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1984-07-24 第101回国会 参議院 社会労働委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月二十四日(火曜日)    午前十時四分開会     ―――――――――――――    委員異動  七月十八日     辞任         補欠選任      本岡 昭次君     中村  哲君  七月二十四日     辞任         補欠選任      中村  哲君     本岡 昭次君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         石本  茂君     理 事                 遠藤 政夫君                 佐々木 満君                 浜本 万三君                 中野 鉄造君     委 員                 大浜 方栄君                 金丸 三郎君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 森下  泰君                 糸久八重子君                 中村  哲君                 和田 静夫君                 高桑 栄松君                 山中 郁子君                 柄谷 道一君                 下村  泰君    国務大臣        厚 生 大 臣  渡部 恒三君    政府委員        厚生大臣官房長  幸田 正孝君        厚生大臣官房審        議官       新田 進治君        厚生省健康政策        局長       吉崎 正義君        厚生省保健医療        局長       大池 眞澄君        厚生省保健医療        局老人保険部長  水田  努君        厚生省生活衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省薬務局長  正木  馨君        厚生省保険局長  吉村  仁君        社会保険庁医療        保険部長     坂本 龍彦君        運輸省海上技術  武石  章君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        大蔵省主計局主        計官       兵藤 廣治君        国税庁直税部所        得税課長     岡本 吉司君        文部省教育助成        局教職員課長   糟谷 正彦君        文部省体育局学        校保険課長    青柳  徹君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出衆議院送  付) ○健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。渡部厚生大臣
  3. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  昭和二十年八月、広島市及び長崎市に投下された原子爆弾被爆者については、原子爆弾被爆者医療等に関する法律により、健康診断及び医療の給付を行うとともに、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律により、医療特別手当特別手当原子爆弾小頭症手当健康管理手当保健手当等支給を行い、被爆者の健康の保持増進生活の安定を図ってまいったところであります。  本法律案は、被爆者の福祉の一層の向上を図るため、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律について改正を行おうどするものであります。  以下、その内容について御説明申し上げます。  まず第一は、医療特別手当の額の引き上げであります。医療特別手当は、原子爆弾被爆者医療等に関する法律規定により、原子爆弾傷害作用に起因する負傷または疾病状態にある旨の厚生大臣認定を受けた被爆者であって、現に当該認定に係る負傷または疾病状態にある者に対して支給されるものでありますが、この医療特別手当の額を現行月額十万二千四百円から十万四千四百円に引き上げるものであります。  第二は、特別手当の額の引き上げであります。特別手当は、原子爆弾被爆者医療等に関する法律規定により、原子爆弾傷害作用に起因する負傷または疾病状態にある旨の厚生大臣認定を受けた被爆者のうち、医療特別手当支給を受けていない者に対して支給されるものでありますが、この特別手当の額を現行月額三万七千七百円から三万八千四百円に引き上げるものであります。  第三は、原子爆弾小頭症手当の額の引き上げであります。原子爆弾小頭症手当は、原子爆弾の放射能の影響による小頭症の患者に対して支給されるものでありますが、この原子爆弾小頭症手当の額を現行月額三万五千百円から三万五千八百円に引き上げるものであります。  第四は、健康管理手当の額の引き上げであります。健康管理手当は、造血機能障害等特定障害を伴う疾病にかかっている被爆者であって、医療特別手当特別手当または原子爆弾小頭症手当支給を受けていない者に対して支給されるものでありますが、この健康管理手当の額を現行月額二万五千百円から二万五千六百円に引き上げるものであります。  第五は、保健手当の額の引き上げであります。保健手当は、爆心地からニキロメートルの区域内において直接被爆した者であって、医療特別手当特別手当原子爆弾小頭症手当または健康管理手当支給を受けていない者に対して支給されるものでありますが、この保健手当の額を、一定の範囲の身体上の障害のある者並びに配偶者、子及び孫のいないと十歳以上の者であってその者と同居している者がいない者については、現行月額二万五千百円から二万五千六百円に引き上げ、それ以外の者については、現行月額一万二千六百円から一万二千八百円に引き上げるものであります。  以上がこの法律案を提案する理由及びその内容でありますが、この法律案につきましては、衆議院におきまして、昭和五十九年六月一日から施行することとなっておりますものを、公布の日から施行し、昭和五十九年六月一日にさかのぼって適用することとするとともに、これに伴う経過措置規定する修正がなされております。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことを御願い申し上げます。
  4. 石本茂

    委員長石本茂君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。     ―――――――――――――
  5. 石本茂

    委員長石本茂君) 委員異動について御報告いたします。  去る十八日本岡昭次君が委員辞任され、その補欠として中村哲君が選任されました。     ―――――――――――――
  6. 石本茂

    委員長石本茂君) 前回に引き続き、健康保険法等の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは、時間の許す限りにおきまして質問をさせていただきたいと思います。  私は、厚生省が四月の末ごろ出されたビジョンに盛られている四つの柱がございますが、「国民健康づくり対策推進」、「医療供給体制整備等」、「医療保険制度の改革」、それから「先端科学技術研究開発促進等」、この四つの柱がございます。この四つの柱を大体中心質問をさしていただきたい、こんなふうに思っております。  そこで最初に、私は健康の自覚というのは健康教育でするのが本筋であるというふうに本会議でも申し上げたところでありますが、若干私には、私とはちょっと食い違った面があったんじゃないかなと、この基本の考え方は多分反対ではないはずなんですけれども、もうちょっと詰めてみたいと今思っているわけです。  大臣は、この前の本会議の御答弁で、病院に行って、受診時において健康保持、健康に対する自覚を促すのも一つの方法である、そういうふうにおっしゃったと思うんですが、私はそこの認識がちょっと違うんじゃないか。というのは、病院に行きまして診断を受けるときには、病気であるかないか、健康であるかないかを聞いているのではなくて、何の病気にかかっているのか、ああこの病気かという、つまり健康の自覚ではなくて、それはレラティブに出てくるかもしれませんが、病気自覚なのであって、病院に行ったら病気自覚が先行する、何の病気でどんな治療を受けたらいいのかということになろうかと私は思うわけです。したがいまして、受診時における例えば健康保持というふうなのは既に手おくれの場合がある。再三申し上げますように、例えばがんなんかですと、これは本当に自覚症状があって行った段階では、もうかなり転移の可能性があるということであります。  したがいまして、やっぱり自覚というのは、みずから悟るというのは、どのような病気かを悟るのではなくて、いかにして健康であるべきか、つまり健康全般についての知識、レベルの向上にあるということでありますから、当然健康教育が基盤である。その中に病気であったらこれは大変だとかというのがレラティブに、比較的に、比較の問題では出てくるけれどもウエートはもう当然健康教育でなければならない、こういうふうに私は思っているんですが、大臣いかがでしょう。
  8. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 健康への自覚健康教育が一番大事である、これは先生と私と全く同じ考えで、御指摘をいただきました、私どもが発表いたしました健康増進運動ビジョンというようなものも、さきに予算委員会等高桑先生からも非常に貴重な御意見をちょうだいし、その先生の貴重な御意見等も十分取り入れさせていただいて、こういう方向を示したわけでございます。
  9. 高桑栄松

    高桑栄松君 大臣はお若いから反応が速くて、私は相手にとって、いろんな意味大変話がしやすいなと思って今大臣の御答弁を伺いました。その精神をひとつどうぞいつまでも持ち続けていただきたい。それがつまり予防医学の基礎なんですよ。  そこで厚生省文部省教育というと文部省のように見えますが、大きく分けて、学校教育文部省で、それから厚生省社会教育での健康部門を担当しているんじゃないか、こういうふうに分かれていると思うんですが、現在厚生省はどういうところにウエートを置いて健康教育を進めているか。あるいは予算的には今年度は前年度に比べてふえたのかどうか。マイナスシーリングの折からですから大変なことかなと思いますが、その辺を少し説明していただきたいと思います。
  10. 水田努

    政府委員水田努君) 厚生省は、老人保健法に基づきまして健康教育推進いたしているわけでございますが、基本的には、老人保健法ができましたときにつくりました五カ年計画に則しまして事業推進を図っているところでございまして、特に五十九年度は大変厳しい財政の事情下にあったわけでございますが、大臣に大変御努力いただきまして、対前年度三七%アップという大幅な予算の獲得をすることができ、その事業推進に現在当たっているところでございます。  内容的には、これは市町村にこの事業お願い申し上げているわけでございまして、先生の御指摘のとおり、成人病というのは別名習慣病とも言われる日常生活に起因することが非常に大きいわけでございますので、具体的に申し上げますと食生活における減塩、それからバランスのとれた食事、それからやはり適切な運動量の確保、そういういろんな面でのそれぞれの市町村の実情に応じた弾力的な健康教育ができるように私ども事業推進お願いいたしているところでございますし、特に私ども市町村お願いをいたしておりますのは、病気にかからないような事前の対策であると同時に、定期的な年一回の健康診査を通じてそこで問題が発見された人につきましてはやはり健康教育に有機的に結びついていくような、フォローアップができるような、例えばその後の高血圧教室であるとか糖尿病教室であるという事後的にも随分フォローアップできるような実践的なヘルス教育をやるようにお願いをいたしておるところでございます。
  11. 高桑栄松

    高桑栄松君 文部省の方は後で伺うことにします。  今お話が出た老人保健法に基づく健康診査ですね、五カ年計画。あれの数字で、「六十一年度(目標年度)」というところで、「約千七百五十七万人五〇%」と書いてあるんですが、資料に。あれは、五〇%というのは、分母は何でしょうか。
  12. 水田努

    政府委員水田努君) 老人保健法で受け持っておりますヘルスは、事業所であるとか職域であるとか、健康診査を受ける機会のある人以外の方を受け持ってこの事業をやるようになっているわけでございまして、私ども一応六十一年度末までにはそういう方の半数を目標に一般健診を受けられるように持っていきたい、そういうところに努力目標を置いているわけでございます。
  13. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでわかりました。僕はまた四十歳以上の全部の人口を分母にしているのかと、そうすると四千六百七十万ぐらいになりますから。そうすると今の対象になっているのは三千五百万人ぐらいということですね。そうですか、いやそれならそれでわかりました。  ただ私は、あそこの人数の対象というのは一般診査ですね、あれはもういかにも現代科学から取り残されたようなやり方でないかと思っているんです。つまり問診をして、打診をして、それで血圧をはかって、尿検するということですから、その後精密に回す人は回すと言っているんですが、あの一般診査というのによる効果というのはどれくらいに考えておられるでしょうかね。
  14. 水田努

    政府委員水田努君) 一般診査につきましては、魅力がないのではないかという御指摘があることは私どもも承知いたしておりまして、私ども法律に基づきます健康診査受診率を高めていくためには、どうしてもやはり内容的に魅力があるということが重要であると考えておりますので、特に、五十八年度の実績を踏まえまして、五十九年度、都道府県に対しましては、一般診査と同じ会場で引き続き、スクリーニングでひっかかった人は精密検査が同時にできるように、できるだけ内容の充実を配慮しながらやってほしい。例えば、血圧の高いという結果の出た人は、その場で引き続き眼底カメラ検査が受けられる。そういうふうな自後に用意しております精密検査を同じ会場で受けられるという形をできるだけとるように指導を本年度からいたしているところでございます。
  15. 高桑栄松

    高桑栄松君 それは予算的に見ると四分の一ぐらいですね。精密診査に回るのが四百万何ぼだったかと思います。私、その言葉じりをとらえるのでありませんから聞き流してもらっていいんですけれども、今の魅力のあるという言葉は、私は医学検査には適応しないと思うんです。やっぱりそれは正確な診断ができるかどうかということなんですね。ですから、血圧それから尿検スクリーニングができると考えるのは非科学的という段階にもう入りつつあるのじゃないかと思うんです。  後でまたもう一遍触れますけれども、この前の委員会大浜先生が、検査づけという言葉があるようだけれどもとんでもないというお話をされた。本当に検査がなければ診断の正確は期されないというのが今の医学ですよ。ですから、これから検査というのはどんどんふえていく、また、ふえていかなければ医学診断の正確は期されない。研究というのはその診断の正確を期すための研究なんですね。勘で診断をする時代はもう過ぎたんです。ですから、言うなれば、もう今から見れば非常に現代的でない、つまり、二十年ぐらい前にやっていたことなんですけれども、今から見ると極めて陳腐だと思われるようなことをやっていますと、フォールスネガティブというのが出てくるんですよね。マイナスだと思ったのが実は本当はプラスである。しかし、非常に粗雑など言うといけませんけれども、不正確など言った方がいいかもしれませんが、そういう診断をすると、本来プラスであるべきものがマイナスに出てしまうということがあるんです。その反対もあるんですよ。だから、その反対マイナスであるべきものがプラスに出た、これは精密診査に回りますからいいと思うんです。ところが、本来プラスであるべきものが、非常に粗っぽいスクリーニングなものだからマイナスに出た。本人は非常に喜んで安心しちゃった。ザッツオールということですよ。もう手おくれになった。  ですから、私は、今の現代的な医学意味における健康診査というものは、あそこでうたっている一般診査というのは、もはやそれは老人を喜ばせるために打診をやり、血圧をはかるという程度ではないのか。本当の意味の、つまり四十歳以上というのは大変働き手なんですよね。そして特にがん年齢死亡率トップに挙がっているんですから、そういうのは今の一般診査でわかるはずがない。ですから、今のお話は、やっぱり学問的な立場では大変うまくないんじゃないかと僕は思っているんです。  ですから、私がここで言いたいのは、一般診査から精密診査に入っている、例えば血液検査ですね。血液検査でいろんなことがうたってありますけれども、例えばコレステロールだとか中性脂肪だとか、肝機能検査、糖、あそこに書いてないけれども痛風ね。皆さんに聞くと痛風の人はいっぱいいるんですよ。それから尿酸値ですね、そういったこと。もちろん血球のいろんな変化もありますが、私はやっぱり、例えばの話が血液検査。私が勧めているのは二十項目というやつなんですけれども、二十項目予防医学立場でもしやれば、これはお金は別としまして、採血するだけですから、手続上ほとんど時間かかりませんから、時間的に極めて簡単にやれるわけです。しかし点数は、ちょっとわからぬけれども、大変やっぱり点数はかかりますね。二十項目ぐらいやるとどれぐらいかな。かなりかかると思うんですね。五百点ぐらいになるんでしょうかね。ですけれども、例えば予防医学的にやる場合にはある程度点数を下げる方法もあるんではないかと思うんです。点数がどうか知りませんがね。  ですから、そういう意味で、あそこにうたっている精密診査というのはもはや一般診査であるべきだと私は思っているので、北海道の教育委員会で、血液検査の二十項目をやることをかなり勧めました。というのは、巡回健康診断では五年に一遍しか全部を診れないと言っていました。それでは意味がないんだから、少なくとも血液だけは、採血するだけでもう毎年やれるではないか。ただ、アナライザーさえ、そういう施設があればやれるわけですから。ですから、私がそれを勧めて、勧めて、勧めて、やっと試験的に予算を取って、教育委員会の中のあるグループでやってみたりした。そうしましたら、やっぱり肝炎になっていた。本人は知らないで、毎日家へ帰ると大変疲れている。疲れているからまあ一杯飲んでというので一杯飲んで寝る。翌日また出かけていく。ところが血液検査で肝機能が下がっていることがわかったわけです。あっということで、精密検査に回しまして、これで絶対安静。肝炎であるということがわかりまして、本人は命拾いをしたといって大変感謝をしまして、それから今度はこれが非常に進んで、何か組合の方でも金を出すから同じことをやってくれという申し入れがあったとかいうふうに僕は後で聞かされたんですけれども。  私は、そういうことを考えますと、特に肝炎というのは我が国でも非常に感染率が高いわけですよね。ですから、そういうものも念頭に置いたら、これからの特に四十歳以上を考えると、少なくとも血液検査は要るし、がん検査はちゃんとしなきゃならないし、そういう意味一般診査というのはもうやめて、精密診査の方に移るべきではないかと、私は思っています。いかがでしょうか。
  16. 水田努

    政府委員水田努君) 私ども、現在やっております一般診査なり精密診査検査項目を固定的に考えているわけではございませんが、三千三百の市町村に健診をやっていただき、また、大変多忙な住民の方が貴重な時間を割いてやはりこれに参加していただく、そことのやはり兼ね合いというものも十分考えてまいらなきゃならぬと思っておりますので、私ども般健診とそれに直接密着した有機的にできる精密診査をまず普及さして、その上で、先生の御指摘のような問題についても、やはり第二段として取り組ませていただくのがより実際的ではないかと考えている次第でございます。
  17. 高桑栄松

    高桑栄松君 それでは、文部省にちょっと伺いたいと思いますが、今の健康教育については、文部省はどんなふうに取り組んでいるんでしょうか。
  18. 青柳徹

    説明員青柳徹君) 学校におきます保健教育につきましては、健康に関する知識を理解させると同時に、健康な生活を営むために必要な習慣や態度を養うことをねらいといたしまして、教育活動の全体を通じてこれを取り進めるというようにいたしておるところでございます。特に、教科体育または保健体育授業におきまして健康に関する基礎的な知識や技能を修得させるということが中心でございますが、特別活動学級指導あるいはホームルームにおきましても日常生活に即した健康指導を適宜取り上げて実施をいたしております。  また、御案内のとおり、健康診断学校におきましても毎年やっておるわけでございますが、そういう健康に関する学校行事関連をいたしましても健康教育を多面的に取り上げて進めておるというような状況でございます。もちろん、保健体育あるいは体育授業だけではございません、ほかの関連する教科におきましてもいろんな形での健康の保持増進に関する教育実施をいたしておるところでございます。
  19. 高桑栄松

    高桑栄松君 中学、高校は専門の教師がいる、小学校はいないわけですね。それで、私の記憶では、指導要領か何か知りませんが、随時随所健康教育をするというふうにあったかなと思いますが、いかがでしょうか。
  20. 青柳徹

    説明員青柳徹君) 小学校段階では、御指摘のとおり学級担任先生が、先ほど申し上げましたように、学級指導の時間、あるいは学校行事としての健康診断その他の行事関連をいたしまして指導をいたしております。特に五、六年生につきましては、体育教科の中での「保健」の領域におきましてやや系統的な指導をいたしております。専任先生ではございませんが、学級担任中心体育については、学校によっては専任先生がおるわけでございますが、そんな体制指導に当たっておるわけでございます。
  21. 高桑栄松

    高桑栄松君 そこで伺いたいと思いますのは、私は若いときですが、戦時中でございましたけれども師範学校教えに行っていたことがあるんです。あのころ、英語をやめてドイツ語教えると、そういうことがありまして、師範学校ドイツ語教える。北大には文科系がありませんので、私に行けと言われて、ドイツ語教えに行ったことがある。そうしたら、師範衛生というのがある、それで、衛生学先生だから師範衛生をやってくれというので、私、師範衛生教えたことがある。男子部女子部というのがありまして、これは必修でございました。  ところが、今の教員資格からは、保健教育というか健康教育に関する部分が選択になっているはずでございますが、いつからそうなったのか、理由は何か、承りたいと思います。
  22. 糟谷正彦

    説明員糟谷正彦君) 現在の教育職員免許法体系ができましたのが昭和二十四年でございますが、この体系が発足いたしましたとき以降、今おっしゃいました保健体育の関係の必修科目と申しますか、それは変わっておらないわけでございまして、二十四年以降は大学での養成というのが基本原則になっておりまして、「基礎資格」といたしまして「学士の称号を有すること。」ということになっておりますが、その学士の称号を有しますためには、大学の方で、その大学設置基準に基づきまして、一般教育科目、外国語科目それから保健体育科目それから専門教育科目と、この四本立ての柱になっておりまして、その中で保健体育科目というのは、大学におきまして講義及び実技四単位以上必修ということになっておるわけでございまして、この保健体育科目の中で、今おっしゃいましたような保健に関しますような関係の講義が行われておる。この点は二十四年以降変化はございません。
  23. 高桑栄松

    高桑栄松君 一般教養としての保健体育がどんな位置づけをされているか、まあ私が言ってはいけないと思うので申し上げませんが、極めて、最も安易な単位の場所なんですね。それでもう一つは、随時随所教育をする。その教師が健康教育に関する科目が必修でない、それで一体教えられるんだろうかということなんですね。  それからもう一つは、中学、高校の保健体育専門先生がいる。私が承るところによりますと、体育の免許があれば保健教える。つまり、本質的にどちらをとるか僕は知らないけれども体育をとれば保健教える、そういう先生が中学、高校で保健教える。承りますと、雨降り保健と言っているそうですね、雨が降ったら仕方がないから保健教える。天気がよければ外でボールをやったり何かやるということで雨降り保健だと、こういうふうな批判をされているというふうに承っていますが、保健体育という専門教科の教師が保健必修でとらなくてもいいんだろうかというふうに私は思っておりますが、これに対してはどんなお考えでしょうか。
  24. 糟谷正彦

    説明員糟谷正彦君) ただいま申し上げましたように、すべての学校を通じましては、大学におきます「専門教育科目」の中の「保健体育」でやっておるわけでございますが、具体的に申しますと、小学校の教員になります場合には、専門教育科目の中で「教科に関する専門科目」というのがございまして、その中で、体育に関する専門科目を二単位以上修得しなければならないことになっておりまして、この中には保健に関する領域が入ってございます。  それから、ただいまお話がございました保健体育先生が大学で修得しなければならない科目の中には、体育実技とか体育原理とか生理学とか、そういうものと並びまして学校保健衛生学、これを四単位以上とらなければならない、そういうことになりておるわけでございます。したがいまして、体育の実技だけをやって保健体育の免許状が出ているわけでございませんで、生理学とか学校保健衛生学、こういうものもちゃんと修得をしてきて、それが教えられる実力を備えているものと、そういうように考えておるわけでございます。
  25. 高桑栄松

    高桑栄松君 文部省の方は御承知かと思いますが、日本学校保健学会というのがございます。私も現在会員でございますし、日本学校保健学会の学会長をさせられたこともございます。  私も、健康教育というのは成人病の段階教えても遅いといえば遅いんですね。慢性疾患というのは生まれたときから始まっていると考えた方がいいんですよね。簡単に言うと、食生活を考えると、食生活は、おふくろの味と言いますけれども、そのおふくろの味が高血圧をつくるようなおふくろの味をずっと持っていくから成人病、高血圧が起きるのでございまして、おふくろの味ということで、何でもいいからおふくろの味はよかったと言っていると、おやじは脳溢血、兄は脳溢血、弟も脳溢血という、遺伝かと思うと、実は生活習慣であるかもしらないんです。ですから、健康教育というのは子供のときから早くしなければいけない。  厚生省も聞いておいていただきたいと思うんですが、そういうことによって健やかに年をとっていくことで医療費も抑制される。みんな満足をして年をとっていける、年をとったらぽっくりというのがうまくいけば一番文句がないということであります。日本学校保健学会では、昭和二十四年に教員免許状の中から必修科目としての学校保健が外されてから、もう本当に一生懸命にこの復活を要望してきております。私もその一人でございますが。どうでしょう、やっぱりこれだけ日本は豊かになったし、いわゆる文化的な生活レベルが上がってきた。そして、今ここで福祉の中で健康というのが最も大事なことであることは皆さん御承知だと思うんですね。何といったってやっぱり命あっての物種でございますから、ですからやはり教師が随時随所に子供たちに健康に関する教育をしていくとすれば、それは基礎的な知識必修科目で持ってもらう必要がある、こう私は強調したいのでございますが、どんなふうにこれを受けとめられるでしょうか。文部省お願いします。
  26. 糟谷正彦

    説明員糟谷正彦君) 現在の教育職員免許法、それに基づきます教育職員免許法施行規則でも、教職専門科目の中の例示といたしましては学校保健に関する専門科目も挙がっておるわけでございますが、ただ今おっしゃいましたように、学校保健必修という形にはなっておらないわけでございます。  それで、現在私どもの方では教育職員免許法等の一部を改正する法律案を国会で御審議をいただいておるわけでございますが、これでは、教職専門科目のところを教育実習とか生徒指導とかそのほかの科目をふやすために免許法で単位数の増加を図る措置を改正案としてお願いをしておりますが、これに対しましても、大学の方を縛るものだという反対が非常に多うございまして、これをいろんなものを必修として課しますと、また大学の方からいろんな御意見が出てまいります。したがいまして、この教職科目の中でどの程度までのものを必修として大学に課すかというところは非常に影響するところが大でございますが、今もお話しがございましたように、健康ということは人間として生きるための最も基本的な問題でございますので、そういう免許法等の改正、教員養成制度のあり方等々を検討する際に十分に検討をさせていただきたい、そういうように考えております。
  27. 高桑栄松

    高桑栄松君 今の御答弁、私は私なりにいいお話だと承りました。御検討していただきたいと思うんです。  それで、ちょっと話題を変えまして、きょうテレビあるいは新聞で見たんですけれども、何かドリンク剤というのにアルコールが入っている。最高一二%入っている。ビールは黒ビールで五%かな。だから、ドリンク剤の方が、量をたくさん飲めばビールの倍以上濃いものを飲んでいるということになってくるわけですけれども、これ、厚生省の食品関係のことかと思うんですが、ドリンク剤というのは何なのですか。健康食品とかいろんなのがあるようですが、ドリンク剤は何に属するんでしょうか。
  28. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 一般にドリンク剤と言われておりますのは、医薬品たるドリンク剤を指しておるわけでございますが、先生御案内のように、これは総合滋養強壮剤というふうに言えると思います。それから医薬品たるドリンク剤以外に、清涼飲料水としての、これは食品でございますが、両方あると思います。
  29. 高桑栄松

    高桑栄松君 そうすると、今のドリンク剤というのは、何だが、私朝よく読まないで来たのですけれども、あの一二%というのはこれは普通に売られているわけですね。
  30. 正木馨

    政府委員(正木馨君) これはこの四月の十六日に刈田議員の御質問がございまして、その際、いわゆるドリンク剤の中にアルコールが含有されておる。これが自動車運転をする人にとりまして事故のもとになるのじゃないかといった観点から御質問がございました。  先生おっしゃいますように、これは中には一一%あるいは一二%近いというのもあるようでございますが、平均しますと四、五%程度。それで、大体ドリンク剤と申しますと百ミリリットルということで、絶対量としましては非常に少ないものでございます。ただ、個人差もございますので、これはやはりアルコールというものはできるだけ含有しないようにすべきじゃないか、また、含有しているものにつきましてはその表示をきちっとすべきではないかということで、先生の御指摘もございまして検討をしてまいりました。  そこで、なぜアルコールが入るかということでございますが、これは生薬をアルコールに浸しまして抽出する。生薬成分を抽出するためにはどうしてもアルコールが含有してしまう。できるだけ除去するわけでございますが、どうしても必要最小限のものは入ってしまう。  そこで、一般の方々はまさかドリンク剤にアルコールが入っているとは知らないわけでございますので、その辺の表示をきちっとするようにということで、私ども製薬団体連合会の方とも協議をいたしまして、各メーカーにきちっとした表示をするように、それからできるだけアルコール分を除去するように、低減するようにということで指導をして今日に至っておるわけでございます。
  31. 高桑栄松

    高桑栄松君 アルコールの含有量が少ないようなお話ですけれども、一二%というのは日本酒あるいはワイン並みなんですよね、ワインあるいは日本酒が一四、五%ですから。五%が最低ということですが、これ黒ビールですよね。普通のビールはちょっとはっきりしない、四・六かなんですよ。それで一本百二十ミリリッターだと二本で二百四十ですから、あのちっちゃな一口ビールなんというのはそれぐらいいっちゃいますよね。ですから、私はそんなにアルコールが多いものということを知らなかった。  今の刈田さんの御質問、そういえば僕ちょっと相談を受けたことがあって、今思い出したのですけれども、たしか刈田さんが質問されましたね。それがちょうど新聞に出てきたのかなと今思ったのですが、私はアルコールを取り上げようと思ったのじゃなくて、最近健康産業というのは随分ブームだと思うのですよ。いかに国民が健康に目を向けてきているかということと、そっちの方にブームが出ているというのは、やっぱり日本人は豊かになったのかなという二つのことを僕は思うのですよね。私なんかが見て、専門家の端くれとしましては、健康食品というのはこういうことを言っているのかいなと思うようなものを、一般の方は一生懸命信者になって買ったりして、私にまで勧める方がいるのですよ。まあまでと言っちゃいけませんね、私にもですね。それでも、私は、おかしな話だと思いながら、本人がせっかくそう信じているのだから、毒でなければ結構じゃないかというつもりで、こっちもお話しをにこにこと受けていた方がストレスがなくていいだろうと思っているのですけれども。  しかしこのごろは、いかさま健康薬品というのかな、何か出ていますね。私ちょっと資料を調べないでしまったのですが、何かどこかの土だかなんかをこね回したものをがんに効くとかいって売ったとかというのがあったようですが、私はやっぱり健康食品ということで、少なくとも害があってはいけないと思うのです。本当に有効であればいいけれども、これは医薬品の検定のようにはまいらぬだろうと僕は思います。けれども、健康食品というものが野放しになっているのかなという気がするんですが、健康食品に対する厚生省の対応というものはどうなっているのでしょうか、承りたいと思います。
  32. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) 健康産業ブームあるいは健康食品ブーム、先生お話しのように、国民の生活水準の向上あるいは国民の健康に対する意識の高揚、そういったものが背景になって、いわゆる健康食品ブームがその一つのあらわれとして起こっておるのではないかというふうに考えておるわけでございます。いわゆる健康食品につきましては、実は、原料にいたしましても、成分、形態、用途、実にいろいろ多種多様なものが現在流通をしておる状況でございます。  先生お話の中にございました、これらのいわゆる健康食品の中で薬事法に抵触するものについては、これはもちろん薬事法による指導、取り締まりがあるわけでございますが、それ以外のものは、食品ということで食品衛生法で必要な規制を行うことになっておるわけでございます。  五十八年度に経済企画庁が中心になりまして行われました調査の中でも、一部公衆衛生の被害が発生するおそれがあるというようなものも見出されておりますので、そういったものにつきましては、例えば有毒、有害なものについては販売の禁止等を行う、あるいはそれ以外に必要な場合には、特定の物質についての含有量とかあるいは加工方法とか、そういったものの基準を設定をするというような規制を行って対処してまいりたいと思っておるわけでございます。
  33. 高桑栄松

    高桑栄松君 今思い出したんですけれども、水も売られているということで、これ厚生省だったと思うんですが、外国産ミネラルウオーターと称するものを調べてみると、飲料不適というのが結構あるんだというふうに出ておったと思うんですが、昔から我が国は山紫水明、水のおいしいところだと、確かに外国へ行って飲んでみますと、私は日本の水はおいしいと思っておりますけれども、しかし、「おいしい水とは」と厚生省でも言い出しているぐらいですから、日本の水がおいしくなくなったんだということはわかりますが、今売られている水、これ、外国産のもの、輸入品というのがありますよね、実際。それは水割りに必要だということのようですけれども、飲料不適というのもあるということですが、これは新聞だったと思うんで、私はデータとして厚生省から取り寄せたんじゃないのでわからないんだけれども、こういうのはどこで規制するんでしょうかね。
  34. 竹中浩治

    政府委員(竹中浩治君) いわゆるミネラル等の入った水ということで、瓶詰あるいは缶詰等で売られているわけでございますが、これもやはり食品衛生法によりまして規制をいたしておるわけでございまして、食品衛生上危害がある場合には、やはり食品衛生法の規制の対象といたしまして販売の禁止措置等々を行う、それから瓶詰ないしは缶詰のものにつきましては、これは食品衛生法上製造所の許可が必要だというようなことで規制をいたしておるわけでございます。
  35. 高桑栄松

    高桑栄松君 話をまたちょっともとへ戻したいと思いますが、この七月十日に東京都が健康に関するアンケート調査を行ったというのが報道されておりますが、健康に不安を持っている人が四九%と、自信を持っている人を上回ったということであります。特に主婦は五七%が不安を持っておる。御承知のように、女性の方が男性よりも五年または六年長生きでございますが、この女性の方が特に不安を持っている、ますます長生きになるのではないか――いや結構なことだとは思っておりますけれども。まあ、そういう不安というのがやっぱり現代病の一つであろうと思うんですよ。ストレスですね。ストレスというものの一つに、健康不安というのが、これは本当に大きなものだろうと思うんです。  そこで、この健康の不安に対応するのに、私は、憲法第二十五条の健康保障というものの三つのレベルのお話を本会議のときにいたしました。第一レベルは疾病の治療である、第二レベルは疾病状態からの回復、つまり早期発見、早期治療である、第三レベルがいわゆる健康づくり、健康の保持増進であるというふうに申し上げた。健康保障の最低限度というものを保障するのは憲法二十五条に定められているわけですが、私は、この第二レベルまでが健康保障の限度として取り入れるべきものだ、こう思っているんです。つまり予防医学推進すべきであると先ほど老人健康診査のところでお話しをいたしましたけれども、こういうことについては厚生省御異論がないでしょうね、ちょっと確かめておきたいと思うんです。
  36. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 全く異論がございません。
  37. 高桑栄松

    高桑栄松君 そこで、実はこれがイントロダクションでございまして、その次があるわけで、厚生省は健康づくりの妙案を募集したというのが新聞に出ておったんですよね。厚生省はもう大変エキスパートで知恵者がそろっておられるけれども、やっぱり一般の妙案などを募集しているんだなと、いいことだと思うんですよ。というのは、幾ら知恵がおありでも、国民参加という意味で、募集なんかいたしますと、やっぱり関心を持って、健康の自覚に役立つんですよ。だからそれは僕は大変いいと思うんです。  ところが、その中であっと思ったのは、北海道の鷹栖町の例が挙げられておりましてね、私は、北海道から出てきたわけじゃないんですけれども、北海道で長く職を奉じておりましたので大変関心が深いんですが、その鷹栖町の例というのを見ますと、鷹栖町は午前六時半から九時だったかな、それまでの早朝診断というのを行っておる。早期診断でなくて早朝診断なんですね。その時間を利用して早朝診断を行っておる。それから、家族単位で健康台帳をつくっている。これを厚生省は大変御推賞のようでございます。私もいいことだと思っているし、鷹栖町のことはこの前の予算委員会で、三月二十八日のときかな、私も例に挙げた覚えがあります。  それをもう一度振り返ってみますと、鷹栖町は昭和四十三年から町民健康づくりを始めております。三十歳以上を対象に早期発見に努めてきた。それで、実に異常者というのは二八%という報告なんですね。びっくりしてよくよく見たら、異常というのは病気でないものを含んでいる。これは非常に大事なポイントであるんです。そして、これには予防的な生活指導を行うものを含んで、二八%の人をピックアップしている。私は、鷹栖町というのは大変いいことをやっているんだということがよくわかったんですが、それで、データを取り寄せてみますと、昭和四十九年には、例えば入院で全道と鷹栖町では鷹栖町の方が一・二倍高かったのが、五十六年ですから七年たっていますね、それで入院で〇・八倍になった。医療費は〇・九倍。つまり、北海道全道平均よりはずっと医療費が低下している。私はそれをいつも申し上げていたわけです。健康管理、健康診断、早期発見を行うことによって、十年もすれば医療費は間違いなく低下していくということを証明している事実なわけで、私は、そういう意味で、鷹栖町が健康づくりの妙案のサンプルに二つか三つ挙げられた中に出ていたことを、大変いいことだ、きょうの委員会にも話をさしていただく大変いい材料であった、こう思っているんです。  そういうことで、これは同じようなことが岩手県の沢内村とか長野県の佐久市なんかで同じようなデータが出ているわけでありまして、だから町民健康づくりといったような町ぐるみの予防医学、予防重点活動というものが町民の健康を保持増進させ、そして町内会の協力体制もうまくいくんじゃないかと思いますね。昔の衛生組合なんというのは今ないようですから、ああいったものとは別な意味で協力体制ができていくんじゃないかと思うんです。  ですから、そういうことを大いに進めていただきたいと思いますが、もう一度申し上げますと、さっきの一般診査というようなことはこういうところでは問題にならぬわけですよ。こういうところはもっともっと、二八%も異常者がおるというのは、異常でないものもひっかけていっているということでございまして、しかも毎年やっているということは非常に大事なことでありまして、血圧でも何でも、御承知のように高ければいけないんじゃないんですね。高いのがことしも去年も来年も同じレベルでいっていれば、それはその人のノーマルな血圧と考えていい。去年低かった、ことし正常のように見えた、来年高くなった、それは、統計的には、再来年はもっと高くなるということでありまして、これが問題になるわけです。したがいまして、健康診断というのは毎年やっていくことが大事。しかも腎がんなんかの検診ですと、小さな細胞レベルというか、粘膜の細胞レベルでわからなかったものが半年するとわかるようになる、一年ほっておいたら、ひょっとしたら若い人だと手おくれかもしれない、こういうものでありますから、少なくとも年に一度は胃がんの検診も必要なんですね。  ですから、そういうことを考えると、私は、さっき厚生省が示された成人病予防五カ年計画の中には、一般診査というようなレベルの低いものではなくて、やっぱり精密診査クラスが入っていかなければいけない。あれには胃がんが入っておりませんけれども、これに子宮がん検診、それから胃がん検診を含める必要がある。国保は別ですが、組合とか政管健保、共済組合は、保険の本人はもう間違いなく十割健康診断を受けております。しかも大企業であるほど極めて手厚い健康診断を受けている。中小企業とそれから国保、それから家族、そういったところはどうしても健康診断というのはなかなか行かないし、健康診断は行けば全額自分ですから、これは大変なことだと思うんです。  私がやっぱり福祉という意味で主張したいのは、予防給付という考え方を保険給付の中に採用できないか。つまり国保であるとか家族であるとかいう人たちのために、予防給付が保険給付として採用されないか。私は病気は受難だと思っています。受難であるから受難の人に対する相互扶助ということで保険というものがあるんだ、こういうふうに私は理解しておりますが、健康診断の場合には、若干私は受難というよりも受益側に傾いて考えているんですけれども、したがって、ある意味の自己負担は経済的には仕方がないのかもしれないと思います。しかし、予防給付というものが、今は被用者本人以外は全額本人負担、そういうことで、この際保険給付が適用できる道を開けないものかということを伺いたいと思います。
  38. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 医療保険の立場で予防をどう扱うかという問題でありますが、現在のところ私どもは、給付の形ではなしに、保健施設ということでやっております。したがって、例えば健康保険組合というのは、自分の健康保険組合の施設でもって、今先生申されましたような人間ドックをやるとか、あるいは精密な検査を毎年実施するとか、そういうことをやっておりますし、政府管掌健康保険におきましても、中小企業の従業員を対象といたしまして保健施設をやっておるわけでございます。また、国民健康保険におきましても、国民健康保険の保健施設、あるいは福祉施設活動として予防に関する活動をやっておるわけでありまして、私ども、この保健施設の重要性というものは最近特に重視しておりまして、この面における予算の確保あるいは事業実施というようなものを督励をしておるところでございまして、先ほど老人保健部の方から申しましたように、一般の地域を相手にする保健事業と相まって、職域における保健施設活動を通じて予防活動をやってまいる、こういうことでございます。  それでは、給付として取り入れることができるかどうか、こういうことでございますが、現在の健康保険の建前といたしましては、一応保険制度でございますので危険分散を図る、こういう思想に立っております。したがって、何かの保険事故が生じた場合にそれをみんなで補償をする、これが保険のシステムの基本でございますが、そういう事故が起こった場合、あるいは不時の出費に備えるという意味から保険制度ができている、こういうことでございます。  しからば、予防活動というのはそういう保険事故としてとらえることができるかどうか、そこは非常に問題のあるところでございます。したがって、私ども現在の段階では、予防というものは危険分散という観点、あるいは不時の出費に備えるというような観点から申しますと、やはり保険事故の対象にはなかなか難しいのではないか。そういうことで、給付の体系ではなしに、先ほど申し上げましたように保健施設の体系事業を進めておる、こういう形をとらざるを得ないのが現状でございます。
  39. 高桑栄松

    高桑栄松君 今のお話、例えば事故と健康予防給付の問題というふうなもの、私も大体そういうふうなつもりだと申し上げたと思うのです。  だけれども、今のは、何というか、つまり文章の上でそう書かれているということでありまして、中小企業の場合、これは厚生省でなくて労働省かもしれないのですよね。私は労働衛生の方も若干専門でございますので、現場のことも一応心得ているつもりでいます。中小企業は本人の健康管理でさえもなかなかできないのです。医者は嘱託医がおりますけれどもなかなか思うようにはいっていないというのが実情なんですね。まして本人以外の家族が、なかなかできるものではないのです。したがいまして、今おっしゃるのは文章の上でそうなっているということであって、実情とはやや遠いのではないかと私は思います。  したがって、私が申し上げたいのは、受益者負担という考えがあってもいいから、やっぱり全額では、丈夫なのにお金を出してまでという気持ちがあるだろうと思いますので、その辺、給付の方法を考えて、保険給付の中で面倒を見る方向はないものか、これが福祉というものではなかろうかという気がするので申し上げたんですが、もう一度いかがでしょうかね。
  40. 水田努

    政府委員水田努君) 私ども老人保健法に基づく一般診査について先生に若干理解をしていただきたい面があるので立たせていただいたわけでございます。  私ども一般診査と並列的に胃がん、子宮がん検査をやるようにいたしておりまして、特に老人保健法法律上は四十歳以上の人を対象にするわけでございますが、子宮がんにつきましては予算上の措置として三十才まで繰り下げてやっているわけでございまして、私どもこの一年間健康診査というものを実施してみてしみじみ思いますことは、やはり市町村が住民に働きかけをしながらその診査を受けるようにと、まさしくこれが保健活動なんだろうと思うんです。給付みたいに一方的に自分の判断でということになると、なかなかいかないんじゃないか。特に私ども五十八年度の実績を見ますと、全国レベルではほぼ予定していたものを、予定どおりいっておりますが、総じて言いますと、やはり前の日絶食してバリウムを飲まなきゃならぬという胃がん検診になかなか出ていただけない。市町村が一番苦労するのはその働きかけで、どうやってこの検診に参加していただけるかということで、ダイレクトメールでやるとか厄年健診でやるとかといういろんな工夫をしながら、やっぱり町内会の組織を使いながら参加していただくということをやっているわけでございます。  また、先生御心配の、中小零細企業の家族は当然対象でございますし、また中小企業の方は、労働安全衛生法に基づきましては、胃がん検診、子宮がん検診の対象になっておりませんので、こういう面は私ども対象にいたしておりますし、それから当然精密検査のレベルまで達しておりませんので、精密検査のレベルには、私ども積極的に零細な企業の方にも健診を受けるように働きかけをいたしているところでございまして、やはり日本的な健康診査の進め方は、大変口幅ったいようでございますが、やはり市町村を通じての働きかけを住民に積極的に町ぐるみでしながらやって、やはりレベルを上げていくことが、遠回りのようで一番近道ではないかと考えている次第でございます。
  41. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 中小企業の従業員の関係でちょっと御質問と申しますかお話しございましたので、中小企業を主として抱えております政府管掌健康保険の健康管理に関しても一言お答えをいたしたいと存じます。  政府管掌の健康保険におきましては、保険給付ということではございませんけれども、いわゆる保健施設という形で中高年の健康診断など実施をいたしております。これはやはり先ほどもお話しのございましたように、従業員の方はなかなか十分な健診の機会にも恵まれないということもあろうかと存じまして、保険のいわばサービスのような形で施設として実施しておるものでございます。  内容的には、一応四十歳以上の従業員の本人の方を対象にいたしておりまして、一次検査、二次追跡検査とやっております。一次検査は、例えば問診から始まりまして血圧、尿、血糖、肝機能、心電図あるいはエックス線等の検査をいたしておりますし、またその結果に基づきまして、第二次追跡検査として尿検査、血糖検査、肝機能あるいは胸部エックス線さらにガストロカメラ検査または胃ファイバースコープ検査、こういったようなことを実施しておるわけでございます。  ただ、従来政府管掌健康保険の方は赤字でございましたので、こちらの方にその経費を割く余裕がなかなかございませんでしたというふうなこともございまして、現在の段階で被保険者に対する実施率はようやく五十九年でも八%の六十五万人程度というので、まだ決して自慢できるところまで参っておりませんけれども、最近財政状況も少し落ちついておりますので、こういったようなところを積極的に進めていきたいと考えておる次第でございます。
  42. 高桑栄松

    高桑栄松君 いや、率直なデータで、私はよかったと思うんです。そういうことを我々やっぱり認識をして、そして帳面づらと中身とがどう違うのかということで考えていく必要があると思います。  それから、健診をやろうと思っても出てこない、そこですよ、健康教育というのは。ですから私は、健康教育を進めるということが何といっても基本にあるんだというふうに思って、私は衛生学の教授をしておりましたので、そっちの方に重点を置いた仕事をしてまいりましたが、今こういう場に立ってみて、まさにそう思うんです。だから、私は健康教育を進める上では、厚生省、労働省、文部省、この三つの省が、環境庁ももちろんありますね、まあ全部の省かもしれませんけれども、特に関係しているこの四つの省は、それぞれ健康教育に関してはやっぱり横の連絡をとって非常にうまく効率的にやってもらいたいなというのを私は今痛感をいたしました。それは要望として述べさせていただいたわけです。  二番目の柱に入ろうと思いましたけれども、時間を考えて、三番目の柱に行った方がいいなと今思いましたので、三番目が「医療保険制度の改革」ということです。  そこで私は、保険制度の改革に当たっては、一番「国民健康づくり」、二番「医療供給体制の整備」、三番「医療保険制度の改革」、四番は研究開発ですから、ちょっと脇へ置きまして、この一番と二番と三番の柱が有機的に一体となってこそ効果があるというふうに本会議でも述べさせていただいたんです。  しかるに、この柱を見てみますと、第三の柱の一番目の「給付と負担の見直し」だけがタイムスケジュールが示されている。これは私だけが指摘しているんじゃなくて、各新聞の社説等を見ましてもこのことが指摘されているわけで、私はやっぱりこれは大変おかしいと思っているんです。「医療保険制度の改革」の特に「給付と負担の見直し」だけがタイムスケジュールが示されている。そうしてあと一番と二番の柱と三番のそのほかのところにはタイムスケジュールがない。これは、ビジョンというものが絵にかいたもちかと。そういうことではいけないと思うんです。それは話としてするなら結構ですけれども、現実の政治の場では、やはりそれぞれ対応して国民は期待をするわけでありますから、三番の一だけのタイムスケジュールではなくて、一番の柱、二番の柱を含めてタイムスケジュールを私は承りたいと思うんです。
  43. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生から、医療保険だけがタイムスケジュールがあってほかのがない、こういうお話でありますが、今先生からいろいろ御質疑を賜りまして政府委員から答弁いたしましたように、生涯を通ずる健康づくり、これはいつからいつで終わるなどというものじゃなくて、これは人間が幸せで健康な生活を続けていく限り、もう永遠に役所が努力していかなければならないものであり、そうなるとタイムスケジュールというのはいつ始めるか、こういうことでございますけれども、これは先ほど政府委員から答弁いたしましたように、老人保健事業でも、五十九年度予算は、非常に厳しい中を二百億近い増額をするというように、もう既に健康づくりの推進というものは始まっておるものでありまして、これからもっともっといいものに、先生の貴重な御意見などを拝聴しながら、来年、再来年どこれから無限の可能性を秘めてより充実したものにこれは進めていかなければならない問題だと思います。  また、「地域医療を確保するための医療供給体制の整備」、これもいろいろ今日までも努力を続けておるわけでありますが、これは具体的には、我々は今回の国会にも医療法の改正法案を出しまして、いろいろがんセンターや循環器センター、また、今度国立小児病院小児医療研究センターも秋には発足いたしますが、そういうナショナルセンターの充実をやり、また、今僻地医療であるとかいろいろ言われておりますし、また、がんセンターのようなものでも、今度は東北あるいは九州、北陸、北海道というようなブロックごとに欲しいというようなこと等もありますし、やっぱりそういうスケジュールはこれから毎年毎年我々つくっていかなければならないと考えておりますから、これもある程度五カ年計画とか十カ年計画とかあっていいかと思いますが、今までやっておりますし、また、これから先生方の御意見等をお聞きしながら、毎年計画を立てて、やはり予算をつけて、その推進プログラムをつくって、これから進めてまいりたいと思います。  したがって、これはどれを分離してするという問題でなくて、医療保険制度も極めてこれは重要な問題でありますし、これは総合的に進めていくべきものだという考えで私ども仕事を進めておるわけでございます。
  44. 高桑栄松

    高桑栄松君 なかなかいいお話を承りました。せっかく大臣が一生懸命答えてくださったんで、予定を少し変更いたしまして、渡部大臣の顔を見るとすぐ思い出すことになっているので、医学教育会議、学術会議の勧告について、ひとつお伺いをしたいと思うんです。  御承知のように、学術会議第七部というのは、医学、歯学、薬学、これは地方区と全国区とございまして、いやもう小ちゃいんで、参議院と比較になりませんけれども、これ、全国区、地方区あるんですよ。私は、地方区一期、全国区三期というので、今四期目なんですけれども、それでこの中で生涯教育委員会委員長をもう三期ぐらい務めてきているんです。これは、医学、歯学、薬学の先生方のもう十年来の悲願なんですよね、医学教育会議というのは。それは、いろいろな問題があったからなんです。  例えば、あのインターン反対闘争というのがありましたよ。大臣はお若いからそのころのことはわからぬと思うから、開いていていただければいいです。吉崎さんなんかよく御存じのはずでございます。あれは、学生はインターンを廃止せいなんて言ったんじゃないんですよ。インターンという、学生でもない、医者でもない、何も身分が保障されていない、そういう状態で一年間ぼんやりさせるのかと、だから、アメリカではこうではないかといったようなことをやっていったら、行政というのは反応が遅いんですよね。来年ならだめだっていうわけで、それで何のことはない廃止になったんですよ。あれ、ひょうたんからこまが出たと僕は思います。私は、インターンというのは必要だと思っているんです。  ですから、プライマリーケアとか卒後研修とかと二番の柱に盛ってありますけれども、今の医学教育会議だけを取り上げますと、このことで我々は生涯教育というものの理念に立って、そして長期展望のもとに医師の養成にいかにかかわるか、しかも医学の進歩と疾病構造の変化と社会のニーズにこたえる医者をどう養成するか、これは医学教育者のもう全く純粋な願いであったわけです。そこへいろんな問題が起きて、今のがあったし、一県一医科大学というのはもう反対してきたんですからね、私たちは。それは教育ができないということで言っているんです。学生がどうとか医者がふえるとか言っているんじゃないんですよね。質の問題なんです。国民の健康に対する期待にこたえられるかということを意識し、そういうことで反対をしました。  私は、大学設置基準審議会の専門委員で、医科大学をつくる側で、六年間ぐらいやりましたし、医学歯学委員を八年もやりました。ですから、私はこれに深くかかわっていたんです。それで、どうにもならない何かがあって、それをどこかの審議会で言うと、ぐちで終わる。それが取り上げられない。それで、医学、歯学、薬学が打って一丸となって、医学教育会議というものをつくろうと、これは昭和五十四年に医学部長病院会議医学教育白書に詳しく盛られているんです。何とかしてほしいということです。これは、医学、歯学、薬学全く一致したというのは、利害関係も何もないんです。もう本当に一致したんですね。そういうことで、私たちはこれを昭和五十二年には申し入れを行ったんです。医学と歯学、薬学含みますから。それに医療従事者もみんな含みますから、この医学というのはそういうふうに理解していただきますが、医学教育のための総合的な運営の体制をつくるようにという申し入れを昭和五十二年に政府に行いました。五十五年に勧告を行いました。勧告は政府が尊重しなければならないということになっております。これは科技庁が窓口でございまして、そして担当省は厚生省文部省というふうに翌年の六月、通達が出ております。  それから三年たちました。文部省厚生省もそれぞれ相互乗り入れで研究しているとおっしゃっているんです。しかし、大学の先生方はそうおっしゃっておらないんです。これは横の連絡がどうしてもない。さっき申し上げた、ぐちで終わる。名前を挙げればおわかりの大先生方が最後にはぐちって終わるんです、もうだめだなと。これがやっぱり縦割行政と横の問題だと思うんです。ですから私は総理大臣に、教育臨調というものが本来文部省であるべきものが多数省にわたるという意味で、新しい考え方で臨時教育審議会をつくるという形に今進みつつあるようでございますが――通ったかどうか、まだ通っていませんよね。それで、医学教育会議も同じように、文部、厚生、両省が取り扱い窓口だと言われているところを見ると、明らかに複数省ですよ。ですから私は、これこそ教育臨調にふさわしいことを十年も前から私たちが主張してきたことである、だから、それは日本医学会、日本薬学会、それから日本歯科医学会、全部賛成しておられるんです。ですからあとは――あとはと言ってはいけないんだな。結局文部、厚生両省とも建前は賛成のように僕は思うんです。  だから、難しいのは何だろうかと思うんですが、私はそのために新しい課だとか部だとか局をつくるということではないと思っていますので、これが大きな方針を決める、つまり健康教育というのは今の非常に進歩の速い学問の進度に教育が追いついていけないのじゃないかという心配を我我は持っているわけです。一遍カリキュラムを決めると医学教育は六年、歯学もそうですが、六年、役に立つのにあと仮に四年つけても十年ですから。ですから、この教育をどうしていくか。そして先生の考え方も変えてもらわぬといかぬわけですよ、教師の。これは文部省とか厚生省のお役人がやれと言っても、大学の自治というのがまたありましてね、大学にいたときは私もそっち側でございましたけれども、大学の自治というのがまたいいものなんですよね、とても。ですからそういう壁があって、文部省厚生省もそう思ってもできないことはいっぱいある、そう僕は思います。  だからこの際、大学の教育のエキスパートだとか経営者だとか、それに医学、歯学、薬学の学会の代表だとか、もちろん文部、厚生両省は重要な担当行政機関ですから委員を出していただく、それからそういう専門家では偏るおそれがあるから、いわゆるその他の学識経験者を入れるというふうなことで、医学教育のあり方を日常的に改善、改革をしていく方向で常に検討していく必要がある。これが、大臣医学教育会議の設置の勧告なんです。  ですから、申し入れが五十二年、勧告が五十五年、私が申し上げているのは五十八年、五十九年、これから大臣の顔見るごとにひとつ申し上げたいと思いますけれども、何とかこれの方向で文部省と御相談をいただきたいと、こう思っておりますが、いかがでしょうか。
  45. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ただいま先生指摘医学教育会議の設置に対する考え方、私も全く同感でございまして、最初予算委員会先生から文部大臣と相談してやりなさいというお話、大変新鮮なものに承りまして、部内でもいろいろ検討をさせたのでございますが、今のところ部内の考え方は、先生のお考えはもっともなのでございますが、これらの趣旨は現在のところ役所の中で、文部省当局と常に連携を保ちながら国家試験の改善とか医学教育の充実とかそういう施策を推進してきておるし、また、これからもそういう考え方で推進していきたいということで、率直に申して新しくそういう機構、会議というものを設置するということには消極的な様子でございました。  もっともこれは、今の臨調等で、何でもかんでも何か新しいものをつくることは悪いことだというような一つの全体の行政の中の雰囲気がございますから、そういう雰囲気の中で、新しい機構をつくるよりはできるだけ現在の枠の中でそういう施策を進めていくという部内の考え方だったと思いますが、今のところそういう考えで今日まで経過しておりますために、今先生から大変アカデミックなすばらしい御意見を拝聴しながら、私の方からは歯切れのいいすきっとした答弁ができないのでございます。
  46. 高桑栄松

    高桑栄松君 どうも渡部さんらしからぬすっきりしないお話だったと私も思っておるのですが、今お話しになったことは私たちも十分承知なんです、もう両省とも大変面倒らしいなと。  しかし、なぜだろうということなんですよね。本当に医学教育関係者は、自分のこととかそういうことではなくて、次の代をしょっていく医師、歯科医師、薬剤師、医療従事者の質的向上をどう図っていくか、それがどうニーズにこたえられるかということを常にやはり良心的に考えているんですよ。それを、新しい機構という、その辺が私よくわかりませんけれども、新しいポストをつくれとか、そう申し上げているのではないので、文部、厚生両省の現在やっておられるのはそのままもうやっていただくことは当たり前のことなんで、だからその行政機構の中でどうこうというのじゃなくて、世界の情勢を調査し適応できる態勢さえとればいいんです。ですから大変難しいことではないし、まさにいいことなんですよね。  大臣、もう一つ考え直して、ひとつお考えを承りたいと思いますが、いかがでしょう。
  47. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 確かに先ほどからの先生の御質問から浮かび上がってきましたように、今ほど国民の健康に対する関心というものが高まっている時期はないと思います。  私は、まあ評論家的に言わせていただくならば、今中曽根内閣は行政改革をやって、教育臨調というものを国民に問うておるわけでありますが、さらにその次の段階で国民的な視野で我々が行わなければならない政策は、幅広い観点に立っての国民の健康を守るための大きな施策である、私は国民健康会議というようなものがこの次の大きな政治課題になっていくべきではないかというようなことを今抽象的に考え、また、それを模索しておるのでございます。  そういう幅広い考え方から言えば、その中で先生医学教育会議というものは、非常にこれは大きなそこでのポイントになってくるものだと考えますので、予算委員会で御質問をいただいて、そこで明快な答弁をきょう申し上げたかったのでありますが、やっぱり大臣も役所の者の意見をいろいろ聞きますから、私は今まではそういうところになっておったのでありますが、さらに先生からの強いお話であり、これは趣旨としては私も全く同感なのでございますから、今の臨調の枠の中でどこまでやれるか、しかし、行政改革といっても何でもかんでも新しいものをつくってはいかぬと、こういうことではありませんから、これは不必要なものほとんどんどんどん整理して、やはり新しい時代のニーズの中で必要なものはつくっていくと、こういうことでございますから、きょうの先生の熱心なお話を受けとめまして、さらに文部大臣とも相談をし直しまして、また関係当局の政府委員、関係者とも相談をいたしまして、もう一遍、先生の趣旨にこたえられる方向があるかどうか、努めて勉強させていただきたいと思います。
  48. 高桑栄松

    高桑栄松君 今大変前向きな――私は前向きという言葉は余り好きじゃないのですけれども、まあ積極的なというか、お考えを承りました。やっぱり大臣は時々評論家になっていただきたいと思うんです。行政的なものの上におられると思うことも言えないのじゃないか、まあうっかりするとすぐ揚げ足を取られますからね。だけどもそうじゃなくて、これはやっぱり積極的に考えていただけるというふうに私受けとめまして、大変いいお答えをいただいたと喜んでいます。  それでは次のところですが、大蔵省に伺いたいのですが、予算編成上、私は健保の改正に当たって、これだけの予算を伴うものがさらりと年当初予算の中でバスをしちゃって、後でこれが今出てきている。これは先般の質問で、大蔵大臣は、改正内容を踏まえた予算編成をすることになっているんだとか、それから十二月に予算案は提出するのが通例なのに出された例がないとかとおっしゃっていまして、こんなふうに、予算が通ってから予算を含んだ健保という大問題が今俎上に上っていると、こういうのが通例であるとおっしゃいました。私はそういう世界は初めてで、予算というものは常識的にはこういうことは成り立たないはずなんじゃないかと思って大蔵大臣の解説をお願いしたんですけれども、通例であるというのはこれは回答になっていないんですよね。そうだと言っているだけなんです。だから大蔵省の、私を納得さしていただける回答をお願いしたいと思います。
  49. 兵藤廣治

    説明員(兵藤廣治君) お答え申し上げます。  今回の健保法の改正、大変重要な制度改正であることはそのとおりだと存じますが、政府としては、臨調の答申の御趣旨をも踏まえ、医療費の適正化などのための施策の早急な実施を図るために、今回の制度改正は五十九年度から実施することを予定をいたしまして法律案を提出いたしますとともに、その改正内容を踏まえた予算を編成して同時に国会に御提出申し上げ、御審議をいただいているところであるわけでございます。  先生御承知のとおり、憲法及び国会法によりまして通常国会は毎年一回、一応百五十日間の会期で開催されることとなっておりますけれども、その通常国会におきましては、毎年度の予算と重要な法案、それに執行の結果の決算を御審議をいただくことがいわばその役割だと思うわけでございます。今国会におきましても、四十三本の予算関係法案が政府から提出をされまして御審議をいただいているところであります。  御指摘のとおり、通常国会はどうしても予算先議で議事が進められますので、法律案の御審議は後になりますけれども、あくまでも予算法律案は別個の議案でございまして、既に予算は成立を見ておりましても法律案法律案として御審議を経、御議決をいただくものでございます。したがいまして、法律案の審議の結果、既に成立した予算内容とあるいは異なる形で法体が成立を見るような場合が仮にありますというと、何らかの予算との調整が図られなきゃいかぬという、そういう必要が出てまいります。政府といたしましては、成立した法律の施行に何とか努めていかなきゃならぬということになろうかと思うのでございます。  先生の御質問に対するお答えに的確になるかどうかあれでございますが、ともかく、今御審議いただいている法律案法律案としてやっぱり御審議をいただくんだというのが答えなのでございますが、以上でございます。
  50. 高桑栄松

    高桑栄松君 私は、そういう法律予算との絡みでの折衝という立場に立ったことはありませんので、新聞を通じて知っているだけですが、何かこれが通らないと四千二百億の赤字が出るとか、毎月五百億ずつ赤字になっているとかというふうに書いてありますし、何としても成立を図りたいのは予算のためみたいにやっぱり素人には受けとめられるんですよね。ですから、そういうことですと、さっきちょっと言われたのでなるほどそういうものかなと思ったのは、じゃ、仮に法案がだめになってもいいのかと、つまり予算がですね。極端なことですが、それでいいのかと、そういうものなのかなと、これはやっぱり一般常識的ではないのではないかと僕は思うんですよね。どうでしょう、もう一度伺いたいんです。
  51. 兵藤廣治

    説明員(兵藤廣治君) 政府といたしましては、今回の改正を五十九年度から実施をさしていただきたいということで予算もお出しをし、法案もお出しをしておりますわけでございまして、何とか早期の成立をお願い申し上げたい、こういうつもりでおるわけでございます。  私、先ほど申しましたのは、法律案予算というものが議案としての記述形式が異なるということの一般論としてお話しを申し上げた次第でございまして、その政府の施策として五十九年度からこういう制度実施を図りたいということはもう重要の、ともかく喫緊の課題として課せられているものと思っております。何とか御賢察を賜りたいと思うわけでございます。
  52. 高桑栄松

    高桑栄松君 せっかくおいでになっているのでこれでお帰り願うと何だか気の毒でございますから、もう一つお伺いをいたしたいと思うんです。  竹下大臣が、十二月に予算案を出すことが通例になっているが出たことがないとおっしゃったと思うんですよね。これ、歴史始まって以来ないんでしょうかね。  それからもう一つ、私が聞いている範囲では、それはよくないことだと竹下さんが言われたように僕には聞こえたんですよね。僕は、そんなことを国会がやっていていいんだろうか。つまり、看板はちゃんと出しているんだけれどもやったことはない、それでは世の中に道徳を通せとかなんとか言ったってだめじゃないのかなと、自分がうそを言っているような気がするんですよね。だから、通例になっているなら通例のとおりやればいいし、でなかったらあそこを削除したらいいんじゃないか。十二月に出すのが通例であるという部分ですね。私は素人ですからどうしてもわからないんですけれども、さっきも「御承知のとおり」とおっしゃったのは、あれまくら言葉で、僕は御承知でないんです、これは。御指摘のとおりというのはそのとおりですけれども、御承知はなかったんです。だから、これは私はやっぱり、もし通例が通るんだったらそこの条文の表現を変えたらいいんじゃないかという、極めて単純な気持ちがあるんですが、いかがでしょうか。
  53. 兵藤廣治

    説明員(兵藤廣治君) どうも失礼を申し上げました。  大臣が申されましたのは、財政法二十七条に、毎年度の予算は十二月提出を常例とするという書き方になっておるのでございます。これは先ほども御説明申し上げましたとおり、通常国会の主要な使命といいますか、そういうものが、予算審議がまず第一にございまして、通常国会の召集が国会法の規定でやはり十二月とするというふうに規定されておりますのは、予算を審議する国会の召集期と予算の提出の常例とすることを合わせてあるというふうに考えられるわけでございます。  しかし、御承知のとおり、国会の常会はお正月を挟みまして、本格的な御論議は一月の下旬ぐらいから始まるということになります。それから、予算の編成も、私ども来年度の経済情勢等、各般の情勢を見通しまして編成をするということでございますので、ぎりぎりまで見通しを詰めまして、十二月年内概算決定といいますか、予算折衝で決めるところまでが精いっぱい。それから、国会の方がお休みと申しますか、先生方が本格的な論戦に入る前の間の一月に鋭意膨大な予算書の印刷をいたしまして、そして正式な提出になるのはどうしても一月の下旬にずれてしまう。概算決定は一応大体は年内編成やりますが、印刷提出は一月になってしまうというのが大臣の申されたことでございまして、そういうことで実は今まで予算委員会でも種々十二月常例とする二十七条の規定をめぐる御論議がしばしばございました。  そういうこともありまして、実は概算決定した内容の概要を、総括説明書というのをまず予算書の前につくりまして、そしてそれを諸先生方にお配りをして、少しでも早く御勉強ができるようにということで出さしていただいておるというのが現状でございます。
  54. 高桑栄松

    高桑栄松君 なるほど承ればやっぱりいろいろと理由はあるものだな、いやいや、あるからそうなっているんでしょうから。わかりました。それでいいと申し上げているんじゃないんですけれども、なるほどわかりました。そういう仕組みなんだなとは思いますが、いいということではないし、それから、今の常例になっているというのが論議されたというのを承りまして、私も素人ながらやっぱり疑問を呈してよかったとこんなふうに今思ったところです。  それではその次なんですが、厚生省の資料によりますと、医療費は、昭和五十七年、五十八年、五十九年度と、それぞれ前年度に比較してどんどん国民の医療費は下がっている。五十七年度七・八%、五十八年度が四・六%、五十九年度予想が二・五%、毎年半分ぐらいずつ伸び率が下がっています。ところで国民所得は依然として六・五、六・五、六・三、これはほとんど同じであります。つまり、所得に対する医療費の伸びというものは断然下がっているわけで、だから金は幾ら使ってもいいと僕は申し上げているんじゃないんですよ。なぜ一割負担をここでしなければいけないのか。一割本人負担という新しい制度をなぜここへ持ち込むのか。つまり医療費が下がってきている。国民所得は横にそのまま行っている。経済学者によると、収穫逓減の法則というのがあって、どんなに上向きであってもどこかでだんだんプラトーになってそして下がっていくという法則があるそうで、まさに医療費はそこに来ているのではないか。  そのピークから下がっていくという意味は、私はやっぱり厚生省の言われる健康の自覚、これは国民がみんなそうなってきたんだと思うんです。だから、それはやっぱり厚生省の努力のたまものだとちょっとお世辞を使っておきますけれども、なぜ逓減をしているのにもかかわらずここで一割負担という新しい制度――私はこれを申し上げたのは、三割負担の国保や家庭の人がいるから、二割、三割がいるから、ゼロの人は一割ぐらい負担してもいいではないかというがまん説というのか、お願い説というのかがあるわけだ。今まで政管とか組合とか共済の被用者本人が負担していなかったのは昭和二年以来ですよね。つまり既得権なんですよ。それでもうすべての生活設計ができているわけだ。それを一割負担せよというのは、私は、広辞苑に出ている福祉の定義に反する。つまり、公的扶助による生活の安定充足をマイナス要素として働くはずなんですから。ですから、既得権だから守るという意味じゃありませんが、しかもこれは働き手本人なんですよね。ですからそういうのを含めてなぜ、医療費がどんどん、毎年半分半分と行っている、所得は横ばいだ、どうしてここで一割負担を入れようとしているのか。  これはやっぱり大蔵省が――大蔵省おられるから僕は申し上げるのですが、大蔵省が厚生省にこうせいこうせいと言ったんじゃないか、マイナスシーリングじゃないかと。仕方がないから厚生省はつじつま合わせをしたのではないか。私は、これはやっぱり健康保障なんだから、厚生省は、大蔵省が幾らこうせいと言っても、そういう案はお蔵に入れるというふうにしてもらいたいとこの前申し上げたんですけれども、これについて厚生省本当にどう思っているんでしょうね。一割負担を新設したのと医療費の逓減のことでございます。
  55. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 先生指摘のとおり、昭和五十七年度の国民医療費の伸びは七・八%、それに対しまして国民所得は六・五%、昭和五十八年度は医療費の伸びが四・六%、そして国民所得は六・五%、それから五十九年度、これは予算の数字でございますが、国民医療費は二・五%の伸び、国民所得は六・三%の伸び、こういうことでございまして、五十七年度は国民医療費の伸びの方が国民所得の伸びよりも高い。しかし五十八年度と五十九年度は低いわけでございます。  なぜ低くなったかということにつきましては、五十八年度におきましては薬価基準の引き下げ、それから老人保健法の施行等がございました。したがって、現実の医療費の伸びは下がったわけでありますが、私ども、これらの対策が行われなかったと仮定いたしますと、五十八年度も七・三%程度は伸びたものと、こういうように推計をしております。また、五十九年度におきましては、今回の制度改革案によりまして、また医療費の適正化対策あるいは薬価基準の引き下げ等を総合的に実施すると、こういう見込みで二・五%の伸びに推算をしておるわけでございます。したがって、もし五十九年度におきましてもこういう施策がとられなかったとすれば、私どもは七・二%程度の医療費の伸びがあるものと、こういうように予測をしておるわけでございます。  そこで、現実にはそういう施策をしたことによりまして医療費の伸びというものが低くなっておることは事実でございますが、これが今後どういう動きをするかということにつきまして、私どもいろいろな推算をしておりますが、やはり医療費というものは人口の高齢化、あるいは医学医術の進歩、疾病構造の変化というようなことから、やはり今のような、例えば五十九年度の二・五%というような伸び率で今後推移するとは思えない。それで、私も収穫逓減の法則が医療費に働くのかどうかということはようわかりませんが、少なくとも私どもの推算では、国民所得の伸びを上回るような医療費の伸びがある、将来もあるというように、何もしなければそうなるのではないかというように予測をしております。したがって、今回の改正案は、一つは将来の医療費の伸びあるいは規模というようなものを国民所得の伸び程度にしたい、その辺におさめれば国民の負担というものもこれ以上上がっていかない、こういうことを一つねらいにしておるわけでございますし、また、そういうように医療費を抑制していくということになりますと、その中において公平の原則というものを追求していく必要があるのではないか、こういうことで医療費の規模を適正化すると同時に、全国民を通じて公平原則というものを追求をしていこうというのが今回の改正案を提案しました私どもの本当の気持ちでございます。
  56. 高桑栄松

    高桑栄松君 医療費の伸びが減ってきた、それはかくかくしかじかの対策をされたと、まあ結構ですね。今おっしゃったのは、重要なポイントは、保険者本人に負担をかける改正ではなくて、まあ多分そうだと思うんですが、薬価基準を改定したとかというふうな、直接被保険者等に影響がない、つまり健康に不安を持たせないという意味でですけれども、それは私は納得がいくんですよね。ただ、今回のやり方は健康に不安を持たせるやり方ではないかという意味で、私は一割本人負担という新しい制度が、新しいというところに問題があるというふうに私は思っているんです。  そこで、これも例に挙げたんですけれども、札幌市で老人診査を、五十七年度まで無料で四十歳以上に成人病健診をやってきたら、年間五万件の人が診査を受けた。ところが、老人保健法が昨年二月に施行されてから一年たってみたら、昭和五十八年度の同じ件が二万四千件に減った。半分ですね。これは所期の目的に反するということで、新聞に、札幌市は昭和五十九年度は無料に戻すと書いてありました。資料を取り寄せましたら、五十九年度四月から札幌市は無料に戻したそうです。厚生省はやっぱりこれをよく熟読玩味してみる必要があると思うんです。予算が半分になった、予算上助かるわけですよ。しかし札幌市は、それでは所期の目的を達成できない。つまり老人が――この老人というのは四十歳以上ですけれども、五万件だったのが半分に減った、この半分の来ない人を来させなきゃいけないと。これはやっぱり厚生省の仕事というのは金を使う側だと僕は思うんですよね。ためる側じゃないんだな、これは。だから渡部大臣、使う側に回ったらいいと思っているんです。そのつもりでひとつお考えいただく必要があるので、札幌市の例というのをよく考えていただきたい。予算が半分になるにもかかわらずもとへ戻したというこの考え方が、健康の保持増進に必ずプラスになって返ってくると私は思うんですが、局長いかがですか。
  57. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 今、先生がお挙げになった例は、成人病健診の例のようでございます。私どもは、健康診断ということではなしに、実際の治療についての問題を対象にしておるわけでありますが、私は、健診の場合に一部負担を取るのと、それから自分の治療あるいは医療を受ける場合の一部負担を取るのと、これはやはり違うのではないか、問題が違うのではないかというような気持ちがいたします。私どもの判断では、一割程度の一部負担によって必要な受診が、本当に医療を受けなければならないような状態にもかかわらず受診が抑制される、こういうようには考えていないのであります。
  58. 高桑栄松

    高桑栄松君 いよいよ本日の私の主題に入ってまいりましたけれども、一割負担が受診抑制につながらないというお考えは、大臣からも一、二度御答弁があったように思うんです。これは大臣のお考えじゃなくて、省の方々のお考えを大臣が言われたんだと思うんですけれども。今の局長お話がそこに触れてまいりましたが、受診抑制にならない、受診率が下がらないと、九割給付、八割給付にしても下がらないと、今でもそう考えておられますか。いかがですか。
  59. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども受診率が下がらないであろうという予測をしておりますのは、一つは、国民健康保険、これは三割の負担であります。それから被用者保険の家族、これは外来三割、入院二割の負担でございます。本人は十割給付ということですが、この三者の受診率を比較いたしまして、受診率ではほとんど差がございません。したがって、給付率の差異によって受診率に影響を与えるということは非常に少ないのではないか、こういうように判断をしております。  それからまた、国民健康調査というもので見まして、病気を持っておる人のうちで医療機関にかかった者の比率というのがございますが、これは大体九〇%は医療機関にかかっております。本人も八八%、家族も八八%、国保が九二%であります。そこで、病気があるにもかかわらず医療機関にかからなかった理由、こういうものを調べてみますと、大した病気でなかったからというのが一番多くて、費用がかかるからというのはわずかに一%でございます。  したがって、現在の日本の社会におきまして、一割程度の負担をすることによって受診率が下がる、そして必要な受診というものが妨げられる、こういうようなことは私はないのではないか、こういうように判断をしておるわけでございます。
  60. 高桑栄松

    高桑栄松君 一つお伺いしたいのは、政府がこの予算案を出されるに当たって、改革による影響ということの資料を出しておられます。それは、八割給付の場合は三百六十三億マイナス、九割になると二百九十三億マイナス。もし、受診件数が全く同じであれば、トータルの医療費も全く同じはずですね。そこが返事としてはもらいたいと思いますが、全く同じはずですよね。件数が下がらない、そして医療も同じであれば、そのトータルの医療費は、負担のいかんにかかわらずトータル医療費は同じだと思う。いかがですか。
  61. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私どもは、受診率の方は変化が余りない、しかし、診療の中身、診療の中の費用の配分というものが違ってくると、こういうように考えております。端的に言いますと、検査、それから投薬、注射、それらの費用が下がるものだと考えております。
  62. 高桑栄松

    高桑栄松君 それは私は納得できませんね。本人が一割負担をすることになると医者はかげんするとおっしゃっているんですか。健康を守る医師として、それはどういうことを意味しておられますか、伺いたい。
  63. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私どもの持っておる統計によりますと、理由はわかりません、しかし、本人と家族について投薬、注射の点数を比較してみますと、本人の方が二割ぐらい高いわけであります。それから検査についても一割ぐらい高いわけでございます。また、入院の点数を見ましても、投薬と注射、それから検査、レントゲン等は本人の方が家族より高い。各年齢階層別に見ましてもそうでございます。  したがって私は、これがどういう理由でこういうことになるのかわかりません。わかりませんが、家族の場合と本人の場合とは、やはりお医者さんの行われる診療内容が違うと、こういうように考えざるを得ないわけでありまして、事実の問題として二割から三割ぐらい高い、こういうことでございますので、その部分が減る、こういうようなことが起こるのではないか、こういうように考えております。
  64. 高桑栄松

    高桑栄松君 私は先ほど、時間のこともあると思って反論はいたしませんでしたが、制度別の受診率の比較で同じだとおっしゃっていますよね。それは本人、政管健保、組合健保、それから共済ですね。――これを見ておられるんでしょう、家族と本人というのを。さっき言われたの。同じだと、横並びで同じだとおっしゃっているんだと思う。ところが、組合健保、共済健保なんかは極めて濃密な健康管理をやっていますよ。だから、病気の予防ができている。したがって家族が三割というのと余り変わりがないと言われて、本人はただだから多いのかと言ったらそうではないというのは、僕は健康管理がうまく行き届いているからだと、だからそうだろうと僕は思うんです。同じことが医療でも言えると思うんですよ。本人病気でというときには、健康管理から外れた、つまり、ある意味でかなり病気の進んだ場合があるわけです。家族はそうじゃないと思うんです。ですから、一件医療費というものが違ってくるかもしれない。それを医師が、患者の本人が負担するかしないかで検査や投薬を変えるということは考えられますか。私はそういう考えであったらこれは大変だと思うないかがですか。
  65. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、お医者さんが変えるべきではない、そう思います。医学立場に立って患者の症状に合うような医療を行うというのがお医者さんの使命だろうと思うんです。したがって、本人と家族において変わるはずはない、これはそう思いたいわけでありますが、事実は変わっておるわけでありますし、また、私どもいろいろ監査をしておりますが、本人と家族で、本人の場合には普通の十倍以上の診療費を請求しておる。それから家族と比べましても、同じ医療機関で二・四倍ぐらいの点数を請求しておる、こういうような事例も持っております。したがって、十割給付ならなぜ医療費が上がるのかというのは、これはなかなか説明しがたいのでありますが、事実はそういうことになっておることを申し上げておきたいと思います。
  66. 高桑栄松

    高桑栄松君 事例の一つを一般論に当てはめるというのは大変悪いと思うんですよ。そういうことではなくて、ちゃんとした分析が欲しいと思うし、私が今申し上げたのもデータがあって言っているわけじゃないけれども、医者は、患者が負担するかしないかによって医療検査を変えることは、私はあってはならないと思うし、ないと思っております。  それから、したがって私は、本人は健康管理を受けているから、予防医学が発達しているから、だから一件一件の医療費が、そこを外れたものはやっぱり濃くなると思うんです。だから私はさっき言ったように家族の方が医療費が比較すれば低額になるのはそういう理由ではないかと思うんですけれども、この議論は時間も関係がありますから次へ行きます。  さっきの三百六十三億と二百九十三億を、私は今言った論理に立って受診率が変わらないとすれば医療費も変わらないというはずですから、二割が三百六十三億であれば、一割にすればその額というのは半分でなければなりません。百八十一億ですか、でなければならないわけです。三百六十三億だから百八十一・五億ですよ。それが二百九十三億という、その算出の根拠を承りたい。
  67. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 概算要求のときは先生指摘のように三百六十億円、それから予算の決定は二百九十三億円と、これは国庫負担の影響額でございますが、概算要求の段階におきましては波及効果というものを計算をしておりませんでした。その後、実際の予算を組む段階におきましては波及効果を算定をしたと、こういうことでございます。  波及効果と申しますのは、先ほど申し上げましたように、受診率による波及効果よりも給付率の変更に伴う診療費に対する波及効果を計算をしたと、こういうことでございます。
  68. 高桑栄松

    高桑栄松君 ただいまの資料で私が計算をしたところでは、少なくも九割から八割に下がるところで、受診率つまり医療費ですけれども、結局は受診率の方の計算かな、これ。三八%下げているのですよね。だから、これはもう大変な受診率の低下を見込んでいるわけですよ。ですから、本人負担によって受診率が低下したとかしないと言っているのは、私はこのデータから言うとそれは間違っているんじゃないかと思うのです。計算をしてみられたことがありますか。何%下がっているかおわかりでしょうかね。
  69. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) もし先生の御指摘のとおりだとすれば、家族と本人受診率は、今先生がおっしゃいましたような数字くらい違うんではないか。そこが違ってないから私どもはそう申し上げておるわけでございます。
  70. 高桑栄松

    高桑栄松君 私が算出の根拠と申し上げたのは、何か数式があるんでしょうかね。数式があったら教えていただきたい。
  71. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、給付率と医療費の大きさの関係を示す数式といたしましては、長瀬係数というものを使っております。それで、長瀬係数にもいろいろな数式がありまして、B式というのを使いまして、y、これは医療費の大きさでございますが、そしてxは給付率ということで関係をあらわしておるのでありますが、yイコール0.784x2乗マイナス0.536xプラス0.752という係数を用いております。
  72. 高桑栄松

    高桑栄松君 長瀬係数の中に、患者が個人負担をしたら医者が投薬や検査をかげんするという要素が入っていますか。
  73. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 長瀬係数というのは、給付率と医療費の大きさを事実の数値に基づいて観察をした係数でございまして、なぜそうなのかという理由まで追求をした係数ではない。現実に起こっております給付率と医療費の大きさをいろいろな観点から眺めてそれを係数化したものでございまして、その下がったのが、お医者さんの行為が変わるんだとか、何がどう変わるんだというような要因までさかのぼって示す数値ではないと私どもは思っております。
  74. 高桑栄松

    高桑栄松君 つまり、そういう要素は入っていないんですね。いかがですか。
  75. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 説明はしがたいのでありますが、恐らく入っておるがゆえに給付率が変われば医療費が変わると、こういう関係になるんだろうと思います。
  76. 高桑栄松

    高桑栄松君 私は開業の経験がございませんので、今のに明快に反論とか意見を申し上げるわけにはいきませんが、私はこの点は保留さしていただこうと思っております。  次に、高額療養費というところでちょっと意見を述べさしていただきたいんですが、高額療養費の限度額というのがセットされておって、それの何か折衷があって衆議院で修正されたんでしたか、何かあったようでありますけれども、私は、この限度額についてこう思っているんです。  少なくとも新しい本人一割負担というのは、働き手の収入からそれが出ていくんだと、つまり生活設計の中へ新しくマイナス要素が入ってきたということであります。それで、税金なんかは一年間の収支決算で、最後に申告をして税金が戻ってきたり取られたりしているわけでありますけれども、私は、やっぱり限度額というものを月々のセットではなくて世帯単位で、つまり収入単位ということであります、世帯というか収入ですよ、その辺の法律用語はわからないんだけれども、収入で養っているその単位です。それと、年額でやれないだろうか。私は単純に、税務署へ申告するときにレシートを持っていくと、そのトータルで見てくれますね、ああいう方式だと、医者の方も、医療機関の方も、一回一回いろんなことをしなくてもレシートさえ出せばいい。そうすると、それが全部一括されて年額での限度を決めれば、それで窓口もいいし、一番便利じゃなかろうかというふうに思っているんですが、いかがですか。
  77. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 一つの立派な御意見であると思っております。  ただ、私どもが領収書方式に踏み切れない理由があるわけでございまして、それは、現在の診療報酬の請求・支払いというものが、先生御承知のように、レセプトという細かいことを書く診療報酬の請求明細書を通じてやっておる、したがって、私どもも高額療養費を支給するとすればそのレセプトを基礎にしてやっていかなければならない、こういうことでシステムが組まれておるわけでございます。  そこで、それとは別の領収書方式というものを持ち込んで、それが可能ならば先生おっしゃるようにレシートをずっと足していけば世帯単位も可能ですし、また、年間通算、合算というようなものも可能になる、これは事実でございますが、私ども、レシート方式によう踏み切れません理由は、レセプトについて支払基金で審査が行われ、査定が行われることがかなりございます。その場合に、医療機関の窓口で払いました一部負担の類と、それから審査、査定された後の一部負担の額というものが変わってくるわけでございます。これは衆議院でもいろいろ御議論がございまして、その審査、査定後の一部負担というのは医療機関の不当利得だから返すべきではないか、こういうような議論までいろいろ出たわけでありますが、そのレシートが本当に審査後の金額をあらわすに値するきちっとした領収書といいますか、レシートになれば、私どもは今先生指摘のような方式に移行もできると、こう思っておりますが、そこが非常に難しい問題で、私どもも頭を抱え、何かうまい解決方法はないかということで勉強をしておりますが、まことに申しわけないんですが、難しいことは難しい問題でございます。
  78. 高桑栄松

    高桑栄松君 まあ知恵者の吉村局長がおっしゃるんだから難しいんだろうなと承りましたけれども、その手続の問題は別としまして、私は、限度額を収入単位でやらないと、それはやはり負担がかかり過ぎるんじゃないかということで申し上げたんで、これももう一度また、よさそうなお考えだと言っておられるようだから、検討をしていただいたらいいんじゃないかと思っています。  それから、さっき負担の公平というふうな話が出ておったようですが、付加給付というものの考え方、組合健保、共済健保は付加給付をするかどうか承りたい。もう一つは、何か政管健保がしてもいいというんでしたか、今のお考えはどうか承りたいんです。
  79. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 給付の公平という観点から申し上げますならば、付加給付というものは認めるべきでないと私は思います。しかしながら、現在健保組合等で付加給付を行っておるという実態も無視できない。また、国民健康保険におきましても、例えば建設国保だとかあるいは医師国保だとかというのは十割給付に近い給付をしておるわけでございますが、そういう国保組合における付加給付、実質的に付加給付でございますが、付加給付も現在直ちにやめてしまえということもいかがかということで、しばらく付加給付というものは目をつぶっていかざるを得ないのではないか、こういうことで付加給付は残していくということに踏み切ったわけであります。  それで、健康保険組合につきましてそういう付加給付を認めますと、それでは中小企業を抱えております政府管掌とのバランスというものがまた問題になりまして、政府管掌の事業所におきましてもそういうことができるような事業所については、それは認めてもいいのではないかと、バランス上そうなるわけでございまして、その根源は、本来なら認めるべきでない付加給付というものを健保組合に認めたがゆえにそういうことをずっと横並びで考えなければならないということになっていることは事実でございます。  私の気持ちとしては、付加給付というのは給付の平等という観点からいって適当ではないと、こういうように考えてはおります。
  80. 高桑栄松

    高桑栄松君 私は、付加給付を認めるべきでないというふうに申し上げたつもりではないんです。つまり、黒字健保で付加給付できるところはする、それは黒字を別なところへ投資するよりはいいのかもしれないなと思うんです。ですから、そういう付加給付の是非を論じているつもりはないんで、問題は、やっぱり組合、共済が付加給付をするだろう。政管であるところとないところが出ると、私は今まで既得権というお話をしたんですけれども、その中から脱落をしてくる、つまり、付加給付によって同じようなことだという組合と、新しくドロップしてくる組合が出る。それはやっぱり負担と給付の公平に反するということを私は指摘したいと思ったわけです。いかがですか。
  81. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 同一制度の中においてそういうことが起これば、給付における不公平、それから負担における格差というものが生じることは、これは事実でございます。
  82. 高桑栄松

    高桑栄松君 大変乱暴な言い方かもしらないけれども、考え方としまして、付加給付が全部に行き渡るのであってごく一部だけがドロップするのであったら、その付加給付分は黒字健保から賄うことができるのではないか。そして全部付加給付をやめて、付加給付分は組合の黒字からそのまま徴収をする方がいいのではないか、そして、ドロップするわずかな零細のところはカバーしてやるというふうなことが考えられるのではないかと僕は思うんですが、いかがですか。
  83. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) まことに恐れ入りますが、先生指摘のことは、代理請求といいますか、そういうようなことなんでございましょうか。
  84. 高桑栄松

    高桑栄松君 そんな感じです。
  85. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) わかりました。  恐らく付加給付分は従前どおりに保険者の方から払っていけば、本人の窓口における負担がなくて済むではないか、こういうご指摘だろうと思いますので、その線に従って答えさしていただきます。  私ども、付加給付の部分につきましては、これは保険者がどういう給付をするかということを決めるわけでございますので、保険者によってまちまちになるだろう。それぞれの組合でどういう付加給付をするかというのは組合ごとで決めていくわけで、これを一律にこうしろ、ああしろということはなかなか難しい問題でございます。したがいまして、代理請求のようなことを実施するためには、患者と医療機関と保険者との間にそういう代理請求、代理受領をするような一種の合意、契約というものが結ばれれば、これは窓口で負担をしないで診療を受ける、こういうことは可能であろうというように思っております。
  86. 高桑栄松

    高桑栄松君 ちょっと話題を変えまして、私は一割本人負担というのは反対でございますが、そういう方向でお考えであるということも念頭に置いて新しい提案なんです。  乳幼児ですが、御承知かと思いますが、赤ん坊は、生まれますと半年間は受動免疫というのがあるわけです。母親の血液の中に抗体があって、半年間ぐらい余り病気にはかからない。それがなくなるのは大体半年ですね。そうすると、免疫のない状態でございますから、いろんな病気にかかる。これが就学前の乳幼児の病気の実態です。したがって、頻回にお医者さんのところへ行く。その受診率は、ほかの年代から比べると二倍、三倍、四倍であります。老人になるとまた違いますけれども。ですから、乳幼児のときには診療にかかるチャンスが非常に多いということが一つあります。また親も、ちょっと我慢せいとか様子見ようというわけにいかないんで、ギャアと泣けばさっというわけですよ。ですから回数も多い。しかし、割合に簡単に帰ってくるということなんですね。だから入院も多いんですよ。とにかく入れてしまう。それで短期間で帰れるということかと思うんです。  それで、そうときの親というのは三十代、四十代という比較的若い層であります。したがって、収入の方はやっぱり多くはないんですね。それが一割負担ということで今度負担がかかるわけだ。そういうことを念頭に置きますと、せめて就学前乳幼児の保険給付は十割にしてどうだろうか。つまり医療費は多分大人の三分の一くらいかなと私はそんなふうに踏んでいるんですけれども、どんなものだろうか。十割給付という考え方があっていいんじゃないか。つまり本人の一割負担が新しくできるというようなことが一つありますので、これ、念頭に航いて考えてみると――もっとも一割負担もさせない、乳幼児は十割給付、これが一番いいですよ。就学前乳幼児ですが、どんなものでしょうか、お考えを。
  87. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 乳幼児の場合は、今回の一部負担と関係がない、従来から三割負担をしておるわけでありますが、それを、今申されましたような、乳幼児について負担をなくする方法はないか、こういう御指摘でございます。  確かに先生おっしゃるように、ゼロから四歳層だけを比較しましても、受診率は高いのでありますが一人当たりの診療費は低い、こういうことは事実でございます。そこで、乳幼児だけについて給付率を上げるということにつきましては、私どもはやはり保険制度ということから考えますと、特定の部分に特定の給付率で処理をするというのはかなり難しいのではなかろうか。むしろ必要な部分に厚くするためには、例えば公費負担医療だとか、必要があるならば、そういう面の給付はそういう公費負担によって厚くしていくということは可能にいたしましても、保険制度の中で一般の大人と子供というようなものについて給付率の差をつけていくというのは、年齢によって区分をしていくというのは、少し難しいのではないかというような感じがしております。
  88. 高桑栄松

    高桑栄松君 何だかもっとものように聞こえたけれども、よく考えてみると、それくらいのことが、年齢という程度で処理できないわけがない、だからその辺は、もっと柔軟にというか、温かい考え方が入ってきてもいいのではないかなと今思っているんですが、これは医学的根拠があってのことでありますので、その点は十分また御検討いただきたいなと思っております。  もう時間も余りありませんので、あと、時間のある間、質問をさしていただきます。  技術料の評価というのが出ておりますので、このことで先ほどもちょっと申し上げましたが、前回大浜先生が、検査には本当にお金がかかると、CTスキャンなども入れると億単位の金がかかると言っておられましたが、私は、先ほども健康診断のところで申し上げましたが、医学の進歩というのは検査技術の進歩が非常に重要な役割を果たしておりますので、検査というのはますます進んでいく。それにはまずます精密なそして精度の高い機器が入ってくるわけです。そして診断には、必要にして十分な検査という条件があるわけですよ。必要にして十分な検査をする、それが医師の良心であるし正確な診断を期待する場合はそれでなければならない。ですから、検査づけというふうな言葉を聞いたことがあるように思うんですけれども検査づけというふうなのは、私はこれはもう表現も内容も全然間違っていると思うんです。検査は当然しなければならない。ただ問題は、例えばCTスキャンなどが億ですよね。一億か二億か、その辺かと思いますが、そういった機械を導入して、それが減価を償却できないとなると、一生懸命に使うぞということになるのかな。そういうことはあり得るわけだ。といって、機器の共同利用ということをうたってあるんですよね。ビジョンに載っています。  これ、話を聞こうと思ったけれども、時間がありませんので私が自分の考えを述べますけれども、共同利用というのは、健康診断等で使う場合なら結構だと思うんです。患者が行くことができます。しかし、仮に脳外科を今挙げてみますと、救急患者、手術緊急患者で持ち込まれた。機械は共同利用だから、それに患者を送るか、持ってこさせるか。両方ともできないんです。脳外科を標榜したらやっぱりCTスキャンがなかったら、脳のどこの部分にどんな出血をしておるのか、あるいはないかもしれない。手術を五時間以内にやるのかやらぬのかとか、そういう判断は、そういう高級な機械でなきゃできないんです。しかも本人が持っていなきゃできないんです。といって、利用頻度というものを考えますと、その機械の一種のコストが医療費に反映するようではやっぱり困るわけだ。それに、今の機械というのは二年もしたらだめかもしれないですね。新しいいい機械ができて、あそこへ行ったら古いからだめだ、ここへ来なきゃだめだというふうなことがあるので、そういうことを考えると、私は非常に高い機器は、共同利用はある範囲でありまして、つまり、医師会立オープンシステムの病院みたいなところは、ちゃんと病院と機械が共用ですよ。いろんな機械、看護婦さんもみんな共用みたいなものですよ。そうでなくて、今言ったような高額機器については、例えば有償貸与制のようなことをとりまして、そして医者はレンタル料を、減価を全部償却するんじゃなくて、それはどこで持つか、私は知恵がないんでわかりませんけれどもつまり医療費にそれが入ってこない。技術料だけがそこに持ち込まれるという体制がとれないだろうかということを私は前から思っているんです。そういう考えはいかがでしょうね。
  89. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) お話しの点は確かによくわかりますけれども先生のおっしゃったことを突き詰めていきますと、やはり全体で考えることと、それから事例になると思うのでございますね。極端に言うとどこにもかしこにもなきゃいかぬ、こういうことにもなりかねないのではなかろうか。  お話しのございましたように、CTに例をとりますと、我が国は実数でアメリカを超えたと思います。これは国民医療の見地から非常に望ましいことだと考えております。ところが、これもまた、お話にもございましたけれども、やはり投資でございますから、経営を圧迫しておる向きがございますし、場合によっては必ずしも必要ではない検査もやるかもしれません。これはわかりませんけれども、そういうふうなことを考えますと、やはり適切なる共同利用というのは推進すべきものであると考えております。  レンタルでございますが、現実の問題としてそういう制度もございますけれども、これもお話にもございましたが、完全に償却しないといたしますと、やはりどこかからこれ持ってこなければいかぬわけでございまして、先生は考えると、こうおっしゃったように思うのでございますが、なかなかこれは、非常に難しいと思うのでございます。そういう原資をどう考えたらいいか。お話はよく理解できますが、慎重に検討する必要があるのではないかと考えております。
  90. 高桑栄松

    高桑栄松君 お金の件は、私はやっぱり知恵がないんでだめなんですが、そういうのを考えるのを政治というのじゃないかと思っているんですよ。ですから、吉崎局長お話も、やっぱり大変温かい気持ちで考えておられるんじゃないか。私はやっぱり医者は技術料を高く評価してもらう方向でいくべきだと思うんです。  時間がなくなりましたので、世の中で言う薬づけということについて、私は医者を教育をしておりました立場で、医者をみんな悪徳だと思われては、甚だ私が非難を受けているような気がいたしますので、いささか意見を述べさせていただきます。  薬づけとよく言われます。しかし、この病気にはこの薬をこれだけの理由があってこの量をやればいいかどうかというのが医者の技術料なんですよね、本当は。ですから、今の段階では現物ですから、医者が薬を出すとき、それが技術なんですね。だから薬を出してもうけているように思われているのは医者にとっても心外だと僕は思うんです。  ですから、そういう意味で薬づけという言葉は、だれが発明したのか知らないけれども、そして検査づけというのも、僕は本当にこれは奇妙な話だと思う。そういうところも大臣医学教育会議なんですよ、これ、大事なんです。  医薬分業ということがよく言われますが、もう日本医師会も日本薬剤師会もこれは認めてやっていますよね。一〇%ぐらいですけれどもね。それで、これを進めるには基盤整備が要るとちゃんとビジョンに書いてありますよ。つまり、受入体制をどうするかということなんですよ。  それで、学術会議の第七部、生涯教育委員会、私が面倒見させてもらっていたわけですけれども、その中で薬学系の方が強く要望されているのは、医療薬剤師制度をつくってはどうか、つまり、医薬分業をもし進めるのなら、医師のレセプトに対応して、それだけの知識のある薬剤師にその医療をやらせる必要があるんじゃないか。今薬剤師は年間八千人卒業している。その何割が薬剤師免許証を取っているか知りませんが、それが全部医療薬剤師ではないんですね。それに日本薬剤師会会長の高木先生は、六年にした方がいい、二年は臨床勉強させたらいい、インターンを含めたらいい、そして、プロトコールですね、処方箋に対してはちゃんと処方がそれだけの知識を持ってできる、配合、禁忌等についてもちゃんと知識を持っているというふうな基盤整備が要るのではないか、こういうことを主張しておられるんですよね。  時間になりましたので、このお答えを承って、私の質問を終わらせていただきます。
  91. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 薬剤師についてでございますが、先生おっしゃいますように、医薬品というのは、そもそも疾病の治療のために臨床の場において用いられるものであります。これまで、どちらかと言いますと、薬剤師の知識というもの、あるいは教育というものがケミストリーと申しますか、化学的知識というものに偏るというと語弊がありますが、それにやや重点を置きがちであったということで、先生おっしゃいますように医療薬剤師という言葉、要するに医学、薬学の知識というものを薬物治療という面で臨床の場において十分対応できるような薬剤師さんを育て上げていくということが必要であるということが各方面から指摘をされております。そういったこともこれからの医薬分業を進めていくという上からも非常に重要なことだと思います。  これは今後の薬学教育をどう持っていくのかといった問題ともかかわり合いがございます。日本薬剤師会におきましても、先生おっしゃいますように、高木会長を初めとしまして、こういった点に重点を置いた今後の薬学教育のあり方、それから薬剤師の生涯教育といいますか、そういった面での充実というのを図っていかなければならない。これは先ほど来先生お話にございました昭和五十五年の日本学術会議の勧告の中で、これからの薬学教育のあり方といったものも触れておられます非常に基本的なことが述べられておりまして、こういった面につきまして、私ども日本薬剤師会とも十分連携をとりながら一歩一歩進めてまいりたいというふうに考えております。
  92. 石本茂

    委員長石本茂君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時五十分まで休憩いたします。    午後零時五十分休憩      ―――――・―――――    午後一時五十四分開会
  93. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、中村哲君が委員辞任され、その補欠として本間昭次君が選任されました。     ―――――――――――――
  94. 石本茂

    委員長石本茂君) 午前に引き続き、健康保険法等の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  95. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、この重要法案の健康保険法の一部改正についての初めての質疑でもありますので、きょうは、本法案が根本的な大改悪であり、低所得者層ほど打撃が大きいという根源の問題をテーマとして、明らかにしていきたいと思います。  まず初めに、大臣にもよく御認織をいただきたいのでありますが、本法案に対する国民各層の反対の声はかつてなく大きなものがあります。例えば請願は既に一千万を超えました。そして地方議会の議決も、全国の半分に近い自治体で行われております。あるいは、都道府県で申し上げるならば、三十九都道府県、ここで反対の決議、意見書が議決をされ送られてきております。それからまた、この三十九都道府県を考えますと、そこの自治体のもとに暮らしている住民は実に八七%に及ぶ、つまり国民の大多数がこの改悪法案に反対をしているということが如実に明らかになっていると思います。  反対理由は多くありますけれども、その第一は日本で健康保険制度が創設されて以来、原則的に本人の十割給付が継承されてきたにもかかわらず、今回はこれを九割、そして近い将来は八割に引き下げることによって制度の根幹を破壊するものだからであります。この点が最も大きな根本的な点であります。政府は、給付の公平化と繰り返し言われておりますけれども、給付を公平化する道は、引き下げだけではなくて低い給付を引き上げる道もある、これは当然のことです。この方向で公平化のための努力を行うならば、これはだれも異存がないはずであります。  それで、例えば厚生大臣もその点についてこのように述懐をされております。これは四月十二日に行われました衆議院社会労働委員会の中での御発言です。大臣なんかになるのも時期があって、要するに、厚生大臣にしてもらうなら、十割を九割とか八割にするときでなくて、七割を八割にするというようなときになりたかったものだなという実感を漏らしたことがあると、このように述懐されております。私が今申し上げましたけれども、公平化を言うならば引き下げだけでなくて低い給付を引き上げるという道もある。これならばだれもが異存がないはずである。こういう国民の声、気持ち、この点については厚生大臣も御異存のないところだと思いますけれども、初めにお伺いをいたします。
  96. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは国民の皆さんから見れば、税金はできるだけ安くて、保険料はできるだけ少なくて、また負担もない方が、これはいいに決まっております。しかし、いずれにしてもこれは天からお金は降ってまいりませんから、保険料でちょうだいするか、税金でちょうだいするか、また患者の皆さん方に御負担をいただくか、これ以外にお医者さんに金を支払う方法はないわけでございます。  かつての高度成長の時代のように、毎年税収が自然に伸びてきて社会福祉のために予算がどんどん使えるようなときに私は厚生大臣になっておれば、これは山中先生にきょうここでおしかりを受けるようなことにならなかったと思うのでございますけれども、今日の条件というものは、先生御案内のように、経済成長はそう伸びることも期待できない、したがって税の自然増収も期待できない。そういう厳しい条件の中で、やはり国民の健康を守るための医療保険制度というものはいついつまでもしっかりと守っていかなければならないということで、今回、大変恐縮でございますけれども、今の保険制度の中で制度的に給付条件としては最も恵まれた条件にあるところの、いわゆる十割給付の被用者保険の皆さん方に一割御負担をお願いしなければならないと、こういうことになったわけでございます。  率直に言って、私も給付率を引き上げるようなときの大臣、保険料を下げるようなときの大臣の方がこれはよろしいに決まっておるのでありますけれども、しかし、これはだれかがいっかはどこかでやらなければ、我が国の社会保障、国民の健康を守る医療皆保険制度というものは守っていけないということでございますから、お言葉を返して大変恐縮でございますが、これは決して医療保険制度を破壊するためでなくて、これからの厳しい高齢化と低成長と財政難の時代に、医療保険制度を揺るぎないものにするために今回の改革があるということだけは先生にぜひ御理解を賜りたいと思います。
  97. 山中郁子

    ○山中郁子君 それが理解できないところであります。つまり、給付の公平化あるいは今制度の安定ということをおっしゃいました。それは、今度の乱暴なこうした本人の負担の導入などということではなくてできると、このことについては既に衆議院段階でも我が党は繰り返し主張してまいりまして、私もおいおいその点については展開をしてまいります。問題は単純なことでありまして、本人負担が導入されれば医療費の増大による生活の困難、破壊が目に見えているという点であります。  そこで保険局長にお伺いしますけれども局長衆議院の審議で、生活水準が上がったからこの程度の負担はできると答弁されていますけれども、何を根拠に生活水準が上がったというふうに判断されるのか、この点についてお答えください。
  98. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 各種の経済指標を見ましても国民生活の水準は上がっておる、こういうように言えますし、また、衣食住の状態から申しましても、また国民の意識から言いましても、最近の文化、芸術への希求、そういう精神的な状態から申しましても、全体として日本の国は豊かな社会になっておるというのが常識だというように思います。
  99. 山中郁子

    ○山中郁子君 全く具体的な根拠をお示しにならないで、生活水準が上がったからこの程度の負担は可能だというふうにあなたはおっしゃっている。これはとんでもない話で、それは大昔から比べれば技術や科学の進歩によって、文化の発展によって人間の生活環境が向上していくのは当たり前です。それが人間の社会の原則じゃないですか。そういうことではなくて、例えば労働白書の指摘によっても、そのことはあなたのおっしゃるようなことではないということははっきりしています。御紹介いたしますが、五十八年版の「労働経済の分析」にこのように述べています。「世帯全体の消費支出の増加をまかなっために必要な世帯主可処分所得の伸び率を比較すると、四十歳台後半層では五十二年より、五十歳台前半層では五十四年より、それぞれ世帯主可処分所得の伸び率が消費支出の増加をまかなっために必要な伸び率を下回っている。四十歳台後半層は、教育関係費や土地家屋の借入金の返済費が大きく増える一方、教養娯楽費への支出が減少」している。また、「妻の収入等によってこの不足分を補うなど、最近のこの年齢層は、以前より経済的に余裕がなくなっている可能性がある。」、私は時間の関係で多くを引用できませんけれども、そのほかにこうした分析は多く出ています。新聞でも大きく伝えられたとおりであります。  それで、国民の大多数は、あなたのような高額所得者じゃないんですね。あなたは勤労者の平均年収が幾らだと思っていらっしゃるか私は知りませんけれども、労働白書の数字によると、五十八年で平均年収三百五十六万七千二百二十八円です。それで、あなたの場合には局長さんだから、指定職の八号俸でしょう。年収は千三百八十一万円になるわけです。一般勤労者の平均収入はあなたの四分の一程度なんですよ。そういうあなたが、何の具体的な根拠も示さないで、国民は医療費の負担能力があるという安易な判断を前提にしてこういう改悪案をつくったということは大問題だと思うんです。国民の厚生行政に当たるトップクラスの行政官として、まだ搾れるんだと言わぬばかりの言い方でしょう、何の根拠も挙げないでですよ。不見識も甚だしいと思います。国民はまだこの高額な医療費の負担にたえられる、まだ搾れるんだと、これがあなたの御認識ですか。
  100. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 具体的に申し上げますと、勤労者の家計収支の動向、これは三十五年と五十六年を比べまして九倍になっております。それから可処分所得も八・五倍になっております。それからエンゲル係数も三八・八%から二七・五%に下がっております。それから教養娯楽費でございますが、これは十二・四倍になっております。それから貯蓄の状況でありますが、五十七年におきまして貯蓄は一世帯当たり六百九十七万円、負債が百八十五万円、差し引き五百十一万円でございます。五百十一万という数字は年間収入に大体匹敵をする貯蓄額だと、こういうように承知をしております。それから耐久消費財の普及におきましても、カラーテレビは九八・九%の普及率でございますし、冷蔵庫も九九・五%、エアコン四二・二%、乗用車六二%。  こういうようなことで私は国民の生活水準は質量ともに向上をしておるというように判断をいたしたわけであります。私の月給で判断をしたわけではございません。
  101. 山中郁子

    ○山中郁子君 さっきも申し上げましたように、何十年も前の数字と比較して、あるいはまたカラーテレビがどうだとか冷蔵庫がどうだとか、そんなのはあなた、今もう生活上の必需品じゃないですか。私、そんなこと言っているんじゃないんですよ。そういう文明の発展、社会の発展、そういうものの中での人間の生活態様の変化なんていうのはこれはもう当たり前の話であって、そんなことを麗々しく国会の舞台であなたが暴論を吐くなんでいうことば、全く常軌を逸する話だと思います。今私が申し上げましたのは、そういう低所得者のところに大きな打撃を与えるこういうものを、あなたが何の根拠も示さずに――というのは、ここへきてですよ、ここへきて、実態に照らして一割でも二割でも医療費の負担が可能なんだ、生活水準が上がっているんだと、そういうことを、何にもお示しにならないでおっしゃっている、不見識ではないかということを申し上げました。  具体的に入っていきますけれども、一割負担、二割負担が低所得者にどれほど打撃が、大きい負担として家計にのしかかってくるか、まず私はこの点について論議をしたいと思います。  厚生省が新聞発表をされている試算でも、直接の負担増として、例えば盲腸の場合一万一千五百円ふえる――ふえる分だけですよ。胃がんの場合三万五千二百円これもふえる。一割負担だけでもこれだけふえる。二割になれば基本的にはこの二倍ですよね。これは大きな負担増に間違いないでしょう、今まではないわけだから。それが一万一千五百円、三万五千二百円。そのほかにもいろんな例示が出てますわね、おたくが発表した。これが二割になれば二倍です。これは大きな負担増になるでしょう。違いますか。  これは大臣にちょっとお伺いしましょう。
  102. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生指摘のように、被用者保険、今まで十割給付だったものが今度は九割給付にお願いするわけですから、一割は御負担をいただかなければならない。したがって、一割の御負担は新しくお願いをしなければならない。したがって私どもお願いしておるわけであります。  ただ、先生、低所得者に非常に重くのしかかるということでございますが、これは一割負担ですから、高所得者であろうと低所得者であろうと同じ御負担をお願いするわけですが、しかし、政治はそれだけで解決するものでありませんので、私どもは、その一割負担によって低所得者の皆さん方が非常に負担が過重になる。負担が多くなるわけじゃありませんが、所得の少ない人ほど負担が過重になるわけでありますから、これを解消するのが政治であるという考え方から、五万一千円の高額療養費を低所得者の皆さんには入院三万円という特別の計らいをし、また、今後も先生方のいろいろの御意見を聞きながら、私はあらゆる場で申し上げておるのでありますが、この一割御負担を願うことは、日本の国の現在の財政状態、経済状態、あるいは高齢化していく社会の情勢、いろんな中でこれはやむを得ないことである。やはり現在の保険料水準をこれ以上上げないようにして、医療費の負担が国民の皆さん方にこれ以上かからないように、私どもが今回の改革案を出したのは、国民の負担をふやすためにやるんじゃなくて、国民の皆さんの医療費に対する負担がこれ以上ふえないために今回の改革案を出しておるわけでありますから、しかし、そのためには一割の御負担を願わなければならない。その一割の御負担が低所得者の皆さん方の生活を破壊するようなことがあってはならないということで、三万円の高額療養費の打ちどめというものをつくっておるということもぜひ先生に御理解を賜りたいと思います。
  103. 山中郁子

    ○山中郁子君 医療費の負担をふやさせないために医療費の負担をふやしてもらうというのも、これまた大変妙な理屈であります。私が申し上げましたのは、低所得者ほど打撃が大きいということを申し上げているんです。これはまたおいおい解明いたします。  それで、今私は厚生省の例示ということで盲腸と胃がんの例を引用させていただきましたけれども、さらに言うならば、厚生省の例示は必ずしも実態を正しくあらわしていると言えない節もあるんですね。やっぱりどうも低目に見ていらっしゃると思います。私は、ある公立病院の実例を幾つか把握をいたしました。それで、二、三御紹介をいたします。  子宮がんの場合、入院日数三十一日で医療費八十六万二千二百七十円、負担は現在ですと一万五千五百円です、三十一日の入院ですから。しかし、改悪されますと八万六千二百三十円ということになります。五万一千円という高額医療費の枠があったとしても、三万五千五百円の負担増になります。もう一つの例を申し上げますと、子宮筋腫、子宮筋腫は女の方たちに随分多いです。二十二日入院、医療費三十八万四千九百八十円、現行は二十二日ですから一万一千円の負担で済みます。これが三万八千五百円になりまして、二万七千五百円の負担増になります。それから出血性胃潰瘍の場合、入院二十三日、医療費九十五万二千百三十円、負担は現行ですと一万一千五百円、これが九万五千二百十円になりまして、実質的な負担増は三万九千五百円になります。胃がんで入院の場合、二十日間のケースがございます。医療費七十九万二千九百七十円、今までは二十日ですから負担は一万円です。これが七万九千三百円、実質負担増は四万一千円になります。  私は、今幾つかの例を申し上げましたけれども、この土台の数字についてあなた方がどう言うかは別としまして、この例示で、実際の公立病院の実例でございますが、今私が申し上げましたように、それだけの負担増になるということは保険局長お認めになりますね。端的に答えていただきたい。
  104. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 各病気についての医療費が幾らかかるかというのは、お医者さんあるいは患者さんの状態によって異なる、こういうことでございまして、画一的ではございませんが、今先生がおっしゃいました、そういう医療費がかかったならば、今おっしゃったような負担増になると思います。
  105. 山中郁子

    ○山中郁子君 お認めになるとおりなんです。これだけ患者負担がふえるんですよね。まして二割負担になればこれの倍でしょう。それで収入は減るわけでしょう、本人病気で入院するわけですから。まさに多額の現金を用意しなければならなくなるのです。五万一千円とおっしゃったって、実際は、窓口で払わなきゃいけないわけです。これは一たん払うわけでしょう。だから、実際にはかなり大きな現金を用意しなきゃならない。それも特別な重病のケースではなくて、今申し上げたのはよくあるケースです。  伺いますけれども、一割負担の場合で入院の場合、負担増になる人の割合はどのくらいと見ていらっしゃいますか、お示しください。
  106. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 今回の一割負担によりまして負担減となるのが二二%でございますので、負担増となるのは七八%であろうと思います。
  107. 山中郁子

    ○山中郁子君 今私、入院の場合というふうに申し上げました。それでは、入院の場合と通院の場合と、それぞれに分けてお示しください。
  108. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 入院の場合、負担減となる件数の割合は一・七%でございます。したがって負担増となるのが九八・三%ということになると思います。
  109. 山中郁子

    ○山中郁子君 今おっしゃいましたように、入院の場合負担減一・七、負担増九八・三、ほとんどが負担増になる。通院の場合でも、厚生省の資料によりますと、二三・一%が負担減で七六・九%が負担増、まさに圧倒的な部分がこの改悪によって負担増になるわけです。特に入院の場合にはほぼ一〇〇%と言ってよろしいでしょう。特に、慢性病患者の場合には、文字どおり慢性ですから、恒常的に負担増を払い続けなければならなくなる、こういう問題になります。  衆議院の論議で血友病の例示がありましたけれども、慢性的疾患で継続して治療を要する疾患にはどんなものがあり、月平均医療費がどのくらいかかっているか、代表的なもので結構ですがお示しをいただきたいと思います。
  110. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 慢性疾患ということになりますと、その病状の程度等によって医療費は変わりますが、長期にわたることはこれは事実でございます。  それで、私ども試算をしてみますと、月々の患者負担が高血圧の場合約千二百三十円ぐらいではないかと思っております。それから糖尿病の場合は千八十円ぐらいであろうと思います。それから痛風の場合は八百七十円ぐらいでございます。それから虚血性心疾患の場合は千六百四十七円ぐらいではないかというように思っております。それから腎透析の対象になる腎不全、これは三万六千五百四十円ぐらいであろうと思います。それから、がんでございますが、胃がんで入院の場合は三万七千百二十円ばかり、子宮がんの場合は三万四千六百円ぐらい、それから虚血性心疾患で入院をしました場合は二万三千三百円程度というように推計をしております。
  111. 山中郁子

    ○山中郁子君 先ほど私は、低所得者層ほど打撃が大きいというふうに申し上げました。その中でも、本人負担導入が最も強烈な打撃になるのは、慢性疾患を持っている人がその一つのケースであるということが言えると思います。高額療養費額の五万一千円以下であっても、例えば五万円とか四万円とか三万円とか、そういう医療費を長期に払うということになれば、それはまたそれで大変大きな問題になる。そういう点について、私は、厚生省がもう少し全面的な調査をされて、そういう人たちがこの法改悪によってどのくらいの負担増を強いられることになるかということも把握されていなければ、責任を持った提案だというふうに言えないと思うのです。  診療点数上でも、慢性疾患で指導管理を要するものとして厚生省告示で出されているものがありますね。つまり、結核から始まりまして約八十種類の疾病がここで列挙されています。私は、これらの患者はかなり長期にわたって自己負担をしなければならない、こういう負担の実態、それからまた、これからそのことによって負担がふえる実態、そういうものについてもう少し厚生省が全面的に調査をして、お示しをいただかなければならないというふうに思いますけれども、その点についてはお約束いただけますか。八十種類全部とは申し上げませんけれども、この八十種類が厚生省によって慢性疾患として指導管理を要するものとして告示されているわけですから、これらについてきちんとした把握をされる必要があると思いますが、いかがでしょうか。
  112. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 慢性疾患指導管理料の対象になる病気というのは、必ずしも重い疾病ばかりではございませんが、できるだけ私ども、その医療費の負担について調べてみたいと思います。
  113. 山中郁子

    ○山中郁子君 重いものでなくても、結局、慢性疾患でずうっと、場合によったら半永久的に、そうでなくてもかなりな長期に負担を強いられるわけですよ。そういう意味で私は、厚生省がそうした実態を把握していないのは怠慢だと言わざるを得ないと思います。  先ほど幾つか数字をお挙げになりましたけれども、これもやはり厚生省は随分低目にお考えになる傾向があるなというふうに思います。私も具体的にあるお医者さんに幾つかのケースを伺いました。これについても二、三御紹介をいたしますと、高血圧症、慢性気管支炎の方です。こういうケース実際にたくさんあるんです、御承知だと思いますが。一つの病気だけじゃないんです。慢性病になると特にそうですね。この方の場合、ことしの五月、二日通院して医療費一万三千百八十円、したがって千三百二十円の負担ですが、今まではゼロでした。六月には四日通院されていて九千百四十円、つまり九百十円で、今まではゼロ。また、ぜんそくの方、六月に五日通院されました。二万七百二十円で、現行ならゼロだけれども二千七十円。それからまた、慢性胃腸炎、慢性咽喉頭炎、低血圧症、胃潰瘍、こういう併発している慢性病を持っていらっしゃる方、こうした方もそう珍しいことではなくてあります。五月に七日通院されて二万六千七百三十円、今までゼロであったのが、二千六百七十円の負担。六月は二十日通院されまして五万六千五百円、これもゼロでありましたのが五千六百五十円負担、こういうふうになります。  これまで十割給付で、ほとんど自己負担はなかったわけですね。初診の際は、慢性病ですからもうずっと前に初診料を払っていらっしゃる。したがって、この上に、重病でなくても、一回一回の負担がそれほど何万というふうなことでなくても、今申し上げました数字がずっと続くわけ。そしてこれは、今まで一家の働き手として自分が一生懸命払ってきた保険料によって十割給付が確保されていたから、お父さんの分だけは――お父さんだけには限りませんけれども、少なくとも本人のところだけは負担がかからなかったのにかかわらず、ここにもかかってくる。  それで、これは七月の十三日の毎日新聞の社会面の記事でありますけれども、「受難の〃標的〃サラリーマン」という大見出しで書いてありますが、ここで新宿のある奥さんが「「中二の息子がぜんそくで月に七、八千円も医療費がかかっている。主人の医療費だけはタダだと思っていたのに」と肩を落とす。」という記事があります。ほかにもたくさん、いろんな例があります。つまり、ここに家族の分も結局加わるわけですよね。  そういうふうにして大きな負担を強いられてきて、しかもこれが二割負担になれば倍になる、あなた方は近い将来二割にするとおっしゃって頑張っているわけだから。だから、そういう点ではこれが丸々二倍になるわけでしょう。そういうことを働く人々が、勤労国民が反対して、私たちの家計をこれ以上いじめないでくれというふうにして反対されるのは、こういう実態に照らしてみてもそれは当然のことじゃないでしょうか。大臣はいかがお考えですか。最初の演説は繰り返して伺わなくても結構ですので、実態に照らしてどうお考えか。
  114. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今回、十割給付の被用者保険の皆さん方に一割の御負担をお願いするという改革案を通していただくことになれば、今先生指摘のように、いろいろそれぞれの皆さん方に御負担になることは大変恐縮に存じております。ただ、私ども政治の責任を持っておる立場の者に言わせていただきますと、お金は天から降ってくるわけでも、空から降ってくるわけでもありませんから、被用者保険の皆さん方が病院やお医者さんにかかった医者代というものはこれは払わなければならないわけです。払う金というものをどこからお願いするかといえば、加入の皆さん方の保険料の御負担にお願いするか、あるいは政府から、国民のとうとい皆さん方の税金を出すか、あるいは利用される皆さん方に一部御負担をいただくか、このいずれかの方法を選択する以外にはこれは道はないのです。私もこの法案の責任者になって皆さんからおしかりを受けるたびに、厚生大臣が打ち出の小づちを持ってこう振れば銭がどんどん出てくるようならば、山中先生からもおしかりを受けないで済むのにと何度夢を見たかわかりませんけれども、このいずれかをとるしかありません。  そうしますと、今保険料率をこれ以上上げるということになりますと、これは今でさえ租税負担というものが大変多くなり、また、今度の年金改革でもある程度の御負担をお願いしなければならないということになると、病気にかかる人もかからない人もみんながそれぞれに大きな御負担をお願いしなければならないので、今回はひとつ利用者の皆さん方に一割御負担をいただくことによって、今までの社会保障の大きな問題であった、健康保険制度の中に三割御負担をする人もあり、また全然御負担しないでも済む方もあるという不公平をやはり今後は是正していく。また、一割御負担をいただくことによって健康の自己管理、健康というものに大きな関心を持っていただこう。そして、これは全体に負担を強いることになってしまう保険料率を今後二十一世紀の将来にまで上げないで済まして、何とか国民の健康を守ってきたこの皆保険制度というものを、将来にまで揺るぎないものにするためには、この方法以外になかった、それ以外に我々はいろんな知恵を絞り、工夫を重ねたのでありますけれども、現在国民全体の皆さん方のバランスを考えた上で医療保険制度というものを守っていくためには今回の改革をお願いするしかなかったということをぜひ先生に御理解を賜りたいと思います。
  115. 山中郁子

    ○山中郁子君 国民のとうとい税金なら、なぜ軍事費にだけたくさん使うんですか。ゼロシーリングだ、マイナスシーリングだと言っていて、大企薬への補助金を湯水のように出すんですか。それをやっているのは自民党政府じゃないですか。中曽根内閣じゃないですか。余り白々しいことを言わないでください。私が言いたいのは、まさに国庫負担も削減して本当にお金を使わなきゃならないところに使わないで、そして軍事費ばかりにお金を使ったり、大企業に補助金出したり、そういうことをやっていることが問題であって、それがいかに国民の命と暮らしを苦しめているか、このことがこの健保の改悪の大問題なんだということを申し上げているんです。  それで、医療費の適正化だとか、給付と負担の公平化だとか、中長期展望に立った改革だとか、いろいろもっともらしい言葉を使っておっしゃるけれども、要するに本人負担がふえるのは事実でしょう。本人負担がふえる、これに尽きるんですよ。そして全体を通じて国庫負担は減らす。重大なことは、患者負担増が低所得者ほど大きいということを私初めに申し上げましたけれどもつまり、これは低所得者の生計に与える打撃が大きい、こういう意味なんです。疾病率、病気にかかる率も低所得者の方が多いということは一般的に客観的に言えます。  初めに確認したいんですけれども、負担増は、所得のいかんにかかわらず一定の額を負担することになりますね。一定の額というのはそれはまた医療費の一割というその率ではありますけれども、所得にかかわらず、さっきの局長じゃないけれども、一千万もらっている人も三百万しか取っていない人も、同じ病気にかかつて同じ医療費がかかれば、同じ負担をしなきゃいけないわけね。負担がふえるわけです。だから結局、負担する割合は低所得者ほど高くなる、つまり、低所得者層ほど打撃が大きい、これはもう確実ですよね。これはお認めになりますね。
  116. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) それは先生おっしゃるとおりです。ですから、低所得者層の皆さん方の御負担が多くならないように、高額療養費の中で、低所得者の皆さん方は十万円かかっても十五万円かかっても二十万円かかっても、一カ月の支払いは三万円というふうに高額療養費制度をつくっているわけです。
  117. 山中郁子

    ○山中郁子君 私はそういうことを言っているんじゃないんです。制度の根本の問題を言っているんです。  それからもう一つ、低所得者層ほど一般的に労働条件、生活環境が悪いという面はありますね。職場の環境だってそうですね。中小企業は罹病率が高くなるという、そういう傾向もあるのは理論的にも私は当然だと思いますが、実際にもやはりそういう点が出てまいります。  これは中小企業労働者が加入している政管健保と、大企業労働者などで組織する組合健保とで比較しますと、やはり明らかにその違いというものが出てきていますけれども、これを厚生省の保険局の調べや社会保険庁の調べの数字でもって当たってみますと、五十七年度の場合の千人当たりの受診率、外来の場合で政管は組合健保の約一・三倍、入院の場合は政管は組合健保の場合の一・六倍の受診率ですね、こういう数字になってきます。  同じ政管健保の中を見ましても、これも厚生省からいただいた資料でございますけれども、所得水準と受診件数との間で同様の傾向があります。余り十分な時間があるわけじゃありませんので数字を一つ一つ申し上げませんけれども、いただいた資料は五十六年十月分の診療分であります。標準報酬月額の層別に見た受診件数を比較してみますと、やはり低所得者層ほど受診件数が多くなる、こういう傾向がどうしても一貫して出てまいります。こういう傾向については局長もお認めになるでしょうか。
  118. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 数字はそういうことでございます。ただ、それが低所得者層と申しますか、標準報酬月額の階級が低い方は、やはり年をとった人が多いんではないかというように考えておりますが、今先生指摘のように、一番低いところは一・三倍というのも事実でございます。
  119. 山中郁子

    ○山中郁子君 これは政管健保と組合健保を比べれば、いろんな要素があると思いますけれども、例えば年齢構成だとかその他のファクターが全然ないわけではありませんけれども、全体の構成として、やはり低所得者層ほど罹病率が高いし受診件数も高い、これはもう既にはっきりしている問題です。これが二割負担になったら余計大変だというので多くの勤労国民が反対しているわけです。今までも議論の中でも出ていますけれども、当面一割だというふうに修正したとかいろいろおっしゃるけれども、結局二割負担というのは法案の中心部分、幹の部分として当然残っているわけですね。ここのところが大きな問題の根源である。一割、二割、それがこの制度改革の大きな柱としてもちろん居座っているということが重要な問題です。  ところで、大臣にお伺いしますけれども、勤労者、労働者は安易に医者に行き過ぎだというふうにお考えですか。私は、働いている者は、自分自身も経験ありますけれども、時間的にもなかなか、ちょっとぐあいが悪いからといって、それほど安易に医者に行くというふうな条件はないんですよね。と私は思うんですけれども、その辺はいかがお考えですか。
  120. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 決して、勤労者の皆さん方が安易に医者に行き過ぎているなどと考えておりません。
  121. 山中郁子

    ○山中郁子君 五十五年に総理府が行った年金問題、高齢化問題の調査によりますと、あなたはすぐに医者にかかる方かと、そういうふうな設問に対しまして、重くならないとかからないというふうに答えている人が六四%もあるんですね。だから、働いている人たちはそう安易に簡単にお医者さんになんか行かないんですよ。行かれないんだわね、実際事情としてね。  さらに、厚生省の五十七年度国民健康調査によりますと、発病から一週間未満の者は三三%が売薬で済まし、病院に行く者は六三%、こういうふうになっているんです。発病してから一週間たっても三分の一の人たちが売薬で済ましているんですね。  この二つの調査からも明らかなように、国民はそう簡単に医者に行っていないということははっきりしています。あなたも今お認めになりました。  そこで、私はちょっとここで問題にしたいのですけれども、藤波官房長官が、政府の広報誌、宣伝のグラフ雑誌「フォト」というんですけれども、この六月一日号です。ここでこういうことを言っていらっしゃるんですね。  これは有馬さんという方との対談なんですが、「”健保””年金”も見直しへ」というところで、藤波官房長官は、「”乱診乱療””薬づけ”など目にあまるものがありますね。また患者の側も、容易にお医者さんにかかる。一部の病院では待合室が娯楽室化しているのも事実でしょう。ですから少しご本人にも負担していただければ、」と、こうおっしゃっている。どういうふうにお考えになりますか。
  122. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 国民の皆さん方の中で、今の官房長官のような考え方もかなり多くあることも事実でございます。
  123. 山中郁子

    ○山中郁子君 あなたはそう思わないけれども、官房長官はこう思っているんですね。これは官房長官と厚生大臣の考えが随分違いますね。統一見解を出していただかないと、これ以上審議が進まないという気がしますが、私は質疑が続けられませんけれども、どうなんですか。これは提案理由の大前提ですよ。そうじゃないですか。あなたは、厚生省は、健康保険法等の一部を改正する法律案趣旨説明の中で、今までもおっしゃいました。「本格的な高齢化社会に備え、中長期の観点に立った医療保険制度の改革」、「すべての国民が適正な負担で公平によい医療を受けることができるよう、」「制度全般にわたる改革を目指したものであります。」と、ほかにもいろいろおっしゃっている。だけれども、藤波さんは、乱診乱療、薬づけが目に余る、患者も容易にお医者さんにかかる、病院では待合室が娯楽室化している、だから御本人にも負担していただくんだと、それでこの健保の改正案を出したと、こう言っているんですよ。世間ではそういうふうにおっしゃっている人が多いと、これは世間の一人が言ったんじゃない、内閣の大番頭の藤波官房長官が言っているんです。しかも、責任ある政府の広報誌ですよ。活字になっているんです。どうしてくれますか。
  124. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、今回の改革案を国会で説明申し上げたのは私でございますから、私の趣旨説明は、衆参ともに本会議においても委員会においても、今御指摘のような内容の説明はいたしておりませんから、これは正式の私どもの提案理由の説明の中にそういう考えがないことは御理解いただけると思います。  ただ、この健康保険法の改正を支持してくださる皆さん方の中に、これはそれぞれの理由で支持してくださるわけでございますが、その中には、やはり今のような考え方の方もございますし、それから、私どもも今回改革案を出しておる中の一つには、やはり一割御負担を願うことによって国民の皆さん方の健康に対する自己管理、また、今の保険制度、そういうものに対する認識や関心を高めていただいて、医者にかかれば一割負担しなければならないから、毎日毎日健康に注意して、今度はおれはたばこをやめようじゃないかとか、そういうふうに健康管理をして、なるべく医者にかからないように、病院にかからないようにしようと、そういう努力をお願いしなければならないというのも今回の改革案の理由の一つではございます。
  125. 山中郁子

    ○山中郁子君 国民の中にどういう考えを持っている人がいるかということについて私は今議論しているわけじゃないんです。そのことはもう一番最初に言いました。圧倒的多数の人々が暮らしている自治体で、反対決議をしている、意見書を出している、一千万を超える署名が来ている、地方自治体も半分以上がこの反対決議をしている、そのことについてはもうさきに言いまして、あなたもそれはよく承知しているというお話でした。  私が今問題にしているのは、そういう事態のもとで、藤波官房長官が、世の中にそういうふうに言っている人がいますよと言っているんじゃない、自分がそう言っているんですよね。これ、どうしますか。あなたは提案者としてそういうことで提案したのではないとおっしゃる。だけど官房長官がそう言っているんですよ。どういう解決をしてくれますか。しかも政府の広報誌ですよ、どうするんですか。藤波官房長官を呼んで、そしてこの点については撤回をする、そして「フォト」にこの点についての取り消し、釈明、陳謝の記事を出す。私は、今いろいろ考えられることを言っているんですけど、まあそういうことのうちのどういうことをしてくださいますか、提案者として。
  126. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) この内閣において、健保法の改正を提案しているのは厚生大臣である私でございますから、私の提案理由の説明をもって内閣の考えと思っていただきたいと思います。
  127. 山中郁子

    ○山中郁子君 そうしましたら、このことについては、提案者の責任で、取り消すように藤波官房長官にあなた責任を持ってお話しなさいますか。私は、きょう藤波官房長官に答弁に来てもらうように要望したんです。そうしたら、何かほかの委員会にお出にならなきゃいけないというお話で、きょうおいでいただけなかったんです。だから、やむを得ませんから、あなたにそのことについてお約束をいただきたい。
  128. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私、まだその本も読んでおりませんし、また、官房長官の真意も承知しておりませんので、きょう山中先生からそのような御質問がありましたことは官房長官に伝えたいと思います。
  129. 山中郁子

    ○山中郁子君 委員長、ちょっとこれを。何か政府の広報誌を私が大臣にお渡しするのも筋が違うような気がしますけれども。お渡ししてよろしいですか。――では、これぢょっと大臣のところに。ここに線引いてありますから。  政府の重要な責任ある職責の官房長官が、乱診、乱療、薬づけ、容易にお医者にかかる、娯楽室化している、それだから一部負担していただくんだ――これは、医者と国民を悪者に仕立てて、そして、政府の国庫負担を減らすなんていうことに何にも責任感じてないわけよ。そういうことを、事もあろうに政府の広報誌で言っている、しゃべっているんです。私は、だからまさに本心はそうなんだと思うんですね。けれども。本心がそうであるにしても、広報誌でしゃべって、活字にして、そしてぬけぬけと、あなたこれは政府がこれをこうやって売ってるんでしょう。私、余りにも国民をばかにするにもほどがあると思うんですよ。提案者であるあなたが違う違うって一生懸命言ったって、しょうがないじゃないの、これ、政府の機関誌ですもの。活字になっているんです。私は、この点については直接藤波官房長官においでをいただいて明らかにして、本当に国民に陳謝をする手続をこの「フォト」の誌上でとっていただかなければ、これはこの健保の法案の提案した大前提の問題ですからね。そのことについては引き続き官房長官の出席を求めていきたいと思っておりますので、委員長においてもお取り計らいいただきたいと思っております。  それで、官房長官に私の質問の趣旨を伝えるというお話でございました。今それ見ていただければわかると思いますので、そのことについては厚生大臣としても責任もって後ほど御答弁をいただくということでよろしいですか。
  130. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 官房長官にお伝えし、その結果を御報告いたします。
  131. 山中郁子

    ○山中郁子君 今の政府の姿勢、官房長官の姿勢に端的にあらわれています。それもある。それからまた、国民の負担増、低所得者ほど現実に患者負担の打撃が大きいということもあなたも認められた。だから、当然この改悪の法案は廃案にして、国民的合意の得られる改革案をつくり上げるべきであるというのが、我が党の一貫した主張であります。  ところで、患者負担増の制度改悪に、虎視たんたんとしてこれをねらっているのが、また財界です。第一は、生保業界の例があります。四月二十日に開かれた生命保険協会の理事会のメモがここにありますけれども、これは会が終了した後の昼食会で、大蔵省銀行局保険部幹部の発言として明記されていることなんです。これは衆議院の社労委員会で我が党の浦井議員も取り上げた件でありますけれども、こう書いてあるんですね。「健保改正による自己負担分填補商品について」「ある理事からの健保改正によって生じる医療費自己負担分を実損填補する商品を認めて欲しい旨の要望に対して、大蔵省としては、前向きに検討したいが厚生省との摩擦を避けるため、時期を見て検討すべきと思料。」、考えるということですね。「厚生省に「健保で貯えない医療費分を民間で補完して欲しい」と言わせてから動き出すのが最適」と、こう書いてある。大蔵省の銀行局の保険部の幹部が生保業界の理事会でこう発言しているというふうに書いてある。まさに私は厚生省はこけにされていると思うんですよね。厚生省からこういう話を持ち込ませようとしているのね。自分の方から言うとぐあいが悪いから、厚生省からそういうふうに言い出してきたら、やってよろしいと、こういうふうに言おうと。  そんなことを言い出すおつもりがありますか。つまり、大蔵省がねらっている、財界の利益の先導者として大蔵省が厚生省にこう言わせようと思ってねらっている、そういうことをおっしゃるおつもりがあるんでしょうか。
  132. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) そのお話は聞いておりませんが、私の方が大蔵省に言い出すというような気持ちは全く持っておりません。
  133. 山中郁子

    ○山中郁子君 大臣、このことについてどうお考えになりますか。つまり、大蔵省の幹部が生保業界のところへ行って、そして厚生省にそういうふうに言わせるように仕向ける、その方が摩擦が少ないと、こう言っているのよね、この健保の改悪の問題に関して。これで本人負担が出てくるところを生保業界の新たな商品としてねらっているわけです。大臣、どういう感想か伺います。
  134. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私はそう財界の方のことを知りませんので、今先生からお話しがあって、なるほどそういうことを考える人もあるのかなあと、今初めて認識をしたところでございますから、これをどういうふうに話すとか話さないとかなんとかいうことは、今全く私の意識にはありませんが、今後もこれをきっかけにして、そういうことも勉強させていただきたいと思います。
  135. 山中郁子

    ○山中郁子君 何かあなたもおとぼけですね。これはさっき言ったように、衆議院社会労働委員会で我が党の浦井議員が質問しているんですよ。それで保険局長か、どなたがお答えになったか、私今その議事録を持っていませんけれども、初めて聞きますなんて、あんまりとぼけないでください。  既に現実にそれで動き始めているんですよ。あなた方よく知っている「厚生通信」、御存じですね、これの七月十六日号にこう書いてあるんです。「新型の疾病通院保険を検討 生保と損保会社で 大蔵省には未申請だが健保法成立みて」と、こうなっている。だから、もう既にそういう方向で現実に動き出している。あなた、初めて聞きましたなんて、そんなとぼけていられちゃったら困るんですけれども。私が申し上げたいことは、この法改正、つまりこの大改悪は、結局こういう業界に新しい商品を提供するような役割を果たしているということなんです、一つの側面から見て。  私は今、いかにこれが国民の暮らしを苦しめるか、家計を破壊するかということを言ってまいりました。あなたもそれはお認めになりました。もう一つの面から見ると、こういうふうに財界の食い物にされるようなそういう役割を果たす側面を持っている。逆に言うならば、こういう新しい商品が成り立つほどの改悪だと言うべきだと思います。まさに生保業界の食い物にされるということで、医療を食い物にするようなこういう商品が出てくること自体、厚生省は歓迎するんですか。初めて聞いて、これからよく勉強しますみたいなことをおっしゃっていたけど、まさか歓迎なさらないと思いますけれども、いかがでしょうか。
  136. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは先生、私、とぼけるわけでも何でもなくで、そういう方面の勉強が不十分だったということを先生からおしかり受ければこれは甘んじなければならないわけですが、先生のおっしゃる意味は、一割負担が実現しますとその一割負担を個人が負担していかなければならない、そういうものに備えるための生保ができると、そういう意味なんですか。
  137. 山中郁子

    ○山中郁子君 私が言っているんではないんです。生保業界で問題になって、大蔵省が言ったという意味です。「ある理事からの健保改正によって生じる医療費自己負担分を実損填補する商品を認めて欲しい」という要望があった。生保業界のある理事からあった。そうしたら大蔵省の幹部が、前向きに検討したいけれども厚生省から言わせよう、その方が摩擦が少ないと――これも何ならあれですけれども、そういうふうに記録になっているのね。別に私が言っているわけじゃないんです。御紹介したのはそういう趣旨です。そういうことを厚生省としては歓迎なさるんですかと、そういうことを今伺っています。
  138. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今私考えてみますと、これ、想像ですから間違ったらお許しいただかなければなりませんが、一割負担をお願いするということになれば、今度は被用者保険の皆さんはその負担する一割分のお金というものを常に用意して万が一の場合に備えた方がいいという意味で、そういうものを負担する意味の新しい商品が出るのかということと、もう一つは、ここでも差額ベットとかいろいろ議論されておりましたでしょうが、病気になったとき、やはり個人の好みで一人部屋でぜいたくな医療を受けたいというような嗜好の人もありましょうから、そういうぜいたくな分の医療費に加えた商品ということと、私の貧弱な頭脳で今想像したところでは、二つ考えられると思うんですが、そういう商品は、やはりこれは商売人というのはいろいろそのときそのときの社会情勢なり国の制度なり、そういう中で消費者のニーズを考えた商品というものを考えていくことはあるものかなと今思っているところです。
  139. 山中郁子

    ○山中郁子君 今私が御紹介しました、生保業界で大蔵省の幹部が言っていたということに符節が合うのが、先ほども御紹介しましたが、「厚生通信」に出ている記事なんです。これが今あなたがおっしゃったことを解明してくれると思います。「新型の疾病通院保険を検討」とこうなっているわけです。  それでは中身をちょっと御紹介しますと、「①現在の入院一日二千円―三千円程度を組み合わせた掛け捨て型」「②生命保険に疾病給付をつけ、特定疾患について一回通院に特定給付をするものでいずれも一週間以内通院には給付しない方針で、申請は健保法改正の成立後となろう。」、こういうことが中身に出ているんです。おわかりになったと思いますけれども、そういうことを歓迎なさいますか。
  140. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ようやくわかってまいりました。  再三私申し上げておるように、今回の被用者保険本人の皆さん方にお願いする一割負担というものは、そのことによって健全な勤労家庭の皆さんの生活破壊につながるようなことがあってはならない。そのための政策的配慮というものは、この健康保険法の改正案を提案した責任者として、今後全力を尽くして努めていかなければならない。したがって、また現在の勤労者の方々の収入で何とか払っていただける程度の数字でなければならないということで、五万一千円打ちどめの高額療養限度額、また低所得者の皆さんには、入院時何百万円かかっても三万円で打ちどめ、そういう配慮をしておるのでありますから、そのような新しい商品が出なくても、健全な勤労家庭の皆さん、まじめにやっておられる勤労家庭の皆さん方は、その収入の中で、あるいは世帯更生資金とか政府のいろいろの制度がありますが、政府がやっておる福祉制度、そういうものの枠の中でお払いになれるような状態、そういうものに政策的配慮をしていく。したがって、そういう商品が新しく出るとなれば、私はそういう商品に対する営業妨害をする立場になると思いますが、そういうふうに考えております。  ただ、もう一つの問題の、やはり個人の嗜好がそれぞれあるわけですから、タクシーに乗るのにも小さい車よりやはりおれは大きい車に乗りたいと、また、国鉄にもグリーン車があって、自分の負担でグリーン車に乗る人もあるわけですから、一般保険の水準よりも自分はお金を余計払ってもぜいたくな医療を受けたいと、そういう人の嗜好、ニーズ、そういうものに対する商品というものが出回るのは、またこれはやはり今の自由経済の中ですから、個人の嗜好、ニーズ、そういうものに商品というものは新しく工夫されていくかもしれませんし、そういうものに我々がとやかく批判する余裕はないと思いますが、しかし、一割負担は皆さん方が病気になったとき困らないためにちゃんと保険料を納めて保険に入っておるんですから、保険に二重に入らないと最低限の医療を受けられないというような状態であってはならないと考えております。
  141. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、大臣の今の御答弁が、いみじくも事の本質を明らかにしたと思います。  つまり、あなたはこの制度の改定、でそういうようなことに頼らなければならないような負担を国民にかけるつもりはないと、そういうふうには考えていないとおっしゃるわけね。だけど、生保業界がこうやって大蔵省を動かして、現にもう健保法案成立後申請すると、こう言っている。経営者が、需要がないなどということを前提にしてこんな新しい商品を売り出しますか。それこそあなた、資本主義社会で、自由経済か何か知らないけれども、資本主義社会でこの生保業界がそういう需要も見込めないのに新たな商品を、これを見越して売り出すなんて、そんなこと考えられないでしょう。だから、あなたのおっしゃることがまさに事の本質を反面から私は明らかにしたと思うのですけれども、あなた方がどう言おうとも、今度の制度で持ち込まれる国民の負担増というのは、生保業界がねらうほどの値打ちのある負担増で、苦しみを与えるんだと、こういうことを証明しているわけです。  それに対してあなたは、今度の改定はそういうふうなことに国民が依拠しなければならないような中身ではないと言ったって、現にこういう、生き馬の目を抜く業界が、もう既に虎視たんたんとしてねらって、大蔵省を動かして、そして厚生省にそういうことを言わしてやろう、こう言っているんです。そこのところをあなたはそれは率直に見なきゃいけないと思いますよ。多分、このことについては歓迎をしないということでございましょうけれども、そういう御答弁だったと思います。あとおっしゃったことはもう全然別問題ですから、横道に入りますから、私、そのことについては今ここでは触れませんけれども、まさにそういう点で財界のねらうに値する国民の苦しみ、国民がどこかにすがらなきゃならないようなそういう医療改悪というものが行われる、こういうものの本質を示している、あなたの今の御答弁はやはりそれをある意味で明らかにしたと思います。  もう一つ、製薬業界もやっぱりこの健保の改悪についてはねらっているんですよ。この点については、過去の実績を見れば一目瞭然なんですが、委員長、ここでちょっと資料を配付をさせていただきたいと思います。
  142. 石本茂

    委員長石本茂君) はい。    〔資料配付〕
  143. 山中郁子

    ○山中郁子君 簡単な一表にいたしましたけれども、これを見ていただきますと、やはり過去の実績から見れば本当に国民が踏んだりけったりの目に遭っていることがよくわかると思います。  大企業の風邪薬ですね、三共ルルゴールド、大正パブロン、武田ペンザ、幾つかの種類がありますけれども、ここではこの三つに絞って出しました。大体売薬で治すということで一番多いのは風邪なんですね。さっきもちょっと御紹介しましたけれども、三三%の人が売薬で治す、こう言っています。  それで、この風邪薬の価格の推移を見ていただけばわかるんですけれども、五十三年の一月から、初診時患者一部負担二百円から六百円に引き上げられました。このときに風邪薬は一斉に全部上がっています。それから五十六年、五十七年、五十六年三月から初診時患者一部負担六百円から八百円に引き上げられる、このときにも大多数が上がっています。五十八年二月から老人医療費有料化、老人負担月四百円、こういうふうになりました。こういうときにこうやって業界が全部薬の値段を上げているんですよね。今度またこれ一部負担などということをやられたら、もうこれもさっきの生保業界じゃないですけれども、こうした製薬業界が虎視たんたんとしてねらっているわけでしょう。それでなくても薬の問題、製薬業界の問題は大変大きな問題になって、我が党も一貫して追及してきたところです。  私はそういう点で、まさに医療の行政が、こうした財界、大企業、業界、こういうものにつけ入らせて、そして国民の健康、命を守るという上で大きな汚点を残していく、これは財界との関係でも明確になっている。そのことについて厚生大臣に見解をお伺いしたいと思います。
  144. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 山中先生大変勉強されておって、私のほかり知らざることが次々と出てくるのでございますが、私どもは、国会でも何回か各党の皆さんから薬価の問題はいろいろ議論がございまして、今回の健保法の改革案の提案に当たっても、今年の三月一日薬価基準を一六・六%引き下げたわけでございますから、これ山中先生にお褒めをいただかなければならない、こう思っておったところが、今薬が上がる話で、どういう時期を追ってどういうふうになってというのは今私が即答できる問題でございませんが、私どもは一貫してこれは実勢価格に合わせて、薬屋さんに法外な利益を与えるというようなことになってはいかぬということで、毎年毎年非常な努力をしながら、薬価基準の適正化に今後も努めてまいるつもりでございます。
  145. 山中郁子

    ○山中郁子君 資料がお手元に届かない向きもあるので、一つだけちょっと御紹介しますけれども、五十二年から五十三年にかけて、これは初診時患者一部負担が二百円から六百円に引き上げられたときです。三共製薬新ルルゴールドA三十錠三百六十円から四百円に上がりました。次が六十錠六百七十円から七百五十円に、百錠千五十円から千百七十円に。大正製薬のパブロン三層錠四十五錠が五百五十円から七百円。これはパブロンですけれども、六十五錠入りが七百五十円から九百五十円、九十錠入りは千円から千二百五十円。パブロンカプセルは五百五十円から七百円、同じく二十四カプセルが千円から千二百五十円。パブロンの顆粒が七百五十円から九百円、十二包が千円から千二百五十円、二十包が千六百円から二千円。ペンザカプセル二十四錠が五百六十円から六百五十円、これは武田です。四十八錠が千円から千百六十円。まさに全部、こういうふうにしてこのときに上げているんですよ。  そして、これに符節が合うのが、さっきも御紹介したように、国民はみんな、風邪ぐらいでは売薬で済ますんです。まして医療費が上がれば余計そういう傾向が強くなるんです。そこにつけ込んでこうやって売薬の薬価をどんどん上げてきている。まさに死体に群がるハゲタカのような、それは経済界の、財界の論理でしょう。そういうものが、今生保業界と売薬の例を挙げましたけれども、そういうふうな役割を果たすような今回の改悪、このことを大臣は肝に銘じていただかなければならないと思うんです。  私は、最後の問題になりますけれども、なぜこのような改悪、患者負担増の改悪を急ぐのか。もともと無理な改定だということは審議会からも異例のクレームがついているということであなた方もよく御承知のところですよね。「今回の改正案は、我が国の医療保険制度の根幹にかかわるものであり、慎重かつ広汎な検討を行う必要があるにもかかわらず、予算編成後の極めて限られた審議期間で審議し、答申をとりまとめざるを得なかったことは、遺憾である。今後このようなことのないよう努められたい。」、こういう異例なクレームもついているということですけれども、私はやはり、こういうだれが考えても無理な、審議会でさえこういう異例のクレームをつけるような無理な改定をなぜ今するのか、そこのことについて、一番最初にあなたがおっしゃったその内容と、藤波官房長官のおっしゃっているこのこととまるっきり違う、それはやっぱり口先だけのことでしかないし、また本当に公正な医療、あるいは安定した医療、そういうものを模索していくなら、幾らだって道がある。私はまた引き続き次の機会にそのことについて私どもの考え方も具体的に提起をし、あなた方の考え方もただしていきたいというふうに思いますけれども、このような審議会もクレームもつけるし、国民の大多数が反対しているようなことについて、こういうものを患者負担増で解決を図っていこうとする大改悪案について、我々は断固として認めるわけにはいかないし、廃案にして、本当に国民が合意できるそういう道を模索していくべきであるし、つくり上げていくべきであると考えているものです。  この審議会の異例の意見を含めて、どうしてこのような無理な改正を急ぐのかという批判に対してはやはり謙虚に大臣は受けとめるべきだと思いますけれども、その点の御見解を伺っておきます。
  146. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今の審議会というのは、社会保障制度審議会と社会保険審議会の意味だと思いますが、社会保険審議会は、いろいろの立場の特定の団体なり、また一つの集団を代表する立場の人もおりますから、満場一致の意見というものにはまいりませんでしたけれども、私は、両審議会を通じて我々の改革の意図するところはおおむね御理解を得ているものと判断して、今回の改革案を国会に提出させていただきました。  また、先生幾たびか、みんなが反対みんなが反対というお話でありますが、これはだれでも負担するよりはただの方がいいに決まっておりますから、それは一割負担というものを好ましく思わないと思いますけれども、しかし、やはり国全体の中でまじめに真剣に医療制度を考えてくださる皆さんは、おおむね一割程度の負担はやむを得ないではないかというふうにお考えいただいている方が国民の大部分の皆さんの良識であると、私は判断しております。
  147. 山中郁子

    ○山中郁子君 じゃ、国民の大多数の良識ある人が一割程度なら仕方がないというふうに判断しているということの根拠を示してください。
  148. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 根拠といっても、これは世論調査とかそういうことはまだしておらないわけでありますが、たしか総理府の、かなり前の時期でありますが、国民意識の調査の中では、被用者保険加入の皆さん方でも半数以上やむを得ないというようなお考えをお持ちだったというような報道を私は記憶しておりますが、これは世論調査をする以外であれば、どういう方法で根拠を――私自身は、私自身の周辺の人たちや、あるいはいろいろ歩いていろんな人に聞いておる、それからまた手紙をいただいたりします。渡部厚生大臣、勇気を持って、二十一世紀の国民の健康を守るために、一部の反対を恐れずに頑張ってくれというような激励の手紙をちょうだいいたしております。
  149. 山中郁子

    ○山中郁子君 時間が来ましたのでこれで終わりますが、反対が一部であってと、やっぱり最後に本音が出たんですよ。あなたが最初からいろいろいろいろ低姿勢でおっしゃっていたところもみんなうそだということがわかりました。反対が一部で大多数は賛成しているっておっしゃったんでしょう。それで、自分の周りの人はみんなそういって頑張ってくれと言ってくると。大多数の国民が賛成しているという合理的なデータを、根拠を次回お示しください。そして、三十九の自治体で、都道府県議会で反対の決議をしていることをあなたはどういうふうに受けとめられるのか、あるいは、たくさんの人の署名、請願、それからまた、全国の地方自治体の半分に達するところの決議、こうしたものをあなたはどう受けとめるのか、その点もきちんと次回の私の質問のときにお示しをいただくように強く申し上げまして、きょうの質問を終わります。
  150. 柄谷道一

    柄谷道一君 医療保険制度の前提諸条件の整備の問題、また、被保険者本人に対する定率負担導入の問題等は、私は、本会議でも触れておりますので、後ほどこの問題についてさらに細部御質問することといたしまして、私の本会議質問で触れ得なかった実務的な問題について、最初に御質問をいたしたいと思います。  まず、五人未満事業所に対する適用拡大の問題でございます。  現在、五人未満事業所が健康保険法の強制適用事業所になっておりません。これを強制適用の事業所にするということは多年の課題でございました。政府は、今回ようやく五人未満事業所を強制適用するという方針を固められましたが、これを年金改正法の中で処理されようとしております。私は、これは適用範囲の問題でございますから、本来的あり方としては健康保険法の中でこれを明定するというのが筋である、と同時に、年金改正法はまだ衆議院段階で審議継続中でございまして、その成立が可能かどうか、これはまだ未知でございます。こうした総合的情勢を考えますと、私は健康保険法本法の中に五人未満事業所の強制適用を明定する、これが筋であろうし、政府もその精神を了とされておるわけですから、これを拒否する理由は全くないと、こう思うんですが、いかがでございますか。
  151. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 五人未満の事業所に対する適用拡大の問題でございますが、この問題につきましては、従来から健康保険と厚生年金と、この二つの制度についてそれぞれ議論がなされ、また、そのために政府においても種々検討を重ねてきたところでございます。このたび、今回の健康保険の改正あるいは厚生年金を含む年金の改正の審議の過程におきまして、社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会から御答申をいただきまして、その中に五人未満事業所に対する厚生年金、健康保険の適用拡大を図るべきであるという、こういう御意見をいただきまして、制度改正を行うことに踏み切ったわけでございます。  その際に、やはり答申にも出ておりますけれども、健康保険と厚生年金保険、これは被用者にとりましてはいわば両者一体というような形でございまして、そのようなものとして一体として取り扱うことが適当と考えられるわけでございます。その際に、それでは法形式として健康保険でやるか、厚生年金でやるか、これはいろいろ考え方がございますけれども、特に今回のこの五人未満事業所に対する適用問題につきましては、年金の改正におきまして基礎年金を導入することに伴って、この五人未満の事業所に対する年金制度の基本的な適用という問題が大きくクローズアップされておるわけでございまして、そういった背景も踏まえまして、厚生年金の改正において両者を一体として適用の改正をいたそう、こういうように考えたわけでございます。法律上はもちろんそのどちらでやりましても、これが可決成立いたしますれば、それぞれの法律が五人未満適用という形になるわけでございますので、形式的にいろいろ道はないわけではございませんけれども、私どもの方は、今回そういう考え方で整理上厚生年金の方へ規定をいたしたということでございます。
  152. 柄谷道一

    柄谷道一君 整理上そういうことで年金法の改正案の中に入れておる、これは私承知しておるんですよ。しかし、年金法は今国会で成立しないでしょう。臨時国会への継続、これは衆議院でなるかこっちでなるかはわかりませんよ。もうあんた、日をほとんど残していないのに、ここで年金法を持ってこられたって審議する時間がないでしょう。とすれば、当初の考えは当初の考えとして、健保法でもこれをうたって、年金に援用すれば問題ないじゃないんですか。だからその立法の手段、当初と今とは情勢が違うということを踏まえて、大臣これは決断なさるべきだと思うんです。いかがですか。
  153. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 私どもがこれを立法いたしましたときには、政府立場としては、両方の法案を今国会で成立をお願いするという前提でございます。また、実際に五人未満の適用を実施いたしますのは六十一年四月からということで整理をいたしておりますので、私どもとしては、この法案を提案いたしましたときには、時間的余裕をもって両者を厚生年金の方で改正をするという考え方で整理をしたものでございます。
  154. 柄谷道一

    柄谷道一君 当初の整理方法を聞いているんじゃないんですよ。適用範囲といったら法律中心部分の一つでしょう。だから、年金法でも健保法でも明定しておって一向に構わないんでしょう。そのことを伺っているんです。――もう事務方はいいですよ、大臣お考えをお示しください。
  155. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今政府委員から答弁しましたように、私どもは、今回の健康保険法の改革、また年金の改革、これは社会保障制度の改革の車の両輪のごときものですから、今度の国会でいずれも成立させていただくという前提で考えておりまして、私は人間というものは最後まで希望を失っちゃいけないということで、いまだこのことの希望を全くは失っていないので、ぜひこれはいずれも成立させるようにお願いをしたいと思います。
  156. 柄谷道一

    柄谷道一君 まあ大臣の期待は期待として聞いておきますけれども、物理的に不可能ですよ。もう物理的に先が見えたという場合は、余りそこまで期待をされると、ちょっと期待じゃなくて、何というんですか、へ理屈と言っては失礼かもしれませんが、そう受け取らざるを得ません。ただ、この問題をここで直ちに大臣が修正しますということはなかなか言い得ますまい。これは追って院としてのどうするかの扱いを私は与党とも話し合いたい、こう思います。  二番目に、傷病手当金と障害年金との併給調整の問題でございます。  これは衆議院の附帯決議でも、「傷病手当金と障害年金等との併給調整について検討する」ということが取り上げられております。しかし私は、この問題に関してはもう検討する必要はないと思うんですね。すなわち現行制度では、同一傷病の場合傷病手当金は障害年金との併給は認められておりません。後者が、いわゆる年金が受給されるようになれば、法第四十七条に定める一年六カ月の給付期間内であっても傷病手当金の支給が打ち切られる仕組みになっているわけでございます。したがって、傷病手当金の受給者が障害年金の受給要件に該当することになった場合には傷病手当金の支給が打ち切られる。と同時に、障害年金の障害認定日がおくれた場合はその差額を還付する、こういう仕組みになっているわけですね。  ところが、政管健保の被保険者で平均標準報酬月額が十八万円の人、これはほぼ平均に等しいランクでございますけれども、この人の傷病手当金は月額十万八千円でございます。しかし、障害年金は三級と認定されましても五万八千六百九十一円と、ほぼ半分ということになるわけですね。そうなりますと、傷病手当金の受給要件に合致していながら、たまたま年金の受給という認定が下されたがためにその支給額は半分に落ちる。そこで、認定日が三カ月おくれますと十五万円返還しなければならない。これは障害年金の三カ月分受給額を越える額を返さなければならぬという不合理がある。これはもう多く検討するまでもなく、明々白々たる現行制度の矛盾でございます。私は特に透析患者の場合、これは人工透析開始後三カ月後に障害認定されるわけでございますから、これは非常に酷な現状にあるということはもう大臣局長も十分御理解のとおりです。  そうとすれば事は簡単、傷病手当金の額が障害年金の額を上回るときはその差額分は傷病手当金として支給する、いわゆる返還する必要はないという形にせめてして現在の矛盾を解消する、これは当然政治としてとるべき改善の方策ではないか、こう思うんです。いかがでございましょうか。
  157. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生指摘のとおり、同一の疾病により傷病手当金を受給していた者が障害年金の受給要件に該当すると受給金額が著しく低下したり、あるいは多額の返還金が生じたりするという事態が生ずることは、それぞれ制度の趣旨は異なっているとはいえ、これは先生指摘のとおり大変大きな問題であると私ども認識しておりますので、先生のただいまの御指摘に謙虚に耳を傾けて、先生方の御意見を拝聴しながら改善の努力に努めたいと思います。
  158. 柄谷道一

    柄谷道一君 次に、分娩費等の現物給与についてちょっと質問してみたいと思うんです。  私はかねがね、もう二十年来でございますけれども、ILO百三十号条約批准のためにも分娩費は現物給付とすべきだと、こういう持論を持って主張し続けてまいりました。しかし、この私の主張は一応横に置くとして、昭和五十五年の健保法改正で、分娩費の額はすべて政令事項とされたわけでございます。このときの当局の御説明は、「弾力的に対応するため」と、こういうことだったんですね。ところが、五十六年三月に十五万円に最低保障額が引き上げられまして以来三年間、その額は据え置きのままでございます。本年度の予算にも措置されておりません。ところが、これは厚生省の資料でございますが、国立病院の平均分娩費用を見ましても、五十六年三月に十五万円であったものが五十七年三月には十七万四千円、五十八年三月には十八万三千円、現在はほぼそれから一万円程度はふえていると推定されるわけでございます。私が独自で調べました国公立の平均は現在約二十一万円でございます。さらに、日赤産院二十三万円、慶応病院二十八万円、聖路加病院が二十五ないし二十六万円、済生会中央病院二十五万円、新宿赤十字産院二十三ないし二十五万円。大体一般病院の平均は二十五万一千円見当になっております。  そこで、これ端的にお伺いするんですけれども、政令にゆだねて、当初の趣旨どおり弾力的に対応していないということは、国会に対する約束を履行していないことでございますから、この際思い切ってその金額をもとへ戻して法定化すべきではないですか。もし法定化することがだめだというのであれば、来年この金額の是正を図られますか。
  159. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今先生からお話しがありましたように、現行の分娩費や埋葬料の最低保障額が実際の費用との間に大きな差があるようでございます。今の問題もございますが、まず、財源手当て等の問題を考えながら、御指摘の趣旨に沿って関係審議会の御意見等も伺って、今後そういう方向に向かって善処してまいりたいと思います。
  160. 柄谷道一

    柄谷道一君 埋葬費のこと、先に答弁されちゃったわけですが、埋葬費も五十五年八月八万三千円。これは東京二十三特別区の区民葬儀料金の最低ランクでございます。ところが、五十八年四月は九万三千円、五十九年四月は約十万円に達しております。  私は、大臣お願いをいたしたいことは、法律を出すときは法律で金額を明定しておくとなかなか改善がしにくい、おくれる、だから政令事項にゆだねてくださいよということで提案されているんですね。ところが、実勢料金と相当の格差が生じながら、一向にその政令事項が、これは大蔵省の抵抗もあるんでしょう、実行できないとすれば、弾力的運用を目的とする政令移管の目的は全く機能していないということになるわけです。これは法律で明定するか、それとも、当初の立法府に対する約束どおり弾力的に都度都度改善していくか、この二つの道を選択する以外に道はないと、こう思うんです。私の理解でよろしゅうございますか。
  161. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 御指摘のとおりでございますので、改善の努力をしてまいりたいと思います。
  162. 柄谷道一

    柄谷道一君 次に、退職者の任意継続加入に対する保険料の問題でございますが、御承知のとおり、厚生年金ではこの制度が開かれているわけですね。今後、健保に対してこの制度同様の方式を導入するお考えはお持ちでございますか。
  163. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 御指摘の問題につきましては十分理解をしております。この委員会の御審議を踏まえまして対処をしたいと、こう考えております。
  164. 柄谷道一

    柄谷道一君 衆議院段階でも、現行の償還払い方式の改善問題がいろいろ議論されました。  最近、医療の進歩に伴いまして高額医療は大変な額に上るものが多くなっております。二百万、三百万という医療費はそう珍しいことではございません。中には二千万円という高額医療もあるやに私は承知いたしております。そこで、数カ月後には高額療養費を超える金額は返ってくるとはいえ、一たんこれを立てかえて支払わなければならないわけですね。二百万であれば二十万円です。二千万円の高額医療の場合は二百万円です。従来は家族でしたけれども、今度は被保険者本人も、一家の主人ないしは世帯主が入院する、それだけの金策をだれがするのかという問題が出てくるわけでございます。仮に、金策に思い余ってサラ金にその財源を求めるとすれば、これは大変な社会問題にも発展するおそれがあると思うわけでございます。  現行の無利子融資制度を私いろいろ調べてみましたら、次官通知により要綱を定めて実施しております世帯更生資金貸付制度、それから法を根拠として設けております特殊法人日本育英会の育英奨学金制度、同じく法を根拠にしております中小企業事業団の特定高度化事業融資制度、また若干性格は異なりますが、予算措置で利子補給を行っておる住宅金融公庫の融資などなど、いろんな形態があるわけですね。  私は一つの方法として、今度国会へ出しております事業団統合法、いわゆる社会福祉医療事業団の新たな事業項目としてこれを追加するという――この健保法ではございませんよ、その法律で一部手直しを行えば、附帯決議による善処、検討の実を満たすことができるんではないかと、こう一方法として考えるものでございます。附帯決議については、衆議院大臣も、附帯決議の趣旨を尊重して努力すると、こうお答えになっているんですから、一体どういう具体的な方法を今お考えなんですか。
  165. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは私たびたび申し上げておりますように、今回の一割負担の改革案が成立し実施されることによって、健全なサラリーマン家庭の生活が破壊されるようなことがあってはなりません。そのための一番大きな歯どめが、先生指摘の高額療養費制度でございますが、今先生指摘のように、これは最初に窓口で支払わなければなりませんので、その金融の面の御心配、これはまことにごもっともなことでございます。  今先生指摘のあったような、現行制度もいろいろございます。したがって、まず基本的には、この現在ある制度を周知徹底させることによって充足させることでございますが、これが実施されることによってそれでは間に合わないという問題等がいろいろ出てまいるということでございますれば、これは今後の先生方の御審議に耳を傾けて、一割負担が実施されても健全なサラリーマン家庭の皆さん方がそのことによって経済破綻を来さないような政策的努力というものは、国会の決議を尊重する立場からも当然のことでございますから、先生今御指摘の、新しくつくられる事業団の事業というものに加えるかどうかという問題等を含めて、先生の御要望にこたえるように努力をしてまいりたいと思います。
  166. 柄谷道一

    柄谷道一君 次に、船保の疾病部門でございます。  御承知のように、現在船員保険は、船員の高齢化さらに海運不況、二百海里規制以降の漁業不況等の要因が重なりまして、被保険者は約五千人毎年減少し続けております。このため、船員保険の疾病部門は大幅な累積赤字を抱えまして、疾病部門の健全な財政運営そのものに支障を与えているというこの現状については大臣もよく実態を御理解のところであろうと思います。  ところが、五十四、五十五年度は十五億円、五十六年度は二十億円、五十七年度以降は二十七億円に、国庫補助は低額で据え置かれているわけでございます。ところが、社会保険審議会はここ数年、五十三年以来でございますが、国庫補助の定率化を図れと強く大臣に答申、建議をいたしておるわけでございます。パーセンテージは一応横に置きまして、どうしてこれを定率補助に切りかえられないんですか。
  167. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 船員保険の疾病部門の国庫補助につきましては、ただいま御指摘ございましたように、数年前から社会保険審議会におきましても定率化を図るようにという御意見が出されておりまして、私どももそれを受けて、予算の要求の段階においては定率化の要求をいたしてきておるわけでございます。しかしながら、船員保険におきまして、私どもとしては、その審議会の御答申に沿った定率補助を実現すべく努力をいたしておるわけでございますけれども、なかなか財政当局の壁が厚くて実現するに至っておらない、こういう状況にあるわけでございます。
  168. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣、これは大蔵省が認めないからという理由だけでしょう。大臣も本来は定率補助であるべきだと、こうお考えじゃないんですか。
  169. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 非力ではございますが、今後財政当局に努力してまいりたいと思います。
  170. 柄谷道一

    柄谷道一君 努力もいいんですけれども、我々立法府が定率と法律を書き改めると、大臣楽じゃないんですか。
  171. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 予算上の処置を講じてやはり法律に書き込むということでございますから、まず、財政当局に対する努力をさせていただきます。
  172. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、原案提出者でございますからこの席で修正に応ずるとか応じないとか言える立場にはないし、それこそ与野党間のこれからの協議の結果どうなるかということでございますので、本日のところはこれ以上この質問を避けますけれども、一応私が本会議指摘した以外の問題にもこのような問題点があるということを念頭に置いていただきまして、いやしくも行政府が、参議院の院としての協議に横からブレーキを踏むということだけはないように要請しておきます。よろしゅうございますね。
  173. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、私はこの法案の提案者でございますから、私が提案した法案をそのまま御可決いただきますことが最も願わしいのは当然でございますが、しかし我が国は議会民主政治でございます。私も党人政治家で、国会尊重は何人にも劣らないつもりでございます。この参議院の社会労働委員会で皆様方の賜りました御審議、そしてそこから出ました結論は、尊重してまいりたいと思います。
  174. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただ、一つここで苦言を呈しておきたいことは、この法案全部を眺めまして、従来指摘されている問題でありながら改善部分は何もないんでずよね。ただ財政上の措置からその削減を図ろう図ろうという意識に走るが余り、従来問題とされてきた改善点についても知らず、存せずでは、これは国民を納得させることはできますまいと、このことだけを苦言として申し上げておきます。  次に、私は本会議でも高額療養費支給制度についていろいろ御質問したわけですが、一問一答方式ではございませんでしたので、再度お伺いしたいと思います。  政府は、被保険者本人の給付率を、本則では八割、当面は九割に引き下げることの代償として、従来被扶養者に認められてきたこの制度を本人にも導入するということによって反対の矛先をかわそうとされているのではなかろうかと、こう思いますが、私は、問題は五万一千円を据え置くという問題でこの問題が解決されるわけではないと、こう思うわけでございます。  私は、四月五日の予算委員会でも大臣に対して具体的に御質問したわけです。例えば現行制度は、同一医療機関ごととなっているがために、A病院に入院して自己負担四万円、B歯科で自己負担が二万円、合わせて月六万円の自己負担をしても、この制度には対象とならない。また、C病院で外来診療を受けて自己負担が六万円の場合は制度の対象になるが、医薬分業に協力をして、C病院で三万円の自己負担をし、D薬局で三万円の薬代を自己負担したという場合は、同じ六万円でもこの対象にならない。こういう矛盾がありますよと。また、被保険者本人と被扶養者が別個になっておりますから、同じ病院本人と被扶養者の一人が入院をしてそれぞれ四万円、計八万円の自己負担をしても、この制度の対象にならない。また、被扶養者一人が入院をして十二万円の自己負担をした場合は、十二万円マイナス五万一千円、いわゆる六万九千円が償還されるわけですね。ところが、本人と家族がそれぞれ六万円ずつ同じ金額の十二万円を自己負担しても、六万円マイナス五万一千円掛ける二ですから一万八千円しか償還されない。また、暦月方式でございますから、七月一日から三十日までの一カ月入院して自己負担が六万円の場合は償還の対象になるが、同じ入院三十日の場合でも、七月二十日から八月十八日までの三十日間入院した場合は制度の対象にならない。また、極端に言えば、税制上医療控除があるとはいうものの、毎月五万円、計六十万円の自己負担をしても制度の対象にならない。これは現行制度の持つ矛盾、問題点ですね。  現行制度にこういう矛盾、問題点があることは大臣もお認めになりますね。
  175. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 高額療養費の問題、これは私がたびたび申し上げておりますけれども、今回一割負担を国民の皆さんにお願いし、国民の皆さん方の家計破壊や経済破綻につながらないようにするための一番大きな歯どめになる大事な大事な政策であると私どもは考えております。その内容については、今先生から御指摘のように、一元的でないいろいろの難しい問題等があるようでございます。私どもは、この参議院の社会労働委員会先生方から御審議を賜りました事項には謙虚に耳を傾けて、可能な限りの改善の努力に努めたいと考えております。  今それらの問題に一つ一つ具体的な答弁はお許しいただきたいと思いますが、基本的な考え方として、この参議院の社会労働委員会先生方の合意を得まして、御命令をちょうだいすれば、この高額療養費の問題は、この一割負担によって国民の皆さん方の生活や経済を破壊しないための極めて重要な、最重要など申し上げてもいいこれは政策的な歯どめでございますので、先生方の御意見に謙虚に耳を傾けてまいりたいと思います。
  176. 柄谷道一

    柄谷道一君 局長にお伺いしますが、本会議の私の質問に対して、端的に要約して言えば、現在査定はレセプト主義になっておるので、将来の電算機導入等の場合には別としても、世帯単位、三十日単位というものに直ちに切りかえることはなかなか実務上問題がある旨の御答弁されたんですが、これ、領収書主義に切りかえたら問題は何もないでしょう。
  177. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) けさほど高桑先生からも同様な御指摘がございました。確かに領収書主義でいけば、今のような問題は片づくわけでございます。ただ、領収書方式をとる場合にはまた領収書方式の問題が出てまいることもこれは事実でございまして、レセプト主義でいくか領収書主義でいくか、これによってこの高額療養費の支給の態様というのはかなり変わってくるということは言えると思います。
  178. 柄谷道一

    柄谷道一君 それは、仮にある一定の検討期間が要するという場合ですね、今社会保険事務所は台帳に世帯別にどれだけの医療費を払ったかわかっておるわけでしょう。とすれば、例えば二ないし三カ月連続して一世帯ごとに高額療養費の限度額を超えて自己負担をしておるというものは二カ月、三カ月、どれがいいのかはこれからの問題ですけれども、その期限を過ぎれば収入はないわけですから、または傷病手当金をもらっても賃金は六〇%に落ちているわけですから、そういう長期入院者に対しては、例えば低所得者並みの限度額に落とす等で長期入院者に対する特別配慮を行うということは実務上何も問題はないと思うんですが、いかがですか。
  179. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 今先生が御指摘になりましたように、所帯別に全部レセプトがファイリングされておるという前提ならそういうことなんですが、現在の社会保険事務の現状では、世帯ごとにファイリングされていないわけでございまして、申請があれば支払い基金から送られてきておる膨大なレセプトの中から該当レセプトを引き出すという作業をしなければならない、こういうことで、ある所帯のレセプトを合算するとか、あるいはまた月をまたがって同一人についてのレセプトを合算するとかそういうことは非常に難しいわけでございます。
  180. 柄谷道一

    柄谷道一君 余り技術論に突っ込みますと――私も技術論的な解明方法はあると思っておりますけれども、こんなことでこればっかり時間をとるわけにいきません。難しいけれどもなせばなるでございます。いかにして大臣の言われる趣旨を生かすか、これは立法府も行政府もあるだけの知恵を絞って世帯ごとの過大な負担をいかに軽減していくか。現行制度に矛盾があるんですから、それは大臣もお認めなんですから、それをいかにすれば矛盾を改善することができるか、これこそ政治の働かなければならない、行政府としても真剣に検討しなければならぬ課題でございましょう。これだけは言っておきます。  そこで私は、厚生省は五万一千円据え置いたから従来と変わりないじゃないか、こう言われるんですが、これは本人にとっては大変な変化が出てくるわけですよ。従来初診料八百円だけであったものが、外来の場合でも最高は五万一千円まで自己負担がふえる、こういうことになりますね。入院一カ月間の者は、従来は一万五千八百円ですね、初診料八百円と一万五千円で。一万五千八百円が五万一千円まで限界がふえるわけですから、一挙に三・四倍に負担がふえる、こういうことになりますね。入院二カ月目以降はゼロから五万一千円ですから、ふえ方はこれは無限大ですね。しかも、これは被保険者本人ですから世帯主ですよね。  厚生省のモデル試算によりますと、盲腸で手術、入院七日の場合、現行負担四千三百円が一万八千四百二十四円。これは私は厚生省の資料どおり言っておりますがね。胃潰瘍で病院で手術、十四日入院、現行七千八百円の自己負担が三万六千九十三円、二万八千二百九十三円の負担増。胃がんで胃を摘出、三十日入院、この場合は現行一万五千八百円の自己負担がさきにも言いましたように五万一千円、これは三万五千二百円の負担増。さらに三カ月入院した場合を考えますと、現行の自己負担一万五千八百円が一カ月目は三万五千二百円、二、三カ月目はそれぞれ五万一千円、合計十三万七千二百円も自己負担がふえると、こういうことになるわけですね。  私は定率負担がいいという立場に立っているわけじゃございませんけれども、定率負担を政府が出す以上、せめて本人に対しては激変緩和の措置がとられてしかるべきではないか、一挙にこれだけの変動を被保険者に押しつけるということははなはだ問題があり過ぎる、こう思うんですが、認識いかがでございますか。
  181. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生指摘のとおりでございまして、私も今回この法案をまとめるに当たって、最初の原案は定率二割の御負担を最初から願うということでありましたが、激変緩和という意味で、当面一割ということでお願いしておるわけですが、一割でもまだ今先生指摘のようないろいろの難しい問題がやはり出てくるようでございます。  したがって、これを緩和させるための大きな政策が高額療養費の問題でございますから、これは行政がやる場合、物理的に技術的に不可能な問題がありますが、可能な範囲で、これからこの委員会での先生方の御審議を賜りまして、その審議の上、先生方の御意見で私どもに申しつけられましたことについては、誠意を持ってそれが実現されるように努力をしたいと思っております。
  182. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、昭和四十五年から四十六年にかけての医療抜本改正時代、社会保険審議会の一員であった者でございますが、大臣御記憶にあると思うんですけれども、答申の中には、公費負担医療と保険医療との再編成を考えなさい。そして難病、長期高額医療については必要なものは公費負担医療に移行せしめなさい。移行せしめ得ないものについては適当な負担の減額措置を講じなさいということが答申の中にございました。これは公益保険者、被保険者、医療担当者を含めて全会一致の答申でございます。  衆議院段階では、血友病などの一定疾病については軽減等の措置を図ると附帯決議になっておりますね。私は、審議会の答申というものを考えれば、ただ軽減だけではなくて、この際、公費負担医療に移行すべき疾病は何か、どのような疾病については軽減措置を講ずべきか、これを大臣として関係審議会に諮問して、その諮問の結果を尊重し、減免の措置がとられてしかるべきだ、こう思うんですが、いかがですか。
  183. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 難病対策、また今先生指摘のような問題に対する公費負担の問題、これも私ども医療行政にあずかるものにとって極めて重要な問題でございますので、これから参議院の審議の中で、先生方から、これこれというこの委員会の合意によって私どもに対するお指図を賜れば、それが実現に向かって努力してまいりたいと思います。
  184. 柄谷道一

    柄谷道一君 現行法第四十四条ノ三では、ただいま私がいろいろ問題提起をいたしました高額療養費についてはすべて政令にゆだねられているわけでございます。私は、この本人定率負担の導入ということの是非、これは本委員会でもっと深く検討しなければならぬ問題でございますけれども、仮に定率負担を導入するということになれば、これは従来の高額療養費というものも、この激変期に果たして従来どおりすべて政令にゆだねていいものかどうかという問題が生ずると思うのでございます。したがって、高額療養費の持つ意義、原則ないしは主要な骨組みというものは、少なくても立法府でそれを確認して法律の中に明定化して、その立法府の定めた原則及び仕組みの中で政令で具体的金額を定めていく、せめてそれぐらいの措置をとらなければ、この激変期に対応する政策のあり方ではない、私はこう思うんですが、いかがでございましょうか。
  185. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、私は政令を定める立場でございますから、国会の先生方の御意向を十分尊重をして政令をつくっていくつもりでございますが、これが立法化でなければだめかどうかということは、これは国会の先生方でお決めいただくことで、私から申し上げることではないと思います。
  186. 柄谷道一

    柄谷道一君 以上の私の幾つかの指摘に対しましては、一言で言うと、これは立法府の問題だから十分御審議いただきたい、その結果については尊重します、厚生省は立法府の審議や協議を阻害しませんということから一歩も出ないわけですな。しかし、大臣がそこらについては非常に弾力性を持って問題を考えておるということだけは大体読み取れましたが、私の理解は間違っておりますか。
  187. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 誤解のないように正確に申し上げさせていただきますが、この改革案の提案者である私といたしましては、これは原案のとおり御議決を賜ることが最も望ましいのでございますが、しかし、それ以上に国会というものは優先して尊重されなければならない問題でございますから、良識の府と言われるこの参議院の社労の委員会で、先生方が御相談の上各党合意でお決めいただいたことには、これは謙虚に従っていくということでございます。
  188. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、いよいよ問題の被保険者本人に対する定率負担について若干伺います。  私は、本会議でも指摘したのでございますが、被保険者本人の原則十割給付、原則というのは初診料、入院時の一日五百円の負担というのがありましたので、本人もすべて十割ではない、いわゆる原則十割でございますけれども、そういう制度がある。これは昭和二年の健保制度発足以来五十七年間の長きにわたって維持されてきた制度でございます。  そして、政管健保がちょうど昭和三十七年あたりから三K赤字の一つと言われまして、財政対策が非常に重大な政治課題になったときも、一度として政府からこの給付率を下げようということは提案されたことがなかったわけですね。これだけは、やはり制度創設以来の伝統は守り抜いていこうというのが歴代厚生大臣のかたい決意のあらわれであった、こう思うんです。しかも、昭和五十六年以降、政管健保の財政は黒字に転換しておりますね。財政的にも現在のところ健全に運営されている。大臣のお得意の二十一世紀は別にしまして、現在はそれが保険財政の実態なんですね。このときに、なぜ定率負担を導入するのか。  私は大臣の本音を聞きたいんですけれどもね。これは画一的マイナスシーリングを強要された、まあ強要されたという言葉が悪いならば閣議で決まった、とすれば、厚生省予算の中に占めておる最大のものは、財源は医療と年金ですね。ここに手をつけざる限り一般経費一〇%の削減というものを満たすことができぬ、背に腹はかえられぬということで、やむを得ずとらざるを得なかった措置だと、こう思う以外に理解しがたいんですけれども、いかがでしょう。
  189. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 厚生行政を、今日、マイナスシーリングという厳しい財政上の枠の中で守っていかなければならない私の立場に対する温かい配慮ある思いやりのお言葉をちょうだいしてありがたいのでございますけれども、しかし、財政問題もございます、今回の改正案は。これは、我が国の社会保障予算厚生省がお預かりする分で五十九年度九兆二千四百五十億円、五十九年度一般会計の国の政策費の二八%でございます。また、その中で医療費に支出する金、三兆九千億でございます。先ほど、防衛予算のためにやるのではないかという御指摘もありましたが、防衛予算はこれまだ三兆円にもなっておりませんが、医療費だけでも三兆九千億でございます。これは、増税なき財政再建という国の路線の中で、これから医療費をどんどんどんどん毎年増額していくということが極めて難しい財政条件にあることも私は率直に申し上げます。  しかし、今回の改革案は、決してその財政条件だけではございません。今日まで長い間、昭和四十年に一兆円であった医療費が既に十四兆円を突破し、これに何らかの歯どめがなければ、医療費というものが将来国家財政を、あるいは国民の生活を大変圧迫するのではないかというような議論も行われてまいりましたし、また、やはり医療保険の中に患者一部負担という原則は取り入れるべきではないかという議論も、昭和四十年以後幾たびか国会でも行われ、また、専門的ないろいろな方から御指摘を受けておるところでございます。  そういう中で今回私どもが考えましたのは、まずやはり、今後租税、社会保障負担を大きくして二十一世紀に働く人たちが、五〇%以上も租税負担やあるいは社会保障負担に取られて、何か働くことがばからしいようなことになって、いわゆる社会に活力を失ってはならない。そういう点では、現在五%程度のこの医療保険の保険料率を二十一世紀の将来にわたってまでこれは現行の保険料率でとどめたいという我々の強い願いもございます。また、幾たびか議論がありましたように、現在医療保険の中でも国保の皆さんが三割御負担になる、また、家族の皆さんも二割、三割御負担になる。これはやっぱりできるだけ早い機会に給付と負担の公平、給付率が国民全部平等の給付率になることが望ましい。あるいは、やはり無料ということで国民の健康に対する自己管理の意識が薄れるのではないか。一部患者の皆さんに御負担を願うことによって、それぞれの皆さん方が健康の自己管理に努めるように努力を願い、また、医療費の適正化も進めてまいりたいと、こういった多面的、多角的ないろんな願いを込めて、今やらなければ、我々の健康を守ってきたこの国の医療保険制度というものを将来にわたって持続することができないという考え方で今回改革案を出したもので、先生指摘のように財政的な面もございますが、それだけではないということを御理解賜りたいと思います。
  190. 柄谷道一

    柄谷道一君 一律マイナスシーリングをかけた、ただ防衛及び経済協力、これは政府の重点施策としてその例外に置いた、しかし、社会保障は重点施策の中には入り得なかったということだけはこれもう事実ですよね。それから、二十一世紀を展望しての医療費のあり方、これは一部負担を課して受診率を抑えて適正化することだけが方法か。他にもっと多く検討しなければならぬ課題がある。この問題はまた改めて篤と大臣と二十一世紀論を闘わしたいと思います。  ただ、ここで大臣に一つお伺いしておきたいことは、私が本会議で、昭和四十六年度の社会保険審議会の答申をひもといて、画一的に給付率を九割、そして将来八割と落としていくということについて、審議会の答申の精神にもとるのではないか、こういう質問に対して、総理も厚生大臣も、四十六年当時は高度経済成長の時代であった、現在の経済財政状況のもとでは、せっかくの当時の公的審議会の答申ではあるが、これに沿い得ない、そういう趣旨の答弁をされたんですね。  そこで私はここでお伺いしたいんですけれども、率は一応横に置きましょう、ただ審議会の理念は、本人、家族とも、高額医療疾患、長期療養疾患のある者については、公費負担医療に移管して国民の疾病に対する不安を除きなさいよ、その他についても、自己負担を考える場合は、本人、家族とも、入院の給付率は厚く、外来については適正な一部負担はやむを得ないと、画一的給付率の思想では全くないんですね。大臣はこの思想そのものも、率は別として、否定されるんですか。
  191. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 難病、あるいはきわめて長期療養を要し、あるいは非常に多額の医療費のかかるそういうものは、財政が許す範囲でできるだけ公費負担に持っていくような努力をしなければならないという、医療保険に対するこれは私の基本的な考え方でございます。
  192. 柄谷道一

    柄谷道一君 長期高額医療に対する大臣のお考えはわかりました。これは審議会の理念に沿うというお考えですね。  入院と通院について、画一的に見るべきではないよという答申に対してはいかがですか。
  193. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今でも被用者保険の家族の方は外来七割、入院時八割ということになっておるわけでありますから、そういう考え方も尊重しなければならないと思います。
  194. 柄谷道一

    柄谷道一君 しかし、いつの日かわかりませんけれども、全部込めて八割にしようということは、その思想を否定されているんじゃないですか。
  195. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) いや、そういう考え方も尊重しなければならないと申し上げたわけでございますが、将来の医療保険のあり方としては、私は毎回申しておりますが、やはり国民すべての皆さんが同じような給付条件になっていくことが望ましい。これが九割という数字を出せば先生から多少はお許しをいただいたのかもしれませんが、八割とこういうことになってしまったわけでございますが、これは、国保加入者の皆さん方にお目にかかると、現在でもほとんどが保険料が高過ぎる高過ぎるという苦情が多いので、これ以上保険料率を上げるということも大変困難でありますので、責任ある立場に立っておる私どもとしては、八割という程度の数字を挙げざるを得なかったということでございます。もっと望ましい方向が理想としてあれば、その理想は掲げられますが、現実的に今責任を負う立場に立っておる私どもとしては、八割程度の数字しか申し上げられなかったということでございます。
  196. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、被用者保険に定率負担を導入すること自体について問題視しているものでございますが、政府案の問題点は二つあるんですよ。昭和六十一年四月一日以降別途国会で承認を得る日までは九割は続けるんですと修正してはおるものの、本則はあくまでも八割に固執していることですね。よって、当面九割だが八割給付にすることを立法府は担保せよと、言葉をかえればそういうことですわね、この法案は。  私は、九割給付がいい悪いは一応横に置いて、八割給付とするということをとるとすれば、これから検討しなければならぬ課題はたくさんあるんですよ。例えば政府が数でこの法案を通して一割負担というものを法律改正をした場合、その一割負担ということの結果、総医療費ないしは保険財政にどういう影響が出てくるか、これも見なければならぬ一つの要因でしょう。受診率がどう変化していくのか、そのことと国民の健康確保という視点から見て問題点がないのかどうか、これもチェックしなければならぬポイントでございましょう。  さらに、後ほどこれは質問申し上げますけれども医療保険の前提諸条件について、二十一世紀を展望するえらい大論文の中には、前提諸条件の整備が、スケジュールこそ入っていませんけれども、これもやっていかにゃならぬということを書いてあるわけですね。そうしたらその二十一世紀までの、ないしは昭和六十五年までの前提条件の整備の、医療費ないしは医療保険に及ぼす影響はどうなのか、これもチェックしなければならない。  さらに、私が今申し上げましたように、果たして入院と外来をどのような形にすべきか、差を設けるべきなのか同一にすべきなのか、これも公的審議会の答申がある以上十分にチェック、検討しなければならぬ問題であろう。  さらに、国民健康保険との一元化を図るという問題につきましても、それでは所得の捕捉と被用者保険対国民保険の負担の均衡という問題に対してどういう解決策を見出すべきか、これも重大な検討課題でございましょう。  参議院がわずか四回の審議日数しかない、チャンスがない。私が今指摘した問題について、本当に院として将来の担保を行い得るか否かについて論議を尽くすとするならば、これは無限の時間を要しますよ。その審議もないままに九割、そして八割まで担保せい、これはちょっと暴論じゃないですか。余りにも参議院というものの審議を短い時間で、そこらはまあ衆議院で通ってきたんだから八割担保、八割担保、こんなことを言われて、はいそうでございますかということだったら、これ参議院の存在価値ないですよ。その点に対して、大臣どう思われますか。
  197. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 審議日程については、これは国会の問題でございますから、これは私にどうこう意見を求めるのは先生無理だと思いますが、政府の一員としての私の考え方を申し上げさせていただければ、これは我が国の憲法によって二院制度が設けられ、これが正しい政治を行われる制度であると期待され、しかも参議院は国民の良識の府として大きな尊敬を抱かれておるのでございますから、参議院の審議というものをできるだけ尊重してまいりたいと考えております。
  198. 柄谷道一

    柄谷道一君 仮に本則八割という問題を削除しても、当面保険財政には何の影響もないでしょう。少なくとも五年間何もないんですよ。  私は、こういう私が指摘した幾つかの問題については、公的審議会でももっと深く検討すべきだし、必要があればこの立法府の中に小委員会ないしは特別委員会を設けて、それこそ大臣の言う二十一世紀にかけての保険医療のあり方、この中における負担率のあり方はいかにあるべきかという問題について真剣な討議を行って、最終的な給付率を設定する、それが国民の合意を得る道であり、政府が一割負担をしたいというのであれば、それはあくまでも時限立法としての性格を帯びるべきなんです。なぜ、八割負担を本則にうたわなければならないとお考えなのか、未解決の問題がいっぱいありながら。予約券というのはいつ乗るということがわかって初めて切符を予約するんですよ。国会の議決があるまで、これいつ汽車に乗るのかわからないですね。乗る列車の時間がわからないのに予約券だけはあらかじめ買っておけ。国民の中には西へ行きたい人も東へ行きたい人も北へ行きたい人もある、そんな議論は無用である、ただ一筋に八割へと、担保せいと。私、真意がわからないんですけれどもね。私がわかるように御説明願いたい。
  199. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私ども政府立場ですから、これは我々が決めたことは現実に実行しなければなりません。それには財政的裏づけというものが前提になります。そこで、現在の私どもの計算では、将来あらゆる職業、あらゆる分野の皆さん方が統一した給付率ということになると、現在の保険料率を余り上げないで統一した給付率にするというためには、八割前後しか給付する財政条件にないということで、八割前後ということを考えておるわけでございます。  ただ、先生御承知のとおり、これは給付率八割前後ということの中に、この我々の政策として先生が熱心に御心配の高額療養費の問題とか、あるいは老人医療、あるいは生活保護、あるいは難病に対する公費負担とかそういうものもありますから、八割程度の給付率で、実質的な国民全体の中での患者負担は一割程度と、九割程度の給付ということになっていくと思います。
  200. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣、本会議でも「八割程度」と言われたですね、速記録をよく読んでみますと。今も「八割前後」と言われたんですがね。ということは、これからどうするかの検討が残されておるということですよね。ところが、本則は「八割」と決めてくれというんでしょう。「程度」とか「前後」ということと、本則「八割」ということは違いますよ、これ。どっちなんですか、「八割程度」なんですか、これは。
  201. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、長期ビジョンには、「八割程度」で全国民の給付率を統一したいと、こういうことを言っておるわけでございますが、「八割程度」と申しますのは、私どもフラット料率としては八割というものを頭に描き、プラス高額療養費を仕組むことによって実質的な給付率というのは八割より上になると、こういうように考えておるわけでございます。したがって、八割ということでなしに、「八割程度」という言葉を使っているのはそういう意味でありますし、また、将来の本人の給付率を「八割」にしたいという、その「八割」というのは、フラットの給付率を八割にしたいと、こういうことを書いておるわけでございます。大臣が「八割前後」という言葉をお使いになったのは、恐らく「程度」と「前後」を少し言い違えられたんだろうと思いますが、「八割程度」ということで私どもは考えておるわけでございます。
  202. 柄谷道一

    柄谷道一君 いろいろ質疑をやりましても、これきょうは時間がないのでまた次の機会にしたいと思いますけれども、私は多くの検討すべき課題がある、そういう議論も深めないで、フラットが八割給付なんですからそれを予約しなさいと、これはちょっと院の審議というものを余りにも短い期間で拘束し過ぎる。そういうことについてはなかなか我々としては納得できないということだけを申し上げておきます。  そこで、衆議院段階で三師会との話がございまして、千五百円以下のとき、それから千五百一円から二千五百円以下のとき、二千五百一円から三千五百円以下のとき、三段階の定額負担を都道府県知事が認めた場合はこれにかえることができると、こういう修正が行われたんですが、それは総診療件数に対してランク別にどれくらいの比率を占めるのかお知らせをいただきたい。
  203. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 入院外でまず申し上げます。千五百円以下が総件数のうちの二〇・八%でございます。それから千五百一円から二千五百円までが二二・六%でございます。それから二千五百一円から三千五百円のランクが一七・九%、合わせて六一・三%でございます。  今のは入院外に対する数字でございますが、入院及び歯科を入れた全体の数字を申し上げますと、千五百円以下のランクは一七・四%、千五百一円から二千五百円は一九・六%、二千五百一円から三千五百円までは一五・〇%、合わせて五二・〇%でございます。
  204. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、この修正というものは少額医療費の事務簡素化という視点からわからぬことでもないんですけれども、しかし、入院外では実に六〇%以上、全部含めても半数以上が定額負担方式になるということですね。それは提案の趣旨説明を見ますと、医療費の実態というものを国民にもわかっていただいて、そして医療費適正化の一助にしたい、それが本案改正の一つの大きな目的ですね。この目的がこれによって満たされている、こう大臣お考えなんですか。
  205. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今回の改正案、先生指摘のように、定率の御負担をいただくことによって医療費というものが明朗になるという理由も大きな提出の理由でございます。したがって、私どもはいまだに、政府原案のとおりお認めいただくことが私どもの考えとしてはベストであると考えておったのでありますけれども、今御指摘のような点について衆議院で修正を受けたわけでございます。  何回も申し上げておるように、国会でお取り決めいただいたことについては、議会民主政治でありますから私ども従わなければなりません。しかも、この内容はいわば四捨五入的な簡素化を行ったということで、定率負担というものの基本原則を変えるものではないというふうに私は理解しておるのでございます。
  206. 柄谷道一

    柄谷道一君 まだまだ多くの質問を用意しておったのでございますが、これは次回に譲ることとして、最後に一点だけ質問しまして、あとの問題は次回に譲りたいと思います。  定額負担を政府はのんだわけですよね、やむを得ぬということで。これ、一割を超えるものが出てくるでしょう。二千五百一円以上三千五百円までは三百円ですから、例えばそのランクをとれば二千五百一円から三千円までは一割より余分の負担をしなければならぬということですね。政府の一割定率負担とそれ以上の負担を負う者が出てくるという点についてその整合性をどう考えておられるのか、この一点を質問しまして、残余の質問は次回に譲りたいと思います。
  207. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 確かに、第三ランクをとりますと、三千一円以上三千五百円までは一割より低いわけでありますし、それから二千五百一円から三千円までの方は一割より多い負担になる。これはもう丸めて取る以上はそういうことがどこかで起こる、これはやむを得ないものだと考えております。しかし、そのランク内を平均すれば、一割の定率負担になっておるということは、これは事実でございます。
  208. 下村泰

    ○下村泰君 私は、この法案に対してはもちろん賛成をする立場じゃございません。むしろやはり反対でございます。ほかの先生方は、それぞれの御専門専門的なお尋ね方をしていらっしゃいます。私は、あくまでも庶民を代表して庶民の感覚でお尋ねをいたしますので、ひとつわかりにくいようなお答えでなく、わかりやすいお答えをしていただきたいと思います。  会計検査院の方来ていらっしゃいましょうか。――来ていなければ来てからでいいです。  私は、いつも非常に素朴な感覚を持つんです。といいますのは、例えば新聞にも大きな活字でこういうのが出ていますよ。「ごまかし所得史上最悪」、「五千三百億円 病院トップ」とか、こちらも「ごまかし所得五千三百億円 税金逃れ〃常連〃開業医」とか、こういうのを見ますと、これだけお医者さんがごまかしている分をもしごまかさなければ、健康保険料なんか別に上げる必要もないんじゃないかと簡単に考えます。庶民の感覚というものはそういうものじゃないかと思うんですよ。ですから、ごまかされるから医療費が余計かかる、もしごまかさないように皆さんが本当にまじめにやってくだされば、そんなに医療費もかからないんじゃないか、こういう感覚になるんですよね。  国税庁の方は来ていらっしゃいますね。――国税庁の方にちょっとひとつお伺いしますけれども、大体どういう業種がどういうふうにやっていますか、ちょっと聞かしてください。
  209. 岡本吉司

    説明員(岡本吉司君) 今先生から御指摘のございましたものは、七月の上旬に国税庁において発表いたしました五十八年におきます申告所得税の特に事業所得を有する方々の調査をした結果の数字だろうと思っております。これに基づいてお答えいたしますと、業種別にという御指摘ございましたので、その発表の中の業種的なところだけを抜粋してお答えさせていただきたいと思います。  一件当たりの申告漏れ所得金額の上の方を十五ほど並べておりますが、その一番目に挙がってまいりますのが病院でございまして、一件当たりの申告漏れ所得が一千四百七十四万円ということでございます。以下、パチンコ業、貸金業、土地売買業、産婦人科底等々が続いてまいるわけでございます。
  210. 下村泰

    ○下村泰君 これを拝見しますと、私はあくまでも新聞の活字に頼るしかないんですけれども、順位を見ていきますと、一番が個人病院ですわね。そして五番目に産婦人科がきておるんです。六番目に小児科と泌尿器科がきています。以下まいりまして十一位に外科医がいるんですね。ほとんど各科にわたる病院が全部出てくるわけですね。  これの総額というのは大体どのくらいになるか、医業関係だけの総額というのはどのくらいになるか、国税庁の方でお調べになっていますか。
  211. 岡本吉司

    説明員(岡本吉司君) 大変恐縮でございますけれども、今発表いたしましたのは所得税関係だけの数字でございまして、ただ所得税の場合には病院が、我々のところは医療業ということで非常に広範囲なものをとっておりまして、なおかつ額という感じでは管理しておりませんので、大変恐縮ですが御勘弁いただきたいと思っております。
  212. 下村泰

    ○下村泰君 それは結構です。恐らく国税庁ではそういうのはわかるわけはないでしょうし、その内容についてはむしろ厚生省の方が御存じだろうと思います。  さて、厚生省に伺いますが、こういったいわゆる医師の所得ごまかし、こういう内容は大体どういうことなんでしょうかね、ごまかし方といいますか。
  213. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) なかなかちょっと正確にお答えする知識を持ち合わせておりませんけれども、さきに医道審議会の処分の対象にいたしたのがございますけれども、脱税でございます。それから不正請求、これが主なものであろうかと存じます。
  214. 下村泰

    ○下村泰君 私、五十五年の三月十七日の予算委員会で取り扱ったことがあるんですけれども、こういうことがあったんです。そのとき政府委員でお答えくださったのが石野清治さんですか、この方がお答えくださったんですがね。水虫の治療に行ったら脳波の検査をされたという話があるんですよ。このときに、どうして水虫の治療に行って脳波の検査をされたのかと私は聞いたんです。そうしましたら、これは「東京スポーツ」に出ていた話なんですけれども、そのときに石野さんのお答えには、「水虫は御存じのとおりカビの一種の真菌の感染によって起こるわけでございますが、いわば髄膜炎という病気がございますが、この髄膜炎の病気につきましても真菌というものによって起こることがまれにございます。これは真菌性髄膜炎といっておりますが、一般の場合にそういうことはあり得ないわけで、ごくまれな事例としてはあり得ると、こういうことでございます。」こうなんです。水虫の治療に行ったときに脳波を検査したお医者さんは、こんなことは常識だと言っているんですね。水虫の治療に行ったら脳波を検査するのは常識だと言っているんです。それが記事になっておるわけです。それで今度は私が、これは常識ですかと石野さんにお伺いしたら、「やらない方が常識だと思います。」、これはちゃんと議事録に載っております。そして、(笑声)となっております。これは当たり前ですよ、こんなことは。例えばこういうような治療の仕方をすれば、幾らでも点数というのは出てくるんじゃないか、こんな気がします。  それからこの医師は、これはもちろんたしか処分されたはずです。それから、大阪市旭区の内科医で中野恵明という、これは有名な悪徳医ですね。この方の場合は、五十四年の十一月だけで収入四千万ですね。患者が大体二百人から二百二、三十人、その患者が一件当たり平均二十万、全国平均が八千百円のときに二十万ですから約二十五倍、こういうような診療の仕方をしていた。すごいのになりますと、患者の七〇%が毎日三本ないし五本の注射をされていたとか、その患者の九七%が全部心不全だといってこういう治療をしていた、こういう事実があるんですよ。  そうしますと、先ほども申し上げました所得ごまかし、もちろんそれはごまかすぐらいですからいろいろなことをやっているんでしょうけれども、こういうお医者さんもそれ相当のことをしていると思いますが、やっぱりそういうふうに判断してよろしいでしょうかね。
  215. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 先生指摘の、社会保険の分野におきます不正というのは、今申されましたような通常の医師なら行わないのが当たり前というような治療を継続して行っているような、私ども濃厚診療と申しておるんですけれども、濃厚診療を行う例。それから水増し請求をする例、つまり注射一本しか打たないときに三本打ったというように数を水増しして請求する水増し請求。それから、架空請求と申しまして、全くやらないのにやった、あるいは死んでしまった人の請求書が出てくるというようなのが架空請求でございますが、大体私ども不正不当という形で監査をし、あるいは審査をしておる事件というのは、今申したようなものでございます。  今先生が御指摘のようなのももちろん濃厚診療、不当診療ということで監査の対象になりますし、現にお挙げになりました診療所は、私ども保険医療機関の取り消しをしております。
  216. 下村泰

    ○下村泰君 この際ですから、たまたま私がそのとき取り扱った例を申し上げますと、中にはひどい医者がいるんですよ。五十三年の七月に死亡した人を八月、九月と二カ月も面倒見ている、こういう例もあるんですね。  そうすると、こういうような、先ほど高桑先生が、薬づけだ、検査づけだなんというのはだれがつくった言葉か知らぬが、私の方から言わせれば言語道断なんということをおっしゃっていましたけれども――高桑先生今いらっしゃらないんで幸いなんですけれども、実際そういうお医者さんが多い。  例えば、私の家の女房がかつてかかっていたお医者さんがある。そこで風邪を引いた、やれちょっとぐあいが悪いといって行きます。馬に食わせるほど薬をくれる。それで料金を取る。ところが、そのお医者さんが亡くなりましてね、今度藤田先生というところに行きましたら、これが大変少なくて済んだと、こういう話がいろいろあるんです。  ですから、全部が全部のお医者さんが悪いというわけじゃないんですけれども、こういうような、例えば上がってきたいろいろなレセプトと申しますか、こういうのを審査する、これは確実なものなんでしょうか。完全に今審査ができるんでしょうか。
  217. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、支払基金における審査は、いろいろな角度からやっておるわけでございますが、やはり現在の医療というのは、診療内容を決めるのは医師の自由裁量権によって決まる、この人にどういう治療をするかというのは画一的に決まるわけではございませんで、そのお医者さんの医学知識、それから患者さんの状態、これに対応してそれぞれ違うわけでございます。したがって、それを紙の上に書いてくるのがレセプトですから、紙の上で審査をしなければならない。しかも、実際の診療の内容というのはそのお医者さんでないとわからないという面が非常にあるわけでございまして、審査をするといってもやはり限界があることは事実でございます。
  218. 下村泰

    ○下村泰君 では、この当時でございますからあれでございますけれども、支払基金の審査委員の数も十分じゃございませんというのが政府側のお答えでした。わずかに全国で三千百五十九名。それで調べなきゃならない枚数というものが四億六千七百万枚というような膨大な数が出ておりましたが、現在どういうふうになっていますか。
  219. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 現在審査委員は三千四百八十九人でございます。そして、支払基金における取扱件数は五億四千万枚ぐらいでございます。
  220. 下村泰

    ○下村泰君 しかし、それはもう大変な数で、それを審査するのに大変な手間がかかると思いますけれども、十分にできているんでしょうか。
  221. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 単純に計算をいたしますと、今の取扱件数を審査委員の数で割りますと、一件当たり七秒で審査をしなきゃならぬ、単純な計算をするとそういうことになるのでありますが、基金においては、やはり保険医療機関の傾向というようなものをある程度つかんでおりますので、この医療機関はどういう医療機関がということは大体支払基金でつかんでおりますので、重点的な審査をやっております。したがって、今の一枚七秒というのは単純な計算でございまして、全部について七秒で審査をしておるという意味じゃございませんが、重点的な審査をしております。  そして、ただいまのところ支払基金にコンピューターも入れましたし、いろいろな意味で統計の資料が利用できるという状態になっておりますので、例えば一定点数以上のレセプトを抽出しましてそれを重点的に調べるとか、そういうような審査の方法を講じておるわけでございます。
  222. 下村泰

    ○下村泰君 私が最初にお伺いした五十四年度のなにのときも、やっぱり一枚について七秒ぐらいでした。それはスピードはいまだに変わらない。  そうしますると、厚生省としては完全に審査できるという御自信はおありなんですか。
  223. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) まあ完全な審査というのがどういう意味か、いろいろな意味があると思うんですが、私は完全な審査というものはそれは担保できないというように思います。  ただ、与えられた人員と予算の中で最大限の努力をしておることは、これはまたお認め願いたいと思います。
  224. 下村泰

    ○下村泰君 それをやるには相当の頭数が要るんでしょうな。大体どのくらいの人数がいれば完全にできますか。
  225. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 本当に完全に審査をするとかあるいは医療をするというと、一人のお医者さんに一人のお医者さんがついてずっと見ておるとか、あるいはそのレセプトについて一々治療をしたお医者さんに来てもらって説明を受けるとか、いろいろなことがあるんだろうと思います。したがって、今の先生の御質問にはなかなか私もよう答えないんで、御勘弁のほどをお願いいたします。
  226. 下村泰

    ○下村泰君 まことにばかばかしいかとは思いますけれども、これが一番素直な心の質問だと思ってください。  今日、人口十万に対してお医者さんの頭数が大体百五十人というふうに目標を持って今日まで歩んできて、ほぼ達成されたと思うんですが、いかがでしょうか。
  227. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 昭和四十五年に立てました目標、今お話しのとおりの数字でございますが、これは当時、少なくともここまでという数字でございますけれども、これにつきましては既に達成されております。
  228. 下村泰

    ○下村泰君 済みません、ちょっとわからなかったんだけれども、ほとんど達しているわけですか。
  229. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 人口十万対百五十、少なくともそこまでは昭和六十年までにという目標は既に達成いたしました。
  230. 下村泰

    ○下村泰君 そこで伺いますけれども、大変地域差があるように思うんですが、いかがでしょうか。この十万人に対する目標が達成し過ぎているところもあるかと思えば、まるでほど遠いところもあるんですが、それはもちろん厚生省はつかんでいらっしやいましょうか。
  231. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 確かに御指摘のように地域差がございます。  三つの視点から申し上げたいと思いますが、一つはブロック別でございますが、これは実はそれほどございません。昭和五十七年末の数字でありますけれども、中国、四国が多うございまして、百六十四、百六十、それから近畿、九州が多うございまして百五十五・九、百五十四・八、こうなっております。北海道、東北百三十五、関東百三十四、中部が一番少なくて百二十六でございます。  一方、これを都道府県別に見ますと相当程度の差がございまして、昭和五十七年末で医師数の一番多いのが徳島でございますが、人口十万対二百となっておりまして、一番少ないのが埼玉県で八十一・四でございます。  それから、これを都市化の程度によって見てみますと、十一大都市、これが最も多うございまして二百十三・七でございます。その他の市が大体全国平均並みでございまして百四十一・五、それから町村、これが八十・四、このように地域差がございます。
  232. 下村泰

    ○下村泰君 今のお話で、埼玉が八十一、それから沖縄が九十五。私は沖縄の方が少ないと思ったんです。埼玉が八十一、しかも首都圏の周りの県で八十一、これはどうも大変少な過ぎるというような気がします。それから徳島が二百、石川が百九十九、この二県が非常に高いんですね。これはどういうところに原因があるんでしょうか。
  233. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 一番大きな理由は、人口の少ないところに医科大学があるところが多うございます。それで、無医大県が解消になりましたので、まだ卒業生が出ておらぬところもございますが、次第にならされてくるのではないかと思います。特に埼玉県の場合には、これはベッドも実は少のうございまして、東京へかかりにくるとか、そういういろんな事情があろうかと存じます。
  234. 下村泰

    ○下村泰君 こういう表を拝見しますと、それぞれにこういうふうな数が出でおりまするけれども、僻地の方へ参りますとまだまだお医者さんがいなくて困っていらっしゃる。しかも日本という国でありながら日本のお医者さんが行くのではなくて、よその国からお手伝いを受けているというふうな現状があります。  これは今後どういうふうになさいますか、大臣
  235. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今御心配いただいておる点、私も考えているんですが、私のところも何か僻地が多うございまして、今先生指摘のようによその国から、この前も私行ってまいりましたら、やっとお医者さんが見つかったと、よかったなと言ったら、よその国からお手伝いいただいている、そういうのが非常に多いのであります。  やはり勉強したいという、そういう意欲で、都会あるいは大学のあるところから余り遠いところに行きたくないとか、いろんな理由があると思いますが、ようやくお医者さんの数もふえてきましたので、これからは地方にも行っていただけるお医者さんがどんどん出てくるであろうということで、私どもは今度医療法の改正もお願いしておりますけれども、全国的に、日本列島全体に適正な医療機関と医師の配置というものに努力をしてまいりますし、また、それができるような条件に今なりつつあるということも御承知願いたいと思います。
  236. 下村泰

    ○下村泰君 簡単に考えますと、そういうことも完全でないのに、この今度の給付率の問題を簡単にこちらも受け入れる気持ちにはなれないと、こんなふうになりますね。  それから、「医療施設問のネットワーク化(診療所―一般病院―高度・特殊病院)を推進する。」というふうな説明になっておりますけれども、これは作文でなくて実際にそれ可能でしょうかね。そこのところが問題ですけれども
  237. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) もとより可能であると考えておるところでございます。現に一部の地域でそういうことが始まっておりまして、高額の医療機械の共同利用等が、例えば国立病院中心にしたり、あるいは医師会立病院中心にしたり、始まっております。これからの医療を考えますと、やはり機能分担を図ることがぜひとも必要であると考えておりまして、強力な推進を行う所存でございます。
  238. 下村泰

    ○下村泰君 ここでちょっと変えまして、会計検査院の方来ていらっしゃいますか。――まだ来ないの。  医療保険の給付率八割程度で、昭和六十年代後半に統一すると書かれているんですけれども厚生大臣は御存じかどうかわかりませんが、自民党と医師会の間の話し合いで、国会終了直後に時期を示すと言っているようなんですが、この点は大臣御存じでございましょうか。
  239. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) お聞きしております。
  240. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますと、現行のこの国庫から患者保険料のこの負担割合を維持するとすればですね、医療費低下でもなければ給付率を引き上げることは困難であると思うんです。一体だれの負担で給付率引き上げを図ろうとするのか。この三者ございますね、どこが一体やるのか、その辺が一向に明らかになっていないんですけれども、そこのところはいかがでしょうか。
  241. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 自民党と医師会との話は、そういう話があったということは承知をしております。  ただ、私どもは、医療保険の一元化につきましては、六十五年度以降というようにビジョンの中にも掲げておるわけでございまして、今先生指摘のように、国保を八割に引き上げると、これは相当大きな財源を要するわけでございまして、結局八割に引き上げる財源というと、保険料で賄うか国庫負担で賄うか、あるいは他の医療保険制度との財政調整というようなことで、よその拠出金みたいなもので賄うか、この三つしかないわけでございます。したがって、その辺について、現在私ども見通しを立てることができないわけでありまして、今後の医療費の推移あるいは財政の状況、それから今回創設をいたします退職者医療制度の実施後の実績なり影響なりをいろいろこう見ながらこれは判断をしていきたいと、こういうことで、少なくとも六十五年度以降に目標を置かざるを得なかったと、こういうことでございます。    〔委員長退席、理事佐々木満君着席〕
  242. 下村泰

    ○下村泰君 例えば国保の七割から八割、それから健保が今までずっと一割払っていたのが、済みませんけれどもあなたもう一割負担してくださいと、こっちが二割になって一割損して、こっちが一割得すると、こういうことになれば、これはそれこそ大岡名裁きの三万一両損と、こういうことになるんですよ。ところが、今回のはそうじゃないわけですね。そこに問題があると思うんです。  今局長のおっしゃったように、六十五年までにはそういうことを達成してそのころから落ちつくであろうとおっしゃるんですが、そのころになってなおかつおかしくなった場合に、保険料は引き上げない、国の方はお出しになりません、そうなりますとまた給付率を切り下げと、順序よくいけばこういうことになっちゃうんですがね。やっぱりそういうことしかありませんか。
  243. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 何もしなければそういうことになるわけでありますが、そういうことがあってはいけないわけでありまして、私ども、国保について給付率をさらに下げるとか、あるいは被用者保険の八割の目標をさらに切り込むとか、そういうことは考えていないわけでありまして、いろいろな方法をとって、あるいはいろいろな措置を講ずることによって、目標の達成をしたい。ただ、現時点においてはその時期というものについての自信が持ち得ないと、こういうように御理解を賜りたいと思います。
  244. 下村泰

    ○下村泰君 会計検査院来ましたか。――会計検査院が来てくれないと、この話をせぬことには後がつながらないんでね。――それでは、私の話はここでとめます。
  245. 佐々木満

    ○理事(佐々木満君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  246. 佐々木満

    ○理事(佐々木満君) それでは速記を始めてください。
  247. 和田静夫

    ○和田静夫君 まず、船員保険について若干伺いますが、船員保険収支のこの赤字の最大の原因は短期反復雇用にあるわけでありますが、この短期反復雇用についてはっきりした方針を持たない限り、船員保険の構造的赤字は解消できないというのがこの間からの論議の帰趨だと私は思うんですよ。どういうふうに受けとめられますか。
  248. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 船員保険の、特に失業部門におきましては、短期反復雇用者ということでありましても、船員法において船員とされる者は被保険者として適用をしておるわけでございます。    〔理事佐々木満君退席、理事遠藤政夫君着    席〕したがって、御指摘のとおり、こういった短期反復雇用者、これに対する失業保険金の額が非常に多いということになれば、なかなか船員保険の失業部門の財政安定というのは期しがたいということになるわけでございます。私どもといたしましても、やはり財政安定という見地から考えまして、できるだけ船員雇用の安定というものを望んでおるわけであります。むしろ船員雇用の安定というものが不可欠であると考えておるわけでございます。  しかしながら、実際のところ、厚生省といたしましては、船員雇用政策という点に関しましては直接の権限がございませんので、雇用対策推進の問題につきましては、関係の省庁と十分協議をしながら施策を進めていただくように期待をいたしながら、なお私どもの方でも、できるだけ適正な運営をするように心がけていく必要があろうかと存じております。
  249. 和田静夫

    ○和田静夫君 質問時間が早まったから、答弁者が来ていないので――。
  250. 遠藤政夫

    ○理事(遠藤政夫君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  251. 遠藤政夫

    ○理事(遠藤政夫君) 速記を起こして。
  252. 和田静夫

    ○和田静夫君 それじゃ飛びますが、厚生大臣、この前問題にしました基本方向、いわゆる長期ビジョンですが、これを的確に実行していくと、私は国民医療費の伸び率を抑え込んでいくことができると見るわけです。逆に言えば、国民所得の伸び率程度には国民医療費を抑え込みたい。それは世界的なあれでもあるわけですが、そういう趣旨でいわゆる長期ビジョンをおつくりになったわけですから、長期ビジョンが実現ができるとすれば、国民医療費の伸びを国民所得の伸び率程度にとどめることが可能だと、こういうことになるわけですね。それはいいですね。
  253. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) そのとおりでございます。
  254. 和田静夫

    ○和田静夫君 そこで、十七日の委員会で要求をしました傷病別医療費の削減目標額が一定の前提のもとにはじき出されている、その結果をお示し願いたいわけであります。  まず、がん。胃がん、子宮がんの早期発見に努めることによって十年後の医療費は幾ら削減されるだろうか。次に、脳卒中。脳卒中の半減によって幾ら削減できるだろうか。そして、トータルでの削減額は幾らですか。
  255. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 医療費の推計につきましては、非常に難しい推計を命じられまして困惑をしたのでありますが、いろいろ仮定を置きまして計算をいたしました。  そこで、胃がんの死亡率三割減、こういう目標を立てておりますが、それによる医療費の減少額は五百四十億円というように推算をしております。また、子宮がんにつきましても死亡率三割減と、こういうことで目標を立てておりますので、それに伴います減少額は九十億円、合わせて六百三十億円の医療費減少額になるのではないか、こういうことでございます。なお、この金額は五十六年価格で計算をしております。それから、脳卒中につきましては、半減をするという計画を立てておりますが、この脳卒中の半減に伴います医療費の減は四千五百二十三億、こういうように推計をいたしております。
  256. 和田静夫

    ○和田静夫君 私は、胃がん、子宮がん及び脳卒中以外に、肺がん及び胃潰瘍その他の消化器系疾思などについても削減目標を設定をして、国民医療費の減額分というものを出すべきだろうと思うんです。  厚生大臣、ずっと先日来眺めていまして、あなたと保険局長大変たばこをお吸いになるわけですね。しょっちゅうもう手から離れたことがない、今偶然離れていますがね。たばこと肺がんの因果関係はこれはほぼ立証されているわけであるが、いわゆる喫煙の抑制は肺がんの発生率を低下させる。少なくとも蓋然性はあるわけだろうと思うんですね。したがって、きょうここでとは言いませんが、肺がんについても、胃潰瘍その他の消化器系疾患についても、削減目標を設定をして、そして出されるべきだろうと思うんですが、大臣いかがでしょう。
  257. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 非常にこれは技術的に困難なことだと思いますが、考え方としてはそういう問題もこれから推計していかなければならないと思いますが、これはあくまで仮定のことであり、それを何年後というもので推計するというのは、非常に技術的に困難なことだと思います。
  258. 和田静夫

    ○和田静夫君 大変苦労をされて資料をおつくりになって出されてきたんで、今述べた問題についても、私は苦労をされれば出ない筋合いのものではないだろうというふうに考えているんです。  そこで、出てきたところの胃がん、子宮がん、脳卒中だけで、先ほど言われた五十六年度価格において国民医療費を二%削減ですね。こういう形になっているわけですね。これが二%削減できるということであるのならば、私は、今指摘した傷病等を加えて概算的に考えてみると、もっと削減することができるということになろうという、そういう意味だろうと考えているんですがね、これは局長、それでいいわけですね。
  259. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 確かに二%減になるわけでありますが、それは十年後に二%ということですから、これから十年先まで同じように減っていくとすれば、年率では〇・二%程度の縮減効果を持つと、こういうことになろうかと思います。
  260. 和田静夫

    ○和田静夫君 傷病別の医療費削減目標について、これは私の求めたものとはかなり違いますが、一応の目標値が提出されました。いわゆる長期ビジョンが実現されるといいますか、国民健康づくりと、あるいは効率のよい医療供給体制が確立されるのであれば、もっと私はドラスチックに医療費を削り込むことができると考えているわけです。今提出をされましたデータに基づいて国民医療費が削減可能であると、あるいは伸び率が抑制されることが立証されています。それは何年後であるかは一定の前提を置いて。  そういう意味で、私は大臣、やっぱり国民医療費の抑制は可能なんだということをまず再確認を求めておきたいんですがね。
  261. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは先生、私もこの前の先生の御質問をいただいてから、大変大きな問題で、あれこれと考えておるわけですが、これは私ども今後健康増進の努力をたゆみなく続けて、そして国民医療費の削減の努力をしていかなければならないことは当然のことであります。  それなら将来医療費が、がんがなくなることによってもうなくなっちゃうのかというと、過去のことを振り返ってみると、昭和二十年代我々を苦しめた病気は、ほとんど伝染病と結核だったわけです。ですから、恐らくその当時、結核がなくなれば、伝染病がなくなれば、もう病気の問題は本当に少なくなるという感じを持ったと思います。ところが、結核もなくなりはしませんけれども極めて少なくなってまいりましたし、伝染病も本当に少ない状態になってきておりますが、ところが現実は、また次から次に新しい病気が出てまいりますし、医療費というようなものになりますと、医学が進歩して医術が進歩していけばいくほど、かつては考えられないような高額な医療を、療養を必要とするようなものがどんどんできてくる。これからも先端医療というものがどんどん進んでいくということでありますから、私どもは、健康を守るための医療費の縮減というものは、国民の健康をあずかる私どもとして、いわば無限の可能性に向かって挑戦していくというような気持ちで、年々できる限りのたゆまざる努力を続けていかなければなりませんが、それならそれによって二十年後に医療費が要らなくなるような状態が来るかということになると、この予測というものは極めて困難なことだと思うんです。
  262. 和田静夫

    ○和田静夫君 ちょっと、先日私も取り上げましたし、きょう午前中からもずっとありました高額療養費の問題について、一問だけここに入れておきたいんですが、答弁ずっと聞いていました。それで私は具体的に、この長期療養者について高額療養費の算定基準を疾病単位に考えることをこの間も申し上げました。つまり、五万一千円に達した患者を同じ病が続くのであれば翌月から自己負担がゼロになるということ、それに対して、きょうも一貫してレセプトの問題が局長からの答弁、そのシステムがネックになっているという答弁が終始しているわけです。  私は、それじゃ領収書とレセプトの併用を考えてみたらどうだろうというようなこともさっきちょっと思いましたし、やる気があれば技術的に可能だとやっぱり私は思うんですよ。つまり、例えば無利子の融資制度を新設して、そして年度ごとに還付するというシステムを考えられませんか。そういうことを考えてみることが必要でしょう。それが事務的負担を強いると言うなら、最初の月に、けさほど来も論議がありました領収書を発行する、そしてその翌月窓口の支払いのときにそれを提示すれば病院側はレセプトにそのことを明記する、そして支払基金に回すというようなことも一つの手法だと思うんで、ここは工夫次第でやっぱりできるんだと思うんですが、局長、いかがですか。
  263. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 確かに不可能なことというのは世の中にないことはそうだと思うんです。ただ、この問題はレセプトを中心にして動くものでありますので、医療機関と支払基金と保険者、それぞれにかかわる問題でございます。したがって、例えば三十日を単位とする高額療養費というものを考えましたならば、現在のような暦月のレセプトを足して二カ月で一万円のレセプトにするとか、あるいは領収書につきましても一定の様式というようなものを考えた領収書で処理をしなきゃならぬというような問題も生ずるでありましょうし、また、これは社会保険庁の事務処理体制の問題でございますが、やはり事務がふえれば定員もふやさにゃいかぬ、こういうような問題も生ずるわけでございまして、その辺を全体的に考えて知恵を出していかなければならない、こういうように考えております。
  264. 和田静夫

    ○和田静夫君 技術的に工夫して、例えば長期療養者について、月を超えた患者に頭打ち制度を設けるというようなことも私は実現可能な提言だと考えていますので、その辺も考えていただきたいし、家族単位の高額療養費ということも同様に工夫すれば可能だと、そういうふうに思っていますので、論議があったところですから意見を述べておきます。  そこで、国民医療費の問題に入りますが、まず薬剤費についてでありますが、五十五年度以降の薬剤費の平均伸び率は何%ですか。
  265. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 五十五年度から五十七年度までで推計をいたしますと、この間に大きな薬価基準の引き下げをいたしました関係上、薬剤費の平均伸び率は一・七%ということになっております。
  266. 和田静夫

    ○和田静夫君 薬剤費は現にかなり大幅に引き下げられてきたわけですが、薬価についてはなお引き下げの余地があるというふうに見ておいてよいですか。
  267. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 今後の問題としてだと思いますが、私は引き下げる余地はあると思います。
  268. 和田静夫

    ○和田静夫君 厚生大臣、私は十七日の委員会において試算を提出して、それに対するコメントを求めまして、その結果いろいろ資料が出てきたんですが、その際、大臣は私の指摘に反論されて、負担の公平、給付の公平という見地から今回の改正案を提案されたんだという趣旨の御答弁がありました。それは私の指摘への反論には残念ながらならないのでありまして、まず第一に、この負担の公平、給付の公平と言うのなら、本人給付の引き下げに見合った形で家族及び国民健保の給付率を引き上げ内容を含んだ改正案でなければならぬわけであります。ところが、今回の改正案と称するものは、本人給付の引き下げはありますけれども、他の給付についての引き上げ条項というのは、これはどこにも見当たらないわけでありまして、厚生省はいつ給付率をそろえるのか、これは時期を明らかにすることが迫られていると私は思うんです。  第二に、ここが私の言いたい肝心なところなんですが、厚生省は将来八割に給付の線にそろえると言っているわけですが、八割という数字の根拠が薄弱であります。きょうの論点は、私は資料をはじき出しまして配りましたとおり、そこに焦点を置いて若干の論議をしたいので急いできたんですが、私も負担の公平、給付の公平に反対するものでないことは、これは大臣に確認しておいてもらいたいのであります。しかし、私は、八割の線での統合に疑問を呈しているわけです。九割以上の線でそろえることも可能だと言っているわけであります。そうであるならば、本人十割給付を当面維持しつつ、その他を九割に近づける、その段階で、九割にそろえるのか、あるいはもう一踏ん張りして九・五とするのか、あるいは十割にするのかという検討をすればよいわけでありまして、私は別に負担と給付を公平にすることには何ら異議を唱えない。問題は八割の線での統合に異議を唱えているわけです。  大臣政府案は、初めに給付率引き下げありきでありまして、その後は何ら保障の限りではないというのが政府案なんです。そしてさらに、八割統合論の根拠は薄弱という欠陥提案であると私は思うんですが、ここは答弁をもらいません。  さらに続けますが、そこで事務当局から昨日私のところに資料が出ました。この資料はなかなか興味深いのでありまして、もう非常にぎりぎりに出てきましたから十分に勉強する余地がありませんから次回までなおやりますが、例えばこの昭和六十年度の場合ですが、国庫負担は五十九年度に比べて一千億円の減です。二兆四千五百億円から二兆三千五百億円なんです。これはおたくから出てきた資料です。あるいは保険料負担は五十九年度が八兆一千三百億円、六十年度が八兆七千五百億円、六十一年度が八兆八千五百億円、こういうふうになっている。にわかに理解しがたいことは、この六十一年と六十年の保険料の差額が一千億円にしかならないことであります。対前年比で一・一%しか伸びていないのであります。これは国民所得ないし雇用者所得が六・五%伸びているのに保険料率が一・一%しか伸びないということは、保険料率を引き下げるということをこれは意味していますね。
  269. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) まず、五十九年度と六十年度の数字の差でございますが、五十九年度は私ども対策をするのでありますが、これを七月実施と、こういうことで組んでおりますので、財政効果といたしましては満年度の三分の二の効果しかない、こういうことになっております。したがって、それが六十年度になりますと満年度に引き延ばされると、こういうことでございますので、国庫負担につきましては国保の国庫補助率を下げるわけでございまして、それが満年度に広がるということで下がるわけでございます。  それから保険料につきましては、これは退職者医療制度に対する拠出が、これも満年度に広がるわけでありますので、ふえ方が多い。それから六十年度から六十一年度にかけましては、これは満年度で八割給付それから――失礼しました、六十一年度も満年度で計算をいたしておるわけでございます。  そこで、五十九年度、六十年度、六十一年度という数字は、五十九年度だけがいささか特異な姿を示しておることはひとつ御理解を賜りたいと思います。
  270. 和田静夫

    ○和田静夫君 保険料率は。
  271. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 五十九年度、六十年度、六十一年度、保険料率は上がらない計算になっております。
  272. 和田静夫

    ○和田静夫君 患者負担の方は、五十九年度が一兆五千七百億でしょう。それから六十年度が一兆七千四百億、六十一年度が二兆千二百億となっていますね。それで対前年比で見ますと、六十年度が一〇・八%、六十一年度が二一・八%、この間は急速に増加する。つまりドラスチックな負担増が国民の上に覆いかぶさってくるということになっていますね。  そこで、この資料をもとにして、私は保険料が国民所得並みに伸びていくと見るならばどうなるのかというのを目の子計算をやってみたわけです、もう時間がありませんから。目の子で計算しますと、六十一年度の保険料が前年並みに伸ばして七・五%上昇すると考えてみます、その後は六・五%で伸ばしていくと考えますと、その増額分を患者負担に入れるとどうなるかということを計算してみたんですよ。これはつまり六十一年度以降も本人一割負担のままで保険料をいじらずに推移させるということであります。そうすると患者負担は、六十一年度が一兆五千六百億、六十二年度が一兆六千五百億、六十三年度が一兆七千六百億、六十四年度が一兆八千六百億、六十五年度が一兆九千五百億となって、平均的給付率は、六十一年度が八九・三、六十二年度が八九・四、六十三年度が八九・四、六十四年度が八九・五、六十五年度が八九・六となりますよ。現行の給付率水準よりも高い水準を確保するということがちゃんと出てきます。これはおたくの数字です。  厚生省は、八五%の平均給付率で八割統合論を打ち出したわけでしょう。ところが、私はおたくのそれをもとにしながら忠実に計算をしますと、保険料収入を維持していけば八九%に引き上げることは可能になるわけですね、可能になる。おたくのデータをもとにして出したこの数字から私は算出をした。したがって、あなたの言う八割統合論の根拠はまさに薄弱であるし破綻をしていますよ。あなたの数字で破綻をしている。九割統合論の可能性を示す。私はこういうことになると思うんですが、どうですかね。
  273. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) これは、先ほど配付していただいた資料の数字とはちょっと違うわけでございまして――
  274. 和田静夫

    ○和田静夫君 まだそこまで入っていません。それは私の試論ですから。
  275. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私、今先生がおっしゃられた数字が少し理解しかねたのでありますが、五十九年度から六十年度までは保険料率を上げるんでございましょうか、上げないんでございましょうか。  私どもは、保険料の額は、国民所得が伸びるものですから率は変えなくても額は上がっていく、こういうことで、料率の方は上げない計算をしておるつもりでございます。
  276. 和田静夫

    ○和田静夫君 いや、私は保険料が国民所得並みに伸びていくというふうに見て申し上げているんですよ。  何ならちょっと照合しましょうか、おたくの数字でこれを私はじいたんだから。
  277. 遠藤政夫

    ○理事(遠藤政夫君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  278. 遠藤政夫

    ○理事(遠藤政夫君) 速記を起こして。
  279. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 確かに和田先生指摘のように、六十年度から六十一年度の保険料の伸び率を六・五でなしに七・五%という伸び率でふやして、さらにそれ以降六・五という数字を使えば、先生おっしゃるようなことになるようでございます。ただ、私どもとしては、その六十年から六十一年度の保険料の伸び率が七・五というところが少し疑問を持ちますので、なお次回まで検討をさしていただきたいと、こう思います。
  280. 和田静夫

    ○和田静夫君 そこで、それを前提にしまして、今のところはまああれとして、私の試算をお手元に届けました。  十七日の委員会で私は薬剤費の伸び率を物価上昇率程度に抑え込む場合の国民医療費を示したわけです。その推算に若干手を加えまして、さらに負担区分を推計した。薬剤費を物価上昇率程度、三%に抑える、そしてその他の医療費を七・五%の上昇率と置いてみる。七・五%という数字は、これは何遮も申し上げているのですが、「一九八〇年代経済社会の展望と指針」で想定されている国民所得の伸び率六・五%に高齢化率一%という数字を加えた数字です。これはもうおたくでもお使いになっているんですし、ここのところが違うと言われると、これは大臣政府の統一見解を求めるというようなことになるわけでございまして、非常にここのところは苦悩するので、そこのところは次回まで検討を願えればいいのですが、ちなみに厚生省試算のケースーですね、これは総医療費の伸び率を六・五%と見ておられる。私の試算は、厚生省の想定よりも余裕を見た試算なんですよ、これは。ということになるでしょう。そうしますと、国民医療費計算しました。だからここに書いてありますように、八四年が十五兆二百億円、八五年が十五兆九千六百億円、八六年が十六兆九千六百億、そして九〇年度が二十一兆七千百、この間の対前年上昇率は三・五%から六・四%であります。この伸び率は国民所得の伸び率以下なんですよ。この試算の前提は、今年度に薬価引き下げと医療費適正化のみを行って、そして本人は十割、その他の制度改悪には手をつけないということです。したがって、八四年度の国民医療費は十五兆二百億円であって、厚生省の十四兆八千八百億円よりも高い。  一方、こうして算出された国民医療費を負担区分に分解してみたのがお手元の資料の「収入欄」ですね。「公費負担」と「保険者等負担」は過去の傾向に従って伸ばしていったわけですけれども、「患者負担」は国民医療費と公費負担プラス保険者等負担との差額で求めました。そうしますと、患者負担は八四年度には一兆五千七百億円あったものが九〇年度には八千五百億円になります。逓減をしていくことができます。  マクロの水準での給付率はどうかと見てみますと、私の試算では急速に上昇します。八四年度八七・八%、八五年度八九・三%、八六年度九〇・七%、そして九〇年度には九五・四%に上昇いたします。さらにこの間の公的支出は七・三%から七・一%の伸びを示しております、現在の歳出構造をそのまま維持すると。トータルな公的支出における医療費関係支出の構成比を現行水準に維持しさえすれば、そうすれば税収弾性値一・一から一・一二で無理なく支出できるということになる。特段の財政負担を考える必要はないということに私の試論はなる。  結論から言えば、薬剤費の伸び率を物価上昇率程度に抑え込むことができるのならば、たとえその他の医療費が国民所得の上昇率を超えて伸びたとしても患者負担を削減することができる。そしてマクロの給付率を九五・四%まで上昇させることができる。そしてそのために特段の財政負担を必要としない。マクロの給付率を九五・四%に持っていけるということは、本人十割、家族、国保九割が可能だということであります。あるいは九割の線で負担率を統合することが可能だということを私の試論は示しています。    〔理事遠藤政夫君退席、委員長着席〕  さらに言えば、厚生省試算のケースーのように医療費を六・五%に抑え込むとしましょう。そうすると、いわゆる長期ビジョンで述べられていることが実現できるなら、薬剤費を除く医療費を六・五%の伸びに抑えることも可能であるでしょう。とするならば、すべての給付率を十割にそろえることもできるという展望を、これまた特段の財政負担を考慮することなく描くことができると私は思うんですよ。あるいは財政的におつりが出てくることも期待をできます。  厚生大臣、もはや八割統合論の理論的破綻というのはこれで明らかなんですね。もう固執される必要は私はないと思うんですね。したがって私は、ここでやはり国民医療費の推計に基づく負担区分を出していただかなきゃならぬ。これはずっとやってまいりまして、念のために申し上げますけれども、担当者の人たち非常な努力をされました。昨日私はずっとおたくと打ち合わせをやりました。徹夜でもって仕事もしてもらいました。したがって私は、責任をどこどこ、だれだれにあるというような追及をするのではなくて、本当のいい意味での健保制度をつくるために求めている資料をなお次回、私は時間を残しますから、次回までに出していただく、そして突き合わせながら、今私は一定の試算を申し上げました、これは午前中に届けてありますからここで反論を加えられることができると思うんですが、後段の部分の資料はおたくの方でなお作業中でございますから、それを照合しまして、次回に論議をいたしたいと思います。よって、私は、問題提起をしておきます。
  281. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 御要求の資料は、四十八年度から五十七年度あるいは五十八年度までの国民医療費の構成についての資料でございますね。これは用意をいたしまして、準備をさしていただきます。  それから、今先生がお配りになりました資料についてこれも検討をさしていただきますが、私どものただいまの感触では、薬剤費の伸びを三%に抑え、かつ薬剤費を除く医療費の部分を七・五%に抑える、こういうことが本当に可能かどうか、ここが一つ問題であろうと思います。  と申しますのが、私ども、例えば五十四年から五十七年をとってみますと、薬剤費のところが六・九%、薬剤費を除く部分が九・五%ぐらいの伸び方をしております。それから、仮に五十五年から五十七年をとってみますと、薬剤費のところが一・七%で、その他薬剤費を除く部分が一一%になっております。それから、五十四年度から五十八年度をとってみますと、薬剤費のところが五・〇%で、薬剤費を除く部分のところが八・七%、薬価基準をどれぐらい下げるかということによって薬剤費の伸び率のところがいろいろ数値が変わってくる。そして、そこが変われば薬剤費以外のところも変わってくるわけでございまして、そして全体的に国民医療費の伸びも変わってくるというのが過去の数値でございます。したがって、これを私ども六・五%の国民所得の伸びの範囲内に抑えようとしておるわけでございますが、これはなかなか容易なことではない、こういう覚悟をいたしまして、私どもとしては給付率の引き下げも含めまして総合的に手を打ては何とかなるのではないか、何とか六・五%を維持できるのではないかということで今回の提案をしてみたわけでありまして、そこのところは少し違ってくるかなと、こういう感じがいたします。  それからもう一つ、第二番属の「収入」のところでございますが、私ども、ちょっと試算をしてみますと、やはり保険料の伸び率がかなり高い伸び率になっているのではないか。そして、国庫の支出もこの数字だけで私ども拾ってみますと、両方七・八%ぐらいの伸び率になっておるようでございます、年率の伸び率が。そうしますと、やはり保険料の伸び、国庫負担の伸びというものが国民所得の伸びよりも高い率で伸びる、こういう前提に、前提か結果かわかりませんが、そういうことになっておるのではないかというような感じがするわけでございます。  そこで、結論を申し上げるのにはまだ早いわけでありまして、そういう今見ました感じを申し上げまして、なお深く検討をさしていただきたいと、こう思います。
  282. 石本茂

    委員長石本茂君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十分散会      ―――――・―――――