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1984-04-20 第101回国会 参議院 環境特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月二十日(金曜日)    午後一時三分開会     —————————————    委員異動  四月二十日     辞任         補欠選任      高桑 栄松君      太田淳夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         穐山  篤君     理 事                 山東 昭子君                 原 文兵衛君                 丸谷 金保君                 飯田 忠雄君     委 員                 石本  茂君                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 藤田  栄君                 星  長治君                 森下  泰君                 矢野俊比古君                 柳川 覺治君                 吉川  博君                 秋山 長造君                 片山 甚市君                 太田 淳夫君                 近藤 忠孝君                 中村 鋭一君                 美濃部亮吉君    衆議院議員        発  議  者  福島 譲二君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  上田  稔君    政府委員        環境庁長官官房        長        加藤 陸美君        環境庁企画調整        局長       正田 泰央君        環境庁企画調整        局環境保健部長  長谷川慧重君        環境庁水質保全        局長       佐竹 五六君    事務局側        常任委員会専門        員        桐澤  猛君    説明員        法務省訟務局行        政訟務第課長  大藤  敏君        農林水産省農蚕        園芸局農薬対策  岩本  毅君        室長        水産庁研究部漁  山添 健一君        場保全課長        通商産業省基礎        産業局基礎化学  高島  章君        品課長     —————————————   本日の会議に付した案件 ○水俣病認定業務促進に関する臨時措置法の  一部を改正する法律案衆議院提出)     —————————————
  2. 穐山篤

    委員長穐山篤君) ただいまから環境特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、高桑栄松君が委員を辞任され、その補欠として太田淳夫君が選任されました。     —————————————
  3. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 水俣病認定業務促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、発議者衆議院議員福島譲二君から趣旨説明を聴取いたします。福島譲二君。
  4. 福島譲二

    衆議院議員福島譲二君) ただいま議題となりました水俣病認定業務促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  水俣病は、我が国において他に類例のないほど深刻な水質汚濁影響による疾病であり、水俣病にかかった者の迅速かつ公正確実な救済を図ることは極めて重要な課題となっております。  このため、熊本県において検診審査体制充実等措置が講じられてきたほか、昭和五十三年十月には水俣病認定に関する処分を行う機関の特例臨時に設けることにより認定業務促進を図るため、本臨時措置法が制定され、翌五十四年二月十四日から施行されております。  同法においては、旧公害に係る健康被害救済に関する特別措置法、いわゆる旧救済法により昭和四十九年八月三十一日までに認定申請をしていた者で認定に関する処分を受けていないものは、環境庁長官に対して認定申請することができるものとし、申請をすることができる期間は、旧救済法による認定申請の日に応じて、昭和五十四年二月十四日及び昭和五十四年十月一日からそれぞれ五年となっております。  同法施行後既に五年を経過しましたが、国あるいは熊本県等における認定業務促進努力にもかかわらず、いまだ認定に関する処分を受けていないものが相当数残っている現状にかんがみ、これら長期にわたる申請滞留者を速やかに解消し、もって水俣病認定業務を一層促進させるため、この法律案を提出した次第であります。  この法律案は、旧救済法による申請者認定に関する処分を受けていないものが環境庁長官に対して認定申請することができる期限を昭和六十二年九月三十日まで延長するものであります。  以上がこの法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  5. 穐山篤

    委員長穐山篤君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 片山甚市

    片山甚市君 本法案を審議するに当たりまして、私は、水俣病世界最大有機水銀汚染公害であり、本問題の広さ、深さを正しく総合的に把握し対策を立てること、水俣病の事実判明後既に二十年を経過している今日、被害者救済緊急性、新しい被害者をつくらないための万全の対策について、加害者はもちろん、行政責任と姿勢が問われているとの認識大臣と完全に一致すると思うんですが、冒頭にこのことを確認しておきたいと思います。
  7. 上田稔

    国務大臣上田稔君) お答え申し上げます。  水俣病問題は公害の原点でございますし、環境行政重要課題の一つであると認識をいたしております。国といたしましては、この問題を解決するためにこれまで最大限努力をいたしてきたところでございまして、今後ともに国、県一体になりまして水俣病患者認定業務促進等に努めまして水俣病対策の推進を図ってまいる所存でございます。
  8. 片山甚市

    片山甚市君 それでは臨時措置法実績についてお聞きいたします。  この措置法施行されて既に五年を経過しておりますが、施行後の実績はどうなっているのか。施行時の本法による対象者、すなわち旧救済法申請して認定に関する処分を受けていない者及び本法による申請認定棄却、未審査の数はどのぐらいあるのか。
  9. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  水俣病認定業務促進に関します臨時措置法に基づきまして環境庁長官あて申請された方々は、昭和五十九年三月末現在九十五名いらっしゃいます。このうち昭和五十八年十二月末までに申請のあった七十二名の方々につきましては、臨時水俣病認定審査会審査を受けられまして既に所要処分を終えたところでございます。認定は二十名、棄却は五十二名ということになっております。昭和五十九年一月以降に申請されました二十三名の方々及び今後申請されると思われる方々につきましても、臨時水俣病認定審査会の答申を得て所要処分をなるべく早くいたしたいというぐあいに考えているところでございます。
  10. 片山甚市

    片山甚市君 同時期における公害健康被害補償法による県の認定審査会での申請認定棄却保留、未審査の数、また、そのうち本法による申請資格を有していた者の数はおのおの幾らですか。
  11. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  昭和五十四年の四月一日から五十九年二月末までにおける県におきます審査状況でございますが、この間におきまして認定された方々は三百三十七人、うちいわゆる本法対象となります旧法申請者の方でございますが、この方は百八十七人でございます。棄却されました方は二千六百九十人、旧法対象者は七百六十二人、保留は千四百四十四人ということになっております。
  12. 片山甚市

    片山甚市君 対象者に対して五年間の申請者がそれだけであれば、環境庁予測どおりと見ておるのか。多かったと思うか、少なかったと思いますか。
  13. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 臨時措置法によります申請及びその審査実績先ほど申し述べたとおりでございますが、五十三年に臨時措置法が制定されましたことに伴いまして、国、県におきまして、この臨時措置法対象旧法申請者に対しまして、臨時措置法趣旨説明をするなどによりまして国の申請呼びかけを行ったわけでございますが、その結果五十九年三月末までに先ほど申し上げました九十五名の申請があったというところでございまして、この数が多いか少ないかという御議論でございますけれども、私どもとしましても必ずしも多数の申請者があったとは言えない状況にあるというぐあいに考えておるところでございますけれども認定業務促進のために国、県が一体となって努力するという意味では一定の役割を果たしてきたというぐあいに考えておるところでございます。
  14. 片山甚市

    片山甚市君 自分で評価するのは適当にされましょうが、これだけの数であれば実績としてほとんど機能していないも同然だと私は思います。これは認定制度上の根本的な欠陥であるからではないのか。  申請者が少ない理由内容はどういうことですか。
  15. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先生からただいま御指摘があったわけでございますが、御指摘のように必ずしも多数の申請者があったとは言えない状況にあるわけでございますが、これは一部申請者団体の方からこの臨時措置法患者切り捨ての手段であるとの反対運動がなされたというようなこともございまして、必ずしも法の趣旨が正しく理解されなかったことなどによるものというぐあいに考えております。  しかしながら、臨時措置法が制定された時点では、本法対象者旧法申請者は、先生御案内のとおり約千四百名おられたわけでございますが、その後の関係県、市の御努力も相まちまして、約千名の方の処分が終えられて、先ほど申し述べたとおりの数字でございますが、現時点では約四百余名の方が残されておるという状況にあるわけでございます。このようなことから、臨時措置法に基づきまして国が取り組んできた認定業務水俣病患者早期救済を図るという意味では一応の役割を果たしてきておるというぐあいに考えておるところでございます。
  16. 片山甚市

    片山甚市君 衆議院環境委員会等でも議論を先日やったところでありますから、私の方の党の馬場昇君が大臣に対しては相当厳しく追及したことについて思い出してもらいたいんですが、臨時措置法ができましてもなぜ申請者が少ないかというと、臨時審査会メンバー審査手続患者信頼が全くなく、切り捨て審査だということで申請しない、今おっしゃったようにこれが一つあります。二つ目には、法制定時国会附帯決議が守られていない。信頼のない審査委員に対する任命があった。三つ目には、法制定時山田環境庁長官統一見解が守られていない。また、衆議院当該委員会で満場一致で決議した水俣病総合調査に関する件についても何一つ実行されていないという批判があるんですが、それについてお答え願いたいと思います。
  17. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  先生お話ございました五十三年の臨時措置法審議の際におきまして山田長官統一見解についてでございますが、その統一見解の中におきましては、例えば、新たに検診資料を得られない場合には、主治医のカルテ等資料をできるだけ収集するため、申請者が受診していた病院を調査するなどの努力をする必要があるというようなことが書いておるわけでございますが、このようなことにつきましてそれなりに努力をしてまいりました。また、水俣病認定につきましては関係県、市区と連絡を十分とるようにという趣旨があるわけでございまして、これにつきましても、水俣病に係ります三県一市の連絡会議を開催するようなことも行っておりまして、そういう面での各県との連絡調整も図ってまいっているところでございます。  また、附帯決議につきましては、その臨時審査会委員任命に関しましては、先生お話にございましたように、患者さんの信頼を得るような先生方を選びなさいというのがあるわけでございますが、水俣病にかかわります医学に関しまして高度の学識と豊富な経験を有する方々にお願いするなどいたしまして、附帯決議趣旨に沿って運用に努めているところでございます。  また、総合調査に関する決議につきましては、現在水俣病健康被害にかかわります医学的調査につきましては今後どのような調査が必要か、また可能であるかということにつきまして引き続き調査研究を行っているところでございまして、この臨時措置法審議の際におきます国会で御論議のございました三点につきましては、それぞれその趣旨を尊重いたしまして主要な措置を講じてまいったところでございます。今後ともこのような御趣旨を十分尊重いたしまして患者救済に適正に対処してまいりたいというぐあいに考えております。
  18. 片山甚市

    片山甚市君 患者にとっては切り捨て審査であるという感じと、信頼のできない審査委員任命されておるという不安、それらについてはぬぐうことができないのでありますから、この促進を進めるところの臨時措置法実績を上げようとすれば、それらを改めないとできないと思うんです。  そこで、実績が乏しい制度を今回あえて延長しなければならない理由は何でありますか。しかも延長期間をなぜ三年と区切ったのですか。まずお答えをください。
  19. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  先ほども御説明申し上げましたけれども、これまでも国、県は一体となりまして認定業務促進に努めてまいったところでございます。臨時措置法施行後、国と県によりまして約一千名の旧法申請者方々処分が行われているところでございますが、なお未処理となっております四百名を超える方々につきましては、検診希望日照会をした上で検診を行うなど、いわゆるきめの細かな検診を行うことによりましてこの方々処分を速やかに行いたい、こういうことで図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。このような意味で、私どもといたしましても、この旧法申請者方々審査が速やかに行われますよう、県、国におきます臨時措置法に基づきます審査会等におきましてできるだけ速やかな審査を行ってまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  20. 片山甚市

    片山甚市君 延長期間をなぜ三年としたのか。
  21. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先ほども申し上げましたように、現行臨時措置法で五年間におきまして、当初臨時措置法スタート時点におきましては千四百余名おられました方々が現在四百名ほどになっておるというような状況もございますし、またあわせまして、速やかに審査を行ってそれぞれの適正な処分を行うということが必要であろうというようなことから、私どもといたしましては、三年という期間内におきましてこの申請者方々に対する処分を行いたいというぐあいに考えているところでございます。
  22. 片山甚市

    片山甚市君 それでは、延長期間の三年間にどの程度申請があり、どれだけの認定に関する処分をすることができると予測してこの法律案を提出していますか。
  23. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 私どもといたしましては、この臨時措置法が制定されました場合におきましては、申請者方々につきまして検診希望日につきましていろいろ照会をして、その申請者方々の御都合に合わせて検診を行うなどいたしまして、できるだけ検診をスムーズに行いまして処分を速やかに行いたい。そのためには国、県一体となってきめ細かな対応を行うことによりまして、この期間内において認定促進最大限努力してまいりたいというぐあいに考えているところでございます。
  24. 片山甚市

    片山甚市君 質問に答えてください。  どの程度申請がありどれだけの認定に関する処分をすることができると考えておられるか。——答えられませんか。やめましょうか、もう。予想がつかぬならつかぬでいいよ。わからぬならわからぬでいいよ。それならそれでいい。
  25. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  ただいま四百名の方が申請のままになっているわけでございますので、この方々につきましては、県におきます審査会、それから臨時措置法に基づきます国の臨時審査会、両方におきまして審査をし速やかに処分を行いたいというぐあいに考えているところでございます。それぞれにどの程度方々審査が行われるかについての見通しということにつきましてはなかなか難しい問題でございますので、お許しいただきたいと思っております。
  26. 片山甚市

    片山甚市君 何もわからぬということがわかった。  延長期間の三年を経過した時点でなお対象者が残っていた場合どうするのか。申請期間の再延長か、それとも公害健康被害補償法による処分をするのか。これについてお答えください。
  27. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 今御審議いただいております臨時措置法が三年延長された結果、その三年間において処分が全部済むのか済まないのか、済まなかった場合どうするのかというお尋ねでございますけれども先生からお話がございましたようなことが起こらないように、私どもといたしましては申請者の理解を得ながら国、県一体となってできるだけ早く処分を終えるように最大限努力してまいりたいというぐあいに考えております。
  28. 片山甚市

    片山甚市君 これも四百余名程度のことがわからないということで、実際三年間延長してみても見込みがないし、新しく申請されることもわからない。わからぬけれどもとにかくやっておる格好をつけたい、何とかしっかりやっておるという環境庁の姿を出したいということで、ポーズだということがわかりました。この法案ポーズであって実態を整えていないと思います。  そこで、認定についての処分をまだ受けていない者は、現在、旧法申請した者四百名に対し、新法、すなわち現行公害健康被害補償法申請した者が五千余名おりますが、措置法では、旧法申請した者のみを対象とし、新法申請した者を対象としていない理由について説明をしてください。
  29. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  公害健康被害者認定業務につきましては、その業務性格から見ましても、関係県、市におきまして一元的に処理することが望ましいというぐあいに考えておるところでございますが、特に水俣病認定業務につきましては、旧法申請者を初めといたします多数の未処分者方々が、先生がただいま数字で申し上げられましたように多数の方々が滞留しておる状況にかんがみまして、旧法申請者に限りまして臨時特例的に国においても直接認定業務を行うことができるということにされたものというぐあいに考えておるところでございます。このような考え方から、現行特例措置といいますものを新法分までに広げるといいますか、及ぼすことにつきましてはいろいろな問題があるということで従前どおり措置法案が提出されているものと理解いたしております。
  30. 片山甚市

    片山甚市君 旧法申請をしておる残りの四百余名についてはこの対象になるけれども公害健康被害補償法申請している者については対象にしないのは、これは責任を負えない、それに対する措置がとれない、こういうことですか。
  31. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  公害健康被害者救済に当たりましては、それぞれの県、市におきまして審査会を設けまして審査をするというのが原則といいますか、基本的な考え方でございます。したがいまして、通常の形でございますと、水俣病の場合でございますと熊本県におきます審査会において審査を行うのが最も望ましいというぐあいに考えているところでございます。  そういうことでございまして、旧法あるいは新法方々におかれましても熊本県におきます審査会において審査が進められているところでございますが、特に水俣病につきましては非常に多くの方々申請中のままに処分されない状況にあるということから、臨時特例的に、県に申請している方々の中で国の審査会を選択して申請がえできるという制度をつくられたものでございますので、そういう面では、旧法方々につきまして県の審査会、国の審査会並列に置いてそれぞれ審査を進め、速やかに処分を行うという考え方をいたしているわけでございます。またあわせまして、県におきましても旧法あるいは新法に係ります申請者方々審査が行われているところでございます。
  32. 片山甚市

    片山甚市君 それでは水俣病総合調査実施状況についてお聞きしますが、措置法の制定の際、衆議院において水俣病問題総合調査に関する決議を行いまして、環境庁はこれを尊重していく旨発言していますが、この決議による総合調査実施状況はどうなっておりますか。
  33. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  総合調査に関します決議につきましては、現在、水俣病健康被害にかかわります医学的調査につきまして今後どのような調査が必要か、また可能であるかなどにつきまして引き続き調査研究を行っているところでございます。またあわせまして、国立水俣病研究センターにおきましてもこの水俣病に関します医学的な調査研究を行っているところでございます。
  34. 片山甚市

    片山甚市君 そこで、衆議院決議を受けて総合調査方法等について検討しているとのことだが、検討委員会メンバー、その活動状況についてどういうことになっていますか。
  35. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 環境庁におきましては、この総合調査につきましては研究班を設けまして水俣病に関します総合的調査手法開発に関する研究ということで行っているところでございます。研究班メンバーといたしましては放射線影響研究所重松理事長を班長といたしまして、そのほか基礎、臨床、疫学の各分野の専門家から成ります九名の方々によって研究を進めていただいているところでございます。  研究班昭和五十四年度から検討を開始いたしているところでございますが、まずこれまで行われてまいりました水俣病に関しますいろいろな研究調査等につきましてレビューを行いまして、今後実施すべき調査についての検討を行っているところでございます。
  36. 片山甚市

    片山甚市君 総合調査のための調査研究を行っているというのでありますが、決議がなされて五年以上経過している状態ですが、成果と言われるものについて中間的に報告してもらいたい。
  37. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 水俣病に関します総合的調査手法開発に関する研究におきましては、これまでも行われてまいりました水俣病に関しますいろいろな研究調査等につきましてのレビューを行いまして、今後実施すべき調査についての検討を行っているところでございます。こういう研究班性格から中間報告というような形のものを取りまとめることはなかなか困難でありますので、御理解いただきたいと思っております。
  38. 片山甚市

    片山甚市君 その結論はいつごろ出て、総合調査にはいつから着手する予定になりますか。
  39. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 研究班の方にお願いいたしまして、できるだけ早くに結論がまとまるようにお願いいたしたいというぐあいに思っております。
  40. 片山甚市

    片山甚市君 この法律は御承知のようにあと三年延長するということでありまして、その研究の方はそれではいつになるかわからないというようなものであるということで理解してよろしゅうございますか。
  41. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 水俣病に関しましては従前からいろんな調査研究が行われているところでございますので、その調査研究レビューをやりました後に足りないものについていろいろ検討しておるということでございます。できるだけ早く結論をいただきまして必要な調査を行う必要があるというぐあいに考えております。
  42. 片山甚市

    片山甚市君 できるだけ早くということはいつごろまでということで明示できませんか。
  43. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) いろいろ複雑といいますか、非常に問題がいろいろ絡み合っているところでございますので、研究班にできるだけ早くおまとめいただきたいというぐあいにお願いしているところでございますが、現在そういうことでいろいろ調査研究を進めておる段階でございますので、いつまでということにつきましてはお許しいただきたいと思っております。
  44. 片山甚市

    片山甚市君 よくわかりました。ゆるゆると検討しておる間に水俣病患者が亡くなったりしたら、研究材料がなくなるでしょうから非常に残念であります。急いでもらわなきゃならぬということを言ったのでありまして、できるだけ早くじゃなくて徹底的に急いでほしいと思います。  さて、附帯決議に対する措置状況についてお聞きするんですが、水俣病認定業務促進に関する臨時措置法案の審査の際、これは第八十五国会ですが、附帯決議が付されております。これに対する措置状況についてまず項目ごとに聞くんですが、「認定業務の不作為違法状態を速やかに解消する措置を講ずるとともに、」とありますが、昭和五十三年から今日までの認定促進状況はどうなつておるのか、数字を挙げて説明してもらいたいと思います。
  45. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答えをいたします。  認定業務促進するために、国及び県はこれまでも検診審査体制充実等各般の施策を実施してまいったところでございます。具体的に申し上げますと、百五十人検診、百三十人の審査体制の確立とか、あるいは検診充実のための検診医の確保とか、あるいは検診機関の設置とか、また熊本県におきます水俣病対策に資するために国の職員の派遣だとか、環境庁熊本県の間の連携強化を図るための定期的な会合を設けるというようなことをいろいろやってまいってこの認定促進に努めているところでございます。
  46. 片山甚市

    片山甚市君 納得できる回答ではありませんが、次に移ります。  患者との信頼関係の回復についてですが、患者の声を聞く機会をできるだけ設けるとありますが、具体的にどのようにして患者との対話の機会を持ってきたのか、まず御答弁願いたい。
  47. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 国及び県におきましては、患者団体の御意見も聞いて行政の運用の参考に資するというような観点から、いろいろな機会を設けまして患者団体の御意見を聞くことに努めているわけでございます。私どもといたしましても機会あるごとにできるだけお伺いするということに努めてまいっているところでございまして、今後とも患者さんの御意見を聞き、患者さんの理解を得るように努めてまいりたいというぐあいに考えております。
  48. 片山甚市

    片山甚市君 今のお話ですと個別的に、患者ごとに対話をしておるというふうに理解するのですが、それでは患者団体との話し合いはどう進んでおるんですか。
  49. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) どうも大変失礼いたしました。私が申し上げましたのは患者団体という意味で申し上げたつもりでございますので、御了解いただきたいと思います。
  50. 片山甚市

    片山甚市君 私は、どのようにして患者との対話の機会を持ってきたのかと聞いたんです。もう一度御答弁をし直してください。
  51. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 個々の患者さんとの信頼回復の観点からどのようなことをやってまいったかというお尋ねでございますが、これまでも私どもといたしましては検診審査体制の充実や治療研究事業の充実に努めてまいっておりますほか、患者さんの個々の声もできるだけ聞くなどいたしてまいっているところでございます。そのためには県におきます個別の方の御意見、私どもも機会があれば個別に御意見を聞くなり、またそれ以外の機会にお会いすることもございますので、そういう場合におきまして個別に御意見を聞くというようなことを行っているところでございます。
  52. 片山甚市

    片山甚市君 患者団体との話し合いをしてきたと言っておりますから、その次に聞きます。  患者団体が複数存在する場合、交渉上どのような対応をしておられますか。患者団体名、所属人員数、話をしたというんですから、大体会った団体数とその会った人たちの数はどのぐらいか、把握しておられるところを、会っておればですよ、個人としては会っていない、団体と話をしておるというんですけれども、この団体を言ってください。数も言ってください。
  53. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 患者さんの方々がいろんな団体を構成しておるということは承知いたしておるところでございますが、こうした団体の方々全部に一度にお会いするということはなかなか難しい面もあるわけでございますが、国、県におきましては、機会あるごとにそれぞれの団体、個別の団体あるいは連合した団体等の御意見をお伺いいたしているところでございます。これらの団体の数につきましてはいろいろあるわけでございまして、私どもといたしましては少なくとも十を超える団体があると承知いたしているところでございますが、それぞれの個々の団体の詳細についてはよく承知していないところでございます。
  54. 片山甚市

    片山甚市君 患者とは対話はしない、患者団体とする、患者団体の名前を聞いたらわからない、人数もわからないということですから、何もやっていないということをきょうははしなくも環境庁は告白をしたと受け取って終わります。  次に、患者との信頼関係の回復に何よりも大切なことは何かというと、五十三年次官通達、これは患者切り捨てとなった通達でありますが、それを昭和四十六年の次官通達、疑わしきは認定をするという発想に戻ることはできませんか。何よりも患者との信頼関係を回復するのにはそれが必要だと思うんですが、私の意見について見解を述べてください。
  55. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  五十三年七月の環境事務次官通知に関するお尋ねでございますが、この通知につきましては、水俣病の判断の適切さを期し水俣病認定患者促進に資するために示したものというぐあいに考えているところでございます。この通知は、四十六年の環境事務次官通知あるいは五十二年の環境保健部長通知等、いろんな機会にいろんな形で明らかにしてまいりました水俣病の範囲に関する基本的な考え方医学的知見の進展を踏まえまして再度確認する目的を持って統合整理したものであるというぐあいに理解いたしております。したがいまして公害健康被害者の迅速かつ公正な保護を図るという趣旨に沿っておるものでございまして、四十六年次官通知、五十三年次官通知、同一趣旨といいますか、同一線上にあると、同じものであるというぐあいに理解いたしておるところでございます。
  56. 片山甚市

    片山甚市君 羊頭狗肉というか、強弁というか、面が厚いというか、下の人たちはそう受け取っておらないんです。あなたそう言ったって切り捨てだと思うことが起こっておるんですから、私は患者側の意見について理解を示す。あなたの言うことについて、完全にやる、迅速にやると、迅速にやっていないじゃないですか。促進していないじゃないですか。この通達が出たからそれじゃ認定が早く進んだのかといったら、数で一千名やりましたと、そういうことでありますから納得しません。環境庁はいかにそういうことについて熱心でないかということがきょうわかればいいんであります。熱心にやっておらぬということがこの国会を通じて明らかになることを目的にして聞いておるんだから。できるだけつっけんどんにお答え願ったら結構です。  私は水俣の現地にまだ行っていませんから、悲惨なことについては、いわゆる映画を見たりお話を聞いたりしておるだけですから、それ以上の切実感を持っていない面があるから怒りが頭にきていませんけれども、今度水俣に行って帰ってきたら、別の角度から、今のような御答弁が正しかったかどうか、議事録を見ながら、患者と話をして、お会いをしましょう。  次に、水俣病に対する行政責任というのは、御承知のように昭和三十一年五月に奇病発生が保健所に報告されて、昭和三十八年二月、熊本大学の研究班が有機水銀化合物が原因だという統一見解を出され、昭和四十三年九月に厚生省が公害病と認定した。この十二年間もチッソ工場は排水し続け、行政の対応がおくれたということでさらに被害が大きくなったと聞いています。昭和五十一年には熊本判決として、認定業務のおくれは行政の怠慢で違法、これは控訴せずに判決が確定しました。そういう意味で、これはまさしく冒頭に言いましたように企業の責任であり、行政責任であった問題ですから、患者に対して責任を追及するやり方は納得できない。  そこで、昭和五十八年七月にいわゆる待たせ賃判決が出されましたが、それをどういうふうに受けとめておられますか。
  57. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) ただいま先生からお話がございましたように、この水俣病問題につきましては、三十一年当時から非常に難しい問題等でいろいろ経緯があったわけでございます。  五十一年の不作為違法判決、それから昨年の待たせ賃訴訟の判決というのがあるわけでございますが、五十一年の不作為違法判決につきましては、いろいろな問題があるにいたしましても、今後の認定業務促進のためにその不作為違法判決につきましては確定いたしたところでございますが、五十八年の、昨年の待たせ賃訴訟につきましては、先生からお話ございましたように、途中の経緯におきまして、国、県一体となりまして検診審査体制の充実をするなど、いろんな努力を五十一年以降やってまいっておるところでございますが、このような国、県のいろんな努力が裁判所において評価されなかったということはまことに残念であるというようなことで、さらに上級審の判断を仰ぐことにいたしたところでございます。
  58. 片山甚市

    片山甚市君 判決の要旨は、処分のおくれは故意、過失と認定、おくれによって受けた損害は月額二万円を支払えということでありまして、今おっしゃるように、国、県は控訴しております。この控訴が認定促進にプラスになるのかマイナスになるのか、まずお答えを賜りたい。
  59. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) ただいまも御説明申し上げましたけれども、この待たせ賃訴訟におきます判決につきましては国、県いろいろ協議いたしたところでございますが、五十一年の不作為違法判決以降、国、県一体となりましていろいろな面での認定促進のための諸般の施策を進めてまいっているところでございますが、このような努力が認られていないというようなことにつきまして、非常に残念であるというようなことから控訴いたしたところでございます。  先生お尋ねのプラスかマイナスかということにつきましては、直接のお答えにはならないとは思いますけれども、私どもといたしましては、五十一年の不作為違法判決以降精いっぱいいろいろな形で努力をしてまいっておるということで、そういう面が適正に認られなかったということにつきまして大変残念で、これについて再度上級審の判断を仰ぎたいということでお願いいたしておるところでございます。
  60. 片山甚市

    片山甚市君 処分のおくれは故意、過失と認定されたことについて、けしからぬ、納得できない、よって法によって明定されるまで争っていきたいということになると、認定促進にはプラスにならない。私は、控訴すべきでなかったし、取り下げるべきだという意見を開陳をしておきます。それでいつもあなたたちは、私がここで言ったからそうしましょうなどとは言わないんです。控訴したということは認定促進にプラスにならないという立場で意見を述べておきたい。  そこで、長期保留者は法の趣旨により知事が認定すべきだと思いますが、それについてはいかがですか。
  61. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  現行制度におきます水俣病認定に関します処分につきましては、県知事等が、水俣病に関しまして高度の学識と豊富な経験を有する者で構成されております認定審査会の意見を聞いて行うことになっておるところでございます。したがいまして、審査会結論が出される前に県知事等が何らかの処分を行うことは適当ではないというぐあいに考えております。
  62. 片山甚市

    片山甚市君 被害者にとっては、加害者であるチッソ及び行政責任がある事件だということがわかっておっても、そういう措置をとらないということはわかりました。冷たいことが法を守ることであり、温かいことは法を守らないことだと思っておると言えると思います。  次に、検診審査体制についてお聞きします。  昭和五十四年以降、国及び地方公共団体において一カ月百五十人検診先ほどおっしゃったように百三十人の審査体制の樹立を行っているとのことでありましたが、未処理件数が約五千七百件を抱えておるのですが、これで遅滞を生ずることはないんですか。
  63. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 認定業務促進を図るために、五十二年六月の関係閣僚会議申し合わせにのっとりまして、また国会におきます附帯決議等もあるわけでございますが、これらも踏まえまして、熊本県においては、先生お話にございましたように、月間百五十人検診、百三十人審査を行うということを目的といたしまして体制を整備いたしておるところでございます。  このようなことで検診審査体制の整備充実を図ってまいったところでございますが、五十五年九月から一部の申請者団体におきまして始められました検診拒否運動などのために、残念ながらこの体制が十分機能しない状態となっておるところでございます。申請者の理解を得ながら、この体制が十分機能できるようにすることがまず重要であろうというぐあいに考えておるところでございます。
  64. 片山甚市

    片山甚市君 患者個人と会うことはいやだし、団体と会うことは好きだが、団体の名前も数もわからぬという程度で何でそんな大きな口をたたくんですか。まあそういうものだということを患者の皆さんもこれを機会に理解をしてもらえば結構です。  水俣病検診業務に従事する常駐医師はどのように拡充されてきましたか。
  65. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 水俣病検診のための常駐医の確保の状況でございますが、五十三年度より確保いたしまして、常駐医を置きまして、さらに五十五年度より一名ふやしまして二名という形で増員して検診を行っておったところでございますが、その後検診の呼び出しをいたしましてもなかなか応じない方もあることなどによりまして、なかなか検診を受けていただけないというようなことから、昭和五十七年度より常駐医は一名となっておるところでございます。しかしながら、熊本大学等関係機関の協力を得まして検診のために必要な検診医の確保といいますものは図られておるというぐあいに考えております。
  66. 片山甚市

    片山甚市君 先ほど申しましたように、審査する委員に対する信頼関係がない、こういうことについては反省する余地はないという態度ですから、大変厳しいと思いますが、認定業務促進のため、施設充実等諸般の施策の実施状況についてはどうなっていますか。
  67. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 水俣病認定業務促進のために、先生からお話がございましたように、水俣病の専門の検診施設ということで、申請者の最も多い水俣市に熊本県立水俣病検診センターを五十三年度に設置いたしまして、その後、中身といいますか、機器の整備を行っておるところでございます。また県外にいらっしゃる申請者方々のために、東海地区は国立名古屋病院、また近畿地区は国立大阪病院をそれぞれ五十六年度、五十七年度に指定いたしまして、それぞれの地区におられます申請者の便宜を計らっておるところでございます。
  68. 片山甚市

    片山甚市君 月百五十人の検診、また百三十人の審査体制患者検診拒否に遭って今行き詰まっておるとお答えがありましたが、それに対する抜本的認定促進策は何か考えられますか。
  69. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 水俣病患者の速やかな救済を図るためには、水俣病認定申請者方々認定業務促進が当面の急務であるというぐあいに考えております。このため環境庁といたしましては、現行制度を着実に実行していくことが最も肝要であるという認識に立っておりまして、引き続き国、県一体となって最大限努力をしてまいりたいというぐあいには考えております。  なお、検診促進に当たりましては、患者さんの事情に合わせて検診を行えるようきめ細かな配慮をしながら検診を進める必要があるというぐあいに考えておりまして、そういうことで取りかかっておるところでございます。
  70. 片山甚市

    片山甚市君 私が聞いたのは、抜本的認定促進の策はあるかと聞いたら、きめ細かくぼつぼつやるということです。これは非常に残念です。  その次に、異議申し立てに対する鑑定の充実について聞きます。  一つは、措置法認定処分に対する異議申し立ての審理に際し、第六条で、患者の主治医の鑑定を求めることになっていますが、その意見は具体的にどのように尊重されていますか。
  71. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  措置法の第六条の規定の運用に当たりましては、附帯決議趣旨に沿いまして、疫学の調査あるいは各科の所見等できるだけ十分な資料を整理いたしまして、不服審査会委員及び主治医の方々に文書により鑑定依頼いたしまして、文書により意見を求めておるところでございます。そしてそれらが十分尊重されるように、それらの意見の相違点等を十分審議した上で決定するというようなことを行っておるところでございます。
  72. 片山甚市

    片山甚市君 その鑑定のための医師の人数等はどうなっていますか。
  73. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 異議申し立てによりまして、この法の第六条に基づきます鑑定をお願いいたしました件数は六件ございまして、それぞれ公害健康被害補償不服審査会委員及び異議申し立てにかかわる患者が申し出ております主治医の方々、大体お一人の患者さんが主治医一人でございますので、そういう面では六件の方々がそれぞれ六名の審査会委員、それから六名の主治医の方の御意見をいただいておるということでございます。
  74. 片山甚市

    片山甚市君 審査のための証拠についてお聞きしますが、公正な審査に資することとのことで、申請者が受診していた病院調査等の資料収集に努めているとのことでありますが、病院の個別のカルテ、その他関係書類の保存の期間、廃棄処分などとの関連で、証拠の散逸等の不都合が生じていることはないか。逆に言えば、完璧なものを証拠としてそろえることについては非常に難しいと思いますが、それについての判断はどうされていますか。
  75. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お尋ねございました、死亡者の方々に関します生前の疾病の状況調査の把握に関するお尋ねでございますが、できる限り過去の受診状況を把握いたしまして、生前受診しておられました病院につきましてできるだけ早く調査を実施するということに努めておりまして、御指摘、御心配のございましたようなことのないように努めているところでございます。
  76. 片山甚市

    片山甚市君 そういう不都合、証拠が散逸しておるというようなことはなかったとお答えをしたと理解してよろしゅうございますか。
  77. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先生のおっしゃるとおりでございます。
  78. 片山甚市

    片山甚市君 国立水俣病研究センターの運営状況についてでありますが、研究センターの治療研究体制は、昭和五十三年十月の設立以来どのように充実強化されてきたのか、まずお答えを願いたいと思います。
  79. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 水俣病研究センターにつきましては、先生御案内のとおり、水俣病にかかわります総合的な医学研究を通じまして水俣病対策を推進することを目的といたしまして、五十三年十月に設立されたものでございます。設立から五年を経まして、順次組織等の充実に努めてきているところでございまして、現在は三部十一室の研究体制を整備いたしているところでございます。臨床医学基礎医学及び疫学の各分野にわたりまして研究を進めておるところでございます。
  80. 片山甚市

    片山甚市君 そこで、設立当初と比べてみて治療上改善された研究成果はどのようなものがありましたか。具体的に説明できるものがあれば御説明を賜りたいと思います。
  81. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 研究面につきましては、先ほども御説明申し上げました三部におきましてそれぞれいろんな項目で研究いたしているわけでございます。例えば臨床面の研究におきましては、明水園の医療スタッフとの共同研究によりまして、入院患者の治療を通じて、水俣病患者の臨床症候の変化あるいは薬物療法あるいは電気ばり治療の効果に関する研究、あるいはリハビリテーションにつきましては、退院患者を含めまして日常生活の中での機能評価というようなことをいろいろ行っているわけでございます。  このようなことでそれぞれのところでいろんな研究を進めておるところでございますが、その成果につきましては、研究報告書ということで取りまとめまして関係機関に配付いたしておるところでございます。研究が緒についた段階でもございますので、今後とも関係者の理解と協力を得まして研究機能の充実を図りまして、水俣病患者救済に役立つように努めてまいりたいというぐあいに考えております。
  82. 片山甚市

    片山甚市君 一層の努力をお願いしたいと思いますが、次に認定手続の運用状況についてですが、認定申請から処分まで所要日数はどの程度かかる予定になっていますか。
  83. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 申請される方々申請されましてから認定なり棄却なりの処分されるまでの間におきましては、所要検診を受けていただく必要があるわけでございまして、その検診を受けていただいた上で認定審査会審査を経て判断するということになっているのは御案内のとおりでございますけれども、近年は判断困難な事例がふえてまいっておりますということ、あるいは申請者の増加がありますことから認定業務はなかなか思うように進んでいない状況にあるわけでございます。さらに、検診拒否運動の影響により検診が進まないというような事情もありますことから、一概に申請から処分までの所要期間というもの等につきまして申し上げることはなかなか困難でありますので、御理解をいただきたいと思います。
  84. 片山甚市

    片山甚市君 申請がされても検診を受けられないと言っていますが、検診を受けてから処分まではどのぐらいかかりますか。
  85. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 一応検診センターにおきます検診が全部終了しました後におきましては、事務手続等のこともありますので、大体一、二カ月ぐらいのめどで審査会において御審議していただけるというぐあいに考えております。
  86. 片山甚市

    片山甚市君 検診を受ければ一、二カ月の間に処分が決まることになっておる。  そこで、申請後一部で検診拒否が行われ、審査が進まないと聞いておりますが、検診拒否の理由は何でありますか。
  87. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先生御案内のとおり、熊本県におきましては、五十五年の九月に一部の申請団体の方から検診拒否運動が始められたところでございます。国及び県におきましては、五十一年の不作為違法確認訴訟判決以降、特に検診審査体制の整備等認定業務促進のために必要な措置を講じまして進めておったところでございますが、そのやさきに、この不作為違法解消に誠意が見られないというようなことを主張されまして検診拒否運動が始められたということでございまして、まことに残念なことというぐあいに思っているところでございます。  申請者水俣病であるかどうかということを判断するためには、申請者方々検診を受けていただくということが必要であるわけでございますので、申請をしていながら検診を受けていただけないということにつきましては、どう理解してよろしいのか苦慮いたしておるところでございます。環境庁といたしましては、熊本県とも十分相談いたしまして、申請者方々認定制度趣旨を十分理解してもらうように努めまして、検診を受けてもらうことによりまして認定業務促進を図ってまいりたいというぐあいに考えております。
  88. 片山甚市

    片山甚市君 信頼がないところにはそういうことが起こるのは当たり前ですが、申請者の団体は開業医のカルテを認定審査の資料として採用してもらいたいとのことでありますが、当然の要求ではないかと思うんですが、どのような不都合が今生じておりますか。
  89. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 水俣病につきましては、公害病全部に言えることかもしれませんが、特に水俣病につきましては、先生御案内のとおり、非常に難しいといいますか、高度の医学的判断を必要とする水俣病審査に当たりましては、公正さを期するという観点から、県等におきまして統一的に行われております検診によるデータにより審査が行われているところでございます。認定申請書に添付されました主治医の方々の診断書の内容につきましても、参考としてこの審査会において判断が行われているというぐあいに承知いたしております。
  90. 片山甚市

    片山甚市君 開業医のカルテについては参考として見るという程度のことでありますか。
  91. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 非常に高度の医学的判断を要します水俣病審査に当たりましては、その審査をする基本となります検診データは統一的に行われているデータに基づいて判断するのが最も公正であろうというような観点から、検診センターにおいての検診データに基づいて判断いたしているところでございます。その際に、先生お話ございました主治医の御意見といいますか、診断書につきましては、その意見も参考にしながら判断させていただくということでございます。
  92. 片山甚市

    片山甚市君 水俣病という高度な病気にかかった者が因果だということになりましょうが、それをつくったのはチッソであり、行政責任でありますから、加害者が余り威張ることで、公正だということを言うこと、患者の痛みをわからないような言い方については賛成できません。  そこで、申請後一定期間内に受診をしない患者については、往診し、患者の疫学的状況もあわせて把握するという方法についてはどうお考えですか。
  93. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) ただいまも御説明申し上げましたけれども水俣病であるかどうかの審査を行うためには、どうしても検診センターで検診を行う、検診を受けていただくということが必要であるわけでございまして、この検診の意義を御理解していただき御協力いただくことがまず必要であるというぐあいに考えております。しかしながら、寝たきり等の方々で、検診センターに来られないようなやむを得ない事情を有する方もいらっしゃるわけでございますので、こういう方々につきましては、在宅での検診が受けられるよう私どもの方で出かけていって検診を行うということについて取り組んでおるところでございます。  また、先生お話ございました疫学調査につきましては、申請者のお宅に直接出向きまして、魚介類の喫食状況や既往歴などを申請者の方や家族の方々からも聞き取りまして調査をいたしておるところでございます。
  94. 片山甚市

    片山甚市君 検診はきちんと設備のあるところへ行ってもらわなければしないということの答弁であったと思いますが、とにかく寝ておる人たち、動けない人たちも含めて具体的な措置が望まれるとこです。  臨時措置法の実効性についてまずお聞きします。  第一条の目的にある「水俣病にかかった者の迅速かつ公正確実な救済のため、」とありますが、原案にはなく修正で入ったものであります。そのことはすなわち、立法過程においては既に認定業務促進が強く望まれていたということの証拠であろうと思います。とすれば、その時点行政の対応が厳しく指摘されているのであって、現在なお十分でないということが問題であろうと思います。それでもなお措置法趣旨は十分生かされてやってきたと先ほど来強弁されておりますが、もう一度言われますか。
  95. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  昭和五十三年に臨時措置法が制定されましたことに伴いまして、国、県におきましては、この臨時措置法対象者旧法申請者に対しましてこの臨時措置法制度趣旨説明をすることによりまして、国への申請の呼びかけを行ったところでございます。この結果、五十九年三月末までに九十五名の申請があったというところでございます。確かに、先生おっしゃるように多数の申請者があったとは言えない状況にあるわけでございますけれども、これにつきましても先ほど説明を申し上げましたように、一部の団体の方からの反対運動があったというような経緯もあったわけでございまして、なかなか法の趣旨が正しく理解されなかったという嫌いがあるのじゃなかろうかというぐあいに考えておるところでございます。  しかしながら、臨時措置法が制定されました時点におきましては、本法対象者の数、旧法申請者方々が約千四百名おられたわけでございますけれども、その後の関係県、市の努力と相まちまして、約千名の方々処分が終わりまして、現在では約四百名の方が残っておる状況にあるわけでございます。このようなことから、臨時措置法に基づきまして国が取り組んでまいりました認定業務も、水俣病患者早期救済を図るという意味で一応の役割を果たしてきた、趣旨を十分尊重しながらやってまいったというつもりでございます。
  96. 片山甚市

    片山甚市君 措置法趣旨は十分生かされているかということについてはお答えがきちんとありませんでした。そのあたりがやはり十分にやっておらないという証拠だと思います。  未認定のまま死亡した人々の中に二十名を超える多くの犠牲者がいたということでありますが、この事実をどういうように環境庁は見ておられますか。
  97. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  申請中に不幸にしてお亡くなりになられた方々につきましては、その生前の臨床所見、あるいは、解剖されました方々につきましては解剖後の所見も含めまして総合的に判断いたしまして認定処分を行っておるところでございます。
  98. 片山甚市

    片山甚市君 未認定のままで死亡した人がおるということですから、五千七百名ほど今申請しておる人たちが速やかに認定がされるようにすることが環境庁の最大の仕事であって、四百名をどうするかではない。四百名を認定すれば済むんじゃなくて、環境庁の全体の仕事は、五千七百名ほどおる人たちにどのように早く水俣病としての対策をとるのかということが問われておると思っています。そこを議論すると、またできもせぬ話をすることになりますからこのぐらいにしますが、私は、今四百余名の問題の上に、五千七百名の未審査方々に対する促進のことがこの法案審議するときには前提条件になっておるという意見を述べておきます。  そこで、昭和五十六年十一月二十日の水俣病に関する関係閣僚会議において、チッソへの第二次金融支援を決めておりますが、本来、公害犯罪企業への支援などというのはあり得ないはずでありまして、あくまでも水俣病患者に対する補償金などの支払いに支障を生じせしめないためということであろうと思います。しかし、一方では国の監督責任も問われているのでありますから、そのことをあいまいにしたまま、さも道義的な責任を果たしているということの対応は見せてはならないと思いますが、国の責任はこの場合どういうようにチッソへの第二次金融支援を決めたときの態度を決めておられますか。
  99. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) 補償問題でございますが、患者さんの救済という観点を最も肝要と考えております。したがいまして、患者さんに対する補償金支払いに支障を来さないということを措置することを旨といたしておるわけでございますが、あくまでも汚染原因者でございますのはチッソ株式会社でございますので、それの補償責任ということを完遂させるという立場から、県債発行によりますところの補償金の財源調達とか関係金融機関によりますところの金融支援、これは元本の返済猶予とか金利の減免とか金利棚上げとか、そういう措置でございますが、さらに、チッソの経営基盤の維持強化というものは大事でございますので、関係行政機関によりますところの経営の適切な指導によりまして、何よりもまず補償金支払いが円滑に行われるということを最大の目標として努力を政府全体で続けてまいりました。  したがいまして、今後におきましても、被害者救済が何より重要度という観点で、引き続いて患者に対する補償を適切に実施してまいりたい、こういうふうに考えております。
  100. 片山甚市

    片山甚市君 チッソ支援のための県債発行について熊本県はどのような負担を負うことになっておるのか。患者熊本県以外にもいないのか、いるとすれば熊本県のみに県債を発行させるというのはどうか。チッソ小会社を含めれば地域経済との密着性も多数の県に上るのではないか。熊本県議会の県債発行についての要望はどういうものであるか。それについて国の態度はどうなっているかについて御答弁を賜りたい。
  101. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) チッソに万一の事態が起こった場合どうかというようなお尋ねでございますが、もちろんそのような事態がないように関係行政機関におきましても日ごろから検討し指導いたしてまいっているところでございまして、万々一そのような事態が起こりました場合には、熊本県の財政に支障を来さないように国におきまして所要の対応策は講ずるというふうに関係の閣僚会議で申し合わせいたしている次第でございます。  さらに、熊本県以外にも患者が多数いるではないか、熊本県だけが県債を発行してチッソを助けているのはどうか、こういうようなお尋ねでございますが、この県債発行によりましてチッソに融資を行うことといたしましたのは、もちろんその患者補償金の円滑な支払いということを第一義にいたしておるわけでございますが、あわせまして、万一チッソに不測の事態が生じた場合には、水俣市とその周辺地域におきますところの雇用問題、あるいは社会的経済的な深刻な事態が想定されますので、こういったことを避けるとともに、当地の経済にとりまして重大なかかわりを持っております熊本県が県債を発行するという考え方及び方式が一番いいであろうというような考え方で行ったということに承知いたしております。  県からの要望でございますが、二つございまして、一つは、チッソに万一不測の事態が生じた場合、県財政に支障を来さないように国側において十分な対応策を講じる。第二は、チッソの経営改善のための適切な行政指導を行ってほしいという要望を主としていただいております。  まず第一の点につきましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、万一不測の事態が生じました場合の対応策といたしまして、昨年の五月におきましても関係閣僚会議におきまして、熊本県財政にいささかの支障も来さないよう国側において十分な対応策を講ずる旨確認いたしておる次第でございます。  さらに第二点でございますが、チッソの経営改善につきましては、関係行政機関におきまして適切な指導を行ってまいるということで確認いたしている次第でございます。
  102. 片山甚市

    片山甚市君 たくさん並べて質問したから一つ落としたんです。  熊本県はどのような負担を県債を発行することによって負っておるか、金額的な負担をどういうふうにしておるかということについてお答え願うと同時に、現在の金融措置昭和五十九年度まででありますが、その後は熊本県はどういうように対応すると言っておりますか。この二つ。
  103. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) これからも関係行政機関あるいは熊本県ともいろいろ御相談いたしまして対応策を講じてまいるつもりでございまするが、現在の県債発行方式によりますやり方が、患者救済のための補償金の支払いという点では全く支障を来していないと認識しておりますので、現実的かつ適当と考えられる現行方式をやはり続けてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  104. 片山甚市

    片山甚市君 熊本県は、引き続き再延長して負担をしていきたいとおっしゃっていますか。
  105. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) この問題につきましては、従来からも県選出の国会議員の先生方並びに県会の先生方から長い間いろいろな御示唆なり御指導をいただいてでき上がってきた制度でございますので、県の御意思というものを十分尊重してまいりたいと思っておりますが、基本的には現行制度というものについて県当局におきましても御理解を賜っていると私ども認識いたしておりますが、先ほど申し上げましたように、今後とも県と十分相談した上でいろいろと対策を講じてまいりたい、こう思っております。
  106. 片山甚市

    片山甚市君 お答えがありませんでしたから、もう一度聞きます。  県債の償還は昭和五十八年度から始まっているはずでありますが、その返済元利合計額は幾らになるのか、その財源は何によるものであるかについて、県債発行によって熊本県がどういう負担を負うのかということについての答弁をあわせてお願いしたいと思います。
  107. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) 県債の発行でございますが、五十三年から五十八年の十二月までに約二百六十二億でございまして、そのうち資金運用部で引き受けておりますものが百七十七億円、約六八%に相当いたします。さらに民間金融機関の引き受けが約八十五億円、約三二%でございます。それから、先ほどちょっと触れましたように、その他民間金融機関で金融支援があわせて講じられたところでございまして、県が金額的に負担をするということはございませんで、県が県債を発行して、資金運用部資金が同じ内容で県に財政援助をいたしております。さらに金融機関が同じくチッソに対して対策を講じておる、そういう形になっておる次第でございます。
  108. 片山甚市

    片山甚市君 それではチッソの再建策についてお伺いしますが、第二次金融措置でチッソは経常利益の半額を留保し、投資できるようにしておりますが、その利益額、投資の状況はどのようなものですか。
  109. 高島章

    説明員(高島章君) チッソに対します金融支援措置に対しましては、五十六年の上期以前はその経常利益の全額を補償金支払いに充てるという形をとっておったわけでございますが、そういたしますと、企業にとりまして最も大切な、今後の維持発展に大切な投資の原資を全く持たないということになるわけでございまして、長期的に補償金の支払いを円滑にいたしますためにはやはり新しい分野への投資のもとになるものを持つということから、その経常利益の二分の一を社内留保して次の発展に役立てるという形になったわけでございます。  ただ、先生既に御案内のように、チッソの主要分野は石油化学でございまして、石油化学産業は現在非常に苦しい構造的な不況の中にございます。チッソの懸命な努力にもかかわりませず、全般的な当該産業をめぐります環境のためにこの数年収支はやっと均衡を保つとんとん程度でございまして、そういう意味では、二分の一の原資を新しい投資に回すという措置を講じておりますけれども、そのための十分なもとを得ているかということになりますと、残念ながら十分の結果を得ていないという現状でございます。
  110. 片山甚市

    片山甚市君 開発銀行からのチッソ子会社に対する設備資金の融資については、現実にどのような推移をしておりますか。
  111. 高島章

    説明員(高島章君) チッソが公表しておりますところによりますと、昭和五十七年に日本開発銀行からチッソ石油化学に対しまして、合成樹脂の新製造技術企業化投資と、それから公害防止の設備投資向けに合計二十億円が貸し付けられております。現在、この投資に基づきまして新しい研究、そして今後の収益のもとになります設備の稼働が可能になりつつございまして、この開銀によります融資は、チッソ石油化学の資金調達コストの軽減には大変役立って、今後の明るい芽の一つになるであろうと考えております。
  112. 片山甚市

    片山甚市君 このような措置で大体チッソの再建は可能なのか、それとも見通しは大体明るくなったということでよろしゅうございますか。
  113. 高島章

    説明員(高島章君) 先ほど説明申し上げましたように、チッソの主要分野が最も構造的不況に悩まされているものでございます関係上、なかなか明るい見通しをここで申し上げる状況ではございません。  ただ、昨年来行われております法律に基づく産業構造改善策、あるいはチッソみずからの新しい分野への進出努力等によりまして本年度におきましては黒字を計上できるやに聞いておりますが、今後ともこの黒字定着のために法律的な構造改善策、そして新しい分野への進出に当たっての通産省としての各種の支援措置、こういうものをなるたけ努力してまいりまして、チッソが今後の経営基盤におきまして明るさを増すように努力してまいりたいと思っております。
  114. 片山甚市

    片山甚市君 通産省のチッソへの肩入れの態度はわかりました。  そこで、もしチッソが倒産した場合の債務についてですが、チッソの利益を子会社へ投資することは、チッソ本社が倒産した場合当然債務は子会社が継承するということでよろしいか。
  115. 高島章

    説明員(高島章君) そのような事態が生じないために関係省挙げていろいろ努力をしているところでございますが、親会社と子会社の関係につきましては、法律的に法人格は別ということでございますから、チッソ本体、チッソ本社のみの問題で、後へ波及しないとかあるいは波及するというようなことを私がこの場でお答え申し上げることはできないと存じます。あくまでもチッソ全体が今子会社を含めましてその再建のために日夜本当に努力をしているところでございます。
  116. 片山甚市

    片山甚市君 私は倒産することを望むのでなくて、倒産した場合に子会社も一体として責任をとるのかということについて聞いたところ、とるということですからそれ以上追及しません。  水俣湾のヘドロのしゅんせつ事業についてですが、水俣湾の堆積汚泥しゅんせつ事業は、昨年十一月、県の公害対策審議会で改定されたとのことでありますが、事業の経緯、現在までの施行状況、改定内容、財源の負担関係について説明してください。
  117. 佐竹五六

    政府委員(佐竹五六君) 水俣湾のヘドロ除去事業についてでございますが、水俣湾のヘドロ除去事業の施行方式等につきましては、四十九年三月、熊本県知事、環境庁長官、運輸大臣の間でその施行方式等について合意がなされたわけでございます。これを受けまして五十年六月十四日、熊木県におかれまして、水俣湾堆積汚泥処理の基本計画並びに監視基本方針の計画が策定されたところでございます。  これらに基づきまして、本事業は、熊本県を事業主体といたしまして、運輸省第四港湾建設局を施行主体といたしまして、五十二年十月に着工されたところでございます。五十二年十二月に一部の住民から、熊本地方裁判所に二次公害発生を懸念して工事差しとめの仮処分申請がなされたところでございますが、五十五年四月、同地方裁判所がこの申請を却下されたわけでございます。五十五年六月から工事が再開されたところでございまして、六十四年度の完成を目指し、現在二次公害の防止を旨といたしまして慎重に工事が進められているところでございます。  なお、この計画改定につきましては五十八年十一月に行われているところでございまして、計画内容の変更の主な点につきまして申し上げますと、まず事業費が、従前の計画では百九十三億円だったものが四百三十五億円に増額されているわけでございます。それから工事期間でございますが、従前四十九年度から五十八年度の十カ年を予定したわけでございますが、改定によりまして四十九年度から六十四年度までと変更になったわけでございます。  この負担関係につきましては、従前の計画では国庫負担額三十三億、県負担額三十四億、チッソの負担額が百二十六億だったわけでございますが、改定計画におきましては国庫負担額が八十二億、県負担額同じく八十二億、チッソ負担額二百七十一億と、かようになっているわけでございます。
  118. 片山甚市

    片山甚市君 二次公害のおそれありとの理由での工事差しとめの訴訟は却下されましたけれども、二次公害のおそれありとする住民の不安は判決で解消されたものではありません。  そこで、工事方法に万全を期すといっても、水銀が撹拝されることなどについて絶対大丈夫だという保証がありませんが、そこで、もしこの工事を即時やめるということを仮定するならば、どんなときにはやめることになりますか。
  119. 佐竹五六

    政府委員(佐竹五六君) 一応その地裁判決で私ども施行方式について認められたわけでございますが、それをもってよしとするわけではございませんで、慎重の上にも慎重に進めるわけでございまして、御質問の工事を中止する場合でございますが、次のような場合でございます。  まず第一点は、総水銀の濃度が監視基準値の〇・〇〇〇五ppmに適合しない場合。それからまた、生活環境項目が監視基準値に適合しないことが判明した場合において、さらに監視を強化した後もその生活環境項目の基準値に適合しない状態が解消されない場合。それから第三点といたしまして、この基準監視地点のほかに補助監視地点を設けているわけでございますが、その補助監視地点の半数以上で同時に監視基準値、汚濁度でこれをはかっておりますが、これを超えた場合には必要に応じてさらに監視を強化いたします。場合によっては工事を中断して原因を究明の上、監視委員会に御相談して所要措置をとることといたしておるわけでございます。
  120. 片山甚市

    片山甚市君 最後に、私は本法案の周辺の問題について経過と問題点を実務的にただしてきましたが、その答弁はまさに官僚答弁であり、心がない。人間の問題を物と手続で処理しようとするように感じられます。どこかに温かみが感じられるかと思いましたけれども、お答えの中には、そこには公害があるけれども人間がないということで、環境行政の基本を今ここで改めて論争する気はありませんけれども、納得できません。  水俣病対策を見て、原因が何であれ、環境が破壊され、人間としての尊厳と生活する手段を奪われて、ツケ回しがあってから初めてそれらに対する措置をとるために行われたことでありまして、すべてが後回し後回しになっていることであります。本委員会においてすでに私は、水銀による土壌汚染、乾電池問題、琵琶湖の水質問題などについて、あるいはこの間宮崎では土呂久の問題がありますが、すべて相当の年数を経て問題視されています。  環境破壊というのはもう取り返しのつかないところまで来ておるというふうに考えるんです。公害源となるものは蓄積されていくということでありますから、その場その場で仮に基準値を下回っていたとしても、蓄積は必ず生態系に影響し、環境を破壊することは常識であります。原因者責任は当然としても、原因となるものを根本的に排除することこそ、今日のごとくあらゆる面で環境破壊が行われておるときに最も急を要することではないか。ましてや、その被害者が長年にわたり放置されたままであるということ自体が犯罪につながると思います。  大臣は、この際決意を新たにして勇断を持って実効のある措置をとってもらいたい。冷たい法律の解釈でなく温かい心を注ぐようにしてもらいたいと思いますが、大臣の所見をお聞きして終わります。
  121. 上田稔

    国務大臣上田稔君) 片山先生からるるただいま御質問をいただきまして、それに対してお答えを申し上げたのでございますが、非常にこの認定業務というのがおくれておりまして、患者の皆様方に大変に御迷惑をおかけをいたしております。しかしながら、それに対して今知事さんも懸命になってこの対策をおやりをいただいておりますし、また、認定が非常におくれておった旧法による方々に対しましては、ただいま議員立法としてこの法案をお出しをいただいて、さらに、環境庁としてもその認定に当たらしていただくということができるように今講じていただきつつあるわけでございますが、こういう御処置を受けまして、ひとつ早く認定促進をいたしたいと考えております。  また、今最後に御質問をいただきました水俣湾の問題でございますが、その原因であるものがなお湾の中にあるのでございますので、これを除去するために、その工事も、公害をさらに起こさないように、浮き上がらせないようにして、そして工事を完全にさせていきたい、こういうふうに決意をいたしております。
  122. 片山甚市

    片山甚市君 失礼ですが、大臣の気持ちが落ちつくならば、水俣に一度足を運ばれて現地を見ていただくことが大変有益だと思いますので、重ねて、質問じゃなくて要請をしておきます。私はやはり、「百聞は一見に如かず」ということがありますから、政治治的な背景じゃなくて、やっぱり環境庁長官というのは現場を見て、法律じゃなくて、どうすべきなのか、どうあるべきなのかということを、長官は良識のある人ですからそれに対処できると思います。ぜひともお願いをして終わります。重ねて申し上げておきます。
  123. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 最初に提案者にちょっとお聞きいたしたいんですが、長官はおくれていてまことに御迷惑かけているというお話ございましたけれど、衆議院で、「水俣病にかかった者の迅速かつ公正確実な救済のため、」というのが当初第一条に修正案として出されて加えられたという経緯は御存じでございますね。それで実際にこの「迅速かつ公正確実な救済」、この「迅速」の方が上なんです。迅速に行われているというふうに提案者としてお考えですか。
  124. 福島譲二

    衆議院議員福島譲二君) 大変残念ながら、この臨時措置法をつくった結果、迅速な処分にお役に立っているということが言えない現状であることは、私も大変残念でございます。  これはしかし、国の方の立場から申しますと、単に県の審査機関だけに任しておくことは、国としてももう少し協力をしなければならないという、そういう情勢のもとに五年前にこの臨時審査会を設置するようにお願いをいたした次第でございます。事は、患者さん、申請者の皆様方がこの趣旨を御理解をいただきまして、県の認定審査会だけで不十分であればさらに国の方にも直接申請ができるという、いわばバイパス、新しい門戸を開放したわけでございまして、患者さん方のお気持ち次第ではこの国の審査会を直接御利用いただくということで結果的に迅速な解決を見ることが可能だと、その道を開くための今回の延長であるというように私ども理解をいたしております。
  125. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 それで長谷川さんにお聞きしたいんですが、衆議院で馬場委員の質問に対しまして「私ども認定業務が現在のような形で、いろいろ努力いたしておりますけれども、おくれておるという実態に対しましては、これは患者さん方の救済という観点から見れば申しわけない、」云々とありまして、「県ともその後もさらに連絡をとりながら、一緒になってきめ細かな配慮をしてやっていこうというぐあいに今いろいろ計画中でございます。」これは四月六日にこういう答弁をあなたはなさっておる。問題は、計画中の中身、これは中身があるから御答弁したんだと思いますので、計画中の中身をひとつ教えていただきたい。
  126. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  県ともいろいろ相談いたしまして、特に長期未処分者方々、非常に長く処分が決まらないままになっていらっしゃる方々もございますので、特に長期に処分の決まらない方々に対しましてできるだけ検診を受けていただく方策を考える。従来からもいろいろ呼びかけ等を行いまして受けていただくようにやっておったわけでございますが、さらにそれにつきましてはきめ細かな配慮をしながらやっていく必要があるんじゃなかろうかということで、そういう方々に対しましては、県の方で部長名をもちまして検診の呼びかけを行いまして、その申請者方々の都合のよい日を聞かせていただいて、その日に合わせて検診がやれるような体制を組みたいということで、そういう都合のいい日を聞かしていただきたい。  また、体の事情でなかなか検診センターに行かれない方については、県の方で出かけていって検診を勧めるというようなことも考えておりますので、そこら辺の御本人の考え方なり状況についてもお知らせいただきたいというようなことで、県の方で、国とも相談いたした上でございますけれども、そういう面での状況申請者方々に個々にお尋ねいたしまして、その申請者方々の事情に合わせて検診を組むということを計画するといいますか、そういうことで取りかかっていきましょうというような話が進んでおった段階でございますので、そのように申し上げたところでございます。
  127. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうしますと、ここでとにかく検診審査体制の強化ということにつきましては今いろいろ計画中だというのは、その程度のことなんですか。もう少し具体的だかと思って期待しておったんですが、この記録を見て。いいですか。あなたは検診審査体制の強化についてと言っているんですよ。これどういうふうに強化するんですか。今のお話じゃ何にも強化、例えば何人人をふやして、どれだけの予算規模をこれだけつけてと、それでなきゃ強化にならぬでしょう。そういう計画がおありだから答弁しているんだと思うので、その計画を知らせてくれと言っているんです。
  128. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 失礼いたしました。  そのために、在宅で寝たきりの方々に対しましていわゆる往診といいますか、出かけていって検診をするためのいろいろな機器の購入というものにつきましては、今年度予算で計上いたしまして御審議いただいたところでございますが、その予算も計上してそういうものの機器をこれから買いまして、そういう検診の充実に努めてまいりたい。  それから、先ほども申し上げたわけでございますが、私どもといたしましてはできるだけ多くの方々検診を受けていただくということを考えておりまして、そういう面で当面百五十人検診、百三十人審査体制ということを確立するという体制を整えているわけでございますけれども検診方々が多くなりました時点におきましては、さらにそういう点については、先生お話がございましたように、検診医の強化といいますか、拡充ということも当然考えていかなきゃならない問題であろう。今現段階におきましては、現在用意しておりますと言っちゃ語弊があるのかもしれませんけれども、そういう体制が整えられておりますので、それをまず受けていただくということが当面重要といいますか、先決であろうというぐあいに考えているところでございます。
  129. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大臣、今理事さんたちの御了解をいただいてミカンをそちらにお配りしたいのですが、これは水俣病認定患者たちが、被害者である自分たちが農薬をまいて加害者になったらいけないということでグループをつくってできたミカンなんです。被害者加害者になってはいけないと。そしてこれはなかなか苦労して売っております。私も二箱買って食べたんですが、なかなかおいしいんです。で、水俣の問題というのは、まさに私はそういう点で、昔から言われておりますけれど、公害病の原点であるし、日本の環境行政の原点だということを痛感しているんです。  それで、農林省来ていると思うんですが、この方たちは十八回まいていた農薬を今三回で済ませたと。黒点病なんかが出たんで四回にしなきゃならぬかなと思ったけれど、多少こういう見ばえが悪くても味に変わりがないから三回で済ませたというのが去年の報告なんです。一体このアマナツですね、ほかではどれくらいやっていますか。
  130. 岩本毅

    説明員(岩本毅君) 御説明申し上げます。  農薬による病害虫の防除の問題でございますけれども、防除の回数は地域によりましてさまざまでございます。御承知のように日本の夏は非常に高温多湿に経過する関係がございまして、一般的に申しまして病害虫の発生量、種類も大変多いものでございますので、それに対応した適切な防除が行われております。ミカンについて言いますと、全国押しなべて約十回ぐらいではないかというふうに見ております。
  131. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 あなたいつも少な目に言うんだよ。ここでさえも十八回やったと言っているんです。十回くらいということはないと思うんですよ。この間ブドウをその後調べましたか。七回、八回じゃなかったでしょう、山梨。同じことなんです。そうして、そういう農薬がばらまかれるために被害者加害者になっちゃいけないといってこういうミカンをつくり、そして一生懸命努力しておる人たち。一方では十回も二十回も農薬を、これは決してナツカンだけじゃないですが、ばらまく。こういう今の日本の農業生産が続いているわけです。  それで、つい最近、江戸前ハゼの大産卵場、羽田沖に百八十億匹の産卵をする場所があって、これが新しい埋め立てでどこかへ引っ越さなきゃならない、こういう記事が出ております。これについて、水産庁来ておりますね、これはやっぱり都の港湾局と相談しながら何とかこのハゼは死滅しないような方途を考えているんですか。
  132. 山添健一

    説明員(山添健一君) 先生ただいま御指摘のございました、羽田沖の埋め立てによりましてハゼの生息場、すなわち産卵場が消滅する、これにつきましては移転を考えているということでございますが、これはまだ東京都内で協議している最中でございまして、まだ私どもの方は新聞紙上以上のものは承知しておりません。
  133. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そしてそのハゼは、大体九一・四ppmといわれるようなCNPが残留しているのがわかったというふうなことを水産庁御存じですか。
  134. 山添健一

    説明員(山添健一君) 東京湾のハゼの農薬汚染についてでございますが、私ども承知しておりますのは東京都の衛生研究所の調査がございまして、この結果によりますと、CNPがごく微量、五十八年度の調査でございますと一・三PPbという、非常にごく微量でございますが検出された、こういう報告は承知しておりますが、先生指摘の数値についてはちょっと承知しておりません。
  135. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大臣水俣病というふうなものをしっかりやはり我々考えていかないと、日本国じゅう至るところで、この程度ならこの程度ならということが進んでいくんです。  それで、私はやはり水俣病対策というのは大変大事だし、それから大臣はしばしば県と相談してということを言っておられますが、いろいろ希望があってもなかなかおいでになれないようです。で、この人たちのグループが映画をつくったんです、一時間足らずの映画。一月の末にできております。東京でこういう映画を取り寄せて見るくらいのことはできませんか。どうです。
  136. 上田稔

    国務大臣上田稔君) 映画につきましてのお話は初めてお聞きをいたしたのでございますけれども、そういうものがありましたら、県の方とよく連絡をとりまして、私どもの方にもひとつ早く持ってきてくれるように連絡をいたします。
  137. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 わかりました。まあ映画くらい見てやってください、まず。  それから、今も起債の関係の話が大分出ておりました。この起債は交付金なんですか。いや交付金ではないですわね。どういう性質の起債ですか。
  138. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) この起債と申しますか、熊本県が県債を発行いたしましてチッソに貸し付けて、チッソが患者に補償金を支払っております。県が県債を発行するに当たりまして、その資金を国の資金運用部で貸し付けている、六〇%貸し付ける、そういう仕組みになっております。
  139. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうすると、これはいわゆる一般公共のような起債と違って、企業債のような特別債ですか、この起債は。
  140. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) ちょっと御趣旨わかりかねますが、私ども理解しておりますのは、一般の地方債として起こして、それをチッソに貸し付ける、こういうことでございます。
  141. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 一般の地方債でもいろんな性格がありまして、枠だけを決めれば市中金融機関からでも借りられる起債もございますわね。それと国の資金運用部からと。この場合六〇%は資金運用部を通じて出ているようですが、あとの四〇%は県がそれを独自の起債を、金融機関から借りる、そういう方法で賄っているんですか。
  142. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) 御指摘のとおりでございますが、利率その他の内容は県債の場合と同じやり方でございます。
  143. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうしますと、チッソが破産して熊本県がこれをしょわなければならなくなった場合に、国が一〇〇%見るという新聞報道も出ておるんです。この見方なんですが、県の基準財政需要額の中に組み込んで交付税で見るのか、あるいは特別の交付金にするのか、どちらなんですか。
  144. 正田泰央

    政府委員(正田泰央君) 今先生指摘のチッソの万一の場合の報道でございますが、私ども政府部内といたしまして合意に達しておりますのは、そのような事態が起こりました場合には、先般の閣僚会議説明がございまして、いささかも支障がないように国が所要措置を講ずるということを決めておりますし、現在のところそのようなことだけを考えておりまして、その資金運用部資金の取り扱いとか、そういった具体的な措置につきましてはまだ検討を行っていない状態でございます。
  145. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 大臣、閣議でこれ決められているんですよね。そうすると、財源措置現行の法的規制の中において財源措置をしなきゃならないんです。そうするとちょっと考えられる方法が私見当たらないんですよ。一般単独なり何なりの補助起債にしたって、少なくとも起債枠は認めて一〇〇%充当するというのはないんです。九九%というのはありますよ。それから、特に県が独自に起こす、金融機関等から借り入れる枠だけ決めてやる特別債、これの場合には基準財政需要額に入れることさえも大変難しい。ましてこれは交付金という形で、補助金と言わないで交付金と言いますけれども、これをどういう方法でやるかということについて、大臣、閣議の場合はそこら辺はどういうことだったんです。文書は覚えていますから読んでもらわぬでもいいです。時間ありませんので。こちらに持っております、閣議の文書は。
  146. 上田稔

    国務大臣上田稔君) お答え申し上げます。  今の閣議でございますが、実は私のときよりも以前のときの閣議でございますが、そのときにそういうお話があった、これは私も承知をいたしております。これに対しまして、先生の御指摘のとおり、いろいろその措置、そういうことが、万一起こった場合——起こさないように今一生懸命に措置を講じておるわけでございますが、起こった場合の措置ということについて、県に負担を与えないということは決まっておるわけでございますが、どういう仕組みでそれをやるかということについては、今いろいろ検討をしてもらうということになっておりまして、まだ詰まっておらないのでございます。
  147. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 新聞発表の方は、一〇〇%国が責任を持つ、こう言っているんです。しかし五月十七日の閣議決定では、所要の対応策を講ずると言っておりますけれども、一〇〇%とは言っていないんですよね。ここら辺も非常に、これは熊本だけじゃないんです、水俣の問題だとか、それから水銀の公害というのはほかにもあるんです。もともとこれは本来国が責任を持たなきゃならないやつを都道府県に押しつけておいて、後始末を後からやっていこうとするところに問題があるんでなかろうか、私はこう思うんです。  それで、実は五十一年の十二月に熊本地裁で、水俣病認定申請に対する県知事の不作為が違法ということで判決が出て、これについては県が控訴をしなかったから確定しておりますわね、この事実御存じですか。
  148. 上田稔

    国務大臣上田稔君) それも承知をいたしております。
  149. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 そうしますと、これもその後、非常におくれが今御指摘のあったようにあるんですよね。  実は、行政事件訴訟法という法律があります。その中で「不作為の違法確認の訴えの原告適格」、これは、そういう訴えを行政体に対して行う場合には申請した者に限るという原告の資格要件があります。それから、訴訟取り消しは三十八条で準用規定がございますね。これは御存じだろうと思うんです。ところが、これは、三十七条、三十八条を受けまして、「第三十三条及び第三十五条の規定は、取消訴訟以外の抗告訴訟に準用する」とありまして、三十三条では「処分又は裁決を取り消す判決は、その事件について、当事者たる行政庁その他の関係行政庁を拘束する。」拘束するとあるんですよ。このことについては、大臣どうお考えですか。大臣でなくてもよろしいです。——ちょっとそれではこちらで読みます。  これにつきましては、兼子博士が「行政事件訴訟特例法の実態」という本の中でこう言っているんです。「確定判決のあった以上判決を受けた行政庁は、以後同一当事者間の同一事項を処理するに当たっては、判決が違法と確定した判断を尊重しなければならず同一の過誤をくり返すことができなくなる」、こういうあれが出ているんです。これらについて環境庁は、これは下級審の判決だからといっても、確定した以上はある意味では下級審の判例になりますでしょう、このことは。しかも、それは熊本県を相手に取った訴訟だと、だから環境庁は束縛されないということないんですよ、行政庁間のね。  ところがあなたたちは、その後に起きたお待たせ賃判決ですか、これでは、拘束されている熊本県と共同被告として控訴しております。私はこれは非常に問題だと思うんですよ。一体こういうことができるのか。こういう控訴をすること自体が果たして——共同訴訟しているんだ。少なくともこの条文は熊本県を拘束していることだけは間違いないです。その拘束されている熊本県と同一の事実について、環境庁が共同被告人として共同して控訴することというのは、一体できるんでしょうか。  そういう抗弁がないから裁判所は受理したでしょう、控訴も。しかし、抗弁がないからといってこの種の問題をないがしろにするのは私はおかしいと思うんです。
  150. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  国及び熊本県におきましては、認定業務促進につきましてこれまで検診審査体制を充実するなど数々の努力を重ねてまいったところでございますが、国、県のいずれの努力も裁判所において評価されなかったことはまことに残念でありまして、さらに上級審の判断を仰ぐということにいたしたわけでございます。  なお、一審、五十一年の不作為違法判決につきましては、先生からお話ございましたように、この判決が確定いたしまして、私どもその判決を十分重みを踏まえながらそれ以降認定促進のための仕事をいろいろ進めてまいったわけでございますが、お話の後段にございました昨年の判決につきましては、国賠法上の不法行為があるというようなことでの訴訟でございますので、不作為違法訴訟と国賠法上の不法行為というものにつきましては、おのずから異なるところがあるというようなこともあるわけでございますので、そういう面では必ずしも同一において論ずることについてはいろんな御意見があろうというように思っておるところでございます。
  151. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 お待たせ賃訴訟というのは、損害賠償というか、事金銭に関する問題だから、いわゆる不作為の違法というものと違うとおっしゃるかもしらぬけれども、しかし不作為の違法であるということを踏まえて出てきた損害賠償ですね。そうすると、金額の是非を争うという問題は当然これはあろうかと思います。  しかし、少なくともこういう行政機関に対しては、下級審の判決といえども拘束されているんだということを踏まえておやりになっているかどうか。そしてまた、それを重大に受けとめた上で国会であなた方が、おくれているのは申しわけないとか、こういうことになるのかどうかということなんです。この判決があったら、やはり確定したら、当然、今ごろになって環境庁長官がまことにおくれているから申しわけありませんなんていう答弁のできる仕掛けでは私はないと思うんです。環境庁長官、もう一回、五十一年の不作為の違法だという裁判所の判決の確定を踏まえて、おくれている問題について御答弁を願いたい。
  152. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先生からお話あったわけでございますが、五十一年の不作為違法判決におきましては認定業務のおくれが違法であると示されたわけでございますが、行政当局といたしましては、この不作為違法判決を十分踏まえまして認定業務促進することが最も肝要であり、認定業務申請者の理解と協力なしには推進し得ない性格のものであるということにかんがみまして、水俣病対策の円滑な推進という見地に立って控訴しなかったという事情もあるわけでございます。  一方、昨年七月のいわゆるお待たせ賃訴訟の判決におきましては、不作為違法判決後、これまで国、県において認定業務促進のため行ってきた各般の施策が全く評価されてなく、認定業務がおくれていることにつきまして国家賠償法上の賠償責任があるとされたことでございまして、このことはまことに残念でございまして、また、不作為違法判決と国家賠償法上の違法とは異なると考えるわけでございますので、国としてもさらに上級審の判断を仰ぐということにいたした次第でございます。
  153. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 一生懸命やっていると言いますけれども、これはそれぞれ今までもなくさん言われていることの繰り返しになりますけれども、あえて言わせてもらいます。  読売新聞、「水俣病患者無念の自殺 解剖九か月、やっと認定 申請十年、保留の果て」これ読売新聞です。朝日新聞、「水俣病申請中の死亡急増追いつかぬ解剖 県の認定業務遅れ響く」「自殺後、水俣病認定 吉永さん「生前なら…」と遺族」。どれを見ても今あなたの言われたような答弁に納得できる状況になっていないじゃないですか。五十一年の不作為の違法判決を踏まえて一生懸命やったなんというようなことがどこにも出ていない。私はこんな答弁ではきょうはとても承知できません。  時間が来たのでまた後に譲りますが、もう少しここら辺ははっきり解明し、環境庁長官としても責任を、熊本県なんて、これは熊本県だけの問題でないんです。今申し上げましたように至るところにも出ているし、これからも非常に農薬汚染等含めて問題が出てくる可能性のある時期に、環境庁がもう少ししっかりしてくれないとそれは困るんですよ。例えば農薬いろいろ指導していると言いました。三里塚、成田空港ですね、ああいうところになると、農地以外だから関係ないでしょう、農薬室長。
  154. 岩本毅

    説明員(岩本毅君) 御説明いたします。  私どもの農薬は、農林産物の病害虫等の防除に使われる薬剤を中心に取り締まり規制を実施しております。
  155. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 長官、今のお答えのように、農地以外に農薬をばらまかれていても全然関係ないんです。やっぱり環境庁がしっかりしてもらわなきゃ、東京湾の江戸前のハゼだって食えなくなっちゃいますよ。その原点が水俣なんですから。水俣病のこの問題について、きょうの御答弁だけでは、一生懸命やっているなんということはどこにも見えないんで、もう少し具体的に聞かしてもらうまでは承知できないことを申し上げて、時間ですからきょうはとりあえず終わります。
  156. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 水俣病につきましての国の責任についてお伺いをいたしたいわけですが、チッソの会社が排水を海中に流し出したのは昭和七年ごろからだと判決書に書いてあります。そして昭和四十一年六月ごろまで排出を続けてきたと、こう書いてあります。ところが、同じく熊本水俣病損害賠償請求事件の判決を見ますと、昭和三十四年の十一月三日に衆議院委員の方が向こうへ行かれまして、当時会社の幹部を呼んで、熊本大学がこの水俣病の原因についていろいろ研究をしておるのを妨害するようなことをするのはいけないではないか、熊本大学と一緒になって原因究明に当たるようにという一つの警告を発しておられるわけです。これは昭和三十四年十一月三日なんですよ。ところが、それでもなお四十一年六月までは排水を海中に流し続けてきたということが判決文に書いてある。これは重大な問題だと私は思います。  そこで通産省にお尋ねするんですが、チッソという会社に対する  では通産省おいでにならぬそうですから、法務省に先にお尋ねをいたしますが、こういう会社に対する監督権はそれぞれの所管官庁にあると思います。通産省に後でお尋ねしますが、通産省に監督責任があるわけなんですが、衆議院委員会でさえこの問題に気がついて、会社に対して警告を発しておるのに、通産省がそれを行っていないというそのことは法律的に見ましてどういうことになるでしょうか、お尋ねいたします。きょうは同僚議員が私の質問をみんな言ってしまわれたんで、突然の質問で申しわけないけれども、お答え願います。
  157. 大藤敏

    説明員(大藤敏君) 御説明申し上げますが、今先生がおっしゃられましたとおり、突然の御質問でございますので考えてきておりませんでしたので、もう少し考えさしていただきたいと思いますが、もうしばらく時間をいただきたいと思います。
  158. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 通産省今おいでだそうですから、通産省にちょっとお尋ねします。  通産省は熊本のチッソの会社に対する監督権はどの程度お持ちか、監督権の範囲をお尋ねします。
  159. 高島章

    説明員(高島章君) 個々の企業の経営方針なり状態について逐一我が方は意見を申し上げる立場にはございません。ただ、現在は、チッソの主要分野でございます石油化学工業につきまして、産業構造法に基づく設備処理等構造改善を進めておりまして、その関係で、その計画が円滑に遂行いたしますように、その対象であります企業との関係でいろいろの情報交換あるいはその必要な施策の助言等を行っております。その関係におきまして、チッソ株式会社からも現在の経営状況、今後の新しい分野への発展の計画等を聞いておりますし、その関係におきまして、必要な支援措置が必要であれば我々といたしましてはそれを検討し、関係の政策措置へつないでおるというのが実情でございます。
  160. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 大まかな監督責任はそういうことでしょうが、細かく言いますと、チッソ工場がいろいろな仕事を行いますね、その仕事を行う、例えば排水を海に流すという設備をしておる場合に、その排水が危険でないかどうかということを検査するのが当然のことですね。これは判決文にも書いてありますね。それは当然会社がやらねばならぬことであると書いてあります。その点で過失責任があると書いてありますが、裁判所がそう言うんですから多分間違いないと思います。  それで、通産省ではそういう問題について会社がどういうことをしておるかということを検査をしたり、あるいはあらかじめ申請を受けて了解を与えたりする任務はございませんか。工場の監督は通産省じゃありませんか。
  161. 高島章

    説明員(高島章君) 法律対象になります種々の規制措置、例えば、新たに設備を起こします場合に、それに政策的な支援を行った場合にはその支援内容が適切であるかどうか、あるいは現実に円滑に遂行されているかどうかということに関連をいたしまして、実際にその工場を視察いたしまして現状を十二分に把握することは我々の務めであります。ただ、全般的に常にチッソの工場の運営状況につきまして逐一あらゆる点につきましてこれを監視するということまでは行っておりません。  ただ、チッソの金融支援措置に関連いたしましては、その基盤でありますチッソの経営の健全化のためにどのような形で現在工場の生産がなされているかということは我々の最も関心事でございますので、逐一会社の方からその現状の聴取をしておりまして、例えば、新しい樹脂の部門につきましてその運転状況はいかがであるかとか、あるいは現実にどのような新しい収益を生みつつあるかとか、あるいは、今御指摘ございました、その生産活動に関連いたしまして公害等問題は一切生じていないかといったようなことは常日ごろチェックをしているつもりでございます。
  162. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 それでは、通産省では工場排水等の問題も従来見ておいでになったんですね。  環境庁はいつごろできたんでしょう。このチッソの事件に環境庁が関連をお持ちになったのはいつごろでしょうか。
  163. 佐竹五六

    政府委員(佐竹五六君) ただいまの御指摘の排水規制の問題でございますけれども、仮に現行法制で申し上げますと、特定施設、これは政令で指定されて、有害物質を出す蓋然性の高い施設が政令で指定されておりますが、そういう特定施設を設置をしようとするときには都道府県知事に届け出が必要になるわけでございまして、その届け出でその設備の内容等を審査いたしまして、もし問題があれば設備の変更命令、計画変更命令等がかけられるような仕組みになっているわけでございます。  問題の昭和三十四年当時でございますが、私も事実関係につきまして詳細を承知しておりませんので正確には申し上げられませんが、水質汚濁防止法の以前の水質保全法という法律がございまして、これに基づきまして、政令で指定された水域についてはやはり現在の水濁法と同じような、特定施設を設置する場合には届け出が必要になるというような法制が仕組まれていたかと記憶いたします、突然のことでございますので正確には記憶しておりませんが。三十四年当時水俣湾が特定水域に指定されていたかどうかにつきましては、まことに申しわけございませんが、現在正確な知識がございませんのでお答えいたしかねますが、もしそれが指定されておれば当然届け出等が必要になったのではないかと、かように考えるわけでございます。
  164. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 会社に対する監督責任というものは、実は、カネミの事件を御存じでございますね、カネミ事件でこれは国家に責任があるかどうか問題になりましたが、私の記憶が間違っておれば訂正しますが、高裁の判決ではあるというものが出たように新聞に載っておったのを見ましたが、その点どうですか、法務省。
  165. 大藤敏

    説明員(大藤敏君) 御説明申し上げます。  カネミ油症の事件につきましては、今自余の調査をしておりませんので正確な御返事をいたしかねますので、御了承いただきたいと思いますが。
  166. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 最初は、国に責任がないと、こう言っておったんですが、やはり監督責任が国にある。殊に化学工場をつくる場合に、その化学工場から排出する危険物質というものは必ずあるので、そういうものに対する規制をしなければならない義務が当然国にある。チッソがあの工場をつくりまして、昭和七年からずっと有機水銀の排水を流し続けてきたという問題、これは明らかなことでございます。判決文を見ますというと、判決文の中では、昭和七年ごろから昭和四十一年六月ごろまでアセチレンから水銀触媒を用いてアセトアルデヒドを合成して有機合成化学製品を製造してきた、その際発生するところの危険な排水を海中に垂れ流し続けた、こういうことが書いてあるわけです。こういう問題は当然化学工場は事前に危険を予知しておらねばならぬし、また監督官庁は化学工場を許可をする、認可をするに当たってそういう方面まで気を使って監督するのが任務ではないかという趣旨なんですよ、判決の。  ところが、この判決、熊本の水俣民事訴訟では被告がチッソだけになっておりまして、国を相手取っていない。カネミの場合は国も相手にしておりますがね。それでこういうことになっておるというわけなんですが、それだけの理由で国の責任一体なくなるのかという問題に私は疑念を持つわけです。元来、被告として訴えられたかどうかということとは関係なしに、国はやはり監督下にあるところの工場の行う危険性、こういうものについては十分監督して国民に迷惑を及ぼさないようなことをする責任が当然あるとしなきゃならぬと考えるわけであります。こういう考え方はこれから裁判所の方でもどんどん取り入れる傾向にあるわけです。そこで、このチッソの問題をこれは単なるチッソの責任ということで今まで扱っておられるから、県債を発行して後どうだとか、チッソがつぶれたら後どうなるかといったような心配が起こるわけです。これはもともと国の責任なんだという観点からいけば、当然もっと違った対応があったものと私は考えるわけであります。  こういう問題につきまして、法務省さん、これ研究しておりませんかね。御答弁願います。
  167. 大藤敏

    説明員(大藤敏君) 御説明申し上げます。  御質問の点につきましては、今手元に正確な資料がございませんので責任を持ってお答えすることはできませんので、お許しをいただきたいと思います。
  168. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これはまた法務委員会でお尋ねしますので、御研究願います。  環境庁におかれましても、この問題についてはやはり国の責任として御認識を願う必要があるのではないかと思いますが、どうでしょう。
  169. 佐竹五六

    政府委員(佐竹五六君) 突然のお尋ねでございますので正確にはお答えいたしかねますが、先生法律には非常にお詳しくていらっしゃいますので私どもから申し上げるのもいかがかと思いますが、国の責任といわれます場合に、法律上の責任と、それから法律上の責任は別として道義的な意味で何らかの措置が講じられてしかるべきであろうと、そういう非常に広い意味での道義的責任と二色あろうかと思います。  法律上の責任というふうにおっしゃられる場合には、私どもといたしましては、それの責任を果たすために、執行するのに必要な権限が必要になるわけでございまして、当然工場への立入り検査権その他そういう権限の付与が必要になるわけでございます。これはやはり個別の立法措置が必要になるわけでございます。この立法措置によって私どもは権限を与えられ、その権限を十分に行使していないかどうかというような場合には、先生指摘のような法律上の責任の問題が出ようかと思うわけでございます。  ただ、近時、国民の安全を保護するために国の法律上の責任をどこまで認めるべきかということについては、裁判上いろいろ議論があることは私どもも承知しているわけでございます。それは例えば水害の問題とか、それからカネミ訴訟等についても、いろいろ新しい法律考え方が裁判所の判決の中にあらわれていることは十分承知しておるわけでございますが、カネミ訴訟につきましても、たしか私の記憶では、直接国の監督責任ということではなくて、むしろ広い意味での国民の健康を守る、安全を守る義務があるという意味での責任を認められたというようなことではなかったかと記憶するわけでございますが、もちろん正確に判決内容を承知しているわけではございません、大変恐縮でございますけれども。  しかしながら、その点につきましては、私ども現在の行政の能力、つまり与えられた予算、人との関係ではいろいろ異論があるわけでございまして、カネミ訴訟についても関係部局内で議論した結果控訴するということになっているんではなかろうかと思うわけでございます。環境庁は広い意味で国民の安全を守る義務があるといわれる意味でなら先生指摘のとおりでございますけれども法律的な責任という問題になればそれに見合う権限も必要になるわけでございまして、個別立法措置がない以上は、そのような責任が私どもはあるということを簡単に申し上げるわけにいかないことを御了承いただきたいと思います。
  170. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 水俣病はこれはまことに悲惨な病気であることはもう御存じでございますね。こういうものが人為的につくり出される、今後文明が発達して、科学が発達していきますという必然的にこういうものが至るところで出てくる運命にあるわけですね。ですからそれを防止する責任がやはり国にあるのではないかと私は思うわけです。一企業に任せますと、企業は利潤追求ということだけに目がいきましてそうした他人の迷惑などは考えない。そういうものを規制して、考えさして、危険を及ぼさないようにして国民の生命、財産を守るという、そういう組織に、そういう体制になっていかなきゃならぬと私は思います、法律体制自体が。  法律がなくとも解釈でそういくわけなんですが、今日そういう体制になっていないということであれば、早急に工場に対する監督責任の所在、企業責任——企業責任だけの問題でなしに、企業責任を追及するほかに、国の監督責任、それから危険防止責任、私は監督責任だけじゃなしに危険防止責任があると思うんです、国には。そういう法律制度を一日も早くおつくりになることが必要ではないかと思いますが、おやりになるおつもりありませんか。
  171. 佐竹五六

    政府委員(佐竹五六君) 確かに水俣の事件等大変悲惨な事件でございまして、再び起こしてはならない事件である、かような観点もございまして、水質保全法、さらにそれを広く公共水域一般に及ぼす水質汚濁防止法が制定され、環境庁及びその指揮監督下にある都道府県知事に一定の権限が認められたわけでございまして、私どもはこの法律の適正かつ厳格な運用を通じまして、再びあのようなことのないように一生懸命やってまいりたいと、かように考えておるわけでございます。
  172. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この問題につきまして私が御質問申し上げておりますのは、過去においては、国の怠慢であって、法の怠慢であって、いい方法がなかったんだけれども、今日現時点において水俣病をどうするかという問題について、過去にさかのぼって法律があったと同じような対応が必要ではないかと私は考えるわけですが、これは議論してもしようがないからぜひお考え願いたい。そうして早急にそういう方面の努力をお願いしておきまして、次の質問に入ります。  これは前に質問者が質問された内容ですけれども昭和五十三年の十月二十日の臨時措置法案に対する附帯決議がございますが、その御質問に対する御答弁がどうも簡略過ぎて私ははっきりわからなかったんでもう一度お伺いしますが、水俣病医学的病像の解明ということが掲げられております。水俣病というものは医学的にどういうものなのか、それをはっきり解明をして対策を講じろと、こういうことなんですがね。それにつきましてどのように今までやっておいでになったでしょうか。
  173. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答えいたします。  附帯決議にございます水俣病医学的病像の解明あるいは水俣病の治療法の解明ということに関するお尋ねであろうと思うわけでございますが、この水俣病像あるいは治療法につきましては非常に難しい問題でございますが、国立水俣病研究センターにおきまして、水俣病の治療方法等に関します臨床医学的な研究、あるいは生理、生化学等の基礎医学的な研究、あるいは疫学研究というようなのをいろいろ組み合わせて行っておるところでございまして、また一方におきましては、医学の各分野の専門家から成ります研究班研究を委託するというようなことで、病像あるいは治療法の研究につきましてはそれぞれ鋭意努力いたしているところでございます。  私どもといたしましては、この研究班あるいはセンターの研究、あるいは専門家のお集まりをいただきながら、病像といいますか、水俣病認定の基準的なものにつきましても鋭意御検討をいただきまして、現在の認定要件等を定めて審査を行っておる状況にございます。
  174. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 どうも私はっきりわからなかったんですが、この判決を見ますと、水俣病の悲惨な状況が書いています、具体的に。その一つ一つ、個人個人を診なければ、あらわれた病像を診なければ水俣病というものはわからないのか。あるいは水俣病にはある一つの特徴があって、その特徴さえ見つければわかるようになっておるのか、そういうような問題を私は附帯決議で要求しているんじゃないかと思いますがね。医学的な病像といいますかね、どういう形の病気なんだということなんですが、例えば手足がしびれてしまって頭の脳がやられてしまうとかございましょう。そういうことの御研究をどの程度やられておるか、それを治療する方法は現在完全にできておるでしょうか、こういう質問なんです。
  175. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  この水俣病像につきましては、先ほどお話ございましたが、昭和三十三年に病気の届け出がございまして、当時におきましてはいわゆるハンター・ラッセル症候群ということでかなり顕著な症候があったわけでございますが、その後遅発性水俣病あるいは小児水俣病というようなものも出てまいりまして、そういう面では水俣病像を一概に御説明するのがなかなか難しいものでございますが、先生お話の中にございますように、大まかといいますか、この症状を申し上げますと、両手足、四肢の末端のいわゆる感覚障害に始まりまして、運動失調なりあるいは平衡機能障害、それから求心性視野狭窄、歩行障害、構音障害、筋力低下、振戦、眼球運動異常というような症状を起こすものでございます。たまには味覚障害なり臭覚障害あるいは神経障害というような症状も起こすことがあるわけでございまして、これらについて個々のケースといいますか、個々の申請者方々につきましてそれぞれ判断することになろうかと思うわけでございます。  特に、こういういろんな症状が出てまいっているわけでございますが、その症状の中で多く見られるといいますか、共通して見られる症候といたしましては、四肢、両手両足でございますが、四肢末端ほど強い両側性の感覚障害、時には口の回りの感覚障害も出現することもある。それから小脳性に由来する運動失調、それから両側性の求心性視野狭窄などが主要症候といいますか、主な症候でございまして、それ以外に先ほど申し上げましたようないろんな障害が付随するといいますか、出てくることもあるわけでございまして、そういう面では、患者さんといいますか、申請者の病像がいろいろ出てくるものでございますから、この病像につきまして水俣病に関します専門家のお集まりにおける審査会において審査をしていただきまして、水俣病であるのかないのかという判断をしていただいておるという状況にございます。
  176. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 水俣病認定が非常におくれておるという話が出ておりますね。認定がおくれるというのは、症状が出ておれば診ればわかるはずなのにどうしておくれるのか。つまり、全然症状が出てこない人が申請をしてこられるんでしょうか。その点いかがですか。
  177. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) ただいま私が御説明申し上げました症状は、すべてが水俣病の場合だけ特定して出る主要症状というわけでもございませんで、他の疾病によっても起こる症状があるわけでございます。ただ、水俣病におきましては、先ほど申し上げましたような主要症候がかなり特徴的に出るということでございます。そういうようなことで、いろんな病気をお持ちの方々がいろんな症候を出されますこともございますので、そういう面では、審査会において、それぞれの病気が他の病気に由来するかどうかということについても慎重に検討しなきゃならないという問題もあるわけでございます。  それから、先ほど申し上げましたように、当初の水俣病発生の時期におきましては、かなり水俣病特有な症候が強く出ておりましたこともございまして、判断といいますか、そういうものが非常にしやすかったところがあるわけでございますが、だんだん判断困難の事例が出てくるとか、あるいは年齢の高い方になりますとかぜに伴う症候との判断も必要になるというような問題もございますし、そういう面で、判断困難、もうしばらく経過を見た上で判断したいというような症状をお持ちの方々がだんだんふえてまいっておるというようなことで、審査といいますか、処分に時間を要することになっておるというぐあいに理解いたしております。
  178. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 もうしばらく様子を見るということですと、保留の方でございますね。棄却じゃございませんね。棄却するというのは、はっきりと水俣病でないという認定がなされての棄却なんでしょうか、それとも疑わしいから棄却するんでしょうか、どちらでしょうか。
  179. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 申請がございましてから県の検診センターにおきまして所要検診を行うわけでございますが、その検診の結果、いろんな症状についての検査を行いまして、その検査の結果を審査会において判断をされる。まあ所見のある方もない方もいらっしゃるわけでございますけれども、その時点における症状を見て審査会で判断をいたしまして、水俣病でなければ棄却をすることになるわけでございます。したがいまして、その後時間がたちまして新しい症状が出てくることもあり得るわけでございますので、そういう面では、その症状が出て水俣病じゃないかと思われる場合におきましては再度申請していただきまして、また必要な検査を受け審査会で御審議していただくというような仕組みになっているところでございます。
  180. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 水俣病認定業務促進に関する臨時措置法という法律の第四条を見ますと、「臨時水俣病認定審査会を置く。」と、こうなっておりまして、「委員十人以内で組織する。」となっております。審査をするのにこの審査会を通らねばならぬとなっておりますが、委員が十人以内だというわけなんです。十人以内のそんな少数でこれだけのたくさんの申請をさばき切れるかどうか。結局人数が少ないから未処理件数が多くなってしまったんじゃありませんか。その点どうですか。
  181. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  十名以内の先生方はそれぞれの分野、内科とか神経内科あるいは眼科、耳鼻科というような各科の先生方にもお入りをいただきまして審査会が構成されるわけでございますが、熊本県におきましては大体月に一回、二日間にわたりまして審査を行っているところでございまして、一回当たり大体七十名から八十名ぐらいの審査が行われている状況にございますので、まあそういう面での審査に支障を来すという状態には至っていないというぐあいに理解いたしております。
  182. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 十名はそれぞれ同じ専門でない人とおっしゃいましたが、別々の専門の人が十名以内ですね。それが例えば熊本県だけでも申請が一万百九十五人もおるわけですね。この人を一日七十名おやりになるにしても随分これは時間がかかる。しかも、一日に七十名の人を審査するというようなそういうことでは審査手続が余りにも粗雑ではないかと思われますが、いかがですか。
  183. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  県におきましては月間百五十人検診をやりまして、百三十人審査を行うという計画を立てまして、そのような形での委員構成等を行っているわけでございます。先ほど申し上げました七十名は最近の数字でございますが、そういう面では、現在の委員方々で申しまして、月に検診が順調に推移いたしますれば月間百三十人ぐらいの方々についての審査ができるというぐあいに考えております。そんなことで、一時そういう形で推移しておったわけでございますが、いろんな状況等によりまして現在はその検診なり審査が低下しておる状況にございます。
  184. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 月間百七十名とおっしゃいましたね。これ全部で一万百九十五人申請しているんですよ。一月に百七十名ぐらいの人を審査しておったんではこれは未処理件数がふえるのは当然でございましょうね。そしてしかも、これは認定が非常に少なくて棄却とか保留が多いわけですが、こういうことになるのは結局人数が少ないので適当な審査が行われるのではないか。また、認定はもうはっきりした人だけを認定をして、ちょっと時間がかかるようなのは全部棄却するんではないか。保留というのは、ある程度疑いを持てるのが保留という、そういう推定を受ける状態じゃありませんか、今のおっしゃったような状態ならば。
  185. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  審査につきましては月間百三十人審査をやるという形で体制を組んでいるわけでございますが、先生お話ございましたように、非常に多数の方がお待ちになっている状況にもございますので、当面百五十人検診をやりまして百三十人の審査をするということをまずやっていきたい。いずれたくさんの方々検診を受けられるようになりまして、審査の方に回ってくるという段階になりました場合におきましては、さらに、検診体制なりあるいは審査体制について、先生のおっしゃるように数が少ないために遅延しておるというようなことがもし仮にあるとすれば、そこら辺の手当ても考えなければならないと思うわけでございますが、現在の段階におきましては百五十人検診、百三十人審査体制というものをつくってはあるんでございますけれども審査というよりもむしろ検診の方がうまく機能していないというようなこともございまして、なかなか申請者方々の滞留が続いておる状況にございます。  なお、申請の総件数一万五千件と申しますのは三県分でございまして、熊本県だけで申し上げますと、残っておる方が大体五千件弱でございます。
  186. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私今おたくからいただいた表を見てやっています。人数は。間違っていないつもりなんですが。  要は、法律でどうしてこんなに少ない委員の数を決めたのかということが一つ問題なんですよ。検診の方がなかなかはかどらぬ、こうおっしゃっているんですが、検診がはかどらぬのはやはり検診をするお医者さんの数が少ないからじゃありませんか。どのぐらいの人数で、どのぐらいのお医者さんで検診をなさっておるのか。どうですか、各県別に言いますと。
  187. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 熊本県の例で申し上げますと、熊本県の検診センターにおきましては、五十三年に常駐医を確保いたしまして、その後常駐医を二名にふやしまして検診をやっておったわけでございますが、その後検診を受けられる方が少なくなったということから常駐医が一人お減りになりまして、その分を関係大学等の医師の応援をいただきながら百五十人検診が行われるような体制を現在行っているところでございます。  したがいまして、中身で申し上げますと、熊本県の検診センターにおきましては、勤務医といいますか、常駐医がお一人ございますが、それ以外に各関係大学等からの応援をいただいている先生方が、延べ数になるかもしれませんけれども、三十四名ということでございまして、そういう面でいろんな神経内科、精神科、眼科、耳鼻科という先生方がそれぞれ日を調整しながらおいでいただきまして必要な検診を行っている状況にございます。
  188. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 これは直接確めたわけではないから確実でないかもしれませんが、ある人の話によりますと、検診を非常に嫌う人がおるそうですね。嫌う人の話によりますと、嫌うのは結局検診のやり方が不親切で、丁寧じゃないので、棄却されるおそれが多分にあるというわけです。だから、棄却されてしまったんでは元も子もないのでできるだけ検診を避けたく思うという人もおるようでございますね。  こういうことが事実だとすると、これは問題だと思いますよ。いいかげんな検診をすることによって責任逃れをするということでは困りますので、そういうことについての実態はどうなんでしょうか。
  189. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 水俣病認定申請者検診の実施に当たりましては、先生お話のように、申請者検診をする医師との間に信頼関係といいますか、不信感がないことがどうしても必要でございまして、そういう面では非常に、検診といいますか、特に先ほど申し上げました両足両手の知覚障害といいますものを測定するにつきましては、かなり御本人の考えといいますか、検査をしてそれについての反応といいますか、そういうものについても調べていくということもございます。そういう面では特に申請者とお医者さんの間の信頼関係がなければならない問題でございますし、また、申請者の方の病状といいますか、体の状態によりましてはそれぞれ慎重な配慮をしながら、時間をかけてやるなり、少し休んでからやるというようなことの配慮をしながらやる必要があるだろうというぐあいに思っているところでございます。  そのようなことで、従前からも検診に当たっていらっしゃる先生方は、そういう面で申請者信頼を得ながらあるいは申請者の状態を十分配慮しながら行っているというぐあいに承知いたしておりますけれども、なお今後ともそういう面での配慮が行われるようにしてまいりたいというふうに考えております。
  190. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 私が環境庁の方からいただきました資料によりますと、昭和五十九年二月末現在、熊本県の要処理件数は九千九百四十五件、そのうち認定が千六百十二件、棄却が三千三百六十七件、保留が千四百三件、未審査が三千五百六十三件、こうなっております。これは認定された者の数をパーセントで求めますと、一六%強なんですよ。余りにも認定の数が少ないのではないか。要処理件数の一六%強ですね。こういうわずかな者しか認定にならない理由はどこにあるでしょうか。
  191. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  申請者水俣病であるかどうかを判断するに当たりましては、個々の申請者方々の病状といいますか、症状につきまして検診を行った上で、水俣病にかかわります医学に関し高度の学識と豊富な経験を有する専門家から成ります認定審査会において慎重に判断して行われているところでございます。多数の方々申請をされまして検診を受けられ、先ほども申し上げました認定審査会において判断をされて、その結果におきまして御指摘のような割合といいますか、率になっておるところでございます。その数字で高いとか低いということにつきましては、適当でないといいますか、必ずしも言えない。個々の方々の判断事例を積み上げてまいりますと結果的にそうなりますということで御理解いただきたいと思います。
  192. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この検診を受けて認定を受けませんとチッソの方から賠償を受けることできませんですね。そうじゃありませんか。
  193. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) この審査会において患者さんと認定されました後におきましては、患者さんとチッソとの間に結ばれました契約に基きまして補償等が行われていくという仕組みになっております。
  194. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 今までの裁判を見ますと、余りたくさんの人やっていませんが、裁判を起こした人だけが補償されている、おとなしくして裁判を起こさない人は補償も受けないで苦しんでいるという状況のように推察されますがね。殊に、認定がたった一六%強ぐらいしか認定されていかないということになりますと、これは救済が十分いっていないのではないかと思われるわけですよ。  判決文を見ますと、お見舞い金をやってあるからいいといったような思想があったということが書いてあります。しかし裁判所はお見舞い金ではだめだと言っておりますよ。確実な賠償を早くしてあげなければならないのは、これは発病してからもう随分になるでしょう。これはもう二十年ぐらいになるんじゃありませんか。その間苦しんだままで放置されておるという人が多いわけなんですが、こういう未審査の人は、国の怠慢によって未審査状況が生じたんですから、それに対する損害賠償を請求できるという論理になると思いますがね。ただ、この損害賠償請求ができるといっても、弁護人を雇ってやると金がかかるのでやめておこうという人もおるでしょう。貧乏人は裁判ということに非常に弱いのですよ。そういう事情にあるのに、それをもう見て見ぬふりをして放置されておる国の責任というものは大きいんじゃありませんかな。どうですか。
  195. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 多数の方々申請をしておられまして、その認定業務がなかなか機能していないということにつきましては、私どもも鋭意努力いたしまして、申請者方々の理解を得ながら、できるだけ早く検診を受け審査を進めてまいりたいというぐあいに思っておるところでございます。  このような中におきまして、申請をされましてから処分に至るまでの期間が非常に長くなる方もおられるわけでございまして、先生おっしゃる未審査の方、あるいは保留の方もいらっしゃるわけでございますが、そのような方々につきましては、早く所要検診を受け審査の結果を決める必要があるということは十分わかっておるわけでございますが、その間におきまして時間がかかるというような要素がありますので、その間そういうような方々が治療、医療上に不安が起こってはいけないというような配慮もございまして、そういう方々に対しましては、治療研究助成というような形で、医療費にかかります自己負担分については補助をするというような仕組みで、医療面に関してはできるだけ御心配がないような形で対応いたしておるところでございます。  とにかく私どもといたしましては、先生お話ございましたように、申請から処分までの期間ができるだけ早く進められるよう所要措置が講じられるよう、検診審査といいますものにつきましてさらに努力して進めてまいりたいというぐあいに考えておるところでございます。
  196. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 まあおっしゃることもわかりますが、今未審査の人に対して治療代だけは出していると、こういうお話でしたね。治療代を出す金は一体だれが出すんでしょう。未審査でありまだ認定されていない人に対してチッソは払うでしょうか。それとも国の方で払うんでしょうか。どういうことになっているんでしょう。
  197. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先ほど申し上げました治療研究費の助成でございますが、申請をされましてから処分までの非常に長期にわたる場合におきましては、申請されてから一年経過した方、まあ症状によっては半年の方もいらっしゃいますが、そういう方々に対しましては、病状の把握というような意味もございまして、医療費にかかります自己負担分を国と県折半で補助をしておるといいますか、研究事業を進めておるということでございます。
  198. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 医療費について、未審査の人に対して医療費を払うことを国と県でおやりになる、これは福祉行政なんでしょうか。それとも水俣病というものに対する責任としての措置なんでしょうか。いかがでしょう。
  199. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 申請者方々申請をされましてから処分までに非常に長期にわたる場合もありますことから、その間におきます病状の変化を把握するというような意味で、治療研究という形で実施いたしておるところでございます。
  200. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 そうしますとこれは福祉ですね。病気かどうかわからぬ者に金を出すんですから、まあ老人福祉のようなものですね、病人福祉ですか、そういう見解のように受け取れますがね。まあそれはそれでもいいですが、そこで次の問題に入ります。  先ほども同僚議員から御質問がございました不作為違法確認訴訟があった。その不作為違法確認訴訟、これは昭和五十一年十二月十五日の熊本地裁で、国が検診を怠っておるのでそのために違法状態が生じておる、元来早く検診をして決着をつけなければいかぬものをやっていないということ自体が違法なんだと、こういうことで判決が下りまして、その場合は控訴なさらなかったんですね。ところが、その水俣病認定不作為違法確認訴訟、つまり認定をおくらしておるのは違法だという判決が出た、それでそれを根拠にして損害賠償をおやりになったでしょう。今度損害賠償請求事件の判決が五十八年の七月二十日にあった。ところがこれについては控訴をなさいましたが、これは先ほどから同僚議員からの御質問もあってお答えになったので、それでいいとおっしゃればそれまでですが、どうも私ははっきりわからないんですよ、おっしゃった理由が。  違法確認訴訟、つまり不作為は違法だと、こう裁判所が言ってそれが決まった。既判力があるんです。既判力というものは裁判の効力、もう打ち消せないものがある。だからそれを根拠として損害賠償をしろと、こうやったところが、それに対して国は承知しない、それはだめだというわけで、控訴なさった。どうもこれは筋がはっきりいたしませんがね。先ほど同僚議員に対する御答弁だけではどうも私ははっきりわからないんですが、その理由はどういうところにあるんでしょうか。そういう控訴した理由ですね、何かあるでしょう、特別の理由が。特別の理由がなければ控訴をなさるはずがないわけですね。いかがですか。これは法務省さんの方ですか。
  201. 大藤敏

    説明員(大藤敏君) 御説明申し上げます。  ただいまの御質問の損害賠償請求訴訟の判決に対しまして控訴をいたしましたのは、諸般の事情を総合的に判断した上で決定したところでございますが、特に法律問題に関しましては次のようなところが問題であるというふうに考えた次第でございます。  その第一点は、行政事件訴訟法に言いますところの違法と、それから国家賠償法上の違法とは、原判決は同じものと解釈しているわけでございまして、本件の国家賠償請求は、その違法性の判断に関する限りは不作為の違法確認判決の既判力に拘束されるというふうにしているわけでございます。それが第一点でございます。  第二点は、不作為の違法確認の判決を経ていない他の国家賠償請求訴訟の原告が十一名いるわけでございますが、この人たちに対する関係においても、不作為の違法確認判決の既判力及びその余の十三人の原告らに対する関係との均衡上、知事の不作為を違法であると認めるのが相当であるという判示をした点でございます。  次に第三点は、熊本県知事は国の機関として水俣病に関する認定業務を行っているにもかかわらず、国家賠償法三条によって不作為の違法確認判決の既判力が熊本県にも及ぶ、そういう判示をした点でございます。  それからさらに、既判力が基準時以降の不作為状態にも及ぶんだ、そういう判示をしたところでございます。  そういった点に納得しがたい点があるということでございましたので、環境庁とも協議をいたしまして、さらに上級審の判断を仰ぐというふうにしたわけでございます。
  202. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 どうもその理屈がはっきりわからぬのですが、具体的事実、そういう理屈が出てきた事実は何だったでしょうか。何かあったんでしょう。いろいろ事実があるので、それでそういう理屈が出てきたんじゃありませんか。その背景となる事実をひとつ答弁ください。
  203. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  先生御案内のとおり、五十一年の不作為判決が確定されまして以降、国、県一体となりまして認定業務促進のためにいろんな面での努力をやってまいっているわけでございます。そういう努力をいろいろやってまいっておりますことを認められないといいますか、評価されていないということでこのような判決が示されたわけでございまして、こういう点につきましては私どもといたしましても非常に残念に思っているところでございます。
  204. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 理論的な問題をやっておってもしようがありませんので次に行きますが、これは損害賠償請求訴訟を起こした人はそれで救われることもありますね。ところが多くの人がその損害賠償請求訴訟をしていないのですよ。それはいろんな理由があってしていないと思いますが、現在の日本の裁判制度ではとても金がかかるので不安に思ってしていないというのがこれは一般の民衆の心理状況だと私は思います。  そこで、この水俣病のように同じ病状の人がチッソの行為によって発生した場合には、どなたかが代表で訴訟を起こされた。そしてそれに下ったところの判決というものを参照しまして、それ以外の実際の水俣病にかかっている人に対する損害賠償を実施するという考え方について今後実行しようという御意思はあるかないかお伺いします。つまり、集団訴訟の法理で損害賠償を解決しようという考え方はいかがでございますか。
  205. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  国と県におきましては認定業務促進が最重要であるというぐあいに考えておりまして、最大限努力を重ねてきておるという状況にあるわけでございます。そういう面で国、県におきましては国家賠償法上の責任はないということで争っていることでございますので、そういう考え方で国、県がおるということで御理解いただきたいと思っております。
  206. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 時間が迫ってきましたので、それでは別の問題を御質問申し上げます。  水俣湾、それと八代海方面の汚染状況調査を今まで何回、いつ幾日にどのような調査をしておいでになったか、調査の結果はどうだったか、それから今日現在の状況はどうなっておるか、こういう問題です。安全であるか安全でないか、安全宣言をなさったかなさっていないのか、こういうことについて科学的な根拠を示して御説明願います。
  207. 佐竹五六

    政府委員(佐竹五六君) 御指摘の八代海におきましては約二カ月に一回熊本県が水質測定を行っておるところでございますが、五十八年度までのここ十年間、総水銀、それからアルキル水銀、いずれも水質環境基準を達成しているところでございます。と申しますのは、具体的に申し上げますと、総水銀についての水質環境基準値〇・〇〇〇五ミリグラム・パー・リッター以下であった、それからアルキル水銀については検出されなかった、かようなことでございます。  それから、さらにまた底質についてでございますが、この底質の総水銀につきましては、昭和四十八年度以降これまでに環境庁熊本県がそれぞれ調査を行っておるわけでございますが、その底質の総水銀の含有量は〇・〇三ミリグラム・パー・キログラムから〇・二四ミリグラム・パー・キログラムでございまして、底質の暫定除去基準は二十五ミリグラム・パー・リットルでございますので、その除去しなければならない含有量に比べれば千分の一ないし百分の一という程度の低濃度でございまして、危険性は全くないわけでございます。したがいまして、八代海につきましてはその水質、底質ともに全く危険はないわけでございまして、八代海におきます漁獲物については漁獲規制等も行われていないわけでございます。  このような実態にございますので、私どもも特に安全宣言というようなことはやっていないわけでございます。このような状態でございます。
  208. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 まだ時間が少しありますのでお尋ねしますが、この水俣病認定申請処理状況の表を実は環境庁の方からいただきました際にお尋ねをいたしましたが、処理済み件数のところで認定棄却、計とありますが、認定よりも棄却が多い。それから保留と未審査のところでも未審査が非常に多い。こういうのはどうしてこういうことになるのだろうかという私疑念を持ちましてお尋ねしたところが、一たん棄却された人がまた申請をなさることが多いと、こういうお話だったんです。棄却された人が申請するということです。それは現在法律で禁止していないのでそういうことが起こってくるのでいつまでたっても数が減らないんだと、こういうお話でございましたが、そういう事実はございますか。
  209. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  申請をされまして審査会に諮りまして、その申請者の方が水俣病にかかっているかかかっていないかの判断をされまして、かかっていないという場合には棄却をされるわけでございますが、それは申請されました方のその時点におきます症状等を審査をいたしまして判断されるわけでございますから、その方が時間がたちまして新しい症状が出てまいりました場合におきましては、さらに、疾病にかかっているものといいますか、そういう疑いを持たれて再申請される方もおられるわけでございますので、先生のおっしゃっている意味ではそのとおりでございます。
  210. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 この水俣病認定業務促進に関する臨時措置法という法律の第六条には異議申し立ての規定がございますね。異議申し立てをするんなら法に基づくものですからいいと思いますが、棄却されてしまった人がもう一回その申請をするということについて、そういう手続を規定した法律がどうも見つからぬのですよ。施行令を見ましても書いていないし、それから水俣病認定業務促進に関する臨時措置法施行規則、こういうのにも書いていないし、それからその下の総理府令を見ましても明確でないんですね、このところが。これをもっと明確に、つまり、棄却されてもこうこうこういう理由があれば再び審査請求ができるよと、こういうことの条件をつけた何らか政令なり省令なりをおつくりになる必要があるんじゃないでしょうか。法律に基づかないでいろいろなことをおやりになるというのはどうもおかしいのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  211. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  公害健康被害補償法の第四条第二項に「疾病にかかっていると認められる者の申請に基づき、」というぐあいに規定がございます。この「疾病にかかっていると認められる者の申請に基づき、」ということによりまして、一たん棄却された後におきましても、その後の病状の変化や新たな症状の発生等によりましてそういう水俣病ではないかという疑問を持たれた場合には再申請ができるというぐあいに、ここを救済という観点から理解をいたしまして、これに基づきまして再申請という行為が行われ、それを受理して検診審査を行っているということでございます。
  212. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 飯田君、時間です。
  213. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 もう一つで、時間ですからやめますが、そうしますと、再審査請求をやったんですね、再審査請求をやるという人はもともと病気だったんでしょう。病気だったから再審査請求をしておるわけですが、そういう人を前に棄却してしまったということは、やはり認定審査がずさんだという証拠になりませんかね。つまり、結局は検診をする人が数が足らぬとか、あるいはもう面倒くさいから簡単にやってしまおうとか、そういう事実があるのではないか。だから患者から見ると信頼が置けないという事実があるのではないかという推定を受けるんですが、その点はいかがでしょうか。これひとつ……
  214. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 簡単に集約してください。
  215. 飯田忠雄

    ○飯田忠雄君 簡単にひとつ言ってください。  それから、最後に大臣の所信をお尋ねします、大臣の御決意を。それから提案者の方が、いろいろお出しになった、今まで聞いておられてちょっとおかしくないかということがないかどうか御見解を求めます。
  216. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先生のおっしゃっておられるような心配といいますか、そういうことはないというぐあいに聞いておりますし、そういうことのないように私どもこれからも努めてまいりたいというように思っております。
  217. 上田稔

    国務大臣上田稔君) 飯田先生からいろいろと御質問がございました。  水俣病というのは公害の原点であって、環境庁がつくられた最も大きなもとになったものであるというように私どもは理解をいたしておるのでございます。したがいまして、国といたしましてはこの問題の解決のためにいろいろと対策を立てさしていただいておるのでございます。しかしながら、このもとになりましたチッソ工場からの無機水銀が出されておったのでございます。もともと、戦前と戦後しばらくの間というものは、無機水銀というのは人体に影響がないと実は皆考えておったのでございます。戦前におきましては肥料の中に水銀を使いまして、そしてそれをまいておったこともありまして、その当時におきましてはこういうような被害が出ておらなかったものでございますから、あるいは知らなかったのかもわかりませんが、そういうことで、そういうものは害がないというふうに考えておった。ところがだんだんそれがそうではなくて、有機水銀に変わり得るんだと。そしてまた、それが魚の体内に蓄積されるというようなことが起こってこういう大きな被害が発生をしたということがわかってきた。こういうことからこういう水俣問題というのが発生をいたしたのでございます。  これを考えますと、環境庁というのはそういうことを防止しなくちゃいけないということでございますので、今後発生し得るかもしれないという公害に対して細心の注意を払っていろいろと対策を立てていかなければならない。それの一つのあらわれが、五十七年に地下水の調査をやらしていただいた。そうしたら、まだ人体には及んでおりませんけれども、これはあるいは公害になり得るようなものが発見をされた。早速それに対して手を打っていっておる。あるいはまた、いろんな廃棄物を燃やしていきますと、一般のごみの中に水銀乾電池が入っておる、これが燃えるというようなことによってもまたいろいろ害が出てくる。また、灰の中にもダイオキシンなんかもある。少量ですけれども、今のところは害がないけれども、将来どうなるかわからぬというようなことを発見してきた。  こういうことで、そういうことに対する対策をこれから立てていくということになるのでございます。以前では、そういうことで、わからなかったからということで、それではそれが国の責任ではないかということになると、道義的にはそれはそういうことになるのでございましょうけれども、人知がそこまで及ばなかったということではなかろうかと思うのでございます。しかし、それによって被害を受けておられる方々に対しては、これはもう最善を尽くしてひとつ救済の道、また、おかかりになっているお苦しみを軽減するような対策を立てていくということに全力を挙げていくということでございます。これからも環境庁はその任務に邁進をしていく覚悟でございます。
  218. 福島譲二

    衆議院議員福島譲二君) 今先生が国の責任というものを中心として御質問を展開をされました。  私も、地元出身の代議士の一人として、水俣の問題はこの十年来深い関心を持って見守ってきております。そして、この基本が、申請者の皆さんあるいは患者の皆さん方と国あるいは県との間の相互不信というものが非常に大きないろんな意味での問題の種になっておるということを痛感をいたしております。そのことは大変残念でならないわけでございます。もちろん、県あるいは国の方におきましても、いろんな点で改善を図っていかなければならないこともまだまだ残されてはおりますが、しかし、申請をしていらっしゃる皆様方にも、やはり国、県それぞれかなりのやはり努力はしておるんだということについてのまた御理解もひとつお願いを申し上げたいということを感じた次第でございます。  今先生の御指摘の、例えば棄却された者が再申請をする、それは検診審査がそもそもずさんではなかったかというような御指摘もあるわけでございます。もちろん、再審査された結果改めて認定をされるということも、これもないわけではございませんし、まあしかし、それも当初の審査がずさんであったということか、あるいはまた病状がその後明確化してきたということであるか、そういうこともあろうと思いますし、また大変複雑な病症でございますので、かつて沖中先生が退官されたときに、あれだけの名医の方でも、自分の誤診率が相当なものであったということをおっしゃられたことを思い出すわけでありますが、そういう全体の背景の中にこの問題は理解をしていかなければならない点がたくさんあるんじゃないかなと思っております。  御質問の中にも、認定率というものがだんだん下がってきて、これが意図的に患者の皆さん方を切り捨でしようとしておるものではないかというようなことが何遍かこの席上でも御指摘がございました。しかし、私は、やはり非常に重症の患者の皆さんがまず申請をされてそうして認定をされていったということは、むしろ当然のあるいは自然の趨勢であったわけでございまして、私はそういう意味では認定率が低下をしていくということはむしろ自然の趨勢である、そういうことではないか。そしてまた、同じ確定率が下がってきたその中を見ましても、かつては明確に積極的にこれは水俣病であるという認定をされる内容が大変多かったわけでありますが、最近はむしろ明確に水俣病ではないと言うことができないという、いわば消極的な形での認定がかなり多くなってきた、全体の流れがそういう背景の中にあるということをひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。  そういうことになってまいりますと、検診拒否の問題等につきましても、つい先般衆議院の環境委員会におきまして、四月十三日であったかと思いますが、藤田委員からいみじくも御指摘がございました。検診を受けて棄却となるよりは、むしろペンディングの状態のままにあって治療研究費というものを受けた方が得だというような判断というものも自然に出てくるわけでございますが、しかしその前提として、先ほど申し上げましたように、私は、やはり認定率がだんだん下がってくるということはむしろ自然の趨勢だということをお考えをいただいて、決して国、県が患者切り捨てというものをやっておるんじゃないんだというような御理解のもとに、患者申請をしていらっしゃる皆様方にも、せっかくここに門戸を開放しようとしている、県の審査会ももちろんでございますが、今後新たにつくろうとしておる、継続をしようといたしております国の認定審査会もどしどし虚心坦懐に御利用をいただきまして、そして認定審査業務がどうか円滑にこれから進んでいくように私ども提案者として期待をしてこの法律提案をした次第でございます。
  219. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 最初に上田長官に基本的な問題についてお伺いしたいと思います。  この水俣病認定業務促進に関する臨時措置法審議されましたのは五十三年の十月ごろでありますが、そのころの環境庁山田長官は、公害健康被害補償法の目的は何か、認定はどうあるべきか、そういう質問に対しまして二つ答えてます。一つは、少なくとも水俣病に該当する方は一人も漏れなく救済されるということが本法の目的でなければならない。患者切り捨てであったりチッソから補償金を受ける資格の認定であってはならない。第二点として、認定業務は県段階で行うのが原則である、今回の措置臨時特例のものである、こう答弁されておりますけれども、この基本的な考えには変わりはありませんか。
  220. 上田稔

    国務大臣上田稔君) 水俣病におかかりになっておる方、この方を救済をするということにつきましては、これは方針は変わっておりません。きょうお出しをいただいておりますこの法律、これは臨時に国が旧法による患者の方に対してやらしていただく、それが終わりましたら県の方にお願いをして県でやっていただくと、こういうことでございます。
  221. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 救済するのは当たり前の話で、当時の山田長官は、一人も漏れなく救済されるということが本法の目的だと、そういう点ではどうでしょうか。というのは、先ほど発議者の中で、これはまた後で申し上げますけれども認定率の低下は趨勢であるというこの考えは、私はこの漏れなく救済するということとは大分かけ離れた考えだと思うんですね。  なぜかと申しますと、福島先生も言われたように、かつての典型的な水俣病、私も第一次訴訟のころの患者さんをずっと見ていますけれども、これは本当に深刻なものですね。ただ残念なことは、そういう患者さんの認定や治療から始まったために大変高い水準で水俣病像が固まっちゃったんですよ。その後、水銀の影響を身体に受けながら、そういう高い水準の認定基準があるものだからどんどん切り捨てられていく。それが先ほどは趨勢と言われたんですが、しかし、環境庁の立場からいきますと、少なくとも水銀によって身体上に影響がある、それはいろんな病名で出ると思うんですけれども、そういう者を漏れなく救済していくというのが私は環境庁の立場。そしてその場合には、山田長官も当時言っておりましたけれども、補償を受けるかどうかというのはこれはまた別の問題ですよね。しかし、そこまでのかなり強い因果関係が認められなくたって、その前の段階で救済すべきものはたくさんあると思うんです。私は漏れなく救済というのはそういう趣旨じゃないかと、こう思うんですが、その点どうですか。
  222. 上田稔

    国務大臣上田稔君) 認定をされた方、これはもう漏れなく救済をするという考え方で進んでおります。また、水俣が今後起こらないようにということで今いろいろ水俣湾に対しまして対策、施設、工事といいますか、そういうものをやらしていただいておりますが、これも一つのやはり今後起こさないような救済措置と申しますか、そういうものの一つであると解釈いたしております。
  223. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 認定された方は漏れなく救済するというのは当たり前なんですよ。認定された人を救済しなかったらとんでもない話なんです。問題は、水俣病の、要するに水銀による身体障害のある人は一人も漏れなく救済という場合には、認定するということ、そして救済する、そうじゃないでしょうか。
  224. 上田稔

    国務大臣上田稔君) 私どもこれは審査会にお願いをいたしまして、これはやはり専門家の方が認定をしていただくということにお願いをしておるわけでございまして、私ども素人の考え方でこの考えを入れますと誤るということになるのでお願いをしております。
  225. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 当時の山田長官の言われた趣旨と大分後退していると判断せざるを得ません。それは率直に言ってそうですね。  それで、その問題ばかりやっているわけにいきませんので、次の問題に入りますが、昭和五十三年のこの法案審議の際に我が党は、これは認定制度に名をかりた患者切り捨て促進策であるという立場から反対いたしました。その理由としては三点あります。第一点は、従来環境庁認定業務は住民と身近な立場にある地方公共団体の長が行うものとしてきた基本方針を覆して、そしてこれを国の認定というものとしてきたという点が第一点。それから第二に、前の事務次官通知から大幅に後退した新事務次官通知と一体のものとして出されたものであって、これは認定促進に名をかりた患者切り捨てになるということは明らかだということを私たちは指摘をしました。第三に、行政不服審査の道が閉ざされている。私はその三点いずれも当時私たちが指摘をしたとおりに進んでいると見ざるを得ません。現にこの法案が通った以後ぐっと棄却率が高まっているということは、その何よりの証拠だと思うんです。何も国の方だけではなくて全体としてですね。  それで、ひとつ法律自身の中身に則してお聞きしますが、不服申し立て制度の欠陥の問題です。要するに、臨時審査会が出した結論に対しては異議申し立てたけで不服申し立てができないわけであります。これにつきましては当時その点の不備が指摘されまして、我が党は加わりませんでしたけれども、修正案が出されまして、その修正案の中では、これもさっき指摘がありましたけれども、「公害健康被害補償不服審査会委員及び当該異議申立てに係る患者の主治の医師の鑑定を求め、これを尊重するよう努めなければならない。」旨の規定がつけ加えられて修正されたわけであります。ただ、私たちはそのとき、異議申し立てたけだという点はやっぱり変わらない、単なる努力規定であって、しかも全体的には厳しく制限された認定基準と一体のものだということで、この修正にも反対をしたわけであります。  結論的には、不服申し立ての場合には一段上の機関がもう一度見直すわけですね。ところが異議申し立てというのは、その棄却をした審査会に異議申し立てをしましても、それはいわば単に反省の機会を求めるだけで、基本的には自分に不利な決定をした者に対する異議の申し立てたけですから、大体結論は最初からわかっているんじゃないかということであります。そして、実際にその後棄却されて異議申し立てした人、この異議申し立てば一回も通っていないでしょう。どうですか。
  226. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 異議申し立てのありました件につきましては、この法律にございますように、公害健康被害補償不服審査会の意見あるいは主治医の意見といいますものをとりまして、十分慎重審議をした結果、その異議申し立てについては却下いたしておるところでございます。
  227. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 これは環境庁からもらった資料によりますと、審査件数七十二件中認定二十件、棄却五十二件中八件が異議の申し立てをしましたが、今言われたとおりゼロと。やはり、けった相手にやったってこれはだめなんだということは最初からわかっているんですね。それもまず私たちが指摘したとおりであります。  それからもう一つの問題は、要するに認定業務患者に近いところでやらなきゃいかぬと、こういう問題なんです。やはり実際に患者を診ているか、患者としばしば接触できるかということが大事だと思うんですが、国でやった場合には全く書面審査だけになっていますね。そういう点で患者とかけ離れているということがまず一つの問題。だからその点が救済の道を余計ふさぐんだということを私たちは言ってきました。これに対する答弁は要りません。  もう一つは、むだな面があるんじゃないかということで、これも調べてもらっていますけれども、県でやった場合の審査会の費用と、それから国でやった場合の審査会の費用、一人当たりどの程度違いますか。——計算していないようですが、私たちの方はそちらからもらった資料で計算してみたんですよ。そうしますと、五十六年度で、国の場合には患者一人当たり七万七千四百四十四円、五十七年度も七万四千九百七十四円、五十八年度が七万五千三百四十円。県の場合は、五十六年度で四万四千三百五十五円、五十七年度で四万七千五十五円。大分割り安になっておるんです。大体そんなものでしょう。その点どうですか。
  228. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) この臨時措置法に基づきます審査に当たります費用につきましては、私どもはっきりわかりますのは、この審査会を開きますときの委員等旅費、謝金のたぐいにつきましてはある程度把握できるわけでございますが、それ以外の庁費だとかあるいは検診に必要とする費用等についてはわからない点もあるわけでございますけれども、わかります範囲内におきましては、先生指摘のとおり、それを単純に一人当たりに割り出しますとそのくらいの経費がかかると。県の方の数字については詳細把握いたしておりませんけれども、そのような数字になるのではなかろうかなと実は思っております。
  229. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 私がここで申し上げたいのは、余計に費用がかかり、しかも患者から離れて、実態に即した審査ができないとなれば、もともと、言っているとおり、国がこれを取り上げないでというか、あなたの方に設けるよりもむしろ現場の、県の段階の審査機能を充実した方がいいんじゃないかということを申し上げたいんです。これを延長するよりは県の方をもっともっと充実する。その場合、充実の方法としましては、これも先ほど来お医者さんの数の問題とかいろいろありますけれども、基本的には私は、検診のやり方の問題とか、それからもっと大きく言えば基準の問題ですよね、新次官通達の問題。  ただ、これをやっているとそれだけで時間がたっちゃうのできょうは論じませんけれども、それは後に譲りたいと思うんですが、そういうもっともっと抜本的な対応策と同時に、国がこんな遠いところへ引き取って余計に金をかけるよりは、むしろ現場へ返すということの方が大事じゃないのか。その点のお考えを聞きたいと思います。
  230. 福島譲二

    衆議院議員福島譲二君) 今近藤先生の御指摘の点、理論的には確かに御指摘の中に私どもも同感できる点が幾つかございます。ただ、今の御質問の点で、金額的に県の方が割り安だという問題については、確かに結果的にそうだと思いますが、これは一つは、国の認定審査会においでいただく申請者の方が、利用していただく数が少ないということの結果でございまして、できるだけ国の認定審査会を利用するようにお願いをしたいというのが提案者の趣旨でございます。  もう一つ、確かに県の方を充実するとか、あるいは県にもう一つつくるとかいうことは論理的にも十分に考え得る措置でございますが、五年前にこの法律提案した当時の背景といたしまして、熊本県当局は、国は認定審査業務を機関委任事務として熊本県に押しつけて非常に厄介な仕事を県ばかりにやらしておる、大変けしからぬ、これは機関委任事務だから、ひとつこれを国に返上してしまえというようなことが熊本県議会で大きな問題になりました。その県議会においてこれが決議されるというような事態が発生をいたしました。そういう意味で、この県議会あるいは県当局の気持ちを和らげるというような必要性がございました。  そういう意味で、理屈の上では先ほどの異議申し立て等の問題について確かに問題は残ったところでございますが、そういう過去の歴史的な背景のもとに、じゃ国もひとつ応分にこの認定業務について協力をしよう、協力をさせようという趣旨のもとに議員立法を提案いたした次第でございます。
  231. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 今先生が言われた、国の場合の方が来る数が少ないから割り高になるのは当然だというのは、逆でして、そういう点の一人当たりの単価は逆に国の方が安いか、ほぼ同じなんですよ。問題は、全国から先生方に来てもらうからその旅費分だけ高いんです。だからそういう意味でこれはむだなんですよね。要するに、旅費までかけてそして遠くへ来て、ますます患者から離れるという点で、私はこれは基本的に県に戻し、そして、いろいろ問題はあるけれども、本当に患者の実態に即したものに改めていくということが大事だと思います。  時間の関係で次へ進みますが、これらの問題とあわせて、認定制度が本当に危機的な状況にあると思うんです。これは私、基本的な数字の問題は二月二十三日の補正予算の予算委員会で上田長官に質問しまして、環境庁からも数字をお答えいただきました。もう一度議論の前提としてその数字を申し上げたいと思います。  まず未処分が、先ほど来問題になっているとおり五千名以上ですね。それから申請して十年たっても認定されない者三百名、五年以上たって認定されない者二千六百名、それから解剖は二百六十二名やりましたが、そのうちの約半分の百四十四名が認定されておる。五五%ですね。まずそういう数字があります。  それからもう一つは、再申請中に死亡、そして解剖、認定、これにつきましては環境庁の方では五十八年中の最近の事例だけを報告されまして、そういう人は二名いるというんですが、それはあくまで五十八年中の問題であって、これは私の調査では十五件あるんですね。  これは本当に深刻な問題でして、要するに大変申請業務が時間がかかる、そして棄却が多い。棄却をされた者は先ほど言ったような事情で再申請しますね。これは私は、先ほどの答弁の中で、その後の病状の変化で再申請したものと思うという長谷川部長の考えは事実誤認も甚しいと思うんです。変わってなくたってすぐ申請するんですよ。というのは、棄却が間違いだという確信があるからです。大変高い水準の認定基準によって棄却された、自分は水俣病の水銀の影響が体にあると確信し、そいつを証明するお医者さんもいる、それをけったからけしからぬという一つは抗議の意味で再申請し、もう一つは、先ほど指摘もあったように、やはり棄却されれば治療費はもらえない。しかも、治療費もらえないというのはこれは大変、私考えれば逆なんだけれども、それこそもう本当に深刻な最低生活にありますね。  だからそれがもう一度もらいたいということでやっていくんですが、それはなぜ検診拒否するのかということにもつながってくるんですが、そういうともかくも棄却が間違いだったということが死んだ後解剖によって初めてわかる、そういう数がこれは環境庁が認めるだけでも昨年二件、もっと全体見れば十五件ある。本当にこれは深刻な事態だと思うんですね。私は、そういう点について環境庁として反省があるのかどうか、既に裁判でもその点は認められておりますが、その点どうでしょうか。
  232. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  審査会におきましては、申請される方が申請されました時点におきまして検診センターにおきまして所要の検査を行うわけでございますが、その検査の所見を審査会におきまして慎重に審議をいたしまして、水俣病であるかないかということについての判断を行っているわけでございます。したがいまして、そのとき、申請者検診を受けた時点におきます症状、まあ過去の既往歴等もあるわけでございますが、そういうものに基づきまして判断をされるわけでございますので、その時点においては、審査会においてその方は水俣病ではないという判断をされた上で棄却をされておるということになるわけでございます。その後時間の経過に伴いまして症状が発現してくる方もあり得る話でございますし、そういうことで再申請される方もあるだろうと思うわけでございます。  再申請をされましてさらに再検診を受けられて、それをまた審査会で御審議をいただく手順ではございますけれども検診審査体制が必ずしも機能していないというようなことから、再申請をされたままで亡くなられる方もいらっしゃるということでございまして、五十八年中の数字で申し上げますと、一たん審査会棄却をされた方が十名おられまして、その方が再申請をされまして、亡くなられまして、解剖所見が得られて、解剖所見と臨床所見を総合的に判断して審査会ではその中の二名を水俣病ということで認められたということでございますので、そういう面で、この水俣病像といいますのが時間の推移に伴いまして発現してくるということもあるわけでございますので、そういう面で非常に難しいといいますか、時間的経過に伴ってそういうことがあり得るということでございますので、御理解いただきたいというふうに思っております。
  233. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 この問題について指摘しますと、必ず、専門家先生方が公正に判断する認定審査会で決めるんだということなんですが、ただ、これはもう経過的に見まして、前の次官通達のときとそれから新次官通達では、環境庁は全然変わっていないと言うんですが、現場では完全に違っておりまして、前なら認定されたような資料でも今は認定されないというのが現実に起きておるんです。私はその点では、検診制度、それから認定審査会、機構全体をもう一度環境庁が本当に真剣になって見直さないとこの問題解決しないと思うんです。これはまた次に議論したいと思うんです。  さらに深刻な事実があるんですね。今申し上げた、棄却され、死んで解剖してそしてやって患者に認められるという例とか、あるいは申請中に死んでしまって解剖で認めてもらえるという、その解剖自身が果たして維持できるんだろうか、こういう問題があると思うんです。  そこで具体的に熊本の例に即してお伺いしますが、熊本水俣病の解剖を担当している人は何人ですか。
  234. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 主としておやりになっていらっしゃる先生はお一人でございます。
  235. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 それは衛藤先生とおっしゃるんですが、解剖というのは単に体を切り開くだけじゃなくて、特に水俣病の場合には脳とそれから一般臓器、それをきちっと取り出して標本をつくって十分な検索を行うことが必要だと思うんですね。そしてさらに、それに基づいて認定審査会に出す資料づくり、それに基づいて今度いろいろ書類を書く。それを出した場合にはもちろん認定審査会専門家検討対象ということにもなりますし、もし裁判になれば裁判の証拠として論争の対象になるというんで、やはり相当労力と時間と神経を使うものじゃないでしょうか。実態はどうでしょうか。
  236. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 先生のおっしゃるとおり、病理所見、解剖されましてから標本をつくり、それについての判断をされることにつきましては相当な時間を要するものというぐあいに考えております。
  237. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 大体普通の能力がある人の場合、一カ月に何検体ぐらいの解剖ができるんでしょうか。というのは、現にこの間もこれは予算委員会で答弁ありましたよね。ことしになってから十件。あれは二月の段階でしたから、一カ月五件。一カ月五件というのを衛藤先生が一人で全部やっているわけですからね。大体、聞きたいことは、一カ月に五件なんということが人間としてできることなのか。
  238. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) それを主としておやりになる先生が、その水俣病の疑いを持ったまま亡くなられた方の解剖にどの程度時間をかけられるかどうかということにかかわる問題だろうと思います。また、熊本大学の病理学の先生にお願いしているところでございますので、その先生がそれ以外の研究等もおありであるわけでございますので、そういう面で、先生お話しのように、現在はその先生にお願いしますのは月間五体ということでお願いしておるという状況にございます。
  239. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 果たしてそれが人間の能力としてできるかどうか。学者というのはそういう解剖に時間を割いているだけが仕事じゃないんですからね。ほかの研究もたくさんあるわけですよね。できるかどうかお答えがないんですが、これは聞いてみると、そんなのもうできないと。要するに、五件はやればできるけれども、それだけかかっちゃって学者として何もできないと言います。しかも、今既にやったもののその報告書づくりだけでもいつになるかわからないというような状況が現にあります、これは実際聞いてみますと。  そこで、時間が来ちゃったのでこれは次回にまたやらざるを得ませんが、さらに聞きたい点は、この衛藤先生は留学するんでしょう。四月いっぱいは今までの経過があるからやるというんですよ。その後五月一日からは解剖する先生はいなくなっちゃうんじゃないか。となれば、今まで言ったとおり、棄却され、死んで解剖と、もう人間最後の、最低のひどい状況でやっと認定されるんだけれども、衛藤先生が外遊される。外遊される事実は御存じでしょう。外遊され、後なくなっちゃうんじゃないか、こういう心配があるんですが、環境庁はそれに対して、後は万々大丈夫だ、今後も継続できるという、そういう自信がありますか。
  240. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  熊本大学におきます解剖の問題でございますが、熊本大学におきましては今後とも引き続き従前の機能といいますか、それは維持するというぐあいに聞いております。
  241. 近藤忠孝

    ○近藤忠孝君 維持すると聞いておるつたって、実際にそんな心当たりありますか。こんな大変な仕事を大体だれが引き受けるかという問題が一つありますね。もっともっとたくさん出てきたら大変だと。と同時に、よほどその道の専門家でなきゃできないという面もあるんです。できると言われていると言うけれども、本当に自信があるのかどうか。  もう時間がないので、それが一つと、そして、その後の後任がなかなか見つからないなんていうことだってあり得るんです。そんな場合の責任一体どうするのか。これが二点ですね。  そして私はもう一つお聞きしたいのは、どんな事態になっても、これはもう患者にとってはぎりぎりの、ぎりぎり以下の問題ですからね。生前の認定とは全然次元の違う、そういう問題すら救済方法がなくなるとなれば、まさに地獄ですよね。本当に環境庁はこの問題を責任を持ってやっていくのか。  この三点お聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  242. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 病理解剖につきましては、先生おっしゃるように、解剖後の所見を審査会におきます判断の要件として使わせていただいているところでございますが、御指摘のような熊本大学におきます病理解剖の体制が今後とも維持されるように私ども県ともよく相談し、あるいは大学ともよく協議いたしまして、そういう体制が確保されるというぐあいに思っておりますし、確保されるように万全の努力を図ってまいりたいというぐあいに考えております。
  243. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 きょうの午後から同僚議員の皆さん方が今回のこの臨時措置法について質問をされておられます。いずれも、苦しんでいる患者さん方を一刻も早く救済をしなければいけない、こういう観点からの御質問であったと私は理解をしております。  考えてみますと、先ほどから長官も何回もおっしゃっておいででございますけれど、昭和三十一年の五月に、もとの新日素から奇病の発生が報告されました。そのときに我々国民も、例えば何にも知らない猫が、純朴な漁民が、何百年来自分たちが食べ続けていた、海でとれた魚を食べて狂い死にをするという、本当に身のももよだつようなニュースに接して驚くと同時に、これは大変なことだと、こう考えました。当時私は放送局の報道部におりましたけれど、私も何回も現地に参りましてその実態を見て、本当にただもう恐ろしいという一語に尽きた取材経験をしたことがございます。長官もおっしゃいましたように、だからこそ公害という言葉が普通名詞になり、昭和三十年以前は私は字引には公害という単語は記載されていなかったように理解しておりますし、それから以後環境庁がこうやって一つの行政体として設けられるに至った。まさにおっしゃいますように公害の原点がこの水俣病であると思います。で、救済法、補償法、そして今回の臨時措置法行政は対応をしてきたわけでございますけれど、そこでまずお尋ねをいたします。  この水俣病に端を発しましたいわゆる公害問題について、環境庁は的確にこれまで法律上対応をしてきたか。単に法律上だけではなくて、その根幹をなすところの国民の救済、あるいは二度とこういうことを起こしてはならないという精神面においても、環境庁がその先頭に立って闘い続けてきたという実感があるかどうか、そのことをまず長官にお伺いをいたしたいと思います。
  244. 上田稔

    国務大臣上田稔君) 中村先生の御指摘でございますが、確かに三十一年のころでございますが、私も新聞で水俣の猫の話を実は読みました。私も実は水俣の近くに兵隊でいたものでございますから、非常に関心を持っておったのでございます。したがいましてそういう記事にも引かれて読んだのでございますが、そのときにはまさか無機水銀がそういうようなことを起こすとは実は考えてもいなかったのでございます。これはどういうことなんだろうか、ああ昔はなかったのにと思ったのでございますけれども、それがだんだんとわかってきて、こういう事態がわかったわけでございますが、これは大変だと実は思ったのでございます。  したがいまして、それに対していろいろ対策を国もやって、県も一生懸命になって知事さんも先頭に立っておやりをいただいた。国会議員さんも県会議員さんもおやりをいただいた。しかしながらやはりなかなか、初めてのものでございますので、その対策がそれでは振り返っていいかどうかということになるとそれはわかりませんが、最善を尽くしておやりをいただいてきたと私は確信をいたしておるのでございます。まあこれからもやはり救済を早く完成をしてしまわなくちゃいけない。今度この法律を議員立法でお出しをいただいたゆえんのものもそこにあるのではなかろうかと思うのでございます。したがいまして、その対策の一環として私どもも懸命になってやらしていただきたいと考えて決意をいたしておるものでございます。  なお、今後、初めは無機水銀でございましたのですが、それが有機水銀に変わって体内に蓄積される、こういうことになったのでございますが、こういうようなことはもう本当に考えてもいなかったのでございますが、これからこういうようなことがさらに起こるといけないということで、環境庁としては他の問題に対してもひとつ大いに力を入れて、今まだわからない面もたくさんにあるわけでございますが、それに対して力を入れてやらしていただきたい、こういうふうに考えております。懸命になってやらしていただきます。
  245. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 発議者でございます福島先生に感想をお伺いいたしたいと思います。地元とお伺いいたしました。  最初この奇病の発生が報告され、自来三十年近いわけですね、二十八年になります。その間ずつと水俣病の現状をごらんになり、そしてこれを何とかしなければいけないということで先生御自身先頭になって頑張ってこられたと思いますけれども、今回この臨時措置法を発議なさいましたそのきっかけといいますか、そのきっかけの中に、やはり三十年近く現地にあって患者を見てこられたその思いというものが込められている、こう思うんです。だからしたがって認定業務は非常に的確かつ速やかでなければならない、こう思うんですけれども、その辺につきましての御感想をお伺いいたしたいと思います。
  246. 福島譲二

    衆議院議員福島譲二君) 私も、直接郷里に帰りましてこの水俣の問題を目の当たりにいたしましたのはまだ十年間でございますが、それはともかくとして、本当にこの事件の発生以来長い年月が経過をいたしまして、本委員会でも再々御指摘のようにたくさんの方々がまだ申請段階で取り残されておるということは本当に残念な限りでございます。  これにつきましては、先ほども申し上げましたような意味で大変一筋縄ではいかない複雑ないろんな背景があるということも事実ではございますが、しかし、何としてもこの不幸な事態というものをでき得る限り早い機会に、短い期間で解消するということは、当然のことながら国、県としても今後一層努力をしていかなければならない。そういう意味合いで、この臨時措置法に基づく認定審査会というものが大きく寄与できるようにひとつ申請者の皆様方にも大きな気持ちで門戸をたたいて御利用をいただきたい、このような思いでいっぱいでございます。
  247. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 本当に私は、人間、のど元過ぎれば熱さを忘れるということを言いますが、でもやっぱり公害の原点であるこの水俣病については、かりそめにも風化というような言葉が安易に用いられては絶対にいけないと思いますね。  そういう点から見ますと、犯罪者を裁判なんかやる場合に、疑わしきは罰せずという言葉がございますけれども、こういった公害病の認定等の場合は、一点たりとも疑わしい点があるならばこれはもう積極的に、それを切り捨てたり、大丈夫だろうというんじゃなくて、もうほんの少しでも疑わしい点があればこれを十分に担保していく、均てんしていく、救済していく、こういう姿勢が最も環境庁に望まれる根本的な点だと思うんですね。  それで、今回の臨時措置法について一、二お尋ねをいたしますけれど、これまで同僚議員がもう何回もお尋ねでございまして、重複はいたしますけれどお尋ねをいたしますが、およそ二千七百名が認定されまして補償が既にされておりますが、一方で、申請をしながら何ら処分を受けていない人が五千数百人もいる、こういうことなんですね。これはやっぱり未処分者がこれだけいると大問題ですね。今私が申し述べたような観点からしてもこれは大変な問題である、こう思うんです。この未処分者の中には、一度棄却処分を受けながら再申請をした人がいらっしゃる、こういうふうに聞いております。この点を含めて、未処分者の内訳、その現状について環境庁がどのように把握をしていらっしゃるのか、お教えを願います。
  248. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  昭和五十九年二月末現在の集計でございますが、申請者延べ数が一万四千二百八十八名ございまして、そのうち認定されました方が二千六百五十九名、棄却が五千九百二十五名となっております。残りの五千七百四名がいまだ認定にかかわる処分を受けていないということになるわけでございます。この未処分者方々のうち約三割に当たります千六百十九名の方々は、一度審査会にお諮りいたしたところでございますけれども医学的判断が困難であり、症状についてその推移を見る必要があるというようなことから、再度検診を受けていただき慎重に審査をすることとした、いわゆる保留者の方々でございます。また、三割強の千九百五十一名の方につきましては、一度棄却された後再び申請された方でございます。なお、ここ数年におきましては、申請者のうちの約六割から七割の方が再申請者という形になっております。  申し上げましたように、このように、未処分の方といいましても、全員が検診審査が行われていないということではなくて、かなりの方々につきましては、少なくとも一回は審査をいたしているところでございます。いずれにしましても、これらの未処分方々につきましては、引き続き国、県一体となって認定業務促進最大限努力するつもりでございます。
  249. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 努力するというのは結構なんですけれど、私が初めに、こういった公害行政の根本的精神について確認をいたしました。にもかかわらず、厳然たる事実があるわけですね、五千数百人がまだ認定されていないという。だから私は部長にお尋ねしたいんです。  これまで本当に具体的に、いわばこういうことは二度とあってはならない、環境庁の職員の皆さんが燃えるような情熱でこれに取り組んでこられたか、具体的にはどういう対策を講じてこられたのか、現に今どういう対策を講じつつあるのか、その考え方も含めて、まず部長、それから次に長官にちょっとお考えをお伺いいたしたいと思います。
  250. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  先生お話にもございましたし、私どもといたしましても、水俣病の発生あるいは水俣現地におきます患者さんの苦労、申請者方々の悩みといいますものを十分理解いたしておるつもりでございます。その意味で、患者さんの気持ちも十分理解いたしながら私ども患者さんの救済業務を進めさせていただこうというぐあいに思っておるところでございます。そのような観点におきまして、申請者方々につきましての検診審査体制の整備ということにつきましても、国と県と協議をいたしまして、古い話になるかもしれませんけれごも、五十二年六月の関係閣僚会議の申し合わせに従いまして、また五十三年のこの臨時措置法審議におきます附帯決議等も踏まえながら、いろんな面での検診審査体制の整備を図ってまいったところでございます。  具体的に申し上げますと、百五十人の検診あるいは百三十人の審査体制の強化とか医師の確保とか、国家公務員によります熊本県に対する医師の派遣の問題等、いろんな面での検診体制、審査体制の整備を図ってまいっているところでございますが、その間いろいろな事情等がございまして、非常に審査がおくれるといいますか、検診認定機能が必ずしも十分に機能していないというところは非常に残念に思っているところでございます。今後とも、国、県一体となりまして十分協議をいたしながら、申請者方々の理解と協力を得ましてこの検診審査体制の機能を十分に発揮していきまして、速やかな処分が行えるよう努力してまいりたいというぐあいに考えております。
  251. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 今検診拒否をしておられる方は何人いらっしゃるんですか。
  252. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 検診拒否をしておられます方々は、五十五年に熊本県におきまして一部の団体の方々から検診拒否ということの反対運動を起こされまして、検診を受けていただきたいということで呼びかけをやりましてもなかなか受けていただけない実情にございます。そのようなことで、検診拒否を呼びかけた方々、あるいはそれに同調するといいますか、そういうことと意見を同じくしてなかなか受けていただけない方々が非常に多くなっておるということでございまして、その割合といいますか、数につきましては詳細は把握いたしていないところでございます。
  253. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 私は、国民の一人として考えれば、さっきも言いましたように、一点疑わしき点があればこれを救済するというのが根本的な精神だと思うんですよ、こういう公害救済の。とすれば、もうこれは地元の方が自主的に、私はぐあいが悪いんだとおっしゃれば、もう検診なんかしなくたってあらゆる救済措置を講じてもいいぐらいに私は思いますよ。しかしまあ現行制度の中では検診を必要としますね。検診を必要とするのにあえてその検診を拒否するというのは、やっぱり拒否する側にもよくよくの事情がある、こう私は思いますけれど、部長どうですか、その原因はどの辺にあるんでしょうか。なぜ検診を受けることを拒否なさるんでしょうね。
  254. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) お答え申し上げます。  申請者方々水俣病であるかどうかということを判断するためには、申請者方々にどうしても検診を受けていただくことが必要であるということは、先生のお言葉にもあったわけでございますけれども、どうしてもそれが必要でありますにもかかわりませず検診を受けていただけないということにつきましては、その理由については理解に苦しむといいますか、その理解をするに非常に困っておる状況にございます。いろんなお話理由等がいろいろ言われているわけでございますけれども、まあいろんな考え方等があるのかもしれませんけれども、私どもといたしましては、その正確な理由についての把握が十分でないということでお答え申し上げることができないわけでございますけれども、何とか申請者方々の理解と協力を得まして検診を受けていただき、速やかな処分を進めてまいりたいというぐあいに思っております。
  255. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 その理解に苦しむということは、なぜ拒否をなさるのか環境庁はわからない、理解に苦しむというのはそういうことですね。だから、なぜそうなさるのか原因も一切把握できない、こういうことなんですか。
  256. 長谷川慧重

    政府委員長谷川慧重君) 不作為違法判決が確定されました後、県と一体となりまして検診審査体制の整備をいろいろやってまいりまして徐々に検診審査体制の機能が動き出しましたやさきにおきまして、そういう一部団体におきます検診拒否運動が始められたわけでございますが、その理由といたしましては、不作為の違法解消に誠意が見られないというようなことを言っておられるわけでございますので、五十一年以降、県、国一体となっていろんな面での検診認定促進対策をやっているわけでございますが、そういう面では申請者方々理由が私どもにはよく理解できないという意味で申し上げたものでございます。
  257. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 最後に、ひとつ長官、そういうふうにいろいろ部長おっしゃいますけれど、五千人以上の方が未処分であるというのはこれは大変ぐあいが悪いと思いますよ、さっきから討論をしておりますように。やはり公害病の原点でございますし、だからこれは何とかしなきゃいけないと思います。その促進のための臨時措置法の改正案でございますから、これからどんどんスピードアップして、そういう点も含めて頑張っていただきたい、こう思いますので、その点につきましての長官の御決意と、それから、恐れ入りますが、発議者でございます福島先生の今回の臨時措置法の一刻も早い採決をお願いになります。その根本的な感想を、なぜこの法律案を一刻も早く成立をさしてもらいたいのか、その点についてのお気持ちをお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  258. 上田稔

    国務大臣上田稔君) お答えを申し上げます。  先ほど、残り五千七百名の方々がまだ申請をしておられてそのままになっておるというお話でございまして、その内訳を部長の方から説明を申し上げましたが、約三分の一が保留の方である。保留というのはどういうことかというと、臨床関係を見ていきまして、そして臨床所見ではちょっとすぐにはわからないという方、これはもうちょっと様子を見さしていただきたい、こういうことで保留をさしていただく、保留をしている間に症状が出てきたときにはまたそれを認定をさせていただく、こういうことでやっておりますので、水俣病に今おかかりになっておられる方々の臨床所見というのはなかなかわかりにくい状態にあるようでございまして、専門のそういうお医者さんが判定が非常にしにくいという状態にある。したがって、それをそういう保留という形で延ばしてそして認定をしようということでおやりをいただいておる。  また、非常に複雑な症状でありますから、もしそれが棄却されても、後において、いや、やつぱり私はどうもじんじんちくちくがあるというようにお考えになられたら、それはまた申請をお受けをしてまた診さしていただくというような制度をつくっておりますので、その点もひとつ私どもは誠意を持ってそういう方々認定をやらしていただきたいと、こういうことでございますので、どうぞその点も御理解をいただきたいと存じます。
  259. 福島譲二

    衆議院議員福島譲二君) 不作為違法の判決あるいはいわゆる待たせ賃訴訟の判決、この判決そのものについてはそれぞれ私なりにいろんな感想、考え方もございますが、しかし、それはともかくとして、一刻も早く不作為違法と言われるような状態というものを解消していくということの努力を国、県がこれからも続けていかなければならないということは、これはもう改めて申すまでもないことかと思います。そしてこの事態を解消していく上に当たりましては、今回国に認定審査会を置くというような形において、まだその他いろんな問題がございますが、国と県が協力一致してこの問題に対処していくという体制をきちっと確立していくということが一つ大変重要なことと思います。もう一つは、申請者の皆さんと申しますか、患者の皆さん方が県あるいは国に対して抱いておられるところの不信感というもの、これをできる限り除去していくという努力がなお大変必要な段階だと思っております。  同時に、先ほど環境庁の方からは一応のお答えはございましたが、実は、熊本県当局がつい先般、県内の三百人の方々検診を受ける希望があるかどうか、もしないとすれば一体それはどういう理由に基づくか、こういうことのアンケートを実施をいたしました。ところがその三百人の中で積極的に検診を希望する数がわずかに六十人でございました。二十四人がいろんな理由検診に応じたくない。中には三次訴訟が決着してからとか、あるいは県が待たせ賃訴訟の控訴をやめたら受診するとか、こういうかなり何というか確信的な理由に基づく拒否運動をなさっていらっしゃる方もおいででございましたが、しかし大多数、七二%の二百十六人の方が全然御回答をいただけなかった、こういう状態でもございます。  そういう意味で、私は、この検診拒否運動の問題につきましても、申請をしていらっしゃる皆様方のもう少し積極的な御理解もいただくべき問題があるんではなかろうか。問題が大変複雑な問題だけに、なかなか簡単にいく問題と思いませんが、今申し上げたようなことを一つ一つほぐしながら、少しでも早い時期にこの不作為違法と言われるような状態をできるだけ脱却するということが国としてもなさなければならない。そういう意味で、今回の臨時措置法に基づく認定審査会も国に応分のひとつ協力をしていただく、そして患者申請者の皆さん方も積極的にこの門戸もひとつ利用していただく、こういうような体制に持っていただくことを期待をいたしておる次第でございます。
  260. 中村鋭一

    ○中村鋭一君 終わります。
  261. 穐山篤

    委員長穐山篤君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時十八分散会      —————・—————