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美濃部亮吉君 私は自然破壊が進んでいるということが非常に
心配でございまして、この二年、三年、自然破壊が問題になっているところをできるだけ
たくさん自分の目で見たいと思って回ってみたのでございます。それのすべてについてお話しする時間はとてもございませんけれ
ども、大きいところについて少しお話をしてみたいと思うんでございますが、自然破壊につきましては、自然破壊というか、企業なら企業を誘致する、あるいはその他の計画を持ってそうして準備をする、あるいは海岸を埋め立てる、あるいは整地をする、そういうふうに準備行動をしてしまったけれ
ども、目標である計画が実現をしないで、整地した土地がほうりつ放しになっている。埋め立てた海岸が手つかずで残っている。そういう場所が数多くあるということと、もう一つは、これから破壊しよう、自然破壊の計画を実行しようというところと、その二つがあるというふうに思うんです。
それで、第一に、その自然破壊はやった、つまり場所はつくった、しかしながら計画どおりの実現ができないで、その土地なり何なりがほうりっ放しになっている、そういうところで一番私が大きい問題であると思ったのは、苫小牧の東地区でございます。これは簡単に申しますけれ
ども、鉄鋼業とか石油精製とか、石油化学とか非鉄金属とか、自動車とか電力とか、それらの
関連工業が、これはもっとも高度成長が始まろうというときだったせいもございましょうけれ
ども、こういうふうな工業が来る、そうして従業員は五万人ふえる、それからそういうすべてのものの生産額は三兆円以上にも達するという鳴り物入りで、約一千億円をかけて整地をしたわけでございます。そして港をつくったわけなんです。ところが何も来ない。ほとんど来ない。電力会社が一つできた、それから自動車工場が一つできて、あとは全部が草ほうぼうの状態で残っている。これが一つでございます。
それからもう一つは、むつ小川原の問題でございまして、これは石油精製百万バレル、石油化学生産百六十万トン、火力発電三百二十万キロワット、そういう工場を起こすというので、札束でほっぺたをた
たくようなことで
たくさんの金を積んで土地を買収して、そうして今言ったような工場を誘致するという土地を整地したわけでございますけれ
ども、これも工場はほとんど全く来ないと言ってもいいと思うんです。
そうして、私が言うまでもなく有名な話でございますけれ
ども、そういうふうにしてお金をもらった人たちが六
ケ所村という村にみんな集まりまして、それはそれは立派な家を建てまして、そうして中には菊の御紋の入った家なんかがある。そうして子供たちにはみんな自動車を一人一人買ってやる。そうして、おれたちは事業が来るんだからそこで働ければ大いに所得を得ることができるという考え方でまいりましたところ、工場は一つも来ない。そして最後に来たのが石油のタンクであって、石油のタンクというのは現地の人はほとんど全く要らない事業でございますから、土地を売った人たちは非常に困って、みんな出稼ぎに行って、私が参りました昼間などは実に森閑としたもので、立派な家の中に家族が肩をすぼめているというふうな状態でございました。
そうして、ここはさらにもっと悪いことには、原子力発電の集中場所にして、そうして関根浜も合わせてここを原子力の基地にしようということになりそうな
状況でございまして、この関根浜は
「むつ」を最後に持っていこうというところでございまして、これは新聞にもたびたび最近出ておりますけれ
ども、漁業権の放棄について非常に不正が行われたということで、大変な問題になろうとしているところでございます。
それからもう一つ、これと類似をしたところは、福井県の東尋坊のこっちの方の三国町の臨海工業地帯でございます。同じようなことでございますからくどくは申しませんけれ
ども、ここも整地はして、これはハッカの畑があって、そのハッカの畑をみんな買収をして広大な土地をつくったけれ
ども、企業が来ない。そこで、余談でございますからすべて省きますけれ
ども、そういうことでやはり土地が大半手つかずで余っている。
それから、これは土地ではございません、中海の水門の問題でございますけれ
ども、これは農地二千五百ヘクタールを新しく開拓するという看板を掲げて、そうして中海に水門をつくった。しかしながら、その水門をして、そうして中海と宍道湖とが真水に近い状態になったらば、今まで住んでいる魚はみんな死滅するというふうな反対が非常に盛んになりまして、そうしてまだ水門はすっかり、私が行ったときは、いつでも閉めるようになっているけれ
ども、反対が強いんで閉めることができない。そして現在に至るまで水門はあいたままであった。
こういう例はまだ
たくさんあるんですけれ
ども、大きいものを数えてみましても今申し上げたようなところがありますので、これはつまり計画がずさんだったという以外にございませんで、大変な費用をむだ遣いをして、そうして
たくさんの人たちに迷惑を及ぼして、そうして何も成果がなかったという、実に嘆かわしいような結果になって、ただ行われましたのは大規模な自然破壊だげであるということなんですけれ
ども、これについてどうお考えでございましょう。