○大浜
方栄君 私は、以上十三点についていろいろ御答弁をいただきましたけれども、最後に診療の実態とこれに対する
厚生行政の対応について私の意見を申し述べたいと、こう思います。
先ほどの
質問で私が申し上げました一件当たりの点数の伸びは、
社会保険全体の平均値でありますが、政管健保については、
厚生省統計情報部が毎年公表している社会
医療診療行為別調査報告によって疾病分類別に
診療内容を知ることができるようになっております。
それで、恐縮ですけれども、これは大事なことでございますので少し時間をかけて御
説明を申し上げたいとこう思うわけでございますが、お配りをいたしました第一表及び第二表の資料をごらん願いたいわけでございますけれども、この調査によると、
昭和五十三年から五十七年までの間に
外来一件当たりの点数が特に大きく増加しているもの、二枚目のつづりの第二表でございます。おおむね三〇%以上増加しているものは五つの疾患群であって、この疾患に該当する診療件数は総件数のわずか六%にすぎません。この第二表の向かって右の方をごらん願いたいわけです。これは第二表の上にありますように、新生物、内分泌・栄養・代謝障害、血液・造血器の疾患、精神障害、妊娠・分娩・産褥の合併症などでございます。
また、一件当たり点数の伸びが総平均の九・一%よりも低い疾患群は八つございます。第二表の下の方でございますけれども、これに該当する件数は全体の五〇%でございます。すなわち、平均値よりも低い疾患群が五〇%も占めていることでございます。このように
外来分の一件当たりの点数はこの四年間で平均では九・一%になっております、第二表に書いてありますとおり。これを疾患別に見ると、その増加率は極めて大きい差がございます。疾患別に見て差の低いものも差の大きいのもあるわけでございます。先天異常とか、泌尿・生殖系の疾患は逆に低くなっております。私は、この事実に注目願いたいのであります。すなわち、医師は
患者の病気を一日でも早く治すために献身的な努力を払っているものであって、医学、薬学の成果を積極的に日常診療に取り入れているということがこの表からあらわれているのではなかろうかと、こう思います。
次に、この社会
医療調査の
昭和五十七年度分によって一件当たり点数の診療行為別の内訳を比較してみたのでありますが、これはお配りした資料の第三表、二枚目の下の方でございますけれども、「投薬が多いもの」、「注射が多いもの」、「検査が多いもの」と三つに分類をしてみました。それぞれ全疾患の平均の一件当たり点数の中に占める割合、すなわち平均値よりも高くなっている疾患を示しております。
投薬料点数の割合が平均よりも高い疾患は、表にあるとおり新生物、精神障害、循環系の疾患、呼吸系の疾患、皮膚・皮下組織の疾患でございます。新生物、すなわちがん等の腫瘍疾患でございますけれども、これはどうして多いかというと、最近の抗がん剤、制がん剤の開発を反映しているものでございますから、これがふえるのは当然のことであると十分御理解をいただけるのではないかと思います。また、二番目にある精神障害、さらに循環系の疾患等は、心臓疾患あるいは高血圧等でございまして、これはもう皆様御存じのとおり、薬物療法あるいは生活指導を主にするから薬剤投与が多くなるのはこれもまた当然でございます。呼吸器疾患についても、普通風邪風邪と言いますけれども、急性気管支炎などの基礎的な疾患がある場合や、細菌感染が強い場合には、あらかじめ抗生物質を特に老人の場合には与えるのが医学の常識でありますから、これがふえるのもまた私は当然のことであると、こういうぐあいに思っております。
次に、注射が平均よりも多くなる疾病でございますけれども、真ん中の欄に書いてありますが、新生物、血液・造血器の疾患、消化系の疾患、筋・骨格系・結合組織の疾患となっておりますけれども、これも新生物、がん等に対して注射が多くなるのは、先ほど申し上げたのと同じ
理由でございます。それから、血液・造血器の疾患は貧血を主としますけれども、この貧血に対しても薬物よりは注射の方が効率がよい、だから注射が多くなっている、こう言えます。それから四番目の筋・骨格系・結合組織の疾患も、これは御存じのとおり慢性関節リューマチとか、あるいは腰痛等がございまして、これに対しては局所注射が最も有効であるから注射が多くなる。また三番目の消化系の疾患についても、十二指腸潰瘍、胃潰瘍等は以前は手術療法のみで主に治療され、薬物療法ももちろんございましたけれども、最近は胃潰瘍、十二指腸潰瘍等も注射で治るケースも多くなったから、当然この注射が多くなってしかるべきものでございます。
また、検査に関してでございますけれども、私は、検査づけ検査づけと、こう言うことに対して申し上げたい。検査というものは、疾病の診断に当たって目であり、耳であり、口でございます。この検査なくしては疾病の早期診断はできないのでございますから、誤解を恐れずに言わせてもらうならば、検査は、医学的な論理に従ってやるならば、やってやり過ぎるということはないのじゃないか。もちろん日本が今日の世界に誇る医学のレベルを持つようになったのは、そういう検査を
十分日常診療に取り入れるだけの学問的なレベルと経済的なレベルがあったからではなかろうか。その他の要素ももちろんございますけれども。
それで、私は一つの例を申し上げますと、CTスキャナーができる以前には、腰椎穿刺、脊髄穿刺がございました。これは脳溢血、それから蜘蛛膜下出血、その他脳外傷等の鑑別に当たっては非常に大事な診断方法でございまして、以前は脊髄に針を刺して、それで血液が入っているかどうかで鑑別した。しかしながらこれは非常に時間がかかる、苦痛を与える、あるいはまた細菌感染のおそれがある、また、診断に時間も要するし、多くの人々が命を捨てたわけでございますけれども、現在では、CTができたおかげで十分ぐらいで的確な鑑別診断ができる。脊髄穿刺は七十点七百円でございました。CT検査は二万一千円でございます。二千百点ですね。二万一千円ぐらいで人間の命がこんなに救われるならば――いいですか、皆さん、みんなが病気になったと思ってくださいよ。
医療の質が上がると、今申し上げたように
医療費が上がるのは当然であると、私はこう思っております。
それで、この検査の今申し上げた新生物についてもっと申し上げたいわけでございますけれども、鑑別診断、治療効果の測定、判定に当たりましても、また投与医薬剤の副作用の判定などでも検査が必要でございます。
高桑先生もいらっしゃいますから、医学部長なさっておられたんだから、私の意見に反対であればまた反対意見をお聞きしたいと思います。それから二番目の内分泌・栄養代射障害等でございますけれども、これは先生方御存じのとおり、糖尿病とか甲状線の疾患でございまして、これも検査が必要でございます。検査なくしてはこの治療はできない。それで、投与量を適切に決定するためにも検査が必要である。薬をやるたびごとに検査が必要であると言っても過言ではないぐらい検査の必要性が強いわけでございます。それから血液疾患の大
部分は同じように貧血が主でございまして、貧血の原因はいろんな病気がございますから、その原因疾患を究明するためにも検査が必要である、こういうわけでございます。
以上のように、一件当たり点数を疾患別にその
内容を観察いたしますと、それぞれ疾患によって
診療内容の構造に特徴があるわけでございますから、この点を御理解いただきたいわけでございます。すなわち、疾患の種類ごとに
診療内容に明確な差が見られるということは、それぞれ医学、薬学の水準の向上を積極的に取り入れて
患者の早期治癒に努力している。検査が少ないのは、変な言い方ですけれども、
医療のレベルが低いんですよね。私はこう言っても過言ではないと思います。投薬や検査の点数の割合が大きくなったことを取り上げて、あたかも
医療担当者が営利的に
診療内容を操作しているように言われておりますけれども、これはまことに遺憾なことであります。特に行政の
責任者である
厚生省までが、時としてこのような薬づけ、検査づけをPRするようなことは慎んでもらいたい、私はそう思います。
医療は
国民と医師との信頼関係の上に成り立つわけでございます。そうでないと成果を上げることができない。それを逆に、
患者と医師との対立関係をあふるようなやり方をするべきではない。
第二次臨調は民間の活力を生かすことをうたっております。日本の
医療の八五%は民間
医療機関で占めております。私的
医療機関です。特に歯科のごときは九八%でございますから、私は、民間
医療機関の活力を生かすことが臨調の基本精神にのっとることである。このためには、民間
医療機関の経営基盤の安定を図る。人間はホモエコノミックスでございます。まして、
医療機関の経営の安定なくしては十分な
医療供給はできないわけでございますから、私は、それとともに医師と
患者の信頼関係を阻害しないような
医療制度の確立こそが
厚生行政の基本
政策である、こう思っております。
最後に一言だけ申し上げておきますけれども、医師の喜びは、長者番付に載ることが喜びではございません。医師の喜びは、難しい病気を治すこと、治した
患者さんから年賀状と暑中見舞いをもらうことが医師の最も大きな喜びでございますから、そういう喜びを感ずるような
政策をとっていただきたい。もちろん
医療界も医の倫理を守って襟を正すべきは当然でございます。
これで私の
質問を終わらせていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。