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1984-07-04 第101回国会 参議院 環境特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月四日(水曜日)    午後一時五分開会     ―――――――――――――    委員異動  七月三日     辞任         補欠選任      高杉 廸忠君     片山 甚市君  七月四日     辞任         補欠選任      片山 甚市君     高杉 廸忠君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         穐山  篤君     理 事                 山東 昭子君                 原 文兵衛君                 丸谷 金保君                 飯田 忠雄君     委 員                 石本  茂君                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 藤田  栄君                 矢野俊比古君                 柳川 覺治君                 吉川  博君                 片山 甚市君                 菅野 久光君                 近藤 忠孝君                 中村 鋭一君                 美濃部亮吉君    政府委員        環境庁長官官房        審議官      大塩 敏樹君        環境庁水質保全        局長       佐竹 五六君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    参考人        滋賀琵琶湖研        究所所長     吉良 竜夫君        社団法人淡水生        物研究所長    森下 郁子君        千葉環境部技        監        関 登世彦君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○湖沼水質保全特別措置法案内閣提出、衆議院  送付) ○湖沼環境保全特別措置法案丸谷金保君外二名  発議)     ―――――――――――――
  2. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから環境特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨三日、高杉廸忠君委員辞任され、その補欠として片山甚市君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 湖沼水質保全特別措置法案及び湖沼環境保全特別措置法案を便宜一括して議題といたします。  本日は、両案上審査のため、お手元に配付しております名簿の方々参考人として御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜り、まことにありがとうございます。  本日は、両案につきましてそれぞれのお立場から忌揮のない御意見を賜りまして、審査参考にいたしたいと存じます。どうかよろしくお願い申し上げます。  次に、議事の順序について申し上げますが、吉良参考人森下参考人関参考人の順で、お一人二十分以内で御意見をお述べいただきまして、その後委員からの質疑にお答えをいただきたいと存じております。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、各委員質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔にお願いをいたしたいと思います。  それでは、まず、滋賀琵琶湖研究所所長吉良竜夫参考人からお願いをいたします。吉良参考人
  4. 吉良竜夫

    参考人吉良竜夫君) 吉良でございます。  この法案は、湖沼水質悪化を防ぐために、湖の流域からいろんな汚濁を招く物質が流れ込むことを規制するということが趣旨かと存じますけれども、それにつきまして、一つは、水質というものがどういうもので、どういうふうにして決まるものであるかということが一つ、それからもう一つは、湖にいろんな汚濁物質が流れ込むということが現在はどういう状況になっているかという、その二つのことについて申し上げたいと思います。  もう十分御承知のことがたくさん入っているかと思いますが、その点はお許しをいただきたいと思います。  水質というのは、水の中に主として生物栄養源として使えるような物質がどのくらい入っているかということでございまして、これは分析をすればわかることでございます。ただ、水質をよくしよう、つまり水質をコントロールしてやろうと思いますと、そのためには、その水質というものがどういうふうにしてできてくるのかということを考える必要がございますが、それを考えてみますとこれは非常に厄介なものでございまして、なかなか一筋縄ではいかないものでございます。  例え話で恐縮でございますけれども、私は、水質というのは、乱暴な例えで申しますと、我々の財布の中にお金が幾ら入っているかというようなものであろうかと思っております。財布の中にあるお金は、私なら私の財布に入っておりますお金は、私が得ました収入と使った支出との差額が簡単に申しますと財布に入っているわけでございまして、したがって、財布の中に少ししかお金がないからといって必ずしもその人が金回りが悪いということにはなりません。例えば一万円財布に入っているといたしまして、それは百万円入ってきて九十九万円使った残りの一万円かもしれませんし、十万円入ってきて九万円使った残りの一万円かもしれない。まあ一般的に言いましたら、金回りのいい人ほど財布にはたくさん平均すれば金が入っていると思いますけれども、しかし財布の中の金でもってその人の経済状態を評価するというわけにはいかないわけでございます。  水質もそれと同じでございまして、湖の水質というものにとっての収入といいますと、それは周り流域から流れ込んでくる汚濁物質収入でございますけれども、それは湖の水という財布の中へ入ってきますと、すぐどんどん使われていきます。それは、主としては植物プランクトンとかそういう湖の中にいます生物がどんどんそれを吸収して使うわけでございます。そうしますと物質はなくなります。しかし、その生物の体になるわけでございますが、それはしばらくしますとその生物が死んで分解してまた出てきますので、いわばしばらく貯金で預けてあるようなものでございます。そのほかに、例えば泥と一緒になって底へ沈んでいくというようなこともございます。  どんどん収入ふえますと、使えるお金ができますから生物がどんどんそれを使いまして生物ふえます。その死骸がすぐに分解するのもありますけれども、沈んでいって泥と一緒に底へたまりまして、いわゆるヘドロというものになっていく。これはかなり大きな貯金でございまして、次々と分解してはまた物質を水の中へ出していきますので、預金から絶えず引き出されたりあるいは利子が生まれてきたりするようなことになります。これも詳しく申し上げる時間はございませんけれども、その中には、定期預金みたいにしばらくはたまっているけれども、ある条件がくるとどっと出てくるというような性質のものもございます。  いずれにしましても、貯金ふえますとまたその貯金から収入が新たにふえるわけですから、その分また生物ふえてまた貯金ふえる。そうなった湖がいわゆる富栄養化した湖というわけでございます。ですから、どんどん使いますので、財布の中、水の中にはいろんな物質ふえはしますけれども、そう無限にふえはしないわけでありまして、ふえた分だけ生物が使います。したがって、水質が何割か悪くなったということは実は何倍かの収入になっているということでありまして、水質がほんの少し悪くなって、これはほんの少したというふうに考えるのは間違いでございまして、水質がほんの少しふえるためには相当大きな量の収入があって、それが湖の中で使われているんだということを考える必要がございます。  これは琵琶湖の例でございますけれども、御承知かと思いますが、琵琶湖は南の方は浅うございますが、琵琶湖大橋がかかっておりますところから北は百メートル近い深さを持った大きな湖でございます。非常に大きな湖でありまして、高度成長以後、北の方の大きな湖の周りにも人口が集中し、産業もふえましたので、相当たくさんの汚濁物質が流れ込んだわけでありますけれども水質は悪くはなりましたけれども、それほどひどく悪くはなっておりません。ある意味ではまだ今でもそのままで飲める程度の水でございます。霞ケ浦や諏訪湖に比べますと格段にまだきれいな湖でございます。しかし、それで安心していることはできませんので、実は貯金がどんどんふえております。  琵琶湖の場合には、やっぱりプランクトンふえまして、百メートル近い水底に沈んで水底ヘドロが年々蓄積してきております。その結果、夏になりますと、深い湖はどこでもそうでございますが、表面だけが温まりまして重い冷たい水が底に沈んでおりますので、夏の間は水が上下まじりません。したがって底の方へは酸素の供給が悪いわけでありますが、底でたまったヘドロが分解しますのでだんだん酸素が少なくなります。  ところが、今から二十年あるいは三十年くらい前には、琵琶湖北の方の深いところの底は夏のそういう時期でも酸素が十分にございました。一〇〇%酸素があったわけでありますが、それがこの二、三十年の間にどんどん減ってきまして、三分の一あるいは四分の一ぐらいまで減ってきております。もしこれがこのままの状況で続くとしますと、あと十数年、長く見積もっても数十年のうちには夏には琵琶湖の深い底で酸素がゼロということになります。酸素がゼロの状態になってきますと、これまで蓄えられてきた貯金の中から特に重要な燐が大量に溶けて出てくるということがわかっておりますので、もしそういうことが起こりますと琵琶湖は加速度的に悪くなることが予想されるわけであります。ですから、水がきれいだからといって安心しているわけにはまいりませんので、実はそういう貯金の問題というのが非常に大きい。  貯金をなくするということは大変難しいことでございまして、例えば空気を送り込んで分解を早めるとか、あるいはヘドロをさらって取るというようないろんなことが考えられますけれども、いずれも池に毛が生えたぐらいの小さい湖ですと可能性がありますけれども、ある程度以上の大きな湖にとってはそれは大変なことでございまして、容易にはできないと思います。ですから、琵琶湖もことしあたりは過去四,五年に比べますと水質が大分よくなりました。県の方で随分努力をしまして流入規制をしておりますのでかなりよくなりましたのですが、それで安心していることはできませんので、例えば赤潮はやはりやまずにずっと続いて出ておりますし、昨年は、ごく短い期間ですけれども、よりたちの悪いアオコも少し出ております。したがって、水質規制ということは大変難しいことであって、いろんな面から努力をしないとなかなか改善はできないということであろうかと思います。  しかし、いずれにしましても、そのきっかけをつくるのは、流域から物が流れ込むことがきっかけでありますから、それをとめるということが一番重要なことでございます。ですから、もとへ戻すということは非常に困難でも、少なくとも今以上悪くしないという意味ではやはり流入をとめるということが大変重要でございます。ただ、その流入をとめるということがなかなか難しくなってきているということをちょっとしまいに申し上げておきたいと思います。  それは、もう既に水質汚濁防止法あるいは公害基本法等に基づいて排水規制が行われるようになってから十数年になるわけでございますが、その間に行われたことは、これは当然でございますけれども、まず規制しやすいものから規制する、それから大口から規制していく、これは当然のことでありますが、その結果、例えば高度成長の一番激しかったころに比べますと、水質悪化は確かに鈍っております。しかし、鈍っておりますけれどもとまってはおりません。やはり私ども湖のそばに住んでおります実感としましては、じりじりじりと汚濁は進行しております。それは、後へ残った規制のしにくいもの、それから小口、そういうものの相対的な重要性が非常にふえてきているわけでございます。例えば、大工場からの排水のようなものが一番規制もしやすいです、大口でありますから。これはかなり徹底的に規制がされている。しかし、あちらこちらに散らばった小さな排出源というものがまだ無数にございまして、それがかつて高度成長の時期に主役を演じたような大工場からの排水みたいなのにかわって湖を汚している。  例えば生活排水、各家庭の排水、これは大部分の湖の流域はそうでございますが、下水道網のない地域へ人口が都市からあふれ出して集中しているという問題、それから生活程度がどんどん上がったということ、そういうことで生活排水の相対的な重要性がだんだん高まってきております。それから、農業、畜産あるいは水産業、特に養殖漁業、そういうものからの汚濁発生というのもやはり相対的にだんだん重要になってきております。  こういうふうに少数大口汚染から多数の小口汚染、それから、集中して出るものでなくて面的に出てくる汚染が非常にふえてきたというそういう状況では大変規制が難しゅうございます。何か一つ抑えれば数十%流入が減らせるというような、そういうのがだんだんなくなりまして、例えば燐を含んだ洗剤は禁止するというようなそういううまい手は大体皆打たれてしまいまして残っておりません。あとは小さな一つ一つのものに対して一つ一つ対応していくとか、非常に多面的な、総合的なやり方でもって規制していかないとなかなか流入量を減らすということは難しいという状態になっております。  この法律では、そういう小さな排出源に対する手を打つということを十分に考慮されておられるようでございますし、その点では私どもはこういう法律ができることは大変ありがたいことであると思っております。  こういう時代なりますと、例えば自然浄化というようなことを申しますが、自然はそういう汚濁物を浄化する力を持っておりますが、これは人間が集中的に排出する汚濁量なんかに比べれば微々たるものでございますけれども、しかし、こういうふうに小さな小口汚染源が一面に広がっているというような時代なりますと、そういうものも無視できない。有効に利用していくということが必要になりますし、あるいは、最も手のつけようのない汚染としましては、大気汚染の結果雨がどんどん富栄養化しているという問題がございます。こういうふうなものもこれからはとても無視できない。例えば、先進国はどこでもそうでございますが、過去の十年間で雨の中の窒素の量が倍になったと言われておりますが、そうなってきますと、従来はそういうものはほとんど問題でなかったのでございますけれども、現在ではそういうものも十分に考えなければならない。  そういう総合的な規制、それと同時に、少数行政担当者あるいは技術者科学者だけが問題を考えていればいいのではなくなって、ほとんど全部の、社会を構成するほとんど全部の人がこの問題について認識を持ってやっていただくということが大変重要になってまいります。  そういう意味で、そういうふうな事態のもとで流入規制するということ、大変困難なことでございますけれども、それが何とかうまくできるような方向法律の御審議をいただければ大変ありがたいと思っているわけでございます。  以上でございます。
  5. 穐山篤

    委員長穐山篤君) どうもありがとうございました。  次に、社団法人淡水生物研究所所長森下郁子参考人お願いいたします。森下参考人
  6. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 森下でございます。  どれくらいお役に立つかわかりませんけれども、日ごろ湖沼をフィールドにして研究しております研究者として湖のことについてお話をさせていただきたいと思います。  私、世界の二、三の湖、タンガニーカですとかいろんなアフリカの湖を除いてはほとんど全世界の湖を見たというふうに自負しておりますけれども、その中でなぜ日本の湖をこれだけ一生懸命に保護しないといけないかということを少しお話しさせていただいて、そして川と湖がどうして違うのかということで結ばさせていただきたいと思います。  ほかの湖で、世界で起きております湖の中で一番問題になっておりますのは水質の面では塩化ということでございます。それはどこの国でもそうでございますけれども乾燥地帯の湖というのは、実際には二十ミリから三十ミリぐらいの降雨量のところへ蒸発量の方が非常に多うございまして、三千から四千ぐらい蒸発するものですから、アメリカの大きな湖でも、非常に塩分が濃縮されてしまって、その塩分濃度が上がることによってかえって周辺に砂漠化を招いているという現象が一つございます。それが一つと、それからもう一つは、酸性雨の問題があります。これはスウェーデンなんか、特に北欧の地方では非常に問題になっておりまして、魚の種類が変わったとか、それから人畜に有害だったというようなことが報道されてございます。  どちらの問題を挙げましても、これは新聞紙上なんかで非常に書かれておりますけれども、これは日本には余り問題のないことでございます。日本の場合には、年間に三千ミリ、四千ミリと降るところがございますので、乾燥による塩化ということがございませんから、そういう問題はまずないと思っていただいて結構だと思うんです。  それからもう一つ酸性雨による影響というのは、これは先ほど吉良先生お話しなりました、窒素が非常にふえてということで栄養塩濃度が湖で高くなっているという事実はございますけれども生物相に対してスウェーデンなんかで被害が出ているようなことはございません。それは何かと申しますと、日本はもともと火山国でございますから、非常に酸性の低い生物が、例えば東北地方ですと、出が二ぐらいのところでも生息できるようなウグイのような魚がすんでおりますので、今非常に低い濃度酸性の雨が降りましても、特別生物相を変えるほどの影響は及ぼさないというのが現状でございます。酸性雨の問題は、どちらかといいますと、栄養塩濃度が濃くなるということだけに限られて、日本ではまだまだ大丈夫のようでございます。  そういうことをまず踏まえました上で、それでは日本の湖というのがどうして保護してやらないといけないかという問題なんですが、これは、日本の湖のほとんどが温帯湖熱帯湖の両方に属しております。温帯湖と申しますのは、表面の水温が四度から下に下がる湖でございます。それから熱帯湖というのは、今度は四度以上の湖です。ですから琵琶湖なんかは熱帯湖の部類に入ります。冬の一番寒いときでも、あれだけのボリュームのある湖ですから、七度を切ることはありませんで、非常に寒いときに六・何度ということはありますけれども、七度ぐらいが維持されますので、冬の間も非常に生産が高うございます。そのために、入ってきた栄養塩が即その琵琶湖生物に体を変えてしまって、そして琵琶湖の中にとどまってしまいますために、栄養塩流出率というのが外国の湖に比べて非常に少のうございます。そういうことが、琵琶湖にというよりも日本の湖に栄養塩を入れてはいけないということの原則でございます。  それからもう一つ河川と湖とを比べましたときに、なぜ湖の方により多く保護してやらないといけないかといいますと、河川の場合ですと、入ってきた有機物が河川生物に変わるのにはかなりの時間がかかりますから、河川の場合ですと、入ってきてからしばらく流れている間に、ずっと流れて海まで、特に日本河川は海が近うございますから、海の方へ流れてしまってやっと生物になるということが比較的多うございますけれども、湖の場合には、そこで流速がなくてとどまっている間に全部ほかの生物になってしまうということでございます。  全体の話をするときに琵琶湖の例をとりますと、いささかまま子扱いするような気もしないではないんですけれども、五十年に計算しました滋賀県のデータでは、一日のうちに入ってくる窒素の量が大体二十二トンという数字が出ているようでございますし、燐にしますと大体ニトン半ぐらいが出ております。  そういう窒素だとか燐からそれじゃどれくらいの生物プランクトンが生産されるかといいますと、大体理論的な値としては、窒素一グラムからは五十グラムぐらいの生物が、それから燐一グラムからは大体千グラムぐらいの生物が生産されることになります。これはあくまでも理論値でございますから、大体三分の一なり四分の一なりを掛けていただかないといけませんけれども、そうしますと大体二十二トン一日に入ってまいりますと、百トンぐらいの生物がそこで生産されることになりますので、どのくらいまで削減したらいいかという問題ではございませんで、生物学的に言いますと、今琵琶湖の中にあるのでいっぱいいっぱいでございますから、本当だったら一グラムも入っていただかないような規制をしていただくのが生物学的には大変好ましいことだというふうに思っておりますけれども、これは原則論でございます。  それでは、富栄養化したら何が一番困るかといいますと、一番困るのは、御承知のように、水が異臭味がついて非常にまずい水になってしまうということでございます。それから、それに派生しまして赤潮のような異常発生をする生物が出てくるということです。異常発生をする生物というのは、本質的には、長く続いていつまででも発生するのではございませんで、時々やむことがございます。ずっと異常発生をした、例えば植物でもそうですけれども異常発生をしたものが永久に地球上を覆ってしまったということはございませんけれども異常発生をするたびにいろんな社会に対するマイナスの面を残してまいりますので、水塊というのはそれに合わせてどんどん悪くなってまいります。例えばゲンジボタルが出ていた水域が汚れてまいりますと、その間に必ず赤潮のような状況が一度起こってまいります。そして安定したというふうにしてまた蛍が飛んでいるような状況が戻ってまいりますけれども、今度戻ったときの蛍は、これはヘイケボタルに変わっておりまして、前の蛍が飛んだときと後の蛍が飛んだときと、水質が全く違うというのが現状でございます。  川でもそうで、魚の場合にはアユなんかがそうでございますけれども、人工的に放流してまいりますのでアユなんかどこでも今見えますけれども、そのアユを取り除いたときの後に起こることの方がずっと怖いようなことでございます。  それから三番目に、やはり富栄養化してまいりますと一番困るのは景観が悪くなるということでございます。どこを見ても余りきれいじゃないという景色になってくることがやはり非常にマイナスの面だと思うんです。特に川のなぎさ線の場合が非常に問題を起こすようでございます。  そういうことで、私としましてはできるだけ何も入れない方向の方に持っていっていただきたいというふうに思っております。  あとまた御質問にお答えさせていただきますので、この辺でやめさせていただきます。
  7. 穐山篤

    委員長穐山篤君) どうもありがとうございました。  次に、千葉環境部技監関登世彦参考人お願いいたします。関参考人
  8. 関登世彦

    参考人関登世彦君) 関でございます。  私は、千葉県にあります印旛沼手賀沼水質が現在どういう状況にあるのか、またそれに対しまして県はどういうような対策を講じているのかということにつきましてお話しさせていただきたいと思います。  まず、印旛沼手賀沼の概要でございますけれども、この沼は千葉県の北部の利根川沿いにございまして、東京から大体一時間程度で通勤できる位置にございます。印旛沼の周囲は二十六キロで、平均の水深が一・七メートル、大変浅いわけでございます。流域人口は四十八万人ということでございます。水資源が大変千葉県は乏しいわけでございますけれども、非常にこの点この沼は貴重でございまして、上水道とかあるいは臨海工業地帯の工業用水、農業用水、これらに利用されているほか、内水面漁場として、あるいは県立自然公園として重要な役割を果たしているところでございます。  次は手賀沼でございますけれども、これは周囲が三十八キロで、平均の水深はわずか九十センチ、流域人口は三十七万人で、農業用水とかあるいは内水面漁場として、また県立の自然公園として住民の憩いの場となっているわけでございます。  次は水質汚濁状況でございますけれども印旛沼手賀沼は最近流域が大変開発されてまいりまして、人口が急増しております。当然のことといたしまして、これに伴いまして水もどんどん悪くなってきているわけでございます。  印旛沼のCODは、四十二年度六ppmでありましたけれども、五十七年度は十二ppmということで、環境基準値の四倍、それから環境庁が、全国の湖沼百三でございますけれども、これの測定結果をまとめられた結果によりますと、ワースト二位という状況でございます。また、富栄養化の原因でございます窒素は環境基準値の六倍、富栄養化限界値の十三倍というような状況でございます。  手賀沼のCODでございますけれども、これは四十二年度が五ppmでございましたけれども、五十七年度は二一ppmということで、環境基準値の四倍、それから環境庁の全国の集計結果によりますとワースト一位という非常に残念な状況にございます。窒素は、環境基準値の六倍、燐は五倍で、富栄養化は非常に進んでおりまして、アオコもしばしば発生しているというような状況でございます。  しからば、この汚濁の原因は何であるのかということでございますけれども印旛沼流域は県の面積の十分の一を占めております。周辺は近年宅地化が大変進行しておりまして人口ふえております。したがいまして、このCODの汚濁負荷の割合を見てみますと、生活系、つまり我々家庭から出している汚染質でございますけれども、これが全汚染質の六九%を占めておる。そして工場とか事業場、いわゆる産業糸から出ているものはわずか九%というような状況でございます。  一方、手賀沼流域は県面積の約三十分の一でございます。宅地率が県平均値の二倍、人口密度は県平均の二・五倍というように大変過密になっているわけでございます。このCODの汚濁負荷の割合を手賀沼について見てみますと、生活系は何と七五%というような状況で、また工場、事業場、いわゆる産業系につきましては一三%というようなことで、圧倒的に家庭排水汚濁が原因であるということがわかるわけでございます。  しからば、これらに対しまして県はどういうような対策を講じてきているのかということでございますけれども千葉県の非常に貴重な財産でございますこの沼の水を将来にわたって保全していくということは、県民を挙げての重要な課題になっております。そういうようなことから、私ども県といたしましては、現段階で見込める実施可能ないろんな施策を総合的、計画的に実施していくということにいたしまして、五十七年の四月に印旛沼手賀沼につきましてそれぞれ水質管理計画というものを策定したわけでございます。  地域はこの両方の沼で二十四市町村と非常に広い面積にわたっております。そしてこの水質管理計画の目標年度を昭和七十年度といたしました。そして対象とする項目はCOD、窒素、燐、こういうものを対象といたしますけれども、両方の沼とも、汚濁がまだそれほど進行していなかった昭和四十年代の初めの水質に持っていくということにしているわけでございます。したがいまして、CODについて見てみますと、印旛沼手賀沼につきましてそれぞれ七十年までに五ppmにしようというのがこの水質管理計画でございます。  そして、この水質管理計画でございますけれども、四つの柱を立てております。第一に生活系の排水対策、第二に産業糸の排水対策、第三に河川直接浄化対策、第四にその他の関連対策としておりまして、全部で二十項目にわたりましていろんな施策を展開するということにしているわけでございます。  次に、この水質管理計画の中に織り込んでおります対策を少し具体的に申し述べさせていただきたいと思います。  まず第一の柱でございます生活系の排水対策でございますけれども、これは何といいましても下水道の整備というものが中心になるわけでございます。県は現在、印旛沼流域下水道、手賀沼流域下水道というものを鋭意整備しているわけでございます。昭和七十年度末までにこの両方の下水道整備を促進いたしまして、印旛沼流域では全人口の約八〇%に当たる生活排水を、また手賀沼流域では約九〇%に当たる生活排水をそれぞれ処理いたしましてこれらの沼の外に持ち出す、つまり流域外に運び出すということにしております。具体的には、印旛沼排水は東京湾、手賀沼排水は利根川というところに出しまして、沼の中には入れないということにするわけでございます。この結果、七十年度の生活系汚濁量、CODでございますけれども印旛沼流域では現状の五二%に、また手賀沼流域では現状の二〇%に減少させるということでございます。産業系、生活系全体のCOD削減量のまさに七三%はこの下水道事業によるということでございます。  次は、単独公共下水道の終末処理場でございますけれども、これにつきましては、両方の沼の流域内にございますところの終末処理場の三カ所を、流域下水道の整備に伴いましてこれに接続して排水流域外に運び出すということにいたします。  次は、し尿処理場の対策でございますけれども、沼の流域内のし尿処理場二カ所を廃止するとともに、三カ所の処理場につきましては高次の処理施設を設置するということにいたします。  次が家庭雑排水対策でございます。  先ほどから家庭雑排水は大変大きな問題だということをお話ししたわけでございますけれども、家庭から出ますところの、主として台所の排水は年々ふえてきております。これも沼の汚濁の主な原因になっております。そこで、家庭雑排水の垂れ流しの家庭には家庭用の沈殿槽等を設置することにしまして、普及率を七十年までには五〇%に持っていきたい、このように思っております。  さらに、下水道整備区域外の部落につきましては、下水路の水を処理するところの共同処理施設を設けて浄化した後に再び下水路に放流するということにいたします。一つの共同処理施設はおよそ百戸程度を処理する規模でございますけれども、七十年度までにはこれを全部で二十四基設置する計画になっております。  それから富栄養化の原因になっております燐対策でございますけれども、無燐洗剤の促進によりまして家庭雑排水の燐の汚濁量も減らしたい、このように考えているわけでございます。  次が産業系の排水対策でございますけれども、両方の沼の流域内の工場、事業場に対しましては、当然のことといたしまして排水規制を行いますとともに、流域下水道の区域内の工場につきましては、原則として排水は全部この流域下水道につなげていただく、そしてこの沼の系外に排出するということにしたい、このように考えております。  次は河川の直接浄化対策でございます。  一つはしゅんせつの対策がございます。二つの沼は大変汚れておりまして、ヘドロもたまっておるわけでございます。特に手賀沼はこの堆積が大変著しいというようなことになっておりまして、ここからの汚染質が溶け出したりあるいは舞い上がったりして汚濁の原因になっております。したがいまして、このヘドロの除去というのも水質汚濁防止のためには大変有効な手段でございます。このために、印旛沼につきましては新川、それから手賀沼につきましては大堀川の河口から手賀沼公園にかけましてしゅんせつを行いたい、このように思います。  次が流動化対策でございます。水は、流れがとまりますと自浄作用というものが低下しまして富栄養化が進むわけでございます。また、新鮮な酸素をたくさん含んだ水を導入してやるということは、微生物の働きを活発にいたしまして浄化作用を促進するわけでございます。このため、手賀沼につきましては、利根川から毎秒十トンの水を導入するところの北千葉導水事業を六十五年度に完成するということをめどに現在事業を建設中でございます。印旛沼につきましては、印旛沼の放水路に現在、洪水対策のためでございますけれども、大和田機場というものが整備されております。したがいまして、これも沼の流動化を図るために活用できないかということを今後検討してまいりたい、このように考えております。  それからもう一つ、ホテイアオイの植栽も現在千葉県はやっております。ホテイアオイと申しますのは、金魚を飼うときによく水草として浮かべてある、おなかの辺が膨らんでいる例の植物でございますけれども、これは大変窒素と燐の吸収率がいい植物でございます。また繁殖が大変旺盛なものでございます。したがいまして、現在これはテスト中でございますけれども手賀沼に植栽いたしまして窒素、燐を吸収させるというようなこともやっているわけでございます。  以上が、県がやっておりますところの水質管理計画でございますけれども、そのほか水質浄化の緊急対策というのも県はやっております。これはどういうことかと申しますと、今まで私どもいろんな水質汚濁防止対策をやっていたわけでございますけれども、先ほど来申し上げておりますように、五十七年の四月に水質管理計画を策定してきたにもかかわりませず、環境庁の発表では印旛沼手賀沼水質が全国のワースト一位、二位というようなことになりましたので、これは何とかしなくちゃいかぬということで急遽緊急対策を講ずることにしたわけでございます。  五十八年の十二月にこの対策をつくったわけでございますけれども、その内容は、まず生活排水対策といたしましては、現在両方の沼の流域に家庭雑排水の未処理の家庭が約十七万世帯ございます。そこで、この家庭でできる浄化対策を実践するために、流域の中に四万五千世帯を対象としました家庭排水対策実施強化地区というものをまず設けました。そしてこの強化地区の各家庭に対しまして、浄化効果のあるところの、いわゆる台所の流しにあります三角コーナー、それからその三角コーナーにかぶせるろ紙袋というものを四万五千世帯に無料で県が配布いたしまして、台所から流れる水は全部これで一度こしてそしてきれいな水を排水してください、このようなお願いをしたわけでございます。  また、工場に対しましても、CODが一日二キログラム以上出ているところにつきましては削減をしていただくようにいろいろお願いもしたわけでございます。  それから、礫間浄化施設というものもつくることにいたしました。これはどういうものかと申しますと、要するに石ころでございますけれども、握りこぶしぐらいの石ころをたくさん層にしたところに下水等を流しますと、その石に付着しているところの生物膜等で汚濁物質のCODが吸着されたり、あるいは沈殿したり酸化したりして浄化する効果というものがございます。したがいまして、これにつきましては、印旛沼に桑納川という非常に汚れた川が流れ込んでおりますので、それに六十三年度完成をめどに本年度からこの礫間の浄化施設をつくるということでスタートしたわけでございます。また、手賀沼につきましてもこのような施設をつくるべく今調査をしているということでございます。  以上が緊急対策でございます。  そのほか、汚濁防止に係る研究ということも大変重要なわけでございます。きょうも先生方から汚濁物質あるいはその汚染のメカニズムにつきましてもお話があったわけでございますけれども、まだまだ未解明な点がたくさん多うございます。県でも水質保全研究所というところでいろいろ研究をしておりますけれども、必ずしも十分でないというような状況にございます。一方、千葉大学の環境科学研究機構というものが、従来から千葉県のいろいろな環境の面につきましても適宜研究をしていただいてきているわけでございますけれども、このたび、印旛沼手賀沼が大変汚れているというようなことで、この科学研究機構も全学的にこの印旛、手賀の水質汚濁問題に取り組むということになったわけでございます。千葉県といたしましても、これとタイアップしていろいろ対策を進めていきたい、このように考えておるわけでございます。  最後に、湖沼法につきましてのことでございますけれども、申すまでもなく、湖沼水質保全につきましては体系的、総合的な対策が極めて重要でございます。したがいまして、千葉県といたしましても、一日も早くこれが制定されまして印旛沼手賀沼が指定湖水に指定されることを望むものでございます。  また、この二つの沼の汚濁源は、先ほど来申し上げておりますように生活系が圧倒的でございます。これらの水質を浄化するためには、流域下水道、あるいは関連している公共下水道、あるいはしゅんせつ事業あるいは導水事業というものがございますけれども、大変これらにつきましては多大な事業費を必要といたします。湖沼法によりまして水域の指定が行われました暁には、国においてはこの印旛、手賀沼のこれら事業に対しまして重点的にまず予算の配分をされるようお願いしたい、このように思っております。特に、流域下水道の早期整備というものは、この沼の水質浄化のためには欠くことのできない重要な施策でございます。今後とも、流域下水道の整備につきましては国としても特段の御配慮をされるよう特にお願いいたしまして、私の説明を終わりたいと思います。  以上でございます。
  9. 穐山篤

    委員長穐山篤君) どうもありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の陳述は終わりました。  それでは、これより参考人に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言をお願いいたします。
  10. 丸谷金保

    丸谷金保君 本日はどうも御苦労さんでございました。大変参考になるそれぞれお話を承りまして、これからの法案審議の中で私たちもきょうのお話を生かしていきたい、かように存じておる次第でございます。  ただ、今吉良先生からのお話の中に、水質をよくするこの法案だという冒頭にお話がございました。実は、今私ども審議いたしておりますのは、政府提案の水質保全の法案社会党提案の環境保全特別措置法というのがございます。これらの両案についての対比といいますか御意見がお三方どなたからもいただけなかったので、多分資料としてはお手元にお配りされていると思いますので、それによってお答えを願いたい。  と申しますのは、私どもは、水質をよくするためには、もちろん公害防止法であるとか、あるいは河川法であるとか、水質汚濁防止法という既存の法律というふうなもので環境の方についてはできるだけ整備して、まずこの法案では水質をきれいにするということだけだということもわからないではないのですが、従来の法律でなかなか今お話のございましたように効果が上がっていないことから今回の湖沼法というものが俎上に上がってきたという経緯にかんがみますと、やはり水をきれいにするために環境の保全をしていかなきゃならないということが大事じゃないか、かように思っております。もちろん、私どもが提案しました法律におきましても、環境の保全ということのためには非常に厳しい私権の制限をしなきゃならないというものがございますから、必ずしも理想的ではなくて大方の御賛同が得られるということも念頭に置きながら、ある程度政府案よりも突っ込んで、このあたりまではコンセンサスを得られるんじゃないかという形で御提案した次第でございます。  それらについてそれぞれお三方からの御意見もまずちょうだいいたしたい、かように考える次第です。
  11. 吉良竜夫

    参考人吉良竜夫君) それでは私の考えを申し上げます。  私は自然関係でございまして、法律等につきましては全く素人もよいところでございますので、どういうふうな形の法案が最も有効であるかというようなことにつきましては余り意見を申し上げる資格はございませんのですが、基本的な考え方としましては、今おっしゃいました、湖をきれいにするためにはつまり環境全体をよくしなければならないということにつきましては、私は全く賛成でございます。  それで、つまり湖というものが汚くなるそもそもの原因は、湖を取り囲んでいる、湖へ水が集まってくる流域、あるいは集水域と申しますが、その集水域の陸上に全部原因があるわけでございまして、それが川や地下水に運ばれて物質を湖へ流し込むからそれが起こるわけでございますので、湖だけを幾ら詳しく調べましても、あるいは湖だけをどんなにいじっても湖はきれいにならないのでありまして、必ず集水域と込みにして考えなければいけない。そういうことで、例えば私どもの研究所は琵琶湖研究所と申しておりますけれども、これは湖を研究しているという意味ではございませんで、琵琶湖とその集水域とあわせて研究する研究所というふうに考えております。  そういう意味で、湖をきれいにするためには、その集水域まで含めてその全体の環境をよくするということが湖をよくすることである、そういうプリンシプルにつきましては、全くただいま丸谷先生のおっしゃったとおりかと思っております。
  12. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 私も、吉良先生と同様で法律的なことはわかりませんけれども、これからそういうことは断らずにお話しさせていただこうと思っております。  一つの問題として、きれいな湖でありましたら必ずその周辺はきれいな環境が保全されているということは言えると思いますが、湖の周辺の環境が非常にきれいであっても水質が非常に悪いというのが世界にたくさん例がございます。それは、スタンダールが言ったような、イタリーのコモ湖というのがございますけれども、非常に高いところで、この湖を見ないやつはばかだというようなことを言ったというのがありますけれども、そのイタリーのコモ湖は、今ミクロキスティスがちょうど霞ケ浦よりもひどい状況で発生しております。  それから、スイスにおきましてもいろんなところで、ヨーロッパの多くの湖、それからアメリカの多くの湖が、周辺の環境として、私ども日本人が見てこれ以上保護できないであろうというぐらい保護されておりますけれども水質は非常に悪うございます。そういうのを見てまいりますと、まず一番先に水の問題を解決していただいてからではないかというふうに私は考えております。
  13. 関登世彦

    参考人関登世彦君) 湖沼につきましては、環境の保全と水質汚濁防止を一体として保全していくということがよいことは申すまでもございません。言ってみれば私はそれが理想であるというふうに考えているわけでございます。しかしながら、現在、自然環境の保全ということにつきましては、自然環境保全法とかあるいは自然公園法とか、そのほかいろんな法律がございまして、それぞれの法律に基づいて規制というものも行われております。したがいまして、これらの制度を活用すればかなりの点まで自然というものは保護されるのではないか、このように考えております。  現在一番湖で緊要なのは、やはり水質汚濁を防止するということでございます。現在この湖沼法は水質汚濁防止に焦点を合わせて法律がつくられているということで、これもやむを得ないのかな、こういうふうに思っております。したがいまして、社会党の方からお出しになっている案というのは、言ってみればベストではございますけれども、この湖沼法はベターであるというふうに私は考えているわけでございます。  なお、千葉県のことでございますけれども印旛沼手賀沼につきましては、県の自然公園条例に基づきまして県立自然公園として指定しておりまして、それなりに自然を保護していくということで努めております。  以上でございます。
  14. 丸谷金保

    丸谷金保君 私たちが提案している法案は、大体中公審の答申に忠実にというか、それを下敷きにしてつくり上げております。したがって、大変今お褒めをいただいたのですが、ベストとは思っていなかったので、ベターではある。それをベストというお褒めをいただいて感激をしておる次第でございます。そういう評価に対しては深くお礼をまず申し上げておきたいと思う次第でございます。  吉良先生にお伺いいたしますが、琵琶湖でもやはりいろいろやっておられて、面の規制というのがなかなか大変だというふうなお話がございました。特に雨の富栄養というふうなものについてはなかなか手がつかない。琵琶湖の周辺では産業関係というのは三四%というふうにCODの負荷の割合は承っております。  それで、酸性の雨が影響を与えているような状況というのは、どういう工場があって、その酸性雨の原因というふうなものは追求しておられるのかどうかということがまず一点。  それから、住民に湖沼を守るというふうな認識を持たせることが大変必要だと、全く同感でございます。その点については、琵琶湖あるいは霞ケ浦等の条例の方はそういう住民に対する啓蒙というふうなこともうたっておるようでございますが、それは実際にどういうふうなことをやっておられるかということ。  それから三番目に、大変テレビなどで諏訪湖の水が臭いというふうなことが問題にされておりますし、それから、現在の状況というのは例えばアユの生育に影響を及ぼしてきているというふうなことがテレビ等では取り上げられておりました。しかし、今の先生のお話を聞いてみると、それでもまだそれほどではないんだというふうなことなので、いささか安心もした次第でございますけれども、しかし、そのにおいというふうなものも原因がなければ起こるはずがないのではないかと思うのです。非常ににおいが悪くなってきているというふうなことに対する原因というものについては先生のところで御研究なさっておるのかどうか。  この三点についてひとつお願いします。
  15. 吉良竜夫

    参考人吉良竜夫君) お答え申し上げます。  まず第一番目は酸性雨の問題でございますけれども酸性雨の原因はもちろん大気汚染でありまして、滋賀県の中にも相当数の工場がございますので、それが酸性雨の原因になっていることは間違いございませんけれども酸性雨というのは、世界的にもそうでございますけれども、非常に広域現象でございまして、滋賀県に工場が多いから滋賀県に酸性雨が降るというようなものではなくて、むしろ日本全域、あるいは日本の空気に対しては海を越えた中国の工業の影響が相当及んでいるのではないかと思います。したがって、例えば滋賀県の北の端の方は割合人口も少ない非工業地帯でございますけれども、その辺の山の中で降っております雨も、少なくとも酸性という点から言いますとかなり強い酸性でございます。したがって、滋賀県の中の産業活動と直接結びつけることはかなり難しいというふうに思います。  それから、住民の意識を高めるためにどういうことをしているかということでございますが、これは私がお答えするのは余り適任ではないのでございますけれども、御承知かと思いますが、滋賀県では、琵琶湖の水をきれいにしていくためのABC作戦というものを考えまして、非常に広範ないろいろな種類の施策をやっているわけでございますが、その中で、住民の湖を守るという意識をできるだけ高めるということでいろんな手段をとっております。  例えば、最近のことでございますと、特に環境教育というものは、ほかの教育もそうだと思いますが、割合小さい子供の時分からたたき込むということが最も重要なことでございます。滋賀県では最近「湖の子」という、何といいますか学童のための教育用の船をつくりまして、それに県下の小中学校の子供たちを交代で乗せて湖へ出ていって、現場で湖のことを話しながら意識を植えつけていくというふうなこともやっているわけでございます。  それから三番目は、アユの生育、においというようなお話でございましたが、琵琶湖水系を水源にしております京阪神の水道水はまずいので有名でございまして、東京から京阪神方面へ赴任してこられた方が一番先に閉口されるのが水道の水だということを聞いております。  そのにおいも、私は余り鼻がよくありませんので自信はございませんですが、何種類かあるようでございまして、生臭いようなにおい、それから土臭いようなにおい、それからカビ臭いにおい、いろいろありまして、それぞれ原因が違うようでございます。その中でも、例えばかなりカビ臭いにおいなんかにつきましては原因物質も既にわかっておりますし、それからどういうプランクトンが大発生したときにそのにおいが出るということもわかっております。それから、これは原因物質はわかっておりませんけれども、例えば赤潮は非常に生臭いいやなにおいがいたしまして、赤潮が発生した時期にはやはりそのにおいが水道水につきます。  そういうふうに、原因物質あるいは何が原因であるかということはかなりよくわかっておりますのですが、それをどうやって抑えるかということが非常に難しい。それはやはり水質そのものを改良していかないとなかなか戻らないのではないかと思っております。  以上でございます。
  16. 丸谷金保

    丸谷金保君 今吉良先生の御説明の中でも、ま.さに水質を保全するためには広域的な環境の保全が大事だということを、酸性雨一つとってもおっしゃられたというふうに理解をさせていただいて、森下先生の方に移らせていただきたいと思います。  大変世界の湖をいろいろごらんいただいておるようでございますが、アメリカの湖水で塩化が進んでいるというふうなことでございますが、アメリカほどの国ですからこれに対する中和対策といいますか、中央アジアなんかと違ってそれなりの対策を立てているのじゃないかという気もいたします。できれば、そういうことをもし御調査しておられればまず御説明を願いたいと思う次第でございます。  それから、簡単に言うと、何も入れない方が水・はきれいなんだ、こういうことでございますけれども、現在の日本状態でなかなかそういうわけにもいかないと思います。しかしその中で特に、御研究になっていて、外国と比べていただきたいのは、例えば農薬とかそういう形の汚染、これに対しては、実は環境保全という形でも水質保全という形でもいわゆる規制というのは非常に日本の場合緩うございます。極端に言いますと、農薬の規制というのは、農薬が作物に与える影響というふうなとらえ方で、これがいわゆる河川から湖に流れていくというところの規制が余り行われておりません。ここいらに私ども一つ問題があるのじゃないかと思いますが、そういう点について、農薬等と湖との関係で外国でそれらについての規制等をやっておるところがございましたら、その面について御説明を願いたい。  以上の二つでございます。
  17. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 大変難しい御質問なので、ぼつぼつ答えさせていただきます。  アメリカの例でございますけれども、アメリカでフーバーダムというのが一九三五年につくられました。バックウォーターまで五百キロありますから、これはもう日本で言う湖の感覚で論じてもいいのではないかと思うんです。砂漠の真ん中にコロラド川をせきとめてそれでフーバーダムをつくりまして、そのダムによってカリフォルニアですとかサンフランシスコの周辺が非常にオレンジ畑になりまして、農業地帯になりまして豊かになってまいりました。ちょうど五十年たちまして今一番問題になっているのが、そのときの塩分濃度が五十年たちましたら十倍以上に上がったということで、今度はフーバー・ダムから引いております水をコロラド水路を使ってカリフォルニア州に持ってまいりまして、そのとき持ってきた水を今度はオレンジ畑にまきますと、塩害ということでオレンジの収穫が少なくなっているということで問題化しております。  そういうことを生態学的ブーメラン現象だというふうに呼んでおりまして、アメリカのそういう研究者の間では非常に深刻な問題としてとらえて、問題提起として今世紀に解決をしたいというふうに考えられておりますけれども、実は塩化という問題はまだまだ解決かしそうにない。例えば死海なんかですと、ちょうど海水の十三倍ぐらいに濃縮されておりまして、実際にあった湖の百分の一ぐらいの水面しかないんだそうでございます。先日参りました青海湖という湖も、琵琶湖の七倍ほどありますけれども、一番最初に調べられたときから見るとやはり相当小さくなっている。  これが実情で、それが全部塩化ということにつながってまいりまして、とても富栄養化の問題以上に難しい問題が起きるということです。水が降らないことによる問題で、これはまだ解決の方法が富栄養化よりもかなり大変だということです。  私先ほどの水の問題をあれしましたから、こういうことが通るかどうかはわかりませんけれども、一度こういう日本の国で、非常にたくさんお金もあることでございますし、世界に先駆けて一つの湖を浄化することをやっていただいたらいいのではないかということを常々思っております。そのためにいろんな問題が起きてまいりますけれどもお金をかけてやってやれないことは、例えば今度の問題のような窒素だとか燐だとかを含みますCODの規制の中では、お金さえかければ何とか解決する問題ではないかなと思いますので、水質の問題として提起をさぜていただいているわけです。  あと、最後の問題はとてもわかりません。農薬の問題、それからいろんな薬剤の問題は、専門が生物学ですので、どう解決したらいいのかわかりません。
  18. 丸谷金保

    丸谷金保君 私の質問がちょっと悪かったかと思うのですが、塩化に対する中和の問題は、アメリカでは思い切った予算をつけてそういうことに取り組んでいるのかどうか。むしろお金をうんとかけているか、まだそういうところまでいっていないのか、そういう点をお聞きしたがったのです。
  19. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 御承知のように、アメリカは州が違いますと全部法律が違うようなことでございますので、全体としてまだそういう問題に取り組んではおりません。五大湖なんかからサケがなくなってコイがふえたときに、つけかえをして、ダイバーションといいますけれども排水をかえたりしたようなときに非常に大きなお金をかけておりますけれども、そこまでのお金をまだかけていないようでございます。
  20. 丸谷金保

    丸谷金保君 それじゃ関先生にお伺いいたしたいと思うのですが、先生はまだ行政のお立場におありだと思うんです。  それで、今緊急の県の対策として四つの項目について御説明がございました。そのうちで、他の湖沼に比べて印旛沼でも手賀沼でも生活系雑排水影響というのが非常にパーセントが高いというふうなことで、特に下水道の問題に力を入れておられると思うのです。私は、流域下水道は、ここでもやはり七十年というふうにきょうもおっしゃいましたが、相当長期にはならないと流域下水道というのは完成しないわけですね。むしろもう少しコンパクトなものをどんどんやっていくことによってもっと早くきれいにする手があるんじゃないかと思うのですが、これはやはり補助率が高いとかいろんなそういう面が多いんですか、実際にこういうことを重点にやる理由は。
  21. 関登世彦

    参考人関登世彦君) 沼の場合は非常に広域でございます。したがいまして、県の事業といたしまして流域下水道、これは先生十分御存じだと思いますけれども、大きなパイプを沼の周辺につけまして大きな処理場で処理する、それに市町村の関連公共下水道をつなぎ合わせるというのが流域下水道の体系になっているわけでございます。私どもといたしましては、この大きな流域下水道をつくって一括処理してそれを東京湾とかあるいは利根川、つまり沼の外の水域に出してしまうというのがこの閉鎖性水域にとりまして一番水質汚濁防止に役立つのではないか、そういうような観点でやっているわけでございます。  コンパクトな公共下水道を何カ所かつくって処理すればよろしいのではないかというような御趣旨かと思いますけれども、そういう下水道になりますと、どうしても処理した排水がまた沼に還元されるということになります。処理された後でございますので最初から比べると当然きれいにはなっておりますけれども、ゼロにまではなっておりません。したがいまして、やはりそういうものが沼に流れるということは水質保全につきまして必ずしも望ましいことではない、そういうふうに考えますので、私ども流域下水道整備をまず第一義的にやる、こういうわけでございます。
  22. 丸谷金保

    丸谷金保君 その流域下水道には結局工場排水もそのまま入れるというお話でございましたですね。そうすると現在の排水規制というのはその段階でなくなりますね、工場排水を下水道に入れてしまいますと。現在は排水規制があるわけなんですが、それは千葉県としては、その排水規制をかぶぜて、そこである程度きれいになったものを流域下水道に入れるお考えなのか、それとも、それは流域下水道につなぐことによって現在の工場排水に対する規制というふうなものはなくしてしまうお考えなのか。もう時間ございません、その点一点だけ。
  23. 関登世彦

    参考人関登世彦君) 工場排水原則として流域下水道につなげるというお話をしたわけでございますけれども、これはあくまでも流域下水道の処理区域内の工場については入れるということで、流域下水道すべてが全部の地域をカバーするわけでございませんので、その流域外につきましては今までどおりの工場排水規制が適用されるということになります。  そこで、しからば流域下水道につなげる場合その排水規制はどうなるのかということでございますけれども流域下水道につなげる場合は、当然のことといたしまして今の排水規制は適用されないということになります。しかし、それならばすべての水を無処理でみんな流域下水道に入れてしまうのかということになりますけれども、やはり有害物質等につきましては一義的には工場の方である程度処理していただいたものをつなげるということになるのじゃないか、このように思っております。
  24. 丸谷金保

    丸谷金保君 それじゃ、もう時間でございますが、公共下水道の場合は、ある程度処理したのを流域下水道に入れる、こういうお話ございましたですね、公共下水道もつなぐということは、だと思うんです。工場排水の方だけは規制しないということになると、何かちょっとそこのところで違和感があるんですよ。それはどうかということで終わりにいたします。
  25. 関登世彦

    参考人関登世彦君) ちょっとその辺につきましては私十分存じておりませんですけれども、一般の工場につきましては、下水道に通ずるときはそれなりの、まあ今の規制とは違いますけれども、多少緩い規制ではございますけれども、そういうものをかけてある程度処理したものを入れるようになるのじゃないか、このように思っておりますけれども。御参考までに。
  26. 菅野久光

    ○菅野久光君 今丸谷委員の方からちょうど流域下水道の関係の御質問がありましたので、引き続いて私の方からもちょっとお尋ねしたいというふうに思います。  流域下水道の場合には、やはり工事そのものが大規模になるために相当時間がかかるわけですね。そこで、手賀沼印旛沼の関係は既に工事をもう始めておられるか、あるいは完成の時期的なものというのはどのぐらいになっているのでしょうか。
  27. 関登世彦

    参考人関登世彦君) 印旛沼手賀沼につきまして流域下水道は現在かなり進捗しておりまして、完成年度は一応七十年度をめどとして鋭意工事を進めているという状況でございます。  その進捗状況でございますけれども、大体事業費で二つの沼の流域下水道で現在三七%ぐらいということでございます。
  28. 菅野久光

    ○菅野久光君 完成年度の予定が七十年度ということになれば、まだ相当時間があるわけですね。  それで、私どもも、湖沼汚濁を少しでも早くとめる、そのためには、生活雑排水が相当汚濁の負荷を高めているということでありますから、できるだけ早く公共下水道あるいは都市下水道などで水を浄化していく必要があるのではないかということが一つと、本来流域下水道になりますと、その沼に入らなければならない水が別なところへ流れていってしまうわけですね。そのことによって手賀沼なり印旛沼などの水位が変わってくるのではないか。そういうことによって、これは森下先生の方にお尋ねしたいのですが、生態系としてどのような影響が起きるとお考えか。その点を関参考人とお二人にお伺いをいたしたいと思います。
  29. 関登世彦

    参考人関登世彦君) 流域下水道は、最終的には七十年度をめどに鋭意整備しているということでございますけれども、できたところからどんどん排水はつなげていって現在でも処理しておるというわけでございます。流域下水道は、御案内のことと思いますけれども、要するに幹線と終末処理場と二つございます。そして現在これを並行してやっておりまして、既に印旛沼手賀沼も終末処理場がもちろん一部できておりますので、供用を開始して家庭雑排水もどんどん取り込んでいるという状況でございます。  それから次に、こういうような水を系外に出してしまうと沼の水量が変わって汚濁濃度もそれなりに変わるのじゃないか、言ってみれば、水の量が少なくなれば濃度が濃くなるのではないかという御趣旨の質問かと思いますけれども、私どもこの水質管理計画を策定するときには、汚濁量がどれだけ入るか、そして沼の中でどれだけそれが浄化されるか、そういうようなことを要するにコンピューターを使いましていろいろ計算して、そして七十年度にはほぼ五ppmぐらいになるという計算結果が出ているわけでございます。したがいまして、その辺の水量も当然織り込まれているので問題はないのではないか、このように考えております。
  30. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 一番深いところで一・七メートル、それからくぼんでいるところでも二メートル足らずの印旛沼でございますから、水位が下がることによって生態系が著しく変わる、見た目にはっきりわかるほど変わるということはあり得ないと思います。水質悪化かどうかということによって生物相が変わることはよくわかりません。水質が変わってまいりますと生物は変わるのがこれが世の中のならわしてございますから、汚水が入らない、それから濃縮されたような状態なりましたら生物相は確実に変わると思います。ただ、その変わる幅と申しましても、非常にきれいな湖が汚くなるわけではございませんで、現実の印旛沼状態が多少変化をしてもそれが人の生活の上に影響を及ぼすような変化はないだろうというふうに思います。  湖の中で非常に深い湖と浅い湖がございますけれども、深い湖に対しましては一メートル、二メートルの影響というのがかなり大きく響くことがございますけれども浅い湖というのは、もともとそういう浅いところにしかいない生物で、しかも干陸化しても比較的影響を受けない生物が非常にたくさんございますから、まだほかの湖に比べましたら印旛沼影響は――影響というんですか、今何でも影響があると悪いというふうにお考えになられると思いますけれども、変化はあるかもしれないけれども、その変化自体が私どもの生活にとって大変困ることにはならないだろうというふうに推察されます。
  31. 菅野久光

    ○菅野久光君 それから森下先生にちょっとお尋ねをしたいわけですが、先生の「ダム湖の生態学」という本を、私も落ちついて読むいとまがなくてところどころしか目を通していないんですけれども、この本によりますと、流れている川と、せきとめて水をためたダムとは全く別の生態系になるというふうに指摘をされております。また、ダム湖の生態系は、自然の湖沼の生態系と同じレベルになるということは非常に難しい、このように指摘されております。  そこで、この三種類の生態系を持つものを河川法という一つの法規で、しかもこれは災害防止を第一とする法律だと思いますが、これで管理することはいろいろ困難を生んでいるのではないかというふうに思うわけですけれども、その点の考えをひとつお聞かせいただきたいというふうに思います。
  32. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 河川法というのは生態系の法律ではないのですね、別な法律ですね。ですから、水があるとして、その水についての法律を定められたと思うので、それは湖沼であろうと河川であろうとダム湖であろうと適用される範囲だと思うのです。ただ、中にすんでおります生物というのは生態系は全く違いますけれども法律的な問題はよくわかりませんけれども日本人とアメリカ人とそれからよその国の人はそれでもやはり共通の部分で縛ることができるように、河川法の中には生物が入った法律ではございませんので、私は何ら不都合はないというふうには考えておりましたけれども、これはもう一度帰りまして勉強などさせていただくつもりでおります。
  33. 菅野久光

    ○菅野久光君 自然を守るということからいけば、そうすると生態系というものをしっかり守っていくことが私はやはり大事なことではないかなというような思いがあったものですから、ちょっとお尋ねいたしました。  今回の湖沼法ではダム湖と自然湖を対象としていますけれども、こういったようなことでの生態上注意するようなことは何かないのか、その辺の先生のお考えをひとつお聞かせをいただきたい。
  34. 森下郁子

    参考人森下郁子君) ダム湖と普通の湖が違いますのは、これはその中に水がどれぐらい長く、ポットの中ですね、容器の中に長く入っているかどうかで違うと思うんです。特にダム湖の場合には流れが一定方向にあるという物理的な条件もまた違ってまいります。  今度の法案の中に両方が入っているということでございますけれども、そのときに取り扱い上注意をしていただきたいと思いますのは、どの部分を湖沼として、どの部分をダム湖として扱うかという区分をはっきりさせた上で取り扱っていただきたいというふうに思っております。と申しますのは、先ほどおっしゃっていらっしゃるように、ダム湖と湖沼は全く違うものでございますから、それでも共通項はございます、共通項で法律をつくっていただく分には問題はございませんけれども、細目についてはかなり違うだろうと思うのです。  もう一つ、これは全体の湖沼でございますけれども琵琶湖に当てはまる法案と、それから、本来ですと印旛沼手賀沼、霞ケ浦というような浅い湖に当てはまるものとは、これは生態学的な立場からすると別な法律があることが望ましいというふうには考えております。
  35. 菅野久光

    ○菅野久光君 ありがとうございました。  また、同じ先生のこの著書の中で、赤潮の発生を汚染の進行と直接結びつける一般の新聞報道に対して、調査の結果もっと複雑であるというような意味のことが書かれているわけですが、その発生の予防の方法というものがあるのかどうか、その辺をちょっとお伺いします。
  36. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 本に書きましたのは、私が世界じゅうのダムだとか湖を見まして、それでこういうことではないかということで書いたので、それはひょっとしたら漫画かもわかりませんし、信じていただかないと話が進みませんので、一応信じていただいたということで進めさせていただきます。  生態系のことでございますから実証の方法がなかなかございませんで、あくまでも物の考え方の問題でございます。と申しますのは、同じ湖に赤潮が出るのは非常に初めに出たり後に出たりしますけれども、その赤潮は、初めの赤潮と後の赤潮はかなり性格が違うものでございます。木曽の御岳山の上に三浦湖というのがありますけれども、一軒の人家もない湖がございます。その湖でも昭和十年のころに赤潮が出ておりますし、それから、世界いろんなところでダムをつくりますけれども、そういう湖でも赤潮が出ております。ところが、その赤潮が十年以上長く続いたという記録がございません。ですから、一度出た赤潮が次にまた出るまでには何年間かそこにたどり着くまでの期間があるのではないかということを私書いてございます。  それに対応してそれではどういうふうにして防御したらいいかということでございますけれども、瀬戸内海の赤潮のようなものとそれから淡水の赤潮とは多少違いますけれども、初めに出て次に出るまでに時間があるのであれば、その出ない時間を長くすることを考えた方がいいのではないか。出てしまってから生物を退治するということは大変難しゅうございます。生まれる前の生物というのはこれは抑えることができますけれども、一度生まれてしまいましたら、これは木と一緒でございまして、多少栄養状態が悪くなりましてもずっと存続するものでございますから、今のあるものというのはそういうようなことで、特に赤潮生物というのは昼間は植物の働きをしますし、夜になると動物になって動き回ります。えさのあるところへ動いてまいりますから、その水域に赤潮を発生させる栄養塩が残っている限りは、一度発生しますと非常に抑えにくいものでございます。  そういう意味で、一度発生してそれからしばらくしたら必ず消えるものだという認識の上に立って、消えてしまったその後の赤潮のない水域をできるだけ長く次の出るまでの間維持していくということが人間の英知ではないかと思っております。
  37. 菅野久光

    ○菅野久光君 人間の英知を何とか集めるということで、今赤潮を発生させない、そういうことのためにみんなで努力しようということでやっているわけですが、湖沼汚染の指標としては、透明度だとか出とか栄養塩類などがあるわけですね。環境基準はCODと窒素、燐で決められているわけです。  ところで、湖沼を本当に保全していくためにはこのほか生物指標を使って判断することが必要ではないかというふうに思いますし、何かそのようなことが新聞なんかにもちょっと出されているわけですけれども、そのことについての先生のお考えがあればぜひお聞かせいただきたいと思います。
  38. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 生物指標を使って湖沼を保全していくということは、これは地域の問題と、それからもう一つは精神生活の問題だろうと思うのです。生物指標がどうこうだからそれで保全されるという問題ではないと思うのです。あくまでも生物というのは、その湖を代表する生き物でございますから、指標にはなるということで、物差しでございます。最終的な処理の部分でございます。  それで、さっきちょっと私まずかったんですけれども、保全していくためにどうしたらいいかということになりますと、やっぱり現在の水質を維持していく、そのために今度の法案を通していただこうということではないかと思うんですが、そうですね。
  39. 菅野久光

    ○菅野久光君 先ほど、千葉県でも水をきれいにするために窒素、燐の関係でホテイアオイなどを植栽するというようなことが出ておりますが、人間がみずから汚した水ですから、人間自身がその水をきれいにしていくということは必要なわけですけれども、何ともそれだけじゃちょっと時間がかかり過ぎるのではないか。何とかほかの生物の助けをかりるようなことができないものなのか。その辺いろいろ研究をなさっておる先生の今までの研究の中での成果なりなりありましたら、ぜひこの機会にお聞かせいただきたいというふうに思うのですけれども
  40. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 千葉県のホテイアオイの問題ですけれども、水温が大体七度ぐらいになりましたらホテイアオイというのは成長がとまります。それからBODにしまして、大体二〇〇ppmぐらいのBODの値がありませんと非常に効率のいい成長はありません。それで東南アジアなんかでも豚をこっちに飼って、こっちの池でホテイアオイを茂らすということで効果を上げておりますけれども濃度が低くなりますとホテイアオイというのはなかなか茂ってくれないので、多分、千葉県の地理的な条件を見ますと、冬の間効率がないということもありますし、非常に平面積が要るということもありますので、それから窒素、燐を取ることは大変難しいと私も思います。  それならばどうしたらいいかということですが、それならば入れないにこしたことはないと思っております。入れないような何かありませんでしょうか、方法。というのは、下水処理が一番早く、しかも、下水処理だけでなくて農業排水もあわせてみんな処理してしまうというような方法でやっていただくのが一番いいことと、それからもう一つ、非常に浅い湖でございますから、先ほど吉良先生がおっしゃったような、貯金の部分というんですか、底泥の部分が非常にございますから、水産の影響を考えますと、必ずしもそれに五を掛けるわけにもまいりませんけれども、できましたらそういうしゅんせつということも一度お考えいただいた方がいいのではないかと思います。  ただ、一遍に幾つもの方法で進むということではなくて、やはり入れない方をまず考えてみて、それで動きがとれないならばという、何とか段階を追っていただいた方が自然に対しては、もし間違っていたらいけませんので、いいのではないかと思います。
  41. 菅野久光

    ○菅野久光君 大変貴重な御意見ありがとうございました。  吉良先生にちょっとお尋ねをしたいわけでありますが、人工的な形での浄化というのは、一度汚れるとなかなか大変だというようなことのお話がありましたが、自然の浄化作用というものは、狭い範囲だけを切り取ってみれば数量的には評価はできないけれども、ほんのわずか、部分だけ切り取れば、ほんの微弱なものであっても、しかしそれが自然という大きなマクロ的なものになっていけば巨大な環境調節の作用を果たしているということになろうというふうに思うわけです。  これは他の学者の話なんですけれども、緑が騒音防止や大気の浄化に役立つことは事実でありますが、それは他の技術でも代替のきくものであって、緑の効用としては副次的なものである、緑の本来の効用は緑が人間に精神的、肉体的に働きかけ、人間性を育て、生活の福祉、健康を増進することである、これは何物によってもかえられない緑固有の価値である、こういうようなことが言われております。これは緑に限らず水や水辺についても同様だというふうに思いますけれども、このような観点からすれば、自然破壊は、一見軽微なものであってもそれによって人間が受ける損失は思いのほか大きなものになるのではないかというふうに思うのです。  そこで、今琵琶湖で進められています湖岸堤や人工島の建設が及ぼすインパクトについて先生のお考えをお聞かせいただきたいと思いますが。
  42. 吉良竜夫

    参考人吉良竜夫君) お答えいたします。  まず、自然浄化作用については、今おっしゃいましたことに私は全く同感でございます。自然浄化作用というのは、評価しますと非常に小さいものでございまして、例えばここにヨシの生えた湖岸が百メートルあるといたしまして、その百メートルを今取ったからその湖の水質がどれだけ悪くなるか、例えば窒素が何ppmふえるか言えと言われてもそれはできません。とてもそういうのではかれるようなものではございません。ですけれども、私はいつも、ちりも積もれば山となると言うんでございますけれども、そういう微弱なものでも、自然というものをたくさん残しておれば決してばかにならない量になる。だから、人間はどうしてもある程度の活動をしなければ暮らしていくことはできませんから、自然ばかり残しておくわけにはいかないのですけれども、壊さなくてもいい自然はできるだけ壊さずに残しておくということによって相当大きな力が発揮できるということは事実だと思います。  ただ、自然の力というのはそういう微弱なものでございますが、それに対して人間がやること、例えば町をつくった人間の集団が出す生活雑排水であるとか、あるいは工場一つつくったために出てくる産業排水、そういうものから出てくる量は幾けたも違うぐらい自然の力とは違うわけでございますね。ですから、一方でそういうことをしておいて一方を自然の浄化作用で受けようと思ってもそれは無理でありまして、人間が大都市をつくったりあるいは大工場をつくったりすることのしりぬぐいは、やっぱりそれに見合うだけの技術でもって受けなければ環境をきれいにすることはできないだろうと思います。  それから、今緑の効用の例をおとりになりまして、最終的にはもっと精神的なものが大事だという話でございましたけれども、確かにそういう面はあると思いますけれども、実は自然というのはほかのものと違いまして、例えば浄化作用を一つとりますと、それは確かに微弱なものでありますけれども、同じ一つの緑なら緑が騒音もよければ大気も幾らかはきれいにするし、あるいはそこから流れ出す水も少しはきれいにする、温度も調節する、いろんなことをしている。これは人間がつくる、例えば騒音だけでしたら騒音の防止の塀を立てればいいわけでありますが、塀は空気をきれいにしてくれないわけでありまして、そういう意味で非常に多面的な働きをするという点でも自然というのは貴重なものだと思っております。  そういう意味でございますから、自然は壊さずに済むならばなるべく壊さない方がいいわけであります。しかし、例えば琵琶湖の総合開発で湖岸堤をつくる、あるいは流域下水道の終末処理場をつくるために、土地がとても高くて手に入らないので琵琶湖の中に人工島をつくってそこに処理場をつくったということでございます。そういう場合に、そういうことをすることによって、そういう一種の開発行為と言えるかと思いますが、そういう開発行為をすることによって生ずるマイナスと、それからそれによって人間が得る利益とをてんびんにかけてはかれというのが一般に言われることでありますけれども、これは非常にカテゴリーの違う価値をどっちをということでありますから、非常にそれは難しい。  ですから、なかなかそれに万人が賛成するような結論は出ないと思いますけれども、ただ、琵琶湖の湖岸堤、人工島ということに関して言いますならば、もし湖岸堤なり人工島なりというものが必要であるならば、これはつくらざるを得ない場合もあり得ると思います。しかし、その場合にそれが全面的な自然の破壊を意味しないようにつくることは十分可能である。例えば沿岸の湖岸堤をつくるために相当たくさんの湖岸が人工化されまして、これまでヨシや柳が生えていたりあるいは砂浜であった部分がコンクリートになる部分があるわけでございますけれども、それは設計の仕方一つで、一たんはコンクリートをしんに持った湖岸堤ができましても、それが竣工した後またその堤の外側にヨシができ、柳が生えていくような構造の堤をつくるということは技術的に決して不可能なことではない。  だから、そういうふうに人工的な開発行為をするのはだめだというふうに決めつけてしまうだけではなくて、両者の間を折り合わせていくことは私は十分可能であると思っております。  以上でございます。
  43. 菅野久光

    ○菅野久光君 湖岸の、いわば湖岸堤やらいろいろ人工化に対する代償措置というんでしょうか、人工なぎさだとか人工アシ原がつくられていますが、これについてはどのようにお考えでしょうか。
  44. 吉良竜夫

    参考人吉良竜夫君) これは全く私の個人的な趣味でございますけれども、私は人工なぎさとか人工ヨシとかいうのは余り好きでございません。  例えばヨシなんかは、人間が何かブロックみたいなものを組み立ててその間ヘヨシを植えていく、大変な経費と手間でございますけれども、そんなことをしなくてもヨシが生えやすいような条件をつくってやれば割合に簡単に回復してくるものでございます。人工なぎさなんかも、人間が埋めて湖岸堤をつくっておいてからまた人工なぎさをくっつけるということは、何だか大変ばかばかしいことをしているような気が私個人としてはしております。  それから同時に、その場合には、既にもう一遍埋め立てて、自然の湖との関係でできた地形を一遍壊してしまって、その先へまたもう一遍砂浜をくっつけるということになりますので、これは技術的にも、つまり工学的な意味での技術的にもかなり難しい問題があって、場合によっては砂浜をくっつけてもしばらくしたらまた波が全部持っていくということになる可能性もございますので、その辺のところは、私はそういうことが全部無意味であるとは申しません、場合によってはそういうことが必要になることがあるかもしれないと思いますけれども、その場合には非常に慎重にそういう問題を考えていただきたい。特に、人工なぎさの問題なんかの場合には防災上の問題というのは十分考慮していただきたいというふうに思っております。
  45. 菅野久光

    ○菅野久光君 時間になりましたので、三人の先生方、本当に貴重な御意見、ありがとうございました。  終わります。
  46. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ただいまいろいろのお方から御質問がございまして、ほとんど問題が出尽くしたように思いますけれども、これから少しく細かい問題をお尋ねするのでお許しを願いたいと思います。  まず、吉良先生にお尋ねいたしますが、従来、水質汚染の問題で窒素とか燐ということで絞っていろいろ論議をされておるわけでございますが、富栄養化ということだけで論議をされておりますが、私ども知識がない者から見ますと、毒物だとか染料だとかいろいろの生活排水が出るのですが、こういうものは全部窒素、燐に還元されてしまうのかどうかということでございます。こういうもの以外に、もっと水質を別の意味で人類にとって害のあるものにしていはしないかという問題、どうも私ども知識がありませんのでその辺をお教え願いたいと思います。これは第一の点です。  それから、その次の問題は、いろいろ汚水の処理をいたしますが、処理した水を湖水に流したり河川に入れたりいたします。そういう処理された水というものは、人間にとって害悪を及ぼさない水質になっておるかどうかですね。長い間蓄積するならば体内に蓄積して悪いものになるような物質はないものかどうかという問題。  それから、次に三番目の問題としまして、先ほど先生の御説明で、夏には上部は温かいが下部の方は水が冷たいので水の交流がないということでございましたが、冬季の場合には上下の水の交流はあって問題は解決されるかどうかという問題でございます。  それから次に、先ほども質問が出ておりましたが、湖の岸を岸壁化することによって湖水の水質影響を与えないか、浄化するかどうかは知りませんが、影響を与えないかという問題で、もし岸壁化した場合には、元来自然の力で浄化されるべきものが浄化されなくなるようなことがあるのかどうか、そういう問題でございます。  こういうような問題につきましてお尋ねをいたしたいと思います。  ほかの先生にはまた別にお尋ねいたしますので、よろしくお願いします。
  47. 吉良竜夫

    参考人吉良竜夫君) まず、第一番目と二番目のお話が大変関連しているかと思います。  つまり、今特にこの法律で主眼が置かれている問題は、いわゆる富栄養化という問題でございまして、窒素や燐を含むような物質が流れ込んで湖が汚くなっていくということでございますが、それと、人間の健康に有害な物質によって湖が汚染されるという問題とは別の問題でございます。ですから、全く冨栄養化していない非常にきれいな透明な水の湖であっても、実はその中には水銀がかなり入っていて、もうそこの魚は漁獲禁止になっているというような湖がスウェーデンではたくさんございます。ですから、これは別の問題として考える必要があろうかと思います。  日本の場合には、大変不幸なことに水俣病とかイタイイタイ病とかあるいはPCBによる、これは自然の状態ではありませんが、被害等が出ましたために、毒物汚染に対しては比較的早くから社会の関心が高まりまして、その結果規制もかなり強く行われたということで、現在は毒物による汚染の問題はやや社会的な関心からいうと下火になっているという感じでございます。しかし、それは危険がなくなったということを意味はしない。割合短い時間のうちに人間に健康被害があるようなそういう毒物につきましては、これはかなりよく現在は監視されておりまして、かつて起こしたようなあんな大事件は多分起こらないような体制になっている、日本ではの話でございます。と思いますけれども、実はそのほかに、もうちょっと長い時間をかけないと人間に健康被害が出ないけれども出れば怖いという物質がたくさんあり得るわけでございます。  その代表的なものが、いわゆる変異原物質と申しますか、要するに長い間作用すれば人間にがんを誘発するかもしれないというたぐいの物質。これはまだ知識が極めて少なくて、水の中にも随分そういうものがあるということはだんだんわかってきておりますけれども、知識が不十分でございまして、一部水道水、上水道の水を塩素処理するために出てくるトリハロメタンという一部の物質が問題になっている程度でございますけれども、これは私はそういう化学につきましては本当の素人でございますけれども、恐らくそういうふうな物質は探せばまだまだあるのではないか。これは将来の水の問題としては非常に重要な問題にこれからなっていくだろうと思います。  随分たくさんの方がそういうことを研究しておられますので、だんだん事態が明らかになってくるとは思いますけれども、いずれにしましても、急性被害の場合は非常に黒白が明らかでありますけれども、慢性被害、あるいは人間ががんになる確率を高めるかもしれないというようなそういう物質をどういうふうにこれから扱い、監視していくべきかというのは大変大きな将来の問題であろうと思っております。  それから水の交換の件でございますが、これは御承知のように水は温度が上がるほど密度が低くなって軽くなりますので、夏は表面から照りつけて温まりますので表面の水が温度が高くて軽い。したがって、それは下へ下がらないわけでございますね。表面だけが温まって下に冷たい水が残るわけでありますが、秋口になって表面から冷え始めますと、そうすると、例えばこれまで二十五度あった水の表面の方が二十度になりますと、二十五度の水よりは二十度の水の方が重いものですから、下の方の二十五度の水が上へ出まして二十度の水は下へ下がる。それが冷えるとまた下へ下がる。順次冷えていきまして、琵琶湖の場合ですと、秋の終わりから冬の初めごろになりますと上と下の水が全部入れかわります。そのときに、例えば下の水へも十分酸素は補給される。けれども、また次の年の夏になりますと下の方の水には酸素が補給されないのでだんだん酸素が減っていく。そういうことを毎年繰り返すわけであります。  ただ、今私が申しましたのは少なくとも三十メートルぐらいから深い湖の話でございまして、数メートルしかないような湖の場合には、これは風が吹いただけで全部上から下まで入れかわりますので、今私が申しましたような現象はございません。  それから最後に、人工湖岸になることによって自然浄化力が落ちるかというお話でございますが、これはやはり原理的には落ちると思います。ただ、私がさっき申しましたように、百メートル人工湖岸化したから水質がどれだけ悪くなったかはかれと言われましても、それは到底測ることができない程度影響でございます。しかし、それは、例えば今ここに自動車が五万台ある町があったとしまして、そこに五万一台目の自動車が加わったから大気汚染がどれだけひどくなるかはかれと言われましてもこれははかれませんですが、しかし自動車というものがふえることによって大気汚染がどんどんふえていくということは御承知のとおりでございます。  それから、それと全く同じような意味で、この百メートルの湖岸を壊したから幾ら悪くなると言われましてもそれははかれませんけれども、ずっと何十キロメートル、何百キロメートルとある湖岸が壊れるということはこれは相当大きな影響を及ぼすということであろうかと思います。
  48. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 次に森下先生にお尋ねを申し上げますが、先生は淡水生物の御研究所においでになるということで、的外れの質問をするかもしれませんが、お許しください。  淡水生物が湖の水が汚れることによって受ける影響というものについてお尋ねをするわけですが、赤潮が発生するということは先ほど御説明がございました。赤潮の発生と淡水生物、これは藻だとかそのほかたくさんありますが、ミズスマシだとか、そういうものもあるのですが、そういうようなものとの関係、それから赤潮と水中植物との関係はどういう関係が生ずるであろうかという問題、これが第一番目の問題でございます。  それから第二番目に、水中酸素の消費の問題、水中酸素が汚水によってどのように減ったりふえたりするのかということでございますが、特に淡水湖に生ずる植物との関係、あるいは動物でも赤潮の関係、こういうもので水中酸素の増減状況、消費状況についてお尋ねをいたしたいと思いま す。  それから第三番目が、淡水生物の生態、こういうものは水が汚れることによってどのように変化していくのか、環境の変化が生ずるのか、あるいは水質の変化が生ずるのかという問題ですね。水が汚れることによって生物の生態が変わるかどうかという問題です。  それから、水が汚れることによって微生物に変化が生じて人間に害を及ぼす微生物も生ずるというお話でございましたが、そういうものは例えば魚類などによって処理できないか。つまり、そういう微生物の天敵はないだろうかという問題でございます。  お尋ねいたします。
  49. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 大学で一年分ぐらい講義をするようなテーマで実は大変困っております。  一行ずつで答えさせていただくと、赤潮生物が出まして環境の変化が参りますと、まず最初に、琵琶湖を例にとりますと、昔はビワマスがいたんです。ところが水質が悪くなってきます。一度赤潮が出ました。その次に出てきたのがアユのようなものです。さらに水質が悪くなってきますと今度はワカサギのようなものがふえてまいります。ワカサギが行き着きましたらフナだとかコイだとかがふえてまいります。霞ケ浦はフナだとかコイだとかになってしまった湖ですからまず赤潮が出ません。ビワマスからアユになるそのときに赤潮が一度出ます。アユの生態、今度はこっちにはワカサギがありまして、それになるときにもう一度出ます。ワカサギがコイに変わっていくようなときにはた出ますけれども、普通の自然の状態ではそれがダブって行われますから、非常に関心を呼びませんけれども、農林統計なんかで長い間を見ていただきましたらそういう推移がわかります。  人間が生きているのは大体八十年でございますね、七十年か八十年。それで動物は変わるものだという認識がございますから、私のような動物学を専攻する者は変わっていくのが当たり前だと思っておりますから、変わり行くことに不幸だとか悲しいという感覚は余りございません。そういうものなんだなというふうにお考えください。植物の場合は、手を触れてやれば一つの松が三百年も四百年も生きてまいりますから、植物学の先生方が考えられる環境の変化に対する発想と動物学者は多少違うということをお考えの上で聞いてください。  酸素の増減ということになりますと、こういうことなんです。  水の中の酸素というのは水温に合わせて一定量しか溶けていかないのです。余分に溶けてしまうとよさそうに見えます。例えば、下に植物が非常にたくさん茂りますとたくさん酸素を放出しますから過飽和になります。過飽和で酸素がいっぱいあったらいいように見えますけれども植物がいっぱい茂ることはその植物に必ず動物がひっついていることですから、夜になりますと酸素を吸ってしまいます。ですから、酸素が昼間たくさんあるということは夜になったら酸素がないということで、一日の酸素の量が非常に変化が激しい。これはすみにくいわけです。ちょうどアンデスの山中で人間が昼間は三十度、夜になるとマイナス十度で一日のうちに四十度の変化に耐えて生きていますね。日本の変化はぜいぜい十度ですけれども。そうすると、その日本の生活とアンデスの生活を比べられたらわかりますように、湖の中に昼間酸素がたくさんあると思っても夜になってなくなる。その変化の量が大きいほどこれは大変すみにくいことです。そうしますと、そういう変化が幅のあるような生物というのは限られてまいります。  それで、富栄養化ということが起こりますと非常にたくさんの植物プランクトン、水生生物ふえますから、その変化がだんだん大きくなるというふうにお考えください。そのために植物、動物の量をある一定の量、その湖に合わせた量に抑えたいというのが富栄養化を防止する理由です。  そうしてまいりますと、三番目にかかりますけれども、そういう形で生態系の変化というのは当然起こるものだとしますと、その起こる方向というのはどういうふうにしてあらわれてくるかと申しますと、まずマクロな状態では種類が非常にふえてまいります。魚もいる、虫もいる、カニもいる、エビもいる、とにかく生物の種類が非常にふえてきたのがいい状態です。悪くなりますとその種類の数が非常に減ってまいります。そのかわり単一な種類、あるそこの湖に非常に適応した、例えば先ほど申し上げましたワカサギのようなものとかコイのようなもの、フナのようなもの、淀川ですとヒメタニシのようなもの、それから多摩川ですとユスリカのようなもの、ある特定の種類の生物の量が爆発的にふえてまいります。これは環境が変化して悪い方向へ移ったことです。種類が何でもいる、種類がいっぱいふえてくることはこれは環境がいい方向に向かっているということです。ですから、異常繁殖しやすい生物がそのときどきにあらわれるということは、ある特定の種類が爆発的にふえたということですから、ごれはいささか環境が壊れているぞということを私どもは認知しないといけないということです。  四番目の天敵の問題ですが、こういうことがございました。霞ケ浦でたくさんミクロキスティスが、ミクロキスティスというのは非常に小さい藍藻でございます。三ミクロンから三十ミクロンぐらいな藍藻という、一番バクテリアに近い植物なんですが、それがたくさん発生いたしました。  そのときに、何とか天敵でその生物を食わせる方法はないかということでいろいろ考えまして、顕微鏡の下にそれを持っていってそれを食べている動物はいないかというふうなことを見たんです。そのときに見ましたら、確かにワムシという動物がその藍藻を食べるようでございます。それで、ワムシをたくさん発生させてミクロキスティスをそれじゃ退治したらいいじゃないかという案が机の上から出てきました。ところが実際には、ワムシを発生させるためにはそのミクロキスティスを今あるものの十倍ぐらいふやさないとワムシはふえぬ。そういうことなんです。自然の中というのは非常にうまくできておりまして、ワムシが発生できないから、もうオーバーになっているから、ミクロキスティスが余っているわけでございまして、その余っているものを食わせようとするとさらにえさを入れてワムシをいっぱいふやさないといけない。  それは瀬戸内海の赤潮のときに起こった現象が全くそうでございます。なぜかといいますと、生けすの中のハマチの数を適正に入れておけばいいものを、少しふやしますと、そうするとえさもたくさん余り物がある、それでその水域の水温が上がる、そういうことで赤潮が発生するわけです。あれが自然界ですと赤潮によって生物が死ぬことはないんです。なぜかといいますと、赤潮はにおいますから、何ぼ魚が鈍感でばかだと申しましても、そんなところにわざわざ寄っていくはずがないのです。それで逃げていきますから、赤潮によって生物が死ぬことは今までにない。ただ、赤潮が発生したことによって水中の酸素が極端に減りまして、その酸素が減ったことによって生物が酸欠を起こすということはございます。  お答えになりましたでしょうか。
  50. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 ありがとうございました。    〔委員長退席、理事丸谷金保君着席〕  関先生にお尋ねを申しますが、沼に流れ込む川がございますが、その川に対する水質保全という問題が沼の水質保全には緊密な関係があると思いますのでお尋ねをいたすわけでございますが、下水の水を浄化をいたしまして、その浄化した水を下水路にまた流し入れる、先ほどこういう御説明がございました。そういうことを行いまして汚濁度は減少するであろうかという問題です。  つまり、下水の中にはほかの方からまた別の汚水が入るはずでございまして、そうしますと、せっかく浄化してもまざってしまうので、何かはかの方法を講じなければならぬような、素人考えではそういう考えが浮かびますので、千葉県ではこういう問題はどのように処置をしておいででしょうか。つまり、下水にほかの汚水が入ってこないようなことをやっておいでになるか、それともそうでないのかという問題でございます。  それから、時間がありませんのであと一問にいたしたいのですが、昭和七十年度を目標といたしまして実施される、こういうわけでございますが、その可能性の条件ですね。七十年度を目標にして実施可能な方法という問題でございますが、その可能性の条件、どういうような条件が一体必要だろうか。例えば環境的条件だとか水質的条件、それからまたきれいな水の条件、きれいな水とは一体何であるか、そのきれいな水の条件、そうした条件としてどういうものが特に考えられるだろうかということでございますが、時間がなくて申しわけありませんが、ひとつよろしくお願いします。    〔理事丸谷金保君退席、委員長着席〕
  51. 関登世彦

    参考人関登世彦君) 私先ほど、家庭から出てくる排水につきまして、下水路の水を一部浄化してまた下水路に入れるというお話をしたわけでございます。  実は、流域下水道が整備される流域内の家庭排水につきましては、すべて流域関連公共下水道に取り込んで最終的に処理されるわけでございます。しかしながら、印旛、手賀非常に地域が広うございますので、言ってみれば、余り人家が密集していないところは公共下水道もなかなか整備できないということで、整備区域外になるわけでございますね。言ってみれば、多少農村部の部落といったようなところは流域下水道が及ばないというようなところがございます。しかしながら、そういう部落につきましても、汚水が下水路を通って河川に入り、またそれが沼に入るということは、最終的にはその沼の汚染にもつながりますので、そういういわゆる部落単位のものにつきましては、その下水を一度処理して、それでまた下水に戻すというお話をしたわけです。言ってみれば、処理したやつを公共下水道につなければよろしいのですけれども、くどいですけれども、要するに非常に人口が密でないためにつなげないといったような状況で、これはやむを得ないのではないか、このように思っているわけでございます。  それから二番目でございますけれども、七十年までにいろんな対策をやっていくということでございます。しかしながら、私ども水をきれいにするための対策につきましては、この可能性と申しますのは、やはり尽きるところお金の問題ではないか、このように思っております。汚濁量生活排水が七〇から七五%に及んでおりますので、やはり何といっても下水道整備が重要だ、これが一番効果的だ。そうすればこれにまた一番お金がかかります。したがいまして、国の方で湖沼が指定されましたら重点的にこういうような効果のある事業に事業費を投じてくださるのが一番沼の水をきれいにするのではないか、このように思っている次第でございます。
  52. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 どうもありがとうございました。  終わります。
  53. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最初、吉良森下参考人にお伺いしますが、この湖沼法が成立した後、全国十カ所が指定湖沼になる予定ですが、今までの審議の中で、環境基準、CODですが、環境基準に比べて大体五〇%から多いところで八〇%の削減率が必要なんですね。私はこれをなくしていくことが湖沼法の目的だと思うのです。  そこで具体的に申しますと、諏訪湖の場合などは、富栄養化の問題ですが、類型Ⅳを達成するためにトータル窒素あと四〇%カット、低い水準でもそうなんですね。それからトータル燐であと三四尾カット、それが必要だということで、これは県の水質審議会の答申が出ています。同じように、これは滋賀県の方ですが、琵琶湖の場合に、類型Ⅱを達成する場合に、現行の富栄養化防止条例の諸対策を全部実施する、それが湖沼法ができても大体その線でいくということですが、それでもなお南湖で四五%、北湖で一五%、これは窒素。燐では南湖三五%の削減が必要だということなんです。  そこで両参考人に、一つは、琵琶湖研究所長としての吉良参考人、それからもう一つは、動物学者として全世界の水を見ておられる、そして川の健康診断も出しておられる森下参考人の立場からお伺いするのですが、現在の日本では一番到達した対策を立てている、それでもなおかつこういう状況。となると、これをどうやってなくしていくのか、その具体策をお持ちでしたらばお伺いしたいと思うのです。
  54. 吉良竜夫

    参考人吉良竜夫君) 大変難しいお尋ねでございまして、十分なお答えができないかと思いますが、今四五%とか三五%とかという削減率のお話が出ておりますが、これはまだ県でも内部的に試算をしている段階でございまして、多分公表はまだされていないと思います。したがって、この数字がどの程度確実性があるかということは私どもよく存じませんのですが、これはいずれにしましても、私が最初に申し上げましたように、流れ込んでそれを消費して、またその一部分が出てくるという、そういうメカニズムを一応コンピューターでモデルをつくった上で計算した値でございます。したがって、つまり今琵琶湖は類型のⅡとⅢのちょうど真ん中にありまして、Ⅲに対してはもうほぼ基準を満足しているわけでございますけれども、Ⅱはまだ届かない。仮にこの数字を信用するといたしますと、その程度の燐や窒素流入負荷を減らさなければⅡは達成できないということでございます。  それについて私が申し上げられることは、さっき申しましたように、例えば、琵琶湖の富栄養化防止条例で燐を含んでいる洗剤の使用禁止をいたしましたときには、流入する川水の燐の濃度が一挙に三〇%ぐらいは減りました。けれども、そんな手はもう残っておりません。あとは、私がさっき申しましたように、非常に細かい一つ一つの発生源について一つ一つ違う手を打っていって、一つ一つについては一考か二%の効果しかないけれども、それを十幾つ、二十幾つ集めれば何とか目標になるという、そういうやり方をせざるを得ません。  したがって、どういう方策があるかと言われましてもなかなか具体的にお答えがしにくいわけでございますが、琵琶湖の場合にはそういう細かい策を一つずつ積み重ねていく以外には、なかなかこれだけ大幅な削減をすることは難しいであろうというのが私の持っております感じでございます。
  55. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 一つだけ少し感覚的に違うのは、動物というのは生き物でございますから、おっしゃられるように、これだったらいい、これだったら悪いというのでございませんで、幅を見ていただいて、四〇%ぐらい削減できるのだったらそれでもうある意味では目的を達したというふうに見ていただけないかと思うのです。それは、何もしないよりもそれぐらいのものでもしますと、もとへ戻ることはできなくても現状は維持できるだろう。確かに数字になりますと、それが非常にむだなようには見えますけれども生物にとりましてはそれで十分なんです。  これから新しいものが生まれてくるときには多少の問題はございますし、例えばアユのすんでいる今の琵琶湖にビワマスをすませようと思いましたらもう少し頑張っていただかないといけませんけれども現状アユがすんでいるままを維持しようとするのであれば、その四〇%前後の幅というのはこれは動物にとっては許容できる幅でございます。ですから、科学で出されました数字と動物がすむすまないという環境の問題とはかなり差がありますので、そういうふうに御理解いただけたらいいのではないかと思います。  当然、一〇〇%満足をして、そして次のもう一つ上の段階に行こうというのはこれは非常に理想的な問題でございます。例えば諏訪湖が類型Ⅱになりましたら、これは今一番盛んでありますワカサギがとれなくなりますので、そういうことまでまだこの湖沼法では目的としていないだろうと思います。実際問題として、日本ぐらいお金があるところですと、諏訪湖の水ぐらい入れかえまして、そしてきれいな水をそこにためまして、さあそれじゃビワマスすみなさいといってすませるとしましても、諏訪湖の立地条件からしますと、これは十年もたたないうちにアユにかわりますし、また同じ状態なります。まあそこそこの環境条件の中で持っています容量がございますから、できの悪い私のようなのに幾らカルシウムを食べさせてくれても伸びないのと同じでございまして、それぞれの湖にはそれぞれに合ったのがございますので、一津に考えていただかない方がやはりいいと思う。それが自然保護の精神だろうと思います。
  56. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 続いて吉良参考人にお伺いしますが、琵琶湖研究所の八四年版要覧によりますと、プロジェクト研究の中に、琵琶湖集水域の現況と湖水への物質移動に関する総合研究というテーマがあります。まだ最終の完結にはなっていないようですが、先ほどの最初の陳述をお伺いしますと、大体これに沿っての御発言のように承ったわけです。  そこでもうちょっとお聞きしたいのですが、現段階で把握されております琵琶湖集水域の現況、とりわけ流入河川流域の植生や土地利用状況河川汚濁負荷量、そのうちどれくらいが琵琶湖流入するのか、この実態に関するおおよその解析結果がどうなっているのか、これについておわかりの限度でお答えいただきたいと思うんです。
  57. 吉良竜夫

    参考人吉良竜夫君) 大変申しわけございませんが、そういう御質問が出ることを実は期待しておりませんでしたものですから、具体的な数字等を持っておりませんので、大変大ざっぱなお答えになって恐縮でございますが、琵琶湖に入ってまいります川の数が総数で小さな流れまで入れますと四百何十、五百近くございます。それで一級河川だけでも百二十近くあるわけでございますが、それだけの川の水質をちゃんとはかりませんと今の御質問にお答えすることはできないわけでございますが、これはもう到底不可能なことでございます。それも月に一遍ぐらいはかりに行ったのではとても本当の水質というのはわかりませんので、ぜめて週に一回ははかりたい。ですけれども、それも例えば一級河川百何十程度でも週に一回はかりましてそれで水質項目を全部分析するということになりますと、その分析等を委託すれば大変なお金なりますし、自分のところでやるとしますともう朝から晩まで分析だけやっているだけで何もほかのことができません。そういうことでなかなかこの環境のデータというのはとれないのでございます。  集水域の概況という大きなテーマを書いておりますけれども、私どもが持っておりますのは、年に数回程度はかって百何十の河川の平均水質を求めたデータと、それからもう一つは、十ほどの河川について、短い期間ですが、全部そろっているのは一年間でございますが、一週間置きにはかったデータとを持っているだけでございますが、それだけの範囲で申しますと、例えば一本の川がありまして、その川が琵琶湖に入る直前のところで水を取って平均水質を求めてみますと、それと、その川の流域の中で例えば森林面積が何%ある、それから農地面積が何%ある、それから居住地面積が何%ある、人口密度が幾らある、工場の密度が幾ら、工場生産額が年に幾らというのを求めてみますと、その両者の間にはもう非常にはっきりした関係がございます。  窒素と燐の場合でかなり違いますが、燐の場合はもう圧倒的に人間の活動でありまして、事実上人口密度と工場生産高ぐらいでもう川の水の燐の濃度が決まってしまうという感じ。それに少し農業の影響が入る。それに対して窒素の方ですと、今度は自然の意義が非常に大きくなりまして、例えば森林面積が何%あるかというようなことが人間の活動と余り変わらない程度にきいてまいります。自然森林率の高い流域ほど窒素濃度がぐっと低くなります。ですから、少なくとも琵琶湖流域に関してだけで言いますと、その川の流域の土地利用の比率がどういうふうになっているか、人口が幾らあるか、工業生産が幾らあるかという程度のことがわかりますと、その川が一年間にその湖へ負荷する窒素や燐の量のおおよその推定はつきそうでございます。  ただ、厄介な問題は、一度大水が出ますと、窒素にしましても燐にしましても、大水が一昼夜とか一日半とかというぐらいの時間で平水時の数百日分ということは、何十日分から何百日分ぐらいの窒素や燐が一遍に入ってしまいます。ですから、台風が一度来まして集中豪雨があったときの大水だけでつまり何年分か入ってしまうことになるわけでございます。それの観測というのが大変難しいことで、チャンスの問題がございますので、今雨のときにどれだけ入るかということを集中的に調査をしておりますけれども、それがもう少し進みませんと数字的にはなかなか申し上げにくいのでございますけれども、大変長くなりまして恐縮ですが、要するに、流域がどういうふうに利用され、どういうふうに人間が住んでいるかということで事実上流れ込んでくる栄養物質の量は決まっているということでございます。
  58. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 時間が来てしまったのでこれで終わりますが、その辺はそれじゃ今度研究所をお伺いしてお伺いさせてもらいたいと思います。  関参考人には、時間がありませんので失礼したいと思います。
  59. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 本日はどうも御苦労さまでございます。  吉良参考人にお尋ねいたしますけれども日本一の大湖を擁して全国に先駆がけて自治体として富栄養化防止に関する条例、いわゆる洗剤条例を制定されて県民とともに頑張っていただいているわけでございます。そのことにまず敬意を表したいと思うのです。  環境特別委員会は、湖沼水質保全特別措置法案とともに、社会党から提出されました湖沼環境保全特別措置法案、この両案を今審議しているわけなんですけれども、いかがでしょう、地元で水質汚濁と取り組んでおられる参考人として、この両案、もし内容を御存じなければ結構でございますけれども、少し内容を研究しておられるのでしたら、どちらの法律案が地元としては望ましいものであるか、まずお伺いいたしたいと思います。
  60. 吉良竜夫

    参考人吉良竜夫君) 私は、逐条非常に詳しく比較をするというところまでは実は拝見しておりませんので、大ざっぱに言いまして、集水域、流域のいろんな例えば現状変更等に対するのが届け出になるか許可になるかというようなもの、あるいは保護地域みたいなものを設定するところまでこの法律に含むか、あるいは水質だけの問題にするかというような、そういうことであるというふうに私は了解しておりますけれども、私は直接行政にタッチしているわけではございませんので、どちらが行政の立場から見てやりやすいのかということは、ちょっと私からとても責任を持ってお答えはできないわけであります。  私がそういう問題を研究している研究者としての立場から言わせていただくならば、例えば土地利用みたいなものの変更に対して強制力を持てるような法律があれば、それは大変環境をよくするというだけの目的から言えばいいんだろうと思います。しかしこれはもう全く学者の空論でございまして、実際にそれを行政的におやりになる場合にどういう形がいいのかということにつきましては、ちょっと私から確信のある御返事は申し上げられません。
  61. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 そうしますと、現に審議しておりますいわゆる湖沼法ですね、これも現地で研究していらっしゃる立場から言いますと一刻も早い成立が願わしいものである、そのように理解してよろしゅうございますか。
  62. 吉良竜夫

    参考人吉良竜夫君) 全くそのとおりでございまして、先ほども申し上げましたように、この法律が成立することで非常に大きな進歩があると思っております。
  63. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 森下参考人にお尋ねいたしますけれども、先ほどのお話の中で、湖が富栄養化いたしますと周辺の景観が非常に悪くなる、このようにおっしゃったと私思うんです。酸性雨が降りますと周辺が砂漠化する、これもおっしゃいましたけれど、そうじゃなくて、いわゆる富栄養化すると周辺の景観に影響を及ぼすというふうにおっしゃったと思うんですけれども、それはどういう理由でそうなるのでしょうか。
  64. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 少し違うと思うんです。  湖が汚れていても周辺の非常にいい環境があるところがたくさんありますよというお話をしたのだと思うんです。イタリーのコモ湖を初めとするヨーロッパ、アメリカの湖沼水質に関係なしに周辺は非常に保護された、整備された自然の状態が残った。その環境からだけ見たらどんなにいい湖だろうというふうに思ってのぞいてみると、非常にたくさん藍藻が発生していたということです。
  65. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 どうも失礼いたしました。私の少し聞き間違いでございました。  水中の生物の生態系が変わるということについてお尋ねしたいんです。  御存じだと思いますけれども、今回この湖沼法が成立いたしましたら、島根県の中海は指定湖沼になるわけなんですが、一方で、昭和四十年代の初頭から工事を行っております、干陸化の工事ですね。既に水門は完成しておりますが、今島根県や鳥取県に委嘱をして調査をしております。その調査の結果を待ちまして、水門を閉めていわゆる淡水化に踏み切る、こういう計画なんです。  どうでしょうか、学者としてお伺いいたしますが、中海と宍道湖は運河で結ばれておりますね。これが淡水化いたしますと、その水中生物は、先ほど来から先生がおっしゃっているように、相当やっぱりその生態系に異変が起こると思うんですが、その起こる異変というものは好もしい変化、例えばさっきおっしゃいましたね、爆発的にある種が繁殖する、ユスリカが繁殖する、こういうふうな変化は好ましくないし、既にいる生物がバランスよく多種類生息している状況がいい環境であるとおっしゃったと思うんですが、仮にこの中海を閉め切りまして、従来の塩入りが淡水化いたしますと、どのような変化が起こり、その変化は学者として見た場合に好もしい変化になるのであろうか、それともそうでないのか、その辺をお伺いいたしたいと思います。
  66. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 中海の問題は私実際はよくわかっておりませんけれども、児島湾それから八郎潟、いろんなところで淡水化の事業が進んでまいりまして、その淡水化をしたために生態系が変わった。霞ケ浦でも変わってまいりました。例えば、ヤマトシジミのようなものは汽水にしかすめませんので、これはもう絶滅してなくなります。次にマシジミというのがかわりますけれども、そういう状況なります。  生態系が変わるのはもうこれは当然でございます。あれだけ大きな事業をして、しかも塩分が入っていないと生きていけないような生物がいなくなって、しかもまだ新しゅうございますから、淡水化しても即淡水の生物ふえていくわけではございませんから、ある特殊な生物がそこでふえることも可能でございますかわりに、その全体の量というのが減っていくのも事実でございます。これは生態系が変わるのは当たり前で、それが悪いかどうかという問題はよくわかりません。社会通念でよくわかりません。ただ、言えますことは、それに見合うプラスの部分があるのであれば、トータルとしての評価はしないといけないだろうと思います。  全く生物学的な言い方をしますと、変化が起きて中海なり宍道湖なりが著しく変化するのは、これは当然だと思っております。
  67. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 関参考人に最後に一つだけお尋ねいたしますが、この印旛沼手賀沼水質管理計画ですね、昭和七十年にこれを達成したい、基準値を達成したいということでございましたが、この湖沼法が仮に成立をいたしました場合、その昭和七十年に例えば印旛沼手賀沼をきれいな水にしよう、昭和七十年にはその基準を達成しようということについて、この湖沼法そのものが大きな補強の手段になり得ますか、それともなり得ませんか。  最後にそのことだけをお伺いして、私の質問を終わります。
  68. 関登世彦

    参考人関登世彦君) 私は結論的には大変な補強になる、このように思っております。ただ、法律ができましても、やはり私はその運用は大事ではないか、このように思っております。法律ができますといろんな対策が計画的に総合的に実施されるわけでございます。したがいまして、先ほど来行政の立場から大変くどく申し上げておりますけれども、国の援助等が十分になされるならば、この法律は運用の面でも大変生きまして、私ども水質管理計画を大いにバックアップする立派なものになるのじゃないか、このように思っております。
  69. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 終わります。
  70. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 一番最後になりましたけれども森下さんにお願いをいたします。  私は、今我々が勉強しております、湖沼水質をよくする、これは理論的には非常に簡単だと思うんです。それは、先ほど関さんも森下さんも言われましたように、日本湖沼水質をよくしよう、そうすれば下水を完備して、二次、三次の下水まで完備する、そうすれば一応は湖沼水質はもとに戻るということは確実ではありますけれども、現実的には非常に難しい。それはどのくらいの金がかかるか想像もつかないようなといいますか、想像もつかないようなといっても、ほかのものを犠牲にしてやれば、日本の現在の財政では負担できると思いますけれども、軍備その他がありますから、なかなか全部の湖沼水質をよくするような下水道の処理ができるようにはならない。  それで、その点において、私は、世界のほかの国々、特にヨーロッパ、それから先ほどおっしゃいましたコモの湖、それからスイスの湖、それから北欧の湖、こういう湖は若干日本とは変わった環境にあるのではないだろうか。と申しますのは、つまり下水はほとんど完備している。それですから、日本で問題になるように、下水が二〇%とか一〇%とかいう普及率の環境のもとにおける湖水の水質の浄化という問題と別な問題である。それは先ほども言われましたが、塩水化とか酸性の問題とか、つまり日本とは別な問題じゃないだろうか。  それで、その点において御意見を伺いたいのでございますが、日本とはやはり別な問題、つまり日本ではヨーロッパ、アメリカ、スイスとは別な問題を解決しなきゃならないんじゃないだろうか。その辺いかがでございましょうか。
  71. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 水道の水を取ります場合に、東京では上流へ上流ヘダムをつくってそしていい水を取ってきて飲んでいますね。これがアメリカ方式なんです。ヨーロッパの方式は、国がほかの国と接していますからそういう形で水源を動かすことができない。それで悪くても承知していてそれを浄化して飲まないといけない。これが関西方式でございます。淀川の水を一番下流の方から取っておりましてそれを飲んでいますけれども、本来ならば琵琶湖の真ん中から引いていって飲んだらいいわけですけれども、そんなことをしないで、淀川に流してそして処理をしてまずい水を飲んでいるわけですけれども、それでもそれが関西の文化だということで頑張っているわけです。そのようなことで、非常に日本の中でもそういうふうに違うわけなんです。ヨーロッパ方式を日本に当てはめてきているわけですから、その中で何とかしようかと。  今度の湖沼法で一番の大変な問題というのは、そういう日本的なものを全部、しかも一つの湖が水道の水にもなる、水産の水にもなる、農業用水にもなる、排水も受けないといけない、こういうようなことはこれは日本的な全くお家の事情でございますので、それはヨーロッパを参考にしてそれで施策を立てるというわけにはまいらないだろう、そういうふうに考えております。
  72. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 確かにそうだと思うのでございます。例えば。ハリでは水道の水は飲みませんから、ミネラルウオーターの、少し高いけれども瓶に入った水以外には飲まない。日本では考えられないような状況になっているんで、つまり水についての考え方ですね、これを変えなければならないんじゃないか、そう思います。  しかしながら、日本水質の問題においては下水道が何よりも問題だ。というのは、私が知事になりましたときに、隅田川が汚れに汚れて両国橋に立つとにおうというふうになって、この隅田川の水をきれいにすることが都民の生活環境をよくする最も重要な問題の一つである。一体どういうふうにしたらばよくなるだろうかと考えて、私は、隅田川、多摩川などの下水道を浄化する、そういうふうにして水をきれいにする以外にはないと思って、何よりもまずその下水道の完備ということをしろというんで、非常な金をかけて、三二、三%だった下水が七〇%までするようになって、そして隅田川の水も大変にきれいになった。それでハゼもとにかくすめるようになったというわけでございます。  だから、それと同じで、やはり僕は、日本水質汚染をなくするためには金をかけて下水をよくする、関さんもたびたびおっしゃいましたけれども、下水を完備する、それ以外に方法はないんじゃないだろうかと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  73. 森下郁子

    参考人森下郁子君) 湖沼水質保全特別法が通ってこれが達成されましたら、少なくともその湖沼から水を飲むことは可能になってくる、これは思います。今現在でも飲んでいるわけですから、飲めないなんという水を飲んでいないわけですけれども、でも安心して飲めるようにはなるだろうと思います。  それで、下水道以外にそれじゃ何をしたらいいかということはこれは非常に難しい問題で、ちょっとやそこいら考えて、これだけいらっしゃる方々が考えつかないことを私が考えるわけにもまいりませんでしょう。
  74. 美濃部亮吉

    美濃部亮吉君 それで、もう一つ関さんに御質問いたしますけれども、霞ケ浦、手賀沼印旛沼、これはワースト一番、二番というふうに非常に悪くなっている。そうして一遍悪くなった湖沼の水をきれいにするということは非常に難しいことであると思います。それでありますから、こういう湖沼の水をよくする、少なくともこれ以上は悪くしないという努力はなすべきであって、非常に重要であると思いますけれども、それと同時に、悪くなりつつある湖沼の水をこれも悪くならないうちにとめるということが僕はある意味においては最も重要である。  その意味において、牛久沼、これは小さいですけれどもとにかくまだ水は比較的きれいである。そして、アオコも少し発生しているようですけれどもそれほどでもない。それでこの牛久沼を残念ながら湖沼法では保護するように、できないことはないんですけれども、最初の指定は、最も悪くなった湖沼を指定してそこに全力を尽くすということで、牛久沼くらいのきれいな湖はその指定から外れるということになるので、そうなりますと湖沼法の保護は受けない。しかしながら、今申しましたように、牛久沼は何とかして今よりは悪くならない、そういう方法を講じたいと思うんですけれども、関さんの御意見はいかがでございましょうか。
  75. 関登世彦

    参考人関登世彦君) ただいま牛久沼のことにつきましていろいろお話ございましたけれども、実は牛久沼は千葉県ではございませんので私十分承知しておりません。しかしながら先生のおっしゃる意味もよくわかるわけでございますけれども、ちょっと答弁はここでは差し控えさせていただきたいと思います。
  76. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 以上で、本日御出席をいただきました参考人に対する質疑は終わりました。  参考人の皆様に一言お礼を申し上げます。  本日は貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げる次第であります。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十八分散会