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1984-04-12 第101回国会 参議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十二日(木曜日)    午前十時七分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月七日     辞任         補欠選任      対馬 孝且君     浜本 万三君      安武 洋子君     山中 郁子君      抜山 映子君     藤井 恒男君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         石本  茂君     理 事                 遠藤 政夫君                 佐々木 満君                 浜本 万三君                 中野 鉄造君     委 員                 大浜 方栄君                 金丸 三郎君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 森下  泰君                 糸久八重子君                 本岡 昭次君                 和田 静夫君                 中西 珠子君                 山中 郁子君                 藤井 恒男君                 下村  泰君    国務大臣        労 働 大 臣  坂本三十次君    政府委員        労働大臣官房長  小粥 義朗君        労働大臣官房審        議官       平賀 俊行君        労働大臣官房審        議官       野見山眞之君        労働省労政局長  谷口 隆志君        労働省労働基準        局長       望月 三郎君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        労働省職業安定        局長       加藤  孝君        労働省職業安定        局高齢者対策部        長        守屋 孝一君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        経済企画庁調整        局調整課長    田中  努君        経済企画庁総合        計画局計画課長  柴田 章平君        通商産業省産業        政策局産業構造        課長       細川  恒君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○労働問題に関する調査  (労働行政基本施策に関する件) ○身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告をいたします。  去る四月七日、対馬孝且君安武洋子君及び抜山映子君が委員を辞任され、その補欠として浜本万三君、山中郁子君及び藤井恒男君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 石本茂

    委員長石本茂君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事浜本万三君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 石本茂

    委員長石本茂君) 労働問題に関する調査を議題とし、労働行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 本岡昭次

    本岡昭次君 まず初めに、労働者派遣事業の問題について幾つかお伺いをいたします。  労働省は、労働者派遣事業制度化法案を今国会に提出するということで検討し、準備を進められてきたと聞いておりますが、現在の状況と、いつそれを国会に提出する用意があるのかという点についてまず質問をいたします。
  7. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 労働者派遣事業の問題につきましては、五十五年の六月に労働者派遣事業問題調査会石川吉右衛門先生を会長といたします調査会でございますが、そこに、制度のあり方につきまして調査検討をお願いしてきたわけでございます。その間、中断はございましたが、十四回にわたる審議の結果、ことしの二月に労働者派遣事業問題調査会から調査報告が出たわけでございまして、その内容におきまして、多数意見という形でこの派遣事業問題について制度化を図ることが必要である、こういう趣旨の報告書が出されたわけでございます。  労働省といたしましては、この問題につきまして、この報告書を踏まえまして、現在中央職業安定審議会検討をお願いをいたしておりまして、この中央職業安定審議会においては、現在派遣事業問題等委員会という小委員会を設けまして、鋭意検討を続けていただいておるという状況でございます。  今後、この小委員会あるいは審議会での審議の結果、具体的成案が得られれば、関係法案を今国会にも提出したいということで、なお検討を進めていただいておる、こういうことでございます。
  8. 本岡昭次

    本岡昭次君 労働省が現在掌握している労働者派遣事業実態について、報告をしていただきたいと思います。
  9. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) この派遣事業につきましては、その背景といたしまして、いろんな近来の経済社会活動変化背景にあるわけでございまして、業務の一部を外部に委託している、こういうような傾向が見られるわけでございまして、これに伴いまして、労働者をほかの企業に派遣してそこで就労させる、こういう形態事業増加してきておるわけでございます。  これらの事業の中には、やり方といたしまして請負事業として派遣先企業業務とは別個に独立して業務が行われている、こういうようなものもございます反面、請負事業形態ではございますが、実際には派遣先企業業務と一体となって業務を行っておる、こういうようなものもあるわけでございます。あるいはまた、これらのミックスしたような形のものもあるわけでございます。  これらにつぎましての数字的な面につきましては、派遣事業というものが制度的にはまだ存在をしていないわけでございますので、明確に具体的な数字を挙げることは難しいわけでございますが、こういう派遣的な形態事業が比較的見られる業種、こういうような観点数字を見てみますと、ビルメンテナンス業では五十六年度で約八千の事業所があり、約三十万人の労働者がこれに就労しておる。あるいは警備業では、五十六年度で約三千の業者都道府県公安委員会に認定を受けておりまして、約十二万の労働者が就労しておる。また情報処理サービス薬では、約五千の事業所がございまして、約十六万の労働者が就労しておる。あるいは事務処理サービス業につきましては、業界団体等もございませんので正確な数の把握は難しゅうございますが、約六十社ないし八十社程度、登録者は約六、七万、こういうような推計がされておるわけでございます。  しかし、これらはいずれも業務処理請負事業、こういう形態をとっておるわけでございまして、今申し上げました事業所なり労働者が全部派遣労働者と、こういうわけではないわけでございまして、そういうものが比較的多く見られる業種についての事業所数とか労働者数を申し上げるとそういうことだと、こういうことでございます。  そのほか、また別の観点から見ますと、自分会社で、ほかの会社労働者自社内で使っておる、こういうような形の企業を見ますと、これは五十四年の調査でございますが、約一六%ございまして、そういう自社で他社の労働者を使っておるというものについての職種などを見てみますと、清掃員であるとか警備員であるとか、コンピューターあるいはエレベーターなどのオペレーターとか、あるいはプログラマーとか、こういうような関係、それからタイプなどの事務処理関係、こういったようないろいろな職種が見られるわけでございます。  現在の派遣事業的なものにつきましての大まかな実態なり数などを申し上げますと、そんなような状況にあるわけでございます。
  10. 本岡昭次

    本岡昭次君 職業安定法の第四十四条は、労働者供給事業を明確に禁止をしています。しかし、今報告があったように、警備保障ビルメンテナンス、一タイピストや受付嬢などの一般事務、さらには情報サービス業などの分野で労働者派遣が一般化して立派な企業として運営をされてきています。  一方、一流の大企業もこれらの派遣事務所から派遣労働者を大量に受け入れております。そうなると、企業は、自分雇用責任を負わない労働者を、必要な部分で必要なときに安く使用ができるという関係ができます。企業にとって重要な部分だけ労働者を常用にし、あとは解雇をやり、不況にも対応できる身軽な経営がこのことによって可能になります。  こういうことになってまいりますと、職安法四十四条に言う労働者供給事業禁止するという項目が、請負という衣をかぶせて完全に空洞化をして、実態職安法違反が横行しているということになると思います。  労働省は、実態実態として認めながらも、職安法四十四条というものが現に存在していながら、実態としてそういう形が現実的に大きな力で存在をしているという事柄について、まず第一に、労働省自身の反省も含めた責任ある事態認識を明確にここでしておかなければ、私はこの労働者派遣事業そのもの自身意味のないものになる、こういうふうに考えるんですが、労働省現状のそうした労働者派遣的事業――労働省は派遣的という言葉を使っておりますが、その存在が大きくなってきている、そのことについての責任の一端を感じておられるのかどうか、明確にしてもらいたいと思います。
  11. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 労働省といたしましては、職安法四十四条というものがございまして労働者供給事業というものを禁止をしておる。具体的に労働者供給事業というものにつきまして、施行規則の四条におきまして具体的な労供にならない請負事業というものの要件を定めておるわけでございまして、そういう意味で、従来、こういう労働者派遣的な事業につきましては、こういう労供にならないような請負事業として適正に行うように、こういう指導をしてきたわけでございます。  こういう事業増加をいたしてきました背景としましては、これが需要側ニーズだけではなくて、労働者側の方もいろいろ日分の働きたい日とか時間に就労をしたい、あるいはまた自分の専門的な技能というものだけでずっと仕事を続けたいとか、いろいろそういうようなニーズにうまく合致をいたしまして増加をしてきておるわけでございます。  これにつきましては、我々職業安定機関といたしまして、そういう時代需要側供給側の大きな変化にうまく対応する需給調整システムというものが十分に整備されてこなかった、あるいはまた、職安機関でもそういったものについての対応が必ずしも十分に行われていなかったというようなことは、確かに、我々としても一つ問題があったと考えておるわけでございます。  このため、私どもとしては、この労働者派遣的なこういう事業内容等につきまして、現状のままで放置しておくことは適当でない、こういう基本認識のもとに、この労働者保護、それから雇用の安定、こういったようなものを図っていくという観点から何らかのルールづくりというものをやりまして、この必要な規制措置をかぶせていくというようなことでの措置を講じていかなきゃならぬ、こういう基本的な認識に立って、現在この問題の取り組みをいたしておるということでございます。
  12. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、今のような労働省対応の仕方で労働者派遣事業を推進することには反対なんです。  まず基本は、五十三年の七月に行政管理庁による行政監察が行われております。民営職業紹介泰業等指導監督に関する行政監察結果報告害というのがあります。これを読みますと、もうこの段階で、既に職安法四十四条に違反する労働者供給事業がいろんな形で行われているということが指摘をされて、違反事項もここに明確に挙げてあります。そして、労働省職安法四十四条違反のそうした事業所なり、企業そのものについて積極的にそれを摘発し、指導する、そうした労働省そのもの労働行政の弱さがあるんではないかという点もここに指摘をされております。  だから私は、需給関係バランスをどうとるとか、需要側にも供給側にも変化が起こってきたんだというふうな他律的な問題じゃなくて、まず基本は、労働省職安法四十四条に禁止している労働者供給事業というものをさせないという、労働行政をどれだけ徹底的にやったかということが基本にあって、しかも、それでもなおかつ、新しい事態の中でそれでは対応できないものがあるから、その労働者派遣事業というものを制度化するというのなら私は理解できるんですよ。  ところが、この現状を見る限りにおいては、労働省は、職安法四十四条に基づいて、労働者供給事業という違反をやっている事柄について徹底した取り締まり行政指導、そういうことをやっていない。そして労働者派遣事業制度化することによって、みずからの責任を免れようとしている、だから私は反対だと、こういう今、立場をとったんです。  だから、どうですか。それではお尋ねしますけれども、労働省として、現在労働者派遣的事業というふうに言われている中で、職安法四十四条に違反する供給事業というものをどれほど摘発され、どれほど指導されてきたかということを、例えば五十七年度はこれだけのことをやってきた、五十八年度はこれだけのことをやってきたということを具体的にここで言っていただければ、私もある程度納得できるんですが、いかがでしょうか。
  13. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) この職安法労働者供給事業のいわば構成要件といいますか、規定の仕方が、御存じのように、法律では労働者供給事業と、こういう表現になっておるわけでございまして、それにつきましての具体的な内容について、施行規則条件を定めまして、こういうもの以外は労供だぞと、こういうような形での規定の仕方をしておるわけでございます。  そういう意味で、具体的に問題となりますのは、指揮命令を……
  14. 本岡昭次

    本岡昭次君 幾ら取り締まったかという件数を言ってください。
  15. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 指揮命令を、請負……
  16. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、そんなことは聞いていない。もうわかっているんだ、私も調べて。
  17. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) そういう観点から、ですからなかなかそういう意味では、特に作業指揮を向こうでやったかどうかという関係でそのような問題になってくるということで、非常にそこのところがつかまえにくいという点はあるわけでございます。
  18. 本岡昭次

    本岡昭次君 やってないんだな。
  19. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) それで、五十七年の数字で申し上げますと、この四十四条違反監査いたしましたのは、五十九件監査をいたしておるわけでございます。従来の数字で言いますと、多い年では百六十件ぐらい、あるいは百件ぐらいというのもございますが、最近はこういう五、六十件と、こんな件数になっております。
  20. 本岡昭次

    本岡昭次君 その五、六十件を監査して、そうしてどうなったんですか、その結果は。
  21. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 指導具体にいたしました件数としては、多いときには二十件ぐらい、あるいは少ないときは一件というような内容でございます。
  22. 本岡昭次

    本岡昭次君 その五十九件の監査というのは、それはどこか東京都とかいう一都道府県単位ですか、それとも全国で五十九件やったというのとどちらですか。
  23. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 全国でございます。
  24. 本岡昭次

    本岡昭次君 全国で五十九件をやったということになるんですか、それ。あなたは今労働者派遣的事業というものは大変な数に上っていると言ったでしょう。ビルメンテナンス八千カ所、そして従業員数は三十万。これだって何も労働省がやったんじゃない、総理府統計を写してきているんですよ。警備関係三千業者、十二万四千人。これだって警察庁の調べ、何も労働省のあれじゃない。情報サービス五千カ所、十五万七千。これも総理府労働省責任を持ってやった統計はここに何もない。よその省庁の資料を写してきて、大体これだけあるんですと言う。そして、それでは職安法四十四条問題について、今どれだけあなた方はやっていますかと、言うたら、五十九件ということでしょう。  だから、まず職安法四十四条に基づく労働者供給事業というものをしてはならないんだということが現にあって、その現行法制のもとにおいて、労働省行政指導をより狭めてそうした違反事項取り締まりを強化して、それをさせないということをどれだけ徹底的にやるかという問題を抜きにして労働者派遣事業制度化はない、こう言っているんで、現在のこの状況について、労働省がいや十分やっていますと言い切れるのか、いややろうとするんだけれどもできないんですと言うのかという問題を、ここで正直にその実態を言っていただきたいということなんです。
  25. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 先ほども御説明をしかかったわけでございますが、その施行規則四条の関係で一番実態として問題のありますのが、派遣労働者について、派遣元使用者としてのすべての責任を負う、あるいはまた作業指揮命令というものを派遣元がやる、こういう要件があるわけでございます。それがまた現実に派遣先との絡みにおいて実際にどの程度行われているかということについては、これは本当にもう個別ケースについてそういう問題があるかないかにかかわらずぎりぎり調べないと、そういった点についてはなかなかわからないというような問題がございまして、その辺について、実際問題として行政的にこういったものを完全に現行体制の中で取り締まるとかという形は非常に難しいという問題があることは事実でございます。  それからまた、先ほど数字の問題につきまして御指摘がございましたけれども、要するに派遣事業という明確な法律概念なり定義なりがあるわけでございませんで、結学派遣的な面が比較的多く見られる業種をとらえるとこういう数字になるということでございますので、まだ、それぞれ総理府のこういう鶏業所統計調査とかいうようなものを使う以外にない。率直に言いまして、労働省としても、今いろいろ議論はいただいておりますが、派遣事業というものについて具体的な定義なり。明確な概念があるわけでございませんで、そういった観点から労働省で独自に派遣事業全体のそういう数字というものはつかみ得ない、そんな状態になることはお許しをいただきたいと思うわけでございます。
  26. 本岡昭次

    本岡昭次君 大臣も聞いておいていただきたいんですが、労働省が、今の人員配置なり監督機能からして私は無理だと思います。だけれども、無理だといっても、職安法四十四条に禁止されてあることが横行しているということは、これは労働行政そのものが問われるんです、結果として。  現在、特に重脳下請構造ということで、多くの労働者がいろんな形態のところで働かされております。本来一つ企業の中で雇用すべき人たちが結局企業外のところでいろんな下請、あるいはまた孫請という形で雇用されて、そしてその企業のところに戻ってきているという形態、その中で多くの労働者不利益や不当な権利侵害を受けている。労災の適用も受けられないというふうなこともその中から起こっているんですね。だから私は、こうした現状に対する労働行政責任体制というものをどう持つのかという、そのことを抜きにこの派遣事業というものを公認すれば、派遣祖業が一層拡大をしていって、不利益、不安定な雇用条件を強いられる労働者がますます増大する危険性がある、こう考えるんです。  一方、派遣事業制度化しても、やはり職安法四十四条の規定というものは現にあるんですからね。その職安法四十四条がより力を発揮するかといえば、逆にだんだんそれはまた空文化するという結果になってしまいはせぬか、こういう心配をいたします。  だから私は、労働省がいろいろ理由なり原因なりはあるにしましても、今日までのそうしたある意味ではそういうものを野放しにせざるを得なかったという行政責任、そうしたことをまず明確にして、その上でこうした労働者派遣事業というふうな問題に取りかからなければ基本的な問題が間違ってしまう、こういうふうに先ほどから申し上げているわけなんです。  その点、労働大臣として、一言お考えを聞かしておいていただきたいと思います。
  27. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) ただいまのお話を聞いておりましたが、職安法四十四条というものは、やっぱり我が国雇用労働、これを規制する上での原則として存在をするということは間違いはないと思います。  しかし、何さま相当前につくった法律でありますから、ここ十年、二十年、三十年までのロングレインジをとれば、我が国経済だとか、それから経済の中の変化だとか、まして国際化になってまいりまするし、かつての形態ではなかなかそれは背の法律では適用がしにくくなってくるということは、これは当然のことだろうと思うております。  そういう意味で、最近の情勢に応じて、例外的にこれはやっぱり新しい法制をつくった方が時代に適応するのではなかろうか、こういうことで派遣毒薬をやろうということでありまするが、しかしやっぱり基本となるのは、我が国終身雇用、年功序列というようなその中の企業でしっかりと労働者保護を果たしていくというような観点から見れば、職安法四十四条は、これは原則的にやっぱり大宗をなすものであろうと思いますけれども、先ほど申しましたような大きな時代変化多様化近代化、技術の革新、いろんなものがございまして、昔の終身雇用の中だけではとてもカバーできないというようなところから、時代の要請でこういう派遣的事業が生まれたのでありまするから、その対応部分に対して、新たにやっぱり派遣事業法制化というものも研究をしていった方が、私は時代変化対応できるベターな姿ではなかろうか、こう思うております。
  28. 本岡昭次

    本岡昭次君 私も、今の議論の中で言っておりますように、労働者派遣事業というふうな一つ形態を全面的に否定しているんじゃないんですね。ただ、労働省がそこにすべてを逃げ込んでしまって、今も局長が-むずかしいですよ、この問題は。実態をつかむのもむずかしい。だから、むずかしさをそこへ、労働者派遣事業法制化して逃げてしまってはだめですぞということを言っているんですよ。やはり労働者保護する、労働者不利益状態に置かないという立場に立って職安法四十四条というものが厳然として存在をして、それに基づく労働省の毅然とした労働行政というものが一方にあって、そして今大臣も言ったように、例外的に、今の需要供給バランスの問題なり、また、企業の例あるいは労働者側の新しい立場に立った就業の形態というものを例外的に一つ一つ認めていくということでなければどうにもならぬ。最終的にはこうした法律自身存在も不必要になるというときも時代の流れの中であってもいいと思うんですが、しかし、やはりこれを基本にした上でやっていただきたいということを私は繰り返し申し上げているんですね。  そこで、そういう立場に立って二月九日付で労働大臣あて中立労連の竪山議長がこの労働者派遣事業の問題について申し入れをしておられますね。この中立労連というのは、情報サービスの問題で非常にこうした派遣労働者の問題について、労働者派遣的事業という問題により多くかかわってきているところでございますが、この労働大臣への中立労連申し入れ内容、これはどういうふうに今検討されていますか。
  29. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) この申し入れ内容を拝見いたしますと、大体労働者派遣事業問題調査会報告と大むね同じような主張の上に立ったものであるわけでございますが、業種の限定であるとか、あるいは日常的な行政のチェックであるとか、認可における特性のチェックであるとか、使用者責任の明確化であるとか、あるいは派遣労働者雇用の確保の問題、あるいは労働者のプライバシー保護の問題等についていろいろ考え方をいただいておりまして、こういったものも現在この職安審の小委員会におきましていろいろ御検討をいただいておる上での、また一つ具体的な検討に値する御議論というようなことで取り扱わせていただいておるということでございます。  いずれにいたしましても、この派遣事業形態に実はいろんな形があり、同じ問題でも、ある業種から見れば非常に結構であり、ある業種から見るとそれは困るんだと、非常に一律にいかない、非常に多様な形態のものでございますので、そういう風味でいろんなところからの実情を踏まえた御意見というものをよく検討対象に入れて、今後の法制化問題には取り組んでいかなきゃならぬ、こんな観点で、こういった御意見も拝見させていただいておるわけでございます。
  30. 本岡昭次

    本岡昭次君 私も、電気労連が研究した情報処理産業における派遣労働者対策指針というのですか、これもいただいて読ませていただきました。また、労働者派遣事業問題調査会に参加をしておられた総評の内山副事務局長の意見書、これも繰り返し読んでもみました。私も、どちらの意見もよくわかるわけでございまして、ひとつこうした意見をとにかくよく調整をして、整合性のある対応制度化をやってもらわなければならぬと、こう思うんです。  産業的には、情報処理産業における派遣労働者というのはこれからさらに増大をしていくんじゃないかと思います。現在でも、派遣労働者ということで、ある意味では職安法四十四条に抵触するような形態で派遣されている労働者が約五万人近くもいるんじゃないかというふうに内部的にも言われております。そして、さらにそれがこれからも情報処理産業がこれから発展をしていくという中で増大をしていくという状況下にあるときに、職安法四十四条との関係をきちっとつけながらその制度化の問題をやはり早急に解決をしていかなければ、これは非常に難しい問題になるのじゃないかということを私も理解をできるのであります。  それでどうですか、情報処理産業の問題に絞って、労働省はこれをどういうふうに見ておられますか。
  31. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 情報処理産業におきまして非常に最近派遣関係的な就業形態がふえてきておりますのは、一つには、いろいろコンピューターなどを扱ったり、あるいはそういうコンピューターを備えつけて運転できるようにするまでの仕事というものは非常に専門的な知識経験を要するというような面もございまして、一般の企業でございますと、そういう人を新たに雇って養成して、そうしてそういうものを備えつけるというのには大変な時間もかかるし費用もかかる。そういう意味で、そういう情報関係のいろんな専門家を抱えておる派遣的会社がございまして、そういう新しくコンピューターを導入したり何かしようという場合に、そこへ頼めば、ぱっと会社へ来てくれてそういったものを備えづけてくれる、あるいはまた一般の従業員が慣れるまでずっとその運転をしてくれる、こういうようなことの必要性というのは非常に経済活動の面ではわかるわけでございますし、一方またコンピューターのそういう専門家というのは、一般の会社に入っていろいろそこの会社で仕事をするよりはコンピューター専門でいきたいと、こういうやはり専門家も実際に育ってきておりますし、そういう意識の人たちもふえてきておるわけでございます。そういう意味で、需要供給が特によくマッチしておるといいますか、そんなようなことで、必ずしも賃金がそれで低いとか、そんなような問題ではない、むしろそういう新しい社会経済の動きの中での問題だと、こんなふうに思っておるわけでございます。  問題は、それが職安法の四十四条、労働者供給事業というものをなぜ禁止をしておるかという原点に立ち返りますと、それは、中間搾取をする、あるいは強制労働をさせる、こういうようなことを基本的に禁止するために戦後職安法でこの労働者供給事業というものは禁止をされた。そういう労働者供給事業というものが禁止をされておる原点から見た場合に、そういう情報処理産業などでの派遣的労働者というものが、今そういう強制労働をさせられておるか、あるいは中間搾取という目に遭っておるか、こういう観点からいきますと、必ずしもそうは言えない面もいろいろあるわけでございます。  ただそれが労働者供給事業というもの、いろいろこういう場合は供給事業に当たりますよというようなことで規定をしておる施行規則四条というような面から見ると、やはり派遣されたところからある程度指揮監督的なものを受けたり、作業指示を受けたりというようなところに問題が出てくるというようなことで、やはりこれを何らかのルール化をしていかなきゃならぬ、こういうようなことであるわけでございまして、特に電機労連などから、情報処理産業について強くこういう注文が出てきていますのは、中間搾取とか強制労働というようなものはないのに、何か労基法違反ではあるまいかというような疑いの目をもって見られては困る、そこはそうでないという一定のルールをちゃんとつけてそれで早く認めてくれと、こんなような観点から特に情報処理産業でそういうルール化が強く今要請をされてきておる、こんなふうに見ておるわけでございます。
  32. 本岡昭次

    本岡昭次君 あと大臣に一言お考えを伺って、この点については終わります。  今局長のおっしゃったような認識を情報処理産業に働く皆さんは持ってはいないと思うんですね。やはりその派遣されていくという形態の中で雇用条件は不安定であり、賃金も低賃金、あるいは今中間搾取ということをおっしゃいましたけれども、そうした状況もやはり現にあるという認識に立って、そういう中間搾取をなくし、不安定な雇用条件、労働条件をなくし、安心して働けるように、賃金も不安定な状態じゃなくて安定をし、そして自分の仕事に相応した賃金を支給してやれるようにという形にしてやらなければだめだと、こう言っている主張の方が多いんですよね。あなたのように、そうじゃないというのじゃないんですよね。むしろそういうのが多いから何とかしてやれというのが中立労地の方の主張だろうと私は読み取っているんです。  とにもかくにもその基本は、雇用関係使用関係が分離されているということなんですよね、基本は。雇用されているところで働くのじゃなくて、別のところで働いている。だから、雇用関係使用関係が分離された状態のもとで働く労働者というものを基本的になくしていくということがこの命題だと思うんですが、しかし、それをなくすることができない形態で働かなきゃいかぬ労働者がそこに現に存在しつつあるという状態についてどうするかというふうに、非常に限定された形でこの問題を論議していかなければならぬじゃないかと、私はこう思うんですよ。だから、労働者派遣事業制度が、その雇用関係使用関係を分離して働くということを認めてそれを恒常化し拡大させていくという方向であってはならぬ、こう思います。  いずれにしてもこの問題は早急に解決をしていかなければならぬ問題だと思いますけれども、労働行政立場からすれば、やはり職安法四十四条というものが現に存在するのでありますから、それに立脚した上での制度検討制度化というものをやっていただかないと困るという一点を私強調しておきます。またこの問題が出たときに論議ができると思いますので、きょうはこの辺で終わりたいと思いますが、労働大臣、私の議論をしようとしたことをおわかりいただいたかどうか、それだけちょっとお考えをいただいて、この問題については終わりたいと思います。
  33. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 新しい時代に即応して、そういう労使双方からのニーズでこういう派遣的な事業というものが社会的に存在をしておる、これは無視できないというようなことで、いろいろな御意見を踏まえまして、専門の中央職業安定審議会の中の労働者派遣事業委員会でそれを今一生懸命検討をしておるというところでございますが、何といいましても、やはり終身雇用で年功序列でやってきた企業の中で、就職するよりは就社するというような感じで、どんな仕事でもこなそうというてやってきたんですけれども、それは時代が大きく動くと専門的な技術も職種もふえてまいりますのでこういう新しいのができたと思いますけれども、原則はやはりあなたのおっしゃるように、安定した雇用条件でもって、そしてそこにまた、私はどうも今ごろ職安法四十四条、真っ向から搾取が行われておるというようなことはそれはちょっと余り説いたことはありませんけれども、その精神というものは当然これはあるべきものでございまして、新しい時代に即応するという進歩した面で、それは今は例外的なものでありましょうけれども、それの変化対応するというそういう面で私どもも対応していきたいと思いますので、これはもう職安法四十四条を否定するというような趣旨ではありません、原則は原則、そして新たなる時代対応する例外的な事項は例外的にきめ細かく勉強をして対応していくというのが基本姿勢です。
  34. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは次に高齢著の雇用問題についてお伺いをいたします。  労働大臣の所信の中でも、今日の労働行政の重点として、高齢化社会の進展に対応した高齢者雇用対策がまず第一に挙げられると考えると、このようにして高齢者雇用対策が労働行政の重点の第一に掲げられております。私も同じ認識を持っています。それで、こういう認識のもとに進めていただくことについて賛成もし、労働大臣に大いに頑張っていただきたいという激励も送りながら、若干の質問をさせていただきます。  それで、現在高齢者の雇用状況ですね、これは概括してどのような状態にありますか、御報告いただきたいと思います。
  35. 守屋孝一

    政府委員(守屋孝一君) まず、高齢者の場合、一般労働市場の需給状況の面から簡単に申し上げますと、現在のところ、求人に対する求職の割合の状況を見ますと、五十八年の、これは年齢別に見る場合は十月しかとれませんので、その点で申し上げますが、求人倍率は全体平均では〇・六一倍でございます。ただ、五十五歳以上になりますと、非常にこれは威しゅうございまして、〇・一倍と、言うならば求人一に対して求職が十であると、こういう状況でございます。ただ、現在の状況から見まして、今の、企業の中で高齢者を雇用をしていく状況というのは、非常にこれは着実に進んでいるというように考えております。といいますのは、これの一つの指標は定年延長の状況でございます。六十歳以上の定年を導入している企業状況を見てまいりますと、五十八年一月、これは毎年一月で押さえておりますので、まだ五十九年一月は出ておりません。この五十八年一月の数字で見てまいりますと、六十歳以上の定年を導入しております企業は四九・四%、ほぼ五〇%に近づいております。さらに、近く六十歳定年を導入するという予定を組んでおる企業も含めますと六二・三%で、もう六割を超える状況になってまいりました。他方、まだ五十五歳定年、五十五歳以下の定年を持っている企業状況は五十八年一月で三一・三%。近々定年延長をやって五十五歳定年をやめていくということになっておる予定の企業を除きますと、これは二二・七%、近い将来は二二・七%に落ちるであろうというのが定年延長の状況でございます。  それからもう一つは高齢者の雇用率の問題でございますが、この方の数字を見てまいりますと、五十八年の六月一日現在、これは毎年六月一日現在で押さえますので五十八年の六月一日現在の状況を見ますと、法定雇用率は六%でございますが現在実雇用率は七・一%と、こういう状況になっておるのが今の現状でございます。
  36. 本岡昭次

    本岡昭次君 高齢者の法定雇用率ですね、これは中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法に基づいて六%というふうに定められているんですが、しかし今それが七・一%ということで、それを見る限りでは六%を上回っているということになります。しかし企業別に見ると、規模の大きい企業ほど未達成企業が多いということが実態として出てきておりますね。  ここの資料で見ますと、百人から二百九十九人で未達成企業のパーセントを見てみますと四三・七%です。それから、三百人から四百九十九人で五六・三%となります。五百人から九百九十九人で六三%、千人以上で六九・九%が未達成ということで、規模が大きくなるほど未達成企業の数が増大してくるということでありまして、このことが一つの問題ではないかと、こう思っておるんですが、この法律の第十一条の二によれば、労働大臣は、この法定雇用未達成の企業に対して、法定雇用率を上回って高齢者を雇用するための計画の作成を命じることができるということがあるんですが、この法定の六%を達成するために計画を作成して努力せよというふうなことを今日までやられた事例があるのかないのか。その点はいかがですか。
  37. 守屋孝一

    政府委員(守屋孝一君) 今先生おっしゃいましたこの計画の提出命令を出しました件数は、全部で七百十二件ございます。このほかにも自主的にこの計画を出していただくように私どもが指導いたしまして、出していただいたものが千五百ございます。ただ問題は、今先生も御指摘のように、企業規模が大きくなるほどその雇用率が低くなっているということは、これは一つには、ただ単に法定雇用率を高めるという指導のみならず、この場合に必要なことは、先ほども申し上げました定年延長の推進ということが私は非常に重要な問題だろうと思います。また、この定年延長も、いつまでも定年を延ばせるというわけにもまいりません。六十歳台になってきますと、やはり加齢によるフィジカルな面での、身体的な格差が相当出てまいりますので、この面につきましては、定年延長を含めた雇用延長の奨励ということが非常に重要であろうと思います。私どもは、ただ率を達成ということもさることながら、こういった面で制度的に高齢労働者を抱えていただけるように、企業に対して各種の助成措置、また指導措置、援助措置等を講じてこの率を高めるように努力しております。その結果が、先ほども申し上げましたように、六十歳定年が近々のうちに六割を超えるであろうというところまで持ってきておる。しかし、これで私どもは十分と思っておりません。昭和六十年、六十歳定年制の一般化に向けて、より一層の努力をしてまいろうと思っております。
  38. 本岡昭次

    本岡昭次君 今も、高齢者の問題を論じるときに、五十五歳定年を六十歳定年にということになってまいります。通常高齢者と言う場合に、私たちは五十五蔵からを高齢者というふうにはなかなか認識できませんね。しかし、法律では五十五歳から高齢者どこうなっております。これは厚生省関係の方では六十五ですか。老人というのは六十五と、高齢者は六十五となるんですが、労働省の場合は、これは五十五歳。それで、やはり私は通常の六十歳以上の高齢者ということで論議をしたいと思うんです。  それで、六十歳以上の高齢者の就労率というのは、全国平均どのぐらいあるかつかんでおられますか。六十歳以上です。
  39. 守屋孝一

    政府委員(守屋孝一君) これは、一つは失業率がこの目安になると思います。あるいは労働力率等がこの目安になると思いますが、まず労働力率で見ますと、大体六十から六十四のあたりが労働力率はほぼ五〇%台という状況でございまして、これが六十五歳を超えてまいりますと急激に落ちてまいります。大体六十五から六十九のあたりがもう四割になってまいりまして、さらに七十というのはがくんと落ちるというのが一つの労働力率の推移でございます。  次に、就業者の比率の状況を見てまいりますと、六十から六十四の間が、これも先ほどの労働力率とほぼ似たような数字で五割台。六十五から六十九になりますと、これは四割を切るというのが現状でございます。  さらに、雇用者という観点から見てまいりますと、六十から六十四はほぼ二五%前後というあたりでございます。六十五から六十九になりますとこれが一五%台に落ちてくるというのが、簡単に申しますと、現在高齢者の方が働くというか、雇用関係についておる場合、あるいはまた意思、能力がある場合というのがそういう状況になっております。  ただ、一つ言えますことは、六十歳台に入ってまいりますと、いわゆるフルタイム就業ということよりも、いわゆる短時間勤務を望まれる方がだんだんそのウエートが高くなってくるというのも現状でございまして、このあたりは非常に就業ニーズ多様化してくるというように考えております。
  40. 本岡昭次

    本岡昭次君 私が今持っておりますこの資料ですね、全国的な状況の中で、現在六十歳以上の老人の働いているという状況で見ると、三五・五%の人が働いている。それから働いていないというのが六四・五%というふうな状況であるというふうにつかんでいるんです。  それで、これは厚生省や労働省、いろんなところからとってきた資料で、ちょっと今どこであったか明確にできないんですが、私が問題にしたいのは、高齢者の就労の率というのは、これは当然今おっしゃったようにいろんな状況で低くなっていくのは当たり前なんですが、同和関係の、部落の場合の平均はそれではどうなるかということを一つの例としてきょうは論議してみたいと思います。  それで、全国的な調査も私たちは持っていないんですが、大阪がこうしたことを非常に力を入れて調査をしております。そこで見ますと、二六%という結果が出ています。だから全国のこの就労率三五・五に対して部落の方は二六%の就労率しかない、こういうことであり、また、今おっしゃったようにその就労の形態もいろいろありまして、常雇いとか、臨時雇いの場合もこれは当然ありますね。それでその常雇いの分を見ると、この全国平均、今の就労されている方の中で六九・九%が常雇いで、臨時が一七・五%。同和関係の方の方は、常雇いが五二・七、あるいは臨時雇いが四三・〇。こういうことで全体の就労率も低いし、その低い中でなお常雇いは一七・二%も低く、逆に臨時雇いの方は二五・二%も高くなっている。こういう実態を、まあ大阪という一つの地域ですが、つかんでいるんです。  それで、どうしてこのような差が出てくるのかという問題なんですがね。政府の方も労働省の予算の中に、同和関係住民等の雇用対策として三十五億四千九百万円を計上しておりますね。それではその中で、この中高齢者の雇用対策の問題として、一大阪地方の状態をとっても、これだけ同和関係住民の就労状況が悪い、あるいは雇用形態そのものも常雇いよりも臨時雇いの方が圧倒的に多いという状態で、非常に悪い状態にあります。だからこそ予算にこういうふうに組まれてあると思うんですがね。この予算は、今私が指摘しておりますその高齢者雇用の問題についてどのように具体的にかかわっているのか。具体的にどのような施策を、今みたいな低い状態を高めるためにやってきたのか。具体的なその施策をここで報告してもらいたいと思います。
  41. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 御指摘ございましたように、五十九年度の地域改善対策関係予算は、総額で三十五億円を予定をいたしておるわけでございまして、この中身には、学卒者対策等もございますが、こういう一般求職者対策、それから雇用主に対する啓発指導費等々ございまして、高齢者の関係で特に関係がございますのは就職資金の貸し付けというような形で、特に世帯持ちの方につきましては金額を一件当たり十三万六千円を十三万九千円に増額するというような形での増額を図りまして、就職の御援助をする。あるいはまた、特に技能を身につけていただくというところにやはり一つの力点を置いておりまして、こういう職業講習ということで、各種学校への委託をいたしましていろいろ技能を身につけていただくというようなことで五億円の予算を計上いたしておるというようなことであり、あるいはまた、雇用開発助成金ということで、こういう企業へ就職される際に賃金助成を行う。特に中小企業には賃金の三分の一を助成するというようなことで三億の予算を計上するというようなことをいたしておるわけでございます。また、雇用促進給付金というような形のものも予定をいたしておりまして、月額三万六千円を今度三万七千円に増額いたしまして、十二カ月間この給付金を支給するというような形で、こういう中高年齢者についての就職の際のいろいろ御援助を申し上げるというようなことを予定しておるわけでございます。また、訓練の関係でいろいろ、特に自動車の運転の関係の補講であるとか、あるいは自動車の運転訓練の助成とかいうような形での予算を予定をいたしておるわけでございます。こういうようなものにつきまして、特に中高年齢者と、こういうような概念でやっておりまして、六十以上についてという要件でないというようなことで、ややそういう意味では、六十歳以上ということではございませんが、中高齢者の方についての就職促進のためにそういうような対策を予定をいたしておるということでございます。
  42. 本岡昭次

    本岡昭次君 大臣も聞いておいていただきたいんですがね、昭和五十七年の四月一日付で同和対策新法ができた後、その問題にかかわって職安局長通達が出ています。この通達は、同和関係化民の雇用の促進と職業の安定に特段の配意を求めております。そして私が今問題にしていますこの中高年齢者の雇用についても、優先的に同和関係住民の採用を配慮するよう事業主の理解と協力を求めるようにというようなことでこの通達の中でも出されています。しかし、実態は今私が言いましたような状況であり、高齢化は年々進んでまいります。だから、やはり高齢者の雇用問題というのがこの同和関係住民の雇用対策ということの中でも、大臣の所信の中に掲げてある雇用対策の高齢者の問題というのを私は相当重視してかからなければならないのではないかと、こう考えます。  それで、今いろいろおっしゃいましたけれども、それではそういうものが具体的な効果を発揮して、全国的な高齢者の雇用、就労状況と部落関係住民の雇用、就職状況というものが差別があり、またそこに大きな落差があるというものを本当に埋め得ているのかどうか。この同和新法がこれから三年残されている中で、そうしたものを完全に是正することができるのかということが問題だと私は思います。そういう観点に立って、どうですか、私が先ほど言ったような、中高年雇用の問題一つとっても、部落関係住民の実態はどうであるかというデータ、そういうようなものを果たして労働省として正確に現在持っておられるのかどうかということなんですが、その点はいかがですか。
  43. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 私ども、この同和地区の住民就業実態につきましては、数字的なものといたしましては五十二年調査という形で把握をいたしますと同時に、そういうものを踏まえまして巡回職業相談ということで、こういう地区の方々のところへ安定所の職員が巡回いたしましていろいろ職業相談に応じておるというようなこと、あるいはまた、事業主を集めましてこういう同和問題に絞りましていろんな啓発指導等もいたしておるわけでございます。  御指摘のように、確かに私どもの調べました関係で言いましても、臨時日雇いの割合が高くて一般常用雇用という割合が低いとか、あるいはまた、事務系の職種の方が少なくて単純労働者という形での就業が多いとか、あるいはまた、就業される事業所を見ましても、三十人未満の比較的規模の小さなところの事業所での就業割合が高いとか、あるいはまた、一つ事業所での平均勤続年数というものを見ましても、全国の平均よりも短いとか等々、いろいろそういう問題的実情というものは承知をいたしておるわけでございます。そういうものを踏まえまして、私どもも常時日常の安定所の相談活動の中で地区にいろいろ伺いましての相談指導をずっと続けてきておる、そういう中でのまたいろいろ個別事情なども伺いながらきめ細かな相談指導というものを続けてきておるということでございます。
  44. 本岡昭次

    本岡昭次君 今若干の実態報告がありましたけれども、それはいつの時点で調査された結果に基づいて報告されたんですか。
  45. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 具体的には、昭和五十二年の同和対策対象地域性民就業実態調査というものを労働省でやりました結果そういうようなものが出ておりまして、それを踏まえましてずっと対策を続けてきておると、まあこういうことでございます。
  46. 本岡昭次

    本岡昭次君 五十二年の実態調査をもとにして、現在五十九年ですね。私はそういう、ちょっと時代のずれたような感覚で行政をやってもらっては困ると思うんです。少なくとも同和対策の新法ができて二年を経過し、あと三年という段階で、果たしてその目的とするところが達成できるのかどうかというこの状況にあって、今だに五十二年の調査実態をもとにしてやっておられたのでは、私は困ります。  だから、あと三年、法律に基づいて地域改善の施策を十二分にやっていくために何をなすべきかという事柄に保ついての実態調査というものを、雇用の問題であれば労働省責任を持ってその実態調査ということをやらなければ、今私が一大阪の地域の問題を出してもこれだけの格差があり、その格差はさらに拡大をしていくかもしれない。いや、あなたが言うように、それは縮小しているのかもしれない。実態のわからないまま予算を三十五億組んだ、三十六億組んだと言っても、具体的な有効な仕事ができない、私はこう思うんですね。だから、やはり調査実態を知る、そのことがすべての行政のスタートでなければならぬと思うんですが、今だに五十二年の調査をもとにしてやっているというのではこれはどうにもなりません。できるだけ早い段階でこの雇用問題、特に高齢者雇用というのはこれから重要な課題になってまいりますから、その部面だけからでも労働省として積極的に調査して、そしてそれに基づいて予算を組んでいくというようなことをやるべきでないかと思いますが、いかがですか。
  47. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 私が申し上げました五十二年調査というのは、こういう全国状況数字的にとらえたと、こういうことでございますが、この同和対策につきましては、私ども日常業務の中で常にその実態を把握をしながら相談をいろいろしておる、こういうことでございますので、全国数字がこうだということは一つの出発点でございますが、この五十二年の調査だけで事態を判断して行政を進めているというものではございませんので、この辺は誤解のないようにお願いをしたいと思うわけでございます。  数字的なものとしてはそういうものでございますが、事実は毎日いろいろそれぞれ管轄の安定所におきまして、週、月に何回というような形でいろいろ巡回相談をいたしましたり、雇用主の相談をいたしましたり、指導をいたしましたりという中で、絶えずその実態というものを踏まえながらの相談、指導あるいは行政というものを進めておるという、そういう中からこの三十五億という予算を組んでおるわけでございまして、決してこの五十二年の数字で組んだというものではないわけでございますので、その点は御理解を賜りたいと思うわけでございます。
  48. 本岡昭次

    本岡昭次君 とにかく、あなたがいろいろおっしゃっても、実態をつかんでおられないことには間違いないんですよ。毎日毎日事実に基づいてやっているとおっしゃっていますが、それではここで私に対して、高齢者雇用の問題について、同和関係住民の六十歳以上の就労状況雇用状況はどうなっているかということをデータとして正確に示して、だからこうやっているということをここで私に言えますか。
  49. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 数字的には、そういう形では確かに押さえておりませんということでございます。
  50. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は押さえてくださいとお願いしている。
  51. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 先ほどから申し上げておりますように、高齢者対策ということで、こういう中高齢者対策というような中で私どもいろいろ行政を進めており、特に中高年齢者が非常に就労の実態が難しい、また、就労先についてもいろいろ困難が加わってきておる、こういう状況を踏まえて行政を進めさしていただく、こういうことでございます。
  52. 本岡昭次

    本岡昭次君 その結果どうなったかということをデータとしてお示しくださいと言っているんですよ。同和関係住民の中高年の雇用状況というものは、全体としてやっている中でどういう状況に現在あるかという問題を具体的な数字でもって示してもらいたい、こう言っているんです。
  53. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 中高年齢者の就職の促進問題は、なかなか一般の方も非常に難しい状況にあるわけでございますが、同和地区につきましてはさらにそれにいろいろ問題が加わるということで、非常に困難な状況にあることは十分承知をしておるわけでございます。特にそういう意味では一般よりもさらにきめ細かく懸命な努力をしておると、こういうことでございます。
  54. 本岡昭次

    本岡昭次君 懸命な努力、懸命な努力ということは私でも言いますよ。具体的な数値をもって、こういう雇用政策をやってきたおかげで――先ほど言ったじゃないですか。通達で出して、特に優先的に同和関係住民の皆さんの雇用問題をやっていきます、こう言ったんでしょう。だから、そのやっていますということは、具体的にどのように成果が上がっているのかということを数字でもって示してもらわなければ、私がなるほどよくできているなとか、問題があるぞとかいう検討の材料すら手に入らないじゃないですか。それをしてくださいとお願いしているんですよ、言いわけじゃなくて。あなた、するのかしないのかという問題を答えてもらったらいいんですよ。
  55. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) それぞれの県なり、あるいはまた安定所なりでそれぞれそういうような状況等をつかみながら努力をしておるわけでございまして、そういったものの業務的な形での集計というものはいろいろ可能でございますが、そのために特に新たに全国調査をやるというようなことは考えていないところでございます。
  56. 本岡昭次

    本岡昭次君 それなら、あなた全国の集計をつかむことは可能だとおっしゃいましたね。それをつかんで私に出してください。改めて全国調査してもらわなくても、現在でもつかめると言っているんだからつかんだものを集計して私に出してください。
  57. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 業務的に、いろいろそういう面での日常業務をいたしておるわけでございまして、そういう業務的な形での業務集計的なものはまとめてお示しすることはできると思います。
  58. 本岡昭次

    本岡昭次君 できると思いますじゃなしに、私はしてくださいと言っているんだから、あなたはやりますと言ってくれたらいいんですよ。
  59. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) そういう業務集計をいたしてみます。
  60. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、それに基づいてまた後ほどこの問題は質問さしていただきたいと思います。  それでは、時間がありませんので次の問題に入ります。次は、労働災害保険における重度労働災害被災者の遺族補償年金とそれから介護料問題について伺っておきたいと思います。  全国脊髄損傷者連合会より二月三日労災保険審議会へ提出された要望書には、  一、重度労働災害被災者が死亡後、その死因に関係なくその遺族に遺族補償年金を支給して下さい。  二、現在の労災の介護料を国際水準に接近するよう月額十万円に引き上げて下さい。 この二点が要望として出されています。介護に当たる配偶者の心身両面にわたる疲労こんばいと夫の死後の困惑についての事例を知るとき、当然の私は要望だと考えます。また、長期にわたる重度障害者の介護経験を有する者ならよく理解できることだと考えます。私もその経験者の一人であります。日本の高齢化は、当然脊髄損傷者にも、また、その他の重度障害者にも急速に進行しているはずであります。夫の死亡がこれからも続発して、夫の死亡の原因で遺族補償年金を受給できない妻たちの悲惨な問題もここで心配がされておりますが、労災保険審議会で、あるいはまた労働省では、この要望がどのように検討されているのかどうか。現状について教えていただきたいと思います。
  61. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 今先生から御指摘のございました労災保険審議会への陳情につきましては、私も承知しておるところでございます。  御承知のとおり、労災保険の給付というものは、業務上または通勤途上の災害による死亡または疾病というものを支給事由としておるわけでございます。したがいまして、被災労働者が死亡した場合、その死因のいかんにかかわらず遺族に対して給付を行うということは、労災保険制度の性格から見て非常に困難でございます。障害の原因となった災害と死亡との間に相当因果関係があるということで初めて給付がなされるわけでございます。  それから、労災保険から支給される傷病補償年金におきましては、考え方として、第三級の障害、これを永久的な完全労働不能に相当するものとして、支給率をこれを基準に定めておりまして、より重度の一級ないしは二級の障害につきましては既に通常の介護の費用を見込んで金額が定められております。また、在宅療養であって常時介護を要する者に対しましては、これとは別に介護料を支給する制度を設けておりまして、この介護料の額の決定につきましては、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律に基づく介護手当など、他の社会保障制度における類似の制度の額の動向を勘案しながら定められておるわけでございまして、なかなか大幅に引き上げというのは非常に難しいわけでございます。  今年度は、現在介護料の支給額が月額三万三千六百円になっておりますが、六月から三万五千八百円に引き上げられるという予定でございます。
  62. 本岡昭次

    本岡昭次君 そういうことじゃなくて、この要望書が出ておりますが、労働省としてこれをどう受けとめておられるんですかということです。現状報告してくれと何も言っていないんですよ。もっと正確に答弁してほしい。私は、どう受けとめているんですかと言っているんです。
  63. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 今申し上げましたように、死因のいかんにかかわらず労災給付として補償を行えというのは労災保険制度の建前から非常に難しいということをお答え申し上げたわけでございます。  それから、介護料の引き上げにつきましては、先ほど申し上げましたように、他の類似の制度との関係バランスをとりながら、それぞれ必要な額を毎年アップしているということで、先ほど申し上げましたように、三万三千六百円が新年度は六月から三万五千八百円にアップされますということをお答えしたわけでございます。
  64. 本岡昭次

    本岡昭次君 労災保険審議会でこの問題は論議の対象になっているんですか、なっていないんですか。
  65. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 現在は、これがまだ審議会では問題になっておりません。
  66. 本岡昭次

    本岡昭次君 将来審議される状況にあると思いますか、どうですか。
  67. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) この問題は、そういう制度論からすると非常に難しい問題であるわけでございますが、確かに非常に気の毒な状態でございますので、私ども労災保険審議会の中に基本問題懇談会というものがございまして、これは性急な結論ということでなくて、労使公益三者構成になっておりますので、そこでよくこの問題を議論していただくというつもりでございます。
  68. 本岡昭次

    本岡昭次君 これも高齢者の問題と関連するんですがね、高齢化社会に向けてということで、やはり私は総合的な対応をやっていかなきゃいかぬと思います。  労災年金福祉協会の昭和五十九年二月の実態調査を見ますと、労災年金受給者の平均年齢は五十九・八蔵と非常に高齢になっているんですね。この脊髄損傷者では五十二・六歳ですが、五十歳以上が六〇・九%を占めております。また、その介護に当たる配偶者を見ましても、五十蔵から五十九歳が三一・七%、六十歳から六十九歳が二九・三%、七十蔵以上が八・一%ということで、五十歳以上は六九・一%という状況で、年金受給者も介護をする配偶者も着実に高齢化の道を歩んでいるんですね。若いうちならいいというわけじゃありませんがね。やはり重度の労災被災者が長期にわたり、しかもその御本人も高齢化する、配偶者も、介護する人も高齢化していくというこの状況の中にあって、やはり私は新しい一つの配慮のようなものができなければ、これはもう大変悲惨な状態が現出するのではないかという心配をしてるんです。  労働大臣、どうでしょうかね。労災という一つの保険の考え方も損失てん補というふうな、その人が損失を受けたことをてん補するんだと、補うんだという事柄だけではなくて、やはりそこに、介護料なんというのもそうだと思うんですが、やはり社会保障的な分野もそこにかかわってきて、そしてその労災に遭った労働者及びその家族を含めて、何とか人間らしい生活を保障できないかということで今日までずうっと来たと思うんですね。その中に私は高齢化という問題をやはりここに加味して、今言いましたように、介護料の問題なり、あるいはまた死亡が、労災を受けたそのものに起因する場合だけに年金が出るのではなくって、どんな方法をとるにしても、長年にわたって介護した配偶者が、夫を亡くしたその後どう生きていくのかという問題で、途端に生活苦に追いやられるというふうな状況をつくるということが果たして労災の精神なのか。あるいはまた、介護料の問題にしても、わずか三万三千円とか五千円とかといったことが真に家庭機能を崩壊させない介護料なのか。あるいはまた、生活を困窮化させない、貧困化させないための手当なのかと考えてみますと、どうも理解ができないし納得ができないんですね。  だから、どうでしょうか。昭和六十年に何か労災法の改正というものも検討されておるようなんですが、その労災法の改正に焦点を合わせて、こうした遺族年金制度の問題なり介護料の問題なり、労災そのものをいま少し社会保障的な観点を重視して、こうした方々に福音というんですか、やはり生きる望み、そうしたものを与えていくということが必要ではないかと思うんですが、労働大臣、いかがでしょう。
  69. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 今のお話を聞いておりますと、それは確かにお気の毒なことなんですから、しかしこの労災制度という枠組みの中でやろうとすれば、それは原因と結果とか、いろいろな問題が起きてくるでしょうけれども、しかし、お気の毒だという立場から考えれば、もしも労災の方で配慮をするということが制度上難しければ、社会保障制度全般の枠の中でこれは取り上げられてもしかるべき問題でもなかろうかと、こう思います。しかし、今本岡さんがおっしゃるように、これは非常に重度の障害を受けておる。労働災害が原因で重度の障害を受けておる。しかし、これはもうなかなか立ち直るというわけにはいかぬし、そのうちにやはり万一の場合ということも考えられる。それまでの間家族はなかなか看護が難しい。そういう点に至れば、これはどの制度でどうするかということはそれはもちろん問題はありましょうけれども、人間としてはお気の毒だということはこれは間違いないので、私どもの労働省制度の中で考えるとすれば、今までは労災保険の枠内では理論的に難しいかもしれぬけれども、そういう場合はそれに一応付随した問題として、お気の毒だということはこれはもう重々承知しておりますので、来年度の改正というような機会をとらえて、今まではそういう問題は取り上げられておられなかったかもしれませんが、労災保険基本問題懇談会という場でこの問題を提起をして、ひとつ御審議もいただきたいと、こう私は思っております。
  70. 本岡昭次

    本岡昭次君 今大臣がおっしゃいましたように、ぜひ審議の場で具体的にこの論議をしていただきたいということを強く要望し、大臣もひとつ意のあるところを酌んでいただいて、法改正の中にぜひとも組み込んでいただきたいと思います。  それで、最後にそのことに関連して、要望だけをして終わりたいと思うのですが、今大臣もおっしゃいましたように、労働災害保険法という一つの枠がある。だからその枠の中でできることとできないことがある。それは当然だと思うのですが、しかし私は、先ほど言いましたように、労働災害保険法というのは、当然労働災害に起因していろんな状況が起こったときに、その本人の今まで所得してきたものが当然所得できなくなるのだから、その損失を補てんをしていこう、てん補していこうということが最も単純明快なる考え方だと思うのですね、労働災害に対する。しかし、私もまだ勉強不十分なんですが、労働省から持ってきていただいた資料を詳細にずっと見てみますと、現在の制度は必ずしもそれだけでなく、もっとやはり私が今言っているような事情を随分と加味しながらやってきておられるという温かい配慮のようなものをこの法律の中に見ることができるのですよ。この法律は血も涙もない法律ではなくてやはりその中に血も涙もある法律だというふうに理解をしました。  例えば、本人の所得が労災によって得られなくなって、その損失を補てんするというだけの観点であれば、本人が死亡したときに、遺族に対する年金というふうなものに、遺族が一人であれば幾ら、二人であれば幾ら、三人であれば幾ら、四人であれば幾ら、五人であれば幾らというふうなやり方は、ちょっと本人の失ったその所得を補てんするということとの結びつきじゃなくて、むしろ残された遺族の生活をどう守ってやるのかといういわば生活保障的なものがやはりそこに加味されて、私はだからこれは血も涙もある一つ制度だなと見るのですよ。  そういうふうに、法律というのは、制定当時から比べてそこに関係するいろんな状況でやはり解釈も考え方もあわせてふくらましていくというのが当然だと思うので、そういう立場に立てば、私が提起しました問題、特に連合会が主張している問題も全くこれは論議の対象にならぬということではない。むしろ高齢化の進んでいる中で今日的な一つの論議の対象とすべき中身になっているというふうに思ったものですから、ここで大臣に要望したようなわけでございます。  そういう意味で、ひとつ十分こうした労災の中においても社会保障的な生活をその遺族も含めて守っていくのだという観点に立っての新しい制度あるいは法律内容というものを積極的に検討していただくことを最後に要望しまして、私の質問を終わります。よろしくお願いします。
  71. 糸久八重子

    糸久八重子君 ただいまは本岡委員から大変具体的な問題が出されたわけですが、私は最近の雇用失業情勢についてお伺いしたいと思います。  大臣は所信表明で、労働行政を取り巻く内外環境は著しく変貌しているが、諸課題に対し積極的かつ機敏に取り組んでいくと述べられております。まず、山積する問題に対する積極的、機敏な取り組みの内容について具体的に説明をしていただきたいのですが。
  72. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 政治の本質というものは常に変わることはないとは思いますけれども、具体的な対応という事行政になりますと、時代の動きによっていろいろな事態変化が生じて、これに機敏に対応していくということは非常に大切なことであることは申すまでもございません。  私どもの労働行政におきましても、高齢化社会、人生五十から八十に急速になったわけでありまするから当然のことでありまするが、高齢化社会が到来をする、それからここ数年前までは考えられもしなかったような技術革進が進んでおります。それからまた、日本の戦後の経済を立て直してきたバックボーンである第二次産業というものが、ここ十年ほど前から第三次産業が第二次産業を凌駕するような勢いになってくる。その中でサービス産業化というものがどんどんと進んでくる。これなどは十年、十五年前にはとても考えられなかったような大きな変化であります。  それに対応いたしまして、婦人の社会的な進出というものもこれまた大きな変化であります。そういうふうな変化にこれは機敏に対応していかなければならぬということはもう当然のことでございまして、勤労者の雇用の安定と福祉の向上を実現するというのが私どもの基本的なこれは姿勢でございますから、こういうようないろいろな問題点に対しまして、もちろん安全衛生の面や労働福祉の対策も取り入れまして、そして機敏に取り組んでいきたいと思っております。  この高齢化社会に対応するというようなことの、定年制の延長を初めいろいろな点がございまするが、今度の予算編成におきましても、最後の大臣折衝まで残ったのは、六十歳台前半層、年がいってまいりまするから、それまでのようにもう一日じゅう働くということもなかなか難しい。そういうような場合に、自分のやっぱり能力を生かして短時間でもやりたいという人がうんとふえてきましたので、これ今までに考えなかったようなことでございますが、それをひとつ制度化の方向に誘導したいということで、六十歳台前半層の短時間労働を希望するというニーズがうんとふえてきております。これをとらえて最後の大臣折衝でもこれらの皆さんの期待にこたえるような助成制度も考えたというようなことでございまするし、ME化に伴いまして最近増加しておるVDTの作業につきましても、労働衛生管理のガイドラインなども今示しております。  これだけで十分でありませんが、今盛んにそれを検討を進めてもう一段と進歩した制度にしたいなと思っておるようなことも一例を挙げればそういうことでございまして、役所の仕事というものはとかく後手後手になりがちなものであります。それがために政治家がおるわけでありまして、同氏の気持ちをよく吸い上げて、そして行政対応がおくれないように鞭撻をするということも、御指導と両々相まって、そして私どももおくれないように、できれば先手をとりたいというのが私どもの基本的な考え方でございます。
  73. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは、雇用対策の積極的推進についてお伺いしたいと思います。  最近の雇用失業情勢は、景気の回復傾向や労働省の施策にもかかわらず非常に厳しさが続いておるわけです。そして所信表明の中でも大臣は、「厳しさを残しているものの、景気の回復を背策として改善の動きが出てきております。」と申されておりますけれども、労働経済指標によりますと、完全失業率は五十八年度で二・六%、殊に高年齢の男子労働者は四・三%にも達するなど、総理附の統計開始以来最悪の事態となっておるわけであります。そして、ことしの一月は二・九%、二月には三%台と上昇をしておるわけですが、このような失業の増加の要因と今後の対応策についてお伺いしたいのですが。
  74. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 最近の雇用失業情勢について見てみますと、昨年の七月ごろを底にいたしまして徐々に求人が増加に転じてきておるわけでございます。七、八月ごろには主として輸出関係の電気とかあるいは精密機械とか、そういったようなところでの求人増ということで出てまいりましたが、秋以降になりますと、それが徐々に繊維であるとか、あるいは鉄鋼であるとか、そういう全般的に広がってまいりまして、本年に入りまして、建設業を除きましてほとんどすべての業種におきまして求人が前年に比べて増というような形で広がってきておるわけでございます。  一方、求職者の方の動きにつきまして見ますと、大体求職者の方がふえどまっておるといいますか、前年と同じ水準にとどまっておる、こういうような状況になっておりまして、求人倍率も〇・五八という昨年七月の数字を底にいたしまして、わずかずつではございますが、逐月、求人倍率も改善を見まして、現在は〇・六五というようなところまで回復をしてきておるわけでございまして、この間、雇用者数も全体としては増加を続けておりまして、総理府の労働力調査によりましても、この二月には前年に比べまして雇用者数が約六十六万人ふえておる、こういうような事情にあるわけでございます。  こういうような状況ではございますが、一方、完全失業者数は、御指摘ございますように、昨年は完全失業統計始まって以来の高い数字が出たわけでございまして、ことしの二月におきましても、季節調整値で二・七三%というような完全失業率が出ておるわけでございます。ただ、これにっきましては、雇用者数は先ほど申し上げましたように六十六万人ふえておる。しかし、雇用者数がふえている中で失業者数もふえる、あるいはなかなか減らないというような現象がずっと続いておるわけでございますが、この辺につきましては、一つはなかなか就職の難しい高齢者がやはり以前に比べまして求職者という形でどんどんふえてきておる、こういう理由、あるいはまた女子の中年者と申しましょうか、三十代、四十代の方々が一応家事からあるいは育事からある程度解放されて新しく求職活動を始められる、こういう方が相当ふえてきておると、こういう構造的な、求職されても直ちにはなかなか希望の仕事につけない、こういう方の増加というような構造的な事情も加わりまして、完全失業率が上がったり、あるいはなかなか下がらない、こんなような状況にあるわけでございます。  そういうような背景を踏まえまして、私どもとしては特にこういう求人と求職のミスマッチ、うまく結びつかないという、これによる失業というものをどうしても減らしていくというところに大きな重点を当てまして、今後このミスマッチの解消ということを軸に失業の減というものを進めていきたい、こんなふうに取り組みをしておるわけでございます。  一応この五十九年度の経済見通しにおきましては、そういうような努力をいたしまして、この五十八年度の失業者数首五十五万という数字を何とか百五十万程度に、もうどんどんふえる傾向にはありますが、それを何とかそういう努力によりまして打五十万程度に持っていきたい。そしてまた完全失業率も、五十八年度二・六%というようになっておりますが、これを五十九年度においては二・五%程度まで持っていきたい、こんなふうに考えておるところでございます。  そのための具体的な対策といたしましては、やはり高齢化の進展、あるいは女子の就業意欲の高まり、こういったものに対しまして、特に高齢者対策の推進、あるいはまた女子の就業についてのいろんな誘導策、こういった点を十分に織り込んだ対策というものを進めていく必要があるであろう。あるいはまた、つい最近もございましたように、大沢商会とかマミヤとか、ああいうような特定の業種あるいは地域におきまして、いろいろ景気の回復についてなお取り残されておる、あるいはまた、非常に構造的変化でいろいろ転換を余儀なくされている、例えば鉄鋼の産業というようなもの等にやはり不況対策、不況業種対策・地域対策、こういったようなものを発動していかなければならぬだろう。あるいはまた、今後のこういうサービス経済化の進展に対応しまして、こういうパートタイム労働などへの雇用対策、こういったものも進めていかなきゃならぬだろう、こんなような観点で、こうした状況への対応を進めていきだい、こんなふうに考えておるわけでございます。
  75. 糸久八重子

    糸久八重子君 大変具体的にありがとうございました。  政府の経済計画における見通しと実績につきまして、経済企画庁にお伺いしたいと思います。  新経済社会七カ年計画の実質経済成長率と、完全失業率の目標と実績はどうなっておりますでしょうか。
  76. 柴田章平

    説明員(柴田章平君) 今の御質問でございますが、新経済社会七カ年計画でございますが、実質成長率は五・七%前後、それから完全失業率は六十年度に一・七%程度以下ということを表示いたしております。これに対しまして実績でございますが、五十七年度の経済成長率については四・二%、それから完全失業率は五十七年度で二・五と、こういう数字でございます。
  77. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは、五十四年度以降の経済見通しとその実績につきまして、資料を用意いたしましたので、委員長、配付させていただいてよろしゅうございますか。
  78. 石本茂

    委員長石本茂君) はい、どうぞ。
  79. 糸久八重子

    糸久八重子君 ではお願いいたします。    〔資料配付〕
  80. 糸久八重子

    糸久八重子君 それでは、今資料をお渡しいたしましたけれども、これで見る限り、政府の経済計画はほとんど当たっていないと言ってもよろしゅうございますね。政府の経済計画等はどのような意味を持っているのでしょうか。計画は計画にすぎないというのであれば、企画庁は不必要だということになります。この計画の見通しと実績の相違はどのように説明をなされますか。
  81. 田中努

    説明員田中努君) 毎年政府が作成いたします経済見通しと実績との乖離についてのお尋ねでございますが、私どもといたしましては、そのときどきの経済情勢につきまして、できる限り的確な分析を行いまして、その分析に基づきまして的確な見通しを立てておるつもりでございますが、しかしながら、いろいろな事情によりまして必ずしもそれが的中しない場合があることは事実でございます。  配付されました表に即しまして申し上げますと、五十四年度につきましては見通しが六・三%、実績が五・三%でございます。これには若干統計上の問題点がございまして、この当時国民所得統計は昭和四十五年基準で発表されておりまして、したがいまして、見通しはその旧基準、昔の基準のベースで行いました数字であるわけでございます。同じ四十五年基準で実績をとりますと、実は六・一%となるわけでございまして、ここに掲げでございます実績はその後改定になりました五十年基準の数字でございますので、若干そういう統計上の問題点がございまして、それを除きますとかなり的中率が高まっております。五十五年度につきましては見通しが四・八%、実績四・六%でございますが、これも見通しのベースと同じベースで申しますと五・〇%となりまして、これも見通しにかなり近い姿になっております。五十六年度につきましては、五・三%の見通し、これもやはり旧基準であるわけでございますが、実績が三・五%と低いわけでございます。これも見通しの方を仮に新しい基準、実績と同じべースの基準に直して、年度の途中で数字が改定になりましたために、改定試算というものも当時発表いたしたわけでございますが、それによりますと四・七%ということでございまして、若干実績に近づきます。しかしながら、四・七と三・五でございますからかなりの乖離があったということもまた事実でございます。五十七年度以降はそのような統計上の問題はございません。したがいまして五十七年度もかなりの乖離がある。五十八年度につきましては現在の時点ではまだ実績見込みしか判明しておりませんけれども、三・四%という当初の見通しにかなり近い数字になるであろうというふうに考えておるところでございます。  そこで、五十六年度と五十七年度の乖離がなり大きかったわけでございますが、この点につきましては、当時世界的に第二次石油危機後の不況の時期に当たりまして、この第二次石油危機の後遺症というものが当時の期待よりも長引いておりまして、そのために世界経済が停滞をする、そのことによりまして日本の国内の企業、それから消費者の行動も非常に慎重になるというふうなことがございまして、当初の見通しよりも実績が低く出たという事情がございます。五十七年度につきましては、そのようにいたしまして出発点が非常に低くなったということも一つございました上に、やはり不況が予想外に長引いたという点がございまして、特にこれは内需の面よりも、五十七年度におきましては世界貿易がマイナスになるという予想外の事態が発生をいたしまして、日本の輸出がきわめて停滞をいたした年であったわけでございます。貿易統計では日本の輸出がマイナスになるというようなことでございまして、この面で外需の成長に対する寄与が予想外に少なくなってしまったというふうな事情があったわけでございます。
  82. 糸久八重子

    糸久八重子君 労働省は第五次雇用対策基本計画を明らかにしておりまして、これによりますと実績経済成長は年平均四%、そして完全失業率は六十五年度で二%程度ということで、特に世帯主の失業率を低くするということを目標としているわけですね。先ほどいろいろ具体的に、例えば婦人の問題とか、それから高齢者の問題とか、あと業種の名前を挙げて、またパートの問題とかということで、二%達成について努力をしていくというようなお話があったわけですけれども、現在、経済は低成長であり、労働力人口の増加と急速な高齢化、そして技術革新の進展、サービス経済化と女子労働力の増大等々、非常に多くの問題を抱えている一方で、労働省予算の削減があったり、国際貿易摩擦の激化、そして労働行政に対する経営者側の拒否反応等々の強まりがあるという、そういう状況の中で今後どのようにして政府の目標達成を図っていくのか、改めて大臣の決意なり方針なりをお伺いしたいと思います。
  83. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 第五次雇用対策基本計画でやはり一番議論で問題になりましたのは、完全失業率二%程度という、その辺の目標設定がいけるかどうかというところでございまして、やはりこれについては、こういう高齢化が進んでいく、あるいはまた女子の職場進出が進んでいく、あるいはまた構造変革が進んでいくと、こういうようなこと、あるいはまた第三次産業がこれからどんどん拡大していく。第三次産業というのは比較的失業回数が多いといいますか、終身雇用でないということで失業頻度の高い業種でございますが、そういうようなところでは雇用が進んでおるというようなことで、なかなか失業率というものが低くならない構造的な要因というものがある。しかしそういう中で、なおこれらの失業率というものはやはりできるだけ低くしていくということで、一つの大きな努力目標として二%というものが設定されたわけでございます。  そして、その具体的な方法論として特に問題になりますのが、たとえ求人の量と求職者の量というものが数量的には一致をいたしましても、要するにある程度需要供給が数量的には合っても、それがマッチしなければ失業者になる。具体的にそれがどこで出てくるかといいますと、地域間のミスマッチ、都会では人が欲しいというのに実際には求職者はできるだけ地方で就職したい、こういうことで地域間のミスマッチが起こる。それから年齢間のミスマッチということで、求人者の方は若い人が欲しいというが実際に求職者の方は高齢者が多いというふうな関係。あるいはまた、職種間のミスマッチということで、求人者の方はコンピューター関係を扱える人が欲しい、こういうのに対して、求職者はそういうものは扱えない。こういうような形。あるいはまた、産業間のミスマッチという形で、求人の方は第三次産業での求人が多いのに求職者の方は製造業で就職したい。こういうようなミスマッチというものがいろいろ広がっていく。そういう中で失業というものがどんどんふえていく。しかし、そこを職業安定行政なり雇用対策なりでうまくそのミスマッチを最小限にとどめるように結合を進めていけ、こういうことが雇用対策基本計画で出ております二%の目標の考え方であるわけでございます。  そういう意味で、今申し上げましたようなそういう今後失業をふやしていくような諸要因というものに対して適切な対策を組んでいくということが基本でございまして、具体的には技術革新の進展とか、こういう産業構造の転換に対する積極的な対応、あるいはこういう高齢化の急速な進展に対する高齢者対策の推進、あるいはこういうサービス経済化の進展に対する雇用の面からの対策、あるいはこういう労働市場の構造的な変化対応する労働力の需給調整についての機能の整備、こういったようなことを基本に据えて六十五年度二%程度の失業率へ持っていく、こういうことでの努力を進めていきたいとこんなふうに基本的に考えておるところでございます。
  84. 糸久八重子

    糸久八重子君 ただいまの答弁の中で、技術革新への対応というお話が出ましたけれども、技術革新と雇用への影響等につきまして、労働省調査とかそれから民間労組の実態調査報告等が出されているわけですけれども、その現状と今後の見通しに。つきましてお伺いしたいと思います。
  85. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) これはME関係を中心にいたしまして非常に技術革新がいろいろ進んでおるわけでございまして、現在もう生産部門だけではなくて、事務部門あるいは流通部門などにも広範にMEを中心とする技術革新が進んでおるわけでございまして、私ども労働省調査をいたしました五十七年暮れの調査でいきますと、既にME機器を導入しておる製造業は六割に達しておる、そして、今後三年以内に導入を予定しているところが約七割だというような実態にあるわけでございます。  今まで導入に際しましてはいろいろ関係労使が協議をする、あるいはそれに対する対応をいろいろ労使で話し合うというような中で、全体として深刻な問題は出てきておりませんが、やはり現実には技術革新に対して労働者が技能の面でどううまく適応させていくのか。あるいはまた、そういう機器が入ってきまして配置転換をしなきゃならぬ、これに対してどう対応していくのか。あるいはまた、そういうことによりまして、やはりそういう関係では新規にはもう人が要らないという形での抑制問題、こういうような形でいろいろ影響があらわれてきておるわけでございまして、そういう意味で我々としてもこの問題についてはやはり非常に大きな問題ということで、現在有沢広巳先生を座長といたします学識経験者のトップレベルで構成いたします雇用問題政策会議というところにおきまして、特にMEの導入に関連いたしましての雇用問題に今後どう対応したらいいかというようなことについて、その対応についての何らか提言を求めたいということで、今御検討を賜っておるわけでございます。  私どもも、今後こういう提言が出ましたならばそれに十分こたえられるような対応策を進めていきたい。あるいはまた、このMEの進展の状況につきましては、特に雇用に対してどう影響を及ぼすかというところに十分目を当てまして、今後絶えずこの問題についての実態把握等、調査検討というものを継続的にやっていきたい、こんなふうに考えておるところでございます。
  86. 糸久八重子

    糸久八重子君 通産省は技術革新についてどのような施策を講じておいででしょうか。
  87. 細川恒

    説明員(細川恒君) 産業への影響ということでお答えをさせていただきたいと思います。  最近のME化等の技術革新といいますのは、極めて進展が著しいものがございますけれども、それを通じて我が国の産業構造を知識化、あるいは高付加価値化していくという原動力になっておるというふうに考えております。こういう進展を通じまして、生産性の向上、設備投資、新たな製品市場の拡大等を通じて産業活動の活性化には役立っておるというふうに考えておりますが、技術革新が起こりましてこのように実用化してきておりますのは最近のことでございますので、これがどのような影響を与えていくか、産業構造上どういう影響を与えていくかということにつきましては、現在種々検討中でございます。
  88. 糸久八重子

    糸久八重子君 八〇年代の通産ビジョンによりますと、技術立国としての施策を推進するとしているわけです。雇用への影響を配慮した国としての統合的な施策が必要なのではないかと思うわけです。  三月の二十六日に愛知県から、ME化の進展に伴って新たな社会不安を生むことのないような対応策をというような要望書が本委員会あてにも出されてきておるわけですね。そういう状況でもありますので、社会党ではこの技術革新の進展に伴う対応策といたしまして、雇用や労働条件、安全衛生、教育訓練等々に関する基準のほかに、事前事後協議制の義務づけ等を内容とする法制化検討しておるわけです。  政府は、二月にVDTについてのガイドラインを示しておりますけれども、こうした技術革新全般に関する基準をつくり行政指導を強めていくべきではないかと思います。そして、通産省、労働省が中心となってその法制化を図っていくべきではないかと思うのですが、この点についてはいかがでしょうか。
  89. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 先ほど申し上げましたように、この問題が特に私ども雇用問題に対していろんな影響を及ぼしつつある、あるいはまた、今後もいろんな影響が出てくるであろう、そういう意味でこの問題については技術革新あるいはME化というものが基本的には経済社会の発展に、そしてまたこれが労働者の福祉の向上に役立てるというような形のものとして利用されていく、活用されていくというものでなければならぬだろう、こう思っておるわけでございますが、この問題については、現在複雑な問題もいろいろ抱えておるわけでございまして、先ほど申し上げましたように、一応まず雇用についての基本的な原則というようなものについて、労使あるいは政府等も含めました関係者におきましての何か国民的なコンセンサスというようなものをつくっていくような努力というものがまず一つ要るのではないだろうかということで、現在雇用問題政策会議でいろいろ御検討をいただいておりまして、近く提言というような形で、関係労使のトップレベルあるいはまた学識経験者の方々のコンセンサスとしてそういったものが出されるような段階に今あるわけでございます。  そういう意味で、いろんなそういう手順を踏まえての対応が必要な問題だろうと思うわけでございまして、立法措置ということになりますと、いろいろこれは各方面にも意見がある問題だろうと思うわけでございまして、慎重に対応していくことが必要ではないだろうか、こう考えております。
  90. 糸久八重子

    糸久八重子君 時間が参りましたけれども、赤松局長にわざわざおいでいただきましたので、委員長、一分だけお時間いただきたいのですが、よろしゅうございますか。
  91. 石本茂

    委員長石本茂君) どうぞ。
  92. 糸久八重子

    糸久八重子君 今、三十六回の婦人週間が始まっているわけです。「あらゆる分野への男女の共同参加」のテーマは一九八一年からでございますけれども、それ以前は「男女の平等と婦人の社会参加をすすめる」というテーマが長く続いたわけです。これらのテーマを掲げて労働省は運動の推進に当たってこられたわけですけれども、国際婦人年以来、あらゆる分野での参加、そして男女平等、婦人の礼金参加等、どれほどの効果が上がったと判断していらっしゃいますか。
  93. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 婦人週間のテーマは、その時折のいろいろな情勢を考えて決めているわけでございますが、先生御指摘のように、国際婦人年以降は国連の定めました目標でございます平等、発展、平和を目指してそれに関連のあるものをテーマとして選んできたわけでございます。  そこで、こういうテーマに基づいてキャンペーンをいたしましても、物事の性格から申しまして、すぐにその効果が期待できるというような性質のものでは必ずしもないように思います。しかし、婦人の社会参加を進めるという点につきましては、例えば審議会への婦人の参加というようなことは、政策決定の場への婦人の参加としての一つのメルクマールとして考えられますが、これは当初特別活動が始まったとき以来、徐々にではございますが進んでいるというようなことから、効果は時間をかけながらあらわれてきていると、このように考えております。
  94. 石本茂

    委員長石本茂君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時十三分休憩      ―――――・―――――    午後一時三分開会
  95. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き労働問題に関する調査を議題とし、労働行政基本施策に関する件について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  96. 中西珠子

    ○中西珠子君 労働省の五十九年度一般会計予算の昨年度に比べる減額は約四十八億ですけれども、その大部分が失対事業の縮小によるものと言われております。現に四十四億近い予算減となっているわけでございますけれども、この失対事業につきましてお伺いしたいと思います。  まず、失対事業の対象人員は何人ぐらいであるか、それから就労日数、それから就労の一日の単価、こういったものをまずお聞きしたいと思います。
  97. 守屋孝一

    政府委員(守屋孝一君) 失業対策事業に従事する方々の人数につきましては、これは毎年九月末で調査しておりますが、大体その時点で約六万八千というようになっております。この方々の就労日数につきましては、今年度におきましては六十五歳未満については月二十二日の紹介をやります。それから六十五歳から六十九歳までの方につきましては月二十日の紹介でございます。それから七十蔵以上につきましては月十五日の紹介をやることを計画しております。
  98. 中西珠子

    ○中西珠子君 今、年齢別に就労日数をおっしゃいましたけれども、その構成というものはどうですか。六十歳までが何%、六十五歳から七十歳までが何%というふうに、ちょっと詳しく年齢別構成、パーセンテージをお教えいただきたいんです。
  99. 守屋孝一

    政府委員(守屋孝一君) 大ざっぱに分けますと、大体七十歳以上は約三割でございます。それから六十五歳未満が五割弱でございまして、残りの二割強が六十五歳から六十九歳でございます。
  100. 中西珠子

    ○中西珠子君 私の調べたところによると、これは五十八年度の数字ですが、六十五歳以上七十歳未満が二五・三%、七十歳以上が三一%となっております。そして、その中の女性というのは大変多くて、七二・三%というものが総数の中の中高年女性の占める割合ということでありまして、失対事業で働いている中高年の女性からたくさん陳情が来ております。はがきも来ていますし、また陳情に見えた方もありますし、そして、先ほどお伺いいたしました就労の単価についてのお返事がなかったと思いますけれども、この人たちは今大体月に六万、多くて九万ぐらいしか失対事業において収入を得られない。ほかにはどこにも働き口がないから働いているのだということでございます。そして、二十年以上も失対事業にいるという人が全体の八八・五%を占めているということだそうですけれども、これについてはいかがでしょうか。
  101. 守屋孝一

    政府委員(守屋孝一君) 五十八年度の数字としては、今先生おっしゃったとおりでございます。
  102. 中西珠子

    ○中西珠子君 就労の一日の単価についてお教えいただきたいと思います。先ほど御質問いたしましたけれども漏れております。
  103. 守屋孝一

    政府委員(守屋孝一君) 一日の単価と申しますのは、恐らく一日の労力費といいますか、賃金をおっしゃっているのだろうと思います。  賃金につきましては、これは地域別定めますので、地域によっていろいろ違いますが、五十九年度で申し上げますと、失対賃金は、これは臨時の賃金を含みまして月額で平均、六十五歳未満でございますと大体十一万四千四百円程度、それから六十五歳から七十歳未満の方につきまして、先ほどの就労日数を前提にしてみますと、大体八万五千三百円程度、それから七十歳以上につきましては六万六千五百円程度になります。  ただ、このほかに不就労日につきましてこれは雇用保険が支給されることになっております。この雇用保険の日数を加味いたしてみますと、大体六十五歳未満では月当たりで十二万五千二百円程度、六十五歳から七十歳未満の層では十万一千五百円程度、七十歳以上につきましては九万六千三百円程度と、こういうような数字になると思います。
  104. 中西珠子

    ○中西珠子君 失対事業については、五十五年十二月の失業対策制度調査研究報告に基づいて、労働省としては六十五歳以上の高齢者の離職を進めて、将来はこの事業を廃止する方針ということを伺いましたけれども、戦後のいろんな事情の中で失対事業で働き続けてきた方々は高齢者であり、また、高齢者としての雇用対策また福祉、生活保障というものを考えてあげなければならない人たちなんだと思いますけれども、労働大臣の御所見を承りたいと思います。
  105. 守屋孝一

    政府委員(守屋孝一君) 先に事務的に御説明さしていただきます。  この失業対策事業につきましては、先生も今お話しがありましたが、定期的にこの制度の見直し検討を行っております。実は五十五年の見直し検討の際に、失業対策事業を今後どうすべきかという基本的な方針が出ておりました。  そもそも失業対策事業といいますのは、戦後のあの経済の非常な大混乱期に、六百万とも言われる失業者が出るという中で、我が国経済が非常に疲弊して、今や雇用吸収力がない、その中で臨時に、やむを得ず緊急に就労の場をつくったという性格のものでございます。したがいまして……
  106. 中西珠子

    ○中西珠子君 歴史的沿革は私もよく存じておりますので、それは結構なんです。これからどうなさるおつもりか。また、労働大臣が国民の心を心としてやっていくということを所信表明の中でおっしゃっているので、たとえ六万とはいえ、こういった年をとった人たちをどうしてあげるつもりですかということをお聞きしているわけでございます。歴史的沿革は結構でございます。
  107. 守屋孝一

    政府委員(守屋孝一君) 実は、歴史的沿革からこの制度の本来の趣旨が出ていますので申し上げかけたのでございますが、緒論だけを申しますと、やはりこれは、民間に再就職されるということがやはり理論的な前提になっておりまして、現在の雇用の情勢を見てまいりますと、民間ではまず六十歳定年というものに持っていくのが今緊急の課題であり、さらに六十歳台前半層への雇用延長というものを我々は今一生懸命やっておるわけでありまして、こういう点を念頭に置き、また、現在の各年齢階層別のいわゆる労働力率というようなものを考えてまいりましても、大体六十歳台層というのは引退過程に入るような傾向を持っております。特に六十五歳が、労働力率の面から見ましても、雇用者比率の面から見ましても、また就業者比率の面から見ましても、失業率の面から見ましても、大きな節目になっておりまして、私どもは、予算上、法律上特別の対策を講ずるというのは、やはり六十五歳未満というのを基本的な線にせざるを得ないのじゃないかというように考えております。  もっとも、職業紹介の面とか、あるいはシルバー人材センターというような問題は別でございますが、特段の財政措置を講ずるというのはやはり六十五歳が限界であり、これを基本にして近い将来にまた失対事業の見直し検討を行おうというのが基本的な考え方でございます。
  108. 中西珠子

    ○中西珠子君 六十五歳以上の人も、現在は雇用保険ももらっているわけですね。今度は雇用保険の改正によって六十五歳以上の人は適用しないということになりますけれども、この人たちはどうなりますか。
  109. 守屋孝一

    政府委員(守屋孝一君) 失対事業に絡んでの問題といたしますと、これは失対事業は日雇い雇用保険の適用を受けておりまして、日雇い雇用保険については、今の改正を予定している内容についてもこれを年齢制限するということは考えておりません。
  110. 中西珠子

    ○中西珠子君 労働大臣の御所見を伺いたいと先ほど申しましたけれども、労働大臣はいかにお考えでいらっしゃいますか、お聞きしたいと思います。
  111. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 歴史的沿革は御承知のとおりでございますが、私どもの労働省といたしますれば、社会保障全般というものはもちろんにらまにゃいけませんけれども、やっぱり現実の労働市場ということを無視するわけにはこれまいらぬわけでございまして、現実に六十五歳以上ということになると求人倍率も〇・〇四というふうに極端に低くなっているということも聞いております。それで、一般の民間の方々は引退過程に入っていかれるというようなある程度のバランスも、お気の毒だからいつまでもというわけにも、雇用政策の面ではこれは限界があるのではなかろうか。こういうことで、しかしそれを考えながらも続けておることは続けておりまするが、激変緩和措置などを考えまして今継続をしておる。しかし、シルバー人材センターでお仕事をお世話するとか、職業安定機関でもお世話をするとか、あるいはまた高年齢者相談室でもお世話をするとか、そういう面でひとつできるだけのお世話をしたい、こう思っておるところでございます。
  112. 中西珠子

    ○中西珠子君 とにかく中高年の雇用対策という問題も、社会保障との連関なしにはお考えになりませんように、そして、やはり同じ一つの政府ですから、厚生省と労働省が別々のことをお考えになって別々にどんどんおやりになるということではなく、やはり緊密なる連携を持って、そして雇用対策、また、社会保障対策というものを、そして社会福祉対策というものをお考えいただきたいということを強く要望いたす次第でございます。  これにちょっと関連いたしまして、今厚生省の方はいらっしゃってないのでございますけれども、婦人の年金問題、これやはり漸進的に、支給開始年齢を引き上げまして、婦人も男性と同じ支給開始年齢にするということでございますね。その前提はやはり男女雇用平等ということだと思うんでございますが、労働大臣いかがでございましよう。
  113. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 厚生省の年金政策の中で、年金の支給開始年齢がこれまで男女が異なっていたのを、しばらく時間をかけながら同じにしていくというふうに理解いたしておりますが、この場合、定年年齢が男女がまだ違っているという実情に対しましては、私どもが五カ年計画等でその是正を行政指導の中で図ってきたわけでございます。  しかし、それだけでは限界もございまして、ただいま法案作成中の、機会の均等、待遇の平等確保のための法律をつくるに当たりましては、この点につきましても十分考慮をいたしまして考えたいと思っておりますし、また、先ごろ審議会の方からいただきました建議の中にも、定年の差については、これまでの判例の集積等も考慮して、定年の差に男女の差別がないようにするということについての建議もちょうだいいたしておりますので、その方向で考えたいというふうに存じております。
  114. 中西珠子

    ○中西珠子君 今ちょっと男女雇用平等法案について触れたところでございますけれども、もう一つそれに関連してお聞きしたいと思います。  それは、今の段階ではもう本当に男女雇用平等について労使の意見も非常に対立しておりますし、婦人自身の中でも意見が大変分かれていて、国民的なコンセンサスがない状況でございますが、そういった状況の中では男女雇用平等法などをつくらない方がよい、差別撤廃条約も急いで批准することはないという意見もあるわけでございますけれども、この点については労働大臣はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  115. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 憲法には、男女平等と、こうあるわけです。参政権もちゃんと男女平等になっておるわけなんですね。しかし、現実の日本の社会の中には、いろいろな理由で今までの社会慣習から男女の差別のある面もあることは、これは現実の姿なんです。これにつきましてずっと昔からいろいろな婦人運動が起こりました歴史も大変あります。ですけれども、なかなか婦人運動という面だけでは、決して今まで成果を十分に上げ得たとはなかなか言えません。  大体日本という国は一民族、一国家、一言語でありまして、やっぱりなかなか今まで自分たちの慣習ということを自分らの中から打ち破るということは歴史の上でも大きな変革がちょっとなかったように私は思います。つまり、黒船が来て開国をしたとか、戦争に負けて民主主義を導入したとか、あるいはまた、今度の国連やILOの中の男女差別の撤廃というような、そういう外国からの動きというもの、これをうまく活用して、また新しい飛躍を図っていくということも私はいいことだろう。そういう意味では、私は来年の批准年を迎えて非常にタイミングというものが大事なんじゃないか。これはうっかりしますと、来年をずっと通り過ぎますと、もうすうっと忘れ去るようなこともこれはないとは言えません。今までは大体そうです。わあっと盛り上がって、すうっと消えていくというようなことになりがちですから。そういう意味で私は、それは今までの慣習から、皆さんのいろいろな婦人運動が盛んになって推し進めてこられたとはいえ、やっぱりこの批准という国際的な要因を契機にしてやらなきゃならぬと思っております。  しかし、長い間の慣習ですから、おっしゃるように二論三論が出てきた、これはやっぱり自分自分立場立場を主にした御意見が出てきて論が分かれておるんだろうと思いますけれども、長い間、六年も審議会でもやっておるし、その前からの歴史も長いんです。そういう状態でございますが、この批准ということを一つの契機にいたしまして、私はやはりスタートをしなきゃならぬと思いますね。まずスタートすることが第一なんで、考えてから歩きましょうと言っておったのではなかなか難しい。まず歩きながら考えるというようなことで、まずスタートをする、その後はスロー・バット・ステディーで行く。非常に大きな理想を持って、急激な革命ではありませんけれども、大きな改革をやろうとするときには、やっぱり後は重き荷物を持って歩むがごとくと、急ぐべからずということもこれは一面の真理だろうと思いますので、私はまずスタートして、後はスロー・バット・ステディーと、スリーS主義と、こう申し上げておるわけであります。
  116. 中西珠子

    ○中西珠子君 労働大臣がおっしゃるとおり、タイミングということは非常に大事ですし、また、差別撤廃条約の批准というものを目指して努力をする、また、この前の社労の委員会で、労働大臣を初め赤松婦人少年局長にもいろいろと御注文を申し上げたわけでございますけれども、この機会に、なるたけよい男女雇用平等法をおつくりいただいて、そして、新しい歴史の一歩を踏み出すという御決意でお願いしたいと思います。  いつごろ法案をお出しになる御予定でございますか、お伺いしてよろしいですか。
  117. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 今せっかくやっておる最中で、仕上がりの直前でございますが、今月中にもなるべく早くと、こう思っております。
  118. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでは、労働大臣の所信表明の中にも、労働省としては「パートタイム労働対策要綱を作成することとし、」と、こう書いてございまして、「この要綱に基づき、労使に対する啓発指導に努める」というふうに書いでございますが、この要綱はもう既におつくりになったんですか。それとも、これからおつくりになるんですか。
  119. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 現在検討中でございます。
  120. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでは、いろいろと調査もなすっていると思いますけれども、パートタイム労働者として労働省が把握していらっしゃる短時間就労の労働者の年齢構成を男女別に教えていただきたいんですが。
  121. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) パートタイマーの年齢構成でございますが、我が国の場合は、労働力調査特別調査という調査がございまして、これによって見ますと、女子では三十五歳から四十四歳が四三・二%、それから四十五歳から五十四歳が二三・二%と、中年層の占める割合が高くなっておりまして、五十五歳以上は九・一%にとどまっているのに対しまして、男子では五十五歳以上の高年齢者層が五割を占めております。諸外国におきましても同様の傾向が見られるわけでございますが、我が国状況はそんなことでございます。
  122. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでは次に、パートタイム労働者の就業分野につきまして、男女別に教えていただきたいんですが。
  123. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) パートタイマーの産業別就業分野を、やはり先ほど申し上げました労働力調査特別調査によって見ますと、製造業が三七・六%、それから卸売・小売業が三七・六%、それからサービス業が一七・三%で、この三つで全体の九割以上を占めております。  これを男女別に見てみますと、女子は、卸売・小売業が三八・六%、製造業が三七・八%、サービス業が一七・〇%の順であるのに対しまして、男子の方は、製造業が三五・七%、それからサービス業が二八・六%、卸売・小売業が二一・四%となっております。
  124. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでは、企業規模別の構成はどうなっていますか。
  125. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 企業規模別に見ますと、労働者一人から二十九人の企業が五六・一%と過半数を占めておりまして、次いで三十人から四百九十九人の企業が三一・四%、五百人以上の企業が九・八%となっております。小規模企業の方が割合が高いということでございまして、男女別に見てもほぼ同じ傾向にあります。
  126. 中西珠子

    ○中西珠子君 全般的にパートタイム労働者が大変増加しているそうですけれども、その増加の理由というものはどういうところにあるんでしょうか。需要側供給側についてお答えいただきたいと思います。
  127. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) パートタイム労働者増加をしております背景といたしましては、供給側の理由としまして、やはり家事、育児、こういったものの負担の軽減などによりまして家庭婦人の就業意欲が最近ますます高まってきておるということであり、また、その就業意欲を満たす方法としまして、背は内職というような形でございましたが、最近はこういう就業希望が、パートタイムという形が五割を超えておる、こういうような状況でパート希望者がどんどんふえてきておるというような事情にございます。需要側の方といたしましては、特に商業とかサービス業関係業種では、業務の忙しいときに、特に忙しい時間帯に欲しいとか、あるいはまた特定の時間帯だけに欲しいとか、こういうような形での雇用。それからまた、生産量とか販売量などの増減に応じましてある程度雇用の調整が容易である、こういうようなことで、需要側供給側双方にパートタイム労働での就業を求める動きがふえてきておる。こういうことがパートが増加してきておる理由だと考えておるわけでございます。
  128. 中西珠子

    ○中西珠子君 パートタイマーとしてとらえられている人の中では、非常に長時間働いている人もいるわけですね。統計によりますと、一応週三十五時間未満働いている人をとらえているという統計もあるし、またそうではなくて、パートタイマーと称している人、もしくは呼ばれている人を対象にした調査もあるわけでございますね。そういった調査によりますと、パートタイム労働者という名前でありながら大変長い時間働いている人が多いということでございますけれども、それはどのような調査がございますですか、労働省としては。パートタイム労働者として働いている人、また、企業からパートタイマーと呼ばれている人で長時間働いている人というのがございますでしょう。一般の、所定労働時間を働いている一般従業者と同じくらい、もしくはもっと長く働いている人というのが統計上出ているんじゃないですか。
  129. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 総理府の労働力調査特別調査でございますが、これは五十六年の三月の統計でございますが、パートタイマーとしての労働時間、日数とも同じだというのが全体のパートタイマーの中の二三・七%あるという調査がございます。
  130. 中西珠子

    ○中西珠子君 私がちょっと調べましたところによりますと、労働力調査特別調査によって、パートタイム労働者の週間就業時間が四十九時間以上が三五%というのがあるんですけれどもどうですか。三十五時間から四十八時間までは四八・四%、四十九時間以上というのが三・五%というのがあるんです。週間の日数は、五日以上が九〇・六%と大部分を占めている。こういう調査あるんですけれどもね。
  131. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 先生がおっしゃるとおりでございます。
  132. 中西珠子

    ○中西珠子君 それからまた、これは女子パートに限ってでございますが、一日所定労働時間八時間以上働いている者が一四・七%、九時間以上が〇・八%となっているんですね。これについてはどのようにお考えですか。
  133. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 第三次産業雇用実態調査によりますと、先生おっしゃるような数字になっております。一日八時間以上の者も約一五%ということでございます。
  134. 中西珠子

    ○中西珠子君 その同じ第三次産業雇用実態調査によりますと、週の所定労働時間が四十八時間以上という者が一〇・六%となっているんですね。こういうパートという名前だけれども、長い時間一般の労働者の所定労働時間と同じもしくはそれ以上も働いているというふうな人もパート労働対策でお扱いになりますか。
  135. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) パートタイマーというのは、本来的には一般の労働者と比べて所定労働時間が短い労働者だというように考えておりますが、今先生おっしゃるように、実は名ばかりはパートタイマーでも実際は所定労働時間は普通の人と同じというような人、あるいは、残業をやればもっと長くなるという方も今約二割くらいおるわけでございますので、労働時間の長いパートタイマーの保護もやはりこれも重要でございますので、私どもとしては、今検討中のパートタイム労働対策要綱の策定に当たりましては、これらの方方も広く視野に入れながら、具体的対策の事項に応じて対象範囲を決めて対処したいと、こう思っております。
  136. 中西珠子

    ○中西珠子君 現在は、法令上も行政上も、パートタイム労働省の一般的な定義というものがないと理解してよろしゅうございますね。そうして統計によってまた調査対象を変えていらっしゃるということですね。そしてパートタイム労働者という総折的な名前でいろいろ調査をなすっているという調査もあるし、そうじゃなくて、週三十五時間未満の者だけを対象とする調査もあるということですね。  そういたしますと、今度おつくりになるパートタイム労働対策要綱の中では、どのようなパートタイム労働者定義をするかはまだ決まっていないわけですね。
  137. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 一般の事項につきましては、通常の労働省よりも所定労働時間が短い方をパートタイマーとしてとらえて重点的にやっていきたいと、こう思っておりますが、今市し上げましたように、名だけがパートタイマーで、実際は非常に通常の労働者と同じような方については、その指導しようとする事項によって、これはやはりそういう人も加えた方がいいという事項であれば、それは広くその人たちも含めてやっていきたい。例えば労働条件の明示だとか雇入通知書というものを使いながら、契約の最初に当たって通知書を取り交わすというような事項は、これは名目だけパートタイマーだという人も必要な事項でございますので、そういうものについてはこれは全部包含して対策をつくっていきたい、こう思っております。
  138. 中西珠子

    ○中西珠子君 長時間働いていて、ただ名前だけパートという人の問題も非常に重要な問題だと思います。と申しますのは、今おっしゃいました労働契約の明示ということだけでなく、やはり基準法の適用だとか賃金、労働条件の面で、また社会保険、労働保険の適用の面で、パートという名前で差別されているという面が非常にありますので、この点はどうぞパート労働対策の中にお入れになっていただいて保護してやっていただきたい。賃金、労働条件も改善するようにしていただきたいと思います。強く要望、いたします。  それから、ただいま雇入通知書の問題が出ましたけれども、これの普及状況はどうなっていますか。
  139. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 今、大都市を中心に、五十八年度まではテスト的に普及を図ってきておりますが、新しい年度、五十九年度でございますが、これは今までの経験をもとに全国的に普及を図っていきたいというように考えております。
  140. 中西珠子

    ○中西珠子君 行政指導でやっていらっしゃるということが当分の政策でおありになるならば、大いにそれを独力に推進していただきたいと思いまして、御要望いたします。  それでは次に、パートタイム労働者への労働基準法の適用状況についてお伺いしたいと思います。  いろいろございますけれども、まず、休憩にっきましてはどのように指導していらっしゃいますか。
  141. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 休憩につきましては、労働基準法に規定があるわけでございますが、普通の場合は昼間の休憩というものがあるわけでございまして、これについては通常の労働者と同じように休憩をとるように。指導をしております。
  142. 中西珠子

    ○中西珠子君 通常の労働者と同じようにとおっしゃいましたけれども、例えば六時間働かない場合は休憩をしなくてもいい、六時間以上の場合は一日四十五分間、八時間の場合は一時間というのが基準法の中の条項でございますと理解しておりますけれども、パートの人である場合は別に休憩をやらなくていいのだと考えている企業が多いらしいんですね。そして、お弁当を食べるための休憩もこれは無給にするというふうに考えている企業が多い。これは私のところに実際に訴えがあったからよくわかっているわけでございます。  それから、とにかく深夜業は禁止になっているのに、夜の十時半から朝の五時まで一度も休憩なしに働いているというパートもいるわけでございます。それは、ちょっと名前を出すのはどうかと思うんですけれども、「ほかほか弁当」というのがございますね、このごろ。大臣御存じですか、「ほかほか弁当」。そこで働いている女の人は、ほかに昼間のパートがないからそこに行っているというんですが、夜の十時半から朝の五時までは腰かけることもなく働き通し、腰かけて休んでいるとお弁当が間に合わないからだと、そういう話も聞いております。それから、昼間働いている人では、時計のバンドづくりとか、いろいろな有機溶剤を使うような、カメラの部品をつくるとか、そういったところで働いていながら、パートがそこの主流を占めており、そして休憩はさせない、休憩中お弁当を食べるという時間は無給にする、そういう企業が多いんですよ。  そういうことをお聞きになったことはございますですか。
  143. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) そういうケースも中にはあろうかと思いますので、できるだけ休憩時間も実態に合うような形で指導していきたいと思っております。
  144. 中西珠子

    ○中西珠子君 年次有給休暇については、どのような指導をなすっていらっしゃいますか。
  145. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 年次有給休暇は、先生御承知のように、通常の労働者が最初一年間ずっと勤務した場合に翌年六日間やると、こういう制度になっておるわけでございますが、パートタイマーについては労働日数がまちまちでございますので、私ども労働基準法を合理的に解釈をいたしまして、週の所定労働日数が五日以上である者については、三十九条の条文どおり六日全部与えるべきであるという解釈をしておりますが、週の所定労働日数が四日の者については、法解釈上は若干疑問がございますが、指導としては同様に年次有給休暇を与えることが望ましいということで行政指導をしているということでございます。
  146. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでは、パートの超過勤務というものについてはどのようにお考えになり、またどのような指導をなすっていますか。
  147. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) パートタイマーが生まれた制度背景につきましては、先ほど職安局長から答弁をいたしましたが、要するに、短時間の就労というものを労働者の方も希望するし、それから使用者の方もそういういわばハンディな形の労働力を欲しいということでこういった実態存在するわけでございますので、こういう方々の、特にまた多くは家庭の主婦ということで、やや普通の労働者よりは早く家へ帰って子供たちの夕飯の支度をしなきゃならぬとかいう脳が大部分でございますので、やはり余りオーバータイムというのは好ましくないという考えに立って指導をしております。
  148. 中西珠子

    ○中西珠子君 ところが、実際には時間外労働をさせられているパート労働者というのもいるわけでございますね。そのとき問題となるのは、結局基準法で週四十八時間ということで、それにはいろいろただし書きがついていますけれども、それを超過しなければ割り増し賃金は払わないというところが多いわけですね。そういうところは、どうなんでしょうか。時間外労働はパートの労働契約の中に、これ、口頭の契約が多いからいい加減になっちゃってわからない。おそば一杯でうんと長時間働かされるというところもあるし、大変難しい問題なんですけれどもね。例えば六時間働くという口約束であれ何であれしましてね、そしてもう少し働いてもらいたい、九時間ぐらい働いてもらいたいといった場合、その三時間、一応約束の六時間より多く働いた三時間分は、これはもう別に、同じ時間給のままでよろしいと、そして、例えば一般の労働者が一日所定内労働が八時間とすると、残りの一時間だけは割り増し賃金をつけると、そういうことでよろしいんでしょうか。
  149. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) まあ法律論を申し上げて申しわけございませんが、先生がおっしゃった後段のことでございますが、六時間の方がオーバータイムを三時間やったということになりますと、労働基準法では、八時間を超えるということでございますので、三時間のうちの二時間はこれは労使がどう決めるかという当事者の問題に任される。けれども最後の一時間は、これは八時間を超えますので、労働基準法に従って二割五分の割り増し賃金を払うということになろうかと思います。
  150. 中西珠子

    ○中西珠子君 賃金の支払いの問題でございますが、これは結局パートという名前で働かされている人、また、初めから自分が自発的にパートで雇われて働いている人の賃金というのは本当に低うございますね。一般の女子労働者の平均賃金の六割ぐらいですか。こういった普通の労働者の賃金よりもパートであるがゆえに低いという傾向は外国には余りないんじゃないでしょうか。
  151. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) パートタイマーの賃金が低いというお話でございますが、私ども五十七年の調査では、女子パートタイム労働者の時間当たり所定内給与額というものは五百四十円ということで、これは勤続ゼロ年の女子一般労働者の約九割がそんなことでございます。  それから外回と比べますとどうかという点でございますが、これはちょっと、一九八〇年の比較でございますが、日本のパートタイム労働者の賃金は一九八〇年ですから四百九十二円となっておりますが、イギリスは同じ年で百六十九・九ペンスということで、ちょっとこれは換算せぬとわかりませんが、格差としては、日本の一般労働者の賃金との格差をちょっと比べてみますと、それだけは今計算できておりますのでお答えしますと、イギリスではパートタイム労働者の賃金は一般労働者の賃金の九二・七%でございます。それからオーストラリアは、パートタイム賃金の方が一般よりゃや高くなっているという数字でございます。我が国の場合は七六・二%ということで、四分の三程度ということでございます。
  152. 中西珠子

    ○中西珠子君 今例にお出しいただきましたイギリスの九二・七%、オーストラリアが一般より高いということは一〇〇%以上ということですね。とにかく、パートタイムで働いても、同じ仕事をしているのであればやはり同一賃金というものが適用されるべきであるし、それが時間給となり、時間による案分というふうにならなければならないと考えるわけでございまして、つい最近公明党から提出いたしましたパート労働法におきましても、同一労働同一賃金の原則の適用ということがうたってあるわけでございますが、とにかく日本のパートの賃金の低さというものはやはり何とかしていただかなきゃならない問題だと思いますので、どうぞよろしく行政指導をお願いしたいと思います。  それから、就業規則の適用状況はどうなっておりますか。  それからまた、就業規則の作成とか変更というものについてのパート労働者の参加はどの程度になっていますか。
  153. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 私どもの五十七年の調査によりますと、パートタイマーについての就業規則を整備している企業は約半数ということでございます。半分が就業規則の整備をしているということでございます。
  154. 中西珠子

    ○中西珠子君 一度にお聞きしましたので後の方のお答えがありませんでしたけれども、就業規則の作成と変更について、パート労働者がどの程度参加していますか。ということは、就業規則を作成する場合、そのパートに適用条項があるときにはパートの意見が聞かれるかどうかということですね。パートの大多数の意見が反映されるかどうか。それからまた、就業規則もいろいろ変更がございまして、いい変更のときはいいんですけれども、不利益変更なんという場合、パートの大多数の人の意見が反映されるかどうか、開かれているかどうかという点について、調査をなさったことがございますか。
  155. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) その点はちょっと調査がございませんので申しわけございませんが、ただ、私ども今考えているこれからの行政指導の方向としては、やはりパートタイマーがおる事業所におきましては、就業規則等の作成に当たってはパートタイマーの意見を聞くような、そういう方向で考えていきたいと、こう思っております。
  156. 中西珠子

    ○中西珠子君 それから解雇予告の問題なんですけれども、パート労働者には解雇予告をしなくてもいいのだという考え方が非常にあるような気がするんです。と申しますのは、私がいろいろ面接調査をした人の中でも、パート労働者で、子供が水ぼうそうになってしまったので保育所に預けられなくなってしまった。法定伝染病ですから、これは保育所では預かれないということで、仕方がないからちょっと一週間でも休みをもらって子供のめんどうを見たいんですけれどと申し出た途端に解雇されてしまったというような例が、これは一つの例ですけれども、ございまして、パート労働者には解雇予告も要らないのだ、解雇手当も要らないのだ、基準法の適用はその点においてはないのだという考え方が相当広がっているらしいんですけれども、この点についてはいかがですか。
  157. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) それは非常に誤解でございまして、パートタイマーには労働基準法適用があるわけでございますので、当然解雇予告、手当が必要でございます。  なお、期間を定めて労働契約が結ばれている場合、例えば三カ月とか六カ月、そういうものであっても、それが反復継続された場合には、実質上期間の定めのない労働契約と同視できる状態がございますので、そういう場合にはもとより解雇予告が必要であるというように解釈しております。
  158. 中西珠子

    ○中西珠子君 パートタイム労働者として雇われていて、本当にフルタイムの一般労働者と同じようになりたいと思いながらもう十年も二十年もたってしまって、いまだにパートの身分でいるというふうな、殊に女子労働省が多いんですけれども、そういった人たちのフルタイムヘの優先雇用という問題でございますが、そういう優先雇用の問題、また逆に、家庭の事情その他からパートで働きたい、フルタイムからパートにかわりたいというふうなそういった人たち、いわばパートとフルタイム労働者の相互間の転換というんでしょうか、そういったものを促進したりする計画はおありですか。
  159. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 第三次産業雇用実態調査というのを労働省でやっておるわけでございますが、それによりますと、女子のパートタイマーあるいはアルバイトをやっておられる方で、一般社員あるいは正社員にかわりたいという方が一七%程度、あるいは、かわりたくないという方が七八%、こんなような調査がございます。特に、かわりたくないということの一番主な理由は、勤務時間帯の都合が悪くなるからという方がその六割ぐらいというようなデータもございまして、そういうパートでいたいということについて、そんな事情で正社員になりたくないという方が八割近くもあるわけでございますが、仮に本人がそういうような事情から解かれてもう正社員になりたいというようなことであれば、これはそういう、優先的に応募できるというようなことは、これは大変好ましいことではないかというふうに思うわけでございます。  ただ、問題は、優先的に雇用しろということがどこまで言えるのか、この辺のところがなかなか、やはり本人のその仕事についての能力なり適格性なり、そういったような関係などで、どこまで言えるかわかりませんが、優先的に応募できるというふうなことは大変結構じゃないか、こう思っておるわけでございます。
  160. 中西珠子

    ○中西珠子君 もちろん、パートタイム労働者がヴェイカンシーの、一般労働者として雇われるヴェイカンシーの資格要件を満たしてということが前提になると思います。しかし、そういった場合も、やはりパートタイム労働者はパートタイム労働者の身分なんだから、外から採るというふうな傾向も非常にあるのではないかと思いまして、この四月ですか、提出いたしました公明党のパート労働法の中には、そういったパートタイム労働者のフルタイムヘの優先雇用ということを打ち出しているわけでございますけれども、これからおっくりになりますパートタイム労働対策要綱の中にもぜひそれをお考えおきいただきたいと思います。  それから、後で私が申しました、パートとフルタイム労働者相互間の転換の促進という、これですね、これにつきましては、けさほども御説明ありましたけれども、六十歳以上の、六十歳台前半の労働者、これは、男性も女性も含めて、短時間労働の就労を希望する者については助成金をお出しになるというぐらいのことですから、これは大いに奨励なさることだと思いますが、こういった奨励策にもよってパートタイム労働者は一層これからふえてくると思いますので、この人たちの労働条件雇用の安定、それからもちろん賃金もですね、そういったものも含めて、大いにパートタイムの労働対策というものは強化していただかなければならないと思うわけでございますが、これから労働対策要綱をおつくりになるということですけれども、これはもう早急におっくりいただいて、そして行政指導を強めていっていただきたいと思います。  私は、行政指導で果たしてどこまでいくかということをちょっと凝固に思いまして、本当ならばパート労働法というものをつくっていただきたいと思うんでございますが、それはいかがなものですか。
  161. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 公明党提出の法案も私ども読ましていただいて参考にさしていただいております。私ども、とりあえずと申しますか、パートタイマーの現状をよく認識しながら、まず新年度はできるだけ早くパートタイム労働対策要綱というものをつくって、これで行政指導を強力にしていきたい、こう思っております。  できれば法律でやるべきではないか、こういう御指摘でございますが、私ども、行政指導を要綱によってやっていきながら、やはり関係者の合意の形成ということを図りながら、それがある程度の段階へ行くまではひとつこの対策要綱で、一歩一歩関係者の合意が得られるような形で積み上げていきたいというのが私どもの真実の考えでございます。
  162. 中西珠子

    ○中西珠子君 それでは、パートのことはこれで一応、いろいろお聞きいたしまして、お答えいただきましてありがとうございました。とにかく行政指導を強めておいきになるのでしたら、それで大いに頑張ってやっていただきたいと思います。  それから、問題はちょっと変わりますが、技術革新、殊にMEの対応について、非常に雇用の面の対応、また労働安全衛生の面の対応というものを大いにお考えくださるということを伺っておりますけれども、最近アメリカでVDT作業に従事する女子労働者の流産とか奇形児の出産などの報告がふえているということで、ボストン大学の労働協約、それからカナダのオンタリオ州政府と組合との労働協約、そういったものの中では、妊娠中の女子をVDT作業から外すという取り決めが既にできているそうでございますし、また、非常に多くのアメリカの女子労働者が、妊娠中の女子をVDT作業から外してほしいという要求をしているそうでございますが、労働省はこの問題はどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  163. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 御指摘のように、最近オフィスオートメーション化が各産業分野で進められておりますので、私どもも今御指摘のVDT、ビジュアルディスプレー装置を用いる作業が非常に多くなってきておりますので、労働衛生上の配慮を欠くことになれば、特に手腕系への影響としての頸肩腕症候群だとか、あるいは視覚への過度の負担に伴う目の疲労等の問題が生じてくるおそれがあるということが指摘されております。  そこで、ビジュアルディスプレー装置の急速な導入に対応した当面の対策といたしまして、私ども、専門家の意見を聞きまして、自主的な健康管理を進める上で参考となる指標を、これはガイドラインでございますが、暫定的に作成しまして、先般、これは二月の二十七日でございますが、公表したところでございます。当面、この指標に基づいて関係事業者を指導していくということでございます。  ただ、これはなかなか難しい問題がございまして、根本的には産業医科大学及び産業医学総合研究所という二カ所に今三年計画で基本的な調査研究を依頼しておりまして、今、一年目が終わりまして、二年目に入っておりますので、その結果にまちたいと思いますが、当面は、先ほど申し上げました二月二十七日にガイドラインをつくりまして、全国の労働基準局並びに監督署にこれによって指導をしろという通達を出しておるところでございます。
  164. 中西珠子

    ○中西珠子君 今の局長の御説明にもありましたように、いろいろの職業病が出てきそうだということで、例えば頸肩腕症候群とか口の疲労とか、そういったものについてはもう碓かにガイドラインをお出しになりまして、それも拝見いたしましたけれども、最近言われている妊娠出産の異常というものにつきまして、これもやはり調査の対象に加えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  165. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) そういう問題につきましても、今産業医科大学と産業医学総合研究所に基本的な研究をお願いしておりますので、その場でそれらの事項も検討をしたいというように考えております。
  166. 中西珠子

    ○中西珠子君 大変時間が早くたってしまいました。家内労働のことをお聞きすると言っておりましたけれども、時間がたってしまいましてなかなか――家内労働手帳の普及状況とそれから安全衛生対策についてお聞きしたかったんですけれども、これ、簡単にお答え願えますでしょうか。
  167. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 家内労働手帳の普及状況でございますが、これは毎年私ども家内労働についての重点事項としてやっておりますが、現在七割方普及しているという数字が出ております。  それから、安全衛生対策につきましては、特に有害な業務、原材料を扱う家内労働というようなものもやはり特定なところにはございますので、安全衛生の点についても十分これを重点として指導を強めるということで、毎年指示を全国にしております。
  168. 中西珠子

    ○中西珠子君 労災特別加入についてはいかがですか。
  169. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 家内労働の有害業務に従事する者につきましては労災の特別加入例度を認めておりまして、これについては保険給付もときどき発生しておりまして、十分に加入の、まあ促進と言ってはおかしいですが、加入についてのPRをしながら適切な給付を現在実行しつつあるという状況でございます。
  170. 中西珠子

    ○中西珠子君 いろいろお答えいただきましてありがとうございました。私が労働行政を担当の労働大臣を初め皆様方にお願いしたいことは、最も弱い立場にある者、また日陰にいる者、そういった人たち、また婦人をも含めまして、中高年をも含めまして、そういった人たち立場を考えて労働行政もやっていっていただきたい。もちろん経済発展のためにいろいろと労働対策の面からなさらなければならないこと、優先順位もございますでしょうけれども、弱い者の立場というものをお考えいただいて労働行政もやっていただきたいということを心からお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  171. 山中郁子

    山中郁子君 先日の予算委員、会の集中審議で、私は婦少審の建議に係る男女雇用平等法の中のいわゆる女子保護の規制の緩和や撤廃の問題について、幾つかの点をお伺いをいたしました。それで、そのときは時間が足りなかったものですから、そのことに関連して最初に改めてもう一つ強調をしておきたいと思いますので、婦少局長はもちろんですけれども、労働大臣にもぜひお受けとめいただきたいと思います。  先日の予算委員会の際に私は、労基研の専門委員報告が、時間外規制の緩和による長時間労働について、女子の健康に有害であり、その重大性を指摘していることを引用して申し上げました。同時に、この労基研の専門委員報告書が深夜業についてもかなり明確に指摘をしている。当然御承知だと思いますけれども、ここのところもぜひとも認識をしていただいて、今労働省が取り組んでいるとおっしゃっている雇用平等法の法制化の中に、先日局長もお答えいただきましたように、そうした経緯、あるいは婦人労働者の要求はよくかみしめて対応したいとおっしゃった中身として、改めて認識をしていただきたいと思います。  深夜業の問題に関しては、このように「医学的・専門的立場からみた女子の特質」として専門委員会が発表している報告があります。「深夜業に従事する男女の健康水準は、その多くの場合、労働内容条件を男女で異にするため、一般に比較が容易でないが、仮に母性への影響を除いて考えた場合にも女子に影響が著しいことが指摘できる。」、そして幾つかの調査結果なども取り上げつつ、例えば常日勤者の場合と三交代の場合の罹病率の違いとか、そうしたデータを挙げながら、結論的に、こうした資料は、「女子の深夜業がその健康保持の上で特に不利となる可能性を示唆していると言ってよい。」ということを明確に述べているわけです。私は、先日も予算委員会の集中審議で申し上げましたけれども、深夜業においてもはっきりこのように労働省が委嘱をして研究を重ねられた専門家の研究の報告の中で提起されている以上、そして労働大臣が長きにわたって審議会検討していただいたものであると繰り返しおっしゃったそこの中身の土台になっているものである以上、この問題についてはよもやおろそかに扱われないと思いますけれども、この点は重々お考えをいただかなければならないと思っております。  なお、さらにILOの行動計画の中にでも保護法の再検討という項目がありますけれども、その中でも、生活内容の改善を目指すためのものである、この保護内容の再検討がですね。このことが明確に述べられているんです。ですから、こうした今私が幾つか取り上げました問題についても、深夜業についての規制の緩和や撤廃という問題が、まさに労働省自身が委嘱をして研究をしてくれたというふうに発表されている中身の結論にも反対の結果を導くものであるし、ILOの行動計画の中で、生活の改善を目指すということで提起されているものにも逆行するものである、そのことを今私は改めて指摘をいたしまして、どういう法案をつくろうとしているのか、どういう法律をつくろうとするのかというのは、両論併記あるいは三論併記として婦少審が出さざるを得なかった以上、労働省の姿勢に深くかかわるもので、今こそ労働省が、政府がだれのための、何のための雇用平等法をつくるという立場に立っているかというその姿勢が問われているものであるということを初めに重ねて強調をしたいと思います。きょうも大変時間が限られておりますので、この点についての御答弁は結構です。  もう一点、この婦少審の建議にかかわる問題でございますけれども、危険有害業務の就業制限は専門家の意見を聞いて見直すということになっております。私は、専門家による十分な科学的検討の結果によるべきであると考えておりますと同時に、専門家の意見を聞く場所というのは、特に労働団体の意見を十分尊重して、そういう方たちをもって専門家の意見の基本とするということでなければならないというふうに思っています。この問題につきましても、「医学的・専門的立場から見た女子の特質」、この報告書の中で次のように述べております。「労働基準法制定当初と比較し、一般に安全衛生関係の規制が整備されたり、技術革新が進展したことによって、現行規制の適用を受ける対象作業が消滅したり、あるいは危険性が減少している反面、新しい危険性、有害性が生じていること、かつ災害の大型化の傾向などをもあわせて考慮する必要があろう。」、このように述べております。ここで大事なのは、「新しい危険性、有害性が生じている」という指摘だと思います。この点も含めて、いわゆる専門家の方々の意見を聞くというこの建議の中の方向、政府としても慎重に、あくまでも慎重に、そういう立場で女性の健康を守る、労働者の健康を守るという観点で取り組み、検討されたいと思っておりますけれども、この点についてはお考えなり、お約束なりをいただきたいと思います。大臣、いかがでしょうか。
  172. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 先生の御指摘のうち、危険有害業務の就業制限についての検討の中で労働団体の意見を聞くようにという御趣旨と存じますが、これを具体的に進めるに当たりましては、将来母性保護の見地からの検討ということで進めるわけでございますが、現在既に専門家の検討に入っていただいているわけでございます。しかし、これを具体的に省令レベルでの規定にいたします場合には、さらに関係審議会にお諮りすることといたしております。その段階で十分労働側の御意見も承ることができると存じております。  また、新しい有害業務というようなものについては、こういう分野では日々変わっている、新しいものも生じているということも十分に考えられますし、先生の御指摘の文書などもよく検討をししているわけでございまして、これらの問題についても課題と考えますが、ただ現在の婦人差別撤廃条約に照らして母性保護規定を除く女子保護規定を見直すという観点からは、まず最初に現行の危険有害業務を中心に検討をするという過程があるというふうに考えております。
  173. 山中郁子

    山中郁子君 個々に細かく立ち入る時間はないのですが、私が申し上げた趣旨はおわかりいただいていると思うので、こうした見直しということがすべてとにかく撤廃とか、縮小とか、廃止とか、そうしたところにつながるという問題ではないので、この専門家の皆さん方の御意見もある、労働の態様もある、あくまでも慎重に、その点については婦人労働者の健康を守る、そういう観点を踏まえて対処されたいということをお願いしておりますので、ぜひ大臣からもお約束をいただきたいと思います。
  174. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 私が先ほど申し上げましたように、やっぱり日本は日本なりの実情もありまするし、今までの保護の態様もありまするし、今すぐアメリカ並みにすぱっと全部男並みという、それは急なことは無理だと思います。  前の御質問の時間外とか、深夜とか、あるいはまた今の御質問の危険有害業務に就くことにつきましても、それはやっぱり女性の健康ということを考えて、これはやっぱり漸進的に図っていく。それで、それの危険とかそういうものが除去されるような、そういういろいろな手だて、研究が進みましたときは、だんだんこれは、もちろん条約の趣旨に照らして、母性保護以外はだんだん撤廃をしていくという方向にあるとは思いますが、現状ではやっぱりそういう危険なこととか、女子の健康保護ということにつきましては現実的に私どもは考えていきたいと、こう思うております。
  175. 山中郁子

    山中郁子君 当面の対応の姿勢という、おっしゃる御趣旨はわかりました。将来の問題として、いわゆる女子保護について撤廃はしていくんだという大前提に立っておられるようでございますけれども、将来の問題としても私どもは、御承知のように、この点については重大な意見を持っているということだけを今の機会には申し上げておきます。  同じく婦少審の建議にかかわる問題ではございますが、育児休業の問題について次にお尋ねをいたします。  この建議の中身としては、育児休業についてはこのようになっています。「育児休業請求権の法制化」というふうに項目としては出ておりますが、「我が国における普及率も一割強にすぎないこと等を考慮すると、現段階において全企業に本制度の実施を強制することは困難であり、当面、行政側の積極的な指導、援助等に、より本制度のなお一層の普及を図ることが先決であること。」。しかし、少数意見として、労働意見でございましょうが、「本項については、行政指導では普及は進まないので法制化すべきであるという少数意見がある。」、こういうことになっています。  私は、ここでひとつぜひ労働省にも見解を伺いたいんですけれども、普及が一割強にすぎないからまだ実施は無理だと、こういう意見になっているわけですね。だけれども、それでは経営者はこの問題について今までどういう態度をとってきたか。一つだけ象徴的な例を申し上げれば、これはたしか八一年、昭和五十六年の九月だったと思いますが、日経連、経団連、商工会議所、経済同友会、この四団体が文書で労働省へ育児休業の制度化には反対だという申し入れをしているはずです。つまり、使用者側がそろってこれに反対をしている。反対をしているということは、実際には普及させていないわけですよね、させようとする意思がないわけですから。それでいて、まだ一割しか普及していないから実施の条件にない、これは余りにも身勝手な言い方で、エゴもいいとこだと私は思うし、論理的にも、それではいつになったらできるのか。自分たちは普及させない、しかも反対だと言っている。それでいて普及していない実態なんだから法制化は無理だ、こういうでたらめな話はないというふうに思うのですが、私はそこでやはり行政責任というか役割があると思うので、この問題について、経済界のこういう態度、理屈、余りにも身勝手に過ぎると思うし、また認識としてもおくれていると言わなければならないと思いますが、この点について労働大臣の御見解をお伺いいたします。
  176. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 先生から、前に日経連等経済四団体から出されました文書についてお尋ねがございましたので、先に御説明いたします。  この中で、経営側の一致した見解として述べられておりますことは、本制度を分業種、全企業一律に強制実施させることは無謀であるというところに非常に重点が置かれているわけでございまして、このたびの建議の中でも、育児休業制度の普及そのものについての反対は必ずしもございませんで、この普及、行政指導によって個々の企業が実情に応じて導入していくことについてまで反対しているわけではない。ただ、法律で強制して一律にやれということはまだ時期尚早である、このように述べられていたように、私は出席しておりまして、理解いたしておりました。したがいまして、既に御存じのように、勤労婦人福祉法の中で育児休業制度については使用者の努力義務がございますから、この努力義務をもとにいたしまして、行政指導もあるいは奨励もしているわけでございます。これを進めるということについてまで企業が反対しておるわけでは決してございませんので、その点だけ法制化、つまり強行的にすべての事業に一律に育児休業を実施させる、このことに反対しておられるというふうに理解をいたしております。
  177. 山中郁子

    山中郁子君 局長のおっしゃるとおりだとしても、財界が、経営者がそのことに反対をしている。これは育児休業請求権の法制化というのはすべての職種に、すべての企業に一律にと、そういう法制化ですから、それに反対している人たちが、それは勤労婦人福祉法で努力義務でうたわれていることに自分たちが率先して反対はしないかもしれない。だけれども、自分たちはそもそも一律にやられることには反対なんだと言っている人たちがやっぱり雇用の経営者の側、経営者なんですから、だから自分のところで一割しか普及させない。イニシアチブというのは経営者が持っているわけだから、それは虫のいい話だ、ジレンマですね、論理としてだって。だから、その点についてやはり労働省としてはこうしたおくれた経営者の姿勢、身勝手な姿勢については毅然とした態度で行政の役割を発揮しなければならないはずではないかと私は申し上げております。  それで関連してお尋ねいたしますが、育児休業側度が世界ではどのくらい実施されているかということですが、たしか十数カ国に上っていると思います。それで、これは国際的にも今後のやはり趨勢なんですよね。政府も賛成しているILO百五十六号条約及び百六十五号勧告ですね。特にこの勧告の中で、男女労働者、家族的責任を有する労働者の機会均等及び平等待遇に関する条約です。この中で、「両親のうちいずれかの者は、出産休暇の直後の期間内に休暇をとる可能性を有すべきである。ただし、雇用を放棄することなくかつ雇用から生ずる権利が保護されるものとする。」ということで、この育児休業制度について触れています。この勧告には、使用者側は棄権しているんですけれども、一九八一年六月の六十七回総会で政府は賛成しているはずです。  国際舞台では、やはりこういうふうに国際的な流れに対してそういうポーズをとるかのように見受けられる態度をとっておられて、それで反面国内の問題になると、経営者側のそうした姿勢を労働省は擁護する、あるいはそれに寛容であるということでは私は姿勢としても正しくないし、また、今後その問題に発展させていく力にもなり得ないと思いますので、あえて、今申し上げましたようなILOの百六十五号勧告に日本政府が賛成しているということも踏まえて労働大臣から、私が先ほどお尋ねをいたしました現状の経営者の姿勢や考え方、そうしたものに対するもっと積極的な労働省立場というものでお答えもいただき、この問題に取り組んでいく姿勢も示していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  178. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 戦後、ずっと男性中心でやってきて、工業中心でやってきてというような体制が続いておったものですから、やはり急に経営者側から一律全般的に分業種というのは時期尚早だという趣旨だろうと私は思っておりますが、しかし、もうこご数年は大分状況が変わってきまして、女性は若いときに勤めてすぐ結婚したり、子供ができればやめちゃうというのでは大分なくなってきまして、すっかり世の中が変わったんです。それで、それならば日本の賢明な企業者もその状況変化対応しないというはずは私はなかろう、こういう情勢の変化を踏まえて、これは努力義務にもなっておりますから、やっぱり女性をたくさん使っておるところはそういう制度を導入することがメリットになるという、今までとは大分違いますから、そういう情勢も踏まえまして、一段と経営者側に対しましても行政指導を私は進めていきたい。また、いけるような情勢にもだんだんなってきた、こう思っております。
  179. 山中郁子

    山中郁子君 世の中が変わっていくということについての認識や確信というものを持つことはお互いに大事なことですけれども、それと自然発生的に経営者の考え方も変わるということは余りにも甘いと言わざるを得ません。なぜならば、ちゃんとこの今度の婦少審の建議の中に、一割程度しか普及していないんだからまだ早いんだ、こう言っているんですからね。それが強力な使用者側の意見であるわけですから、そこのところをしっかりと見きわめていただかなければならないと思います。  育児休業の問題につきまして、私はもう一つここで別な角度からちょっと問題を考えてみたいと思うんですけれども、労働大臣も多分御承知だと思いますが、WHOの総会決議を受けて、厚生省が昭和五十年からいわゆる母乳運動を推進しているんですよね。それで、きょうは時間も足りないので厚生省には特においでいただいていないのですが、いろいろ資料その他もいただいて厚生省の見解も事前に聞いてきたんですけれども、ここでは母乳育児の長所として、乳児の死亡率、罹患率が低い。病気に対する抵抗力が強い。栄養成分の組成が理想的である。精神的、情緒的発達によい。母体の回復を早める。育児が簡便で経済的。こういう長所を列記しまして、それで、このスローガンとして、いわゆる母乳運動を厚生省がイニシアチブをとってキャンペーンをしているわけですけれども、そのスローガンとして一・五カ月までは母乳のみで育てよう、二点目が三カ月まではできるだけ母乳のみで頑張ろう、それからその次に、四カ月以上でも安易に人工ミルクに切りかえないで育てよう、こういう運動ですね。  その運動の結果、五十年以降母乳の率というのは大分向上してきたという結果も述べておられましたけれども、現在こういうふうに国としてWHOの経過も受けてですけれども、こういうことで提起をして連動も進んでいる中で、改めてやはり育児休業という問題のこの点に関して必要性なり意義なりが言えるというように思います。  もちろん、育児休業の請求権の法制化という言葉にあらわされているように、私どももこれは本人の希望によるそうしたものであるという大前提には立っておりますけれども、いずれにしても厚生省の言う三カ月まではできるだけ母乳で頑張ろう、四カ月以上でも人工ミルクでない方がいい。こういうことはやはり働いている母親が子供にお乳を与えるという条件がつくられなければいけないわけですから、そこのところが問題になってくるわけです。  ところが、産後休暇は現在六週間ですよね。それで強制は五週間です。建議では産後八週間ということが一つありますけれども、八週間に仮になったとしても二カ月ですよね。厚生省の言う三カ月は頑張ろうといっても、これは事実上頑張り切れないわけですわね。私は、そういう点でもう一度この観点からも育児休業制度の必要性というものを労働大臣関係者にも認識をしていただきたいというふうに思います。  それで、日本の働く婦人の場合に、長距離通勤やラッシュ通勤で異常出産、そうしたものもやっぱりかなり高くなっていて、大変影響が大きくなっているわけで、もし仮に産後八週間となったとしても、局長はよく御承知だと思いますが、先進ヨーロッパ諸国などに比べて、決して先進とは言い切れない面があるというふうに思っております。  ですから、今私が申し上げましたような、国として、また医学的にもかなりコンセンサスを得ている母乳で育てるという観点からいっても、働く婦人の実情や要求に照らして、育児休業制度がより積極的に、しかも早い時点で取り組まれ、実現されることが望ましいということは御異論のないところじゃないかと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  180. 赤松良子

    政府委員(赤松良子君) 母乳の子供に与えるメリットというものは、近年大変研究が進んでいるように承知しております。労働省はそれは専門外ではございますけれども、育児休業が普及された方がいいということの根拠の中には、その考慮も当然に入っているということはございまして、育児休業を最初努力義務として規定いたしましたときにも、その期間はどのくらいが望ましいかというような研究をいたしました。そのときにも、子供の状態を、例えば首が据わるのはどのくらいかとか、脳の細胞が発達するのは、どのぐらいのときにはどういう状態に達しているかとか、あるいは、母乳が母乳以外と比べてどのぐらいよいかなどというようなことも研究の対象にしたこともございまして、先生御指摘のような、母乳のメリットということを考慮の外に置いているということは決してございませんでした。したがいまして、その点に関しても育児休業がよい制度だというふうに考えて、奨励金制度、普及指導員の活用、あるいは育児休業促進旬間なども最近は新しく設けて、その促進に励んでいるわけでございまして、その中に母乳のよさというようなことも全く考慮の外というわけでは決してございません。
  181. 山中郁子

    山中郁子君 それは私もよく承知しております。問題は、今それを現行の限定された対象からすべての職種、すべての働く女性に広げよう、そして、これを制度化する、これが今問題になっているわけですよね。それで、この雇用平等法の婦少審の審議の中にもその問題が含まれていて、その建議の中身としては、何回も最初から言っているように、まだ普及が一割程度だから時期尚早だという使用者側の強い抵抗に遭ったという形で、この中では実らない、建議の中では実らないという危険というか、可能性が出てきているということを私は今問題にしております。  それで、大臣、ぜひともこれは知っていただきたいのですが、これは各党ともみんな異論はないんです。つまり、努力義務というような範囲じゃなくて、対象をすべての職種に広げてそれで制度化する、請求権の法制化ということについては国会においても各党異論はないんです。それで、それぞれ法案の中身なども用意したり検討したりされておりますし、私どももしております。中身の細かいことについては多少の違いはあるにいたしましても異論がない。特に与党である自民党もこの点についてはそういう考え方を示しているんです。これはもうぜひ知っていただきたいんですけれども、これは自民党の五十九年の一月の大会のときの連動方針の決定ですけれども、この中で「育児等の環境整備」ということがありまして、「雇用婦人の約六割が既婚者である現実を踏まえ、その多様なニーズに適応するよう保育施策を改善充実する。」ということに続いて、「さらに、すべての働く母親のための「育児休業」の制度化を図る。」ということを明記して決定されているんですね。だから、国会の中ですべての党が全部そのことについて反対がないし、積極的な考え方を持って制度化を図るということになるとすれば、何が隆路になるのかといえば、あとは先ほどから何回も申し上げておりますように財界の、使用者側のそのおくれた、また身勝手な姿勢であるとしか言いようがないということなんです。  ぜひ労働大臣からこの問題について、単に今までの延長でなくて積極的に育児休業の制度化のために、この雇用平等法はもちろんのことでありますけれども、国として、労働省として取り組んで努力をしていくというお約束をいただきたいと思います。
  182. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 自民党の大会のその「制度化を図る。」というのは、やっぱり一つの目標なんです。それは間違いありません。ただ、それに向かって環境の整備を図ったり、いろいろな努力はいたさなければならぬと思いますが、その方向で私どもも努力をしていきたいと思います。
  183. 山中郁子

    山中郁子君 終わります。
  184. 藤井恒男

    藤井恒男君 最初に大臣にお伺いいたしますが、きょう未明に私鉄総連の賃金交渉が妥結いたしまして、ストが回避されたわけなんです。大体この春の賃上げは、これで大どころが全部終わったという勘定だと私は思っている。これ以降は三公社四現業の問題、あるいは民間の産別関係というふうに推移していくと思うんだけど、まあまあ大方の相場づくりのところが終わったという状況の中で、どのように今回の賃上げというものを評価しておられるのか、その点、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  185. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) ゆうべから非常に関心の的になっておりました私鉄の大手の交渉も、今未明に妥結をいたしました。しかし、現在においても多くの企業においてまだ交渉は進行中であるということもこれまた事実であります。まあまあ大体の峠は見えたとおっしゃるかもしれませんが、まだ相当なものが残っておるという段階でございます。  私といたしましては、その個別的な具体的な数字の評価ということはこれは差し控えさしていただきたいと思いますが、やはり労使が自主的に自由に交渉をせられて円満に妥結をしていくということは、私は健全な我が国の労働運動だというふうに評価をいたしております。
  186. 藤井恒男

    藤井恒男君 確かに低成長という中で、春闘の姿というものも随分変化してきているなというふうに思うわけですが、一方、国鉄、林野などの三公社四現業、有額回答ゾーンを十三日から十七日までという強い希望を持って公労協が主張しているわけですが、これはきょうの一新聞に、政府首脳がこの有額回答ゾーンに必ずしもこだわっていないという発言をしていることと、いま一つは、基本給においては業績によって格差をつけるべきでない、なぜならば基本給は生活給であって、年度末手当などとは性質が違う、これまでの業績悪化の責任を若い職員に負わせることは無理があるるというふうに発言しているわけだけど、これは所管の問題、いろいろありましょうが、これについて労働省としてはどういうふうに見ているのか。この言うところの政府首脳と称するものは、これは労働省ですか。どうでしょうか。
  187. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) けさの新聞につきましては、どういう筋からどういう話が出たか承知をいたしておりませんが、御指摘のございました公企体等の賃上げの問題につきましては、先ほど来語のございましたように、民間の賃上げが相当程度解決いたしまして、大勢が見えた状況で賃金交渉が本格化するわけでございまして、あるいはその後また公労委へ手続が移っていくというようなこともあるわけでございますが、それらの時期につきましては、いずれにしても大どころはきのうからきょう、あすぐらいで妥結、解決の方へ向かっていくのかもしれませんが、さらに中堅等も含めた大勢が出た時点で交渉が本格化して、そういう手続に移っていくのであろうというふうに思うわけでございまして、今の時期でどういう時期ということを明確に申し上げるのは困難であろうかと存じます。  内容につきましても、公共企業体におきます賃金問題につきましては、基本的にはやはり労使で交渉をして決められる問題でございまして、したがいまして、有額回答につきましても各当局現在交渉中でございますが、そういう経過等を踏まえて適切に措置されるものと考えておりますけれども、いずれにしましても、民間がもう少し全体の姿として明確になった後で本格化し、手続も進行してまいりますので、今の段階で時期、中身等について具体的に申し上げられる状況にはないというところでございます。
  188. 藤井恒男

    藤井恒男君 どうせそういうことだろうと思っていたので、このぐらいでやめますけれどもね。  別なことですが、マレーシアあるいはシンガポールあたりで、しきりにルックイーストということで、日本の驚異的な経済成長の原因がどこにあるかと、その主たる要因を日本における労使関係だというような観点から、ちょっとこそばゆいようなことかもわからないけれど、ルックイーストという言葉が非常に盛んになっておる。このことはもう労働省も篤と御存じだと思うんだけれど、これはASEANだけじゃなく欧米工業先進国でも非常に日本の労使関係というのには関心が深い。それでは、今のところ大体日本の労使関係というものはどういうところに特色があるのかということになると、日本が企業内組合であるということ、それから終身雇用であるということ、それに伴うところの年功序列賃金、あるいは生産性向上運動、こういったことが日本的労使関係の特色というふうに見ておるようです。  しかし、最近ナショナルセンターの幹部の人たちといろいろ話し合っている中で、ちょっと様子が変わってきたぞと、例えばマレーシアを初めとするASEANの組合の方たち、あるいは経営者の方たち、政府の方たち、欧米の人たちも、ちょっと日本的な労使関係というのはおかしいんじゃないか。例えば生産性向上という運動についても、果たしてそれは組合の参加があるのか、成果配分というものがきちっとなされているのか。あるいは終身雇用という状況の中で、あるいは生産性向上運動とMEの導入という問題などを絡めて、日本の労使関係というものが果たしてそれが近代的なものと言えるのかどうか疑問だという声がかなり起きてきている。これは非常に、貿易摩擦の問題などをめぐって憂慮すべき問題であるということを私は耳にしている。  そういった点について、このルックイーストという問題、日本的労使関係の特色、また今言ったように変化が起きつつあるということについて、労働省は何か把握しておるか、あるいは把握しておるとしたらどのような所見を持っているのかお聞きしておきたいと思います。
  189. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) ただいま御指摘ございましたように、我が国の労働組合の運動とかあるいは組織形態につきまして、外国の労働組合の会議等で話題になったということは仄聞はいたしております。  問題は、労働組合の組織形態なりあるいは労働運動のあり方というものは、それぞれの国の経済的、社会的な背景のもとで形成されてきておるわけでございますから、普遍的なこういう組織形態がいいとか、こういう労働運動であるべきだというようなことは決めがたいところでございますが、そういう意味では、例えば組織率の問題等でも、そういう組織形態のあり方とか、あるいは労働運動のあり方が直接関連するということにもなかなか決めつけられない点があろうかと思います。問題は、日本の労働組合の組織のあり方なり、あるいは労働運動の実態が、諸外国に正しく理解されることが大切でございますので、最近では労働組合の方々の交流も活発化されておりますし、我が国の労働組合の活動とか、あるいは企業の中で労使関係がどうかとか、その中で労使がどういう活動をされているかというようなことにつきましても、論外国でだんだん正しい評価を得てきておるというふうに思っておりますけれども、やはり貿易摩擦の問題、その他の問題の観点からいたしましても、我が国の労働組合の状況とか労働運動の状況については正しく理解される必要がございますので、労働省といたしましては、今後とも国際交流とか、あるいは海外広報を積極的に推進いたしまして、労働事情について理解の促進を図るよう努めてまいりたいと思っておるところでございます。
  190. 藤井恒男

    藤井恒男君 日本の労働事情というものが正しく伝わるということを私は望んでいるわけだけど、残念ながらそうじゃない、そうじゃなくなってきつつあるということだから、その辺のところをよく注意しなければならない。なお、そのことが貿易摩擦等に要らざるインパクトを与えていくというようなことであれば非常に重要な問題である。この辺はよく一度御調査をいただきたい。  それから、これに関連するんだけど、例えばアメリカを初めとする工業先進国あたりでは、在外公館に労働組合出身者、組合経験者というのが極めて多い。日本の場合には、これは世界じゅうにたった一カ所バンコクに、タイに一昨年出ていったたった一人と、こういうような労働省から出ていっておるのはよく知っていますけどね、これ、一人という状況なんです。この辺もやっぱり非常に諸外国と我が国との違うところで、私は、ああいったタイにおける組合からの出向者、これは受け入れ口はそれは外務省でありましょうが、労働省としても労働外交というものが極めて重要であるというふうに位置づけられている状況の中で、もうちょっと積極的にその辺のことに取り組んだらいかがかと思うんだけど、どんなものでしょうか。
  191. 小粥義朗

    政府委員(小粥義朗君) 先生御指摘のように、今タイで労働組合出身の外務公務員という形で御活躍をされていることも承知しておりますし、また、大変御活躍だということも承知しているわけでございますが、ただ、外交官ということになりますと、例えばレーバーアタッシェの場合、労使関係はもちろんですが、それ以外の労働問題全般にわたる、さらには開発途上国等ですと、労働問題以外のほかの、例えば技術協力その他の仕事もあわせ担当しなければならないということで、いろいろ幅広い活動を求められる面もございまして、したがって、どこでもだれでもというわけにはなかなかいかない面もございます。  ただ労働省立場では、少なくとも労働問題について世界各国とのいろんな交流を深める、あるいはまた外国の事情もよくつぶさに理解をする、また、日本の事情も理解をしてもらうという意味からしますと、労働組合出身の方だからだめだとかというような気持ちはさらさら持っておりません。したがいまして、外務公務員の人事権は申すまでもなく外務省でございますので、適材がいればまた外務省としてもそうした民間の方を外交官に活用していくという気持ちは持っているというふうに聞いておりますから、そうした面は今後外務省ともよく話をしていきたいと思っております。
  192. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 私は十年ほど前に自民党の外交部会長というのをしばらくやっておりましたが、戦後、日本の敗戦によって一遍に――あそこは行政整理を大変やったんです。吉田さんが特に外務省に力があったものですから、それを逆用されましてね、外交官がうんと減らされたんです。それが今まで尾を引いておりましてね、まだインドネシア並みとかベルギー並みとか言っております。何とかイタリア並みの五千人台にあと十年ほどで取り返したいなと、そういうことでございまして、そこでこれはいかぬということで相当巻き返しをやって、外務省の定員をふやすようなことにした、私のときに手をつけたということがございました。  そのときに条件を出しまして、外務省は、外務省のキャリアだけでと、そんな視野の狭いことではいけない、もっと民間の血を活用しなさい、そんな御殿女中みたいなことじゃ困る、やっぱりもっとたくさんの幅から、たくさんの活力を導入しないと、新しい時代に、変化対応できないというようなことでやったんですが、前は全然閉鎖しておりましたのが少しは広がったんです。労働省の高橋展子さんなどもそうして入っていった方でありましょう。  そういうふうな意味から、今おっしゃるようにタイに組合出身のアタッシェが行っておるということはこれは当然のことであって、もっともっと私は、人材さえおればやっていけばいいことだろうと思うておりますが、何さま人事権は、役所の縄張りでなかなか外務省放しませんけれども、そこはよく相談をいたしまして、私はあなたのおっしゃるような趣旨で民間から活用をする、組合に適材な人がおればこれまたまことに結構だという意味で、外務省とも相談をして努力をいたしたい、こう思うております。
  193. 藤井恒男

    藤井恒男君 大臣全く私と同じお考えのようでございまして、デンマークにも婦人の大使が現におられる。たった一人だけどレーバーアタッシェという道がやっとおととし開かれたわけでしてね、労働省も、所管が外務省ということじゃなく、各国のレーバーアタッシェというのがどういう形になっているか一遍調べていただきたい。びっくりする。それは何も外務省におけるキャリアがやっておるわけじゃないのであって、労働組合から出ていった人、全くノンキャリアが一つのレーバーアタッシェというポジションを持って非常に活躍している。だから、こういったことは積極的にひとつ労働省もやっていただきたいし、たまたま大臣が外交部会長のころに始めたことということでございますので、ぜひひとつこれは実現をさしてもらいたいと思うわけです。  次に、これは非常に残念なことだけど、我が国の労使関係が健全化していると外国で青われ、また先ほど大臣のお言葉の中にも春闘を顧みてそういったお言葉があったんだけど、どういうわけか組織率というのが五十年の三四・四%をピークにして逐年低下して、五十八年二九・七%、三〇%を割っているという状況ですね。だから、これだけの数字をもってするなら、日本における労働組合の組織率は何%だと言われて、三〇%を割っていると、この一事をもってしても、私は諸外国から、果たして日本には健全な労働連動というのが存在するのか、労使が本当に対等な立場で分配等についての話し合いを行っているのか疑問を持たれるというふうに思うわけだけど、健全な労使関係をはぐくむ立場にある労働省として、五十年から八年間にわたって毎年低下し続けている組織率の低下状況というものをどういうふうに見ておるのか。あるいは、そういう状況について何か施策を講じているのか、ただ拱手傍観しているのか、その辺はどうなんでしょう。
  194. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 我が国の労働組合の組織率につきましては、ただいま先生御指摘になりましたとおりでございまして、昭和三十年代の後半ごろから三三%から三五%ぐらいでずっと推移をいたしておりましたが、第一次オイルショック後の昭和五十年から〇・数ポイントぐらいずつ徐徐に徐々に下がってまいりまして、五十八年で二九・七%になっておるわけでございます。これも三〇%から台がわりしたという点は一つの顕著な事実ですけれども、〇・数ポイント下がって二九・七%になったということでございます。  このように、組織率が五十年以降徐々に低下しております原因は、基本的には雇用者数はかなりふえてきておりますけれども、組織化がそれに伴っていないということでございまして、五十年代に入りましてからの雇用者数の増減の動きを見ますと、組織率の一般的に高い製造業では雇用者数が伸び悩み、または減少というような状況で推移いたしておりますのに対しまして、組織率の低い第三次産業等で雇用者数がふえている、あるいはまた、組織率の高い公務部門とか、あるいは電力、ガス、水道等の公益部門におきまして合理化が進められて雇用者数が減っている、また、雇用者の中で入離職率の激しい女子等がふえている、こういうようなことが原因であろうかと存じます。  そこで、こういう組織率の下がっていることに対します労働行政の施策ということでございますが、労働行政といたしましては、労働組合をどういう形で結成するかとか、あるいは労働組合がどういう運動をされるかは、当然のことながらその組合なり労働者の方々が自主的に行われることでございまして、労働省といたしましては、そういう活動ができるような条件整備といいますか、そういうための労働関係制度、あるいは労働関係法の運用等につきましていろいろ啓蒙を進めていくというのが私どものやるべき仕事だろうというふうに考えておるところでございます。
  195. 藤井恒男

    藤井恒男君 これは私はちょっとそういう考えと違うんでね。例えば労使というものが存在している状況の中で、その企業なら企業、産業なら産業の労働条件をつくり上げていくということについてはその労使が自主的な話し合いによって決めていくべきであり、そのことに介入すべきじゃないというふうに思うわけだけど、しかし、労働組合をつくって、つくる素地というもの、産業、企業にあっては健全な労使がそこにあることが普通の姿なんだ、労働組合というのは必要悪じゃないんだということをPRし啓蒙するということが私は労働省の仕事だと思うんです。なぜならば、労働省のあらゆる施策の中で、かなりな部分はそこに労働組合があるということを前提にしておるでしょう。労使というものを前提にしておるでしょう。だから、労働組合を必要悪だ、つくっても必要悪だ、つくらさぬのだ、ないほどいいんだというような雰囲気がまだまだ日本に多い、地方に行けば。中小企業等には。これが組織率が三割を割っているという私は実情だと思うんですよ。  例えば、製造業でも大手のところはほとんどこれは、組織率は高いですね、七〇%、六〇%というところあるわけですよ。ところが今言ったように、ローカルな、しかも中小の場合には現実にまだまだ労働組合というのは必要悪だと、ない方がいいんだという雰囲気ですよ。それに対してやはり労働省としては新しい産業構造、そしてここまで成長してきた日本の礼金にあっては、労使関係というものが必要だということは積極的に進めるべきであって、それはすぐれて労使関係に、自主的な問題にあるということはそれはちょっと違う。だから、この辺については一遍大臣の所信をお伺いしておきたい。  それから、きょうは時間がないからまた後の時間に譲らしてもらいますが、定年延長を、昭和六十年までに六十歳定年を一般化する、あるいは総実労働時間ですね、これを昭和六十年までに年間二千時間を普及さす、これが閣議決定に基づく労働省の方針でございます。しかし、現実に六十年といったらもう目の前だけど、この定年の問題も労働時間の問題も、目標に比べると到達率が極めて低い。高齢化社会を迎える状況の中で、定年、労働時間、一面においてはそれはワークシェアリングという問題にもなりましょうし、あるいは高齢化社会における生きがい対策という意味においても、雇用構造の変化というものをつくっていかなければいけない、クリエートしなければいけないという意味からも非常に大切なことだと思うんだけど、この達成状況、そして未達の原因、施策というようなものを、あと時間がありませんから簡潔にお答えいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  196. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) 労働組合というものは必要悪だ、どうもそういう気風が中小企業などに多い、それがやっぱりブレーキになっているんじゃないかとおっしゃる御意見でございますけれども、そこはひとつ組合の方々の自主的な創意で工夫をして、必要善だというふうに、ぜひ運動をしていただければいいと私は思っております。  それは、労働運動の中では、いろいろ個々の問題については、あれはよかったと言う人もあるし、あああそこはちょっと行き過ぎだったというところもそれは今まであったでございましょうけれども、問題は、やっぱり組合自体の自主的な運動いかんによって、未組織の中小企業分野などにも私は広がっていかないということも決してないのではなかろうかと思います。  憲法でも、言論それから結社の自由がうたわれておりまして、これは基本的人権の延長路線にもあるように思います。それで、終戦直後みたいなときでしたら、マッカーサー司令部がやってきて、そしていわゆる上からの指令で、そして政府がどんどん労働組合運動を奨励するという時期があったかもしれませんけれども、もうここまで来まして、そして藤井さんがおっしゃるように、御心配になるぐらいルックイースト、ルックウエストなんて言われるように――これはあんまりいい調子になっても困るというお話でございますが、そのとおりだけれども、そういう成熟したときになりましたら、これは政府がよかれと思って言うことでもこれは下手な干渉になっても困りますので、こういう政治活動、政党活動とか、それから労働組合連動というものは、まさに自主的な民主的な社会のこれは原動力でありバロメーターですから、特殊な時期はいざ知らず、かえって今日の成熟社会においては自主的にひとつ健全に仲はされるということが私は国民の期待ではなかろうか。また、そうなればそれだけの力がおありになるのではないかというふうに私は一般的にそう感じております。
  197. 加藤孝

    政府委員加藤孝君) 昭和六十年六十歳定年制の一般化、こういうことを目指してやっておるわけでございますが、昨年の一月現在で約五割が六十歳定年制になったということでございまして、六十歳定年制が主流にはなってきておるということでございますが、まだ一般化というところには来ていないということでございます。後、今後六十歳定年制にすることがもう決まっておるというところ、あるいはそういう方針を決めておるというようなところを入れますと、約六二、三%というところまで来ております。特に大企業、五千人以上の大企業、そういうところまで入れますと、九〇%ぐらいが六十歳定年制というようなことになってきておりまして、今やとうとうと六十歳定年制に向けて流れ始めてきておる、こう言えると思うわけでございます。しかし、六十年というまでにもう間がございません。さらに懸命な最後の努力をしようということで、もう今取り組みをし始めておるところでございます。  御指摘のように、今まで五十五歳定年制というものであったものをさらにこれから六十五までいろいろ就業の形を延ばしていこうというわけでございますので、おっしゃるように確かに新しい就労形態、新しい就業構造というものをつくっていかなきゃならぬ、クリエートしていかなきゃならぬ、こうおっしゃるのはまことにごもっともでございまして、そういう観点で、例えば短時間就業、こういうような形のものも、パートタイム形式のものも今高齢者には進めておりますし、それからまたシルバー人材センターというふうな形で任意就業というような形での新しい就業形態も今進めておるというようなことで、これからもそういう新しいいろんな就業形態をいろいろまた模索していきたいということで努力をしたいと考えております。
  198. 望月三郎

    政府委員(望月三郎君) 労働時間の短縮の状況でございますが、先生おっしゃるように、昭和五十五年に週休二日制等労働時間対策推進計画というものをつくりまして、年間総実労働時間二千時間というものを目標に各種の施策をやってきたわけでございますが、経済状況を反映しまして週休二日制の普及が最近において停滞している。それからまた、景気の回復に伴って所定労働時間が多少増加しているというような傾向もございまして、昭和五十八年の年間総実労働時間は二千九十八時間ということになっております。  そこで、私ども今後この時間の短縮についていろんな手法によってできるだけ時間短縮を進めていきたいと思いますが、特に中小零細企業に相当問題がございますので、都道府県における業種別会議というようなものの開催を通じまして実情に即した指導をやっていきたいと思っておりますが、この昭和五十五年当時と相当状況も変わっておりますので、せんだって、公労使三者で構成されております中央労働基準審議会の労働時間都会に、最近の経済情勢の変化等も踏まえて今後の時間短縮のあり方というものを現在検討を願っているところでございます。
  199. 石本茂

    委員長石本茂君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     ―――――――――――――
  200. 石本茂

    委員長石本茂君) 次に、身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律案を議題といたします。  政府から趣旨説明を聴取いたします。坂本労働大臣
  201. 坂本三十次

    国務大臣坂本三十次君) ただいま議題となりました身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  身体障害者の雇用対策につきましては、昭和五十一年に身体障害者雇用促進法を全面的に改正し、身体障害者の雇用制度による事業主の雇用義務を法的義務とするとともに、身体障害者雇用納付金制度を創設し、これらの制度を中心に、その雇用の促進と安定に努めているところであります。  この身体障害者雇用納付金制度は、身体障害者の雇用率未達成の事業主から一定額の納付金を徴収し、これを雇用率を達成している事業主に調整金として支給する等により、身体障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担を調整するとともに、身体障害者の雇用を全体的に引き上げることを目的とするものであります。  現在、この納付金制度に係る業務につきましては、特殊法人である雇用促進事業団が実施しており、その業務の一部は、認可法人である身体障害者雇用促進協会に委託されておりますが、先般の臨時行政調査会の答申におきましては、雇用促進事業団の業務の整理合理化という観点から、この納付金関係業務を身体障害者雇用促進協会に全面的に移管すべきである旨の指摘がなされているところであります。  政府といたしましては、この答申の趣旨に沿うとともに納付金回係業務の効率的な運営を確保すべく、この業務を身体障害者雇用促進協会に全面的に行わせるために必要な改正を行うこととしたものであります。  また、近年においては、障害の種類が多くなり、かつ、その内容が複雑になってきていることにかんがみ、身体障害者雇用促進法の対象となる身体障害の範囲を拡大し、その雇用対策を的確に推進することが必要となっております。  これらの観点から、政府といたしましては、この法律案を作成し、身体障害者雇用審議会にお諮りした上、ここに提出した次第であります。  次に、その内容の概要を御説明申し上げます。  第一は、現在雇用促進事業団が実施している納付金関係業務を身体障害者雇用促進協会に行わせることとしたことであります。  これに関連して、身体障害者雇用促進協会の組織及び体制についての整備を図ることといたしております。具体的には、納付金関係業務を身体障害者雇用促進協会に全面的に行わせるに当たっては、本業務の有する高い公共性にかんがみ、納付金関係業務が適正に運営されるよう身体障害者雇用促進協会について、新たに学識経験者によって構成される評議員会の設置や予算、事業計画、業務方法書に対する労働大臣の認可等所要の措置を講ずることといたしております。  第二は、身体障害の範囲を拡大することであります。  身体障害の範囲について、従来法律で定めているもののほか、新たに政令で定めることができるようにし、政令においては、人工肛門、人工膀胱の造設者等の排せつ機能障害で日常生活が著しい制限を受けるものを定める予定にしております。  なお、この法律の施行は、納付金関係業務に係る部分については昭和六十年四月一日から、身体障害の範囲の改正に係る部分については本年十月一日からといたしております。  以上、この法律案の提案理由及びその内容の概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ、御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  202. 石本茂

    委員長石本茂君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十四分散会      ―――――・―――――