○関嘉彦君
外務大臣はロンドン・
サミット以降、日韓外相会談であるとか、また今度はASEANの拡大外相
会議に御出席されて、文字どおり東奔西走、殊にきょうは、きのう遅く帰ってこられたばかりのところ、長時間質問にお答えいただいてまことにお気の毒に存じますけれども、お役目ですから御辛抱願いたいと思います。
私は二つの問題を取り上げたいと思うんですけれども、
一つは、チョン・ドウホワン大統領の訪日に関する日韓の問題と、それから、今度の
ASEAN拡大外相会議の
成果の問題、この二つを取り上げたいと思っております。
韓国と
日本は地理的には非常に近いのですけれども、ある
意味では非常に遠い国で、国交回復後間もなく二十年になろうというのに、今まで韓国の大統領の公式の訪問がなかったということは、これはむしろ異常といってもいいのではないかと思うのであります。今度、遅過ぎたといえども大統領が訪日されることを心から歓迎したいというふうに思っております。
国民の中には、韓国においては人権が尊重されていないとか、反対派の弾圧が行われているとか、そういうことを取り上げて訪日に反対する人たちもいるようでございますけれども、まだ国をつくって間もない、しかも
北朝鮮と兵戈を交えた後、いわば現在でも準戦時状態にあるような国に対して、
日本と同じような尺度をもって民主主義的でないというふうな評価をするのは、私は間違いではないかと思います。確かに民主主義の成熟度という点からいえば劣っている点はありますけれども、これはやはり程度の問題でありまして、韓国よりもっともっとひどい全体主義的な弾圧をしているような国もあるわけでございまして、そういう国とも
日本は国交を持っておりますし、大統領を迎えたこともあるわけですから、
日本の尺度でほかの国のことを推しはかるべきではない、そういう
考えで歓迎したいというふうに思っております。
しかし、国家間の友好
関係というのは単に
政府対
政府だけの問題ではなしに、民衆レベルで
お互いに本当の友好
関係を結ぶのでないと、国と国との間の親善というのは成り立たないと思うのでありますけれども、どうも残念ながら双方の民衆の間では、最も嫌いな国としてそれぞれ相手の国を挙げる人たちがかなり多い、少なくとも多かったといって間違いないと思うのであります。
これは、過去の不幸な
両国の歴史的
関係に基づくもので、一朝一夕になくなるものではないと思いますけれども、しかし、
政府としてもできるだけそういった精神的な心と心の交流、それを妨げるような条件を取り除いていくということが
政府の任務だろうと思います。そのために幾つかのことがあると思うのでありますけれども、その
一つは、今度大統領が訪日されたときの、天皇陛下に拝謁したときのお言葉の問題でございます。これはすでに同僚議員から取り上げられましたし、また今の
段階で
余り細々したこと空言うのはかえってどうかと思いますから私はこれ以上差し控えますけれども、ただ
一つ希望として述べておきたいことがございます。
それは、天皇というのは
日本国民にとっては象徴でございますけれども、
外国の人はこれは元首として
考えているわけでありまして、やはり
日本の国民の代表として、過去の不幸な事件について、時代について何らかの方法で遺憾の意を表されることは私は当然なことではないかというふうに
考えております。何か
日本の過去を悪く言うことは自虐的な趣味に陥ることだというふうに反対する人もありますけれども、どこの国でも過去において明るい面と暗い面があるのは当たり前であって、どこの国でもそうであって、その暗い面について遺憾の意を表することは、私は少しも
日本のプレスティージを落とすことにはならないと思うのです。その
意味において、
政府としても十分その点を考慮して適切な配慮をされることを希望しておきます。
それからもう
一つ、国民的なレベルでの心の交流を妨げている問題として、私は
外国人登録のときの指紋の押捺の問題があると思うのであります。これは単に韓国人だけではなしに
外国人一般の問題でございますけれども、韓国人は入数において圧倒的に多いし、また日韓地位協定に基づく居住者として特殊な地位にもあるわけでありまして、指紋の問題が日韓の
民間レベルの心の交流の
一つの障害になっているというふうに
考えますので、ここに取り上げて質問したいというふうに
考えております。
民社党はこの問題につきましてはすでに衆議院でたびたび取り上げました。法務省の見解も伺っているわけでございますけれども、国際親善の
立場から改めてこの問題を再考していただきたいというふうに
考えております。というのは、指紋というのはこれはどこの国でもそうだと思いますけれども、やはり犯罪を連想させる問題でございます。法務省として、これは先般の日韓の外相会談でも取り上げられた問題だと思いますけれども、
外務大臣はそれを断られたそうですけれども、それはやはり法務省の見解がその背後にあったのだと思いますので、法務省の方、見えていますですね。――この
指紋押捺の制度を
外国人登録に際して必要だというふうに
考えられる論拠はどこにあるか、それをまずお聞きしたいと思います。