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1984-04-17 第101回国会 参議院 社会労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十七日(火曜日)    午前十時開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         石本  茂君     理 事                 遠藤 政夫君                 佐々木 満君                 浜本 万三君                 中野 鉄造君     委 員                 大浜 方栄君                 金丸 三郎君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 森下  泰君                 糸久八重子君                 本岡 昭次君                 中西 珠子君                 山中 郁子君                 藤井 恒男君                 下村  泰君    国務大臣        厚 生 大 臣  渡部 恒三君    政府委員        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生大臣官房審        議官内閣審議        官        古賀 章介君        厚生大臣官房審        議官       新田 進治君        厚生省公衆衛生        局長       大池 眞澄君        厚生省環境衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省医務局長  吉崎 正義君        厚生省薬務局長  正木  馨君        厚生省社会局長  持永 和見君        厚生省児童家庭        局長       吉原 健二君        厚生省保険局長  吉村  仁君        厚生省援護局長  入江  慧君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        警察庁刑事局審        議官       於久 昭臣君        行政管理庁行政        監察局監察官   吉田 俊一君        労働省労働基準        局安全衛生部長  小田切博文君        建設省河川局水        政課長      青木 保之君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度等に関する調査  (厚生行政基本施策に関する件) ○身体障害者福祉法の一部を改正する法律案(内  閣提出)     —————————————
  2. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  社会保障制度等に関する調査を議題とし、厚生行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 本岡昭次

    本岡昭次君 まず初めに、前回の当社会労働委員会において厚生省が事実と異なる資料を事前に私に渡して、また、その資料に基づいて質問を行わせて、私の食品添加物に対する審議を実質的に妨害したという点について、大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。  私は、厚生省が指定した食品添加物が、指定した後数多く取り消しになっている事実を聞き及びまして、その資料を求めました。ところが、厚生省の方は、私の資料提出要求に対して、勝手に発がん性疑いがあるという物のみに絞って、取り消したものが六品目であるという資料をつくって私に渡し、また、当委員会でも、六品目が取り消されたものであるという趣旨答弁を行っています。それで私はその後列の人から、もっとたくさんあるはずだという話を聞き、私もおかしいなと思いながら質問していたんですが、そしてまた別の立場から要求をすると、今度は五十七品目指定取り消し資料が出されてきたんです。私は、初めにこの五十七品目資料提出を期待して、それに基づく質問を展開する用意をしておったんですが、六品目だというものを出されたために私の質問の観点は変わってしまったという事実があるんですね。これは、私がうかつだったのか、厚生省が私の質問要求故意にねじ曲げてやったのかという、そこのところはいろいろあろうと思うんですが、事実は、社会労働委員会に対して実態と異なる答弁がそこになされたということは間違いないんです。  私も初めは大変腹を立てたんですが、人間というのは時間がたつとともにだんだんそういうようなものは薄れていくもので、今では別にそのことで声を大きくする気はないんですが、やはり委員会で実質的な審議が事実に即してできるように正確な資料委員に提出する、このことについて、厚生大臣の方から厚生省のそれぞれの方々によく注意し、今後このようなことが起こらないようにやっていただきたいということをまず冒頭にお願いを申し上げたいと思うんですが、いかがですか。
  4. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ただいまの件、先生指摘のとおり、昭和二十三年の食品衛生法施行後の食品添加物指定取り消し件数は五十七件でございます。  先生が大変よく御勉強なさって御質問をちょうだいしたのに対して、政府委員が御質問趣旨を十分酌み取れずに正確に答弁をしなかったことによって先生審議に大変御迷惑をおかけしましたこと、これまことに申しわけないと存じます。  ただ、決して故意とか、そういうことではありませんで、これは私どもの方がうかつであったことをお許しいただきたいと思います。これは大変重要な審議基礎になることでございますから、今後このようなことのないように政府委員にも十分注意をしてまいりますので御容赦を賜りたいと存じます。
  5. 本岡昭次

    本岡昭次君 そういうことで、ひとつこれからよろしくお願いしたいと思います。  去る四月二日に特別売却になった医療法人社団浩徳全部病院の問題について、一問だけお伺いします。  この都病院に、八日以降右翼団体と言われているN社人たち数人がジープや宣伝カーでやってきまして、土足でこの病院の中の会長室に入ったり病棟内に入ろうとしたり、またその都病院職員をこずいたり突き飛ばしたりしているということが今起こっています。この原因は、都病院理事長牧山氏が高橋さんといわれる方から一億九千五百万余りの借金をしたことによって、この高橋 さんが昭和五十七年十月から昭和六十年の十月までの三年間、その借金のカタとして病院の土地、建物を借用してこれを仮登記し、さらにN社の先ほど言った皆さんに賃貸しをしたという事実があります。それで、貸したのは五病棟会長室事務長室ということになっているようであります。  そこでお尋ねするんですが、このような病院の重要な事務長室とかあるいは病棟そのものを、医療と直接何ら関係のない人に賃貸しをするというふうなことは、医療法四十二条に触れるのではないか、そのようなことはできないのではないかということを私は思っているんですが、それはいかがですか。  それから、こういうことが起こるのは、今言いましたように高橋さんといわれる方が牧山理事長に一億九千五百万円余の債権があるということなんですが、そういう実態が本当にあるのかどうかということも事実問題としてはっきりさせなければならないと思うんですが、この点を調べていただけないかということであります。  せっかく落札がなされて、医師職員一丸となって再建に向かって努力をし、医療も円滑に進み、厚生大臣等のいろいろ御協力もいただいて昨日開設許可も出たということで、私はここでありがとうございましたというお礼だけを申し上げたいと思ったんですが、そういう事実が一方で起こっておりますので、早速東京都とも連絡をとっていただき、事態の対処をしていただきたいというお願いをまず第一点申し上げたいんですが、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  6. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) 御指摘の件についてでございますけれどもお話にもございましたが、確かに医療法の第四十二条、医療法人として許される業務の範囲等に関しまして抵触する疑義がございますから、東京都におきましては、近く後段でお話しのありました件も含めまして、事情聴取を行うことといたしております。
  7. 本岡昭次

    本岡昭次君 事情聴取を早急にやっていただいて、再建の今途上にある都病院問題が再び混乱が起こらないようにひとつよろしく御指導いただきたいと思います。  それでは、昨日の決算委員会で若干質問さしていただきました宇都宮病院についで、厚生省からいろいろ資料もいただいておりますので、それに基づいて質問をさしていただきたいと思います。  まず、昨日も入院患者の預かり金の不正についてただしましたが、これは今後の調査なり捜査にまたなければならない面がありますので、今直接に触れません心ただ、その預かり金の支出内容の問題について、患者希望によって使用した使い捨てディスポ注射器代、あるいは新設された病棟冷暖房費等というものがあって、これはまさに入院患者の預かり金を使うべき性格のものでないわけで、全く間違ったことをやっております。それは今後のまた内容が明らかになった段階での問題としまして、ただ、きのうも、医療の問題として、患者希望によって使用した使い捨てディスポ注射器代というのがあるんですね、十六万円。これは、ディスポ注射器というのは一本当たりどのぐらいの値段になって、十六万円というのはどのぐらいの本数をこれによって使用したかということ。それからもう一つ、きのうも答弁の中で、この注射器患者希望によって使用するというふうな性格のものでないと明確に答弁をいただいたんですが、この病院では患者希望によって使用するというふうなことが現にここに資料の中にはっきり書いてあるんですね。とすると、一体この問題はどのように考えたらいいのかという点、教えていただきたいと思います。
  8. 持永和見

    政府委員持永和見君) 先生指摘の、まず十六万円の問題でございますが、ディスポの一本当たりの代金は、平均しますと約三十円程度でございます。一本当たり平均して三十円程度でございます。全体の患者が二百七十五人おりまして、そのうち生活保護患者は百三十一人でございますが、一人当たり大体十九本程度使っておりまして、全体として私ども調査対象となりましたいわゆるこの適当と思われない支出に該当するディスポ本数はおよそ約五千二百本ぐらいじゃないかというふうに考えられるところでございます。
  9. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) ディスポーザブルの注射器でございますけれども、これは前回もお答えいたしましたように、かなり広く使われております。針の方でございますとまあ大体九〇%ぐらいは使い捨てのものを使っておるのではないか。それから注射器の方、これは半分まではまだいかないと思いますけれども、かなり広く使われておりまして、お話にもございましたが、患者希望によって使うというものではございません。医師が判断して使うものでございます。
  10. 本岡昭次

    本岡昭次君 だから、医師が判断して使うものを患者希望によって使用するというふうなことが報告の中に出ている。一体この病院で何が行われているのかということが、私、この一つを見ても何か背筋が寒くなるような感じがするんですね。ぜひこれ実態を明らかにしていただきたいと思います。調査をしていただきたい。よろしいですか。
  11. 持永和見

    政府委員持永和見君) おっしゃっるとおり、十分調査に努めたいと思っております。
  12. 本岡昭次

    本岡昭次君 それから、今から申し上げることも、昨日の決算委員会で明らかにされた、五十六年から三年間の死亡者が二百二十二名いて、そのうちに不慮事故原因考えられる死亡者が十九名ということでありまして、その区分脳挫傷以下八つの区分がありまして、全体として三年間で十九名となっております。  それぞれ今わからない面もあろうと思いますが、窒息ということでも一体どういう状態窒息なのか。誤飲というのも、一体何をどのようにして誤飲したのか。寒冷死疑いなんて、一体どういう状態寒冷死で死ぬようなことになるのか。いろいろこうあるわけで、その個々について具体的に、いつ、どこで、どのような状態でこのようになったかということを、現在判明している状況でよろしいから報告をしていただきたい。
  13. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 栃木県におきまして実施いたしました死亡状況調査でございますが、その重要な基礎になっておりますのは死亡診断書でございます。死亡診断書死亡の直接の原因が記載されておるわけでございますが、その直接の死因に着目して県は調査を行ったところでございます。  そこで、既に御答弁申し上げましたように、一般的な病死でない外因死というようなものが十九名見受けられたという結果でございます。ただ、直接の死因から見て外因死に当たるのではないかと推定されたものでございまして、これが直ちに暴行その他に結びつく死亡といったことを意味するものではないと承知しているわけでございます。  それでお尋ねの、十九名の中で措置入院患者に関しましては、別途その死亡時点におきまして精神衛生法の定めがございますので、死亡した旨の手続がとられたわけでございますが、その五名につきまして、具体的な状況が現時点で把握できております。  それを逐次具体的に申し上げますと、第一例につきましては、昭和五十六年六月に天井から首をつったという状態窒息死をしておるということでございます。それから第二の例についてでございますが、昭和五十七年の三月、ビニールのひもを鉄さくにかけて首をつった結果窒息死をしたということでございます。それから第三例は、五十七年の六月に食物の嚥下困難による誤嚥ということがこの死亡診断書に記載されております。それから第四例でございますが、五十七年の一月、ヒロポン中毒症がございまして、その症状の一つでございます錯乱のために誤飲による窒息と、こういう記載になっております。それから第五の例につきましては、昭和五十八年の九月でございますが、朝食でパンを誤嚥いたしまして窒息死をしたと、こういうふうに掌握されております。  残余の十四名の方につきましては、現在捜査当局によりまして死亡診断書を初め関係書類が押収されておりまして、現在のところ御質問の詳細はちょっと判明いたしておりません。  以上の状況でございます。
  14. 本岡昭次

    本岡昭次君 まあ今の話の中で、その断りとして、この不慮事故原因考えられるということについてはリンチとか暴行に起因するのではないと思っていると、こういうことで述べられましたが、それでは警察の方で傷害致死として問題になった二件について、その人たちはカルテにどのように死因が記載されていたんですか。
  15. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 警察におきまして傷害ないしは傷害致死事件として現在捜査をされております二件につきましては、ただいまの十九名には含まれておらないわけでございます。  その二件につきましての県におきまして調査しました死亡診断書によりますと、直接の死因は、一例は心衰弱、他の例は吐血というようになっておるという旨の報告を受けておるところでございます。
  16. 本岡昭次

    本岡昭次君 だから私は問題にしているんですよ。心衰弱吐血、それが病名として死亡をしたというふうに書いている。何ら問題ない。だから、今あなたが不慮事故原因考えられると挙げたこの十九名についても、直接はそういうことであったとしても、そこに至るまで何があったかということは全然解明されないわけです。それでは二百二十二名というその死亡者一人一人解明していくと、今言ったように心衰弱あるいは吐血であっても、そこに至るまでにすさまじいリンチ暴力行為を受けて、そしてそのことによって体が衰弱し、心臓が悪くなり、吐血をする状態になったというふうなことを考えていけば、本当に恐ろしいことだと思うんですね。  だから、そういう表面的なことでなく、この病院で一体何が行われたのかということについて、今の二件だけにとどまらず、この十九名の問題はもちろんのこと、二百二十二名の問題についてもやはりこれを解明しなければ私は宇都宮病院の全貌はわからない、こういう立場厚生大臣にも警察の方にもこれは要求をしている、こういうことでございますので、その点はもう既に警察厚生省もやりますと、こうおっしゃっていただいておりますから、改めてここで答弁はいただきませんが、よろしくお願いしたいと思います。  次に、先月十四日に宇都宮病院事件が表ざたになってから一カ月が経過をしておりまして、次々といろんな事実が明らかになって、それは今も申し上げましたように想像を超えたものであり、信じがたいものであるわけであります。この委員会でも私も論議をさしていただきました。予算委員会でも論議がありました。それで、リンチ殺人については、新聞紙上明らかなものは六件を超える疑いが浮上をしておりまして、暴行傷害告訴のみでも三件を超えて、まだ次々と告訴が準備されつつあるようでございます。また一方、白衣の患者が他の患者を診るという無資格者診療も次々と確認をされており、これに関与し逮捕された者は現在八名に達しており、その関係石川院長逮捕も必至の情勢となっているように思います。さらに、先ほども触れました生活保護法に基づくところの日用品費不正流用、限度を超えた患者作業作業療法と称する患者作業など、常軌を逸したこの実態国民に極めて深刻な衝撃を与えています。  この間、明らかになった事実はほんの氷山の一角にすぎないと私も思っておりますし、厚生大臣もそういう認識を持っておられることは過去の御答弁の中で承知をさしていただいております。したがって、私が繰り返しここで言っておりますように、現在大切なことは小手先の対応でなく、つまり、宇都宮病院というその病院の問題に限定するのでなく、ましてや傷害致死で送検されたその二件の問題だけに問題の焦点を絞ってしまうのでなく、我が国全体の精神医療はどうあるべきかという精神医療百年の大計に向けてこの事件の徹底的な解明が必要であろうと思います。  我が国医療費が非常に膨大なものになっている、国民医療として将来負担し切れないものになるのではないかということから、健康保険の一部負担という問題も論議されている中で、それでは精神医療の中で使われている医療費というのは一体どうなんだと、本当に医療に値する医療費がそこで使われているのかどうかという問題の解明も、私はこれとあわせてやっていかなければならぬ問題が含まれている、こう思います。  したがって、私たち社会党は、これは単に事件の問題として扱うのでなく、将来、精神医療そのもののあり方、国民医療そのものを本当に健全なものにしていくという立場に立って、今これに取り組んでいるわけでございます。  そういう意味で、大臣のお考えをここでお聞きして、あと、若干具体的な問題を述べてみたいと思います。
  17. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今回の宇都宮病院事件は、これは極めて遺憾なことであり、まさに先生指摘のとおりでございまして、私もこの事件発生以来、最初に考えておった以上にひどい内容が次々とあらわれてきて、胸を痛めてまいりました。  今後の問題についての考え方も、今の先生お話と私の考え、ほとんど同じでありまして、この宇都宮病院事件教訓にして私どもは今後の問題を勉強しなければなりませんし、また、対策を立てていかなければならないと存じておるのであります。  ただいまだ事件も一〇〇%解明されたということではございません。まだ解明されない点も残っておりますので、今後引き続いて栃木当局等と協力しながら真相の解明に努めてまいり、そして全容を明らかにし、今後の我が国の精神衛生問題の対策の貴重な教訓として今後この教訓を生かして対策を講じてまいりたいと存じます。
  18. 本岡昭次

    本岡昭次君 今厚生大臣が決意として述べられましたその問題にかかわりながら一つ一つ伺ってみたいと思います。  そこで、まず一つ宇都宮病院医師の数、あるいはまた看護職員の数でありますが、もう既に明らかになっておりますけれども、改めてここでお伺いします。事件発覚調査された数と、事件発覚前に調査した数ですね。医師、それから看護職員について報告をいただきたいと思います。
  19. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) 宇都宮病院に対しまして昨年の七月二十日に医療監視を行っておりますが、そのときの医師の数は十五人でございます。これは非常勤医師常勤換算も含んでおります。以下同じでございますが、看護婦等につきましては九十六人でございました。事件後の立入調査昭和五十九年三月二十四日現在では、医師数が五人、看護婦等六十四人と、こういう報告を受けております。
  20. 本岡昭次

    本岡昭次君 大臣、今お聞きになったと思いますが、医師が十五人いたのが事件発覚のときは五人、看護職員九十六人であったのが六十四人。なぜこういうことが起こるのかということが私は不思議で仕方がないんです。  もう一つ厚生省の方からいただいた資料によりますと、この宇都宮病院が一定の基準に照らしてどれだけの医師あるいはまた職員を置かなければならぬか、看護職員を置かなければならぬかということについての報告をもらっております。五十五年度は、その基準に対して現員は八名不足している。これは医師の場合です。五十六年は、基準に対して現員が六名不足。五十七年は基準に対して現員が五名不足。だんだんこれ改善されてきているわけです、八名、六名、五名と。五十八年度は基準に対して六名不足。この程度であれば許容できるんではないかというのがこの資料としてあるんです。ところが、実態は今言ったようなことであったという。なぜこのような大変な差が起きるのかということなんですよ。なぜこういうことが起こるんですか。
  21. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) ただいまの件につきましては、正確にその理由を把握し切れておらない状況にございますけれども事件発覚後に一部の職員が退職したというようなことも一因ではないかと考えておるところでございます。
  22. 本岡昭次

    本岡昭次君 一部の医師があんた退職するといったって、三月の二十四日は基準に合わして必要な医師は十九名、それに対して現員五名でしょう。そうすると、十四名も不足しておるんですよね、実態として。これはどういうことになるんですか。その現員五名も常勤が三名、非常勤が二名ですか、そしてそのほかの常勤換算をして五名ということで、常勤の医者は三名しかいなかったということなんですよ。これはもう病院としての実体を伴っていない中での医療が行われた。だから、もう既にこれは、この中は医療じゃなかった。だから、問題は、そういう病院を放置していたという責任を一体どこがとればいいのか。患者をそこへ入院させた保護者立場に立ったら、まさかそんなひどい病院とは思っていなかっただろう。これどこが責任とるんですか。  そしてまた、恐らく改善勧告というのが出されていたと思うんですね。たとえ基準に対して六名であれ八名であれ五名であれ不足しておれば、基準を充足するようにという改善命令というものが出ていたと思うんですが、そのことにかかわって、なぜ改善措置が具体的に行政としてとれないのかという問題なんですね。これは現在の医療行政の中ではやむを得ぬことなのか、それとも本来やらなければいかぬことをやらなかったのか、その点いかがなんですか。
  23. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) 御指摘のございましたように、当該病院につきましては、改善計画を提出させまして必要な指導を行っておったところでありますけれども、結果として改善されておらなかった、これはまことに遺憾であると考えます。  先ほど大臣からもお話しになりましたように、私どもとしてはなぜこうなったのか、この結果をよく分析いたしまして、今後この医療監視の効果が上がるように、特に反復して違反をしておる、あるいは重要なるところの違反をしておるような場合に、この教訓を生かしてどうやったらいいのか真剣に検討をしておるところでございます。
  24. 本岡昭次

    本岡昭次君 いやいや、慎重に検討って、私は、現在の医療行政の中において改善勧告をし、そして計画書を出させる、そういう措置をしてもなおかつこういう事態がある。先ほどの厚生大臣と私との話じゃありませんが、これは宇都宮病院だけではない、全国の精神病院にはこういう実態があると私は見なければならぬと思うんですね。そうすると、厚生省あるいは県が行政措置としてやれることは、改善命令を出しそして計画書を出させるという段階でそれ以上踏み込んで行けない、実態を正確に把握してそして実態が合わなければそれを強制的に改善させるという、そういう法的な裏づけが現在ないというふうに考えたらいいのか、あるんだけれどもそれをやらなかったんだというふうにとるのかということを私は尋ねているんです。やれるものをやらなかったのか、そこまで現在の仕組みの中ではやれないんだというのかということをお尋ねしているんです。
  25. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) この医療法違反、いろいろございますけれども、今の医師数看護婦等の数につきましては、定めておりますものが標準でございますので、先ほど先生からも、まあこれぐらいならば許容できるというふうなお話がございましたけれども、一〇〇%、これが望ましいのでありますが、そうでないからといって罰則等は実はないのでございます。  ですけれども国民医療を確保する立場から、できるだけこの標準を満たすということで従来から強力な指導をやっておったのでありますが、今回それにもかかわらずこのようなことになった、これはどうもまことに遺憾なことでありまして、先ほども申し上げましたけれども、真に実効が上がるような医療監視をどうしたらいいのか、本件をよく分析をいたしましてその方法等について真剣に検討し、実行に移してまいりたいと考えておるところでございます。
  26. 本岡昭次

    本岡昭次君 何か事件が起きなければその真相がわからぬ、こういうことでは困るわけでございまして、一つ提案をしてみるんですが、どうですか。  この宇都宮病院のような大病院ですね、精神病院の。全国で三つなり四つなりどこか指定をして、厚生省がじきじき、県庁が調べているものと相違があるのかないのかというものを実態調査を一遍やってみてはどうかという提案をするんですが、いかがですか。
  27. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今回の宇都宮病院の問題、大変に大きな波紋を投げかけておるのでありますが、最初に先生に私申し上げたように、事件が起こって、最初に私ども考えておったよりはるかに想像を絶することが次々と出てきておるということは、やはり院長が我々の常識で考えられないような点があったので、今回宇都宮病院があったから全国が全部そういうことだろうと言うのも早計であろうと思いますが、しかしこれは念には念を入れるということが大事でありますので、今の御質問趣旨を十分踏まえ、一層厳正な医療監視が行われるように都道府県を今後指導してまいります。  また、今年度の医療監視の重点項目の一つに、精神病院における医療従事者の充足状況を加えると、こういうことにして御趣旨に沿ってまいりたいと思いますので、御了承をいただきたいと思います。
  28. 本岡昭次

    本岡昭次君 どこか三つか四つ取り上げてということはなかなか難しいと思いますけれども、石川院長が特異な人であったからということももちろん大きな要因にあろうかと思いますが、しかし伏線として、精神病院が全体として持っている問題点を、ただこの宇都宮病院が異常な形で突出させたと見る方が私は妥当でないかと思うので今のようなことを提案をしてみたわけです。しかし、全体として監視監督を強めて、実態をそういう立場からつかんでみるとおっしゃっているんですから、ぜひその結果を聞かせていただきたいと思います。  それから、前々回の質問の際にも御注意を申し上げてお願いをしましたが、何か大量の患者を退院させている事態が続いているのではないかと思うんですね。入院させる必要のない人間を入院させていたというふうなことになって退院させているということのようですが、家族なり、あるいはまた県の福祉関係の皆さんと十分連絡をとって、退院される患者のその後の生活なり医療の問題が十分の状態になるような形で退院の措置がされているのかどうか。新聞等を見ると何かおもしろくない事態も起きているようでございますので、その点はどのように指導をされていますか。
  29. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 患者さんの退院の問題につきましては、症状が軽快いたしました患者に限りまして退院させることとして、県が強力に指導を行っているところでございます。三月の二十七日には文書をもちまして衛生環境部長から院長あてに、病院の適正な管理運営についてということで、特にその点を強く指導をしておるところでもございます。  なお、既に報道もされておりますが、精神衛生鑑定医によります実地審査を県が四月十日から着手しているところでございますが、この県の実地審査によりまして退院ということになります患者が出た場合には、家族や福祉事務所と十分連携をとって退院をするというようなことを強力に県は努力中でございまして、当方といたしましても県にそのように指導をしているところでございます。
  30. 本岡昭次

    本岡昭次君 今ありました、改めて鑑定によって入院の必要のない方は退院の措置をとろうとしているということですが、その鑑定の結果、現在時点で、どれだけの患者さんを診た結果、どれだけの人が入院の必要はないというふうな判断に至ったか、資料がありましたら報告してください。
  31. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 逐次県から報告を聴取しているところでございますが、四月十六日現在でございますと、現在措置入院患者さんから先に着手をしております。既に実地審査を行いました患者さんは七十人に達しております。ちなみに、これに従事いたしました鑑定医の数は三十一人日となっております。  その結果でございますけれども、引き続き措置入院を要するという鑑定結果になりましたのが二十四名でございまして、引き続き入院を要するけれども措置は解除すべきであるという意見になりましたのが四十名おります。それから、通院医療に切りかえることが可能であるという判断になりました者が五名ございます。なお、鑑定の結果を保留しておる者が一人ございます。  以上のような状況報告を受けておるところでございます。
  32. 本岡昭次

    本岡昭次君 措置入院というのは、これは知事が強制的にある意味では拘束をするんですね。それで、引き続き措置が必要だという人が二十四名ということでございますが、そのほかの四十名とか五名とか言われる方ですね、措置入院という形が必要でないとされてきた人の中で、どうですか、非常に長期にわたって、例えば五年も十年も入院をしていたというふうな、措置入院患者として入院していたという人がいるんですかいないんですか。期間の長期、短期はどうですか。
  33. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) ただいま御説明申し上げました七十名の関係につきましての具体的な在院期間別という数字は現在把握しておりませんが、恐らくそういうケースも含まれておるだろうと推定しております。
  34. 本岡昭次

    本岡昭次君 措置入院という問題から解除されるべき人が長期にわたって措置入院患者として扱われていたということは、これはまさに人権問題ですね。この入院患者一人一人のこうした問題も、状態をさらに克明に調査をしていただきたいと思います。今言いましたように、措置入院された七十人なら七十人がいっその措置入院という状態になったのか、そして、そのとき一体どういう状態であったのかという問題ですね。ひとつ時間がかかると思いますが、また資料として提出をしていただきたいということをお願いを申し上げたいと思います。  それから、ちょっと警察の方にお伺いをするんですが、これは事実でないというふうに私は思いたいんですが、しかしそうだと言う人もあるので、念のために質問するんですけれどもね。  とにかく退院をどんどんしている。今措置入院患者を診てやっているという話がありました。しかし、その一方では宇都宮病院が、リンチ、そして暴行、そして人権というものを全然無視した形で医療機関にふさわしくない行為をやっていたということで社会的に今非難され、糾弾を受けているという実態で、もうこれ以工事実を明るみにさせたくない、ある意味では犯罪の証拠隠滅をはかりたいというふうな考えもあって、病院の外に出て告訴し、告発をするという患者に対して、口封じのおどしをやらせるために退院をさせられた者もいるというふうなことも聞きます。そして警察の方にあるいは地検の方に告訴をしようとする人に対して、その人から、おまえそれやってみろというふうな形でおどしの電話がかかってくるというふうなことがあって、どうも余り好ましくない状態があるようなんですが、なぜそのようなことが起こるのかということについて、この病院の中に松本院長補佐という方がおられ、この方がかつては南署の次長ということで警察官の方であったということ、そしてまた、この病院には元警察官の方が何人がおられて、そういう方々が証拠隠滅というふうな立場からの働きかけをしておられるんじゃないかというふうなことを耳にするんです。  あってはならないことであるし、私はそういうことはないであろうと思うんですが、念のために、その間の事情の問題と、この宇都宮病院職員として元警察官だった方が何人おられるのかということについて、わかっておれば警察の方から教えていただきたいと思います。
  35. 於久昭臣

    説明員(於久昭臣君) 報徳会宇都宮病院に勤務しております元警察官であった職員は一名のみでございます。先生指摘の人物につきまして、御指摘のような事実があることは承知しておりません。
  36. 本岡昭次

    本岡昭次君 結構です。あっては困りますので、念のために質問をさしていただきました。  それで、今後そうした疑いを持たれないように、火のないところに煙は立たぬという話もありますしね、十分慎重に対応をしていただきたいものだと思います。  それから、最後に作業療法の問題についてお伺いをいたします。  この宇都宮病院では作業療法の名によって強制労働が行われております。この作業療法ということでの強制労働を拒否すればリンチが行われるというふうな関係にもあるようなんですが、厚生省に精神病院における作業療法の定義と指針、それを示してもらいたいということを私は要求したんですが、また大体の範疇は教えていただきましたが、明確な定義とか指針というふうなものはないようでございます。その問題について厚生省に、何か作業療法と称してやられた作業というものの事実を教えてもらいたいという要求をしましたところ、報徳産業グループに対する宇都宮病院からの患者作業隊の派遣者数及び患者一人当たりに対する作業手当という報告をいただきました。  それでまずお伺いしますが、報徳冷凍冷蔵庫株式会社における患者の運搬作業、六人従事しておりますが、これはその作業療法考えられる範囲のものかどうか。そして、作業日数も七日から二十三日で報酬は一人当たり八百円というふうになっておりますが、この報酬はここに働いた患者六人に果たして正確に渡ったのかどうか、渡されたのかどうかという点も私は疑問が出てくると思うんです。その二点についてお伺いし、さらにこの宇都宮病院と報徳冷凍冷蔵庫株式会社というものの関係はどういう関係にあるのかという点についてお伺いしたいと思います。
  37. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 作業療法につきましては、精神医療におきまして非常に重要な位置づけをされておる点については御理解を賜っているところでございます。  この宇都宮病院におきます作業療法がそれぞれ適切であったかどうかは、現在、引き続いて行っております調査の一環として非常に重視して我々も取り組んでいるところでございます。御指摘の、御質問の点につきまして、今後の調査において明らかにしていきたいと考えておる次第でございます。
  38. 本岡昭次

    本岡昭次君 今後明らかにするって、この資料は大分前にいただいたんですよ。そして、報徳冷凍冷蔵庫での運搬作業というこの中身ですね、それが患者作業隊というふうなものでもって派遣していくという形態が、あなたは精神医療にとって非常に作業療法は重要だと今おっしゃいましたが、そういうようなことに該当すると思いますか。調査を待たなくとも……。
  39. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 現在、私どもの掌握している範囲で申し上げますと、院内作業といたしましては二十六種目ほどの院内作業を行っておりますし、また、院外作業としましては五種目ほどの作業を行っているわけでございます。それぞれにつきまして月間の日数、それに従事いたします患者数等、掌握しているわけでございますけれども、個々にその作業量がどの程度であったのか、また、治療目的に照らして医学的な管理が十分行われていたかどうかという専門的な判断の問題になりますと、これはやはり調査におきましても、その事実関係の掌握ということについては専門家の目も加えまして十分検討する必要があろうかということでございまして、事実を踏まえてお答え申し上げたいということで、今後の調査にゆだねさしていただきたいということでございます。  一応、外見的にあらわれている数字からは、特別問題の数字というようなものは出ておりませんけれども、今後も調査を行ってみたいと考えております。
  40. 本岡昭次

    本岡昭次君 ぜひ早急に明らかにしてください。あなたは外見上、別に問題がないと思うと言いますが、一般の人が見たらみんなこれはおかしいと思いますよ。患者作業隊なんというものを編成して、そしていろんなところに仕事に行くなんということ、それは医療上必要な作業療法というようなことは出てこないですよ、これは。  さらに申しますと、宇都宮病院における作業隊の実態という問題をもっともっと調べてもらいたい。私たちの耳に入っているのにはこういうこともあるんです。  この作業隊というのは、西病棟一の三十六名から四十名と、新館の三棟の六十人から七十人、計百名をオーバーする人たちでもってこの作業隊というものが編成されているようです。その人たちの実力は、病院の附帯工事以外なら何でもやれるという能力を持っているというんですね。  ここの病院入院患者の特徴は、他の、栃木県とか全国では精神分裂症の患者というのが五〇%なり六〇%を平均超しています。栃木県では五八、全国では六一。ところが、この病院では三四%であり、一番多数を占めるであろうと思うのは中毒性精神病患者、アルコール中毒とか覚せい剤中毒、その他の中毒というふうなことで、その他というのも、他の、栃木県とか全国に比較しても多いんですね、パーセントが二二・九%と多い。だから、その他というところの人なり、あるいは中毒性患者という人たちが恐らく中心になってこの百名を超える作業隊というものを編成をして、朝八時半から午後四時半までの八時間労働をやり、日曜と雨の日以外は休まぬということで、出動には二十四人乗りマイクロバス二台と小型バス一台でやっている。これでもまだ足らぬときには、石川幼稚園のバスまで動員をされている。また、遠いところへ行く場合には泊まり込みでも行っている。  そして、今までの作業内容の中で明らかになっているものを二、三言うと、親族の経営するスイミングスクールに四人行っているとか、院長の私宅に多いときには十六人、あるいは田畑に出て農作業には十二、三名、あるいはまたこれも新聞に報道されておりましたが、院長私宅に常駐四人ということ、こう挙げれば、それこそもう百何人の作業隊というものがいろんな形で労働に従事しているということなんで、私はこれはもう作業療法でも何でもないと思うんですね。  だから、作業療法というのは一体何なのかという問題をこの際はっきりさしておかなければ、これは大変な事態になるという気がして仕方がないのであります。  また、石川院長の一族がかつて経営していた養魚場の池、これも作業隊がつくったと言われています。そして、この池の底に敷きつめてある玉石もこの作業隊が鬼怒川の河川敷からそれを運び出して持ち込んだというふうなことも聞いています。  建設省の方にも聞いておきたいんですが、河川敷の石を手続もせずに勝手に作業隊が持ち運ぶというようなことをやれるものかどうか、私はやれないと思うんですが、後でその見解を聞かしていただきたいと思います。  厚生大臣、こういうことを言うともう数限りがないんです。しかも、それが労働ということになってしまったら、作業療法医療行為であるといって、それに対して医療報酬はその病院に入ってくるでしょう。しかも、労働をさせれば、その労働によって一定の利益を得る、ただで働かせるんですから。日当何ぼかとありましたけれども、現実にただに近い形で働かせるんですから。医療行為と労働力の搾取、こんな二重取りを許されていいものかどうか。私は全くもう怒り心頭に発するという状況であります。  そして、過去において、作業療法中の患者が二十メートル近い高いところに上がって塗装中落ちて、そして救急病院死亡したというふうなことも現に起こっており、院長が警察や、労災等の問題もあったんじゃないかと思うんですが、労働基準監督署で事情聴取をされたというふうなこと。あるいはまた、作業に必要な地下足袋、作業衣、長靴、全部患者に買わせていたというふうな事柄も報告をされております。もう私は名状しがたい状態だと思います。  時間もありませんので、建設省、労働省の答弁はまた後ほど私の部屋でしていただくことにして、質問を終わるに当たって、最後にひとつ大臣の方から、法案審議に入りますともうこの種の質問もなかなかできる機会がありませんので、この事実の解明実態解明、きょうもたくさんの問題を申し上げましたが、一つ一つ手抜きすることなく、将来のためにやっていただきたいという強い要望を申すのですが、大臣のお答えをいただいて終わります。
  41. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今先生から具体的に一つ一つの問題の御指摘がありまして、恐らく、聞いておった者みんな、本当に常軌を逸しているということが次から次へとあらわれてくるわけでございます。  ですから、作業療法の問題にしても、この宇都宮病院のはこれは全く論外ですけれども、全体的な精神障害対策としては、これは精神障害対策で何よりも大事にしなければならないのは、一日も早く社会復帰をしていただくこと、その社会復帰ができるように促進する、そういうためには、場合によっては、健全な形で行われるならば、この作業療法というのもこれは大事なことなんです。ただ、宇都宮病院のものが常軌を逸しておったということであって、全体として作業療法が全部悪いというようなことにはならないということもこれまた御理解いただかならないと思います。  何にしても、今先生お調べのように、これは常軌を逸した行為等が次々と明るみに出ておりますので、二度とこの日本国に宇都宮病院をつくるようなことがあってはなりませんから、事態の究明を徹底的にこれから解明してまいりまして、二度と宇都宮病院のようなことが起こらないように努力をしてまいりたいと思います。
  42. 本岡昭次

    本岡昭次君 せっかく来ておられますので、労働省と建設省に一言ずつ。
  43. 青木保之

    説明員(青木保之君) 河川敷での採取の件でございますが、河川区域内の土地、これは民有地と国有地がございますが、河川区域内の国有地で土石を採取しようとする場合には、河川法二十五条で、河川管理者の許可が必要でございます。さらに、土石を採取することによって、河川区域内において土地の掘削その他土地の形状を変更をするというような場合には許可を受けなければならない、これは二十七条でございますが、この二つの許可が必要となるわけでございます。  御指摘の鬼怒川でございますが、これは一級河川、利根川の支川でございまして、宇都宮市の付近におきましては、大体宇都宮市から二十五キロぐらいの程度は建設大臣の直轄管理区間、それから上は県知事の管理区間という格好になってございます。  いずれも現場の事務所の方で許可事務を行っておるわけでございますが、先生から御通告をいただきましてざっと問い合わせいたしましたところ、大体現地におきましては地元の砂利の採取は地元の砂利組合に許可をするというような方針を中心に行っておりますので、そのような病院に対して砂利採取の許可をするということはないというようなことでございました。
  44. 小田切博文

    説明員小田切博文君) ただいま先生いろいろ作業療法実態について例をお挙げになったわけでございますが、その辺につきまして、私ども所轄の監督署を通じまして即刻調べさせていただきたいと、こういうふうに考えております。
  45. 浜本万三

    ○浜本万三君 厚生大臣の所信表明に対する質問をさせていただきたいと思います。  今回の国会は、一般世間では防衛費が突出をいたしまして、福祉行政国民サービスが削られておる、こういう批判がございます。したがって、予算委員会等におきましても、厚生行政に対する厳しい質問があったことは大臣もよく御承知でございます。大臣にいろんな質問をいたしますときに、私自体といたしましても大臣の人となりとかあるいは厚生行政に対する御見識を十分調べた上で質問をすればいいのでございますが、なかなかそういう機会がございませんでしたので、端的な質問をすることになると思います。  特に大臣が、大臣に御就任になりまして以来の新聞で報道される御発言の内容でありますとか、あるいは予算委員会等における答弁内容を承りまして、口幅ったい言い方ではございますが、大変庶民性のある方だと、また率直な意見を吐かれる人だというふうに承っておるわけでございます。  しかし、厚生行政内容を見ますと、大臣の人格に反しまして、大変厳しい政策になっておるわけでございまして、私どもといたしましては、大変に残念に思うところでございます。  したがって、これまでの予算委員会等における質問に重複しない範囲で二、三の問題について質問をさせていただきたいと思いますので、ひとつ率直な御答弁をいただくようにまずお願いを申し上げたいと存じます。  まず最初は、社会保障、社会福祉に対する大臣の基本的な姿勢について承りたいというふうに思います。  そこで、事務当局の方から、国際的に見まして日本の社会保障制度あるいは社会福祉の水準というのは現在どの程度になっておるのか、具体的な資料をもってひとつお示しをいただきたいと思います。
  46. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 我が国の社会保障制度が外国に比べてどうかという御質問でございます。  私ども日本の社会保障は、制度的には西欧諸国に比較しまして決して遜色ない水準にまできておるというふうに考えております。社会保障制度の一つの大きな柱でございます年金について申しますと、先生御案内のように、既に我が国は皆年全体制がしかれておりますし、その水準につきましても、西欧諸国に比べまして十分に肩を並べられる水準まで達しておるというふうに考えております。  また、もう一つの柱でございます医療につきましても、これまた国民皆保険になっておりますし、それに医療供給体制の整備と相まちまして、例えば平均寿命や乳児死亡率は世界の最高水準になっておるということでございます。  資料ということでございますので、ちょっと申してみますと、例えば年金でございますと、日本の老齢年金、これは平均月額でございますが、厚年の場合に月額十一万三千円になっております。アメリカ、イギリス、西ドイツ、スウェーデンというところあたりを見ますと、大体八万円から高いところで十四万円ぐらいとなっております。ただ、これは額でありますから、前年の平均賃金に対します比率を国際比較してみますと、日本の場合四三・五%に対しまして、外国の場合には四五、四八、三五、四五と大体水準としては肩を並べる段階にある。しかも、これは支給開始年齢が日本の場合六十でありますし、西欧の場合には大体六十五でございますので、そこら辺もあわせ考えますれば、先ほど申しましたように十分肩を並べられる水準になっているということが言えると思います。  さらに、医療の面で、先ほどちょっと触れましたが、平均寿命、これは御承知と思いますが、日本の場合には男七十四・二二歳、女七十九・六六歳ということで、世界のトップレベルでございます。乳児死亡率も六・六ということで、スウェーデンが六・九でありますが、そのほかは大体二けた、一〇%あるいは一二%ということでありますので、これもトップレベルにある、こういうことが言えるかと思います。
  47. 浜本万三

    ○浜本万三君 今審議官は、日本の社会保障制度というものは国際的に見て大変いいんだというようなお話がございましたんですが、しかし、社会保障給付費の国民所得の割合を見ますと、日本の場合には国際的にそんなにいい状態ではないというふうに思っておりますが、この点はいかがでしょうか。
  48. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 社会保障給付費の国民所得に対する比率でございますが、今おっしゃいましたように、確かに現段階では日本はかなり低率でございます。  昭和五十六年度で申しますと、その割合は一三・五%でございます。これに対しまして、西欧諸国の場合には国によってばらつきがございますけれども、大体二〇%ないし四〇%ということで、これに比べますと確かに日本の場合は低いわけでありますが、これには理由があるわけでございます。  その一つは、老齢人口の率、これが日本の場合に西欧諸国に比べて低いわけであります。まあ西欧諸国はかなり老齢化が進んでおりますけれども、日本はこれからという段階でありますので、ここが一つ違うわけです。ちなみに、六十五歳以上の人口比率、これは老齢化の一つのメルクマールでありますけれども、この率を調べてみますと、西欧諸国の場合には大体一四、五%、スウェーデンなんかは一六%を超しておりますけれども、そこら辺。これに対して日本の場合は、まだ現段階では九%台でございますので、老齢人口そのものは少ないということが一つの理由でございます。  それから、もう一つの理由は、年金制度の歴史が日本の場合に浅い。したがって、成熟度が低いわけでございます。それに対して、西欧諸国の場合にはほぼ完全に成熟化している。この点が大きな違いでございます。したがいまして、我が国におきましては、よく言われますように、これから人口の高齢化が非常な急ピッチで進んでまいりますし、それから、逐年年金の成熟化も進行してまいるわけでありますから、社会保障給付費も、現段階では先ほど申し上げたような数字でございますが、これから先を考えますと、この割合というものは非常に急速に伸びていく、こういうことが言えると思います。
  49. 浜本万三

    ○浜本万三君 先ほどお答えいただきましたように、国民所得に占める社会保障費は諸外国に比べて低い、その理由は述べられたわけでございますが、しかし大臣、今のような事務当局の話を伺いまして、大臣の所見、御認識はいかがでしょうか。お答えをいただきたいと思います。
  50. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これはいろいろの見方がございますが、福祉元年と言われたような時代からこの十年間の間に、我が国の社会保障が先生方の御指導によって急速に伸びてきたことは、これは間違いのない事実だと思います。  問題は、私は、これからのことを非常に心配しておるのであります。予算面についても、これは皆さんから福祉の後退だ、福祉の後退だ、防衛突出だというおしかりもちょうだいするのでありますけれども、御議決を賜りました五十九年度予算で見ましても、これは九兆二千五百億という厚生省の予算は、今回お決めをいただいた我が国の総予算の中の政策予算の二八%を占めておるのであります。例えば、他の予算と比べてみますと、防衛突出、防衛突出と言われておりますが、まだ防衛庁の予算は三兆円に達しておりません。つまり、防衛庁の予算の三倍を超えております。また、農業に対する保護政策が強いとかいろいろ財界等から指摘されておりますが、農林省の予算は三兆五、六千億と私は承知しております。こういうものと比べると、これはかなりの予算であることも間違いありません。生活保護世帯のための予算でも一兆円、これは通商産業省の予算よりもはるかにオーバーしておるのであります。  だから、私ども政府の立場になりますと、五十兆円の予算全部これは社会保障に持ってくれば問題ありませんけれども、これは農業政策もやらなければなりません、中小企業対策もやらなければなりません、教育もやらなければなりません、また国も守っていかなければならないというと、やはり現在の政策予算の二八%というのは、まあよく頑張ったと褒めていただいていい予算でもあります。  しかし、それならば、それで十分に間に合っておるのかと、こういうことになりますと、これは私が来年度予算でも頭を痛めておるところでありますが、厚生省の予算は九兆二千五百億といいましても、その中身を見ますと、医療費に対する補助、これだけでも三兆九千億。これは農林省の予算よりも多い。エネルギー問題やいろいろ抱えておる通産省の予算の四倍と三兆九千億。また、年金その他の手当が三兆五千億。合わせて七兆四千億という金は、これはちょうど人件費と同じように、現行制度の中で年々高齢化すれば、なおさら急速に増額をしていかなければならない予算でございます。  こういう点を考えますと、行政改革というのも国の方向の至上命令になっており、ここ当分の間経済成長が急速に期待できないということになると、予算編成のたびに、ゼロシーリングとかマイナスシーリングとかという騒ぎの中で我々は厚生省の予算を組んでいかなければなりません。今の社会保障を後退させないで、今日の厳しい財政状態の中で社会福祉のための予算を獲得していくということは非常に困難なのでありますが、私どもはこういう厳しい条件の中でも社会福祉というものは、これは休むことのできない国民生活に直結することでありますから、何とか期待にこたえたいと思って日夜頭を痛めておる我々の立場も御考慮いただきたいと思います。
  51. 浜本万三

    ○浜本万三君 確かに、厚生省の予算規模九兆数千億円は多いということをおっしゃるんですが、それはまあ数字の上ではそのとおりだと思いますが、それぞれの省庁の予算というものは、それぞれの政策の積み重ねの結果こういう数字が出ておるんですから、まるっきり違うものを比べて多い多いと言うのは、これは議論にならないというふうに思うわけでございます。  そこで、もう一回事務当局の方にお返しをいたしましてお尋ねをいたしたいのは、それでは人口が老齢化した段階で我が国国民所得に占める社会保障費は、いつごろ、どの程度になると推計をなさっていらっしゃるんでしょうか。また、我が国の場合にはどの程度の水準が妥当な水準であるというふうに理解をされておられるんでしょうか。そういう点についてお尋ねをいたしたいと思います。
  52. 小林功典

    政府委員(小林功典君) まあ今の御質問につきましては、国民所得がこれからどう伸びるか、あるいは医療費、年金の経費がどういうふうに伸びていくかという正確な試算がございませんと正確なお答えができないわけでありますが、よく言われますのは、先ほど申しましたように、人口が急速に老齢化をして進んでいく、それから年金制度も逐年成熟化していくということになりますと、一つの指標として申し上げられますのは、例えば先ほどちょっと触れました六十五歳以上の人口の比率が現在九%台でありますが、これが七十五年度には一五・六%となります。これは大体現在の西欧諸国の水準でございますが、これに到達する。さらに九十五年ぐらいになりますと二一、二%に達しまして、これは大体日本の老齢人口のピークに達すると、こういうことが言われております。  これは老齢化の話でありますが、これに年金制度の成熟化の要素を加味して考えますと、まあ粗いざっとしたお話でございますけれども昭和九十年前後には社会保障給付費で西欧諸国の水準に追いつき、そのままほっておきますとそれを追い越していくと、こういうことが言えるかと思います。
  53. 浜本万三

    ○浜本万三君 先ほど大臣お話を承りまして、さらにお尋ねをいたしたいというふうに思うのでございますが、最近与党の一部、あるいはまた財政当局の中に、我が国の社会福祉を評してはらまき福祉でありますとか、あるいは老人を余りにも甘やかしておるとか、あるいはまた、このままいくといわゆる英国病になるとかいうような言い方をされておるようでございます。そして、それを殊さらに宣伝する向きもあるようでございます。しかし、先ほどの大臣お話によりますと、やはり福祉国家をつくるということについては相当の情熱を持っていらっしゃるというふうに承りましたんですが、一体、先ほど申したような日本の福祉行政に対する批判ですね、これに対しまして大臣はどのような見解を持っていらっしゃるでしょうか。
  54. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 最初に浜本先生にお断りしておきますが、私はさきに申し上げたのは、社会保障の予算が今多いという意味でございませんので、今の五十兆の国の予算の中の三十二兆円の政策予算の中で、二八%というのは他の予算とのバランスの中で精いっぱい頑張ったということを御理解いただきたいということで、九兆二千五百億の予算で社会保障の予算が多いなどと私が言ったわけでないことはひとつ御理解をいただきたいと思います。現在の予算全体の中の他の省とのバランスやなんかの中で精いっぱい頑張ったということを御了解いただきたいということでございます。  そこで、これからの問題になりますけれども、高度成長が前から続いておったり、あるいは今後ある時点でまた高度成長に入って、国の財政がどんどんどんどん自然増で入ってくるような時期になってくれればいいのでありますけれども、今の時点で考えると、当分国の財政がそういう方向に行くとはこれは想像できないのであります。そういう当分厳しい国の経済、財政の中で、しかし本当に困った人たち、その人たちの予算は、どんなことがあってもこれは我々確保していかなければなりません。今回の五十九年度予算でも、私は大臣就任早々、身体障害者の皆さん方の予算、こういった予算はこれはむしろこういう厳しいときにこそ増加しなければならない。あるいは今後の国民の健康を守っていくための予算、あるいは老人対策というようなもの、老人保健事業というようなものを積極的に予算を進めていったわけでありますが、やはりこれから厳しい財政の中でも、本当にお困りの皆さん方のための予算はどんなことがあっても確保しなければこれはなりません。  そういう意味でやっぱりもう一遍、全体の中でどこか御辛抱を願えるところがあるかと、こういう点はやはり本当にもっと困っている人がおるんだから、その人たちのためにこの辺では御辛抱をいただけないかということの検討はこれはありまして、それが今回の例えば児童扶養手当というようなもの、これから審議を通じておしかりを受けると思いますけれども、やはりみんなが困っているんだから、本人が三百万以上の収入のある人には御辛抱いただこうとか、あるいは別れるときのだんなさんが六百万以上収入のある人には、やはり父親としての義務をまず果たしていただきたいとかいう若干のお願いは私どもしておるわけでございますが、これも私どもとしては制度の見直しであるという考えでありますし、また浜本先生からはこれは福祉の後退でないかというおしかりを受けていくことになるだろうと思いますが、この辺のことで、これから私どもは制度の改革というものをお願いしたわけでございますが、決して世上言われるように、福祉の予算が多過ぎる、それを削りなければならないと、そういうような考えでは毛頭ございません。  二十一世紀の未来にわたって年金が確保され、また立派な医療保険制度が確保され、年をとったら年金がもらえるんだ、いつでも病気になったら立派な医療機関で健康を取り戻してもらえるんだという国民の皆さん方に安心感を持っていただくような社会保障制度というものを、二十一世紀の長期にわたって、より揺るぎないものにするための改革ということはお願いをすることが出てくると思いますけれども、決してはらまき福祉であるとか、福祉の予算が多過ぎるからそれを取り上げるというような、世上言われておるような考えを私は毛頭持っておらないことを御理解いただきたいと思います。
  55. 浜本万三

    ○浜本万三君 福祉を充実させるということは基本的に考えておるけれども、具体的に後退したのではこれは何にもならないというふうに思うんですね。  例えば五十九年度は、たまたま大臣も一、二触れましたように、たくさんの福祉後退の施策があらわれておるわけです。例えば今おっしゃいました医療保険の問題、児童扶養手当の所得制限の強化でありますとか、あるいは生活扶助の基準の見直しでありますとか、あるいは身体障害者の施設費用の徴収でありますとか、そういうふうにたくさんの政策が後退をしておるわけなのでございます。  ですから、大臣考えていらっしゃるように、将来福祉を一つ一つ積み重ねて、二十一世紀に向けて不動のものにしたいとおっしゃるならば、今の時期に後退をさせるような政策をおとりになるということはよろしくないというふうに私は思うんですが、そういう点はいかがでしょう。
  56. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、お言葉を返して大変申しわけないのでありますが、今度の国会に私どもお願いしておる健康保険法の改正とそれから国民年金法の改正、これは決して福祉の後退ではありません。私は、より立派な福祉政策をするための改革であるという考えを持っておりますので、御了承をちょうだいしたいと思います。
  57. 浜本万三

    ○浜本万三君 先ほど大臣からお話しございましたように、昭和四十八年を福祉元年といたしまして十年間、皆さんの努力で営々として福祉行政を充実さしてきた。これはもう間違いないというふうに思うのであります。しかし、この十年間の中で一番制度的に後退をするという状況になっておるのが今年度の厚生行政であるというふうに私は思うわけですね。そういう状態を見まして、国民の多くの皆さんは、福祉が後退をするのではないかという心配をしておることは間違いないというふうに思うのであります。  そこで私は、その所管大臣であります厚生大臣に、そういう国民の不安を解消するような政策を積極的にとっていただきたいということを希望をしておるわけなんでございますが、その点についてはいかがでございましょうか。
  58. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 全く先生のお考えと基本的には同感でありまして、ただ、具体的な方策になって若干意見が変わると思いますが、私は、今こういう厳しい財政の中で、こういう厳しい経済情勢の中で、いかにして福祉を後退させないかということで日夜頭を悩ましておるものでございます。
  59. 浜本万三

    ○浜本万三君 ぜひひとつ、渡部大臣のときにこれまでの日本の福祉が後退したという汚名を受けることは大臣としても望むところではないというふうに思うのであります。したがいまして、今後厚生行政の中で国民が期待されるように福祉の政策を積極的に進めていただくように重ねて希望を申し上げたいと思います。  それから、次の問題は、衆議院の予算委員会が再開されるときに、五十九年三月八日、自民党の見解が発表をされておるわけでございます。それは六項目にわたる内容が発表されておるわけでございます。その中に、厚生行政の中で重要なかかわりを持つものが二つございます。これは、「健保に関する問題については、委員会における審議を見守り、その結論に従って措置する。」というくだりと、それからもう一つは、「児童扶養手当については、当該委員会において審議する。」、その結果を尊重するというくだりがあるわけなのでございます。この内容は御承知でありましょうか。
  60. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 承知しております。
  61. 浜本万三

    ○浜本万三君 この内容をどのように受けとめていらっしゃいますか。大臣の理解していらっしゃる内容について承りたいと思います。
  62. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私ども国会に提出申し上げた法案については、これは私どもが練りに練って最善のものであるという考え方でこの法案を提出しておりますから、私どもの提出した法案を御審議願ってそのまま通過させていただければこんなありがたいことはございませんけれども、しかし、言うまでもありませんが、これは三権分立の、国会が審議することでございますから、当然これは社会労働委員会の御審議、これを議会民主政治の政党内閣として私どもが十二分に尊重しなければならないのも当然のことでありますから、これから社会労働委員会で十分御審議を賜りたいと思っております。
  63. 浜本万三

    ○浜本万三君 特に健保の改正問題につきましては、前々からもやもやしたところがございましたので、重ねてお伺いをいたしたいというふうに思います。  私の記憶では、総選挙のさなかだったと思うのでございますが、自民党さんからこれは選挙後見直しをしたいという御発言がございました。これまでのいきさつを振り返ってみますと、厚生省一つの見解を発表いたしまして、世間でこれに対するいろんな批判が出ました。そして、選挙のさなかにそういう自民党の御発表がございましたわけであります。その後さらに、本国会が開会をされましで審議を続ける中で、給付率の手直してありますとか、あるいは高額医療費の見直しでありますとか、あるいはその他の問題が流布されておるわけであります。しかも、これは消えることなく依然として続いておるわけでございます。そこで、公党間の重要な約束事としてあのような見解が示されたとするならば、政府案は政府案といたしまして何か別なことを考えていらっしゃるんじゃないだろうかというような考え方も我々に浮かぶわけなのでございます。  したがいまして、重ねて大臣からこの問題についての見解を承りたいと思います。
  64. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは先生、総選挙前、厚生省原案といいますか、概算要求の時点で出されましたね。あの案、これについては、これは御承知のように、総選挙前に総理が幅広い見地からこれを再検討するということでありましたので、私は厚生大臣に就任してこの総理のお気持ちを十二分に考えて、私が最初に厚生省原案として受け取ったときの案は、五十九年度からこれは二割いただくとか、あるいはこれは随分いろいろ議論されて、入院しなくても家庭におっても食べ物は食べるんだから、入院時の給食材料費ぐらい負担するのは当然であるということで入っておったり、あるいはビタミン剤その他をこれは保険に認めないと、かなりいろんなものがあったんですが、これは総理の総選挙前における、選挙が終了して幅広い立場でこれは検討するというお言葉にこたえるためにいろいろ手直しをしまして、今回国会にお願いしておるわけでございます。  したがって私どもは、今回提出した原案は、いろいろ皆さん方のそれぞれの方面の意見を聞いて練りに練って出したものでありますから、これはそのままお認めいただくのが最も望ましいことであるという考えには変わりはありませんけれども予算委員会審議の中で、各党国対委員長の皆さん方が相談をいたしまして、この健康保険法の問題についてはさらに社会労働委員会審議を待つという取り決めをちょうだいしておりますので、この社会労働委員会の場を通じて先生方の御意見をお聞きして十分これを尊重してまいりたいと、こう考えております。
  65. 浜本万三

    ○浜本万三君 大臣そうお答えになりましたけれども、最初の概算要求のときの実と、それから、天下の公党が検討をするという発言をいたしましてその後の健保改正法案というものは、内容的にほとんど変わっていないんですよ、実際ね。ですから、私といたしましては、先ほど大臣から御答弁いただきましたように、社会労働委員会審議を尊重するというお話がございましたが、それはいつごろの時期に社会労働委員会審議状況を見守って政府側の態度を決めたいというふうにお考えになるんでしょうか。
  66. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは私どもの方でどうこう申し上げる性質のものでございませんので、私はいわばまないたにのったコイのようなものでございまして、これは皆さん方にお決めをいただくことでございますから、これは今衆議院の社会労働委員会の方で御審議を賜っておりますので、これの審議の間で各党間の合意を得た御意見が出てまいりますれば、それに対して政府側として対応してまいりたいと思います。
  67. 浜本万三

    ○浜本万三君 私たち社会党といたしましては、国民の世論としてこのような改正案を撤回してもらいたいという気持ちを持っておりますので、審議の中でひとつ大臣もそのような決断をしていただきますようにお願いを申し上げたいと思います。  それから、次の問題は、日本医師会長さんの改選が今度行われましたので、これに対しますることについて大臣のお考えを承りたいというふうに思うのでございます。  医師会というのは、医療行政を行うに当たりましては非常に関係の深い団体でございまするし、医師会との円滑な関係をつくるということは、医療行政、ひいては厚生行政全体に重大な影響を及ぼすということが前々から言われておりました。つまり、医師会の協力がないとなかなか難しいということではないかと思うわけでございます。今度医師会の会長さんがおかわりになったということなのでございますが、この点について、大臣はどのような御認識をお持ちでございましょうか。
  68. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、先生指摘のとおり、厚生省の仕事の非常に大きな役割が国民の皆さんの健康を守っていくことでございます。国民の皆さんの健康を守るために第一線で働いておるのは、医師会の皆さん、歯科医師会の皆さん、薬剤師会の皆さん、その他医療関係の皆さん方なのでありますから、厚生省がその方々と対立した関係でおるというようなことが国民のために決して好ましいことだとは思いません。  かつて残念ながらそういう時代がこれは報道されておったことがあります。日本医師会の方が悪かったのか、あるいは厚生省側にも責任あったのか、その辺のことはこれはいろいろ議論のあるところでありますが、私は、過去のことは過去のこととして、私が厚生大臣に就任して一番先に私の一緒に働いてくれる厚生省の皆さん方に申し上げたことは、やはり厚生省国民の健康を守る役所であり、その国民の健康を守る第一線で働いておられる方は、今申し上げたように、医師会とか歯科医師会とか薬剤師会とか医療関係のそれぞれの皆さんなんだから、この方々との信頼関係というものをつくり上げることは、これは国民の皆さんの期待にこたえることでもあるということで、できるだけ今後円満に連絡を密にしていくように申し伝えたのでございます。前の医師会長さんも立派な方でありましたが、今回新しく誕生をした会長さんも、私二度ほどお目にかかりましたが、非常に立派な方でございます。  私は、現行の自由診療、そして出来高払い制度というものにはいろいろの欠陥がございますが、今日置かれた我が国国民医療というものを守り、また、これから我が国医療を飛躍的に発展、進歩をさせていくためには、これはこれ以外にないと、こう考えておるのでありますが、この制度が立派に機能するためには、これは医師会、歯科医師会の皆さん方の良識というものに最大の期待が寄せられておりますので、立派な医師会長さんが出ましたから、私はこれに期待して、これからこれは円満に国民の健康を守っていくという目的では一致するのでありますから、これから先生に御心配をおかけしないで済むような関係改善に持っていきたいと思っております。
  69. 浜本万三

    ○浜本万三君 大臣の御認識はよくわかったんですが、一部の新聞報道によりますと、新しい会長の当選は従来の医師会の政治力低下に危機感を持った結果ではないかというような論評があるわけなのでございます。そして、今問題になっております健康保険法の一部改正法案などについても強い御意見を持っていらっしゃるというふうに報道されておりますが、こういう点についてはどのような御見解をお持ちでしょうか。
  70. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 政治力低下というようなことは、これは勝手に新聞が書いておるのでありまして、私はそう思っておりませんし、医師会の皆さんにしても、これは患者があっての医師会であり、国民があっての医師会であり、厚生省も全く同じことなのでございますから、それが、医師会の皆さん方の意見だけ一〇〇%世の中に通していくというようなことが政治力が高いということなら、それは間違った政治力でございまして、私は今の医師会の姿勢がそんな政治力が低くなったとか、そんなふうに全く考えておりません。むしろ最近の医師会が良識を取り戻しておるということで高く評価をしたいと思います。  それだけに私どももやっぱり、良識のある人にこそこれは役所は期待し、それにこたえていかなければならないのですから、ただ力を振るってわがままを言う人には頭を下げて何でも言うことを聞いて、穏やかな良識ある人を粗末にするというようなことなら、これはますます乱暴者が進んでいく世の中になっていくのでありますから、穏やかな方であるからこそこれは尊重しなければならないので、私は、厚生省は、医師会の会長さんが穏やかな良識のある方であればあるほど、今度はこっちから医師会に出向いていって皆さんの御要望を聞いてくるというぐらいの姿勢で、やはり国民の健康を守っていく第一線に立って働いてくれる医師会や歯科医師会や薬剤師会の皆さん方が安心して国民医療のために頑張っていただけるような条件づくり、あるいは経営の安定、そういうものに積極的にやっぱり手を伸ばしていかなければならないと感じております。  しかし、残念ながら今の日本医師会や歯科医師会の方が我々の提出しておる健康保険法の改正に反対なさるということは間違っておると思います。私はやはり三千二百万の被保険者の皆さん方は、これは現在十割負担だったものが九割になって、今までただでお医者さんに行けたのを一割負担しなければならないのでありますから、その被用者保険の本人の皆さん方が我々にこの法案について反対なさるのであれば、これは私どもは、財政厳しい折から今後の医療保険を安定させるためにひとつお許しをいただきたいとこれはお願いする以外にないのでありますけれども医師会の皆さん方は、私は十分私どもの今回の保険改革の意というものを十分素直に御理解いただくならば決して反対する性質のものではないと、この法案は、そういうふうに考えております。
  71. 浜本万三

    ○浜本万三君 私は、何もかにも医師会と仲よくやってもらいたいということを申し上げておるのじゃないのでございます。今医療費が異常に高騰するとか、あるいは医の倫理が問われておる時期でございますので、そういう問題についても国民の批判にこたえるような改善をさせるように医師会にもぜひ要望してもらい。そういう意味も含めまして、医師会と厚生行政でよく話し合ってもらいたいということを申しておるわけでございますので、誤解をしないように、そういう点を特にひとつ、医師会と話し合いをしていただくようにお願いをいたしたいと思います。
  72. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) はい。
  73. 浜本万三

    ○浜本万三君 それから次は、非常に古くて緊急な問題がございますので、ひとつお尋ねをいたしたいと思います。  これは戦時中に徴用いたしました朝鮮人の皆さんの遺骨収集に関する問題でございます。大臣、よく御承知いただいていないとすれば困りますので、ちょっと簡単にいきさつを申し上げます。  これは、戦時中に広島造船所並びに広島機械製作所に約二千八百人の朝鮮人の方を徴用いたしまして働いていただいておったわけでございます。そして、一九四五年六月に例の義勇兵役法というのが出まして、職域義勇隊として生産に従事をされておった方々でございます。この方々が広島で原爆に遭遇いたしまして被災をされ、戦争が終結をいたしますと同時に、八月二十五日には徴用が解除されました。同時に、内務省及び厚生省は、広島県に対しまして、これらの方々を事業主側が引率して母国に、釜山まで送り返すようにという命令を出したわけでございます。そしてその方々は、盧聖玉という人が引率者になりまして、二百四十一名の徴用工と徴用工の家族五人が合流をいたしまして、広島を出発し、下関経由で仙崎に向かったと言われておるわけでありますが、その後の消息が不明になっておる事件でございます。  その後の調査によりまして、この二百四十六名の方々は帰国途中、台風に遭難したのではないかと、そういうことで調査をしていただいたわけでございます。  広島県の中におきましても、この事件を人道的な立場から非常に憂慮されまして、深川宗俊さんという方が中心になりまして、遺骨の収集でありますとか、あるいは埋葬でありますとか、いうことを一生懸命行ってきたわけでございます。  私もこの問題を田中さんが大臣のときに取り上げまして、いろいろ政府側に具体的な措置をお願いをしてまいりました。その後、衆議院の森井委員もこの問題を取り上げまして政府側に積極的な対策を講じていただくようにお願いをしてきたところでございます。  そして、五十九年九月に政府側の調査をいただいた結果を発表いただいたわけでございます。しかし、残念ながらその後、調査報告書というものが出されて具体的な措置もお決めになっていらっしゃるわけでございますが、一向に事が進まない、そういう状態になっておるわけでございます。  したがって、私といたしましては、その調査結果は一体どうなっておるのか、また、調査に基づいて今後行わなければならないこともお決めになっておるようでありますから、その内容についてお答えをいただきたい。  それからもう一つは、緊急な事態と申しますのは、この盧聖玉さんの実兄が広島の原爆病院に原爆病の治療のために今入院をしていらっしゃるわけでございますから、本人のお兄さんがおられるときに何らかやっぱり政府側の人道的な温かい措置をしてもらいたいというのが私の気持ちでございますので質問をいたしておるわけでございます。お願いします。
  74. 入江慧

    政府委員(入江慧君) ただいまの、広島県の三菱重工で働いておられた朝鮮半島の方々の問題でございますけれども、今御指摘のございましたように、昨年五月の十八日から二十九日にかけまして外務省と一緒に現地で調査をしたわけでございますが、その結果、朝鮮半島出身遭難者ということが推定されます埋葬遺骨が確認されました対馬につきましては、その報告書にも書いてございますように、遺骨を収集して、とりあえず対馬の美津島町町営の納骨施設におさめるということで、今年度それを行うということで、現在準備しておるわけでございます。  またその際に、壱岐につきましては遭難者の遺骨が残っている可能性が非常にあると思われる箇所がございますので、そこを再調査するということを現在考えておりまして、その実施時期等につきましては外務省と現在詰めを行っているというのが現状でございます。  それから、二点目に御指摘になりました、亡くなった方のお兄さんの盧長寿さん、私ども承知しておりますのは、今年三月初めに広島市においでになって入院治療中というふうに聞いておりますが、ただいま申し上げましたこの調査結果等につきましては、韓国政府を通じてこのお兄さんも御存じだと思いますけれども、御指摘のございましたように、何といいますか、非常に御遺族の方のお気持ちということも勘案しなければいけませんので、御本人の病状等を考えまして、適当な機会にどういうお考えかというようなことをお尋ねするという方向で外務省等と協議してまいりたいというふうに考えております。
  75. 浜本万三

    ○浜本万三君 今のお話によりますと、結局まだ何もやってないと、こういうことになるわけなんですね。  外務省と協議してなさるということなのでございますが、それはいつごろになりますか。
  76. 入江慧

    政府委員(入江慧君) まだ最終的に詰めておりませんが、できれば今年度前半にはやりたいというふうに考えております。
  77. 浜本万三

    ○浜本万三君 今年度前半。
  78. 入江慧

    政府委員(入江慧君) はい。
  79. 浜本万三

    ○浜本万三君 私の希望は、今のお兄さんの盧長寿さんですか、この人が入院加療中のときに、ぜひそのような具体的な措置を行っていただくような方向で努力をしてもらいたいという希望があるわけなのでございます。  これに関しまして、先ほど申しました深川宗俊さんという人が韓国側の代表者の方にお会いをいたしまして、どうなっておるかということを聞いておるわけなのでございますが、その方は、保健社会部医政局長及び保健社会部長官でございますが、この方々に会いましてどうしておるのかということを聞きますと、韓国政府としてはこれに対応する十分な用意があるが日本側の反応はない、こういうふうにおっしゃっておられるわけなのでございます。したがいまして、日本側の反応ということを向こうが期待しておられるとするならば、一刻も早く外務省と厚生省が協議をしていただきまして、調査結果に基づく具体的な措置を直ちに講じるように行動を起こしてもらいたいというのが第一のお願いです。  それから第二は、できれば厚生省の代表がお兄さんの盧長寿さんに入院中にお会いをいたしまして、これまでの日本側の対応の内容について説明をされると同時に、御本人のいろんな御希望があると思いますから、そういう問題について詳しく聴取をされて、措置のできるものは措置をするというふうに取り計らってもらいたい。  この二つを私はお願いしたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
  80. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 第一点の問題は、要するに私どもがわかっておりますのは、朝鮮半島出身者ということはわかっておりますが、それ以上のことがわかっておりませんので、御存じのように非常に微妙な問題もございます。したがいまして、これは外務省と相談さしていただきたいというふうに考えるわけです。  それと、お兄さんが入院加療中に、要するに厚生省の代表が会ったらどうかという点につきましては、これまで外務省なり労働省等と一緒にこの問題、何といいますか、対応してきておりますので、そういう関係で相談して、今の御希望のような方向で検討をしていきたいというふうに考えます。
  81. 浜本万三

    ○浜本万三君 相談はいつごろまとまるんですか。相談相談というのはいつもお聞きするんですけれども、まとまる時期をちょっとおっしゃってくださいよ。
  82. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 実は、先ほど申し上げましたように、三月の初めにおいでになったというのを承知しましたのは、きのうお話を伺いまして、広島県を通じて確認したばかりでございますので、早速相談したいというふうに考えます。
  83. 浜本万三

    ○浜本万三君 大臣、ここでひとつ答弁をきちっといただきたいと思います。
  84. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 浜本先生の御心配の壱岐、対馬の朝鮮人遺骨の再調査及び収集の問題、これは人道上も大変大きな問題であり、速やかに実施をしたいと考えております。  ただ、いろいろの条件等もございますので、今政府委員から答弁がありましたが、御期待にこたえるように、できるだけ早くこれを実施するように、外務省及び地元関係機関と協議をしてまいりたいと思いますので、御了承いただきたいと思います。
  85. 浜本万三

    ○浜本万三君 答弁は極めて不満でございますが、時間が来ましたので質問を終わりたいと思います。
  86. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私は、昨年八月二十四日に提出されました身体障害者福祉基本問題検討委員会報告書の中に言われております具体的事項についてお尋ねいたしたいと思います。  最初に厚生大臣大臣は、この報告書の中に新しく触れられておりますオストメードについて、どのような御認識をお持ちですか。
  87. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 人工肛門、人工膀胱の造設者については、身体障害者福祉審議会答申等を踏まえて、新たに、日常生活に著しい制限を受ける者を身体障害者に含める考えでございます。具体的には、改正後の身体障害者福祉法別表に基づく政令で定め、今年十月一日から法の対象とする予定でございます。
  88. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 今大臣もおっしゃいましたように、この人工肛門とか、人工膀胱というものは、本人を初めほかの人に対しても、これは不快感や嫌悪感を催させる言葉である、こういうことから、現在この両方を総称して、万国共通になっているオストメードと呼称して、これを公用語に取り入れてもらいたいというのがこの造設者の方々の要望でもありますが、いかがですか。
  89. 持永和見

    政府委員持永和見君) 御指摘のように、人工肛門、人工膀胱という言葉について、それをひとつぜひ改めてほしいという御要望が、実際お使いになっている方々から出ているのは、私どもも十分承知をいたしておりますし、また、国会でもいろいろと御議論がありましたことも承知をいたしております。  それで、身体障害者福祉法の改正ということで、これから法律改正をこの委員会で御審議お願いする、そういった中で、政令でこの人工肛門、人工膀胱の造設者の方々を身体障害者福祉法の対象にしようということで私ども今予定しておりますけれども、実は、身体障害者福祉法の中でそういう言葉を決める場合には、一般的に使用される用語で、また範囲が客観的に特定できるものであることが必要であるかと思います。  今もおっしゃいました人工肛門なり、人工膀胱という言葉の中には、医学用語としての結腸人工肛門についてコロストミーという言葉でございますとか、あるいは回腸人工肛門についてイレオストミーというような言葉がございますし、また、転用語として、先生おっしゃいましたオストミー、あるいはそういった状態にある方々のことをオストメートというようなことを言っておるようでございますが、先生の御意見も十分に踏まえまして、現在、いろいろとこの範囲の問題あるいは等級の問題、そういった全体の問題を専門家の方々に御審議お願いしておりますので、今御議論のございましたことを十分踏まえて、御審議をさらに重ねていただきたいというふうに考えておるところでございます。
  90. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 先ほどから大臣もお答えになっておりましたが、既に大臣のところにもこのオストメートの方々からいろいろな陳情等もあっておると思いますし、このオストメートの方々の日常の御様子というものもある程度おわかりかと思いますけれども、さらにひとつ認識を深めていただく意味合いで、この際、びろうな話ではございますが、ある程度リアルにこの方々の日常生活の支障を披瀝せざるを得ませんので申し上げます。  このオストメートの方々、つまり人工肛門、人工膀胱には当然のことではございますけれども、括約筋がございません。したがって、それこそ昼夜の別なく、絶えず無意識のうちに排便排尿があるわけでして、そこには当然収便具というものを装着しておかなくちゃいけない。しかも、この装着する収便具なるものが、それぞれの人の体位が違いますので、必ずしも適切であるものばかりではないし、一長一短があるわけでして、しかも、この収便具は一日に何回も取りかえなくちゃいけない。その取りかえるたびに、不潔にならないように清拭もしなくちゃいけない。そういうわけで、外泊あるいは出張、旅行というようなことはもちろん、長時間にわたる会議だとか、あるいは集会にもこれは参加が困難、こういうようなこともあるわけでして、また、不測に発生するガス、排便排尿の悪臭を防止するために、聞くところによりますと、その袋の中に活性炭を入れてみたり、あるいはお茶の葉を入れてみたりしてその悪臭の防止に努めておられるというようなこと等もあるようです。  しかも、この方々がどちらかといえば一家の大黒柱であるというような立場にあるにもかかわらず、こういう状態であるところから職場を追われ、あるいは就労がなかなかできないというような方もいらっしゃるし、そしてまた、家庭にあってさえも、始終出るわけですから、おふろに入るにも、家族の人たちにまでも気兼ねしなくちゃいけないというような、そういう日常生活を強いられるわけでございます。食べ物も、質といい、量といい、いろいろそこには吟味しなければいけない。  中には、御婦人の人たちは、婚約を破棄された人、あるいは長年妻の座を守ってきた人でも、夫婦離別というようなことにもつながったというような方々、そういう社会問題も起こっておりますし、また、そのほか、特有の皮膚のただれだとか、また、それによって生ずる細菌による感染、もうありとあらゆる付随的な疾患が起こってくるわけでして、そのほか性機能が喪失、それによって、本当に口外をはばかるような種々の生理障害を抱きながら生涯を送らなくちゃいけない、こういう方々なんです。  このように、もう社会的にも家庭的にも正常な日常生活を果たし得ない立場にあり、しかも、これが医学の進歩によって生じたところの新手の障害者であるわけです。ところが、今日現在、いまだにこの身体障害者福祉法の適用を受けておりません。  ですから、私ここで大臣に確認したいわけですが、今も申されましたように、この検討委員会報告書にあるように、このオストメートの方々を今後身障者福祉法の適用対象者と必ずされること、これは確約されますね。
  91. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 中野先生から大変御心配をちょうだいしておりますが、これはたしか予算編成の前だったと思いますが、関係の皆さん方に大臣室においでをいただいて、私もお話を聞いて、非常に感動をいたしまして、これは何とかしなくちゃならないと思って、たしかこの人工肛門の問題と事後重症の問題だったかと記憶しますが、大蔵省に、これは認めるということで、予算でも認めていただくことになりまして、先ほどから福祉の後退というような議論を受けておりますが、これらは福祉の前進として評価していただいていい問題だろうと思います。  今回の身体障害者の福祉法の改正により、これは新たに身体障害者に含めることによって、先生御心配の、日常生活上のハンディキャップ等の改善、その福祉の増進を図るという考えでございますので、どうぞこの身障福祉法を先生方のお骨折りで通過させていただいてこれを実現したいと思いますので、御協力をお願いしたいと思います。
  92. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 ところで、このオストメートの方々は、現在我が国でどのくらいいらっしゃいますか。
  93. 持永和見

    政府委員持永和見君) 今大臣がお答え申し上げましたように、私ども、五十九年度の予算からこのオストメートの方々に対します補装具の支給を実施したいということでいろいろと推計をしておったわけでございますが、五十九年度予算においては、実は、一部の都道府県の実績などから勘案して所要の人員を積算しているところでございまして、おおよそ私どもの方で積算しておりますいわゆる身障福祉法の対象となる身体障害者の方々としては、約六千三百人の方々を予定をいたしております。
  94. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 全国でわずか六千三百人、そういうようなことはあり得ないと思うんです。これは、事が事だけに非常にそれをひた隠しに隠していらっしゃる方々もおられるし、今おっしゃったのは何を基準に六千三百名とおっしゃったのか、まずそこをお伺いしたいと思うんです。
  95. 持永和見

    政府委員持永和見君) 先ほど申し上げましたように、これはあくまで推計でございます。実は、一部の都道府県の推計と申し上げましたが、まあある県の障害年金におきます人工肛門なり人工膀胱の受給者数を推計をいたしまして、それを全国的に伸ばしたものでございまして、私ども実際の運用の問題といたしまして、現在予算上の推計はこういうことにはなっておりますが、実際上の問題としては、あくまで身体障害者福祉法の上で身体障害者として認定された方々につきましては、必要な福祉の措置は講じてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  96. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 そうしますと、これが法制化された場合に、このオストメートの方々は医師の証明なり、そういったようなものがあった場合には、これは全部障害者として認定できますか。
  97. 持永和見

    政府委員持永和見君) 実は、身体障害者福祉法の上では、先生も御案内のとおり、身体障害者の範囲として、長期的な障害の方々、それからもう一つは、「日常生活活動に相当程度の制限を受ける者」というようなことで、身体障害者の範囲についての答申があるわけでございまして、したがいまして、後段の、「日常生活活動に相当程度の制限を受ける」というような方々の対象として、こういったオストメートの方々も身障福祉法の対象にするかどうか、具体的、専門的に認定をしていきたいというふうに考えているわけでございます。
  98. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 実は、昨日も厚生省の方にこのことをお尋ねしたんですが、まあ全部というわけにはいかないでしょうと、例えばオストメートの方でもゴルフをやっているような方がもしいられたとしたら、そういう方を身障者として認めるわけにはいかないんじゃないでしょうかと、こういうようなお話もあったわけなんです。  そこで、私思うんですけれども、このオストメートの人たちは、自分たちの疾患が特異なものだけに、ものがものだけに我々の想像以上に非常に気を使っていらっしゃる。できることならもうだれにもこれは知られたくない。少なくとも最小限の人にしか知られたくない。職場に働いていたとしてもこれはもう秘密にしていらっしゃる。それがもし明らかになると、下手すれば解雇されるおそれさえある。そうでなくても今後昇給だとかあるいはいろいろな昇格に影響してくるかもしれない。あるいはそうでなくても、第一周囲の人に何となく敬遠されてしまうおそれがある。こういうわけで大変な気配りをなさっていると思うんです。もし自分がオストメートであるということを知っている人が周囲にいらっしゃったとしたならば、もうそこで自分が惨めったらしくしょげた態度をすればますます不潔感を与えることになるし、だからあえて晴れ晴れとした表情で、清潔感あふれるように、よりすがすがしく、よりさわやかな立ち居振る舞いにこれ努めていらっしゃる。それが実態ではないかと思います。  きょうもあちらにこのオストメードの代表の方々が傍聴席にお見えになっておりますけれども、皆さんごらんになってもわかるように、お見受けする限りでは血色もよく、何ら我々健常者とほとんど変わりない、こういう方々ばかりでございますから、したがって、外形だとかあるいは動作だとか、それで断定するということはこれは大変な間違いである。ここにこのオストメートの特異性があるし、また、そこのところをひとつ厚生省としてはよく御理解をいただきたいと思うんですが、いかがですか。
  99. 持永和見

    政府委員持永和見君) 先ほど申し上げましたとおり、身体障害者福祉法の対象と申しますか、身体障害者福祉法によります身体障害者としての認定につきましては、範囲につきましては、身体障害者福祉基本問題検討委員会からも報告が出されておりまして、あるいは身体障害者福祉審議会からも答申が出されておりまして、先ほど申し上げましたように「長期にわたる身体障害を有し、かつ、日常生活活動に相当程度の制限を受ける者とすること。」という答申が出されておるわけでございます。  基本的には、ほかのいろいろな内科疾患、内臓機能障害の方々も現在身体障害者福祉法の対象とされておりますけれども、こういった方々も、基本的にはこの線で身体障害者の認定をさしていただいているところでございまして、したがいまして御指摘のオストメードの方々、こういった方々につきまして、具体的にどういった範囲でどういった認定基準をするかということについては、そういった対象の実態ももちろん踏まえながら、我々としては検討をしていかなければならないことは当然のことだと思いますけれども、実際に非常に専門的な問題でもございますので、現在、具体的な対象範囲、障害認定基準等につきまして、身体障害者福祉審議会におきまして審査部会を特に設けまして、昨年の十二月から実際に活動いたしまして、法律の施行が本年の十月を予定いたしておりますので、その前でございます本年の七月ないし八月に結論を出していただこうということで、今鋭意この問題について専門的な御検討をいただいているという段階でございます。
  100. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 どういう専門家がいらっしゃいますか。
  101. 持永和見

    政府委員持永和見君) 具体的にお名前申し上げますと、審査部会の身体障害者等級問題小委員会ということでお願いしておりますが、その中で、小委員長中島さん、順天堂大学の方でございます。小委員といたしまして、大国先生、日本大学。小高先生、千葉大学。設楽先生、北里大学。津山先生東京大学。横山先生、慶應大学。そのほかに専門委員といたしまして、膀胱の先生でございます北川先生、順天堂大学でございます。それから直腸の専門家でございます土屋先生、横浜市立大学。こういった方々をお願いいたしております。
  102. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この認定の方式について、先ほどの基本問題検討委員会報告書では、手帳申請の際に添付される指定医の意見書を参考に行うことと更生相談所の意見を聴すること、こういうことがうたわれておりますが、ここが問題だと思うんですね。  やはりオストメートの認定については、普通の医師ではなかなか判定できない面も多々あるんじゃないかと思うんです。したがって、オストメートに精通した医師、その方々の診断によるべきではないかと、こう思うんです。そうでなかったら的確な判断が下されないということにオストメートの方々の危惧と不安がつきまとっているわけですが、いかがですか。
  103. 持永和見

    政府委員持永和見君) この問題は、先生指摘のとおりでございまして、確かに専門家の方々が専門的な判断を下された診断書が私どもも必要だと思っております。そういう意味で、どういった方々をこの診断書を書いていただく医師にするか、そういった点も今この委員会で検討していただいているところでございますが、基本的には先生の御指摘のような方向が適切なものであろうというふうに考えております。
  104. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 さらに、このオストメートの方々が新規に身障者の適用を受けることになりますと、今後の身障者福祉審議会審査部会には、先ほど述べましたようにオストメートに精通した医師、例えば御自身がオストメート、造設者であるというお医者さんもおられるようですが、こういうつまり精通した人、それにオストメートの複数の代表がこの審査部会のメンバーとして参加するのが妥当じゃないかと思いますが、この辺のお考えいかがですか。
  105. 持永和見

    政府委員持永和見君) 前段の御指摘の、オストメートに精通された専門的なお医者さん、これに入っていただくのは当然だと思います。ただ、審査部会の等級問題小委員会なり、この審査部会は非常に学問的な立場でいろいろと御検討、御審議をいただくところでございますので、すべて学識経験者と申しますか、それぞれの斯界に精通された専門家の先生方をもって構成している会でございますので、そういう意味合いで、専門家の先生、これを中心にして今後とも小委員会を続けていきたいというふうに考えております。
  106. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 その精通したお医者さんということのほかに、私が今申し上げているのは、オストメートの、造設者である医師の方も何人もいらっしゃるわけなんです。そういう方々もひとつ加える意思はおありかどうかということを聞いているんです。
  107. 持永和見

    政府委員持永和見君) 先生お話の中で、そのオストメートの先生の中に本当にそういった専門家がおありになるとすれば、それは十分に私ども前向きに検討させていただきたいというふうに考えております。
  108. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私がくどくど申し上げるのは、このオストメートの方々は、これは生涯復元不可能なストーマの実情からであります。  すなわち、先ほども申しましたように、どんなにさっそうとしておられたとしても、一たび裸になれば、ストーマ造設者であることにこれは変わりありません。そしてこのストーマ造設による特有のさまざまな共通した悩みを持って生活している方々ばかりでありますし、しかも、これまたストーマ自体から派生するいろいろな感染症や後遺症がつきまとうわけですので、非常にこれは大変な問題でありますけれども、しかし残念ながら我が国にはストーマ・リハビリテーションもありませんし、さらにストーマ療士のいる療養所もあり ません。現在アメリカではこれが制度化されて、既に四十カ国で二千数百名のストーマ療士、ETというそうですけれども、このETの方々が資格を持って活躍しておると聞いております。  そこでお尋ねいたしますけれども我が国でこのストーマ療士の資格を持った人は何人いらっしゃいますか。
  109. 持永和見

    政府委員持永和見君) 今先生、アメリカのお話がございましたが、日本におきましては、まだストーマ療士というものが制度化されていないのではないかと思います。そういう意味合いで、こういった資格の方々が何人かということは、今の段階でお答えできかねる問題かと思います。
  110. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私が調査した結果では、ストーマ療士の資格を持ったお医者さんはわずかに一名です。看護婦さんが九名です。アメリカに留学して免許を取ってきておられます。本当にオストメードの医療の面ではまことに寒々とした現況でございまして、こういう現況で、まだまだオストメードの実情やストーマの医療知識が未熟なまま手帳交付の適否を決定したり、あるいはそこで等級を査定するのは、これは極めて軽率と言わざるを得ないわけです。  そこで、今後の対応、すなわちストーマ・ケアをどのようにお考えになっているのか、この点をお尋ねいたします。
  111. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) ただいまお聞きをいたしまして、外国から勉強して帰ってきた者がそういうふうな状況であるということでございますが、今後こういう手術を受けられた方もふえてこられるでしょうから、検討を進めたいと考えております。
  112. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私は、これは一つの提案ですが、とりあえず、オストメード及びストーマにかかわる疾患を、現在厚生省に設置されている特定疾患調査研究班の中に新たに加えていただくことがまず第一歩じゃないかと思いますが、いかがですか。
  113. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 現在私どもの方で取り上げております疾病は、原因もまだよくわからない、治療方法も確立していないというような疾病、かつ命に重要なかかわりがあるというような疾病に着目してこれまで取り組んできている経緯がございまして、ちょっと今御指摘の疾病とは、性格が異なるように考えております。
  114. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 難病には指定されていない、しかし、今あなたが言われたような、そういう治療方法というか、原因というか、なかなかこれは難しい問題で、ちょっと治療の見込みも立たないといったような、そういう疾患がここに四十三項目挙げられておりますが、今私が申し上げているこのストーマという問題も、いわゆる生涯これは復元不可能なんですから、そしてそのストーマ造設によって起こるいろいろな後遺症というものは、これまたいわば未知の病です。どういうものが今後派生してくるかわからない。今までなかった疾患であるだけに、我々健常者から考えれば、本当に想像もつかないような、いろいろなとてつもない症状が起こってきているわけなんですから、そういう意味から四十三班今研究班があるわけですけれども、そこの中に——まあそれとはちょっと次元が違うというような答弁でしたけれども、何かの方法で、どこからかこの問題に取り組むそのきっかけをつくるべきじゃないかと思うのです。現に先ほども申しましたようにETの資格を持った人は、たった一人、看護婦さんはたった九名しかいない。こういう状況でこれからどうしますか。そこのところをひとつ考慮していただきたいのですが、いかがですか。
  115. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは中野先生大変御勉強をいただいておりまして、私どもの方、今オストメードと、私も横文字はそうでなくてもなかなか慣れないものですから、すっと出ないくらいで大変恐縮したのでありますけれども、非常に大事なことであることを今の先生の御指摘の中でわかりました。ひとつ先生のきょうの御指摘、それからオストメードの皆さん方の対策、これがもう大事なことは、私は大臣就任のときからこの問題に取り組んで、大臣折衝にまで残して、この予算を確保したほどの気持ちを持っておるのでありますから、これは専門的な問題でございますので、もう少し勉強させていただきたいと思います。
  116. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 要は、ただ身障者としての手帳を交付すればそれでいいという問題でもございませんし、また、これはオストメードに限ったことではございませんけれども、そういういろいろな社会保障の一環としてお金をやればそれで済むという問題ではございません。もうそこのところはよくおわかりだと思いますけれども、特にこのオストメードの問題は、これからどんどん数はふえていくと思います。こういう方々の数がふえていくと思うんですが、ひとつ十分の策を期待しておきます。  次に、現在身障者の等級が厚生年金と国民年金では違っておりますね。つまり、厚生年金の方は三級まであるのに対して、国民年金の方は二級までしかない。したがって、厚生年金では三級の資格があったとしても、国年になると何にもなくなってしまう。非常にこういう不合理があるわけですが、特に、このオストメードの方々は国年加入者が多いわけですけれども、これはやはり今回の改正に伴って国年も厚年と同じようにこれはすべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
  117. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 先生指摘のように、国民年金では一級及び二級が定められておるわけでございます。これは日常生活能力の制限度合いをもとに考えられておるものでございますが、厚生年金では労働能力の制限度合いをもとに一級から三級までが定められておる、こういうことでございます。  それで、人工肛門の問題につきましては、今御指摘のように、両制度では差異がございます。厚生年金は装着の日に判断をいたしますのに対して、国年は装着の日から一年半たってから判断をするということ。それからさらに、厚年では装着それ自体で障害三級が出ますけれども、国年では装着に加えて、日常生活に著しい障害を伴うというような状態がなければ国年の二級に該当しないというような取り扱いになっておるわけでございます。こういうような両制度の差異につきましては、私どもは各制度体系の整合性という観点に留意しながら、基礎年金の導入の際に検討をいたしたいということでございます。  問題点は、やはり認定や支給の時期、そのずれをどうするか。それから基礎年金の導入に伴って、二級、三級のそういう等級の違いの関係をどういうように整理するか。それから身障法の位置づけをどのように考えるか。こういうような三点の見地から筋の通った解決を図るべく検討をいたしてまいりたいというふうに考えております。
  118. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 同じ人間でありながら制度の差異によってこういう差別がつくということは、これはもう放置できない問題ですので、ひとつ一日も早く統一できるような、そして皆さんが納得できるような施策を講じていただきたいと、こう思います。  大体時期としてはいつごろからになりますか。
  119. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) これらはすべて政令事項でございます。現行法では障害等級表は法律で決められておりますけれども、障害等級表も含めまして政令で定めるということになっておりますので、法律が成立し、これが実施に移されるまでの間に政令を決めるということでございますので、やはり一日も早くこの法律が成立をするということが必要であろうというふうに思うわけであります。
  120. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 では、やることに間違いありませんね。
  121. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) やはり整合性のとれた、筋の通った方向で解決をいたしたいというふうに考えております。
  122. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 次に、先ほどから何回か述べました補装具についてお尋ねいたしますが、これが先ほども述べましたように、毎日数回取りかえる使い捨ての消耗品であるわけなんです。したがって、その費用もかなりかさんでまいっております。特に、特殊な物だけに国産品というものがまだまだ技術開発のおくれから品質が悪くて、よほどうまくやらないと疎漏してしまう、こういうところから、必然的にアメリカ、イギリス、デンマークあたりからの輸入品に頼っているというのが現状でございますが、したがって価格も比較的割高となる、それだけ経済的にも負担が強いられている現況であります。  そこで現在東京都では法外援助という形で月に一万円程度の補助をしているようですけれども厚生省としてこの点についての今後のお考えはいかがですか。
  123. 持永和見

    政府委員持永和見君) こういった造設者の方々については、身体障害者福祉法では補装具の支給というものがございまして、先生指摘のように、補装具の支給という形で必要な器具を支給する、こういうことになるかと思いますが、具体的な内容あるいは支給方法につきましては、まずは改正法が成立するということが前提でございます。改正法の成立を待って、これは私ども、ほかの補装具もそうでございますが、告示の形で行っておりますので、改正法の成立を待ってから将来の告示を行いたいというふうに考えております。  その場合には当然、いろいろ御指摘ございました利用者の便も考えなければなりませんし、また、製品につきましても、御指摘のように、まだ現在国産品としてはいいものがないようでございますから、輸入品というものを配慮しながら考えていかなければいかぬというふうにしておるところでございまして、これから検討をさしていただきたいというふうに考えております。
  124. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 オストメードという、それこそ今までなかった身障者に対するいろいろなこれからの施策だけに、きょうの私の質問に対しても、今後の策として明確なお答えがいただけなかったという点等もありますし、これはひとつ厚生省としては真剣に取り組んでいただきたい問題だと思います。  そこでもう一つ、これもちょっとお願いしておきたいことなんですが、オストメードの方々が、例えば風邪だとか、頭痛だとか、その程度の病気をしたというときには比較的どこのお医者さんでも診てくれるわけですけれども、これが内臓的な腹痛だとか、あるいは腰が痛いだとか、そういったようなことでお医者さんの門をたたいた場合には、特殊なそういう人たちだけに、へたに診察をして、その後の妙な医療紛糾にかかわるようなことは、これはもう真っ平だと、こういうわけで、あなたの場合は手術をした病院に行きなさい、こうやって追い返されると、こういう例が少なくないようです。要するに、受け付けさえしなければ責任をかぶることもないと、こういうことだろうと思うんですけれども、こういうようなほかの病人には考えられないような問題も派生してくるわけでして、何とかひとつこういうことが起こらないように、病院相互間の血の通ったシステムを考えるべきじゃないかと、こう思うんです。  先ほど申しましたように、今までなかった病気であるだけに、これからの施策といい、今言ったような、こういうシステムといい、本当にこれは専門的にひとついろいろ考えていかなくちゃいけない。したがって、研究班の中に参加させるということではなしに、別途に何かそういう研究の部署をつくっていただくということも私強く要望いたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  125. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) 実は、私どもの先輩に二人おられます。私も不勉強でございましたが、ただいま先生からお話も伺いまして、そういう実際のメードの先輩の意見もよく聞いてみまして検討をさせていただきたいと思います。
  126. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 時間が余りましたけれども、これで終わります。
  127. 石本茂

    委員長石本茂君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後三時二十分まで休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      —————・—————    午後三時二十分開会
  128. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、社会保障制度等に関する調査を議題とし、厚生行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  129. 山中郁子

    ○山中郁子君 渡部厚生大臣に対する質問の初めての機会でございますので、まず厚生行政の基本姿勢について一言注文も申し上げ、また御見解を伺いたいと存じます。  申し上げるまでもなく、厚生行政我が国の福祉と社会保障をつかさどる中心的なところでありますけれども、最近、この姿勢に対して国民の間で大きな不安が広がっていると思います。財政難克服という行政改革だとか、あるいは高齢化社会に対応するという社会保障制度の確立だとかという美名のもとでさまざまな制度改定がされようとしていますし、また、現に今までもされてまいりました。今国会でも、例えば健康保険あるいは年金制度、こうした大改定が行われようとしています。例えば、児童扶養手当の改悪にまでその問題が波及をして、特に婦人の方たちの中では、大変大きな不安と怒りが今春き起こっていますことは、大臣も先刻御承知だと思います。財政危機を理由にして、今まで国民の力、あるいは国会の中でのさまざまな審議を経てつくり上げられてきた我が国の福祉や社会保障が大きく崩壊させられていくのではないかという、現にそうした事態が生まれてきているわけで、国民の不安はますます高まってきています。  制度改革については、やはり限界があるわけで、そういう点でも大臣もお感じになっているところがあるというふうに思いますけれども、私はここで最近入手いたしましたILOの専門家グループの報告指摘をちょっと御紹介をして、大臣にも耳を傾けていただきたいと思います。  これはILOのニュースに掲載されているものですけれども、こういうふうに書いているんですね。「社会保障を経済危機・景気後退のスケープゴ−トにし、他の部門の公的支出及び民間計画の増大を無視することは、「極めて不当である」と、ILOが発表した報告は述べている。」、あるいはまた、報告によると、社会保障は、これに反対するグループからの攻撃を受けており、経済危機の悪化や貧困の責任を負わされている。」、その他数多くの指摘がされているんですけれども、私はこうした指摘、つまり社会保障などをスケープゴートするというような指摘については、日本の政府に対しても痛烈に批判をしているというふうに受け取れるという感じも深くいたします。まさに私は、社会保障をこれ以上スケープゴートにしてはならない、財政再建問題については、私ども共産党は今までもその考え方を既に明らかにしてきているところでございますけれども大臣に、最低、これ以上社会保障制度の問題をスケープゴートにしてはならないという、そういうことについて、ぜひとも厚生大臣としてのお考えとそれから御決意のほどもまず初めに伺っておきたいと存じます。
  130. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 社会保障の基本は、国民の皆さんの生活の不安をなくすための基礎的な要件というものを支えていくことでございますから、したがって先生指摘のごとく、これを後退させるというようなことはできません。私どもの今苦労もそこにあるわけでありますが、御承知のように、我が国の経済、財政、大変厳しい状態に置かれておりまして、ここ数年、またこれからもゼロシーリングあるいはマイナスシーリング、そういう客観的な条件の中で社会福祉の予算をつくらなければなりません。しかも、これは国民生活に直接関係する待ったなしの予算、また高齢化等に伴って当然に自然増をしていかなければならない予算、こういうものが多いのであります。  そこで私どもは、こういう厳しい条件の中で、どうしても必要な基本的な社会保障はあくまでもこれはやっていかなければならないということで苦労をしております。そのためにいろいろの手直し、これはどうしても必要な方には何としても社会保障はやらなければならないのでありますから、ある程度その人たちから見れば恵まれた立場の人には多少御遠慮を願おうといったような手直しが行われておるわけでありますが、これをもって福祉の後退と断定されるのは早計でございまして、今日の厳しい財政経済の中で社会保障を後退させないための私どもの努力というものも先生にひとつ御理解を賜りたいと思っております。
  131. 山中郁子

    ○山中郁子君 後退させてはならないというだけではなくて、むしろ逆に拡充強化しなければならないという分野、施策がたくさんあります。  それで、私はきょうの機会にその一つとして、学童保育問題、いわゆるかぎっ子対策について政府のお考えをお伺いしたいし、またお約束もいただきたいと思っております。  行政では、都市児童育成事業の中の児童育成クラブという分野でございますけれども、まずこの点は、発足当初、都市における核家族化の進行、既婚婦人の職場進出等による留守家庭児童の多発、あるいは人口の都市集中、交通量の増大などによって児童の遊び場の不足が生じていることなど、そうしたことを原点として都市における児童の福祉の増進に資することを目的とするということで始められた施策であります。これは昭和五十一年の七月三十日付厚生事務次官通達にもそのことが明記をされておりますけれども、こうした原点は当然現在も変わっていないし、今後も変わらないという立場にお立ちになっていると思いますが、厚生省の御見解を初めに確認をしておきたいと思います。
  132. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 今お話にございました、かぎっ子対策、留守家庭学童対策、五十一年から始めたわけでございますけれども、そのときの基本的な考え方、趣旨、現在も全く変わっておりません。
  133. 山中郁子

    ○山中郁子君 それで、特に昨今の雇用平等法の制定をめぐる議論の中でも明らかになっておりますけれども、勤労婦人の増加、それからさらには都市化現象もますます広域化している、そういう状態のもとで、この制度の必要性はますます高まっていると思います。  ちなみに御紹介をしておきますが、大臣御承知かどうか、大臣の選挙区であります福島二区でも、会津若松四カ所、郡山に三カ所、この学童保育が設置されております。この点についても、大臣の必要性の御認識をあわせて一言お伺いをいたします。
  134. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今、私の選挙区のこともよく御勉強をいただいて御指摘いただきましたが、私もこれらのものを見ておりまして、非常にその必要性、重要性については、先生に劣らないとみずから思っております。
  135. 山中郁子

    ○山中郁子君 ここで行管庁にお伺いをいたしますが、さきに行った五十七年度定期調査での都市児童育成事業の実施状況報告書が昨年十二月に発表されました。ここでも、需要はますますふえているという調査の結果が出されていると私は読んでおりますけれども、この点についてのみ行管庁の確認をいただきたいと思います。
  136. 吉田俊一

    説明員(吉田俊一君) 都市児童健全育成事業につきましては、五十七年の七月から九月にかけて、この事業を実施している十六の都市をサンプルで抽出しまして調査したものでございますが、調査結果によれば、先生ただいま御質問の児童育成クラブの設置・育成事業につきましては、十六都市中十二市が実施しております。ほかのメニューの事業に比べれば最も実施の実績が多い事業でございます。  ちなみに、ほかのメニュー事業は、民間指導者養成事業は十六市のうちの八市、それから園庭開放事業は十六市のうちの三市というように実施状況は低調でございますが、多分既婚婦人の職場の進出の増加等により、こういった事業が地域住民の需要の多い事業であると、一応うかがえた次第でございます。
  137. 山中郁子

    ○山中郁子君 共働きの家庭がふえているということはやはり国民が必死になって働いてるということなんですよね。そのあらわれであるわけです。  それで明らかに、今行管庁もお認めになりましたように需要は多いし、需要もふえています。これ、クラブ数を厚生省並びに関係者の方々のところから把握をいたしましたら、十年前は約二千カ所だったのが、ここへきまして、一番新しい数字で八三年の秋、昨年の秋で四千九百十カ所にふえております。現在はさらにこれよりまた十カ所程度ふえているというふうに推定されます。これは一九八〇年の数字で三千九百三十七カ所となっておりますから、やはりこの両三年の間にかなりふえてきているということが言えると思います。  こういう実態にあることは厚生省としても把握をされていると存じますが、いかがでしょうか。
  138. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 児童育成クラブなり学童保育クラブ、そういったクラブ数が今おっしゃいましたように、大変毎年ふえているということは事実でございまして、ちなみに私どもが助成の対象といたしておりますクラブ数を見てみましても、五十五年には九百二十五のクラブ数でございましたけれども、五十八年には千六百六十五クラブになっておりますし、五十九年度におきましては千八百五十クラブを予算におきまして補助対象クラブとして考えているわけでございます。
  139. 山中郁子

    ○山中郁子君 そういう実態は現在の状況を見ても、さらに潜在需要が非常にあるということにもつながると思いますけれども、その点の御見解はいかがでしょうか。
  140. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) この児童育成クラブのねらいというものが、留守家庭児童、かぎっ子、もっと具体的に言いますと小学校低学年の子供さんで、お父さんは無論のこと、お母さん等も働きに出られてかぎっ子になる、そういった子供たち、学童を対象にしたクラブでございますので、やはり今後そういった婦人の職場進出が進むに従いまして、ますますそういったクラブ数は、それに対する行政需要というものはこれからもますますふえてくるだろうというふうに考えております。
  141. 山中郁子

    ○山中郁子君 大臣にお伺いいたしますけれども、この都市児童健全育成事業、特に児童育成クラブ事業ですね、これにつきましては、最近亡くなられましたが、園田さん、当時の厚生大臣でいらしたわけですけれども、また同時に鈴木前総理大臣、これは五十六年の予算委員会、三月十四日の委員会だったと存じますけれども、我が党の沓脱タケ子委員質問したことに対しまして、ともに今後とも拡充に努力するという立場で御答弁をされております。渡部厚生大臣も当然この立場を引き継がれて、今後さらに拡充の努力をされるというお立場をとってくださっていると思いますが、お約束をいただいておきたいと思います。
  142. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 同じ政党であり、我々の先輩である内閣において、先輩の大臣が国会で申し述べておることでありますから、私もその志を継いでまいりたいと思います。
  143. 山中郁子

    ○山中郁子君 私が今なぜこの問題を取り上げてお伺いをしているかといいますと、さきにお尋ねいたしました行管庁の報告書の中で、この事業に対する今後の検討課題としての指摘があるわけです。それで、このことに対して関係者の皆さんの中にもいろいろな御心配もあるという事態が起きておりますので、厚生省としてこの行管庁の報告書の中の勧告、指摘をどのように理解されていらっしゃるかをお尋ねいたしたい。
  144. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 昨年十二月に行管庁から御指摘いただきました要点は、児童育成クラブにつきましては、「事業内容が学校放課後の宿題学習等が中心であり、地方公共団体において同種事業が地域の自主的活動として実施されている状況にかんがみ、本事業の在り方を見直す」必要がある、こういう御指摘をいただいているわけでございますが、私どものこれに対する考え方といたしましては、本来、留守家庭児童の保護育成というものは地方だけじゃございませんで、国と地方が両々相まって推進に責任を持っている、推進すべきであるという考え方に立っておりますし、また、児童育成クラブというのは、一部学習等が中心になっているようなところがあるかもしれませんけれども、全体としては、当初のねらい通り児童の遊びを通じて児童の健全育成を図る、こういう趣旨に従って私は運営されているというふうに考えておりまして、そういった考え方で、さらにこのクラブの今後の推進発展というものを援助をしていきたいというふうに思っているわけでございます。
  145. 山中郁子

    ○山中郁子君 二つの点についてさらに確認をしたいんですが、一つは、宿題とか学習というのは放課後の児童の生活の中に一部としては当然あることである、もちろん遊びも含めて。その点は問題のないところであると存じますけれども、その点の御確認と、それからもう一つは、厚生省の理解としては、当然のことながら、育成クラブの事業について今後とも縮小とか、もちろんのこと廃止につながるような趣旨ではなくて、さらに拡充し、補助効果を高めていく、こういう立場での御理解だと承りましたけれども、その二つの点について、さらに御確認をいただきたいと思います。
  146. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 確かに、放課後の児童の生活の中に学習というものが全く入ってはおかしいとか、入れるべきでないという考え方はとりませんが、あくまでも児童育成クラブのねらいは、最初御指摘をいただきました事務次官通知にも書いてございますように、留守家庭児童等の余暇における保護・育成に資するため、地域住民の積極的な御協力を得て遊びを主とする健全育成活動を行う地域組織というふうに考えておりますので、主体はやはり遊びを通じて健全育成を図るということだろうと思います。全体としては、やはり現在の児童育成クラブはそういった考え方に沿った運営が私どもとしてはなされている、こう思うわけでございます。  それから、今後のクラブに対する考え方でございますが、先ほども申し上げましたように、地方単独事業として助成をしているところもございますし、また、国の助成対象になっているところも年々にふやしているわけでございますけれども、やはり国と地方と相まって児童育成クラブの発展というものを今後とも国としても援助をしていかなければならない、助成をしていかなければならない、こういうふうに思っているわけでございます。
  147. 山中郁子

    ○山中郁子君 したがって具体的にはクラブをさらにふやしていく、内容的にも充実していくという、先ほど大臣にも確認をしていただきました、前総理大臣の御答弁もあった、そういう立場に立ってお進めいただけることだと思いますけれども、同時に、具体的な中身の問題として、現在五万以上の都市というところで一つの線引きというか、基準が行われているわけですね。それから対象の市の数も百市という一つ基準ができています。初めに申し上げましたように、こうした基準をやはり最近の都市化現象の広域化、ないしはまた、需要が高まっている、さらには厚生省自体もお認めになりましたように潜在需要も非常に高く存在している、そういう事態に照らして、これを五万をさらに引き下げる、対象の市の数もふやす、そういう方向へ発展をさせていってその潜在需要にこたえ、国民要求にこたえていくという積極的な姿勢をおとりいただきたい。また、その時期に来ているというように私ども考えておりますけれども、この点についてはいかがでございましょうか。
  148. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) その点につきましては、この都市児童健全育成事業の考え方が、やはりそもそもそういったかぎっ子なり留守家庭児童の問題というのは都市に多い問題である、特に、都市の中でもどちらかといえば大都市に多い問題であるという考え方から、この育成事業の補助対象といいますか、クラブ活動の助成対象というものを、今お話のございましたように、五万以上の市を対象として助成をしているわけでございます。  一つは、これはもう先生御承知だと思いますけれども、本来は、こういったクラブよりもその都市に児童館なり児童センターがありまして、そこを拠点として対策を進めるというのが本来筋でございますが、都市におきましては、用地難等からそういった児童館等の整備もなかなかままならないというような事情もございますので、そういったことも考えまして、都市というものを対象にこの事情をやっているわけでございます。  今地方自治法で市になり得る人口規模というのは、一応原則として五万ということになっておりますので、一応私どもの補助対象、助成対象も人口五万以上の市というものを対象に進めているわけでございますが、実際の運用に当たりましては、原則的にはそうでございますけれども、どうしても五万以下であっても助成が必要だと、あるいは助成してほしいという御要望の強いところにつきましては、五万以下でございましても助成の対象にしているわけでございまして、考え方からいいましても、これからもやはり人口五万以上の市を原則として対象として進めていきたい。また、対象の市の数も百という決してまだ十分な数でございませんので、今のところそれを町村まで、あるいは五万以下の市まで広げるということよりも、五万以上の市を対象にして今後ともその中でクラブ数の増加を図っていく、対象の市の数をふやしていく、そういった方向で進めていきたい、こういうふうに思っているわけでございます。
  149. 山中郁子

    ○山中郁子君 町村であっても、それから五万に欠けていても、あるいは五万ちょっと出ていてもという、違いというのはそういう実態上の違いではないんですよね。実態は全く同じような必要性ないしは需要、そうしたものがあるわけで、私は、これは全体のこの事業にかける予算のこととも大いに関係してくるとは思うのですけれども、先ほどから御確認いただいているように、この事業についてやはり国民要求、とりわけ働くお母さん方の要求にこたえて、政府としてもさらに充実強化していく、クラブ数もふやしていくという、そういう立場で取り組まれるならば、今五万で線引きをされて、そして百市の対象というところが一つの大きなネックになってくるわけですので、ぜひともこれは大臣に、方向としてふやしていく、拡充強化してていくという、そういう施策に立っていらっしゃるので、この点も含めて積極的な今後の検討課題にしていただきたいということなのですが、いかがでございましょうか。
  150. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 児童育成クラブの設置育成事業については、昭和五十九年度予算においても、これは今お話がありましたように、補助対象数を増加するとともに補助単価を増額する等その内容を充実してきたわけでございます。  もちろん、今後ともその需要を見きわめつつ御趣旨に沿って努力をしてまいりたいと思います。
  151. 山中郁子

    ○山中郁子君 先ほど、多少柔軟な対応はしているという意味のことをおっしゃっていましたけれども、そうしましたら、そこのところは実際の需要に照らして、要求に照らして、五万とか百市とかということを機械的におっしゃるんではなくて、今現在、まるで物すごい、ぎちぎちで五万というふうにやってらっしゃらない部分は私もわかるんですけれども、それはかなり幅の狭いものなんですね。要求としてはもっと、今当面柔軟に対応なさるとしても、もっと幅のある対応を求めている、実際に。そういう面もありますので、ぜひそのことも含めた積極的な姿勢をお伺いしたいところでございます。
  152. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 弾力的に、柔軟に努力してまいります。
  153. 山中郁子

    ○山中郁子君 それで今の問題は、先ほどちょっと五十九年度の予算でもというふうに大臣がお触れになりましたけれども、私は、この事業にかける予算の問題からも出てくると思うのですが、率直に言いまして、余りにもかけるお金が少な過ぎると思います。私は、厚生省がこれについての努力をされていることについて否定するものではありません。しかし、申し上げるまでもありませんけれども、単価が一クラブ当たりわずか五十万二千円、今度ふやして五十一万二千円ですか、というものですよね。しかもそれの三分の一ということですね。私は、これではやはり金額的にはもう少し考えていっていいものだというふうに思います。まあ今すぐ五倍や十倍にしろということまでは申し上げませんけれども、せめてクラブ数あるいは単価ともにそこの金額のところからふやしていくということを具体的にお考えいただきたい、そういう時期に来ているのではないか。総額でも、これは育成クラブだけではなくて、三事業全部合わせてたしか二億八千万円だと思うんですよね、五十九年度の予算で。ですから、やはり今後の問題としてはこの金額の増額も含めてお考えいただくことによって、初めて今後とも柔軟に、弾力的に、そして拡充強化していくという先ほどからのお約束が中身のあるものになってくると思いますけれども、この点はいかがでしょう。
  154. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 確かにまだ予算的に私ども決して十分だとは思っておりません。ただ、五十八年度と五十九年度の予算で比較をいたしてみますと、五十八年度は千六百六十五のクラブに対して予算額が約二億一千九百万、二億二千万でございましたけれども、五十九年度におきましては、クラブ数が百八十五クラブの増、千八百五十クラブを対象に予算額は二億四千八百万、約二千万円以上の増額になっているわけでございます。率から言いますと、全体として決して大きな額ではございませんけれども、一割以上の伸びの予算になっているわけでございまして、最初大臣からも申し上げましたけれども、こういった厳しい予算、財政の中で私どもとしては私どもなりの最大限の努力をいたしておるつもりでございます。
  155. 山中郁子

    ○山中郁子君 ですから私も、先ほども厚生省が努力をされていないというふうには考えていませんということを申し上げました。もうちょっと規模を大きくして、厚生省でそこのところの見通しを持って努力をされないと、やはりこのぐらいの水準で一〇%上げるとか、今局長も率としてはそれほどというふうにおっしゃいましたけれども、そこら辺をもうひとつ飛躍させないと、本当にクラブ数をふやすとか、あるいは拡充整備していくとか、あるいは基準を弾力的に需要にこたえて拡大していくというようなことも実際上裏づけがないんですよね。  そこで、一番最初に大臣にも御確認いただいて御決意を伺ったんですけれども、今やはり福祉、社会保障、本当に頑張って国民要求にこたえていかなきゃならない大事なときで、むしろ拡充しなければならないことがたくさんある。その中の一つとして、毎日の暮らしの中で国民が切実に求めている課題の一つでございますから、今私が繰り返し申しましたように、ひとつぜひともこれをつかさどる最高責任者の厚生大臣として、金額も含めて少し大きな飛躍の検討をいただきたいんですが、いかがでしょうか。
  156. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今年度も大変厳しい予算の状態だったことは、これは先生にも御理解を願えると思うんですけれども、その中で頑張ったつもりでございますが、来年度もまた、なお厳しい条件のもとで私ども予算編成に取り組まなければならないという客観条件、そういう中でひとつできるだけ頑張りたいと思います。
  157. 山中郁子

    ○山中郁子君 終わります。
  158. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 この委員会でもうしばしば取り上げている問題で、精神病院のことなんですけれど、多少重複する面があるかもわかりませんが、私、この際、二、三お伺いしておきたいと思うんです。  私は、宇都宮の問題に限定してとやかく申し上げるつもりはありません。たまたま宇都宮病院に端を発して、この際、精神病院のあり方というものにメスを入れなければいけないんじゃないかという気がしておりますので、その面についてお伺いしたいと思うんです。  今度の宇都宮問題を見てみましても、問題は、この精神病院という特性の中からくる閉鎖性、そして監督指導体制の難しさ、そこからくる不備、こういったことが結果して患者の人権を侵害するというようなことが横行する、これが宇都宮病院という形において事実をもって世に証明されたことじゃないかというふうに見ておるわけです。  現在の状況でいきますと、精神病院に対する監督指導は県が実地指導を行って、その結果を年報の形で国に報告するというシステムがとられておるわけです。昭和三十一年にかなり細かく「精神病院に対する実地指導の強化徹底について」という通知が出されておるわけでありますが、その後昭和四十三年に、「精神病院に対する実地指導の強化について」という通知が再び出され、ここでは、「この通知に基づく報告は、従来、必ずしも励行されていない向きもあった」と率直に認めて、この通知がなされているわけです。そして、「四月一日から翌年三月三十一日までを一括とりまとめ、同年四月末日までに報告」されたいということを強く要請しているわけですが、たまたま今度の宇都宮の問題もこの例に漏れないわけでありまして、十九項目の質問事項について衆議院段階で私どもの塚田君が御質問したんだけど、どうも厚生省からのお答えが抽象的でよくわからなかったということを私聞いております。  したがって、この十九項目全部とは言いませんが、暴行不当拘束にかかわる問題の有無、あるいは医師の配置状況作業療法の限界を越えた患者の使役の状況、さらには給食の実施状況、こういったものはいやしくも過去数年間は毎年、これは報告が来ておるわけなんで、その報告段階でこれがチェックされて的確な指導がされていたならば、今度見られるような不幸な事案はなかったんじゃないかという気もするわけなんで、どこにその責任があるか、それはけしからぬ、どうこうということじゃなく、この種の何といいますか、県における実地指導、そしてそれを報告せしめて国がチェックするという今の精神病院に対する監督指導のあり方というものがいいものなのかどうなのか。それで完全に、全国に三十数万という人間がおられるわけですね、精神病院の方が。そういった人たちの取り扱いというものが完全にできるものなのかどうか、その辺ざっくばらんにお聞きしておきたいと思うんです。いかがですか。
  159. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 精神病院に対します実地指導の強化につきましては、かねて重視をして取り組んでおるところでございますが、御指摘のとおり、昭和三十一年には公衆衛生局長、医務局長連名通知で、「精神病院に対する実地指導の強化徹底について」ということで発簡しております。そして、御指摘のとおり、項目の数として数え上げますと、十九になりましょうか、表題としては、「従業員の配置状況」、「給食の実施状況」等々、重要な項目を掲げておるところでございます。その後、昭和四十年代に入りましてから関連する通知も二度ほど出ております。  それで、宇都宮病院に関しての御設問でございます。今回の事件を契機としまして、これまでの実地指導が宇都宮病院に対してどのように行われたかということの要点だけ申し上げますと、毎年栃木県におきまして年一回精神病院については実地指導を実施しておるところでございまして、その病院に対しては、精神衛生の部門と医療監視の部門と合同で病院に赴いて、関係者からの事情聴取並びに必要な書類の点検等行っておるわけでございます。  なお、栃木県におきましては、チェックする項目をさらに細かく定めまして、八十七ほどのチェック項目について点検を行っておるという旨の報告をいただいております。その主要な項目につきましては、まず職員については十一項目ございますし、患者の処遇関係につきましては十八項目、以下家族との関係、それから作業療法について、それから防火防災についてというようなことで、最後に給食関係、診療管理事務について、合計いたしますと八十七ほどの項目についておおむねすべてチェックをしておるわけでございます。  これまでの指摘いたしました指導事項につきましては、ほとんど毎年のように医師数不足、看護婦数の不足指摘しております。そのほか、例えば五十六年度におきましては、十月に実施しておるわけでございますけれども、無断離院患者の数が多いので管理体制を速やかに改善することというような指摘を行っております。それから五十八年度につきましては、五十八年七月に実施しておりますけれども医師数不足、必要数二十一名に対して現員十五名、六名不足。それから看護婦数の不足、必要数百四十九名に対して現員九十六名で五十三名不足。この節は改善計画書を提出するように指示しております。それから、同じく五十八年度のチェックにおきまして夜間を想定した避難訓練が実施されていないというようなことの指摘、あるいは家族会の活動が見られないけれども、こういった面での家族会の育成等家族との関係をもう少し密にするような配慮を必要とするというような指導を行っている旨の記載がございます。そのほかはチェックしたという記載でございまして、特に問題の指摘がなされてないというようなこれまでの推移でございます。  通常の精神病院におきましてこれだけたくさんの項目についてチェックをするわけでございますけれども関係者からの実情把握、書類の点検、大方の病院におきましてはこれだけのことでいろいろな問題点が出てくるわけでございますが、残念ながら宇都宮病院のケースにおきましては、もし現在問題になっておりますような事柄がチェックし切れなかったとすれば非常に遺憾なことでございまして、今回の事実究明をまってそういった問題点をさらに深く掘り下げて、可能な限り今後の医療監視あるいは指導に、それを教訓として反映させていきたい、こういう所存で今専ら事実の究明、問題の所在の解明ということを継続しているところでございます。
  160. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 宇都宮病院におけるこれは、ここだけであるのかどうかわからぬわけで、実際恐ろしいことなので、現に出てきたこの宇都宮病院リンチ殺人、乱脈医療実態、それがここまで放置されてきた、これはまさに行政の監督指導体制の不備、それから精神病院の閉鎖性あるいは密室性、これが重なってこういう結果を生んでいると私は思うんです。  昨年のリンチ殺人事件も、病院に収容されていた者が退院して警察に届け出て発覚したのが端緒なんです。今までの実地調査ではわからないわけなんだから、毎年一生懸命これをやったって何もわからないんですよ、何年も。退院した者が警察に行って、そして初めてこのリンチ殺人というのがわかった。厚生省もその人がだれだということを知っておると思う。私もその人に会っておるんですから。だから、それは何遍も言っていると言うのです、本人は。取り上げられない。たまたまこれ取り上げられて四月と十二月に発生したリンチ殺人ということが表に出たんだけど、それ以外にも過去に何件か発生していると。本人も最近これを手記にまとめるということを言っておるようだけれども、極めてこれは重大な問題だと思うんです。  やっぱりその一つに、先ほど言った書類調査の不備というものと、それからこの密室性、これにメスを入れなきゃいかぬ。宇都宮の場合でも、電話の交信は二週間に一度院長の許可制、そして、看護人の付き添いにより病院に不利な内容をチェックされたりすると、これは後でもうどうしようもないことになる。あるいは手紙も病院側が承諾した者あてに限る。そして封をせずに看護人に手渡して投函させる。面会の場合でも看護人が付き添っている。こうなってくると、これはもう監獄を通り越した状況であって、この昨年十二月のリンチ殺人事件の発端も、面会のときに患者の苦情が付き添った看護人の耳に入ったというふうに退院した人は重言している。だから、これは重大な問題であって、こういう面から具体的に、例えば精神病院における患者の人権を守るためには通信、面会の自由というものをやっぱり保障しなきゃいかぬと思う。それは精神病という特殊なものはあるにせよ、そこはやっぱり考えなきゃいかぬのじゃないかと思う。  厚生省は、三十一年、三十二年に通信の取り扱いについて通知を出している。それは、人権ということも考えてこれを出しているわけなんです。それにもかかわらずこの宇都宮病院というこういう実態があったということに照らして、この通信ということについて、その自由を保障する、例えば郵便ポストをもう精神病院の中にも置く。ポストに投函することが何が悪いんだという気持ちに我々はなるわけなんです。あるいは公衆電話ももう設置する。直接そのことが人に危害を与えることでも何でもないんだから。だから、そのようなことを思い切って変えてみるというようなことを考えたらどうでしょう。大臣どうですか。
  161. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 私どもといたしましても、通信の自由の問題、面会の自由の問題、これは大変大切な基本的な人権、あるいは人権にかかわりのある大切なことであるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、精神医療の面におきましては、患者さんの医療と保護の観点から、その医療と保護のために欠くことのできない、やむを得ない行動の制限という問題がどうしても生じてくるわけでございまして、病状、その性質いかんによってケースごとにいろんな程度の度合いはあろうかと思いますけれども、どうしてもそういった問題が出てくるわけでございます。  私どもの指導といたしましては、先ほど先生から御指摘ございましたように、人権の問題を重視するということを基本に置きながら、今言った問題につきましての通信の問題あるいは家族との面会の問題、こういったことについてそれぞれ通知を出しまして、県の方に指導をゆだねているところでございます。  今回、宇都宮病院の問題につきましても、県がこれまでに実態を掌握している範囲で病院関係者から事情聴取をしたところによりますと、通信の手紙につきましては、患者の同意を得て、その患者の面前で開封をしておった、これはむしろ危険物とか金銭等が入ってないかというようなことをチェックするためというような説明として聞いているところでございます。それから発信の場合は、患者さんの手紙を密封してそのまま発信しているというふうに申し立てておるところでございます。時として、病状に応じて発信先に迷惑をかけていないかどうかというようなことを問い合わせたことはあるようでございます。それから、電話につきましては、開放病棟に公衆電話を三台設置をしておるということでございます。それから、面会の点につきましては、病棟によっては面会室が個有の面会室として設置されておらず、看護室で行われておったというような状況が見出されまして、これはいろいろと問題があるというような認識に立って今後の指導事項ということで今検討しておるところでございます。  全体の問題として、一般的に申しますと、基本的には通信の自由、面会の確保ということは大変大切なことだという前提がございますが、それぞれの患者さんの医療と保護の上からの必要欠くべからざる行動制限として、その辺の兼ね合いをどうしていくかということは今後のさらに検討を深めなきやならぬ部分だろうと私ども考えているところでございます。
  162. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは私はやっぱり精神衛生法の中に、通信、面会の自由というものを保障する規定を盛り込むべきだというふうに思うんです。  精神病の方たち、これは弱い立場人たちですよ。後ほど法案も出てくるけれども、身障者も同じですわ。これは精神薄弱じゃないけれども、合併した症状を持って、車いすで、言語も障害がきている、こういった人たちは、この医療法人のもとに置かれておる身障者の施設から社会復帰ということはまずあり得ない。病院に行って人生を終わるか、そこで終わるかという弱い立場ですわね。そういったところの医療法人が悪いことをいっぱいしておるでしょう。現在北九州のあれだって服役しておるでしょう。国から出ておる補助金あるいは身障者年金、それを、弱い立場で物が言えないものだから、それを全部集めて豪遊し、家を建て、土地を買いと。今度の宇都宮でも同じことなんです。  だから、弱い人間に対して、それから強奪するというやり方は、これは許せないことなんだ。それを今まで、おっしゃるように、書類審査では何もなかった。例えば、電話は三つあった、面会室がなかったから看護人の部屋を使っておったという報告だから、これは余り大したことはないという判定をしていることが間違いなんでしょう。現に間違いでしょう。だから、やっぱり三十一年あるいは四十三年のあの形による県における実施指導、そしてそれを年報として報告して、チェックするというやり方、これはやっぱり抜本的に変えなければ、大変な人道問題だというふうに私は思うんです。だから、この辺のところを本質的に一遍考えてもらいたい。  それからいま一つ社会復帰の問題ですね。精神医療の最終目標というのは、言うまでもなく患者が社会に適応して生活できるような治療を施すところなんだ。しかし、時間が長くかかるということと、精神病ということによって、なかなか社会復帰の機会がとらえられない。そのためのやっぱり中間的な施策というものをもっと考えてみるべきだ。これは昭和五十五年に、通院患者リハビリテーション事業というのを想定して事業をやっておられるようだけど、こいつをもっと拡充して、生活指導等を行ってみる必要がないかということを強く感じているので、その点についてのお考えをお聞きしたい。  それから、時間がないからあわせて申し上げますが、同意入院者の問題、これも今度のような事件が起きると、これはもう大変恐ろしいことであって、正常な人間が同意入院させられて、六年も七年も退院させられないというごとになると、一体これはどういうことになるのか。もちろんそこには親権者、保護義務者という者がいるわけだけど、これは名前ははばかるけど、私のここで言いたいのは、家族間のトラブルの中から六年間入れられた。その後本人は診療を受けて、精神病でないという診断を受けている。だけど、これは精神病院なるがゆえに現に同意入院という形がとられるわけですわね。  だから、この辺の退院に関する問題についても、私は今のようなやり方じゃなくて、新たに監察医などを設置、常置して、そしてそれらの複数の人たちの検査によって、これは退院できるという判定などを下していくべきじゃないか。ここにもメスを入れなければ、今言った、名前はばかるけれど、こういった人たちが、これが言っていることが仮に本当であれば、これはもう大変な問題だ。  そういった点、たくさんの問題をたまたま宇都宮病院という事件が世に問うているわけなんで、この点やっぱり真剣に受けとめて、先ほどもちょっと触れたように、一番弱い層に対して悪いことをするな、一番弱い層に対していわゆる悪いことをしたやつは、これはやっぱり徹底的に社会の名において処断をしなきゃいかぬ。その辺についてのお考えをお聞きして質問を終わりたいと思います。
  163. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 精神医療におきまして、特に近代的な医療におきましては、社会復帰、地域での医療の確保、そして職場、家庭への復帰ということが非常に重視されていることは御指摘のとおりでございます。  厚生省におきましても、これまでにデイ・ケア施設、精神障害回復者社会復帰施設、精神衛生社会生活適応施設等、それぞれ着手をしているところでございますし、また、五十九年度におきましては、小規模保護作業所事業等の検討にも入ろうということで、今準備を進めているところでございます。  また、通院患者のリハビリテーション事業も御指摘がございましたけれども、五十九年度におきましても引き続き実施する地域の拡大を強く図っているところでございます。  また、地域におきますいろいろな精神衛生の問題に的確に対応し、必要な施設にいろいろとあっせんするというようなことも含めまして、精神衛生相談というものを保健所で、困難な事案につきましては精神衛生センターというようなことで取り組んでいるところでございます。御指摘のようにまだまだ十分ではございませんで、それぞれの地域でいろいろと努力を今積み重ねて、それを基盤にしながら逐次全体に推し広げていくという努力を継続中でございます。  このようなことでございまして、社会復帰の重視という点については今後とも力強く取り組んでいきたい、かように考えておるところでございます。
  164. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今、藤井先生お話を聞いておりまして、私もほぼ同感でございます。  今度の宇都宮病院、長期にわたってまだ確実に真相が究明されない、今真相究明の段階にあるわけでございますけれども、九百人からの患者が最初おったわけですから、その事件があれだけ報道されれば、一番騒いで心配しなけりゃならないのはその家族あるいは保護者の皆さんのはずでありますが、いろいろの方から厚生省もおしかりを受けたり、お小言をちょうだいしたり、御指導をちょうだいするのでありますけれども、肝心の患者の家族や保護者の方からの話は余りないのであります。宇都宮の県庁の人たちにも聞きましたら、意外とそういうことだということで、私は置かれておる患者人たちに対する、何か大変な立場にあるなということで、今藤井先生おっしゃったように、非常に気の毒な立場にあるなどいう気持ちを禁じ得なかったのであります。  そういう条件に置かれている人たちの人権を守ってあげるということはこれは大変なことでありまして、ましてや、そういう人を悪用して金もうけを考えるなどということがあってよいはずはありません。それなら、自由に解放するかといいますと、この前新聞で報道されましたように、今度は自由に解放された患者の一人が上野駅で乱暴を働くというようなことで、非常に特殊な状態にありますから、この人たち医療を図り、また、医療のためにはやっぱり特殊な条件の人ですから、ある程度の保護はどうしても必要だ。そういう条件の中で、また彼らの基本的人権を守っていかなければならない。しかし、家族や保護者からはあるときは見放されているような立場にあるということで、大変私は今度勉強させられたのであります。  残念ながら、またこれは私は今勉強の途中で、今すぐ精神衛生法をどこをどういうふうにして改正しなければならないというところまで自信を持って先生にお答えできるところまで勉強しておりませんが、ただ、事の重要性ということは、いろいろ今示唆を受けております。また、厚生省でも、今神経センター、これは国立神経センターとして大きく拡充してもらいたいというような意見等もありますので、これらをあわせながら、できるだけ早く対策について勉強をさせていただきたいと思いますので、今先生にすぱっとしたお答えができないのは大変申しわけありませんが、今私は真剣にこの問題を勉強しておるということで御了承いただきたいと思います。
  165. 大池眞澄

    政府委員大池眞澄君) 先ほどの御設問の中で、精神衛生鑑定医によります実地審査の点につきまして答弁漏れでございまして、大変失礼いたしました。実地審査の仕組みにつきましては、精神衛生法の規定によりまして、知事が必要と認める場合に、精神衛生鑑定医による病状報告を求め、あるいは鑑定医を派遣いたしまして、患者さんの病状を拝見して、入院の必要がないと判断される場合には強制的な退院を命ずることができるという仕組みがあるわけでございますが、これの実態上の運用におきまして御設問のようなケースについて効率的に働いているかと、こういう点の御指摘だったと思います。  そのようなケース、保護義務者並びに医療機関がともにそろって非常に悪いというようなことは通常は想定しにくい事柄ではございますが、そういったような場合でもきちっとこういった仕組みは動くんだというような点につきましての詰めは、今回のケースの実態究明とも相まちまして、今後の教訓として検討をしていきたいと思っております。
  166. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 終わります。
  167. 下村泰

    ○下村泰君 大臣は、朝の十時からずっとお休みないですね、今まで。本当に御苦労さんです。恐らく腹の中じゃ、大臣なんかやるもんじゃないと今思っているんじゃないですか。お気の毒だと思いますから簡単にさせていただきましょう。  この間、高校の教科書に、兎唇という言葉が入っていたのを直してほしいというふうに申し上げておきましたが、実は私、手元に口唇口蓋裂——今は唇顎口蓋裂と言うそうですけれども、この方たちの出している機関紙がありまして、これが八二年ですから二年前の八月の二十五日の会報を見ますと、二年前の時点で既に名古屋の方の高校でもやはり同じようなものを使っていた、しかも出版社は同じです。どうでしょうか、お伝え願いましたでしょうか。
  168. 持永和見

    政府委員持永和見君) 文部省の方に、先生の御意見伝えでございます。
  169. 下村泰

    ○下村泰君 あちらの御返事はいかがなものですか。
  170. 持永和見

    政府委員持永和見君) 向こうの方に、こういう御議論があって、先生からこういう御意見があったということを伝えでございます。
  171. 下村泰

    ○下村泰君 さて、こういった機関紙を拝見しますと、実にどうも、厚生省というところも時によっては神様のように思われている場合もあるということの証拠品がここにありますからね、「長い冬の寒さに堪えやっと堅いつぼみが、ふくらんで花開く桜の季節になりました。 ことのほか長い冬がすぎやっとまちにまった春がやってきた」−これはことしの話じゃありませんよ、二年前ですよ。この文章の中に、「国会での審議のおり、議員の方々、厚生省の役人の方々、日本歯科医師会等、関係医療機関の人々の理解の賜物のひとつと思っております。」というふうに、紙面を通して皆様方に感謝をしたいと、これはちょうど一九八二年、五十七年の四月の一日から健康保険が適用になったことの喜びがこの文章の中にあらわれているわけです。  さらに、この機関紙の中を拝見しますと、こういうことを書いておるお母さんがおります。「ひどい——あまりにもひどい。なぜよりによって私の赤ちゃんだけにこんな仕打ちを……神様を恨みもしました。」、これはいきなり唇の裂けたお子さんが生まれたんですね、自分の体内から。その赤ちゃんを腕に抱いた瞬間のこれ母親の気持ちですね。そして、このお母さんは二度と子供を産むまい、絶対に次の子供は産まない、また産んでこういう目に遭ったらどうしようかということでしょうね。恐らく恐怖の念でしょう。ところが、このお子さんは、その後二回の手術も無事に終わりまして、六年過ぎた。ですからちょうど今三年生ぐらいになっています、このお子さんは。きれいな顔になったそうです。そして、このお母さんが五年後に二人目の赤ちゃんを産んだんです。ところが、「出産までの十ケ月余りというものは、」「不安の方が大きく、薄氷を踏む思いの毎日でしたが、無事に親子の対面を果したときには、「元気な赤ちゃんをありがとう」と思わず叫びたくなりました。長男のときとは異なり、まるで天国にでもいるように喜びに満ちた病院での一週間でした。病院先生には勿論のこと、庭の草のひとつにも、道端の石ころにさえも「元気な赤ちゃんありがとう」と呼びかけたくなるのでした。」、わかります、本当に。こういう方たちとおつき合いをしておりますと、こういう方々の気持ちは本当によくわかるんです。「結婚後、多忙だったり、初めての妊娠でよくわからなかったりで、風邪薬を二回程飲んでしまいました。この障害の原因は、多々議論されていますように、単一のものではないようですが、あのときの薬が原因ではないのかしらと、今でも一人頑固におもい続けている愚かな母親です。」と、こういう文章なんですが、さあいかがでしょうか。  この間ちょっとお尋ねしたときに中途半端になってしまって、お答えしに来てくださる方がいらっしゃらなかったんですが、どうなんでしょうか。こういうこともありましょうし、こういうものの原因の究明、それから発生地域、例えば流行性感冒なんかがはやったときとか、そういった時期とかいうものがあるんでしょうか。厚生省の方で調べられている何か数字がございましたら教えていただきたいと思います。
  172. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) まず、発生状況でございますけれども、実は、厚生省といたしましては詳細にわたっては把握しておらないところでありますが、諸論文の報告を総合いたしますと、発生につきましては特に地域的な差はないようでございます。  それから、発生状況でございますが、大体今日は出生約五百人ないし六百人に一人ぐらいではなかろうか。これが三十年ほど前でございますと四百人に一人ぐらいという数字もございます。  それで、先生お話しございましたように、遺伝的あるいは環境的要因などの複合作用であると現在考えられておりますけれども、このように発生状況が減ってきたということは、いろんな環境条件、例えば、お話にもございましたけれども、風疹にかかるとかそのようなことも原因一つ考えられておりますが、そういう全体としての総合的な対策が呼応しておるのではないかと想像されるのでございますが、今後もそういう全体の環境、健康対策に総合的に対処していくことがこの発生を減らしていくことになるのではないかと考えております。
  173. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますと、例えば排気ガスとかああいうことで公害説が非常に問題になった時期がございますわな。東京都内で言えば環七にしてもどこそこにしても、それから川崎ぜんそくとか、ああいう大変大気汚染された時期というのがあります、時期的に。それが日本全国で問題になりましたが、その当時とそれ以前とその役との比較というのはございますか。——いや、なきゃなくたっていいですよ。なけりゃなくてもようございますから、これから調べていただけますか、全国的に。どうでしょう。
  174. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) 大気汚染に関連した報告は、今のところ私どもとしては承知をいたしておりません。これを全国的に調べるとなりますと極めて困難だと思います。極めて困難だと思いますが、なお報告等があるかどうか調査をしてみたいと存じます。
  175. 下村泰

    ○下村泰君 大阪大学の教授で宮崎正先生という方がいらっしゃいますが、この宮崎先生が日本では一番最初に口唇口蓋裂の学会のまとめをなさった方なんだそうですから、これも非常に歴史的に浅いものですから、それほど厚生省の方でも全国的にというようなこともないと思いますけれども、もしできたならばひとつやってみてください。  この先生もおっしゃっていますけれども、外的な要因によっての障害を起こす率は二〇から三〇、遺伝は大ざっぱに言って一〇%、それ以上はない。あとの七〇—八〇%の原因がわからない。この先生調査によりましても、口唇口蓋裂は三百五十九・七人に一人、この先生のデータはこういうふうに出ています。  ですから、今お答えくださったのがほとんど間違いがないわけです。ただ、全国の地域差はないというんですが、ひょっとしたらどこかにそういう差が出てくるんじゃないかというような気がします。それもひとつあわせてお調べいただければ幸いです。  それで、もう一つお願いがあるんですが、今も、先ほど私ちょっとお読みしましたけれども、余りにもひどいと神様まで恨んだという母親の気持ちを察しますと、一番ショックを受けるのはもう母親なんですわ。その時点でもう何をどうしていいかさっぱり見当がつかない。そこで、こういう御経験のあるお母さん方に集まっていただいてお話を聞きますと、一番最初に問題になるのは、まず、その母親がどういうことをしてもらえるということに対する安心感ですね。ただ三口のお子さんならば、これは今手術が大変上手になっていますから、上手というのはおかしいかもしれませんが、医学が進んでおりましてきれいな、まあ仕上がりという言葉もおかしいですかな、術後大変きれいになるんです。ですから別にそれは急がない。しかし、生まれた途端のお母さんの心境というのは、これは大変なものだ。そういうことの母親に対する安心感。それから、もし保健所でこれこれこれこれこういうふうにしてこうすればこうなるんですよというような手引書とか、あるいは保健所の方々の説明とか、あるいは担当医師、産婦人科医の方々の心遣い、こういうことがありさえすれば、さほど母親は慌てないんですけれども厚生省、この間の御説明だけじゃちょっと私は満足できなかったので、きょうは改めてひとつこういうことに対してどういうふうにやっていらっしゃるか聞かしてください。
  176. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) 最初にお話しのございましたように、確かにこの母親の驚きは大変なものだろうと存じます。お話にもございましたが、保健所等でどういうことができるか、母親学級その他ございますから、そういうところで今どうやっておるかとお話しになったように存じますが、今どうやっておるか、ちょっと私お答えできませんけれども、御趣旨を体しまして適切な治療が受けられるように、そういう体制について検討してみたいと存じます。  なお、お話の中で確かに今非常に治療よくできるようになりましたが、一層、このチーム医療ということをどうやって進めていくか、そのようなこともあわせて検討したいと存じております。
  177. 下村泰

    ○下村泰君 と申しますのは、昔で言うと取り上げた、私なんかよく町内で取り上げばばあなんて言ったものですけれども、その取り上げた産婦人科のお医者さん自体がよくわからない方がいらっしゃるんですよ。今全国的に母の会が横に手を結んでいます、そういうお母さん方の、各地区のお母さん方からの報告がそういうことなんですよ。そうすると、取り上げた産婦人科のお医者さんがまごまごして、どういうふうな手続でどうしたらいいかなんということがわからないで、下手すると母親と一緒になって騒いでいるお医者さんがいる。ちょっとこれはオーバーですけれども。ですから、そこのところを、厚生省の方がどういうふうにその産婦人科のお医者さんに対して徹底していらっしゃるのか、ちょっと伺っておきたいと思うんですけれども
  178. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 口蓋裂、口唇裂等の障害児につきましては、育成医療の対象になっているわけでございまして、手術等が必要の場合には指定医療機関で医療が受けられるということになっているわけでございますが、そこに至る前の段階の産婦人科医なりあるいは母親に対する育児指導、これは産婦人科医につきましても保健所を通じていろいろ御指導ができるような措置はとっておりますけれども、まず保健所では、そういった障害児についての新生児の障害一般についての療育指導を行うという体制ができております。特に、保健所の中で療育指定保健所というのがございまして、そこではそういった専門家もおりますので、そういった保健所でもってまず適切な療育指導等をやっていくというような体制は、私どもとしてはとっているつもりでございます。  それから、新生児に対する訪問指導等の際にも、仮に口唇口蓋裂のような異常のある児童が発見された場合には、保健婦さんなり何なりを通じて、母親に対して適切な指導が行えるように——必ずしもすべての場合に十分な御指導が行われているかどうか、それはあるかもしれませんが、私どもとしてはそういう体制をとって、なお努力をしているということでございます。
  179. 下村泰

    ○下村泰君 私は別に何にもしてないとは言ってないわけですね、何にもしてないとは言ってない。ただ、厚生省というお役所の中にいらっしゃる方々は、これこれこういう手当てはしていますよと言うだけのことであって、それが実際に行き届いていれば、今も申し上げたようにお母さん方がびっくりする、お医者さんも泡食ってどうしたらいいかなんていう産婦人科のお医者さんもいないということですよ。これが今おっしゃったように徹底していればこんな声は出てこないわけなんですから、そこのところはひとつ何とかうまいことやってみてください。  こんなのがありますね。これはもう厚生省の方、御存じでしょう。財団法人日本歯科医師会から出ているこういう口唇口蓋裂のお子さんのパンフレットがありますね。これはごらんになったことありますか。大臣もごらんになりましたか。こういうふうにありますわ。こういうとき慌てないでこうやりなさい、ああやりなさいと、こういうようにいろいろと治し方も出ているわけです。こういうものが例えば母親の目の触れるところにあったり——もっとも生まれる前にこれ見たらびっくりするでしょうけれども、パンフレットとかそういったもので、即座にこういうものを見ることによって慌てなくて済むというような方法というのはとっていらっしゃいますか、今。例えば産婦人科の方に。
  180. 吉原健二

    政府委員(吉原健二君) 現在、そこまでのことをやっているかと言われますと、率直に言いまして、自信を持ってやっているという御返事ができないわけでございますが、そういうことがこれからできるようにやってみたいというふうに思います。
  181. 下村泰

    ○下村泰君 これからやってみるというんですから、やらないことはないと思うんですけれども……。  厚生大臣、こういうお話をそこで聞いてくださって、今局長さんたちがそういうふうにお答えくださいましたけれども、これはやっぱり厚生大臣としてちょっと見張って、こういう方たちが、ああやっぱりいい厚生大臣だと喜ぶような処置をとってくださいますね。
  182. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今先生お話、私聞いておりまして、お母さんが、子供が生まれてきたときに神様も恨みたい気持ちになったというくだりをお聞きいたしまして、私も胸につまされたのでありますけれども、私、厚生大臣に就任したときに、最初に、本人の責任によらないことで非常に不幸な、あるいは不便な、不利な条件、立場に立っておる人、この人たちに対しては、これは全力を尽くして温かい手を伸べるのが厚生行政の基本でなければならないということを申し上げたのでありますが、先生指摘の問題は、いつお聞きしましても、この私の厚生行政に対する基本的な哲学に触れる具体的な問題を御教示いただいておりますので、私も感動に胸を打たれて聞いておるのでありますが、今政府委員から答弁したとおり、私も政府委員を督励して、そういう皆さん方のお役に厚生省が立てるなら、できるだけのことをしたいと考えております。
  183. 下村泰

    ○下村泰君 ありがとうございます。  私のお尋ねすることはもう大抵できることばっかりですから、局長もみんなうなづいていますからできるでしょう。そんなに難しいことを私はお願いしませんから、そのかわりお願いばっかりですから、その点ひとつよろしく。  それから、四月十日の予算委員会で視覚異常のことについてお尋ねしましたけれども、これはこの間もちょっとお話出ましたけれども、目白の方のあるところで、治るんだと、そして三万七千人の治療をした、そして、三千何ぼかの方たちが色覚の異常が衰えて、治療ではないんですね、向上したというふうなたくさんのデータをつかんで、そういうふうなことをして、またそれに関する本なんかも出ているんですけれども、実際に厚生省の方として、多少なりとも色弱とかあるいは色覚異常の人たちが幾らかでも色の感覚が向上するものなんでしょうか。そういうことが厚生省の方でもつかむ—つかむというのはおかしいけれども報告とかその他というのはあるんですかね。ちょっと聞かせてください。
  184. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) 前回のことを私も記憶をいたしておりますが、先生がある専門家の意見を引用なさいまして、色覚異常には今のところは治療方法はない、厚生省はどう考えておるかと、こういうお尋ねでございましたが、私どもとしても今のところは治療方法はないと考えております。
  185. 下村泰

    ○下村泰君 治療方法はないにしても、つまり幾らかでも向上する、幾らかでもいい方へ向かっていくというような結果の報告というのはありますか。
  186. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) 私どもとしては存じておりません。
  187. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますと、これが堂々と治療機関の一つとして出ているとなれば、厚生省の方としては何らか調査してみるとかというようなお考えはありますか。
  188. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) 医学に関する図書でございますから、基本的には自由なんでございますけれども、今先生からもお話もありましたし、私もお答えいたしましたように、専門医学的に見て適切であるかどうか、関係学会等の意見もよく聞いてみたいと存じますが、ただこれが特定の医療機関の報告になるような場合でございますと医療法に抵触する疑いが出てまいります。その方面からも検討してみたいと思います。
  189. 下村泰

    ○下村泰君 別にこの話というのは、私の質問内容関係あるかどうかはわかりませんけれども、私の知り合いがたまたまこのことについて新聞社と論争しておりまして、これが係争になって、そして裁判ざたになった。地方裁判所でいよいよきょう判決が出る、結審されるというんでそこへ傍聴人として行った。もちろん住所、氏名を書いて傍聴券をいただいた。ところがその日は裁判が延期になりまして、無期延期ですからいつ行われるかわからない。ですから、その日の裁判というのは全然傍聴も何もせずに帰ってきたわけですね。ところが、その人間が帰ってきましたら、その男のところへ、五千円の商品券が入って、傍聴ありがとうございました、当事件について御理解をいただいてという、そのクリニックの方から、治療をしているところの相手の方からそういうものが送ってこられたというんですね。どう考えても何か間尺が合わないんですね、理屈が合わない。傍聴人に対してまでお礼だからといって五千円の商品券を送るとか、図書券を送ってくる、何か話が、つじつまが合わないんですね。そうしますと、何かまやかしの治療をしているとしか思えないんです。  ですから、厚生省の方として、そういうことに対する調査というのは果たしてするのかしないのか、できないのかできるのかということをちょっとお伺いしたいと思います。
  190. 吉崎正義

    政府委員吉崎正義君) ただいま申し上げましたように、医学図書でございますから、専門医学的に見て適切であるかどうかについて関係学会等の意見もよく聞いてみたいと考えております。
  191. 下村泰

    ○下村泰君 こういう記事が出ておったんですがね、四月十五日の朝日に、日曜日ですけれども。倉敷の方で、ある係長さんが、精神薄弱者の施設に入所している方々のために、これは個人負担金というのがあるのだそうで、会計検査院が調査いたしましたところ、ミスが指摘された。そのミスはどういうのかといったら、この個人負担金というのは、お父さんの所得と、それからその御家族の全部の所得を総合した、その中からパーセンテージで割り当て金を納付する。それじゃ割り当て金が高くなるからというので、この係の人が独断で計算をして全然徴収しなかった。それの損害が千五百二十二万二千八百四十円という金額が出まして、五十三年度分は時効になりまして、その後の金額を請求されたというような記事が出ておったんですけれども、この事件で倉敷市の滝沢という市長さんは、「この不祥事は公務に対する基本的な認識の欠如と管理機能が不十分だったことが原因で、深く反省している」、これは市長として当たり前の言葉なんですけれども、市の幹部の方が「「負担金を徴収しなくても制度を変えることにつながらない。そんな気があるのなら意見を上にあげ、制度改正に向けて改善策を考えてくれるとよかったのに」と残念がっている」、ここのところがどうも私にはぴんとこないんでね。一出張所の係長ぐらいが意見を上司に伝えたからといったって、こんなものは改正できるわけがないんだ。これこそ本当に市の幹部という幹部職にいる人の一番これは都合のいい言葉なんですね、これは。「制度改正に向けて改善策を考えてくれるとよかったのに」。そんなことだったら、この人が考えればいい、本当は。  こういったような、何といいましょうかね、現場にいる人たちの感覚といいましょうかね。もちろんこれは決められたことは決められたことできちんとしなければならないんでしょうけれども、例えばこういうことをした人、僕は本当にこういう人の方がむしろ大岡裁きみたいな感じがするんですよね、法は法であっても。こういうところに何となく血の通ったような行政が欲しいというような気がするんですけれども、どうでしょうかね、厚生大臣
  192. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 大変大事なことであり、また、厚生大臣としては、答えるのになかなか難しい問題でもございます。私も時代劇が大好きで、あの大岡裁きというのを一番好きなんです。そういう点からいうと、あれは弱い者の立場をかばって、そして自分の責任でかばってきた、しかしそれが結果的には職務を遂行することにはならなかった、ある意味では職務を怠ったことになっているわけですね。これに対して、私どもも七万五千人の厚生省職員に規則を守って働いていくように指導している立場でありますから、なかなか答弁のしにくいところでありますが、一方、「泣いて馬謖を斬る」なんという昔のことわざもございますけれども、これは気持ちは実によくわかりますけれども、そういう人を奨励できるかどうかということについては、ひとつ答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  193. 下村泰

    ○下村泰君 結構でございます。  改正法について伺おうと思いましたけれども、これはまだこれから趣旨の御説明があるものですし、次回に譲ることにいたしまして、私は質問はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  194. 石本茂

    委員長石本茂君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  195. 石本茂

    委員長石本茂君) 次に、身体障害者福祉法の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。渡部厚生大臣
  196. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ただいま議題となりました身体障害者福祉法の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  昭和五十六年の国際障害者年を契機として、国民各層において障害者問題に対する関心と理解が深まり、身体障害者福祉の理念が広く定着してまいりました。このような状況を踏まえ、身体障害者福祉対策の一層の推進を図るため、身体障害者の範囲を拡大するとともに、身体障害者更生援護施設に関する規定の整備等の所要の改正を行うこととし、この法律案を提案した次第であります。  以下、この法律案内容の概略について御説明申し上げます。  第一は、身体障害者福祉の理念に関する規定の整備であります。近年高まりつつある完全参加と平等という国際障害者年の理念を身体障害者福祉法に盛り込むことといたしました。すなわち、すべての身体障害者はあらゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものであることを法律上明らかにすることといたしております。  第二は、身体障害者の範囲の拡大であります。すなわち、障害の多様化、複雑化等に的確に対処するため、身体障害者の範囲を従来法で定めているもののほか、新たに政令で定めることができるようにすることとしております。政令においては、人工肛門、人工膀胱の造設者等の排せつ機能障害を有する者で、日常生活に著しい制限を受けるものを定める予定にしております。  第三は、身体障害者更生援護施設に関する規定の整備であります。まず、現在障害別に規定されている肢体不自由者更生施設、失明者更生施設、ろうあ者更生施設、内部障害者更生施設を身体障害者更生施設として統合し、身体障害者のニーズに即応できるよう施設運営の弾力化を図ることとしております。  次に、身体障害者が、地域社会で自立した生活を営むことができるよう居室その他の設備に配慮するとともに、日常生活に必要な便宜を供与する小規模な生活施設として、新たに、身体障害者福祉ホームを設けることとしております。  また、身体障害者の地域福祉対策の中核である身体障害者福祉センターを新たに法に規定することとしております。  第四は、身体障害者更生相談所の機能の充実であります。身体障害者更生相談所は、地域リハビリテーションの中枢機関として、その機能の強化と活性化が望まれているところであり、このため、専門的な相談に応ずること等をその業務に加えることとしております。  第五は、身体障害者更生援護施設における費用徴収に関する規定の整備であります。すなわち、障害者の所得保障の充実等を踏まえ、施設利用に関する費用徴収規定を設け、費用負担の合理化を図ることとしております。  なお、この法律の施行は、本年十月からとしておりますが、施設の利用に対する費用徴収に関する改正については、障害者の所得保障制度の確立する昭和六十一年四月からとしております。  以上がこの法律案の提案理由及びその内容の概要であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  197. 石本茂

    委員長石本茂君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十四分散会      —————・—————