○
参考人(宮川洋君) 東京
大学の工学部の宮川でございます。
こういう先生方の席上で
先端技術について御
意見を申し上げることができるという機会、大変弘光栄に存じておりますけれ
ども、ただ、私も浅学非才でございますので、十分あらゆる分野についてまとまって、あるいは先生方のお役に立つような御
意見が申し上げられるかどうか大変心配しておりますけれ
ども、その点をお含みの上お聞きいただければというふうに思っております。
私は、東京
大学の工学部に
電気工学科という学科がございますけれ
ども、そこで
電気通信工学という講座を担当しております。そういうようなことで、専門は
電気通信工学、いわゆる通信と呼ばれておる分野でございますけれ
ども、最近、こういうぐあいに
技術の進歩が非常に激しゅうございまして、狭い
意味の通信だけではなくて、もろもろの
エレクトロニクスの
技術あるいは情報
技術というものも通信と互いに絡み合ってまいりまして、一体となってきつつある。また、放送というような分野もございます。狭く通信を考えますと、電話のようなものが狭い
意味の通信でございますけれ
ども、放送の分野とも絡み合ってくる、またコンピューターとも絡み合ってくるというようなことで、そういうような分野を一言で「
エレクトロニクス、情報
通信技術」、こういうぐあいにまとめさせていただきますと、
エレクトロニクス、情報
通信技術、そういう分野についての最近の動向あるいはそれを取り巻くような環境というものを私がどういうぐあいに考えておるか、あるいは把握しておるか、そんなことをお話しできればしたいというぐあいに思っておるわけでございます。
そういう話になりますと、
レジュメのようなものをつくってまいりましたけれ
ども、この
レジュメもちょっと私の手書きで大変お読みづらいと思いますけれ
どもお許しいただきたいと思いますけれ
ども、「高度情報社会とその
背景」ということで、これはいろいろなところで言われておりますので、また繰り返すまでもありませんけれ
ども、
一つは
産業が非常に成熟化してきた。この理由としては、戦後の壊滅的な状況からやはり国民
経済というものも立ち直らせていかなければならないということ、言うなれば先進国をお手本にいたしまして、それに追いつこうではないか、そういう政策から出発してきておるわけでありますけれ
ども、さらには、最近は後進国からも非常に
技術的にも追い上げを受けておるという状況のそのはざまの中で、
日本がこれからどうしていくかという状況になりつつあるという状況でございます。
産業の成熟化というのを
一つ簡単な例で申し上げますと、鉄が一トン十万円
程度である。これに対しまして、鉄が基幹
産業であった
時代、まあ今でも基幹
産業でございますけれ
ども、花形
産業であった
時代から、船舶、自動車、こういうものに移ってまいりますと、自動車ですと一トン当たり大体百万円ぐらいである。非常に大まかなラウンドした数字でございますけれ
ども、こういうことが言えるんではないかと思います。
これに対しまして、テレビになりますと、一トン当たりですと一千万円ぐらい、テレビ受像機でございますけれ
ども、そのくらいの価格がつけられておるんではないか。ICと、集積回路と呼ばれています、トランジスタを
一つのシリコンのチップの上に集積化したものを非常にたくさん取りつけて、一遍につくってしまうという
技術がございますけれ
ども、これも先生方もう篤と
御存じだと思いますけれ
ども、さらに一けたぐらい高付加価値のものであるというようなことで、
産業の成熟化に伴いまして、先進国へ追いつくとともに、また後進国からの追い上げと、それから国際的な
産業の分業ということによりまして、やはり
日本も高付加価値のものに
産業構造を移していかなければならない、こういう状況が
一つにあろうかと思います。
そういう
意味で、高度情報化社会と言いますと、私
ども、テクノロジー先行型である、使い方もまだわからないのに、どんどんテクノロジーだけ一方的に進んでしまうというお話がよくございますけれ
ども、しかし、テクノロジーと社会だけの問題ではなくて、
日本社会が
世界の中でどういうぐあいに位置づけられて、どういう位置を占めておるかという、その中での
一つの選択として、やはりハイテクノロジーといいますか、そういうものが要求されてきておるというぐあいに私は考えておるわけでございます。
それから、「高度情報社会とその
背景」の二番目としましては、高齢化、それから高学歴化、女性の就業率の増加というようなことも挙げられようかというぐあいに思っております。
これは
産業構造の
変化にもよりますけれ
ども、人口の高齢化に伴いまして、高齢者にもやはり
仕事をしていただくような環境をつくっていかなければならない。それから高学歴化ということになりますと、現に高校出の職場というものが、中学出はもちろんですけれ
ども、高校出の職場もだんだん少なくなってきておるという状況である。オフィスにおきましても、高校出の女子というよりも、さらに広い知識を持った人が求められておるという状況である。それから、女性の就業率も増加してきておる。
仕事自身が全体としてやはり高度な構造にだんだん移していかなければならない。単純力作業といいますか、単純労働といいますか、そういうような労働力というものがだんだん不足してきておる。そして、
産業の方もさらに高度なものを求めてきているというのがもう
一つの
背景だと思います。
それから三番目は、高度成長のひずみの是正ということが
背景にあろうかと思いますけれ
ども、まあ
日本社会が成熟化してきたといいましても、やはり生活環境というものに非常にまだまだ先進国に及ばない点があるわけでありまして、特に住まいを取り囲みますところの住居環境といいますものを考えてみますと、まだまだ不足しているところがある、我々努力しなければならないところがある。それから、社会のインフラストラクチャーの整備、下水道の整備を含めまして、学校や図書館あるいは公園の整備というようなことを考えますと、非常に不足している点もあろうかと思います。それから、高度成長のひずみとして、やはり都市に人口が集中し過ぎているんではないか。これの分散化を図らなければならない。こういうようなことを考えてみますと、やはりこういうような問題解決の――この中で特に都市の集中から地方への分散というようなことを考えてみますと、新しい先端
産業と、特に
エレクトロニクスや情報
通信技術に何か積極的な役割が
期待できないだろうかということが考えられるわけでございます。
それから四番目でございますけれ
ども、これは言うまでもなく、
日本は何といいましても省資源・省
エネルギーというものは、これは
本質的な
日本の
産業に対する要請だというぐあいに私了解しておるわけでございまして、これからやはり資源・
エネルギー浪費型の
産業から、省資源・省
エネルギー型の
産業に
転換していかなければならない。そのためにやはり
エレクトロニクス、情報
通信技術が非常に
期待されておるというぐあいに考えておるわけでありまして、高度情報社会というものが新聞紙上非常に表面だけ往々にして取り上げられますけれ
ども、それに
期待されているところは非常に大きいものがあるというぐあいに、まあ私の専門分野でございますので我田引水のところもあろうかと思いますけれ
ども、そういう認識を持っておるわけでございます。
二ページ目で、また実はこれタイプしていただこうと思っておったのでございますけれ
ども、手書きのまま先生方にお配りいただいたという状況で、大変申しわけありませんけれ
ども、二ページ目に「
先端技術の現状」ということで、先ほど来お話がございましたけれ
ども、
先端技術にもいろいろあろうかと思いますけれ
ども、大まかに二つに分けまして、
一つは当面直ちに
期待される分野。実戦力としまして
産業を支える、しかもかなりの雇用を支える分野というものと、それから十年ないし二十年後、今後に
期待される分野と、こういうぐあいに二つに分けられようかと思います。
もちろん十年先、二十年先といいましてもすぐやって来るわけでございますから、今からこういう分野についても手を打っておかなければならないわけでございますけれ
ども、直ちに
期待される分野といいますと、やはり新聞紙上で華やかに取りざたされておりますように、
エレクトロニクス、コンピューター、通信、こういう分野が既にかなりの実績を上げておりますし、それから
技術革新も非常に激しい。これからも
技術革新の非常に激しいスピードが
期待されるわけでありまして、しかもかなりの分野に育っておる分野というぐあいに考えておるわけでございまして、これに最近は新
技術、新材料といいますか、材料
技術というものがつけ加わりつつあるというのが私の認識でございます。
こういうぐあいに直ちに
期待される分野といいますと、比較的情報通信、
エレクトロニクスの占める割合がどうしても多くなってしまう。将来を考えてみますと、バイオテクノロジーあるいは遺伝子工学、宇宙
技術というものが将来大きな分野に育ってくれば、
産業技術、
産業分野あるいは雇用にも大きな影響を及ぼしてくるのではないかということでございますけれ
ども、とりあえずはまだまだ、まあ種をまいて苗木を育てている
程度でありまして、現在のところは非常に人手をむしろ食っておる、手間がかかる作業をやっておる。むしろありていで、俗な
言葉で言えば、稼いでくれるあるいは頼りがいのあるものはやはり今のところは情報通信あるいは材料の分野ではなかろうかと思っておるわけでございます。
この情報通信の分野に――材料の分野は私ちょっと専門外でございますので、情報通信の分野に限ってお話をさしていただきますと、非常に情報通信の分野も発展が厳しゅうございまして、一番
最後の八ページのところに、どういうような分野が、
産業技術が現在考えられておるかということをわかりやすく図にしたものがございます。
これは下の方に「
技術の融合とメディアの融合」と書いてございますけれ
ども、非常に
技術が進歩してまいりまして、いろいろな
産業、
電気通信の分野を支えておった
技術が一体になりつつある。融合しつつある。どの
技術でも同じような基本
技術でつくられるようになってきたということでございます。
この大きな丸をかきましたのが、一番上の丸は電話
技術というぐあいに考えていただければと思いますけれ
ども、まあ公衆
電気通信を中心にいたしまして電話のネットワークというのが
日本全国に広がっておるわけでありまして、約五千万台の電話機がつながっておるということで、非常に大きなネットワークになっておるわけでございます。これにつきましては、マイクロ波であるとか有線の
技術というものが使われて構築されておるわけでございますけれ
ども、これにも非常に大きな
技術革新が押し寄せつつありまして、通信衛星、CSと書いてありますけれ
ども、コミュニケーションサテライトでございます。それから光ファイバーの
技術が非常に大きな影響を及ぼしつつあるわけであります。
また電電公社の方におきましては、INS――電話のネットワークを通しましていろいろなサービスを提供する。例えば、お子様方がパソコンなどを御
家庭でお使いになっておりますけれ
ども、今のところは電話線とつながっておりませんけれ
ども、そういうようなものも将来は電話のネットワークというものがディジタル化されますと、パソコンにはそういうコンセントがついておりまして、電話機にコンセントがついている。電話のかわりにパソコンをつなぎますと、友達のうちのパソコンといろいろゲームができる。あるいはそれが発展してまいりますと、スーパーだとか大手の商社につながりまして、デパートにつながりまして、ホームショッピングができる。パソコンを使ってホームショッピングができる。あるいはそういうようなパソコンを使いまして、やはり電話線を通しまして銀行につながりますとホームバンキングができるというような、いろいろなことが考えられるわけで、将来を考えれば在宅勤務というようなことも言われておりますけれ
ども、そういうようなものも従来の単に電話と言われておりましたものからそういう方向に非常に大きく広がりつつあるということでございます。
それから、放送につきましても、先生方
御存じのように、先月BS2という
世界で初めての大電力の実用放送衛星というものがわが国で打ち上げられたわけでございまして、五月ごろに実際に放送が開始されるということでございますけれ
ども、これは
一つの衛星で
日本全国を直ちにカバーしてしまうという非常に大きな力を持っておるわけでございまして、NHKが
昭和二十八年にテレビ放送を開始しましたけれ
ども、まだテレビをごらんいただけない御
家庭が四十万世帯ぐらいございますけれ
ども、三十年たってもまだテレビを見られない世帯がある。しかしながらこの放送衛星によりますと、一遍に全国に番組が分配できる。しかも、もし視聴者が、例えば今NHKの視聴者約三千万と呼ばれておりますけれ
ども、三千万という数にいたしますと非常に安い値段で番組が配られる、非常に画期的な力を持っておるわけであります。しかしながら、当初はやはり視聴者の数も少ないでしょうからその負担をどうするかということがいろいろございましょうけれ
ども、将来は非常に大きなものに育っていくと考えられるわけであります。
それから、高品位テレビというものもございます。これはつい一年ぐらい前までは、この先ほど打ち上げました放送衛星ではいわゆる周波数帯域、これは情報を運ぶ大きさでございますけれ
ども、これが足りないんではないか、高品位テレビは少し送ることはできないんではないかと言われておったわけでありますけれ
ども、最近の
研究によりますと、いまの打ち上げておりますBSでも高品位テレビは十分できそうである。ですから、あるいはBS3といいますか、五年後の放送衛星では高品位テレビというものも可能になってくるんではないだろうか。高品位テレビは大体三十五ミリの映画フィルム以上の画質を持っておると言われております。非常に細かい画質を持っておる。ですから、御
家庭に劇場と同じような、あるいは野球場の場面がそのまま送り届けられるという非常に大きな能力を持っておるわけでありまして、これは御
家庭にそういうような新しい情報をお届けするだけではなくて、ミニ劇場あるいは小さな劇場をこういうような放送衛星でつないだらどうだろうかというような話も、私個人的な
意見でありますけれ
ども、いろいろなところからお伺いしておるわけであります。
それから、もう
一つの分野はコンピューターでございまして、コンピューターはいま第一世代、第二世代、第三世代というコンピューターにまで育ってきておるわけでありまして、ICを使ったコンピューターが、今、集積回路を使いましたコンピューターが一般に使われておるわけでございます。そして、これは社会、
企業におきましてもいろいろなところで役立っておる。あるいは、銀行におきましてもオンライン
システムというようなところで使われておりますけれ
ども、これにつきましても、御
家庭にもう既に、五、六年前にしますと一億円ぐらいの
電子計算機であったものが、もう子供のおもちゃとして十万円ぐらいで手に入る状況になっておるわけでございます。
しかしながら、
皆さん、先生方
御存じのように、電卓というものも、かつては非常に高いものであったわけでありますけれ
ども、もう御
家庭に何台も電卓がおありだと思います。そういうような
意味で、パソコンも今のままでいきますと、もう
たちまち
家庭の中にはんらんしてしまうという状況でございます。
このためにはだれでも使えるようなコンピューターにしなければいけない。特殊な
教育を受けた人でなければ使えないようなコンピューターではコンピューターの普及というものも限度があるわけでございまして、私は第五世代のコンピューターということを通産省が非常に力を入れておやりになっておりますけれ
ども、これは非常に使いやすい、ユーザーフレンドリーのコンピューターというような
言葉が最近よく使われますけれ
ども、ユーザーがお使いやすいコンピューターをつくる。そうでなければ需要にも限度がある。コンピューターがどんどんつくり出されるけれ
ども、だれも使われない、
たちまちオーバープロダクションになってしまうという状況が考えられるわけでありまして、何とかしてこれだけのコンピューターという非常に大きな力のあるものをどなたでも使っていただけるようにしていただける、これが第五世代の非常に大きな目標ではなかろうかというぐあいに思っております。
それから、スーパーコンピューターあるいはさらにスピードの速い超高遠計算機というようなものも、将来非常に大きな役割が考えられておるわけでありますけれ
ども、これはアメリカなどでは軍事用に非常に
関心を持たれておるわけであります。しかし、
日本もこういう面につきましてもハードウェアの点では非常に力がついてきたという状況ではなかろうかと思います。それぞれの分野の現状を大まかにかいつまんで眺めてみるとそんなところではなかろうかというぐあいに思っておるわけでございます。
しかしながら、先ほど申し上げましたように
技術が融合したということで、その間にいろいろなものが電話、放送、コンピューターと、三つ大きな分野がそれぞれ別個に存在しておったわけでありますけれ
ども、よく考えてみますと、電話局の電話交換機というものは実はもう既にIC化されておりまして、中身をよく見ますとコンピューターと全く同じものでございます。
そうしますと、電話局でいろいろな情報処理サービスができないだろうかということになってくるわけでありまして、これがVANと呼ばれておるものでございます。これは付加価値通信網と呼ばれておりますけれ
ども、もう既に、現に電電公社などでは、例えば地方の緊急医療情報
システムというようなものをいろいろ都道府県から委託を受けまして電話局の中に各地につくっておりますけれ
ども、これは例えば病院であるとか開業医の診療所でどういうような設備があるか、それからお医者さんが夜中でもいるかどうか、勤務していられるかどうか、あるいは空きベッドがあるかどうかというようなことをお医者さんの端末から電電公社にありますところの電話交換機といいますか、計算機の方に送り届けまして、そして計算機にすべて情報を送り届けておく。救急車が出動します場合には、どの病院にベッドがあいているか、あるいは診療科目があるか、外科であるか内科であるか眼科であるかというようなことを問い合わせまして、そこに送り届けるというようなことをやっておりますけれ
ども、これはまさに情報処理をやっておるわけでありまして、こういうような
仕事をVANというぐあいに呼んでおるわけであります。
それからまた、先生方新聞でよくお聞きになると思いますけれ
ども、双方向CATVというものもいろいろなところが
事業化しようとしておるわけであります。ですから、
技術的に可能であったものが
事業化されるという状況でございまして、これが
事業化されますと、先ほど電話線にパソコンを通しましていろいろな情報を、銀行の預金口座から引き出すとか、あるいはショッピングをするとかというお話をしましたけれ
ども、双方向CATVでもそういうことが可能になるということでございます。これはアメリカなどでは非常に広く普及しつつあるものでございます。
それから文字放送というものがございます。これは昨年の十月三日からNHKが朝の「おしん」の番組のせりふであるとか、あるいはニュースであるとか、天気予報であるとか、大体一種のこれは紙芝居と考えていただいてよろしいかと思いますけれ
ども、テレビに適当な押しボタンを用意しまして、そこで十三なら十三を押しますとテレビ画面にニュースが出てくる。ニュースはたとえば五枚ぐらいの構成になっておりまして、それが三十秒置きぐらいに自然に切りかわってまいります。しかしながら、これは、今NHKが実際におやりになっておりますのはまだまだ試験的なものでございまして、将来はこれも非常に大がかりなものになってくる、それで非常に役立つものになってくるであろうと考えられております。
特に放送衛星の場合には非常にあきが、情報容量のあいているところがあります。テレビを送るだけではなくて、それ以外にあいている情報の道が、パスが非常にたくさんございまして、それを通しますと非常に多くの情報が送り届けられるのではないか。
他方、たとえば共同通信社であるとかロイター通信社であるとか、そういうところはもう既に電話線を通じて同じようなサービスをやっておるわけでございます。情報の分配というのをやっておるわけでございますけれ
ども、御
家庭にそういうような通信社から新聞社を通さないで直接ニュースが入ってくるということも考えられるわけでございます。
真ん中にキャプテンあるいはビデオテックスと書いてございますけれ
ども、これは電話線とテレビをつないだもの、電話線にテレビをつなぎまして、テレビは今までアンテナにつないでおったわけでありますけれ
ども、電話線につなぎまして、そして電話線からいろいろ情報を送ってもらう
システム、これをビデオテックス――国際的にはビデオテックスと呼んでおりますけれ
ども、各国でそれぞれ愛称をつけておるわけであります。
日本の場合にはキャプテンという名前で呼んでおるわけでありますけれ
ども、フランスの場合にはたとえばテレテル、オランダなどでも非常に一生懸命
研究しておりますけれ
どもビジテルと、いろいろな名前をつけておる。
イギリスですとプレステルというような名前で呼んでおりますけれ
ども、これも
日本で十一月から実際に営業を開始する、今実験を行っておりますけれ
ども、営業を開始するということを聞いておるわけでありまして、これはすぐ右手に書いてありますVANというものと非常に近い力を持っておる。
ですから、このキャプテンを使いましてもホームショッピングとかホームバンキングということも可能になってくるわけでありまして、ある
意味で御
家庭にいろいろな
先端技術というものが、まさに電話線なりテレビ電波なりを通しましてじかに入ってくる
時代になってきたというぐあいに考えられるわけでございます。そういうようなところが情報通信の現状ではないかというぐあいに思っております。
二ページ目の下の方に三という
項目がございますけれ
ども、「
エレクトロニクス、情報
通信技術の現状」と、こうしまして、「
日本の
技術は本当に進んでいるか」ということでございます。
よく
日本は非常に
エレクトロニクスの
技術が進んでいるということを聞くわけでありますけれ
ども、これは一般論としまして日米を比較しますと、ヨーロッパは多少おくれておるところがございますが、
日本とアメリカがつばぜり合いをしておるというぐあいに一般論として言えるかもしれませんけれ
ども、一般論の比較を言いますと、
日本はやはり少品種大量
生産、これにつきましては非常に力を持っておる。しかしながらアメリカはやはりいろいろな品種で、しかも小量のものを、しかも非常に高度なものをつくっておる。ですから、いわゆる集積回路、ICというようなものもございますけれ
ども、これが、今のところが一般論でございますけれ
ども、各論に入りますとどうか。
確かに
日本はすぐれているものがありますけれ
ども、そのすぐれているものの品質が非常に限られている。よく集中豪雨的と言いますけれ
ども、たとえばテレビならテレビ、自動車なら自動車が非常に
日本は
生産技術が高い、そして集中豪雨的にアメリカであるとかヨーロッパに輸出されるということが言われますけれ
ども、まさに
エレクトロニクス、情報通信も同じようなことが言えるわけでございまして、三ページに各論がざっと、これも非常に大まかで、さらに細かくお話しすると時間もかかりますけれ
ども、半導体についてはどうだろうかと言いますと、
日本は普及品、量産品につきましては非常に進んでおる。これは記憶素子というものがありますけれ
ども、六十四キロビットのメモリーであるとか二百五十六キロビット――キロビットというのは千ビットのことで、蓄える情報の単位でございますけれ
ども、ようやくアメリカで二百五十六キロビットのものができたという話が新聞紙上に出てきておりますけれ
ども、
日本ではもう去年の初めごろから各社つくっておりますけれ
ども、
余り大きくこれを宣伝いたしますと非常に日米摩擦の無用の刺激になるということで、ひそかにサンプル出荷ということをやっておりますけれ
ども、そういうように非常にこの記憶素子というのは大量に使います。そういうものにつきましては
日本の
生産技術というのはまことにすぐれたものであるということが言えるわけであります。
しかしながらアメリカではどうかといいますと、CPUあるいは論理素子と呼ばれておりますところの
一つの計算機をつくろうとしますと、それ以外のもろもろのいろいろなものを使わなければいけませんけれ
ども、そういうものについてはやはりアメリカの進んでいるところが多いわけであります。もちろんパソコンに使われているような集積回路、半導体部品は
日本でも全部つくっておりますけれ
ども、少し
産業用の高度なものということになりますと、やはりアメリカから買ってこなければならない、アメリカに太刀打ちできないという状況でございます。
コンピューターについてはどうかということになりますと、コンピューターについては、やはりハードの
技術は
日本では非常に進んでいる。しかしながらアメリカは、ソフトの
技術あるいはコンピューターの運用・管理
技術、利用
技術、こういうものが非常に進んでおる、特に使い方について非常にすぐれておるということでございます。たとえばコンピューターネットワークというような考え方、コンピューターがいろいろなところにありますけれ
ども、これをつないで、いろいろなお互いにデータベースのやりとりをしようというような考え方は、もうアメリカでは十数年前からあるわけでありまして、そしてそういうようなネットワークの構築についていろいろ努力されてきておるわけでありますけれ
ども、
日本ではようやく最近こういうことについても本格的に
関心が向けられ始めてきたということで、利用
技術の面では非常に劣っているということが言えようかと思います。
あるいは、単に大型のコンピューターといいましても、プログラムを走らせるだけではなくて、それが故障した場合には診断プログラムというのを走らせるわけでございます。ですから、単に計算をさせるだけではなくて診断プログラムを走らせる。そういうような非常にきめの細かい診断プログラムをどうするかという話になりますと、やはりアメリカの
会社の方が一歩先んじておる。どうしてもそういうようなものを、全部含めて
日本に移植すると非常にやりやすいわけでありますけれ
ども、
日本に全部含めて移植できない場合には、ハードの面あるいは非常に広く使われるソフトのものは
日本でも
開発されるようになりましたけれ
ども、きめの細かい運用
技術まで立ち至ったものはまだおくれておるということが言えるわけであります。
これは
電気通信につきましてもまさにそうでありまして、電話であるとかそういう
技術につきましても、ハード
技術あるいは運用・管理
技術というものは非常にすぐれておりますけれ
ども、一般に利用
技術というものについてはおくれているということが言えようかと思います。
たとえば電話線につなぎますところの御
家庭の電話機、これは電話機以外にいろいろなものが実際はつなげるわけでありますけれ
ども、
日本の場合には最近まで法的な規制も厳しいということがございまして、そういうようなことに対しての
関心が少なかった。あるいは非常に特殊な
産業に対しましては特殊な通信網というものが必要になってまいります。そういうようなものも、
日本の場合は電話網、公衆の電話網でやったらどうだろうかということで、やはり
関心が少なかったわけでございます。これは電話の普及というものも、アメリカに比べて普及の台数から見ますと十年から十五年ぐらいおくれております。電話というものはひところは非常に貴重なものであったという
感じが今でも多少は残っておる。ようやくそういうものが一般に普及いたしまして、次の段階を考える
時代にようやくなってきた、アメリカは十年ぐらい前に既にそういう状態にあったのだというぐあいに考えられるわけでございます。
光ファイバーのことも非常によく言われておりますけれ
ども、光ファイバーは、
技術につきましては日米同列、こういうぐあいに考えていただいてよろしかろう。もちろん
日本の進んでいるところもありますし、アメリカの進んでいるところもある。
衛星
技術はどうだろうか。これも非常に大きな分野でございますけれ
ども、これはやはり軍事的な面も含めましてアメリカが絶対的優位である、こういうぐあいに考えられるわけでございます。
そういうことで、四ページ目に「
エレクトロニクス、情報
通信技術の課題」というものを幾つかまとめておいたわけでありますけれ
ども、この中で「
技術」といいますのは製造
技術であるとかプロダクション
技術、これを
技術というぐあいにまとめたわけでございます。「利用」と申しますのは社会での受け入れ態勢、受け入れがスムーズにいくかどうか、広く使われるようになるかどうか、これを利用と、こう置いたわけでございます。
超LSI、これは
技術のところに二重丸。先ほど言いましたように、超LSI、
日本はかなりアメリカに対してある面では進んでいる。例えば
技術、超LSIをつくる
技術ということでは非常に進んでおる。しかし、どういうような超LSIをつくったらいいかということになりますと、コンピューターの中身になってきます。これになりますと、やはり利用
技術に結びついできますので、つくるのはつくれるけれ
ども、一体どういうものをつくったらいいんだろうか。お子様のお使いになっておりますところのパソコンというようなものも、例えば中身には八〇八〇というようなマイクロプロセッサー、小さなコンピューターがついておるわけでございますけれ
ども、それは、設計はみんなアメリカでされたものでありまして、
日本でそれと同じものをつくっておるわけでございます。そういうぐあいにいたしまして、超LSIも、つくる
技術は進んでいるけれ
ども、実際に利用するという
立場からはかなりおくれているということでございます。
第五世代のコンピューターもまあまあいいところまで、かなりのところまで成果を上げるんではないだろうか。しかし、それを本当に利用し、使いこなすかということになりますと、多少やはり心配の点があるわけでありまして三角にしておるわけであります。課題としては
システム化ということを挙げさせていただきましたけれ
ども、これもいろいろ
議論があろうかと思います。
ソフトウエアにつきましては、アメリカに比べまして
技術もおくれておるし、利用の分野もおくれている。課題としてはソフトの流通であると。アメリカの場合には、それぞれがソフトをつくるのではなくて、いいソフトがあれば他人のソフトでもどんどん買ってきて使う。そのかわり自分のところでいいソフトができますと、コンピューターのプログラムでございますけれ
ども、他人にもそれを有償で売るということが非常に一般的に行われておるわけでありまして、
日本もだんだんその傾向が出てきておりますけれ
ども、まだアメリカほどではないということが言えるわけでございます。
それから、光通信につきましては、
技術はかなりのところまでいっておる。しかし利用につきましては、
制度的な展開がこれから広がりますとさらに利用も進んでいくんではないかというぐあいに思っておるわけであります。
衛星につきましては、やはり
技術ももちろんおくれておりますし、利用についてもおくれておるという状況でございます。
CATVにつきましては、アメリカはもう既にかなり進んでおります。しかしながら、その装置というものは
日本から輸出されておる場合が多いわけでありまして、そういうぐあいに、製造
技術は、いろいろな機器の製造は進んでおりますけれ
ども、利用につきましてはアメリカよりおくれておるわけであります。
VANについても同じようなことが言えるわけでございます。
それからデータベース、これも非常に大きな分野でございまして、今まで述べませんでしたけれ
ども、VANであるとかCATVであるとか放送であるとかコンピューターであるとか、あらゆるものに関係しできますけれ
ども、これはいろいろな科学文献情報であるとか、あるいは気象情報であるとか資源情報であるとか、そういうような細かい情報を計算機の中に入れておきまして自由に使えるようにしておくものでございます。要するに、大きな
電子図書館と考えていただければよろしいかと思います。そういうようなものが、
日本の場合にはそれぞれの
企業が情報を自分のところだけでお持ちになっておる、情報の流通がうまくいかないということもございまして、なかなかデータベースというものが
日本の場合にはでき上がってこない。しかも、こういうものは
日本だけで使うのではなくて
世界にも使ってもらわなければいけない、一種の出版と同じでございます。あるいは通信社で、ロイター通信社というものが
世界じゅうの通信網を握っておるというぐあいに言われておりますけれ
ども、
世界的にそういう情報を買っていただかなければならないわけでありますけれ
ども、
日本の場合には、いろいろな科学文献情報につきましてもオリジナルな情報が、やはり
日本での
研究成果が乏しいということもありますし、それから言語の障害があろうかと思いますが、こういうことで非常におくれておるということが心配されるわけでございます。
それから、実は雇用との関係が先生方の御
関心であるということで私見を多少つけ加えさせていただいたわけでございます。
五ページ目に、「
エレクトロニクス、情報
通信技術と雇用」ということでまとめさせていただいたわけでございますけれ
ども、雇用の量的なインパクトが
一つあろうかと思います。これは、
一つには直接的なインパクトあるいは
エレクトロニクス産業、情報通信
産業自身がどれだけの雇用吸収能力があるかということでございます。これは今後とも伸びていくということも考えられますので、これはかなり
期待されるところであろうかと思いますけれ
ども、間接的なインパクト、これは一般
産業が情報通信が進歩することによりまして高度化いたします。例えばOA化される、自動化される、
ロボット化されるということで、ある
意味では、これはポジティブのインパクトも考えられますし、ネガティブのインパクトも考えられるわけでありまして、こういう二つの面があろうかというぐあいに考えられるわけでございます。
それから二番目は、雇用の質へのインパクトでございまして、
一つは、
産業が高度化するということで、結局中身はどうなってくるかといいますと、やはり知識・情報
産業あるいはサービス・セールス
産業というところにこれからは雇用を移していかなければならないんではないか、いわゆる製造業からこういうところに雇用が移っていくんではないだろうか。一次
産業、二次
産業といいましても、その中身を考えてみますと、かなり知識・情報
産業あるいはサービス・セールス
産業になってきているところもあるわけでありまして、例えば一次
産業で、漁業などにつきましてもいろいろな
電子技術が導入されておる、あるいは出荷情報――どの市場に出荷したらいいかというような
システムもでき上がっておるということでございます。
それから二次
産業につきましては、製造業の合理化、自動化というのは非常に激しいものがございます。そして、製造部門から
研究開発部門に人が移りつつあるという状況であります。しかしながら、繊維
産業というようなものもある
意味ではソフト化しつつある。人も減りましたけれ
どもファッション化、あるいは建設
産業の方もコンサルタント化してきておる。海外にいろいろ進出されておる例が多いわけでありますけれ
ども、コンサルタント、設計、管理、施工ということをやっておるところが多いわけでございます。
それから、三次
産業でございますけれ
ども、これにつきましては、もともとサービス・セールスに近いわけでございまして、こういう面につきましても、鉄道につきましては、例えばCATVであるとか、あるいは線路わきに光ファイバーを引いて通信
産業を始めるというようなこともいろいろ取りざたされておるわけであります。銀行・金融業務につきましては第三次オンライン化。今までは支店まで、本店-支店間はオンラインになっておった。しかし、
家庭にまでこれがつながろうという状況になりつつあるわけであります。それから医療につきましても、在宅医療であるとかホームケアというようなことがいろいろ検討されつつあります。
教育につきましても、
教育放送が始まる、あるいはディスクであるとかパソコンを使いまして、いろいろ
教育産業が新しい
電子技術の利用に乗り出してきておるわけでございます。物流、南流につきましても、同じように非常に情報
通信技術に
関心を持ってきつつあるということでございます。
こういうことをまとめてみますと、それから今後の課題でございますけれ
ども、一番目は、
エレクトロニクス、情報
通信技術は、現在の
我が国社会が抱える諸問題を解決する可能性を持っているので、積極的にこの
技術の導入、利用を図るべきである。しかしながら、プラスの面とマイナスの面があろうかと思いますので、総量としてやはり雇用が創出されるように政策展開というものが必要ではなかろうかというぐあいに考えております。
それから、二番目でございますけれ
ども、雇用の創出の観点から知識・情報、サービス・セールス
産業の育成強化を図るべきである。知識・情報といいますと、もちろん
研究開発な
ども含めまして広く解釈させていただいておるわけであります。それからサービス・セールスも、これも非常に人手のかかる分野でございます。そういう
意味で、こういう分野で雇用を吸収していくように努力しなければならないんではないかと思うわけでございます。
エレクトロニクス、情報
通信技術は、これらの
産業のインフラストラクチャーとして役立つ。また、
産業構造の
転換は社会
経済に大きな影響を及ぼすので、適切な対策が必要であろうというぐあいに考えられるわけでございます。
それから三番目でございますけれ
ども、
産業組織としては、大
企業への集中化、巨大化を排除して外製化といいますか、大
企業が何でもやってしまって人減らしをするということではなくて、それを排除して外製化、ありていに言えば外注ということでありますけれ
ども、単に下請ということではなくて、そのネットワークの中で中小
企業の育成を図るようにならないであろうかというぐあいに考えております。それから、中小
企業の近代化、高度化を促進し、雇用を創出する必要があるんではなかろうかと思うわけでございます。
それから、四番目でありますけれ
ども、基盤となる
技術は国の責任におきまして積極的に
研究開発する必要があろうかというぐあいに考えております。
それからさらに、五番目でありますけれ
ども、
大学、専門学校での
教育を社会の要請に応ずるように改革し、充実整備する必要がある。特に創造性育成に配慮すべきであろうかというぐあいに思っておるわけでございます。
それから六番目でありますけれ
ども、生涯
教育制度を確立する必要がある。非常に雇用の質が変わってまいります。そういう
意味で、やはり
企業もある
意味で使い捨てということではなくて、そこに例えば、「一定規模以上の
企業における従業員の定期研修」というようなことを書きましたけれ
ども、中小
企業につきましても、やはり中小
企業の働いている方に生涯を通して勉強していただくような
制度を確立する必要があろうかというぐあいに思うわけでございます。
それから七番目でございますけれ
ども、国際化の推進。これからはやはり国際的な依存関係というものがますます高まってくるわけでありまして、特に発展途上国への
技術移転、
技術者育成というものにつきまして
我が国は積極的な役割を果たす必要があろうかと、そういうようなことで、
先端技術と言われているものも国際的な広がりの中で初めて実を結んでくるのではないかというぐあいに思っておるわけでございます。
ちょっと二、三分超過いたしましたけれ
ども、多少独断もございますのでお聞き逃しいただきたいところもございますけれ
ども、以上簡単にまとめさしていただいたわけでございます。よろしく。御
参考になりましたかどうですか。