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井上計君 私も別に高村
先生が再度
中教審の会長におなりになることについては反対とかどうとかという意味じゃ毛頭ありません。ただ、こういうふうなものが、いま
大臣言われるように、必ずしも前後のなにじゃなくてこれだけ大きく見出しになっているというふうなことかもしれませんけれ
ども、やはりこういうふうなものが出てくると多くの
人たちが疑問を持つであろうと、こういうふうに感じますので、十分その点についてもお
考えいただいたらいかがであろうかと、こういうことで発言をしたわけです。
そこで時間も、
大臣もありませんから急いでまいりたいと思いますが、そういう意味で私はやはり
教科書問題についても
教育問題についてもわれわれの
立場でやはり
考えることは当然言うべきである、また審議すべきである、こういう観点から申し上げたいと思うんですが、
教科書問題は、先ほどから
大臣の御
答弁あるいはまたすでにいろいろと論議されておりますけれ
ども、やはり何といっても
教育の基本として
教科書問題は重要である、このように
考えております。ところが、
教科書等について
検討中だと聞いておりますけれ
ども、現在の高・中・
小学校等の
教科書に過去の問題を事実と違うといいますか、あるいは事実を隠したそのような記述が相当あるんですね。私は、すでにこれらの問題等についてはいままで
指摘もしております。たとえて申し上げますと、北方四島問題にしても、ソ連が当時終戦の前後に行った国際法違反であるとか、あるいはまた終戦の宣言以降、すなわち八月十五日以降南樺太あるいは千島列島あるいは北方四島に武力で進駐をして多くの民間人、
日本人を殺害したとかというふうなことはどの
教科書を見ても全くないんですね。私は、何もソ連のそういうふうな不法行為をぜひ大きくということじゃありませんけれ
ども、やはり事実は事実として記載をしなくちゃいかぬ。ところが、数年前から南京の虐殺事件あるいはまた進出か侵略かというふうな問題についてはずいぶんと大きく騒がれました。マスコミも大きく取り上げました。ところが、こういうふうないわば北方四島問題を中心としたソ連のそのような不法行為、国際法違反というのは余り言われないし、取り上げもしないんですね。そこらあたりに
教科書のやはり問題としてとらえていかなくちゃいかぬ問題があるんではなかろうかというふうに思います。
検討中の
教科書法との関連が云々ということは言いませんけれ
ども、そういうこともぜひ問題をひとつ
大臣としてもお
考えをいただきたいと、こう思います。
そこで、私お配りした資料に基づいてちょっと申し上げるんですけれ
ども、高校
教科書の中に、現在
わが国、すなわちわれわれが信奉しておる自由主義
体制あるいは日米安全保障条約等を否定をするような、あるいは否定をしてと思われるような、あるいは否定をする教材としてまことに使いやすいようなそういう記述が幾つかあるんですね。私
専門家じゃありませんからよくわかりませんでしたが、ある人の資料、説明等を受けて私
自身も実はびっくりをしておると、こういうことなんです。
そこで、お配りした資料の一−Aというのは四十二ページ、ラインが引いてありますけれ
ども、「自衛隊や駐留アメリカ軍は、
憲法第九条二項の禁止する戦力に該当するものであって
憲法に反するものであり、また、核兵器をはじめとする軍備競争が激しい現在の
国際情勢のもとで、
わが国の防衛に役だつとは
考えにくいばかりでなく、かえって危険でもある、という反対
意見もある。」ということで、ある意味では逃げてはいますけれ
ども、先入観を持った人がこれらのものによって
教育すれば、当然これは
憲法違反でありかえって危険であると、こういう
教育をすること、可能だというふうに思うんですね。
それから、同じく資料一の次のページの二百五十四ページの下の方に、「生きがいある人生と
社会」という中ででありますが、「個人主義的な
生き方」、「わたし
たち一人びとり」云々というのがありまして、次のページに「そうだとすれば、一回かぎりの人生を自分のために生きても、けっして非難される筋合いはない」すなわち親、兄弟等々顧みなくてもいいではないか、このように受けとめできるようなそういう記述もあるわけですね。
それから次の資料二、これは「現代
社会」のやはり高校
教科書でありますが、二百六十四ページ「人間的な
社会の追求」という中で、マルクス主義礼賛と思えるような記述なんですね。「現代において、マルクス主義思想はどのような意義をもっているであろうか。」という中で、次のページの上の三行目から見ていただきますと、「現代の資本主義
社会において、
経済の動きを
国民全体の
立場から制御する政策がとられているが、じゅうぶんにその
成果があがらず、不況・失業・物価高などの深刻な問題があらわれている。したがってわれわれは、その問題の解決につとめなければならないが、他方また、現在の
社会主義の
経済体制もさまざまな深刻な問題をはらんでいるので、われわれは、
日本の
社会に即したより人間的な新しい
社会体制をつくっていかなければならない。そのさい、マルクス主義思想は、一つの重要な手がかりをあたえてくれるであろう。」マルクス主義はいいとは書いてありませんけれ
ども、これらのことをもとにして
教育する場合に、マルクス主義礼賛の
教育に利用されるおそれ多分にあるんではなかろうかと、こういうふうに思います。
それからも一つ、資料三でありますけれ
ども、これは日米安全保障条約についての、要するに批判的なことに利用されるものだと思いますが、「両陣営のいずれにも属さない多数のアジア・アフリカの諸国が次つぎと独立を達成し、中立主義・非同盟主義をかかげて活躍していることは、今後の
世界平和の維持に明るい希望を与えている。こうしたときに、
日本国
憲法における徹底した平和主義の精神の果たす役割はますます重要になるであろう。」すなわち、非同盟主義がいいというふうな、こういう
教育に使われるおそれが多分にあるということであります。
それから実は資料第四でありますが、たまたま去る一月二十日にモスクワ放送が、例の家永
教科書告訴の論評をしておるわけですが、そのモスクワ放送の中に、
教科書には極東の
日本軍国主義に対するソ連の行動について、またソ連自体についての根拠のない非難が書き加えられました。しかも、ソ連が対日戦に参戦したのは連合諸国に対して負った義務に基づくものである以上、ソ連の行動が全く正当なものであったという事実は無視されてしまっているのですというふうなことを言っておる。
それからもう一つ重要なことは、かつて
日本政府が宣言した非核三
原則のような
日本の政策の個別的な側面です。たとえば、
文部省は防衛を目的とする少量の核兵器の保有は
憲法違反にならないというような諭旨を若干の教材に挿入しておりますと、こういうモスクワ放送があったんです。そこで調べてもらいましたら、この「
高校生の現代
社会 最新版」こういう資料四の百七十六ページ、ラインが引いてありますからごらんをいただきたいと思うんですが、「政府は、防衛力の限界は「そのときの諸般の情勢、
科学技術の発達などの諸条件によって一概にはいえないが、他国に対して侵略的な脅威を与えるようなもの、たとえば、長距離爆撃機、攻撃型空母、大陸間弾道弾などは保持できない」と述べている。また政府は、「他国に脅威を与えない自衛のための必要最小限度であれば、小型の核兵器を保有することは
憲法上は可能」との解釈をとっているが、政策として非核三
原則により保有しないこととしており、」云々と、こうなっておるんですね。だから、これは大変重要だと思うんですね。だから
文部省、政府がたとえ小型の核兵器であっても非核三
原則の政策に反して核兵器を持つことを
憲法上認められておる、こういうふうにこれは記述がしてあるわけですね。私は、これらのことはもっともっと論議をやっていかなければ大変な誤解を、あるいはそういう偏見を
教育の場で与えることになる、この点を憂慮しておるわけです。
そこでもう一つ続いて申し上げますけれ
ども、一九八三年度、今年度の日教組の運動方針でありますが、日教組の運動方針は、明らかにほとんどのものが
政治闘争である。
文部大臣ごらんになっておるかと思いますけれ
ども、大会スローガンも、この中に「
憲法政悪、軍事大国化路線に反対し、安保条約廃棄・非武装中立・非核三
原則を堅持」云々というのがあります。それから、「主任制・
教科書攻撃・免許法改悪など「
教育大臨調」に反対し、
憲法・
教育基本法」と、こういうふうな大会スローガンが明らかに先ほど申し上げましたけれ
ども、
教員の
政治的中立に関するそれぞれの法律等、あるいは公務員法等に違反をしたようなことがずっとあるわけですね。運動方針細部にわたると、そういうふうないわばいま申し上げたような
教科書のそういうふうなことがずいぶんと一致するものがあるわけです。したがって、この日教組に加盟をしておる
先生が日教組の運動方針を遵奉して、こういう
教科書を教材にすれば明らかに間違った
教育をする、
教育をすることに大変逆に言うと都合がいい、こうとも思える点がある、このように私は
考えざるを得ないわけであります。
細かい点申し上げていると切りがありませんが、それらのことについて
文部大臣はどのようなひとつ
認識をお持ちであるのか、また、今後どのようにお
考えであるのか、時間がありませんから、
文部大臣四十五分にはここを出られるそうでありますから、御
答弁をいただきましてひとつ御退出いただいて結構であります。