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国務大臣(
安倍晋太郎君) この日米経済摩擦というのは、これはいいかげんに打ち切りにしたいところですけれども、しかし今の日米の経済の膨大な
交流、貿易だけでも六百億ドルという
歴史始まって以来の二国間の貿易、これも伸びる一方です。その貿易も今非常にインバランスになっておると、こういうことで、これはただ一過性のものではなかなかないんじゃないか。ですから、これはGNPの自由
世界で一位と二位の国ですから、この国がさらに貿易、経済
交流を盛んにしていく以上は、どこかで何かがいつの
時代にも起こってくるということはやっぱり私たちは認識してかからなきゃならぬのじゃないか。しかし、この問題は日米間においてはあくまでもやはりお互いに話し合いで解決する、経済問題は経済問題で解決していく、大きな政治問題にすることだけは避けるというのが日米の今後のあり方から見て、また今のあり方から見て非常に必要なことであろうと、こういうふうに思うわけなんです。
そういう中で、当面の解決を求められている課題は、農産物とVANが一応終わりましたからあと今
お話しのように円・ドルの問題、それからサテライトの問題、それから
アメリカあるいはEC等が要求してきております関税引き下げの問題がこれからの我々の課題になるわけです。農産物の交渉は大変難航をきわめて一時決裂というところまでいったわけですが、最終的には
両国が痛み分けということで決着がつきました。これは
両国ともこの問題で決裂のままいきますと、これからの日米間の懸案解決には非常に大きなそごを来すというよりは、同時にまたこの問題は政治的に大きくクローズアップするおそれがある、ですから、この辺でお互いに我慢し合ってという、
両国ともそういう意思が働いてああいう解決になったと思うわけです。ですから、あの解決によってやっぱりその他の問題は一面においては非常に解決しやすくなったということは、
傾向として私は言えるんじゃないかと思うんですね。
VANの問題も相当
アメリカは厳しい注文をつけてきました。これは最近の
アメリカ、今、和田さんは少し勝手過ぎると言われましたが、全然そういう面がなきにしもあらずですけれども、なかなか
アメリカも
日本の政策決定の時期とかメカニズムというのを非常に
勉強して知ってきたわけですね。ですから、例えば関税なんかでも、今までは四月だとか五月だとかいうときにぽんと出してきていました。今度は、関税率審議会が年に一回しかないわけですから、これをねらってその寸前に打ち出してくるとか、あるいはVANの問題でも
国会で法律が通った後では仕方がない、出してからではなかなかどうにもならぬ、ですから、
政府が閣議決定をする前をねらってやっぱり注文をつける。その辺は今までと違ってなかなか
アメリカも
日本の政策決定の過程というのを非常によく知ってきたという
感じを、
研究してきたという
感じを私ども率直に言って持つわけです。そういう中で厳しく注文をつけまして、
日本は最終的には
日本の判断ですが、しかし
アメリカとの
関係も
考えてああいう形で決着をして、これはある程度の評価はしておると思います。しかしこれから法律ができて、それから運用でどうするかという点について
一つの疑問を持っておりますから、その辺はこれからの法律をどういう形でつくるか、そしてその運用をどうするか、やはり我々としては内外無差別、透明性というのが、これはハイテクだけに貫かれていかなければならない、こういうふうな基本的な認識は持っておるわけでございます。役所間のいろいろの調整は大変難航しましたし、またこれからもあると思いますが、やっぱりその認識が、その基本というのが大事だと思うんですね。
それから、残っている問題については大体四月の終わりごろをめどに今各省間で作業を進めておりまして、大体パッケージにしたいということですけれども、
お話の円・ドルの方は、これは今
アメリカに大場財務官が行ってやるわけですが、これは今我々がそばから見ておりましてもなかなか厄介だと思うんです。四月に何か日米間に見通しがつくかといってもそう簡単につくかなというふうな率直な
感じを持たざるを得ない。リーガン財務長官は相当怒りまして、
日本に来たけれども、
日本で何らの資本市場の自由化とか円の国際化について具体的な解決策を示さなかった、逃げたんだということでえらく憤慨しているという
状況が今も続いているように見えます。しかし、それはそれなりにやはり
日本としても難しい問題を金融面で持っていますから、これは四月の終わりといってもなかなかそう簡単にいかないと思います。どの程度まで今度のアドホックの
委員会で話し合いが進むか、これは注目しております。
それから、サテライトとかあるいは関税の引き下げの方は、これはある程度の調整がつきつつあるんじゃないか、全体的に見てそういうふうに私は見ておるんです。これも関税については、特に農産物なんかにつきまして問題があるわけですから、どういうふうにこれを全体的にこなしていくかというのは、なかなかこれも困難な点をこれから乗り越えなきゃならぬわけですから、いずれにしても何とか四月の末ぐらいにはパッケージにしたいものだ、こういうことで今各省間の調整を進めておりまして、この経済対策
閣僚会議にいつ持ち込めるかということが今の焦点になっているところであります。
ブッシュ副
大統領も五月の初めには場合によっては来るという可能性もなきにしもあらずで決定しているわけじゃないようですが、そうなればやはりそれまでには一応の方向性だけは打ち出さないといけないんじゃないか。
アメリカもそれを求めておる。
日本もやはりこの辺で一応の懸案についての
日本の努力の成果というものを一応総まとめはしたいものだと、こういうふうに率直に思っております。