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1984-08-03 第101回国会 参議院 社会労働委員会,地方行政委員会,大蔵委員会,運輸委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年八月三日(金曜日)    午前十一時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。    社会労働委員会     委員長         石本  茂君     理 事                 遠藤 政夫君                 佐々木 満君                 浜本 万三君                 中野 鉄造君     委 員                 大浜 方栄君                 金丸 三郎君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 森下  泰君                 糸久八重子君                 本岡 昭次君                 和田 静夫君                 中西 珠子君                 山中 郁子君                 柄谷 道一君                 下村  泰君    地方行政委員会     委員長        大河原太一郎君     理 事                 岩上 二郎君                 真鍋 賢二君                 三治 重信君     委 員                 井上  孝君                 上條 勝久君                 古賀雷四郎君                 出口 廣光君                 吉川 芳男君                 上野 雄文君                 佐藤 三吾君                 高杉 廸忠君                 原田  立君                 神谷信之助君    大蔵委員会     委員長         伊江 朝雄君     理 事                 岩崎 純三君                 大坪健一郎君                 藤井 孝男君                 竹田 四郎君                 塩出 啓典君     委 員                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 倉田 寛之君                 福岡日出麿君                 藤井 裕久君                 藤野 賢二君                 宮島  滉君                 矢野俊比古君                 吉川  博君                 赤桐  操君                 丸谷 金保君                 鈴木 一弘君                 近藤 忠孝君                 青木  茂君                 野末 陳平君    運輸委員会     委員長         矢原 秀男君     理 事                 梶原  清君                 下条進一郎君                 瀬谷 英行君     委 員                 江島  淳君                 小島 静馬君                 小林 国司君                 内藤  健君                 藤田  栄君                 安田 隆明君                 山崎 竜男君                 吉村 真事君                目黒今朝次郎君                 安恒 良一君                 小笠原貞子君                 伊藤 郁男君                 山田耕三郎君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        自 治 大 臣  田川 誠一君    政府委員        総務庁行政監察        局長       竹村  晟君        大蔵省主計局次        長        兼内閣審議官   保田  博君        国税庁直税部長  冨尾 一郎君        文部省体育局長  古村 澄一君        厚生大臣官房長  幸田 正孝君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生大臣官房審        議官        兼内閣審議官   古賀 章介君        厚生大臣官房審        議官       新田 進治君        厚生大臣官房会        計課長      黒木 武弘君        厚生省健康政策        局長       吉崎 正義君        厚生省保健医療        局長       大池 眞澄君        厚生省保健医療        局老人保健部長  水田  努君        厚生省生活衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省薬務局長  正木  馨君        厚生省社会局長  持永 和見君        厚生省児童家庭        局長       小島 弘仲君        厚生省保険局長  吉村  仁君        厚生省年金局長  吉原 健二君        厚生省援護局長  入江  慧君        社会保険庁長官        官房審議官    長門 保明君        社会保険庁医療        保険部長     坂本 龍彦君        社会保険庁年金        保険部長        兼内閣審議官   朝本 信明君        食糧庁次長    山田 岸雄君        運輸省海上技術        安全局船員部長  武石  章君        自治大臣官房審        議官       土田 栄作君    事務局側        常任委員会専門        員        高池 忠和君        常任委員会専門        員        河内  裕君        常任委員会専門        員        今藤 省三君        常任委員会専門        員        村上  登君    説明員        文部大臣官房審        議官       齋藤 諦淳君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――    〔社会労働委員長石本茂委員長席に着く〕
  2. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会地方行政委員会大蔵委員会運輸委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私、社会労働委員長が本連合審査会会議を主宰いたします。  健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は、お手元に配付いたしましたとおりでございますので、御了承のほどをお願いいたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 安恒良一

    安恒良一君 質問に入る前に、御答弁に回られる大臣並びに政府委員にお願いしておきますが、持ち時間が少ないのですからごく簡潔に私も質問したいと思いますし、簡潔にお答えを願いたいと思います。  健康保険法改正の最大の理由は、大臣もしばしば言われておりますように、二十一世紀へ向けて我が国の国民の健康の増進、こういうことに重点が置かれているというふうに聞いておりますが、私は、皆保険下における健康保険制度については二つの約束がなけりゃならぬと思うのでありますが、この点についてどうお考えになるか。一つは、国民保険下でありますから、国民がいつでもどこでもよい医療を平等に受けられる、これが第一。第二の約束は、いわゆる病気の場合には早期発見早期治療。これが一番国民健康維持に極めて重要なことだと思いますが、この点について厚生大臣並びに大蔵大臣の所見を求めます。
  4. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ただいまの先生の御指摘、私も全く同感でございます。まだまだ不十分ではございますが、国民のすべての皆さんがどこでも立派な安心のできる医療を受けられるようにこれから努力をしていかなければなりません。  また、まさに予防にまさる治療なし、今回の五十九年度予算でも老人保健事業等厳しい予算ではございましたが、これらの予防対策のためには大幅な予算の増額をしてそのための努力を続けておるところでございます。
  5. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 安恒委員、ちょうど二十年前になります。あなたは中央社会保険医療審議会委員さんでありました。私は内閣官房長官で、中医協に復帰していただきたいと、そのときから教わりました医療問題でございます。  厚生大臣からお答えしたとおりであります。
  6. 安恒良一

    安恒良一君 そこで一番問題になるのが、今両大臣も御認識をいただきましたように、私は早期発見早期治療、それから国民がいつでもどこでもよい医療国民がみんな平等に受けられる、こういう観点から二十一世紀へ向けての法律改正をしていかなきゃならぬ。  そこで質問をしたいのでありますが、今度の厚生省政府原案では、患者本人の一割負担が入っています。なぜ入れたかということについてはもうしばしば承っておりますから重ねてお聞きする必要はありません。その中の一つの問題として、乱診乱療防止に役立つということがしばしば言われています。また、本人自覚を持たせる、こういうことでありますが、ただ、これもまず前提として聞いておかなきゃなりませんが、医療に関して、本人自覚を持つとか選択範囲があるのか。医療範囲について、医療裁定ですね、私は今の健康保険法、それからいわゆる治療指針、それから診療報酬支払い点数、単価等々を見ますと、残念ながら患者側には選択範囲がない。いわば医療についてはオールマイティーとは申しませんが、医師裁定権裁量権といいますか、がもう最大限であるというふうに思いますが、その点はどうでしょうか。
  7. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 今先生指摘のように、医療中身に入りましたときに患者の方の選択権というのは非常に少ない、こういうことになると思います。医者の方の裁量権によって医療中身が決定されるということだと思います。
  8. 安恒良一

    安恒良一君 その点も肯定をされたわけです。  そこで、具体的にお聞きをしたいんですが、私は、患者側には裁量権がない、医師裁定する、そういう中で、一割負担というのがどうして乱診乱療防止に役立つのかわかりません。  具体的にちょっと聞いてみたいと思いますが、富士見産婦人科病院事件宇都宮精神病院事件被害者は、本人の場合もありましたが、ほとんどこれは健康保険家族ないし国保加入者でありました。ですから、こういう方々には既に患者負担があったのであります。にもかかわらず、残念ながら乱診乱療のいわば犠牲になったというのがこの代表的な事件だろうと思います。また、大腿四頭筋短縮症ですね、これは幼児に対する過剰注射原因であるというふうにされています。また、スモンやサリドマイドの薬害ですね、これらすべてを見ますと、何か十割給付だから以上のようなことが起こったのかということになると、そうではないと思うのであります。  でありますから、十割給付ゆえ薬害とか医療被害が大量に発生をした、こういう証拠があるならばひとつお示しを願いたいと思います。
  9. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 今先生指摘のような薬害事件、あるいは医療被害事件というようなものにつきましては、十割給付であったとか七割給付であったとか、そういうことよりも、むしろ医者診療中身、そこが問題であろうと思います。
  10. 安恒良一

    安恒良一君 私が聞いたことに答えてもらいたいんですが、十割給付ゆえに何か大量にこういう問題が発生したということがありますかどうかということを聞いているんです。
  11. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 今御指摘のような薬害事件あるいは医療被害事件については、十割であるということによって起こったとか、あるいは七割であるから起こった、こういうことではないと思います。
  12. 安恒良一

    安恒良一君 すなわち私は、今も認められたように、この一連の薬害とか医療被害というのは十割給付がゆえに起こったということはないということが明らかになった、そういう状況の中で十割給付を一割下げられるというのでありますが、そこでお聞きをしたいのであります。  今回の予算設定のときに、概算要求から最終予算決定をされたときに長瀬指数というものを採用されておりますが、長瀬指数というのはどういうものか、ごく簡略にひとつ説明してください。
  13. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 長瀬指数というのは、医療費の大きさと給付率との関係をあらわす関数の係数でございます。
  14. 安恒良一

    安恒良一君 長瀬指数というのは、いわゆる一つ医療費における給付水準が下げられた場合に、それが患者受診にどのように影響を与えるか、また、医療経済にどういう影響を与えるか、そういう意味で、今回の場合の概算要求から最終的な要求を決められたときに使われたんじゃないんですか。その結果数字があのように出てきたというふうに私は承っていますが、それでいいですか。
  15. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) そのとおりでございます。
  16. 安恒良一

    安恒良一君 そこで大蔵大臣も、それから厚生大臣も聞いてほしいのでありますが、いわゆる病気を治すためには、何といっても早期発見早期治療が一番いいと、これは両大臣がお認めになったところであります。  ところが一方、厚生省自体が、また、大蔵省厚生省予算折衝の中においても長瀬指数というのが使われている。長瀬指数というのは、今私が言ったように、給付を下げればそれだけ受診も減るし、そういうことにこれはなってくるわけですね。そうしますと、これは早期発見早期治療とは逆行することになる。  なぜかというと、私は、病気というものはできるだけ早期発見をして早期治療をする、そのことが本人苦痛も伴いませんし、また医療費観点からいっても節約できる。いわゆる一部負担が導入されることによって、逆に自分自己診断をしたり、町の売薬を飲むことによって医療機関を訪れることが遅くなる、そのことは本人も非常に苦痛が伴うし、また、医療経済からいっても結局非常に高いものにつく、こういうふうに思うのでありますが、その点はどうですか。
  17. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生指摘の問題、私も最初に心配したのでありますが、いろいろ調べてみましたら、現在二割あるいは三割負担しておる方と十割給付の方で受診率には大きな違いがございません。そういうことから、今回の一割負担、これは必要な受診は妨げないと判断をいたしました。  それなら医療費適正化には役立たないのではないかと、こういうことになりますが、受診率は余り変わっておりませんけれども、一枚のレセプト受診内容、これはやはり自己負担のある者とない者で一割あるいは二割程度違っておる、こういうことでございます。
  18. 安恒良一

    安恒良一君 その点はもう一遍ちょっと。  受診率は変わっていないということはわかったんですが、受診内容が変わっているということですか。中身について説明してみてください、具体的にどういうふうになっているかということを、簡単に。
  19. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 診療中身家族本人、あるいは国保の場合に変わっております。  そこで私ども、一日当たりの診療費というものを比較をいたしてみますと、政管本人とそれから家族の場合には、特に投薬注射それから検査レントゲン等におきまして家族に比べて本人点数が三割ないし四割高い、こういうようなケースを持っております。  そのところを大臣指摘したものと考えます。
  20. 安恒良一

    安恒良一君 納得できませんね。  どういうことかというと、今大臣が言われたり吉村局長が言われたことは、いわゆる受診率は変わらない、しかしその中身が違っておるというのは、正確に言うならば、同じ病気をした場合において、本人の場合は同じ病気でも投薬注射検査が多い、家族は少ないのかどうか、そのことを明確にしていただかぬと、トータルで本人家族比較して、本人の方が高いんだということではわからないんです。  ですから、あえて私は、一割負担というのが患者のやはり受診の機会を非常にそぐだろうと思っていますから、それはそれで素直にお認めになるならわかるんですけれども、今言われたようなことではわかりませんので、同じ病気の場合に、今おっしゃったようなことについてどう具体的に違っているのか、ひとつ説明してください。
  21. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 今申し上げましたのは、私ども本人家族年齢階層別に同じ年齢比較をしてみました結果、本人の場合は二、三割高いということを申し上げたわけでございまして、同じ病気の場合ということになりますと、個々のケースで考えてみますと、例えば、私ども大阪のある診療所で、これは取り消し事件に該当した診療所でございますが、本人の場合と家族の場合、それから老人の場合、同じような病名であっても家族に比べまして本人の方がはるかに高い診療点数になっておる、こういうようなことから類推をしておるわけでございます。
  22. 安恒良一

    安恒良一君 類推では困るわけなんです。というのはどういうことかというと、今重大なことをおっしゃったのは、一割負担になっても受診率は下がらぬだろうと、こういうことなんですね。私は下がるだろうと。そこで、受診率だけを見ると、平均で、健康保険本人受診率家族受診率を見て、これは同じようだから、家族には既に二割とか三割あるにもかかわらず同じ受診率だからと、こういうわけです。それはそのとおり。それじゃその中で今度は病気中身についてどうなのかと聞いたら、やや注射投薬検査が、ということです。  ですから私は、今言われていることは、同じような病気の中で、例えば、本人盲腸なら盲腸にかかった、家族盲腸を切った、その場合に、盲腸に必要な治療検査投薬というものが、同じ病気で十割給付だから高い、家族は入院の場合八割だから低いということならば、そういう具体的な事例でひとつ説明をしてみてくださいと、こう言っている。類推では困ります。その点をひとつはっきりしてください。
  23. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 同一疾病比較をした資料は持ち合わせておりませんが、診療の大体の傾向からいいまして、先ほど申し上げましたようなある診療所の例を引きましても、これは大体同じような疾病名患者を比べてみたわけでございますが、やはり十割給付の方にウエートのかかった診療点数になっておる、こういうことがあるわけでございまして、同一疾病の場合でも、本人家族の場合には診療内容が違うんではないかと考えるわけでございます。
  24. 安恒良一

    安恒良一君 これは重要なことです。違うんじゃないかでは困ります。同一疾病本人家族治療内容検査内容が違っては、これは大問題です。同一疾病で違うんではないだろうかと、そういうことでは議論できません。そこをはっきりしてください。  私は少なくとも、健康保険法それからいわゆる治療指針等々の中において、同一疾病であって家族本人の場合に給付水準の違いがあるから治療中身が、注射投薬検査、こういうものが違うなどというのはあり得るはずはないと思います。そこのところ、大変に重要な違いでありますから、明確にしてください。
  25. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私も家族本人診療内容に差があってはならないと思います。しかしながら現実の問題として本人家族の間に二、三割の違いがある。これはなぜかというのはなかなか説明しがたいのでありますが、あることは事実でございます。  そこで私どもは、その原因は何かと、こういうことをいろいろ考えてみますと、やはり給付率に差がある、自分負担がある場合とない場合とで診療中身医師診療選択が変わってくるんではないかと、こういうように判断をしておるわけでございます。
  26. 安恒良一

    安恒良一君 それは困ります。日本の皆保険というのは、いつでもどこでもよい医療国民が平等に受けられる、これが皆保険約束の大前提なんです。  今聞きますと、同一の病気であっても本人家族においては治療中身が違うということは重大な問題です。私はそんなことはないと思う。お医者さんが病気を治すときに、家族が来たから、本人が来たからといって、この人は一割負担があるから必要な注射をやめたり、必要な検査をやめたり、必要な投薬をやめるはずがないと思います。そんなばかげたことはありません。  この点はひとつ明確にしてください。明確にしてもらわないと進められません。こんなばかげたことはありません。お医者さんに聞いてください。そんなばかげたことはありません。
  27. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは私もいろいろ疑問に思って検討してみたのでございますけれども、まさに診療行為としては安恒先生おっしゃるとおり、これは二割負担であるから、あるいは十割給付であるから診療内容というものが変わっていいはずのものではございません。しかし、現実に出てきておる数字が一割程度あるいは二割程度違う。  これはなかなか表現が難しいのでありますけれども負担が全然ないという場合と負担があるという場合で、やっぱり節約しようと、そういう気持ちがこういう数字的な結果になっておるのではないかと推察するのでございます。
  28. 安恒良一

    安恒良一君 納得できません。  それでは、保険医療機関及び保険医療養担当規則の中で、給付に差があった場合にそういう差別的な医療行為が行われているということを証明する条項がどこにありますか。そういうことは一切書いてありません。給付水準が違うからといって、同一病気のときに医者手かげんをするなどという療養担当規則は全然ございません。そういう、だろうとか、あるだろうでは困る。具体的に言ってください、例えば、あるレセプトを見たら、いわゆる盲腸なら盲腸にかかったときに、本人の場合にはこんなに注射をする、家族の場合にはやっていないという。そんなことは療養担当規則のどの条項見ても、療養に関して本人家族区別給付区別によって療養中身が変わるという条項はどこにもない。それはどうなっていますか。
  29. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 療養担当規則上そういう差別があるわけではございません。したがって、私は、お医者さんが必要な診療部分について家族本人について差別をしておるようなことは、日本のお医者さんで、あるはずはないというようなことは考えております。  ただ、若干やはり給付率の違い、あるいは患者負担のあるなしによって必要な部分以上のものが行われておるという可能性は、これは否定できないと思います。
  30. 安恒良一

    安恒良一君 いや、話はだんだんおかしくなってくるわけですね。お医者さんが必要な医療についてはこれは本人家族区別がない、ところが本人の場合は必要でないのがあるだろうと、だろうじゃ困るんですよ。具体的に言ってみてください。今私が挙げた例で、病気のときに、例えば盲腸なら盲腸治療するときにここまでは必要なんだ、これより以上は必要でないけれども本人は十割だから過剰サービスをしていると、具体的に言ってください。具体的な話をしてもらわぬと困るんだ、病気の話だから。どういう行為が必要でないんですか。
  31. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私ども支払基金の審査等を見まして、査定をされておるものはやはりむだな部分というものを査定をしておるんだろうと思います。そこで、私どもはいろいろ医療の実態というものを眺めてみましたときに、やはりただの場合にはむだな部分が生ずる、生じやすいという傾向があることは事実だろうと思います。  今先生指摘のように、ここまでが必要な医療で、そこから上は必要でないと、こういうのを具体的に示せということをおっしゃっておりますが、これはなかなか難しいわけでありまして、やはり担当規則では医学常識に従って患者の個々の病状に従って一番必要な医療をすると、こういうことになっておりますので、そこはそういうことだと思います。
  32. 安恒良一

    安恒良一君 抽象論では困りますから。  それでは、支払基金においてむだな分を削除しているとおっしゃいました。わかりました。本人の十割給付で削除されたものはこういうものがある、家族で削除されたものはこういうものがある、具体的数字を出して、その上で本人の方が非常にむだな医療が行われているというなら具体的に言ってください。あなたは支払基金においてと言われましたから、支払基金における具体的数字で、本人診療分についてはこうこうこういうことでむだがこれだけの金額、これだけ削除された、家族の場合については、家族の場合にはこういうふうにされていない。それから、同じ病名で、例えば盲腸なら盲腸で来たときに本人の場合にこれだけの削除がある、ところが家族の場合には必要なことであるから、ないならない、この二つについて具体的に示してください。
  33. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私ども、具体的な数字は持ち合わせておりません。しかし、指導監査等を通じて個々のケースで考えてみますと、そういう判断をしておるということでございます。
  34. 安恒良一

    安恒良一君 委員長、納得できません。  支払基金においていわゆるむだな分は査定をしておると言われましたから、それならば支払基金において査定された中で、本人についての査定、削減が幾らある、家族について幾らある、それから、同じ病名で、レセプトを点検されればわかるわけですから、支払基金で、例えば盲腸なら盲腸とか、腹膜炎とか、いろんな病名、代表的な病名の中で本人の分についてはこれだけの削除があった、家族についてはこれだけの削除、だから本人の方がよけいむだ――私はむだな医療なんてないと思いますし、必要ない医療なんてないと思いますが、あるということを立証していただかないと、残念ながら次の論議に進めません。こう頼りなく、あるだろうとか、今度は指導監査の方向に逃げていっているんですね。そういう答弁では全然議論が進みません。お願いします。
  35. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 支払基金の査定というのは必要な診療以上の部分、不適切な部分を査定しておるということになるわけでございますが、家族本人でどういう姿になっておるかという数字は私ども持ち合わせていない、こういうことでございまして、少なくとも私ども判断の底には指導監査の事例等についてそういうものを考えておる、こういうことでございます。
  36. 安恒良一

    安恒良一君 委員長、困ります。  今明確に言ったんですよ。支払基金の査定において本人家族の場合においては違うということを言ったんです。それで私が、それじゃ資料を出せと言ったら、今度はないと言う。今度は指導監査と言うんですね。じゃ、指導監査について具体的資料を出せと言ったらすぐに全部出せるのか。私は指導監査についても要求します。指導監査についても要求しますが、少なくとも支払基金において本人家族の審査の結果、非常に本人の方が削減が多いということを前段で言ったんだから、言った以上は、今になってないということはどういうことなんですか。ないことを勝手にうそを言ったんですか。そういういいかげんなことをやってもらっては困るんです。  私はこういう方面には専門屋ですから、専門的な話をちゃんとしておるわけですから、専門的に自信がないことは自分で答えないこと。ないことはないと言えばいいことであって、いかにもあなた、支払基金において本人家族の場合、給付内容が違うことによって差があるということを言ったから、そうですが、それじゃ具体的資料をお出しくださいと、こう言っているんですから、出してもらってください。何をやっているんですか。
  37. 石本茂

    委員長石本茂君) 速記をちょっととめてください。    〔速記中止〕
  38. 石本茂

    委員長石本茂君) 速記を始めてください。
  39. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 私は長いこと町長をやっていたものですから、理事者の御苦労もよくわかるんです。わかりますので、こういうときになるとつい仏心が出て、かわって、やってもいいなという気になって急いでここへ立ったわけなんです。  それで、実は長いこと町長をやっている間、町立の病院がありまして、私は事業的にはいろいろうまくやってきたんですが、町立の病院だけはどうしても赤字が続くんです。人口一万くらいの町で、毎年一億以上一般会計から繰り出ししなきゃならぬ。大変なんです。ところが、今度東京へ来ていろいろ話を聞きますと、随分病院というのはどこももうかっているようです。ひとつ厚生大臣でもあるいは担当の方でもいいですが、どうやったらもうかるのか、この機会にまず教えていただきたい。みんなもうけているようなんでね。私たちは、随分患者もたくさん来るし、お医者さんも一生懸命努力してやっていて、お医者さんの評判もいい病院で、何としてももうからない、赤字が多いんですよ。これはどういうわけなのか、皆さんの方がよくお調べになっているから、いろんな例おわかりになると思うんで、どうしてあんなにほかの病院はもうかるのか。
  40. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 丸谷先生の御質問に私が明快な回答ができれば、今国立病院の一番悩んでいる赤字はなくなるわけでございますけれども、残念ながら、名回答は私は持ち合わせていないのであります。  私どものところも、県立病院など非常に赤字に苦しんで、すぐそばの私立病院は結構やっておる、これが全国どこにでも見られることでありまして、これは具体的にどうこうと言うのはなかなかここで難しく、お答えするのに困難なんですが、やはり自由主義というか、そういう中で創造的な努力というものが加わるか、また、どうしてもお役所日の丸式になるのか、そういうものが結果として先生指摘のような問題になってしまっておると思いますが、専門的なことは政府委員から答弁させます。
  41. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 何か官業非能率化というふうなことが病院にもあるんじゃないかというお話でございますけれども、そんなことはないんです。それは現場を見ていただければわかるけれども、お医者さんから看護婦から事務方から本当に一生懸命やって、そして、はやればはやるほど赤字がふえるんです。こういう仕組みなんですね。  ところが、開業病院の方は、地方なんかに行くとどこでも多額納税者ほとんどお医者さんです。こういうところにきちっと原因追及のメスを入れないと、財政が大変だから健康保険法改正するんだというふうに何ぼやっても、私は、公立病院が一生懸命やっても利益は上がらないで、開業医はどんどんもうかっていくこの仕組みの根本をやはり検討しないと、こういう法案を一生懸命審議してみても結局変わらないんじゃないかという気がするんです。  端的に言って、なぜ開業医がもうかって、一つもごまかすことのできない公立病院がもうからないのか、ここのところをひとつ。
  42. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これも今申し上げましたように、ここで具体的にこれあれと言うことはなかなか難しい問題でございますが、先生指摘のように、開業医、私立病院、この人たちは結構経営をやっておって、公立、県立というものが、国立病院もそうですけれども、赤字を出しておる、これは厳粛なる事、実でございます。  これはやっぱり自由主義経済が洋々発展しているように、そこで働く人の意識の問題もありましょうし、経営する人の意識の問題もございましょうし、また、今の診療報酬のいろいろの問題等もありましょうし、これはいろんな要因が総合的にそういう結果をもたらしておるわけでございまして、これを具体的にこれこれだという指摘を今するのはなかなか困難なのでございます。
  43. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 中には医療冬の時代ということで、倒産が昨年は最高の五十四件、これは放漫経営、ずさん投資、医療機械等にうんと金をかけ過ぎたというふうなことも出ておりますから、そうもうかっているのばかりじゃないという声がそちらから飛びそうな気もしますけれどもね。  こんなのもありますよ、たまには。ありますけれども、全体として私はやっぱり出来高払いにきちっとメスを入れないと、周りをぐるぐる回っていてもなかなか、お医者さんが悪いのじゃなくて、そういう今の制度に厚生省がしっかりメスを入れてくれなければだめでないかなという感じが強いんですが、どうもその辺になるといろいろ抵抗があって踏み込めない。踏み込めなければ、やっぱりいろんな法案をこんなことしてやってみても、問題の核心をつかないで周りをぐるぐる回っている。靴の上からかゆいところをかくようなことでないか、まさに今度の法案はそういう感じがするのです。そのことを踏まえて、今の医療の制度の問題、こうやればもう少しと思う点を具体的に出していきたいと思います。  その前に、この間実は大蔵委員会で塩の問題をやったのですが、きょうは卵の問題をひとつ。これは質問を通告しているので用意ができていると思うのですが、同じ鶏が同じようなえさを食って、大体毎日、あるいは一日置きに五十グラムなら五十グラムの同じ卵を生んで、中の卵黄の大きさも大体同じだというときの栄養価は同じなのでしょうか。
  44. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) お答え申し上げます。  食品の栄養成分に関する基礎的データといたしましては、昭和五十七年に科学技術庁資源調査会の方で公表いたしました「四訂日本食品標準成分表」というのがございます。この成分表におきましても、鶏卵の栄養価につきまして先生指摘の有精卵、無精卵という別は示してないところでございます。栄養学の通常の知識からいたしますと、主たる栄養素につきまして差があるとは考えにくいわけでございますが、微細な点で差があるかどうかについては、現段階では厚生省としてもデータを持ち合わしていないという実情でございます。
  45. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 質問に答えてくださいね。有精卵、無精卵の話までしていない。これからすることまで答弁されちゃったらこっちが困っちゃう。  それで、今のお話のとおりなんです。実は有精卵も無精卵も今の栄養学では成分的に変わりがないということになっています。しかし、私は若い時分に鶏屋をやっていたのです。有精卵は三十日置いても腐らぬけれども、無精卵は十日過ぎると腐り出すのです。今冷蔵庫があるからそんなことはないと言うかしらぬけれども、自然な状態に置くと。これがどうして同じなんですか。片方は三十日たっても腐らない、片方は十日で腐り出す、有精卵と無精卵、同じ鶏が生んだやつです。これが同じだというのですか。こんなばかなことありますか。
  46. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 栄養素として分析してみると、その差がこれまでのところ見つかっていないという理解でございます。  ただ、御指摘のとおり、有精、無精の差は生物学的には明らかでございまして、有精卵からは将来鶏が発生してくるということが期待できる、その点は本質的に差があることは常識的にも考えられるわけでございます。それが栄養素としてどうかと言われますと、微細な差は別として、私どもの承知している限りではその差については知悉しておらないということでございます。
  47. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 専門家に聞きたいのですが、生物学的に見れば片方は生きているのです、有精卵は。そうでしょう。無精卵はこれは死んだ卵ですよ。生命がもうないでしょう。有精卵というのは生命につながっているのです。無精卵はつながっていないのです。言うなれば死体みたいなものです。ただ、今の栄養学ではこの違いがわからないということであって、私は同じでないと思う。いかがですか。
  48. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) あらかじめおわびするんですが、私は別に卵の専門家ではございませんで、一般的に栄養学の知識からお答え申し上げておるわけでございます。  今の先生の御指摘の卵の差でございますけれども、生きているというものをどういうふうにとらえるかによっても言い方が変わってくるかと思いますけれども、いずれにしても、有精卵、無精卵、一定の段階はそれぞれある意味では生きたたんぱく質という状況だと思います。ただ、将来の発生し発育していくという意味において何らか差があるということは事実でございます。主としてそれは卵黄とか卵白の部分、栄養素の塊の部分ではございませんで、胚というところが受精をしているかしていないかというところに生物学的な差があることは事実でございます。
  49. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 結局今の栄養学はその程度のものだということを私は言いたいんです。わからないことがたくさんあるんです。わからないことがたくさんあることをオールマイティーなように考えて、成分表が同じだからそのようにつくった食箋でも何でも、栄養の計算でもこれが絶対だと、私は今卵の例を出しましたけれども、必ずしも卵だけではないと思うんです。分析の成分表だけでないものがまだある。それが私は命のとうとさだと思うんです。  だから、命というものに対する、三十億年もかかって海から上がってきた、そして人類まで到達した今、これに対するわからないことがまだたくさんあるんだということを基礎にして論じないで、今の科学が、あるいは今の医学が、今の栄養学がもう完成したものだなどというふうな考え方で、絶対これでいいんだ、いいんだというふうな仕組みをつくっていけば、私は大変だと思うんです。第一、今の医学あるいは栄養学、日進月歩に進んでいっています。日進月歩にまだこれから進んでいくということは、いかにわからないこと、いかにおくれているかということです。進むというのは、おくれているから進むんです、そうでしょう。  ですから、そういう点について大臣、今の学者がいろんなことを言ったって、それはまだまだこれからどんどん変わっていく。それは確かに進んではきたけれども、今の段階でこうだから絶対これがいいんだというふうなことで栄養学や医学を考えてはいけないということについて、今の私の話を聞いていてどのように思いましたか。
  50. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 丸谷先生の今のお話、まことに含蓄のある哲学でございまして、私どもはやはり人間生きている限り無限の可能性に向かって挑戦をしていかなければならない。すなわち、これで絶対というものはないわけでございまして、百メーター競争というような局限されたことでも、やはり人間が生きている限り新記録に挑戦しておるのでありますから、まして医学の分野というのもこの十年間のことを振り返ってみただけでも、私ども舌を巻くような進歩に驚かされるわけであります。またこれからの十年ということを考えればこれはすばらしい進歩が期待されるし、また、その進歩に向かって我々も努力をしなければならないし、そういう考えでこれからの厚生行政も務めたいと思っております。
  51. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そこで、食用とそれから今の薬価基準、その他の問題について御質問したいと思うんです。  今、薬をなるたけ使わないで、食事を中心にして病気を直そうとする、今の栄養学や医学に対する反省からそういうお医者さんが随分ふえてきております。ところが、この人たちが非常に困っていることは、今の薬価基準との問題になってくるわけです。非常にそういう点で経済的に困る、今の、何というか、医学界の潮流に乗っていれば非常にもうかるけれども、これじゃいけない、薬づけにしちゃいけないというふうに考えるお医者さんたちは、非常に困っているんです。  例えば栄養指導、要するに患者に、いや、薬はいいから、それよりもこういう食事に切りかえなさいということを指導するとしますと、これは点数は何点ですか。
  52. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 病院におきます栄養指導としては、二十点が請求できるようになっていると承知しております。
  53. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 私は一昨日、東京都内でそういう栄養指導をしながらできるだけ薬を使わないでやっているお医者さんのところへ行ってきたんです。院長が理解あるので、これはもうからないけれどもやらしてもらっている、気がついたので生涯の仕事だとその方は言っておりました。患者さんによっては、やっぱり親切に教えてあげなければならぬから一時間ぐらいかかるというのですよ。いろいろ聞いて、早くても三十分、これで二十点です。二十点といえば二百円ですね、一点十円だから。一時間かかって二百円。それで薬をなるたけ飲ませないでやる。  大蔵大臣、この方が国の予算はうんと助かっているんですよ。それで、きょうは特に大蔵大臣に聞いていただきたいのですが、これがたった二百円。こんなばかなことでやれると思いますか。何でも私は上げろと言うのじゃないのです。しかし、なるたけ薬を使わないようにしているお医者さんは絶対にもうからないような仕組みになっているんですよ。いかがですか。これでいいと思いますか。
  54. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 診療報酬点数そのものを定めることは、もう先生も御承知のとおり、所管の局が場合に応じていろいろ御相談して決めていくわけでございますが、成人病等々とのかかわりにおいて、栄養指導の重要な役割ということを考えますと、私どもの立場からはこういった問題についても一層注目され、論議されてしかるべきであると考えております。
  55. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 これでいいか悪いか言っているんです、これをこのままで。  それじゃ、もう一つ別の角度から言います。皆さんの尊敬する土光敏夫さん、この人が、これは熊本でやはり同じような食指導をやりながら非常に苦労してやっているお医者さんの書いた「鍬と聴診器」という本です。なるたけ無農薬でというようなことでやっているお医者さんなんですが、これに対して土光さんは、「今の人は健康について医者など他にばかり頼るが、自分の健康は本来自分で守らなくてはだめだ。――わかっていてもやらない人が多いなかで、竹熊先生は勇気がある。事実、生活としてやられているのだから大したものだ。」と、こう非常に褒めているんです。  私は、土光さんなんていうのは大変ぜいたくな人で、朝からイワシを食うなんて、日本人では最高のぜいたくな朝飯を食っている人だから、こういうのはわからぬかと思ったら、ぜいたくなりに食べ物のことはわかるんでしょう。朝からイワシを食っていて大変質素だなんていうことを言っているのは、あれはとんでもない話でね。だから私は余り尊敬していないんです。だけど、こういうことを書くのでちょっと見直したんです。土光さんもやはりこういうふうにしていかなきゃならぬと、あなたたちの尊敬する人が――私は尊敬していないけれども、その人が言っているんです。  それで、どうですか、こんなことでいいと思いますか。こういう人たちが大変苦労していることをここに書いてあります。薬を使わないために貧乏しながらやっているんだということをこの本にも書いているんですが、それは結局大変いいことだと、臨調の土光さんも言っているんです。
  56. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、今の自由診療、出来高払い制度という中で抱えている一番大きな悩みといいますか、問題点といいますか、丸谷先生から御指摘をちょうだいしたわけでございますが、私たちも子供のころ、腹が痛くて苦しんだりなんかしていても、お医者さんのところに連れていかれてお医者さんの顔を見ただけで何か腹が痛くなくなってしまったり、元気が出てしまったり、そういう記憶がございます。患者医師の信頼とか、また、やはり医師患者の健康を全部抱えて、なるべく投薬したりそういうことをしないで健康になるような指導をすることが最も望ましいわけでございますが、なかなか今の出来高払い、自由診療というのは形にあらわれたもの、これはもう客観的な事実ですから、これに支払われる現金が、抽象的なものにも、今説明しましたように健康診断とか、そういうものにも保険ができるだけ適用されるように、これは私ども努めて努力をしておるのであります。  先生から御指摘のような問題がいろいろ出されるのでございまして、私どもはこういうものに謙虚に耳を傾けて改善の努力をして、やはり人間と人間の信頼の中で、お医者さんがそれぞれ自分が担当しておる患者の健康を診てあげる、しかもそれで医師としての生活が十分成り立っていくという方向に、非常に難しい問題をはらんでおりますけれども努力をしていかなければならないと考えておるところでございます。
  57. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 努力するということはやらないということの同意語だとよく言われるので、素直に受けとめられないんです、その程度の御答弁では。  それでこの場合に、それだけではないんです。投薬注射が減る、それから栄養指導ということで親切に相談に乗ってやっても、ちっとも金額にならないということのほかに、今度は入院した場合にメニューをつくるとしましても、これがまた今の点数制度では思うようなものが使えない。それは、栄養食の基準は別にあります。それで、栄養改善方法によっていろんな、こんなものを使えばというプラスする栄養食があります。しかし、そういう加工したのじゃだめなんです。自然のものをできるだけ使っていこうとすると、なかなか今度は足りないんです。この場合、薬を使わないんだから、食事が薬だというのに対しては、これはやはり薬価基準の中で認めるというような前進的な方法をしてもらわないと困るんです。首をかしげておりますけれども、例えば四十六年の業務局長の通達、この通達自体は随分いろいろ問題もあります。こういう中で一番わかりやすいのでニンニク、これは通達では「通常の食生活において食品として使用される物」となっているんです。食品としても使用されるというから薬品だということなんですね。薬品としても使用される食品でなくて食品としても使用される薬品、これ、薬価基準の中には点数がないんです。だからニンニクを使ったってだめなんです。しかし、ニンニクの効用などというのは大変なものなんです。これは御存じでしょう。  ですから、この薬価基準、下げるものは下げなきゃならぬ。しかし、そういう医療費の全体を下げようとする努力というよりも、そのことが正しいんだと思って、結果として医療費のかからないような診療をしているお医者さんが全国に随分出てきました。この人たちが非常に困っている状態、これは健保法の改正のこの機会に――大蔵大臣にお伺いしますけれども、今のを聞いていて、これだと医療費は下がると思いますでしょう、こういうのがどんどんいけば。そうすると、国家財政も今のようなことをしていかなくたって、もっともっと医療費を下げることができるはずなんです。いかがですか。大蔵省というのは、出てきたやつをこれはだめだ、これはだめだと切るんじゃなくて、ここの方はもっとつけてやるからしっかりやれというふうなことも、大臣としては私はできる機能を持っているんじゃないかと思うんですが、いかがなものでしょうか。
  58. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 食事療法と国家財政に対する一考察と、こういうことでございましょう。私の未熟な知識からすると、その専門分野に対する御答弁は能力をはるかに外れておりますので、ちょっとお答えする自信がございません。
  59. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そのことの是非の問題よりも、こういうことをやっていけば財政的には楽になるということはおわかりいただけませんか。薬をなるたけ使わないで、病気にならないうちにいろんなそういう食事関係を中心にして病気のもとを絶っていく、こういう風潮がずっとくると。いかがでしょうか。
  60. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 病気にならないように常日ごろから心がければそれだけ医療費がかからないわけでございますから、それは直接的にも間接的にも国家財政とかかわり合いはあるということは私も理解ができます。
  61. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで、これは有名な杉靖三郎先生が言っているんですけれども、今の医学というのはとにかく体や心身が不調だというふうなのに対する手当てが中心だ――言ってみれば、火事が起きたからさあ消防車を持って消しに行けということに例えているんです。だから、やっぱり火事が起きるんだから消防車も必要なんです。しかし、それだけじゃないじゃないか、その前段が非常に今の医学の中では抜けているということを大変に心配しておられる、そういう文章もあるんです。細菌や毒物で起こるところの病気というものに対する研究は非常に進んでいるけれども、いわゆる健康から半健康になって、それから病気になっていくような臓器の問題とか、そういうことになるとまだまだ、特に食べ物を注意することによってできるだけ健康にしていかなければならぬということについてはこう言っているんです。  実は私、二月の十日にマクガバンレポートを中心にして御質問したんです。余り因果関係がないということで、すれ違いになってしまいました。しかし、あれはそんな簡単なものでないんです。アメリカ上院は、もう二年もかけて世界じゅうの学者を集めて慎重に検討しまして、例えばケネディ議員があのレポートを読んだとき、こう言っているんです。我々は全くばかだった、明きめくらだった、食事というものに対して全く関心がなかった、食事がいかに健康に大事だかということを。この中で、先進国の食事は全く不自然でひどい食事になった、そのことにだれ一人気づかなかった、しかも、こんな内容の食事が先進国に多いがんも心臓病も糖尿病も生んでいた、我々は即刻食事の内容を改めなきゃならない。事実、アメリカというのはいいことならすぐ始まりますから、そういう点で食事改善あるいはナチュラルフーズというようなことで、できるだけ漂白しないパン、白くない砂糖、こういうふうなものを使う、そういうあれがどんどん、店もできてきたし、進んでおります。  マクガバン報告についてその後、大臣は多少御検討をしていただいたでしょうか。
  62. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 御指摘のマクガバン報告、米国上院におきます栄養・人間ニーズ特別委員会のことを指しておられるわけでございますが、一九七七年にそこにおきまして発表された内容を私どももよく勉強しておるところでございます。  その影響でいろいろなほかの先進諸国におきましても類似のアクションが起こっておりまして、我が国におきましては、つとに昭和四十四年来、栄養所要量というようなことで、おおむね五年刻みに政府としての日本人の栄養所要量というものは出してきたところでございます。しかし、これを少し、専門家向けでなくて一般の方にもわかりやすいような食生活の指針というようなもので表現してみたいということで、現在その作業の検討を行っている最中でございます。
  63. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 厚生省で出すと、わかりやすいといってもなかなか文章がわかりにくいんです。だから、やっぱりそういうものを出すときには、こういう食事関係、そういうことで非常に苦労なさっている先生方の意見も入れて、その人たちが実際に扱ってきてわかりやすい表現の仕方を持っています、その先生たちが出しているパンフレットもたくさんきょう私は持ってきたんですが、こういうのを見ると非常によくわかるんですよ。だから、こういうふうなものをひとつ参考にしてそういうものをつくっていただくということにしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  64. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 内外の資料、文献、できるだけ幅広く勉強させていただいて、わかりやすいいいものをつくりたいと思います。
  65. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 文部省がおいでになっているそうなんで、ちょっと伺います。  八王子の学校給食米から高濃度の臭素が検出された。こんなことは当然起こり得るだろうというふうに想像していたことで、別に驚きもしないんです。やっぱりそうだったなという程度なんですが、この問題はいろいろ農水の委員会なんかでも取り上げてやられております。しかし問題は、私は、こうした食べ物の問題について、文部省と厚生省と農林省、これがみんなばらばらでないかという気がするんです。恐らくこの臭素の問題、臭素酸カリウムの問題にしても、厚生省は、基準があって、きちんとそのとおり指示して、これだけやっていれば大丈夫だ、こういうふうな指示をして、農林省はそのとおりやっていると厚生省は思っているから、はいそこまでということになっていると思うんです。ところが農林省の方は、御承知のように農水の委員会でいろいろ問題になったようにわんわんやってしまった。そうすると今度は、文部省の方は文部省の方で、出てきた米は、そういうことは汚染されてないものとして使う。この横の連絡というものが、食糧政策、食物の安全対策というものについて一つもないんじゃないかという気がするんです。  それで、文部省に特にこの機会に申し上げておきたいんですが、学校給食というものをやっている。ところが、この学校給食の中で、食べ物に関することを先生たちが、食事をしながらでも、子供たちに、こういう食事がいいんだよというふうな指導をするような形がとられていますか。
  66. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 食事のとり方、いわゆる栄養の問題とかそういったものを中心にいたしました指導というのは、大体小学校の五年、六年になりますと家庭科の授業の中で、こういったものについてはこういう栄養が含まれている、したがってこういう組み合わせで食事としてとるべきだというふうなことを、小学校は五年、六年、中学校は全学年にわたって教えることに相なっております。  なお、学校給食につきましても、そのときに現物があるわけでございますから、その現物を利用して指導をするというふうにいたしております。
  67. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 学校給食米から高濃度の臭素が検出されたということで、こういうものを食べてはいけないですよというふうな指導をいままでしていますか。
  68. 古村澄一

    政府委員(古村澄一君) 学校給食そのものから見ますと、その食物そのものは子供の口に入るわけですから、できるだけ安全性を確保するというのは当然なことでございまして、不必要な食品添加物は使わないよう強く指導しておるわけでございます。  なお、こういったものを食べちゃいけないというものについての具体的な指導については、そこまではやっていないんじゃないかというふうに思っております。
  69. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 学校の家庭科の中でやっているなんていうのは、カリキュラムを見ても本当にもう、やっていますという程度のことなんです。毎日食事をしながらどうしてそれができないのか、ここに一つ問題があります。  農林省あるいは厚生省、文部省、これらがこうした食事、食品の安全の問題について横の体制が全くとれていない、それがきょうの、こういう問題に発展したということについて、ひとつ、今後しっかりそういう横の連絡をとってもらうということを大臣から約束をお願いして、時間ですから終わりにしたいと思います。
  70. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生指摘の問題、これからの国民の健康を守っていくために極めて重要なことだと思います。全くとれていないとか、これは別にしまして、必ずしも十分でなかったと思いますので、今後文部省、農林省等と連絡を十分に密接にとるような機会をできるだけ多くつくりまして、今先生指摘のような、食事が健康を守る、これは非常に大事なことだと思いますので、これらの万全を期すべく努めてまいりたいと思います。
  71. 石本茂

    委員長石本茂君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十分開会    〔社会労働委員長石本茂委員長席に着く〕
  72. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会地方行政委員会大蔵委員会運輸委員会連合審査会を再開いたします。  休憩前に引き続き、健康保険法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  73. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 健康保険法改正案の連合審査に際しまして、私は地方行政委員の立場から関連する事項について政府の姿勢をただし、以下質問をいたしたいと存じます。  まず、国民健康保険関係について伺います。  国保財政に対する市町村の持ち出しが多い状況から見まして、昭和五十七年度の被保険者一人当たりの一般会計繰入金は三千四十一億円であり、こうしたことがどうなるかというところに問題があると思います。特に、退職者医療制度は国保と一緒に市町村が扱うことになって、同制度に対しても市町村の補てんが強いられるのではないかとの懸念があります。退職者医療制度の拠出率については、予想される高齢化社会の到来に伴いまして当然増加することになるわけですが、これに対して歯どめをかけ、歯どめをかけた分を国で負担するのでなければ、市町村あるいは被保険者にしわ寄せされることになることは明らかでありますが、まず自治大臣、所見を伺います。
  74. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 退職者の医療制度におきましては、その医療費は退職者の保険料と被用者保険からの拠出金によりまして負担をされることになっておりますし、事務費につきましても全額国庫負担によりまして措置されるものと厚生省の方から説明を受けておるわけでございます。  高杉さんおっしゃったような懸念ももちろんあると思いますけれども、自治省といたしましては、こうした新しい制度になりましても市町村財政にさらに負担が加重をされるということはないものと考えておるわけでございます。
  75. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 大臣、今事務費について伺ったんですが、大臣も御承知のとおりに、国保の事務費は全額国が負担することになっていますけれども、国の立場からは保険者が使用した事務費を無制限に全額負担する趣旨ではなく、規定上から見ても「政令の定めるところにより、」行われるものであるとしておりますね。現実の支出とは異なる場合が多いですね。一説では実所要額の六割程度にすぎない、こういうことでありまして、超過負担であることは間違いないのですね。そのことは退職者医療制度の事務費についても生ずるのではないかと、こういうふうにどうも私ども心配するんです。  そこで伺いますが、第一に、創設される退職者医療制度には国庫負担がないことになっています。政管健保や国保の補助との整合性を図る必要があるのではないか、こういうように考えるんです。大臣、いかがですか。
  76. 土田栄作

    政府委員(土田栄作君) まず、事務費でございますが、厚生省の方からは、十分の十で四十億五千九百万円の事務費補助金があるというふうに伺っております。この額につきましては、もちろんあるべき額として計算されるべきものであり、実際の支給額との乖離が生ずることはあるかもしれませんけれども、超過負担といった問題が生じないように私どもとしても十分留意してまいりたいというふうに考えております。  それから、退職者医療制度に伴います負担額につきましては、平年度ベースで一応この事業規模が八千億ということでございまして、これに対しましては、労使の拠出金、それから保険料相当額あるいは本人の二割負担といったものでカバーされるというふうに聞いております。これも制度の創設以後どういう形で運営されるかということは未知数でございますけれども、私どもとしては、このような問題につきまして市町村の余計な負担が絶対生ずることがないように十分見守っていきたい、必要があればまた厚生省に善処方を申し入れてまいりたい、このように存じております。
  77. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 続いて第二にお聞きいたしますが、退職者医療制度における退職者、この意味が非常に不明確なんです。したがって、この際でありますから明確にその意味を示していただきたい。いかがですか。
  78. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 退職者と申しますのは、一応被用者保険のOBというものを私ども頭の中に描いておりますが、退職者医療制度を確実に実施するために、被用者のOBのうちで年金給付、特に老齢または退職を支給事由とする年金給付を受けることができる者を考えております。そして、その配偶者を退職者医療制度の対象にすることにしております。
  79. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 退職者の中にも、細かに繰ると、サラリーマンをやめて国保の被保険者になった人でも国保組合に入った人は退職者とはされない、こういう細かい点が幾つかあるんですね。  退職者の三つの要件、これはどういうことですか。
  80. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 退職者で国保組合に入っておる方は、これは今回除外しております。  それから、先ほど年金受給権を有する者ということを申し上げましたが、一応、年金保険の被保険者であった期間が原則として二十年以上、または四十歳以後十年以上である者、これを対象に考えております。
  81. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 局長、民間サラリーマンのOB、これは六十歳になるまでは退職者ではない、こういうふうになるわけですね。その点はどうでしょう。
  82. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 年金の受給権が発生いたしますのは原則として六十歳ということになっておりますので、六十歳以上が原則としてそうでございます。
  83. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 これは要請でありますが、退職者医療制度をつくるわけですから、幾つかのわかりにくい退職者の取り扱いではなくて、退職者はこういう人ですよということをもう少し国民一般がわかるようにぜひPRしていただかないと困ると思うんです。退職者については私どもでも理解がなかなか難しい。これは要請しておきます。  それから第三に、国保事業の職員数について伺いますが、昭和五十四年と五十八年を比較してみますと、この間に二千二十三人の減員となっているんですね。国保事業の職員がこのように減員となる理由というのは何ですか。これも、考えてみますと、福祉切り捨ての一部となっていることが明らかであると考えるんですが、この点はいかがですか。
  84. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 確かに先生指摘のように、国保事業に従事する市町村の職員数は減少傾向にございます。  この理由でございますが、一つは電算処理へ移行しておる市町村がたくさん出てきたということと、それから国保税関係事務を一般の地方税の所管課の方へ移管をするとかいうような市町村における事務処理体制の変化に伴うものだというように考えております。
  85. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、地方交付税の積算内容について伺います。  第一に、地方交付税の市町村分、厚生労働費の保健衛生費、衛生諸費の特別会計繰り出し企の、診療所特別会計への繰り出し金の積算ですね、これを見ますと、昭和五十九年度標準団体で二百五十万円となっているんですな。これはどういう根拠なんですか、まずお尋ねいたします。
  86. 土田栄作

    政府委員(土田栄作君) ちょっと経緯的に説明させていただきたいと存じますが、診療所に対します経費の偉人は、昭和四十四年までは人口比例で基準財政需要額を入れるというやり方をとっておりました。その結果、人口十万人の標準団体、標準市におきまして一つ診療所があるという計算をいたしまして、そこにつきましては昭和四十八年度は一診療所当たり繰り出し金の理論所要額として二百五十万円を算入するというふうにいたしていたわけでございます。  ところが、いろいろ実態を調べ、市町村の要望を聞いてまいりますと、診療所の数というのは必ずしも人口比例であるわけではないということでございまして、むしろ診療所の繰り出し所要額というのは診療所の数に応じて増減するということでございますので、制度改正をいたしまして、単位費用で入れます二百五十万円というのはずっと据え置いておきますけれども診療所数に比例して入れるという形での密度補正という制度を設けまして、密度補正での算入額というものをふやしてまいるということで、実態に即して交付税に入れるという形の改正をいたしたわけでございます。  現在は、人口比例の一団体当たりの算入額は二百五十万円そのままでございますけれども診療所一所当たりの偉人額、というのはふやしてまいっておりまして、現在三新七十五万円算入いたしているわけでございます。したがいまして、人口十万で一診療所あるということになりますと、現在では二百五十万円と三百七十五万円を合わせました六百二十五万円というものが算入されるということで所要の地方交付税措置をいたしているわけでございます。もちろん診療所数がふえればさらに三百七十五万円ずつふえていく、こういうことでございます。
  87. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それならば、今人口比例だとおっしゃったのだけれども、この積算額の標準団体で二百五十万円、これはあなたが知っているとおりに、昭和四十八年から十年以上も全然変わっていないんですよ。人口がふえているところがあるでしょう、変わっていないじゃないですか。これはどういう理由なんです。
  88. 土田栄作

    政府委員(土田栄作君) 積算でございますが、昭和四十八年度当時は繰り出し額が大体直診につきまして三十八億程度ございまして、箇所数としては約千二百カ所ございました。そういうことから一カ所当たり二百五十万円という対応をいたしているわけでございますが、現在は今申し上げましたような形で、まあ単純に計算しますと一カ所当たり六百二十五万円ということでございます。これに現在の診療所数を掛けますと、一千カ所強でございますけれども、これを掛けますと六十数億円ということに相なるわけでございまして、まあ一〇〇%ではございませんけれども繰り出し金に対応する財政措置というものはやっている。要するに鎌入額をふやしている、こういうことでございます。
  89. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それじゃ確認しますが、人口比例における標準団体の二百五十万円はそのままずっと据え置きだが、診療所その他の比例で増減をしている、こういうふうに理解していいんですか。
  90. 土田栄作

    政府委員(土田栄作君) そのとおりでございます。
  91. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それじゃ第三に、この国民保険事業直診勘定のほか、会計繰入金の決算の推移を見ますと、都市、町村それぞれ三倍になっているんですね。このように繰入金が増加している理由、これは何ですか。  それからまた、このように決算額が増加しているにもかかわらず、単位費用の積数を今申し上げましたとおりに十年以上も据え瞬きそのままにしてきた理由、こういうことでどうも納得がいかないんですね、その方は。その辺ひとつきちんと整理して明らかにしてください。
  92. 土田栄作

    政府委員(土田栄作君) 繰入金がふえます理由としては、一つは、社会保険診療報酬が上がりますと、患者数が仮にふえませんでもそれだけ経営規模が拡大するという問題がございます。いわば単価アップに伴います増ということでございますが、そういう面が一つと、それからもう一つは、御案内のとおりやはり診療所の経営というのは苦しいわけでございまして、診療収入が伸び悩んでいる、そのために運営費の赤字補てんのための繰り出し金がふえているというのも事実でございます。  したがいまして、先ほど申し上げましたような形で、単位費用ではふやしませんけれども診療所一所当たりの算入額というものをふやすということで、診療所比例によります財政措置を強化するということで国保診療所の財政運営が健全にできるようにという財政措置を講じてきているところでございます。
  93. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 次に、日雇健保について伺います。  所得水準の低い日雇労働者を対象とする日雇保険保険料率が政管健保よりもかえって高いというのは、私もちょっと理解に苦しむんです。  厚生大臣、御承知のとおりに政管健保は千分の八十四ですね、これは労使折半。日雇健保を見ますと、昭和六十年九月までは千分の九十二、昭和六十年十月からは何と千分の百十、ちょっとこの辺が理解に芳しむんですが、どうですか、明確にひとつお答えいただきたいと思います。
  94. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 日雇労働者健康保険は今回の医療保険の改革で健康保険の体系に取り入れることにいたしたわけでございます。そういたしますと、一般の常用の被保険者との間に給付あるいは負担の両面にわたって均衡を保つようにする必要があろうと考えた次第でございます。ただその際に、日雇労働者の就労の特性という面についても考慮を払う必要があろうかと存ずるわけでございます。  そこで、どういう違いがあるかと申しますと、実態調査をいたしますと、日雇労働者の就労日数は一般の被保険者に比べますと平均的に少なくなっておりまして、大体一般の勤労者が月二十二・四日であるのに対して、日雇労働者の場合は、大体月に十七・一日ぐらいになっております。  そこで、実際にはこの就労日数の差というものがもし同じ保険料率であれば保険料の差になってまいりますけれども給付の方は一般の場合と均衡を保つようにしてございますので、保険料率の方で逆算をいたしまして千分の八十四にこの二十二・四と十七・一の比率を掛けますと百十と、こういう数字が出てまいります。しかしながら、一度に百十に上げるということは非常に負担が急増するということでもございますので、経過措置として途中の九十二という数字を設定したと、こういう次第でございます。
  95. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それじゃ続いて伺いますけれども、同じ事業量をある会社は、大変言い方は悪いんですが、安上がりの日雇労働者でこなして、もう一方の会社が常用労働者を使用してその事業量を消化するというならば、確かに日雇労働者を使用する企業の収益性は高くなるということは一応言えると思うんですね。こうしたケースを想定しまして日雇健保の事業主に高い保険料率を掛けるということは、これまたどうも納得がいかないんです。私は長い間中小零細企業を組織した経験がありますが、日雇労働者を使っているがゆえにペナルティーのような保険料を取られていることでは、どうしても理解がしにくいんです。  そこで伺いますが、第一に、日雇労働者の事業主が他よりも高収益かどうか、私はデータをいただきたいということで資料をお願いしたのですが、ここでひとつ資料を示して明らかにしていただきたいと思うんです。
  96. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 今御指摘のありました収益性に関する資料というのは、私ども、実は持ち合わせておりません。と申しますのは、企業の収益性につきましてはいろいろな要素が絡んでまいりますので、保険料の額、率、そういったもの以外に極めて複雑な要素が絡んでおると存ずる次第でございます。  そこで私どもは、収益性、直接収益性というよりは、企業における労務コストと申しますか、その一人当たりの従業員に対する賃金でございますとか、社会保険負担でございますとか、あるいは退職金、その他、そういったものについて一般の常用労働者に比べれば、日雇労働者の場合には少なくとも厚生年金保険保険料は負担しなくて済む。さらに、常識的に考えまして、いわゆる退職金のようなものも普通はないであろう。こういったところを勘案いたしますと、かなり労務費というものは少なくて済んでいるであろうという判断をいたしたわけでございまして、大体全平均で見ますと、その差は毎月決まって支給する賃金の一〇%ぐらいになるんではなかろうか。そういう差がございますので、先ほど申しました保険料率の差というものは大体この差の中におさまってしまうであろう。もちろん平均的なお話でございますけれども、そういう判断をいたしたわけでございまして、特にペナルティーという気持ちでやっておるわけではございません。一応常用の労働者に比べると負担が少ない面を考慮して、日雇労働者の場合の保険料の負担をお願いをしたと、こういうことでございます。
  97. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 ひとつデータを、後でいいですから、出していただけますね。
  98. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 収益性に関するデータは、私どもの方持っておりません。ただ、労務費の平均的なデータというのは、私どもも一度調べてみたことがございますので、これはお出しできると思います。
  99. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それじゃ、さっき言った保険料との関係で、収益性が見えなければ、審議できないんじゃないですか。どうして資料をお願いしてあるのに、私の方へ出してくれないんですか。
  100. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 収益性に関するデータは、さきにお断りしましたように、私ども持っておりません。社会保険保険料は法人税などと違いまして、収益に基づいて御負担をいただくものではございませんので、私どもとしてはそういう判断をいたしておるわけでございます。  したがいまして、データを持っておるのをお出ししないという意味ではございませんで、収益性に関するデータは直接私どもは把握しておりません。
  101. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 どこで出るんですか、それは。
  102. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) データでございますか。収益性のデータは私ども把握しておりません。強いて申しますならば、労務費用の方のデータというのは調べてみたことがございます。
  103. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 それじゃ、労働関係の資料でも結構ですから、後で出してください。  第二に、これまた資料をいただきました。それで、日雇労働者を雇う企業の規模ですね。これは大きいのから中ぐらいから小、零細にわたって資料をいただきました。ただ、これを見ますと、残念なことに五人から三十人ぐらいのところが非常に高いですね。それから、どっちにしても百人以下の企業はずっと高いわけですね。ですから、そういうことも含めて、やはり日雇労働者を使っているところにペナルティーのような保険料高いわけですね、これではちょっと、企業にペナルティー的な保険料じゃないかと、こういうふうなのが私の考えていることですから、その点はどうですか。
  104. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 日雇労働者の就労人員の分布を見ますと、確かに百人以下の事業所にほぼ七割程度というような結果にはなっておりますが、一方において五百人以上の事業所にもほぼ一〇%近く就労しておりまして、大企業の方にも決して就労がないという状態ではございません。  それから、繰り返して申し上げますが、決してペナルティーという考え方でございませんで、先ほど申しましたように、日雇労働者を使用いたします場合には厚生年金保険料の負担がなくていいと、こういう面を考慮して、その分少し御負担いただけないかと、こういう気持ちでございますので、御了解いただければと思います。
  105. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 時間の関係で次に進ましていただきまして、宇都宮病院の関係についてお脅ねをいたしたいと思います。  私は、去る三月十五日の本院予算委員会において、我が国の精神障害者の人権と医療に関連をして宇都宮病院の事件を取り上げました。政府の見解をただしてまいりました。これは本連合審査にも深いかかわり合いを持つ問題でありますので、この機会にその後の経過も含めまして、本審査との関連において政府の見解を伺いたいと思います。  まず、厚生大臣に伺います。  医療機関による患者に対する人権侵害や不正行為はあってはならないことでありますが、依然として後を絶たない。政府は、これが根絶のためにどのような決意で臨むものか伺います。
  106. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 医療機関において人権侵害や不正行為があってはならないことは先生指摘のとおりでございます。このような人権侵害や不正行為を一掃するために、医療監視、精神病院においては実地指導、保険の指導監査等、これらの問題を今後なお一層充実するように努めてまいりたいと思います。
  107. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 厚生大臣、決意のほどはよくわかりましたが、これは容易なことではないと思います。具体的にはどうするのか。特に人権侵害や無資格者の.医療など、祐だしい違憲、違法、これを行ってきている精神病院、例えば宇都宮病院、田中病院、上毛病院、七山病院などの各病院の事件に対してこれまでの医療監視体制は、全く私は役に立たなかったと言っても過言ではないと思うんです。残念ながらこれは事実であると考えるんですが、大阪いかがですか。
  108. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは全く役に立たなかったとおっしゃられると、もうそのとおりですと言うわけにはまいりませんが、しかし、あの予算委員会で先生から御指摘をいただきまして、宇都宮病院の問題、その実情が次から次と明るみになってまいりました。またその後、田中病院、上毛病院というような問題が起こりまして、私どももこれは医というものは人間のとうとい今、そしてその人権を守っていくのでありますから、何にも増して不正や不当が許されないのでございますが、現実にそういうものが存在をいたしております。したがって、私どもの今までの指導監査がまだまだ十分でなかったという反省のもとに、今後よりその充実を期してまいりたいということでございます。
  109. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 大臣なぜこれまでの医療監視体制では歯が立たなかったのか、この点どう考えているか伺いたいんです。  私が申し上げました四つの病院事件の解明の端緒、これはいずれも内部からの問題の提起なんです。行政の手によってこれをつかんだものは一つもなかったと、こう言っていいと思うんですね。今後も恐らく現行法のもとにおける医療監視体制では悪徳精神病院の違法行為をなくすことは、摘発することもできないだろうと、こう思うんです。そこで、先ほどの現行体制の運用では、どうも今後も四病院のような事件が起こった場合、私は一体だれがその責任をとるのか、そして行政の責任、これを明確に私はしていただきたいと思うんです。大臣、いかがですか。
  110. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) この心身障害者対策の中で、身体障害者の場合ですと、これは先生御案内のように、外見的にいろいろ見えてまいります。ところが精神障害者というのは外見的に見えません。そういうために、今の精神病院の封鎖性の中で、外部からそれらの真相を明るみにするということが非常に困難であったために、全く先生指摘のように、これらの問題、本来は我々の監査体制の中で指摘していかなければならないのにかかわらず内部告発から出て、我々がその後を追いかけるようなことになってしまった。これは厳しく私ども反省をしなければならないと思います。  精神衛生対策というものが、お話のように、長い歴史と沿革がございますが、西欧の先進国家に比べて我が国がかなり立ちおくれておるということも、これは今回の一連の事件を通じて私どもの率直な反省でございますので、これらの問題等を含めて、今後責任の所在を明らかにするような方途というものを検討してまいりたいと思います。
  111. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 大臣もお認めになりましたように、これまでの経験に照らして精神病院の不正行為が容易に摘発されない理由にその密室性がある。それで、これは精神病院があらゆるものに対して治外法権を持っているんですね。その治外法権のゆえに違法行為が常識化しているんではないか、こういうふうに思うんです。どうですか。
  112. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 違法行為が常識化しておるということになりますと、私はやはり大部分医師の皆さん方の良識というものを信頼したいし、また、国民の健康を守る立場の厚生大臣として、その第一線で国民の健康を守るお仕事をしておる医師の皆さん方を信頼しないで職務を行うということは極めて困難なので、みんながみんなということには考えられませんけれども、しかし、先生指摘のように、精神病院というものの特殊性、封鎖性の中でそういう行為が行われておる危険が非常に多いことも事実でございまして、そういう点は今後なお指導監査体制の強化によってそういうことのないように、不備な問題等いろいろございますから、これらの問題一つ一つ今後検討してまいって、できる限り、精神病院にいらっしゃる皆さん方がその封鎖性の中で人権を捨てられておるというようなことのないように努めてまいりたいと思います。
  113. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 時間の関係がありまして、わずかな時間でありますから端的に大臣伺います。  大臣もお認めになったように、現行精神衛生法の行動制限規定、これがあるわけですね。そのことが非常に障害になっている。ある意味ではこれが精神病院の中における患者の人権を無視できるようなと言っちゃ悪いんですが、そういう裏づけにもなっているんですね。この行動制限規定、これを改廃すべきだと思いますが、どうですか。
  114. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは非常に難しい問題でございまして、精神病患者、精神患者の皆さんは非常に医療を必要とすると同時に、その特殊性の中でやっぱりある程度の監視というものも現実に必要とすることもこれは否定できない問題なのでございます。  したがって、これの運用ということを誤ると、先生指摘のように、またきょうまでみんなで心を痛めてきたような問題等が起こってまいります。したがってこれらの問題は、今まで起こってきた宇都宮病院等の問題を十分に参考にさせていただいて検討をさせていただきたいと思います。
  115. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 厚生大臣と、大蔵大臣もちょっと聞いていただきたいんですが、我が国の精神病床の全病床に占める割合というのは、昭和三十六年は八・六%です。ところが昭和五十七年には二二・八%、三倍近くなって、昭和三十年二百六十病院の四万四千二百五十床が昭和五十七年には千五百七十病院、病床にして三十一万百九十一床、病院数で六倍、病床数では七倍、大変な急成長といいますか、大変なんですね。昭和五十六年で七千六十六億円、これが昭和三十九年はわずかに五苦三十億なんですね。十三倍以上なんです。間もなく一兆円の大台に上るんですね、精神医療医療費が。こんな野方図なことにしていくと、これは国家財政でも大変だと思うんです。ですから、この基本的な精神病対策、国の費用、国家財政、こういう見地から私は大事な問題だと思いますが、大蔵大臣もあわせて所見を伺いますが、厚生大臣いかがですか。
  116. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今御指摘のあったベッド数の問題、これも我々非常に考えさせられる問題でございまして、先生指摘のように、今までは量という面できたわけでございますが、今回の問題等をきっかけにしてやっぱり精神病院の質というものに力を入れていかないと、これはいろんな社会問題を起こしてしまう。したがって、ベッド数の再検討、量よりも質という考え方でこれも考えてまいりたいと思います。
  117. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私、素人でございますので定かにはわかりませんが、精神病床の全病床に占める比率は、昭和五十二年をピークにその後漸減してきておるというふうなことを知らされておりますが、いずれにいたしましても、入院患者の増加等の要因によって医療費は増高傾向にあることは事実でございますので、したがって、今後とも適切な医療保護の確保に努めますとともに、社会復帰対策の推進、指導監査、この充実強化等によって医療費適正化に一瞬努められるであろうというふうに期待をいたしておるところであります。
  118. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 最後の質問になりますから、厚生大臣大蔵大臣、自治大臣からのそれぞれ所見を伺って私の質問を終わりたいと思います。  去る予算委員会のときにも申し上げました、「健康は第一の富である。」、これはアメリカの詩人そして哲学者のエマーソンの言葉であります。私は、国民の健康こそ我が国最大の富であると思うんです。国民の健康にして文化的生活、福祉の充実、医療制度はだれでもいつでもどこでも安心して医療が受けられるものでなければならない。このことは政治の基本だと考えます。  今や国民最大の関心の注目の中で本法案の審議が行われております。私は本連合審査で政府の姿勢をただし、医療制度の後退があってはならない、このことを強調いたします。幾つかの提案をいたしました。そして、さらに去る社会労働委員会における精神病院における本岡提案、これもあります。具体的には救援センターの問題もあります。こういう幾つかの提案を生かして国民の期待にこたえるべきだと考えます。  最後に、これらに関して大蔵大臣、自治大臣厚生大臣それぞれから所見を伺いまして私の質問を終わります。
  119. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) まさに先生の御指摘のとおり、人間の幸せにとって何よりも何よりも大事なのは健やかに健康に生きていくことでございます。私ども、その国定の皆様の幸せの原点になる健康を守るための大きな責任を負うておるのでございます。  したがって、私は、来年度の予算でもことしの予算でも、そのことに頭をめぐらしまして、五十九年度予算でも、先生御案内のように大変これは厳しい財政でありましたけれども、元気な老人、生きている限り元気に健やかに暮らしていけるように、みんなの健康を考えていこうということで、老人保健法によるところの老人保健事業の予算百七十億近く、これは大蔵大臣におねだりをして増額をさせていただきました。また、来年度もこの医療費の特殊性というものを認めていただくように大蔵大臣に強く今訴えておるところでございます。そういうことから救援センターの問題や先生から御提言のありました健康を守る幾つかの問題についても、これを実現すべく今後大蔵大臣にも強く要望してまいりたいと思います。
  120. 高杉廸忠

    ○高杉廸忠君 社労委員会における本岡提案については。
  121. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今の御質問の前の、精神病院のベッド数の検討等を含めてやるという話、先ほど先生の御質問でもお答えしたものですから省略させていただきましたが、当然のことでございます。
  122. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 憲法に保障されておる、まさに健康こそ何にもまさるものだと、私自身にもまた健康ということを言い聞かせながら、国民全体の健康を担当される厚生大臣の意見をよくお聞きいたしまして、私どもとして、私の分野において可能な限りのことをしなければならないだろうという考え方には間違いございません。
  123. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 健康の増進を初めとする住民福祉のために関係各省とともに連絡をとりながら地方自治体を指導してまいる決意でございます。
  124. 石本茂

    委員長石本茂君) 速記をとめて。    〔午後二時十六分速記中止〕    〔午後二時二十八分速記開始〕
  125. 石本茂

    委員長石本茂君) 速記を起こしてください。
  126. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) けさ方、同一の疾病等につきまして、本人家族点数の違いにつきまして、支払基金の査定の点におきましてもそういう違いがあるというように申し上げましたが、私ども資料を持ち合わせないでそういうことを申し上げたのはまことに申しわけございません。支払基金のところの発言については取り消しをさしていただきたいと思います。まことに申しわけありませんでした。
  127. 安恒良一

    安恒良一君 大臣、お聞きのとおりで、私四十分の残り時間わずかですけれども、前段の議論は全くロスになっちゃったんです。私は、少なくともここで答弁する以上は、支払基金の資料を使っておやりになるならなるように、私が要求したわけじゃないんです、向こうから答弁されたんですから、支払基金の審査によってもこうだと言うからそれじゃ中身をと、こうくると、中身が今では間に合わない、こんなことでは審議が進まない。この点注意しておきます。  そこで、第二点目について、いただいた資料で質問します。  ここで、政管の一件当たり本人家族比較で、例えばわかりやすい病気で肺炎でいきましょう。肺炎でいきますと、本人は二万三千四百七十九・一、家族は一万七千五百四十六・五ということで、指数で見ると一〇〇対二二四になっています。三四%も本人の方の点数が多いのは何ゆえでしょうか。それを説明してください。
  128. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 一件当たりの点数の差につきましては先生の御指摘のとおりでありますが、この差が何によって生じるのかという点につきましては、私どもなかなか説明し得るる理由が見つからないというのが現状でございます。
  129. 安恒良一

    安恒良一君 そういうことはないでしょう。さっきあなたは、いわゆる家族給付が八割、本人が十割だから、本人の方が同じ病名においても高いと言うから、それじゃお出しなさいということでこれを出させたら、ここの本年五月七日の調査によりますと、こういうふうに出たというんですから、理由は見つからないということじゃ、午前中の説明とはつじつまが合わぬじゃないですか。  午前中あなたは、家族よりも本人が高いのは十割給付なんだからということを強調されたじゃないですか。そのことについて今度は、なかなか理由はわかりませんということじゃ困ります。どういうことですか、もう一遍言ってください。
  130. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) この点数が三割四分ほど本人の方が高い理由についてはいろいろなことが考えられると思いますが、私どもとしては、一つの理由として、給付率の差があるんではないかというように考えたということでございまして、いろいろな理由があるんだろうというように私どもは思っております。
  131. 安恒良一

    安恒良一君 給付率の違いがある、これが一つの理由だと言われた。いろいろと午後になってつけ加えられました。  それじゃお聞きしますが、保険医療機関及び保険医療養担当規則の十二条から二十二条までにおいて、保険医の診療方針について書いてありますが、これにおいて、同じ肺炎の場合に本人家族の差が出てきますか、この療養規則からいうと。
  132. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 出るべきはずはございません。
  133. 安恒良一

    安恒良一君 出るべきはずがないのに三四%も高いのは、そうするとまずお聞きしますが、家族の場合も本人の場合もこの規則に従って保険医はちゃんと行っていますね。間違いありませんね。そのことだけ、あるかないか、言ってください。
  134. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) そのとおりでございます。
  135. 安恒良一

    安恒良一君 そうしますと、規則に従っていると出るはずがない。出るはずがないのに三四%も点数が多いということは、いわゆる保険医療養担当規則で定められているのは、医学の良心に従って必要な治療を行えと、こう書いてあるわけですが、そうすると三四%分というのは不必要な治療もしくはやや過剰治療を行っているというふうに承っていいんでしょうか。
  136. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 三四%の違いが全部過剰診療だ、こう言うわけにはまいらないと思いますが、一部にはあるんではないかというように私どもは考えておるということでございます。
  137. 安恒良一

    安恒良一君 厚生大臣、ここは重要なところだから大臣お答えください。  私は、本人であろうと家族であろうと、療養担当規則に基づいてきちっとして行われておりまして、差別があってはいけないということは同じだと思うんです。にもかかわらず同じ病気で三割五分も点数が傷いということについて、今局長は、いわゆる必要のところまでは同じですからと、そうすると必要以上というのは過剰ということになるんですが、ここのところについては、と思いますとか、はっきりしないんですよ。これは非常に重要なところですから、ここのところはなぜこういうことになるのかということについて、大臣
  138. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生、長い間の社会保障の権威者でございまして、私は去年の十二月まで全く素人で、この職について大変に難しい御質問をちょうだいするのでございますが、現実に、先ほどから私が申し上げておるように、また、先生も御指摘ありましたように、本人家族あるいは国保と健保、そういう中で同じような内容のものが一〇%なり二〇%なり請求に違いが出てくる、これは現実でございます。  その理由ということになりますと、いわく言いがたし、いろいろ難しい問題があるので、これだと、こう申し上げるのはなかなか難しいのでありまして、いろいろの理由があると思います。これは医師の責任の場合、それから患者のいろいろの考え方の場合、しかし現実にそういうことがあることは数字があらわれておるのでありまして、やはり国師の方にもいろいろお考えを願わなければならないし、また、患者の皆さん方も医療費というものに強い関心を持っていただくし、また、国全体もいろいろ政策面でこの問題に関心を持つことによって医療費適正化というものを進めていきたい。その中に、私どもがお願いしておる、十割給付の皆さん方に一割御負担をお願いするということもあるわけでございますけれども、これを一つこれだというのはなかなか割り切れない問題で、お許しいただきたいと思います。
  139. 安恒良一

    安恒良一君 もう時間がありませんから、ここでやめますが、答弁になっておりません。  午前中からの議論は、一割負担をなぜ導入したのかと言ったら、そのことが非常にいわゆる医療費の節減に役立つということでありましたから、私はそれでずっと論争を展開をしてきて、いま肝心のところになりますと、本人家族の三四%の差について的確な答えができないんです。そうすると、それは今までのあなたたちの答弁全体を否定をすることになる。  そこで、私は結論だけを申し上げておきます、もう私の持ち時間なくなっていますから。  私は、今の診療報酬点数出来高払い制度を直ちにやめろと言っているんじゃありません。それはそれとして、この方針にも善いてあるように、悪いところを直すということですから。そのほかに例えばいわゆる人頭払い、登録医制ですね、家庭医すなわちきょう丸谷さんもやりましたし、同僚議員からもやりましたように、予防に力を入れる。ところが、予防に力を入れても、今の現行点数出来高払いではお金にならないんですよ。だから予防にまた力を入れる。それから注射投薬を打てば打つほど上がるのじゃなくして、注射投薬を打たなくてもお医者さんの医療がなっていくために、やはり登録医制度、いわゆる患者の受け持ち数によってやる、こういうことについても前から――今度だけじゃないんです、前の改正、前の改正から、私たちは皆さん方に訴えているわけですから、そういう点を真剣にひとつ御議論を願いたい。  それから、薬や注射点数の違いが出てきています。その場合には、やはり薬を使うことによってもうけるというところを断つために、例えば薬価問題についてもきょうやろうと思って用意してましたが、私たちは新薬を登載するところの薬価の決定の仕方について民主的な委員会をつくってやったらどうかと、こんなこともいろいろ今まで提起しているんです。ところが、法案を通してもらうときには、ああそういうことは検討しますと言うんです。法案が通ってしまうと、次の法案が出るまでは現状維持で、ほとんどされていない。そこにいろんな問題が出てきていると思います。  私の持ち時間ありませんので、それらの点については今度こそ、あなたは二十一世紀に向けてといつも胸を張られるんですから、今まで数々現行診療報酬制度なり薬価なり、いろいろな矛盾点について、また国民の健康を守るためにはもっともっと予防に力を入れると、こういうことについての提起について御検討していただくことをお願いをしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  140. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、まず最初に大蔵省にお尋ねをいたしますが、これは先般七月十二日の新聞の報道で、「所得ごまかし五二九〇億円」、そういう中で、「上位に“常連”開業医」と、こういう記事が載っておりますが、さらに昨年の八月でございますが、国税庁が医療費の不正請求についていろいろ調査をして、そうして二十六億円の不正請求があったという記事があるわけでありますが、こういう記事から見ると、お医者さんというのは非常に悪い人ばかりではないか、こういうような印象も受けるわけですが、この状況について、簡単で結構でございますが、概要を御報告をいただきたいと思います。
  141. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) お答えをいたします。  最近、昭和五十八年中に行いました所得税の調査の中で、口立って所得申告漏れのあったというものにつきまして発表させていただきました中に、御指摘医師もございまして、私どもとしては、すべてのお医者様、医師の方が申告が低調であるというふうには考えておりませんけれども、今申し上げました最近の調査結果によりますと、医師の脱税がかなり多いということも率直に言って事実でございます。  ただ、それについて若干申し上げさせていただきますと、病院とか産婦人科医、外科医などの場合には一件当たりの申告漏れの金額は病院で千四百万円くらい平均ございますが、これは基本としてかなり所得水準が高うございますので、申告漏れ割合から見ますと大体一けた程度の割合になっているということもまた一方で事実でございます。私どもとしては基本的には、比較的所得の高額で多額の申告漏れのあることが見込まれるような納税者を重点的に調査をいたしておりますので、こういう点から申し上げまして、医師の方が比校的私どもの調査対象に取り込まれるということは事実でございますが、私どもとしては、全般的に申告納税制度の趣旨に基づいてきちんとした適正な申告をしていただくようにという趣旨から調査を進めておりますので、今後とも的確な対象選定を行いまして、公平な課税の実現に向けて努力をさせていただきたいというふうに思っております。  それから、私どもが一昨年に行いました開業医についての不正請求の問題がございましたが、いわゆる水増しないしは架空の診療報酬の請求につきましては、租税特別措置法の二十六条による必要経費の特例の適用が認められませんので、これについては私どもとしてはかなりの件数につきまして調査を行いました結果、全体として不正請求の金額二十七億円、一件当たり七百円強の不正請求を把握したということで新聞に申し上げたことがございます。  私どもとしては、今後とも調査の過程におきましても、このような不正請求につきましても、措置法の二十六条の適用の可否という問題もございますので、十分に目を光らせながら調査の充実に努めてまいりたいというふうに考えております。
  142. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それで、今の診療報酬の不正請求の件ですね、これは重加算税ですか、いわゆる不正請求による収入に租税特別措置法を利用して、最高七二%の経費を控除して所得申告するのは脱税であるということで、重加算税を取ったとお聞きしているわけですが、その診療報酬のいわゆる不正な請求は返還はされたわけですか。
  143. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) 私どもとしては、税務調査の結果そのような不正請求の事実を把握し、それを含めて所得税の上で申告漏れになっていた金額につきまして差額を追徴し、もし偽り、その他仮装、隠ぺいの行為があれば、重加算税を課するということで処置したわけでございまして、それがその後どのような形で、つまり診療報酬を返還したかどうかという形につきましては、その後のことにつきましては承知をいたしておりません。
  144. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 これは大蔵大臣厚生省大蔵省は省が違うわけですから、大蔵省が税務調査で知り得た事実を厚生省に伝えるということは、これはやはりプライバシーの面から蓄えば非常に口が固くていいとも言えるんですけれども、ただ、私は国家公務員法の中に、たしか国家公務員というものは刑法に触れる行為を見つけた場合にはこれを告発しなければならないという、こういう趣旨から言えば、ただ税金だけ取ればいいというんじゃなしに、当然その不正請求についてはちゃんとやっぱり厚生省に連絡をして支払基金に返還をさせるというのが私は我々国民の常識じゃないかと思うんです。  そういう点はどうなんでしょうか。
  145. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) 私どもとしては、現在の調査のやり方は、今申し上げましたように、任意調査という形でいわば納税者の御協力を得ながら納税者との信頼関係のもとに調査するというのを基本にしておりますので、片方で守秘義務の問題もございますし、それらも含めて私どもとしては現状のところ調査した関係につきましていろいろ承知をすることもございますが、それにつきまして関係のところに一々連絡を申し上げるということはいたしておりません。
  146. 竹下登

    国務大臣竹下登君) 私も正確に承知いたしておりませんが、いわゆる相互の信頼関係に立って納税者の協力を得て税務上の職務を行うという段階には、職務上知り得た秘密に対する守秘義務が働くだろうと私も思います。したがって、それは任恵の申告の場合はいわゆる刑法に触れるという断定を税務当局がするということは難しいかもしれませんが、少しこれは塩出先生勉強させてくださいませ。お願いします。
  147. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は、二十六億の不正請求があっても、それは国税当局がキャッチをしてそうしてそれに相応する税金だけは取っちゃって、結局二十六億はそのままになっておると、こういうことが非常に理解が苦しいわけでありますが、その点ひとつ御検討いただきたいと思うんですけれどもね。  それと、先ほどお話しがありましたように、この申告漏れの割合から見ますと、貸金業が五三%ですね。それからもっと多いのがありますね。これが農産物等集荷業というのが六三%、それから高いのから言えば砂利採取業とかいろいろあるわけでありますが、そういう点から見れば、病院とか産婦人科医、小児科医、外科医というのは全部六%か七%か、パーセントから見る限りは申告漏れの割合も少ないけれども、金額が大きいから、こういうように新聞の記事に出ると、医者は全部悪いような気になってしまう。  しかし、そういうことはまじめな医者にとっては非常に迷惑千万な話で、これは厚生大臣に特によく言っておいてもらいたいと私頼まれたんですが、私の知り合いで、明治生まれの眼科の医者がおります。私もいつもいろいろ教えていただいておるんですが、健康保険法のNHKの討論会か何かが日曜日にあったらしいんですが、そのときの各政党の代表、厚生大臣までが、医者というのはもう悪者だと、不正請求するのが常であると、こういうような感じで言われておるということは非常に心外である、まじめに本当に一生懸命やっている医者もいるわけだし、そういう点はやはり評価してもらいたいと、そういう意見ですよ。  私は、守秘義務もいろいろあるでしょうけれども、やつ。はり悪い人ははっきり名前を出す、そして一つのけじめをつけると、そういうふうにしないから、もう何となく医者全体が悪いようになってしまう。そういう意味で、僕は今後もっとやっぱり医者に対してもいいことはいい、悪いことは悪いとはっきり指導していく、こういう姿勢を持ってもらいたい。そういう姿勢の方がむしろまじめなお医者さんも喜ぶのじゃないかと思うんですが、そういう点どうですか。
  148. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生の御指摘、これは全く私も同感でございます。  ただ、今お話ありましたが、私はあらゆる場所で、やはり現在の自由診療、出来高払い制度というものは、基本的にお医者さんを信頼することによって、というよりは、お医者さんが自主的に良心を持って診療をしてくれるということで立派に機能を果たす制度でございますから、医師の大部分の皆さんを信じたいという気持ちでいつも発言しております。  しかし、先生指摘のように、現実にこうやって国民から見れば許せない不正行為が行われておるのも事実なのでございます。私の親しいあるお医者さんが、私に早く一割負担の健保法を通してくれと言うので、あなたどうしてそんなことを言うのかと聞いたら、何か、そうでないと我々みんないつも患者から医者はごまかしているんじゃないのかと思われるのがつらくてたまらぬ、一割負担の導入によって医者はもうごまかしていないんだということを国民の前ではっきりしたいということを言う人まで出ておるのでございます。やはり私ども監査体制をますます強化しまして、もう断固として悪いものは悪いと摘発していく、そして、まじめな良心的なお医者さんが立派に治療して、立派に生計を営んでいけるような経済的な面での政策というものも考えていかなければならないと思っております。
  149. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そういう点で、今回の場合でも診療報酬の四一%が水増しであるとか、ちょっとひどいと思いますし、そういう人なんかはやっぱりと名前を発表するとか、こういう点、ひとつ今後御努力をいただきたいと思います。  そこで、次に、医師が非常に過剰であるということ、過剰というか、いわゆる十万人当たり百五十という線がもう達成できたので、医学部の定員を減らしてはどうか、こういうようなお話が一部にはあるわけです。しかし我々の実感としては、まだまだ無医村、無医地区もたくさんございますし、保健所とかあるいは一部の公的病院等、非常に医者は不足しておるように思うわけでありますが、こういう点の今後の考え方はどうなのか。  これは厚生省と、やはり文部省にお尋ねいたします。
  150. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私ども、当初、十万人当たり医師百五十名、歯科医師五十名というものがおおむね適正規模だろうということで、それらの医師、歯科医師の養成を文部省にお願いしたわけでございますが、先生指摘のように、今ではほぼそれらの目標は達成しつつある状態にあります。  しかし、それならば医師は過剰になったのかと、こう考えますと、まだまだ僻地、山村、漁村、離島など、お医者さんがいないという声が強いのでありますし、また、私どもがやっております保健所業務でも、保健所の所長はお医者さんでなければならないのですが、それが足りない、兼任になっておるというような状態もありまして、やはり高齢化がどんどんこれから進んでまいりますと、若い人に比べてお年寄りの方は四倍お医者さんにかかるわけですし、また、医療内容というのも非常に変化しておりますから、今回私どもが検討委員会をつくりましたのは、単に医師は過剰になるという前提でなくて、十万人当たり百五十人と考えた当時から非常に変化しておるので、この数が適正かどうかということを含めて、将来にわたっての医師の適正数はどのぐらいなものだろう、また、そのためには文部省にどういうことをお願いしなければならないかということで、これから検討をしてまいりたいと思います。
  151. 齋藤諦淳

    説明員(齋藤諦淳君) 文部省といたしましては、厚生省医師の将来を見通した適正な数、水準等の検討を待ってこの問題は考えていきたい、こう考えているわけでありまして、もちろん地域医療の問題もありますし、それから私どもも医科大学を預かっておる立場から言いましても、基礎医学の先生になお他の学部の卒業生が入ってくる、こういうような状況がございまして、全体として見ればなおこの問題は非常にいろいろな背景があるのではないか、このように考えております。  なお、それとは別に一部の大学では、例えば大学の附属病院が六百床でありますが入学定員を百二十名にしている、そういうことで、もちろん基準には合っているわけではありますけれども、十分な診療教育をできない、そういう立場から、一部そういう教育条件を少しでもよくするためにということで、入学定員の百二十名の若干名を減らせることがあるかどうか、そういうことを検討している大学も事実ございますが、基本的には全体の数というものについての見通しというものを踏まえて検討していきたい、こういうように考えている次第でございます。
  152. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後にちょっと大蔵大臣厚生大臣に。  今まで何回も論議になりましたいわゆる医師の領収書の発行の件ですね。大体お金を払えば領収書を出すというのは社会の常識でありまして、しかも医療費の税金の控除のためにはこれは必要なわけで、こういうことはちゃんと守られないのかどうか、こういうこともきちっとしていくことが僕は非常に大事じゃないかと思うんですけれども、こういう点はどうなんでしょうか。厚生省としてはそういう指導をちゃんとして、ほとんど実施されるようになってきておるのか、その点どうでしょうか。
  153. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) もうこれも先生指摘のとおりでございまして、私もこの役所をお預かりしたときに、一番先に関係の者を呼んでただしたところなのでございますが、現在でも、これは領収書は出すのが当然なのでございますが、現実には患者が請求しないと出さないというところが多いようでございます。そうすると、患者が請求すればいいんですが、実際は私ども話してみますと、やっぱり腹が痛かったり体がぐあい悪かったり苦しくてお世話になるわけですから、そこでなかなか領収書を出してくれというようなことを言いにくいというようなことをよく聞きます。  そういう意味では、今回一割負担というものを導入させていただきますれば、これはもう自然に患者はどれだけの医療費がかかったかということが一目瞭然にわかるシステムになるわけでございます。
  154. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) 税務上では、医療費控除の場合に、通常医師の発行した領収書が医療費を支払った証明として必要でございますが、基本的に領収書を出すかどうかという問題につきましては、いわばお医者さんと患者さんとの間の関係ということで、私どもとして直接領収書を出せと  かどうこう言うことはやっておりません。
  155. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから次に、医薬分業の問題につきましてまとめて二、三お尋ねいたします。  これは、厚生省の二十一世紀のビジョンでも、そういう方向に行くという、私たちも、ダブルチェックという意味からもやっぱり医薬分業を推進すべきだと思いますが、この現状を御説明願いたい。  それから、薬事法に基づく薬事監視員というのが、これが各薬局等を訪問をしておるわけでありますが、薬局の方は回るけれども病院の中にある薬局、そういう点には余り行っていない、公平に行ってもらいたいと、こういう意見がありますが、私はぜひそうしてもらいたいと思うんです。  それと、この薬事監視員が薬を、収去という言葉があるそうですが、ある選ばれた薬を薬局から持って帰ってそれぞれ検査をして、それぞれの規格に合っているかどうかということを検査をするようでありますが、その検査データというものが、薬は黙って持っていくけれども全然報告がない、その薬がよかったのか悪かったのか、また、同じ薬でも、その有効成分が果たして一〇〇%あったのか五〇%あったのか、そういうようなデータもわかれば、薬局として、薬剤師として、やはり今後薬を選択する場合の参考にもなるし、そういうものをぜひデータを教えてもらいたい、こういう意見があります。私も、せっかく検査をするわけですから、そういうデータはやはりできるだけ公表すべきではないか、それについてはどうか。  それと、薬剤師の資質向上、そういう点から医学部、歯学部と同じように薬学部を六年制にしてほしいという――もちろん反対の意見もあるようでありますが、そういうような意見が大半のようでありますが、そういう問題についてはどのように検討されているのか、これをお伺いいたします。
  156. 正木馨

    政府委員(正木馨君) まず、医薬分業につきましては、これはかねてからの大きな課題でございますが、やはり医師と薬剤師がそれぞれの専門機能を生かして国民医療の質の向上を図るということで推進を図っておるわけでございます。  現状についてはどうだというお尋ねでございますが、昭和四十九年度を一つの契機といたしまして、当時と比べますと処方せんの交付枚数は十一・六倍と、十二倍近くまで来ております。しかし、これは四十九年当時の処方せん枚数が極端に低かったということもございまして、当時と比べますと十二倍近くなっておりますが、全国的に見ますとまだまだ不徹底でございます。かなり低い水準にございます。ところが、医薬分業につきましては地域によって非常に差がございます。例えば、長野県の上田地区とか広島県の因島地区といったところは非常に分業が進んでおる。一方、おくれておるところについての推進を図る面からも、そういった面でのケーススタディー的な推進も今後図っていかなければならないというふうに思っております。  それから第二点の薬事監視員でございますが、薬事監視員は、御案内のように医薬品等の品質の不良なもの、表示の不正等を取り締まるために国と都道府県に置かれておりまして、現在二千七百名ほどございます。  先生の今御指摘でございますが、薬局等については徹底が図られているけれども、病院、診療所についての院内薬局については不十分じゃないかという御指摘もございました。しかし、一般に薬局の方が一般の大衆の方々を相手にするということで、その力点を置く場合が多いということも事実でございますが、要はこの薬事監視というのは医薬品を扱うものについて構造、設備に不備があっちゃいかぬし、あるいはまた不良な医薬品が使われるということがあってはならないということで、その辺は私どもとしては公平といいますか、均一と申しますか、必要なところには必要な監視を徹底していくということで、今後も十分やってまいりたいと思います。  それから、薬事監視を行います場合に、薬局等に参りまして当該物件の収去をしてそれで検査をするわけでございますが、その検査の結果、不良なものがあったといいますと、これは製造段階であったとすれば製造の方にチェックをいたしますし、それぞれ適切な措置をとるわけでございます。この監視結果のデータを明らかにすることがいいんじゃないかというお話でございます。やはり薬というものは有効で安全性というものを確保していくということなんで、そういった検査の結果、有効性、安全性の確保に反映するような努力というものをやっていかなきゃいかぬ。しかし、それはすべてやったものについて全部公表するのかどうかということになりますとなかなか難しい面もございますが、その辺はやはりこの薬事監視の本旨に沿いまして、先生の御趣旨を生かすように私ども努めてまいりたいと思います。  それから最後に、薬剤師の資格問題についての御意見がございました。これは、薬剤師につきましては、やはり今日医療薬学といいますか、そういった面で、臨床面で薬剤師の果たす役割というものもどんどんふえてきております。そういった面で薬剤師の質の向上というものが叫ばれておりまして、そこで先生のお話しのように六年制にしたらどうかとかといったような御意見もあります。また、日本薬剤師会は一挙に大学六年制ということじゃなくて、大学四年プラス修士二年の受験資格を持ったらどうだというような御意見もございます。これにつきましては学校教育のあり方とか、受け入れ態勢とか、いろんな点で文部省とも十分相談していかなければならないわけでございますが、いずれにしても、今日的な意味で薬剤師の質の向上というものが非常に叫ばれておる、そういった面でこういう薬剤師の資格、資質の面につきましても、私ども関係省とも十分相談をしながら検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
  157. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、医薬分業についてもひとつ積極的に一歩一歩前進をしていただきたいことを強く要望いたします。  次に、今回の健康保険法改正において一つの大きな改正点は、いわゆる退職者医療制度でございますが、この対象者は国保の中において本人が二百二十九万七千人、家族が百七十六万五千人、合計四百六万二千人と聞いておりますが、この対象者の数をどうやって把握したのか。また、これから年々会社を退職して国保に入ってくる方がいらっしゃるわけでありますが、これは申請主義とのことでありますけれども、なかなか申請主義なんというのは徹底しないんじゃないかと思うのですが、こういう数の把握をどうしていくのか。  それと、国保全体として今回の退職者医療制度導入によります負担緩和はどの程度であるのか、またその計算の根拠はどういう理由でそうなるのか。これをお伺いいたします。
  158. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 退職者医療制度の創設により新制度に移行する退職者の数は、先生指摘のように四百万でございます。これは私ども各被用者保険の制度の中で年金受給者は何人おるかということを調べまして、そのリストアップに基づいて計算をした数字でございます。したがって、今後も年金受給者が新たに発生をすればそのリストを関係市町村に配付することによりまして漏れのないようにやっていくということでございます。  それから第二点の、退職者医療制度の創設によって保険料の負担がどれだけ減るかということでございますが、私ども保険料の負担は五十九年度七月実施のベースで千七百七十七億円の減少というように積算をしております。これは退職者制度に移行する四百万人の医療費をまず推算をいたしまして、それに保険負担率というものを乗じまして算出した数字でございます。
  159. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私は九百九十億と聞いておったわけでありますが、これは千七百七十七億で間違いございませんでしょうか。これはほかのやつが入っておるんじゃないですか。
  160. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 千七百七十七億円の中には退職者の該当する保険料というのがございます。それが七百八十一億円でございますので、保険料の負担千七百七十七億円から七百八十一億円を引きますと先生指摘のような九戸幾らの数字になります。
  161. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 だから私が言ったのは、退職者医療制度が実施になって国保からの給付というかそういうものが少なくなる金額は九百九十億と理解していいわけですね。  そうしますと、一方国庫補助方式が今回変更になったわけでありますが、これはもう今さら言うまでもございませんが、今までは医療費ベースの四五%から給付費ベースの二分の一、五〇%、実質は三八・五%と国からの国庫の補助は低下をするわけでありますが、その額はどの程度になりますか。
  162. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 千七百四十五億円でございます。五十九年度七月実施ベースで計算をいたしております。
  163. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そうしますと、今回の改正によりまして、国保全体として退職者医療制度による負担の軽減よりも国からの補助が減るという方が大きいわけでありまして、そういう点が国保財政をより厳しくするわけでありますが、この差額について政府の案ではいろいろ、医療費適正化とか薬価、診療報酬改定等によって捻出をしてこれを埋める、したがって、今回の国の助成率を低下することによって保険料の値上げ等につながるおそれはないのかどうか、この点をお伺いいたします。
  164. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 数字先生指摘のとおりでございますが、私どもは、今回、医療費適正化あるいは薬価基準の引き下げというようなことをいろいろ考えておるわけでございまして、その結果保険料も減ることになっております。したがって、総体として私ども国民健康保険が五十九年度に負担すべき保険料に増減はない、保険料がふえるようなことはないというように推算をしておるわけでございます。
  165. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 医療費適正化で千八百二十四億円ですね、このように削減する。そのうちには薬価、診療報酬改定が七百六十六億円含まれておるようでありますが、これは本当にできるんですか。自信はありますか。こういう帳じり合わせにしておいて、それがうまくいかなかったからといって、結果的には保険料を上げなくちゃいかぬ、残ったのは国庫の補助を切ることだけという、こういう結果だけ残るんじゃないか。この点どうですか。本当にやってくれますか。
  166. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 今先生が挙げられました数字は、全医療保険数字でございまして、国保関係だけで申し上げますと、医療費適正化で三百四十五億、薬価基準の引き下げ等で四百三十八億というような数字になっております。  問題は、今先生指摘のように、本当にうまくいくのかいなと、こういう御心配でございますが、私どもも心配しながらひとつ最大の努力をして、私どもが計画しておるような姿に落ちつくように最大限の努力をするつもりでございます。    〔委員長退席、社会労働委員会理事遠藤政夫君着席〕
  167. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 先ほど大蔵省が国税庁の調査でも二十六億円と、一番悪いのを選んでやってそれぐらいですから。しかし、それをやっていただかないと、ここにうその資料を出して、法案を通すために国会にそういう間違った資料を出したことになりますから、この点はぜひひとつ厚生大臣は責任を持ってやっていただきたいと思いますよ。  それから、国保の皆さんが一番心配しているのは、いわゆる退職者医療制度による恩恵を受けるのと、国からの助成が減る分と、その点において、余り、退職者医療制度に適応するような人が少ない田舎の町村等では、財政のアンバランスを非常に心配をしておるわけでありますが、そういう点は、財政調整交付金五%を一〇%に上げてそれで調整をとるというお話ですけれども、それで十分にできるのかどうか。その点はどうでしょうかね。
  168. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 御指摘のような、退職者の数が市町村間でアンバランスがあることは事実でございます。そこでそのアンバランスは、財政調整交付金の枠をふやしましたことによって十分財政調整の実を上げていきたいと、こういうことでございまして、私ども、一〇%の財政調整交付金の配分について十分留意をしていくつもりでございます。
  169. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それと、これはいわゆる拠出金を出す健保とか共済のサイドの意見でありますが、政府の今回の資料では、法案が予定どおりに施行された場合は三千六百十五億の拠出金を出す、これは保険料率では五・七パーミルである。それで、政管健保が幾ら、組合が幾ら、共済、船員保険が幾らと、こういうような資料があるわけでありますが、この金額がどんどん伸びていくと、三十年後にはこれは千分の九・八にならざるを得ないと、そういうように、拠出額が無限にふえていくことに非常に心配をしているわけですけれども、こういう点の歯どめをどう考えているのか。この拠出金というのはどういう計算で決めるんですか。全部一律に、医療費ベースでいくとか、加入者ベースでいくとか、そういうのはどうなるんですか、この計算は。
  170. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) まず、退職者医療に要する医療費医療給付費を出しまして、それを被用者保険の標準報酬の総額でもって割るわけでございます。そうすると、今、五十九年度では五・七パーミル、千分の五・七という数字が出るわけでございまして、その千分の五・七という数値を組合健康保険にも掛けるし、政府管掌健康保険にも乗ずるということでそれぞれの拠出額が決まってくると、こういう計算方法を考えておるわけでございまして、私ども将来の退職者医療給付費がふえていくことをやはり前提として物事を考えざるを得ませんが、一つ医療費適正化対策を強力に推進をするということと、それからまた、拠出者側の意向を十分反映をしていく、こういうことでコントロールをかけていく等いろいろな手法を講じていきたいと思います。  三十年後九・八ぐらいの数値になるわけでありますが、五・七から始まって三十年間で九・八、まあ一%を割るような数値でございますので、それほど大きな負担にはならないんではないかというように現在のところでは考えておる次第でございます。
  171. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ちょっと先ほどのに返りますが、いわゆる各市町村の財政調整ですけれども受診率とかそれから一人当たりの療養費の費用ですね、これは私は広島県に住んでおりますので広島のデータを見ましても、例えば一人当たりの療養諸費用額の状況、一番安いところは九万七千二百十一円、一番高いところは二十三万三千五十八円と、このように非常に差があるわけですね。それから保険料にいたしましても、一番安いところは一万五千三百九十円、一番高いところは五万二千九百六十六円と、こういうように、これは広島県下だけのばらつきですけれども、全国において非常にばらつきがあるわけで、そういう意味で、国の助成についてもただ財政状況だけではなしに、ある程度、例えば基準財政需要額というものを交付金のとき出しますね。だからある程度やっぱり、農村で年得りが多いところは当然医療費も高いわけですしね。また一方、非常にいろんな努力をして保健事業をやっておるというようなところもあるわけで、私はそういう一生懸命努力をしている点も評価をすべきである。  そういう点で、ある程度基準財政需要額みたいな医療需要額というものを算定をして、そして保険料との差額を、保険料が極度に低い市町村もあるし、高い市町村もある。そういうような点から見て、今私が言ったようなそういう考え方はないんですか。
  172. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 財政調整交付金の配分の基準でございますが、やはり基本は、医療費と所得というものを基本に置くことは、これはどうしてもやむを得ないと思います。しかし、今先生指摘のような、各市町村ごとの健康管理、あるいは保健施設等への努力の仕方、あるいは医療機関の状態等を勘案して、財政調整に少し弾力性を持たしてはどうかというような御意見だと思いますが、私どもその線でひとつ検討をさしていただきたいと思います。
  173. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それから、健康保険サイドとして一番心配しているのは、国保としてもっと経常努力に頑張ってもらいたい。そういうことを余りしないで、また、そういうことに国保の関係者もタッチしないで、ただ国保のツケだけを回されては困ると、こういうような意見が強いわけですけれどもね。  いろいろあると思うんですけれども、その一つ保険料の収納率ですね、これが非常に悪い。我が広島県においても、田舎の町村はもう一〇〇%ですけれども、大きな都市が非常によくない。一番悪いところは八七とか。私の住んでいる広島市は八九・一四で非常に悪いわけですが、こういう点。まあ場所によっては町内会に委託をするとか、こういうようなこともやって収納率を上げている場合もあると思うんですけれどもね。私は、これは低所得者にはいろいろ保険料を免除したり、そういうような制度もあるわけですから、ともかく払うべき人はちゃんと払ってもらわないと、こういうのは全部ほかの人の負担になっているわけですし、もうちょっとこのあたりは収納率アップの努力が私は強く要請されるんじゃないか。そういう努力もしないで、ただ健康保険からもらうというのではこれはいけないと思うんですが、そういう点は厚生省としてはどういう努力をする決意なのか、これを伺っておきます。
  174. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 国民健康保険も社会保険である以上相互扶助の理念で運営される面があることは事実でございまして、その限りにおきまして、先生指摘のように収納率を上げていくということは、これは目下の急務でございまして、私ども、今年度収納率向上特別対策というものを実施をすることにいたしております。  三年間で、収納率の低い市町村におきましては低下原因の分析をし、収納率向上計画を策定をしていく、こういう努力を続けてもらうようにいたしております。そのために私どもは、その収納率向上対策に必要な事務的な経費も若干助成をして、ひとつ市町村の方に対する行政指導を強化していきたい、こういうことで進んでおります。
  175. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ひとつ厚生大臣、この法案においていろんな、国保の国の助成を減らす、あるいは退職者医療制度を導入する、そういう陰にはいろいろやらなければならない問題がやっぱりあると思うんですね。今の収納率を上げるということも問題であると思いますし、また、医療適正化問題ですね、これもやはりちゃんとやる。しかしこれはなかなか、今まで言うはやすく行われなかったことでございますので、私はもう今までと同じ気持ちではなしに、本当に衆知を集めて一つ一つの問題を解決するように、厚生大臣先頭に立って頑張ってもらいたい、このことを要望します。  そのお答えをいただくことと、最後にもう一つ、これは先般の老人保健法でございますが、老人保健法において、その施行におけるいわゆる拠出金ですね、拠出金が法律の本文においては医療費按分率と加入者按分率は本来二分の一と、こうなっておるのに、五十八年度においては加入者按分率は四七・二%、それから五十九年度は四五・一%、こういうようにこの間、三月の初めに決定をされたようでありますが、これは折半原則からさらに遊離をしておる、法律の本旨から離れた方向に行っているんじゃないか、こういうような意見が強いわけでありますが、それに対してどう考えるのか、五〇%に早くいくべきではないか。これに対するお答えをいただいて質問を終わります。
  176. 水田努

    政府委員(水田努君) お答え申し上げます。  老人保健法が参議院で成立いたしますときに、いわゆる附則四条、五条というものが修正でつきまして、健康保険組合の負担増が急激にならないようにという修正がなされておりまして、その附則の経過規定に基づきまして老人保健審議会にお諮りして先生の御指摘のとおりの五十八年、五十九年の加入者按分率を決めたわけでございますが、御指摘のとおり、按分率が下がってまいっておりますことに対しまして、国民健康保険の関係者が非常に批判的な意見を強く持っておられるわけでございまして、本来制度の創設の趣旨から離れていっているのではないかという批判が最近強くなされているわけでございますので、附則四条で、この算定方法は六十一年度を目途に見直すということになっておりますので、本年の四月から老人保健審議会で少し前向に、総合的に、この問題の扱いというものを検討してみようということで、既に検討を開始していただいておりますので、私どもその結論を待って、六十一年度の拠出金の算定方法の見直しに取り組んでまいりたいと、このように考えておる次第でございます。
  177. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生指摘の収納率の向上、医療費適正化を推進して国保財政を安定していかなければならないということ、全く同感でございます。  私ども、今回長い間の懸案であった思い切った抜本改正をお願いするということは、二十一世紀の安定した医療制度というものに向かって総合的な国民の健康を守っていく施策を講じていく、その中の一つとして保険制度の安定ということもあるわけでございますから、総合的な健康づくりという中で医療費適正化、収納率の向上に努めてまいりたいと思います。
  178. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 終わります。
  179. 神谷信之助

    神谷信之助君 まず、厚生大臣に聞きますが、この春に保険局長及び国保課長通知で五十九年度の各市町村の国保財政の予算編成について厚生省は指導をなさいました。その指導によりますと、臨時財政調整交付金は廃止をする、軽減費交付金は十分の十を十分の八に削る、市町村独自の上乗せによる受診伸びなどの波及増加分は自分で賄え等々の指示をなさっているわけです。そして、国庫支出金とか都道府県の補助金、一般会計からの繰入金以外は保険料で賄えということを強調されています。そのために多くの市町村でこの春に国保税の引き上げといいますか、国保料の引き上げ、これがずっと出ているのですけれども、その状況は把握をなさっておりますか。
  180. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 市町村国保保険料は、通常六月の議会で決定されるものでございますので、現時点で私ども、まだその詳細な状況は把握しておりません。  例年でまいりますと、十月時点で私どもは調査をすることといたしておりますが、ことしも十月に調査を実施いたしたいと考えております。
  181. 神谷信之助

    神谷信之助君 これは、まだ今法案を国会で審議している最中ですね。国凍補助がどういう状況になってくるのかもまだわからぬ状況で、法案の成立を前提にして改正法案成立に関連した留意事項というのを別添でつけて、そして国庫補助はこれだけ減りますよ、それから軽減費交付金は八割にしますよと、これらを留意をしてことしの予算を組め、こうなっているんです。だから、削る方は全部ちゃんと留意しなさいよ、それで国保財政にプラスになるとおっしゃっている、本当にプラスになるかどうかは別にして。医療費適正化なり薬価の適正化なり、あるいは退職者医療制度の創設に伴う方は、これは改めて法が成立したらお知らせをします、それについてはどうしなさいということはない。減る方だけ減らすんですよ。だから、ことしの各市町村の国保税率の引き上げというのがあちこちで起こっているというのが多いですね。  一、二の例を挙げますと、例えば奈良県の河合町は、三月議会で国保税を二六%上げています。大分市は、四月に市民に対してアンケートをしたら、その中で今一番負担に感じていることは何かといったら、高い国保税というのがトップです。そういう状況の中で、六月の市議会では国保税は初め二四・一%の値上げ計画を出された。それが提案の段階で一四・九%になって、そして最終的には議会で修正可決されて一二・五八%になっています。それから水俣病の患者の水俣市ですね、これは六月議会で提案は二七・六%のアップです。それが市議会の議論の中で修正されて一八%になっています。修正されたわけです。この大分の場合も水俣の場合も、あるいはそのほかの市町村たくさんあるんですが、提案されたのが大体二十数%アップ、そして修正されたところは大体一四、五%ぐらい修正されています。修正をされたのはなぜかというと、医療費の見込み額を過大に見積もっているんですね。これが議会でずっと議論されて、去年なりおととしなりからの伸び率はどうなんやということで議論をされて、これは実態に合わぬではないかということで修正されているんです。  まさに先ほど言いました厚生省の市町村に対する、国保財政の予算編成に対する指導が、減る方は減るぞ、だからそれに留意した予算を組みなさい、しかし、片一方医療費適正化等々で国保財政にとってプラスになる療養費の方は計算に入れない、だから療養費は大幅に見込んでしまった、こういう状況になっているんですがね。  これはまさに、何といいますか、法案成立以前に法案の中身を一部先取りをし、しかも、この法案が成立をしても国保税は全体としては上がりませんよと言いながら、実は先に上がる分を先取りしておいて、そして、実際に実施に移したときにはこのプラス面がありますから、改めて国保税のアップをしなくてもいいという状態をつくっているというようにしか考えられないんですが、この点はいかがですか。
  182. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私もときどき国に帰りまして、先生と同じようにあちこちで国保税が上がってその負担が大変だというようなことを多くの親しい人から聞く場合もございます。    〔委員長代理遠藤政夫君退席、社会労働委員会理事佐々木満君着席〕ただ、国保の財政は市町村によっていろいろ異なりまして、また最近は、そういう苦情ばかりかと思っておりましたら、国保税が下がったといって喜んでおられるところもございます。財政事情によってそれぞれの地域で異なるわけでありますが、ただ厚生省として、予算編成方針、これは、まだこの法律通してはいただけませんが、私ども政府の立場としてはこれは通していただきたいということでございますから、そういう考え方をやはり保険所管庁としてそれぞれの市町村に、今年はこうこうこういうふうになりますよと、そういう前提でいろいろ政策を考えてもらいたいというような指導といいますか、何といいますか、そういうことはやはりする必要があり、責任があるので、今年度の方針というものをそれぞれの市町村に御連絡を申し上げ、あるいは御相談を申し上げたのだと思います。
  183. 神谷信之助

    神谷信之助君 医療費をどういうように推定をするかというのは、この予算編成についての通知の中にちゃんとこういうように計算をしなさいというやつを指示しています。しかもその中では、市町村が行う予算編成に当たっては予算原案段階で必ず内示させ指導すること、だから都道府県の民生部長に指導をすることを指示をしている。だから、医療費を実際の見込みよりも大幅に見るというのは、これは厚生省医療費の見込み推計――推計の計算の仕方も全部出ていますが、それに基づいてやり、そしてそれを県がちゃんと目を光らして原案段階で目を通す。だから、そっちの方をふくらましながら片一方では減らすんですから、国保料の値上げにならざるを得ないところがたくさん出てきているということですね。  私はここに一つ大きな問題点があると思うんですが、自治省の方は、こうした厚生省の指導について相談を受けているのかどうか、あるいはオーケーをしているのかどうか、この辺についてはどうですか。
  184. 土田栄作

    政府委員(土田栄作君) お答え申し上げます。  厚生省におきましては、毎年度国民健康保険保険者の予算編成につきまして、都道府県が指導に当たって留意すべき事項等について通知しているところでございますけれども、これは所管省の責任におきましてなされているものでございまして、私どもとしては事前の相談を受けているわけではないわけでございます。  ただ、去る五月十五日の参議院の地方行政委員会での御指摘もございましたので、私どもとしてはその後厚生省に問い合わせまして、今回の改正につきましての基本的な考え方を聞きました。それにつきましては、御案内のように軽減費交付金につきましては二割カットする、ただその二割というのはカットしつ放してはなくて、普通交付金の方に加えることも検討するというふうなお話をいただいておりますので、私どもとしてはそこのプラスマイナスというものがどうなるかということにつきましてさらに詳細なる説明を受けませんと、現時点では判断できないという状況でございます。
  185. 神谷信之助

    神谷信之助君 そこが問題だと思うんですよ。今自治省から答弁がありましたが、軽減費交付金の削減の問題ですね、これは私は参議院の地方行政委員会で自治省及び厚生省にも追及した問題なわけです。これは政令、省令改正をしなければならないわけですし、しかもそれは厚生省一存ではできない問題だ。当時の自治省の津田審議官はこの問題について、これは国民保険制度の土台にかかわる問題で、自治省としてはそう簡単によろしいと言うわけにいきません、だから厚生省から相談があればそういう立場に立って議論をいたしますと、こういう答弁しておるわけです。ところが、現実には市町村の国保財政の予算編成ではそれは八割で計算しなさいと、こうなっている。これは一体どういうことなんだ。  厚生省は、省令改正に当たっては自治省と協議をしなきゃならぬのに、しかもその自治省は、厚生省の役人もおる前で私の質問に答えて、そういうように皆保険制度の根幹にかかわる重大な問題だと、そういう理解をしているという答弁までしているのに、既にもうそういうことが行われている。やってしまった後でどうするんですか。自治省はいや応なしに厚生省の主張を聞かなきゃならぬ、こういうことになるのですか。
  186. 土田栄作

    政府委員(土田栄作君) 厚生省からもお答えがあると存じますが、私の方の考え方といたしましては、厚生省だけでございませんで、各省庁におきましては地方公共団体の予算編成等の行財政運営ができるだけ円滑に推進できますように、早い段階から情報提供の意味を含めて独自の判断によって通知を出しておられるところであろうというふうに思います。これらの通知につきましては、すべて自治省に事前に御相談をいただくというところまでは必要ないと思いますけれども、根幹的な制度の改正でございますとか、それから国の重要な施策の展開とか、それから、さらには国庫補助負担金の整理合理化に当たりましてはあらかじめ当省に十分事前に御連絡をいただくということが必要であろうかと思います。  今回の改正につきましては、実は法案の御審議をいただきまして内容自体というものも固まってまいると思いますし、それから、それを受けまして政省令を決めるということになると思いますので、具体的な内容が固まるのはもっと後になると思いますが、その時点におきまして私どもとしても十分に協議に応じ、地方財政の運営に支障がないように配慮してまいりたい、このように存じております。
  187. 神谷信之助

    神谷信之助君 この制度は、法律で認め保険料の軽減について国が十割責任を持つ、こういうものですね。だから、保険料を払えないようなそういう生活困窮者に対して国が責任を持ち、だれもがこの保険制度の利益を受けることができる、こういうためにやられているわけです。したがって、現在でも物すごく低い水準ですね。年所得二十六万円以下で六割の軽減、四人家族の年所得八十三万以下で四割というのが現在の状況ですよ。これは実情に合わない、実際の市町村が住民と接している状況では。だから、各市町村では、この法定減額以外に申請減額というものをやっている。そういうことでいろいろカバーをしているわけですね。  だから京都市でも、所得減少世帯減額、それから倒産世帯減額、被爆者減額などつくってやっているんですが、そのほか宝塚市の場合ですと、今度は生活保護基準以下の場合は一〇〇%減、あるいは生活保護基準の一・二倍以下のところは七〇%とか、一・三倍のところは五〇%の減、半分にしてやるとかいうようにして、生活に困難な人たちでもこの保険制度を遠慮なしに利用ができるようにするというのをきめ細かくやっていると思うんですよ。こういう上乗せがやられているんです。ところが、これを十割を八割にしてしまうと、こうなりますから、国保財政の厳しいところはこの上乗せも、これは自前でやっているわけですから、今度考えなきゃならぬという問題が起こるわけでしょう。    〔委員長代理佐々木満君退席、委員長着席〕 だから、本当に生活に困っている人たちが、国民の連帯といいますか、それと国の社会保障制度を完備していくというそういう政策とが相まって、自由に医療を受けられるという、そういうのが制限されていくわけだ、困難になっていく。これは国民保険制度そのものをつぶしていくんですよ。だから、軽減費交付金というのを十割を八割にするというのは非常に重大な改悪になる、保険制度そのものを、皆保険制度そのものをつぶすことになる。  これは自治省自身もそういう見解をこの間、五月十五日ですか、参議院の地方行政委員会でも言っている。事ほどさように重要なものだけれども厚生大臣の認識はいかがなものかということをまずお聞きしたいと思います。
  188. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私ども軽減費交付金の補助につきましては、総額を減らすというようなことは考えておらないわけでありまして、十分の八は、軽減をしたところはした中身に従って配賦をいたします、それからあと十分の二については、その市町村の財政力に応じて配分をいたしますと、いわば配分の率そのものに変更を加えたわけでありますし、したがって総額は変わらない。また、軽減基準につきましても緩和をしよう、こういうように考えておるわけでございまして、例えば二十四万円を今度二十六万円にする、こういうようなことでございます。  なお、この交付金につきましては省令で定めるものでございますので、省令をつくる段階においては当然自治省と協議をするつもりでございます。
  189. 神谷信之助

    神谷信之助君 それが大体ごまかしなんですね。退職者医療制度を創設することによってアンバランスができる。したがって、それを穴埋めをするために財調交付金を使います。財調交付金を使うんだけれども、その中で使っている軽減費交付金が年々ふえてきて、四分の一程度になってきた。これはふえてきたんでは困るから、配るのに足らぬから、ばらつきが大きくなりますからね、農村、市町村の場合と企業城下町とではうんと違ってきますから、だからそのための財源をつくるために二割カットして、こっちへ持ってくる。しかし財源調整資金全体の枠というのは変わらない。あるいは国庫補助金体としては減ってくるんですから、その穴埋めをせなきゃならぬ、こうなっているんですからね。入れ物は変わらぬけれども要るものはふえる、だからこっちへきますよと、こう言う。だから軽減費交付金の配分を結局二割分は一般の方に使いますよと言っているけれども、全体としてそれが足らないという状況だということを私は指摘しておきたいと思うんです。  そこで、国保税が年々どんどん上がってきているんですよね。厚生省の資料をいただきましたが、五十三年度の保険料税額、これが五十七年度と比べてみますと、全体として一・五三倍になっています。ところが、これはもう大臣も御承知のように、市町村個別にそれぞれが違いまして、そのアップ率というのは違いますね。だから、例えば岡山市の場合ですと、五十年度と五十八年度の間、八年間で三・〇六倍になっています。それから前橋市の場合で十年間で約五倍になっていますね。そうするとどういう状況が起こっているかというと、収納率も五十年度は九四・六%だったのが五十六年は九〇・一四%に下がる。だから、国保税が上がってくることによって収納率が下がってきている。これは全国的にもそういう状況で、五十三年度は九四・九%が五十七年度は九三・六%に下がってきていますね。  現実に一体それがどんな状況になっているかと見ると、前橋市の五十八年度の「所得階層別加入者調」というのを見ますと、国保加入者の中の所得のない者というのが二六・四三%、それと二十二万円以下というので二九・四七%という状況ですね。さらに二十二万から七十万円の所得の人、これが一一・二八%、これら合わせますと全部で四〇・七五%。だから、国保の加入者の四割近い人がそういう低所得者で占められている。こういう状況で、そこへ国保税がどんどん上がっていくわけですから、片一方では減額の基準をつくって救済をしてみても、収納率全体としては下がっていく、こういう状況が現に起こっているというのが私は特徴だというように思うんです。  それで、これで収納率が悪いと、大臣も御承知のようにペナルティーがかかりますね。財調交付金が減らされているわけでしょう。九〇%以下になると一〇%カットになってきますし、こういうカットがされる。これで沖縄の場合を見ますと、そうやってカットされるものですから、例えば那覇市で五十七年度が八三・五%ですね。基地の町で失業者が多いという問題もある。そういう状況の中でそうなりますから、調整交付金は一〇%カットされて、結局ペナルティーとして年間六千七百万から七千万円ぐらい減額されている。だから、那覇市の財政も著しい中から五十九年度は五億一千万円国保財政に繰り入れざるを得ない、こういう状況が起こっています。先ほども答弁ありましたけれども、したがってそういうところはもっと収納率を上げなさいと、こうなりますね。そして収納率を上げるためにいろんな手が打たれる。  そういう中で、沖縄県の十市では、国保税の滞納者に対して保険証を交付していない。保険証を渡さない。それで、誓約書を書かせて、有効期限つきの国保の加入証明書を渡す。だから、滞納額が多い人は一カ月更新だし、比較的滞納額の少ない人は六カ月ぐらいの更新、こういうことになるわけです。これが名護市も沖縄市も具志川市も、ずっと全部そういう誓約書を書かせて証明書を出す。その証明書は期限つきだ。だから、どうしても医者にかからなけりゃならぬという家族を抱えたり、本人の場合、ただ頭を下げていろいろ苦しい状態を訴えて、そしてまた誓約書を書いて交付をしてもらう、こういう状況が起こっているんですよ。  これは好ましい状況でしょうかね。大臣、いかがですか。
  190. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生指摘のように、時代が非常に変化してまいりまして、地方の農村などでも健保の方に所得の高い人がどんどんどんどん移っていくということで、国保財政が苦しい情勢になっておることは、私どもも頭を痛めておるところでございます。そのために、将来構想として保険制度の一元化というような議論も起こってくるわけでございますが、現在確かに先生指摘のように、苦しいから保険税を上げる、保険税を上げると収納率が悪くなってくるというような情勢も、それはそれぞれの市町村によって違いますけれども、そういうことのあることもたびたび耳にするのであります。  そこで、先ほども収納率を向上させる努力をしろという御意見等もちょうだいしたわけでありますが、それぞれの出先でみんなが努力をしております。そのためにいろいろな問題が起こってくるわけでございますが、ただ、先生に御認識をいただきたいのは、低所得者の皆様、保険税が納められないような事情にある低所得者の皆様には、それぞれ一つの軽減措置なりいろいろの施策を講じておるわけでありますから、やはり収納率を上げる。また、保険者の皆さんには、苦しいでしょうが税を納めていただかなければなりません、そのために出先の者が努力をして、ある場合に行き過ぎというようなものがあるのかと、これは私直接耳にしたことはございませんが、今、先生からのお話で想像をしておるのでありますが、保険税を納めないために医療を受けられないというようなことは現制度の中でございません。しかし、やはりできる限り、納められない方には軽減措置をとるという施策があるのでございますから、やはり収納努力は、それぞれ努めていただかなければならない、こういうことでございます。
  191. 神谷信之助

    神谷信之助君 私は、収納の努力をする必要はないと言っているんじゃない。納められる人は納めなきゃならぬし、そしてみんなで支えていかなきゃいかぬ。しかし、同時に国の責任もあるわけですよね。だから、その点ははっきりしてもらわなきゃいかぬ。  それから、先ほど同僚議員の質問に対して大臣もおっしゃったように、保険制度というのは、いつでもどこでもよい医療が貧富の差なく平等に受けられるということをねらっているのに、貧乏なために、一々頭を下げて、月に一回なり三月に一回は役所へ行って誓約書を書いて、そして期限つきの組合員だという、加入者だという証明書をもろうてこなならぬ。こんなことをやるというのが本当に平等の措置なのか、こういうことを私は言っているわけです。  それから、確かにそういうことで市町村は努力しています。そこで大臣、今日我々の生活で電話というのは、これはもう生活必需品じゃないかと私は思うんですが、大臣どうですか。
  192. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今日の近代社会で、もう電話はそれぞれのコミュニケーションの耳の役割を果たしておるわけでありますから、生活必需品に近いものだと思います。
  193. 神谷信之助

    神谷信之助君 それで、収納率を上げろと言って叱咤激励されるのは一面大野なことですよね。それに伴って前橋市も五十八年度で差し押さえ七百五十九件。何と電話も押さえていますよ。電話まで押さえなきゃならぬような差し押さえというのはおかしいじゃないか。これはサラ金の取り立てに変わらぬ。そういう状態が逆に起こっているんですよ。だから、保険制度、国民健康保険制度というのは皆保険制度で、貧富の差なしにどこでも平等に自由によい医者にかかれるという状況をつくるのが目的なんだから、その目的がどこかよそへ行っちゃって、そしてこういう状態が起こる。これはもうけしからぬことだ。  国保の問題は、国保税をどんどん上げざるを得ぬ。先ほど言いましたように、ここ数年の間に三倍五倍と上がってきているというところに問題がある。ただ、財政力のいいところもありますよ、国保財政の。しかし、困難なところはそういうところに問題がある。それを助けるのが財政調整交付金の制度である。その財政調整交付金の制度というのは、今のような国保財政の状態があるんですから、その役割を果たしていないということでしょう。その総額、国庫補助なりその原資を削るということになりますから、これは今度の改悪は国保税の値上げをせざるを得ないし、また一層そういう収納率が悪くなるし、それをしりをたたかれれば、それこそ寝ている人の布団まで引っぱぐような、そういう差し押さえをやらざるを得ぬような状況が起こってくるということを私は指摘をして、こういう法案はもうおやめになる方がいいということを申し上げて私は質問を終わります。
  194. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 最初に、船員保険に関連いたしまして二点ばかりお伺いをしておきたいと思います。  第一は、船員保険に対する国庫負担でありますけれども、これは政管健保に比べて著しく低い現状にあるわけでございます。政管健保は医療給付費の一六・四%と事務費の全額が計上されているわけでありますが、船員保険の国庫負担は二十七億円の定額、五%にも満たない、こういう現状でございます。制度の健全化のために労使の努力はもちろん必要でございますけれども、船員保険の国庫負担についてもその増額と定率化を図るべきだ、こういうように思いますけれども厚生省の見解はどのようなものでございましょうか、まず最初にお伺いをいたします。
  195. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 船員保険の国庫負担でございます。  御指摘のように、政府管掌健康保険給付費の一六・四%の国庫補助、これに対して船員保険疾病部門は定額で現在二十七億円でございます。この国庫補助につきましては、従来から私どもいろいろと検討をしており、また財政の健全化を図るためには定率化すべきであるという社会保険審議会の御答申もございますので、私どもとしては、従来から定率化の要求大蔵省にも出しておるわけでございますが、現在のところまだ実現を見ておりません。この問題につきましては、今後とも鋭意検討をいたして努力をしてまいりたいと存じます。  ただ、現在の国家財政の状況からいたしますと、増額という点については非常に難しい情勢にあるようでございますが、いずれにしても、審議会の答申にもございますので、定率化に向けて努力をしたいと考えておるところでございます。
  196. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 次に、運輸省にお伺いをしておきたいわけですが、船員保険制度はその基盤が非常に弱体化しつつあるわけです。その原因は、大臣も御承知だと思うんですけれども、加入者が非常に減ってきている。昭和四十五年は二十六万七千人であったものが、それをピークにいたしまして年々減って、今は十九万人台になっているわけでございます。  そこで、船員保険制度の円滑な運営のためには、何としても雇用の安定が必要である。それと同時に、船員行政と保険行政の連携強化が必要だと私は考えておるわけです。  そこで、この船員雇用安定対策について運輸省としてどのような方策を今日まで続けてこられてきたのか、具体的にお示しをいただきたいと、こう思うわけでございます。
  197. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 船員の雇用対策は、船員保険制度の基盤の強化ともう絶大な関係があることは今おっしゃるとおりでございます。しかし、この保険の問題を切り離しましても、雇用問題は私ども運輸省の所管行政のうちの一番重要な施策の一つのことであると存じておりまして、こういった観点から各種の施策を鋭意実施をしておるところでございますが、具体的には政府委員から答弁をさせたいと存じております。  特に、昨今の海運、水産の不況は、船員の雇用問題を非常な深刻なものにしておるのでございまして、現在、この点に関しまして、海運造船合理化審議会におきまして、今後の外航海運政策のあり方について審議中でありますが、その結果が、船員の雇用対策に重大な関係を有しておると考えられます。そこで、この際、雇用対策全般について再検討といいましょうか、レビューをいたしまして適切に対処してまいりたいと存じておりますし、保険行政との連携も十分とってまいりたいと、かように存じております。  具体的ないろいろな諸施策につきましては、政府委員から答弁をさせたいと存じます。
  198. 武石章

    政府委員(武石章君) 船員の雇用対策といたしましては、現に雇用されております者に対して失業を未然に防止するという見地からの雇用安定対策と、現に失業の状態にある者に対する雇用促進対策とがございます。  前者の雇用安定対策といたしましては、まず内部登用制度を定着させるための上級の資格を受有させる訓練を実施し、これを受講させる事業主に対しまして助成を行っております。次に、日本船員福利雇用促進センター、財団法人でございますが、そこが開拓いたしました外国船等に余剰船員を派遣する事業主に助成を行う、それとともに外国船への乗船に必要な訓練を実施しまして、これを受講させる事業主にやはり助成を行っております。また、海技大学校の分校におきまして技能講習を行いまして、陸上での就業に必要な技能資格の取得をさせるようにしております。さらに、本年度からは船員保険特別会計からの補助で雇用促進センターにおいて実施しております能力開発事業の一環として、中高年船員職業訓練では、陸の公共職業訓練校への入学の道を開きますとともに、これを受講させる事業主に対して同じように助成を行っております。  後者の雇用促進対策といたしましては、まず特定不況海上企業からの離職船員、国際環境の変化に伴う減船による漁業離職船員等、やむを得ず離職をする船員に対しまして、船員の雇用の促進に関する特別措置法、船員となろうとする者に関する国際協定の締結等に伴う漁業離職者に対する臨時措置法などによりまして、失業保険の延長給付、職業転換給付金の交付を行うなどの特別の措置を講じております。次に、船員職業安定所等にありましては、広域にわたり再就職の促進に努め、求人の開拓、職業相談、就職指導などについてきめの細かい積極的な対応を講ずるようその推進を図っております。また、日本船員の職域拡大を図る意味で、雇用促進センターを通じて外国船への乗り組みを積極的にあっせんしている、かようなことを行っているところでございます。
  199. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 これは御答弁は要りませんが、ひとつ運輸大臣、聞いてお帰りをいただきたいと思うんです。  船員に関する行政は運輸省と農水省が所管と、こうなっておるわけですね。保険厚生省。だから、保険制度の安定のためには、これら三省庁が連携を密にして対策を立てていただきたい、こう思うわけです。そこで、具体的に、できれば三省間の定例的な懇談、会議の開催とか、あるいは人事交流など、こういうものの対策を進めながら、船員の雇用安定並びに保険制度の安定というものに鋭意努力をしていただきたい。私はその要望だけ伝えまして、運輸大臣はもうお帰りになって結構でございますが、厚生大臣、運輸大臣、農水省も含めまして三省の連携を密にして雇用安定のために御努力をいただきたい。このことを要望しておきたいと思います。  それでは次の質問に移りますが、七月三十一日に六十年度の予算の概策要求基準が閣議決定をされました。経常部門は前年度比一〇%減、投資部門は前年度比五%減の概算要求基準が決められたわけでありますが、この概算要求基準は予算編成の第一段階ではありますが、その中身を見ますと、防衛費等の特別扱いは認めながら、一方において積極経済の推進あるいは福祉の計画的な向上、産業基盤の強化など、それらのために必要な経費については機械的なマイナスシーリングを当てはめている、こういうように見ているわけですが、私はこれはまことに残念だと思うわけであります。なぜならば、機械的なマイナスシーリングというのは、政策の優先順位をほとんど無視することになるわけでありまして、そういう点で大変遺憾に感じているわけです。  政府は、しばしば臨調答申を最大限尊重すると、こういうことを約束をされてきたわけですが、その臨調答申の中には、今後の我が国の行政の目指すべき二大目標として、活力ある福祉社会の建設と国際社会に対する積極的貢献を挙げているわけでありますが、この二大目標は、今回のような一律マイナスシーリングのような手法によって達成への道が一体開けるだろうか、その点について大変危惧しているわけでありますが、大蔵大臣の御見解をお伺いをしておきたいと思います。
  200. 竹下登

    国務大臣竹下登君) ただいま伊藤委員指摘なさいましたとおり、いわば増分を認めるといいますのは、人件費、年金、それから国際社会、国際国家とでも申しましょうか、ODA、それから防衛関係あるいは科学技術関係等に多うございますが、国際条約の取り決めに基づく支払い分とかいうものを増分にしまして、そうしてマイナスは今おっしゃったとおり経常部門、投資部門、一〇%、五%、それでその省庁でそれが前年に比して減になるところはまた半分、まあ二・五%激変緩和と、こういう大筋のものでございます。  それで、事実私どもシーリングというのは、いわゆる概算要求基準というものは昭和三十六年からやっておりますが、三十六年の場合はまだ五〇%増分までが基準だと、それから三〇になり二五になりまして、五十五年予算が、私が組みましたときがプラス一〇、それから七・五、それからゼロ、マイナス五、マイナス一〇と、こうきておるわけであります。考えてみますと、私は、公債政策というのはそれなりに機能してきたと率直に思います。昭和四十年からいわば公債政策に入って、そして五十年からは赤字国債をもお願いしたと、こういうことでありますが、残高で見ますと、仮に一兆円を今日発行いたしますと、ちょうど元利含めますと六十年で三兆七千億後世の納税者にツケを回す、こういうことになります。  ですから、百二十二兆と言えば三百九十兆、それから昭和六十五年に赤字公債の発行がゼロになるという前提でやってみますと百六十五兆になるわけでありますから、その百兆が建設国債、六十五兆が六十五年でちょうど赤字国債、それをやりますと五百十兆後世の納税者にツケを回す。やっぱりこれをいかにして減らすかということで、六十五年までには赤字公債の発行はとにかくなしにしよう、その後はその残高を減らしていこう、こういうことで考えますと、やっぱり厳しい財政状態の中で、優先度というものは、その概算要求基準の中で専門家であられます各省庁がそれぞれ優先順位をおつけになる。大蔵省の方が指名手配をして、それは多過ぎるとかいうような性格でなく、内なる改革を求めようと、こういうことでこのたびも厳しい概算要求基準を設定し、その中でいろんな苦悩をしながら優先順位というものが生まれていくことを今日期待をしておるということを率直に申し述べるべきだと思って申し上げたわけであります。
  201. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 概算要求基準の問題について、さらに関連をして厚生省にお伺いをするんですが、厚生省の当然増経費は約六千五百億円、こういうように聞いているわけですが、一体どこがどうふえていくのか、まずその内訳を教えていただきたい。これは当局の方から教えていただきたいと思了います。
  202. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 厚生省予算先生御案内のように、五十九年度で言いますと九兆二千四百五十億、その中でおおむね医療費で三兆九千億、年金で三兆五千億、七兆四千億程度のものがございます。これらの予算は、制度そのままでありますれば、これは当然増といいますか、これはどんなに大蔵省から削れと、こう言われても、社会保障の質を低下させないためには必然増は避けられない予算がございます。そういうものをいろいろ勘案して、六十年度予算を組む場合は、六千五百億程度の増額はやっぱり必要であるという考えで大蔵省にお願いをしておったわけでございます。
  203. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 とにかく当然増というのは、厚生省予算の場合はもうなかなか削ることができない、こういう中身のものであるということは私も承知をしているわけですが、ところで、今度の概算要求基準の作成に当たりまして、約六千五百億円に達するであろう当然増経費のうち三千四百二十億円が認められた、大蔵大臣との折衝の中で。その基準が決定をされた後で、これ、新聞報道で見たんですが、厚生大臣はこれについて、満足な数字ではないけれども、まあ努力すれば何とか予算は組めそうだということでほっとした表情であったと、こういうように伝えられているわけでありますが、果たして六十年度確信を持って予算が組めるのかどうか、その確信のほどをちょっとお伺いをしておきたいと思うんです。
  204. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私どもは六千五百億程度の増加は避けられないという気持ちで折衝を続けたのでありますが、その結果、年金については特別の事情にあるということをお認めいただきました。また、医療費も高齢化に備えての医療費のある程度の増というのも避けられないという御認識もちょうだいいたしました。それらの計算の上でシーリング、一つの基準としては、四千百億程度はやむを得ないだろうということが認められたわけでございます。ただ、その中からまたマイナスシーリングで引く部分が出てきますので、これらを引いて、来年度のシーリングとしては三千四百二十億程度の増というものの認識を得たわけでございます。これは五十九年度が二・三%増でございますから、今回は三・七%の増ということで、昨年よりはかなり大幅に必然増が避けられないというシーリングを得たわけでございます。  そこで、これで十分かということをおっしゃられますと、大蔵大臣がここにおるところで言いにくいのでございますけれども、これは決して十分ではございません。しかし、国全体が増税なき財政再建という道を歩もうという国民的合意の中で、特に現在の政府としてはこれが一つの政策の基本方針ということになっておるわけでありますから、私もその内閣の国務大臣の一人としてこの国の基本的な財政再建の方針には協力をしていかなければならないのでございますから、そういう中で、各省軒並みにゼロシーリングあるいはマイナスシーリングという中で三・七%のシーリングの増を認められた、年金と高齢化に伴う医療費の増という我々国民の皆さんの老後の生活を保障し、健康を守っていかなければならない厚生省の政策としては、生命線とも言うべき点については認識を得たという点で、私どもは、大変厳しい条件ではありますけれども、このシーリングの中で今後倹約できるものは身を切るような思いでできる限り節減をして、来年度このために社会保障の水準を、直接国民の生活にかかわる、命にかかわる、老後の生活にかかわる社会保障の水準は落とさないようにして、何とか予算編成に工夫を重ねてみたいと今思っておるところでございます。
  205. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 これは、いずれにいたしましても夏の予算編成第一段階で、当然増と見られる六千五百億円のうち三千四百二十億円。となりますと、年末の最終の第二段の予算編成の段階でどうなるかわかりませんが、いずれにいたしましても約三千億円を削減をして予算を組まなければならない、こういう事態だと思うんですよね。  ところで、その削減に当たっては、その前提として、これは厚生大臣の見解だと思うんですが、今回のような健康保険法改正のような制度改正は行わない、福祉水準は維持すると、この二点の基本方針を堅持しつつ、この年末の最終の予算編成に臨むのだというように聞いておりますけれども、これは一体事実なのかどうか、この点をお伺いをしたいと思います。  ついでにあわせまして、いずれにしても、どのようにして三千億円を削り込んでいくかということが重大な課題になると思うわけでありますが、伝えられるところによりますと、補助金の整理を中心とした国庫負担の地方肩がわりで約二千億円を獲得する、こういう方針だと、こういうように聞いているわけですが、事実は八月二日の新聞の伝えるところによりますと、大蔵省首脳は来年度予算編成で総額一兆四千億円に上る生活保護費補助金について国と地方の分担比率、今は八対二ですけれども、これを見直すんだと、そして地方の分担率を高める方針を明らかにしたと、こういうように伝えられているわけですね。  大蔵省はもともと財政再建を目指す歳出削減の柱として、一般歳出の四割強を占める補助金を来年度は原則一割削減する方針を決めており、この方針に従って生活保護費にも切り込んでいくんだと、こういう考え方が大蔵省の方から明らかにされたんだと、こういうように伝えられているわけでありますけれども、地方の分担率が高められていく可能性が非常に強いという段階におきまして、もし地方に国庫負担金、それから補助金などについて、例えば具体的に生活保護費などの負担金というものの地方肩がわりというものが現実に起きつつあるというその段階において、肩がわりを求められた場合に、自治大臣としてはどのような方針で臨んでいかれるのか、その点をあわせて、厚生大臣からまず最初にお伺いし、それから自治大臣からお伺いをしておきたいと思います。
  206. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私、シーリングの設定が終わりましてからの記者会見で申し上げましたのは、このシーリングの中で予算を組んでいくのは大変つらいのだけれども、しかし、もういろいろ工夫をしてみても、何千億も生み出すような思い切った制度改革というようなことは私としてはとても考えることはできない。また、先ほども申し上げましたように、厚生大臣国民の皆さんの命に関する健康の問題、また老後の生活の安定、あるいは生活保護者の方、身体障害者の方、まさにそれぞれの皆さん方の生活を守っていく立場にあるのでございますから、それらの待ちかねておる皆さん方に対して、予算の社会保障の水準を下げるようなことはしたくない、そういう前提の中で工夫に工夫を重ねて、何とか八月三十一日まで予算を組んでみろということを担当の者に伝えたということを申し上げたのでございますが、今そういう私の考え方に立ってそれぞれの分野で担当の者が鋭意努力中でございまして、まだまだその内容についてはここで申し上げるところに至っておりません。
  207. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) 概算要求基準あるいはまた行革審などに示された国家財政の非常な厳しい状態というものは、これは地方財政も同様でございます。しかし、国も地方もお互いに車の両輪のような関係でございまして、国が悪いから地方の方へかぶせよう、こういうわけにはなかなかまいらないと思います。国の行政改革をやり、できるだけ経費の節減も歳出抑制も図っていかなければならぬ。これは地方も同じようにやっていかなければならないことは当然でございます。国庫補助金などの整理統合、こういうことも私どもは賛成でございますし、これはやっていただかなければならない、こういう姿勢で臨んでいるわけでございます。  ただ、こうした国庫補助の整理合理化に当たりましては前提がある。事務事業を廃止縮減していくという基本のもとにこういうことを進めていかなければならない。そういう事務事業を廃止縮減するという基本のもとに国庫補助金等の整理を図っていく必要がある。同時に、国と地方とで共同責任でやっている事務事業については、現在の国と地方との負担割合、こういうものはやっぱり地方自治の側からして見ますと、これはもう維持していっていただかなければならない、こういう考え方のもとに国庫補助金の整理合理化を図っていっていただきたいというのが私どもの考え方でございます。
  208. 伊藤郁男

    ○伊藤郁男君 今の御答弁に必ずしも満足ではございませんけれども、さらに本格的な論議の場もあるでしょうから、時間が参りましたので、この辺で終わりたいと思います。
  209. 青木茂

    ○青木茂君 御質問申し上げます。  この法案は、患者側に対する切り込みが極めて厚く、医療費膨張の本当の原因をつくっている診療側に対する切り込みが極めて薄い。つまり患者性悪説、医師性善説というような立場、原点で構成された法律であるということに対して我々は極めて不満を持っております。  そういう意味におきまして少し伺ってみますけれども、まず、今いわゆる保険薬局というものの数ですね。数はどんどんふえているというふうに聞いておりますけれども、この点はいかがでしょうか。
  210. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 保険薬局の数でございますが、薬局全体の数が昭和四十九年に二万六千十二カ所でございましたが、昭和五十七年末ですと三万三千二百八十七、そのうち保険薬局の数は四十九年現在が二万六百三十六、五十八年四月一日現在では二万九千五百四十六ということで、保険薬局の数はおっしゃるようにかなり伸びてきております。
  211. 青木茂

    ○青木茂君 具体的にちょっと伺いますけれども、例えば一つの例といたしまして、内服薬を二剤三日分、外用薬を一種類投薬を受けた場合、医療機関のみで投薬を受けた場合は大体幾らになりますか。
  212. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 技術料だけで計算をさしていただきますと、二百三十円でございます。
  213. 青木茂

    ○青木茂君 これを、医者の方が処方せん書きまして、そしてそれを持って薬局へ行って薬剤の投与を受けると、その場合は医者に払うお金と薬局に払うお金の総合計はどのぐらいになりますか。
  214. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 医療機関に払う額が六百七十円、調剤薬局に払う金が五百八十円、合わせて千二百五十円でございます。
  215. 青木茂

    ○青木茂君 そうすると、医療機関で投与を受けた場合二百何ぼであって、それからこれを薬局で買った場合はもう六倍に近い伸びを示すわけですね、同じものが。その保険は支払基金から出ていくと、こういうことになりますな。そうなると、ここで患者側は物すごい大きな負担をしなければならない。ましてや、医者が第二薬局と申しますか、自分はお医者をやって、裏で親戚か奥さんかなんかに薬局を経営させるとしたら、まさに利益の二重取り。患者負担は物すごく大きくなるということは、これは言えますか。
  216. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 片一方が二百三十円、片一方が千二百五十円、約五倍ないし六倍ぐらいでございますので、それだけの差が生ずるわけでございまして、もうかるかどうかと、こういうことになりますと少しわかりませんが、それだけの差があって、それが患者負担に同じように響くということは、これは言えると思います。
  217. 青木茂

    ○青木茂君 五十七年五月二十七日の調剤薬局、保険薬局あるいは第二薬局、それに対する通達は生きていて、厚生省の監督は厳格に行われておりますでしょうか。
  218. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 御指摘の通達は現在も生きております。そしてその内容は、第二薬局とみなされるような調剤薬局につきましては保険薬局の指定を行わないということで、これは厳正に実施をいたしております。  なお、その当時、既に調剤薬局として指定をしておりましたものにつきましては、期間を限って改善を求めておりますが、特に国立大学の第二薬局につきましては、文部省当局とも協議をして改善に努めておりますが、この点は遅々として進まないというのが現状でございます。
  219. 青木茂

    ○青木茂君 ここに一つ写真がございますけれども、ここが医院の入り口でここが薬局の入り口で、裏は廊下でつないでいるわけですよ。それだけで五倍ないし六倍我々は余分に払わなければならない。こういう状況をそのまま残しておいて、一割負担だ、二割負担だと言われても、とても我我としてはたまったものではない。  また一つ資料を提供いたしますと、これは「醫學振興」という新聞ですけれども、こういう文句があるんですよ。「薬は全体の医療費の三割四分ないし五分ですから、総水揚げが三割五分減る。」、薬局に回せばですね。「そうすると、特例による課税が俄然下がる。」――今大蔵大臣いらっしゃいませんけれども。「それをやりなさい。そのかわり処方箋料を倍にしてやる。」、「その近くに薬局をべつの法人でつくればいいんです。いわゆる第二薬局問題と同じです。お医者は奥さんとやってるんだから。」、これは元厚生大臣の発言ですよ。  こういうようなことをそのまま残しておいて、一体厚生省の第二薬局というものに対する規制が建前でなしに本気で行われているのかどうか、我我として疑わざるを得ない。そういう中で、五倍ないし六倍という薬の費用を我々は保険から払わなければならない。だから、診療側への切り込み極めて薄くと言わざるを得ないのはそういう点なんです。  私は小会派ですから時間が大変短いものですから、お答えをいただくより、申し上げるだけ申し上げておきますけれども、いわゆる医療におけるNHKというのがございますね。Nは中野で、Hは阪和ですか、それからKが川合ですか、これが有名な医療におけるNHKです。今問題はNですけれども、これは保険医を取り消された一番ひどいものです。とにかく一人の人に病名を十九つけて、検査を五十種やって、ほとんどすべての人を心臓病にしちゃってと、こういうんですよ。これ、ひどいと言っても、一部の例外だということでみんな片づけられてしまうんだけれども、やはり本当に我々が医療というものを、医療費の膨張を抑えようと思ったら、これは氷山の一角として考えるのが私は普通の考え方だと思うんです。一部例外でほかは大丈夫ですということでは、私はこういう医療の不正というものはどうしてもなくならないと思うんですけれども厚生大臣、これはいかがですかね。
  220. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 放置し得ないがゆえに私どもは取り消しをしたわけでございます。ひとつ一私どもの気持ちも御理解を賜りたいと思います。
  221. 青木茂

    ○青木茂君 私が伺っているのは、一部例外と考えているのか、氷山の一驚と考えているのかということを実は伺いたかったわけですけれども、時間がございませんから次へ進みます。  これはこの前も少し御質問申し上げたことがございますけれども、高度医療機械にCTスキャナーというのがございますね。これは、日本にある総台数はヨーロッパにある総台数より多い。要するに、お医者さんが二億円近くするものを買います、また買うだけの金があるわけだ。しかし、それを早く償却したいものだから、二日酔いで頭が痛いと言ってもCTスキャナーをかけられちゃって、えらいたくさん保険点数を取られるという事実もあるんです。  これが一方において、それじゃイギリスはどうかといいますと、イギリスは日本みたいに出来高払いじゃないものだから、これ見てくださいよ。(資料を示す)CTスキャナーが欲しいためにお医者さんが街頭でビラをまいて、助けてくれ、助けてくれと、CTスキャナーを買う金を何とかしてくれと悲痛な叫びを上げている。  ところが、日本の場合、出来高払いの制度であるがゆえに、いとも簡単に高いものを買って、早く償却したいためにかけなくてもいい患者にかけて保険料がより多く水増しされる、そういう状況があるわけなんですね。だから医療側というものに対する切り込みというものをもう少ししっかりやってもらわなければ、本当に今度の法律は私は片手落ちだと言わざるを得ないということでございます。  それから、もうあと一方的にしゃべって終わります。  もう一つ国保保険料が、非常に収納率の問題があって国庫補助が高い。ただし、国民健康保険保険料というものは、納める税金を基準に四一〇%ないし五〇%が決められておるわけですよ。そうなると、もし巷間に言われるように、クロヨンだとかトーゴーサンという事実がありとするならば、それが住民税にはね返ります。はね返って保険料が不当に安くなっちゃうというんです。だから国保財政が苦しくなってくる、こういうような事実もなきにしもあらず。こういうことを総合的に考えていきますと、私は一割負担だ、二割負担だ、患者側の犠牲ですね、患者側の犠牲のみを考えるんじゃなしに、医療制度の、本当に毎年一兆円ずつ膨張させる医療費、これの真の原因はどこであるかということをはっきり踏まえた抜本的な対策というものを強く望みたいわけでございます。  最後に厚生大臣の御意見を伺って終わります。
  222. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 大変貴重な御意見をちょうだいいたしました。  今回の私どもの改革案は、ただ患者の皆さんに一割の御負担をお願いするというだけではございませんで、今先生から数々御指摘のあった医療費適正化の問題、御案内のように三月一日、薬価基準を一六・六%引き下げたわけでございますが、今後、監査体制の強化、審査体制の強化等を行って、医療費適正化も、先生今御指摘のようないろいろの問題、国民の声としてございます、私どもこの声に謙虚に耳を傾けて勇敢に医療費適正化というものも進める。また、一割御負担をお願いすることも、これはやはり患者の人に自分のかかった医療費をわかっていただくということで、先生指摘医療費適正化というものに役立つ面もございます。そういうことで、私どもは今度の改革のねらいは、むしろ保険加入者の皆さんにこれ以上保険負担を上げるようなことのないように、二十一世紀の将来まで今の被用者保険加入者の皆さん方の保険料率を大体現行程度にとどめたいというのが大きな目的で今回の改革案を出しておることも御理解賜りたいと思います。
  223. 青木茂

    ○青木茂君 厚生大臣おやめになった途端に変な発言をなさらないように、ひとつ以後よろしくお願いいたします。
  224. 石本茂

    委員長石本茂君) 以上をもちまして本連合審査会は終了いたしました。  これにて散会いたします。    午後四時五十三分散会