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1984-01-25 第101回国会 参議院 決算委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年一月二十五日(水曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  一月二十一日     辞任         補欠選任      喜屋武眞榮君     木本平八郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         安恒 良一君     理 事                 林  ゆう君                 平井 卓志君                 福田 宏一君                 松尾 官平君                目黒今朝次郎君                 服部 信吾君     委 員                 石本  茂君                 岩本 政光君                 大浜 方栄君                 河本嘉久蔵君                 倉田 寛之君                 斎藤栄三郎君                 杉元 恒雄君                 曽根田郁夫君                 出口 廣光君                 夏目 忠雄君                 原 文兵衛君                 星  長治君                 矢野俊比古君                 久保田真苗君                 菅野 久光君                 本岡 昭次君                 太田 淳夫君                 刈田 貞子君                 佐藤 昭夫君                 井上  計君                 木本平八郎君    国務大臣        文 部 大 臣  森  喜朗君        労 働 大 臣  坂本三十次君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       岩動 道行君    事務局側        常任委員会専門        員        丸山 利雄君    説明員        内閣総理大臣官        房管理室長    菊池 貞二君        内閣総理大臣官        房参事官     松本 康子君        警察庁刑事局捜        査第二課長    上野 浩靖君        防衛施設庁施設        部施設取得第二        課長       小澤 健二君        外務大臣官房審        議官       遠藤 哲也君        文部大臣官房長  西崎 清久君        文部省初等中等        教育局長     高石 邦男君        文部省大学局長  宮地 貫一君        文部省管理局長  阿部 充夫君        文化庁次長    加戸 守行君        水産庁漁政部水        産流通課長    吉村 龍助君        通商産業省立地        公害局長     石井 賢吾君        通商産業省立地        公害局石炭課長  宮副 信隆君        労働省労働基準        局長       望月 三郎君        労働省婦人少年        局長       赤松 良子君        労働省職業安定        局長       加藤  孝君        会計検査院事務        総局第一局長   西川 和行君        会計検査院事務        総局第二局長   竹尾  勉君        会計検査院事務        総局第三局長   秋本 勝彦君        会計検査院事務        総局第四局長   磯田  晋君    参考人        日本原子力船研        究開発事業団理        事長       井上啓次郎君        日本原子力船研        究開発事業団専        務理事      福永  博君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十六年度一般会計歳入歳出決算昭和五  十六年度特別会計  歳入歳出決算昭和五十六年度国税収納金整理  資金受払計算書、  昭和五十六年度政府関係機関決算書(第九十八  回国会内閣提出) ○昭和五十六年度国有財産増減及び現在額総計算  書(第九十八回国会内閣提出) ○昭和五十六年度国有財産無償貸付状況計算書  (第九十八回国会内閣提出)     —————————————
  2. 安恒良一

    委員長安恒良一君) ただいまから決算委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  一月二十一日、喜屋武眞榮君が委員を辞任され、その補欠として木本平八郎君が選任されました。     —————————————
  3. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 昭和五十六年度決算外二件を議題といたします。  本日は、文部省労働省及び科学技術庁決算について審査を行います。  この際、お諮りいたします。  議事の都合により、これらの決算概要説明及び決算検査概要説明は、いずれもこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  それでは、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。  速記をとめて。    〔速記中止
  5. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 速記を起こして。
  6. 本岡昭次

    本岡昭次君 文部省にお伺いします。  現在言われております教育改革論では、六・三・三・四制の見直しということが盛んに言われています。戦後学校教育法が制定されて現在の六・三・三制の体制がしかれて三十数年が経過をしております。文部大臣も戦後の六・三・三制教育を受けてこられた一人であるわけですが、大臣はこの六・三・三制という学校制度、これに対してどのような認識を持っておられるか、まず伺いたいと思います。
  7. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 戦後のわが国の六・三・三・四制学校制度は、教育機会均等を実現し、国民教育水準を高めてきたことにつきましては、大変大きな成果があったと思っております。ただいま先生から御指摘もございましたが、私は、ちょうど小学校の二年のときに終戦になりました。したがって、小学校の一年生のころには、たしか高等科みたいなものがあったんです。六年生だけではなくて、もうちょっと上に先輩があったような気がいたします。そういうときのこともなつかしく感じますし、そのことと、今日の教育、自分が生い立ちをずっとたどってきて、そのことがよかったか悪かったかというようなことは全くわかりませんが、少くとも、日本の国は大変大きな教育立国として国民教育水準も非常に高まってまいりましたし、日本が今日世界の中でも大きな繁栄を見るに至ったそうした科学技術文化、いろんな面での成果というものは、これは大いに評価をすべきだと思っております。  ただ、どうも先生方もそうであろうと思いますし、私どももそうでありますが、こうして政治活動を続けておりますと、どうも教育環境社会環境がいろんな形の中で、ついつい学校制度そのものに何かあるのではないかなあというような、そういうやっぱり国民の批判みたいなものも出てまいります。たとえば、試験地獄入学試験が厳しくなると、これもまた何か学校制度がよくないんじゃないかというふうに、何でもそういうふうに結びつけてしまう思潮がございまして、決して、この六・三・三・四制がいいとか悪いとかということを、そう簡単に判断がすぐできるものではないというふうに私自身も受けとめているわけでございます。  いま、世間ですぐそういう形で出てくる議論としては、たとえば、十四、五歳のところから十八歳ぐらいの一番年齢として若き青春青年時代のときに、どうも試験ばっかりやらされていてかわいそうじゃないかという意見がついつい出てくる。特にお母様方なんかから非常にそういうことを私たちは選挙区におってもよく聞くことが多いわけであります。そうすると、中学校から高等学校高等学校から大学試験ばっかりさせてかわいそうじゃないか。その試験のためにどうも学校に行っているんじゃないかというようなことから、つい三、三と区切るのはよくないんじゃないかというような、こんないわゆる——感情的なものと言うとちょっといけないかもしれませんけれども、そんな感覚でとらえている方がございますが、それなら入試のところがもう少し改善されて、どうも入試本位学校ではないというふうになれば、あえて変えることないじゃないかという意見もまたあるわけでございまして、非常にこの制度そのものは、今日の日本教育の定着化した中には大変私は大きく寄与し、成果はあったものと思っておりますが、いま申し上げたような議論世間にはたくさんあって、そういう声を私どもやはり聞きながら、この制度がいいのか悪いのかということも一遍戦後の教育全体を大きく見直してみるという機運は、いろいろな形の中に出てきておりますから、私どもだけで判断することではなくて、多くの国民的な意見を求めながら、またそれぞれの各界の専門家皆さんの御意見を賜りながら、一遍よくみんなで見直して見てみることが必要ではないかなあと、そんなふうに私個人としては思っております。
  8. 本岡昭次

    本岡昭次君 大臣教育に対する慎重な構え、配慮、また戦後の六・三・三制教育に対する認識、また評価問題点、まあいまのお話は、私はそれはそれなりに受け取りたいと思います。  そこで、もう一点聞いておきたいのは、教育をどう改革するか、あるいはまた見直すか。いろいろ論議があっても、一体その改革なり見直し出発点となるものは何か、その理念となるものは何か、ここのところがはっきりしないでやっておると、大変な間違いを犯します。大臣は、教育改革なり教育見直しをやろうとすれば、その理念なり出発点をどこに置こうと考えておられますか。
  9. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) わが国社会が今後とも活力ある文化国家として安定した発展をしていくという基本的な考え方、このスタンスが教育の果たす役割りにきわめて私は大きいこれは基礎だというふうに思っております。しかし、やはり時代の変化、歴史的な経過、それから単に日本だけではなくて国際社会がいろいろな形で動いてまいります。これまでの日本教育は、どちらかと言えば鎖国が解かれて世界先進国に追いつけ追い越せという一つの目標がやっぱりあっただろうと思いますけれども、今日のように日本の国が政治経済文化、いろいろな意味で世界の中で大変大きな地位を占めるようになりまして、単に——具体的なことを申し上げていいかどうかわかりませんが、自動車あるいは電気製品は、輸出だけではなくてよその国に工場ができるようになりますと、そこで雇用する外国人方々日本的な生活の様式といいますかライフファクターというんでしょうか、そんなことまで押しつけるようになってくると、日本人生き方そのもの外国ではやはり大変大きな関心になってくると言われております。わが国は、やはり平和を希求して世界の中に大きな経済大国としての地位を占めていくには、やっぱり外国皆さんから理解をし尊敬をされ得る民族でなきゃならぬ。  そういうふうに考えると、国際社会の中で生きていくこれからの日本の国の教育というのはどうあるべきなんだろうか。あるいは日本人だけの教育だけではなくて、これからやっぱり世界の中に目を開いていく、あるいは世界人たちに門戸を開いていくような、そうしたやっぱり教育でなければならぬ。そんなことを考えますと、同じような教育体制をこのままずっと守り続けていくということではなくて、やはり社会進展国際情勢や、そしてまた日本の国の進展に伴って教育あり方もやはり議論をしていくということが大事だなと、私はこういう構え教育改革をやはり見直していかなければならぬと、こんなふうに思っております。
  10. 本岡昭次

    本岡昭次君 いま大臣の言われたような発想もあると思いますが、やはり現に日本には憲法があり、憲法には教育方向、そして基本的な考え方、国の責任、そうしたものが示されています。また、教育基本法が現にあるわけですから、私はここで大臣に伺いたいのは、そうした憲法なり教育基本法というものが現に存在する、そのとおりに現在の教育が行われているのかどうか、また、憲法なり教育基本法の示す理念に従って日本教育が行われてきたのかどうか、そこを出発点にしなければ私はこの教育改革はとんでもない過ちを犯すんではないかという危惧を持っています。その点、ずばり私の言っている考えどおり、新しくなられた、そして六・三・三制の教育を受けてこられた新大臣としての率直なひとつずばり答弁いただきたいと思います。
  11. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 平和憲法をしっかり守って、そして教育基本法にのっとって今日までの教育が大きな成果を見たと思っておりますし、この基本的な考え方は全くそのとおり遵守して進めていくことには間違いないと申し上げてよろしいと思います。
  12. 本岡昭次

    本岡昭次君 そこで、教育改革について近々第十四期中教審を設置して、そこで議論をしていくということであります。まあ、これ中教審に対する文部省諮問の仕方はいろいろいままでもありました。今回のこの教育改革という問題がいろいろ論議されている中でのこの中教審に対する文部省諮問の仕方でありますが、たとえば六・三・三制にかわって五・四・四・三制というふうなものをひとつ論議してもらいたいといって具体的にそうした学校制度というふうなものをたたき台として出すのか、あるいはまた中学校義務教育を終えた後、高校、そして専修学校といった形の複線型というふうなものを議論してもらいたいというふうに、具体的にそうしたものを文部省として出してやろうとしているのかどうか、その点はいかがですか。
  13. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 昨年の十三期中教審は、初等中等教育教育内容、それから方法等を中心に今後の学校教育あり方について審議されました。昨年十一月には教育内容等委員会審議計画をおまとめをいただいたわけであります。同報告でも現行の学校制度について見直しを行うべきであるという指摘をいただいております。文部省といたしましても、この報告を踏まえながら、教育改革に関する諸問題の今後の取り進め方については、いま検討を一生懸命しておるところであります。  先生から御指摘がありましたように、具体的にどうこう示してそれを問うのかあるいは全体的なことを問うのかということも、すべてまだ私自身文部省当局と私どもいま一生懸命相談をし、鋭意検討をいたしておるところでありますが、従来のやり方や、それからこれからのどのようなやり方については事務当局から、いまの私の答弁で不便であれば……
  14. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでいいです。
  15. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) よろしゅうございますか。そういう考え方でおります。
  16. 本岡昭次

    本岡昭次君 それで大臣の私見というのですかね、あなたは大臣自身考えとして六・三・三制にかわっていま私が言いました五・四・四・三制というふうな制度についてはどうか、あるいはまた単線型のいま教育がありますが、複線型という問題についてはどういうふうにお考えになっておられますか。
  17. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) いま、あえて私的な意見としてどうかというふうにお尋ねいただいたので、大変ありがたいと思っておりますが、僕自身もさっきから申し上げた六・三・三・四制で育ってきた一人でありますが、すべてそうだとも言い切れない面もあるんですが、私はこれでよかったのかなと思っております。ただ、僕たちがそういう時代学校教育を受けてきた社会あるいは国際情勢といまとは違うんですね。そこのところが僕らのころはもうちょっと楽しく愉快に勉強もし、スポーツもやってきたけれども、いまの高校生や中学生はわれわれのような生き方がどうもできていない。それだけ見るとやっぱりかわいそうな気がします。だとしたらもうちょっと楽しいやり方ができないのかなというふうに思います、楽しいというか、学校は楽しいことだけでやってはいかぬと思いますけれども。ですから、この間も国立大学協会入試懇談に関する先生方ともお話をいろいろさせてもらったのですが、もうちょっと遊びの時間を高校生につくってやれるようなそういうことに先生方していただけないんだろうかと、率直に。こう申し上げるのですが、やっぱり能力というものを大変大事にしなければ社会の求めに応じていけないのだという考え方から見れば、やっぱり学力本位勉強本位学校体系というものをやはり国立大学先生方はお考えになっておられるようであります。そこのところわれわれ政治家ですから、何とかそれだけじゃなくてもうちょっと青春の血をたぎらして、もう少し汗をかくような時間ができるようにしてやってほしいなというのは、これは政治家としての気持ちなんですね。こんなことがこれから専門家皆さんでやっぱり議論をしていただかなきゃならぬ教育制度のことでございますから、私どもはそういうことをできるだけ努めてそういう専門方々にもお願いもしながらやっていきたいなと、こう思っているところであります。  したがって、六・三・三・四制がだめで五・四・四にしろとか、五・四・三にしろとかいうそういう具体的な考え方を示すのではなくて、どういうふうに一遍この子供たち全体の学校区切りは、学制の区切りはどうあるのか、あるいは昔は人生五十年でしたけれども、いまはもう七十年だということになりますと、学校に入る年齢が一体いつがいいんだろうかというようなことも、やっぱりこの際ぜひ考えてももらいたいなというふうにも思いますし、余りこう具体的にこういうやり方でというふうに示さない方が、私は初めの段階はいいのではないだろうか、こんなふうに思っております。
  18. 本岡昭次

    本岡昭次君 私も中教審諮問の際はその方がいいと思います。  そこで、中教審委員人選そのものが、いまの大臣お話からしても大事になってきます。どういう方が日本の将来に向けて子供たち教育あり方考えていくのかという点ですね。それで文部大臣の方も従来のような人選でなく、幅広いひとつ意見中教審の中にくみ上げられるような委員の構成にしたいという強い意見もあるようで、私は結構なことだと思っています。  そこで、たとえばいま大臣が言われたような子供たちがもっと楽しく学校で学ぶようにする方法はないかとか、いろいろな問題について一番よく知っているのは学校現場教職員であり、また父母であるわけで、そうした代表がいま中教審委員にいないかというと、そういう代表であるなと思われるような人はいます、幾人かね。だけれど、実際そうした大方の子供たちのいまの悩みや苦しみ、親や学校教師のそうした現場において悪戦苦闘している状況から、その教育をどう変えたらいいかという問題を的確にやはり中教審の中で意見として出せる人はいない、僕はこう思います。だからいまの教職員集団というのはたくさんあります。たくさんと言っても五つぐらいだと思うんですが、やはりそうした教職員集団代表ですね、組織代表というふうな人たちもこの委員の中に組み入れて、国民的なひとつ合意というものをつくっていく。中教審意見を出せばどこかの組織が必ずそれに反対するというふうな形でない中教審を設置してもらいたいという強い私は願望を持っているのですが、その点はいかがですか。
  19. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 先ほどもちょっと申し上げましたけれども文部省としてもさきの中教審十三期の報告を踏まえながら、教育改革に関する諸問題の今後の進め方について、いま慎重に検討いたしておるところでございます。御指摘のところにつきましても、その一環として慎重に検討してまいりたいと思っております。
  20. 本岡昭次

    本岡昭次君 全般に慎重でなくて、いま言いましたように、現場教職員を真に代表し得るような人を加えて、幅広いひとつ国民的な合意中教審の中につくるということについて、いま慎重に考えているというふうに理解していいんですか。
  21. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 幅広い皆さんから御意見をいただきたいというのは、私の基本的な考え方でございます。
  22. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは観点を変えて、この百一特別国会の中に文部省教員免許法改正、並びに教科書法、ちまたでは教育二法というふうな形で呼ばれようとしていますが、これを提出するというふうに文部省として腹固めをなさったのですか、どうですか。
  23. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 今日の学校教育におきましては、児童、生徒の一人一人の能力適性等に応じた適切な教育を行うこと、あるいは非行等の問題、行動等に適切に対処する、大変大きな問題を先生方学校も抱えておられるわけであります。これらの状況改善して国民の信頼にこたえるために、個々の教員の力に負うところが非常に大きくなっておりまして、すぐれた教員を確保してその資質能力向上を図るということは、これはもう教育の中で一番大事なことだというふうにされております。  こういうような考え方から、私ども文部省といたしましては、教員養成、それから免許制度の具体的な改善策につきまして教育職員養成審議会諮問をいたしてまいりました。そして、すぐれた教員を得るために大学院修士課程修了程度基礎資格とする免許状を新設をしたい。実践的な指導力を養うことを主眼として教育実習生徒指導特別活動等教職専門科目単位数を引き上げることなどを主な内容とする答申がございました。いずれもこの提言教員資質能力向上に資するものでございますので、学校教育改善に寄与するところがとっても大きいというふうに私ども考えておりまして、答申趣旨を尊重してその実現を図る方向教育職員免許法改正のいま準備をいたしておるところでございます。  教科書につきましても、中教審の昨年の六月の答申では、教科書制度の一層の改善を図るために、教科書の著作・編集、検定、採択、研究・評価など制度全般にわたって種々の指摘提言がなされておりますので、今後答申趣旨を尊重して適切に対処してまいりたいと思っております。具体的な対応方法につきましては、目下慎重な検討をいたしておるところでございます。
  24. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、いまの大臣答弁では、教員免許法の件については今国会に出すと、教科書法についてはさらに慎重に検討している、こういうふうに理解してよろしいか。
  25. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) そのように受けとめていただいて結構です。
  26. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、教科書法は慎重に検討していただいて、出す必要がないという結論を出してもらいたいと、こう思います。教員免許法の方も改正する必要がないという立場に私は立っておりますので、そういう立場で幾つか細かい質問をやってみたいと思います。  文部省がこの法律を改悪しようとする根拠に教育職員養成審議会答申を置いております。私はあの答申を読みましたけれども、先ほど森文部大臣教育基本法に基づく教育というものをこれからも推進していくべきだとおっしゃったし、六・三・三制そのものについての全体的な評価もなさいましたが、そのことと教員養成制度というのは深くかかわっているわけであります。つまり、教員養成制度の根幹である開放制原則、これを今度の教養審はこの原則そのものをゆがめて教師間に身分的な格差を生み出して現場教師連帯を失わせるということであって、学校そのもの子供教師という大きな連帯をつくり上げているそのものについても大きな弊害をつくり出す。言ってみれば百害あって一利なし、私はこう思います。  そこで伺いますけれども、新しく特修免許状というふうなものをつくるということですが、そういう特修免許状がそれでは取れる大学院は現在幾つあるんですか。
  27. 宮地貫一

    説明員(宮地貫一君) 大学院につきましては、特修免許状を新たに設けまして大学院修士課程修了程度基礎資格とする免許状ということでございますが、お尋ねの既設の教員養成大学院について申し上げますと、国立の教員養成系の大学院で修士課程を置いているものは十四大学でございます。しかしながら、もちろん、この修士課程設置の一般大学はほかにあるわけでございまして、それぞれ修士課程については必要な教職課程を取れば、もちろん、修士課程を基礎資格とする特修免許状は取得ができるわけでございます。したがいまして、学校教育を担当する教員が現在たとえば百万を超えているような現状でございますし、したがって、一つの免許基準で統一して教員の資格を考えるということは、必ずしも現実的ではないというぐあいに理解をするわけでございます。  したがって、今回養成審議会で御答申いただきましたように、学部段階、修士課程段階、短期大学の段階というようなことで、三段階の修了者を対象とする免許状をそれぞれ対応して考えるというような考え方が、この審議会の答申では盛り込まれているわけでございまして、それを受けて改正案を検討いたしたいと、かように考えております。
  28. 本岡昭次

    本岡昭次君 その三段階の免許状がそれぞれ上級免を取っていくということについて、現場での対応はそれではどういうふうに考えているんですか。
  29. 宮地貫一

    説明員(宮地貫一君) 具体的な内容はこれからさらに検討を詰めていくことになるわけでございますが、考え方の基本で申し上げますと、修士課程修了を基礎資格とする免許状は、もちろん、修士課程を修了しまして所要の単位数を取れば特修免許状が出されるわけでございますが、学部段階を修了して免許状を取った者が現職経験を持ち、かつ、必要な単位修得をすれば、それぞれ学部段階の標準免許状を持っている者が特修免許状を取得する道というものはそれぞれ設けられているわけでございます。したがって、現職にいる者がその現職の経験と所要の単位修得というようなことで上級免許状を取得する道がそれぞれ設けられるわけでございまして、現職教育による上進制度を並行して設けるというような考え方を持っているわけでございますので、先ほど申し上げました三段階の免許状の区分が、それが永続的に固定されるというようなことでは決してないわけでございます。むしろそういう仕組みを設けることによりまして、現職経験と単位修得というような仕組みで教員資質向上により一層励みが与えられるというようなことになるんではないかと私ども考えております。
  30. 本岡昭次

    本岡昭次君 免許状の種類によって教員地位やあるいは賃金、待遇、そうしたものに差をつけるのかつけないのか、それを。
  31. 宮地貫一

    説明員(宮地貫一君) 答申では、先ほども申し上げましたように、免許状を三種類とするということを答申では提案をいただいているわけでございます。しかしながら、その区分によりまして個々の教員の職務の内容に違いが生ずるものではないわけでございますので、給与につきまして差を設けるというようなことは私どもとしては考えてはおりません。
  32. 本岡昭次

    本岡昭次君 上級の免許状を取得する場合、現職の教員が取得する場合、単位をどのような形でそれでは取っていくんですか。
  33. 宮地貫一

    説明員(宮地貫一君) 具体的な方法につきましては、免許法の改正作業を現在事務的に進めているわけでございまして、それぞれ現在の制度の仕組みを基本としながら、必要な改正案についてはただいま検討をいたしている段階でございます。
  34. 本岡昭次

    本岡昭次君 それでは、いまの話を聞く限りにおいては特段、三段階の免許状をつくる必要もないように思うんですが、再度お尋ねしますが、それではなぜ三段階をつくるのか。全体の受け取り方としては、免許状の種類によってよい先生、悪い先生、まあいまごろよく、よい子、普通の子、悪い子というふうに三つに分けるようなことが言われているけれども、これは免許状によって先生をそういうふうにして類別していくということにつながる以外の何ものでもないと、こう思うんだけれども、その点はどういうふうに考えているんですか。
  35. 宮地貫一

    説明員(宮地貫一君) 先般教員養成審議会で答申をいただいたわけでございますが、基本的にはただいま申し上げましたような三段階の免許状ということについては、すでに昭和四十七年の教育職員養成審議会の建議でも述べられている点でございますし、かねて中央教育審議会でもそれらの点は言われてきたわけでございます。  それで、今回の答申でも、いわゆる開放制原則は尊重しながら、教員専門性の向上を図るため、免許基準について引き上げを図り、また大学院修士課程を教員養成・研修の過程の中に適切に位置づけるというような考え方が言われているわけでございます。この措置を講じることは、修士課程の設置が現実に進んできているという状況も考慮し、また修士課程で特定の分野を専攻し、高度の能力を備えた人材を教育界へ誘致すること、また現職教員の研修に対する自発的な意欲を助長することに資するものであるというようなことが、修士課程修了程度を基礎資格とする免許状を設けることの一つの理由として審議会の答申でも述べられているところでございます。
  36. 本岡昭次

    本岡昭次君 開放制原則をゆがめないようにと言いますがね、開放制原則は完全にゆがめられて、教員養成、特修免許を取れる大学が特権化していくということになります。そう簡単に大学が、特修免許状を取るに必要な単位を取るだけの学校教員の問題にしても定数の問題にしても拡大をしていくことは不可能だと、この教養審内容では思いますし、最後、いまの局長お話で一番ひっかかるのは、特修免許状を持った有為な人材とこう言いますがね、教員という社会の中において有為な人材は修士課程を経た者が有為な人材である、こういうとらえ方をもって学校現場を律していく。特に小中といった義務教育の段階ではまことに不適切な、現場に混乱をもたらすだけの私は制度だというふうに思わざるを得ないわけなんで、その点についてここで議論をしている時間がございませんから、最後にこの免許法を今国会に出すことについて再考を求めて、ここで私が答弁を求めても、それはそうできませんと言うのはわかっていますから、私の要望だけにして次の問題に入ります。こういうことはもうやめた方がいいです。  それから、次に国士館問題に入ります。  国士館大学の運営改善の問題は、私はずっと三年来取り組んできました。文部大臣も四人の文部大臣にかかわってこの問題を論議したんですが、一向に問題は解決しない。むしろ文部省が責任逃れを繰り返しているうちにだんだんと事態が悪化してくるという状態であります。  前の瀬戸山文部大臣は、学長にその責任をとらさなければならぬ、それ以外に問題の解決はあり得ないというふうなお考えにも立って、この責任をとらせたいということを本委員会で言明をしています。その段階で文部省は、一、二カ月のうちにこの問題についての解決をさせたいということでしたが、その後この問題はどうなっているのか、もう時間がありませんから簡潔に現状を報告していただきたい。
  37. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 御質問の国士館の件でございますけれども、去る昨年の九月十六日に国士館大学柴田総長を呼びまして、運営体制の刷新等六項目にわたりまして指導を行ったわけでございます。この運営体制の刷新ということに関しましては、関係者の責任を明確にし、社会的に信頼を得ることができるような体制を刷新確立すべきであるということで、特にそれにコメントをつけ加えまして、この言わんとしている趣旨の中には、最高責任者である理事長の責任は重大と考えているという指導を行ったわけでございます。  これに対する回答は、その後五十八年の十一月十日に参りました。柴田総長自身が持参をしたわけでございますが、運営体制の刷新に関しましては、理事、評議員を刷新をいたしました、これによってしっかりやっていきますという内容お話でございました。具体には、理事は柴田総長を除く全員の理事が交代をし、それから評議員につきましては二、三の方を除きまして大部分が交代をしたと、こういう内容のものでございました。  私どもといたしましては、最高責任者の責任が重大であるとまでコメントをしておることでございますので、この内容については文部省としては全く了解はできない、文部省の指導した趣旨に沿って再検討してほしいということをさらに厳しく指導をし、さらに検討を約して帰られたいという状況でございまして、その後の再度結論をまだ回答を得る状況には至っておりませんけれども、今後とも引き続きこの指導の方針に従って対応してまいりたい、かように考えているところでございます。
  38. 本岡昭次

    本岡昭次君 昨年末から新聞紙上もにぎわしておりますが、学長が十二月十二日か十三日に学校に籠城したとか、あるいはまた十二月二十六日に学部長会議が退陣要求というものを学長に突きつけるといったような状態が起こるし、さらに今度は理事会あてに十二月二十七日には学長解任の請求が出て、それが実現されなければ訴訟も起こすということで、学部側と理事会が真っ向から対決するというふうな事態にまで動いている。大変なことになってきていると私は思うんです。  そういうさなかにあって、十二月二十六日学部長会に光定という理事が出席をして、これは事務局長ですが、大変なことを言っております。これは文部省にも大学教職員組合の方から提出されている資料だから知っておられるはずです。その中で光定理事が何を言っているかというと、「一、総長は学長・理事長をやめる意志はない。文部省からも直接そうは言われてない。二、これからは力で対決する。私の背後には文部省が控えている」、こういうふうな形で学部長会で発言をやっている。  この光定という人はどういう人かと調べてみると、これは文部省にかかわってきた人のようでありまして、教育委員会からずっと教育畑を歩いてきた人であります。一体この光定理事の発言、これをどういうふうに文部省はとらえているのか、そこのところをはっきりしてください。
  39. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 昨年の十二月二十六日にそのような会合があったということは承知をいたしておりますが、個々の発言の内容等については、私ただいま初めて伺ったわけでございます。ただ、いずれにいたしましても、先ほど来御説明を申し上げておりますように、文部省の態度は、私が申し上げたことが明確にそのとおりでございますので、その点につきましては、今後機会あるごとにさらにはっきりと大学側には伝えてまいりたい、かように存じております。
  40. 本岡昭次

    本岡昭次君 いま私の言ったことは、ちゃんと大学会議録に記載されてある言葉のようです。ひとつ文部省として調べて、文部省から直接そう言われていないということを理事の責任者が言うということはどうなのか、それから、力で対決する、私の背後には文部省が控えている、こういう形で、文部省がまるで総長問題についての肩を持っているというふうな形での発言がここにあるんです。このことについて事実を解明していただけますか、そして光定理事のこの発言内容について責任を追及していただけますか。私の背後には文部省が控えている、ここまで言い切っているんですから、事実を解明していただけますか、責任を持って。
  41. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 関係の理事から事情を聴取いたしたいと思いますし、そのようなことが事実であるとすればきわめて遺憾なことでございますので、十分注意を促したいと存じます。
  42. 本岡昭次

    本岡昭次君 いや、注意を促したいじゃなくて、こういうことがずっといままで行われているから問題は解決しないんですよ。結局文部省の対応の仕方のまずさ、弱さ、逃げ腰、それがこういう状況をつくり出しているんだという責任を感じてもらわなければいかぬと思います。  それで問題は、やはり学校が混乱するということは、そこに学んでいる学生たちにとって不幸であります。やはり三月末までに解決をして、四月からは新しい体制で新しい学生も迎えて国士館大学が発足していくように、そういう体制を早くとらさなければ、補助金だって全額カットという事態がいまそこにあって、それはもろに学生、親にかぶっていく、そうでなかったら学校が成り立たぬ。総長は、それなら学校をつぶしてしまうというようなことを漏らすようですが、いかに今日私学といえども教育の一端を担っているのが、そういうふうな形で学校の廃校問題を云々するというようなことは、これはもう私は言語道断だと思うんですよ。そういう意味で文部大臣、これは私はずっと三代か四代前の田中文部大臣からこのことを言ってきて、みんな責任を持ってやります、やりますと言いながら、みんなかわってしまわれるんですよ。ひとつ三月末までにこの問題を解決するということを責任を持ってもらいたいと思うんですが、いかがですか。
  43. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 私が党におりました——もちろんいまも党の所属ですが、おりましたときに、私立学校振興助成法を制定をした一人でありまして、私学を大事にしたい、そして私学がとっても社会の中に大きな寄与をしておるということを考えまして、私学だからといって、国が全くその手助けをしないということはいけない、そういう考え方で私学助成法を制定をし、強力に私学を国が援助する、その姿勢を求め貫いてきた一人でございますから、私学がいろんな形で不祥事を起こすということは、生意気なことを言うようですが、わが子が何か不祥事を起こすような気持ちでとってもたまらないんです。そういう一つや二つの学校がそういうことを行うため、世間から、こういう財政状況の中ですから、私学に金なんてやる必要はないんじゃないかというような意見が出てくることがとってもつらい、そんな気持ちなんです。ですから、こうした不祥事をぜひ起こさないでもらいたい、これはもう文部省として言い続けているところでありますが、これは本岡先生よく御承知のとおり、文部省として、たとえ私学であっても、学長やめなさい、理事長はかわりなさいということは、具体的には名前を挙げて言えないもどかしさもあるということもこれ先生もよく御承知のところだと思います。管理局長を初めとして学校関係者には、できるだけ早く大学の自治、学問の自由という大きな見地の中で、みずから自分たちの姿勢を改めるように指導は一生懸命しております。  いま先生お話もありましたように、九月十六日、私学振興財団からもこれはもう五年間の助成金のカットというきわめて強い措置もいたしておるところでありますが、どうも柴田総長のお考え方から見ると、やはり昔の方なのかなと、私の年代から見るとそんな感じがいたしまして、何か自分でつくった大学で、自分はつぶせばいいんだなんというようなことは、もう本当に言語道断の遺憾な発言だと私も受けとめているところであります。  いま管理局長からも話がありましたように、二回強い姿勢で反省を促し、そして改革案を持ってくるように言っておりますが、大学側の自主的な判断をわれわれはどうしても待つしか方法がないわけでありますが、一生懸命に文部省としても努力をしたいと思っております。  きのう、たまたまスポーツ功労賞の大臣表彰を行ったんですが、その中にはことしのオリンピックでも入賞の期待される斎藤君がおりました。それで、斎藤君と東海大学の山下君がおりまして、ことしは斎藤君勝てるかなと言ったら、絶対勝ちます、国士館の名誉にかけて勝ちます、こう言ったら、横におった山下君が、そうはなかなか負けぬよ、ことしはぼくがまだ優勝するんだ、こう言っておりますやりとりを見ておりましても、この斎藤君が学校の名誉にかけてということを言ってくれることに、大変私はもう何とも言えないほのぼのとしたうれしさを感じたんです。それだけに、そういう学校大学人たちが一生懸命に学校の名誉にかけてがんばっておられる、柴田総長も早くそういう学生たちのためにも、職員のためにも、そしてまた校友、OBの皆さんのためにも、何とかみずからを反省して、世間に大変御迷惑をかけたこの不祥事を自分たちみずからが反省して改革を進めるように、私としても文部省局長以下一生懸命関係当局でさらに努力をいたしたい、こう思っております。
  44. 本岡昭次

    本岡昭次君 努力をしていただかなければなりませんし、いまの大臣答弁はありがたいと思いますが、やはり時期というものがあると思いますね。三月末というのは年度が変わるときですから、やはりそれまでに解決をして、そして新しい体制で四月の新学期を迎えるようにということは当然一つの節目として必要だと思います。  だから、再度私は要望しますが、三月末までというふうにめどを設定して、そして全力を挙げてやっていただきたいと思いますが、そのことについて御異論はございませんね。
  45. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 管理局長を中心に努力を続けます。
  46. 本岡昭次

    本岡昭次君 それから、ブラジルへ十億円の金を投資して体育館を設置しているという問題の海外資金送金の問題なんですが、その後どういうふうに進展していますか。
  47. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 前回の先生の御質問にお答えいたしましたように、文部省といたしましては、大学側の説明が、送金をいたしました金の種類が貸付金である、事務的なミスのために寄附金として処理をしてしまったということを申しておりますので、そういうことであればその貸付金と寄附金の違いにつきましては、実際の性格のものに手続の方を改めるようにということを指導をしてきたわけでございます。大学当局といたしましても、これはブラジルの現地の問題がまず必要でございますので、現地にあります国士館大学協会という現地法人におきまして、ブラジル中央銀行との間に協議を続けているというふうに聞いておりますが、ブラジルの国内事情等もございましてなかなか難航をいたしておるようでございます。私どもといたしましては、この点につきましてはさらにできるだけ早急に解決を図るようにということを引き続き強く指導を重ねておるところでございます。
  48. 本岡昭次

    本岡昭次君 そういうやり方では一向にらちが明かないんじゃないんですか。やはり文部省として、寄附金を貸付金というふうに資金の性格を変えるなら変えられる協力をしてやらないとだめじゃないんですか。たとえば外務省を通して現地の大使館等に働きかけて、いま国士館大学が寄附金名目の金を貸付金に変えるということについて、もっと努力を文部省としてやらなければこれは実現しないんじゃないですか。もし実現しなかったらどうするのかという問題があると思いますよ。どうですか、その点。ただいまのような国士館大学報告を聞いているだけでは私はできないと思いますよ。これできなかったらどうするんですか、文部省。名目の変更ができなければどうするんですか、逆に。
  49. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) ブラジルという国の性格等もございまして、現実に経済事情がなかなか困難であるということから、外貨の獲得あるいはその放出というような面について非常に厳しい姿勢がとられておるわけでございます。したがいまして、一度手続的に寄附金として入ってきた金を、これを貸付金であったと直すことについては、ブラジル国政府の関係等非常にむずかしいという事情があるように聞いておるわけでございます。それにいたしましても これについての努力をさらに重ねているということでもございますし、また万一、万一と申しますか、この点が非常にむずかしい場合には、さらに別途の方法がないかどうかということを現地の弁護士等とも相談を開始をしているというような話も聞いております。国内の事柄と違いますので、なかなか処理がむずかしいわけでございますが、私どもといたしましては、当該大学を督励をいたしまして、問題の解決に一層努力するよう努めておるところでございます。
  50. 本岡昭次

    本岡昭次君 そういう答弁ばかり聞かされていてもらちが明かないわけで、次の私の質問、いつになるかわかりませんが、そのときにはもう少し明確に、いつまでに解決できるのかという時期を明示して、それから解決の見通し、そうしたものを明らかにしてひとつ報告をしてもらいたいと思います。  それから、貸付金の三億円の分についての元利の返済は引き続き行われているんですか、いませんか。
  51. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 前回お答えいたしましたように、ちょっと数字を記憶しておりませんけれども、一回その利息分の送付が行われた以降は行われておらないというふうに聞いております。
  52. 本岡昭次

    本岡昭次君 警察の方、来ていただいておると思いますが、前回の質問で、この海外送金問題について疑惑があるからその捜査をするというお話でしたが、その後捜査が続いているんですか。それともその疑惑が晴れて捜査を打ち切られたんですか、いかがですか。
  53. 上野浩靖

    説明員(上野浩靖君) お答え申し上げます。  御指摘の事案につきましては、警視庁におきまして関係者からの事情聴取を行うなど、事実関係の把握のため必要な措置をとってまいったところでございますし、現在もなお継続しているところでございます。
  54. 本岡昭次

    本岡昭次君 大臣、私は具体的な中身はここで時間がなかったから言いませんでした。しかし、警察も捜査をしているし、外国との関係もあって国際関係に発展するような中身を持っている、一大学学校の運営という問題だけでは解決できないことがあります。ひとつ文部省としても、この問題について解決ということに全力を挙げていただきたいということを最後に申し上げて、また次の質問の段階まで文部省の努力を待ちたい、このように思います。  それから次に、建国記念の日が近づいてきておりますが、これについて二、三伺っておきます。  文部省は、この二月十一日の建国記念の日に東京でやっている、ある団体が主催する奉祝式典の後援をしてこられましたが、ことしもこの式典の後援をすることにしたのかしていないのか、どうですか。
  55. 西崎清久

    説明員(西崎清久君) ただいま先生指摘の建国記念の日奉祝式典の問題でございます。昨年、本委員会先生初めいろいろと御指摘の点がございました。私どもの方といたしましては、先生方指摘の点を踏まえまして種々検討を重ねておるわけでございます。具体的には一月十七日に申請書が提出されたわけでございまして、この点については、種々そのあり方等につき、宗教的色彩その他の問題もございますので、指導に努めその対応を見きわめた上で取り決めをしてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  56. 本岡昭次

    本岡昭次君 関連して総理府に伺いますが、総理府はこの問題はどのように扱っていますか。
  57. 菊池貞二

    説明員(菊池貞二君) 私どものところへも一月十七日でございますが、建国記念の日式典運営委員会から後援名義の使用承認の申請が参っております。ただいま文部省の方からもお話ございましたが、昨年も本岡先生その他の先生からいろいろ御指摘をいただいておりますので、そのあたりを十分踏まえまして、私ども国民の祝日としまして建国記念の日が国民の皆様からこぞって祝っていただけるよういろいろの御批判、御指摘は素直に受けてこの式典をやっていただくよう申し入れると同時に、私どもの後援承認基準そのほかを参考にしながら目下検討を進めているところでございます。
  58. 本岡昭次

    本岡昭次君 総理の出席についても祝電のみにしたと。その理由の中に、やはり古色蒼然たる式典の内容とか、国民の祝日としてふさわしくないとかいうふうなことが述べられて断られたようですが、私はまさにそのとおりだと思います。だから、これは総理府が——自治省も後援をしているようですが、そういったところに働きかけて、私どもがいままで追及をしてきたような観点に立って対応していただきたいということを要望申し上げ、またその結果どうなったかというのは、式典の中身の問題と皆さん方の対応とは次の機会に改めてこの問題については論議をさせていただきたい、このように思います。  それから、それに関連してこの前もちょっと質問しました島根県の松江日大高校が建国記念の日に講堂に高校生を集めて、校長が教育勅語を朗読して生徒もそれを一緒に声を上げて読んでいるということが明らかになって、文部省としても教育勅語を学校教育活動の中で使うのは好ましくないから、それを指導したいということでしたが、この二月の十一日が近づいておりますが、そのことについてきちっと指導できたのかどうか伺います。
  59. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 決算委員会での御指摘もございましたので、文部省といたしましては、島根県当局に対してこういう内容についての是正を指導してもらいたいということを指導してまいったわけでございます。県といたしましても私学の自主性という立場の尊重の限界がございますけれども、いろいろやり方について問題がございますので、是正をしていくようにという私学の当局者に指導を繰り返してきております。ことしの二月の十一日の形がどうなるか定かな状況はまだ見込みがつきませんけれども、当局者の話によりますと、是正をしていきたいという意思表示を県の方にしているというような状況でございますので、その推移を見守っていきたいと思っております。
  60. 本岡昭次

    本岡昭次君 私も見守りたいと思います。  この学校は去年の十月二十一日、ブラジルの新聞にも紹介されて、ピストルの実射訓練をブラジルまで行ってやったと。そこでの教育の活動の中に朝夕教育勅語を読みながらピストルを撃つ練習をしたと。教育勅語とピストル、どうも結びつきがいいことないんですが、そういう学校でありますから、いまおっしゃったように十分ひとつこの問題については監視をしておいていただきたい。外国にまで行って物議を醸しているんですから、よろしくお願いしたいと思います。  それでは、残りました時間で科学技術庁の方に質問さしていただきたいと思います。  政府によってこの「むつ」問題の決着がつけられたようでございます。そこでまず今回の「むつ」の予算措置について伺います。  今回の予算は関根浜に新母港を建設して実験航行を行うということで科学技術庁が百二十八億の予算を要求したところ、これを下回る七十七億円になるということが政府案のようですが、この予算額は、母港は建設するが、廃船に向かってスタートをしたという受け取り方をしていいのかどうか、これが第一点。  さらに、最終結論は自民党内で八月まで検討して出すということのようですが、今回のこの予算措置は一体どういうことを意味するのか、実験航海を行うための母港の建設の予算なのか。まるで廃船論と推進論を足して二で割るようなあいまいさを残していて非常に問題があると、こう思います。そして、いままでこのように結論を先送りすることがここまで問題をこじらせてしまった、そしてその過程で不必要な、むだなお金を支出してきた、壮大なむだをやったということでありまして、この議論の中にはまるでそうした反省がないということについて私はがまんならないんであります。一体この予算要求の意味と過去の「むつ」にかかわる問題の反省、一体それはどういうふうに絡んでいるのかということです。  それから三点目に、わずかばかりの減税をしてそれをはるかに上回る増税ということになったわけであります。国民に大きな犠牲を払わせて、文教予算、まあ私学の助成金なんかも大幅にカットされるという状況、福祉もそうですが、そして軍事費を依然として突出させていく、こういう予算の中身です。こういうときにこの「むつ」の問題についてこのような形で予算をつけるということは、表現はちょっとどぎついですが、結果として最終的にはどぶに金を捨てるというふうなことになるんではないかという見通しが非常に強い中では、とても国民の理解は得られぬと思います。八月の結論によっては七十七億円を支出せずに直ちに廃船するということもあり得るのかどうか。  まず、この三点について伺います。
  61. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) まず、昨日の自由民主党の中における方針の決定でございますが、このことは最終的に廃船ということではございません。それらのことはさらに長期的な観点から、また十分な専門家意見等も聞きながら、慎重に「むつ」の研究開発を進めていくという考え方でございます。ただいま御指摘のように、「むつ」に関する過去の経過にかんがみますと、相当の金額がつぎ込まれてまだ研究開発の成果が上がっていないということは、私どももはなはだ遺憾に存じておるところでございます。しかしながら私どもは、日本の原子力の平和利用と、そういう中の一環として日本が海洋国家であり、貿易国家であり、また科学技術を国是として日本の民族、国家の繁栄のためにはぜひやっておかなければならない重要な原子力平和利用の一環として原子力船「むつ」の研究開発を進めてまいったところでございます。したがいまして、私どもはこの方針をさらに反省を加えながら進めてまいりたいと、かように考えているところでございます。  特に御案内のように日本は資源のない国でもございます。特に石油資源はほとんど皆無といってもいい状況でございます。そういう中におきまして、日本のエネルギー政策としてはどうしても石油から他の代替エネルギーにこれを置きかえていかなければならないという、きわめて重要な課題を抱えているところでございます。したがいまして、私どもはエネルギー政策の観点からも、石油から他の代替エネルギー——石炭あるいはLNGあるいは水力あるいは新エネルギー等に全力を挙げて取り組んでいるところでございますが、原子力エネルギーも重要な日本のエネルギー源として考えていかなければなりません。そういう観点から私どもは原子力の平和利用、そしてその一環としての原子力船の研究開発は日本にとって大事な課題であります。そのような観点から私どもは過去のことは十分に反省をし、その上に立って原子力船の研究開発は進めてまいる考えでございます。したがいまして、八月ごろを目途としてさらにその進め方については党としても十分な検討を加えたいという御意思でございまするから、私どももその検討につきましては十分に今日までの政府の考え方を申し上げまして、妥当な結論が出るように努力をしてまいりたいと考えているところでございます。
  62. 本岡昭次

    本岡昭次君 その八月の結論の出るまでですが、現在予算案として出されてきたこの七十七億円あるいはまた関根浜の港を建設するということについての関連予算、そうしたものは執行されていくのか、あるいは結論が出るまでそれは凍結をしておくのか、その点はいかがですか。
  63. 岩動道行

    国務大臣岩動道行君) 八月にはどのような結論が出るかはまだここで申し上げるような段階ではございません。したがいまして、私どもは従来の方針を変更するという考えは持っておりません。したがいまして、やがて——まだ決まっておりませんが、五十九年度の予算案が政府案として決定され、そして国会に提出をされた場合には、十分に国会でも御審議をいただくことになると思いますが、現在におきましては七十七億円というただいま内定をいたしております予算の執行につきましては、これを続けて実行をしてまいりたいと、かように考えておるところでございます。  また、港につきましてもこれは長い間の、しかも大変むずかしい交渉で地元の御協力をいただいて、そして港をつくるという、地元とのお約束もございます。このようなお約束は政府と地元との長い間の、しかもむずかしい交渉の結果合意ができたものでございまするから、私どもは地元のお約束に対してはこれを忠実に実行してまいらなければならない、かような意味におきまして、港の建設工事は着実に、しかもむだのない進め方で実行をしてまいりたいと考えているところでございます。
  64. 本岡昭次

    本岡昭次君 詳細はまた科学技術特別委員会の方で論議をさしていただきます。もう時間がありませんので、最後に一問だけお尋ねをしておきます。  これは水産庁の方になるかと思いますが、五十三年佐世保の漁業補償基金として出された地元対策費二十億円ですが、これはその後利息を生み、そしてまた、その間取り崩しも行われる中で、五十七年度末の残高二十二億九千四百八十八万三千円となっております。一体この金はどうするのか。もう佐世保に原子力船が入港する、ここが母港になるということはないわけですから、この二十億円の基金の返済ということは当然行わなければなりません。また、その果実としてつくり上げられた二億九千四百八十八万三千円、これも当然国の金をここに投入してそれだけの果実を生み出したんですから、これも含めて適当な時期に返済されるべきだと思いますが、その点はいかがですか。
  65. 吉村龍助

    説明員(吉村龍助君) お答えいたします。  本基金の運用でございますが、この原子力船「むつ」の風評にかかる魚価低落のおそれがなくなったというふうに認定される場合には、国に返還するということになっております。この認定は農林水産大臣が行うことになっておりますが、その認定に当たりましては、長崎県及び科学技術庁と十分相談の上行うというふうにしております。  それから、返還の額でございますが、これは風評にかかる魚介類の価格が低落するおそれがなくなったと認定した場合でその基金に残高がある場合には、その残高のうち国庫補助金に相当する額を返還するということになっております。
  66. 本岡昭次

    本岡昭次君 そうすると、基金はおそれがなくなった時期というのはいつかということになりますが、返還するが、二億九千何がしのお金は、地元に迷惑料として残しておく、こういうことになるんですか。それだけ聞いて終わって、また特別委員会の方で審議します。
  67. 吉村龍助

    説明員(吉村龍助君) ただいま申し上げましたように、国庫補助金に相当する額を返還するというふうな方針で対処することとなっております。
  68. 久保田真苗

    久保田真苗君 労働大臣、国連婦人の十年もいよいよことし、来年だけになってしまいました。いま世界各国が追い込みで一生懸命のところでございます。この国連婦人の十年の最重要事項と申しますのは、何と申しましても婦人差別撤廃条約、この批准でございます。すでに五十一カ国が批准していると伺っておりますけれども日本は八〇年夏のコペンハーゲンで署名を行いまして、それからもう四年目になっております。こういう非常に大事なとき、私ども婦人にとりましては最も大事なときに労働大臣は労働大臣という要職に御就任になられたわけでございます。いよいよこの婦人の十年の総仕上げ、差別撤廃条約の批准を、総仕上げをやっていただくそういう重大な責任をお持ちのお立場でございます。国会関係でも国連婦人の十年議員推進連盟というものが超党派、衆参男女の議員を合わせて百八十九人の議員が結成いたしまして、最後の追い込みに拍車をかけてまいるところでございます。  そこで大臣、この婦人差別撤廃条約の批准のためには、その要件を満たすために何と申しましても労働省に一番目玉になる仕事を完成していただかなければならないわけでございます。つまり、雇用における男女平等、これを達成するための法制度の整備をお願いしなければならないわけでございます。御新任に当たりまして、このような仕事に向かって、条約の早期批准に向かって大臣の御抱負をまずお聞かせいただきたいと、こう思います。
  69. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 婦人差別撤廃条約につきましては、総理大臣を本部長といたします婦人問題企画推進本部におきまして、国連婦人の十年が終了する昭和六十年までに批准ができまするようにと、国内法制度の条件の整備に努めるということがもう申し合わされておるわけであります。私といたしましても、労働省としても当然この方針に従って、雇用の分野での最大の目玉は、雇用の分野でのこの男女の機会均等、待遇の平等を確保するための法制と、この法制を整備しなければならぬと、こう思っております。内外、世界における今日の日本地位ということを考えれば、そろそろどころか十分にその潮どきに達したと、こういう考えをいたして感じを持っておりますが、しかし、いま婦人少年問題審議会で鋭意煮詰めておられるわけでありまして、私どもがこの国会に法案を出したいと、こういう気持ちを十分に審議会にもお伝えをしてございまして、関係法案が、審議会が何とかまとまって、私どもが提出できまするように極力この審議の促進をお願いをしておるというのがいまの実情であります。
  70. 久保田真苗

    久保田真苗君 国会に法案提出を目途として審議会の審議を促進していただいているということでございます。  ところで、最近、去年の十二月二十一日に労働省から発表されております審議会の審議状況という資料がございます。これは「婦人少年問題審議会婦人労働部会における雇用における男女平等実現のための諸方策に関する審議状況について」と、こういう資料が出ております。この資料といいますか、このいまの審議の審議状況の位置づけなんでございますがね、これは前々、昨年内に一応答申の予定もあったようなんですけれども、それを中間報告というような形のものではなく、単にいままでの審議の経過を公表したものと見てよろしいのかどうか、これの位置づけについてお願いいたします。
  71. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) お答えいたします。  審議状況についての位置づけでございますが、この発表したものについての位置づけについてでございますが、中間答申というような形ではなく、このような途中経過を発表することは審議会の慣例としてはそう多くないようでございます。しかし、私どもといたしましては、できれば昨年じゅうに審議会の結論を出していただけないかなと思っておりましたところ、やはり労使の意見の違いというものがまだかなり大きい状態で、昨年末までに結論をお出しいただくことができませんでしたので、どういう点に違いがあり、どういう点までは一致したかということをいろいろと各方面に知っていただくということもあるいは必要なのではないか、あるいは有効なのではないかというふうに考えましたので、審議経過として事務局が取りまとめて発表したわけでございます。
  72. 久保田真苗

    久保田真苗君 これには表書きに「今日までの労使各側の考え方は下記のとおりであり、」というふうに、表書きではなくて前文にそういうふうな書き方をしております。「労使各側の考え方は下記のとおりであり、」、こういうふうに書いてあります。しかし、内容を見ますと、こういう書き方で、それらの議論に対し、公益委員の一部からの発言が記載されていると、こういうふうになっております。この公益委員の一部からの発言という書き方あるいは「労使各側の考え方」という前文で書いてあるところを見ますと、私の印象では、公益委員側の審議はいまだしという印象を当然受けるのでございますけれども、この点いかがでございますか。
  73. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) この労使の見解が、いろいろと開いておりましたところ、公益委員先生方の御苦労も大変大きゅうございまして、見解の一致した点を調整をしていただいたわけでございます。  「公益委員の一部」というふうにまだなっておりますのは、公益委員全体としての見解を御発表になるまでに至っていないという経過からそういうふうにしたわけでございます。
  74. 久保田真苗

    久保田真苗君 公益委員の本格的な議論はまだこれからだというふうに了解してよろしゅうございますね。
  75. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) これまでもいろいろ大きな役割りを果たしていただいたと思っておりますが、今後とも労使、公益それぞれの御意見を十分に伺いたいと思っております。
  76. 久保田真苗

    久保田真苗君 と申しますのは、公益委員立場というのは非常に大事だと私は思います。そして、この「公益委員の一部」というような表現で中途半端な意見がこれがすべてだというふうに誤解されることを避けるために私は確認をお願いしているんでございます。その点どうですか。
  77. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) 公益委員全体としてのまとまった意見を御発表になる段階になっておりませんので、このようにいたしたわけでございます。
  78. 久保田真苗

    久保田真苗君 公益委員全体としてのまとまった意見を発表する段階でない、このこと確かに承りました。  ところで、今後公益委員議論が本格化してまいるわけですけれども、公益委員立場の重要性にかんがみまして私は一つ懸念いたしております。それは、現在この婦人労働部会の公益委員は三人いらっしゃいまして、そのうち一人が女性でございます。ところが、この女性の委員が部会長をやっておいでになります。つまり、この委員役割りは部会長として全体をまとめる立場と公益委員として意見を述べられる役割りと二つあると思うんでございますけれども、部会長をしておられる関係上、唯一の女性の委員であるこの方の意見開陳が不十分だという、こういう懸念があるんでございますが、この点いかがでございましょうか。
  79. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) 御指摘のように公益委員、部会でございますので、わずか三人でございます。そして女性の委員はお一人で部会長をしておられるということも御指摘のとおりでございます。部会長の機能からいって部会をまとめるということにむしろ重点を置かれて、御自分の御見解を御発表になる機会があるいは少ないのではないかという御懸念でございますが、そのような場面もあるいはこれまであったかもしれませんが、御自分の御見解をお述べになる必要のあるときには、必ずやそうなさるものと考えておりますし、また御懸念のような点はそう多くないというふうに考えております。
  80. 久保田真苗

    久保田真苗君 これは特に女性の権利の問題を解決するというその内容を持っておりますから、ぜひこの女性の委員に、たった一人なんですから、十分意見を尽くしていただくよう重ねて期待いたしますし、また労働省としても運営の点御配慮をお願いしたいと、こう思うわけでございます。  審議会御自身が濶達になさるということで結構なんでございますけれど、しかしこれは政府提案の法案のもとになるものでございまして、この審議の結果を踏まえてということでございますならば、いずれにしてもそのときには審議のあり方について私ども意見を申し上げなければならない、そういう場面もあるかと思いますので、ひとつ十分御注意をお願いしたいと、こう思います。よろしゅうございますね。
  81. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) 御指摘の点十分注意いたしております。
  82. 久保田真苗

    久保田真苗君 ここで外務省にちょっとお伺いしたいんでございますけれども、婦人差別撤廃条約の性格あるいは中身に関連しまして、この条約が基本的な要請としまして条約の二条(b)項において「婦人に対するすべての差別を禁止する適当な立法その他の措置をとること。」と、こういうふうな要請をしております。また、(c)項におきましては「権限のある国内裁判所その他の公的機関を通じいかなる差別行為からも婦人を効果的に保護することを確保すること。」こんなふうに言っております。  現在のところ雇用関係で男女差別を直接禁止しておりますのは労基法四条「女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱をしてはならない。」とあるものはございますけれど、その他の面では条約でいう同一の雇用機会、昇進、訓練等全般にわたって差別を禁ずる決まりがないわけでございまして、外務省は条約との関連で今後、この効果的に差別を排除する、それに足る立法措置が必要とお考えになると思いますが、この点確認さしていただきたいと思います。
  83. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、婦人差別撤廃条約の第二条、そのとおりでございます。  他方、この条約上の要請をどのように日本の法制上担保されているかという点につきましては、先生いま御指摘のとおり、労働基準法で賃金面についてはそういう規定がございます。  他方、賃金面以外でもこれは先生御案内だと思いますけれども、賃金面以外での差別行為に関する法的救済につきましても、たとえば男女別定年制につきましては民法第九十条、これは公序良俗の規定でございますけれども、これに対する違反としましてこれを無効とする判例が確立しているわけでございますが、しかしながら、この条約上の、二条及び婦人雇用につきましては第十一条でございますけれども、これの要請がどうも現行法令では十分に担保されているとは言いがたいと思います。したがいまして、今後この条約を批准するに当たりましては、雇用平等に関する新規立法などをもって条約内容に即した適切な措置をとっていくことが必要であるかと考えております。
  84. 久保田真苗

    久保田真苗君 ところで、この問題点につきまして、外務省は昨年でございますか、欧米主要国の法制を調査しておられますね。たしか八カ国ぐらいだったと思いますが、その結果はどんなふうでございましたでしょう。お聞かせいただきたいと思います。
  85. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 外務省といたしまして、この条約批准に際しまして、各国の取り扱いぶりを調べるために、これ一昨年でございますけれども昭和五十七年の秋に先生指摘の八カ国、スウェーデン、とカナダ、ポルトガル、それから米国、西ドイツ、フランス、イギリス、オランダの八カ国の状況につきまして調査をしたわけでございます。この調査の結果は、これらいずれの国におきましても、雇用の分野において男女の平等を確保するために何らかの形の雇用平等に関する法律を持っております。この中で、まあ、おおむね同一価値の労働に対しては同一賃金ということを決めているとともに、募集、それから採用、昇進、解雇、訓練等につきましても性別に基づく差別を禁止しております。
  86. 久保田真苗

    久保田真苗君 ただいま、外務省から各国において性別のいろいろなステージの差別を禁止している法制を持っているという御報告がありました。これは八カ国でございますけれども労働省の方でもOECD加盟のような先進国群の対応ぶりをつかんでおられると思いますが、これにつけ加えて、情報ありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  87. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) 労働省といたしましても、主として諸外国の法制につきましては、法規、法令集などを通じまして勉強いたしております。そして、いま外務省がお調べになった以外にも若干の国については資料などが整っているわけでございますが、共通いたしておりますのは、各国ともに雇用における男女の平等を確保するための法律、制度を持っているということでございます。
  88. 久保田真苗

    久保田真苗君 ところで、労働省にでございますが、この条約の内容日本はすでに署名しております。かつ、八五年までの批准を前国会で総理から所信表明していただいております。条約の関連で、この対象とする差別なんでございますけれども、これはお聞きするまでも本当はないんですが、一応確認さしていただきたいんですが、条約の前文に「婦人に対するあらゆる形態及び形象の差別を撤廃するために必要な措置をとることを決意して、」と、まずあります。第二条(b)項には、「婦人に対するすべての差別を禁止する適当な立法その他の措置をとること。」と、これを受けて十一条では具体的にその内容を掲げております。つまり、同一の雇用機会、これには当然就職から職種、配置あるいは昇進昇格、定年、解雇といったようないろいろな段階を含むと思われますが、職業訓練も含めて、その他いろいろありますが、全部は読み上げません。つまり、雇用の全ステージをカバーしなければならないのは当然だと考えますが、局長の御見解はいかがですか。
  89. 赤松良子

    ○説明日(赤松良子君) 御指摘のとおり、雇用の全ステージ、すなわち募集、採用、配置、配置転換、昇進昇格、教育訓練、福利厚生、最後に定年あるいは解雇というようなものまで、全ステージをカバーするというふうに考えております。
  90. 久保田真苗

    久保田真苗君 そして、繰り返しになりますけれども、第二条の(b)項で、「婦人に対するすべての差別を禁止する適当な立法その他の措置をとること。」とございます。ここでこの禁止、プロヒビット、禁止という字句が使われております。また、「適当な立法」とそれから「その他の措置」との間はアンドで結ばれているということを重ねて指摘しておきたいと思います。つまり、あらゆる雇用のステージの差別を禁止していく立法及びその他の措置が必要だと、このように考えるわけでございます。いやしくも条約を批准するためには、少なくとも、たとえば就職の門戸が平等に開かれているかどうかというような、こういう重大問題に関して差別が禁止されなければならないのは当然条約の要請であると、そういうふうに思いますが、局長の御見解いかがですか。
  91. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) 次の十一条には「同一の権利特に次の権利を確保するため、雇用の分野における婦人に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる。」というふうに書いてあるわけでございます。その適当な措置の中には、以上に掲げてございます立法が入るのは当然というふうに考えております。
  92. 久保田真苗

    久保田真苗君 私が申し上げたいのは、この条約の基本的姿勢からして、いかなる差別も許さないと。あらゆる形態の差別を禁止していく措置が必要である、こう言っているわけだというふうに解釈しております。この点いかがですか。
  93. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) すべての適当な方法によって差別を撤廃する政策を追求することに合意するというふうに書いてあると存じます。
  94. 久保田真苗

    久保田真苗君 すべての差別が撤廃されるためには、まずそれを禁ずる立法が必要だというふうにお考えになりませんか。
  95. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) 立法は必要と存じます。
  96. 久保田真苗

    久保田真苗君 ありがとうございました。  次に、救済機関の問題なんでございますが、この審議状況についての発表文の中には救済機関のことは余り触れられておらないと思います。この点、審議会ではどのくらい突っ込んだ議論があったのか、あるいはまだ余り議論されていないのか、その点を伺いたいと思います。
  97. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) 審議会の議論でございますが、いろいろと御議論いただいているわけでございますが、救済機関に関しましては労働側の委員の方から救済機関が必要であるという御意見が出ております。しかし、どういう内容の救済機関であるべきかというような具体的な内容につきましては、まだ議論がそこまでは進んでおりません。
  98. 久保田真苗

    久保田真苗君 現在、差別された婦人は、先ほど外務省も御指摘になったように、裁判所へ訴訟を起こしております。そして憲法十四条、これはすべての国民の法のもとの平等、民法九十条、これに基づく公序良俗に違反する行為というような、かなり回りくどい方法をとって救済を得ておるわけでございます。無論、多くの婦人が勝訴を得ておりますけれども、それには二年、三年、あるいは時には十年以上もかかって結果を得ているわけでございます。その上、このような訴訟を起こす方々は大概の場合もう会社をやめる決心をした方なんでございます。そして、しばしば労組が長期にわたって支援をするというような、そういう後ろ盾があって初めて訴訟が成り立っているというケースが多いわけでございます。大抵の人は訴訟までいかず泣き寝入りをしていることも多いと思います。  こと雇用の問題、つまり働いて食べていくこと、こういう問題に関しては、これだけの救済ではとても本当に救済されたとは言いにくい場合が多いのではないかと思います。  これは私が申し上げるまでもなく、大臣局長皆御存じのところでございます。  だからこそ平等法が必要である。その平等法の中にいかなる差別行為をも迅速に排除していく効果的な保護をすることを、それを確保するための救済機関が必要だと思います。この点いかがでございますか。
  99. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) 御指摘のような考えを踏まえて労働側からそのような意見が、先ほど申し上げたような見解が述べられたものというふうに理解をいたしております。その点十分にこれからの検討課題だと存じております。
  100. 久保田真苗

    久保田真苗君 私は効果的に実効ある婦人の権利を保護することを確保する、これが条約の要請だと思いますので、どうぞそのような観点からの審議が行われますよう、よろしくお願いしたいと思います。  また、社会党は一九八三年から法案を出しております。毎年提出しております。この分野は新しい分野でございますから、やはり実態を調査しまして、労使の言い分を十分に聞いて、そして、公正、客観的に審査する、そういう中央、地方の委員会の設置がぜひ必要だと思ってこれを提案しているわけでございます。  実態をよく見ながらガイドラインをつくるという仕事もきわめて大切でございますし、そうしなければ労使に対しても十分誠実に対応できていないのではないかと、そんなふうに思うわけです。  もちろん、他の野党からもそれぞれ御提案が出ております。それぞれに違いはありますけれども、意図するところは雇用の全ステージをカバーする立法であること、そして禁止規定を設けてそれを禁ずるという立場をはっきりすること、そしてかつ紙に書いただけではだめだから、これを迅速に救済していく委員会のような救済機関をきちんと制度化すること、この三点がほぼ共通したポイントだと私は思っております。  そこで、ぜひこれらのポイントが長年野党から提案されているところでございますので、十分にこれらのポイントに御配慮いただきたい。審議会の御審議の内容にもそれらのことが検討されていくような、そういった運営をお願いしたいと思いますが、いかがでございますか。
  101. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) 先生のただいまお触れになりました、社会党の数次にわたって国会に提案されました法案、あるいはその他、それぞれ野党の方から御提案あるいは発表になっております法案等については、十分勉強をさせていただいているわけでございます。また、これが今後の審議にどのような法案が提案されており、どのような内容のものであるかということは、審議会の先生方にも十分お知りを願いたいというふうに考えております。
  102. 久保田真苗

    久保田真苗君 大臣にお願いしたいと思います。  やはり、私どもが長年にわたって主張してまいりました実効ある救済機関を伴う、そしてすぱっと明快な、後日にいろいろな混乱を起こさないような明快な禁止規定、こういったものを私どもぜひ必要だと思っておりますので、労働省でもこのような観点をぜひ前向きに検討していただく、そのように下部を、大臣のお立場から督励していただきたいと、このように思いますが、大臣のお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。
  103. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 私自身社会党の案もいま勉強をしておるところでございます。それから、その他の野党の案もございます。非常に共通した点も、その中にはいまおっしゃったような点でもございます。まあただいま局長がお答えをいたしましたように、審議会の論議におきましても各野党の皆さんの御意見も反映をいたしておることと思います。しかし、この審議会で各政党の意見も十分勉強をせられて、審議会として公正な案が出てくるように私どもは期待をいたしておるということでございまして、何とかひとつ、来年が十年目ですから、婦人の十年目の年、最終の年ですから、タイムリミットは来ておるわけでありますので、何とかしてひとつ、皆さんの、各政党の御意見もあるでございましょうし、審議会の皆さんの御意見もあるでありましょうし、そこをひとつ、小異を超えて大同について、そして世界の中の日本としても恥ずかしくない男女雇用平等法という法律ができまするようにと期待をいたしておるわけでございまして、いま委員のおっしゃったような点につきましても、私ども十分勉強していきたい、そして審議会の御意見がまとまっていただきたいなと切望をいたしておるわけでございます。
  104. 久保田真苗

    久保田真苗君 私どもも、重ねて労働省での作業の進捗状況をよく拝見し、私どもの申し上げることも手おくれにならない時点で申し上げてまいりたいとこう思いますので、今後ともいろいろな形で国会の方に、状況を早目、早目にお知らせくださるようお願いいたします。  じゃ、労働省、どうもありがとうございました。  次、文部省、お願いいたします。  実は、この婦人差別撤廃条約の批准に関連して、雇用問題以外にも少なくとも二つの重要事項があるわけでございます。一つは国籍法なんでございますけれども、昨日法制審議会がなかなかきれいな答申を出したということで、まあよかったと思っているわけでございますが、もう一つの問題は文部省関係の教育課程の問題でございまして、これは立法とか法改正の問題ではなく、学習指導要領という運営上の問題なんでございます。むしろ、動きがわかりにくいんでございますけれども、当然のことながら、婦人差別撤廃条約の批准に見合う対応を新大臣にもしていただける、そのように促進していただけるものと思っておりますけど、いかがでございましょうか。
  105. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 久保田先生からの御指摘をいただきました点、わが国では高等学校におきます家庭一般、四単位を必修といたしておりますことをお話しをいただいたものと受けとめておりますが、高等学校におきます家庭一般の必修は歴史的な背景のもとにわが国の実情に沿った家庭教育という、そういう立場から展開をしてきたものでございます。しかし、このことが、男女間に同一の教育課程を確保すると規定しました婦人差別撤廃条約第十条(b)項に抵触するのではないかという、こうした意見もあることは十分承知をいたしております。しかし、家庭一般の履修方法を変更するかどうかについては、他教科との関連もございますし、やはり教育課程全体の中での検討が必要であろうというふうにも考えております。したがいまして、近く発足いたします第十四期中央教育審議会——中教審におきまして、十三期に引き続きまして初等・中等教育教育内容全般にわたりまして審議が行われることになりますので、その審議の中にもこのことをぜひ議論をしていただくように、そしてこの条約第十条(b)項に抵触しないように、そのことを十分踏まえながら検討をしていきたいと、こう思っているところであります。  しかし、いずれにいたしましても、文部省としましては、基本的には家庭科の取り扱いが条約の批准の妨げにならないように、このように対処していきたいと、こう思っております。
  106. 久保田真苗

    久保田真苗君 家庭科の問題が条約の批准の妨げにならないようにというのもなかなかわかりにくいんでございますけれども、条約の場合は後ほど外務省から御見解をお聞かせいただきたいと思うんです。  条約の五条にまず、男女の役割りを固定化するようなことをやめようという趣旨がございまして、条約の十条の(b)、(c)におきまして同一の教育課程についての機会を平等に確保すると、こういう表現になっております。また、(c)では「教育のすべての段階及びあらゆる形態における男女の役割についての定型化された概念の撤廃。」という、こういう表現になっているわけでございますね。  現在の指導要領ですと、高校では女子だけに家庭科が必修となっている、それを四単位を下らないこととされているわけです。その裏側としましては、体育で女子は七から九単位だけれども、普通科の男子には十一単位を必修とするというふうに差がつけられているわけです。また、中学でございますと、技術・家庭におきまして十七領域中七領域を選択履修することとしておりますんですが、この場合、男子に対してはAからEまで、つまり木材加工、金属加工、機械、電気、栽培から五領域をとりなさいと、女子には被服、食物、住居、保育関連の五領域をとりなさいと。ただし、最近、お互いに相手の領域に一領域ずつ相互乗り入れをするというような一歩前進があったことは確かなんですけれども、しかし男女別に領域を決めてかかっている役割り固定化の点では、依然としてこれが続いているわけです。  そこで、外務省からお聞きしたいんですけれども、この関係でもって条約の求める条件を十条(b)項、(c)項あたりと関連してどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、お聞かせください。
  107. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 先生指摘の十条(b)項でございますけれども、これはまず、文理上も同一の教育課程ということでございますし、他方、この条約が作成過程において審議されましたいわゆる審議経緯におきましてもいろんな議論があったんでございますけれども、これは同一にすべきなのか、あるいは同様にすべきなのかというような議論がございまして、結局、同様という議論が排除されて、文言上はイコールではなくてセイムになった、こういうふうな経緯がございます。  そういうふうな文理上及び審議経緯を照らしますと、男女間では、同様ではなく、同一の教育課程を確保するということを決めているものと、こういうふうに解釈しております。
  108. 久保田真苗

    久保田真苗君 同一の教育課程の機会が平等に開かれている、こういうことでございますね。
  109. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 同様ではなく、同一のということでございます。
  110. 久保田真苗

    久保田真苗君 外務省はこの問題点についても八カ国の調査をおやりになりましたけれども、結果はどんなぐあいでしたでしょうか。
  111. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 本件につきましても、先ほど御説明申し上げましたように、一昨年の秋にやったわけでございます。その結果は、確かに教育問題につきましては各国政府の関与の仕方は一律ではございませんけれども、カリキュラムの作成の指針となるようなものにつきましては、この八カ国すべての調査対象国におきましては男女を平等に取り扱っておりまして、この中でも、家庭科、体育につきましても男女同一の機会を確保している、こういうふうな調査結果でございます。
  112. 久保田真苗

    久保田真苗君 文部省の方でも、この関係で外国の法令、指針等をお調べになったことがおありでしょうか。もしありましたら、ただいま外務省のお述べになりました調査結果の共通点と比べてどうだったか、お聞かせいただきたいんでございますが。
  113. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 担当官を派遣いたしまして調べたことがございます。  それで、基本的にはいま外務省からお話のありましたのが大勢であるということで、一、二の国では州ごとにそれを決めるというカリキュラム上の取り扱いをしているところがありますので、そういうところにおいては若干の取り扱いが異なるというところがあるように報告を受けております。
  114. 久保田真苗

    久保田真苗君 文部省となさっては、これは法律の問題じゃございませんで、すでに憲法にも教育基本法にも教育の性別、機会均等ということがうたわれているんでございますから、学習指導要領の運用の問題が主だと思うんですけれども、実際にこれが批准の支障にならないようにということは、具体的にいまどういう検討なり対応なりを考え、またしていらっしゃるのか、ちょっと具体的にお聞かせくださいますか。
  115. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 戦後、日本学校制度が男女平等、機会均等という制度のもとに教育を展開してきたわけです。そして一方、日本子供たちにどういう機会を与えたらいいかということから、明治以来いろんな努力を重ねて、女子に対する教育の展開、男子に対する教育の展開の歴史の積み重ねが今日の学校教育の中身として出てきているわけです。  今日まで国内的にはいまのような家庭科の取り扱いが男女平等に反するとか、機会均等に反するという論議を一度も受けたことはなかったわけです。しかし、今回、条約批准という問題に直面して、いま議論の行われているような問題が提起されたわけです。  そういう状況でございますので、教育内容を改定するに当たりましては、少なくとも十年がかりの期間をかけていままで改定をしてきたわけです。先回改定いたしましたのが五十二年度、そして高等学校で完成するのが五十九年度と、それくらいの長い時間をかけて教育内容の移行を図ってきている、慎重にやってきているという、いわば教育の持つ特殊性というのが今日あるわけでございます。したがいまして、条約の批准に妨げにならないようにという一方の要請がありますので、われわれとしては中教審答申を踏まえまして方向づけが出されるということで、その方向で作業が着手されるということが国内でとり得る最大の努力ではないかというふうに思っているわけでございます。そういうようなわが国の特殊な事情を御了解いただければ、そのこと自体が条約に対する抵触であると言って国際的に非難を受けることはなかろう、こういう感じで大臣は先ほど基本的な態度を説明申し上げたわけでございます。
  116. 久保田真苗

    久保田真苗君 手続的な問題と内容的な問題と両方あると思うんでございますけれども、これは、私、条約の趣旨は、決して何か教育課程の違いを目くじらを立てているというよりは、むしろ新しい時代に向かって新しい女性の役割り、そして、男女のいままで余りにも固定化した、そういった女性の進出を妨げるようなそういった教育、それをやめて、男女で共同責任を持って社会も家庭もやっていこうという、こういう志向をしているんだと思うんでございます。  それで、この問題は、立法の問題でないですけれども、それに劣らぬ非常に重要な問題だと思うんでございます。何しろ教育は一生に影響いたします。学校を出てからの職業生活にも、また家庭、社会生活にも出ていくわけでございます。ですから、子育てとか栄養とかに音痴な男性を再生産していく、あるいは電気、機械、運動の面で音痴な女性を再生産していく、そういうことをしないためにも、それから子供の才能とか興味とかがうんと広がってきております今日、男女別の狭い殻に子供たちを閉じ込めていくというような、そういった方針は、この際、この機会にはっきりと再検討していただきまして、条約の趣旨が本当に生かされるように文部省としても最大の御努力をお願いしたい、こう思いますんですが、この婦人の十年のまとめを、総仕上げをしてくださいます文部大臣のお考えを、御決意をお聞かせいただきたいと思います。いかがでしょうか。
  117. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 長い間婦人問題について大変な御勉強と御努力をしてこられました久保田先生でありますし、かつて私も総理府にしばらく仕事をさしていただいたこともございまして、久保田先生のこの問題にかける情熱は本当に尊敬をいたしております。先生のその理念、お考え文部省としても大事にしていきたい、こう思っておりますが、先ほど担当局長から申し上げましたように、教育の課程内容は大変慎重の上にも慎重を期して改定をしていかなけりゃならぬ、これは先生もよく御存じのとおりでございます。したがいまして、次の中教審先生理念や、またこの条約のきわめて大事な意義を十分踏まえながら、女子の家庭一般の教科内容について十分検討を加えて、でき得る限り条約の批准に妨げにならない、矛盾しないようなそうした考え方を教科内容に盛り込めるように中教審にもそのことを求めてまいりたい、こんなふうに思っております。
  118. 久保田真苗

    久保田真苗君 ぜひ条約に沿い、これに矛盾しないような運びをお願いしたいと思います。  ついでにもう一つ大臣にお願いしたいんでございますけれども中教審の任期が最近切りかえになると承っておるんです。ところで、中教審の策定する政策につきましては、その半分は女性が結果を受けるわけなんですね。ところが、中教審の中には女性の数はきわめて少ない。現在、せいぜい三人ぐらいだったと思いますんですけれども、このような教育の分野、特に人材もいると考えられますこういう教育の分野に、ひとついまの大臣のお心意気を中教審に女性委員をふやすという、そういう御尽力であらわしていただけないものでしょうか、いかがでしょうか。
  119. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 先生の御趣旨を十分に踏まえながら、先ほど本岡先生の御質問の際にも申し上げましたけれども、できるだけ幅の広い、各分野の皆さんの御意見を賜れるようなそういう構成にしたいと考えております。
  120. 久保田真苗

    久保田真苗君 どうもありがとうございました。  次に、話題が変わりまして、池子の弾薬庫跡への米軍宿舎建設の問題に移らしていただきたいと思うんです。  この神奈川県逗子市にあります池子弾薬庫は、これまで両院で何度も取り上げられてまいりました。  昭和十三年に海軍に接収され、昭和二十年に米軍が接収、都合四十五年の間立入禁止でございました結果、首都圏に他に比を見ない原生的な自然の生態系が戻ってきているという、そういう貴重な自然の宝庫なんでございます。二百九十ヘクタール、日比谷公園の十七倍ほどの広大な森林がございまして、首都圏に大気とか気象とか気温とか、そういった無形の恩恵を広く施している、こういうふうに思われるわけです。  ところが、ここに米軍宿舎を大規模に建てるという計画が出されまして、神奈川県会はこの問題で五十五年から五十八年の間に少なくとも四回、逗子市議会も昨年七月に地方自治法九十九条第二項の手続を踏んで、緑の破壊に反対し、自然公園にしたいので返還してもらいたいという、大意そういった内容意見書が県、市から出されております。市長それから知事も反対意見の表明をしておるというような経過がございます。  ところで、きょうは文部省の時間でございますから、特に文化財のことについてお尋ねしたいんでございますが、この池子地区はそういった立入禁止のために、自然、つまり動物、植物、鳥類等につきましても、また埋蔵文化財、遺跡につきましても、ほとんど調査がされておらないわけでございます。  まず、文化庁にこの池子の遺跡、または埋蔵文化財について、どの程度つかんでいらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
  121. 加戸守行

    説明員(加戸守行君) 先生お話しございました池子地域につきましては、文化庁で作成しております全国遺跡地図の中に埋蔵文化財として一カ所が記載されております。  この一カ所は、いわゆるやぐらと呼ばれております山腹を掘り抜きました横穴式の個室という形で承知いたしております。
  122. 久保田真苗

    久保田真苗君 その一カ所は、それは戦前からわかっていたもんでございますね。ちょうど今度の建設予定地に入っているわけでございます。しかし、それ以外のものについては、よくわかっておらないわけでございますけれども、最近、防衛庁に伺いますが、五十六年度から調査費というものがついておりますね。そして、最近になって予備調査、それからアセス調査を施設庁がおやりになっている。つまり、現在の時点では、池子の自然や文化財について一番よく知っていらっしゃるのが施設庁であると思われるわけです。施設庁は、この調査からどんな遺跡や埋蔵文化財を確認していらっしゃるか教えていただきたいと思います。
  123. 小澤健二

    説明員(小澤健二君) お答えいたします。  ただいまの先生からの御質問に対しましては、現在私ども承知いたしております住宅建設計画、およそ八十ヘクタールでございます。八十ヘクタールの中には、いま文化庁の方から申されました全国遺跡地図に記載されておるやぐらが一カ所存在しておるということを確認いたしております。それで、その後この調査につきましては、昭和五十七年度には地形、それから地質等の調査を実施いたしまして、昭和五十八年度には、これは昨年の七月以降でございますが、環境影響調査等を実施中でございまして、その他全体計画等の必要なものにつきまして、いま鋭意調査をいたしておるところでございます。
  124. 久保田真苗

    久保田真苗君 それはいつできて、公表されるのかどうか。
  125. 小澤健二

    説明員(小澤健二君) この調査は本年の三月末で一応終わりますが、この公表につきましては、その公表すべき時期について、結果が出ましたならば、この公表をするということについて検討さしていただきたいと考えております。
  126. 久保田真苗

    久保田真苗君 公表はなさるわけですね。
  127. 小澤健二

    説明員(小澤健二君) 公表の時点がまいりましたならば、これを検討させていただいて、公表の方に鋭意進めたいと考えております。
  128. 久保田真苗

    久保田真苗君 施設庁の池子のアセス調査についてですけれども、これは神奈川県の環境影響評価条例、いわゆるアセス条例を尊重するとこれまで言ってこられたわけでございます。つまり、これはこの条例に従って、アセスの手続を踏んでやるという、こういうふうに受け取ってよろしいわけでございますね。
  129. 小澤健二

    説明員(小澤健二君) さようでございます。そのとおりでございます。
  130. 久保田真苗

    久保田真苗君 ところで、最近の新聞によりますと、防衛施設庁の方から、これは二十一日の新聞ですね、各紙に出ております。池子弾薬庫の利用問題で防衛施設庁が説得訪問していますね。これは、逗子市長に会われて、いろいろ協力してくれればこういう条件を出すがというようなことを言っていらっしゃる。新聞記事のことでございますので、ひとつ直接どんな交渉をなさったのかお聞かせいただきたいんですが。
  131. 小澤健二

    説明員(小澤健二君) 池子弾薬庫に米海軍の家族住宅を建設することにつきまして、一月二十日でございます、防衛施設庁の次長ほか逗子市を訪問いたしました。本件住宅の建設を早急に実施したいので、理解と協力を得たい旨の要請をしたわけでございます。これに対しまして、市長の方から了解は当日得られなかったわけでございますが、本計画に対する国の決意はかたい、この現状をはっきり見きわめて、直ちに市会と意見調整の上、追って回答したいということでございました。
  132. 久保田真苗

    久保田真苗君 新聞記事によりますと、計画への協力が得られれば、かねてから市が第二運動公園として返還を求めてきた弾薬庫南側十二ヘクタールの土地の一部返還を前向きに検討してもよい、そしてさらに住宅建設戸数も減らしてもよい、こういって書いてございますけれども、これは事実ですか。
  133. 小澤健二

    説明員(小澤健二君) 大規模公園のお話はございましたのですが、十二ヘクタールの返還という具体的なお話はございませんでした。
  134. 久保田真苗

    久保田真苗君 一応こういうお話し合いは出ているわけですね。
  135. 小澤健二

    説明員(小澤健二君) はい、そのお話は一応出ております。
  136. 久保田真苗

    久保田真苗君 施設庁はこの神奈川県のアセス条例を尊重し、このアセス手続にのっとってやると、こう言っていらっしゃるわけです。以前の国会の発言でもそういうことを言っておられるわけですね。ところが、こういう一種の、何というか、不確かなえさを出して、こういうアセス条例、これに基づく手続が行われて、そしてこの神奈川県のアセス条例というのは、これに基づいて情報公開する、あるいは説明会を持って住民からの意見を聴取する、それに対してさらに見解書を出す、最後に知事が査定書を出すというような、そういう手続を決めているわけでございます。この調査の結果も公表されないうちに、こういう裏での取引をするということは、大変住民の協力を得にくくするものだと思いますが、そうお思いになりませんか。
  137. 小澤健二

    説明員(小澤健二君) 一応、先ほど申し上げましたアセスにつきましては、当然これは環境調査ということで、これ十分尊重されるわけでございまして、一応いま先生の御指摘の市長に会ったということにつきましては、市長さんの一応御要望ということをお聞かせいただくということで参った次第でございます。
  138. 久保田真苗

    久保田真苗君 この問題は住民が非常に関心を持っております。懸念をしております。逗子市では市民大会も開かれ、自然と子供を守る会がワシントンに行ってアメリカ側に直接訴えたり、緑の作戦センターというようなものを持ったり、日本野鳥の会の会員たちの協力があったり、また米国側の自然保護団体も幾つもこの成り行きを懸念して見守っているわけでございます。ぜひ、アセス調査をもうなさっているわけですから、そのアセス調査の手続をちゃんとやっていただいて、住民との話し合いを決して阻害しないという、これだけの住民の意思というものを尊重していっていただく、こういうフェアな公正なやり方をとっていただきたい、こう思うんですが、いかがでしょうか。
  139. 小澤健二

    説明員(小澤健二君) いまの先生からのお話、十分私どもも理解しておりますので、今後そのような方向で進めさしていただくということでございます。
  140. 久保田真苗

    久保田真苗君 これは防衛庁の時間に引き継ぐことにいたしまして、文化庁の方に一言お願いいたします。  確かにこの文化庁の一カ所の遺跡の指摘はあります。けれども、この北側鎌倉市、南側逗子市には相当のやぐら群、横穴群の散布する記録があるんですね。いわゆる池子のこの地帯だけが遺跡調査の空白地帯になっているわけです。しかし、地形その他から考えまして、この中には未調査の遺跡がまだ幾つもあるというふうに私は考えますけれども、この可能性について文化庁どうお考えになるでしょうか。
  141. 加戸守行

    説明員(加戸守行君) 文化庁といたしましては、この池子地域の埋蔵文化財の所在状況について調査したことがございませんので、現段階で明言することは差し控えたいと思いますけれども先生指摘のように、当該地域の周辺には相当数の埋蔵文化財が点在しておるということは事実でもございますし、周囲の状況や地形等から勘案いたしますれば、現在文化庁で把握しております先ほどのやぐら以外のものについても、いわゆる埋蔵文化財が所在するということは十分考えられるわけでございます。
  142. 久保田真苗

    久保田真苗君 この池子のような文化財の調査とか保護に関連して、その責任体制はどういうふうになっておりますんでしょうか。  つまり、こういうことを、こういう文化財を保護する責任者はどこなんでしょうか。
  143. 加戸守行

    説明員(加戸守行君) 文化財保護法に基づきまして、それぞれ文化庁のなすべき仕事あるいは地方公共団体の役割り等ございまして、個々の事案等によっていろいろな対応が違うわけでございますが、基本的には、まず開発計画等が具体化されました段階で当該地域に埋蔵文化財が所在するかどうか、そういった状況の把握、あるいは埋蔵文化財の所在がわかりました場合におきます保存、そのまま現状を保存すべきか、あるいは記録にとどめると、いわゆる記録保存を行うかというような状況の決定、あるいはそれに基づきまして記録保存をすべき場合には発掘調査を行って記録保存をするという体制がございまして、基本的には事業者あるいは地方公共団体等の行為に対しまして文化庁といたしましても十分な指導をする、こういうような仕組みになっているわけでございます。
  144. 久保田真苗

    久保田真苗君 この問題につきましては、幾つかの郷土の研究家たちのいろいろな情報があるんでございます。私は素人でございますけれども、塚松というところから、恐らく古墳時代から奈良時代までにしかなかった直刀が見つかったとか、それから石のやじり、石器、土器などが発見され、昭和三十八年に駐留軍要員が大型蛤刃、石おのを発見している。こういうものは弥生時代中期の集落があったのではないかと。いろいろな民間情報ですけれども、こういった情報がございますので、ひとつこの地域が自然プラス文化財の非常に重要な問題のある土地だということを十分に頭に置いていただきまして、今後この問題を見守っていただきたいと、こういうふうに思いますんですが、文部大臣いかがでございましょうか、この点につきましては。
  145. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 久保田先生指摘のとおり、自然とそして長い日本の歴史を後世に残してくれる埋蔵文化財を大切にしていかなきゃならぬ、この姿勢は私も同じような考え方でございます。文化庁もそのような姿勢で埋蔵文化財を大事にしていきたい、こう考えております。  しかし、現実の問題として、計画に沿った国や地方公共団体の開発、あるいはそれぞれの計画をまた進めていかなきゃならぬ実際の状況も、またこれも認めていかなきゃならぬところでございますから、この辺につきましては、先ほど私が申し上げた一番大事な文化財をしっかり守るというこの基本姿勢にのっとって、文化庁そしてまた地方の県や市を指導していきたい、このように考えております。
  146. 久保田真苗

    久保田真苗君 ありがとうございました。質問を終わります。
  147. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 午前の審査はこの程度とし、午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      —————・—————    午後一時二十一分開会
  148. 安恒良一

    委員長安恒良一君) ただいまから決算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、文部省労働省及び科学技術庁決算について審査を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  149. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私も婦人に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約について種々お伺いしたいと思いますけれども、午前中同僚議員のるる質問がございましたものですから、それを避けまして、少し観点を変えて、あるいはまた重なる部分もございますかと思いますが、お伺いをしたいと思います。  私どもこの婦人差別撤廃条約を批准するに当たって幾つかの問題があることはよく存じておりますが、このことに向けて公明党といたしましても男女雇用平等法等、案を提出しておりますけれども、まず労働省にお伺いいたしますが、この立法措置をしていただかなければならない経過の中で、いま婦人少年問題審議会の婦人労働部会で審議されている事柄、その中で一番ネックになっているものは何だというふうにお考えでしょうか。
  150. 赤松良子

    説明員(赤松良子君) お答え申し上げます。  婦人少年問題審議会の婦人労働部会では機会の均等と待遇の平等を確保する範囲及びそれに対する措置についてが第一点、労働基準法の女子保護規定の見直しについてが第二点、その他女子の就業と家庭責任との両立を可能にするための条件整備として育児休業普及対策等、大きく分けますとその三つに関して検討が行われているわけでございますが、お尋ねの問題点といたしましては、雇用における男女の機会の均等と待遇の平等を確保するために立法措置が必要という点については一致しておりますが、その立法措置の中身、つまり企業に対してどの程度の義務づけをするかという強さと申しますか、そういう点につきましては労使の見解が分かれております。また、労働基準法の女子保護規定につきまして、妊娠出産にかかわる母性保護規定はこれは労使双方とも大切ということで一致いたしておりますが、それ以外の規定につきましては男女が同一の基盤に立って働くという観点から見直しを行う、その見直し内容、どの部分を改正が必要かあるいはいつから改正していくべきかというような点に関しまして意見が分かれているわけでございます。
  151. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 新任の労働大臣は去る金沢市で開かれた閣僚の就任祝賀会で、論議の的になっている現行労働基準法の女子保護規定は母性保護以外実情に応じて外していくというふうに語られておりますけれども、この点大臣にお伺いいたします。
  152. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 金沢で記者の質問にお答えをしたことはございますが、相当、五分以上十分ぐらいお話し合いをしたわけでありますけれども、一行にしてそういうふうな記事になったんだと思いまして、私の考えておるところを、意を尽くしていないように思います。  いま局長から御返事をいたしましたように、審議会では、この母性保護規定は、これは残すんだ、これは文句はない、しかしそのほかの点につきましては見直しをやろうということでございまして、新聞に出ておる実情に応じて外していくというようなのは、母性保護規定以外について見直しをして、そしてこの問題はどこまで見直しをするのか、その程度はどこまで改正をするのかというようなことについていま審議をやっておるので、労働省としてもその審議を見守って、そしてうまく結論が出たらひとつ今度は潮どきだから男女雇用平等法を国会に提出をしたいと、こういう趣旨のことをお話をした。内容につきましては今赤松局長からお話を申し上げたとおりという程度でございます。
  153. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 午前中の同僚委員の発言に対して、大臣は小異を捨てて大同につくというようなお話をなさいましたけれども、これはどういう意味でしょうか。
  154. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 私は、内外の情勢から見まして男女の雇用平等法というのは、日本の労働政策にとりましては、また社会的な影響というものも考えまして非常にエポックメーキングな、大事な法律であろう、こう思っておるのです。しかし、審議会などにおきましてもそういう男女雇用平等法というものはつくらにゃいけないという総論は賛成になっておるわけですね。ただ、先ほど局長が申しました各論の、いろいろ基準法の女子保護規定の細かいところにつきましては、さあどの程度に改正するのかというところがいろいろとまだコンセンサスができていない、こういうことですね。それは、労使があれば当然意見の食い違う点も出てくるだろうと思います。ですけれども、私といたしましては、総論賛成各論反対で終わっちゃって、そうしてどうもこの法律が成立しないということになるとこれはまことに残念なことになるので、そういうことにならないように、ひとつどうぞコンセンサスをおつくりを願いたい。小異を捨ててとは申しませんで小異を超えて大同にと、こう申し上げたわけでございます。
  155. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 重ねてお伺いいたしますが、そういたしますと、大臣は婦人差別というものをどのような概念でとらえておられますか、お伺いいたします。
  156. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) まあ、日本の最近までのこの動きというもの、社会状況とかあるいはまた労働行政などにつきましても、男女雇用平等法がありませんもんですから、これは現場におきましてはいろいろとやっぱり雇用の不平等ということがあっただろうと、あったと思いますよ。それをひとつ今度この機会に改正をしていくということは、先ほど申しましたエポックメーキングなことであると、こう思って、私はまあ非常に前向きに考えておると、こういうことでございます。
  157. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私たち女性の立場から申しますと、この条約の第十一条にあります(a)から(f)までの権利の一つ一つは、どれをとってみても小異なるものは一つもございません。とにかくこういう一つ一つの女性の働く権利をしっかりとお認めいただいて、いままでいまおっしゃられたようにあったと思われる差別というふうなものが解消されていくよう、女性が働くいい環境をつくっていけるようなそういう立法措置を労働省にお願いいたしたいというふうに思います。  次に、文部省の方にお尋ねいたします。  文部省にお尋ねいたしますのは、先ほど同僚議員の方からも質問がありましたように、家庭科教習の問題で私もいささかお伺いをしたいわけでございますが、先回の行政改革特別委員会で公明党からこの問題をお尋ねいたしましたときに、中教審答申待ちであるという答えをちょうだいしてありますが、この答申というのはいついただけるのでしょうか。
  158. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 初等教育についての答申を第十三期の中教審にお願いをして、そしてその中教審経過報告ということで任期切れになったわけでございます。そして、十四期の新しい中教審の構成が決まると思うんです。経過報告の形でございますから、その中で最終的に論議を詰めて最終の答申をいただくということで、これについては中教審の発足の時期、それから審議のやり方その他によっていまのところいつごろということの見通しをこの時点で申し上げることはちょっと困難でございます。
  159. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 この中教審での審議の中身があると思うんですけれども、およそどんなことがいま課題になっているわけですか。
  160. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) まず、幼稚園から高等学校までの教育について、幼稚園もほとんど一〇〇%の就園率、高等学校も九十数%という、いわばほとんどの国民教育を受けるような状況に量的になっている。そういう状況を踏まえて、現在の幼稚園から高等学校までの教育内容の与え方はこれでいいかというのが、基本的な検討のポイントであります。  そこで、具体的には幼稚園と小学校の関係、それから小学校における低学年の教科構成の問題、それから中学校高等学校における教科構成の問題、そういう全般的に検討を願って、先回経過報告という形で発表されたわけでございます。
  161. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 この条約の十条の(c)で「男女の役割についての定型化された概念の撤廃。」ということがうたわれておるわけですけれども、このことについて大臣どのようにお考えでございましょうか伺わせてください。
  162. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) すべての教育またすべての社会制度、これは男女の差別があってはならぬということは言うまでもないことでございます。しかし、教育の中身については、そういういろんな見方があると思うんですけれども、ここにございます家庭科におきます議論の中には、いま議論になっておりますのは家庭科の問題でありますから、家庭科の科目を選ぶことについてそれが男女の差別をしているのではないかという、そういう指摘はあるわけですが、教育内容あるいは制度というのはそういう観点からやっているわけではありませんし、長い日本教育の歴史の中で日本の教科の内容として定められてきたものでございますから、私どもとしては、その一番先生がいま御指摘なさっておられます差別がなされないような状態に、ぜひこの教科内容もまた教科の科目もしていかなきゃならぬ。こういう意味で、ただ教育の中身や制度はでき得る限り幅広い多くの皆さんの中から意見を出していただきたい、こういうことで中教審にお願いをしておるところでございますので、この答申をぜひ、先生指摘のような問題点を十分踏まえながら、そういう答申を期待して文部省はそれに対応していきたい、こんなふうに思っているところであります。
  163. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 いま中学校の家庭科は、相互乗り入れということで一部共修という条件を満たす形にはなってきているのではないかというふうに思われますけれども、そのところですでに領域指定をしているという、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
  164. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 中学校について、五十二年度の教育課程改定の際にいろんな論議を重ねまして、結局教育というのが、男にとっても女にとってもどのような形で教育を与え、教育を受けることが、その社会に生きていく場合に一番いいかということの背景で論議されていくわけでございます。したがいまして、従来家庭科の問題については日本学校教育は、本来これは家庭に任しておけばいい分野についても、あえて積極的に明治以来公教育の中で分担してきたと、そしてそれはそれなりの大きな成果をおさめてきたという長い一つの歴史の重みがあるわけでございます。そういうことで、中学校における教科の構成に当たって、やはり女子に現在の時点で身につけておいてもらうことが最も適当であろうと、望ましいであろうということの結果出されたのが五十二年度の改正方向であり、相互乗り入れの内容であるわけでございます。  ですから、この内容の方式がなお条約との関係で問題になるとすれば、再度また論議をしていかなきゃならないということで、現在の時点では高等学校の家庭科の問題を中心に論じておりますが、中学校の問題についてもそういう論理展開で考えるのか、冒頭に申し上げたような方法日本教育を展開するかということで、大きな影響が与えられるということになろうかと思うんです。
  165. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それでは、文部省ではこの相互乗り入れで批准に持ち込む立場で差し支えないというふうにお考えでしょうか。
  166. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) これはもう少し詰めていかなきゃなりませんが、中学校における技術・家庭科の問題については、そういう歴史的な経過を踏まえて改正いたしましたので、条約との抵触がなければこのままいきたいと。高等学校については若干問題があるんで、高等学校の問題は基本的に考えてみたいと、こういうふうに現時点では考えているわけでございます。
  167. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 外務省にお伺いいたしますけれども、いまの文部省の答えはどんなふうにお受けとめになりますか。
  168. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) まず、先生、条約の解釈の問題でございますけれども、この十条の(c)項というのは、これは文理上もそれからこの条約作成に至ります審議の過程におきましても、同一の教育課程についての機会を確保するということになっておりまして、これは同一ということになっております。  そこで問題は、その条約の批准に関連します国内的な措置でございますけれども、これは先ほど文部大臣答弁のように、条約の批准が可能になるような方向で今後御検討されるということでございまして、具体的ないまの御質問につきましては、いまの私が申し上げました条約の解釈の趣旨に沿うように、どうやったら具体的な措置をとれるかということにつきまして今後とも文部省と詰めてまいりたいと、こういうふうに思っているわけでごいます。
  169. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 まだ検討中であるということでよろしゅうごいますか。
  170. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 具体的な措置についてはそのように御理解いただいてよろしゅうございます。
  171. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 高校家庭一般について文部省にもう一度お尋ねいたしますが、私ども聞いておりますところによりますと、研究指定校を設けて、共修についてのモデル校をつくって研究しているというふうなことを伺っておりますけれども、この点いかがでしょうか。
  172. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 必ずしもそうではありませんので、これについてはいろんな選択があると思うんです。選択という方式、それから必須の共通という方式、それからもっと教科の領域を広げた中で選択を認めていくと、いろんな組み合わせがありますので、一定の方向づけをして研究を委託しているということはないわけでございます。
  173. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 それから、教師用の指導資料を作成しているあるいはするというふうなことを伺っておりますが、この点いかがでしょうか。
  174. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 指導書についてはそういう準備を進めております。
  175. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 いずれにいたしましても、この家庭科一般あるいは中学における家庭科というふうなものが、今日かなり教育の問題に関心が高まっている母親層の中で、話題というよりは課題になっております。ぜひいろんな人の、多くの人の声を聞いて、そして一番いい方向で結論を出していただきたいというふうに思うのでございますけれども大臣いかがでございましょうか。
  176. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 先生のいまの御指摘の問題は、確かに話題というよりも課題になっているというそういう御指摘も正しいかと思います。  ただ、先ほどから私も局長も申し上げておりますように、中学や高校におきます家庭科の教科は、女性をこのような教育は絶対にやらなきゃだめなんだよと、こういうふうにきめつけてやっている、そういう立場をとっているものではないわけでございます。確かに女生徒に対してできればこちらの領域をとっていただいたらありがたい、こういうふうに言えば何となくそこに差別をしたような感じにもなるのかもしれませんけれども、そういう言い方をする方もあるかもしれませんが、これはまた私ども政治活動をしておりますと、最近の家庭ではやはりお母様方が仕事についていらっしゃる、そういう御家庭が非常に多うございます。共働きをしておられますと自分の子供たちに対してやはりいろんな指導ができない。被服でありますとか、あるいは女性が一番大事にしておられるような家庭のお仕事がどうしても教えられないということが、親というのはやはりいろんな意味で学校に期待をするものが非常に多いものでありますから、ついついそんなことももっと学校で教えてくれたらいいのになあなんというようなこともやっぱり言われる、そういうお母さん方もいらっしゃることも現実でございます。そんなお母様方にとってはそのことが男女の差別をするとか、単位の履修のそのことが女性にとってとってもつらいことになるんだというようなことまではお考えになっていないでしょう。率直に、素直にそんなふうにとめておられるお母さん方もいらっしゃるわけです。  文部省としてはできるだけ幅広く、中学は中学の課程で、高等学校高等学校の課程で人としてこの学問だけは身につけておいてもらいたいという、そういう立場で教科内容を設定をしているわけでございます、そういう意味で、ともすればこうした歴史的な中でずっとこうやって培ってきた日本教育でありますけれども、いまのような婦人に対する差別撤廃条約という角度から見ると、ああ意外にこんなところにも問題があるんだなということも確かに出てくるわけでございまして、それだけにまた大変むずかしいもんだなあということも改めて私自身も、いま先生やまた赤松さんとのやりとり、労働大臣とのやりとりを伺いながら、大変細かく気を配っていかなきゃならぬもんだなあということは率直に私も感じた次第でございます。  しかし、国民の期待していることというのは非常に幅広く、ある意味ではまたとっても無理なこともあるわけでございまして、そうしたいろんな条件をできるだけ満たすように、教科内容あるいは教育制度を完全なものにしていかなきゃならぬ、その努力は文部省として一生懸命これからもやっていかなきゃならぬ、こう思っておりますが、先ほどから何度も申し上げますように、事は大事な問題でありますだけに、中教審という教育内容やあるいは制度専門的にお考えになる方々にぜひこのことを十分に詰めていただきたいなあと、こう思っておるところでございます。
  177. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 私は、最後に申し上げたいことは、批准の条件を満たすために整備をしていくということではなくて、現状、現存している婦人差別、そして不平等、こういうものをなくしていくために国内法を整備していくという観点に立っていただいて、そして結果的にそれが批准に向けて条件がそろった、こういう考え方に立っていただきたいというふうに思うのでございますが、この点いかがでございましょうか。
  178. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 先生のお考えどおり十分に配慮して進めていきたいと思います。
  179. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 最後に総理府にお伺いいたしますが、五十六年四月に本決算委員会において五十二年の決算を締めます際に、政府に対して本決算委員会が警告をいたしておりますね。このことを御存じでございましょうか。
  180. 松本康子

    説明員(松本康子君) 警告について承知しております。
  181. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 警告を受けて、そして種々手を打たれ今日までの運びがあるというふうに思いますけれども、先ほど午前中からいろいろのやりとりを伺っている中で、この批准に向けての動きというのが大変敏速性に欠けている、あるいは大変おくれているというふうに私は思いますが、この点いかがでございましょうか。
  182. 松本康子

    説明員(松本康子君) 婦人差別撤廃条約批准のための諸条件に努めるということは、婦人問題企画推進本部が策定いたしました国内行動計画後期重点目標の重点課題でございます。それで、ただいま労働省文部省からも御説明しましたとおり、現在関係各省庁におきまして条約と国内法制等の整合性につきまして検討いたしますとともに、諸条件の整備を進めているところでございます。  私ども、今後一層関係各省庁間の連絡、調整を密にいたしまして、批准のための諸条件の整備を促進してまいりたいと存じます。
  183. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 中曽根総理は、自民党本部で開かれた東京都の各種団体協議会のごあいさつの中で、婦人差別撤廃条約を来年、これは十二月の一日の話でございますので、ことしのことになります。来年批准しようと考えているというふうに述べられておりますけれども、こういう進捗状況になるのでございましょうか。
  184. 松本康子

    説明員(松本康子君) これは六十年——後半期の重点課題ということでございますので、六十年までに批准のための条件を整備するということでございますが、なるべく早い時期に整備がされますように一層促進してまいりたいということでございます。
  185. 刈田貞子

    ○刈田貞子君 日本の全婦人の大きな希望でもございますし、念願でもございますので、どうぞその作業におくれることなくこれは進めていただくことを希望いたしまして、私、きょう持ち時間これしかございませんので失礼いたします。ありがとうございました。
  186. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは最初に、労働省の所管されますところの福祉施設の概要についてまず御説明をお願いしたいんですが。
  187. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) 労働省は雇用保険の被保険者の福祉の増進、また中小企業などにおきます労働力の確保、あるいは雇用の促進に資するため労働保険料を原資といたしまして、教養、文化、体育、またはレクリエーションなどの各種の福祉施設の設置を進めているところでございます。その主なものといたしましては、勤労者の体育施設あるいは農村教養文化体育施設、共同福祉施設、勤労者野外活動施設、港湾労働者福祉センター、勤労身体障害者教養文化体育施設、中高年労働者福祉センター、建設労働者研修福祉センター等々十九種類、千百九十三カ所の運営をいたしておるところでございます。
  188. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いまの御説明がございましたけれども、十九種類の福祉施設があるわけですけれども、その中で検査院の調査対象になりましたところの勤労者体育施設、農村教養文化体育施設、共同福祉施設、これの三施設につきまして設置個所数あるいは出資額、五十七年度末現在の出資額で結構ですけれども、これも大半がここに来ているわけです。設置個所数あるいは出資額を見ますと。これらの三施設の設置の目的及び設置の状況、及び今後の設置の方針についてお伺いしたい。
  189. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) まず御指摘のございました勤労者体育施設の設置目的は、中小企業に働く勤労者の福祉の増進を図り、もって雇用の促進と職業の安定に資すると、こういうことを目的としてつくっておるものでございまして、五十八年三月現在で五百五十六カ所、そして一カ所平均の年間利用者は五十七年度で約一万八千人ということでございます。それからまた、農村教養文化体育施設、これは農村地域工業導入促進法に基づきまして導入される工業、それに就業する勤労者の福祉の増進を図り、もって雇用の促進と職業の安定に資すると、こういうことを目的とするものでございまして、設置数は百三十二カ所、一カ所平均の年間利用者は約一万六千人、こうなっております。また、共同福祉施設につきましては、これは中小企業の従業員の福祉を増進し、雇用管理の改善を図り、もって中小企業の労働力の確保と雇用の安定に資すると、こういうことを設置目的といたしておるものでございまして、運営数は百六十七カ所、一カ所平均の年間利用者数は約一万八千人でございます。今後のこういった施設の設置につきましては、やはり中小企業におきます文化、教養関係の施設あるいは体育施設などが、これは大企業に比べまして非常にその施設の設置状況がおくれておるわけでございます。そういう状況にあることから、労働省といたしましては、やはり中小企業に働く労働者の福祉の増進を図りますために、今後ともこれらの施設につきましては、それぞれの地域におけるいろんな福祉水準なども勘案しながら整備を進めていきたいと、こんなふうに考えておるところでございます。
  190. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 雇用促進事業団が四十五年度から五十六年度までの間に北海道から二十三府県に設置し、運営しましたこの三つの福祉施設ですね、これは二百五カ所あるわけでございますが、その利用状況を見てみますと、百二十五カ所の半分以上が被保険者等の利用が全利用者の三〇%という低率でありましたり、あるいは被保険者等の利用者数が著しく少ない、こういう現状になっていると思いますし、また農村教養文化体育施設ですか、これにつきましては農工法に基づくところの導入企業、この従業員の利用が皆無になっている、そういう状況があるわけでございますけれども、その点につきまして、また共同福祉施設につきましては、会議室あるいは研修室等の施設の一部が、これはほとんど利用されてない、そういう検査院の指摘もありますけれども、この点についての実態と、なぜそのような状況になったのか、そこをお伺いしたいと思うのですけれども
  191. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) このたび会計検査院から指摘をされておりますそういう施設につきましての雇用保険被保険者の利用割合を見てみますと、勤労者体育施設につきましては、この被保険者が三五%、それから農村教養文化体育施設につきましては三四%、それからまた共同福祉施設につきましては三九%、こんなような利用割合になっておるわけでございます。  先ほど申し上げましたように、労働省といたしましては、こういった施設を中小企業を中心とした雇用保険の被保険者の福祉向上を図る、こういうことを目的として整備をしておるものでございますが、これらの施設は比較的小型の施設でございまして、人口規模の小さな市町村にも設置をされておる、こういうようなこともございまして、こういう雇用保険の被保険者の数が少ない、あるいはまたこの運営を、設置しております市町村に運営委託をいたしておるわけでございますが、この委託しております市町村が必ずしもこの設置目的に沿わない、あるいは設置目的に必ずしも沿ってないような利用を図っておる、こういうような例もあるというようなことによりまして、こういった状況になっておるというような状況でございます。この問題につきましては、私どももこういう被保険者などの利用の見通しなどにつきまして、これまで事前審査が不十分な面もあったというふうに考えておるわけでございます。こういった点につきまして、今後この設置計画についての基本方針を見直しをいたしまして、今後こういう被保険者の施設としてこれが十分利用されるような方向での審査を厳密に行っていくように改めていきたいということでの検討をいま進めておるところでございます。
  192. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いまいろいろと局長さんからお話がございましたが、これからいろいろとお聞きしようと思ったところも先にお答えになっておるような状況でございますけれども、先ほど、利用率につきましては三五%とかあるいは三四%という数字を挙げられましたけれども、現実に会計検査院が調査したところの状況によりましては、要するに被保険者等の利用が低率になっているところの施設は、勤労者体育施設の中では百三十八カ所、そのうちの六十九カ所になっているわけです。あるいは農村教養文化体育施設につきましても三十八カ所中三十カ所。共同福祉施設につきましても二十九カ所中二十六カ所というのが被保険者等の利用が三〇%以下になっているというのが現状じゃないですか。どうですか。
  193. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) 特に検査院の方から御指摘をいただきました検査されましたところにつきましては、特にこういう利用の割合が非常に低いものが出ておりまして、年間の利用が、私先ほどお答えいたしましたのは全国平均ということで申し上げたんでございますが、年間利用が三千人以下であるとか、あるいは、平均で言いますと三五%から三九%という数字を申し上げましたけれども、三〇%を割っておるとか、あるいはまた、被保険者の施設でございますけれども、実際にはその地域の小中学生が半数以上利用しておるとか、こういうようなものがいろいろございまして、御指摘を受けておるわけでございます。これらの点につきましては、私どももこういう指摘を受けまして、そういったところについての今後設置を新しくする場合には十分な審査が必要でございますし、あるいはまた、現在設置されておるものにつきましては、被保険者のための利用施設であるという原則に立ちまして、そういう方々のより利用を促進するような方途をやはり講じていかなきゃならぬ、こんなふうにいまいろいろ検討をしておる段階でございます。
  194. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いまいろいろとお話がございましたけれども、確かに調査によりますとそういう勤労者体育施設の建設につきましても、そういう市町村が類似の施設を建てた後に建設した場合もかなりあるようでございますし、これでは当然利用率も下がってくるわけですし、あるいは農村教養文化体育施設につきましても、導入企業の従業員の利用が皆無だという状態もこれはあるわけですね。これは目的外使用じゃないかと言われてもしょうがないと思うんです。あるいは皆さん方、設置の条件の中に、そういう施設をつくった場合には市町村の方で道路を建設するという約束になっていながらできていないところもあるわけですね。そういった点につきましても、今後しっかりと見直していただきたいと思いますし、私どももこういう施設は十分働く皆さん方の福祉のために必要でもあろうと思いますし、決して建ててはいけないというわけではございません。今後も、こういったものが建設をされてくる一つの方向性にあるわけですから。しかし、こういうものが立法された、法律をつくられてそれに基づいていろいろとそれが建設され、そしてそれが運営されていくわけですけれども、立法をされるときにはいろいろと御説明をされたと思います。また、委員会等でも審査をされて、そういう趣旨について、目的について、あるいは意義については賛同されてこういうものが建設されてきた。しかし、そういう法律としてスタートしてしまった後はどうでもいいというような状態であってはならないと思うんです。当然、先ほど局長さんおっしゃったように、働く皆さん方の、勤労者の皆さん方の福祉の増進ということを考え、そして、これは雇用保険の保険料の一部からできているわけでございますし、そういった点で設立の目的に立ったそういう建設を進めていかれる、あるいは意義が失われないようなことをやっていただくということが大事じゃないかと思うんです。  やはり先ほどお話があったように、いろいろと市町村からそれが出され、都道府県に上がってきて、そして労働省の方で採択されるわけですけれども、やはり採択基準にいろんな問題があったんじゃないかと思うんですが、その点どのようにお考えですか。
  195. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) 先生またいま御指摘ございましたように、検査院の方からもそういう点での指摘を受けておるわけでございまして、率直に申しまして、いままでのそういう設置につきましての基準について比較的、たとえば人口一万以上というようなことだとか、あるいはまた農村工業導入につきましてのそういう計画についてのシビアな審査をするとかいうような、そういった面での方針がはっきり具体的に示されてないとか、そういう意味で労働省のこういう設置についての基準が比較的ラフなものであったというような点については私どもも遺憾であったと思っておるわけでございます。こういった点について今後しっかり具体的なそういう設置基準というものを設けて、こういう御指摘を受けないような形での設置を進めてまいりたい、こんなふうに考えておるところでございます。
  196. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 まあこれはいろいろとやっているんで改善の方途をおっしゃっているわけですけれども、たとえば被保険者の人口であるとかあるいは対象の企業がどれだけあるとか、あるいは体育活動のニーズの把握とかあるいはスポーツ振興の実情の把握、そういったものが欠落していることがやはり問題じゃなかったかと思うんですね。それから、いままでの福祉施設設置あるいは運営に係る業務の流れを見ますと、市町村から設置要望書が上がってまいりまして、都道府県、それが取りまとめをして優先順位をつけて十月の末に締め切りをする、そして労働省の方でその要望書の取りまとめをしてヒヤリングを行い、設置決定をして設置決定通知を出すと、一月から三月ですね。今年度はもう決定をされて出されているわけですか。
  197. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) この設置に至ります過程については、いま先生がおっしゃいましたようなそんなような流れでやっておるわけでございまして、そんなことで現在その設置要望数等に応じまして、あるいは設置のそれぞれ要望の一応全国バランス等々、あるいは御指摘ございますその必要性なり緊急、緊要性なり、そういったことを現在まだ審査をいろいろ続けておる、こういう段階でございまして、私どもとしては、できれば二月下旬ぐらいまでにはそういった具体的な個所づけは決めるように努力していきたい、こんなことで現在作業中でございます。
  198. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 当然今回の決定につきましては、会計検査院から指摘をされておる点につきましては十分のみ込んで決定をされていかなきゃならない、こう思いますね。  大臣に最後に、こういう福祉施設につきましては私どもも反対というわけではございませんけれども、やはり設立のいろんな意義について、あるいは立法の目的に外れたりすることのないようにしっかりと今後の運営も進めていただきたいと思うんです。特に先ほどもお話がありましたけれども、市町村にいろいろと委託をされる場合がある。そういう市町村の場合ですと、大体もう、何と申しますか、いろいろとお話をお聞きしますと、教育委員会関係の方がそういった面の運営に当たられるというようなことになりますと、やはりどうしても労働行政上の利用というよりもむしろ文部省の側に立ったような利用を図られる場合があろうかと思うんですが、そういった点でやはりしっかりとその意義というものもそういう運営を委託する場合に、何と申しますか、きちっと徹底をされて、あるいは企業者等もあるいは働く皆さん方もそういうところを大いに利用できるようなやはり何か活用の方法考えていただきたいと思いますし、あるいはその地域地域によってはいろんな要望があろうかと思うんですね。必要のない部分について一括してこういうものをつけるということじゃなくて、それぞれの地域のニーズに応じたやはり建設計画というものが上げられて建設を進められていくという方向をまたお考えいただきたいと、こう思うんです。その点はどうでしょうか。
  199. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) いま問題になっておりまする労働省のいろいろな施設につきまして会計検査院から指摘を受けて、それはこういうところはまずいじゃないかと具体的に指摘をされたということは、労働省としてもこれはまことに申しわけのないことだと思っております。しかし大変これが人気がございまして、零細企業だとか、それから地方の田舎へ行けば行くほどそういう施設が少ないもんですから非常に御要望が多いと、そういうところでついついその市町村から県を通じて上がってくる基準などにつきましてどうもしっかり目が通らなかったということもあるかもしれませんので、今後委員のおっしゃったように市町村の教育委員会などにも、本来のこれは勤労者の施設がこれがもう目的でございますので、二度とこういう会計検査院からお目玉を食うようなことのないように十分注意をしていきたいものだと思っております。    〔委員長退席、理事目黒今朝次郎君着席〕
  200. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 それでは、文部大臣に二、三お尋ねをしておきたいと思いますし、確認をしておきたいと思うんですが、中曽根総理は組閣に際しまして、特に文部大臣に森大臣を指名されたと承っておりますし、また総選挙中に国民の注目を浴びております教育改革につきまして七項目の構想を発表されて学制の見直し等を含む教育改革を公約されているわけですが、午前中同僚の委員に対しまして、学制改革の問題につきましてはいろいろとお答えもあったようでございますが、その点の再度、教育改革についての所信をお伺いしておきたいと思います。
  201. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 私が文部大臣を総理から拝命をいたしましたときには、教育がとっても大事な国民の関心を集めているときでありますから、多くの皆さん意見を十分に踏まえながら日本教育について新しい制度や新しい内容が必要かどうか、そうしたことも十分に議論を交わしながら積極的に取り組むように、こういった指示をいただいたわけでございます。教育や学術や文化の振興を図るということは国政の一番大事な基本であると思っておりますし、また日本の国のように資源が全くない国でありますから、まさに人間が一番とうとい資源であるというわが国のこの歴史的にもまた世界全体の中でも置かれている日本の現状を考えますと、教育ほど大事な、まさに国家百年の計と言われるだけに大変重要なものであるというふうに受けとめておりまして、その教育の責任の省であります文部大臣に就任をいたしたということについては大変職責の重大さを痛感をいたしておるところであります。教育改革を進めなきゃならぬ、また多くの国民皆さん日本教育に対しいろんな関心を持っておられますだけに、文教行政には重大な課題が山積をいたしておるというふうに受けとめておりますし、また総理が示されました教育改革構想なども十分内閣の一員としてそれを踏まえながら、各界の意見を十分に固めながら全力を挙げて努力してまいりたい、こんなふうに思っているところでございまして、どうぞ太田先生のまたいろんな角度からの御指導も賜りたいとお願い申し上げておく次第であります。
  202. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 私どもも、現在の教育の場が校内暴力であるとかあるいは非行問題あるいは登校拒否などのさまざまな問題を抱えていることは非常に大変残念だというふうに思っておりますし、警察庁の調査を見ましたら、五十八年の上半期では五十七年の同期よりも二六%の校内暴力が増加している、こういう調査もありましたし、中でも教師に対するものは四一%もふえている、こういう状況です。あるいは少年非行の問題につきましても、低年齢化ですね、だんだんと年齢が下がってきておりまして、いまや中学生がその半数を占めるし、あるいは小学校まで巻き込まれているような状況になってきておりますし、また登校拒否の問題でも、中学生の八割がその願望を持っている、こういうような調査の結果が出ているわけですけれども、その中で、その問題の背景の一つに偏差値重視による輪切り教育がある、こういう指摘もされてきているわけですね。現在、徹底した偏差値による進路指導というものがされてきている。そのために一人一人の適性や志望が度外視されているというような状況になっている。その偏差値の高低だけで先々の進路まで決まってしまう中で、その抑圧された部分というものが校内暴力とかあるいは非行として突出をしてきているんだ、こういう指摘もあるわけですけれども、その点大臣はどのようにお考えでしょうか。
  203. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) いまの太田さんの御指摘のとおり、日本教育は、確かに社会の犯罪、特に子供たちの犯罪が非常に多くなってきております。恐らく、第三の波と言われているように、昨今は特に低年齢化しておりますことは非常に私どもも頭の痛いところであります。これすべて学校教育学校に責任があるということを果たして言い切れるかどうか。こんなことを申し上げるとしかられるかもしれませんが、テレビや雑誌や社会のいろんな環境がやはり子供たちをどんどん低年齢化のところにまで、大人に対する興味、心身ともにまだ未発達で、いいことと悪いことのけじめや判断力がまだつかない子供たちにまで、大人のわがままなものがどんどん入り込んでいく。そうしたことを家庭や社会でもっと気をつけて配慮してあげなきゃならぬのに、どうもそのあたりがおざなりになっているのではないだろうか。そんなこともやっぱり一つの原因であるというふうにも私は考えますが、同時にいま御指摘がありましたように、学校教育、授業内容、これがまたつまらない、あるいはどうも試験中心に考え過ぎているのではないか、こんなことが学校がつまらないものになってしまっているという、こういう側面もまたあるというふうに受けとめております。これだけ日本の国は教育に熱心で、しかも教育立国として世界の中でとっても高い評価を今日得ているわけでありますが、それだけに反面、教育熱心なるがゆえに、受験競争というものもまたとても大きな、教育だけじゃなくて、社会問題としてまで出てきていることも事実でございます。どうもそれがだんだん安易に偏差値のみで子供たちの区別をしてしまう、こういうところが残念ながら遺憾ながら今日の現状であるというふうにも文部省としても認めざるを得ないと思っております。したがいまして、何とかこのような風潮を直すことをみんなで努力しなければならぬ。国民皆さんの協力を得ないとなかなか教育の問題はそう簡単に、単に文部省の指導だけで直るというものでもないということでございますが、まずは何といいましても教育の責任である文部省におきましては、その責任の重大さを一番感じとめておりまして、昨年の十二月に事務次官通達によりまして進路指導の適正化を指導するようにいたしておりますし、また高等学校入学者選抜の改善については偏差値のみに頼らないように、あるいはまた特に業者のテストにのみ依存をしないように、そしてもっともっと子供たちの個人的な性格やまた学業以外の人間的なすばらしさ、そんなことも十分先生がよく指導して、将来の進路の指導もあわせながら子供たちを大事に育て上げてほしい、そんなことを文部省からもそれぞれ各都道府県教育委員会を通じて指導をいたしておるところでございます。
  204. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 いま大臣からお話ありました十二月八日事務次官通達を出されたということでございます。いまその内容につきましてお話がございましたけれども文部省では昭和五十一年にも業者テスト利用による偏差値重視の傾向を改めるように通達を出していますね。これはどういう通達ですか。
  205. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 昭和五十一年に、業者テストの取り扱いについてという初等中等教育局長通達を出して指導してきたことはそのとおりでございます。
  206. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 その通達を出されましたその後の状況を見ましても、この業者テスト、統一テストによる偏差値重視の態勢というものが改められたというよりも、むしろ一層その傾向が強まってきたのではないかと、このように私たちも思うんですけれども文部省ではこの業者テストの全国的な実施状況というようなものはつかんでおりますでしょうか。
  207. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 五十一年度の局長通達では、大きく言うと三点ございまして、安易に業者テストに依存しない。二番目が業者テストを授業中に行うことは望ましくない。三番目は、教師が業者から金品等の報酬を得ることは自粛するという三点が主たる内容でございます。  その通達の結果、授業中に業者テストが利用されるという状況はなくなっております。それから、教職員が業者から金品をもらってやるということもなくなってきております。ただ、業者が任意にいろんな形でやっているテストが広く進路指導に利用されている。その事実は残っているわけでございます。したがいまして、その事実についての改善をもっと進めていきたいということで、一歩進めた事務次官通達を出したというのが経緯でございます。
  208. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 そうしますと、公立高等学校入学者選抜実施状況に関する調査報告というものをまとめていますね、昨年ですか、五十八年。この状況をごらんになってどのようにお考えになりますか。
  209. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 二年に一回高等学校入学試験の実態がどういう形で行われているかというのをいろんな形で調査しているわけです。たとえば、どういう幾つの教科で実施されているか。それから、選抜で推薦制度が利用されているかというような幅広いものでありまして、むしろ業者テストが利用されているかどうかということより、もっと制度的な実態はどうあるかということを調査しているわけでございます。ただ、業者テストについては大部分の府県で使われているという実態があることは承知しております。二、三の県ではそうでないようになっておりますけれども、現状は大部分まだ利用されているという実態でございます。
  210. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 この通達を今回出されましたのですから、文部省としても偏差値を進路指導の基本的な資料とすることにつきましては、当然是正しようという意欲があってのことだと思うのですけれども、    〔理事目黒今朝次郎君退席、委員長着席〕 前回、五十一年に出されました通達がほとんど効果があらわれていないという状況の中で、今回の通達が現状の改革にどの程度の効果をあらわすか、どのように期待されておりますか、その点お答え願いたいと思います。
  211. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 通達だけですぐに効果があらわれるというふうには期待できないのであります。そこで、この問題は、基本的には高等学校入試全般改正問題ということに取り組んだその中で解決していかなきゃならないということで、昨年の十二月にそのための専門家からなる会議をつくりまして、いま論議をしていただいております。多分六月ぐらいにはその内容がまとめられると思います。そのまとめられた内容を各都道府県に指導していくということで、各県はまたそれぞれの県でそういう委員会をつくって論議を重ねて改善をしていくということに手続的には考えているわけでございます。
  212. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 お話ですと、入試改善検討会議というものが設置されて、六月に一つの回答が出るということでございますけれども、この偏差値が輪切り的な進路指導を生み出しているために、私ども地方でございますけれども、いま高等学校の間にある明確な序列化みたいなものが生み出されてきているのが事実ですね。そして、中学校でも偏差値を高めるための授業が行われてきたり、あるいは受験産業に利用されているというような異常な状態が見られる状況です。当然この改善について根本的な解決をしてもらわなければならないし、いまお話のありましたように、やはり高校、大学入学試験改善ということも当然これは連動していかなければならない。  その点で大臣に、大臣大学の共通一次試験について見直しをするということを記者会見でもお話をしておりますけれども、その点のビジョンについてお話し願いたいと思うのですが。
  213. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 最近共通一次についての賛否両論の意見は非常に多うございます。賛否というよりも、余り賛成やほめてくださる意見はどうも少ない。やめちまえなんていうような意見もたくさんあるわけであります。  ちょっと長くなって太田さん恐縮ですが、この間私ちょうど共通一次が無事終わりましたので、入試センターの職員の皆さんの労もたたえ、私もちょっと視察をしてきました。なかなか一般の方が入れるところじゃありませんから、直接文部省の責任におります私が見る機会があって、とても参考になりました。人間と機械、コンピューターを駆使しながら大変な努力をしているわけですね。これは文部省のことで自画自賛するようなことになって恐縮ですが、三十五万か六万の受験生を、北海道から沖縄までの人たちを時間的に一斉にやってしまう。その試験の答案用紙を搬入するあるいは搬出する、その仕事も大変なことですし、それを集めてどんどん区分をして、それをコンピューターに読み取らせて、それを集計して出させていく仕業なんというのは、本当にこれは日本人のすばらしい勤勉さと、機械を駆使しながらやる日本ならではの仕事だなと私は思いました。  日銀のお金が一枚どこかへ消えても、大変失礼な言い方ですが、そのお金を全部廃止する必要はないわけですけれども入試センターのあの用紙が一枚どこかへ消えてしまったら、即座にこれは中止しなければならぬということになる。それを、問題をつくって印刷かけて準備をするのに一年がかりでやっている。大変精巧なものだということがわかりました。  それだけ努力しながら、また問題をつくる先生方の努力も聞いておりますけれども大学先生方がお集まりになって、そして十人ぐらいの方々で作題をされるわけですが、ほとんど謝金程度の形で、先生方が御自分の仕事とは別にそうやってお手伝いをしてくださる。それも御自分の家族や御親戚に受験生があったりしたら、これはもう適格な条件ではないというふうに、先生方を選ぶ基準もとてもむずかしい基準でやっておられる。  そういう方々によってりっぱに共通一次をやっておられても、そんなにも細やかに気を使ってやられるのに、やっぱり共通一次が悪く言われるのは一体何なんだろうかなということが、非常に私はいま文部大臣という立場にありながら、いろんな方々意見をそうやって聞いているわけでございます。  要は、このいまの高等学校の問題もそうなんですが、高等学校の受験のやり方についても、文部省はそれなりにいま検討はしながら、また通達指導をしていかなきゃなりませんが、高等学校の設置の責任は都道府県にあるわけでございますから、文部省がこうせい、ああせいと言ったって都道府県がやっぱり一番よく考えてくれなきゃなりませんが、それこそ東京も北海道も、また私どもの石川県もそれぞれ条件や歴史的なものが違いありますから、高等学校の差別みたいなものをつくるなと言ってもなかなかそこにまたむずかしいものがあるんだろうと思いますし、国民全体がやはりいい学校に行って、そして学歴偏重と言われるように、いい大学を出るといいところに就職ができるというような、そういうどうも観念みたいなものが身につき過ぎている、そんなこともこれ直せと言ってもなかなか無理なところでございまして、文部省がそんなことはないんだと言ったって、国民はそう理解してくれるわけではないわけでございます。しかし、私自身としていまいろんな教育制度の不満や矛盾みたいなものを感ずるのは、やっぱり大学入学試験のところが一番私はネックじゃないだろうか。大学試験のところがどうしても問題になるから、結局その大学に入るための試験——高等学校、そしてその高等学校を選ぶための中学、またさらには小学校、幼稚園、こういうふうになっていくんで、一番大事なところは私はその大学の受験のところだろう、私はこんなふうに自分なりに承知をしておるわけです。  そこで、大学のこの入試やり方を何とか少し考えていただきたい、こういうことで、先般も国立大学協会入試改善に関する懇談会、東大の学長さん初めそういう皆さんともずいぶんいろんな議論もいたしました。ここのところは私のような立場の者と国立の大学方々とは意見がなかなか合わないところでありまして、現に私とこの初中局長とも私的にはいつもやり合うところなんですが、問題を下げて、ハードルを下げて楽な試験にしてやったらどうかなと僕は簡単に考えるんですが、そうするとやっぱり高等学校教育体制や中身が乱れるという教育者の考え方がありますし、それなら、ハードルを低くするということは教育者の立場から見るとよくないということならば、せめてあの七科目五教科なんというような大変ハードなことをやらさないで、少し少なくしたらどうかという議論もしますが、国立大学の学長さんによっては、いやあれでいいんだ、そうしなきゃ子供たち勉強しないんだ、こういう持論をやっぱり持っていらっしゃる先生方も国大協の先生方にいらっしゃるわけで、このあたりがなかなか議論ができない、まあ詰まらない。五教科の五科目ぐらいなら納得できるけど、こういうことです。私は、人間を選ぶ基準というのは学力だけで選ぶことではないんだという持論を持っておるんです。もっと豊かな人間性で比べてみたらどうですかと言うんですが、国立大学先生方から見ると、やっぱり能力がいい人間を社会に送り出すことがわれわれの責任なんだ、こうおっしゃる。日本の今日の繁栄というのは、すばらしい技術を伴うこれだけの科学技術というものを日本が大きな力を得るようになったのは教育なんだ、大臣は学力を低下させて日本の国力を悪くするようにお考えになるんですかとまで言われると、やっぱり私の意見は間違っておるのかなあという気持ちにもなる、ここが非常にむずかしいところでありまして、この共通一次はこれだけの苦労をしておることでありますから、何とかみんなから信頼をされて、いい制度なんだなあというふうに、現状のものをどう守りながらこれを育てていくかということをまず私は考えていかなきゃならぬ、どうしてもこれが現状にそぐわないということであればそうこだわる必要はないと私自身も思っておりますけれども、何とか子供たちにもうちょっと夢を持って、さっきも御質問に対して申し上げましたんですが、もうちょっとゆとりがあって、高等学校中学校学校に行くことそのものがもっと楽しいことなんだというふうに思えるような学校に何とかしたいなあというのが、私の大臣に就任してからの一番の悲願でありますし、何とかこのところを改善したい、こう思っているところであります。
  214. 太田淳夫

    ○太田淳夫君 この教育問題いろいろと論議もあろうかと思いますが、高校入学の場合ですと、偏差値の問題と同時に内申書ですね、内申書制度というものもこれまた非常に問題点があろうかと思うんです。いま大臣がおっしゃったようなそういう人間性というものが、内申書制度で果たして十分な点でそれが認められてできるのかどうかということが、私どもも地方におりますと、父兄の方からいろいろとお話を聞く場合もあるわけですね。ある点で偏った内申書制がとられているのじゃないかと思われるところもあるということですね。その点でまたその点も含めて御検討を私たちはお願いしたいと思いますが、いま大臣から共通一次の問題を含めまして、大学入試方法についての改善お話がございましたけれども、午前中も同僚委員からお話があったと思いますけれども、私たちもこの大学入試の問題につきましては一つの提案をいたしております。それはやはりこの共通一次テストの利用を含めまして、入学者の選抜の方法を多様化して複数の窓口から入学させるように改善すべきじゃないかと、こういうように思っているわけですけれども、たとえば共通一次テストの結果による入学者、また高校の推薦による入学者、あるいは論文試験だけによる入学者ですね、これは国公立の場合を申し上げているわけでございますが、私立の場合にはこういうような制度がございますからね、さらに現行の共通一次試験改革としましては、一次試験と各大学の二次試験、あるいは調査書などによる総合判定という観点から試験を行うようにすると、あるいは先ほどお話が出ました五教科七科目のこの教科、科目についての再検討、こういうことも必要だろうと思っておりますし、何とかそういういろんな多様化によりまして、現行の試験制度指摘されておりますようなそういう知識偏重であるとか、あるいは暗記力あるいは受験技術がすぐれた学生が有利とか、そういう批判についてもかなりの改善ができるのじゃないか、このように思って提言をしているわけでございます。その点を含めまして大臣からも再度お考えをお聞きしたいと思いますし、やはりこういうことがいろいろとされましても、あるいは中教審からいろいろな意見が出され、あるいは文部省のいろいろな意見が出されましても、それが果たして実行できるかどうかとなると、なかなか非常にむずかしい点もあろうかと思いますが、教育の問題、やはりこれは先ほどお話があったように、国の一つの資源ですね、人材という資源を発掘する一つの大きな方途でございますので、どうか精いっぱいの努力をしていただきますことをお願いをして質問を終わりたいと思いますが、最後にお答え願いたいと思います。
  215. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 太田先生の御指摘、公明党さんのいろいろな御提言も私ども大変貴重に受けとめさしていただいております。大学入試については、先ほどもちょっと申し上げたように、でき得ればわずか短い中学校の三年間、わずか高等学校の短い三年間ですから、学力だけではかることではなくて、一生懸命にひたすら努力してクラブ活動をやったとか、生徒会の仕事に一生懸命にボランティアで努力をしたとかいうことをできるだけ評価してやってほしい、すばらしいインターハイに出て日本的な記録を出さなくても、三年間黙々と陸上競技をやっておったという、それだけでも今日のこの若者の風潮の時代の中では私は大変とうといことだと思うんです。三年間一生懸命にテニスを続けた、ラグビーを続けた、この人がもし勉強を一生懸命やったらきっとできるだろう、そういうふうにひとつ評価してやってほしい、こんなことを私も事務当局にも命じておりますし、国大協の皆さんにもそういうことを評価できる方法をぜひ考えてほしい、こういうふうに言い続けておりますし、これからも努力していきたいと思うんです。  ただ、この間私はたまたま国大協の先生方お話をした後に、ちょっと記者会見——私したんじゃないんですが、その中身がちょっと記者さんに漏れたんです。たまたま新聞に出て私読んでみたんですが、そう間違ったことは言ってないんです。いま言ったように、学力だけではなくて、クラブ活動をやっておったら、クラブ活動の評価もぜひ加えてやれないかなあという発言をしたことが新聞に出ておりましたら、私の選挙区から手紙が来ましてね、森さんは自分が運動の選手だったからクラブ活動クラブ活動と言うけど、スポーツもできないような弱い子はどうするんだ、こういう文句の手紙が私のところに来まして驚いたんですね。いいようにと思って言ったことが、国民から見るととんでもないやはり受けとめ方をされるんだなあということを非常に私自身も反省もし、驚いたわけです。野球とかスコアでぴしっと出てしまう、じゃんけんをやって、グウ、チョキ、パアで負ける、これはあっさり人間というのはあきらめがつくんです。だから点数も、一点足りなかった、そうか残念だなと、これで終わるんですが、そこをクラブ活動の評価や論文の評価や人間的な評価を加える、これを人間がやるもんですから、必ずそこに、後にしこりと問題が何か残るような気がする。日本人というのはそこのところが非常にきちょうめんな性格ですから、点数やそういうものできちっとすることは好きだけれども、どうもそういう情実が加わるような基準で物をやることについては何となく納得しにくい国民性であるということも、非常に受験の制度の私は大変むずかしいところだ、こう思っております。それだけに、子供たちの将来を大事に判断する進学の検定でありますから、選ぶ立場の者も十分心してできるように、そしてまた、一つの情実だけで事が左右できないように、幅広いいろんな角度から物が眺められるように、そういうやはり受験の選抜制度にぜひしなきゃならぬ、ぜひそういうふうに検討の機関や、あるいはまた国大協や関係の皆さんに私のこういう考え方はもう本当に伝えながら改善をするように一生懸命努力したい、こう思っております。
  216. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 まず、文部大臣に幾つかお尋ねをいたしますが、いわゆる教育改革の基本的な視点について、午前中の本岡委員のそれは憲法教育基本法理念に照らして教育の充実、発展を目指すべきものだ、こういう質問に対して文部大臣は同感の意思を表明をされたわけでありますが、しかし、私がなお不安を感じますのは、中曽根首相がかねがね戦後政治の総決算の一環としてこの教育改革という問題を強調していること、そして中曽根氏が憲法改正のタイムテーブルは胸の内にあるというふうに語っておられるこのこと等の問題であります。  そこで重ねてお尋ねをしますが、文部大臣としては、憲法教育基本法を変えることもあり得るというような教育改革を断じて考えてはいない、こういうふうに明言できるんでしょうか。
  217. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) わが国の現行の教育は、教育基本法そして今日の憲法を基本として学校教育法その他諸法令に基づいてすべて行われているものであるというふうに私は認識をいたしております。  したがいまして、現在教育基本法改正する考えも全く持っておりませんし、今日の日本憲法の中で教育は行われていくということを大事にしていきたい、こう私は考えております。
  218. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 中曽根首相は、あの総選挙の中でありましたが、儒教、仏教、神道などの精神的土壌の上に新しい教育体系を考えていくべきだということを発言をされていました。これは戦前の侵略戦争遂行を合理化し、美化した神道など、反民主的な道徳思想を国民に押しつけようとするものだと私は思います。これは先ほども御確認をされました憲法教育基本法の基本理念、これに真っ向から反する危険な考え方なんじゃないかというふうに思うんですが、どうでしょう。
  219. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 総理が選挙中にお話しになっていたのは、私も選挙やっておりましたので直接聞いておりませんが、ただ新聞等で総理の御発言も後でよく読んでみました。  総理の御発言は、やっぱりわが国教育の基本にはわが国古来から伝わる伝統や文化を大事にしてほしい、私はそういう精神、趣旨を述べられたものだというふうに理解をしておるわけであります。先生から御指摘のように、戦争とか侵略とかということはこれは確かによくないことであることは間違いないわけですし、われわれも戦争は避けていかなきゃならぬ、これはもう未来永劫の大事な、国民的な哲学でなきゃならぬと私はこう思っております。しかし、日本の昔から大事に守ってきている先祖を大事にしようとか、お父さんやお母さんを大切にしようとか、先生をやっぱり尊敬しようとかというようなこういう考え方は、これは昔からの日本の古来のやはり物の考え方であろうと思いますし、あるいはこれは儒教や仏教やいろんな形で教えられていると思いますし、西洋ではキリストを初めとしてそういう宗教の中でもやっぱり教えられていることでありますから、そのこと自体は私は否定をすべきことではない。特に日本の今日は、東洋の昔からの文化の上に新しい文明の社会に入ってきて、西洋の文化もどんどん日本に入ってきているわけですから、そういう西洋の文化と、日本が昔から大事に守ってきた日本の伝統というものも大事にしていこうと、こういうことを総理は常々お話しになっておられるということでございまして、決してこの発言の趣旨はそのようなものではなくて、日本の伝統や文化や歴史を大事に踏まえて日本教育はあるべきだと、こういうことを述べられているものだというふうに私は解釈をしておるわけでございます。
  220. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 文部大臣は中曽根さんにかわって精神はこういうことだということでいろいろ弁明をされましたけれども、そういういろんな日本の伝統や文化を大事にしようという、そういう意味合いの言葉であれば神道云々という、ああいう発言が出てくるというのはまことに不用意というそしりは、これは免れぬというふうに思います。これはしかるべき時期、中曽根氏自身に対してまたいろいろ議論する機会もあるでしょうから、この程度にとどめておきます。  教育改革の最初の具体化として、教員養成制度教科書制度の改悪が登場してきていますが、これも、本岡委員の質問に対して免許法は国会提出準備中、教科書法は慎重に検討中と答えられましたが、繰り返しの質問は避けまして、私としても文部省として法案提出を撤回するよう強く意見だけ本日は申しておきます。  ところで、さっきもございました中曽根首相が教育改革の一つに共通一次を挙げているというこの共通一次をめぐる問題について、先ほども文部大臣いろいろ個人的な感想のようなことも含めてお述べになっていましたけれども、これももう繰り返しはやめます。一言だけずばりとお尋ねをいたしますが、共通一次六年目を迎えているわけですけれども、あれが出発をするときの国会の附帯決議で、その状況について国会報告をすることと、こういう決議をしてきておるわけですけれども、実施をめぐるいろんな問題点について国会に対して一遍しかるべき報告を行う、そして改善策についてお互いに模索をすると、こういうことをやられてしかるべきじゃないかというふうに思うんですが、どうでしょう。
  221. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 先生指摘の参議院文教委員会におきます附帯決議の件でございますが、共通一次試験を含めまして大学入試問題につきましては、国会におきます文教委員会あるいはまた予算委員会及びこの当決算委員会等におきまして、質疑を通じまして資料の提出等なども適宜報告をさしていただいているところでございまして、今後遺漏のないように努めていきたいと思っておりますが、私はその当時の文部省の衝にいなかったものでありますから、詳しいことは局長からでも答弁をさせたいと思います。
  222. 宮地貫一

    説明員(宮地貫一君) ただいま大臣からお答えしたとおりでございまして、国会質疑等を通じまして、その際資料を提出するなどのことをいたしておるわけでございまして、御指摘の点については私どもも今後とも遺漏のないよう適切に対処をしてまいりたいと考えております。  国会との対応では、最近特に大変関心もあるわけでございまして、五十七年末から……
  223. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 ちょっと質問の焦点をはっきりさせたいんです。  質問があればいろいろ資料もお出ししますし、いろいろお答えもしますという、まあ言うなら受け身じゃなく、国会決議もやってきたことであるから、一遍積極的に文部省として実態をまとめて報告をしてもらってしかるべきじゃないかということを尋ねているわけです。
  224. 宮地貫一

    説明員(宮地貫一君) 共通一次の問題については、いろいろ御指摘のような問題点についてそれぞれ国大協なりしかるべきところで御検討を願っているところでございまして、それらの検討がある程度まとまった段階において、御指摘の点については検討さしていただきたい、かように考えます。
  225. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 次に、教育予算の関係の問題について質問に移ります。  五十九年度の予算編成は昨夜いわゆる打ちどめになりまして、本夕閣議決定が行われる予定でありますが、またも軍事費大突出のため教育や福祉の予算が犠牲にされようとしています。まだ計数整理の段階でありますが、新聞報道で推定をいたしますと、軍事費は約二兆九千三百億、対前年伸び率六・五五%、文部省予算は約四兆五千五百億、対前年伸び率〇・四%というこの数字が端的に示すように、軍備増強のために教育が犠牲にされるというこの姿が如実に出ているわけでありますが、その集中的なあらわれとして私学助成が概算要求時の対前年マイナス一〇%よりもさらに切り込まれる、奨学資金有利子化が拡大する、学校給食補助費まで減らされる、こういう結果になったことについて文部大臣はまず責任を感じておられますか。
  226. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 私学を含めて予算は大変厳しいものであったということは、私もこれは残余だなあという気持ちはございます。しかし、日本のこの予算の編成は各省概算要求をし、また前年度の予算を、シーリングという一つの基準があるわけでございますから、その枠の中で最大限の努力をして積み上げていくというやり方をいたしておるわけでございます。私自身も、先ほど午前中にも申し上げましたように、私学の予算は一番大事に考えてきた一人でございます。ただ、全体的に補助金のあり方、特に私学助成のあり方についてはいろんな方面からやはり国民のなかなか合意が得られてない面もあるようでございます。さらにまた、残念なことでありますが、私学の一部には先ほど午前中にもちょっと議論がありましたように、不祥事を起こすようなそういうところもございまして、予算時期になりますとこういうことがやっぱり新聞の片隅にも非常に強く出てまいります。そういうようなことも勘案をいたしますと、一応大蔵省が決めました一〇%のシーリングにこれは従わざるを得ない。大変残念なことでありましたけれども、いままででございますと、シーリングの枠よりももうちょっと何とかならないかということで、まあまあ、言葉はいい言葉がどうかわかりませんが、特別扱いをしてもらうようにいろいろやってきたつもりでありますけれども、今回は一応シーリングのまま普通並みの扱いをしていかざるを得ないというふうに判断をしたものでございます。  文教予算が全体に伸びてないではないか、こういう御指摘文部大臣として責任をと、こう言われると、全体的に伸びなかったということでは、大臣として大変残念だったと言わざるを得ないと思っておりますが、内閣全体としてこの予算の一つの考え方、そして多くの国民の目がこの教育予算の中に向けられているということも十分承知しながら、最大限の努力はしたつもりでございます。少ないということで責任を感ずるかと言われると、残念だなあと言わざるを得ませんけれども、しかし、厳しいこういう財政状況の中では一生懸命やったというふうに私自身はそう思っているところでございます。
  227. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 とにかく私学助成について言えば、マイナス一〇%シーリング以上に切り込まれた、減らされたということは事実でありまして、このために私立大学や高校での学費値上げにはね返っていくことは避けがたいと思うんであります。値上げを発表している学校、こういう事態を予測して値上げをすでに発表している学校は比率で、どれくらいあるのか、値上げの最高額、それから値上げ全体の平均額はどれぐらいの姿になってきておるか、どういう判断ですか。
  228. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 私学の学費問題につきましては、夏の段階で私学助成をシーリングどおり一〇%減で要求せざるを得ないということになりました時点から、私ども大変気にいたしておったところでございまして、九月の段階におきまして早速私立大学等につきましては直接、それから高校以下につきましては都道府県の所管課長を通じましてできるだけ各私学で経営面での努力をしていただきまして、学費の値上げ等にはね返らないような御配慮をお願いをし、まあいわば指導を重ねてまいったわけでございまして、現在各私学の、特に大学につきましては、現在半分あるいはそれ以上程度調査が集まりつつあるところでございまして、中間的な段階でございますから明確には申し上げられないわけでございますけれども、大体大学等の場合には昨年度の値上げ率並み程度にとどまる、場合によって若干それを下回るかもしれないというような雰囲気で眺めておるわけでございます。高校以下につきましては、現在調査書を発送した段階でございますので、まだ中間的な内容も把握いたしておりませんが、大学につきましては中間的な状況としてその程度におさまりそうだということでやや胸をなでおろしているというところでございます。
  229. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 私は率直に言って、文部省の事態の把握は非常に甘いというふうに思うんです。私の地元は京都ですけれども、四年制大学が十八校あります。このうち十五校が値上げを決めている。これはもう本当に近年なかったことです、これだけの比率で値上げがおしなべて行われるということは。最高値上げ額初年度二十三万円、こういう学校もあるわけですね。私は今度の私学助成のこういう結果が、どんなに親と学生の諸君に負担を加重をしていくことになるかという、ここの問題を明らかにする意味でひとつ早急に実態の調査をやってもらって、今国会でこの予算さまざまありますけれども、この私学助成削減の可否を国会として十分審議ができるよう、その資料を文部省として早急に用意をしてもらいたい、国会に出してもらいたいということを強く求めたいわけであります。
  230. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 私学の学納金の実態につきましては、先ほども申し上げましたように現在調査を行っている最中でございます。その結果等につきましては、新聞等にも例年発表をいたしておるところでもございますので、結果がまとまった段階では公表もいたし、あるいは先生のお手元にもお届けできるかと思います。
  231. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 もう一つお尋ねします。  九州産業大学、国士館大学など一部私学の不正常な事態を口実として、文部省は私学助成予算の大幅削減に同調をしてきたわけですけれども、しかし、責任の一端はこういう一部私学における理事長などの専断体制や非民主的な管理・運営を放置してきた文部省にもあるというふうに私は思うのであります。  そこで質問しますが、一つは、文部省は、全大学が教授会をきちんと置いて、入退学の決定権やカリキュラム決定権など教学権を確立をする。そのことを初めとして、大学にふさわしい管理運営体制を整備するよう通達などで一層の指導の強化を図ってもらう必要があるということが一つと、二つ目には、不正事件をなくすためにも経理公開が国民の世論となっています。その必要は、五十八年七月の行政監察報告でも、私学会計経理の適正化、明確化ということで、関係者に明らかにする慣行を定着させることが望ましいというふうにも報告も出ておるところでありますし、すべての学校に経理公開をひとつぜひ指導してもらいたい。  以上二点、どうでしょう。
  232. 宮地貫一

    説明員(宮地貫一君) 私立大学の教授会の問題についてお答えを申し上げますけれども、法令上は学校教育法第五十九条で重要な事項を審議するということで規定をされておるわけでございまして、個々の大学における教授会の設置については、それぞれ私学については私学の学則等で定められておるわけでございます。ただいま御指摘大学についても、たとえば九州産業大学についても学則で各学部及び教養部に教授会を置くというような規定は十分整備をされているわけでございます。  その運用につきまして、一般的にはもちろん重要事項について、教学面からの事項について教授会の意向というものを十分尊重すべきことはもとよりでございますけれども、個々の事柄についての処理については、それぞれ各大学の自治に基いた処理がなされるべきことは当然でございまして、私どもとしては、大学全体がみずからそういう方向で処理されていく方向にいくことが最も望ましいことだと考えているわけでございます。  個別の案件の具体的な指導については、それぞれ処理をしているわけでございますけれども、一般的にそのことについて通達等で書くということについてはいかがかと、かように考えております。
  233. 阿部充夫

    説明員(阿部充夫君) 御質問の第二点の、経理公開の点についてお答えさしていただきますが、私立学校に関しましては、各学校法人がその公共性をみずから自覚し、自主的に健全な経営を行っていただくということが原則であろうと思っておるわけでございます。こういった見地から、経理の適正化という観点につきましても、まず最初に監事あるいは評議員会といったような内部監査機関が置かれておりますので、その内部監査機関に十分機能していただく。そしてさらに、それに加えまして、補助金の交付を受けます学校法人につきましては公認会計士の監査も義務づけられておりますし、さらには会計検査院の検査等も行われるわけでございます。また、学校法人は財務諸表を私立学校法の規定によりまして、常時大学に備えつけ、必要に応じて関係者に閲覧をさせるというような仕組みもあるわけでございますので、文部省といたしましては、こういった制度の面では原則的な部分は整備されているというふうに考えておるわけでございます。  しかしながら、従来から学校経営等に関しまして関係者の協力等を求める必要等もあろうかと思いますので、必要に応じて財務状況を、たとえば学内広報等の形で公表するというようなことが望ましいという方向での指導は行っておるという状況でございます。
  234. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 文部省結構です。  労働省、通産省お願いします。  まず過日の三池炭鉱の大災害の問題について質問に入っていきます。  本日も現地で合同葬儀が行われているところでありますが、今回八十三名に及ぶとうとい生命をなくされた方々に対して、まず心から哀悼の意を表するものであります。  今回の八十三名の死亡、十六名のCO中毒、戦後四番目の大災害でありますが、約二年前には夕張の大災害があったばかり、そのたびに二度と繰り返さないと政府も会社も誓ってきたんですけれども、また大災害が繰り返されるということでありまして、早速わが党は調査団を出し、私も先日来現地に赴いて会社や監督局、組合や労働者の方々、遺族の方々からいろいろ事情を趣取をしてまいりました。  まず労働大臣にお尋ねをいたします。  亡くなられた遺族の方々に対する補償問題、とりわけ下請労働者の人が差別されるということがないよう、平等に弔慰金などがきちっと支払われるよう会社を指導するということやら、労災の速やかな適用、CO患者に対する手厚い対策、そうして遺家族の就職あっせん、こうした問題について早くそして強力な手だてをぜひ講じてもらいたいと思うわけでありますが、どうでしょう。大臣
  235. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 三井三池のこの大きな災害に対しまして、本当に心から犠牲者にお悔やみの気持ちでいっぱいでございます。私自身も事情が許せば合同葬儀にもお参りしたいと思っておりましたが、予算や国会がございますので御遠慮したようなわけでございまするが、いまおっしゃったように二度とこういうことのないように、政府全体はもちろん関係の業界におきましても二度とこういうことのないようにということで、私どもできるだけのことをしたいなと思っております。  私ども労働省といたしましては、労災保険からの遺族補償給付の支給を速やかにやれるように万全の事務体制をとっておるところでございます。当面必要と見られる最大限度額約十億円の資金もすでに用意してございます。  それから、手続の面で下請などの方はやっぱり事務的な能力の面もございましょうけれども、ここらは特に下請なども含めて事業主に対してできるだけのスムーズな手続で、要請されれば遺族補償が出るように万全の努力をいたしたいと思っております。  それから、家族の方々の就職の御希望などに対しましては、まず御本人が働いておられた会社は、御本人のことも家族のことも一番よく知っておられるわけでございましょうし、また会社において遺家族の方々の就職に必要な努力もせられるものと思いますが、この努力もひとつぜひとも私どもとしては要請もし、それからこういう努力を援助もしたい。もちろん、労働省の地元の各公共職業安定所などで臨時の職業相談や職業紹介は十分できるように体制をつくりますし、職業訓練や職場適応訓練というような実施の各種の援護措置もやっていきたいと思いますし、あるいはまた宿舎への優先入居なども、御遺族の方々の就職にお役に立つようにという努力もいたしたい、こう思っておるところでございます。
  236. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 念のために確認を求めますが、会社の責任者も私どもに、さっき言いました弔慰金など下請の方を差別することなくきちっとお払いをしたいと思っているというふうに言っておるわけでありますけれども、ひとつこの方向で事が全うするように、労働省としてもよく指導してもらいたいと思いますが、いいですね。
  237. 望月三郎

    説明員(望月三郎君) 弔慰金につきましては、私どもできるだけ下請も含めて弔慰金を均一に親会社から支払っていただきたいということで、政府としてもお願いをしておりますので、恐らく均一的な弔慰金が支払われるということになろうかと思います。
  238. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そこで、事故の特徴でありますが、夕張事故などのようにガス突出とかあるいは炭じん爆発事故、こういうような一瞬のうちに大災害になって多数の命が奪われる、こういうケースと違いまして、ベルトコンベヤーの発火といういわば日常的な保安対策がきちっと行われていれば食いとめ得るはずのそういう事故であったというふうに思うんですが、それがこうした大きな死者を含む災害にまで突き進んだその背景には、徹底した生産第一主義、片や人減らし。そのために保安対策が、保安要員が徹底して軽視されておるというここの問題が、一つ重視をしなくちゃならぬ問題としてあると思うんです。  私、会社の出していますいろんな出版物をもとにいろいろ調べてみますと、たとえば少し古い数字ですけれども、十年前の昭和四十八年、生産が約五百万トン、人員五千五百人、七年後の昭和五十五年、生産五百四十万トン、人員四千人ということで、この七年間の間に出炭は四十万トンふえ人員は千五百人減らされている、こういうことであります、これは三池全体。有明鉱について言えば、五十八年上期の出炭実績七十万九千トン、掘進実績九千百五十九メートル、五十八年下期の出炭計画七十九万五千トン、掘進計画一万一千三百八十五メートルということで、九万トン出炭をふやす、それから掘進も二千メートルふえる、しかしさっきの話の人員はぐっと減る、こういう形になってくるんですから、食いとめ得るはずの災害が実は発生せざるを得ないという基本的問題がここに一つあるということです。  さらに、具体的に直接的な事故の原因、これも徹底して明らかにされなければならぬわけでありますけれども、私いろいろな事情聴取をしてきた中で、いまの段階でもさまざまな重大な問題が浮き彫りになってきているんではないかということで、以下幾つか通産省の局長に質問いたしたいと思います。  この事故の核心となるベルトコンベヤーの発火を初期の段階、まだ燃えないくすぶっている、焦げ臭いにおいがするというこの段階でなぜ食いとめられなかったのか。私どもの調査では当日のベルトコンベヤー当番、これが所定どおりきちっとついていたかどうかという、ついていたら食いとめ得たことだと。  そこでまず聞くんですが、この問題の発火をしたというベルトコンベヤーナンバー一〇、ここの担当人数と守備範囲はどういうことですか。
  239. 宮副信隆

    説明員(宮副信隆君) 御説明いたします。  御承知のように、今回の坑内火災につきまして、その発火場所につきましてはベルトコンベヤーナンバー一〇の付近ではないかと推察されているわけでございますが、現在その個所は災害当時の対応のために包囲密閉をしておりまして、さらに水を注入しております。現場にはまだ確認しているわけではございません。  御質問のベルトコンベヤーの監視員がどうなっているかということでございますが、鉱山保安法上に明示的に何名置きなさいというような規定はございません。ただ炭鉱側がその運転要員、監視要員といたしまして監視員を配置しているということは聞いております。ただ、現在その場所に、あるいはその近傍にその監視状況がどうであったかという点はまさしくいま先生がおっしゃいましたように、その原因究明の核心であるわけでございますが、これは現在検察の指導のもとに警察、鉱山保安監督局の鉱務監督管が入りまして実況見分あるいは供述等をやっておりまして、目下捜査中でございまして、この点につきましては捜査の結果がはっきりした段階までお待ちいただきたいと思っておりますので、御了解いただきたいと思います。
  240. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 当日何人そこについていたか、当番がということは、それは捜査中かもしれない。本来何人つくはずになっていたかという、ここもわからぬというんですか。私はそれを尋ねておるんですよ。
  241. 宮副信隆

    説明員(宮副信隆君) 現時点におきましてそういう観点からも捜査をしております。したがいまして、捜査上の問題だと考えております。
  242. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 速記をとめて。    〔速記中止
  243. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 速記を起こして。
  244. 石井賢吾

    説明員(石井賢吾君) 八十三名の死者を出しました重大災害を起こしましたことはまことに私どもとして残念でございます。  ただいまお尋ねございました監視員の人数その他につきまして保安計画等すべてが現在の捜査の段階における証拠資料となっております。したがいまして、その証拠資料をもとにしまして現場検証及び当日の事情聴取によりまして今後の保安法違反問題を明らかにしていく現段階でございますので、現在どういう状況になっているか、あるいはどういう計画であったかということにつきましても、ただいまの段階ではお答えを控えさせていただきたいというふうに思う次第でございます。
  245. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 皆さんもいまの答弁をお聞きになって、だれもどういう答弁かと思われるに違いないと思うんですが、当日何人ついていたかということは、それはいま捜査上の対象になっているかもしらぬけれども、本来何人監視役がつくはずになっていたかというこの問題がなぜ答えられないのかということは、これは私はどうしても合点ができませんね。
  246. 石井賢吾

    説明員(石井賢吾君) お尋ねの保安計画あるいは保安図によります監視体制を含めましてこれは捜査上の証拠でございます。その証拠との間の突合を図ることが今後必要になるわけでございますので、ただいまの段階でその証拠の内容についてお明かしするのは差し控えたいと申し上げているわけでございます。
  247. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 速記をとめて。    〔速記中止
  248. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 速記を起こして。
  249. 石井賢吾

    説明員(石井賢吾君) 恐縮でございますが、委員長、済みません、ちょっと釈明をさせていただきたいのでございます。  委員長のおっしゃるように、確かに何名配置さるべきであったか、また会社として何名配置しておく計画でございましたという計画につきましては、それ自身が捜査の段階におきます資料でございます、捜査資料でございます。それと照らし合わせて当日どうであったかと。これはまあいま委員長おっしゃるように、これからの捜査にまたなければなりませんが、それと証拠資料との突合が今後の問題になるわけでございますので、それらを含めていまの段階でお明かしするということは差し控えさしていただきたいと、こう申し上げているわけでございます。
  250. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 同じことを何回繰り返されたってだれも納得をする論理じゃないんですよ、それは。しかし、もうこんなことだけで時間がどんどんたっていくのもあれでありますので、委員長からのそういう発言も出てますように、せめて本来どういう姿であるべきであったかというここの問題については、会社に聞けば会社は答えざるを得ないんです、監督官庁として。だから、それをきちっと問い詰めて会社を、そうして報告をしてください。よろしいね。  二つ目の問題。煙感知器です。これは幾つあったんですか。
  251. 宮副信隆

    説明員(宮副信隆君) 煙感知器の実際の設置数等について御質問でございますが、煙感知器の設置状況につきましては、保安図というのがございまして、これは鉱山保安法令の規定に基づきまして鉱業権者が副本を鉱山保安監督局に届け出るようになっているものでございますが、この保安図に煙感知器の設置状況が記載されているということは事実でございます。ただ、先ほど私の局長から申し上げましたように、このこと自身が鉱山保安法に基づく司法捜査官でありますサイドといたしましては、現在その具体的な設置個所等については、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  252. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 速記をとめて。    〔午後三時二十三分速記中止〕    〔午後三時五十一分速記開始〕
  253. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 速記を起こしてください。
  254. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いまも委員長からありましたようなことで、当然国会審議に向けて資料提出は、警察の方が押収をしておることで出せないと言う、百歩譲ってそうであるにしても、その内容の説明ぐらいできないはずがないということで、先ほどの理事懇でも繰り返し議論があったところでありますけれども、私は当局に問題の重大性を認識をしてもらうために——恐らく答えはないでしょう、しかし、こういうことをよく究明をしてもらいたいというのを幾つか挙げておきます。  一つは煙感知器ですね。私が組合で聞きますと、受けが六、本体六あると言う。監督局に聞きますと十三あると言うのです。会社に聞きましたら十一か十二くらいだろうと言うのです。だろうと言うのです。で、私が中央管理室、そこへ行ってボタンを数えたんです、煙というマークのついたボタンを、そうしたら八つあったんです。とにかく聞けば聞くほど数が違ってくる。こういう姿になっておる、そもそもここにこういうことが起こってこざるを得ない一つの問題があるんじゃないかということも含めてひとつ究明をやってもらいたい。  それからもう一つ、保安図の問題、話出ておりました。ところで、これを更新をする場合三月に一回提出が義務づけられていますね、保安図の提出が。そこでもう時間ありませんので、もう答弁求めませんけれども、亡くなられた大半の人たちが働いておった場所というのは、いわゆる掘進をさらにどんどん進めていく、トンネルのように掘っていくんですね。ところが、肝心のここの部分の保安図更新がやられているんだろうかということなんですよ。私ども現場へ行きまして、有明鉱へ行きまして、暗い暗い廊下でしたけれども、そこに張り出されておる保安図の日付は五十八年九月二十一日です。もうすでに三カ月を、事故の起こったあの時点に経過をしておる。そうすると、大半の人が働いておるそこの掘進現場がどういう様子になっておるか、そして煙とかいろんなものの感知器、そういうセンサーが、機器がどういうふうに配置をされておるかという、ここがあまねく労働者にわかるように図面の上で周知されてない、これになると事が重大という意味でこの点についてもよく調べてもらいたいということです。  それから、これはちょっと質問してみましょう。この二年間でいいです。災害が発生をしたその時期、内容、監督官庁としての指導事項、こういうものについてきちっとして国会審議の資料として出してもらえますか。過去のことですよ。出してもらえますかどうか。  二つ目は災害発生の二カ月前、去年の十一月に総合検査をやっている。ですから、これは全面的な検査です。このときの検査の結果とその指導事項、これも資料として出してもらえるか。これも過去のことです。どうですか。
  255. 石井賢吾

    説明員(石井賢吾君) 第一の過去二年間におきます災害発生の内容につきましては、早急に資料を提出さしていただきます。  それから第二点の十一月に実施いたしました総合検査につきましては、ただいま鉱山保安監督局が相当繁忙をきわめておりますが、早急に検査結果及び指導事項を取りまとめまして御提出いたします。
  256. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 もう一つ質問です。  さっきちょっと前段で言っておりました保安図の更新ですね、というのは、新しい掘進をやっているんですから、保安図は更新をされているというふうにあなた方は確認をしていますか。
  257. 宮副信隆

    説明員(宮副信隆君) 保安図につきましては三カ月ごとにその副本を出すということになっております。先生がおっしゃいました保安図は九月の保安図でございまして、それ以降につきまして、保安図はその時点での実績を示す図でございまして、その状態をその図面に書いて提出するのに若干時間がかかっておりまして、そういう点でまだこれ確認はとっておりませんが、それに対して一つの図面として新たに提出する場合と、それからそれに変化のあったところを書き加えるというようなこと、その他書き足すことということもございまして、この付近の実情につきましてはいま調べておるところでございます。
  258. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 いろいろ言われているけれども、どうも出ていないというニュアンスですね。三カ月越えてもう一カ月近くたっているんですから、時間がかかるといったってそんなものは本当に誠意を持ってやる気があればできることでしょう。  まあいろいろ聞きました。過去の問題については、それは報告国会に出しましょうと、しかしあの事故をめぐるあの以降ですね、当日どういう状況になっていたかというのは捜査事項になっていても、本来どういう姿にあるべきであったかという、ここの問題ももう出せませんと、一切出さないというこの態度、絶対にこの国会の審議権にかけてそういう不当な態度を承認するわけにはいかぬ。これはもう委員長以下、先ほどの理事懇でもこもごも強く言われておったことなんで、これは引き続きこの態度については追及をしてまいります。  いずれにしても、この災害を二度と繰り返さない、そういうことを本当に誓うなら、こういう資料について進んで提出をして、一刻も早く再発防止策を確立をするということが必要なんだということを強調をして、残念ながらこれできょうは終わらざるを得ないということでありまして、あと五分ほど残っておりますので、せっかく労働省、労働大臣来ておられますので別の問題でちょっと聞いておきます。  いわゆる雇用保険法の改正の問題でありますけれども、先日も雇用保険部会の報告労働省の具体的な考え方といったような文書を説明を受けました。結局これはもっぱら財政再建のために労働者の生活に犠牲を集中をすると、ですから一月二十三日の毎日新聞の社説に「勘定あって、行政さえなく、まして政治はない」と。とにかく赤字を埋めるために一切を労働者の負担にかぶせる、こういうやり方、そうして朝令暮改のようにいままで言ってきたことがくるくると変えられるということがまかり通って一体許されるのかという問題でありまして、具体的な問題で二つほど聞いておきましょう。  一つは、手当算定の基礎となる賃金の範囲からボーナスを除外をするという問題、これは失業の不安の上に二重の生活保障に打撃を与えるというやり方だと。ところで、一方労災保険の方は、十年ほどの議論を経て、労働組合も要求し、やっとボーナスを給付に含めるように実現をしてきたのは最近のことだと。そうすると、労働省の所管をする中で二つの柱といいますか、一つは労災保険、一つは雇用保険、こうあって、片一方はボーナスを含めるという方向へむしろ前進した、片一方はこれを取っ払うということで後退をさせる、こんな矛盾をした行政というものは私はまかり通ってはならぬと思うんです。大臣はこのことを、こういう姿になっておるということを御存じですか、そもそも御存じてしたか。大臣に就任をしてから聞き初めですか。
  259. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) 労災にはボーナスも含めてそれを基準にすると、年金ですね。それは私は初耳でございました。
  260. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 そういう矛盾と問題点があるということを、しかとひとつ確認をしておいていただきたいと思いますね。  もう一つ、いわゆる失業給付離れの措置ですが、受給者が失業給付を大幅に残して再就職をした場合に再就職手当を支給する、こういう提案になっておるわけですけれども、しかしこれも十年前に現行の雇用保険法を制定をしたときに、従来失業保険法にあったこの制度を廃止をしてきているわけです。そうして今回それをまた復活をする。こういう十年の間に制度がくるくる変わるというのは非常に無定見なやり方じゃありませんか。  この点質問をしますと同時に、何としても雇用の確保、失業の予防、そして失業中の労働者の生活保障、これを第一とするというこの基本的立場から、いま特徴的に二つほどの矛盾点を指摘をした、そもそも本来的に生活保障が犠牲にされるという基本問題が言うまでもなくありますけれども、こういった矛盾点についてよく検討して、この雇用保険改正なるものについては慎重に最終態度を労働省として決める、労働大臣として決める、慎重にやってもらう必要があるということを特に要望をし、また意見を最後に求めます。
  261. 坂本三十次

    国務大臣(坂本三十次君) ここ近々中にも審議会に労働省としての法案要綱というものを煮詰めましてそして提案をする段取りになっておりますので、その際、もちろん委員の皆様方の慎重な御審議も仰がなければなりませんが、いまおっしゃったような点も含めて研究を労働省としても対応していきたいと思っております。
  262. 佐藤昭夫

    ○佐藤昭夫君 終わります。
  263. 井上計

    井上計君 五時から閣議だと承りましたし、大臣お急ぎでございましょうから、どうぞ労働大臣結構です。文部大臣もお急ぎのようですから、教育制度改革あるいは教育構想あるいは教員養成等についてもお伺いする予定でありましたが、お急ぎでありますし、また午前の質疑の中で大臣並びに局長からも御答弁がありまして理解をいたしましたので、これは省略いたします。  ただ一つ、教育臨調を設置をしたらどうかということを実はわが党、民社党は主張をいたしておるわけであります。教育の問題がいろいろと言われておりますけれども、ただ単に一部の機関でそのようなものを論議したのでは、いま大きな問題である教育の問題の根本的な、いわば将来に向かっての改革改善というものはこれは不可能であろう、やはり行政改革に匹敵するようないわば国民的な大きな政治課題でありますから、したがってそのような機関を設置をし、また同時に、教育の問題ということになりますと文部省だけの問題でありませんで、財政問題では大蔵省であるとか、あるいはその他自治省関係、あるいはまた雇用問題では労働省、あるいは保育行政では厚生省という各省庁にまたがる問題でありますのでそのようなものを設置すべきであろう、こうわれわれ考えておりますが、大臣はどのようにお考えでありますか。
  264. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 教育がいろいろな角度でいま国民的な関心が大変寄せられておりますところでございます。中曽根総理も第二次中曽根内閣発足に当たりまして、教育改革をぜひ進めていきたい、十分なる角度から見直しをするようにということで、私もその命を受けておるところでございます。  確かに教育の諸条件を整える、あるいは教育の諸制度改革するということは、内閣全般にまたがる大変かかわり合いの深いものでございます。しかし、事は教育内容制度が基本的なことでございますので、できれば文部省の責任においてそれを進めていくということが最も穏当なやり方であるというふうに私自身考えておるわけでございます。しかし、確かに先生が仰せのとおり、もっと大きな立場で、あるいはもうちょっと高い次元のところで議論をしたらいいのではないか。そういう意味で教育臨調というお話もたびたび伺っておりますし、総理も大変関心も示しておるところでもございます。私自身もいまその取り組み方について、中教審を中心に進めていくことが最もよいか、あるいはまたいまのようなお考え方で進めていくことがいいのか、そのようなことも含めながら、私自身総理からそのことも含めて十分に勉強しておくようにとこう言われておりますので、いろいろと関係者の意見を聴取をしながらいま検討を慎重にいたしておるところでございます。  確かに教育制度改革内容やあるいは教育全般にわたります方策が出てまいりましても、これを具体的に実行していくということは大変容易ならぬむずかしい問題が多うございますので、内閣全体の力でやはり実現する方向に動かしていくためには、一つの考え方としては私は謙虚に傾聴に値する意見として受けとめていかなければならぬ、このように受けとめております。
  265. 井上計

    井上計君 総選挙の際に中曽根総理も教育改革についてはいろいろと構想を御発表のようでありますし、また文部大臣も就任をされましてから新聞等で拝見しますと、インタビューの中でかなり積極的にお考えのようでありますから、大いにひとつ期待をいたしておりますので、今後とも十分このことについては御検討いただきながら最善の教育改革というものをひとつお考えをいただきたいと、かように考えます。  さて、そこで数年前から教育の荒廃、特に教育現場の荒廃につきましていろいろと大きな社会問題になりまして、私も当院の予算委員会でもこれらの問題について、あるいはまたこの決算委員会でもこの問題等について言及をしたことがありますし、ただ最近は余りニュース性がなくなったといいますか、常時行われておるので余りマスコミ等で報道されなくなったというふうなことがありますが、これは減ったんじゃなくしてニュース性がなくなった、乏しいからつい報道されなくなったというふうな点も私考えておるんですが、大臣はどのように教育の荒廃について受けとめておられますか。またこの対策としてどういうふうにお考えになっておられますか、ひとつ御所見を承りたいと思います。
  266. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 井上先生指摘教育全体が確かに、荒廃という言葉がいいか、荒れておるというのは私もやっぱりそのように率直に受けとめております。午前中にも私が申し上げたのでありますが、たとえば不良化が進んでおって、そしてその不良化、青少年の非行が非常に年齢がだんだん下がっておるということも一つの現象でありましょう。これは学校教育だけにすべて責任があると私はどうも思えないところもあるんで、いまの文化、文明の進みぐあい、あるいはテレビを中心に、あるいは雑誌、出版物を中心にする大人向けの社会状況等がどうも子供世界を大変荒らしているのではないか、心身ともにまだ自分で判断ができない子供たちに、大人の無責任さがどんどんこれが飛び込んでいるんではないか、こういうことも一つのやはり教育の荒廃にあることも側面あると思います。あるいはまた、これも午前中の議論で十分に議論が出たところでありますが、どうも学校がおもしろくない、学校へ行って本当言うと一番友達と、あるいは先輩後輩と、先生と親しみたいのに、どうも試験のための勉強ばっかりしているようで、勉強したくない人たちを集めて無理やりに勉強さしておるような感じがしてならない。これもやっぱり教育の荒廃という面もあるかとも思います。  それから、もっとやっぱり私は大臣として一番考えなきゃならぬのは、やっぱり大人の社会の中にわれわれがいままで考えられないようなことがいろいろ起きる。たとえば子供を殺したり、捨てたり、また逆に言えば親を殺したり、そんなことがいま井上先生のおっしゃるように余りにもすごいニュースだけれどもどうもニュース性がなくなるぐらい慢性化している。どうもこういう大人の社会を見ておると、日本教育が正しかったのかどうかという反省もやっぱりしておかなきゃならぬ、こういう角度から見ますと、教育の荒廃というのは確かに御指摘どおりだというふうに思っておりますが、やはり何といってもそこのところをどう直していくかというのはこれはもう本当に国民全体の大きな環視の中で正しい日本教育をどうすべきかというのは大変むずかしい問題だろう、こう思っておりますが、やっぱり一番基本に置かなきゃならぬことは、学校が楽しくてそして学校がとってもいいところというふうに私はしなきゃならぬ、これが一番大事なことだと思いますし、もう一つはやっぱり子供たちを教える学校先生、それから子供たちが学ぶ学校現場、ここが一番子供たちにとってよりよき少年の思い出になるような、そういう私は教育の環境をつくることが一番大事だと、こんなふうに思っております。
  267. 井上計

    井上計君 いま大臣の所見承って私も全く同感だと思います。特に最後の方に言われました学校が楽しくおもしろいということ、もう一つは教える教師考え方、あるいは態度等、また思い出になるような、いわばいい先生といいますか、昔流でいいますならば恩師というふうな、そういう思い出の先生、こういうふうなことがぜひ大事であろうというふうに考えます。  そこで私は伺いたいんでありますけれども、なかなかいい先生、いい教師という方が、もちろん大ぜいおられますけれども、一部にはどう見てもいい先生、いい教師と思われぬ方がおられるというふうなこと、これは否定できないであろうと思いますし、そこで大臣は新聞のインタビューの記事からいきますと、日教組についてどう対応していくかという問いに対して、「教育関係者とはできるだけ幅広く話し合っていきたい。先生一人ひとりは使命感を持ってやっておられると思うが、政治的な運動をされることは容認しえない。」こういうふうなコメントをしておられます。事実と若干違うかどうか知りませんが、大体こういうコメントをしておられますが、そこでお伺いしたいんでありますが、日教組の問題等について触れていきたいと思いますが、昨年の十月七日に日教組が全国的なストを行っておる。この参加状況を見ますと、小中学校で一万五千二百十九校十九万四千六百二十八人の参加者、それから高校で二千三百二十二校五万九千百五人、合計いたしますと一万七千五百四十一校で二十五万三千七百三十三人という大変多くの先生がこのストに参加をしておる。四十七都道府県並びに政令都市十市、合計五十七の都道府県並びに政令都市がありますが、その記録ですけれども、その中で参加をしていない学校が小中学校で十九校、それから高校で十九校、こういう数字が出ております。これを見ますと、大臣の御出身であります石川県では小中学校、高校とも全部ストに参加をしてかなりの参加人員である、こういう数字が出ておりますが、これについてどうお考えであるのか、またこれについての処分はどのように行われたのか、これらについて、これは政府委員で結構ですが、お聞きをいたします。
  268. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) いま先生の御指摘のとおりに、五十八年十月ストについてはかなりの教職員が参加したわけでございます。文部省といたしましてはもうずいぶん前からストライキは法律上禁止されている行為であるということで、そういう情報が伝えられますたびごとに注意を喚起する通達を出すということをやってきているわけでございます。そして事後の措置につきましては、これまた法令に従って厳正なる処置をとってもらいたいということをやってきております。まだ五十八年十月七日のストに対する処分は全国的な状況から見ると少ないわけでございますから、今後各県ではその実態を十分把握した上漸次処分ということが考えられているという状況でございます。
  269. 井上計

    井上計君 私は過去教職員政治スト等について、違法スト等については行われた場合には厳重な処分、すなわちやはり教育現場でも信賞必罰の精神を守ってほしいということをしばしば発言し、要望しておるわけでありますが、昨年の当決算委員会におきましても当時の瀬戸山文部大臣も厳重な処分をするということを言明されましたが、文部大臣どうお考えでしょうか。
  270. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) ただいま局長がお答えをいたしましたとおり、公務員であります教職員のストライキについては、その目的のいかんを問わず法律で厳に禁止されているところでございます。まして子供たちの鏡にならなきゃならぬ、法律をしっかり守るというそういう師の立場であります先生でありますから、みずから法を無視した行為に走るということは、これは国民教職員に寄せる期待を失うということで、私もこれは断じて許してはいけないということだと思っております。いま局長からも言いましたとおり、五十八年十月のストライキにつきましては、参加者については従来どおり厳正な態度で臨んでいきたいと、このように指導してまいりたいと、こう思っております。
  271. 井上計

    井上計君 けさの理事会でお願いをしました資料の配付をよろしゅうございますか。    〔資料配付〕  いまお配りをいたしました資料を、一から五までありますが、最後にとじてあります五の資料をまずごらんをいただきたいと、こう思います。  この資料の五でありますが、これはここにありますように、一九八三年十二月十九日、すなわち衆議院選挙の行われた翌日であります。ある県の組合のある支部が執行委員長名で組合員に配付した文書であります。私は、これを見ましてやはり強く感じますことは、余りにも日教組、政治闘争、特に法によって禁じられておるこのような政治活動、選挙活動を活発にやっておることについて当然これは問題にすべきであろうと、このように考えます。若干読みますと、一番上の右の終わりの方、「今次衆議院選挙に際しましては学期末多忙な時期にもかかわりませず、かつてない取り組みをしていただきましてありがたく感謝申し上げます。おかげさまで苦しい戦いではありましたが○○」——これは、実は候補者の名前であります。「○○勝利に結びつけることができました。」。それからその少し真ん中辺に、「次期国会で提案されようとしている教育二法粉砕の闘いはすでに始まっていますが私たちの力だけでは困難であり、どうしても今次選挙で勝利しなければなりませんでした。」。それで、最後の三行目に、「集票活動に動員に積極的に参加して頂き感謝いたします。」。まあ大体こういう内容の文書であります。これにつきまして、私はこれは地方公務員法、それからさらには教育公務員特例法等に明らかに違反をしておると考えますけれども文部省、どうお考えですか。
  272. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) この文章自体ということになりますと、いろんな内容を少し精査して論じないとできないわけでございますが、一般的に教職員政治活動を、法律上禁止されている政治行為を行うという場合については、その違反行為に対して処分の対象になるという法律上の規定があるわけでございます。この文章だけでは直ちに具体的にだれがどうだということまで明確に取り上げにくいという点がございますけれども、一般的に教職員が特定の政党ないしは特定の候補者、そういうものを具体的に挙げて支援するというようなことは、およそ中立であるべき教育公務員の立場からいって決して望ましいことではないというふうに思っております。
  273. 井上計

    井上計君 この文書は、たまたまある県の文書でありますけれども、恐らくその県だけでなくて、かなりの県でこれに似たような文書が当然配付されておる。したがって、言いかえますと、同じような行動がかなり各地で行われたものであろうというふうに推定できるわけでありますが、いま局長、この文書だけでは軽々に論じられぬけれども、まず当然違反的な様相が強いというふうな、そういう私いま認識を受けましたが、ぜひひとつ調査をしていただいて、事実こういうふうなことが行われており、また明らかに違反であるというふうなことがはっきりすればこれについての処分、対策をお考えになるべきだと、こう考えますが、いかがですか。
  274. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) この問題については、公職選挙法等の問題もございますので、関係省庁と十分協議してまいりたいと思います。
  275. 井上計

    井上計君 強く要望しておきます。  それから、中教審委員、次の、十四期になりますか、十四期の中教審委員が近く任命されるといいますか、委嘱されるお考えになっておるようでありますが、私は五十六年、十三期の中教審委員が決まりまして、会長になられました高村先生が、当時、これは新聞インタビューでありますけれども政治家教育あるいは教科書等に口を出すなと、こういうふうな発言をしておられる記事をちょっと実は手に入れておるわけですが、政治家教科書問題あるいは教育問題に口出しをするなというのは、ちょっといささかどうであろうかと。やはり何といいましても政治の根本は教育でありますから、したがって、当然国会であるいはわれわれがわれわれの立場教科書問題なり教育問題に当然言及してしかるべきだ、また当然それは審議してしかるべきだと、このように考えますが、これは文部大臣、これから中教審のメンバーをいろいろとお考えになり委嘱されるという中で、どういうふうなお考えをお持ちでありましょうか、お伺いいたします。
  276. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 高村先生の御発言の新聞は、私もすぐこれを取り出しまして読んでみました。新聞の談話でございますから、こういろいろ記者さんとのやりとりの中にあったんだと思いますので、前提あるいは後の方のことなどはある程度新聞の紙面上切ってあるかもしれませんので、必ずしもそこのところだけ誇張されたのかどうかというのは若干先生に聞いてみなきゃわからぬところであります。  ただ、私個人としては、高村先生は大変りっぱな方でありますし、教育の歴史また教育の現状、そしてまた教育に対する御貢献はきわめてすばらしいものがあるというふうに私は信頼を申し上げておりますし、高村先生自身政治家は黙っておれというような、そういう考え方の持ち主ではなくて、非常に幅の広いお考えを持っていらっしゃる方でございますので、この記事だけではなかなか高村先生の個人的なことを私から申し上げるのはかえって失礼になるのではないかというふうに思っております。  ただ、中教審委員は、会長ももちろん含めて人格がまず高潔でなきゃなりませんし、教育や学術やまた広く文化に関しましても高い識見を求められているということは言うまでもございませんので、文部省といたしましては、それぞれの委員がみずからの責任においていろんな御発言について、言われることについては文部省としてはとやかく申し上げることはかえって失礼かというふうに考えておりますが、中教審委員の選定に当たりましては、先生のおっしゃるようなお話のことも十分踏まえながら幅広く、先ほどから何回も申し上げておりますように幅広くいろんな角度からぜひいい方々をお選びし、お願いをしたいと、こう思っております。
  277. 井上計

    井上計君 私も別に高村先生が再度中教審の会長におなりになることについては反対とかどうとかという意味じゃ毛頭ありません。ただ、こういうふうなものが、いま大臣言われるように、必ずしも前後のなにじゃなくてこれだけ大きく見出しになっているというふうなことかもしれませんけれども、やはりこういうふうなものが出てくると多くの人たちが疑問を持つであろうと、こういうふうに感じますので、十分その点についてもお考えいただいたらいかがであろうかと、こういうことで発言をしたわけです。  そこで時間も、大臣もありませんから急いでまいりたいと思いますが、そういう意味で私はやはり教科書問題についても教育問題についてもわれわれの立場でやはり考えることは当然言うべきである、また審議すべきである、こういう観点から申し上げたいと思うんですが、教科書問題は、先ほどから大臣の御答弁あるいはまたすでにいろいろと論議されておりますけれども、やはり何といっても教育の基本として教科書問題は重要である、このように考えております。ところが、教科書等について検討中だと聞いておりますけれども、現在の高・中・小学校等の教科書に過去の問題を事実と違うといいますか、あるいは事実を隠したそのような記述が相当あるんですね。私は、すでにこれらの問題等についてはいままで指摘もしております。たとえて申し上げますと、北方四島問題にしても、ソ連が当時終戦の前後に行った国際法違反であるとか、あるいはまた終戦の宣言以降、すなわち八月十五日以降南樺太あるいは千島列島あるいは北方四島に武力で進駐をして多くの民間人、日本人を殺害したとかというふうなことはどの教科書を見ても全くないんですね。私は、何もソ連のそういうふうな不法行為をぜひ大きくということじゃありませんけれども、やはり事実は事実として記載をしなくちゃいかぬ。ところが、数年前から南京の虐殺事件あるいはまた進出か侵略かというふうな問題についてはずいぶんと大きく騒がれました。マスコミも大きく取り上げました。ところが、こういうふうないわば北方四島問題を中心としたソ連のそのような不法行為、国際法違反というのは余り言われないし、取り上げもしないんですね。そこらあたりに教科書のやはり問題としてとらえていかなくちゃいかぬ問題があるんではなかろうかというふうに思います。検討中の教科書法との関連が云々ということは言いませんけれども、そういうこともぜひ問題をひとつ大臣としてもお考えをいただきたいと、こう思います。  そこで、私お配りした資料に基づいてちょっと申し上げるんですけれども、高校教科書の中に、現在わが国、すなわちわれわれが信奉しておる自由主義体制あるいは日米安全保障条約等を否定をするような、あるいは否定をしてと思われるような、あるいは否定をする教材としてまことに使いやすいようなそういう記述が幾つかあるんですね。私専門家じゃありませんからよくわかりませんでしたが、ある人の資料、説明等を受けて私自身も実はびっくりをしておると、こういうことなんです。  そこで、お配りした資料の一−Aというのは四十二ページ、ラインが引いてありますけれども、「自衛隊や駐留アメリカ軍は、憲法第九条二項の禁止する戦力に該当するものであって憲法に反するものであり、また、核兵器をはじめとする軍備競争が激しい現在の国際情勢のもとで、わが国の防衛に役だつとは考えにくいばかりでなく、かえって危険でもある、という反対意見もある。」ということで、ある意味では逃げてはいますけれども、先入観を持った人がこれらのものによって教育すれば、当然これは憲法違反でありかえって危険であると、こういう教育をすること、可能だというふうに思うんですね。  それから、同じく資料一の次のページの二百五十四ページの下の方に、「生きがいある人生と社会」という中ででありますが、「個人主義的な生き方」、「わたしたち一人びとり」云々というのがありまして、次のページに「そうだとすれば、一回かぎりの人生を自分のために生きても、けっして非難される筋合いはない」すなわち親、兄弟等々顧みなくてもいいではないか、このように受けとめできるようなそういう記述もあるわけですね。  それから次の資料二、これは「現代社会」のやはり高校教科書でありますが、二百六十四ページ「人間的な社会の追求」という中で、マルクス主義礼賛と思えるような記述なんですね。「現代において、マルクス主義思想はどのような意義をもっているであろうか。」という中で、次のページの上の三行目から見ていただきますと、「現代の資本主義社会において、経済の動きを国民全体の立場から制御する政策がとられているが、じゅうぶんにその成果があがらず、不況・失業・物価高などの深刻な問題があらわれている。したがってわれわれは、その問題の解決につとめなければならないが、他方また、現在の社会主義の経済体制もさまざまな深刻な問題をはらんでいるので、われわれは、日本社会に即したより人間的な新しい社会体制をつくっていかなければならない。そのさい、マルクス主義思想は、一つの重要な手がかりをあたえてくれるであろう。」マルクス主義はいいとは書いてありませんけれども、これらのことをもとにして教育する場合に、マルクス主義礼賛の教育に利用されるおそれ多分にあるんではなかろうかと、こういうふうに思います。  それからも一つ、資料三でありますけれども、これは日米安全保障条約についての、要するに批判的なことに利用されるものだと思いますが、「両陣営のいずれにも属さない多数のアジア・アフリカの諸国が次つぎと独立を達成し、中立主義・非同盟主義をかかげて活躍していることは、今後の世界平和の維持に明るい希望を与えている。こうしたときに、日本憲法における徹底した平和主義の精神の果たす役割はますます重要になるであろう。」すなわち、非同盟主義がいいというふうな、こういう教育に使われるおそれが多分にあるということであります。  それから実は資料第四でありますが、たまたま去る一月二十日にモスクワ放送が、例の家永教科書告訴の論評をしておるわけですが、そのモスクワ放送の中に、教科書には極東の日本軍国主義に対するソ連の行動について、またソ連自体についての根拠のない非難が書き加えられました。しかも、ソ連が対日戦に参戦したのは連合諸国に対して負った義務に基づくものである以上、ソ連の行動が全く正当なものであったという事実は無視されてしまっているのですというふうなことを言っておる。  それからもう一つ重要なことは、かつて日本政府が宣言した非核三原則のような日本の政策の個別的な側面です。たとえば、文部省は防衛を目的とする少量の核兵器の保有は憲法違反にならないというような諭旨を若干の教材に挿入しておりますと、こういうモスクワ放送があったんです。そこで調べてもらいましたら、この「高校生の現代社会 最新版」こういう資料四の百七十六ページ、ラインが引いてありますからごらんをいただきたいと思うんですが、「政府は、防衛力の限界は「そのときの諸般の情勢、科学技術の発達などの諸条件によって一概にはいえないが、他国に対して侵略的な脅威を与えるようなもの、たとえば、長距離爆撃機、攻撃型空母、大陸間弾道弾などは保持できない」と述べている。また政府は、「他国に脅威を与えない自衛のための必要最小限度であれば、小型の核兵器を保有することは憲法上は可能」との解釈をとっているが、政策として非核三原則により保有しないこととしており、」云々と、こうなっておるんですね。だから、これは大変重要だと思うんですね。だから文部省、政府がたとえ小型の核兵器であっても非核三原則の政策に反して核兵器を持つことを憲法上認められておる、こういうふうにこれは記述がしてあるわけですね。私は、これらのことはもっともっと論議をやっていかなければ大変な誤解を、あるいはそういう偏見を教育の場で与えることになる、この点を憂慮しておるわけです。  そこでもう一つ続いて申し上げますけれども、一九八三年度、今年度の日教組の運動方針でありますが、日教組の運動方針は、明らかにほとんどのものが政治闘争である。文部大臣ごらんになっておるかと思いますけれども、大会スローガンも、この中に「憲法政悪、軍事大国化路線に反対し、安保条約廃棄・非武装中立・非核三原則を堅持」云々というのがあります。それから、「主任制・教科書攻撃・免許法改悪など「教育大臨調」に反対し、憲法教育基本法」と、こういうふうな大会スローガンが明らかに先ほど申し上げましたけれども教員政治的中立に関するそれぞれの法律等、あるいは公務員法等に違反をしたようなことがずっとあるわけですね。運動方針細部にわたると、そういうふうないわばいま申し上げたような教科書のそういうふうなことがずいぶんと一致するものがあるわけです。したがって、この日教組に加盟をしておる先生が日教組の運動方針を遵奉して、こういう教科書を教材にすれば明らかに間違った教育をする、教育をすることに大変逆に言うと都合がいい、こうとも思える点がある、このように私は考えざるを得ないわけであります。  細かい点申し上げていると切りがありませんが、それらのことについて文部大臣はどのようなひとつ認識をお持ちであるのか、また、今後どのようにお考えであるのか、時間がありませんから、文部大臣四十五分にはここを出られるそうでありますから、御答弁をいただきましてひとつ御退出いただいて結構であります。
  278. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) 井上先生から参考資料いただきまして、私どもも、もう少し教科書をよく読んでおくことが大変大事なことだというふうに改めて痛感をいたしました。細かなことは、また事実関係いろいろについては局長から答弁をさせることにいたしますが、事実に全く間違っていることを書いてあれば、これは修正をさせる、手直しをさせるということはかなりできるわけでありますが、人の考え方、物の考え方でございますと、ここのところを直しなさいというようなことはなかなか今日の検定制度の中では非常にむずかしいことでございます。また、このあたりのやりとりがいろいろとどちらの側から見てもいつも不満なところでございます。  私自身は、いま先生お読みいただきましたところを一緒に読ませていただきまして、自衛隊と駐留軍、アメリカのところは危険だなという反対意見もあるというのはちょっと突出した感じが確かにいたしまして、局長はこの前に、日米安保条約のことをちゃんと認めて書いてあるからこれで両論書いたという判断になるんだというふうに私に説明しますが、私は、この上の方は必ずしも安保条約はあっていいんだというふうには書いたとはどうも政治家としては解釈できないんです。これは正直なところであります。あるいはこの個人主義の生き方のところも、これを書いてくださるならこれも一つの考え方だと思いますが、しかし、社会は、人と人との関係、みんなの連帯と責任とお互いの使命感といいましょうか、そうした協調の中に社会というものがあるんで、ひとりで人間は生きていけないんだよということもやっぱり両方書いていただいて教えてくださることが、一番手を尽くした教育じゃないかなあというふうな感じもいたしますが、高校生だからそこまで書かぬでも判断すりゃいいじゃないかといえば、またこれも一つの意見かとも思います。  このように非常に、マルクス主義のことも書いてありますが、マルクス主義の考え方というものそのものは、これは事実を書いてあるわけですからこれもそのものはいかぬとは言えないわけですが、ほかにも、人間が生活を営み、国が繁栄をしていくやり方については幾つかの主義主張や考え方があるんだということもできれば並べてくれた方が、教育教科書ということからいえば一番誤解のないところだという、そういうところをできる限り十分にもうちょっと吟味をして、そして教科書検定官の皆さんというのはやっぱり大変なお仕事でありまして、それぞれの学者さんが自分の自説を中心に書いておられることでありますから、一検定官がああしなさいこうしなさいと言うことも失礼だというそういう立場の中で、できるだけそういう方向に従って是正をしていただいておるわけでありますが、この辺も検定制度あり方というのは非常にむずかしくて、そしてまた検定官の立場を私どもが外から見るととても大変な大きな仕事を持っておられるんだなあということで、それだけにさらになお一層教科書検定については慎重にしていかなきゃならぬし、また改めるところは改めていかなきゃならぬと、とても大事な教育の一番根幹の問題であるというふうに私は受けとめているわけでございます。  日教組の政治的活動についてのこともこれにあわせて御質問いただきましたが、先ほどからも申し上げ、局長からも申し上げましたように、いかなる個人の立場であろうともあるいは団体としての立場であろうとも教育公務員は中立であるということは、これはもう大前提でございますし、特に心身ともに未発達な子供たちに対する影響というものは大変大きいわけでございますので、先生立場政治的に常に正しく、子供たちからもまた父兄からも誤解や信頼を裏切るようなことのないようにぜひしていただきたいと、こう文部大臣としては望んでいますし、今後、また違法なことがあれば的確に善導するように働きかけていきたい、こんなふうに思っております。
  279. 井上計

    井上計君 文部大臣、いま御答弁伺って、私も大臣の御見解についてはそのとおりであろうとこう考えますので、今後とも十分ひとつそれらについて御配慮をいただきたいと、こう思います。  そこで、もう一つ資料四で申し上げました核兵器の問題です。「また政府は、「他国に脅威を与えない自衛のための必要最小限度であれば、小型の核兵器を保有することは憲法上は可能」との解釈をとっているが、」こうなっていますが、これについてはどうお考えですか。
  280. 森喜朗

    国務大臣森喜朗君) これもいま初めて見たわけでありまして、国の国会におきまして、いわゆる非核三原則というものは、国民代表であります議会で決議をいたしたことでございますから、それに相反するということであるならばこれは大変大事な問題点指摘であると、このように私自身は受けとめて、事務当局にも十分このことの経緯あるいはその間における検定のやりとりはどのようであったか、これについて事務当局でよく調べて、先生にまた御報告を申し上げたいと、こう思います。
  281. 井上計

    井上計君 どうぞ、じゃ、大臣結構です。大分質問短縮しましたから、もう大臣に承りましたから、文部省もう結構でございます。  労働省大臣お見えでありませんが、一、二お伺いしたいと思いますが、雇用保険法の改正検討されているようでありますけれども、会計検査院の報告によりますと、不正受給者が年々増加しておる、こういうようなふうに考えられます。さきの報告によりますと、二万三千四百二人を調査したところ、そのうち千百四十三人が不正受給をしており、その不正受給金額が一億六千万円であるということになりますと、    〔委員長退席、理事目黒今朝次郎君着席〕 仮に単純に計算をすると、八十五万人の受給人員があるとすると、この率でいくと五十八億円が不正受給されていると、こういう推定ができると思うのです。大変な金額だと、こう思うんですが、労働省検討しておられる法改正の中で当然このような不正受給者の対策を考えておる、新聞報道で見ましたけれども、どういう点、どういう方法でこの不正受給ということについての対処をされるおつもりかどうか、それをお伺いします。
  282. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) ただいま会計検査院の指摘に基づきまして不正受給者の推計を先生おっしゃったわけでございます。この点につきましてはいろんな推計の仕方はあろうかと思いますが、特に調査をいたしました方たちは自己就職をしておられて、そして就職をしながら実は保険をなお続けられる、こういう方でございますので、受給者全部八十五万人に引き延ばすというのではなくて、自己就職をした全体の数と、こういうようなものとの比較で引き伸ばしてみますと約二十五億ぐらいになるかなと、こういう私どもは、ちょっとこれも単純な推計でございますのであれですが、また実際に私ども行政で今度不正受給ということで返還を命じておりますのが二十八億円という数字でございます。  その数字の関係はともかくといたしまして、こういう不正受給の数が先生いま御指摘のようにどんどんふえておるわけでございまして、まことに遺憾なことだと思っておるわけでございます。この点につきましては雇用保険部会で、雇用保険制度がこれからいろいろ高齢化社会が進んでいく、あるいはまたサービス業という、非常に離転職率の高いそういう分野で雇用が伸びていく、失業もそういう分野で非常にたびたび起こる。あるいはまた女性の職場進出が進んでいくという中で、女性の場合には終身雇用という面が男性よりも低いというような面もございまして離転職率が高い。そういうような雇用構造が変化しつつある中でこの雇用保険制度をどう運用していくか、そしてまたいまのままの制度でいくと昭和六十年ぐらいには積立金が非常になくなって支払いにも困るような事態も起きかねない。そういうことで、どうしていくかということで、現在雇用保険部会の報告を受けまして職安審議会でいろいろ御議論をいま賜っておると、こういう段階でございますが、その雇用保険部会の報告の中にもやはり不正受給の防止問題あるいはまた実際に不正受給が行われた場合には、それを的確に返還命令あるいはまた納付命令を出していくというようなことについてもう少し制度としてしゃんとしたらどうだろうかと、こういうようなこともございまして、その具体的な方法等についてよく検討しろという指摘をいただいておるわけでございます。そういう不正受給の防止の問題、これはすでに私どももこういう年々不正受給がここのところ急速にふえてきておるということについては、大変遺憾なことであるということで、昨年十一月をこの不正受給防止啓発月間と、こういういままでにない異例の月間を設けまして、雇用保険というのは失業している方がもらうんですよ、失業してない人がもらうのはこれは制度から言って間違いですよというようなことを中心にいたしまして、啓発活動したわけでございますが、実際にその不正受給した人についてのまた返還の仕方についても、現在は何といいますか、ちょっと言葉は悪うございますが、ばれもとといいますか、見つかって、これが不正ですよと言われてあっ済みませんといってさっと返す、その金額だけ返す、言うならばばれたら返しゃいいんでしょうという、非常に大変雑な言い方をして恐縮でございますが、そんなような面もございます。しかし、一方においては納付命令というのがございまして、悪質なものについては、いわゆる俗な言い方しますと倍額返しといいますか、そういう制度も現にあるわけでございますが、それについては実際には余り動いていない、しかし納付命令制度の動かし方についての、これ職安審議会で御審議をいただいた上で決めていただいた基準がございまして、その基準がやや何といいますか、厳しいといいますか、そういった中での動きにくい面等もございまして、やはりその辺についてももう少し労働省としても検討して、職安審議会にかけて、制度についての見直し、そういう面も部会の報告にやはりあるわけでございます。そういう意味で、これは給付の関係についての制度見直しと同時に、こういう不正受給というものについてもやはり制度を適正に運用していかなければ、その面からも制度は崩壊をするわけでございますので、そういう面でやはり今後私ども基準の再検討ということでの取り組みをぜひしていかなきゃならぬということでおるところでございます。
  283. 井上計

    井上計君 いま局長お答えの中で、ばれたら返しゃいいんだろうという人があるということですが、それらの人たちには至急不正受給した金額だけ返さしているということですが、不正受給というのは要するにすべて不正なんですから、やはり罰則規定にあるように倍額返還ということを厳しくやることによって、不正受給もまた多少は防げるということになろうかと思うんです。若干ケースによって違うかと思いますけれども、余り恩情があり過ぎて逆に不正受給をふやしておるんではないか。ばれたら返しゃいいんだ、損がないんだ、ばれなきゃもらい得だ、こういうふうな人があるやに聞いておるんで、その点についてもやはり規則は規則、規定は規定、厳しくやはりおやりになる必要があろうと、こう考えますから、なおよくひとつ御検討をお願いします。  それから、このほかに会計検査院の報告等によりますと、労働省関係の補助事業についても対象外のものへの不正といいますか、そういう指摘をされたような支出が数多くある、このようなふうに聞いておるんですが、これは労働省として補助金を支給する場合の審査の段階で、そのようなものは対象であるのかないのかということはわかると思うんですが、そういう点でどうなんですか、むずかしい点があるわけですか。
  284. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) 今回の会計検査院の決算報告におきまして、不当事項といたしまして指摘されております補助金につきましては、補助事業の事業主体が補助対象経費の算定を誤っていたということ、あるいはまたそれについての今度審査の段階でそれが発見できなかったというようなこと、それからまた事業主から助成金などの申請が行われたのに対しまして調査が十分でなかった、こういうようなことによるものでございまして、まことに遺憾なことであると思っておるわけでございます。やはりこの辺についてはそういう補助金の制度、こういう場合はこういう範囲が補助の範囲ですよとか、そういったようなものについての十分なやはり申請側に対する。指導というものを、やはりこれが私どもも十分足らなかった、あるいはまたそれが審査する際にそういった点について書類の審査の中だけで十分にその辺のところが解明できなかった。    〔理事目黒今朝次郎君退席、委員長着席〕 実際にそれで補助しました中身の実行でよく実際に検査院でお調べになったら、やはりこれはちょっと補助の対象として超えているじゃないかとかいろいろな問題が出ておりまして、私どももこういった、特にこういう財政厳しい状況の中でそういう補助の金がいろいろ誤ってそういうことになって大変申しわけのない話でございますので、そういう申請側に対する制度の十分な周知、そしてまた私どもの審査についてのいまのままでどうだろうかという観点で十分ひとつ審査体制についても見直し等もやる、あるいはまた場合によっては、必要によっては立入検査というものの徹底というものも図っていかなきゃならぬ。こんなところでいま鋭意そういう体制固めをしつつあるところでございます。
  285. 井上計

    井上計君 十分それらについてひとつ今後とも慎重におやりいただくように要望しておきます。  最後に、労働省直営の福祉施設あるいは労働省の外郭団体のいろんな施設が各地にずいぶんといいものが最近できています。それなりに非常に喜ばれて利用されておるわけでありますけれども、しかし中には役所仕事といいますか、サービス面が全く考えられなくて、せっかくの施設が有効に活用されていない、あるいは使ってみたら大変不愉快だとか、そういうふうなことを時に聞くんですね。それからもう一つは、一般営利を目的とした興行といいますか、そのようなものがほとんど大きな会場なんか前もってとっておって、実際に労働者が必要な集会になかなか使えないというふうなことも数多くあると、こんなふうなことも聞くんですが、これは要望であります。いま具体的にどうとかということは言いませんけれども、そのようなことについての改善について、やはり利用者が喜んで使うような、そういうことについて十分ひとつサービス面で配慮していただきたい、これは要望しておきます。お答えがあればお答えいただくとして、以上で質問を終わります。
  286. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) ただいま御指摘いただきましたような点、率直に申しまして私どもも時に耳にいたしておる問題でございまして、そういった点についてやはり十分な配慮が必要であると、具体的にその辺もう少しいまよりより喜ばれるように、あるいはそういう批判のないようにしたらいいのか、この辺は十分私ども改善に努めていかなきゃならぬところだということで、いろいろ関係者に具体的な検討はさしておるということでございまして、十分ひとつ御指摘心得てさらに努力をしたいと存じます。
  287. 井上計

    井上計君 終わります。
  288. 木本平八郎

    木本平八郎君 まず、文部省にお聞きしたいんですが、まずサラリーマンの転勤に伴う子弟の転入学問題なんですけれども、去年の八月十二日にサラリーマン新党として青木代表と私の名前で文部省に対して要望書を出したわけです。それで、御存じのように、サラリーマンには非常に転勤がつきものだと、非常に転勤の度合いも激しいわけですね。ところが、実際にはほとんどと言ってもいいぐらい単身赴任しなきゃいかぬ。この理由には、たとえば家の問題もちろんあるわけです。しかし、そのうちの相当部分が子弟の転校問題、特に高校生を抱えている家庭では教育の問題があって単身赴任しなきゃいかぬということになってきているわけです。この現象自身は、いろいろありますけれども、非常に好ましいものではないと考えるわけですけれども、私ども出しましたこの要望書についてその後どういうふうな御検討をいただいたか、ちょっとお聞きしたいと思うんでございます。
  289. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) まず基本的なことから申し上げますと、転勤に伴っての転入希望者を可能な限り受け入れていくという基本姿勢を持つべきだろうということで、そういう前提に立ちまして文部省としてもいろんな機会をとらえましてそれぞれの教育委員会に指導を行ってきているところでございます。埼玉県とか大阪府等の一部の県においてはすでに入学定員の二、三%を積み増しして前向きにそういう人のための準備をするということを県で対応しているわけでございます。ただ、転勤の実態というのは全国的に一律ではございませんので、どうしても各県ごとにその実情を踏まえて対応していかなきゃならないということで、今後ともできるだけ前向きでそういう子供たちを受け入れやすいような姿勢で措置をしていただくようお願いしてまいりたいと思っております。  それから、そういう観点で少なくとも転入の時期を年一回ではなくして年三回ぐらいにやったらどうかという御指摘でもございますが、これもかなりの府県で実施をしておりまして、現状を申し上げますと年三回受け入れをするということを決めておりますのが十九県あります。たとえば東京とか大阪の大都市圏、そういうところは年三回、また県によっては随時というようなことをやってきております。したがいまして、この問題はかなり弾力的に前向きで対応していくという方向に流れているわけでございます。  それから転勤証明、転勤してきた際に本当に住居が移ったかどうかということをいろいろ調べて出させるということで、会社のこの学校のこの支店に転勤したという会社側の証明だけでない地域があるわけですね。そういう学校はどうも乱用されるという心配があるんでそういうことをしているようです。というのは、有名校へ入りたいためにそういうおやじの転勤証明を持ってきて入れてくれということでは非常に困るので、本当にその住所が親子ともども移ってきたかどうかという確認のための書類が欲しいということをやっておりますので、転勤証明の件についても、そういう簡単な方法で受け入れてもいい県と、かなりチェックしていかないといけない県と両方あると思いますので、これまた各県の実態に応じて処理してもらいたいということを考えておりまして、要望の趣旨につきましては前向きでできるだけ広げていくという対応を指導してきているところでございます。
  290. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで、三番目にありましたもとの学校の成績というか内申書みたいなものですね、これを非常に尊重するという点についてはどうでしょう。
  291. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) これも各県の公立学校のたとえば中学から高等学校に行く場合のことを考えますと試験の仕方が違うわけですね。内申書を五割ぐらい見ているところと七割ぐらい見ているところと三割ぐらいと、そういう差が基本的にあるということがあるものですから一応……。それから学校の格差と申しますか、地域格差と申しますか、そういうのもあるということで、この取り扱いが不公平になると他の親たちが大変かえって不平等でないかというような、非常にやさしい学校から大都会に来てそういう証明で上に行けると、そういう他の親たちとの平衡感覚というかバランス感覚、そういう点で問題になる可能性もあるわけです。したがって、この問題はちょっと画一的に指導することが非常にむずかしい。各学校の自主的な判断で対応してもらうということになろうかと思うんです。どちらかというと、ちょっと前の学校の成績をうのみにしていろいろ取り扱うという点については教育界で抵抗がございます。
  292. 木本平八郎

    木本平八郎君 この転校問題は、午前中も大臣からありましたように、要するに高校教育というものを見直すということの一環でぜひこれを、転入問題というのをきっかけにして考えていただきたいと思うわけです。すなわち、いま答弁にもありましたように格差ができてくるわけですね。有名校ができてくると。転校する人だれもかれもがみんな有名校に行きたがるわけですね。しかし、この有名校の存在というのは、私はむしろ高校教育全体としては弊害が多いんじゃないか。したがって、転入というときに、仮に四十五人のうちに五人なら五人転校生が入ってくるということになると、それは確かに不公平はあると思うんですよ、あると思うんですけれども、そういう点で少しは格差が少なくなっていく。教育の問題というのは確かに都道府県の教育委員会がやっていて各学校長にも相当権限があるわけです。しかしながら、それに任しておいたんでは文部行政にならないと思うんですね。全体日本の国の将来の教育どうあるべきかという観点からやはり指導していただきたいと思うんです。その点でこういう、私はむしろ先ほどありましたように、いま三流校だと、しかしながら大阪なら大阪の一流校に行きたいと、おやじに転勤してもらうということがあってもいいんじゃないかとぐらい思うわけです。ということは、要するに大臣お話にもありましたように、学力だけが入学資格じゃないんだという社会に持っていかなきゃいかぬと思うんですよね。おやじの転勤というのも一つの入学資格になるという考え方があってもいいと思うんですけれども、その辺、全体の高校教育という点からいま私のお話し申し上げたようなことをどういうふうにお考えになるかちょっとお聞きしたいんですがね。
  293. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 実は非常に有名校に在学している子供、そしてその親が地方に転勤すると親も子供もその学校に残していきたいということでなかなか穴があかないわけですね。そういうことが一つあります。そうすると、いま逆の話でございますけれども、有名校でない者を有名校に入れてもいいじゃないかというのも一つの考え方でございますが、なかなか平等というんですか、機会の均等と申しますか、そういう点から言うと、そこについては教育界でいろんな抵抗がございます。したがいまして、皆さんがこれならばと納得いくような形で改革をしていかざるを得ないということで、いま御指摘のような方向に直ちに持っていくということについてはいろんな問題点があるというふうに考えます。
  294. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで最後になにしました転入学定員を別枠で設けてくれという要望なんですけれども、これはほかにもいろいろ関連すると思うんですけれども、いまのような私の考え方に基づいて有名校なら有名校には少し枠を広げておいてこういう要望にこたえていくと。公平と、こうおっしゃいますけれども、世の中に何が公平なのか神様でなきゃわからぬわけですね。そういう点で少し有名校には枠を広げておいて、それは有名校だと今度おやじさんが転勤した場合に子供を残していくというなにもありますけれども、その辺はやはり行政だと思うんですけれども、この有名校にできるだけ残していくと、多分むずかしいというお答えだろうと思いますけれども、そういうイージーなお答えじゃなくて、どういうふうに局長考えになるか最後に伺いたいと思うんですがね。
  295. 高石邦男

    説明員(高石邦男君) 基本的に親と一緒に生活をするというのが特に高校時代までは非常に大切なことだと思うんです。したがいまして、現在のサラリーマンの社会子供教育ということが非常に大きな転勤その他でネックになっているということも十分承知しております。したがいまして、そういう障害をできるだけ解消していくという方向は基本的に持っているわけです。ただ、その際にどういう手法があるかということについては、いろんな手法を考えていかなければならないと思いますので、いま御指摘考え方も一つの考え方だということで検討さしていただきたいと思います。
  296. 木本平八郎

    木本平八郎君 いま答弁にありましたように、やはり日本のいま教育で一番大きな問題の一つは父親が教育にタッチしていないということなんですね。特に、いまおっしゃいましたように、思春期の非常に動揺しやすいときにおやじがおらないということは、非常に将来民族としても大きな影響があるんじゃないかと思うわけですね。したがいまして、これはいま単身赴任だけじゃなくて、一般的に母親任せになっているわけです。しかしながら、これは決していい姿じゃないんで、ぜひ民族としても父親が教育に参加するように変えていかなきゃいかぬと思うんです。そういう意味で、今後ともこの転入学の問題についてはぜひ文部省として真剣にというか、考えていただきたいということを御要望したいわけです。  もう結構でございます。どうもありがとうございました。  それでは次に、労働省に雇用保険の問題についてお伺いしたいんですが、いま一生懸命に労働省としても雇用保険の改正ということに取り組んでおられるわけですけれども、五十七年度で二百十七億円の赤字ですか、実質的には五百億円ぐらいだと。これ、いま数字は出ていないかもしれませんけれども、大体の予想で、五十八年度はどのくらいの赤字になりそうなんでしょうか。
  297. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) その辺につきましては、やはり相当の赤字になりそうなので、この辺についてはならないようにいま懸命に努力をしておる最中であります。その努力の効果がどの程度出てきますかというようなことで、やはり具体的な数字での見通しをいま持っておるわけではございません。
  298. 木本平八郎

    木本平八郎君 なかなか数字は具体的に言えないと思いますので私の想像を申し上げますと、五十四年で六百五十八億の黒だったわけですね。それから五十五年が五百七億になり、五十六年が五十六億に下がったと。そして五十七年度に赤字に転落したわけですね。この調子でいきますと、多分五十八年度も数百億の赤字になるんじゃないかと。このままの趨勢でいきますと、まず黒字になることは考えられないと。したがって、労働省としても雇用保険の改正というのにいま取り組んでおられると思うんですけれども、一般的に考えましても、こういう低成長で、今後企業の賃金アップもそう考えられないと、高齢者がどんどん出てくるという状況で失業給付がどんどん膨大になっていくということはもう当然だと思うんですけれども、これはサラリーマンにとっては一番の脅威なわけですね。この辺だけははっきりしていただかなきゃいかぬわけです。  それで、実は労働省がいまやっておられますこの計画ですね、これを拝見した範囲では、どうもこのままではいわゆる高齢者に何かしわ寄せして、とりあえず当面の赤字対策だけはやろうということなんですけれども、これが実施された場合、保険料を上げるということは別ですよ、いまの保険料でこういう対策を実施して五十九年度黒字になる見通しというか、そういう自信はおありなのかどうかということをお伺いしたいんですがね。
  299. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) いま御指摘のそういう問題につきまして、中央職業安定審議会でいろいろ論議をしていただいておる最中でございますが、そこでもそういう問題いろいろ提起をされております。ただ、いろいろいま労働省考え方ということで提起しておりますそれが、具体的にどのくらいの、いわば保険財政上のプラスなりマイナスなりになってくるのか、この辺はなかなか一概に決めにくいと。たとえば就職促進給付というようなものを一つ考え方として示しておりますが、そういうものによって何人ぐらいが早く——従来であれば、まるまる保険をもらい終わるまでずっと就職は余り積極的にならずにおられて、保険がもらい終わったら、じゃひとつ就職するかと、こういうような対応をしておられた方について、そういう給付が出るから、それじゃここらあたりで就職するかというような形でどのぐらい実際に出ていかれるだろうかと、こういうようなことで、その辺についてはなかなかぴしっとした推計というものはしにくいわけでございますが、いろいろ大きな幅の中で——いま審議会で私ども申しておりますのが、これによって一千二、三百億ぐらいから二千五百億ぐらいというような幅の数字でいまのところ試算を申し上げておると、そんなようなところでございます。
  300. 木本平八郎

    木本平八郎君 それで私、これ拝見していて非常にいやな感じを受けたのは、一番最後に、これは読むまでもないでしょうけれども、要するに、「上述の措置の運用の推移をみつつ、保険財政の健全な運営を確保するため必要かつ最小の範囲内で保険料率を改定する。」と。ここに「最小の範囲内で」とつけてはおられますけれども、どうも、やるだけやってだめなら上げるというふうに簡単におっしゃられるんですけれども、私も、こういう行政とか政治とかいうのは、かかわって日が浅いんですけれども、サラリーマンというか、労働者にしてみれば、こういうものが上げられるということは非常に厳しいわけですね。しかも、企業の場合だっていまそうもうかってないんですから、それにまた自分の負担が上がるというのは大変なわけですね。われわれ民間——われわれと言うと何ですけれども、民間の発想では、値段を上げるというのは死活問題なんですね。もしも上げたら売れなくなる、売れなくなると会社がつぶれると、そういうことで必死になってやるわけですね。ところが、国家だとか政府というのはつぶれないものだから、やるだけやってだめなら上げればいいんじゃないか、上げるしか仕方ないというふうに開き直っちゃう。増税問題、減税問題もそうですね。これどういうふうにお考えになっているか。私が本当に聞きたいお答えは、もう絶対に最後の最後まで、命をかけてでも、職をかけてでも保険料は守ると。それで、もしも保険料を上げるときには私は責任をとりますというぐらいのことを、その覚悟で取り組んでいただきたいんですがね。それは実際問題無理でしょうけれども、保険料を何とか上げずにやると、その辺の決意はどうですかね。
  301. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) この雇用保険部会で報告が出ます過程におきまして、やはり保険料の値上げ問題についていろんな論議がございました。そういう中で、とにかく、いままさに木本先生おっしゃいますように、保険料を当面上げて、こういう制度そのものの、何といいますか、雇用構造の変化に対応するための制度改正、給付の面でのいろいろな制度改正というようなものはもうちょっと延ばしたらどうかとかいう議論もないわけではなかったんです。しかし、やはり圧倒的に多いのは、できるだけ、こういう給付の面でこの辺はもう少し変えてもいいではないかというようなことで、いろいろやれるだけのことをやって、それでどうしても上げざるを得ないということならば、最後の手としてまた上げるということも、それはやはり必要最小限考えなきゃいかぬだろうが、まず、そういう給付面でのいろいろな合理化、あるいは先ほどお話もございましたように、そういう、今度は不正な受給者といいますか、現に働いておられるのに保険をもらいに来られるというような者をなくするように手だてをするとか、とにかく、こういう保険制度を破綻させてはならぬので、しかし、その場合、簡単な値上げなんというのは、これはもう軽々に考えることじゃないということの強い御意見がございまして、そういうような保険部会での御意見等も私どもも十分受けまして、いま考え方として出しておりますペーパーにはそういういろんな措置を努力をしながら、なおそれで対応できない場合において必要かつ最小限にと、こういう感覚でそういった考え方を審議会に提出をしたと、こういうことでございます。
  302. 木本平八郎

    木本平八郎君 そういうことで、あらゆる手を打って、とにかくこの保険財政の好転を目指すというのは当然だと思うんですけれども、そのうちで不正受給、保険料の徴収の過不足の問題がありますね。過不足差し引きしますと五十七年度で四億円ですか、これは千分の一ぐらい調べたら四億円あったというんですね。これ単純に掛けて四億円を千倍して四千億という、そういうわけにはいきませんけれども、せめてその十分の一の四百億でもあれば、五十七年度の二百十七億あるいは実質的には五百億ぐらいですね、それがそこそこカバーできるということなんですけれども、こういう、いまコンピューターなんかでもきちっとセンターができていてもう処理できるということなんで、少し真剣に——真剣にと言ったらおかしいですけれども、突っ込んでいただければ、わりあいにこういう保険料徴収不足というものは防げるんじゃないかと思うんですが、その辺いかがですか、御方針は。
  303. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) 御指摘のように、保険料の徴収につきましてこういう過不足がございまして、まことにそのことについては残念、また私どもの至らざる点でございますが、特に中小企業の事業主となってまいりますと、この制度が現在自主申告自主納付制度と、こういうものを基本といたしておるわけでございます。そういう中でこういう事業主の皆さん方がここに入れる賃金の範囲というものをどうするかというようなことについて、いろいろな技術的なあれもあるものですから、そういった面での制度なり法令の周知徹底の面で、なかなか大企業などに対応していただくような形ですぱっと対応していただけないというような面等もございます。  そういう意味で、一応現在行政側でも積極的に事業場に赴きましてこういう保険料の算定基礎調査と、こういったようなものをやりながら、事業主指導というものをやって努力はいたしておるわけでございますが、とにかくそういう自主申告自主納付のこの基本を変えるというわけにはこれはいきません。そういう中での、とにかく制度的に決められておるいろんな賃金の範囲とかそういったものについて、やはり制度の周知徹底あるいはまた私どももできるだけそういう事業場への手の届くような、たとえば労働保険事務組合という制度もございまして、そういう事務組合あるいは社会保険労務士というような方たちのいろいろな協力も得まして、御指摘のようにそういう、こういう財政的にも非常に苦しくなっておる面もございまして、適正に徴収をしていくと、また十分その制度を御理解をいただく中で徴収していくということに懸命に努力はしたいというふうに思っておるわけでございます。
  304. 木本平八郎

    木本平八郎君 もう時間がありませんので最後に一つだけ。ちょっとこれは私のアイデア的なんですけれども、失業給付を受けている中に、会社で女子事務員がやめて結婚する、ところが結婚はするんだけれども自分が受給資格があるからもらわなければ損だということで、失業保険をもらうというケースが多いわけですね、実際問題としては。これは決して違法じゃないと思うんですよ。その資格要件があって、一カ月に一遍職業安定所へ行っていろいろ形だけやっていればこれはいいわけですね。しかしながら実態は、中にはこれで海外へ旅行したという人もおるやに、私も知っています。  それから、そういうんでね、しかし結婚というのはある意味では三食昼寝つきの永久就職みたいなものですよね。完全に再就職しているのにそれでもらっているというのは、これはある意味では不正みたいな感じがするわけですね。そういうことを、こういうニーズが非常に低いわけですね。こういう人に多少遠慮してもらうといったらおかしいけれども、して、本当に必要な人の方に回していくと。保険財政上もそれが望ましいわけですね。ところが、資格があるのにちょっとやめとけというわけにもいかないし、そこで私の提案としては、要するに何かここで、私はいま結婚するんで差し迫って失業保険要らぬと、ここで辞退しておけば将来何らかの形でプラスになるというふうなうまい方法があれば、これはわざわざもうめんどくさい——めんどくさいと言っちゃおかしいけれども、行ってもらいにいかないということもあり得ると思うんですね。たとえばこれの中に被保険者であった期間と、何年間勤めていたということを多少加味してこようという思想が入ってますね。いままでは掛け捨てだったんだけれども、今回からはそういうふうにやっていこうということなんで、たとえば三年間勤めてお嫁にいくというときに、この三年間を将来にキャリーオーバーしておけば、また四十になってから職場に復帰したときにカウントされるとか、そういうふうな本人にとってメリットがあるような方法で繰り延ばすと。そうしますと、これはやっぱり払う方としてはあるいはうまく払わなくて済むかもしれないと。現実に私なんかも三十三年間払ってきてもうそれもらえないわけですね。そういうふうなことを、それで保険をもらえなければ、これはある意味じゃハッピーなわけですね。したがって、そういうふうに受給者に得になるような方法というのをぜひ真剣に考えていただきたいと思うんですよ。もうこれ、先ほども申し上げましたように、必死になってやっぱり知恵をしぼっていただかなきゃいかぬ段階だと思うんですね。だから、簡単にいやそれはだめだとか、いやこれはあかんとかいうことじゃなくって、この女子の問題、これはもう相当給付金の半分ぐらいいくんじゃないかと思うんで、ぜひその辺のことを考えていただきたいということで私の質問を終わりたいと思うんですがね。いかがでございますかね。
  305. 加藤孝

    説明員(加藤孝君) 率直に言いましてただいま出ましたようなアイデアといいますか、そんな考え方もいろんな論議の中では出たこともございます。実は結婚するために会社をやめられるということの意味ですが、結婚するから私は働けないから、働けなくなったからやめるというのであれば、これは保険の受給者で本来あり得ないと。働かないのであれば、これはもう失業者ではないわけです。ところが、結婚したために、何といいますか、住所が変わらなきゃならぬと。これはお嫁に行くといいますか、とにかく住所を変わると。そうすると、この会社へ通勤できなくなるからやめると。しかし結婚したところから通えるようないい事業所があればぜひ就職したいと、こういうケースももちろんあるわけでございます。いま、きょうもいろいろ論議になっております男女の雇用機会の均等と、こういうような問題絡みで女性の職場進出もいろいろ進んでおりまして、結婚したから本当に、何といいますか、完全に労働戦線からリタイアするというんじゃなくて、近所へ行きたいとか、あるいは通えるところへ通うというような形の就職希望もあるわけでございますので、それは結婚するということが一つの離職の理由になったということが、すなわちもう働く気がないんだということには、あるいは失業者でないんだということには一義的に結びつかないと、こういう問題もあるわけですから、そういう意味では結婚した人についてという形での取り上げ方というのはなかなかむずかしいと。  それからもう一つ、先生も御承知だと思いますが、以前雇用保険法に改正いたします十年ほど前までは、要するに妊娠した女性というのは、これは当然産前産後の規定等もございまして、当然本人が働きたいとか働くとおっしゃったってその就業が禁止をされている。あるいはまた、働くというのは実際には無理だ。しかし、にもかかわらず働きたいと言わないと失業者にならないので、無理に安定所へおいでになったというようなこともございまして、これはちょっと問題じゃないかということで、そういう方については給付を先へ延ばすと、こういうふうな形で特別な配慮をする制度を十年前に設けましていまやっておるわけでございます。そういうケースと結婚のような、これは働く働かないかまさに本人の意思次第というのとは、ちょっとそこは次元の違う取り扱いというふうなことでございまして、先生のおっしゃったような意見もやっぱりいろいろ議論の中では出ておりますが、ちょっと現実にそういう結婚退職というものについて特別に、そういう何か就業する、就職するという問題と何かこう即働かないんだという形での結びつき方というのは、なかなかこういう時代でございましてむずかしいんじゃないか、こういう感じがするんでございます。
  306. 木本平八郎

    木本平八郎君 どうもありがとうございました。
  307. 安恒良一

    委員長安恒良一君) 他に御発言もないようですから、文部省労働省及び科学技術庁決算についての審査はこの程度といたします。  次回の委員会は二月三日午前十時三十分開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十分散会      —————・—————