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1984-08-02 第101回国会 参議院 社会労働委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年八月二日(木曜日)    午後一時三分開会     ―――――――――――――    委員の異動  八月一日     辞任         補欠選任      本岡 昭次君     菅野 久光君  八月二日     辞任         補欠選任      菅野 久光君     本岡 昭次君      和田 静夫君     大森  昭君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         石本  茂君     理 事                 遠藤 政夫君                 佐々木 満君                 浜本 万三君                 中野 鉄造君     委 員                 大浜 方栄君                 金丸 三郎君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 森下  泰君                 糸久八重子君                 大森  昭君                 菅野 久光君                 本岡 昭次君                 和田 静夫君                 中西 珠子君                 山中 郁子君                 柄谷 道一君                 下村  泰君    国務大臣        大 蔵 大 臣  竹下  登君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        農林水産大臣   山村新治郎君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        郵 政 大 臣  奥田 敬和君        労 働 大 臣  坂本三十次君    政府委員        厚生大臣官房長  幸田 正孝君        厚生大臣官房総  小林 功典君        厚生大臣官房審        議官内閣審議        官        古賀 章介君        厚生大臣官房審        議官       新田 進治君        厚生大臣官房会        計課長      黒木 武弘君        厚生省健康政策        局長       吉崎 正義君        厚生省保健医療        局長       大池 眞澄君        厚生省保険医療        局老人保険部長  水田  努君        厚生省生活衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省薬務局長  正木  馨君        厚生省社会局長  持永 和見君        厚生省児童家庭        局長       小島 弘仲君        厚生省保険局長  吉村  仁君        厚生省年金局長  吉原 健二君        厚生省援護局長  入江  慧君        社会保険庁長官  長門 保明君        社会保険庁医療        保険部長     坂本 龍彦君        社会保険庁年金        保険部長内閣        審議官      朝本 信明君        労働大臣官房長  小粥 義朗君        労働大臣官房審        議官       平賀 俊行君        労働大臣官房審        議官       白井晋太郎君        労働省労政局長  谷口 隆志君        労働省労働基準        局長       望月 三郎君        労働省婦人局長        労働職業安定  赤松 良子君        局高齢者対策部        長        守屋 孝一君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働  組合関係)(内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄動力  車労働組合関係)(内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄施  設労働組合関係)(内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(鉄道労働  組合関係)(内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国鉄動  力車労働組合連合会関係)(内閣提出衆議院  送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄千葉  動力車労働組合関係)(内閣提出衆議院送付  ) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全国電気  通信労働組合関係)(内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(日本電信  電話労働組合関係)(内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全専売労  働組合関係)(内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全逓信労  働組合関係)(内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全日本郵  政労働組合関係)(内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労  働組合関係定員内職員及び常勤作業員常勤  作業員処遇を受ける常用作業員を含む。)」  (内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全林野労  働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤  作業員処遇を受ける者を除く。)及び定期作  業員」)(内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(日本林業  労働組合関係定員内職員及び常勤作業員(常  動作業員処遇を受ける常用作業員を含む。)  」(内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(日本林業 労働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤  作業員処遇を受ける者を除く。)及び定期作  業員」)(内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全印刷局  労働組合関係)(内閣提出衆議院送付) ○公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定  に基づき、国会議決を求めるの件(全造幣労  働組合関係)(内閣提出衆議院送付) ○雇用分野における男女の均等な機会及び待遇  の確保促進するための労働省関係法律整備  等に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送  付) ○健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働組合関係)、同(国鉄動力車労働組合関係)、同(全国鉄施設労働組合関係)、同(鉄道労働組合関係)、同(全国鉄動力車労働組合連合会関係)、同(国鉄千葉動力車労働組合関係)、同(全国電気通信労働組合関係)、同(日本電信電話労働組合関係)、同(全専売労働組合関係)、同(全逓信労働組合関係)、同(全日本郵政労働組合関係)、同(全林野労働組合関係定員内職員及び常勤作業員常勤作業員処遇を受ける常用作業員を含む。)」)、同(全林野労働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤作業員処遇を受ける者を除く。)及び定期作業員」)、同(日本林業労働組合関係定員内職員及び常勤作業員常勤作業員処遇を受ける常用作業員を含む。)」)、同(日本林業労働組合関係基幹作業職員常用作業員常勤作業員処遇を受ける者を除く。)及び定期作業員」)、同(全印刷局労働組合関係)、同(全造幣労働組合関係)、右十七件を一括して議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。坂本労働大臣
  3. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) ただいま議題となりました、公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働組合関係)外十六件につきまして、一括して提案理由を御説明申し上げます。  昭和五十九年二月二十八日以降、公共企業体等関係労働組合は、昭和五十九年四月一日以降の賃金引き上げに関する要求を各公共企業体等に対し提出し、団体交渉を重ねましたが、解決が困難な事態となり、四月二十日以降、関係労働組合または当事者双方の申請により公共企業体等労働委員会調停が行われ、さらに五月一日同委員会の決議により仲裁手続に移行しました。同委員会は、五月十二日、公共企業体等関係労働組合に対し、本件仲裁裁定を行ったのであります。  本件仲裁裁定は、職員基準内賃金を、本年四月一日以降一人当たり基準内賃金の一・三九%相当額に千百七十円を加えた額の原資をもって引き上げること等を内容とするものであります。  政府といたしましては、現状におきまして、本件仲裁裁定実施予算上可能であるとは断定できません。したがいまして、公共企業体等労働関係法第十六条第一項に該当するものと認められますので、同条第二項の規定により、国会に付議し、御審議を願う次第であります。  何とぞ、よろしく御審議の上、国会の御意思の表明を願いたいと存ずる次第であります。     ―――――――――――――
  4. 石本茂

    委員長石本茂君) 次に、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保促進するための労働省関係法律整備等に関する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。坂本労働大臣
  5. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) ただいま議題となりました雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保促進するための労働省関係法律整備等に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  近年、我が国における女子労働者は着実に増加し、約千五百万人と全労働者の三分の一を超え、また、あらゆる産業、職業に進出し、我が国経済社会の発展は今や女子労働者を抜きにしては考えられなくなってきております。女子職業に対する意識も高まり、その生涯における職業生活の比重も増大しております。しかしながら、我が国経済社会実態は意欲と能力のある女子労働者がそれを十分に発揮し得る環境が整えられているとは必ずしも言えない状況にあり、そのような環境を整えることが大きな課題となってきております。  また、昭和五十年の国際婦人年を契機として、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保することが国際的潮流となっている中で、我が国国際連合総会において採択された婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約昭和五十五年に署名したところであり、先進国の一員として、早期に関係国内法整備し、条約の批准に備えることが要請されております。  このような内外の情勢を考慮に入れますと、我が国においても、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保されるよう、新たな立法措置を講ずる一方、労働基準法女子保護規定については、女子就業分野の拡大に資するとともに、時代の変化に即したものとなるよう見直すことが必要となっております。また、これらに加えて、既婚女子労働者倍加等に伴い、女子労働者自身の健康と福祉さらには次代を担う国民の健全な育成という観点から、母性保護等についての施策の拡充が求められているところであります。  これらの問題については、昭和五十三年以来婦人少年問題審議会において御審議をいただいてきておりましたが、本年三月末、六年余の長期にわたる御審議の結果を建議としていただいたところであります。政府といたしましては、世界潮流を見通し、あるべき姿へ向かって着実に進むべく歴史的な第一歩として、この建議を踏まえ法律案作成し、関係審議会にお諮りした上、ここに提出した次第であります。  もとより、雇用分野において男女の均等な機会及び待遇が現実に確保されるためには、このような法制の整備と相まって女子自身労働に従事する者としての自覚のもとにその能力を発揮すると同時に女子の就労についての国民全体の理解を深めることが必要でありますので、政府といたしましては、これらの機運の醸成を図ってまいることといたしております。  次に、この法律案内容概要を御説明申し上げます。  第一は、勤労婦人福祉法の名称を雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保等女子労働者福祉の増進に関する法律に改めるとともに、その内容男女の均等な機会及び待遇確保促進を図るという観点から抜本的に改正することであります。  その内容の一は、男女の均等な機会及び待遇確保のために必要な事業主の責務を新たに規定したことであります。すなわち、募集、採用、配置及び昇進については事業主女子と男子を均等に取り扱うよう努めなければならないこととするとともに、これらの事項について労働大臣が指針を定めることができることといたしております。また、労働省令で定める教育訓練及び福利厚生並びに定年、退職、解雇については、事業主労働者女子であることを理由として差別的取り扱いをしてはならないことといたしております。  その二は、男女の均等な取り扱いに関する紛争解決のための措置であります。このような紛争については、事業主はまず、企業内で自主的な解決を図るように努めなければならないことといたしております。また、紛争関係当事者から求められた場合には、都道府県婦人少年室長が必要な助言、指導または勧告を行うほか、都道府県ごと機会均等調停委員会を設け、紛争調停に当たらせることといたしております。  その三は、妊娠出産または育児のため一たん退職し、再就職しようとする女子就業援助措置等であります。すなわち、事業主は、これらの女子の再雇用について特別に配慮するように努めなければならないこととし、また、国は、その再雇用促進に必要な援助を行うように努めるものといたしております。  第二は、労働基準法を改正し、妊娠及び出産にかかわる母性保護措置を拡充する一方、それ以外の女子保護措置について廃止または緩和することであります。  その一は、女子の時間外・休日労働規制について、まず、命令で定める管理職及び専門職については、それを廃止することといたしております。また、工業的事業女子については、時間外労働に関する現行の一日二時間の制限を廃止することとし、非工業的事業女子については、時間外・休日労働規制命令で定める範囲内において緩和することといたしております。  その二は、深夜業の規制について、命令で定める管理職及び専門職業務の性質上深夜業が必要とされる業務に従事する命令で定める短時間労働者等については深夜業の禁止を解除することといたしております。  その三は、危険有害業務就業制限生理休暇及び坑内労働について、それぞれ現行規制を緩和するとともに、帰郷旅費規制は廃止することといたしております。  その四は、妊娠及び出産に係る母性保護について、まず産前休業多胎妊娠の場合十週間に延長するとともに、産後休業を八週間に延長することとしております。また、妊産婦が請求した場合には、時間外・休日労働及び深夜業を禁止することといたしております。  最後に、この法律の施行は、事前の周知を十分に図る必要があることを考慮し、一部の規定を除き、昭和六十一年四月一日からといたしております。  なお、この一部の規定のうち、昭和五十九年七月一日から施行することといたしていた部分につきましては、衆議院における修正により、公布の日から施行することとされております。  以上、雇用分野における男女の均等な機会及び待遇確保促進するための労働省関係法律整備等に関する法律案提案理由及びその内容概要について御説明申し上げました。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  6. 石本茂

    委員長石本茂君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。     ―――――――――――――
  7. 石本茂

    委員長石本茂君) 次に、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  本案趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 浜本万三

    浜本万三君 議題となりました法案につきまして質問をいたしたいと思います。  まず最初に、原爆白書の問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  原子爆弾被爆をいたしまして四十周年を迎えようとしておるわけでございますが、被爆者実態調査あるいは国勢調査等を活用いたしまして、いわゆる被爆者白書作成検討することについて、厚生大臣は先日の衆議院社労委員会におきまして、我が党の大原議員質疑に答える形で、「できる限り努力をしていかなければならないもの」という意味の意欲的な発言をなさっておられるわけでございますが、私は、この大臣答弁に対しましては一応敬意を表したいと思っております。したがって、実現を強く望むものでありますが、まず白書作成につきまして、大臣の基本的な御認識につきましてお伺いをいたしたいと思います。
  9. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 来年で戦後四十年になるわけでございます。先生御案内のように、原爆はまさに人類史上初めて我が国がこうむった、また、人類歴史に二度とあってはならない悲惨なる出来事でありまして、この原爆による被災状況については、広島長崎、両市において被災状況調査が継続して実施されておるところでございます。これらの調査、種々の調査を総合してみますことは大変意義のあることであると思いますので、その具体的内容等について関係者相談をしてみたいと考えておるところでございます。
  10. 浜本万三

    浜本万三君 白書ということになりますと、被爆実態の全体像を明らかにするということであろうと思います。被爆者の置かれておる社会的、経済的、身体的状況、あるいは熱線や爆風、放射線の影響調査人的物的被害状況死没者調査、あるいは復元調査等を尽くしまして、原爆が人間に与えた影響を総合的に調査分析したものを集大成することが重要ではないかと思っております。また、このことは、原爆白書作成いたしましてその実相を世界に知らせていくことが大切であろうと思います。これは唯一の被爆国である我が国歴史的使命であり、また、世界平和のために貢献することではないかと思っております。  そういう意味で、大臣の考え方を改めて伺いたいと思います。
  11. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ただいま浜本先生のおっしゃったとおりに私どもも考えておりまして、来年は戦後四十年になるのでありますから、今までのいろいろの経験を調査したものを一つにまとめて世に問うということは、私が先ほど申し上げましたように、二度と人類歴史の中にこのようなことがあってはならないという大きな警告にもなりますし、また、このようなむごい惨事に遭った皆さん方に対するより一層の対策の充実ということにも役に立っていくのではないかと思います。
  12. 浜本万三

    浜本万三君 厚生省の今年度の予算を見ますと、実態調査についてはわずか二百万円程度でありまして、大臣の先ほどの御答弁では、原爆白書というような構想が述べられたわけでありますが、二百万円の調査費ではこれはどうにもならないのではないかというふうに思っておるわけなんでありますが、その点はいかがお考えでしょうか。
  13. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) お答え申し上げます。  御指摘の本年度の予算についてでございますが、これは昭和四十年、昭和五十年におきまして、それぞれ全国原爆被爆者方々健康状態生活状況につきまして調査をしてきた、そのまた十年たった今日の、その後の変化を、推移を把握したいということで、昭和六十年度に同様な規模の実態調査を予定しておる、こういうことでございます。そのための準備の経費でございます。  それから、先ほど大臣から御答弁がありました件でございますが、十年ごと実施してきた実態調査実施しまたまとめていく段階におきまして、御提案のございました、現地の広島県市、長崎県市において各種調査を行っておられます、また、動態調査復元調査被災状況調査というようなことで積み重ねてきておられる諸調査がございますが、国の調査をまとめる段階で、こういった関係者方々の貴重な資料とのすり合わせ、総合というようなことも十分検討に値する意義の深いことであろう、こういうふうに私ども感じておるわけでございまして、来年度の調査実施並びにそのまとめの段階におきまして、関係者方々と密接に御相談を申し上げていきたいと、こういう趣旨でございますので御理解賜りたいと思います。
  14. 浜本万三

    浜本万三君 その構想の中に、死没者調査というのは入っておりましょうか。
  15. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 死没者調査につきましては、しばしば御指摘を受けておるわけでございますけれども、この調査の具体的な実施方法ということを考えますに、戦後四十年、被爆後四十年という時間の経過を経ておりまして、来年の六十年実施段階におきまして、記憶に頼っての調査、あるいは遺族の方々範囲をどのように設定できるかとか、いろいろ調査技術的に極めて困難な状況がございます。  したがいまして、具体的に来年度調査の中身として死没者調査を独立して行うという部分というのはなかなか技術的には困難であるという見通しに立っておるところでございます。
  16. 浜本万三

    浜本万三君 被爆者団体協議会が発行しております機関紙によりますと、昨年の三月八日から東京でいろんな行動をなさいましたときに、当時の自民党の二階堂幹事長並びに当時の厚生大臣とお会いをいたしまして、死没者調査などの問題について陳情いたしました際に、幹事長厚生大臣が、六十年度死没者調査を含む被爆者調査について検討を約束されておる記事が載っておるわけでございます。そういう点については恐らく前厚生大臣から引き継いでいらっしゃると思うんでございますが、約束をしておる以上は、今のような御答弁でなしに、もう少ししっかりした答弁をお願いしたいと思います。
  17. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私が先ほど申し上げたように、来年は戦後四十年になるわけでございます。人類史上最大悲惨事であるこの原爆の四十年間の経緯というものを調査し、一つのものに総合してこれをまとめていくという、恐らく総合的な意味のお話であったのではないかと思うのでございますけれども、具体的に死没者についての調査というものは、私が大臣に就任して当局から説明を受けておる段階では、戦後四十年たってしまったので、これは技術的に、現実的に、物理的に、その正確な調査というものは極めて困難であると、そういう報告を受けております。
  18. 浜本万三

    浜本万三君 特に私希望をしておくのでございますが、この問題は国家的な大事業でもございまするし、また、あの忌まわしい事件を通して社会に平和の理念をよく知ってもらうためにも、どうしても原爆白書というものは必要であるというふうに思っておりますので、なお積極的に立派な白書をつくっていただきますように御要望を申し上げておきたいと思います。  それから続きまして、被爆老人の医療費の負担問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  これは前々から大分、老人医療制度ができましてから問題になっておるわけでございますが、被爆者以外の通常の老人と全く同様の、一般法であります老人保健法が適用されまして、原爆医療法が不適用となったことは、もう明らかに被爆者対策の重大な後退であるというふうに私は思っておる次第でございます。七十歳未満の被爆者の一般の疾病につきましては、医療費のうちの自己負担分をすべて国が負担をいたしまして、七十歳以上になると地方負担が入ってくるというのでは、ちょっと常識的に考えましておかしいのではないかというふうに思っております。  したがいまして、今からでも必要な法律の改正をされまして、もとの状態に戻すことが立法の趣旨に沿うのではないかと思いますが、大臣の見解を伺いたいと思います。
  19. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) ただいまの御指摘についてお答え申し上げます。  老人保健法の施行によって地方公共団体に新たな負担が生じたのではないか、こういう御趣旨だったと理解したわけでございますが、御指摘のように、原爆の医療法におきまして、認定疾病につきましては従前と同様に原爆医療法で対応しておるわけでございますが、一般疾病につきましては、従前の仕組みは、健康保険等の諸法が適用されたその後に原爆の方で補てんしていくという仕組みが以前の状況であったわけでございます。その健保法に見合う部分に老人保健法が新たに適用されたと、こういう点をまず御説明申し上げまして、そこで新たに地方の負担が生じたという部分は、まさに老人保健法が健保法等に置きかわった、そこに生じているわけでございまして、これは老人保健法のそれ自体の中での問題でございます。したがって、原爆医療法の方は依然として全く従前と同じ水準を維持しておると、こういうふうに御理解をお願いしたいと思っております。  なお、老人保健法の側から生じた負担につきまして、広島長崎におきまして、非常に原爆被爆者の高齢者の方の比率の高いところにおきましては、地方負担の生ずる部分が相当な高額に及び、その激変を緩和するというような形で、五十八年度予算以降これに臨時財政調整補助金を設けて対応してきておるところでございます。
  20. 浜本万三

    浜本万三君 ことしの予算措置の問題についてちょっと伺うんですが、今年度の予算を見ますと、老人保健臨時財政調整補助金の原爆分の予算といたしまして十四億円が計上されておるようでございますが、この計上額で、老人保健法以後新たに生ずることになりました県市の地方負担を完全にカバーすることができるんでしょうか。私が聞きましたところでは、広島長崎両県市の推定では、新たに生じる地方負担が五十九年度で二十三億円程度になるのではないかという話を伺っておるんですが、これでは到底不足をすると思うんですが、いかがでしょうか。
  21. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) ただいま御指摘の金額につきましては、いろいろ現在掌握している数字の、時点によっても相違がございましょうし、私ども、県市の方といろいろと調整、協議をしておるわけでございますが、考え方としましてお答えいたしますと、従前の形と比較しますと、確かに五%新たな負担が生じた形になっておりますけれども、老人保健法におきましては、全国あらゆる地方公共団体におきまして、老人保健法施行に伴いまして地方公共団体として負担していただくという部分があるわけでございます。これはもう全国共通の部分というふうに認識いたしまして、それ以外の増加分につきまして、先ほど申し上げましたような激変緩和ということで予算措置しているところでございます。
  22. 浜本万三

    浜本万三君 どうもその考え方がおかしいんでございまして、老人保健法以前におきましては負担をしないで済んだわけでございます。ところが、今回は三%分については補助をして、残り二%については全国公平に負担するというのが答弁趣旨であろうというふうに思うわけでございます。そうなりますと、従来は原爆医療法の規定によって県市の負担はゼロであったものが事実上負担をするということになってまいりますと、原爆医療法の広い意味の国家保障という精神に合致はしないんじゃないかというふうに思われるのですが、大臣、この点いかがですか。
  23. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) お答えいたします。  先ほど御答弁申し上げましたように、原爆医療法の方で受け持つ部分については、従前の法律と改正後の現在とで全く差はないわけでございます。あくまでも地方負担の生じている部分というのは老人保健法、すなわち従前は健康保険その他の制度で受け持っておった部分について老人保健制度に移行したという部分から生じているわけでございます。したがいまして、全国各地方自治体において負担しているのに見合う部分については、これは当然応分の負担としてそれぞれの市町村で受け持つという考え方で整理したわけでございます。
  24. 浜本万三

    浜本万三君 どうも論理的に言って、本人は関係ないんだ、新たな老人保健法制定後の負担分は地方自治体が持つんだと、本人には関係ないんだというような趣旨を述べられようとしておるように思うんでございますが、いずれにいたしましても、従来の医療法では地方自治体にも負担はなかった、もちろん本人には負担はなかったわけでありますが、今度は自治体に負担がかかるわけなんでございますから、私は明らかに後退だというふうに申し上げておるわけでございます。  これに関連して具体的にお尋ねいたしますと、現在財政措置が行われておりますのは、広島長崎の四県市についてのみであろうというふうに伺っておるわけでございます。ところが、ある情報によりますと、広島市、長崎市の周辺の市町村で老人割合の高いところに新たに拡大適用されるという話を伺っておるわけでございますが、そうした場合に、どういう市町村がどういう基準で候補になるのか、お尋ねをいたしたいと思います。
  25. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 御指摘のとおり、五十八年度におきましては、広島長崎、四県市にこの臨調が適用されておったわけでございますが、五十九年度の予算を若干確保いたした段階におきまして、その配分については現在検討をしているわけでございます。  その考え方としましては、広島市、長崎市と比較して被爆者の老人の割合が、広島市、長崎市と同等以上である、こういう市町村に着目しているわけでございます。そのような市町村におきましては、急激な負担増の状況というのは広島市、長崎市と共通しておると理解できるわけでございますので、この臨調の補助金の性格に合致するものと考えておるわけでございます。
  26. 浜本万三

    浜本万三君 ちょっとはっきりしなかったのですが、そうすると、今度は範囲を拡大されるということですね。どういう基準で拡大されるかといえば、老人が多いところに拡大いたしたいと思うというのですが、市町村の名前は具体的にどのようにお考えになっておるわけですか。
  27. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) それぞれの関係し得る市町村の医療費の実態を現在解析し、また、それぞれの地域におきますところの被爆者の老人の方々の割合等の把握をしておる最中でございまして、まだ市町村名を特定するには至っておりません。
  28. 浜本万三

    浜本万三君 くどいようですがもう一度お尋ねしますと、私が持っております資料によりますと、「市町村別老人保健法医療給付対象者数」という資料がここにあるんです。これは多分厚生省から出たんじゃないかと思うんですが、その資料によりますと、広島市が老人保健対象者四万六千六百十三人、そのうち被爆者が二万二千三百七十六人、したがって被爆者の割合が四八%ということになっておるわけでございます。  そういう割合から周辺市町村を調べてみますと、例えば広島市の場合に、坂町が広島の四八に比べまして五〇・九%、宮島町が四八%、府中町が四二%。長崎では、長崎市が五二%、時津町が五七%、長与町が五六%というふうに、被爆者の割合が非常に多いところがあるわけでございますが、そういうところは今度新たに補助地域として拡大される予定があるのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  29. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) ただいま先生が具体的に例示されましたそれぞれの町におきます数値は、五十八年二月断面で入手できたものでございますが、その後の変動を現在調査し、把握をしているということが加わっておりますので、今年度具体的にどこをというところにまではまだ煮詰まっておらないということでございます。
  30. 浜本万三

    浜本万三君 小さい町で、割合被爆者の人の多いところは、大変財政が窮屈なときなお困っておられると思いますから、よく検討をなさいまして、できるだけ範囲を拡大していただきますように要望しておきたいと思います。  次は、小頭症患者の終身補償の問題についてお尋ねをするわけですが、原子爆弾の小頭症患者は、原爆症に加えて小頭症があるために日常生活能力あるいは社会適応能力が著しく劣っておられる方が多いんじゃないかと思います。自活が非常に困難な状態にあると思いますので、特に、両親が亡くなった後の対策につきましては重大な関心を持つ必要があると思います。したがって、特別な措置が必要であると思うわけでございますが、そういう問題について、考え方を伺いたいと思います。
  31. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 原爆小頭症の患者さんにつきましては、現在の特別措置法におきましてもできるだけの配慮が加えられておるところでございまして、御承知のとおり、医療特別手当に加えまして小頭症手当をあわせ支給しているところでございます。  また、養護ないしは介護を必要とされる小頭症患者の方に対しましては、原爆養護ホームに入所することもできるようになっておりますし、その援護につきましては十分意を用いているところでございます。
  32. 浜本万三

    浜本万三君 それから、所得制限の撤廃の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  今、支給率は大体どの程度になっておるでしょうか。それから、この撤廃問題は前から非常に要求されておると思うのでございますが、御承知のように、現行の諸手当につきましては、医療特別手当、原爆小頭症手当を除き、所得制限が行われておるわけでございます。支給率がほとんど一〇〇%近いんじゃないかというふうに思っておるのですが、わずかなことならば財政上さして負担にもなりませんので、この際思い切って撤廃をなさってはいかがかと思うのでございますが、その点はどのようにお考えでございましょうか。
  33. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 現在の所得制限に関します支給率でございますけれども、計算上、支給率九六%という水準で予算措置をしているところでございます。  所得制限の撤廃のことでございますが、この制度の基本的な考え方といたしまして、被爆者対策の考え方としては、広い意味における国家補償の見地に立って、障害の実態に即した適切妥当な対策を重点的に実施すべきであるという基本的な考え方に立っているわけでございます。このような観点に立ちまして、放射線の障害の程度の大きい方に支給される手当につきましては所得制限は撤廃をしているわけでございまして、障害の実態に即して対応するということでございます。  また、その制限を加える場合におきましても、過大な制限にならないように予算上の配慮もしてあるわけでございます。その点、御理解をお願いしたいと思います。
  34. 浜本万三

    浜本万三君 趣旨はよくわかりますがね、私はさらに、被爆者が高齢化をしておるという現状にかんがみまして、せめて健康管理手当受給者のうちの六十歳以上の被爆者についての所得制限の撤廃ぐらいはすべきではないか。つまり、これは段階的に高齢者の対策を講ずるという意味で、すべきではないかというふうに思っておるわけなんでございますが、そういう柔軟な考え方は出ないのですか。
  35. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今政府委員から答弁がありましたように、各種手当に関する所得制限取り扱い、放射線障害の程度の大きい者に支給される手当の所得制限は設けていない、そういうようなことからほとんどの方に支給されておるわけでございます。  私も、最初説明を聞いたとき、もう九〇%をはるかに超す支給率になっておるのだから、それなら全部の方にということをも考えたのでございますが、しかし、今の厳しい財政状態の中で、これは高額の所得者の方にはどうかなというようなこと、今所得制限をきれいに撤廃するというようなことが国民的な合意が得られるものかどうかというような問題等、いろんな議論がありまして、わずかに所得制限が残っておるのでございますが、ただいま浜本先生指摘の高齢者についてはどうかというようなお話しもございました。これらにもいろんな御意見がございますので、ひとつ今後の検討課題ということにさせていただきたいと思います。
  36. 浜本万三

    浜本万三君 検討されるというお話でございますのですが、そうすると、もう一つついでに御検討願いたいものがあるわけです。  その一つは、手当の改善時期の問題なんでございます。各種手当の給付改善の実施時期につきましては、今回の改正案では従来の実績を一歩進める形で六月実施が予定されておるわけなんでございます。これは私も一応評価をいたしたいと思っております。しかし、年金法の改正案では、厚生年金、拠出制の国民年金などのスライドの実施時期が四月に繰り上げられるという予定になっておるわけであります。あるべき姿といたしましては、原爆関係の諸手当につきましても四月実施とするのが妥当ではないか、かように思うのでございますが、この点についてもひとつ御意見を伺いたいと思います。  また、仮に四月実施が困難であるならば、拠出制国民年金の一カ月後の引き上げという従来の実績にかんがみまして、福祉年金、原爆関係の手当につきましては、五月引き上げを約束されてもよいのではないか、かように思うんですが、この点いかがですか。
  37. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) ただいま御指摘もございましたように、原爆被爆者方々に支給される各種手当につきましては、従来より他の公的給付との均衡を考慮して対処してきたところでございますが、従前の公的給付の中で老齢福祉年金に改善時期を合わせてきているという経緯がございます。今回、その改善時期を六月といたしましたのは、老齢福祉年金の実施時期が六月であったということでございます。  今後とも、こういった公的給付の改善状況、改善時期等を考慮いたしまして、特別措置法による諸手当の支給時期、改善時期についても、適切な対応をしてまいりたいと考えております。
  38. 浜本万三

    浜本万三君 ぜひひとつ改善を要望しておきたいと思います。  次は、被爆者の施設対策につきましてお尋ねをいたしたいというふうに思います。  被爆者の高齢化対策に関連することなんでございますが、被爆者が養護老人ホーム、特別養護老人ホーム等の一般の老人ホームヘの入所を余儀なくされる場合があると思うのであります。つまり、原爆病院がいっぱいであるとかいうような理由で。その場合に、原爆養護ホームとの費用徴収の基準に乖離があるために、その差額だけ多くの負担が必要となっております。その分について自治体が肩がわりをしておる現状なんでございますが、筋論としては国の制度によって措置すべきではないかというふうに私は思います。  また、原爆養護ホーム、原爆病院等の原爆関係施設につきましては、いまだ法律上の認知もなされていない現状でございますので、この際、明確に位置づけをなさるのが妥当ではないかと、かように思いますが、これはひとつ大臣の方から所見を伺いたいと思います。
  39. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 原爆関係の施設の問題でございますが、現在、原爆病院、原爆養護ホーム等を通じまして、被爆者方々に対する福祉向上を図るべく対応しているところでございます。これらの施設につきましては、被爆者方々に焦点を合わせた施設ではございますが、実質的に見ますと、一般の医療施設、福祉施設とそれほど特に変わっている点もないというようなことで、なかなか積極的に法制化をするという理由に乏しいものと考えておるところでございます。  むしろ私どもとしては、法制化よりも予算措置によって必要な助成を配慮していくということに力点を置いて、今後とも頑張っていきたいと思っております。
  40. 浜本万三

    浜本万三君 予算措置というお話なんですが、最近の広島原爆病院の経営状態というものは御承知でございましょうか。御承知であるならば、知っておられる範囲でちょっとお知らせを願いたいと思います。
  41. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) お答えいたします。  広島原爆病院について、非常に累積赤字あるいは単年度赤字がかさんでおるという状況はよく承知をしておるのでございますが、ちょっと正確な金額を今手元に資料として持っておりませんので、そのような認識には立っておるということでございます。――失礼いたしました。ただいま数字がわかりました。  五十七年度末現在で累積赤字が五億八千七百万となっております。
  42. 浜本万三

    浜本万三君 五十七年度ではそうでしょうが、さらに一年後の五十八年度末における累積赤字は七億五千万円になっておるわけですよ。六十年度は恐らく十億になるのではないかと言われておるわけでございます。  これまでも、日赤病院の方は、職員の兼務体制を初めといたしましていろんな意味での経営に対する援助をされておるようでございます。その赤字は、どうやってうまくやりくりをしておるかといえば、薬剤等の延べ払いなどをいたしまして、大変やりくりをしておるという情報を私は得ておるわけでございます。  被爆者が必要とされる医療を十分受けるためには、病院の健全な運営ということが必要ではないかと思います。したがいまして、六十年には十億に近い赤字が出るということになりますと、薬代の繰り延べもとても難しいのではないか。病院が破産をするという状態にあると思うんでございますが、こういう状態の中で、厚生省としてはどのように援助をして、病院の健全な運営と同時に、病人の健全な看護をしていくかということについてお尋ねをいたしたいと思います。
  43. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 私ども、原爆病院が大切な病院であるということは十分承知しておるわけでございます。いろいろと経営改善の努力というものにつきましては原爆病院自身も努力しておるわけでございますが、やはりその主たる患者さんが慢性疾患で、比較的高齢者の方も多い。したがって、病床の回転が一般病院に比べますと回転率が低いというようなことで、収入は必ずしも十分伴わないというような現状があることも事実でございます。  また、研究的な経費も、原爆病院というような特殊性から必要としているというような状況も理解できるわけでございまして、こういった観点から、国といたしましてもできるだけの応援をするということで、五十八年度におきましても既に厚生省から、広島原爆病院に対しまして合計六千百万円ほどの援助もしておるわけでございます。その中で特に運営費の補助、これは千八百二十万含んでおりますし、また、研究の委託というような形での応援も二千万ほど含んでおります。また、医療器械等の形での補助、これも千九百万ということで五十八年度対応したところでございますが、五十九年度につきましても引き続きこの線に沿ってできるだけの援助をしていきたいということでございます。
  44. 浜本万三

    浜本万三君 相当援助をされておるという一生懸命報告がございますのですが、その結果でも、なおかつ五十八年度で七億五千万ということを僕は申し上げておるわけですね。六十年には十億円になる。これは現実の問題なんですよ。  ですから、今より以上の補助をしなきゃならぬし、さらにまた、国の施設として運営するような体制もとらなきゃならぬということを先ほどから申し上げておるわけなんでございますが、これは大いにひとつ厚生省の方も努力をされて、赤字の解消について何らかの措置をおとりになるようにしていただきたいと思いますが、大臣どうでしょうか。
  45. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今先生指摘のように、原爆病院は赤字を抱えて大変御苦労のようでございます。政府としても、今政府委員から答弁のように、いろいろのことをやっておったのでございますけれども、また、これからもやってまいるつもりでございますけれども、なかなか容易でないような状態でございます。  言うまでもありませんが、原爆は、まさに人類史上かつてない悲惨な惨状を広島長崎にもたらしてしまいました。それは国が起こした戦争の結果でございます。私どもは、大きな責任を感じていろいろの施策を行っておるものでございますが、この原爆病院の赤字対策についてもできる限りの御協力を申し上げたいと思っております。
  46. 浜本万三

    浜本万三君 ぜひひとつ、破産をしないように一層御努力をお願い申し上げたいと思います。  次は、原爆関係の調査研究機関の問題についてお尋ねをするわけであります。  調査研究機関といたしましては、放射線影響研究所や広島大学原爆放射能医学研究所、さらには科学技術庁の放射線医学総合研究所などがございます。研究体制の整備充実、連携の強化が従前から強く求められておったところでございますが、この点について今後どのようなお考えをお持ちか。また、研究の成果を被爆者の健康管理と治療により役立てていきますためには、運営の改善と一元化というのが必要ではないかというふうに思っておりますが、この点についての御見解を伺いたいと思います。
  47. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 原爆放射線の健康影響問題に関する調査研究というのは、先生指摘のとおり、非常に大切な分野でございまして、また、原爆被爆者方々に対する対策を今後展開していく上でも重要な基盤となるものでございます。  したがいまして、現在、御指摘のようないろいろな研究機関におきます研究というものについて、一層連携し、効果的な方向に向かうべきということについては、私どももその必要性を感じているわけでございまして、現在その研究体制のあり方につきまして、原爆放射線の影響に関する研究体制のあり方検討会ということで検討をお願いしているところでございます。この検討会におきましては、放射線影響研究所と他の関係の研究機関、あるいは関連する医療機関等との連携を強化し、また、原爆放射線の影響に関する調査研究体制の整備のための方策についていろいろ御検討をいただくということで進められているところでございます。  私どももまた、そのあり方検討の成果を踏まえて、必要な対応してまいりたいと考えております。
  48. 浜本万三

    浜本万三君 そのあり方検討会の検討事項の中には、移転問題も含まれておるんですか。
  49. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) あり方検討会の検討の中身には、当然その立地条件の問題でございますとか、あるいは連携の問題でございますとか含まれていると期待しているわけでございますので、移転等の問題も関連してくるものと思います。
  50. 浜本万三

    浜本万三君 広島市からは、公園整備のために、現在地を立ち退いてもらいたいという要望が出ておるそうでございますが、これは文部省とか、あるいは関係省庁とのいろんな折衝も必要なんじゃないかと思いますけれども、今はどんなになっておるんですか。
  51. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 広島市等からそういう御要望が強く出ているということも承知しておりますし、また、関係省におきましても、その問題についていろいろとやりとりをしているという段階だと承知しておりますが、まだ私どもとして、厚生省として、県市、文部省等で一つの結論を導くという段階までには至っていないと、こういう状況でございます。
  52. 浜本万三

    浜本万三君 移転に際しまして、大体あれは日米合同の研究機関でございますので、移転をする場合に必要な経費というのは、日米折半ということになるわけでしょうか。
  53. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 基本的には、日米折半という考え方で整理していくことになると思います。
  54. 浜本万三

    浜本万三君 移転問題は非常に長い間議論されておる問題でございまするし、あそこの職員も大変心配をしておるということも伺っております。安心して研究できるように、早急に問題を解決してほしいということを要望しておきたいと思います。  それから次は、高齢者の近距離被爆者に対する手当の増額についてお尋ねをいたしたいと思います。  先ほどの質問では、高い被爆を受けた皆さんに対して、手厚い援護措置を講じたいというのが厚生省の基本的な考え方であるという趣旨を伺ったわけでございます。そういう答弁に従いましてお尋ねをするわけなんでございますが、原爆投下の際に爆心地から二キロメートル以内の地域で被爆をした者や、当時その人の胎児であった者につきましては、現在一万二千六百円、改定案では一万二千八百円になる予定ですが、この保健手当が支給されております。原子爆弾の傷害作用の影響による身体上の障害のある者や、身寄りのないと十歳以上の単身老人には二万五千円、改定では二万五千六百円の手当が支給されることになっておるわけなんですが、何分にも近距離で直接被爆した者であるため、特に高齢者におきましてはいつ発病するかわからないという不安感にさいなまれておるというふうに思います。非常に不安な生活を余儀なくされておる現状であると思います。  こうした被爆者の皆さんの間からは、せめて高齢者については保健手当を特別手当並み、現行は三万七千七百円、改定では三万八千四百円に引き上げてもらいたいという声があるわけでございますが、高い被爆を受けた老人に対する積極的な政策といたしまして御検討をしてもらいたいと思いますが、いかがでしょうか。
  55. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 既に御指摘ございましたとおり、七十歳以上の身寄りのない老人の方等におきましては、精神的な不安の状況に加え、日常の生活においても種々のハンディキャップというようなことを持っておられる。したがって、他のそうでない方々に比べますと、保健上特別の配慮を必要とすると、こういう観点に立ちまして、保健手当の中で特に区分を設けまして、増額分というものを上積みした経緯があるわけでございます。  そういった趣旨に立ちまして、今後こういった手当の改善に当たりましては、やはり近距離被爆者方々の間でそういうような事情というものも十分考慮に入れながら検討を加えていく必要があろうかと思っております。
  56. 浜本万三

    浜本万三君 まあことしは予算化してしまっておるのでどうにもならないと思いますが、来年被爆四十周年ということなので、特に手当の再検討が地方自治体八者協からも求められているというふうに思います。ぜひひとつ来年は検討していただきまして、前向きの答えを出していただきますように大臣に要望したいと思いますが、大臣、どうでしょうか。
  57. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 大変重要な問題でございますので、できる限りの努力をしたいと思います。
  58. 浜本万三

    浜本万三君 次は、在米被爆者に対する検診団の派遣問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  これは、今まで広島市を中心にいたしまして、医師団や放影研、それから国、四者が共同で費用を負担いたしまして派遣されておりまして、大変向こうの被爆者の方は歓迎をしておられるようでございます。最近、新しくカナダにおられる被爆者の皆さんが、在米被爆者と同様にカナダにも検診団を派遣して診断をしてもらいたい、こういう声が上がっておるようでございます。新聞報道によりますと、カナダでは、特にバンクーバーを中心にいたしまして、バンクーバーの市長等からも強い要望がなされておるという話が伝わっておるわけでございますが、北米に対するこの検診団の派遣とあわせて、カナダにも検診団を派遣される用意があるかないか、その点について伺いたいと思います。
  59. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 在米被爆者方々に対しては、五十二年から五十四、五十六、五十八と、合計四回関係方面の御協力のもとに医師団が米国に派遣されたところでございます。昨年におきましては、カナダ在住の方々からの御要望もあったやに聞いておるわけでございますが、アメリカの実施場所をシアトルも含めることによりまして、カナダ在住の方々にも便宜を図ったというふうに承知しているわけでございます。  今後、カナダの御要望につきましては、そういう御要望があるということも承っております。ただ、あくまでもこれは向こうの国の国内問題でございますので、やはり外交上の配慮と申しますか、そのような配慮も固めていく必要がありましょうから、関係方面とよく相談をした上で、できる限りの援助の手は差し伸べる方向で努力したいと思っております。
  60. 浜本万三

    浜本万三君 人道上の見地からも、ぜひカナダにも検診団を派遣していただきますように、これは大臣からも約束をいただきたいと思います。
  61. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今政府委員から答弁申し上げましたように、外交上、また相手国、関係方面との話し合いを必要といたしますが、先生のお考えに沿うように努めてまいりたいと思います。
  62. 浜本万三

    浜本万三君 時間がございませんので、最後にもう一つだけお尋ねをいたしたいと思います。  それは、被爆者の在宅対策の問題についてでございます。今後の方向といたしましては、被爆者のための施設対策と並行をいたしまして在宅対策も飛躍的に発展をさしていかなきゃならぬ、かように思っております。  特に、高齢化社会の進行に伴いまして、寝たきりあるいはひとり暮らしの被爆者老人数も相当多くなっておると思いますので、この具体策のために今政府が考えております被爆者相談員あるいは被爆者家庭奉仕員というのがございますが、現在の予算人員では非常にわずかでございますので、不足をし、手薄ではないかと、かように思われます。当然この充実が必要であると思うんですが、この点について、今後の考え方を伺いたいと思います。
  63. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 被爆者の方の高齢化に伴います、在宅におきます。そのような事業が一層の充実を図る必要があるということにつきましては、私どもも同じ方向の考え方をとっております。  現在、家庭奉仕員の派遣事業につきましては、老人福祉法による家庭奉仕員派遣事業が相当広範囲にカバーをしておるわけでございますが、そこでカバーされない六十五歳未満の方々について必要な奉仕員の派遣事業を補完しておるというわけでございまして、この点につきまして、今後とも各地方公共団体の実情を踏まえて、一層積極的な対応をしてまいりたいと考えております。  また、相談事業につきまして、広島長崎両県市に相談員が置かれているわけでございまして、この方々相談事業が発展できるように私どもも国としての補助を申し上げているわけですが、五十九年度におきましては、前年度に引き続きまして相談員十三名を十四名ということで増員を図ったところでございます。今後、相談事業の充実についても努力を続けてまいりたいと考えております。
  64. 浜本万三

    浜本万三君 冒頭申し上げましたように、来年が被爆四十周年、非常に重要な節目になる年だというふうに思います。したがいまして、お尋ねいたしましたそれぞれの事柄を六十年度の予算の中ではさらに充実をさしていただきますように、特に大臣に要望をいたし、大臣の決意を伺いまして私の質問を終わりたいと思います。
  65. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) まさに先生のおっしゃるとおり、あのむごたらしい惨事から四十年たとうとしております。しかし、まだまだ問題は解決されておりません。多くの皆さん方政府の施策を望んでおります。先生御承知のように、来年度大変に厳しいゼロシーリング、マイナスシーリングと言われる予算の状態でありますが、そういう中でも、私はこの我が国の、人類の初めての惨事を我が国が受け、その犠牲者の方々が多くいらっしゃる、その対策のためには全力を尽くして予算確保に努力してまいる決意でございます。
  66. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 我が国における原爆被爆者対策行政を推し進めていく場合に、厚生省当局が絶えず念頭に置いていただくべきことは、基本的にはもう昭和五十三年三月三十日付の最高裁判決と昭和五十五年十二月十一日付の原爆被爆者基本問題懇談会で示されている基本理念であると私は思います。すなわち、この最高裁判所の判決と基本懇の両者に共通して読み取られるものは、被爆者対策は、その質量の特異性から、ただ単なる社会保障施策でもって対処すべきではない。つまり、国家補償的施策をもって対処すべきであるということであります。  そこで、私はきょうここで主張しておきたいことは、昭和六十年度予算編成に当たって、政府としてもゼロシーリングの枠を被爆者対策予算にかぶせることは妥当ではないと、私はこう思うわけでございます。先ほどの最後の質問の中にもこのことは言われておりますけれども。なぜならば、今申しますように、被爆者対策は一般の社会保障施策とは異なって、国に財政的ゆとりのあるなしにかかわらず、これは国家補償の見地に立って優先して補償すべき性格のものである、こういうように私は定義づけたいと思うのです。つまり、来年度予算編成に当たって厚生省当局は、被爆者対策関係予算についてはゼロシーリングの枠対象から外すことが妥当であると、このように考えますが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  67. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 気持ちの上では私も全く同感でございますが、先生御承知のように、厚生省予算は非常に厳しい状態にございます。年金に要する費用、また、高齢化社会に伴うところの医療に要する費用、これらの予算は年々当然に増加を続けてまいります。したがって、来年度の予算ということを考えますと、現在の制度の中で、社会保障の水準を落とさないように予算を組むためには、かなりの増額が必要でございます。マイナスシーリング、ゼロシーリングというような枠で、予算が組めない内容のものをいっぱい持っております。国全体の大きな増税なき財政再建というフレームの中で、これは倹約すべきものは縮減していかなければならない、こういうことで八方頭を痛めておるのでございます。  しかしその中でやはりこの原爆関係の予算は、先ほどから私申し上げておるように、これが戦争によってもたらされた人類史上初めての、また、二度とあってはならない惨事に遭われた方々に対する対策、まだまだいろいろの問題を残しておるのでございますから、厳しい条件というものは知っていただかなければなりませんが、その厳しい条件の中でも、先生がおっしゃったと同じような気持ちで、私は原爆関係の予算確保のために全力を尽くして努力したいと思っております。
  68. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 今大臣の御答弁の冒頭にもありましたけれども、気持ちにおいてはと、そこのところが私非常にひっかかるわけでございまして、申し上げるまでもなく世界唯一の被爆国、そして、これら原爆被爆者の人たちは世界人類の中でそれこそほんの一握りの方々なんです。ですから、先ほど私申しましたように、財政的ゆとりがあるとないとにかかわらず、このほんの一握りの方々こそ、これはもうそれこそ特別扱いして、聖域扱いで、これはもうひとつ特段の御配慮をいただきたいことを特に大臣にお願いいたしておきます。  次に、戦後既に三十九年を経過しようとしておりますが、今日においてもなお原爆被爆者の体の中でずっと休まずに燃え続けているわけでございまして、そういう被爆者の皆様にとっては、被爆者援護法が制定されて初めて戦後は終わったということになるのでありまして、厚生省当局としては、この被爆者援護法の制定を前向きに検討していただきたい、被爆者の皆様に、本当に戦後は終わったという喜びを与えてほしいと思うわけでございますが、これも大臣の御所見をいただきたいと思います。
  69. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) あの戦争で、私どもはあらゆる場所で非常に多くの犠牲を受けました。また、多くの若者たちが親に別れ子を残して戦場で散っていったのでございます。しかし、そういう中でもこの原爆の被害というのは、放射能被害という後々まで大きな惨禍を、その人間が生きている限り逃れることのできない大きな惨禍を残しておるのでございます。そういう意味から他の戦災と全く事情が違うということで、私どもは特別の法律をつくってそれが対策に当たっておるのでございます。  先生指摘のように、戦後四十年たってもまだまだこれは終わっていない、まさにそのとおりでございまして、人間の最も尊い今、その命に、四十年たっても五十年たっても六十年たってもあのむごたらしい惨禍がまさにそのつめ跡を残しておるのでありますから、私どもはこれは国家的な補償という面でそういう人たちに施策を考えなければならないという法律をつくって、今先生方の御協力を得ながらそのための施策の万全を期すために努力をいたしております。  新しい法律をつくるかどうかということについては、これらの施策によってあらん限りの努力をして、どうしてもそれでできないというようなことであればさらに検討する問題になってまいりましょうが、現在の政府の考え方としては、現在つくった、特別の国家的なこれは補償を必要とする問題であるという考えてつくった法律の中で、万全を期してまいりたいと思います。
  70. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 具体的な問題に触れてみたいと思いますが、現行のいろいろの諸手当については、医療特別手当及び原子爆弾小頭症手当を除きまして、所得の状況により支給制限が行われておりますが、先ほどから申しておりますように、国家補償の精神からすればこうした所得制限の撤廃をすべきである、また、していただきたいという声が強いわけでございますが、この点いかがでしょうか。
  71. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 基本的な考え方といたしまして、広い意味の国家補償という見地に立ってこの制度は対処しているわけでございますが、放射線による健康障害という特別の犠牲に着目して諸手当を支給している、こういうことで、やはりその放射線の障害の実態、その程度ということはどうしてもこの制度の中では考慮する必要があるわけでございます。  したがいまして、放射線の障害の程度の大きい方々に対しては所得制限というものは設けていないわけでございますけれども、その他の方につきましては経済的に余裕のある方々は御遠慮いただくというような仕組みを導入しておるわけでございます。
  72. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 被爆に起因した疾病等による特別な出資のために支給される医療特別手当及び特別手当並びに家族介護手当を生活保護法運用上の収入認定から除外してほしい、こういう要望が広島市等から盛んに起こっているわけでございます。  ところで、ここでその特別措置法と生活保護法の関係で、収入認定の関係で、本来高額であるべきはずの特別手当が本人受領分の段階になると一万六千二百五十円と保健手当の二万五千六百円より少なくなって逆転現象を起こしておるわけですが、こういうことから見ても手当を収入認定からこれは除外すべきが妥当ではないか、こう思うわけですが、いかがでしょうか。
  73. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 生活保護法所管局がちょっと今おりませんが、その問題につきましては、かねてより御要望の強い点も私ども承知しております。担当の局ともよく連携をとって今後とも検討をしてまいりたいと思っております。  ただ、現在収入認定を行っておる諸手当につきましては、生活保障的な経費が入ってきた場合には、これは一応収入とみなすというような、生活保護法の運用としては全体に共通する割り切りに該当するというふうに聞いておるわけでございまして、医療特別手当も含めてでございますが、諸手当のこれまでの歴史から見まして、生活保障的な部分があるというようなその部分に着目しての収入認定はどうしても現在の生活保護法の体系ではそうせざるを得ないんだというような説明を聞いておるところでございます。
  74. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 ちょっとこの件については通告をしていなかったんですが、今わかりますか――わからなかったならば後ほどお答えいただきたいと思いますが。
  75. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 細部については、調べた上で後ほど先生のところに説明に上がります。
  76. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 次に、広島原爆病院についてでございますが、これも先ほどの質問に出てまいりました。昭和五十八年度末の累積赤字が七億四千六百万円、こういうところから、これは先ほどから申しておりますように、特別な計らいをもって助成措置を講じていただきたいということを私も要望しておきたいと思います。  次に、被爆者方々もいよいよ本格的な高齢化を迎えるわけでございますが、したがって生きがい対策というものが非常に重要になってまいりますが、現在原爆養護ホームの入所希望者が非常に多いということも聞いておりまして、入所したいという希望はたくさんあるけれどもなかなかその夢がかなえられない。そういう中で、待ち切れないで個人病院に入院を余儀なくされて、そこで寂しく、話し相手もなく死んでいかれるという方々も少なくないと聞いておりますが、七月十五日の中国新聞によりますと、七月十四日現在、広島市役所の援護課の掲示板には、原爆養護ホームの入所希望者が特別養護三十一人、一般養護七人いらっしゃるということがございます。今のは入所希望者ですけれども。そして、こういうように退所者よりも入所希望者が非常に上回るため、短くて三カ月、長くてはもう半年以上待たなくちゃいけない、こういうようになっているようでございますが、何かこれに対する対応策ということはお考えでしょうか。
  77. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 最近、特別養護ホームヘの御希望が、先ほど数字でおっしゃいましたような人数あるというようなことは、私どもも承っているところでございます。それぞれのホームの運営状況につきましては、私どももよく県市を通じて承りながら、高齢化が進んでいく被爆者方々に対する対策の面で今後大いに検討して、取り組んでまいりたいと考えております。  現在の状況につきましては、県市におきましてそれぞれ相談に応ずる、あるいは福祉の面で受けとめる、場合によっては、先ほどお話にございましたように、医療機関の方で受けとめるとか、いろいろそれぞれ措置されているというふうに聞いておるわけでございますけれども、将来的な問題としては今後検討していく必要があると考えております。
  78. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 本年七月の十五日付の中国新聞を見ますと、原爆の日を一カ月後に控えた七月六日のことですが、失対事業で働いておられた広島市内の被爆者でお年寄りの御婦人の方が、太田川という川に飛び込み、入水自殺をされたということが載っております。この自殺の原因としては、関係者は、来年から六十五歳以上の失対就労は中止とするという高齢者打ち切り決定、これが原因ではなかったのかと、将来を悲観してといったような、そういう記事が載っております。  現在広島市では、失対事業で約千三百九十人が働いておりまして、平均年齢が六十六・九歳、六十五歳以上の方々が約八百九十人、全体の六三%を占めております。そして、この失対就労者の六〇%近い七百九十六人という方々は、この自殺した御婦人と同じような被爆者でございます。そこで考えられることは、もし原爆に遭わなかったならば、今ごろは家庭を奪われることもなく、平穏な戦後が送れたのではないか。また、こういう自殺した御婦人が二十年以上も失対で食べていかなければならなかったというのもこの原爆の犠牲である。そういうような広島の就労者の実情を思えば、これは失対打ち切りは非常に酷じゃないか、こういうように市民の方々も考えている人は多いと思います。  そこで労働省にお伺いいたしますが、先ほどから申しましたように、この最高裁判決及び基本懇の趣旨から考えるときに、国家補償の見地に立つ被爆者対策の施策と、国の行政改革の一環としての失対の打ち切り施策とのいずれが今重要であるかということをお考えいただいて、ぜひこの被爆者の就労の機会を奪うことのないような特別のお計らいをしていただくことはできないのかと私は思うのですが、この点いかがでしょうか。
  79. 守屋孝一

    政府委員(守屋孝一君) 私も、先日の新聞の記事は十分承知しております。この新聞の記事によりますと、今先生おっしゃったような関係者の話が出ております。私の方で調べた状況ですと、この方は、過去一年の間に三カ月と四カ月にわたりまして、それぞれ高血圧症あるいは腰痛症で失対に就労されていなかった。非常に体の方がおぐあいが悪かったようであります。しかし、何はともあれ、こういう関係者の方がお亡くなりになったことにつきましては、私も心から御冥福をお祈りしたいと考えております。  ただ、この失業対策事業につきましては、これは既に昭和五十五年に失業対策制度調査研究会の基本的な方針についての報告も出ております。その報告の内容を簡単に申し上げますと、失対事業というのはあの戦後の大混乱期に始めました事業でありまして、既にその使命は終わっておる。しかしながら、この失対事業が現にやられている地域等の状況を勘案するに、今直ちにこれを廃止するということは適当でないであろう。そこで、実施するということにしても、当面五年程度の経過期間を置いて六十五歳以上の方の就労は御遠慮願うということにしなければ、労働省が労働政策としてこの事業をやっているということと基本的に性格、本来内在する性格から見まして矛盾が出るという指摘があるわけでございます。  これはどういうことかといいますと、失対事業というのは、ここでいつまでも雇用の場を提供するという考えではございませんで、基本的には、臨時的な雇用の場でございます。ということは、民間への再就職を前提としたものでございまして、現在の民間の雇用状況を申し上げれば、私がくどくど申し上げるまでもなく、六十歳定年制の延長というのが今最大の眼目であり、私どもは六十五歳まで何とか雇用延長していただきたいということを企業に強く働きかけているのが状況でございます。  そういう中で、六十五歳を超えて失対という場で就労を保証するということが、果たしてどうであろうかという問題があるわけでありまして、私どもは、六十五歳を超えて働くなということを申し上げているのではございません、月何日という形で就労を保証するということについては問題があるということでございます。私どもはそういう意味合いにおいて、特別の財政措置を講じるのは六十五までであるという基本的な方針のもとに今までもこの失対事業を運営してきておりますし、近々迎えます制度検討の場合にも、基本においてはこの六十五というのは、労働省が行う就労事業であるということを前提にする以上は、万やむを得ないものではいないかというふうに考えております。  もちろん私は原爆被災者の方々につきまして、全然その問題は知らぬということを申し上げているのではなくて、それぞれの省が所管するその事業の性格から見て、これはやむを得ない問題であるというように考えておるということでございます。
  80. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 今の御答弁は、原爆被爆者方々は非常にお気の毒だとは言いながらも、非常に観念的でありまして、一般の高齢者と原爆被爆者という方々をただ横並びにしてしか考えていらっしゃらない、こういう感じがいたします。  先ほど、厚生大臣にも私申し上げましたけれども、原爆被爆者という方々は、これはもうそれこそ世界人類の中でほんの少数しかいらっしゃらない特殊な方々なんだから、そういう特別の計らいをしていただきたい、特段の考慮をはらっていただきたいということを私は要望しているわけでございますから、今のお答えのように、ただ並みの高齢者と横並びに考えるというようなことじゃなくて、特段の御配慮をいただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  81. 中西珠子

    ○中西珠子君 突然に質問をするようにと言われたのでございますけれども、同僚委員がいろいろ私どもの考えでいることを申し述べさしていただきましたので、私はただ補足的に、細かい点をちょっとお聞きしたいと思います。  今回の法案によりまして、原爆被爆者特別措置、そしてその手当の内容というものが多少なりとも改善されることは大変結構なことではございますけれども、まだまだ十分ではない。殊に、介護手当というものが、介護に要する費用を支出していないものと支出したものとに分けて決められておりまして、それがそれぞれ引き上げられてはおりますけれども、現在被爆者の高齢化というものを考えましたり、また、その介護に当たる看護婦とか家政婦とか、そういった人たちの現在要求している一日の報酬というものを考えましたときには、大変これは低いのではないかということでございます。まあ介護のための費用を支出している者については月額三万五千八百円になるということで、多少は引き上げられておりますけれども、非常に低い。また、介護に要する費用を支出していない者というものに対しては月額が一万八百円ということですし、大変これは低いものではないか。  これに関連いたしまして、先ほども同僚議員が申しましたけれども、やはり特別養護老人ホームとか一般養護老人ホームに入ることを要望している被爆者方々に対する特別の措置をお願いしたいし、また、昭和五十七年の参議院の社労の附帯決議におきましても、その五でございますけれども、「被爆者に対する家庭奉仕員制度の充実及び相談業務の強化を図ること。」という要望事項がございますが、これに対しては厚生省としてはどのような対策を講じていらっしゃいますか。ホームにも入れないということになると家庭で介護してもらうより仕方がないのですが、家族に見てもらうだけでは行き届いたこともできませんし、家族そのものも非常に疲労を感じたり、病気になったりというふうな、健康を損なう危険もございますので、家庭奉仕員制度というものは非常に重要だと思うのでございますが、これについてはどのような手を打っていらっしゃいますか、伺わしていただきます。
  82. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) お答えいたします。  介護手当につきましては、今回、先ほどお話にございましたような改善をそれぞれ図っておるところでございますが、この介護手当は、従来より生活保護におきます他人介護料等と横並びの改善ということで取り組んでいるところでございます。今後、被爆者方々の年齢が高齢化するに伴いましてその需要等も増大していくことが見込まれるわけでございます。したがって、介護手当の重要性というものも大きくなっていく方向にあると認識しておりまして、今後とも介護の実態をよく踏まえまして改善に努めていく所存でございます。  また、在宅の被爆者方々に対する家庭奉仕員とか、あるいは相談事業とか、御指摘のとおり私どももいずれも重要であると考えておりまして、相談員につきましては予算上も引き続き増員を図っておるところでございます。また、家庭奉仕員につきましては、六十五歳以上の方につきましては老人福祉法によります家庭奉仕員派遣事業が既に相当広範囲にカバーをしているわけでございます。こちらの原爆対策の一環といたしましては、六十五歳未満の方についてそれを補完するような形で、地方公共団体に配置されております奉仕員の助成を引き続き行っているところでございます。
  83. 中西珠子

    ○中西珠子君 引き続き一層の御努力をお願いいたしまして、次の質問に移ります。  やはり高齢化が進んでいる被爆者の生活は、非常に困窮をきわめているということでございまして、生活保護を受けている人も多いと思うのでございますが、どのくらい生活保護を受けている人がいるか、数字をお持ちでいらっしゃいますか。
  84. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 原爆対策のサイドからそのような数値をちょっと手元に掌握しておりません。
  85. 中西珠子

    ○中西珠子君 生活保護の収入認定から医療特別手当などを外していただきたいということを同僚委員からもお願いいたしましたけれども、これについての検討をお進めいただきたいということは、先ほど申し上げました昭和五十七年八月三日の参議院のこの委員会においても附帯決議として出しておりますので、この点に関しては資料をちょうだいすること、並びに御検討をお進めいただくことをお約束いただけますか。
  86. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 収入認定、すなわち生活保護法に基づく収入認定の問題につきましては、別の局の所管に属するわけでございますので、便宜、お答えいたしますが、原爆関係の諸手当につきましては、それぞれの手当ごとに、生活援護あるいは精神的不安の緩和等、それぞれその趣旨、性格が異なっておるわけでございまして、生活保障的なものについては、これはもう生活保護法におきます運用の基本的な部分として、他の問題との均衡等もあって、収入認定から除外するということは非常に難しいというふうに解釈を聞いておるところでございます。  しかし、引き続き関係局との協議を行ってまいりたいと考えております。
  87. 中西珠子

    ○中西珠子君 せっかく手当をお出しになっても、収入認定から外されていないと何のために手当をお出しになったのか。また、生活保護も何のために受けるのか。また、少しは収入認定から外してもまだ、これを適格である場合は出すという意義が非常に少なくなってしまう。非常に私どもには理解に苦しむところなんでございますが、一層の御検討をお願いいたします。  それから、先ほども同僚委員が申しましたけれども、所得制限が医療特別手当と小頭症手当以外はついているんですね。この所得制限がついているということは、結局、社会保障であって所得の高い人には別に必要ないんだから、所得の低い人だけには出すという趣旨だということになるんじゃないか。そういたしますと、被爆対策というのは国家補償であるべきであるというふうに私ども考えるのでございますけれども、この所得制限を外すということは絶対できないことなんですか。外すための御努力というものはお願いしてあると思うんですけれども、どのようにお考えでいらっしやいますか。
  88. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) この特別措置法の基本的な考え方といたしましては、御指摘のように、国家補償の問題につきましては、広い意味の国家補償という観点に立っているわけでございまして、不法行為に伴う国家補償ということではないわけでございまして、戦争という結果生じた健康上の特別な犠牲、こういう広い意味の国家補償的見地から組み立てられているわけでございます。  そのような観点からいたしまして、社会保障的な性格を持っている制度にそういう広い意味の国家補償的な要素が加わったということでございますから、どうしても、非常に高い収入のある方にもすべて漏れなく諸手当をというところまでは、なかなか踏み込みがたいということでございます。
  89. 中西珠子

    ○中西珠子君 御承知のとおり、今時大戦は、昭和十二年の七月七日に始まりまして昭和二十年九月二日に終わったんですけれども、この今時大戦というものを始めて、また、終結したという権限と責任は日本国政府にあったわけでございますね。この政府のとった行為が国家行為であり、やはり国家の責任としてやらなくちゃいけないということは厚生省もお認めになっていることでございますけれども、ここから先厚生省がお考えになっているのが、やっぱり戦争行為は国家行為なんだから、国家としての補償、殊に原爆投下という物すごい経験をして被爆した人たちのために補償しなくちゃいけない、これは国家的な補償でなくちゃいけないというところと、それから厚生省の考えとがちょっと違っているような気がするのでございます。  全野党が共同提案いたしました被爆者援護法案に対する見解として、ことしの六月二十一日に衆議院の社労委で渡部厚生大臣もおっしゃっていることでございますが、野党案の方は放射線による健康障害という特別の事情にない原爆被爆者死没者の遺族に対する補償、そういったものをやっぱり考えておりますけれども、どうも厚生省のお考えの方はちょっと違いまして、殊に政府委員の方は、今もおっしゃいましたけれども、原爆被爆者対策というものが広い意味においての国家補償の見地に立って行われるべきである、ということは、国の戦争責任を認めるという観点からの意味ではなくて、原爆被爆者の人々が受けた原爆放射線による健康被害という特別の犠牲に対してやっているのだ、結果責任として被害に相応する相当の補償を認めるべきであると理解していると、こういうふうに答弁なすっているので、この御答弁趣旨はきょう伺っているところと同じだと思うんですけれども、これは余り、被爆者方々の心情というものをよく理解して、そしてその身になって考えてみるというところがどうも欠けているような気がするのでございます。  それで、やはり国の責任というものはあるわけでございますから、それをあいまいにするようなことはなさらないで、本当に原爆投下という一瞬の出来事で命を失った人、また青春を犠牲にした被爆者方々の長い労苦を思いまして、恩情をもって被爆者行政に当たっていただきたいというふうに考えますし、戦後既にもう三十九年を経ました今日でも、原爆被爆者の体の中で生きているということでございますので、その方々のために被爆者援護法というものが制定されて初めて本当に戦後が終わったということになるのではないか、被爆者援護法制定というものはやはり必要ではないか、そういう要求が野党ばかりでなく国民の中に大きく存在しているということを認識していただきたいし、また、唯一の被爆国としての日本が恒久平和と核廃絶を叫ぶためにも、その資格を全世界の人々から問われるようなことなく、きちっとした国家的な補償というものを考えるということ、今の原爆二法も結構なんですけれども、それを乗り越えて被爆者援護法制定というものに向けて積極的な取り組みというものをお見せいただきたいというふうに考えるわけでございます。  この点に関しまして厚生大臣の御見解を伺いたいと思いますが、いかがでございますか。
  90. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生指摘のとおり、原爆というものは、人類史上初めて我が日本民族が体験をいたしました。特に広島長崎地域の皆さん方が、国が起こした戦争という事実の中でそういう悲惨な災害をこうむったわけでございます。しかも、原爆の被害というのは、先生が御指摘のように、生存した人々にも放射線被害という、その人が生きている限り逃れることのできない、むごたらしい惨害を残したわけであります。したがって、これは同じ戦争における災害の中でも、この原爆による被害は、生存し得た人になお生命の恐怖、不安というものを残しておるという特殊の事情にかんがみまして、国家的補償の立場から二つの法律をつくってその援護対策に今日まで努めてまいり、厳しい予算の制約の中でも一千億に近い予算を投じてそのための対策に鋭意当たっておるところでございます。  また、先生から所得制限の問題がございましたが、これもほとんど、そのひどい災害の方にはそういう適用をしない範囲の拡大を行って、現実的には九六%と、ほぼ大部分方々にその施策を行っておるところでございます。そういうことから、私どもは、原爆のもたらした災害のむごさ、これに対しては国ができる限り手厚い援護の措置を考えなければならないし、やらなければならないし、また、世界人類史にこのようなむごたらしい惨害を二度と起こすようなことがあってはならないということで、私どもは先生の考えと全く同じ気持ちでその対策に当たっておるのでございます。  ただ一点、私どもは現行法の中でできる限りの努力をしたいということであり、先生はまた新しい法律をつくったらよいだろうということでございますが、私ども気持ちは同じでございますので、先生方の御意見に謙虚に耳を傾けて、現行法の中で今後もできる限りきめ細かい対策を講じてまいりたいと思います。
  91. 中西珠子

    ○中西珠子君 ただいま厚生大臣から御決意のほどを伺いましたが、非常に厳しい財政事情ではございますけれども、被爆者方々のために大いに一層の努力をいたしてくださいますように心からお願い申し上げまして、私の質問を終えます。
  92. 山中郁子

    ○山中郁子君 今までの質疑でも、厚生大臣現行法の範囲でも最大限の努力をするといろいろ言葉をたくさん並べておっしゃっているんですけれども、私はまず最初に、本法案が被爆者への諸手当の引き上げ率を二%に抑えたものであって、被爆者の健康の保持増進と生活の安定の見地から見ても著しく不十分であるということを指摘しなければなりません。  まず、もともと人勧の値切りですね、これに倣ったもので、この措置は本当にその範囲のものとしても非常に不当であると言わなければならないと思います。従来政府の言い分でも、今までもなくさん議論がありましたけれども、原爆被爆者対策には特別な配慮をすると言っていらっしゃいました。折に触れてそのことをいろいろおっしゃってきたわけですね。特別の措置、第三の道だとか、要するに特別配慮をするということを繰り返しおっしゃっていたわけです。何でこの人勧に横並びの切り捨ての中で、このこと自体、人勧の切り捨ても含めて大変不当でありますけれども、再三特別の措置をする、誠意を尽くしてやるとおっしゃっている厚生大臣、厚生行政が、この点についての特別な計らいをする努力をなされなかったのか、この点が私はどうしても、まず第一に本法案に対してはっきりさせていただきたいところでありますが、ここへ来ましてもやはりその非を認めて直ちに是正すべきであると思っておりますけれども、その点はいかがでございましょうか。
  93. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 原爆被爆者方々に対します対策は、広い意味における国家補償の見地に立って行われるべきであるということは、私どもも全くそういう立場で対応しているわけでございますが、その内容につきましては、国民的合意を得ることができる公正妥当なものでなければならないわけでございます。そのような観点に立ちまして、この制度によって支給される各種手当の額につきましても、老齢福祉年金等値の公的給付との均衡を配慮して定めているところでございます。  今回の御審議賜っております五十九年度の諸手当の額の引き上げにおきましても、老齢福祉年金等他の公的給付との均衡を考慮した結果、引き上げ率としては二%という形で並んでいるわけでございます。
  94. 山中郁子

    ○山中郁子君 それではお答えになっていないんです。あなた方は今まで、今も厚生大臣おっしゃっていたけれども、特別に配慮いたしますと言っているのに、局長は横並びでやったんですと、それじゃ全然お答えになっていないんです。  厚生大臣に伺いますが、今度の問題についても、人勧の切り捨てその他の諸手当の横並びでやったということでは、ちっとも特別な配慮はしていない、特別な努力はしていないということじゃないですかということを私は伺っているので、厚生大臣からお答えをいただきます。局長が何回同じことをおっしゃってもだめよ。
  95. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) お言葉を返して恐縮でございますが、原爆の惨禍というものは人類史上で初めて日本民族が遭遇した残念なことであり、また、こういうことは人類史上に二度とあってはならないということで、私は原爆対策についてはまさに党派を超えて、国民全体がみんなで真心を込めてこの対策を講じなければならないということで今日まで来、今後も行かなければならないと思います。  ですから、不当であるとか、切り捨てであるとか余りおっしゃっていただくと大変残念なのでございますが、私が再三原爆というものの特性、特別なことと言いますのは、先ほども申し上げましたように、国民の中で、同じ戦争によって随分多くの人がとうとい生命を失い、自分のかわいい息子が、またつえとも柱とも頼る父親が、あるいは妻を残し、あるいは母親を残して戦場に行ってとうとい命を失ったり、みんなが犠牲を受けたのでありますが、その中で原爆というのは、放射線被害ということで、生存し得た人たちでも一生涯逃れることのできない放射線被害という生命の不安、恐怖、そういうものをお持ちになっておるのでございますから、その対策というものは、これは全く他の戦争被害と違うという特殊性を私どもは考えて、そのための法律をつくって施策を講じておると、こういうことでございます。
  96. 山中郁子

    ○山中郁子君 いろんなことをおっしゃるけれども、今度のこの諸手当の引き上げはまさに被爆者への諸手当の引き上げなんですよね。だから、あなたがそういうふうに何かいろんなことをおっしゃって、本当にそれが心からのものであるならば、少なくとも特別な配慮、特別な努力をされてしかるべきではなかったかということを私は申し上げております。口でいろいろおっしゃるけれども、少なくともこの点に関しては特別な努力はなさらなかったし、なさるおつもりもないということがよくわかりました。  それで、私どもは被爆者方々への諸手当の引き上げを速やかに決めるべきだという基本的な態度に当然立っております。しかし、今申し上げましたように、これを二%に値切って抑えるというやり方についてこれをよしとするわけにはいかない。これは被爆者の方だって大きな怒りを持っていらっしゃる、そういう立場であるということを明らかにしておきたいと思います。  それで、本法案に関連いたしまして、私がきょう厚生大臣並びに厚生省にいろいろお伺いしたいことは、さらに今後の努力をどういうふうな立場でなさる姿勢がおありかということになりますが、その一つの土台といたしまして、このほど被爆者の団体であります日本原水爆被害者団体協議会、略称で日本被団協というふうに言われておりますけれども、ここの団体が、昨年十一月以来全国に散在する被爆者から被爆者要求調査というものを行って報告書が発表されております。これは回答者三千六百九十人で、被爆者手帳の保持者の約一%に当たるわけですけれども、被爆者組織の方々がみずからの手で行った画期的な調査としてマスコミなどでも大きく取り上げられておりますので、大臣以下厚生省方々も御承知のところだというふうに思います。  それで、時間が余りありませんから、かいつまんで御紹介いたしますと、この調査は、被爆後今日まで最も悲しかったこと、また今一番悩んでいること、困っていることは何か、また、原爆を許せないと思うのはなぜか、それから、国や地方自治体にやってほしいことはどういうことか、また、医療や手当申請でいやな思いをしたことはどういうことがあるかなど、六項目を本人が記入するような調査でございます。幾つかの調査の結果に基づく特徴点を挙げますと、被爆者であるための健康上の不安、老後の生活不安、子供や孫の健康と遺伝についての不安、こういうものを挙げた人が大変多くて総数の六二・一%になっています。それで、これは一般の国民の意識と比べる上で特に特別被爆者方々にそうした悩みやら苦しみや不安が多いということを見る上で朝日新聞が昨年の末に行いました国民意識調査というのがございます。ここでは老後の生活の不安が平均で五四%です。それで、この被団協の調査の同じ年代の六十歳台で見ますと、一般の意識調査では四〇%というふうな数字が出てまいりますが、少なくとも被爆者の方は、一般の意識調査の場合よりも二〇%も高く、深刻な病気と健康への不安を持っていらっしゃるということがこの調査で示されていると思いますので、これは一つの大きな特徴だと思います。  当然のことながら、被爆者の方たちがこうした老後や健康上の不安を、一般の方々の中でも今そういう不安というのは大変大きな社会問題になっているけれども、それに加えて、さらにこの調査で比較すれば二〇%以上も高くなっているということについては、厚生大臣としても容易に認識されることであるというふうに思いますが、御見解をお伺いいたします。
  97. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 本調査が発表されて、私どももその資料を入手いたしまして、拝見しているところでございます。  その報告書におきましてもいろいろな所見を述べておられますが、これは統計的な調査というよりは、むしろ率直な生の声を把握するということに主眼を置かれたものであるというふうに記載されておりますように、被爆者方々の切実な御意見をまとめたものと、私どもは理解しておるところでございます。  今後の被爆者対策の参考の一部にさせていただきたいと考えております。
  98. 山中郁子

    ○山中郁子君 あなたの御答弁は、またすれ違いなんですね。そういうふうに参考になさることはもう当然のことであります。私は、今申し上げたのは、例えば一般の国民の意識と比べてと、これは一つの例として朝日新聞社の昨年末の国民意識調査を例として出しました。同じ年代で、六十歳台では四〇%の人々がそのことを述べているのに対して、今度の被団協の調査では、一般が四〇%に対して被団協の調査では六二・一%と二〇%も高い。つまり、被爆者の方たちが健康や老後、そうしたことの不安に対して、一般国民より以上に大変な悩みや苦しみを持っていると、この事実を御認識なさいますか、御見解を伺うというふうに私は御質問申し上げたわけなので、限られた時間ですから、まじめに聞いてちゃんと質問に答えてください。
  99. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 今先生が御指摘のような理解をしたわけでございますが、ただ、統計調査ということでございませんので、あえて、数字として申し上げたわけじゃございません。あくまでも、被爆者方々は、年を召されるに従って、被爆という大変痛ましい体験、それに基づくいろいろな健康上の不安というものにさらに老齢ということが加わって、一般の人よりもそういった健康に対するいろいろな不安が強いという調査結果になっているということは、私どもも理解したわけでございます。
  100. 山中郁子

    ○山中郁子君 さらに、この調査での総括的な特徴といたしまして、原爆を受けて最も悲しかったこと、苦しかったこととして、二二・九%の人が、原爆落下時の地獄の中での死の光景や家族や近親者の死を挙げておられます。  例えば、千葉に住む八十歳になる被爆者の方は、一人娘を亡くしたことで、いまだに夢まくらに立つということを訴えておられまして、三十九年前の体験がきょうもなお被爆者を苦しめ続けている。高齢化に伴う孤独感にさいなまれているということが多くの方々から訴えられております。当然、不安に満ちた戦後を生きてきた被爆者の御自分自身の経験から、再び被爆者をつくるまいという意識が強くここに反映されております。こういうことは、もちろん今まで多く言われてきました。そして、多くの記録や書物にもなっております。私は、今これをあえて御紹介しましたのは、被団協自身による被爆者自身の生の声として、こういうふうにたくさんの方たちのお考えが集約されているというのが今回の調査でございます。私は、こういう直接的な生の被爆者の方たちの心境、要求、悩み、苦しみ、こうしたものを厚生大臣がどのように受けとめられるかということを、ぜひ一言御見解をお伺いしたいところでございます。
  101. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今の朝日新聞の紙面も読ませていただきましたが、これを読まなくても、原爆の被害、これはいまだかつてない、生存者にいわゆる放射線被害によるその人の生涯逃れることのできない生命に対する恐怖、健康に対する不安、こういうものを残しておる実態、このむごたらしい実態はこれは言葉に表現できない深刻なものでございます。私どもは、その深刻な事実というものの中で、私どものできる限りの施策を行うべく努力をしておるのでございます。  いよいよ今年の原爆の記念日も近づいてまいりましたが、私は国会でお許しをいただけるならば、ぜひこの原爆記念日には広島に参って、原爆病院等施設も訪問させていただいて、この今日まで人類が何人も経験しなかった、私どもも経験していない、あの広島長崎でのむごたらしい被害を、受けた人しかわからないそのむごたらしい被害、その人たちのありのままのお言葉、ありのままのその人たちの生活、そしてその人たちの願い、これも謙虚にお聞きし、真剣に耳を傾けて、そして六十年度の私の行い得る限りの力での施策に反映させたいと今考えておるのでございます。
  102. 山中郁子

    ○山中郁子君 具体的に、幾つかの点について、こうした被爆者の方たちの切実な要求にこたえていただきたいという点をただしたいと思います。  一つは、健康管理手当についてでありますけれども、高齢の被爆者の場合に、支給要件十一種の疾病のいずれかに引き続き該当している実態に即応できるようにするべきであろう。特に、老齢化に伴う更新手続の困難さから手続簡素化への切実な要求が出ています。この要望は当然だと思いますけれども、速やかに実施されるというお考えを伺いたい。
  103. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 健康管理手当につきましては、十一ほどの障害いずれかを伴う病気にかかっているということに着目しての支給でございます。したがいまして、その疾病の状態が継続しているかどうかを確認することはどうしてもこの手当の性格上必要でございます。したがって、一定の時期にそれぞれの障害の継続状況を確認するという現在の仕組みを基本的に省くことはできない。それに伴う手続等で簡素化できる面についてはいろいろとそれは検討をし、また、必要な改善も行うとしても、この手続そのものを省くということはできないということでございます。
  104. 山中郁子

    ○山中郁子君 要するに、被爆者方々の、とりわけ高齢化していく被爆者方々の願いにこたえていってほしい。お役所仕事でややこしいことを言っているんじゃなくて、手続の簡素化、そういう中身のある行政の立場から、心のこもった行政の立場から、切実に求められているややこしい今の手続をとにかく簡素化してほしいということが要望ですので、余り四角四面なことをおっしゃらないで、その中身を受け取って、この要望にこたえていただきたいと思います。  二つ目は、健康診断内容の改善と充実ということがやはり大変強く出されています。特に老齢化した被爆者の方たちの場合の実情と、不安が高いわけですけれども、こういう声にこたえて、現行定期二回、期間外二回という検診制度が実情に見合ったものとは言えないと私は思いますので、年一回のがんの特別検診、これをやはり追加すべきであるというふうに思います。多くの要望が出ています。それから一般健診にも心電図検査を加えて、また肝機能検査は全員に実施する、そういうふうな充実を早急に図っていただきたいと思いますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  105. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 被爆者の方に対する健康診断につきましては、従来から医学的な観点から専門家の意見を承りながら必要な検診項目の追加等を行ってきたところでございます。現在も調査研究の一環といたしまして検診の項目の問題も含めましていろいろ検討いただいているわけでございますが、現状におきましては、またがん検診そのものを取り込むということまでは私どもは考えておりません。ただ、現在行っております一般検査におきましても種々がんの重要な兆候というものは把握できる仕組みでございます。その後に引き続く精密検査の段階におきまして、結果的にがんについてのチェックはできる仕組みになっております。
  106. 山中郁子

    ○山中郁子君 行っておりませんとおっしゃるけれども、行っていないから行うようにしてくれと私は申し上げているんで、厚生大臣、やっぱりそういう前向きの積極的な充実ということについて、ぜひとも御努力のお約束をいただきたいわけですけれども、いかがでしょうか。
  107. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先ほども、何度も申し上げておるように、これは被爆者皆さん方は生存してなお放射線被害という健康に対する一生涯ついて離れない不安を持っておられるわけでありますから、その不安をできる限り取り除くような努力をするのは私どもの努めでございますから、そういうことが今専門家の立場で必要であるということであれば、そういうものをやるように努めてまいるのが当然でございます。
  108. 山中郁子

    ○山中郁子君 具体的にがんの特別検診、それから一般健診での心電図検査、肝機能検査、こうしたことを私は申し上げておりますので、ぜひとも今厚生大臣がおっしゃった基本的な姿勢の中の具体的な施策としてお受けとめくださいまして、早急に実現できるように努力をしていただきたいと思います。  それから次に、被爆者手帳一本でどこの病院でも医療を受けられるように、被爆者手帳の優先、それから指定医増、こういうことがやはり多くの方々から要望されておりますので、この点についての御努力の姿勢をお示しいただきたいと思います。
  109. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 被爆者の方が一般疾病の医療、あるいは認定疾病の医療を受けられる際には、被爆者の健康手帳に加えましてそれぞれ保険証ないしは認定証を御提示いただくこととなっておりますが、これはどうしても原爆医療の給付をきちっと制度にのせて運用していく上では不可欠な手続でございまして、これを省略することはできないものであると考えております。
  110. 山中郁子

    ○山中郁子君 指定医増の問題はいかがでしょうか。
  111. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 失礼いたしました。ちょっと御質問を聞き取り損なったものでございますから。  指定と聞こえたんですが、認定疾病医療を受けるに当たっての問題についてお答えいたしますと、先ほど答弁いたしました中で、認定疾病医療につきましては認定証をあわせて提示いただく、こういうことで、これは不可欠な部分であるということでございます。
  112. 山中郁子

    ○山中郁子君 私が申し上げたのは、指定医の増加を求めているたくさんの方たちの声があるということをあわせて申し上げましたのですが、もう時間がありませんので、その点については姿勢を私の方に別途お示しいただきたいと思います。  それから次に、先ほどからこれも議論になっていたところなんですが、老人保健法の施行に伴う問題ですね、一部負担の問題ですけれども、これがやはり広島長崎以外では本当に手続が大変複雑で何とかしてくれという声が大変大きくなっていますので、この点についてはやはり直ちに改善すべきではないかというふうに思いますけれども、先ほど来議論がありましたけれども、この点についてもあわせて一言積極的な御努力の姿勢を伺いたいところでございます。
  113. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 老人保健法との関連で手続がという御設問でございますが、広島長崎以外のところにおきます医療の現物給付を検討してという御設問に理解さしていただきました。  それにつきましては、できるだけそういう便宜が図れるように関係機関、団体ともよく相談をしまして、できるだけ早い機会に実現できるように努力をいたします。
  114. 山中郁子

    ○山中郁子君 速やかに処理できるようにお運びいただきたいと思います。  本当に幾つかに限られたことでございますけれども、今具体的な施策の充実について要望もいたしましたし、お約束いただいた部分もございます。以上の現行制度ですね、そのほかにも多くありますけれども、現行制度の充実は当然必要なことでありまして、これには大きな努力をしていただかなければなりませんけれども、先ほども中西委員からの御質疑の中でもありましたが、この原爆被害についての国家補償の精神に立った国の責任の基本、つまり医療などの制度の確立、必要な被爆者への年金の支給などを内容とする被爆者援護法の創設、これは私がきょう被団協の方たちの直接生の声をまとめたこれに基づいてもどうしても必要なことであるし、また、広く国民的なコンセンサスを得られるものであるし、むしろ国民の声として大きく沸き起こっている問題であります。今こそ私は政府は過去の行きがかりを捨ててこの検討に具体的に着手し、速やかに実現するように努力すべきであるというふうに思いますが、厚生大臣にその点についての御決意のほど、御努力の姿勢を示していただきたいと思います。  もうその御答弁をいただくと、私に与えられた時間が終わりますので、これで終わりにいたしますけれども、もし時間が許せばきょう硫黄島の遺骨収集のことについてちょっとお伺いしたいと思っていましたので、もしかしたら関係者の方においでいただいていると思いますが、きょう触れられませんので大変残念ですが、これは戦傷病者等の援護法の質疑機会にまた改めてその点についてはただしたいと思いますので、お出かけいただいて大変恐縮でございましたけれども、そのように御了解いただきたいと思います。  最後に厚生大臣の、被爆者援護法、国家補償の基本に立ったそうした取り組みの姿勢をお示しいただきたいと思います。
  115. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 繰り返して申し上げるようでおしかりを受けるかもしれませんが、原爆の被害というものは人類史上で初めて我が国が受けた被害であり、しかもその被害というものが今日までの戦争被害と全く異なり、幸いにして生存することのできた人にも生涯逃れることのできない放射線被害というむごたらしい惨禍を残しておる。したがって、これは全く他の戦災と違う条件でございますので、そこでこういう問題については国家補償の精神によって法律をつくって、その法律によって私どもは必要なる施策をできる限り努力を今日までもし、今後も努力してまいりたいと、こういうことでございます。
  116. 柄谷道一

    柄谷道一君 多くの委員から数多くの問題について触れられておりますので、私はなるべく重複しない範囲で御質問をいたしたいと思います。  まず冒頭に、今回厚生省の衛生部局の組織改組が行われました。私は、局の名称が変わっただけで余り新味を感じないわけでございますが、この組織再編のねらいは一体どこにあったわけでございますか。
  117. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 今回の再編成におきましては、臨調答申の趣旨も踏まえまして、高齢化の進展、疾病構造の変化等、最近の社会情勢の変動に即した保健医療政策を展開する体制を整えることを目的として行われたものでございます。すなわち、従来公衆衛生局と医務局にそれぞれ分かれて所管されておりました保健対策、医療対策をできる限り一貫したものとしてとらえるようなそういう再編成としたわけでございます。  同時に、保健医療の分野におきまして、政策部門と事業の実施部門とを分けまして、保健医療行政の基本的な政策立案機能を強化するといったようなことも一つのねらいとしたわけでございます。そのような考え方でございます。
  118. 柄谷道一

    柄谷道一君 非常に優等生的な御答弁があったわけでございますが、それでは端的にお伺いいたします。  現在議題になっております原爆被爆者対策は、従来公衆衛生局企画課で扱っていたものが、今回新たに保健医療局企画課によって行われる、こう理解してよろしゅうございますか。
  119. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 全くそのとおりでございます。
  120. 柄谷道一

    柄谷道一君 私が冒頭の質問でなぜこういうことを尋ねるかと申し上げますと、私は率直に言って、今回の組織変更で被爆者対策の担当部局に対してもっと深いメスが入れられるのではないかという期待を持っていたからでございます。    〔委員長退席、理事佐々木満君着席〕と申しますのは、なぜ被爆者問題を公衆衛生局、新しい機構では保健医療局で所管するのかということについては、私なりの理解によりますと、我が国被爆者対策が当初医療法から出発をした、そういう歴史的経過の中で、いわば対症療法的な施策としてとらえられてきたのではないか、それで果たしていいんだろうかという疑問を持つがゆえでございます。被爆者の不安、不満が、来年四十年を迎えようとしてぬぐい去れないものがあるこの時期に、そうした対症療法的な発想でこの問題をとらまえ、対応するということについて、厚生省の姿勢と被爆者方々の御要求がその原点で食い違っているんではなかろうかと、こう私は思うわけでございます。  大臣の御所感を率直にお伺いいたしたい。
  121. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 原爆の被害というものは、戦争によってこれはいろんな被害があったわけでございますが、その中で特に原爆の被害というのは、生存者の方に放射線被害、自分の体に放射能が残っておるのではないかという健康上の障害の不安というものを残してしまったと、この点については国家補償の精神で政府は施策を講じていかなければならないということから出発したために、私は、この原爆対策というものが極めて医療に関係するものであるということで今日まで至ったと考えております。
  122. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは大臣、やはり医療法的発想、いわゆる対症療法的発想というものを持ち続ける限り、大臣は国家補償の広い視点に立ってと、こう言われましても、機構自体がそのような機構になっていないということはお認めになりますか。
  123. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 現行の制度が対症療法であるか否かという点はちょっと私も、先生の対症療法という意味によると思いますが、確かに歴史的、時間的には医療救済的な措置からスタートを切ったという観点からおっしゃっているかと存ずるわけでございますが、その後、この制度の考え方、基本理念というものも逐次明確化され、また、その後特別措置法も生まれ、現在の二法の基本的な考え方は、広い意味の国家補償的見地で、考え方としては基本的に統一されておるわけでございます。
  124. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは大臣にお伺いしますが、七月三十日に日本原水爆被害者団体協議会、いわゆる被団協が被爆者調査を発表されております。当然大臣もこれを入手され、目を通されているものと考えますが、この調査書をごらんになった大臣の率直な御所見はいかがでございますか。
  125. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 戦後まさに四十年にならんとしておるのにかかわらず、あの三十九年前に起こった原爆の被害というものが、いかにむごたらしい問題をそれぞれの人間の生活の各分野にわたってもたらしておるものであるか、この人たちの深刻な生活の不安、健康の不安、人間として生きていく限り続くであろうその不安というものの深刻さというものを痛感いたしております。
  126. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、この被爆者の声というか、実態というものを常に正確に把握をして、そしてこれにこたえていくというのが行政の責任であり、それを施策に反映していく義務が行政府にはあるのではないかと、こう思います。  しかし、現在の被爆者対策は果たしてそういう方向で進められているのであろうかという、私は率直な疑問を抱かざるを得ません。例えば、原爆被害への国家補償を求める声は被爆者援護法の制定という形をとり、被爆者の五六・五%がこれを求めているわけでございます。政府は、現行法が、広い意味での国家補償の見地に立たなければならないといたしました原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見を一〇〇%取り入れて現在の施策が進められているということを、胸を張ってお答えになれますか。
  127. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 基本懇の意見書におきましては、被爆者対策は広い意味での国家補償の見地に立って行うべきであるという考え方を明確にするとともに、今後の被爆者対策におきましては、この基本理念に基づきつつ、近距離被爆者に対する手当の改善あるいは原爆放射線の研究体制の整備充実、相談事業の充実等を行うべきであるという御指摘をいただいたところでございます。  その後、こうした御意見を踏まえまして、具体的には医療特別手当及び増額保健手当を創設いただいたわけでございますし、また、原子爆弾小頭症手当の法制化も行われたところでございます。また、医療特別手当、原子爆弾小頭症手当の所得制限についてはこれを撤廃して設けたということもございますし、その後逐年各種手当についても増額を図ってきております。また、研究費の増額、被爆者状況調査促進等、この基本懇の考え方、また御提示賜ったことについてはすべて盛り込んで現在運用、展開を図っているところでございます。
  128. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、今日までそれぞれの改善が行われてきたということを知らないものではございませんし、その努力は評価します。また、今回の法案も、医療特別手当、特別手当、原子爆弾小頭症手当、健康管理手当及び保健手当の額を老齢福祉年金の改善に準じて引き上げる、そういう趣旨であることもよく知っております。  しかし私は、この法案が国会提案されるたびに、もう十年前から、国家補償の原則に立った被爆者援護法の制定を何回も何回も求め続けてまいりました。広島市内の病院のケースワーカーの人々等で組織しております「原爆被爆者相談員の会」と「原爆被爆者証言のつどい」ですか、七月二十七日に被爆者アンケート調査結果を発表しております。また、被団協が七月三十日に「被爆者要求調査」の結果を発表いたしております。これらを見る限り、人類最初の核兵器による悲惨な体験をした人たちは、高齢化し、四十年を経過してもなお体と心の傷はいえていない。むしろそれは老齢化という現象によって一層深刻化しておるということが浮き彫りにされていると思うわけでございます。そして、結論するところ、原爆被害への国家補償と国の責任の確立、国の責任による医療、療養、被爆者年金の支給、そして原爆死没者、遺族に対する補償の四本を柱とする援護法の制定ということがむしろ被爆者の悲願であることが浮き彫りされていると私は思うわけでございます。  もう十年来続いた、またそれ以前からも続きました援護法制定について、大臣はこれに踏み切る心の準備はございませんか。
  129. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生のおっしゃるお気持ち、これは全く私も同じなのでございますが、ただ一点、私どもは現行法、私はこれも一種の被爆者援護法と思っておりますけれども、原爆という特殊の被害というものについては国家補償的な精神で国はその施策を行わなければならないという考え方で、今日まで医療の面で、あるいは生活の面で、限られた予算という枠はございますけれども、その範囲の中でできる限りの努力を今日までも続け、さらに、これはまだまだ不十分な点が非常に多いのでございますから、今後もやっていかなければならない、やっていこうと私どもは考えておるのでございます。そういう点では同じだと思うんですけれども、その法律をどうしてもつくれと言われる、我々は現行法で何とかやりたいと、その一点の食い違いがございますが、現在、政府の立場としては、現行法で可能な限りの努力をしたいと、こういうことでございます。
  130. 柄谷道一

    柄谷道一君 それではもっと具体的にお聞きいたしましょう。  被爆者の団体は、以前から死没者、遺族の調査を要求し続けております。ところが、私の調べましたところによりますと、広島の場合は、広島県知事発表、広島県衛生課発表、広島県警察部発表、広島市事務報告、広島調査課被害調査まとめ、原水協の原水爆被害白書、国連ウタント事務総長報告、NGO被爆問題国際シンポジウム発表、全部これ民間団体の死没者推定の発表でございます。しかもその数は、一番少ない広島県知事発表が四万二千五百五十人、一番多い原水協の被害白書によりますと十六万五千九百人と、大きな差があるわけですね。  長崎の場合も、長崎県発表、長崎県外務課発表、増山元三郎氏推計、イギリス派遣団報告、長崎原爆資料保存委員会発表、日米合同調査団発表、国連ウタント事務総長報告、NGO被爆問題国際シンポジウム発表と、これも全部部外の民間団体でございまして、その数も、最も少ないと予想しておりますのが二万一千六百七十二名、一番多い推定は七万名。  このように、原爆によって亡くなられた方が一体何人いたのかということについて、日本政府の責任ある調査とその数字の発表というものは行われていないわけでございます。亡くなった方の数すら把握しないでどうして被爆者対策を進めていくことができるんですか。政府調査をしてその犠牲者の数を確認する、その第一歩から進めていくお気持ちはないんですか。
  131. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 先生の冒頭御指摘のございましたように、いろいろな調査がこれまでにもございまして、被爆後比較的年月の浅い時期に相当権威のある調査機関で行ったものですらそのような数字のばらつきがあるというのが実態であり、私どもも、そういうような数字についてはそれぞれ承知しているところでございます。  その後三十九年経過した今日におきまして、それよりもさらに精度の高い調査で何か一つの新しい答えが導き出されるということは、期待することが技術的にはもう不可能と言わざるを得ない現状でございます。    〔理事佐々木満君退席、委員長着席〕 非常に記憶に頼らざるを得ないような中身になっておりますし、また、遺族の範囲というようなものについての定め方も、技術的には非常に困難であるというようなこともございまして、国としてその死没者調査を改めて行うということについては、その見通しは極めて困難であるとお答えせざるを得ない現状でございます。
  132. 柄谷道一

    柄谷道一君 私が冒頭指摘いたしましたのは、医療法的発想で今日まで来ましたから、死没者というものは対象の外に外されておったから、だから調査する必要もなかったし、今日に至った。民間発表は物すごく違うんですよ。それは推定によって多少の誤差が出てくることはわかりますけれども、これだけの大きな違いがあって、政府としては一体何人広島長崎で亡くなられたのかということ自体も把握しないで、どうして被爆者の皆さんと納得のいく話し合いができるんだろうか。私はそのことを疑問に思わざるを得ません。  そこで、昭和六十年、来年は国勢調査が行われます。被爆四十周年にも当たるわけでございます。私は、厚生省自身も老齢化が進む被爆者実態を、死没者を含めて可能な限り調査実施し、そして、その基礎データに基づいてこれからの被爆者対策を進めていく。これなくして、幾ら口で国家補償の建前に立って云々と言われましても、これは国民は率直にそのことをわかりましたと理解できないと思うんです。  調査実施をお約束願いたいと思いますがいかがですか。
  133. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 五十九年度予算におきまして、六十年度に実態調査を行うべく準備検討段階に入っておるわけでございます。来年度の実態調査に向かいまして、現在の被爆者方々がどういう健康状態におられるのか、また、生活の実態がどのような状況にあるかということを、できるだけ今後の原爆被爆者対策の有効な基礎資料になるようなそういう資料を得るべく、その調査項目について検討をこれから行うこととしております。
  134. 柄谷道一

    柄谷道一君 本年度予算で、来年の調査予算措置が講ぜられているわけですね。大臣、私の意を酌みまして、これは四十年経過しているんですから、調査が大変なことはわかりますよ。しかし、この実態の把握というのが対策のスタートでしょう。だから私の要望をできるだけ酌み取って、この実態を、政府として責任を持って把握するということをお約束いただきたいと思うんです。
  135. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 来年は戦後四十年になるわけでございます。残念なことですが、人類史上初めて日本民族が遭遇したところの原爆の被害、こういうものが四十年たってもなお生々しい傷跡を我々人間の生活にもたらしておる、こういうものの実態をできるだけ把握して、これを世界の人たちに知ってもらうことは、こういう広島長崎のむごたらしい惨事を二度とこの人類歴史につくらないという大きな警告にもなりますし、また、今先生指摘のように、これからこの対策について政府が万全を期していくための大きな参考になるものでありますから、幅広い見地に立って、その総合的調査をするような準備を進めてまいりたいと思います。
  136. 柄谷道一

    柄谷道一君 健康管理手当の問題につきましては、既に多くの委員から質問がされておりますので重複を避けます。  ただ、お伺いしたいことは、現在の制度では所得制限がございます。更新手続が義務づけられております。今他の委員の御質問に対しまして、局長は、更新手続は基本的には削除できないが、その簡素化は極力図っていきたいという趣皆の御答弁をされました。しかし、被爆者は相当高齢化しているわけですね。私は、完治できる見込みがない患者というものは一回検診すればわかるわけですから、例えば老齢化した七十歳以上の方々については更新手続を省略をしてその支給を続ける。七十も八十もなる人に、一々更新手続に出てきなさいということ自体が問題じゃないんでしょうか。私は、全体の更新手続を廃止せよというのじゃなくて、特に高齢者について、医師の診断の結果、これは生涯完治できる疾病の状態ではない、こういうように認定をされた者に対しては、これを特別の扱いにするぐらいの恩情が政府にあってしかるべきではないか、こう思いますが、いかがでしょう。
  137. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 先生指摘の気持ちは私どもも同様に持ちながらいろいろな検討に取り組んでいるつもりでございますが、健康管理手当におきます疾病の継続状態の把握につきましては、やはり健康管理手当の性格上、どうしてもこれを省略することはできないというふうに私どもは考えておるわけでございます。また、七十歳を超えた方におきましても、いろいろな方がございまして、難しい病気でも見事治って健やかにまたその後を送られる方も十分期待できるわけでございますし、必ずしもその年齢によって画一的になかなか割り切れないというような現状もございます。
  138. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は医者じゃございませんけれども、原爆の後遺症というのは突然異変によって完治するというようなものじゃないと思うのですね。私の言っていると十歳というのは、七十歳以上の方全部更新手続を免除せいと言っているのじゃないのですよ。七十歳以上の方で、しかも責任ある医師の診断の結果、これは完治が難しい、こう認定される患者ぐらいは、毎回毎回出てきて更新手続をしなさいというまでのことを要求しなくてもいいのじゃないですかということを言っているのです。いかがです、検討願えませんか。
  139. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 認定疾病等につきましては、かなり放射線との因果関係におきまして結びつきが濃いという判断に立つわけでございますが、健康管理手当に挙げております障害は、否定し切れないというような観点から取り上げておる疾病でございます。やはりその疾病にかかっているかどうかということを確認するということが健康管理手当という仕組みそのものを確保していく上に非常に大切な部分でもございますので、先ほどからのこだわったような答弁で申しわけございませんが、先生のお気持ちは十分理解しておるつもりでございますので、今後の検討の上でそういった気持ちも踏まえながら取り組んでまいりたいと思います。
  140. 柄谷道一

    柄谷道一君 原則は原則ですよ。しかしそこに弾力的運用するというのが政治じゃないですか。今検討すると言われたのですから、私の今述べた趣旨に立って、お医者さんの御意見を十分尊重して、まあこの方はお気の毒ながら生涯この後遺症を負っていかねばならぬ疾病であると、健康管理手当を支給しなければならぬ状態であると医学的に認定された方に対してまで更新手続を義務づけることはないということを強く申し上げておきます。改善を期待しておきます。  もう一点、所得制限について、改善のお気持ちはございませんか。
  141. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 所得制限の問題につきましても、この制度の性格上放射線との関連が非常に濃厚の者については、すなわち放射線の障害として明らかに認定されているような疾病にかかっておられる方については、医療特別手当ということで所得制限は除いてあるわけでございます。同様に、原爆小頭症の方についても、放射線障害であるという結びつきが明確でございますので所得制限から除いてあるわけでございますが、健康管理手当の基礎になっております傷病につきましては、必ずしも放射線との関連が明確には論じ切れない、否定し切れないというような観点が強いわけでございまして、そのような疾病を対象として考えております手当につきましては、どうしても本制度の性格上所得制限というものは必要であろうと考えておるわけでございます。しかし、その傷病の実態、放射線との結びつきぐあい、そういったことについての今後のいろいろ研究成果の進展、そういったことも十分踏まえながら所得制限の問題については引き続き取り組んでまいりたいと思います。
  142. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、この所得制限の金額につきましても、行政というのは全部横にらみなんですね。しかし、私は、原爆被爆者という視点を考えると、単に他の諸手当の所得制限と横並びだけで検討していいものかどうか、これは大いに一考を要する問題だと思うんですよ。この点は検討すると言われるんですから十分検討してください。  最後に、これも他の委員指摘されました健康審査の問題でございます。局長は、今直ちにがん、肝機能検査等を加えることはできないが、検討をしてみましょう、こういう趣旨の御答弁だったんですね。大臣にお伺いしますが、私は、原爆後遺症の病気を発見するという検診から、もう相当老齢化されてきているわけですから、やはり予防、疾病の発生を防ぐという予防健診という発想の転換が必要ではなかろうかと思うんです。そのことが、あの悲惨な被害を受けられ、そして老齢化し、今病気でなくても絶えず疾病の不安を感じながら生き続けておられる被爆者への政治の思いやりではないだろうか。そういう意味で、私は、この定期検診の内容自体についてももう一考されるべきではなかろうかと、こう思いますが、大臣の御所見をお伺いしまして、時間が参りましたので質問を終わります。
  143. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生のお話のとおりでございます。原爆の被害の皆さん方は、生涯絶えず、いつどこで出てくるかという疾病の不安をお持ちになっておるのでありますから、その疾病を防止する、予防健診、これは極めて重要なことでございます。  ただ、私は医学的には全く素人でございますから、具体的に今どの点がどの点がと申し上げるのは差し控えさせていただきますが、先生のお考え全く同感でございますので、そういう精神に沿ってこれから当局の者を指導し、皆さん方が健康で安心していただくために必要な検診があれば、これは幅広くどんどんやっていくということに努めたいと思います。
  144. 柄谷道一

    柄谷道一君 終わります。
  145. 下村泰

    ○下村泰君 本法案に対して、多くの先生方が事細かに御質問をなさっていらっしゃいますので、私は、質問というよりも、委員という場を離れまして、日本人の一人、庶民の感覚でひとつお願いだけをして終わりたいと思うんです。  今、反核運動というのはもう世界的なんですよね。そして、先日も英国の上院議員ですか、九十幾つになる方がいらして、こういう反核運動、いわゆる原水禁反対運動に、多少の感情なんかまぜてはいけない、大同団結してやらなきゃいけないなどというふうに、批判をなさっていたようです。  私ごとでございますけれども、私も戦争中は一兵士として東南アジアの各地に作戦行動をしておりました。そして、ちょうどビルマのラングーンというところがありますが、そのミンガラドンというところに飛行場がありまして、私の部隊は加藤隼戦闘隊です、その一員としてラングーンにおりましたときに、今日本にはすごい爆弾ができているんだ、マッチ箱ぐらいの大きさで、その威力たるや新型爆弾ですごいんだ、もし日本でこれを使ったならば、恐らく日本は戦争に勝つんじゃないかというようなうわさの流れたことがありました。ついにその爆弾は使われなかったんですが、その当時、私の周りでは、法定伝染病にあらわれるペスト、コレラ、こんなものは言うに及ばず、風土病としてはマラリア、デング熱などという病気がございまして、殊にマラリアという病気にかかりますると、三日熱というのは三日目ごとに熱が出て、四日熱というのは四日目ごとに熱が出る、これなぞはまだ我慢ができるとしても、熱帯熱にかかりますると四十度以上の熱が一週間以上続くわけです。そうしますると、脳漿を侵されるんです。脳を侵されますから、当然普通の状態ではなくなるわけです。中には、当委員会で使うべき言葉がどうかわかりませんが、ふんどし一つで木銃をかつぎまして、そして命令の授受の動作をしたり、最後にはその木銃を構えまして六階の屋上から、突撃、と絶叫して六階下のコンクリートに自分の身をたたきつけて亡くなっていった戦友もいるんです。あるいは、敵の爆撃に遭います。私はまあそのとき健常な体でしたから当然逃げます。爆撃が終わって帰ってくると、私の横にいて全然動けなかった兵隊が、姿がないんですな。姿がないわけなんだ、直撃弾食ってるから、手も足も頭もばらばらに吹っ飛んでいるわけですよ。そういう姿も見ております。  しかし、我々の置かれたのは戦争という異常な状態の中に置かれているんです。これはやむを得ないことだと思います。しかし、広島長崎に落とされた原爆というのは、非戦闘員、何にも知らない非戦闘員、その頭上にあの爆弾が落ちたわけだ。このうわさを聞いたのは、八月に入りまして十日前後、今度はタイ国のウボンというところで私は終戦を迎えたわけですけれども、ここでこの報を聞いたわけだ。そうしますと、ビルマにいたときにマッチ箱ぐらいの大きさの新型爆弾ができたというのは、こっちの話じゃなくて向こうの話だった。しかも、多くの被爆者が出て、多くの犠牲者が出たわけだ。  大臣、ここのところを考えてほしいんですよ。この新型爆弾の、いわゆる原爆というものが長崎広島に投下されて初めて終戦が早くなったんだ。これは事実なんです。もし広島長崎にあの原爆が投下されなかったならば、まだ続いていたかもわかりません。恐れ多くも天皇の詔勅の中にもあるはずです。あの爆弾によって戦争が終結された。少しでも、長引く戦争が縮まった。とすれば、今日のこの平和と経済の繁栄、そして民主主義が何となくもう地についた今の日本のこの状態は、長崎広島被爆者の犠牲によってから取ったものだと言っても私は言い過ぎではないと思います。もちろんほかにも大勢の犠牲者はおります。先ほど私お話ししたように、私の戦友も幾多亡くなっております。また、東京でもあの三月十日の大空襲でも亡くなっている方がいます。それぞれ犠牲者です。けれども、その犠牲者の中で、端的に言って、広島長崎にこの原子爆弾が落ちなければあるいは戦争が長引いていたとするならば、長崎広島被爆者というのは、これは大変な存在だと私は思うんです。  そういう方たちのために行うべき施策が、この法だ、あの法だといって、これは私は、庶民の感情として絶対に受け入れられないものなんですね、庶民の感情というのは。何でこれだけの人たちが、何でこんなことがいつまでもできないんだ、何でこんなことをぐずぐずしているんだ、あるいは、被爆者の方たちにとってみれば、何でおれたちだけが犠牲になっていなきゃならないんだ、こういう観念は当たり前だと思うんです。それだけに、先ほど承れば、大臣も六日の日には現地へ行っていろいろと現地の方々のお話を聞きたい、生の声を聞きたい、そして現場を把握したいと、ごもっともだと思います。できるならば行ってください。そうすることによって、大臣の、恐らく渡部厚生大臣渡部恒三という一個の人間だったならば、それこそ大臣にあり余る資産があればあげましょうと、私は渡部厚生大臣ならやると思いますよ。だけれどもそうはいかない、これは国の予算なんですから。  ですから、私のお願いをしたいのは、こういう現場をよくごらんになるとともに、その方たちにどうすれば報いることができるかという基本的なお気持ちを伺わせていただいて、私はお願いということで終わります。
  146. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生の御意見、これは全く貴重な御意見であるし、私も心情としては全く同じでございます。  ただ、最後に先生からも御理解をいただきましたが、大臣というような立場になりますと、やはり法律の中で動かなければなりません。また、国民のとうとい税金、これを使うのでございますから、やはり一定の法律上の制約の中で、本当に我々も人間としてはときどきこのぐらいのことはというようなことを思うことが多いのでありますが、しかし、議会人であり政党人である私どもが内閣に入って大臣になっておるという意味は、そういう規則や法律で動いていかなければならない役所の中に、先生のようなお考えをできるだけ注入するというのが私の務めだと思いますので、先生の今までのお考えを来年度の原爆対策予算にできるだけ反映させるように、施策にできるだけ反映させるように頑張ってまいりたいと思います。
  147. 下村泰

    ○下村泰君 お願いします。  終わります。
  148. 石本茂

    委員長石本茂君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  150. 石本茂

    委員長石本茂君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  この際、佐々木君から発言を求められておりますので、これを許します。佐々木君。
  151. 佐々木満

    ○佐々木満君 私は、ただいま可決されました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党・国民会議、日本共産党、民社党・国民連合及び参の会各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  政府は、次の事項について、その実現に努めるべきである。  一、原爆被爆者については、広い意味における国家補償の見地に立って、その対策が講じられるべきであるとの原爆被爆者対策基本問題懇談会の意見が出されていること等にかんがみ、被害の実態に即応した援護対策を一層拡充するよう努めること。  二、被爆者の障害の実態に即して所得制限を撤廃するとともに、医療特別手当等については、他制度との関連も考慮し、生活保護の収入認定からはずすことについて検討すること。  三、原爆症の認定については、被爆者の実情に即応するよう、制度と運営の改善を行うとともに、健康管理手当の認定についても、制度の趣旨が生かされるよう地方自治体を指導すること。  四、被爆者について、死没者状況が十分把握されていないことにかんがみ、その調査を行うよう努めること。  五、原爆病院の整備改善を行い、病院財政の助成に十分配慮し、その運営に当たっては、被爆者が必要とする医療を十分受けられるよう万全の措置を講ずるとともに、被爆者に対する家庭奉仕員制度の充実及び相談業務の強化を図ること。  六、被爆者とその子及び孫に対する放射能の影響についての調査、研究及びその対策について十分配慮するとともに、原爆医療調査機関の一元一体化について検討し、その促進を図ること。  七、放射線影響研究所の研究成果を、被爆者の健康管理と治療に、より役立てるため、運営の一層の改善、同研究所の移転、原爆病院との連携強化などにつき検討すること。  右決議する。  以上でございます。
  152. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいま佐々木君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  佐々木君提出の附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  153. 石本茂

    委員長石本茂君) 全会一致と認めます。よって、佐々木君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、渡部厚生大臣から発言を求められておりますので、これを許します。渡部厚生大臣
  154. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、その御趣旨を十分尊重いたしまして、努力をいたす所存でございます。
  155. 石本茂

    委員長石本茂君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  156. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  157. 石本茂

    委員長石本茂君) 前回に引き続き、健康保険法等の一部を改正する法律案議題とし質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  158. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、健康保険法の質問に入る前に、一言委員長に強く抗議を申し上げます。  周知のとおり、この社会労働委員会は、本日は労働省の定例日でございます。健保は言うまでもなくこれは厚生省の案件です。先ほどの委員会でも、仲裁の疑旨説明が行われて、当然これが議決されるべきものであります。私は、理事会でも繰り返し主張してまいりましたけれども、こんなにたくさんの人々が反対をしている健康保険法の改悪を、会期末だからという理由で、慣習を無視して、定例日外のきょう行うということには断固反対してまいりました。まさにそれは悪法を成立させること、これを皆さんがお認めになる、そういうことにほかならないということであります。当然のことながら今までの国会の慣習として、そしてそれを守られてきた定例日の審議を十分慎重に行いながら、そしてそれで審議が尽くせないならば審議未了、廃案となるべきことであって、それが国民の声の国会に対する反映であります。その私の一貫した主張を無視して、そしてきょうこのような形で健康保険法の審議を強行するという委員長委員会運営について、それからまた、私どもが知らないところでどういう御相談があったのかわかりませんけれども、そうしたことも明らかにされないまま、理事会でも引き続き解明されないで、このような質疑を強行することについては、私は強い抗議を表明するものであります。  私は、この健康保険法の改悪について、最初の時点から最低十時間の質問は必要であるという意思を表明してまいりました。私が今まで質問できたのはわずか一時間二十分であります。したがいまして、私はさらに慎重な質疑が必要だということを要求し続けている立場から、質問を放棄する、あるいは質問時間を使わないという立場にはもちろん立っておりません。したがいまして、先ほど申し上げました強い抗議を行うと同時に、あくまでも慎重に、この健康保険法の改悪については審議をすべきであるという立場から、これから二巡目の健康保険法の改悪に対する質疑に入ります。  私は、前回の質疑で本人一割負担、二割負担がどれほど勤労者家計に打撃を与えるか、このことを入院や慢性的な病気の例を挙げて指摘をいたしました。国民は医療保険だけで政治を見ているわけではありません。労働白書によりましても、健保は二割負担になる、年金保険料も上がる、労働白書によりましてもさまざまな国民の声と、それから実態が浮き彫りにされていますけれども、健保が二割負担になる、年金保険料も上がる、社会保障関係は国庫負担を減らしながら逆に防衛費は伸ばす、またまた来年度の概算要求でも国民にとっては我慢のならないそうしたことが相談をされている、決定されてきている、こういうことはまさに了解できないところであると同時に、国民が本当にこうした政治に対して反発し、怒りを覚え、この健保の改悪をやめるべきだという大きなうねりになってきていることは当然のことではないかと思います。  私は、本法案の提出の本当の動機、これは前回にも多少触れましたけれども、結局は患者負担増をする、それから国庫負担の大幅な削減を図る、そういうこと以外にはない、そこのところが本当に中心的なねらいであるということはもう改めて申し上げるまでもないと思いますけれども、最初にこの点について臨調答申との関連でもって申し上げますが、臨調第一次答申、申し上げるまでもありませんが、答申内容一、二、三項ともにそのことを明らかに示しています。  つまり、一項、「医療保険の国庫負担については、定額国庫補助の廃止等によりその削減を図る。また、受益者負担の原則にかんがみ、高額医療費自己負担限度の引上げ等を行う。」、二項目、「医療保険に対する事務費国庫負担の保険料財源への切換えを図る。」、三項目、「老人保健制度において患者一部負担を導入した趣旨にかんがみ、地方公共団体は、単独事業としての老人医療無料化ないし軽減措置を廃止すべきである。」、こうしたことがまず臨調第一次答申で登場いたしました。国保への国庫負担の削減、都道府県の五%負担は反対でつぶれたけれども、そうしたら今度は本案のように、退職者医療制度の創設を理由として補助率の引き下げということで三千九百億円、これを国庫負担を削るという状況になってきています。つまり、あれがだめだったら今度はこれで削る、そういうふうなやり方で、全く無定見である、つまり、定見がないということと同時に、あるのは国庫負担を減らして患者負担を増額させるということ以外にはないと言わなければなりません。  臨調最終答申でも、さらに追い打ちをかけてこのことについて書いています。つまり、「他の医療保険についても、医療費適正化対策を推進するとともに、国の補助はあくまでも補完的役割にとどまるべきであるという観点から、保険財政を考慮しつつ、補助率の引下げ、定額化等を図る。」、厚生大臣が幾ら二十一世紀二十一世紀と言っていろいろな言葉を尽くして言われても、結局のところは、こうした患者負担増による国庫負担削減、この臨調路線に基づくものであると言う以外にはないじゃないですかということ、まず、今私が申しました臨調の答申のずっとこういう経過を見ましても、結局そこのところから発しているという以外にないではないか、この点について厚生大臣の御見解を伺います。
  159. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生からいろいろお話しありましたが、増税なき財政再建というのは、我々の内閣の基本方針になっております。したがって、政府全体がそのために努力しなければならないのは、幅広い国民的合意に立って私どもが行わなければならない責任でございます。  その中で、社会保険制度というものに対する御認識、これはいろいろの御意見があるかと思いますが、私どもはこれはでき得れば、これは保険者の掛金によって賄われるというのが社会保険方式だと考えております。しかし、広い意味で社会保障全体に対する国の責任というものがございますから、どうしてもこれで賄い得ない場合は、そのことによって国民の健康が守られないというような危険があれば、これは当然国が支出しなければならないということで、国庫から支出金を出しておるというふうに解釈しております。  いずれにしても先生、これはアメリカからお金が来るわけでも、イギリスから来るわけでもありませんから、やはり国で出さなければなりませんから、保険者の皆さん方の保険料が、それから国庫が出すか、あるいは患者の皆さん方が一部御負担するか、この三つによってやっぱり財政は賄われる以外にない、こういうことは御理解いただきたいと思います。  その中で、国が出せばいいんだというのが一番簡単なことでありますが、国が出すといっても、これは国民の皆さんの汗を流して働いた税金から出すのでございます。もちろん、社会保障は国の責任でありますから、必要な予算はどんな厳しい中でも出さなければならない。私も、こういう増税なき財政再建という厳しい条件の中で、社会保障の水準を下げるようなことのないように守っていかなければならないということで、財政の確保に全力を尽くして努力をしておりますが、しかし、いずれにしても、このために国民の健康を守る非常に大事なこの健康保険制度というものは、どんな財政の状態の中でも、また、どんな高齢化社会が来ても揺るぎないものとして我々は守っていかなければならない。そして、そのための財政は、保険者の皆さん方の掛金と、国民のとうとい税金と、そして受益者の皆さん方の御負担、この三つによって賄われる以外にそのほかお金が出てくるところはないということは、先生にも御理解を賜りたいと思います。  そういう中で今度私どもは、現在の保険制度の中でも既に現在三割も御負担をいただいておる国保の皆さん方もあり、また、被用者保険の皆さん方にしても皆さん方の大事な奥様方や家族の皆様方は二割の御負担をなさっておるのでありますから、この保険制度を今後も維持していくために、また、保険料負担というのも大変なものでございますから、この国民の皆さんの保険料の負担をこれ以上上げないために、大変恐縮でございますが、いわゆる給付率としては一番恵まれた条件にある被用者保険の皆さん方に一割の御負担をお願いしたいということをお願いしているわけでございます。
  160. 山中郁子

    ○山中郁子君 アメリカの要求に屈服して、これに追随して軍事大国への道を歩む日本が、中曽根内閣の政策のもとに、軍事費大突出でずっとやってきているんじゃないですか。アメリカから金が来ないなんて、そんなふざけたこと言わないでください。国民のお金はとにかく大事な血税ですよ。本当にもうみんながまじめに働いて、血のにじむような思いで納めている税金です。それを、アメリカの圧力でもって、アメリカの要求に屈服して莫大な軍事費を湯水のように使う、そういうことにみんなが今大きな怒りを持っているんです。ふざけたことを言わないでいただきたい。  例えば年金でも、徹底的な改悪を臨調の答申で出されていて、その線に沿って進められている。また、児童扶養手当の削減法案も国会に出しているじゃありませんか。あらゆる福祉関係について、とにかく金を国が持つのは減らす、そして国民の負担をふやしていく、そういう方針で進められているということは、厚生大臣がいろんなことをおっしゃっても、これはもう事実によって明らかです。年金に対する国庫負担金も、第一次答申に基づく行革一括法案の中で三年間凍結ということになりましたけれども、結局これは、金は年金の財政から貸せと、いつ返すかはわからない、そういうむちゃなことを実際やってきている。  一体、年金負担金、これは幾ら凍結したことになるのか。そして、政府は年金財政にこれをいつ返すのか。もうかねてからこれは何回も繰り返し問題になっておりますけれども、どういうことになっておりますか。
  161. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 大変恐縮ですが、健保の御審議をお願いするということで、まだ年金局長が来ておりませんので、年金局長をすぐ呼んでお答えするということでお許しいただけないでしょうか。
  162. 山中郁子

    ○山中郁子君 結局ね、初めに申し上げましたように、こういう乱暴な委員会運営をするから、あなた方だってどういう質問が出るかわからないからということで用意ができない。それでは結局質問ができないということになります。  委員長、年金局長が来るまで一たん中断させてください。
  163. 石本茂

    委員長石本茂君) 速記は中止します。    〔午後四時三十一分速記中止〕    〔午後四時四十三分速記開始〕
  164. 石本茂

    委員長石本茂君) 速記を始めて。
  165. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 大変申しわけございませんでした。  ただいまの山中先生の御質問、五十七年千八百三十億円、五十八年二千百七十億円、五十九年二千四百二十億、計六千四百二十億。なお、利子分九百四十億円で、約七千三百六十億円。こういうことになっております。
  166. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしますと莫大なお金ですけれども、この分は年金財政にいつ返すということになりましょうか。
  167. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 行革関連特例法による年金国庫負担金の減額分については、積立金運用収入の減額分を含め、将来にわたる年金財政の安定が損なわれることのないように、特例通用期間経過後において、国の財政状態を勘案しつつ、できる限り速やかに繰り入れに着手するということになってございます。
  168. 山中郁子

    ○山中郁子君 貸せというだけでもって、しかもその莫大なお金を年金財政で凍結しておいて、それでいつ返すともはっきり約束をしない。結局国民は、こういう政府の姿勢をよく見ているし、また、将来の社会保障や福祉は一体どうなるだろうという大きな不安を持っているわけです。  もっともらしい理屈をつけてああだこうだ、年金を切り込んだり、健保の改悪、さっき申し上げましたように児童扶養手当を改悪したりという提案をなすったり、そういうことをあちこちやっても、結局それは財政対策というそこから出発しているということだということを私繰り返し申し上げましたけれども、これは私だけが言っているわけじゃなくて、もちろん各野党の皆さんもおっしゃっているけれども、与党である自民党の中でだってそういうことは大きな問題になっているんですよ。  これは自由新報に報道されております自民党の社会部会での決議です。政府も御承知だと思いますけれども、社会保障の問題について、全額確保決議をされているんですね。   そもそも社会保障費は、人口の急速な高齢化、生活水準の向上などに伴い毎年必然的に巨額の当然増が生じるという、他の施策とは異なった特殊性をもっており、これに対しゼロないしマイナスのシーリングを実施することは不可能であり、あえてこれを強行すれば社会不安や政治不信を招来することは必至である。したがって、われわれは、必要不可欠な社会保障費をこれ以上抑制することは容認することはできない。 これは自民党の社会部会の決議なんです。  大臣、こういうように与党である自民党自身も認めざるを得ないような乱暴なことなんです。こういうことが財政対策という名義のもとに、国民福祉に対しての攻撃になっている、これはあっさりお認めになる以外にないんじゃないですか。
  169. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 厚生省の置かれている厳しい立場に、温かい御心配をちょうだいしてありがたいと思っております。  先生指摘のように、今回の五十九年度予算も九兆二千四百五十億のうち医療費に三兆九千億、年金関係その他の手当てで三兆五千億、七兆五千億という予算、これは事の性質上当然増経費といいますか、必然増経費といいますか、年々社会保障の水準を落とさないためには、これはふえざるを得ない、増加せざるを得ない費用でございます。  そういう中身を持っておる厚生省予算が、国全体のゼロシーリングあるいはマイナスシーリングという中で、国民皆さん方の期待する社会保障の水準を下げないでこれを行っていくということには大変工夫が要る厳しい困難な問題が当面するのでございます。  私は、厚生大臣として中曽根内閣国務大臣の一人でございますから、内閣国民的幅広い合意のもとで増税なき財政再建ということで、今後厳しい財政の中で国民の皆さんのとうとい税金を有効に使い、また、国民皆さん方にこれ以上大きな負担をさせないようにこれから国の政治を運営していこうという基本的な施策に協力してまいらなければならないのは当然であります。そういう厳しい条件の中で社会保障の水準を落とさないように予算を組んでいくということは、大変困難な問題があるのでございますが、幸いに六十年度予算についても、高齢化が進んでいく中で年金と医療というものは特別のものであるということで、三千四百二十億円の増額をシーリングの中でも認めていただいて、何とかこの中で工夫して、来年度社会保障の水準を下げないように予算を組まなければならないということで日夜苦労をしておるわけでございます。  そういう厳しい条件の中で、二十一世紀の国民皆さん方の負担を余り過大にならないように、しかも、年金や医療という国民の健康を守り、国民の老後を守っていく社会保障の制度というものを揺るぎないものにするために今回の健康保険法の改正案も提出しておりますので、どうぞ御審議のほど賜りたいと思います。
  170. 山中郁子

    ○山中郁子君 今厚生大臣がおっしゃったような立場に立つならば、だからこそこの改悪案をもちろん出すべきじゃないし、そういう立場に立つなら、今からでも遅くないから、これはもう引っ込めるべきです。そうしなければ、この一割負担、二割負担を初めとして、どれだけたくさんの負担が国民に強いられるか、もう既に明らかにしてきたところです。  それで私は、医療費の適正化を言うならば、本法案のように患者負担をふやす前にやることがあるということを強調しなければなりません。その最も有効な対策に健康の保持、病気の予防、早期発見、早期治療、そういう体制の確立、これが本委員会でもいろいろ言われてきていますけれども、それが確立されていなくて、医療費の抑制だ何だということで患者負担をふやす、国民の負担をふやすということでは本末転倒であるということですけれども、問題は、予防、早期発見の体制を、学校あるいは地域、職域、これを基礎にしてきちんと体系を打ち立てる、これが基本だというふうに考えますけれども、その点はいかがですか。
  171. 水田努

    政府委員(水田努君) 御指摘のとおりであろうかと思います。  私ども、昨年の二月から老人保健制度をスタートさせまして、その中心の一つとして、四十歳以上のヘルス事業というものを推進することにいたしているわけでございまして、その実施機関としては市町村にお願いをいたしているわけでございますが、私どもは、地域住民の健康の増進と保持に努めるほか、職域におきますところの事業主の健康診査その他とも十分連携をとりながら、両々相まって国民全体の健康の保持に寄与できるように、今後とも努力してまいる所存ております。
  172. 山中郁子

    ○山中郁子君 それが具体的にきちんと積極的な政策が打ち出されていないし、もちろん当然それが行われていないというところの問題があるわけですけれども、「今後の医療政策の基本的方向(厚生省試案) 二十一世紀をめざして」、また二十一世紀を目指してというのは大臣のお好きな言葉のようでありますけれども、これが出ていますね。この文書の性格はどういうものなのかちょっとお伺いしたいんですが、括弧して「厚生省試案」となっておりますので、厚生省の試案であって、関係審議会検討されたものでもないし、また、内閣として決定したものでもないという、そういう性格のものだと理解できますが、それで間違いありませんか。
  173. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 厚生省の責任においてつくったものでございます。
  174. 山中郁子

    ○山中郁子君 厚生省だけで二十一世紀を目指されても困るのでありまして、やっぱり国の基本的な政策というものをはっきりさせていただかなければならないのですが、国民的合意を得られる内容で練り上げられていかなければならないということですが、それにしても、この中で、「ライフサイクルに応じた地域・職域を通ずる健康増進、疾病予防等総合的な健康づくり対策の推進」となっておりますね、そこで、職域の健康対策労働者の保健、健康確保についてお伺いをしたいのですが、労働省お見えになっていますね。――労働省にお尋ねいたしますが、労働者の健康確保については、私は労働政策の重要な一つであると考えておりますし、当然そのような位置づけをされているはずであると思いますが、まず基本的なその点についてお伺いをいたします。
  175. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 労働者の健康の確保ということは、労働条件の中でも何より優先して確保されなけりゃならぬ事項だと思います。
  176. 山中郁子

    ○山中郁子君 私の知るところでは、労働省は昭和四十九年と五十七年に労働者の健康状況調査実施しておられますね。その点について、この結果によって労働者健康状態がどうなっているのかということを概括的にお示しいただきたい。
  177. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 労働省では、四十九年と五十七年に労働者の健康問題の調査実施しておりますが、健康状況につきましては、昭和四十九年に、労働者個人の健康状況とその職場の状況、事業所における長期欠勤者の状況を中心に調査を行っております。また、五十七年には、これに加えて事業所における中高年齢者を中心とする健康対策について調査をしたわけでございます。  昭和五十七年の労働者の健康状況調査の要点を申し上げますと、一つ労働者のうち健康である者は八割弱、不調を感じている者は二割強でございます。それから第二番目は、事業所内において過去一年間における疾病、負傷等による一カ月以上の長期休業者は千人中十六人で、中高年齢層ほどその比率は高いという結果でございます。それから、成人病健康診断または人間ドックを実施した事業所は、全事業所の三割でございまして、大規模事業所ほど実施割合が高い。それから四番目は、事業所で健康管理対策上重要となっている事柄のうち最も多いものは、大規模事業所では成人病対策であり、小規模事業所では定期健康診断の完全実施でございます。
  178. 山中郁子

    ○山中郁子君 今の御答弁の中にもありましたけれども、例えば、健康であるという人が八割を切る、それで病気だというのが二割以上ということです。特にその調査の中で、慢性的な持病のある者という項目では、四十九年は二六・一%、五十七年は二〇・四%という数字になっておりますし、薬を常用している者、四十九年は二四・三%、五十七年は二四・九%、こういう状況になっていることは御確認いただけると思います。  それで、これはもうもちろんのことですが、決して軽視できない状態であって、厚生省国民健康調査昭和五十七年の分ですが、これによりますと、八人に一人が病気だということになります。そういうあれが出ていますけれども、労働者の場合には、今の数字で見ましても四、五人に一人が病気だということで、特に慢性的な病気を持つ、そして薬を常用しながら働き続けている、こういう状態が示されているわけです。私は、今度の健康保険法の改悪案が、こういう健康状態にある労働者からまた一割、二割という医療費を、患者負担を取ることになるという点でも、これは大変大きな大問題だという立場から、絶対にこれは承認できないということが国民の、労働者の大きな声になっているということは当然だと思います。  今私は、四十九年と五十七年の比較の数字を申し上げましたけれども、慢性的な持病のある者、薬を常用している者、この二つの項目だけとりましても改善が見られないんですね、数字の若干の違いはありますけれども。大きく基本的に言って、八年間改善されていないという状況がある。この点についてはなぜでしょうか。労働省が労働者の健康を守ることは、何にも優先して第一義的に重要な施策であるとさっきおっしゃいましたけれども、八年間も基本的な改善の傾向は出ていないわけですね。この点はなぜですか。
  179. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 特に詳細な分析はしておりませんが、私の考えでは、やはり高齢化が進んでいるということが最大の要素がと考えております。
  180. 山中郁子

    ○山中郁子君 ちゃんとした分析がされていないということでは、あなたが考えるということだけで議論をするわけにいきません。労働省としては、そういうことをなぜなのか、最大の重要な施策であるとおっしゃっているのにもかかわらず、その推移について何の分析もされていないというのはこれは怠慢じゃないですか。どういうことですか。
  181. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) いろいろ検討はしております。ですが、やはりいろんな要素がございまして、それを数量的にこれがこれだというところはなかなか難しいという意味で申し上げたわけでございます。
  182. 山中郁子

    ○山中郁子君 それでは、そうしたこの労働者健康状態の憂うべき実態について、責任を持ってお調べになるという、そういう方向は、御努力は示されますか。
  183. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) もちろんやるつもりでございますし、今もそういう議論を審議会の専門委員会の場でやっているわけでございます。
  184. 山中郁子

    ○山中郁子君 もちろんやるつもりだって、そんなふうに力んでおっしゃるんだったら、何で今までやっていないのかと、そのことを私は伺っているんです。五十七年の調査でしょう。二年たっているじゃないですか。何でやらなかったんですか。もちろんやります、やることですなんて、もちろんやることなら、どうして今までやらなかったんですか。
  185. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 結論が出ていないということで、検討はやっているというわけでございます。
  186. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、その労働省の態度というのは、一番最初に局長が何よりもまして重要なものだと認識しております、取り組んでおりますとおっしゃっていることが、全く違うということを何よりも明らかにしていると思いますけれども、そこのところはちゃんと責任を持った、国会答弁なさるんだったら口先だけでごまかすんじゃなくて、実際のあなた方の行政の中でそれが立証されなきゃならないというこのことは当たり前の話で、そんなこと私何回も言いたくないけれども、まさにおっしゃった口の下からやっていないということをおっしゃるわけでしょう。そこのところを重ねて申し上げておきます。  それで、厚生省にお伺いいたしますが、前からも問題になっているんですけれども、最近OA化なんかが進んで、余計新しい状況のもとでの問題になってくることに職業病の問題があるわけですね。それで職業病だというふうに認定されないで労災保険が適用されないとなると、当然治療は健康保険ですることになるということですが、それはそうですね。
  187. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 職務上の疾病以外は健康保険でやる、こういうことになっております。
  188. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、これは公害もそうだと思うんです。つまり、大気汚染に関してぜんそくなど、気管が侵される、ところが認定地域内に居住していることが条件になる、また、認定患者でなければ一般の医療保険で治療する。交通事故にも同じような問題があると思います。これらは改めて論議をするといたしますけれども。  労働者の問題だけに限りましても、長時間労働、あるいは深夜労働、超過密労働などが労働者の健康をむしばんでいる、新しい労働態様が新たな観点から新しい病気をつくり出しているということがあるわけで、これは朝日新聞に「ニュース三面鏡」というところで「深刻なOA病の労災認定」ということで出ております。これだけに限りません、いろんなところにあります。私は一つの例としてこれを申し上げましたけれども、要するに、因果関係が不明確だというふうに労働省が言って、労災認定がされないという事態があります。これは前からあることで、これが全く新しく出てきたものじゃないということは私申し上げるまでもなく皆様方御承知だと思います。つまり、頸肩腕症候群の労災認定の問題なんかも、私も逓信委員会その他で幾つも手がけてまいりました。  私が今ここで問題にするのは、新しい労働態様のもとでこういう事例がさらにどんどん出てくるわけですね。そうすると、結局本来なら労災保険が適用されるべきであるものについても、労働省の認定の姿勢というものが大変後ろ向きの姿勢でありますから、なかなかそれが結論が出ないでいるという、そういうことが出てまいります。そうしますと、本来労災で見なきゃならない病気について、結果的に保険給付、あるいは医療費がそこの方に膨らんでくるという、そういう問題が出てくる。これは私はかなり根本的に、抜本的にメスを入れて検討しなきゃならない問題だというふうに思っていますけれども、この点についてはいかがお考えでしょうか。厚生省にお伺いいたします。
  189. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 先生指摘のとおりでございまして、疾病のうちで業務上の原因のものは労災、それから業務外のものは健康保険と、こういうことになっておりますので、業務上の認定というものが行われない限り健康保険の方の医療費になってくる、こういうのが現状でございます。
  190. 山中郁子

    ○山中郁子君 だから、私が今申し上げているのは、問題提起をしているんです。  厚生大臣ちょっとお答えいただきたいんですけれども、OA化が進む、そのほかいろんな問題が出てきます。例えばきょうも趣旨説明が行われました雇用機会均等法案、これについて今この場で私は議論するつもりはありませんけれども、この中の重要な問題として、労働基準法の改悪の問題があって、女性の労働者に対しても深夜労働だとか長時間労働、残業規制が緩和されたり撤廃されたりする、そういう問題が提起されているわけですね。私どもこれに断固反対しておりますけれども、そういうふうに労働態様が変化してくるという事態のもとで、労働省の労災認定をしないという消極的な姿勢ですね。少なくとも、うんと善意に百歩譲って言っても、労災認定を積極的にしようとしない。ああだ、こうだ、原因が不明確だとか、因果関係が立証されないとかそういうことでもって引きずって労災認定をしないとすれば、労災で治療するとすれば本来経営者の、資本家の負担になるものが、そういうものが筋違いに保険医療費のところに食い込んでくるわけでしょう。そういうことは労働態様の変化が今大きな問題になっている中で、やはり抜本的に検討しなければならない課題である、私はそのように認識すべきだと思いますけれども、厚生大臣いかがですか。
  191. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私は、今聞いておりまして、労災適用を労働省がしないようにしているとは思われません、またお吃りを受けるかもしれませんが。ただ、行政というのは、これは言うまでもございませんが、一つの基準とか、そういうものの枠から離れてやるわけにはいきませんから、やはり一定の要件というものをそろえたものということのために何かいろいろの、今先生の御指摘のような問題が起こったんでしょうが、そういう行政の一定の要件、やっぱり基準でこれやらなければなりませんが、そういう中では、私はやっぱり、労働者の健康と生活を守る労働省では、積極的に認定するようにしておると思っております。
  192. 山中郁子

    ○山中郁子君 実際の問題として、たくさんの認定されないケースが労働省の消極的な姿勢によってあるんです。そのことの議論は今おくとしまして、私が申し上げているのは、要するに労働態様の変化、これはお認めになるでしょう。いろんな点で、OA化はもちろんですけれども、そのほかいろんな点である。そうした場合に労災の分が、本来労災であるべきものが、因果関係が不明確だということで労災でない扱いをされたとすると、それは保険医療になってくるわけですね。そうしたらそういう分まで医療保険でしょい込まなきゃならないということについて、労災職業病がふえていく、これはもう傾向ははっきりしているんですね、いろんな点で出てます。これは政府も認めているところなんですけれども、そういう事態のもとでやはり抜本的にこの問題について検討されなければいけないときが来ているのではないか、遅過ぎるということさえ言えると思いますが、そこをお伺いしています。
  193. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これはできるだけそういう労働条件といいますか、労働条件ではございませんね、今先生言われたように労働態様ですな、これが変わってきている、時代が進んで。これはもう先生のおっしゃるとおりでございます。したがって、そういう新しい変化、そういう時代のニーズというものが出てきておるのでありますから、これはよその省のことを私どもが言うのはどうかと思いますが、労働省は、もちろん労働者の生活を、健康を守るために積極的にやっていただきたいと思いますし、しかしまた、厚生省国民すべての皆さん方の健康を守らなければなりませんから、その認定を受けられなかった者、これは厚生省でお引き受けするのも当然かと思いますが、しかし、それが保険者の負担になることは先生おっしゃるとおりなんで、両省ともに、今後どういうふうにしてできるだけ公平にそういう新しい労働態様あるいはニーズというものにこたえていくかということでは相談をしてまいりたいと思います。
  194. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、厚生大臣に申し上げているのは、先ほどから言っているように、そういうものがふえてくる、そしてそれが労災認定がされないということがふえてくるとすれば、それは保険医療費にかぶさってくる、こういう関係で厚生大臣にそこのところのメスを、新たな問題としてメスを入れるべきだということを申し上げています。労働省に申し上げていることはもちろんです。積極的に、ちゃんとした労働者の立場に立った労災認定を進めるべきだということであります。こういうことにメスを入れないままに、医療費が大変だ大変だと言いながらツケだけを患者に回すというやり方が納得できない。だから前提は予防医療ですね、国民の健康を保持するというその施策が大事だということです。  具体的に労働省にそういう観点でお伺いしますけれども、労働安全衛生法六十六条では、事業主は年一回労働者に定期健康診断をしなければならないというふうに義務づけていますけれども、これは労働省の資料では、五十七年は九・二%の疾病発見率になっておりますが、早期発見には大事な健診だというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  195. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 定期健康診断につきましては、これは職場において必ずやらなきゃならぬ事項だと思います。そういう意味で、定期健康診断を通じまして労働者健康状態をチェックして早期治療に努める、あるいは早期の予防に努めるということがぜひとも必要かと思います。
  196. 山中郁子

    ○山中郁子君 しかし、労働安全衛生法にそのようになっているにもかかわらず、労働省の調査の結果の資料によりますと、五十七年は千四十万人が受診して九・二%の疾病の発見率になっておりますね。ところが、定期健診の対象労働者数は約四千万人いるはずですね。これがどうして千四十万人の受診結果しかわからないのでしょうか。
  197. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 私どもの、定期健診の実施結果の報告を求めているのは、五十人以上の規模の事業所になっておるわけでございます。そういう意味で、四千万人ということでなくて、一千万人という数字になるわけでございます。
  198. 山中郁子

    ○山中郁子君 一つは、ほかの労働省のいろんな統計資料は、規模三十人以上の事業所ということで全部出ていますね。それがこれは五十人以上だとおっしゃる。しかし、五十人以上だとしても、労働者数は概数で千七百五十万人のはずですね、そのうち報告率は六十%ぐらいです。私はやはり、労働安全衛生法六十六条、これは強行法規ですから――私は五人以上の事業所に限定しているということ自体も問題があると思いますけれども、仮にそうだとしても、五十人以上だとしても、報告率は六〇%になっている。これはたまたま五十七年がそうなっているだけじゃなくて、労働省の統計をずっと見てみますと、十年来結局そういう状態が続いているんですよね。  さっきの問題を繰り返すようになりますけれども、労働省は、第一義的に大事なことですと言いながら、例えば、なぜこれを十年来そういう状況で放置してきているのか、改善のためのどういう手を打ってきたのか、その辺はいかがですか。
  199. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 確かに先生おっしゃるように、健康診断の実施率というのが、監督の結果を見ますと一割が未実施ということで、これは罰則つきの強行規定でございますので、これらについては、是正をさせるとか、あるいは悪質なものについてはこれを処罰するという格好で監督指導をやっておるわけでございます。  ところが、報告義務、これは百条でございますが、安全衛生法百条に基づく報告義務につきましては、先生指摘のように六割ということで、まことに遺憾な数字でございます。この点につきましては、私どもも監督指導あるいは集団指導を通じまして年々努力はしておるわけでございますが、なかなかそのパーセンテージが上がってこないということでございますので、私ども、今までもいろんな手を使って努力はしておりますが、今後ともさらに報告率の向上という点については力を尽くしていきたいと、こう思っておるわけでございます。
  200. 山中郁子

    ○山中郁子君 いろいろ努力してきているとおっしゃるけれども、それでも十年来全然改善されていないというのは、どういう努力をされているんですか。それで、今後どういうふうな方法をもってこの問題について改善をしていくというふうにお考えでしょうか。
  201. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 各種の会議あるいは集団指導、あるいはいろんな事業主の団体の会議等を通じまして、各段の努力をしていきたいと、こう思っております。
  202. 山中郁子

    ○山中郁子君 結局、具体的な努力は全く何をしたのかわからないという御答弁なんで、最初の問題と同じですけれども、どこまで労働省がそこのところを重視されているのかということは大変疑わしいというふうに思います。    〔委員長退席、理事遠藤政夫君着席〕  それで、この検診項目なんですけれども、高齢化社会を迎えると言われている時代に対応していないのではないかというふうに思いますが、この点、成人病予防、早期発見などを含めた検診項目の充実ということについての御検討はないですか。
  203. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 労働安全衛生法に定めております健康診断は、職場における労働者の安全と健康を確保するということを目的といたしまして、事業者の費用負担のもとで実施を罰則づきで義務づけているという性格のものでございます。  一方成人病は、主として個人の体質なりあるいは生活習慣、加齢等に起因するものでございまして、就業に直接関連するものとは言いがたいという点もございますので成人病の健診につきましては従来から厚生省サイドで広く国民一般を対象にして行われてきたものでございます。したがいまして、現行労働安全衛生法による定期健康診断の項目に先生のおっしゃるような成人病健診の項目を取り込んでこれを事業主に義務づけるというのは、現段階では非常に難しい問題があるというように考えておるわけでございます。
  204. 山中郁子

    ○山中郁子君 労働安全衛生法六十六条を根拠とする労働者定期健康診断の検査項目というのは身長、体重、視力、エックス線、血圧、尿検査、これだけですよね、基本的に。これは、私たちが子供のころ身体検査といって、体重をはかったり身長をはかったりした、そういう域を出ていないんですよ。ずっとそれが補充されてないんです。  あなた、さっき私の質問に対して、こういう労働者健康状態がちっとも改善されないで来ているということは、一体どういうことが原因だと思うかと申し上げたら、よく調べていないけれども、高齢化しているのが原因ではないかと、こうおっしゃいましたね。それだったら、高齢化してきているという問題に対応して、成人病も含めた検査項目を積極的にこの労働安全衛生法の中で追加していくということをしてこそ  労働者の健康を守ることが第一です、高齢化しているところに病気がなかなか改善されていないという現状がありますとおっしゃるならば、そうすべきじゃないですか。少なくとも積極的に検討する姿勢をお示しになるべきではないですか。
  205. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 私は、職場で成人病の検査をやるなと、こう言っているわけじゃございませんで、もちろん私どもは行政指導として、職場において例えば四十歳以上の者には一般健康診断をする際にあわせて成人病のチェックもやるようにということは指導としてはやっております。しかし、それは法律で、完全にすべて事業主の負担でやれというところまで義務づけるのは問題があると、こういうことを今申し上げているわけでございます。
  206. 山中郁子

    ○山中郁子君 厚生省政府管掌健康保険成人病予防検査ということで、約八十億円のお金を出していらっしゃる計画の中には、相当さまざまな検査項目が入っているわけですね。これは結局厚生省予算からそれだけのお金を出すわけでしょう。それだったら、もともとが企業主がやるべきものとして労働安全衛生法に決められているところに積極的にそうしたものを追加していくことによってそういう予防をしていく、そうすれば、厚生省がこういう二重の形でお金を使わなくたって済むわけでしょう。そういうことを私は申し上げているので、労働省がそのことについて何ら積極的に考えようとしないということは本当に怠慢だし、あなたがおっしゃっている労働者の健康第一ですというのが全くうそっぱちだということにしかならないと思うんです。  まず厚生大臣に、この点についてお伺いいたします。
  207. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 厚生省予算について御配慮をちょうだいして、まことにありがたいと思います。これは私は先生のお考えに同じような思いもいたします。労働者の生活を守る、もとよりでありますが、やっぱりそれぞれの企業にとって、そこで働く皆さん方が健康で頑張ってくれるということは、その企業そのものの発展にもなることでありますから、これはお話を聞いておって、そういうことがあればありがたいなと、こういう気持ちは持ちました。  しかし、これも、大臣、役人的になるなど、こうおしかりを受けるかもしれませんが、私は大臣になって一年生で、最初に先輩に教えられたのは、大臣答弁のときによその省のことについてみだりに言うなということを教えられておりますので、私の個人の気持ちだけを申し上げさせていただきます。
  208. 山中郁子

    ○山中郁子君 それが縦割り行政の弊害の典型的な御答弁になるわけですけれども、個人のお考えとしてもお示しになったのは、厚生大臣の見解は、私が申し上げたことに同感であるという御答弁だと承りました。  もういろいろ言いませんけれども、少なくとも労働省は、関係審議会相談するなど、この点について積極的に検討の姿勢をお示しになるべきだと思いますが、その点はいかがですか。
  209. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) もちろん私どもも全く放置しているわけではございませんで、いろいろ難しい問題があると申し上げているのは今検討をしているからでございまして、そういう新たな問題を私どもとしてはまじめに検討して取り組んでいるつもりでございます。
  210. 山中郁子

    ○山中郁子君 やっぱり労働省が本当に労働者の立場に立った行政の府であるということを示さなければ、あなたのさっきからの御答弁も含めて、それでは結局企業家の、企業者の立場に立ったということにしかならないじゃないかということを私は申し上げているわけです。  そういう点では、今、検討するということも若干含みのある発言をなさいましたので、その点についてはぜひ、実際にこういうように労働態様が変化していて、そして片方ではそういうことに対する積極的な対応が何らないままに、健康保険の労働者負担を負わせようという悪法が出されているということの関係で、ぜひともその点についてはきちんとした責任ある施策をとるべきである。これはもう労働省も厚生省ももちろんのことでありまして、よその省のことに口出すななんてつまらないことを言っていないで、やっぱり内閣として、政府として、本当に国民の健康、労働者の健康を考えるならば、積極的に対応していただかなければならないと思います。  それで、もう時間がなくなってきてしまいましたので、きょうは、前回の委員会で私は、藤波官房長官の政府広報誌「フォト」での発言について問題にいたしました。きょうもまた藤波官房長官に御出席願えないでいるわけですから、あのときに厚生大臣は、自分の立場から藤波官房長官にその真意をただすということをお約束くださいましたので、ひとつその結果についての御答弁をお示しいただきたい。
  211. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 山中先生からお話しがありました後、官房長官にお目にかかったときに、早速山中先生から委員会でこのような御質問をちょうだいしたということを申し上げました。官房長官は、たしか理事会か何かで――委員会でも先生からそのようなおしかりをちょうだいしたんですか、何かそんなおしかりをちょうだいしたようで、これは大変恐縮をいたしておりました。
  212. 山中郁子

    ○山中郁子君 理事会でも問題にいたしました。それで、ただ恐縮していられたんじゃ困るのであって、「フォト」というのは政府の発行している広報誌です。そこで藤波官房長官が何を言ったかというと、まず健康保険法の今度の改悪について、本人負担を導入したのは、国民がとにかく医者に行き過ぎる、乱診乱療が横行している、それで病院の診療室の一部は、それはもう娯楽室化しているという事態もあるということを言って、だから医療費に自覚を持ってもらうために本人負担をしてもらうんだと、こういうことをあからさまにおっしゃっていて、そしてそれが活字になっているんですよね。  だから、ただ恐縮しておられたんじゃ困るのであって、私は前回の質問のときにも厚生大臣にただしましたけれども、この健康保険法、本法案は決してそういうのが提案理由ではないというふうに大臣は言明なさいました。それでは藤波官房長官がそこで、政府の広報誌で言っていることとまるっきり違うわけで、それは審議の前提が違うことであるからそこのところを明確にしていただきたいということを申し上げて、私は、藤波官房長官がそれを取り消して陳謝をされて、そして国民にもおわびをすると、それは自分がしゃべった「フォト」誌上でそれを取り消さなきゃならないはずだということを、例えばそういう方法があるだろうということをこの前申し上げましたけれども、そうした点についても大臣から藤波官房長官にはお話しをいただけたのだと思いますが、その辺はどのようなことになっておりますでしょうか。
  213. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 何かこれも、たしか理事会のときに先生からおしかりを受けて申し上げたと思うんですけれども、一般にそういう声がある、そういう話もあるということを申し上げたのが、そういう表現になってしまったという意味で、これは大変恐縮しておったようでございます。山中先生の大変きついおしかりで恐縮しておりました。これ、どういう因縁が、山中先生も私も藤波官房長官もかつて早稲田大学で一緒に勉強いたしまして、今こうしておしかりを受けておりますが、これはこの辺でお許しをちょうだいしたいと思います。
  214. 山中郁子

    ○山中郁子君 早稲田大学は関係ありません。国民の立場に立って私は申し上げています。まあきょうまた藤波官房長官お見えいただいていないので、これはまた引き続き官房長官の出席を求めて申し上げます。  きょう私は、こうした健康保険法の大改悪を出さなければならないんだといういろんなことをおっしゃるけれども、それより前にすることがあるでしょうということで、労働者の健康の問題について一つは重点的に申し上げました。次には、もう一つは大きな問題として薬価の問題があります。このこともやはり問題として、前提として考えなければならない。その前にやるべきことですね。そういうことがいい加減になったまま、どんな理屈つけたってこういう本人一割負担、二割負担を初めとする大改悪を持ち込むなんていうことはとんでもない話だということを私は重ねて申し上げ、こうした国民の声をやはり謙虚に、率直に聞いて、今からでも遅くはないから、政府として、国民の健康を守る立場からこの本法案を撤回するという態度をとるべきであるということもまた申し上げておきたいと思います。  薬価の問題については、次の質問の機会に譲ります。
  215. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、前回政府が定率負担を導入しようとする場合の高額療養費との深いかかわりの問題について御質問をいたしました。本日は、まず保険外負担の問題について質問いたします。  私は、医療費負担を考える場合、差額ベッド、付添介護料等の保険外負担の存在を無視することはできないと思います。差額ベッドにつきましては、昭和四十九年に厚生省が三人室以上の差額徴収は廃止する、それ以外の差額病床については各保険医療機関の全病床の二〇%以下とする、国立病院についてはその割合を一〇%以下とするという指導方針を決定されました。自来十年間が経過いたしております。ところが、厚生省はこの線に沿って行政指導をされてまいりましたけれど、全病床に対する差額徴収病床割合は四十九年の一九・二%から五十六年七月一日現在一二・八%と減少はしております。これは努力の結果だと思うんでございますが、三人室以上の差額病床は廃止を目標にしておりましたけれども、なお二・三%残っております。また、病床を規模別にこれを眺めてみますと、一人室の六七%、二人室の三七・七%が依然として差額を徴収しており、目標の二〇%以下という線は達成されておりません。しかも、これを金額階層別に眺めてみますと、千円から二千円までが二六・四%、四万一千七百三床と最もこれが多くて、続いて五百一円から千円までが一八・五%、二千一円から三千円までが一七・一%とこれに次いでおりまして、私は四十九年と比較して五百円以下の差額ベッドが減少し、傾向としては高い階層にシフトする傾向を示していることが厚生省の統計でも明らかでございます。  私は、こうした厚生省発表の資料を分析する限り、厚生省の指導はまだ十分効果を上げていない、今後さらに徹底した行政指導を強化する必要のあることを示唆しているものと思いますが、今後の具体的対処方針についてまずお伺いをいたします。
  216. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 御指摘のように、現在私どもは差額ベッドの解消について努力をいたしております。先生今御指摘の数字は、五十六年の数字を挙げられましたが、五十八年におきましてはかなりまた変わった姿になっております。私ども、三人室以上の差額ベッド、これについて全力を注いできたわけでございまして、今や病床数の一・一%だけが三人室以上についてやっておるという状態まで改善をされてまいっております。したがって、私どもの努力もひとつお認め願いたいと、こういうように思うわけでございます。  なお五十八年七月一日現在で一万一千九百五十ベッドが三人室以上で差額徴収をしておると、こういう病床数でございますが、そのうちの大半以上が学校法人、つまり私立大学附属病院でございます。私立大学附属病院につきましては、私ども私立大学協会とも話をいたしまして計画的にこれを減らしていくと、こういうことで徐々に解消を図ってきたところでございまして、既に私立医科大学の附属病院でも差額ベッドをゼロにした大学もございます。    〔理事遠藤政夫君退席、委員長着席〕 五十六年度では一万一千二百が私立大学の差額病床数でございましたが、五十八年度では六千七百三十七というように減ってはきておるわけでございます。  そこで、私ども差額病床一般につきましては、例えば国立あるいは公立あるいはその他の公的医療機関についてはゼロになっております。したがって今後、やはり学校法人それから医療法人が多いわけでございますので、この辺を重点に、私立大学病院につきましては文部省あるいは私立大学当局とも話をしながら解消計画を立て、解消の道を歩んでまいりたいと思います。  ただ、差額ベッドの問題につきましては、柄谷先生も御承知のように、やはり病院の経営の問題が深く絡んでおります。したがって、特に都市部におきましては、やはり建築の代金が高いとか、地価が高いとか、そういうようなことで、特に都市部というものがなかなか解消しがたいことになっておりますので、都市部それから私立大学附属病院等をひとつ重点的に解消の重点対象として今後やっていくつもりでございます。私ども、差額病床の解消がないというのを保険医療機関の指定の拒否の事由にしてひとつ頑張ってもみたわけでありますが、なかなか難しい問題もございます。なお、今申しましたように、私立大学病院等につきましては話し合いを続けて、解消の努力を続けてまいりたいと考えております。
  217. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣、私は厚生省が何もしなかったということを言っているんじゃないんです。努力はされたでしょう。しかし、今度は政府は、我々賛否は別にして、定率負担を導入しようとされておるわけですね。患者の負担はぐっとふえるわけですよね。特に入院の場合、私は前回申し上げましたように、入院一カ月間で従来は一万五千八百円の負担であったものが五万一千円まで負担はふえる、二カ月目以降はゼロだったものが五万一千円の限界までふえていく、こういうときに、差額ベッドのあり方というのは、従来のようなピッチの指導でいいんだろうかという疑問が沸いてくるのは私は当然だと思うんです。  そこで、この問題については難しい局面があることは私もよく知っております。例えば、一つは具体的に改善計画というものを提出せしめる、そしてそれを厚生省がチェックして具体的に指導していく。ところが、中医協の答申を受けまして私立医科大学協会を通じて、五十六年でございましたか、改善計画を提出さしたところ、解消予定率は三二・七%にしか達してないんです。この改善計画というものに対するもっと強力な行政指導も必要である。今吉村局長が言われたように、病院の経営実態調査もやっておられるわけです。経営ということも大切ですよ、しかし、負担という一面も重視しなければならぬ。どうしても差額ベッドをゼロにすることによって経営が成り立たないとするならば、また別の施策をもって経営が成り立つような方策を講じていかねばならぬ。私は本末を転倒したらいかぬと思うんですね。  こういう意味大臣、これは根本的にこの問題を一遍掘り下げてみる、それだけの熱意をここで示していただきたいと思うんですが、いかがでございましょう。
  218. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生指摘の差額ベッドの問題、これは私も、随分あちらこちらからお聞かせをいただいて、非常に重要な問題だと認識しております。  今、政府委員からもお話しいたしましたように、今日までかなり改善されてきておる、これはかなりその努力を進めて改善されてきておるということも御認識をいただいておると思いますが、しかし、なお徹底される状態までにはいっておりませんので、先生の御趣旨を体して、徹底させていくような方途を講ずるように研究してまいりたいと思います。
  219. 柄谷道一

    柄谷道一君 局長にお伺いしたいんですけれども、これ、同じ五十六年を対比しまして、厚生省の発表は私が今申し上げたとおりなんですが、健保連の大阪支部が五十六年六月に保険外負担に関するアンケート調査をいたしております。それを見ますと、一人室の八四・六%、二人室の五六%、三人室以上の四・二%、全体では一八・五%が差額徴収をしておる。しかも、一人室では一日について三千円から一万円までが六五%、二人室では千五百円から四千円までが五八%、三人室以上では五百円から二千円までが七二%を占めておる。これは私は健保連という機関がやったんですから、虚偽の結果が出ているとは思わないんですね。これは、厚生省が同時点に発表されました差額徴収の結果とは際立った差があるわけですよ。もちろんこれは都市部という特異性があることは承知しておりますが、どういうふうにこれは受けとめればいいんでしょう。
  220. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、予算委員会の席におきましても先生からそういうお話がございましたので、よく調べてみました。  厚生省調査は、全病床数、病院のベッド総数に対して差額を取る病床は何%を占めるか、こういう調査でございます。健保連大阪支部の調査は、入院患者で、健保組合関係の入院患者で、差額ベッドに入ってそして差額を徴収をされた、こういう数のパーセンテージでございます。したがって、非常に豊かな方、あるいは、病院へ入って快適度を追求したい、しかもそれだけの資力がある人という基準からいいますと、健保組合あたりはかなり裕福な方々が多い。そういたしますとやはり差額ベッドを希望される、そういう入院患者に対する差額ベッド利用率が健保連の大阪支部の調査のようでございます。したがって、パーセンテージがおのずから変わってくるというように私どもは思います。また、大阪府に直接聞き合わしてみましたところ、例えばテレビだとかラジオ等を持ち込んで、その電気の使用料を取られたとか、そういうものも調査の中に入っておるようでございます。  したがって、そういうことから先生が御指摘のような数字と私どもの申し上げている数字の差が一つ出てまいっておるんではないか、こういうように思います。
  221. 柄谷道一

    柄谷道一君 大阪健保連のこの同じ調査によりますと、付添介護でございますが、三六・九%が付き添いをつけているが、このうち一一・三%が病院からの要請によって専門看護人、介護人をつけておる。一日当たり費用は半数以上が八千円以上の高額負担になっておる。入院患者の五四%が、入院した病院が基準看護病院がどうかを事前に知っていない。また、基準看護病院でありながら介護人が付き添ったものが三〇・四%ある。このうち自発的に付き添ったものは七七・一%であるが、病院からの要請で付き添ったものが二二・九%を占めている。これが発表された数値でございますね。  前回、どなたかの質問に対して、基準看護病院が付添介護をつけておるようでは病院の指定を取り消すとまで局長は断言されたわけです。あるべき姿はそのとおりであろうと思いますけれども、しかし、実態はかくのごとしてございます。そうしますと、基準看護そのものの見直しを含めてこの問題はもっと掘り下げていかないと、違反すれば取り諦まるよ、取り消すよと言うだけでは、この問題は解決ができないんじゃないか、私はこう思うんですが、いかがでございましょうか。
  222. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) ただいまの調査につきまして、先生指摘のとおりでございます。確かに二二・九%が病院からの要請によって付き添った、こういうことでございますが、その二二・九%のうちの九四%は親族とか友人が付き添ったということで、特別の専門の介護人を雇ったというのは六%、数にして十七であったわけでございます。私ども、やはりいろいろな病状に応じまして、親族や友人が付き添うということは、やはり一つの人情の問題として、これは目くじらを立てるのはいかがかというように思っております。問題は、病院からの要請で、専門の看護婦を雇えというような要請をされることが問題なんでありまして、もしそれが基準看護病院においてそういうことが行われるんなら、私どもは基準看護の承認を、病院の承認を取り消すんではなしに、基準看護の承認を取り消したい、こういうことでございまして、基準看護の病院につきましてそういう付添看護婦を雇うべしというような強要をするような医療機関は、やっぱり承認の取り消しというものも考えていかなきゃならぬだろうと思います。  それからまた、先生指摘のように、看護の付き添いの基準、あるいは付添看護の料金等々、現在の付添看護の基準あるいはその実態との差というようなものについては、これは私ども検討をいたしまして、無理のない形で病院が運営され、また、患者のためにもなるような形で改善の道を探ってみたい、こう思います。
  223. 柄谷道一

    柄谷道一君 ここで数字の内容をやりとりしておりましてもこれは切りがない。しかし、同じ健保連の調査では、付添介護をつけた者の一一・三%が病院からの要請で専門看護人を雇っておるという数値もまた並行して出ておるわけです。  そこで大臣、いずれにしても差額ベッド、付添介護、これがまだ完全に問題が解消されていないということは大臣もお認めだと思うんです。多くの問題を残している。今まで十年間努力をしてきたがなお解決されていないということも、これまた厳然たる事実です。それには病院の経営問題も絡むでしょう。今回新たに定率負担という問題も絡んでくるでしょう。そうしてくると、私は、これを取り締まり行政だけで問題を解決しようと思ったって解決できるものじゃないと思うんです。この保険外負担改善のために総合的な視野からこれを解消するためにはどうあるべきかという真剣な検討厚生省で行われ、医療供給側の理解も得ながら患者の差額ベッドというものを解消していく、こういう具体策をもう確立すべき時期じゃないかと思うんです。ぜひそういう検討をこの場でお約束を願いたいと思うんです。いかがでしょう。
  224. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) まことに先生の御指摘、大事な問題で、行政指導を強化をして今日まで改善の努力をしてきたわけでありますが、今度は法的根拠を持った規制になります。そういう方向で、格段の努力に努めてまいりたいと思います。
  225. 柄谷道一

    柄谷道一君 次は、医の倫理の確立と医療費適正化対策についてお伺いいたします。  私は、さきにも指摘いたしましたように、医療は何よりもまず医師と患者の厚い信頼関係の上に成り立つものだと確信をいたしております。そして吉村局長は、去る七月十七日に本委員会で、大浜委員の御質問に対しまして、医の倫理の確立と医療費適正化対策については、医師会の自主的努力に期待しておるという旨の御回答をされました。建前はまさにそのとおりであろうと思います。しかも私は、多くの医療関係者国民の生命と健康を守るために日夜真摯な努力をされておることを評価するものでございます。  しかし反面、最近の新聞報道を取り上げでみましても、例えば順天堂大学医学部附属順天堂病院の無資格検査問題、本委員会でも取り上げられました宇都宮病院の無資格診療と患者へのリンチ事件、東京医科歯科大学の教授選考をめぐる贈収賄事件、大阪の中野診療所におけるけた外れの過剰診療事件、さらに、歯科医師の先生もいらっしゃいますが、歯科用金銀パラジウムのにせ合金事件等々がマスコミにどんどん出ます。そうしますと、国民は、このことによって医療荒廃という暗たんたる気持ちに陥った国民が多いこともまた否定できない現実であろうと思うのでございます。しかも、五十七年度の厚生省指導監査結果を眺めてみましても、架空水増し請求など悪質な不正請求で保険医療機関が五十機関、保険医五十五人と、過去十年間の最高の不正摘発と処分があった。返還された金額は十億一千九百三十三万円に及んでおる。また、国税庁が五十七年約六百人の開業医の税務調査をした結果、二十七億円に及ぶ不正請求を発見したと、これも新聞に報道されたところでございます。  さらに、医道審議会が七月十一日に計十七人の医師の方々に対しまして業務停止、戒告処分を行った。同日国税庁が発表した五十七年度分申告所得税務調査で、個人病院が九年連続でワースト一位を占めておる。一件当たりの申告漏れ所得は一千四百七十四万円に達している等々、医の倫理の確立に対してまだ問題を多く含んでいるということもまた我々が黙過することのできない一つの現実であろうと思うんです。ということになれば、私は、片や医療関係者の自浄作用の高まることを期待して、そこに望みをかけつつも、同時並行的に、不正を監視するという体制を強化しなければならぬということになると思うのでございます。  医療費を負担しているのは患者でございます。そこで新聞論説では、これはある新聞でございますが、「「医道」が泣いている」という大きなショッキングな見出しをつけまして、医道審議会に対して、制裁の対象拡大、処分内容を厳しくしなさい、また税務当局に対しても告発をした関係者の氏名と所在地の公表をしなさいなどの社説を掲げているわけでございます。私は、今回厚生省が専門医師による顧問団の編成などの監視体制の強化を図ろうとしておるところは評価いたしますが、そのほかにも、俗に医療Gメンと呼ばれております医療指導官の充実、百七名の定員すら満たしていない地方の指導医療技官の増員、私がたびたび委員会で取り上げております支払基金の制度の充実、さらには官給領収書の発行など、やはり一連の医療適正化対策というものが伴わなければならない。医師の方々の自浄作用の高揚というものと、私の今挙げたようなこういう施策が相並行してとられることによって初めて医師と患者との信頼という基盤が築かれるのではなかろうかと、こう思うわけでございます。  大臣の御所見と具体策をお伺いいたしたいと思います。
  226. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生指摘のとおりでございます。その方面に努力をしてまいりたいと思いますが、今の具体的なそれぞれの問題については、政府委員から答弁させたいと思います。
  227. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 確かに先生が今列挙されましたような事例というのは、本当に医師としてあるまじき行為だというように私どもも思っております。しかし一方、医師というのは聖職だと、こういうことでございまして、やはり診療の自由というものは確保するのがこれは必要なことであろう、こういうように思うわけでございます。  そこで私どもは、やはり専門団体の自主的な規制というのを主として、そして私ども役所がやる規制というのは従というようなことでやっていくのが正しい姿ではないか、こういうように思います。そして、私どもが行う外部からの規制、こういうことになりますと、今先生がおっしゃいました医療Gメンの充実、あるいは医療技官の充足、それから支払基金における審査体制の強化、それから官給レセプトというような御指摘もございましたが、私ども、官給レセプトについては、またこれはいろいろな問題がございますので現在検討しておりませんが、その他の事項につきましては十分努力を続けてまいってきておりますし、また、今後とも十分努力をしてまいりたいと思います。  いずれにいたしましても、本当はそういう外部規制が行われることのないような形で医療が行われるのが一番望ましいわけでありますが、やはりお医者さんでも神様ではないわけでございますので、そういう外部規制が必要な部分については私どもも十分気をつけてまいりたい、こういうように考えております。  今回の改正の中におきましても、そういう趣旨からいろいろな措置というものを盛り込んだつもりでございます。
  228. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、自分の哲学と言ったら大げさかもしれませんが、原則は、人の性は善なりという性善説の立場に立つものでございます。しかしどの社会にも、すべて善人だけではないわけでございまして、これは医療界にかかわらずどの職業にも、人の性すべて善なりというその善意と逆行する行為をなされる方がある、これが現実の世の中でございますね。したがって私は、人の性善なりという自浄作用は大いに高めていただきたい。大浜先生もいらっしゃいますけれども、日本医師会の良識に私は期待をいたしたい。  しかし、ただそれだけでは医師と患者との信頼は確立てきないわけでございますから、いずれが主たり、いずれが従たりというお考えではなくて、これは医療供給者側とも十分に御相談願って、そうした信頼を損ねる行為をする者に対しては厳正な措置をするよと、こういう相並行した施策がとられるように、これは大臣ひとつ勇断をもって、何も医療費の問題だけを医師会と語るのがそれがすべてじゃないんですね。この問題について真剣に三師会とお話し合いをいただきたい、こう思うんですが、よろしゅうございますか。
  229. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私も先生と全く同感でございまして、自由診療、出来高払いという現在の制度、これは、私がいつも言っておるんですけれども、ちょうど議会民主政治のようなものでございまして、やっぱり議会民主政治が立派にいくためには政治家が立派になり、また、その政治家を選ぶ国民が立派になっていかなければなりません。したがって、戦後三十九年、国民の健康を守り、また、これから二十一世紀の未来に向かって国民の健康を守っていくこの自由診療、出来高払い制度というものは、これを担当する医師の皆さんの良識に期待することがやはり一番大きいのであります。  私は厚生大臣として、我が国の医療を担当する医師の皆さん、歯科医師の皆さん、薬剤師の皆さんはもとより、それぞれの医療担当者の皆さんが、そのほとんどが善意と良識と誇りを持って一生懸命やってくださっておると信じておりますが、しかし残念ながら、新聞紙上に見られるように、また、先生から御指摘ありましたように、断じて許すことのできないような行為があることも事実でございます。そういう行為があるということは、結局、そのことによって一番迷惑するのはむしろ医師会や歯科医師会のまじめにやっておられる皆さん方なのでございますから、私は、この健康保険法を成立させていただきましたら、直ちにできるだけ早く医師会、歯科医師会あるいは関係の皆さん方の代表とお目にかかって、まずやはり自浄作用、みずから襟を正すということに努力をしていただいて、今政府委員から答弁ありましたように、これは外から取り締まることによってどうこうするというよりは、やはり本来医療担当の皆さん方の誇りと良識によって解決されるのが最も望ましいのでありますから、そういうことをお願いしたいと思っております。  同時に、たとえ百に一つであっても不正は断じて許せないのでありますから、そういう不正のないように、私ども努力をしてまいりたいと思います。
  230. 柄谷道一

    柄谷道一君 この際、レセプトの電算処理についてお伺いいたしたいと思います。  私は、これ新聞で承知したのでございますが、昨年七月、保険診療報酬請求業務に電算機を大幅に導入いたしまして、保険制度を抜本的に改革するという遠大なる思想を持って、俗に言うレーンボーシステム構想というものが発表されました。そこで、今後の手順と具体的スケジュールを明らかにしていただけませんか。
  231. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、医療の世界に電算機の入り方が少ないということで、お医者さんの方々にも無用な事務を課しておるんではないか、それから支払基金においても事務処理の合理化というものがなかなか進行できない、そしてまた、保険者の事務も合理化できない、こういう溢路があるわけでございまして、医療機関と支払基金と保険者の間をコンピューターで結ぶならば、これは現在の社会保険の事務というものが、請求、支払いの事務を含めまして、相当合理化されるだろう、こういうことで、この構想を考えたわけでございます。ただ、コンピューターに対する認識の度合いというようなものもございまして、なかなかまだ完全に医療関係団体の了承を得ていない、こういうことでございます。  そこで私どもは、本年度におきましては、少なくとも条件が整った都道府県、あるいは都道府県の一部でもよろしいのでありますが、そういう実施できるところについて、実験的にまずこの計画の試行をしてみたいと、こう考えて、その予算も計上しているわけでございます。そこでいろいろな問題点というものも把握できることでありましょうし、その実験というものを踏まえて、全国普及というものを考えていきたい。  ただ、今申し上げましたように、コンピューターについての理解度と申しますか、そういうものにいろいろ度合いが違っておりますし、また、ある県でやるとすれば、用意ドンで一斉にやらないと、ある医療機関はやりある医療機関はやらないというばらばらでは、せっかくコンピューターというものを導入しても価値が半減をするということでございますので、これは慎重に構えて十年程度ぐらいの期間で全国に対する普及というものを考えておるわけでございます。逐次、条件が整備した県から始めまして、十年程度を目途に全国的な整備を図っていくというのが私どもの考え方でございます。
  232. 柄谷道一

    柄谷道一君 私たちは、高額療養費の中で、世帯単位、三十日単位ということを要求いたしました。当局の御答弁は、現在のレセプト主義では何ともならない、部分的改善は考えられると、こんな御意向でございましたが、この電算化システムが完全になれば、これは容易にいかなるシステムも活用できるわけですね。ところが、今の御答弁では十年待てということになりますね。我々の要求が、これ、十年も待っておるのではまことにまどろっこしい話でございまして、大臣、やはり関係者の合意を得るための努力はしなきゃなりませんが、これは大病院と違いまして診療所は相当金がかかるんですよ。これを短期に国民のためにやっていこうとすれば、どういう方法か私は申し上げませんけれども、やっぱり政治的な誘導政策というものがこれに並行していかないと、十年たってもできるかどうかわかりませんよ、これ。  ここらについて、早期にこれを実践するために、やっぱり厚生大臣もっと真剣に考えていただけませんか。金のないことはよく知っております。しかし、何らかの誘導策がないと、十年座して待つべしては、我々は本当にこれ、十年待てるんかいなという気になりますな。お考えいただけますか。
  233. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私は、今回、十割給付であった被用者保険の皆さん方に一割の御負担をお願いしているわけでございます。このことは、二十一世紀の我が国の医療制度を揺るぎないものにするために、また、国民皆さん方の医療保険負担をこれ以上ふやさないために、また、国民皆さん方が健康の自己管理に努めていただいて、みんな元気で健康で幸せに生きていっていただくためにお願いをしなければならないという信念を持って私はお願いしておるのでございますけれども、しかし、このことで私が一番頭を痛めておるのは、今回の一割負担をお願いすることによって健全なサラリーマン家庭の皆さん方が、今先生からいろいろ御指摘ありましたように、一カ月の間に病人が二人できたり、あるいは病気が継続して長期的に思いが起こったり、そういうことで、この一割負担のために健全な勤労者家庭の皆さんの生活破壊というようなものが起こるようになったのではこれは申しわけない。したがって、この一割負担の法律を通していただくということは、私は厚生大臣として、このことによって、先生の御心配になるようないろいろの問題によって健全なサラリーマン家庭の生活破壊になるようなことになってはならない、このためにはこれはどんな工夫もしなければならないと私は毎日考えておるのでございます。  今のような問題も、今政府委員から説明ありましたように、技術的には大変難しい問題でございますが、十年待つというようなことでなくて、何とかこの法案を成立させていただく時点で、皆さん方にある程度の御安心を願えるような回答を出すように、全力を尽くして努力したいと思います。
  234. 柄谷道一

    柄谷道一君 ちょっと視点を変えますが、特定医療制度ですね。私は、その運用いかんによりましては自由診療の大幅拡大、保険医療の後退をもたらす危険をこれははらんでいると思うのでございます。また、この指定ということに伴いまして、これは必然的に病院のランクづけを行うという結果になる。そこでまた、逆の視点からとらまえますと、高度医療のための設備充実を目指そうとする病院を締め出す結果になるおそれすらあると、こう思うんですね。  そこで私は、社会保険制度の根幹に触れるような特定医療制度の導入については、これは慎重を要すべきである。私はむしろ撤回を望むものでございますが、仮に撤回ができない場合、この運用というのは、これは大変重要な問題になってくると思うのでございます。撤回はできないのか、どうしてもできないというなら、どういう運用で危惧される問題を解消されようとするのか、お願いいたします。
  235. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今御心配いただいたように、これは運用いかんによってはもろ刃のカミソリ的性格を持っておる内容だと思います。したがって、この法案を通していただく限り、私どもは先生御心配のようなことにならないように、むしろ国民の健康を守るために本当にいい制度とほめていただけるようにこれを運用していく責任がございます。これは努力するつもりでございます。  ただ、撤回しろというお話でございますが、これは今後新しい先端医療がどんどん進んでまいりますし、また、国民皆さん方の医療に対するニーズというものもやっぱりこれは多面的になり、多様になっておるのでございます。  私は素人でございますが、新幹線で例えれば、普通車が保険でやっておるところでありまして、これは非常に大事で、確保して、どんどん立派にしていかなければなりませんが、そこから上の部分はいわばグリーン車というようなもので、したがって、グリーン車を一切認めないというのも今日の自由社会の中にない。しかし、グリーン車があるから普通車の乗り心地が悪いなんていうことになったらこれは申しわけございませんから、保険医療をますます強化していくということで御理解を賜りたいと思います。
  236. 柄谷道一

    柄谷道一君 汽車で言われたんですが、私の心配は、グリーン車ならいいんですけれども、運用を誤るとみんな新幹線の方にばかり乗っちゃって、もう在来線の赤字がどんどんどんどんふえていったという国鉄の弊がここにあらわれては大変だ、そうなれば保険医療制度が根幹から揺さぶられることになるという心配を申し上げておるわけです。  そこで、この運用に関しては、社会保険審議会の意見を徴されますか。
  237. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) これは保険医療に関することでございますので、中央社会保険医療協議会の御審議を煩わしたいと、こう考えております。それによりまして、今先生御心配のような点がないように立派な運用基準をつくって、十分運用をしていくつもりでございます。
  238. 柄谷道一

    柄谷道一君 これもまた視点を変えますが、前回の健保法が成立しました四十八年の第七十一国会、ここで政府は、四十八年度末の政管健保の累積赤字については保険料でその穴埋めはしない、その償還と借入金に係る経費は一般会計より予算に定める金額を毎年度逐次繰り入れて処理する、これが政府の公式回答でございます。その後、余り財政事情がよくなくて、返す方が少なくて金利がたまっておるというのがどんどんふえておるというのが実態だと思いますが、これは今も生きており、今後も変える意思はない、こう理解していいかどうか。  さらに、今回の日雇健保の累積赤字についても、四十八年の確認同様保険金で穴埋めをしないというふうに受けとめていいのか。結論だけ教えてください。
  239. 坂本龍彦

    政府委員坂本龍彦君) まず、政府管掌健康保険の昭和四十八年度末の累積赤字でございます。これは、昭和四十八年度の法律改正の際に、当時の累積債務につきまして純粋の損失見合い分と資産に見合う分とにこれを分けまして、純粋の損失見合い分についてはこれは一般会計からの繰り入れをもって償還をする。それから資産に見合う分については、これは保険料をもって償還する。こういう規定になっております。ただ、その後国家財政が非常に窮迫してまいりました関係上、一般会計からの繰り入れというのはまだ現実に行われておりませんので、償還がなされないで借り入れが続いているということから、利息分が加算されて累積債務額がふえておるということは事実でございます。  それから、日雇健保の累積赤字でございますが、これにつきましては、今回の改正法案におきまして、昭和四十八年度末における政府管掌健康保険の累積赤字のうちの損失見合いと同様に、これを毎年借りかえができるようにいたしまして、かつ、一般会計から償還のため繰り入れの道を開くことにいたしております。  今回、特に国家財政苦しい中ではございますけれども、利子の一部に充当するために二百八億円の繰り入れも予算に計上いたしております。この処理につきましては、将来とも政府管掌健康保険と同一の特別会計で処理をいたしますけれども、その保険料をもって償還するということは考えておりません。
  240. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣予算折衝でこれ大変だと思うんですよ。経常の予算も大切でございますよね。しかし、今雪だるま式にふえているんですね、これ。利子が利子を生みまして、やはりこれも健保の財政を考える場合に重要な位置づけを行って、大臣が処理していきませんと、苦しいときには何とやらで、これ、ほっておきますと、国会への約束で法律上書かれているわけですから、それよもや政府も保険料でまた埋めてくれということは言えない。しかし、どんどんどんどん累積はふえていく。これでは保険財政がこうした面でパンクするおそれも出てくると思うんですね。私は、どんなに財政が苦しくても、せめて利子分ぐらいはここへ償還原資として繰り入れて雪だるまだけは防ぐ、これくらいの配慮で、これはやっぱり大蔵大臣と、渡部厚生大臣の向こうっ気の強いところで解決していただかないと、歴代の厚生大臣がバトンタッチで後ろへ後ろヘタッチしているうちにどんどん赤字がふえていく。これでは大変だと思いますので、この点は御努力いただきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  241. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 御指摘のとおりの心配を私も痛切に感じております。率直に言って、やはり今日ゼロシーリング、あるいはマイナスシーリングという大きな国の財政の枠の中で、私どもが社会保障の水準を落とさない、どうしても落とさないようにしなければならないということのしわ寄せが、結局先生御心配の今のような問題になっておるのであって、これはやはり先生の御心配のようなことにならないように努力をしなければなりませんから、私は、六十年度の予算編成に当たっても、今先生おっしゃるように、せめてその利子分だけでもという気構えでこれから予算折衝に臨みたいと思います。
  242. 柄谷道一

    柄谷道一君 まあ、野党ながらそういう正論には力をかすことにやぶさかではございませんので、大臣の奮闘を期待いたしておきたいと思います。  それから、時間もなくなりましたので、社会保険審議会は本法案に対する答申の中で、健康保険組合及び国保組合の設立を積極的に推進すべきであると、こういう答申をいたしております。厚生省はこれを受けまして、五十九年度に国民健康保険組合の地域拡大を目指しまして、被保険者数で約十二万四千人の拡大を見込んでいると、これは予算で読み取れるわけです。ところが、健保組合の方は読み取れないですね。  そこで、これは健保法では二十八条で、保険組合の設立の被保険者数は三百人以上と、こう法定されておるんですが、実態は、二十五年五月八日の保険発第八十四号によりまして、「被保険者が過去一カ年間において概ね一、〇〇〇人以上であり今後もその数を維持することが確実であること」ということを健保組合設立の要件としておるわけですね。民間企業では、どんどん合理化、省力化によりまして、生産量は落としておりませんけれども従業員数は減少の傾向にある。この通達の原則を変えない以上、これ、健保組合設立促進といってもふえませんよ。私は、設立促進というならば、この通達をもう一度洗い直して、例えば例示の数字でございますけれども、例えば七百人がいいのか六百人がいいのか。そういう新たな通達を出すことが審議会の答申の趣旨に沿うことになるのではないか。それもやらないというのなら、これは空文だということになりますね。私は本当にこれは技術的に物を言っておるわけです。  そこで、仮に六百とか七百とか通達で決めましたら、あんまり本則の三百人――今千人ですから、法律のていをなしていないわけですね、この条項に関する限り。私は、今回は法修正の要求には入れておりませんけれども、この問題も、通達の見直しとあわせて今後の健保組合設立要件の本則を法文上どうすべきか、これは当然検討しなければならぬ問題であろう、このことを指摘し、御回答を求めまして、時間が参りましたので私の質問を終わります。
  243. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、健康保険組合の設立につきましては、これを推進するつもりでございます。  ただ、私どもの心配としては、余りにも規模が小さいとやはり保険運営上の安定性を欠くことになるのではないか、こういう危惧を常に持ち合わせておるわけでございまして、千人という現在の運用基準もそういう趣旨から定められたものでございます。しかし、二十五年にこの基準を設定し、その後事情はかなり変化をしてまいっております。したがって、現在のところは、個々の具体的な組合の設立のケースに従いまして、この基準をかなり下回ることがあっても中長期的に健全かつ安全な運営ができるという見通しがある場合には弾力的に対応をしたいと、こう考えております。  先生がおっしゃいました、何人がいいのかということについては、今私ども検討をいたしておりますし、千人を下回るということで基準を決めるということも十分あり得ることでございますし、また、その際には、三百人という法定の基準というものを改正をする、こういうことも十分頭の中に入れて検討をいたしたいと思います。
  244. 柄谷道一

    柄谷道一君 これはお答えいただく必要ございませんが、産業界の実態をよく把握を願いたいと思うんです。昭和二十五年というのは労働集約的産業が大半を占めておったんです。このごろはもう装置化、省力化が進みまして、人数だけでは判断できないですね。依然として労働集約的な産業においては千人おっても、その企業基盤は果たして健全かどうか。わずか三百人でもそれが極めて近代装置化された企業においては安定しておる。産業界の大きな変化というものを配慮に入れて、ただ人数だけで縛るという終戦直後の発想だけはひとつ見直していただきたい、このことを要望いたしておきます。
  245. 下村泰

    ○下村泰君 お尋ねをする前に、言いわけじゃございませんが、本日は予定日じゃなかったので、大変不勉強をさらけ出して申しわけないと思っておりますが、長い時間をかけずに短い時間で、余りました時間は保留させていただきまして、またの節に利用させていただくということをまず申し上げておきます。  本日、実は国会へ参ります間に何げなくカーラジオを聞いておりましたならば、アメリカの方で、政府の出す文章は非常に難しい、老人保険を受け取る方が、たまたま政府から回送されてきた、恐らく封筒でしょうな日本で言えば。そういうもので来たんだけれども、ところが、余り言葉が難しくてわからない、そのために無効になったという例がございまして、その老人の方たちが訴訟を起こしたそうです。そうしましたら裁判所の判決が、そういう難しい文章では書くな、もっとやさしい文章でわかりやすく書きなさいという判決が出たんだそうで、私も、日本でもぜひそういう判決を出してもらいたいなと思うんです。何回か読むうちにはわかってくるでしょうけれども、何しろ私余り学問がございませんから、何回読んでもわからないところが多いんです。  それで、この「今後の医療政策の基本的方向について (厚生省試案の説明)」いうのが出ております。これについてわからないところちょこちょことお伺いをしますので、ひとつお答え願いたいと思います。  この冒頭に当たっての言葉は、これはよくわかります。それで、「国民健康づくり対策の推進」というところの①の中で、「疾病の予防及び早期発見・早期治療のため、ライフサイクルの各段階に対応した乳幼児健診、成人病健診等各種の健康診査、保健指導等の保健サービスを充実する。」と、こう書かれております。私なんか長屋住まいの感覚で物を判断しますから、「保健サービスを充実する。」とあれば、「サービス」というのはこれは奉仕なんだな、奉仕ならこれはただなんだなと、これは無料で全部やってくれるんだなというふうに解釈しておるんですが、どうなんでしょうか。
  246. 水田努

    政府委員(水田努君) お答え申し上げます。  老人保健法に基づきますところの健康診査につきましては、受益者負担ということで、軽微な負担をしていただくようになっております。  なお、医療に関する事業の対象者は全部無料といたしております。
  247. 下村泰

    ○下村泰君 そうすると、「保健サービスを充実する。」とあるこの「サービス」という意味はどういう意味になるんですかな。
  248. 水田努

    政府委員(水田努君) 私ども提供いたします健康診査なり健康教育なり健康相談内容を長期ビジョンの期間の間により効果的なものに充実をしていく、こういう意味で書いたつもりでございます。
  249. 下村泰

    ○下村泰君 何か聞いていると、わかったようなわからないような――私は、ただなのか、それとも銭取られるのかと聞いておるんですけれども、どうなんですか。
  250. 水田努

    政府委員(水田努君) 先ほど申し上げましたように、私どもは軽微な受益者負担はしていただくつもりでおります。
  251. 下村泰

    ○下村泰君 少しはもらうということなんですね。
  252. 水田努

    政府委員(水田努君) そういう意味です。
  253. 下村泰

    ○下村泰君 最初からそういうふうにおっしゃってください。いろんなことおっしゃるから、一体どうなっちゃったのか、私の聞いたことはどこへ行っちゃったのかと、下手すりゃ警視庁に行方不明の捜索願いを出さなきゃいけないと思った。  次に、がん対策の問題があります。「今日では、年間十七万人を超える者ががんにより死亡し、国民四人に一人はがんで死亡するという状況にあり、」こういうふうになっています。これは確かにがんはふえております。ただ、がんというのは、早期発見すれば、お医者さんに言わせればおできみたいなものだとおっしゃいますけれども、思っている本人よりも思われている周りの者が大変なんですよね、このがんというのは。  「このため、五十八年六月に策定された「対がん十カ年総合戦略」に基づき、官・学・民あげて、次の事業に取り組み、がん本態の解明を目指す。」、そして①が「重点研究の推進」、②が「若手研究者の育成・活用」、③が「日米を中心とした国際協力の推進」と、何か日米安保条約みたいなものですな。④が「実験材料の供給等研究支援体制の整備」となっております。これだけで果たしてがんの制圧ができるのかいなあというような気がするんです。と申しますのは、その上の方に、この文に入る前に、「健康づくりを国民運動にまで高め、十年間で胃がん、子宮がんの死亡率の三割減、脳卒中発生率の半減を目指す。」こういうことがうたわれておりまして、その下にこういう文章があるんですけれども、果たしてこれできますかね、この題目どおり。
  254. 水田努

    政府委員(水田努君) まず私の方から、子宮がんそれから胃がんの死亡率の三割減、脳卒中の発生の五割減についてお答えを申し上げたいと思います。  これは昨年老人保健法がつくられまして、この中で四十歳以上の方のヘルスの対策を講じていく、こういうことになったわけでございますが、これを具体的に推進していくためには法律で決めただけではできないので、やはりそこには具体的な施策を展開していかなきゃならぬということで、厚生省に公衆衛生審議会という専門の審議会がございまして、そこに老人保健法に基づくところの保健事業の推進のあり方について諮問をいたし、一年間の検討の末、昨年の暮れ答申をいただいたわけでございますけれども、このヘルス事業というのは、市町村が実際に実施機関としてやるわけでございますが、市町村がヘルス事業をやります場合には、やはり具体的な目標があった方 が、やることについて目標もきちんと設定できるし、推進がしやすいというようなことがございまして、種々専門部会で検討されました結果、いわゆる国民の方の協力を得てやるならば、過去のいろいろな検診をやった実績から見て、向こう十年間でここに書いてありますような胃がん、子宮がんの死亡率の三割減なり、脳卒中の発生率の五割減を達成することは決して無理ではないという、また政府はそれを目標に掲げてこのヘルス事業というものをやはり一つ国民運動まで高めていきなさいと、こういう答申をいただいておりますので、それを受けてこの長期ビジョンの中で我々は具体的にその政策の展開をしていきたいということで、このビジョンの中に盛らさせていただいたということでございます。
  255. 下村泰

    ○下村泰君 国民の協力ということになりますと、つまり国民の方から積極的に、診てもらうというように仕向けていけばそういうことができると、こういうことなんですね。
  256. 水田努

    政府委員(水田努君) そうです。
  257. 下村泰

    ○下村泰君 私の時々行くお医者さんの応接間に、あれは応接間といいますかな、待合所というほど大きくはないんですけれども、そこに、胃がんの検査をしますよ、それから子宮がんの検査をしますよ、無料ですからどうぞというようなポスターが出ていますけれども、ああいうことを指して言っておるわけですな。
  258. 水田努

    政府委員(水田努君) 胃がんなり子宮がんの検査を受けるということは、検査を実施するところまで住民の方に足を運んでもらわなければできないことでございまして、特に胃がんなり子宮がんというのは、自覚症状のないときに、自分は何ともないと思っているときに検査を受けていただいて、そこで早期発見すればほぼ一〇〇%制圧できるという、初期段階を発見することが非常に重要なものですから、何ともないと思っている方に検査に出向いていただく。特に胃がんの検診なんかはもう前の日から食事をとらないで検査を受けるときバリウムを飲まなきゃならぬということで大変苦痛を伴うわけなんで、これはやっぱり自分の健康は自分で守るという健康教育なりPRというものをしないと、なかなかその検査を受けに出向いてもらえないので、そういうことを積極的に進めてまいりたいと、こういうことでございます。
  259. 下村泰

    ○下村泰君 それから、「地域医療計画の策定等」という項目がありまして、その中に、「休日・夜間急患センター、救命救急センター、救急医療情報システム等の救急医療体制の体系的整備」、こうなっております。ところが、この休日の夜間救急センターというのは実に当てにならないんですね、ここにはこう書いてございますけれども。いまだに新聞の活字で出ますでしょう。実際に患者がたらい回しされて、あげくの果てには間に合うものが間に合わなくなったというのがよくありますわね。落語じゃありませんけれども、手おくれになるわけです。何で屋根から落ちる前に来なかったというやつですね。落語ならそれでいいんですよ。だけど、実際には、生きている人間が救急車に乗せられて、あっちへ持っていかれこっちへ持っていかれ、あっちでも断られこっちでも断られると、これが現状なんですよね。  ここに書いてあることは立派なんですよ。これ、できるんですか、ちゃんと自信を持って。
  260. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 救急対策は医療の原点でございまして、かねてから関係方面の御協力をいただきましてやっておるところでございます。  お話にございました、新聞に出る度合いは随分減ってきたんじゃないかと実は思っておりますが、確かに減ってきております。やはり医師も休日には休みますので、こういう休日・夜間急患センターというものをつくっておりますんですが、一両日前の新聞でも、夜病気になったら休日・夜間急患センターへ行くというのがかなりありました。  しかしながら、お話にもございましたように、まだまだ不十分な面がございますので、さらに努力をいたしましてそういうことのないように、これはできると思います。
  261. 下村泰

    ○下村泰君 実際、今局長がおっしゃったように、行ってもその専門医がいないからだめだというところもあるわけですね。ですから、そういうこともあるんですから、ひとつちゃんとやってくださいね。いいですね、にこにこ笑っている場合じゃないんです。  その次に、「へき地診療所やへき地中核病院の整備」、これは僻地診療所や僻地中核というと、僻地に中核病院なんてあるんですかね、その「整備」と書いてありますけれども。そして、「へき地勤務医師の確保等へき地医療対策の推進」。せんだっても当委員会で私が質問させていただいたときに、厚生大臣みずからが、御自分のお里の方でそういう場所があったというようなお話を聞いております。厚生大臣みずから認めている。これが活字の上では大変すばらしく目に鮮やかに踊っておるようですけれども、さてこれが東京音頭でおしまいになるか、ちゃんとできるのか、これはどういうふうになるんでしょうね。これも御自信おありですか。
  262. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) この僻地の医療対策も実に重要な課題でございまして、今日、第五次の整備計画をやっておるところでございます。  お話しのございました僻地中核病院といいますのは、僻地にあるのではございませんで、その近くにございまして、そこから医師を派遣したりそういうことをやるのでございます。  できるかというお尋ねでございますけれども、たしか先回お答えしたと思いますが、医師の分布は、ブロック別に見ますとそれほど差がございません。ブロックの中で県別あるいは都市化の程度等によってかなり差がございますけれども、ブロック別にはそれほど差がございませんので、これはもう考えられる限りの誘導策を適切に講ずることによりまして、僻地にも適切な医療を確保せねばならぬと考えております。
  263. 下村泰

    ○下村泰君 これを拝見していきますと、これから先お医者さんがどんどんふえて、大変結構なような数になっております。そのうちにお医者さんの方から患者の方にいろんなサービスがあって、私のところへ来ればこういうものを上げますよなんということになればこれにこしたことはないと思っておりますけれども、そういうふうな時代が早く――来ませんかな、これは。  それではこれをお伺いいたします。  「診療報酬体系の改善」というところを拝見しますと、お薬の値段が下がっているようです。大変これは結構なことだと思います。その③のところに「薬づけ、検査づけ等不適切な医療は排除する。」という項目がございます。これは排除されるのはまことに結構ですけれども、この薬づけ、検査づけ等の不適切な医療機関をどうやって発見するのかということを、私は大変疑問に思うんですけれどもどうでしょう。
  264. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 医療機関の請求額を見ておりますと、薬の使用額が非常に高い医療機関、それから検査の費用が非常に高い医療機関、これはわかるわけでございます。したがって、そういうものを重点的に対象にいたしまして指導監査をするというようなこととか、あるいは、薬づけ、検査づけを生じせしめるのは診療報酬点数表の構成がそういうような仕掛けになっておるという点もございますので、例えば検査づけ医療を改善するためには、検査の点数を包括化する、丸めてしまうというようなことも一つの方法でございます。そういうような、いろいろな総合的に手を打って検査づけをなくする、あるいは薬づけ医療につきましても薬価基準の改善をしていく、こういうことによって解消できるんではないかというように思っております。
  265. 下村泰

    ○下村泰君 これを聞いておしまいにします。  今の局長のお話を聞いていても、一番腹の立つのは、この間もここへ公述人の方々が来ておっしゃったんですが、とにかく一万五千種類ぐらい薬がある。その中でも、いいかげんと言っちゃ失礼かもしれませんけれども、そういう薬が五千種類ぐらいある。それから、製薬会社の方からサービスで来る薬がある。そのサービスで来るような、いわゆるただで、無料で、おまけで、いわゆる製菓会社の子供のお菓子じゃありませんけれども、おまけについてくるものが保険の点数でお金を取られるとなると、こんなばかげた話はないですね。これは早く整理していただきたいというのが私のお願いです。
  266. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 御指摘の点につきましては、私ども検討しておるところでございまして、整理をいたす方向で物事を考えていきたいと思います。
  267. 下村泰

    ○下村泰君 終わります。
  268. 石本茂

    委員長石本茂君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  269. 石本茂

    委員長石本茂君) 委員の異動について御報告をいたします。  本日、和田静夫君が委員辞任され、その補欠として大森昭君が選任されました。     ―――――――――――――
  270. 石本茂

    委員長石本茂君) 公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働組合関係)外十六件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。――別に御発言もないようですから、質疑はないものと認めます。  それでは、これより右十七件を一括して討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もなければ、これより採決に入ります。  公共企業体等労働関係法第十六条第二項の規定に基づき、国会議決を求めるの件(国鉄労働組合関係)外十六件につきましては、公共企業体等労働委員会の裁定のとおり実施することを承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  271. 石本茂

    委員長石本茂君) 全会一致と認めます。よって、右十七件は全会一致をもって公共企業体等労働委員会の裁定のとおり実施することを承認すべきものと決定いたしました。  この際、関係大臣を代表して、坂本労働大臣発言を求めます。坂本労働大臣
  272. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) ただいま御承認の議決をいただき、まことにありがとうございました。  私といたしましては、本会議での御承認が得られ次第、速やかに仲裁裁定実施されるよう努力する所存であります。
  273. 石本茂

    委員長石本茂君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  274. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十二分散会      ―――――・―――――