○
政府委員(高橋元君)
昭和五十八年における
公正取引委員会の
業務につきましてその概略を御説明申し上げます。
昨年の
我が国経済は、
世界景気の
回復、
物価の安定等を
背景に
輸出や生産が伸びを見せるなど、緩やかながら着実に
回復してまいりましたで。また、中長期的に見ますと、
技術革新とともに経済のソフト化、サービス化が
進展するなど
経済社会の構造
変化には著しいものがあります。このような中で
民間活力が十分に発揮されるような経済
環境の
整備を行うことがますます重要になっており、
公正取引委員会といたしましては公正かつ自由な競争の維持、
促進により
我が国経済の
活性化、
効率化を図るべく、独占禁止
政策の適正な
運営に努めてまいったところであります。
特に昨年は、独占禁止法違反事件の迅速な審査に努めるとともに、広報活動や業界に対する指導等により予防行政を
推進いたしました。また、
貿易摩擦問題に関係した各種の実態
調査を行いその結果を広く
内外に説明したほか、下請取引を初めとする
中小企業関係の取引の公正化に努めたところであります。
まず、独占禁止法の運用
状況について申し上げます。
昭和五十八年中に審査いたしました独占禁止法違反被疑事件は三百四十四件であり、同年中に審査を終了した事件は二百四十五件であります。このうち
法律の規定に基づき違反行為の排除等を勧告いたしましたものは十二件、法的
措置をとるには至りませんでしたが警告を行いましたものは百二十九件であります。また、昨年における課徴金納付命令事件は十五件であり、合計二百三十五名に対し、総額十七億九千百八十六万円の課徴金の納付を命じました。
次に、届け出受理等に関する
業務でありますが、合併及び営業譲り受け等につきましては、
昭和五十八年中に、それぞれ一千五十七件、七百九件、合わせて千七百六十六件の届け出があり、所要の審査を行いました。
事業者団体につきましては、
昭和五十八年中に成立居等一千三百七十四件の届け出がありました。また、事業者団体の活動に関する事前の相談に対しましては適切に回答を行うよう努めるとともに。相談事例を取りまとめて公表することにより違反行為の未然防止を図りました。
国際契約等につきましては、
昭和五十八年中に四千二百六十三件の届け出があり、改良
技術に関する制限、競争品の取り扱いの制限等を含むものについてはこれを是正するよう指導いたしました。
独占的状態に対する
措置に関する
業務といたしましては、ガイドラインの別表掲載の十三業種について実態の把握及び関係企業の動向の監視に努めました。
価格の同調的引き上げに関する
報告徴収の
業務につきましては、昨年中に価格引き上げ理由の
報告を徴収したものは、鋼材六品目、バター、溶接棒、ビール及びウイスキーの計十品目でありました。
次に、経済実態の
調査といたしましては、生産集中度
調査、企業集団
調査等を行いました。また、流通
分野においては、医療用医薬品、腕時計等の
業種別の実態
調査に基づき、独占禁止法及び景品表示法上問題のある行為につきまして所要の改善指導を行いました。
さらに、近年、
貿易摩擦問題の一環として、
我が国市場が閉鎖的ないし排他的であるとの諸外国からの批判があることにかんがみ、
輸入品の流通実態、
輸入総代理店や総合商社の事業活動の実態等につきまして独占禁止法の
観点から
調査を行い、
昭和五十八年四月、その結果を公表いたしました。
政府規制
制度及び独占禁止法適用除外
制度につきましては、
我が国経済における
民間の
活力を生かし、経済の効率性を高める見地から、引き続きその見直しのための検討を行いました。
独占禁止法上の
不況カルテルは、エチレン、石綿スレート及びセメントの三品目について認可いたしましたが、
昭和五十八年末までに終了しております。なお、独占禁止法の適用除外を受けている共同行為の数は、
昭和五十八年末現在で四百六十八件となっておりますが、その大半は
中小企業関係のものであります。
国際関係の
業務といたしましては、OECD等の国際機関における会議に積極的に参加するとともに、
アメリカ、EC等の独占禁止当局との間で
意見交換を行うなど、国際的な連携の
強化に努めました。
次に、下請代金支払遅延等防止法の運用
状況について申し上げます。
下請事業者の保護を図るため一千六の親事業者に対し、下請代金の支払い改善等の
措置を指導いたしました。特に不当な値引き等の案件につきましては、値引き額を下請事業者に返還させるなど重点的に取り組みました。また、親事業者及び親事業者団体に対して下請取引の適正化の要請を行うなど法の周知徹底を図り、違反行為の未然防止に努めました。
最後に、不当景品類及び不当表示防止法の運用
状況について申し上げます。
昭和五十八年中に同法違反の疑いで
調査した事件は三千五百四十六件であり、このうち排除命令を行いましたものは十二件、警告により是正させましたものは千二百八十二件であります。都道府県の行いました違反事件の処理件数は、
昭和五十八年一月から九月末までで四千九百四十三件となっており、今後とも都道府県との
協力を一層
推進してまいる
所存であります。
また、同法第三条の規定に基づき、家庭用合成洗剤及び家庭用石けん業並びに不動
産業における景品類の提供を制限する告示を制定いたしました。
事業者が自主的に規制するための公正競争規約につきましては、雑誌業における景品類の提供の制限に関する規約など十三件を認定し、
昭和五十八年末現在における公正競争規約の総数は百十三件となっております。
以上簡単でございますが、
業務の概略につきまして御説明申し上げました。
今後ともよろしく御指導のほどお願いいたします。