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1984-04-06 第101回国会 参議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月六日(金曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  三月三十日     辞任         補欠選任      大浜 方栄君     徳永 正利君  三月三十一日     辞任         補欠選任      徳永 正利君     大浜 方栄君  四月五日     辞任         補欠選任      山中 郁子君     小笠原貞子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。    委員長          石本  茂君    理 事                 遠藤 政夫君                 佐々木 満君                 中野 鉄造君    委 員                 大浜 方栄君                 金丸 三郎君                 斎藤 十朗君                 関口 恵造君                 曽根田郁夫君                 田代由紀男君                 田中 正巳君                 村上 正邦君                 糸久八重子君                 本岡 昭次君                 和田 静夫君                 中西 珠子君                 小笠原貞子君                 藤井 恒男君                 下村  泰君    国務大臣        厚 生 大 臣  渡部 恒三君    政府委員        厚生大臣官房長  幸田 正孝君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        厚生大臣官房審        議官        兼内閣審議官   古賀 章介君        厚生大臣官房会        計課長      黒木 武弘君        厚生省公衆衛生        局長       大池 眞澄君        厚生省環境衛生        局長       竹中 浩治君        厚生省医務局長  吉崎 正義君        厚生省社会局長  持永 和見君        厚生省児童家庭        局長       吉原 健二君        厚生省保険局長  吉村  仁君        厚生省援護局長  入江  慧君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        警察庁刑事局捜        査第一課長    三上 和幸君        経済企画庁国民        生活局消費者行        政第一課長    村田 憲寿君        法務省刑事局参        事官       馬場 俊行君        大蔵省主計局主        計官       小村  武君        文化庁文化部宗        務課長      村上 則明君    参考人        医療金融公庫総        歳        北川 力夫君        環境衛生金融公        庫理事長     加藤 威二君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十九年度一般会計予算内閣提出、衆議  院送付)、昭和五十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付)、昭和五十九年度政府関係  機関予算内閣提出衆議院送付)について  (厚生省所管医療金融公庫及び環境衛生金融  公庫)     ―――――――――――――
  2. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨五日、山中郁予君委員辞任され、その補欠として小維原貞子君が選任されました。
  3. 石本茂

    委員長石本茂君) 去る四月三日、予算委員会から、四月六日及び七日の二日間、昭和五十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、厚生省所管労働省所管医療金融公庫及び環境衛生金融公庫について審査の委嘱がございました。  本委員会といたしましては、理事会で協議の結果、本日は厚生省所衡分を、明七日は労働省所管分をそれぞれ審査することといたしました。     ―――――――――――――
  4. 石本茂

  5. 石本茂

    委員長石本茂君) まず、参考人出席要求についてお諮りいたします。  本件審査中、医療金融公庫及び環境衛生金融公庫役職員参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認めます。  なお、その人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ荷あり〕
  7. 石本茂

    委員長石本茂君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  8. 石本茂

    委員長石本茂君) 予算説明につきましては、厚生労働大臣から既に聴取いたしておりますので、これより直ちに質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 本岡昭次

    本岡昭次君 まず最初に、政府の五十九年度厚生省予算、これは言いかえれば社会保障予算と言えると思いますが、この厚生省予算に対する基本的な方針はどのようなものであるのか。また、その方針は、中長期に物を考えていく上で整合性を持ったものと言えるのかどうかといった基本的な点について、まず厚生大臣に二、三お伺いをしておきたいと思います。  昨年の八月に閣議決定された「一九八○年代経済社会展望指針」では、社会保障に関して、「経済成長率が低下し、財政も厳しい状況にある等、社会保障を取り巻く環境は厳しく、先行きについての不透明感がある。こうした時期にこそ社会保障基盤を固め、国民不安感を払拭することが肝要である。」と述べています。しかし、最近の社会保障に対する政府の姿勢は国民に大きな不安を与えております。今私が参考にしましたこの政府決定による「展望指針」では、こうした国民不安感を払拭することが肝要だと言っていますが、実際は国民に大きな不安を与えておるというのが現状であります。最近数年の編成を見ましても、五十七年度厚生年金国庫負担を繰り延べ、また、国民健康保険について十一カ月分予算を組んだり、五十八年度国民年金国庫負担を三千億も繰り延べてようやく予算編成を行ってきたというのが実態であります。さらに本年度は、医療保険改革の名のもとに、六千二百億円余の国庫負担削減を図っております。こういった政府の態度を見るときに、国民に不安を持つなと言う方が無理ではないかと私は思います。厚生大臣はどのように説明をして国民の不安を払拭されようというのですか。その点について、まず基本的な問題の第一点としてお伺いをいたしておきます。
  10. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 確かに御指摘のように、今日の厳しい財政状態、また、経済成長が鈍化しておるというような中に、さらに高齢化社会という中で、社会保障予算も例外としないということで、厳しい状態に立っておることは御指摘のとおりだと思います。  そういう中で私どもは、国民皆さん方に長期にわたって不安なからしめる社会保障基本哲学を守っていかなければならない、どうすればよいかということでいろいろ工夫、苦労を重ねておるわけでありますけれども、まず第一は、将来の高齢化社会、これは今六・三人に一人で老人を抱えておるというのが、いずれは四人で一人というようなことになるために、何か年金に対する将来の不安というものを国民の持さんがお持ちにたっている。そこで、今思い切った年金改革を行って、国民皆さんに将来にわたって不安なからしめるような長期的な展望を持たなければならないとか、また、今御指摘のありました医療保険の問題も、年々医療費が増大しておるということになりますと、今のように経済成長が鈍化しておる状態ではどうしても国民負担が多くなってしまう、そういうふうにならないようにするにはどうすればいいかということで今回の改革案をお願いしておるわけでございますが、結論的に申し上げますと、今日やはり財政全体が苦しい中でございますから、社会保障も厳しい情勢に立たせられておるという認識においては私は先生と同じだと思うのでありますが、しかし、私ども政府立場で、そういう厳しい状態の中でなおかつ社会福祉が後退しないように、国民皆さん方のあすの不安をなからしめるように、そういうことで今回の九兆二千五百億という予算編成しだということを申し上げたいと思います。
  11. 本岡昭次

    本岡昭次君 今の大臣答弁では納得できません。不安感を持っている国民にその不安感を払拭させるためにあなたはどう説明するかということですが、今の説明では国民はだれも不安感を払拭しないのみか、ますます不安感を募らせていくと思いますが、それは具体的にはひとつこれから社会労働委員会にかかってくる法案の中で厳しく追及させていただき、厚生省厚生大臣社会保障に対する考え方をもう少し変えていただくように私は論議をしてみたいと、こう思います。  そこで、最近の新聞を見ますと、何か大蔵省行政改革特例法を六十年以降も延長する方針を決めたというふうなことを報道した新聞があります。あれは時限立法で五十九年度で切れるわけですが、これは本当に新聞が報じるように大蔵省行政改革特例法を延長する方針で来年度予算編成に臨もうとしているんですか。
  12. 小村武

    説明員小村武君) お答えいたします。  新聞の報道、四月四日の日経の記事だと存じますが、私どもは一切そうした事実を承知しておりません。今五十九年度予算について御審議をお願いしている段階でございまして、六十年以降についてはまだ確たることを申し上げる段階ではないと思います。
  13. 本岡昭次

    本岡昭次君 当然だと思います。  そこで、厚生大臣にお伺いしますが、この行政改革特例法の中には、先ほど厚生大臣年金の問題が大事だから、しっかりした基礎固めをしなければいかぬと、こうおっしゃいました。厚生年金国庫負担金の四分の一カットがこの中に、削減の中の最大の金額として含まれておりますが、これは一方では年金改革というものを進めながら、一方財政的な面では四分の一カットがさらに続くというふうなことになってはこれは大変であります。  年金改革を進めていくその原因は、いろいろ遠因もありますが、まず財政破綻というふうな問題が、財政百姓の面から、あるいは臨調から指摘をされているのでありまして、その財政破綻の問題がありながら、一方ではこの厚生年金国庫負担金を四分の一ずつカットしていくというふうなことが引き続いて行われるということになれば、これはもう政策整合性に欠けるのも甚しいというふうなことになると私は思います。  厚生大臣として、この四分の一カットはもう特例法段階で終わり、そして国会の中でその法制化段階政府が繰り返し答弁したように、元金と利子を計画的にそれを返還をしていくということについて積極的に対応していくべきだと思いますが、その点についての見解を伺っておきたいと思います。
  14. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私どもは、行革関連特例法昭和五十九年度までの臨時特例措置を定めたものであり、したがって六十年からはもとに戻るという解釈をとっておりますし、また予算編成に当たっては、これは当然返していただくものは返していただく、戻していただくものは戻していただくということで折衝を続けてまいる決意でございます。
  15. 本岡昭次

    本岡昭次君 この問題について最後にお伺いしておきたいのですが、国の予算編成への取り組みの一つの目安として、防衛予算社会保障予算伸び率を見て政府予算考え方論議する立場というものがございます。その立場から論議をしてまいりますと、最近の国民最低生活を保障すべき社会保障関係費伸び率防衛費伸び率の問題は、厚生大臣もとくに御存じのとおりに、五十六年度に逆転して以来防衛予算の方の伸び率社会保障関係費伸び率に比べて非常に大きな差をもたらしているということについては私も納得できませんし、厚生大臣もその点については納得されていない、こう思うんですね。だから、社会保障のような分野は単年度バランスというよりも長期的な視点を見据えて取り組まなければならないし、経済の好不況に左右されない社会保障の長期的な計画も必要だと私は思います。  そこで、厚生大臣として、この防衛予算伸び率を絶えず下回る社会保障予算であっていいのか。あるいはまた、今後の社会保障の問題にかかわっての長期的な展望に基づいた予算編成上の基本的な考えというものを今の段階で聞かしておいていただきたいと思います。
  16. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 御指摘のとおりでございまして、私どものやっておる仕事の中で、特に年金とか医療とかいうものは長期的な展望に立っての制度があって初めて国民皆さん方不安感をなからしめるものでありますから、そのときどきの経済の変動や財政状態で変化をしたのでは国民皆さんが安心できません。そういうことから今回私どもは、いろいろ国民皆さん方に厳しい御負担を願わなければならない問題等もございますが、やはり二十一世紀の将来にわたって年金医療保険は、財政がどうなろうと、あるいは経済状態がどうなろうと、揺るぎない基盤制度というものをつくりたいということで今回の改革案をお願いしておるわけでございます。  五十九年度予算は、御指摘のようにこれは社会保障予算防衛費伸びをはるかに下回っておることは御指摘のとおりでございます。昭和五十年から五十九年までを全体として見ますと、まだたしか社会保障伸びの方が多いと思いますが、この数年、今御指摘のように、五十六年に逆転しまして今回はかなり差があることも事実でございます。ただ、今度の予算全体をごらんになっていただきますと、政策予算の中で厚生省の占める予算の割合は二八%でございますから、これは農業政策もやらなければならない、中小企業対策もやらなければならない、防衛もやらなければならないという国全体の中のバランスとしては、この数字で私ども最後に了承したわけでございます。  しかし、この中身をいろいろお調べいただきますと、全体としての伸びは御承知のように防衛予算より低いのでありますけれども、今新しい政策として国民的な強い要望もあります老人保健事業であるとか、あるいは身体障害者福祉対策であるとか、そういう予算防衛費伸びよりもはるかに高い予算を伸ばしておる等のいろいろの工夫を重ねておる、厳しい財政状態の中でできるだけ恵まれない人たちに対する配慮ということで工夫を重ねておるということも御理解賜りたいと存じます。
  17. 本岡昭次

    本岡昭次君 今の御答弁について、防衛費との関係をもう少し突っ込んで論議してみたいんですが、きょうは個別の問題を質問の用意をしておりますから、また次の機会に基本的な問題については論議さしていただくことにいたします。  それでは次に、食品添加物の問題について伺っておきます。  昭和五十九年度予算におけるこの食品添加物行政のための予算額、具体的な対策、これを簡潔に説明をしていただきたい。
  18. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 食品添加物関係の五十九年度予算でございますが、一億三千四十三万円を計上いたしておりまして、前年度に比べまして約三・一%の増ということでお願いをいたしております。  その主なものは、まず、既に指定しております食品添加物安全性の再評価を行うための慢性毒性等試験に要する経費でございまして、一億七百十万四千円でございます。  それから、二番目に、食品添加物使用基準見直し等を行いますために食品添加物食品への使用実態調査を実施をいたしたい、これは新規でございまして、三百六万七千円でございます。  それから、天然添加物でございますが、天然添加物安全性を確保するための経費といたしまして一千四百十五万六千円、そのほかに食品添加物に関する内外の情報の収集、交換等々の費用のために六百十万三千円を計上いたしております。  以上のような内客でございます。
  19. 本岡昭次

    本岡昭次君 今のような食品添加物行政であれば、私ども社会党が要求している内容としてあります、一人一日当たりの総摂取量の推計、特定添加物の一人一日当たり摂取量発がん性催奇形性評価指導、妊産婦、乳幼児、病人等へ特殊な影響、あるいは複数の物質による相乗効果複合毒性など安全性確認のための調査措置というものが、どうも本年度も十分やれるような予算でない、こう言わざるを得ないと思います。  このような貧弱な添加物行政では、今使用されている添加物を安心して使用できないばかりか、日本は経済大国と言われながらも、添加物行政はまだまだ未成熟な状態にあって、これから厚生省としてもっともっと力を入れなければならない実態である、現状であるということをまず率直に認めることから、この添加物行政の問題についてこれから進めていかなければならないと、私はこう思うんですが、厚生大臣、率直なところいかがでございますか。
  20. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 先ほど五十九年度予算、ちょっとはしよって申し上げまして恐縮でございましたが、安全性評価のための慢性毒性試験という御説明をいたしました。その中に発がん性でございますとか、催奇形性でございますとか、そういったものが組み込まれておるわけでございます。  それから、使用実態調査ということで申し上げましたが、これが添加物の一日摂取量を把握するためにも利用できるという調査でございます。
  21. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 食品添加物の問題、大変御心配をちょうだいしておりますが、これは今日の消費者皆さん方食べ物に対するニーズの多様化、あるいは賜際化、こういう中で極めて重要な私ども行政になってまいりました。私どもはこの行政を進めるに当たって、まず何よりも安全性の確保、このことを前提にして、今御指摘のありましたように、国民皆さんが安心して食べ物を食べられる、そういう条件づくりのためにも、今もいろいろの施策について政府委員から報告がありましたが、今後なお一属力を入れてまいりたいと存じます。
  22. 本岡昭次

    本岡昭次君 今まで添加物がいろいろ使用を認められてきておりますが、一たん認めたその後、危険であることが判明して指定取り消し、あるいは使用禁止等々の状況になった事例は何件あるのか。また、その理由はどういう理由によって取り消されたり、あるいはまた使用基準改正というふうなものが行われるようになったのか。説明をいただきたい。
  23. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 指定をいたしまして取り消した例といたしましては、例えばズルチン人工甘味料ズルチンでございますが、昭和二十三年に指定をいたしまして、四十二年に削除をいたしております。それからいわゆるチクロでございますが、サイクラミン酸ナトリウムサイクラミン酸カルシウム、こういったものは三十一年あるいは三十六年に指定をいたしまして、いずれも四十四年に取り消しをいたしております。それからAF2でございますが、四十年に指定をし、四十九年に削除をしておる。これらはいずれもそれぞれ削除時点におきまして発がん性疑いがあるということで削除をいたしておるわけでございます。  それから、使用基準改正例では、昭和五十五年に過酸化水素、それから昭和五十七年に臭素酸カリウム、いずれも発がん性疑いということで、最終食品の完成前に分解または除去することというようなことで、使用基準改正をいたしております。  これらの削除あるいは使用基準改正理由でございますが、一言で申しますと、それぞれの時点における最新の、あるいは最高の学問技術水準に基づいて調査会で御判断をいただいておるということで、それぞれ削除した時点発がん性があるという疑いがはっきりしてまいりましたので、削除等をしたということでございます。  特に申し上げたい点は、特に発がん性試験にっきましては、昭和四十三、四年から五、六年ぐらいまでの間に実験の仕方が大変精密に発展と申しますか、精密になってまいりまして、従来はごくわずかのネズミを使う、あるいはネズミの飼い方が十分でなかったものですから非常に早く死ぬということで、発がん実験が十分にできなかった。四十五年以降になりますと二百匹ぐらいのネズミを使い、あるいはネズミは一生涯は大体二年間でございますが、二年間飼うことができるようになったというようなことで、発がん実験そのものが非常に進歩をしてまいった。  そういうことで、今申し上げましたような発がん性疑いによる削除例、あるいは使用基準改正例といったものが出てまいったということでございます。
  24. 本岡昭次

    本岡昭次君 今御説明がありました。しかし、私は消費者立場で結論を言いますと、そのときそのときの段階における科学技術水準では発がん性疑いというのは察知できなかった、だから指定をした。しかし、その後の科学技術の発展なり、検査の水準が高まることによって、今度は新しく発がん性の危険を察知することができた。だからそれは取り消したという例が今も既に六件出ているわけであります。だから、指定そのものは一〇〇%完全だということではないという一つ事例がここにあります。  厚生省食品添加物指定をしたというものは将来にわたって絶対安全だと、その食品消費者国民が常時それを食しても安全だということは言えないという例がここにはっきりしているということではないかと、こう思います。だからこそ、昭和四十七年六月の食品衛生法の一部を改正する法律案に対する附帯決議は、その決議の中に、「食品添加物については、常時その安全性を点検し、極力その使用を制限する方向で措置すること。」、こういうふうに厳格な枠はめをしていると私は思います。  厚生省が誠実にこの附帯決議というものを守ってそれに基づいて今日までやってきたというふうに私は言えないと思いますが、厚生大臣、こうした一たん指定した添加物の中から発がん性疑いが出てきて取り消していくという状況そのものと、それから先ほど言いました、附帯決議そのものを誠意を持ってこれからやっていくのかどうかという点について、一言大臣の言葉をいただいておきたいと思います。
  25. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) さっきも申し上げましたように、これは安全性がすべてに優先する問題でございますから、附帯決議を十二分に尊重して今後も行政を続けていくのは当然のことでございます。
  26. 本岡昭次

    本岡昭次君 それで、安全性確認をどうやっていくかという問題でありますが、添加物そのものは、通常の段階では食品メーカー添加物指定を申請するということで、添加物そのもの必要性生産者側が主として行われていて、消費者側がそうした添加物を必要とするという場合は、これはほとんどないのではないか、こう思います。  しかし、実際に健康、安全という面の問題が出てくるのは消費者の側であるわけですから、その添加物そのもの消費者の側が必要とするという問題を、厚生省として審議段階でどのようにそれを確認をしていく努力をしているのかという点についてお伺いをしておきたいと思います。
  27. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 御承知のように、我が国では食品添加物に対する国民の関心が大変高うございますし、考え方も厳しいわけでございます。そこで、消費者団体が非常にしょっちゅう私どものところへお見えになりまして、いろいろな御意見を伺ったり、あるいは議論をしたりいたしておりまして、消費者団体のお考えなり問題点指摘なりは私ども十分心得た上で食品衛生調査会に臨んでおるということが一つでございます。それから、食品添加物指定あるいは削除等につきましては、厚生大臣の諮問機関でございます食品衛生調査会にお諮りをいたすわけでございます。この食品衛生調査会では学識経験者を委員とするということになっておりまして、食品衛生に関する専門知識をお持ちの、学識経験をお持ちの方に限って厚生大臣から委員をお願いするわけでございますが、その範囲の中で、食品衛生に、ついて専門知識をお持ちになると同時に、消費者側の意見についても十分御理解のあるような委員がおられればそういう方をこれまでお願いしておるというようなことでございます。
  28. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、今おっしゃった食品衛生調査会委員の名簿を持っています。この四十人の委員の中で、消費者の代表はどの方ですか。
  29. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 先ほども申しましたように、消費者の代表という形で調査会に入っていただくわけにはまいらない。つまり、食品衛生法の二十五条で、食品衛生に関して学識経験のある方の中から厚生大臣がお願いをする、任命をするということでございます。  そこで、そういう学識経験のある方で消費者サイドの御意見も十分御理解いただける、御理解を持っていただいておるという方ということで例を挙げますと、例えば金森房子さんという方がおられますが、この方は、前に日本消費者協会の理事をされておったというようなこともございまして、消費者サイドの御意見をある程度述べていただいておる。それからまた佐竹繁男さん、この方は、国民生活センターの理事でございまして、国民生活センターという観点から消費者保護、そういった点の御理解も深い方でございます。それから、現在はそうではございませんが、主婦連の高田ユリさんが十年ぐらいの間にわたりまして委員をやっていただいたわけでございます。この方は、薬学関係の学識経験者でございますと同時に主婦連の役員ということでお願いをした経緯がございます。
  30. 本岡昭次

    本岡昭次君 私の感じとしては、四十名の委員がいて、消費者立場を代弁できる人といえば、今例として二人挙げられました。そのほかあると思うんですが、しかし全体の比率としては非常に少ない、こう思います。  しかし、今それを現在の委員を選任していく条件の中からは選びにくいということがあるならは、百歩譲って、消費者あるいはまた消費者団体に、具体的な添加物指定審議する段階においてアンケート調査をやるというふうなことはできないのか。  あるいはまた、調査会の中に消費者だけを専門委員として集めて、消費者部会というふうなものをつくって、消費者の意見を聴取するというふうなことも、やろうと思えばやれるのではないかと思うんですが、いかがですか。
  31. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) アンケートというお話でございますが、添加物指定というのはなかなか、科学的な論議を十分積み重ねる必要がございますので、私ども、今までもそうでございますが、指定段階消費者団体がお見えになりますと、十分時間をとりながら科学的な問題を十分御議論もし、その上で消費者団体としての御意見も伺うというようなことをやっておりますので、アンケートという方式はちょっといかがなものかなという気がいたしております。  それから消費者部会ということでございますが、これも、食品衛生調査会審議をお願いいたしております事項は、食品添加物もそうでございますが、そのほかの問題につきましても、食品衛生は専ら科学技術的な面で終始をいたしますので、食品衛生調査会の中に消費者部会をつくるということはちょっといかがなものかなという気がいたします。
  32. 本岡昭次

    本岡昭次君 まあいかがなものかという答弁でありますが、できないということではないと思います。それは要するに添加物行政厚生省の姿勢を問われている問題だと思いますので、いかがなものかの段階じゃなくて、こうした積極的に消費君そのものを組み込んでいく、意見を聴取する場を積極的につくるということについての検討を要望しておきます。それで、消費者サイドに立つと言えば、まあいろんな関係機関もあると思いますが、経済企画庁の中に国民生活審議会というふうなものがあり、そこに消費者政策部会というものがあるように問いております。そしてまた、こうした消費者政策部会も消費者立場から意見を添加物問題について出していけばどうかというふうな話も耳にするんですが、経済企画庁はこうした問題にどのような考えを持っておられるか、一言だけ聞かしておいていただきたいと思います。
  33. 村田憲寿

    説明員(村田憲寿君) お答え伸し上げます。  ただいま本岡先生おっしゃいました国民生活審議会の消費者政策部会でございますけれども、この部会の中には消費者代表も含めました委員もおられるわけでございまして、消費者保護に関します基本的な事項につきまして調査審議をこれまで行っておるわけでございます。広く製品一般の安全性の確保の問題とか、それから表示の適正化の問題、あるいは契約の適正化の問題といった消費者保護施策のあり方につきまして意見の取りまとめを行っていただいておるわけでございます。取りまとめていただきました御意見は関係省庁あるいは関係業界等関係方面にお送りいたしまして、私どもの方からその実現方の要請を行っておるという状況でございます。  私ども経済企画庁といたしましては、消費者の安全確保の問題というのは消費者保護上の一番基本的な問題でございますので、今後とも消費者政策部会等において関連する意見等が出てまいりました場合には、関係の省庁等にお伝えするなりあるいは事業者の方にお願いするなりということでその施策の実現を図るように努めてまいりたいというように考えておるわけでございます。
  34. 本岡昭次

    本岡昭次君 厚生省にお伺いしますが、昭和五十四年四月から昭和五十八年五月末まで食品化学課長であった人はどなたですか。
  35. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 藤井正美という人でございまして、現在、神戸学院大学の薬学部の教授をいたしております。
  36. 本岡昭次

    本岡昭次君 食品化学課長というのは、食品添加物を直接担当する課長ですか。
  37. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) そのとおりでございます。
  38. 本岡昭次

    本岡昭次君 この藤井氏が昭和五十八年十二月十五日付の朝日新聞紙上で課長時代の食品添加物規制の問題についての仕事について記者と対談をしています。私、この対談を読みまして非常に腹が立っています、怒っています。この質問をしようという気になったのも、これを読んでその気になったんですが、この藤井氏の対談の中における発言について厚生省考えをただしておきたいんです。というのは、この藤井氏のような考えが依然として現在も食品添加物行政の主流であるならば私は大変なことだと、こう思うからなんです。  まず、この対談の中で藤井氏は、「私が課長になった当時、国内のメーカーから食品添加物指定要請が六十件も山積みになっていた。四十七年の、使用を制限する国会決議にしばられて手をこまねいていたんです。」、こう書いてある。この「国会決議にしばられて手をこまねいていたんです。」と、この感覚は、国会決議が邪魔になって何もできなかったという別の表現なんですね。厚生省の役人というのはこういう感覚で国会決議を見ているんですか。私はこれは国会決議に対する大変な侮辱だと、こう思うんですが、厚生大臣いかがですか。
  39. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 藤井前課長がどういう内客の話をしてその結果こういう記事になったのか、よく承知をいたしていないわけでございますが、私どもは、四十七年の「極力その使用を制限する方向で措置すること。」という衆参両院の附帯決議を尊重いたしまして、その線に沿って食品添加物行政を過去もいたしておりますし現在もしておる、これからもそのつもりであるということでございます。
  40. 本岡昭次

    本岡昭次君 厚生大臣、いかがですか。
  41. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) その藤井さんという方も、またそのときの情勢も、私は詳細に存じておりませんけれども、今のお話だけを承りますと、国会決議に縛られるという意味はいろいろに受けとれるので、国会決議を尊重しなければならないというふうにも受けとれるので、その言葉だけで私が是非を議論するわけにはまいりませんが、その内容を、経過だと思うので、よく勉強してみたいと思います。
  42. 本岡昭次

    本岡昭次君 その新聞記事を一度読んでいただきたいと思います。
  43. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) はい。
  44. 本岡昭次

    本岡昭次君 その後にこういうことも書いてあるんです。「添加物はなるべく使わない、そんな本物志向はたしかに一部にあります。しかし、現在の大勢は加工食品でもいい、手軽なものを使って便利に、快適に過ごしたいという方にあるのでは。そうでないと、現在のようなインスタント食品のはんらん、添加物のいっぱい入った栄養剤などの隆盛は考えられない。」と言って、規制をするという、そういうことよりも、そうした現状を肯定していくという立場をとり、米国は時間をかけてこのアスパルテームという添加物問題についてやっていることについて、日本では「一日か二日というが、逆にいえば米国で事前に十分な審査をしていたからこそ、それだけでできたともいえます。」というふうなことで、アメリカで七年間もかけて十分やったんだから、日本では一日か二日でもいいんだというようなことを言い、また、「私は一つ添加物を集中して食べるよりも、多くの種類を分散して食べた方が安全、というのが持論です。どんな添加物でも量が多くなれば毒性をもってくるものなのです。」と、こうして、これからどんどん添加物を四十件も五十件も指定していかにゃいかぬのでしょうというふうなことを述べているんですね。この人が問題になった新しい食品添加物十一種類の指定をやったときの課長なんですよ。  だから、私が言いたいのは、この藤井氏が最後に言っているように、添加物でも量を多くとれば毒を持つ、こうはっきり言っているので、だから、毒性を持たないようにできるだけ多くの種類のものを分散して食べたらいいんだ、こう言っているんですよ。しかし、この藤井氏のように知識のある人は分散して食べることが可能ですけれども、一般の国民添加物にそうした知識は持ち得ていない、ほとんど。だから、彼が言っているように、一つ添加物の量を多くとって毒性を持つ状態にさらされる、そういう危険な状態にさらされる国民がたくさん現在いるということになるんですよ。  だから、こういうことを平然と言っても彼は今一私人だから、民間人だからいいといっても、しかし、一年前まではれっきとした食品添加物行政の責任者であったということからして、私は、現在もこのような考え方が引き継がれてはならないという立場で、ひとつ厚生大臣その点明確にしておいていただきたいと思うんです。――ちょっと、これは厚生大臣から。
  45. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、民間人になると一つの学問的な立場とか、自分の一つのイデオロギーとか、いろんなことでそれぞれ意見というものを言いますから、役所におったときとはまた違うニュアンスというようなことで物を書いたり言ったりというようなことはいろんなところであると思いますけれども、そのことには全く関係なしに、私ども、この食品添加物の問題に関しましては、これは国民の食生活に不安なからしめる、安全第一という方針でこれから部下を督励して努めてまいりたいと思います。
  46. 本岡昭次

    本岡昭次君 今の厚生大臣のお言葉を具体的に行政の中に十分示していくようにしていただきたいし、間違ってもこの藤井氏のような立場を、現在の食品化学課長並びにその担当者はとってもらっては困るということを強く申し述べておきたいと思います。  最後に、今回指定された食品添加物十一品目のうち、株式会社味の素が申請した人工甘味料アスパルテームの問題について伺っておきたいと思います。  食品衛生調査会審査の資料として利用した文献は四十五文献がございます。この文献の中で、日本のものはわずか十一、しかも申請企業の味の素研究所の文献がその中で八文献ということで、日本の文献の中のほとんどは味の素の会社の研究所そのものの文献ということになっております。また、外国の文献にしても、味の素と業務提携をしているアメリカのサール社研究室のものがその中の十文献を占めております。しかも重大なことは、公表をされていない文献が、外国のもので三十四文献のうち十五文献、国内のもので十一文献のうち五文献もあって、全体として四十五の文献のうち二十、ほぼ半数の文献が公表されていないという状態のもとで審議がされたという事実であります。  このことについて、昭和五十年六月二十四日、閣議決定によって、当時の総理大臣三木武夫氏名で、外国文献採用の基準として、「政府機関の研究所、大学その他権威ある研究機関で実施され、かつ、原則として公表されたものを用いることとしている。」と、「公表されたものを用いることとしている」という閣議決定そのものに反した審議が行われたのではないかというふうに私は見ています。なぜ、半数の文献が未公開ということや、申請企業の味の素の資料や提携会社のサール社の資料が半数近いという異常な条件下で審議されなければならなかったのか。逆に言えば、昭和五十年六月二十四日の閣議決定の基準が充足するように十分文献を整え、資料を整えて審議をしなかったのかという点について、私は大変大きな疑問を持ち、審議そのものが正当な手続、閣議決定に従って行われなかったというふうに言わざるを得ないんです。  厚生大臣から国民に対して納得のいく答弁をいただきたいんですが、既に味の素社から人工甘味料として百貨店の健康食品の売り場に、こういうパルスイートというふうな人工甘味料が皮肉にも健康食品という売り場に売られているということなんですね。今私が言っている閣議決定そのものに審議が反したのではないかという点について、厚生大臣いかがお考えですか。
  47. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 今お話しのアスパルテームの指定について、食品衛生調査会審議をしていただいたときの資料でございますが、先生お話しのように、雑誌に、つまり定期刊行物に掲載されていないものが半数程度あるということでございます。ただ、これらは定期刊行物に、雑誌に出たものも出ないものも含めまして、この論文資料は全部FAO・WHOの合同食品添加物専門家委員会提出をされまして、国際的な専門家委員会評価の対象として採用されたものでございます。そして、そこで多数国の専門家によって審議をされまして、その結果、そこで審議をされたデータ、つまりこの四十幾つのデータ全部がFAO・WHOで抑制をされまして、世界各国に公表をされておるわけでございます。つまり、そういう格好で公表をされ、かつまた、今申しましたようなことで十分科学的評価に耐えるということでございますので、その資料を食品衛生調査会に私どもはお出しをして議論をしていただいたということでございます。  いずれにいたしましてもデータの信頼性という問題だろうと思いますけれども、そういうことで、だれの目にも触れなかったものを使っておるのではございません。印刷されてWHOから各国に配られたものを使っておるということでございます。  それから、食品添加物の場合は指定ということでございますので、厚生大臣厚生省が国内、国外の文献をいろいろ出してまいりまして、そのうち適切なものを提供するというようなことでございます。サール社あるいは味の素の研究所の論文もかなり入っておりますけれども、私どもといたしましてはサール社の研究所も味の素の研究所も十分科学的評価に耐えるデータをつくっておるというふうに考えておるわけでございます。
  48. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、昭和五十年の閣議決定による資料、文献の採用基準というものから逸脱をしていないと言い切られるわけですね。
  49. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) その権威ある研究機関、まあ「その他権威ある研究機関」という表現でございますが、この答弁書が出ました後、御存じのように、薬品関係でGLPというふうな制度も普及をしてまいりまして、それに今適合するような研究機関は「権威ある研究機関」と理解していいのではないか。それからまた、「原則として公表さ机たものを用いる」ということでございますが、この「公表」の意味合いは、先ほど申し上げましたように、定期刊行物に出されるものはもちろんでございますけれども、先ほどのような格好でWHOが世界的に配って、印刷物として発行したというものも当然これは公表というふうに考えていいものと思っております。
  50. 本岡昭次

    本岡昭次君 今の問題はまた別の機会に、その基準そのものに反しているのか反していないのかということは取り上げて一度論議をさしていただきたいと思います。  そこで、この問題についてあなたは信頼性の問題を述べられましたが、私たちなりにそれでは信頼性の問題について確信を持ちたいと思います。  そこで、この四十五の文献ですね、それにかかわる資料、調査会審議した資料そのものを私たちが必要に応じて求める場合、全部公開いたしますということの約束をしてください、そのかわり。
  51. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) それは既に公開をいたしておりまして、消費者団体がお見えになりまして御要望があれば、調査会に出しました資料は全部ごらんをいただくようにしております。
  52. 本岡昭次

    本岡昭次君 味の素社とか、それぞれ各企業が研究したそのデータも公開されておりますか。
  53. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 調査会提出した資料という意味でございます。
  54. 本岡昭次

    本岡昭次君 それ以上の資料を求めても、厚生省としては、積極的にそれを提出させて、そして安全性確認、信頼性を高めるということについて協力するという意思は、あるんですか、ありませんか。
  55. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) まあ調査会にはできるだけ多くの資料を、そしてまた審議をしていただくのに十分な資料を御提供申し上げ、また場合によれば、委員からこういう資料はないか、ああいう資料はないかという御注文ももちろんございまして、さらに追加の資料を出すということも実際やっておるわけでございまして、そういったことで非常に膨大な資料でございますが、それで、指定論議の対象になっておる添加物安全性については、調査会にお出しをした資料で私どもは十分だと思っておりますので、その範囲内で、つまり調査会にお出しした資料ということで公開と申しますか、ごらんいただくというふうにしておるわけでございます。
  56. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、厚生省は企業の手によってつくられたデータで十分だと言っておりますが、しかし、あなた方が十分だと言ったそのことに関して、それが十分でなかった、あるいはまたいかに危険であるかということは、今日まで幾つかの事例があるじゃありませんか。薬の資料改ざんをした昭和大学の問題や、大鵬薬品、あるいはミドリ十字、いろいろと信頼性というものについて我々に納得のいかない事例が出てきております。だから、そういう厚生省の態度を私は納得できません。  また一方、現在アスパルテームが人工甘味料ということで添加物として指定されたんです。一体人工甘味料というものがどういう必要性があるのかという問題について意見を述べてこの問題を終わりたいと思うんですね。  現在、人工甘味料でない砂糖は生産過剰で、業界が労働者の大量首切りなどをしながら再編合理化を今強行して、一方では国内産砂糖を調整金によって保護しているという状態にあるんです、砂糖業界というのは。その中にあって、なぜ人工甘味料というものを次々出していかなければならないのかということについて、私は政府政策整合性というものがそこにできていない、こう思います。結局、砂糖で十分事の足りるものを、厚生省が味の素の企業利益の増大に力をかしたということに結果としてなると思うし、一方では、国民は砂糖を消費しておれば問題ないものを、食品添加物ということでこれを指定をして、そして将来にわたって本当に安全かどうかわからないままで危険にさらしていくということについても、どうしても私は納得がいきません。  だから、そういう意味で、この味の素のアスパルテームの取り消し問題についてこの場で要求し、引き続いて厚生省に対してこの問題についての資料を要求しながら、我々の立場から問題の追及をしていきますということを申し上げて、時間もありませんのでこの問題は終わります。  次に、精神病院における医療問題について残された時間、質問をいたします。  今月二日、医療法人社団浩徳会都病院の第六回特別売却があり、横田禎夫医師が都病院の落札をしました。ところが、牧山一昌氏が、これは理事長ですが、これに関して妨害行為に出ようとしていることでありますが、そこでこの牧山氏はまだ理事長として在職しているのかどうか、厚生省の方から正式にお答えをいただきたいと思います。
  57. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) ちょっと前段のこの妨害行為ということにつきましては承知をいたしておりませんけれども、昨年の五月の二十六日でございましたが、東京都が医療法人浩徳会に対しまして、営利事業に対し不適当な貸し付けを行うなどの放漫経営を行い、法人を破産状態にさせたことなどを理由に理事長の牧山氏の退陣を勧告したところでございますけれども、現在までのところ牧山氏はそれに応じておりませんで、理事長職を引いておらないところでございます。遺憾なことであると考えております。
  58. 本岡昭次

    本岡昭次君 せっかく林前厚生大臣のお骨折りをいただいてきた都病院問題であります。その一つの問題は、牧山理事長退陣勧告というものが、行政的な指導によって理事長が退陣するということが実現するということが一つであります。いま一つは、その病院が再建されて、患者への医療行為が正常な形で行われるようにするということであります。これは前厚生大臣もその観点に立っていろいろ御努力をいただいてきたわけですから、この締めくくりをしっかりとやっていただきたいと思います。  しかし、聞くところによりますと、牧山氏は今度は積水社というトンネル会社を札幌から東村山市に移して、これを使って埼玉県や神奈川県の二カ所でまた霊園事業を計画しているという話を聞いております。この牧山氏は大変霊園事業に御執心のようで、あちこちでこれをやろうとなさいます。このことについて一方では、都病院問題について理事長をやめなさいという勧告がされているという状況でありながら、さらに問題を拡大をしようとすることではないかと、こう思いますので、まず文化庁の方でこうした霊園事業問題については、岡山の問題では大変協力をいただきましたし、同様のひとつ対応を講じてほしいと思いますが、いかがですか。
  59. 村上則明

    説明員村上則明君) お答え申し上げます。  関係の都県からは、いまたそのような申請は出ていないと聞いております。仮に今後そういう申請がございました場合は、宗教法人としての資格要件を満たすかどうか十分調査をして慎重に対処するよう、所轄庁を指導したいと考えております。
  60. 本岡昭次

    本岡昭次君 岡山のときの措置のようにやっていただきたいということを要望しておきます。  それから、これは厚生大臣にお伺いをしたいんですが、先ほど言いましたように、これは厚生省も深くかかわって都病院の再建をしていこうとすることでの努力をしてまいりましたが、先ほど報告しましたように、一番の問題でありました都病院の特別売却問題が今月の二日に行われて横田禎夫医師が落札をして、今後横田医師が全力を傾けて患者を守って、円滑な医療の継続を図ろうというふうに決意をしております。私もお会いをいたしました。  そこで、この横田医師によって都病院の再建をこれから図っていくことになろうと思いますが、新大臣におかれても、林前大臣同様諸般にわたる厚生省としての御尽力を賜り、早期にこの問題の解決をしていただきたいと思うんですが、厚生大臣、いかがでございますか。
  61. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) ただいまお話しの件、入院患者の医療を確保するという観点から今日までも東京都を通じ都病院に指導をしてきたという報告を承っておりますが、残念ながらいまだ解決を見ておりません。前大臣がお約束を申し上げましたことは、私もお約束したと同様のことでございますから、この問題についてはできる限り早期に決着がつくように今後とも努力をしてまいりたいと存じます。
  62. 本岡昭次

    本岡昭次君 ありがとうございました。ひとつよろしくお願いします。  それでは、医療法人報徳会宇都宮病院の問題で伺いたいと思います。  この問題は、新聞紙上をにぎわして多くの国民の知るところとなっておりますから、ここで私が改めていろんなことを言う必要はないと思います。しかし今の問題は、警察が昨年四月と十二月に起こった同病院のリンチ殺人事件に関して五人の看護人グループを逮捕しております。しかし私たちが見るところでは、リンチ殺人事件はこの二件にはとどまらない、もっとあるのではないかというふうに見ております。それは別グループによるものがあるということでありますが、やはりどうしても捜査の範囲の拡大、そして全貌を解明をしてもらわなければならない。間違っても現在逮捕された方の問題でこの事件の捜査を終わるというふうなことがあってはならないという立場に立って、この全貌を解明するという立場で現在進めておられるのかどうか、関係省庁の考えを聞かしていただきたいと思います。
  63. 三上和幸

    説明員(三上和幸君) 栃木県警察におきましては、昨年の四月及び十二月の傷害致死及び傷害容疑の事件について捜査をいたしておりますが、そのほかにも傷害事件等情報を入手しており、その実態の解明に努めていく所存でございます。
  64. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、私のお尋ねしたのは、全貌を解明すべくこれから取り組まれるのかどうかということです。明確に答えてください。
  65. 三上和幸

    説明員(三上和幸君) 事件の容疑として十分な容疑が固まりますれば、全貌を次々と解明をしていくという所存ております。
  66. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、具体的な全貌を解明していただく材料を提供する前に、最近何か宇都宮病院でどんどんと患者を退院させているという状況新聞に報道されておるのですが、そのことに関連して、厚生省、宇都宮病院の患者数がどういう状況になっているんですか、報告していただきたい。
  67. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 先月、問題が提起された時点で、三月十四日の時点で九百四十四名収容しておったわけでございますが、その後、栃木県が医療監視等を行い、また、厚生省がその状況について事実聴取に参りまして、非常に少ない職員で超過収容をしているという事態、これは早急な改善を要するという判断に立ちまして、栃木県の方に、病院を強く指導をして退院可能な者、あるいは転院の可能な者については減らすようにというような指導を行ってきたわけでございます。それで、約百名ほどの患者をそのような措置をとったというふうに報告を受けております。
  68. 本岡昭次

    本岡昭次君 現在は何人になっていますか。
  69. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 三月二十四日現在では八百八十九名でございますが、その後四月の、ちょっと今時点は不明でございますけれども、八百三十六名というような報告を受けております。
  70. 本岡昭次

    本岡昭次君 厚生省、ちょっとお伺いしますがね。私は今の措置は奇異に感ずるのですよ。医者の数が少ない、看護人の数が少ないにかかわらずたくさん入院させているから、改善するために退院させると、こう言っても、精神病院に入院している人は、これは同意入院なり措置入院なりというふうな手続を経て入院しているのであって、それを退院させるのに、人数が多過ぎるから退院させると言うのは、それはむちゃじゃありませんか。きちっとした家族の同意、入院させることに同意した人に対して退院の同意、そしてその患者がその後どこで治療をするのかという問題、行き先をきちっと見届けて退院させなければいかぬじゃないですか。  だから、人数が多いから追い出せというそのやり方というのは、私は基本的に間違っていると思う。そこにおる患者がどういう状態医療を続けられるのかという問題でしょう。病院の方がいいのか、あるいは家庭の方がいいのかということじゃないですか。逆転しているんじゃないですか、どうなんですか。  そのことによって今どんなことが起こっておるんですか。追い出された患者が行き先がなくてけがをしたとか、いろんなことが逆に起こっておるんじゃないですか。家族が引き取りを拒否しておるというようなことが。そんな無責任なことを厚生省はやっていいんですか。責任問題だと思います、私は。
  71. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ただいま御指摘のことにつきましては、県からまだ報告を受けておらない段階でございますけれども、そのようなことが起こらないような配慮は当然必要と存じます。
  72. 本岡昭次

    本岡昭次君 そんな間の抜けた答弁じゃだめですよ。あなたのところが指導をしてやっていることが、現に手続もほとんど無視してやっているんじゃないですか。追い出しているんじゃないですか。  早急にこの問題も調査をして、そして、まず患者というものの医療行為がどう続けられるかという基本でしょう。医師の数が少なかったら逆に医師をそこへたくさん従事させて、そして治療を続けさせるという厚生省の指導の本来の姿に戻らなければ、私は無責任きわまるとこう思うんで、実態調査、そして退院について、私が今言っているような正当な手続、方法を講じるようにやっていただきたいと要望します。
  73. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ただいま御指摘のことは当然でございまして、厚生省といたしましても、そのようなことも含めて指導をしておるわけでございます。既に三月下旬には、県の方から病院の責任者に対しまして文書をもって当面の遵守事項についての具体的な指示もしておるところでございまして、その中でも、転院先の決定する前に退院させるようなことがないよう特に配意するというようなことも指示しておるところでございます。  それから、いろいろな手続の面につきましては、自由入院というものにつきましてはそういう手続を要しないわけでございますし、また、同意入院というようなものにつきましては、家族の了解がつけば当然に退院あるいは転院をすることができるものでございます。
  74. 本岡昭次

    本岡昭次君 単純に、人数が多いからこういうことになるんだろうと、だから人数を減らすというふうなことでこの問題は解決しないんですよ。もっと本質的な問題、基本的な問題を踏まえて対応していただきたいということを要望しておきます。  それから、先月の三十日、宇都宮市在住の信末さんとおっしゃる方が、東京地方検察庁に対して、医療法人報徳会宇都宮病院石川文之進院長及び看護人二名を、刑法第百九十五条第二項、同百九十六条に該当するという告訴状を提出をいたしております。この点について、法務省の方確認していただけますか。
  75. 馬場俊行

    説明員(馬場俊行君) お尋ねの告訴状につきましては、御指摘のとおり、先月三十日、東京地検に提出がございまして、東京地検において受理いたしております。
  76. 本岡昭次

    本岡昭次君 その告訴状によりますと、石川院長は、昭和五十八年三月初旬、弟の石川裕郎氏のために選挙運動をしなかったということで立腹をして、同病院西一病棟内の独房へこの信末さんを監禁し、以降二十五日間この監禁状態を継続しています。そして、監禁した二、三日後、同病院の食堂内において、回診の際に百たたきの処罰と称して、両手で持ったゴルフのアイアンで力いっぱい三、四回強打し、暴行陵虐の行為をなして、そして全治数日間を要する打撲傷を与えたという内容がまず第一にございます。  そこで伺いますけれども、弟の選挙運動をやらなかったからといって患者を保護室に入れるというふうな権限が医師にあるのかどうかということなんで、これが事実かどうか、これからだということじゃなくて、もしこういうことが事実であるならば、こういうむちゃくちゃをやった医師というのは、一体これはどういうふうに扱えばいいんですか。厚生省
  77. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) お答えいたします。  医師という平面で論ずる以前の問題としても、あってはならないことと考えておりますが、仮に御指摘のようなことがもし事実であるとすれば、まことに遺憾なことであろうと思います。
  78. 本岡昭次

    本岡昭次君 あってはならないことがもし事実としてあったというふうに認定された場合は、これは医師免許を停止して、病院内立入禁止というふうな措置をやらなければならないと思うんですが、いかがですか。
  79. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 医師の免許の取り消しまたは医業の停止につきましては、罰金以上の刑に処せられた者などにつきまして医道審議会に諮った上で処分を行うこととされておるところでございます。もしそういう事実関係が明確になりましたならば、所要の手続を踏みまして厳正に対処してまいる考えでございます。
  80. 本岡昭次

    本岡昭次君 さらに、これも事実をこれから明らかにしていかなければなりませんが、私どものところに入っているその関係者の訴えによりますと、この医者は、そのときの感情次第で、入院期間について、おまえは半年だ、おまえは一年だ、おまえは十年、おまえは一生入っていろというふうな、まるで裁判官、あるいは警察官でも個人の自由をこういう形で拘束するというようなことはだれにもできないと思うんですが、この医者は平然とそういうことをやっておるわけでございます。  したがって、今言われたように早急に、医師としての権限外のことを、個人の人権をこういう形で踏みにしっているという問題について、厚生省の方も実態調査というものを早急にやって事実を明らかにしていくべきでないか。警察の方の捜査にお任せしていますということじゃなくて、医師そのものの行為として適当なのかどうかという問題が今問われているんですね。だから、厚生省として医師の適格性の問題をめぐって私はもっと深くかかわっていくべきだと思うんですが、いかがですか。
  81. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ただいま御指摘のございました在院期間、入院継続の問題、あるいは保護室への収容の問題等、これはもう言うまでもございませんが、精神医学を足場としましたあくまでも本人の症状に照らして判断をする問題であることはもう全く当然のことでございます。御指摘のような事実がもしあるとすれば、極めて精神医療の枠を逸脱するけしからぬことであるというふうに考えております。
  82. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、もしあるとすればじゃなくて、あるかないかを厚生省が確かめるべきでしょうと言っているんです。
  83. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 厚生省立場といたしましては、医療監視、実地指導の面で、そのような事実があるかないかということは確かめることを努力をいたしますが、しかし、ただいま御指摘のような点、私ども立場から犯罪捜査のようなごとまでは踏み込むことができません。たまたま現在同病院におきまして精力的な捜査も継続中というふうに承知しておるわけでございまして、その動きも十分注目してまいりたいと思っております。
  84. 本岡昭次

    本岡昭次君 犯罪捜査をやれと言っているわけじゃないんです。医師として適格か不適格がという問題を当然厚生省としてやらなければならないんだろうと言っているんですから、早急にやっていただきたい。  それから、保護室の問題というのが大変な状況であります。この西二病棟の保護室の状況は次のようなものであるというふうに言われています。  二畳半のコンクリートづくりでトイレは溝だけ。布団は血だらけで色がない。かけ布団一枚、まくら、シーツなし。ちり紙はロール一個、手洗い水もなし。朝晩どんぶり一杯の水。お握りは二口もすると終わりのものが二つだけ。それでこのお握りも残飯を使っている。おかずはなし、たくあん二枚。はしなし。運動なし。窓なし。換気扇も回っていない。鉄の二重扉で、食事の出し入れ口は差し入れる相手の顔も見えない。これが精神病棟の保護室と言われるところなんですがね。  一体こういうところに人間を監禁してもいいものなのかどうか。厚生大臣いかがですか。
  85. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) いいはずはないと思います。
  86. 本岡昭次

    本岡昭次君 いいはずがないところに監禁されているんですよ。だから、厚生大臣もいいはずがないだけではいかぬでしょう。現に精神病院の監督省庁というのは、これは厚生省なんですから。  私は、もう少し言ってみますと、こういうことがあるんです。こういう独房である保護室が、密室であるがゆえにしばしば絶好のリンチ場所に使われています。例えば、昨年の九月十四日自殺されたとしているFさんの場合、二箱のたばこをくすねた、洋服を買ったとうそをついたというささいなことで、泥棒やろう締めてやれと、T看護人にかぎで二、三発殴られ頭から出血、その夜、八時五十分過ぎから保護室でキャーキャーと泣き叫ぶ声が聞こえていたが、その次の日には自殺をした、こうされているんです。  それで、これは厚生省の資料にも新聞にも自殺ということで出ておりますが、通常、自殺という場合は、変死という扱いでもって、必ず遺体そのものを警察の方が見るということが行われると思うんですが、このFさんの場合は、そのように、遺体そのものを警察によって検視をしたのかどうか。その点どうですが。
  87. 三上和幸

    説明員(三上和幸君) 九月十四日の変死事案は、六階から飛びおりて自殺したということで、検視を行っております。
  88. 本岡昭次

    本岡昭次君 今言いましたのは一つ事例で、独房がこのようなリンチの場所に使われています。厚生大臣は、それはあってはならないことだというふうに今言われましたが、あってはならないことがあったとすればどうするのかという問題が問われてまいりますが、それは後ほどひとつ厚生大臣の明確な決断を伺うことにします。  それでは、ここ五年、宇都宮病院で死亡した患者数はどのぐらいあるのかということと、その中で自殺者はどのぐらいあるのかということをひとつ報告してほしいと思います。
  89. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 現在、まだ調査を続行している途上でございますけれども、先般、死亡診断書等の記録の面で把握をいたしました患者さんの死亡状況は、五十六年の一月から五十九年現在までに二百二十二名でございます。なお、その死亡診断書等の記録によりまして、経死等の死因から自殺と推定されるものも含まれておるわけでございますが、全体で自殺者が何人というのはまだ現在の調査で継続中でございます。
  90. 本岡昭次

    本岡昭次君 その二百二十二名を年度ごとに言ってください。
  91. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 五十六年が五十八名、五十七年が七十九名、五十八年が七十四名、五十九年が十一名と報告を受けております。
  92. 本岡昭次

    本岡昭次君 五十六年以前は捜査の中でまだ判明していないということであって、なかったということではないんですね。だから、わかればこれから報告をできるということですね。私はこの点も全貌をつかんでいただきたい、どの程度ここで死亡したかというのをできますね。
  93. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 可能な限り努力をいたします。
  94. 本岡昭次

    本岡昭次君 それで、この死亡数なんですが、通常の精神病院の死亡数と比べて、異常に多いのですか、通常の状態なんですか。
  95. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) この数字だけで多い、少ないということを論ずるには、まだいろいろ情報が不足しておりますので、何とも申し上げかねるわけでございます。
  96. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、通常の病院での死亡数というものがあると思うんですが、それに対して多いのか少ないのかということです。何人多いとか、率をどうとか言っているんじゃない。
  97. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 当然のことでございますが、その病院の規模-この病院はかなり大きな規模でございます、また、その収容されております患者さんの年齢構成なり、疾病の重症度なり、いろいろな条件があるわけでございまして、そのような情報はちょっと国の統計としては掌握できませんので、そういう意味の比較ができないということを申し上げたわけでございます。
  98. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、五十六年に五十八名、五十七年に七十九名、五十八年に七十四名というこの死亡者が、九百人余り療養されている中の人数として、精神病院の全体としても多いか少ないかという問題は統計上わからなくとも、これは異常に多いんじゃないかというふうに判断し、しかもそれが自殺という件数が多く含まれているということからも、大変な病院での医療行為があったというふうに判断をせざるを得ませんが、それはこれから新しい統計が出てきた段階論議をさしていただきます。  次に、先ほど言いました告訴された訴状によれば、この信末さんは、昭和五十八年五月初旬、二人の看護人が共謀の上、ささいなことからこれら看護人に両手に手錠をかけられ、これまた西一病棟独房において、木刀で顔面、胸部その他全身をめった打ちにされ、顔面に二つの歯が折れ、胸部に肋骨二本が骨折をするという傷害、全治四十日以上の傷を受けているんです。さらに、驚くべきことに、病院側はこの傷害に対する治療をしないで、独房に放置して、さっきも述べたごとき劣悪な衛生環境下の独房の中に、約四十日間の長期にわたって監禁をし、何の医療もしなかったというふうに述べられています。  もうここまで来ますと、この精神病院は精神医療の場でなくって、患者に対する暴力加害の場になってしまったというふうに言わざるを得ないんですが、この信末さんがリンチを受ける原因になったのが、四月二十五日退院をしたKさんが面会に来て、窓越しに話をしたことにかかわっています。このKさんまで数名の看護人が拉致して保護室に入れてしまったということでありまして、まさに見境のないリンチや暴力を振う看護人がいるわけで、グループとして他にも存在するわけであります。  したがって、さきに逮捕された五人と全く別なグループが、こういう形で患者の告発によってこれからも明らかになってくると思うんですが、当局はこの問題について積極的にこれから捜査をし、事態の解明に乗り出すべきだと思うんですが、いかがですか。
  99. 三上和幸

    説明員(三上和幸君) 先ほどもお答えをいたしましたように、私どももいろいろな角度からの情報を得ておりますので、容疑が固まれば捜査を遂げていきたいと考えております。
  100. 本岡昭次

    本岡昭次君 先月の三十日、ロンドン発行のサンデータイムス紙が弁護人依頼権を渡部厚相が妨げたと報じています。これは資料として渡しておきましたが、先進諸国で全く考えられないことをあなたがしたというふうに国際的に宣伝をされているわけで、私は大変なことだと思います。私も読んでみて、もしこれが事実でないなら厚生大臣は大変怒っているだろうなと、こう思ったわけなんですね。  そこで厚生大臣、まさに精神病院という問題からしていけば、人身の保護を図る責任があなたの方にあるわけでして、だからこのサンデータイムス紙も日本の厚生大臣は何をやっているんだということを談じているんですが、現に弁護士が被拘禁省に接見することさえもできない。精神病院に拘禁されているような状態の患者が弁護士に会えない、弁護士が会おうとしても会わせないという状態にありながら、しかし加害者である、加害者の総元締めである石川文之進医師が、逆に今度は弁護士を選任して、そしてこの問題の解決に当たろうというふうなことになってきておるわけですね。加害者が既に弁護士を選任をしてみずからの立場を守る反面、被害者として置かれている患者たちが弁護士と接見もできない。こんな理不尽な状態が放置されては絶対にならないと、こう思うんですね。  だから、その責任者はあなただろうと、こう」育っているわけなんで、どうですか、この問題について明確にひとつ厚生省立場から弁護人と接見できるように、弁護人が行けばちゃんと会わせるように当然の措置としてやらすべきじゃないですか。国際的な恥辱ですよ、こんなことは。
  101. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) このような新聞をお届けいただきまして、見てびっくりしたわけでございますが、ここに報じられている、妨げた云々の話は全く事実と反するわけでございまして、大変残念に思うわけでございます。いかような形でこのような報道がなされるに至ったか、ちょっとわかりませんけれども、私どもが患者さんなり患者の家族が弁護士に会いたいというものを妨げたとか、そういうことはもうあり得ないことでございますし、また、病院におきましてそのようなことがあったというふうにも聞いていないわけでございます。  一般論といたしまして、面会に関しまして、これは患者さんの人権を擁護するという観点からも非常に重要な点と心得ておるわけでございます。これまでの指導におきましても面会の問題につきましては人権擁護という立場を踏まえ、かつまた患者さんの治療効果、社会復帰という観点からも重要なことでございますので、細心の注意を払うべく指導をしてきておるところでございます。  ただ、病状によりまして、やはり患者さんの医療保護の観点から、必要最小限の行動制限というようなものが必要になる場合はあり得るかとは存じますが、一般的な立場としては、今市し上げたような姿勢でこの問題には対処しているわけでございます。  したがいまして、この件にっきましては、弁護士の方が、患者さんないしは保護義務者から受任されておる者が接見を拒否されたとか妨害されたとか、そういう事実は私ども承知しておりません。
  102. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、患者が弁護人を選任しようといっても、どうして選任するんですか。その場がなければ私はあなたを選任しますとは言えないじゃないですか、みんな拘禁されているんですから。だから、弁護士が患者に一遍会いたいという状況が今起こっているんでしょう。それを拒否すれば、あなたが言うように、一般的に患者が弁護士を選任すればといっても、その場がないんでしょう。そういう場をつくろうともしないし、現に弁護士が行っても拒否されてしまうということだから、日本という国は厚生大臣がそういうことを指導しているんだろうと、こうなるんで、あなたのその一般的な話じゃなくて、現にそこで起こっている事実、その医者自身が患者の病状云々の判断じゃなくって、どう言うんですか、病院に弁護士を入れないという、そういうことなんですよ。  あなたが一般的におっしゃるんなら、それではその弁護人に付き添って、一遍行って、なぜ弁護士を入れないのかという病院側の主張を、同行して行って一遍聞いてみなさいよ。そうしたらこのサンデータイムスが言っていることが事実に反するのかどうかということが明らかになるでしょう。結局、そこで弁護士が拒否されたということは、これは厚生大臣の問題であろうと、こう述べているんですからね。どうですか、今一般的にあなた方がおっしゃっているように、許容できる状態なのか、そうでないのかということを一度確かめに行かれてはどうですか、弁護士と一緒に。どうです。そのぐらいのことをしなければ、ここで事実であるかどうかということがわからないじゃないですか、あなた方の一般的の話では。  厚生大臣どうですか、あなたの恥辱に係る問題ですよ、こんなことは。だから、本当かどうかということをあなたの責任で実際に弁護士を同行させて、その病院がどうしたかという問題を明らかにさせるだけの必要のあることだと私は思います。
  103. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ある病院の入院中の患者さん全員がこれこれの心配もあろうから、自分が弁護士としての立場から全員の患者に会いたいと、こういうような観点から患者さんの接見を申し入れるというようなケースにつきまして、一般的に患者さんの医療保護を確保するというような観点から、そのようなことがなかなか一般的には受け入れがたいものであろう。それが患者さんの利益に必ずしもならないんじゃないか、こういうようなことは想定されるわけでございますけれども、具体的なケースについて、全員からぜひ弁護士に会いたいというような意向があるかどうかということについては、私どもはそういう事実は承知しておりません。
  104. 本岡昭次

    本岡昭次君 あなたの言うような状況でないからこの宇都宮病院は問題なんでしょう。あなたが言うように患者が弁護士と一遍会いたいとか、これこれをしたい、家族と面会してなにしたいというようなことが正常に行われているのなら宇都宮病院事件なんて起こりませんよ。そういうことができない病院だからこういうことが起こったんでしょう。一般的な問題じゃなくて、特定された異常な状態ということの中で、厚生省が乗り出さなければ問題が解決できないじゃないですか、厚生大臣。――ちょっと待って、ちょっと待って。先、ほどから厚生大臣が自分の意見を言いたいのに、あなたが横で全部一般的な問題にすりかえてしまうんだ。これは厚生大臣そのものが問われているんだ、国際的に。
  105. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) この際、明確にしておかなければならないと思いますが、弁護士が患者に面会を求めたのに対して、厚生大臣あるいは私の部下である厚生省の職員がこれを妨げたというようなことは全くございません。  まあ火のないところに煙は立たないということわざもありますが、恐らくサンデータイムスにそういう記事が載ったのは、今こう考えておったんですが、私、参議院の予算委員会の際にこの弁護士の問題を質問されましたときに、今局長答弁して先生からおしかりを受けた一般論として、弁護士というのは、患者ないしは患者の保護者である家族とか親戚とか、そういう人が心配をして弁護士に依頼をした場合、これをいかなる病院といえども、いかなる院長であろうと、その弁護士の入室なり作業をとどめるというようなことは、人権が保障されておるこの国の憲法の中で許されるはずのものではないと、こういう答弁をしております。ですから、それは当然のことなのでありますが、それ以外にこの弁護士の問題について私が発言したという記憶はございませんから。したがって、これはサンデータイムスの明らかに間違いだろうと思うんですが、けさ私もこれ見せていただきましたら、私の名前を「ワタナベコウゾウ」でなくて「ワタナベマサミ」と、こうなっている。残念なことにロンドンではまだ私はそう有名でないと思ったんですが、かなり推定的な記事であって、これは向こうの間違いである、私どもはそういう考えは全くないということをまず申し上げさせていただきたいと思います。  御心配の件、これは私も胸を痛めておるのでありますから、入院患者にはこれは当然に適切な医療保護が確保されるとともに、精神障害者であると何であるとにかかわらず、この国に住むすべての人が基本的人権が保護されていくのは当然のことであって、連日、その人権が非常に危うい状態にされておる報道や、この委員会での御覧間等をちょうだいいたしまして胸を痛めている一人なのでございますが、これは行政として、今日の枠の中でやれる範囲というものがございます。  私など素人の厚生大臣でございますから、政府委員とこの問題で相談したとき、最初はそんな院長すぐ首にしちゃったらどうだというような話を政府委員との相談の中ではしたこともございますが、これ、現行の法律の枠の中で厚生大臣がそんなことをこの委員会で言ったら、それこそそっちがまた失言になって、私の方が非難されるということもあるでありましょうし、今の枠の中ではやはりそれぞれがまた、患者の基本的人権も保障されなければなりません。と同時に、また医療を担当している院長やなんかもそれぞれにみんな立場があるわけでありますから、厚生大臣の一存ですぐそれをやめさせるなんということは、今の法の枠の中でできない仕組みに制度がなっておりまして、その枠の中で何とかということで、先般も担当局長に命じて、精神衛生課長を初め専門の者を宇都宮に派遣して実情の調査当たり、また、県と十分な連絡をとりながら、今世間の人がみんな心配しておるのでありますから、まずこの宇都宮病院に入院しておる患者の人権が保護されるように、適切な医療が受けられるように、また、今後この病院が十分に改善されでこういう心配がないように、可能な枠の中で、できる限りの努力をいたしておるところでございます。
  106. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、今の大臣のその答弁は非常に大事だと思います。素人の感覚でと言われましたが、私も素人の感覚で論じているので、結局素人の感覚が今一番大事だと思うんです。  というのは、大臣も、すぐ首にしろとこう結論を引き出された。それが素人の感覚なんです。というのは、やはり人権侵害に対する正義感、怒りというものがストレートに出てくるんです、素人は。ところが、厚生省皆さんは、そこにいろんなものが介在して、ああでもないこうでもない、一般論とか何かにすりかえてしまって、正義感とか、怒りそのものは消えてしまっているんですよ。だから問題の解明にストレートに入っていかない。だから、渡部厚生大臣はすぐ首にしろという言葉が出たのは、私もそう思います。なぜ首にしないのか。それは今言ったように、人権侵害に対して我々は、一般の者は、率直な怒りと正義感を持っているんですよ。だから世の中の不正もなくなり正しいものに変わっていくんですね。それがなくなったらおしまいだ。だから私は厚生大臣もそうした感覚は失ってもらっては困ると思うんですよ。そこがまずスタートだ。この問題の解決は、私はそこがスタートだと、こう思うんですよ。人権侵害に対する素直な怒り、正義感、そういうものがなかったらだめです。  そこで私は問題だと思うのは、そういうのが現在の関係者、役人の中にないということが最大の問題だと思うんです。現に訴状を提出した信末さんも、その中でこういうことを述べているんですよ。「社会福祉担当当局者も、告訴人の受けた暴行傷害の事実を知っても、「歯を福祉で治療してやるからかんべんしてやれ」などと被告訴人らを擁護する」、こういうことで、官庁によっても患者の保護は期待ができない、こう言っているんですよ。だから、人権が侵害されている状況を訴えに行っても、それを別の件で丸め込んだり、無視したりする、そういう公務員がいるということなんです。だから、本来人権が侵害されたときには告発すべき立場にある、ある意味では義務を持つ公務員が、こういう態度をとることが許されるのかどうか。歯の治療を福祉でしてやるから、おまえこの暴行を受けたことは黙っておれというふうな対応というのは、厚生大臣どうですか。許されるのですか、公務員として。
  107. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 先生御指摘のことが事実であるとするならば、これは大変公務員としてまことに不適切な言動だと思いますし、遺憾なことだと思います。こういった問題がもしあったとするならば、任命権者においてしかるべくそれなりの措置がとらるべき事態だと思っております。
  108. 本岡昭次

    本岡昭次君 告発をすべきなんですよ。それをしない。  別の観点から見ても宇都宮病院のこうしたいろんな問題は、県や医療一一〇番、あるいは福祉事務所、保健所、そうした関係するところにいろいろ訴えられてきた事実があるんでしょう。ひとつここで、相談件数はどのくらいそれぞれのどこにあったか、年度ごとに、トータルでよろしいから報告してください。宇都宮病院について訴えが来た、相談が来た件数。
  109. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 昭和五十五年から昭和五十八年までの相談件数はトータルで四十九件ございまして、内容としては、病院の処遇問題、転退院の関係、無資格診療の訴え等でございます。
  110. 本岡昭次

    本岡昭次君 各年度ごとに何件何件と言ってください。
  111. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 五十五年が十名。以下十三名、八名、十八名。五十八年が十八名でございます。
  112. 本岡昭次

    本岡昭次君 命報告のあったように、五十五年で十件、五十六年十三件、五十七年八件、五十八年で十八件、県とか保健所とか福祉事務所にそれぞれ訴えが出されてきております。県の段階を見ても、五十六年には五件、五十七年には三件もこの問題の訴えが出てきているんですね。  これだけの件数がありながら-ある意味では一件でもそういう問題が訴えられてきたら事実解明に乗り出してやらなければならない。精神病院なんですから、普通のところと違うのだということでより積極的に相談に応じ、なぜこういう相談が来るのかという問題に対して保健所なりまた福祉事務所、県、あるいは医療一一〇番の関係者等が対応すべきでなかったのか。ある意味ではもっと早く厚生省が患者そのものの訴えなり家族の相談に応じておれば、このような事態は起こらなかったのではないか、私はこのように思うんです。この件数の相談そのものが放置された事実、そのこと自身私はけしからぬと思うんです。厚生大臣、いかがですか。
  113. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) これまで、ただいま御説明申し上げましたような相談が寄せられた点につきましては、その内容に応じましてそれぞれの部門から病院に出向いて必要な調査も行い、また措置を解除するというような処置も講じてきたというふうに報告を受けておるわけでございます。
  114. 本岡昭次

    本岡昭次君 そんなつまらぬ答弁、やめておいた方がいいんじゃないですか。報告を受けておりますといって、あなた、現に今度のような事件が起こったということを前提にして、それぞれ適切に対処していますなんて答弁できるのですか。厚生大臣、適切に対処できなかったからこの問題が噴き上げたんでしょう。これだけの相談件数がありながら――だめですよ、そういう答弁は。
  115. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、今いろいろと御指摘をちょうだいしておるのでございますけれども、私どもとしては、今私どもに与えられている権限、そういう枠の中で可能な範囲での務めをしておる、私はそう思っております。  先ほどの私の話、間違いがあると困りますから正確に申し上げておきますが、私は、政府部内でいろいろ相談をしたとき、その院長が本当にそういう悪い者であればと、悪いという前提で、悪い者であればそれは首にできないのかという、私のこれからのこれに対する処して行き方の一つ参考として、部内で意見を聞いたとき、今厚生大臣としてはそういう権限はないということをレクチャーされた、こういう意味でございまして、やっぱり行政官というものは法律の枠の中で仕事をしているわけでありますから、我々野人が善悪でぱっと判断してそこで行動するというようなわけにはまいらない。役所の仕組みはそれなりの役所の仕組みというものがございます。私どもは民間人から大臣になって、そこで民間人の考え方と、また、法の枠の中で、行政の枠の中で仕事をしている役所の方々との間の調整を図っていくのが私どもの務めである、こう考えてこの問題も勉強をしておるところでございますが、現在の条件、枠組み、こういう中では今厚生省としては精いっぱいこの対策に立ち向かっている、これも御了承を賜りたいと思うのでございます。
  116. 本岡昭次

    本岡昭次君 私はやはり、今厚生省の方から答弁があったように、これだけの相談件数があっても、相談には誠実に応じてそれぞれ必要なそのことをやってきました、だけどもわかりませんでした、今日になるまでわかりませんでしたということが問題の核心じゃないでしょう。わからなかったというのはやはり行政側の対応がまずかった、本来わかるべきだ、わかるまで調べなければならなかったんだ、だからその対応は不十分でありましたという反省がないんですよ、あなた方には。法律の枠内では十分やったやったといって、それでもわからなければ法律の枠をわかるところまで広げなければ仕方がないでしょう。これが素人の感覚ですよ。そうでしょう。  それで、宇都宮病院だけにこういうことがあると特定するからまた問題が起こるんでしょう。多くの精神病院でこういうそこに入院する患者からの訴えというものが必ずあるはずなんですよ。あっても、結局宇都宮病院と同じように一社会の偏見もあるでしょう、精神病患者に対する。いろんなことでそれが具体的に措置できないということになるならば、宇都宮病院のこの問題にかかわって、この相談という問題にかかわって、二度と宇都宮病院のような状態にならないように、やはり相談が来たときには、具体的に現実に起こっている問題を的確につかみとることができるように行政上の力でどう広げるか。ただ医務室へ行って、どうですか、こんなのが来ていますがこのとおりですか。いやそうじゃないですよ。ああそうですかと帰るような仕事をやっているからこういうことになるんですよ。そうじゃなくて、やはり人権にかかわる訴えがあったときはとことんまで調べ切るという、そういう権限を厚生省が持てるようにしなければ患者は安心できないということでしょう。そういう問題に対するところの反省と今後の方策というものが出てこないから私は怒っておるんですよ。どうですか、厚生大臣。そうでしょう。――うなずいておられるからそうだということで私了解をしますけれどもね。そこを私は怒っておるんですよ、行政に。だから、素人の感覚と役人の感覚の違いということが間脳になってきます。  それで、さらにこの病院には報徳産業グループというふうなものがあって、さまざまなところで作業療法とやらで仕事をさせられているという面もあるんですが、厚生省、この報徳産業グループの実態というものはつかんでいますか。
  117. 吉崎正義

    政府委員(吉崎正義君) 新聞報道で報徳産業グループというものが報道されておりますけれども厚生省といたしましては、民間の一般の事業所に対しまして調査をする権限が実はないわけでございまして、その実態は把握しておらないところでございます。
  118. 本岡昭次

    本岡昭次君 病院と密接な関係があるので、これはどこが調査したらいいのか、後ばと私も勉強してまいりますが、ひとつ厚生省の方としても、病院と密接な関係があるので、事態の解明にはこの報徳産業グループの実態もつかまなければ事態の解明ができない、こう思っておりますので、早急に各省庁間で協議して調査をすべきだということを要望をしておきたいと思います。  それで、もう時間が最後になりましたので、厚生大臣、きょう私は約一時間にわたってこの宇都宮病院の問題をいろいろ質問いたしました。まあ検察庁あるいは警察庁の方もおいでいただいたんですが、課長出席ということで、政府委員出席は他の委員会に取られてしまってここへ来れませんでした。したがって、これは厚生大臣が全責任を持ってこれから事態の解明を検察庁あるいは警察庁等々とも調整をとりながらやっていただかなければならぬと思うんです。だから、私が初めに申しましたように、まず大事なことは、現在の逮捕者の問題の究明だけにとどまらしてはならない、もっともっとこの中には明らかにしなければならない事件が隠されている。だから、全貌をとにかく明らかにするということを抜きにして問題の解決はないということからその中の幾つかを申し上げました。私は、これからこの委員会が開かれるたびにこの問題を具体的に出して厚生大臣にその対応を要請をしていきたいと思うんですが、きょうの審議を通して厚生大臣としてこれからこの宇都宮病院事件の解決を目指しての決意を最後に聞かしていただきまして、私の納得のできる決意をひとつここで披露していただきまして終わりたいと思うんですが、よろしくお願いします。
  119. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) この問題、すでに司直の手が入っておるのでありますから、先ほど警察当局から答弁が幾たびかございましたように、いずれ正邪が司法当局によってこれは明らかにされることと思います。私どもとしましては、まず、入院患者に適切な医療保護が確保されるということ、その人権が守られるということ、これは一番大事なことでありますから、それを念頭においてこれから私どものできる範囲での行政指導に全力を尽くしてまいりたいと思います。  私は、この問題、今日までいろいろ勉強をさせられまして、精神障害者対策というもののいかに重要なものであるか、また、これが他の問題と異なって非常に難しいいろんな問題を含んでいるかということを今痛切に感じておりますので、この宇都宮病院の解決を一日も早く進めると同時に、このような問題が我が国において起こらないように今後検討、勉強をしてまいりたいと思います。
  120. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、以上で精神病院関係の問題は終らせていただきまして、環境衛生公庫の総裁あるいは医療金融公庫の総裁がお見えになっておりますので、それぞれお伺いをして、それで私のすべての質問を終わりたいと思います。  まず、環境衛生公庫の総裁に一斉だけお伺いしておきます。  この財政投融資の資金計画を見ますと、来年度は本年度と比べて二百億円ばかり減額となっております。また、貸付計画も同程度の減額が予定されておりますが、この規模で新規の事業を賄うことができるのかどうかという点です。来年度貸付件数の改善点というのは、そういう意味ではどういう点にあるのか。あるいはまた、小企業等設備改善資金融資にかかわる事故率が高いと聞いているんですが、その改善対策はどのように行うつもりか。こうした問題について、もう時間もありませんから基本的なことだけをお伺いしておきたいと思います。また改めて論議をさしていただきます。  それから、医療金融公庫の総裁にも一言伺いしておきます。  現在、臨調答申の趣旨を受けて、医療金融公庫社会福祉事業振興会と一体化するための法律案が提案されておりますが、社会福祉医療事業団という名称で統合して昭和六十年一月にスタートを見ることになっております。総裁として、この統合一体化をどのように認識され、今後の業務運営に当たられようとしておるのか、この際、所信をお聞かせを願っておきたいと思います。
  121. 加藤威二

    参考人(加藤威二君) 環境衛生金融公庫の理事長でございますが、お答え申し上げます。  資金枠は、御指摘のとおり五十八年度が二千三百五十億でございましたのに、五十九年度は二千百五十億と二百億減っております。これは、御承知のように中小企業の設備投資意欲というのが非常にここ数年減退いたしておりまして、環境衛生金融公庫の資金枠も過去数年にわたりまして毎年残が出ております。大体四百億、五百億の残が出ている、こういう実態でございまして、五十八年度も先ほど申し上げましたように二千三百五十億の枠がございまするけれども、場合によっては二千億を下回るような資金需要という、こういう実態でございますので、来年度は二千百五十億と本年よりも二百億下回った資金枠でございますけれども、現在の環衛状態実態から考えますとこの資金枠で一応賄える、こういう判断をいたしておるわけでございます。  それから、貸付条件の改善につきましては、来年度、資金枠は今申し上げましたように減っておりまするけれども、いろいろ改善を図っております。例えば二、三主な点を申し上げますと、償還期限の延長、これは消防設備とか防火施設につきまして、従来十年以内でございましたのを十三年に延ばしました。それから貸付限度の引き上げ、これも一般業種三千万を三千五百万に、旅館業につきましては五千四百万あるいは国民旅館が六千万でございましたのを七千万に、浴場業につきましては八千万を九千万にというような限度額の引き上げをやっておりますし、また小企業につきましても三百五十万を四百万に引き上げる。その他いろいろありまするけれども、そういう貸付条件の改善をやっております。  それから最後の御指摘の、小企業につきまして事故がふえているではないかという御指摘でございますが、確かに少しずつふえております。例えば五十五年度は六カ月以上の延滞が十一億、五十六年度は十三億、五十七年度十五億というぐあいに毎年二億ずつぐらいふえております。これは、小企業というのは五人未満の非常に、零細な環衛業者に対する貸し付けでございまして、無保証、無担保という思い切ったそういう貸し付けをやっておりますので、事故が若干ほかの方よりも多いということはやむを得ないと思いまするけれども、今後もできるだけ、これは環境衛生同業組合を通じて貸し出しをいたしておりますので、そういうところでさらに審査のときに十分に配慮してもらいまして、事故の起きないようにさらに努力を続けてまいりたいと存じております。
  122. 北川力夫

    参考人(北川力夫君) 今回の医療金融公庫社会福祉事業振興会の統合につきましては、御承知のような非常に急速な高齢化社会の進行に伴いまして、政策金融の分野におきましてもやはり医療と福祉との連携強化を図りますとともに、時の流れに見合った事業の実施を図ってまいるべきであると、こういう趣旨のものと理解をいたしております。したがいまして、今後はこういった趣旨を踏まえまして、国の政策にリンクした事業運営につきましてなお一層研さんを重ねてまいる所存でございます。
  123. 石本茂

    委員長石本茂君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時五分休憩      ―――――・―――――    午後一時四分開会
  124. 石本茂

    委員長石本茂君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、昭和五十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、厚生省所管医療金融公庫及び環境衛生金融公庫を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  125. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私は、まず今回提案になります年金制度改革問題についてお尋ねいたしますが、私どもは基本的に今回の年金制度改革案については評価しておりまして、その実現を期待するものでありますが、この中に共済年金グループを取り込む形での、全国民共通の基礎年金の確立が本当にこれ可能なのか。共済サイドの対応がいまひとつ不明瞭な点がありますけれども、この点についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  126. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 御案内のように、今国会に厚生年金、船員保険、国民年金、民間の年金一つにして、共通基礎年金を発足させます。それで、六十年には共済年金も一緒になるという閣議決定をいたしておりますので、私どもは、共通年金によって国民全体が新国民年金に一緒になれるもの、まあなれるものというよりはしなければならないと考えておりますが、それらの準備についてはそれぞれの部門でやっておりますので、担当の政府委員から答弁をさせていただきます。
  127. 石本茂

    委員長石本茂君) 年金局長、まだ見えておらぬので……。
  128. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 では、年金問題については後からやることにいたしまして、まず、医療保険関係についてお尋ねしたいと思います。  医療保険改革について、昨日の予算委員会の一般質疑で取り上げられた問題でございまして、私もその答弁を聞いている限りでは、厚生省はいろいろな現行法及び改正案の矛盾を認めておられるようではありますけれども、その矛盾を欠陥のままの形で上程しようとなさっているんじゃないかという感を深くしたんですが、いかがですか。
  129. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今回の年金改革案、これはたびたび御指摘をいただいておるように、将来の高齢化という中で我々の医療保険制度を揺るぎないものにするために医療保険医療費の適正化とか、総合的な施策の中で行われておりますが、その中で一番御関心をちょうだいしておる患者一部負担というのは、被用者保険の本人についてはこれは初めてのことでございますから、そのために現在まで受けておった給付といろんな意味で問題等が出てくる、そういうことになるわけでありますが、その中で私ども社会保障制度審議会あるいは社会保険審議会等からの御意見、また国会で先生方の御意見、こういうものを踏まえて、この患者一部負担が実現することによって当然受診しなければならない患者の受診率が下がるようなこと、あるいは所得の低い方が病院に入院できない、そういうようなことのないようにこれは配慮を図っていかなければならないのでございまして、そういう点については、今後私どもの今回の改革案の中で矛盾があれば謙虚にこの委員会審議での皆さん方の御意見に耳を傾けていく、そういう姿勢でこの審議をちょうだいしておるところでございます。
  130. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 私が申しますのは、昨日の柄谷議員の質問に対していわゆるその矛盾点は認めておられるようでした。今大臣答弁、これはもう一一ごもっともではございますけれども、私が申し上げたいのは、どうせ出すなら完全なものを出せるまで十分時間をかけて検討した上で出すべきではなかったのかと、こういうことなんですね。社制審の答申にも、余りにも時間が短か過ぎたというような内容が出ておりますけれども、この点についてお伺いしているんです。
  131. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、我々の今回の案が粗雑だという意味ではこれは全くないと私どもは確信しています。  ただ、今まで被用者保険の皆さんが十割給付だったものが、今回お願いをいたしまして一割だけ患者の皆さん方に御負担をいただくことになるわけでありますから、そのために今までの状態とはいろんな変化がございます。そういう変化の中で、本当に所得の低い患者の皆さんがこの法律のために病院に入院もできない、あるいは健康を守らなければならない被保険者の皆さん方がお医者さんに行けないというようなことがあってはならないので、そういうことがあれば私どもは謙虚に耳を傾けていきたいという意味で、この法律が粗雑なものであるとか不合理なものであるとか、そういうふうには考えておりません。  私どもは、今回の改革案をもって今日置かれたる日本の財政状態、あるいは今日置かれたる日本の経済状態、またやがて将来、将来というよりは急速に足音を近くやってくるところの高齢化社会、そういうものに備えて、今後の経済状態や人口状態がどういうふうになろうと変わらない医療保険改革案であるという信念を持って御審議をちょうだいしておるものでございます。
  132. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 まあ改定をされるその目的はよくわかります。しかし、結果的に見てちょっと拙速に過ぎたのではないかという感は禁じ得ません。一応将来には完全なものを一つ一つ是正をしながらやっていくとしても、やっぱりいま少し検討をすべきではなかったかと、こう思うんです。  例えば、これは本年一月二十日に大蔵原案が内示されましたその時点では、医療費適正化として千四百六十二億円が示されまして、その五日後の一月二十五日には健保制度等の改正案要綱が諮問されたわけなんですが、そのときにはこれが千八百二十四億円、こういうようになっておりますね。まあこれは入院時の給食材料費の給付除外とか、いろいろそういったようなことが取りやめられて、そういうようなことから医療費適正化の数字の変更がこれはあるのではないかと思いますが、これに間違いないのか。どうしてこういうように五日間の間に数字が大きく変わったのか。その要因は何だったんでしょうか。
  133. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 先生御指摘のように、私ども概算要求におきましては、医療費適正化による国庫負担の影響額は千四百七十四億でございました。そして、予算編成の結果千八百二十四億ということになったわけでございますが、これは概算要求のときには、私ども薬価基準の改正、それから診療報酬の改定というものを予定していなかったわけでございます。したがって、医療費適正化そのものといたしまして千四百七十四億というものを想定をしたわけでございますが、予算編成の過程におきまして、薬価基準の一六・六%の引き下げをやり、そして診療報酬の合理化といたしまして二・八%の医療費の結果的な引き上げをしたわけでございますが、そういう要素を新しく算入をいたしましたことから、予算決定案、予算政府案におきましては千八百二十四億という姿になったわけでございます。
  134. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 単純に計算しますと、財政面からだけの見方ですが、今言われたように千八百二十四億円に結果的になった、当初は千四百六十二億円であった。この差額がここに三百六十二億円出るわけですから、医療費適正化で削減額がこれだけふえたわけですから、であるならば一割負担の二万九十六億円ですか、この分の被用者保険本人給付はやらなくてもマイナスシーリングは間に合うのじゃないのか、こういう考え方が出てくるんですが、いかがでしょう。
  135. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私が答えましたのは、医療費適正化だけの側面をとらえて申し上げたわけでございますが、全体といたしましては、概算要求時時点におきまして六千二百八十七億円の国庫負担の減ということで概算要求をしたわけでございます。この内容は、本人の給付率につきましては八割、それから入院時給食材料費を給付除外にする、あるいはビタミン剤等の一部薬剤を給付除外にするとか、高額所得者を適用除外するとか、そういうような項目も含めて六千二百八十七億であったわけでございます。  その後、与党との調整あるいは関係方面のいろいろな御意見も考えまして、現在の予算案ができておるわけでございますが、その予算案におきましては、本人の給付率は九割にする、そして入院時給食材料費はこれは見送る、それからビタミンも見送る、高額所得者の保険適用除外も見送ると、こういうようなことでこれらの国庫負担額というものの削減がなくなったわけでございます。そのかわりと申しますか、別の項目といたしまして、先ほど申し上げました薬価基準の引き下げとそれから診療報酬の改定というような項目が入った。  それからまた、概算要求時点におきましては、これは八月でございます。したがって、八月以降医療費はどんどん変わってまいっております。したがって、一月の予算編成時点において医療費の趨勢というものも見直しまして、総額としては六千二百七十六億円と、こういう国庫負担削減予算案をつくったわけでございます。
  136. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 もう少し、これはいろいろお固さしたいこともありますが今後の審議に譲って、次に、退職者医療制度の創設についてちょっと伺います。  政府が提案されているこの退職者医療制度、これは給付率が八割でありますから、医療保険全体で見ると被用者本人九割、その家族は入院八割、入院外は七割、国民健康保険七割、サラリーマン退職者及びその家族は八割、給付率が非常にばらばらになるわけですね。そうすると、制度間の格差を是正するどころか、これは結果的には逆行するというようなまた新しい事態が生まれてくるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  137. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは先生、お言葉を返して恐縮なんですけれども制度間の格差というもので我々心配しておりますのは、上は十割給付、下は七割というものに非常な差があるわけですから、これからどれだけ時間がかかるかわかりませんが、努力してこれをお互いに近づけていかなければならない、こういう点ではほぼ国民的合意を得られておると思いますが、そういうことを考えますと、今回の退職者医療、この方々は、今までは国保に入れば七割だったわけでございますけれども、これが退職者医療制度ができて八割ということになるのは、私どもの念願である、将来やはり国民には等しい給付水準にしたいという理想に向かって着実に前進していくことになるというふうに考えております。
  138. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この退職者医療制度の創設等も含めて、全体的に今回の改正案を見て感じることは、国保に対してはほとんど考慮が払われていないんじゃないかという気がするんですが、いかがでしょうか。
  139. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは先生御案内のように、今まで被用者保険で保険金を納めておった人が退職をなさいますと、退職をするということは収入が減っていくことでございますし、しかも年齢も五十五蔵から六十歳、これからいよいよお医者さんにかかる率が多い、こういう人たちはみんな国保に入っておったわけであります。これが固保の財政を苦しめておったことも事実でございますけれども、その皆さん方が、今度は退職者医療ができて国保の負担から外れるわけでありますから、その面は私ども考慮が払われたと考えております。
  140. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 僕が聞いているのは、その退職者医療制度を対象としての国保という意味ではなくて、全体的に見て国保加入者の立場に立ったいろいろな配慮というものがいま一つないのじゃないでしょうかということをお話ししている。
  141. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、現在の医療保険につきまして最大の矛盾は、現役時代は被用者保険でカバーをされましてかなりいい水準の給付を受けておる。ところが一たん退職をいたしますとそれが全部国保へ流れ込んでいくといいますか、国保の被保険者になっていく。そして、その時点におきましては所得も下がる。それから、医療の給付率も国保は七割でございますので下がっていく。それは人生八十年というライフサイクルから考えますと非常に不合理なのではないか、こういうように考えて、少なくとも被用者ということで人生の大半を過ごした方については、国保に迷惑をかけないで自分たちの手でと申しますか、自分たちのサイドでひとつ医療保険をやっていこうではないか。そして七十歳の老人保健法までつないでいけばライフサイクルとしては公平になるのではないか、こういうことで物事を考えたわけでございます。  したがって、今回退職者医療制度の対象として約四百万人を考えておりますが、その四百万人の方々については従来は国民健康保険の方が面倒を見ておった。したがって、国保の若い人々から見れば退職者に対して保険料を持ち出しておったというのが実態でございます。したがって、もしその退職者四石万人について退職者医療制度を設けるとすれば、その方々に対して若い人の負担というのはそれだけ軽減をされる。こういう意味におきまして、国保にとっては退職者医療制度をつくるということが最大の恩恵と申しますか、最大の利点になる、こういうものだと私ども考えております。
  142. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 退職者医療制度を創設することが国保加入者に対する一つの配慮であるということのようですが、単純明快に言って、そういうようにして今まで十割給付であった人たちを九割だ、将来は八割だと、こういうようにしていく。それならば国保の加入者の人たちを、今七割ですけれども、これを八割というようにはならないんですか。
  143. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、私も大臣に就任しましてから政府部内の者といろいろ保険制度で勉強しているとき、冗談に、おれ、どうせ厚生大臣になるなら、被用者保険十割を九割とするときでなくて、国保を七割を八割にするとき大臣になりたかったなどと冗談を話したこともありますが、これは先生、いずれ御指摘のように、我々の方向としては、被用者保険の皆さんに八割ということになっていただくということは、将来国保の七割を八割にする時期がこれは当然やってこなければならないと思います。この点では先生の考え方と私の考え方と同じなのであります。  ただ、それならいつやれるかということになりますと、現在の財政状態の中では残念ですけれども今回は厳しい方をお願いして、今度国保七割を八割にするという方はまだ残念ながらそういう客観条件が整っておらない、こういうことでございます。
  144. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 要は、患者に負担を強いる前に、ひとつこの医療費適正化対策に万全を期すべきであると、私はこう思います。  そこで、大臣にお尋ねいたしますが、昨年九月に、前の林厚生大臣のときの医療費適正化対策の七項目として発表されましたが、厚生大臣はこの七項目はそのまま引き継いでいかれますか。
  145. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) もちろん、当然のことでございます。
  146. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この七項目の三界日に、医師会による自浄活動を期すとともに、医療標準の作成等を促すと、こうしてありますけれども、新しく適正化対策として取り上げたいわゆる趣旨、決意、または医療標準はこれは制限診療につながらないかというような批判があるわけですが、この点いかがですか。
  147. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 医療標準というのは、私どもやはりある病気につきましては大体医学常識に基づく医療の標準というものがあっていいのではないか。現在私ども医療保険の業務に携わっておりまして、同じぐらいの年齢で同じぐらいの、例えば、糖尿病というような患者さんで医療費が十倍も違うというような事例がございます。それは確かに患者さん個別でございますので、個別的な差というものが当然あることは、これは当然だと思いますが、しかし、それにしましても、同じぐらいの年齢で同じぐらいの病気で、十倍も医療費が違うというのは少しおかしいのではないか。そうすると、やはり糖尿病患者については大体これくらいの医療というのが現代の医学の水準、医術の水準ではないかと、そういう標準というものがあっていいのではないか。こう考えて、医療標準というものを提案をしてみたわけでございます。  しかし、それを私ども役所でつくって、これを保険の世界に適用しろ、こう言えば、やはりそれは官制の制限診療ということになる、医療内容に私どもが介入をしていくということになるわけですから、これはやはり避けるべきであろう。しかし、学術専門団体と称しておられる日本医師会、あるいは日本歯科医師会、そういう方々が自主的に現代の医学、医術の水準に従って、例えば糖尿病なら糖尿病の医療標準というのはこんなところなんだよと、そして会員がそれを守っていく、こういうことなら、それはそれなりにやはりお医者さん方の自主的な活動と申しますか、自主的な規制をされるということですから高く評価をすべきであろうし、それによって医療の質が標準化され、そして医療費も大体標準的なところに集約していくとすれば、それはそれなりの価値があるのではないか、こういうように考えた次第でございます。  決して役所がつくってそれを強制しようという趣旨ではございませんので、念のために申し上げておきます。
  148. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 医療の倫理という点から少しお尋ねいたしますけれども、この医療と薬剤をめぐって、最近多くの不祥事件が発生しております。昨年来、国立予防衛生研究所の不正検定に端を発した新薬スパイ事件だとか、あるいは東京医科歯科大学における教授選考についてのいろいろな事件だとか、こういうことがあるわけですけれども国民の生命、健康を守り、とりわけ高い倫理性が求められる医療、薬品の世界からこういう事件が起こる、続発するということは、極めてこれは遺憾なことでございますけれども、これらの犯罪あるいは不正行為が厳正に処断されなければならないということは当然ですけれども、こういう腐敗を生む要因を政府はどのように認識されておりますか。
  149. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 一つは、医師の倫理あるいは製薬メーカー等の守るべき社会的な責任というようなものからの逸脱であろうというように思います。それから、もちろん現在の医療制度というのは一応現物給付で出来高払い方式というもので運用をしておるわけでございますが、その制度の欠陥というものがこれはございます。その制度の欠陥がそういう面にあらわれておるということも一つの原因であろうと思います。
  150. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 我が国の医療保険制度のもとにおける、今おっしゃったその診療報酬の請求の方法というのが、医師及び医療機関は不正は行わない、こういう絶対の信頼のもとにでき上がっていると、こう思うわけなんですね。ところが、診療とそれに基づく請求は、すべて医師の判断に任されているのが現状でございまして、すなわち医師の良心に依拠した制度となっておる。ところが現実は、先ほどから申しておりますように、自浄機能が働かない部分が非常に出てきておると、こういうことなんですね。  そこで、今日のこういう医療費の著しい増高が問題とされ、また、限られた医療資源を有効に配分していかなければならない現在、こういう不正を正し、医療費の適正化を図るため、厚生省としては新たにどういう手段あるいは施策をとろうとなさっているのか、具体的に聞かしていただきたいと思うんです。
  151. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども医療費を抑制すると申しますか、そういう医療費のむだをなくし、適正化していくためには、ただこれだけという政策ではだめだ、万能薬というものは私はないと、こう思っておるわけでございますが、いろいろな手段、対策というものを総合的にいろいろな角度から打っていかない限り、医療費のむだというものはなくならないのではないか、こういう観点から、一つは、診療報酬の合理化ということもこれはやっていく必要があると思いますし、薬価基準につきましては、今後毎年一回は引き下げをしていくこととしておりますし、また審査、指導、監査というようなものもこれもやはりそれだけで医療の不正なり不当な部分がなくなる、こういうわけではございませんが、限界はあると思いますが、やるだけのことはやっていきたいと、こう思っております。  それからまた、保険医療機関で非常に乱脈をきわめるものにつきましてはこれは指定をしない、こういうような新たな措置もとりたいと、こういうように考えております。  それからまた、医療費の適正化というのはお医者さんの方ばかり問題があるわけではございませんで、患者さんの受診行動というものにつきましてもやはり再検討をしなきゃならぬ面があると思います。私ども、今回の定率の患者負担というのも、一つはそういう見地からも考えておるわけでございまして、医療費を効率化する、あるいは適正化するためには、今申しましたようなことをいろいろ総合的にやっていくことによって医療費を明朗なものにし、効率的なものにし、適正なものにすることができるんであろうと、こういうように考えておる次第でございます。
  152. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この問題は、国民が今や非常に不信感を募らせつつあることでもありますので、ひとつ厳正にやっていただきたいと思います。  次に、年金行政についてお尋ねしたいんです。  年金行政において、今まで余り所得の再分配的理論の考え方は少なかったんじゃないかと、私はこう思いますが、特に国民年金については定額徴収、定額給付でございますので、現行制度でも所得の再分配という面は余り見受けられません。国保加入者という方々は、どちらかといえば貧富ないしは所得の格差が非常に極端である場合が特徴でありまして、中には、定職もない人たちもこの中に含まれているわけですが、その意味ではこの国年に対する配慮がいまひとつ足りないと思うわけですが、いかがでしょうか。
  153. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 先生おっしゃいますように、国年におきましては定額給付、定額保険料というシステムでございまして、今度の基礎年金におきましても、自営業者などにつきましてはその方式を踏襲しておるわけでございます。  それで、所得の低い者に対する配慮が足りないのではないかと、こういう御指摘でございますけれども、私どもは今度の改正案におきましては、保険料の上げ幅を従来よりも少なくいたしまして三百円とするというように、その上げ幅の緩和を図っておる、こういうことでございます。それから、従来は三カ月まとめて払うというのが原則でございましたけれども、毎月払いの方式に改めたいということでございます。そういうふうなことで、十分所得の低い方にも配慮をいたしておるということが言えるわけでございます。それからさらに、それでもなおかつ保険料を納めることが困難な方につきましては、先生御承知のように、免除という制度がございますので、その制度を御活用いただく、こういうことでございます。  それから、給付水準につきましては、基礎年金だけではないかと、自営業者につきましては基礎年金という定額の給付でございますから、それでは低いのではないかという御指摘があろうかと思いますけれども、この基礎年金の上乗せという問題につきましては、これからの課題であるというふうに考えておるわけでございます。
  154. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この制度に対する信頼感の確立のためにも、今回の七割水準の長期的維持を国民にこれは約束していただきたい、こう思うんですが、いやしくも再度の再度、再々度の水準引き下げは絶対に行わないようにすべきだと思いますが、大臣、いかがですか。
  155. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) 現行水準が、モデル年金につきましてはもう既に六十一年度におきましては六八%、約七割弱というところまで来ておるわけでございます。今度の改正案ではそれを横ばいで現状を維持するということで、約二十年後の四十年加入が一般化いたしますときにおきましてもこの水準を守るということでございまして、そのときは大体六九%になるわけでございますけれども、そういったことで、現在の七割弱の水準、これを維持していくというのが今度の改正案の内容でございます。
  156. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 これは私、予算委員会でもお尋ねいたしたわけですが、年金財政の将来が非常に危ぶまれる今日、年金積立金の有利逆用について、これは自主運用ということについてお尋ねいたしましたけれども、きょうは大蔵省は見えておりませんが、大臣、いかがですか。
  157. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは私も各方面の皆さん方から、まず年金の保険者の意見を反映させろ、また有利運用について考えると。今ほど審議官から応弁のありましたように、我々は今後七〇%に近い線での年金を守っていくためにはやはり財政というものが前提になりますから、この有利運用というものは心がけていかなければならない大事な問題であると今いろいろ考えておるのであります。これは先生に申し上げるまでのこともありませんが、国民皆さんの命の綱とも言うべき、老後を保障するお金でありますから、安全であるということが前提になってなおかつ有利である、こういうことであります。これは極めて妙な話でありますが、普通は、危険であればうんと有利になる、しかしこれは非常な危険なこと。安全な場合はどうしても利率が少ないというのが一般常識になっておりますから、そういう中で、安全第一にしてなおかつやっぱり将来に備えでできるだけ有利な運用ということをこれから勉強してまいりたいと思います。
  158. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 この際、関連してお尋ねいたしますが、第九十五国会で成立したいわゆる行革関連特例法による財政再建期間中の厚生年金国庫負担率の四分の一削減分の返済についてでありますが、法案成立時の国会答弁では、削減分の六千七百億円については、六十年度以降のできるだけ早い時期に、保険財政に支障を来さないよう、金利、運用益も含めた返済をすることを当時の鈴木総理、渡辺大蔵大臣が確約をしております。この方針は変わらない、不変であるということを衆議院の行財政特別委員会で林前厚生大臣確認しているところでありますが、この特例期間の最終年度を迎えた今日、返済期間、返済方法等について、これは厚生省は具体的に国民に明らかにする責任があるのじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  159. 古賀章介

    政府委員(古賀章介君) これは国会におきましても、今先生おっしゃいましたように、総理並びに厚生大臣が御答弁申し上げておるわけでございまして、これは特例期間終了後遮やかに年金財政が損なわれないように、また、国の財政事情というものを勘案しながら速やかにこれを繰り戻しをするということになっておるわけでございます。したがってこの方針は、先ほど厚生大臣が御答弁申し上げましたけれども、その考えは変わっておらないということでございまして、しかしながら、返済の方法その他具体的な問題につきましては、これから財政当局と検討をする、詰めていく、こういうことになるわけでございます。繰り返すようでありますけれども、特例期間終了後速やかに利息も含めて繰り戻しをするという方針に全く変わりはないということでございます。
  160. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 では、少し問題を変えますが、昨日の予算委員会で、我が党の藤原議員の残留農薬の問題に対しまして、厚生大臣は極めて抽象的な答弁をなさっておりました。農薬ということはこれは農水省の所管であるという姿勢が根幹にあるからではないかと私は思ったんです。しかし、たとえどこの所管であれ、被害をこうむるのは国民なんですから、国民の健康を維持し生命を守る厚生省としては、いま少し前向きに取り組むべき問題ではないか、こう思います。まあ偶然かもしれませんが、穀倉地帯にがん死亡者が多いことから考えても、その因果関係にかなりの不安がありますし、この農薬の人体に及ぼす影響を究明して、安全なら安全、要注意であるならば要注意であるということを、これは厚生省として明確にすべきじゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  161. 竹中浩治

    政府委員竹中浩治君) 農薬の問題は、御承知のように、農林水産省それから環境庁、厚生省、この三つの省庁がそれぞれの分野で責任を持っておるわけでございます。  私ども厚生荊といたしまして直接責任を持っております分野は、食品に残留した農薬の問題が直接私どもの責任所管になっておるわけでございます。現在まで、野菜でありますとか果実でありますとか、そういった農作物五十三品目に使用されております二十六の農薬につきまして農薬残留許容基準を設定をいたしておるわけでございまして、今後も必要に応じましてそういった残留農薬の基準の設定を進めまして、農薬からの被害の防止を期したいというふうに考えておるところでございます。
  162. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 今の答弁の中にもありますように、これはどこそこだ、これはどこそこだということではなしに、先ほどから申しますように、結局被害を受けるのは国民なんですから、どこの所管であれ、国民の健康を害するものについてはすべて厚生省でそれをチェックするというくらいの前向きな姿勢をひとつとっていただきたいと思うんです。  ちょっと語は変わりますが、午前中は宇都宮病院の暴行事件がいろいろ取りざたされておりました。これに端を発して、去る四日に栃木県では異例の措置として県内病院の入院患者の要否を鑑定する、審査することになったわけですけれども、このことについて厚生省はどのようにお考えになりますか。
  163. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 先般の宇都宮病院の事件におきまして、栃木県はこれに立入調査を行いまして、その後、厚生省におきましても現地に責任者も参りましてつぶさにその事情を聴取し、必要な判断から宇都宮病院に関しての実地審査を行うことを検討を指示したわけでございます。その指示を踏まえまして、県におきましては県内の全精神衛生鑑定医に呼びかけを行い、先般、会合も持ちまして、宇都宮病院に対する実地審査、これを全員に対して行うということで計画を組んだということを発表したところでございます。
  164. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 それはわかっているんです。だから、厚生省としてはこのことをどういうように思いますかと、つまり、現在全国で措置入院患者数が幾らいるのか、また同意入院患者が幾らいるのか。こういうようなことを踏まえて栃木県がこういうことをやった、これはやっぱり特異な例として、それはそれとして、これはこのまま全国的にはこれをこうしなさい、ああしなさいというような指示は別に出すとか出さないとか、そういうようなお考えを固いているんです。
  165. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 精神衛生法に基づきます実地審査、これは大変大切な機能と心得ております。  そこで、これまでに基本的な通知も出ておりますけれども、毎年々定期的に開かれます主管課長会議あるいは衛生主管部長会議というような席上におきましても、この精神衛生法におきますところの実地審査の重要性について繰り返し指導を行っておるところでございまして、県におきましては、今ちょっと手元に数字がございませんけれども、一万件をちょっと欠けるくらいの実地審査はそれぞれの地域において行われているところでございます。
  166. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 今度はまた逆な立場から伺います。  最近特に木の芽立ちという、例年の季節のもたらす現象がもしれませんけれども、精神分裂症患者の自殺だとか犯罪が非常に日立っております。こうした自殺や犯罪によって全く無関係の人が突如として思いもよらない巻き添えを食うという事故も起こっておりますけれども、昨日の新聞にも出ておりましたように、代々木公園で遊んでいた子供が精神分裂症の男に首を絞められて宙づりにさせられたというような、こういう記事も出ておりますように、こういう犯罪や自殺を未然に防ぐための、そういう精神障害者といいましょうか、精神異常者というような方々が野放し状態にあるということも本当にこれは不安なことなんですが、どういうようにお考えになっておりますか。
  167. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 基本的に、精神障害者の方々に対しては医療保護、これは大変大切な部分でございまして、精神衛生法を初めとして、関係の諸制度におきまして精神障害者の医療と保護に努めているところでございます。  具体的には、まず予防的な見地も含めまして、地域におきます保健所活動、精神衛生センター等が中軸になりまして、精神衛生相談事業、訪問指導等を展開しているところでございます。  また、御質問で触れられておりましたような件も含めまして、自傷、つまりみずからを傷つけ、また他人を害するおそれのある精神障害者の方々につきましては、精神衛生法に定めるそれぞれの措置がございますので、そのケースに応じて適切な対応をしておるところでございます。そして、そのような心配な症状が消失するまで医療保護を行っているところでございます。  今後とも社会の状況に即応して、精神障害者の方々に対する適切な医療保護が行われるように力を注いでまいりたいと考えておるわけでございます。
  168. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 これはもう発作的に、しかも他面、人権問題も絡むことでもありますし、非常にやりづらい問題であるかと思いますけれども、ひとつ前向きにこれは取り組んでいただきたいと思います。  それと、もう時間がありませんので最後になりましたが、年々増加しているということではございませんが、依然として六十五歳以上の老人の自殺者が後を絶ちません。こういうことを見るときに、しょせん高齢者の自殺というのは、まあ個人の尊厳が維持できている間は、これは死ぬるということを考えないはずなんですけれども、それがかなわぬと予感するとき、前途をはかなむと同時に、これ以上もう惨めな思いはしたくない、そして煩悩の日々を繰り返したくないということから死を選ぶということになるんじゃないかと思います。  そういうことで、この老人の生きがいということについて、全国で生きがい対策という名のもとにいろんな策が行われておりますけれども老人の生きがいというものは一体何か、大臣はどのようにお考えですか。
  169. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私は厚生大臣に就任したとき、最初に、これからは福祉というものも物と心の調和のとれた福祉政策というものでなければならないということを申し上げたのでありますけれども、やはり老人皆さん方には、今先生御指摘のようないろんな点があります。これを考えてみますと、心の問題が非常に大きいのでありまして、ただ施設に収容して食べていけるからいいなどというものではありません。やはり人間は生きている以上、一生生きがいがなければならない。  私は、老人の生きがいで一番大きなものは、やっぱり孫を背中にしょったり、あるいは孫に小遣いをくれたり、おじいちゃん、おばあちゃんと慕われておる農村の風景の中に老人の生きがいという姿を見出すんです。ですから、これはもちろん我々のいろんな施策も大事でありますけれども、やっぱり社会全体が思いやりと感謝の気持ちと、これを調和さして、お年寄りを心で、連帯の精神で包んであげるということがなければ、これは厚生省だけで幾ら力んでみても老人の自殺者はなくならないだろう。私は、一つの方法としては、例えば老人施設、そのそばに保育施設や、あるいは子供たちがおる施設を一緒につくって、身寄りのないお年寄りでも、やっぱり孫がかわいい、子供がかわいい、あるいは子供たちからおじいちゃん、おばあちゃんと言われるような毎日とか、そういうものを今いろいろ検討しておるところでございます。
  170. 中野鉄造

    ○中野鉄造君 今大臣がおっしゃるように、この老人の生きがいというものは、ただ単に金をもらったり、物をもらったりすることだけで喜びを感じるものではないと思いますし、やっぱりそこには働くこと、あるいは自分がいなくちゃいけないんだというような存在価値を本人が覚えること、それが大事じゃないかと思います。そういう面では、何といいますか、よく見受けることでございますが、自分の過去の経験を若い人たちに得々として得意げに話している、あそこには生きがいを感じているんじゃないか、こういうような気もするんですが、そういうことをするためには別に場所も要らないし、余り金もかかることではないし、何かそういうような本当に老人人たちが過去の生きた歴史の生き字引といいますか、世代を生き続けてきたそういう経験を後世に伝えるというようなところに生きがいを感じるような、そういう何かもひとつ考えていただきたい、こういうように私は要望いたしまして、私の質問を終わります。
  171. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 大臣、昨日はありがとうございました。お会いしていただきました方々は、みんな精神障害者御自身でございまして、あの中の方、具体的に言いますと、大学時代に分裂病が起きて、そして教育大を卒業して、学校の先生をやって、そして現在までに七回入退院を繰り返しながらも社会復帰して、そしてみんなで助け合いながら、一日も早く普通の生活がみんなできるようにと頑張っていらっしゃる方々でございました。  私も御一緒して、そして聞いていまして、私が心に打たれましたことは、私たちは特別のことをしてくれと言っているんじゃない、ほかの障害者と同じような、そういう保護の立場に立った保障があれば私たちは自立していけるし、自立したいんだ、そうおっしゃっていた言葉が私はきのうすごく印象に残って、社会復帰施設というものの大事さを痛感したわけですけれども大臣、お会いになってどんな御感想だったか、一言最初に伺わせていただきたいと思います。
  172. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私も先生と同じ気持ちで、やはり一日も早く健康を回復されて、社会復帰して幸せになっていただきたい。また、お目にかかった皆さん方は、一目でありますが、この方方ならちゃんと社会復帰できるだろうと、そういう期待感も持つことができました。
  173. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 今ちょっと精神障害者の犯罪のことを同僚議員からおっしゃいまして、私は非常にショックを受けて、心が痛むわけです。今福祉の谷間のまた谷間に置かれているというのは、何かといえば、精神障害者というのは大変恐ろしいものだと、犯罪を犯すものだというような偏見が満ち満ちている。そういう中で新聞でも、普通の犯罪に比べれば精神障害者の犯罪というのは、統計をとったら幾らか、確かに十分の一以下ですよね。それでも恐ろしいんだ、犯罪を起こすんだというように大きく宣伝されるという中で、御本人も家族も大変悩んでいらっしゃる。私は、事実客観的にこういう方々の問題を取り上げるためにも、偏見をなくするためにも、厚生省としても大臣としても努力をしていただきたいと痛切に感じたわけなんです。  それで、本当に自立していけるとおっしゃる、自立していらっしゃるということを考えれば、今何が必要かと言えば、隔離して強制的に閉鎖病棟に入れちゃうということではなくって、本当に社会へ復帰するためのそういう施設が私は欲しいと思うんですね。  それで、五十九年度予算でどうなっているかと調べたいということで厚生省からいただきました資料によりますと、五十九年度予算で精神衛生医療費が七百十四億八千万円という数でございます。その中で、社会復帰対策費というのは六億七千万円、〇・九三%、一%にも満たないというような大変わずかなお金にしかすぎないわけですね。大臣も社会復帰対策が必要だとおっしゃっている中で、改めて一%にも満たないという、こういう予算を聞いていただいたら、これじゃちょっと大変だとお思いになるんじゃないかと思います。私は、社会復帰対策にもう最大の努力をしてほしいということをお願いしたいと思います。いかがでございましょうか。
  174. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) ただいま五十九年度予算案におきますところの六億七千万が社会復帰対策という御指摘でございましたが、精神衛生対策費の中での社会復帰対策は六億七千万でございますが、そのほかにもいろいろ関連する予算におきまして、社会復帰の促進のための事業は行われているわけでございます。  その一つの例を申し上げますと、国立療養所におきます精神作業療法等、デイ・ケア等々の整備もございますし、また、国立精神衛生研究所の運営の中におきましても、専ら社会復帰促進のためにいろいろなことが行われていることは御承知のとおりでございます。そのほか生活保護費によります医療、その中にも医療の中で社会復帰というものに配慮した医療というものは相当行われているわけでございます。等々、なかなかそれぞれの医療費の中にどのくらい組み込まれているかということは、医療とその社会復帰とがなかなか分離しがたいものでございますから、数字では申し上げかねるわけでございますが、相当な大きな国費が社会復帰のためには投入されているというふうに御理解を賜りたいと思います。
  175. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 まあ、いろいろな箇所に分かれてお出しいただいているというのはわかるわけですけれども、昨日からももう申し上げていますように、患者が百万人というような推定をお出しになっている中で、いろいろなものを含めても本当に微々たるものだ。もう何%になるんですか、計算してごらんになってもいいと思うんですけれども。そして、本当の必要とする社会復帰施設というようなものに対してまだまだ少ないということを見たときに、私はもうおわかりになっていただけると思いますけれども、再度そういう点について大臣の御努力をいただきたいと思うんです。大臣に、そのことについての御決意を伺いたいと思います。
  176. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 私も、率直に言って決してこれ多いとは思いませんが、しかし先生、これ予算といいましても、みんな国民皆さんの税金をちょうだいしてこれを私ども使うわけですから、そして、今小さい小さいという話がありましたけれども、大体精神障害者の皆さん方に使っているお金、これはまあ役所の人は、それがどれになっているかこれになっているかと先生に詰められるとまた困るものですから、はっきりした数字言いませんがね、私、勉強してみましたが、大体荒っぽく言って三千億円程度は、いろんなものを精神障害者の皆さん方に使っているんです、三千億前後の予算。まあ三千億前後の金がちっぽけだって一これもちっぽけでしょうけれども、これはまあ私は厚生省に入る前、主にエネルギー政策をやっておりましたが、日本のエネルギー対策は大事だって随分第一次オイルショック以後皆さんで騒いたものですが、それでエネルギー対策予算がその程度ですからね、三千億程度。中小企業か大事だって先生方の同士の方も随分やりますけれども、あの中小企業の予算は二千億になっていないわけですから。だから、三千億もやはり税金を納める国民皆さんから見れば、やはり一生懸命出している金であるということも御理解いただいて、しかしなおかつ、私はきのうから先生のお話をお聞きしながら、やっぱり精神衛生対策、精神障害者対策は、まだまだヨーロッパ等に比べて日本はおくれているんじゃないかという反省も持ち、また、今後やらなければならない問題が、施設の問題一つとっても多いので、これから一生懸命ひとつ勉強したい。  ただ、この精神障害者対策というのは本当に先生難しいと思いますよ。先ほど先生からもお話がありましたように、一方では基本的人権を守らなければならない。しかし一方ではまた、社会全体の安全のために、精神に異常を来しているような人を野放しにしておって子供や老人に危害を加えてもいいのかという議論も出てくるわけですし、非常に難しいんですが、そういう難しい中で、私どもはまずやっぱり適当な保護のもとに最高の医療を加えてとにかく治っていただく、そして治っていく過程の中で社会に復帰していただく、こういう一つの原則を立ててそのためにこれから努力をしてまいりたいと思います。
  177. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 今の大臣のお答え、また反論したくなることも出てきましたけれども、また時を改めてやりたいと思います。  そういうようないろんな考え方があるというのも、まだこれが非常に進んでいないという中で、これが一つにまとまっていかないというところがあると思うんですね。わかりゃすく言いますれば、例えば予算の中でも措置入院費だとか、医療で閉じ込めて使うお金よりも、本当に環境を整えて、社会復帰の条件を整えて自立して社会に入って行けるという方に使った方が本当に効果のある、そして人権も守られるというお金の使い方になるということをわかっていただけると思うんですよね。  そしてまた、次に申し上げたいんですけれども、きのう局長が四十一年十一月の身体障害者福祉審議会の答申を説明されました。その中には、「精神障害者については、身体障害者とは別途に措置することが適当」である云々という言葉も書いてあるんです、確かに。しかし、大事なところを抜かされちゃったわけなんですね。そう言いながらも、心身障害者を福祉の対象としてはいけないということは書いてない。福祉の対象となぜできないかというと、「時期尚早である」というのが次に書かれていますよね。そして、その終わりに、最後に大事なことが書かれてある。「ただし、身体障害者に対する措置と精神障害者に対する措置との間に不均衡やギャップを生ずることのないよう」というのが締めとして書かれているんですね。私はそのことを強調したいわけなんです。きのう、時間がかかったけれども、各省から、障害者に対してどういうサービスがありますかということ各省に聞きましたら、随分時間がかかるくらいそれぞれに中身の問題はあってもサービスがありますよね。それが心身障害者には適用されていない、まさにギャップがあるということもきのうの中で明らかになったわけなんです。この答申に基づいて、そして本当の、本来の考え方からいけば、ギャップをなくして、さっきも大臣が言われたように、社会復帰施設も充実していかなければならないという努力がされなければならないと思うんです。  きのうも御説明いただきましたように、そういう精神障害回復者社会復帰施設というものが全国で三つしかないというまことに寂しい状態でございますね。四十七都道府県の中で三つ、患者は百万人抱えて三つなんていうのはまことに少ない、何としてもこれをふやすということを私は考えていただきたいということが一つ。それからもう一つは、なぜそんなに数が少ないのかというと、国の補助率が違うわけなんですね。つまり、身体障害者のための施設や運営費というのは八割が国の補助になっていますよね。ところが、精神障害者のためには二分の一なんですよ。そうしますと、財政問題が大変だし、特に、二分の一もらったからといって本当の運営費や設備費の二分の一になるかといったら、そうなりませんね、実際のお金で計算してみると。調べてみましたら、川崎の社会復帰医療センターですね、ここも数字出してもらったら、運営費に占める国庫補助の割合というのは三・二%だというようなことなんですね。そういう数字から推してみても、数をふやすということと、そして補助率をほかの精神障害者並みの八〇%出すということになれば、三カ所なんかにとどまらないで、全国にもっとできるのではないか。そういうことをぜひ御検討をいただきたいと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  178. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 実情につきましては、今先生からお話のございましたように、施設整備並びに運営費につきましておおむね二分の一というようなことで整理されているわけでございます。しかし、この補助率の問題につきましては、これはそれぞれの事業、それぞれの制度が組み立てられたときのいろいろな論議があってのそれぞれの差が生じておるわけでございまして、国と地方との分担の問題、そういったような観点での論議、例えば地方の自主性を生かしてやっていくべきであるといったような観点も含めまして、それぞれの制度ごとに補助率が定められてきた経緯があるわけでございます。これからもそういった事業の社会的な要請、またその事業の実績等も踏まえまして、今後とも努力をしてまいりたいと思っております。
  179. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それなりの事情があって決まったということはそれなりの事情があったんだと思いますけれども、今の考え方で、大臣、ほかの身体障害者並みの補助率八〇%を出してやりたいなとお思いになりませんか。出すように検討すべきだなとお思いになりませんか。私は、特別なことをしてもらいたいと言っているんじゃない。せめてほかの障害者並みのことをしてもらいたいというきのうの患者さんの言葉が頭に残るんですよね。今すぐとは言われないかもしれないけれども、当然そういう施設もでき、そして社会復帰できるようにしてやりたい、検討もしたいとお思いになっていただけるのではないかと思うんですけれども大臣、いかがでございますか。
  180. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 身体障害者の方も、精神障害者の方も、これ厚生省としては非常に大事な、幸せに暮らしていっていただくために我々でお手伝いをしなければならない、こういう方であることに変わりはない。そして、その人たちが健やかにまた幸せに暮らしていけるようにしたい、そういう気持ちはこれ全く同じなのでございます。  しかし、役所の仕事というのはこれは法律によって、定めによってやっておるわけでありますから、今の制度の中ではこれは身体障害者福祉法によって行われる事業と、精神衛生法によって行われる事業とで、今のような先生のお話があったんですね。気持ちは私はもういっぱい持っているんですよ。独裁政治の時代ですと、これは大臣がこうやれと、こういうことで決まっていくわけですが、しかし、今日本は民主主義、法治国家ですから、その法律の枠の中でやりますし、役所にもそれぞれの秩序がありましてね、現行の中では今のような結果ができておるわけでありますが、そういう結果が出ておるということは私も十分に頭の中にしっかり入りましたし、私はこれからは、この前も先生に申し上げたように、精神障害者の対策が、これは残念なことですが、まだ完全なものでないということは私も認めざるを得ない状態でありますから、それをできるだけ完全なものにするためにこれから努力してまいりたいと思います。
  181. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 今大臣がちゃんとおっしゃいましたけれども、やっぱり福祉の方の対象になっていないというところでそれだけのギャップが出てきているわけですよね。だから、そのためにこそ、福祉の対象にするために法律を運用するか法律をつくるかということをやっていただきたいというのをずっと私たちは願っているわけなので、そのことも含めて大臣考えいただきたい。今はそうだけれどもこういうふうに前進させなければいけないという発展があってこそ政治でございますので、その点はぜひお願いをしたいと思います。  私は、北海道のことを考えますと、北海道でも欲しいんですよね。それで四カ所くらいは欲しいということで、特に札幌に一つ欲しいというので計画もされつつあるんですよね。そうしますと、やっぱり補助の問題、いろいろとございます。またそういうものが具体的に出てきましたら何とか間に合わせるように大臣考えてください。私は特に札幌にいて、北海道全体考えてなんて、セクトを出すわけじゃないけれども、ぜひその節はまた御検討をいただきたいということをよろしくお願いします。大丈夫ですね、検討してください。
  182. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今の制度の中で、どれだけ大臣の権限で弾力的な活用ができるかということを十分研究してまいりたいと思います。
  183. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 私は、今言った精神障害回復者社会復帰施設の世田谷のリハビリテーションセンター、これは東京都立でございますけれども、見学させていただきまして、そして本当に精神障害を持った者でも一持った者でもという言葉から問題なんだけれども、今お薬もよくなっているし、環境のいい中で、そして医療と保護という立場で社会復帰はもうできるんだとお医者さん自身も非常に確信を持っていらっしゃいましたし、効果が上がっているというのが数字的にも出てきまして、ぜひこういう施設をたくさん欲しいと、そう思ったからお願いをしているわけなんです。  そういうのと一緒に、今度は小規模作業所、いわゆる共同作業所と言っておりますが、家族の方やそれから自治体でやっているところもございます。小さい規模でそういうのが地域にできて、たしか全国ではもう竹を超しているわけなんです。私はそういうところも行って見学してまいりました。例えば札幌に希望の家というのがございまして、そこに一日三十人くらいの方がいらっしゃいまして、割りばしをつくるとかいろいろな作業をする。そういう作業をすることも大事なんだけれども、そこに集まればみんな仲間がいる、そしてそこで話し合うというようなことで、これが社会復帰なんですね。連動の訓練じゃなくて精神的にみんなと触れ合って、本当にこれはいいものだなと、そう思いましたし、遠くの大きいところへ行くんじゃなくて地域にございますからね。そういうのを見まして、いいなあつくりたいなあと思ったときに、これがなぜこうやって働いていけるのかというと、そこに大きな犠牲がありました。例えば指導員の方なんかも、賃金なんというのは非常に低賃金でございますし、ボランティアの方々が支え、家族の方々が患者を抱え、また、財政的にもそういうものを負担しながらというようなことで、これは大変だな、何とかお手伝いして差し上げなければならないなあとつくづくそう思ったんです。厚生省としても、これは大事だというようなことをお考えになったと思うんですね。五十九年度でだしか二百二十万の調査費というのをつけていただいたと思うんですけれども、これは本当に大事だというふうに位置づけていただいて、そして来年度あたりは、もう当然こういうものをもっとふやすというようなことに御努力いただけると、そう思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  184. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 精神障害者の社会復帰の重要性にっきましては、私どもも、その重要性の認識においては人後に落ちないつもりでございますが、その各論段階におきまして、まだいろいろな問題が整備途上にもございます。必ずしも実態がつまびらかでないという点もございまして、あらゆる機会を通じて私どもとしては調査に着手しているところでございまして、実態調査等も現在各都道府県の協力を得て終わったところでございますが、来年度にも、予算案に計上さしていただきましたように、小規模施設の調査費というものを組みまして、今御指摘のような小規模作業所の実情についてもしっかりと調査勉強してみたい、このように今計画を考えているところでございます。
  185. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 調査なさることはもう賛成ですし、ぜひ調査をやっていただきたい。だけど、それは共同作業所、小規模作業所というものが大事だという評価と認定に立っての調査でなければ、うるさいから調査だけしたよ、調査の結果うまくないからやめるんだよなんていう、そんな冷たい調査ではないと私は思うんですよね。その調査というのは、これを本当に位置づけて発展させていくという考え方で前向きに御検討をいただけるんだろうと思っているわけですけれども、いかがでございますか、大臣
  186. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは小規模作業所、私のところにも実はありますがね。先生今おっしゃったように、ボランティア活動で本当に一生懸命りっぱな人たちがやってくれておるんです。私も非常に感激いたしましたけれども、それらのものを踏まえて実態調査をするということは、これは当然前向きの方向に進めていく。つまり、何度も申し上げているようですが精神障害者の社会復帰、これを促進することが精神障害者対策の第一のポイントであるという私ども考え方に従ってこれを進めてまいりたいと思います。ぜひ御協力をお願いします。この前、これは別な方ですけれども、精神障害者対策を一生懸命やらなければならないということで調査をしようとしましたら、調査をしちゃいけないなどと言ってこられた人もありまして、私もいろいろ困ったことがあるんですが、ぜひ御協力をお願いいたします。
  187. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 次に、職親制度というのがございますね。俗にそう言っております。これも五十九年度予算で見せていただきましたら、十六県にあって、そして一県が十六人と、こういうことなんですね。四十七都道府県のうち十六県しかない。これらの実情をいろいろ聞かせていただいたりいたしました。そうしたら、十分とは言わないけれども、こういう制度ができて本当にうれしい、ありがたい、これをもっと活用したいと、こういう気持ちでいっぱいなんですね。そうすると、四十七都道府県のうち十六県というんじゃちょっと寂し過ぎるんじゃないですか。そして、一県当たり十六人ということもこれまたちょっとおそまつ過ぎるのではないか。  だから、私がお願いしたいのは、この十六人の枠を補助対象をもっとふやしていただきたい、人数をふやしていただきたいということと、それから各県にできる、数もたくさんつくるというようなことをぜひやっていただきたいと思うんですね。そうでないと、障害を持った人たちが生きる喜び、私も社会で何らかの役割があるいう喜びも、そういうものがなくなりますから、うつうつとしてしまう。やっぱり精神障害者というのが年年ふえてきているというのは、こういう環境の中からできてくると思うんですね。だから、あらゆる手だてを尽くしてこの職親制度の対象の数をふやすこと、人数をふやすこと、このことを心からお願いしたいと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
  188. 大池眞澄

    政府委員(大池眞澄君) 御指摘のとおり、精神障害の回復途上、あるいは回復間近い方々が地域社会に復帰していく上において、非常に有効な一つ対策であるというふうに認識しておるわけでございます。  ただ、まだまだいろいろと経験を積まなければならない点もございますし、なかんずく精神医療の専門家と、それから地域社会におきます方々との密接な協力関係、相互の理解と協力関係で継続的な努力を要する事業でございます。なかなか一挙にどこででもというふうにもまいらぬ実態もございまして、五十八年度十一県に対して五十九年度予算案としては十六県ということで、目いっぱい拡大の努力、また、財務当局の御配慮も賜ったところでございます。着実にこの線を今後積み重ねてまいりたいと、かように考えております。
  189. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 最後に。  少しずつよくなっているというのは認めるんだけれども、もとが余り低いものだから、少しずつやったって、ちょっと常識ではこれは大変だということになりますし、それから何度も繰り返すようだけれども、この精神障害者の問題が今まで大きく取り上げられなかったでしょう。本当に本人自身も言うのをはばかっていました。でも、今は、私のお目にかかった人たちは、私は精神障害者です、私は分裂病ですと言って、そしてそれを書いてチラシをまくくらいまで行っているんですよね。それくらい治って、治ってというのは、完全に回復はしない、緩解という言葉が使われるけれども、そういう立場に本当に変わってきていますよね。  ここのところでやっぱり大事なのは、本人がそういうふうにして、みずからが社会に入って、恐しくないよ、普通なんだよということを知ってもらうと一緒に、家族の方々も隠したりなんかしないで、これがどこかの病気と同じように、出た場所がちょっと違うんだというふうな、そういう気持ちに変わって、世間の見方が変わってという、これがないとなかなかコンセンサスというのは得られないと思う。そういうのは待っていてできない。じゃどうすればいいかといえば、私はやっぱり大きな役割としては、きのうもおっしゃいましたね、地域の保健所八百何ぼ、それでこれだけやっていますと、こうおっしゃった。そこで本当に力を出してもらいたいと思うんです。お金をかけなくても、この問題を本当に据えてくだされば、来た人に対しての指導、これも一月に一回くらいなんというんじゃちょっと役に立たないわけですよね。ただお楽しみみたいなクラブじゃなくて、この人たちが生きがいが持てるようなそういう中身にしていただかなければならない。  また、驚いたことには年金をもらっていない人がいっぱいいるんです。もらえるべきものを、もうほとんど知らないでもらっていない。なぜ知らないのか、申告制度だから、申告しなきゃもらえないわけですね。そうすると、あなたは精神障害者でこういう条件でこういう年金がもらえますよと、申請して五年前にさかのぼってももらえますよということを知ったら、びっくりするんですよね。私は本当に不親切だと思いました。  そういうように、この問題について、これからでございますから、大臣、これから本当にやっていかなければならないとすれば、いろいろな手だてをあらゆる面でいつも頭に置いておいていただいての施策をお願いしたいと、心からそのことを私はお願いしたいと思うんです。  宇都宮病院を契機として、国会でもこれだけ大きな問題になったことを、私は大きな教訓として発展させていかなければならないと思います。百万人の患者といえば、家族を含めれば三百万、四百万のたくさんの人たちの悩み、苦しみをこのままにしておいてはいけないと思いますので、私がるるいろいろ申し上げましたこと、どうか大臣立場で本当に決意を固めてお取り組みいただきたいと、最後に心からお願いして、しっかりした決意の一言をいただければありがたいと思います。
  190. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今の先生のお話、私の考えと全く同じでございます。これから精神障害者対策というものに対するその重要性を認識しながら、私は力いっぱい努力をしてまいりたいと思います。
  191. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 きょうは三十分しか時間がありませんので突っ込んだ御質問はいたしかねるので、概括的なことを二、王お尋ねしたいと思います。  最初に、厚生大臣にお尋ねいたしますが、大臣就任に当たっての所信というものをお聞きいたしました。大臣は別な場所でもおっしゃっているように、私はいわゆる社労族じゃない、ずぶの素人だということで重要な厚生大臣に御就任なさったわけですが、既に衆議院で予算委員会も終わり、参議院の予算委員会もこれでもうほとんど終わりに近づいている。各般の質問を広範囲にお受けになったことと思います。また、大臣就任以来、今の宇都宮の問題等々、医療の問題からいろんな問題が毎日全国で起きております。そういったものを踏まえて、現在の時点厚生行政の頂点に立つ責任ある立場として、率直にどういう所感をお持ちか。  前大臣の林さんも、就任なさったときは同じように、私は実は門外漢ですということであったが、大臣に就任してずっと私もおつき合いしている範囲で、非常にフレッシュで斬新な発想で大臣を終わったというふうに私は思っているんです。あなたも非常にフレッシュな感じで、いい線走っておるわけなんで、これは、本岡さんも先ほど言ったように、むしろ素人の方が新鮮なひらめきが出てくる。厚生行政というのは非常に多岐にわたるし、非常に難しいことだと私は思うんだけど、それを今までの継続した形の中だけで歩んでいったのでは間尺に合わなくなってしまう。そういった意味で、新鮮なところで一遍思い切ってあなたが今感じていることを聞かしてもらいたいというふうに思うんです。いかがですか。
  192. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) おっしゃるとおりでございまして、私は全くずぶの素人で厚生大臣を拝命いたしましたので、最初はちょっとまごつきまして、いろいろ皆さんに御心配をおかけしましたが、それだけにこの三カ月、衆参両院の予算委員会なり社会労働委員会なりにおける先生方の御意見を素直に謙虚に今日まで聞いてまいりましたし、またこの国会におけるそれぞれの御見識をお持ちになり、それぞれの体験をお持ちになってここで御指摘やら御注意をちょうだいする意見は、本当に私の厚生行政にとってまさに血になり肉になっていく大変ありがたい御意見が多かったのでございます。  ようやく私も今、厚生大臣という職務に大きな誇りと責任感を持って、先生方の御指導をちょうだいしながらこの仕事をやり遂げなければならない、今こういう決意に燃えておるのでございますけれども、ただ時期というのがありまして、私はこの前冗談に、私の郷里の大先権の齋藤邦吉先生に、齋藤先生が厚生大臣になったころ、おれもどうせなら厚生大臣になりたかったなと。これは冗談でありますけれども、あの高度成長期、毎年毎年国の財源が伸びていけるときの厚生行政、また今日のように財政情勢が非常に厳しい状態で、ゼロシーリングあるいはマイナスシーリングというようなものを押しつけられなければならない中での厚生大臣というものを考えますと、なおさら今私に与えられた責任の重さというものを痛感しておるのであります。  しかし、年金の問題にいたしましても医療保険の問題にいたしましても、あるいは心身障害者の対策の問題にいたしましても、どれ一つをとってみても厚生省行政というものは、他の公共事業みたいに、ことし金がないから、ひとつ来年は休んでいただきたいとか、来年一年間辛抱して再来年からというようなことで国民の竹さんに御理解をいただけるような性質のものが非常に少ない、いわゆる待ったなしに、毎日毎日の国民生活にかかわりのある厚生行政、これをゼロシーリングあるいはマイナスシーリングという条件の中で、国民皆さん方の御満足のいくような福祉対策というものをやらなければならない厚生大臣というものに、日夜本当にその責任で夜も眠れないような今の気持ちでございますが、しかしやはり与えられた条件の中で人間は最大の努力をする。その中で知恵を絞っていくということで、私は次官以下の厚生省の幹部にもこういう厳しい財政状態の中にこそみんなで知恵を絞って、やはり福祉の後退だというような非難を先生方からできるだけ受けないように努力していくのが私どもの務めだと今考えておるところでございます。
  193. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは、いみじくも大臣今おっしゃった、齋藤先生のころの厚生大臣ならばというふうにおっしゃったわけだけど、これは民間の産業でも、例えば製造業に携わる者は、リスクは多少冒しても設備投資をして、それがやがて実を縮んで利益につながる、企業が拡大するというポジションである。ところが、やはり企業の中でも同じように厚生という部門がありまして、そこはせっかく企業が蓄えた利益を食っていくものですね。したがって、それぞれのポジションの部長は、社長から見ると厚生部長というのはいつも金を食っていくところだ、研究部門だとか製造部門は、やがてこれは金の卵を産んでくるということで、非常につらい立場というふうによく言われるんだけど、しかしその厚生が非常に大切であるし、企業なら企業の最も活力を生む源泉であるというふうに私は思うんです。  国においても同じことであって、やはりこの厚生行政というものは非常にこれ重要なことなんで、仮に今の行革のさなかといえども、私は、今大臣がおっしゃったようなことを勇敢に、国民と一緒になって、むしろこの厚生行政というものは超党派でやっていかなきゃいかぬ、そういうふうに思うので、ひとつフレッシュな頭で、行動力で頑張っていただきたい。激励申し上げたいと思う。  そこで、一、二御質問を申し上げますが、高齢者福祉政策の問題で、これも臨調第一次答申の中に、「活力ある福祉社会の実現」という言葉が随所に出てくるわけです。中曽根さんもこれを受けていろんなことをおっしゃっているわけですが、締局、「活力ある福祉社会の実現」というのは何だろうというふうに思うんだけど、我が国の場合には避けることのできない高齢化社会というものを迎えつつある、こういった中で国民生活と行政のかかわり合いを抜本的に一遍見直してみるということじゃなかろうか。それで、活力ある福祉社会づくりの条件というのは、やはり行政面における福祉の増進がなきゃいかぬ。同時に、家庭、地域社会あるいはボランティア、この統合した活動が定着していかなければいけないということを私は指していると思うんです。  こうなった場合に、行政面においてそれじゃどういうことをやるのかということになると、私はやっぱり高齢化社会を迎えるという大きな出来事の前では、健康な高齢者の能力の開発、あるいは雇用の機会を与えるということ、同時に、年金等におけるナショナルミニマムというものを長期展望に立って確立することだというふうに私は思うんです。新たな医療保障の問題、退職者の医療保障の問題、これの整備、こういったことももちろん必要ですけど、今言ったような観点から、私は早い機会によく国民にわかる展望を示すべきだと思うんだけど、しかし一方中曽根さんは、行革という中で言っていることは、日本的な充実した家庭を中心とする福祉社会を求める切実な声によって、政治の光を家庭に当てて、家庭という場を重視したい、こういうふうにおっしゃる。これは文字づらから見ると非常に立派な言葉なんだけどね、その前後、行革ということと福祉ということと、このこととをひっつけてみると、同氏の側から受ければ、これはもう大変別な意味に私はとられるんじゃないか。例えば、福祉サービスなど公的な援助体制の確立というものをむしろ行革という名のもとに軽視するという、言葉はなにですが、そして介護というような重いことを家庭に押しつけていくんじゃないか、こういうふうに私はこれもうとられがちだと思うんです。国民の自立とか内助とか互助ということは非常にこれは重要なことです、非常に重要なこと。しかし、ともすれば中曽根さんの言葉の端々には、それが福祉に結びつくときには、これはひがんだ見方かもわからぬけど、私が言ったようなことを率直に国民各層は受けとめている。  このことについて、やはり私は厚生大臣として責任ある発言をして、先ほどおっしゃったような前向きの答弁をしてもらわぬといけないんじゃないかというふうに思いますので、そこら辺についてのお考えをお聞きしておきたい。
  194. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 中曽根総理の考え方、まあ私どもも基本的にその考え方に沿って、例えば老人施策なども、やはりお年寄りの方は在宅福祉といいますか、やはり孫に囲まれたり隣近所の人がおったり、家族に囲まれたり、そういう中にこれは幸せがあるということで、厳しい予算の中でも在宅福祉のヘルス事業はこれは増額するとか、老人保健事業を増額するとかやっておったわけでありますが、それが先生御指摘のように、何か胴でやるべきことを地域やボランティア活動や家庭に押しつけられるというように、これは考えられると大変残念でありますが、ただ、やはり行体の中でお金がふんだんに使えなくなっておる現実だけは、これは今日の何人も否定することのできない現実でありますから、金をできるだけ有効に効果的に使っていくという工夫はやはりこれからしていかなければならない、これはお許しをいただかなければならないと思います。  基本的には、私は先生御指摘のように、社会保障社会福祉とナショナルミニマムというものは、そのときの経済状態あるいは財政状態に左右されて、人々の生活の不安を駆り立てるようなことがあってはならないのでありまして、最初に先生御指摘の問題でございますが、今こそ私どもは、これみんなが今心配しているわけですから、今六・二人の若い人で一人の老人を支えているけれども、二十一世紀、もう少したつと、これ三人で一人支えるようになったときは年金財政が破壊してしまうんじゃないかとか、このまま老人化が進んでいけば病人だらけになって医療保険が壊われてしまうのではないかとか、そういう御心配があるわけですから、むしろこういうときにこそ二十一世紀の未来に向かって国民皆さん方に安心のできるような一つ社会福祉のビジョンというものを示していかなければならない。  こういう考えで、今回の年金改革については、確かにこれは高齢化社会が進んでいくわけでありますから、年金財政というものが今のままでは苦しくなっていくのは、これは算術計算でわかるわけでありますが、そういう中で、今回の改革案工夫を加えながら今度の改革案を認めていただければ、将来にわたって標準報酬の七〇%に近い線まで年金というものを差し上げられるような工夫、また年々増高していく医療費の中でこれを適正化して、将来にわたってまで大体現在の保険料率で医療保険を賄えると、そういうひとつ目標を立てて、やっぱりいろいろ皆今不安を持っておるわけでありますから、そういう方々に将来に対する安心感を持っていただくような一つの政治のやっぱりビジョンというものが今こそ必要でないかと頑張っておるところでございます。
  195. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 やはり重要なことは、各種のアンケートを見てみても、若い人たちが不安を持っている。じゃ、おまえの不安とは一体何だと問うても確たるものではない。しかし漠然とした不安がある。結局これはせんじ詰めてみれば、やはり高齢化社会というものを現に迎えている、これは現在の情報化社会の中で非常に行き届いて宣伝されている、その高齢になるということにおける生活、病気、住宅、もろもろの不安がミックスされた状態じゃないか。だから、今度の医療問題にしても老人医療保険の問題にしても、各種の問題全部、言ってみれば不安材料をばらまいておる。パンクするんだぞ、どうしようもないんだぞと、みんな不安材料をばらまいておるわけですよね。しかし、それが現実であればそれに向かって確たる対応をしていかなきゃいかぬわけなんだけど、その側面にやはり中期ビジョンというものを立てて、こういうものが描けるんだというものを国民に指し示すことが一番必要なことじゃないだろうか。  だから、熟年者の自殺が激増している、老人の自殺が激増している、痴呆老人がふえている、介護疲れして家庭が崩壊する、これら全部の問題が将来に向かって自分の生活設計が立てられないというような漢とした不安、そういうものの不安を除去することがやはり私は厚生省として今非常に重要なことじゃないだろうかというふうに思うので、そういった中期ビジョンというものをわかりゃすく国民に示してもらいたいと思うんだけど、どうでしょう。
  196. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは、藤井先生と私と全く同感でございまして、私も今度の健康保険法の改革案を出して、委員会でいろいろの先生方から御指摘をいただいて、ビジョンが一緒に伴わなければこれわからぬじゃないか、やはり十年後にはこうなる、二十年後にはこうなる、あるいはこういうふうになってはいけないからこういうふうにしていくというような一つの青写真というものがなければこれはだめじゃないかという御指摘を幾たびか受けまして、私も全く同感で、医療問題に関しては今政府でごく近いうちにそういう中期ビジョンというものを示す準備をさせておるところでありますが、先生御指摘のように、これは単に医療問題だけでない、年金もありますし、老人施策、いろいろございますから、これはあらゆる方面にわたって現代の不安といいますか、高齢化社会を迎えて現在の国民皆さんに将来に対してもっと何か穏やかな安心感というもの、気持ちの上のゆとりというものを持ってもらえるようなひとつビジョンをつくるように努力してみたいと思います。
  197. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 まあ老人の問題、老人福祉の問題といったら数多くあるわけだけど、きょうはもう時間がありませんので、このうち、最近とみに社会的な問題になっている痴呆老人についてお伺いしたい。  さきに東京都の発表によると、六十五歳以上の痴呆老人発生率が四・六%というようなことを私ちらっと見たことがあるんです。社会的な問題になっているこの痴呆老人、全国的に見て現在とのようなことになっているのか。また、国、地方の行政の対応が必ずしも十分じゃない。そういったために家族が介護疲れ等になって家庭崩壊をしているというケースもあるわけです。したがって、この痴呆老人対策というものが現状どうなされているのか、これからどうしようとするのか、この辺のことを一括してお伺いしておきたいと思います。
  198. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 御指摘の痴呆性老人の方々の数でございますが、先生お話しございましたように、東京都の調査で出現率四・六%でございます。この東京都調査によりまして私どもも推計をいたしておりますが、これは在宅の痴呆性老人の方々でございます。在宅の痴呆性老人の方々がこの推計によって約五十万人全国でおられるという推計でございます。このほかに、特別養護老人ホームでございますとか、あるいは養護老人ホームでございますとか、そういった施設の中に入っておられる方々で痴呆性老人になっておられる方々が約三万人。それから病院、主として精神病院でございますが、こういった病院に入院されている六十五歳以上のいわゆる痴呆性老人の方々が約二万八千人ということで、全体合わせて約五十六万人程度の方々がおられるのじゃないかという推計でございます。  こういった方々に対する対策の問題でございますけれども一つは、やっぱり保健と申しますか、ヘルスの面からの対策がございます。それから、福祉の面からの対策がございます。こういった両方、保健、福祉両面の対策が両々相まって対策をやっていかなければならぬということでございますが、まず対策として申し上げておきますと、予防対策が何よりも大事なことだと思いますけれども、予防対策としては、いわゆる脳卒中等の疾病を予防する、そういった痴呆の原因となります原因を除去するためのいわゆる保健面での、ヘルス面での対策がございます。それから一方、本人の個人個人の、先ほども御議論がございましたが、やっぱり生きがいの問題、老後の生きがいの問題、こういった中で、お年寄りが自分みずから落ち込まないようにするためのいろいろな対策が必要かと思います。そういった意味で、保健の面では、ヘルスの面では老人保健法による保健事業をやっておりますし、それから福祉の面ではいわゆる老人福祉面の生きがい対策として、就労あっせん事業でございますとか、あるいは老人クラブ活動を通じての生きがい対策を行っているところでございます。  それから、既に痴呆性老人になった方々やその家族の方々のための対策といたしましては、ヘルスの面では、現在、保健所におきます老人の精神衛生相談でございますとか、あるいは保健婦による訪問指導がございます。一方、福祉の面では、いわゆるホームヘルパーの方々を保健婦と共同で連絡をとりながらそういった家庭に派遣してサービスをさせるということがございますし、また、現在既にあります老人ホームにおきまして、こういったお年寄りの方々の入浴、給食サービス、あるいは日常動作の訓練でございますとか、あるいは家族の方々に介護のいろいろな技術を指導する家族介護教室なども開いておるところでございます。それから、特別養護老人ホームにおいて一週間程度そういったお年寄りを預かる一時預かりの制度でございますとか、あるいは施設といたしましては、特別養護老人ホームで福祉の面で施設に入所していただくというようなことがございます。  なお、五十九年度でございますけれども、五十九年度は先生御指摘のように、この痴呆性老人の方々の問題が非常に大きな社会的な問題になってまいっておりますので、特に来年度におきましては、特別養護老人ホームにおきましてやはり痴呆性の老人の方々をできるだけ受け入れていただくということが必要であろうかと思います。その受け入れていただくためには、やっぱりそういった職員の方々が、痴呆性の老人の方々の処遇の技術を十分身につけるということが必要でございますので、特別養護老人ホームの寮母などを対象にいたしました痴呆性老人の処遇技術の研修というのを新たな事業として五十九年度に二十カ所行うというようなことをいたしているところでございます。  現状は以上のようなところでございます。
  199. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 どうもありがとうございました。これについて、いろいろ私ども考えもありますが、時間の関係でこれはまた一般質問のときなどに申し上げたいと思います。  その次に、長期的なビジョンというものを先ほど私申し上げたんだけど、どうも長期的なビジョンが欠落しているために、それぞれの行政が跛行的になって整合性を欠いているという気がするんです。これは一つの例ですけれど、例えば生活扶助を受けている方が現在十五万二千九百六十円、これに教育、医療、住宅扶助を加えると十八万二千二百九円、積算すればこうなる。ところが青森、岩手の最低賃金は一日二千八百五十八円です。二十五日間働いて七万一千四百五十円。これは一つの例ですよ、例だけど、こうなると、年金、最低賃金、あるいは生活保護と生活水準関係、働く者と働かない者との関係、あるいは負担と配分のバランス、こういった点にもっと整合性がなきゃいけない。これはビジョンがなくて、財政との関係もあろうことから、一つ一つ突いていくから、あけてみるとこういうようなことになっているんだと私は解しているんです。この辺について、どのような所感を持っておられるか聞いておきたいと思うんです。
  200. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) これは非常に大事なことだと私も常々思っておるのですが、きょうたまたま御指摘をちょうだいいたしました。  私のところも非常に貧しい農村でございますが、汗を流して一生懸命働いても一カ月に十万円なかなか稼げない。そういう中で、子供を学校に出さなければならない、親も養わなければならないというような、私の周辺にもいっぱいございます。そして税金をまたそれぞれ汗を流して働いておる勤労の中から納めている方もございます。福祉が重要であることは論をまたないのでありますが、社会保障政策というものは、もちろん掛金もありますけれども国民皆さん方の税金もこれは投入して行われておるわけでありますから、やはり汗を流して一生懸命働いて、そして苦しい生活をしながらその中で税金を納めておられる方にも幅広く理解していただける社会福祉政策、そして本当にこの国で、困って生活ができないというような人をいなくするための福祉政策でなければなりません。  そういう意味で、今の先生の御指摘整合性というのは非常に大事な問題でございまして、今度の年金改革案なんかでも、先生方からも御指摘いただいておりますが、幾ら工夫しても、働いている人と働かない人との間の格差とかいろいろな問題、私は今考えさせられておるところでありますが、そういう点では、おしかりを受けるかもしれませんが、私は厚生大臣という重い職務をちょうだいした以上、行政改革あるいは第二臨調、またゼロシーリング、マイナスシーリングというような、非常に厚生大臣としては一番苦しい時期の厚生大臣でございますが、福祉の後退というようなことは断じて言われないようにこれから努力をしなければならないという覚悟はしております。それと同時に、福祉の後退でない、今先生御指摘のような問題を抱えてやっぱり国民全体の皆さん方に快く支持していただける福祉政策ということで、福祉の見直しということは、今後やはり真剣に考えていかなければならないことだと思っております。
  201. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 時間が来ましたので、最後にもう一つだけ御質問して、お答えをいただくことによって質問を終わりたいと思うんです。今大臣おっしゃったことなどについては、また一般質問の折に議論を深めさせていただきたいと思います。  最後の質問は、中国の残留孤児の肉親捜しにかかわる問題ですが、今回第五次を迎えました。この孤児の方たちが北京の大使館に集まって、日本の土を踏み肉親とめぐり会うことのできる方、それができずに涙ながらに中国に帰っていかれる方、国民ひとしくかたずをのんで静かに見詰めているところです。一方、今やっているような状況では、肉親の方も高齢化してしまうし、孤児の方たちも年をとってどんどん記憶も薄れていく。まさに隔靴掻痒の感があるわけなんです。何とかこれを一気に解決するような手だてがないものかというのが国民の率直な感じだと思うんです。もちろん中国がありますから、相手の国のお立場もある。我が国だけの考えではいけないことはわかっているんだけど、何かそこに、中国とよく話し合って孤児問題の解決を見る方法を講じられないものか。  せんだって、孤児問題に関する二国の口上書の交換が行われて、従来よりは明るさが増したやに聞いておるわけなんだけど、現在のこの残留孤児の方たちの数、そしてこれからの進め方、口上書をめぐって今後なおこうした方がいいと思うと、相手国の考えはもちろんあろうけれど、我が国としてはこうなればいいんだというようなものがあれば、この際示していただきたいというふうに思います。
  202. 入江慧

    政府委員(入江慧君) 御指摘のように、肉親を捜しております孤児が千五百二十八名おるわけでございますけれども、現在のところ七百九十四名まだ未判明。その中で訪日している者が百名ほどおりますから、まだ訪日しておらない者が六百九十三名おるわけです。  おっしゃるように、今のテンポでやっておりますと、何といいますか、こちらの肉親の方も年をとっていく、向こうに残っておる孤児も年をとっていくということで、これを促進しなければならないということは私どもも十分承知しておるわけでございますけれども、今御指摘のように、向こう側の事情もあるということで、当面私どもは、幸い先ほど交換されました口上書によりまして訪日調査というのがレールに乗るようになりましたので、これを目いっぱい進めていく。具体的に言いますと、まず五十九年の百八十人の実現について努力をする。そのほか私ども考えておりますのは、今まで訪日調査のほかに資料による調査でありますとか、公開調査とか、いろいろやっておったわけですので、そういうものを総合的にやっていきたい。  具体的に一、二、例を申し上げますと、例えば私どもが中国残留孤児と推定されるものとして把握しておりますのは、十三蔵未満の未帰還者あるいは死亡宣告を受けた者の名簿というのがあるんですが、それに載っておりますのが約三千名おるわけでございます。したがいまして、その三千名の方々の関係者からさらに詳細な事情を聞いて、離別のときの状況等をさらに詳細に検討する。それで資料の情報の再整備をして、一方、残留孤児の方々から聞きました資料と突合していけば効果がある程度上がっていくんじゃないか。また、ただいま申し上げました報道機関の御協力を得ましての公開調査。また、中国へ職員を派遣しまして向こうで直接孤児の方あるいは関係者の方と面接しまして資料の収集を行う。あるいはビデオを撮ってきてこちらで放映するということも考えておるわけでございますが、この最後の点は、何分あちらの事情がございますので、中国側と粘り強く交渉を重ねていきたいというふうに現在のところ考えておるわけでございます。
  203. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 どうもありがとうございました。
  204. 下村泰

    ○下村泰君 まず、厚生大臣にお礼を申し上げます。実は、社団法人あゆみの箱という慈善団体がございますが、これが二十二年目に入りまして、先月の二十七日に第二十回目の東京大会を三越で催しました。その節には政務次官を通じてお言葉をいただきまして、ありがとうございました。  今まで大臣のお答えの様子を拝聴しておりますと、質問者以上に、その質問者の裏にいる方々の悩みをそのまま肌でお感じになってお答えをなさっていらっしゃるように私には見受けられます。こういうすばらしい厚生大臣は何人もいません。これはお世辞じゃございません。私も昭和四十九年に当選いたしまして、五十二年から三年間、社労の委員として務めさせていただきましたが、その間に、本当に心の底から、いわゆる大臣という看板を背中にしょいながらも、日本国民の一人として、その立場に立ってお話をしてくださった方は数少ないと思います。今席を離れておられますが、田中正己委員がいらっしゃいますが、厚生大臣のときに優生保護法で私は質問させていただきまして、堕胎王国日本と言われたこの優生保護法の八カ月未満まで中絶してよろしいというのを一カ月縮めさした経験もございます。そういうふうに、非常に私どもの気持ちになってお答えくださった大臣もいらっしゃいますけれども渡部厚生大臣のように、本当に真実心の底からお答えくださっている方は少のうございました。したがいまして、渡部厚生大臣の任期の長いことを私は祈りたいと思いますし、その任期中に私どもの心を心としてくんでくださる大臣にはぎりぎりの線まで迫って、これから身体障害者の問題についてお尋ねしてまいりますので、よろしくひとつお願いを申し上げたいと思います。  さて、厚生省伺いますが、口唇口蓋裂児の出生数です。  その前に、今、口唇口蓋裂児の問題をどこの課で、窓口はどこになっていましょう。
  205. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 唇顎口蓋裂の発現率のお尋ねでございますが、四百六十回の分娩に一回程度出るのじゃないかという予測でございまして、年間三千人から四千人の人たちが発生を……
  206. 下村泰

    ○下村泰君 窓口はどこかということです。
  207. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 窓口は、社会局では更生課でございます。
  208. 下村泰

    ○下村泰君 社会局更生課ですね。  それじゃひとつ、続けて今のお答えを願います。どのくらいの出生数をつかんでいるか。
  209. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 今申し上げましたように、四百六十回の分娩に一回。年間の発生の方ダが三千人から四千人ということでございます。
  210. 下村泰

    ○下村泰君 現在、口唇口蓋裂と言われる方々が全国にどのぐらいいると推定なさいますか。
  211. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 全国でどのくらいかというのは、現在、私どもの方で数字は把握をいたしておりません。
  212. 下村泰

    ○下村泰君 そのくらい滞在的であり、かつ、なかなか把握しにくいんだろうと思います。  しかし、私の方の調査で――これは私も余り自信を持って言えませんよ、本当のことを言って。これが実数であるというふうなことは言えませんが、愛知学院大学の河合先生、鈴木先生、それから東京医科商科大の第一口腔外科の清水先生、こういう方々、あるいは松本歯科大の先生方の意見を総合しますと三十万、二十から三十ですから大体三十万というふうに見ていいと思うんですけれども厚生省の方としては、これからこの調査をなさいますか、どうなんでしょう。
  213. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 先生、そういうお話でございますが、実は率直に申し上げて、調査がなかなか難しいんじゃないかという感じでございますが……。
  214. 下村泰

    ○下村泰君 難しいからといって、調査ができなければ、患者数を完全につかむことができなければ、予算の組み方もできないでしょうし、これに対応する手だてもできないと思うんですが、これからそういうことをおやりになる気持ちはございますか。
  215. 持永和見

    政府委員(持永和見君) いろいろと検討をしてみたいと思っております。
  216. 下村泰

    ○下村泰君 これは早急にどうのこうのという問題じゃございません。しかし、治療その他に当たりまして、やはりそれだけの数を把握しておりませんと皆様方の方でもいろいろと立案もしにくいと思いますので、急ではございませんけれども、よろしくひとつ調査してください。  それから、例えばこういう口唇口蓋裂の子供さんがなぜ生まれるのか、この原因の究明、こういうことを御研究なさったことありましょうか。  それから発生地域。それから時期。と申しますのは、例えば流行性感冒、こういうものをやった後にこういう子供たちが生まれるという説もあります。それから、私が聞きましたのでは、松本歯科大の先生によりますると、大気の汚染ではないかという説もあるんです。それで、東京よりも関西地区の方で発生する率が高いとか、いろいろなことが言われております。そういうことをやっぱり総合調査しなければ原因究明ができないと思うんですが、いかがでしょうか。
  217. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 実は、口唇口蓋裂の児童の方々と申しますか、要するに分娩の際に発生するというようなことでございますので、実は今聞きましたところ、児童家庭局の母子衛生課の方で研究をしているようでございます。
  218. 下村泰

    ○下村泰君 それは、研究は結構ですけれども、私は素人なりにいろいろお話を伺ったんですが、この口蓋裂というのはもう胎児のときじゃないんだそうですね。胎児じゃない、胎芽だそうですな。つまり、精子と卵子が結合して、おなかの中で芽ができます、人間の。この芽のときに、胎芽のときにこういう症状が出てくるのではなかろうか、こういうことが言われているんです。  これはもう私はこれ以上わかりません。芸能の方の研究はよくわかりますけれども、こっちの方は全然だめですからこれはわかりません。ただ、厚生省の見方としてどうなんでしょうか。あるいは医学的に見て、これを遺伝と見ているのか。ここのところが大変重要な問題なんですが、いかがでしょうか。
  219. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 今の非常に専門的な先生のお尋ね、医学的な問題でございますけれども、実は私どもも事務屋でございまして、医学的な知識は持ち合わせておりませんので、もし何でしたら呼びましてお答えをさせますが……。
  220. 下村泰

    ○下村泰君 本来ならここで私が怒り心頭に発して、委員長、こんなことではできませんてなことを言ってとめるところなんでしょうけれども、そんな余計な時間ありません、もったいないから。これ、実際急務の問題なんで、調べてください。  それで、実はこういう問題があるんですよ。なぜ私がこんなことを質問したかと申しますと、今まで私がこういった関係の専門家に伺っている段階では、遺伝という言葉を言っている先生はいないんです、遺伝という言葉を。ところが、どういうわけか、高等学校の保健体育の教科書、大原出版社というところが出しているんだそうですが、この中に、先天性異常、優性遺伝の中で、兎唇、いわゆる三口ですね、兎唇は優性遺伝の中に入っているんですね、教科書の中に。これは差別ではないか。下手をすると、五十人クラスに一人ぐらいはいるわけです、こういう三口のお子さんが。そうしますと、これは差別になりゃせぬか。その子供に与えるショックが非常に大きいのではないかということで、この兎唇という言葉を削除してくれ-なくしているところもあるそうですが、依然としてこういう教科書が出回っているという話を醜いておるんです。もしこれが現実ということになれば、これは大変な問題なんで、所管は違いますけれども厚生大臣の方からひとつ文部大臣の方へお話しくださいまして、あるいは事務レベルでも結構でございますから、ひとつよろしくお願いしたいと思います。
  221. 渡部恒三

    国務大臣渡部恒三君) 今の先生のお話、しかと承って、文部大臣に話してみたいと思います。
  222. 下村泰

    ○下村泰君 よろしくひとつお願いをいたします。  それから、昭和五十五年の三月十七日の予算委員会、大平総理が存命中の最後予算委員会でございましたが、その予算委員会で実はこの口唇口蓋裂のことについて質問させていただきまして、それまでこれは全然健康保険がききませんでした。今ここに列席している小笠原貞子委員も御一緒にやってくださいました。これは、この問題が起きてきたのは北海道の方から起きてまいりまして、北海道の方はもう小笠原先生選挙区でございますから、もちろん大変に身を入れていらっしゃいましたけれども、そしてやっとこれが健康保険の適用がされた。  大平総理に私が直接パネルをもちまして御説明をいたしたんですけれども、もし渡部厚生大臣が余りこれに関して御関心がないようでしたら簡単に御説明をいたしますけれども、上あごが裂けるんです。この上あごの裂けるお子さんが大体五百人に一人生まれると今百われています。それで、不幸中の幸いといいますか、何といいますか、余りにも激しく裂けるお子さんは栄養が体の方へ参りませんから、わりかた生命力がございませんので短くしてお亡くなりになるという率も非常に高いわけでございます。ひどいのになりますると、上あごからみけんまで裂けます。頭蓋骨がそのまま裂けます。軽いのは上あごが裂けるだけです。これを縫合するんです。縫合は簡単なんですけれども、この上が育たないんです、今度は。上あごと下あごがこういう形になるんです。入れ違いになります。入れ違いになったまま大きくなっていったんじゃ困るんで、この上あごの内側ヘジャッキを入れまして、これ広げていくんです。そして、上あごと下あごがぱっちり合うようにするわけです。ここまで、成人ですから大分の年限がかかるわけです。子供のうちにそれすりゃいいというものじゃないんです。育つ大きさに従ってそういう処置をしていくわけなんですね。  この健康保険の適用というのは、これは大変お母様、お父様方お喜びになりました、そのときに。ところが、実際のことを言って、今のところこの術を施す方のお医者さんがまだ徹底してないというお話を伺っておるんですが、厚生省の方ではどうなんでしょうか、そういうお医者さん方にきちんと徹底していましょうか。
  223. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 今先生おっしゃいましたように、唇顎口蓋裂の歯科矯正は五十七年の四月から保険に導入をしたわけでございますが、そのときに、関係団体と非常に、継続的に話をいたしまして中身を決めたわけでございますが、私ども、その後も日本矯正歯科学会とも十分話をしております。したがって、現在のところ私どもその意見交換を通じて、特段の問題が歯科矯正の問題につきまして起こっているというようには聞いておらないんですが、なお継続的に私どもお話しをするつもりでございます。  今おっしゃいましたこの歯科矯正をする歯科医師さんは二百人強ぐらいの人数、特殊な分野でございますので、そういうように聞いておりますが、その二百人の方につきましては、日本矯正歯科学会が十分その内容につきまして連絡、指導というのは少し言い過ぎかもわかりませんが、十分医療の中身についての意見交換をやっておるようでございます。
  224. 下村泰

    ○下村泰君 それから、健康保険の適用されるのはやっぱり年齢がございますか。
  225. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 健康保険の適用について年齢の制限はございません。ただ、恐らく医療上適当な年齢の時期があるんだろうと思います。健康保険の方で年齢を制限するとかいうようなことはいたしておりません。
  226. 下村泰

    ○下村泰君 聞くところによりますと、育成医療というのが十三歳から十五歳までですか、適用されていると……。
  227. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 育成医療は十三歳といいますか、十七歳までだと思いますが、十八歳以上になりますと、身体障害者福祉法による更生医療になります。
  228. 下村泰

    ○下村泰君 その更生医療にスライドされるわけですね、それ過ぎますと。  ところが、ここに問題が起きてくるんですけれども、この治療をするときに、保険に適用になっているのがポリザルボン、これはポリサル義歯と言うんだそうですけれども。それからレジン床、硬質プラスチック、それからメタルリテーナ、金属など、こういうものが使用されるんですが、これは保険に、適用になっているんだそうですね、こういうものは。
  229. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 現在、歯科矯正の最終治療といたしまして、メタルリテーナという金属を用いた、まあ一種の金属床でございますが、私どもそれを保険で認めております。
  230. 下村泰

    ○下村泰君 実はお願いをしたいのは、その場合、その口唇口蓋裂児にも障害者手帳というのが支給できないだろうか、渡すことができないだろうかというところが問題なんですが、どうでしょう。
  231. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 身体障害者福祉法におきましては、身体障害者福祉法による身体障害者手帳、これを交付する方々をそれぞれ法律で決めておるわけでございます。その中で、唇顎口蓋裂に関連するという形で部位が掲げてございますのは、音声言論機能障害ということになるかと思いますけれども、そういった方々で音声言語機能障害者に該当するということになりますれば、身体障害者手帳の交付を受けることができますし、身体障害者手帳の交付を受けた方々につきましては、身障法による更生医療というようなことで歯科矯生などの更生医療を受けることができることになっております。
  232. 下村泰

    ○下村泰君 この場合に、そういう判定は一体どこの部門のお医者さんがやるんですか。
  233. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 身体障害者福祉法では、障害認定のための診断書作成は医師ということになっております。医師でございますから、恐らく先生お尋ねは、歯科医師ではいかがだろうかというお尋ねで……
  234. 下村泰

    ○下村泰君 耳鼻咽喉科の先生方がほとんどやっていらっしゃる、この場合。歯科医師は全然入っていらっしゃらない。ここのところがちょっとおかしいと思うんですがね、いかがでしょうか。
  235. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 先ほど申し上げましたように、身体障害者福祉法では、身体障害ということに着目して身体障害者手帳を出しておるわけでございまして、したがって、唇顎口蓋裂の後遺症による障害ということで、これは唇顎口蓋裂というのが歯牙というか口蓋全体のことに関連いたしますので、したがって、そういう意味で診断書の作成を耳鼻咽喉科のお医者さんにやっていただいているということになっております。
  236. 下村泰

    ○下村泰君 実は、この身障者のこういう手帳が交付されるのとされないのとでは、今申し上げた後の治療の問題が非常に負担になってくるわけなんです。  今もちょっと厚生大臣に御説明しましたとおりに、上あごと下あごがきちんとかみ合いませんと、まず物を幾ら食べたってそしゃくができない。しかも、通常の歯並びならいいんですけれども――これ、本当は本日モデルを持ってきて厚生大臣に見ていただけばわかるんですけれども、とにかく歯がもうあちゃらこちゃらに向いているわけですね。それをきちんと並べませんと、幾ら治療をしても、物を幾ら食べても、そしゃくしてこれが栄養に回るということはあり得ないわけなんです。ですから、育つ過程においてこれが最も重要なところなんです。  今も健康保険できくというようなものをいろいろと申し上げましたけれども、これは実は完全に補綴されるものではないわけなんですね。こういったことの専門に携わっている専門医に言わせますと、補綴装置が非常に必要である。その補綴装置なんだけれども、この補綴装置が実は保険外である、保険ではできないものなんだ。保険でできるのは限られていて、それではだめなんだそうです。ここのところが問題なんですが、どうでしょうか。
  237. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私ども、先ほど先生おっしゃいましたレジンで固定をするとか、そういうことでは合成樹脂のものですから壊れることがある。そこで、メタルリテーナという、保定装置と言っておるんですが、金属床の一種でかちっとやると、それで大体最終的にこの歯列矯正、歯科矯正の目的は十分達せられるというように聞いております。
  238. 下村泰

    ○下村泰君 そうなんです、今まではそうなんですよ。ところが、それじゃ実際はだめなんです、実際問題としては。それで専門家の方は金属床及びメタルボンドブリッジ、このメタルボンドブリッジというものを使わせてほしいと言うのです。ところが、これは保険適用外なんです。そして、三十万から四十万かかるんです、こういうのは。そうしますと、こういうお子さんを持っている親御さんにとっては大変な負担になるわけなんです。ですから、これを何とかして健康保険で面倒を見てもらえるようにしてもらえないだろうか。  今も申し上げましたように、補綴をきちんとしないと-今まで法で認められているものですと非常に弱くてだめなんだそうですわ、実際に携わっている方たちに言わせれば。ですから、こちらの厚生省のお役人様方は御報告を受けているだけで御自分がそういう状態じゃないからおわかりにならぬだろうとは思いますけれども、専門の現場にいるお医者さんの報告がこういう報告なんですよ。してみるとこれはうそを言っているわけじゃないし、営利が目的で言うはずもないんですし、これが一番こういう方たちに必要なんであるということを切実に訴えてきているわけなんです。何とかしてこういうものがそういう保険の適用にならないだろうかということなんですが、いかがでしょうか。
  239. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) メタルボンドブリッジというのは、私どもも、もちろんそういうものがある。そしてメタルリテーナとの交換性があるというように考えておりますが、メタルボンドブリッジというのは、やはりどちらかといいますと装飾的と申しますか、要するに歯のメタルの上にそういうメタルボンドをくっつける。だから、外見は非常にそれでよくなる、こういうことのように聞いておるわけでございます。  そこで、やはり私ども保険の立場から言えば、そういう装飾性みたいなものは別としまして、実際に歯科矯正ができて、今先生がおっしゃいましたように、歯の咬合というものがうまくいけば、そして食事等につきまして支障がない、そういうことならそれでよろしいんではないか。きれいになるというのもそれは一つの目的かもわかりませんが、そこまではひとつ保険は勘弁をしていただきたい、こういうことでメタルボンドブリッジについては今のところその保険の適用まで考えておらないというのが現状なわけでございます。
  240. 下村泰

    ○下村泰君 審美的とおっしゃいますけれども、以前厚生省の見解で、口蓋裂の患者さんの手術するときには整形美容の方に入れていたことがあったでしょう。そういう時期がありましたよ。これは小笠原先生もたしか御存じのはずです。生まれたときに上あごの裂けるお子さんが、そのお子さんの治療をするのに何で整形美容が、こういう発想のところから考えていくと、今おっしゃったことも私はちょっと納得いきかねるんですね。  例えば、それが表面から見たもの、どうのこうのということもありましょうけれども、現場に携わっている専門の歯医者さんが、こうしてもらった方が物を食べる、つまり食べて栄養になるための、物をそしゃくをするにはこれが一番必要なんだということをおっしゃっているんですから、ただ単に、見た目に美しいとか、どうのこうのとかということから出ている言葉ではないと思います、私は。そこのところをもう一度考えてほしいと思いますけれども
  241. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) まあメタルボンドにつきましては、現在の歯科医療全般の問題でございますが、私どもとしては、審美的なものだ、こういう見地から、保険診療には取り入れていないわけでございます。  そこで、先生おっしゃいますように、唇顎口蓋裂の患者さんについて、本当にメタルボンドブリッジでないとそれはだめなんだ、こういうことなら、私どもは検討をさしてもらいます。しかし、現在のところは、私ども、歯科医師会あるいは学界等でいろいろ話をしておりますが、メタルリテーナという保定装置でこれで機能的には十分間に合うのではないかというように聞いておるわけでございます。
  242. 下村泰

    ○下村泰君 それで、今のメタルリテーナですけれども、これが歯茎とか、いわゆる歯がしっかりしているならばいいんですよ。ここなんですよ、問題は。歯茎がしっかりしている、歯がしっかりしているという、そういう患者ならばそれでいいんです。ところが、そうじゃないんですよ、この口蓋裂の人たちのあごの中というものは、口の中というものは。ですから、そこのところをよくおわかりいただかないと、そのメタルリテーナでいいという判断ができかねるんです。そこのところなんです、問題は。
  243. 吉村仁

    政府委員(吉村仁君) 私どもの現在の考え方は今までお答えしたとおりなんですが、あるいは先生のおっしゃるように、個々の症例によっては、そういうメタルボンドブリッジというようなものでない限りだめなんだという場合があるのかもしれません。したがって、そういう場合について、必要があるかどうかを含めましてひとつ勉強をさしていただきます。
  244. 下村泰

    ○下村泰君 ありがとうございます。  それから、厚生大臣一つお願いしたいことがあるんですが、同じ身体障害者の、先ほどの認定もいろいろとありましょうけれども、生まれたときに既にもうそういう症状が起きているわけですね。その時点で私はもう身体障害者の扱いをしてもいいと思うんです。そういったようなお考えはございませんかしら。その時点で身体障害諸手帳を出すと。
  245. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 身体障害者福祉法による身体障害者というのは、いわゆる十八歳以上の大人の方々だけを対象にしております。これは先生御案内のとおり、実は身体障害者手帳の交付を受けますと、行政面でのいろんな施策が行われることになっておりまして、在宅の面でのいろんなサービスでございますとか、あるいは施設の利用でございますとか、それから身体障害者福祉法以外でも、国鉄の運賃割引だとか、税の問題だとか、いろんな意味でのそういったサービスも受けられますし、また、行政施策のいろんな手も及んでおります。  そういう意味合いで、現行の身体障害者福祉法では十八歳以上の人たちについて身体障害者としての認定をして手帳を交付する、こういうことにいたしておりまして、十七歳以下の人たちについては、いわゆる児童福祉法の対象として、育成医療という形でこれを処理しているというようなことでございます。
  246. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますと、今おっしゃったように、それ以後に身体障害者手帳を交付するというようなお考えはございますか。
  247. 持永和見

    政府委員(持永和見君) 十八歳に達した後でも、そういった後遺症がございまして、固定した身体障害者として、先ほど申し上げましたように、言話機能障害、そういった意味での認定ができるということであれば、これは手帳を交付するということもあり得るわけでございます。
  248. 下村泰

    ○下村泰君 といったようなことで、まだまだこの問題はそう簡単にはまいらないと思います。自後いろいろとお願いも申し上げていきたいこともございます。その他、身体障害者に関することでこれからももろもろお願いをいたします。どうぞ厚生大臣、これからもよろしくひとつお願いをいたしまして、終わりにさせていただきます。
  249. 石本茂

    委員長石本茂君) 以上で、厚生省所管医療金融公庫及び環境衛生金融公庫に対する質疑は終了いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十分散会      ―――――・―――――