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1984-07-17 第101回国会 参議院 社会労働委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十七日(火曜日)    午後一時三十分開会     ―――――――――――――    委員異動  七月六日     辞任         補欠選任      出口 廣光君     斎藤 十朗君      梶原 敬義君     和田 静夫君  七月十一日     辞任         補欠選任      本岡 昭次君     中村  哲君      中西 珠子君     高桑 栄松君  七月十二日     辞任         補欠選任      中村  哲君     本岡 昭次君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         石本  茂君     理 事                 遠藤 政夫君                 佐々木 満君                 浜本 万三君                 中野 鉄造君     委 員                 大浜 方栄君                 金丸 三郎君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 森下  泰君                 糸久八重子君                 本岡 昭次君                 和田 静夫君                 高桑 栄松君                 山中 郁子君                 柄谷 道一君                 下村  泰君        発  議  者  糸久八重子君    衆議院議員        修正案提出者   橋本龍太郎君    国務大臣        厚 生 大 臣  渡部 恒三君    政府委員        大蔵政務次官   井上  裕君        大蔵省主計局次        長        兼内閣審議官   保田  博君        国税庁直税部長  冨尾 一郎君        文部大臣官房長  西崎 清久君        厚生大臣官房長  幸田 正孝君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生大臣官房審        議官       新田 進治君        厚生大臣官房会        計課長      黒木 武弘君        厚生省健康政策        局長       吉崎 正義君        厚生省保健医療        局長       大池 眞澄君        厚生省保健医療  水田  努君        厚生省生活衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省薬務局長  正木  馨君        厚生省児童家庭        局長       小島 弘仲君        厚生省保険局長  吉村  仁君        社会保険庁医療        保険部長     坂本 龍彦君        運輸省海上技術        安全局船員部長  武石  章君        労働省労働基準        局長       望月 三郎君        自治大臣官房審        議官       土田 栄作君        自治省行政局長  大林 勝臣君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○公衆浴場法の一部を改正する法律案糸久八重  子君外五名発議) ○健康保険法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件 ○公聴会開会承認要求に関する件 ○連合審査会に関する件     ―――――――――――――
  2. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十一日、中西珠子君が委員辞任され、その補欠として高桑栄松君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 石本茂

    委員長石本茂君) まず、公衆浴場法の一部を改正する法律案議題といたします。  発議者糸久八重子君から趣旨説明聴取いたします。糸久君。
  4. 糸久八重子

    糸久八重子君 ただいま議題となりました公衆浴場法の一部を改正する法律案につきまして、日本社会党、公明党・国民会議日本共産党、民社党・国民連合参議院の会を代表いたしまして、提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  売春防止法制定より二十七年を経過した現在、政府公認集娼制度は解体されましたが、売春形態は多様化し、潜在化して第三者による女性搾取は後を絶ちません。  「国連婦人の十年」の起点であった一九七五年の国際婦人年メキシコ会議において、婦人の人格の尊厳及び肉体の不可侵が宣言され、人身売買及び売春の禁止が決議されています。また、一九七九年十二月、第三十四回国連総会において採択された婦人に対するあらゆる形態差別撤廃条約第六条においても、「締約国はあらゆる形態婦人売買及び婦人売春からの搾取を禁止するためのすべての立法を含む適当な措置をとる」と規定されているところであります。この条約は、一九八〇年七月コペンハーゲンでの国連主催世界婦人会議において、我が国を含め七十五カ国が署名しておりますが、現在では、批准加入国は既に五十六カ国に及んでおりますので、批准を急がなければなりません。  我が国においては売春防止法によって売春は禁止されているとはいえ、さまざまな売春形態が存在し、社会環境年少者性的非行少女売春を生み出す大きな要因となっています。また、暴力団業者による売春の強要は、外国女性(主としてアジアの各国)にも及んでおり、海外からの非難も浴びています。それらはしばしばトルコ風呂その他各種の接客業者の仲介や強制によるものであり、このまま放置しておくならば売春防止法はその意義を全く失うものとなりましょう。  中でも、個室つき浴場業の業態は売春温床と化し、特殊浴場業距離規制の悪用によって全国各地集娼地域を発生させており、そこで役務提供する女性に対して浴場業者は、事実上の管理売春による搾取を行っています。また、これらの 業者と結託するヒモ、暴力団などによる売春強制搾取など、女性人権侵害は目に余るものがあります。  かかる実情を見るとき、売春防止法実効性を補完するための一助として、個室つき浴場業において異性による役務提供させることを禁止し、売春温床を多少とも取り除く必要があります。  これが、ここに公衆浴場法の一部改正案を提出する理由であります。  次に、この法律案内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず第一に、営業者は、浴場業の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務提供し、または異性の客に接触する役務提供する者に当該役務提供のために当該個室を使用させてはならないものとしております。  第二に、都道府県知事は、必要があると認めるときは、立入検査等を行うことができるとともに、違反した営業者には、浴場業の許可を取り消し、または営業の停止を命ずることができるものとしております。  第三に、第一の規定に違反した者は、これを六カ月以下の懲役または一万円以下の罰金に処することにしております。  なお、この法律は、公布後二カ月を経過した日から施行するものとしております。  以上がこの法律案提案理由及び内容概要でございます。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  5. 石本茂

    委員長石本茂君) 以上で趣旨説明聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。     ―――――――――――――
  6. 石本茂

    委員長石本茂君) 次に、健康保険法等の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明聴取いたします。渡部厚生大臣
  7. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ただいま議題となりました健康保険法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  我が国医療費は、人口の急速な高齢化疾病構造の変化、医学医術高度化等により、根強い増加傾向を示す一方、経済成長は鈍化し、今後、医療費国民負担能力との間の乖離が拡大していくおそれがあります。  また、厳しい国家財政状況下で、国庫による各医療保険制度間の不均衡調整機能を維持することが困難となってきております。このような状況に的確に対応し、本格的な高齢化社会に備え、中長期の観点に立った医療保険制度改革を行うことは緊要の課題となっております。  今回の改正は、このような情勢を踏まえ、医療保険の揺るぎない基盤づくりを進め、すべての国民が適正な負担で公平によい医療を受けることができるよう、医療費適正化保険給付見直し負担公平化を三本の柱とした制度全般にわたる改革を目指したものであります。  改正案主要事項について、概略を御説明いたします。  第一は、医療費適正化のための改正であります。  保険医療機関等の不正、不当を排除するため、診療内容が適切を欠くおそれがあるとして、重ねて厚生大臣等の指導を受けている保険医療機関等については、その再指定を行わないことができることとし、また、不正請求による処分を逃れるために保険医登録を取り下げる等の場合については、再登録等を行わないことができることとしております。  さらに、社会保険診療報酬支払基金の主たる事務所に特別審査委員会を新設し、極めて高額の診療報酬請求書等について重点的な審査を行うこととしております。  第二は、医療保険における給付見直しであります。  まず、被用者保険本人給付率を改定することとしております。  現在、被用者保険本人給付率は十割、その家族入院八割・外来七割であり、また、国民健康保険給付率は、世帯主家族とも入院外来七割となっております。このような給付率の格差を漸次縮小し、全国民を通じて公平化を図っていくとともに、かかった医療費の額がわかりやすくなること等により医療費効率化が促進されるという見地から、被用者保険本人給付率昭和六十年度までは定率九割、昭和六十一年度からは定率八割に改めることとしております。なお、これに伴い、現行の初診時一部負担金及び入院時一部負担金は廃止することとしております。  また、受診時の自己負担額が過大とならないよう、被用者保険本人についてもその家族国民健康保険の被保険者と同様の高額療養費支給制度を設けることとしております。  次に、療養費支給に関する改正であります。  新しい医療技術の出現や患者の欲求の多様化等に対応し、高度医療や特別のサービス等について保険給付との調整を図るため、療養費制度改正するものであります。これは、高度の医療提供すると認められる特定承認保険医療機関において療養を受けた場合や保険医療機関において特別の病室の提供等厚生大臣の定める療養を受けた場合に特定療養費支給するものであります。なお、この療養費については、被保険者への支給にかえて、直接医療機関支払いを行うことができることとしているほか、被保険者が支払った費用については、領収証の交付を義務づけることとしております。  第三は、医療保険制度合理化等による負担公平化であります。  まず、退職者医療制度を創設することとしております。  事業所退職者は、退職後、国民健康保険加入者となるため、給付水準が低下し、また、その医療費負担は、主として国庫自営業者農業者等他国民健康保険加入者に依存することとなるという不合理と不公平が生じておりますので、これを是正するため、退職者医療制度を創設することとしたものであります。  すなわち、これらの退職者及びその家族対象に、市町村国民健康保険事業の一部として事業を行い、給付率は、退職者本人入院外来八割、家族入院八割・外来七割とし、また、高額療養費支給制度を適用することとしております。この医療給付に要する費用負担は、退職者及びその家族の支払う国民健康保険保険料と現役の被用者及び事業主負担する拠出金により賄うこととしております。  次に、国民健康保険国庫補助に関する改正であります。  退職者医療制度創設等による市町村国民健康保険への財政影響等を考慮し、市町村に対する国庫補助現行医療費の百分の四十五から医療給付費の百分の五十へと変更するとともに、国庫補助財政調整機能を強化することとしております。さらに、国民健康保険組合に対する国庫補助についても、補助対象医療費から医療給付費に改める等所要改正を行うこととしております。  第四に、日雇労働者健康保険の体系への取り入れに関する改正であります。  日雇労働者健康保険制度を廃止し、日雇労働者健康保険日雇特例保険者とするとともに、その給付内容及び保険料については、就労の特性を考慮し、一般の被保険者と実質的に均衡のとれたものとなるよう定めております。  また、国庫は、政府管掌健康保険事業所日雇特例保険者に係る給付費等について一般の被保険者についてと同一の補助率により補助を行うこととしております。  なお、廃止前の日雇労働者健康保険事業に係る累積収支不足については、借り入れをすることができることとし、その償還を一般会計からの繰り入れにより行うことができることとしております。  以上のほか、保険料負担の適正を図るため、標準報酬等級について所要調整を行うこと、船員保険法国家公務員等共済組合法等共済組合法についても、健康保険法に準じた改正を行うこと等の改正を行うこととしております。  なお、この法律施行期日は、本年七月一日からとしておりますが、退職者医療拠出金等に関する重要事項について社会保険審議会の意見を聞くこと等については公布の日から、また、標準報酬等級の改定については本年十月一日からとしております。  以上がこの法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  8. 石本茂

    委員長石本茂君) 次に、本案につきましては衆議院において修正議決されておりますので、衆議院修正部分について、修正案提出者衆議院議員橋本龍太郎君から説明聴取いたします。橋本君。
  9. 橋本龍太郎

    衆議院議員橋本龍太郎君) 健康保険法等の一部を改正する法律案に対する衆議院修正部分について、その内容を御説明申し上げます。  修正の要旨は、  第一に、被用者保険本人の一部負担金については、昭和六十一年四月一日以後においても、国会で承認を受ける日までの間は、なお引き続き一割とすること。この場合の一部負担金の額は、都道府県知事に届け出た保険医療機関等における医療費の額が千五百円以下のときは百円、千五百一円以上二千五百円以下のときは二百円、二千五百一円以上三千五百円以下のときは三百円とすること。  第二に、保険医療機関等における一部負担金支払いについて十円未満の端数金額が出るときは、その額は四捨五入し、十円単位とすること。  第三に、任意継続保険者制度特例を設け、五十五歳以上で被用者保険資格を喪失した者については、六十歳に達するまでの間またはそれ以前で国民健康保険退職保険者となるまでの間、二年を超える場合でも資格を有することができるものとすること。  第四に、健康保険組合等がみずから当該組合の被保険者であった退職者について医療給付を実施できることとし、当該組合退職者医療制度に対して拠出すべき療養給付費拠出金について所要調整を行うものとすること。  第五に、政府管掌健康保険等事業主及びその被保険者により構成する法人等社会保険庁長官承認を得たものは、その被保険者本人の一部負担金について付加的な給付を行うことができるものとすること。  第六に、日雇特例保険者については、療養給付期間は、日雇特例保険者手帳を一年以上所持していれば五年とするとともに、傷病手当金等支給日額は、前二カ月または六カ月のうち最も賃金総額の多かった月の賃金総額を基礎として算出するものとすること。  第七に、政府は、新健保法施行後の医療費の動向、国民負担の推移、財政事情等各般状況を勘案し、健康保険制度全般に関する検討を行い、その結果に基づいて社会保険各法の被扶養者及び国民健康保険の被保険者給付割合を八割とするよう必要な措置を講ずるものとすること。  第八に、昭和五十九年七月一日から施行するとされていた部分施行期日については、公布の日から起算して三カ月を超えない範囲内において政令で定める日からとすること等であります。  何とぞ、委員各位の御賛同をお願いいたします。
  10. 石本茂

    委員長石本茂君) 以上で説明聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  11. 和田静夫

    和田静夫君 まず、衆議院における修正部分についての御説明がありました橋本衆議院議員に、一、二お伺いをいたします。  参議院段階におけるこれからの法律案取り扱い、あるいは修正行為等を含んで、官房長官は本委員会に先立った理事会出席をされ、本委員会審議を尊重し、柔軟に対応するという姿勢を示されたようであります。そこで、衆議院における法案修正責任者として、衆議院でのこの修正案というのは、もう最良のものであるというふうにお考えでございましょうか。
  12. 橋本龍太郎

    衆議院議員橋本龍太郎君) 私どもとしては、与えられた条件の中で最善を尽くしたつもりであります。
  13. 和田静夫

    和田静夫君 定額部分について、定率制ではなくて定額制を導入されたわけでありますが、これは私は改正案の本来の趣旨である医療費負担患者認識をさせるという側面から考えますと、どうも後退になるのではなかろうかと考えるのでありますが、橋本さんはすぐれた専門家でいらっしゃいますから、どのようにお考えでしょうか。
  14. 橋本龍太郎

    衆議院議員橋本龍太郎君) 確かにそうした御批判が一部ありましたことも、決して私は否定をいたしません。ただ、現実問題として、厚生省から提供を受けております。その資料の数字を計算してまいりました場合に、一円以上千五百円までのレセプトの一部負担を平均をしてみますと、たしか百一円四十何銭かになったと記憶をいたしております。同様に、千五百一円から二千五百円までの間のものを平均いたしてみますと、やはり二百一円強になったと記憶をいたします。同じように、三千五百円以下というものを計算しました場合に、たしか二百九十五円何十銭かになった、そのように記憶をいたしております。  我々としては、受診される方々の便宜をも考え、また、医療機関における請求事務の煩雑さを少しでも避けることをも考え事務簡素化というものを頭に描きました中で、希望される医療機関についてこうした措置がとれるように道を開いたわけでありまして、私は、必ずしもこれによって本来の定率性趣旨を崩したものとは考えておりません。
  15. 和田静夫

    和田静夫君 最後にしますが、ともあれ私たち社会労働委員会、本委員会論議経過を尊重されまして、自由民主党の責任者としても、法律案取り扱いに柔軟に臨まれる、そういうふうに理解をしておいてよろしいでしょうか。
  16. 橋本龍太郎

    衆議院議員橋本龍太郎君) 私は、衆議院修正案提出者としてこの場に立っております。衆議院規則の六十条の二を見ますと、「衆議院修正にかかる部分につき、」私は説明をすることが許されているだけであります。  ですから、今の御質問にお答えをする資格があるかどうかわかりませんけれども、私見として申し上げるならば、また、それをお許しをいただけるならば、私は、参議院参議院の御審議の中でおのずから出てきた結論をおとりになるであろうと考えておりまして、その参議院側の御審議に対し、衆議院側が云々をすべきこととは考えておりません。
  17. 和田静夫

    和田静夫君 まず、シーリングの問題で若干厚生大臣並びに大蔵省政務次官にお聞きをいたしますが、この健保法の改悪につきましては、私は既に春の予算委員会でも問題にしたところでありますが、改めて若干議論を深めたいと思います。  まず、厚生大臣伺いますが、社会保障制度財政状況が今日鋭く対立をしています。財政事情が悪化してきていることを口実とされまして、社会保障制度の切り捨てがまかり通っているという現状だと私たちは言わざるを得ないのでありますが、私はこういうような現状というのは大変ゆゆしい状況であろうと考えます。大臣に心構えとしてお伺いをしておきたいのでありますが、社会保障制度を維持することに優先順位を置かれるのか、あるいは財政事情を優先して社会保障をばっさりと切っていくのか、二つの相対立する姿勢が私はあると思うのでありますが、大臣はどういう姿勢をまずおとりになりますか。
  18. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 御指摘のように、社会保障国民生活を守っていく上で欠かせないものであります。特に、その中には、恵まれない人あるいは弱い人、こういう方々が健やかに暮らし ていけるための予算もございます。そういう予算は、幾ら財政が厳しくても、そのために予算が削られるというようなことは不可能でございます。そういう意味で、どんな厳しい財政の中でも、社会保障の守るべきもの、守らなければならないものは守っていかなければなりません。  しかし、同時にまた、国全体が政策を遂行していく場合、今日では財政再建というものが国の基本方針になっておりますし、また、かつての高度成長時代幾らでも財源がわいてくるというような時代は終わって、これからは厳しい経済情勢財政情勢が続くことが予測されておりますから、そういう厳しい財政の中で、社会保障のぎりぎりを我々は守っていかなければならないのでありまして、これは財政と無縁というわけにはまいりませんが、どういう厳しい財政の中でも、社会保障に必要なる予算は確保していかなければならないと考えております。
  19. 和田静夫

    和田静夫君 御説にもありますように、財政事情が苦しいからといって社会保障をむやみやたらに切っていくということにはならないと思うんですね。財政事情が苦しくとも、できる限り社会保障を守っていく、そのためには厚生大臣としても最大限の努力をされるということが必要でしょうし、いろいろ知恵を出し、工夫をして財源を確保して、そして社会保障給付水準を守っていくこと、そういうことが厚生行政基本的スタンスであるはずであろうと私は思うのです。  そういう意味では、ことしから来年にかけて厚生行政はある意味での正念場を迎えるんだろう、そういう気がしてなりませんが、大臣認識も御同様でしょうか。
  20. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生御指摘のとおり、私も、この六十年度予算編成というものは、我が国社会保障の将来にまでかかわる非常に重大な時期だと、今緊張しておるところでございます。
  21. 和田静夫

    和田静夫君 そこで大臣マイナスシーリングをめぐる論議がやかましいわけであります。本来ならば、この社労委員会が開かれる前に予算委員会を開いて総理並びに大蔵大臣と本質的な論議をしたかったんですが、予算委員会おくれておりますから逆になりましたが、私はもはやこれ以上社会保障後退を招いてはならないと思うのであります。大臣も、どうも先ほどの答弁を聞いていますと、そういうお考えのようであります。そのためには社会保障マイナスシーリング対象から外すことがこれは非常に重要だと思うんです。  来年度マイナス一〇%シーリングをかけられるとすると、これは厚生省予算は編成できますか。
  22. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは大変難しい御質問でございまして、国全体の方向は、先生御承知のように増税なき財政再建という政府の大きな基本方針を定めて、これには私ども内閣にある者全員が協力をしていかなければなりません。そのためにマイナスシーリングという予算の編成の方向があるわけでありますから、全くこれを無視していくというわけにはまいらないと思いますけれども、同時に、今先生から御指摘がありましたように、社会保障関係の予算、特に厚生省がお預りしておる年金、手当あるいは医療というようなものは、国民の生命に、生存に直接かかわる問題でありまして、お金がないから来年は休もうとか、あるいはことしは休もうとか、そういうことが不可能な、その日その日、一日も欠かすことのできない生活ぎりぎりの予算等がございます。しかも、これらの予算の多くは高齢化社会に進むに従って額がふえてまいりますし、これは当然増とも言うべき性格の予算が非常に多いのであります。  これらをマイナスシーリングという枠の中で確保していくというのは、これは極めて困難でありますから、私どもはそういう点で、さきに申し上げましたように、これは六十年度予算編成を前にして、政府のぎりぎりの大きな基本方針の枠の中で、社会保障予算厚生省予算国民の皆さんが御心配になっておる生活を守る予算をどうしたら確保できるかということで今大変頭を悩ましておるところでございます。
  23. 和田静夫

    和田静夫君 ずばり言って、マイナス一〇%シーリングをかけられるということを仮定をいたしまして、やはりこれでは厚生省予算というものは組めないというふうに御答弁になるわけでしょうね、今のことを解釈してみれば。
  24. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 極めて困難であると思います。
  25. 和田静夫

    和田静夫君 過去の厚生省所管予算の当然増経費の対前年増額分、毎年大体一千億程度伸びているわけであります。五十七年七千億、五十八年八千億、五十九年九千億となっておりますね。過去の推移をそのまま引き延ばして考えてみますと、六十年度は一兆円の歳出額を見込まなきゃなりません。仮に今国会で審議中の全法案が成立をしたといたしましても、今最低限七千億円は当然増として見込む必要があるとなってきます。  大臣、現在の社会保障制度を維持するためには、少なくとも七、八千億円の歳出増を見込まなきゃならぬわけですが、アバウトな数字ですけれども、この点は確認をしておいてよろしいでしょうか。
  26. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 来年度の当然増経費については今積み上げ作業中でございますので、私の口から今何千億ということを申し上げるのはお許しをいただきたいと思いますが、和田先生御指摘のような数字というものは、極めて重みのある数字でございます。
  27. 和田静夫

    和田静夫君 それで大蔵省ですが、マイナス一〇%シーリングということになりますと、厚生省予算は、予想される当然増も含めて、幾ら削らなきゃなりませんか。
  28. 保田博

    政府委員(保田博君) 来年度の社会保障関係の予算所要額でございますが、先ほど厚生大臣から御答弁申し上げましたように、かなりの当然増がございます。でございますけれども、六十年度予算を一方では増税なき財政再建、片方では六十五年度にいわゆる特例公債依存体質からの脱却という二つの命題のもとに編成するということでございますれば、この当然増に見合う額をなかなか来年度の予算において増額をするということは難しいのではないかと思います。  それでは具体的にどういう手段でこの額を、先ほど申し上げましたような二つの命題のもとで編成される予算に仕組んでいくかということにつきましては、今後、年末にかけての予算編成の過程におきまして、厚生省当局と我々とで検討を重ねていくと、こういうことになるわけでございます。  細かい数字でもって御説明できればよろしいのですが、今の段階ではそれはなかなか困難なことでございます。御理解を得たいと思います。
  29. 和田静夫

    和田静夫君 いや、なかなかこれは理解するわけにいかぬのですが、始めたばかりですからもう少し続けますけれども、どっちみちシーリングの問題は、月末までに全部決めるということで、もうあなたの頭の中には全部描かれているんでしょうから、少しは具体的な数字をお出しになって論議に供するということの方がいいんじゃないかと思うんですがね。大蔵政務次官がお答えになるような答弁をあなたからお聞きをしようとは思っていないのでありまして、そこのところを踏まえながらこれからの質問に答えてもらいたいと思うんですが。  非常に幸いに、大蔵政務次官は一方医療専門家でもいらっしゃるわけでございますからね、財政事情が悪い、財布の中身が少ないからといって、医療その他の社会保障を容赦なく切り捨てていくということは、これは許せないと理解してよろしいですか。
  30. 井上裕

    政府委員(井上裕君) 先生御案内のように、財政改革は単に財政収支の均衡化を図ることでなく、高齢化社会の経済あるいはまた社会情勢の進展に即応して対応力をつけなくてはならない。そこで、今主計局次長が申し上げましたが、私ども、六十五年度の特例公債依存体質脱却という努力目標に向かって現在一生懸命努力をしているわけでございます。  六十年度の予算編成が現在行われつつあるわけでございますが、各方面の方々の御意見を尊重い たしまして、いろいろな角度から今後対処をいたしたい。やはりあらゆる面に聖域ということをつくらずに、そして厳しい財政難を切り抜けなければならない。しかしながら、この社会保障関係予算につきましては、今後高齢化の進展を展望いたしまして、将来に向けて安定した制度をつくるために改革を行う、そういうことにつきましては、やはり真に恵まれない人々に対する施策の充実ということに努めたい、このように考えております。
  31. 和田静夫

    和田静夫君 もう一問次官に聞きますが、社会保障マイナスシーリング対象にするということ自体これは私はおかしいと考えているんですがね。次官も同じ立場でしょうか。
  32. 井上裕

    政府委員(井上裕君) 再三申し上げますが、現在の私の立場は大蔵省側でございますので、何としても六十五年度で特例公債の脱却というものはどうしてもやりたい、やらなければならない、そういうような事情にありますので、よろしくひとつ御理解のほどをお願いしたいと思います。
  33. 和田静夫

    和田静夫君 主計局次長、理事会で、官房長官が御出席になって、もう政府としてはあらゆる資料を本委員会に提出をして審議に御協力をいたしますと、こう述べられたのです。したがって、その趣旨に基づいて、もう一遍さっきのに返りますけれども、予想される厚生省予算、当然増を含めてマイナス一〇%のシーリングの場合には、どれだけ削らなければなりませんか。もう計算できているでしょう。
  34. 保田博

    政府委員(保田博君) その計算を今始めようかといった段階でございます。  ただ、若干御説明をさせていただきますと、社会保障関係費の中にも、年金といったようなことのための国庫負担、これは年金の成熟化に伴いまして所要額が非常にふえていくといったようなことで、そういう経費のいわば硬直的な増加の性格、あるいは社会保障費の中でも特に下方硬直性といいますか、そういう性格を持った生活保護費といったようなものは、マイナス何%を掛ける分母から外しておるわけでございまして、そういう年金あるいは生活保護費といったようなものを除いたものにマイナスX%を掛けるということでシーリングを決定しておるわけでございます。  でございますが、現在は、ほうっておいた場合に、では経費がどれくらいになるのかといった計算、あるいはシーリングをはじきますときに除外すべき経費をどういうふうに考えるかといったようなことをまだアヒルの水かき的に、計算をしたり消したりといったような状況でございまして、この場で数字をお示しできるといったような段階ではないのでございます。
  35. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、一兆円に近い経費を、どこをどう削れば捻出できるのかといろいろ考えてみますと、私は不可能に近いんだろうと思うんです。とうてい不可能だと思う。行革審の小委員会は、「児童手当」、「生活保護」、「社会福祉施設」等々を見放せと、こう言っていますね。これは可能でしょうかね。
  36. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、私も大臣は初めてなんで、今この時期に、六十年度の予算についてこういう場所でどの程度のことを申し上げなければならないということの経験がございません。そういう意味では、予算編成作業もまだ事務段階で積み上げ作業中で、私は報告を聞いておるわけでありませんから、これは私の私見という感じになるかもしれませんが、今先生御指摘のような予算を削っていくということは、極めて困難だと思います。
  37. 和田静夫

    和田静夫君 これ、大臣ずばりと困難だと言われたのですが、どうですかね、ちょっと具体的にこれ伺ってみたいんですが、「児童手当制度の抜本的見直し」と行革審小委員会報告案にあるわけですが、これは実行されますか。今のお言葉であれば実行はされないというふうに認識しておいてよろしいですか。
  38. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先ほども前提として申し上げたように、これまた六十年度予算の編成作業、私はすべて聞いておるわけでありませんので、厚生省全体としての六十年度の予算の方針というのはまだここで申し上げる段階でございませんが、私の私見――やっぱり大臣ですから、これ私見といっても大臣としての私見ということになるのかどうかわかりませんが、まあ今の児童手当ですね、こういうものを来年度削ってしまうというようなことは私は考えておりません。
  39. 和田静夫

    和田静夫君 仮に今実行された場合ですね、これ幾ら浮いてくるんですか。
  40. 幸田正孝

    政府委員(幸田正孝君) 児童手当の国庫負担額は五十九年度予算で六百二十億円と理解をいたしております。
  41. 和田静夫

    和田静夫君 では、六百二十億浮くということですか。
  42. 幸田正孝

    政府委員(幸田正孝君) 児童手当の問題につきましては、今大臣からお答えを申し上げましたとおりでございまして、私ども現在中央児童福祉審議会でこの児童手当問題につきましては鋭意御検討をお願いをしている最中でございます。私ども、その専門の児童福祉審議会の御意見を十分踏まえまして、また、行革審の御指摘等もございますが、それらも勘案しながら、今後どういう方針で臨むかということを決定をすると、こういう段階でございます。
  43. 和田静夫

    和田静夫君 児童手当については大臣の今の答弁非常に重要でありまして、ぜひしっかりやってもらいたいと思います。  次の「生活保護」ですが、生活保護についてはどうですかね。これ、「不正受給防止対策」ということになっているんですが。これは幾ら浮くんですか。
  44. 幸田正孝

    政府委員(幸田正孝君) 生活保護の問題につきましても、ここ数年の間私ども不正受給対策、特に新聞その他で報道されておりますような暴力団受給の問題でございますとか、いろいろな面での対策の強化をしてまいりました。六十年度予算の場合に、私どもこういった面で一層の努力が必要であるという気持ちは持っておりますが、今具体的にどの程度のものかということはまだお答えをするような段階ではございません。
  45. 和田静夫

    和田静夫君 そう言われますけれども、けさの報道によりますと、八木元事務次官が行革審の中でかなり鋭くいろいろな意見を述べていらっしゃる記事が載っていましたね。当然皆さん方と打ち合わせされて、金額なども頭の中にこう描きながらああいう御発言になっているんだろうと思いますよ。どれくらいのことを考えていらっしゃるのか。官房長官の言葉を引用するわけじゃないけれども、一切の資料をお出しになるというんですから。どうです。――大蔵の側でもいいし。
  46. 幸田正孝

    政府委員(幸田正孝君) 重ねての御質問でございますけれども、行革審の小委員会、これから本審議会に報告をされまして二十五日に本審議会の御答申をいただく手はずになっておりまして、私ども政府側は、それを受けまして八月末の概算要求に向けていろいろ作業を積み重ねていく、こういう現状でございますので、重ねてのお答えでございますが、具体的に今どのぐらいのものをというイメージは持っておりません。そういうお答えでございます。
  47. 和田静夫

    和田静夫君 同じ答えになるんでしょうが、もう一つだけ聞きますが、それじゃ、社会福祉施設における受益者負担適正化、これはどういうふうに考えられるんですか。
  48. 幸田正孝

    政府委員(幸田正孝君) 社会福祉施設、特に老人ホーム等につきましての費用徴収の問題が恐らくこの行革審の小委員会の御指摘ではないかと私ども受けとめておりますが、この問題につきましても、先ほどと同じように、今後予算編成、概算要求の過程の中で具体的なものを詰めていく、こういう考え方でございます。
  49. 和田静夫

    和田静夫君 厚生大臣、今のところそういう答弁なんでしょう。了解するわけにいきませんけれども一応それを踏まえて質疑を続けますが、私は、少なくとも予算編成時において法律で支出を義務づけられているもの、そういうものについては概算要求として盛り込むのが当然だと考えるのですよ。社会保障制度の諭理に従って検討されないうちに、内閣の財政の諭理で一方的にカットし ていくという手続が進む、私はこれは許されることじゃないんだと思うんです。  今回の医療保険の改定の際に、思い浮かべてみますと、社制審にしろ社保審にしろ当該の審議会が、財政対策を急ぐ余りに社会保障制度としての検討が不十分であるという見解を出しました。これは予算委員会大臣と私やりとりしたところでありますから。その教訓をどのように生かすつもりなのかということが非常に重要だと思うんですよ。社制審、社保審答申を尊重するのであったならば、これは法律で支出を義務づけられているものについては予算として編成をする、そういうことが当然のこととして行われなきゃならぬのであります。大臣はこの点はしっかり踏まえていかれますでしょうね。
  50. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これも先生、大変難しい御質問なのでございますが、先ほど申し上げましたように、これは私ども政府全体が増税なき財政再建というスローガンを掲げてこの厳しい経済情勢の中で財政再建を果たしていかなければならないというのは、私は、国民的な合意を得た今日の中曾根内閣の基本方針であると思います。したがって、これは、何を担当する大臣であろうとこの基本方針には協力をしてまいらなければなりません。  そういう意味で、竹下大蔵大臣がよく言っている、内なる改革ということもあるでありましょう。私どもも、五十九年度の予算編成に当たっては、今和田先生から御指摘のあったような、国民生活にとって一日も欠かすことのできない予算、これは何としても確保していくというために思い切った内なる改革に当たっておるわけでございますが、これは決して福祉を切り捨てるとか福祉を縮小するとかいう意味でなくて、こういう厳しい情勢の中で福祉を何としても守っていかなければならないというところから私どもが行っておるものでありますが、それなら来年度またマイナスシーリングという枠の中で、五十九年度に私どもが思い切ってやっておるような内なる改革ができるか、あるいはそういうものがあるかということになると、私はもうこれはなくなってきておると思います。  したがって、私は六十年度の、来年度の予算については、五十九年度予算で私どもがこれだけ厳しい環境に立ちながら、あえて二十一世紀に向かっての社会保障を継続させていくために思い切った内なる改革の努力をしておるということは、大蔵省もまた内閣全体もこれは知ってくれておるのでありますから、六十年度については、私どもがこの厳しい財政状態の中で社会保障のぎりぎりを守っていこうという姿勢には、政府全体として御協力いただけるものと考えております。
  51. 和田静夫

    和田静夫君 この行革審小委員会の報告書案を読んでみて、歳出カット項目のうち、国民的なコンセンサスを得ているのは何であろうと考えてみますと、乱診乱療の防止などの「医療費適正化対策」だと思うんですね。生活保護の不正受給防止も、字面だけを追ってみれば当然だということにはなりますけれども、しかし一面で、防止対策の行き過ぎという事態を招くおそれなしとしないと私は思うんですよ。その他はすべからく社会保障給付の水準低下をもたらすものです、これは。今、児童手当などについて見直しには断固として一歩も引かないという大臣姿勢が示されましたし、今の答弁でも六十年予算に向かってかなり強い姿勢を示されましたから、そこの部分は評価をいたしますが、恐らく二十五日、ほとんどこれが報告書になるんでしょうけれども、非常に大きな問題をはらんだものをマイナスシーリングで、つまり財政の諭理だけでカットする、これは許せませんからね。  ここのところは、大臣のお考え方はわかりましたが、事務当局の責任者としてこれから中心的に予算の仕事に当たられる官房長も、一遍この辺で締めくくり的な答弁をひとつやってみてくださいよ。
  52. 幸田正孝

    政府委員(幸田正孝君) ただいま渡部厚生大臣がお答えを申し上げました意を体しまして、私ども事務当局も全力を尽くしまして六十年度の予算編成に当たる覚悟でございます。よろしく御協力、御指導をお願い申し上げるわけでございます。
  53. 和田静夫

    和田静夫君 大臣ね、私は社会保障を尊重する立場からしますと、これは行革審小委員会報告のように歳出カットすることはできないと考えているんですが、また仮に、行革審の指示するようにカットしたとしましても、マイナスシーリングなどの枠におさまるとは私は考えられないのであります。  したがって、ずばり言って、マイナスシーリングでは責任を持って厚生行政を遂行することはできない、そう明言をなさっておくこと。先ほどからかなりよく答弁されておりますけれども、どうですか、一遍その辺ずばりと明言されておいたらいいんじゃないですかね。やりやすくなるんじゃないですか。
  54. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私ども、やはり内閣の一員として与えられた条件の中で最大量善を尽くす、こういうことだと思います。
  55. 和田静夫

    和田静夫君 大蔵政務次官、最後にしておきますが、再度伺うということになるんですが、社会保障については全面的にマイナスシーリングの枠を外す、これは別枠とするという英断を下されるべきだと私は思うんです。特にあなた専門家でもいらっしゃいますから、ひとつここでずばりと御見解を。
  56. 井上裕

    政府委員(井上裕君) 先ほど申し上げましたように、六十年度の予算編成、現在行われている最中でございまして、各方面の御意見を尊重いたしまして、そしていま勉強中でございますので、私からは先生言われるような答弁は出ないと思いますが、ひとつそういう点で御勘弁願いたいと思います。
  57. 和田静夫

    和田静夫君 非常に歯切れが悪いのですが、主計局次長さん、厚生大臣の御答弁もお聞きになったでしょうし、官房長の答弁もお聞きになって、それに対する御見解はいかがですか。
  58. 保田博

    政府委員(保田博君) 社会保障予算の充実を求める厚生省御当局の希望は、ここで初めて伺ったわけではございません。私も何回か社会保障予算を担当さしていただいておりますので、非常によくわかっておるわけでございます。  ただしかし、政府全体としていろんな各面からの財政需要はそれぞれの担当者からとってみれば、それはまさに我が命と引きかえというぐらい大事な予算ばかりなのでございますけれども、それを全部入れたのでは国の予算というのは組めないわけでございます。そこが我々の非常につらいところなのでございますが、一方でそういう諸施策の充実を求める声を聞きながら、他面また国民負担の増大は困る。これが大きくなり過ぎますと社会の活力を失うといった面から国民負担の増大も適正な水準にとどめなければならない。そういう適正な水準の中で各般の財政需要を賄わなければならないということでございますので、厚生省当局の強い御希望を念頭に置きながら、しかしまた、これすべて入れるというわけにはいかない我我の苦衷をお察しいただいて、本日のところはお許しをいただきたいと思います。
  59. 和田静夫

    和田静夫君 答弁だけを許してもらいたいということで、あなたのお考え方を許すわけにはいきませんから、これ以上答弁をさせずおいてくれというところだけはひとつ理解をしておきましょう。  次官、もう結構です。  本題に入りますが、春の予算委員会で私は、薬づけ、検査づけ医療改革こそが健保制度に手をつけることよりも先行すべきであると主張しました。その後、さまざまな方々から多くの意見が寄せられました。また、直接会って論議も交わして今日までまいりました。それらは非常に私の主張に確信を深めさせるものでありました。国民医療費の伸び率を抑制していくことは、どのような立場に立とうが私は必要なことだと考えるのであります。  そこで厚生省、総論的にこの国民医療費の伸び 率抑制のためには、私は次のような施策が必要だと考えているのですね。まず第一には、国民医療費に占める薬剤費の比率を傾向的に低下させること。それから第二には、疾病予防を徹底させること。そのためには日常生活における健康づくりが必要であります。それから第三には、地域的なレベルにおける段階的な医療供給体制の確立とでもいいますか、だれもが高度な医療を受けられ、かつ初期段階で治癒できる体制をつくる、そういうことでしょう。  厚生大臣、最低限この三つの基本的施策を強力に進めることが私は国民医療費の伸び率抑制に必須であると考えているわけですが、いかがでしょう。
  60. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、先生のお考えと私の考えとほぼ同じだと思いますが、医療費適正化、一歩進めれば節減ということになるかと思いますが、これには今先生の御指摘のような問題、努めて努力をしていかなければならないと思います。
  61. 和田静夫

    和田静夫君 そこで、今申しました三つの基本に基づいて一つずつ論議をしていきたいのですが、まず第一の薬剤費の問題ですが、厚生省の試案、「今後の医療政策の基本的方向」、いわゆる長期ビジョンというやつですが、これには、薬価算定制度のあり方の見直しや今後の国民医療費に占める薬剤費比率などの展望が実は示されていないのであります。私はあれだけ予算委員会で問題にしてきたが、まあ結果的にはこの長期ビジョンの中では無視されてしまっています。  そこで、その薬剤費をどういうふうにしていくおつもりなのか、示していただけましょうか。
  62. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、今先生がおっしゃいましたように、薬剤費の比率を適正化していく、これは必要なことであろうと思います。  そこで、一つは薬剤の価格につきまして、薬価基準の改正を毎年一回ずつやっていく、こういう方策をとるということにしております。また、薬剤の使用につきまして、厳格な指針というようなものを今後医師会あるいは歯科医師会等においてつくっていただいて、薬剤の過剰使用というようなものを少し自主規制をしていただきたいと、こういうような考えを持っております。それからまた、審査あるいは指導、監査等におきましても、薬剤の使用等について適正化を求めてまいりたい、こう思います。  そのほか、もう一つは医薬分業というようなことも考えていかなければならない問題であろうと、こういうように考えております。
  63. 和田静夫

    和田静夫君 どうも局長答弁も抽象的なんですが、大臣ずばり、現在の医薬品使用量を適正だとお考えになっていますか。
  64. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは先生、私がお答えするのにはなかなか難しい問題だと思いますが、少なくとも、昭和四十年医療費が一兆円であったものが年々増額して今日十四兆円を突破することとなり、このことが大きな国全体の問題になり、その中で薬剤費というのも非常に大きなウエートを占めておりますから、しかも、今まで御案内のように、薬価基準と実際に流通する価格の差とかいろんな問題等がありまして、ことしの三月一日にも私どもは一六・六%という思い切った薬価の引き下げを行ったわけでありますが、こういうものも私ども先生おっしゃるように適正なものにするための努力をしておるわけでございますが、それですべて終わったかというと、今申し上げましたように、決して私どもはこれで終わったというふうには思っておりません。今後もこれはやるべきことはやっていかなければならないと、こう考えております。
  65. 和田静夫

    和田静夫君 各国の薬剤費比率を見ますと、日本は高いわけです。諸外国の統計では入院患者の薬剤費は含まれていませんから正確な比較はちょっと困難ですが、少なくとも低いという見方はできない状態であります。仮に単価が同一レベルであるとしますと、医薬品の使用量が多いわけです。言いかえますと、日本の医療というのは医薬品依存度が高いということになるんだと思うんですね。必要以上に投薬しているということになるわけであります。  その意味で再度お尋ねをしますが、医薬品依存度は高いのか低いのか。適正なレベルにあるのかないのか。ここは今後の議論のベースとなるところなので、ちょっと局長から明快に答弁してもらいましょうかね。
  66. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 医薬品の使用度というものが高いか低いかという御質問でございますが、これはなかなか一概に論じられないのではないか。例えば、薬剤比率を各国比較いたしましても、かなりの差がございます。恐らく薬剤比率というのは分母が医療費で分子が薬剤費ということでございますので、分母が大きくなれば薬剤比率は、使用量は同じでも下がっていく、こういうことになろうかと思うわけでございまして、一般的に高いか低いかということにつきましては、高いような感じはいたしますが、必ずしも日本の医療が薬に依存して、薬の多用によって医療が成り立っておるというようには私ども理解をしておりません。  ただし、一部の医療機関にそういうものがある、これは私どももそう思っております。
  67. 和田静夫

    和田静夫君 医薬品単価は、諸外国に比べてどうでしょうか。
  68. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 個々の医薬品の価格につきましては、一般的に言いますならば、高いのもありますし低いのもあるのでございますが、国際比較をしてみますと高いと言う方が正しいんではないか、こういうように思います。
  69. 和田静夫

    和田静夫君 私は、薬剤費を当面少なくとも横ばいにしていくことは十分可能であろうと思うんです。傾向的に低下させていくこともできない相談ではないと思うんですよ。  そこでひとつ試算をやってみました。厚生省が五十九年度に見込んでいる薬剤費は四兆二千億ですね。国民医療費十四兆八千八百億の二八・二%ですね。計算すればそうなりますね。そうすると、薬剤費をそのままに据え置いてみたんですよ。少なくとも物価上昇率三%程度の伸び率に抑え込んでいくわけですね、抑え込んでいく。このことは、現在の薬剤使用の状況から考えて私は十分現実的だと思うんです。私がつくった数字ではない。そうして計算しますと、薬剤費の伸び率を三%と置くと、薬剤費は次のようにふえていきます。  昭和六十年、一九八五年四兆三千三百億、八六年四兆四千六百億、八七年四兆五千九百億、そして八八年が四兆七千三百億、八九年が四兆八千七百億、九〇年、いわゆる昭和六十五年は五兆二百億  そこで、今度の制度改悪を行わずに薬価の引き下げと医療費適正化だけを行った場合の五十九年度の国民医療費というのは十五兆二百億でしょう。この数字をベースにしまして国民医療費の伸び率を国民所得の伸び率と同じとする、すなわち六・五%の伸び率を見込むわけですよ。国民医療費国民所得の伸びと同じにするということは、これは負担率をふやさないということですよ。これは吉村保険局長が昨年厚生省の方針として述べておられたところの復唱ですよ。  そこで、六・五%の伸び率で国民医療費を計算してみました。それから薬剤費を控除しますと、そうするとどうなるかというと、薬剤費を除く一般的な医療費が計算されるわけでしょう。それは八十五年度が十一兆六千七百億円。八十六年度が十二兆五千八百億円。八十七年度が十二兆五千五百億円。そして九十年度は十六兆九千億円となりますね。伸び率で言いますと、七・九%から七・六%の水準を維持することができるという計算になるわけです。厚生省試算のこの計数に、おたくの試算の計数にいわゆる国民所得の伸び率六・五%プラス高齢化率一%で七・五%上回る水準を確保することができるというわけですよ。要するにこの試算は、薬剤費を物価上昇率に抑えることができるのならば、それは私は十分可能だと、現実的だと思っている。現行負担率を上昇させなくとも、七・五%を上回る医療水準を確保できるとい うことを今私がはじき出した数字は示しています。この試算はまた、工夫次第では本人十割給付を維持しながら家族や国保の給付水準を高めることができるということをもまた示しているんです。その辺のことを頭に描きながら予算委員会論議をしたんですが、制約された時間の中で有能な吉村保険局長の答弁にすりかえられまして、あそこではあれ以上やらなかったんですがね。  厚生大臣、これが医療改革の本道なのですよ。したがって、今用意をされているこの法律案というものは、私の試算に基づけば必要でない。仮に皆さん方、大蔵を中心とする国家目的を一応認めてみても、その枠内においてちゃんとやっていける数字を私は提起をいたしました。これにコメントを求めます。
  70. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私の尊敬する和田先生のお言葉にお返しして申しわけないのでありますが、今回私どもが御審議をお願いしておる改革案というものは、もちろん財政問題もございますが、ただ単に財政問題だけでございません。一つは、社会保障のあるべき方向として、特に健康を守る医療というようなものについて、国民はやはり等しい給付を受けるべきである。御案内のように、現在農家の人とか零細な商工業あるいは自由業の皆さん方は既に三割の御負担をなさっておるのでありますし、また、今日の近代社会において、一軒の家でだんなさんも大事ですけれども奥さんも大事ですし、子供さんも大事です。みんな人間の命に差はないのでありますから。ところが、被用者保険そのものでも、家族の皆さん方は外来七割、入院八割ということで、二割、三割のこれは御負担をしております。  こういうことを考えると、やはり二十一世紀の将来の立派な福祉社会の医療保険給付というものは、国民が等しく同じような給付条件にしていかなければならないという一つの方向がございますし、また、今まで乱診乱療とかいろんな御指摘をいただいておりますが、その一つにやはり十割給付というものがある。やはり一部を患者の皆さん方に御負担を願うことによってこれは医療費というものに対する国民的な関心も高まり、またもう一つは、やはり何よりも大事なことは病気になって直す前に病気にかからないということが本人にとっても一番幸せなのでありますから、やはり病気にかかれば一部負担をしなければならない、幸せを守るためにはまず健康を守ることだということで、健康の自己管理に努めていただく。  私、テレビなんかを見ておりまして感じますのは、最近、健康を守るということの国民的な関心の高まりということはかってないものであります。これはやはり今回の私どもが提案している健康保険法改正というようなものが国民の関心を集めて、自分たちの幸せを守るためにはまず健康管理に努めて病気にならないようにと、立派な健康を守っていくようにという国民的な関心が非常に高まっておるのでありまして、こういう今回の改革案は一石二鳥、三鳥、四鳥という、国民が健康で幸せに生きていくために、厳しい財政条件、また、高度成長はもう終わってしまって、もうこれ以上財政から社会保障にどんどんどんどん金を回していくことが厳しい、こういったあらゆる条件の中で、やはり二十一世紀にまで我々の医療保険制度というものを揺るぎなく持続していくためにこれは出したものでございまして、先生の今までのお話ごもっともでありますが、そのことが今回の改革案を必要としないとおっしゃるのは少し早計ではないかと考えます。
  71. 和田静夫

    和田静夫君 せっかくの御答弁ですが、ここのところはちょっと譲るわけにはいきませんので。  私、保険局長が述べてこられたことをずっと後追いしながら数字を当てはめていった結論について具体的に数字を提起をして提案をしたわけですからね。それに対して反論があるのならば数字を挙げて反論してもらう。これはちょっとこのまま進めませんね。
  72. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 今先生から初めて数字を示されたものでございますので、なかなか私どもよくわからぬ面もございます。したがって、その資料を見せていただきたい、こういうように思います。  確かに、先生がおっしゃるように、薬の部分をパーセントを据え置きにされて、毎年物価上昇程度の薬価を上げていく、こういう前提のようにおっしゃられたように記憶しておるんですが、そうだとすると、二八%の部分がまあ三%すっ上がっていって、そして全体の医療費の伸びは六・五%の中におさめようとすれば、確かに他の技術料の部分は今申されましたように七・六か七・九%ぐらいの伸び率になるであろう、こういうようには思います。しかし、医療費全体として考えますと、やはり六・五%の範囲内になるのではないか。そうすると、私ども六・五%の範囲内に医療費をおさめるために今回の提案をしておるわけでございまして、先生御指摘のような形で薬剤費を抑え込んだならば、技術料の伸び率というものはそういうようなことで七・六ないし七・九%ぐらいのパーセンテージの伸びを確保することはできましても、医療費全体としてはやはり六・五%、その中にとどまるわけでありまして、その六・五%にとどめるために私どもはいろいろな手を打っていきたいと考えておるわけでございますので、今の先生の計算をひとつお見せいただいて検討をさしていただきたい、こう思います。  私ども、六・五%の国民所得の範囲内に医療費をおさめるために定率一部負担もお願いをしたい、こう思いますし、また、医療費の各種の適正化というものもやっていく、こういうことで今回の提案をしている次第でございます。
  73. 和田静夫

    和田静夫君 じゃ、別室でひとつ資料を提供して詰めますわ。それまでお休みだ。
  74. 石本茂

    委員長石本茂君) 速記をとめてください。    〔速記中止〕
  75. 石本茂

    委員長石本茂君) 速記を起こして。  暫時休憩をいたします。    午後二時五十一分休憩      ―――――・―――――    午後三時開会
  76. 石本茂

    委員長石本茂君) では、再開いたします。
  77. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) ただいま和田先生御提出の資料につきましては、しばらく検討の時期をかしていただきまして、次の機会に意見を述べさしていただきたい、こういうように思います。お許し願いたいと思います。
  78. 和田静夫

    和田静夫君 それでは、来週の委員会で答弁をもらってここの部分をさらに詰めることにいたしますが、大臣、私が言いたかったことは、局長も正確に今突き合わしてみましたら理解をされていましてね。問題は、そこでこの法律案が必要であるかないかの見解が少し分かれているところで、私は必要ないと、こう言っているわけですけれども、少なくともことし一年に限って今回の制度改革を行わずして、そして国民所得の伸び率以下に抑え込むことは可能です、この試算では。これは私がつくった数字じゃありませんで、厚生省がお出しになった数字をそのまま並べていってですからね、つくり上げているわけじゃありません。薬価の引き下げ分と医療費適正化とで五千四百億円削り込むことができるわけです。したがって、国民医療費は十五兆二百億円となるわけです。  これだけ問題の多い法律案を、国民医療費の観点からするならば無理に通す必要はない。じっくり論議をする時間をかける、そういうことが必要だと思って、予算委員会以来、「二十一世紀を展望して」という答弁をたくさん大臣からお聞きしましたけれども、その辺のことを考えても来年出直すべきだ、もっと我々と具体的に煮詰めていって出直すべきだということを考えていますが、ともあれ答弁は来週になりましたから、そこのところはさらに来週もっと論議をさせてもらいますがね。それで、私は何といいますか、今後の展望として薬剤費をどうするのか、これはやっぱり明確かつ具体的な指針を出されるべきだと思うんですよ。私の方は機械的な計算で出したわけですから、そういうものを厚生省からも出していただいて突き合わしていくということが当然だろうと、 そういうように考えます。  予算委員会でも示しましたように、薬価を一六・六%引き下げたけれども、なお市場実勢とは乖離があるんです。例えば日医工という会社がありますが、日医工のカリクロモン、この新薬価は二十四・一円です。ですが市場には四円から五円で出回っている。私が予算委員会指摘したとき八円だったんです。それがさらに半分ぐらいになっているわけですね。そういうふうに値引きされているわけです。薬価基準改定の根拠は、この市場の実勢にできる限り速やかに近づけるというところに私はあるんだろうと思うんです。中医協も公取もそういうような考え方をとっているわけでありますから、ことしドラスチックに引き下げたからもうしばらく引き下げないということにはならないというふうに思っているんですが、この点はどうでしょうかね。
  79. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 先生ただいまおっしゃいましたように、薬価算定につきましては、中医協の五十七年の九月の答申にもございますように、「市場において形成された実勢価格が薬価基準に迅速、適切に反映される」ということでございます。毎年薬価基準の改定を行うわけでございますが、その前提として薬価調査を行う。この薬価調査につきましては、実勢価格を調査をいたしまして的確に把握をいたしまして、それを薬価に反映させるということで、この方針については変わりはないわけでございます。
  80. 和田静夫

    和田静夫君 薬価調査でありますが、この薬価調査の時点だけ基準価格に近い線に価格を指示して、そして終わってしまうとダウンさせる、これはどうも業界の常識のようなんですよ。メーカーは、調査時点では高い価格で卸して、そして調査が終了しますと差額を払い戻すなりあるいは製品で渡すなりしているわけですね。そういう価格操作が行われているのはよもや御存じないはずがないだろうと思うんです。したがって、薬価調査で把握された市場実勢価格はフィクションなんですね、私をして言わしむるならば。この点は業務局どういうふうにお考えになっているんでしょう。
  81. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 薬価調査は、申すまでもなく市場で行われておる価格を的確に把握するということでございます。薬価調査のあり方につきましてはかねてより国会でもいろいろ御論議があったわけでございますが、先生御案内のように、薬価調査は、薬価本調査、自計調査、これを丸一カ月行います。今回の改定で申しますと、四月取引分につきまして五月で自計調査を行う、さらに他計調査ということでその辺をチェックをするということを、これは流通調査官等を増員をいたしまして的確に把握をするということで努力をいたしておるわけでございます。  世上言われますように、薬価については極めて低い納入価格で行われているじゃないかということが言われるわけでございますが、これも先生御案内のように、医療機関に納入する場合には個々に価格交渉を行いまして納入をするわけでございまして、薬価調査につきましては、全販売サイド、それから医療機関につきましては、病院については十五分の一、診療所については百分の一を調査をいたしまして全数を把握いたします。したがって、中には低いものもありますし高いものもある。それを全体をつかみまして的確に薬価に反映させるということで行っております。  私ども、今後とも薬価調査の本旨に沿いまして的確な実勢価格が反映されるようにということで努力をしていきたいというふうに思っております。
  82. 和田静夫

    和田静夫君 私は、今いろいろ御答弁がありましたけれども、フィクション、虚偽の市場実勢価格をもとにしてどうも薬価基準が決められる、結局そういうことになっているという感じがして仕方がない。それが市場実勢よりもはるかに高いというのは、それは当然だと思う。九〇、八一バルクラインという制度を前提にしても高いのは、これはもとが間違っているから当然そうなると私は思うんですよ。私は一度卸なり代理店を抜き打ち調査やってみたらどうだと思うんですね。これは調査時点、協力してくれる、してくれないの問題等があって御苦労なさっているんでしょうけれども、一遍ぐらい抜き打ちでやってみなけりゃ実勢は出てこないんじゃないだろうか。大臣、そういう調査を一遍指示されませんか。
  83. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 薬価調査のあり方につきましては、先ほど申しましたように、かねてより適切な実施という面でいろいろな御議論がございました。薬価の本調査につきましては一カ月間完全実施をする、それから調査容体につきましても、トンネル卸しの排除など、いろいろ調査方法についての改善に努めてきたところでございます。  ところで、先生の今御指摘の、抜き打ち的にたまにはやってはどうかというようなお話でございます。ところが、これも先生御案内のように、薬価調査というのは販売サイド、購入サイドの協力を得て実施しておる、事務的な面も含めまして調査客体の協力を得て実施するというのが基本になっておるわけでございます。そうして、その正確性のチェックというものを他計調査を通じまして実施をしていくということで、私どもとしましては、今後ともこの調査というものを的確に把握していかなけりゃならぬと同時に、調査客体の協力というものも十分得ていきたいということで、何にも増しましてこの薬価調査の使命というものが十分達せられるという点に基本を置きつつ、これからも努力をしていきたいというふうに思っております。
  84. 和田静夫

    和田静夫君 私は今、日医工のケースを挙げたんですが、どうもこの日医工という会社は業界の中でもダンピングで鼻つまみになっているようなんですが、これは関西の開業医に出回っている日医工の値引きのリストなんです。非ステロイド系消炎剤、これが旧価格で十五円から七十二円のところが、驚くなかれ、三円五十銭から二十円となっていますよ。解熱鎮痛剤のリウマピリン穎粒、これは旧薬価二十円を七円、六割五分引きです。ほとんどが六割から八割引きなんですよ。まあお言葉ではありますが業務局、日医工ぐらいに限ってでも特別な調査をすべきだろうという感じがしますね。これはもう非常にひどいよ。
  85. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 具体的な事例を挙げてのお尋ねでございますが、現在私ども、この三月に薬価改定が行われ、六月二日に後発品の収載が行われまして、その後の価格が落ちついたところで薬価調査という段取りになるわけでございます。  そこで、この薬価調査につきましては、繰り返すようでございますが、実勢価格を的確に反映するということが使命でございます。御指摘のございました具体的な事例につきましても、今後の薬価調査の実施に当たりまして御指摘の事例というものも十分頭に踏まえまして調査を実施していくようにしたいというふうに思っております。
  86. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、やっぱり薬価調査は改善の余地がありますよ、これ。流通調査官を大幅に増員されて、そして的確に実態をつかむことが必要だと思うんですが、大臣、この薬価調査で見解。
  87. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今先生から、大変貴重な、具体的な事実等のお話を通じての御意見がございました。これは大変重要なことでございますので、私ども、実勢価格をできる限り正確に把握するための調査方法を改善する努力は毎日続けていかなければならないものと考えますので、今後、先生の貴重な御意見等をも参考にいたしながら、より正確な実勢価格を把握するための調査方法の改善に努めてまいりたいと思います。
  88. 和田静夫

    和田静夫君 文部省、大変お待たせしました。  ことし三月に新薬価が決まったですね。その後、各病院、医療機関で新規の契約が行われているわけでありますが、新薬価よりも高い水準で契約がなされたところはないでしょう、厚生省。  それで文部省、東大病院ですが、東大病院は対薬価基準価格化何%で契約されましたか。
  89. 西崎清久

    政府委員(西崎清久君) ただいま先生お尋ねの、東大病院に係わる医薬品の購入状況でございますが、私ども、五十九年四月と五十九年五月の契約分の数字を持っております。  四月について申しますならば、薬価総額が一億九千九百万円余でございますところ、購入金額は一億七千二百万円余でございまして、値引き率が一三・八%となっております。さらに、五月分につきましては、薬価総額が二億九千万余でございますところ、購入金額が二億四千九百万円余でございまして、値引き率が一四%というふうな結果に相なっております。  以上でございます。
  90. 和田静夫

    和田静夫君 大臣御存じのとおり、東大病院は事実上のプライスリーダーだと言われているわけですね。今文部省から答弁がありましたように、ここでも新薬価どおりに取引されているわけではないわけですね。理論的に言っても、薬価基準価格は市場実勢価格の上限価格だということになるわけです。つまり、裏返して言いますと、バルクライン方式に基づく薬価基準という制度自体はどうも論理的にも必ず差益を生み出す制度になっているんじゃないだろうか、そういうふうに考えるんですが、これ、いかがでしょうね。
  91. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) バルクライン方式は必然的に薬価差益を生じさせるシステムではないか、こういう御指摘でございますが、確かにバルクライン以下のところにつきましてはそういうことが必然的に生ずる制度でございます。
  92. 和田静夫

    和田静夫君 文部省、結構です。  さらに、このバルクによる薬価基準算定制度は、差益を解消しよう、市場実勢価格に近づけようとすれば、何か常に引き下げられなければならないはずでしょう。何かの競争のように、カメに永遠に追いつくことができないという状態。薬価基準価格は市場実勢価格に追いつくことはできませんね。私はバルクライン方式の矛盾を指摘しているわけで、このプライスリーダーである東大病院ですら昨年度は旧薬価の八三・三%、そういう形で医薬品を購入していたとなりますと、どこがバルクラインの九〇%から一〇〇%の間で医薬品を購入していたのだろうかという疑問が生まれるんですよ。  それで、今回の改定に向けての薬価調査において、このバルクの九〇から一〇〇%、あるいは八一%から一〇〇%の水準で購入していた医療機関、これはどんな経営主体の医療機関ですか。
  93. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) それぞれの薬によって違いますが、九〇から一〇〇ぐらいのランクに入ります医療機関は、主として公的な医療機関が多いのではないか、こういうように考えられます。
  94. 和田静夫

    和田静夫君 東大病院を初めとする国立医療機関においておおむね八〇%の対薬価基準価格比で医薬品を購入している。民間はもっと低いはずですね。となりますと、トータルで九〇から一〇〇の間で購入している医療機関は想定できないですよ、局長。自由に価格が形成されているという前提に立つ限りこれは想定できませんね。この疑問はどういうふうに解いてくれるんでしょう。
  95. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 確かに、実際上の商売の過程におきまして何%の値引きをするかというのは、いろいろな形態があると思います。私ども、和田先生が予算委員会で御質問になりましたときの資料をいろいろ見ましたところ、例えば九〇から一〇〇のランクに属するものが、ある薬では一一・九%を占めておりますし、ある菜では五・三%、ある薬では一・〇%。そのランクに属する価格帯というものは非常に少ないのでありますが、パーセンテージとして若干上がっておるところを見ますと、やはり九〇から一〇〇のところで買っておる。つまり、値引き率が一〇%以内のところが少しはあるということではないかというように思います。  理論的に、従来の薬価基準の一〇%以内で買っておるという医療機関はあり得るでしょう、理論的にはあり得るんだろうと思います。実際的には今申しましたように非常に数が少ないわけでありますが、理論的にはあり得る。しかし、一たん改正をしますと、今度また九〇から、一〇%ぐらいのところで買うというのが少数ながらある、こういうことになっていくのではないかと思います。
  96. 和田静夫

    和田静夫君 一応業務局の調査が正しいとして、メーカーが何らかの非市場的操作とでもいいますか、そういうものによって価格支持政策をとっているということになるわけなんでしょう。その全貌を明らかにできますか。
  97. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 医薬品の納入は、医療機関との間におきまして薬価基準というものを前提といたしまして個別の価格交渉が行われるわけでございます。製薬メーカーあるいは卸、これも企業でございますので、できるだけ高く売りたいという気持ちを持つのはこれは当然のことだと思います。また、医療機関は、現実問題として薬価差に期待するということで、できるだけ安く購入をしたいということが行われる。そこで価格交渉が行われるわけで、三月に薬価改定が行われましてから今日までもうすでに四カ月余りたったわけでございますが、いまだに価格設定ができないところもかなりあるわけでございます。メーカーも一生懸命でありますし、また、医療機関の方も、できるだけ経営努力ということでやっておるというのが現状だと思います。  そこで、製薬メーカの立場に立ちますと、できるだけ高い値段で納入をしたいということでございますが、一方におきまして価格面だけでなくて、あるいは景品をつけるとか、そういった面での操作が行われる、こういったことが従来から指摘をされておりまして、こういったところに非常に不明朗な面があるということで、サンプル規制を中心としました公正競争規約というものも制定され、この七月から実施をされたわけでございますが、私どもとしては、薬価基準のもとにやはり公正な自由競争のもとに行われるということにつきましては、これは認めていかなきゃならない。しかし、一方におきまして、不公正と思われるようなものがあれば私どもとしては十分指導し、また、チェックをしていかなければならない、こういうふうに考えております。
  98. 和田静夫

    和田静夫君 きょう持ってきませんでしたけれども、メーカー側のバンフの「製薬産業と薬価基準」を読んでみましてびっくりしたのは、まあびっくりすることもない、彼らにとって常識でしょうが、「販売数量の一部分のみの価格を維持しようという販売姿勢も生じます」というメーカーのバンフになっているんですよ。私は、もうこれだけ問題になっているんですから、やっぱり医薬品流通市場実態の全貌を調査する委員会でも厚生大臣のもとなりあるいは業務局長ですか、とにかく新しいそういうような委員会でもつくって、流通市場実態調査というのを、全貌を調査してみることが必要じゃないでしょうかね。
  99. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 数年前に医薬品の流通実態調査というものを実施したわけで、これは先生御案内だと思いますが、なかなか医薬品の流通実態というのは難しさがございます。人によっては複雑怪奇であると言う人もいるわけでございますが、非常に長い歴史のもとでなかなか解明できない点もございます。それはやはり何にも増して現在の流通機構というものが、前近代的と言っては何でございますが、非常に解明しにくい面があるということでございます。  そこで、委員会と御指摘ございましたが、私どももこの点が非常に重要だということで医薬品流通近代化協議会というのをつくりまして、これにはメーカー、卸の代表の人も入ってもらう、それから学識経験背も参加をしてもらいまして、今の流通でどういった点が問題があるのか。例えば取引条件の改善であるとかモデル契約の設定であるとかいったような問題、その前提としまして、今日いろいろ言われております流通の実態面での問題点というものも浮き彫りにし、これからの国民から納得されるような方向に持っていく努力をしたいということで、今せっかく協議、検討を続けておるわけでございます。
  100. 和田静夫

    和田静夫君 薬価差益に戻りますが、厚生省としては、この薬価差益をどのように位置づけられているんですか。一言で言って薬価差益というのは必要悪だというふうな形で認めているということでしょうかな。
  101. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、先ほど先生御指 摘のように、現在のバルクライン方式をとる以上薬価差益というものは必ず生ずるであろう、こういうように考えております。したがって、薬価調査を適時適切に実施することによりまして、薬価基準の方を実勢価格に合わせていく、こういう方策をとっておるわけでありますが、それにいたしましても、個々の医療機関をとりますと、必ず薬価差益というものが出る医療機関が生ずるのは、これは今の制度から必然的に生まれるような仕掛けになっておるわけでございますので、その限りにおいては必要悪だと言わざるを得ないと思います。
  102. 和田静夫

    和田静夫君 この同じ薬価差益でも、民間開業医、医院の場合と病院の場合とでは、機能が違うと考えますね。これはどういう見解をお持ちでしょうか。
  103. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、医療機関の差によって機能が違うかどうかということはよく明確につかむことはできませんが、私ども一般的に考えておりますところによりますと、病院の場合には経営費の不足というようなものを薬価差益によって埋めておる、また埋めるために薬価差益というものを利用しておるというような面がある、こういうように考えております。  それから、一般の診療所の場合にももちろんそういう面があると思いますが、それは恐らく医師の所得というようなものに還元される部分がかなりあるのではないか。そういう意味において、病院の場合には人件費を払う一つの手段というようなことで薬価差益というものが活用といいますか、利用といいますか、そういうところに使われるということになりましょうし、開業医の場合は、一部経営の費用、それから一部は医師の所得になると、こういうようなことになるのではないか、こういうように考えております。
  104. 和田静夫

    和田静夫君 先日、税務調査の報告が発表されました。相も変わらず個人病院と開業医が脱税業種になっているわけですが、個人病院が平均千四百七十四万円、産婦人科医が七百十二万円、小児科その他が七百十万円の所得隠しをやっているわけですね。  国税庁、これは実調率は極めて低いわけですが、実際にはかなりの個人病院と開業医が脱税をやっているというふうに類推をされますね。いかがでしょう。
  105. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) 国税庁といたしましては、税務の基本は適正、公平な課税を実現するということでございまして、このために各種の施策を講じて、申告水準の維持向上に全力を尽くしているというのが私どもの実態でございます。  私どもとしては、大多数の納税者は適正に申告をしていただいているというふうに考えておりまして、このことは基本的には開業医も含めたいわゆる医療業を営む方についても同様であるというふうに基本的には考えております。ただしかし、調査の結果を見る限りでは、ただいま先生が御指摘されましたように、多額の申告漏れという実態がある業種もございますし、また、そういう医療関係者があることも事実でございますし、そういうことにつきまして、私どもとしては、適正に納税をしている納税者とのバランス上も非常に残念なことでございます。  今後ともそういう申告漏れが多い業種、申告水準が低いような業種につきましては、重点的な調査を行いますとともに、業種指導等充実いたしまして、適正な課税の実現に努める、このように考えております。
  106. 和田静夫

    和田静夫君 もう一問ですが、先ほど来お聞き願ったように、薬価差益という不明朗なものが存在をする。これが個人病院や開業医の所得隠しの一つの温床になっているというふうに考えられるわけですが、これは実調を踏まえて何か御見解があれば承りたいと思います。
  107. 冨尾一郎

    政府委員(冨尾一郎君) 先生御指摘の、薬価基準と実際の購入価格の差ということは、私どもの税務調査の段階でも事実として把握しております。しかし、税務上は所得金額というか、収入金額というのが片一方にございまして、これの必要経費として現実に購入いたしました薬価を差し引くという形で医療保険業の所得金額は計算されるわけでございますので、税法上は、薬価基準で必要経費を算定するということではなくて実際の購入価格で算定をされますので、薬価の差益があるかどうかということにつきましては、税務上は関係のないことであろうというふうに私どもは考えております。  ただ、お話しのように、薬価基準と実際の購入価格に差があるということは、通常のいわゆる診療報酬なりいろんな基準の中で想定をされますお医者さんの所得というものを実際以上に、そういう一般的な基準的な考え方以上に現実に膨らませるという効果がございます。このために、結果といたしまして、経費を水増しするとかいうようなことによりましてあるいは所得金額を圧縮するというような動きがないわけではないというふうに考えております。  ただ、私どもの調査の実態から申し上げますと、医療関係におきます過少申告の態様の主たるものは、自由診療を初めといたしますいわゆる現金収入の除外による過少申告というのが一番多うございまして、その次に経費の水増してございますが、こういうことで、必ずしも薬価差益があるということで申告漏れが大きくなっているとか、申借漏れを防いでいるというようなことは必ずしも言えないのではないかという感じを持っております。  さらに敷衍をさしていただきますと、社会保険診療報酬につきましては、租税特別措置法によりまして必要経費の特例規定が制定されてございます。したがいまして、この適用を受ける場合には、その診療報酬の必要経費であります薬価につきましては、薬価基準だとか実際に購入価格が幾らということとは関係なしに、診療報酬の収入の金額に応じまして一定の率を掛けました必要経費率が算定をされ、これを差し引いて所得が計算される、このような仕組みになっているわけでございます。
  108. 和田静夫

    和田静夫君 国税庁、ありがとうございました。  厚生大臣、医師優遇税制によって特典を与えていましても、どうも依然として脱税が後を絶たない。財政難の折でもあるわけですから、どうですか、この辺で英断を下して医師優遇税制を撤廃するぐらいのことを答弁をされたら。
  109. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私も税のことは余り詳しくありませんが、五十四年、当時私も党の税制調査会の委員をしておりましたけれども、問題になっておった医師優過税制はかなり思い切って是正をされたものと承知をしております。それでもまだ不十分であるという、今後の問題等については、これは税の問題ですから、これは私が改正するとかしないとか言う立場にはないと思います。
  110. 和田静夫

    和田静夫君 薬価差益をなくすことで病院経営が困難に陥るという現状については、私は十分理解しているつもりであります。それはむしろ、この診療報酬体系の抜本的見直しによって解決すべきであると考えるわけですね、それはまあ後で触れますが。そこで、まずは薬価差益を解消していく方法を考えるべきだと思うのです。これまで指摘してきましたように、バルクライン方式はどうも論理的にも実態として差益を必然的に生み出すやり方であると指摘をいたしましたし、局長もそれを深く認識をされています。厚生省、私はもうそろそろバルクライン方式の再検討に入るべきではないだろうか。  大臣、例えば一例ですが、イギリスのように製造コストに一定のマージン率を掛けるという、そういう薬価決定方式も一つの改善策ではないだろうかというふうに思うんです。ここらで薬価算定方式の抜本的改正を決意をされる、検討に着手するというふうにお考えになりませんか。
  111. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 薬価の問題、大変難しい問題です。私も大臣に就任してこの説明を最初に聞いたころは、厚生大臣に就任するまで商工関係の仕事をしておりましたから、物の値段という のは当然にコスト計算、いずれにしても生産費方式というものはどういう形にしてもある程度取り入れられておるものかと思いましたら、この薬価については研究開発費が非常に大きなウエートを占めるもので、その時点での製造するためのコスト計算というもので価格を決めることは極めて困難であるということのようであります。そのために、いわゆるゾロゾロメーカーというようなものもいろいろ出てきたり、今先生から御指摘のありました、基準価格と実勢価格が非常に隔たりが出てきたり、同じ品質の製品がいろんな価格で売られるとか、いろんな問題等があるようでございます。  今医薬品の基本問題に関する懇談会も厚生省でやっておりまして、私も何回か出て、かなりの識者の方からいろんな御高説をちょうだいしておるのでありますけれども、残念ながら浅学非才の私には、今ここで先生に御納得の得られるような、こういう方法でやりますから御安心くださいと言えるような方策を持っておりませんのが残念でありますが、今の先生の御指摘の問題、これは予算委員会当時から私も非常に傾聴をしておるのでありますが、薬価について、今後我々がやっていかなければならない医療施策の中で極めて重大な問題であり、今後改善すべき多くの問題を抱えておるということは先生と同じ認識でございますので、今後検討を重ねてまいりたいと思います。
  112. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) バルクライン方式に欠点があるということは承知をいたしております。ただ、現在の方式というのは、五十七年の九月の中医協の答申に基づきましてやっておるわけでございます。その後二回ほど薬価基準の改正をやったわけでありまして、その答申の中にも、例えば国際価格を勘案するとか、バルクライン方式だけではない方式もいろいろやってみるべきだという御指摘もいただいております。したがって、そういうものを含めて検討をしてまいりたいと思います。  私ども、先ほど先生がおっしゃいましたイギリスの薬価算定方式、これは各メーカーの収益率あるいは利潤率そのものに介入をするような方式でございます。そこで、日本のような自由主義経済の場合に利潤率に介入するような薬価算定方式がとれるかどうか、これは相当難しい問題を含んでおります。自由主義経済の原則のもとにおきましては、やはり適正な研究開発や営業活動等自由に競争をするということが原則になっておりますので、我が国において利潤率に介入するというのは非常に難しいような気がいたします。そこで、一応私どもは、バルクライン方式には欠点があるもののこれを原則にし、国際価格あるいは原価、そういうものも勘案しながら今後薬価基準というものを考えていきたいというように現在では考えております。
  113. 和田静夫

    和田静夫君 コスト原理からしますと、例えば主成分の原料を輸入しているものですね、したがって研究開発費がそれほどかからないもの、それに銘柄別の薬価がつけられるというのはどうも納得できないんですね。主成分の原料を輸入しているということは、先発メーカーの研究開発費を見込んで薬価に差をつけるという理屈は通らないでしょう。少なくともそういうような製品は統一収載に戻すべきだというふうに考えるんですがね。これはいかがなものでしょう。
  114. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 先生御指摘のように、現在銘柄別収載方式というものをとっております。従来は統一限定の収載方式をとっておったわけでございますが、統一限定の収載方式にはまた非常に先発メーカーについて不利だというような欠点もありまして、銘柄別に変わっていった。そして、銘柄別を採用すると、今先生がおっしゃいましたようなまた欠点が出てくる。そこで私ども、銘柄別収載とそれから統一限定収載とのいいところを組み合わせて悪いところを捨てていく方式はないかということで、今いろいろな角度から検討をしております。  先生の御指摘の銘柄別の収載方式の欠陥につきましては、十分理解をしておるつもりでございます。
  115. 和田静夫

    和田静夫君 現行のこの薬価算定制度が続く限り、どうも私は健全な医薬品産業の育成はできないと見ているわけです。  厚生省、この長期ビジョンの中で、「医薬品の適正な生産・流通の確保、」云々「を図り、医薬品産業の健全な育成に努める。」とされていますね。薬価算定との兼ね合いでどういうような展望をここのところお持ちなんでしょうか。
  116. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 薬価基準につきましては、基本原則は市場価格、実勢価格を的確に反映させるということが基本であるわけでございますが、すぐれた医薬品を、良質な医薬品を安定的に供給するというのが医薬品行政の使命でございます。そういった面で、現在の薬価算定方式によった場合に果たしてすぐれた医薬品の開発意欲というものが損なわれることはないかということが一つ考えなければならぬ点でございます。  そこで長期ビジョンにおきましては、新薬開発についての推進といった問題、それから先ほど先生挙げられました医療ニーズに対応した医薬品の生産、供給の確保ということをうたっておるわけでございます。例えて申しますと、希用薬、まれにしか使われない薬というものにつきましては生産、供給が不足がちである、こういったものにつきましては現在でも薬価算定上配慮が加えられておるわけでございますが、こういった点についての配慮はどうしても必要である。あるいはまた、小包装品に対する採算面での配慮、あるいは特定品目に供給過剰になると、そういった面での防止、要するに生産面、供給面につきまして必要なものが供給され、不必要なものは――不必要と申すとなんでございますが、必要にして十分なものは供給されるような配慮をしていくということが健全な医薬品産業を育成していくためにも必要ではないかということで、特にこの長期ビジョンで項立てをして述べられておるわけでございます。
  117. 和田静夫

    和田静夫君 医薬品産業の産業規模ですね、座業規模についてはどういうふうな展望を描かれましょうか。
  118. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 我が国の医薬品産業というのは、省資源、知識集約型の産業というふうに言われております。そして、今後我が国が発展していく上で、医薬品産業というのは我が国にとっても非常に重要な産業であるというふうに私ども認識をしております。  それで、やや長くなって恐縮でございますが、これまでの医薬品産業というものを振り返ってみますと、国民皆保険後非常に国民医療というものが伸びてきた。そういう中で医薬品産業というものも伸びてきたわけでございますが、同内市場というものが恵まれておったために国内市場依存という傾向があったことはぬぐい去れないわけでございます。そういう中で、外国で開発された医薬品をあるいはバルクで輸入をしましてつくっていくとかいうようなことで、技術開発という面でこれまでの我が国の医薬品産業というものは必ずしも十分でなかったのではないかということで、この数年かなりの改良は加えられてきておりますが、やはりこういった厳しい状況の中で、腰の強い、そうして将来性のある医薬品産業というものを育てていかなければならないということが一つあると思います。  それから、やはり現在製薬メーカーというものが非常に数多いということでございますが、自由で公正な競争がなされるということは、これはぜひなされなければならないわけでございますが、やはりそれぞれのメーカー、企業というものがより発展していくというためには、それぞれの持ち味を生かした行き方というものも考えていかなければならないのではないか。これまでの国内市場が恵まれてきた医薬品産業の背景とはここが非常に違ってきておるという中で、これから国民にすぐれた医薬品を供給できる腰の強い医薬品産業を育て上げていかなければならない。これはメーカーを初めとする企業の方々自身のこれからの踏ん張りにも大いに期待をしていかなければならないというふうに私ども考えておるわけでございます。
  119. 和田静夫

    和田静夫君 私は、医薬品について、市場メカニズムを通したコストの低減とでも言いますか、適正な価格が形成されるべきだと考えるのです。また、医薬品産業は、今も言われましたように大変激しい競争をしているわけですが、競争のメリットが全く国民に還元されていませんよね。現行の価格形成は余りにもブラックですよ。もう本当に不明朗だという感じがいたしますね。少なくとも市場メカニズムを活用するような方向でこの価格問題を考える、そういうことが必要だと思うんですが、御見解ありますか。
  120. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 現在の薬価というのが、市場の実勢価格を的確に把握をいたしましてそれを反映するということであります。それで、薬価のもとにメーカーなり卸と医療機関との間で自由な価格交渉というものが行われるわけでございますが、これが自由かつ公正に行われる限りにおきまして、これは市場メカニズムというものが生かされていくわけであります。  私ども、この公正でかつ自由な競争というものに期待をするわけでございますが、先生からも御指摘があり、これまでも各方面から指摘がありますが、医薬品の流通につきましてはなかなか理解しがたい面があるということで、これはやはり反省をしていかなければならないということで、先ほども申しましたが、サンプル規制を中心とする公正競争規約の策定、実施というものも、これがすべてではございませんが、その一つであると思います。  それから、先ほども申しましたが、自由な競争のもとに、国民に喜ばれると言うとあれですが、国民の生命と健康を守る医薬品については生命関連商品と言われておりますが、こういう企業の本質に照らした使命というものを忘れてはならないということで厳しい競争をされ、いい薬がどんどんつくられるということは結構でありますが、現時点におきましては、必ずしもどうかなという面もございます。やはり、それぞれが持ち味を生かし、公正かつ発展的な成果が得られるような市場形成というものがなされるということがこれから大変必要なことではないかというふうに思っております。
  121. 和田静夫

    和田静夫君 私は、医薬品産業は、今後薬剤費の圧縮の中で産業再編成に追い込まれていくのではなかろうかと見ているわけですが、その意味では、今後雇用問題が発生してくる可能性というのも非常に強いわけですね。  そこで厚生省現行の検討機関とは別に、先ほども流通の近代化協議会などというお話がありましたが、医薬品産業の産業組織ですね、あるいは流通価格等について幅広く検討する機関を、それこそ労働者、労働組合の代表も入れてつくる必要があるというふうに考えているんですがね。この辺は大臣どうですか。
  122. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今お話し申し上げましたように、医薬品の問題、極めて重要だということで、医薬品に関する基本問題を検討する会もございます。また、関係者が集まって相談する会もございます。そういうことから、今度先生今お話しの新しいものをつくる、それらとの関係がどうなるか、あるいは屋上屋を重ねてはどうかといったようないろんな点がございますが、先生のお話は極めて大事なものでございますので、今後検討してみたいと思います。
  123. 和田静夫

    和田静夫君 あと若干医薬品を続けますが、医薬分業なんですが、この長期ビジョンは、「医薬分業の基盤づくりの促進」ということになっているわけですね。医薬分業の論議、私自身、始めてから非常に長い論議をしているわけですが、これ、医薬分業の促進とはなっていないんですよ。調剤センター、検査センター、そういう整備もよいことではありますけれども、具体的に医薬分業を進めていく計画を立てるべきではないだろうかと考えるんですよ。  どうですか、急テンポで医薬分業を拡大していくというような発想になりませんか。
  124. 正木馨

    政府委員(正木馨君) この長期ビジョンに「医薬分業の基盤づくりの促進」ということがうたってあるわけでございますが、これはもうかねてから言われておることで、先生のお尋ねは、もっと急テンポで計面的に実施をすべきではないかということだと思います。  私どもも、この医薬分業の推進ということは極めて重要な課題だというふうに考えておるわけでございますが、私ども、まず言わせていただきますと、この「医薬分業の基盤づくりの促進」とは一体何かと申しますと、一つには、やはり我が国におきますこの問題についての長い歴史と経緯という中で、やはり関係者の理解と合意というものを得ることがどうしても必要であるというのが一つございます。そういうことで、医薬分業の推進懇談会ということで三師会の代表と学識経験者が参加をされまして今後の問題について検討に入っておるわけでございます。それから第二には、やはり国民に対するPRといいますか、広報活動というものが二つ目に必要である。それから三番目に、先生の御質問にあったわけでございますが、受け入れ態勢ということで、検査センターとか調剤センターの整備という、この三つが基盤づくりでございます。  私どもとしても、これは計画的に実施したいという気持ちは重々持っておるわけでございますが、何にも増してこの医薬分業の問題はやはり関係者の合意の形成と意識の問題があると思います。非常に平たいことで言わせていただきますと、やはり国民の側に立ちましても、この医薬分業というのは、そもそもがお医者さんは診断と治療の専門家がある、薬剤師は調剤についての専門家である、それぞれの専門機能を生かして国民医療の質を向上させるということがその基本にあるわけでございますが、私は、国民の立場からして、やはり薬の専門家は薬剤師さんである、薬屋さんのところに行って相談を受け、調剤をしてほしいという気持ちが起きるようなことが必要だと思います。そういう面ではやはり薬剤師さんの側におきましてもより一層の資質の向上を図っていかなければならないのではないか。それから、国民の側にそういった気持ちを起こさせる、起こさせると言ってはなんですが、起こしてもらうようなやはりPRというものも徹底していかなければならない。  そういうことで、大変長くなりましたが、私どもといたしましては、先生御案内のところだと思いますが、この医薬分業につきましては、現在まだ水準は低いわけですが、介国的に見ますと非常に成績のいいところもある。例えば長野県の上田地区であるとか広島県の因島地区であるとか、これはかなりの成績を示しております。そういったところで一体どういう苦労があったのか、どういったところにその医薬分業推進に当たっての隘路があったのかといったようなことを十分分析をし、そうして、これまで実施がおくれているところにハッパをかけていくと申しますか、参考にしていくというような努力を積み重ねていきたい。そういった地道な努力を今後とも十分重ねていって、やはり医薬分業の本旨というものを十分国民方々にも理解していただき、この促進を図っていきたいというのが私どもの偽らざる気持ちであるわけでございます。
  125. 和田静夫

    和田静夫君 小野薬品の人工流産剤、プレグランディンについてですが、厚生省は慎重な取り扱いを通知されているわけですが、なお私は不安が残ると思います。臨床例では、母親が死亡したケース、胎児が生きたまま出てきたケースなどがあったようでありますが、これは何例ぐらいあったんでしょうか。
  126. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 人工流産剤のプレグランディンにつきましては、この五月三十日に承認をいたしたわけでございますが、私ども、承認審査に当たりまして提出をされました審査データにおきましては、本剤による妊娠中絶によりまして生児が生まれた例及び妊婦の死亡例はないということでございます。
  127. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、名大医学部の蜷川さんという開発者、助教授がいろいろ報告をされているものの中で、私は素人ですが、ほぼ一%にそ のような例が見られたという愛知県産婦人科医会の例というのがありますね。私は、これちょっと読みながら、胎児が生きて出てきたケースというのは、意識的にやろうとしますと、人工的に未熟児をつくり出していくということができることにつながらないだろうかということを考えるんですよね。あるいは母親、母体が死亡するケースがあったと報道されているわけですけれども、そうなれば、この薬品の使用について患者家族の同意を必要とするということになると思うんですね。そういう点はどうでしょうね。
  128. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 先生の御指摘のは、五十九年の六月二十七日の東京新聞の記事で、このプレグランディンにつきまして、名大の蜷川助教授の記事が載っておるわけでございます。実は、先生から御指摘を受けまして、私もおくればせながらこれを読んだわけでございますが、そこで心配なので直接蜷川助教授の方にもお伺いをいたしました。必ずしもこの新聞記事のとおりではないようでございまして、蜷川助教授のおっしゃいますには、妊娠中期であれば、流産した胎児はすべて死亡と申しますか、しておると、ごくまれに筋反射が残っているような場合もあるけれども、心臓も停止しておって呼吸を開始するというような例はないということを先生は言われております。この先生は、一%という数字は記憶はないが、この筋反射という面であるいはそういうことが書かれておるのかもしれない、いずれにしても生児が生まれ出るというケースはあり得ないということを言っておられます。さらに、WHOでも二十四週未満の中絶というのを、二十四週ですから六カ月未満の中絶を認めておるのは、生存不可能な時期にあるからだということでございます。  御案内のように、この人工流産剤のプレグランディンは、「妊娠中期の治療的流産」ということで、三週間から六週間までということでございます。そこで、妊娠後期になりますと先生御心配のような例も出てくるわけでございますので、その点は十分周知を徹底していかなければならないというふうに考えております。
  129. 和田静夫

    和田静夫君 この小野薬品の製品は、輸出されますか。
  130. 正木馨

    政府委員(正木馨君) その前に先生、今私三週間から六週間と申しましたが、それは間違っておりまして、三カ月から六カ月でございます。十二週から二十四週でございますので、訂正をさせていただきます。  それから、輸出の関係でございますが、このプレグランディンにつきましては、小野薬品工業が開発をいたしまして、現在生産段階に入っておりまして、八月早々には販売されるのではないかということでございますが、これは国内使用と同時に輸出も行われることになろうかと思います。
  131. 和田静夫

    和田静夫君 私は、この薬の流通管理は国内だけでは不十分だと実は考えているんですよ。メーカー側は、どうも輸出に期待をされているようです。これは素人が使うと非常に危険だと指摘をされているわけですね。例えば東南アジアなどに大量に輸出するということは、日本への逆輸入を含めて私たちは残念ながら考えざるを得ないと思うんですよ。注意深く考えなきゃならぬと思う。そういう意味で問題が多いというふうに思うんですね。覚せい剤などと同様に、密輸ルートがつくられる可能性などというようなものもやっぱり想定をしながらいかなきゃならぬ性質のものじゃないだろうかというふうに思っていますが、いかがでしょう。
  132. 正木馨

    政府委員(正木馨君) この人工流産剤のプレグランディンは、医薬品としては有効性、安全性の面で有用度の高い薬であるということで承認をされたわけでございますが、先生おっしゃいますように、この薬は素人が使いました場合には非常に危険を伴う薬でございます。そこで、中央薬事審議会でも慎重な審議のもとに――実はもう一年半以上前に薬としての有用性が認められるということで答申が出たわけでございますが、やはり使用面にわたっていやしくも問題が生じてはならないということで、これについての管理・取扱い要領というものの策定をいたしまして、そしてこれは優生保護医に限って使わせる、それから妊娠中期の治療的流産である、それから創業に指定をする、それからメーカー、卸、指定医の関係におきまして十分厳重なチェックをして、横流れがないようにということでチェックをいたしたわけでございます。そういうことで国内的には厳重な取り扱いができるということの目安をつけまして承認にしたということでございます。  ところで、これが輸出をされるということになりますと、一つには輸出先の国におきましてまた問題があってはいかぬということで、これはそれぞれの国におきまして規制をなさるわけでございますが、私ども小野薬品工業に厳重に指導をしておりますのは、輸出するに当たりましては、我が国においてはこういうような厳重な扱いをしているんだということをきちんと言ってもらうようにするということであります。それからもう一つは、先生御心配の、向こうに輸出したこのプレグランディンが海外旅行者を通じて我が国に逆に入ってくるということがないかということでございます。そういう逆輸入の形で海外に輸出されたプレグランディンを国内に持ってきて販売するということになりますれば、当然のことながら薬事法による無許可営業ということになりますので、そこで十分チェックをしてまいります。  ただし心配は、個大使用という形で持ってくるということになると、ここがまた非常な心配でございます。それはやはり個人個人の方に、個人が素人療法で扱った場合には大変心配なことになるんだということを十分周知徹底をしなければならない。と同時に、輸入監視の面におきましても、薬事監視員等を活用いたしまして強力な行政指導を行って、そういう妙な使われ方をしないように、妙な輸入のされ方のないようにということを厳重に私ども目を光らせていきたいというふうに思っておるわけでございます。
  133. 和田静夫

    和田静夫君 第三世界で、例えば産児制限国がこの薬を初期中絶に使用する可能性もそれは十分にあるわけでしょう。その点の制限使用の手だてというのはありましょうかね。
  134. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 現在、プレグランディンにつきましてはまだ生産段階でありまして、国内でも販売されておりませんし輸出も行っていないわけでございますが、ただ、治験用としまして、幾つかの国から治験用ということで求めがありましてそれに応じている例がございます。例えばシンガポールとか、あるいは英国とか米国。ですから、シンガポールなんかでもこの薬についての臨床試験を実施中と聞いております。  そこで、これはやはりこのプレグランディンという薬が、専門の医師によって注意深く使用しなければ危険を伴うものであるということをそれぞれの国においても十分認識してもらうということが必要だと思います。そこで、先ほど申しましたように、我が国におきましては管理・取扱い要領をかなり厳重に定めておるわけでございますが、これにつきましても諸外国に、我が国におきましてはこういう厳重な扱いでやっていますということを言う必要があるんじゃないかということで、それぞれ輸出する国につきましてはそういった情報を提供する。それから、WHOには、この薬を承認したということで、こういう扱いをしているという既に報告をしておりますが、取扱い要領を今英文で翻訳をしまして、そして我が国においてはこういう形でやっておる、ゆめゆめ疎漏な扱いをしないようにということを諸外国にも徹底をしていきたいというふうに私ども考えております。
  135. 和田静夫

    和田静夫君 私は、人工流産剤を認可するよりも、避妊薬やらあるいは避妊器具を認可する方が、母体の健康や生命倫理の上から見てどうも先ではないかという議論があることを踏まえる必要があろうと思うんですね。なぜビルやIUDを認可しないのかという疑問が表明されていますね。この点はどうなんですか。
  136. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 先生おっしゃいますように、人工妊娠中絶を行うより避妊を行う方が母体保護の上からいきましても倫理の面から言いまし ても望ましいと、それもおっしゃるとおりだと思います。私どもも避妊薬とか避妊器具の有効性、安全性というものについてチェックを行いまして、そして有用性の高い薬剤等の承認、許可というものをこれまでもやってまいりましたし、今後もやっていかなければならないというふうに思っております。  しかし、避妊薬や避妊器具がございましても実際妊娠した段階におきまして、そして妊娠中期になりまして母体の保護の面から人工流産を必要とするというケースが出てくることもこれは事実でございまして、そういった面での人工流産剤の有用性というものもあると思いますが、先生おっしゃいますように、やはりこれから避妊薬とか避妊器具というものについても十分な検討を進めていかなければならないということはおっしゃるとおりだと思います。  ところでビルでございますが、ビルにつきましては、欧米諸国におきましては既に解禁されておるわけでございますが、我が国においては、これは月経困難症等の婦人科疾病の薬剤としては承認されておりますが、避妊の目的とした効果は承認されていないというのが現状でございます。  その理由は、やはり健康な妊娠可能年齢の婦人がこのビルは長期にわたって連用するわけでございますが、長期にわたって連用する場合には、ときとして重篤な副作用が生ずるというような報告が出されておるということも事実でございます。また、ビルの投与によって次の世代に対する影響についてもまだ十分解明されていない。既に利用されている国におきましても、そういった面で首をかしげているというような例もあるわけでございます。  こういうことでまだ完全に安全性という面で確認できないということで、我が国は踏み切れないというのが実情でございます。
  137. 和田静夫

    和田静夫君 先月警察庁が覚せい剤についての報告を発表いたしました。あれを読むと、主婦や少女にかなり急速に広がっているという実態が示されているんですね。  それで大臣、ここの部分の総括的な御答弁をいただきたいんですが、業務局長からはいろいろキャンペーンの問題についてお話しがありました。厚生省としてやっぱり警察の取り締まりに頼ってはかりいるのではなくて、私が申し上げたような危惧されることがたくさんあるわけでありますから、一大キャンペーンを行う必要があると思っているんですが、いかがですか。
  138. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 先生御心配のこと、私どもも心配しておることでございます。これは確かに大変な新しい薬だと思いますが、これは創業でございますから、使用方法によっては人を救うこともできますが、一歩使用を誤ればこれは人間社会に害悪をもたらすことになる極めて重要な問題でございますから、私ども、その使用方法というものについては国民の皆さん方に迷惑をかけてもいかぬし、また、外因の皆さんに迷惑をかけるようなことになってはならないのでありますから、これは厚生大臣が許可した薬でありますから、それが外国の人にも国内の人にも迷惑をかけることのないように、また、我々が望んでおるこの新しい薬が人の命を助けることにのみ役に立つように、立派に使用されるように、今後のあらゆる方法を考えながら努めてまいりたいと思います。  また、先生の、妊娠中絶よりももっと避妊薬の普及が大事じゃないかというようなお話だったと思いますが、まさにこれは予防にまさる治療がないのでありまして、そういう方面の開発にも努力をしてまいりたいと思います。
  139. 和田静夫

    和田静夫君 新薬の被験者についてですが、年間およそ何人が被験者になっていますか。
  140. 新田進治

    政府委員(新田進治君) 新薬の臨床実験でございますが、御案内のように、医薬品の開発のために新薬の臨床実験をやります場合には、五十五年に改正いたしました薬事法によりまして、厚生省に届け出を義務づけてございます。  それによりますと、大体毎年七十種ぐらいの新薬が開発されておりまして、大体一件につきまして百五十例のデータをとることになっておりますので、それが何カ所かになりますので、今現在実数は正確に把握しておりませんが、それが一応届け出の臨床実験でございます。それと別に、各病院におきましてお医者さんが、医師の裁量におきましていろいろ治験と申しましょうか、医療研究がなされております。そういう点についてはまだ実数を十分に把握しておらないところでございます。
  141. 和田静夫

    和田静夫君 被験者の同意を得ず投与しているケースがかなりあるように思われますが、そういう実態は把握されていますか。
  142. 正木馨

    政府委員(正木馨君) 今の審議官の答弁にございましたように、五十四年の改正におきまして治験の規定が入りまして、そして臨床試験を実施する場合には一定の基準に従って行わなければならないということで、その中では、被験者の同意を得るということが定められておりますので、同意のもとに行われているというふうに私どもは理解をしております。
  143. 和田静夫

    和田静夫君 何か専門家会議で規制案を作成中というふうに開いていますがね。私、規制案を早急につくられるべきだと思うんですが。
  144. 新田進治

    政府委員(新田進治君) 御案内のように、新薬の臨床実験に当たりまして、患者の同意を得るということは非常に重要な問題でございます。特に、人権を擁護する立場から、全く新たに生体に使うわけでございますので、当然患者の同意を得なければなりません。今局長から御答弁いたしましたように、昭和五十四年の薬事法改正に当たりまして先進諸国と同様の治験に当たっての同意を得ることを義務づけております。  ただ、御案内のように、日本の場合特に医師と患者の信頼関係がございまして、臨床の場で同意の得方、とり方が非常にいろいろございます。原則はリトンコンセントと申しまして書類による同意をとることが原則になっております。特に、アメリカとかヨーロッパとかはその習慣が非常に古くからございまして、そういう権利意識がございまして、そういう同意を得ることは非常に進んでおるわけでございますが、御存じのように、日本の場合は、お医者さんと患者のそういう信頼関係という上に成り立っての治療でございますので、リトンコンセントを原則とはいたしておりますが、合意によるオーラルコンセントと申しますか、患者の合意があれば臨床試験ができるようになっております。それからさらに、患者が全然そういう同意を得るような状態にない重篤の場合には、親権者である家族とかそういう人たちの同意を得ると、こういうことになっております。  それから、御案内の、日本でもそういう患者の権利を守るということで、今現在厚生省の中に諮問機関といたしまして、新薬の臨床試験に関します専門家会議というのを設置いたしまして、その中で臨床試験に当たっての医師の適正な臨床実験がいかにあるべきかということで、今数回にわたって議論を継続しておるところでございます。これにつきましては、いろいろ関係の専門家、特に医学関係者以外の法律専門家でございます弁護士、さらにはほかのそれぞれ斯界の専門家方々にもお集まりいただきまして、幅広く人権の保護の観点からの御検討をいただいております。これにつきましては、いずれその成案がまとまりますと、またその成案につきまして具体的な検討をやっていこうと、こういうことになっております。
  145. 和田静夫

    和田静夫君 その成案がまとまりますというのは、大体いつごろの時期ですか。
  146. 新田進治

    政府委員(新田進治君) 今の予定でございますと、年内にはまとまる予定でございます。
  147. 和田静夫

    和田静夫君 いわゆる長期ビジョンで、成人病予防について、国民健康づくりとかあるいは成人病対策の計画的推進とか、るる非常にいいことが述べられているわけですが、問題は実行計画がないですね、これ。実行計画を医療費の見地から組み立てていくことが私は求められていると思うんですが、これ、どこにも触れられていませんね。  厚生省ね、がん、脳卒中、心臓病が病気の主流になりつつあるというのであれば、まずこの傷病 別の医療費を算出をして、それを逓減させていくプロセスを具体的に明らかにすべきですよ。傷病別医療費あるいは傷病費用、これは出ますね。がん、心臓病、脳卒中、胃潰瘍などの消化器疾患、それぞれ幾らかかっており、構成比はどのくらいですか。
  148. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 五十六年度ベースの数字しかございませんので、それで申し上げます。  五十六年度の国民医療費は十二兆八千七百九億円でございます。そして、その中で悪性新生物、がんでございますが、七千三百六十六億、五・七%でございます。それから循環器系の疾患のうち虚血性心疾患、これが三千百十八億円、二・四%でございます。それから脳血管疾患、これが八千二百十三億円、六・四%でございます。それから消化器系、これは消化器の胃とか十二指腸とか、肝臓の疾患等も含んだ全部の数字でございますが、一兆五千百五億で一一・七%でございます。
  149. 和田静夫

    和田静夫君 傷病別のこの医療費がそういう形で出たならば、大ざっぱな削減計画を出すことは可能ですね。例えばアメリカのがんの直接費用の三分の一は――厚生大臣、たばこのことをいろいろ言われた経過がありますが、喫煙に起因する、こうなっているわけですね。その数値を類推をすれば、日本の肺がん費用約四百億円ですからね、喫煙を抑制すれば百億円削減できるということになりますね。脳卒中にせよ心臓病にせよ、どのような食生活、生活習慣をとれば幾ら削減できるというような目安ですね、そういう目安を得ることは可能ですね。  大づかみで結構なんですが、医療費削減計画をお出しになりませんか。
  150. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 将来、例えば今肺がんの数字を挙げられましたが、確かにたばこを吸わなくなれば、それがどれくらい肺がんの発生率が減るのかということがわかれば、そして国民がたばこをやめる、こういうことが確実に実施されるならば、数字の推計はもちろんできます。
  151. 和田静夫

    和田静夫君 いや、その数字を出して、私は、医療費の削減計画で数字が出てくれば、こんな法律案要らないという主張をするつもりなんで――
  152. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 老人保健事業の一環といたしまして、ただいま先生御指摘のような循環器疾病について、塩を減らすとか、あるいは食事の栄養バランスを考慮するとか、こういうことを強くこれから打ち出して現在進めておるわけでございますが、これまでの経験に照らしますと、非常にそういうことに熱心に取り組まれた地域の実績から見ますと、脳卒中の新発生というのは二割、三割ぐらい減っている、もっとそれに力こぶを入れれば五割減ぐらいまでは可能ではないかというような目安を置いて現在実施中でございまして、どのような衛生教育活動を行えばどのぐらい減るかという、定量的な計数というものがまだなかなか掌握できていないわけでございます。  将来そういった方向に向かってのやはり評価というものは極めて大切でございますので、現在取り組んでおります。そういう老人保健事業の中におきましても、並行しての評価のための調査研究というものは取り組んでまいりたいと、かように考えているわけでございます。  また、がんにつきましてもいろいろな要因が、それがどのぐらいがんの発生率を押し上げる上で寄与しているかというような、いろいろな研究もあることは承知しております。それに基づいてのいろいろな試算も出されておるわけでございますが、なかなか行政の方でそれを、どの計数をどのような判断で取り上げるかということについてはそれ自体いろいろ考え方もあるわけでございまして、そういったことも踏まえて今後検討さしていただきたいと思っております。
  153. 和田静夫

    和田静夫君 委員長、こんないわゆる大衆負担を求める法律案を出す前提が欠けているんですね。私は予算委員会のときから何遍も言っているんですが、これは私は細かい数字出せと言っているわけじゃありませんから、アバウトでもいいわけですが、詳細な計画を求めるというのは無理なことはわかっていますがね。しかしながら、これだけ重要な法律案を出しておいて、前提になるものはこれからいろいろ計画して計算していくんですというんじゃ、これはとても話にならぬ。大づかみな目標数値は当然出るはずですよ。そんなものが出せなくてこんな法律案出してくるなんて無責任なことは許せませんよ。これは出てくるまでは待ちましょう。
  154. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ビジョンの方でお示ししております十年間を目途に、脳卒中の発生率の半減、これは先ほど触れさしていただいたわけでございますが、また胃がん、子宮がんにつきましても、現在の早期発見、早期治療ということを推進することによって十年間の目標を死亡率三割減と、こういうふうに掲げておるわけでございます。これはあくまでも予防活動におきます一つの目標でございまして、その結果招来する医療の変化というものについてはいろいろとまだ検討を要するわけでございますが、その十年先に、仮にこの目標が達成された場合におきます疾病構造がどのようになっているかということを想定することがその医療費を推計する際に必要になるわけでございますが、これは膨大ないろいろな検討を要するわけでございまして、今そのような手持ちの指数、試算はまだ存在しておりません。  しかし、今後の活動を進めながらそういった問題については逐次固めてまいりたい。その一翼を私どもの局におきまして、老人保健事業においても担ってまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  155. 和田静夫

    和田静夫君 削減計画が出なくて、負担だけ増加させる法律案を平然と出すなんて、そんなこと、とてもだめですよ。
  156. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 将来の医療費の推計でございますが、国民医療費の総体の推計をいたしまして、例えばがんがどういう経過をたどるか、あるいは高血圧がどういう経過をたどるかということを、これを推計しない限り、なかなか各疾病別の医療費は出ないとこういう、これは御理解願いたいと思うのでありますが、例えばこの健康づくり対策の「胃がん、子宮がんの死亡率三割減」といいましても、死亡率は三割減るという目標を立てても医療費が三割減るかどうかというのはこれは別のことでございまして、死亡率を三割減らすために逆に医療費は非常にふえる、こういうこともあるかもしれません。それから「脳卒中発生率の半減」というのは、これは発生率を半減させるための予防対策をいろいろ講じていくことでございますので、これは恐らく医療費の推計はできると思います。  そういうようないろいろな前提なり予測というのは、今後の医学医術の進歩というような要素ももちろん入れていかねばなりませんので、非常に推計が困難。したがって、ある前提を置いて計算をするということはこれはできますが、なかなか責任を持った計画というものは私ども非常に難しいのではないか、こういうように考えておるわけでございます。    〔和田静夫君「それはだめです。少なくとも二十一世紀に向かって、取ることばかり考えているというような方向じゃ話にならない。論議をする基礎的な資料が出ない。これは医療費削減計画を出してもらいましょうよ。そんな、ふえるかもしれません、減るかもしれませんなんというような答弁じゃ話にならない」と述ぶ〕
  157. 石本茂

    委員長石本茂君) 和田先生、立って御意見をおっしゃってください。    〔和田静夫君「いや、答弁になっていませんから」と述ぶ〕
  158. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 先ほど申し上げましたような基本的に難しい点がございますが、ひとつせっかくの御提案でございますので、私どももいろいろな角度から検討をしてみたい。ただし、時期につきましてはかなり時間がかかるかもしれない、これだけはひとつ御了承を賜りたいと思います。
  159. 和田静夫

    和田静夫君 理事会でもやって取り扱いを協議 してくださいよ。これは非常に基本的なところでございまして、検討して結果を出して、次のときまでに出してもらうのなら次のときまでに出してもらうということで――(「議事進行」と呼ぶ者あり)
  160. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 先ほどから申し上げておりますように、非常に難しい問題でございますが、私どもできる範囲で次の機会に提出するように努力をさしていただきたいと思います。
  161. 和田静夫

    和田静夫君 じゃ、そこの部分は来週――次の委員会の前にくれなけりゃ、こっちもそれを見て検討しなければいけませんから、ずばり前というんじゃ困りますが――。
  162. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 次の機会と申しましたのは、来週ということではない気持ちなんでありますが、できるだけ早く検討をし努力をいたしますので、御了承を賜りたいと思います。
  163. 和田静夫

    和田静夫君 まあそれは私が質問できないようなことをやってもらっても困りますから、その辺のことは良識ある局長ですから、私の方も精力的にこうこうこういうやつが出るじゃないかということを言いますから、それに基づいて出してもらいたい。  もう一つ、国民医療費の削減という観点から考えてみますと、プライマリー・ヘルス・ケアは極めて重要な位置を占めるだろうと思うんですね。それで、長期ビジョンもこのプライマリーケアを重視した医療施設間のネットワークをつくる、こうなっているんですよ。あるいは、医療機能を高めるというふうに言っているわけですね。これ自体は私は非常に結構なことだと思うんですが、先進国の中で医療費を比較的に低レベルに抑えているデンマークなどの経験からも言えることじゃないかと思われるんですが、問題はこの分野でもいかに具体化させるということは全然ビジョンがないわけですよ。これは年次計画をつくってその財政的な保障をすることが重要なわけでしょう。それがなけりゃこれは絵にかいたもちですよ。画餅なのでありますから、具体的な計画を出さなければならないと考えますが、これは出るんでしょうね、これは。
  164. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 先ほど来お話しがございましたように、健康対策につきまして、健康増進から病気の予防に力を入れるべきこと、それからまたプライマリーケアを重視すべきこと、各医療機関の機能分担を図ること、全く同感でございます。  その第一歩といたしまして、今国会に御審議をお願いしておりますところの医療法の一部改正案におきまして、各地域の実情に合った医療計画を作成いたしましてプライマリーケアの推進を中心に機能分担を図っていく、こういう計画を立てておるところでございます。  また、具体的にこのプライマリーケアの推進につきましては、健康のすべてについて相談に乗り、普通の病気のほとんどについて的確な治療を行う家庭医というものを再構築すべきである、こう考えておりまして、その養成、制度化等につきまして検討を始めておるところでございます。
  165. 和田静夫

    和田静夫君 それじゃ、今はまだ具体的計画というのは出ないということですか。
  166. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 医療法につきまして御審議をお願いしておるわけでありますが、既に幾つかの県につきましては地域医療計画を策定しておりますが、これを逐次進めてまいる所存でございます。
  167. 和田静夫

    和田静夫君 これも答弁にはなっていないんですがね――。  この長期ビジョンで保健所の機能強化を言っておるわけですけれども、実際には保健所への補助金を実質的に削減するということをやっている。実際にやっているのは保健所の人件費の削減ですね。これはだれが見ても矛盾すると思われるんですけれども、大臣、どうですか。
  168. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 保健所は健康対策の第一線の機関でございまして、大変大事であると考えておるところでございます。  御指摘のございました件は、これもまた保健所法の一部改正の御審議をお願いしておるわけでございますが、地方公共団体の実情に応じて保健所の自主的、弾力的な運営を促進し、地域における保健事業の充実強化を図りますために、従来の個別積み上げによる定率補助方式から標準定額を基本として調整分、これを考えた交付金方式に改めることとしておるわけでございますけれども、この際にその補助方式の変更に当たりましては、保健所活動の重要性にかんがみまして補助金が減るようなことのないように、前年度に比べまして約三十五億円の増額を図っておるところでございます。
  169. 和田静夫

    和田静夫君 いや、長期的に見れば、結果的には人件費などについて削減になると述べているのです。この長期ビジョンでは、「診療報酬体系の改善」として、技術料を重視するとされているわけです。出来高払い制の診療報酬そのものの限界には触れていませんね。厚生省認識は。
  170. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 出来高払い方式については、いろいろ欠点があることは事実であります。ただ、出来高払い方式にはやはり捨てがたい長所もあることも、これもまた事実でございます。そして、他の方式というものを考えてみましたときにも、またそれぞれ長所もあり欠点もあるわけでございます。したがって、私どもは、この制度が少なくとも医師の行った医療の質と量に応じて医療費が支払われる、そして医学医術の進歩に対応した医療が取り入れられ、それに対して報酬が払われる、こういう点はどうしても維持をいたしたいということで、出来高払い方式の維持はいたします、しかしその欠点の是正は今後ともやっていきたい、こういうことで今回の診療報酬体系の改善についての基本的方向の中にそういうものを取り入れた次第でございます。
  171. 和田静夫

    和田静夫君 例えば、中小病院の場合に、入院室料、看護料、それからリハビリの技術料、あるいは調剤料、手術料などが赤字要因になっていますね。看護料だけで看護婦の人件費を賄うことができないんですよ。調剤料だけで薬剤師の人件費を生み出すことができない。というのは、現行の出来高払い制からしてこれは当然なんですね。したがって、病院は薬価差益に頼らざるを得ない。必要でもない薬を使う、そして収益を上げざるを得ない、こうなっているわけなんです。病院勤務医にとって名医というのは何かというと、レセプト審査の際に不正使用にならないようにいかに薬価差益の大きい薬を使うかということだと言われているわけですよ。  したがって、診療報酬体系に人件費的要素を加味していくことは非常に重要だと思っているんですが、これはいかがですか。
  172. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 確かに、先生御指摘のとおりでありまして、人件費的な要素というものを当然加味していく必要があると思います。  ただ私ども、現在の診療報酬点数表におきましては、看護料等につきましても、ひとつ技術料として総合的に評価をしておるつもりでございます。ことしの三月一日の診療報酬改定におきましても、看護料あるいは基準看護料について引き上げを行いまして、看護婦さんの人件費が払われるように少しでも近づけるように総体的に考えたつもりでございます。
  173. 和田静夫

    和田静夫君 今答弁されましたが、例えば看護料ですが、看護料で良質な看護婦さんの確保のためには、例えば病院の中に保育所を設けたりするといった非人件費的費用も今日必要になっているのが現状ですよ。薬づけ、検査づけを排除して、良質な医療を確保していく病院ほど赤字になるという構造になっているわけでしょう。  技術料重視のこの診療報酬体系を進めるというのであったならば、一歩進めて、人件費的要素を勘案したものというやつは、これはどうしても必要だと思うんですね。大臣、そう思われませんかね。
  174. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) そのように思っております。
  175. 和田静夫

    和田静夫君 家庭医についてですが、特別の診療報酬が考えられてしかるべきだと思うのですけ れども、これは具体策としてどういう方向が考えられますか。
  176. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 家庭医というものの定義というものは現在ございませんし、また、家庭医という制度もございません。したがって、私ども家庭医的な機能というものは、これは必要であり、今後そういう機能というものを伸ばしていく必要があるということは認識をしております。  家庭医的機能あるいは制度はなくても、家庭医に該当される方々の診療報酬というのは、やはりプライマリーケアを重視するという観点から、プライマリーケアにかかわる点数表というものを十分評価をしていく、そういうことで可能なんではないか。そして、私ども中医協におきまして現在そういう方向で検討をしていただいております。
  177. 和田静夫

    和田静夫君 本人の九割給付について伺いますが、まず厚生大臣、これは官房長官理事会出席されて一応氷解したといえば氷解したという形になっていますが、法案の修正が議会内の政党間で話し合われずに、医師会など外部圧力団体とだけ詰められていくという、そういう修正作業というのは、これは著しく議会というものを無視したものであったと指摘をせざるを得ませんが、ここについて大臣の見解を求めておきます。
  178. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、政府・与党は一つでもあり、また二つでもございます。  私どもは、原案をそのまま通していただくように衆議院委員会でも願っておったのでありますけれども、社会労働委員会審議の中で、これは与野党の皆さんがいろいろ話し合われ、特に与党が中心になって修正を受けたのであります。その間にあっていろいろのことが報道されておりますけれども、私の聞き及ぶ範囲では、与党の関係者は野党の各党の皆さん方に幾たびか修正案を示しながら、あくまでも社会労働委員会審議を通じて行われるという原則の中での努力を続けておったように思います。  また、医療担当者との与党の話し合いについてでありますが、これは私が審議の中で委員会等でも、やはり健康保険法改正というものは、医師会あるいは歯科医師あるいは薬剤師といったような、直接最前線で医療に従事する皆さん方の理解と納得を得らるることも望ましいということは幾たびかこの委員会等でも予算委員会以来御意見を聞かせていただいておりますので、与党の立場でそういう努力もしていただきまして、この法案が各方面の理解を得られて通るような努力をしていただいたことはありがたいことだと思っております。
  179. 和田静夫

    和田静夫君 どうも開業医団体とだけ詰められる、三師会とだけ詰められる、病院団体だとか、あるいは患者代表だとか保険機関とか、そういうところとの修正についての話し合いは持たないというような点でも非常に遺憾に思っているんですがね。したがって、出てきた修正案というのは、私はどうも開業医の立場重視の修正だというふうに思いますが、この参議院での審議を踏まえまして、大臣、なお関係諸団体と話し合う、開業医団体以外、あるいは当委員会審議内容は十分尊重される、まあ当然でありますが、そういう姿勢を貫く必要があると思いますけれども、そのことを否定をされようとは思いませんが、特別に話し合う機会というものを設けられるつもりはありませんか、大臣は。
  180. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 患者の皆さん、いわば被用者保険本人の皆さん、今回の十割給付から九割給付になっていただく皆さん方の御意見というものを拝聴するのも極めてこれは重要なことだと思います。衆議院段階での社会労働委員会では、被用者保険の本人の皆さんの一番の組織ということになると、これは総評と同盟の組織の皆さんだろうと思いますが、そういう方々の代表の意見は委員会等でも、公聴会で、参考人として、お聞かせをいただいておりましたので、この委員会でもそういう機会があれば、できるだけそういう御意見に耳を傾ける努力をさせていただきたいと思います。
  181. 和田静夫

    和田静夫君 修正定額制を導入したわけですね。なぜ三千五百円までは定額制で、それ以上五万一千円までは定率制になったんだろうか。その理論的根拠は何でしょう。
  182. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども三段階の定額制は一つの丸めた形での定率制だと、むしろ定率制の変形だというように理解をしております。医療機関の事務の軽減という観点から、三段階の定額ということで修正が行われたものと、こういうように理解をしております。したがって、全体的に申しますならば、定率制は維持されておる、こういうように理解をしております。  そこで、その定率制を維持された場合に、高額な医療費がかかった場合の負担というものが大きくなっていく、それを防止するために高額療養費制度というものを利用いたしまして、五万一千円で患者負担の頭打ちを設ける、こういうことで高額な負担を避けてまいりたい。したがって、定率制は維持しながら、患者負担が大きくなる場合にはその患者負担に頭打ちを設けるという原案の趣旨は、私どもは維持されておるというように理解をしております。
  183. 和田静夫

    和田静夫君 患者医療費を周知させるというやつですが、周知させるのであれば、私は領収証、明細書の発行を義務づける、そうすればたちどころにわかるわけですね。五十六年に通知が出ていますが、健保連の調査では領収証を請求したけれどももらえなかったというケースもあるわけですね。発行を義務づける指導をきちんとすべきですね。大臣どうです。
  184. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 領収証につきましては、これはお金を払えばその領収証をもらうというのは、民法上の義務ということになっておりますので、もしお金を払って領収証を出さない医療機関があったとすれば、これは私ども十分指導をします。  ただ、その意味するところが医療費の明細書ということになりますと、これはなかなか医療機関の事務的な負担の問題というものがございまして、法律的に義務づけるというのは困難であると、こういう認識に立っております。現に中医協におきましても、支払い側、医療側との話し合いを通じて、例えばコンピューターを入れておるような医療機関におきましては明細書も出すというように、実施可能な医療機関からこれを始める、こういうことで指導をしておるわけでございます。  また、例えば富山市の医師会等は、自主的に明細書の発行運動を実施しておるように聞いております。医師会の中でそういう運動というものが起こるようにいろいろ督励をしてまいりたいと、こういうように考えております。
  185. 和田静夫

    和田静夫君 領収証や明細書を義務づけると、文書量がふえるというような指摘も新たに一面ではあるようですがね。明細書はともかくとして、今言われた領収書発行の事務費などというのはたかが知れています。医院や病院の窓口で薬を受け取ると、御丁寧に、薬品名の書いてあるところを切り取って渡す。要するにどういう銘柄の薬であるか患者にはわからないようにして出している。薬品名を消すぐらいの事務量で領収証を発行することができるわけですね。そういう意味では、私は漏れなく義務づけていくということが必要だと思うんです。  薬品名を消すということも私はやらせるべきではないと思うんですね。患者はどこのメーカーのどういう薬を飲まされているのか知る権利を持っています。このことはまた薬害救済の際の重要な資料であるわけでありますから、医療供給側はむしろ積極的に患者に投薬内容を告知すべきであると言わなきゃならないのじゃなかろうかと思うんです。これも強力な行政指導が必要だと思いますが、いかがでしょう。
  186. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 投薬の内容を知りたい、こういうことは患者側の希望として十分わかると思います。それはやはり医師の口から聞くべきではないかと私は思います。  そうして、私理解に苦しむのでありますが、そういう薬の名前のところを故意に消すというよう な医療機関がそんなにたくさんあるのかということにつきましてはよく存じておりませんが、例えば今患者の医学知識が非常に高まっておりますので、相手に、患者に知らしてはいけないような病名、それに伴う投薬というようなものは、あるいは今先生御指摘のようなことがあるのではないかと思いますが、それは私はそれなりに評価をしていかなければならないというように考えております。
  187. 和田静夫

    和田静夫君 私は、がんなど一部の病気を除いては、患者に知らせるということに不都合はないと思って、これはやっぱり一定の基準を設けて患者に知らせることをむしろ積極的に進めるべきだというふうに考えておるわけです。  自己負担定率制の問題に入りたいと思うんですが、私は、政府原案にせよあるいは修正案にせよ、やり方は逆じゃないかと考えるんです。風邪などの軽い病気は負担が軽くなる。そして慢性病だとか熱病などは負担が重くなる。これは一体どういうことだろうと思うんですよね。  医療の場合、受益者負担という一般の原則はこれは成り立たないわけですが、受益者負担というのは益を受けるか受けないかを需要側が選択できるときに初めて成り立つわけですね。医療においては、需要の側の選択の余地はないと言ってよいわけです。医者にかかるかかからないかが唯一の選択であるわけです。それすら高熱が続いたり、痛みが続いたりすれば、これは医者にかからざるを得ないわけで、医者にかかってしまえば、その人が低所得者であろうが、高額所得者であろうが、診療行為には差がつけられない。所得に応じて診療行為に差をつけるということは、これは大臣是認をされないでしょう。
  188. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは人間が健康を守っていくためには、すべての人にとって人間の尊重は同じでありますから、私どもは、お金がなくて医療を受けられないという人があっては困るので、生活保護世帯に対して公費負担というようなことをやっておるわけでございますし、また、お金のない老人に対しての特別の給付というようなものをやっておるわけでありますし、そういう考え方については、これは全く同じでございます。  ただ先生、今お話を聞いておりますと、重い病気になった方、いわゆる高額の医療費を必要とする方に対する御心配がございます。私も全く同じことを今回の改正案で一番心配をしておりまして、この一割負担という改正案が通ることによって重い病気にかかった人、長期の療養を必要とする人が家計破壊になるというようなことのないように高額療養費制度というものがあるわけでございますが、これはまた非常に患者にとって大事な問題でございますので、今後も先生方のお知恵を拝借したいと考えております。
  189. 和田静夫

    和田静夫君 まあどんな所得の人であれ、適切な医療を享受することができるというのが、これが医療保障の考え方であるはずであります。本人自己負担の導入というのは、これは家計に強制的に負担増を求めるものであることは間違いありません。サラリーマンの標準世帯で年間幾ら負担増になると厚生省ははじいていますか。
  190. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 被保険者一人当たり、つまり一世帯当たりという意味でありますが、年間七千五百円、一カ月にいたしまして六百二十五円というように計算をしております。
  191. 和田静夫

    和田静夫君 厚生省の試算によりますと、胃がんで胃を全摘、三十日間入院、これで病院の窓口で六万四千円支払わなきゃならぬということになっていますね。ところが、これは最低額なのであります。今日、基準看護病院でも付添婦をつけなければならないところもある。入院に伴うさまざまな費用負担が存在する。実際の費用負担はこの厚生省試算よりもはるかに高いということになる。この点は認めてしかるべきだと思うんですが、実際の費用負担というのはどれほどになるんですか。
  192. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私どもは、一応現在の診療報酬点数表ではじいた額をお示ししておるわけでありますが、その患者さんかどういう病院でどういう部屋に入院をされるか、それによって負担額が違ってまいります。その金額は持ち合わせておりません。    〔委員長退席、理事遠藤政夫君着席〕
  193. 和田静夫

    和田静夫君 持ち合わせていないということは、出ないということですか。どこかへ行けばあるということですか。今ここに持っていないということですか。
  194. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 例えば一等室、一日六万円を取る一等室というのももちろんございます。そこへ入ったとして計算をしろということならこれは出まずし、三人部屋の一日千円徴収をしている医療機関へ入った場合に、その金額がどうなるかというのは、これはまたお示しすることはできます。
  195. 和田静夫

    和田静夫君 だから、その何人部屋に入ったというのを含んで、出そうと思えば出るということですね。後でください、それ。胃がんの全摘の場合ですね、摘出の場合。  私は、誤解を恐れずに言いますが、かぜの三百円程度の負担減というのは、家計にとって大したメリットではありません。問題は、慢性病患者や死亡率の高い重病患者です。例えば、腎臓病の人工透析の患者は、一生月々五万一千円なりの高額負担を強いられるということになりますね。この人たちの家計がどれほど圧迫されるか、家族のなめる苦汁は、これはもう想像を絶するものがあります。改正というのは大臣、そういうように人々の負担を軽減するものが改正なのであって、今度の改悪案は全くその意味では逆立ちしているんですよ。そうお思いになりませんか。
  196. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは先生のその面での議論だけお聞きしますと、それはそのとおりでございます。ただ、政策というものは全体のバランスの中で行われるものでありまして、今でも国保加入者の皆さん方は三割負担とか家族の皆さんは二割負担とか、非常にそういう重い病気の中でもこれは負担があるわけでありますから、今回、現在の我が国の保険制度の中では最も恵まれた条件、給付条件だけで言えば一番恵まれた条件の十割給付の皆さん方に一割御負担をいただく。それでも、一割御負担をいただくことになってもまだ他の保険の皆さんよりは給付条件がいいわけでありますから、これは全体の中での社会福祉、国民全体の社会福祉、医療保険を守っていくということで御辛抱をいただき、また同時に、先生御指摘のような問題は非常に大事な問題でありますので、私ども今後政策問題としてできる限り配意をする努力をしてまいりたいと思います。
  197. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、腎臓病のみならず、慢性肝炎、糖尿病あるいは高血圧症等々、長期療養が必要な背の負担増ははかり知れないものがあります。これは私は提案者側の立場に立ってみても不合理だとお考えになっているんだろうと思うんですね。改善の余地があるのではないかと思うんですが、改善の余地はありますか。
  198. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 改善の余地はあると考えております。
  199. 和田静夫

    和田静夫君 例えば、この高額療養費を月単位で決定するのではなくて、発病から治療までのトータルで高額療養費考えるべきだと私は考えるんですがね。高額療養費の限度額五万一千円を一つの疾病で考えますと、慢性病、難病患者負担を軽減することになるんですね。いかがでしょう、そんなのは。
  200. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) おっしゃるとおりでございますが、私ども、現在の医療保険の事務といいますかシステムが、レセプトを基礎に動くシステムになっておるわけでございます。したがって、レセプトを基礎にして高額療養費の問題等も考えていかざるを得ない、それが現在のシステムでございますので、その限界が必ずつきまとう。システムを変えない限り限界が常につきまとうわけでございまして、その限界でぎりぎりのところで改善の余地はあるというように私ども考えておるわけであります。  レセプト方式というものを、このシステムを変えることができるならば、今先生御指摘のような こともできるわけでございますし、また、例えば全医療機関にコンピューターが入るというような時期が参りますと、先生の御指摘のようなこともすべてできる。しかし、現在のシステムを前提とすればどうしても限界が生じ、その限界の中で物事を考えなければならないという制限があるということは御理解を賜りたいと思います。
  201. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、これ、高額療養費の限度額そのものを引き下げることをお考えになりませんか。大胆に引き下げる必要があると思うんですがね。引き下げる余地はあるでしょう。
  202. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、私どもは高額療養費、一定限度の物価等を勘案したものを提出しておったわけでありますが、今度、衆議院段階で先ほどのとおりになったわけでございます。  これらの運用等については、私どもはもちろん法案の提出者でございますから、提出したとおりに御議決を賜れば最も望ましいのでありますが、幾度か申し上げておりますように、この社会労働委員会審議を通じての御意見を尊重し、そして、これで皆さん方のいろいろの御意見、つまり、私が何遍も申し上げておりますように、この一割負担を現在十割給付の皆さん方にお願いするということは、これ大変恐縮なのでございますが、二十一世紀に向かっての我が国医療保険制度というものを揺るぎないものにするためにどうしても御辛抱を願わなければならない。しかし、この一割負担が実現することによって健全なサラリーマン家庭の皆さん方が、病人が続出することによって家庭破壊が行われるようなことがあってはならないという思いは一つでございますから、それらについての配慮について、この委員会等で各党の皆さん方が話し合われて一致しました意見に対しては、私はできるだけその御意見を尊重してまいりたいと思います。
  203. 和田静夫

    和田静夫君 高額療養費について、さらに家計という面からの配慮が必要でしょう。家族療養費のトータルが限度額をクリアする、そういうケースが想定されるわけでありまして、一人一人の療養費ではなくて、やっぱり家計を一にするものの限度額といいますか、そういう位置づけがこれまたなされるべきだと思うんですが、御見解を。
  204. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 先生の御指摘は、世帯単位で療養費考えるべきではないか、こういうような御趣旨だと思いますが、私どももそのように考えます。
  205. 和田静夫

    和田静夫君 また、この高額療養費については、同じ月、同じ病院でも、診療科が異なれば、診療科目ごとに限度額を超えなければ適用されないという、そういう不合理なシステムになっていると思うんですが、そういう点の改善というのはいかがでしょう。
  206. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 先ほど私がお答えいたしましたレセプト方式というものの欠陥がそういうところにあらわれるわけでありまして、少なくとも一つの医療機関ならある程度まとめることができるんではないか。これは病院の事務の処理と支払い基金の審査との関係がございますので、その辺とも十分接触をして、検討をしてみたいと思います。
  207. 和田静夫

    和田静夫君 高額療養費についてもう一問尋ねますが、現在、原則は自己申告制であって、患者が一時立てかえ払いをしなければならない。また、患者ないし家族がこの制度を知らなけりゃそのままになってしまうわけですね。この点の改善はどうなりますか。
  208. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、定率負担をやる趣旨から、現在の方式を変えることは非常に困難であろうと思っております。
  209. 和田静夫

    和田静夫君 いずれにせよ定率負担は、困っている人々に重い負担としてのしかかってくる。私は依然としてこういうような制度に反対の意を表明せざるを得ませんし、こういうような状態でなくてもやっていけるのだということは、私が数式を出していますから、次回までにその数式と厚生省側の考え方を照らし合わせながら、あなた方の方に理論的破綻が訪れることはもう明確だと私は思っていますから、その意味で論理的には私の方が、きょう局長が約束をされました二つの資料が次回までに出てくれば、もう論議する必要がなくなるほど歴然としてくると思っていますが、ともあれ、こういう制度について反対の意見を表明せざるを得ないんですが、平均的な給付率を引き上げることすら私は可能であると思っているんですが、これ概念的に何かお考えになっていますか。
  210. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 平均的な給付率と申しますと、医療保険の立場に立ちますと、高額療養費支給制度をどういう形で実施するかによって給付率が上がったり下がったりすると、それは一つ言えると思うんです。例えば、国民健康保険につきましては給付率は七割でございますが、現在の高額療養費制度を実施しておりますために、平均給付率は七七%ぐらいの給付率になっております。  それからもう一つ、実質的な給付率を引き上げる、給付率と言うと若干語弊があるかもわかりませんが、給付を引き上げる、こういう方策としては、公費負担医療を充実する、こういうことによって可能だと思います。現に、国民医療費全体で考えますと、患者負担というのは一一%ぐらいでございます。それは医療保険給付に、法定の給付率、フラットの給付率に高額療養費をプラスし、そして公費負担医療をプラスすれば約九〇%の給付率になり、患者負担は一割と、こういうような姿になっておるわけでございます。
  211. 和田静夫

    和田静夫君 国民医療費の伸び率が国民所得の伸び率を下回れば、給付率を引き上げることは理論的に可能ですね。
  212. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 単年度で言えばそういうことは可能かもわかりませんが、私どもは給付率というのはその年度その年度で考えるべきではなしに、中長期的に考えるべきだというように考えております。
  213. 和田静夫

    和田静夫君 厚生省のこの長期ビジョンが年を追ってずっと実現されていくとしましょう。そうすると、国民医療費の伸びを抑制することは可能ですね、これは。
  214. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私どもは当初の原案で、五十九年度、六十年度九割、六十一年度から八割と、こういう提案をしておるわけでありますが、その制度の枠が実施されるならば、国民所得の伸びの範囲に同民医療費をとどめることができる。つまり、六十五年度ぐらいまでの間、現在の国民所得と国民医療費との比率、大体六・二%でございますが、その六・二%の比率というものは変わらない、こういう試算をしております。変わらないというのは、つまり中長期的に見まして国民所得の伸びの範囲内に医療費の伸びがとどまっておるということを示すものだというように考えております。
  215. 和田静夫

    和田静夫君 聞き方をちょっと変えますよ。  この長期ビジョンは、これは私がもらっている厚生省医療費のいわゆる試算のやっと照らし合わせますと、どのケースになるんですか。ケース1ですか、ケース2ですか、ケース3ですか。
  216. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私どもは、ケース1で考えております。    〔理事遠藤政夫君退席、委員長着席〕
  217. 和田静夫

    和田静夫君 そうしますと、この長期ビジョンに基づく国民医療費の推計、それから国庫負担の割合、労使負担の割合、給付率、出ますね。
  218. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 労使の負担は、現在計算したものを持ち合わせておりませんが、今御指摘の点は出ます。
  219. 和田静夫

    和田静夫君 そうすると、それではさっきの二つのことと一緒に、次回までに私にもらえますか。
  220. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 次回までに提出をいたします。
  221. 和田静夫

    和田静夫君 そう簡単にいくんですか――まあ出すと言われたんだから、いただきます、待っていますけれども。  差額ベッドについて伺いますが、これも長期療養患者にとって経済的負担を強いるものでありますが、五十七年七月の調査でも、三人部屋以上で差額徴収をしている病床が一万七千百六十九床あ る。この経営主体別の内訳は、きのうわかると言われたんだが、ちょっと言ってください。
  222. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 五十七年の七月現在、一万七千百六十九床の三人室以上の差額ベッドがございます。内訳を申し上げますと、学校法人、つまり大学の附属病院等でございますが九千六百四十八、それから医療法人三千四百三十八、その他の法人二千六百八十二、個人千三百十一、国立、公立ともにゼロ、その他の公的医療機関九十という内訳になっております。
  223. 和田静夫

    和田静夫君 私大の附属病院が差額ベッドのがんであるわけですが、三人室以上の部屋の差額は、期限を切ってゼロにするといった強力な行政指導をすべきだと考えますが、いかがですか。
  224. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私どもは、そういう計画にのっとりましてやってまいっております。  五十七年の七月の数字は今申したとおりでありますが、五十八年七月現在では一万七千百六十九床が一万一千九百五十になっておりますし、特に学校法人の場合には九千六百四十八ベッドが六千七百三十七床になっております。私ども、大学当局といろいろ話し合いを進めながら、三人室以上の差額ベッドについては解消を図るべく努力をしておるつもりでありますし、今後もその努力を続けてまいりたいと思います。
  225. 和田静夫

    和田静夫君 特定療養費の中で、「特別の病室」という項目がありますね。この措置は差額ベッドを拡大する傾向を助長するものではないでしょうかね。
  226. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私どもは、現在差額徴収の規制というのは行政指導でやっておるわけでございますが、行政指導でやる場合にはやはり限界もございます。今後は、この差額ベッドを特定療養費という形で法律に載っけて、そして法的な規制を加えていくつもりで、今回の制度を創設したわけでございまして、法的な規制を今後はしてまいりたい、こういうつもりでございます。
  227. 和田静夫

    和田静夫君 特定療養費については、衆議院で、自由診療の大幅拡大や保険診療の後退にならないよう配慮せよという附帯決議がなされましたね。その具体策はどうなりますか。
  228. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 特定療養費そのものの運用につきましては、これは中医協で御論議を願う、こういうことにしております。  私ども、特定療養費をつくったことによって、保険診療の中身を狭くしていくというようなつもりはございません。必要にして適正な医療というのは、これは保険医療の中に今までも取り入れてまいりましたし、今後も取り入れていくつもりでございます。これはやはり専門団体の意見を聞いて、かなり普及をしてきた段階では、必ず保険診療の中に新しい技術を取り入れていく、こういうことを今までやってまいりました。したがって、今後もその方針には変わりない、こういうことで運用をしていくつもりでございます。
  229. 和田静夫

    和田静夫君 附添看護料について、先ほども若干触れましたが、基準看護病院でも実際には附添婦をつけろと言われるところがあるわけです。普通看護病院に入院して、附添料だけで一月五十万円も取られているケースも実際にはあると訴えられていますが、保険による給付があっても一日当たり六、七千円の負担を強いられるわけで、これも患者には非常に重い負担になっているわけです。この点についてはどういう認識をお持ちですか。
  230. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 基準看護病院で附添看護をつけるような病院があるとすれば、基準看護の承認の方を取り消します。
  231. 和田静夫

    和田静夫君 基準看護病院を拡大しつつ、普通看護病院では保険による給付の幅を拡大するという処置がとられてしかるべきだろうというふうに考えていますが、それもいいですわね。
  232. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 先生の御質問趣旨をちょっとはかりかねておるわけでございますが、特定療養費の運用を通じて附添看護料の問題も解決してはどうかと、こういうような御指摘でございましょうか。申しわけありませんが。
  233. 和田静夫

    和田静夫君 基準看護病院を拡大をしながら、そして普通看護病院では保険による給付の幅を拡大するというような処置をとってしかるべきじゃないだろうかと思うんですがね。
  234. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) わかりました。  基準看護病院の拡大につきましては、私ども、病院が整備をされて基準看護の承認基準に合えば、これは承認をしていくつもりであります。基準看護病院ができることによって自動的に付添看護という分野が減るわけでありますから、基準看護の範囲で基準看護病院を拡大するという形でそういうものを解消するという方策はひとつ今後ともとっていくつもりでございます。
  235. 和田静夫

    和田静夫君 退職者医療制度国民健保で若干触れますが、まず、退職者医療制度ができたので全額国庫負担を削るというのは理解できないんですが、労使の拠出金と本人負担でやっていけというのでは政府として責任を果たすことにならぬのじゃないですかね。何か余りにも虫のよい話ではないかと思うんですが、大臣、どうです。
  236. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 社会保険制度というものに対する認識だと思うんですが、私どもは、これは社会保険はでき得れば加入者拠出金に、掛金によって賄えれば最も望ましい仕方であって、ただ社会保障全体の政府としての責任はありますから、そのために政府管掌保険であるとか国保であるか、どうしてもそれでは破綻してしまうものに対しては国の責任で国庫から費用を投入しておるものでございまして、今回創設する退職者医療、これは被用者保険の中に入るわけですが、幸いにして、現在皆さん方の御努力によって今の保険は国からお金を入れなくても何とかやっていただける。よく国が負担するしないと、こう言われますが、国がお金を出しても、これは結局は国民の皆さんからちょうだいする税金でございますから、保険料でいただくにしても、国が出すにしても、いずれにしても結局は国民の皆さん方の御負担に最終的にはなるわけで、今の被用者保険は、幸いにして退職者医療を創設しても国から金を出さなくても何とかやっていただける状態であるということでございます。
  237. 和田静夫

    和田静夫君 了解できないんですが、将来健康保険制度を統合しようとするときは、この退職者医療制度はどうなりますか。
  238. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 医療保険の統合一元化の問題については、いろいろな議論がございます。  現在分立しておる制度を一本にする、全部解消して統合する、こういう考え方もありますし、分立しておる制度を前提にいたしまして財政調整を図っていく、こういう方法もございます。  まず第一に申し上げました統合をするというような方策をとった場合には、確かに退職者医療制度というものはその中に埋没をして消えてなくなる性質の制度だと思います。それから、財政調整の形で一元化を図っていくという方法をとったとすれば、これは財政調整の一つのやり方として退職者医療制度というものは存続をして構わない、こういうように考えております。
  239. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、寝たきり老人の看護とかぼけ老人の看護とか、本来これは老人福祉の分野で見るべきことを医療保障で見ているわけです。特別養護老人ホームあるいはナーシングホームでやられるべきことを病院でやられている。  長期ビジョンは、この分野でも具体的目標、具体的プランを持っていないんですよ。老人福祉の分野での施設マンパワー計画、こういうものを示す必要があると思うんですが、どうでしょう。
  240. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 御指摘のように、老人問題というのは、これから非常に大きな我々の問題になってくると思います。これは福祉の問題でもございますが、老人になればなるほど病気にかかることが多いので、これは医療の問題でもございます。それらの被用負担の問題等については、今後検討する問題が幾つかあると思います。  また、今この老人問題について私どものビジョンというものがないのではないかと、こういうことでございますが、これは、この私どもが出した「二十一世紀をめざして」のビジョンにもはっきり示してございますし、また今度の五十九年度の 予算でも、非常に厳しい予算でありましたが、老人保健事業については、たしか百七十億前後と記憶しておりますが、予算を増額して、もうこれらの問題にこれから積極的に取り組んでいく第一段階としたところでございます。
  241. 和田静夫

    和田静夫君 労災適用ですが、先日の委員会で、症状固定で労災適用が打ち切られた患者が健保で治療を受けているケースを取り上げましたが、その後幾つかの患者からの訴えが私のところに今届いているわけです。  これは朝霞市在住の女性からの訴えなんですがね、この女性は頸肩腕障害で労災の適用を受けていたところ、昨年の三月三十一日付で、労働基準監督署から、症状固定で治癒の認定を受けた。ところが、この女性の主治医は、なお休業加療の必要を認めているわけです。昨年一月付の労基署あての主治医による意見書を持っていますけれども、この主治医は、今後の治療の必要を主張しているんですよ。にもかかわらず労災適用は打ち切られた。それでこの女性はやむを得ず健康保険給付を受けていたわけです。これもことし六月七日付で返納通知を受けた。七月十三日付の朝日新聞にもタクシー運転手の同様のケースが報道されていました。  先日は全国的な調査を要求したところでありますが、こういうような制度の谷間に突き落とされている人ですね。こういう人はかなりの数に上るのではないかと思われる。労働省は、少なくとも主治医の診断書が要治療としている者については、安易な打ち切りを慎むべきだと考えるんですが、これ、まず一問。
  242. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 労災保険の業務上の疾病につきましては、私どもも治癒という段階で一応給付を打ち切るということを原則としてやっておるわけでございますが、ただ、頸肩腕症候群その他の一定の疾病につきましては、これらの者が治癒したときに、疼痛だとかあるいはしびれというような症状を含む一定の身体障害が残存した場合にございましては、その身体障害の程度に応じまして障害給付を行うとともに、疼痛だとかしびれ等がある場合で特に必要な場合には、アフターケアで給付を実施しているということでございます。  そういうことでございますので、今の問題はアフターケア制度のあり方に関する問題であると承知しておりますので、私ども労災保険審議会に設けられております労災保険基本問題懇談会に今この点を審議をお願いしているという段階でございまして、できるだけ前向きに取り組みたい、こう考えておる次第でございます。
  243. 和田静夫

    和田静夫君 労働省の考え方はわかりましたが、厚生大臣、この制度の谷間について、どうも今までは労働省とキャッチボールをしている状態だったんです。こういうのは困るんで、両省間で連絡を取り合って、早急に改善策を打ち出されてしかるべきだと思うんですが。
  244. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 御指摘の問題について、これから相談をいたしまして、御心配のないような努力をしてまいりたいと思います。
  245. 和田静夫

    和田静夫君 現在、既に打ち切られて自由診療扱いとなっている人がいるわけですね。こういう状況が続けば労災であっても私傷病で治療した方がよいというケースがふえてくるわけです。そういう傾向があらわれていますよ、現に。これは労災保険の本来の姿じゃないですね。
  246. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 先ほどお答えいたしましたように、基本問題研究会で今検討をしておりますので、もうしばらくお待ちを願いたいと、こう思います。
  247. 和田静夫

    和田静夫君 労働省、ミツミ電機という部品メーカーがありますが、この会社、労災多発企業ですよ。労災が多発する企業というのは、どうも労務管理に何らかの欠陥があるのではないかと疑わしめるものがあるのですが、この会社の姿勢というのは非常に問題がある。  私は人事部長名で出されました「社員のみなさんへ」というビラを持っておりますが、こんなふうに書いてあるんですね。一部の人が「労働基準監督署に申請をし、それが認定されましたが、その認定根拠は全く示されていない現状です。業務上の原因で発病したか否か――医学界でも結論を出し得ない難解な疾病に対して「作業に無関係とはいえないだろう」という理由だけで認定されたのでは、会社としても納得できないのです。」、このくだりに対して労働省、どういうコメントをされますか。
  248. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) この点につきましては、先生から御指摘がございましたので直ちに調べたわけでございますが、なかなか事実がつかめませんが、保険給付支給に当たりましては、作業の実態の調査結果だとか、あるいは医師の意見等を総合的に検討しまして、業務と疾病との間に相当因果関係が認められるものについてのみ業務上として保険給付支給対象としているわけでございます。  したがいまして、御質問のような文書がいかなる趣旨のもとに出されたのか明らかではございませんが、事業主の主張によって業務上・外の判断は影響されるものではないと、こう思います。
  249. 和田静夫

    和田静夫君 私も答弁のとおりだと思うんですが、実はこの会社、労災に対して、ぶらぶら病だとか、怠け病だとかというレッテルを張って、そして労務管理、労働安全衛生での反省が全くないんですよ。労働条件の面でも労災患者を差別しているんですね。私のところへ持ってこられた訴えによれば、どうも所轄の労基署の署員との間で会社の関係にいろいろあるという訴えもあるんですがね、今そのことを問題にはしませんが。  やっぱり労働省としては、労基署を通じてきちんとこれ指導をされてしかるべきだと思いますが、いかがでしょう。
  250. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) この事業場も、昨日先生から御指摘がございましたので、よく調査をいたしましてきちんと処理をしたいと、こう思っております。
  251. 和田静夫

    和田静夫君 今回の改正で、日雇健保を政管健保に取り組もうとしているわけですが、図らずも健康保険制度統合の第一歩となるわけですけれども、これをそう手放しで評価するわけにはまいりません。今日まで独立した会計勘定、法制度のもとで運用してきた理由というものがあるわけでして、それは一体何なのか。その理由は今日解消したのかという点が問題になるわけだろうと思うんですがね。その点はいかがでしょう。
  252. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 日雇労働者健康保険は、御承知のように昭和二十九年に設立されたものでございますが、当時、健康保険法そのものを適用することは技術的にもまたその他いろいろな面で非常に困難である。しかし一方において、国民健康保険制度もまだ全面実施という時期に至っておりませんで、国民皆保険体制が達成されていなかった、こういう状態の中で日雇労働者医療保険制度を何とか確保しよう、こういう考え方から、特別な制度という形にはなったわけでございますけれども、日雇労働者健康保険制度というものが創設されたというように私どもは理解しております。
  253. 和田静夫

    和田静夫君 いろいろ言われていますけれども、詰まるところは財政上の理由にあるのではないだろうか。  五十八年度の収支見込みを見ましても、保険料の三倍の給付費が必要となっていますね。保険料を上回る一般会計からの繰り入れがなされている。単年度の赤字が三百七十七億円、要するに保険のていをなしていなかったということでしょう。累積赤字は七千四百五億円と見込まれているわけです。ここのところはなぜ今日まで放置されてきましたか。
  254. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 日雇労働者健康保険も、創設当時は必ずしも今日のような大幅な構造的赤字になるかどうかという点についてははっきりしておったわけではないというふうに私どもは理解しております。現実に制度発足後の二、三年は一応収支均衡というか若干黒字が出ておるような状態でもございました。しかし、やはり被保険者全体が低所得の方が多いということ、さらに政 管健保や組合健保に比べて高齢者が多いというようなことから、次第に、給付費は増高する一方、保険料の方はなかなか伸びていかない。特に健康保険などの給付との均衡から制度的にも給付面での改善が何次かにわたって行われましたし、一方保険料の方は引き上げもございましたけれども、何分にも日雇労働者という特殊な就労形態のために、一般健康保険のように標準報酬制をとり、さらにその標準報酬の伸びに応じて保険料増収を図るという、こういう形がとれなかったというやや宿命的な姿があったようでございます。  保険料も、二段階制ということで定額制でございましたので、なかなか保険料収入が伸びなかった。こういうような状況で、厚生省といたしましても幾度か構造的な赤字を解決するように制度改正も行い、努力もしてまいったわけでありますが、やはり客観的事情がなかなかそれを許さなかったということであったろうと理解をいたしております。
  255. 和田静夫

    和田静夫君 それで、今後の国庫補助というのはどういうように確保されますか。今年度と同様であると考えておいていいんですか。
  256. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 今回の改正における日雇労働者に係る国庫補助、これは形の上では政府管掌健康保険あるいは組合管掌健康保険が共同で実質的に日雇労働者医療保険を実施しようという形でありますが、国庫補助政府管掌健康保険が受け持つ部分について行われるという形にいたしております。その際に、政府管掌健康保険の一六・四%という同率をまず導入いたしまして、そのほかに定額の国庫補助をさらに導入をいたしまして、あわせて現在の日雇労働者健康保険国庫補助の水準と実質的に同様の水準になるように予算を組んでおるわけでございます。  この一六・四%の方は法律で規定されておりますので、当然その率で計算されるわけでありますが、その他の定額部分につきましては、これは予算措置という形でございますので、今後毎年度の予算の際に私どもは大蔵省と折衝して、実質的に今の国庫補助水準というものを確保できるような形で持ってまいりたいというように考えておる次第でございます。
  257. 和田静夫

    和田静夫君 大臣、ここのところを保障されないと、そのしわは結局政管健保に寄っできますからね、これは今の答弁、大臣確認をしておいていただけますか。
  258. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) そのとおりでございます。
  259. 和田静夫

    和田静夫君 もう一つ大臣、この日雇健保の累積赤字をどういうような手だてで解消させていくのか。よもや統合後も保険料をもって返還していくというようなことじゃないでしょうね、これは。
  260. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 日雇労働者健康保険健康保険の体系に統合し、政府管掌健康保険においてその経理を一緒にして行うわけでございますけれども、日雇労働者の累積赤字については明確に区分をいたしまして、政府管掌健康保険保険料でこれを償還していくということは考えておりません。
  261. 和田静夫

    和田静夫君 前後しましたが、日雇健保の赤字要因というのはどこにありますか。
  262. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) これは先ほどもちょっと私の答弁の中で出てまいりましたが、やはり日雇労働者という被保険者が、平均的に見まして非常に所得の低い人が多いということで、保険料収入の方はやはり余り多くが期待できない制度でございます。  一方において、平均的に見ましてやはり年齢がかなり高い、平均年齢が他の健康保険制度に比べて高いというような状況でございまして、結局構造的に保険料収入と給付費、その他の支出のバランスというものがなかなかこれはとれないような構造になっているということであろうかと考えております。
  263. 和田静夫

    和田静夫君 いわゆる寄せ場の実態を見ますと、業者指導が全く不徹底なわけなんです。寄せ場の中に社会保険事務所をつくってほしいという意見もあるわけですが、そういう要求、意見などについてはどのようにお考えでしょう。
  264. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 寄せ場という言葉は、私どもとしては一定の場所に日雇労働者の方が集まって、そこで例えば職業安定所などがある、そういうところで日雇関係の事務をやれるようにしてはどうかというお尋ねかというふうに存じますが、現在、社会保険事務所につきましては全国約二百七十カ所ばかりそれぞれ必要な地に置いておるわけでございますけれども、何分にもそういった出先など新しく設けるというようなことにつきましては、現在の定員事情のもとでの人員配置の問題とか、あるいは実際の事務の効率性といったような面で種々困難な問題があろうかと存じております。  しかしながら、現実に事業主に対する各種の指導なり被保険者に対する各種の事業内容の周知徹底といったような問題については今後私どももできるだけその充実を図っていかなければいけないと思っておりますので、まずは実際にそういう関連のある都道府県などとも十分相談をいたしまして、どういう方法によって指導なり周知の徹底を進めていくかという点について適切な方法を検討してまいりたいと考えております。
  265. 和田静夫

    和田静夫君 私は、保険事務所をつくることができなければ、例えば移動相談などというようなことも一案としては皆さん方に伝えてあるわけですが、それらも含んでやはり検討して、なるべく要望にこたえるようにしてもらいたいと思うんです。  委員長、あとは先ほどの資料が出てきませんと、基本的な論議になりますので、とりあえず次回まで資料が出てくるのを待ちます。
  266. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 まず、厚生行政の基本政策についてお尋ねをいたします。  迫り来る高齢化社会に対応して、今後十年先、二十年先をどのように政策を進めていくのか。二十一世紀の日本が物心両面ともに豊かになるということは非常に重大な国家の施策でございますけれども、このときに当たって厚生行政の課題は極めて多く、また、果たすべき役割は重大なるものがございます。  厚生行政がいよいよ有効に総合的有機的かつ未来志向的に力強く展開されることを希望するものでございますが、この重大な時期に当たって厚生大臣はどういうお考えでおられるのか、その点をまずお伺いしたいと、こういうぐあいに思う次第でございます。
  267. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 人間を尊重する近代政治において、厚生行政というものはまことに重大なものであります。  その厚生行政を預けられまして、今私が一番将来に関心を持っておりますのは、御承知のように、高齢化社会というものは待ったなしにやってまいります。現在六・二人の人が働いて一人の先輩を支えておりますが、これは、いずれ二十一世紀に入りますと四人の人が一人を支える。さらに三人の人が一人を支える。つまり、医療保険にしても年金にしても、掛金を納める人よりもらう人の方が多くなってくるわけであります。そういう時代になっても、人間の生活の基本である社会福祉制度というものはびくともしないものでなければなりません。  私どもはそういう観点に立って、負担給付の公平とかいろいろございますが、今後経済が悪い状態でも、財政が厳しい状態でも、この社会保障の基本は揺るぎないものにするような制度というものを今のうちからしっかりしたものにつくっておかなければならないと考えております。
  268. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 今大臣は、高齢化社会に向かってのあり方を示されたわけでございますけれども、若い人も年をとった人も、国民全部が心身ともに健やかであるというためには、特に若いときからのヘルス事業が非常に重要であると、こう思っております。    〔委員長退席、理事遠藤政夫君着席〕 厚生省は、最近ヘルス事業についてかつてないほど力を入れているようでございますけれども、今 後どういうようなヘルス事業についての施策を考えておられるのか、大臣の御答弁をお願いいたします。
  269. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 大浜先生御指摘のとおり、これは二十一世紀の高齢化社会というものを前にして、当面私どもが何よりも考えなければならないのは、健康な国民をつくっていくということであります。それが先生御指摘のヘルス事業をできるだけ重視した政策ということでございまして、御承知のように五十九年度予算も厳しいゼロシーリングという中で、予算はあれも削られこれも削られという苦しい状態でありましたが、老人保健事業については百七十億を超す増額を大蔵省に認めていただきまして、これから四十歳以上の国民の皆さん方には全部健康診断を受けていただきまして、将来、七十になっても八十になっても病気をしないで、康康で豊かに楽しく生きていけるような老人をつくっていく。  また、やっぱり福祉というのは社会の連帯の精神、私はよくお金と心とこれが調和して本物の福祉になるということを言っておるわけでありますが、やはり隣近所の人たちの親切とか家族の皆さん方の心とか、これを調和していかなければなりませんので、今後は在宅福祉とかあるいは地域の皆さんのボランティアとか、そういうものにも力を入れていく。また、医療と福祉、またその中間というような問題もありますので、これらも系列化して立派に、お互いに責任のなすり合いというようなことでなくて、お互いにそれぞれみずからの責任を背負って快くやっていくというような方向に進めていかなければならない。これらの問題について、これから計画的に将来の方向をつけて努力しなければならない。  特に、今健康というものに国民の皆さん方の大変な関心が持たれておりますので、これはまた私の私見でございますが、健康会議というようなものをつくって、国民すべての皆さんが楽しく愉快に健康に一生暮らせるような社会づくりのために頑張ってまいりたいと思います。
  270. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 次に、今回の健康保険法改正案についてでございますけれども、何分私の時間が限られておりますので、簡潔に御質問を申し上げたいと思います。  結論から先に申し上げますと、私は、今回の改革はどうも拙速に過ぎたうらみがあると、こういうぐあいに思っております。はっきり申し上げて、二十一世紀を迎える国家財政の危機並びに医療費が高騰していく、受益者という言葉は私も余り好きではございませんけれども、一部負担を導入するに当たってどうするかということで、政府が真剣に取り組んでおられることは私は敬服いたします。特に渡部厚生大臣は非常な熱意を持ってやっておられます。また、誤解を恐れずにはっきり言わしていただくならば、吉村局長も真剣に取り組んでおられます。国民の一部からは怨嗟の的になりながらも努力をしておられるということには敬意を表するものでございます。ただし、そのこととこの法改革が拙速であるかどうかということはまたこれは別問題でございますので、その点を私はぜひ知っていただきたいと、こう思うわけでございます。  そもそも戦後の医療保障政策史を振り返ってみますと、特に医療保険に関しましては、戦後この方どうも自民党と日本医師会と保険者の三組織による試行錯誤が重ねられてきた。しかも極言するならば、医療費のことのみに関して、それを契機として起こってきたと言えるのではないか、私はこう思います。社会保障とは何か、社会保険との違いはどこにあるか、社会保障社会保険の上限、下限、ナショナルミニマム、シビルミニマムを踏まえての社会保障社会保険の本質的な論議が十分なされない、あるいはそれが政策の上に生かされていないということを私は訴えたいのでございます。常に経済的、社会的な、政治的情勢に左右されてきた、こう言っても私は過言ではないと、こう思っております。今回の法改革に当たっても、どうも厚生省当局は、あすにでも医療費の高騰が国家財政の破綻を来す、きょうあすにもすぐ訪れるというような感を抱きますけれども、果たしてそうであるかどうかと私は思うわけでございます。  すなわち、私が拙速であると言う理由は、数字をもってお尋ねいたしますけれども、日本の社会保障費と租税負担国民所得比は、御承知のとおり一九八一年に三三・六%であります。ちなみに西独は五三・八、スウェーデンは六七。日本の国民負担が現在の西欧先進諸国に達するまでには十数年を要すると、こう言われております。それで、政府当局がおっしゃるように、老齢化社会が訪れるのも同じく十数年、十五、六年かかるんです。    〔理事遠藤政夫君退席、委員長着席〕 六十五歳以上の人口は、一九八一年で日本で九・三%、それから英国で一九・四%、西ドイツで一五・五%、スウェーデンは一六・六%となっております。だから、西欧社会のように高齢化社会に突入するには十五年、十六年要するんです。所得の問題でも、国民負担の問題でも、高齢化社会に入っていく人口学的な問題でも。十五、六年かかるのに、どうしてこの十五、六年の間に、少なくとも二、三年あるいは数年をかけて十分国民の各界各層の意見を聞いていくべきであると、私はこう思っております。昨年自民党の社会部会でこの問題が論議されて以来今日まで私が慎重論を唱えた理由の一つはそこにあるのでございます。  それで、私は大臣にお伺いしたいのでございますけれども、大臣のおっしゃる、二十一世紀への展望を踏まえて揺るぎない医療保険制度にするとおっしゃっておられますけれども、どうも戦後三十数年の間に保険の改革が行われたとき、いつでも景気がいいときには国民負担を軽くする、景気が悪くなるときには重くするといった、医療を経済に合わせるというやり方は私は感心しない。もちろん経済を医療だけに合わせるということもどうかと思いますけれども、少なくともその中間を求めてやっていくべきではなかったかと、こういうぐあいに思うわけでございます。大臣の御答弁をお願いします。
  271. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 社会保障政策というものが、これは経済の変動に余り左右されてはならないという先生の御意見、全く同感でございます。私は、そういう意味では、今回の改革案というものはもっと早く本当はやるべきであった。遅きに失したために何か経済が不景気になって、財政が苦しくなって、そのためにやったような印象が、これも非常に理由がございますが、これだけが国民の皆さん方に映って、私どもが二十一寸紀の将来まで考えてのこの改革案というものが理解されにくい状態なのであります。  ただ、先生にぜひ御理解賜りたいと思いますのは、今回のこの法案をつくったいきさつは、先生から御指摘のようなかなりいろいろの問題等がございますけれども、しかし、医療保険制度の中で、やはり利用者の皆さん方に一部御負担を願うべきであるということについては、これは昭和四十年代以来、幾たびか議論に議論が重ねられ、ある場合は与野党を通じての合意等もできたり、ある場合は医療担当者の皆さん方にも一部御理解をいただくというような何回かの議論が重ねられてまいりまして、今回、いわば現在の保険制度の中の条件としては最も恵まれた条件にある十割給付を受けておる被用者保険の皆さん方に一割の御負担をいただくということで、これをやっていただくことによって保険料率を将来にわたって上げないで済むようにしよう。また、先生の、西欧並みの国民負担にまだ日本はなっていないんじゃないかというお話、これそのとおりでございます、現在は。しかし、やっぱり将来もなってはいけないというのも国の基本方針になっております。  私は厚生大臣として、医療保険と同時に年金もこれは非常に大きな責任があるわけですけれども、年金の場合は、現在六人の人が掛金を払って一人いただいている、いずれこれが三人の人が掛金を払って一人がいただくということになれば、将来はどうしてもある程度の掛金の負担というのは避けられない状態にあります。そういう中で、 やっぱり今から準備をしておかないと、これは必ず二十一世紀に入ってかなり重い社会保障負担あるいは租税の負担が、高齢化社会我が国の活力を失わせるようなことになってしまうおそれがありますので、それはもう二十一世紀に入ってからではとても間に合わないので、年金にしても医療保険にしても、今やらなければこれは十五年後に間に合わないのでありまして、その点はぜひ大浜先生に御理解を賜りたいと思います。
  272. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 次に、高額療養費支給制度適正化でございますけれども、和田先生が御質問なさったのと重複するかもしれないんですが、第一は高額療養費支給制度は、衆議院ではこれについて、「家計の負担能力に適切に対応した仕組みとなるよう所要の改善を図る」という附帯決議がなされております。この趣旨を制度化するには法律の条文を改める必要があるのか、あるいは政令以下の段階で処理できるのであるか、お考えをお聞かせ願いたい、こういうぐあいに思います。
  273. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 高額療養費制度の仕組みをどのように考えるかということによって結論は変わってくると思います。  現在私どもがやっておりますのは、個々のレセプトに載っかっておる医療費というものに着目しまして、個別的に高額療養費支給をするという仕組みをとっておるわけでございますが、それを大きく変更をするということになれば法律改正が必要になる事態が生じます。しかし、その限度内でやるということになれば政令だけで実施できる、こういうことだと思います。
  274. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 高額療養費支給制度は家計の負担能力の軽減ということにあるわけでございますけれども、先ほどの和田先生御質問のとおり、当然世帯を単位とすべきものと考えます。  それで、その際に三点ほど問題があるんじゃないか。長期慢性疾患患者で、各月分は患者負担の限度額には達しないが、継続して毎月相当高額の負担がある場合。第二番目は、一世帯に二人以上の患者があって自己負担の合算額がこれも同じく各月分では限度額に達しないけれども、継続して毎月相当の額に達している、こういう場合でございます。それから、月末に入院して翌月に退院した場合、これを合算すると限度額を超える、こういうようなものに対応する仕組みを考えるべきではなかろうか、こう思うのでございますけれども、当局の御見解を承りたい。
  275. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 御指摘の点は、そのとおりであろうと考えております。  ただ、私ども、先ほど和田先生の御質問の際にもお答えしたのでございますが、現在の医療保険のシステムというのは、お医者さんから出てまいりますレセプトを基礎にすべての事務が行われる、こういう仕掛けになっております。そして、そのレセプトというのは個人単位でありますし、医療機関単位でありますし、また暦月単位になっております。そのシステムを変えれば何でもできる、あるいは医療機関がすべてコンピューターを入れてコンピューターではじけばすぐ結論が出てくる、こういう形になっておれば、かなりのところまで今先生御指摘のような点は解決できるわけでありますが、やはりレセプト単位方式というシステムを変えない限り、今申されました点につきましても実施するに当たっては限界がある、こういうように私どもは考えるわけでございます。  したがって、限界の範囲内でぎりぎり私どもは努力をし得る余地があると、こういうように考えておるわけでございます。
  276. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 次に、特定承認保険医療機関の点についてお尋ねいたします。  改正法案第四十四条は、「大学ノ附属施設タル病院其ノ他ノ高度ノ医療提供スルモノトシテ命令ヲ以テ定ムル要件ニ該当スル病院若ハ診療所ニシテ都道府県知事承認ヲ受ケタルモノ」を特定承認保険医療機関として特定療養費給付を行うと、こういうぐあいにありますが、この場合の「高度ノ医療」というものは当面どのようなものを考えておられるのでしょうか。  時間がございませんので、簡潔にお願いします。
  277. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私どもが今考えておりますのは、がんの温熱療法、内視鏡によるレーザー診断法等を予定しております。
  278. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 「高度ノ医療」、すなわち新開発医療技術でございますけれども、その技術としての確立状況や普及度を見ながら逐次保険に取り入れて点数化を図り、その結果広く全国民がその恩恵を受けるということを、今まではそういうプロセスをとってきたわけでございますが、今回の特定療養費制度ができると、高度の医療はいつまでもこの制度の枠内にはめられる、あるいは保険に採用されるのが遅くなるのじゃないか、こういう疑念が現在生じておりますけれども、これに対するお考えをお願いします。  それともう一つは、今度高度の医療が特定承認医療機関に独占され保険外負担が永続するようになることのないよう、適切な時期に保険給付に取り入れるような対策をとるべきである、こう考えますが、その点の御見解もお願いしたい。
  279. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 新開発の医療技術につきましては、これまでも医学界あるいは医師会の御意見を聞きまして、中医協の意見を聞きながら保険へ導入をしていく、普及するにつれまして保険に導入をしていくというプロセスをとってきたわけでございまして、今後もそういう方針を貫くつもりでございます。学界の意見、医師会の意見等を聞いて十分運用に当たるつもりでございます。  そうして、特定療養費対象にしたからといって、それを長く保険の枠外に置いておくというようなことはしないで、普及していけばこれを速やかに保険の中に取り入れていくということで運用をしていくつもりでございます。
  280. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 次に、家族療養費のことでございますけれども、現在、被用者保険本人国民健康保険の被保険者に対する医療給付は、療養給付として十割の現物給付を前提といたしております。しかし、これに対して、政策的、財政的な見地から一割、二割あるいは三割の一部負担を課しております。これに引きかえ、被用者保険家族については、家族療養費支給という現金給付方式が法律の建前とされております。これは前近代的な労働者保護的社会保険思想の残りかすと言っても過言ではない。また、これは被用者保険家族に対する差別ではないかとも言われております。今日の社会保障のもとでは、これは当然是正されるべきものではなかろうか。しかも、実態としての医療給付手続が便法としてありますけれども、本人が国保被保険者と全く同様に取り扱われているのでありますから、これを是正することについていささかも障害はないのではないか。このような健保家族法律上の身分の是正について、お考えをお聞かせ願いたいと思うわけです。
  281. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 確かに先生がおっしゃるように、被用者保険の被扶養者だけが取り扱いが違っておることはこれは事実でありまして、その取り扱いを国保等に見られるような形に是正すべきではないか、こういう御指摘もごもっともでございます。私ども、これは将来、医療保険の一元化というようなものを考えていく過程で、当然そういう方向で検討したいと思います。  ただ、今先生御指摘のように、支障はないではないか、確かに支障はないのでありますが、一つ支障があるような気がいたしますのが、被扶養者につきましても、そういう現物給付の形に直します場合に家族保険料の問題をどうするか、こういう問題が必ず出てくる話でございまして、その辺を解決をする必要があろうかと思います。支障と言えばそういうような点であろうと思いますが、今後、医療保険の全体的な整合性を保つ場合に当然考えていきたいと、こういうように考えます。
  282. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 次に、高額レセプトの審査体制の件でございますけれども、支払基金法の改正等には、基金本部に特別審査委員会を設けることとされております。この特別審査委員会は、厚生大臣が別に定める診療報酬請求書を審査するとされておりますが、厚生省は、これを高額レセプトすなわち濃厚診療あるいは不当な診療であるかのよう にPRしているために、一般国民の間では同じような印象を受けております。高額レセプトすなわち不当診療という誤った認識を与えているのではないかと、私はこう思うんですが、これは非常に遺憾なことでございます。  既に、支払基金の支部には審査専門部会が置かれて高額レセプトを中心として特別の審査が行われておりますから、単に高点数であることだけに着目して本部の特別審査を行うということは、屋上屋を架すことになりはしないか。したがって、中央審査を行う場合には、診療内容が医学、薬学の論理に従っているのかどうか、極めて高度な専門的判断を必要とするものであって、私は、この基準に当たっては、今申し上げたような高度の専門的な判断をするもの並びに極めて高額な点数、これに限るべきであると、こう思っておりますけれどもどうでございましょうか。局長の答弁をお願いしたい。
  283. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 先生御指摘のように、私どもも高い点数が直ちに不当な請求であるというような見解は持っておりません。したがって、もしそういう誤解を招くような発言があればこれは改めてまいります。  それから、特別審査委員会審査対象になるケースについてでございますが、先生御指摘のように、医学的にあるいは薬学的に極めて高度な専門知識を要するようなケース、それから極めて高額な医療費に限定すべきではないかと、こういう御意見につきましては、私もそのように考えて、今後そういう形で運用をしていくつもりでございます。
  284. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 それと関連して、特別審査委員会審査委員の委嘱に当たっては、先ほど申し上げましたように、極めて高い専門的な知識を要するわけでございますから、日本医師会等の意見を聞くべきである、学術的に聞くべきであると、こう思うわけでございますが、これに対する御見解をお願いします。
  285. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 学術的に聞くつもりでございます。
  286. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 次に、保険医療機関の再指定の見直しの件でございますけれども、改正法案第四十三条の三の第二項の改正部分には、「保険給付二関シ診療若ハ調剤ノ内容ノ適切ヲ欠ク虞アリトシテ重テ第四十三条ノ七第一項ノ規定ニ依ル指導ヲ受ケタルモノナルトキ」というような規定がなされております。しかしながら、その内容が極めて不明確であります。これは具体的にどのようなケースを指しているのか。また、この内容は、保険局長通知等で明確に示す意図があるのかという点について、お答えをいただきたい。
  287. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、この規定に関しましては、画一的な基準を設けるつもりはございません。具体的なケースにつきましては、医学常識あるいは地域的に見まして、他の医療機関に比べて非常に点数が高い、あるいは診療内容が画一的、傾向的であるというような保険医療機関につきまして指導を重ね――「重テ」というのは二度という意味ではございません、しばしばと、たびたびという意味に私ども解釈をしておりますが、たびたび指導を重ね、改善を求めましても効果がないというような場合を頭の中に描いております。  そして、対象となるケースにつきまして、通知等で明確に示すかどうかという御質問につきましては、そのようにするつもりでございます。
  288. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 なお、医療適正化はこれはぜひとも必要であり、医の倫理にもどった診療行為をする医師は、これは絶対に排除すべきであることは申すまでもございません。しかしながら、権力的な規制のみに頼ることは医療における信頼感を失うものでございます。したがって、できる限り専門団体による自主規制に期待をすべきであって、法の適用はあくまでも慎重に行うよう配慮さるべきものと考えますが、いかがなものでございましょうか。
  289. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) ぜひ医師会の強力な自主的な規制をお願いをいたしたいと考えております。
  290. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 次に、本人一部負担請求事務についてお尋ねをしたい。  衆議院修正によって、三千五百円以下の一部負担金は三段階の定額制となり、窓口の徴収事務は一応簡素化が進められたものと評価されています。しかしながら、これに伴ってレセプト様式の一部改正が行われることと考えますけれども、従来に比べてレセプトの様式と記入方法が複雑化することも考えられます。この点について、できる限り簡素化を進めるよう日本医師会等と十分御協議いただきたいと、こう思います。いかがなものでしょうか。  また、今回の改正に関連する部分だけでなく、請求事務全体の簡素化についても積極的に進めていただきたいと思いますが、この点について御見解を承りたいと思います。
  291. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 確かに、今回の改正によりましてレセプトに一部変更を加えなければならない事態が生じたわけでありますが、この点に関しましては、先生御指摘のように簡素化を図って、複雑にならないような配慮をいたしたい。そして、これは実際に請求をされる、事務に当たられるのはお医者さんでございますので、当然医師団体とも相談をして決めるつもりでございます。  それから、請求事務全体の簡素化に努力すべしという御指摘に関しましては、私ども、コンピューターの導入等も含めまして今後簡素化の道を歩んでまいりたいと、こういうように考えております。
  292. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 次に、本人一部負担に関する付加給付の問題でございますけれども、政管健保の被保険者に対して付加的給付事業ができるよう修正が行われたのでありますが、これによると、社会保険庁長官承認した事業主と被保険者の団体が設けられた場合に限る、とされております。この承認基準はどのようなものであるのか。また、この付加給付は代理請求を医療機関ができるのか。そして、この部分も支払基金を通じて支払われるのか。これらの点についてお聞かせを願いたい。
  293. 坂本龍彦

    政府委員(坂本龍彦君) 三点お尋ねがございました。  最初の承認基準でございますが、現在、私ども検討しておる段階でございまして、基本的なものとして幾つかのものを考えておる段階でございます。さらに詳細につきましては、今後検討を進めて詰めていきたいと考えております。  現在考えております主な基準と申しますと、まず第一に組織、事業内容といったようなものが明文で定められているということでございます。それから第二に、事業所の被保険者全員が参加しているという点でございます。それから第三に、事業が安定的かつ確実に実施されるということが見込まれるということが第三点でございます。第四点といたしまして、集められました資金が適正に管理される、こういったようなことが基本的に必要な基準であろうと現在考えておるわけでございます。  第二点の、付加的給付についての代理請求の問題でございますが、いろいろと問題はあろうと存じますけれども、一定の条件のもとであれば可能であろうと考えておりまして、そのような方向で検討を進めていきたいと考えております。その際に一応どういう条件というものが考えられるかということでございますけれども、第一に、保険者とそれから医療機関患者保険者と申しますのは実施主体も含めまして。それから医療機関、さらに患者。この関係者の合意のもとに行われるということが必要であろうかと存じます。  それから、今回の定率負担趣旨というものは、やはり医療費のコスト意識を喚起するというような点にあるわけでございますので、この代理請求等を実施する場合に、そういった趣旨を没却することがないような形で行われることが望ましいと考えられるわけでございます。したがって、例えば一部負担金全部を給付してしまうというようなことではなくて、そのうちのさらに一部分定率でやはり患者本人が受診時に支払っていただ くというような形が望ましいと考えられるわけでございます。こういった点をさらに十分勘案しながら実施のルールと申しますか、そういう方向を決めていきたいと考えております。  第三の、こういった付加的な部分についての支払いを支払基金を通すことはどうかという点でございますが、この付加的給付というものにつきましては、本来の保険給付とは性格を異にいたしますし、また、実際に実施する場合にどういうような水準で行われるか、これは実施する組織、団体等によってまちまちであろうかと思うわけでございます。支払基金の場合にはどうしても画一的大量の処理を行っておるわけでございますので、支払基金の事務にはなかなかなじみにくいということで、支払基金を通じることは困難ではないかと考えておる次第でございます。
  294. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 次に、今日の医療のあり方について一言申し述べたいと思います。先ほども和田委員から貴重な御提言がございましたけれども、私は、国会議員であるけれどもまた医師でもございますので、その点からあるいは先生に反論の形になるかもしれないのでございますけれども、一言申し上げたい、こう思います。  一部では薬づけ、検査づけ、こういう形容がなされております。このような表現は、私はまじめに地域医療に取り組んでおる医師にとっては非常に問題になる、こういうぐあいに思っております。それで、どうしてそういうことを私が申し上げるかということでお聞きを願いたい。それは薬づけ、検査づけという評価が果たして妥当であるかどうなのかということでございますけれども、今ここに表をお配りいたしました。二枚つづりの表でございます。昭和五十三年度から昭和五十七年度までの政管健保の外来の一件当たり点数の比較でございます。疾病分類別でございますけれども、これも参照にしながらひとつ聞いていただきたい、こう思うわけでございます。  社会保険の一件当たり点数の伸びは平均四・二%でございます。五十六年の六月には点数引き上げが行われましたが、薬価引き下げ分を差し引くと実質二%の引き上げとなっております。この引き上げを考慮に入れますと、一件当たり点数の年率四・二%、こういう数字は決して大きいものではない、私はこう考えます。このような医療費増加傾向というものは全く正常なものであって、薬づけ、検査づけが異常に行われているとは言えないのではないか。まずこの点から当局の御答弁をいただきたいわけでございます。
  295. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) この数値は全体的な平均をとっておるわけでございまして、一件当たりの数値としては四・二%、こういうことでございますので、この伸び率だけからいわゆる薬づけ医療というようなことを云々することはできないというように思います。
  296. 大浜方栄

    ○大浜方栄君 私は、以上十三点についていろいろ御答弁をいただきましたけれども、最後に診療の実態とこれに対する厚生行政の対応について私の意見を申し述べたいと、こう思います。  先ほどの質問で私が申し上げました一件当たりの点数の伸びは、社会保険全体の平均値でありますが、政管健保については、厚生省統計情報部が毎年公表している社会医療診療行為別調査報告によって疾病分類別に診療内容を知ることができるようになっております。  それで、恐縮ですけれども、これは大事なことでございますので少し時間をかけて御説明を申し上げたいとこう思うわけでございますが、お配りをいたしました第一表及び第二表の資料をごらん願いたいわけでございますけれども、この調査によると、昭和五十三年から五十七年までの間に外来一件当たりの点数が特に大きく増加しているもの、二枚目のつづりの第二表でございます。おおむね三〇%以上増加しているものは五つの疾患群であって、この疾患に該当する診療件数は総件数のわずか六%にすぎません。この第二表の向かって右の方をごらん願いたいわけです。これは第二表の上にありますように、新生物、内分泌・栄養・代謝障害、血液・造血器の疾患、精神障害、妊娠・分娩・産褥の合併症などでございます。  また、一件当たり点数の伸びが総平均の九・一%よりも低い疾患群は八つございます。第二表の下の方でございますけれども、これに該当する件数は全体の五〇%でございます。すなわち、平均値よりも低い疾患群が五〇%も占めていることでございます。このように外来分の一件当たりの点数はこの四年間で平均では九・一%になっております、第二表に書いてありますとおり。これを疾患別に見ると、その増加率は極めて大きい差がございます。疾患別に見て差の低いものも差の大きいのもあるわけでございます。先天異常とか、泌尿・生殖系の疾患は逆に低くなっております。私は、この事実に注目願いたいのであります。すなわち、医師は患者の病気を一日でも早く治すために献身的な努力を払っているものであって、医学、薬学の成果を積極的に日常診療に取り入れているということがこの表からあらわれているのではなかろうかと、こう思います。  次に、この社会医療調査の昭和五十七年度分によって一件当たり点数の診療行為別の内訳を比較してみたのでありますが、これはお配りした資料の第三表、二枚目の下の方でございますけれども、「投薬が多いもの」、「注射が多いもの」、「検査が多いもの」と三つに分類をしてみました。それぞれ全疾患の平均の一件当たり点数の中に占める割合、すなわち平均値よりも高くなっている疾患を示しております。  投薬料点数の割合が平均よりも高い疾患は、表にあるとおり新生物、精神障害、循環系の疾患、呼吸系の疾患、皮膚・皮下組織の疾患でございます。新生物、すなわちがん等の腫瘍疾患でございますけれども、これはどうして多いかというと、最近の抗がん剤、制がん剤の開発を反映しているものでございますから、これがふえるのは当然のことであると十分御理解をいただけるのではないかと思います。また、二番目にある精神障害、さらに循環系の疾患等は、心臓疾患あるいは高血圧等でございまして、これはもう皆様御存じのとおり、薬物療法あるいは生活指導を主にするから薬剤投与が多くなるのはこれもまた当然でございます。呼吸器疾患についても、普通風邪風邪と言いますけれども、急性気管支炎などの基礎的な疾患がある場合や、細菌感染が強い場合には、あらかじめ抗生物質を特に老人の場合には与えるのが医学の常識でありますから、これがふえるのもまた私は当然のことであると、こういうぐあいに思っております。  次に、注射が平均よりも多くなる疾病でございますけれども、真ん中の欄に書いてありますが、新生物、血液・造血器の疾患、消化系の疾患、筋・骨格系・結合組織の疾患となっておりますけれども、これも新生物、がん等に対して注射が多くなるのは、先ほど申し上げたのと同じ理由でございます。それから、血液・造血器の疾患は貧血を主としますけれども、この貧血に対しても薬物よりは注射の方が効率がよい、だから注射が多くなっている、こう言えます。それから四番目の筋・骨格系・結合組織の疾患も、これは御存じのとおり慢性関節リューマチとか、あるいは腰痛等がございまして、これに対しては局所注射が最も有効であるから注射が多くなる。また三番目の消化系の疾患についても、十二指腸潰瘍、胃潰瘍等は以前は手術療法のみで主に治療され、薬物療法ももちろんございましたけれども、最近は胃潰瘍、十二指腸潰瘍等も注射で治るケースも多くなったから、当然この注射が多くなってしかるべきものでございます。  また、検査に関してでございますけれども、私は、検査づけ検査づけと、こう言うことに対して申し上げたい。検査というものは、疾病の診断に当たって目であり、耳であり、口でございます。この検査なくしては疾病の早期診断はできないのでございますから、誤解を恐れずに言わせてもらうならば、検査は、医学的な論理に従ってやるならば、やってやり過ぎるということはないのじゃないか。もちろん日本が今日の世界に誇る医学のレベルを持つようになったのは、そういう検査を 十分日常診療に取り入れるだけの学問的なレベルと経済的なレベルがあったからではなかろうか。その他の要素ももちろんございますけれども。  それで、私は一つの例を申し上げますと、CTスキャナーができる以前には、腰椎穿刺、脊髄穿刺がございました。これは脳溢血、それから蜘蛛膜下出血、その他脳外傷等の鑑別に当たっては非常に大事な診断方法でございまして、以前は脊髄に針を刺して、それで血液が入っているかどうかで鑑別した。しかしながらこれは非常に時間がかかる、苦痛を与える、あるいはまた細菌感染のおそれがある、また、診断に時間も要するし、多くの人々が命を捨てたわけでございますけれども、現在では、CTができたおかげで十分ぐらいで的確な鑑別診断ができる。脊髄穿刺は七十点七百円でございました。CT検査は二万一千円でございます。二千百点ですね。二万一千円ぐらいで人間の命がこんなに救われるならば――いいですか、皆さん、みんなが病気になったと思ってくださいよ。医療の質が上がると、今申し上げたように医療費が上がるのは当然であると、私はこう思っております。  それで、この検査の今申し上げた新生物についてもっと申し上げたいわけでございますけれども、鑑別診断、治療効果の測定、判定に当たりましても、また投与医薬剤の副作用の判定などでも検査が必要でございます。高桑先生もいらっしゃいますから、医学部長なさっておられたんだから、私の意見に反対であればまた反対意見をお聞きしたいと思います。それから二番目の内分泌・栄養代射障害等でございますけれども、これは先生方御存じのとおり、糖尿病とか甲状線の疾患でございまして、これも検査が必要でございます。検査なくしてはこの治療はできない。それで、投与量を適切に決定するためにも検査が必要である。薬をやるたびごとに検査が必要であると言っても過言ではないぐらい検査の必要性が強いわけでございます。それから血液疾患の大部分は同じように貧血が主でございまして、貧血の原因はいろんな病気がございますから、その原因疾患を究明するためにも検査が必要である、こういうわけでございます。  以上のように、一件当たり点数を疾患別にその内容を観察いたしますと、それぞれ疾患によって診療内容の構造に特徴があるわけでございますから、この点を御理解いただきたいわけでございます。すなわち、疾患の種類ごとに診療内容に明確な差が見られるということは、それぞれ医学、薬学の水準の向上を積極的に取り入れて患者の早期治癒に努力している。検査が少ないのは、変な言い方ですけれども、医療のレベルが低いんですよね。私はこう言っても過言ではないと思います。投薬や検査の点数の割合が大きくなったことを取り上げて、あたかも医療担当者が営利的に診療内容を操作しているように言われておりますけれども、これはまことに遺憾なことであります。特に行政の責任者である厚生省までが、時としてこのような薬づけ、検査づけをPRするようなことは慎んでもらいたい、私はそう思います。医療国民と医師との信頼関係の上に成り立つわけでございます。そうでないと成果を上げることができない。それを逆に、患者と医師との対立関係をあふるようなやり方をするべきではない。  第二次臨調は民間の活力を生かすことをうたっております。日本の医療の八五%は民間医療機関で占めております。私的医療機関です。特に歯科のごときは九八%でございますから、私は、民間医療機関の活力を生かすことが臨調の基本精神にのっとることである。このためには、民間医療機関の経営基盤の安定を図る。人間はホモエコノミックスでございます。まして、医療機関の経営の安定なくしては十分な医療供給はできないわけでございますから、私は、それとともに医師と患者の信頼関係を阻害しないような医療制度の確立こそが厚生行政の基本政策である、こう思っております。  最後に一言だけ申し上げておきますけれども、医師の喜びは、長者番付に載ることが喜びではございません。医師の喜びは、難しい病気を治すこと、治した患者さんから年賀状と暑中見舞いをもらうことが医師の最も大きな喜びでございますから、そういう喜びを感ずるような政策をとっていただきたい。もちろん医療界も医の倫理を守って襟を正すべきは当然でございます。  これで私の質問を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  297. 石本茂

    委員長石本茂君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  298. 石本茂

    委員長石本茂君) 参考人出席要求についてお諮りいたします。  健康保険法等の一部を改正する法律案審査のため、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  299. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認めます。  なお、日時、人選等につきましては、これを委員長に御一任順いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  300. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  301. 石本茂

    委員長石本茂君) 公聴会の開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。  健康保険法等の一部を改正する法律案審査のため、公聴会を開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  302. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認めます。  つきましては、日時、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  303. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  304. 石本茂

    委員長石本茂君) 連合審査会に関する件についてお諮りいたします。  健康保険法等の一部を改正する法律案について、連合審査会開会の申し入れがあった場合には、これを受諾することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  305. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  306. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時六分散会      ―――――・―――――