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1984-04-25 第101回国会 参議院 国民生活・経済に関する調査特別委員会高齢化社会検討小委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十五日(水曜日)    午前十時二分開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     小委員長        安永 英雄君     小委員                 大島 友治君                 坂野 重信君                 沢田 一精君                 内藤  健君                 松岡満寿男君                 森山 眞弓君                 糸久八重子君                 太田 淳夫君                 橋本  敦君                 青木  茂君    政府委員        北方対策本部審        議官内閣総理        大臣官房総務審        議官       橋本  豊君        厚生大臣官房総        務審議官     小林 功典君        労働省職業安定        局高齢者対策部        長        守屋 孝一君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        総理府内閣総理        大臣官房長人対        策室長      吉田  勇君        厚生省保険局企        画課長      多田  宏君        厚生省年金局年        金課長      山口 剛彦君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○高齢化社会に関する件  (今後の雇用展望雇用対策方向について  )  (老後生活心理面について)  (社会保障の将来展望について)     ―――――――――――――
  2. 安永英雄

    ○小委員長安永英雄君) ただいまから国民生活経済に関する調査特別委員会高齢化社会検討小委員会を開会いたします。  高齢化社会に関する件を議題とし、関係省庁より説明を聴取いたします。  まず、今後の雇用展望雇用対策方向について労働省より説明を聴取いたします。守屋高齢者対策部長
  3. 守屋孝一

    政府委員守屋孝一君) では、お手元にお配りしております資料のうちで、この資料でございますね、「今後の雇用展望雇用対策方向 第五次雇用対策基本計画」の中で、高齢者部分にかかわる部分中心に、これで御説明したいと思います。  なお、ほかに三枚の資料をお配りしておりますが、それは後でこれに絡む関係についてまたお話ししたいというような手順で運ばしていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
  4. 安永英雄

    ○小委員長安永英雄君) どうぞ。
  5. 守屋孝一

    政府委員守屋孝一君) では、お手元にお配りしておりますこの「第五次雇用対策基本計画」のまず三ページをあけていただきたいと思います。  今回のこの第五次雇用対策基本計画は、五十八年度から六十五年度の間の雇用対策基本に関する計画でございます。  まず、この三ページの冒頭にありますように、これからの「雇用対策基本的課題」といたしましては、次の四ページをごらんいただきたいと思います。  四ページの一番上に、1といたしまして、「構造変化の下での完全雇用達成」という表題がございます。  第五次雇用対策基本計画は、この構造変化の下での完全雇用達成と、構造変化への弾力的な対応と、この二つを大きな基本課題にしております。  まず、この「構造変化の下での完全雇用達成」の中で、高齢者部分にかかわる部分は、この中ほどに2)というのがございます。ちょっとここ読んでまいりますと、  2)今後、中長期的にみると、世界経済にはなお不安定な要因も懸念されるが、次第に明るさを取り戻していくと見込まれる。また、国内では政策の効率化重点化を図ることが求められているものの、我が国経済は、雇用安定を進める上で適度の成長を持続する能力を有している。 こういう経済見通しの前提のもとにこの雇用計画はつくられております。   一方、労働力需給それぞれをみると、まず供給面において、特に六十歳台前半層労働者が急増するなど本格的な高齢化進展することが最も重要な変化として挙げられるが、これに加えて女子職場進出への意欲も引き続き高まるなど供給内容多様化が進むと見込まれる。  他方、需要面においては、サービス経済化の一層の進展や新たな技術革新の広範な普及、構造的な不況業種発生等によって産業職業構造変化すると見込まれる。   このように需給両面において多様な変化が進む場合、様々な需給ミスマッチ企業内外において生じ、失業増加をもたらすことになりやすい。特に、今後高年齢労働者が急増するのに対し、適切な調整努力がなされないならば、たとえ総量として需給がバランスするようにみえたとしても、需要供給の円滑な結合が進まず、失業者増加として現れる可能性がある。 これからの課題といたしましては、この2)の冒頭に書いてございますように、一応雇用安定を進める上で適度の成長を持続する能力我が国経済にはあるとしても、需要供給の面でのミスマッチということが非常に大きな問題となる可能性があると。そのミスマッチによって需要供給が円滑に進まない結果、失業者増加としてあらわれる可能性がある。その中の一つ要因として今後の高齢化問題というのが大きな問題になってくるという認識でございます。  この五ページ目の下から五行目のところに3)というのがございます。  3)以上の観点から、この「今後の雇用展望雇用対策方向」においては、一九八〇年代(昭和五十八-六十五年度)を対象として、「今度に予想される急速な高齢化産業構造転換等に的確に対応するため労働力需給の、ミスマッチ解消を図り、質量両面にわたる完全雇用達成と活力ある経済社会形成を目指すこと」を課題とし、 今申し上げましたように、この構造変化によるところの労働力需給ミスマッチ解消を図ると、そういうことによって完全雇用達成と活力ある経済社会形成を図ろうというのがこの計画基本課題ということになっております。  なお、その場合に一体失業率をどう見るかということ。でございますが、この六ページの2の「変化への弾力的対応」の直前のフレーズをごらんいただきたいと思います。ここに、「昭和六十五年度の完全失業率の水準を二%程度目安として、できるだけ低くするよう努める。」、こういう考え方でございまして、まあ二%を一つ目安として、それよりも低くなるように努力していこうという考え方でございます。  そこで、現在の「雇用動向問題点」でございますが、七ページをごらんいただきますと、 「最近の特徴」ということが書いてございます。ここの中ほどに1)として、労働力供給についての現状を分析した結果がここに書いてございますが、ちょっとここを読んでまいりますと、  1)労働力供給についてみると、労働力人口昭和五十三年の五千五百三十二万人から、五十七年には五千七百七十四万人と四・四%増加した。高度成長期を通じて長期的に低下傾向を続けていた女子労働力率は、昭和四十九年から五十年にかけて急落したあと上昇を示した。 労働力供給面特徴としては、近年五十歳台後半層が年率五%程度の高い伸びをみせ、労働力人口全体の増加のうち五十五歳以上での増加が約半数を占めるなど急速な高齢化が始まったことを指摘できる。 ここは、ちょっとこの本の三十二ページを開けていただきたいと思います。表が出ております。三十二ページの第4表というのがございます。  この三十二ページの第4表をごらんいただきますと、この表の右の方に五十年から五十七年、五十七年から六十五年、六十五年から七十五年という中期的なターンで増減数を出してございます。これは労働力人口増減数でございますが、この五十年から五十七年の間の労働力人口増減数は、計の欄をごらんいただきますと四百五十一万人、これはこの期間に四百五十一万人ふえたということでございます。  その内訳は下にそれぞれの年齢階層別内訳がございます。ここをごらんいただきますと、この五十年から五十七年にかけては、十五歳から二十九歳といういわゆる若年層が二百五十三万人減少しております。それに引きかえまして、五十五歳から五十九歳というところが百十五万人の増加を見ております。これを五十七年から六十五年というところをごらんいただきますと、この五十五から五十九歳層、ここが百十万人ふえ、さらには六十から六十四歳層というところが百十万人ふえるということでございまして、要は五十年から五十七年のあたりは五十歳台後半層がふえる時期になっており、五十七年から六十五年、これからでございますが、これからの中期的な見通しては、六十歳台前半層労働力人口としてふえてくるであろうという見通しを示した表でございます。  またもとの七ページに返っていただきまして、企業定年年齢昭和五十八年一月現在で五十五歳が三一・三%であるのに対し、六十歳以上が四九・四%と半数に達し、六十歳定年が主流となっているが、産業別規模別にみるとなお遅れている分野も残っている。また、高年齢者労働力需給は、五十五歳以上の有効求人倍率が〇・一倍と著しい緩和の状態にある。 これもちょっと後ろの表を見ていただきます。四十ページの第22表というのがございます。  四十ページの第22表をごらんいただきますと、ここに「定年年齢の推移」というのがございます。この定年制調査は毎年一月に実施をしておりまして、今年、五十九年はまだ集計が終わっておりません。五十八年が最新の数字でございますが、ここで五十八年のところを見ていただきます。五十八年で(A)と(B)がございます。この(A)と(B)の違いはどういうことかといいますと、(A)というのはもう既にその年齢刻みでの定年制を決定しているところ、それから(B)というのは近く実施することを予定している企業も含めた数字でございます。そこで、この表の六十歳以上の欄を見ていただきます。六十歳以上の欄で昭和五十八年の欄をごらんいただきますと、四九・四%というのがございます。これが現に実施している企業でございます。六十歳以上の定年制を現に実施しているのが四九・四%でございます。(A)というのはここの下に注がございますが、既に定年年齢を改定することを決定した企業、まだ実施には入ってないが、もう既に決定しているというのが(A)欄でございまして、これが五三・七、それから(B)は先ほど申し上げましたように、近く実施することを予定している企業も含めました数字がこの(B)の欄でございまして、これが六二・三%でございます。したがいまして、近々六十歳以上の定年制実施するものも含めますと、約六割を超える企業が六十歳以上の定年制に踏み切っておるというようにお考えいただいたらいいと思います。  片や、五十五歳以下の定年制を決めている企業というのは、この(B)欄でごらんいただきますと二三%というように非常に少数といいますか、ウエートとしては非常に低くなってきておる。そこで、私どもは六十歳定年制が今や主流を占めているという判断をしております。まだ一般化していると言えるかどうかは別といたしまして、もはや主流にはなっておるだろうということでございます。  ところで、これをちょっと下の表で規模別にごらんいただきますと、六十歳以上の定年制をしいている企業は、いわゆる巨大企業中小企業とがウエートが高いということでございます。五千人以上の規模をごらんいただきますと、これは五四・八%。この五四・八%というのは、上の欄でいきますと、五十八年のところの四九・四に対応する数字でございます。企業平均では四九・四%でございますが、五千人以上の企業になりますと五四・八%でございます。ちなみに定年年齢の改定を予定している企業も含めますと、五千人以上の規模ではほぼ九割になります。どちらかというと定年延長がおくれておりますのは、三百人から九百九十九人といったようないわゆる中堅企業定年延長がおくれているということでございます。  それからなお、先ほど七ページのところで、いわゆる有効求人倍率高齢者は非常に低いということを申し上げましたが、これは三十七ページの表にございます。三十七ページの第13表というのをごらんいただきたいと思います。  この三十七ページの第13表をごらんいただきますと、これは毎年十月に実施する調査でございますが、年齢別にその有効求人倍率を出しております。  なお、有効求人倍率とはどういう数字がといいますと、求職者を分母にいたしまして求人件数を分子にしております。簡単に言えば、求職者一人に対して求人が何人あるかということでございます。  この五十七年の欄をごらんいただきますと、例えば十五歳から二十四歳という若いところでは〇・九六とほぼ一対一で見合っております。ところが、五十五歳以上というところになりますと〇・一一と。〇・一一というのは、まあ十人に対して一人しか求人がないというような状況になっておる、こういうことでございます。  次に、今後の方向でございますが、これは九ページをごらんいただきたいと思います。  九ページに2といたしまして「今後の方向」という見出しがございます。  1)十五歳以上人口昭和六十五年までの間に約九百十万人程度増加するが、これに伴って労働力人口は四百五十万人程度増加し、昭和六十五年には六千二百三十万人程度に達すると見込まれる。この間の労働力人口増加率年率〇・九%程度で、最近十年間とほぼ同程度伸びとなろう。また、五十五歳以上の高年齢層は、この間年率三%で二百八十万人の大幅な増加を示すことが見込まれる。 これも先ほど申し上げました三十二ページの第4表のところで、この数字はそれぞれ出ております。ちょっと説明は省略させていただきます。   高齢化は、今後二十一世紀初頭にかけて急テンポで進展し、高年齢者の割合は昭和五十五年の六分の一から六十五年には五分の一へ、更に七十五年には四分の一へと高まることになる。また、急増する年齢層昭和五十年代は五十歳台後半層であるが六十年代に入ると六十歳台前半層に移ることになる。 先ほど三十二ページの4表で説明した内容でございます。   六十歳台前半層は特に失業率が高いことに留意する必要がある。 これにつきましては三十六ページの第11表をごらんいただきたいと思います。ここで性、年齢階級 別の完全失業率が出ております。例えば、計の欄でごらんいただきますと、昭和五十七年では、平均では二・四%の失業率でございますが、五十五歳以上でごらんいただきますと二・九%。これをまた男女別に下にそれぞれ分けて書いておりますが、当然のことながら、労働力率等関係もございまして、男子の方が高齢者になれば、五十五歳以上では失業率が相当高うございます。  また十ページに返っていただきまして、   我が国の高年齢者労働力率は国際的に高いが、六十五歳程度年齢までは今後もかなり多くの労働者就業を希望するとみられ、労働力率が大きく低下することは考えられない。 これに関する表は三十三ページの5表でございます。この三十三ページの5表で国際比較をしてございます。ここでごらんいただきますと、六十五歳以上の欄が一番右の端にございますが、日本が労働力率が三八・八%であるのに対しまして、諸外国は、大体日本の半分ないしはそれ以下という状況でございます。  次に、今までは見通しといいますか、最近の特徴点と今後の見通し方向を申し上げたんでございますが、しからば、これに対してどのような雇用対策を打っていくかということでございます。  十二ページをごらんいただきますと、ここに「雇用対策に関する基本的事項」というのがございます。雇用対策に関する基本的事項といたしましては、まず四点ここで指摘しております。  第一は、この十二ページの下三分の一のところにございますように、   第一は、技術革新進展産業構造転換等に対する総合的かつ積極的な対応を進めることである。いわゆる積極的に雇用の確保を拡大を図っていこうという考え方でございます。  次に、十三ページの上から三行目をごらんいただきますと、ここに第二といたしまして高齢化問題に対応する雇用対策基本的事項の指摘をしております。   第二は、高齢化の急速な進展に対し、高年齢者の活力を高めつつ雇用の安定を図ることである。このため、増加する高年齢労働者能力開発向上と多様な就業ニーズ対応した雇用就業機会開発を積極的に進めるとともに、高年齢者就業職業生涯を通じての資産形成公的年金等総合的な視点からの所得安定対策を推進する。 これが基本的な対応でございまして、そこでこれを具体的に展開するとどういうことになるかということでございますが、これはずっと後ろへ行きまして十九ページをごらんいただきたいと思います。  この十九ページに、4として「本格的な高齢化への対応」というところでございますが、   本格的な高齢化社会の到来を迎えて、経済社会の活力を維持し、発展させていくためには、高年齢者の高い就業意欲を生かし、その能力を有効に発揮させていくことが必要であり、高年齢者雇用就業機会の確保が重要な政策課題となっている。  1)そのためには、わが国の雇用慣行の長所を生かし、企業内において高年齢者雇用を維持しその長年にわたり培われてきた経験や能力を活用していくことを中心とした仕組みを形成していくことが最も重要であり、このような観点に立って、次の対策を重点的に進める。  ①昭和六十年度には六十歳定年が一般化するよう定年延長を引き続き積極的に推進する。このため定年延長への対応の遅れた企業に対する指導を強化するとともに、企業の実情に即しきめ細かな相談援助措置の充実を図る。なお、定年延長の立法化問題については、定年延長の今後の進展動向を見ながら、昭和六十年頃の適当な時期に改めて検討を行う。 ここで、文章としてはこう書いてございますが、具体的な施策といたしましては、私どもはこの相談援助措置といたしまして、定年延長奨励金という奨励金制度を設けております。  ここから後の私が御説明します内容につきましては、お手元にお配りしております「高年齢者雇用対策の体系」という、こういう資料がございますので、一々お書きになる必要はございません。この資料をごらんいただいておりますと、ここの部分でこれが関連しているというのがわかるようになると思いますから、ここを横にあけておいていただきたいと思います。  定年延長につきましては、一つ定年延長奨励金という奨励金制度もございます。それから、これはこちらの体系図の一として「定年延長促進」という部分の下の方に書いてございますが、このほかに高年齢者職場改善資金融資という融資制度も設けております。それから、このほか、順番が前後しますが、その上に書いてある定年延長アドバイザーという制度を設けております。これは、こういう定年延長の面につきまして、いろいろ学識経験のある方、こういう方を私どもアドバイザーに委嘱いたしまして、それぞれの企業相談に応じていただく。またそのほかにも、私どもはこの定年延長するに当たりまして、賃金コストとか退職金年金等の計算をしませんと、一体労力費がどれくらいかかるという問題がございますので、そういうコスト計算サービスもするということも現にやっております。これは高年齢者雇用開発協会というところが中心になってやっております。  ここに、この本文にございますように、定年延長の立法化問題については、雇用審議会で六十年ごろのしかるべき時期にこの必要性があるかどうかということも含めて検討するということになっております。  ②六十歳台前半層については、昭和六十年代に入ると高齢化の波が及ぶので、同一企業あるいは同一企業グループ内において、六十五歳までの間は、定年延長、再雇用勤務延長等による雇用延長普及促進を図る。このため、労使による検討促進とそのための具体的な事例の提供等による啓蒙・指導の強化、雇用助成制度拡充等を進める。また、適正な人事賃金管理あり方についての検討労働環境整備に努めるとともに、短時間就労希望者増加など六十歳台前半層就業志向多様化対応した弾力的な内容雇用延長が推進されるよう条件整備に努める。なお、高年齢者雇用率制度については、引き続き未達成企業に対する指導を強化するとともに、今後の高年齢者雇用動向に即してそのあり方について検討を行う。 今私が申し上げました部分は、この体系図に行きますと、二番目の「六十歳台前半層雇用就業対策」の部分でございまして、ここにございますように、いろんな助成措置を私どもは講じております。  なお、今申し上げました中で、高年齢者雇用率制度につきましては、現在この法定雇用率は六%になっております。実績は今七・一%でございますが、ただ、四八・五%がまだ未達成企業でございますので、私どもはこれの雇用率達成に各般の行政指導を講じておるところでございます。  次に、二十ページの2)の部分を読ましていただきます。  2)高年齢者雇用の維持、拡大を図るためには、まず、長年の経験等を十分生かしつつその職業能力開発向上を進めることが重要であるので、生涯訓練の理念に立った事業内教育訓練の振興に努めるとともに、公共職業訓練においては、訓練科目整備転換を進めるなど高年齢者向け訓練の拡充に努める。 ここの部分につきましては、この体系図の一番下にございます「高年齢者職業能力開発向上」という部分でございまして、一つは、事業主が行う中高年齢者教育訓練に対する助成措置でございます。これについては、生涯職業訓練促進給付金という制度がございます。それからもう一つは、高年齢者向け職業訓練実施でございまして、現在、今年度、五十九年度予算では、全国の各職業訓練校の中で、この高年齢者向けの職種と して六十九科設定することになっておりまして、訓練人員は約二千人の予定を組んでおります。   また、高年齢者に対する雇用職業情報積極的提供職業相談職業紹介体制見直し等労働市場整備を図るとともに、適職の開発、職域の拡大就業援助措置拡充等を進める。  更に、六十歳を超える年齢層になると、健康状態、資産の状況等個人差が大きくなり、このため就業志向多様化し、特に短時間就労を希望する者が増加してくるので、第三次産業等における高年齢者に適した短時間就労の職種の開発に努めるとともに、雇用奨励策について検討を行う。なお、高年齢者就業機会拡大するとの観点からのワークシェアリングについても検討を行う。  また、本格的な職業生活からの引退を志向する者も徐々に増加するので、このような過程にある者の短期的、補助的な就業希望対応するため、シルバー人材センターを育成、強化する。 これは、お配りしております資料の中に、「シルバー人材センターの概要」というのがございます。これをごらんいただきますと、大体シルバー人材センターがどんなことをやっているかおわかりいただけるかと思いますが、説明する時間の関係がありますので次に行きます。   更に、高年齢者所得保障については、職業生活からの円滑な引退にも配慮しつつ、就業あり方公的年金あり方等について総合的な生活設計の視点から検討を進めるとともに、高年齢者生活の一層の安定を図るため、企業退職年金制度及び勤労者財産形成年金貯蓄制度の一層の普及に努める。  なお、被用者年金支給開始年齢の引上げについては、高年齢者生活設計に深い関係があることにかんがみ、今後の定年延長雇用延長進展状況等高年齢者雇用動向等に配慮しつつ総合的に検討していくことが必要である。 以上が、この第五次雇用対策基本計画に盛り込んでおります、今後の本格的な高齢化対応したところの高齢者対策基本的な考え方でございます。  なお、予算といたしましては、今年度の予算は、お手元にございます「高齢化社会進展対応する雇用対策」ということで、予算を取りまとめております。予算の柱といたしましては、先ほどのこの体系図にほぼ即した形で予算を取りまとめておりますので、これとあわせてごらんいただきたいと思いますが、要は、五十八年度と五十九年度の予算比較におきましては、高齢者対策関係する部分の予算は約五十四億ふやしまして、八百七十六億八千四百万円の予算を計上しておるところでございます。  非常に簡単でございましたが、以上御説明申し上げました。
  6. 安永英雄

    ○小委員長安永英雄君) 次に、老後生活心理面について総理府より説明を聴取いたします。橋本務審議官
  7. 橋本豊

    政府委員橋本豊君) 老後生活における調査ですが、老人対策室長が参っておりますので、御説明は老人対策室長の方からさしていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  8. 安永英雄

    ○小委員長安永英雄君) 吉田老人対策室長
  9. 吉田勇

    説明員(吉田勇君) それでは、「老後生活心理面に関する調査結果の概要」につきまして、時間が二十分でございますので、手短に御説明申し上げます。お手元にこの薄い要旨の方とそれから厚い印刷の方と二冊あると思いますが、厚い方から説明させていただきます。こちらの方でございます。  まず、一ページをお開きになっていただきたいと思います。  第1の一に「調査の目的」というところがございます。これは、この調査の目的といたしましては、六十歳以上の高齢者が果たして老後生活で満足をしておるかどうか、それから悩み事はどんな悩み事があるか、それから不安、どんな不安を感じているかというふうなことを、総合的に高齢者の心理を調べて、今後の老人対策の参考に供したいと思って調べたわけでございます。対象者は六十歳以上の男女でございまして、約三千五百人の対象者を調べました。大体三千五百人くらいですと偏りのない全国的な推計ができるということから、こういうふうにいたしました。それが調査の目的でございます。  それから、二ページをお開きになっていただきたいと思いますが、これは「調査客体の属性」というのがございまして、性別、年齢階級別に調査対象というのはこういうふうな分布になっております。これは国勢調査等で全国の分布が大体こんな分布になっておりまして、これとほとんど同様でございます。それから、一番下の「配偶者の有無」というところがありますが、これは配偶者がある方が六四・五%、ない方が三五・五%というふうになっております。  なお、ちょっと申し忘れましたが、私どもここ十年来、老人に関しまして、高齢者に関しましていろんな調査をやっておりまして、その調査の結果を行政施策に反映させてもらっておるわけでございます。ずっとここ毎年二本くらいずつ調査をやっておりまして、例えば高齢者がどんな生活をしておるか、それから別居しているか同居しているかというようなこと、そういう同別居、収入、所得、多方面にわたりまして国際比較をやったり、それから今後同別居についてどういうふうに考えているかどうかというふうなこととか、そういうふうなことを調べております。  それからまた、若い人が親の扶養というものをどういうふうに考えているか。それから高齢者が扶養されるということについてはどういうふうに考えているかどうかというふうなことを調べたりしております。それから、若い人、三十代から五十代くらいの人が今後の老後設計、例えば将来は何で暮していこうと思っているか。それから住宅というのはどんな住宅を望んでいるか、都市に住もうと思っているかどうかということも含めまして。それから余暇活動というものをどういうふうに考えているかというふうなことを調べております。それからまたもう一つ調査では、高齢者が社会や家庭や地域でどんな役割を果たしているか、それからどんな役割を果たしたいと思っているかというふうなことを調べたりしております。あと、また高齢者に適した作業というものはどんなものが考えられるかというようなことも調査しておりまして、そういう中での一環でこの心理面というのを初めて調査いたしました。ちょっとつけ加えさしていただきたいと思います。  それから、では三ページをお開きになっていただきたいと思いますが、現在の高齢者、六十歳以上の状況はどうかということなんですが、「健康・身体」というところがありまして、ふだんの健康の状態はどうかということなんですが、「良好」とした人が三七・二%、それから「普通」とした人が三九・三%ございます。これは高齢者というと、寝たきり老人等が非常に問題になっておりますが、高齢者の七五%くらいは健康だったり普通であるという人が多い。非常に多くの人はそういう状態であるということがわかります。  それから、自分の健康の状態について満足をしているかどうかということなんですが、それは(イ)というところにありまして、「どちらかといえば満足している(年相応であるので不満はない)」という人が大体七〇%いるということがあります。これは当然のことと思いますが、おおむね高齢になるほど満足とする者の比率が低下して、不満であるとする者の比率は高まる傾向にございます。これはだんだん年をとってきますと、やっぱり弱ってくるということからであると思います。  それから四ページでございますけれども、「家族との人間関係」でございますが、子供と同居しているかどうかということがございます。子どもと同居している人は六八・三%、七割でございます。別居している人が二六・一%でございます。これは非常に日本特徴でございまして、西欧先進諸国で子供と同居しているという人は、アメリカが一二・四%、イギリスが七・五%、フランスがちょっと多くて二〇%前後でございまして、非常に日本特徴でございます。ただタイなんかにしますと、九六・一%が子供と同居しておりますが、子供といいましても、タイの人は自分の娘と同居しているというふうな人が多いようでございます。  それから「家族との人間関係に対する満足感」があるかどうかということなんですが、家族との人間関係で「どちらかといえば満足している(不満はない)」という人が九三・二%ございます。それでこれは同別居を含めた人に聞いたわけでございますけれども、子供との同別居の関連を見ますと、家族との人間関係で満足している者は、子どもと同居している者が九六・一%、極めて高くなっておりますが、子供と別居している人でも八七・八%というふうに、ほとんどの人が家族との人間関係でも満足しているというふうな結果があります。それから別居している人につきましては、やはり頻繁に交流しているという人ほど家族との人間関係が満足という度合いは高くなっているという結果が出ております。  それから五ページでございますが、そういう高齢者が仕事や家事にどれくらい従事しているかということでございますが、「ほぼ毎日従事」「ときどき従事」というのを合わせまして七四・二%の者が仕事や家事に従事しているということで、家庭でやはり高齢者というのは何らかの役割を持っております。それからそういう仕事や家事に対する満足感がどうかということなんですが、「どちらかといえば満足している(不満はない)」とする者が八六・六%というふうになっております。それから仕事や家事に対する満足感は男性よりも女性の方が高くなっております。ただ年齢による差異はございません。そういう結果になっております。  それから六ページでございますが、生活費等の現在の暮らし向きについて「余裕がある」「やや余裕がある」「普通」というふうなのにつきましては、暮らし向きが普通以上であると考えている人は八二%あります。ただ世帯別に見ますと、単身世帯では暮らし向きが普通以上であるとする者は六二・一%ございますが、ほかの世帯はもっともっと高くなっておりまして、やはり単身世帯というのは問題があるのではなかろうかと思っております。それから(イ)の現在の暮らし向きについては満足しているかどうかということなんですが、「どちらかといえば満足している(不満はない)」とする人が八三・六%というふうにかなり高い比率で出ていると考えられます。  それから七ページでは、オのところでございますが、「近所づきあい」がどうかということなんですが、近所の人と親しくつき合っているとしている人は六三・八%ございます。それからこれはやはり当然と言えば当然かもしれませんが、近所の人と親しくつき合っているという人は大都市が低くて、町村の方に移るに従って非常に高くなっているということが言えると思います。それから近所づき合いについて満足感はどうかといいますと、「どちらかといえば満足している(不満はない)」とする人が九二・八%、ほとんどの者が満足しているということが言えると思います。  それから八ページでございますが、「友人関係」ですが、親しい友人を持っているかどうかということなんですが、親しい多くの友人を持っているという人は四六・五%、それから少しの友人を持っているという人が四四・三%ございます。全体の約九〇%は親しい友人を持っているということが言えます。それからこれもさっきと同様の傾向で、大都市から町村へと移るに従って親しい友人を持っているという人の比率が高くなっているということが言えると思います。それから友人関係についてそれでは満足しているかどうかということなんですが、「どちらかといえば満足している(不満はない)」とする者が九一・一%というふうになっております。  それから九ページで「余暇時間」ですが、打ち込んでいるものや励んでいるものを持っているかどうかということなんですが、「持っている」とする者が四七%ございます。それから余暇時間の過ごし方について満足しているかどうかということなんですが、「どちらかといえば満足している(不満はない)」とする者が八二・四%あります。  それから十ページの(2)ですが、それでは現在の生活や境遇などについてこれらを含めて全体として満足しているかどうかということなんですが、「満足している」とする者が三八・二%、それから「やや満足している(不満はない)」とする者が四九・二%ございまして、「満足している」という者の比率は両方合わせますと八七・四%になっております。これは十年前に私ども同様な調査をいたしましたときにも、十分満足、やや満足と合わせますと八〇%というふうになっておりまして、それよりは若干上がっているわけでございますが、全体の満足感というのは従来どおり高いのではないかと思っております。それからこの世帯を見ますと、満足しているという者の世帯は三世代世帯、高齢者、それから中年、それから孫というふうな三世代世帯が一番高くて、単身世帯が最も低くなっております。  それから十二ページをお開きいただきたいと思います。悩みごとがあるかどうかということについて聞きました。そうしたところ、「悩みごとがある」とする者は四五・三%、半分くらいの人が悩みごとは持っておるわけでございます。その内容は何かといいますと、「自分の健康」というのがやはり一番多くございまして、その次が「家族の健康」、それからあと「子どもの結婚問題」、「生活費の不安」ということで続いております。やはり高齢者の一番の関心というのは、自分の健康問題というのが一番関心があるということがいろいろな調査で出ておりまして、ここでもやっぱりそういうことが出ておりまして、健康問題の重要性というのが明らかになっておると思います。それから不安について聞きますと、「今後の生活費について」よく不安を感じる、それから時々不安を感じるとしている人が三五・三%おります。それからそういう不安を感じている人は単身世帯がやはり最も高くて、三世代世帯は、ほとんど不安を感じないとする者が七六・〇%というふうに非常に高くなっております。  それから十三ページでございますが、「身の回りの世話について」。自分が身の回りの世話を要する状態になったときに世話をしてくれる人がいるかどうかについて不安を感じるという人は三六・一%ございます。その不安を感じる人では、三世代世帯が四・六%と最も低くなっておりまして、一人暮らしの単身世帯では二九・三%というふうに最も高くなっております。  それから十四ページですが、「寝たきりやボケた状態になることについて」。自分が寝たきりやぼけた状態になることについて不安を感じるかというのでは、五六・〇%の人が、全体の半数を超えて不安を感じているというふうな状態になっております。最近よくぼけ老人について問題になっておりますけれども、やはりこういうようなことについて不安を感じているようでございます。それで、それもやはり三世代世帯では不安を感じる人が最も低くなっておりまして、ひとり暮らしの世帯では三三・六%というふうに、一人暮らしの世帯は非常に不安を感じているということが言えるわけでございます。  それから十五ページの真ん中ごろですが、「自分の死について」不安を感じるかどうかというんですが、これは「ほとんど(全く)不安を感じない」とする人が六割くらいになっております。  それから十六ページを見ますと、「配偶者に先立たれた後のことについて」は、約半数が不安を感じております。それでこれはやはり男性の方が配偶者に先立たれたことについて不安が高くなっておりまして、男性が五四・九%、女性が四五・九%となっております。それからこれは世帯では夫婦二人のみの世帯というところが一番不安を感じるということ、比率が高くなっております。それからその下の方の「子や孫の将来について」は、ほとんど全く不安を感じないという人が八割くらいになっております。  それから十七ページですが、「役割が続けられなくなることについて」、ほとんど不安を感じないという人が半分くらいになっております。  それから十八ページですが、悩み事の相談相手はだれかということなんですが、「相談相手がいる」としている人は九四・三%、ほとんど相談相手がおります。相談相手とする人は子供とする人が一番多いんですが、配偶者を有している人だけを対象にとってみますと、最も大事な相談相手としてはやはり配偶者というのが六割近くになっておりまして、子供は二五%しかございません。それから最後に、これらを含めまして十九ページですが、「充実感」があるんだろうかと、高齢者について今の生活でということを聞きまして、「自分の生活や日頃やっていることにやりがいや充実感を感じる」か、それとも「自分の生活や日ごろやっていることにわずらわしさやむなしさを感じる」かということなんですが、どちらかといえば充実感を感じるとする人が六六・三%になっております。それから世帯を見ますと、どちらかといえば充実感を感じるという人は、七割くらいの人が、単身世帯を除いては充実感を感じているんですが、単身世帯では五割くらいしか充実感を感じておりません。それから仕事や家事に非常に頻繁に従事している人ほどやはり日ごろの生活について充実感を感じておりまして、やっぱり高齢者の役割というものを何らかの格好で果たすということが、高齢者の生きがいに通じるという結果が裏づけられていると思います。  それから二十ページでございますが、「疎外感」があるかどうか。「家族や周囲の人にとけ込んで生活していると感じる」か、それとも「家族や周囲の人から相手にされないと感じる」かということなんですが、どちらかといえば溶け込んで生活していると感じているという人が八六・〇%というふうになって、疎外感も、かなり溶け込んで生活しているという人が多いというふうに感じられます。  それから二十一ページですが、「孤独感」というのがありまして、「一人ぼっちと思うこと」があるかどうか。それはないという人と、それからいつも寂しいという、どちらかということなんですが、どちらかといえば孤独感はないという人が八割近くになっております。それから、これは子供と同居しておる者では、孤独感というものは、寂しいと感じている人は九・九%しかおりませんが、子供と別居している人は一五・二%が寂しいと感じている。子供がいない者では二六・四%が寂しいというふうに感じる。やはり子供と別居している、子供がいないということが孤独感につながっているということになっております。  それから二十二ページですが、「有用感」ということですが、家族や地域社会のために役立っているかどうか、それとも役立つことができないと思っているかということなんですが、どちらかといえば役立つことができると思っている人が五六・九%でございます。  以上簡単ですが、御説明を申し上げました。  これ全体的に調査の結果を集約しますと、暮らし向きの満足感とか全体としての満足感というのは非常に高いんじゃないかと、そして十年前とも違いがないということが言えるんじゃないかと思います。  二番目は、単身世帯というのは、三世代世帯に比べてかなり問題がある。例えば単身世帯では、暮らし向きの普通以上とか、全体としての満足感は非常に低いわけでございますし、それから今後の生活費や身の回りの世話や、寝たきりや、ぼけた状態になることについての不安というのも非常に高こうございます。それから充実感というのは低く、疎外感というのは高いわけでございまして、三世代世帯は全くそれと反対でございまして、例えば暮らし向きが普通以上とか、全体として満足感も最高でございます。それから不安も最低というふうになっております。  それから三番目は、悩み事というのは、やはり自分の健康、家族の健康というものについての悩み事が一番高いわけでございまして、健康問題というのが非常に重要だということが裏づけられていると思います。  それから四番目は、先ほど説明の中で申しましたが、仕事や家事に従事することが多い人ほど日ごろの生活に充実感というものがあると。やはりお年寄りや高齢者は、何らかのことで世の中に役に立っているということが生きがいにもつながるし、それから自分の健康にもつながるのじゃないかというふうに要約されると思います。  以上でございます。
  10. 安永英雄

    ○小委員長安永英雄君) 次に、社会保障の将来展望について厚生省より説明を聴取いたします。小林総務審議官
  11. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 厚生省の総務審議官でございます。  最近特に高齢化問題というものが各方面から重要な社会的課題として提起をされております。特にその中でも厚生行政あるいは社会保障の分野に対する高齢化問題の影響というのは非常に大きいものがございまして、これから先社会保障を考えます場合には、どうしてもこの高齢化問題をよくよく吟味して対応していかないといけないと、こういう認識を我々は持っておるわけでございます。そこで、先生方もう十分御承知のことが多いと思いますけれども、そういった意味で、最初に高齢化状況といったものを資料をもとにして簡単に触れてみたいと思います。  お手元資料の一ページでございますが、まず人口高齢化の背景と申しますか、我が国人口高齢化がなぜ進んでいくのかというところからお話を始めたいと思います。  この最初の方に書いてありますように、「人口高齢化の背景」と申しますのは、一つは「平均寿命の伸長」でございます。もう一つは「出生率の低下」、これが両々相まって人口高齢化をもたらしている。これがいわば結論でございます。  そこで、①のところの図を見ていただきますと、終戦直後の昭和二十二年には、我が国人口平均寿命は男が五十・〇六歳、女が五十三・九六歳と、これが年々延びてまいりまして、五十七年度を見ますと男が七十四・二二歳、女が七十九・六六歳と、ここまで延びてきているわけであります。これはいろいろ原因がありますけれども、医学医術の進歩あるいは公衆衛生の充実あるいは食生活面での改善、さらには医療保険制度整備といったものもこれに影響していると思いますが、いろいろな要素で平均寿命が延びてまいりまして、それで終戦直後にはいわば人生五十年でございましたのが今や人生八十年と、いわゆる人生八十年型社会になっておると、こういうことが言えると思います。  それから、人口高齢化のもう一つの要素でありますが、出生率の低下でありまして、左下の棒グラフを見ていただきますと、昭和二十二年には出生率は二百六十七万九千人でありましたのが、五十七年には百五十一万五千人というところまで減ってきております。  それから、右の下の棒線グラフでございますが、これは合計特殊出生率と申しまして、一人の女子が一生の間に産むと推計される平均子供数でございます。これを見ますと、昭和二十二年には四・五四人だったのがだんだん落ちてまいりまして、五十七年にはちょっと持ち直しておりますけれども、それでも一・七七人というところまでこの合計特殊出生率が下がってきているということでありまして、これをあわせて考えますと、いわゆる少産少死型、少なく産んで少なく死ぬと、少産少死型の社会になっていると、これが人口高齢化の背景でございます。  それから二ページへまいりまして、それでは人口高齢化がどの程度進んでいるかということでございます。  そこで、まず上の表でございますが、六十五歳以上の人口、これは絶対数でありますが、昭和四十年をごらんいただきますと六百二十四万人となっています。だんだんふえまして五十五年には千六十五万人、それから昭和七十五年には千九百九十四万人というようになりまして、そこからさらにどんどんまた増加していく、こういう傾向にございます。  そこで、老齢化あるいは高齢化を示す指標と申しますか、メルクマールとして使われますのに、一つはこの右から二番目の欄に挙げてあります六十五歳以上人口の総人口に対する割合といいますか比率、これがよく使われます。これで見ますと、ちょうど今現在五十五年に近いわけですが、五十五年にまいりますと九・一%であります。五十八年度はここにありませんけれども、五十八年度には既に九・八%まで上がってきております。それが年々上がりまして、二十一世紀へ入る昭和七十五年になりますと一五・六%になります。それからさらに一八・八と上がりまして、昭和九十五年に大体ピークの二一・八%まで上がっていくということでございます。  それから、高齢化を示すもう一つの指標でありますが、一番右の欄でございます。二十歳から六十四歳までの人口、これはいわば働き手であります。これを六十五歳以上の人口、つまり老人の人口ですが、これで割ったもの。この意味は、要するに働き手何人でお年寄り一人を抱えるか、こういう数字であります。つまり数の少ない方が高齢化が進んでいる、こういうことになるわけでありますが、ごらんいただきますと、昭和四十年だと九・一つまり九・一人で一人の御老人を抱えると。こういうのがだんだん落ちてまいりまして、二十一世紀へ入ります昭和七十五年をごらんいただきますと三・九人、それから八十五年には三・〇と、つまり二十一世紀に入りますと若手の働き手が四人で一人のお年寄りを抱える、さらには三人で一人抱えなきゃならぬ、こういうことになっていくということを示しておるわけでございます。  しからば、西欧の諸国はどうだろうかというのが次の表でございます。下の方の表でございます。これをごらんいただきますと、右から二番目の六十五歳以上人口の総人口に対する比率、これをごらんいただきますと、アメリカはちょっと低いんですが、イギリス、西ドイツ、フランスあたりをごらんいただきますと、大体一四、五%でございます。スウェーデンはちょっと高くて一六・穴となっておりますが、大体一四、正あるいは一六というあたりであります。これに対しまして日本は九・三%。これは昭和五十六年現在の数字でありますが、九・三。ヨーロッパに比べるとまだ日本はそれが低いということであります。  同じように、その一番右の欄の二十歳から六十四歳人口を六十五歳人口で割った数字、これもイギリス、西ドイツ、フランスは大体四人でございます。スウェーデンはちょっと低くて三・五人ということですが、日本はまだ六・五という数字になっております。つまり、言えることは、まだまだ日本は、高齢化高齢化と申しますけれども、現段階では本格的な高齢化社会にはまだ至っていないということが言えるわけであります。  ただ問題は、後で申しますように、これから先確実に、しかも非常に急速に高齢化が進んでいく、そこが問題だということでございまして、理段階だけをとりますと、西欧に比べますと日本高齢化がまだ低いということでございます。ちなみに上の表と比べ合わしていただきますとわかりますが、上の表で、先ほど申しましたように、昭和七十五年に一五・六になると申しました。これがちょうど西欧の現在の数字と似ています、大体一五、六%ですから。ですから、まだもう十五年ないし二十年たってようやく西欧諸国の水準に達すると、こういうことであります。ただ、今申しましたように、これから先の高齢化が非常に確実に進みますし、しかもそれが急ピッチで進むということがございますんで、今のうちからこれに対応する物の考え方とかあるいは制度の仕組みを考えておかないと、将来大変な問題になると、こういうことが言えるわけでございます。  それから、三ページへまいりまして、日本人口高齢化特徴をここに挙げておきました。今ちょっとお話に出ましたが、特徴の一番大きなものは世界に類を見ないスピードで高齢化が進むということでございます。  上の表をごらんいただきますと、六十五歳以上人口比率が七%になってから一四%になったときまでのかかった年数を示した表でございます。〔注〕の1にありますように、国連によりますと、六十五歳以上人口比率が七%以上の場合に高齢化した社会というふうに分類されておるんですが、その七%になったときからその倍の一四%になったときまでのかかった所要年数、これを一番右の欄に掲げてございます。アメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、スウェーデン見ていただきますと、七十五年、四十五年、四十五年、百十五年、八十五年という期間がかかってます。ところがこれに対しまして、日本は驚くべきことに、たった二十六年間で七%から一四%になると。非常に大変急速に高齢化が進むということがこれでおわかりいただけると思います。これが日本高齢化特徴でございます。  それから、どこまで高齢化が進むかというのを示したのが下の表でございまして、先にアメリカ、イギリス、西ドイツ、フランス、スウェーデン、この下の方を見ていただきますと、それの実績(再掲)と書いた欄と、将来推計二〇〇〇年のところを比べていただきますと非常によくわかります。アメリカで言いますと一一・四から一一・三、イギリスは一四・九から一五・三、西ドイツは一五・五から一五・四と、非常に安定しております。つまり、高齢化がもう相当進んじゃっております。ただ、二〇二五年になりますとややこれが上がりますけれども、少なくとも二〇〇〇年までを比べますと非常に安定しております。  それに対しまして日本を見ていただきますと・一九八一年には九・三%が二〇〇〇年には一五・六になると。これが日本高齢化特徴であります。それがさらに二〇二五年になりますと二一・三%ということで、世界最高の高齢国になる。これが予想されているわけであります。  そういうことでありますから、よほど周到な準備をしてこれに適応する工夫をしておかないと、社会経済にもひずみが当然出てまいりますし、それから公的ないろいろな制度についてもそれをしておきませんと、その存立そのものが危くなるといった危惧もあるわけでありまして、ここら辺が私どものこれからの課題であるというふうに認識をしているわけでございます。  それから、四ページへまいりまして、こういう高齢化を反映しまして社会保障給付費が非常に伸びているということでございます。  そこで、表をごらんいただきますと、社会保障給付費を医療、年金、その他別に分類いたしまして、三十五年度から五十六年度までの年次推移を示しております。一番下の計の欄をごらんいただきますと、昭和三十五年度の計は社会保障給付費全体で六千五百五十三億、対国民所得比で四・九%でございました。これが五十六年度になりますと、実に給付費で二十七兆三千五百七十八億円、対国民所得比で一二・四七%に急増しているわけでございます。特にこの中でも年金の伸びが非常に目立ちます。年金の欄の四十年を見ていただきますと三千五百八億円、これが五十六年には十一兆七千五百十九億円、これが非常に顕著に伸びているわけでございます。  そこで、この表をごらんいただくにつきましてちょっと注目をしていただきたいのは、三十五年と四十年の間、大分伸びておりますけれども、ここには例の国民皆保険が昭和三十六年に達成されております。それがこの三十五年と四十年の間に入っております。したがいまして、医療で見ていただきますと、三十五年は国民所得比で二・二であったのが四十年には三・四というふうに伸びている。それは皆保険の影響が非常に大きいわけであります。  もう一つのポイントは、四十五年と五十年の間に、四十八年の保険年金制度の大改正が入っております。医療保険で申しますと、健康保険の家族をそれまで五割であったのを七割給付に引き上げておりますし、それから高額療養費制度というものを新たにつくりましたりしております。それから年金につきましては、年金水準を四十八年に大幅に引き上げておりますし、それから物価スライド制というのを初めてここで導入したということで、福祉関係では非常な大改善を図ったのは四十八年でございますが、それがこの四十五年と五十年の間に挟まっているということでございまして、その影響で一番下の欄の対国民所得比で見ますと、四十五年が五・七九であったのが五十年には九・四八というふうに急増をしているわけでございます。  それから次のページへ行っていただきまして、五ページでございますが、「社会保障給付費の国際比較」を示しております。  上の左の表をごらんいただきますと、イギリス、西ドイツ、フランス、スウェーデン、ここら辺を見ていただきますと、大体社会保障給付費の対国民所得比は二〇ないし四〇%でございます、アメリカはちょっと低いですが。それに対して日本は一三・五ということで、欧米諸国に比べますとかなり低い水準にございます。  ところが、これには二つほど理由がございます。現段階では確かに日本は西欧諸国に比べますと、社会保障給付費の対国民所得比は低いわけでありますが、その理由がございまして、右の方の表にありますように、先ほどちょっと触れました六十五歳以上人口の比率が、日本の場合には現段階ではまだ西欧諸国に比べて低いというのが一つでございます。  もう一つの理由は、年金の成熟度が欧米に比べて日本の場合はまだ低い。この年金成熟度というのは、〔注〕にありますように、老齢年金受給者の加入者に対する割合であります。つまり、今、年金に入っておる加入者、若手の加入者が年金をもらう御老人を抱えるその率と考えていただけばいいですが、それが高いほど成熟化が高いわけでありますが、これをごらんいただきますと、西ドイツ、フランス、スウェーデンあたり見ますと大体三割でございます。これに対して日本は一四・六でありますから半分ということであります。ですから、人口高齢化の度合いと年金成熟度が低いということで、現在だけを考えますと、社会保障給付費の対国民所得比は日本の場合はまだまだ低いということが言えます。  そこで次に、「社会保障給付費の増加する要因」でございます。なぜこんなに給付費がふえていくのかということでございます。年金と医療に分けて御説明を申し上げます。  まず、年金でございますが、ここにありますように、人口高齢化制度の成熟化による受給者の増、それから加入期間の伸び、この二つの要素に伴いまして年金給付費が増加すると、こういうことが言えます。  まず、公的年金給付費はどういうふうに動いているかというのが下の表に示してございます。四十年度に給付費は千五百六億円でありましたのが、五十八年度では十一兆六千五百五十七億円に伸びております。四十年を一〇〇としますと、五十八年は七七四〇でありますから、この十八年間で七十七倍にふえたと、こういうことになるわけであります。  その理由が次に述べてあります。一つは、先ほども申し上げましたが、受給者がふえるという要素がこの給付費の増に非常に大きく影響しております。一番上の表をごらんいただきますと、昭和四十年に老齢年金の受給権者数が四十七万八千人でございました。これが五十七年には九百九十一万二千人にふえております。下に対前年度の増加数を書いてあります。ここ数年ごらんいただきますと、大体七十万人前後がこの人口高齢化と年金制度の成熟化によって年々ふえていくという傾向にございます。  なお、これは老齢年金だけでございますので、このほかに遺族年金とか障害年金とかございますので、受給者全体としましては百万ぐらいになるわけでありますが、老齢年金だけをとっても約七十万人ぐらいずつ毎年ふえている。これが給付費を伸ばす一つ要因でございます。  それからもう一つ要因は、加入期間が伸びるという点であります。②であります。平均加入期間の年次推移をとったのは真ん中の表でありまして、四十四年から八十年まで書いてありますが、昭和四十四年時代には大体平均加入期間は二十四年で年金をもらうということであったわけですが、これは年々伸びてまいりまして、直近の五十五年には三十年が平均になっております。これがさらにどんどん伸びまして、将来、昭和八十年ぐらいになりますと四十年ぐらい加入するのが平均になると、こういうことでございます。  年金は、御案内のように、加入期間が伸びますと、それに応じて支給する年金額がふえます。つまり単価が上がってくるわけであります。ですから、加入期間がどんどん伸びていくに従って支給単価がふえ、したがって給付費も伸びると、こういう関係になるわけですから、上の表の受給者の増と加入期間の伸びが両々相まって給付費を伸ばしてくる要因になるわけでございます。  以上が年金であります。  次が「医療保険」でございますが、人口高齢化、医学医術の進歩等によって医療費は増加する傾向にございます。  医療費がどれくらい伸びているかというのは下の表でございますが、国民医療費総額で昭和四十年が一兆一千二百二十四億でありましたのが、五十八年には十四兆五千百億と、このところ大体年々約一兆円ずつふえております。対国民所得比で見ますと、四十年が四・二二であったのが五十八年には六・五一というふうにふえております。こういう増加を医療費は示すわけでありますが、その原因は次に書いてあります。  その前に、七ページの一番上の線グラフを見ていただきますと、一番上が国民医療費であります。賃金、国民所得、消費者物価というのが並んでいますが、この中で一番国民医療費の伸びが著しいわけであります。最高の伸びであります。  ここで注意しなきゃなりませんのは、この国民医療費が国民所得を超えて伸びているという点でございます。つまり、医療費が伸びましても国民所得並みであればその負担感というのはそれほどでもないということが言えると思うのでありますが、国民所得以上に医療費が伸びますと、その負担をどうするか。国民医療費と国民所得との伸び率のギャップですね、その差について、その負担をどうやって埋めるかという問題が大きな問題として浮かび上がってくるということでございます。  それから、その理由でございますが、まず一は、①にありますように人口高齢化であります。真ん中の棒グラフの図を見ていただきますと、これは年齢階級別に一人当たりの診療費を出したものであります。ゼロ歳から九歳ぐらいまで、まあ乳幼児から九歳ぐらいまでの子供さん、これはちょっとそれ以上の階層に比べて高いのですが、これを除きますと、十歳から七十歳以上までずっとこれ見ますと、きれいなカーブで上昇しております。これはつまり年齢が上にいけばいくほど一人当たりの医療費がかかるということであります。したがって、高齢化が進んで年齢が上へ上へとシフトしてまいりますので、そうなると、必然的に一人当たりの診療費の単価が上がっていく。したがって、これが医療費総額の伸びになっていくと、こういうことが言えると思います。  それから第二の理由は、「一件当たり診療費の年次推移」というのを下の表に書いてありますが、結局医学医術の進歩が非常に著しいということが言えます。まあ医薬品にいたしましても、医療機器にしましても、技術革新は非常に目覚ましいものがありましてどんどん高度化してまいります。それがいわば先ほど申しましたように、死亡率を低下させ、平均寿命を延ばしたという大変な貢献をしているわけでありますが、それ自体は非常に結構なことなんですが、やっぱりそれにはコストがかかるということが言えると思います。この表でごらんいただきますと、四十年には一件当たり診療費が三千九十五円でありましたのが、五十七年には一万七千十七円ということになっています。四十年を一〇〇にいたしますと五十七年は五五〇、つまり十七年間で五・五倍に単価が上がっているということでございます。以上は給付費の伸びとその原因でございます。  八ページはその裏腹でございますが、「社会保障負担の増加」のことを示しております。それでよく使われますのが、①にありますような「租税・社会保障負担の対国民所得比」でございます。これを国際比較してみますと、この一番右の合計の欄をごらんいただきますと、アメリカはちょっと低いんですが、イギリス、西ドイツ、フランス、これが大体五〇%を超しております。それからスウェーデンに至っては六七・八%という非常に高い率を示しております。これに対して日本の場合には一九八四年ベースで三五・〇ということであります。ですから、まあ現段階だけで見ますと、西欧諸国に比べますと日本はまだ負担率が低いということが言えると思います。ただこれが、将来放置しておきますと、どんどん急激にふえていくという要素はございますが、現段階だけを見ますとまだ低いということは言えます。  そこで、日本の場合将来どの程度の負担となるか、あるいはどの程度の負担とすべきかという点、これなかなか難しい問題でございますが、一つの参考としましてここに引用しておきましたのは、②にありますように、臨時行政調査会の第三次答申にこのくだりがございます。「租税負担と社会保障負担とを合わせた全体としての国民の負担率(対国民所得比)は、現状(三五%程度)よりは上昇することとならざるを得ないが、徹底的な制度改革の推進により現在のヨーロッパ諸国の水準(五〇%前後)よりはかなり低位にとどめることが必要である。」。それから同じように、五十八年八月に出ました「一九八〇年代経済社会展望と指針」というところでは、やっぱり同趣旨のことが書いてあります。そこで、臨時行政調査会ではこの点でかなり抽象的に「現在のヨーロッパ諸国の水準よりはかなり低位にとどめる」という表現をしておりまして、何%程度という具体的な数字は出しておりません。おりませんが、当時の委員をされておりました瀬島龍三氏のお話を伺いますと、あくまでこれは論議の過程の話だということなんですが、論議の過程の中では四〇から四五ぐらいの数字がいろいろ論議をされたということをおっしゃっていますので、一つの参考になるのかなという気はいたします。ただ、いずれにしろ、まあ具体的に何%という数字はなかなかそれを述べるのは難しかろうという気はいたします。  と申しますのは、国民負担率の将来予測をする場合にはやはりどうしても経済動向というのを考えなきゃいかぬのですが、これがまあ非常に流動的で極めて不確実な要素が多いということ、それから社会保障の分野だけについて見ましても、特に医療費の場合について考えますと、疾病構造がこれから先どういうふうに変わっていくんだろうかといった問題、それから薬にしろ医療機関にしろ、いわゆる医学医術の進歩というのがどの程度進むかといった点が非常に把握しにくいというか、予測しにくいわけでございまして、そういった意味で、正確に将来どういうふうになるか、あるいはどうすべきかというのを具体的に示すのはなかなか困難だと思います。  ただ、私ども今頭にありますのは、医療と年金に分けて申しますと、医療保険につきましては、現在衆議院で御審議いただいています健康保険法、医療保険の改革案、これを成立させていただきまして、さらにあわせていわゆる医療費の適正化といったものを強力に進めるということをいたしますれば、大体国民所得の伸びぐらいにはとどまるだろう。伸びていくことは伸びていくんですが、伸び方が国民所得の伸びと大体パラレルの格好でとどまるんではないかというふうに思っています。  ただ、医療保険はそうなんですが、年金について見ますと、先ほど来申しておりますように高齢化が進みますし、それから制度の成熟化も進んでまいりますから、年金の方は、これも今御提案申し上げております年金の改革案、これをお通しいただきましても、やはりそれでも給付費は増加していかざるを得ない。したがって、それに伴って年金についての負担増はある程度は避けられないと、こういう考え方は持っております。  それから、次の九ページへ参ります。  そこで、以上申し上げましたような給付費の増、あるいは負担の増といったことを頭に入れた上で、今後の社会保障をどっちの方向へ持っていったらいいかということでございます。まあ再々申しますように、人口高齢化問題というのが社会保障の分野に非常に難しい課題を投げかけているという認識を持っているわけでありますが、本格的な高齢化社会を迎えます二十一世紀におきましても、国民の健康と暮らしをどうしても守っていかなければならぬわけでありまして、そういった意味で、これから社会保障をどっちの方向へ持っていくべきかというのは大変難しい問題ありますが、どうしても取り組まなければならない、避けて通れない問題でございます。  そこで、まず(1)の「年金」でございますが、そういう高齢化が本格化した二十一世紀においてもやはり制度が安定していかなければいけませんので、その制度の長期的安定というのは前提条件でございます。そこで、縦割りの制度体系を再編成するとか、あるいは給付と負担の均衡を図るといったことで今あの改革案をお願いしているわけであります。①の制度体系の再編成、これについてはまあ詳しくは申しませんが、共通部分に基礎年金というのを導入する改革案の審議を今お願いしているわけでございます。  それから、特に年金の場合に重要視しなければならないのは、②の給付と負担の均衡ということを考えなければいかぬということでございます。つまり均衡とは、公平あるいはバランスと言ってもよろしいかと思いますが、そういった物の考え方をこの年金に入れていかないといけないということを考えているわけであります。  上の表は「加入期間の伸びと給付水準」を示したものであります。ここで、ケースというところの下にありますように、平均標準報酬は二十五万四千円の場合の受給年金の月額であります。これは夫婦であります。下は現役の平均賃金、これはボーナスは除きますが、これに対する年金額の比率でございます。  それで、今は大体、この右から三番目にあります三十二年加入、これが現在の姿だと考えていただいてよろしいかと思います。これでいきますと、夫婦で受給する年金の額は平均で十七万三千百円であります。これは現役の人にとってどういう感じかというのが下の率になるわけですが、現役の平均賃金のこれは六八%になります。つまり、現在働いている現役の人の平均賃金の六八%を受給者である老人夫婦がもらっていると、こういうことでございます。  これは現在なんですが、これがどんどん上がってまいります。それで、四十年加入、さっき六ページで御説明しましたように、昭和八十年には四十・三年にこの加入期間がないます。だから、これからざっと二十年後の姿というふうに考えていただけばいいんですが、そのときになりますと四十年加入が平均になります。そうしますと、もらう年金受給額は月額で二十一万一千百円になります。これは現役と比べてみますと、現役の大体平均賃金の八三%に当たります。つまり、保険料を拠出する現役世代、これはまあ家族は恐らく夫婦子供二人というのが標準的でしょう。それで税金も払わなければならない、保険料も負担しなければならない、それから子供の養育費もかかる、場合によっては住宅ローンの支払いもかかるといった現役世代、これが保険料を払うわけです。もらう方の老齢世代は夫婦二人。それから普通の場合には税金も保険料も負担がない。でありますので、老人の方が現役の八割以上の年金額をもらうのは果たしていいだろうか、公平かどうか、あるいはバランスがとれているかどうかといった、ここら辺が一つ十分考えるべき問題であろうとは思います。余りこれが上がりますと、やっぱり出す方の側の納得が得られない。国民全体のコンセンサスがまとまらないとなるわけであります。  そこで私どもは、これやっぱり八三%では高過ぎる。四十年加入ぐらいが標準になるような時代では当然こうなるんですが、これやはり現役とのバランス、均衡、公平といった面から見ると高過ぎるというふうに考えまして、〔注〕2にありますように、今回の改正案では、「現役の平均賃金に対する比率を現在と同じような七割弱」、つまり六八、九%に維持することにして、制度の設計をして、審議をお願いしているわけでございます。  それをまた保険料の面から見たのが下の表でございまして、例えば厚生年金でいきますと、現在一〇・六%、これは労使で折半しているわけでありますが、これが現行制度のままでまいりますと、昭和百年ごろには三八・八%、これは標準報酬の三八・八%になるわけですが、今の約四倍まで上がってしまう。これ改正案でやりますと二八・九%ぐらいでとめられる。さらに、〔注〕の2にありますように、「仮に、将来支給開始年齢を六十五歳に」上げるということをやりますと、この二八・九はさらに落ちて二三・九と今の大体二倍強でおさまるということになります。もちろん今回は支給開始年齢は触れておりませんけれども、仮の試算をしますとこうなります。  国民年金につきましても同じような傾向でありまして、現在月額六千二百二十円でありますが、現行制度のままいきますと一万九千五百円。それから、改正案ではそれを一万三千円ぐらいに抑えたい、こういうことでございます。ですから、世代間の公平という面、それから過度の、過重な負担を避けるという面から言うと、ある程度の給付を抑えるということもどうしても考えざるを得ないんではないかというのが私ども考え方でございます。  次に、「医療保険」でございます。十ページでございます。  医療費につきましても、やはり先ほど申しましたような上昇をそのまま放置するわけにはまいりません。やはり医療費の規模を適正な水準にするということが第一であります。それから、やはりこれは医療保険につきましても、給付と負担の公平を図るという見地がどうしても避けて通れない問題だと思っております。  そこで、上の図をごらんいただきますと、御案内のように医療費というのは結局は保険料と国庫負担、若干地方負担がある場合がありますが、国庫負担と患者負担、この三つで賄われるわけでございます。それがその区分に応じて過去から現在までどうなってきたかというのを示したのが下の表であります。昭和三十五年のときは、右の方に保険料がありますが、被保険者が二五・七%持っておって、事業主が二四・六、国庫が一五・七、地方が四・〇、患者負担が三〇%というのが、だんだん変わってきておりまして五十六年度の姿になっております。  ざっとごらんいただきますとおわかりのように、まず保険料のところ、これは被保険者、事業主ともほとんど変わっておりません。三十五年から五十六年度まで変わっておりません。それから、地方負担も額は少ないですが、これもまあまあ変わっておりません。著しく変わったのが、国庫負担が大幅にふえて、患者負担が大幅に減ったということでございます。これはなぜかといいますと、結局従来の医療保険の歴史は、国庫負担をふやすということで患者負担を減らして給付改善を図ってきた、こういう歴史と言っていいかもしれません。  しかし、注意しなければいかぬのは、国庫負担でありますが、これは言いかえれば税金でございます。税金なんです。ですから、税金でありますから、従来はいわば高度成長に支えられまして、毎年、税の自然増収が入ってまいりましたから、こういうことが可能であったわけでありますが、今や低成長時代になりまして、税の増収というのはなかなか期待できないということになりました。ところが一方医療費というのは、先般来申しておりますように、本来年々増加していくという要因を内在しているわけでありまして、そこをどうするか、つまりふえていく給付に対応する財源。これをどこに求めるかというのが今の時代の一番大きな問題になってきたと、こういうことでございます。  しかし、どこで持つかと申しましても、先ほど言いましたように、保険料負担か国庫負担か患者負担しかないわけであります。国庫負担というのは税金であります。そうなると、仮にふえる分を税で賄うかというと、やっぱりこれはどうもそうもいくまい。増税なき財政再建ということでもありますし、増税はなかなか難しい。じゃ保険料を上げてそれを賄うかと。これも、保険料といいましても出す方にとってみますと税金みたいなものでありますから、なかなか保険料を上げるといっても納得はそう簡単には得られない。じゃ患者負担をふやすかと。これもなかなか御不満の方もいらっしゃるんですが、保険料か患者負担かということを考えますと、これもいろいろ見方はあるんですけれども、例えばよく言われますのは、健康な方は、患者負担は少しぐらい多くてもいい、しかし保険料は余り上げてもらっちゃ困ると、こうおっしゃいます。ただ、病気がちの人は、保険料は少しぐらい高くてもいいが、いざ病気になったときの患者負担は少なくしてほしいと、こうなりますですね。そこの兼ね合いというのはなかなか難しいのでありまして、どっちで賄うか、これは大変難しい問題でございます。  ただ、そこら辺は、要は選択の問題だと思うわけであります。つまり、国民の皆さん方がどの組み合わせ――一定の枠は決まっているわけでありますから、どういう組み合わせが一番妥当かという選択をしてもらう以外にはないだろうと、こういうことであります。  そこで、今衆議院で審議をお願いしております健保の改正法案というのは、まず税金をふやすというのは、これは難しかろうから税ではやらない。それから保険料も同じようなことで、税と似たような制度ですからこれも上げられない。したがって、無理のない程度である程度の患者負担を上げることによって将来の負担増というか、給付と負担の関係整備をしたい、こういう考え方で出しておるわけでございます。しかし、ここら辺は立場が違うに応じましていろいろな御意見が出てきますけれども、要はこの組み合わせの話ですから、この中から一番妥当な線を見つけなきゃならないし、またそれは見つけられるものというふうに考えております。  それから最後のページへ参りまして、もう一つ医療保険で忘れてなりませんのは、制度間の格差でございます。上の表にありますように被用者保険、つまり健保とか共済組合でありますが、これは本人十割、それから家族は入院が八割、外来が七割、国保は全部本人、家族とも七割と、こういう仕組みになっております。これはばらばらなところがございますが、主としてこれは各制度の沿革的な理由に基づくものであります。ただ、皆保険が実現しましてからもうすでに二十年以上経過しているわけでありまして、現段階でこの医療保険制度全体を見渡した場合に、こういう格差があっていいかというのは一つの問題だろうと思います。  そこで私どもは、すぐというわけにはまいりませんが、将来はこれを大体ならして八割程度に統一するのがいいんではないかということ、それからその第一段階として今回の改正法案では、第一段階は本人は九割という線を打ち出しているわけでございます。  それからもう一つの問題は、その下の表にありますように、高齢者の加入率がやはり違うわけです。上は給付率。制度そのものが違うんですが、下は制度の中身と申しますか、加入者の構成が違うということでございます。それで、六十歳から六十九歳それから七十歳以上と、高齢者の率でございます。これをごらんをいただきますとわかりますように、組合健保が一番低いわけで、国保が一番高い、圧倒的に高いということであります。七十歳以上で申しましても組合健保は二・七九%しかおりませんが、国保は一〇・一七%。つまり加入者の構成がこうなっていますから、結局国保が一番体質が弱い、組合健保が一番強い、政管健保がその中間と、こういうことでございます。  これは従来、まああった話なんですが、実は従来はこれを国庫負担である程度調整しておったわけです。国保は総医療費の四五%の国庫負担が出ております。これは給付費に直しますと六割ぐらいになるんですが、それに対して組合健保はなし、給付に対しては国庫補助なし、政管健保は一六・四%の国庫補助ということで、国庫補助を傾斜配分することによってこの体質の差を改善しておったということが言えます。さらに加えて、さきの老人保健制度を成立させていただいたわけですが、これでは、老人医療費の七割を賄う保険者拠出金というものの半分を各保険者の加入者数で案分するという方法になりましたので、これで、要するに老人を多く抱える制度は負担が減るし、老人を少なく抱える制度は負担がふえるという意味で、負担の公平がその分できたわけであります。  これをさらに推し進めまして、今回の改正案では退職者医療制度というのつくって、そこでさらにこの体質の差の改善を図る。つまり制度間のアンバランスの是正を図るということを考えているわけでありますが、こういった方向、つまり制度間の格差の是正という方向の改善が一つ必要ではないかという考え方を持っております。  いずれにしろ高齢化は確実に、しかも非常に急ピッチで進んでまいります。それに引きかえ、経済情勢というのは一時の高度成長はとても期待できないという状況にございますので、その中でどうやって将来の国民の健康と暮らしを守っていくかということが大変な問題になるわけであります。  そこで、私ども制度をとにかく長期的に安定させなきゃいかぬというのが大前提でありますが、それとともにいろんな面での均衡あるいは公平といった考え方を持って制度を見直していかなきゃいかぬのじゃないか。その中には給付と負担の均衡もありましょうし、あるいは年金で申しましたような世代間、受益者と拠出者といった面での公平もありましょうし、あるいは今申しました制度間の公平もありましょう。いずれにしろその一定の枠内で、あるいは限られた財源のもとでの組み合わせでありますから、そこにはまあ何とか国民の皆さん方の合意によって一つの選択ができるんではないか、なされるんではないかというふうに思っておりますけれども制度改革、いろいろ問題がございますけれども、ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。
  12. 安永英雄

    ○小委員長安永英雄君) 以上で関係省庁からの説明聴取は終わりました。  本件に対する質疑は午後に行うこととし、午後一時まで休憩をいたします。    午前十一時四十二分休憩      ―――――・―――――    午後一時三分開会
  13. 安永英雄

    ○小委員長安永英雄君) ただいまから国民生活経済に関する調査特別委員会高齢化社会検討小委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、高齢化社会に関する件を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は小委員長の許可を得て順次御発言を願います。
  14. 橋本敦

    橋本敦君 まず、「今後の雇用展望雇用対策方向」ということで御説明をいただきました。それに関連をしてお伺いしたいと思っております。  まず第一に、失業の問題ですけれども、六十五年度の完全失業率の水準、大体二%程度目安にしてというお話でございました。それも努力目標ということでは理解できるわけですが、実際は失業問題というのはもう少し深刻な状況になることを展望する必要があるのではないかという気がするわけです。具体的には、例えば五十八年度平均でも、総理府の労働力調査によりますと二・六%ということになっておる数字がございますし、それからさらに、ことしに入って出ました資料を拝見いたしましても、総理府の方で発表したのによりますと、ことし二月で完全失業者数は百七十一万、完全失業率は三・〇%と、こういう数字になっておる状況であります。したがって、六十五年度で二%程度目安ということは、目安としては理解できますが、果たしてそんなふうにうまくいくかどうかということで、失業問題についてはもう少し現実は厳しいのではないか、そういう意味でリアルな状況をもう少し見た上での展望を立てる方がいいのではないかということが一つ問題になろうかと思います。  それから第二番目の問題として、完全失業者をどうとらえるかということのとらえ方の問題について御意見を聞きたいと思うわけであります。  例えば五十七年三月に総理府の統計局が出しました労働力調査報告によりますと、就業を希望するけれどもいろんな事情で求職活動ができない、こういう非労働力人口、これが二百三十三万という数字が出ております。それから、週十五時間未満しか就業していない、こういう家族の労働従事関係、あるいは一時帰休、そういう休業者については、これは就業者扱いにしておりますけれども、その数がおよそ百十二万人。ところがこういった状況は、例えばアメリカの統計などでは、週十五時間未満などでは失業者に入れられるというのは御存じのとおりでありますから、これに政府統計の完全失業者百四十七万人を加えますと、その総数が四百五十万人以上と、こういう状況になるのではないかと思うわけですね。したがってこういう点を考えますと、日本失業問題というのは諸外国に比べて緊張度合いが少ないということがよく言われるんですけれども、将来経済予測がどうなるか、先行き不安もぬぐい切れない状況のもとで、完全失業者というのは実態としてはもっともっとふえるのではないか、ここらあたりをどう見ておられるかということが二番目の問題であります。  それから三番目に、高齢者雇用問題ということでいろいろと労働省としても施策立案で御検討いただいておることはお話を伺いました。しかし、それにしましても、高齢者求人倍率が〇・一一ということでございますし、それからさらに御指摘のように、五十歳台後半及び六十歳台前半の就業希望が一層今後増加するであろう、こういうことを考えますと、高齢者雇用創出の展望というのはかなりの努力をいたしませんとなかなかうまくいかないだろうということを心配するわけであります。  そこで労働省では、その点については、一つには定年延長促進の問題、あるいは六十歳台前半層雇用就業対策として、就職あっせんや奨励金制度の充実の問題、あるいはシルバー人材センターの充実の問題、こういったことを努力していただいているというお話を聞きましたが、その前提として私は、きょうもお話がありました高齢者雇用率六%の達成を具体的にどうやっていくかということ、これが非常に大事ではないかと思うんですね。その点については今後指導を強めていくということをおっしゃっておられますが、私はこの点で特に問題になるのは、大企業ほど雇用達成率が悪いという状況を積極的に改善する必要がある、この問題を指摘したいわけであります。  例えば高齢者雇用状況を見ますと、平均では未達成率は先ほどお話がありましたように四八・五%ということでございますけれども、これを企業別に千人以上をとってみますと、五十八年六月一日現在で六九・九%が未達成、三百人から五百人までをとってみますと五六・三%、五百人から千人までをとってみますと六三%、三百人以下で見ますと四三・七%というように、企業規模が小さくなると努力をして雇用達成率が高まっているわけですね。だから、これは身障者雇用の問題でも常に指摘をされたことですが、大企業ほど労働省指導を積極的に受け入れていない状況があるのではないか。この点について特段の今後の指導強化が望まれると思いますが、これについてどういうふうに指導強化するか。私は、この問題については雇用達成率は法律で厳しく義務化するという方向も含めて検討される必要があるのではないか、こう考えておるんですが、この点についての御意見も承りたいと思うわけであります。  それからもう一つは、定年延長の問題も御指摘にございました。この定年延長については、昭和六十年をめどにして新たな立法措置その他も検討するというお話でございましたので、その方向にいくことを希望をしておるわけでございますけれども、六十年度での立法化の見直しということが実際にやられるためには、もう既に五十九年度に入っておるわけですから、大体の展望内容が具体的にはもう策定されていかなくちゃならぬのではないか。そこで中身に突っ込んで、そこらあたりの内容をどのように御検討しつつあるのか、その点の状況がわかればお聞かせをいただきたいというように思っているわけであります。  最後に、シルバー人材センターにも関連をいたしますが、五十歳台後半から六十歳台前半という高齢化社会における雇用の創出ということになりますと、まさに御報告にもありましたが、高年齢ということに適応して、一つは長年にわたって培われてきた経験能力を社会的に活用するということと、体力に応じた労働態様を検討するということと、それから労働力を提供するといってもその志向がさまざま多様化しているというお話がございましたが、それに応じて企業が受け入れられる状況というのはどうやってつくり出していくかというような、非常に難しい問題がいろいろあるわけですね。だから、したがってその点は、シルバー人材センターということで検討あるいはいろいろなさっていきましょうけれども、それを受け入れる社会、あるいは企業の側の、求人の側の需要をどう創設をしていき、どう指導していくかということが私は具体的にはかぎになっていくだろう。そこらあたりを見通して今後どのような対応を御検討いただいておるのか。  以上多岐にわたりましたが、労働省関係について御意見を聞きたいということでございます。よろしくお願いします。
  15. 守屋孝一

    政府委員守屋孝一君) 御質問の点が非常に多岐にわたっておりますので、あるいは答弁漏れがありましたら、後で御指摘があればまたお答えします。その点御容赦いただきたいと思います。  まず第一点の失業率が甘いかどうか、六十五年を見ての二%というのがどうかという点でございます。これは、一つは中期的に見た計画でございまして、この計画策定は五十八年度の後半に計画を策定いたしました。私どもがこの計画策定の前提条件、四ページにも申し上げましたように、我が国経済は中期的に見ましたら、一応「雇用安定を進める上で適度の成長を持続する能力を有している。」、こういう考え方でこの計画をつくっております。したがいまして、確かに現在は、相当落ち込んでいるといいますか、失業率が高く出てきております。  ただ、この原因がどこにあるかということでございますが、最近の失業率が上がっている要因というのは、やはり何といいましても女子失業者の増大という点があるわけです。しかもその場合に、女子の増大というのが、いわゆるパート雇用とか、ああいう面での女子労働力化、またこれは意識調査が入っておりますから、この調査時点における失業者というのは、労働の意思と能力を持っている人、意思だけでもあれですが、能力と両方を備えている場合の意思という場合に、働きたいという意識というのが女子の場合に非常に最近高く出ておるということがございまして、この方の対応の仕方はある程度短期的な景気にも非常に左右されておりますが、今後パート労働の推移等がどうなるかという面も我々十分見なきゃいけませんし、そういう部分失業率が非常に高目に出ておるということもあるんじゃないかと思っております。今後そのミスマッチが起きないように、対策要を得ますればほぼ二%を目安とした水準に我々は持っていけるんじゃないかというように考えております。  それと関連いたしまして、完全失業者のとらえ方でございますが、これは日本もアメリカも余り大差はございません。その月の最終の週、一週間に収入を得る労働をしたかしないかというところで考えております。失業者のとらえ方というのは各国によって若干の差異はございます。イギリスなんかですと、御承知のように今十数%、フランスが今一番高うございますが、アメリカは最近六%台でございましたか、大分状況よくなってきております。  そこで、例えばアメリカと日本の場合に、失業率をはじく場合には分子と分母の関係があるわけなんです。問題は分母の部分がどうかということで、例えば日本で言えば自衛隊、アメリカで言えば軍隊等を入れるか入れないかというような問題もあるわけでございます。細かい点につきましては、いろいろ就職がもう決まっておって、まだその調査時点では働いていない場合、それを失業者としてカウントするか、もう決まっておったらそれは失業者ということでカウントしないかというような問題もあるわけでございますが、その点分母の方が問題になりますので、分母をいろいろ諸外国と合うように合わせてみましても、さして日本失業率がそう大きく動くというものではございません。やり方によりますと三%台ぐらい、一ポイントぐらいは上がる場合がございますが、そう動くものでもございませんし、そういう意味で私は、日本失業率が非常に低目に出ておるという見方は必ずしもどうかなという感じは持っております、統計上の処理としては。むしろ失業率の出方というのは、日本の場合ですと、大体企業が、景気が悪くなりましても直ちに解雇するという形をとりません。企業が極力自分の内部労働市場に抱えておこうという意識が非常に強く働くわけですね。といいますのは、景気の非常に悪い時期、昨年、一昨年の時期に、一体企業が自分のところで抱えている労働力についてどういう見方を持っているかという調査をやったのがございますが、過剰感――自分のところは余分に人を抱えているという過剰感を持っている割合が非常に高いわけなんです。最近はこれがだんだん低くなっているというようなこともございまして、なかなか我が国の場合はいわゆる終身雇用制というものがございますから、欧米諸国のように、レイオフのような形で、生産が落ち込めば直ちに人を解雇するという形をとらない。そのかわり逆に景気がよくなってきますと、アメリカの場合ですとすぐ人を雇う。しかし日本の場合はすぐ人を雇うんじゃなくて残業をやる。だから景気がよくなると、最初に動くのはいわゆる超過勤務の時間数がずっとふえてくるわけですね。そういう形で動いておるという、それぞれの国のいわゆる採用というか、労務管理に関する対応の仕方が違う面が非常に大きいのじゃないか。ある意味では、不景気になった場合に直ちに切るんじゃなくて、企業がそれまで抱えておくというのはいい面だろうと思います。そういう点もありますので、ちょっと失業者のとらえ方は、諸外国との比較においては、その評価というのは必ずしも日本の場合低目に出ているというわけには私はいかないんだろうと思います。  次に、いわゆる高齢者雇用率の問題でございます。  現在、法定雇用率は六%でございまして、今先生御指摘のように、大企業は確かに実雇用率が低いというのが事実でございます。ただ、これを法制化するかどうかという問題は、我々よく慎重に検討しなければならない問題だと思います。というのは、身体障害者の場合は、これはまさにそういうハンディキャップをずっとお持ちのわけです。高齢者というものは、人間はだれも年をとれば高齢者になるわけでございます。企業の今までの生い立ちにもよりまして、戦後急成長したような会社は比較的年齢構成が若いわけでございます。そういう企業に対して、今いる若い人を解雇して高齢者を揺れというようなことを言うわけにもこれはなかなかまいりません。むしろ重要なことは、その企業が今後高齢化社会に向かうに従って、高齢者を早目に切らない。例えば五十五の定年をしいておいて、そこで五十六以上はもうやめてくれというような形で解雇しないという形が私は非常に重要だろうと思います。  そういう意味では、定年延長ということが非常に重要な話になるわけでございまして、私ども先ほども午前中御説明いたしましたように、大企業定年延長というのは相当進んでおります。近々六十歳以上の定年制を導入するという方針を決めているところまで含めますと、五千人以上の企業でございますと、大体九割がそうなっておる。問題は、いわゆる中堅企業部分でございます。私どもは、これを法定化して何かペナルティーをつけるとか、法的に強制するというのが果たしてなじむだろうか、現実に。そういうことをやって、本当に高齢者雇用が進むかどうかという問題でございます。  というのは、高齢者雇用の問題は、今申し上げましたように、定年延長をするということが非常に重要なことでございまして、しかもその場合には、ただ法律でもって強制するということではなくて、むしろこれは労使が十分に話し合う問題の場が非常に広うございます。といいますのは、ただ、今の日本雇用の慣行ですと、これは御承知のように終身雇用とともに年功序列型の賃金体系をとっております。したがいまして、そのままで定年延長するということになりますと、企業によってはとても労務コストの負担に耐えられないということになってくるわけでございまして、今のいわゆる年功序列型の賃金体系というのが、五十五歳の定年制をしいているところは、五十五歳を念頭に置いての賃金上昇カーブをとっているわけです。ある意味ではこれを倒していく必要があるわけです。倒すような場合には、ただこれは企業が勝手に倒すわけにもまいりませんし、これは労使十分コンセンサスを得る話でございます。  そういう意味で、高齢者雇用を広げる意味においての労使の話し合いが非常に重要でございますので、私どもはこれを法的に強制するというよりも、むしろ話し合いを進めていけるように、またそういうことを企業がやりやすくするように、いろんな奨励措置をとるのが今の段階では非常に重要であろうという判断をしております。  同じことは、その後の、先生御質問の定年延長についても言えることでございます。  私は、先ほどこの雇用計画で読みました点は、これは六十年に立法措置をとるということを申し上げたんじゃございません。もしそのようにお聞きでしたら、これは非常に誤解がありますので、今訂正させていただきますが、立法措置をとるかどうかということを検討しますと申し上げたわけでございます。したがって、立法措置をとるというふうに決めたわけではございません。何となれば、この定年延長の問題も、今申し上げたように、労使で話し合いをしてこれを進めていくということが非常に重要でございます。ただ法的に強制して、その効果がすぐあらわれるという性格のものでもございませんし、そういう意味合いにおいて、私ども定年延長促進についてはいわば助成措置を講じるなり、いろんな指導措置を講じるということでこれを進めておるわけでございまして、例えば定年延長の進んでいない業種につきましては、私どもの方へそれぞれの業界で有力な企業の代表をお集まりいただいたりいたしまして、定年延長促進方についていろいろ御要請も申し上げ、またこういう助成措置があるということもお話ししているわけでございます。そういうような措置を講じて私ども高齢化対策を進めていこうということを考えております。  したがいまして、最後の御質問の高齢者雇用の場をどうやって創出するのかという点でございますが、これはやはり私どもは、何はともあれ今一番必要なのは六十歳台前半層がふえる中で、こういう人たちがどのようなニーズを持っているかということを前提にして対応していく必要があると考えておりまして、実は六十歳台に入ってまいりますと――大体私どもは六十歳台というのは引退過程期だというふうに考えております。七十になると、少なくともこういう政治家として活動されるような、政治的分野とか経済的分野はこれは別にいたしまして、人に雇われる、いわゆる被用従属関係に立つという形で働かれるという場合には、ほぼ私どもは七十歳は完全に引退されてしまっている。六十歳台が引退過程期だと。しかもその中で、六十五歳というのが非常に大きな節目になっておると思います。  そこで私どもは、これから六十歳台前半層についての企業の受け入れ態勢を進めるということを考えておりますが、その場合にも必ずしもこのあたりの年齢層が、今申し上げたように、人によってはもう引退したい、人によってはフルタイム雇用につくのはちょっともう体が持たぬ、あるいは年金その他の関係がございまして、フルタイム雇用を必ずしも希望されない層がこのあたり大分ふえてまいります。ですから私どもは、ここは必ずしも定年延長とかいう感じではなくて、雇用延長という言葉を使っておりますが、フルタイムでなくても結構ですと、例え、何といいますか、半日勤務あるいは嘱託というような感じでもいい、再雇用してもらえればいいと。  まず第一点は、企業の中に――企業外労働市場に出すんじゃなくて、企業内労働市場の中で抱えてもらいたいということで、いろんな助成制度を設けております。特に今年度からは、フルタイムではなくて半日勤務あるいは短時間就労の場合につきましても、一定の助成金を出す制度を今回導入することにしております。これは今衆議院で御審議いただいております雇用保険法の改正が通過いたしました暁に、あわせてその制度をとりたいというように考えておりますので、何分雇用保険法の審議の方をよろしくお願いしたいと思っております。  ちょっと余りあれし過ぎましたが、そのほかにも、そういう多様な就業の形として、必ずしも雇用という形は好まない、いわゆる雇用でない就業という分野の、いわゆる一種の任意就業的なことを希望される方も多いわけでございます。これが先ほど先生がおっしゃった、シルバー人材センターを受け皿にしたいというふうに考えておりまして、ここは多様な対策、多様なニーズに応ずる多様な助成措置でもってこれを進めていきたいというのが私ども基本的な考え方でございます。  もし答弁漏れがございましたら、御指摘があればもう一回説明さしていただきます。
  16. 松岡滿壽男

    松岡満寿男君 高齢社会を急速に迎えようとしているわけですけれども、そういう中でまず労働の関係ですけれども労働力率ですね。これが先ほどの御説明を伺いますと、三十三ページの表を見ると、六十歳から六十四歳で日本が七六%、イギリスは高いわけですけれども、その他ヨーロッパ諸国は非常に低い。それから六十五歳以上になるとさらに低くなっておりますね。この男子の労働力率国際比較を見ますると、非常に極端にこうなっているのですけれども、ヨーロッパの場合は非常に高齢化が進んできておるわけなんですが、この数字の意味するものは一体どういうことなのか、その辺をちょっともう少し御説明をいただいておきたいと思うんです。  それから、先ほど失業率の話が出ておりましたが、日本も二・八%の失業率ということで、非常に高いじゃないかという議論があったときに、先ほど説明のように、女子労働の問題が入っている、パートの問題が異常に高い失業率というものを形成しているんだというような御説明があったわけですけれども、今後さらに、こういうサービス産業女子が進出してきておる段階では、この失業率の問題はやはり我が国経済動向を大きく決めていくポイントになっておるわけですから、そういうパートタイマーについては何かこう説明をつけるとか、別に抽出していくということを考えていかないと、失業率について毎回毎回説明しなきゃいけないという問題が出てきはしないかと思うんです。今後は、高齢者の問題が出てくれば問題がさらに複雑になってくる。いわゆる景気動向の指標と失業率をかみ合わせていくときに、いろんな問題が出てきやしないかと思うんですね。  この資料を拝見しておりましても、女子の問題については景気とほとんど関係がない。「景気の変動に応じて感応的な動きを示していない。」というような説明もしておられるわけですから、そういう経済指標に使われる失業率の中から、そういう問題についてはやはり排除していくことを検討していかないと、非常に難しい問題が起きてこないかなという感じがするんですが、その辺につきましてのお考えをひとつ伺っておきたいと思います。  それから、総理府の資料を拝見していますと、現状について非常にいいデータが出ておるわけですね。だけど、我々疑問に感じるんです。例えば死についての不安がないかというようなことについても、非常にいい回答があるんですけれども、我々の年代でも、時としてはそういうものへの思いをいたすこともあるわけでありまして、これはアンケートですから、それだけのきちっとした回答が出ておるわけだと思うんですけれども、私はむしろ、この現状のアンケートは、現在の老後を迎えておる人たちというものは、まだ家族構成も子供の数も多いわけですよ。しかし、これから悲惨ないわゆるエージド・ソサエティーを迎えていくということになると、むしろ子供が一人しかいない家族とか、それから、あるいはもう本当に単身であるとか、子供のいない世帯というものについてのいろんな老後生活心理面に対するアンケート調査というものを、別に私はこれはやる必要があるんじゃないかと思うんです。恐らく今の状況、現在の老人たちはまだまだ恵まれておる。これからさらに深刻な事態がエージド・ソサエティーの中では生じてくるわけでありますから、そういう角度でのひとつ調査も私は必要じゃないかと思うんです。  せんだってのこの委員会でのある参考人の意見では、現在の出生率一・七ですか、一・六幾つですか、だと、千二百年後には我が国の国民は二千人になるんだという非常に厳しい御意見もあったんですけれども、そういう事態を考えますると、このアンケートを見て安心しておるわけには私はいかないだろうということが一つ気になるわけであります。  それと、いずれもやはり三世代同居については非常に満足度が高いわけです。これは非常に重要な問題だと思うんです。今後のやはり老人問題の大きなかぎを握っておるのは、私はこの三世代同居の問題だと思うんです。  それでは、三世代を同居させていくためにはどういう条件をつくっていけばいいのか。中国あたりは住居環境からやむを得ず三世代同居という形になっておる場合もあるわけでありまして、我が国のように生活水準が高くなってきておる、そういう中で、それぞれの自己主張もしながら、なおかつ三世代同居をどのように円滑に促進していくかということがこれからの大きな課題だというふうに考えておりまするが、こういう問題についての、同居についてどのような対応策が、同居させるような政策を進めていくときにはどういう問題があるのかということについて伺っておきたいと思います。  それから厚生省の関係なんですが、年金の我が国のレベルですね。せんだっても三浦参考人ですか、我が国の年金というものは、非常にかなり国際比較でもレベルが高いということをはっきり指摘をしていただいたんですけれども、マスコミその他でかなりいろいろな意見もあるようですね。この辺の実態というものはどういうふうに考えたらいいんだろうかということをひとつ伺ってみたいのです。  せんだって郵政省の方の資料で、六十歳以上の預金の目標額が二千五十万円、六十歳以上の人は二千五十万円預金したいという目標を持っている。それに対して実際に保有しているのは八百八十四万だと。それから、七十歳以上は二千百七十三万円目標額で持っておるけれども、実際の保有額は八百三十二万というデータが出ておるんですね。その中で、六十歳以上の平均余命の必要経費が、例えば六十歳以上の平均余命は十八・九九歳ですか、そうすると、十九年間で必要な消費支出が五千八百八十五万円というあれが出ているんです。そうすると、厚生年金支給額がこの十九年間で概算で三千二百六十五万と。そうすると、その不足額が二千六百十九万というのが出ておりまして、六十歳以上の方で二千万ぐらい要するに預金をしておきたいと。しかし、実際八百万だという。その二千万がたまたま不足額に、大体十九年間生きるとしてなってきておるんですね。そうすると、やはり年金だけでやっていくというのは非常に難しい。そのために預金をしておるという現実があるのか、どうなのかよくわかりませんけれども、少なくともそういうデータが出ているようなんですが、我が国の年金のレベルというものが一体どうなんだろうかということが一点。  もう一つは、今いろいろな経済活動でも、民間活力の活用ということが出ておりますけれども、現在福祉関係でもいろいろとボランティアであるとかあるいは民間の方々の活力が非常に活用されておるわけですけれども、今後の福祉のあり方の中で、そういう民間福祉というものについてどのように考えていけばいいのかという点についての御意見があれば伺いたい。  それから、高齢者の今後の対策については、前回もこの委員会の中で参考人のいろんな意見を聞いたんですけれども高齢者のやはり細分化をしていくべきだ。一律六十五歳以上を高齢者ということにしておるけれども、実際は、先ほど御意見があったように、リタイアの時期、七十歳というものを一つのメルクマークにしたらどうかとか、あるいは肉体的な面から見れば、要するに非常に有病率が高くなっていくというのは八十歳からだとか、あるいは七十五歳で切ったらどうかとか、そういう高齢者の細分化の問題が出てきておるんです。そういう問題は、今現在そういう各省の施策の段階では恐らく一律に扱われておると思うんですけれども、恐らくこれからそういう高齢化、高齢社会に移行していく段階では、当然高齢者の、例えば前期高齢者層とか後期高齢者層というような細分化の問題、この問題を各省それぞれどのように考えておられるのか、御意見があればひとつ伺っておきたいというように思います。
  17. 守屋孝一

    政府委員守屋孝一君) 御質問の点で、ちょっと話が前後するかもわかりませんが、まず失業率の点でございます。  これは実は私どもの方で調査しておりませんで、総理府の統計局の方の労働力調査でこの数字が出ますが、この労働力調査をごらんいただければ、実はこれは男女別数字も出ておりまして、ただ一般的に新聞等に出ますのが、これが男女計の一般の数字がぼんと出るわけでございます。それで、異常に高くなったというお話がいつも出るわけでございますが、ちょっと一、二例を挙げてみますと、ここ数年の間にこれを男女に分けて完全失業率のアップした状況を見ますと、昭和五十年ごろから五十七年までで見ますと、男の場合は〇・四ポイントの増加をしておりますが、女子のこれは、二%から二・四%に男子が増加したときに、女子の方が一・七から二・三ということで、〇・六ポイント増加しておると、いわゆる増加率としては五割増しになっているわけでございます。  これは今手元にちょっと五十八年で年間計の細かい数字を持っておりませんので、恐縮でございますが、そういうようなことで、私今、この原因としては女子労働力化と、しかもそのパートの部分が大きいだろうと申し上げたわけでございまして、これはいろいろ御質問を受ける場合にはいつもそのように申し上げておるわけでございますが、ちょっと統計上そう分けて、こういうことだからこれは低いんだというのを毎回新聞記者に発表をされるときに言われるかどうか、ちょっとこれはいろいろ問題もあると思いますので、御質問等があればいつもそのように答弁しております。私どももいろいろデータ等を公表するときに、分析した場合にはそういうお話もしておるわけでございます。  それからもう一点、労働力率が高いということでございますが、実はこの表は、ちょっと説明を若干させていただきますと、この三十三ページの第5の表は、「男子労働力率国際比較」の表になっております。日本の場合、ここは今高齢化の御審議のようでございますから、六十五歳以上のところで見ていただきますと、三八・八という数字がございますね。一番右の端の上でございます。この三八・八というのはこれは男子の場合でございまして、これを男女計で申し上げますと二六%程度でございます。なぜこのような率になるか、男子の場合高いかといいますと、諸外国の場合は男女格差が日本ほどありません。というのは、日本の場合は男子の労働力率が高こうございまして、女子労働力率が比較的低いという就業の形になっておるというのが現状でございまして、男女計にいたしますと、これよりも幅が余り大きくは出てまいりません。  それからもう一つ日本の場合は、自営業主、家族従業者の占める労働力率を見ました場合に、現実に就業されている場合の占めるウエートが諸外国に比べて非常に高こうございます。ちなみに自営業主、家族従業者の占める割合を見ますと、日本が二八・一%のときにアメリカが九・四、イギリスが七・六というように、家族従業者の占めるウエート日本は非常に高いという点でございます。  もう一点は、いわゆる一次産業といいますか、農林水産業に従事される方のウエート日本の場合は非常に高い。日本が一〇・四%の場合にアメリカが三・六、イギリスが二・七%というふうに非常に低うございます。  私は何を申し上げたいかといいますと、この労働力率が高いといいましても、これは今言いましたように、一次産業いわゆる農業に就業される方、あるいは自営業主、家族従業者の方、こういう方のウエート日本の場合には非常に高いわけで、そうした場合に、こういう方々はこれはいわゆる一般的な雇用者ではございませんから、極論すれば、働ける間、体が動く間じゅう働こうという感じもございまして、その分の反映で私は相当この労働力率が高く出ておるのではないかというように考えております。雇用者比率だけで日本とアメリカを比較いたしますと、ここに数字はございませんが、日本もアメリカも大体八・三、四%ということで、六十五歳以上のところの話をしておりますが、八・三、四%ということでほぼ似たような数字になっております。  それともう一つは、今後これは一般的には、年金の成熟度合いが進めば若干さらに下がるのではないかというような感じも持っております。そういうことで、日本の場合労働力率が高いのは今のような理由が一番大きいのではないかというように考えておる次第でございます。  それから最後にリタイヤする時期の問題ということでございますが、これは六十歳台ということになりますと、非常にそれぞれの方の、何といいますか身体的な能力といいますか、状態の格差、度合いが非常に散らばってくるということで、一概に言い切るのも難しゅうございましょうが、私どもはやっぱり労働政策の対象として考えるのが、ほぼ六十五歳未満というように考えております。もっとも六十五歳を超えたらもう一切我が方は手を引くということを申し上げているのではございませんで、特段の財政措置、予算措置を講じ、法律上特段の対策を打つというのは、私どもは六十五歳未満というところを一つの節目にしております。もちろん就業を希望され、体もぴんぴんされておって、何か職はないかと言われれば、安定所がこういう方々について紹介を拒否することはいたしません。もちろんあれば紹介もいたします。いたしますが、特別の財政措置を講じる、助成金、奨励金等をつけるというのは六十五歳未満というのが我々の労働力政策一つ目安にすべきものであろう、このように考えております。
  18. 吉田勇

    説明員(吉田勇君) 先ほどの御質問で、高齢者心理面のみならず、これから高齢者になろうとしている人たちの心理面というものも調査すべきではないかということでございますが、全く同感でございます。私ども、例えば五十年に、三十五歳から五十四歳の男女に老後の生活設計に関する調査というふうなものをやっておりますし、それから五十二年にもやはり老後生活への展望に関する調査、これは三十歳からやはり五十四歳の男女に、どういうようなことを一番要望しているかというようなことにつきましても調査しているわけでございますけれども、今後もこれから高齢者となろうという人について、何が不安であるかというふうなこと、それから何を要望しているかということについては十分調べていきたいと思っております。  それからもう一つ、三世代の同居の条件は何かということでございます。  これはいろいろあるわけでございますけれども、ハードとソフトの面があると思います。ハードの面では三世代が同居して住めるような住宅の確保ということが非常に重要ではないかと思っております。それからソフトの面でございますけれども、これは同居したために非常にお嫁さんの負担が重くなり過ぎるというふうなことがあってはならないわけでございまして、やはりそれを地域で支えるシステムとか、それから家庭奉仕員というような、その同居を支えるシステムというのが必要ではないかというふうに思っております。同居している場合に、税制上の優遇措置その他もあるわけでございますけれども、それらも含めて今後できる限り、高齢者が自分の住みなれたところで最後まで生活するというのが一番高齢者にとって幸福だと考えておりまして、その中に同居というのもあるわけでございますので、そのような方向で施策が進められなければならないと思っております。  また、実際親子が同居している場合に、どうしたら同居がうまくいくかということについていろいろボランティア等で研究しているのもありまして、例えばすべてこの原則が当てはまるというわけでございませんけれども、親子の同居の七つの原則というようなものもあるようでございます。これは、同居については、同居するかしないかというのは選択の問題であるということとか、相互に尊重、それから可能な限り高齢者は依存しないというふうなこと、それから家族の協力、それから生活上の役割分担をきちっとする、それから扶養の分担というものを兄弟間で公平に保つ、それから社会連帯ということで家族から地域へと広がる協力関係の創出ということが、親子同居を可能にする原則というようなことで出されているようなのがあります。  私どももブロック会議とかそれから中央で高齢化社会を考える国民の集いというのを開きまして、お互いに、若い人はどんなことをしなきゃならないか、それから高齢者の側でもどういうような心構え、どういう役割をしなきゃならないかということをいろいろと考えてもらっておりまして、そういうことを通じまして、同居を選択した方には同居がスムーズにいくようにしたいと考えております。
  19. 山口剛彦

    説明員(山口剛彦君) 年金関係につきまして御説明をさしていただきます。  年金のレベルの問題でございますけれども、回際比較はなかなか各国の事情が違いますので難しい問題がございますけれども、一応平均額で比べて見ますと、我が国の場合、厚生年金をとりますと、現役の賃金に対する割合で平均支給額のレベルを比べて見ますと、大体先進各国とも現役の総報酬の四四、五%というところでございます。ちょっと具体的に申し上げますと、西ドイツが、制度が違いますのでブルーカラーのものとホワイトカラーのものが別々でございますが、三五%から五一%、スウェーデンが四五・七%、イギリスが四八%、アメリカが四五・九%、それに対して厚生年金が四三・五%ということで、この数字を見る限り、少なくとも厚生年金についてはほぼ西欧諸国並みの水準が出ておると言っていいかと思います。  もう一つの要素としましては、いずれの国も大体老齢年金の支給開始年齢が六十五歳でございます。それに対しまして厚生年金は男子が六十歳、女子は現在では五十五歳ということがございます。  それからもう一つの要素としましては、厚生年金の場合、昭和十七年に発足をしまして、今平均的な方の過去の加入期間二十五年程度だろうと思いますが、西欧諸国では歴史が古いものですから、その加入期間も三十年とかに達しておる、いわば成熟をしておるという段階でございますので、我が国の年金制度が非常にまだ成熟の途上にありながら、こういう水準のものが出ているという意味でも、いい線をいっていると。このまま、今の制度設計をそのままにしておきますと、だんだん成熟してきまして、今の平均二十五年という加入期間が四十年近くになることはこれは間違いありませんので、そういう段階を考えますと、ちょっと今の我が国の年金制度の年金設計、水準の設計は、やや現役の人たちとの関係から言ってバランスを失するほどに高くなってしまうんではないかということで、今回の年金改革の最大の課題一つとして、将来に向けて年金の給付水準を軌道修正をしていこうということを大きなねらいにしているわけでございます。  国際比較の問題としましては、ただ実感としてそんなに国民の皆さんが高いと思っていないじゃないかということにつきましては、今御説明申し上げましたのは厚生年金でございますので、現実には国民年金がございまして、これは平均的な支給額も月額大体二万五千円弱と、制度が三十六年にできておりますのでまだ成熟していないということで、そういう方々が大変多くおられます。それから福祉年金の方もおられますので、実際の年金受給者の大半がそういう方で占められておるという意味で、実感とその国際比較の間にずれが出てきているという問題があろうかと思います。  それから、先ほど老後生活上の必要経費と年金の水準との御指摘がございましたけれども、私ども基本的には公的な年金では老後生活のすべてをそれで賄っていこうということは、これは無理ではないか。老後生活の中の基礎的な部分、これを公的な保障、社会的な連帯の中で保障をしていくと。それ以外の部分につきましては企業年金、それから個人的な年金、あるいは貯蓄と、三本柱で老後生活をより豊かなものにしていただくという方向が望ましいんじゃないかというふうなことを基本的には考えております。
  20. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 後の第二点のボランティアの問題と、それから高齢者の細分化の問題についてお答えいたします。  まず、ボランティアでございますが、社会福祉全般について言えることでありますが、福祉というのはそもそも自立自助の精神を前提にしながら、それで足りないところについて社会全体で支えると、こういうことでありますから、そういった意味でボランティアの果たす役割というのは大変大きいし、これは重視していかなければならないと、こう考えております。その点は御指摘と全く同じ考えております。  ただこれは私見が入りますけれども、欧米の場合の例を見てみますと、どうも宗教的基盤と申しますか、そういったものに支えられたボランティアというのがあるんだろうと思うんです。そこがどうも我が国の場合には少し足りないんではないか、それによって欧米との差が少し出てくるんではないかなという、これは私の個人的見解でございますが、そういう気もいたすわけでございます。  それにいたしましても、現在社会福祉協議会という組織がございまして、これがいわば社会福祉全般の拠点になっているわけでありますが、そこにボランティアをやりたいというので登録している人数が大体約二百五十万人おられます。これは社会福祉協議会に登録したものでありますが、そのほかに全部含めますと、大体全国で七百五十万人ぐらいがそういう意欲を持っておられるという推計がございます。ですから、こういった方たちの熱意を反映してボランティア活動を大いに推進していかなきゃならないなということで、ちょっと今手元にございませんが、若干の助成措置も福祉系統でしております。  ただボランティアを進めます場合に、私どもよく日常考えますのは、例えばきょうの議題であります高齢化問題を考えるに当たりましても、せっかく社会的ないろんな豊富な経験をお持ちになり、知識を持っておられる、しかも暇もあるという老人の方が、例えば子供さんの世話をするといったようなことですね。これは、もしそれができれば御老人の方の生きがい対策にもなりますし、子供さんの教育にもなると、社会全体で非常にプラスになるわけであります。そういうこともよく考えます。  それからまた、健常な子供さん方が、小さいうちから、例えば障害者のお世話をする、ボランティアですね、ということになると、結局幼いころから福祉というか、あるいはボランティアの必要性といったものが体について育っていくわけでありますから、そういった道もぜひとりたいなと、これも若干助成をしているんですけれども、そういった方向でボランティアを大いに活用したいと思っております。  特に、私どもこれから社会福祉の方向といたしまして、従来ややもすると施設をつくって、そこにハンディキャップを持った方たちを収容すると、それでお世話をするという点にやや力点があった時代がございました。しかし、これから先はそうじゃなくて、在宅福祉と申しますか、施設中心よりもむしろ家庭にあり、その社会の中に溶け込んで、その中で社会全体の支えを受けながら普通の元気な方たちと一緒に暮らしていく、こういう方向が正しい方向だと思いますので、そういった面を考えますと、どうしてもやっぱり地域のボランティアの方たちの御協力がぜひとも必要だということで、この点はさらに推進していきたいというふうに思っております。  それから、最後の高齢者の細分化の問題でございます。大変ごもっともな御意見だと思います。ただ、これは具体的にどう割るかとなりますと、なかなか難しい問題だと思います。要するに、その施策施策に応じて高齢者あるいは老人といったものの階層というものも違ってくるのは当然だろうと思うんです。単に、一律に老人とかあるいは高齢者という、一律というか、全体をまとめた概念というのはなかなか難しかろうという気はいたしますが、この前通していただきました老人保健制度にいたしましても、例えば医療費の軽減、医療の保障という面からいきますと、七十歳以上が適当だ、こういう判断をしたわけです。  ただ、その医療の保障はそうなんですけれども、例えば老人の方が健康で健やかに老後を暮らすといった意味から言いますと、やはりもっと早い時期からの保健というか、ヘルスの対策が必要だというので、あの制度では四十歳から健康診断をやるということになっていますが、これは一つの例でございます。だから医療費の軽減という面から見ると七十歳、しかし疾病の予防とか健康づくりとかいう点になるともっと早くからやると。それぞれの施策というのは、高齢者なり老人の方のニーズに応じてそれぞれ対応しなきゃいかぬので、一律にどうかという点はちょっと難しいんではないかなという感じを持っております。
  21. 糸久八重子

    糸久八重子君 高齢者生活心理面に関する調査の結果を拝見いたしまして、大変満足度が高いわけですね。この抽出方法なんですけれども、これは地域的に偏っているという部分はないんでしょうね。
  22. 吉田勇

    説明員(吉田勇君) 地域的に偏りはございません。
  23. 糸久八重子

    糸久八重子君 そうですか。  大変満足度の高い結果が見られるわけですけれども、特にこの調査の中では、三世代の同居の家庭が非常に満足度の度合いが高いというようなことが出ているわけなんですね。厚生省の調査等の結果を見ますと、高齢者とそれから子との同居率というのが年々減ってきているわけですね。昭和三十五年ですと八一・六%、そして五十七年の調査ですと六八・一%と、だんだん減っている傾向にあるわけです。これは時代的な背景があるわけなんですけれども。  そこでお話の中では、三世代の同居というのは大変年老いた人たちについては幸せだというような結論のようなことが出ていたわけなんですけれども、私考えるんですが、三世代のファミリーサイクルを考えてみますと、今、例えば二十八歳で男性が結婚したといたしますね。そうしますと、大体三十歳から五十歳の半ばぐらいまでがいわゆる子供を育てて、そして教育をする年代になるわけです。先ほどのどこかの統計見ますと、今子供の数が一・七七人だということですから、二人の子供を育てるということになりますと、どうしても五十三、四歳ぐらいまでかかるというふうに考えられるわけですね。そうすると、その年代は子育てと教育の責任が非常に重くのしかかってくる。そしてさらに、大体三十歳の後半から五十歳の後半にかけて年老いた親の扶養の責任というのがまたのしかかってくるわけですね。ですから、平均的な家族については、その世帯主の三十代の後半から四十代、五十代にかけまして、親と子の二重扶養ということが求められているというふうに考えられるわけですね。  それでさらにこれからの傾向といたしますと、一組の夫婦が二組の親を扶養するというケースもたくさん出てくるんではないかと思うんですよ。そういうことになりますと、非常に三十歳台から五十歳台にかけての年代層は、教育費もかかる、そしてローンの返済もかかる。そしてそれに加えて親と子の両方の扶養がかかるということで、非常に肩の荷が重くなるということが考えられるわけですね。ですから、そういうような家族の中では、結局その重さに耐え切れなくなってしまうというような、そういう人たちも出てくるんじゃないかと思うんですね。  そうしますと、親の扶養か子の扶養がということの選択が迫られるということになりますと、これはどうしても親が独立をしていかなければならないといったケースが出てくるんじゃないかと思います。したがいまして、今私が申しましたライフサイクルから考えてみますと、やはり三世代ということを考えますと、年老いた親の座はますます小さくなってしまうだろうということが考えられるわけですね。  でも、今、年金課長もいらしているけれども、年金をだんだん改定していきながら、親でも、やはり年とった方たちでも年金が確立していくから、経済的な問題はないから経済的な負担はかけないよと言うかもしれませんけれども、これも調査の結果から見ますと、単身者の世帯では他の世帯に比べるとやはり苦しいんですよね、生活が。そういうことから考えますと、やはり年金で十分生活できるという状態ではないから、扶養義務というのが子供にかかってくるということが言えるわけですね。  そこで、日本の国は欧米の先進国から比べますと非常に同居率が高いわけですけれども、その中で老人の自殺があるわけですね。その自殺率を見てみますと、これは昭和五十六年の東京都監察医務院の調べなんですけれども、それを見ますと三世代の同居老人の自殺率というのが非常に高いわけなんですよ。ですからやはりそういう意味では、こちらの調査にあるように、三世代の同居というのが非常に幸せで、老人も非常に満足をしていていい状態だということは、やはり私は言い切れないというふうに考えるわけですね。その辺についてはいかがでございましょうか。
  24. 吉田勇

    説明員(吉田勇君) 確かに日本は自殺の率が高いんでございますけれども、なぜ自殺するかということについての分析というのは、私ども調べた限りではないわけなんです。これはある学者に言わせますと、自殺というのは非常に複雑な要因が絡んでいるので、非常に一番最高のところで自殺をするという人もいるんだというようなことを言う人もいるわけなんでございますけれども。それですから、自殺の問題と三世代同居との問題というのは、必ずしも私ども今のところでは結びつけて考えることができないんじゃないかというふうに思っております。  ただ、私ども調べましたのは今六十歳以上の人なんで、今の高齢者が同居というものを非常に満足に感じているということでございます。今後、これから高齢者になる人たちがどのように考えるかというのはまた別な問題でございます。  それから、同居がこれからどうなるかということにつきましては、これは非常に大きな問題で、いつも社会学者が最大の関心を持っているわけです。確かに今までの傾向ですと下がってきましたけれども、ではこれがもう物すごく欧米並みに下がるのか、それとも緩やかに下がるのか、それとも今の状態が続くのかというのは、全く今のところは何とも言えないわけでございますけれども、子供の数が非常に減っていったという限りから言いますと、同居する相手というものがだんだん少なくなってくるということで、これは厚生省の人口問題研究所などの若手の人たちの推計では、単身世帯が今後非常にふえてくるんじゃないかという推計もございます。  そういう意味で、いずれにしましても社会的に、特に一番問題になります寝たきりになった場合に同居している人、それから地域で暮らしている老夫婦のみの世帯につきまして、十分な社会的に支えるシステムというのが非常に今後はますます重要になると思っております。
  25. 青木茂

    ○青木茂君 五つほど伺いたいんですけれども一つは、最近この高齢化社会の問題が非常に何というんですか、一種の流行語になりまして、各企業、特に金融関係企業が、この高齢化社会に対する不安であるとか高齢化社会に対するおびえですね、これを商品化しちゃって、しかも異常に高い保険料でもって、もう公的年金だめなんですよ、私的年金の時代なんだからと言って、非常におびえの商品化という傾向があって、これがどうもよくないんじゃないかという点、これに対して行政指導的なことをお考えであるかどうかということをまず第一にお伺いしたいということ。  それから第二にお伺いしたいことは、今出ましたけれども老後生活費の基礎的部分公的年金によってカバーする。これは非常に結構だと思うんだけれども、もうここまで来ますと、老後生活費の基礎的部分の具体的な計算ですね、例えば標準生活費を計算しておいて、何%がその基礎的部分であるとか、平均生活費に対して何%が公的年金でどうしてもフルカバーしなければならない基礎的部分であるかということを、国民の前にもう明らかにすべき時期に来ているんじゃないかということ、これがお伺いをしたい第二の点です。  お伺いしたい第三の点は、年金なんかの保険料積み立てがあるわけですね。これの運営状況はどうなっているか。特に財投資金なんかの関連においてこれはどうなっているんだと、またこれからどうすべきかというようなことでお考えがあるかどうかということ。  それから第四点は、年金なんかで、典型的に言えば厚生年金会館なんですけれども、金が足りなくなってくれば、財産切り売りということだってあり得るわけだから、ああいう各種のむだ――むだと言っては語弊があるけれども、施設ですね、施設を一回仮に時価評価してみたら、総計どれくらいに一体なるんだろうかというようなこともお考えになったことがあるかどうかということ、これが第四点。  それから第五点は、これは国民健康保険ですね。国庫負担率は非常に国民健康保険、国保の場合が高いんですけれども、国民健康保険の保険料の算定基準の内訳は一体どうなっているかと。と申しますことは、その中に所得基準がありますね。所得基準があるとするならば、どうも我々がよく言うクロヨンということがそこに影を落としてはいないかというようなことを考えているんですけれども、簡単で結構ですから、この五点について御見解だけ承れればありがたいと思います。
  26. 山口剛彦

    説明員(山口剛彦君) 年金関係について御説明を申し上げます。  第一点のおびえの商品化という、確かにそういう傾向がございまして、私どもも、大変公的年金が将来つぶれちゃうからというような宣伝をして、それを使って商品を売り込むというのは大変困るということで、そういうケースが発見されました場合には、私どももかなり目を光らせておるつもりなんですけれども、具体的に指導しまして、そういう誤解を招くような行為をしないようにということで、これは厳しく指導をいたしております。今後ともこれはそういう厳しい態度で臨んでいきたいと思っております。  それから年金の水準、基礎的な部分はどれくらいかということでございますが、これはいろんな経費を積み上げて、この辺のところが基礎的なものというのはなかなか言うべくして実際難しいと思うんですね。私ども基本的な考え方としましては、やはり現役の方の標準的な生活費ですね、これの何割ぐらいのところが老夫婦に平均的に保障をしていくべきかということで、これ自体もなかなか難しいわけですけれども、従来から平均的に見た場合は、それの六割程度のところが適当じゃないかという御意見で、そんなことでずっとやってきておりますので、六割がいいか七割がいいか、実際問題として平均的には七割弱のところへ来ておりますので、そこは難しいところでございますけれども、大体六、七割というあたりを平均的な水準としては好ましいんじゃないかというふうに一応基本的には考えております。  それから積立金の問題ですね。これは積立金は将来給付に回すべきものですから、まあ私ども基本的には高利で、なおかつ安定した運用ができるようにということで従来から配慮してきておりますけれども、何分、全部を資金運用部に預託をするということで、その利率が今、最近変わりまして七・一ということで、今のいろんな金融商品なんかに比べると少し低いんじゃないかという御指摘もございまして、この辺については今度の改正の一環として、大蔵省とも今具体的な改善策というものを検討をいたしております。できるだけ高利に運用していくという点については配慮をしていきたい。  それから厚生年金会館等の問題でございますが、これは大変難しいんですけれども、年金制度、やはり給付をすると同時に若い人たちに拠出をしていただいて、協力をしていただかなければなりませんから、そのための施設というものもこれは制度全体を運営していくためには必要なことだと思っております。ただそういう観点から、的確な施設またその運営ということについては今後とも努力をしてまいりたいと思っております。  そういったものを、先ほど申し上げました積立金自体は給付に回すということで、先ほど申し上げたようなことで運用しておるわけでございますけれども、今申し上げております厚生年金会館等は、これは制度運営が続いていく限り必要な施設ということでございますので、これを売り払ってどうこうというようなことを考えておりませんし、また現在全くそんなことを考える必要はないという状況でございます。
  27. 多田宏

    説明員(多田宏君) 国保の保険料でございますが、御承知のように今国保の保険料の取り方というのは、国保の所要医療費から患者負担を除きまして、それから医療費の四五%を国庫補助でもらうという前提に立ちまして、それで足りない分を国保の被保険者に保険料として賦課すると、こういう格好になっております。したがって、国保の被保険者以外の人から保険料を取るという格好は建前上なっていない。そうすると、今度国保の被保険者の人たちから保険料を取る取り方というのは、これは均等割というのやら所得割、資産割といういろんなやり方がございまして、それらの組み合わせを考えておりますが、応能的なものと応益的なものとがまあ基本的には半々ぐらいということで考えられているわけでございます。したがいまして、その中で、国保の人たちの中での所得捕捉が多少悪いということになりますと、国保集団の中でやや不均衡があるではないかという問題はあるかもしれません。しかし、サラリーマンとの間の不均衡というのはその場合には特段の問題は出てこないのではないかと、こんなふうに私ども考えております。
  28. 青木茂

    ○青木茂君 一言だけ。  第一のおびえの商品化ですね。これは目につくものは、具体的な勧誘のケース・バイ・ケースではなかなか目につかないけど、広告なんかを見ますと非常にこれ目につきますから、そこら辺の規制までさらに踏み込んでいただきたいということ。  それから老後生活の基礎的な部分計算の問題は、大体六割から七割ということなんですけれども、これは平均生活費にしろ標準生活費にしろ、学問的にやり方があるわけですから、例えばマーケットバスケット方式でもいいし、あるいは一番簡単にやってしまえば、標準的な食費額をエンゲル係数で割ってしまうという、かつて大蔵省のやった手がある。いろいろあるんだから、余り概算でなしに、国民の前に明らかにした方がいいんじゃないかという気がしておりますね。  それから第三点の運用利回りについては、やはり七・一%ではやや国民損しているんではないかという印象は否めないということ。それから厚生年金会館という例を挙げたけれども、今おっしゃったことは平時の発想であって、年金財政、いわゆるおびえというものが盛んに言われているんだから、非常事態の発想というものも少し出てきてもいいんじゃないか。まだそういうことを考える必要はない状況だということになると、年金はそう心配要らないんじゃないかということも言えぬでもないわけだから、ここら辺は考えていただきたい。  それから、国民保険の保険料の算定の中に所得割の部分があって、その所得の把握がもし少ないとしたならば、出す保険料は少なくなりますね、これはバランス論の問題ではなしに。そうすると、国民健康保険の保険料は少々低く抑えられているんではないか。したがって、国庫負担率がふえてくるんではないかという心配もあるわけです、負担料がね、負担額が。負担率は最初からはねるんだけれども、そういう心配もあるということだけ。別に御答弁要りません。
  29. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは二点だけちょっとお伺いしますが、厚生省さんの資料の一番最初にあります合計特殊出生率ですか、この推移でございますが、ずうっと低下をしてきて五十七年には一・七七となって、五十六年度に比べますと多少これがちょっと上向きになっているんですけれども、これいろんな原因があろうかと思いますけれども、ずうっと今まで下がってきた原因として皆さん方が把握をしている部分ですね、あるいはこれからちょっと上がったわけですけれども、これから少しずつ上がっていく傾向が見られるのかどうか。やはりこのまま下がっていきますと、将来ともこれは人口構成がますます高齢社会になってしまうわけですから、そういう点の今後のまた施策等についてのお考えがあればお願いしたいと思います。  二点目は、いわゆる先ほどボランティアのお話もちょっと出ましたけれども、寝たきりのお年寄りあるいはぼけ老人の皆さん方の対策というのは、これからも家族を初めとして社会的な問題になろうかと思います。各地方の自治体でもそれぞれ取り組みをしておりますけれども、それにも限界も出てまいりますし、そういった点での皆さん方のお考えをお聞かせいただきたいと思います。  ぼけ老人をお持ちの皆さん方の家族の会等からも、特に厚生省に対しましてはいろんな要望も出ておりまして、特に国立病院において、こういう皆さん方の相談に乗ってあげられるような医師あるいは看護婦とか、そういう体制をつくれないだろうかという要望もあるんですが、その点についての皆さん方の取り組みの仕方ですね、お聞かせいただきたいと思うんです。
  30. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 午前中説明申し上げました資料の一ページの出生率のお話でございますが、これも専門家によりますといろいろ議論があるところなんですが、大勢としましては、大体落ち込みは終わって反騰に転ずるのではないかというのがどうも有力でございます。いろいろ、ちょっと今手元にありませんので全部申し上げられませんが、例えば一つ例を申しますと、今まで学歴がだんだん上がってまいりまして、結婚年齢が非常に高まってきたと、それがこの出生率に影響したというケースがあるんですが、そこがどうもそろそろ上げどまりだと。大体そこら辺で落ちさきましたので、それが一つなんですが、そのほかに幾つか、三つか四つか理由があるんですけれども、そういうことで、もちろん将来ですからはっきりはいたしませんけれども、大体下げどまりで、上がるか維持するかというところにているのではないかというのがどうも専門家の多数の意見のように聞いております。  それから、寝たきり老人あるいは痴呆性老人のお話でございますが、これは重大問題だと思うのです。これからどんどん高齢化も進みまして、どうしてもいや応なしにこういうケースがふえてまいると思いますので、いろいろ対策は講じなきゃいかぬと思っていますが、一つは、いろんな対策を今まででもしてきているのですが、特に来年度は特別養護老人ホーム、そこに寮母さんがおられるのですが、その寮母さんを対象にしまして、この痴呆性老人の処遇技術、これはなかなか素人じゃわかりません。特別な処遇技術が要りますので、その研修を行いまして、その特養がそういう痴呆性老人を受け入れやすいような基盤をつくるということで、大変御案内のように厳しい予算でありましたけれども、特にこれは新規事業で出ております。まだ新発なものですから余り数は多くありませんけれども、これはどんどんふやしていきたいと思っております。それからもう一つ、これはすぐにということじゃございませんが、今、老人あるいは寝たきり老人、あるいは痴呆性老人を含めまして、病院に入っている方と、それから特別養護老人ホームに入っている方と、両方にこう分かれているわけですね。病院でも、精神病院に入っている方もいらっしゃるし、それから普通の病院にもいらっしゃいますし、それから特養にもいると。それで、それはそれなりに対応してきておるんですが、これから先を考えますと、そういった今の医療機関あるいは福祉施設といった分類で果たしていいんだろうかという問題意識は持っております。  そこで、これも将来の話にはなりますけれども、医療と福祉との接点というようなことでございますね、その中間分野、ここら辺にどうも着目して、医療法なり福祉系統の法律を見直すことも前提になりますけれども、何か中間施策みたいな、よく言われるナーシングホームですね、外国の。あるいはホスピスとか、あるいはデイ・ケア施設とか、こういった中間施設的なものを考えていかないと、これからの時代に乗りおくれるのじゃないかということで、実はいろいろ内部では検討しているんですが、表に御説明できるのはもう少し先だろうと思いますが、そういう問題意識は十分持っているということでお答えにさせていただきたいと思います。
  31. 内藤健

    ○内藤健君 私も、今、太田先生から質問されておりましたぼけ老人についてですが、先ほど、午前中も総理府の御説明をいただいておりまして、この資料の中でも、老人が一番不安を感じるというのは寝たきりあるいはぼけ老人と、これになるということに一番不安を感じておる、こういうふうなことの御説明をいただきましたが、今も御説明でいろいろの施策を講じられておると、こういうふうなお話でございましたが、各地方でいろいろぼけ老人対策というのですか、これの研修の手引きというふうなものをそれぞれが個別につくりまして、そういうふうなものでやっておる。そういうふうなことでありますから、これはそれぞれの地方団体が個別にやるのよりか、国の方でひとつしっかりしたモデルをつくってやっていかれるというのは、これは余り金もかからぬと思いますので、ひとつそういうふうな御研究もやっていただけたらと、かように思います。  それともう一点は、最近、地域経済活性化推進事業というのがやられておりまして、これは御承知のように民間の資金を活用して、そして地方の経済を活性化すると、こういうふうな事業でありますが、この中に高齢者対策というようなものが入っておるのかどうか、もし入っておるのであればお教えいただきたい。  こういうふうなことをお尋ねいたしますのは、最近、特に全国的に一村一品運動というのですか、こういうふうなことが各町村で取り組んで盛んにやられておりますが、地方へ行きますと、どうしても事業所が少のうございますので、特に高齢者雇用というのはこれはもう地方へ行きますと非常に難しい、こういうふうなことでございます。  そういうふうな中で、高齢者が、今まで経験と申しますか、経験を生かした技術と申しますか、こういうふうなものを生かして地方の活性化に役立てると、こういうふうな方法を、何かの方法でもってなお推進さしていくと、こういうふうなことについて御意見がございましたらお聞かせをいただけたらと思います。  以上です。
  32. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 最初の方の御質問にお答えいたします。  痴呆性老人の介護と申しますか、そういったものの基準なり手引書を国でつくったらどうかというお話でございます。私、直接今担当しておりませんのではっきりお答えできないのですけれども、担当の方ではいろいろ工夫はしておると思います、ちょっとここでお答えできませんが。先ほども出ました社会福祉協議会なんかもその道の専門家がおりますので、もしつくっていなければつくるようにちょっと相談をしてみたいと思っております。
  33. 内藤健

    ○内藤健君 後の方はわからぬのですか。
  34. 守屋孝一

    政府委員守屋孝一君) 地域経済活性化ということでの絡みは、恐らく今先生おっしゃったのは、通産省がおやりになっている対策だろうと思います。決して私どもも、縦の縄張りがありまして、あれは知らぬこれは知らぬという気持ちではございません。もちろん必要があれば十分連携をとってまいりますが。  私どもとして今新商品として売り出しておりますのは、実はきょう午前中お配りしておりますシルバー人材センターでございまして、これが恐らく今先生がおっしゃった御趣旨に非常によく合うんじゃないかと思います。これは、現在やっておりますのは人口十万以上の市を対象にいたしましてシルバー人材センターというのを設置し、その補助をしております。  ちょっと午前中の資料出していただきますと、この一番下に現在設置数は二百十七カ所となっております。これは五十九年度は、二百三十五団体助成ができるように補助金の予算を組んでおります。  どういうことをやっておるかといいますと、ここの「仕事の例」というのがございますが、これは、要は単に事業所の、いわゆる企業の注文をとるというだけじゃなくて、家庭の中にも需要がありますから、そういう需要も取り入れて、まさに地域社会に役立つ高齢者の仕事というのを集めてきて、高齢者の方々にその仕事を提供するという形をとっておるわけでございます。現在会員数は約九万人でございます。私どもとしては、これを今後どのように発展さしていくかということにつきまして、さらに検討を進めていこうと思っております。多分これが先生のおっしゃった趣旨にひたり合うものじゃないかと思います。
  35. 内藤健

    ○内藤健君 どうも失礼をいたしました。これはここのなにを見てみましたら、国土庁の方で「高齢化社会と地域政策」、こういうのをやっておるそうですね。ただ、私どもこの高齢化社会検討委員会、各省庁の説明をいただくのも七省庁の説明をいただくので、非常に広いわけですよね。それで、今縦割りというふうなことを言われましたが、やはりこれは非常に大きなこれらの問題ですから、縦割りでなしに、やはりこういうふうなものはそれぞれの立場があると思いますので、横の連絡も十分にし合ってやっていただきますように特に希望いたしまして終わります。
  36. 橋本敦

    橋本敦君 私は厚生省関係、あとに残して質問をしておりませんので、厚生省関係についてお伺いをさしていただきたいと思います。  要するに「社会保障の将来展望について」ということで、この懇談会が出されておるのを見ましても、その背景的事情としては人口構造の高齢化という、これはだれもが否定できない問題にどう対応するかと、しかも、それが経済成長の低成長化という状況を予想してというようなコンテクストがございまして、そこからどうしても出てくるのが適正な受益者負担あるいは負担の公平の見直し、そういうことになってくるわけです。  そこで私が心配するのは、そういう受益者負担の適正とはいうものの、実際は高負担、低福祉ということになって、国民の期待するような将来対応ができなくなるというのはこれは非常に心配だと。そこで、基本的には社会保障財源を一体どこからどう出してくるかということで、国民的コンセンサスなり知恵を出さなくちゃならぬというところに迫られてきておるというのが問題状況だというように認識しておるわけです。  そういう観点でちょっと二、三の質問をしたいと思うんですが、まず一つは、年金水準の国際比較が難しいというお話が先ほども出ました。私はこれも気にしておるところですけれども先ほど金課長国際比較でお述べになったのは、厚生省の年金局調べを利用して私どもいただいている資料で大体お述べになったんだろうと、こう見ておるんですが、それではまず日本の場合は、厚生年金保険、大体これが全受給者平均が十万八千円程度というのを基準にしておられると思いますが、この問題で言えば、一つは、先ほど課長もおっしゃった国民年金、その他全年金の受給者、いろいろあるわけですが、その中の厚生年金保険だけを抽出をしていますから、全受給者の関係で言えば一八%ぐらいではないかというように見ているんですが、そういうこととの比較で、今度はスウェーデンの例をとってみますと、スウェーデンの国民保険、これを一つ数字として選んでいらっしゃる。ところが、スウェーデンの場合で見てみますと、厚生省の大臣官房の太田さんが「スウェーデンにおける老人福祉施策体系」でお書きになっているのを見ましても、結局、国民年金プラスいろんな付加年金というのがスウェーデンは圧倒的に多いわけですね。だからこれを加えますと、従前収入の六五ないし七五%相当額がスウェーデンでは大体年金として、実態として平均化されているというようなことも太田さんおっしゃっておられるわけですから、そういう点を比べますと、先ほどおっしゃった平均賃金とのパラレルで見て、大体老齢年金額は四割程度ですか、四〇%台程度だという比較で大体パラレルだというお話は、ちょっと比較のデータのとり方として必ずしも正確に反映してないと、そういう意味では日本の年金はまだまだ追いついていないとも言えるんではないかというように私も見ているんですが、これが一つの問題です。  例えばILOのザ・コスト・オブ・ソシアル・セキュリティーという一九七五年から七七年までの資料を見ますと、国内総生産費に対する社会保障給付費の割合は、日本が八・六%、これに対して今のスウェーデンの場合は二九・七%、イタリアで二〇・五%、西ドイツで二二・四%、アメリカで一二・九%、大体こうなっておりますから、こういう国内総生産費に対する関係で見てみましても、日本のレベルというのは、諸外国より大体三分の一程度になっているのではないかというようなことも考えられますので、まだまだ年金問題については、そういう国際的な水準に成熟さしていくという展望で見ていく必要があるのではないか。これが第一点の問題です。  それから二番目は、老人保健法が施行されましてほぼ一年になるわけですが、私どもが心配したとおり、やっぱり外来患者の受診率の低下という実態が起こっているのではないか。私は手元に「老人診療諸率の動向」という、厚生省の調査だと思いますが、これを持っておるんですが、これによりますと、前年同月に比べて五十八年の三月以降は、大体平均して四%程度ずうっと受診率が低下をしているわけですね。  それと同時に、私が聞きますのは、老人を病院から追い出すということにはならぬという厚生省のお話があったんですが、実際は老人特掲診療報酬の問題やあるいは保険外負担の増大やいろんなこともあり、あるいは老人病院指定の問題もあり、やっぱり老人が病院に入りにくいという状況で、特別養護老人ホームへの希望者が非常に増大をして、特養待ちという老人の数が非常にふえておるという実態があるというように聞いておるんですが、ここらあたりの実態はどの程度把握していらっしゃるか、ここらあたりの調査もしていただく必要があるというように思うわけです。  それからもう一つは、訪問指導の問題ですが、寝たきり老人やあるいは介護を要する老人の数が高齢化社会対応してふえていくという状況にどう対応するかということです。この訪問事業というのは、この展望の中でも社会福祉対策として非常に重視をして、「家庭奉仕員派遣事業、訪問サービス事業等の拡充が必要である。」と、こう書かれているわけですが、ところが実際問題としてどれくらいの奉仕員がいるかということになりますと、日本の場合はこの訪問指導事業に従事する保健婦なりあるいは看護婦さんという数が非常に少ない。そういうホームヘルパーの人口当たり比較しますと、日本の場合が人口十万に対して十一。ところが、西ドイツは二十、アメリカが二十八、スウェーデンになりますと二百九十七というように、二十七倍近くの人員、スタッフをやっぱり持っているわけですね。だから、こういう面のおくれを考えますと、これからの福祉を含む医療、老人対策というのは諸外国のレベル、水準に達するためにはまだまだかなりの国の施策とそれから条件整備が要るのではないか。そこらあたりがこの展望では具体性に欠けているという点が気になるわけですが、そこらあたりについての御見解を承りたいと思うわけです。  それからもう一つ、私は大事なことと思いますのは、要するに、先ほども言いましたが、将来社会に対応して社会保障収入財源をどこから持ってくるかということですね。この問題で言いますと、国会図書館の立法考査局の方で出しております「国政統計ハンドブック」五十八年版があるわけですが、これで見ますと、社会保障収入の財源構成を見ますと、日本と諸外国との差が非常に顕著なのがここに一つあるんです。  例えば、日本の場合は保険料の場合に、被保険者が二五・〇%、事業主が二八・八%、公費負担で国庫負担が二七・九%。つまり大体三割程度でパラレルになっているわけです。ところが、諸外国の例を見ますと、公費負担、事業者負担のレートが非常に高いわけですね。例えばアメリカの場合は、被保険者が二一・四、事業主が三五・五、国が二六・四、こうなりますが、スウェーデンやイタリアにいきますとさらにこれが高くなって、スウェーデンの場合は被保険者が一・二、事業主が四四・〇、国庫負担が二〇・六。イギリスの場合は、被保険者が一七・七、事業主が二九・五、国庫負担が四三・五、こうなりますね。  だから、こういう点を考えますと、私は将来の社会保障財源の確保という点で言うならば、この負担の構成費を諸外国並みに近づけるという方向検討をもっと積極的にしてよいのではないか。この問題がヨーロッパ諸国を歩いた場合でも、日本の事業者負担が少ないという声を私は聞くんですが、こういう点についての対応検討する必要がある。  それから、さらに将来問題としては、二つの方向を私は検討すべきだという気がしておりますが、一つはやっぱり社会の生産力の発展といいますか、経済成長率の問題に直接にかかわるかどうかわかりませんが、要するに有効な社会の生産力の発展ということの蓄積をどうやって社会保障なり福祉の方に社会資本として蓄えていくかという、こういった問題が一つと、それからやっぱり八二年のウィーンで、国連の高齢者問題世界会議で、これは日本の代表も出られましたが、ここで高齢者問題国際行動計画が策定をされたわけですが、ここでも言っているように、要するに高齢者の多様な問題に対応していくためには、軍事目的に使われる資源や経済力、こういったものの資力を社会開発のニーズへの転用という、こういう状況をつくり出さないといかぬと、ここで本当に真に解決されるんだということも国際的にも言っている。こういうことを含めますと、将来そういった軍縮方向も目指しながら財源確保していくという方向を、もっとこういう懇談会の展望なんかでは打ち出してもらっていいのではないかというような気もしておるわけであります。  ここらあたりになりますとどういう御答弁がいただけるか、この懇談会に私は直接聞かなきゃならぬのかもしれませんが、私の意見としてそういうものも考えておりますので、そこらあたりもひとつ御検討いただきたい、こういうことです。  それから、最後に一点だけ、ぼけ老人対策先ほどお話がございまして、私もこの問題は大事なので質問をしたいと思っておったんですが、要するに全国でどれぐらいぼけ老人がいらっしゃるか、厚生省の推定で五十万ぐらいという数字私は見たことあるんですが、実際に実態調査ができておるのかどうか。私は、これは実態調査をまずおやりいただくということが必要ではないか。それから養護、特養あるいは病院等に入っていらっしゃるのはまだいい方で、入れないために、介護のために家族が大変な苦労をなさって一時ステイのような施設がほしいとか、あるいはもっと施設を拡充してほしいとかいうことで、在宅の痴呆性老人の介護に大変に家族が苦しんでおる。そういう実態を調査して、そのニーズにどう対応するかということも思い切った施策として打ち出していただきたいということを希望しておりますが、以上御質問をさせていただきます。
  37. 山口剛彦

    説明員(山口剛彦君) 年金関係についてお答え申し上げます。  年金のレベルの国際比較を申し上げましたけれども、それの問題点として先生御指摘いただいた点については全くそのとおりでございます。私どもも比較上そういう問題があるということを十分認識をいたしております。したがいまして、そういうような問題もございますので、国際比較だけでどうこうするということは私どもも必ずしも適当じゃないと考えております。  ただ、先ほど申し上げましたように、我が国の年金制度が成熟の途上にあって、これからの高齢化社会あるいは年金制度が成熟化していく中で、今の制度を全く放置しておいて二十年、三十年を迎えることが果たして適当かということを考えました場合に、やはり軌道修正が必要じゃないかという認識でございます。  そういうことでございますので、先ほどレベルの比較の問題として、トータルで見で国民総生産との比較がございましたけれども、この問題も今、発展途上、成熟の途上にございますので、今の制度をそのままにしておきましても、成熟化が進みますと、先ほど御指摘のありました数字も、我が国の場合、今の数倍にもなるというのは数字の上でも出てまいることでございますので、この辺のところも成熟の状態高齢化状態等考え合わせながらその比較をしていく、また将来に向けての方向検討していくということが必要ではないかというふうに考えております。
  38. 小林功典

    政府委員(小林功典君) 最初に、老人保険の関係でございますが、確かに先生おっしゃるように、外来患者の受診率が下がっている、これ事実でございます。ただ、これはもう少し時間を見ないとはっきりした分析は無理かと思いますけれども、現段階で私どもは、これは従来の老人の方のはしご受診と申しますか、そういうものが減ってきたというふうに見ているわけでございます。決して病院に入っていなきゃいかぬ方を追い出したということではないと考えておりますが、これはもうしばらく様子を見る必要があると思います。  それから、特養待ちがどれくらいあるかということでございます。今調べている段階では約一万三千人という数字が出ております。ただこの中で、どれだけが老人病院から出たかというのはちょっとわかりません。全体で今待っている方、待機リストに入っている方が約一万三千人、こういう意味でございます。  それから訪問指導、これはもう大いにやらなきゃいかぬということで、かなり苦しい予算の中でございましたが、家庭奉仕員、ホームヘルパー、この増員は厚生省の最重点事項としてやってまいりました。予算を、五十七年度から五十九年度にかけまして、五十七年度が三千二百九十八人の増、五十八年度が千六百六十人、また五十九年度が千六百三十人と、三年間で約六千六百人程度、これでも不十分という御意見もあろうかと思いますが、私どもの予算の感覚から言いますと、これは大変な努力のたまものだというふうに、自分で言うのもおかしいんですが、そういう感じの数字でございます。  それから、その次の収入財源の問題、大きな問題、なかなか難しい問題でございます。おっしゃいますように、日本と例えばアメリカ、スウェーデン、イタリア、これは確かにその財源区分が違います。ただ、アメリカの場合には、先生も十分御案内と思いますが、メディケアとメディエードですか、要するに日本で言えば、老人医療と生活保護、医療扶助に近いものでありますが、それでありますから、当然公費負担の方がシェアが高くなる、これはその性格から当然かなという気もいたします。それから、スウェーデン、イタリアになりましては、これは一種の国営でございますから、当然公費の方が多い、これも当然であります。  ただこの場合に、午前中にも申し上げたことでありますが、公費負担というのは税であります。ですから、保険のシステムか、公費負担のシステムかということは、言いかえれば、保険料で出していただくか、税金で出していただくかという差にすぎないわけでありまして、どちらのシステムをとる方がいいかということであります。これは、どちらがいいかということは、私は一概には言えないと思いますが、それぞれの国の国情と申しますか、あるいは歴史と申しますか、そういうものによって決まるべきものでありまして、どちら側でなきゃならない、こちらが正しいということじゃないと思いますけれども日本の場合には、従来の沿革、これまで築いてきた歴史から見て、やはり社会保険システムでやった方がいいと私どもは考えております。そこは、だから費用負担がどっちかということじゃなくて、やっぱりシステムをどう組み立てる方がいいかという論議の対象になる問題ではなかろうかという感じがしております。  それから、あとは大変難しい問題でございますが、軍事費を社会開発の方に回すのがいいかと、これもやはり一つの選択の問題でございまして、日本の場合はどうかと、これは厚生省の総務審議官としては、ちょっとお答えしにくい問題でございます。  それから最後に、ぼけというか、痴呆性老人対策でございますが、数は一応調べてきております。今までに二十数県で調査済みでありますが、推計いたしますと、全国で約五十六万人という数字を私どもつかんでおります。そこで、あと家族の、例えば実態の調査をしたらどうかという点、ちょっと担当の局とも一応相談してみたいと思います。
  39. 安永英雄

    ○小委員長安永英雄君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後二時五十二分散会