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参考人(
関登世彦君) 関でございます。
私は、
千葉県にあります
印旛沼、
手賀沼の
水質が現在どういう
状況にあるのか、またそれに対しまして県はどういうような対策を講じているのかということにつきましてお話しさせていただきたいと思います。
まず、
印旛沼、
手賀沼の概要でございますけれ
ども、この沼は
千葉県の北部の
利根川沿いにございまして、東京から大体一時間
程度で通勤できる位置にございます。
印旛沼の周囲は二十六キロで、平均の水深が一・七メートル、大変浅いわけでございます。
流域人口は四十八万人ということでございます。水資源が大変
千葉県は乏しいわけでございますけれ
ども、非常にこの点この沼は貴重でございまして、上水道とかあるいは臨海工業地帯の工業用水、農業用水、これらに利用されているほか、内水面漁場として、あるいは県立自然公園として重要な役割を果たしているところでございます。
次は
手賀沼でございますけれ
ども、これは周囲が三十八キロで、平均の水深はわずか九十センチ、
流域の
人口は三十七万人で、農業用水とかあるいは内水面漁場として、また県立の自然公園として住民の憩いの場となっているわけでございます。
次は
水質汚濁の
状況でございますけれ
ども、
印旛沼、
手賀沼は最近
流域が大変開発されてまいりまして、
人口が急増しております。当然のことといたしまして、これに伴いまして水もどんどん悪くなってきているわけでございます。
印旛沼のCODは、四十二年度六ppmでありましたけれ
ども、五十七年度は十二ppmということで、環境基準値の四倍、それから環境庁が、全国の
湖沼百三でございますけれ
ども、これの測定結果をまとめられた結果によりますと、ワースト二位という
状況でございます。また、富栄養化の原因でございます
窒素は環境基準値の六倍、富栄養化限界値の十三倍というような
状況でございます。
手賀沼のCODでございますけれ
ども、これは四十二年度が五ppmでございましたけれ
ども、五十七年度は二一ppmということで、環境基準値の四倍、それから環境庁の全国の集計結果によりますとワースト一位という非常に残念な
状況にございます。
窒素は、環境基準値の六倍、燐は五倍で、富栄養化は非常に進んでおりまして、アオコもしばしば発生しているというような
状況でございます。
しからば、この
汚濁の原因は何であるのかということでございますけれ
ども、
印旛沼流域は県の面積の十分の一を占めております。周辺は近年宅地化が大変進行しておりまして
人口が
ふえております。したがいまして、このCODの
汚濁負荷の割合を見てみますと、生活系、つまり我々家庭から出している
汚染質でございますけれ
ども、これが全
汚染質の六九%を占めておる。そして
工場とか事業場、いわゆる産業糸から出ているものはわずか九%というような
状況でございます。
一方、
手賀沼の
流域は県面積の約三十分の一でございます。宅地率が県平均値の二倍、
人口密度は県平均の二・五倍というように大変過密になっているわけでございます。このCODの
汚濁負荷の割合を
手賀沼について見てみますと、生活系は何と七五%というような
状況で、また
工場、事業場、いわゆる産業系につきましては一三%というようなことで、圧倒的に家庭
排水の
汚濁が原因であるということがわかるわけでございます。
しからば、これらに対しまして県はどういうような対策を講じてきているのかということでございますけれ
ども、
千葉県の非常に貴重な財産でございますこの沼の水を将来にわたって保全していくということは、県民を挙げての重要な課題になっております。そういうようなことから、私
ども県といたしましては、現段階で見込める実施可能ないろんな施策を総合的、計画的に実施していくということにいたしまして、五十七年の四月に
印旛沼、
手賀沼につきましてそれぞれ
水質管理計画というものを策定したわけでございます。
地域はこの両方の沼で二十四市町村と非常に広い面積にわたっております。そしてこの
水質管理計画の目標年度を昭和七十年度といたしました。そして対象とする項目はCOD、
窒素、燐、こういうものを対象といたしますけれ
ども、両方の沼とも、
汚濁がまだそれほど進行していなかった昭和四十年代の初めの
水質に持っていくということにしているわけでございます。したがいまして、CODについて見てみますと、
印旛沼、
手賀沼につきましてそれぞれ七十年までに五ppmにしようというのがこの
水質管理計画でございます。
そして、この
水質管理計画でございますけれ
ども、四つの柱を立てております。第一に生活系の
排水対策、第二に産業糸の
排水対策、第三に
河川直接浄化対策、第四にその他の関連対策としておりまして、全部で二十項目にわたりましていろんな施策を展開するということにしているわけでございます。
次に、この
水質管理計画の中に織り込んでおります対策を少し具体的に申し述べさせていただきたいと思います。
まず第一の柱でございます生活系の
排水対策でございますけれ
ども、これは何といいましても下水道の整備というものが中心になるわけでございます。県は現在、
印旛沼流域下水道、
手賀沼流域下水道というものを鋭意整備しているわけでございます。昭和七十年度末までにこの両方の下水道整備を促進いたしまして、
印旛沼流域では全
人口の約八〇%に当たる
生活排水を、また
手賀沼流域では約九〇%に当たる
生活排水をそれぞれ処理いたしましてこれらの沼の外に持ち出す、つまり
流域外に運び出すということにしております。具体的には、
印旛沼の
排水は東京湾、
手賀沼の
排水は利根川というところに出しまして、沼の中には入れないということにするわけでございます。この結果、七十年度の生活系
汚濁量、CODでございますけれ
ども、
印旛沼流域では
現状の五二%に、また
手賀沼流域では
現状の二〇%に減少させるということでございます。産業系、生活系全体のCOD削減量のまさに七三%はこの下水道事業によるということでございます。
次は、単独公共下水道の終末処理場でございますけれ
ども、これにつきましては、両方の沼の
流域内にございますところの終末処理場の三カ所を、
流域下水道の整備に伴いましてこれに接続して
排水を
流域外に運び出すということにいたします。
次は、し尿処理場の対策でございますけれ
ども、沼の
流域内のし尿処理場二カ所を廃止するとともに、三カ所の処理場につきましては高次の処理施設を設置するということにいたします。
次が家庭雑
排水対策でございます。
先ほどから家庭雑
排水は大変大きな問題だということをお話ししたわけでございますけれ
ども、家庭から出ますところの、主として台所の
排水は年々
ふえてきております。これも沼の
汚濁の主な原因になっております。そこで、家庭雑
排水の垂れ流しの家庭には家庭用の沈殿槽等を設置することにしまして、普及率を七十年までには五〇%に持っていきたい、このように思っております。
さらに、下水道整備区域外の部落につきましては、下水路の水を処理するところの共同処理施設を設けて浄化した後に再び下水路に放流するということにいたします。
一つの共同処理施設はおよそ百戸
程度を処理する規模でございますけれ
ども、七十年度までにはこれを全部で二十四基設置する計画になっております。
それから富栄養化の原因になっております燐対策でございますけれ
ども、無燐洗剤の促進によりまして家庭雑
排水の燐の
汚濁量も減らしたい、このように考えているわけでございます。
次が産業系の
排水対策でございますけれ
ども、両方の沼の
流域内の
工場、事業場に対しましては、当然のことといたしまして
排水規制を行いますとともに、
流域下水道の区域内の
工場につきましては、
原則として
排水は全部この
流域下水道につなげていただく、そしてこの沼の系外に排出するということにしたい、このように考えております。
次は
河川の直接浄化対策でございます。
一つはしゅんせつの対策がございます。二つの沼は大変汚れておりまして、
ヘドロもたまっておるわけでございます。特に
手賀沼はこの堆積が大変著しいというようなことになっておりまして、ここからの
汚染質が溶け出したりあるいは舞い上がったりして
汚濁の原因になっております。したがいまして、この
ヘドロの除去というのも
水質汚濁防止のためには大変有効な手段でございます。このために、
印旛沼につきましては新川、それから
手賀沼につきましては大堀川の河口から
手賀沼公園にかけましてしゅんせつを行いたい、このように思います。
次が流動化対策でございます。水は、流れがとまりますと自浄作用というものが低下しまして富栄養化が進むわけでございます。また、新鮮な
酸素をたくさん含んだ水を導入してやるということは、微
生物の働きを活発にいたしまして浄化作用を促進するわけでございます。このため、
手賀沼につきましては、利根川から毎秒十トンの水を導入するところの北
千葉導水事業を六十五年度に完成するということをめどに現在事業を建設中でございます。
印旛沼につきましては、
印旛沼の放水路に現在、洪水対策のためでございますけれ
ども、大和田機場というものが整備されております。したがいまして、これも沼の流動化を図るために活用できないかということを今後検討してまいりたい、このように考えております。
それからもう
一つ、ホテイアオイの植栽も現在
千葉県はやっております。ホテイアオイと申しますのは、金魚を飼うときによく水草として浮かべてある、おなかの辺が膨らんでいる例の
植物でございますけれ
ども、これは大変
窒素と燐の吸収率がいい
植物でございます。また繁殖が大変旺盛なものでございます。したがいまして、現在これはテスト中でございますけれ
ども、
手賀沼に植栽いたしまして
窒素、燐を吸収させるというようなこともやっているわけでございます。
以上が、県がやっておりますところの
水質管理計画でございますけれ
ども、そのほか
水質浄化の緊急対策というのも県はやっております。これはどういうことかと申しますと、今まで私
どもいろんな
水質汚濁防止対策をやっていたわけでございますけれ
ども、先ほど来申し上げておりますように、五十七年の四月に
水質管理計画を策定してきたにもかかわりませず、環境庁の発表では
印旛沼、
手賀沼の
水質が全国のワースト一位、二位というようなことに
なりましたので、これは何とかしなくちゃいかぬということで急遽緊急対策を講ずることにしたわけでございます。
五十八年の十二月にこの対策をつくったわけでございますけれ
ども、その内容は、まず
生活排水対策といたしましては、現在両方の沼の
流域に家庭雑
排水の未処理の家庭が約十七万世帯ございます。そこで、この家庭でできる浄化対策を実践するために、
流域の中に四万五千世帯を対象としました家庭
排水対策実施強化地区というものをまず設けました。そしてこの強化地区の各家庭に対しまして、浄化効果のあるところの、いわゆる台所の流しにあります三角コーナー、それからその三角コーナーにかぶせるろ紙袋というものを四万五千世帯に無料で県が配布いたしまして、台所から流れる水は全部これで一度こしてそしてきれいな水を
排水してください、このような
お願いをしたわけでございます。
また、
工場に対しましても、CODが一日二キログラム以上出ているところにつきましては削減をしていただくようにいろいろ
お願いもしたわけでございます。
それから、礫間浄化施設というものもつくることにいたしました。これはどういうものかと申しますと、要するに石ころでございますけれ
ども、握りこぶしぐらいの石ころをたくさん層にしたところに下水等を流しますと、その石に付着しているところの
生物膜等で
汚濁物質のCODが吸着されたり、あるいは沈殿したり酸化したりして浄化する効果というものがございます。したがいまして、これにつきましては、
印旛沼に桑納川という非常に汚れた川が流れ込んでおりますので、それに六十三年度完成をめどに本年度からこの礫間の浄化施設をつくるということでスタートしたわけでございます。また、
手賀沼につきましてもこのような施設をつくるべく今調査をしているということでございます。
以上が緊急対策でございます。
そのほか、
汚濁防止に係る研究ということも大変重要なわけでございます。きょうも先生方から
汚濁物質あるいはその
汚染のメカニズムにつきましてもお話があったわけでございますけれ
ども、まだまだ未解明な点がたくさん多うございます。県でも
水質保全研究所というところでいろいろ研究をしておりますけれ
ども、必ずしも十分でないというような
状況にございます。一方、
千葉大学の環境科学研究機構というものが、従来から
千葉県のいろいろな環境の面につきましても適宜研究をしていただいてきているわけでございますけれ
ども、このたび、
印旛沼、
手賀沼が大変汚れているというようなことで、この科学研究機構も全学的にこの印旛、手賀の
水質汚濁問題に取り組むということになったわけでございます。
千葉県といたしましても、これとタイアップしていろいろ対策を進めていきたい、このように考えておるわけでございます。
最後に、
湖沼法につきましてのことでございますけれ
ども、申すまでもなく、
湖沼の
水質保全につきましては体系的、総合的な対策が極めて重要でございます。したがいまして、
千葉県といたしましても、一日も早くこれが制定されまして
印旛沼、
手賀沼が指定湖水に指定されることを望むものでございます。
また、この二つの沼の
汚濁源は、先ほど来申し上げておりますように生活系が圧倒的でございます。これらの
水質を浄化するためには、
流域下水道、あるいは関連している公共下水道、あるいはしゅんせつ事業あるいは導水事業というものがございますけれ
ども、大変これらにつきましては多大な事業費を必要といたします。
湖沼法によりまして水域の指定が行われました暁には、国においてはこの印旛、
手賀沼のこれら事業に対しまして重点的にまず予算の配分をされるよう
お願いしたい、このように思っております。特に、
流域下水道の早期整備というものは、この沼の
水質浄化のためには欠くことのできない重要な施策でございます。今後とも、
流域下水道の整備につきましては国としても特段の御配慮をされるよう特に
お願いいたしまして、私の説明を終わりたいと思います。
以上でございます。