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1984-07-31 第101回国会 参議院 社会労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月三十一日(火曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員の異動  七月三十日     辞任         補欠選任      糸久八重子君     対馬 孝且君  七月三十一日     辞任         補欠選任      対馬 孝且君     糸久八重子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         石本  茂君     理 事                 遠藤 政夫君                 佐々木 満君                 浜本 万三君                 中野 鉄造君     委 員                 大浜 方栄君                 金丸 三郎君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 森下  泰君                 糸久八重子君                 対馬 孝且君                 本岡 昭次君                 和田 静夫君                 中西 珠子君                 山中 郁子君                 柄谷 道一君                 下村  泰君        発  議  者  対馬 孝且君    国務大臣        厚 生 大 臣  渡部 恒三君    政府委員        国税庁直税部長  冨尾 一郎君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生大臣官房審        議官        兼内閣審議官   古賀 章介君        厚生大臣官房審        議官       新田 進治君        厚生大臣官房会        計課長      黒木 武弘君        厚生省健康政策        局長       吉崎 正義君        厚生省保健医療        局長       大池 眞澄君        厚生省保険医療        局老人保険部長  水田  努君        厚生省生活衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省薬務局長  正木  馨君        厚生省社会局長  持永 和見君        厚生省保険局長  吉村  仁君        厚生省年金局長  吉原 健二君        厚生省援護局長  入江  慧君        社会保険庁医療        保健部長     坂本 龍彦君        社会保険庁年金        保険部長        兼内閣審議官   朝本 信明君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        内閣参事官    太田 義武君        文部省高等教育  佐藤 國雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○市町村が行う寒冷地世帯暖房費援助事業に係る  国の補助に関する法律案対馬孝且君外三名発  議) ○社会福祉・医療事業団法案内閣提出衆議院  送付) ○戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正す  る法律案内閣提出衆議院送付) ○保健所法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○連合審査会に関する件     ―――――――――――――
  2. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  市町村が行う寒冷地世帯暖房費援助事業に係る国の補助に関する法律案議題といたします。  発議者対馬孝且君から趣旨説明を聴取いたします。対馬孝且君
  3. 対馬孝且

    対馬孝且君 ただいま議題となりました市町村が行う寒冷地世帯暖房費援助事業に係る国の補助に関する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  北海道等寒冷地域住民にとっては、暖房生活を維持していく上で必要不可欠のものであり、他地域に比べて多量の燃料を必要としていますが、年々高騰してきた石油等燃料費支出は、寒冷地住民の生計を圧迫し、生活保護世帯に準じた低所得世帯にとってはゆゆしい問題となってきております。例えば、北海道における住民石油等暖房費支出標準世帯で約二十三万円にも及び、このような低所得世帯にあっては、これに何らかの援助の手を差し伸べなければ、冬期間は多数の世帯生活保護を受けなければならないことにもなりかねない状況になってきております。  また、行政当局においても、これら地域における生活実情について調査を行い、その実態把握に努められているところであります。  このような事態に対処して、一部寒冷地における地方公共団体は、母子世帯等に対し特別生活資金貸付事業及び援助金等支給する事業を行っております。  しかし、現下の地方財政実情では、地方公共団体が低所得世帯に対し、実のある暖房費援助事業を継続して行うことは困難であり、当該地方公共団体は、これら事業に対する国の援助を強く要望しているところであります。  そこで、市町村が行う寒冷地世帯暖房費援助事業の円滑な実施を図るため、道県当該事業につき補助する場合における当該補助に要する費用について国が補助する必要があります。これがこの法律案を提出する理由であります。  以下、本案内容説明いたします。  第一に、寒冷地世帯暖房費事業とは、寒冷地の低所得世帯に対し、当該世帯暖房費に係る経済的負担の軽減を図るため、暖房費に係る援助金灯油等の金品を支給しようとするもので、国庫補助対象となるのは、寒冷度世帯構成員数に応じて通常必要と認められる暖房費の三分の一に相当する額として政令で定める額までの援助に限っております。なお、対象地域である寒冷地は、寒冷の度が甚だしい地域政令で定めることとし、対象世帯は、世帯構成員全員所得合算額政令で定める一定の額未満である世帯に限定するとともに、寒冷地手当受給者世帯生活保護世帯社会福祉施設入所世帯等を除いております。  第二に、国庫補助は、道県市町村に対し補助を行っている場合に限り、その補助に要する費用の三分の二を国庫補助するものとし、市町村事業費の二分の一相当額限度額としております。  なお、この法律案は、公布の日から施行し、昭和五十九年九月一日以降の事業について適用することとしております。  以上が本案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  4. 石本茂

    委員長石本茂君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。     ―――――――――――――
  5. 石本茂

    委員長石本茂君) 次に、社会福祉・医療事業団法案戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案及び保健所法の一部を改正する法律案、右三案を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から右三案について順次趣旨説明を聴取いたします。渡部厚生大臣
  6. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ただいま議題となりました社会福祉・医療事業団法案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  政府といたしましては、社会福祉増進並びに医療普及及び向上を図るため、昭和二十九年に社会福祉事業振興会を、また、昭和三十五年に医療金融公庫を設立し、融資等業務を行っているところであります。  両法人の果たしてきた役割は大変大きなものがありますが、近年、社会経済状況は大幅に変化してきており、とりわけ社会福祉医療を取り巻く環境の変化は極めて著しく、高齢化社会到来を間近に控えて時代の変化に対応した新しい観点から社会福祉増進並びに医療普及及び向上を図っていくことが大きな課題となっております。  政府といたしましては、昨年三月の臨時行政調査会最終答申を踏まえ、特殊法人整理合理化を図るとともに、このような要請に適切に対応するため、社会福祉事業振興会医療金融公庫統合し、社会福祉・医療事業団とする必要があると考え、この法律案提案することとした次第であります。  以下、この法律案内容について、その概要を御説明申し上げます。  第一に、社会福祉・医療事業団は、社会福祉事業施設及び病院診療所等設置等に必要な資金融通等を行い、もって社会福祉増進並びに医療普及及び向上を図ることを目的とするものであります。  第二に、社会福祉・医療事業団は、法人といたしますとともに、役員として、理事長一人、副理事長一人、理事四人以内及び監事二人以内並びに非常勤の理事二人以内を置くものとしております。なお、役員数につきましては、行政改革趣旨に沿って統合前より縮減しております。  また、法人運営の適正を期するため、理事長諮問機関として評議員会を置くこととし、業務運営に関する重要事項調査審議するほか、理事長に意見を述べることができるものとしております。  第三に社会福祉・医療事業団業務につきましては、従前から、社会福祉事業振興会が行っておりました社会福祉事業施設設置等に必要な資金融通その他社会福祉事業に関する必要な助成、社会福祉施設職員退職手当共済制度運営心身障害者扶養保険事業実施に関する業務を行うほか、病院診療所等設置等に必要な資金融通社会福祉事業施設及び病院診療所等に関する経営指導等業務を行うこととしております。  そのほか、社会福祉・医療事業団の財務、会計、厚生大臣監督等につきまして、所要の規定を設けることといたしております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、ただいま議題となりました戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  戦傷病者戦没者遺族等に対しましては、その置かれた状況にかんがみ、年金支給を初め各種の援護措置を講じ、福祉増進に努めてきたところでありますが、今回、年金等支給額を引き上げるほか、国債最終償還を終えた戦傷病者等の妻に対して引き続き特別給付金支給することとし、関係の法律改正しようとするものであります。  以下、この法律案概要について御説明申し上げます。  第一は、戦傷病者戦没者遺族等援護法の一部改正であります。これは、障害年金遺族年金等の額を恩給法改正に準じて引き上げるとともに、併発死に係る遺族年金等について遺族加算を行うものであります。  第二は、未帰還者留守家族等援護法の一部改正であります。これは、未帰還者留守家族支給される留守家族手当の月額を遺族年金に準じて引き上げるものであります。  第三は、戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法の一部改正であります。これは、昭和五十四年に特別給付金として交付された国債最終償還を終えた戦傷病者等の妻に対し、引き続き特別給付金として、二万円、二年償還の無利子の国債支給するものであります。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次に、ただいま議題となりました保健所法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  保健所は、地方における保健衛生行政のかなめとして、我が国保健衛生水準向上に大きく貢献してきたところであり、都道府県等がこれを設置運営し、国は、その創設費人件費等について昭和二十四年以来、定率国庫負担を行っております。  今後、保健所においては、本格的な高齢化社会到来に伴う地域ごとの多様な保健需要に十分対応することが必要でありますので、この際、保健所の自主的、弾力的な運営に資するため、保健所に対する国の財政援助方式を、地方公共団体の創意と工夫が保健所運営に反映しやすい方式に改めることとし、この法律案提案することとした次第であります。  なお、このことは、臨時行政調査会の第三次答申にわいて人件費補助の見直しが指摘されている趣旨にも沿うものであると考えております。  改正内容は、保健所に関する経費のうち、人件費等保健所運営に要する経費については保健所運営費交付金として交付し、保健所施設または設備に要する経費については引き続き定率により負担することとすることであります。  また、保健所運営費交付金は、各地方公共団体の人口及び面積を基礎とし、地理的事情その他の地方公共団体における保健所運営に関する特別の事情を考慮して政令で定める基準に従って交付することとしております。  なお、この改正は、昭和五十九年四月一日から施行することとしております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容でありますが、この法律案につきましては、衆議院におきまして、公布の日から施行し、昭和五十九年四月一日にさかのぼって適用することとする修正がなされております。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  7. 石本茂

    委員長石本茂君) 以上で右三案に対する説明は終わりました。  右三案に対する質疑は後日に譲ります。     ―――――――――――――
  8. 石本茂

    委員長石本茂君) 前回に引き続き、健康保険法等の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 和田静夫

    和田静夫君 前回に引き続いて、きょう、本人一割負担の問題に絞って残された時間質問をいたします。  私は、これまで二度にわたって試算示しまして、一割負担導入理由とされる八割での統合論に異を唱えてきたわけであります。  そこで、将来八割で統合した場合の平均給付率、それから九割で統合した場合の平均給付率、さらに九割五分で統合した場合の平均給付率、これをまず示していただきたいと思います。
  10. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 八割で統一をいたしましたときの平均給付率は八五・九%、六十五年度ベースでございます。九割と九割五分のやつはしばらく時間をおかしいただきたいと思います。すぐ計算をいたします。――オール九割の場合は九二・七の給付率と見込んでおります。――まことに申しわけございませんが、九割五分につきましては正確に計算をした数字を持ち合わせておりません。したがって、私ども大体の数字で申し上げますと、九七%ぐらいの平均給付率になるのではないかと、こういうように考えられます。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 さらに、後ほどの論議のため、被用者の本人十割をまず維持しますね、私の論点は今までずっとそういうことですから。そして、その他を九割給付とする場合の平均給付率というのは出ているでしょう。
  12. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) これも推算でございますが、オール九割で九七%ぐらいの平均給付率になるわけでございますので、本人を十割で家族を九割にすれば、九八か九九ぐらいの給付率になるんではないか。大体の推算でございますが、こういうように思います。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 少し違いますけれども、私の方の計算とは。違うことを浮き彫りにするのが意図ですからそれはいいんですが。  そこで私は、さきに薬剤費伸び率を三%に抑える試算示しましたね。厚生省試算のケースⅠですね、いただきました医療費保険料等の将来推計、この中で、薬剤費伸び率は何%とまず見込んでいらっしゃいますか。
  14. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私どもは全体的に医療費をはじいておりますので、先生の手法とちょっと違いまして、薬剤費その他の費用というような形に分けて推算はしておりません。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃちょっと変えますが、薬剤比率は何%ぐらいに考えているんですか。
  16. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 現在三〇%程度でございますので、それが今回の薬価基準引き下げ薬剤比率が二八・四ぐらいに下がる、こういうことで、今後の推計の中には二八・四程度薬剤比率で見込んでおるということになるかと思います。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 この薬剤費伸び率が何%見込んだ数字であるかという答弁ができないところが、実は大臣、非常に臭いところなんですよ。無理やりこの法律案に合わせる数字がずっとつくられてきている。そういうところなんです。ここのところはぜひ記憶しておいてください。きょうの最後に大臣から答弁を求めますから。  それで保険局長、私に、日本の薬価が高い、あるいは薬剤への依存度が若干高目であるという見解は前にお示しになりました。そうしますと、五十四年から五十八年、いただきましたやつでは、薬剤費五・〇%ですよね。これよりも低い伸び率を想定していると考えても、これは非現実的ではないということになると私は思うんです、おたくのこの数量。そこで、五十五年から五十七年度の薬剤費は一・七%の伸びだったわけですね、これも御答弁ありました。三%の伸び率は、結果的にはなせぱできる数字であるということをおたくから出された資料は物語っていると思いますが、よろしいですか。
  18. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 五十四年度から五十八年度の薬剤費を見ますと五・〇%、それから五十五年度から五十七年度の薬剤費伸び率をとりますと一・七でございますので、先生試算でお示しになりました三%というのは不可能な数字ではないと私は思います。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 それで、薬価改定後の東大病院――国立病院契約状況をこの間見てみましたね。文部省からも答弁をいただきました。対薬価比で一〇%以上の値引きをしているということが出てきました。そういう状況からしますと、なお引き下げの余地がある、その意味答弁局長からこの間いただきました。それを前提にしますと、薬剤費伸び率を今後も抑制していける可能性があるということは、これは明確に示していると理解をしておいてよいですね。
  20. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 薬剤費全体の伸びを三%程度と考える考え方は極めて非現実的だというようなことではないというように思います。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 そこでどうしても大臣、先ほど答弁されませんでした薬剤費伸び率を何%。と見るか、これはやっぱりこの席上で責任ある答弁をちょっと欲しいところですがね。
  22. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 先生承知のように、現在の薬価基準というのは、市場における実勢価格というものを反映をして薬価基準を決める、こういうことでございますので、市場価格がどう動くかということが決め手になるわけでございます。それは先生承知のとおりなのでありますが、そこで全体の伸びを三%ぐらいに抑えていくことが現実的に可能かどうか、こういう一つの政策的な判断と申しますか、そういう見通しが成り立つかどうか、そういう現実的な基盤があるかどうかということが重要なんだろうと私は思います。  そういう観点から考えますと、三%ぐらいの薬剤費伸びに抑えていくということになると思いますが、それが不可能ではないと私は思います。そして、三%の伸び薬剤費伸びていくとすれば、大体私ども試算によりますと、六十五年度で薬剤比率が二二%から二三%ぐらいの範囲にとどまることになると思います。したがって、現在の二八%という薬剤比率が二二%台ぐらいの薬剤比率になるのではないか、こういうような数字であります。  三%という数字意味はそういうことでございますので、私どもとして六十五年度ぐらいまでに薬剤比率を二二%台に抑えることが不可能かということになりますと、それは不可能ではないのではないかというような感じを持つ数字でございます。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと問題外れますが、衆議院での修正で、定率部分定額制が持ち込まれましたね。この修正は、私は本質的に原案と変わらない修正であると考えておりますが、さらに問題なのは、次のようなことが起こってきませんでしょうかね。  つまり、医薬分業医院診療を受ける、そして、調剤薬局で薬をもらうという場合ですね。この場合に、負担が二倍になりませんか。A医院で九百円かかると窓口で百円払う、そして処方せんをもらってB薬局に行って六百円の薬をもらうと、ここでも百円払う、こういうことになりますね。そうすると明確に二百円払うことになります。ところが、A病院で千五百円で同じ診療行為、投薬を受ける、薬局のある病院で。ということになりますと、自己負担は百円で済みますね。つまり、これは修正の結果出てきた新しい矛盾でしょう。  厚生省医薬分業を進めないとするのならそれでもよいんでしょうけれども、私に促進すると約束しているんですからね。そうなると、これはまずいんじゃありませんか、厚生大臣
  24. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 確かに定額制を導入して、医療機関あるいは薬局がそういう定額制を選ぶ選択をすれば、先生おっしゃるような今のような事態が起きます。そして非常にまずいということは言えると思います。  ただ、一割の定率負担というものをとるか、衆議院修正されました定額制をとるかというのは医療機関選択ということになっておりますので、定率の方をとればそういうことは起こらないということになるわけでございまして、先生指摘のような事態が生ずることは、これは事実でございます。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、局長もまずいと、また、起こるのも事実だということになると、大臣、こんなのはちょっと許せませんよね。どうしますかな、これ。少しとめて、ちょっと協議しましょう。
  26. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは先生御案内のように、衆議院の段階で修正を受けたものでございますが、私どもは、たびたび申し上げておるように、政府が最初に提出した原案をもって最善のものであるということで、原案どおり成立させていただくことをこいねがっておったのでありますが、修正を受けました。しかし、我が国議会民主政治でございますから、私ども国会の議決は最高のものであるということで、修正をやむなしと受け入れたものでございます。  今和田先生から御指摘をちょうだいしますと、医薬分業の推進という意味からいえば、先生指摘のとおりの確かな問題が起こることは事実でございます。これは私ども原案でございません、国会修正ですから、私どもの方がこれをよしあしとこう言うのはいかがかと思いますが、この委員会でも御相談を賜れば、私どもも御相談に乗ってまいりたいと思います。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 今の大臣答弁は、ここの委員会で再修正する以外にはない、こんな改悪部分、まずい部分はそのまま認めるわけにはいかぬ、こういうふうに理解をするとすれば、ちょっと理事会でも開いてもらって、どういうふうに再修正するのか、出してくださいよ。
  28. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ちょっと誤解を受けると困りますので補足させていただくと、私は決して、衆議院修正をちょうだいしたものに対して改悪などと申し上げておりません。これは、国会で決めたことに対しては厳粛に私ども従っていくのでありますが、ただ、内容について、和田先生から御指摘を賜れば、なるほどなというような点があると申し上げたのでございます。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 これはもう委員長の裁量で、理事会で少しここのところ詰めてもらわなければ。――それじゃ、これは理事会に預けます。  そこで国民医療費の問題に立ち返りますが、私は、言われるように薬剤費伸び率三%、薬剤を除く医療費七・五%、厚生省長期ビジョンがうまく実行されていくなら七・五%以下に抑えることができるということをずっと主張してきました。再度主張しておきます。したがって、国民医療費伸び率国民所得伸び率以下に抑えることができて、そして本人十割、その他九割の給付も不可能ではないというのが私の三日間ずっと続けてきている主張なんですよ。この辺はもう大体明らかになったと思うんですが、アバウトなあれでまとめて、一遍この辺で大臣、御見解出ませんか。
  30. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 確かに先生試算は、そういうことを示す一つの試算であろうと私は思います。  ただ、私どもの考えを申し上げますと、四十八年から五十七年までの数値、データというようなものを先生の方はお使いになって、それぞれ、保険料収入なりあるいは平均標準報酬なりそれから雇用者所得なりというようなものをいろいろ使っておられるわけでありますが、四十八年から五十七年という期間のデータが今後の動向を推計する指標として適切かどうかということについては、私ども一つ疑問を持っております。したがって、推計そのものは先生おっしゃるとおりでありますが、その推計の前提だとか、それから将来推計でございますので推計の仕方はいろいろあろうかと思いますが、私ども、いずれにいたしましても医療費についての負担というのは、保険料で負担をするか、国庫負担負担をするか、患者負担負担をするか、この三つの柱で負担せざるを得ない。そして、そのバランスをどう組むかということに尽きるんだろうと思います。したがって、保険料を幾らぐらいのバランスにし、国庫負担を幾らぐらいのバランスにし、患者負担をどれくらいのバランスにするかというのは、これは政策の選択の問題ではないかと、こういうように考えるわけでございます。  私どもは、国民所得の伸びの範囲程度医療費伸びを抑えるためにはいろいろの手だてを講じなければならぬとこういうように思いますし、そうして、ある程度抑制をされた国民医療費をどう負担をするかということにつきましては、なるべく保険料をふやさないで、特に保険料率は引き上げないようにして物事を考えていきたい。それから、国庫負担につきましては、やはり増税というようなことがなかなか選択できないとすれば、国庫負担を今後どんどんふやしていくということもできまいというようなことから、今回の政策選択をしたわけでございます。  だからといって、先生がおっしゃるように、保険料を上げて給付率を引き上げる、こういう選択がないということを申し上げるつもりはございません。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 さきの委員会で問題にしましたが、厚生省のケースⅠの医療費保険料等の将来推計、何といっても理解しがたいんですよ。どうも頭の中に前提があって数字がつくられているんじゃないかという感じがどうしてもするんですがね。  例えば、保険料は昭和六十一年度でがくんと落ちるわけですね。それまで五十九年度が六・三%、六十年度が七・六%伸びてきたのが、六十一年度では一・一%しか伸びない、こういう数字におたくのやつはなる、一方患者負担は、六十年度が一〇・八%、六十一年度が二一・八%も、ずっと伸びるわけですよ。これはおたく数字ですよ。そうすると、被保険者保険料は六十年から六十一年度でマイナス百億円となっていますね。この指針は全く非現実的ですよ。  こんな非現実的なやつがなぜ出てくるんだろうかということを考えてみますと、保険料が下がるというのは保険料率が下がるということ、あるいは加入者が減るということ、あるいは国民所得は六・五%で上昇するが、賃金は極端に下がるということ、いずれかを意味しているはずですね。それはそういうふうに理解しておっていいですか。
  32. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私どもは、むしろ料率が下がるものだというように考えておるわけでございます。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 いろいろはじいてみましたけれども、結果的にはおたくのやつというのは、何というか、いわゆる計算の順序がどうもやっぱり仕組まれているんですね。計算の順序がどうしても私は理解できない。  厚生省、この推計の問題点は、給付率をあらかじめ八五%水準に決めているんですよ。そういうことになっているんですね。八五%水準に決めておいて算出するから、私が言う非現実的な数字になってくるんだと思うんですね。保険料率を下げて自己負担をふやすということは、これは医療保険の思想に逆行するものでしょう。これまでの厚生省説明は、現行保険料率を据え置いても自己負担をふやさざるを得ないということではなかったんですか。要するに、この推計は無理やりに八割統合論給付率を合わせようとした、そういうことから破綻してしまって非現実的推計となってしまった。どんなに頭をひねっていろいろはじいてみても、そういうふうにしか言えないんですね。この推計を根拠に論議するということは私はどうもできない。  したがって、現行の平均的な保険料率を据え置いた場合の保険料収入をまず算出してもらう。そして、それをベースにして保険収支、給付率そして負担率というように出してもらう。それをベースにしなければどうも議論ができないというのが私の結論なんですが、これ出ますか。
  34. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) おっしゃるような形の数字はできると思います。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 それで論議をしたいと思っているんですが、そこで実際の保険料収入は、厚生省推計よりも高いはずですね。これは高いはずでしょ
  36. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 今先生がおっしゃったような形で料率を据え置いてはじくとすれば、平均標準報酬の変化がどういう姿を示すかは別といたしまして、それを別とするならば、私ども数字より高い数字になるだろうと思います。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、保険料収入が厚生省推計よりも高くなったら、その差額で国庫負担を減らすということになるのではないですか。そういうことはありませんか。
  38. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私どもは、現行の給付率で推移をするならば、医療費伸びが六・五%にはおさめることが難しいんではないか、こういうように考えております。したがって、先生指摘のように、保険料収入は現在の保険料率でまずはじけば、これは出ます。それから、現在の給付率でもって医療費を単純にはじけば、私どもは大体七・五%ぐらいの医療費伸び率になるのではないかというように一つの推計を持っております。  したがって、七・五%の医療費伸びでいいんだと、こういうことを考えますならば、いろいろな保険料の推算もできますし、また、国庫負担推算もできるわけでございますが、七・五と六・五%の医療費伸び率の差、ここを何で埋めるかというのは、これはまた政策の選択の問題になるんであろう、こういうように考えます。
  39. 和田静夫

    和田静夫君 ちょっと確認しますけれども、現行の国庫負担率水準を今後も引き続き維持するということについては、これは間違いないわけですか。それはそういうことでしょうか。そこのところはどうなんですか。
  40. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 現在の国庫負担率を維持するということではじくのならばそういう形ではじけますし、私どもは、それでは国庫負担というものが相当膨大になるであろう、こういうようなことで今回のように一つの国庫負担についても合理化を図るという政策をとった上で、私どもの将来の推計をしておるわけでございます。  したがって、国庫負担率を現在と全く変えないということになれば、また違った数字になってくるだろうと思います。
  41. 和田静夫

    和田静夫君 前回委員会の最中に私のところに提出された保険料収入の過去のデータ、それをもとにしまして回帰式をつくりますと、保険料収入は八・二%から七・七%に伸びます、昨日おたくに私どものはじいた数字をお渡ししたとおりですが。これは保険料率の上昇分をダミー変数を用いて、そして排除したモデルによって、それだけ伸びるということになる計算になりました。恐らく間違っていないはずです。一方、この間の雇用者所得の平均伸び率、これを国民所得の伸び率よりも〇・五ポイント高い七・〇%と置く。そうしますと、保険料率を据え置いても、実は被用者保険料収入の平均伸び率を八・〇%を確保できるわけです。国保が仮に国民所得の伸び率程度にしか伸びないと見ましても、一九八七年度には平均給付率九〇・二%を確保できる計算になりました。おたく数字をもとにした回帰式で計算してみたら。そうすると、保険料収入は国民所得の伸び率よりも高い伸び率を示すと見るのが妥当だということになってきましたね。このことは昨晩恐らくはじき直されたでしょうけれども否定をされないと思うんです。  そこで保険局長ね、前回試算の保険料収入が高いのではないかと私に言われたわけですね。そこで私は、御説を尊重いたしまして、できる限り謙虚に、控え目に計算をして試算を出した。そして、八割統合論の根拠というのが出てくるのだろうかなと思ってやってみたが、どんなにはじいてみても、八割統合論の根拠は出てきません。数字の上で、理論の上で、あなた方の論理は破綻をいたしています。したがって、改正案四十三条の八は、これはもう撤回をされなきゃどうにもならぬところへ来ていますよ。それは大臣、論理が破綻をしているのに、あとのいろいろの事情があるから、政策の選択の問題だといって無理やり法律案を通すというのは、これはいけませんよ。すぐれた渡部厚生大臣、政治家として、将来に非常に汚点を残すことになります。ここは勇気を持って、間違っているところは間違っているとして認めて、そして漸進的に、まあ手を入れることに協議を続けると、こういうことがやっぱり今は必要になってきていますね。いかがでしょう。
  42. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 和田先生からこれまでいろいろお示しいただいた推計、大変すばらしい緻密な頭脳で検討をいただいて、私も舌を巻く思いでこれをお聞きいたしておりました。非常に貴重な御意見として、私どもこれからの医療政策の参考にさせていただきたいと思います。ただ、薬剤費医療費全体の動向、あるいは保険料負担の水準、国庫の負担能力、こういうものの基本的な条件設定の面で、これはまあ当然と言えば当然でございましょうが、私どもと考え方の基本的な違いがございます。  なお、今度私どもがこの改正案をお願いしておる理由は、非常に多面的な、多目的なものでございまして、まず、社会保障制度の本来のあり方から言えば、やはり医療というような重要な国民の生活権にかかわる問題の給付は、農家の皆さん方もサラリーマンの皆さん方も、あるいは本人も御家族も、給付はできる限り同じような条件のものでありたいという考え方、あるいは負担給付の公平、また今日いろいろ先生方からも御指摘をいただいておりますけれども、これからは国民の皆さん方の健康に対する非常な強い関心を考え、また今後高齢化社会に備えて、元気で幸せに暮らしていける、みんなの幸せということを考えますと、それぞれ国民の皆さん方に健康についての自己管理努力といいますか、やはり十割給付よりは、たとえ一割でも御負担をいただくことによって皆さんが健康というものにより以上に関心を持っていただく、あるいはまた、戦後三十八年間我が国の国民の健康を守ってきたかなめであるこの皆保険制度に対する国民の皆さんの認識を高めていただくとか、また、私は必ずしもそうとは思っておりませんけれども、国民の間には、乱診乱療であるとか、いろんなことを言われておるのでありますから、そういう中で医療費の適正化、適正な医療費というものを進めていくのにはやはり一割程度の御負担をお願いする、十割給付というのはいかがかとか、そういう多面的、多目的ないろんな理由をもって今回提案をいたしておりますので、和田先生のその推計、大変貨重なものでございますが、それだけの理由で、この健康保険法の改正が必要ないということは、いささか早計であるような気がいたします。その点の貴重な御意見は私ども今後の保険行政に非常に有力な参考とさせていただきますが、今回の一割負担をお願いする改正案というものは、より多面的あるいはより多目的な国民の二十一世紀に向かっての、高齢化社会に備えての健康を守っていかなければならない政府の責任としては、どうしてもこれは成立させていただかなければならない法案でございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  43. 和田静夫

    和田静夫君 もう時間もないようですから、百歩譲って、ここ二、三年の推移を見て、保険料収入が私の試算のように確保されるのであれば、そして、国民医療費が抑制ぎみで推移するということであったならば、本人十割、その他九割とか、あるいは九割での給付率統合可能性が出てくるということをずっと私は立証してきました。そして、私の立証を反駁するものは答弁者側からは出なかった。数字と論理の上では出なかった。  今言われる、政治的な感慨として大臣が述べられることについては、何遍も答弁を承りました。私は、やっぱり将来この保険財政の状況が私の主張どおりであれば、これはもうどんなに考えてみても――今大臣も腹の底では認められたと思うんですね。一割負担一割負担とこうおっしゃいましたからね。もう二割の線は消えちゃったんだろうと思うんですけれどもね。そういうふうにお認めにならざるを得ないところに私は論理を展開をしてきたつもりでいます。九割統今ないしそれ以上の水準を維持することができると、これはもう大臣も、我々の論議をお聞きになってそうお思いになっているんだろうと思うんです。しかし、お出しになった立場があるからいろいろのことを述べられる、非常に残念なことであります。私は英断をもって、やっぱり誤っていれば誤っているところを正すということが正しいし、国民はそのことを期待しているわけですから、ぜひそういう立場に立っていただきたい。  どうですか、ここで一発協議をしてやろうじゃないかということにならぬですか。論理は破綻をしているのに、あんまり固執するのもどうかと思うんですがね。
  44. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私ども、財政あるいは今後の医療、すべての面に責任を負わなければならない政府の立場としては、今申し上げましたようにこれをお願いしなければなりません。  しかし、同時に、今後一生懸命努力して、国民の皆さんの健康管理に努めていただいて、また医療費の節減や薬剤費の節減を努力していきまして、将来和田先生のおっしゃられる御意見というものを貴重であったというような方向に結果が出ますれば、またそこで当然これは給付――私ども今の厳しい財政経済の中でどうしてもお願いしなければならないということで、さらに、将来経済情勢が変わったり財政情勢が変わったり、また医療費の節減というのが先生の御指摘のようにすばらしくいい方向に進んでいけば、そこでまた私ども和田先生の御意見を尊重していける時期がやって来ると思いますが、私ども、今和田先生のお話だけで、基本的な我々の医療政策の根幹を変えるというわけにはまいりませんので、これは十年後先生と私とまたお目にかかったとき、私が先生に頭を下げるか、また先生が君よく頑張ったなと言ってくれるか、そこに残していただきたいと思います。
  45. 関口恵造

    ○関口恵造君 まず厚生大臣に、六十年度予算の編成に向かってどのような御決意で臨まれるかにつきまして、お伺いを申し上げたいと思います。  この点につきましては、大臣、けさの新聞にも出ておりますように、大分この面について御労苦をいただいたという点については、深く敬意を表するものでございます。  さらに、今回の改正案につきまして、衆議院修正によりまして本人二割負担実施時期を国会承認のときに改めるなど、関係者の御苦労を多とするところでありますが、歯科医療という観点から見ると、なお、さまざまな問題が残されていると言わざるを得ません。このような観点から、幾つかの点について御質問を申し上げます。  まず第一に、少額の医療費の場合の三段階の定額負担についてでございますが、本来医療担当者は学問にのっとり、国民に最高、最良の医療を懇切丁寧に提供することを使命としております。しかるに、現在の医療保険事務は極めて煩雑であり、膨大な労力を割いている現状でございます。ある調査によれば、月百七十時間の診療のほかに、三十八時間の請求事務をかけている実態でございますが、これに本人一部負担の導入となれば、さらに事務量が増大し、患者のための診療時間を圧迫することになります。したがって、大多数の願いは、医療担当者が患者の治療に専念できるよう、一部負担金は保険者が徴収してほしいという要請が強いわけでございます。  特に、今回の修正による軽費医療三段階定額は、歯科の実態の中で抜歯後の洗浄のみ、アマルガム充てん後の研磨のみというケースも多くあるわけでございますが、医療費は十二点と十四点、すなわち百二十円と百四十円でございまして、これについて百円の一部負担を取るということは、医療費が高過ぎるという誤解を招くこともございます。他方、歯科において自然治癒がなく、咬合機能の回復を行って初めて完結した医療となるものでございますので、ほとんどのケースは三千五百円を超えることになります。  したがって、定額制のランクについて評価をいたしますが、このような歯科医療費の構成実態に応じて歯科について特別の配慮をすべきと思うわけでございますが、大臣の御見解をあわせて伺いたいと存じます。
  46. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 六十年度予算について、大変御心配をいただいてありがとうございます。ゆうべ午後七時半からと九時半からと、二度にわたって大蔵大臣にお目にかかりまして、私は社会保障の予算というものは、特にこの年金医療といったようなものは、幾らお金がないからといっても縮減が不可能な面がある。行革の推進でどんなに削っても、これはどうしても増加は避けられない。当然増というよりは必然増と言ってもいい自然増がある。これを認めていただけない限り、もう社会保障を守っていかなければならない厚生大臣として責任を持てなくなるので、これだけはどうしても認めてほしいということを再三お願をいたしました。  大体、私の考えでは、ことしこうやって健保法の改正、また年金法の改正という大改革を先生方にお願いしておるのでありますから、来年度はそのような大きな制度改革をやらなくても、また、国民の皆さん方の生活を守っていく医療とか年金とかあるいは身障対策もございます。生活保護の問題もございます。そういう意味での国民の皆さんに対する社会保障の水準を下げるようなことがないようにして、あとはこれは行革でございますから、我々も政府の一員として削るる努力をしなければなりませんが、もう一度申し上げますと、国民の皆さんに対する社会保障の水準は下げない、また、来年度はこのような健保改正のような大きな改革はお願いしない、そういう前提で何とかこの六十年度の予算を組めるシーリングというものを確保することができたことを御礼申し上げたいと思います。  また、事務の簡素化の問題でございますが、非常にむずかしい問題でございます。衆議院で、今先生指摘のような三段階の定額制、これは事務の簡素化になるということで修正を受けたわけでございますが、これがまた、今和田先生から御指摘のような、医療分業を促進するためにどうこうというような問題が出てまいりますので、やはり事務の簡素化ということになると、四捨五入するとか、切り上げるとか切り下げるとか起こりますから、先ほど和田先生から御指摘のあったような、論理的な矛盾というものは、必ずこれは若干生じてくるわけで、大変むずかしい問題でございますが、しかし私どもはできる限り、医療機関の皆さん方が本来の医療の仕事に専念できるように、その簡素化については可能な限りの便宜は図っていきたいということで、今後行政の面でできる点で先生の御要望にこたえて努力をしてまいりたいと思います。  また、歯科の重要性も、これは私も先生に劣らないぐらいの気持ちで、今後の国民健康、元気な国民、幸せな国民、これをつくっていくために、歯科部門の重要性というものを痛感しておりますので、これから先生の期待にこたえて頑張ってまいりたいと思います。  詳細の点については政府委員からお答えさせていただきたいと思います。
  47. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 三段階の定額制が導入されておるわけでございますが、私ども確かに歯科の現実を見ますと、今先生指摘のような事態があるだろうというように考える点はございます。ただ、私ども今回の修正によりまして、三千五百円以下の医療費の回数というものを考えてみますと、医科全体で約五三%でございます。それから歯科の場合には約五〇%と、こういうことで、まあ医科と歯科とのバランスというものは大体とれておるのではないか。そして、恐らく歯科医療の場合でも事務軽減に資することになるんであろうと、こういうように考えております。  ただ、御指摘の点は確かに問題でございますので、今後の問題として、歯科医療の実態あるいは今後やはり歯科医療費というものがどういう推移をたどるか、こういうようなこともやはり考えてみなければならないと思います。したがって、そういう推移等も勘案しまして、対応すべき措置というものがあるかどうか、そういうことを含めまして検討をさしていただきたいと思います。
  48. 関口恵造

    ○関口恵造君 特に、本人一部負担の導入に当たりまして、付加給付が認められることになっておるわけでございます。これは社会保険にも同様でございますが、付加給付について代理請求の扱いは患者の福祉医療機関の事務軽減の面からこれを認めるべきであると思うわけでございますが、その扱いについて御見解を伺いたいと思います。
  49. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 付加給付につきまして代理請求を認めるかどうかという問題でございますが、私どもは、やはり付加給付をやるとすれば、一定の条件のもとで代理請求というようなものも認める方法は十分にあるんではないか、こういうように考えておるわけでございます。したがって、その代理請求の扱いをどうするか、こういうことにつきましては、私はやはり保険者と医療機関と患者の三者に関係することでございますので、十分この辺の意向というものを考えていかなければならないだろうと考えております。  したがって、これは歯科医師会等とも十分相談をいたしまして、取扱要領というものを決め、そしてそれを全国に通達をする、こういうようなことになるように思っております。私どもとしては代理請求のやり方について最もいい方法というものをこれから模索をして、十分関係団体とも相談をして取扱要領を決めていきたい、こういうように考えております。
  50. 関口恵造

    ○関口恵造君 次に、特定療養費制度についてでございますが、なお明確でない点がございますので、歯科医療に関し、幾つか確認をしておきます。  まず第一に、保険診療と自由診療の関係でございます。保険診療がカバーすべき医療はどのような範囲、水準のものであるか、御答弁をいただきたいと存じます。
  51. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 現在の歯科の医学常識というものから保険医療に取り入れる必要がある、そして、それを取り入れることによって日本の歯科医療の水準というものを向上させていく、そういうような範囲のものは、当然保険給付の中に入れるべきである、こういうように考えております。
  52. 関口恵造

    ○関口恵造君 限られた保険財政の枠からすれば、患者側の皆さんの多様なニーズや選択による医療医療サービスをすべて保険に導入していくことには無理があることは理解できるのでありますが、保険診療と自由診療との間を橋渡しするものとして差額徴収を適切に位置づけていくことが適当であると存ずるわけでございますが、歯科における差額徴収の問題について、大臣の見解をお伺いいたします。
  53. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 医療技術の進歩や患者ニーズの多様化に対応し、保険診療と保険外診療との調整を図る上で、今回の特定療養費制度は有効な手法であることを今政府委員からお答えしました。  他面、その適正な運用は保険診療の確保を図る上で欠くことのできないものでございます。このため、特に技術料差額についてはさまざまな御意見のあるところでございますが、私もいろいろ実情を聞いておりまして、先生方のお話、なるほどなとうなずかされることが非常に多いのであります。  今後中医協において幅広く御審議をいただき、その結論を踏まえて先生方の期待にこたえるように努力してまいりたいと思います。
  54. 関口恵造

    ○関口恵造君 特定承認保険医療機関について、大学病院を主として考えているようでございますが、歯科医療の現場からは、例えば練達のすぐれた専門医療技術を持つ医師グループが地域においてチームを組み高度な総合医科診療に当たるようなケースについては、特定承認医療機関としての要件を備えていると思うが、このことについての御見解を伺いたいと思います。
  55. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私ども、特定承認保険医療機関としての要件につきましていろいろ検討をいたしておりますが、やはり人員と設備というようなものについての基準というものを考えていかなければならないだろう。そういう観点から、一番ティピカルに頭に描かれるのは大学病院だということで、大学病院を念頭に置いております。しかし、先生指摘のように、いろいろ大学病院に相当するようなスタッフを充実したり、あるいはそれにまさるとも劣らないような設備、施設を持っておるところもこれはかなりあるのではないかと、こういうように考えております。  したがって、その辺をどう取り扱うかということにつきまして中医協における審議というものをお願いをして具体的に検討をしていきたいと思います。その具体的な検討の中で、今先生指摘のような点は十分検討をさせていただきます。
  56. 関口恵造

    ○関口恵造君 保険医療機関の再指定拒否の規定についてでございますが、歯科医療担当者の間では、規定が乱用され善良な多くの歯科医師が安心して保険診療に携われなくなるようなことがあってはという不安を感じております。  国民皆保険のもと、医療機関であることは保険医療機関であることと同義であり、保険医療機関でなくなることは生活権を奪われることにもなりかねないわけであります。一部の心ない医師、歯科医師の行為によって大多数の善良な医師は大きな迷惑を受けておるわけでございまして、このような悪徳医師と言われるような人には、医療担当者自身が、また、医療の学術専門団体みずからが自浄作用によって是正を図っていくことが基本であるべきだと思います。  この改定規定について十分に運用に留意し、ニアミスの生ずることのないよう細心の配慮を望むものでありますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。
  57. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生のお話、全くそのとおりでございます。そのような御心配が起こらないように、行政の責任者として最大の配意を払って、慎重にこれを執行するように努めてまいりたいと思います。
  58. 関口恵造

    ○関口恵造君 次に、診療報酬に関連する問題について若干伺いたいと思います。  歯科医療には自然治癒がなくしかもハンドメイドであり、予防、早期治療は極めて重要でございます。そのような面から見ると、また国際的に見ましても、歯科技術料の評価が極めて低く、その見直しと適正評価が急がれておるわけでありますが、大臣の御見解を伺いたいと存じます。
  59. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 診療報酬は、中医協で各診療行為間の点数の権衡やまた全体として保険医療機関の健全な経営が確保されるようにと、こういうことでお骨折りをいただいて今日に至っておるわけでございます。  しかし、これは個々の点で見ますと、国会でも何回か私質問を受けたのでございますが、一つ一つ取り上げてみると、本当にこんなに低い技術料で歯科医師の先生方よく頑張ってくださっているなと思われるような点も幾つかあるのでございます。賃金も上がり、物価も年々上がっておりますし、歯科医師の皆さん方、これは非常に大きな労働であり、また、非常に高い技術を要する。最近は医療技術も、歯科部門においても私ども歯科医師に行くたびに目をみはらされるように進んで、先端医療とも言うべき方向に進んでおり、しかもまだ大変な労働を要するお仕事でございます。  こういう点を全体的にやはり見直していかなければならない時期に来ておるのではないかということを私は今痛感をしておりますので、国会先生方のお気持ちを十分尊重し、また、中医協の審議等を見守って、できる限り御期待にこたえるように努力してまいりたいと思います。
  60. 関口恵造

    ○関口恵造君 歯科診療においては、点数表の解釈において種々の制約がありまして、また、歯槽膿漏症の治療指針も非常に陳腐化し、歯科医療の実態に合わないものとなってきております。  歯科医療担当者、学術専門固体の意見に耳を傾け、実態に合った適正なものとなるようこれらの制約は撤廃、改正を行うべきであると思うが、この点についての御意見を承りたいと存じます。
  61. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 歯科の診療報酬の評価につきましては、ただいま大臣が申し上げましたとおりでございまして、中医協における審議で、今先生が御指摘のような不合理というものは是正をしていく必要があると考えております。  それからまた、歯槽膿漏の治療指針につきましては、大体歯槽膿漏という名前からおかしいそうでございまして、歯科医師会、それから関係の学会等から改正が要請されておりますので、御意見を聞きながらひとつ検討をさしていただきたい。成案がまとまれば中医協の結論を待って改正をするつもりでございます。
  62. 関口恵造

    ○関口恵造君 この際、さらに幾つかの問題を指摘し、適切なる対応をお願いいたしたいと思います。  歯科医師の養成対策の見直しについてでありますが、厚生省文部省との間で十分連絡を図り、適正なものとなるよう計画的に対応してほしいと思うわけでありますが、現在どのようになっておるか、また、医療保険の立場からこの問題をどのように考えているかについてお伺いいたしたいと思います。
  63. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 御指摘のございましたように、現状の養成数のままに推移をいたしますと、昭和七十五年、二十一世紀の初めには人口十万対八十一人程度となる、そういう推計がございまして、その後さらに増加することが確実でございます。このため、今後の適切なる歯科医師数の検討をいたしますために、将来の歯科医師需給に関する検討委員会を設けまして、お話にもございましたけれども文部省にも御参画をいただきまして御検討をいただいておるところでございます。  検討に際しましては、今後の地域医療や疾病構造の変化、医学医術の進歩等、歯科医療需要の動向を踏まえまして、適正な歯科医師数について幅広く御検討をお願いしておる、こういう事情でございます。
  64. 佐藤國雄

    説明員(佐藤國雄君) ただいま厚生省の方から御答弁がございましたけれども文部省といたしましても、厚生省に置かれました将来の歯科医師需給に関する検討委員会の方に参加をいたしておるわけでございますが、従来から、これは昭和五十六年当時からでございますが、文部省厚生省事務レベルで検討を進めてまいった結果でございます。  私どもも、この検討委員会の結論をも勘案しながら、また、歯科医学の教育、こういった面を考えながら、各大学の状況を見て一層歯学教育を発展させていく、充実させていく、こういうような観点から慎重に対応してまいりたいと、こう考えております。
  65. 関口恵造

    ○関口恵造君 歯科医師養成施設については、国庫負担の大きい国公立からまず定員削減対策をとるべきだと思うわけですが、この点についてはいかがお考えでしょうか。
  66. 佐藤國雄

    説明員(佐藤國雄君) ただいま申し上げましたように、厚生省の方でこの検討委員会がただいま動いておる状況でございます。私どもといたしましては、この検討委員会の結論を踏まえまして、先ほど申し上げましたように、歯科医学教育、この全体の展望というものを持って適正規模につきましても対応していきたい。したがいまして、現在の時点では入学定員の削減が必要であるかどうか、これはまだはっきり決まっておりません。また、必要であるならばどの程度の削減が必要なのかと、こういった点もあるわけでございまして、削減する場合の設置者別の分担につきましてはまだ検討を進めていないというのが現状でございます。
  67. 関口恵造

    ○関口恵造君 歯科医療の水準を高めていく上では、行政当局の専門技術のレベルを確保することが極めて重要でありますが、歯科関係の医薬品、歯科材料等の許可、承認等の重要な役割を担います業務局に歯科医師がいないことは問題であると思うわけでございます。この点についての特に配慮を願いたいと思うわけでありますが、御答弁を賜りたいと存じます。
  68. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 歯科用薬剤あるいは歯科材料の許可承認に当たりまして、歯科領域の専門家の知識が重要な役割を果たしているということは先生おっしゃるとおりでございます。  ところで、私ども歯科用薬剤、歯科材料を新たに承認するに当たりましては、先生御案内のように、中央薬事審議会に諮ることといたしております。中央薬事審議会は、各領域の専門家によって構成されておりますが、多くの調査会に分かれておりまして、歯科関係で申しますと、歯科用薬剤調査会、それから歯科用調査会、これは歯科材料の関係でございますが、こういうものがございます。歯科用薬剤調査会につきましては、七名の委員によって構成されておりますが、歯科医師の先生が五人入っておられます。それから、歯科用調査会におきましては、六名の委員で構成されておりますが、歯科医師の先生が五人入っておられます。こういった先生方の専門的な意見を十分反映いたしまして承認等を行っておるわけでございます。  実際問題といたしまして、今の定員事情で常勤の職員を置くということはなかなか難しいわけでございますが、今後とも歯科用薬剤とか歯科材料につきましては、こういった専門の先生方の御意見を十分反映して、誤りのないような形で進んでまいりたいということでございます。
  69. 関口恵造

    ○関口恵造君 衆議院社労委におきまして出されました附帯事項におきまして、医院経営の基盤の安定とその環境条件の整備について努めるとありますが、行政当局はこの点についてどのようなお考えを持っておられるのか、基本的な考えについて伺いたいと存じます。
  70. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今先生からお話しがありましたように、衆議院の社労委において、「医療機関における健全かつ安定的な経営の確保のため、経営基盤及びその環境の条件整備に努めることとし、医業経営が薬価差益に依存することのないよう関連制度の改善に努めること。」という附帯決議をちょうだいいたしております。  実は、私も厚生省をお預かりして、国民の健康を守るというのが厚生省の仕事でございますから、そのためには、やはり第一線に立って、直接国民の健康を守る立場に立っておる医療機関の経営の基盤、これは医師、歯科医師全く同様でございますが、その診療所、病院、この経営基盤の安定なくして国民の健康を守れないという考えに立ちまして、今度二十一世紀に向かっての厚生省医療政策のあり方を世に問うたわけでありますが、その中にも特別に項を起こしまして、「医療機関の健全経営の確保」ということで、「医療の特質に応じた税制、金融措置及び医療機関の経営効率化の促進」というものを我々の大事な政策にうたったわけでございます。  したがって、これからやはり国民の健康に対する関心はますます高まり、それにこたえなければならない政治や行政の務めはますます大きくなってくるのでありますから、医師の皆さん、歯科医師の皆さん、また薬剤師もございます。その他の皆さんもございます。やはり医療機関の皆さん方、そこで働く皆さん方が安心して、誇りを持って国民の皆さんの健康を守っていけるような基盤づくり、これは厚生大臣としての私の務めであると痛感をいたしまして、この法案を通していただきましたら、すぐにその仕事に取りかかって、二十一世紀の将来にわたって国民の健康を守る医療機関で働く医師の皆さん、歯科医師の皆さん、またその他の皆さん方が安心して、誇りを持って働いていけるような経営基盤の安定、そのための施策を実行してまいりたいと思います。
  71. 関口恵造

    ○関口恵造君 まだ二、三ございますが、時間の関係で、高額医療制度等につきまして申し上げます。  衆議院で現行五万一千円の据え置きとなったことは評価できますが、さらに支給方式について、現行の個人単位から家族単位に変更するとか、一カ月単位から複数の月にもまたがっても可とする暦月方式の変更についても考慮をお願いいたしたいと思っております。受益者の負担の軽減を図るようお願いしたいわけでございます。  最後に、歯科医療担当者として、事務簡素化が目下の最大の急務でございますが、本人一部負担の導入、退職者医療制度の導入等々、ますます複雑化し、その事務に対し診療が圧迫され、この増大する事務に対応するために窓口の受付事務員を雇わなければならない。そのために人件費を払うのであれば一部負担金の受領を遠慮しようという声もあるような、このような混乱に至らないように、行政当局においてきめ細かな対応を求めて質問を終わりたいと思います。よろしくお願いいたします。  ありがとうございました。
  72. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 冒頭に、健康保険法の審議に入る前に、どうしても解明したい問題がありますので、それを問題にします。  先日七月二十五日、私どもの部屋に、「年金法案は今国会で是非成立を図る必要がある。 仮に成立しなかった場合次のような問題がある。」という囲みの表題で、怪文書が配付されました。あえて怪文書と言うのは、何の署名もない文書でありますから怪文書と言います。この点を問題にしたいと思います。これはある意味では、行政府と立法府のかかわり合い、突き詰めれば議会制民主主義のあり方にもかかわる問題であると思いますから、健康保険法の審議に入る前に、厚生省の、あるいは厚生大臣の明確な返事をいただきたいと思うからであります。  まず初めに、この文面を見る限り、厚生省以外こうした文書を出すところはない、こう思うんですが、厚生省の一体だれがこの文書を作成したのか、だれがこの文書に対する責任を持つのか、その点を明らかにしていただきたい。
  73. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) お尋ねの文書の件でございますが、私ども、今の国会年金法の改正提案さしていただいておるわけでございますが、今の国会でぜひともこの法案を成立をさしていただきたいという切なるお願いからこの文書を作成をいたしまして、私ども年金局の職員が手分けをいたしまして関係の先生方のところにお願いに上がったそのときの文書、資料でございます。  やり方等におきまして適切でない、大変配慮を欠く点がございましたことを重々おわびをさしていただきます。
  74. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 的確に私の答弁に答えていただきたいと思います。私は、何も言いわけを聞いているんじゃない。だれの命令によって、だれの責任によってこの文書がつくられたのか、あるいは、だれの責任によって配付をされたのかということを聞いているんです。
  75. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 私の責任でございます。
  76. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 年金局長の責任によってこの文書がつくられ、年金局長の責任においてこの文書を配付させたということでよろしゅうございますか。
  77. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) よろしゅうございます。
  78. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 厚生大臣にお伺いしますが、厚生大臣は、年金局長がそのような、今説明されたような文書をつくり、そしてこれを配付するということを知っておられましたか。どうですか。
  79. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私ども、今度の国会にいろんな法案をお願いしておりますが、特に健保法の改正年金法の改正、これは大きな目玉でございまして、ただ、衆議院の社労で健保の御審議をちょうだいしておる時期にこれまた年金のことをお願いするということで先生方を混乱させてはということで、衆議院の社労の審議中は余り年金局の活発な活動というものは、慎重にしていただいたわけでありますが、衆議院の社労で健保法を通していただいたので、今度は、衆議院の社労の先生方に年金のお願いを一生懸命したい、それはよかろうというような話はした記憶がざいます。
  80. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 結論として、大臣は知らなかった、こうした文書を配付することについても協議はなかったというふうに理解してよろしいですか。
  81. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 年金局長が、これから先生方に年金法を通すようにお願いに上がりたいということを私は許しておるのでありますから、具体的にこの資料の作成を知らなくても、最終的な責任は私にあると思います。
  82. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 厚生大臣に責任があると、こうおっしゃられたので、それでは、厚生大臣の責任において今からお尋ねをいたします。  「年金法案は今国会で是非成立を図る必要がある。」これは年金局長の意思として書かれたのか、厚生大臣の意思として書かれたのか。その点いかがですか。
  83. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは私の責任で今国会年金法の改正を提出いたしました。先生御案内のように、今後の年金統合合理化、また、二十一世紀に向かっての揺るぎない年金制度というものをつくり上げていくためには、一日も早くこの制度改正に出発したいということでお願いしておるわけでございます。
  84. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そこまで厚生大臣がおっしゃるなら、なぜこの文書には厚生大臣の署名をはっきり入れて我々に渡されないんですか。
  85. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これ、後でいろいろ聞いてみますし、調べてみましたが、先生、ぜひ御理解いただきたいと思いますのは、私なども大臣になる前、国会委員長とか国対の責任者とか、そういうものをやっていますと、いろいろ法案の説明に役人の方が参ります。ところが役人というのは説明が下手なものですから、いろいろくどくど説明されてもなかなかわかりにくい。こっちもまた忙しいと、こういうことで、何か紙に書いたものはないかと、今君らの言ったことをきちっとメモにして持ってこいというようなことをよく言うのであります。やっぱり説明を聞いても紙がないと何か頭に入ってこないというようなことで。  今回の場合も、ここに厚生大臣とか年金局長とか、厚生省とか入れなかったのは、紙を配付することが目的でなくて、年金局の職員が先生方にお目にかかって年金法の改正の必要性を説明する場合の参考資料として、やっぱり先生方に御理解をいただくのには、こういう紙があった方がいいと、いわば私はこれはメモだと思いますが、年金法の改正の必要性についてのメモがあった方がいいということで考えてつくったものでございまして、したがって、年金局の職員が先生方に説明を申し上げるときに、紙に書いたものはないかというときに、こういうふうですということで必要によってメモを出すようなものですから、そこにあえて署名等というものの必要はなかったと考えて、これは行き過ぎではございましたが、やはり年金局の職員たちにしてみれば今まで一生懸命年金法の改正に努力してきて、この改正法を国会でどうしても先生方の御理解をいただいて通したいという熱意の余りの勇み足ということで御理解を賜りたいと思います。(「了解」と呼ぶ者あり)
  86. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、そこは了解しても私は了解しません。  大臣、そこまで言うのなら、なぜ参議院の本会議中に職員が配って回ったのですか。本会議中といったらだれもいないでしょう。そのときに、これよろしくお願いしますと言って、封筒に入れて、名刺つけて渡す。あるところはポストに入れる。怪文書でなければ何ですか、それは一体。一々局長説明に回って、この文書を示してよろしくお願いしますと言われるなら、それは局長の仕事として私たちはそれなりの対応をします。本会議中に、議員がだれもいないときに、職員が回って勝手にポストに入れる、あるいは秘書に名刺を渡してこれをよろしくお願いします――これをと言ったって、封筒に入っていて何が入っているかわからぬ。あけてみたらこれが入っている。  そんなことじゃないんですよ。私は、これは、やはり行政のおごり高ぶった態度ですよ。関西弁で言えばなめとるんですよ、我々立法府を。どうですか、この文章の書き方。年金の法案は成立する必要がある。仮に成立しなかったら次のような問題がある――成立させるかさせないかは立法府の仕事でしょう。それを厚かましくも、一つ一つにわたって、「六十一年四月実施が不可能となる。」とか、これができなければ「次のような深刻な事態が生じる。」とか、「今回の改革の目標の達成は困難となる。」とか、「関係者の強い期待が裏切られる。」とか、まるで立法府に対する脅迫まがいのこんな文書を出して、僕は、そんな厚生大臣の言っているようなことじゃない。だから私は初めに言いましたように、これは立法府と行政府の関係にかかわる問題で、越権行為である、そういう意味で、自民党の皆さん方がどう納得されようと、私は一議員として納得できぬ、こう言っているんです。  そしてまた、行政府の立法府に対する侮辱ですよ、こんな内容の文書を無署名で投函して。そういうことが通ると、こういうことだったんですか、長年の自民党の単独政権のその中で。立法府は行政府の意のままに動くんだと、動かない方がおかしいんだというふうな言い方じゃありませんか。私は、参議院に籍を置く一人の議員として、こんな許しがたい侮辱を黙って見過ごすことはできません。  しかも、当委員会は今健康保険法という最重要法案を全国民注視の中で審議をしているんでしょう。その審議をしている委員に対して、年金法を早く成立させろ、させなかったらこういうことになりますぞとは一体何ということですか、これは。年金法の審議なんて、衆議院で始まったばかりじゃないですか。我々に一体どうせいと言うんですか、行政府は。私は、このような脅迫まがいの文書で、厚生省に侮辱されて、そして健康保険法を早く上げなさい、いつまでかかっているんですかと言われるような状態の中で、健康保険法の審議をする気になりません。  厚生大臣、あなたがこれを書かしたと言うのなら、あなた責任をとってください、こういうものを出したことについての。私が言っているように、参議院に対する侮辱ですよ。それから行政府の立法府に対する越権行為ですよ。それからそれぞれの議員に対する脅迫ですよ、これは。あなたの責任あるひとつ答弁を聞かしてください。そうでなければ私は絶対に質問をしません。どういう責任をとってくれますか。
  87. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、私の聞いたところでは、衆議院で健康保険法の審議を終結させていただいて参議院に送付されました。衆議院の方では、今度は健保から年金法の審議をちょうだいしなければならないので、衆議院の社労の関係の先生方に、年金局の者が説明やらお願いに伺ったということを聞いておりましたが、参議院にもまるで郵便ポストに投函するようにしてこれが配られたということであれば、これはちょっと行き過ぎであり、ちょっと軽率であったと思いまして、これらの点は私も厳重に注意をしなければならないと思っております。  ただ基本的に、私どもこのことが先生方の――私も国会議員の一人でございますから、先生方の審議権を行政が束縛するというようなことであってはこれ断じてなりませんし、そういうような誤解を生むような行為のあったことに対しては心からおわびを申し上げます。
  88. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 大臣、私はさっきから言っているように、大臣衆議院と同じようにわびてもらって私は納得したくないんですよ。このことの事務を執行した、具体的にそういうことを執行させた人の責任をとらしてください。
  89. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 行き過ぎのあったことに対してはよく調べて注意したいと思いますのでお許しをちょうだいしたいと思います。
  90. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 注意じゃなくて、責任をとらせますと言ってください。
  91. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 厚生省全体の責任は私にございますので、よく調べた上でこれらの行き過ぎのあった行為については今後このようなことが二度とないように私から厳重に注意をいたしますので、御勘弁を賜りたいと思います。
  92. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 今の答弁は不満です。――責任をとると言ってもらいましょうか。これだけの侮辱を参議院にしているじゃないですか。社労委員会にされているじゃないですか。
  93. 石本茂

    委員長石本茂君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  94. 石本茂

    委員長石本茂君) 速記を始めて。
  95. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今申し上げましたように、私ども理解では、これは衆議院のこれから年金法を審議していただかなければならない社労の関係の先生方に、年金局が年金法の内容等の説明やらお願いを申し上げるためにこの文書を作成し、そして御説明にお伺いしておったというふうに私どもは考えておりましたが、今先生からお話しのように、まだ健保法の審議も済んでいない参議院の先生方にまで、またさらに、私どもは役所の者が先生方に御説明を申し上げるときの参考の資料としてこれができでおったものと解釈しておりましたが、それを投函するとかいうようなことで、先生方に誤解を招くような行き過ぎの行為があったことについては、これは厚生省全体をつかさどる大臣として、厳重に注意をいたして、今後二度とこのようなことで先生方に御迷惑をおかけしたり誤解を招くようなことのないようにいたしますので、お許しを賜りたいと思います。
  96. 石本茂

    委員長石本茂君) それでは、質問の途中でございますが、もうお昼の時間にもなっておりますので、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時五十分休憩      ―――――・―――――    午後一時二分開会
  97. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  連合審査会に関する件についてお諮りいたします。  臨時教育審議設置法案及び国民教育審議設置法案について、内閣委員会に対し連合審査会の開会を申し入れることに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  100. 石本茂

    委員長石本茂君) 午前に引き続き、健康保険法等の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  101. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 午前中の怪文書問題の責任の所在について、厚生大臣から明らかにしていただきたいと思います。
  102. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今回の年金局職員による文書の配付については、適切を欠く点があったことは既にお答え申し上げたとおりであります。特に、現在年金法案が衆議院において審議されている段階において、参議院の関係議員の先生方にこれを配付したことはまことに遺憾であります。  この問題に関する年金局長の責任については、私の判断において厳正に処置をとるつもりであります。
  103. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 今の大臣答弁で、私は一応この場は納得して、質疑に入ることにいたしますが、厚生大臣に篤と要望しておきます。  行政府である厚生省が、一々国会審議の中身についてあれこれと言及をして、そして越権行為にわたるようなことを、しかも局長の職にある人が我々議員に対して、まさに侮辱とも受け取れるようなこうした文書をつくったこと等々、その基本は議会制民主主義というものを厚生省の役人がないがしろにしたというところにあって私は怒ったわけでございますから、厳正にその責任をとらしていただきたいということを強く要望して質問に入ってまいります。  政府健康保険法等の一部を改正する法律案を見ますと、人口の高齢化、疾病構造の変化、医学医術の高度化などを踏まえつつ二十一世紀に向かってどう国民の健康を守るのかという視点よりも、いかにして保険に対する国庫よりの支出を減らすのかという面にのみ終始しているというふうに私には思えます。確かに経済成長が鈍化している中で、本格的高齢化社会を迎えなければならないことは明らかでありますが、政府の言う医療費の適正化、保険給付の見直し、負担の公平化などのみで事態を処理しようという態度には納得がいきません。例えば、一〇〇%所得を捕捉されているサラリーマンに一割あるいは二割の自己負担を課することはもってのほかであると思います。このような自己負担をしなくとも保険制度としてやっていけることは、本委員会において我が党の和田静夫委員の繰り返しての質問、意見の中で既に明らかであり、政府も一応その論理の正しさを認めておられるように思います。私は、この意味からも、今回この健康保険法改正には反対の立場で、質問をこれから続けてまいります。  現在でさえ国民は、差額ベッドや付添料など、保険外負担の重圧に耐えかねています。この上さらに負担を強いることを私は許すわけにはいきません。そればかりか、我が国医療制度は、健康増進、予防、リハビリテーションなどの視点に欠け、点数出来高払い制は、長い待ち時間と短い診療、薬づけ、検査づけなどを生み出し、加えて、もうかるところへの自由開業医制は、幾ら医師を養成してみても、それが都市に集中し、僻地、離島などの無医地区はいまだに解消されず、医療の機会均等すら保障されていない現状にあります。  さらに、もう一つ強調しておきたいのは、いやしくも国民の皆さんに負担を求めたいというのであれば、現行医療供給体制、特に医療機関における人権侵害や不正行為の一切に対し、完全にこれを一掃する措置が講ぜられなければならないと私は思います。これが前提条件にならなければなりません。しかし、こうした基本的な前提条件抜きで、今国民に負担を求めるこの健康保険法が審議されておるわけでありますが、私から言わせれば、問題の主客転倒が甚だしいと言わざるを得ないと思います。したがって、私は社会労働委員会、決算委員会等を通じて、今までも精神医療の問題を中心に論議をしてまいりましたが、その中でも人権侵害や医療機関の不正行為の問題も取り上げてまいりました。  そこで、まず大臣にお伺いをしますが、医療機関における数々の人権侵害やあるいは不正行為、こうした問題を一掃する、そうした厳しい政府の態度、措置、そういうものがここでお約束いただけなければ、この健康保険法の審議も結局二十一世紀の医療の適正化を展望してみても、これは何ら効果を持ち得ないものになると、こう思いますので、再度医療機関における人権侵害や不正行為をこれから一掃していくという強い決意を最初に表明をしておいていただきたいと思います。
  104. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ただいま本岡先生から、医療機関における人権の問題と、また、その医療機関の社会的責任について御指摘がございました。全く同感でございます。私ども医療機関において人権侵害や不正行為があってならない、これは先生に負けない強い気持ちを持って今後努力をしてまいらなければなりません。このような人権侵害や不正行為を一掃するために、医療監視、精神病院における実地審査、保険の指導監査等の充実等、より一層努めてまいりたいと存じます。
  105. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 大臣のそういう強い決意にもかかわらず、医療機関の、特に精神病院における人権侵害あるいは不正な医療行為、こうしたものが宇都宮あるいは田中、上毛等、今まで私が取り上げたものが特別なものでなく、それが一般的な状態であるということについてこれから述べなければなりません。  そこできょうは、西日本における実態の一つとして、大阪府泉南郡熊取の医療法人社団爽神堂七山病院に関する問題についてただしてまいります。  この七山病院については、歴史が古く、一六〇○年ごろ浄見寺というお寺で漢方薬を用い、精神修養を行っていたものが前身で、明治二十二年七山病院養生園となり、昭和四十六年医療法人化されたと言われています。さて、この七山病院では昭和五十六年四月に本多義治医師が就任、それまで同病院の開放化を促進してきた山崎医局長が同年六月に辞職後、いろいろな問題が表面化をしてきました。きょうは時間の関係もあり、このうちの何点かに限って伺います。  まず、この病院でも、御多分に漏れず医師、看護婦などが必要数を満たしていない中で無資格医療が行われてきています。具体的には、無資格の看護助手が昭和四十九年十一月二十一日以降二年ほど前まで、脳波をとり続けてきました。これについては、本年六月二十五日、大阪地方裁判所の八〇九法廷で行われた木村政紘医師地位保全裁判の証人調べの席上、本人がそう証言をしたとのことであります。  まず第一点は、この無資格診療の事実について、厚生省として早急に調査を行ってもらいたいという点であります。調査を行っていただけますか。
  106. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) ただいまお話しのございました点、きょうの新聞報道にもございまして、実はその内容につきましては今のところ承知をしておらないところでございます。  御指摘にございましたように、至急大阪府を通じましてその事実の把握に努め、そのような事実がございました場合には、厳正に対処してまいる所存でございます。
  107. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 次に、この七山病院医療の質について疑義がありますのでお尋ねします。  不適切な対応ミスで患者のCさんを死に至らしめたと思われる事件について申し上げます。  私の手元に、七山病院を告発する会のニュース十四号、さらにこの御本人のカルテ、そうしたものがございます。また、看護の日誌もございます。それによると、昨年九月十日、同病院に入院中であった、仮にCさんと今は申し上げておきますが、このCさんの死亡にまつわる疑義について、同病院が行っていた医療について家族が損害賠償請求を行うため、今年四月三日、大阪地裁岸和田支部鳥飼裁判官、弁護士などによって、証拠保全のためカルテを押さえたことによって事実が判明したとされています。  そのカルテによると、ここにございますが、Cさんは亡くなる前日の九月九日まで、心電図、脳波、肝機能などどこにも異常はなかった。ところが、九月六日から飲み薬のほかに、セレネースとアキネトン、これはいずれも精神安定剤あるいはまた筋肉をやわらかくする副作用どめの注射のようなんですが、これを一日二回ずつ注射をされています。九月九日に至りこの薬の副作用によって手の震えがひどくなってきました。九月九日の午後七時三十分全身のけいれんが始まった。ところが、看護婦は、けいれんが起こっているのに既に出されているセレネースとアキネトンという今までと同じ注射をして、ベッドにCさんをくくりつけています。それから三時間、けいれんで昏睡状態のまま放置されて、医師が回診で指示を出したのが三時間後の十時三十分であります。そのときの指示の内容は、アキネトンとフエノバールという注射――フエノバールというのはけいれんをとめる注射のようですが、これであったようです。そこで、お母さんやお姉さんが呼ばれて病院に十一時前後に来ましたが、何も具体的な処置がしてないので、せめて酸素吸入や点滴をしてくださいと要求をしたことによって初めてこうしたことを始めだということです。そして、このCさんは翌十日の零時三十九分死亡をしております。当直医が阪大の研修医後藤守氏三十三歳、担当医は本多義治医師ということです。  この件で間違いなく言えることは、この状態ではICUのある病院に移す必要があった、移せば一命を取りとめ得たかとも考えられるという問題であります。しかも、この対応のまずさを隠すためか、押さえられたカルテに改ざんとおぼしき跡があると言われておりますし、病院側もほぼこの事実については認めているようでありますが、変死としての届け出の有無も含め、早急にこのCさんの死亡の状況について病院側の手落ちがなかったかどうかという問題について厚生省に把握をしてもらいたい、こう思うんですが、いかがですか。
  108. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) ただいまの点につきましても、先ほどの無資格診療の有無と同様、至急大阪府を通じましてその事実の把握に努め、適切な処置を図る所存でございます。
  109. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 さらにこの病院では、今述べましたこのCさんの例ばかりでなく、昨年二月ごろBさんに対して鼻腔流動を行ったが、医師などの手違いで、胃に入るべきものが肺に入って死亡したとか、同年十月ごろ、通常電気ショック療法を行う場合は、全身の負担を減らすため薬を調整などをするべきであるのにこれをせず、Aさんに直接ショック療法を行って死に至らしめたとかいうふうな話も次々と出ております。これらについても、先ほどのCさんの問題と同様、早急に実態を調査して、死後、変死の届け出の有無があったのかどうかという問題も含めて明らかにしていただきたいと思います。いかがですか。
  110. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 御指摘のございました点につきまして、早急に調査をいたし、適切な処置をとる所存でございます。
  111. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 まだまだあるわけなんです。  さらに、この病院では、同意入院に関する保護義務者の選任についても問題を起こしています。例えば、昭和四十五年四月に措置入院をしたDさんは、昭和五十一年五月に措置解除、つまり同意入院になったわけなんですが、保護義務者に当たる母親があるにもかかわらず、保護義務者が決まるまでは市町村長が代行できるとして、昭和五十八年九月一日の退院まで七年四カ月の長きにわたって熊取町長を保護義務者にしてきています。家裁に選任を求めれば、二、三週間で保護義務者が決まるわけです。  そこで、この経過と、この病院の同意入院患者のうち保護義務者の選任が必要な者は何名で、選任されているのは何名かを含め、早急にこの保護義務者の問題についても調査をしていただきたい。いかがですか。
  112. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ただいま御指摘の点につきましては、精神衛生法の観点から適切に運営されていたかどうかの点も含めまして、大阪府を通じて至急調査をするようにいたします。
  113. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 次は、さらにけしからぬ問題でありまして、この七山病院では、患者の口用品費など預り金をめぐっても不正流用などがあるのではないかと思われます。  私の手元に、昭和五十三年末から入院をし、同五十六年半ばに退院をしたある人の預り金帳簿の写しがございます。これを見ますと、昭和五十六年二月十七日から同年五月二十一日までの間のもので、「月日」、「摘要」、「収入金額」、「支払金額」、「差引残高」の欄があって、この間の収支が記載されています。ここには、この方が外勤をして得た収入十三万五千円、生活保護法による各月の日用品費、あるいは退院時福祉事務所から支払われた十七万九千百円などが記載されていますが、問題なのは、この御本人にもわからない支出があるということです。それは、先ほど示したこの日用品費の会計の収支の帳簿の中に、「9」という記号で、各一万五千円ずつ六回と一万円ずつ四回、計十回、十三万円が天引きをされております。御本人には全然わからないのが勝手に天引きされております。  また、この病院では、年間約一億五千万から二億円に上る生活保護法による日用品費などが預り金としてありますが、これに伴う利子を別会計にしているとのことであります。もともと生活保護法に基づいて支給される日用品費、そしてそれから生じる利子、これは患者さんのものであるべきでありますが、これは別会計にして、その利子を勝手に使っている、運用しているというふうな状態がここに起こっております。  こうした問題も、今までの宇都宮病院とか他の精神病院に共通して見られる問題でありますが、この日用品費の預り金全体について、早急に監査を行って結果を明らかにしていただきたいと思います。
  114. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 御指摘のございました点につきまして、早急に大阪府を通じて調べまして、適切に対処する所存でございます。
  115. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 また、この病院は、先ほども経過で言いましたけれども、山崎医局長辞任後、木村医師解雇問題などがあったわけですが、これを機に、病院の周りをフェンスで囲んで、門を設けて、ガードマンを置いて、通行証なるものを発行して、これがないと出入りできない状態に置かれていると聞いています。まるで刑務所のような状態の中に患者がいて、人権が全く無視されている状態にあると聞いていますが、こうした問題についても調査をしていただきたい。  さらにもう一点、厚生省からもらいました資料によりますと、これも傑作なんですが、七月二十六日現在の調査では、この七山病院の医師標準人員十三名に対して、つまり十二人の医師がこの病院にいなければならないという標準人員に対して現員は十四名で一名オーバーになっているという資料をいただきました。しかし、七山病院に問題があるから再度調べよと言って厚生省に督促しますと、七月三十日に出てきた資料になりますと、今度は医師標準人員十三人に対して現員は八人しかいないということで、四日間の間に十四人のお医者さんが八人に減って、標準よりも五名不足しているというふうに資料が出てくるわけなんです。 一体これはどういうことなのか。  お医者さんの数がふえたり減ったり、突如消えたりするこの怪奇な事実、結局都道府県の調査というものがいいかげんなのか、病院がいいかげんな報告をやっているのか、お医者さんが出入りが激しくて病院に定着しないからこういうことが起こるのか、まことに不可思議な状態がここに起こっています。これは宇都宮病院でも同様のことがありました。しかし、また別に私たちが調べた資料によりますと、この病院では、実際に一週間の診療の日程を見ますと、院長は全く診療をしておりません。そして、週に三日とか、あるいは週に一日とか、週に四日とか、いろんな形態で勤務する医者がいて、これを加えても十名から十一名、これを常勤のお医者さんに換算をすると、大まけにまけても六名程度にしかならないのではないか、こう思うんですね。そうすると、この病院の現員は、標準十三に対して六名程度しかいない。そうすると、七名の不足になるというふうなことで、一体何がここの病院の医師の数の真実なのかということが全然わからぬというふうなことにもなっております。  この実態についても厚生省、面接厚生省の責任でお医者さんを面通しして、そして必要な書類と照合して、病院の常勤の医師と非常勤の医師と、それを換算したら何人になるかという確実なことを、厚生省の責任において調べてきていただきたいと思うんですが、いかがですか。
  116. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) ただいま御指摘のございました点は、お話にもございましたけれども、非常勤の常勤換算で過誤があったと、このように報告を受けておるところでございます。  そこで、宇都宮病院の事案に学びまして、さきの通知では、今もお話もございましたけれども、いろんな証拠書類できちんと確認をするように細かい指示をいたしたところでございます。そこで今日では、医師につきましては不足数五人、こういう数字になっておりますが、ただいまお話しもございましたので、さらにきちんと調査をいたし、適切な指導をいたす考えでございます。本岡昭次君 厚生大臣、この七山病院の実態についてはこれから厚生省調査をしていただくわけなんですが、私は、宇都宮病院と同じような事実がまたここから解明されるのではないかと、こう思っていますが、どうですか。  関東にも関西にも、また全国を調べると多数にこういう病院が出てくるのではないかというこの状況に対して、最初厚生大臣は、医療機関における人権問題あるいは医療の不正行為、こうしたものは厳正に対応していかなきゃいかぬ、その思いは私以上にしっかり持っているとおっしゃっているんですが、あなたの足元にはこういうものがいっぱいあるんですよ。今七山病院の問題をずっと聞いておられてどういう感想を持たれましたか。
  117. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私は、予算委員会の当時に宇都宮病院の事件が起こりまして、先生方から数々の御指摘があり、私ども調査をいたしますと、それが残念なことに御指摘のとおりの事実が次々と明かるみに出てまいりまして、非常に残念に思うと同時に、こういうことは宇都宮事件だけで終わってほしいと心から願い、また、関係の者にはこういう事件が二度と起こらないようにできる限りの努力をするように督励をしてまいったのでありますけれども、残念ながら、今御指摘をいただいたような問題が新しく発生してまいりまして、これはまだ完全な調査が済んでおるわけではございませんが、先生指摘の問題、これから関係者に厳正に調査をさせて、真実を明らかにするように努力してまいります。  私どもは、医というものは仁でなければならない、徳でなければならない、地球よりも重いと言われるとうとい人間の今、また人間の生きる権利というものを守っていかなければならない医療機関において、このようなことが起こることはまことに残念であり、また、その起こった理由等をこれから厳密に厳正に調べ、こういうことが何がゆえに起こったか、これを厳しく反省し、今後こういうことが起こらないようにするためには何をすればよいか、これを勉強してまいりたいと思います。
  118. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 きょうの私に与えられた時間の中で、大臣として、もう勉強をされている暇はありませんよ、今直ちにこれに対して具体的な対応をされなければ大変なことになりますよ、また、そのことを抜きにして健康保険法の改正なんというのは考えられること自身が間違っていやしませんかということを順次述べていきたいと思います。  それで、今月の十九日に、ジュネーブに本部を置く国際法律委員会、ICJですか、これが、このほど日本での精神病患者の人権問題についての報告書をまとめて、精神衛生法に基づく患者の強制入院、入院継続が人権侵害のおそれがあるとして、英国の精神健康審判所のような権限ある独立審査機関を設置するよう勧告をまとめて中曽根総理に書簡を送っております。その書簡はこういう書簡であります。政府は、この書簡を受理しておりますか。
  119. 太田義武

    説明員(太田義武君) お答え申し上げます。  先生から今お話しのありました国際法律委員会からの総理あての書簡でございますが、二十一日の新聞報道がございまして、早速外務省を通じまして現地ジュネーブの代表部を通じて先方の事務局に照会を申し上げ、事務局で確認を求めまして、それでその総理あての書簡の写しを入手いたしましたので、それを、二十七日に入手してございますそれを関係省庁に送付いたしております。
  120. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そうすると、この報告書は、厚生省内容をつぶさに検討され、厚生大臣にも報告されておることと、こう思います。  したがって、この報告書の中身については全文を申し上げませんが、この報告書は、宇都宮病院の患者虐待事件を詳しく検討して、医療行政当局が精神病院の状態をチェックせず、患者虐待を防止するための独立した権限ある監視機構がないことがこのような事件を生んだというふうに指摘をしております。私も、そのとおりであると、このように思っているんですが、この報告書の指摘している患者虐待を防止するための独立した権限ある監視機構の必要性の問題、これについて厚生大臣はどのように考えられますか。
  121. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 先ほど内閣参事官から御説明申し上げましたように、入手したばかりでございまして、厚生省におきましてもコピーをちょうだいしたということで、現在その文書の中身につきまして私どもとしても検討に着手をしておる、こういう状況でございます。
  122. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 現在はそれは検討中ということですか。  それでは、この報告書、中曽根総理あてに出されたこの権威ある国際法律委員会のこの文書について詳しく検討した後、どのように厚生省としては対応をするおつもりですか。それを伺っておきます。
  123. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ただいま申し上げましたように、検討をこれから行うわけでございますけれども、現在の我が国におきます仕組み、我が国の精神医療をめぐりますいろいろな諸条件等を勘案しまして、最も適切な方法でこの趣旨に沿うような努力をしてまいりたいと思っております。
  124. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 今局長答弁はそれでいいんですが、大臣にもやはり一言、これに、対応の仕方について答弁をいただいておきたいと思います。  今局長が、この報告に対して最も適切な対応をしたい、こうおっしゃいましたが、この報告の言っているのはこういうことなんです。「それほど状況が重大でない諸外国では、当該政府としては独立した委員会を設けて、精神病で苦しんでいる人々の処置や患者の権利について調査をしてもらったり、また勧告書を出してもらったりする方がよいと考えておるようであります。」、だから日本でも、我が国でも、そのような独立した委員会をつくられてはいかがですかということをここで言っているわけですね。権限のある監視機構をつくってはいかがですか、こう言っているわけで、このことにこたえていくことがこの勧告についての最も適切な対応だ、私こう思うんですが、大臣いかがですか。
  125. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今政府委員からも御答弁申し上げましたように、国際法律委員会、これは極めて権威のある国際的な機関でございますから、この御意見、今先生から御指摘のあった問題等もきわめて重要な問題であると考えますので、総合して、今後の精神衛生対策、これは私は、今回の問題を反省材料としてこれから考えていく必要というものを今日までも痛感しておりましたので、これらの御意見等をも十分に参照しながら、今後の我が国の精神衛生対策のあるべき方向、今先生から御指摘の問題等を実現すること等をも含めてこれから検討してまいりたいと思います。
  126. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 宇都宮病院事件は、精神障害者の人権の問題として、国内問題の域を超えつつあります。それは今述べましたようなところからも指摘されているわけですが、私は、この委員会でも言ったと思いますが、サンデー・タイムズとかあるいはハアッアレツ、これはイスラエルですか、こうしたところの新聞報道、また、今回の国際法律委員会勧告等を通じているわけです。  さらに、今月八日、九日、週末版のフランスのル・モンド紙が、全ページ医療関係の報道をするページの大半を使って宇都宮病院問題を報道をしているんです。このようにして報道をしています。(資料を示す)上は、これは日本の都電かあるいはまた国鉄かそのほかの電車かしりませんが、満員電車の中にすし詰めになって通勤している風景がありまして、そして下にずっとこう報道されております。そしてこの見出しは、訳してもらいますと、日本の神経症という書き出しのようであります。そしてここにずっとこう、リードですか、小見出しがありますが、これも訳してもらいますと、日本の会社の過多の厳しさが脆弱な人々を極端な精神錯乱に追いやるという解説がついていて、そしてここに、この宇都宮精神病院の問題から、なぜこのような事件が起こるのかということが非常に詳しく、日本の新聞の社説等も引用しながら書いてあるんです。  これはきのう政府に渡しておきましたから、厚生省の方もこれを訳されて内容をごらんになったと思うんですが、厚生大臣、この中身に書かれてあることは読んでいただきましたでしょうか。
  127. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 昨日、先生からの御指摘を賜りまして、この新聞も拝借をし、早速私どもなりに読ましていただいたところでございます。  最近、日本の出来事も国際社会において非常に注目を浴びている、いい意味でも大変日本的社会というものが注目されているわけでございますが、このような中身で報道されているということは非常に残念なことだと思っております。
  128. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、厚生省大臣お読みになりましたかと私は質問しているんです。
  129. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私も余り学生時代勉強をしませんので、横文字の方は得意でございませんので、政府委員の方で読んだ内容を私も聞かせていただいております。  今お話しがありましたように、我が国にとって決して名誉なことでございませんし、こういうようなことが外国の新聞に載っておるというようなことは、我々今日までの精神衛生対策に対して、厳しく反省をしなければならないことであろうと考えております。
  130. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私もこれはこのまま読めません。だから訳してもらった文を読んでいるんですが、大臣、これは要約を聞かれたのですか。それとも、大臣自身で全文お読みになりましたか。
  131. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 要約を聞かせていただきました。
  132. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それはいけませんね。やはりこれは、読んでもらわないかぬですよ。  厚生省、なぜ大臣に日本文に直した全文を渡さなかったんですか。そのためにきのう渡したんじゃないですか。
  133. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは大変恐縮でしたが、ゆうべは御承知のように午前四時ごろまで大蔵省との予算折衝をやっておったりしたものですから、政府委員も、それを要約して私に説明するという方法をとったのだろうと思いますが、私も今度はできるだけ辞書をいっぱい集めて、読むように努力をしたいと思います。
  134. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そんなこと――私はここにちゃんと訳されたものを持っておりますが、後で渡します。ゆっくりひとつ読んでください。  それで、私も日本人ですから、フランスの有名な新聞にこのように日本の状態を書かれると、一つは非常に恥ずかしいという思いと、もう一つは外国からこういう形で日本人を見られるということが、厚生大臣も二十一世紀ということをよく言われるけれども、その二十一世紀の国際社会に生き抜いていく我々として、これは国際間における大変な問題が生じてくるんではないかという一つの危機感みたいなものを日本に対して持つんですね。  例えばこんなことも書いてあるんです。男女差別のルールの現存する家や社会において低い地位や低給にとどめられている女性や、幼稚園時代から入試競争をさせられ、全時間をそれに費やされる子供にも精神障害が起こる。世代間の意見の衝突、日本的家庭の崩壊、伝統的価値の侵食、都市生活の質の低下等も強い。時には耐えがたい精神的圧迫を起こすとか、もういろいろこう、言われてみればなるほどという面もあるし、私にも、ちょっと書き過ぎじゃないかなという面もあるんですが、しかし全体として、我々が置かれている状況を間違いなく指摘されているとこう思うんです。  だから、こういうふうなものが外国のいろんなところの新聞に、私がこの国会で取り上げたのでもイギリス、フランス、イスラエル、また国際法律委員会と、いろんなところからこういうものが出されてくるんですね。だから政府としても、この問題が今から勉強しますというふうなそういう状態ではない、こういうふうに私は思うんです。世界の国際的な世論というのが、日本の会社社会の、管理社会化によるストレス社会というふうにこう見ていて、そして世界の大国、経済的意味での先進国である日本でありますけれども、人権感覚では非常に後進的であるということをあからさまに書いているわけで、しかし私は、これがやがて厳しい国際的批判に発展していくと大変なことになると思います。  明治以来我が国が、西欧諸国に追いつけ追い越せを目標に、経済的側面、技術的側面を追求してきましたが、それは達成されて年間三百兆のGNP、これはまさに自由世界第二位という状態でありますし、今後もさらに年間三%から四%の成長を遂げていくならば、二十一世紀以降、さらにもう一つのGNP三百兆円を積み上げ、それこそ六百兆ものGNPを有する国というふうになっていくという状況もそこにあるわけで、既にこの先端技術を駆使する第三次産業革命、そんなものも進行しつつあるわけです。  しかし問題は、こうした日本の経済発展あるいは第三次産業革命と言われるものが進行している、そういう日の光の当たる部分だけが問題じゃなくて、やはりこの新聞等も指摘しているように陰の部分、それをどうするかという問題であります。つまり、こうした日本の科学技術の振興、経済発展、そういうようなものについていけない、邪魔になる者を、そうした者をどんどんと置き去りにして、そして社会の中で関係のない場所にそれを収容していく、そういう状況がこの精神医療の問題の中の最大の問題である、私はそれがまた世界の各国から指摘されているというふうにこう見るんですね。  私はここで問題を、厚生省の「今後の医療政策の基本的方向」というものの中に移していきますが、「二十一世紀にわたる国民の健康と生命を守る揺るぎない保険医療制度を確立する。」、このことを厚生省は今回の健康保険法の審議に当たって医療政策の基本方向ということで言っておりますが、今進行しつつあるこうした、ル・モンド紙から日本の神経症というふうに言われ、また、この「基本方向」の中にも、精神的な面で病にかかる人がどんどんとふえていきつつあるということを、あなた方自身もその中に表明をしている。しかし、それに対して、それではその問題を一体どうするのか、どう対応するのかという問題について、何ら具体的なビジョン、方針、中身というものがないということについて、私は大きな不安を持ちますし、政府が、厚生省が余りにも無責任であるということをここで鋭く指摘をしなければならぬわけです。  具体的な問題は今から一つ一つ申し上げていきますが、全体的な問題として、厚生省が二十一世紀を目指して、今私がいろいろ長時間かけて言いましたような問題について、具体的にどのようなビジョンを示そうとしているのか。厚生大臣のように、これから考える、勉強するでは間に合わないものが現にそこにあるわけですから、まずその基本的な問題についてお答えをいただきたいと思います。
  135. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ただいま先生から御指摘ございましたように、国内問題だけではなくて、国際的な視野からも日本のこのような状況については注目を浴びているということは、私どもも全くそういうことを痛感しておるわけでございます。諸外国、特に欧米諸国、発達しました工業社会におきまして共通して味わっている中身を、日本も今味わっているという側面もありますし、また、それぞれの歴史と文化、伝統、宗教等々、いろいろそれぞれの国の固有の形でそれと関連をするような、そういう精神医療上の問題点、それぞれの国にあることも事実でございます。そこで、そういったことも十分我々としてはよく状況をキャッチし、そういったことを参考にしながら、国内の総合的な観点から最もあるべき姿を編み出してその方向に進めていきたい、こういう基本的な考え方に立っているわけでございます。  さて、ただいま先生のお話しございました、このビジョンでどういうことを考えているかということを若干敷衍して申し上げますと、日本の精神医療、諸外国との対比におきましては、地域精神医療対策という面でまだまだ伸ばしていかなければならぬ、こういう認識を一つ持っているわけでございます。それからまたもう一つの側面は、非常に重度の典型的な、端的に言いますと自傷他害のおそれのあるような、そういう精神障害者というものを中軸に据えたような、そういう意味の精神医療というものがこれまでの流れであったようにも見えるわけでございますが、今後の新しい方向としましては、もちろんそういった側面というものは引き続き重視し、保護を手厚く、人権を尊重していくわけでございますけれども、もっと広い意味の精神衛生、精神保健というような分野に目を注いでいく必要があろうかと思うわけでございます。  そのような方向へ向かって一つ一つを取り組んでいくわけでございますが、まず大切なこととしては、精神衛生相談指導体制の整備がございます。これにつきましては、現在精神衛生センターとか保健所等のシステムを駆使しまして、行政としても取り組んでおるところでございますし、その他、民間の医療機関等もそれぞれの独自の活動を逐次その方向に向かって努力をしている最中でございます。  また、高齢化社会を迎えましての高齢者におきますところの精神衛生上の問題、これはますます量的にも質的にも今後増大し、大変になっていくであろう。そういう観点に立ちましてのいろいろな地域での受けとめ方、在宅での受けとめ方、また、いろいろな社会復帰施設の整備、こういったような問題が今後我々としては大いに力を注いでいかなければならない分野である、こういうことで、ビジョンの中でもそういう柱を例示的に打ち出しているところでございます。
  136. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 今回の健康保険法の審議について政府が出された二十一世紀のビジョン、「今後の医療政策の基本的方向について」というのは、私の聞いているところでは、健康保険法を審議するために必要であるということで資料として提出されたわけで、そういう意味では、この中身が我々にはっきり理解できなければ健康保険法の審議そのものもできない。つまり、政府が何を考えているのか、どういうところに日本の医療を持っていこうとしているのかということがわからないということになると思うんですね。そういう意味で、私は精神障害者の人権と医療という問題について、政府の言う二十一世紀のビジョンをこれから具体的にひとつ問題にしてみたいと思います。もし政府が、私の言っていることについて具体的に将来の方向性が示せないということであるならば、精神医療も今の医療政策の非常に重要な部分でありまして、そういう意味で何ら将来のビジョンが示されないまま健康保険法を改正すればいいということにならないわけで、私はその問題が明らかになるまで時間をかしますから、厚生省、じっくり考えてくださいということで審議を中断したいというぐあいに思っておりますから、そのつもりで答えていただきたいと思います。  第一に、日本には今三十二万四千床を超える精神病床がありますね。これは日本の病院の病床の二〇%に相当するというんです。医療の中では非常に大きなウエートを占めております。そこに三十三万一千人が入院しているんです。だれでもすぐわかることは、三十二万四千床のベッドに三十三万一千人が入院しているということは、これはもう完全に全体として超過入院、オーバーベッドということが現にここに数字の上であるわけです。三十三万人もの人が措置入院あるいは同意入院等々によって強制収容が行われていて、しかもその人数が年々増加をしていっているんです。これを一体二十一世紀に向かってどうしようとするんですか。三十三万、三十四万、三十五万、三十六万と、精神病院に入院する人をどんどんこれからふやしていくんですか。それともそれを減らしていくんですか。減らすとすればどういうふうにしてそれを減らしていくのか。措置入院患者には一人当たり十七万から十八万という措置入院費というのが国から出ているんでしょう。一体これはどうされるんですか。先ほどのような抽象的な問題でなしに、現にオーバーベッドがそこにあって、年々一万人、二万人と精神病院の入院患者がふえているという、それをどうするんだということがなかったらビジョンもへったくれもないじゃないですか。
  137. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ただいまの先生のお話にもございましたように、現在断面で既に病床数を上回る収容をせざるを得ないというような実態があること、これも一つの事実関係でございます。その背景には、主治医の入院を必要とするという判断がもちろん基礎にあるわけでございますけれども家族、あるいは患者の関係者からのいろいろと入院へ対する希望も含めました需要というものもあるということを指摘する必要があると思います。  また反面、先ほど来申し上げております施設での入院医療というよりは、地域医療で在宅でケアをするというような方向づけ、これは先生も御案内のように、欧米諸国での近年の大きな流れでございます。また、国内におきましてもそういうような御意見というものを多々拝聴しているところでございます。このような実態の両側面がございますので、その両面を配慮しつつ、それぞれの地域ごと地域医療計画というようなことを通じまして、今後の必要な病床数を確保、システム化していくということをこれからは行っていくわけでございます。
  138. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 勘違いしたらいけませんよ。どんどんと精神病患者がふえていっているんでしょう。これを当たり前だとして、今後ふえていくことをよしとするんですか。このことは問題だとするんですか。昭和三十九年には十六万六千五百六十一人だったんですよ。それが今三十三万人になっておるんでしょう。最近を見ましても、五十五年は三十万九千人、五十六年には三十一万七千人、五十七年には三十二万五千人、五十八年には三十三万一千人と、こうなっておるんでしょう。こういうふえ方だったら、これは五十九年の統計をとったら三十四万人と、こうなっていきますわな。これをどうするのかというんですよ。  精神病患者が年々増加していくから、全部病院へどんどん入れていったらいいんだというふうにするのかしないのか。これに従って、医療費はどんどんどんどんふえていくでしょう。だから、健康保険法を改正して国民に負担を求めるんだという問題とかかわって、あなた方は医療の適正化というものを出しているんでしょう。この精神病の入院患者がどんどんふえるに任せていくというんですか。それともこれを減らしていくというんですか。このままふやさないというんですか。そういうことがいわゆるビジョンなんでしょう。今後の方向性なんでしょう。厚生大臣違いますか。それが全然ないわけなんですよ、どうするのか。
  139. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ただいま先生の御指摘の点は、なかなか一言でお答えする、また行政の立場でそれを一言でお答えするというには、いろいろたくさんの要因を含んだ問題でございまして、先ほど来申し上げておりますように、現在の医療需要と、それからまたその医療のあり方的配慮というものの両側面等を考慮しながら、地域医療計画というものの積み上げの中でそういったことを実行していくということが最も行政としては円滑な実施に向かっての適当な方法であろうと考えておるわけでございます。
  140. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それでは納得できません、私は。そんなことで、一体精神医療をどうするんだという方向も展望も何も出てこないじゃないですか。問題はこれだけじゃありませんので、全部言ってからまとめて問題にします。  第二番目に、入院医療費についても、どんどんと入院患者がふえていきますから、昭和四十九年、十年前をとりますと、十年前で三千六百五十三億円入院医療費が必要でありました。それが五十三年には六千七十四億円になって、五十六年には二倍に近い七千六十六億円にふえているんですよ。最近を見ますと、これも入院患者がふえていきますから、どんどんと入院医療費はふえてきております。恐らく五十八年度は八千億円台になっているんじゃないんですか。このままずっとふえていきますと、数年後に一兆円を超す入院費がこの精神医療の入院患者のために必要になると、こうなるんですよね。一方、全体の総医療費を十四兆五千億になってふえ過ぎだと、これを何とか抑えなければならぬということが至上命令としてあるんでしょう。それがあるならば、このようにしてふえ続けていく精神医療のこの問題を、どこに焦点を当ててどうするのかということがなければ、これはビジョンでも何でもないわけです、精神医療の問題について。これも成り行き任せですか、厚生省は。
  141. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 精神医療におきましても、一般の医療と基本的に同じ考え方に立つわけでございまして、必要な医療には対応していく必要があるわけでございます。しかし、医療費を効果的、効率的に用いていくという観点からいたしますと、精神医療も一般医療からの例外ではございませんで、御指摘のような点につきましては、この医療費の有効使用という観点に立ちまして、いろいろ考えられる施策は今後とも行っていく所存でございます。
  142. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それもだめです。  それから三番目に、先ほども医療施設福祉施設の体系の検討というのをおっしゃいましたけれども、それでは、この精神障害者の医療とそれから社会復帰等々にかかわる医療施設とか社会福祉施設というものが一体どれだけあるかという問題ですよ。  厚生省の資料では、定員六十名のデイ・ケア施設が全国で七カ所、精神障害回復者の社会復帰施設が、適所定員で三十五名、入所定員で七十名というのが三カ所あるだけ。精神衛生社会生活適応施設というのがあって、これも定員五十名、これが一カ所、合計十一カ所で定員七百八十五名でしかないわけなんです。そして民間のことは、これはさっぱりわからぬというふうなことで、精神病患者が病気の回復期になって、社会復帰する間のさまざまな社会的訓練、あるいはまた社会復帰が難しい場合にどこでどのようにして生活をさせていくのかというふうな問題等々、ほとんどこれでは、全国にこれだけのものしかないわけで、だからこれを将来五年計画なら五年計画でどれだけふやすとか、十年計画で全国にどれだけこういうものをふやしていくとか、そのことによって入院している患者をそこへ出して、そして入院患者を減らしていく、何かそういうようなものが全然出てこないわけです。  それでは、この医療施設なり福祉施設というものを、これから五年計画、十年計画等で具体的にふやしていくという見通し、そういうものがあるんですか。
  143. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ただいま御指摘のございました全国七カ所、三カ所、一カ所というようなそれぞれの社会復帰関係の施設につきましては、確かに御指摘のような状況でございますが、これはそのような形で機能を独立させた形で国が補助をして整備した箇所がそれだけの箇所数ということでございます。  先生の御指摘にございましたように、既に民間ベースでのいろいろな先覚的な実施もございますし、また、観点を変えますと、現在の医療施設あるいは社会福祉施設等におきましても、何らかそういったような機能の一部を果たしているというような状況もあるわけでございます。しかし、今後社会復帰を一層促進させるという方向に立ちまして、ただいま芽を出したばかりの施設、こういったものの全国への普及には引き続き努めてまいるわけでございますし、また、まだそういう形で整備の途上にないいろいろな施設についても、いろいろと必要な調査検討に着手をしているというようなことでございます。
  144. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それも全く具体性がありませんね。  それでは、次の問題を一遍尋ねてみます。  先ほども問題にしましたけれども、精神病院医療従事者の充足状況ですね。精神病院の場合、一般的にお医者さんや看護婦の充足率は、平均して標準の六割から七割だというふうにされておりますが、この精神病院における従事者数年次推移を見ても、例えば、昭和五十七年度患者数三十二万五千四百四十二人に対する看護婦の数は四万九百九十三人で、本来医療法に定められた基準数でいきますと五万四千二百四十人必要だということになるんですが、結局これも標準の基準の七五・五%しかいない、こういう状態であります。この精神病院の患者に対して看護婦等の数が充足していないという問題を、それは一体どのようにして充足して質の高い医療をそこで行わせるのかという問題についても全く何も言っていない。  また、医師についても、厚生省の出した資料によりますと、一病院当たり最低三人必要とするのに、常勤医師は三千四百四十六人、そしてこれを精神病院の千五百七十という数で割ってみると二・一九ということになって、つまり一病院当たり三人必要だと言われていながら、常勤医師だけ見ても単純で二・一九人しかいない。平均して基準に達していないということです。だから宇都宮病院のような少し大きな病院になれば、もう常勤医師はほとんどいないということになってきます。非常勤医師が四千七百六十五人いるといいますけれども、これも一体常勤換算をしたら何人になるかということについても具体的に把握できない。  つまり、精神病院に入院している患者が非常に質の低い医療を受けている。それをどうするのかという問題について、医師の数、あるいはまた看護婦の数を基準に充足させるために何をするのかという最も基本的な問題すら何もこのビジョンの中には出てこない。厚生大臣はこれから勉強する勉強するとおっしゃっていますけれども、しかし、勉強している間に、現にこうした質の低いところで医療を受け、そして国全体では多額の医療費がそこに供給されているという事実が進行しているわけでして、私は、今のような具体性のない答弁で、それで結構でございます、二十一世紀に向けてこの医療の問題は厚生省にお任せしますと言うわけにはいかないんですよ。どうですか。  今私の申し上げました幾つかの点について、もう少し具体的に一つ一つについて、厚生省として五年計画、十年計画、そうした内容をひとつここにお示し願えませんですか。私はそれに基づいてあるべき精神医療の問題、それを論議したいと思います。そのことは、言ってみれば、健康保険法をここに提案をして、そして、「生涯を通ずる健康づくりの推進」とか、「地域医療を確保するための医療供給体制の整備」とか、「将来にわたる医療費規模の適正化」、あるいはまた、「医療保険の給付負担の公平化」を図る、こうした事柄に一つ一つかみ合っていくと思うんです。今のような答弁では、全然そうした将来の医療のあり方の問題について論議がかみ合わない、こっちはかみ合わせようがないわけです。  私は、このことはきょう初めて言ったんじゃないわけで、先日も質問をしているし、精神医療の問題はもう三月以来ずっと質問をしている。一体どうしてくれるんですか。
  145. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 最後にお話しになりました医療従事者の関係でございますが、御指摘のございましたように、精神病院におきまして、ほかの病院と比べまして医療従事者の充足が十分ではない、残念ながら御指摘のとおりでございます。  何よりも肝心なのは、個々の精神病院医療従事者の充足について努力をすることであると考えております。医療監視等によりまして厳しく指導してまいる所存でございます。さきに出しました通知でも、特にこの医療従事者が著しく不足している病院であって、早期に充足の見込みのないものにつきましては、実地指導と相まちまして医療従事者に対応した患者数に移行するよう指導するようにいたしておりますが、何よりも個々の精神病院が充足に努力をする、これが基本であると考えております。  なお、医師を初めとする医療従事者は今後かなり大幅に増加をいたしますので、そういう努力と相まって充足が今後図られてまいると考えておるところでございます。
  146. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 質問のしようがないんですよ、私は――それでは一つ一つ答えてくださいよ。  まず、先ほど言った病床の問題から。入院患者がどんどんどんどんふえていくということについて、一体どうするんですか、成り行き任せなのですか、これは減らす方向に将来措置をしていくのですか。――そんなことも出せないで審議しろと言っても審議できないじゃないですか。そんな方針もないままやっているんですか、厚生省は。
  147. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) お答えいたします。  精神医療におきまして、精神医療で扱う患者の範囲というものにつきましても、時代とともに引き続き拡大の方向に向かっていくと思われますし、先ほど申し上げましたような定型的な精神障害から精神保健というような分野までの拡張等、今後の精神医療につきましては、質的にも量的にも、ますます需要は増大していくことは想定されているわけでございます。ただ、これを施設でどのように受けとめるか、地域でどのように受けとめていくかというのは引き続く課題でございまして、これは、何かの結論を待ってからそれに従ってやるという性格のものでなくて、常に現在の実態を動かしながらまたそういう方向意識を持って進めていくという性格のものだと考えておるわけでございます。  今後の方向としては、あくまでも地域医療、在宅ケアというような方向というものをより重視して取り組んでいく、それが結果的には、現在入院患者がふえる一方ではないか、あるいはそれに対応する病床がどんどんふえているではないかと、こういう御指摘に対する一つの答えになるんではないかというふうに考えておるわけでございます。  ただ一方、高齢者人口の急速な増大に伴いまして、そういった方々の持つ心身の特性ということからいたしますと、非常に慢性的に病床をふさぐというような傾向も今後出てくるわけでございまして、その両方の兼ね合いでございますので、今後ふやすべき、減らすべきというのは、まだなかなか一義的にはお答えできる段階ではないということを御説明申し上げておるわけでございます。
  148. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そうすると、今我々は医療費の問題なり医療体制の問題を健康保険の中でいろんな角度から論議しているんですが、精神医療の問題については何ら具体的な内容を持ち合わせていないということに私は結果としてなると思うんですね。  厚生大臣、どうですか、そういうことで、あなたは勉強したい勉強したいとおっしゃっているけれども、勉強するんじゃなくて、具体的にどうするかという問題について何ら私たちの前に示されないということですね。こういう点は、あなたは主管の大臣としてどのように思われますか。事務当局は全然示せないと言うんですよね。この今の現状について、将来どういうふうに日本の精神医療のあり方を持っていこうかとするその具体的な問題について、何ら方針、方向性というものを持ち合わせていないということが、今具体的な答弁の中ではっきりしてきているんですが、これはどう思われますか。
  149. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 精神衛生対策は、残念ながら我が国は西欧の先進国に比べておくれておるようでございます。また、戦後の施策等についても、今数々の御指摘をいただくような結果になっております。  考えてみますと、戦後我が国は、先ほども先生からお話しがありましたように、経済やかなりの分野で西欧の諸国に追いつき追い越せということで非常な発展を遂げてきたわけでありますが、その中でこの精神衛生対策がおくれておった。その結果、文明危機になってくればくるほどこういう問題がいろいろ社会的な問題を惹起しておる今日のような状態になっておるわけでございます。  私が最初に申し上げたように、人間の人権というものにかかわる極めて重要な問題でありますから、宇都宮病院後起こってきたこれらの問題にも対処しまして、二度とこういうことが起こらないようにということで、県を通じていろいろの指導をやってきておるわけでありますが、何かこの七カ月を反省してみますと、駆けっこより追いかけっこをしておったような感じで、先生からおしかりを受けるような状態でございますが、今政府委員からいろいろ答弁いたしましたように、現在の精神衛生法の中で、その都度私どもはその対策を進めてきたわけでありますが、やはりこの辺で思い切った計画的な対策というものの青写真をつくるべきでないかというお話もごもっともであり、あるいはおくればせながらということになるかもしれませんが、今先生から御指摘のような問題等十分に参考にさせていただいて、思い切ったこれらの対策に取りかかるように、政府委員に命じてまいりたいと思います。
  150. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私が今ここで急に言っておるんなら、それは今無理言うなということなんでしょうが、「今後の医療政策の基本的方向について(厚生省試案の説明)」というこの冊子の四ページのところに、「精神保健対策の推進」という項目があるんですね。これは、まさに今私が論議している精神医療の問題なんです。  ここに書いてある項目を見たときに、今答弁があったように、精神衛生センター、保健所及び市町村にいろんな相談、指導ができる体制を整備しますとか、精神障害者の社会復帰を進めるためのデイ・ケア施設等、社会復帰施設の整備を促進しますとか、痴呆性老人対策としてこうするとか、こう書いてある。「精神衛生センターについては各県に設置されるよう指導していくとともに、」とか書いてあるんですね、三つほど。しかし、その上の方にははっきりと、「社会環境の複雑化、人口の高齢化等により、精神的、心理的に環境に適応できない者が増加してきており、精神保健に対するニードが大きくなるとともに多様化してきている。」というふうに、ここでもはっきり、そういうものが増加している、だから精神保健に対する要求というものが大きくなるということを想定しながら、それではどうするのかということになると、何らそこに具体性がないわけです。  私は厚生省に対してこれを一つ一つ具体的に、「精神的、心理的環境に適応できない者が増加してきており、」、つまりそれは、精神病院に多くの人間が収容されていくということになる、だから、そういう状況に対して具体的に、二十一世紀に対してのビジョンならビジョンとして、どういう計画的な対応をしていくのかというものを資料としていただきたい。こう言ってもう一週間ほどたったんですが、全然出てこないわけです、出てこない。出てこないということは、ここに書くことは書いたけれども、そういうこれから起こるであろう問題に対して、厚生省は的確な具体的な内容を持ち得ないということだと僕は思うんです。だから先ほど、私の言ったことに対しても何ら具体的に答えができない。  私、突如言っているんじゃない、委員会で質問してやりとりすることがだけ仕事だと思っておりませんからね。私は日常厚生省の対応する課なり局に対して、今必要なことはこういうことではないかということを絶えず要求してきたつもりです。それに対して答弁をもらえるかと思ったら全然その答弁が示せない。私は、二十一世紀の精神医療のあり方についてここで論議しようと思っていたんです。私は、日本の精神医療はこういうやり方で進むべきでないかという自分の対案をあなたのところに示した。だけれども、あなた方からは何にも出てこない。こんなことでは審議も何もしようがないじゃないですか。  私は、このことにきちっとした答弁をいただくまで、ちょっとこの問題、審議は保留さしてもらいます。
  151. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ただいまの先生の御指摘でございますけれども先生の御提案という御指摘につきましては、メモの形でちょうだいしたものについて私どもがお答えするということでよろしゅうございましょうか。
  152. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 メモというのは、私の提案したあれですか。あの長期総合計画についてあなたが答えるというのですか。――人をばかにしなさんなよ。あなたのところのを出しなさいよ。私はこうやって出しておるんだから、あなたの方のを出しなさいよ。そんなばかなことがあるかね。私は専門家でも何でもないんでずよ。ただ、今までの質疑の中で、こういうものが必要ではないかといって出しておるものについて、あなた方が答えてどうするんですか。厚生省のものを出しなさいよ、厚生省のを。
  153. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 厚生省の考え方につきましては、先ほどの御質問にお答えしましたような基本的な考え方をとりつつ、それぞれの年度において具体的な対応をしてまいりたいと考えておるわけでございます。
  154. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それぞれの年度で具体的なものを出す、そういうことで「今後の医療政策の基本的方向」というものの説明がつくんですか。  厚生大臣は、二十一世紀に向けてあるべき日本の医療と盛んにおっしゃいます。私もそのとおりだと思う。そうであるならば、二十一世紀に向けて、今これほど問題になっている精神医療の問題について、こういうふうにして改善していきます、よくしていきますという具体的なたたき台が何で出せないんですか。これは考え方の問題ですらあるでしょう、一つは。ただ単年度単年度、そのときそのとき具体化をしていきます、そんなことでは、私はこの大事な健康保険法の審議なんてできない。
  155. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 先ほど既にお答え申し上げたところでございますけれども、例えば精神病床をどういうふうに具体的に年次計画を持っていくかというようなことは、今の医療法等の仕組みからもなかなか一方的に行政で決められる仕組みになっておりませんし、やはり先ほど申し上げましたような基礎的な医療需要の動向、それからまた精神医療のあり方というものを見定めながら、そのときどきの行政指導という形で臨んでいくのが一番現実的なことであるというふうに御説明申し上げたところでございます。  いろいろとそういう数字的に表現をする必要があるという御指摘のようにも理解したわけでございますが、全く数字がないというわけではございませんで、例えば精神衛生相談事業、これを推進していく上では精神衛生センター、保健所等で実際に活動しております精神衛生相談員、重要な役割でございますが、老人保健の事業を計画的に伸ばしていくという一環として、この点につきましては六十一年度に向かっての計画の中で、現在の精神衛生相談員に百八十名ほどを上積みしていくという計画で、もう既に三年目に到達しているというような状況もございます。  また同様に、精神衛生センターにつきましては、私どもとしては全県にそれぞれ設置をしていくべきであるという考え方に立っておるわけでございますが、現断面ではまだ設置を見ていない県も存在しておる。こういったところに個別に働きかけをいたしまして、できるだけ早い時現にその設置を促していくというようなことも具体的な計画としては今後見込んでおるところでございます。
  156. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 どうしようもないんでね――あなたの方が出さないので、それでは、私の方の出したことについて私が尋ねていきます。  こうした問題について先進的に手をつけた英国では、一九六二年に政府病院十五カ年計画を策定して、人口万対三十四であった精神病床を一九七五年に万対十八に、続いて一九六三年アメリカが、ケネディ教書で十年から二十年内に入院患者を半減させるとし、あるいはまたフランスでは、一九六〇年に地域精神医療計画を樹立しています。これらにはいろいろ長所、短所、そういうものがありますけれども、精神医療の問題で、入院患者を措置入院、あるいはまた同意入院という形でそこに強制収容をしていくという形態を解除していくという方向をとっていることは間違いないわけなんです。だから私は、我が国が、あなたの言うように、厚生省の当局のように、成り行き任せでそのときそのときの状況に応じてやったらいいということじゃなくて、長期総合計画というものを立てて精神医療対策に対応すべきでないかということで、幾つかのものを出してあなたに渡したわけなんです。  それを私の方から提案してみますと、まず一として、精神障害者の人権の問題として、その労働権を保障するという点をまず第一に掲げなければならない。二は、このために、多様な労働と生活の場を具体的に提供するための諸施策を策定実行に移していかなければならぬ。三として、先ほども問題にした、現行三十二万床を十年間で、今言った一、二を実行していきながら二十万床程度にこれを引き下げていく。さらに四として、次の十年度でこの三の結果を見て削減の計画を立てていく。五として、外来診療、社会復帰のための医療社会事業を徹底して強化をしていく五として、精神衛生法を改正して、入退院に関する本人申請による異議申し立て制度をつくり、適正手続を保障する。あるいはまた六として、行動制限規定等がありますが、こうしたものを改廃する。七に、精神医療従事者、医師、看護婦等の新しい定数基準をつくる。そして、現在のような未充足のまま放置するというふうなことのないようにやっていく。八として、通信、面会の完全な自由を保障する。そして、患者の弁護人依頼権を確立をする。それから九として、先ほども論議をしましたが、独立の医療監査制度を確立をする。それから十に、国連の障害者権利宣言、ダエス報告、今回のICJ勧告の趣旨を生かして、精神障害者の人権擁護体制を確立する。十一に、自由入院制度と開放医療への転換を計画的に図っていく。十二に、精神障害者救援人権センターをつくる。こうした事柄を柱にして、具体的に一つ一つ改善を積み上げていくということが今の日本の精神医療にとって重要であると私は思っております。  なお、当面早急に対応しなければならないこととして、一番目に、県立の精神病院をまだつくっていない県が八県もあるわけで、未設置県八県に対して早急にこれをつくらせる。二は、精神衛生センター、先ほども出ておりましたけれども、未設置県が六県ありますから、これも全県に早急に設置させる。三として、共同作業所に関し公的補助を行う。また、公的なものをつくる場合でも、小規模のものを多数つくっていくようにする。四として、社会福祉法人がこの種の共同作業所をつくる際、民間からの寄附を受けるときに、これについて免税の措置を講ずる。こうした事柄を当面の緊急の問題としてやっていく。  最低こうした事柄が、若干の将来の展望も示しながら、ここの「精神保健対策の推進」というところに書いてあるならば、それがまさにこれは二十一世紀を目指して国民の健康と生命を守る揺るぎない保健医療制度の中の精神保健対策であると私は思うけれども、ここに書いてあるような、単年度に何をするかということだけをここに列挙して、あとはどうなるかわかりません、というふうなことを示されたんではどうにもならぬということを私は言っているんですよ。  厚生大臣どうですか。私が今ずっと説明しましたけれども、私の示しました案について、どういう感想をお持ちですか。
  157. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これからの精神衛生対策のあるべき方向として、その指針として、大変に参考になる意見だと思って今承ってまいりました。本岡先生に公衆衛生局長をお願いできたら、私の答弁ももっと楽だったと思って、今痛切に感じておるのであります。  ただ先生、さっき私申し上げましたように、確かにこれは我が国の精神衛生対策が先進諸国に比較しておくれをとっておることは、私も大臣としてわずかの期間の勉強でしたけれども、これは認めざるを得ないと思います。しかし、それにはもろもろの歴史的ないろいろのことがございまして、この点は厳しく私ども反省するとともに、やはり先生指摘のように、将来の展望が極めて大事でありますから、それぞれの都道府県で――今都道府県でないところがありましたが、私、この前国に帰りましたら、福島県の矢吹町というところに県が非常に力を入れた精神病院ができておりまして、これは先生にもぜひ一度行ってごらんになっていただきたいと思いますが、これは大したものです。素人ですから私どこまでかわかりませんが、私の素人目では、こういうものがいっぱいできたらば、全国にできて、精神患者の皆さん方全部にこういうところに入っていただけたら、今度の宇都宮病院のような騒ぎも起こさないで済んだのになあと、いろいろなものがそこの中に、職業指導とかいろいろありまして、感じてきたのであります。  やはりそういう方向に向かって我々努力していかなければなりませんし、今局長、お医者さんですから、専門家ですから、私より答弁が上手でなかったというだけで、それぞれ勉強しておるので、これから、局長もこれからの対策について先生の御意見も大いに参考にさせていただくし、私どもの方もそれなりに勉強をしておりますので、これは述べさしていただきますが、そのためにも我々財政を確保しなければならない。将来の展望と同時に、まず六十年度の予算の対策も大事でありますので、ゆうべも遅くまで私どもシーリングの確保に努めてまいったのでありますが、先生のただいまの御意見まことに貴重なものでございますので、これらを指針とさせていただいて、今後、長い間の歴史の中でおくれをとってきた精神衛生対策、西欧先進諸国に負けないように追いつき追い越していくように、今後努力をしてまいりたいと思います。
  158. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 局長、今私が言いましたことの中で、今すぐできることと、今から考えてやれることと、それから意見がやはり分かれるという点、三つぐらいに分けて、今幾つか言いましたけれども、検討していただけるならひとつ検討してください。
  159. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) お答え申し上げます。  まず、労働の場を提供する、労働の保障を行うという最初の二つの問題でございます。私どもの立場としてできる最大のものは、やはりリハビリテーション対策の一層の強化ということでございまして、具体的には精神障害回復者の社会復帰施設、デイ・ケア施設、こういったものを引き続き予算の許す限り目いっぱい整備を促進していく。関係する自治体にも、そういった強い働きかけを行っていきたいと考えております。また、いわゆる職親制度を含みました通院患者のリハビリテーション事業につきましても、現在十六県実施ということになっておりますが、その拡充に努力をしてまいりたいと考えます。  それから次にベッドの問題、先ほど来しばしば御指摘でございますが、御案内のように、我が国におきましては、諸外国と一番違います点は、開設主体が公的な主体というのは総体的に非常に小そうございまして、諸外国、欧米におきましてはその発達の歴史からしましても公的機関が多い。そういうようなことで、相当思い切った政策が具体的な数値として打ち出せる、そういう背景があろうかと思います。しかし、近代的な精神医療の流れというものに十分着目いたしまして、いろいろな政策の中におきまして近代的な医療というものを取り込んでいく、その一環としては社会復帰施設の整備でございますし、社会復帰の健進のための諸施策を講じていく、そういったことがひいては必要以上に増大するかもしれない入院医療の需要というものを、そういった地域医療という方に振り向けていくというような効果は期待されるわけでございます。  それから、社会復帰のために必要な、それに従事する専門的な職員でございますが、現在既に精神衛生研究所等を中軸にいろいろな研修コースを設けておりますけれども、その引き続きの充実を図ってまいりたいと考えております。  また、精神衛生法それ自体におきまして、入退院等におきますところの異議申し立て制度等の問題でございます。また、行動制限規定等の改廃も含めての検討という御指摘でございます。私どもの考え方といたしましては、先般関係する局、すなわち公衆衛生局、医務局、社会局という三局長の連名通知によりまして、現行法の基盤の中で一層その趣旨を達成できるような指導の強化、徹底に着手しているところでございます。この指導通達を一層地域におきまして的確に実行していくことによって対応していきたいと考えているところでございます。  なお、精神医療の特殊性という観点から、どうしてもケースによりましては、症例によりましては、行動制限というものはその医療と保護のために欠くべからざる限度において必要となるわけでございますが、それをもう少しできる限り具体的に詰める必要があると判断いたしまして、既に公衆衛生審議会におきましてそのような検討の場を設けて検討に入っておるところでございます。  また、通信、面会の自由の確保という件でございます。これは非常に大切な側面であると私どもも考えておるわけでございまして、特に通信の自由というものはこれは保障されなければならない。また、面会につきましても、その患者さんの、医療保護に著しい支障を来さない範囲におきましてこれも確保していく必要があるだろう。こういったことも含めまして、先ほど申し述べました公衆衛生審議会の検討の場におきまして専門的な角度から検討に着手していただいておるところでございます。  また、国際的な組織からのいろいろな提言の一環としましての独立監査体制の問題等、非常に制度の抜本的な問題に関する御提案でございますが、この点につきましては、当面私どもとしては、現在の仕組みの中でその運用でいろいろとまだ改善を要する点もあるし、強化を図っていかなければならない点があると認識しておる関係上、そのような対応で努力をいたしたい。将来の課題として、こういった国際的な組織からの提言でございますので、その観点からは私どもとしてもよく勉強してまいる必要はあると考えておりますけれども、現在の対応としましては、現行の仕組みの中でそれのより一層内碓な運用ということで対処してまいりたいと考えておるわけでございます。  また、措置入院、自由入院というような問題も、制度の基本にかかわる部分もあるわけでございますが、やはり措置入院という制度はどうしてもみずからの保護、また他人に害を与えるということに関する保護という観点がございますので、すべてを自由入院制度というわけにはなかなかまいらぬだろうと考えております。しかし、そういう措置入院というものを軸にする一定の本人の意思によらない入院につきましては、これまでの先生からの御指摘、いろんな御論議がございますように、その根底に人権というものを尊重しなければならないということは非常に大切な観点と考えておるわけでございます。今回の三局長通知におきましても、そういった人権の尊重、保護ということについては格段の配慮を加えるようにそれを軸にしながら指導に着手をしているところでございます。  次に、人権擁護のためのセンターという御指摘がありますけれども、非常に貴重な御提言ではございますが、現在の日本の精神医療と司法との関係というのはまだまだ熟していない論議がいろいろとあるわけでございます。私どもの立場としましては、現在の精神衛生相談事業、精神衛生センター等を基軸にいたしまして、患者さんあるいは患者さんの家族、関係者、そういった方々のいろいろな御相談に幅広くおこたえしていきたいと、かように考えているところでございます。  また、いろいろな相談の窓口におきまして提起されるかもしれないいろんな苦情、あるいは問題提起という問題につきましては、一層迅速かつ適正に対処するようにそれぞれの行政部門で努力を重ねてまいりたいと思っております。  また、精神病院の未設置県、それから精神衛生センターの未設置県につきましても、御指摘のございましたように強く働きかけを行って、その早い実現を国の立場からも促進してまいるように努力をしたいと思っております。  また、共同作業所の御提言でございますけれども、五十九年度予算におきまして全国の実態把握、それに対処すべきいろんな施策を検討するというようなことに着手しているわけでございます。その調査検討の成果を踏まえて、今後の、次年度以降の施策の発展に努力をしてまいりたいと、かように考えているところでございます。
  160. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 今の私どもの案に対しても、努力する努力するということが非常に多くて、それでは一体どうするのかという問題がさっぱりはっきりしないわけですね。私の今言ったことがすべてでないし、最善、最高のものとは思っておりませんが、宇都宮病院を初めとする精神医療の今日の状況を見たときに、これを改善するためにこうした事柄をやはり考えていかなければならないのではないかという一つのテーマを出しているわけなんですが、厚生省はそれに対して、受け身に立って、それは努力します、努力しますということであっては、これはどうにもならぬね。  どうですか、厚生大臣、今このことを一つ一つ論議しておっては大変なんですが、具体的に厚生省として、私の今出した分も含めて、精神保健対策の問題についてこの二十一世紀のビジョンの中につけ加えるべき中身をこれから厚生省として考えていきます、せめてそのぐらいのことはここで言えませんか。そうでなければ、こんなビジョンの中ではどうしてもこれ解決できないでしょう。大臣自身もそう思われるんじゃないですか。それはひとつ大臣の責任で、今いろいろ私が出しました問題も含めてこれから検討をして、そうした計画をしっかりと樹立すると、こういう問題について最低ここで基本的なことを育っていただかなければ、この「基本的方向」そのものの権威の問題にかかわると思うんです。大臣にひとつ答弁をはっきりいただいておきたい。
  161. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今ごらんになっていただいておる私どもが出しました二十一世紀に向けての今後の医療のビジョン、これはいわば総論と言うべきものでございますから、役所の行政としてこれに身を入れていくためには、そこに具体的な各論がなければならないのは当然のことでございます。できるだけ早急に、先生方に御納得のいただけるような、我が国のおくれをとっておる精神医療対策、西欧先進諸国に負けないような精神衛生対策をやるためのビジョン、これを具体的に政府関係者に積極的に勉強をさせて、できるだけ早く先生方に提示するようにしたいと思います。
  162. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それでは少し観点を変えて、医療法人がつくっているトンネル会社の諸問題について伺っておきます。  これも言ってみれば医療法人が不正な診療行為なり、あるいは本来請求できない医療費を請求し、そして不当な利益を上げる。あるいはまた、精神病患者に対して十分な医療も行わずに、それをやったかのごとく医療費を請求し、また、精神病患者ということで措置入院患者には十七万とか十八万とかいうお金が毎月出る。だから、それで入院させておけば自動的にその金が入ってくる、こういう仕組みの中で不当な利益を上げている。いわば国民の総医療費というものを不当な方法で拡大をさしていく、増加させていくという側面がこの医療法人にまつわるトンネル会社の中にある、私はこのように考えて、六月の二十五日の本院決算委員会でこの問題について政府に厳格な対応をひとつお願いしたいということを官房長官に求めました。  官房長官は、内閣として検討するので、しばらく時間をいただきたい、このようにおっしゃったわけですが、この点について、厚生大臣、しばらくという時間の中でもう一カ月を経過しましたけれども、内閣としてどのような検討をしていただいたでしょうか、答弁をいただきたい。
  163. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 大変恐縮ですが、官房長官が他の委員会に呼ばれてこちもに来れないそうでありますので、私から答弁させていただきます。  医療法人の資産運用が適切かどうか、指導監査に努めていくとともに、国税庁、警察庁などの関連省庁との緊密な連携のもとに実態を解明してまいりたいと思います。  お話しの三省庁連絡会議の問題、六月二十五日の官房長官答弁を踏まえ、警察庁刑事局捜査一課、国税庁直税部法人税課等と連絡をとり、今後とも必要に応じ情報を交換すること等を確認し合ったところでございます。
  164. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そうしますと、宇都宮病院、あるいはまたこの前も問題にしました田中病院等が、医療法人でありながら、周辺にたくさんのトンネル会社を持ってそこへ利益誘導をしていたというふうな問題点について、厚生省だけでは解明できないという問題をこれから警察庁あるいは国税庁、そういうところと一緒になって、一つの協議体のようなものをつくって具体的に解明に当たると、このように理解してよろしゅうございますか。
  165. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 関係省庁で緊密な連絡をとって、その解明に当たってまいりたいということでございます。
  166. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 その解明を中心的に進めていただける方は、厚生大臣というふうに考えてよろしゅうございますか。
  167. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 医療法人の関係でございますので、厚生大臣を中心として、関係省庁と連絡をとってまいりたいと思います。
  168. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それで問題の解明の手がかりをつかむことができました。京都の十全会病院のときのように、ひとつ積極的な対応をこれから求めてまいりたいと思います。  そこで、六月三十日の新聞によりますと、リンチ死、乱脈医療などが明るみに出た報徳会宇都宮病院がペーパーカンパニーの関連合社に約十七億円の本館建築工事を発注、同社は一億円を天引きして地元中堅業者三社に工事をそっくり下請に回していた。このトンネル操作に伴い、同社は五十七年八月決算で約二千万円の所得申告漏れを宇都宮税務署に摘発、追徴されていたと報道がされています。このトンネル会社は報徳建設株式会社で、今問題になっております宇都宮病院の前院長石川氏の弟の石川裕郎県会議員が代表取締役を務めておられます。  そこで国税庁に伺いますが、この新聞報道は事実ですか。
  169. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) お尋ねの件につきましては、個別にわたる事柄なのでちょっと御答弁を差し控えさしていただきたいと思いますが、昭和五十七年度におきまして、報徳建設株式会社の修正申告の公示の所得金額は四千七百七十四万円となっておりますところから、状況は御賢察いただきたいと思います。
  170. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 状況を御賢察いただきたいということなんですが、五十七年八月決算で約二千万円の所得申告漏れを宇都宮税務署に摘発、追徴されていたという、これは事実なのですかと聞いているんですが、これを賢察せいと言われても――これが事実か事実でないのかということだけを言ってもらえばいいんですよ。
  171. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) 特定の企業の申告漏れの有無、ないしはその金額等につきましては、私ども、個別事案の内容にわたる事柄でございますので、従来から御答弁を差し控えさしていただいております。  ただ、ただいま申し上げましたように、修正申告の公示所得金額が四千七百七十四万円ということでございまして、この会社の当初の所得金額については公示をされていなかったというところから、状況は御推察をいただきたいということを申し上げたわけでございます。
  172. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 厚生大臣、御賢察してくださいということで、受たちは賢察しなけりゃならぬのですが、まあ新聞報道は事実でありましょう。  この会社は、昭和五十一年に設立されて、石川文之進医師が所有の石川ビルに入居、しかも事もあろうに現場事務所を宇都宮病院構内に置いています。しかし、自前で工事を行う能力はゼロで、こういうペーパーカンパニーが病院本館鉄筋七階建策工事を一括して報徳会から発注を受けています。工事費の六%相当をピンはねして、同市内の建設設備など三業者に再発注をして仕事をさしたということです。結局、約一億円が伝票操作で石川県議の懐に入ったということのようでございます。本館建設費用は足利銀行などからの融資でありましょうが、この返済は、病院収入、つまりこの病院に入っている入院患者によって支払われた医療費ということになってくるわけであります。特に措置入院患者が多かったこの病院では、措置入院費――国の税金がこの本館建設のために使われたということになる、それ以外に返済の方法はありません。言ってみればこの医療費を操作をして、そして同族がお互いに私腹を肥やし合っていたということではなかろうかと思います。大切な国民の医療費がこういうふうに使われているという状況であれば、まじめに医療費を支払い、負担 をしている国民の立場に立ては、これはどうしても納得のできない問題であります。  したがって、今厚生大臣も、これから各省庁協力してこの問題を解明すると言われましたけれども、早急にこの宇都宮精神病院にかかわる関連会社の諸問題について調査を進めていただきたいということを、今の一つの事例に基づいて再度要望しておきたいと思います。――厚生大臣お願いします。
  173. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 六月二十五日の決算委員会から今日まで、医療法人報徳会と、お話しのございました報徳グループと言われておる会社との取引関係につきまして、今日まで、報徳冷凍冷蔵庫株式会社から五十九年三月まで患者等の給食材料の仕入れを行っていた、株式会社三幸石油から車両用ガソリン等の購入を行っていた、報徳産機工業有限会社から病院敷地の一部を賃貸していた、報徳建設株式会社に五十四年度に病院本館建築工事を発注していた、そういうことを把握しておるところでございますけれども、帳簿書類が押収されていること等がございまして、それらの取引関係の詳細につきましてはまだ把握できておらないところでございます。  お話にもございましたように、今後ともこれらの事実の把握に努めまして、不適切な点があれば指導してまいる所存でございます。
  174. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私がただしていこうと思う問題について幾つか挙げられましたが、今、その捜査の都合上関係書類が押収されているので厚生省として手がつけられない、そういうことになるので、先ほど内閣の方で協力体制をしいて、そしてその全貌を解明してもらいたいと、こう言っているわけで、だからそこに警察あるいは検察庁、そういうものが協力すると言っているんですから、その押収されている証拠書類をそうした観点に立って解明をしていただくということでなければ、いつまでたっても警察が押収しているから解明できないできないということでは、何のために内閣でもって今後この事態を解明していく協力体制をしいていきますと言っているのかわからなくなりますから、そこのところはひとつ大臣、今のような答弁だったらどうしようもない。あなたの先ほど言われたことと今の局長答弁は完全にそごしていますよ。どうですか。
  175. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは先生から御指摘をちょうだいしたとおりでございまして、医療法人は、これ利益追求を目的としてならないということは一般常識でございますし、私も先ほど申し上げたように、医は仁であり、徳でなければならない、これは絶対の前提でございます。ところが、この場合は残念ながらいろいろの報道または先生方の御指摘、こういうものを聞くと、まさに悪徳そのもののような感がいたします。  ただ行政上の問題としては、事実究明ということによって、またそれぞれの立場の事実究明ということによってその責任を追及することになりますので、今警察当局あるいは国税当局それぞれの責任、それぞれの果たす役割の中で真相究明をしていただいておりますので、先生趣旨に従って、国税当局、警察当局と緊密な連絡をとりながら、今後、そういう悪徳は断じて許されないという厳正な態度で臨んでまいりたいと思います。
  176. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 この問題について、この次から答弁の中に、警察が書類を押収しているので手がつけられないというふうな答弁はなさらないように、ここで強く注意をしておきます。そのために官房長官が内閣でこれの調査の方法について考えようと、こういう答弁があったわけなんです。  そこでもう一件の、群馬県の田中病院のトンネル会社田中食品というのがありますが、これも大きな問題を持っています。これも新聞社の調査によりますと、患者作業でつくられた農作物を一たん田中食品に卸し、それをトンネル会社が田中病院に買わせていた。だから、同じ野菜が何日でも続いて出たとされています。どうも解せないですね。自分たちで、患者作業で農作物をつくって、それを田中食品に売って、またトンネル会社が田中食品に買わせてそれを患者が食べているというんですから、どう考えてみても二の句が継げぬというふうなことをやっているんですよね。それで、患者の作業というのはこれはただ働きをさしているんですから。  あるいはまた、上毛病院の方は、幸栄不動産株式会社というのがこの病院の中にあるんですが、看板も電話もなく、社長は同病院の中沢院長自身で、知事の、宅地建設取引業務の開設許可すら取っていない。ところが、この幽霊会社は上毛病院を所有していて、毎月二百万円の賃貸し料を病院から取っている。これも一体どういうことになっているのか。院長が両方の、幽霊会社の社長で、それから上毛病院の院長で、上毛病院から二百万円の賃貸し料を取って幽霊会社に入れている、こういうでたらめなことも今の段階でわかっているんです。  また、関西にある精神病院のトンネル会社、今の段階では名前は言いませんが、これは関連病院のレセプトをチェックをして、投薬、注射、処置等の指示さえ行って、安く大量に買いたたいてきた品物を持ち込み、値札をつけかえて高くして病院に納入する、こうしたことを業としているというようなものも明らかになりつつあります。  したがって、大量の医療費が使われて、しかもそれが本当に医療に使われるのではなくて、これをこういう悪徳者が横取りをして、そして経営者が私腹を肥やす、こういう問題を徹底的に追及してなくしていくということでなければ、医療に対する信頼は絶対に回復できない。だから私は初めに厚生大臣に、健康保険法を改正するということで国民に負担を求めるという、私たちが許すことができないことをやっているが、しかし、そういう問題を論議する前に、こうした医療の不正行為ともいうようなものが医療費にかかわって堂々と行われているという問題について、徹底的に摘発し、これをなくしていくということをやるべきだということを申しました。だから先ほどの、内閣においてこうしたトンネル会社、関連会社の問題について、宇都宮病院について調べるということでありますが、今言いましたように、田中病院、上毛病院、本委員会で取り上げたこの病院の問題もともにひとつ調査をして事実を解明していただきたいということをここで厚生大臣に要望しておきますが、いかがですか。
  177. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 承知いたしました。
  178. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それでは、一日も早く医療に対する国民の信頼を回復できるように、事実の解明を内閣の責任で行っていただきたいと思います。  それでは次に、措置入院患者、同意入院患者の問題でありますが、宇都宮病院の措置入院患者に関する実地審査の結果を念のためにここで再度報告していただきたい。同時に、同意入院患者の実地審査も行ってもらっているはずですから、この結果も伺いたいと思います。  というのは、もう御存じのとおり、入院する必要のない人間を入院させて、そしてそこで医療費を取っていたということなんですから、これはもう医療の適正化の中の最重要問題だと、こう思いますので、この問題についての結果を伺いたいと思います。
  179. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 宇都宮病院におきます実地審査の状況について御報告申し上げます。  まず、措置入院患者についての結果でございますが、百六十一名の措置入院患者につきまして精神鑑定医の実地審査の結果、要措置となったものが四十七名でございます。残余の百十四名は措置は要しない、しかし、そのうち九十八名は引き続き要入院ということでございます。それから十四名が要通院ということでございます。それで残りの二名がその他と、こういうような結果に相なっております。  次に、同意入院による患者の件でございますが、これはまだ現在実施中でございまして、七月末現在での中間的な状況把握でございますが、これまでに百五十名鑑定を行いまして、引き続き入院を継続する必要があると鑑定されました者が百十五名でございます。それから、通院に切りかえることが可能という判断が三十四名、それから退院が可能であるという判断が一名と、こんな状況でございます。
  180. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 またここも随分いいかげんなことが行われたということが明らかになりましたね。  先ほど言いましたように、措置入院患者には措置料が国から出ているわけで、これだけの措置入院百六十一名に出していた国からの医療費としての措置入院費が、これからは四十七名でいいことになったということですよね、これ。大変なことです。同意入院の問題についても、百五十名が同意入院していて、そのうちに三十四名が通院で済むようになった。これも入院治療費が通院によって軽減されるんです。医療の適正化というんですが、これは大変な問題です。一体なぜこのようなことが起こるんですか。今までの病院の病状報告そのものが結局はいいかげんであったということ以外の何物でもないと、こういうことなんですか、これは。
  181. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 御指摘病院につきましては、実地審査の結果がかような状況でございますので、私どもといたしましても甚だ遺憾に思っておるところでございます。  一つには、そういう病状報告の的確な記載、それのまた判断ということもその一つの要因でございますが、何分にも時間的な経緯の中で、いつから措置症状が消失したかという判定は、さかのぼっては極めて難しゅうございまして、今後こういうことが起こらないような指導を一層強化する必要があると考えておるわけでございます。したがいまして、三局長通知におきましても、この点につきましては今後特に力を注いでまいりたいと考えておるところでございます。
  182. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 この際、全国の措置入院患者数は何人いるかということと、その措置に要する医療費は一人当たり幾らになっているかという点をここで明らかにしておいていただきたいと思います。
  183. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 五十八年六月末の断面でございますけれども、措置患者数は三万七千四百十二名となっております。一人当たりの平均の医療費は年額で約二百二十万円でございます。
  184. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 一人年額二百二十万円ですか。そうするとこれ、先ほど言った宇都宮病院で百六十一人の措置入院患者がいて、それがそのまま措置入院ということでいけぱ、二百二十万掛ける百六十一人分ということですね。それが実地審査の結果四十七名になったということですから、今度は二百二十万掛ける四十七名です。大変な差が出てきますね、これ。しかも、同意入院もこのように通院と入院費の差が出てくる。全国に三万七千四百十二名現在いるという措置患者なんですが、これ、一〇〇%信用していいのかという問題に突き当たりますね。三万七千四百十二名に対して二百二十万円出ているんです。どうなんですか、これ。  例えば、こういう問題があります。  東京の松沢病院の資料によりますと、昭和四十二年に六百八十八名だった措置患者が、昭和四十七年に五百二十八名、四十九年に二百六十八名、五十年に百四十一名、五十五年に二十五名、昭和五十八年には十四名になっているんです。大臣、おわかりですか。昭和四十二年に六百八十八人も措置入院患者がいたのが、昭和五十八年には十四人になっている。これは、同病院の医師が、積極的に、患者に対して措置の必要があるのかどうかという問題を審査をやってきたということなんですよ。一たん措置入院したら、もう死ぬまで措置入院患者だというやり方でなく、患者と絶えず接触してそういう措置をやってきたからこうなってきているんです。  それで、現在東京での措置率は人口万対〇・三名です。鹿児島県では万対十一・五名、高知県では十一・七名。この数字を見ますと、措置入院患者というのは自傷他害のおそれのある危険な人ということになっているわけで、東京では万対〇・三人しかいない。ところが、鹿児島へ行けば十一・五、高知へ行ったら十一・七。そうすると、鹿児島や高知の人たちは、圧倒的に自傷他害のおそれの強い人がたくさんいるということになるんですよ。こういうことになりますよね、この統計から。  だから、私は医療費の面からも、あるいはまた、本当に措置入院が必要な人なのかどうかという問題は、それはすぐれてその人の人権にかかわる問題だと思うんですね。だから、措置患者全員に対する実地審査というものをやはり徹底的にやる。そうすれば、先ほど私が言った、三十二万人も三万人も入院している人の中で、入院を必要でない、通院でいいという人が必ず出てくるんですよ。しかし、これを全国でやれと言っても、実地審査をやるのにはやはり鑑定医に来てもらわにゃいかぬからお金が要るでしょう。やはりこれには厚生省が本当にこれにメスを入れようという気持ちがおありならば、来年度の予算に、この当面措置入院患者に対する実地審査をするに必要な予算を組んで、そして県に対してそれをやらせるということでなければ、そんな三局長の署名入りの通達文書を出してやりなさいと言ったって、私はそれは実行できないと思う。現に、松沢病院なんて異例ですよね。どんどんどんどん減らしている。そして、宇都宮病院がまた、その典型的な例。入ってみれば、何のことはない、本当に措置入院が必要だったのは三割しかいなかったということなんですよ。  だから、大臣、この問題について努力しますとか通達してますとかいうことじゃなくて、それに必要な予算を厚生省として裏づける、予算措置をするという問題について、ひとつここで明確に言ってもらわなければだめだと思います。
  185. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 御指摘ございましたように、実地審査の重要性を今回の通達におきましては特に重視して、各県にその実施方を要請しているところでございます。原則として毎年一回ということで、措置患者に対しては特に重点的に実施することとしておるわけでございます。  その裏打ちとなる予算、これはもちろんそれがなければなかなか動かないわけでございますので、これは来年度予算の問題でございますから、今この場で明確にこちらの立場だけではお答えできませんけれども、必要な予算は確保するように全力を挙げて取り組むつもりでございます。
  186. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それはやっぱり厚生大臣の方から言ってもらわなんだらいかぬですわな。
  187. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今先生から、措置入院の必要性を正確に審査するということの重要性のお話しがございまして、私も本当に大事なことだという認識で一致しております。  これはとにかく我々素人が考えましても、身体障害者の場合は形の上でいろいろあらわれておるわけですけれども、精神障害者の場合、全く外形は同じわけで、また、時間的にあるいは時期的に変化するわけでありますから、これの正確な認定というのは大変難しい問題だろうし、しかもそれが間違ってやられた場合、その人の人権に対する影響ということを考えると、これは大変に大事なものであるということを認識いたしました。  今関係部局からも予算要求をしておるということでありますから、私は大臣として、この部局から要求しておる予算を、厳しい財政ではありますけれども、今回の反省に基づいて必ず確保するように努めてまいりたいと思います。
  188. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そのことによって問題は一歩前進すると思います。しかし、今問題は、同意入院患者が圧倒的に多いわけでありまして、同意入院患者が二十九万人とも言われておるわけでありますから、同意入院患者についてもやはり実地審査というものを本気になってやるということによって、これも人権の問題と医療費の問題の両方の解決を図れると思います。今も、宇都宮病院で百五十名の同意入院患者の審査をしたところが三十四名が通院でよろしい、一名が退院でよろしいという結果が出ているわけで、これも入院と通院による医療費の問題はこれは十分厚生省としてもわかってもらえることであろう、このように思うし、人権上の問題であります。  しかし、何分こちらは人数が多いですから直ちに来年というわけにはまいりませんが、これは年次計画でも策定をして、せめて五カ年計画ぐらいで一度、二十九万人も三十万人も入っている同意入院患者、しかもそれが普通の入院患者のように一カ月か二カ月、あるいは長くて一年で退院するということではないんですね、五年、十年、長い人は二十年、三十年とこの同意入院ということで入っているんですから、これは大変なことなんです。だから、私の提案として、五カ年ぐらいの間に計画を立てて、この際一遍徹底的に洗い直すということをやっていただきたいという提案をするんですが、いかがですか。
  189. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 同意入院の患者につきましても、措置入院と同様に、人権上の配慮等のことも含めまして重要であると認識しておるわけでございます。したがいまして、今後計画的な実施ということで、重点的な実施で対処していきたいと思っております。
  190. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そこで問題は、実地審査があったからといって、あるいはまた現行制度では患者本人の転退院などの希望があってもなかなかそれは具体的に反映されないという実態があります。また、保護義務者がいないでそのまま同意入院させられているという実態も先ほどから問題になっています。  そういう関連の中で、今月二十八日、宇都宮病院に強制収容されている状態にある十九名の人たちが、東京高等裁判所に人身保護を申し立てるということになっています。この人身保護を申し立てることになったというのは、弁護士が宇都宮病院に入って一人一人接見をして、そして、本人の意思を確かめてこういうことになったようでありますが、結局これらの人たちが転退院を希望するということでありますが、どこの病院にどのように転退院をするのかということが問題になるわけで、こうした本人の人権の立場から転退院を希望する場合、これが実現するよう厚生省なり当該県である栃木県が格段の努力をするべきが至当であると、私はこう考えるんですが、この点についてはいかがですか。
  191. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 当該のケースにつきまして、県がどのような対応をしているかはまだ報告を受けておりませんが、そのような際、あくまでも患者さんからの求めがあれば、あるいは施設の方からの求めがあれば、県としては、他の医療機関に対するあっせんについていろいろと相談に乗って必要な連携をとる。具体的には保健所福祉事務所、他の医療機関等々の間をよくつないでいくということが必要になるわけでございまして、そのような県の対応を私どもとしても指導してまいりたいと思っております。
  192. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 その点については協力を特に要請をしておきます。  それでは次に、医療従事者の過不足の問題についてただしてまいりたいと思います。  これは、一定の医療の質を確保したことによって請求されるべき医療費を、医療の質が非常に低いにもかかわらず請求するという事柄について、私は大変な医療費の不正請求である、このように思うからであります。医者も十分にいない、看護婦も十分にいない、全然そこで医療らしい医療も行われていないのに、先ほど言ったように、措置入院患者に対して二百二十万の金が出ているとか、同意入院患者に対しての医療費がおりる、これほどけしからぬことはない、薬づけ、検査づけ医療の問題だと、私はこう思うんです。  そこで、宇都宮病院、そしてまた田中病院も問題にしましたが、現在この医療従事者の過不足はどのようになっておりますか。
  193. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 宇都宮病院についてでございますが、五十九年七月一日現在で、医師数につきましては不足の七名となっております。去る三月二十四日には不足の十四人でございました。それから看護婦数は、標準数に対しまして不足の三十八人となっております。これは三月二十四日には八十五人でございました。それから薬剤師でございますが、これは三月二十四日には一人余計におりましたが、七月一日現在ではちょうどになっております。  それから田中病院でございますが、これは七月六日現在でございますけれども、医師は不足の三となっております。看護婦は不足の十六でございます。薬剤師は過不足なしとなっております。
  194. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そこで厚生大臣にお伺いしますが、宇都宮病院にしても田中病院にしても、特に宇都宮病院はこの問題が明らかになったのが三月ですね。そして現在はもう七月です。三月、四月・五月、六月、七月と、このように経過をしていくんですが、お医者さんの不足というものは依然として改善をされない、看護婦の数も、少しは改善しておりますが、依然として四〇%近い不足。これ、こういう状態で病院という形態を持続させていくことの問題はどうお考えになりますか。  一つの問題は、不足があるということは、それだけ患者が多いんだから、患者をそれだけ減らして、医者の数と看護婦の数に合うだけの患者を入れればいい、そういうことですね。それによって充足しますよね。もう一つの方法は、これはお医者さんと看護婦さんをそれに合わせてふやす。どちらかでその問題が解決するわけなんです。  ところが、これ、全然解決しないまま月日を過ごしているんですが、こういう問題はどうですか。診療の適正化という問題からも、医療の質について一定の水準を確保する上からも、このまま放置できないんじゃないかと、こう思うんですが、これはどうですか。成り行き任せにずっとされていくんですか。それとも、何月までにこういうふうにしなさい、しなければこうしますとかやらなければ、先ほどから言っているように措置入院の一人当たり二百二十万円というお金が出るのも、患者何人当たりに対してお医者さんが何人いて、看護婦が何人いて、こういう医療行為を行ったことによって一人二百二十万という金が出るんでしょう。医師が半分しかいない場合は半分の医療しかやれないということなんで、そうするとその措置入院に対する二百二十万の金がおりていることだって、これは半分はそこの病院診療に使わなくてもいいということに単純に言えばなるわけなんですよ。  だから、もう一つの側面から言えば、整っていないところはそれだけの低い診療しか行っていない。あるいは、治療なき収容だと言われているんですから、措置入院費を渡さないということだってできると思うんですよね。医療費だってそのまま支払わないということだってできる。何かをやらなければこのままの状態がずっと続いていきますよ。これはどうなさいますか、医療の適正化、あるいは診療の不正行為をなくする、いろんな観点から、私ははっきりわかっていることを、宇都宮のように調べてみて初めてわかったというのは別にして、現にわかっている問題をずっとこう放置していくということは、医療法があり、いろんな法律がある中でこれは大問題だと思うんですが、どうですか。
  195. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) まさに先生の御指摘の問題が、医療機関は営利を目的としてはならないということになっていると思います。看護婦さんを少なくして、お医者さんを少なくして、入院患者を余計にすれば、これは経理状態はいいに決まっているわけです。  そういう考えで行われたのが、結果としてあの宇都宮病院のような残念なことになってしまったわけでございますから、その後厚生省としては、各都道府県を通じて、それぞれの医療機関でそのようなことのないように指導をしてまいってきておるのでありますが、まだまだ十分とは言えませんので、今後もさらに一層これらの医療機関が正常な診療体制で国民の健康を守り、患者の人権を守ってくれるように指導、監査を強化してまいりたいと思います。
  196. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そういうことで済むんですかね。三月にもそういうことをおっしゃったわけですよ。四月の質問のときにもそういうことをおっしゃった。今七月になっているんですよ。仮にもしこのことをことしの十二月に質問する機会があっても、またそういうことをおっしゃるかもしれない。私はそんなことで済まされないと思うんですがね。  はっきりと三カ月後にこうしなければならないとかいう、やはりここに強制力が伴わなければ、どうするんです。お医者さんが足らなければ、厚生省なり県が責任を持ってお医者さんをそこに配置する、あるいはそこの患者を他の病院に移す、何かそういうふうなことをして、この病院医療機関としての責任を持てる状態につくりかえていかなければどうしようもないじゃないですか。私が言っているような具体的なことを責任を持ってやるということを、当然この段階ではもうおっしゃらなければいけないんじゃないですか。今までだったら私は頑張ってくださいと言ってきましたけれども、もうこの段階で、私はその答弁では納得できませんね。
  197. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 事件が起こりましてから、その後次々と出てまいりますので、今まで駆けっこのようなことになってしまいましたが、これは確かに一つのタイムスケジュールということも必要だろうと思いますので、ある程度の一つの目標、期間というものも設けて趣旨を徹底させるというような方法を事務当局に検討させて、進めさせるようにしてみたいと思っております。
  198. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それをこの場でひとつはっきりさせていただけませんか、事務当局もおられますから。いつまでにこの問題をどのような方法で解決するかということを。
  199. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 医療監視におきましては、期限を定めて改善計画を提出させまして強力なる指導を行ってまいります。  そこで、今この場でいつまでにという具体的なお話でございますが、これはやはり患者の様子その他も配慮をする必要がございますので、県ともよく相談をいたしまして対処をしてまいりたいと考えております。
  200. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それはだめですよ。きのうやきょうのことじゃないでしょう。三月に起こったことでしょう。県と相談するなんというようなことはもう済ましておられなければならぬでしょう。どうやってなくするのか、はっきりそれは言えるでしょう、時期は。先のことになっても。  例えば、医者、看護婦の不足分を充足するために県と厚生省が責任を持ってこれからやっていく、あるいはまた逆の問題として、患者を医師、看護婦が充足しているところに責任を持って移して、そして個々の医療機関としての体制を確立するという――あなた、どうするかという中身も言わないで、これから県と相談してって、私たちは何もこれ抽象的な問題を論議してない。ここに現に患者がずっと入院しているんですよ。そこで受けている質の低い精神医療のことを問題にしているんじゃないですか。人権上のことを問題にしているんじゃないですか。私はそんな答弁では納得できませんね。
  201. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 先ほども先生からもちょっとお話しがございましたが、三月の二十四日から七月の一日まで、宇都宮病院につきましては、例えば医師数につきましては不足の十四から不足の七まで、また看護婦につきましては不足の八十五から不足の三十八まで、それから田中病院につきましては五月十八日からでございますが、七月六日まで、医師につきましては不足の五から不足の三まで、看護婦につきましては不足の二十三から不足の十六まで、それぞれ努力をしておるところでございます。  御指摘にもございましたように、全体的にこの精神病院医療従事者の充足状況残念ながらよくないのでございます。そこで、これもまたお話しにございましたけれども、著しく不足しております場合には患者を削減する、実地指導と相まちまして適切なる処置をとる、こういう処置をとって今日まで至っておるところでございます。  なお、今後ともそういう努力を続け、適切なる医療の確保を図ってまいる所存でございます。
  202. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そうしたら、厚生省として具体的にどのような努力をされたんですか。
  203. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 厚生省といたしましては、県とよく相談をいたしまして、今申し上げましたように、施設自体も医療従事者の充足に努力をいたしましたし、また、患者の数を削減をするということにつきましても、近辺の精神病院に協力を要請したところでございます。
  204. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そうしたら、この点についてもこれからの努力にまつということで、いつになればこの精神病院としての、診療機関としての最低必要な標準の医師数、看護婦数が充足するかわからぬ、こういうことでありますか。  それはここだけじゃなくて、私が厚生省からいただいた「精神病床七百床以上有する精神病院の現状」というのを見ましても、一位から十五位までずっと並べてみて、この中で充足している病院が六つですよね。上位十五位の病院をとっても、充足していない病院の方が多いわけなんです。  だから、全体として、全国の病院がほとんど充足していないという現状の中で精神医療が行われているんですが、なぜこの標準のこれが充足しなくてもいいんですか。診療機関としての診療行為が続けられるんですか。
  205. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 標準数でございますので、ただいまお話しのございました、ベッド数の多い方から十五番目でも、先ほどのお話にもございましたように、確かに不足しておる部面が多いのでございますけれども、多いところもあるわけでございます。それは、患者の態様、入院患者の病状、その他によって、大幅にこれが不足するということはこれはもう断じて許されることではありませんけれども、今日の状況から見ますと、若干の不足、これは今日の状況では全国的にそういうことがございまして、適切とは申しませんけれども、やむを得ないのではないか。  先ほども申し上げましたけれども、適切なる医療を確保いたしますために、まずこのそれぞれの医療機関医療関係者の充足に大いなる努力をすべきものであると考えております。
  206. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 ちょっと、的確に答えてくださいね。  なぜ、診療機関としてこの標準という一つの定めがありながら、医療従事者のそれが不足していても構わないのですかと尋ねているんです。
  207. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) ただいま申し上げましたように、標準でございますから、若干は不足をしておりましても、これはやむを得ないのではないかと思います。また、患者の内容等にもよるかと存じます。  しかしながら、これを大幅に不足をしておりまして、しかも改善の努力に欠けるところがあるというようなことは甚だ遺憾なことでありますので、そういう場合には強力な指導をいたしますと同時に、実地指導と相まちまして患者の制限、ほかの医療機関への移送、その他の措置をとるべきである、このように指導をしておるところでございます。
  208. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 標準というのは何によって定めてあるんですか。
  209. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 医療法でございます。
  210. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 医療法に定めてあるその標準に至らなくても、それについて何ら、制裁を加えるとは言いませんけれども、そのことを問題にして何か行政指導をやらなければならないとかいうものは、何もないんですか、医療法には。
  211. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 標準を満たすように指導をする、こういうことで対処をしております。  なお、著しく不足をしておりまして、かつ何ら充足の努力も見られない、こういうふうな極端な事例につきましては、収容患者にも十分配慮をしながら厳正に対処していく必要があると考えております。
  212. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 どうもあなたの答弁ははっきりしないね。この私の言うこれは、今生きているんですかどうなんですか。「特殊病院に置くべき医師その他の従業員の定数について」昭和三十三年十月六日の厚生省の医務局長の通知、「主として精神病の患者を収容する病室を有する病院について、精神病の診療に主として従事する医師の確保が困難な特別な事由があると認められるときは、暫定的にこれを考慮し運用することも止むを得ないこと。」、この通達があるからできるんでしょう。あなた、さっきから何かぐだくだわけのわからぬことをしゃべっているけれども、これがあるからやれるんじゃないですか。――厚生大臣、ちょっと具合悪いね、そこにおられる人たちは。
  213. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 標準数は基本的には――
  214. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、この通達が生きているんですか、どうですかと聞いているんです。
  215. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) それは生きております。
  216. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 大臣に尋ねます。  問題は、今局長がいろいろあれこれと言いわけしている事柄ではなくて、今言いました昭和三十三年の局長通達というのが今も生きていて、そして「暫定的にこれを考慮し運用することも止むを得ない」と、数が足りなくても。だから、全体的に慢性的に不足しておってもそのことが医療法上特段問題にならないという現状があるんですよ。さらに、基本的に医療法の中で制定しているその医師の標準の数の中でも、精神病院は一般の病院よりも少なくていいという規定があるわけですね。これは例えば「医師 入院患者の数を精神病にあっては三、結核にあっては二・五をもって除した数と外来患者の数を二・五をもって除した数との和が五二までは三とし、それ以上一六又はその端数を増すごとに一を加えた数」とするというのがここにありまして、一般の病院よりも医師の数が少なくてもいいという定めがあるので、看護婦もそういうふうになっているんです。その上になお、一般の病院よりも精神病院医療従事者の配置の標準の数値が低くてもいいというのがあって、さらにその低い数値でも医師の確保が困難な場合は、やむを得ないときはこれを充足しないでもいい、こういうことになっておりますから、今のようなことが慢性的に実態として定着をしているんですね。  ところが一方、先ほど言いました七百床以上の病院をとってみたときに、医師が標準よりオーバーしているところは軒並みに国立なんです。公立なんです。都立松沢病院は十八人のオーバー、たくさんお医者さんがいるわけです。中宮病院という県立、これも七名、武蔵療養所、国立、ここは三十八名標準よりもたくさん医師がおります。下総療養所、ここも三名多くいます。だから、国立、公立のところは標準を満たしてさらにそれを上回らす。民間の精神病院をそれを慢性的に下回っているということが、こういう数値が出てくるんです。それが何によってそのようなことが許されているかといいますと、この三十三年の通達によっています。  だから、話を最初に戻しますが、精神医療問題ということをこの三十三年の時点では、それは人権意識も薄いし、精神医療に対する国民の間の関心も薄いし、修学旅行の子供たちのように、十畳ぐらいの広さのところに布団を敷いて、十人並べさせておっても、それでもいいというふうな時代にはこれでもよかったのかもしれない。しかし今の時代に、精神病の治療に要する医師の数や看護婦の数が一般の病院よりも少なくてもいいというふうな、こんな差別的な通達は、これはもう私は、なくすることを早急に検討をしてもらわなければならぬと思うんです。ここにその根幹があるんです。  だから、直ちに医者の数を、あるいは看護婦の数を充足するということはいろんな障害があるでしょうけれども、まず私は厚生大臣にやってもらいたいのは、この通達をとにかく改廃する、なくするというところから、私は精神病院を差別的な状況から解放していく。一般病院並みにそうした問題の基準を上げてやる。それがこれは一つは人権上の問題として当然なすべきことではないか、こう思うんですが、早急にその問題の検討をしていただけませんか。――ちょっとあなたじゃない。厚生大臣、基本的な考え方で結構ですから。
  217. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 一般病院と精神病院とで、その基準等について精神病院に対して緩和といいますか、弾力的な措置をとっておったというのは、それなりに恐らく医学的な事由があったのだろうと考えられますので、今すぐそれを私がここで廃止するとかしないとか、即答をするのはお許しをいただきたいと思いますが、先生指摘のように、精神病院のみならずこれはすべての問題にも通ずるかもしれませんが、時代が十年前、二十年前より豊かにもなってまいりましたし、そういう問題に対する考え方もどんどん変わってきておりますし、新しい時代にそういう通達がなお生き続けなければならないのかどうかという点について、先生の今の御指摘を十分に頭に入れて、事務当局と相談してみたいと思いますので、その時間的余裕はお与えいただきたいと思います。
  218. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 ぜひこれは、二十一世紀の国民のための医療というものを検討されるのであれば、こうした差別的なその基準は、当然これは排除していただきたいということを要望しておきます。  それから、いろんな問題を私は論議をしてまいりましたが、ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども厚生省は結局、精神病院問題についていろんな告発があって事件が起こらなければ、お医者さんがそろっておろうがおるまいが、詐欺まがいの医療費請求があろうがなかろうが、無資格診療が行われていようがなかろうが、また、トンネル会社で医療費を不当に横流しして私腹を肥やされていようが、結局厚生省自身のお金を使うのではない、それは国民の総医療費であり税金であり、そうしたものがそこに使われているんだというようなことで、何ら有効な防止策を結局持っていなかったということだと思うんですよ、これ。局長の私とのやりとりの中で、何か間の抜けたような答弁ばっかしが返ってくる、それはそのことの象徴的なことだと私は思います。本院で三月十五日の予算委員会以来、中曽根総理もこのことに対しての答弁をきちっとしてくれた、あるいは厚生大臣も一生懸命になってやろうとしている。だけれども、肝心の厚生省自身の対応というものが全くなっていない、私はこう言わざるを得ないんです。それで、ここでこうして八回にわたって質問を私を含めていろんな人がしてきましたけれども、結局毎回お役所仕事、そのときそのとき何か答弁をのらりくらりやっておれば済むというふうな状態でしかなかったんです。  私は、これは厚生省の内部の皆さん方の考え方に問題がある、対応の仕方に問題があると思います。その一つの例として厚生省のある課長がこういう発言をしております。  病院に泊まり込んだりできないし、捜査権も認められていない、少なくとも帳簿類にうそはないという最低の倫理性が医療監視の前提になる、そこまで信用しないのでは行政は成り立たないと、こう言っています。もちろん私はこのとおりあってほしいと思います。思うけれども、そうでないのであれば、別の立場からこの問題を追及しなければならないんですが、最低の倫理性が医療監視の前提になる、そこまで信用しなければ行政は成り立たないというところだけに逃げ込んでいるというところに私は問題があると思うんです。また、福岡で開かれた日本精神神経学会にまで出かけていって、ここでもいろいろな発言をしておられるんです。私は富士見病院についても関係しておりましたですけれども、やはり形として行政権限を強める、コントロールを強めるということは果たして正しい道なのかどうか、むしろ先生方のお考えもまたお聞きしたいと思いますと言っておられます。  この発言と、厚生省が今国会に提出している医療改正案ということは私は矛盾する、こう思いますし、富士見病院事件、京都十全会事件、そして今やっている宇都宮病院等々、病院をめぐる不祥事件が続発している中で、やっぱり厚生省の問題意識の中にやはり医療法の一部改正というものが必要ではないかというところに行きついてきたんだ、私はこう思うんですが、その点は厚生省は基本的に今私の言った点についてはどのようなお考えをお持ちなのか聞いておきたいと思います。
  219. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 医療は、医師と患者との信頼関係、これが何よりも肝心だと思うわけでございます。そのためには、職業人としての医師の倫理の高揚、これが何より大事だと思います。  一方、お話にもございましたように、残念なことが起こりまして、それに学びまして、医療法人に対する指導も強化をする必要があると考えたところでございます。  そこで、お話しのありましたこと、私どもくどくど申しません、同感でございます。
  220. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 いや、医療法を改正するというその立場ですね、それは厚生省としては変わっていないという問題についてただしたんですが、変わっていないということですね。
  221. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 変わっておりません。
  222. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 それでは次に、精神科における診療報酬の問題について、若干聞いてみたいと思います。  精神科における精神療法というのは、どのような内容で、一回何点になるのですか。
  223. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 精神療法の点数は、ただいま六十点でございます。  精神療法の内容につきましては、いろいろ内科的な方法、それから精神分析療法等を含んでおります。
  224. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 そこでお聞きしますけれども、どのような療法あるいはまた医療行為にしても、患者と医師との間に人間としての信頼関係というものが成り立たないならば、それは診療行為に値しないと思いますが、この点はどうですか。
  225. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 何が診療行為かというのは難しゅうございますが、少なくとも診療行為の基本に、医師と患者の人間関係というものが必要であることはこれはそのとおりだろうと思います。
  226. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 宇都宮の精神病院のことがよく新聞に出されましたが、患者の診療をするに当たって、医師がゴルフの五番アイアンを常に持って、それで患者をこづいたりおどしたり、あげくの果てに自分に気に入らないことを患者が言おうものなら、それで殴りつけるなどしてきた。こうした事柄が今裁かれておりますけれども、これは診療行為と言えると思いますか。
  227. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 具体的に、ゴルフの五番アイアンか何かを持って歩いておる、それは診療行為ではないと思いますが、その前後どういうことが行われておるのか、それを含めてやはり診療行為がどうかというのは判定すべきだろうと私は思います。
  228. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 今、一回当たりの精神療法六十点ということは六百円ですか、この宇都宮病院は当時患者が九百人いて、この九百人の患者の診療を医師が一人でこなしてきた。患者一人当たり数秒から十秒間、こう診て、はい、はい、はい、はいとこうやって、しかしそれが堂々と医療費として請求され、そして受理をされてきているわけなんです。東大の医師が、宇都宮には優秀な先生がいて一日に九百人さっと診ることができるというふうなことを言ったそうですが、これは医者が優秀なのでなくて、本来それはもう診療行為でないということだと私は思います。  だけれども、それが診療行為として、一回当たり六百円の精神療法ということで、九百人の患者を診たということになれば、六、九、五十四年で、それだけで五十四万円ということになるので、細かいことを言っているようですけれども、これも一つの医療費であるということになるのならば、医療費の適正化という面からもこうした診療は許されない。そしてこんな診療によって医療費を請求するということは許されないと私は思うんですが、いかがですか。
  229. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 御指摘のように、診療の密度というような観点から考えますと、確かに非常に薄い中身の診療ということになると私は思います。
  230. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 薄いということは、薄くてもそれは診療行為として認め、そして医療費を請求するということについても別に問題がないという立場をおとりになるのですか。
  231. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私どもは、少なくとも医療法に基づいた人員、医療法に基づいた設備、そういうものによって行われる医療というものを前提としておることは確かでざいます。ただ、その診療の密度、診療の中身というようなことになりますと、なかなか判定がしがたいわけでありまして、ある場合には今御指摘のようなものが不正診療になる、あるいは不当診療になるというようなこともあろうかと思いますし、また、そうでなしに、ぎりぎり医療ないし診療としての態様を整えておる、こういう場合もあろうかと思います。
  232. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 具体的に、私が今言ったような状態の場合は、私はこれは医療行為ではない、こういうふうに思います。ある意味ではこれは医療という名における詐欺をやっているのではないか、こう思うんです。  私が厚生省に求めたいのは、宇都宮病院の問題について今裁判が進行しておりますけれども、宇都宮病院において、特に石川文之進医師によって行われた精神医療とかあるいは回診などによる医療費請求の問題は、これは厚生省独自の立場で一度徹底的に調査をしていただいて、そしてそれが真に診療に値するものかどうか、医療費を請求するに値する診療であったかどうかという点について明らかにしていただき、医療に値しないものについて請求した分は、これは当然返還をさせる、こうした強い対応を求めたい、こう思うんですがいかがですか。
  233. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私ども医療機関あるいは保険医についての指導監査をやっておりますが、今先生指摘の、医師が行った行為が医療に値するかどうかというその判定が一番難しいところでございます。したがって、医療に値するか否かという判定をだれが下すかというのがまたこれは難しい問題でありますが、少なくともそこには医学的な判断というようなものが必要なんであろうというように私どもは考えております。  したがって、現在の宇都宮病院につきまして、いろいろな裁判等の進行がございますが、私ども調査をいたしておりますし、また、一応県の保険課の調査をやったわけですが、その時点におきましては、少なくとも不正請求という事例に該当するものはなかったようでございますが、裁判の進行に伴いまして、また私どもひとつ指導監査をして実態を調査してみたい、かように考えます。
  234. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 その実態を調査した結果、まあ何が医療であるかという判断は非常に難しいとおっしゃいますが、しかし、それは調べればその判断はできる、こう思います。したがって、先ほど言ったように、ゴルフのアイアンの五番を振り回しながら一日に九百人も、さあ次、はい次と言って診療をして、まさに神風診療というふうなことをやりながら、それでもやはり診療であるというふうな問題は、これは医療の名においてやはり私は糾弾されるべきことだと思うし、そのこと自身によって請求された金額はやはり返還をされるべきだ、このように思います。  したがって、調査の結果これは医療費を請求するに足る診療ではないということが明らかになったものについては返還をさせるという点について、一再度確認をいただきたいと思います。    〔委員長退席、理事遠藤政夫君着席〕
  235. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) まさに、医療に値するかどうかの判定というのは、私どもというよりも神がやるような非常に難しい問題でございますが、仮にいろいろな方途を講じまして、医療に値しない医療だという判定が下せるならば、先生のおっしゃるとおりだろうと私は思います。
  236. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 ぜひそのように厳正に医療の中身について厚生省が責任を持っていただかなければ、今回のこの健康保険法改正というふうな問題についても我々はとても論議ができないということになりますので、ひとつしっかりとやっていただきたいと思います。  それから、前々から申し上げてきましたけれども、できればこの際厚生大臣のお考えとしてはっきりけじめをつけてほしい問題があります。それは、宇都宮病院の事件を起こした石川文之進医師の問題であります。私は、個人の問題をあれこれ取り上げて言うのは好みませんけれども、しかし、社会的な問題としてやはり言及せざるを得ないのであります。  石川文之進医師の医師免許の問題でありますが、この医師免許問題について、現在裁判で、全面的に事件の中身につきまして認めておられるようであります。そうした前提に立って、医師免許の問題で、これを現状において凍結をし、そして判決後、有罪であれば当然医師法に基づいて免許を取り消しになるということであろうと、こう思いますが、やはり社会的な問題として、厚生大臣のこの問題に対する一つのけじめとして、社会的に医療の信頼を確保するために、今後の精神医療というもののあり方について厚生省の一つの毅然たる態度を示すということにおいても、ここではっきりとそうした面についての考えを打ち出しておいていただきたい。この点を求めたいと思います。
  237. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生のお考え、これは私も全く同感なのでございますが、医師法に基づく処分は、罰金以上の刑に処せられたこと等の処分事由に該当することが明確になった段階において初めてできるものであり、医師免許凍結(医業停止)、判決後免許取り消しという段階的行政処分は行うことはできないと、こういうことになっております。  医師法に基づく医業停止または免許の取り消し処分は、罰金以上の刑に処せられた者などについて医道審議会に諮った上で行うとされておりますので、厚生大臣の一存でこういうことをやるということは、今回の場合などはだれが考えてもこれは世間がお認めいただけるような事由であると思いますが、これはいろいろのケースがあるものですから、やはり厚生大臣の一存でやるというような前例をつくるということは、後に問題を残すことも考えられますので、本件については既に起訴がなされておるところであるが、残念ながら事件の全貌がまだすべて明確になっておりません。大変歯切れの悪い答弁で申しわけないと思いますが、事件が明確になった段階において、所要の手続を踏んで厳正な処分を行いたいと思います。
  238. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は、長時間にわたって精神医療の問題を論議してきましたが、石川文之進医師の進退の問題、あるいは医師免許を取り消されるのか取り消されないのか、こうした問題は国民注視の問題であろうと思います。医療費の適正化という問題を前面に掲げて健康保険法の改正を求められておる厚生大臣として、間違いのない対応を私はこれに求めたい、このように思います。  そこで、質問の途中で論議をしました長期ビジョンの問題でありますが、ビジョンを取り上げた段階では、必ずしも全体の問題が明らかになっていなかったわけであります。私も一番最後に取り上げればよかったんですが、質問の関係でちょうど中間の時間帯で取り上げました。  そこで、再びこの私が示しました長期総合計画の骨子の問題に、総まとめの意味において戻るわけなんですが、やはり診療の適正化とかあるいは医療の適正化、国民の総医療費をもうこれ以上どんどんと増額をさせない、あるいはまた精神医療の問題からいえば、患者の人権あるいは十分な医療、こうしたことを考えていくために、やはり抽象的なことでなくて具体的な問題は、現行三十二万床もあるこの病床を、やはり年次計画でもってこれを二十万床程度にまで下げていく、そのためにそれでは社会復帰施設をどうするのか、地域医療をどうするのかというさまざまな問題を周辺に提起をし、そして病院における拘禁状態、収容状態、こうしたものをなくしていくということを図っていかなければならぬと思うんですが、どこから手をつければいいかという問題を一つ言えと言われれば、私はやはり病床をふやさずに減らしていくというところに軸を置いて、そしてそれに必要なことをやっていく、このこと以外にないのではないかと思うんですね。  たくさんあるからどれからやったらいいかというんじゃなくて、やはり軸になるものがあると思うんですよ。医療費の面からも、いろんな面から見ても、やはり病床を少なくする。アメリカでもイギリスでもフランスでも、先進諸国は皆そういうふうにして落としていっているんですね。やっぱり、こういう問題の論議は軸がなければいかぬと思う。だから、この三十二万床を十年計画で二十万床程度にしてはどうか、私どもはこう言っているわけなんですが、それが何万床であってもいい、厚生省としてやはりこれを下げていくんだというところに軸を置いてもらわなければ、先ほど措置入院の問題をいろいろ論議してきましたけれども、結局解決はしないと、こう思うんですね。  厚生大臣、どうですか。二十一世紀の医療のビジョンの中の精神医療のこれから取り組む方向の中の中心にそういうものを据えて周辺の整備をしていく、こういうことでなければ、私たちはただ宇都宮病院の問題をだあっと取り上げて、そしてこの事件をただ追い回っていたということに終わってしまう、こう思うんです。どうでしょう――大臣の率直なあれを言ってもらえばいいんだから、横から要らぬこと言うな。
  239. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 病院の質をよくする、医療体制を完璧なものにするためには、確かに先生言われる、病床を減らしていくというのは貴重な考えかと存じますが、全体的な責任を考えますと、ただ減らしていくということで、それでは全国の精神患者の皆さんに対応できるかどうかという問題等難しい問題も含んでおりますので、この効率化ということ大変大事な問題だと思いますが、これらのものを勉強をしてみたいと思いますが、今ここで私に、病床を減らすという確答をさせるのはお許しをいただきたいと思います。
  240. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 何か横から要らぬ知恵がつけられて、大臣の決意が鈍ったようで大変残念なんです。  私はむやみに、何も手を加えないで病床を減らせなんて、そんなむちゃなことを決して言っていない。やはり何かを起こさなければ周辺の問題が解決しないんで、これはやっぱり減らすには減らす条件づくりが必要なわけですね。条件ができて減っていくんですよ。それはむやみやたらと病床を減らしたら、これは大変なことになります。だから、やっぱり減らすという方向を決めて、そのためにどういう条件整備ができてきたらいいか。条件整備ができた分だけ減らしていけばいいんですよ。減らすことが先じゃなくて、減らすことのために条件整備をどうするかということになるのであって、私は大臣にそんなむちゃなことを言っていないわけで、結局考えていく軸にそういうものを置いていかないと、いつまでたってもこの問題は解決しないんじゃないか、こう言っているんですよ。  厚生省の皆さんじゃなしに、やはり大臣の、あなたと私と素人で論議しようじゃないかと初めに言ったことがあるんだから、そういう問題でひとつ率直な答弁をしていただきたいと思います。
  241. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) さきにも申し上げたとおり、こういう問題等が起こってまいりますと、精神病院の劣悪な条件というものが非常に大きな問題になっておるわけでございますから、まず質をよくすると。まあ今までの粗製乱造ということを考えると、先生の病床を減らしたらどうかというお話、まことに貴重な提言でございます。しかし私ども全体の医療の責任ある行政としましては、やはりそれには周辺の整備なり総合的な効率化なり、そういう中で病床を減らせるような条件というものをつくっていかないで、ただすぐにここで減らすというわけにはいかないので先ほどのような答弁を申し上げたわけでございます。  これは二度と宇都宮病院のような問題を起こさせないために、今後いろいろの施策を講じていかなければなりません。そのためにはまず質の向上ということで、粗製乱造的な精神病院の質の向上ということでベッドを減らす、そういう総合的な周辺状況を整備していくというのは大変貴重な御意見だと思いますので、そういう方向に努めてまいりたいと思います。
  242. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 今の部分についてはもうこれ以上大臣答弁を求めても無理だと思いますが、基本的にはそういう方向で考えていただけるというふうに僕は期待したい、こう思うんですね。何かそういうものがなければ、ただ日にち仕事のようなことをやっておっても私はこの問題は解決しないと思うし、日本の将来の医療問題の大きな恥部になってくる、こう思いますから、ここをひとつ声を大きくして言っておきます。  それと同時に、今回のようなことを起こさせないために、やはり医師と患者の信頼関係というものがなければ医療はない、こういうふうに局長もおっしゃいますし、それはそのとおりであります。しかし、それでは精神障害者の場合にはどのようにして医師と患者の間の信頼関係をつくっていくかというのはこれは非常に難しい。だから、他の医療機関にないやはり制度のようなものがそこにはなければならぬわけで、そういう意味で、弁護人の依頼権というふうなものをそこに確立をするとか、あるいはまた、病院診療行為そのものについてこれを訴え、そしてそれを審査していく独立の医療監査制度というものがなければ、宇都宮病院を初め幾つかの病院の中で問題が起こる。それは県が監査をする中で見つけるんじゃなくって、内部からの告発でなければそれがわからないということが、もうこれは厳然たる事実になってきているんです。  だから、独立の医療監査制度というもの、あるいは弁護人の依頼権、こうしたものをあわせて患者の人権を守っていくという問題についての積極的な検討を特に大臣に要望をしておきたいと思うんですが、いかがでございますか。
  243. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 精神医療の分野におきます患者さんの精神障害の特殊性にかんがみます人権上の配慮というものが重要だという点については、先生の御指摘のとおり、私どももそのように認識しておるわけでございます。これを実際に運営していく仕組みとしては、それぞれの国の歴史的な背景の中で育ってきた制度があるわけでございます。現在の私どもの精神衛生法の幾つかの仕組みの中で、そういった人権上の配慮を行うことになっているわけでございますが、実地審査を初めとしましてそういった取り組みについて、今回のような事件等も十分踏まえまして一層これを的確に実施していくということで今一歩を踏み出しているところでございます。そのような取り組みの中で、引き続き人権というものを尊重していく精神医療の基盤というものを確保してまいりたいと考えているわけでございます。  また、独立した監視機構とかあるいは弁護人とかいう問題でございますけれども、これは将来の検討課題として、諸外国の動き等もよく見ながら我々としても勉強していかなきゃならぬと思っております。ただ、当面の対応としましては、まだ我が国の精神医療にとって、そういったような裁判所がどのように関与し得るものかどうかいろいろと詰めなければならぬ点が多々あると思いますので、今直ちにそのようなものを法制度に取り込んでという具体的な検討というのは、ちょっと困難であろうと思っております。
  244. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 この点の最後で、結局私は、精神衛生法の問題を、改正という点に焦点を合わして追求をしていかなければ、問題は解決しないんじゃないか、このように思います。したがって、今精神衛生法に基づいていろいろな通達を出してやっている、こうおっしゃっているんですが、精神衛生法そのものにやはり問題があって、今回のようなさまざまな精神医療に伴う事件なり不正な医療行為が、あるいは人権侵害が次々起こってきた、私はこう見るので、この精神衛生法の改正という問題についても、厚生省が積極的に検討に入るという点をここで答弁いただければ非常にありがたいと思うんですが、その点はいかがですか。
  245. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 精神衛生法は、これまでにも、いろいろな経験に立脚しまして、逐次必要な修正も加え、今日に及んでいる法体系でございます。我が国の精神医療を支える一番根幹をなすものでございまして、現状の精神医療を支えでいくためには、この精神衛生法の精神をより一層的確に具現していくような行政指導を一層強めてまいりたい、かように考えているところでございます。
  246. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 精神衛生法の改正を考えていく気はないということなんですか、今の答弁は。
  247. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) そこまで明確に申し上げたわけではございませんで、現在の精神衛生法をいかに的確に実施していくかということが当面の私どもの責任の第一義的な問題でございます。  ただ、いずれにいたしましても、そういう制度を預かる以上は、内外の諸情勢の推移、大きな流れ等も見定めながら、そういった面についての情報もとらえ、一生懸命勉強してまいりたい。そういう意味においては、広い意味において、検討課題としては取り組んでいくつもりでございます。
  248. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 やはり精神衛生法の中の問題が今日のような状態をつくったと私は見ています。ぜひ精神衛生法を再度見直してそこにある問題点を解決をしていくということについて強く要望をしておきたいと思います。  最後に、もう時間がなくなりましたから、今問題になっております高額療養費の支給、あるいは自己負担限度額問題について、若干お伺いをしておきたいと思います。  これはもう既に議論が出尽くしておりますが、しかしまだ現行の不合理な点を最近私は聞かされまして、これはぜひこの場でひとつたださなければと思ったものがございます。  それで、まず第一にお伺いしますのは、現行の高額療養費の支給要件のもとでは、レセプト主義をとることから、同一期間であっても入院診療分と通院診療分とはそれぞれ区別されるということになっているのですか。
  249. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) そのとおりでございます。
  250. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 私は、そのことによる不合理をこの間聞かされまして、私はこれは不合理だと思います。  具体的に申し上げてみますと、この方は、ある意味では難病にかかっておられると思います。非常に難しい病気にかかっておられます、病名は申し上げませんが。昨年の十一月からの診療費をずっとこう見てみますと、五十八年十一月に五万七千六十八円、十二月に七万二千四百十円、五十九年、本年に入って一月に七万一千百四十八円、二月に八万六千百七十四円、これはいずれも入院に際して要した費用でありますが、三月になりまして六万九千五百二十四円を入院費として払い、そして通院をしてもいいということになって、同じその三月に通院に要した費用を四万一千百四十八円支払う、四月には通院の五万九千十八円、五月に再び入院をして七万一千二円。それから六月に入院が二万二百六十円、通院が二万二百七十四円。このように、入院、通院、入院、通院を繰り返していくわけですね。  そこで、五十八年の十一月から五十九年の二月までは自己負担額の五万一千円というもので済んでいるわけですね。ところがこの三月になってまいりますと、入院で六万九千五百四十二円、通院で四万一千百四十八円ということになって、結局この方は自己負担が、それまでの五万一千円の自己負担から、この月にはたしか計算すると九万二千百四十八円の自己負担になると思うんですが、そういうことになるわけなんですね。  したがって、同一人が同一診療機関で、医師の指示によって入院と通院ということを繰り返していく中で、入院だけしておれば五万一千円で済むものが、通院が入ることによってこういうふうに負担がふえてくる。これはレセプトが違うから起こってくる問題のようなんですが、今回の高額医療の問題の、自己負担限度額の不合理是正をいろいろ検討されておられるようですが、この問題についてもぜひその中に加えてもらう必要があるんじゃないかということを私は思います。特にこういう方は難病の方が多いんじゃないかと思うので、数も限られているし、特に救済をするべき内容ではないかと思うんですが、いかがでしょう。
  251. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 御指摘の点はもっともでございます。ただ、レセプト主義をとればやはりある程度の限界があることもこれはまた事実でございまして、私どもその限界の範囲内で、ぎりぎりの改善方策というものを現在検討をしております。  今申されたようなことは、あるいは救えるような検討ができるかもしれない。しかし、入院と外来で外来の方がずっと診療費が低いような場合に、それを全部合算するということになりますと、やはりレセプトそのものから入院と外来というものをまとめたレセプトにするとか、そういうような措置が必要なことになると思います。そういたしますと、やはり医療関係者なりあるいは支払基金なりとの協議というものをしてみないと、なかなか解決が難しい問題だと思います。それらを含めてひとつ検討をさせていただきたいと思います。
  252. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 これで四時間近い質問を終わるわけでございますが、最後に、くどいようですが厚生大臣に一言要望し、答弁をいただいて終わりたいと思います。    〔理事遠藤政夫君退席、委員長着席〕  今国会で私は、医療問題の中心に、精神病の患者あるいはそれに絡まる診療行為の不正、いろんな問題を取り上げてまいりましたが、幾つかの点について前進的な回答もいただいたし、ある程度今後に希望が持てるようなものも出てまいりましたが、やはりこれは、国会のある間はこうした場がありまして、いろいろ具体的に要望もできるしまた答弁もいただけますが、国会が終わると、厚生省側としてもほっとしたというようなことになって、また次の国会までこの問題が放置されるというふうなことがあってはならぬ、こう思いますので、幸い官房長官のお世話で、内閣の中にそうした協議をする場もつくっていただきましたし、来年の予算委員会等でこうした問題が再び論議をされて、厚生省何をしているんだということのないよう、厚生大臣として、責任を持ってこの精神医療問題について対応をしていただきたいということを強く要望し、厚生大臣の決意をいただいて終わりたいと思います。
  253. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今回の国会で宇都宮病院の問題がきっかけになって、精神衛生対策が大きな議論を呼びまして、先生方から大変貴重な御意見等をちょうだいすることができました。  私は、長い歴史の中で、我が国医療対策全体は決して外国に劣るものでない、非常に進んでいる面もお認めいただかなければならないと思いますが、残念ながら、精神衛生対策で西欧の先進諸国に若干のおくれをとっておったことは、肝に銘じて、私どもこれに携わる者全員反省をしておりますので、今までの先生方からちょうだいした御趣旨もまた我々勉強をさせていただきまして、国会は決してこれで終わりではありません、次にまた国会があるのでございますから、この国会で無事に健保法を成立させていただいて、国会が終わりましたら、私ども、今先生方からちょうだいしたこの精神衛生対策の貴重な御趣旨を、関係政府委員の者肝に銘じて、次の国会にはよくそこまで頑張ってくれたなとお褒めをいただけるように、猛勉強、猛対策をするように努力をしてまいりたいと思います。
  254. 本岡昭次

    ○本岡昭次君 終わります。
  255. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 本法案に対する審議はもう回を重ねておりまして、各委員の方々からいろんな質疑が出されまして、その内容は共通した面も多々あるようでございまして、私もまた、今まで出された質疑と重複するような点があるかと思いますけれども、私は私ですので、ひとつ懇切な御答弁をお願いしたいと思います。  まず最初に、厚生大臣にお尋ねいたしますが、昨日六十年度予算の折衝が、大蔵大臣とその詰めが行われましたけれども、結果的に見てどうでしょう。さらに高齢化が進む来年以降の中長期ビジョンの中に盛られたもろもろの構想を遂行していく上に支障が来さない、そういう見通しというか、自信があるかどうか。いかがですか。
  256. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 昨夜から未明にかけて決められたシーリング、残念ながら、決して十分というものでは。ざいませんが、国全体が厳しい予算の中でマイナスシーリングあるいはゼロシーリングということで各省苦悩をいたしております。そういう中で、国の政策費の二八%という膨大な予算を抱えておる厚生省が、来年度三・七%の増、三千四百億というシーリングをいただいたということは、これで決して十分ではございませんが、全体のバランスの中では、五十九年度の伸びが二・三であることを考えますと、全体では五十九年度と同じ条件というよりは厳しい条件で今度のシーリングが決められておりますから、やむを得なかったと思います。  そこで、先生方一番御心配なされるのが、このために社会保障の後退になってはならない、あるいは福祉の質が落ちることになってはならないということでございますが、これから八月末の概算要求まで、私ども知恵を絞って工夫を重ねて、このシーリングの中の予算で、来年度、予算縮減のための改革を先生方にお願いするというようなことが決してなくて済むように、また、社会保障の年金あるいは医療諸手当等の予算は、これを受ける人々にとっては命の綱とも言うべき予算でありますから、その人たちに対する福祉の水準を下げるようなことのないように、工夫に工夫を重ねてまいりたいと思います。
  257. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この社会保障というのは、申し上げるまでもなく国民の将来の安心、安定の源泉になることでもありますし、どうかひとつ、せっかく大臣の今後の御健闘を期待しております。  そこで、次に参りますが、衆議院における審議の段階において、政府本人二割負担ということを完全に払拭するということではなしに――私、この二割負担ということを既成事実化させようというような感にも受け取れるんですが、この二割負担を強いる政府の当初概算要求額は三百六十三億円、こう計上されておりましたが、単純計算しましても、一割負担を求めている予算額が二百九十三億円でありますのに、なぜ二割負担ですと三百六十三億円となるのか、そこのところをいま一度説明いただきたいと思います。
  258. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 確かに概算要求時におきましては三百六十三億円、それから予算決定時には二百九十三億円ということでございました。概算時点の三百六十三億につきましては、負担率を二割、こういうことで計算をいたしました。その場合に私どもはいわゆる波及効果というものを計算をしておらなかったわけでございます。非常に単純な計算をしたわけでありますが、概算要求時にそういう問題があったわけでありますが、それは少し検討をしつつ予算編成時、予算の時点におきましてはこの波及効果というものも計算をいたしまして、九割の給付率計算をいたしました。その結果二百九十三億円ということになったわけであります。  つまり、医療費全体の見方の違いとなってあらわれるわけでありますが、一つは、八月概算要求時点の医療費推計と、それから、一月に編成をしたわけでありますが、一月時点における医療費の実績というものが違ったということと、それからもう一つは、波及効果というものを加味したかしないか、この二点によってそういう数字の違いとなってあらわれてきたものでございます。
  259. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 その波及効果を入れたとか入れなかったとかいうことですけれども、例えばこの計算方法の中身には、やはり受診抑制のとらえ方で国庫負担の額が変わってくるんじゃないかと思うんですが、仮に一割負担の場合、百人に対し受診抑制はどのくらいになるのか。二割負担の場合同じく百人に対して受診抑制というものがどのくらいに計算をされるのか。それはどういうことになりますか。
  260. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私どもは、一割負担あるいは二割負担によりまして受診抑制という形で受診率が下がるというような計算はしておりません。何が違うかといいますと、やはり一日当たりの診療費が給付率によって違ってくる。例えば、国民健康保険は三割の一部負担、それから家族の場合は三割ないし二割の負担本人の場合には十割給付でございますが、その違いを調べてみますと、受診率の違いはなくて、むしろ一日当たりの診療費に違いがある。そして、本人の方が二、三割方高い、こういう数字がございます。したがって、私どもはむしろ給付率が下がることによってその一日当たりの診療費というようなものが減ってくる、それを波及効果として計算をしたわけでございます。  その関係を数字で申し上げますと、医療費の大きさをあらわすものをyといたしまして給付率をxといたし、yイコール0.784x2乗マイナス0.536xプラス0.752こういう数式を使いまして、給付率医療費との関係をあらわす数式として使ったわけでございます。
  261. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 必ずしもその計算どおりにいくかどうかということが極めて疑問ではございますが、長瀬方式というものもこの中に入っているんですか。
  262. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 今申し上げました数式が長瀬係数のB式という式でございまして、先ほど先生がお尋ねになりました、受診率の抑制として九割の場合幾ら、八割の場合幾らということをお尋ねでございましたが、私ども受診率でなしに医療費で考えてみますと、九割給付の場合には五・九%の縮減になる、今の長瀬係数で計算をいたしますと五・九%ぐらいの医療費の縮減効果がある、八割の場合はその約倍ぐらいの縮減効果がある、こういうように判断をしております。
  263. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 では次に、保険給付率について、厚生省は将来は八割程度に統一したいという考えを示されておりましたけれども、この件についていつごろどういう手法で統一をされるのか、その目途というものはいまだに明示されておりませんけれども大臣いかがですか。これが一つ。  それと、そうなった場合に、例えば地域地域、職域は職域という形での一元化というか統一というような、そこいらのお考えをお示しいただきたいと思います。
  264. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、私の出した二十一世紀を目指す医療の方向という中でも触れておりますけれども、社会保障、これはやはり本来国民の皆さんが同じ条件で給付を受けるべきであろう、これが本筋である。ただ、医療保険制度の場合は、先生承知のように長い歴史がありますので、その歴史の中で幾つものものができてしまいました。これを全部白紙に戻してきょうから先生方と相談して医療保険制度をつくろうということになれば、これは恐らく給付条件は全部同じということで合意を得るものと思いますが、そういう長い歴史の中で、農家の皆さん方は三割負担、あるいはサラリーマンの方は現在は十割給付でというようなことになっておりますから、これをやはりできるだけ早い時期に給付負担の公平を図るということはもう既に国民的に合意を得ておる問題であると私どもは考え、財政等いろんな問題がありますので、六十年後半のできるだけ早い時期にそういう統合、統一の方向に向かって進めたいという我々の考えを明らかにしたわけでございます。  そこに至るためにはいろんなことが今考えられておるわけでありますから、まだ方式をこれとコンクリートしたものではございませんが、いろんな方向をたどりながらそういう目標に向かって進んでまいりたい、こういうことでございます。
  265. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 次に、医療費適正化についてお尋ねいたします。  この医療費適正化の額は、一千八百二十四億円から薬価基準改定の一六・六%減額した七百六十六億円を差し引いて、一千五十八億円が本来の医療費適正化と、こうなるわけですけれども、これはそういう考えでよろしいでしょうか。
  266. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) そのとおりでございます。
  267. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そうしますと、薬価基準改定も確かに医療費適正化対策の一環として含まれておりますが、一千五十八億円の細部にわたっての明細、それをお知らせいただきたいんです。
  268. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) レセプト審査の強化、指導監査体制の充実、それからその他いろいろ総合的な実施によりまして千五十八億円というものを計上したものでございますが、その中身につきましては、百五十八億、これは被用者被扶養者の認定条件のアップ、それから健康保険組合の拡大、それから任意包括適用事業所の拡大というようなことで百五十八億の効果額を計上しております。それから残り九百億でございますが、過去のレセプトの査定率が大体一・〇五%ぐらいでございます。それを三倍ぐらいの査定率にすれば大体九百億になるわけでございまして、私ども定率というものをひとつ上げていきたいと、こういうことで千五十八億になるわけでございます。
  269. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そういたしますと、今回のこの法案がこれから成立するかどうかわかりませんけれども、仮にか成立したとして、今答弁がありました指導監査の強化だとかレセプトの監査だとか、こういったようなものをさらに厳密にやっていかなくちゃいけない。また、健保適用の拡大だとかそういったようなこともこれあり、来年度の医療費適正化というものが今年度を下回るというようなことはないと、大臣約束できますか。
  270. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私ども、年々医療費の適正化には真剣に取り組むつもりでございます。ただ、先ほど先生指摘薬価基準引き下げ分、これが一つ不確定要素でございます。今年と同じょうに一六・六%というような大幅な引き下げになるかどうか、ここはわかりませんが、後の千五十八億円の部分、これにつきましては、私どもは当然ことしに劣らない努力をしていくつもりでございます。
  271. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 何だか非常に医療費適正化というよりも医療費適当化と言った方がいいような、つかみみたいな感じがしないでもないんですけれども、どうですか、明確にこれはこれ、これこれと、そういうようなことは言えないんですか。
  272. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 医療費というのは、計画的にこれだけ切るとかこれだけ圧縮するとかということはなかなか難しいわけでありまして、いろいろな対策を講ずることによって千億程度の縮減を図ろうという一種の努力目標を打ち立てるわけでございまして、先生指摘のように、確かにそれは、そんなことを言うんだったらそれは適正化ではなしに適当にはじいておるだけではないかと、こういう御指摘にもなろうかと思いますが、私ども一千億というのはかなり高い、国庫負担ベースで一千億でございますので、かなり高い目標を掲げて努力をしておるつもりでございます。したがって、ぜひ適正化だと御理解を願いたいと思います。
  273. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 次に、今薬価というお話も出ましたので、この薬価についてお尋ねいたします。本来、薬価は厄介だなどと言われるように、これは非常に難しい問題であろうことはよく承知しております。医療費が、五十八年度の見込み額として十四兆五千百億円、その中で厚生省のまとめた薬事動態統計調査によりますと、五十八年の一月から十二月の医薬品総生産額は四兆三百二十一億円と、全医療費の約三割を占める状態でありますけれども医療機関向けと大衆向けと分けますと、五十八年度においてどういう分布状態になりましょうか。
  274. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 医薬品の生産額でございますが、五十八年度で総医薬品生産額は先生おっしゃいましたように四兆三百二十一億でございます。これは対前年伸び率一・三%でございますが、このうち医療用医薬品が八五・三%を占めておりまして三兆四千三百八十六億、それから一般用医薬品が五千九百三十五億円でございます。
  275. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 医療費伸びが非常に取りざたされておりました中で、五十九年度の国民医療費は十四兆八千八百億円となって、対前年度比で三千七百億円ですか、ふえることが予想されまして、その伸び率としては、史上最低というか、非常に低い数字推計をされておりますが、薬価基準がことし三月に一六・六%引き下げられた、この引き下げによってどのくらいの医療費抑制につながったと見ておられますか。
  276. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私ども試算では、五・一%医療費が減るものと計算をいたしました。
  277. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 金額にしてどのくらいですか。
  278. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 金額にいたしまして、三千四百五十九億円でございます。
  279. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そうしますと、少なくとも薬価基準引き下げられたこの引き下げ額に比例した医療費の減ということになるはずなんですが、いかがでしょうか。
  280. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 少し答えが間違っておりまして、訂正をさせていただきます。  薬価基準引き下げ分だけでございますと、医療費にいたしまして七千六百七十億円の減になります。これが五・一%分の数字でございます。それで実は医療費の適正化ということで、同じ三月一日に総医療費ベースで二・八%の引き上げをやっております。医療費の改定をやっております。したがって、五・一%から二・八%を引きました二・三%が今回の純縮減額と、こういうことになるわけでございまして、その純縮減額が三千四百五十九億と、こういうことでございます。  失礼をいたしました。
  281. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 過去、近年三回薬価引き下げられておりますけれども、それでもまだ余裕があるといいましょうか、その引き上げに耐え得る状態とでも言いましょうか、この薬価数字の適正化というのが果たしてどこまで下げればいいのかちょっと見当がつかないんですけれども、そこいらはどのようにお考えですか。
  282. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 薬価基準というものが、薬価調査をいたしまして決定をする、その薬価調査にあらわれてくるのは市場実勢価格があらわれてまいってくるわけでございます。したがって、医療機関とメーカーとの取引価格が下がらなければ薬価基準に反映しない。しかし、それが下がれば薬価基準は下がっていく、こういう関係になるわけでございます。  そこで、何%ぐらいの余裕があるんだと、こういうことでございますが、これはしたがって正確には私どもはつかむことができません。薬価調査をやってみないとわかりませんというのが正直なところでございます。  ただ、けさほど和田先生からの御質問で、和田先生は、薬剤費を三%ぐらいずつ伸ばしていくということについてどう考えるかと、こういう御質問がございましたが、それに対しまして私どもは、三%という数字は実現不可能な数字ではないと、こういうように思いますというお答えをしたわけでありますが、仮に三%ぐらいで薬剤費伸びるとすれば、私ども五十九年度におきましては医療費の中で薬剤比率は二八%ぐらいなんでありますが、これが六十五年度におきましては二二%ぐらいのところまで落ちていく、薬剤比率が落ちていくという計算になります。
  283. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 薬価基準を決めても、結局医療機関で値切り合戦が行われると、こういうことで、私調べておりますのでは、薬価基準と大きな病院での購入価格との間にはいろいろな差がございます。例えば薬価基準と実際国立病院が購入する価格との間に約一二・八%の差がある。国立療養所になると一五・三%、国立大学の附属病院になると一六・七%、民間病院に至っては二七・二%と、かなりのそういう差が出てくるわけなんですね。  こういうところからでございましょうけれども、ことしの五月に都内のある病院で約六億円に上る所得隠し事件が摘発されました。この事件で明らかにされたことには、裏流通の現金問屋からの仕入れやあるいはおまけ薬品の横行、あるいはリベート等、こういうことは今やほとんど常識化されているということが浮き彫りにされたわけでございます。昭和四十三年に厚生省は、こういういろいろな景品だとかおまけだとかというようなものの禁止ということを通達しておりますけれども、実際は、今言ったようなことが今や常識化されている。そして乱売合戦、ひいては薬づけ医療というようなことにつながってくるわけです。  この事件で問題になるのは、大量に購入したというか、入手した薬は、もとをたどっていけば、今言ったような現金問屋と呼ばれる薬の裏流通ルートだったということも言われております。そうすると、現金問屋が安い薬をどこから手に入れるのか、それについては、ある現金問屋の社長の言葉によれば、卸売業者から仕入れるのが圧倒的だと、というのは、メーカーの卸売業者に対する圧力が強くて、そのメーカーの圧力に耐えられない卸売業者が、ノルマを達成するためにどっとたたき売りのようにして自分たち現金問屋に流してくる。こういうような証言をしておりますが、こういうことが本当であるならば、これはもうゆゆしきことであると思います。  こういう実態については当然厚生省も御存じと思いますが、薬品の流通機構の改善ということはこのビジョンの中にも載っておりますけれども、今後どのようにお考えになっていますか。
  284. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 御指摘のように、医薬品の流通市場というのが非常に複雑難解であるということが言われております。一般の商取引と違いまして、薬価を前提といたしましてメーカーが仕切り価格を出す、その仕切り価格をもとに卸が医療機関に納入をする。そのときは自由な競争のもとに価格交渉が行われまして、値引きをして納入をする、それに対しましてメーカーが値引き保証する。それからまた半年なり一年に一遍ぐらいリベートを出す。これが大部分が卸のマージンになる。さらに卸は、大多数がメーカーとの関係で長い歴史の中で形成されておりますために、必ずしも債権債務の関係がはっきりしない、契約がきっちりしないというような中で、えてして不明朗と言われるような事例がこれまで出てきたというようなことも指摘をされております。  先生指摘のように、いろいろなことが各界でも問題とされまして、厚生省長期ビジョンにおきましても医薬品問題についていろいろ触れておりますが、流通の適正化ということも一つのテーマとしてうたっておるわけでございます。そこで、これは五十八年の六月に公正取引委員会からの製薬協に対する審決がございまして、これを受けまして厚生省と公正取引委員会とで、「医療用医薬品の流通改善について」という基本的な項目を確認をし合いました。そして、具体的な案件につきましての是正措置を講ずると同時に、先生おっしゃいますように、これから明朗な、そして近代化のとれた流通改善というものを図っていかなければならないということで、現在までやっておりますことは、一つには先生先ほど添付とかサンプル等のお話しもあったわけでございますが、これも一つ重要な問題でございます。そこで、これは製薬団体の方でも自主的に大いに検討してもらいまして、サンプル規制を中心とする公正競争規約というのをつくりまして、これが公正取引委員会の認定を受けましてこの七月から実施をされておるということで、この公正競争規約の適正実施というものを流通段階について大いなるテーマにしていくということで私ども指導をしております。  それから、もう一つだけ言わしていただきますと、流通改善という面からいきますと、やはり先ほど申しましたように、流通関係というのが非常に契約関係もはっきりしていない、取引条件というのもはっきりしていないというようなことなので、取引条件の明確化、改善を図るためのモデル契約といったようなものも検討していこうじゃないかということで、これは役人だけでやりませんで、医薬品流通近代化協議会、これはメーカーとか卸の代表も入っていただく、学識者も入っていただく、私ども行政も一緒に参加しまして、今申しましたようなことを地道に積み上げて、何とか改善の方向に持っていきたいということで努力をしておるわけでございます。
  285. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そこで、実はきのうはここで公述人に対するいろいろな質問が行われましたが、その中で、私は薬価について数点質問をいたしました。それと同じ観点からお尋ねをいたします。  今も申しましたように、医療機関の購入価格と薬価基準との間にはかなりの乖離がある、日本の医師の技術料は世界一安い、しかし世界の医師の中で最も高収入なのは日本の医師である、こういう実に不可思議な現象がここに醸し出されてくるのもこういうことが原因だということなんです。お尋ねしたいことは、次から次に新しい薬が出てきます。本当の商売の常道から言うならば、安いのを仕入れてというのが常識なんですけれども医療機関では必ずしもそうじゃない、できたばかりの高い薬を仕入れている、こういうのが実情のようですけれども、そこで、この新薬の価格決定について、ここにもかなりの矛盾があるように思いますが、具体的にこの点についてどういうように思われますか。
  286. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 新薬の薬価の算定は、一応基本的には新医薬品と薬効が似ている医薬品を選び出しまして、その類似薬効の医薬品の価格を基本にして新薬の価格を決めるというのを原則としております。しかし、その原則に合わない場合には、例えば国際価格を参考にするとか、あるいは原価方式計算をしたものを新薬の価格にするとか、こういうことも例外的にやっております。基本的には、従来保険医療で使われております薬効が似た医薬品との比較におきまして価格を決定しておるということでございます。
  287. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 現在、収載品目はどのくらいの数がありますか。
  288. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 約一万五千品目でございます。
  289. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そうすると、きのう公述人に私お尋ねいたしましたが、約一万五千ぐらいの品目の中で、今やもう医療機関からほとんど顧みられない、こういったような薬品だとか、あるいは薬効が現在ではかなり疑わしいというか信頼できないというか、そういうようなことでほとんどもう用いられないのが約五千種類くらいあるということも聞いておりますが、これらを整理していくことも一つの大事なことじゃないかと思うんですね。つまり、どんどん新薬も出てくる。そして去る五十一年には漢方薬も保険適用となっているわけですから、加速的にこれはふえてくると思うんですが、そこいらの収載品目の整理、これも必要じゃないかと思うんです。  もう一つは、この収載品目の中には銘柄別収載というのがありましょうけれども、これにもまた問題があるのじゃないかと思いますが、この点はいかがですか。
  290. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) まず第一点の、収載品目の整理の問題でございますが、私どもとしては、過去におきましても整理をしてまいっております。例えば五十六年におきましては二千二百七十品目、五十七年度は少し少ないのでありますが三百五十品目、それから五十八年度は六百八十品目、それから五十九年の三月には七百品目、こういうようなものを経過措置品目というようにいたしまして、収載後に流通しなくなった医薬品というものは経過措置品目にまずいたしまして、原則として一年後には薬価基準から落とす、こういうような整理の仕方で進めております。  それから第二点の、銘柄別の問題でありますが、確かに銘柄別にすることによって品目の数というのが非常にふえてまいります。そこで、銘柄別収載方式というものについて検討を加えれば、そして仮に統一限定収載方式というようなものにすれば、この一万五千という品目の数はかなり減ってまいります。これは事実なんでありますが、実は、銘柄別にいたしましたのは五十三年からでございます。なぜ銘柄別を採用したかと申しますと、従来統一限定収載方式というものをとっておったわけでありますが、これは主としてゾロゾロメーカーを結果的に保護する収載方式になる、こういう批判がございまして、その点を是正するためにやはり各メーカーが自分のブランドについて責任を持ってつくり、かつ販売をするという姿勢を示し、そういう流通をするためにはやはり各銘柄に従って銘柄別収載をする方がいい、こういう判断から五十三年に収載方式を変えたということでございます。  しかし、今先生指摘のように、銘柄別を採用すれば今度はまた銘柄別に伴う弊害というものが指摘されるような状態になっております。したがって、私どもの頭の中にある一つの考えとしては、銘柄別の長所は長所として残しながら、かつ、統一限定収載方式もまた捨てがたいいいところもある、その両方の長所を足して、そして欠点は捨て去るような方式はないものかということで現在検討をいたしております。
  291. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 それは非常にいいことですけれども、しかし、実務的にそういう器用なことができる可能性はありますか。
  292. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 知恵の出し方だろうと思います。
  293. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 では次にまいりますが、厚生省は六月十二日に、医療機関向けの医薬品の小口包装をふやすよう製薬業界、団体に通知を出しましたが、この趣旨は何だったんですか。
  294. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 六月二日に、「小包装医薬品の円滑な供給について」という通知を出したわけでございます。これは、医薬品につきましてはいろいろな包装単位があるわけでございますが、まれには大きい包装しかないということで、医療機関が注文をしてもなかなか手ごろな包装品が手に入らないということで不満が生ずる、また、これは医薬品の効率使用という面からもやはり問題があるわけでございます。そういうことで従来から指導してきたわけでございますが、なお円滑を欠く面があるという指摘が中医協においてもなされまして、改めてこの六月に通知をいたしましてその徹底を図ると同時に、苦情については、例えば都道府県の業務主管課等で十分把握をして、是正方についてよく指導するようにというようなことを通知いたしたわけでございます。
  295. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 ちょっと論点が変わりますけれども、例えば医療機関における診療費にも地域的に格差がある、こういうことを聞きますが、この点はどうでしょうか。つまり、例えば関西地方では東京方面に比べて医療費が非常に高い、その地域格差は三〇%以上に達する、こういうように言われておりまして、もし関西地方で東京並みの医療費診療が行われるとするならば、年間一千七百億円ぐらいの節約ができるという計算もできる、こういうことが言われておりますが、この地域的な格差の原因というのは何なんでしょうね。
  296. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 確かに今先生が御指摘のように、一件当たりの医療費について一般的に西高東低、西の方が高くて東の方が低いという傾向がございます。その原因につきましてはいろいろなことが考えられるわけでありますが、例えば人口当たりの医師数の違い、あるいは医療機関数の違い、ベッド数の違いというような、主として医療供給体制に係る原因、それから、例えば老人人口が多いかどうか、それから患者の受診行動といいますか、受診のためのビヘービアみたいなものの違い、こういうものも考えられます。また一つの見方としては、医療機関診療の中身の問題が関係をするであろう、そしてまた、それに対する審査というものの違い、県別の違いというようなものも作用をしておるだろう、そういうような原因がいろいろ重なって地域差というものが生じておるのだろうというように私どもは考えております。
  297. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 今の御答弁の前半の方は、それはある程度不可抗力とも言えましょうが、しかし、その後半の段になると、これはある程度の行政指導によって是正される面もあろうかと思いますが、いかがですか。
  298. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) そのとおりだろうと思います。しかるがゆえに、私どもは指導監査あるいは審査を強化することによりまして、先ほどのような医療費適正化の効果を上げていきたいと、こう考えている次第でございます。
  299. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 次は、医薬分業についてお尋ねいたします。  医薬分業の推進ということがこの中長期ビジョンの中にもうたわれておりますが、その中に、「基盤づくりの促進」ということがあります。この「基盤づくりの促進」ということはどういうことでしょうか。
  300. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 医薬分業は、改めて申すまでもございませんが、お医者さんは診断治療の専門家である。薬剤師は薬の専門家である。それぞれの職の専門を生かして、連携プレーによりまして国民医療の質の向上を図るということだと思います。  そういうことでありますが、これは長い歴史の経緯がありまして、西欧先進諸国に比べまして日本は非常に徹底を欠いておるということで、かねてからの課題であったわけでございますが、やはり何と申しましても長い歴史的経緯がございますので、医薬分業実施のためには関係者の理解と合意の形成というものが基本的に必要だと思います。そういう意味で、基盤づくりと申しますと三つのポイントがあると思います。  やはり関係者の理解と合意というもの、いろいろの立場の違いの意見がありますけれども、それを端的に協議をし合って合意を形成をしていくということが一つ。それから第二番目には、国民の皆さんに、やはり薬の専門家は薬剤師であるということをよく理解してもらう。そしてまた、医薬分業趣旨というものをPRし、徹底していくということだと思います。それから三番目には、やはりこの受け入れ態勢というものを整備していかなければならない、そういう意味で、調剤センターであるとか検査センターの整備、これは従来から進めてまいりましたが、さらに一歩も二歩も前進を図るようにといったことが基盤づくりの中心になろうかというふうに思っております。
  301. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 広く国民にこの基盤づくりの一環としてのそうしたPRをしていかなくちゃいけないと、それに要する予算はどのくらいありますか。
  302. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 医薬分業の関係の予算というのは、これは何と申しましても関係者の理解と合意、それから意識面ということでありますので、額の面からはそれほどの額はございませんが、それでもやはり私どもとしては医薬分業の推進費といたしましては、昭和五十九年度の予算では五百八十三万余円を計上をいたしております。
  303. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 五百万ぐらいの予算、そのくらいのことでこの医薬分業という画期的な大事業がこれ十分ですか、大臣
  304. 正木馨

    政府委員(正木馨君) この関係の経費は、医薬分業に関します関係者の理解と合意ということで、先ほどちょっと申し落としたわけでございますが、医薬分業推進懇談会というのを設けまして、これは三師会の代表、学識者も入っていただきまして、そして私どもも入りまして、医薬分業の推進に当たって一体どういう点に隘路があるのか、どういった点にポイントを置いてこれから協議をしていくのかといったような協議をする懇談会でございますが、こういった経費、それから医薬分業の推進の指導者に対する講習会の実施経費、それから国民にPRをする経費というものでございますが、このPR経費というのは、国と同時にやはり日本薬剤師会、これも非常に力を入れておるわけでございますが、そういう面とタイアップをいたしましてこの辺の事業を進めていくということで、予算の効率化というものを図りまして、実のある執行を図っていきたいということで私ども努力をしておるわけでございます。  さらに、ちょっとついでに申し述べさせていただきますと、先ほど申しました受け入れ態勢の整備ということで、検査センター、調剤センターの整備ということを申し上げましたが、これにつきましては、保健衛生施設等の整備費の補助金というのがございますが、その一環としてある程度費用を見ておるということでございます。必ずしも十分な予算というふうには思っておりませんが、できるだけ効率的な使用を図りまして、その趣旨の徹底を図っていきたいということを考えております。
  305. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 まあ予算額が多けりゃいいというものじゃないんですけれども、これは役場じゃないんだから、一国の一つの事業というものに五百万円だなんていうのは、ビジョンに盛られているそういう文言から見ると、何ともあの文言がそらぞらしく感じられるわけなんですよね。そこで私はあえてこの予算の額というものをお聞きしたわけですが、では、この医薬分業というものをいつごろを目途としてビジョンに盛られているのか。いかがですか。
  306. 正木馨

    政府委員(正木馨君) これは、医薬分業というのは非常に長い経過をたどっておるわけでございますが、先生御案内のように、昭和三十一年に、医師法、薬剤師法の改正に伴いまして任意分業の形で実施されたのでありますが、ほとんど定着しないままに推移してきた。それで、昭和四十九年というものを一つの転機といたしましてかなり進展が図られてきた。四十九年から五十七、八年ごろまでを見てみますと、処方せんの発行枚数では十二倍ぐらいに伸びております。しかし、これは基礎数字が低かったために十二倍に伸びましたけれども、全国的に見ますとまだ水準が低い。それから、地域によってのアンバランスというものも非常にございます。  そこで、私ども医薬分業の推進というのは厚生省としての大きな課題でありますのでこれを推進していく、これには関係者の意識というものをそちらに持っていくということが必要なわけでございますが、大変平たいことを言わしていただくとあれでございますが、医薬分業をいかに推進しても、先ほど受け入れ態勢というのがございましたけれども、やはり薬剤師さん自身が、あの薬剤師さんのところに行って調剤をしてもらおうという物的な面と、それから精神面と申しますか、物心両面にわたっての受け入れ態勢を図っていくということも必要だと思います。そういう意味で、非常にそれぞれの方々、関係者の意識の向上というものが前提になるわけでありまして、私どもとしては、できるだけ速やかに推進を図りたいということを思っておりますが、何年までに何%と、何年までにということはなかなかこれは決めにくい。  しかし、中には非常に進展をしているところがございます。例えば長野県の上田地区とかあるいは広島県の因島地区というようなところは非常に成績がいい。こういったようなモデル的なケースが一体そこはどういう苦労があったのか、それからまた進展に当たってどういう点に隘路があったのかということを、まあおくれていると言ってはなんですが、そういうところに示していって、お互いに向上を図っていくということが必要じゃないかということで、はっきり何年計画とかということはなかなか言いにくい問題でありますけれども、そういう面で私どもこれから薬剤師会とも連携をとりながら努力を続けていかなければならないというふうに思っておるわけでございます。
  307. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 現在世界の先進国で医薬分業が定着している国はどのくらいですか。  それともう一つは、現在我が国でこの医薬分業がされている医療機関と申しましょうか、薬局といいましょうか、その数はわかりますか。
  308. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 医薬分業は、西欧の先進諸国で申しますとほとんどが分業が実施されております。中には、強制分業という形では実施はされておりませんが、我が国と比較しますとその分業の実施率というものは比較できないほどの実施率でございます。それはやはり我が国とそれぞれの西欧先進諸国との歴史的な経過の違いというものもあるわけでございます。  ところで、もう一つの御質問の、医薬分業実施している保険薬局はどれくらいかということでございますが、ちょっとここに正確な数字はあれでございましたが、保険薬局として指定をされておる薬局は三万弱ぐらいということで、保険薬局の指定は、ほとんど大部分あるいは相当部分薬局が保険薬局としては指定をされておるというのが現状でございます。大体そんな感じでございまして、薬局数が昭和五十七年度で三万三千二百八十七でございますが、保険薬局の数は二万八千七百二十二ということでございます。
  309. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そこで、この問題については午前中も他の委員から御質疑がありました。私もきょうこのことをただしていこうと予定しておったんですけれども、本法案が成立したときに、この間衆議院修正可決されて当院に回ってきております一部定額負担の問題ですね。これはどういうことになりますか。というのは、今言うように、医療機関でも百円払った、そしてそこで出された処方せんを持っていって、また薬局でも百円払う、こういうことになるのか、そこのところをお願いいたします。
  310. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) そうなるわけでございます。  ただ、けさ方の設例では、例えば九百円医療機関医療費がかかった。そこで百円を払う、そして処方せんを持っていって薬局で六百円の医療費を払った。そうすると、医療費総額としては千五百円なんだけれども、一部負担は二百円になるではないか。医療機関だけで薬ももらえば千五百円以下は百円でございますので百円で済む。医薬分業で処方せんをもらえば二倍になる、二百円になる、そういう例をけさ取り上げられたわけでございます。  しかし、一方におきまして、例えば二千七百円の医療費と仮定をいたしまして、千二百円が医療機関でかかった、そして薬局で千五百円支払った、薬剤費がかかったといたしますと、まず医療機関で、千二百円ですから、千五百円以下になりますので、百円の一部負担を払う。それから薬局へ処方せんを持っていきますと、千五百円以下でございますので、また百円を払う。そうすると、二百円払うことになるのであります。しかし、それをもし医薬分業でなしに医療機関だけでやるとすれば、二千七百円のランクというのは三百円払わなきゃならぬというランクになっておるわけでございます。  したがって、医薬分業をやっておるからといって、医療費が幾らかかるかによって得をすると言っては申しわけありませんが、支払い額が変わってくる。得をする場合と損をする場合が生ずる。そして、非常に中立的な場合もあるわけでございまして、例えば医療機関で千円、それから薬局で千円というような場合は、それぞれ百円ずつ払って二百円。それを医療機関でやりましても二千円の場合は二百円払えばよろしいわけでありますから、これはどちらも同じ。こういうようにケースによっていろいろ違うわけでありまして、私どもは、けさの例、例えば九百円と六百円というような設例の場合ですと、何となく医療分業が行われがたいような金額になりますし、先ほど挙げましたように、二千七百円というような例を考えてみますと、医薬分業は断然推進されるはずだ、こういうことになりまして、なかなか今度の衆議院修正の結果につきましては評価が難しいんでございます。  そこで、弊害ばかりでございますと、弊害というか、損をするケースばかりでございますと、私どもも何かの行政指導で手を打つ方法も考えなきゃならぬかなと、こういうような気がしておるわけでありますが、今申し上げましたように、得をする場合も生ずるとすれば、なまじ知恵を出したために患者に損をかける、かえって損をかける、こういうようなことになるわけで、医療費の段階でくくって、一部負担を定額にするということに伴って、やはり段階の前後の辺の医療費についてはやはり定率とは違った問題が出る。これは否定しがたいことで、今の医薬分業の場合の一部負担の違いというのもそういうことから生ずるやむを得ない結果ではないかというように受け取られます。  ただ、私どもは、本則というのはやはり定率の一部負担だというように考えております。したがって、定率を選ぶか、金額段階別の定額制を選ぶかというのは医療機関の自由でございますので、やはり医薬分業を推進する見地から、そういう届け出が参りましたときには何らかの形で行政指導をする道がないか、こういうことを少し模索してみたいと考えております。
  311. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 はっきり申しまして、非常にわかりにくい、そういう気がいたします。  医療というものは、薬屋のためでもない、医療機関のためでもない、結局病気にかかって苦しんでいる病人を本位として考えるべきじゃないかと思うんですけれども、あの修正案が出されたその経緯をたどってみても、何かしら医師会との話し合いで、糊塗的というか、そういうような感じが非常に強いわけでして、今非常にわかりづらい答弁いただきましたけれども、じゃ、端的に言って、薬品というものは、あれは技術なのか物なのか、どうでしょう。
  312. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私ども、保険診療あるいは保険に伴う診療報酬の従来の扱いからいえば、物だというようなことが通説になっております。
  313. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 物であるならば、医薬分業の場合、先ほども申しましたお薬屋さんが受け取る百円なら百円という、そのお金の性格というのは、それは何でしょうか。薬代ですか、それとも技術料ですか。技術は別にお薬屋さんは直接下していないわけですが。
  314. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 定率負担というのは、物であるか技術であるかを問わず、使われた医療費に着目をして、その何割を負担をする、こういう制度でございますので、仮に物であっても技術であっても、その医療費に対して一割なら一割、二割なら二割というものがかかっていくのが定率負担であろうと、私どもはそう理解をしております。
  315. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 これはいずれにいたしましても釈然としない問題ですね。私がそう思うように、これがもし実施されたときに、一般国民はそういう矛盾というか、疑問を感じて、これはいろんな問題が派生してくるということは十分予想されますよ。その点に対する何かフォローしていくというような、そういうお考えはないんですか。
  316. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 私ども、この三段階の定額制を希望する医療機関がどれくらい出るか、あるいは定率の一部負担を採用する医療機関がどの程度出るか、これが現在のところまだ予測がつきません。したがって、私ども定率の一部負担で考えればさほどの混乱は起こらないと思います。  ただ、医療機関側においてやはり事務的な負担というものが若干ふえる、そこを救うために三段階の定額制一部負担というものが出てきたわけでございますので、先生が御指摘のようなトラブルというようなものが起これば、その時点において適切な手を打って混乱のないようにいたしたいと思います。私ども、今のところそのトラブルというものがどういうものか予測がつきません。したがって、もし法律を通していただければ、実施までの段階に大いに周知徹底を図りまして、トラブルのないようにいたしたいと考えております。
  317. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 今、これはまだ実施されないわけでして、それといま一つは今おっしゃったように何か起こってからと、これはちょっとおかしいと思うんですね。それともう一つは、ビジョンの中にも盛られている分業への推進ということとリンクした場合に、非常にこれは矛盾を感じます。  ですから大臣、この問題、だれが考えてみたってこれは矛盾ですから、それをどう説明されようと、説明されればされるほどわからなくなってくる、これがもう正直なところじゃないかと思うんですが、最後に大臣、この点についてのお考えをお聞かせいただきたい。
  318. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは先生御案内のように、衆議院で議員立法で決まったものですから、それに対して、国会の議決をすべてに優先しなければならない議会民主政治社会で私どもがとやかく批評するというのはいかがかと思いますが、今論議がありましたふうに、確かに医薬分業の推進というのは厚生省の基本方針でありまして、その点からいえば、先ほどのように、損をする場合、つまり医薬分業を妨げる場合、または得をする場合、これは医療分業を推進する場合ということになるんでしょうが、そういう問題が出てくるのは御指摘のとおりでございます。  事務的な簡素化ということになると、四捨五入、あるいは切り上げ、切り捨てということになりますから、どうしてもこういった矛盾は避けられないわけでございます。しかし、やっぱり医療機関の窓口で、九十六円とか百十何円とかいうことは、簡便さということになると、むしろ百円、二百円、三百円ということの方が、単に医療機関の窓口の便宜ということでなくて、患者にとってもかえって便利な場合もあるとか、なかなかこれは難しい問題だと思いますが、いずれにしても国会でお決めいただいたことでありますから、それについて私どもとやかく申し上げることはできませんので、その決まった内容で弊害のないように、行政的な努力に知恵を絞ってみたいと思います。
  319. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この件については、私どもとしてもまた十分に大いに検討をしてみたい、このように思います。  では、次にまいりますが、私、戦中派でございますので、皆さん方の中にもかなり私と同年配の方いらっしゃると思いますが、戦時中よく標語に、ポスターなんかが町に張られておりまして、「まず健康」と、こういうのがありました。まず健康、やっぱり人間というものは、いろいろなことを言ってもまず体が丈夫でなくちゃいけない。これが一番大事じゃないかと思うんです。その健康づくり、体力づくりということが最近非常に強く叫ばれておりますけれども、そういう意味から考えて、健康診断というものを転ばぬ先のつえとして、やっぱり丈夫なうちに定期的にやっていくべきじゃないかと思うんですが、健康診断と一口に言いましても、身長をはかって、体重をはかって、問診をして、聴診器でこうやって、これでも健康診断。まるで私どもが小学校のころ、いわゆる身体検査と称するあのたぐいのものでも健康診断と、こういうのもあるわけなんですね。  ですから、健康診断というものはこれこれこれのこれだけの検査をすべきだというような、そういう明確なものが実施されなければいけないんじゃないかと思うんですが、その点いかがでしょうか。
  320. 水田努

    政府委員(水田努君) 御指摘のとおりでございまして、老人保健制度は四十歳以上の方のいわゆる成人病と胃がん、子宮がんの予防を目的としまして健康診査を決めているわけでございます。  具体的には、一般健康診査は循環器の系統を主としてねらいといたしております。それから、胃がん、子宮がんは早期発見をねらいとして実施をいたしているところでございます。
  321. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 地方に参りましても、今保健所というのがございますけれども、県民、市民の健康維持、健康保持のために保健所といったようなところがどれだけ機能しているかということを見るときに、これはちょっと疑わしいんですね。それと相まって、本当に国民の大半の人たちが健康診断を受けるようなそういう態勢をつくっていくべきじゃないかと思いますが、今はいわば、何といいますか、自然の形というか、自然のまま受けたい人は受ける、そうでない人はもう十年でも二十年でも、生涯一遍も受けないという人たちだっているわけなんですがね。こういうようなことでございますが、この態勢づくりというか、そういうものをどのようにお考えになっていますか。
  322. 水田努

    政府委員(水田努君) 御指摘のとおりでございまして、老人保健制度がスタートして一年余を経過したわけでございますが、私ども老人保健制度では、住民の最も身近な行政主体である市町村に、今申し上げました健診事業というものの実施をお願いしているわけでございまして、これを今後進めてまいりますためには、大きく言って二点あろうかと思うんです。一つは、三千三百の市町村の行政の中にこの健康診査の事業をきっちりと定着化をしてまいらなきゃならぬという点と、それから、先生が御指摘のとおり、この健康診査に住民の方が協力し参加していただかないとこれは成り立たないわけでございまして、自分の健康は官公で守るという自覚のもとに、市町村実施する事業住民の方が積極的に参加してもらうための啓蒙、啓発というものをやってまいらなきゃならぬ、この二点が一番重要なところでございます。  私ども、その自覚を持っていただくために、昨年の公衆衛生審議会の答申にのっとりまして、ことしの秋に、これは仮称でございますが、四十歳からの健康週間というようなものを設けて、やはり健やかな老後を迎えるためには四十歳から健康の仕込みをしておかなきゃならぬ、そのためにはやはり何としても定期健診を毎年きっちり受ける必要があるんだというPRを徹底してやるということと、それから、やはり市町村における行政の定着化を図るために、健康マップというものをつくりまして、全国の市町村別に胃がん、子宮がん、脳卒中の死亡率等の分布を明らかにし、それに対するそれぞれの市町村事業の実績状況もあわせて図表化し、住民の方が一日で自分の置かれておる市町村のこの事業への取り組みぐあいというものが判断できるようなものを工夫してつくってみたいということで、現在準備を進めているところでございます。
  323. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 それに関連しまして、つまり乳幼児の、就学前児童の医療の公費負担についてお尋ねいたします。  この就学前児童の生理的特殊性といいますか、それに発病の因果関係については、過日、我が党の高桑委員が専門的見地からその必要性をるる強調しておられましたが、健保の中にもこのことは明記しておりますように、乳幼児の医療費というものには国から、本当にこれはこれからの我が国を背負って立つ人材としての生育、それを保護するという意味からも当然じゃないかと思うんですが、もう一つは、やはりこうした乳幼児を抱えている保護者というのは、年齢から推定しても大体において非常に年の若い人たちが多い。したがって、その所得の面から見ましても決して多い方ではないと思うんですね。そういうようなことから負担を軽減するような配慮というものをぜひやっていただきたいと思うんですが、いかがですか。
  324. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 乳幼児に対して、乳幼児が特殊性があるので十割給付をすべきであるという御意見でありますならば、私どもは、保険制度の原則からいって、給付率は少なくとも全国民公平であるべきだと、こういう観点から給付率を定める必要があろうかと思います。特定のグループだけを対象にして給付率を厚くするというのはなかなか保険の給付率としては難しいことだろうというように私どもは考えております。  ただ、それでは公費負担医療として結果的に自己負担がないような形の医療にしてはどうかと、こういうことになりますと、現在も特に乳幼児の疾病のうちでは心身の障害を残すおそれがあるとか、あるいは長期の療養を必要とする慢性疾患等につきましては公費負担をやっておるわけでございまして、むしろ私どもはそういう子供の将来を考えましたときに、将来禍根を残すようなものについては公費負担をやっていくべきであって、一般の疾病全体に対して公費負担をする、こういう政策はやはりとるべきでないのではないか。やはり優先順位から考えて、問題のある、優先度の高い部分に公費をつぎ込んでいくのが正しい政策ではないか、こういうように考えておるわけでございます。
  325. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 その優先順位から考えた場合に、だからこそ乳幼児というものの特殊性というものを非常に強調されたわけでございますが、この席で私は、将来に向かって、就学前のそうした乳幼児に対する特段の配慮を強く要望いたしておきたいと、このように思います。  もう時間も迫ってまいりますので、次に移りますが、被保険者の拡大についてお尋ねいたします。  五人未満の事業所の数がどのくらいあるのか。さらに、五人未満のこれら事業所は、政管健保の適用を受けられるということは、これはもう認められているのかどうか、ここのところを確認したいと思うんです。
  326. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) いわゆる五人未満事業所と言われております事業所の数は、約九十万事業所でございます。それから、そこに働いている従業員の方の数が約三百六十万人でございます。  現在、健康保険と厚生年金保険におきましては、強制適用にはなっておりませんが、任意加入の道は開かれておるわけでございまして、事業所に働く人の過半数の加入したいという意向が明確になれば、申請をいたしまして、許可を受けた上で加入することが認められております。
  327. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 今の御答弁のような状況であるならば、今日のようなこういう大きな改革をやろうとするわけですから、この際、これについて明確に法制化して、強制加入などの積極的措置をとるべきじゃないかと思いますが、大臣いかがですか。
  328. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 確かに今御指摘のとおりでございまして、従来からこの問題は私どもも十分意識をしながら検討を進めてまいったわけでございます。  今回、健康保険におきましても大きい改正をいたすわけでございますし、また、年金制度におきましても、基礎年金の導入を初めといたします大きな改正を予定しておるわけでございまして、これを機会に五人未満事業所について強制適用の範囲を拡大していくと、こういう方法に踏み切ったわけでございます。  具体的には、まず昭和六十一年の四月以降、とりあえず法人によって経営されておる事業所、これは把握も容易でございますし、また、賃金でありますとか、各種のいろいろな事業所内の従業員の労務管理等も明確になっておりますので、まず法人事業所から適用していこうということにいたしまして、立法化をすべく既に法案を御提案申し上げているところでございます。
  329. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 次に、国保の問題に移りますが、国民健康保険の加入者、被保険者数、市町村と組合に分けてお願いします。  それと並行して、高額保険料支払い者がどのくらいおられるのか、その点もひとつあわせてお尋ねいたします。
  330. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 市町村の被保険者数は五十七年度末現在で四千百三十万人でございます。それから組合は三百三十万人でございます。合わせて四千四百六十万人でございます。
  331. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 次に、国保の保険料を平均して非常に高く納めさせられているところ、そういう自治体、それと今度は逆に非常に安いところとこういうふうにあるわけですが、その中で国保の保険料の収納率というのもおのずとここにいろいろ変わってきているわけですが、全体的に見てこういう安いところ高いところ、この差はどういうところから出てくるんですか。
  332. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 国民健康保険料が高いところと低いところがございます。その保険料の格差がなぜ生ずるか、こういう御質問でございますが、現在、国民健康保険は御承知のように市町村単位で運営をしております。したがって、市町村ごとに医療費が違う、こういう事態が起こるわけであります。例えば医療機関の数が違うとか、医師の数が違うとか、あるいは交通の利便度が違うとか、あるいは一人高額の医療費を要する患者が発生するとか、いろいろなことによりまして市町村ごとに医療費の額が違ってまいります。その医療費を賄うために国庫負担と保険料があるわけでございますので、やはり医療費が高いところは保険料が高くなると、こういうことになるわけでございます。
  333. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そこで、この保険料ですか、先ほども申しましたように、かなり滞納の額もここで出てくるわけですけれども、それが年々少しずつではございますけれどもだんだん滞納の額がふえていっておる。そこで、五月二十九日だったですか、厚生省は都道府県に、収納率向上のための実施要領を出されたと思いますが、その後の状況はいかがですか、まだ日にちはたっておりませんけれども
  334. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 御指摘のように、確かに収納率が年々低下をいたしまして、五十七年度では収納率が九三・六%というような数値を示しております。そこで、私どもといたしましては、収納率向上対策の実施要領というものを示しまして、収納率向上のための施策を各市町村でとるように指導通達を出したわけでございます。  その効果につきましては、この五月に出したわけでございまして、今のところどういう効果が上がったかということを定かにできませんが、各市町村、非常に努力をしておるようで。ざいまして、恐らく今年度におきましては収納率が上がっていくんではないか。私ども、個人の市町村民税の収納率から見ましても、少し保険料、保険税の収納率が低いようでございますので、収納率向上対策をやれば少しは収納率向上の効果が上がるものだと期待をして、期待の気持ちを持ちながら現在市町村にお願いをしておるところでございます。
  335. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 それで、国保の国庫補助が、医療費ベースに直しますと約三八・五%、金額で一千五百四十四億円ぐらいの削減になるわけですが、国保の補助率が四五%から三八・五%に引き下げられることで、これはもう当然市町村の財政にかなりの負担がかかってくる、ために保険税がはね上がってくる、こういうおそれがあるわけです。  先ほどから指摘しておりますように、国保の保険料の未納世帯がふえつつある、こういう現況から見て、負担をより重くするようなことになって、収納率向上を指示されたそれとは逆行するような現象が起こってくるんじゃないかというおそれもありますが、いかがですか。
  336. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 確かに補助率に関しましては、先生の御指摘のとおり引き下げることになっております。  ただ私どもは、今回退職者医療制度をつくる、こういうことで、国民健康保険の負担というのは非常に軽くなってくるわけでございまして、その分を差し引いた、こういうことでございます。したがって、仮に国庫補助率が下がりましても、そのために保険料が上がる、こういうことにはなっておりません。私ども、五十九年度で各市町村が取るべき保険料として予想しておった数値が今回の改正によってふえる、こういうようには考えておらない次第でございます。  また、今回の改正によりまして、財政調整機能というものを高めようということで、財政調整交付金の交付枠をふやしております。従来の倍にふやしておるわけでございますが、私ども、その財政調整機能を通じまして、保険料の負担が急激な変化をしないように十分気をつけて配分をしてまいりたいと考えておりますので、まず先生の御指摘のような御心配というのは起こらないんではないか。起こるようだったら財政調整交付金でもって調整をしていく、こういうことで考えておるわけでございます。
  337. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 いま一つ私ひっかかるのは、この国庫負担市町村及び組合によってその率が公平であるかどうかということなんですが、どうもそこのところが、必ずしも公平であるというようには思えないような節があるんです。  それで、実はこのことをいろいろ質問するに際しまして、国庫負担補助額の出し方というか、非常に高額なものを出しているところと少なく出しているところ、そういったようなところの実態を知りたかったものですから、資料要求をしたんです。ところが、それはもう厚生省にはありませんと、その理由は何かというと、もう市町村の数が三千数百あるんだから、とてもじゃないけれどもそういうものはありません、今、電話番号を教えますから、そこに行けばありますから、そこへとりに行ってください、こういうことなんです。そこに国民健康保険中央会があるから、そこの電話番号を教えるから、そこへとりに行ってくれと言うんです。まあ不親切というか何というか、そういうことを言ったからどうだと、そういう低次元のことで私はやかましく言うつもりはありませんけれども、そういうような資料が厚生省にないということも、これも一つ問題じゃないかと思うんです。  国庫負担を出している、どこにどのくらい出している、こういうものがなくてもいいんでしょうか。それがむしろ問題じゃないかと思うんですが、いかがですか。
  338. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 今初めてお聞きいたしたわけでありますが、まことに申しわけない仕儀でございました。今後気をつけさせるようにいたします。  私ども国保行政をやっておる局といたしまして、国保の国庫補助額が市町村間にどれだけ行っておるか、それがわからないはずはございませんし、わからないで行政をやっているつもりはございません。これは想像でございますが、恐らく、三千二百市町村の全部を出せというように誤解をしたんではないか。例えば高いところ、低いところ、そういうものを示せとおっしゃれば直ちに持って参上をいたします。今後も、三千二百ということになりますとなかなか時間もかかりますが、特に特徴的なところを示せというような御指示ならば、いつでも私どもは御指示に従うようにいたしますので、先ほどのことはひとつ御勘弁のほどをお願いをいたします。  そこで、確かに先生指摘のように、国保の一人当たり国庫補助額を見てみますと、市町村間でかなりのアンバランスがございます。それはなぜかといいますと、やはり医療費の何%と、こういうことで国庫補助が行われている関係上、医療費が高いところには高い補助金がいく、医療費が低いところには低い補助金しかいかないと、こういうことになってくるわけでございまして、そのことによって生ずる欠陥につきましては、やはり私ども負担の均衡を図る見地から、所得それから医療費の額、両方を勘案をしまして、財政調整交付金を配賦しておる次第でございまして、全市町村を通じて額はアンバランスがございますが、実質的に国保財政に及ぼす影響については等しくなるように国庫補助金の配分をやっておるつもりでございます。
  339. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 国保について最後にお尋ねいたしますが、国民皆保険と言われている現在、それでも今日なお未加入の人たちがいらっしゃるわけですが、この方々に対してはどのような手を今後打たれていきますか。
  340. 吉村仁

    政府委員吉村仁君) 少なくとも法律的には全国民が何らかの医療保険に入るということになっております。したがって、被用者保険に入っていない方々は国民健康保険に入る資格があるし、入ってもらっておるというように私ども思っておるわけでありますが、未加入者があるとすれば、私どもの適用の努力が足りないと、こういうことになるわけでございまして、今後市町村を督励をいたしまして、国保への未加入者がないようにひとつ指導をしてまいりたいと考えます。
  341. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 以上で終わります。
  342. 石本茂

    委員長石本茂君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十八分散会      ―――――・―――――