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1984-04-19 第101回国会 参議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十九日(木曜日)    午前十時三分開会     ―――――――――――――    委員の異動  四月十九日     辞任         補欠選任      夏目 忠雄君     福田 宏一君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         後藤 正夫君     理 事                 鳩山威一郎君                 松前 達郎君     委 員                 大鷹 淑子君                 嶋崎  均君                 中山 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 原 文兵衛君                 平井 卓志君                 福田 宏一君                 久保田真苗君                 八百板 正君                 黒柳  明君                 和田 教美君                 立木  洋君                 関  嘉彦君                 秦   豊君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        外務大臣官房審        議官       山下新太郎君        外務大臣官房審        議官       都甲 岳洋君        外務大臣官房外        務参事官     斉藤 邦彦君        外務大臣官房領        事移住部長    谷田 正躬君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省中南米局        長        堂ノ脇光朗君        外務省中近東ア        フリカ局長    波多野敬雄君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        防衛庁防衛局調        査第二課長    三井 康有君        外務大臣官房調        査企画部長    岡崎 久彦君        外務省アジア局        外務参事官    瀬崎 克己君        運輸省航空局監        理部国際課長   向山 秀昭君        労働省労働基準        局賃金福祉部企        画課長      逆瀬川 潔君        労働省婦人少年        局婦人労働課長  佐藤ギン子君        労働省職業安定        局業務指導課長  鹿野  茂君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○所得に対する租税に関する二重課税回避及び  脱税防止のための日本国政府中華人民共和  国政府との間の協定締結について承認を求め  るの件(内閣提出衆議院送付) ○航空業務に関する日本国政府スリ・ランカ民  主社会主義共和国政府との間の協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付  ) ○千九百八十二年の国際熱帯木材協定締結につ  いて承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付  ) ○出版物国際交換に関する条約締結について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○国家間における公の出版物及び政府の文書の交  換に関する条約締結について承認を求めるの  件(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府中華人民共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、航空業務に関する日本国政府スリ・ランカ民主社会主義共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件、以上両件を便宜一括して議題といたします。  両件については、既に趣旨説明は聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 松前達郎

    松前達郎君 最初に、スリランカとの航空業務協定に関連してお伺いをいたしたいと思いますが、この種の航空協定というのは、国際化時代で非常に協定を結ぶ相手の国が多くなってきていると思うんですけれども、協定は結ばれる、さて、それで乗り入れが行われるとなりますと、日本側国際空港発着の問題ですね、これが非常に大きな問題になってくるんじゃないかと思うんです。  それで、これは運輸省にお伺いをいたしたいんですが、外国航空会社我が国国際空港への受け入れの状況ですね、これは一体どのようになっているか。その点を簡単にひとつ説明いただけませんか。
  4. 向山秀昭

    説明員向山秀昭君) 現在我が国乗り入れております外国航空会社は、全体で三十一力国及び一地域から三十六社が乗り入れを行っておりますが、大部分は東京成田、それから大阪でございます。そのほかに地方空港乗り入れているものが、地方の大空港に対して九社が乗り入れております。  以上でございます。
  5. 松前達郎

    松前達郎君 その中で、成田東京ですね、これが恐らく一番数が多いのだろうと思いますけれども、その辺、飽和状態に近くなる可能性があるか、あるいはもう既に相当乗り入れが多くて運営上非常に問題が出てきているのか、その辺の問題はありませんか。
  6. 向山秀昭

    説明員向山秀昭君) 御承知のように、昨年の八月に成田燃料輸送のパイプラインが完成いたしまして、それまで一番の障害でありました燃料の供給という問題は一応解決を見たわけでございます。したがいまして、当面若干のゆとりはございますけれども、御承知のように、既にターミナルビルが非常に手狭になっているとかあるいは駐機場の問題とかございまして、将来の大幅な便数の増加というものに対応するには、さらに抜本的な対策が必要であるというふうに考えております。
  7. 松前達郎

    松前達郎君 そうしますと、附属している設備、施設の問題が非常に大きなネックになるだろう、離発着の回数からいっての問題はありませんか。
  8. 向山秀昭

    説明員向山秀昭君) これも、現在一日の最高発着を二百四十ということで運用してございますけれども、管制の面でありますとか、そのほか空域の関係もございまして、これから大幅な増加をするためにはいろいろ解決しなければならない問題がございます。
  9. 松前達郎

    松前達郎君 もう一つ伺いしたいんですが、ウェーティシグリストといってはおかしいんですが、乗り入れ申し入れがありますね。そういう申し入れがどのくらい今積滞しているのか。このスリランカ協定を結んでも、順々に申し込み順に認可していくのか。その辺の問題も含めてウエーティングがどれだけあるか、ひとつお願いします。
  10. 向山秀昭

    説明員向山秀昭君) 現在までに航空協定締結申し入れてきております国が三十一カ国ございます。ただ、これは中には日本航空――日本企業乗り入れてもらいたいという要請もございますので、そのうちの半分より少し多いぐらいが日本に対する乗り入れ希望であるというふうに了解しておりますが、ただ、これは今まで何らかの形で我が国に入りたいという、あるいは航空協定を結びたいというその希望を表明した国でございまして、これは古いものから全部合わせてでございますから、現在、これらの今申し上げましたような国々が直ちに日本に入りたいという希望を持っているわけでは必ずしもないというふうに考えております。
  11. 松前達郎

    松前達郎君 そうすると、現時点で非常に強く要望しているというのはそうたくさんないということですね、ウェーティングしているのは。
  12. 向山秀昭

    説明員向山秀昭君) 必ずしも幾つとかあるいはどの国とかいうことは、それぞれ動いておることでございますので数を集計することは難しいのでございますが、相当数の国が強い希望を持っていることは事実でございます。
  13. 松前達郎

    松前達郎君 空港の方がパンクしてしまったのではこれは話になりませんので、スリランカとの航空業務協定はこれは結構だと思いますけれども、その辺の状態ですね、ちょっと気になったものですから質問さしていただいたわけです。状況はわかりました。  それでは次に、これは外務大臣にお伺いしたいんですが、今ちょうどESCAP総会が行われておりまして、これは各国東京に集まっているわけですから、恐らくその中でいろいろな外交的な問題が話し合われるというチャンスがあるんだと思うわけですが、新聞によりますと、ベトナムとの外相会談について外務大臣が合意されて、今までちょっと得とんぎみだったところが新しい関係がさらに開けてくると、そういう状況が報道されているんですが、それと同時に、片っ方では今度は例えばソビエトがSS4とかSS5を配備するとかどうもあの辺は何だか緊張がだんだん高まっていくような感じもするわけですね。ですから、そういう意味で今度のESCAP会議というものが非常に大きなきっかけをつくるということになるんじゃないか、とりわけあの地域における平和の問題に関連しまして。それで恐らく外務大臣もそういうことで接触をされたんじゃないかと思うんですが、カンボジア問題をめぐった今後の大臣のお考えですね、国際的な役割を果たすという意味でどういうふうなお考えを持っておられるか、それをお聞かせいただきたいと思います。
  14. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まず、今回ESCAP総会が十一年ぶり東京で行われることになったわけですが、我が国ESCAPに対する協力は、アジア太平洋外交国連外交との接点としてとらえておりまして、従来よりESCAP活動に対し積極的に貢献してきておるわけですが、今次総会を含め五回の総会我が国招請をいたしたのもそのあらわれでありまして、先ほど申し上げましたように十一年ぶりに開かれたわけです。  そこで、この総会についてちょっと申し上げたいんですが、今度の総会は第四十回という、ESCAPの歴史の中において一つの区切りをなすものであります。また、我が国ESCAPに加盟いたしましてちようど三十周年、幸いにしてESCAP加盟各国から二十人以上の閣僚級参加者がありまして、我が国において近年にない大国際会議ということになったわけであります。我が国招請国として今次総会が具体的な成果を上げられるように積極的に貢献する方針で今臨んでおります。  今度の総会テーマは「開発のための技術」ということでありますが、これは我が国で開催される総会にふさわしいテーマであると、こういうふうに思っておるわけでございます。そういう立場から、私の演説も冒頭に行ったような次第でございまして、参加各国の代表の今回の総会に寄せる期待は非常に大きいと思うわけです。そういう中でちょうど総会が開かれているわけで、いわゆる二国間の活発な個別外交等もその間隙を縫って行われております。  実は、私がベトナムラウ外務次官接触をいたしましたのは私が招待をいたしましたおとといのパーティーの席上でございまして、そのときラウ外務次官と――これは去年私が呼んでおるわけですが――二度目のあいさつをしたわけですが、ラウ次官の方からアジアの平和、特にインドシナ半島の平和に対して日本の積極的なひとつ貢献をお願いしたいと、こういうふうな話がございまして、私から、日本としてもインドシナ半島の平和に対しては特にアジアの一国として重大な関心を持っておる、そこで、いろいろと動きも出ておるようであるが、日本も何らかの役割をひとつ平和のために果たしたいと、こういうふうに思っておるし、そういう意味ベトナムとの対話もやりたい、やらなきゃならぬと思っておる、日本ベトナムとでは基本的な考え方の違っている点があるけれど、違えば違っているほど話し合いというのがある意味じゃ大事じゃないかと、そういうふうに思うし、昨年は国連総会でお目にかかる機会を逸しましたので、ことしぐらいはグェン・コ・タク外相と会うということができれば喜んで会って、そしてインドシナ半島の問題、平和の問題について話し合いたいということを言いまして、ラウ次官も、私もぜひともひとつそういう方向で対話を進めることに努力をしてみたいと思うのでよろしく頼みますと、こういうふうな話でございました。それがあの明くる日の新聞に出たわけでございます。  私は、これは基本的な考え方ベトナム次官にも言ったわけで、日本ベトナムとは外交関係もありますし、それで今、基本的な考え方は違いますけれども、しかしそれだけに話し合う一つ意味は私はあるんじゃないかと思っております。  我々のベトナムに対する考え方は、これはきのうもキュー・サムファン三派の副大統領に会って説明したんですが、この点については終始一貫変わっていないわけで三派を支持する、そしてカンボジアに真の自主独立政権が誕生することを心から念願をし、それにはやはりカンボジアに入っておるところのベトナムの軍隊が一日も早く撤兵することが最も望まれることである、そして日本はやはりベトナムカンボジアからの撤兵を望むために、そしてまたこれに対して強くベトナムに抗議もし、ベトナム撤兵を行うまではベトナムに対しては経済協力はしないと、こういう方針で臨んでおるし、三派に対するいろんな支援も行っていくという日本の基本的な考え方をきのうは述べたわけでございます。そうした基本的な姿勢はこれは変わっていない。しかし、インドシナ半島をめぐっていろいろと動きが出ておりますから、グエン・コ・タクさんがオーストラリアヘ行くとか、オーストラリア外相もこの前見えまして、ヘイドン外相カンボジア問題について十分話し合いました。非常に熱心な意欲を持って取り組んでおりますし、そしてまたインドネシアのモフタル外相グェン・コ・タク外相との接触もなかなかあるようでございますしそういう動きも出ておりますから、そういう中で、日本もやはりそれなりのアジアの一国としての平和に貢献をするという意味での対話は、基本的な姿勢を変えるわけにはいかないけれども対話は進めて、その中で何か平和への道をつかんでいきたいと、こういうのが私の考えで、そういう点で実はラウ次官外相会談についての話し合いをしたわけであります。
  15. 松前達郎

    松前達郎君 イラン、イラクの問題もありましたですね。そういった、紛争というよりも何か泥沼化しそうな状況が今続いているわけですから、どうか今お話がありましたように、今後御尽力をひとつお願いできたらというふうに思うわけです。  もう一つだけお伺いしたいんですが、これは日中租税協定に関してですね、この協定の中に、第五条の(f)というところですが、この「鉱山、石油又は天然ガス」等の問題が挙がっているんですね。天然資源全般に関して採取をする、そういう問題がここに具体的に入っておるわけなんですが、中国側日本技術、いわゆる技術移転ですね、テクノロジートランスファーに相当期待をしているということと、それからもう一つは、天然資源の探査といいますか、とりわけエネルギー関係資源ですね、こういう問題について相当興味を持っているんじゃないかと私は思うんです。これは日本エネルギーはありませんから日本の問題じゃなくて中国における開発ですね。そういう問題が恐らく今後出てくるんじゃないかと思うんですね。特に原子力エネルギー等を含めて核燃料の問題とか、それも含めて出てくると思うんです。そういう話は、現在既に何らかの形で中国との接触の中でありますか、それともまだまだそこまでいっていないと。その辺の状況をひとつお聞かせいただければと思うんです。
  16. 瀬崎克己

    説明員瀬崎克己君) 先生おっしゃいましたとおり、中国側といたしましては、経済開発の一環といたしましてエネルギーを特に重点的にやりたいというようなことを基本方針として打ち出しております。その過程で、やはり外国からの資金供与それから技術協力というような点で非常に期待しておりまして、先般、中曽根総理安倍外務大臣が訪中された際にも、先方のエネルギー資源開発につきまして長期的に日本資金協力を要請したいというような話がございまして、今後もそういった面での話し合いは進行するのではないかというふうに考えている次第でございます。
  17. 松前達郎

    松前達郎君 私の方はこれで終わります。
  18. 八百板正

    八百板正君 所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための協定についてですが、御承知のように中国社会主義の国ですから、主要な生産手段である工場とか銀行とかはもちろん国有で国営です、第三次産業も国営です。だから、日本のように所得のあるところから課税という考え方は、日本考えるような形では中国にはなじまないという状況、これは御承知のとおりであります。  個人所得税合弁企業所得税外国企業所得税地方所得税など列記して中国租税というふうに定められておりまするが、この対象になるものは中国自身では少ないと思います。最近は御承知のように、私企業的なものがかなり多くなるような傾向が速い速度で中国で進行中ですから、今後は日本と共通するような税金租税考え方が多くなるだろうと思うんですが、この法律は主として両国にまたがる企業についての二重課税脱税防止と、こういうふうなことになるようです。  そこで、これは中国だけという意味でなくて普遍的な問題として、殊にこの条約は世界でたくさん同じようなものを決めておるようですから、例えば税の基礎控除がある場合とかあるいはコストなんかもいろんな国それぞれの違いがあると思うんです。そういうふうな面で生産点と申しましょうか、利益を上げた地点で税金を取るという考え方のようですが、そうするとなるたけ税金が少なくて済むような方法といいますか、ところで税金を出すと、こういうふうな考え方に立って何か所得を片寄せるというか、一方の国に寄せていくような、得な方に、得と言うとおかしいが、税金が少なくて済むような方法でその国の方に所得経理上寄せていくというふうなことが起こり得るんじゃないでしょうかね。私は余り商行為実態を知りませんが、何かちょっとそんなような感じがするんです。今まで各国との間に行われているこの種の条約ですから、そんなふうな点については、これ、言ってみれば実質的に脱税的効果をねらっていろんな経理操作本店と支店の関係をこしらえていくというか、そういうことが起こり得るんじゃないかと思うんですが、そんなふうな点はこの条約の中で何か考慮されておるでしようか、あるいはまたどこかでチェックされるような条項がございますでしょうか。私も詳しく調べていませんから、そんな感じをちょっとお聞きしたいんですが、どなたでも、大蔵省の方が本当はこんな話はいいのかもしれませんけれども。
  19. 小和田恒

    政府委員小和田恒君) 八百板委員承知のとおり、いわゆる租税条約というのは、今委員が御指摘になりましたように、まさにそういう二つ以上の国にまたがって行われる事業活動商行為に関して、税金について二つの目的を達成しようということで条約を結んでいるわけです。一つは、今おっしゃったような脱税防止するということ、それからもう一つは逆に、両方の国で同じ事業活動あるいは同じ商行為に対して税金をかけられる結果、二重に課税されることになるというそういう可能性をなくしよう、この二つのこと、つまり過重になってもいけないし、また取らないという結果が出てもいけないということで、いわば交通整理をするために協定を結ぶというのがこの協定趣旨でございます。  そのためにどういうことをやるかと申しますと、いろいろ技術的に厄介なことがございますけれども、非常に大ざっぱに申しますと、事業について申しますと、恒久的施設というものがどこにあるのかということに着目をいたしまして、それでどっちかで税金を取る。その税金を取るのも、本人の申請でどっちか安い方で取るというのではなくて、事業実態着目をいたしまして、どちらの方でやっているというふうにみなすことが妥当であるかということで整理をするというのが基本的な考え方でございます。  それで、中国との場合には、御指摘のようにいろいろ税制の違いだとかというような問題がございますので、理屈を申しますといろいろ厄介なことがあるんですが、幸い今度の交渉におきましては、大体国際的に通用しておりますOECDモデルというのがございまして、そのOECDでつくったモデルにかなり、基本的にはそれにのっとった形で中国側が対処することで日中間に合意ができましたので、それに基づいて交通整理をしているということでございます。
  20. 八百板正

    八百板正君 素人素人と言って申しわけないんですけれども、例えば香港なんかに本店を置くといろんな意味で得だというふうな形で、香港なんかがある意味で繁栄の基礎をつくっているというようなこともあり得るのじゃないかと思うんですけれども、中国の場合は、租税というものに対しては余り日本のようになれていないと思うんですね。そういう意味でなじまないというか、そういう不安みたいなものを感じる、あるいはなかなか消化できないというようなそういう点がございますから、日本側にも従来のいろんな抜け穴や欠陥があるでしょうけれども、中国側にもやはり新しい問題として私企業的なものが中国の中でいろいろふえていくような傾向の中で問題も多いだろうと思うので、日本もひとつ運営上でうまくやるのか、あるいは制度上また対応する工夫を考えていくのか、これは日本にも多いが中国側にはもっと多い問題があるだろうと思うのです。  こんな点は日本の方も気を配って見守る必要があるというような点がちょっと考えられますので、これは具体的にどうということじゃございませんが、ひとつ意見として申し上げて、何か御意見があれば一言だけお聞きいたします。なければ結構です。
  21. 斉藤邦彦

    政府委員斉藤邦彦君) この協定が適用されます租税にっきましては二条に規定がございまして、中国側につきましては、ここに個人所得税外四つ名前が挙がっております。  ただいま御指摘のとおり、中国側におきましてこれらの税制が整いまして税法が公布されましたのは比較的最近でございますので、ただいま御指摘がありました、中国側においていかにこういう税金が実際に運用されていくかという点につきましては、若干不明確な点があるというのはそのとおりでございます。したがいまして、これからこの租税協定締結されました後は、その運用を通じまして日本側にとりまして不都合が生じないように、日本側といたしましても十分注意を払っていく必要があろうと存じます。
  22. 八百板正

    八百板正君 そこで、気づいた点をちょっと触れますから、時間もございませんので端的に願いたいと思うんですが、第一条に「締約国」という言葉がありますが、締約国となると当然に中華人民共和国ですね、この条文でいく限りは締約国となると中華人民共和国ですから、中華人民共和国となると外交上は台湾を含むことになるんです。同時に、「居住者である」と第一条に規定してありますが、これもまた文面上から言うと台湾住民は含むということになります。しかし実際上は、第三条をちょっと見ますと、「中国租税に関する法令が施行されているすべての領域」というふうにございますから、これによっていわゆる台湾が除かれるという形につながっていくんだと思うんですが、それはそういうふうに見ていいんですか。これは余り長く話をするとたくさんの問題があると思うので、いいかどうかひとつ……。
  23. 斉藤邦彦

    政府委員斉藤邦彦君) 御指摘のとおりでございまして、この三条の定義によりまして、中華人民共和国という意味が地理的に用いられる場合には中国租税に関する法令が施行されている領域及び水域ということになっておりますので、この租税協定台湾には適用がございません。
  24. 八百板正

    八百板正君 そうすると、台湾については二重課税とか脱税防止というふうな何らかの話し合いが別にあるわけですか。
  25. 斉藤邦彦

    政府委員斉藤邦彦君) 台湾との関係につきましては、我が国は日中共同声明の精神にのっとりまして処理をしておりますので、台湾との間でそういう取り決めないし協定を結ぶということはございません。
  26. 八百板正

    八百板正君 そうすると、実務的にはいろいろあるわけですから、ちょっと話が長くなる問題をたくさん含んでおると思うんです。  たとえば、旅行にしたってかなり台湾日本との旅行は多いですし、物もたくさん動いておりますし、ちょっと簡単な条文で処理できない問題を含んでおるわけですが、国際的には台湾外交関係を持っておる国は二十四カ国。もちろん日本外交関係は持っていない。しかし、実務関係はたくさん山ほどある。旅行者だって中国のビザでは行けないという形ですね。こういうふうな関係についてはこれはひとつ外務大臣、ある意味では異常なわけなんでして、基本的にはもちろん中国自身台湾問題ですから日本がどうということはございませんけれども、しかし日本も実務的には非常に関係が深いですから、どんなことが望ましいか、一言句か積極的な意見がございましたらちょっと述べてください。
  27. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国としましては、御承知のように日台関係は非政府関係である、こういう日中国交正常化以来の基本的な枠組みの中で関係を維持していくという方針をとっておりますし、今後もそういう方針で臨む考えでございます。
  28. 八百板正

    八百板正君 それから、中国が今香港関係についてかなりイギリスとの間に話が進んでおります。これもまた中国自身の問題ですから日本がどうこうということはございませんが、これについて外務大臣、何か見解がありましたら…。
  29. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、香港問題につきましては、ちょうど中国と英国の間で交渉が行われております。ちょうどハウ外相中国に今行っておるわけでございます。したがって、香港問題というのは主として中国の問題である。同時にまた中英間の交渉の問題でありまして、この見通しにっきまして、第三国である我が国が云々するということは差し控えるべきだと思いますが、華が国としましては、いずれにしても本件問題が中英間の合意に従って香港の繁栄と安定を維持する、こういう形で解決されることを期待をいたしておるわけでございます。
  30. 八百板正

    八百板正君 台湾の問題ももちろん中国自身の内政の問題ですけれども、しかしかつて日本の植民地であったという経緯もあり、現実に実務関係がかなりいろいろ深くつながっておるわけでございますから、ひとつ積極的に頭に置いて外交的態度をとっていただきたいというふうに考えます。これは別に外務大臣の御意見は伺わなくてもよろしい、私の意見として申し上げておきます。  それから、中国から三千人の日本の青年を招待するという話を、これは中曽根総理中国の胡耀邦総書記との間でできた話ですが、これは日本政府筋、政府ベースに対しても相当数の招待が出ておりますが、民間が多いんですけども、大体日中関係の団体は押しなべて二十名という形で招待をされておりますが、あとぱらぱらという言葉は適当じゃありませんが、中国とのつながりのあるところも三けたぐらいの団体や機関に対して招待が出ておるようですから、民間でもいろいろ相談はし合っていますけれども、いろいろあるようです。個人のことを申し上げてあるいは不謹慎かもしれませんが、私も向こうの責任のある招待者から、あなたも来てくださいと、こういう話を受けております。私は青年じゃありませんよと言ったところが、いや、青年は年ではありませんと、心の若さですと、こう言われまして、これは行かぬじゃなるまいかなと思っておるわけなんですが、いずれにしても政府ベースの招待もあるんですから、この間官房長官にもちょっと話は上げたんですけれども、総務長官の方の筋でやるのか、外務省の方がタッチするのか、余り余計にタッチされても困るんでしょうけども、これもある程度窓口というか担当者を決めて少しはやっぱり相談に乗ってあげるというふうにやっていただいた方がまとめの上でいいような感じがするんですが、何かそんな点、お考えになっておりますか。
  31. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) この中国側の三千人招待という構想は、これはもちろん中国側から、特に胡耀邦総書記が日本に参りまして各地で非常に歓待されたのを受けまして、何とか中国が、日本からの経済協力その他、政府それから民間との関係におきましても非常に日本にいろいろ世話になっているので、今度国慶節を機に中国から、日本の青年三千人を招待して日本との友好協力一つのあかしとしたいと、こういうことで、両国の政府政府との話し合い、あるいは外相チャネルでもって決められた問題ではございませんで、中国側日本に対する好意のあかしとして示されたものでございます。先生御指摘のとおりに、これは中国側がこれまで日中関係に非常に功績がありました各団体、それから政府、それから民間、それから都道府県、それから各党、こういうことで中国側が人数を割り当てましてそこで招待が来ていると、こういうことでございます。ただ、先生御指摘のとおりに、中国側の好意に報いるためにも、三千人の構成はさまざまの、本当にさまざまの団体から構成される代表ということになるわけでございますが、これは呼ばれていきます以上やはり混乱といいますか、ごたごたがあっては困るということで、そこで外務省の関係部局が日中六団体を初めといたしまして関係諸団体に呼びかけまして、代表者が既に何度も集まりまして、せっかく呼ばれていく以上うまく協調を保っていけるようにしようということで、現在相談を続行中でございます。
  32. 八百板正

    八百板正君 結構です。どうもありがとう。
  33. 久保田真苗

    久保田真苗君 外務大臣、私ども社会党の訪米団がワシントン、ニューヨークに滞在しますに当たりましては、大変短期間で簡潔、率直な意見交換をアメリカの方々とすることができました。つきましては、外務省の御協力に心から感謝したいと思います。  内容につきましては既に新聞等で十分御存じのところでございますので、私、一つ印象記といいますか、そういったものをお話しして外務大臣のお考えも伺ってみたいと思うのでございます。  スケジュールの中に、アメリカの上院、下院を訪問して懇談する機会がございまして、オニール下院議長などにも親しくお目にかかってお話を伺ったのでございますけれども、ちょうどその日とその前の日にアメリカの新聞のトップ面をにぎわしておりますニカラグアの港湾への機雷敷設の問題で、上院が十日、下院が十一日に、このレーガン政権の機雷敷設に関与することに反対する決議案を圧倒的多数で通したのでございます。その内容は、ニカラグアの港湾ないし領海内に機雷敷設をするのに、今後いかなる政府資金も使われるべきではないというような内容のものでございまして、あわせてお目にかかった方々から、ニカラグアに対するCIAの秘密活動費についての追加予算が今要求が出ているのでございますけれども、こういったものを続けて葬るという気持ちだというお話も伺いました。  特に上院では、共和党の多いところでございますのに八十四対十二でございますか、そのような多数でこれが採決されましたことは、やはりアメリカの議会が党派別の形骸主議に決してとらわれていない活発な活動をしているという印象を強く受けたわけでございます。また、レーガン政権の中米軍事介入に対しましては、このように議会を初め国内的にもまた国際的にも懸念が強まっておりまして、これに対して日本としては果たしてどうなのかということなんでございます。  以前、昨年の十月のグレナダ侵攻のときに、後に私、外務大臣及び総理に対して質問をさしていただいたんですが、あのときには、友人としてレーガンさんが訪日されたときにこの軍事行動をいさめるという形でおやりになったというお答えをいただきましたし、また今後このようなことを平和的に持っていくように日本も最大限の努力を払いたいという、そういうお考えを伺ったわけでございます。ニカラグアの問題が次に起こるのではないかと懸念しておりましたところが、こういうような状況になってまいりました。日本政府としましては、外務大臣はどのような御所見をお持ちか、この際伺わせていただきたいと思うんでございますが、いかがでしょうか。
  34. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まず、社会党の委員長を初めとする久保田委員を含めた今回の訪米団が訪米されて後、アメリカの政府の要人あるいはまた議会の指導者たちと活発に意見の交換をされたということは、日米の将来にとりましても非常に有益であったというふうに考えておるわけでございます。久保田委員の活躍に対しても心から敬意を表する次第であります。  それから、今お話がございましたニカラグアの問題でございますが、お話しのように先般、米国の上下両院がともに、議会の法律において今まで支出を承認され、または今後支出を承認されることがあるいかなる資金も、ニカラグアの港または領海における機雷敷設を計画し、指導し、実施し、または支援する目的で使用されてはならないとの趣旨の決議案を可決したということは承知をいたしておるわけでございます。  この決議案が可決されたということにつきましては、もちろんアメリカの議会における決議でございますし、またこのニカラグアの港湾における機雷敷設問題の具体的事実が、いろいろとうわさ等はもちろんありますし私も聞いておるわけでございますが、まだ明らかにされていないという状況にもあるわけでございますから今ここでコメントするということは差し控えるべきだと、こういうふうに思っておりますけれども、しかし、我が国としても本件につきましては、米国内でもいろいろと取りざたをされておるということもありますし、また我が国の船舶の航行安全の見地も含めまして米側に対しましても懸念の表明を行っておるわけでございまして、今後の情勢等も見守ってまいりたいと考えております。
  35. 久保田真苗

    久保田真苗君 この機雷敷設のために、新聞の情報でございますけれども、ソ連、オランダ、日本等六カ国、十二隻の船舶が既に触雷して被害を受けているということでございますが、日本側の、日本の船舶の被害というのはどのようなものだったのでございましょうか。
  36. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) 我が国の船舶の場合は、日本郵船がチャーターしております輝潮丸という貨物船でございまして、三月三十日、現地時間で夜八時ごろでございますが、港湾中に待機中でございましたけれども、接岸のために向かう途中で突然機雷爆発によると思われる大きな震動がございまして、乗組員のうちの二人が軽いけがをしたと。それから船体自体は航行に差し支えない程度でございます。船舶自体にはそれほど被害がなかったというふうに聞いております。
  37. 久保田真苗

    久保田真苗君 これにつきましては、何か抗議とか、あるいは申し入れとかということをされたかされるという御予定がございますでしょうか。
  38. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) この事件がございましたのが三月の三十日でございましたけれども、四月の二日、在京のニカラグア大使に対しまして私の方から、日本の船舶がニカラグアの港でこういう事故に遭うということは遺憾であるということも申しましたし、またアメリカ側に対しましても、一般的に機雷の敷設のようなことは航行の安全を脅かすものでございますし、我々としても非常に憂慮している、しかし、アメリカがやったということは我々は何らそういう事実を承知しておりませんので、一般的な懸念の表明ということではやっております。
  39. 久保田真苗

    久保田真苗君 事実関係がということでございますけれども、これはおのずから明らかにされていくと思いますので、この場合はひとつ日本としても、公海の航行安全あるいは太平洋の平和の維持という観点からよろしくお願いしたいと、こう思うわけでございます。  訪米中にアメリカの方といろいろ話していて耳にしておりますことは、レーガン政権の軍事路線といいますか、特に中米に対する軍事介入、あるいはソ連脅威論についての特殊なメンタリティーは決して共和党の中でも本流ではない、こういう話を耳にいたしました。その事実は、上院での機雷封鎖に関する決議がある程度立証しているのではないかと、そんなふうに思います。  それで、共産主義に対する自衛の行為という理由を挙げているんでございますけれども、他国の港湾内あるいは領海内に、いかなる目的にせよ機雷を敷設し、あるいはこれに手をかしていくというようなことが果たして自衛というものと言えるのかどうか。それとは甚だほど遠い考え方ではないかと思います。このような考えに同調いたしますと、日本の場合にもたびたび話題になっております三海峡の封鎖というような話と思い合わせますと、非常に身の毛のよだつような思いがするわけで、この際、このニカラグア問題の処理にっきましては、特にレーガン政権の非常に一方的な考え方に同調することに強い懸念を私も表明しておきたいと思います。また、太平洋の平和という見地からいきまして、今後この経過を見守っていただきまして、ひとつそのときそのときの時期におくれず、平和的な手を打っていってほしいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。  次に外務大臣、私ども訪米中に、例えばジョンズ・ホプキンス大学とかあるいはニューヨークでの日本協会でのパネル討議というようなものがございました。この討議には、私ども婦人の議員がおりましたためか来会者にも婦人の数が相当多うございまして、一つには日米経済摩擦がかなりに関心を集めた経緯もありまして、雇用面での女性の平等とか、あるいはILOの発表した賃金の資料についての質問がかなり出て大きな関心が示されたのでございます。それで、大臣が担当でいらっしゃる婦人差別撤廃条約の批准の問題につきまして、私どもは、来年批准するというそういうスケジュールになっているという答えをしてきたんでございますけれども、特に雇用における男女平等立法の実現について、今、山場になっております。外務大臣条約担当大臣としてのお考えと見通しを伺わせていただきたいと思います。
  40. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 婦人差別撤廃条約につきましては、日本といたしましてもこれを批准すべく準備をいたしておりまして、政府としては、六十年にはどうしても批准をしたいという目標で今各省間の詰めに入っておるところでございます。  その中の一つの大きな問題はもちろん雇用平等法の策定でございますが、この点につきましては、労働省が中心になって今調整あるいはまた策定が進められておる、こういうことでございまして、いろいろの問題点も指摘をされておるわけでございますが、私たちはこうした国内法の法令の整備を早く終えて、そして目的どおり来年じゅうには批准を行いたい、外務省もそういう立場でひとつ今後各省間とも積極的に調整努力を進めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  41. 久保田真苗

    久保田真苗君 それでは、労働省にお伺いしたいんですが、男女雇用平等立法の法律案要綱ができたと伺っておりますが、それの進捗状況と、法案の国会提出のスケジュールはどうなっておりますか。また、要綱の中の主要点についてちょっと概略御説明いただきたいと思います。
  42. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) この問題につきましては、労使の代表の入っていらっしゃいます婦人少年問題審議会で御検討いただきまして、三月の二十六日に御建議をいただいているわけでございます。  現在、労働省で、この御建議の内容とそれからこれまでの審議の経過を十分尊重しながら関係法案を作成しているところでございますが、たまたまきょうの夕方審議会を開きまして関係法案を諮問したいというふうに考えております。現在最終的な調整を行っているところでございますので、まだ具体的な内容を十分お話しできるところまでいっておりませんが、機会均等を図るための措置と機会均等を推進する観点からの女子保護規定の見直しという点が中心になるかと考えております。
  43. 久保田真苗

    久保田真苗君 今、法案をとおっしゃったのですけれども、法案を諮問とおっしゃったのですが、それは法案を、法律案でお出しになるということですか。
  44. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) 現在、関係法案の要綱を諮問したいというふうに考えております。
  45. 久保田真苗

    久保田真苗君 ちょっと気になるところを二、三伺いたいんですが、例えばこの前の、今おっしゃった三月二十六日の婦人少年問題審議会の、特に公益委員案としましては、募集、採用についての努力義務というのがありまして、この入り口に関する一番大事な機会均等について一つ調子を下げた、何といいますか弱い規定になりそうだということが懸念されたんですが、この点はいかがでございますか。
  46. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) 現在、この問題につきましての最終的な調整を行っているところでございまして、まだ必ずこうなるということを申し上げられるところまでは大変恐縮ではございますがいっておりません。
  47. 久保田真苗

    久保田真苗君 その他についての、では強行規定になるかどうかということも現在調整中ですね。
  48. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) そういうことでございます。
  49. 久保田真苗

    久保田真苗君 基準法につきまして、時間外労働について、工業的業種以外に原則的に女子の規制を廃止するというような内容がこの前から出ておりますけれども、それは一般的な保護水準の低さから見まして私どもちよっと懸念しているところなんです。特に、商業、サービス業の現場の問題ですね。こういったものについての懸念がありますけれども、それらについてはいかがでございますか。
  50. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) 時間外労働につきましても、先生御指摘ございましたが、なかなかいろいろ難しい問題がございまして現在調整をいたしているところでございますが、建議ではこの問題につきまして三論併記になっておりましたので、そのあたりは十分審議の経過等も踏まえながら今調整をしているところでございます。
  51. 久保田真苗

    久保田真苗君 それでは、詳しいことは要綱を拝見してまた続けたいと思いますが、きょうのところは日ごろ私が非常に気になっております二、三の点につきましてお伺いして、あわせて外務大臣にもこの点についての御意見など例えればと思うわけでございます。  その一つは、現在の公共職業安定行政の問題なんでございますけれども、今、職業安定所は、男女を求人、求職とも全く異なる取り扱いによって事務を処理しておるわけでございます。つまり、求職票が赤と青と二色ありまして、赤は女、青は男と、こういうふうになっております。また、求人票の方も同じくそのような色分けがございまして、たまたま男女不問といいますか、どっちでもいいという求人が出てきた場合には、それを書き込む共通のカードもないと、このように聞いておりますけれども、この点はいかがでしょうか、労働省。
  52. 鹿野茂

    説明員(鹿野茂君) ただいま先生が御指摘されましたように、確かに私ども職業安定所の窓口では求人についても求職についても男女それぞれのカードを使用させていただいております。これは現在の事業所の採用のあり方が男女別にという採用計画を立てられるということからそうせざるを得ない事情にあるわけでございます。ただ私どもとしましては、必ずしも男女別々にしなくてもいいという求人もございます。それからまた、男子を採用したいという求人について、女子の方も応募したいという事例もございます。そういう場合につきましては、例えば男女別々にしなくていいというような場合は、それぞれ男子用、女子用両方のカードも作成いたしておりますし、あるいはまた、男子の求人に女子の方が応募したいという場合は、事業主の方に十分な御説明を申し上げまして女子の方の応募も可能なような指導もいたしております。
  53. 久保田真苗

    久保田真苗君 しかし一般的に言いますと、そのように男女を色分けしまして、特に色と色とを合わせるという作業が一般的には行われると思います。また、安定所がそのような状況ですから、安定法によって職業紹介を行う学校等についてもこれは大きい影響を及ぼしているんじゃないかと、こういうふうに思うわけです。特にこれを女性の立場から見ますと、女子の求人は男子の求人よりも職域とか職種あるいは技能の程度そういったものが非常に限られた状態で出されてくる。そして女子はそれしか目に触れないような業務体制がとられているということは、女子の同一の雇用機会へのアクセスを著しく阻害していると私は思うのでございます。条約を批准いたします以上は、これについての改正が抜本的に必要だと思いますけれども、この点はどうでしょうか。改正のめどあるいは日程的なものも含めましてお答えいただきたいと思いますが。
  54. 鹿野茂

    説明員(鹿野茂君) 確かに現在の企業における採用のあり方は、先ほども申し上げましたように男女別々の採用計画を立てることが一般的でございます。そういうことで安定所の窓口でも男女別々のそれぞれのカードを使用しておりますけれども、ただ、私ども安定行政としての基本的な考え方といたしましては男女別々の扱い方はしたくない、したがいまして、最近における安定所の窓口の相談体制は男女別で窓口を分けるのでなくて、求職者の態様と申しましょうか、例えば自分から、みずから求人選択が可能であるとか、あるいは特別の相談を必要とする方とか、あるいは心身障害者や高齢者の方のように特別のきめ細かい援助をする方が必要であるとか、そういうような求職者の態様に応じて窓口を分類いたしておりまして、基本的には男女別に取り扱うという考え方はとっておらないわけでございます。ただ、繰り返すようでございますが、現行では男女別のカードを使用いたしておりますが、これは仮に条約が批准され、あるいはまた男女雇用平等法のように何らかの法的な位置づけというか、考え方が明確にされた場合につきましては、男女の求人票の取り扱いについては十分検討してまいりたいと思っております。
  55. 久保田真苗

    久保田真苗君 直すとしますと、一体どのくらいの日時を要するとお考えでしょうかね。
  56. 鹿野茂

    説明員(鹿野茂君) 男女別の求人を一本化するという作業そのものについては私どもそう時間的なものは必要はないと思いますけれども、そのような考え方事業主に立っていただくという指導というものは十分必要ではなかろうかというふうに思っておるわけでございます。
  57. 久保田真苗

    久保田真苗君 それではこの点につきまして、私はできればどのくらいの期間に何をどうするかということをはっきりお約束いただきたいと、こう思うわけなんでございます。婦人少年局の方はこの点についてもちろん安定と一定のめどを立てて協議をなさったと思いますけれども、その点はどうですか。
  58. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) この問題については十分に安定局と相談をいたしております。
  59. 久保田真苗

    久保田真苗君 そうしますと、相談のポイントはどこですか。
  60. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) 今、先生から御指摘もございました男女別の取り扱いその他につきましていろいろ相談をいたしているということでございます。
  61. 久保田真苗

    久保田真苗君 それは引き続きぜひ詰めていただきたいと思いますし、安定局の方も、批准に至りますまでにはひとつスケジュールなり方法なりめどをはっきりと伺わしていただきたいと、こう思うわけですけども、いかがでしょうか。
  62. 鹿野茂

    説明員(鹿野茂君) 当然のことながら、私ども行政の従来のやり方を基本的に変えるということになりますので、十分なスケジュールとそれから慎重な計画というものを持って対応したいと思っておりますので、きちんとした計画をつくってやってまいりたいというふうに思っております。
  63. 久保田真苗

    久保田真苗君 では、きちんとした計画をひとつよろしくお願いいたします。  外務大臣、今お聞きくださいましたように、政府機関みずからの行う窓口業務がこのように男女を非常にはっきりと分離した形で取り扱っております。このことは婦人差別撤廃条約の十一条、雇用に関する部門の労働権の次に特筆大書しているところなんでございますが、同一の雇用機会についての権利というものを締約国は確保しなければならないわけでございます。法律の中身もさることながら、今現に行われているこのようなプラクティスですね、行政のあり方、このようなものにつきましても、多分このままではとても条約の批准などという状況じゃないんじゃなかろうか。このやり方は条約の要請と非常に真っ向から対立するような、そういうやり方だろうと思っております。それで、他の民間あるいは公的機関への影響も非常に大きいと思いますところから、ぜひこの雇用平等法を立案している労働省みずからがこのことを正していただくように外務大臣としても大いに督励をお願いしたいと、こう思うわけでございますけれども、いかがでございましょうか。
  64. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、労働省からの答弁がありましたが、公共の職業安定所の実態ですね、これは労働省としても別に男女を差別するという、そういう立場でやっておられるということでは基本的にないということでありますし、運用上のいろいろと技術的な見地からの取り扱いも行われておると思いますが、いずれにいたしましてもこれから男女雇用平等法を策定しなきゃなりませんし、そして来年はこの差別撤廃条約を批准しなきゃなりませんので、そういう趣旨とか精神というものを踏まえて、これからのこの法案作成に当たって、十分ひとつ労働省としてもそういう趣旨を踏まえて検討していただきたい、これは政府全体としてそういう立場で取り組んでいかなきゃならないことであろうと、こういうふうに思います。
  65. 久保田真苗

    久保田真苗君 ぜひよろしくお願いいたします。  続きまして、時間外労働について一言お伺いしておきたいんですけれども、先ほどから問題になっております女子の時間外労働の規制を分野によっては廃止し、あるいは工業的業種についてもこれを若干緩和するというような意見が出されているんですけれども、私はひとつこのよって立つところの日本の労働時間に関する基本的な条件というものをぜひお考えいただきたいと思うのでございます。  労働省にお伺いしますけれども、日本は労働時間に関するILO条約というものを全く批准しておりませんですね。この国際基準との内容の関係で問題点はどこにあるとお考えなんでしょうか。
  66. 逆瀬川潔

    説明員(逆瀬川潔君) 労働時間に関するILO条約、基本的なものといたしましては第一号条約、工業的企業に於ける労働時間を一日八時間且一週四十八時間に制限する条約、それから三十号条約でございますが、商業及事務所に於ける労働時間の規律に関する条約がございます。これにつきましては、我が国もこの条約で定めます基準を基本的には満たしているところでございますけれども、ただ、この労働時間制度のあり方につきましては、それぞれの国の労働慣行、社会慣行等と密接な関連がございまして、例えば所定外労働時間の取り扱いにつきまして細部において条約と一致していない部分がございまして、批准をしていないものでございます。  それから、労働時間を一週四十時間に短縮することに関する条約、四十七号条約でございますけれども、これは一週四十八時間制をとる労働基準法と一致しないために批准をしていないものでございます。  なお、この労働基準法の改正によりまして週四十時間制を実施することにつきましては、労働基準法が罰則による強制をもって使用者の守るべき最低の労働条件を定めたものでございます。そういう意味で、労働時間の現状が産業や企業規模によって大きく差異がございますので、特に中小零細企業に対して重大な影響を及ぼすおそれがございますので、直ちにそのような法改正をするということは適当ではないのではないかと我々は考えているわけでございます。
  67. 久保田真苗

    久保田真苗君 一号条約、細部についてとおっしゃるけども、どうもこれは細部などというものではないと思うんです。一号条約は八時間、四十八時間制をとりながらなおかつ時間外制限をきちんとしておるわけでございますけれども、日本の基準法によりますと、労使協定がある場合は事実上無制限に残業ができるという非常なざる法になっております。労働基準法は昭和二十二年に制定されたものでして、当時は非常な経済的混乱の中にあった状況ですけれども、今それとは全く違う。日本は世界自由主義経済第二位のGNPですし、思いやり予算まで米軍に出せるようなそういう状況になっておりまして、今この二十二年の労働基準法の底の抜けた残業規制のなさ、これが維持されるべき理由は何もないと、このように思うわけです。実態面で見ましても先進各国は週四十時間制が定着しておりますし、時間外、深夜業についての割り増し賃金五〇%以上というのが常識なんです。確かに日本は零細企業もございますけれども、しかし昭和二十二年に制定された当時のものを今もそのまま何も底上げをせずにおるという理由は全くなく、これに合わせて野放図な残業ができるような状態に女子の残業制限まで外すということは非常に時代に逆行するものじゃないかと思います。  それで、私はぜひ伺いたいじ、お願いしたいと思うんですけれども、今、労働基準法改正の予定はございますのでしょうか、特にこの時間外労働に関連してですね。どういうふうになっておりますのでしょうか。
  68. 逆瀬川潔

    説明員(逆瀬川潔君) 時間外労働についてまずお答え申し上げたいと思いますが、先生御承知のように、我が国は終身雇用慣行をとっておるということがございまして、景気変動に対します雇用調整機能がこの所定外労働にございまして、所定外労働についてはある程度の幅を持たせることが必要ではないかというふうに考えるわけでございます。そうではございますが、恒常的に長時間労働をするということは、八時間労働制の原則を定めました労働基準法の趣旨に沿うものではございませんので、このような見地に立ちまして時間外労働協定の適正化を図るために、昨年の一月から一定期間につきましての時間外労働の限度に関する目安を設けまして、労使がこの目安時間を十分考慮して適正な時間外協定締結するよう指導を行っているところでございます。  なお、労働時間の問題全体をどうするかという御質問があったと思うのでありますが、これにっきましては労働時間問題を含め労働基準法施行上の諸問題につきまして、学識経験者から成ります労働基準法研究会に専門的立場からの調査研究をお願いしているところでございます。この調査研究につきましては、一応昭和六十年を目途に結論を取りまとめていただくようお願いしているところでございまして、労働省といたしましては、この研究会の検討結果あるいは各界からの要望とか御意見等を踏まえまして、法改正の要否も含めて所要の施策を検討してまいりたいと考えております。
  69. 久保田真苗

    久保田真苗君 昭和六十年を一応の目途としてそのような法改正の動きがあるのでしたならば、私はこの際、男女雇用平等法に関連して出ている女子の時間外制限について工業的業種だけにこれを置いておいて、例えば商業とかサービス業というようなものを外すというようなことは、この基準法改正の動きに対してさえも悪い影響を与えるんじゃないかと思うんです。ですから、もしそのような動きがあるのなら、今、時間外制限、女子についての規制を改めるというのはそれとの見合いでお考えになるのが一番適当なんじゃないでしょうか。そうでなくて、今これを実行するということになりますと、このことが逆に基準法改正への意欲といいますか、行政的な責任というものを非常に緩めていく、そのような感じが私はするのです。  婦人少年局としては、特にILOの三十号条約という商業、事務関係を律している条約もあることですし、今の審議されているような外し方、あるいは労働省がお出しになろうとしているこの内容、これについてやはりぜひ考え直すべきだと思いますけれども、どうなんでしょうかね。
  70. 佐藤ギン子

    説明員佐藤ギン子君) 今、関係法案の要綱を詰めているということを先ほど申し上げましたが、その法案要綱で、工業的業種以外のものについてすべて撤廃するという形になるというふうにまだ最終的に決まったわけではないわけでございますが、ただ私どもといたしましては先ほども申し上げましたように、雇用の場での均等な機会と待遇を確保するための法律案要綱をつくっておりまして、これをぜひ今国会にかけたいという時間的な事情もあるわけでございまして、そういう機会均等を確保するという観点から、女子保護規定のある程度の見直しは避けられないことだというふうに考えております。  ただ、女子保護規定をどのように改正するかということにつきましては、先生からも今るるお話がございました労働時間を初めとしました労働条件、労働環境、それから女子が家庭責任を負っているということも踏まえたものにしていこうということで、そういう観点から最終調整を行っているということでございます。
  71. 久保田真苗

    久保田真苗君 見直しに名をかりて時代に逆行するような労働条件の悪化をもたらすような、そういう間違いをぜひこの際犯さないでいただきたいのですね。  外務大臣、こういったILO条約、しかも古いILO条約との大きな落差、それから諸外国との大きな隔たり、このような労働時間環境の中で日本人の生活には本当にゆとりがない、そしてその結果としての輸出の集中豪雨、こういった一連の日本人の、何といいますか労働時間に関して、これを尊重していく態度の欠如していることを私は非常に憂うるわけですけれども、この点につきましても、ぜひ国際的な視野でもって外務省の方も御研究いただき、ひとつ今度の婦人差別撤廃条約の批准までにすべてのことが妥当な、時代に逆行しない、そういう形でおさまるような御検討をぜひお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  72. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 来年のこの婦人差別撤廃条約の批准に向けて、各省で今法制の整備に努力をしておるわけでございますし、外務省としてもそうした各省の努力に注目をし、そして見守ってまいりたい。基本はやはり条約を批准する、そしてそのためには条約趣旨、それから精神というものを踏まえた、そういう観点に立ってこれからの法案の整備が行われなければならない、こういうふうに思うわけであります。
  73. 久保田真苗

    久保田真苗君 機会均等は憲法上の大原則でございます。ですから、法案を立案する一部の方々の手でもって、例えば募集採用に関する機会均等は四〇%あればいい、昇進は五〇%、訓練は六〇%、定年制は八〇%といったような、そういう惜しみ惜しみ点数をつけられるという、そういうものではないだろうと思うんです。  私、今度アメリカで、佐藤さんもよく御存じの雇用平等委員会、あるいは民間団体でございます婦人の権利防衛基金といったようなものを視察してまいりまして、つくづく人権を、自由主義経済のチャンピオンであるようなアメリカの中でも、政府機関はこの人権を守るためにはやっぱり私企業にそれなりの責任を持って介入していっているということ、それから民間団体でも、このような婦人の法的権利を守る基金に対してフォード財団、ロックフェラー財団といったようなところから大口基金を得ていること、こういったことがアメリカの社会を、いろいろ一言われますけれども、やはり健全なものとして進めでいっている要素なんだろうというふうに思います。  顧みまして、私は自分の国を大変悲しく思ったんですが、経営者団体の方々が余り恥ずかしげもなく男女の雇用平等法反対だなどと大声で言っていらっしゃる、非常に珍奇な、特異な風景だと思いますね。男女平等を進めると家庭が崩壊する、企業経営がやっていけない、非行がふえる、何と情けないことなんだろうと思うわけです。むしろ日本で熟年男性の自殺率の高さが近ごろ問題になっていますし、また外国へ赴任する方々の家族の赴任旅費さえ出さない会社というものも今までたくさんありました。そういった余り人間的でない考え方というものがやはりこの日本の社会の健康をむしばんでいるんじゃないか、どうもそのように思われてなりませんので、繰り返してお願いいたしますけれども、外務省もひとつ国際的な視野からこのことの成り行きをよく見守っていただき、十分御検討の上、条約の批准に進んでいただきたいとお願いして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  74. 黒柳明

    ○黒柳明君 条約の質問に入ります前に、二、三国際情勢について大臣にお伺いしたいんですが、一昨日の国内の報道で、レーガン訪中に絡んでの中韓問題、なかんずく朝鮮半島の問題、これが国内紙に一斉に報道されておりました。最近のワシントン・ポスト、ニューヨーク・タイムズなんかを見ましても当然ですけれども、あのレーガン訪中ということであと一週間後ですか、なかんずく朝鮮半島の問題というものがコメントされておりました。当然大臣も御存じかと思うんですが、中国側はレーガン訪中をとらえて積極的に中韓関係の発展を目指したいと、正常化という段階の手前としても政府承認の民間交流、文化、経済あるいは人物交流等も積極的にやりたいと。レーガンをそのてことしたい、こういうようなことについては国内もアメリカの報道も大体同じような感じがあります。  ただ、アメリカの一部の報道では、レバノン問題でミスをしたレーガン政権が、選挙を目指して外交的なポイントを取るのは今回の訪中、韓半島問題での姿勢ではなかろうかと、こんなこともコメントしてあったものもありました。中には、相当ドラスチックな変化を期待できるような話し合い、提案もするんじゃなかろうかと、こんなことを書いてある横文字の新聞もありました。  いろんな情報が一週間後のレーガン訪中を前にあるわけでありますが、日本としても当然これは無関心でいられる問題じゃありませんし、中国側も、朝鮮半島の緊張緩和というものはやっぱり我が国について非常に緊要であると、何かかっての日本政府が朝鮮半島について述べたと全く同じような文言句々を使いながら述べている。こんなこともありまして、中国側、なかんずく受け入れ側の非常に積極的な感じを受けます。レーガンサイドもそれなりの積極姿勢、意図を持って訪中する感じを強く受けております。当然北とも仲がいい中国ですから、米国を媒体にして韓国と今まで以上な積極的な交流を進めるとなりますと、日本の場合には非常にやはり近くて交流が深い韓国、関心が多い朝鮮半島問題ですけれども、あるいは中国問題での頭越しというような、頭越しになるかどうか別にしまして、そういうことがあるかもしれないと、私はこういういろんなことを私なりに想定し、情報も集めているわけであります。  一口に言いまして、外務大臣は私より何百倍もの情報を集め、あるいは思慮をめぐらしているレーガン訪中かと思いますが、一口にこのレーガン訪中、中国政府の韓国に対する積極姿勢、こういうものを踏まえての朝鮮半島の情勢というものをどういうふうに御判断されているか、コメントいただけませんか。
  75. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今おっしゃるように、レーガン訪中をアメリカ政府は相当盛り上げようということであろうと思います。  これは、一つにはやはり米ソ関係が行き詰まっておる、そういう中でこの米中関係の占める役割は非常に大きいということで、米中関係を今後の国際政治の中で大きく取り上げていこうということでありましょうし、もう一つは、大統領選挙を控えておりますので、やはりそうしたレーガン訪中を盛り上げることがレーガン再選にもつながっていくというふうな政治的な意味ももちろん率直にいえばあるんじゃないかと思います。同時にまた、我々が先般訪中しましたときに中国側とも話し合いをしていますが、中国側もやはりこのレーガン訪中には非常に期待を持っておる。  それは、中国が現代化計画を非常な勢いで、非常に熱意を持って進めております。そして、日本中国との経済協力もそういう中で大きな役割を占めております。特に、アメリカとの間では高度技術についての協力であるとか、その他のいろんな面における協力というものを大きくアメリカに対しても期待をしておると。そういうこともあって中国側としましても、また一面においては中ソ関係というものをにらんでのもちろん配慮等もありますが、そういうこともあって中国側も盛り上げを考えておるというふうに私は受け取ったわけであります。したがってそういう意味では、今度のレーガン大統領の訪中というものは相当大々的なものになってくるのじゃないだろうかと思うわけで、そういう中でいろいろのことが米中間で話し合われると思いますが、基本はやっぱり米中間のこれからの友好発展の基礎をどういうところに置くかと、どういうふうに策定していくかということが基本でありましょうが、同時に今お話しのような朝鮮半島の問題もこれは当然大きな議題の一つになるであろう、こういうふうに思います。  アメリカにとりましても、やはり韓国にはああいう駐留軍を置いておるわけでありますし、そしてまた米韓安全保障条約を持っておるわけでございますし、そういう中で朝鮮半島の緊張緩和というのは、アメリカにとりましても非常に今後の世界政治を展望する場合に重要な意味を成す、こういうことで、ようやく朝鮮半島にも対話の兆しが多少出てまいりました。非常にジグザグな動きでありますし、行ったり来たりしているような状況がありますけれども、しかし動きとしては出てきたわけでございますから、この際にその緊張緩和をどういうふうに中国とも話し合って進めていくかということについて、これは我々も注目して見ております。そして、レーガン大統領の訪中が終われば、実はシュルツ国務長官が直ちに日本にも立ち寄って、当日は総理大臣も私も日本にいないわけでございますけれども、とにかく立ち寄って、そしてレーガン大統領の訪中について日本側にも十分その内容を伝えたいということでございますので、日本側とは密接な連絡をとりながらやろうというアメリカの意思ははっきりしておるわけでございます。  いずれにしても、我々はそうしたアメリカの配慮に感謝するとともに、このレーガン訪中がアジアの緊張緩和あるいは朝鮮半島の緊張緩和、さらに世界政治のこれからの新しい展望に一つの大きな役割を果たすことを心から期待をいたすわけであります。
  76. 黒柳明

    ○黒柳明君 当然、外交というのは、どういう結果が出るかというのはこれは各国の間のことですから。ですけれども、国際的にどういう役割を果たしたかというのは、国際的に当事国の、あるいはそれに対して調停なり仲介の労を果たした国のプレステージが評価されるわけでありまして、シュルツ長官が、外務大臣も総理もいらっしゃらないときにわざわざおいでになると。私も国務省にいろいろお友達がいますので非公式にいろいろ聞いてみますと、やっぱり、ただ単にすっと忙しい中で寄るわけがないんです。どうも韓半島問題、朝鮮半島問題をめぐって、一部ワシントン・ポスト等の、ドラスチックな提案がある、驚くような結果が出る可能性のものがあるんじゃなかろうかというようなものについて、それがレーガンあるいは向こうの中国首脳との間で公式に表になるのか、あるいは裏になるのかそれはわかりませんが、そこらあたりを伝えることが唯一のシュルツ訪日の目的だと言う人も中には、自分の憶測も含めてあるのですが、私はそんなことも耳にしますと、あり得ることだと、こんな感じもいたします。ですから、一部のマスコミの活字をそのまま信用する必要も当然ないわけであります。  ただし、朝鮮半島をめぐって何かドラスチックな変化が起こるような前提の提案もすると、話し合いもすると、これもやっぱり無視するわけにいかない。外務大臣の知識の中でいろいろ判断してもまだ判断の域を出ない問題も当然これは当事者の国じゃありませんからあるかと思うんですが、果たしてどうでしようか外務大臣、もう一歩進んで、レーガン訪中で朝鮮半島をめぐっての何かトラスチックな変化というか何らかの変化というものが起こるような感じがするのか、このあたりの情報分析というものはどうされているでしようか。
  77. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃる点はよくわかるんですが、かってのニクソン、キッシンジャーの時代、よく日本の頭越しに米中関係を発展さしたりいろいろのことがあったわけでございますが、あの当時と今のレーガン、シュルツ時代というのは日本との関係も随分違うと思います。そして今の日米関係のもとにおいては、大体事前にいろいろな問題についてはアメリカも十分日本に知らしてきておるわけでありますし、今の日米関係からいくと頭越しにアジアの問題についてアメリカが動くなんということは到底あり得ないと私は確信をいたしております。  それからまた、中国日本との関係も大変密接な状況になってまいりまして、大体中国の真意というものはむしろアメリカよりは日本の方が知っておると、こういうことが言えると思いますので、今のこの状況の中にあってアメリカと中国が非常にドラスチックなことを行ってそして後で日本に知らせると、こういうふうなことには私はならないのじゃないかと思っておりますし、今の客観情勢から見ましても、朝鮮半島の状況についてそうした米中間でドラスチックな方向を打ち出すというふうな状況にもないんじゃないかと。非常に楽観に過ぎるかもしれませんけれども、私は、今の日米関係それから日中関係というものを振り返ってみますと、そういう心配は、頭越しというふうな心配は、そしてまたドラスチックな動きを行って後で日本に知らせるというふうなことはちょっとあり得ないと、こういうふうに判断はいたしておるわけであります。
  78. 黒柳明

    ○黒柳明君 中国日本と体制が違いますけれども、メンツというものを捨てるという意味ではありませんが、単純と言えば単純な外交、わかりやすい外交をする。アメリカに説得を頼むというふうな点もあります。日本みたいに、非常に考えながらやる反面、どうも思ったことがはっきり言えないという点もありますが、中国の場合には体制の相違というものがあるにせよ、今回の場合も事前に出ているその内容というものは非常に明確で、何かレーガンに相当頼っていくんだと。北との間については中国は問題がないわけですから、南との問題についてそういう態度、当然それはあの一部の報道がありましたように、南北の話し合いでもアメリカが、アメリカも中国も休戦協定調印当事者ですから当然とは言いながら、今全く話題にもならない、あるいは提案してもそれが全く空虚なものと言われているその三カ国だ四カ国だなんていうものにつきましても、米中はひとつ座って南北の話を聞こうじゃないかと、こんなことはこれはあり得ることでありますし、それで今までと違ってそういうオブザーバーというのか、そういうものがあっての上の南北の対話というのは、これは今まで考えられないようなことも可能性としてはあるわけでありまして、非常にわかりやすいというか単純な外交をやれる国柄というような感じもいたしますので、確かにニクソン時代とは若干時代が変わっていますが。  ここにアメリカ局長アジア局長がいらっしゃいますが、まだ大臣に説明していない――実務者として出す方と受け入れ側の責任者がいらっしゃいますので、どうもアメリカはアメリカ側の今言ったように選挙絡みといいますかいろんな問題があるし、中国側も非常に先ほど言いましたように変わった面の熱心さがあります。どうでしょうかね、今までのいろんな情勢分析をした上において、頭越しなんというニクソンと同じような米中関係の中の日本という場合、そういうことがあったとしても日本は何も関係ないわけでありますが、朝鮮半島の問題はちょっとこれは中国とは――もし頭越しという問題、そんな大変な問題じゃなくても、やっぱり何かしらの変化というものがあるとそれこそ日本は笑い物というか、日韓のきずなというものはこれは政府間じゃなくてほかのサイドから日本に対しての不信感があらわれるとか、こういう可能性だってありますし、韓国という国もやっぱり物をずばずば言う国ですから、非常に私なりに、今度のレーガン訪中というものを日本中国日本と韓国、いい意味でのそういう外交関係というものを前提として、あるいは日本は北鮮とどうすればいいのか、こういう苦慮というものを前提にしてこのレーガン訪中というものをにらんでいるわけでありますが、ひとつその一番情報をつかんで、一番実務の責任者、送る方と受け入れ側の局長さんにひとつ分析をお願いしたいと思うんですが。
  79. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) アメリカ局長も同様だと思いますが、私も情報の中で特に重要な情報につきましては一〇〇%大臣に常に報告しておりますので、したがいまして、私どもの結論も先ほど大臣が御答弁されたところに尽きております。  ただ御参考までに申し上げますと、確かに先生御指摘のとわりに例えば最近のワシントン・ポストでございますとか、あるいは日本新聞も含めまして、レーガン大統領訪中の際に特に朝鮮問題について劇的な動きがあり得べしという報道は私どもも承知しております。ただ、先ほども大臣が御答弁になりましたけれども、朝鮮半島をめぐるすべての動きにつきましては、これは中国日本に対しまして事細かに、詳細に伝えてきておりますし、それからアメリカも大臣の言われたとおりでございます。それから、肝心の韓国もすべて日本考え方を伝えてきているのみならず、具体的には差し控えますが、北朝鮮とのさまざまの動きにつきましても事前に韓国政府から日本政府に、自分としてはこういうふうに北とやろうと思うがどうであろうかという意見まで求めてきております。したがいまして、アメリカ、韓国、中国に関する限りは私どもは重要な点は一〇〇%知らされていると、かように考えております。  そこで、その関連で申し上げますと、中国に関しまして私どもが現在承知しておりますところでは、非政治的な関係、つまり韓国との関係におきまして非政治的な関係、人道問題でございますとか、あるいは文化、あるいはスポーツと、これらの点については次第次第に交流を積み上げてまいりますが、しかし政治関係外交関係につきましては、あくまでも北朝鮮支持という原則は変えないというふうに聞いております。  それから韓国につきましても、これは韓国の本心を私がそんたくいたしますと、韓国としては中国との関係をもっと深めていきたいと考えていることはこれは間違いございませんが、しかしながら中国が今申し上げましたような考え方でおる以上余り無理してもということで韓国といたしましても現在のところは中国との関係は非政治的な関係にとどまるであろうということを考えております。そういった中国、それから韓国の考え方をアメリカも非常によく知っておりまして、私どもがアメリカから公式に聞いておりますところでは、先ほど大臣が御答弁になりましたように、劇的といいますか、ドラスチックといいますか、そういう耳目を聳動させるような大きな変化といいますか、動きというものは現在の時点では私どもは予想していないというのが実情でございます。
  80. 北村汎

    政府委員(北村汎君) ただいま大臣それからアジア局長から申し上げましたことと私も全く同意見でございますが、私は今のレーガン政権というアメリカの政府は今までのアメリカの政府の中で最もアジア・太平洋地域というものに大きく目を向けた政権であるというふうに感じております。特に、アジア・太平洋地域というものの重要性がこれはいろんな意味で高まってきておるということもありますし、またレーガン政権自体がやはりアメリカの西部の出身の方も非常に多いということもございましようし、またアメリカの中での経済的な重要性がだんだんと東部から面あるいは西南部の方に移ってきておるということもございましょうし、またアメリカの貿易も大西洋を越えての貿易よりも太平洋を越えての貿易の方が大きくなってきたという、こういういろんなアメリカの内部の変化というものも反映いたしまして、そうしてこのアジア・太平洋の重要性がアメリカ外交の中で非常に大きくなってきておるというのが私どもの分析でございます。そこで、そのアジア・太平洋の中で日本がやっぱり一番中心的な地位を占めておる。これはレーガン大統領もシュルツ国務長官も事あるごとにそういうことを言っております。したがいまして、ただいま大臣からも申されましたように、またアジア局長からも申しましたように、私は日本に対して重要なことを相談しないでアジア・太平洋地域の問題をアメリカがやるということはこれはないんじゃないか、こういうふうに考えております。
  81. 黒柳明

    ○黒柳明君 きのうかおととい、さきおととい、この二、三日の間ですけれどもね、中国の外務省の太平洋州局長という人、こちらでいうとどういう肩書になるかわかりませんが、例えば先ほどちょっと私が言ったように、アメリカと中国が同席して南北の話し合いと、こんな問題もこれは断定的に言ったのか何を言ったのかちょっと覚えておりませんがこんなことも出ておりまして、ドラスチックな、劇的なという言葉は私は出ていたのを引用しただけであってそんなことはないとは思いますけれども、今言ったようなことはこれはあり得ないことじゃないと思うんですよ。米中間で最高首脳が話し合って、結果はいざ知らず、当事国があるわけですから米中たりといえども独立国に対してプレッシャーをかけるわけにいきませんからね。ですけれども、両国が是と頼む、味方と頼む大国がひとつ話し合ってみる、おれたちも同席するからと、こういう話が首脳部で、しかも向こうの当事者がどういう折にどういう発言意図を持ったかわかりませんけれども、そういうことがちょこっと活字になって報道されるということについてやっぱり看過はできないし、外務大臣を、中曽根総理を飛び越えてロンが何かやるなんていうことは考えられませんけれども、その劇的という言葉を考えていなくても、ちょっとした手順を踏んだつもりがそういう方向に行くということは幾らもあるわけでありまして、その中の一つが同席するということもどうだなんていう話も出ていましたしね。これは私は今まではそういう中においてアメリカが前に出て北鮮と交渉して話はもう全然進まない、そういう段階を経ているわけでありまして、あれだけのスポーツ交流だってこれはラングーンの問題を出せば一遍でだめだと、こういう南北であることはわかっていますけれども、南北たって、やっぱりけんかのためのけんかをしているんじゃないと、こういう感触もありますしね。ですから、ドラスチック、劇的という言葉じゃなくしても、そういう何らかの変化ということは出るんじゃなかろうかという、事前の報道を見ると感じがするんですけれどもね。大臣、この点はどうでしょうか。これは変な話で、また立ち入って恐縮ですけれども、どうでしょうか。
  82. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにおっしゃるように、米中間で、朝鮮半島の緊張を緩和するためのいわゆる枠組みといいますか、そういうものをどうしたらいいかというのはこれは恐らく話し合われることは間違いないと思います。これは日本も、中曽根首相以下我々が行きましたときもそういう問題について中国と真剣に話し合いまして、中国は御承知のように三者会談、これは北と全く連動しておりまして、北朝鮮を支持する、そういう中で三者会談が最も正しいし、これを中国は強烈に支持する、こういうことでございました。日本の場合は、御承知のようにまず当事者同士が話し合う、しかし会談の形式は、緊張緩和が行われるなら三者会談でもそれは結構だ、四者会談でも六者会談でも最終的にはこれを否定するものではないというのが日本考えでございます。アメリカはそういう中にあって、御承知のように当事者の話し合いが基本でなければならぬけれども、しかし四者会談ということがあってもいいんじゃないかということをシュルツ提案という中で出しておるわけでございます。現在の状況では、アメリカの言っておるところの四者会談というものに対して中国は三者会談と、こういうことでございますが、シュルツ国務長官がその間にあって、今おっしゃったような当事者間の会談で両方がオブザーバー的に横におると、こういうふうなことを言っておりまして、これは今までアメリカが言っておる四者会談なのか、それとも変わった一つの形式なのか、私はその辺のところはつまびらかにはいたしませんけれども、そうした考え方というものに対して中国がどういう反応を示すか、これは両国が話し合う中で我々も注目せざるを得ないわけです。  基本的には、中国側はやっぱり北というもの、北朝鮮の意向を無視してこれを進めるというわけにもいきませんし、中国自体もやっぱり四者会談には余り賛同していない。また、北朝鮮も三者会談を進めている。中国はやはりソ連との関係もありますしね、どうも四者ということについては多少シュリンクしているというふうな感じを持っているわけでありまして、しかし今の両当事者の会談にプラスアルファといいますか、両方の両わきに座るということがどういうことを言っているのか、私はその辺のところはちょっとはっきりしておりませんけれども、微妙な点ではあろうと思います。しかし、そういう中で大きな進展が今我々の承知している限りではないんじゃないか。けれども、一つ何か、朝鮮半島緊張緩和についてやっぱり米中間の合意といったものを打ち出したいという気持ちは、これは米国も相当強く持っておるだろうと、こういうふうに思っておりますが、いずれにしても注目はしておるわけでありますし、そして日本の頭越しに大きなドラスチックなものはそれはちょっと考えられない、こういう認識であります。
  83. 黒柳明

    ○黒柳明君 レーガン訪中を注目するよりほかないと思うのですが……。  今日の日中の租税協定に関連しまして、先般、昨月の二十七日、外務大臣、総理が訪中からお帰りになられた翌日に委員会でやりまして、大企業の進出を望むとの中国側希望があって、総理は、あるいは外務大臣でしたか、時期が来たらそれを話すと。法的に向こうはまだまだ整備されておりませんから、だから進出についてはこれはいろんなためらいがあることは間違いありませんけれども、そこらあたり、財界、実業界との、中国側の正式な要請に対してのアプローチというのはこれからなんでしょうか。
  84. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日中の首脳会談の中で、特に鄧小平主任なんかは、中小企業だけじゃなくてやっぱり大企業がどんどん出てきてほしい、これはアメリカも今どんどん出てきているんだから、日本もそれに従って出てきてほしい、こういう強い要請がありました。日本からは、出ていくにしてもやはり投資環境だとか、あるいはまた投資の体制がよくならないと、なかなか今の状況で出ていくといっても無理だ、投資保護協定とか、あるいは国際的な特許の条約に加盟するとかそういうことが必要じゃないでしょうかと、こういうことを説明して中国側もこれに対しては準備を整えると。同時にまた、経済特別区的なものを順次設置していってそして日本企業を積極的に迎えるという強い要請がありました。この強い要請に対しては経済界にも伝えておこうと、こういうことを申しておりまして、帰りまして早速日本の経済界にはそうした会談の内容、そして中国側の要請、また中国側考え方についてはこれを順次伝えておるわけでございます。
  85. 黒柳明

    ○黒柳明君 またちょっと条約からそれますけれども、けさの新聞で、これは官房長官をお呼びしたんですけれども、黒柳とおれは肌が合わないからというんで嫌われちゃいまして逃げられちゃったもので、これは外務大臣にお聞きするというのもちょっとあれかと思うんですけれども、総理の外遊日程、外務大臣も当然総理と一緒にいらっしゃるわけですが、国会の大幅延長、その中におけるサミット、なかんずくそのヨーロッパ諸国等を回る日程なんかとの関係で、何かどこかの通信社の報道なのかあるいは各社の取材なのか、どうしても国会の日程が詰まっていてこれはできないというようなことが出ていましたが、これはけさの記事のままに受けとめていいんでしょうか。これは大臣、直接お答えできないのかな。どうなんでしょうか、それは。
  86. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 外務省が中心になって総理の日程を作成しますし相手国にいろいろと連絡もあるものですから、この問題は特に総理の外遊ということで非常に大きな外交関係ですから、外務省ももちろんその責任を担うわけですが、確かに報道されておりますように、総理大臣がサミットに参加すると同時に、その機会を利用してヨーロッパの主要諸国からかねがね来訪を求められておりましたので、公式なそういう諸国に対する訪問を計画をいたしまして、実は今までそういう国々と話し合いを行ってきておるわけでございます。日程等もだんだんと詰まりつつあるような状況で、何分にもこれは総理大臣が行くということになりますと、早目に日程をつくっておきませんと相手の立場もありますから、日程等もぼちぼち詰めようという段階にあるわけでございますが、御承知のように国会もありますし、今、我々が延長問題とかなんとかいうことになりますとこれは私たちの権限の外でありますし、国会でお決めになることですが、重要な法案もあるわけですから、総理大臣としても内外を踏まえて頭の痛いところだろうと思います。  そういう中でこれは弾力的に考えざるを得ないと。やはり国会の日程といいますか、法案の日程等を優先して扱わなきゃならぬと、こういう考えもあるようでありまして、今、全体的にいろいろと見直しておるといいますか、一案、二案、三案というようなものをつくりまして見直しておる最中であります。最終的にはまだ決まっておりませんが、当初考えておるような日程でそのままいくということは、私は客観的に見て困難ではないかと、こういうふうに判断しております。
  87. 黒柳明

    ○黒柳明君 大臣がおっしゃったとおり受けとめるよりほかないんですけれども、延長については国会でお決めになることで私のあれするところじゃないと言いながら、やっぱり国会の延長というものを大前提としてもこれはやめるよりほかないという御発言そのもので、けさの報道そのとおりだと、こういうふうに受けとめざるを得ないかと思いますけれども、外交日程ですから、まして総理の日程ですから早く各国にアプローチしなければならないし、それから、だめならだめで早くこれは何らかのアプローチしたものについて中止なら中止してやらなければならないし、そんなことはこれは当然だと思いますし、今の国会の雰囲気から見れば、これは当然重要法案を通過させ、行革あるいは教育臨調の問題を何とか今国会でとなればこれは大幅延長はいたし方ないことであって、また中国のときは参議院に迷惑をかけ、連休はこれはみんな休みですが、さらに六月の一番延長直後のときに総理も外務大臣もいないとなったら、これはもうどうしようもないということは、これは常識以前の問題。その中でやっぱり一番外務省が苦労している、一番割を食っている。何か中島さん大丈夫ですかね、百日のうちの半分は海外で、あの方はもともと顔色がよくないですからね。ですから余りあっちこっち、お国のためですけれどもお国のために討ち死になんという時代じゃありませんから、ひとつ日本の頭脳でありますから大臣もよくこれは考えて、何も予算のときだけ差し入れしなくていいわけでありまして、ふだんから差し入れしていけないというルールもないわけでありまして、変なことを言って恐縮でありますが、外務省だけが何かこう苦労しているというような感じもしますので、国会の問題、なかんずくこの参議院の当事者には一月には大きな迷惑をかけていますので、ひとつやめならやめで早く打ち出しちゃうと。先ほどの中国との問題、朝鮮半島の問題じゃありませんけれども、何か日本というのは、言うことも言わないでじくじくしているというようなことがありますので、ひとつその点を要望したいんですが。  それにひっかけて、時間もありませんので最後に一言ですけれども、おととい何か記者会見で総理大臣が、国会延長となるとすぐその延長線は十一月が目の前なんですが、再選に意欲を示したなんてマスコミが書きまして、人事を尽くして天命を待つなんて、何か私は、総理大臣はスマートにしてはばかにじじくさい言葉を使ったなというような感じもしましたけれども、どうですか、外務大臣としても非常に平和外交に徹していますですね。朝鮮半島問題はいざ知らず、欧亜局長がソ連に行く、それから中東局長も、今度イランに行くとかきようも出ておりましたけれども、そういうことを徹底的に、紛争といいますか、我が国にちょっとでも、あるいは大きに関係があるところにはどんどん積極的な外交を進める。中曽根さんも再選に意欲をかけている。おとといのマスコミの人の判断ではもう十二分に意欲がある、二階堂副総裁はその布石であるなんというようなことを、我々のわからないことをいろいろ書いて知識を提供していただいておりますが、そうなると、安倍平和外交もまだまだこれは意欲を見せた行動を起こしたという段階でありまして、もし第三次中曽根内閣が出現して請われるならば、この安倍平和外交をさらに永続して進展させると、こういう意欲をお持ちでしょうか。ばかに回りくどく変な、質問になるようなならないようなあれですけれども、済みません。
  88. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) とにかく私も第二次内閣で全く図らずも再任されましたし、再任された以上は、これは今の日本外交は大変重要な段階に差しかかっておりますし、平和外交に徹して全力をまず傾けるということにひとつすべてをかけて当分動いていこうと、こういうふうに思っております。
  89. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分に再開することとし、休憩いたします。    午後零時九分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十一分開会
  90. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  まず、委員の異動について御報告いたします。  本日、夏目忠雄君が委員を辞任され、その補欠として福田宏一君が選任されました。     ―――――――――――――
  91. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  92. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 本日の議題になっております日中租税協定、それからスリランカとの間の航空協定そのものについては別に異存はございません。特に、スリランカとの航空協定の方は、スリランカというのは民主社会主義共和国といって、民社党の綱領の考え方と全く同じ名前を持った恐らく世界で唯一の国じゃないかと思います。民社党も非常に親近感を持って一昨年視察団なんかを派遣して交流を深めてきた国でありますので、非常に歓迎しているところであります。  何か日本では、社会主義というとすぐ中国、ソ連を連想する人があるんですけれども、スリランカは経済的には混合経済、政治的には複数政党制を維持している国で、まさに民主社会主義考え方の上に立っている国で、この国がますます発展していくことを希望している次第で、日本との交流を深めるための航空協定が結ばれたことを大変喜んでおります。  中国との租税協定の方も協定の案文を見ますと、個人所得税のほかに企業所得税、企業の利得税といいますか、もちろん合弁企業外国企業に限られてではありますけれども、そういった新しい税の考え方なんかも出てきているように思います。これが成功しますと、それが模範になって中国内部の経済制度も徐々に自由化していくんではないかということを考えておりますし、また政治的にもだんだん自由化していくんではないかということを希望している次第であります。  しかし、その一環として、近代化、活性化ということを中国の方でいろいろ努力しておるように承っているんですけれども、果たしてその路線が十分に定着しているものかどうか。と申しますのは、去年あたりからの新聞の報道を見ておりますと、一方においてはいわゆる右翼の精神汚染ですか、そういうものをたたくかと思うと、他方においては左の過激派といいますかあるいは保守派といった方がいいかもしれませんけれども、そういったふうな考え方を批判するという、何かごの政策の考え方の動揺があるように思うんですけれども、外資の導入なんかに対しても、内部ではあるいは租界化ではないかというふうな批判があるようにも承っておるんですけれども、今進めているところの近代化政策、特にそういった外資導入、そういったふうな政策はどの程度定着しているというふうに外務省の方で見ておられるか、そのことをまず最初にお伺いしたいと思います。
  93. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) この間中曽根総理それから安倍外務大臣が公式訪問されましたときも、これは鄧小平顧問委員会主任、それから胡耀邦総書記、それから趙紫陽総理を初めといたしまして中国側の首脳がほとんど異口同音に強調しましたことは、中国が現在採用しております対外開放政策というものは、これはあくまでも長期不動のものとしてやっていくということでございます。それから、鄧小平顧問委員会主任の総理に対する発言をそのまま申し上げるわけでございますが、現在の中国は一人頭国民所得は二百五十ドルですと。これを今世紀の末までに何とかして千ドルに持っていきたいと。そのためにはやはり中国として膨大な資本、それからすぐれた技術というものを必要とする、この点において日本からの特段の御協力希望すると、こういう趣旨のことをるる御説明がありました。ほかの首脳も同様でございますが、私どもが受けました印象は、中国のこのような対外開放路線というものは、少なくとも現政権が続く限り堅持していくものであろうというふうな印象を持った次第でございます。
  94. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私もそれを望んでいるのですけれども、必ずしも内部においてはそれに同調しないような声もあるやに聞いているのです。しかし、これは中国内部の問題でどうにもしようがないことなんですけれども、その外資導入の政策の一つとして経済特区をつくるという、既に経済特区というのができてもいるし、今後大連であるとか天津あたりにもこれを拡大していく、そういうことを知らされているのですけれども、この経済特区という考え方が既にできているものについて判断する限りは、単に輸出加工のための工場、そしてそれをまた輸出する、そういう輸出加工区をつくって外貨を稼ぐということと、それから、中国人が外国技術を習得していく、それが当面の目的であるように思われるのですけれども、一体中国の特区をつくるという考え方の基本にあるのはそれだけのものなのか、あるいはそのほかに何らかの政治的な目的とか何かそういったふうなものがあるのかどうか、もしおわかりであればお答え願いたいと思います。
  95. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 私は、基本的には先生まさに御指摘のとおりの目的で設置したというふうに理解をいたしております。先ほども申し述べましたとおりに、中国のおくれた経済を急速に近代化していく、あるいは中国の国民経済の規模を今世紀末までに何とか四倍にしたいということのためには、どうしても先ほどの資本と技術のほかに、やはり企業経営の形態、その仕様におきましても、日本を初め先進諸国からできるだけ学びたい、こういう意図から一つ企業近代化といいますか、中国企業をより効率的たらしめるための一つのサンプルとしての経済特区設置であると、かように考えております。
  96. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 現在までの特区の地域に、華僑資本なんか一応別にしまして、いわゆる西側諸国といいますか、西欧、アメリカ、日本なんかあたりからどの程度企業進出しているかおわかりでしようか。
  97. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 私はここに細かい資料を持ち合わせておりませんが、私どもの今の頭の中に浮びますのはまさに先生御指摘のとおりに、一番出ておりますのはいわゆる華僑資本でございます。香港華僑でございますとか、シンガポール資本で、こういった資本、いわゆる華僑資本でございます。その次に多く出ておりますのがアメリカでございます。それから西欧勢も出ておりますし、それから日本は、現在のところ単独にしろあるいは合弁の形にしろ出ておりますのは現在のところまだ六件でございます。したがいまして、数的にもあるいは量的にも非常に少ないものでございますから、これも実は総理、外務大臣が公式に訪問されましたときに鄧小平顧問委員会主任が、日本政府からの円借款、技術協力無償も非常に感謝しますと、しかし、日本へお帰りになりましたら日本の民間の企業に、中国にどんどん単独でもあるいは合弁の形でも結構でございますからぜひ来るように勧めてくださいというような、いわば陳情があったわけでございます。
  98. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 やはり、資本主義国の企業が進出していくためには何らかの利点がなければ進出しないわけですけれども、これは外務省の方からいただいた資料によったのですけれども、特区で雇われる中国人労務者の賃金が普通の国営企業なんかに雇われている労働者賃金の三倍くらい高い、ちょっと数字が正確じゃないが、たしか三倍ぐらいじゃなかったかと思ったんですが、かなり高いような賃金で雇うようになっているんだそうですけれども、どういう理由でそういうあえて不利な、労働者にとっては有利ですけれども、そういう条件をつけているんでしようか。
  99. 瀬崎克己

    説明員瀬崎克己君) ただいま先生御質問の点でございますが、特区に進出しております企業に雇われる中国人の給与でございます。これは同じような類似の形態の国営企業に雇われる労働者の一二〇%ないし一五〇%という規定でございます。したがいまして、約一・五倍ということでございますが、やはり特区内では物価が非常に通常の中国人の居住区域と比べまして高いとか、あるいは福利厚生の面で若干経費がかかる、こういうような点を勘案して基準を定めたと、かように聞いている次第でございます。
  100. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そういった特区でどんどん外資が入ってきて企業がだんだん成功していくと仮定しまして、この特区内の経済がだんだん外部、つまり特区で生産した物を中国内部に輸出するとか、あるいは中国内部との自由な物資の交流が行われるとか、そういう展望はあるんでしょうか。
  101. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) まさに先生御指摘の点が、日本企業中国に数多く、あるいはどんどん単独の形でありましょうともあるいは合弁の形でありましょうとも出ていかない一つの理由かと存じます。と申しますのは、日本企業中国に進出します場合、あるいは合弁でも単独でもどちらでも結構なんでございますが、生産された物を何とか中国国内にできるだけ売りたいというのが日本企業希望でございますが、やっぱり人口が多うございますし、それから将来の発展を考えますとそういうことなんでございますが、中国側は今のところどちらかといいますと、生産された物はなるべく外国に輸出して外貨を稼いでほしいということが一つ問題としてあろうかと存じます。
  102. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 この特区の問題は、単に日本企業、進出する企業の問題だけではなしに、いわゆる社会主義経済がどういう形で自由経済的な要素を取り入れていくかという観点から見ても非常に興味のあるところで、今度民社党も佐々木委員長以下が行って視察してくることになっているんですけれども、現在のところは、特区内においては市場経済といいますか、自由に物の売買ができる、そういうふうになっているんでございますか、それとも、一つ企業が工場の中で資本家的な経営をしてよろしいというだけであって、特区内で自由につくったものを売る、内地じゃなしにその特区内でですね、そういうことはできるんですか。
  103. 瀬崎克己

    説明員瀬崎克己君) 特区に進出しております企業の生産物の販売でございますが、これはもちろん特区内では販売は可能でございます。ただし、特区の経済規模というのは非常にまだ小さいものでございますから、それだけで経営が成り立つということではございません。したがいまして、その生産物をどのように販売するかという点が一つの問題でございまして、進出する企業から見ますと中国の膨大な人口市場、これが一つの魅力になっておりますので、できるだけ製品を輸出すると同時に中国市場にも売りたいという希望がございまして、この点につきましては徐々に中国側が理解を示しまして、最近では製品の中国市場への販売の率も高くなっているというふうに承知しております。
  104. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そうすると、今、既存の特区以外に大連であるとか天津であるとか若干地名が、候補が出ていたように思うんですけれども、そういう方面の特区というのはもっと条件が緩和されたものになると考えていいのでしょうか。
  105. 瀬崎克己

    説明員瀬崎克己君) 現在既存の特区というのは、広東省にございます深川、珠海、スワトウそれから福建省のアモイでございます。ただ、ここに進出しておる企業の数と申しますのは非常に多うございまして、現在、一九八三年末の中国側の発表によりますと、外国合弁企業の進出は中国全体で百八十八件ございますが、このうち特区に百三件出ております。したがいまして、やはり外国企業の誘致政策をとっております関係外国企業は特区に進出したいということでございますが、他方、現在の特区は非常に経済立地条件から見ますと必ずしも好ましくないという点がございまして、そこら辺を勘案いたしまして中国側としては、特区でとられておるような政策をほかの都市にも拡大したいということで、三月の十六日に沿海十区都市区域会議というのを開いております。そこに参加した都市の名前は、大連、青島、寧波、温州、海南島、深川、珠海、スワトウ、アモイ、北海と、既存の経済特区の方々も参加しているわけでございますが、その後すぐに三月の二十六日から四月の六日まで、北京で沿海十四都市座談会というのを開催しております。そこでは、秦皇島、天津、煙台、連雲港、南通、上海、寧波、温州、福州、広州、湛江、北海、このような十四都市の方々が集まりましていろいろ経済特区の問題について議論しているわけでございますが、中国大使館からの報告によりますと、先方は、この十四の都市の、全区域を特区に指定する地域、それから市街の中に優遇措置を講ずる区域、それから市街の外に経済開発区域をつくりまして経済特区でとっているような優遇策をとる、このような三つの形態に分類していろいろ今後推進していくということを打ち出し ているわけでございますけれども、今後どのような形で特定の区域にどういう政策を志向していくかという点については、まだ詳細は詰まっていないようでございます。
  106. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 今後の問題で、なかなか予測はつかない問題だと思いますけれども、こういう状態が進んでいけばある程度のいわゆる精神汚染ですね、精神汚染がなければ経済の自由化は私は進まないと思うんですけれども、いわゆる精神汚染が起こってきて、それに対するリアクションで、必ずしも一本道ではいかないだろうと思いますけれども、そういう方向に進んでいくということは、やはり日本中国の経済的な協力関係を進めていく上において非常に有益なことだろうと私は思っております。外務省の方でも注目して、いろんな情報を今後集めていただきたいというふうに考えております。  次は、インドシナ半島の問題を質問するつもりでおりましたけれども、けさから既に松前議員初め同僚議員の方が質問されましたので、私は同じ質問を繰り返して時間の浪費はしたくないと思っていますから同じ問題は避けますけれども、一つちょっと気がかりなのは、ベトナムのカムラン湾にソ連の空母なんかが入港している、あるいは上陸演習なんかが行われているというふうな新聞報道があったんですけれども、ソ連としては、あそこのカムラン湾に艦隊を常駐さしてソ連の一つの軍港化する意図なのか、あるいは一体どういう意図であそこに艦艇なんかをもし常駐させるとすれば常駐させるつもりなのか、外務省として情報がおわかりの限りで結構ですから、知らせていただきたいと思います。
  107. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) ソ連は、一番初めは一九七九年の中越紛争を契機にいたしまして、そのころからカムラン湾への艦船寄港を開始したわけでございます。その数をだんだん増強してまいりまして、現在カムラン湾に停泊しております数は大体現在十数隻、これは日によって少し違いますが、平均して大体恒常的に十数隻があそこに停泊していると、こういう状況でございます。その十数隻の艦船の停泊を可能にするための必要な施設を建設してきたわけでございます。  以上が船でございますけれども、八〇年の一月に入りましてTU95四機をダナンに配備したわけですが、それをダナンから一九八〇年の六月ごろにはカムラン湾に移動しております。この四機をもちまして南シナ海付近において情報収集の活動を継続的に実施しておりました。さらに、これは昨年の十一月でございますが、TU16、これを九機さらにカムラン湾に増派配置いたしております。この九機がその後どういうことをやっているかについては必ずしも私ども詳細に承知しておらないわけでございます。  なお、これは先生御存じのとおりに空母ミンスク、これはカムラン湾に今月に入って立ち寄っておりますが、このミンスクは一九八〇年、それから八二年の二回、南シナ海、それからシャム湾方面を遊よくの途中にカムラン湾に立ち寄ったという事実がございます。  以上申し上げましたとおりに、カムラン湾の空母及び艦船の現状から判断する限り、一時的な補給、整備、休養のために利用しているというふうに私どもは見ている次第でございます。
  108. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 一時的な補給だとすると、その目的は一体どこにあるんですか。たとえば中国ベトナムとのフリクションに対して、中国に対して圧力を加えるとか、そういうふうな意図があるんですか。その意図は一体どういうところにあるんでしょうか。
  109. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) これはやはりこの方面、東南アジア、インド洋、この地域一帯に対しますソ連の政治的、軍事的関心をこういう形で示すということであろうかと存じます。
  110. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 そうすると、単に中国に対する圧力というだけにとどまらず、東南アジア全体に対する一つのプレゼンスとしての威信を示す、そういうふうな意図も含まれていると見ていいわけですか。
  111. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) どうも舌足らずと申しますか、そのものずばりの回答でなくて大変恐縮でございますが、やはりこういった問題につきましては何分政治的、外交的にいろんな背景がございますし、私ども外務省の公式見解としてこういう公式の場所で余り具体的、端的に申し上げることはどうかということで、ちょっと煮え切らない舌足らずの御返事を申し上げて大変恐縮でございますが、やはりソ連としてこの地域にいろいろな意味で強い関心を持っているということのあらわれだというふうに理解をいたしております。
  112. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 その点は大体わかりました。  それからカンボジアの問題、今度のESCAP会議で来られた三派連合の副大統領ですか、それからカンボジアの外務次官ですか、それと会われたことはけさの質問でわかりました。日本政府方針としてあそこの平和を望むけれども、やはりベトナムカンボジアから撤兵しない限りは経済援助はストップしていく、そういう方針だと承りましたけれども、それで間違いないわけでございますね。
  113. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 昨日カンボジアの、いわゆる民主カンボジアの三派連合の副大統領であるキュー・サムファン氏と会談をいたしました、いわゆるクメール・ルージュの代表ですが。そしてカンボジア問題、ベトナム問題につきまして意見の交換をしたのですが、その際日本のインドシナに対する考え方を明らかにしたわけで、これは三派を支持する、そしてカンボジア自主独立政権ができることを心から念願をし、さらにベトナムカンボジアから撤兵をすることを強く求め、撤兵が行われるまではベトナムには経済協力はしない、人道援助はしておりますが経済協力はしない、この方針は変わらないということを説明をいたしたわけです。同時にまた、やはりインドシナ半島の平和を探求していくために日本もそれなりの役割を果たしていきたいと。そういう意味ベトナムとは外交関係がありますし、ベトナムとの間でも対話は続けていく考えだと、外相会談等も行う考え方を持っておると、こういうことも同時に説明をしたわけでございます。
  114. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 五月にシアヌーク大統領が日本に来るというふうなことを新聞記事で見たのですけれども、訪日の主たる目的は何でございますか。そのことが一つ。  それから、外務大臣がお会いになったのは民主カンボジアのキュー・サムファンですか、キュー・サムファン副大統領にお会いになったわけですね。その三派の仲がうまくいっているのかどうか。端的にお伺いしますけれども、何か後からまたシアヌーク大統領が別に来るというふうな話もあるのですけれども、どういう印象を持たれたか。
  115. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) キュー・サムファン副大統領は、今回はESCAPの民主カンボジア代表としてやってきたわけでありまして、シアヌーク大統領は日本がかねてから招待をいたしておりまして、それにこたえて、非公式な形でありますが訪問するということになったわけでございます。  我々は、三派のいわゆるカンボジアにおける自主独立闘争を支持しておりますし、ASEANとも協力関係にあるわけでございますから、シアヌークさんを迎えまして、今後のいわゆるインドシナ半島の平和問題について率直に話をしたいと、こういうふうに思うわけです。  そういう中で、今やはり一番我々も同時に心配なのは、三派がそれぞれの違ったイデオロギーを持っておりますから果たしてうまくいっておるだろうかということでありまして、しばしば不協和音が聞こえてくるわけでございます。そこで、きのうは率直にキュー・サムファン氏に対して、我々が三派を支持しているということは同時にまたカンボジアに本当の真の独立政権ができるということを心から期待するが、それにはやはり三派の結束が大前提であって、三派がばらばらでは幾ら我々が支援をしても力にならないし、また本当にカンボジア自主独立政権を打ち立てるということは不可能だろう、だからこれが一番かぎだということで、率直に三派はどうですかということを聞いてみたわけであります。その際、キュー・サムファン氏は、やはり三派の結束いかんがこれが成功するかどうかにかかっておるし、我々は一番よくそれを知っておるんだ、そして最近では間違いなしに三派の連合はうまくいきつつある、我々としてはこの結束を崩さないで、最後にはベトナム軍をカンボジアから追い出して、そして民主カンボジア独立政権をつくるんだということを強調しておられました。最近ではそういうことで三派間の連携というのはうまくいっているというふうな感じは受けたわけであります。
  116. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 外務大臣、今度のESCAPに来られたオーストラリアヘイドン外相ともお会いになったわけですね。それでやはりこのカンボジアの問題はお話しされましたですか。
  117. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ヘイドン外務大臣がみずからカンボジア問題に言及しましていろいろとオーストラリアの立場を説明をしたわけでございますが、オーストラリア政府としては非常にカンボジア問題には関心を持っておりまして、みずから場合によっては調停、仲介というふうな意欲もこれまで示しておりましたし、そういう動きも行ったわけで、ヘイドンさんに言わせると、ベトナムグェン・コ・タク外相オーストラリアに呼んでそしていろいろと話をしたと。その際、グエン・コ・タク外相から五条件が出されてそしてそれについて話をしたんだけれども、その状況から見ると、相当グェン・コ・タク、いわゆるベトナム側はフレキシブルになってきておる、非常に柔軟になってきておるというふうに自分は判断をして、これなら微妙な変化が起こっておるんじゃないか、そしてインドシナ半島に平和をもたらすことは場合によっては可能性も出てきたんではないかと、こういうふうな判断を実は持ってきておるんだと、こういうことでありました。しかし私から、それはヘイドンさんの努力は多とするけれども、その後の動きを見ると、乾季になってベトナム軍の攻撃が非常に急をきわめておる、そしていわゆるソン・サン派の拠点が攻撃を受けて七万人以上の難民がまたタイ国に流れ込んだ、また逆に三派の方も反撃をしかけておると、そういう状況で必ずしもグェン・コ・タクさんが言っているようにベトナムは柔軟な対応をしていない、またこのごろむしろ強硬的な軍事手段を強化することによって三派の覆滅をねらっておる、こういうことじゃないでしょうかと、こういうことを私も言ったわけでございますが、確かに現実にはそういう面がある。しかし、やはりベトナムもいつまでも軍隊を置いておくわけにもいかないだろうし、ソ連も経済的にやはり多少支援疲れをしてきておるのじゃないだろうか。そういう点から見ると、これからのまた動きとしては可能性がないわけじゃない。  いずれにしても、これは時間はかかるかもしれぬけれども、我々は腰を据えてひとつインドシナ半島の和平工作に努力をしたい、こういうことでございまして、ヘイドン外務大臣は相当意欲を持ち続けてこれに当たっておるという感じを受けたわけであります。
  118. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 日本としてもインドシナ半島の平和の回復の一日も早いことを望むわけですけれども、そのためにオーストラリア日本とが同じ太平洋国として手をとり合って平和回復に努力するということは非常に有益なことだと思うんですが、私、昨年の秋にヘイドン外相が見えましたときと、それからことし、あそこの総理大臣が見えましたときに党としてごく短時間の会談で余り詳しい突っ込んだ話はできなかったんですけれども、どうも私の印象では、オーストラリアの今の政権はベトナムに対してちょっと少し甘い考えを持っているんじゃないかという印象を受けました。何かASEAN諸国とそれからベトナムと等距離に置いて見ているんじゃないか。もしそうだとすれば、日本はやはりASEANを支持するという立場なので、ちょっと日本の見方と少し違うんじゃないかという、あるいは私の印象は間違っているかもしれませんけれども、そういう印象を持ったんですけれども、外務大臣のお考えはどうでございますか。
  119. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 率直に言いまして、私も当初はそういう感じを持っておりましたし、またヘイドン外相もそういう動きをしておりまして、みずからハノイにも飛んでいきましたし、また場合によってはオーストラリアベトナムに対して経済協力をするんだというふうなこういうことを言って、これはASEANから非常な反撃を受けたこともあるわけでありますが、その後の今日の状況では、ヘイドン外相もやはりその点については大分認識を変えてきたんじゃないかと。やはりASEANの立場というものを相当重んじていく、しかし同時にハノイとの関係については積極的に自分が動かなければならないという気持ちも反面非常に強く持っておる。そこでグェン・コ・タク氏を、外相を呼んだわけであろうと思うのでありますが、私はオーストラリアが、ASEANとかまた日本とは違った立場でインドシナ半島の和平工作を積極的に行うということは、それなりに一つ意味があるんじゃないかと思うわけですが、しかし、なかなか事態はそうヘイドン氏が考えているほど容易じゃないということは、その後のカンボジアにおける戦闘の激化というものがこれをはっきり示しておると、こういうふうに今思っております。
  120. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私もやはり日本としてはASEANを中心にしてやっていくべきだというふうに考えております。  最近、日本の雑誌なんかを見ておりますと、日本の東南アジア外交はASEAN一辺倒で、ベトナムなんかのことを全然忘れているのはよくないというふうな意見も出ておりますけれども、私はやはり今までの関係から考えまして、ASEANを中心にしてやっていくべきじゃないかということを考えております。その立場を維持されることを希望して私の質問をこれで終わります。  ダブった点は質問を全部省きましたので、質問時間がまだ十分間ほど残っておりますけれども、もし委員長の方の御裁量で、後の人たちが何か質問したくてうずうずして、たくさん質問したいことがあるそうですから、それを流用していただくのは私の方は一向差し支えございませんです。  私の質問はこれで終わります。
  121. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、先日総理と御一緒に中国を訪問されたですね。それで、中国の首脳の方から最近の中ソ関係それから将来への若干の見通し的なものも説明があったというふうに新聞に報道されていたんですが、そういう説明を聞かれて、また最近の状況をごらんになっていて中ソ関係の現状をどのように認識なさっているのか、またこれからどういうふうになっていくというふうにお考えになるのか、そこらあたりの判断をちょっとお聞かせいただきたいんですが。
  122. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 中ソ関係については我々も非常に注目しておりまして、去年中国を訪問しまして以来、これまでも中国側の要人としばしば意見の交換をいたしたわけであります。特に今回、中曽根総理とともに訪中しました際も、この中ソ関係について中国がどういう認識を持っておるかということを我々は知るということが非常に大事であるということで意見の交換をしたんですが、ちょうど私たちが訪問したときに中ソの次官会議が行われておりましてそしてその大体の結果が入ってきたところでありまして、呉学謙外相から、中ソ関係次官級の会議が行われたけれどもしかし多くの前進は見られなかったと、もちろん多少の改善はあったけれどもしかし基本的な前進はなかったと。それは中国がいつも言っておりますように三つの条件についてソ連が歩みよらなかったと、こういうことで中ソ関係というのは多少の改善、拡大はあったとしても、やはり基本的な問題を解決しなければ思い切った関係の回復にはならないということでございまして、今度はソ連から副首相等もやってくるようでございますが、それに対しては中国としては歓迎もするし、そしてまたそれなりのまた成果も上がるだろうと。要するに、経済とか文化とか人的交流とかそういう面の拡大というのはあるだろうと、しかし大きな政治問題については余り期待を持つわけにはいかぬと、こういうことでありまして、私は今の状況から見ますと、例えばアフガニスタンからソ連が兵を引くということはちょっと考えられませんし、また中国が一番大きなウエートを置いていると思われるカンボジア問題について、ベトナム軍隊がカンボジアから兵を引くというようなこともちょっと考えられない状況でありますし、そういう中でやはりソ連が先ほどもお話が出ましたカムラン湾だとかダナンだとか、そういうところに基地を強化しつつあるということもまた中国にとりましては頭の痛い存在であるし、問題であるし、またINF、いわゆるSS20が極東部に非常に増強されているということもこれは日本も大変な関心を持っていますが、同時に中国にとってはこれは非常に圧力だと、大変な圧力だと言い切っておりましたから、そういう状況から見ますと、ここ当分中ソ関係で大きな変化があるということは我々はほとんど考えることはできないと、そういうふうに思います。
  123. 立木洋

    ○立木洋君 総理も向こうで講演されたときに平和の問題について力説されたわけですが、ソ連のSS20なんかの問題に関連して、今後中国との間でも情報を交換していこうというふうに話し合いをなさったように新聞で出されていますが、アジアにおけるいろいろな核兵器の増強ということは非常に大変な事態になるわけで、こういうアジアにおける核軍縮の問題などについては中国との間では話し合いはなかったんでしょうか。
  124. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 中国は昨年の国連総会における呉学謙外相が提案したいわゆる核軍縮、そして核撤廃についての基本路線を持っております。それの説明はもちろんあったわけでございますが、これは中国が主張はしても、実際的にやはり米ソとかその他の核保有国等がそういう方向で動かなければなかなか現実的な問題としては可能性は少ないと、こういうふうに思っておるわけで、やはり米ソの核軍縮が進むということが最も現実的な道じゃないかと、こういうふうに思うわけでございます。そういう中で、INF、SS20の問題については日本としてもこれは非常に重大な関心を持っているし、INF交渉が極東の犠牲において行われるということは日本としてもこれを認めるわけにいかない。また、これはグローバルな中で解決さるべきであるという日本の主張を中国側に私たちも話しまして、中国側としてもこの点については大体認識を一にしておるわけです。  そこで、このSS20の問題については日本日本中国中国それぞれの立場で核軍縮という取り組みの中でこれを進めていく、これに対して世界に強く主張していく、同時に日本中国との間でINF、特にSS20のこれからの問題について情報があればこれはお互いに情報の交換等もしていきましょうと、こういう点では意見の一致を見たわけであります。
  125. 立木洋

    ○立木洋君 ちょっと話は変わりますけれども、近くレーガン米大統領が中国を訪問されるわけですが、これの影響という点でお尋ねしたいんですが、今お話がありましたように、例えば米ソ関係で言えば去年の十一月の二十三日にINF交渉が中断をしたという事態、その後の経過というものも、いろいろ両国の首脳の話などを聞いてみてもなかなか事態が打開されるというふうな状況にはなっていないわけですね。それから、つい先日も四月の十日でしたか、アメリカの国防総省の長官がソ連の軍事力というものを発表したと、これに対するソ連の厳しい反発があるというふうな動きもありますし、また先ほどお話があった中ソ関係で見てみてもこれは同じようにベトナムとの関係カンボジアとの関係いろいろありましてね。三つの出している条件それ自体がうまくいくというふうな見通しがないし、先ほどのお話にもあったように、両国の次官会議でも話が進展していないという状況ですね。こういう状況の中でアメリカのレーガン大統領が中国を訪問するということが、米ソ関係とそれから中ソ関係にどういう影響をもたらすというふうにお考えになるのか、大臣、そこらあたりのお考えはいかがでしょうか。
  126. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、今度のレーガン訪中というのは相当これからの世界政治の中で意味を持った訪中になるんじゃないかと、米国もそれを期待していると思いますし、また中国側も非常にそういう点では高い関心を持っていると、盛り上げていこうということには間違いないと思いますが、このことは今おっしゃるように米ソの関係、あるいはまた中ソの関係ですね、やはり影響といいますか関連が出てくることは間違いない。米ソ関係については、これはチェルネンコ体制ができておりますけれども、しかしソ連も、やはりアメリカの大統領選挙が動かないとなかなかこれは動けないんじゃないかと思っておるわけですね。それまではなかなか新しい展開は望めないわけです。  そういう中で、やはりアメリカと中国がいろいろの意味で大きく協力関係が前進したというのは、やはり東西関係あるいはまた米ソ、特にソ連に与える影響というのはそれなりに出てくるんじゃないかと思います。あるいはまた、中ソという面においても当然連動はあるんじゃないだろうかと、こういうふうに認識しておるわけですが、いずれにしても私は、レーガン大統領の訪中によって米中関係というのは相当やはり前向きに進んでいくんじゃないかと、そういう一つの今回の演出といいますか、そういうことになっていくんじゃないだろうかと思っております。
  127. 立木洋

    ○立木洋君 同じ質問ですが、専門家の立場で岡崎さん、どうですか。情勢はどういうふうに進展していくとごらんになるか、もし今大臣の言われたことで何か補足することがあれば……。
  128. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) ございません。
  129. 立木洋

    ○立木洋君 この問題については、レーガン米大統領が中国を訪問した後の状況動きを見てまだ改めていろいろお尋ねすることにしたいと思うんです。  次に、先ほど午前中も問題になりましたけれども、ニカラグアの湾岸での機雷封鎖の問題ですが、これについてはいろいろ新聞報道で既にレーガン米大統領がこのニカラグアの機雷封鎖に関して指令をする文書に署名をしていたというふうな報道もありますし、そういう指示を受けてCIAがこれに関与をしたというふうな報道がありました。これらの問題に関して日本政府ではどのように判断されるのか。いろいろこれまでも何回か質問があったわけですが、先般のあれは四月十一日ですか、衆議院の外務委員会で、それらの問題については事実関係は調査中であるというふうに外務大臣が答えておられるんですが、調査した結果どういうふうになっておるのか、まず最初にお尋ねしたいと思うんです。
  130. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) ただいま先生の御指摘のとおり、外務省といたしましてはこの問題につきまして情報をいろいろ聴取、収集しておりまして、現在も引き続き関連情報の収集に努めているところでございますけれども、現在のところ、この機雷自体をだれがどのような状況で敷設したかと、そういうことにつきましては、事柄の性質上なかなかはっきりしたことはわかりません。いろいろな報道はございます。
  131. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、調査中というのはいろいろ情報を収集してそれによって検討してきたということのようですが、アメリカの政府には直接尋ねるということはしなかったんでしょうか。
  132. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) 一つには、触雷しました輝潮丸の船長からいろいろ事情を聞いておりますし、ほかにも種々の方法で情報を集めておりますけれども、アメリカ政府に対しまして、これはアメリカ政府が機雷を敷設したのですかと、そういう聞き方をしたことはございません。
  133. 立木洋

    ○立木洋君 そういう聞き方じゃない、何か別の聞き方をされましたか。
  134. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) 日本の船舶がこの事件にも巻き込まれた可能性がございますし、いずれにしましても機雷の敷設ということは航行の安全を脅かすという点からわれわれとしては非常に 懸念を有していると、そういう種類の言い方はしてございます。
  135. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、午前中も答弁されていましたけれどもまだ事態が明確ではない、だからコメントできないという趣旨の話でした。だけれども、つまりCIAは議会に報告する義務があるわけですね、自分の行った行為に関しては。これが報告がなされていない、機雷封鎖に関与した問題に関しては。そういうことが情報委員会の委員長や副委員長から厳しく要求されて、そして副委員長は辞任を表明するというふうな事態にまで事態が進展したと。  それで、去る四月十六日に、この問題に関してCIAのケーシー長官とそれからCIAのジョン・マクマホン副長官が議会の情報委員会で初めて公式にCIAの港湾機雷敷設関与を認めだということを、同じ四月十六日の午後、CIAのローダースポークスマンが発表しているんですが、これについては承知していませんか。
  136. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) そのような報道がされておりますことは報告を受けております。
  137. 立木洋

    ○立木洋君 これは、機雷封鎖されるということは国際法的に見ても大変な問題があることであって、これは人道的にも許されない。ましてや、これまでも国会で議論された中では幾つかの国の船舶がそれによっていろいろと、大小の違いはあったにしろ被害を受けている状態があるわけですから、平和という問題に関心を持つならば、当然日本政府としてもこういう事態を重視するということがあってしかるべきだと私は思うんです。そういうことがあるにもかかわらず、アメリカ政府に何らこの問題に対して問い合わせをしないということはいかがなものだろうかと思います。こういうことを、CIA長官並びに副長官が議会において明確に関与したという事実を認めたということを公式にスポークスマンが発表しているわけですから、日本政府としても明確にアメリカ政府に問いただして、そういう事態については違憾の意を表明する等の適切な措置をとるべきだと思いますが、大臣、いかがでしようか。
  138. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まだ報道だけの問題で、政府としては真相についてははっきり確認しているわけではありませんが、しかし先ほど局長が答弁しましたように、一般的な懸念はアメリカに対しても表明をしておることは先ほど答弁したとおりです。
  139. 立木洋

    ○立木洋君 これは、アメリカがやったかどうかということはアメリカ政府が公式にまだ認めていないしというふうなことで、あるいは報道だけですからということになるとこれ以上議論は進まないわけですけれども、しかし一般的に言って、こういう湾岸に機雷封鎖をするというふうな行為それ自体については、大臣、いいことだと思われるのか、これはよくないことだと思われるのか、そこらあたりの御認識はどうですか。
  140. 小和田恒

    政府委員小和田恒君) 先ほど中南米局長がお答えいたしましたように、だれが一体どういう状況のもとでやったのかということによってその法律的と申しますか、国際法上の評価というものは違ってくるだろうと思います。  仮定の問題として、例えば第三国の政府が直接そういうものをやったとか、あるいは問題になっておりますニカラグアの国の反徒がやった場合、反徒がやった場合につきましても、反徒が自分でやった場合とそれから第三国の援助を受けてやった場合とで違ってまいりましょうし、それからまたそれをやるについての理由が何であったのか、例えば自衛権的な状況のもとでやったのか、それともそうではなくて一種の戦争行為的な行動としてやったのか、いろんな状況考えられますので、一概に国際法的にどういう評価をするかということはなかなか難しいと思うんです。  ただ、それが結果として第三国の国際航行の自由というものを正当な理由なしに妨げたり、危険に陥れたりするというようなことになってまいりますと、これは第三国としては航行の自由という見地からそれについて懸念を持ってしかるべき問題であろう、こういうふうに考えております。
  141. 立木洋

    ○立木洋君 一般的な解釈、法的な解釈ですよね。言うならば、政府軍であれあるいは反政府軍であれ、それらについても内紛ですか、そういう状況のもとでも行われるということは好ましいことではない。ましてやそれが第三国の航行の自由を脅かすというふうな事態にあってはこれはよろしくないという慣習といいますか、ということだと思うんですが、しかし現実に他国の船舶に対してすでに相当数の危害を、それは大小は別としても現に与えているわけですね。そして、ましてやアメリカの国内自身で先ほど来問題になった上下両院でのこれに関する決議も採択され、情報委員会というのはCIAを監督する委員会であって、そこでは、事前にCIA自身が知らしていないじゃないか、一体どういうことなんだといって委員長にしろ副委員長にしろ厳しい指摘をする。副委員長は、そういうふうなことを知らせないんだったら私は辞任をするということまで問題になっている。そういう状況のもとで、四月の十六日に開かれた委員会で、CIAの長官並びに副長官がみずからこの二、三カ月間にわたる中米情勢に触れて、その中でCIAが機雷封鎖に関与しだということを公式に初めて認めているわけですよ。これをCIAのスポークスマンが発表しているわけです。これほど明白な私は事実はないだろうと思うんです。そういうふうな事実が明白であるにもかかわらず、依然としてそれが不明だからということで明確な態度をとらないということになるならば、これは機雷封鎖を行っても結構だという立場をとっているということになるとこれは困るわけですから、そこでちょっとその問題と関連してお尋ねしておきたいのは、つまりヨーロッパの諸国ですね、ヨーロッパの諸国がこの機雷封鎖の問題に関してどこの国がどういう態度をとっているのか、簡単で結構ですからちょっと御説明ください。
  142. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) これまで私どもが承知しておりますところによりますと、英国政府はロンドンとそれからワシントンにおきまして、一般的な問題として機雷封鎖の問題は遺憾であるという、遺憾の意の表明を行っております。ただ、アメリカが行ったということを認めているわけではないので、アメリカを非難するという形ではございません。これが三月の三十日ごろでございます。それから四月の初めにフランス政府、これはフランスの外務大臣が、コンタドーラグループというグループの諸国がございますが、その一員でございますコロンビアの大統領に書簡を送りまして、そして、機雷の撤去についてほかの国が協力するならば自分たちもやるつもりがあるということを伝えだということが報道され、またフランス政府当局もそういう事実があったということを認めております。そのほか三、四カ国の政府がこの問題でやはり遺憾の意を表明しているということでございます。
  143. 立木洋

    ○立木洋君 ちょっとその大事なことを落としたらあれなんですが、例えばベルギーにしてもそれからオランダだとかスペインなどですね、これは明確にアメリカの大使館に、いわゆる抗議並びに何というんですか遺憾の意の伝達をアメリカの大使館に行っているわけですね。これはアメリカの大使館に行っているということは、まさにアメリカがそういうことに関与しているということを判断した上でそれぞれの政府がそういう対応をとったんだろうと思うんですよ、オランダにしろベルギーにしろスペインにしろ。だからアメリカの政府が、そういうことが明確にされている状況の中で、いわゆる私たちは一切このニカラグア湾岸に対する機雷封鎖には関与もしていないし何ら一切関係ないというふうに発表された報道がございますか。アメリカ政府がそういうふうなことを発表したことがありますか、この二月以降……。
  144. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) ただいま先生の御指摘にございましたオランダ、スペインなどは四月十日ごろに遺憾の意は表明しておりますけれども、私どもの承知している限り、これはアメリカ政府がやったからということでアメリカに抗議をしているという国はございません。
  145. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカの大使館に行っているでしよう。
  146. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) 大使館を通じてそのような申し入れをしている国はございます。
  147. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカの大使館に申し入れに行くということは、アメリカ政府関係なかったらアメリカに申し入れに行くということはないでしょう。局長、それはちょっと苦しい答弁ですよ。
  148. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それは日本も同じでして、日本も本件については、米国内でいろいろと取りざたされておるということもありますし、同時にまた我が国の船舶の航行安全の見地も含めまして米国に対しまして懸念の意の表明を行っているわけですから、ほかの国も同じようにやっぱりやっていると。米国そのものがやったかどうかということについては今真相究明が進行中でしょうから、しかし一般的にアメリカに対して遺憾の意を表明している、こういうことですね。
  149. 立木洋

    ○立木洋君 仮にペルシャ湾で機雷封鎖されたら、日本政府としてはこれは重大な対応をせざるを得ない事態だろうと思うんですよね。ペルシャ湾岸で機雷封鎖をされるならば、アメリカは力によることさえ判断せざるを得ないということを、前にこの委員会で中南米の状況に関して外務大臣が私の質問に対してお答えになった。ところが、いろいろな外国からの報道を見てみますと、アメリカがニカラグア湾岸で機雷封鎖をしたということは、ペルシャ湾で機雷封鎖をするような、こういうことを誘発することになりかねないというふうな批判すら行われているわけですよね。だから、こういう事態に関しては、どこの国が行ったものであろうともこういうふうな機雷封鎖というのはやっぱり許されない行為ですから、その問題に対してやっぱりきちっとした対応をとるということが最も重要なことではないかと思いますけれども、大臣、もう一度お答えいただきたいんですが。
  150. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ですから我々も心配をいたしまして、そして、特にまた日本の輝潮丸という船が機雷にひっかかっているわけですから心配をしまして、調査を進めると同時に、アメリカでもいろいろ取りざたされておるわけですから、アメリカに対しても一般的な形で懸念を表明している、こういうことです。
  151. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) ただいまの大臣の言われたとおりでございますが、さらに若干御説明しますと、ニカラグアの機雷敷設につきましては、二つのゲリラ団体がございまして、一つはARDE、これは民主革命同盟と申しまして、これはもとサンディニスタの片割れと申しましょうか、国防次官が入っています。この人は今のサンディニスタ政権の指導者の命を救ったような非常な国民的な英雄でございますが、このグループがコリント港とそれからエル・ブラッフ港、この二つの港につきまして機雷を敷設したという発表をしております。また、それにつきましてはその機雷はブラックマーケットで買ったという発表をイタリアで行っておるんです。他方、ニカラグアの北の方にはFDNというグループがございまして、これはもとの国警軍たちがつくっている反政府ゲリラでございますが、恐らくそのグループはCIAからもらったんでしょうということをARDEの指導者は言っている。  そういう状況でございますから、なかなかどこまでだれが関与してやったかわからないというのが実情でございます。
  152. 立木洋

    ○立木洋君 時間があれですから終わらなければなりませんけれども、近くこの事態というのは私ははっきりされるだろうと思うんです、すでに四月十六日、CIAの長官がそういうことを委員会で明確に明言しているわけですから。だからこうした問題に関しては、いわゆるそれがどのような国であろうともこういうふうな行われてはならないことが行われるというようなことについては、やっぱり日本政府としてはきちっとした対応を私はすべきであろうと思うんですよ。これが国連の舞台等々で今後問題になる可能性もあるでしようし、だからそういう場合に日本政府としては、それはアメリカとの関係が重要であればあるほど、アメリカが行っている行動に誤りがあればやっぱりきちっと指摘する、指摘をするということで、私は本当の仲のいいという関係でなければならないと思うんですよ。相手が何ぼ間違っても物を言わないというのがいい関係ということではない。そういう意味では、今後国際舞台でもきちっとした対応をとっていただきたいということを最後に要望したいんですが、大臣の御答弁をいただいて私の質問を終わります。
  153. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まず、やはり真相が明らかになるということが大前提だと思います。
  154. 立木洋

    ○立木洋君 いや、きちっとした対応はいいですね、それなら。
  155. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まず、真相を明らかにするということが大事であって、一般的な懸念についてはすでにもう表明済みでありますから。
  156. 秦豊

    ○秦豊君 最初に、案件そのものについて一つだけ確認しておきたいと思いますが、今度の日中租税協定は、これから経済特区に進出をする、あるいはしようとする日本企業への影響というのは考えなくていいんですか。
  157. 瀬崎克己

    説明員瀬崎克己君) 租税協定の目的といたしますところは二重課税防止でございます。したがいまして、日本企業外国に進出する際にどのような課税をされるかということにつきまして日本企業は大変関心があるわけでございまして、二重課税回避されるということがこの協定によって保障されますものでございますから、投資環境の整備の点で非常に貢献するということでございますので、特区その他中国に進出いたします日本企業にとりまして大変意義のある協定であると、かように考えている次第でございます。
  158. 秦豊

    ○秦豊君 外務大臣、今度のソウル訪問はもう確定ですか、内定ですか、いついらっしゃいますか。
  159. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 大体七月の六日から二日間の会談を一応予定いたしております。
  160. 秦豊

    ○秦豊君 今度は何が眼目なんですか。
  161. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは毎年行っております定期外相会談
  162. 秦豊

    ○秦豊君 全斗煥大統領の日本訪問ですね、いわゆる訪日問題というのは当然話し合われると予見してよろしいですか。
  163. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは既に中曽根総理から全斗煥大統領の訪日要請は昨年一月に韓国を訪問した際に行われておりまして、そしていつ訪問されるかはこれは外交チャネルで決めていこう、相談しようということになっておりまして今日に至っておるわけで、何も改めて外相会談で行う必要はないと思っております。
  164. 秦豊

    ○秦豊君 そうだと思います、筋は。だから、外務大臣が今度ソウルを訪問されれば向こうの大統領府としては煮詰めたいわけですよね。一般的には六月のサミットの後、あるいは自民党の十一月総裁公選の前のほどのよい時期というのが常識であったけれども、それを煮詰めるという意味合いが今度のあなたのソウル訪問にはあるんじゃありませんか。
  165. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私はそういう考えは持っておりませんで、あくまでもこちらは受け入れる方ですから韓国側がどういうふうに出てこられるか、それを受けてからでいいんじゃないかと思います。
  166. 秦豊

    ○秦豊君 瀬島さんあたりも年内訪日を双方に勧めているようだけれども、年内に実現するという見通しについてはそれほど過ちはありませんか。
  167. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 年内かどうかは、我々としては、日本としては既に要請しているわけですから、招請しているわけですから、全斗煥大統領のお考え方によると思いますね。あとは日本のこれに対応する日程をどういうふうにして確保するかということだけであろうと思います。
  168. 秦豊

    ○秦豊君 この問題については天皇との会見の仕方ですね、中国との対比における、これが案外難関じゃないかという声もあるが、それは観測にすぎませんか、外務大臣
  169. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはもちろん元首ですから、元首を国賓として御招待したと、そういう一連のこれまでの儀式を行うと、こういうことになるものというふうに一般的には思います。まだしかし何も決まっているわけじゃありませんし、宮中の行事について我々がとやかく言うあれはないと思いますけれども、そう特別に考える必要はないんじゃないかと思います。
  170. 秦豊

    ○秦豊君 これは余りこの問題に時間を実は割きたくなかったものですからさっといきますが、ただ天皇との会い方は、具体的な日程が煮詰まってくると難しい問題で改めて浮上するでしょう。  外務省、五十九年度のODAは確かにプラス九・七%で、苦しい財政状況の中での努力は私了とするけれども、問題はこれからですよね。これも言うまでもなく、国際公約たるODAの倍増計画の今後がまさにこれから問われるわけであって、私が一番懸念しておりますのは、むしろODAの倍増計画は来年度予算を端緒にして下方修正を余儀なくされるんじゃないかと懸念しているんだが、いかがですか。
  171. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先生御案内のとおり、ODAの中期目標、倍増計画と申しますのは、基本になっているのは支出の実績でございます。これは五カ年を対象としたものでございますが、まだ二年しか出ていなくてあと三年の結果を見なければわからない状況でございます。他方、この支出実績を達成するために一般会計も倍増に努めると、こういうことになっているわけでございますが、その予算の方でございますね、予算の方は今ちょうど五十九年度九・七%が出ました結果を見ると、昭和六十年度は二一%伸ばされなきゃならない、こういう形になっておりまして、私どもは何とかしてこれを達成したいと、こう考えているわけでございます。
  172. 秦豊

    ○秦豊君 支出を生み出す予算ですからね。しかし、一般的に六十年度、つまり来年度予算でも一三%以上の増加枠を確保しなければ倍増と結びつかないという試算もあるが、それについてはいかがですか。
  173. 柳健一

    政府委員(柳健一君) これも先生十分御案内のとおりでございますが、支出実績の方は一般会計とそれから財政投融資の部分と、さらには国際開発金融機関に対する国債の部分がございます。したがいまして、一般会計の伸び率でもって直ちに実績にどうつながるかという計算はこれはほとんど困難でございまして、できないわけでございまして、支出実績をふやすためには一般会計も伸ばさなきゃなりませんし、国債あるいは財政投融資のお金でございますね、円借款に入っておりますが、こういうもの全般を伸ばしていかなければだめなわけでございます。
  174. 秦豊

    ○秦豊君 安倍外務大臣、これ、やっぱりあなた自身の外交活動あるいは外交展開の中における一つの大きな眼目だと思いますが、来年度の概算要求がやがて始まりますけれども、今年度をしのぐような増加を何としても外務大臣としては獲得したいという意気込みは当然でしょうね。
  175. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) もちろん、我々はこの倍増計画の旗はおろしていないわけですし、国際責任を果たすためにもこれは実現したいと、こういう強い熱意を持っておりますから、来年度予算につきましても積極的に努力を傾け尽くす考えです。
  176. 秦豊

    ○秦豊君 この後、日本とフィリピンの援助問題に少し絞りたいと思いますが、外務大臣は四月十一日の衆議院の外務委員会で石原議員に対しまして、援助の使途については透明性を確保するというふうなことを答弁されていますね。具体的に交換公文にどういう文言を盛り込むおつもりですか。
  177. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 具体的にどういう方法と申しますか、私の基本的な考え方に基づいてこれから作業も進められると思いますし、私としてはあくまでもその趣旨は何とか貫きたいと、こういう考えです。
  178. 秦豊

    ○秦豊君 だから、交換公文としては異例というふうな伝わり方もしているけれども、私はむしろ当然だと、そういうことがあってよろしいと、だからかなり明確な日本語で使途の明確化、透明度の強化について日本外交姿勢としてはっきり表現されると思っていいわけですね。
  179. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 円借款の使途の明確化と、それからそれが適正にきちんと使われるという問題でございますが、従来とも交換公文の中でそういう規定は設けてきております。したがいまして、今回のフィリピンとの間でも、正確な文言を今ここで申し上げることはできませんけれども、しかし、例えば商品借款につきましても、その見返りの内貨をきちんと開発プロジェクトに使っていくというようなことを明確にするつもりでございます。
  180. 秦豊

    ○秦豊君 その交換公文はいつごろ取り交わすつもりですか。
  181. 柳健一

    政府委員(柳健一君) ただいま先方政府と協議中でございまして、まだいつ交換公文を、閣議の決定を経て交換公文を取り交わすかは決定いたしておりません。
  182. 秦豊

    ○秦豊君 私、予算委員会でも一切ならず申し上げたわけで、当然総理もおられましたけれども、一番大きな疑問は依然として氷解していない。つまり、五月十四日の選挙の後にすればどんな支障が生ずるのか一向に明確でない。約定したものは実行したい、単にそれだけであって、非常に情緒的な答弁でしかないわけですよ。かなりいぶかしく思っているたくさんの国民の皆さんにこたえるには余りにも、論旨を形成していないんだから余りにも弱いと言わねばならないんだが、一体外務大臣、例えば商品借款ですね、限定して、これを仮に選挙後にずらした場合にどういう支障が起こるんですか。
  183. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この借款は毎年行っている毎年の連続の一環ですね。そして、フィリピン経済が特に今回は苦しいという中で商品借款をふやしていくわけなんですね。我々はこの借款の供与というものを政治的に扱ってはならない、こういうふうな感じを持っているわけです。ですから、選挙の後に回すというのはむしろ非常に政治的に取り扱うということにつながっていくわけですから、これまで毎年やってきたように、選挙の後だとか前だとか、そういうものにこだわらないで両国の合意ができたらやっぱり自然に事務的に決着をつけるということがいいんじゃないか、これはマルコス政権を助けるということじゃなくて、フィリピン経済をバックアップしていくということが基本ですから、私はむしろ政治的に取り扱うというのは、選挙を余り意識するのは政治的に取り扱うと、こういうことになりますし、それは避ける方がいいんじゃないか、こういうふうに考えております。
  184. 秦豊

    ○秦豊君 中曽根総理の答弁に少し何か近づいてこられたようなそういうニュアンスを私感じて仕方がないんだけれども、やっぱり安倍外務大臣は本来この問題についてはややクールで、突き放すとは言わないまでも、主管の大臣だからとは言わないまでも、やや冷静であられたはずだと思うんだけれども。私の伺っていますのは、政治的に扱うか扱わないかを伺っているんじゃないですよ。おくれた場合にどういう支障が一体あるのかを聞いているんです。
  185. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 先生御案内のとおりに、アキノ事件以降、フィリピンの外貨がだんだん底をついてまいりました。ところが、かたがたこれも御存じのとおりでございますけれども、フィリピン経済を支える一つの大きな柱は加工産業でございます。つまり、先進国その他から重要原材料を輸入いたしまして、それにフィリピンの比較的低廉な労働力を加えることによって加工産業の形で輸出していく。ところが、外貨事情が非常に厳しくなりましたために必要とする原材料が入ってこない。そこでこのままいってしまえばレイオフも起こるし、工場の閉鎖も起こる。そこで外貨がないからその分を、重要原材料が輸入できるように商品借款という形で何とか援助してくださいというのが商品借款の始まりでございます。つまり、日本はやっぱりフィリピンとの友好協力関係、特にフィリピンはASEAN諸国の中で日本に一番地理的にも近い国であるということで、そのフィリピン経済が破局的な段階に立ち至ってしまえばこれはフィリピン自身が困るのみならず、他のASEAN諸国も、翻って日本も困る。そこで、破局的状況に立ち至る前にできるだけ急いで何とかお手伝い、フィリピン経済再建のためのお手伝いをした方がいいという判断でございます。
  186. 秦豊

    ○秦豊君 理屈は後からついてくると言うが、そういう論理を構成しなければね。それはよくわかりますよ、わがりますけれども、日本政府はいささかも困りませんよ、念のために申し上げるが。困るのは現地進出企業あるいは大筒社、マルコス政権、図式はおのずから明らかだと私は思う。しかし、このことについて議論しても恐らく十分や二十分や一時間では話になりますまいから一応避けますがね、よんどころなく。これまでだって円借款の実施がおくれたケースには事欠きません。したがって、今回もその例外を仮に形づくっても何ら問題はないというのが牢固とした私の認識です。アジア局長のせっかくの御答弁も私をうなずかしめるまでには至らない、申し上げておきたいと思います。  外務省、交換公文を批准にした先例というのはありますか。
  187. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 行政取り決めとして行われております交換公文を批准した前例はないと承知しております。
  188. 秦豊

    ○秦豊君 非常に独裁的な性格が強い、人権抑圧的な性格が強い、あるいは紛争圏内にある国々に対する援助あるいは商品借款を含めた円借款、こういう場合の交換公文は、やっぱり国会の条約承認権をかいくぐるために交換公文という外交上の形式をとりたがるケースがややないとは言えない。したがって私は、重要なこういう問題については、今後は批准というフィルターを通すことをぜひとも考えるべきではないかと思うが、これは外務大臣から伺っておきたい。
  189. 小和田恒

    政府委員小和田恒君) 憲法七十三条との関係で、どういう条約について国会の承認を求めるべきかということにつきましては先般来国会でも議論がございまして、昭和四十九年に大平外務大臣が、政府としての基本的な考え方を統一的な形で申し上げたことは委員承知のとおりでございます。  この憲法七十三条の考え方というのは、御承知のように、条約締結は行政権に属するということを定めている中で、しかしながら条約締結については事前に、または時宜によっては事後に国会の承認を必要とする、こういうことになって、国会の関与を規定しているわけです。そして、そこで言うところのこの条約というのは何であるかということにつきまして、大平外務大臣の答弁というのは三つのカテゴリーを挙げていることも御承知のとおりでございます。詳しい説明はここで避けますけれども、そのときの考え方というのは、交換公文であるかあるいはそのほかの名称の文書であるかということは直接関係はない、つまり条約の名称、条約と呼ばれるものであるか協定と呼ばれるものであるか、あるいは議定書と呼ばれるものであるかというような名称の問題とはかかわりなしに、その国際約束の規定している内容に着目をいたしまして、それが先ほど申し上げた三つの基準に合致しているかどうかということで決めているわけでございます。通常の経済協力の、特に円借款の場合でございますと、これはその年度に経済協力のために決定されております予算の範囲内において行政府が任された支出権限に基づいて、その範囲において相手国に対して経済協力をする、こういう形になるわけでございますので、したがって国会の承認を必要とする条約のカテゴリーの中には入ってこない、こういうことでございます。  さっき経済協力局長が御答弁したこととの関連で誤解があるといけませんのでちょっと一言つけ加えますが、経済協力局長が申し上げましたのは、経済協力の案件に関して交換公文という形で国会の承認を求めたものはないという趣旨で御答弁したのでございまして、およそ交換公文というものが一般的に国会の承認になじまないという意味で御答弁したわけではございません。
  190. 秦豊

    ○秦豊君 安倍外務大臣ね、これはあなたの責任の範囲に直結しますからこれはあなたに答弁していただきたいんですが、先ごろから私は、フィリピンに対する在来の円借款の使われ方について、単に効果というのではなくて、さまざまな影響等を含めて特定して調査をぜひしていただきたいと要望したところ、大臣は誠実に受けとめられて、局長とも相談をして考えてみましょうという御答弁であると記憶しております。その後これについてはどういうふうに考えをまとめられましたか。ぜひこれは実行していただきたいんです。そういう意味を込めて。
  191. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) フィリピンのこの経済協力に対しましては、秦さんが言われるように、私は非常に慎重にこれは取り扱うべきであるという考えでこれまで対応してきたんです。  まず経済協力で大事なことは、やはり本当にこの日本経済協力が相手の国民に喜ばれるものでなければならない、そういう経済協力でなければならないということが第一だろうと思うんですね。そうしてまた、その相手の経済あるいは民生の安定や開発に非常にこれが役に立つものでなければならぬわけなんです。  それからもう一つは、今度のフィリピンの問題を孝えてみましても、やはり日本だけが先行して行うという前に、大事な日本の予算を組んでいるわけですから、どうしても国際的な一つの尺度といいますか、そういうものがその前提としては必要じゃないか。ですから、IMFが今調査しておりますが、そういう一つの結論で何か出る、見通しがはっきりついた、見通しがはっきりつきつつある、こういう段階までいかないと、これは大事な予算で血税も含んでいるわけですから、これはやっぱり国際的な一つの尺度というものがなければならぬ、こういうふうに思っております。  それからもう一つは、やはり経済協力をする場合に、日本の援助したものがどういうふうにこれが使われるのか見届ける。それから、先ほど言いました透明性といいますかそういうこと。それからそれを最後まで見届けるというのが日本政府としての責任ではないかと、こういうふうに思うわけですね。ですから、そういうことを全体的に踏まえてそしてこれを決めるということで、フィリピンの場合は先ほど局長が言いましたように大変今ピンチの状況になっておりまして、今ここでやはり協力をするということがフィリピン経済にいわゆる大きなメリットを与えることになると思いますし、それからIMFの調査も大体煮詰まってきているというふうな状況も聞いておるわけですし、そうして今透明性といいますか、見届けるという問題については、私は事務当局に、確かにこれは国会の議論等も踏まえて商品借款を拡大して大きくして出すんですから、この辺は十分相手と話をして見届けてほしいと、そういう方向で交換公文その他の日比間の話し合いをしてほしいということは指示しておるわけであります。  そういう基本的な考え方に立ちまして、経済協力の評価委員会等をつくってやっていますが、その内容については、これからもまた御指摘があれば調査をし、またこれは報告をさしていただきたい、こういうふうに思います。
  192. 秦豊

    ○秦豊君 ぜひともフィリピンを丹念に調べていただきたいと重ねて御要望を申し上げておきたいと思います。  先ほどから日越関係がかなり出ておりますね。このベトナムカンボジア問題の解決というのは、ASEANと日本は一心同体と、つまり共同歩調という前提だと思います。秋に、仮にニューヨークだと思いますけれども、安倍・タク会談が行われるまでに日本が果たすべき域内へのいわゆる政治的、外交役割を現実化するために、ASEANの外相、インドネシアの外相は来ますね、それは別ですけれども、ASEANの外相レベルとは安倍外務大臣はどういうふうにコーディネートをし、それを積み重ねてニューヨークに至ろうとされるのか、それを伺っておきたい。
  193. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) インドネシアのモフタル外相日本に呼んでおりますから来ると思います。今、ASEANの外相会議の議長をしております。それから、七月にはASEANの拡大外相会議がありましてそこに出席をする予定にいたしております。これはどうしてもやはりカンボジア問題が政治的には最も大きな議題になるわけでございまして、その際、ASEAN各国外相と十分カンボジア問題について話し合いを詰めてみたいと、こういうふうに思っておるわけでございます。  さらにまた、五月の末にはシアヌーク大統領も日本にお見えになる。こういうさまざまな対話というものを踏まえまして、そして秋には向こうの方が会いたいと、こういうことになれば、グェン・コ・タク外相ともニューヨークで会って率直に話し合いをするということが必要であろうと、こういうふうに思っております。
  194. 秦豊

    ○秦豊君 大韓航空機事件ですね、KAL事件ですね。現在遺族団体のいろんな陳情等を、文書などを拝見しましてもそれは難航しているわけですね。これは客観的な事実だと思います。これは本院というより衆議院の決議も出ておりまして、ソ連政府の公式の謝罪と事件の再発防止についての保障措置であるとか、犠牲者の補償については、大韓航空並びにソ連政府に対し十分な措置を講ずる等も打ち出しておりますので、やっぱり難航している補償問題等については、外務省としてできる側面があるのではないかと私は考えますが、どんなことを考えていらっしゃるのかこの際伺っておきたい。
  195. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 確かに先生御指摘のとおりでございまして、これは外務省としても当然重大関心を持っておる問題でございます。これは基本的には先生御承知のとおりに、犠牲になられた方々の御家族と大韓航空との間の、いわばその限りにおいては補償の問題は民事の問題として一応扱われておりますが、しかしながら、やっぱり外務省としてもこれに対しては重大関心を持っておりまして、そこで外務大臣が先方の韓国の外務大臣、これは李範錫外務大臣が例のラングーン事件で亡くなりまして、その直後に新しく外務大臣になられてすぐ日本に参りましたときにも安倍外務大臣からこの問題を提起されましたし、その後機会あるごとに韓国側に強く申し入れておりますし、今後とも機会があるごとにさまざまなレベルで韓国政府に対する善処方、つまり大韓航空をうまく指導して日本側関係者にちゃんと顔を向けて誠意ある対処ぶりをしてくれるように引き続き外交上の努力をするつもりでございます。
  196. 秦豊

    ○秦豊君 まだ時間が残されておりますから。  これは、外務大臣がソウルを訪問されるのはやや間遠ではるか向こうですからね、アジア局長のおっしゃる機会あるごとにを、能動的にアクセントをつけて側面からぜひともサポートするようにぜひ具体的な努力を積み重ねていただきたいと思います。  防衛庁、お見えですね。先ほど関先生からも指摘が少しあったんですが、カムラン湾のいわゆる軍事基地化については最近もワインバーガーリポートが出ております。ところが当然のこと、アメリカの分析が出ると即座に今度はソビエトがほとんど完全否定に近い形で打ち消す。二つの発表というより二つの態度があるわけですね。しかし、最近ではハイフォン南方の海岸線で海軍歩兵、いわゆるマリーンですね、かなり中規模から小規模の間の上陸演習をやってみたり、あるいは定期便がふえてみたり、あるいはミンスクが動いてみたり、さまざまな表面的な動向が看取されます。要するに、防衛庁としての全体的な分析を私はこの際聞いておきたいんですけれども、要は、ポイントを絞ればベトナムにおけるソビエトの軍事的なプレゼンスの現状と全容、それを最新のデータに基づいてあなた方専門家がどのように解析評価をし、さらに結論としてそれが日本の海上防衛、この場合は南西航路だけれども、シーレーン防衛についてはどのような影響を及ぼしかねないと見ているのか、どのような脅威なのか、この辺を最後に伺っておきたいと思います。
  197. 三井康有

    説明員(三井康有君) ベトナムにおきますソ連軍の状況についてのお尋ねでございますが、私どもが現在見ておりますその実態と申しますと、まず軍事施設、どこを使っているかということでございますけれども、これはカムラン湾にございます施設を主体として使っておるというふうに理解いたしております。以前七〇年代にはこのほかダナンというところも使っておったわけでございますけれども、現在ダナンの方の施設は主としてベトナム軍が使用するということで、ソ連軍が使用しておりますのはカムラン湾施設であるというふうに考えております。  次に、それではこのカムラン湾にどのようなソ連軍の使用しておる施設があるかということでございますけれども、まず一つに港湾施設がございます。そのほか隣接する陸上には飛行場がございます。その使用の実態でございますけれども、港湾につきましてはたしか一九七九年以来だと承知しておりますが、ソ連の艦艇がここを根拠地といたしまして南シナ海等におきます行動が始まっておる。現在のその規模でございますが、これは水上艦及び潜水艦を合わせまして二十数隻の規模に達しておると、このように判断しております。  次に、飛行場の方の使用の形態でございますが、これは八〇年に初めてその使用が始まり、そしてその後ベアと言いますソ連の爆撃機でございますが、これが四機ここに配備されるに至り、昨年の暮れには新たにこれにつけ加えまして九機のバジャーという別のタイプの爆撃機が配備され、そして両者とも南シナ海を中心といたしまして周辺海域の上空で活動しておると、このように理解しております。  それから、先ほど御指摘のございました上陸演習といった点でございますが、これにつきましては最近そのような報道があったことは私どもも承知いたしております。それによりますと、ソ連の海軍の歩兵部隊、規模としまして一個大隊、人数約四百ないし五百名がこの地域に駐留しておって、そしてさらに上陸演習をしだというような報道であったと承知しておりますが、防衛庁といたしましてはそのような事実関係を確認はいたしておりません。つまり、果たしてそのような事実があるのかないのか、これを肯定する材料も否定する材料も持っておらない。したがいまして、引き続き情報収集に努めてまいりたいと、このように考えております。  それから、それではシーレーンの問題についてどのような脅威があると見ておるかという最後の点でございますけれども、私どもは、先ほど申し上げましたソ連軍のこのようなプレゼンスと申しますのは、この地域の海上交通安全に対しまして影響力を行使し得るに至っておると、このように評価しております。ただ、それではその力がどの程度なのかということになりますと、これはなかなか定量的には申し上げにくいものでございますけども、現在の兵力から見ますとそれはそんなに極端に大きいものであるというふうには今のところ見ておりません。ただ、逐年その規模はふえてきつつあるわけでございますので、今後の動静につきましては十分関心を持ちながら注目してまいりたいと、このように考えております。
  198. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 以上で両件に対する質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。――別に御発言もないようでありますから、これより直ちに採決に入ります。  まず、所得に対する租税に関する二重課税回避及び脱税防止のための日本国政府中華人民共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  199. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  次に、航空業務に関する日本国政府スリ・ランカ民主社会主義共和国政府との間の協定締結について承認を求めるの件の採決を行います。  本件を承認することに賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  200. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 全会一致と認めます。よって、本件は全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。  なお、両件の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  201. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  202. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 千九百八十二年の国際熱帯木材協定締結について承認を求めるの件、出版物国際交換に関する条約締結について承認を求めるの件、国家間における公の出版物及び政府の文書の交換に関する条約締結について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題といたします。  政府から順次趣旨説明を聴取いたします。安倍外務大臣
  203. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ただいま議題となりました千九百八十三年の国際熱帯木材協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定は、国際連合貿易開発会議の一次産品総合計画の対象産品のうち従来商品協定が作成されていなかった熱帯木材について作成されたものであって、昭和五十八年十一月十八日に、ジューネーブで開催された熱帯木材に関する国際連合会議において採択されたものであります。  この協定は、研究開発等の事業の実施等を通じて熱帯木材生産国の輸出収入の安定を図ることを主たる目的としております。我が国がこの協定締結することは、消費国である我が国にとっても利益をもたらすとともに、開発途上にある熱帯木材生産国の経済発展に協力する等の見地から有意義であると考えられます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  次に、出版物国際交換に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、昭和三十二年十二月三日に第十回ユネスコ総会において採択されたもので、昭和三十六年十一月二十三日に効力を生じ、現在三十九カ国が締結しております。  この条約は、政府機関及び非営利的な非政府団体の間の出版物国際交換を奨励し、かつ容易にすることを主たる目的とするものであります。  我が国がこの条約締結することは、我が国における出版物国際交換の発展に寄与するとともに、この分野における国際協力に積極的な貢献を行うとの見地から極めて有意義であると認められます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  最後に、国家間における公の出版物及び政府の文書の交換に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この条約は、昭和三十三年十二月三日に第十回ユネスコ総会において採択されたもので、昭和三十六年五月三十日に効力を生じ、現在四十一カ国が締結しております。  この条約は、国家間における公の出版物及び政府の文書の交換を促進することを主たる目的とするものであります。  我が国がこの条約締結することは、我が国と諸外国との間の公の出版物及び政府の文書の交換の発展に寄与するとともに、この分野における国際協力に積極的な貢献を行うとの見地から極めて有意義であると認められます。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。  以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  204. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  三件に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十六分散会      ―――――・―――――