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1984-07-17 第101回国会 参議院 外務委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年七月十七日(火曜日)    午後一時開会     ―――――――――――――    委員異動  五月十日     辞任         補欠選任      久保田真苗君     野田  哲君  五月十一日     辞任         補欠選任      水谷  力君     中西 一郎君      野田  哲君     久保田真苗君  五月十六日     辞任         補欠選任      中西 一郎君     安井  謙君  五月十七日     辞任         補欠選任      抜山 映子君     三治 重信君  五月十八日     辞任         補欠選任      三治 重信君     抜山 映子君  五月十九日     辞任         補欠選任      安井  謙君     中西 一郎君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         後藤 正夫君     理 事                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 松前 達郎君                 抜山 映子君     委 員                 大鷹 淑子君                 嶋崎  均君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 原 文兵衛君                 平井 卓志君                 八百板 正君                 黒柳  明君                 和田 教美君                 立木  洋君                 関  嘉彦君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        内閣法制局第一        部長       前田 正道君        宮内庁次長    山本  悟君        外務大臣官房長  北村  汎君        外務大臣官房外        務報道官     三宅 和助君        外務省アジア局        長        後藤 利雄君        外務省北米局長  栗山 尚一君        外務省欧亜局長  西山 健彦君        外務省中近東ア        フリカ局長    波多野敬雄君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省経済協力        局長       藤田 公郎君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        法務省入国管理        局登録課長    黒木 忠正君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○国際情勢等に関する調査  (イランイラクに対する武器輸出規制に関す  る件)  (日ソ間の信頼醸成措置に関する件)  (ASEAN拡大外相会議に関する件)  (ASEAN諸国に対する教育援助に関する件  )  (日米安保条約事前協議制度に関する件)  (ロンドン・サミットに関する件)  (全斗煥韓国大統領の訪日に関する件)  (米国艦船核搭載トマホーク配備に関する件  )  (外国人登録における指紋押捺に関する件)  (カンボジア問題に関する件)  (軍縮と平和に関する件)  (北朝鮮との関係打開に関する件)     ―――――――――――――
  2. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る五月十一日、水谷力君が委員辞任され、その補欠として中西一郎君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事抜山映子君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 国際情勢等に関する調査議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 秦野章

    秦野章君 イランイラク戦争の、できるならば終結に向かってという努力政府もいろいろおやりになっている。日本立場というものが格好立場もあるということでそれ相応の評価を得ていると思うんですよね。私はその点は大変外交成果をある意味では上げているんではないかと思うんですけれども、サミットでも、あるいは国連の機関の動きでも戦争やめろという、そういう意思表示はずっとある。しかし、なかなかこれ、効果が上がらない。四年たって、犠牲者報道によると随分多いし、近くまたイランの大攻勢も予想されて大きな被害が出るんではないかというような報道もあるわけですけれども。四年たったらイラン終戦条件というのは厳しいが、何かこれを緩和する方向努力ということも当然お考えになっていらっしゃると思うんだけれども。  まず、それに先立って、このやめろやめろというふうな空気をみんなが持ちながら、国際的にも持ちながら、その裏では武器を一生懸命売っている。武器輸出というのは、これはある程度必要悪みたいな面もあろうと思いますね、日本武器は買うんですから。しかし、戦争をやってとにかく相当のところへ四年もやってきたんだから、この辺では武器の問題を少し前向きにみんなが考える、特に湾岸の艦船攻撃フランスエグゾセ戦闘機のミサイルでやっつけているんですから、あのストックホルムの平和研究所の資料を見れば、フランスイラクに既に五十億ドルの武器を売った、五十億ドルというと一兆何千万でしょうから、それだけの武器を送りつつ、サミットその他では戦争はやめてくれみたいな話になっているんだけれども、そういう矛盾というのは現実世界の中ではある程度しようがないのかもしらぬが、これだけ時間がたったら、何かそこに一歩踏み込む道はないであろうかということを思うんですけれどもね。まず、そのことの前提としてイランイラクに対する武器輸出の現況みたいなものをちょっと報告してもらえんでしようかな。
  7. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) イランイラクに対する武器輸出についてはいろいろな情報がございまして、的確なことは把握するのがなかなか困難な事情がございますけれども、我々でいろいろ情報を集めました限りにおきましては、まずイランに対する武器供与国としては、最大供与国北朝鮮でございます。これが大体従来の武器供与の。四〇%ぐらいは提供しているんじゃないかと言われております。その他シリア、リビア、東欧諸国、それから、従来若干量イスラエルからの武器供給があったと聞いております。  次に、イラクに対しましては、最大供与国ソ連でございます。これが多分五〇%以上、六〇%程度の供給ソ連から行っているのではないかと言われております。その他、フランスからエグゾセシュペールエタンダール戦闘爆撃機を初めとしまして最新鋭の武器が供与されております。その他、エジプト、東欧諸国等から武器供与が行われております。  その他、特にイランにおいて活発に使われておりますチャネルといたしましては、いわゆるヨーロッパにあります武器ブラックマーケット、やみ市でございまして、この経路を利用して多くのスペアパーツイランに流れているというふうに了解しております。
  8. 秦野章

    秦野章君 両方に売っている国はどこですか、イランイラク両方武器を売っている国は。
  9. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 東欧諸国がその最大なものだと思いますが、従来、北朝鮮、それから紛争の当初におきましては、ソ連からも両方に流れていたと了解しております。
  10. 秦野章

    秦野章君 イギリスはどうですかな。
  11. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 英国から公式のルートを通じて流れているものは極めて少量であると聞いております。
  12. 秦野章

    秦野章君 イギリスはやや伝統的に、何というかな、ブローカー的にやっぱりやるのだろうと思うんですよね。例えば、イランの飛行機はアメリカでしょうから、部分品がなければ継続できませんわな、部分品がなければ。そういう意味で、どこかから買ってイランも一生懸命やっぱり武器を収集する。  大体、イランイラク両方外国製品武器自国製品武器、その比率はわかりますか。
  13. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 両国においてその大部分外国製武器であると思います。
  14. 秦野章

    秦野章君 大部分というのは九五%かね、要するに大方は外国製品ばかりだ。その武器を結局ソ連とか先進国とか、その他中進国を含めて何カ国あるか知らぬけれども、一生懸命武器を売る。武器を売らなければ自分のところの経済がうまくいかないという立場で売っているんでしょうが、最近、中進国北鮮なんかもそうなんだけれども、武器を売ることによって自分経済を維持するということが必要になった国が随分多いんじゃないですか、ブラジルとか北鮮とか。どうでしょうか。
  15. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 必要になったかどうかはよくわかりませんけれども、それが輸出国側経済相当利益を及ぼしていることは事実だと思います。
  16. 秦野章

    秦野章君 世界現実というものは、戦争をやめろやめろと言いながら一生懸命武器をつくって売るという現実がある。困ったものだなと思うんだけれども、戦争の始まった当初、武器輸出するなど言ったって聞く耳持たぬと思うんですけれども、もう四年たって、そしてイランにも二十万の死者が出た。イラクも五万か六万か出た。これからまだまだやるんだということだと、ちょっと初めの段階とは違って、武器供与の問題というものがいま少し新しいポイントをつくった国際的な外交姿勢が出てきてもいいんじゃなかろうか。稼がなきゃ食えないという立場はわからぬことはないけれども、何せ犠牲者が多いものだから、そして何よりもあそこからやっぱりこれから下手をすると悪い方に発展していくという可能性を見たときに、国際的にも国連総会は秋ですか、ありますね。国連総会が秋にあり、その前の国連事務当局動き等の中に何か新しい動きを促進するようなそういう外交的な、余り表には言えないようなことかもしらぬけれども、日本はそういう任務を持ってやってもらう時期が来たんじゃなかろうか、これは率直に私見なんですけれども、お答えは難しいかもしらぬが。もう四年たって、そしてまた頑張るという、どっちも勝つ見込みがあるような空気もあるのかもしらぬが、ちょっと一歩踏み込んだ手はないんだろうか。何かどうでしょうな、そういう感触からの問題は。
  17. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに今おっしゃるように、四年もたって両国がなかなか和平段階に至らぬ。イラク和平には応ずるということを言っているんですが、イランイラクフセイン体制をつぶすまではだめだと頑張っておりますが、そのイランも最近は相当カーグ島なんかやられて少し動きが鈍くなってきているといいますか、国連調停も受けるというふうな態勢には出ておりますが、しかし、果たしてこれでうまく和平の方へ動いていくかどうかというと、そう簡単には見通しがつかないということですが、おっしゃるように、やはり武器両国とも全部外国から買っていると言ってもいいくらいですから、武器の根をとめれば、これは戦争をやっても非常に原始的な戦争になってくるわけですから、あんな膨大な死傷者が出る、さらにこれが発展するという可能性はなくなるわけで、武器輸出をとめることがそれは一番早道だろうと思います。  私も、実はイラクに強大な武器輸出しているある国の外務大臣に、なぜやめないのか、やめたらいいんじゃないかということを言ったら、いや、自分の国がやめたらかわりソ連が売っちゃう、自分の国のかわりに。ですから同じことだと言わぬばかりの答弁があったわけでございますが、それはそれなりに自分の国にも利益がある、イランイラク戦争することによって決してマイナスはないということでもあると思うのですけれども、しかし、そんなことはかり言っていでこれが拡大したら大変なことになりますから。  しかし最近では、アメリカもそうですしソ連もそうですし、その他の大国がやはり武器輸出を自制しなきゃならぬという、そういう空気が出ていることはこれは事実です。ブラックマーケットというものがありましても、これは相当なものが手に入れられるとしても、新兵器なんというものは手に入れられないでしょうから、大国武器輸出を規制していくということがまず大事じゃないか。ですから、やっぱりこれは国連の問題として、それは日本もこれまでいろいろと努力してまいりましたし、この問題については、日本は全然輸出していない国ですから物は堂々と言えるわけですし、せっかく国連がここまでやってきていますから、やはり国連にもそういう点では積極的にアプローチして、日本の役割として外交努力をするのが私は当然だと思っております。それだけのことを今やっておりますし、国連総会もありますから、私も今の御質問等も踏まえて、それまで戦況がどういうふうになるか、何としても戦争拡大を防ぐように努力をしてまいりたい、こういうふうに思います。
  18. 秦野章

    秦野章君 武器イラクが優秀でイランの方が余りよくなかったようで、人的被害イランが大きいわけですけれども、イラクが何だかじき危なくなるような話があったけれども、そうでもなくなってきたような情勢ですわな。かえってその方が両方がやめるという、やめさせるという、やめてもらうというタイミングにはいいんじゃないかという感じもしますので、国連総会議題みたいなことになるとあるいはうまくいかないかもしらぬ、多数決問題では。だから、国連の機能の中で何か踏ん張って、そして日本なんかも大いにひとつ今までの経験を土台にしてもらう。結局ここまできたら私は武器だと思うんだよね。東西陣営先進国から中進国まで一生懸命武器稼ぎ場にしているという問題については、私は説得力があるような時期にぼちぼち来たと思うんですよね、今までは無理でも。何せ一生懸命戦争やるんだから聞く耳持たぬと思うけれども、もうぼちぼち聞く耳持つような時期に来たから、国連総会が秋にあるが、ぜひひとつその前にというか、日本独自ではなかなか難しいでしょうから、今の外務大臣のお話のように、武器の問題を具体的にひとつ国際場裏に持ち出して、説得力のある姿勢を出すことが日本のためにもいいし、世界のためにもいいし、やっぱり私は武器だと思うんですよ。ひとつそのことをぜひお願いをしたいと思うんですが。
  19. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはやっぱり武器両国輸出されるのを防ぐということが、抑えるということがそれは確かに決定的だろうと思います。なかなか難しい面もありますが、各国の利害関係が皆絡み合っていますから。しかし、ここまで来た以上はやっぱりやれるものからやっていかなきゃなりませんし、そういう点では日本としては一番訴えやすい一つのテーマですから、これは日本外交一つの大きな課題として取り上げて、これまでもやってきたイランイラク戦争拡大防止という方針の中で、この武器に対しての訴えかけ、そしてそれは確かにおっしゃるように国連総会とか何かで論じ合ったって結論が出ないわけですから、国連総会というものを舞台にいろいろと議論が裏で動いておりますから、そういう中で少し努力をしてみたい、大いに努力してみたい。デクエヤル国連事務総長もあれだけの部分調停をやったんですから、大いにやってもらいたいと。そういう点ではひとつ十分に話し合ってみる考えです。
  20. 秦野章

    秦野章君 ぜひひとつそういうことで成果外務大臣、上げてもらいたいと思うのです。  それから、いま一つ日ソの問題で、これも何かふん詰まりみたいな格好なんだけれども、この前も衆議院の論議の中で、外務大臣総理大臣信頼というものを醸成する措置というものをどういうふうに持っていくかというのが一つ課題になっておるんですけれども、抽象論としてね。ヨーロッパヘルシンキ宣言東西ヘルシンキ宣言が一九七五年ですか、ヨーロッパの歴史、ヨーロッパの経過の中では、英仏なんかはたしか艦艇の寄港についてお互いにそれを認めるとか、何かそんなのもあったように思うんだけれども、こっちの方の、日本の方の側では北方領土が出るとさっぱり話がそこから先へいかない。SS20が出てもどうやらそこから先へ話がいかない。しかし、SS20がある限りこっちは何も物が言えないというのも困ったものだなと思うんですけれども、この際ひとつどうだろうかと思うのは、防衛庁が例えば日本海で演習するときは向こうへ通報してやる。そのかわりあなたの方もやるときはこっちへ通報してくれないかというような、既にヨーロッパではやっている東西のある種の試みですな、デタントヘの試みというようなものを、成功するかどうかはともかくとして、そういうものをぶつけてみるというのも手ではなかろうか。やっぱりこれ、何か糸口というものが必要なんだけれども、それが果たして糸口になるかどうかわかりません、両方で通報するというようなことは。しかし、これは危険防止の上から言っても、何というか、意外なトラブルを起こすというような危険を防止するという上から言ってもこれは説得力もあるし、当然やってもいいんじゃないか。できれば両方オブザーバー軍艦に乗せ合ったっていいんだし、本当にできれば、場合によったらウラジオストクとこっちの舞鶴とに軍艦が入りっこしたって構わないというぐらいの、そこはちょっと無理かもしらぬが、少なくとも演習の通報とかオブザーバー、そこまでいけば私は成功だと思うんだけれども、そういうことを提案をしてみるというようなことは、ヨーロッパのまねをするわけじゃないけれども、外交を一歩でも展開していく上での一つの方法ではないかというふうに思うんですが、これ、外務大臣どうでしょう。
  21. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今の日ソ関係で、軍事演習お互いに通報し合うというところまで残念ながら日ソ対話は進んでいないと私は思うんですね。日ソ対話は今始めておりますが、これはもう少しやはり我々としては積み重ねなきゃならぬのじゃないかと。そういう中で今のような問題も議題になり得る可能性というのはある。  残念ながら今は、まず第一に、基本的にはソ連信頼醸成措置のことを言っていますけれども、日本ソ連との間の基本的な対立点はやはり領土問題ですよね。北方四島というのがあってこれはソ連が実質的に支配している、占領している。こういうことだけじゃなくて、最近はあそこにミグ23の軍事基地をつくっているということは、やっぱり日ソ信頼関係を一方的にソ連がぶち破る、今こういうことになっておるものですから、ソ連極東軍の増強も異常なものがありますし、こういう状況から見ますと、もっとやはり我々は基本的にそうした問題を含めて日ソ間で対話が進むという状況にならないと、おっしゃるような点まで話し合うというような、通報し合うというようなことにはなかなか両国の今の関係では持っていけないんじゃないかと。私は、領土問題は領土問題としてこれは日本も後へ引くわけにいきませんから、今後ともテーブルに着いてひとつ議論するというところまでソ連を引っ張り出したいと思っています。  同時にまた、それとともに日ソも、領土問題があるからといって決定的に対立するんじゃなくて、やはりその対立が少しでも対話方向へ進むようにいろいろな面で努力は重ねる必要がある。隣国ですし、何といったって戦争することもできませんから。ですから、これはやはり対話を重ねる以外にないと。その対話が重なって領土問題等についてもテーブルに着くと。日ソ間で緩和した状況が出てくれば、いろいろの今おっしゃるような話し合いも両国で出てくるような状況にもなり得ると思うんですが、今の状況ではまだそこまでいってないと思うんですね、残念ながら。
  22. 秦野章

    秦野章君 結局、北方領土問題がむしろ外交前提だと、あるいは軍事基地の問題が前提だということになると、ちょっと見込みがないような話になってくるんじゃないですか、実際問題として。おっしゃるように、それをひっくるめてほかの話もできるというようなことが一番いいんだけれども、現実日本側外交態度というのはやっぱり軍事問題が前提だということですな。だけれども、前提という気分は当然なんだけれども、東京駅をおりるとあの前に北方領土返還の日が平和の日だというのが上がっていますがね、あれは国民的な標語として非常にいいし、あれでいいんだと思うんだけれども、現実外交ではやっぱり球を投げると。球を投げるという一つの球にそういうものがあっても、これは見込みはないかもしれないけれども、いろいろな球を投げるということがあっていいんじゃないか。日本の国益に非常にまずいんだということはないんで、北方領土SS20もそれは困るに決まっているんだ。それはもう当然なんだけれども、そういう意味では、ちょっと球の投げようが何もないんじゃないのか、北方領土SS20で頑張っている限りは。だから、それは頑張ることは頑張るのだけれども、ほかの球もちょっと投げてみて話の糸口をやっぱりつくってみる、あるいは経済問題なんかであるのかもしれませんけれども、何か投げる球がありますか。受け取らないかもしれないんですよ、ほとんど落ちるだけかもしれぬけれども、それでもいいんだと、そういうような球というものが何かありますかね。
  23. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まとまった球はないですけれども、しかし今いろいろと積み重ねをやっていまして、例えば中東問題、イランイラク戦争なんかでもソ連日本と話し合いたいということをこの前もカピッツァ次官が私に言いました。あるいはまた、国連の問題についていろいろ協議をしようとか、それから日ソ政府間の、政府レベルでの経済協議あるいは民間経済、今度安西さんが委員長になりましたね、永野さんの後を継いだ民間経済協議ですね。これはやはり恐らくソ連シベリア開発等を含むプロジェクトの問題が中心になると思います。  そういうものも含めると、日ソ間には話し合う議題というのは相当あるわけですよ。そしてこれは日本利益にもなる、ソ連利益にもなる。こういうことになっていけば対話が進んでいくわけでありますから、私はいまここで日ソ対話テーブルに着いて一挙に関係がわあっとよくなるという、大きな球を投げてそれがそういう形で投げ返されてくるというようなものはありませんけれども、しかし、ずっと積み重ねることによって改善が漸次進んでいく、漸次ずっと進められていく、そして空気がよくなっていく、こういうことは私は今の状況ではあり得ると思っておるんです。今は何といいましても最も悪い関係にありますから。そして、やることが進めばこれは少しでも改善が進んでいく、そしてそれを積み重ねるということが一番大事じゃないかと思うんですね。一挙にやろうということはちょっと無理だろうと思うんです。
  24. 秦野章

    秦野章君 もちろん、一挙には無理なんですけれども、球の一つにはなるんじゃなかろうかという感じがするのと、今お話しになったけれども、安西さんのあの経済問題ね、これは民間の球ですわな。政府ももちろん事前の連絡を受けてやるわけでしょうけれども、これはかなり球になりますか、安西委員会は。
  25. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは永野さんの後を継いで安西さんがやられて、ソ連相当やはりいろんなシベリア開発等を中心にしたプロジェクトとか持っているわけですから、やはりそれに対する民間の協力といった面ではお互いに将来問題としては協力の可能性の非常にある問題だと、これは委員会だと、こういうふうに思います。
  26. 秦野章

    秦野章君 安西さんのあれが、経済施設、経済団体の交渉が球になるという見込みなら、日本民間政府は違うけれども、向こうは民間政府は一体ですから、こっちもやっぱりそれに対応して政府でもそれが球になるという見込みというのか、可能性というのか、検討というのか、そういうものがなくちゃしようがないわけですね。それは球になるわけですね、球に。
  27. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 政府関係では経済協議を再開することにしたんですから、その政府レベルでの経済協議というものもあわせて、やはりこれからの日ソ経済全体の交流といいますか、改善といいますか、そういうものが進んでいく可能性というものは私はあると思うんですね。ですから、これはやはりソ連側の出方にもよりますが、日本のこれからの対応にもよっていく、日本のこれからの進め方にもよると、こういうふうに思います。
  28. 秦野章

    秦野章君 最後に、さっき私が提案した問題は一挙にはもちろんできないけれども、やっぱりヨーロッパ英仏なんかはずっと早くからやっていることです、演習のときは通報し合うというのは。むしろこれは言うならば安全保障として相互に考えいいことなんですよね。だから、適当な時期にはやっぱりそういう球も投げてみることは、私はマイナスはないんではなかろうかという気がするんですが、どうでしょうな。
  29. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはやっぱりそう簡単にいかないと思いますね。日本の場合は日本の問題もありますけれども、やはり日米安保条約によるところの日米協力というのもあるわけですから、そういうことも十分検討しなきゃなりませんし、今そうした軍事演習といった面について日ソ間で話し合うとか通報し合うとか、そういうふうな状況には到底立ち至っていないんじゃないかと。ですから、これはむしる今後の長い将来の中で日ソ関係が非常に大きく前進する、あるいはまたアジアに大きな動きといいますか変化というのが起こってくる、そういう中にあってはこれは一。つの研究課題というものになるとしても、今、日本立場においては、これは日本立場だけじゃなくて日米安保というのもありますし、これを提案するとかあるいは相談するとかそういう段階では私はないと、こういうふうに言わざるを得ないわけです。
  30. 秦野章

    秦野章君 これでやめます。やめますけれども、日本海というのは要するに太平洋と違って、日本ソ連が千キロしか離れていない池みたいなところですから、そこで両方軍事演習をやるときは通報し合うぐらいのことをしても、これは安保条約で話をすればアメリカもわかるんじゃないか、アメリカ日本と一緒にやるときにはそのぐらいの雅量を持った方がいいんじゃないか。だから、すぐというわけにはいかぬけれども、一つの球ぐらいにはなって何の損があるだろうか、日本で。私は損はないんじゃないかと思うんですがね。これ、ひとつ検討してみてくださいよ。これは防衛庁もそういうことは検討せにゃいかぬと、そう思います。  終わります。
  31. 松前達郎

    ○松前達郎君 きょうは大きく分けて二つほど質問させていただきたいんですが、まず最初は、安倍外務大臣ASEAN拡大外相会議に出席をされて昨日帰国されたわけであります。大変御苦労さまでございました。その後、タイ国にもお寄りになったということで帰国されたわけなんですが、これからの時代というのは太平洋の時代だというふうに言う人が非常に多くなってきておるわけですね、これは軍事的な面は別として。そういった面からも、このASEANとの関係というのは非常に重要になってきているんじゃないかと、こう思うんです。このASEANの拡大外相会議に出席された中で、その中で最もインプレッションの強い議題といいますか、論議といいますか、それについてお漏らしいただければと思うんですが。
  32. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今度、ASEANの拡大外相会議に出席をいたしまして、いろいろとASEAN側六カ国の外相と域外の六カ国の外相と話し合いを、全体でしたりあるいは個々にしたりしたわけでございますが、その中で、政治問題としては一番大きな問題は、何といってもカンボジア問題です。これの和解をどういうふうにして進めるかということが最大課題。これはASEANとしては当然のことだと思いますし、また我々としてもこれは一番アジアの大きな問題としてとらえておるわけですが、これは膠着状態になっておるということでありまして、日本側はそれに対して三項目を提案しまして、これは予想以上に各国の反響を得たと私は思っておりますが、このカンボジア問題が一つの政治問題としては最大課題である。  それから、経済問題としては、何としてもロンドン・サミットというものを踏まえたいわゆる南北問題、開発途上国、ASEANもそうですが、この開発途上国に対して先進国がどういうことをしているのか、これから何をしようとしているのか。どうもロンドンのサミットでは、自分たちの思うような結論を出してもらえなかった、依然として累積債務は厳しい状況にあるし、さらにはまた開発途上国も第一次産品等で大変問題を抱えておる、あるいはまた経済協力等でもっと先進国の協力を得なきゃならぬと、そういう状況で、世界経済は回復したと言うけれども、開発途上国に対してこれから何をしてくれるかというのがやはり大きな議論の問題でした。  それから第三番目は、先ほどお話がありました太平洋の将来、これをめぐって各国がそれぞれ自由な論議をいたしまして、そして太平洋というのが、要するにこれからの二十一世紀に向かって世界を支える大きな地域になってくると、こういう認識のもとに、この太平洋の将来に向かってどういうふうに協力関係お互いに行えるだろうかということをそれぞれの国が主張を述べ、論議したわけです。これはまだ本当の初めの論議で、これでもって結論を出すとか、制度をつくるとか、組織をつくるとか、そういうことじゃありません。議論をして、そしてできるものからひとつやってみようじゃないかと。そこで、とりあえずできるとすれば人づくり、これならばみんな異存はないということで、人づくりについてはお互いに協力し合って、これからの長い将来に向かってやっぱり人づくりが大事である、そこで、太平洋の将来に向かっての協力の一つ課題として、人づくりをまず具体的にお互いに進めようと、こういうことになって、この点については、来年までに一つの案をつくろうという結論に達したわけであります。  大体、それが一応のASEANの大きな議題であった、テーマであったと言ってもいいと思います。
  33. 松前達郎

    ○松前達郎君 今、人づくりのお話をされたわけですが、その後タイ国へ行かれて、キング・モンクット工科大学ですね、これに対する援助といいますか、これもお決めになったと。こういうふうなASEANの国に対する人づくりの援助ですね。  それともう一つ、太平洋というのは非常に広い範囲で、しかも島がたくさんあるわけですね。しかも、新たに独立した国がたくさんある。非常に群小国であるからといって見逃していったんじゃまずいと思うんですね。そういうところも、やはり人づくりというものに対してこれから取りかかっていこうというふうに考えている国が多いんじゃないか。こういう国に対する我が国のそういった教育援助といいますか、そういうものについては何か外務省としてお考えでしょうか。
  34. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これが、まさに私が日本を代表いたしまして、いわゆる人づくり、太平洋の将来に向かっての太平洋協力の人づくり構想に積極的に賛成したゆえんで、日本は東南アジア、特にASEANとの間では、人づくりセンターを初めとする人づくりに対する協力は非常に積極的にやってきて、ASEAN諸国はこれを高く評価しておるわけです。実績もどんどん出てきておるわけであります。ですから、このASEANに対する人づくりの経験というものを生かして、そして今度の会議で出された一つ課題というのは、この協力関係を、人づくりをもっと広げていこうと、太平洋全体に広げていくと。ですから、名前を言うとあれですが、まずパプアニューギニアとか、その他いろいろと小さい国々、島々がありまして、そういうところにやっぱり人づくりが今一番求められているので、こういうところも拡大をしていこうと、それなら日本も積極的に協力できる、またしなきゃならないと、こういうことで日本も賛成したわけで、恐らくこの構想を推進する上においては日本相当な役割を果たしていかなきゃならぬと、こういうふうに思っておりますし、またそれがそれだけの意味のある貢献になると、私はこういうふうに思います。
  35. 松前達郎

    ○松前達郎君 その点、ひとつ今後強力に推進していただければと、こういうふうに希望しておるわけです。  さて次は、今度は軍事的な問題になるんですが、トマホークミサイルの配備の問題が最近随分いろいろと論議をされるようになってきたわけですね。日米安保条約事前協議事項、これは何回も私はここでも申し上げて質問さしていただいたんですが、この中の「配置における重要な変更」というところと、それから「装備における重要な変更」と、この二つの項目があるわけなんですが、その中で「装備における重要な変更」というものについて、これは、「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」と、こういうことになっているわけですね。それで、前にも衆議院でたしか論議されたんじゃないかと思うんですが、これは「及び」というところが問題だと思うんですが、中長距離ミサイルというものだけを抜き出して考えますと、このトマホークというのはまさに中距離ミサイルである。ですから、そういうふうになれば当然事前協議の対象になってくる、これは核弾頭のあるなしにかかわらず。そういうことになると思うんですけれども、その点はどういうふうに解釈されていますか。
  36. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 今、松前委員がお尋ねになりました件につきましては、御指摘のように予算委員会で、参議院の予算委員会で同じ問題が提起されたことがございまして、そのときに御説明したわけでございますけれども、考え方としては次のように御理解いただきたいと思います。  つまり、日米安保条約のもとで、アメリカは安保条約第六条に基づいて日本の施設、区域を利用することができるわけですけれども、ですから、これは建前としてはアメリカは第六条に基づいて自由に施設、区域を使うことができるという建前になっておりますけれども、しかし、我が方としてそれを自由にやってもらっては困るという事柄を三つ挙げまして、それを第六条の実施に関する交換公文の適用対象というふうに規定したわけでございます。  その三つと申しますのが、今御指摘のありました「配置における重要な変更」と、「装備における重要な変更」と、それから日本からの「戦闘作戦行動」と、こういうことになったわけです。  考え方といたしましては、表現としては、「装備における重要な変更」という表現になっておりますけれども、当時問題にされておりましたのは、端的に申しまして、核の持ち込みは日本に相談なしにやってもらっては困ると、こういう考え方で問題が議論をされまして、したがって、ここで議論の対象になっているのは常に核の問題である、こういう基本的な了解のもとに交渉が行われたわけでございます。したがいまして、その内容について、その核の持ち込みというのは一体何であるのかということにつきましては、今御指摘のありました藤山・マッカーサー口頭了解がございまして、その内容としては先ほど委員から御指摘のあったようなもの、つまり、「核弾頭及び中・長距離ミサイルの持込み並びにそれらの基地の建設」を言うということになっておりますが、これはあくまでも核兵器の持ち込みということが大前提で、そういうものの内容として今申し上げたようなことが問題になる、こういう考え方でございますので、あくまでも核兵器の持ち込みということで御理解をいただきたいということでございます。
  37. 松前達郎

    ○松前達郎君 事前協議の対象の核のとき、その今お話しされたような核を前提とすると。核を前提とする中長距離ミサイルの持ち込みが対象になるんだと、こういうふうに理解していいんですか。
  38. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) そういうことでございます。
  39. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、例えばヨーロッパあたりで今問題になっているのがパーシングミサイル、パーシングⅡの方ですね。これは最近では通常弾頭のミサイルを配備するという話が出てきているんですね。そうすると、もしか日本でパーシーグⅡ、中距離ミサイルを核じゃなくて通常弾頭で配備するとなった場合には拒否しませんね。
  40. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 具体的な軍事技術的な知識は私は必ずしも十分でございませんので、一般的な形でお答えしたいと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、ここで言っておりますところの中長距離ミサイルというのは、本来的に核弾頭が装着される中長距離ミサイル、つまり、中長距離ミサイルと言っておるけれども当然に核弾頭を装着する中長距離ミサイル、こういうことでございますので、通常型と核型と両方があり得るようなミサイルについては、たとえ中距離ミサイルであっても当然にここで言う事前協議の対象にはならない、こういうことでございます。
  41. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、持ち込みを許すかどうかこれは別にして、パーシングⅡをもしか持ってくるといった場合、事前協議は必要ないということですね。
  42. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) さっきも申し上げましたように、パーシングⅡに通常型というものが現に存在しているのかどうか、私はちょっと軍事技術的な知識がございませんので直接そのことにはお答えいたしかねますけれども、もし通常弾頭型と核弾頭型と両方あるものでございましたら、それは核弾頭を装着する中距離ミサイルということでない限りにおいては、事前協議の対象にはならないということでございます。
  43. 松前達郎

    ○松前達郎君 逆な言い方を今されているわけですが、そうすると、核弾頭じゃないということが言明されれば、持ち込みは事前協議の対象なしに持ち込める、逆に考えるとそういうことになるわけですね。それが今までちょっと疑問だったわけなんです。  また、もう一つの疑問点があるんですが、これももう何回もやったんですけれども、いろいろ本などを読んでみますと、やはりどうもアメリカ日本で解釈が違っているというのが私の結論なんですね。その解釈というのは何かというと、いわゆる持ち込みという言葉についての解釈。これはライシャワー氏などの表現もありますから、アメリカ側のこの持ち込みという言葉に対する解釈が日本側と違っているというのはどうもはっきりしてきているような感じがするんですね。  アメリカ側の解釈というのは、これはここで申し上げる必要はないかもしれませんが、いわゆるイントロダクション、持ち込みというのは、核兵器を陸上に揚げて配置すること、こういうふうに考えていると。これはライシャワーさんも言っているわけですね。したがって、たとえ核兵器を艦上に積載していても、アメリカ側はイントロダクションとは考えない、陸上に揚げないから。ですから、当然、その寄港するということについては事前協議の対象とならない、こういうふうにアメリカ側は解釈しているんじゃないか。いろいろな議論をずっと見直してみて調べてみても、ほとんどそういう結論に達せざるを得ないような感じを私は持つんですけれども、その点、いかがでしょうか。
  44. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) この点につきましては、松前先生御承知のように従来から累次御質問がありまして、それに対しまして、政府としてはイントロダクションの解釈につきまして政府の一貫した見解を申し上げているところでございまして、アメリカ側の解釈と日本側の解釈とが相違しておるというようなことは承知しておりません。
  45. 松前達郎

    ○松前達郎君 そういうふうにおっしゃるんですが、現実的には、客観的に見てどうしてもこれは相違していると見ざるを得ないような気がするので、これを確かめろというところまで私は言いませんけれども、あるいはその辺が食い違っているから都合がいいのかもしれないんですね。適当なその逃げ方も出てくるような感じもするんです。しかし、いずれにしてもアメリカ側と日本側がどうも食い違っているんじゃないか。これはライシャワーさんが言っている言葉をそのままかりますと、核兵器を装備した艦船が日本領海通過をしたりあるいは寄港する、こういうふうな場合、日米間の事前協議の対象になるというこういう日本政府の見解、これは対象になるというふうに見解を持っているんですか。例えば、核兵器を装備した艦船が領海通過したり寄港したりする場合、これは当然事前協議の対象となると日本側考えているんですか。
  46. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 先ほど北米局長からもお答えいたしましたように、この安保条約の核に関する事前協議のもとでは、いわゆる艦船による核の持ち込みを含めて核の持ち込みに該当するものはすべて事前協議の対象だということは前から申し上げておりまして、これは例えば、安保条約を締結いたしました安保国会の特別委員会におきましても、当時の条約局長答弁で、核を積んだ船が寄港する場合はこの対象になるという答弁があったというふうに記憶しております。ですから、政府といたしましては当初からそういう立場をずっと申し上げているわけでございまして、この点について、具体的に日米間に食い違いがないというふうに了解しておるというのは、先ほど北米局長からお答えしたとおりでございます。
  47. 松前達郎

    ○松前達郎君 アメリカの方がそれについてここで蒸し返して、はっきりした解釈をお互いに合意しようなんというふうには絶対言わないと思うんですね。寄港は持ち込みであると、日本側はそういうふうに見ているわけですね。アメリカはそうじゃない、この辺の食い違いですね。ですから、ライシャワー氏に言わせれば、もしか日本がそう言っているなら、国民にそういうふうに説明しているんだとすれば、政府はうそをついているんだ、こういうことまで言っているんですから、どうもその辺がすっきりしない。最近、特に佐世保の市長さんあたりも、何かそういうことで私と同じような疑義を持っているというふうに思うんですが、安倍外務大臣に一度会って話をしてみたいというような意向も新聞には伝えられておりますが、全く私はそれは同じことだと思うんですね、基本的な問題。  アメリカ側だと通過、寄港、これは持ち込みに当たらない、日本側は持ち込みに当たる、この辺の問題をここで必ず外務省が詰めるというふうなことをおっしゃる必要はないと思いますが、しかし、こういう疑義があるということですね、解釈の差があるということをひとつ頭に置いておかなきゃいけないんじゃないか。これは恐らく今後たくさんこういう問題が出てくるんじゃないかと思うんですね。  とりわけ最近は、ニュージーランドとか、それからオー又トラリアとアメリカの安保条約の問題に関連しても、これはANZUSというんですか、これに関しても、既にアメリカとニュージーランドの間に多少意見の食い違いというかそういうものが出てきていて、アメリカ側としては、ニュージーランドの港が艦船の立ち寄りに使えないというのだったら、安保条約は意味がないと言っているんですから、アメリカ側としては恐らくその辺の解釈も含めてやはり考えているんじゃないか、こう思うんです。この辺がちょっと私まだすっきりしない面があるものですからきょう質問さしていただいたんですが。  もう一つは、アメリカとしては船と積載兵器とは区分していないわけですね。これも何回もアメリカの当局の皆さんがおっしゃっている。船と積載兵器とは区分をしていない。ですから、核兵器を積んだ船と積んでいない船を区分することはできないと言うんですね、アメリカ側としては。これは、マッカーサー元駐日大使がそういうふうにはっきり言っているわけです。  アメリカは、自国の艦艇が日本に立ち寄るときは必ず日本側に今まで通告していますね。艦艇が立ち寄るときは、核を持つ持たないということとは別に通告をしていると思うんですが、船上にある兵器についてはアイデンティファイしないということですね、これをアメリカ側は言っているわけですね。この前私が、また同じように、核の有無についてはアメリカ側は一切公表しないということについて、この委員会で申し上げて質問さしていただいたこともあるんですけれども、こういうことだとすれば、入港の艦船が核装備しているかどうか明らかにしないのは当然なんですが、また同時に、イントロダクションというのが寄港を含まないと考えているから事前協議しないということと相まって、事前協議というのは全然これ、ナンセンスになってしまっている、こういうふうに考えていいんじゃないかと私は思うんですが、その点はいかがでしようか。
  48. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 先ほど申し上げたことの繰り返しになると思いますが、安保条約のもとで第六条の実施に関する交換公文というのが締結されました趣旨は、要するに、そこの交換公文に規定されているような事項についてはアメリカが自由にやってもらっては困る、日本協議をして、日本のオーケーをとった上でやってください、あるいは日本のオーケーがあって初めてやれることである、こういうのが交換公文の趣旨でございます。  その内容としてどういうことが理解されているかということについては、日本アメリカとの間に、この日米安保条約締結の当時から一定の合意があるわけでございますので、その合意をアメリカがきちっと守るということが国際条約を締結する場合の基本前提でございますから、日本側としては、そういう合意というものをアメリカが誠実に遵守しておるという大前提に立ってこの安保条約の運用を考えていくということであり、また、現にアメリカ自身が、最高責任者の名前においてしばしば日本側の責任者に対して、アメリカは安保条約及び関連取り決めの規定は誠実にこれを遵守しておりますし、今後もいたしますということを言っておりますので、そのことに準拠して運用を考えていくということになろうかと思います。
  49. 松前達郎

    ○松前達郎君 これは何回言ってもそういうふうにお答えになるだろうと思うのです。そこから先踏み込むとちょっと大変なことになるんで、そういうお答えになると思うんですが、どうも事前協議、それから交換公文、こういうものを含めて置いてきぼりを食っているような感じがするのですね。暗黙のうちにどんどんと事実が進んでいってしまっているので、それを今から詰めるというわけにいかないのだと、こういうふうな感じを私は持っているのですけれども、それはそれとして、いつまでも疑義が残ると思うのですが、アメリカの国防総省が六月二十七日に、核巡航ミサイルトマホークの配備について、数日前に米国海軍の艦船に配備した、こういうことを発表したわけなんですが、またさらに七月になりますと、これは七月五日でしたか、配備計画というのが大体明らかになってきたわけです。  これによると、八三年度中における配備、これに戦艦ABL八基搭載が一隻、これはニュージャージーだということになるわけなんですが、これと、それから、駆逐艦が二基ABLを積んでいるものが一つ、それと、さらにロサンゼルス級の攻撃型の潜水艦が六隻、合計八隻ですね、こういうふうに八三年度中の配備計画が明らかにされている。八四年になりますとまたこれに追加されていく。こういうふうに核を装備した巡航ミサイルトマホーク、これははっきり明言してこういう配備計画が出ているわけなのです。  ですから、例えばニュージャージーですね、これが昨年の八月ごろでしたか、日本に寄港するという話があって、これは日本側としてどういうふうに対応されたか。恐らく、問題だということをおっしゃったのだと思うのですが、その後、ニュージャージーは日本に来ない、ほかの方に回っていったわけですが、それがまた再び日本にやってくる可能性がある。これもある筋によると、そういった意思表示もされつつあるというふうなことを聞いているのですけれども、ニュージャージーになると、これは核装備は八三年度中に終わってしまうのではっきりしていますから、恐らく政府としては、ニュージャージーの場合は入港を拒否するということをおっしゃったのじゃないか、こういうふうに思うのです。たしかどこかで私は聞きました。  そうなると、今度はロサンゼルス級の攻撃型潜水艦ですね、これについて入港をしてくる、寄港してくる、こういう場合には一体どういうふうに対応されますか。
  50. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) まず、事実関係について御説明申し上げたいと思いますが、先ほど先生がおっしゃいましたトマホークの配備計画というものは、私どもの承知しておりますところでは、アメリカの下院の歳出委員会のまたその下の小委員会でございます国防小委員会の公聴会で、国防省が提出いたしました配備計画の表が新聞に報道されておりますので、これを先生がごらんになられて御質問になられたものと承知いたしますが、この表は、あくまでも核トマホークの配備能力の付与を予定している艦船のクラスとその隻数というものを年度別に示したものでございます。  そこで、先ほど委員御指摘のように、八三年については戦艦が一隻、駆逐艦が一隻、さらにロサンゼルス級の潜水艦六隻というふうに出ておりますが、これは現実の核トマホークの配備を意味するものではございませんで、それぞれのクラスの艦船のトマホークの積載能力を有することを示したものであるというふうに私どもは承知しております。したがいまして、こういう表で個別の艦船が核トマホークの積載能力を持っておるということと、個々のそういうクラスに属する艦船に具体的に核トマホークというものが搭載されておるということとは全く別問題でございますので、私どもの方といたしましては、そういう前提で対応していくというふうに考えております。
  51. 松前達郎

    ○松前達郎君 ニュージャージーの入港について、もしかその希望があった場合には入港を断るというようなことを政府として言明されたことはありませんか。
  52. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) ニュージャージーの寄港につきましては、従来から政府といたしましては、基本的に事前協議の問題につきまして、先ほど来条約局長が御答弁申し上げましたような政府の見解に基づきまして、アメリカが核を持ち込む場合には事前協議日本にかけてくる立場にある。事前協議がないという以上は、核の持ち込みは行われないということが政府の基本的な見解でございまして、ニュージャージーにつきましてもその基本的な見解、政府立場というものは従来から変更ございません。  ただ、ニュージャージーにつきましては、現実にこれは核、非核の区別なしで申し上げるわけでございますが、トマホーク搭載という意味ではアメリカの一番艦でございますので、また国内におきますトマホーク問題に関する非常な関心にもかんがみまして、念には念を入れるという観点から、我が国の立場というものをアメリカ側に伝えることあるべし、そういう趣旨の御答弁は従来国会で申し上げておるというふうに記憶しております。
  53. 松前達郎

    ○松前達郎君 念には念を入れるというふうにおっしゃるのですけれども、はっきり言えば、例えばニュージャージーに、あるいは攻撃型原子力潜水艦に核つきトマホークを積んで日本に寄港したとしても、アメリカ側は持ち込みと考えていないのですから事前協議するわけはないですよね。その辺が問題だと私は申し上げている。だから、この辺がやはり今後詰めていきますとおかしくなってくるんじゃないかと私は思うんですね。ですから、もしかその辺がはっきりしないのであれば、核を持って寄港するということを持ち込むというふうに言うのかどうか、これをひとつ確認したらどうだろうかと思うのですけれども。しかし、それはどうもおやりになる意思がないんじゃないかと思うので、要するに核を持って寄港すること、これを持ち込みと我々は考えているけれども、アメリカ側はどうなんだと。これは今まで確認されたことはないでしょう。
  54. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) その点につきましては、従来からもこれは御答弁申し上げておりますが、政府の見解、核兵器を積んだアメリカ軍艦日本の港に寄港するということはこれは事前協議の対象になるという点につきまして、従来から一貫して国会で申し上げているということは、先ほど御答弁申し上げたとおりでありますけれども、そういう日本の見解はアメリカは十分承知しておるわけでございます。
  55. 松前達郎

    ○松前達郎君 アメリカの方は積載した兵器については明らかにできないわけですから、これはそういう面からも事前協議の対象にならないし、もっと基本的に言うと、持ち込むというイントロダクションという言葉、これについての解釈がどうも違うんじゃないのかと、だれが見てもそういうふうに感じるわけなんで、きょうは質問したわけなんです。  まだまだ私自身がはっきりしていないわけなんですね。ただ、どうもこの辺がはっきりしていないとどんどんこれが形骸化していくような気がするし、しかも置いてきぼりを食って事実の方がどんどん先へ進んでしまう、こういうふうな気がするわけなんですね。これははっきりするとまずい点もあるのかもしれませんが。しかし、この点はまだ疑問が残っているということを、私が疑問を持っているということをひとつ御承知おきいただければというふうに思うわけです。  例えば、さっき申し上げましたオーストラリア、ニュージーランド、アメリカの安保条約といいますか、これもこれからその辺の問題が表面化しようとしているわけですね。連中の言っているのは、核を持って寄港すると、こうはっきり言っているわけですから、日本の場合とちょっと違いますが、これについても労働党内閣が拒否をするとか、これが政策だとかというので、これから会議でいろいろ議論されるのじゃないかと思うんですね。  ですから、これから先トマホークの配備ということに関連していろいろと問題が出てくると思いますので、その辺、ひとつ外務省の方もこれは明らかにしろと私が言っても、なかなかその辺は問題があるかもしれませんが、しかし、そういう疑義が国民の中にあるのだということですね。これをひとつ頭に置いていただければと、こういうふうに思います。  私の質問はきょうはこれで終わらせていただきます。
  56. 八百板正

    ○八百板正君 外務大臣、いろいろと暑いところ駆けめぐって御苦労さまでございました。  主としてロンドンのサミットの話と、それから韓国大統領の訪日の問題でお聞きしたいと思うんですが、その前にちょっと余り耳寄りな話じゃないんだけれども聞いておきたいんですが、よく外交については、古い話では吉田外交とかあるいは石橋財政であるとか、あるいは鳩山外交とか池田財政とか、ずっと古くは松岡外交とか幣原外交なんていろんな名前のついた呼び方があるんですが、キッシンジャー外交なんといっても何となくわかるような気がするんですが、中曽根外交という言葉はどこにも出てこないですね。あれほどどぎつい、ぎらぎらした、日本列島不沈空母だとか四海峡封鎖だとか、ああいうどぎつい色彩の外交。折衝をしておっても、それが中曽根外交というような形で言われないというのは、これはどういうわけなんだろうなというようにちょっと思うんですが、やっぱりこれはレーガン外交の支流みたいに見られて、日本国民の気が乗らないというようなところからそういう呼び名が出ないのじゃないかなと、これは私なりに思うのです。やっぱり外交というのは、丸々相手国と同じだったら外交なんて必要ないのでありますから、そう言っちゃ言葉はおかしいけれども、やっぱり違うところに違った意見と立場があるところにいわゆる外交の重要性が出てくるわけですから、それぞれ違うのですから、違うところを打ち出すというのがやっぱり外交の大事な点ではないかと思うのです。  そこで、ちょっとそぐわない話かもしらぬけれども、今、時期が悪いかもしれませんけれども、後で話題にできなくなりますからお聞きしておきたいんですが、何か中曽根外交という言葉は出ておりませんけれども、いずれにしても中曽根さんのやっている外交姿勢と何か一諸くたにして安倍外交というような形で追及するというのは、何となくやりたくないような気がしまして、そんな感じを持っておるんです。それは一つには、今の政局はいろんなことを言われていますが、言葉の修飾語はいろいろございますけれども、やっぱり中曽根総裁の再選と、一方アメリカ大統領レーガンの再選と、こういうふうなところに字句がかかっておるわけであります。日本の場合はやっぱり十一月の自民党総裁選挙、こういうことにかかってくるわけであります。  外務大臣は、前に総裁選挙に立候補された立場なんですからちょっと今は言いにくいんだと思うんですが、殊に時期も時期だし、今回も立候補されるのでしょうか。これ、やっぱりちょっとそういうニュアンスを表明してもらわぬと、追及というと何ですけれども、中曽根外交と一緒に尋ねるには何となくこっちもアングルの立て方に戸惑いをするので、不適当な時期だけれども、いずれは政治はうんと変化しますから、ちょっと何か一言言ってください。
  57. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いろいろの何とか外交何とか外交ということで、中曽根外交もまだはっきりしないじゃないかと、こういうふうなお話もありますが、しかし、外交というのはやっぱり後から振り返ってみて吉田外交とかそういうことがあるわけで、今ここでちょうど中曽根内閣真っ最中のとき、そういう規定というのはなかなかこれは出しにくいんじゃないかと、こういうふうに思います。これはやはり今後の歴史がどうしても判断するというふうなことになるんじゃないかと思うんですがね。  それから、私の問題はこれはまだ今難しいところでして、政治の世界ですから本当に平穏のようでも何が出てくるかわかりませんし、今のところ考えておりませんけれども、考えていないと言ったらうそになりますけれども、二年前に一応とにかく立候補して手を挙げたんですからその気持ちは持っておりますけれども、これ、どうなりますか、またその節は御支援をお願いしたいと思います。(笑声)
  58. 八百板正

    ○八百板正君 私の方はどちらかと言うとあすのことはわからないというような、一寸先はやみだというようなそういう政局の変化にむしろあおりたい方の気分ですから、そういう意味でやっぱり感触を伺っておかないというと、いろんな動きの上にデリケートに作用してまいりますので、そういうふうな立場考えると、余り中曽根政治にそっくり、ぴったりではちょっと動きにくくなるんじゃないかと思うんです。そういう意味でやはり外交そのものが違った立場、意見と突き当たっていくというのが外交だと思いますが、政治もそういう面があろうと思いますので、余り遠慮しないで大胆にひとつやってもらいたいと思います。  それで次に、ロンドン・サミットについてちょっとお話を伺いたいんですが、十回目ですか、いろんないままでの経過からいって、集約的な見解というようなものもどこでどうまとめるという必要はなかろうかと思いますけれども、絶えず変化するんですから。だけれども、外務省としてこの十回の経過を考えて、どういう問題がどういうふうに処理され、発展してきたかというようなことをやはりまとめておく必要があるんじゃないかと思います。そういう意味ではやっぱり文書でもきちんとまとめていただきたいと思うんですが、まず三点について伺っておきます。  今回のサミットはどんな点に特色を期待して臨んだかと、それが結果としてどういうふうにあらわれたかと、それからヨーロッパの現地に足をつけてみて、外務大臣があるいは中曽根総理が、東京に足をつけてみる場合と違ったものが必ずあったと思うんです。どんな違いを感じたかと、この点、ひとつちょっとお話しください。
  59. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今回のロンドン・サミットでちょうどサミットは十回になるわけでありまして、サミット経済サミットと言われますように、第一次石油ショックを受けて世界経済の安定をいかにして図っていくかと、そのために設けられたサミットなんですが、それなりの成果は上げながら来て、しかしこの一、二回といいますものはやはりだんだんと経済だけ論ずるというわけにもいかないと。政治の問題がどうしても出てくるわけで、去年のウィリアムズバーグでは、御承知のようにやはり西側の結束という形でソ連を軍縮のテーブルに引っ張り出そうと、こういう試みがなされてその声明も出されたわけです。ことしもやはり私はそういう意味においては経済が半分、そして政治が半分といったことになったんじゃないかと思っております。  四つの宣言とそして一つの議長声明が出されたわけでございまして、経済につきましては、幸いにしてことしは去年、おととしに比較いたしますと非常に先進国経済はよくなっておるということで、サミット空気はどちらかというと明るかったということが言えるわけであります。このインフレのない経済安定成長を今後とも続けていこうと、そういうことについての合意を見る、同時にまた、そのためには自由貿易体制をこれからも堅持して、保護主義を抑えていかなきゃならないということも合意を見たわけでありますし、あるいはまた南北問題につきましては、これは私は昨年のサミットよりは一歩進んだんじゃないかと。例えば債務累積問題については、これをケース・バイ・ケースで処理していこうということが昨年のサミットで合意されたわけでございますが、今回はそれぞれの国の自助努力といいますか、そういうものに応じてはケース・バイ・ケースで処理する中で、やはり民間の金利の引き下げ等についてはさらに進めていこうというふうな前進も見られましたし、あるいはまた経済宣言の中で、やはりもっと善意と協力を持って開発途上国の問題には取り組んでいこうという積極的な姿勢も出てきたと私は思っておるわけでございます。  そういう中で、日本は特に新ラウンド、いわゆる東京ラウンドに引き続いてニューラウンドを提唱したわけで、それも来年に準備を初めて、再来年からスタートを切ろうという具体的な提案をしたわけでございます。これは日本がいわば主唱者であるわけでございますが、この点については相当な議論が行われまして、その結果として、とにかくやっぱりニューラウンドが必要であるということには結論が出まして、しかし日本が言うほど、時期を決めて、順序を決めて今やるというのは少し早過ぎるんじゃないかということで、この点は日本も一応その時期の明示案を引っ込めまして、ニューラウンドを積極的にやろうということでは合意したと。私は、これは非常に日本考え方が認められた、今までのサミットの中では非常に特筆大書すべき一つの出来事であろうと、こういうふうに思うわけであります。  政治の面におきましては、民主主義の擁護の宣言、これは、ちょうどノルマンジーの四十年記念式典が盛大に行われておりまして、その明くる日に実はサミットが開始されたものでありまして、当時の敗戦国ドイツあるいは日本、イタリーもそれに参加した。これまでのサミットには参加しているわけですし、やっぱり戦勝国も戦敗国も第二次大戦四十年たって一緒になって同じ価値を共有しながら世界のために貢献していると、こういうことを大きく打ち出そうという試みで、それなりの意味があったと思いますし、あるいはまた、東西問題についてはやはり積極的に対話を呼びかけたということであります。そして、ソ連が核軍縮交渉に中断から早く再開のテーブルにつくことを強く要請したということでありますし、また、イランイラク戦争についてもその戦争拡大防止を打ち出した。これが私はある意味においてはデクエヤル事務総長の部分停戦調停というものに結びついていったんじゃないかと、私はそういうふうに思います。  そういうふうなことで、今回のサミットはいろいろと批判もありますけれども、しかし全体的には、世界の平和、経済の安定、そういう意味においては一つの足並みのそろった先進国としての成果のあるサミットであったと、こういうふうに評価をいたしておるわけであります。
  60. 八百板正

    ○八百板正君 サミットに対する期待は、参加国七カ国というよりも途上国の方にあったのではないかと思います。そういう意味では、やはり必ずしも期待にこたえたものではないのではなかったかというふうな感じを私はいたしております。  あなたは前に、かつて日本も歩んだ途上国の立場を独自に代弁したいというふうに、アメリカ立場とも若干ニュアンスの違ったことを言っておられたようですが、その実際の上の効果は必ずしもそういうふうに出ておらないと思います。やっぱり勇気のある自主外交があってほしいと思います。勇気のある追随外交では褒めようがございません。ましてやレーガンさんと中曽根さんがロン、ヤスというふうなことで、何か自分の再選目当ての見せ場づくりの外交であるなどという声も出ておるわけでありまして、目標が狂ってしまったのでは大きく道を誤ることになります。  次に、韓国の関係についてお尋ねいたします。  日本としては、韓国には謝るだけでは済まされないたくさんの問題を今日まで犯してきております。昔から朝鮮に対しては日本は悪いことばかりやってきまして、ちょっと記録を見ただけでも、古代から日本が朝鮮に軍隊を入れたといいますか、出兵したという記録が十回以上あります。倭寇なんていう物取り強盗のそういう数は無論この中には入れておりません。日本の統治下の朝鮮に対しては、主権を奪っただけでなくていろんな文化を奪い、名前まで変えさせる、地名、官名も変えさせる、日本語を押しつける、文化財は略奪する、とにかく随分悪いことをやったわけであります。普通選挙法で参政権が広がった場合でも、治安維持法、そういうふうなものとのかかわり合いであったわけですけれども、朝鮮の場合は除外して弾圧する方は容赦なくやってきております。戦時は朝鮮の人民を強制連行して日本で強制労働につかせております。  今度逆に朝鮮の方から見ますというと、朝鮮が日本に害を加えたという歴史の記録は私の調べた限りでは見当たらないんです。むしろ、日本の文化は朝鮮から渡った記録がはっきりしておりまして、例えば日本語の村なんというのも、あるいは鳥の代表のツルなんというのもこれは朝鮮語の語源であります。日朝の交流は古代からありまして、紀元前からあります。奈良朝文化というようなことを言われますが、これも朝鮮文化の丸写しとは言えないまでも、影響は非常に大きいです。奈良という言葉は朝鮮語の国とか部と、こういう言葉であります。この考証は信ずべきものがあります。  今は、侵略した、侵略されたという歴史から生じた韓国民族の持つ日本に対するわだかまりというものは深いものがあります。また、日本統治の結果として民族が二つの国家に分断されたこともこの民族の悲しい恨みであります。日本が箱根を境にして東西に二つの国に分割されたと思って考えれば、その痛みを十分に理解することができると思います。また、日本もそういう運命の寸前にあったということも、知らない人は知らないが、知る者は知っております。日本の分断の身がわりに朝鮮が二つに割かれたんだと、だから日本一つの民族国家として残ったのだと、こう思っている人も朝鮮には相当おります。  日本の謝罪というのは、この事実に対して謝罪して償いに努力する立場だと思います。それは、日本のだれが朝鮮のどなたに謝罪するかという問題になります。日本は何回わびても足りない立場であります。  今回、大臣もいらして韓国の大統領をお招きするということに触れておられたんですが、その際に、慣例上日本の天皇陛下との会見が行われる。そこで、天皇の謝罪のお言葉をどんな言葉で言いあらわすかというようなことが大変問題だと、こういうふうな報道があります。外務大臣は、全大統領を招くことを直接にお約束し、お話しになってこられましたのでしようか。九月の何日でしょうか。また、天皇との会見についてもお触れになりましたか。
  61. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今回、私が韓国を訪問いたしまして日韓外相会談を行いましたし、同時にチョン・ドウホワン大統領の表敬をいたしたわけでございますが、この外相会談におきまして、かねてから話がありましたチョン・ドウホワン大統領を国賓として我が国にお迎えをするということははっきりしたわけでございます。決まったわけでございますが、ただ、いつどういう日程でということまでは決めておりません。これは外交当局間で話し合いをして、そしてそのうちに合意を見て発表しようということになったわけでございます。そういう中で国賓としてお迎えをするわけでございますから、当然国賓がこれまで我が国を訪問される場合には、宮中におかれましても国賓に対する行事が行われるわけでございますし、また天皇陛下との会見も行われるわけでございますし、チョン・ドウホワン大統領の場合もそういうことになり得る、こういうふうに思うわけでございますけれども、しかしこの点につきまして韓国側と話し合ったということはありませんし、また話し合う筋合いのものではない、こういうふうに思っております。全然話は出ませんでした。
  62. 八百板正

    ○八百板正君 韓国の新聞にも日本の新聞にもかなりその問題については報道されておるのでありますが、このお言葉といっても、いわゆる戦争責任についておわびをするというようなことになりますと、これは外交上の重大な言葉になるわけでありまして、外交と政治は一体でありまして、政治の国際面にあらわれたものが外交でありますから、ということになりますと、この日本国憲法による象徴天皇の政治に関与、「国政に関する権能を有しない。」と規定したこととのかかわり合いがかなりデリケートになってくるわけでございますが、今までも外務大臣は参議院の委員会の答弁の中でもちょっと触れておられまするが、関係ないということにはなかなかいかないんじゃないでしょうかね、いかがですか。
  63. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 政府としましてはというよりは外務省は、これまで国賓が日本にお見えになるときは、天皇陛下の国賓との会見のための資料として、参考としていろいろな資料を差し出しておったわけでございます。そういう中で会見が行われたわけでございますが、天皇陛下がいかなるお言葉を述べられるかということにつきまして政府当局としましてこの見通しを述べるということは、これは差し控えさしていただかなければならぬ問題である、こういうふうに考えておるわけでございます。
  64. 八百板正

    ○八百板正君 ソウルの特派員の日本の有力な新聞の報道などを見ますと、両国の折衝で陛下のお言葉が重要問題になることは間違いない、こういうふうな言葉を使って断定的に報道しております。また、韓国筋のいろんな報道を総合しますというと、全大統領が日本を訪問する決断の前にこのお言葉のことで慎重な検討があった、こういうふうな報道もあります。それからまた、かつて陛下が中国に対して、当時の鄧小平副総理ですかに対して、両国――日本と中国ですね、両国には長い歴史があり、一時不幸な出来事がありましたというふうなお言葉を天皇控下が述べられておるのですが、ところが韓国では、この中国と同じ表現では受け入れられない、韓国と中国とでは歴史が違う、こういうふうなことを韓国の政府高官が言っておるという報道もあります。  今までの教科書問題などの点を考えましても、いろいろの韓国との折衝の過程を考えましても、かなり細かい話まで詰めてくる段階になりますると、お言葉は陛下の御自由にということにはならないのではないかと思うんですが、時間がございませんから余りこの点を繰り返して申し上げられないのですが、これは、結局陛下のお言葉なり行為に対しては当然に内閣が責任を持たなくちゃいかぬ立場にあるわけですから、また同時に陛下のお言葉がそういうニュアンスを含んだものであるということになれば、これまた当然に直接の国事行為ではないとしても、国事行為に準ずる公的行為でございますから、「内閣の助言と承認により」というような憲法の条文がかかわってくることだと思うのですが、この辺のところはどんなふうにお考えになっておられましょうか。
  65. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 私がお答えするのが必ずしも適当であるかどうかわかりませんが、私どもが外務省として了解しておりますところを簡単に申し上げたいと思います。  今、八百板委員御指摘になりましたように、憲法第七条には、天皇が行う国事行為というものが列挙されているわけでございます。これは内閣の助言と承認によって国民のために行うということになっております。今御指摘になりましたような国賓等に対してお言葉を述べられるという行為は、憲法第七条に規定する国事行為ではないというふうに私どもも了解しておりますが、他方、これは純然たる私的行為だということでもないと考えられます。つまり、憲法の定める国事行為のほかに、天皇の象徴としての地位に基づくいわゆる公的行為と、それから全くの私人として行われる行為というものがある。今問題になっておりますような事柄はいわゆる公的な行為に当たるという面があろうというふうに考えております。したがいまして、最終的には国政全般に対して責任を負っているのは内閣でございますので、内閣が責任を持つということになろうかと考えております。
  66. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、条約局長が答弁いたしましたが、そのとおりでありまして、私もそういうふうに思います。やはり、天皇陛下が国賓等に対してお言葉を述べられるという行為は、いわゆる憲法第七条に規定する国事行為ではありませんが、純然たる私的行為でもなくいわゆる公的な行為に当たるものであります。したがって、最終的には御指摘のように国政全般に対して責任を負っている内閣が責任を持つものであると、こういうふうに考えます。また、チョン・ドウホワン大統領がお見えになる、そして天皇陛下と会見されるということにつきましては、韓国内においても関心が高いことはこれは事実であります。しかし、私が訪韓をした際に、この天皇陛下との会見について韓国側との間には一切話し合いはいたしませんでした。これは、私も訪韓前にたしか委員会で述べたと思いますが、これらの問題は日韓両国政府間で話し合う筋合いのものではない、こういうふうな判断に立って話し合いをいたさなかった次第であります。
  67. 八百板正

    ○八百板正君 時間もございませんから、ちょっと意見だけ述べておきますが、天皇のお言葉が、韓国内で対日感情を親日的に整えるというふうな意味で効果が大きいということは確かに言えるわけであります。しかし、裏腹に言えば、同時にそれはそれほど大きな政治外交に利用されるということを意味するものであります。韓国にとってそれが非常に重要な政治問題であるということは、同時に日本でも重要な政治問題であります。日韓同時同様の案件だというふうに考えなくちゃいかぬ。憲法に反して天皇の政治関与をあえてせざるを得ないような形になりますことは、非常にこれははかり知れない重大な問題を起こすことになります。そしてまた同時に、日本国民が朝鮮に対してわびなければならないというのは、日本国民の全体が朝鮮民族の全体に謝罪して償う努力を果たす義務があるということでありまして、それを分断国家の、しかも今は対立抗争の立場にある二つのうちの一つの国家の代表だけに謝罪して済むと考えてはいけないということです。  でありますから、天皇のお言葉については、天皇御自身あるいは宮内庁御自身ということもさることながら、やはり十分に連絡し、話し合って方向を出されるべきものだろうと思います。そして、日本のわびなければならない朝鮮民族に対する謝罪については、改めて政治の責任として政府見解なり何らかの形で別に明確に打ち出して謝罪を率直に表明すべきものだと、私はそういうふうに思います。それは同時に全斗煥大統領の訪日を機会に、朝鮮民族、朝鮮人民の全員、二つの国家と国民に対して同時に謝罪を表明する、こういう立場が裏打ちされていなければならない、こういうふうに考えます。大臣、いかがですか。
  68. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いろいろと今御意見を聞かしていただいたわけでございますが、我々も、日韓が戦後国交回復しまして以来今日に至るまで、日韓関係改善のために、そして友好を樹立するために努力してまいりました。そして、戦後初めて大統領を日本にお迎えをするということになったわけで、まさにこれは日韓の歴史の上においては歴史的とも言えるわけでございます。そういう中で、やはり日韓の過去の歴史というものを我々振り返ってみまして、日本も常に反省の上に立ってこの日韓のこれからの隣国としての関係をより安定して飛躍させなければならない、そういう一つの大きなスタートを切らなきゃならぬと、こういうふうに思います。また、韓国はそういう中で日本立場というものを韓国政府としても十分理解をしておられると私は考えております。  特に、先ほど天皇陛下のお言葉に関心が高いということを申し上げましたけれども、同時に日本が、日韓の両国の問題にこれはすべきじゃないと、筋合いじゃないということも申し上げたわけでございます。韓国側も同時に天皇の日本の憲法における地位と立場というものも十分理解をしておられまして、そういう点については一切日本側とは議題にならなかったわけでございます。その点について我々は何も今後心配をすることはない。しかし、日韓両国の過去については、これはやはり日本としてむしろ反省をして、その上に立ってこれからの日韓両国の新しい友好関係というものを、新時代というものを築き上げていく一つの大きなスタートに持っていきたいと、こういうふうに念願をいたしておるわけであります。
  69. 八百板正

    ○八百板正君 韓国代表として来られるわけですけれども、やはり朝鮮には現実に二つの政権がある、そして日本がいろいろな意味で謝罪をしなくちゃいかぬのは朝鮮民族全体に対してである。したがって、朝鮮民族の統一に向けてそういう日本の謝罪の立場を下敷きにしていろいろのものを組み立てていかなければならないと、こういう点を特に申し上げて、私の質問を終わります。
  70. 黒柳明

    ○黒柳明君 外務大臣、昨日御帰国になったそうでございます。お役目でございますけれども、大変だったと思います。御苦労さまです。  まず初めに、チョン・ドウホワン大統領の訪日についてお伺いしたいと思います。  その前に、昨夜のことでありますけれども、外務大臣が大統領に向かってじかに訪日を要請してまだ一週間ちょっとしかたっていないわけであります。警備当局によってレーガン大統領訪日以上の警戒警備をしくだろうとこう言われていた警戒本部は設置されてもまだ旬日を経ていない昨日、チョン・ドウホワン大統領訪日反対のためのゲリラ行動が各所で行われた。こういうことについて一番やっぱりショックを受けているのは、何よりも今申しましたようについせんだって大統領にじかに訪日を心から要請したばかりの外務大臣ではなかろうかと、こう私推察するわけでございますが、まず昨日の十カ所余りにわたるそういう嫌がらせといいますか、ゲリラ行動を見まして、報道を聞きましてどのようにお感じになっていますでしようか。
  71. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) けさ新聞を見まして、今お話のように昨日、ゲリラというところまでいっているかどうかということは問題でしょうが、しかし、ああした事件があっちこっちで起こったということは極めて残念であると思います。少なくとも外国の元首を日本に迎える以上は、これは日本政府が全責任を持って安全は保証しなきゃならぬ。これは国家としての政府の責任でございます、国の元首を迎えるわけですから。  そこで、特に日韓関係にかんがみまして、チョン・ドウホワン大統領の訪日につきましてはこれは綿密に慎重に安全を期さなきゃならぬということで、対策本部といいますか、そういう態勢も発足したばかりでございますから、こうしたやさきのいろいろな事件を大いに参照いたしまして今後ともこれは万全を期さなきゃならぬことであると、政府全体として万全を期するために努力をしなきゃならないと考えておるわけであります。
  72. 黒柳明

    ○黒柳明君 ゲリラというよりまだ嫌がらせと言った方があるいはいいかと思いますけれども、塀を焦がすぐらいで、あるいは日韓議員連盟のあるビルのフロアのトイレで何か爆発したぐらい、あるいは米軍の基地がちょっと焦げたぐらい。しかし、彼らのねらいというのは、ある物を破壊したり倒す、こういうことであるいはあるのかな、アメリカみたいにそのものずばりを暗殺するとか、こういうことよりもむしろマスコミ――マスコミとしてもこれは事実は報道せざるを得ない義務がありまして、それを報道することによってむしろその嫌がらせ、それがテロ以上に日本国民に対する、あるいは韓国国民に対しての反チョン大統領阻止の行動、こういうようなものを起こさせるということがあるいは今のマスコミ時代のテクニックかもわかりません。それはアメリカでもどこでもマスコミが主体になって社会はこう動いていると言ってもいい時代であります。日本だけじゃありませんけれども、日本は特に今異常なぐらいマスコミというものが失礼でありますが世の中を完全にリードし切っている。これはいろいろ二、三の最近の例を挙げても間違いないと思います。ですから、テロとまでいかなくても、こういう問題が、事実関係をそのまま報道されるということ自体がやっぱり彼らの一つの目的に合致していることじゃなかろうか、こういうふうに私は思います。  それはそれとしまして、大臣もこんなことはもう百も承知だと思うんですが、ただ問題はこれだけで済むか済まないか。警備当局もこれは大変だと、こう感知しております。きのうのきょうでございますから、当然警備当局から詳しい説明はまだ、当事者ではございませんけれども、聞く時間もないかと思いますが、当事者以上にやっぱり責任を持っている外務大臣、当事者ですから、だからこういう問題がこう次から次にエスカレートしていきますと、ただ単に韓国政府なり日本政府なりあるいは日本の警備当局じゃなくて、変なところから変な反チョン大統領の阻止運動みたいな、あるいは訪日させない方がいいというようなものも起こってくる可能性があるわけですが、万が一こういう嫌がらせの行動が工スカレートして、九月上旬だと思いますからまだ一月半近くあるわけですから、警備当局の厳重な調査ないし取り締まりを要望することはこれは当然なんですけれども、やっぱり内閣としての最高の国賓を招く責任があるとおっしゃったばかりでありますので、戦後初めてよかれとした訪日、日韓の今後についてよかれとしたこの招待、これが万が一できなくなった場合には、これはかつてのアメリカ大統領が訪日できなくなったというのとはちょっとケースが違って、相当な日韓関係にマイナスの様相を起こすのではなかろうか。まだこんな事態には至っていないと私は思いますけれども、これからの推移というものはだれも見極められません。ひとつ、万が一のことを考えてもいいようなきのうの事件だと私は思うんです。  警備当局にもそれなりに私は部屋で聞いてみましたけれども、ひとつ外務大臣、万が一のことがあったらこれは日韓関係には相当の亀裂を生ずるマイナス点があるのではないかと思うんですが、万が一ということを私先走っているかどうかわかりませんけれども、むしろ私はそうじゃないという気もするんです、一方で。ひとつ外務大臣、御意見いかがでしょう。
  73. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) チョン・ドウホワン大統領の訪日は、日本が招待をいたしましてそしてこれにこたえるということで国賓としてお見えになるわけでございますから、これは国家の元首としてお見えになるわけでありますし、それも戦後初めてですし、そして日韓関係がようやく本格的な軌道に乗ったと、こういうやさきにお見えになるわけですから、国を挙げて歓迎をしなきゃならぬと私は思います。しかし、日本は自由な国ですから、いろいろな意見があることはこれは事実であります。これは私は韓国政府にも言ったところでありますが、いろいろな意見は出るでしょうけれども、しかし国民の大半はチョン・ドウホワン大統領の訪日を歓迎しておるわけでありますし、政府としましては、また国の世論をまとめてコンセンサスを図って、大統領をお迎えするようにあらゆる態勢をひとつつくっていかなきゃならぬ、これはまた政府の責任であろうと思います。  同時にまた、今お話しの警備の問題、安全の保証、安全の問題は、これはまさに日本政府の責任であります。もし問題があっても相手の国に帰せられない全く招待した側の国の政府の責任でございますから、これからもいろいろのことを考えて警備当局も万全な態勢を図っていくとは思いますけれども、しかしこれは警備当局だけに任せるという問題でなくて、これだけの大きな出来事でございますから、政府全体が力を合わせて見事にチョン・ドウホワン大統領をお迎えをして、そして送らなければならない、こういうふうに思っております。
  74. 黒柳明

    ○黒柳明君 まだ韓国政府ないしは在日大使館から、当然韓国でも日本のことはよく知っているわけですから、警備問題に対する不安というものを意思表示したということはなかろうかと思いますが、今の段階において政府としても外交ルートを通じて、こういう事実があったけれども警備面においては万全を期すと、こういうことを言うつもりはないでしょうか。あるいは万が一、規模の大小はいざ知らずこの程度のものが再発した場合には、その時点においては、向こうの意思表示はいずれにせよ、こちらから安全の保証につきましては外交ルートを通じてそれ相当の発言をしなければならないのかなと、こういうことはお感じになっていますでしょうか。
  75. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは韓国だけじゃなくてどこの国の元首を迎える場合にもそうですが、やはり迎える場合においてはすべての責任が迎える国にあるわけですから、そして相手もそれを信頼してもちろん来られるわけでございますから、改めて警備は大丈夫ですとか、安全は確保しておりますとか、そういうことを言うべきものでもないわけでございますし、これまで日本は国賓を立派にお迎えをして、すべて立派にお送りしておるわけでございますから、チョン・ドウホワン大統領の場合も一々韓国に何か問題が起こるたびに話すとか相談をするとかいう必要は私はない、やはり日本が全責任を持ってお迎えをする、こういうことであろうと思います。もちろん情報とかそういう関係につきましては、これは韓国は韓国なりの情報もあるでしょうし、日韓関係で大統領の滞在を安全にするための情報の交換とかあるいはまた相談とか、そういうものはこれは当然警備当局で行われるであろう、これは警備の責任において行われることであろうと、こういうふうに思っておるわけでございます。
  76. 黒柳明

    ○黒柳明君 大統領に直接お会いになった外務大臣ですし、そのことは克明にマスコミに報道されていると思いますし、またあるいは報道されない部分も、あるいは直の何か話もあったのか、その点は知る曲もありませんが、大統領の言葉の中で、過去に執着することなく、日韓間協力の未来のあり方について云々と、こんなことがありますですね。非常に過去について云々しない、これからの新しい日韓関係のために訪日するんだと、こういう活字になっているんです。これをこのまま読めばそのとおりであって、一国の大統領が、あれだけ日本に長い間支配された国の大統領でありながら過去に執着しないんだと、このままでありますけれども、ただこの前に本委員会でも問題になりました、先ほど八百板先生もおっしゃった天皇陛下の発言の問題で韓国の外務大臣の話があった、それについて日本の国会でも議論があったと、あるいはこんなこともチョン大統領は頭にあって、そんなことも含めて過去のことについては執着しないんだ、活字の文字どおりでは執着しないでと、こんなふうにも読めるのかなというような、これはあくまでも私の感触でありますが、実際に会われて文字の裏を読まれた、あるいは活字にならない面も外務大臣が直接感じられているわけでありますが、その点はどのように判断されますでしょうか。
  77. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 大統領の発言は、今、黒柳さんがお話しになったように、韓国の国民は非常に賢明である、したがって過去に執着は持っていない、それよりもやっぱりこれからの未来に向けての歩みを始めておるんだ、そういう中で自分が行くんだという趣旨のお話でございまして、私はそのままの大統領の御発言というふうに受けとめたわけでございます。大統領も恐らくそういう御発言の背後には、自分が行くということになればいろいろと過去の問題が言挙げされる、しかし自分が行く意味は、日韓のこれからの新しい時代を目指して自分は行くんだということをはっきり言われたかったと、それがああいう言葉になってあらわれたんじゃないだろうかと、こういうふうに思っております。
  78. 黒柳明

    ○黒柳明君 宮内庁の人は来ていますか。  外務大臣はたびたび天皇のお言葉のことで今もおっしゃったとおりです、あれ以上のものは何にもなかったんですから、さらに外務省当局では、いろんな参考資料だけは提出いたします。後はそういう問題につきましては外務省がタッチするところじゃないと。ただ宮内庁としましては、当然のこととして来るべきものはあと一カ月半ぐらい後には来るわけでありまして、元首として天皇陛下との接見は当然あるわけでありまして、そのときのお言葉は当然あるわけでありまして、別に心労ということでもないでしょうけれども、当然考慮の中にはなければならない問題であろうと、こう思うんですが、先ほどから、あるいは前回も前々回も、これはもう三回ぐらい天皇のお言葉と、こういうことを前提にしての質疑があったと私記憶しておりますが、資料だけは提出する、外務省が直接タッチするところでもないと。ただ内閣としてはこれはカバーしなきゃならない問題であると。その当事者として宮内庁は当然その責任者であると、こういうことだと思いますが、韓国の場合には、これは私が言うまでもなくアメリカと全く違う、中国とはこれまた違う面がありまして、長い間の支配してきたところでありますし、現に韓国、朝鮮人が六十数万我が国にまだいるわけであります。その問題もいろいろこじれていて、先方の要望どおり日本政府もできない、こういう問題も多々残っております。  そういう中での来日であり、天皇との接見であり、天皇のお言葉である、こういうことについてはこれはフォード大統領が来たときはどうだったとか、あるいはテン・シアオピンさんが来たときはこうだったとか、そういうものとは違った条件のもとでのやっぱりお言葉、接見――接見自体これは変わりありませんけれども、要素があるんじゃないかと。これは常識中の常識だと思うのですけれども、まずこの点はいかがでしょうか。
  79. 山本悟

    政府委員山本悟君) 宮内庁といたしましても、この韓国大統領の御訪日ということについていろいろと新聞報道その他で言われておることは十分存じ上げているわけでございます。ただ、現在の段階で申し上げますと、先ほど先生のおっしゃいましたように基本的には外務省から各種の資料をいただいて、その総合的な判断の上でいろいろと善言葉なりあるいはスピーチの内容というようなものを練っていくわけでありますが、現在の段階におきましてはまだそういうものもいただいていない段階でございまして、今どうこうというようなことを申し上げるのはいささか時期が違うんじゃなかろうかというような感じもいたします。  ただ、今先生御指摘になりましたようないろいろな諸事情が錯綜しているということは、宮内庁としても十分そういう意味での認識は持っているわけでありまして、そのこと等を踏まえながら情勢をよく見てまいりたいというように現在考えているところでございます。
  80. 黒柳明

    ○黒柳明君 アジア局長ね、材料をもらっていませんということです。早く材料をやらなくちゃ。いつ渡しますか、材料を。もうとっくに渡してあるんじゃないですか。渡すような材料があるんですか、果たして。
  81. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 外務省が提出する資料はもちろん現在までに渡しておりません。しかし、過去のこういう例につきましては、その当事国、日本とその国の関係の現状や過去の歴史、あるいは相手国政府や国民の日本観に関するような資料をそれぞれにまとめまして、順次差し上げているわけでございます。今のところまだ全くそういう段階に至っておりません。勉強はよくしております。
  82. 黒柳明

    ○黒柳明君 まだ一力月半ありますからね、長いと言えば長いけれども、しかし私は、在日韓国人ないし韓国の若干の議員さんでも政府高官でもおつき合いがありますのでその話を聞きますと、必ずしも看過できる問題ではないような感じがいたします。というよりも逆に言いますと、非常にこれは当然と言えば当然なんでしょうけれども、日本の国民が、あるいはもっと言うと日本の議会が、議員が感ずる何倍かやっぱり韓国民というのはこの天皇陛下のお言葉について神経を高ぶらしている、こういう感じを私は接触した対話の中で受けるのでありまして、これが韓国四千万の国民の意見であるかどうか、これはわかりません。ですけれども、時間が別にあるかどうかということを抜きにしまして、これだけやっぱり問題になって国会でも論議されているわけであります。  それで、外務大臣が関知するところじゃないけれども、材料だけは渡しますということは明言しているわけですから、逆に言うと、渡すものは何かあるのかなと、これは冗談めいて私あれしましたけれども、勉強中なんて言いますと、天皇陛下のお言葉について外務大臣は材料は必ず渡すと何回も国会で明言している、アジア局長はただいま勉強中と言ったなんて、この一言がもしセンシティブに韓国のしかるべきところに受けとめられるとこれは問題になるんですよ。局長がそんな意味でおっしゃったんじゃないということは私は理解できますよ。私は理解できますけれどもね、この問題というのは、こちらの政府当局が考える倍、やっぱり向こうでは非常に、だから外務大臣が発言しているわけですから、私は安倍外務大臣が行ったときチョン大統領との発言の中でトーンは下がったと思うのです、トーンは下げられざるを得なかったと思うのですね。ですけれども、向こうの外務当局の責任者がそういう問題をはっきりと新聞記者の皆さん方に提示するということはやっぱり重大問題と、こういう意思表示のあらわれであると。  済みませんね、もう釈迦に説法で恐縮でありますが、ひとつ御勉強中というのも結構でありますけれども、御勉強中ということじゃちょっとうまくないので、宮内庁当局がまだいただいておりません、外務省当局は御勉強中、私にしてみるとやるものが何かあるのか非常に三者三様に、キツネとタヌキで疑心暗鬼じゃこれは困っちゃいます。これだけの重大問題のあれをひとつしかるべく勉強を早くやって、しかるべき資料があったら早く渡して、それをあれしないと質疑ができないわけです。よろしくお願いしますね。
  83. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) いささか私事にわたって恐縮でございますが、私は、このポストに就任する前に二年余、在韓国大使館に勤務しておりましたので、韓国の国民の方たちの気持ちはいささかそのときどきに応じて勉強してきたつもりでございますし、しておりますので、そういう経験もこの際よく踏まえまして、今の先生のような御指摘を十分考えてまいりたいと思っております。
  84. 黒柳明

    ○黒柳明君 わかりました。  次長、済みません、そういうことなんです。韓国にいて日本に帰ってきたばかりなんでまだ資料を渡しておりません。私が代表しておわびさしていただきますね。ただ、韓国の事情はもう二〇〇%明るい人ですから、おくれましたけれども、資料をお渡しすればこれは一五〇%効果のあるものをお出しできると、こう私ひとつ申し添えておきます。  ただ問題は、資料云々も当然必要だと思うんですけれども、その資料というのは一部には完全に常識的に提示されている問題だろうというふうに私は思います。ですけれども、確かに今までの中国、アメリカの場合とは完全に違う。その点の認識は確かにそうだと、こういうふうに御発言いただいたわけであります。ですから、認識が違うということはやっぱりその認識に基づいて発言、これはフォードさんの場合も、テン・シアオピンさんの場合も、ある程度一時的な不幸があったと。遺憾であったと、この言葉がフォードさんになかったですな。これだけちょっと違いますね。だけれども、一時的な不幸が両国にあったというこれは完全に同じだったわけであります。どういうお言葉になるかわかりませんけれども、一時的な不幸、これはこの意味においては日韓は同じですね、一時的な不幸という意味では。しかし、それが遺憾であるなどというものとはこれは全然局面は違うわけでありますから、そういう認識というものはアメリカ、中国と違うということを踏まえた上でのお言葉というものは当然御発言いただくような感じというものは責任者の次長さんにはあると理解してよろしゅうございますか。
  85. 山本悟

    政府委員山本悟君) 先ほどお答え申し上げましたような時点でございますので、私からその内容につきまして何か申し上げることはいかがかとも存じます。さような意味で、新聞紙上等の報道を通じましても、国会の御議論を通じましてもいろいろな御意見があることは把握をさしていただいているということは申し上げられると存じます。  なお、当然のことながらこの国賓の行事におきますスピーチ、宮中晩さんにおけるスピーチというようなものはこれは天皇としての公的行為の相当重要なものでございますので、これはもちろん最終的に、先ほどから御議論もございましたように、内閣の責任の範囲内に入ることであろうと存じます。そういう意味におきましても、十分各方面の意見も承って事が決まっていくと、かように存じております。
  86. 黒柳明

    ○黒柳明君 わかりました。どうも天皇陛下のことですと慣れないもので、我々庶民には質問がやりにくくて恐縮でございますが、済みません、ありがとうございました。  問題が変わりますが、栗山局長、先ほどおっしゃいましたアメリカ国防総省のせんだっての下院における資料、これは私も電話を入れて向こうへ聞きました。日本の新聞というのは非常に正確に報道されますが、それをなおかつ念を入れまして電話を入れましたけれども、アメリカの軍事小委員会における議員の質問、これはもう御存じですね。それに対する答弁書ですね。時間のギャップがあって、時間のずれがあって。その質問は、各紙に書いてありますように、「トマホークの配備計画基数はどうなのか」と。それともう一つ、「いかなる艦船に配備されるのか」と。過去じゃない、「配備されるのか。」と。これは日本の新聞は正確なんですよ、「配備されたのか」じゃなくて、過去完了じゃなくて、こういう質問なんですね、この日本の新聞のとおり。それについての答えなんですけども、そうなりますと先ほど局長がおっしゃった答弁、これは可能なものについての発表だと。どうも今おっしゃったことは国防総省の問い合わせての公式な見解ですかね。
  87. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) お答え申し上げます。  御指摘の下院の小委員会の公聴会の記録を私ども入手いたしまして原文に当たってみました。そこに書いてありますことは、委員御指摘のように、質問の方は核弾頭つきのトマホークの配備計画はどうなのかという質問でございます。それに対します国防省側の回答といたしまして新聞に出ておるような表があるわけでございますが、その説明については、これはいわゆる核弾頭つきトマホークを搭載可能なタイプのプラットホーム、すなわち発射台は以下のとおりであるということで新聞に報道されましたような表が出ておる、公聴会の方に提出されておると、こういうことでございますので、報道されました表につきましては、あくまでも核弾頭つきトマホークの積載能力についての説明であるというのが私どもの理解でございます。
  88. 黒柳明

    ○黒柳明君 ここでその逐条の英語のあれをやる時間はありませんし、私は原文を持ってきていないのでできませんけれども、「いかなる艦船に配備されるのか」というのは過去のことで、質問を出したのは。だから、八三年というのは当然過去のことですね。「されるのか」というのは八三年にされたということを言うのであって、そのされる可能性というのをここで言っているんじゃないと、私はこういうふうに理解もしているし、そういう意味のアンサーを受け取っているんですけれども、そうじゃないですか、これは。あくまでもこの八三年というのはこれも可能性だけですか、過去の八三年も。
  89. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 御質問の表につきましてはそのとおりでございます。
  90. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうでしょう。
  91. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) そのとおりと申しますのは、要するに、核弾頭つきトマホークを搭載する能力を付与する艦艇の年度別のスケジュールを表示したものであるということでございます。  それから、ちなみに事実関係についてもう一点補足さしていただきますと、ニュージャージーにつきましては、委員御承知のとおりに既に通常弾頭の対地攻撃用のトマホーク、これを八三年の三月にニュージャージーに配備しておるということ、これは国防省は別途発表しております。
  92. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、このスタージョン級、ロサンゼルス級なんか、これもあくまでも能力があるということだけの九二年までの予定表であって、これに積まれるかどうかはまた別であると、こういう読み方ですか。
  93. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) そのとおりでございます。
  94. 黒柳明

    ○黒柳明君 ある新聞には、ニュークリア・ケーパブルというのは、向こうの軍事専門家によるともう積まれたんだと、こういうことを書いてありますけれども、そういうニュアンスのあれは全然ないんですね。
  95. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私ども、従来からこの点につきましてはアメリカ側からも再三説明を受けておりますが、核弾頭つきトマホーク搭載能力があるということと、現実にそのクラスの艦艇に核弾頭つきのトマホークが配備されているということとはこれは全く別問題であるというふうにアメリカ側は説明しておりますし、私どもはそういうアメリカ側の説明をそのとおりに受け取っておるわけでございます。  なお、もう一言補足さしていただきますと、先ほど御指摘の国防小委員会の公聴会の記録は、別途計画されておる核弾頭つきトマホークの配備スケジュールというものについても言及しておりますが、その内容につきましてはこれは削除されておりまして公表されておりません。
  96. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、先週、中曽根総理が衆議院でニュージャージーの核装備というのは我々公式には知らないと、それから前回のこの委員会で、四隻のアメリカ艦船に対して実戦配置する可能性があると、これも栗山局長は、実際にはまだ入手してないと、これはあのままで答弁の変更はないわけですか、そのまま。
  97. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 従来から政府の申し上げていることに変更はございません。潜水艦につきましては、四隻の攻撃型原潜にトマホークが配備されているということをアメリカ側が言ったということは承知しておりますが、これはあくまでも核、非核の区別がない一般的なトマホークの配備ということで、四隻の攻撃型原潜ということが言われたということは承知しておりますが、それ以上の具体的な核つきトマホークについての配備計画については承知しておりません。
  98. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、過去のいろんな報道をあれしておりますけれども、核トマホークが積載されたというアメリカの公式見解はまだ一回もない、こういうことですね、アメリカの艦船に対して搭載されたという……
  99. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先般、国防省が一般的な形で核弾頭つきトマホークが一部の米国の海軍の戦闘艦艇に運用可能な段階になったということを発表しておりますが、それ以外に個別の艦艇についての具体的配備ぶりにつきましては一切承知しておりません。
  100. 黒柳明

    ○黒柳明君 一般的に可能になったということは知っているんですけれども、それが艦船に具体的に積載された、それで行動計画の中に繰り込まれる、そういうふうになるわけですね、積載すれば。そういう発言はないんですか、公式な。
  101. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 承知しておりません。
  102. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、承知してないということは、これはアメリカはやっていないという――これだけ日本の中で反トマホークに対する世論が沸き上がっている、国会でも問題になっているわけですから。各種報道を、私は私なりにあの報道を踏まえながら向こうとじかにいろんな情報を入手しているんですけれども、その中においては、どうもそういうのとはちょっとニュアンスが違う面があるんですが、これは私の個人のあれで、政府当局の見解をまず尊重しなきゃならない、重視しなきゃならないという、今はそういう認識を持たざるを得ないんですが、いまだかつて一回もアメリカの艦船に核つきトマホークはいかなる形にせよ積まれた、積み込まれた――運用段階に来た、こういう発言はあっても、積込まれた、積載されたということはない、こういうことですか。ちょっとまた同じことで済みませんけれども。
  103. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先ほど申し上げましたとおりでございまして、私どもとしては、一々アメリカの当局者の一つ一つの発言を全部チェックしておるわけではございませんが、具体的な艦船への配備について、アメリカ側が公式にそういうことを言ったということは承知しておりません。
  104. 黒柳明

    ○黒柳明君 具体的ということを私はあれしているんじゃないんです。具体的という意味は、例えばサンフランシスコ号に積んだとかなんとかこういうことであるのか、あるいはロサンゼルスタイプに積んだとかこういうことであるのか、その具体的というのはわからないんですけれども、既に四隻の艦船に積載したということは言っているんじゃないですか。具体的というのはちょっとわからないんですよ。艦船の名前を挙げて言っていないという意味なのか、あるいは艦船の固有名詞、ニュージャージーとかサンフランシスコとか、そういうことを言って積載したとは言っていないというのか、あるいは戦艦とかあるいはロサンゼルス級原潜とか、こう言って積載したと言っていないというのか、それとも一般的な艦船にと、こうなのか、そこらあたりの具体的というのはどの程度までですか。
  105. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 先ほど私が具体的にと申し上げたのは、両方意味で御答弁申し上げたつもりでございまして、両方意味というのは、個々の艦船について配備したということもさることながら、現実委員が今おっしゃいましたような表現で艦船に積載したと、要するに搭載したと、そういう意味での具体的な発表も私は承知しておりません。私が承知しておりますのは、先ほどちょっと申し上げましたけれども、六月の二十七日に国防省が発表いたしましたプレスブリーフィングの内容で、これは委員御承知のように、数日前に、一部の米国海軍戦闘艦艇において核弾頭つきトマホークというものの運用が開始されたと、こういうことを言っておるということでございまして、具体的に艦船に積み込んだというような表現での公式な発言は承知しておりません。
  106. 黒柳明

    ○黒柳明君 わかりました。繰り返して恐縮でした。  済みませんが、下院でのこの資料、これを一回公式に問い合わせていただけませんでしょうか。これはあくまでも可能性があるもの、こういうふうに御判断していると、それは間違いないと思いますけれども、もう一回正式に国防総省に、そういう外務省の見解は間違いないだろうなと。もう一回やらなければならないかな。この表ですけれども、これは今おっしゃったように可能性である、積載可能のものである、積載したということじゃない、こういうふうに認識していると。これは国防総省に問い合わせての公式見解じゃないわけですよね。それを一回問い合わせて確認いただけませんかね。
  107. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 御指摘の下院の公聴会の記録につきましては、原文はこれは委員に後刻差し上げることは結構でございますが、原文でも明瞭にそれは能力のことだということは書いてあるわけです。しかし念のために私どもも、読んでこういうふうに理解したけれども、その点は間違いないなということは既に米側に確認済みでございまして、米側も、読んで字のとおりであると、こういう回答をしてきております。
  108. 黒柳明

    ○黒柳明君 最後に、時間がないので。さっき確認したんですかと言ったら、そういうことをはっきりおっしゃらなかったから。  これも一部新聞に、「ソ連、増強急ピッチ」「神経剤など30万トン」とこう書いてあって、日本政府が米極秘資料を今回入手した、それによると。これはごらんになったかと思うんです。安保課長はいらっしゃらないかな。きょうは外務省の安全保障課の人はいらっしゃらないか。――そうするとまた北米局長ソ連だからこれは北米局長じゃなくて欧亜局長かな。欧亜局長はそんなことは読んでいないかな。これはどうですか、また北米局長
  109. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) ちょっと今御質問の新聞報道については私は直ちには頭に浮かばなかったのですが、もう少し御説明いただければありがたいと思います。
  110. 黒柳明

    ○黒柳明君 アメリカの国防総省は四月にソ連の軍事力を発表して、今回政府が入手した米極秘情報では、いわゆるソ連が三十万トン以上の化学兵器を持っていた、神経剤等を持っていたと、それが今度はっきり神経剤は三十万トンだと、こういうものがあって、しかも極東のソ連部隊にもそういう化学部隊が配置されている、それから、NATOなんかはこの化学部隊が行けば二、三日で一遍にやっつけられると、ソ連の脅威が増したと。これは現にあのベトナムでも枯れ葉作戦で使われたとか、あのアフガンでもとか、イランイラクでもね、こういううわさ以上に現実として使われている面がありますから、また一番日ソ間が冷えているときに、こういうものがいつ配置されたとかというのは別にしまして、こういう局面があるのかなど。私たちもこの真偽のほどというのか、日本の新聞というのは非常に信憑性が高いということを前提にしまして、ぜひ責任ある当局に聞いてみたい、こう思って今質問しているわけなんですけれども。
  111. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 委員が今御指摘の新聞記事につきましては、私も確かに読んだ記憶がございます。ただ、ソ連軍というものが相当な化学戦を行う能力を付与されておるということは一般的には承知しておりますが、委員御指摘の新聞記事のソースにつきましては、私遺憾ながら承知しておりません。
  112. 黒柳明

    ○黒柳明君 一般的にはというのは、ウラジオストクやサハリン、ここに書いてあるのは北方領土の極東部隊も持っているなんと書いてあるんですが、こういうことも一般的には北米局長が承知している中の分野に入るわけですか。
  113. 栗山尚一

    政府委員(栗山尚一君) 私はすべてソ連の軍事的な能力について承知しておるわけではございませんけれども、今の具体的な軍事情報については私は承知しておりません。
  114. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 外務大臣はロンドン・サミット以降、日韓外相会談であるとか、また今度はASEANの拡大外相会議に御出席されて、文字どおり東奔西走、殊にきょうは、きのう遅く帰ってこられたばかりのところ、長時間質問にお答えいただいてまことにお気の毒に存じますけれども、お役目ですから御辛抱願いたいと思います。  私は二つの問題を取り上げたいと思うんですけれども、一つは、チョン・ドウホワン大統領の訪日に関する日韓の問題と、それから、今度のASEAN拡大外相会議成果の問題、この二つを取り上げたいと思っております。  韓国と日本は地理的には非常に近いのですけれども、ある意味では非常に遠い国で、国交回復後間もなく二十年になろうというのに、今まで韓国の大統領の公式の訪問がなかったということは、これはむしろ異常といってもいいのではないかと思うのであります。今度、遅過ぎたといえども大統領が訪日されることを心から歓迎したいというふうに思っております。  国民の中には、韓国においては人権が尊重されていないとか、反対派の弾圧が行われているとか、そういうことを取り上げて訪日に反対する人たちもいるようでございますけれども、まだ国をつくって間もない、しかも北朝鮮と兵戈を交えた後、いわば現在でも準戦時状態にあるような国に対して、日本と同じような尺度をもって民主主義的でないというふうな評価をするのは、私は間違いではないかと思います。確かに民主主義の成熟度という点からいえば劣っている点はありますけれども、これはやはり程度の問題でありまして、韓国よりもっともっとひどい全体主義的な弾圧をしているような国もあるわけでございまして、そういう国とも日本は国交を持っておりますし、大統領を迎えたこともあるわけですから、日本の尺度でほかの国のことを推しはかるべきではない、そういう考えで歓迎したいというふうに思っております。  しかし、国家間の友好関係というのは単に政府政府だけの問題ではなしに、民衆レベルでお互いに本当の友好関係を結ぶのでないと、国と国との間の親善というのは成り立たないと思うのでありますけれども、どうも残念ながら双方の民衆の間では、最も嫌いな国としてそれぞれ相手の国を挙げる人たちがかなり多い、少なくとも多かったといって間違いないと思うのであります。  これは、過去の不幸な両国の歴史的関係に基づくもので、一朝一夕になくなるものではないと思いますけれども、しかし、政府としてもできるだけそういった精神的な心と心の交流、それを妨げるような条件を取り除いていくということが政府の任務だろうと思います。そのために幾つかのことがあると思うのでありますけれども、その一つは、今度大統領が訪日されたときの、天皇陛下に拝謁したときのお言葉の問題でございます。これはすでに同僚議員から取り上げられましたし、また今の段階余り細々したこと空言うのはかえってどうかと思いますから私はこれ以上差し控えますけれども、ただ一つ希望として述べておきたいことがございます。  それは、天皇というのは日本国民にとっては象徴でございますけれども、外国の人はこれは元首として考えているわけでありまして、やはり日本の国民の代表として、過去の不幸な事件について、時代について何らかの方法で遺憾の意を表されることは私は当然なことではないかというふうに考えております。何か日本の過去を悪く言うことは自虐的な趣味に陥ることだというふうに反対する人もありますけれども、どこの国でも過去において明るい面と暗い面があるのは当たり前であって、どこの国でもそうであって、その暗い面について遺憾の意を表することは、私は少しも日本のプレスティージを落とすことにはならないと思うのです。その意味において、政府としても十分その点を考慮して適切な配慮をされることを希望しておきます。  それからもう一つ、国民的なレベルでの心の交流を妨げている問題として、私は外国人登録のときの指紋の押捺の問題があると思うのであります。これは単に韓国人だけではなしに外国人一般の問題でございますけれども、韓国人は入数において圧倒的に多いし、また日韓地位協定に基づく居住者として特殊な地位にもあるわけでありまして、指紋の問題が日韓の民間レベルの心の交流の一つの障害になっているというふうに考えますので、ここに取り上げて質問したいというふうに考えております。  民社党はこの問題につきましてはすでに衆議院でたびたび取り上げました。法務省の見解も伺っているわけでございますけれども、国際親善の立場から改めてこの問題を再考していただきたいというふうに考えております。というのは、指紋というのはこれはどこの国でもそうだと思いますけれども、やはり犯罪を連想させる問題でございます。法務省として、これは先般の日韓の外相会談でも取り上げられた問題だと思いますけれども、外務大臣はそれを断られたそうですけれども、それはやはり法務省の見解がその背後にあったのだと思いますので、法務省の方、見えていますですね。――この指紋押捺の制度を外国人登録に際して必要だというふうに考えられる論拠はどこにあるか、それをまずお聞きしたいと思います。
  115. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 御承知のとおり、我が国に在留する外国人のうち、一定期間を超えて在留する人につきましては外国人登録をしてもらっておるわけです。その数は約八十二万人ばかりでありまして、その中で、先生御指摘の韓国、朝鮮の国籍を持っている方は約六十七万五千人で全体の八三%余りということでございます。これらの外国人の人たちは、日本人に比べまして身分事項がそれほど明らかでないということが一つございます。そのために外国人登録を行いますに当たりましては、その人物を特定するということが極めて重要なことになるわけでございますが、人物を特定するためには、指紋の持つ、指紋が万人不同と申しますか、一人として同じ指紋でないこと、それから終生不変と申しますか、その指紋は一生変わらないという非常に特色を持っておりますので、この指紋を押していただきまして人物を特定するということがまず一つ。それから過去の例、現在にも続いておるわけでございますが、外国人登録を行った人の中には、不法入国して人の登録を譲り受けたり、その他途中で人物が入れかわる場合がございますので、こういった人物の入れかわりを防ぎ、なおかつその不正を発見するためには指紋というものがまた非常に有効に作用していると。そのために法務省におきましてはと申しますか、外国人登録制度におきましては指紋制度を採用している、こういう次第でございます。
  116. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ちょうどたまたま最近出ております中央公論の八月号に東大の大沼保昭という人が「「ひとさし指の自由」のために」という、「多元的価値から見た外国指紋押捺制」というサブタイトルの論文を書いておられますけれども、その中で私ももっともだと思うようなことを言っておられるのですけれども、つまり同一人性、アイデンティティーを確認するために指紋が必要だという法務省の議論に対して、その大沼さんの議論では、外国人の指紋押捺制度を擁護する議論は、日本国民の住民登録と外国人登録とは本質的に違うのだ、そのために住民登録の方は原始的身分関係を記載する戸籍を反映する、そのもとにある戸籍が確実に把握できるのに対して外国人登録ではそうではないと。これから先はその大沼さんの議論ですけれども、しかし、そこで確実と言われる日本の戸籍自体、外国人登録と同じく本人の届け出に依拠している。本人の同一人性の確実な把握というなら、戸籍の場合でも指紋が必要ではないのか。そういう反論を呈しておられるのですけれども、同一人性の問題についてこういう反論をどういうふうにお考えになるか。それから、写真登録でも、最近は写真の技術が非常に発達してきているので写真でも十分間に合うのではないか、そういう議論も同時に展開されておりますけれども、それに対してどういうふうにお考えでございますか。
  117. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) ひとつ過去の歴史を御説明したいと思いますが、外国人登録制度と申しますのは、昭和二十二年に始まった制度でございます。この制度が始まりました際は、人物を特定する手段といたしまして、十四歳以上の人には写真を提出してもらうということで発足したわけでございますが、当時の社会事情も反映しているとは思いますけれども、非常に多くの不正登録が行われておりまして、一人で二つ三つの登録をする、ないしはその余った登録を不法入国者が譲り受けて本人に成り済ますというような不正登録が非常に多発をいたしまして、その不正の数というのは正確にはつかんでおりませんけれども、いろいろなデータを見てみますと、当時数十万の登録されている中の一〇%ぐらいがそういう不正であったのではないだろうかというふうに思われております。そのために、現行外国人登録法が制定されました昭和二十二年の法律から指紋制度を導入いたしまして、そのような不正、人物の入れかわりが起こらないようにというような制度を設けたわけでございまして、これによりまして現在、何と申しますか、非常に安定した正確な外国人登録が行われるようになっているということでございます。  それで、戸籍の場合と比較してという大沼先生の論文などでございますが、わが国の戸籍は、先ほど申し上げましたように一〇%も不正と申しますか、人が入れかわっているとかというものではないと思います。その意味では我が国の戸籍制度というのは非常に完備されておりまして、そのような不正の入り込む余地は非常に少なくなっているということ、それに反しまして外国人登録は、先ほど申し上げた歴史のようにいろいろ問題が過去にあったし、現在でも幾つかの不正事件というのが散見されることからも、私どもとしては指紋制度がどうしても必要であるというふうに考えております。
  118. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 一九五〇年代の初期において確かに不正登録があったということは承知しておりますけれども、これはある意味で非常に異常な時代であったと思うのであります。そのときのことをもって現在もそうだというふうに類推するのは、ちょっといささかどうかというふうに思うわけであります。確かに一部の不正登録というふうなものはあるかもしれませんけれども、しかし大部分の人たちはそうではないわけでありまして、必ずしも指紋をそのために必要とするということにはならないんじゃないかというふうに考えるのですけれども、いかがですか。
  119. 黒木忠正

    説明員(黒木忠正君) 確かに当時と時代は変わっておりますけれども、現在でも不正登録というのが散見されておりますし、数は少なくなっておりますけれども、それは指紋のもたらす何と申しますか、抑止力と申しますでしょうか、不正を思いとどまらせる効果というものも現にあるというふうに私どもは理解しております。
  120. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 法務省の見解は二、三年前と少しも変わっていないので、これ以上ここで述べていましても、これは法務委員会と違いますから、これ以上この問題にこだわっていても同じ答弁しかもらえないと思いますからこれ以上は突っ込みませんけれども、この指紋の問題は、単に韓国人のみでなしに一般外国人にも関係する問題でありまして、私は政治家になる前に、日本の雑誌論文なんかを外国に紹介する英文の「ジャパン・エコー」という雑誌、あるいは仏文の「カイエ・ド・ジャポン」という雑誌の編集をしておりましたけれども、そこで一緒に働いている外国人、アメリカ人、イギリス人、あるいはフランス人、いずれも数年にわたって日本に居住しているので、あるいは日本政府のために、あるいは日本の企業のために非常に協力している外国人であります。ところが、これが前は三年に一回でしたけれども、やはり指紋を押さなければならない。これは非常に屈辱に感ずるわけであります。なぜ日本政府はそういうことをするのかということを質問されて私は返答に困ったことがあるんですけれども、確かに外国にもそういう指紋をやっている国、余り人権の尊重されていない国においては行われておりますけれども、やはり日本人が頭から外国人を犯罪人扱いするというのではなしに、もっと開いた気持ちで精神的な開放性、単に市場の開放だけじゃなしに精神的に開放していく、そういう立場からこの外国人登録の問題を改めて考えていただきたいと思うのですけれども、外務大臣、お考えいかがでございましようか。
  121. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この問題は、これは今法務省から答弁したとおりであろうと思います。これは法務省で管轄する問題ですから法務省の判断が一番大事だと思いますが、外国なんかの例を見ますと、外国にも日本と同じような指紋制度を持っている国、これは先進国なんかでも随分あるわけでありますし、日本だけがそういう意味では何か差別的な扱いをしていると、こういうことではないと思います。  私は、実は韓国に参りまして日韓外相会談でこの問題が出ましたときにいろいろと話をいたしまして日本立場も説明したわけです。それは、まず第一には、日本としては在日韓国人に対して待遇改善のためにあらゆる努力をしてまいる、これは例えば社会福祉の問題であるとか教育の問題であるとか、いろいろとその成果というのは目に見えておるわけで、やはり日本人と同じような扱いをしたいということで非常な努力をしておる。その顕著な改善が行われたことも、これは韓国側としては理解していただきたいと。しかし、この指紋制度というのは、ただ在日韓国人だからということでやっているわけじゃなくて、ほかの国もやっているように、外国人一般ということでこれはやらざるを得ないと。それは今法務省が言っているような治安の問題であるとか、あるいは行政の配慮とか立場とか、そういう面からこれはやらざるを得ないのであって、この基本というものを変えるわけには到底いかないのですということをるる説明をいたしたわけであります。  韓国では、この問題は非常にやはり重要視しておられることは事実です。そして、外相会談でも出てきましたし、あるいはまた首脳会談でも出てくる課題であるかもしれませんけれども、しかし、少なくとも今申し上げましたように、特別に在日の韓国人を扱っているのじゃなくて、むしろ日本は韓国人に対しては特別に配慮して今日まで来ておるということを私たちは申し上げたいわけでございます。そういう意味で、改善はいろいろと図られてきておりますが、今韓国の求めるように、あるいはまた一般に国内でも言われておりますように、指紋押捺制度をなくするというようなことは、これはちょっと今、国際的にも無理なことではないだろうかと、こういうふうに私としても判断をしておるわけであります。
  122. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 外国でも確かにあることは事実ですけれども、例えばアメリカの場合は移民とそれから永住権獲得の場合であって、事実上は一年以上滞在しても指紋はとられないということが多くの人たちが語っているところであります。アメリカの場合は二世、三世は当然アメリカ国籍ですから、これは問題にならない。日本の場合は血統主義ですから、外国から来た人でも二世、三世が依然として問題があるわけで、ちょっとアメリカと同じに論ずることはできないんじゃないかと思いますし、イギリスなどの場合でも、サインができない人が指紋をするというのであって、無条件に指紋をやらせるというのじゃないと思うのです。少なくとも先進国においては、私はそれほど無条件に指紋を押さしているところは余りないんじゃないかというふうに考えております。今すぐどうしろということはできないと思いますけれども、将来の問題として日本の国際化という点から考えて、十分検討していただきたいというふうに考えております。  ASEAN拡大外相会議の問題を質問しようと思ったのですけれども、五十七分までだそうですから時間がございません。それでは、はしょりましてカンボジア問題についてお伺いします。  安倍外務大臣が拡大外相会議においてカンボジアの平和に至る三段階にわたっての日本の協力を提案されたことを私は高く評価いたします。しかし、単に言いっぱなしじゃなしに、これがやはり実を結ぶようにしていかなくちゃいけないと思うのでありますけれども、一つ私がちょっと気にかかるのは、ASEAN五カ国の内部でカンボジア問題について意見は一致しているのかどうか。つまり、ASEAN外相会議の第一日目に出たところの共同声明と、それから二日目に出たところの共同声明、もちろん新聞の報道ですから詳しいフルテキストは知りませんけれども、ちょっとニュアンスの違いがあるような気がいたします。ASEANの内部でやはりしっかり固まっていなくちゃいけないと思いますし、それからもう一つは、この提案については、この問題の主役はベトナムでありますし、あるいはまた陰の主役は中国といってもいいのではないかと思うのですけれども、ハノイ並びに北京の安倍外務大臣の提案に対する反響はどういうものであるか、それをちょっとお聞きしたいと思います。
  123. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 安倍外務大臣が提案されました三項目につきましては、中国に対しましては東京とそれから現地の北京におきまして内報をいたしました。これに対しましては、中国側は我が方の意図に理解を示したということでございます。  それから、ベトナムにつきましては、現地の我が方堤大使より先方に伝えましたところ、我が方の通報を多とすると。提案の内容についてはもう少し時間をとって十分検討したいというのがとりあえずの反応でございます。
  124. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 ASEAN内部の問題はどうですか。
  125. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) ASEAN内部の、もちろん外務大臣の提案につきましては一致して非常にこれを高く評価されまして、むしろそういう事態が早く来るように努力するのはASEAN自体でございますけれども、この提案というものが、ASEAN内部のみならず、ASEAN拡大外相会議に出席なさいましたアメリカあるいはカナダの代表からも非常に高くこれを評価するということでございます。  それから、ASEANの内部については、このカンボジア問題に対する足並みというものは、私どもとしては一致しているという見解でございます。
  126. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 外務大臣も同じでございますか。本当に一致しておりますか。
  127. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 多少それはニュアンスはそれぞれの国であると思います。ASEAN六カ国、今度はブルネイも入りまして六カ国になりまして、多少のあれはあると思いますけれども、しかし認識としては大体共同声明でまとまっておると思います。今、日本が重視しているのは、昨年の秋のASEAN外相の共同アピール、これが非常にカンボジアの和平へ向かっての段階的なアピールを進めております。これが日本としては現実的である、そしてベトナムも決してこれを拒否してない、こういう判断のもとにこれを実現するための三項目、推進力としての三項目を提案したわけで、この点についてはASEANの足並みはそろっておる、こういうふうに思っております。
  128. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 またいわゆる太平洋諸国間の協力の問題なんかを質問したいと思っておりましたけれども、時間を超過しましたのでまたいずれ機会を改めて質問したいと思います。
  129. 抜山映子

    抜山映子君 本日は軍縮と平和の問題についてお伺いしたいと思います。  日本の成人に達している人口のうち、過半数は幼児期であれ青年期であれ戦争を体験しているという意味におきまして、日本人ほど平和に対する希求の強い国民はないのではないかと思うのでございます。しかし、その平和への方策として、党はもとより各個人の意見が余りにもばらばらの国はないのではないかと思うのでございます。平和を考えますときに、これを日本国内だけの問題と考えて、閉鎖的に孤立的に国内問題として考えるのはもう時代おくれなのではないか。ただ平和を念願し希求しているだけで平和が達せられると考えているグループ、あるいはまた、日本が自力で戦える防衛力を持てばいいと考えているグループ、いずれももう旧式の考えではないかと思うのでございます。今や、平和を考えるときにはもっと積極的に国際的視野に立って平和という問題をとらえなければならない、こういうように思うのでございますが、外務大臣日本日本の平和、すなわち世界の平和を実現するためにどのような具体的方策があるのか、文章ではなく、これと、これと、これと、こういうことを考えているというようにひとつ列挙して、項目を挙げてお答えいただきたいのでございます。
  130. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 世界情勢はなかなか単純に割り切っていけないわけでありまして、戦後は東西対立の中で世界が動いておったわけでございますが、そういう中で冷戦の時代もあればデタントの時代もありました。しかし、同時に東西だけじゃなくて、いろいろと中東だとかその他アフリカとかカンボジア、あるいは中南米というような、いわゆる地域紛争というのも各地で見られた。そういう部分的な紛争、戦争というものは、今日まで世界の人類が、第二次大戦の後国連をつくって二度と再び戦争はすまいという決意を持ったにもかかわらず、部分的なそうした戦争、紛争というのは続いてきたわけでございまして、今日も依然としてそうした状況にある。そして、米ソを中心とする東西間では、残念ながら核軍縮もついに交渉を中断するというふうな事態になっておりまして、さらにまた部分的ないろいろと紛争も起こっておるわけですから、これをどういうふうにして絶対的な平和を獲得しようかということは、これは人類のまさに夢といいますか、本当に熱願をするところでしょうが、これはやはり一国だけでどうするわけにもいかない。やはり米ソだけではなくて世界各国がともに平和というものについて真剣に考えて、そして行動をともにしていくということでなければならぬわけで、だれがやったから平和が来るという、具体的にそういうもので世界の完全平和というものは私はできるものじゃないと思います。
  131. 抜山映子

    抜山映子君 私は項目として挙げていただきたかったわけです。  先ほど秦野先生が、国家間の信頼関係の醸成をすることが平和の達成に極めて有効でないかと、こういうように言われました。そこで、国家間の信頼関係の醸成も平和を達成するための一つの道でしょうし、あるいは平和を阻害する社会的不安、貧困を除去するとか、あるいは国連の平和維持の機能強化とか、こういうことを実は項目を挙げてお答えいただきたかったわけなんでございます。  そこで、国家間の信頼関係の醸成として外務大臣にはどのような方策があるか、ひとつ個人として御見解を御披露ください。
  132. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 個人としてという立場じゃないわけですが、やはり国家間の信頼関係はもちろん大事であろうと思いますし、また、国家間というだけじゃなくて例えばヨーロッパソ連も含めたヨーロッパのストックホルムであるとかああいう決議、そういう形の醸成措置も必要でありましょうし、あるいはまた日ソであるとか中ソであるとか、国家間だけじゃなくてそういうグループ間の信頼醸成措置というようなことも、これは本当に平和を追求していく場合においては必要になってくると思うわけでございます。必要であろうと思いますが、しかし、残念ながらそういう信頼醸成措置といいますか、信頼関係を確立する客観的な状況というものがまだ煮詰まっていないということははっきり言えるのじゃないかと。  例えば日ソ間におきましても、残念ながらああした北方四島の問題が儼乎として存在をして、そこにはソ連軍事基地が構築されておる。こういうようなことがあって信頼関係というものを大きく阻害しているわけで、世界にはまだまだそういういろいろな問題が我々の前途に困難な障害として、信頼を妨げる困難として存在をしているということを認識しなければならぬと思います。
  133. 抜山映子

    抜山映子君 そうしますと、現時点では信頼関係を醸成するための方策、特に日ソ間で信頼関係を醸成するための方策は、外務大臣としては当面考えていらっしゃらないと、こういうように了解してよろしいわけですか。
  134. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そうした信頼関係を妨げる大きな問題が日ソ間には横たわっておるわけですが、しかしあきらめてはならないと思うわけで、こういう問題はこの問題として、我々は毅然として、同時に辛抱強く解決を求めていかなければなりませんが、同時に日ソ間で今いろいろな角度で対話を進めております。こういう対話を積み重ねることによって、私は全体的に日ソ間にも将来信頼関係というものが生まれてくる可能性はあり得ると、こういうふうに思うわけでございます。  私は、そういう意味では日ソ間を絶望する必要はない、困難はありますけれども乗り切っていける努力を重ねていかなければならぬと思います。
  135. 抜山映子

    抜山映子君 日本人のこれは悪い心情だと思うのですけれども、割とバランス志向というものが欠けておると思うのでございます。非常に日ソ間の情勢が厳しくなりますと、やたらに反共イデオロギーをむき出しにしたり、感情をむき出しにしたり、非常に対話が難しいからもう投げる球もないのだというような感触に日本人全体が陥りやすい。これは大変に危険なことと心配しておるわけでございます。  ですから、先ほど秦野先生の質問に対する御回答として、経済交流ということも外務大臣はおっしゃいました。経済交流はもとより文化交流、それから閣僚間の友情を深めるようなコミュニケーションの方法をとるということ。あるいは相互理解を深めるために当該国の語学の研修も図る。あるいは発言の際に、お名前を申し上げては大変失礼ですけれども、中曽根首相の、口がすべったと思うのですが、真意は必ずしも軍国主義の思想ではなかったのだと思いますけれども、海峡封鎖とか不沈空母とか、そういう発言を控えて、同じことを発言するについても日本が、日本の国民が安心して暮らせる体制をつくりたいと、こういうような発言にしていただければ日ソ間も非常にぎくしゃくとならなかったわけで、特に閣僚にあられる立場の方は言葉の問題に気をつけていただきたい。そして、信頼の醸成ということに一層の努力をしていただきたいと心から念願するものでございます。  そこで、国連の平和維持の機能の強化でございますけれども、外務大臣としてはどういう構想をお持ちでございましょうか。
  136. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 国際平和及び安全の維持は国連の主要な目的の一つであるにもかかわらず、国連はこの目的を達成するための機能を必ずしも十分に発揮しているとは言えない状況でございます。我が国としては、このような状況をやむを得ざるものとして看過するようなことがあれば、ひいては国連に対する信頼が損なわれ、その基礎が揺るがされるとの認識に立ちまして、国連の平和維持機能の強化を提唱してきております。  具体的に我が国としましては、国連の平和維持機能強化のため、安保理の機能強化、国連事務総長の役割強化、国連平和維持活動の強化等の提案を行ってきておりまして、今後とも同様な考えを有する諸国と緊密に協議しながら可能なものから実現していくべく一層の努力を払っていきたいと思っております。
  137. 抜山映子

    抜山映子君 核不拡散条約の未加盟国のうち、主要なものを挙げてください。
  138. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 核不拡散条約、現在百二十カ国が加盟いたしておりますが、先生御指摘の非加盟国といたしましては、核兵器保有国ではフランス、中国の二カ国が未加盟でございます。それから、核兵器国になる潜在的な能力のある国としていまだ加盟いたしておりません国、イスラエル、南ア、ブラジル、アルゼンチン、インド、パキスタン等がございます。
  139. 抜山映子

    抜山映子君 米国防総省国防核兵器局が発表したところによりますと、インドが西暦二〇〇〇年には核弾頭千六百七個分に相当する量の核分裂性物質を保有する見通しであると。イスラエルは百二十六個分、パキスタンが九十個分を保有して深刻な事態を迎える、こういうように言っておるんですけれども、こういう国々を核不拡散条約に署名させるための努力日本としてはどういうように考えていらっしゃいますか。
  140. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 先般ジュネーブでの軍縮会議に安倍大臣が日本外務大臣として初めて御出席になりましたが、その際の演説の中でも、核不拡散条約体制の強化の必要性を訴えまして、核兵器国、非核兵器国を問わず、未加盟の国に対しての条約参加を強く呼びかけられたところでございます。また、明年は核不拡散条約のレビュー会議を迎えることもございますので、私どもといたしましては、できるだけ多くの国がこの条約に入ってほしい、こういうことで未加盟の国にそれぞれ接触いたしまして勧誘をいたしておるところでございます。
  141. 抜山映子

    抜山映子君 平和の維持のためには国連の国際的な検証機関の強化というものが必要だと思うのでございますけれども、このイランイラク紛争における化学兵器使用状況調査に専門家の調査団が四カ国から四名、これが三月十三日から三月十九日、これは出ておるわけですね。それから、さらにイランイラク両国が合意した文民区域不攻撃に関する検証を行うため、これもスウェーデン、アイルランド、フィンランド、西独から計四名、これは六月二十日以降、あるいは六月二十六日、二十七日が予定と、こういうように書いてありますけれども、これはもう終わったことですから既に出たのだと思いますけれども、こういうようにわずか四名であるということは、実情を調べる人間、資料をつくる人間というように考えますと非常にスタッフ不足ではないかと思うのです。したがいまして、この検証機関をもっと充実するように日本としても提言していただきたいわけですけれども、外務大臣、いかがでございましょうか。
  142. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 先生から御指摘ございましたイランイラク紛争に関する国連の検証活動でございますが、確かに都市攻撃の違反があった場合の調査をするイランイラクに派遣されます両チーム、とりあえずの段階でございますので、UNTSOと申しますパレスチナの休戦監視団から人員を割きましてとりあえず派遣したということでございますので、現在のところ非常に規模が小さいのは事実でございます。ただ、我が国といたしましては、このような活動にはできるだけ協力するという建前から、両チームの通信機材購入費用を拠出した経緯がございます。今後、国連側がこの検証に際してもっと充実したチームの派遣が必要である、こういうふうになってまいりました場合には、私どもとしてはできるだけの協力をしたい、かように考えております。
  143. 抜山映子

    抜山映子君 被爆国としての日本世界の軍縮キャンペーンをやる義務ともいうべきものがあると思うのでございますけれども、原爆に関する我が国の資料、写真、それから事実を翻訳したものですね、こういうものを国連とか各国の図書館、あるいは日本の駐在大使館の図書閲覧室などに備え置くということが必要だと思いますが、この現状はどうなっておりますでしょうか。
  144. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 国連の本部の軍縮キャンペーンの一環といたしまして、昨年の総会外務大臣が御出席いただきましたときに、国連本部に原爆資料展を開設いたしまして、それの開会をしていただきました。  この原爆資料展と申しますのは、国連本部に広島、長崎両市より展示物といたしまして写真、被爆物、絵画及び長崎浦上天主堂の聖アグネス像を展示いたしております。また、その際国連図書館への備えつけの文献といたしまして、両市の原爆関係の英文の資料を八件寄贈いたしてございます。国連本部の年間の参観者が約五十万名でございまして、この展示されております場所は参観者がすべてお通りになるいい場所に設けていただいておりますので、展示開始ほぼ一年になりますので、約五十万人の方にごらんいただけたのではないかと思います。また、在外公館七館には広報映画を配付いたしてございます。また、広く外務省が配付いたしておりますジャパン・オブ・ツデーという資料がございますが、その中に広島平和公園の写真も展示いたしてございます。
  145. 抜山映子

    抜山映子君 少し回答が抜けておったようでございますが、各国の図書館に備えつけていただくように送付する件、あるいは在外公館の図書閲覧室に備え置く件、この点はどうなっていますか。
  146. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) ただいま国連局長が答弁されましたように、ジャパン・オブ・ツデーとか、一般的な雑誌の外務省の定期刊行物の中、及びそれ以外のものにつきましても、広報センターに一部備えつけてございますし、また、在外公館以外の各国の政府その他の機関につきましては、一部の機関に対しましては関係資料を送付してございます。
  147. 抜山映子

    抜山映子君 私が特に熱望いたしておりますのは、ジャパン・オブ・ツデーのような、一般的な日本の現状を知ってもらうためのインフォメーションの冊子ではなくて、原爆の被害の恐ろしさを赤裸々に外国の人に見てわかっていただけるような原爆に関するオンリーの資料を、各国の図書館あるいは日本の海外の大使館の図書閲覧室に備えて、外国の人の目に触れていただくということが私の心からの熱望するところなのでございます。平和運動と申しますと、とかく日本人はヒステリックな平和運動ばかりを考えまして、数年前でございましたか、アメリカのホワイトハウスの前で死んだまねをして、デモンストレーションをやるとかいって騒ぎましたけれども、このような平和運動のやり方はひんしゅくを買うだけで、決して世界の人の共感を呼ばないと思うのでございます。したがいまして、こういうような原爆に対する資料というものは、見る人の心をおのずから打つものでございまして、ぜひこのことは実現していただきたいと思いますが、外務大臣、お約束いただけませんでしようか。
  148. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 先生御指摘の点を考慮いたしまして、どの程度可能であるか検討させていただきたいと思います。
  149. 抜山映子

    抜山映子君 ありがとうございます。  国連の軍縮フェローシップ計画のもとに長崎とか広島を訪問してもらうというようなアイデアが一時出ましたけれども、これは実現されておりますのでしょうか。
  150. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 国連の軍縮特別総会以後、軍縮フェローシップという制度がございますが、第二回の特別総会に鈴木前総理が御出席の際に、長崎、広島への招待を申し出られました。それが昨年第一回目が実現いたしまして、二十五名の方に来ていただきました。本年につきましても二十五名の方に来ていただくことにして、今準備いたしているところでございます。
  151. 抜山映子

    抜山映子君 もう時間がございませんが、日本外交能力の優越性を高めるということが非常に日本の平和を維持するために必要だと思うのでございます。ところが、一番今問題になっておりますのが日本外交官の在外公館の大使公邸ですね。これの修繕費用がままにならないで長年放置されているという実情、あるいはまた、外交官に対する住宅手当が当該地の家賃と全く見合わないような少ない金額を支給している、そのために給与から補充している公使以下参事官、書記官が大変多うございまして、そのために家庭パーティーをして外交をして情報収集をしようと思っても気恥ずかしくて困る、こういう実情を私は聞いておりますので、ぜひこのことを改善していただくように希望を申し上げまして、私の本日の質問を終わらせていただきます。
  152. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、外務省に対しましてせっかく御鞭撻をいただいたわけでございます。確かに外交官の待遇あるいはまた在外公館等の設備の状況等は、ほかの国に比べますと、私も随分参りましたけれどもいい方じゃありません。日本はやはりこれから国際的な国家として外交活動に重点を置かなきゃなりませんので、そうした外交の実施体制というものを強化する必要があると思っております。非常に財政の厳しい中で我々も努力を重ねてきておりますが、この問題はこれからの日本の体面の問題にもなりますし、これからの平和外交を進める上において重要な一つの要素にもなるわけでございますから、国会の皆様にもひとつ御理解をいただきまして、一層の御支援のほどを私からもお願い申し上げる次第でございます。
  153. 抜山映子

    抜山映子君 ありがとうございました。
  154. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、核軍拡をめぐる状況なんですが、昨年、ヨーロッパで米ソの核配備が行われるということで、ヨーロッパで緊迫した状態が起こっていますが、これはただ単にヨーロッパだけでなくして、アジアにおいてそれぞれの艦船における核の配備が増強されている。アメリカの核トマホークがそうですが、またソ連の方も、それにはっきり政府も言明しているように、潜水艦の増強というふうなことも言われていますから、さらには、これはただ単に米ソだけの問題ではなくして、核保有国の艦船における核の配備、これもふえている。アメリカ民間研究所の発表によりましても、海上における核の配備というのが約一万三千発に上っているだろうというふうなことが言われている。こういう状態というのがどんどん厳しくなってきているということは、これは明確な事実だろうと思うのですね。そういうことを考えますと、やはり非核三原則の厳守ということが一層重要になってきているんじゃないか。これはただ単にそういう状況だけではなくして、核の持ち込みがあるのではないかという疑惑が国民の中にも広がっていますから、そういう意味でも、この非核三原則を今後一層遵守する必要があるというふうに考えるわけですが、大臣、この点はどのように御判断なさっていますでしょうか。
  155. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、日本の平和を守り、さらにアジアの平和と安定に貢献をしていくという意味からいきましても、非核三原則を守るということは大事である、こういうふうに思います。
  156. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、今までと同様ではなくて、さらに一層重要になってきているという点での御認識はどうでしょうか。
  157. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、今までと同様とか、さらに重要になってくるとかいうこと以前の、日本のいわば国の基本方針、国是とも言うべき方針として我々は貫いていかなきゃならない、こういうふうに思います。
  158. 立木洋

    ○立木洋君 状況からしてさらに一層重要になっているという御答弁をいただきたかったわけですが、どうもそのような御認識ではないようですけれども。  アメリカの場合は先ほど来いろいろやりとりがありまして、これまでも何回かやっていますし、事前協議によって対処するということが言われていますのでその問題は一応抜きにして、つまり、アメリカ以外の外国の艦船で核を積載する可能性がある艦船、しかも核が積載されているということが濃厚に考えられる、判断される外国軍艦日本への寄港を申し入れてきたとき、日本としてはどういうふうな対応をなさるのでしようか。
  159. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 一般論として申し上げますが、御承知のとおり、一般国際法上、外国軍艦が我が国の港に立ち寄る場合には我が国の同意が必要なわけでございます。外国からの寄港許可申請というのは外交チャネルを通じて行われますので、外務省の方にその話があるわけでございますけれども、この場合に、友好国の軍艦が我が国に寄港する場合におきまして、我が国といたしましては我が国が非核三原則というものを厳守しておるということを周知徹底させておりますし、その立場というものを入ってくる外国としては当然に尊重しなければならない、そういう前提で我が国への寄港を要請してくる、こういうことになりますので、したがって、そのことを通じて我が方としては非核三原則の実際上の実効を図る、こういうことで従来から対処してきているわけでございます。
  160. 立木洋

    ○立木洋君 局長ね、難しい言い方しないで、具体的にはどういう手続を講じますか。
  161. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 一般的に申し上げますと、我が国としては非核三原則を厳守するということを、国際的な場におきましても、あるいは場合によりまして外交的なチャネルにおきましても、我が方のそういう立場というものは各国に周知させているわけです。ですから、相手国が我が国への寄港を要請してくる場合に、そういう立場を当然承知の上である、こういう前提で対処しているわけでございますけれども、実際問題として従来入ってくる船のケースについて申し上げますと、友好国の親善訪問という場合におきましては、核を積載している疑いがある、あるいは可能性があるというようなケースの船というものはそう頻繁にあるわけではございませんので、大体において今申し上げたような手続において問題が処理されているというふうに理解しております。
  162. 立木洋

    ○立木洋君 小和田さん、ことしの二月十四日の衆議院の中曽根さんの答弁を御承知だろうと思うんですが、この問題に関してはより明確に言っているんですよね。「アメリカとのような日米安保条約を持たない友好国の軍艦の来訪に際しまして、もしその軍艦等が核兵器を保有している疑いが濃厚である、そういう場合には、もちろん我が国は、非核三原則を持っておることを先方に知らせまして、そして協議をする、そして事情をよく聞いてみる。しかし、我が方においてその疑いが消えない、非常にそういう危険性があるという場合には、もちろん拒否いたします。」というふうに総理が言われているんですが、この総理の答弁には間違いないでしょうね。
  163. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 総理が二月の予算委員会においてそういう答弁をされたということは私は十分承知しております。それから、総理がおっしゃったことはまさにそのとおりでございます。私が申し上げておりますのは、先ほど来申し上げておりますように、一般的に友好国の関係においては国家は信頼関係に立って行動するわけでございますし、通常のケースにおいては、友好親善の目的で軍艦が寄港を希望するというときには我が国の非核三原則を当然尊重する、こういう建前で入ってくるわけで、従来、そういうケースについて問題は生じていないということを申し上げたわけです。ただ、我が国の非核三原則に背馳するような核の持ち込みを行おうとしているというようなことを、我が方として確かにそうだというふうに信ずるに足るような理由があるというような状況が、例外的ではございましょうけれども、理論的な問題として考えてそういう状況があったというような場合においては、もちろん我が国としては非核三原則を確保するために必要な措置をとる、総理はそういうことを踏まえて御答弁になったというふうに理解しております。
  164. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカの場合には事前協議があるということが再々言われていますけれども、それ以外、仮に友好国であろうともその疑いが濃厚である場合、そしていろいろ問いただしてみてもその疑いが消えないような場合、これは拒否するということですから、これは、領海条約でもその国の権利として沿岸国の第一義的な権利が認められているわけですから、そういうふうな立場をとるということはこれは当然のことだろうと思うんです、非核三原則の場合。だから、ここで言われている明確に協議をする、そして事情をよく聞いてみる、疑いが消えない場合には拒否をするというこの答弁に間違いないということをひとつ確認をしておきたいと思うんです。  ところが、今度アメリカ事前協議の場合ですが、先ほども小和田さんが言われましたように、核の持ち込みの問題等、日本政府の意思に反して行動しないというための歯どめだというふうな趣旨のことを言われた。それで、ところが事前協議というのは、先般来衆議院でもいろいろやりとりがあったようですけれども、この事前協議というのは日本側からではなくてアメリカ側から申し入れる、発議するものだと。以前のいろいろな答弁の違いはあったけれども、政府の統一した見解というのはそういうものであるというふうに言われましたけれども、つまりアメリカ側からなされるものだというような、事前協議がそういうふうに解釈されるというのはどういう理由からでしょうか。
  165. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) この問題につきましては先般来議論がございまして、衆議院の決算委員会でも御答弁したわけでございますけれども、基本的に先ほども申し上げましたように、安保条約第六条の実施に関する交換公文というのは、安保条約第六条の規定におきまして、アメリカが安保条約の枠内において第六条の規定に従って行うような行動については条約上そういう行動をとる権利が認められておる。ただし、若干の事項につきましては、我が国の国益の立場から我が国としてその個々のケースについてチェックをする権能を保持すると、こういう見地から六条の実施に関する交換公文が決められているということは先ほど御説明したとおりでございます。そういう立場から、その問題について個々のケースにつきましてアメリカがそれに該当するような行動をとりたい、あるいはその行動をとることを考えたいというようなときにおきましては、アメリカがそういうことを考える、あるいはそういう行動を想定するわけでございますので、そういう個々の行動の実施あるいは想定に当たりまして我が方に対してそのことを言ってくる、これは第六条に基づく事前協議制度の建前、事柄の性格上そういうことになるということを申し上げているわけでございます。
  166. 立木洋

    ○立木洋君 かつて愛知さんがそういうふうなことを述べていますよね。ただ、そこではっきりさしておきたいのですけれどもね、第六条のいわゆる事前協議の制度というのは日本側から発議ができないのか、それとも日本側からしないという意味なのか、そこらあたりの法解釈はどうなっているのですか。
  167. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 先ほど来申し上げておりますように、政府が従来から一貫して申し上げておりますのは、事前協議制度の仕組みの問題について申し上げているわけです。この事前協議というものの仕組みはさっき申し上げたようなことでございますので、建前としてそういう個々の行動をとろうとする国が、つまり相手側がそれを日本側に対して申し出るというのが建前であるということを申し上げているわけでございますので、厳格な意味で第六条に基づいて事前協議というものを考えます場合には、それは具体的な行動をとろうとするに当たって先方が言ってくるものであると、こういうことを申し上げております。
  168. 立木洋

    ○立木洋君 だから、法的なこの法律の仕組みから言えば、この事前協議制度という仕組みから言えば日本側から発議はできないということですよね。
  169. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) これも従来から申し上げていることでございますけれども、できるとかできないとかいうようなことを申しますと、何となくその権利があるとか、その権利を奪われておるとかいうような感じに受け取られるかと思いますが、政府が申し上げておりますのはそういうことではないので、六条に基づいてアメリカ側がそういうことを言ってくる義務があると、こういうことを申し上げているわけです。したがいまして、日本側としては、アメリカ側がその交換公文に基づきます義務を履行して我が方に申し出てくる、それによって我が方が協議に応ずると、こういうことを申し上げているわけでございまして、我が方としてこの事前協議の運用一般の問題について、我が方からアメリカとの間でこの問題について話ができるとかできないとかいうこととは一応別の問題として、六条の、さっきから繰り返して申し上げておりますように、具体的な個別のケースにつきまして、アメリカ側がこういうことをやりたいのだけれどもどうだろうかといって日本側に言ってくる義務があるということを申し上げているわけです。
  170. 立木洋

    ○立木洋君 まさに局長ね、私はそこが問題だと思うんですよ。つまり、この法律上の仕組みというのは日本側から発議ができないような仕組みになっている。とするならば、日本の国家として権利を行使することが侵害されている、制約されているということになるわけですね。それで、もしか日本側が条約の仕組みをそういうふうに解釈をして、自発的にしないのか嫌々しないのかは別として、しないというのであるならばこれは日本側の意思でしないのですよ。しかし、そうではなくて、問題はそういう制度上の仕組みがそうなっているのだから日本側からはできないのだ、一方的にアメリカ側からだけしかそれはできないのだということになれば、それはどのように述べようとも、日本の権利を行使することを妨げているという結果に仕組みがなっているのじゃないですか、そういうふうに解釈されてもそれは当然じゃないのでしようか。
  171. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 先ほど来申し上げていることの繰り返しになって恐縮でございますけれども、これは第六条の実施に関する交換公文というのは両国の権利について定めているのではございませんで、第六条の実施に関する交換公文の対象になっているような具体的な行動をとろうとする側は、そのことを相手側に対して協議をする義務があると、こういうことを規定しているわけです。そこで述べられております事柄というのは、さっき申しましたように、第六条の原則的な規定にかかわらずそういうことをとる、あるいはとることを希望する側、即ちアメリカ側がこういう義務を負うと、つまり、アメリカ側についてのみ考え得る事柄が問題になっている、その事柄の性格上アメリカ側がそういう義務を負っている、こう、いう仕組みになっているわけでございますので、どちらの権利がどうであるというような問題は、この交換公文の問題としては生じてこないわけでございます。
  172. 立木洋

    ○立木洋君 いかようにしても権利が行使できないようになっているということはこれは事実なんです、客観的に。  では、この問題は水かけ論になるでしょうから、あなたはそれ以上答弁を変えようとしないでしょうからちょっと質問を変えますが、例えば第四条で言いますと、この日米安保条約の「この条約の実施に関して随時協議し」というふうになっているわけですね。「随時協議し」というのはこれは日本側からだって協議できるわけです。だから、アメリカの艦船が入ってくる場合、核積載艦ということが極めてはっきりして、既に核が積載されているというようなことが極めて濃厚な状況にある場合、これは随時協議日本側から申し入れるということは、第四条の規定に基づいてもこれはできるのじゃないでしょうか。これはどうですか。
  173. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 第四条の「協議」と申しますのは委員が御指摘になりましたように、「この条約の実施に関して随時協議」するということで、英文でも主語は両当事国になっておりますので、もちろん、双方がこの条約の実施に関する問題についていつでも協議をすることができるということを一般的に決めているわけでございます。したがいまして、そういう協議というものは日本側から提起することもありましょうし、アメリカ側から持ち出すということもあるでございましょう。  ただ、先ほど来政府がこの問題に関連して申し上げておりますのは、今具体的に問題になっております個別的な具体的なケース、例えばアメリカが核の持ち込みということを考える、あるいはそういう具体的な問題について日本側協議をしたいというようなケースにつきましては、これは条約の法的な仕組みの問題として第六条の事前協議の対象ということになっておると、こういうことを申し上げておるわけでございます。    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕 したがいまして、あと第四条に基づいてどういう問題が提起できるかということになりますと、これは非常に一般的な規定でございますので、条約の実施に関してはいろいろな問題、いかなる問題であっても随時協議を提起することができるということはそのとおりでございますけれども、日米の安保条約に基づく信頼関係前提としたこの安保体制、安保体制の運用の問題ということを考えてみますと、これは先ほど来申し上げておりますように、事前協議の対象になっていることについては事柄の性格上アメリカが当然に日本協議をしてくる性格のものである、それからまた、核の持ち込みの問題に関連して申しますれば、アメリカが従来から安保条約その関連取り決めの義務というものを誠実に履行するということを繰り返して保証しているわけでございますから、委員がお尋ねになっておりますような個々の具体的な米艦船の寄港の問題については、その第六条の交換公文のもとでの仕組みというものによって処理をするということが前提となっておりまして、それについて日本側がさらに第四条の問題としてこれを提起するということは必要でもないしまた適当でもなかろうということを申し上げているわけでございます。
  174. 立木洋

    ○立木洋君 局長ね、衆議院であなたが答弁した、あるいは四十三年の高辻さんですか、あの高辻さんがあのとき言われているのは、ここに議事録を持ってきていますけれども、事前協議について言えば、事柄の性質上やはりその意図を持つアメリカ側からだろうと、こういうふうにはっきり言われていますよね。ところが、「しかし」と言っているんですよ。「事前協議の申し出、事前協議の中身の運用といいますか、どうもそれは少し怪しいからそういうことをやることをひとつ運用を考えたらどうかというような種類のことは、むろんできると思います。これは四条を引用してもよろしゅうございますし、四条でなければできないというようなしろものでもないと思いますが、むろん四条と申し上げて差しつかえないと思います。」というふうにも述べているわけですね。だから、日本には非核三原則と言われるものが国是としてあるわけですし、そして国民自身が非常に疑惑を持っている、まさに核艦船、核が積載されている疑いが極めて濃厚だという場合には、やっぱり国是を守る立場から、そういう事前協議の問題があったにしても、この問題についてはこういう国民の脅威があるのだから、そのこと自体これには核があるのかないのか事情を確かめるというふうなことを随時協議を申し入れるということは当然行うことができるのじゃないですか。
  175. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 委員の御指摘になりました当時の高辻法制局長官の答弁は、今読み上げられたとおりでございます。ここで申しておりますのは、事前協議の中身を運用と申しますか、どうもそれは少し怪しいからそういうことをやることをひとつ運用を考えたらどうかというような種類のことは、無論できると思います。それは四条の問題だと考えていいだろうと、こういうことを言っているわけでございまして、これはつまり、私は先ほど来二つのことを区別して申し上げようと思っておりますが、一つは個々の具体的なケースについて、それが事前協議の対象になるので日本政府に対して協議アメリカから申し入れてくるという問題、これは第六条の実施に関する交換公文の問題でございますので、それに従ってアメリカからの申し出を受けて我が方が対処をする、こういう性格の問題でございます。そのことを離れて、事前協議の運用一般の問題を含めまして安保条約の実施に関して協議をするということは四条の問題としてできるわけでございまして、したがって、高辻長官が答弁しておりますように、そのことが事前協議の運用一般に関する問題であっても一向差し支えはないのだと思います。その意味では先ほど来政府が答弁しておりますように、例えば昨年の三月でございましたか、外務大臣がマンスフィールド大使を招致いたしまして、我が国のこの問題についての懸念というものを背景にいたしまして、この非核三原則の問題であるとか事前協議の運用の問題であるとかというようなことにつきまして申し入れをしたと、昨年の三月に申し入れをして話し合いを行ったというケースがございます。    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕 ですから、そういうふうに我が方といたしましては、我が国の核持ち込みに関する立場、関心というようなものについては累次必要に応じて日米間で話し合いを行っておるわけでございますし、他方、それに対してアメリカ側は核兵器に対する我が国の特殊な国民感情というものは十分理解しておる、それから、安保条約その関連取り決め上の義務は誠実に履行をしておるしまた今後とも履行をすると、こういうことを言っているわけでございますので、そういう種類の、そういう性格の協議というものは必要に応じて日米間に今までも行われているわけであります。
  176. 立木洋

    ○立木洋君 簡単で結構なんですけれども、だから第四条の場合、この随時協議の場合に、つまり核の持ち込みの疑惑を晴らすための、つまり非核三原則を厳守するための第四条の適用ということはあり得るというふうに考えていいのか、それは第四条としては考えられない、第六条だけであるというふうに言われるのか、その点だけちょっと明確にしておいていただきたい。
  177. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) さっきから申し上げておりますように、個々の具体的なケースについて
  178. 立木洋

    ○立木洋君 具体的なケースで私は言っているのです。
  179. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 具体的なケースについて、この核の持ち込みということを問題にいたします場合は、そのケースについての日本の判断を求めるのは第六条の実施に関する交換公文が規定しているところでございますから、それによるべきものであるというふうに考えております。
  180. 立木洋

    ○立木洋君 第四条としてはできない、第四条についてはしないというのか、第四条を引用しないと。
  181. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) その持ち込みに関連をいたしまして事前協議制度の運用というものを問題にするようなケースは、先ほど来申し上げておりますように、例えば昨年の、五十八年三月の安倍大臣とマンスフィールドの協議というようなものは、そういう種類のものと認識していただいても結構だと思います。
  182. 立木洋

    ○立木洋君 大臣ね、これは大変な問題なんですよ。友好国である、つまり日本事前協議制度の確立されていない国に対しては、総理大臣自身が、そういう疑いが濃厚にあれば非核三原則ということを先方に知らせてそして協議をする、事情をよく聞いてみる、そしてその疑いが消えない場合、非常にそういう危険性がある場合には無論拒否しますと、こういうふうに述べているのです。協議すると言っているのです、相手と。いいですか、ところが、事前協議の制度というのは、これはまさに日本政府の意図に反しないように歯どめをかけるものだと、日本に核を入れさせない、持ち込ませない、こういう歯どめをかけるのが事前協議の制度だと。ところが、六条の事前協議の制度では、この仕組み自体が日本側から発議ができないようになっている、これは確かに局長は我々から権利だということを言われるのを嫌がっておられるでしようけれども、仕組み上だというふうに言いましたよね、繰り返し。だけれども我々から言うならば、日本側からできないような仕組みになっている。今度は第四条の場合で、個々の具体的な問題についてそれなら随時協議をするのか、非核三原則を守るために四条を適用してこれは危険性があるから一体どうなんだということを確かめるのかと言ったら、一般的なことを申し上げることはあるけれども、個々のケースの問題については四条でもやりません、事前協議の運用にかかわる問題だけですと、こういうことになってくると、事前協議の制度がある方がより核の持ち込みが、何というんですか、空洞化されているといいますか、あいまいにされているというか、歯どめすべき事前協議がある方があいまいにされているというのは全く私は理解に苦しむ。矛盾じゃないかと思うのですけれども、歯どめをかける事前協議がある方が日本側からその確認もできない、ない方が協議ができるのですから、そして徹底させて聞いて、疑いがあったら拒否するのですから、大臣、この矛盾をどういうふうに解いてくれますか。
  183. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは矛盾じゃありませんし、私は条約局長の答弁は実に明快だと思いますね。日米安保条約という日米間には重要な条約がありまして、これは、日米の信頼関係によって基本は運営されておるわけですね。信頼関係がなければ条約なんて意味がないわけですから。それで、その信頼関係で最も大きな核をなすものは事前協議制度ですね。それは、日本が非核三原則を持っているのです。これはアメリカも知っているわけですから、事前協議というものはこれは破られない、厳然として守られるというのが大前提のもとに運営されるわけですから、ですからちっとも矛盾でもありませんし、またアメリカ日米安保条約その関連規定はこれは遵守しますということをはっきり言っておる。お互いに条約は守らなきゃならぬわけですからね。ですから、言っていることは極めて明快ですし、そして制度といいますか、条約できちっと決められているわけですから、より確実であるということははっきり言えるのじゃないでしようか。  それから、四条と六条の問題ですが、六条のこの事前協議制度というのは、条約局長が言っておりますようにこれはアメリカの義務なんですよね。アメリカがかけてこなきゃならぬ義務ですから、配備だとか、重要な配置の変更だとか、そういうものは義務としてアメリカは当然なさなきゃならぬことですから、ですから、日本の主権だとか、日本が譲っておるとか、片務的なそういうものでも全然ないわけですよね、これは。これははっきり言えると思います。  それから、四条については、これは随時協議というのはそのままでのいわゆる事前協議の運用等についてもこれは四条協議でやれるわけでしょうし、先ほど局長が言っていますように、私がマンスフィールドさんを呼んで一般的に念を押した、そういう問題等はまさにそのとおりだ、こういうふうに思います。
  184. 立木洋

    ○立木洋君 大臣がここでこれまでの発言の経緯を覆してしまうとこれは天下の大事になりますから、それはそういう発言はないでしょうけれども、私は二点だけ指摘をしておきたい。  今の安倍外務大臣が言われたのは重大な矛盾した発言なんですよ。一つは、日米安保条約が、つまり日本が核を持ち込みさせない、再び日本に核による災害を招かないようにしたいという日本国民の非核三原則の国是、これを完全に履行するのを事実上侵害しているというか、その権利の履行、行使をできないような仕組みに事実上事前協議制度がなっているということだけは、私は明確に指摘をしておきたい。  それから、四条の場合には、日本側が自発的にしないというのであればそれはそうでしょうけれども、この点でもアメリカヘの追随姿勢が見られるということだけ明確にしておきたいと思います。  もう一つは、アメリカ側が、そういう義務があるのだからその義務を履行するであろうと言われましたけれども、義務を履行しなくてもいささかも痛手を感じないような仕組みになっている。第一日本は聞きもしないのですから、核があるかないか。検査もしないのですから。何にもしないのですから。ですから、何ら痛みを感じることなく核兵器を持ち込むことができる仕組みになっているということを私は明確に指摘をしておきたい。これについては、これ以上やりとりしましてもあれですから、別の問題で一問だけお聞きしておきます。  それは、全斗煥大統領の訪日の問題ですが、かねてから日韓関係の問題につきましては、何としても朝鮮半島における分断した国家の統一ということが非常に重要なことでありますから、こういう見地から私たちも考えているわけですが、しかし、この日韓関係の問題で言えば、対韓協力あるいは日韓関係の強化というふうなことがアメリカ側から再々要求されてきた。アメリカの軍部の発言でも八二年にありますが、シーレーン防衛との関連でソ連の脅威に対して日米韓三国の軍事力を合わして共同して戦うべきだというふうなことが述べられたという報道もありますし、あるいはアメリカ政府当局が、韓国が兵器購入資金を工面できるように日本が韓国に経済援助をすることを望んでいるというような発言もあった。そういう事態を踏まえて中曽根首相が日本の総理として初めて韓国を訪問し、韓国の防衛努力を高く評価するという共同声明が発表された。そして、安保絡みのいわゆる四十億ドルという対韓援助が極めて急激に展開されるという事態を迎えた。  そういう状況の中で韓国側としては、韓日運命共同体、あるいは米日韓の安保体制という考え方で原則的に一致した等々の報道政府側の発言としても繰り返し行われているという状況を見ますと、今日の全斗煥の訪日がこういう延長線上にあるということを考えるならば、これは極めて危険なことではないだろうか。  この点で、外務大臣が韓国を訪問された際日言われた発言で、アジアの平和と安定を考えるとき、朝鮮半島の緊張緩和は極めて大事であるということを述べられておりますが、これはどのようにして緊張緩和に日本としては貢献しようとしているのか。これは共同声明の立場で言いますと、韓国の防衛努力が朝鮮半島の平和維持に寄与しているという見地に立つならば、この朝鮮半島のいわゆる緊張緩和というのは、韓国の防衛努力に協力するということにつながるのでもないかというふうにも判断されますし、このような危険な事態が全くないと言えるのかどうなのか、その点について大臣の御見解を伺っておきたいと思うのです。
  185. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどの核の問題は、これは議論すれば切りがないわけですけれども、やはり安保条約という条約は、これはお互いの国家間の信頼関係というものが基礎にあるわけで、この基礎が崩れればこれは条約そのものが成り立たない。事前協議制度も、やっぱりそうした確固たる国家間の約束、信頼関係、そういうものがあって初めて事前協議というものが成り立つわけですから、そういう意味では日米関係は確固不動の信頼関係がある、その上に成り立った安保条約であり事前協議制度である、こういうふうに確信をしております。  それから、今のチョン・ドウホワン大統領の訪日でございますが、これはやはり日韓の友好親善を目的とするものである、こういうふうに理解しております。  政府としましては、韓国は我が国にとりまして最も近い隣国でありますし、これまで友好国であった韓国との間で首脳の相互訪問が行われなかったというのがむしろ不自然というふうに考えておりますし、今後の友好善隣関係の一層の促進の観点からも歓迎をされなければならない。韓国の現政権に対する認識については軽々に論ずるということは慎むべきでしょうが、昨年一月の日韓共同声明第三項にもあるとおり、「日韓両国が自由と民主主義という共通の理念を追求する隣邦」である、こういう認識ですね、そういうことで取り組んでおるわけでございまして、確かに韓国は三十八度線によって北朝鮮との間で分断されておるわけでございますが、これは朝鮮事変、朝鮮戦争というものによってそうしたことがいわば確定的といいますか、そういう方向に今進んでおるわけで、そういう中で緊張関係が続いておることは残念であると思いますし、日本としましては、そうした緊張関係を緩和して、そしてやはり統一という方向へ進んでいくことを心から念願するわけでございます。  少なくとも、それにはやはり平和という雰囲気の中で行われなければならない。そういうような立場から見ましても、今韓国の、朝鮮半島のバランスというものから見ましても、我々は今韓国との間で友好関係を結び、そしてチョン・ドウホワン大統領が日本に訪日するということは、それなりに朝鮮半島の安定あるいはまたアジアの安定、平和というものに対して、これからこれをそういう方向に向かって持っていく環境づくりにむしろそういうものがお役に立つといいますか、そういう方向に持っていく訪日であってもらいたい、こういうふうに私は念願しておるわけですね。
  186. 立木洋

    ○立木洋君 次の質問は次の機会に譲ります。  きょうはこれで終わります。
  187. 秦豊

    ○秦豊君 最初に、外務省に確認を含めて伺っておきたいのだが、我々日朝議連が今度ピョンヤンからしかるべきランクの人々を招きたいと思っていますけれども、その場合、北朝鮮側が我々の招致にこたえて、例えば金佑鐘労働党国際事業部次長または鄭基哲書記長のいずれかを送り込もうとした場合には、そのお二人のうちいずれであっても外務省としては入国はお認めになりますか。
  188. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 御質問の点でございますけれども、その場合には、今、先生から具体的なお名前が挙がりましたけれども、その個々の具体的な方の名前に対して、私どもがただいまどうだこうだと言うことを差し控えさしていただきたいと思いますが、基本的には昨年十一月の官房長官談話がございます。それを踏まえまして、そのレベルそれから訪日の目的というものを勘案いたしましてケース・バイ・ケースにその都度考えさしていただきたい、こういうことでございます。
  189. 秦豊

    ○秦豊君 アジア局長、ずばり言えば私が挙げた具体的なお二人のこのランク、これならば妨げがないでしょう。
  190. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) ただいま私の立場で、今の先生の御質問についてイエス、ノーというお答えは差し控えさしていただきたいと思いますが、具体的にそういうお話がありましたときに改めて検討さしていただきたいと思います。
  191. 秦豊

    ○秦豊君 そう否定的な、全面否定のニュアンスとは受け取りたくはないが、それについてはいかが。
  192. 後藤利雄

    政府委員後藤利雄君) 同じお答えで申しわけございません。その都度考えさしていただきたいと思います。
  193. 秦豊

    ○秦豊君 新任早々だからガードはかたい方がよろしいかとは思うが、しかしとにかく突破口にしなきゃいけませんからね。  大臣にもこれはお答えいただきたいのだが、今度の我々の日朝議連がセッティングするこの東京での接触ですね、これは東京会談といってもいいし、名前はどうでもいいんだが、これはもし北朝鮮側が応諾をしてしかるべきランクの人が来日した場合はですね、冷却している日朝関係打開の緩やかな最初の契機になるということを我々議連としては当然期待しているのです。もちろん、漁業協定を優先しますよ。そういう我々の受けとめ方について、次のステップにつながってもらいたい、ねばならないという我々議連のこういう期待については、外務大臣はどうごらんになっていますか。
  194. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日朝議連のそうした動きにつきましては、私も承知しております。また、漁業協定が中断をして日本の零細漁民が非常に苦しい立場にあるということも承知いたしておりますし、政府間の関係はないのですが、漁業協定がまた効力を発揮できるように日朝間で話が進んでいくことを、これは政府としても、やっぱり零細漁民の立場考えれば私は外務大臣としても期待するわけなんです。しかし、日朝間には政府間の関係がありませんし、そしてまたそういう交渉のために、あるいはその他の問題等もあるでしょうが、そういうためにこちらにお見えになるということについては、今度やはり政府としての立場からケース・バイ・ケースで判断をしていかなきゃならぬ、こういうふうに思うわけでありますし、それじゃ現実に日朝議連の呼びかけに応じて北朝鮮がどういう反応を示すのか、あるいはまたどういう方を送ろうとされるのか、そういう具体的なケースを見ないとちょっと政府としては判断できないのじゃないか、こういうふうに思うわけです。
  195. 秦豊

    ○秦豊君 我々は日朝漁業協定、これがまず第一。民間機の航空路問題。第三、日朝相互の貿易事務所、これは一種の代表部機能をやや非公式に持たせたい、この設置問題。それから、ジャーナリスト、記者の交換問題、この四つを日朝問題打開の一つのステップというよりアイテムに考えているわけです。こういう我々の考え方、とらえ方について、外務大臣としてはどの程度の関心をお持ちですか、あるいは願望をお持ちですか。
  196. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 御指摘の四点のうち、民間漁業協定の交渉再開問題につきましては、我が国零細漁民の生計にかかわる問題でありまして、政府としてもその再開に向けて日朝の民間当事者には話し合いが行われることを望んでおる、これは先ほど言ったとおりであります。  他方、その他の記者交流、貿易事務所の設置については、あくまで従来からの民間レベルでの交流の一環として考えられるか否かにより政府として判断をしていくことになるわけでございましようが、いずれにしましても航空路についてはこれは民間レベルの話し合いになじむ問題ではない、こういうふうに考えております。
  197. 秦豊

    ○秦豊君 安倍外相は、訪韓のちょっと前に韓国人ジャーナリストと話し合いを持たれましてこういう認識を述べていらっしゃるんですよね。「今やピョンヤンの対日姿勢というのは、政策というのは柔軟と受けとめざるを得ない」と。一語一語の正確さには欠けますけれども、おっしゃいましたね。この外務大臣の認識を今度は手数に変えていけばいいと思うんです、アクションというか、能動性に。その時期が私は来ていると思うので、具体的にひとつ提案があるんですが、例えば最近、これはある中国筋の観測ですけれども、ピョンヤンとしては日本政府の、つまり安倍外交の今後の対ピョンヤンヘの対応いかんによっては、来年にでも北側に残されているいわゆる日本人妻問題には前向きに対応したいと。  具体的にどういうことかと言うと、北朝鮮が検討している前向き姿勢というのは、まず日本人妻の置かれている環境を改善する。その次には、日本人妻とその両親とか兄弟縁者との北朝鮮の領域での再会を認める。最後には、関係改善がより進めば里帰りも認めるし、その場合には中国の例の残留孤児の方式ですね、あれをぜひ踏襲したいというふうな、これは非公式な願望を述べているようです。  そこで、今、千八百七十三人の日本人妻という非公式資料もございますし、やはり安倍外交が、対日政策にどうも変化の兆しありと、しかもかなり長期、長いレンジを見据えている印象もあるという認識をあわせてお持ちならば、今度は日本側がアクションを起こすべきではないか。そのためには、先般来人道的なケースとして懸案になっているこの問題を今こそ前向きにお進めになるお気持ちはありませんか。
  198. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今私の率直な気持ちを言わせていただきますと、もう足音が聞こえてきておりますチョン・ドウホワン大統領の訪日をいかにして成功裏に終わらせるか、訪日をいかに歓迎して迎えるかということで頭がいっぱいでありますが、しかし同時に、やはり北朝鮮との間の関係、それから朝鮮半島の緊張緩和のために日本が環境づくりのためになし得ることはやはりしていかなきゃならぬ。私が中国に参りまして、中国と韓国との間のいわゆる非政治的な面での交流を提言いたしましたのもそうした面からでございます。そういう中で、やはり韓国側に率直に現実認識は持ってもらいたいと思いまして韓国の記者にも説明したのは、金日成主席の対ソ訪問だとか、そういう一連の動きで、北朝鮮相当柔軟に対日姿勢ではなってきているということは、これは私はやっぱり日本の判断として韓国側にも知ってもらいたい。日本はこれを注目しているということも、新聞記者団だけじゃなくて、私は韓国の政府にも率直に述べたわけでございます。これがどういう動きになってくるか、今後を見守ってまいりたいと思うわけでございます。
  199. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、覚えていらっしゃると思いますが、去る四月二十六日の当委員会で私が、緩やかではあるし、多少時間もかかるであろうけれども、だんだん朝鮮半島情勢は三者会談の方向に収れんされるだろう、その場合には韓国が同等の資格で参加をすることの保証、それから北京での開催がまず条件、三番目には、懸案の駐韓米軍の撤退問題は前提、つまり入り口にはしないだろう、四番目には、南北対話の同時進行、こういう方向がだんだん顕在化していくだろうとあなたに申し上げたら、外務大臣は、「なかなか含蓄のある御発想だと思いますが、そういうことになるかどうか」ということでずっとやや長い答弁をされています。ところが、まさに胡耀邦氏からもたらされたピョンヤンの感触は、ある日本筋にもたらされた感触ですが、まさにピョンヤンが最近方針転換をして、三者会談の前提条件として駐韓米軍問題は考えない、国連軍としての把握をし直している、こういうことがもたらされておりますし、それからアメリカや我々が希望していました湾岸の戦争停止のために、例えば北朝鮮イラン武器輸出をしているのは何とか見合わしてもらいたいというひそかな願望を持っていたところが、一時停止している。向こうから送られてくるサウンドは、シグナルは非常に微妙なものが積み重なっているわけですね。だから、外務大臣の柔軟だという御認識とどうも符合するわけなんです。僕は、最大のデッドロックというのはやや解かされつつあるのではないか、あとは今度はソウルの態度ですよ、と思いますけれども、どうお考えですか。
  200. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにおっしゃるようにいろいろの情報から分析しますれば、北朝鮮姿勢というのは日本に対しても柔軟になっておるというふうな感じを私は持っておる。持っておるから率直に韓国にもその判断を述べたわけでございますが、これは大変私はいい傾向じゃないかと思います。長期的に見てそういう傾向が続けば、朝鮮半島の緊張緩和に資することになっていくんじゃないだろうか、こういうふうに思うわけですが、ただ、緊張緩和、あるいは具体的に行う場合の方式については、これはまた私は今回韓国に参りましたときも話し合いをしたのですが、韓国は、これはやはりあくまでも韓国と北朝鮮の当事者同士の会談が大前提であるということを主張しておりました。これは終始一貫変わらぬわけでありますし、私は、日本の方もこれがやはり基本であるということを言っておるわけでございますから。この辺のところは、まだ三者会談を要求しておる北朝鮮と、二国間の、当事者間の話し合いを主張している韓国との間には基本的な大きな開きがある、こういうふうに思うわけですが、全体的に朝鮮半島の情勢が緊張緩和の方向へずっと動いていけば、何といいますか、いろいろの手が生まれてくるのじゃないか、手が打てるような状況になってくるのじゃないか、これは今後我々は見守って、そして日本がお手伝いするところはしていかなきゃならぬ、こういうふうに思います。
  201. 秦豊

    ○秦豊君 そうだと私も思います。  先般の日韓の外相会談で、たしか李源京外相が安倍外相に対して、今後とも日本は北に対しては毅然たる姿勢をとり続けてもらいたいのだという要望を公式に述べられたと仄聞いたしますけれども、やはり今大臣が、あるいはその周辺が、外務省が全斗煥大統領の訪日成功に頭がいっぱいである気持ちは私もよくわかります。しかし、やがてアメリカの大統領選挙の後の展開、あるいは全斗煥訪日後の展開を考えた場合に、つまり安倍外交としては中間的な仕上げの時期に入るわけですけれども、やはり独自なスタンスでそろそろ振る舞うべき時期ではないか。標的はこうなったらやはり朝鮮半島だと、外交的なターゲットは。となると、全斗煥訪日後の展開ということには私は安倍外交の展開を期待したい、独自の展開を期待を抱き続けたいと私は思っておりますが、大臣、いかがですか。
  202. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 長期的に見て、この問題がやはりアジアの平和において脅威といいますか、非常に危険な問題をはらんでおるだけに何としても朝鮮半島の緊張緩和、そして南北の民族が統一していくという方向で平和裏に解決されることが最も望ましいわけです。そのために努力していかなければならぬわけで、これは長い間かかってなかなか進んでいかない険しい道でありますし、昨年はああした不幸なラングーン事件等も起こったわけですが、しかし情勢が好転して、そうして南北関係がずっと緊張緩和への方向に進んでいくような事態になれば、これは日本としてもその間にあって最終的な目標に向かっての努力を惜しんではならない。これは日本だけじゃなくて、アメリカも中国も、また恐らくソ連も、やはり周辺諸国がそういう努力を続けて進んで行わなきゃならぬ、こういうふうに思っております。しかし、これはただ短い期間でこういう問題が処理されるということは、なかなかそう簡単にはいかないのじゃないかという判断を持っております。
  203. 秦豊

    ○秦豊君 それから外務大臣、これは今少し考えた質問ですけれども、先ほどから先輩同僚議員が指摘されている韓国大統領の訪日問題ですね、皇居で天皇との会談が持たれた場合に、必ず韓国側は天皇の韓国訪問を要請するのではないか。その場合、韓国側の実は割り切り方は、天皇はいらっしゃれないだろうから、代理として皇太子がしかるべき時期に、遠くない将来にソウルを訪問していただけないだろうかという希望を、あるいは要請を公式に伝達するのではないかと私は思っているのです。これはあり得なくないと思っているのです。公式に要請された場合には対応が非常に微妙になると思いますけれども、どうお考えですか。
  204. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まだ大統領がお見えになっておりませんし、お見えになってからどういうふうなことになりますか、今のそういうふうなお話が出てくるかどうか、その時点で日本としても、政府としても判断をしていけばいいんじゃないかと思います。
  205. 秦豊

    ○秦豊君 これは外務大臣ね、非常にデリケートなんですよ。だから、ソウル駐在の日本国大使は、かなり来日問題を控えてさらに忙しくなると思うのです。最も上手な外交は、これが公式なテーブルに出ない、テーマに出ないという処理が一番私は上手な外交として霞が関の価値観ではお考えではないかと思うのだが、これはあながちあり得なくはありませんよ。必ず私は浮上してくるのではないかと思っておりますが、これは答弁を要しません。  残された時間は、安倍外交が苦労されたカンボジア問題ですが、ベトナム側の反応というのは労を多とする程度だったのですね。一部では検討してみるというふうな報道もあったから、やや歩幅が大きいかなと思ったのだが、そうでもないのですね、さっきの局長外務大臣の答弁を聞いていると。  そこで、安倍さんのいわゆる段階論の中でですが、タイ国境からの部分撤退、これはベトナム側も全面否定していないんですよ、そうですね。しかも、乾季攻勢で攻めあぐねたシエムレアプとか、プノンペンヘの都市攻撃も頻発しているのですね。補給線もかなり寸断されている。ベトナム側の士気が衰えている。必ずしもいい状態じゃないわけですね。むしろ、ソン・サン軍を含めて反政府側の勢力、兵力量は装備の改善と相まってかなり増強されているとタイやヨーロッパの軍事筋では見ているのです。したがって、部分撤退のリアリティーというのは私はあり得なくないと思っていますが、大臣はどうお考えですか。
  206. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この提案を一本にするに当たりましていろいろと分析をしました。そして、日本としてただASEANの外交政策を支持する、カンボジアに平和独立政権ができる、ベトナム軍が撤兵すべきだと、こういうことを言い続けるだけじゃなくて、もっと日本は平和へ向かっての具体的なアクションをとるべきであるとこういう結論で、どういうアクションをとったらいいかということで一番可能性のあるといいますか、現実性を持った道はASEANの去年の秋の外相会議のアピール、部分撤退、国際監視軍であるとかあるいは選挙、そういうような具体的な段階的な最終的な平和へ向かってのアピールが出された。この道が比較的実現可能性がある。そしてまた、ベトナムがこれを否定していないと、こういうことでこれをやはり支持する、これを実現させるための推進力になる必要があるということで、アピールの段階段階においては日本の資金協力その他を打ち出したわけでありまして、ベトナムも、日本が提案と同時にベトナム政府に伝えまして、伝えたことに対しては感謝しておると。少なくとも今ベトナムから、その提案に対して公式的にまだ批判とか評価とか何も出ていないわけですね。出ていないところにみそがあると思っているのですが、私は、これは十分ベトナム側でも検討してもらえるものではないかと、こういうふうに思っておりますし、私もいつかやはりベトナムの外相とも対話するときがあれば対話をしたい、そしていろいろと話をしてみたい、こういうふうに思っております。
  207. 秦豊

    ○秦豊君 そこで、部分撤退が実現したかどうかという検証、確認というのはどういうことを考えていらっしゃるのか。それから、部分撤退が実現した場合の安倍さんの頭の中におありの外務大臣としての援助というのはどの程度のことを考えておられたのか、その点はいかがですか。
  208. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはまだ具体的にスケジュールを決めてそういう態勢に入っているわけじゃないですから、スケジュールを決めて今考えているわけではないのですけれども、しかし日本としましても、今のアピールが実行される段階においては相当なやはり思い切ったことはしなきゃならぬのじゃないかと、そういうふうに思っておりますし、最終的に完全な平和が回復されたときは、これは、インドシナ三国に対する日本の援助というのは、東南アジアに対して今までやってきました援助に匹敵するくらいの各国ごとの援助というものは思い切ってやる必要がある。しかし、それは完全に回復されて、自主独立体制というものが生まれたというのが一つの大前提ですけれども、やはり日本相当に腰を入れてこれは取り組んでいかなければならぬ、そうすることによって初めてこのアピールが実現性を持ってくる、こういうふうに思っております。
  209. 秦豊

    ○秦豊君 わかりました。  こういうことは外務大臣の構想の中にございますか。つまり、今まで日本外交の対ベトナム方針というのは、完全撤退までは凍結中の円借款は再開し実行しない、こうでしたね。ところが、環境をむしろ積極的に変えていく一つの引き金になり得るならば、部分撤退の段階で円借款凍結を解除するというふうなことは検討や考慮の対象の範囲内とお考えですか。
  210. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いずれにいたしましても、我々はベトナム軍の撤兵を念願しておるわけでありますし、その完全撤兵が行われるまでにいろいろと段階があるでしょうから、そういう点に応じて今のアピール実現のためには資金的な援助もしていかなければならぬし、将来にわたっては、我々が示した案を実行するための一つの何といいますか、絵をかく必要もあるんじゃないかと思うわけですが、今我々として少なくとも今のアピールを実現させる、そのために日本としても努力をしてまいりたい。これは基本的にはアピールですから、ASEANを支持するという枠組みは崩さないわけです。同時に、ベトナムとの対話は、これは我々としては今のそういう基本姿勢の中で進めていくことが非常に重要ではないかというふうな認識を持っております。
  211. 秦豊

    ○秦豊君 最後に、タク外相とニューヨークでというのは既に報道済みですけれども、そうではなくて、安倍提案をハノイに外交ルートで伝達をしたというのにとどまらないで、さっき対話ということをちらっとおっしゃったのですが、秋を待たないで安倍構想を実現していくための真摯な努力の一環として、例えば安倍外相自体のハノイヘのアプローチがあり得るのか、あるいはベトナムのしかるべきレベルの外交官を東京に招致してでも安倍構想を深めていく手数をおとりになるお考えがあるのか、あるいはこのままで秋までお待ちになるのか、その点を最後に伺っておきたいと思います。
  212. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いろいろなアプローチがあると思います。大使をお互いに交換しておりますし、そうしていろいろとそういう意味での外交関係を正式に持っておりますから、そういう意味でいろいろの外交のやり方で連絡はとってまいりたい、こういうふうに思っております。
  213. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 外務大臣には御帰国早々長時間御出席をされ、御苦労さまでございました。  本日の調査はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時二十七分散会      ―――――・―――――