所存でございます。
  53. 福間知之

    福間知之君 そのことと関連する話でございますけれども、行政改革問題じゃありませんけれども、保険制度の民営化というふうなこともその俎上にのせていっていいんじゃないかというふうな感じもしております。確かに海外欧米諸国でも政府機関の手によって運営されている。我が国の場合もそうであって、しかも担当の人員も決して多くない、かなり懸命に努力をされている、こういうふうな側面は承知をしているわけですけれども、だからといって国営なるがゆえに千数百億円の予算を投入するということは、しかもかなり長期にわたって、果たしてどうなのかというふうな観点もあるわけですね。  結局、いろいろと議論をしてまいりましたけれども、民営化をすることによってかなりの改善が図られるというふうな要素もあるように思うんです、自由競争によりましてもちろん、中小企業向けの保護制度としては一概に民営化論で論ずるわけにはいきませんけれども、大企業中心の部分というのは民営化によってかなり効率的な運営が期待できるんじゃないかというふうにも思うんですけれども、これはまだそこまで具体的な検討してないと言えばそれまでですけれども、昨今の風潮に照らしましても、この制度もいつまでも通産当局で所管していくと、もともと制度そのものを国の制度として持っていくと、そして運用に当たっていくということが果たしていいんだろうかという疑問があるわけですけれども、いかがですか。
  54. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 輸出保険制度それ自身の民営化の可能性というのを昨今の行財政改革の観点から再検討して見直す必要はありはしないかという御提案でございまして、まあ私ども従来から政府でやってきておりまして、これをいつまでも続ける必要があるということを前提にしておるわけではございませんで、御指摘のような観点からの検討ももちろん加えているわけでございます。  輸出保険の問題につきましては、バイヤーのいわゆる信用リスクだけの問題でございましたらば大数の法則というものでカバーされますし、民間で実施するということもあながち不可能ではなかろうかと思いますが、先ほど来御議論をいただいておりますような相手国の送金制限いわゆる非常危険というようなものを考えますと、これはひとつ事故が起こりますと保険金の支払いが極めて膨大な額に上るということになるわけでございまして、そういったものを民間の手で運用していただけるものかどうかという点についてはかなり疑問があるのではなかろうかと、そういう観点から日本のみならず諸外国におきましても最終的には政府が責任を負うような形で輸出保険制度が運用されてきているのではないかというふうに考えるわけでございます。輸出保険は単なる保険と申しますよりは、やはりその運用の問題につきまして国の貿易政策、対外経済協力政策といったような政策的な観点も配慮されて運営をされるべき問題でもあるかと思いまして、そういう観点からもやはり輸出保険問題につきましてはこれまでと同じように政府の手によって運用するのがしかるべきではないかというふうにも考えております。  能率の点につきましては、先生から御指摘いただきましたようにできるだけ少ない人数で運営をいたしておりまして、そういう観点から若干利用者の方々に対しましてはサービスの面で御不満はあろうかと思いますけれども、私どもこういった点につきましてはこれからもできるだけ事務の機械化、合理化等に努力をいたしまして、保険契約者の方々の御不便を少しでも少なく、できるだけ能率的な保険として運用していきたいというふうに考えているわけでございます。
  55. 福間知之

    福間知之君 次に、自治体とこの制度の関係についてお伺いをしたいと思います。  輸出手形保険の自治体による追加補償制度というのがあるわけでございますが、今回の改正でこの手形保険の付保率、てん補率を現行八〇%から八二・五%以内に引き上げるという運用の弾力化が増大しているわけです。現在のオール・オア・ナッシングではなくて、危険に応じて率の調整が可能になる説明でございますが、自治体との率の調整はこの場合可能なのかどうか。あるいは理に一部自治体から引受率の具体的な数字が明示されない以上、条例改正の手間の時間を考慮するとことしじゅうの実施は無理だという声も出ていますが、施行日までの六カ月間の間に調整が可能なのかどうかということであります。  それからもう一点、中小企業保護のために自治体が追加補償制度を始めた歴史があるわけですけれども、実態は大企業が利用者の過半数を占めているのではないか。だとすれば、本来の制度の趣旨からいって少しそごが生じている感じがしないわけでありません。財政上決して豊かでない自治体の予算を結果としては圧迫する原因になっているんじゃないだろうか。そんな点で、自治体レベルにおけるこの追加補償制度への危機感が出ているのではないだろうかと思われるわけであります。仮に追加補償制度を含めた法改正というものは可能なのかどうか、あるいは自治体の意見というのを十分吸い上げ、そして運営をスムーズにするということが必要ではないか、あるいは財政面で当面自治体に負担が過重になっているということ、この現状をどういうふうに考えるか。  以上、幾つかの点をお聞きしましたけれども、まとめてお伺いしたいと思います。
  56. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 輸出手形保険につきましては、御案内のように現在てん補率が八〇%になっておりまして、国の保険でてん補されない残りの二〇%のうち一五%につきましては地方公共団体の補償制度によりまして輸出者はリスクをカバーしていただいている状況にございます。  それで、まずお尋ねの第一点でございますが、今回輸出手形保険につきまして、てん補率の上限を非常危険に関して引き上げると同時に、以内ということがその上限の範囲内ではてん補率の弾力的な運用を可能にするような御提案を申し上げているわけでございますが、その際、地方自治体がやっております追加補償制度についての一五%の部分はどうなるのかということと存じますが、    〔理事降矢敬義君退席、委員長着席〕 この点につきましては、私ども法律改正の作業をする段階から地方自治体とは緊密に連絡をとっておりまして、現在までのところ地方公共団体におきましてはこの一五%のてん補率の引き上げをするとかというような話はございません。一五%は据え置くということがその意見というふうに承知をいたしております。ただ、国の方がてん補率を引き下げて保険の引き受けをしました場合には、地方自治体の方もこの一五%の範囲内で国のてん補率の引き下げの程度に応じて追加補償制度のてん補率を引き下げると。こういうような御意見であるというふうに承知をいたしております。で、実際にそうするにしても、条例改正の手続等との関係で施行日に間に合うのかという御質問が第二点にあったわけでございますが、この点につきましても地方自治体と密接な連絡をとっておりますので、私どもが今御提案申し上げております改正案を施行する時期までには十分地方自治体の方でもこれに対応した措置をとっていただけるものというふうに期待をいたしております。  それから三番目の御質問といたしまして、追加補償制度が自治体の財政を圧迫をしているのではないか、そういう観点からむしろ政府輸出手形保険の制度に統合するという考え方はどうか。こういう御質問だったと思いますが、この点につきましては、やはり政府輸出手形保険も最近のようなリスケジュール国の増加によりまして採算的にマイナスになっておりますのと同じように、地方公共団体でやっていただいております追加補償制度につきましても採算的にはマイナスになってきております。これはその限りにおきましては地方公共団体の当面の財政負担になるわけでございますが、国の場合もそうでございますが、一方では債務繰り延べをやりました国から、その計画に従って返済が行われました場合には、国の保険も地方の追加補償制度の場合も輸出者を通じて相手国から繰り延べ返済になりました資金につきましてはまた返ってくるという前提になっておりますので、そういうことを考えますと当面は地方自治体の財政には負担をかけておりますが、長期的に見ますと地方公共団体の絶対的な持ち出しになるということではないのではなかろうかと、しばらくの間の資金繰りの問題として解決可能な問題ではなかろうかというふうに考えているわけでございます。  それからこの制度の国の手形保険制度への統合の問題でございますが、これは制度ができましてからの長い歴史もございまして、現在国と地方とでそれぞれ分担をしてやっている問題でございますので、現在までのところ私どもも自治体側にぜひ国の制度に統合してくれという強い御要望があるというふうには必ずしも受け取っておりませんので、このあたりは今後の問題かと思いますが、現時点では統合の必要性については強い要望がないので私どもとしては検討はいたしていない。こういう状況にあることを申し添えておきたいと存じます。
  57. 福間知之

    福間知之君 細部は別として一応自治体との関係で、今、最後に触れられたようなふうに認識してよろしいですね。  次に、この輸出手形保険の付保率やてん補率が引き上げられてきた背景には、事務のコンピューター化、迅速化というものがあると思いますけれども、クレームに対する処理のおくれ等が仮にコンピューター化によってかなり改善されるというふうに考えられるんですけれども、どういうことでしょうか。  さらにまた、外国輸入業者の信用調査結果などを、財団法人信用保険協会と通産当局の間にコンピューターを結んでオンライン検索を行うことが可能になっているようですけれども、このような情報ネットワークを結んで自治体等の窓口で検索できるようにするといい結果が出るかもしれない、PR効果も上がるんじゃないか、こういう構想についてはいかがですか。
  58. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) ただいま御指摘のとおり、このコンピューター化というのは、この事務合理化に今非常に役立っておるわけでございます。この保険の引受額の増大、件数の増大というのが過去十年来大変に大きなわけでございますが、人間の方はほとんどふやさないということで対応できたというのは専らコンピューター化を進めた結果でございます。ただ、別にそれに安住しておるわけでございませんで、コンピューター自体、ハードもソフトもどんどん進歩をいたしますし、私どももさらにこういう債務繰り延べに伴いまして、保険金支払いというような、従来割合に少なかった業務が急速にふえるというようなこともございまして、できる限りそのコンピューター化をさらに進めたいというふうに考えております。  それから、ただいまのお話のございましたバイヤーの信用調査等につきまして、輸出保険協会、さらには一歩進めて自治体と結ぶというような御意見でございますが、実はそこまではまだちょっと考えてなかったわけでございまして、まず第一歩をやってみてという感じでございますが、大変に貴重な御示唆でございますので、まず、何といいますか、第一歩のその次の問題として検討してまいりたいと思います。
  59. 福間知之

    福間知之君 私は、今後とも輸出を円滑に拡大さしていかにゃいかぬというお国柄でございますので、ぜひひとつせっかくのこういう研究と推進をお願いしておきたいと思います。  時間が切迫していますので、次に、特別会計の方に入りたいと思います。  輸出保険の支払いがカントリーリスクの急増から、例えば五十六年度は三百八十億円、五十七年度が六百三十億円、この五十八年度はどれくらい見込まれているのか。一方、保険料の収入の面では、五十六年度は三百三十億円、五十七年度は三百七十億円、ことしは、昨年四月からの保険料引き上げによりましてどの程度を見込んでおられるのか。さらに、五十八年度当初に約千四百億円の資金不足があったようですが、五十九年度は、場合によっては保険金支払いのために払底する可能性が考えられます。そこで、五十九年度中に起こり得る資金ショートに備えるために、今提案されている特別会計法を改正して千百四十四億円を財投から借り入れることにしているわけですけれども対応の仕方としては、資金の返済を必要としない出資、すなわち一般会計からの歳出によって現在の資本金六十億円を大幅に増大するというふうなこと、あるいは保険料の値上げという方法も考えられるわけでありますが、この五十九年度じゅうに予想される保険金支払いの急増、一方、準備金の急減、これに対して財投資金の借り入れによって一応対処するということにしたのはどのような考え方からですか。
  60. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) 数字の方だけお答え申し上げます。  五十八年度の保険金の支払いは、見通しといたしまして九百三十四億円、これに対応いたします保険料収入の見通しは四百二十三億円ということでございます。
  61. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) ただいまお答えいたしましたような、輸出保険特別会計におきます資金不足に対して、資金運用部からの借り入れに頼り、出資または料率の引き上げということを考えなかったのはなぜかという御質問に対しましてお答えを申し上げます。  先ほどもちょっと触れさしていただきましたように、債務繰り延べに伴う保険金の支払いというのが五十九年度で保険金支払いの約九割を占めるわけでございまして、これが輸出保険特別会計の資金繰りを非常に窮屈にしている原因でございます。ただ、この問題につきましては、保険金の支払いはいたしますが、相手国から返済計画に従って返済されました場合には保険特別会計に回収金として回収されるものでございます。したがいまして、単年度で考えますと保険特別会計の収支はマイナスになるわけでございますが、その回収期間まで含めた長期的な観点に立ちますと、現時点で、私ども判断では、輸出保険特別会計必ずしもマイナスになっていないというふうに判断をいたしているわけでございます。したがいまして、そういう限りにおきましては、当面、料率の引き上げによってこれをカバーするという考え方はとらずに、資金繰りの問題として処理をしたいという判断をいたしたわけでございます。それから、もちろん出資ということでその一部を補うことも可能でございますが、先生十分御案内のようなマイナスシーリングでの予算要求という段階になっておりますので、私どもとしては出資金の増額はお願いしたいという気持ちはやまやまではございますが、実際の問題として一般会計からの出資金の増加を最近時点におきまして実現するということはなかなか難しいわけでございます。ただ、輸出保険特別会計の基盤強化の観点からは、やはり中長期的な課題といたしましては出資金の増額ということもぜひやっていただかなければならない問題でございますので、当面の債務繰り延べに伴う保険金の支払い急増という事態を切り抜けました後の話として、ぜひこの問題は実現に向かって努力をしたいと考えております。
  62. 福間知之

    福間知之君 確かに、おっしゃるように、一概に私が申したようなことが適切かどうか、これは慎重に検討をしてみなきゃならぬかと思いますんで、今後の推移をまってまた考えてみたらいいかと思っております。  それから次に、カントリーリスクの高い国に対する輸出業者ほど保険利用のニーズが強いわけですが、そこで、その引き受け制限の弾力化と先ほど来も申しておりましたけれども通産当局においても今日までいろんな政策配慮を加えてこられたと思います。今、制限国が六十五カ国、先ほどこういうふうにお聞きしましたが、こういうリスケジュール国に対する引き受け制限、そういうものはもちろん今後も十分監視をしながら配慮されていくと思うんですけれども、この弾力化ということについて、そのほか多面的にいろんな配慮が必要だと思うんですね。一方において輸出はやはり何とか伸ばしていきたい、一方においてリスクはなるべく最小限にとどめたい、こういうふうな二律背反的な面があるわけですから、そういう点での総合的な御意見をお伺いしたい。
  63. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) ただいま御指摘のございましたように、保険引き受けの弾力化といいますのは、一方でリスクが高くなった場合の保険会計の健全化という観点と相反するわけでございますが、私ども、従来はかなり厳密な輸出保険の付保等につきまして運用をやってきたように思います。それが、先ほど来のお話の中に出てまいりますように、特定国の数にして六十五カ国程度、引き受け制限やっておりますのがそのうち二十カ国程度というふうに、かなり国の数がふえてきておりますので、そういう状況のもとで考えてまいりますと今までのような運用で果たしていいのかどうかという批判については十分これは耳を傾ける必要があろうかと思います。ただ、やはり何と申しましても保険は保険料率で保険金の支払いをするという収支相償の原則というのがございますし、お引き受けをして直ちに保険金の支払いをしなければならないような場合まで弾力化と称して保険の引き受けをするということもこれまたできないわけでございますので、いわば保険としての論理と申しますか、建前を崩さない範囲でどこまで現在やってまいりました運用をより機動的弾力的にでき得るかという二つの極めて難しい問題につきまして十分配慮をしながら、少しでも利用者の方々の御要望に応じられるような方向で考えてみたいというふうにあれしておりまして、今後部内で十分検討さしていただきたいと思っております。
  64. 福間知之

    福間知之君 関連しまして、リスケジュール国の増加に伴って支払いがふえておると、こういうことだと思いますけれども、この輸出保険特別会計の収支の状況というもの、とりわけその中でリスケジュールに基づく支払いの割合というのがわかっておればお尋ねしたい、最近の年度。
  65. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) ただいまの御質問の特にリスケジュールによる保険金の支払いというのは、五十七年度が四百四十億円でございます。五十八年度の見込みは七百三十億円、これが五十九年度になりますと二千五百億円近くになるんではないかという感じでございまして、先ほども申し上げましたが、保険金支払い全体に対する割合は五十七年度が七割、五十八年度が八割、五十九年度が九割というふうに増加する見込みでございます。
  66. 福間知之

    福間知之君 そういうリスクの増大に伴いまして保険の収支、損益と言うとおかしいですけれども、収支状況は大体今おっしゃった五十七年ごろから悪化をしてきているわけですか。
  67. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) 単年度収支で、キャッシュベースでございますが、赤字になったのは五十七年度がたしか、はっきり覚えておりませんが、十六年ぶりか何かでございまして、六十億円の赤字になったわけでございます。本年度の見込みが三百億円弱というような赤字になるかと思います。  ただ、若干繰り返しになりますけれども、こういう赤字というのはいわゆるキャッシュフローといいますか、そういう資金繰り上の赤字でございまして、債務繰り延べ措置、いわゆるリスケによってその支払った保険金というのは相手国との約束によりまして将来金利を付して回収されることになっておりますので、中長期的な収支のバランスというのはとれるというふうに考えております。
  68. 福間知之

    福間知之君 これは後でいいですけれども、いただいたこの資料にも会計全体の収支状況が年度別にこうありますけれども、今触れられたようなリスケジュールによる支払い、五十七年度四百四十億、五十八年度七百三十億、五十九年度二千五百億と、こういうふうになって、そのウエートが七〇、八〇、九〇と示されましたけれども、こういう表は余り出したくないわけですか、出てますか。
  69. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) 過去のものについては構わないと思います。  それから見通しは、先ほど申し上げましたとおり私ども見通しは、できる限りのことをしておるわけでございますが、むしろ債務国側の問題もございまして、これはなお動き得る数字でございます。つまり、ある国によりましてはパリ・クラブで合意をいたしまして、これだけは繰り延べてもよろしいといういわば権利を獲得したにもかかわらず、その部分についても払ってきたというような国もございまして、なかなかあらかじめぴしっと見通せるという数字ではございません。
  70. 福間知之

    福間知之君 まあ今おっしゃられたようなこともあるでしょう、生き物ですから、一概に想定したとおり事態が進行するわけでもありません。いい面は結構なんですけれども、先ほどお話しのように今年度は二千五百億というかなり膨大な額に上るようですから、これからの運用について十分考慮をしていかなきゃならぬと思います。そういうリスケジュール国の増大という悪い傾向が出てきているわけですけれども、収支悪化に対しまして、国別の引受方針やあるいは地域差料率などの設定等によって機動的に対応してこられているように思うんですけれども、今後さらに新しい視点での対処策は果たしてどうなのかということ。  もう一点。これは支払い準備の問題ですけれども、支払い準備である異常危険準備金ですか、これは五十六年中に六百三十四億から五百七十五億に減少している。引受責任残高に対する比率、これは支払い準備率、したがってこれは〇・三%に低下しているようでございますが、五十三年度以降のこの責任残高、異常危険準備金、準備率等はどういう傾向でございますか。
  71. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) 異常危険準備金だけを取り出した数字というのをちょっと申し上げますと、五十五年度の六百三十三億円、パーセントにいたしまして〇・四%というのがピークでございまして、五十六年度五百七十四億、〇・三%、それから五十七年度が四百八億の〇・二%ということになりまして、本年度の見通しというのは、もう〇・〇一%、ほとんど二十八億というように極めて少ない数字になる見通してございます。
  72. 福間知之

    福間知之君 最初の質問の収支の悪化に対する対処策につきましてはいかがですか。
  73. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) 失礼いたしました。  初めの御質問の、例えばカントリーリスクに対してどういう対応をもって今後進めていくかというような御質問であったかと存じますが、現在私ども、先ほど局長の方からも御答弁申し上げましたが、できる限りのことはやっておるつもりでございますが、やや保険の引き受けについてちょっと厳し過ぎるというような御批判といいますか、御要望が民間から非常に強いわけでございます。で、もう少し端的に俗な表現で申し上げますと、保険料はもっと高くでもいいから受けてくれないかと、こういうような話があるわけでございますが、私どもといたしましては、従来非常に難しいんではないかというふうな地域に対しましても地域差料率というものを従来よりもさらに幅を広げまして、現在ABCDEFと六段階に分かれておりまして、その一番リスクの小さいところからリスクの高いところまでの間に既に七倍半の差をもってこの地域差料率というのを運用しておるわけでございますが、さらにこれを大きくと申しますか、リスクの高いところには高い地域差料率というのを適用してできる限り要望におこたえしていく。他方、私どもの収入もそれによってふえるというような運営を考えてまいりたいと思っております。
  74. 福間知之

    福間知之君 それはそれでお伺いして大体わかりました。  先ほどの準備金のやつに関連しまして、引受責任残高が、調査をしたところによると、昭和四十二年当時ほぼ四兆円程度だと、そうですね。それが今や二十兆円をオーバーしている、こういうことのようであります。こういう状況を踏まえて、保険運営基盤の強化を図るために当局が去年四月から保険料の大幅値上げを実施したわけでございますが、この異常危険準備金が集計責任残高のしかし一%にも満たない、先ほどのお話のとおり一%にも満たないというのは、利用者の側から見れば少しこれは信頼性に問題があるんじゃないか、余りに厳しいんじゃないか、こういうことだろうと思うんですね。もちろんその準備率に絶対的な水準、基準というものがあるわけじゃございませんけれども、これからの運営面で責任残高の何%ぐらいの準備率が妥当と考えていられるかということを一つ伺いしておきます。  それから、時間が切迫してますので、あわせましてもう一点は、先ほどちょっと申し上げたいと思ったんですが、質問の関連で後回しにしたんですけれども、いわゆるIJPC、イラクから爆撃を二月ぐらいから受けてますわね、これについて保険金の適用という側面からはどういうふうに考えるかということ。  それから、最後に大臣にお伺いして質問を終わりたいんですけれども、この保険の制度のこれからの考え方でございますけれども、今まで議論をしてまいりましたように、カントリーリスクの増大はこの制度の運用面でも非常に今シビアな状況を提起してきております。そこで、保険制度の基盤強化というために二つの方向性が考えられるんじゃないかと思うんです。一つは、危険度の高い国の保険引き受けを一層厳しく抑制して保険会計の健全化を図っていくという、いわば言葉をかえれば縮小均衡の姿勢で対応することであります。それからもう一つは、リスクの高い国は保険料率を高くする、しかし保険引受制限は行わない、要するに拡大均衡の立場で対処していく。一つ考えとしてこの拡大均衡の方向で保険運用をすることが保険利用者のニーズにこたえる道ではないか、こういうふうな考えがあるんですが、大臣はどのようにお考えでしょう。  以上三つの点、あわせて御答弁を願います。
  75. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 準備金の準備率につきましてどの程度が適当と考えているかという御質問でございますが、五十七年に輸出保険審議会が当面の輸出保険運営のあり方についてという意見具申をしていただいてますが、その中では、中長期的な目標としてやはり一%程度を目標にして準備率の向上に努めるべきではないかということをおっしゃっております。我々もそれを目標にいたしたいとは思います。ただ、先ほども御答弁申し上げましたように、当面は保険金の支払いが増加をし、そのために借り入れをしなければならぬという状況でございますので、この段階で一%まで持っていくということは全く不可能なことに近いと思いますので、こういう事態が乗り越えられました段階ではなるべく早くこの目標の一%になるようにいろいろと努力をしてまいりたいと思っております。  それからIJPCの問題でございますが、これはまだ保険契約者の方から申請が出ているわけではございませんので、具体的な問題につきましての答弁は差し控えさしていただきたいと存じますが、ただ一般論として申し上げますと、海外投資保険の場合には相手国政府によって収用をされるとか、それから戦争によって事業の継続ができないとか、それから送金が停止されるとかというような事態が起こった場合に初めて保険事故となり、保険金の支払いが行われるという状態でございます。IJPCにつきましては、先生指摘のように、サイトに対して爆撃を受けたわけでございますが、それで損害が生じたから直ちに海外投資保険の事故になるというものではございませんで、そういった戦争による爆撃等の事由によって例えば一定期間事業の継続ができなくなるというようなことが生じまして初めて事故になる問題でございますので、今の段階で爆撃があったというだけで保険の問題が出てくるということではないかと思います。
  76. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) カントリーリスクが最近非常に増大しておるのでありますが、しかし貿易の健全な発展のためには輸出保険の果たす役割は非常に重大であるわけでございます。したがいまして、福間委員いろいろ御意見ございますが、その引き受けにつきましては、独立採算の原則に立脚しながら、極力長期的な観点を踏まえて的確なカントリーリスクの評価に努めることによりまして、私どもは的確に、弾力的にこれに対応してまいりたいと存じておる次第でございます。
  77. 福間知之

    福間知之君 終わります。
  78. 石井一二

    ○石井一二君 ただいま時計の針が十二時七分を指しておりますが、私の持ち時間は約三十分と理解いたしております。  御承知のごとく、我々はただいま輸出保険法及び輸出保険特別会計法の一部改正案について論議をいたしておるわけでございますが、その内容は配付されております資料にも書かれておりますごとく、そう間口は広くないわけでございます。具体的には前者については輸出代金保険並びに輸出手形保険のてん補率の引き上げ及び古くなった二つの保険を廃止するということ、また輸出保険特別会計法の一部改正案については一定限度内での借入金を認める、こういうことにすぎないわけでございます。ただいま福間委員より極めて格調高い、また広範囲に及ぶ質疑が二時間にわたりましてなされました。私が予定通告をいたしておりました内容にも極めて多く重複をいたすところでございます。したがいまして、私は若干内容を変えまして、なおかつ質疑通告をした範囲を逸脱しない範囲で私の持てる時間を十二分に活用をさしていただきたい、そう思うものでございます。御協力をよろしくお願い申し上げるものでございます。  さて本論でございますが、一昨日に大蔵省は五十八年度の通関実績なるものを発表いたしました。輸出入のバランスとして二百三十三億ドル余の黒字ということもそこに書かれております。福間委員の御質問の冒頭に通産大臣より最近の我が国貿易情勢等における御所感をお聞きになったわけでございますが、私は特にこの大蔵省の発表された通関実績というものを基礎にして、五十八年度以降の輸出入に関する特徴について大臣自身がどのように御理解なさっておるか、この発表がつい一昨日のことでございますので、この時点で一応改めて聞いておきたい、そう思うものでございます。
  79. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 少し数字の問題について私から御答弁をさせていただきたいと思います。  先生今御指摘のように、八三年度の通関の輸出は前年度比一一・七%増でございました。それで、総額は千五百二十六億ドルでございました。これはこれまでのピークでございました五十六年度の数字を上回るということでございますので、私ども当初輸出が増加するということは期待いたしておりましたけれども、ここまで増加をするというような感じは持たなかったわけでございますが、米国経済等の回復海外在庫の調整というようなことによりまして、輸出が当初想定以上に伸びたという状況でございます。  一方、輸入も当初以上に増加をいたしまして、前年度比で一・六%、総額千二百九十三億ドルでございます。輸入につきましては、前年度水準まで石油価格低下がございますのでいかないんではないかということでございましたが、年度を終わってみますと前年度比一・六%増ということで、輸入もふえておりますが、輸出の伸びが大きかったために、先ほど先生が御指摘のように、通関の貿易収支額では二百三十三億ドルの出超ということに相なったわけでございます。
  80. 石井一二

    ○石井一二君 ただいまの御答弁は輸出入の数字を申されたわけでございますが、私は全体から見る特徴についてどのように踏まえておられるか、例えば地域的にどうであるとか、商品別にどうであるとか、そのような答弁を大臣に期待したわけでございます。後で帰って詳しく読んでみますので、一たん今は結構でございます。  さて、私が理解いたしますところ、特にアメリカとの関係等はございますけれども、今後我々が目を向けていくべき方向はどこにあるか。貿易立国日本でございますから、どうしても必要な物を買うための輸出の増、輸出の強さということは避けて通るわけにいかないわけでございますが、御承知のように昨今極めて激しい貿易摩擦に直面をいたしておるわけでございます。日本が余り輸出をし過ぎる、そういうことでございますが、私は、このような前提のもとに建設輸出とプラント輸出については今後大いに目を向けてみるべきであろうと思うわけでございます。なぜならば、これらの輸出はいわばソフト分野の輸出というものがコンサルティングあるいは技術等を通して含まれておる。現地における人々を雇用する、また現地において資材を買う、こういった意味貿易立国日本という立場を存続しつつ、なおかつ世界経済の発展に寄与できる、貿易摩擦の解消にも一部なる、国際協調もできる、そのような理解をいたすものでございます。  私は、かかる観点から、今回、今言ったような線に基づいて、なお我が国の輸生活動が活発になるためのこの一部改正案が上程されておる、そのように理解をしておるわけでございます。  基本的なプラント輸出と建設輸出に関する御所見をできれば大臣から、あるいは局長からごく簡単にお願いしたいと思います。
  81. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) まずプラント輸出でございますが、先生指摘のように、プラント輸出は従来から摩擦の生じない輸出であるというふうに言われておりまして、それは御指摘のように発展途上国の経済発展に役立ちますと同時に、その中には我が国からのソフトの部分、技術というものが多く体化されている、相手国と競合しない、こういう意味におきまして摩擦の生じない輸出ということで、これはぜひ伸ばしていきたいと思っているわけでございますし、同じように建設輸出につきましても、プラントと一体になって行われる場合ないしは建設工事独自で行われる場合もございますが、相手国のインフラストラクチャーの整備等に効果のある問題でございますし、それにはやはり御指摘のようにソフト部分というのが非常に多く含まれておるわけでございますので、こういうものはやはり摩擦のない輸出という観点から、ぜひとも私どもも伸ばしていきたいと思っているわけでございます。
  82. 石井一二

    ○石井一二君 今摩擦のないソフト分野の輸出を大いに伸ばしていきたい、そういった御所見でございました。またこれまでの御努力は私は多とするものでございます。  例えば税制におきましても、技術輸出所得控除の存続等も図られておりますし、もちろん今回のこの改正案もその一環であろうと解釈をいたすわけでございます。今回のようにてん補率が引き上げられたり、一見話を聞いておると非常によくなっておるように感ずるわけでございますが、先ほど福間委員も御指摘なさいましたように、引受制限が厳し過ぎると、結局結果として利用者というものがそれを十分に活用することができない、こういった悲劇が起こってくるわけでございます。  役所は一言こういったことに対してどう思っておるんだといういろんな改正点あるいは要望事項を指摘いたしますと、専門家でございますから、極めて懇切丁寧ないろいろ説明があるわけでございますが、民間民間でいろいろとこういった問題についての要望等苦慮しておる面もあるわけでございます。  例えば、私はこここに輸出保険制度改善基礎調査研究会報告書なるものを持っております。発行社は財団法人輸出保険協会輸出保険制度改善基礎調査会でございまして、五十八年三月三十一日付の膨大なる書類でございます。また、それ以外にも、イラク、インドネシアを中心とした国際開発ジャーナルと呼ばれる雑誌の中にある民間企業から見た輸出保険制度の改善点、こういった論説もあるわけでございますが、読んでおりますと、一見極めて妥当な多くの要望がなされておるように見えますけれども、先ほど来福間委員との質疑を聞いておりますと、その論についても役所は役所なりの御所見もあるというような感じがいたします。  私は、そういった観点から、運用の厳しさかげんについて、特に政府与党という立場から、もう一度厳し過ぎるということがないのかどうか、その辺の御所見を改めて確認をしておきたい、そう思うものであります。
  83. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 世界の経済情勢変化に応じましてカントリーリスクというものが非常に増大いたしておるところでございますけれども、やはり貿易の健全な発展ということを考えますと、輸出保険の果たす役割は重大なことであることは言うまでもございません。  石井委員の御指摘あるいは先ほどの福間委員の御指摘、いろいろ御意見等ございますけれども、しかし引き受けにつきましてはあくまでも独立採算という原則に立脚しなければならないのが私ども立場でございます。と同時に、極力長期的な観点を踏まえながら、的確なカントリーリスクというものを評価していく。評価した上で機動的、弾力的にこれに対応していくということを我々の方針といたしているわけでございます。
  84. 石井一二

    ○石井一二君 この種の問題を論じておりますと、極めて多く出てくる言葉がカントリーリスクという言葉でございます。カントリーリスクの評価が結局保険料率を決め、引受停止国あるいは引受制限国等を決めるということでございますが、私はカントリーリスクというものがそういった重要な役割を占めれば占めるほど、カントリーリスクとは一体何ぞやということをお聞きしたいわけでございます。  なぜならば、御案内のごとく、極めて多くのカントリーリスクというものがあるわけでございます。  例えば、BERIと呼ばれるもの、BI社の手になるもの、SRI――これはスタンフォード研究所のものでございます。また、アメリカの各銀行がバンク・オブ・アメリカ、チェース・マンハッタンを初め、もっともらしくそれぞれが違った角度からカントリーリスクを発表しておる。一々挙げておればきりがございませんが、あとIPSとかIIとか、その他いろいろ略語でございますが、米国製のカントリーリスクが発表されておる。  また、日本におきましても、日本公社債研究所の手になるもの、世界経済情報サービスの手になるもの、その他あるわけでございます。  評価の方法等もそれぞれ違うようでございますが、まず政府は、カントリーリスクを評価する上においてどのカントリーリスクを基準にして、あるいはどのような方法で独自のカントリーリスクというものをつくられていろんな判断をなさっておるのか、カントリーリスクたるものは何ぞやという観点から、政府の基本的な御所見をまず聞いておきたいと思います。
  85. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) 最後に御質問のございましたカントリーリスクの定義と申しますか、これ、まあいろいろと難しい説をなすものがございますが、非常にわかりやすく申し上げれば、その相手――まあ輸出をいたしますと、その輸出代金が払ってもらえないということがリスクの一番大きなものになるわけでございますが、その払ってもらえない原因の一つが相手国のバイヤー、取引の相手先が、例えば破産をするとか、あるいはそういうその他の事情によって払ってこないというのが一つ、と。それからもう一つは、相手国のバイヤーが十分に払った場合でも、政府が何らかの理由によって、それを交換可能通貨にかえて払うことができなくなるという場合のリスクと二つございまして、後者を指してカントリーリスクと言うわけでございます。ただいま典型的な例として輸出取引を申し上げましたけれども投資についても同様でございまして、例えば投資の収益あるいは投資の元本を返してくるかどうかという点は、まさにカントリーリスクにかかっておるわけでございます。  それで、ただいま先生がいろいろとお調べになって、その例をお挙げになりましたけれども、非常に、最近のカントリーリスクの高まりに対応いたしまして、米国を中心といたします海外でございますとか、あるいは日本でも、先ほどお話のあった公社債研究所でございますとか、あるいは世界経済情報サービスというようなところが、それぞれカントリーリスクにつきまして、それぞれの物差しをもって評価を下しているわけでございます。  ただ、例えば輸出をいたします場合とか、あるいはその国に投資をして、その投資の発展あるいはそのリターンを見るとか、あるいは同じ輸出投資にせよ、安定性に重きを置いて見るとか、あるいはそこの成長性に重きを置いて見るとかというようなことで、非常にその見方が違うわけでございます。  ちょっと一例を挙げますと、この世界の中で最もこのカントリーリスクの小さいといいますか、成績のいい国を上からこうずっと並べまして、そのトップ二十をとってみますと、例えばその大部分の、先ほど先生のおっしゃったII――インスティテューショナルインベスターというところの調べでは、OECD以外の国はわずか三つしか入ってないわけでございます。まあそのほかでも大体六つとか五つとか、世界のトップ二十というのは大体OECDの先進国が占めておるわけでございますが、そういうのはその安定性を中心とした見方でございます。ところが他方、その成長性といいますか、そういうものを中心とした見方で評価をするというところになりますと、逆に二十のうちの十九までがOECDメンバー外であるというような例もございまして、今いろいろ申し上げたのは、非常にそのカントリーリスクの評価というのは、その評価する立場によって、評価する機関によって違うということでございます。  それで、私どもがどういうふうなやり方をしておるかという御質問でございますが、私どもは、ただいまお話のあったような民間でやっておるもののほか、在外公館、ジェトロ、それから私どものまあ同業者と申しますか、世界の同じような輸出保険機関というようなところの情報、それから私どもの保険の日々の営業から上がってまいります情報、そういうものを全体的に総合的に内部で検討いたしまして、場合によっては都外者の有識者と意見交換をいたしまして、カントリーリスクの判断をやっておるわけでございます。
  86. 石井一二

    ○石井一二君 要望いたしておきますが、極めて重要な判断かと思いますので、十分慎重かつ精力的な活動のもとに判断をしていただきたいと要望いたしておきます。  ところで、カントリーリスクに関連してここに私は五十九年二月二十七日付の日本経済新聞を持っておるわけでございます。「輸出保険停止は二十五カ国」という見出しで、「カントリーリスク政府指針」「政府が諸外国の信用度(カントリーリスク)をどのように評価しているかを表す輸出保険の「国別引き受けガイドライン(指針)」の全容が二十六日、明らかになった。」云々と書いてあるわけでございます。ところが、そこの中に書いてある引き受け制限国とか引き受け停止国というものの数は、先ほど来局長あるいは審議官が御答弁になっておる数と大分違うわけでございますけれども、またただいま私がお聞きいたしましたカントリーリスクに対する御評価等を聞いておりましても、こういったものはそうはっきりと国の数等が出るはずはないというような感じもいたすわけでございます。ここら辺あたりはどのような感じのマスコミ発表なさっておるのかちょっと聞いておきたいと思います。
  87. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 各国別のカントリーリスクを我々がどう判断しておるかということにつきましては、対外的な関係等もございますので従来から一切公表はいたしておりません。御指摘新聞記事の出所につきましては定かではございませんが、私どもが出したものではございませんし、したがってそういう意味におきまして、先生指摘のように、先ほど御答弁申し上げたような特定国の数、それからその中で引き受け制限をしている国の数等につきましても違うわけでございます。
  88. 石井一二

    ○石井一二君 時間の関係で先を急ぎたいと思います。  輸出保険特別会計の内容について先ほど福間委員からの御質問の中で出資に対する論議が若干ございました。出資の必要性は認めるけれども局長の御答弁によりますと、マイナスシーリングでの予算の要求極めて難しい状態にあるという御謙虚な声も聞かれたわけでございます。  ちなみに過去の出資の足取りを見ておりますと、昭和二十五年、二十六年、二十七年に十億円ずつ、四十二年に三十億、それから十七年間の今日まで全然さわっておられない。私はマイナスシーリングのこの時代においてもその輸出保険の果たす役割の大きさ、また貿易面における我が国の地位、先ほど来言われておりますようなソフト関係輸出の重要性ということを考えた場合に、私は、先ほど来御答弁にありましたような料率の引き上げであるとか、地域差料率をさらに考え直すとか、一時借入金も結構でございますけれども、今のこの時代に六十億という余りにも我々が扱って論じておる金額から見れば小さな基本的な出資金というものについて再考すべきであるという強い意見を持っているわけでございまして、再度この点について、将来どのような方向で考えていかれようとするのか、全くその意向がないのか、マイナスシーリングがそれほど思いのか、そこらを含めて御答弁を願いたいと思います。
  89. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 先生指摘のような経過で現在の資本金の六十億が出ておるわけでございますが、その後の輸出保険の引き受け規模の拡大考えますと、六十億円という出資金は決して十分なものではないということは私どもも十分認識をいたしております。できますればこの出資金の増額ということをやりたいわけでございます。むしろ今になって振り返って考えますと、もう少し収支採算のいい段階でも、それから予算の制約が現状時点ほど厳しくなる前の段階でやっておくべきではなかったかという反省も出るわけでございますが、これはいわば後知恵みたいなものでございまして、これからの問題といたしましては、私どもはやはり出資金の増額につきましては基本的にはぜひ実現をしたいと思っておりますので、いろいろ困難な情勢はございますけれども、その過程におきまして機会をとらえてそういう方向で努力をしていきたい、かように考えております。
  90. 石井一二

    ○石井一二君 極めて実務的な問題に入っていくわけでございますが、海外建設に関する金融について若干伺っておきたいと思いますが、OECDガイドライン、すなわち八・〇%かと思いますが、これによりますと種々の制約があるということが言われるわけでございます。例えば我が国の輸銀協調融資の場合は、長期プライムレートプラス〇・一%になっておる。その結果、公的金利が市中金利を上回るという逆転現象が生じておるようでございます。裏を返せば、OECDガイドラインに従って建設輸出をやっておったならば、競争に勝てない、生き残れないんだというのが業界の声でございます。今後このような逆転現象を解消し、少なくとも市中金利と同水準まで協調融資の金利を下げる方法を検討する意向はないか。特に実務的な方法として現場の声を聞いてみますと、スイスの転換社債を発行するんだとかいったことの声も聞かれます。それで、OECDガイドラインがあるからそれをどう考えておるんだということを聞きますと、あれには罰則がないんだというのが現場の声でもございます。この辺の御所見を承っておきたいと思います。
  91. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 最近我が国金利水準低下をいたしておりまして、その関係でOECDのガイドラインを守っているとなかなか条件の面で競争国のオファーと対抗できないというようなお話を我々も十分承っております。この点につきましては、OECDのガイドラインそれ自身をできるだけ我が国金利の実勢に近いところで決めてもらうという努力が必要かと思います。このOECDのガイドラインの問題につきましては、ときどき関係国が集まりまして見直し等もやりますので、そういう機会をとらえて、できるだけこの条件の我が方にとっての有利な改定ということに努力をしてまいりたいと思っております。それ以外のいろいろな問題、例えば金利の安い民間の資金だけで調達をして輸銀の資金は使わないというような問題も最近ぼつぼつ出かかっております。こういう事態は必ずしも正常な事態というふうには考えられませんので、こういった事態につきましては、いろんな角度から是正のための努力をしてまいりたいと思います。
  92. 石井一二

    ○石井一二君 海外建設工事のための保険制度に関連して技術提供等保険というものがございます。先ほど福間委員が御質疑になりました。五十七年度で約三千億の実績、五十八年度はそれにも倍増せんという勢いである。やや御満足のような局長のお声も聞かれたわけでございます。片や、この保険に付加される包括特約というものの利用度が極めて低いという指摘も一都にはあるわけでございます。ちなみに、私はここにトップ・インターナショナル・コントラクターズという世界二百五十社ランキングの建設輸出の実績を持っておるわけでございます。日本で一番上位にある会社が日揮、これで十三位、日本で第二番目の千代田化工建設で二十五位、日本で第三位の神戸製鋼で三十六位、その他熊谷組、東洋エンジニアリング、鹿島建設等々が続いておりますけれども我が国の持てるノーハウの力、財力、国力等から見て極めて低い位置に低迷をいたしており、その裏には、建設工事関係の保険というものが今私が申したようなものではまだまだ不十分であるという現場の声もあるわけでございます。私は、かかる観点からいろいろ省におかれてもそのような御研究もなさっておると思うわけでございますけれども、具体的に、あと新たな要望として、どのようなものが取り残されておるとお考えになっておるか、省としてのお考えを聞いておきたいと思います。
  93. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) ただいま御質問のような要望があることは伺っております。ただ、私どもといたしましては、四十六年の制度創設以来二回にわたってその制度の改善を行っておりまして、私どもは、一部を除いて、海外建設工事に伴うリスクのほとんどの分野がカバーされるに至っておるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、その具体的な要望で、私ども理解しておる点について簡単に申し上げますと、一つは引受制度の緩和という点でございます。これはまさに建設工事のみならず、プラント輸出その他全体でございまして、先ほどからいろいろと御質問もあり、また私どもからも、弾力的になるべく保険の枠内で許す限りやっていこうということはお答え申し上げているとおりでございます。  一つは船積み前ソフトの保険に対する付保でございまして、これも先ほどお答え申し上げましたとおり、非常に技術的な問題点があるので検討をしておるという点でございます。  それから第三がリース設備に関する付保の問題でございますが、これも技術的な問題がございまして、目下検討中という点でございます。  最後に仲裁条項につきましてこれをもう少し要件を緩和してもらいたいという点がございまして、私どもこれもできる限り弾力的に対応したいと考えております。
  94. 石井一二

    ○石井一二君 時間の関係で最後の質問に移りたいと思いますが、ただいまの御答弁聞いておりますと非常に自信を持っておられるようでございますが、事建設輸出に関してはやはり建設省が本職でございます。ちなみに私はここに建設省計画局長の私的諮問機関である海外建設基本問題検討会の手になる「海外建設振興の基本的方向」という報告書を持っております。内容も見てみましたけれども、まだまだ輸出保険でカバーされるべき将来的改正点も多いわけでございまして、通産省はこの保険はやっておるんだという自負は結構でございますけれども他省ともよく連携をとって前向きに考えていただきたいということを要望いたしたいと思います。  さて、最後の質問でございますが、他省との関連という面で文部省に一点お聞きをしておきたいと思うわけでございます。  冒頭来申し上げておりますように、今後我が国輸出の方向としてはプラント輸出、建設輸出等が極めて大事になってくると、そう考えられるわけでございますが、これらの仕事は常に長期間海外に滞在せざるを得ないという宿命を伴うものでございます。そのような場合に義務教育の課程にある子女をお持ちの社員も多いわけでございますが、私は現地における効率ある仕事ができるためには生活環境とやはり士気ということが極めて大事であろうと思うわけでございます。特に、昨今は海外在住子女の数は年々増加傾向にあるわけでございますが、日本人学校の施設の建設であるとか、教師の派遣であるとか、現地日本企業への負担の割り当てというものが強制的で多過ぎはせぬかとか、いろんな心配もあり、また現にそのような声もあるわけでございます。かかる観点から文部省におかれましては、外郭団体の一つである海外子女教育振興財団を初めいろいろな努力をされておるようには聞いておりますけれども、この辺の基本的な考え方、行政の状況等についてごく簡単に御答弁を願えればありがたいと思います。
  95. 草場宗春

    説明員(草場宗春君) 先生指摘のありましたとおり、近年海外に在留する義務教育段階の子供たちはふえておりまして、昨年現在三万五千名に達しております。文部省、外務省が協力いたしましてこれらの子供たちに日本国民としてのふさわしい教育と、もう一つ外国に在留する間に国際性を養う教育と、そういったことを目指しまして日本人学校をつくりましたり、あるいは現地の学校に通っている子供たちに対しては補習授業校等を設置いたして各種の施策を行っております。しかしながら、文部省、外務省の施策でも必ずしも行き届いた施策にはなっていないのが現状でございます。そういう観点から特に民間からの御協力をお願いいたしまして、具体的には御指摘のありました財団法人海外子女教育振興財団が、例えば新しく校舎を建設するときは、日本国内において関係の企業等から御寄附を募集するといった協力をお願いしているわけでございます。基本的には政府レベルと民間レベルが分担、協力し合いながら海外在留子女の教育について今後とも努力していきたいと考えております。
  96. 石井一二

    ○石井一二君 時間の関係で終わらざるを得ないと思いますが、ひとつ前向きなお取り組みを要望いたしておきます。  どうもありがとうございました。
  97. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後三時まで休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      ―――――・―――――    午後三時五分開会
  98. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  輸出保険法及び輸出保険特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  99. 田代富士男

    田代富士男君 世界経済も昨年あたりからようやく回復の兆しを見せ始めておりますけれども、大臣も御存じのように、いまだ跛行性があるとはいえ先進国経済には明るさが増してきたということはお認めになっていらっしゃることじゃないかと思います。しかしながら、その一方では持続的回復を阻害する懸念材料といいますか、御承知のとおりに発展途上国の累積債務が増大する傾向にあるわけなんですが、こういうところでカントリーリスクの高まりというものは従来にない激しいものになってきつつあるのではないかと思うのでございます。こういうような情勢のもとで、午前中から審議されております輸出保険制度の担う役割というものはますます重要になってまいりますし、その機構の充実を図ることは急務ではないかと思うわけでございます。  こういう立場から私は質問をしてまいりたいと思いますが、まず第一番目に、最近パリ・クラブで債務返済の繰り延べ、いわゆるリスケジュールに合意する国が急増しているということを聞いておりますけれども状況はどのようになっているのか。またリスケジュールの合意までに至ってないが現在申請中である、また保険の引き受けを制限しているというのはどのくらいの数に上っているのかお答えをいただきたいと思います。
  100. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 先生お尋ねのございましたまずパリ・クラブにおきまして我が国が何カ国に対して現在リスケジュールに応じているかということでございますが、現時点におきましては、我が国は十五カ国につきましてリスケジュールに応じている状況でございます。なお、現在の段階ではまだパリ・クラブの合意には至っておりませんが、三カ国ほどはパリ・クラブでの債務繰り延べの要求をいたしている状況にございます。その上、確定的な国の数は申し上げるわけにいきませんが、なおそれ以外にも数カ国がパリ・クラブの開催を求めて手を挙げてくる状況にあるのではなかろうか、かように。考えております。  そういう状況の中で輸出保険の引き受け制限等についてどうなっているかという第二番目のお尋ねでございますが、債務累積国で債務繰り延べを国際的に合意をしているような国のみなりませず、経済状態が問題になっておる国につきましては、輸出保険はやはり通常の場合に比べてリスクが大きくなっているという判断のもとで幾つかの形で引き受けにつきまして制限的な運用をいたしておりますが、そういう国を私ども特定国と称しておりますが、現在特定国の数は六十五カ国になっております。その六十五カ国の中で、完全に輸出保険の引き受けをストップをしております国につきましては約二十カ国というのが現状でございます。
  101. 田代富士男

    田代富士男君 ただいま御答弁いただいた中で、合意に達している国が十五カ国、それから要求というか申請を出そうとしているのが三カ国、また、開催を叫んで参加しようとする国が数カ国これにあると。それから保険の引き受け制限をしている国、特定国が六十五カ国である、その中身につきましても、ストップの国が二十カ国ぐらいある、このように見てみますと、世界全体の半数に及ぶ国に対しまして、保険の引き受けを制限するという、言うなれば、これは異常な状態だと考えざるを得ないわけでございます。また、今後このカントリーリスク発生の見通しをどのように見ていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  102. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 今後のカントリーリスクということでございますが、むしろ、今後の発展途上国の債務累積問題、どういうような状況になっていくのかという観点からお答えを申し上げたいと思います。  世銀の調査によりますと、昨年末の発展途上国の対外債務の累積額は八千百億ドルというふうに言われておりまして、八二年末に比べますと、約五百億ドルほどふえておるようでございます。こういうような状態にございますが、最近では国際的な先進国間の協調、それに国際金融機関のこういった問題に対する積極的な措置がとられました結果、当面危機的な状況は回避されたというふうに私ども承知をしております。例えて申しますと、非産油発展途上国の経済成長率は、八二年で〇・二%ぐらいで非常に低かったわけでございますが、八三年には一・九%ということで成長率も高くなっておりますし、経常収支赤字幅も八一年以降八三年まで改善に――まだ全体赤字ではございますが、赤字幅が小さくなるということになってきておりますし、それから、デット・サービス・レシオと申しますか、毎年の対外債務の元本、利子の返済額と財、サービスの輸出額との比でございますが、これも八二年に二四%ぐらいで非常に高かったわけでございますが、八三年にはこの比率が二〇%を割るような状況になってきておりまして、危機的な状況は避けられ、まあ、若干改善に向かっているということであろうかと思います。ただ、長期的に見ますと、やはり世銀のレポートなんかによりますと、一九九五年段階には債務累積額の総額は二兆ドル近くにもなるというふうに言われておりますので、先行きについて、完全に楽観することはできないと思いますが、繰り返すようでございますが、危機的な状況は何とか回避できたと、これからはさらにこの問題の解決に向けて各国間が協調をして当たり、また、発展途上国についてはその経済運営について自助努力が求められる、こういう状況にあるのではないかというふうに考えます。
  103. 田代富士男

    田代富士男君 債務累積の問題がどうなるかということが一つの大きな問題であるというお答えでございまして、実績からいくと、八千百億ドルが八二年度では五百億ドルも増加する傾向であって、今後ますますふえていくというこういう実態が出ているわけでございますが、それに伴いまして、最近の保険金の支払いの状況というものはどうなっているのか、お答えいただきたいと思います。
  104. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) お答え申し上げます。  昭和五十五年度から申し上げますと、昭和五十五年度が二百二十億円、昭和五十六年度が三百七十六億円、五十七年度が六百二十七億円、五十八年度は、見込みでございますが、九百三十四億円という数字でございます。
  105. 田代富士男

    田代富士男君 ただいまの御説明のとおりに、五十五年度が二百二十億円、そして五十六年、五十七年、八年と、これで見ますと、五十八年度だけでも見ますと、対前年度比で五〇%以上伸びているわけなんですね。このような保険金の支払いの急増の状況下では、輸出保険の引き受け態度というものは一層厳格になるのではないかということが心配されるんですけれども、この点についてはどうですか。
  106. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) ただいま審議官からお答え申し上げましたように、単年度での保険金の支払い額はこのところ急速に増大しておりまして、単に年度収支での輸出保険特別会計の支払い超過額というものも大幅なものになってきておりますが、このうち、債務繰り延べに伴う保険金の支払いと申しますのは、返済計画に従って対象国が返済をしてまいりますと保険会計には回収金として回収されてまいりますので、長期的に考えますと輸出保険の収支採算はバランスがとれていると、当面の資金繰りをどうつけていくかということが課題になっているというふうに私ども考えているわけでございます。  したがいまして、私ども保険の運用に当たっております者は、単年度の保険金の支払いが多くなったからと申しまして、それがために保険の引き受けというものを厳しくしているという感じはないわけでございますが、ただ、先ほどお答え申し上げましたように、何らかの格好で保険の引き受けが制限されております国の数が非常に多くなっておりますので、保険契約者の側から見ますと、輸出保険自身が、カントリーリスクがふえてきているにもかかわらず非常に引き受けが厳しくなってきているんじゃないか、こういうお感じをお持ちなのではないかなというふうに考えているわけでございます。
  107. 田代富士男

    田代富士男君 今のお話のとおりに、何らかの形で制限がとられているようなそういう国の数がふえているからこういうことが心配されるのではないかと思うけれども、そういうことはやってないということでございますけれども、では、保険引き受けの基準についてはどのようにとり行っていらっしゃるのか、御説明をいただきたいと思います。
  108. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 保険の引き受けをいたします場合に私ども考えておりますのは、やはり、その対象国のカントリーリスクというのがまず基本にございまして、リスクの大小に応じまして地域差料率というものを設けまして、リスクの高いところにつきましては高い保険料をちょうだいするというようなこともいたしております。それから、取引の相手方の信用度というものもまた重要でございますので、こういったものにつきましては、私ども独自に調査をいたしまして、その結果に基づきまして引き受けの態度を決めるということをやっております。それ以外に、決済条件等につきましても私どもなりの判断をしてお引き受けをするということをいたしておりますので、大きく申しますと、相手国のカントリーリスク、それからその次がバイヤーの信用力、最後には契約自身の内容と、こういった三点を総合的に判断をして具体的な保険の引き受けをしているという状況にございます。
  109. 田代富士男

    田代富士男君 ただいまもお話がありましたとおりに、基準というのは相手国のカントリーリスクの問題、それからバイヤーの信用度の問題、それから契約自身の内容の問題等々でやっていると。しかし、リスクの大きな国に対しまして、今言われたような基準のもとに一定の国別の引受枠やあるいは制限条件を設定するということは、輸出保険の健全な運営という点からやむを得ない面もあるかと思います。しかし、本来この制度というものは、リスクをカバーして輸出投資の振興を図る国策としての輸出保険が安易に引き受けを制限するとするならば、そのもの自身の存在意義は失われるのではないかと思うのですけれども、これは相反することに関係のある問題ですけれども、存在意義という問題につきましてはどのようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  110. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) これはしばしば申し上げていることでございますが、最近に至りましてカントリーリスクが非常に増大いたしております。しかし、それゆえに貿易の健全な発展のためには輸出保険の果たす役割が非常に大きいということでございます。したがいまして、この田代委員のお言葉もございますけれども、引き受けにつきましてはやはり独立採算の原則に立脚しながらいろいろな長期的な観点を踏まえた、いわば的確なカントリーリスクを評価していかなければならない。そういうことによって、機動的あるいは弾力的にこれに対応していくということが私どもの方針であるわけであります。
  111. 田代富士男

    田代富士男君 これは本当に非常に難しい問題だと思いますが、大臣も、独立採算性の上から長期的立場に立ってこれを運営していかなくちゃならないという、そういうものもありますけれども、このカントリーリスクが増大しているときこそリスクヘッジとしての主要な手段であります輸出保険に対する期待が大きいわけであるわけなんです。そういう意味から、業界からも保険の引き受け制限の緩和を求める声が高く出ているわけなんですが、制限緩和を考える気はあるのかないのかお答えいただきたいと思います。
  112. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 先ほども御答弁申し上げましたように、私ども特に最近に至って運用を厳しくしているということはないというふうに考えているわけでございますが、制限対象国の数も大きくなってきております。こういう点につきまして、保険契約者の側から、従来の政府の引き受け方針についてもう一度再検討をしてもらえないかという要望があるのは事実でございます。私どもも大臣今お答えいただきましたように、保険につきましては独立採算の原則がございますので、直ちに保険事故になる可能性のあるようなものにつきましてお引き受けをするというわけにはいかないのはこれは御了解をいただけるものと思いますが、保険の観点から、保険の建前からいって、現在までの運用でもう少し考え直す点はないかということになりますと、やはり少しはこの際考えてみるということがあるのではなかろうかというような感じもいたしております。  例えばということで申し上げますと、先ほど来御議論になりました債務繰り延べが行われますと、その国については信用状態が低下したということで、従来はすべて輸出保険はストップをいたしていたわけでございますが、債務繰り延べもその債権の種類によりまして、例えば短期の債権は対象から外すというようなことをやるのが一般的でございまして、外された債権につきましては相手国は債権国に対してそれを支払ってきているという事態が通常でございますが、そういう場合にも、短期の保険までとめなきゃいけないかどうかというあたりについては、保険の建前と実際の要望、特にやはり債務国にいたしますと、保険がつきませんとその国への海外からの輸入がとまってしまうという問題もあるわけでございますので、相手国の立場考えまして、さらに私どものこちら側の輸出業者の立場考えますと、そういう点についてはあるいはこの際検討をしてみてもいいのではないかという感じもいたすわけでございますので、こういう点を含めまして従来のやってまいりました方針をどこまで保険の建前と矛盾しない範囲で運用を変えることができるかという問題につきましては部内でこれから鋭意検討をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  113. 田代富士男

    田代富士男君 ただいまの質問と関連してお尋ねをいたしますけれども、保険を掛ける判断のもとともなりますカントリーリスクの情報体制が十分でないように思われるわけでございます。この体制が十分整っていたならば、必要な十分な情報を得まして輸出やあるいは投資が行われることができるならば、事故発生の可能性がより軽減されるのではないかと思うわけでございますが、一応は努力していらっしゃいますけれども、今申し上げたことに対しまして今さきの質問と関連をいたしましていかに努力をされているのかお答えいただきたいと思います。
  114. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) このカントリーリスク情報の収集分析体制というのは、ただいまお話がございましたように、まさにこの引き受けの基本となる部分でございまして、非常に重要なわけでございます。  やや具体的に申し上げますと、私どもはまずこの保険の日々の運営の業務から通じまして、例えばどこの国には非常に支払いがおくれてきたとかそういうタイプの情報がまず入ってまいりますし、それから政府の機関でございますので、在外公館あるいはジェトロというような政府の出先機関というところからも情報が入ってまいります。それから私どものような同じようなこの輸出保険をやっておるところをほとんど主要国が全部持っておるわけでございまして、そことはテレックスあるいは定期協議あるいはそれの国際的な団体でございますベルン・ユニオンというようなところを通じて情報交換が行われまして、情報はそこからも常時入ってくるわけでございます。それから、午前中のお話にもございましたような公表された資料、あるいは商業ベースでやっておるような見通し、統計というようなものも私どもとっておるわけでございまして、その情報の量というのは相当にあるかと思います。ただ、これを分析する問題という点につきましては、なかなか最近の動きは非常に早うございまして、これは私どものみならず各国でも非常に苦労しておるところでございます。でも私どもは五十八年度から特別に予算をとりましてこういうカントリーリスクの特別の調査を行いますと同時に、保険当局の内部のみならず、通産省の他の部局、あるいは場合によりましては外部の有識者も含めてその検討を、情報交換というのをやっておるわけでございます。ただ、お話しのように非常にカントリーリスクの問題がクローズアップされてまいりまして、幾らやってもまだ完全に十分ということではないかと思いますので、今後一層努めてまいりたいと思います。
  115. 田代富士男

    田代富士男君 集める情報の数というのはかなり多く集まっているけれども、一番問題はその分析に苦労しているところであるし、情報交換等もやっている。このように努力はしているけれども、現実に保険事故が発生した場合の認定というものはどのように行われているのか、またその認定基準がいまひとつ明確でないように思われてなりませんが、どのように考えておられるのかお答えいただきたいと思います。
  116. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) 一たん事故が発生いたしました場合のその保険事故の認定という、あるいはその支払い保険金の査定というのは、これは法令、約款に基づきまして、割合に、割合にといいますか、非常にはっきりと明確に書いてあるわけでございます。ただ、やや技術的に難しい部分につきましてその適用についてはさらに運用の基準を定めましてこれを公表するように努めておりまして、私ども保険金支払いの認定基準にはそれほど問題がないのではなかろうかと思います。もちろん極めて例外がございまして、例えばこれは日本ではまだそういうことはございませんが、投資保険なんかにつきましては明らかな国有化というのではなくって、いわゆる忍び寄る収用といいますか、そういう事故になるのかならないのかよくわからないというような問題が潜在的にはございますが、今までのところ、こういう債務累積に関連いたしまして事故になる場合には払ってくるかこないかというのは非常にはっきりしておりまして、それほど支払いについて問題があるとは考えておりません。
  117. 田代富士男

    田代富士男君 今もお答えのとおりに、この認定基準の問題については問題ないのではないかと、今実際運営していらっしゃる面から言われておりますけれども、識者の一部にはこの保険、約款からするならば、当然保険事故と認定されるべきケースが対外政策上の配慮やあるいは保険財政上の思惑から事故の認定がおくれたり、あるいは支払われない、そういう場合があるという声が聞かれるわけなんですが、もしそのようなことがあるとするならば、この保険の実効性というものは著しく損なわれることになり、問題でありますけれども、この点についてはどのように考えていらっしゃいますか。
  118. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) ただいま審議官からお答え申し上げましたように、損害が発生しました場合の保険金の額の算定につきましては、法令、通達、約款といったもので客観的に判断をし決めておりますので、先生指摘のように種々の事情によりまして保険当局が恣意的にこれを行っているということは私はないものと確信をいたしております。そういう面でもし従来まで公表をしていない部分で公表を必要とする、ないしは公表した方がいいと思われますような認定に関するいろいろな通達等がございましたら、こういうものについてはできるだけこれからも公表をすることを考えまして、保険金の額の算定等につきます。そういった御疑念のないようにいたしたいと思います。  なお、念のため申し添えておきますと、保険金の額の算定等につきまして保険契約者の側におきまして御不満がおありになります場合には、これは法律の規定によりまして通産大臣に対しまして不服の申し立てもできるわけでございますし、それで解決しない場合には民事上の訴訟として争うこともできるわけでございますので、そういう面で最終的には解決を図っていただくというのも考えられるのではないかと思われます。
  119. 田代富士男

    田代富士男君 これは客観的な問題で決めていかなくちゃならないし、一方的にというそういうとられ方をしないように努力はしておりますと。しかし、従来このように公表してない部分もあるし、公表した方がよいというそういうものは公表していって、できるだけこういうような疑惑を解くように今後努力をしていくということでございますが、今言っているこのような疑いを避けるためにも、そういう疑いのないように努力しているけれども、現実にこれは起きているわけなんです。また、事故の認定基準は問題はないということを言われたけれども、これもあわせてもっと明確にいたしまして、被保険者が安心して利用できるようにするためにも、言うなれば第三者による保険事故の裁定機関というものを設置することも一つの案ではないかと思うわけでございます。これにつきましてのお考えもあろうかと思いますが、大臣、こういうお考えいかがでしょうか。
  120. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 先生の方から、通産省側では承知をしてないけれども保険契約者の側にそういう不満が非常に多いのだと、こういう御指摘でございます。そういう問題につきましては、具体的なケースを教えていただきましたら、私どもの方で保険契約者の方と十分お話し合いをいたしまして、御不満のないような格好で解決をさせていただきたいと思います。もし先生指摘のように、今おっしゃるようなことが非常に多くあって、それを解決するためには、やはり何か通産省以外の第三者の意見も聞く必要があるのではないかというような御指摘であるといたしますと、そういう実情をも含めまして私どもこれからの検討課題にさせていただきたい、かように考えます。
  121. 田代富士男

    田代富士男君 通産大臣、今も私が申し上げましたとおりのような考えですね。例えば利用者のニーズと、それから保険制度の運用との調和をどのように図っていくかということは、これは極めて至難なことではないかと思いますけれども、やはりこれは今からこういう面の分野というものは拡大されていきますし、やはり通産省としても検討する余地があるんじゃないかと思いますが、通産省としてのお考えを大臣にお答えいただきたいと思います。
  122. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 利用者のニーズということが何よりも大切であるということは言うまでもございません。したがいまして、今も貿易局長が答えましたように、実情に応じまして利用者の側からさまざまな声が出てくる、あるいはその利用のよりよきように要望の声が出てくるということになれば、当然通産省としてはその声を聞くのが当たり前のことでございまして、そういう中でやはり今後検討していくということにいたしたいと存じます。
  123. 田代富士男

    田代富士男君 次に法案の中身について御質問をしてまいりたいと思いますが、特会法附則の第二項の「当分の間」、このように書かれてありますけれども、この「当分の間」とはどの程度を考えていらっしゃるのか、まずお答えいただきたいと思います。
  124. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) ここにございます「当分の間」というのは今のカントリーリスクから参ります債務繰り延べ措置、いわゆるリスケでございますが、それに基づきます保険金の支払いが集中的にかつ大量に発生するというようなことによりまして借り入れを行わざるを得なくなるという事態がなくなりまして、そしてさらにそうやって繰り延べた分の回収が、これは例えば三年据え置き、五年で返すというような回収があるわけでございますが、そういう回収が行われて、そうして借り入れた借入金の償還が終わるまでというのがこの「当分の間」という意味でございます。
  125. 田代富士男

    田代富士男君 おおむね何年ぐらいですか。
  126. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) これは今後の世界経済情勢、それから債務問題がどのように扱われていくか。私どもは昨年行われましたような国際機関とか、あるいは債権国が協力して債務に苦しんでおる国を何とか助けて、そうして払えるようにしていくというようなことが今後とも続くということを期待といいますか、むしろ確信をしておるわけでございますが、そういう世界経済情勢というのは非常に流動的でございまして、ちょっと今の段階で具体的に申し上げることは難しゅうございます。
  127. 田代富士男

    田代富士男君 これは今言うように、何年ということは流動的だという、債務問題がどのように今後取り扱われるのか、また債務に苦しんでいる国を助けるための世界情勢の動きともというようなことでございますけれども、やっぱりある程度のめどというものは持って仕事をしていかなければ、これは、じゃ相手に流されていってしまうのかという心配もなされていきますし、やはりある程度のそういう動きはありますけれども、主体性は私は持っていくべきだと思います。これはもう私の意見として申し上げておきます。  続いて質問ですけれども、附則第三項の、年度末残高の限度額は最高でどの程度を予測していらっしゃるのか、また借りかえの額ではどの程度になると考えていらっしゃるのか、これもお答えいただきたいと思います。
  128. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) 借入金の規模というのは、先ほどから申し上げておりますような債務国側のいろいろな事情がございますので、一概に非常に確定的なことを申し上げるのは非常に困難でございますが、いろいろの、現段階で最もあり得べきといいますか、確度が高いというような前提条件を置きまして、そしてそれで計算をいたしますと、大体借り入れの限度というのは、今後数年間、もう少し具体的に申し上げますと、五十九年度から六十一年度までの三年間程度で、その額の合計というのは三千億円を下回る程度というふうに考えております。で、それ以降は徐々に借り入れの残高というのは減少してまいると思います。
  129. 田代富士男

    田代富士男君 またここに「政令で定める割合」と、このように書いてありますけれども、これは実際の運用上どのくらいになるんですか。
  130. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) これは国際約束に基づきまして債務国が返してくるわけでございますから、一〇〇%返ってくるというふうに考えておるわけでございますが、まあ通常担保にも掛け目というようなものもございますし、過去の実績を見まして大体八割というふうに考えております。
  131. 田代富士男

    田代富士男君 八割ということでございますけれども、一〇〇%ということはこれは願いたいけれども、わかりました。  今回の改正によりまして、五十九年度以降に予想されます資金ショートに対応できる自信はあるのかどうか、もちろん世界経済の動き等もありますけれども、仮に対処できない事態が生じたらどうするのか、やはりこういうことも考えておかなくちゃならないと思いますが、この点についてはどうですか。
  132. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) ただいまお答え申し上げましたように、私どもといたしましては五十九年度のことだけではございませんで、先ほど御答弁申し上げましたように、今後数年間にわたって債務の繰り延べを実施せざるを得ないというような前提でいろいろ検討いたしました結果、今回改正をお願いいたしておりますことが実現できまするならば、借り入れの具体的な金額の問題は別でございますけれども、実際の制度上の問題といたしましては、これで十分に対応できるというふうに考えているわけでございます。その前提といたしましては、先ほども御答弁申し上げましたように、債務繰り延べの対象になったものが過去の経験等から考えまして八割程度は確実に戻ってくるという前提を取り入れておりますので、万一こういう前提が大きく狂うということになってまいりますと、これは保険会計の長期的な収支採算上もやはり重大な問題になってまいりますので、こういう際には料率の引き上げその他収支改善のための別の措置をまたその際には検討せざるを得ないということに相なるかと思います。
  133. 田代富士男

    田代富士男君 ここで、最近問題になっておりますIJPC事業の現状について御説明をいただきたいと思いますし、それから保険事故発生の可能性についてはどのように考えていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  134. 柴田益男

    政府委員柴田益男君) IJPCの現状でございますが、一言で申しまして現在は建設工事が中断しております。御案内のようにIJPCは、エチレン生産三十万トンを目標に、資金七千億円以上かけまして、七六年に着工したわけでございますが、七九年にイラン革命が起こりまして工事を中断いたしました。その後、八〇年に工事再開をしたわけでございますけれども、八〇年の九月からイラン・イラク戦争による爆撃が行われまして、また工事が中断してしまったということでございます。その後、昨年の七月に日本側とイラン側と話し合いいたしまして、今後の建設所要資金はイラン側の負担でやるということで合意したわけでございまして、工事再開のための調査に取りかかったわけでございますけれども、ことしの二月に再度また爆撃を受けまして、今は先ほど申しましたように工事は中断して、現地に日本人の従業員が行っておりますけれども、現地サイトのそばで待機中である、そういう状態でございます。
  135. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 私の方から、先生の御質問の後段の部分についてお答えを申し上げたいと思います。  IJPCについて保険事故の可能性はいかがかという御質問でございますが、本件につきましてはまだ保険契約者の方から具体的な保険金支払いの請求等もございません段階でございますので、具体的なお答えはそういう事態になったときに申し上げるというのが通例でございますので、ここでは控えさしていただきたいと存じます。ただ、一般論として申し上げますれば、先生御案内のように、IJPCに掛けております海外投資保険は、相手国によります収用、それから戦争、内乱等の状態によります事業継続ができなくなる場合、それから三番目には相手国政府の事情によります送金不可能の事態、こういうものを保険事故として想定をいたしておるわけでございます。先ほど通商政策局長からお答えいたしましたようにサイトが新たに爆撃を受けましたが、この爆撃を受けたということそれ自身で保険事故になるわけではございませんので、先生十分御案内のように、それが原因となりまして一定の期間事業が継続できなくなるというようなことがあって初めて保険事故となるものでございまして、まだそういった期間の経過等もございませんので、今の段階で具体的にどうこうと言うことは差し控えさしていただきたいと思います。
  136. 田代富士男

    田代富士男君 このIJPCの保険契約者の方からは請求が現在出されていないということでございますが、私が今さっき御質問したことに対しまして今後の見通しの問題をお答えいただきましたけれども、この見通しの中には、可能性の問題になりますけれども、IJPCの保険金支払いは含まれておるのかどうか、ここらあたりお答えできる範囲内でお答えいただきたいと思います。
  137. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) この保険金支払いの見通しにつきましては、例えば債務累積、リスケのように、ちょっと予定どおり払えないんでパリ・クラブを開いてもらいたいというように申請をした国につきましては、その国の分はそういうふうに個別に特に取り出して保険金支払いの見通しの中に入れるわけでございます。ただ、そうではございませんで、IJPCのようなこういう個別のケースにつきましては個々の案件ごとに積み上げて予測するというのは到底不可能でございますので、そういうのは過去の事故率等のデータに基づきまして一般的な、経験的、統計的な予測をしておるだけでございまして、IJPCを特に取り出して予測をしておるというようなことはございません。
  138. 田代富士男

    田代富士男君 特別に予測はしていないということでございますが、仮に事故発生の場合は、どの程度の事故となりまして、いかに対処をされるのか、これは仮定の問題でございますから答えにくい面もあるかと思いますが、これは私は予測をしておかなければならない問題だと思いますけれども、これはどうですか。全然ないということは言えないと思うんですが。
  139. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) IJPCの問題につきましては、私どもも事業の完成を願っておりますので、保険金の支払い請求に至るという事態が到来しないことを期待しているわけでございます。ただ、今先生のお尋ねのように、そういうことも頭に入れておかなければいけないのではないかということでございますが、金額がどのぐらいになるかというのは、実際には事故に該当する事由が発生しまして、その段階で損害がどれだけ出ているかということもまた確定をいたしませんと保険金の支払いの額というのは確定できないわけでございまして、ただ一般論で申しますと、もし万一不幸にいたしましてIJPCが保険事故事由に該当するというようなことになりますと、保険金の支払い額はかなり多額なものになるだろうと思います。先ほど審議官から御答弁申し上げましたように、私どもの今後の保険金の支払いの要素といたしましては、個別、具体的にIJPCの問題は考慮に入れておりませんが、そういう事態が万一不幸にして出てくるというようなことになりますと、今私どもが主として考えております債務繰り延べ問題とはまた別に、そういった点の資金手当をせざるを得ないということになろうかと思います。繰り返すようでございますが、そうならないことを希望しておるわけでございます。
  140. 田代富士男

    田代富士男君 大臣、私が今質問しましたことにつきまして、損害がどの程度出ているかという金額が明確にならなければ出せない、これもまた理解できます。さりとてこれが問題になった場合には、多額の金額になって到底これは別の立場で救済する以外にないじゃないかということでございますけれども、これは当然起きてくる、まだ起きてはないけれども起きてくるであろうことは予測されるわけなんですが、これは大事なことでございますから、大臣としてはいかがお考えですか。
  141. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 率直に言って、そのような不安が腹の中にないことはございませんけれども、しかし何分にも仮定の問題でございますので、その場になって考えてみなければならないものだと思います。
  142. 田代富士男

    田代富士男君 その場になって考えたんでは遅いんじゃないですか。
  143. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) ちょっと大臣のお答えにつきまして補足をさせていただきたいと思いますが、先ほど私御説明申し上げましたような意味で、多額にはなりますがその時点になりませんと金額的にも確定をいたさないという意味におきまして大臣もそのときになって考える、こうおっしゃったわけでございますが、やはりもし万一不幸にしてそういう事態になりますと保険金の支払いをせざるを得ませんが、現在までのような状態でもう既に借入金をいたしませんと払えないような状態でございます。ただIJPCのもし事故が起こった場合の問題と債務繰り延べ問題との違いと申しますのは、やはり債務繰り延べの場合には将来返ってくる可能性が非常に強いわけでございますが、IJPCの場合には繰り延べの場合と違いまして払った保険金が返ってくるという性格のものではございませんので、そういう場合には単なる資金繰りの問題ということではなくてまた別の問題、例えば保険の収支相償の原則というのがございますので、そういう観点からやはり料率の引き上げ等というような措置もあわせてその一つとして考えていかなければならないのではないかと思いますので、今回のような資金繰りの問題とはちょっと性格が違うという意味で大臣もまたそのときになって考えてみなければいかぬのだと、こうおっしゃったんだろうと思います。
  144. 田代富士男

    田代富士男君 ではもう一回大臣から。
  145. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 仮定の問題でございますので、その場になって考えてみますというごく率直に簡単に申し上げたわけでございますが、今貿易局長が答えましたように、もしもそのようなことが出来ましたならばそれこそ政治的にも数字的にも大変なことでございます。そういう意味でその場になればそのときで考えるという意味でございまして、御理解願いたいと思います。
  146. 田代富士男

    田代富士男君 仮定の質問だからこれ以上詰められないかと思いますが、そこでIJPCの場合はこれは債務繰り延べしても返ってくる可能性がないということで、こういう事態じゃないかと思いますけれども、債務繰り延べの代金回収につきましてその状況は現在どうなっているのか、また未回収分及びそのうち不良債権と考えられるものはどのぐらいあるのか、今さっきも期間中に八割ぐらいは一応戻ってくるということでありますけれども、重ねてちょっとお尋ねをしたいと思います。
  147. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 過去の経験から申しますと、債務繰り延べをし支払いました保険金につきましてはその八割に相当するものが返ってきているわけでございますが、じゃ残りの部分については返らないのかということになりますと、私の方としましては、やはり国と国との約束でございますから返済期限どおりにはなかなかいかない場合もあろうかと思いますけれども、期間をかけて回収に努力をする、交渉をしていくというようなことによりまして、最終的には全額に近いものをぜひとも回収をしたい、こう考えておるわけでございますので、先生指摘のような不良債権に相当するものが残りの二割の中にあるというふうには考えてないわけでございます。
  148. 田代富士男

    田代富士男君 債権回収につきましては、法律上の義務は被保険者にあるわけでありますけれども、実際問題として相手国政府との交渉となりますと民間立場では非常に難しい面があると思います。したがって、民間からは債権回収における政府の積極的な介入といいますか、そういう援助というものを望む声が強いわけでございますけれども、こういう問題につきましてどのように現実に行われているものか、また今後債権回収に政府としてどのように取り組んでいくのか。二割が不良債権ではないという強い確信も持っていらっしゃいますけれども、あわせてお答えいただきたいと思います。
  149. 前田典彦

    政府委員(前田典彦君) 従来は政府のいわゆるリスケというよりも保険でバイヤー、取引の相手方が払わないというような事故が非常に事故の大きな部分を占めておったわけでございまして、そういうものにつきましてはやはり取引関係のある輸出業者に回収の努力を持たせるというのが最も適切なわけでございますが、債務繰り延べに伴います事故というのはただいまお話がございましたように、政府政府として約束をして払うか払わないか、まあ払うということになっておるわけでございまして、したがってそのスケジュールどおり払ってこないということは政府間協定の義務不履行とでも言うべきことでございます。したがいまして、政府としておっしゃるとおりしかるべく措置をする、直接督促をするとかあるいは他の債権国と協議をしてその支払いを求めるというようなことは従来からもやっておりますし、今後とも積極的にやってまいりたいと思います。
  150. 田代富士男

    田代富士男君 もう時間もそろそろ参ったようでございますけれども、自治体との関連につきましてお尋ねをしたいと思いますが、輸出手形保険は従来国が八〇%、これは御承知のとおりでございますが、主要自治体が追加補償制度といたしまして一五%上乗せをしておるわけでございます。ところが今回の改正によりまして、御承知のとおりに、八二・五%以内となったことにより、危険度に応じて七〇%あるいは六〇%でも引き受け可能となったわけでございますが、そうした場合自治体の上乗せ分はどのようになるのか、この点をお答えいただきたいと思います。
  151. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 本件は、最終的には自治体の方がもしお変えになる場合には条例改正等の手続をお踏みになるわけでございますが、私ども今回の改正を検討します段階から自治体とは一応連絡をとらしていただいておりまして、その限りで私どもが承知いたしておりますところでは、各自治体とも一五%の率そのものは限度としては変える予定はないという御意向のようでございます。ただ、国の方で従来とは違いまして以内ということでてん補率を下げるようなことを考える場合には、自治体の上乗せ補償の方につきましても国がてん補率を引き下げる度合いに応じまして自治体の方も一五%の範囲内でてん補すべき割合を減少させる、そういうお気持ちが強いというふうに聞いておりまして、したがいまして、大体私どもが今後運用いたしてまいろうと思うことはほぼ自治体の側でも同じような方向で受け入れていただけるものというふうに考えているわけでございます。
  152. 田代富士男

    田代富士男君 現在の制度で自治体の財源はどこから出ておるのか、これもお答えいただきたいと思いますし、これは運営のやり方によりましては自治体の負担を増大させることになりはしないかという心配があるわけなんですけれども通産省といたしまして自治体との関連をどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。
  153. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 私どもが伺っておりますところでは、手形保険につきましての追加補償を実施いたしております自治体におきます収支につきましては、最近は私どもの手形保険と同様に持ち出しになっているというふうに承知をいたしております。したがいまして、その持ち出しになっております部分は当面は自治体の一般財源の負担において賄われるわけでございますが、将来債務繰り延べをしました相手国から返済計画に従って返済がございました場合には、やはり自治体が追加補償でてん補をしました部分につきましてはそのてん補した割合に応じて回収がなされるわけでございます。先ほど来、輸出保険特別会計、長期的に考えますと収支が悪化しているわけではないということを申し上げたわけでございますが、都道府県の追加補償制度につきましても、現時点では一時的な持ち出しにはなっているかと思いますけれども、将来回収されますことを考えますと自治体自身の負担がここで急にふえているということではないのではなかろうか、いわば当面の資金繰りの問題として処理していただけるものではないかというふうに考えているわけでございます。
  154. 田代富士男

    田代富士男君 最後の質問でございますが、一貫して今質問してまいりましたけれども懸念材料といたしまして、発展途上国等の累積債務が増大する傾向にありまして、カントリーリスクの高まりというものは従来にない激しいものになってきております。これは御承知のとおりでございます。このような情勢のもとで輸出保険制度の担う役割というものはますますこれは重要になってくるのではないかと思いますし、その機能を充実していくということが急務ではないかと思いますから、通産大臣としての決意をお聞きいたしまして最後の質問といたします。
  155. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 本当にたびたび申し上げるようでございますが、カントリーリスクが近ごろ非常に増大してきているわけでありますが、しかし、貿易というものはあくまでやはり健全なものでなければならない。とすれば、この輸出保険の役割というものはますます増大していくわけでございます。田代委員のいろいろの御意見あるいは議論のやりとりをしておりまして、今後この制度が本当に利用者の要望あるいは利用者のニーズにこたえて私どもが弾力的に対応してまいりまして貿易のより健全化を図ってまいりたいと存ずる次第でございます。
  156. 橋本敦

    橋本敦君 まず最初に大臣にお伺いしたいと思いますが、先ごろ牛肉、オレンジの日米交渉が妥結を見た次第でございます。言うまでもありませんが、この農産物問題が日米貿易摩擦の象徴だとか、あるいは焦点だとか、こう言われて注目を浴びたわけでありますが、農業それ自体をとってみますと、輸出超過でもなければ、むしろその逆にアメリカからの輸入日本の総食糧輸入の三四%を占めるということでございますから、本来的には農業が貿易摩擦の象徴と言われて犠牲にされるようなことがあってはならぬというのが、まさにこれは農民の皆さんを初めとするコンセンサスであろうと思うのであります。しかしながら、あのような結果になりまして、全国農協中央会はまことに遺憾であるとして抗議の談話を出されたわけでありますが、貿易問題について所管をする責任のある大臣として通産相は今回のこの問題についてどういう所感をお持ちなのか、あるいはまた農協中央会のあの談話に見られる農民の皆さんの抗議や怒りについてどんなふうに所感をお持ちなのか、まずこの点をお伺いさせていただきたいと思います。
  157. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) いろいろな御意見、いろいろな評価がございますことは私も承知いたしております。しかし、今回の日米農産物交渉は我が国の農業が犠牲となることのないような決意のもとに行われたものとはっきり理解いたしておるわけでございます。日本の農業が我が国の安全保障の面から重要であることはもちろんでございますが、しかし、一方において工業の発展ということも我が国にとって必要欠くべからざることでございます。しかし、それにしても今回の日米農産物交渉は、日米間に横たわるところの八つほどの問題、その懸案事項の一つがこれで解決したということでございまして、私は山村農水大臣の御努力あるいは御手腕を評価しておるところであります。
  158. 橋本敦

    橋本敦君 山村農相の手腕を評価なさるという御意見がございましたが、私がお聞きしたいのは、農協中央会のあの談話に見られる農民の皆さんの不安の解消、あるいは今後この農民の皆さんの要求にこたえて政府は一層農業を守る施策を進めていくということが一層重大になっておるという、そういう状況通産相としていかがお考えかということが実は聞きたかった次第でございます。先ほども議論になりましたが、大蔵省が五十八年度通関実績で明らかにしたところでも二百三十三億ドルという史上最高の出超を記録しておりますし、対米関係を見ましても、対米貿易の出超もこれまた過去最高の二百十億ドルを超えておるという状況が報告されております。したがって、今後こういった状況貿易摩擦問題がさらに再燃をし、あるいは四年後ということではありますけれども、それまでになく、また農産物問題も含めた貿易問題の摩擦が激化する心配もこれはあるわけでございまして、こういう先行きについて通産大臣としてどうお考えか、この点もお聞かせいただきたいと思います。
  159. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 世界経済をさらに活性化していくためには、何と申しましても自由貿易の推進、このことが不可欠な問題でございます。しかし、先進諸国の間にもそれぞれの国のいろいろな事情がございまして、いろいろな問題で悩んでいることは事実でございましょう。例えばアメリカにおいては、ことしは選挙であるということによってどうしても保護主義が台頭してくる。しかし、保護主義が台頭してくることは、アメリカ自体でもってこれはみずからが解決すると同時に、先進国の仲間である私どもといたしましても、こういうときにこそ保護貿易主義というものを排除をしていこうではないか。やはり国同士が、あるいは貿易担当の政治家同士がこのような問題を堂々と自由闊達に論議していくことも必要でございますし、また、ただ単にアメリカのみならず、EC諸国に対しましてもこのような考え方を進めていかなければならない。現に私は、アメリカブロックさんに会いましても、あるいはECのハフェルカンプさんに会いましても、あるいはカナダのリーガン貿易大臣に会いましても、このような考え方を常に率直に話し合っているわけでございます。もちろん個々の国の中に個々の内蔵した問題、そういうものは当然あるわけでございますが、基本的には私は、かような方針こそ世界経済をさらに一層繁栄させる道であると信じております。
  160. 橋本敦

    橋本敦君 今の大臣のおっしゃった点に関して二点さらにお伺いしておきたいんですが、今おっしゃったような方針で五月に行われるECの会議にお臨みになるというように伺ってよろしいのか、これが一点でございます。  それから同時に、こういった貿易の大きな黒字ということを考えましても、さらに力を入れなきゃならぬのは、通産省としても内需の拡大という点が新たにクローズアップされてきている情勢ではないかと、私、こう思うんですが、この第二点目の問題について大臣の御意見をお伺いさせてください。
  161. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 内需の問題より前に第一の方の問題でございますが、基本的には委員のおっしゃるとおりの私の考え方で結構でございます。  内需の拡大の問題でございますが、御承知のように政府は、その経済見通しを四・一%という成長率のもとで内需の拡大を図っていかなければならないということは既に御承知のとおりの方針でございます。しからば、その内需の拡大ということについてどのような方策があるか、通産省としては何を考えているかと言われますれば、それは具体的に申し上げれば、何と申しましても設備投資民間活力を旺盛にいたしまして、その環境を整備する中で、例えばエネルギー減税であるとか、中小企業新技術体化投資促進税制の創設であるとか、あるいは二番目には、各種の規制を緩和いたしまして、民間活力をそこに導入して内需を振興していく。さらに、これはたびたび申し上げることでございますが、このような時期に機動的なあるいは適切な金融措置を行っていかなければならない、かようなことがその基本でございます。
  162. 橋本敦

    橋本敦君 今大臣がおっしゃったことにつけ加えて、私は、地域地場産業なりあるいは生活関連事業をつくり出す中小企業の育成にも一層力を入れていただくという当然のことですが、この点もつけ加えて要望しておきたいと思うのであります。  次の問題は、この間から、予算委員会等を通じても問題になってまいりました、イランから非公式ながら打診があったというC1輸送機と第三次元レーダーのイランの引き合いに関してどういう態度をとるかということについてお伺いしたいわけであります。  その前に、外務省にお願いして来ていただいておりますので伺いたいと思いますが、先日も安倍外相とイラン外相との会談が行われまして、技術文化交流が主たる議題になったようでございますが、これに関連して、安倍外相も事実上非公式打診があったとお認めになった今のC1と第三次元レーダーの問題ですが、具体的にこの話が出たでしょうか。いかがでしょうか。
  163. 英正道

    説明員(英正道君) 御案内のとおり、昨年の八月に安倍外務大臣がイラン、イラク両国を訪問されましたけれども、その以降日本とイランとの関係が非常に緊密になってまいりまして、いろいろなことが話し合われているわけですが、非公式の打診ということでございますが、先方と話している中で、日本からいろんな物を買いたいんだという中で、おっしゃられたようなものについて先方からどうだろうかという話はあったことは事実でございます。この問題は全く非公式な形で出てきておりまして、実は一昨日からイランの外務大臣が本邦を訪問されたわけですけれども、その本邦滞在中にこの話は出てきておりません。
  164. 橋本敦

    橋本敦君 しかし、聞いてはいるわけで、この問題について対応を検討しておく必要もあり、外務省としても内々その対応は検討されつつあるのではないでしょうか。
  165. 英正道

    説明員(英正道君) この問題につきましては、やはり事柄の性質上、具体的な輸出の案件というふうになってきた段階で関係各省とも協議の上慎重に検討すべきものであるというふうに考えておりまして、まだそういう段階には至っておりません。
  166. 橋本敦

    橋本敦君 しかし、安倍外相の予算委員会の答弁等を見ましても、一応の検討は大臣としてもなされつつあるような答弁を伺えましたのでお聞きをするわけですが、いずれにしましても、我が国の外交の方針として安倍外相は、イランだけじゃなくてイラクにもお行きになったというようなことで、いわゆるイラン・イラク戦争というこういった紛争が拡大しないように、可能であるならば、こういった紛争解決のために両国が話し合う環境ができるように、そういった方向で独自の外交方針で臨むというような方向で進めておられるというように推測しておりますが、その方向は間違いございませんか。
  167. 英正道

    説明員(英正道君) おっしゃられますとおり、日本としてはこのイラン、イラク両国と友好関係を従来持っておりますし、またそういう関係を維持していきたいということで、戦争をしておる国でございますのでなかなか問題ございますけれども、両国の友好関係を維持増進するということに精いっぱい努力しているわけでございます。また、紛争そのものにつきましては、これは地域の平和の問題のみならず、両国にとっても非常に痛ましいことでございますので、やはり早期に解決するようにということを機会あるごとに伝えておりますし、またこの紛争がさらに拡大してより多くの地域、国を巻き込んでいくというようなことになりますと大変なので、そういうことがないように、エスカレーションを防止するということでもいろいろ知恵を出しているわけでございます。
  168. 橋本敦

    橋本敦君 わかりました。  いずれにしても、不幸ながら四年間近いイラン・イラク戦争ということが行われておりまして、したがってこのイラクとイランの状況を見ますと、武器輸出三原則で言うところの紛争当事国に該当するという事実は、これは客観的事実としてリアルな問題だと思うんですが、この点の認識は通産大臣、通産省としていかがでございましょう。
  169. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) この問題は、外務省との問題は問題といたしまして、昨年の十二月とことしの三月、イランの駐日大使が通産省首脳に対しまして非公式な話として来たことは事実でございます。しかし、それは具体的に例えば輸出申請というような問題になってくれば慎重に検討すべきことかと存じますけれども、全くの非公式な話でございますので現状では何とも言えませんし、またもしそうであったらというこれまた仮定の問題でございますから、ここで論議をするということは私としては差し控えるべきであると考えております。
  170. 橋本敦

    橋本敦君 大臣、お言葉ではございますけれども、C1という飛行機が一体いかなる飛行機がということは、これは自衛隊の装備年鑑七四年版を見ましても、これはまさに戦術軍用輸送機であるということははっきりしておりますし、これがつくられた契機を見ましても、前の輸送機がリタイアしていくに当たりまして自衛隊からの具体的なスペックに基づいて設計をされたという経過がございまして、現に軍用機として使われている。しかもこれはまさにりゅう弾砲あるいはジープを空中投下できるし、あるいはまた全天候型ということで検討されておるし、あるいは非常に滑走路の悪い状況のところでも短距離離陸とか上昇が可能だというスペックにこたえておりますし、いずれにしても世界的に見てもこういった双発軍用輸送機としては、軍用としては一級のものだということが航空情報でも言われておる、こういう状況ですね。したがって、民間に汎用性があって国内で使われているんじゃなくて、もっぱら軍用に供されておる。第三次元レーダーにしてもそのとおりであります。したがって、これがイランに持っていかれた場合に、これは軍用に供されない、民間に使われるというような保証はないところか、イラン・イラク戦争の現状から見ますと、これまた軍用に使われる蓋然性、可能性というのは非常に高い。しかも、そういった紛争当事国である、こういうことを考えますと、大臣は具体的に輸出申請があってその段階で検討する課題だ、こういうことでありますけれども、内々に打診があったという状況から見ても、我が国立場をこれやっぱり武器輸出三原則の立場に照らしても好ましくない、妥当でない、輸出すべきでない、こう私どもは思うんですが、通産省としてもそこのところははっきりと見解をお持ちいただいておく方が私はよいのではないか。しかも、先ほど外務省にもお伺いしましたが、イラン・イラクこの間にあってイランだけに肩入れするんじゃなくて、紛争を拡大しないような配慮で独自の外交を進めるという外務省の方針に照らしましても、今この輸入要請にこたえることは妥当ではない、こういう状況だと私は思っておるんですが、そこのところは大臣の率直な御意見伺いたい、こういうことでございます。
  171. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) ただいまC1輸送機について武器ではないかというような観点からの御質問がございましたのですが、このC1輸送機がいわゆる武器三原則等に申します武器に該当するかどうかということにつきましては、かねて国会で御議論の対象になったとおりでございまして、政府考え方は、火器を搭載するような構造になっているものではない、したがって、直接戦闘の用に供されるものではないということで武器ではない、こういう判断をいたしているわけでございます。  ただ、だから具体的に話が出てきたら認めるのかどうかということになってきますと、これはまた別の観点もあろうかと思いますし、あるいは既に御案内と思いますが、このC1輸送機につきましては、五十六年度以来メーカーの方では生産をされておりませんで、生産ラインも撤去されているというような状況になってきておりますので、大臣が申し上げましたように、具体的な輸出申請という段階になってきたら考えるということでございますが、私ども判断としてはそこまでいくんであろうかなという感じを持っているわけでございます。
  172. 橋本敦

    橋本敦君 いずれにしても、明確なお答えが輸出申請が出てない段階ですから、それはそういう意味で今後のことだということでありますけれども、私が指摘したのは、私どもは武器に当たると思いますが、仮に武器でないとしても紛争当事国に当たる、我が国の外交方針からみても今の場合は好ましくない状況がある。環境づくりからいっても相当でないという観点から、この問題については慎重に対処する必要があるというぐらいの対処は政府の方針として持っておいてもらわなくちゃ困るのじゃないかという気がしますので、そういう意味で大臣に私はお伺いしたんですが、いかがですか。
  173. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) それゆえに私は具体的に問題になってきた時点で慎重に対処すると先ほども申し上げましたこともそのとおりであります。
  174. 橋本敦

    橋本敦君 それじゃ、もう時間がございませんので、法案に即した質問も用意しておりますので、お伺いさせていただきます。  まず第一の問題は、今回の改正理由の一つに、中小企業の輸出にも役立てるということで理由が述べられているわけですが、それはそうなればまことに結構なんですが、実際輸出保険の利用実態はどうなのかということから私はまず検討をさせていただきたいと思うんです。  そこで、中小企業の保険利用状況調べというのをいただきましたが、これによりますと普通輸出保険は中小企業は七・一%、輸出代金保険になりますと四・五%という低い率ですね。しかもこの統計をとりました基準として中小企業とは製造業は資本金十億以下、商業は三億以下、こうなっておりますが、ところが、これを中小企業基本法でいう中小企業、つまり製造業で資本金一億以下、そして商業で三千万円以下に引き直しますともっと率は落ちる、私はこう思うんですが、その統計は通産省お持ちでございましょうか。
  175. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 先生の御指摘になりました普通輸出保険と代金保険につきましては、基本法で申します中小企業の定義に該当する輸出者の利用実績というものについては、残念ながら私ども数字は持っておりません。  ただ、今回御提案申し上げております輸出手形保険につきましては、基本法の中小企業者に該当する輸出業者の利用の数字も持っているわけでございます。
  176. 橋本敦

    橋本敦君 だから、したがって私が指摘した中小企業基本法でいう基準に従うと、普通輸出保険や輸出代金保険というのはうんと落ちて、それこそ一%ぐらいになるのではないかという推測ができるわけですね。  輸出手形保険に入る前にひとつお伺いしたいのは、いわゆる今回の改正の問題で契機となりましたいわゆるリスケによる保険金の支払い事故の発生等の問題ですが、この保険の種類はほとんどが輸出代金保険からくる、いわゆるリスケの問題はですね、そういう状況だと思いますが、いかがですか。
  177. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 債務繰り延べに伴います保険金の支払いは主として輸出代金保険及び輸出手形保険、この双方に発生いたします。
  178. 橋本敦

    橋本敦君 輸出代金保険の関係で見ますと、いただきました資料、輸出保険運営実績、これで見ますと倉計欄のところをちょっと見ていただきたいのですが、昭和四十四年から五十七年までの十三年間、総合計これをいたしますと、まず一番下のトータルのところで二千五百七十三億円、これだけが支払い保険金として出ておるわけであります。  それで、輸出代金保険の今度は支払い関係を見てみますと、千二百五十四億円ということになっておりますから、ほぼ私の計算で輸出代金保険、これが四八・七%を占めておる、こういう状況になっておると思うんですね。しかも、この輸出代金保険の九〇数%までがいわゆる大企業が利用している、こういう実態でありますから、結局は中小企業の輸出振興あるいはその他利益になるということでありますが、実態は、やっぱり大企業の輸出、これが問題になって出てきているのではないだろうか。  そういたしますと、私が指摘しましたこの十三年間の合計でも、おっしゃるところの収支相償ということは具体的に実現されてないわけですから、今後の課題としてはてん補率の引き上げじゃなくて、むしろ保険料率の引き上げが、あるいは抜本的な体制を検討し直すか、そういうことによって処理すべき問題ではないかと、まずこう思うのですが、いかがでしょうか。
  179. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 先生指摘になりました四十四年から五十七年までにかけましての輸出代金保険の支払い保険金が千二百五十四億円、それに対しまして収入の方を考えますと、保険料が約九百六十億ぐらいございますし、その他回収金等もございますのでこれを入れますと、先生おっしゃいますように、物すごい持ち出しになっているということではなくて、ほぼバランスがとれているというふうに考えるわけでございますし、そういう意味で今の段階で料率の改定その他の収支改善策をとるような段階に立ち至っていないんではないかというふうに考えているわけでございます。
  180. 橋本敦

    橋本敦君 それが数字の見方が私が指摘したような見方でない、別の面からごらんになっているんですが、客観的に結果として私が指摘したような数字が出ていることも事実なんですね。  それから、輸出手形保険について、この点を見てみましょう。  資料としては、東京都の輸出手形実施状況表というのがございます。これは通産省お持ちでしょうか。
  181. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 持っております。
  182. 橋本敦

    橋本敦君 それによりますと、これは昭和二十九年からということになっております。二十九年から追加補償を実施してきた経過がこれによって明らかでございますけれども、二十九年から五十九年までで一番下のトータルを見ていただきますとわかりますが、これだけで全部をトータルいたしますと、赤字が約二十億という状況になっているわけです。五十九年はもちろんこれは予測になっておりますね。こういう関係になっております。その途中で黒字になったときもありますが、長期のトータルで結局これだけの赤字になっている。地方自治体の場合は、これは一般財源から出すということになっておりますから、これだけの赤字ということになりますと、これまた地方財政を非常に圧迫する要因になっていくというおそれがあることも事実であります。  特に、この輸出手形保険について、この関係でもその利用が中小企業と大企業と比べてみますと、大企業の利用がはるかに高いということも数字で出ておるわけですが、こういう実態は把握していらっしゃると思いますが、いかがですか。
  183. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) まず、先生指摘の東京都の追加補償制度の収支状況につきまして御説明申し上げますと、確かにおっしゃいますように、五十七年度までに収支で約二十億弱のマイナスを計上いたしておりますが、これは昭和五十四年度等でトルコのリスケ等がございましたために支払いがふえ、そのための支出が増加をしているわけでございますが、このリスケの分も、いずれまた回収に立ってくると思いますので、そういうことを考えますと、五十七年度までで二十億の赤字になっているから収支が相償わないんで、この際やはり対策を考えるべきだ、ないしは地方公共団体の負担軽減を考えるべきだというお話は、若干結論的にいかがなものであろうかという感じを持つわけでございます。  それと、輸出手形保険につきまして、先生から中小企業の利用率が低いではないか、こういうお話があったわけでございますが、昭和五十七年度の実績で見てみますと、基本法の中小企業の定義に該当する製造業者でございましたら資本金一億円未満、商業の場合には三千万円未満の事業者の利用で、これは件数で三四%、金額で約一九%でございます。したがって、残りは金額ベースの約八割が大企業ではないか、こういうお尋ねがあろうかと思うのでございますが、これは中小企業と大企業の貿易の比率から考えますと、私どもはむしろ中小企業の方により多く利用していただいているのではないかというふうに考えるわけでございます。  もう少し具体的に申し上げますと、私どもの統計によりますと、中小企業の貿易業者の輸出額は全体の輸出の約五%でございます。五%の方が手形保険では金額ベースで約二割のほぼ金額を御利用いただいているということは、やはり中小企業の方々に手形保険制度というのがよく利用されているのではないかと者。えるわけでございます。
  184. 橋本敦

    橋本敦君 時間がありませんから、具体的な反論は時間をかけませんが、東京の資料から見ましても、いわゆる大企業が五十七年度で七五・八%という数字が出ておりますから、絶対的な数字を比較して考えれば、私が言う指摘も当たっていないわけじゃないと思いますよ。  時間が参りましたから最後の質問ですが、いわゆるカントリーリスクの問題が本委員会でもこれまでにしばしば問題になってきました。問題はこの見通しです。  これは日本公社債研究所の記述によりますと、このカントリーリスクは少なくともここしばらく事態が好転する見込みはない、こういったことで詳しく記事が出ております。問題は、そういう好転の見込みがないということに加えて、今回の法案による借りかえの問題がどうなるか。この問題については、それは当面の危機打開策で問題を先に延ばしただけだ、そればかりか新規融資分が債務としてふえ、リスケによる利率の上昇、手数料支払い等のために将来の資金繰りが一層悪化するのではないかという警告的意見があるんですね。私もこれは聞くべきだと思う意見なんですが、こういう意見に対して、通産省はどういうお考えで今回の法案を出されてきておるのか、最後にこれを伺って質問を終わります。
  185. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 債務繰り延べ、これは国際的な合意に基づく二国間の国と国との約束でございますので、私どもといたしましては、返済計画にほぼ従ってお返しをいただけるものだというふうに考えているわけでございます。  ただ先生指摘のような発展途上国の債務累積の状況が今後好転しない段階ではそういうことになるのかどうか、こういうことでございますが、国際的な債務累積問題につきましてはいろいろな御議論もございますが、むしろ当面は危機的な状況を回避されたというのが一般的な見方ではなかろうかと思いますし、むしろこれからはここ数年に見られたような深刻な状態を回避できたわけでございますから、さらに国際的な協力によりまして発展途上国の債務累積問題をさらに好転させるような努力というのが必要だろうと思いますし、また債務国の側におきましては国内経済運営等につきまして一層の自助努力をお願いする、そういう方向での国際的な努力をしていくべきではなかろうかと考えるわけでございます。
  186. 井上計

    ○井上計君 朝から同僚議員の大変具体的な質問に対して、また政府側の非常に懇切にお答えいただいておりますからほとんど問題点は解明されたと、こう思います。私が用意しておりました質問等についても、同僚議員の質問でほとんど尽くされておりますから、一、二点だけ簡単にお伺いします。  今回の法律改正等によりまして、付保率、てん補率がさらに引き上げられる。それから従来とも我が国の保険制度、他の先進国に比べて非常に有利である、こういうふうに聞いております。包括保険であると、あるいは料率等についても低いというふうな点から、従来でも欧米先進国の保険制度に比べてわが国の保険制度は非常によくできておるという評価を受けておる、こんなふうに聞いております。そうすると一段とよくなるわけですね。それは大変結構だと思います。  さてそこで、先日の発表によりますと昨年度は貿易収支の黒字は史上最高だと、こう言われております。一面では結構なことでありますが、一面ではまた貿易摩擦がさらに激化するんではなかろうかというふうなそういう心配もするわけでありますし、さらに従来の実績から、これは先般貿易局長が衆議院の商工委員会での御答弁の中に出ておりますけれども、昨年は対前年比は九八・四%である、ところがアメリカに対しては一七・九%の増である、ECを含めた先進国に対しては一二・六%の増である、このような数字を実は発表になったと聞いておりますけれども、そうすると、アメリカあるいはEC等はますます日本がいわば輸出振興のためにさらに力を入れていくんではないか、こんなふうな誤解をするんではなかろうかという逆の心配が、朝から同僚議員の質問を聞き、また政府側の答弁を聞いておりましてそんな気がするんでありますが、その点についての懸念はありませんか。
  187. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 今回、輸出保険制度の改正の問題といたしましては、御説明いたしておりますように代金保険と手形保険につきましてのてん補率の引き上げでございます。これは現行に比べまして二・五%というわずかな引き上げでございまして、例えば代金保険を例にとりますと、従来のものに比べて九七・五になるだけでございまして、法制的にはむしろ諸外国はごく特定の例外を除きまして一〇〇%のてん補率になっているわけでございますので、むしろ今回の改正だけをとらえて諸外国から日本がさらにまた貿易摩擦を激化させるんではないかということにつきましては、私ども諸外国との比較におきましてまだてん補率については諸外国のレベルまではいってないんだと、そういうことで御説明をして御理解を得ていきたいというふうに考えるわけでございます。
  188. 井上計

    ○井上計君 大いに今後とも、我が国としては何といってもやはり輸出に頼らざるを得ない国でありますから、輸出振興には力を入れていかなくちゃなりませんけれども、それだけにまたそのような摩擦ができるだけ起きないようなそういう配慮が必要であろう、このように感じますので、確かにてん補率についてもまだ十分ではないという面もありますけれども、相対的に見るとかなり輸出振興についてやはり力を入れておるというふうに諸外国から見られるおそれがあるんではなかろうかと、こんなふうに感じますので、この点をちょっと意見として申し上げたわけであります。  他にもう一つ、カントリーリスク国の経済情勢財政情勢等々の変化が今後ともますます、あるいは刻々続くのではなかろうかという感じがします。先ほどからやはりそういうふうな質問がなされておりますが、ただそういうふうな変化等については、大商社、大企業はやはり自社の情報能力で対応できるものを持っておるわけでありますけれども、中小企業は全くと言っていいほどないわけでありますから、それらの中小企業に対するそういうふうな情報の伝達といいますか、中小企業の情報の収集等々につきましてはさらに配慮をしていただきますように、これはひとつ要望をしておきます。  質問時間、私は大分ありますけれども、もう尽くされておりますから、以上で質問を終わります。
  189. 木本平八郎

    木本平八郎君 今も井上さんから話がありましたように、もう大分いろいろ議論が尽くされておりますので、私も余りもう聞くことはないんですけれども、ただ商社で三十数年間プラント輸出をやってきまして、その間通産省の保険課に対しては大分恨みつらみもございますので、その辺民間意見を代弁して二、三ちょっとお聞きしたいんですがね。  まずプラント輸出の問題なんですけれども輸出保険自身は政府管掌ですね。政府管掌というのはなぜかというと、民間じゃリスクがとれ切れないから政府がやっているわけですね。ところが現実におやりになっていることは、リスクがふえてくるとすぐ保険をとめちゃってやらないというふうなことで、非常に特定国を認定することには積極的だし、引き受け停止には極めて敏感に対処されるわけですね。ところが現実にはプラント輸出がどんどん減っちゃっているわけですね、もう数字を申し上げるまでもないと思うんですけれども。こういうふうで、一方、政府が保険を引き受けてくれないんで、資本金二十億円ぐらいの中堅商社で現在裸与信が百億あるわけですよ。一説によると九大商社で今裸与信が一兆円あると言われているわけですね。これは政府が保険を引き受けてくれないから、やむを得ずにやっていると。それてしょうがないからロンドンのロイドなんかにつないでいるわけですね。そうすると保険料が五%かかるわけですよ。こういう実態で通産省だけがうまくぬくぬくと逃げちゃっても、日本全体としては物すごいリスクを背負っているわけですけれども、その辺どういうふうにお考えになりますか。
  190. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) ただいまの御質問、今までのいろいろな私どもとのおつき合いを踏まえての御指摘でございまして、そういう意味でいろいろと御迷惑をおかけしたとすれば申しわけないと思いますが、確かに保険会計を預かる身といたしますと、リスクが増加した場合に特定国の指定等については非常に積極的であるけれども、その解除については極めて消極的であるという御批判は私どももかねがね耳にいたしております。  先ほど来御説明いたしましたように、特定国の数が大きくなってまいりますと、昔少数のときにはそういうような運営を私どもがやりましても余り民間には御不便をおかけしなかったんだと思いますけれども、これだけ数が大きくなってまいりますと、そうすると、保険が掛からないなら輸出するところがない、ないしはオウンリスクでやらざるを得ないという意味民間からの御批判が非常に声高になってきているんだろうと思ってきております。こういった点につきましては、私どももそういった御批判十分謙虚に承りまして、先ほど大臣もお答え申し上げましたようなことで保険の建前との関係説明がつく限りにおきましてはできるだけ運用の弾力化には努力をしてまいりたい。具体的にどういたしますかはこれから部内で早急に検討をいたしたいと思います。
  191. 木本平八郎

    木本平八郎君 昔はプラント輸出をやるときに事前の相談でまず通産省へ行きますと、通商課とか輸出課へ行ったわけですね。ところがもう今はまず保険課へ行かなければだめだと。大体保険が掛かるかどうか、あそこがどういう特定国がというその判定を得ておかないと、どんな商談をしても、入札してもだめだという状況になっているわけですね。しかしながら、保険課というのはどうも私たちの感覚では、悪く言いますと、どちらかと言えば後方部隊であって、それが第一線というのはちょっと異常な状態だと思うんですね。これは世界的にカントリーリスクがふえているからそれもやむを得ないんだという状況はわかりますけれども、やっぱり一番問題は、輸出保険だけが健全であってもプラント輸出が減ったんじゃ意味がないという本末転倒に今の運営はなっているという感じはするわけですね。それで実際問題、民間で商談、プラント輸出をやっていましても、問題は世界全体がカントリーリスクがふえているわけですね。ところがOECDなんかは非常に皆積極的なんですね。ところが日本だけはMITIががんがん締めるものだからシュリンクしてどんどん競争できないと。値段だとかスペックなんかでは問題ないんですけれども、どうも支払い条件とか保険条件でやられちゃうと。私はどうもプラントが減っているのはMITIの責任じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  192. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 貿易局では輸出保険会計をお預かりをいたしておりますが、同じ通産省の機械情報産業局はプラント輸出の振興をやっているわけでございます。したがいまして、通産省は一緒になりましてプラント輸出の振興には努力をしてまいりたいと思いますが、非常に手厳しい御批判がございましたが、プラント輸出が最近減少しておりますのは、基本的には債務累積問題等発展途上国の経済がきつくなりまして、経済発展計画の見直し等でプラントの需要そのものが少なくなっている。したがいまして、その少ない需要に対してまたプラント輸出国が物すごい競争を展開していると、こういうところにあるのではないかと思いますが、そういったことのほかにこの輸出保険で問題が一層困難になるということのないように、できるだけの努力はするつもりでございます。
  193. 木本平八郎

    木本平八郎君 まあいろいろ原因があると、私もそれは承知していて申し上げているんですがね。その点はひとつ今後ともぜひ前向きに運営していただきたいと思うんです。  それで、先ほどのその特定国の指定には非常に積極的だけれども、緩めるのにはどうも消極的だということを申し上げたんですけれど、通産省自身もお認めになっているようですけれども、それで、要するにこうリスクがあるからとめるというのはいいわけですね。ところが、現実には非常に対応がおくれているんじゃないかという気がするわけです。例えば、非常にカントリーリスクがふえていると、危なくなってれば、そこでとめて、それでパリ・クラブで債権国会議が開かれて、合意に達すれば、もうあとはリスケで返還計画が出るわけですね、返済計画が。まして二国間の協定ができてしまえばね、まあ、あと返済できるかどうかその保証がないにしても、もう再開してもいいんじゃないかと思うんですよ。  例えば、民間の会社が倒産した場合に、一応債権が棚上げすると。まあ会社更生法でやりますね。ところが、それで取引停止までしてしまうと、もう立ち上がれないわけですよね。ところが、今のこの保険の対応は、債権の棚上げをしといて、なるべく取引停止して、そして確実に返せるようになったということになって初めてその特定国解除になっていると。極めて、一たんなってしまうとなかなか再開できないわけですね。  そういうことなんですが、一方、けさからの説明では、リスケになっても八割ぐらいはもう回収できていると。私は、九割以上回収できるんじゃないかと思うんですけれども、そのくらい確実なら、もうパリ・クラブの債権国会議が終わった段階でオープンにしてもいいんじゃないかと思うんですけれども、その辺いかがでしょう。
  194. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 先ほど来御答弁いたしておりますように、繰り延べをいたしましても八割以上は過去の実績で返ってきております。ただ、だからといって債権繰り延べをやっております国について、二国間協定ができた段階で直ちに保険が開けるかというと、必ずしもそうはならないんじゃなかろうかというのが私どもの感じでございます。  なぜかと申しますと、そういう国について、例えば今年いっぱいのデューの来る債権については繰り延べを約束したと。それじゃ来年以降デューの来るものについては完全に支払ってもらえるかどうかということになりますと、そこの辺の見通しがまだ不分明でございます。従来の例でございますと、一次をやりますと、二次リスケ、三次リスケと、こう続いてまいります。そうなってまいりますと、そういう部分について引き受けをいたしますと、また繰り延べた債権の額もふえると、こういうことになりますので、これはやはり会計を預かる者といたしましては、そういう場合にも直ちに引き受けをするということはむずかしゅうございます。  ただ、債務繰り延べといいますのは、御案内のように、大体中長期債権が主体でございまして、短期債権はむしろ繰り延べの対象から外される。その限りにおいては、債務国も債権国に対しては一応払ってくると、こういうのが一般的な例でございます。そうすると、払ってきております短期の部分についてだけは回収の見通しがあるのだから保険を再開してはどうかという御批判はございまして、従来はそういうものも含めて我々は一律にとめておりましたけれども、そういう点につきましては、先ほど来の御批判の一環といたしまして、部内で十分検討さしていただきまして、なるべく早く成案を得たいと思います。
  195. 木本平八郎

    木本平八郎君 国というのは、これはつぶれないようにできているわけですね。今まで国がつぶれたというのは余り聞いたことがないですからね。したがって、少し積極的にやってもいいんじゃないか。特に一番問題は、コンソーシアムを組んでネゴしている場合がありますね、多国間のメーカーが共同で。そのときに日本だけが、おれやめたと言って引っ込んじゃうというケースがあるわけですね。これは、やっぱり非常にぐあいが悪いんじゃないかと思いますので、少なくとも今後そのコンソーシアムを組んだものについては、まあ特別の御配慮をいただきたいというふうに考えるわけです。  その次に、今もうメキシコを初めフィリピンなんかもそうですけれども、非常にリスケをやっててもどんどんどんどん債務が累積していく。ひどいのになると、元本よりも金利が多くなっているという国も出てきているわけですね。メキシコのごときは、百億ぐらい金利を払わなければいかぬ、百億ドル毎年払っていくというのは大変なわけですね。これを幾ら一生懸命に稼いでも稼いでもあるいは返しても、その元本は全然減らないということだと、まあ返す意欲もなくなってきて、それで先ほどの話でまた二次リスケ、三次リスケというふうになっていく、これはあたかもサラ金地獄に入っているような感じを受けるわけです。  そこで、やっぱりこれの基本的に私感じるのは、リスケのときの金利が八%以上ですね。大体八・五ぐらいになるわけですね。八・五%というのは、ただでさえつぶれているところへちょっとこうきつ過ぎるんじゃないかという気がするわけです。したがって、これはもうOECDが大体それでパリ・クラブなんかで合意しているわけですから、日本だけというわけにいきませんけれども、ぜひこれは大臣にお願いしたいのは、OECDのそういうところでひとつ提案していただいて、リスケをやるようなところは苦しいのだから、再建するまで少しみんなで金利を下げてやろうじゃないかということを御提案いただくというのはどうかと思うんです。  それで、ということは、はっきり申し上げて、今まで日本はまあOECDやなんかでもどうしても他国のマッチングばかりなんですね。向こうの言うのに合わしていくと。日本がリーダーシップを持ってそういうことを余り提案したということを聞かないのですけれども、この金利を下げようじゃないかということを日本から提案していただいてもいいんじゃないかと思うんですがね、大臣、いかがでございましょう。
  196. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 全くおっしゃるとおりでございまして、今までもそういう場合をとらえて政府側からその声を出していることは事実でございまして、要するに米ドルを中心として世界的な高金利状態になっている。そして、そのことが債務累積国の金利負担を増大させているということだけではなしに、為替相場が安定しない。世界経済の安定成長にとって、非常にこれは重大な問題でございます。したがって、冒頭に申し上げましたとおり、OECDその他の場をとらえて、我々はこれを的確に処置していかなければならないと考えております。
  197. 木本平八郎

    木本平八郎君 それでは次の質問に移らしていただきます。  それで、この法案に対しては原則的には私も賛成なんですけれども、実のところ申し上げて、ちょっとこの法案にははっきり言って不満足なんです。なぜかというと、まずてん補率を二・五%上げるなんていう、これなんかちょっとこうごまかしみたいな上げ方で、もうそれぐらいなら西欧諸国並みに一〇〇%にしてしまえばいいじゃないかということが第一点です。  それから、次の広告保険だとか、こうありますね。これやめるやめるというと、まあ確かにないんですけれども、どうも私の経験では、通産省が余りお勧めになってなかったと、したがってこれは余り発展しなかったという感じがするわけですね。まあそれでもやはりこれをやめるのはしようがないにしても、それから最後の千百四十四億円ですね、こういうものを借りるとまたこれ金利払わないかぬですね。むしろこのくらいのものは増資されてもいいんじゃないかと。先ほどの二十兆円からあるわけですからね。それに対して一千億ぐらいの資本金があってもいいんじゃないかという気がするんです。これはいろいろ難しい点があると思いますので、今回はこれでいいですけれども、やっぱりその辺積極的にお考えになっていく必要があるんじゃないかという気がするわけです。  そこで、私、この輸出保険というのは、これは昭和二十五年ぐらいからですね。ところが、もう時代が全然変わっているのに、保険自身あるいは運用自身が昔のままおやりになっているという感じがするんです。それはどうしてかというと、これができた時分というのはトランジスタラジオが輸出の花形だった時代で、それが対象になっていた。ところが、もう今はそうじゃなくて、VTRだとかラジカセとかあるいは電卓なんというのにもうどんどん変わってきているわけです。  しかも、私が申し上げたいのは、要するに日本輸出が概算で千五百億ドルぐらいですね。そのうちの一千億ドルぐらいが機械ですか。それで、三〇%ぐらいが自動車で、一五%ぐらいが家電です。ところが、一番中心になってきている自動車とか家電というのはこの保険の対象に、まあなってないというんじゃないですけれども、片足ぐらいしか突っ込んでないんですね。自動車は、自動車組合というのはこの輸出保険に加盟してないんですよ。それから、家電というのは包括保険の品目に入ってないわけです。で、これが相当、先ほどの四百五十億ドルぐらいになるわけですね。こういうものが入っていない。それで、これは包括保険だから全部入らなければいかぬわけですね。それがたまたまうまくそういうなにが抜けている。それで、現実には自動車なんかもアメリカのようなリスクのないところは自分でやっているわけです。それでナイジェリアみたいな危ないところは商社を使っていると、家電も大体同じようなことをやっているわけですね。だから、恨みつらみというというわけじゃないんですけれども、こういうのを何か、やはり輸出の大宗ですからね。しかもこういうのが貿易摩擦の一番元凶なんです。プラントなんというのは全然貿易摩擦になっていないわけですね。その辺が、少し積極的に取り組まれるという必要があるんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  198. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) まとめて何点か御質問がございましたので、お答え申し上げます。  まず、てん補率をなぜ一〇〇にしなかったかということでございますが、法制的にはもちろん一〇〇にすることも十分可能だと思いますが、従来、輸出保険におきましてはてん補率を一〇〇にしないで、ある程度民間のリスクにお任せする部分も置いておく、そうすることが保険制度自身の適切な運用のためにもいいのではないか、こういうことでございましたので、今回もその原則に従いまして、一〇〇にせずに二・五という半端な刻みでございましたが、民間の負担の部分を依然として残さしていただきました。  それから二つの保険制度の廃止については、通産省が使わせなかったのじゃないかという御批判でございますが、むしろ今御指摘のございましたように、輸出のやり方自身が変わってきたんではないかと思います。委託販売というような形での輸出ではなくて、もうみずからが、いい物だからどんどん買ってくださいと、買わなければむしろ我々自分でやりますよと、こういう感じで輸出をするような状況になってきたために、委託販売保険というのはもうほとんど利用がなかったのだろうと思いますし、それから海外広告保険につきましても、民間各社とも一生懸命やっておられまして、保険制度をPRをすればするだけの十分その効果がある、こういうことなんだろうと思うのでございます。したがいまして、そういう意味での政策的な効果も乏しくなってきたと、それに従って民間の御利用の実績もない、この両方の観点から、今回廃止してもいいんではないかというふうに考えたわけでございます。  それから資本金が少ないという点につきましては、これまでもたびたび重ねて御指摘がございました。私どもも全く同じ意見でございますが、現時点で直ちにこれを増額するというわけにもなかなかいかない事情も御理解いただきたいと思いますが、可及的速やかに機会をとらえて増額については努力をしてみたいと思います。  それから包括保険の問題につきまして、家電については対象品目に入っていないし、自動車についてはメーカーが組合に入っていないので使われない、これをもう少し使うようにしたらどうかという御指摘でございました。私ども、できましたら家電につきましても包括の対象にしたいと思っておりますし、自動車につきましても、メーカーが直輸出している分も組合に入っていただいて掛けていただきますと、保険収支採算上は非常に楽になるのでございまして、ぜひそういう方向でお願いしたいと思いまして、今までいろいろ努力はしてきておりますが、どうも御指摘のように、むしろ入らないことないしは品目に対象になってないこと自身が輸出者として望ましいと、こういう感じでございますので、これは輸出保険、強制保険でないものでございますから、なかなか難しいわけでございますが、例えば自動車のような場合、そうだとしますと、後進国向けの部分についてはもう包括から外すと、むしろそれとどちらがいいかというぐらいの選択を迫るということは可能だと思いますので、そういうことは考えてみたいと思っておりますが、引き続き努力はさせていただきます。
  199. 木本平八郎

    木本平八郎君 ぜひその辺は、保険だけじゃなくて、やっぱり不公平の是正という点からもぜひ努力を続けていただきたいと思います。  それで、私まだ時間はあるんですけれども、皆さん相当お急ぎのようなので簡単にしたいと思います。  最後のテーマなんですけれども、私、実はおととい通産省の五階へ行きまして、保険課の部屋を見に行ったわけです。もうこのごろ物すごく忙しくて大変だというので、どういう仕事ぶりかと思いましてそっと行ってみたんですがね。見たら、確かに忙しいわけです。ところが、私の感覚ではどうもやっぱりお役人仕事だから能率が悪い、極めてビジネスライクじゃないという感じはするわけです。普通のときならいいんですけれども、これだけカントリーリスクがなにしてきて業務が増大してきますと、少しやはり仕事のやり方をお考えいただかなきゃ対処できないんじゃないかという気がするわけです。それで民間のときにこんなことを言うとすぐまたしっぺ返しを食うんですけれども、こういう際ですから言わせていただきたいのですけれども。それで私の経験でも、今局長、課長みんなおられますけれども、大体一年か二年で交代されるわけですね。ところが、この輸出保険だけは普通の通産行政とはちょっと違うと思うんですよ。やはり経験だとか知識の蓄積みたいなものが必要なんじゃないか。それにはちょっと一、二年というのは早いという感じするわけです。それからちょっとややこしいこと、求償なんかの問題で説明に行きましても皆さんお忙しいから、聞いていてわかったって処置するまでにまた転勤されちゃうと、新しい方にまた説明するということで、大きな問題のあるのはどんどんどんどんこう積み重なっていくわけですね。きのうもちょっと課長の机を見たらやっぱりそれらしい書類が大分たまっておるわけです。そこで私ども、課長とかそういう局長まで行くのかどうかしりませんけれども、今のこの保険行政というのは非常に大変だと思うんですね、その辺。ところが、権限が集中している、仕事が集中しているのにまた国会の答弁か何かについていかなきゃいかぬとかなんとかで忙しくてみんなペンディングになっちゃっているという感じするんです。そこで、これはそういうことがいいか、できるのかどうかしりませんけれども、まず一点は、こういうのをこの際民間に、例えば財団法人の輸出保険協会ですか、これがどういうことをやっているか全然知りませんけれども、そういうところへむしろ移管されるというのがどうかということが一つ。それからもう一つは、それをとりあえず当面今前田審議官がおられますけれども、審議官のような方でこういう決済をされる方を置いておいていただいて、それでどんどんそっちの方を進めていただくようなことができないか。これは審議官も局長も課長も同じだということかもしれませんけれども、払いやそれは人事政策としては同じかもしれませんけれども、何か特殊な担当を特別に置いていただかないと、このままじゃもう事務的にもパンクしちゃうんじゃないかという気がするわけですね。  この二点をちょっとお伺いしたいんです。
  200. 杉山弘

    政府委員(杉山弘君) 保険金の支払いも膨大なものになってきておりますし、限られた人数でこれに対処するというのは非常に大変なことでございまして、まず私ども考えておりますのは、できるだけ事務を徹底して機械化、合理化をしてみたい。特許につきましてもペーパーレスということをかねてからの懸案として通産省はやっているわけでございます。輸出保険事務につきましてもぜひそういうことを少し考えてみたいと思っております。  それから、民間委託とおっしゃいましたのは、その輸出保険自身を民間でやらせるということだとしますと、これはリスクの大きさからいってなかなか難しいということは御理解いただけるかと思いますけれども、むしろその事務処理の簡素化として一部のものをやらせられないかということだとしますと、むしろまず徹底して機械化をやり、それから場合によってはその機械化の過程で帳票類の記入等につきましては、むしろ保険契約者の側に機械に入るような格好での記入をお願いするとか、そういう御負担はあるいは甘受をしていただくようなことになるかもしれませんが、そういうことを含めましてできるだけ事務の合理化、機械化はやってみたいと思います。  それから、人事の問題につきましては、大臣もここにいらっしゃってよく御承知と思いますし、私の方から人事担当者の方にも今そういう御意見があったということは帰りまして十分連絡させていただきたいと思います。
  201. 木本平八郎

    木本平八郎君 まだ時間もありますし、聞きたいこともいろいろあるんですけれども、大体肝心なことをお聞きしましたんで、いろいろお急ぎの何もありますので、ただ最後に一つだけこれは要望なんですけれども、何かやはりこう実際におやりになっていると保険の業務自身がもう至上だというふうに思い込まれると思うんです。しかしながら、やはり本末転倒をしないようにどこにその本来の目的があるのかということをもう一度見直していただいて、ぜひ輸出振興に役立てるように御協力いただきたいと思うんです。これでもって私の質問を終わります。
  202. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 他に御発言もなければ、本案に対する質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  203. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  204. 橋本敦

    橋本敦君 私は、本法案につきまして、日本共産党の反対の理由をごく簡単に表明いたします。  第一は、代金保険と手形保険のてん補率を引き上げる問題であります。  我が国輸出保険制度は、大企業中心輸出促進策の一つとして活用されてまいりましたが、その制度は輸出保険審議会も諸外国の保険制度と比較しても遜色のない状況にあると認めているとおりでありますし、加えて現在貿易黒字も二百三十三億ドル、史上最高という、こういう状況のもとでありますから、てん補率の引き上げなどでこれ以上の改善をする特段の必要はないと思うのであります。  第二は、中小企業の輸出への悪影響に対処するということでありますが、中小企業の輸出保険利用状況は、先ほど私が指摘したとおり、政府の不十分な資料でも約八%にすぎませんし、実際の利用率はせいぜい数%という状況だと思われます。したがって、中小企業対策といっても、実際は大企業の援助策の拡充とも言えるものとなりかねませんし、このことは大企業の輸出促進に拍車をかけまして、経済摩擦を一層助長することにもなりかねないことを憂慮するのであります。  第三は、輸出保険特別会計法改正して、借入金の借りかえができるようにした点でありますが、改正によって今回の一連のリスケに一時的に当面対処できるといたしましても、将来の見通しは決して明るくないことは明らかでありますから、この借りかえはかえって将来に禍根を残すのではないかと心配するのであります。  むしろ、この際、保険制度の大原則である収支相償、独立採算の原則を厳しく守る立場に立って、保険料の引き上げや承認審査の適正化など、輸出保険制度とその運用の面で見直しを実施すべきではないかと思います。  以上で反対の討論を終わります。
  205. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  輸出保険法及び輸出保険特別会計法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  207. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  208. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  209. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 次に、機械類信用保険法の一部を改正する法律案及び繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。  まず、機械類信用保険法の一部を改正する法律案について趣旨説明を聴取いたします。小此木通商産業大臣
  210. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 機械類信用保険法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  機械類信用保険制度は中小企業の設備近代化及び機械工業の振興等を目的として昭和三十六年に創設され、以来政府が特別会計のもとで運営してきた機械類に係る割賦販売契約、リース契約等の取引につき信用保険を行う制度であり、中小企業政策の観点からも極めて意義の大きい制度であります。  近年、機械類信用保険の規模は急激に拡大し、昭和五十八年度末における保険引受責任残高は約一兆円と五年前に比し三倍強にも達しております。また、今後におきましても中小企業のオフィスオートメーション化、コンピュータ化の急速な進展等が予想され、これに伴い電子計算機及び事務用機器等を中心に本保険の利用の伸びが見込まれるとともに、昭和五十七年度に追加されたプログラム保険についても今後その利用が本格化するものと見込まれます。  このように機械類信用保険事業の業務量の増大が確実に見込まれる状況の中で、同事業の運営の一層の効率化及び円滑化が急務となってきております。このため政府としては、従来特別会計のもとで政府みずから運営してまいりました機械類信用保険業務を中小企業信用保険公庫に移管することにより、機械類信用保険の事業規模の増大に的確に対応し得る体制の整備を図ることとし、同業務の移管を行うために本法律案を提出いたした次第であります。  次に、この法律案の要旨について御説明申し上げます。  第一に、従来政府が行ってまいりました機械類信用保険の業務を中小企業信用保険公庫が行うものとすることであります。  第二に、中小企業信用保険公庫に機械類信用保険運営基金を設け、特別会計の廃止に際し政府から出資があったものとされた金額をもってこれに充てるとともに、機械類信用保険業務に係る経理についてはその他の経理と区分するものとすることであります。  第三に、機械類信用保険特別会計法を廃止することとし、機械類信用保険業務に関し国が有する権利義務は中小企業信用保険公庫が承継するものとすることであります。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  211. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 次に、繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案について趣旨説明を聴取いたします。小此木通商産業大臣
  212. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) 繊維工業構造改善臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  繊維工業につきましては、現行繊維工業構造改善臨時措置法に基づきまして、昭和四十九年度からその知識集約化を目指して異業種間連携を軸とした商品開発力、技術開発力の強化等を内容とする構造改善事業を実施してまいりましたが、近年、消費者ニーズに対応した高付加価値品、差別化品を供給し得る体制が次第に形成されつつあるなど我が国繊維工業にも新たな発展の可能性が芽生えてきております。  しかしながら、この間の我が国繊維工業をめぐる内外環境は、当初の予想を上回るまことに厳しいものとなっております。すなわち、昭和五十四年の本法律改正直後に発生した第二次石油危機に伴う景気の後退により繊維工業は厳しい不況に見舞われ、多くの繊維事業者は前向きの構造改善に取り組む余力を欠くという事態に立ち至りました。さらに、最近においては、発展途上国の追い上げがこれまでの価格競争力の面にとどまらず、我が国が優位を保っている非価格競争力の面でも強まってきております。また、国内においては、需要構造の高度化に伴い供給面での多品種少量短サイクル化の急速な進展に対応していく必要が生じており、我が国の繊維工業は新たな課題対応しつつ一層の構造改善を図っていくことが必要となっております。  これらの状況を踏まえ、繊維工業審議会及び産業構造審議会におきまして、今後の繊維工業及びその施策のあり方について慎重な審議が重ねられ、昨年十月、我が国の繊維工業は、今後とも非常に厳しい内外環境下に置かれることが予想されるが、繊維事業者が技術革新と創造性を軸に迅速かつ積極的な構造改善を進めることにより、先進国型産業として新たに発展していくことが十分可能であること及び政府としても構造改善の困難性、緊急性にかんがみ、繊維事業者の自主的努力を側面から支援するため、本法律を五年間延長し、その一層の促進を図るべきであることを主たる内容とする答申を得た次第であります。  政府といたしましては、この答申に沿って政策を進めるため本法律案を提案することといたした次第であります。  次に、この法律案の要旨を御説明申し上げます。  第一は、この法律が廃止するものとされる期限につきまして、従来、本年六月三十日までとなっているものを昭和六十四年六月三十日まで五年間延長することであります。  第二は、繊維工業の先進国型産業への転換のかぎを握る技術力の強化を図るため、繊維工業構造改善事業協会の業務につきまして、繊維事業者に対して技術指導を行う者の養成及び研修の業務並びに新技術の開発及び導入を促進するための調査研究及びその成果の普及の業務を追加することであります。  吹上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  213. 斎藤栄三郎

    委員長斎藤栄三郎君) 以上で両案の趣旨説明聴取は終わりました。  両案に対する質疑は次回に行うこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十分散会      ―――――・―――――