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1984-07-09 第101回国会 参議院 決算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月九日(月曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員異動  六月二十五日     辞任         補欠選任      小笠原貞子君     佐藤 昭夫君  六月二十六日     辞任         補欠選任      浦田  勝君     岩本 政光君      下条進一郎君     河本嘉久蔵君      竹山  裕君     出口 廣光君      水谷  力君     倉田 寛之君      柄谷 道一君     三治 重信君  七月七日     辞任         補欠選任      石本  茂君     岡野  裕君      井上  計君     柄谷 道一君  七月九日     辞任         補欠選任      倉田 寛之君     岩崎 純三君      杉元 恒雄君     内藤  健君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安恒 良一君     理 事                 林  ゆう君                 平井 卓志君                 福田 宏一君                 松尾 官平君                目黒朝次郎君                 服部 信吾君     委 員                 岩崎 純三君                 岩本 政光君                 大浜 方栄君                 岡野  裕君                 河本嘉久蔵君                 倉田 寛之君                 斎藤栄三郎君                 杉元 恒雄君                 曽根田郁夫君                 出口 廣光君                 内藤  健君                 夏目 忠雄君                 原 文兵衛君                 星  長治君                 矢野俊比古君                 久保田真苗君                 菅野 久光君                 本岡 昭次君                 太田 淳夫君                 刈田 貞子君                 佐藤 昭夫君                 安武 洋子君                 柄谷 道一君                 三治 重信君                 木本平八郎君    国務大臣        内閣総理大臣   中曽根康弘君        法 務 大 臣  住  栄作君        大 蔵 大 臣  竹下  登君        文 部 大 臣  森  喜朗君        厚 生 大 臣  渡部 恒三君        通商産業大臣  小此木彦三郎君        運 輸 大 臣  細田 吉藏君        郵 政 大 臣  奥田 敬和君        建 設 大 臣  水野  清君        自 治 大 臣  田川 誠一君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 藤波 孝生君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  後藤田正晴君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  栗原 祐幸君         —————        会計検査院長   鎌田 英夫君         —————    政府委員        内閣参事官        兼内閣総理大臣        官房会計課長   中嶋 計廣君        内閣法制局長官  茂串  俊君        人事院事務総局        委員長      細谷 重男君        公正取引委員会        委員長      高橋  元君        公正取引委員会        事務局取引部長  利部 脩二君        警察庁長官官房        長        太田 壽郎君        警察庁長官官房        会計課長     立花 昌雄君        皇室経済主管   勝山  亮君        総務庁長官官房        会計課長     鈴木 昭雄君        総務庁人事局長  藤井 良二君        総務庁行政監察        局長       竹村  晟君        防衛庁参事官   古川  清君        防衛庁長官官房        長        西廣 整輝君        防衛庁防衛局長  矢崎 新二君        防衛庁教育訓練        局長       大高 時男君        防衛庁人事局長  友藤 一隆君        防衛庁経理局長  宍倉 宗夫君        防衛庁装備局長  山田 勝久君        防衛施設庁総務        部長       梅岡  弘君        防衛施設庁施設        部長       千秋  健君        経済企画庁長官        官房会計課長   長沢 哲夫君        経済企画庁調整        局長       谷村 昭一君        科学技術庁長官        官房会計課長   窪田  富君        科学技術庁研究        調整局長     福島 公夫君        環境庁長官官房        会計課長     八木 規夫君        沖縄開発庁総務        局会計課長    大岩  武君        国土庁長官官房        会計課長     北島 照仁君        法務大臣官房会        計課長      村田  恒君        法務省刑事局長  筧  榮一君        外務大臣官房長  北村  汎君        外務大臣官房会        計課長      林  貞行君        外務省北米局長  栗山 尚一君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省条約局長  小和田 恒君        大蔵大臣官房会        計課長      朝比奈秀夫君        大蔵大臣官房総        務審議官     北村 恭二君        大蔵省主計局次        長        的場 順三君        大蔵省主税局長  梅澤 節男君        大蔵省理財局次        長        中田 一男君        大蔵省銀行局長  吉田 正輝君        国税庁次長    岸田 俊輔君        文部大臣官房会        計課長      坂元 弘直君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        厚生大臣官房会        計課長      黒木 武弘君        厚生省援護局長  入江  慧君        農林水産大臣官  松下 一弘君        通商産業大臣官        房会計課長    緒方謙二郎君        通商産業省立地        公害局長     平河喜美男君        運輸大臣官房国        有鉄道再建総括        審議官      棚橋  泰君        運輸大臣官房会        計課長      近藤 憲輔君        運輸省地域交通        局長       服部 経治君        郵政大臣官房経        理部長      高橋 幸男君        郵政省簡易保険        局長       大友 昭雄君        郵政省通信政策        局長       奥山 雄材君        労働大臣官房会        計課長      若林 之矩君        建設大臣官房会        計課長      望月 薫雄君        建設省住宅局長  吉沢 奎介君        自治大臣官房長  矢野浩一郎君        自治大臣官房会        計課長      桝原 勝美君        自治省財政局長  石原 信雄君    最高裁判所長官代理者        最高裁判書事務        総局経理局長   川嵜 義徳君    事務局側        常任委員会専門        員        丸山 利雄君    国立国会図書館側        総 務 部 長  三塚 俊武君    説明員        会計検査院事務        総局次長     佐藤 雅信君        会計検査院事務        総局第一局長   西川 和行君        日本専売公社総        裁        長岡  實君        日本国有鉄道総        裁        仁杉  巖君        日本電信電話公        社総裁      真藤  恒君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算昭和五  十六年度特別会計歳入歳出決算昭和五十六年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十六  年度政府関係機関決算書(第九十八回国会内閣  提出) ○昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第九十八回国会内閣提出) ○昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書  (第九十八回国会内閣提出) ○昭和五十七年度一般会計歳入歳出決算昭和五  十七年度特別会計歳入歳出決算昭和五十七年  度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十七  年度政府関係機関決算書内閣提出) ○昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総計算  書(内閣提出) ○昭和五十七年度国有財産無償貸付状況計算書  (内閣提出)     —————————————
  2. 安恒良一

    委員長安恒良一君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る六月二十五日、小笠原貞子君が委員辞任され、その補欠として佐藤昭夫君が選任されました。  また、去る六月二十六日、柄谷道一君、竹山裕君、浦田勝君、水谷力君及び下条進一郎君が委員辞任され、その補欠として三治重信君、出口廣光君、岩本政光君、倉田寛之君及び河本嘉久蔵君が選任されました。  また、去る七日、井上計君及び石本茂君が委員辞任され、その補欠として柄谷道一君及び岡野裕君が選任されました。     —————————————
  3. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 昭和五十六年度決算外二件を議題といたします。  本日は、前回に引き続き締めくくり総括質疑第二回、内閣総理大臣に対する質疑を行います。  総理に対する質疑時間等につきましては、理事会において協議し、各質疑者に御通知申し上げましたとおりでございます。  それでは、これより質疑に入りますが、まず私が、各会派のお許しを得て、決算委員長として総理に若干の質疑をいたします。  私は、本委員会の大きな任務として、予算が効率的に使用されているかどうか、その予算が本当に妥当なものであったのかどうか、さらにその予算目的ないし意図するところが十分に実現されているのかどうか、これらの諸点が十分に審議され、かつ政府国民に対して納得するような対応をしているのかどうか、このことが審議の重要な柱であり、前提ではないかと考えているものであります。  そこで、このような視点から質問いたしますので、国民にわかりやすい答弁総理にお願い申し上げます。  私は、今日の我が国の財政の窮状並びに財政再建緊急性については、今さら申し上げるまでもないことだと思います。私は、この一年間委員長として決算委員会運営に当たってまいりましたが、その経緯にかんがみ、政府に厳しく警告しつつ総理方針をただしたいと思います。  それは、決算審査政府が不熱心で、本委員会運営が期待どおりスムーズに行われない点であります。総理や各大臣予算法案審査に比較し、決算審査にはいろいろな口実をつくって出席を拒む逃げの姿勢が目につくのであります。ひどい場合は審査対象省庁大臣欠席事前了解を怠るものさえありました。  次に、委員質疑に対しては最初から逃げ腰であり、しばしばすりかえやはぐらかしの答弁を行い、最悪の場合は守秘義務を理由に、当然答弁可能なものすら答弁を留保するなどの行為があり、委員長はその都度注意を喚起してまいりました。予算執行行政執行非違指摘批判は、決算委員会の使命であります。そのための国政調査権に基づく委員会審査に非協力な態度は許されません。  まず、総理に改善の決意を込めた答弁をお願いいたします。
  4. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 決算は、予算に関する政府の施策の適否及びその予算執行に関する会計経理適否等を御審査なさる重要な場であり、委員会であると心得ております。予算と同様に、その締めくくりをなす成果を国民に代表して検査する委員会でございますから、我々はこれを最大限に重要視して、その結果につきまして国民の御判断を得るように、決算委員会につきましての御審議には全面的に協力しなければならぬと思っております。政府は、そういうような考えに立ちまして従来も御協力申し上げてきたつもりでございますけれども、今のような御批判をいただきまして甚だ遺憾に存ずる点でございます。  今後とも、与野党折衝等の御指示をいただきまして、その結果につきましては、十分これを遵守してまいるように積極的に努力してまいりたいと思う次第でございます。
  5. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 二問目に入る前に、そのことにちょっと総理に申し上げておきますが、ここで与野党で決まっても、なかなか大臣の御出席等に問題がありますので、どうぞ御指導をお願いしておきます。  次の問題といたしまして、国費のむだ遣い防止についてただしたいと思いますが、会計検査院検査報告には十年一日のごとく予算執行の不正、不当事項が多数指摘されております。しかも、これはわずか八%程度の実地検査の結果であることを思いますと、血税のむだ遣いは膨大な額になる と予想されます。しかも、毎年同じような不正、不当事例指摘されているのは、行政各部にたるみや綱紀素乱の危惧すら感じますが、検査院指摘並びに当委員会での警告決議等徹底指導で、総理はこれまでと違ったどんな方策を具体的にとられるのか、御答弁をお願いしたいと思います。
  6. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 会計検査院検査報告をいつも子細に我々も点検をしております。その結果、毎年相当数の不正あるいは不当の指摘がございまして、その後を絶たないということはまことに遺憾でございます。今までの例を見ますと、似たようなケースの御指摘が毎年連続して行われているということは、確かに御指摘のとおり、政府の側におきまして、公務員に対する引き締めあるいは会計制度に対する厳正さあるいは補助金等の使用に関する熱心の足りなさというような面も、御指摘せられるとおりの点があるのではないかと反省をいたしております。  政府といたしましては、今まで不正、不当の事項の摘出をいただきますたびごとに、各省庁に対しまして予算執行あるいは決算担当者会議等を開催し、また研修等も行いまして、国会警告決議会計検査院指摘事項周知徹底、あるいは関係職員の資質の向上、綱紀素乱防止等について努力しておるところでございます。今まで各省庁予算執行決算担当者会議を毎年そのたびごとに開いてまいりました。また、補助金等適正化中央連絡会議幹事会を開きまして、各省庁会計課長等を招致して、一々厳重にこのような過ちを繰り返さないように指示してきたところでございます。また、財務局の繰越事務担当者会議等も開きまして、大蔵省自体の問題としても、その御指摘なきように関係各省注意を喚起する、その仕事もやってまいりました。また、会計事務担当者あるいは公団公庫等の、あるいは事業団関係職員等につきましても研修会を行いまして、このような御指摘のないようにいろいろ研修をさせ、また各省庁地方支分部局決算関係事務職員に対する研修等も累次行ってきたところでございますが、今の委員長の御指摘の趣旨を体しまして、今後ともこれらの研修等をさらに厳格に行いまして、これ以上過ちを繰り返さないように努力いたしたいと思う次第でございます。
  7. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 総理、その点に重ねてちょっとお聞きしますが、私は御質問をお願いしておるときに、今まで御努力された点はわかるが、この際、これまでと違った新しい方法を総理としてお考えなのかどうかと、この点を質問をお願いしておったんですが、総理どうなんでしょうか。
  8. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今までいろいろ努力してきたところの努力が足りなかった点があるように思うのでございます。大体、指摘された不正ないし不当事項というものに同じパターンのものが多いように思うのでございます。そういう意味におきまして、各省庁あるいは公社公団等におきまして、今までのようなやり方をさらに深めて、そして事前にもいろいろ検査するなり、事情聴取するなり、あるいは相談を受けるなどして、そういう非違がないように予防的に、積極的に努力するということが必要であると感じまして、そのようにいたしたいと思う次第でございます。
  9. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 次に、会計検査院法問題について御質問しますが、院法改正は、歴代決算委員長総理にその実現を要請してまいりましたが、いまだ実現しておりませんことを私甚だ遺憾に考えるものであります。ロッキード事件に端を発し、政治倫理確立視点からも院法改正し、検査対象を拡大する必要は与野党一致の見解であります。本委員会の決定を早急に実現するよう、強く総理に要請をいたしますが、この点について総理のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  10. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いわゆる院法改正問題につきましては、相当長期間にわたりまして政府としても検討をし続けてきておるところでございます。しかし、これは本会議の御答弁でも御答弁申し上げましたが、我が党といたしましては、自由主義経済体制下における公権力の過剰介入問題によく注意しなければならない、あるいは政策金融の円滑な遂行との兼ね合いなどの重要な問題を含んでおるために、慎重に対処する必要がありまして、現段階で政府として提案することは困難であると思っております。  しかし、政策金融に著しい支障を生ずることがなく、会計検査院の、あるいは会計検査充実強化を図ることにつきましては、積極的に対応するように今までも努力しております。例えば、輸銀については会計検査を行うことができますが、輸銀がさらに融資したその先につきましては、輸銀融資先についていろいろ調査することが可能でございますが、会計検査院にも御同行願って一緒にそれを見ていただく等、こういうようなやり方も併用いたしまして、事実上そういう調査には協力もしておる状態でございます。  なおまた、会計検査院充実につきましては、この厳しい財政の折から、各省庁はほとんどマイナスでやられておるわけでございますが、定員におきましても、会計検査院においては甚だ微弱ではございますが、減らさないように、あるいは多少でもふやすように、あるいは予算につきましてもいろいろ努力をしておる、こういう状況でございまして、今後とも会計検査院検査充実につきましては協力してまいりたいと思っておる次第でございます。
  11. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 私は今の総理答弁、本会議で承ったことの域を一歩も出ていないわけですが、これだけに時間をとるわけにいきませんが、総理、もうこれは毎年のように決算委員会、それからまた本会議における警告決議が出ているわけです。これは昭和四十九年からもう毎年のように出ておりますから、そういう意味で、今総理が言われた、いろんな問題点があることを承知しておりますが、なお一段と会計検査院法そのもの改正について、総理仕事をする内閣だと、こういう主張なんですから、ぜひとも歴代内閣はし得なかったことを、ひとつぜひ総理の代におやりいただくことを強くお願いをしておきます。  最後に、私は財政問題について御質問をしたいと思いますが、今日の喫緊の政治課題である財政再建であります。総理はしばしば本会議関係委員会の中で、増税なき再建、それから六十五年度赤字国債脱却の二大目標を掲げておりますが、財政を取り巻く諸情勢目標達成が容易でないことを私は強く感じるものであります。そこで、総理、この二つの公約をどう実現させるのか、その方策について総理のお考えをお聞かせを願いたいと思います。
  12. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は本院でも累次申し上げておりますように、増税なき財政再建の理念を堅持すること、それから六十五年赤字公債依存体質から脱却するということ、そして臨調答申を守っていくということを基本線にしていくということ、そういうような三つの条件のもとに今後とも努力してまいると申し上げてまいりましたが、そういう線でまいりたいと思っております。  臨時行政調査会答申最大限に尊重するということは、政府与党一体になって今推進しておる政策であり、国民皆様方の大方の御支持をいただいておる政策であると考えております。したがいまして、その線に沿いまして今後とも積極的に努力してまいりたいと思いますが、以上のような前提あるいは足かせ手かせをみずから課して、それによって政府歳入歳出を全面的に見直して、根本的に冗費を省き、そして効率的にして、将来に対応し得るような財政力を回復するという目的で、懸命のぜい肉剥離努力を今しておるところでございます。財政事情は非常に厳しい状態ではございますけれども、しかし、そういう努力を続けていかなければならない今の日本の内外の情勢、特に百二十兆に及ぶ公債をしょっておるという状態から見まして、汗をかいていかなければならぬ状況にあると考えております。  それには、やはり歳出歳入全般にわたって根本的に見直すとか、あるいは冗費を削減するとか、そういうような諸般の努力を今後とも継続し、それによって所期の目的を達成するように努力いたしたい、あるいは民間活力をさらに導入したり、 新しい局面を開いて新しい成長の道を模索していく、そういう形によって経済の新しい面を聞きつつ、今のような目的にも適合するようにしていきたい、そう考えて実行してまいりたいと思っております。
  13. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 総理、そうしますと、既にもう総理のお手元で各省は来年度予算編成に入っておるんですが、その場合も増税なき再建、六十五年度赤字国債脱却。まあ総理、それと総理行政改革遂行、こういうことを言われましたが、その方針は堅持をされて六十年度予算を編成されるわけですか。
  14. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) お説のとおりであります。
  15. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 以上で私の質疑は終わります。  それでは質疑を続けていきます。  質疑のある方は、順次御発言願います。
  16. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私は、きょう六十分総理質問をするわけですが、まあ衆議院側健康保険にかかわる問題で非常に本日の委員会の開催についてジグザグがありました。委員長質問のとおり全く決算委員会審議総理以下協力しようとしていない。私は、社会党の理事として極めて遺憾の意をまず冒頭表明しておきます。  したがって、質問内容等についても十分にレクチャーもできませんでした。したがって、答弁についてもかみ合わない点もあろうかもしれませんが、それは私はあえて承知の上できよう質問に立ちました。きょう答弁できなかったところは引き続き早い機会に五十七年度決算の総括質問を我我考えておりますから、わからないところはわからないで結構ですから、余りごまかさないで、時間をかけて、次の五十七年度の総括質問の際に答弁してもらいたいということをまず冒頭お願いをしておきます。今、委員長からあった財政再建の問題ですが、五十六年度決算に関連して五十六年度予算国会に提案した当時を振り返ってみとます、当時の渡辺大蔵大臣は、財政再建元年、こういうことをぶち上げて、独特のやり方で大いに歓心を買ったものでありますが、この五十六年度の渡辺蔵相の問題にまるっきり逆に、皮肉にもこの五十六年度決算財政再建破綻二年目の決算、こういうふうに私は位置づけて間違いない、こう思うわけでありますが、この見込み違いはどこからきたのか、総理大臣として破綻の原因をどう受けとめておるのか、まず冒頭御見解を聞かしてもらいたい、こう思います。
  17. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あのころ二度の石油危機がありまして、世界経済が非常な停滞状態に入り、あるいはリセッションの状態が現出をいたしまして、当初に見込みました経済活動が予測に反して萎縮してしまった、そういう点で、たしか五十六、五十七でございましたか、三兆ないし六兆に及ぶ歳入欠陥が生じました。甚だ遺憾なことでございますが、そのような世界経済及び国内経済の見通しに対するそごがあったという点は指摘せざるを得ないと思っております。
  18. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私は、経済成長率を過大に見積もったこと、高過ぎる経済成長率で税収の計算を誤ったこと、年度途中の政府の景気対策が後手に回ったこと、自民党の総裁選挙で政治空白があったことなどなども最大のやっぱり原因ではなかったか、このように考えておるわけでありますが、それでは赤字国債脱却を目途とした政府財政再建目標は三木内閣、福田内閣あるいは大平、鈴木内閣ことごとく失敗をしておるわけでありますが、五十九年度を見ましても赤字国債は六兆四千五百五十億円も発行しなければならない惨状であったわけであります。  五十年代の我が国財政の最大の課題である赤字国債脱却と、こういう解決の方向を見出す手がかりがつかめなかったと、このようにこの五十年代全体を考えて言えるわけでありますが、この手がかりがつかめなかった原因は何なのか、そしてこれをつかむために今後どうするのか、これについて総理の見解を伺いたい、こう思います。
  19. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 先ほど申し上げましたように、世界経済並びにそれによって起こる国内経済情勢に対する見通しが甘かった、そういうことは遺憾ながら認めざるを得ないと思うのでございます。また、それによりましてある程度の公共事業費の増加等によって景気を興すように努力もしてきたところでございますけれども、世界経済全体が低下していく、そういう状況のもとにおきましては、公共事業費をそれほど増大させても、世界経済や国内景気の上昇期、四十年代とは全く様相を異にしておりまして乗数効果がそれほど出ない。四十年代を前提にしたそのような乗数効果論というものは効き目がないということはある程度そこにも現出してきた、そう思っております。  そういうようないろんな結果、今のような結果が出ましたことは甚だ遺憾な次第でございます。
  20. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 遺憾、遺憾だけで何もその遺憾の後の具体的なやつが出てこないんですが、それでは、中曽根総理赤字国債脱却に必要な年限を七年延長して六十五年を目標にされたわけですが、総理にとって財政再建初年度の五十九年度予算は赤字国債削減目標一兆円がその半分の五千二百五十億円しか減額できませんでした。五十六年度決算財政再建元年が破綻したのによく似ておるわけでありますが、国民赤字国債脱却はできないのではないかという疑問を持っておるわけであります。  そこで総理、一番に、六十五年度財政再建を実現する自信がありますかどうか。二番目、そのために六十年度以降毎年度一兆七百五十億円、これは政府の中期的財政の仮定計算を見ますと毎年一兆七百五十億円の赤字国債削減の実行をすると、こういう計画になっておるんですが、これが来年度できますか。三番目、万一、赤字国債の削減が五十九年度について計画どおり削減できなかった場合はどうするんですか。  この三点について御見解をお聞かせ願いたい。
  21. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず第一に、赤字国債減額の自信があるかということでございますが、先ほど来申し上げましたような行革あるいは臨調答申あるいは増税なき財政再建を尊重していく。そういうような基本方針民間活力の培養というような情勢とを組み合わせまして、所期の目的を達するように全力を尽くしたい。必ずしも望みなきにあらずである、そのように考えております。  毎年一兆七百億円も赤字公債を減らしていかなければできないではないかというお説でございますが、機械的に計算して割ればそういう数字が出てまいりますが、経済はいろいろ変動的要因もございますし、今後の景気の情勢等々も見込みまして適切なる弾力的措置を講じつつ、最終的には所期の目的が達し得るように今後とも努力してまいりたいと思っております。  最後の御質問は五十九年度という意味ですか、六十五年度という意味ですか。今五十九年度というふうに伺いましたが。
  22. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 六十年度。
  23. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 六十年度に一兆減らすという、そういう御趣旨でございますか。
  24. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 六十年度以降六十五年度まで毎年——算術計算で割ると一兆七百五十億、しかし五十九年度を見ますと一兆円の目標に対して大分、行革の中曽根ということで実行されても五千二百五十億しかやれなかった。こういう点から見ますと、現状では約半分、何とか努力して六十年度は組みたい、そういうことを繰り返していって六十五年度にできなかった場合にはどうなさるんですか、ということなんです。
  25. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今申し上げましたように、臨調答申を基本にして守っていくという基本線を守りながら歳出歳入構造の見直し等を行いまして、その上に世界景気の情勢あるいは民間活力の導入等々の要素も加味して、それによって六十五年までに最終的にその所期の目的を達するように努力してまいりたい。まだ時間も十分ございますわけでございますから、そういう意味におき まして諸般の弾力的措置を講じつつ実行していきたい。  五十九年度において、赤字公債減量額が所期の約半分近くであったということは甚だ残念でございますが、それは現下の厳しい財政状況や、また昨年予算編成したときの経済状況等々の情勢からして、できる限りのぎりぎりの線を貫いてやったのでございます。  将来につきましては、今申し上げたような諸条件を勘案いたしまして、適切な処置を行いつつ、最終的に目的を達するように努力してまいる考え方でおります。
  26. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 聞いている限りでは同じパターンだと思うんですが、最大の努力をするということでありますから、私たちも注意深く見定めていきたいと思っております。  次に私は、赤字国債を毎年度一兆七w億円ずつ六十五年度まで継続していくというのは非常に難しいことだとは考えておりますが、ここでこれは大蔵大臣も含めて聞きたいんですが、五十八年度、五十九年度に赤字国債が削減できた背景には、歳出に計上すべき国債整理基金特別会計への定率繰り入れを停止したことが大きく響いていると、こう思います。  国債整理基金特会の資金繰り状況から、六十年度はともかく、六十一年度からは定率繰り入れ停止を継続するわけにはいかないと考えますが、そういうことについて一兆円以上の削減ということが一体できるのかどうか、総理並びに大蔵大臣に御見解を聞かせてもらいたいと、こう思います。
  27. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) まず、国債整理基金につきましては、過去三年間その定率繰り入れを停止させていただいたわけであります。これは今、目黒委員からも御指摘がありましたように、それだけの基金を必ずしも歳出に見合って持たなくてもその存在が成り立ち得ると、こういう背景にあったわけであります。  したがって、目黒委員は、六十年はともかくとしてということをおっしゃったのも、恐らくそういう数字を背景に置いてのお話だろうと思っております。しかし、恐らく六十一年は返済額も多くなってくるし、これを空っぽにするわけにはいかぬのじゃなかろうかと、こういうことも踏まえてのお尋ねであろうというふうに私は理解をいたしております。  これは財政制度審議会にもお諮りをいたしまして、やはり種々議論された結果は、この減債基金制度そのものはこれは維持すべきである。したがって、そのときどきの財政事情によって、例えば五十九年は繰り入れ停止もやむを得ざる措置と認める、こういう御判断をいただいておるわけでございますので、あくまでも国債の信認性というものを維持するという意味におきましても、その制度そのものは維持していくという姿勢の中で、今後の財政状態を見ながら、その都度対処すべき問題であるというふうに理解をいたしておりますが、今御指摘のありましたとおり、六十一年、仮に五十九年と同じような措置を今後継続してとっていくということには非常に問題がございますので、やはり減債基金制度そのものは維持していくという基本的認識には立っていなければならないであろうというふうに考えております。
  28. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 減債基金制度を設けているということは、一種の健全財政のあかしでもあるのであると思います。したがって、減債基金制度というものは維持していかなければならない。これが財政に対する信頼感の一つのしるしであると私は考えております。ただ、これが運用につきましては、そのときの財政事情によりましていろいろ弾力的に考え得ると。御指摘のように来年度はもちますが再来年になるとパンクする、そういう危険性が十分ございます。そういう意味におきまして、そういうことを念頭に置きつつ、やはり健全財政を維持していくという我々の基本観念に忠実に従って、今後とも努力していかなければならない、そのように考えております。
  29. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私は弾力的に運営は、言葉としてはわかるんですが、国債整理基金定率繰り入れ停止による節約額を年度別に見ますと、五十七年度補正が一兆千百二十六億円、五十八年度当初が一兆三千九百七十三億円、五十九年度当初が一兆六千百二十七億円、今大蔵大臣が言った六十年度予想される約一兆七千億円か八千億円と、こういう弾力的に健全財政はいいんだけれども、毎年毎年——これは東北弁で申しわけないですが、のべつ幕なしにずっと使っておったんでは、これは弾力的な運用も健全化もないではないかと。いわゆる当面の予算編成上のテクニックの道具に使われておるといっても私は言い過ぎではないではないかと、こんな気がいたしまして、総理答弁をそのままそうですかと、うのみにするわけにはまいりません。  それで私は、赤字国債の発行減額をするために、総理、手順と方法といいますか、一般歳出のどういう補助金を削るか、各年度の関係はどういう——今まで総理がいろいろ行革あるいは民間活力、いろんな抽象的な言葉を使っておられますが、この十年間で達成できなかった問題を、中曽根内閣は七年間で達成しよう、こういう中期計画をつくっておるわけでありますから、具体的な年度別のプランといいますか、計画といいますか、そういうものをやっぱり具体的に我々の前に示すべきじゃないか。示して、その中で国民各層に協力を願う、あるいは行政サイドもお互いに協力していく、そういうことが私は必要ではなかろうかと、こう思うんですが、この目標達成の手順と方法について、参議院の大蔵委員会でもこの五十九年度財確法の際にいろいろ議論されたと聞いておりますが、この問題についてお示し願えるかどうか、総理の見解をお聞かせ願いたい、こう思います。
  30. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 非常に難しい問題でございますが、先ほど来申し上げましたように、厳しい予算編成をずっと繰り返していく。そして冗費を省いて歳入歳出全体をいつも洗いながら、ともかく経常費あるいは政府関係経費というものを節減して、そしてまず身を軽くしていく。あるいはさらに、税外収入の面においても注目して、できるだけ税外収入を多くふやすように努力していく。そのほか世界景気の情勢や国内景気の情勢を見ながら弾力的に経済を運用し、特に民間活力を導入するというやり方によって経済に活況を呈するような努力もしていく。そういうさまざまなことを複合的に組み合わせつつ今後とも毎年毎年適切な予算編成を行いつつ、最終的にその目的を達する、こういう考えていきたいと思うんです。  大蔵省は財政運用の考え方あるいは機械的に義務費やなにかが増大した場合にどうなるかという意味の見積もりをさきに本院にも提出しておりますが、あれは問題点指摘しているというものでありまして、機械的な一つの例示であると思っておりますが、しかしああいうものは一つの参考になるのでありまして、そういうものを踏まえながら具体的にどういうふうに財政計画を持っていくかという点は、その年度年度ごとに今後とも努力していくことであると、そう思っております。
  31. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 しかし総理、言うことわからないわけじゃありませんが、後ほどの国鉄再建計画にも関係するんですが、七年間で達成すると言った以上は、やはり毎年毎年ということはわからないわけじゃありませんが、例えば前半の二年間ではこれをやる、中期の二年間ではこれをやる、最後の仕上げではこれをやると、そういう少なくとも上、中、下期、これぐらいに分けて、七年間の目標ということをある程度政府部内全体を掌握して、最初の二年間はこれぐらい、中間はこれぐらい、最後はこうと、そういうぐらいのやはり具体的な指針と中身のあるものがなければ、大蔵省がつくっている財政見積もりを一つの指針にしながら、毎年毎年令言ったような臨調あるいは民間活力あるいは云々という四つの言葉の言い回しだけでは国民が納得しないし、私自身もさっぱりわからない、こう思うのであります。したがってこれは大蔵大臣——総理無理なんですが、大蔵大臣、おたくの方では、大蔵省としてはそういう問題について指針とか目安とかというものはあるん ですか、ないんですか。
  32. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 今お示し申し上げまして御審議の参考にしていただいておるものは、いわゆる財政再建に対する基本的な考え方、それから現行制度そのままを前提といたしましたら後年度負担はこれぐらいになりましょうという、いわゆる後年度負担推計の中で歳入等を差っ引いたものを要調整額、その要調整額というものは、これは結論から申しますならば歳出削減が、いわば増収措置がということにならざるを得ない。そのいずれあるいはどのような組み合わせにおいてこれを実行に移したらいいかということを、単年度主義の予算編成のその都度都度国民に問いかけながら、国民全体のコンセンサスがどこにあるかということを国会の論議等を中心にして模索してまいりましょうということで、御不満ながら毎度御批判をいただいております仮定計算等で御議論を賜っておるところであります。  したがって、これらの問題につきまして各党それぞれの立場から、あるいは経済成長率を私どもは六ないし七の中間の六・五というもので一応の仮定計算をいたしておりますが、もっと高目に見たらどうだとか、あるいは年々のぶれというものを平均値だけで見るのは余りにも単純ではないかとか、いろいろな御議論をいただいておるわけでございますので、そういう御議論が国会で議論されるようになったというその環境の中から、私は国民の選択の合意というのが徐々に輪郭が明らかになって、お互いの議論がその中でもっと詰まっていくことになるんではなかろうかという期待のもとに、こうして目黒さんと議論をしておる、こういうことであります。
  33. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 これも十分前もってレクチャーしませんでしたから、参議院の大蔵委員会の附帯決議見ますと、赤字国債脱却目標達成の手順と方法を具体的に明らかにすることと、こういう決議がなっておりますから、この議事録は読ましてもらいました。したがって今大蔵大臣の言うこともそれなりにわからないわけじゃありませんが、大蔵委員会の附帯決議との関連を含めてもう一度、質問答弁要りませんが、次の五十七年度の総括質問の際にさらに私も具体的に聞きたいと思いますから、それまでお互いの検討課題というふうにしてきょうのところは質問を打ち切ります。  次、六十年度予算編成が近くなっておるわけでありますが、概算要求の段階でマイナスシーリングの方針がどうであるとか、政府部内でも議論があるようであります。それから防衛費問題を含めて警察の経費、消防なども含めて聖域は設けないというような議論もいろんな新聞で伺っておるわけでありますが、マイナスシーリングあるいは聖域を設けない、こういうことに対する総理の六十年度予算に対する基本的概念をお聞かせ願いたい、こう思います。
  34. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 来年度予算編成に関しては、まだ始動しておらないのでございまして、今のシーリングの問題やらあるいはそのほかの諸般のいろいろな内容につきましては、これから政府与党で協議してそろそろ研究していこう、そういう段階であるので、この時点におきましては何とも申すことはできないわけであります。  ただしかし申し上げられることは、先ほど申し上げましたように、増税なき財政再建の理念を堅持する、それから六十五年赤字国債依存脱却ということを実行する、そして臨調答申基本線を守っていく、そういう線はやはり貫いていかなければならない。したがいまして、歳出歳入の根本的な見直しも含めて我々は厳しい予算編成にならざるを得ないであろう、そういうふうに考えておるのが目下の情勢でございます。
  35. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 政府部内にもいろいろ議論があるようでありますから、総理大臣としてはそれ以上現段階では言えないことはわかるわけでありますが、ただ私はやはりマイナスシーリングとの関連で従来福祉であるとか文教であるとか、あるいは後ほど触れますが国民の足の国鉄であるとか、こういう国民生活関連に非常に厳しく削減されておる。例えば今、国会で問題になっておる健康保険法の取り扱いなども、やはり同列に扱っている画一的なマイナスシーリングの具体的犠牲と言うと変でありますが、問題が健康保険の問題として今衆議院段階でちゃんちゃんばらばらやられておると思うのであります。したがって私はマイナスシーリングの問題にしろ、予算編成の際に直接国民生活に関係あるものについては、それなりにやはり味のあると言っては語弊がありますが、中身のある予算の裏づけということを取り組むべきではなかろうかと。今回の健康保険問題が、あるいは韓国米の輸入問題、国鉄問題、俗に言われる三K問題が時間とともに大きな政治課題になってくる、こういう点を考えますと、予算編成については十分に国民生活に関係のある福祉、医療、交通などについては重点的に考えていくべきじゃなかろうか、こう私自身は考えるわけでありますが、それは目黒過ちだと、こういうお考えですか、そうならば少しは考えようということなのですか。この辺の総理大臣としての政治判断を聞かしてもらいたい、こう思います。
  36. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) シーリングにつきましては、先ほど申し上げましたように政府与党でこれから研究していく、そういうことであると申し上げ、原則だけは申し上げた次第でございます。  やはり臨時行政調査会が生まれ、これが勧告を行い、政府はそれを最大限に尊重すると言ってまいりました一つの大きな山は、三Kというものが一つあったと思います。国鉄、それから健保、それから米、これが財政状況について非常に大きな重荷を負わしていた、これがある意味においてはほかの仕事をやらせないぐらいな大きな障害になっておったと、財政当局からは考えられる点であったろうと思いますし、一般的にもそう考えられて臨時行政調査会審査の対象としても重点が置かれた一つの山であると思っております。  米については、いわゆる過剰米の処理について減反政策等で農村の皆さんに大変御迷惑をおかけしつつも、しかしある程度この処理が行われた。たまたま五十三年米の臭素の残留農薬の問題で若干御迷惑をおかけいたしておりますが、これはそういう一時的な問題でございます。主食以外のせんべいやその他に関する問題でございまして、まあ臨調答申におきましてはやはり政府管理米に関する逆ざやの解消ということを言っております。その面につきましても今後も努力していかなければならぬと、そう思っておりますが、大体において政策的には推移してきたと思っております。  国鉄につきましては、いま監理委員会をつくりまして懸命の努力をし、また臨調やあるいは監理委員会が設立されたことによりまして、国鉄自体におきましても非常にやる気が起きてまいりまして、減員につきましては一年も早く目的を達するぐらいの協力をしていただいて、しかも今後いよいよ国鉄全体を基本的にどういうふうに編成し、運営していくかという基本問題に今入りつつあるところでございます。  健保につきましても、今回の健保法の改正案というものは、それに挑戦した臨調答申の意を受けた一つの制度改革にまで踏み込んできているのでございまして、ぜひともこれは成立させるように私たちは努力してまいりたいと思っておるのでございます。  そういう意味において、三Kというものについてこのように懸命の努力をして、今その山に登りつつあるという状況でございますので、そういう面からも御理解をいただきたいと思っておる次第なのでございます。
  37. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 三Kはそれなりにはわかるんですが、画一的にマイナスシーリングにさや合わせするために健保の問題、米の問題、国鉄の問題が非常に、あなたは臨調答申の線で極めて順調に進んでいると、こういうとらえ方をしておる。それはそれなりに結構だと思うんですが、受ける側としては大変な大騒ぎですね。まあ韓国米の問題にしても、私も東北ですから、せんべい、みその関係はわかります。そんなことは——ここにうち の大先輩の星大先輩がいますがね、今始まったんじゃなくて、二、三年前東北の農民は問題を提起しておったのを、食糧庁がそれをやらなかっただけであって、しかし農水委員会でいろいろあなたも出席されて議論されたそうでありますし、健保問題は十二日ですか、社労であなたが行って健保問題は最後の締めくくりをすると、こういうことでありますから、私が言うのは、そういう三K問題も大事でありますが、国民生活に非常に影響のある問題については余り画一的に、急速でなくて、少しは時間的な弾力味のある取り扱いをしてもらいたいなということをお願いしたかったわけでありますが、まあそれ以上はやめましょう。  それで、大蔵大臣ね、あなたにちょっとマイナスシーリングで聞くんですが、これは五十八年度、五十九年度の予算編成を見ていますと、マイナスシーリングで大変だ、大変だって厳しくやることはそれなりに意味があるんでしょうけれども、先ほど言った国債整理基金特別会計、このやつを予定どおりやるんだ、やるんだと言って絞り絞って、そしてずっと大体作業が終わったころに定率繰り入れをやめて財源を浮かす。その浮かした財源をまあ防衛庁とかそっちの方に回すと。こういうシーリングと国債整理基金特別会計を巧みに使い分けて予算編成の大蔵省流の妙技を発揮するという点は、あなたの方としては大変御都合がいいかもしれませんけれども、国民にとってはありがた迷惑。ですから、六十年度の予算編成の際にはこの定率繰り入れは取りやめますよと、そういうことで予算編成の概算要求と取り組むのか、いや、それはそのときになってみなければわかりませんよといってペンディングにして概算要求をされるのか。六十年度の予算編成とこの定率繰り入れの取り扱いの絡み合いについて大蔵大臣はどういう考えでいらっしゃるか。うん、そこまではちょっとまだ発表しかねるというのか、この際はっきりきちっとやるのか、大蔵大臣の胸の中をひとつ聞かしてもらいたいなと、ごまかされないように私は見ていますから、ひとつ聞かしてもらいたいなと、この点いかがですか。
  38. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) そもそもシーリング、すなわち概算要求枠でございますが、まあ五十五年、私たまたま大蔵大臣でございましたが、そのときはプラス一〇%シーリング、それからプラス七・五、ゼロ、マイナス五、まあ経常分もマイナス一〇まで、こういう過去に経過を経ておるわけであります。  たまたま昨年度を見ましても、人件費、年金等等、これは経費の硬直的な性格に特別に着目して、これは例外的増加分をまず計算上出てくるものはそのまま認めましょう。そうして、その次が生活保護、医療、利子補給等々は、義務的経費については、これはいわゆるゼロでまいりましょうと。その残余の分について、経常部門は一〇%、いわゆる投資的部門は五%、まあ言ってみれば一つの、予算編成の作業を進めていく上の事務的手続の一こまであるというふうに考えられもしようかと私は思うわけであります。したがって、減債制度は、これはその根幹を維持するという建前でありますときに、最初から歳入部門でそれを列外に置くというわけにも率直に言ってまいらないだろうと思うわけであります。目黒委員おっしゃいましたように、やはりこれはその予算編成の際、ぎりぎりその財政事情を考慮して決めるべき課題でございましょう。  それともう一つは、いかにいたしましても、この概算要求というのは、これは歳出に関して行うわけでございますから、その歳出のいわゆる概算要求枠、それを決定する際は、いましばらくその最終的な、普通ならば十二月、時に選挙等があれば一月になったこともございますけれども、予算編成のぎりぎりにおいてこの歳入、歳出の調和は図らるべき問題であって、概算要求時点はあくまでも歳出の限度枠を設けると、こういう考え方で臨まざるを得ないではなかろうかというふうに考えております。
  39. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 まあ、なかなか言いにくいことでしょうから、これ以上突っ込みません。十分そういうものに関心を持っているということだけはひとつ頭の中に入れてやってもらいたいと、こう思います。  最後に、総理、まあ聖域を設ける設けないという議論の中で防衛費が一番問題になってくるわけでありますが、防衛費の一%の問題なり、あるいは一般予算に突出してやるとかと、もう私から言うまでもなく、これは逆転したのが五十七年ですね。一般が六・二、防衛が七・八、五十八年、一般が一・四、防衛が六・五、五十九年、一般が〇・五、防衛は六・六と、こういうことで、やはりどんなきれいごと言ったって、この防衛費が突出していると、聖域扱いじゃないかと、こういう議論が依然として国民の中にあるわけでありますが、六十年度の予算編成について聖域を設けないと、これも臨調の答申だと、私はこう理解しております。都合のいいときは臨調答申、都合の悪いときは臨調答申を忘れてしまうということでは困りますので、この防衛費の問題に対して、聖域の問題、一%問題について基本的な総理大臣指導力の政治的見解として今日どう考えているかお聞かせ願いたい、こう思います。
  40. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) シーリングの設定等につきましては、もちろん聖域も設けません。また、予算編成に当たりましても聖域は設けない、防衛費といえども論外ではないと、そういうふうに考えて臨みたいと思っております。  しかし、政党政治でございますから、そういう中において重点政策というのはおのずから出てくるだろうと思うんです。防衛費につきましては、五十九年度予算におきまして日本の自主的防衛努力日本の防衛をいわゆる防衛計画の大綱の水準にできるだけ早く接近する、そういう当初の目標、あるいは日本を防衛するために客観情勢の変化に応じて必要最小限の防衛力を漸増していくと、そういう基本方針及び客観情勢の変化等々も踏まえまして、かつ、いわゆる鈴木・レーガン会談における共同コミュニケの実行と、そういう国際関係等々も考慮いたしましてああいうような処置をとった次第なのでございます。  また、ODAにつきましてもこれは倍増するという約束もしておる関係上、これまた重点政策としても取り上げ、あるいはエネルギーその他についても同様の関係でとったわけでございます。  六十年度においてそういう重点政策をどういうふうにとるかということは全くまた白紙でございまして、十二月の予算編成に際しまして、そのときの内閣が決めると、そういうことであろうと思っております。
  41. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 注意深く見ていきましょう。  じゃ、三Kの一つの国鉄問題でちょっと総理の見解を聞きたいと思います。  国鉄再姓問題については、国鉄の当局、それから国鉄再建監理委員会、それから運輸省、それからちょいちょいね、四、五日前だと思いますが、ちょいちょいおたくの有力なメンバー——運輸部会長であるとか政調副会長であるとかいろんな、日本列島を北海道、本州、四国、九州に四島分割論なんというやつをどんどん自民党、与党の交通問題に責任のある方がぽんぽんマスコミに発表していらっしゃるわけですね。したがって、この国鉄問題は総理ね、国鉄当局、運輸省、おたくの与党の何とかかんとかという偉い方々、それから監理委員会、四つが思い思いに問題提起をしているんですが、一国の総理大臣として、国鉄問題のセンターは一体どこなんですか。運輸大臣ですか、国鉄再建監理委員会なんですか、どこなんですか。まず、あなたに国鉄問題のセンターはどこかということをひとつ端的に、もう言い回しは要りませんから、結論だけ言ってください。
  42. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは法律によって国鉄の監理委員会が設置され、その方針政府は尊重すると、そう言っておるのでございますから、当面におきましては国鉄監理委員会努力をし、そしてその成案を我々がいただいて、それを今度は政府及び与党がこれをいろいろ点検してみると、そういうことでございますから、当面は国鉄監理委員会にあると、そういうふうに考えてい いと思います。
  43. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 国鉄監理委員会と運輸大臣の権限の問題について私は一回議論したことがあったんですが、前の長谷川運輸大臣は、行政の権限は運輸大臣が持っているのであるから監理委員会の意見を聞きおく程度、聞きおく程度と言っちゃ亀井委員長に失礼になるけれども、まあ意見を聞きおく程度と。したがって、執行権の最高権限は運輸大臣であると、こういう答弁国会の議事録に残っておりますが、私はきょうはそれを議論しようとは思いません。それはそういうことがあるということで言っておきます。  それで総理、当面あなたが、監理委員会であるならば、監理委員会の皆さんは少なくとも国会が要請したときにはできる限り政策問題をやる運輸委員会、あるいは財政問題をやる大蔵委員会、そこに国会出席して、国民の代表である我々と意見を交換する、あるいは監理委員会の意見を聞く、そういうふうに監理委員会が当面のセンターであるならば、国民の代表である国会と常にやっぱり議論を交わす、そういう場が常に考えられるべきだと私は考えるわけでありますが、いかがでしょうか。
  44. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それはお示しのとおり、監理委員会の事情の許す限り国会国政調査権には協力すべきものであると思います。
  45. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私もそうだと考えます。しかし、私も社会党の運輸部会に席を置きまして、また運輸委員会の一メンバーになっておるんですが、まあこれはどういうことか知りませんが、先ほどの委員長の勧告じゃありませんが、発足以来参議院の運輸委員会に再三再四要請しておるんですが、出てまいりません。六月の二十八日、一年たってやっと亀井委員長が出てまいりました。一年ぶりですね。監理委員会の方は五十八回やっているんです。委員会の方は五十八回やっているのに、国会の要請には、再三要請したのに一年ぶりで一回。しかも、たった一時間か二時間。これでは私は困ると思うんですよ。ですから、広く国民の意見を聞く、委員長はこう言っていました。国鉄の今日置かれている問題は、基本的には世界の趨勢から見て構造的不況に対応できなかった国民全体の責任だと、こういうこの国会で、議事録で残っております。国民全体の問題を議論するなら、やっぱり国会に出てきて大いに国会議員と議論もし、これは私は自民党の諸君だって国鉄問題、交通政策にはいろんな意見があっていいと思うんですよ。野党が運輸省に話を聞くということだけが問題じゃない。国民全体の責任なら、与党、野党含めてやっぱり亀井委員長なり、悪名高いと言っては語弊がありますが、加藤先生とか元運輸次官——元運輸次官が監理委員会委員だというのは私はどうも解せないんですがね。まあ百歩譲ってもいいでしょう、国鉄貨物全廃論者ですから、住田、結構でありますから、国会に出てきて、大いに与党、野党の議論をやっぱり聞くという場が私は当然だと、こう思うんですが、機会があったら総理大臣の方からも国会でこういう意見があったから、与党、野党含めて十分に国会の場で意見を聞いて悔しいということを要望なされることを期待しますが、いかがでしょうか。
  46. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ただいま私は監理委員会の事情の許す限り国政調査権協力すべきである、そう申し上げましたので、そういう趣旨に沿いまして、目黒議員のお考えは機会があればお伝え申し上げたいと思います。
  47. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 年に一回では困りますから、せめて三回に一回ぐらいは来てくださいよ、人間ですから。  それで本論に入ります。それで運輸大臣ね、あなたも総裁も、いろいろ国鉄の問題について議論をしておるけれども、何といっても一つは二十兆円に及ぶ長期債務、これのやっぱり解決策が最優先だと、こういうことを言っていらっしゃるんですが、この考えは間違いありませんか、運輸大臣、国鉄総裁。
  48. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 年度末二十二兆円に及ぶ長期債務をどうするかということは、国有鉄道の再建にとりましてもう避けて通れない絶対的な命題でございます。臨調答申にございますいわゆる民営化、分割、これを考えるにいたしましても、この長期債務の問題を考えて、同時に解決しなければ解決する方法はないと、かように存じております。そういった意味で優先的に考えるということで、これだけが先に、これだけが離れて先行するという意味ではございません。基本的に大切な問題だと考えております。
  49. 仁杉巖

    説明員(仁杉巖君) ただいま大臣から御答弁がございましたが、私も全く同意見でございます。
  50. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 それで総理ね、そういう視点でこの前亀井委員長と若干討論したんですが、亀井委員長は会社更生法と同じ考えで、新しい引き受け会社が見つからない限り長期債務の問題についてはなかなか困難だと、こういう話で、新しい体系と長期債務はセットだと、イコールだと、同時発車だと、こういう考えを示されたわけでありますが、そこで総理にお伺いしますが、この長期債務をそのままにして新しい会社云々と言っても物理的に可能かどうか、総理としてどういう考えを持っていらっしゃるか。聞くところによりますと、北海道の自民党所属の道会議員さんとか道庁の皆さんがこのままで北海道を交通で切り捨てる、あるいは北海道を分離・民営化する、あるいは米の問題で韓国米を輸入して北海道農民をばらばらにすると、いうことでは、自民党総裁として、今の政府についていけないという強硬な決議をしたということを私は北海道新聞で見たわけでありますが、そういう借金を背負いながら北海道だけ分離する、こういうようなことが物理的に可能かどうか、政治家中曽根総理大臣としてこの目黒朝次郎に教えてもらいたい。私は幾ら考えても名案が出てこないんですが、いかがでしょうか。
  51. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) まず、やはり長期債務の問題はこの再編成の問題と切り離しては考えられない、そのように思います。第二に、じゃ具体的にどういうふうに再編成するかという問題は、今、監理委員会でそのために一生懸命汗を流しておられるところでございまして、私はどういう御意見が出てくるか静かに見守ってまいりたいと思っております。
  52. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 静かに見守るのは結構なんですが、総理として一体どうするのかということについてはこの問題に関しては一切ノーコメントということを守り続ける気持ちですか。あるいは総理としては、そうは言っても毎日毎日四十億、五十億の元利合計を国鉄が払っていると、そういうことについてやっぱり最高の政治判断として、政府全体として大蔵省も含めてこうすべきだという何らかの示唆をすべきではなかろうかと、こう私は考えて、あえて総理質問に訴えているんですが、どうしてもだめですか。
  53. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 国会を通過して皆さんの御協賛を得ました法律をもって政府は監理委員会の御意見を聞く、ぜひ意見を聞かしてくださいと、いい知恵を出してください、そういうふうにお願いをしておるわけでございますから、向こうから御意見が出る前にこっちから言うということは適切ではない、何のために意見を聞けと言ったのかと相手に言われるだろうと思います。ただ、向こうから内面的に政府はどういう考えを持っていますかと、参考のために聞かせてくださいと、そう言われれば向こうには内面的には我々の考え方を言うのもまたしかるべきであろうと、そう思っていますが、今申し上げたような問題について公の席で向こうか言う前にこっちがいろいろ言うということは、やっぱり諮問をした趣旨に反すると、このように考えます。
  54. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私も国鉄問題をやると、おまえが汽車とめたから国鉄が赤字になったのだと悪口言われますが、私は同じことをやっぱり中曽根さんにも返したいんですよ。あなただって運輸大臣をやってあなたのつくった赤字がやっぱり十何兆円の中にあるんですからね。鈴木善幸総理大臣は、気仙沼線問題でやっぱり目黒委員の言うとおりだと、私も鉄道建設審議会会長として現在の国鉄の累積赤字をつくった一半の責任はあると、こ う運輸委員会の総括質問で明言されましたから、元運輸大臣中曽根さんもやっぱり一半の責任があると思うんですよ。ですから、責任のなすり合いをやったってしようがありませんから、もう少し角度を変えて、国鉄は今二万五千人の余剰人員を抱えていると、こういうことなんですが、時間がありませんから、もう国鉄と運輸大臣には聞きません。  それで総理大臣に聞きますが、二万五千人の余剰人員を抱えて、赤字国鉄にこれを処理をせいと言ったって、運輸委員会では国鉄側あるいは運輸省は内部努力をする、こういうことを懸命に答えておりますが、私の経験では、あくまで経験です、二万五千人をさばくだけの人的、財的能力が一体国鉄にあるかとなると私は非常に重い荷物だと、こう考えております。したがって、これやれ、これやれ、これやれ、これやれ、減量経営とか、第二次提案とか、あるいは臨調答申とか、緊急提案で国鉄に押しつけておりますが、そこから出てくる余剰人員、これについて一体総裁としてはどういう考えでいらっしゃるのか。もう面倒くさいから生首を切ってしまえと、こう考えているのか、やはり国の政策として失敗した、運輸上の政策失敗から来る余剰人員であるから、これを政策的に救済をしていく、政策的に転換をしていく、政策的にこれをかばっていく、そういうお気持ちで運輸省なり国鉄なり、金が必要とすれば大蔵大臣、法体系が必要であれば雇用を担当する労働大臣、あるいは仕事の確保とすれば通産大臣、そういう政府全体としてこの政策余剰の二万五千人の対応について考えていくという基本姿勢でいらっしゃるのかどうか、総理大臣として御見解を聞かせてもらいたい、こう思います。
  55. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 余剰人員と言われる方々に対しては非常にお気の毒であり、同情にたえませんし、これが善処については我々も努力していかなければならぬと思っておりますが、一・方、国民皆様方から見ると二万五千人もよう出てきたなと、これは貨物の処理という面から出てきたもので、国鉄あるいは運輸省の政策の前進という面から出てきた結果であると思っており、それは決して理由のないことではない、ある意味においては国鉄はよくやったと国民は称賛しておるのではないかと思います。しかし、また一面において、その余剰人員に当たられた方々はいわば摩擦的余剰であると私は考えております。いずれこれは消化していかなければならぬし、処理されなければならぬ。中にはいろいろセールスをやらされているとか、研修をやられておられるとか、いろいろ聞いておりますが、これらもいずれも過渡的な努力ではないかと思うんです。いずれにせよ、国鉄がこのような処理に出たということは一大勇断でありまして、私は立派である、そう思っております。しかし、その該当者になってみれば非常にお気の毒な状態でございますから、政府を挙げていろいろ協力していかなければならぬと、そう思います。
  56. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 亀井委員長は私の質問に対してこう答えております。参考までに申し上げます。貨物の問題ですな。民間ではこのような過員は出さない。国鉄再建は経営的にも労働面にも不安を持たせないよう慎重に考えるべきだと。それから、私が国鉄だけではどうにもならぬではないかと、こういう問題について、今後監理委員会が二次提案をする場合、来年の答申をする場合には、関連企業との雇用問題についてもやっぱり雇用確保ということについてきちっと全体の構想を提案すべきだ、こういう問題については、亀井委員長は、目黒提案はそういうことであるから目黒提案の趣旨に沿って雇用全般について責任ある提言をしたい、こういうことを言っておるわけでありますが、監理委員会からそういう雇用に対する提言があった場合には、政府はそれを正面から受けて、今総理が気の毒だという言葉でごまかされると困るんですが、まあ気の毒は気の毒だ、社会通念ですから、やはり生首を切らないという形、生活を保障するという形、そういう形で今まで炭鉱離職者の保護の問題とか不況業種に関する対応の施策とか、いろいろな特別立法があるわけでありますから、そういう特別立法をも含めて対応するというふうに考えていいかどうか、最後にこの問題について総理の見解を聞きたい、こう思います。’
  57. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この問題については当事者であるまず第一に国鉄、それから運輸省、それから労働省あるいは内閣官房、そういう政府というものが国鉄や運輸省とよく相談をいたしまして、相談にも乗り、必要に応じていろいろ協力すべきものであると考えております。
  58. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 場合によっては特別立法についても考慮するということはいかがですか。
  59. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ともかく第一義的には国鉄あるいは運輸省というものがどういう考えを持つか、それを聞いた上で判断をいたしたいと思います。
  60. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 じゃ、その時期が来ればまた改めて申します。  最後に、総理ね、これはあなたつき合いがあったんですから、福島交通の小針社長の関係で、あなたは白河地区の駐屯地へ行った際に、「みちのく」というおたくの自衛隊の機関紙です、この自衛隊の機関紙によりますと、駐屯地を巡視をする際に、天野さん、中尾さんという国会議員、俳優の芦田さん、それから福島交通の小針さん、こういう方と一緒にオープンカーに乗って検閲されたと、あるいは航空自衛隊が白河地区の写真を小針さんに送っていると、こういうあなたと小針さんということなんですか、あるいは自衛隊と福島交通ということなのか知りませんが、そういう中にかかわり合いを持ったことについてどういう関係であったのか、午後から質問する問題に関連ありますから、小針さんとの関係について一言お答え願いたいと、こう思います。
  61. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が防衛庁長官をやっておりましたのは昭和四十五年ごろであったと思いますが、大分昔のことで記憶も薄れて定かではありませんが、当時福島県で飛行場をつくりたいと、そういう非常に強い要望があってあの阿武隈の台地、那辺でございましたか、あそこへ国際飛行場をつくって貨物専用の飛行場にしたいと、そういうような希望があって、それでそのころのあの辺の航空写真が欲しいというような話があったように記憶しております。それでたしか私の秘書官をしておった者がそういう話を聞いて、便宜措置を講じたのではないかと、そういうような記憶がございます。  それから自衛隊の問題については、私が自衛隊へ参りましたときに私は査閲をやりましたが、そのときもよく記憶ありませんが、もしそういう記事が載っておるならば、天野君や中尾君は国会議員で我々の同志でありますから、一緒に自衛隊にも来、あるいは芦田君とかあるいは小針君とかそういう人も友人でありますから、自衛隊の見学や慰問を兼ねて一緒に来たんではないかと思います。いずれにせよ査閲は私自体がやったので、それ以外のことはちょっと今は記憶にはございません。
  62. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 最後ですが、オープンカーに仲よく乗っている写真も残っています。白河地区については私は、新幹線の白河地区の土地の転売では、売買といいますか、その問題に実に有効に防衛庁提出の写真が運用されていると、利用と言うと語弊がありますから、運用されておったということだけはあなたに一言私としては伝えておきます。答弁は要りません。
  63. 服部信吾

    服部信吾君 それではまず初めに、人事院勧告について総理にお伺いいたします。  人事院は、今月の六日、五十八年度の活動状況に関する年次報告書を国会提出しました。この中で特に注目されるのが、国家公務員の給与引き上げについて、五十七年度に引き続き五十八年度においても凍結されたと、職員の士気、生活に与える影響は大変大であると遺憾を示しており、改めて完全実施を強く促しているわけでありますけれども、総理はこの年次報告書についてどのようにお考えかまずお伺いいたします。
  64. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人事院は、国家公務員法に基づきまして公務員の規律あるいは任用、あるいは生活の擁護等々を所掌しているところであると心得ております。そういう意味におきまして、今までの人事院勧告の処理につきまして人事院の方から、人事院が所期していたこととその結果が若干違ってきたということについて人事院自体の考えを表に表明されるということは、これは当然あり得ることでございまして、我々はそれなりに謙虚に承るべきものであると思っております。
  65. 服部信吾

    服部信吾君 それでは政府の要請を受けて六十年度予算編成のあり方を検討している臨時行政改革推進審議会の小委員会は、行革審に対して七日の日に原案をまとめて出されたと、このようにありますけれども、この原案によりますと、制度、施策の抜本的見直しによる徹底した歳出削減、そして六十年度の赤字国債は一兆円を縮減する、これを柱とすると、このことを強調しており、そのためには、まず国家公務員給与に関する人事院勧告の抑制実施を挙げております。人事院と全く対立するような原案となっておりますけれども、総理はこの原案についてどのようにお考えですか。
  66. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはまだ素案中の素案であると思います。正式に行革審から出てきてまいりました場合にいろいろ検討いたしたいと思っております。
  67. 服部信吾

    服部信吾君 素案中の素案ということでありますけれども、新聞報道等によりますと、七日にある程度まとまっておるということで原案等も出ているようにお伺いするんです。この点はどうですか。
  68. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) あれはたしか小委員会の素案のように新聞では承っておりまして、まだ委員会として正式に政府に提示すべき段階には至っていないものであると考えております。
  69. 服部信吾

    服部信吾君 小委員会の原案ということでありますけれども、当然これはもう早急に出てくると思うんです。小委員会の原案といえどもこういうようなあれになっておるということなんで、この点は総理どうですか。
  70. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 委員会審議を経ていずれ出てくるものでございますから、その途中の問題についてコメントすることはまだ熟成していないと思います。
  71. 服部信吾

    服部信吾君 言うまでもなく、人勧は国家公務員の労働基本権の制約の代償措置と、こういうことでありまして、当然本年度においては実施すべきであると。特に五十七、五十八、五十九と三年間も凍結すると、こういうことになりますと、これは人勧制度そのものの存在自体にも波及するんじゃないか、このように思いますけれども、総理はこの点についてどうお考えでしょうか。
  72. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人事院勧告はいつどのように出るかわかりませんが、出てきた上でいろいろ考えさしていただきたいと思っております。
  73. 服部信吾

    服部信吾君 出てきた際ということでありますけれども、今の状況では総理としては実施すると、こういうお考えでよろしいですか。
  74. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 人事院勧告につきましては、人事院勧告制度を尊重するという基本姿勢に立ちまして、国政全般との関連を考慮しつつ、完全実施に向けて誠意をもって取り組んでまいりたいと思っております。
  75. 服部信吾

    服部信吾君 次に、総理の核の認識についてお伺いいたします。  先般神奈川県におきまして、神奈川非核兵器県宣言、こういうものが県議会で採択になったわけであります。言うまでもなく、我が国においては国是である非核三原則、あるいは安保条約における事前協議というものがあり、ある面で言うならば核に対する歯どめはある程度できておると思います。国是はあると。しかし、今回その補完と申しますか、補強と申しますか、神奈川県において非核兵器宣言というものが採択されたと。こういうことで署名運動なんかも大変多く集まったと、こういうことで、総理としてはこれをどのように考えていらっしゃるのか。この点についてお伺いしておきます。
  76. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 地方公共団体におきまして、その議会が自分たちの意思に基づいてお決めになるということは、地方自治の本旨の上からも考えられることでございまして、それはそれなりに、我々は中央政府としてこれを受けとめると申しますか、理解をすると、そういう態度であるだろうと思います。  政府としては従来から非核三原則を堅持しておるのでございまして、その立場を今後とも続けていくということを申し上げる次第でございます。
  77. 服部信吾

    服部信吾君 まあこの県宣言ですけれども、ある面から言いますと、神奈川県議会においては自民党さんが反対したと、これは中央の指令であったと、こういうことを聞いておりますけれども、そんなことがあったのか。と同時に、この自民党さんが反対した理由として、今回のこの神奈川県の非核兵器宣言がいわゆる反安保、反米、反基地につながると、こういうことで反対に当たったと、こういうことでありますけれども、これは総理が言うように地方の問題ということで私は片づけられないんじゃないのか。党の総裁として自民党の県議団がとられた態度についてどのようにお考えか。また、非核三原則は国民の意を体して国是までになっており、イデオロギーとかあるいは体制を超えたものである。  そこで、総理にお伺いしたいんですけれども、いわゆる非核兵器県宣言、こういうものが反米につながるのか、あるいは反安保につながるのか、そして反基地闘争につながるのか。この辺について総理の御見解を伺いたいと思うんです。というのは、この問題はこれからやはり大きく各地方自治体においても取り上げられる問題だと思いますので、この点について総理にお伺いしたいと思います。
  78. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日米安保体制は我が国の戦後の平和と安定の基礎となっておるものでございまして、それは日米間の強い信頼関係を基盤として成り立っておるものでございます。  日米安保条約上いかなる核兵器の我が国への持ち込みも事前協議の対象であります。また、核持ち込みについての事前協議が行われた場合は、政府としては常にこれを拒否するということを言明しておりまして、非核三原則を堅持する立場は十分に確保されていると思います。  神奈川県議会におきまして、その独自の見解に基づきまして神奈川県も非核三原則を堅持すると、そういう趣旨の決議であると漏れ承っておりますが、それはそれなりに一つの決議として我々はこれを受けとめておると、そういうことでございます。
  79. 服部信吾

    服部信吾君 これは総理として、党の総裁として——これはよその党のことですから余り言う問題じゃありませんけれども、やはりこれだけ重要な問題ですし、特に神奈川県というのは総理御承知のとおり、横須賀という大変大事な基地を持っている。こういうこともあると思いますけれども、総裁として、これは地方議会がまとめて、自民党も反対したからいいんだと、こういうことだと思いますけれども、やはりこれは何らかの総理としても、何と言うんですかね、サゼスチョンなり何かすべきじゃないかと思うんですが、この点はどうですか。
  80. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私はここで内閣総理大臣としてお答えしておるので、自民党総裁としてのお答えは今まではしてないし、委員長内閣総理大臣と御指名になって言われておる次第でございます。
  81. 服部信吾

    服部信吾君 それは総理大臣としても、当然これは自民党の総裁ですから。私はこの採決が、神奈川県七百二十万ですけれども、簡単にそれこそ半月ぐらいで百五十万ぐらいの署名が集まったと、こういうことであります。  なぜ、私は国に非核三原則があり、日米安保条約の事前協議があって、皆さん、核は大丈夫ですよと、心配ありませんよと、こういう形で国では言っておる。しかし、例えば県レベルでこういう ことになったときに、すぐにこれだけの署名が集まるということは、私は、これは意外と県民なり国民が、政府の統一見解とかこういうものに対してある程度疑義と申しますか、疑いを持っているんじゃないか。政府の言う非核三原則を厳守する、またアメリカを信用しますと、こういうふうに再三の答弁はされますけれども、やはり国民あるいは県民、特に現実問題としてそういう杉原潜の寄港地になっておる神奈川県においては、大変そういう面から言って政府の統一見解等に対して疑惑を持っているがために、こんなに簡単と申しますか、あっさり署名も集まりますし、いろいろと議会においては採択の面においてあったようでありますけれども、採択されたと。こういうことで、こういう点について総理のお考えどうですか。
  82. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 神奈川県自民党も中央の自民党と同じように非核三原則を堅持しておる、この点は変わりはないと思います。そういう点においては中央の我々と全く同じ立場にあります。  ただ、恐らく想像しますると、これは当たっているかどうかわかりませんが、日本は、ある意味においてはアメリカの核抑止力に依存しておるわけであります。そういう意味において、日本の平和と安全を維持していくというために、ソ連の膨大な核兵器、核戦力に対して、アメリカの持っておる核抑止力というものに依存して、その均衡によって平和が維持されておる。それは、戦後三十数年の経過が物語っておるわけでございます。そういうようなアメリカの核抑止力に依存しているということ自体に対する疑義と申しますか、あるいは誤解というものが生まれるという危険性を恐れて、そういう意味でおやりになったんではないかと想像いたします。これは別に確かめたわけではありません。  いずれにせよ、神奈川県自民党も非核三原則を堅持しているという点においては変わりはないのでございますから、ぜひ御心配なきようにお願いいたします。
  83. 服部信吾

    服部信吾君 総理の御答弁によりまして心配なきようにということですけれども、心配せざるを得ないと思います。  そこで、非核三原則の対象となる核とは何か、こういう問題についてちょっとお伺いしたいと思うんです。  特に持ち込ませずと、いわゆるイントロダクションの問題でありますけれども、その対象となる核についてちょっとお伺いしたいんですけれども、普通一般的に、形式的には核弾頭だけが対象であると主張することも可能であろう。実際にはその運搬手段も含まれるのがこれは当然だと。例えばトマホークの核弾頭部分は、それ自体はひとり歩きして我が国に入ってくることはあり得ないわけであります。それはトマホークに装備され、潜水艦等に積載されて、すなわち運搬手段と一体となって初めて持ち込みが可能となるということは言うまでもないと思う。もちろん、この核弾頭がトマホークに未装備の場合も含まれるかもしれませんけれども、やはりこれも私はひとつの核の一部ととらえ、これは当然持ち込ませずに入るのではないのか。このように考えますので、非核三原則の核を持ち込ませずにおける核とは明らかに核装備のその運搬手段も含むと、このように考えるんですけれども、この点についてはどうですか。
  84. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 安保条約上の事前協議の対象になりますものが、核の持ち込みとの関連でいかなるものであるかということにつきましては、従来から累次御答弁申し上げているとおりでございまして、これは御承知のように、藤山・マッカーサー口頭了解におきまして「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」というものが事前協議の対象になる、こういうことでございます。
  85. 服部信吾

    服部信吾君 そこでちょっとお伺いしたいんですけれども、最近アメリカの核戦力の五一%というのはいわゆる戦略原潜、いわゆるSSBN、二七%が戦略爆撃機、そして残りの二二%がいわゆるICBM、大陸間弾道弾、こういうことで核戦略がだんだん変わってきておる。とにかく半分以上がいわゆる戦略原潜、ですから今までICBMのときにはアメリカの要するに基地があった、あるいはソ連の基地があった、そういうところでお互いに場所がわかっておる。しかし最近においては、要するに半分以上がいわゆる杉原潜になってきておる。そういうことで、戦略核弾頭の半分を潜水艦発射型として保有しているわけです。いわゆるアメリカ領域以外、公海から発射する態勢がとられているわけです。そしてこのSSBNというのは、核を積んでいても核だけでは効力を発揮しない。やはりどこかに通信基地なり超長波の、そういうものの基地があって初めてそこから発射するんだと。そうなりますと、例えば持ち込ませるという領海外にその戦略原潜が来て核を積み込む。しかし、その原潜が核を発射するためにはどうしても通信基地なり、今C3Iというのはそういうシステムから一緒に連動をとって発射できる。そうなりますと、その発射基地等が、例えば日本の基地にあった場合、これは当然同じ核を持ち込んでいると同じ考えになるんじゃないか、こう思うんですけれども、この点はどうですか。
  86. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 御質問の趣旨は必ずしも私理解したかどうか明らかでございませんが、先ほど申し上げましたように、安保条約工事前協議の対象になるものはあくまでも核弾頭、及び中・長距離ミサイル、すなわち核兵器そのものでございまして 一般論で申し上げますと、通信基地そのものが何らかの意味におきまして委員指摘のような公海上のアメリカの艦船、核兵器を積んだアメリカの艦船と通信をするという役割を有しておるといたしましても、その通信施設が日本の領域内にあるということは、これは事前協議の対象とはなり得ない、そういうものであるというふうに理解しております。
  87. 服部信吾

    服部信吾君 じゃ、具体的にお伺いしますけれども、先般私どもの同僚議員からもこのお話があったわけですけれども、愛知県刈谷市の依佐美基地通信所、そこに大変なアンテナが出ている。その中で潜航状態で、核の発射海域に潜むSSBNにこの超長波を送って情報あるいはメールを送り出す、こういう施設だと、こういうふうに言われておりますし、これはまた常識だと、こういうふうに言われているんですが、この基地についてはどのようにお考えですか。
  88. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 愛知県の依佐美通信所につきましては、これはアメリカの海軍によって運用されておるというふうに承知しております。その具体的な通信所としての役割については私ども承知いたしておりませんが、先ほど申し上げましたことの繰り返しになりますが、仮にその通信所が委員指摘のような役割を持っておるといたしましても、そのこと自体核兵器の持ち込みというものには該当しない、こういうふうに理解しております。
  89. 服部信吾

    服部信吾君 それは考え方の違いかもしれませんけれども、じゃ実際に例えば領海外にSSBNが戦略原潜がいて、実際それがあるところに撃ち込むということに対して通信基地とあれをとっているわけですから、一番大事なのはやっぱり原潜が浅く上がってきて、そしてこれが正確に撃つにはどうしても通信基地との連絡がなくちゃならない、あるいは通信基地といわゆる発射せよという命令もここから出ている。これは常識だ、こういうふうに言われているわけです。ですから、ある面から言えば核弾頭、これ自体はいわゆるハードかもしれません。しかし、通信基地というのはソフトだと、そういうふうに考えたときに、当然このソフトの分野の通信基地、これに対してある程度事前協議の対象なり何かにしなければ、これはただ核弾頭だけということであったら国民は納得しないと思うのですけれども、この点どうでしょう。
  90. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先ほど総理から御答弁ありましたように、我が国の平和と安全というものを安保条約によって確保するという観点から申 し上げますと、アメリカの核抑止力というものに安保条約を通じまして、我が国の安全確保のために依存をしておると、こういう側面がございまして、それとの関連で申し上げますれば、日本に置かれております米軍の施設が、そのような公海上のアメリカの艦船と有効な通信体制を保持しておるということ自体が、アメリカの核抑止力を確保するという上での大切なことであろうというふうに考える次第でございます。他方におきまして、御承知のように政府は非核三原則を堅持しておる次第でございまして、非核三原則につきましては、これは核兵器の持ち込み、これはすべていかなる場合であっても断る、こういうことでございますので、その二つの側面というものは十分両立しておるというふうに政府としては考えております。
  91. 服部信吾

    服部信吾君 総理にお伺いしたいんですけれども、今のやりとりですけれども、これから、今まで確かにアメリカの核戦略も変わってきた、特に五〇%以上が海が発射基地になってきている、本土じゃないのだ、こういうことでこういう問題、今までの時代と大分核の戦略技術も変わってきておる。そういうことでこういうものはある程度今の時期においては考え直すべきじゃないかと思うのですけれども、この点総理どうですか。
  92. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 通信施設は核兵器ではないと思います。
  93. 服部信吾

    服部信吾君 それは確かにそのとおりだと思いますけれどもね。でも核だけでは撃てないのです。核だけでもこれは戦力じゃないと思います、そうなると。だから、それは通信基地とこれとは裏と表で、二にして二ならず、一にして二だと。当然私はこれは考えるべきだと思う。  そこで、先ほど当局が御答弁ありましたけれども、いわゆる藤山・マッカーサー口頭了解に掲げられている事前協議の三ケースがあるわけです。そういう面から考えますと、こういう新しく核の時代が変わってきている、戦略も変わってきておる。そういうふうになったときに新項目、新たに事前協議の対象、そういうものに安保条約の第四条では随時協議ができると、こういうことがあるわけですから、私は新たにこういうふうに事情が変わってきた時点においては第四条の随時協議において、やはりこれも対象にすべきだと、こういうふうに思うのですけれども、これは総理のお考えどうでしょう。
  94. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 事前協議の交換公文と藤山・マッカーサー口頭了解の内容につきましては、従来から御説明申し上げておりますし、先ほど私から申し上げたとおりでございます。この範囲を拡大したらどうかというのが委員の御質問の御趣旨だというふうに理解いたしましたが、政府といたしましては、先ほどから申し上げておりますとおりに、現在の米国との取り決めによりまして、非核三原則というものはきちんと確保されておりますし、他方におきまして先ほど私から御答弁申し上げましたように、日本に置かれております米軍の通信施設が有効に機能するということは、日米安保体制の確保と、ひいては我が国の安全確保という点から見まして、極めて重要だというふうに考えておりますので、委員指摘のような方向での藤山・マッカーサー口頭了解なり現行の日米間の取り決めの変更ということを考える必要はないのではないかというのが政府の現在の考え方でございます。
  95. 服部信吾

    服部信吾君 総理も同じような考えですか。私は通信手段ということと、何回も繰り返しますけれども核弾頭、これはやっぱり一体のものであり、どっちがなくてもうまく機能しないんだと、こう思います。そういうことで今事前協議のいわゆる新項目としてということで、ちょっと無理なようでございますが、総理もそういうようにお考えですか。
  96. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 栗山北米局長が申されたとおりであります。
  97. 服部信吾

    服部信吾君 時間がございませんので、ですからちょっと後で資料要求しておきますけれども、上瀬谷、横田、依佐美、嘉手納こういういわゆるC3Iの関係基地についての政府はどのように関係しておるのか、どのように把握をされておるのか、これらの基地の概要をどのように把握しているのかを資料要求しておきます。  最後に、時間ございませんので、自衛隊の衛星利用についてもお伺いしたい。  最近、いろいろ新聞報道などによりますと、自衛隊の情報収集や連絡体制強化のための衛星の利用について、自前の衛星保有の構想を含め本格的な検討に入っているようでありますけれども、特に我が国の周辺海域を航行する外国艦船や潜水艦の動きをできるだけ正確にキャッチできるほか、陸上を移動する自衛隊の各部隊や艦船等の通信にも有効に活用できる、シーレーン防衛やあるいは有事の際の即応体制を強化するのがねらいのようでございますけれども、総理は、去る三月二十八日の本院の予算委員会におきまして、原子力基本法を例示しながら、非軍事的利用という言葉をどう解釈するか研究課題であると述べて、平和利用の解釈やこれまでの政府答弁について検討し直すことを示唆しておりますけれども、その真意とその後の検討状況についてお伺いしておきます。
  98. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私は宇宙利用、宇宙における利用の問題につきましては、これは平和利用に限る、そういう趣旨の国会決議並びに宇宙開発事業団法の法の趣旨に沿ってすべてこれは処理されなければならないということを申し上げましたが、これは今も同じことであります。ただ、その際私が弁明いたしましたものに、原子力基本法をつくるときに私は松前重義さん等とこれを一緒に作業した人間で、国会の提案者になったわけでありますが、そのときに、平和目的ということを基本法に書いたわけです。そのとき各党で了解いたしまして、私が代表して国会答弁しました。その中に、仮に原子力推進というものが船舶について一般的になった場合には、そういう暁には、もしこれが日本の自衛隊の潜水艦に適用されるというような場合にも、これは平和目的というものと違反するものではないと。原子力の軍事利用というような面というものは、これは核兵器というものが直接殺傷に使われる、そういうように解釈すべきであると、そういう答弁をして、そして満場一致でたしかこれは国会を通過し、成立していたという事情があるわけであります。そうすると、原子力基本法におきましては、もしこれが通常一般のことに使われる、そういうような場合においては、自衛隊がこれを適用してもそれは平和利用の趣旨に反しないという解釈が私は確立していると思うんです。その後、政府はこういう答弁国会でも繰り返して、別に異議はなかったと思っております。  そういうような面を一面において考えて、平和利用というような問題について今度は宇宙の問題を考える、そういう場合に、自民党の内部におきまして、偵察衛星を防衛目的に使うことはどうであろうかというような議論があります。しかし、これについては国会の決議の解釈あるいは宇宙開発事業団法の解釈というものと絡んでまいって一つの研究課題だなと、そういうことを言っておるのであります。それは一つの研究課題という判断の一つの資料として原子力基本法についてはこういうこともあったと。しかし、原子力基本法の場合と今回の国会決議及び宇宙開発事業団法の場合とは例が違うと。そういう面もわきまえておく必要がある、そういうふうに申したわけであります。
  99. 服部信吾

    服部信吾君 まあ今総理も言われましたけれども、五十七年六月に自民党の宇宙開発特別委員会において「宇宙開発政策に関する提言」をまとめております。その中で、「衛星の開発・利用に関して」「国会決議及び宇宙開発事業団法にある〃平和の目的に限り〃とは非軍事利用に限りと同義に解釈されるとしているが、憲法の範囲内で防衛目的に使用できるよう明確にすべきである。」、このように述べられておりますけれども、総理としてこの憲法の範囲内で防衛目的に使用できると、これについて具体的なお考えがあったらお伺いしたい。
  100. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) この点はたしか法制局長官も答弁をしておりまして、私の記憶に誤りなくんば、防衛目的という場合には、憲法上は本当に防衛目的に限局するならば、それは憲法に反しないと、そういうような趣旨の答弁があったと私は記憶しております。もし間違っておったらこれは訂正いたしますが、私の現在の記憶ではそういうことになっております。
  101. 服部信吾

    服部信吾君 まあこの問題につきまして、何となく今国会ではできれば健保の問題がいろいろあるので、これが終わった後何かやりたいなんていうお話をちょっと聞いたんですけれども、最後に総理にお伺いしたいんですけれども、軍事衛星あるいは通信衛星の自衛隊利用について、これは五九中業においてこれを——当然これは来年出ると思いますけれども、五九中業において検討なされる予定なのかどうか、この点についてお伺いしておきます。
  102. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 五九中業は先般長官指示が出たところでございまして、これは包括的な指示が行われておるので、個々の具体的な兵器あるいは戦備等についてはこれは専門家がこれから検討するということであると思いまして、今のところ特にどうであるというようなことは限定していないと思っております。
  103. 服部信吾

    服部信吾君 まあ総理としては専門家に任せるということでございますけれども、やはり総理大臣として五九中業にはいわゆるこの問題については検討しないと、こういうことでよろしいですか。
  104. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) これはあくまで国会決議及び宇宙開発事業団法の趣旨に沿った検討が行われなければならない、そう思います。
  105. 安武洋子

    ○安武洋子君 核トマホークの配備の問題についてお伺いをいたします。  きょうの新聞報道によりますと、米国防総省は核トマホークの艦船配備の計画を米下院に公表いたしております。それによりますと、少なくとも戦艦ニュージャージーが既に核トマホークを配備している、こういう可能性は極めて濃厚になっております。総理はことしの予算委員会で、ニュージャージーの入港に当たっては核の有無を確かめると御答弁をなさっていらっしゃいます。事態がニュージャージーの核積載、これがほぼ間違いないと公表されるというふうな段階になっております。この中で、予算委員会で御答弁なさったように、改めてニュージャージーの入港に当たっては単なる非核三原則、それにのっとった事前協議の範囲内にとどまらないで、核の有無を改めて確認をなさっていただきたい、こう思います。総理の御答弁を求めます。
  106. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私の得ておる未確認情報では、ニュージャージーには核兵器は搭載しない、有核トマホークは搭載しないというような情報、未確認情報でございますが、そういうものがあるんではないかと思います。  それから、ニュージャージーの日本寄港も今のところはない、そういうように私は聞いております。そういう問題は、だから今のところは起きないんではないかと思います。
  107. 安武洋子

    ○安武洋子君 新聞でこのように報道されておりますし、これは米国防総省が配備計画書、これを公表いたしておるわけですから、確かめていただければこの新聞報道が正確であるというふうなことがわかると思いますので、私は早急に確認をしていただきたい、確かめていただきたい、こう思います。いかがですか。
  108. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 御指摘の新聞報道についてはまだ具体的に承知しておりませんので、照会を考えております。
  109. 安武洋子

    ○安武洋子君 直ちに私はこの照会をしていただきたい、確かめていただきたい。そしてこの中で、八三年の一隻が配備をされているというのは、米海軍がこの時点で保有する戦艦、これはニュージャージーだけでございます。ですから、それ以外には考えられないという事態で、ニュージャージーにはこの核トマホークが積載されているということが非常に濃厚でございます。もしこの核、ニュージャージーが入港しようというふうなときには、私は先ほど御要求申し上げたように、改めてこの核を積んでいるかどうかという有無を確かめていただきたい、このように御要求申し上げますが、総理いかがですか。
  110. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) ニュージャージーにつきましては、先ほどのようなことであります。  それから、アメリカは原則として核、非核の有無ということは公表しない、そういうような一般原則を採用しておる、そう聞いておりまして、核を持っているのか持っていないのか、そういうことがわからないことが抑止力になる、そういう戦略、戦術構想を持っておる、そういうことであると承知しております。  しかし、この前私、国会で申し上げましたように、こういうことが明らかになる前においては、つまりニュージャージーにトマホークの核装備はしないということは最近未確認情報で来ておりますが、そういうことが明らかになる前においてはいろいろ国会でも国民の間でも論争がありました、そういう時点において、私はこれだけ議論があったんだから念のためにアメリカ側に、日本側において非核三原則があるんだということは念のために向こうに通報して、注意を喚起する、そういう程度のことはやってもいいということを申し上げました。今の状態からいたしますと、これはアメリカを信頼して今までどおりの原則でやっていいのではないか、そう考えております。
  111. 安武洋子

    ○安武洋子君 この新聞報道にありますように、しかもこれは何も新聞の勝手な報道ではございません。米国防総省の配備計画書が公表されているわけです。そこの中で、この核トマホークがニュージャージーに積載されているという、これが非常に濃厚でございます。ですから、私は先ほど申し上げたように、ぜひこの点を確認をしていただきたい、確認をするという御答弁をいただきました。  そこで、私はこういうふうに事態が変わっている中での総理の御答弁としては甚だいただけない御答弁であるというふうに思います。しかし、この問題で総理は認識を変えてなさらない。アメリカは核を積んでいるか積んでいないか、これを明確にしないと言っておりますけれども、この国防総省の配備計画書によると、明らかにニュージャージーは核を積んでいるということを公表したにも等しいわけです。ですから、こういう事態になっているという御認識に立っていただきまして、予算委員会で御答弁なさったこういう立場に立って、日本にニュージャージーが入港するというふうなことを求めてきた場合には核の有無を必ず確認をしていただきたい、そのことを強く要望しておきます。  時間の関係上シーレーン問題に移ります。  七月七日、朝日新聞の報道によりますと、シーレーンの共同研究で、自衛隊による敵基地を攻撃する米艦船護衛も研究課題に入れるというふうに言われております。総理はこのようなことをお認めになるおつもりでしょうか、お伺いいたします。
  112. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本に侵略が行われる、そういう場合の日本の自衛隊の艦船と米軍艦船との関係については、この国会でも私は既にいろいろ答弁したとおりでございます。その答弁に尽きると思うのでございます。
  113. 安武洋子

    ○安武洋子君 私の問いにお答えくださいませ。私は、総理がほかでどんな御答弁をなさっていらっしゃるか存じ上げておりません。
  114. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) シーレーンの問題というのは、日米間の安保の小委員会、専門家の委員会においてそのガイドラインという、共同作業のガイドラインとして今、作業、研究が続けられておるところです。それで、既にスタートしてやっておるところでございますが、いつごろまでにそれができますか、今分析とか、あるいはどういうシナリオがあり得るか、そういう点の作業を両方でやっていると、そういうように聞いております。しかし、いずれにせよ、シーレーンというのはこれは、沿岸、港湾の防衛であるとか、あるい は海上交通の保護、哨戒、あるいは海峡の一朝有事の際における防衛、そういうようなものすべての相乗的効果としての海上交通の保護を有事の際に行わんとする、そういう総合性のある概念でこれが成り立っている、そういうようにお考え願いたいと思っております。
  115. 安武洋子

    ○安武洋子君 ですから、私が具体的にお伺いをいたしておりますけれども、このシーレーンの共同研究の中で、敵基地を攻撃する米艦船の護衛も研究課題に入れるという中間報告がなされておりますけれども、これは政治レベルの判断にゆだねられる、採用されるのは、というふうに報道されておりますので、もしこのようなことを、政治判断にゆだねるということで総理に言ってまいった場合は、総理はこのことをお認めになるんですかということをお伺いいたしております。お答えくださいませ。
  116. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) シーレーン防衛の共同研究と申しますのは、先ほども総理からもお答えがございましたように、我が国有事の場合におきまして日米が共同をしてシーレーンの防衛作戦をどうやってやっていくかということを一つのオペレーションプランとして研究をするために現在実施しているものでございます。したがいまして、これは我が国有事の場合に我が国を守るために必要最小限度の範囲内で行われるということが、基本的な前提としてその枠組みが合意をされておるということでございます。したがって、そういった我が国防衛のため必要最小限度の日米共同作戦というものとしてどういうふうなことがあり得るかということがその内容になるわけでございます。ただ、この共同研究の内容そのものは、これは防衛という極めて重要な問題でございますだけに、具体的な中身としてかくかくのことをこうですということを公表することは差し控えようということで、従来からもお答えを申し上げているわけでございます。ただ、一般論として申し上げますならば、いわゆる米艦護衛の問題というのは、昨年の予算委員会におきましても政府側から総理を初めるるお答えを申し上げた経緯がございます。つまり、日本有事の際に、我が国防衛のために共同対処行動をとっておる米国艦艇、これを我が国自衛のために必要な範囲内において我が海上自衛隊の艦艇等がこれを守るということは、それが日本の自衛のために心要最小限のものであると認められる限り、これは個別的自衛権の範囲内に入るものであって、憲法上何ら問題はないということを申し上げております。このことは御理解を賜りたいと思います。
  117. 安武洋子

    ○安武洋子君 私の問いにお答えください。私は、シーレーンの共同研究の課題の中に、敵基地を攻撃する米艦船の護衛、この研究課題も入れるということが中間報告されているが、そういうことを許可されるのかどうかということを総理にお伺いをいたしております。ですから、総理お答えくださいませ。
  118. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) そういうような研究が行われるかどうか私は知りませんし、そういう研究の内容というものは公表すべきものではないと、今局長答弁されたとおりでありますから、そういう仮定的な問題については今答弁するのは適当ではないと思います。
  119. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、五十六年十一月十八日の参議院の行革特で、我が党の上田議員の質問に対しまして当時の鈴木総理がこういう御答弁をなさっていらっしゃいます。   わが国周辺数百海里、航路帯で考えた場合には一千海里程度と、これは航路帯で考える場合におきましても、わが国の船舶を守るというだけでございます。よその国の船舶を守るというようなものではございません。わが国ははっきり集団自衛権というのは私は憲法上疑義があるとこう考えておりますから、あくまで航路帯、シーレーンにつきましては、わが国の船舶、それは一千海里程度を守っていこう、また海上自衛隊もそれ以上の能力はなかなか持てない、大変な規模のものになろうかと思いますから、そのように考えておるわけでありまして、これは予算委員会でも、安保特別委員会でも、国会の論議の中で常に政府が申し上げておる点でございまして、 というふうに御答弁をなさっていらっしゃいます。  この立場でいえば、私はこの研究の中に米艦船の護衛は当然できないということになろうと思います。総理、それでよろしゅうございますか。
  120. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) いわゆるシーレーン防衛の問題につきましては、防衛力整備上の目標といたしまして我が国周辺数百海里あるいは航路帯を設ける場合には一千海里程度の海域ということを申し上げているのは、従来から一貫していることでございます。  ただ、その場合にいわゆるシーレーン防衛というものの目的は何かと言われました場合には、これは我が国の有事の場合におきまして、国民の生存を維持し、あるいは継戦能力を確保するというために、必要な作戦としてもろもろの作戦の累積効果をねらっていくということも申し上げていることは御承知のとおりでございます。そうしてさらに、その有事の際にしからば日米共同対処として米艦護衛の問題をどう考えるかという問題がございまして、その点は昨年の予算委員会におきましていろいろと御論議がございまして、総理の御発言その他政府側の答弁等によりまして、考え方を明確にした経緯がございます。したがいまして、共同対処行動の中に、日本の護衛のために共同対処行動をとっておる米国艦船を、我が国海上自衛隊の艦船等が護衛をするということがあり得るということは、当然のこととして御理解を賜りたいわけでございます。  今回の共同作戦の研究におきましても、当然そういった一般的な考え方を基礎として研究が実施されるものであるというふうに御理解をいただきたいと思います。
  121. 安武洋子

    ○安武洋子君 鈴木総理は明確に、シーレーンは「わが国の船舶を守るというだけでございます。よその国の船舶を守るというようなものではございません。わが国ははっきり集団自衛権というのは私は憲法上疑義があるとこう考えておりますから」と、こう言われている。それを百八十度変えたということでございますね。憲法上の解釈を変えた、こういう重大問題でございますね。総理、お答えをいただきます。
  122. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) いや、それは個別的自衛権の範囲内において、一朝有事の際に我が国が我が国の防衛を行うために必要最小限の行為として認められる範囲内において、今のような米艦を護衛することもあり得る、ガードレールはそこまで通行できるんですよということを私は明らかにしたつもりでおります。
  123. 安武洋子

    ○安武洋子君 おかしいじゃありませんか。鈴木総理はそんなことおっしゃっておらないんです。我が国の船舶というのは米艦を含まないわけです。「わが国の船舶を守るというだけでございます。よその国の船舶を守るというようなものではございません。」と。これは憲法上疑義があるからと。こうおっしゃっている。それを、憲法を拡大解釈なさっている。荷八十度私はこの鈴木総理答弁を変えておられる、こういうふうに承らざるを得ないわけです。この点いかがなんですか。もう一度重ねてお伺いいたします。
  124. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は法制局長官も答弁しておりますように、憲法上の解釈からしても、今私が申し上げたような範囲内においては可能である、そういうふうに解釈しておるわけであります。鈴木総理の御答弁は文章をよく見ないとわかりませんが、あえて言わなかったという性格のものではないかと思います。
  125. 安武洋子

    ○安武洋子君 私はね、そうおっしゃいましても明らかに鈴木総理の憲法上の問題については、私はさらに残された問題として追及を改めてやってまいりたいと思います。この問題をのけたといたしましても、鈴木総理のおっしゃっている我が国の船舶を守るというだけだ、それは上田質問に対する答弁だけではなくって、私どもの榊議員に対する答弁の中にもそれははっきりと言っておられ るわけです。これを変えたということであることは明白であります。  私は、鈴木総理がシーレーン防衛で他国の船は守らないと明言されているにもかかわらず憲法を拡大解釈して、そして先ほどのような艦船護衛、敵基地を攻撃に行くというふうな艦船の護衛の研究もシーレーン防衛の中に新たに加えようというふうなことはとても許されることではない、こういうことはおやめになるべきだ、絶対になさらないでいただきたい、こういうことを申し上げとうございます。いかがですか。
  126. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 日本が侵略されあるいは侵略に面した場合に、生存する上に必要やむべからざるしかも最小限の行為として日本を生かしていくというために、今のような行為は認められると私は考えております。
  127. 安武洋子

    ○安武洋子君 明らかに鈴木答弁の百八十度転換であり、憲法の拡大解釈、私はそのように思います。そして、日本が単独で攻撃されるようなことはないということはアメリカの高官筋からも再三言われているわけです。ですから、私はそういうことを口実にしてこのように軍備を拡大していく、日本を核戦争に引きずり込んでいくというふうな総理やり方に対して厳重に抗議をいたしたい、そのように思いますし、こういうシーレーン研究に含めるべきでない、このような敵基地を攻撃に行くような米艦を護衛するべきでない、こういう研究はすべきでないということを重ねて申し上げます。  時間の関係上ロンドン・サミットの経済宣言についてお伺いをいたします。  この経済宣言は、公共支出に関しまして前日明らかにされました原案では、この公共支出に関する負担の項で、なかんずく幾つかの国においてはこれが社会保障の負担の増加に起因していることを少なからず懸念している、こうなっているところが宣言では削除をされております。どのような理由で社会保障の負担のくだりを削除したのでしょうか、お伺いいたします。
  128. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今回のロンドン・サミットにおきまする経済問題の課題というものは、一つはインフレなき持続的成長を続けていこう、そしてその恩典を発展途上国等にも均てんさせるように協力しよう、善意と協力をもって発展途上国等に対しても相対しよう、そういう基本原則を決めたわけです。それを遂行していくために、現在各国にどういう問題があるかということを点検した場合に、まず第一は財政赤字の問題が出ました。したがって、各国とも財政赤字を節減する、そのためにできるだけ最大限努力をする、あるいは産業あるいは労使関係における硬直性というものを打破していく、もっと自由な柔軟な経済活力がさらに造出できるような体制変換をお互いがやろうではないかとか、あるいは先ほど申し上げました発展途上国の問題とか、債務国に対する処置であるとか、特にニューラウンドの問題を私は提起いたしまして、ニューラウンドについても一応の合意を見た、そういう経緯があるわけであります。その一環として財政赤字の削減ということは、これは各国がおのおのの主権に基づいて、その国その国の事情に基づいてこれは行うべきものである、一般原則として財政赤字の削減に努めよう、そういう合意をしたわけであります。ですから、フランスのような社会主義政権においても、ミッテランさんは社会福祉費や教育費の削減ということをかなり思い切ってやって、かなりの抵抗を受けているというのも、やはり同じような考えに立ってやっておるものであるだろうと思います。我が国におきましては、しかし我が国独特の事情というものをよく考えてまいりまして、できるだけ社会福祉というものは大事にする、特に困っておる方々に対しては我々は最大限誠意を尽くして、そのお困りの方は真に救っていかなければならない、そういう考えに立っているということは申し上げるまでもない考え方でおります。
  129. 安武洋子

    ○安武洋子君 この削減に対して総理はどういう態度をおとりになったのでしょうか。
  130. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 我が国の臨調答申におきましては、既に政府の諸経費の節減、そういうことをうたっており、我々は最大限に尊重するということを言っているわけでありまして、そして歳出・歳入構造の見直しということも言ってやっておるわけでありますから、もちろん賛成をした次第であります。
  131. 安武洋子

    ○安武洋子君 では総理は、この原案から削除した部分は社会保障費削減、これが政策的にこういうことを言うのは正しくない、こういう御判断に立たれたから削減に賛成をなさった、こういうことですか。
  132. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 予算に聖域はないと私は申しておるのでありまして、冗費というものはどの分野においても削減していくべきである、しかし大事な費用は残すべきである、そう考えております。
  133. 安武洋子

    ○安武洋子君 いえ、これは明確に幾つかの国では社会保障の負担の増加に起因している、これを少なからず懸念しているというふうになっているわけなんです。ですから、公共支出に対する負担の増大の原因をここに求めているわけで、そしてこれが削減されているわけですから、総理はこの削減したところが政策的に正しくない、こういう判断に立たれて削減に賛成をされたのかということをお伺いいたしております。
  134. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは今私が申し上げましたように、我が国における予算編成においては聖域はない、それで冗費はあくまでどの経費でも削減していく、しかし大事な経費はこれは認めていかなければならぬ、特に社会保障の場合におきましては、本当に困っておる、低所得の困っている方々、あるいは寡婦であるとか未亡人であるとか、いわゆる母子世帯とかあるいは難病の方方とか、そういうような本当に困っている方々については我々は十分面倒を見るようにしなければならぬ、そういうことは申し上げているとおりであります。
  135. 安武洋子

    ○安武洋子君 そうはおっしゃいますけれども、八日の午前の会議の冒頭でサッチャー首相が、ロンドン・サミットの基調報告とも言える演説を行っております。この中でサッチャー首相が、先進国経済の課題といたしまして、特に財政赤字の削減のために公共支出は抑えなければならない、こう言って、社会保障などの国民の国家への期待、要求を抑えるように、こういう主張をされておりますけれども、これを受けて、四番目に発言をなさった総理は、サッチャー報告に賛成だ、こう述べておられます。私は、今いろいろとおっしゃいましたけれども、これが総理の御本心ではないか。冗費を節約する、こう言いながら、聖域はないと言いながら軍拡だけはどんどんお進めになる、そして社会保障費は片端から切り捨ててなさる、これが現実の姿でございます。私は、先ほど総理がいろいろとおっしゃいましたけれども、やはり総理の本心というのはこういうところにあったのではなかろうかということを申し上げて、私時間が参りましたのでこれで私の質問を終わります。
  136. 柄谷道一

    柄谷道一君 総理にまずお伺いいたしますが、第二臨調は政治に対する信頼性の確保、これを行政改革の原則の一つに挙げております。そして、公務員のあり方につきましては、公務員倫理は、「およそ職業人に求められる職業倫理のほか、職務の公共性にかんがみ、更に厳しい規範が課されている。」といたしまして、公務員が、全体の奉仕者として公共の福祉のために勤務すべき地位にあることを自覚して、公正、誠実に職務に当たるとともに、常に身を廉潔に保つこと、公務員は、その意識及び行動において、民主的意識、使命感、経費的観念を堅持し、国民から十分信頼される存在であることを強く求めているわけでございます。  そこで、まず総理の公務員倫理と公務員のあり方についての基本的な御認識をお伺いいたします。
  137. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 公務員に関する基本的観念は、憲法に書かれておる全体の奉仕者であ る、そういう考え方が基本であると思います。これが会社等に雇用されておる私契約に基づく雇用関係とは違う性格を持っております。つまり全体の奉仕者という言葉で、会社員は国民全体に対する奉仕者ではない、会社に対する奉仕者ではあるが、そういう点で公務員と会社員の差というものは厳然としてあると思うのであります。そういう意味におきまして、公務員については全体の奉仕者としての規律というものが特別に要求される。そういう意味において、公務員法その他においていろいろな規制が行われておるところで、公務員におきましては特にそういう点においてよく注意をし、身を厳に時さなければならぬし、職務に忠実でなければならぬと、そう考えております。
  138. 柄谷道一

    柄谷道一君 ただいまお述べになりました総理のお考えとは裏腹に、現実には公務員の不祥事件は後を絶っておりません。昭和五十五年に国際電信電話会社の贈答品密輸・乱脈経理・政官界との癒着事件や宮永元陸将補の対ソスパイ事件等多くの事件が新聞紙上をにぎわしました。今回の審査の対象年度でございます五十六年度を見ましても、金田元法務事務官の覚せい剤密輸事件、山口県警若松・三浦両巡査部長の覚せい剤猫ばば事件、電電近畿の不正経理事件、東京芸大海野教授のバイオリン購入をめぐる汚職事件、東京地裁谷合判事補の招待ゴルフ事件等々、多くの不祥事件が新聞紙上をにぎわし、政治に対する国民の信頼を損なったことは甚だ遺憾と言うほかはございません。  人事院の年次報告書によります国家公務員の懲戒処分の実態を眺めてみましても、五十六年度違法な職員団体活動千二百五十五人、欠勤・職場内秩序素乱等三百六十二人、通常業務処理関係百二十八人、公金官物の紛失・不正取り扱い等百二十人、給与・任用関係八十七人、窃盗・横領等公金官物不正領得関係百二十七人、金品供応等の不正利益受領関係三十七人、一般非行関係三百六十七人、監督責任関係七十人、計二千五百五十三人の懲戒事件が起きております。これは前年度に比べて四百二名ふえているわけでございます。総理のお考えとは逆な現象がこの五十六年度にもあらわれていることは厳然たる事実でございます。  そこで、総理は新しく期待を負って七月一日から発足いたしました総務庁の長官に対して公務員の倫理の確立、人事管理の厳正、信賞必罰を中心とした成績本位の人事運用等について何を期待し、具体的にどのような指示を長官に行うお考えを持っておられるのか、お伺いいたします。
  139. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 新たに発足しました総務庁は、一面において行政監察機能を備えております。したがいまして、各省庁の行政についてそれが適正に行われているか、むだはないか、住民に対する親切心を全うしているか、あるいは規律を重んじてやられておるか等々の面も一面において監察し得ると思います。また、一面においては人事上の任用やその他の問題について権限を持っております。そういう意味において、この両方の機能を持っているという役所がここへできましたということは、公務員管理の面において大きな前進をここでしたと思っておりまして、さればこそ総務庁というものをつくった理由にもあります。そういう意味において、総務庁を中心にして政府一丸となってそのような機能をさらに強化してまいりたいと、そう思っておる次第であります。
  140. 柄谷道一

    柄谷道一君 具体的にそういう問題について長官に対し総理からの指示を行うお考えはございませんか。
  141. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 総務庁の長官を任命しましたときに、私はそういうような話もし、また事務次官以下があいさつに来ましたときにも、そういう趣旨の話をいたしておりました。ややもすると、戦後高度経済成長のときで、物の行政というものに非常に重点が置かれ過ぎた、心の行政という面が非常に欠落しておったと。そこで、行政改革ということもここで出てきたし、臨時教育審議会という面において教育改革というものも出てきた。ここで総務庁というものを発足させて、公務員全般にわたるそういう心や規律の問題というものもここで推進していくのだ。一連のこれは大きな仕事の一環であるからしっかりやってもらいたい、そういう趣旨のことも事務次官に篤と言っておいた次第であります。
  142. 柄谷道一

    柄谷道一君 その成果を着目いたしたいと思います。  次に、総理経済財政運営に関する基本方針についてお伺いいたしたいと思います。  総理は、本年一月十七日の党首会談で、我が党の佐々木委員長が拡大均衡型経済運営への転換を求めたのに対しまして、臨調路線を踏襲している政府としては拡大均衡というわけにはいかないという旨の発言をされております。ところが、二月二十四日の衆議院本会議で、我が党の和田一仁議員が総理質問したのに対し、行政改革と景気対策は両立すると考えているともお答えになっております。一体総理は、拡大均衡型経済運営の路線を行革と並行してとることは臨調答申に矛盾するとお考えになっているのかどうか、明らかにしていただきたいと思います。
  143. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) それは拡大均衡という言葉の定義いかんによると思うんです。いわゆる拡大均衡と普通に言われている言葉は、財政的な強化作用によって公共事業費をふやすとか、あるいは建設公債を多量に出すとか、あるいはその他の借金政策等によって事業を膨らますとかというような形によってさらに成長を拡大して、それによってまた税収を多量に獲得する、それがいわゆる拡大均衡と言われて今まで来た思想であったと思うんです。  そのような一般財源、一般会計等々、要するに財政が出動してそして景気を拡大させるということは、今行政改革財政改革をやっておる現代においては必ずしも適当ではないと。しかし、といって、縮小均衡に持ち込むなどという考えはない。じゃ、何があるかといえば、これは行革を徹底することによって冗費を省き、人員を節減して、そしてその出てきた余力というものを活用するということが一つには考えられる。もう一つは、いわゆる行革の理想である規制の解除、デレギュレーション、これを徹底的に行うことによって民間活力を導入して、そして新しい成長の道をたどる。これは昨年八月私が出しました経済の展望と指針の中に、新しい成長への道というのをはっきりこれは書いたわけであります。それは、今までのような財政に頼った成長という考えよりもむしろ、今のようなデレギュレーションによる新しい成長、あるいは高度情報社会というものを目指したインセンティブを与えるような諸種のいろんな政策による新しい成長の道というものを頭に置いておるのでありまして、その意味においては、国民経済全般から見れば拡大していくということは当然のことで、それが新しい成長の道である。  しかし、今まで来た道をたどろうというものでは必ずしもないと。現にいわゆる電電公社の改革につきまして新しい法案が提出されましたら、既に第二電電というようなことが民間からもう盛んに活動が行われて、京セラが中心になってやるとか、財界がどうだとか、新しい経済活動が活発に動き始めましたですね。ああいうものが動くとその下請になる関係業界がまた色めき立って動き出すと、これやっぱり新しい成長への道の一つのあかしであると、そう考えております。
  144. 柄谷道一

    柄谷道一君 この議論は午後大蔵大臣と本格的にいたしたいと思いますが、二つだけ総理にお伺いしておきます。  二月十日の本院本会議で河本経済企画庁長官は、「経済の拡大路線といいますか、正確に言いますと、潜在成長力を高めるというその経済政策というものは臨調答申に矛盾するものではないと」考えておりますと、こう本会議答弁されております。ただいまの総理のお考えは河本長官のお考えと同じであると理解してよろしゅうございますか。
  145. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私が今申し上げたような考えに立つ経済成長という意味ならば同じで あると思いますが、今までのような過去の例による財政に頼って経済を拡大するという考えであるならば、それは違うところがあるとそう申し上げます。
  146. 柄谷道一

    柄谷道一君 もう一点お伺いいたしますが、宮澤喜一宏池会会長代行がさきに発表されました資産倍増計画につきましては、六十五年度赤字国債依存体質脱却、すなわち財政再建という具体的なプロセスが何ら明示されていないことや、また今後の要調整額にいかに対処するかということについてコメントが付せられていない等、まだまだ不分明な点はございますが、その積極経済政策の基調につきましては、河本経企庁長官は高く評価する旨の発言を行っておられます。総理は宮澤構想に対してどのような評価を持っておられるのか、お伺いいたします。
  147. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 私まだ中身を深く読んでおりません。それから、いわゆるまだ中間構想であって最終的な考えはいずれお出しになる、今そういう過渡期的な時期にあるわけでありますから、これをコメントすることは必ずしも適当ではないし、御本人の迷惑になるかもしれません。ただ、私は非常に心強く思いますのは、やはり臨調答申を尊重して行革路線を進まなければならぬと、そういうことを言っていらっしゃる、これは全く同感でありまして、そういう意味においては我が友を得たと喜んでおるところであります。
  148. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間が制限されておりますので、経済議論は午後の部に移したいと思います。  そこで、総理にこれは質問で予告してなかったんですが、一般的な問題でございますのでお答えがいただけると思うんですが、今衆議院段階で専売改革法案が大きな山場を迎えております。我々民社党は行革与党を自認いたしまして今日まで対処してきたものでございますが、総理はさきに専売法案についてある程度妥協していく、一〇〇%自民党だけの意見に固執するつもりはない旨の発言をされております。臨調答申により一層沿うものであるとするならば、行革推進のための修正案は心を広く受け入れる考えがあるのか、我々と十分話し合う含みをお持ちなのか、この点だけを明らかにしていただきたい。
  149. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今提出されておりまする日本たばこ産業株式会社法案というものは相当妥協して、自民党としてはもう財布をたたいた、底まで出たというような内容であると思います。大蔵大臣もよくそこまで我慢して努力されたと、おかげで提出され、野党の皆さんには御審議をいただいておるという状況でございますから、もうこれ以上余り妥協する余地はないと思うんですが、せっかく柄谷さんがおっしゃることでございますから、大蔵大臣にもいろいろ御相談願って、もし我々でも共鳴するところがあれば、どうぞ大蔵大臣に御相談願いたいと思っております。
  150. 柄谷道一

    柄谷道一君 ということは、総理は自民党案だけに固執する考えはないと言われたのは、また考えがお変わりになったんですか。
  151. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今まで出すまでに相当これは妥協して出したと思うんです。これは柄谷さん御存じのとおり、よくここまで妥協したなと思われるような案ではないかと思うんですが、しかし、それ以上今度は国会へ出て野党の皆さんの御意見を承る段階でございますから、野党の皆さんの御意見でいいと思われる意見、私は特にデレギュレーションという面については積極派でありますから、そういう面についていろいろ大蔵大臣に御相談になり、そして我々ももっともだと思う点があればもちろん話し合いに応ずる余地はあると思っております。
  152. 柄谷道一

    柄谷道一君 行革推進の立場をとられる総理でございますから、より行革に寄与する、こう評価される場合は政府原案に固執すべきではない、これだけを申し上げまして、この法案審議ではございませんから、総理のお気持ちだけを外しまして衆議院に伝え対応したいと思います。  最後に、防衛問題についてお伺いしたいと思いますが、防衛計画の大綱の中の「防衛の構想」という中にうたわれているわけでございますが、「直接侵略事態が発生した場合には、これに即応して行動し、防衛力の総合的、有機的な運用を図ることによって、極力早期にこれを排除することとする。この場合において、限定的かつ小規模な侵略については、原則として独力で排除することとし、」云々、こううたわれているわけでございます。これは総理が主宰する国防会議で了承を与えた大綱でございますからこの考えには間違いないと思うんです。  そこで、総理、端的にお伺いいたしますが、いかなる地域に直接侵略の可能性が高いと想定されて防衛力の整備や自衛隊の重点的配置を行っておられるのかお伺いいたします。
  153. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 自衛隊は日本の国土防衛に寄与するものでありますから、日本全土全体がその対象になっていると思っております。
  154. 柄谷道一

    柄谷道一君 鈴木総理日本列島ハリネズミ論と同じお考えを今お答えになったわけでございますが、私は三月三十日の予算委員会総理にも指摘したところでございますが、イギリスのジェーン海軍年鑑五十八年版は、「戦争において最も考えられるソ連の行動進路は相当数の陸上部隊が北海道の北部を占領し、海峡を確保して海軍展開への相応の援護をすることであろう」と初めて軍事専門家がこのことを指摘いたしております。また、日本研究のために米海軍から防衛庁の防衛研修所に派遣されましたリットン・ウェルズ・ジュニア米海軍中佐が新防衛論集一月号の中で、「ソ連は宗谷海峡の両側をコントロールするため」「北海道の東北部を占領する可能性がある」とソ連の侵略意図を想定いたしておるわけでございます。  さきに米太平洋軍司令官クラウ海軍大将がワシントンのナショナル・プレス・クラブで行われました講演で陸上自衛隊の継戦能力強化の必要性を強調されておりますが、明らかに北海道を重視した背景のもとの発言だと受け取れます。また三月末、米陸軍参謀総長ウィッカム大将が北海道を視察されました。さらに、本年度秋と冬の二回にわたり北海道で陸上自衛隊と沖縄米海兵隊との本格的な共同実動訓練が行われる計画があるとも聞いております。私は、六月二十七日からホノルルで開かれました第十五回日米安保事務レベル協議でアメリカ側が相互運用性の強化、さらに継戦能力の強化を我が国に要請したこと等々を総合いたしますと、北海道の軍事的な重要性をアメリカは念頭に置き、弾薬備蓄、基地の抗堪性、兵員の確保等の継戦能力の強化と有事の際の共同作戦を有効に遂行していくために北海道を極めて重視していると私は受けとめざるを得ないわけでございます。総理はそのような認識をお持ちでございますか。
  155. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛というものは、日本の本土全体がもちろんその対象でありますけれども、しかし防衛構想という形になりますと客観情勢の推移等々も見ながら戦略戦術的にいろいろ構想は組み立てられるものであります。そういうような面から見ますと、客観情勢その他地理的位置等も考えてみますと、北海道というものは最重点地区の一つではないかと私は考えております。
  156. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、総理が言われますように一般論として財政が限りなければ、大都会も田園都市も田舎も同じように消防車や救急車を配置する、日本列島全体の防衛の体制を整備して侵略の抑止力にする、これは理想でございましょう。しかし、財源には限りがあるわけでございます。北部方面隊に我が国唯一の第七機甲師団を配置し、内地の各師団より充足率の高い第二、第五、第十一師団を配置し、陸上自衛隊の約三分の一に当たる四万八千の陸上自衛隊を置いておるということは、ただ北海道の面積が広いというだけのことではないと思うわけでございます。明らかに防衛とは一つの想定のもとに行うものでございます。より明らかな総理の認識をお伺いいたしまして、時間が参りました。午後は防衛庁長官に引き続きお伺いをしたいと思います。
  157. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 防衛につきましてい ろいろ柄谷さんからいつも御教授をいただいて、非常に現実的なかつ周到な御指示に対していつも敬意を表しておるところでございます。  防衛構想という形になりますと、やはり重点地区というものは出てくると思いますが、先ほど来申し上げましたように北海道というものはその周囲の状況あるいは地理的位置等々からかんがみて、日本の防衛については最重点地区の一つであると申し上げました。しかし、そのことは別に日本が仮想敵国を設けて、そうして防衛に当たっているという意味ではない、このことも重ねて申し上げる次第であります。
  158. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は、総理に国債残高の件についてお聞きしたいんですが、昭和五十六年度の決算によりますと、この年はけさほどもありましたように、渡辺大蔵大臣財政再建の元年だと非常に大きな見えを切られたのですけれども、結果的には国債残高が十二兆円ふえて八十四兆円になったということなんですね。この国債残高の問題については、けさほどからも委員長初めほかの同僚委員からも問題提起がありましたように、この年だけじゃなくて、昭和五十年からずっと問題を重ねてきたわけです。そのたびに歴代の総理や大蔵大臣は事あるごとに、いや財政の特例公債依存から五十九年度までに脱却するとかあるいは現金償還するとかずっとおっしゃってきたわけです。  ところが、それが全部ほごになった。一つとして実現されないでもっともっと事態が悪くなったと私は考えるわけです。  それで、この特例公債そのものの意義についてあるいはそれの効果とか、これは中曽根総理も私がお聞きしている範囲でもいろいろ説明されておりました。しかしながら現実にことしなんかはもう国家予算の倍以上の残高ができている。国民一人当たり百万円ですね、赤ん坊からお年寄りまで含めて。これだけの残高を累積させたということは、これは歴代内閣の非常に大きな責任だと思うわけです。ということについて、この責任の問題を看過して財政再建とか何とか言っても、国民としてはもう信用できないという状況に来ていると思うんですね。したがって、私としては、この際歴代総理にはっきりした形で責任をとっていただきたいと感じるわけです。  私、ちょっと質問時間が十二分しかありませんので、まず結論から申し上げますと、昭和五十年に特例公債が発行されました。そのときの三木総理を初め、それ以降の福田総理、あるいは鈴木総理、大平総理——亡くなられましたけれども、そういう方々はこの責任をとって叙勲を辞退していただきたいと思うんですけれども、この辺については総理のお考えはどうでしょう。
  159. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 歴代の総理はその局面局面を分担されまして、非常に御苦心になってやってきておられると思うのであります。しかし、世界経済が二度の石油危機というものによりまして、図らざるリセッションの段階に入って、そのために今までの財政構想が崩れてきたということはまことに残念であり、結果論といたしましては、ともかく申しわけないような国債の累積赤字を生んでしまったということは申し上げざるを得ないと思う次第であります。
  160. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は、これ歴代総理に叙勲を辞退していただいたって、国民としてはどうしようもないし、実質的にも何の効果もないわけですね。各歴代の総理がそれなりに一生懸命やられたということは私も認めます。世界情勢、客観情勢が悪かったということも認めます。しかし、やはり政治家というのは、私は結果責任じゃないかと思うんですね。これ民間だったらもうぶっつぶれていますよ。私はまだ民間の感覚が抜けないからなんでしょうけれども、こんなものを抱えていたら大変だという感じがするわけですね。一生懸命にやったというのは、クレリカルジョブというか、クレリカルワークで、クラークの仕事なら一生懸命やった、結果は仕方がないということは言えますけれども、政治家としては、悪くなるかどうかという予見力ですね。それからやっぱり結果が問題だと思うんですけれども、その辺はいかがでしょう。
  161. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 三木さん以来、歴代の総理で勲章をもらったという方は、実はお亡くなりになった大平さん以外にいないわけですから、恐らくそういうお気持ちもあっていただかないんではないかと思いますね。確かに政治家は結果責任でございまして、余り弁解は許されない、そういう立場にあるのが政治家であると思います。
  162. 木本平八郎

    木本平八郎君 今のお話を聞いて、非常に私はうれしいわけです。やはり歴代の総理がそれだけの責任をお感じになっていただいて、そのために辞退されている。多分私は、しかし解釈は亡くなられるときに普通おもらいになるんじゃないかと思うわけですね、生存者でももらえるわけですけれども。しかし、それでもそういう責任を感じて辞退されているということだったら、私は国民として非常にうれしいと思うわけです。ぜひそういうことであるように念願したいわけです。  私がこういうことを申し上げますのは、これはけさほどからも総理もおっしゃっていましたし、毎回重ねて本会議でもいろいろおっしゃっています。それで六十五年までに赤字国債の依存脱却、それから増税なき財政再建その他おっしゃっておるわけですね。過去もずっと、先ほどの三木総理以下もおっしゃってきたわけです。ところが、結果的にはどうしようもないということでそういうふうに言いわけをなさっていますけれども、国民の側からすればどうせできっこないというふうに見透かしているわけですね。結果がそのとおりになって、案の定という感じなんです。これが政治に対する不信感を一番もたらしている原因だと思うんです。これは総理が一番よく御存じだと思いますけれども、この財政再建の問題というのは、本当にこれは内閣だとか国会だけじゃなくて、国民全部が必死になって取り組まなければいかぬと思うんです、この問題は。国民の方は案外百十兆、百二十兆と言ったって、そんなのは大したことないように感ずるわけです、自分と余りにもかけ離れた金ですから。しかしながら、今の国の経済力でもってこれを自力で償還していくというのは大変だと思うんですね。  総理は、大型間接税それから付加価値税なんか入れないとおっしゃってますけれども、たとえそれを導入しても金利を払うのが精いっぱいで、元本の償還までできないんじゃないかと、これは皆国民そう思っているわけです。そう思っているだけに、この際やはり国民に問題の所在を知らせるためにも、そういう形のある責任のとり方をしていただいて、これは大変なんだという問題意識を喚起しなきゃいけないんじゃないかと、私はそう思うんですけれども、いかがでしょう。
  163. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) その点は全く同じでありまして、百二十兆などというと、国民の皆さんには余り数字が大き過ぎて縁遠い話のように思われますが、実際はこれがじりじりじりじり国民生活に影響を持ってくる大事なことなのであります。  明治以来の財政史を見ましても、こういうような苦労をしたという時代は、西南戦争の後の不換紙幣の乱発で松方正義さんが整理をやった。日本銀行をそれて最終的にはつくったということとか、日露戦争の後の同じように、これはまあ大体外債が多かったのでありますけれども、それでもあのころは西園寺内閣、原内閣はかなりきつい財政整理あるいは行政改革をやった。このときは八八艦隊という問題が出て、非常に重いバードンを片方で負わされながらも、原敬あたりはかなり大正二年ごろのやり方を見ると思い切ったことをやっておりますですね。マイナス一〇%シーリングぐらいをあのときやっておりますですね。  それから、大震災の後の浜口さんが、同じような非常な苦労をされて非命に倒れるということになった。  大東亜戦争の後はどうであるかというと、これまた悪性インフレが起きて、国民の皆さんが塗炭の苦しみに遭って、ようやくはい上がってきた。しかし、あのときは、実はインフレで公債をみん な消してしまったという悪作用があったわけであります。  今回の百二十兆のものというのは、やはり高度経済成長及び石油危機という戦争であらざることで起きたもんですから、国民の皆様は平常のごとのような延長線で見ているわけです。しかし、実際は事の本質から見れば、前の幾つかの問題に比較できるぐらいの、あるいはそれ以上の大きな実は重い石をしょっている事態なのであります。  それが土光さんがあれだけ心配なすって全国民に訴えている真意であると、私はそれがよくわかるわけでありまして、為政者としてもそういう気持ちで本当に真剣に体を張ってぶち当たっていかなければならぬ事態であると、そのように感じておるのであります。
  164. 木本平八郎

    木本平八郎君 ぜひそういうふうに取り組んでいただきたいと思うわけです。  それで、これは今政府のことだと思っていますけれども、必ずこれは我々国民に全部はね返ってきまして、しかも子孫が全部しょっていくわけですから、ぜひ総理としてもやっていただきたいと思うんです。  それで、けさほどおっしゃいましたように、やはり六十五年赤字国債依存脱却という一つの目標を立てられたわけですね。ぜひ総理の場合も、もしもこれができなければ——それはそのときまで総理をやっているかどうかということもまたあるかもしれませんけれども、それとは別に、きょうそこで言われたんですから、六十五年現在で、もしもこれが達成できなかったら、自分も叙勲を辞退するというくらいの覚悟でぜひ取り組んでいただきたいと思うんです。  それで私は、やはり政治家というんですか、トップの方、特にこういうふうに結果についてはっきり責任をとっていくというのが、私、政治倫理の原点だと思うんです。上の方が責任を逃れたら、政治倫理もくそもないと思うんですよ。国民はみんなそれを期待して負託しているわけですから、その辺、ぜひ最後にもう一つだけ総理の覚悟のようなものをお聞きしまして、私の質問を終わります。
  165. 中曽根康弘

    国務大臣中曽根康弘君) 今のお話を外しまして、誠心誠意お国のため、また国民の皆さんのために努力してまいりたいと思う次第であります。
  166. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 以上をもちまして、中曽根内閣総理大臣に対する質疑は終了いたしました。  午前の審査はこの程度とし、午後三時十分まで休憩いたします。    午後一時休憩      ——————————    午後三時十分開会
  167. 安恒良一

    委員長安恒良一君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、昭和五十六年度決算外二件を議題とし、締めくくり総括、各省大臣に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  168. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 会計検査院来ていますか。  ちょっとお伺いしますが、院法解釈の問題は先ほど委員長が言いましたから省略しますが、先月の二十七日に成立した関西新空港株式会社ですね、これは民間出資、若干二%程度出資していますが、大部分は政府出資、地方公共団体。こういう点で、関西国際空港の事業運営について会計検査院検査の対象になり得るかどうかひとつ教えてもらいたい、こう思うんです。
  169. 鎌田英夫

    会計検査院長(鎌田英夫君) 関西国際空港株式会社につきましては、政府出資のみならず民間出資もあるということでございますが、二分の一以上の政府出資がある団体となるわけでございますので、会計検査院法第二十二条第五号の規定によりまして当然検査の対象になりまして、私どもといたしましてはこの会社が設立されましたら計算証明規則に基づきまして常時、計算書あるいは証拠書類、そういったものの提出をお願いいたしまして書面検査をいたすと同時に、実際に工事その他の事業が進みますればそれに対して会計実地検査を行う、こういう段取りになります。
  170. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 これは時間がなくて中曽根総理質問できなかったんですが、「現代」の六月号、ここに「関西新空港「利権三兆円」は中曽根総理の〃恩返し〃」というタイトルで相当具体的な問題が書いてあります。私も決算委員会並びに運輸委員会で随分具体的な問題を質問したんですが、結論から言うと肩透かしを食いまして、実態については政府側から誠意ある答弁は受けることができませんで非常に残念でありました。しかしもう法案が通ると、私があらかじめ予言したやつがどんどん、どんどん、利権に絡んで、土取り、跡地利用、漁業補償、いろんな関係で、もう次の日からそんなのが新聞に出ております。したがって、私たちも懸命に、国民の税金を使うわけでありますから、財界、民間利用といっても国民の税金にかかわる問題でありますから、真剣にここ一年半、約二年にわたって関西空港の利権にかかわる問題については追及したわけでありますから、会計検査院もそういう意味でひとつ重大な関心を持って見てもらいたいということを、これは答弁要りません、要請をしておきます。以上で結構です。  それで、私は持ち時間を使いまして、六月三十日に中堅サラ金のヤタガイが東京地裁に和議申請を出しまして実質倒産をしておるわけでありますが、報道によりますと、このヤタガイの貸し倒れ償却率、これはわずか〇・六%だと、こう新聞が報じておるわけでありますが、大蔵省、これは間違いありませんか。
  171. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 私どもの方のサラ金行政のことでございますけれども、貸金業規制法に基づいて私どもサラ金の行政をやっておりますが、サラ金業規制法は資金需要者等の利益の保護を図ることを目的とした貸金業者の貸し付け業務の適正化を図るということで、いわば業務規制を課するという性質のものでございます。そこで、個々の貸金業者の経営内容にまで立ち入って指導するような立場をとっておりません。これは銀行その他の預金者保護の目的のようなものについては定期的な検査などを行っておるわけでございますが、そういうようなことで、経営内容まで立ち入って指導する立場にはございません。  したがいまして、大蔵省としては個々の貸金業者の貸し倒れの状況について特に調査することはしておりませんので、先生が御指摘のようなヤタガイクレジット株式会社の焦げつき率、償却率と申しますか、それが〇・六%であるのかどうかについては把握しておりません状態でございます。
  172. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 大蔵省はことしの一月十八日、新法に基づいてヤタガイの新宿店の検査をやっておるわけでありますが、この新宿店の調査の際に、いわゆるあなたがあえて介入しないという逃げ口上、防波堤を張っておるんですが、それはいいでしょう防波堤は、また後でやりますから。新宿店検査のときに、ヤタガイの経理状況などについては何らタッチできなかったんですか、どうですか。
  173. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) ただいま先生御指摘の立入検査はやっておりません。
  174. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 一月十八日にやっていませんか。やっておったら大変ですよ。では確認します、やってないと確認します。  では次。我々が専門家に聞きますと、貸し倒れ償却率というのは、分母に前期末貸出残額、分子に現在での焦げつき額、これを焦げつき傘と、こういうふうに専門家が言っているというふうに教わっているんですが、この分母と分子、間違いありませんか。違っておればあなたたち専門家で教えてもらいたい。
  175. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 私先ほどの御質問につきまして、立入検査はしているかという御質問に対してしていないというふうに申し上げましたが、ただいま調べましたところ、立入検査はしております。経営内容にまで立ち入っての調査等をやっていないということでございます。  それから今御質問の件でございますが、ただい まおっしゃいましたとおりでございまして、貸出額の貸し倒れ償却の高を示すものとして、貸し倒れ償却額を総貸出額で除した比率がいわゆる焦げつき率というようなふうに考えていただいて結構だと思います。
  176. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そうしますと、読売新聞の四月二十七日の報道によれば、今あなたが言った格好で言うと、大手四社は一六%、中堅業者は二〇ないし三五%、こういうふうになっておりますが、大体二五%を上限にしてパニック状態になる可能性があるということを専門家が言っておるわけでありますが、ヤタガイだけでなくて大手も一六、中小が二〇、こういうことになりますと、やはりサラ金業界全体が一つの曲がり角に来ていると言っても私は過言ではない、単にヤタガイだけじゃない、こういう気がするんですが、あなた方は経営内容にタッチしない、検査に入っても経営内容にタッチしない、こう言っているんですが、こういういろんな数字から見れば、単にヤタガイだけが問題ではなくて大手四社あるいは中堅にも非常に危険な点があるのではないか、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  177. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 立入検査と申し上げましたわけでございますけれども、業務規制という、規制するという立場でございますので、そういう立場で検査いたしますものですから内容等にまで入っていないという、法に基づいた趣旨であることをまず御了承いただきたいと思います。  それから新聞報道等によりますサラ金経営の悪化の程度でございますけれども、先ほど申し上げたようなことでございますので、特別に私どもそういう数字を把握しておりませんので、恐縮でございますけれどもそれを申し上げる立場にはございませんけれども、例えば五十八年度決算におけるサラ金大手四社の貸し倒れ償却率、今御説明申し上げました貸し倒れ償却率でございますけれども、それは、有価証券報告書とかあるいは営業報告書等によりますと三%程度から八%程度になっておりまして、五十七年度に比して高くなっているということが言えると思います。ただ五十八年度、同様の書類によりまして私ども先生の御質問もあろうかと思いまして検討してみたわけでございますけれども、五十八年度決算におけるサラ金大手四社の経常利益は、同様の報告書等を見ますと百八十五億円から二百三十九億円を計上しておりまして、五十七年度決算に比して増加しております。つまり貸し倒れ償却率は悪化しておるわけでございますけれども、経常利益はふえているということでございます。ただ、先生がおっしゃいました十六社とかそういうようなことになりますと、それからこれは五十八年度決算の数字でございますから、最近の傾向等については承知しておりませんが、五十八年度決算についてわかっておるところだけ申し上げるとそういうことでございます。
  178. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 片や〇・六%と言っておるし、読売新聞の六月二十一日の夕刊を見ますと、ヤタガイはそんなきれいごとじゃなかった。ヤタガイは三カ月以上の延滞債権が二二%、一カ月以上の未収を加えると約四〇%。大体サラ金の専門家にいろいろ勉強さしてもらいますと、どんな優良サラ金でも四〇%を超えてしまうともう倒産の一歩前だということがよく言われているのが専門家から我々勉強で聞くんですが、そうしますともうヤタガイは現実に表面上は、表看板は〇・六%と言っておったけれども中身は四〇%、危険信号の限界を超えている、したがって、倒産はもう時間の問題だということをもう示しておったんじゃなかろうか、こういうことでありますが、これはあなた方は企業まで入らないと言っていますからこれは答弁求めたって答えないでしょう。  それじゃ逆に聞きますが、あなた方はヤタガイの今回の倒産をめぐって良質なサラ金を育成するというのが大蔵省の方針だと言っているんですが、経営の内容までタッチしない大蔵省が良質なサラ金を育成するというのは一体自己矛盾をしませんか。経営内容を洗ってみてこれはおかしい、これは危ない、これは少し金の流れがおかしいとか、だからこれは指導して矯正をして、あと中身のいいやつだけを残していこう、中身のいいやつを残していこうというのが大蔵の方針なら、中身に入っているということを裏づけしているんじゃないですか。中身に入らないと言っていながら良質のサラ金を育成するということは一体自己矛盾になりませんか。この点は私は頭が悪いからあれですが、これはどういうふうに説明すればいいんですか。結局良質のサラ金と中身に入らない、その因果関係についてひとつ御指摘ください。
  179. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 良質のサラ金を育てるということを私どもが言っているということを新聞報道が報じたということでございますけれども、私ども正式にはそういうことは言っておりません。ただ、その良質という意味でございますけれども、良質は恐らく金利あるいは正常な取り立て行為というようなものがサラ金の場合には良質と言えるかと存じます。貸金業法、一連のサラ金業法でございますけれども、それははっきり金利の上限を定め、かつ取り立て行為の規制をやっておると考えられます。  そこで、その場合の法律を正確にやるということは、すなわち良質のサラ金を育てるという結果になろうかなというふうに私はただいま考えるわけでございますけれども、そもそも消費者信用は我が国経済でも重要な役割を果たしていくものと考えられますので、まずその場合には金融機関みずからが積極的に消費者金融に取り組む必要があるということがもちろんでございますので、その点は我々もつとに金融機関にもそのような形で消費者金融に貢献するように指導しているところでございます。  それから先ほどの、前の答弁とも関連いたしますけれども、そういうことでサラ金業者の業務の適正化を図っていくこと自体が、良質のサラ金を残し育てることではないかというふうに考えます。そうして、そういうことによりまして消費者金融全体が金融機関、サラ金を通じまして、市場での適正な競争を通じまして消費者の多様なニーズに対して適切なサービスを供給していくことが必要であるというのが私どもの考え方でございます。
  180. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 なかなかサラ金の中まで入っていかないという防波堤を張ってまず逃げたものですから、質問しにくい。前の宮本局長と大分遣うね。宮本局長は大分親切に答えて、ここにおる、鎮座まします竹下大蔵大臣も、あなたが言ったら信用金庫の育成にはやると、こう言っていますが、じゃもう一つ聞きましょう。  このヤタガイが貸し倒れになった席ですね、六月の十二日、債権者説明会で貸付残高が百三十億で、百三十億の回収については、加藤正見さんというヤタガイの再建委員会になった人の新聞のインタビューに見ますと、百三十億は何とか回収できる、こう言っておったそうでありますが、しかしそのほかに貸し倒れ九十億があるということを新聞報道が報じておって、このことについても加藤正見さんという整理に当たっている方は大体遠からず近からずという意味の発言をしていらっしゃるんですが、この焦げつき、ヤタガイでは九十億と、こう新聞に報じておりますし、この加藤正見さん、この人の新聞インタビューを読むと大体そういうことが当たっている、それからここの女性部長ですか、資金対策部長、いろんな意味あるんですね、この資金対策部長の女の人のインタビューを聞いてみても約九十億程度の焦げつき貸し倒れがある、こういうことになるんですが、これは会社は九十億の貸し倒れですが、出資した一般の個人出資家から見ればこれは回収不可能なわけですね。ですから九十億も貸し倒れ金があるということに対して、サラ金業界の中には入らないと言って大蔵省が無責任で逃げるわけにはいかない、こう思うんですが、この九十億の焦げつきあるいは回収不能のことについては確認しておりますか。
  181. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 新聞報道ではそういうふうに報道されているようでございますけれども、私ども確認はしておりません。
  182. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そうすると、竹下大蔵大臣ね、サラ金論争で私も何回かあなたとやっているけれども、最悪の事態のヤタガイがこういう事態になっているのに、銀行局は一切確認していない。そうするとこれはどういうことになるんですかな、竹下大蔵大臣。こんな銀行局長相手にしたってしょうがないわ。これだけの九十億の焦げつき、回収不能、それは企業が金を融通したこともあるでしょう、あるいはこの新聞などを見ますとぽんとある社長さんが一億円出資したという方もあるし、あるいはだんなにへそくりで百万、二百万のへそくりをやったという方もいらっしゃるわけですね。そうすると銀行行政、金融行政からいって、そういうことになった際に、監督官庁の大蔵省の銀行局長は知りません、確認しませんでは私は銀行、金融に対する国民の負託ということに対して一体どこが責任を負うのか、こうなりますと知りませんではこの問題は通らない、私はこう思うんです。したがってこの焦げつき九十億を確認して、銀行行政として庶民を守るためにどうすべきかということに対する政治的な判断を竹下大蔵大臣答弁を求めます。そうしないと、銀行局長と何ぼ論争したってこれは問題にならぬ。したがって大蔵大臣答弁を求めます。
  183. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) なかなか難しい問題でございますが、まず貸金業規制法、この法律そのものがいわば資金需要者の利益の保護を図ることを目的として貸金業者の貸付業務の適正化のために貸金業者に対して各種の業務規制を課するという性格のものでございます。したがって、個々の貸金業者の経営内容にまで立ち入って指導するという、法の精神がそこにないというふうに私は考えておるわけであります。そのことは当初からわかっておった話でございますから、したがって大局的にはどういうふうに対応していくかとおっしゃれば、先ほどもお話がございましたが、いわば良質のいわゆる消費者金融、これを育てていかなきゃならぬと、こういうことであろうと思います。それには、まずやっぱり金融機関みずからが積極的に消費者金融に対応すべきだということからいたしまして、私どもそういう指導をしてまいりました。  先般、政令改正をしまして、信用組合の員外貸し付けあるいは労働金庫の員外貸し付け、それも、組合員の奥さんでありますとか、あるいは知人でありますとか、そういう方がサラ金へ駆け込む必要性が、そこへお入りになることによって、少なくなることによって消費者金融の良質なものを育てる一つの考え方になりはしないかというような考え方で、基本的にはまずそれで進めておるわけであります。そういたしますと、そういう良質など申しますか、金融機関みずからが行うところの消費者金融が出てまいりますならば、いわゆるサラ金業者の方もこの競争原理の中において業務の適正化を図っていかれるように環境がなっていくであろうと、こういうことを本筋として考えてきたわけであります。  したがって、今度のこのヤタガイに象徴されますところの事件ということになりますと、おのずから、私どもの立場からすれば、言ってみれば介入する限界と、こういうものもあろうかと思っております。そもそもがこのサラ金二法が成立いたしました当時からも、警察あるいは、もとより地方自治体等々広範囲な会合等を持ちながら十一月に出発して、言ってみればそれに対応する筋道がやっと立ったところにこういう事件が起きたわけでございますので、大蔵省としての限界は一応心得て、それ以上に踏み出すということになりますと、私どもとしても、一金融機関と、いわゆる庶民金融としてはおのずからそこに限界がございます。したがって、それについては、まあそういう社会不安というものに対しては、私どもがこれに対応するだけでなかなか解決のつく問題ではないと。だから本質的には、この正規な金融機関によるところの消費者金融を育てながら、その中に競争原理が働いて、いわゆるサラ金と言われる業種の健全化が進んでいくことを期待しながら、その過程で出てまいりましたこの問題については、今のところ我々の範囲内において、これに対して、これをいわば前車の轍を踏んではならぬという意味において、その他の、あるいは卸売的に融資をしておる金融機関等に対して適切な指導をしながら、前車の轍を踏むことがないようにということで、この個別問題そのものにはおのずから法の建前からして、やはり入っていく限界というものがありはしないかなと。いわば受ける感覚としての目黒さんのお話は私にも理解できますが、さてどういうふうなこれに対して、いわば大蔵省銀行局としての対応の仕方といえば、そこに法律の性格から来る一線というものがあるではないかと。むしろそういう問題が起こらないように他を指導していくことが今は私どもの責任ではないかなと。非常に歯切れの悪い答弁になることを承知の上でお答えしたわけであります。
  184. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 これは、私のように頭の悪い者は馬蹄型答弁というのは嫌いなものですから、馬の馬蹄のような。やっぱり結論言ってもらわなければ。  そうすると、やっぱり今の銀行局の金融行政では、九十億の焦げつき、回収不能、そのことが金を出し合った皆さんにもろにかぶっても銀行行政としてはどうにもならぬ、いわゆる丸々損と、どうにもならぬと、こういう答弁だと思いますが、これは大事な、庶民にとっては大変な私はショックだと思いますね。  それでは、逆にもう一回聞きますが、一体この庶民が金を出すというのは、出す方が悪いということも、言われたわけじゃありませんが、このヤタガイの金の集め方、これは出資法の違反になるんじゃないか、こういう問題が問題にされまして、これは六月の十五日ですか、大阪サラ金問題研究会の木村弁護士外四十四名が八谷社長を警視庁に告発するという、ヤタガイ出資法違反と、こういう問題について告発されておると思いますし、同時にまたこの女の方、女性資金部長さん、この方の新聞のインタビューによりますと、八谷社長は出資法違反になることを常に頭に置きながら大分苦労されたと、こういうインタビューの発言があるんですが、法務大臣、このヤタガイの金の集め方については出資法違反になるという、そういう問題について、告発についてどこまで見解を持っておるか、庶民の立場を考えて法務大臣にひとつ答弁を求めたい、こう思うんです。
  185. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) 私からお答えいたしたいと思います。  お尋ねのようなヤタガイの関係につきましては、いろいろな報道がなされていることは承知しておりますけれども、それが出資法違反になるかどうかという点につきましては、なお具体的な事実関係が明らかでございませんので、ちょっと結論を申し上げかねるところでございます。  ただ、一般論として申し上げますれば、預金、貯金あるいは定期積み金の受け入れその他、これらと同様の経済的性質を有する不特定かつ多数者からの金銭の受け入れを業とした場合、出資法二条に違反することになるわけでございますし、また、これが出資金というようなことの性質を帯びてまいりました場合には、同法一条違反ということも考えられるわけでございます。
  186. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 具体的な問題で、先ほど言った弁護士会の皆さんはもう告発をしているんだし、このヤタガイの資金部長の女の方も陳述をしているようですから、今九十億の焦げつきで社会的な、泣いておる庶民のことを考えれば、もう少し法の番人の法務省はむしろ積極的に実態を究明して、庶民の不安なり社会不安をなくすべきじ寸ないかと、こう思うんですが、これは要望しておきます。  そんなら逆に、ヤタガイの五億円以上出している債権者については銀行局長わかっていますか。
  187. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) この五億円以上の債権を有する債権者でございますけれども、この点については私ども正確には把握しておりません。恐縮でございます。
  188. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私の方で把握していますから教えましょう。徳陽相互銀行二十七億五千八百九 十万円、三喜ファイナンスリース十二億四千九百万円、アド東亜十一億円、今池ビルディング十億円、ギコー綜合研究所九億四千万、こんな目黒みたいなやつさえこうわかるやつをなぜ銀行局長が、銀行局がそんなにわざわざカバーするんですかな。  じゃ、ヤタガイの大口債権者である三喜ファイナンスリース株式会社については債権額は幾らぐらいありますか。これはわかりませんですか。
  189. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 先ほどのヤタガイに対する債権額とか三喜ファイナンスの債権額等についてはいろいろの、あるいは債権等についていろいろの報道はなされておることは承知しておりますけれども、この三喜ファイナンスのヤタガイに対する債権額も特に把握しておりません。
  190. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 じゃ私が教えましょう。約十三億円です。十三億円。それでもう銀行局長ね、あんた事前に我々レクチャーしておるんですが、あなたの答弁を聞くと、何もかにも玄関払い、玄関払い、玄関払いと、こういうふうになるんですが、これは幾ら質問しても玄関払いであるならば、前もってうちの秘書があなたにレクチャーしたようなことについては全部玄関払いですか、それは、基本的に聞かせてください、玄関払いなら玄関払いらしく、こっちも腹をくくってやるしかないし、いや、これこれは情報がありますからお答えいたします、これこれは調査中であります、これこれは今後また検討しますと言うんならかわいいところあるけれども、何もかにも玄関払い玄関払いで、何か後に何物がいるんですか、ここで答弁したんでは申しわけないと。前の宮本局長も、あんたよりは頭のも白い分だけ親切だったよ。どうなんですか、これは。
  191. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 私の答弁が至らないところがございましたらぜひ御指摘いただければ御説明させていただきますけれども、本件につきましては把握していないのが実際でございます。でございますから、先生からもレクがございましたわけでございますけれども、もし調査をするようにということであれば調査させていただきたいと思いますが、その上で先生にも御報告いたしますが、今のところ報道も区々に分かれておりますので、私どもからちょっと責任を持って行政当局としてお答えするような数字がないという意味でございます。さらに調査させていただくことも結構でございますけれども、公開の席でお答えできるかどうかについては個別の取引でございますので、その時点でまたあるいは先生とも御相談の上判断させていただきたいと、かように存じております。
  192. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 しかし、それは例えば三喜ファイナンスの問題についてはわかりません。しかし、私ら登記所へ行って謄本取ってくれば全部謄本に書かれているね、必要事項、これもわからないんですか。これ全部私謄本取ってきました。三喜ファイナンス、それから三貢商事、それから株式会社今池ビルディング、それから株式会社フジフアクタリング、それから三中開発株式会社、これは皆謄本取ってきました。こういう会社が全部ほとんど同族ですね、社長さんは皆加藤正見さんという方、全部、同族またはそれ以外。これぐらいはあんた大蔵省、私だって金かけて取ってくるんですから、あんたたちこういう取り組みをしないということは結局門前払いですか。もっと言いますが、問題発言についても帝国データバンクという調査機関がこういうのをちゃんとやっていますよ。これによりますと、やっぱり三喜ファイナンスリースの方は金融、サラ金で三洋信販、マルカワ、ヤタガイ出てくる、ヤタガイちゃんと。それからレインボー、それから自動車リース、これは国税庁来ていますか、自動車リースを見ますと、国税庁職員三十名の専門リースだとなっている、国税庁職員。そうしますと、この会社は国税庁専属の自動車リース業です、これは。それは国税庁知りませんか、国税庁来ておりますか。この三喜ファイナンス知りませんか。
  193. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) その事実については現在のところ把握をいたしておりません。
  194. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 そうしますともう一つ言っておきましょう。  三喜の営業状態、私もさっき言ったこと、新潟相互銀行から八億円、福島相互銀行新宿二億三千万、東京信金江戸川支店四億円、太陽神戸銀座、これは国会の太陽神戸ではありませんよ、太陽神戸銀座二億円、三井本町が一億円、その他これは仙台の徳陽とか第一銀行を含めて十三億八千万、合計三十億、こういうもう全部出ているんです、これは。だからあんたたちが先ほどわかるものは答えます、わからないものは答えませんと、あとは入れる道を渡ってくださいと言って釈明したって、目黒朝次郎がわかるやつを行政権を持っている銀行局がわからないわけがない、いわゆる調べようとしないか、調べても議員の質問には答えないと、どっちかじゃありませんか。私がこれだけ持っているんだから、それでもあんたどういう答弁をしますか。
  195. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 先ほどからの答弁を通じましてでございますけれども、そのサラ金の中で今度のヤタガイ事件というのはやはり相当大きな事件だと思います。私どもサラ金の、先ほど来申し上げております業務規制をやっておるわけでございますけれども、それで、それにつきましては誠心誠意やっているつもりでございますが、そういうサラ金行政について今後のやっぱり一つのケースであろうと思いますので、十分に注視してまいりたいということで報道などもフォローしておるつもりではございます。ただ、今申し上げましたように、内容にまで立ち入っていないのが今までの実態でございますし、特に今回のヤタガイ事件、確かにケースとしては大きいことではございますけれども、ただいま全体としては、サラ金業自体については全体の規制を行いつつ自主的な責任で債権者につきましても、ヤタガイに対する債権者についても自主的責任ということが私どもの立場でございます。  そこで、今おっしゃいましたような書類でわかるということでございますわけでございますが、そういう点についてもし調べるようにということでございましたら調べますが、ただいまヤタガイ自体に私どもが中身こういう事件になったから入るということになりますると、これはまた債権者、債務者に行政当局の立場というものもひとつの何か意味があるのかというような誤解を与えかねませんので、私どもとしてはあえてただいま静観しておりますけれども、いずれかの段階あるいは和議の進行状況、和議をやっておるわけでございますが、進行状況等でこれだけ大きいことでございますから、勉強し、今後の行政に役立たせたいという気持ちはございます。
  196. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 それではあなた自身の問題聞こう。これは「週刊現代」の七月十四日号に、あなたと三喜ファイナンスの代表とのデートか何か知りませんが、載っておりました。あなたが釈明したことが週刊誌に載っております。私は、あなたが新潟相互銀行にかかわり合いかないとは言わせません。かかわり合いがあると思います。新潟相互銀行は関連会社A、これは特に私に情報をくれた方が名前を明らかにしないでくれと言いますからAと言いましょう。Aに発生した多額の焦げつきを回収するため優越した地位を悪用し、そのA社を関与した共同事業からA社の利益を先取りという形で莫大な資金を不当に回収するという事件がありました。悪質な私は行為だと存じます。そのことで、あなた銀行局長は新潟相互銀行首脳より相談を受けた際、この件で、あなたが、私のいる限り国会対策は大丈夫だということを五月下旬ある場所であなたはしゃべっておるという情報を我々は握っておるわけでありますが、このこととすれば、前の宮本銀行局長と徳陽の関係お話ししたことがありましたけれども、この新潟相互銀行の、国会対策は任せろというようなことを断言しているということは相当新潟相互銀行と関連があると、こう私は見て間違いないと思うんですが、この事実についてはどう釈明しますか。
  197. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) ただいま二つの事柄について御指摘があったと思います。デートという お言葉でございますが、ある雑誌を御指摘なさいましたけれども、それは三喜ファイナンスの社長が、結婚披露宴で私の隣の席に座っていたということを指摘されたわけでございます。それにつきましては、私全くその披露宴に出席しましたときにどなたが呼ばれているか、どなたが隣に座るかということは事前に全く察知できなかったわけでございます。結婚式でございますからあるいは歯を見せるような笑うようなことはございましたかもしれませんけれども、断じてその関係はございません。デートではございません。  それから、第二の新潟相互の関係でございますが、全面的にそういう事実はございません。ましてや、行政官庁の役人である者がそういうようなことで国会対策に関係するようなことができるというような不遜なことを申し上げるはずはございません。  それから、その件に関連いたしまして新潟相互の方でございますけれども、その披露宴に呼ばれた方でございますけれども、週刊誌を見られて大変びっくりされまして、私に心なくお呼びしたことで全く関係ないということを申しておるわけでございます。全面的に私としては非常に迷惑でございますし、遺憾だと思っておるわけでございます。
  198. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 まあそういうことであればそれなりに我々も対応するだけでありますから、あなたの釈明は釈明として確認しておきます。  それから、せっかく入るようにつくったら、あっちこっちで時間がたっちゃって、私はもう一つ、この雑誌ですが、ダイヤモンド社「BOX」七月号、ここにやっぱり「疑惑のマネーゲーム」という記事がありまして、なるほどサラ金業界というのはこういうことをやっているのかなということを改めて知らされましたので、これに興味を持って調べてみました。これちょっと大臣に。    〔資料配付〕
  199. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 これはやっぱりこのサラ金との媒介人というか、ブローカーといいますか、そういう方々のからくりといいますか、どういう型があるんだろうかなと思って、私調べてみました。そうしましたら、ここの「出資者」、この「十億円」というのは、これは徳陽相互銀行、これ我がふるさとの宮城県に本店があるんですが、余りいいことじゃありませんが、徳陽相互銀行がどうも十億円出資者のようであります。それから「担保提供者」、これは千曲高原ゴルフ株式会社、それから融資を受けたサラ金業者、これはローンズワールド。ここに出てくる有名ないわゆる金融ブローカーといいますか、金融媒介業という人は、この新聞にも出ておりまする、こういう立派に出ております加藤正見さんという方がなったということを私は最終的に突きとめました。これはほとんど間違いなかろうと思いますが、この場合の手数料は二%。しかし、二%はこれは領収書発行されていないと、こういうことでありますので、こういう関係の問題については、国税庁としてはこれは追跡調査ができるのかどうか。  これと同時に、この先ほど謄本見せました加藤正見さんが社長をやっていらっしゃる今池ビルディング、フジファクタリング、三中開発、こういうところのこの法人各社の所得ということについても、わかるならわかると、わからないならわからない。わかるならば、時間がありませんから後ほど資料として出してもらいたいということを国税庁にお願いいたしますが、いかがでしょうか。
  200. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) お答えいたします。  個別の個人ないしは企業のお話でございますので、具体的なお答えはいたしかねるわけでございますけれども、私どもといたしましては、常に国会の御議論はもちろんのこと、新聞、雑誌その他外部の情報ないしは私ども独自で調査をいたします資料に基づきまして、課税上問題があると思われましたものにつきましては実地調査その他調査をいたしまして課税の適正を期してまいりたいと考えております。
  201. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 だから、私が少し問題があるなど言ってこう提起しているんですから、この提起している問題についてわかり得る範囲で我々に情報の提供ができませんか。例えば有価証券報告書ではこれこれの報告があるとか、あるいは申告ではこれがあるとかということをわかり得る範囲で我々に情報提供ができませんかと言っているんですよ。言えなければ、こっちで握ってからここではらしますよ。
  202. 岸田俊輔

    政府委員(岸田俊輔君) 調査の過程におきまして知り得た事実につきましてはなかなかお答えはできないかと思いますが、一般的に知り得るような資料でございましてお役に立つようなものがございましたら提供いたしたいと考えております。
  203. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 大蔵大臣、ヤタガイの問題を含めて、あなたはさっき見解をいろいろ言われましたけれども、こういうブローカーといいますか、媒介人といいますか、非常に回り回っていろんなあくどいやつが社会の水面下で繰り広げられていると。そういうことが中小サラ金に影響したり、あるいは国民に迷惑をかけていろんな不安を起こすと、こういうことのやっぱりいろんな、諸悪の根源とは言いませんが、いろんな社会悪の根源が水面下の見えないところで行われているということを、私はむしろ注意を喚起するために提起しているんですよ。ですから、大蔵大臣、今国税庁から話がありましたが、こういう問題については、やっぱり正常な金融業の一環という立場で大蔵省としてはこれに対する調査をする意思がありませんか。例えば法務局と連携をとるなり、あるいは警察庁と連携をとるなり、いわゆる個人の人格を侵害しない範囲でとり得る政治的な方法はないものかということを、もう一度出番である大蔵大臣考え方を聞かしてもらいたいと、こう思うんですが、いかがですか。
  204. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 例えば私の実名でございますとか、そういうものを使ったりして、国際シンジケート団とかいうようなことで、もう既に事件になって、恐らく捜査の段階は済んでおるだろうと思います。私も新聞紙上でその事実を知りましたが、その問題も各方面から、あれは確か金額が九十九億円というような大変なお金になっておりますので、国際金融ブローカーと言われる一つの集団でそういう懸念が行われておるような気配があるではないかというような御忠告を受けました。それらはもとより私個人としても、また役所といたしましても、関係方面へ連絡をとりまして、それが事実上、今日事件の容疑で検挙されて、物事がほかの、恐らく詐欺とかいろんなことに広がるでございましょうが、そういうことが今日進んでおるというようなことは、私もその後の経緯は新聞紙上等を見ながら承知しております。したがって、やはりその種のいろいろな問題につきましては、私どもなりにも関心を持って関係方面へ御連絡申し上げるというようなことは、私どもの役所としてもなさねばならぬことではなかろうかという事実認識はいたしておるつもりでございます。
  205. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 東京相互銀行から某サラ金の方が三億四千万借りた際に、一億四千万だけ拘束預金ということで東京相互銀行指定の架空口座に分散預金しろと、そういう条件を実行しなければ金は貸さないと、こういうことが現実に行われているということについてはどういうお考えですか。
  206. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) お考えいたします。  大蔵省といたしましては、従来から過当な拘束性預金の解消を図るよう指導しております。その結果、拘束性預金比率は大幅に低下しておりまして、昭和三十九年二二・三%から昭和五十八年には二・四%に低下しておるわけでございます。過当な拘束預金については今後とも厳正に指導していく所存でございますけれども、御質問にあるようなケースが仮にあるようなこと、その場合には、債務者の意思に反して拘束するというような過当なケースでございますけれども、そのようなことが事実でございますならば、個別な問題として十分調査する必要があると思われます。  なお、過当な拘束預金が認められた場合の処置といたしましては、厳正な処置と申し上げました が、担当役員の責任を明らかにすることを含めて、当局としては厳正な方針指導していく所存でございます。
  207. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 この関係で、加藤正見さんと同じ金融ブローカーをやっている方が、表面金利は一五%、しかし裏金利が九%、こういう利子を取っているのかひったくっているのか知りませんが、そういうあくどいことをやっている。あくどいことをやっていると、ヤタガイの社長さんの新聞記者会見じゃありませんが、正規の金融機関から借りる場合には若干の利子があってもそう苦しくないけれども、こういうやみ金融、表利子と裏利子両方から取られると、もうどうにもこうにも資金繰りが苦しくなって、いわゆるお金を借りた方に高い利子をぶっかけたり、あるいは中小から搾り上げたりと、こういうことをやられるので非常に困っていると、こういうようなことを述べておられるわけでありますが、この二重利子ですね、表利子と裏利子、この問題については大蔵省はどうですか。
  208. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 御質問のケースの場合でございますが、もうちょっと詳細にケースとして教えていただければと思います。それは金融機関とサラ金の間に存在するブローカー的なものの話でございましょうか、それとも金融機関が貸し出す場合に表面金利と裏金利とがあるというようなことでございましょうか、大変恐縮でございますが、問題の所在点を教えていただければありがたいと思います。
  209. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 ブローカー的なこともその主体になっています。  立ったついでにこの問題について、法務省にもお伺いしますが、このブローカー的なことなどをやりますとやっぱり出資法第四条の違反になるんじゃないかと、こんな気もしますが、銀行局と法務省両方からこの裏金利、表金利の関係の考え方を聞かしてもらいたい、こう思います。
  210. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) いろいろのケースがあろうかと思いますので、ケースごとに法に照らして検討する必要があると思います。必要とあれば先生のところにお伺いいたしましてまた勉強させていただきたいと思います。それから法務省とも御相談させていただきたいと思います。
  211. 筧榮一

    政府委員(筧榮一君) ただいまのお尋ねは、具体的な事実関係が明らかでございませんのでちょっとお答えいたしかねるわけでございますが、今先生御指摘の出資法四条の関係について一般論として申し上げますと、金銭の貸借の媒介を行う者が、その媒介に係る貸借の金額の百分の五、五%に相当する金額を超える手数料の契約をし、あるいはその手数料を受け取った場合は出資法四条違反になるわけでございます。これはあくまで手数料でございますので、裏金利、表金利の金利となりますとまた別の問題であろうかと思います。
  212. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 非常に不愉快な五十分でしたが、もうやめます。  最後に、私はここに百一名のリストを持っていますが、これも法務省に言ったってなかなかあれだと思いますが、こういう百一名のリストなどによって金融業界が政界とのかかわり合いでいろんな点で答弁その他について手心を加えるなんてことがあったら私はもう言語道断だ、こう思うのであります。これも法務省も入手するでしょう。あるいは新聞社も入手するでしょう。したがって、こういう疑惑の起きないように庶民の立場に立ってサラ金の問題をきちっとした指導をしてもらいたいということを最後に、これは答え要りません、要請しまして、二分ばかり延びましたけれども、おわびして質問を終わります。
  213. 太田淳夫

    太田淳夫君 それでは最初に、いよいよ七月一日から総務庁が発足をしたわけでございますが、長官は官房長官時代から、あるいは行管庁長官時代からこの総務庁の発足、いろいろと中心的な存在としておやりになってみえたんですが、総務庁長官に就任された所感とこれからの抱負を一言お願いしたいと思います。
  214. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 別段改まって抱負なんという気負った気持ちはさらさらございません。  ただ、総務庁がなぜできたんだというこの総務庁設置の趣旨ですね、これにはやはり政府としても大きな役割を考えておつくりになったんだし、国民の皆さんもやはりそれだけに鋭い視線を注いでおると思いますから、与えられた仕事はできるだけせいぜい努力をして期待に沿わなきゃならぬ、かように考えておるわけでございます。
  215. 太田淳夫

    太田淳夫君 従来の総理府にかわったわけですが、総務庁長官という立場はやはり給与担当大臣としての役割、そして人勧を完全実施をしていくということがこの大きな役目になろうかと思うんですけれども、そういった意味で従来の総務長官も完全実施につきまして閣僚会議等でも発言をされておりますね。  きのうですか、総務庁長官はテレビでいろいろと発言をされておみえになる。私、このテレビにつきましては拝見しておりませんけれども、いろいろと取りざたされておりますけれども真意は一体どこにあったんでございますか。
  216. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 労働三権が制約されておりますからその代償措置といいますか、そこで人事院を設けて給与等について政府国会に勧告をする、これは政府国会も尊重しなければならないと。この勧告制度の基本を守ってこれを尊重しなきゃならぬということは、これいささかも官房長官時代であれ、行管長官時代であれ、今日といえどもちっとも私は変わっていないと、かように考えるわけでございます。テレビ討論の話も出ましたけれども、私の基本はそういう考え方でございます。  政府も、あれたしか藤波官房長官だったと思いますけれどもね、人勧制度を尊重して完全実施に向けて誠意を尽くして努力をすると、こう言っておるわけですから、これは私もちっともその点変わっておりません。  ただ問題は、今日厳しい財政状況というものが一方にある、それから同時にまた、公務員の生涯給与だと思いますけれども、こういう点についての国民のやはり厳しい批判というものもある、これはやっぱり考えなきゃなりませんから、私はそういう点については人事院勧告が出た段階で国政全般との関連をも考慮しながら適切に処理をすべきもの、かように考えておるような次第でございます。
  217. 太田淳夫

    太田淳夫君 人事院勧告が出た段階で適切な措置をしていく、これは当然でございますけれどもね。  このテレビ放送を見ていました人のいろんな話を総合して恥ますと、公務員の皆さん方の中にはこういうとり方をしている方もみえるわけです。これ長官ちょっとお聞きになっていただきたいと思うんですけれども、こういうような御発言だったんではないかと。それは、昨年の人勧六・四七%を二・〇三%に圧縮をして実施してきたため、単純に計算しても四・四四%の積み残しがあると。一方では本年の人勧は七%近くになるだろうと。なるけれども、二%程度の定昇があるし、民間の春闘分も本年分だけとらえると二%程度だから、二%程度実施すれば定昇と合わせて四%程度となるだろうと。したがって、その積み残しを今後どう解消するかということを年次計画を立てて公務員にも示して理解と納得を得てもらうと、こういうような御発言であったかのようにとらえている皆さんもみえるわけですけれども、その点、とらえ方については間違いございませんか。
  218. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 私が申し上げておるのは、おおよそ今おっしゃったようなことと趣旨においては変わらぬと思います。  やはり、政府は公務員の生活の安定、そして同時に士気の低下を来さないで公務能率を上げて全体の奉仕者としての職責に専心努力をしてもらうその環境づくり、これが政府の大きな役割であろうということでございます。  そこで問題は、五十七年に完全に凍結をしたと。まさにこの凍結というのはしたがって当たり前の措置であるという認識は間違いでしょうと、あくまでもこれは異例の措置であるという認識で なければならぬと、そうすれば、やはり積み残し分が——これは年々変わりますからね。一応昨年は四・三六の積み残したと思いますけれども、これは官民の給与が変わっていきますから、ことしどの程度になるのかこれはわかりません。わかりませんが、その積み残しをどう解決をすればいいのかと、ここがやはり大きな課題であろうと。私がその七になり八になるおそれがありますよと言うのは、一遍に解消するということは、これは御辛抱願わなければならぬのではありませんかという意味合いを込めて私は申し上げておる。したがって、完全凍結したものを解消しなくてよろしいなんということは、これはちょっと、ここに大蔵大臣いらっしゃいますからおしかり受けるかもしらぬが、同じお考えだと思いますよ、私は。これはそのままいりまでも、目鼻も立たないといったような状況はいかがなものであろうかと。しかし、一遍に解消しろとこれはおっしゃる方もおると思いますけれども、これは実際問題としてはできないのではなかろうかと、その点は御辛抱をしていただかなきゃならぬかもしれませんと、こういう趣旨で発言をしたわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  219. 太田淳夫

    太田淳夫君 確かに人事院勧告は、五十四年、五十五年とこれは二年続けて指定職の俸給表が十月実施になっていますね、五十六年が管理職について一年間凍結と、五十七年が、これがただいまおっしゃった異例の措置で完全凍結と、五十八年が圧縮実施ということで、五年続けてこれは不完全実施になっているんですね。  その間のいろんな調査もございますけれども、じゃ、どのくらいの公務員の皆さんがそれぞれの役職段階別に損失をこうむっているかということの資料があるわけですけれども、例えば局長クラスの方ですと、昭和五十四年は約十八万三千円、五十五年は約二十四万一千円、五十六年は約七十四万円、五十七年では六十一万七千円、昭和五十八年は約五十四万五千円、合計二百三十二万六千円という損失額になっているわけです。課長クラスの方、この方は行いの一−六で妻、子二人という方ですが、標準家庭ですけれども、五十六年で約四十五万三千円、五十七年では三十九万四千円、五十八年でも三十九万円、合計で約百二十二万七千円。課長補佐クラスの方ですと、五十六年で十万九千円、五十七年では二十三万三千円、五十八年では二十三万円、合計で五十七万二千円。係長クラスの方々で、五十六年が八万九千円、五十七年が十九万七千円、五十八年が十九万一千円、合計で約四十七万七千円。係員クラスの方、この方は奥さんお一人ということでございますが、五十六年で六万一千円、五十七年で十二万八千円、五十八年で十一万九千円、合計約三十万八千円となっていますね。係員クラスの方、この方は独身ですね、その損失は、五十六年で約三万五千円、五十七年で約七万四千円、五十八年で約七万二千円、合計十八万一千円。行政職の行(一)、行(二)合わせての平均では、五十六年で七万円、五十七年で十八万一千円、五十八年では十七万六千円、合計四十二万七千円。こういうような一つの試算が出ております。このように、この間の損失額、特にもうこのこともとっくに御承知だと思いますけれども、そういうような損失をほっているということもよくお考えおきいただきたいと思うんです。  そこで、やはり内閣委員会でも総務長官はお出になっていろいろと御答弁されておりますけれども、特に昨年の十一月の二十七日に当時の丹羽総務長官は、「五十九年度の人事院勧告の取り扱いについては、人事院勧告制度尊重の基本方針を堅持しつつ、俸給表等の勧告内容を尊重した完全実施に向けて最大限努める所存であります。」と、こういう決意を述べられているんです。それを受けられて、総務庁長官も同じようにやはりこの決意に立たれているんじゃないかと、こう思うわけですが、その点もう一度お聞かせいただきたいと思います。
  220. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) あのときは私も同席をしておったと思います。したがって、政府の基本的な姿勢としましては、やはり人事院制度を置き、その勧告制度を尊重しなきゃならぬという立場ですから、その基本の考え方はあのとき総務長官がお答えしたのと同じで、できる限り尊重して、完全実施に向けて政府としては最大限努力をすると、これは当たり前のことだろうと思いますね。しかし、先ほど言ったような厳しい状況もありますから、それは国政全般の上で御判断を願わなければならぬ場合もあり得るということでございます。  なお、今太田さんがお示しになりました損失が二百何十万といろいろお話ありましたけれども、私給与の専門家じゃありませんから、その数字についてとやかく申し上げるつもりはありません。ただ、人事院の勧告自体が、従来から下に厚く、上には割合厳しいというのがございました。それらは累積しておるかもしれません。ただ、本来官民較差でございますから、だから、やっぱり、五十七年に凍結をし、五十八年は二・〇三ということになりますと、毎年毎年四月の段階で官民較差でそれは比較しておりますから、それは私は解消を毎年しておるのではないかなと。しかし、当該年度で抑えた分だけは、これはやっぱり御辛抱願っている額ではないのかと、私はさように理解をしております。もし私の考え方が間違っておれば、専門家がおりますから、人事局長からお答えをさせたいと、かように思います。
  221. 藤井良二

    政府委員(藤井良二君) 今大臣から言われたとおりでございまして、特につけ加えることはございません。  今大臣が言われましたように、四月一日現在で官民較差を比較して人事院が勧告するというシステムになっておるわけでございます。したがいまして、前に残された較差がその次の年に出てくるというようなことは十分あり得ることだろうと思います。
  222. 太田淳夫

    太田淳夫君 人勧の問題につきましてはまた内閣委員会等で論議があろうかと思いますけれども、やはり給与問題担当大臣として、公務員の皆さん方の士気とかあるいは生活にいろいろかかわる問題でございますし、報道されたところだけ見ますと、人勧というものは完全実施はされない方向じゃないかというような、そういう受け取り方をされる向きが、非常に誤解されるというか何というか、あなたの腹の中にはそういうことがあったかもしれませんけれども、人事院がいろいろと年次報告を出している中にもありますように、いろいろな面でこれは士気にも影響してくるんじゃないかと思います。  そういった意味で、せんだっての四月四日の政労会談におきましても、今お話があったように、官房長官は誠意を持って取り組むということで、政府全体としてこれは本当に誠心誠意を持って取り組まなきゃならない問題でございますし、今、人事院勧告が出される前にいろいろとそういう発言をされておるということは、私は一つの問題を提起したことになるんじゃないかと、このように思うわけです。  特に人事院は、ここのところずっと不完全実施ということで、人事院自体の内部でも相当な激しい考えを持っている方もおみえになっておりますし、そういった労苦を積み上げられてみえた人事院の存亡にもかかわる問題だとかつて総裁もおっしゃったことがございますが、そういった意味も含めまして、給与担当大臣として、完全実施に向けて誠意を持って取り組むということを再度御答弁をいただきたいと思います。
  223. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 先ほど来お答えをしておりますように、基本の物の考え方は、私はいささかも変わったことを考えているわけではございません。やはり、人事院勧告というものは尊重しなきゃならぬと。しかしながら、それだけではなかなか容易でない事態があるんですよということを私はやはり申し上げざるを得ない。もちろん行政長官として、公務員の給与の問題については今回総務庁が担当いたしますから、ただやはり国務大臣として、これは私はやはり国政全般の配慮もないといけないのではなかろうかなあと、今の 段階考えておりますが、いずれにせよこれは人事院勧告が出た段階で、給与閣僚会議その他の場で慎重に各方面から検討せられて結論が出されるものと、かように考えております。
  224. 太田淳夫

    太田淳夫君 総務庁長官よろしいです。  次の問題ですが、ちょっと時間がなくなりましたので、一点だけお尋ねします。  行政監察局はかねてから特殊法人の統一的会計基準づくりについて調査をしていると聞いておりますが、その状況はどうでしょうか。
  225. 竹村晟

    政府委員(竹村晟君) 特殊法人の会計処理の問題につきましては昨年来調査を続けておりまして、専門の分野にわたりますので、私どもといたしましては学者とか公認会計士といいました専門家に集まっていただきまして研究会を開催いたしまして、我々の監察のよりどころにすると、そういった作業を進めております。監察自身はまだ調査が続行中でございまして、現在その取りまとめをしておる段階でございます。
  226. 太田淳夫

    太田淳夫君 大蔵省にお尋ねしますけれども、これは五十三年の三月の予算委員会ですけれども、同僚の議員から公庫等政府関係金融機関の予算決算書はわかりにくいし、もっとわかりやすい親切なやり方ができないものかと、こう提案をいたしましたけれども、大蔵省は現在研究会を持って研究していると、こういう答弁があったんですが、その研究の結果と、どのようにあらわされているか、御答弁いただきたいと思うんですが。
  227. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 御指摘の研究会でございますが、確かに五十三年三月に大蔵省銀行局長の私的諮問機関として設置されたものでございます。五十五年六月にその報告書がまとめられたわけでございますが、この報告ではいろいろと企業会計原則や政府機関の会計のあり方なども研究したわけでございますが、現行の政府関係金融機関の会計処理に一部特殊なところがあるのは、それぞれの機関の業務内容、目的等の相違を考慮したものであり、現行法体側のもとではやむを得ないものとされておるわけでございます。
  228. 太田淳夫

    太田淳夫君 ということで、検討の結果としてはそのまま進めているということですね。民間の企業でもいろんなそういう一年間の営業実績を表示する手段として損益計算書の作成がありますが、公庫でも損益計算書の作成は定められてますけれども、この公庫の損益計算書を拝見したところでは、一年間の経営実績というものを適正に把握するのは困難じゃないかと、こう思うわけです。例えば五十七年度の決算でも損益計算書の利益金がゼロになっている、いわゆるゼロ決算になっているところが六公庫あります。そして、これは北東公庫を除いて五公庫はかなり前からこれゼロ決算続いているわけですけれども、このゼロ決算とする理由はどうなんでしょう。また、実態はどのようになってますか。
  229. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 一般論として申し上げさせていただきますと、政府関係金融機関の貸し付けにはリスキーなものが多うございます。また、金利変動による一時的な損益の変動に対処する必要もございます、等々でございまして、その損益計算書の中におきます滞貨償却引当金の繰入限度は民間金融機関よりも高い率に設定されているわけでありますけれども、期間損益でそれを超える利益が発生しない場合には、結果的にゼロ決算となるということでございます。ややこしい答え方をしておりますけれども、各公庫は現在貸出残高の千分の六である滞貨償却引当金を積んだ後の利益をすべて国庫納付するということが、それぞれの公庫法で決まっておるわけでございます、そこで、通常は各公庫の滞貨償却引当金控除前の利益は実は千分の六に達しないということでございますので、その範囲でしか滞貨償却引当金の積み立てができないと。その結果としては利益を出すことがなくてゼロ決算となっているのが通常であると、それが実態でございます。
  230. 太田淳夫

    太田淳夫君 ですから、ゼロ決算がずうっと続いているということになりますと、経営成績をどのように把握していいか非常に難しくなってくるわけです。したがいまして、決算書にあらわれましたところの補給金または政府出資金が適正であるかどうか、あるいは決算書に計上された出資金、補給金が妥当かどうかという判定が非常に困難になってくるんじゃないかと思うんです。ですから、そうなりますと、国全体の予算決算審査にも支障をもたらすことになるわけですが、その点大臣はどのようにお考えになりますか。
  231. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 確かに今銀行局長から御説明申し上げておりますように、補給金というものがいわゆる政府関係金融機関の損益計算上の収益と費用との差を補てんすることを目的としておるものでありますので、その目的に従って予算の範囲内で大蔵大臣の定める滞貨償却引当金の繰入限度内の引き当てを含めて補給すると、こういうことにしておりますので、これは特に国民金融公庫、中小公庫、公営企業公庫、医療金融公庫、環衛公庫の五公庫について今おっしゃいましたゼロ決算が続いておるということでございますので、これは詳しく私も説明を聞きますと、それなりに理解ができております。したがいまして、これについては私的懇談会——諮問機関というよりも私的懇談会をつくって一応やってみたと。だが、やっぱりこれは理解をしてもらう努力をこちらがよけいすることが必要ではないかということで、五十六年でございましたか、お答えをいただいて、そのまま継続しておるわけでございますが、これは絶えずその理解をしてもらうための我々の努力も重ねなきゃなりませんし、また国会等関係方面の意見も聞きながら、国民にわかりやすくするということは、これは何よりも大事なことでございますので、その不断の努力は続けていかなきゃならぬ。今の時点でおまえの決め手は何かとおっしゃれば、わかりやすいような説明をしてより多くの方にわかってもらう努力をすることが我々の責任ではないかなあと、こう考えております。
  232. 太田淳夫

    太田淳夫君 時間もございませんのであれですが、やはり貸倒引当金ですか、滞貨償却引当金の繰り入れの問題につきましては、これは五十年から五十三年にかけましても参議院予算委員会で論議がありましたし、この繰り入れの額は年々減額されて今まで来ているわけでございますけれども、やはりこれがかつては滞貨償却引当金の木明確なあり方が利益隠しや余裕金づくりのためと、こういうことも追及されたのも、これはある時期としてあったわけですけれども、全体として改善の方向は見られますけれども、まだ各公庫間にばらつきがありますし、これは公庫の経営のよしあしを反映したものであるのかどうか。実態はどのようになってるんでしょうか。  また、我々は、前から申し上げておりますけれども、この引当金の繰入額の適正な額というのは、やはり過去十年間ぐらいの平均的な取り立て不能額を計上するのが適切じゃないか、このようにも思っておりますが、その点の御答弁をいただいて質問を終わりたいと思います。
  233. 吉田正輝

    政府委員(吉田正輝君) 先生が御質問の件でございますけれども、この滞貨償却引当金の繰入額は、各公庫の貸し付け規模それから融資対象者並びに財政事情等を考慮して、総合勘案してその公庫の実態に合わせてやっておるということでございますので、その態様等によりまして繰入額に差異が生じていると。ばらつきとおっしゃいましたけれども、そういうことであることは確かでございます。ただ、そういうことで総合勘案してやっているわけでございますが、先生が御指摘のように、引当金の繰り入れ方式が洗いかえ方式がとられておりますので、引当金の多寡が経営のよしあしを反映しているものかということについては、前年度の損益状況が各公庫の引当金の繰入額に反映する一面も否定できないと思います。  それから、先生がおっしゃいましたように、過去の平均取り立て額を、例えば滞貨償却引当金額の額として計上するのが適正ではないかという御見解については、一つの御見識、お考えであると思いますけれども、先ほど申しましたように、いろいろとその限度につきましてはケースごとに変わっているわけでございまして、私どもとしまし ては、今の法体制のもとで各公庫の実態に適した額を計上するのがよろしいというふうに考えておるわけでございます。
  234. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ことしも一昨日の七日、日中戦争勃発四十七周年を迎えて、日本国民だけで三百十万の生命を奪い、中国初めアジア諸国民二千万人に犠牲を与えた侵略戦争への深い反省がひとしお求められているわけであります。この中で、近年、いわゆる七三一部隊による細菌戦、生体実験が大きな批判の焦点となってきました。五十七年四月九日、衆議院の大蔵委員会で我が党の箕輪議員が七三一関係資料の収集と公表を求める質問に対して当時の鈴木首相は、政府としてこういう問題を隠蔽しようという考えは毛頭ない、何分古いことだから、どの程度の資料が集められるか、とにかくやらしてみたいと、こう答弁をしているわけであります。  そこで官房長官、この答弁、約束に基づいて資料の収集、整理の作業をどう計画し、以来今日までどのように進行しているか、まず御報告を願いたい。
  235. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) お話しのように、七三一部隊の資料に関しましては、国会で当時の鈴木内閣総理大臣から、できる限りこれを収集するように努力をしたい、という答弁をされまして、その後政府といたしまして、国会の御議論を踏まえまして、厚生省を中心にいたしましてその努力をしてきておるところでございます。しかし、ああいう混乱の中でのことでございますので、資料を収集すると申しましてもなかなか簡単にはいかない。時間をかけてその努力をして今日に至っていると、こういう状況になっておるところでございます。  なお、厚生省が現在保管をいたしておりますものは、昭和二十年の一月一日に作成をいたしました留守名簿と、それから終戦後に作成をいたしました部隊略歴がございます。この留守名簿の方は全く各個人の身上記録を書いてあるものでございますので、これは一般には公開をしないということになっておることはぜひ御理解をいただきたいと思いますが、一方、部隊略歴につきましては、申し出のあった場合には閲覧に供するというような態度をとって今日に至っておるところでございます。  なお、さらにいろんな資料を収集をしてまいりますように努力をいたしたいと、このように考えておる次第でございます。
  236. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ただいまもありましたこの関東軍防疫給水部略歴と、三ページにわたる資料を厚生省からいただいているわけでありますが、これはいわゆる七三一部隊の略歴を概略示したものと、こういう性格ですね。念のため確認をします。
  237. 入江慧

    政府委員(入江慧君) そのとおりでございます。
  238. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 この資料は、既にさっき引用いたしました昭和五十七年四月の衆議院大蔵委員会で厚生省政府委員が、こういうものがございますと、これは公表して差し支えありませんというふうに既に五十七年段階であったものであって、その後の調査で詳細補充をされているという内容ではありませんね。
  239. 入江慧

    政府委員(入江慧君) その部隊略歴は、先ほど官房長官から申し上げましたように、要するに七三一部隊が戦後引き揚げてまいりましたときに、その部隊についての何といいますか、行動をまとめたものでございまして、その後、五十七年に御質問がありましてから私ども手元資料を精査いたしまして、特に昨年十一月に庁舎の移転というのがございましたものですから、私どもも手持ちの資料をこういうことを頭に置きながら精査いたしましたが、新しい資料は見つけることはできませんでした。
  240. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 といたしますと、この資料では肝心の生体実験の内容、その人数、国別、男女、子供別など、そういう内容が全く明らかになっておりません。こうした点から見ますと、四十七年の総理答弁以降もう二年有余経過をしているわけですけれども、この間、とにかく可能な限りの調査をやりますと言いながら、全くそれが厚生省の関係についても進行していない、こういうふうに言わざるを得ないわけでありますけれども、今もお認めになったところであります。  ところで外務省、お尋ねをしますが、昭和五十七年四月、その大蔵委員会のすぐ直後、十四日、衆議院外務委員会での我が党の野間議員の質問に対して、当時の櫻内外務大臣、まず、国内資料を探すため努力する、それは可能なことだと、こういう答弁があるわけですけれども、しからばこの二年間、外務省がどういう調査をして、どういうまとまりができてきておるんですか。
  241. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私どもの方は、委員指摘の当時の外務大臣の御答弁を踏まえまして、厚生省の方に資料の照会をいたしましたけれども、その内容につきましては先ほど厚生省の方から御答弁がありましたとおりでございまして、私どもの方としましてはそれ以上の資料については確認するに至っておりません。
  242. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 官房長官、ただいまお聞きのとおり、いやしくも総理大臣国会委員会の席上でできる限りの調査をしてみますということでこの答弁、約束をされた、この事柄が二年間ほとんどと言っていい、進行をしていないという、こういう姿というのは、これはもう私はまことにけしからぬ限りというふうに言わざるを得ません。この点で政府の強い反省を求めますと同時に、この鈴木首相答弁なるものの精神は生きているはずでありますから、引き続き七三一関係資料の収集と公表のために、ぜひ一定の担当などを設けて一段の努力をしていただきたいというふうに思いますがどうですか。
  243. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) 厚生省としても、外務省としても、鈴木総理が御答弁になった後全然何もしなかったということではなくて、やはり努力をしてきたと、私はそのように信じておるのでございます。ただ、今申し上げましたように、非常に混乱をした時期の記録のことでございますし、なかなか資料収集といいましても簡単にうまくまとまるものではないということもまた御理解をいただきたいと思うのでございまして、しかし今先生からお話がございましたように、鈴木答弁を踏まえて努力をしてきた、さらにその上に立ちまして一層資料の収集につきまして今後努力をしてまいりたい。ただ、係を決めてという御指摘でございますが、係を決めてして果たしてこれまとまるかどうかということもございます。厚生省、外務省としてきょうのこの先生の御質疑に対して、これを踏まえて努力をするということで、私からそのようにお答えを申し上げておきたいと思う次第でございます。
  244. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 何しろ古いことでなかなか難しいんだというふうにおっしゃいますけれども、後からも触れますが、かなり今日この七三一部隊に関する単行本あるいは雑誌における論文も出ているわけですね。ですから、相当足がかりになる資料はある。だからそれをもとにしていろいろの調査をやれば、私は二年間何もできなかったという、こういうことはちょっと解せないわけです。こうした点ひとつ反省をしてもらって、今の答弁に基づいて一段の努力をお願いをしておきたいというふうに思います。  もう一つ、この七三一部隊の存在について、最近六月二十八日の朝日新聞に報道されましたように、アメリカの公文書でも明々白々たる事実となってきたわけであります。  そこで、国会図書館にお尋ねをいたしますけれども、ひとつできるだけ早くこれら資料の入手方について検討に上せてもらうというふうにお願いをしたいと思いますけれども、まずどうですか。
  245. 三塚俊武

    ○国立国会図書館参事(三塚俊武君) 先生御指摘の新聞記事では、この資料の所在その他必要な情報が十分ではございません。この資料が当館で現在収集を進めております日本占領関係資料の収集計画の中に含まれておる場合は当然収集されることになりますが、収集計画の対象外の資料に含まれている場合には、別途その収集方について検討いたしたいと存じております。
  246. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 次に、この七三一部隊問題にもかかわりつつ、教科書検定の問題で主として文部省関係にお尋ねをいたします。官房長官以下、もうあと大体文部省中心でありますからどうぞお引き取りください。  文部省は六十年度使用の高校社会科教科書検定に当たって、家永三郎教授執筆の「日本史」を初めとして、いわゆるこの七三一部隊に関する記述に対して全面削除の修正意見をつけたわけでありますけれども、この理由は何ですか。
  247. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) お尋ねのいわゆる七三一部隊につきましては、学会の現状では資料収集の段階でございまして、専門的な学術研究が発表されるまでには至っておりません。したがいまして、これを教科書に取り上げることは時期尚早であるという趣旨の意見を付したわけでございます。この意見を受けまして七三一部隊に関する記述は見本本では削除されたところでございます。
  248. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 念のため聞きますけれども、文部省はそういう検定の結論を出すに至る間、七三一部隊に関する著書、論文、今日幾つぐらいあるというふうに把握したのですか。
  249. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) 文部省は、書かれた具体的な記述の内容が、特に歴史教科書の場合には、学会の通説になっているかどうか、そしてまたその事実が客観的に確定されているかどうかということを調べてやるわけでございまして、書かれた内容がどういう実態でどういう背景でということの具体的内容まで一々文部省が立ち入って調査をすることはないのでございます。
  250. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 現在国会図書館に所有をしておる資料でも、単行本十一、雑誌の論文、この関係論文が掲載をされておる雑誌が十あるわけです。果たしてこういうものも見ながら本当に十分慎重に検討したのか私は極めて疑わしいと思うわけでありますが、この先ほどの厚生省の資料、部隊の略歴なる資料、これでも七三一部隊というものが存在をしたということは、これはもう明白になっているわけであります。にもかかわらず、なぜ全面削除をしたのか。すなわち、記述のある部分についてはもう少し正した方がいい、改善をした方がいいというそういう指導じゃなくて、全面削除、こういう決定をしたというのは、これは私はもう極めて不当ではないかというふうに思いますが、文部大臣どうでしょう。
  251. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 先ほども申し上げましたように、七三一部隊につきましてはいわゆる専門的学術研究が発表されるまでに至ってないということを申し上げたわけでございます。  歴史教育は児童生徒に歴史について国民としての基礎的な教養を与えることを目的といたしております。教科書は教科、科目の主たる教材として使用されるものでございまして、したがって教科書は生徒のそれぞれ発達の段階に応じた基本的、基礎的事項に精選される必要がございます。したがって、まだ批判能力が十分でない生徒を対象にしていることもあるわけでございますので、いわゆる著者の学問、研究の発表の場というふうになるものではないわけでございますので、歴史教科書においては通説によって記述するとか特定の事実を必要以上に拡大して記述するということは行わないということが、教育的配慮がなされていかなければならぬ、こういうふうになっているわけでございまして、先ほども申し上げましたように、この七三一部隊につきましては学説としてまだ明確になっていない、こういう判断からいわゆる歴史的教科書としてはこれは適当ではないという判断をいたしたわけでございます。
  252. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 全く言い逃れとしか聞き取れませんね。先ほど来引用しております厚生省の資料、これも公的な文書でしょう。加えて今アメリカで公文書が相当数発見をされたというこういう現時点になっている。こういう状況で七三一部隊に関してどれだけ公文書で明らかになっても、公文書ではっきりしても、何かの一冊の著書で、学術著者でそれが出てこない限り教科書には一切載せない、こういう態度を執拗に続けるというのですか。これは七三一部隊の問題だけに限らない。ほかの問題が、テーマが今後問題になるかもわからぬけれども、公文書でどんなにはっきりしてもそれは教科書に採用するに足らない、こういう態度ですか、文部省は。文部大臣
  253. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) これも先ほど申し上げましたように、歴史教育は児童生徒に歴史について国民としての基礎的な教養を与えるということが目的でございます。したがいまして、生徒の発達段階に応じましてやはり基本的基礎的事項に精選される必要がある。今先生がおっしゃるように、一つの本にはそういうふうにあるかもしれません。しかし、それは学術的にも歴史的に明確にその資料というものは出てないわけでありますから、一つの資料だけでもって、発達段階に応じてそれぞれ子供たちの判断というのは非常に乏しいわけでございますから、これを教科書としてこれに採用するということは、これは子供たちの判断能力のことも考え、いわゆるこれは教育的配慮をしなければならぬと、こういうふうに考えるわけでございます。
  254. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 そのように文部大臣、文部省が言い募れば募るほど、この検定方針なるものがもういかに道理に合わない不当なものかと。公文書もこれは事実と認めない、こういう態度というのはそんなもの通る話じゃないと思いますよ。  もう一つ、念のために聞いておきましょう。この南京大虐殺に関して、日本軍将兵の中には中国婦人を辱めたりする者が少なくなかったと、こういう記述を検定では軍隊では婦女暴行は世界共通の現象だ、日本軍のみをあげつらうというのはこれは不適切だと、こういう理由でこれまた削除の修正意見としたわけでありますが、文部大臣も同じ意見ですか。
  255. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) ちょっと事実関係でございますから……
  256. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いや大臣、同じ意見がどうか、イエスかノーかを聞いているんです。
  257. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 事実関係でありますから、局長からお答えさせます。
  258. 高石邦男

    政府委員(高石邦男君) この事実、記述を書かれた著者自身がその著書の中で、古代以来の世界的共通な慣行例として、そういう戦争が起きた場合に婦女子を辱めるというのが一般的に行われるということを認識しているわけでございます。したがいまして、これは特に日本の軍隊だけがそうであったというのではなくして、古今東西を通じてそういう一般的な状況を戦争というのはもたらしているということでございます。したがいまして、日本軍の行動について特にそれをあげつらってとやかく言うということはいかがかと。一般的な戦争を記述にして書かれることは特段問題ありませんけれども、特定事件を取り上げて日本軍の行動だけを強調して書くということは適当でないという判断でございます。
  259. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 その限られた時間で質問をしているんですから、不必要なことで時間を使ってもらいたくないんですけれどね、日本軍だけがそういうことをやったということは私はつゆほども言ってないわけですよ。この世界共通の現象だから日本の教科書に日本軍をあげつらうようなそういうような記述はふさわしくないという検定の結果を出したわけでしょう。そのことについては文部大臣もふさわしくないという同じ意見ですか。
  260. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) 公正なバランスということも考えますと、これは適当ではない、ふさわしくないという判断をいたしております。
  261. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 クラスの全員が非行をすれば、そうしたらもう全員がみんなその中の一人も非行をしないと同じことになる、みんなが罪を犯せばみんなが罪は免罪されると、こういうような論理をもし言い出したらどうなるんですか。私は、文部大臣がそんな態度で一体何が臨教審かと、そんな文部大臣に生徒の非行防止とか教育改革とかそんなようなものを論ずる資格はあなたにはないというふうに私は強く言わざるを得ないわけですけれども、きょうはこの程度にしておきましょう。  最後に、後藤田さんにお願いをしましたので一言お聞きをいたします。  さっきもありましたが、政府はたびたび国会でも人勧を尊重すると言ってきたわけでありますが、七日の政治座談会で、給与担当大臣であるあなたが、人勧の完全実施をするためにひとつ徹頭徹尾努力をしようというこういうことが非常に希薄で、むしろ人勧がまだ出てもいないこの段階で、抑制しなくちゃならぬという理由をあれこれ挙げると、こういう態度というのは私は全く不見識だというふうに思うんですね。  そこで聞きますが、人勧は完全実施にすべきものだと、完全実施すべきものだというこの考え方は変わりありませんね。
  262. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) 先ほど太田さんの御質疑の際にお答えしたとおりですね、やはり人事院勧告制度というものは基本的にこれは尊重しなければなりません。それだけに、人事院から給与勧告が出れば完全実施に向けて政府としては努力をするということは当然であると。しかしながら、やはり今日の厳しい財政状況、あるいは公務員の給与に対する一般国民のやはり批判というものも頭の中に置かなければなるまいと。私は総務庁の長官でございますから、行政庁の長としては当然完全実施に向けて努力をしなければなりませんけれども、国務大臣でもございまするので、国政全般の観点において適切にこれは処理をすべきものと、私はさように考えているわけでございます。したがって、抑制する方がいいとか、抑制しないで完全実施がいいとかと、そういうことを申し上げておるんじゃなくて、厳しい状況があるんですよと。したがって、五十九年度で一遍に格差是正ということはよく気持ちはわかるけれども、やはり国政全般の上で妥当な適切な解決を政府全体としては人事院勧告が出た際にやらざるを得ませんと、こういうことを申し上げているわけでございます。
  263. 柄谷道一

    柄谷道一君 まず、冒頭、初代総務庁長官にお伺いいたします。  私は、午前中の質問の中で総理に対しまして、公務員の倫理について基本的な認識をお伺いいたしました。    〔委員長退席、理事目黒朝次郎君着席〕 きょうのことでございますから速記録を持っているわけではございませんが、総理の御答弁の要旨は、公務員は他の一般企業に働いている者以上にその職務の公共性にかんがみて、さらに厳しい規範が課せられているという認識をお述べになりました。そこで私は、しかし現実はということで昭和五十六年度、本決算委員会審査の対象年度でございますが、新聞紙上をにぎわしました多くの公務員の不祥事件を例に挙げながら、しかも人事院が発表いたしました国家公務員の懲戒処分の実態、これは年次報告書の中に書かれている数字を挙げながら、懲戒の対象になった人々が二千五百五十三人に及びますよ、前年度に比べて四百二名もふえているではありませんか、新しい総務長官に何を期待されているのかと、こうお伺いしたわけでございますが、後藤田長官及び事務次官に綱紀の確立について努力するようにあいさつに見えたときに篤と申しておいたと、こういう御答弁でございました。  そこで、私は、このかけ声だけで公務員倫理が確立されるわけでもない、現在の状態が改善改革されるわけでもないと思うわけでございます。公務員倫理の確立、厳正な人事管理の実施、さらには信賞必罰、成績本位の人事運用、これはまさに政治への信頼性を高める大原則であろうと思いますが、新長官として具体的に今後この問題についてどう対処されようとしておるのか、国民の信頼にこたえる御答弁を賜りたいと思います。
  264. 後藤田正晴

    国務大臣後藤田正晴君) ただいまの御質疑の中にきょうの総理の御答弁を引用なさいましたが、そのとおりでございます。総理からも官庁綱紀の問題については行政管理庁と総理府が一緒になったことによって人事管理の面、それと同時に一方監察行政がございますから、それらを踏まえてしっかりひとつやってもらいたい、こういう御要望がございました。私は、これはもう当然のことでございますから、やはり何といっても、平たく言いますと、公務員も市民生活をしておりますから、それとの、社会一般の風潮というものも一方にあるということは、これは私は頭の片側に持っております。しかしながら、同時にやはり全体の奉仕者という立場、そして公務員に対する国民の信頼性というものは、これは何としたって確保しなきゃどうにもならぬわけでございますから、やはり公務員の綱紀の粛正ということについては、これは絶えざる国民に対する大きな責任でございますから、政府としては努力をしなければならぬと、こう考えております。したがって、人事管理の面、それから同時に行政監察の面がこれは一つになりましたから、それだけにそういった点にも十分配慮して今後一層努力はしてまいらなきゃならぬと、かように考えているようなわけでございます。
  265. 柄谷道一

    柄谷道一君 後藤田長官にお願いいたしておきたいんでございますが、最近、警察官の不祥事件、ある者は麻薬事件に絡み、ある者は強盗傷害罪に絡み、またある者はサラ金事件に巻き込まれ、国家の治安のかなめとも言うべき警察官の不祥事件が数多く発生いたしております。このことに対しましては、もちろん公務員全般を統括されるのは後藤田長官でございますが、国家公安委員長の方にも篤とその綱紀の粛正方について注意を喚起していただきたいと思います。    〔理事目黒朝次郎君退席、委員長着席〕  次に大蔵大臣にお伺いいたします。  総理にも午前中お伺いいたしたところでございますが、私は最近与党の一部で唱えられております積極財政論、この主張の中には、私はあるいは勘ぐりかもしれませんが、行革つぶしの色合いをはらんでいるようにも受けとめられるわけでございます。行政改革がようやく緒につこうとしておるやさき、そのような思惑をもし秘めた言動であるとすれば、これは到底容認できるものではございません。私は現在の財政赤字の一つの要因は、景気の好不況にかかわらず膨張し続けた行政機構及び経常支出の増大によって生じた構造的赤字ではないかと思います。したがって、行財政のむだを排除し、効率化、簡素化を図ることによって活力ある福祉社会を建設することを主たる目的とします行財政改革は、当面の最も重要な政治課題でございます。そのために補助金や許認可事項の抜本的見直し、国の必置規制の改革、官業や公社の改革、公務員定数の純減による総人件費の抑制、行政経費の節減等の行政改革は今後も精力的にこれに取り組み、構造的赤字の解消に全力を挙げねばならぬことは当然のことであると受けとめております。  しかし、ここで冷静かつ正確に認識しなければならないことは、財政破綻にはもう一つの要因がある。それはこれまでの景気低迷に伴う税収の落ち込みによって生じた循環的赤字という要因がこれに絡んでいるのではないかと私は思うものでございます。  したがって、そうした認識にもし立つとすれば、行革により構造的赤字要因を排除することと並行して、循環的赤字要因の排除のために、公共投資についてはもちろん資金配分そのものを見直さなければなりませんが、ある程度の増額が必要であり、そのことにより社会資本の充実を図っていくということは、私は財政赤字を克服する一手法であり、かつ臨調路線と矛盾するものではないと信ずるものでございます。  私の考えに対する大蔵大臣の率直な御所見をお伺いいたしたい。
  266. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 行財政のむだを排除して、まさにこの財政そのものは対応力を取り戻していくということに努めなければならないのは当然のことであるという前段の意見につきましては、私は全く同感でございます。  そこで、いわゆる構造的と循環的というこの二つの分け方というものが存在しておることは私も承知しておりますが、それを十分に、いわば政府がもろもろの政策を立案する基礎としてとるには、まだ議論の過程でそこまで至っておりません。それはいろいろな、それをとるための基礎的 な数値等についての疑問なりが学者間においてもあるということでありましょう。しかし、それはそれとして、そういう意見があるということは少なくとも承知しておるわけでございますから、前段については私も同感でございます。  そこで後段の問題でございますが、私も先般のサミットに参画したときに、私どもとして全く出なかった議論というのが、いわゆる日本とか西ドイツとか、そういう比較的経済のパフォーマンスのいい国に対する機関車論的な要請というものが全く出ませんでした。そのことは、どこからもそういう声が出なくて、むしろおのがじしそのところに従い、公共支出を削減し、財政赤字を減していこうということにそれぞれの国が努力していかなきゃいかぬということが、そのための公共支出の削減も場合によっては一層強化しなければならぬという結論に到達いたしましたのは、なかんずく先進七カ国でございますから人口にして六億、世界全体の人口から言えば十三%でございますが、五十数%のGNPを上げておるような国が財政赤字に困った場合には、それがいわば中進国はもとより、開発途上国に至るまでの他の四十億に対して高金利によっていわば資本移転というものが全く不可能になったと。だから、むしろ資本提供国としての立場において、おのおのは財政赤字の縮減に努力することが最も世界全体の中において先進国のやらなければならない役割であると、そういう共通認識というのがより確認されたではないかと、こういう印象を非常に強くいたしたわけてあります。  したがって、確かに公共支出が一時的に乗数効果というものがかつてほどはないにしても、それはございましょう。しかし、それはまた仮に公債政策でもってそれを行うとすれば、数年後、また利払いによって財政負担をふやしていくという結果を招来することは、これは理の当然でありますし、したがってこのように若干景気が上向きかげんになった今日こそ、むしろ財政面においては本来の財政改革の姿をこの際こそ強調すべきものではないか、こういう考え方に立っておりますので、この後段の循環的部分についての考え方はいささか意見を異にするではなかろうかという感じを持ちましたので、素直に申し述べた次第であります。
  267. 柄谷道一

    柄谷道一君 この問題は、昭和六十年度の予算編成とその執行について極めて根幹となるべき問題でございます。与えられました短時間にこの問題の議論を尽くすことは難しいと思います。いずれ政調会長会談ないしは与野党間の協議が持たれる運びになると思いますので、また改めてその席上を通じ我々の意見を反映してまいりたいと思います。  次に、防衛庁長官にお伺いいたします。  私は、午前中、総理に、対しまして、イギリスのジェーン海軍年鑑五十八年版それから新防衛論集に掲載されましたリットン米海軍中佐の論文、クラウ米太平洋軍司令官のワシントンにおける講演、三月末のウィッカム米陸軍参謀総長の北海道視察及びことし北海道で予定されております陸上自衛隊と沖縄の米海兵隊との共同実動訓練の計画等々を列挙いたしまして、いかなる地域に直接侵略の可能性が高いと想定をして防衛力の整備や自衛隊の配備を行っているのかと質問をいたしました。総理は、ソ連を仮想敵国とは考えていないが、北海道は防衛上重要地点の一つである、こうお答えになったわけでございます。一つということは複数を意味します。北海道以外にいかなる地域が重点地域でございますか。
  268. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 総理がどういう意図でおっしゃったか私は承知しておりませんが、御案内のとおり、我が国に対する侵略がどういう規模でどのような格好で行われるかということは、侵略の原因あるいは国際情勢等によっていろいろ変わるわけでございます。したがいまして、防衛計画の大綱に基づいて私どもはいろいろと対応しておるわけでございますが、この防衛計画の大綱によりますと、どのような対処をするかは組織とか配備、そういうものを総合的にバランスのとれた格好でやっていくというのが私どもの基本的な考え方でございます。ただ、総理もおっしゃったとおり、北海道はその地理的条件等からいたしまして重大な関心を持っておるということだけは事実でございます。
  269. 柄谷道一

    柄谷道一君 総理は明らかに重点地域の一つと言われたんですが、私は、西部方面隊の第四師団を福岡、第八師団を北熊本に配置しておる、その充足率、さらには海空の自衛隊配備等から見まして、北海道に次ぐ重点地域というシナリオを持っておられるのは、対馬海峡に面し、かつ大陸に最も近い北九州を地政学的に見てもその重点と考えておられるのではないか、こう思うんですが、間違いですか。
  270. 栗原祐幸

    国務大臣(栗原祐幸君) 今いろいろとお話のあったようなことは、それぞれの方のお考えになることだろうと思います。そのことに対しまして私はどうこう申し上げるというよりも、私どもの防衛の観点からいたしますと、侵略の態様というものはそれぞれ原因あるいは国際情勢によって変わってくる、それに対応して限定小規模のものにいかなる場合でも対応ができる、そういう態勢をやっていくというのが我々の基本的なものでございまするから、どこがその次に重点で、どこがどうだというようなことにつきましてはお答えを差し控えさせていただきたい、こう思います。
  271. 柄谷道一

    柄谷道一君 消防庁は例えばホテル、旅館、雑居ビル、地下街、高度街など、火災の危険度が極めて高いというところに重点を置いた消防政策を進められているわけでございます。防衛費は有限なんですね。鈴木元総理が言ったように、この全日本にハリネズミのごとく整備した防衛力を配置することはこれは許されるわけではない。しかも、例えばシーレーンの問題については、南東シーレーン、これは弾薬、武器、兵員等の継戦能力を維持する重要なルートである、南西シーレーン、これは石油等我が国の必要物資を確保する重要な航路である、という一つのシナリオのもとにシーレーンの整備を言っておられると思うんですよ。海に想定があって、どうして陸に想定がないんですか。それでは重点地域というのは何を基準に重点地域と言われるんですか。これは一つのシナリオがあって初めて重点と言うんではないでしょうか。
  272. 矢崎新二

    政府委員(矢崎新二君) ただいま先生のお話の中に、陸上自衛隊の関係については着上陸侵攻の対処についていわゆる想定が全くないのではないかというふうな御疑問の御提示がございましたけれども、それは決してそういうわけではございませんで、私どもは、防衛力整備を進めていくに当たりましては、我が国に対します各種の侵略態様というものをいろいろと想定をして検討をしておるわけでございまして、その点は、シーレーン防衛に限ることなく、着上陸侵攻の対処あるいはその他の態様の侵略対処、そういうものにつきまして十分検討をしておるつもりでございます。  ただ、先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、我が防衛力の整備の基本的な考え方は防衛計画の大綱に示してあるとおりでございまして、いかなる侵略がいかなる地域で生起しても対応できるように、組織配備において均衡のとれた防衛体制の整備に努めるというのが基本でございまして、そういった考え方に立って陸上防衛力、海上防衛力、航空防衛力の整備を進めておるというふうに御理解を賜りたいと思います。
  273. 柄谷道一

    柄谷道一君 時間が参りましたので、もう一問だけ御質問しておきます。  去る六月二十五日からホノルルで開かれました第十五回日米安保事務レベル協議で、新聞の報ずるところによれば、アメリカは相互運用性、インターオペラビリティーの強化を強く求めてきた、こう書かれております。私は、この相互運用性ということは、有事の際共同作戦を有効に遂行していくために、戦術、訓練、装備等あらゆる面での即応性、実戦能力の強化を求めたアメリカの意図と思うわけでございます。となりますと、例えば装備の面で相互運用性というものを考えますと、これまでの国産化、国内開発を重視するよりもむ しろアメリカからの輸入やライセンス生産を重視するということの方が、相互運用性という一点だけをとらえればこれは効果があるわけですね。ところが、これは我が国の従来の防衛産業に対する産業対策との間に大きな問題点を生じてこようと思うわけでございます。  そこで、端的に、アメリカが要請しておる相互運用性と我が国の防衛産業育成という関連についてどう対応されていくのか、これをお伺いしまして私の質問を終わります。
  274. 山田勝久

    政府委員(山田勝久君) 我が国と共同対処する米国が、有事の際に日米のインターオペラビリティーに関心を寄せるということは自然なことでございます。それからまた、インターオペラビリティーの考え方というのは、既に、ハワイ会談に初めて出てきたというよりは、「日米防衛協力のための指針」の中にも記述されているものでございます。  さて、この装備ということになりますと、私ども安定した装備品を供給する、あるいは維持する、こういう生産基盤が必要でございますし、また技術、研究開発という面でも我が国の産業のすぐれた面を活用するという視点がございます。他方、アメリカを初めとする西側諸国の進んだ技術、これを導入する、そういう視点もございまして、バランスをとった国産化というものを努めている次第でございます。輸入あるいはライセンス生産あるいは国内開発と、いろいろ調達の源泉ございますけれども、今先生おっしゃいましたような国内開発あるいは生産という場面におきましても十分インターオペラビリティーという点を考慮しながら開発を進めているわけでございます。先生おっしゃいました国内の基盤というものも、十分それとのバランスにおきまして行っているところでございます。
  275. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は簡易保険についてお聞きしたいんですけれども、その前に、きょうは五十六年度決算締めくくりで、しかも一番最後でございますので、決算の立場から一つお聞きしたいんですけれども、ついこの間も内閣委員会で地方郵政局の改組の問題のときにお聞きしましたように、私、いろいろ調べているんですけれども、どうも郵政三事業というのは一応官業の役目をもう十分に果たしてしまったんじゃないかという感じがするわけです。特に、簡易保険あるいは郵貯、それから郵便年金、こういった事業はもはや官業で続けていく意味がないんじゃないかという感じがするわけですけれども、まずその辺、どういう御意見をお持ちかお聞きしたいんですが。
  276. 大友昭雄

    政府委員(大友昭雄君) 先生のお尋ね、省全体の仕組みの、仕事の中で、三事業——郵便、為替貯金、保険年金、三事業の経営のあり方ということのお尋ねでございます。私、ただいま保険事業の責任を持っておりますので、保険の立場から先生の御質問にお答えさしていただきたいというふうに考えます。  先生御案内のとおり、郵政事業は全国に約二万三千の窓口機関を持っておりまして、津々浦々までネットを張って、郵便、貯金、保険の三事業を運営しておるわけでございますが、保険に関して申し上げますと、この運営の実態をどういう点から判断するか、評価するかということでございますが、一つの方法として、効率的経営というものがどのようになされているか。例えば、保険事業を運営するに当たっての経費率というふうなものはどのようになっているかというような観点から申し上げますと、民間の生命保険会社の経費率とも比較いたしましても遜色のない、むしろ低い形の経費率という形で運営がなされてきているというふうな点がございます。さらに、保険料がどのような形で、お客さんに商品を提供する場合にお払いいただくような形になっておるかという点でございましても、この九月から保険料の引き下げというようなことを計画いたしておりますし、過去における保険料の引き下げというふうなものにつきましても、いわば民間の生命保険に先駆けて簡易保険が保険料の引き下げをする、さらにそれを見ながら民間の生命保険会社でやってくる、そういうふうなこともございまして、集められました資金につきましても、既に先生十分御承知いただいておりますように、公的資金としての財投協力という形の中での社会基盤整備というふうなことに大きく役立ってきているというふうな形でございまして、私どもとしては、国営としての意義は極めて大きいというふうに思っております。したがいまして、これから先もあえて民営化する理由には乏しいのではないだろうか、むしろ国営という事業の中で新しい工夫もし、あるいは経営的効率についての努力も重ね、民間の生命保険会社との間でお互いに競い合い、補い合うという形の中で国民の福祉の増進ということに役に立っていくのが本来のあるべき姿、進むべき方向であろうというふうに考えている次第でございます。
  277. 木本平八郎

    木本平八郎君 時間がありませんので、その辺をもう前にも内閣委員会で聞きましたんで、よくわかっているわけです。  それで私、結論から先に申し上げますと、要するに官業でやれないものを今やるとおっしゃいましたね。そこで私、結論的に簡易保険でぼけの特約ですね、老人痴呆ですね、これの特約をつけると、あるいは簡易保険で別途それをやっていただくという可能性についてどういうふうにお考えがお聞きしたいんです。
  278. 大友昭雄

    政府委員(大友昭雄君) 先生もう既に十分御案内のとおり、高齢化社会が歩みを強めているということの中で、財政事情も非常に厳しい公的年金、公的保障を補完するものとしての自助努力によるみずからの将来の生活設計というものが非常に関心が持たれてるわけでございます。そういった高齢化社会に向けて簡易保険としてどのように対応していくべきかということにつきまして、現在鋭意研究中でございます。  先生の今お話のございますような、介護を必要とする老人になった場合に何か施設が利用できるような権利のついた保険ということでございますけれども、こういった保険というものにつきましては、一体介護を必要とするような老人になったというような状態をどのように判断したらいいのか、あるいは現在どんなふうな形のものがあるのか、保険を希望する方の数でありますとか、仮に必要とするようになった場合の判断基準、支払いの基準というふうなものも、施設の問題とは別個に、大きな検討を要する問題であろうかというふうにも考えております。さらに、保険でございますから、やはり保険数理というものも無視した形のものは考えることができないというふうな事情もございまして、簡易保険の、いわば一つの生命保険として構成することについては非常に難しい面があるだろうというふうに考えております。  さらに、政策的に見まして、そういった施設に入所することの権利をつけるというようなことが、果たしてこれから先の高齢化社会の進展ということに対する政策の方向としてふさわしいものであるかどうか、同居を進めるような方向に政策を持っていくのか、いや、そうではない方向に政策を持っていくのかという、保険の枠を越えた大きな基本的な部分の問題もあろうかというふうに考えておりまして、私ども、御提案でございますけれども、総合的な観点から勉強はさしていただきたいというふうに思っております。しかし、非常に難しい問題であるということも御理解を賜りたいというふうに思っております。
  279. 木本平八郎

    木本平八郎君 いや、それはもうわかってるんです。それで、前にレクのときにも、もうからないからやらないとおっしゃったわけです。それはわかりますよ。それで、ペイすると。しかし、官業である以上私はもうける必要ないと、もっと、民保がペイできないからやれないんだと、民保のやれないことを簡保が補完するというのが本当の官業のあり方だと思うんですね。私ははっきり申し上げて、役人の皆さん方にそんなもうけてもらおうと思わないですよ。もうけるんならもっともっと今すばしっこいやついっぱいいますからね。あなた方はもっと国の本当の福祉全体を考えておやりになっていただかなきゃ困ると。先ほどのまあ在宅がいいかどうかという問題、これはまあそ こに厚生大臣おられますけれども、厚生省ともいろいろ打ち合わせしていただいて、政府としてお考えいただきたいと思うんですね。  それで、今もう、これは数字皆さんに申し上げるまでもなく、五十万人おって、在宅が今八割ですね。ぼけ老人というのは寝たきりじゃなくて、徘徊するわけですね。中にはマッチ持って歩くという危ないのもあるわけですね。こういうのをどうするかと。それからもう一つ、今郵政省の関係では何かレクリエーションセンターとかなんとか、全国に相当施設をお持ちなんですね。そういう施設の運営もやっておられるから、それとのドッキングでお考えいただけないだろうかというのが私の趣旨なんです。それで、もうこれ余り議論してる暇ありませんでね、ぜひ大臣ね、こういう点から官業を考えていただきたいと。  それで、今郵政省からこれ出されてますね、何か、簡易保険の限度を、一千万円を千三百万円あるいは千八百万円に上げてくれと。この中の説明を見ましても、余り、このぐらいのことなら民保でむしろやれるんじゃないかと思うわけですね、何も簡保でやる必要はないという感じがするわけです。したがって私は、もしもぼけの特約をつけていただく、あるいはぼけの保険をやっていただけるというんなら、これは私個人としてはもう限度を三千万、五千万に引き上げても私はいいんじゃないかと、これは民保でやれないわけですからね。今後老齢化社会で、まあ相当この老人痴呆の問題というのは大きな問題になってくると思うんです。その辺、郵政省として、まあ簡易保険として前向きにお考えいただけるかどうか、その御所見を伺って、私の質問をやめます。
  280. 奥田敬和

    国務大臣(奥田敬和君) 今御指摘のぼけ老人の件については、今も政府委員からお答えいたしましたけども、確かに大変家族の皆さんにとっては御苦労な難事であろうと思います。しかし、このぼけを何をもってどこまでをぼけに定義するか、大変医学的にも、また人権の問題にも絡んでおる問題でもございますし、そういった形の政府の福祉政策とも関連して何か答えが出たときにひとつうんと検討材料としては前向きに勉強さしていただきたいと思っております。  ただ、先ほどからの御議論の中で郵務三事業、これはもう民業でいいんじゃないかという御意見でございます。これに対してはっきり違うことは、簡保にしろ、郵貯にしろ、これが全部政府の公的な財投の基金として運用されておるという観点においては民業と全然これは違う、異なる性格を持っております、運用については。しかもこれが百年以上の創設の歴史の中で郵貯というのが大衆に親しまれてきたという沿革、経緯を含めてこれらを民業と同一の比較の中であしたからすぐ効率と効用だけを考えてされるというような方向の考え方にはくみするわけにはまいりません。  そういったことで、今後ともこの公的な資金運用に関しましてはできるだけ先生が今御指摘なさったように、民業では手がけることができないという分野を担当していくことも当然必要でございます。そういうために老人の健康施設に関しましては今御指摘のとおりな全国に大変な施設も持っておるわけでございますが、これらと関連いたしまして、これは簡保の基金、財団の基金、事業団の基金運用にも絡むことでございますので、関係の向きさえ御承認あれば、私どもとしては積極的に頑張ってまいりたいと思っております。
  281. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 他に御発言もなければ、昭和五十六年度決算外二件に対する質疑は終局したものと認め御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  282. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  283. 安恒良一

    委員長安恒良一君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、倉田寛之君及び杉元恒雄君が委員辞任され、その補欠として岩崎純三君及び内藤健君が選任されました。     —————————————
  284. 安恒良一

    委員長安恒良一君) これより昭和五十六年度決算外二件について討論に入ります。  昭和五十六年度決算の議決案はお手元に配付のとおりでございます。  なお、内閣に対する警告案文につきましては、理事会において協議の結果、意見が一致したものでございます。  案文を朗読いたします。   内閣に対し、次のとおり警告する。  (1) 会計検査院検査機能の充実強化については、本院の要請を受け、政府は当面の実行可能な措置を講じてきたところであるが、同院の検査の重要性にかんがみ、今後とも同院の行う検査の実施にあたっては、その目的が十分達せられるよう所要の措置を講ずべきである。  (2) 毎年度、決算検査報告において、国の財政処理にかかわる多くの不当事項等が指摘され、本院でも、常にその改善を求めてきたところであるが、依然として、多くの事項について指摘を受けていることは遺憾である。  政府は、予算の原資が主として国民の税金であることにかんがみ、その執行を一層厳正、かつ、効率的に行い、いやしくも違法、不当の指摘を受けることのないよう努めるべきである。  (3) 民法に基づき、主務官庁の許可によって設立される公益法人の中には、財産の運用あるいは収益事業の実施に際し、法人設立の趣意に反するとみられる事態が生じていることは遺憾である。  政府は、法人設立の許可に際しては、その適格性等について十分調査し、慎重に対応することはもとより、既設の法人についても、その活動の状況に常に留意し、真に公益の増進に寄与するものとなるよう指導監督に努めるべきである。  (4)来る昭和六十年に「国連婦人の十年」の最終年を迎えるにあたり、婦人差別撤廃条約の批准に向けて、国内法制等諸条件の整備を可及的速やかに実現することが求められている。  政府は、雇用における男女の機会均等及び待遇の平等、男女同一の教育課程の確保等を一層促進し、真の男女平等の早期実現に努めるべきである。  (5)貸金業規制二法が施行されて半年余を経過したが、サラ金苦による自殺、家出、犯罪は後を絶たず、加えて自己破産申立て件数が急増するなど、依然として深刻な事態が続いていることは看過できない。  政府は、この種金融の健全化を図るため、関係法律の厳正な運用を行うほか、金利の引下げ、金融機関等から貸金業者等への融資の抑制について一層指導を強めるとともに、都市銀行等一般金融機関が、消費者金融に積極的に取り組める環境を作るなど、利用者の保護に万全を期すべきである。  (6)東京医科商科大学医学部の教授選考の際に、選考委員である現職教授が、複数の候補者より現金を収受し、また医療機器の購入にあたっても、業者より現金を収受するという不祥事を起こし、これに係わった教官二名が贈収賄容疑で逮捕、起訴され、加えて従来からの教授選等にみられたこの種の学内体質について指摘されたことは、極めて遺憾である。  政府は、今回の事件が国立大学医学部に対する国民の信頼を損ね、社会に衝撃を与えたことを深く反省し、指摘された問題については、大学当局の自主的、かつ、積極的な改善措置を求め、今後再びこの種事態が発生することのないよう努めるべきである。  (7) 国立予防衛生研究所の職員が、抗生物質の検定成績通知書に虚偽の記載を行ったほか、製薬会社から提出された新薬製造承認申請資料の窃取事件にも加担し逮捕され、一方、国立衛生試験所では、中央薬事審議会の委員を兼ねる部長が、企業から提出された審議資料 を他企業に提供し、収賄容疑で逮捕される事件が発生したことは、国民の医薬品行政に対する信頼を裏切ったことであり、極めて遺憾である。  政府は、医薬品行政が国民の健康に重大な影響を及ぼすことにかんがみ、医薬品の安全確保について一層努力するとともに、職員への綱紀粛正の徹底、関係資料等の文書管理についても、一層厳正を期し、このような事件の再発防止に努め、国民の信頼の回復を図るべきである。  (8) 本年一月に発生した三井石炭鉱業三池鉱業所有明鉱の坑内火災事故は、生産第一生強と保安対策の不備によって発生した人災ともいえる重大事故であり、その後においても、なお、同鉱業所において、事故が繰返し発生していることは、労働者の健康、生命尊重という基本的な視点が十分に生かされていない結果であり、極めて遺憾である。  政府は、今回の事故の重大性にかんがみ、事故の原因及び保安対策上の基本的な問題の所在を徹底的に究明し、その結果を国民の前に明らかにするとともに、今後の鉱山保安行政を推進するにあたっては、労働者の安全、衛生、保護の各施策を重点的、かつ、有機的に結合させ、さらに一層充実した対策を講ずべきである。  (9) 本院は、郵政省職員による不正行為に対し、これまでしばしば決議を行い、その未然防止を強く求めてきたところであるが、この種犯罪は依然として後を絶たず、とりわけ、先般赤池郵便局において、当該特定郵便局長が、十二年の長期にわたり、巧妙に関係書類を作為し、三億六千万余円を領得した未曾有の不正行為が発生し、改善の実があがっていないことは、極めて遺憾である。  政府は、郵政省職員の不正行為が続発し、その領得金額も年々多額にのぼっていることを深く反省し、この種犯罪の絶滅を期すだめ、業務考査及び会計監査等の監察を強化するなど、万全の策を講ずべきである。  (10) 近年、いわゆるワンルームマンションの建設が急増し、これに伴い周辺住民との間で、居住環境をめぐり、さまざまな問題が発生している。  政府は、こうしたワンルームマンションの建設に伴う諸問題を解決するため、今後ともその実態把握に努めるとともに、地方自治体や供給業者に対し、適切な指導に努めるべきである。  (11) 特定の地方団体において、長年にわたり国の補助事業及び貸付において、関係書類を作為し、事業費の過大精算、事業の一部不実施、補助あるいは貸付対象外を対象とするなどの不正手段を用い、不当に補助金、貸付金を受け、さらにこれらのうち一部は、請負業者から架空会社を経由して割戻しを受け経理を行うなど、著しく乱脈な町財政が行われていたことは、極めて遺憾である。  政府は、この種事態の再発防止に万全を期するため、地方議会及び監査委員等の自律機能がより一層発揮できるよう、また都道府県による財政運営指導がさらに適切に行われるよう指導に努めるべきである。  以上であります。  それでは、御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  285. 目黒今朝次郎

    目黒朝次郎君 私は、日本社会党を代表して、昭和五十六年度決算に対して是認することができないことを表明するとともに、委員長提案の内閣に対する警告案に。賛成するものであります。  その理由の第一は、五十六年度の財政経済運営についてであります。  当該年度の財政運営の帳じりにつきましては、私は、当委員会の冒頭質問でも指摘しましたが、政府は低成長という経済環境にもかかわらず、この現実を無視して名目九・一%、実質五・三%に及ぶ高い経済成長率を設定した結果、税収の見込みが三兆三千三百十九億円の減収と大きく見誤りました。それに加えて、当該年度の補正予算においても、的確な税収の減額修正を実施しなかったため、二兆四千九百四十八億円にも達する決算上の不足額を発生させ、決算調整資金によってこの不始末を処理しましたことは、我が国の決算史上いまだかつて例を見ないことであります。このことは、一つの私企業の例で言いますと、代表取締役社長以下、経営陣の放漫経営によってもたらしたもので企業倒産にも等しく、総理を初め大蔵大臣財政当局の無責任きわまる財政運営の姿勢は絶対容認することはできません。  第二の理由は、五十六年度予算から財界が大きくかかわり合いを持ってきたことを挙げなければなりません。  政府は、五十六年度予算について財政再建元年であると国民向けのスローガンを出しましたが、その手段として納税者と国民に対し積極的かつ大幅な増税を強行しましたことは、まだ記憶に新しいところであります。  国家予算に対する財界の干渉、介入は、いわゆる臨調行革の名のもとに行われ、国民生活と直接かかわり合いのある社会福祉、医療、年金、教育といった分野の予算削減に加えて、受益者負担の名目で大衆課税にも等しい公共料金の値上げを毎年実施し、その反対に、ゼロないしマイナスシーリング枠から聖域扱いにする防衛予算の大幅な突出した増額あるいは米国の世界戦略にくみした特定国に対する経済協力予算の大幅増額などに見られるように、臨調行革なるものはおよそ国民不在のものであって、認めることはできません。  第三の理由は、五十六年度の決算検査報告を見ても、相変わらずずさんな経理と税のむだ遣いが是正されていないことであります。  会計検査院が当該年度の決算において、予算むだ遣いや徴収の過不足を指摘したのは、二百九件、二百七十五億六千三百万円となっており、いかに国民の血税が国民のために使われず浪費されているかがわかります。しかも国民の前に明らかにされたこれらの指摘は、会計検査院が対象機関四万千七百余カ所のうちわずか八%弱に当たる三千三百余カ所について実地検査をしただけのものでありまして、こうしたことから、今回明らかになった不適正経理はまさに氷山の一角と言ってもよく、実際にはその数倍にも達することが考えられます。このことは、政府が常日ごろ国費の厳正、効率的な執行をすると言っていることと大きく矛盾するものであり、どうしても是認することはできません。  以上の理由をもって、本件決算には反対、委員長提案の警告案に賛成いたします。
  286. 平井卓志

    ○平井卓志君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表して、昭和五十六年度決算に対してこれを是認するとともに、委員長提案の警告に賛成の意思を表明するものであります。  昭和五十六年度の財政経済運営の最優先課題は、厳しい財政事情と米国の高金利という制約下において、景気を内需の拡大を中心に早急に回復軌道に乗せることでありました。そのため政府は、五十六年度予算成立前の五十六年三月に決定した総合経済対策に基づき、金融政策の機動的運用、公共事業の大幅前倒し、中小企業対策、住宅建設の促進等、財政、金融両面から各般にわたって適切な対策を講じました。  また、十月に入り、景気の回復が業種間、地域間あるいは企業規模間等において跛行性が見られたため、不況産業対策には特にきめ細かく配慮する等、可能な限り機動的な財政経済運営を行いました。  そうした結果、第二次石油危機後、多くの先進工業諸国がインフレと失業の問題に直面した中で、我が国はこれら諸国に比べ著しく良好な実績を上げ、五十六年度も実質三・三%の経済成長を果たし、低成長ではありますが、中長期的な安定成長路線を定着させたのであります。  さらに十二月には、外貨貸付制度の創設、石油国家備蓄の積み増し、希少金属の民間備蓄に対する利子補給等、黒字減らしのための対外経済対策 を決定し、我が国の外需依存型の成長に伴って強まった貿易摩擦の解消にとり得る限りの対策をとり、世界経済の安定的発展に寄与したのであります。  物価については、各般にわたる物価対策が功を奏し、インフレを誘発することなく、卸売物価は対前年度比一・四%、消費者物価は四・〇%の上昇で落ちついており、国民生活の安定に大きな役割を果たしております。  このように政府の懸命の努力によるその財政経済運営はまことに時宜にかなったものであったと言えるのであります。  しかし、世界経済停滞の影響が予想以上に大きかったため、決算において二兆四千九百四十八億円の決算不足額を出したことは遺憾でありますが、政府は五十七年度以降も増税に頼ることなく歳出の合理化による財政の立て直しに努めており、その努力は大いに評価したいのであります。  財政執行の個々の問題について見ますと、本委員会審査の過程で明らかになった事項あるいは会計検査院指摘された事項のように、反省すべき点、留意すべき点があったことは事実であります。  政府はこの際、国民の信託にこたえるため、警告の趣旨を十分体して、今後一層財政の効率化、行政の適正化に心がけるよう要望いたしまして賛成討論を終わります。
  287. 服部信吾

    服部信吾君 私は、公明党・国民会議を代表して、昭和五十六年度決算に対して、これを是認できないことを表明し、内閣に対する警告に対しては賛成の意を表するものであります。  その理由は、まずこの五十六年度の財政運営の明らかな失敗を挙げねばなりません。昭和五十六年度の財政経済運営は、国内民間需要を中心とした景気の拡大と雇用の安定等を目指したわけでありますが、政府のたび重なる経済政策の失敗によって内需は低迷し、国民生活は少しも豊かにならなかったのであります。  したがって、経済成長率も実質で五・三%と見込んだものが二・八%という極めて低い水準に終わったのであり、これを反映して税収の伸びも終始低迷し、二兆五千億円という巨額な歳入欠陥を生じたのであります。  これらの原因は、過去のほかない高度成長を夢見た政府の過大な経済見通しと、これをもとにした甘い税収見込み、さらに財政経済運営の失敗によるものであることは火を見るよりも明らかであります。  昭和五十六年度を財政再建元年と称して五十九年度までに財政再建を行うという国民への約束も守れず、その後も財政再建の糸口さえ見出せない結果となり、その影響は五十九年度以降にも深刻な影を落としているのであります。  昭和五十六年度予算審議に際して政府提出した財政の中期展望も結局は何であったのか問いたいのであります。厳しく政府の反省と財政再建への決意を求めるものであります。  また、対外関係において、政府は輸出については伸びることなく貿易摩擦も徐々に解消し、経常収支も一兆三千億円の赤字になると予想したのでありますが、現実は輸出が伸び、赤字どころか反対に一兆四千億円の黒字となるなど政府の予想はことごとく外れ、貿易摩擦の一層の激化を招くこととなったのであります。  次に、個々の政策の実行においても国立大学が民間企業との共同研究を行うに際して、弊害を生じないようにするための歯どめが十分でないこと、また、米の需給計画についても政府の見通しの甘さを指摘いたしましたが、私どもの懸念のとおり、その後米不足が明らかになってまいりました。  さらに行政改革が叫ばれている中で、労働省を中心として設置されている福祉施設の多くが遊休化している問題、ドリンク剤のアルコール含有の問題点、専売公社における葉たばこの過剰在庫など政府の行政運営には是正すべき点が少なくありません。  最後に、会計検査院から不当と指摘をされた事項を見てみますと、毎年同じような指摘が繰り返され、国民から見れば納めた税金がむだ遣いされていることに憤りを感じていると思うのであります。強く反省を求めるものであります。  以上、反対の理由を申し述べました。委員長提案の警告に対しては、政府は十分に反省し、改善を急ぎ、速やかに警告の趣旨の実現を図ることを要望して反対討論を終わります。
  288. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私は、日本共産党を代表して、昭和五十六年度決算について、これを是認できないとする反対討論を行います。  五十六年度予算は、財政危機の一層の進行と消費者物価の上昇、税金や社会保険料負担の増大で勤労者の実質賃金が政府統計開始以来初めてマイナスとなり、中小企業の倒産が史上最高を記録するなど、財政経済国民生活の重大な危機のもとで編成されました。  しかし、編成された予算とその執行の結果は、国民生活の防衛を何よりも優先し、それとあわせて財政再建をと願う国民世論に真っ向から挑戦するものでありました。  五月の日米首脳会談では、共同声明で日米関係を初めて「同盟関係」と規定し、周辺海域防衛を約束するなど、日米安保の攻守同盟化が大きく進められ、軍事費は社会保障費の伸びを遭い越し、一般経費の平均伸び率を八割も上回るという突出ぶりとなりました。  また、経済協力費やエネルギー対策費など大企業向けの補助金や利子補給、大企業や大資産家優遇の不公平税制を温存する一方で、国民には、所得減税の四年連続見送りによる実質大増税や賃金の抑制、さらには、臨調にせ行革路線推進の第一弾である行革一括処理法による補助金カットや老人医療費の有料化、児童手当の改悪、教育施設費の大幅切り下げなど、福祉・教育を初めとする国民向け諸制度の根本的改悪が行われました。このような国民犠牲の政治の結果、消費購買力はますます低下し、深刻な消費不況と一万七千件を超える中小企業の倒産を招き出したのであります。  財政面でも、財政再建元年と称しながら十二兆九千億円もの赤字国債を発行し、発行残高を八十三兆にも上らせたばかりか、消費不況の深刻化による税収不足も相まって、二兆五千億円という未曾有の歳入欠陥、赤字決算を生じさせたのであります。  予算執行の上でも、会計検査報告で公共事業発注の積算ミスが数多く指摘され、不正な談合入札の横行が裏づけられるなどの問題が引き続いております。  以上申し上げたとおり、昭和五十六年度決算は重大な問題を含んでおり、どれを是認することはできません。  国有財産増減及び現在額調書は、以上の五十六年度予算執行に伴う国有財産の増減の集計であり是認できません。  国有財産無償貸付状況計算書につきましては、無償貸付の制度自体の意義は否定するものではありませんが、その管理、運用の実態を示す詳細な資料が提出されていない中で、一部に管理、運用上に重大な疑義の生じる事態が残されたままとなっており、本計算書については、これを是認することはできません。  最後に、委員長御提案の警告決議案につきましては、賛成を表明いたしまして、私の討論を終わります。
  289. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、民社党・国民連合を代表して、昭和五十六年度決算に対しこれを是認できないことを表明し、委員長提案の警告決議案に対して賛成の討論を行います。  以下、その理由について申し上げます。  第一は、財政経済運営の失敗であります。  昭和五十六年度は、前鈴木内閣が五十九年度赤字国債依存体質脱却を政治目標に掲げ、財政再建元年とうたい、鳴り物入りでスタートした年度でありました。しかし、この年度は、税収が当初の予算三十二兆二千八百四十億円に対し三兆三千三百十九億円、一〇・四%の減少、補正予算額三十 一兆八千三百十六億円に比べても二兆八千七百九十五億円、九・一%も不足した二十八兆九千五百二十一億円にとどまり、財政再建計画は初年度から破綻したのでありました。  税収不足額二兆八千七百九十五億円は、税外収入寺及び実質的には赤字国債の発行にほかならない国債整理基金からの繰り入れ等による決算調整資金制度を適用して帳じりだけは合わせたものの、二兆四千九百四十八億円もの実質赤字を発生させたその原因は、民間調査機関が軒並みに低い成長率を予測する中で、政府は低成長下という実態を無視し、名目九・一%、実質五・三%の高い見通しを行いながら、それを裏づける政策を欠き、我が党の拡大均衡型経済財政運営への転換という提言を退け、財政の景気調整機能を無視して縮小均衡型経済運営方針に固執したばかりか、逆に法人税を中心とする増税策をとり、それが景気の停滞につながるという大きな失敗を招いたこと、加えて補正予算編成段階で判明していた各月末の税収累計額の伸び率が一〇%前後であったにもかかわらず、その倍近い一八・五%もの税収を見込むなど補正予算での的確な税の減額修正を行わなかったという政府経済財政運営の失敗がもたらした結果にほかならないのであります。  反対理由の第二は、政府行政改革に対する取り組みが不徹底な点であります。  五十六年度に発足した臨調が最終答申を行って解散してから一年余が経過し、今や行政改革は実行の段階であるにもかかわらず、政府行政改革に対する熱意は冷め、その進行状況政府指導力の欠如から遅々として進んでいないばかりか、日本専売公社日本電信電話公社改革法案が臨調答申に比べ大幅に後退した内容となったことは、国民行政改革に対する期待を裏切るものであります。  行政改革の推進を強く主張する我が党は、こうした行政改革推進に不熱心な政府の態度は許すわけにはいかないのであります。我が党は今後とも政府が本来の行政改革である国鉄などの特殊法人や増加を続ける公益法人に対し抜本的なメスを入れ、その改革を断行するとともに、公務員定数の実質大幅削減による総人件費の抑制、行政経費の節約、補助金制度の改革等構造的赤字要因を克服するため全力を傾注することを強く求めるものであります。  第三は、我が党が五十六年度予算執行に対して格別の関心を払い、予算の効率的使用、公正な執行注意を喚起してきたにもかかわらず、会計検査院指摘警告決議案に示されたごとく、予算の効率的使用等所期の成果が十分に達成されていないと思われる事項が多く見受けられることであり、極めて遺憾というほかはありません。これらの指摘事項につきましては今後政府が早急に改善を図るよう誠実に努力を行うよう強く求めるものであります。  第四は、会計検査院の権限強化がいまだ実施されていないことであります。  ロッキード事件に端を発した政府出資法人検査のため、その融資先に対する会計検査院検査については、国民の強い要求があります。加えて毎年度拡大する国の財政規模については、行政改革を徹底し、予算の公正かつ効率的な執行を確保する必要があり、このためにも会計検査院の果たす役割は大きなものがあります。  我が党は、こうした実態を踏まえ、会計検査院機能の強化を再三要求し続けてきたにもかかわらず、政府会計検査院改正の手続さえとろうとしていません。我が党は、今後の予算編成及び執行が効率的かつ合理的に行い得るよう会計検査院の権限を強化すべく会計検査院検査対象範囲の拡大、チェック機能の充実、権限の強化を図るとともに、会計検査院予算編成時に大蔵省に意見を具申することができ、予算が効率的に執行されていないときには、年度途中においても執行停止、変更の勧告ができるよう、制度を改善することを提案するものであります。  以上のごとく、種々の問題を含んだ昭和五十六年度決算は、到底容認できるものではありません。  最後に、委員長提案の警告決議案につきましては、賛成の意を表しまして、私の討論を終わります。
  290. 木本平八郎

    木本平八郎君 私は、昭和五十六年度決算に対して是認しないことを表明し、委員長提案の警告案に対しましては賛成の意を表するものであります。  是認しない理由の第一点として、政府昭和五十六年度の経済運営についてであります。政府経済運営の重点施策として国内民間需要を中心とした景気の拡大、雇用の安定を掲げていたのでありますが、政府の意図とは裏腹に内需は低迷し、輸出に依存する型となり、経済成長率も実質で三・三%にとどまって、政府当初見通しの五・三%より二ポイント低い数値に終わったのであります。  また、雇用の面においても、失業者数は百二十万人以上の高い数値を示し、企業倒産も依然として多発し、その数は一万七千件以上に上り、国民に生活の不安をもたらしたのは明らかであります。  次に、昭和五十六年度の政府財政運営を見てみますと、国債費や、防衛関係費が対前年度に比較して大きく伸びる中で、公共事業対策費や文教関係費、中小企業対策費が低く抑えられるという、赤字財政のツケを国民の生活基盤に直接かかわる分野で穴埋めしようというものであって、国内民間需要による景気の拡大という政府経済運営目標とは背反する財政運営が行われたと断ぜざるを得ないのであります。  また、物価の安定を目標に掲げながら、鉄道運賃や国立大学授業料等の各種の公共料金の値上げが行われたことは、年々賃金の上昇を低く抑えられている国民の生活をますます苦しいものにしたと言っていいでありましょう。  第三として、大量の国債発行と財政再建についてであります。政府は、昭和五十六年度を財政再建元年として二兆円の赤字国債の減額を予算に盛り、以後同様な減額によって昭和五十九年度には、赤字国債発行から脱却するという計画を立てたのであります。しかるに、昭和五十六年度は、国内需要の不振による景気の停滞で税収不足を招き、補正予算で三千七百五十億円の赤字国債の追加発行となり、二兆円の減額目標財政再建の初年度より破綻するという結果をもたらしたのであります。この税収不足の傾向は、補正予算後一周明らかになり、結局昭和五十六年度決算において、二兆四千九百四十八億円余の歳入不足という未曾有の事態をもたらし、決算調整資金で不足額を措置する結果となったのは、政府財政運営の失敗とともに、景気・税収に対する政府の見通しの甘さを如実に示すものであり、強く反省を求めるものであります。  最後に私が申し上げたいことは、会計検査院検査報告により、毎年度のように繰り返し指摘される不当な事例が一向に改善を見ないことであります。例えば私がこの委員会の席で指摘した労働保険料の徴収不足もその一つであり、国の財政事情の厳しい折、これら不適切な会計経理を改善していくことが緊要なことであり、この点迅速な対応を求めるものであります。  以上反対の理由を申し上げましたが委員長提案の警告に対しては、政府はその趣旨を十分に体して、行財政適正化の措置を一刻も早く達成できるよう要望して、反対討論を終わります。
  291. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 他に御意見もなければ、討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  292. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  まず、昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算昭和五十六年度特別会計歳入歳出決算昭和五十六年度国税収納金整理資金受払計算書昭和五十六年度政府関係機関決算書の採決を行います。  第一に、本件決算は、これを是認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  293. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 多数と認めます。  第二に、内閣に対し、先刻朗読のとおり警告することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  294. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 全会一致と認めます。よって、昭和五十六年度決算につきましては、多数をもってこれを是認することとし、内閣に対し、先刻朗読いたしましたとおり警告すべきものと議決いたしました。  次に、昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算書の採決を行います。  本件につきまして、異議がないと議決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  295. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって異議がないと議決いたしました。  次に、昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書の採決を行います。  本件につきまして、異議がないと議決することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  296. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 多数と認めます。よって、本件は多数をもって異議がないと議決いたしました。  なお、これらの案件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  297. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、内閣に対する警告について、関係国務大臣から発言を求められておりますので、順次これを許します。藤波内閣官房長官
  298. 藤波孝生

    国務大臣(藤波孝生君) ただいま御決議のありました会計検査院検査充実強化につきましては、政府といたしまして会計検査の実が上がるよう今後も協力をしてまいりたいと存じます。  次に、公益法人の問題につきましては、今後とも法人の設立許可の際に慎重に対応するとともに、既設の法人に対しても適正な指導監督を行い、これらの法人が公益の増進に寄与するよう一層の努力をいたす考えてあります。  次に、婦人差別撤廃条約批准に向けての国内法制等諸条件整備につきましては現在鋭意取り組んでいるところでありますが、今後とも御決議の趣旨に沿って婦人施策の推進に努めてまいりたいと存じます。
  299. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 竹下大蔵大臣
  300. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) ただいま御決議のありました予算の厳正かつ効率的な執行につきましては、決算検査報告不当事項等が掲記されることがないよう従来から各省庁において努力しているところでありますが、大蔵省といたしましてもこの御決議の趣旨を尊重し、各省庁とも連絡を密にし、今後ともなお一層予算を厳正に執行するように努め、違法、不当の指摘を受けることのないよう道徳なきを期してまいりたいと存じます。  次に、貸金業者の業務の適正化につきましては、従来から関係省庁と連絡を密にしながら法律の厳正な運用を行ってきたところでありますが、今後とも御決議の趣旨を踏まえまして配意してまいりたいと存じます。
  301. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 森文部大臣
  302. 森喜朗

    国務大臣(森喜朗君) ただいま御決議のありました東京医科歯科大学にかかわる事項につきましては、大学における自主的改善措置を踏まえつつ、今後再びこのような事態の生じないよう御決議の趣旨に沿って一層努力してまいる所存であります。
  303. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 渡部厚生大臣
  304. 渡部恒三

    国務大臣(渡部恒三君) ただいま御決議のありました新薬製造承認申請資料にかかわる事項につきましては、御決議の趣旨に沿って医薬品の安全確保に一層努力するとともに、綱紀粛正の徹底、文書管理の一層の厳正を期し、業務行政に対する国民の信頼にこたえてまいる所存であります。
  305. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 小此木通商産業大臣
  306. 小此木彦三郎

    国務大臣小此木彦三郎君) ただいま御決議のありました三池炭鉱坑内火災事故に関する件につきましては、既に同事故調査委員会が事故原因の徹底究明のための調査を進め、本年三月に中間報告を取りまとめ、引き続き詳細な調査検討を行っているところであります。  通産省としては、類似災害の再発防止を図る観点から、全国の鉱山に対し同報告書の趣旨を徹底したところであり、今後とも御指摘の点を踏まえ鉱山保安の確保に万全を期すよう一層の努力をしてまいる所存であります。
  307. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 奥田郵政大臣
  308. 奥田敬和

    国務大臣(奥田敬和君) 職員による不正行為の未然防止につきましては、従来から重ねて注意を喚起してまいりましたが、ただいま御決議の中で御指摘のような不祥事件が発生しましたことはまことに遺憾でございます。  当省といたしましては、御決議の趣旨に沿って、このような事態をなくすよう今後一層指導監督の徹底を図ってまいりたいと存じます。
  309. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 水野建設大臣
  310. 水野清

    国務大臣(水野清君) ただいま御決議のありましたワンルームマンションの建設に伴う諸問題につきましては、御決議の趣旨に沿って、今後ともその実態把握に努めるとともに、地方自治体及び供給業者に対して適切な指導を行ってまいる所存でございます。
  311. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 田川自治大臣
  312. 田川誠一

    国務大臣(田川誠一君) ただいま御決議のありました地方団体の財政運営につきましては、現在、国、地方を通ずる行財政改革が要請されるもとにおきまして、特定の地方団体の財政運営に不適切な点がありましたことは極めて遺憾であると考えております。  自治省といたしましては、今後とも地方団体の財政運営につきまして、健全かつ適切な財政運営が行われるよう地方団体に対し指導してまいりたいと考えております。
  313. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  314. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 速記を起こして。     —————————————
  315. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 次に、昭和五十七年度決算外二件を議題といたします。  まず、昭和五十七年度決算、すなわち一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書政府関係機関決算書につきまして大蔵大臣から概要説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  316. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 昭和五十七年度の一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書及び政府関係機関決算書を会計検査院検査報告とともに国会提出し、また、昭和五十七年度の国の債権の現在額並びに物品の増減及び現在額につきましても国会に報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。昭和五十七年度予算は、昭和五十七年四月五日に成立いたしました。  この予算は、臨時行政調査会行政改革に関する第一次答申最大限に尊重し、歳出面においては、経費の徹底した節減合理化によりその規模を厳しく抑制しつつ、限られた財源の中で各種施策について優先順位の厳しい選択を行い、質的内容の充実と景気の維持拡大に配意するとともに、歳入面においても極力見直しを行い、これにより公債発行額を着実に縮減することを基本方針として編成されたものであります。  さらに、補正予算が編成され、昭和五十七年十二月二十五日その成立を見ました。  この補正予算では、税収不足に伴う歳入不足に対処するとともに、災害復旧費の追加、義務的経費の追加等の措置を行うため、地方交付税交付金の減額、給与改善費の不用を含む既定経費の節減等を行うほか、定率繰り入れ等の停止による国債費の減額を行い、なお不足する歳入については、公債の追加発行によることといたしました。  この補正によりまして、昭和五十七年度一般会計予算は、歳入歳出とも四十七兆五千六百二十一億三千九百九十六万八千円となりました。  以下、昭和五十七年度決算につきまして、その内容を御説明申し上げます。  まず、一般会計におきまして歳入の決算額は四十八兆十二億八千九十二万円余、歳出の決算額は四十七兆二千四百五十億六千三百七十万円余でありまして、差し引き七千五百六十二億千七百二十二万円余の剰余を生じました。  この剰余金は、昭和五十八年度へ繰り越しました歳出予算の財源等に充てるものでありまして、財政法第四十一条の規定によりまして、一般会計の昭和五十八年度の歳入に繰り入れ済みであります。  なお、昭和五十七年度における財政法第六条の純剰余金は千四百七十一億九千五百四十九万円余となりますが、この純剰余金につきましては、昭和五十八年分の所得税の臨時特例等に関する法律第八条の規定により財政法第六条第一項の規定は適用されないこととなっております。  以上の決算額を予算額と比較いたしますと、歳入につきましては、予算額四十七兆五千六百二十一億三千九百九十六万円余に比べて四千三百九十一億四千九十六万円余の増加となるのでありますが、この増加額には、前年度剰余金受け入れが予算額に比べて増加した額四千八百九億三千三百三十七万円余が含まれておりますので、これを差し引きますと、昭和五十七年度の歳入の純減少額は四百十七億九千二百四十万円余となるのであります。その内訳は、租税及び印紙収入における増加額三百三十一億二千四百七十一万円余、専売納付金における増加額七十四億八千百四十四万円余、官業益金及び官業収入における増加額十四億四千九百四十七万円余、政府資産整理収入における増加額五十八億五千四百四十七万円余、雑収入における増加額二千百五億五千九十一万円余、公債金における減少額三千二億五千三百四十三万円余となっております。  一方、歳出につきましては、予算額四十七兆五千六百二十一億三千九高九十六万円余に、昭和五十六年度からの繰越額四千七百九十二億二千八百六十三万円余を加えました歳出予算現額四十八兆四百十三億六千八百六十万円余に対しまして、支出済歳出額は四十七兆二千四百五十億六千三百七十万円余でありまして、その差額七千九百六十三億四百八十九万円余のうち、昭和五十八年度に繰り越しました額は五千五百四十億五千七百九十八万円余となっており、不用となりました額は二千四百二十二億四千六百九十一万円余となっております。  次に、予備費でありますが、昭和五十七年度一般会計における予備費の予算額は二千三百億円であります。その使用額は千二百二十五億八百四十三万円余でありまして、その使用の内容につきましては、別途国会提出いたしました予備費使用総調書等によって御了承願いたいと存じます。  次に、一般会計の国庫債務負担行為につきまして申し上げます。財政法第十五条第一項の規定に基づき国が債務を負担することができる金額は二兆五百二十八億三千八百三十三万円余でありますが、契約等による本年度の債務負担額は二兆百六十二億九千四百八十八万円余でありますので、これに既往年度からの繰越債務額二兆三千四百億四千四百二十二万円余を加え、昭和五十七年度中の支出等による本年度の債務消減額一兆五千三百四億六千百八十七万円余を差し引いた額二兆八千二百五十八億七千七百二十二万円余が翌年度以降への繰越債務額となります。  財政法第十五条第二項の規定に基づき国が債務を負担することができる金額は一千億円でありますが、契約等による本年度の債務負担額はありません。また、既往年度からの繰越債務額百五十五億三千七百三万円余は、昭和五十七年度中の支出等によって全額消滅いたしましたので、翌年度以降への繰越債務額はありません。  次に、昭和五十七年度の特別会計の決算でありますが、同年度における特別会計の数は三十八でありまして、これらの決算の内容につきましては、特別会計歳入歳出決算によって御了承願いたいと存じます。  次に、昭和五十七年度における国税収納金整理資金の受け入れ及び支払いでありますが、同資金への収納済み額は三十一兆二千四百五十九億五千二十一万円余でありまして、この資金からの一般会計等の歳入への組み入れ額等は三十一兆二千二百五億九千五百九十五万円余でありますので、差し引き二百五十三億五千四百二十五万円余が昭和五十七年度末の資金残額となります。これは、主として同税に係る還付金として支払い決定済みのもので、年度内に支払いを終わらなかったものであります。  次に、昭和五十七年度の政府関係機関の決算の内容につきましては、それぞれの決算書によって御了承願いたいと存じます。  次に、国の債権の現在額でありますが、昭和五十七年度末における国の債権の総額は百二兆四千四百六十六億七千百六十七万円余でありまして、前年度末現在額九十二兆二千十九億四千五百五十七万円余に比べて十兆二千四百四十七億二千六百十万円余の増加となります。その内容の詳細につきましては、昭和五十七年度国の債権の現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  次に、物品の増減及び現在額でありますが、昭和五十七年度中における純増加額は三千九百八十一億七千九百五十五万円余でありますので、これに前年度末現在額三兆四百七十七億千三百五十万円余を加えますと、昭和五十七年度末における物品の総額は三兆四千四百五十八億九千三百六万円余となります。その内訳の詳細につきましては、昭和五十七年度物品増減及び現在額総報告によって御了承願いたいと存じます。  以上が、昭和五十七年度の一般会計歳入歳出決算特別会計歳入歳出決算、国税収納金整理資金受払計算書政府関係機関決算書等の概要であります。  なお、昭和五十七年度の予算執行につきましては、予算の効率的な使用、経理の適正な運営に極力意を用いてまいったところでありますが、なお会計検査院から、百八十二件の不当事項等について指摘を受けましたことは、まことに遺憾にたえないところであります。  予算執行につきましては、今後一層配慮をいたし、その適正な処理に努めてまいる所存であります。  何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。
  317. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 次に昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総計算書並びに昭和五十七年度国有財産無償貸付状況計算書につきまして、大蔵大臣から概要説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  318. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総計算書並びに昭和五十七年度国有財産無償貸付状況計算書を、会計検査院検査報告とともに第百一回国会に報告いたしましたので、その概要を御説明申し上げます。  まず、昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総計算書の概要について御説明いたします。昭和五十七年度中に増加しました国有財産は、行政財産一兆三千三百九十一億二千七百三十万円余、普通財産一兆四千七百十九億五千四十一万円余、総額二兆八千百十億七千七百七十二万円余であり、また、同年度中に減少しました国有財産は、行政財産三千四十二億六千百九万円余、普通財産三千五百四十二億二千八百三十四万円余、総額六千五百八十四億八千九荷四十三万円余でありまして、差し引き二兆千五百二十五億八千八百二十八万円余の純増加となっております。これを昭和五十六年度末現在額三十五兆六千九十七億二千四百十四万円余に加算いたしますと三十七兆七千六百二十三億千二百四十三万円余となり、これが昭和五十七年度末現在における国有財産の総額であります。  この総額の内訳を分類別に申し上げますと、行政財産二十二兆二千六百四十九億七千八百七十五万円余、普通財産十五兆四千九百七十二億三千三 百六十八万円余となっております。  なお、行政財産の内訳を種類別に申し上げますと、公用財産十四兆三千四百二億五千四百六十万円余、公共用財産三千七百二十四億二千六百五十三万円余、皇室用財産五千四百七十億四千百十八万円余、企業用財産七兆五十二億五千六百四十二万円余となっております。  また、国有財産の総額の内訳を区分別に申し上げますと、土地十兆六千三百四十四億五千三百四十九万円余、立木竹四兆千四百三十七億九千九十万円余、建物四兆八千五百十四億千九百三十四万円余、工作物四兆千九十億八千七百七十四万円余、機械器具八億五千四百八十七万円余、船舶八千七百二十二億六千六百三十八万円余、航空機六千七百二十五億三千二百四十五万円余、地上権等十四億七下六百八十九万円余、特許権等三十九億四百二十一万円余、政府出資等十二兆四千七百二十四億二千六百十二万円余となっております。  次に、国有財産の増減の内容について、その概要を申し上げます。  まず、昭和五十七年度中における増加額を申し上げますと、前述のとおりその総額は二兆八千百十億七千七百七十二万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって増加しました財産は二兆四千百三億六百三万円余、また、国の内部における異動によって増加しました財産は四千七億七千百六十八万円余であります。  次に、減少額について申し上げますと、その総額は六千五百八十四億八千九百四十三万円余であります。この内訳を申し上げますと、第一に、国と国以外の者との間の異動によって減少しました財産は三千二百七十四億三千四百四十三万円余、第二に、国の内部における異動によって減少しました財産は三千三百十億五千五百万円余であります。  以上が昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総計算書の概要であります。  次に、昭和五十七年度国有財産無償貸付状況計算書の概要について御説明いたします。  昭和五十七年度中に増加しました無償貸付財産の総額は六百六十三億九千三百八十万円余であり、また、同年度中に減少しました無償貸付財産の総額は四百八十七億九千七百九十二万円余でありまして、差し引き百七十五億九千五百八十八万円余の純増加となっております。これを昭和五十六年度末現在額六千六十五億七百四十三万円余に加算いたしますと六千二百四十一億三百三十一万円余となりこれが昭和五十七年度末現在において無償貸し付けをしている国有財産の総額であります。  以上が昭和五十七年度国有財産無償貸付状況計算書の概要であります。  なお、これらの国有財産の各総計算書には、それぞれ説明書が添付してありますので、それによって細部を御了承願いたいと思います。  何とぞ御審議のほどお願い申し上げます。
  319. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 次に、昭和五十七年度決算中、日本専売公社決算につきまして大蔵大臣から概要説明を聴取いたします。竹下大蔵大臣
  320. 竹下登

    国務大臣(竹下登君) 昭和五十七年度日本専売公社収入支出決算書につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、たばこ事業の概況につきまして申し上げます。  昭和五十七年度の製造たばこ販売数量は三千百六十七億本余、金額にして二兆四千七百一億四千三百八十五万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において十四億本余、金額にして百十五億六十一万円余の増加となっております。  また、葉たばこの購入数量は二十一万七千トン余、金額にして三千四百十九億八千七百四十四万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において一万二千トン余、金額にして三百十二億六千六百五十八万円余の減少となっております。  次に、塩事業の概況につきまして申し上げます。  昭和五十七年度の塩販売数量は、一般用塩百四十九万六千トン余、ソーダ用塩万百八十万一千トン余、金額にして合計九百四十八億三千六百十万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において百三十二万四千トン余、金額にして百三十九億四千九百三十三万円余の減少となっております。  また、塩の購入数量は、国内塩九十六万五千トン余、輸入塩六百二十九万三千トン余、金額にして合計六百六十四億二千七百六万円余であり、予定に比較いたしますと、数量において百三十七万六千トン余、金額にして百三十億二千八十一万円余の減少となっております。  次に、決算の内容につきまして御説明申し上げます。  まず、収入支出につきまして申し上げます。保昭和五十七年度における収入済み額は二兆五千七百五十一億四千二百十七万円余であり、収入予算額二兆五千七百三十三億九百六十四万円余に比較いたしますと、十八億三千二百五十三万円余の増加となっております。  これに対しまして支出済み額は二兆四千九百六十八億二百三十八万円余、翌年度に繰り越した額は二百十八億三百六十一万円余、合計二兆五千百八十六億六百万円余であり、支出予算現額二兆六千二百四十四億四千三百十三万円余に比較いたしますと、差し引き、不用額は千五十八億三千七百十三万円余となっております。  次に、損益計算につきまして申し上げます。  総収益二兆五千七百九十三億三千六百十二万円余から、総損失二兆四千六百四十二億八千二百十九万円余を控除した利益は千百五十億五千一百九十三万円余であります。この利益は、日本専売公社法第四十三条の十三の二第一項の規定により全額利益積立金として積み立てております。  最後に、専売納付金につきまして申し上げます。  専売納付金は、小売人等に売り渡した製造たばこにつき小売定価に数量を乗じて得た額に納付金率を乗じて得た額から、納付したたばこ消費税の額を控除した額七千六百五十一億三千二百七十七万円余であり、予定額七千五百九十九億二千七百八十八万円余に比較いたしますと五十二億四百八十九万円余の増加となっております。  以上が、昭和五十七年度日本専売公社決算の概要であります。  なお、会計検査院昭和五十七年度決算検査報告におきまして、意見が表示された事項が一件ございますが、これにつきましては、指摘の趣旨に沿い所要の改善に努めるようより一層指導監督の徹底を図る所存であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  321. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 次に、昭和五十七年度決算中、日本国有鉄道の決算につきまして運輸大臣から概要説明を聴取いたします。細田運輸大臣
  322. 細田吉藏

    国務大臣(細田吉藏君) 昭和五十七年度日本国有鉄道の決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十七年度における日本国有鉄道の運輸成績は、前年度に比し、旅客輸送人キロは約一%、貨物輸送トンキロは約九%それぞれ減少となりました。  運輸収入においては、旅客収入は約六%の増加となりましたが、貨物収入は約一〇%の減少となりました。  以下、収入支出の内容を勘定別に御説明申し上げます。  まず、損益勘定におきましては、収入済額は四兆二千九百二十四億二千六百八十七万円余、支出済額は四兆三千百四十四億六千八百七十七万円余でありまして、支出が収入を上回ること二百二十億四千百九十万円余でありますが、これは予算上の区分による収支決算の結果でありまして、いわゆる損益計算上では、一兆三千七百七十七億八千九百二十三万円余の純損失となっております。  この決算額を予算額と比較いたしますと、収入は予算額四兆五千百五十六億三千四百五十三万円余に対しまして二千二百三十二億七百六十六万円 余の減少となっております。  他方、支出は予算現額四兆六千二百十一億九千五百九十六万円余に対しまして、支出済額は三千六十七億二千七百十九万円余下回っておりますが、そのうち八百二十七億四千九百九十九万円余は翌年度への繰越額であり、残額二千二百三十九億七千七百二十万円余は不用額となっております。  次に、資本勘定におきましては、収入済額は二兆六千五十三億二百六十七万円余、支出済額は二兆六千百五十八億五千八百十二万円余であります。  この決算額を予算額と比較いたしますと、収入は予算額二兆六千八十七億八千五百万円に対しまして、三十四億八千二百三十二万円余の減少となっております。  他方、支出は予算現額二兆九千七百七十六億四千百八十三万円余に対しまして、支出済額は三千六百十七億八千三百七十万円余下回っておりますが、そのうち三千六百七億四千七百十三万円余は翌年度への繰越額であり、残額十億三千六百五十七万円余は不用額となっております。  次に、工事勘定におきましては、収入済額は一兆一千四百七十一億三千三百十六万円余、支出済額は一兆七百七十四億六千八百八十六万円余であります。  この決算額を予算額と比較いたしますと、収入は予算額一兆一千百六億七千五百三十八万円余に対しまして、三百六十四億五千七百七十八万円余の増加となっております。  他方、支出は予算現額一兆五千四百五十五億七千五百二十万円余に対しまして、支出済額は四千六百八十一億六百三十三万円余下回っておりますが、そのうち四千二百九十六億七千五十七万円余は翌年度への繰越額であり、残額三百八十四億三千五百七十五万円余は不用額となっております。  なお、主要施策別の設備投資額内訳は、輸送設備の維持更新四千五百三十億五千八百五十二万円余、経営の体質改善一千六百五十三億六千四百八十九万円余、輸送力整備一千五百四億三千九百九十万円余、新幹線建設二千七十八億七千二百五十九万円余、建設関連利子一千七億三千二百九十四万円余、合計一兆七百七十四億六千八百八十六万円余となっております。  また、特定債務整理特別勘定におきましては、収入済額は三千四百五十六億七千百九十九万円余、支出済額は三千四百五十六億七千百九十九万円余、であります。  最後に、昭和五十七年度の予算執行につきまして、会計検査院から不当事項として指摘を受けた点がありましたことは、まことに遺憾に存じております。今後は、この種の事例の発生を未然に防止し、予算の効率的運用を図るべく、より一層の努力をいたすよう指導監督してまいる所存であります。  以上をもちまして、昭和五十七年度日本国有鉄道の決算に関する説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  323. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 次に、昭和五十七年度決算中、日本電信電話公社の決算につきまして郵政大臣から概要説明を聴取いたします。奥田郵政大臣
  324. 奥田敬和

    国務大臣(奥田敬和君) 昭和五十七年度日本電信電話公決算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  昭和五十七年度の事業運営は引き続き順調に推移し、損益計算上三千六百九十六億三千四百八十六万余円の当期利益金を計上するところとなり、昭和五十二年度以降黒字決算を続けているところであります。  収入支出決算の内訳を各勘定別に申し上げますと、まず、損益勘定におきましては、収入済額は、四兆二千九百六億一千四百七十万余円で、予算額に比べ一千二百四十二億四百七十万余円の増収となりました。一方、支出済額は、四兆一千九百三十七億二千三百二十三万余円でありまして、支出予算現額四兆二千四百八十九億五千四百十四万余円に比べ、五百五十二億三千九十万余円下回りました。  次に、資本勘定におきましては、収入済額は二兆五千百三十八億五千七西九十三万余円、支出済額は二兆五千百三十八億五千七百九十三万余円であり、この中には、財政運営に必要な財源の確保を図るための特別措置に関する法律に基づき臨時かつ特例的に昭和五十六年度から昭和五十九年度までに納付する臨時国庫納付金総額四千八百億円のうち当年度納付額一千二百億円が含まれております。  また、建設勘定におきましては、支出済み額は、一兆七千四百三十一億六千八百九十八万余円であり、これにより一般加入電話百二十万七千余加入の増設を初めとする各種の建設工事が実施されたところであります。  最後に、昭和五十七年度予算執行につきましては、会計検査院から工事に関するもの二件の指摘を受けたことはまことに遺憾に存じます。  今後この種事例の発生を未然に防止するよう日本電信電話公社を指導監督してまいる所存でございます。  以上をもちまして、昭和五十七年度決算の概要についての説明を終わります。  何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。
  325. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 次に、昭和五十七年度決算検査報告並びに昭和五十七年度国有財産検査報告につきまして会計検査院長から概要説明を聴取いたします。鎌田会計検査院長
  326. 鎌田英夫

    会計検査院長(鎌田英夫君) 昭和五十七年度決算検査報告につきまして、その概要を説明いたします。  会計検査院は、五十八年十月十四日、内閣から昭和五十七年度歳入歳出決算の送付を受け、その検査を終えて、昭和五十七年度決算検査報告とともに、五十八年十二月二十一日、内閣に回付いたしました。  昭和五十七年度の一般会計決算額は、歳入四十八兆十二億八千九十二万余円、歳出四十七兆二千四百五十億六千三百七十万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において五千五百七十九億四千三百四十一万余円、歳出において三千二百三十九億九百六十六万余円の増加になっており、各特別会計の決算額の合計額は、歳入百十一兆七千三百七十三億七千百十万余円、歳出九十七兆八千七百九十六億七千百三十六万余円でありまして、前年度に比べますと、歳入において五兆七千七百七十七億七千六百五十七万余円、歳出において五兆五千五百八十六億九千十三万余円の増加になっております。  また、国税収納金整理資金は、収納済み額三十一兆二千四百五十九億五千二十一万余円、歳入組み入れ額三十兆千七百四十億七千三十万余円であります。  政府関係機関の昭和五十七年度の決算額の総計は、収入二十三兆四千七百八十三億八千七百二万余円、支出二十三兆二千五百八十二億二千七百七十一万余円でありまして、前年度に比べますと、収入において一兆三千八百九十六億六千六百七万余円、支出において一兆八百六十七億二千五百七十三万余円の増加になっております。  昭和五十七年度の歳入・歳出等に関し、会計検査院が、国、政府関係機関、国の出資団体等の検査対象機関について検査した実績を申し上げますと、書面検査は、計算書二十三万八千余冊及び証拠書類六千五百二万余枚について行い、また、実地検査は、検査対象機関の官署、事務所等四万千六百余カ所のうち、その八・五%に当たる三千五百余カ所について実施いたしました。そして、検査の進行に伴い、関係者に対して千二百余事項質問を発しております。  このようにして検査いたしました結果、検査報告に掲記した不当事項等について、その概要を説明いたします。  まず、不当事項について申し上げます。  不当事項として検査報告に掲記いたしましたも のは、合計百八十一件であります。  このうち、収入に関するものは、五件、二十一億七千二百七十九万余円でありまして、その内訳は、租税の徴収額に過不足があったものが一件、十四億二千百四十万余円、保険料の徴収額に過不足があったものが三件、七億四千七百三十三万余円、職員の不正行為による損害を生じたものが一件、四百五万余円、また、支出に関するものは、百四十六件、三十五億三千六百九十五万余円でありまして、その内訳は、工事に関するものとして、計画、設計が適切でなかったため不経済になったもの、予定価格の積算が適切でなかったため契約額が割高になったもの、監督、検査が適切でなかったため設計と相違して施工したものが七件、二億三千四百八十四万余円、役務に関するものとして、委託費の精算が適切でなかったため支払い額が過大となったものが二件、千四百八十五万余円、保険に関するものとして、傷病手当金等や保険給付金の支給が適正でなかったものが三件、二億三千四百六十三万余円、補助金に関するものとして、補助事業の実施及び経理が適切でなかったものが百十一件、二十五億四百三十六万余円、貸付金に関するものとして、貸し付けの対象とならないものに貸し付けていたもの、共同利用施設として貸し付けた対象施設が、貸し付けの目的を達していないものなどが二十一件、五億千二百八十五万余円、職員の不正行為による損害を生じたものが一件、百九十九万余円、その他、公共下水道工事に伴う負担金について、負担額の算定が適切でなかったため過大となっていたもの一件、三千三百四十万余円であります。  以上の収入、支出に関するもののほか、民事執行予納金などの保管金や、郵便貯金の預入金、出納官吏の保管に係る資金等について職員の不正行為による損害を生じたものが三十件、五億五千七百九十九万余円ありまして、これらの合計は、百八十一件、六十二億六千七百七十三万余円となっております。これを前年度の百八十四件、四十二億五千九十三万余円と比べますと、件数において三件の減少、金額において二十億千六百八十万余円の増加となっております。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について説明いたします。  五十八年中におきまして、会計検査院法第三十四条または第三十六条の規定により意見を表示しまたは処置を要求いたしましたものは十四件でありまして、その内訳は、同法第三十四条の規定により是正改善の処置を要求いたしましたものが九件、同法第三十四条及び第三十六条の規定により改善の処置を要求いたしましたものが一件、同法第三十六条の規定により、意見を表示いたしましたものが三件、改善の処置を要求いたしましたものが一件であります。  このうち、会計検査院法第三十四条の規定により是正改善の処置を要求いたしましたものは、農林水産省の国営及びこれに附帯する道府県営のかんがい排水事業によって生じた農業用用排水施設の管理に関するもの、林業改善資金の貸し付けに関するもの、沿岸漁業改善資金の貸し付けに関するもの、郵政省の郵便物取集業務の委託契約に関するもの、建設省の公営住宅関係国庫補助事業の実施及び経理の適正化に関するもの、地方公共団体が実施している住宅新築資金等貸付事業に対する国庫補助金の経理に関するもの、日本国有鉄道の固定資産の貸し付け等に関するもの、日本電信電話公社の各種システムサービスのセンター設備使用料算定基準に関するもの、住宅金融公庫の土地担保中高層建築物貸し付けの対象建物の無断用途変更の防止に関するものであります。  会計検査院法第三十四条及び第三十六条の規定により改善の処置を要求いたしましたものは、厚生省の国民健康保険助成費に関するものであります。  会計検査院法第三十六条の規定により意見を表示いたしましたものは、労働省の福祉施設の設置及び管理運営に関するもの、日本専売公社の国内産葉たばこの在庫量に関するもの、日本電信電話公社の電報事業の運営に関するものであり、会計検査院法第三十六条の規定により改善の処置を要求いたしましたものは、農林水産省の水田利用再編対策事業の実施及び効果に関するものであります。  次に、本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項について説明いたします。  これは、検査の過程で会計検査院法第三十四条または第三十六条の規定により意見を表示しまたは処置を要求すべく質問を発遣するなど検討しておりましたところ、当局において、本院の指摘を契機として直ちに改善の処置をとったものでありまして、検査報告に掲記しましたものは十四件であります。すなわち、農林水産省の輸入小麦の買い入れに当たっての国内港間の海上運送経費を政府の負担としていることに関するもの、通商産業省の委託費により受託者が取得した物品の不適切な管理に関するもの、運輸省の東京国際空港における土地使用料の算定方法に関するもの、防波堤築造工事における上部コンクリートの海上運搬費の積算に関するもの、航空照明用の受配電機器等の設置工事における一般管理費等の積算に関するもの、日本国有鉄道の踏切事故に係る損害賠償金債権の不適切な管理に関するもの、重軌条更換工事等に使用するレールの材質の使用区分に関するもの、軌道整備工事におけるバラストかき込み工費の積算に関するもの、日本道路公団の橋梁工事におけるプレストレストコンクリート単純けたの設計方法に関するもの、トンネル工事における火薬取り扱い労務費の積算に関するもの、首都高速道路公団のコンクリート床版補強工事における増けた架設費の積算に関するもの、本州四国連絡橋公団の自己昇降式作業足場で使用するディーゼルエンジン発電機の燃料費の積算に関するもの、宇宙開発事業団の種子島宇宙センターにおける自家用電力と購入電力の調整に関するもの、帝都高遠度交通営団の地下鉄道施設を保守管理する工事の労務費の積算に関するものであります。  最後に、特に掲記を要すると認めた事項について説明いたします。  この事項は、事業効果等の見地から問題を提起して事態の進展を図るために掲記しているものでありまして、昭和五十七年度決算検査報告には、次の四件を掲げてございます。すなわち、建設省の国が補助した土地区画整理事業の施行に伴って整備された宅地の利用の現状に関するもの、日本国有鉄道の旅客営業の収支等に関するもの、日本鉄道建設公団の成田新幹線の建設工事に関するもの、日本原子力船研究開発事業団の原子力船「むつ」の開発に関するものであります。  以上をもって概要の説明を終わります。会計検査院といたしましては、機会あるごとに関係各省庁などに対して、適正な会計経理執行について努力を求めてまいりましたが、なお、ただいま申し述べましたような事例がありますので、関係各省庁などにおいてもさらに特段の努力を払うよう、望んでいる次第であります。  引き続きまして、昭和五十七年度国有財産検査報告につきまして、その概要を説明いたします。  会計検査院は、五十八年十月十八日、内閣から「昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総計算書」及び「昭和五十七年度国有財産無償貸付状況計算書」の送付を受け、その検査を終えて、昭和五十七年度国有財産検査報告とともに五十八年十二月二十一日内閣に回付いたしました。  五十六年度末の国有財産現在額は、三十五兆六千九十七億二千四百十四万余円でありましたが、五十七年度中の増が二兆八千百十億七千七百七十二万余円、同年度中の減が六千五百八十四億八千九百四十三万余円ありましたので、差し引き五十七年度末の現在額は三十七兆七千六百二十三億千二百四十三万余円になり、前年度に比べますと二兆千五百二十五億八千八百二十八万余円の増加になっております。  また、国有財産の無償貸付状況につきましては、五十六年度末には、六千六十五億七百四十三万余円でありましたが、五十七年度中の増が六百六十三億九千三百八十万余円、同年中の減が四百八十七億九子七百九十二万余円ありましたので 差し引き百七十五億九千五百八十八万余円の増加を見まして、五十七年度末の無償貸付財産の総額は六千二百四十一億三百三十一万余円になっております。  検査の結果、「昭和五十七年度国有財産増減及び現在額総計算書」及び「昭和五十七年度国有財産無償貸付状況計算書」に掲載されている国有財産の管理及び処分に関しまして、昭和五十七年度決算検査報告に掲記いたしましたものは、「不当事項」といたしましては、総理府の給油所設備工事の施行に当たり、タンク室の防水モルタル工事の単価を誤ったため、契約額が割り高になったもの、文部省の中高層大気観測施設の敷地造成等の工事の施行に当たり、電波障害防止フェンスの支柱の設計が適切でなかったため、フェンスの強度が著しく低下していたものの二件であり、また、「本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項」といたしましては、運輸省の東京国際空港における土地使用料の算定が適切でないため、徴収額が低額となっていたので、算定方法を改善させたものの一件でございます。  以上をもって概要の説明を終わります。
  327. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 以上で昭和五十七年度決算外二件に関する概要説明を終わります。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時五分散会      ——————————