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1984-04-12 第101回国会 参議院 外務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月十二日(木曜日)    午前十時六分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月六日     辞任         補欠選任      抜山 映子君     藤井 恒男君  四月七日     辞任         補欠選任      藤井 恒男君     抜山 映子君      前島英三郎君     秦   豊君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         後藤 正夫君     理 事                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 松前 達郎君                 抜山 映子君     委 員                 大鷹 淑子君                 中山 太郎君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 平井 卓志君                 八百板 正君                 黒柳  明君                 和田 教美君                 立木  洋君                 関  嘉彦君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        外務大臣官房審        議官       都甲 岳洋君        外務大臣官房外        務参事官     斉藤 邦彦君        外務大臣官房領        事移住部長    谷田 正躬君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省中南米局        長        堂ノ脇光朗君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務省国際連合        局審議官     遠藤 哲也君        外務省情報文化        局審議官     市岡 克博君        文部省学術国際        局ユネスコ国際        部企画連絡課長  内田 弘保君        文部省学術国際        局ユネスコ国際        部留学生課長   岡村  豊君        厚生省医務局医        事課長      横尾 和子君        郵政省電気通信        政策局国際課長  長谷川憲正君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○日本国マレイシアとの間の国際郵便為替の交  換に関する約定締結について承認を求めるの  件(内閣提出) ○日本国政府ペルー共和国政府との間の文化協  定の締結について承認を求めるの件(内閣提出  ) ○国際電気通信条約及び紛争義務的解決に関す  る国際電気通信条約(千九百八十二年ナイロビ  )の選択追加議定書締結について承認を求め  るの件(内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る七日、前島英三郎君が委員辞任され、その補欠として秦豊君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事抜山映子君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 日本国マレイシアとの間の国際郵便為替交換に関する約定締結について承認を求めるの件、日本国政府ペルー共和国政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件、国際電気通信条約及び紛争義務的解決に関する国際電気通信条約(千九百八十二年ナイロビ)の選択追加議定書締結について承認を求めるの件、以上三件を便宜一括して議題といたします。  まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。安倍外務大臣
  6. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ただいま議題となりました日本国マレイシアとの間の国際郵便為替交換に関する約定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  我が国と諸外国との郵便為替交換は、一般的には、万国郵便連合(UPU)の郵便為替及び郵便旅行小為替に関する約定によって規律されております。しかし、マレイシアはこの多数国間の約定締約国ではありませんので、同国との間で郵便為替を直接交換するためには、二国間の約定を新たに締結することが必要であります。  このため両国政府は、かねてから予備的な話し合い及び交渉を行った結果、最終案文について合意を見るに至りましたので、昨年十一月十八日に東京において、日本側大臣及び桧垣郵政大臣マレイシア側ジャマルディン駐日大使との間でこの約定署名を行いました。  この約定は、前文、本文十四カ条及び末文から成り、本文十四カ条は、為替交換方式為替表示通貨為替業務に関する諸料金、両郵政庁間における決済の方式仲介業務等両国郵便為替業務を円滑に行うために必要となる基本的事項について定めております。  この約定は、我が国署名した二国間約定としては第九番目のものであり、我が国が従来締結した二国間約定形式内容においてほぼ同様のものであります。  この約定を締約し、我が国マレイシアとの間で郵便為替の直接交換を開始することとなれば、両国国民間の送金の利便が拡充されるとともに両国間の協力関係の一層の増進にも寄与するものと期待されます。  よって、ここに、この約定締結について御承認を求める次第であります。  次に、日本国政府ペルー共和国政府との間の文化協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  我が国ペルー共和国は、ともに古い歴史と文化遺産を有する国であり、両国間ではこれまでも種々の分野において文化交流が行われてきております。両国政府は、このような文化交流をさらに促進するため文化協定締結することとし、交渉を行いました結果、昭和五十九年三月十五日にリマにおいて、両国政府代表者の間でこの協定署名を行った次第であります。  この協定規定内容は、戦後我が国締結した各国との文化協定とほぼ同様であります。  この協定締結により、両国間の文化関係に基本的な枠組みが与えられ、ペルー共和国との文化交流が今後一層安定した基礎の上に促進されることが期待されます。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。  最後に、国際電気通信条約及び紛争義務的解決に関する国際電気通信条約(千九百八十二年ナイロビ)の選択追加議定書締決について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  国際電気通信条約は、国際連合専門機関一つである国際電気通信連合基本的文書でありまして、連合の機構、業務等について定めているほか、国際電気通信業務運用に関する基本的事項について規定しております。  同条約につきましては、従来より通常数年ごとに開催される全権委員会議において旧条約にかわる新条約形式で作成されてきております。一昨年のケニアナイロビで開催された全権委員会議においては一九七三年のマラガ=トレモリノス条約にかわる新条約が作成されましたが、新条約は、旧条約に対して主として技術的内容をもった若干の改正を行ったものであります。また、その時の全権委員会議においては、紛争義務的解決に関する選択追加議定書につきましても新議定書が作成されました。この選択追加議定書は、条約当事国間の紛争解決を円滑に行うためのものであり、条約とは別個の議定書であります。  我が国は古くより国際電気通信連合主要メンバーとして連合活動に積極的に参加してきており、この条約及び選択追加議定書にも率先署名しましたが、今後とも国際電気通信分野における国際協力を推進し、もって我が国電気通信業務の発展を確保していくため、この条約及び選択追加議定書当事国となることは必要かつ有意義と考えられます。  よって、ここに、この条約及び選択追加議定書締結について御承認を求める次第であります。  以上三件につき、何とぞ御審議の上、速やかに御承認あらんことを希望いたします。
  7. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 松前達郎

    松前達郎君 きょうは、日本国政府ペルー共和国政府との間の文化協定締結の問題を中心としまして、国際的な文化交流あるいは国際的な協力体制、そういった問題について質問さしていただきたいと思うのです。  まず第一に、ペルー状況、これは新聞報道等で見ますと、いろいろと対外債務が大きいということなどが原因しているのかもしれませんが、まだまだ政治的に余り安定した状況ができ上がっていないような気がするわけなんですね。シュワルプ首相外務大臣辞任をするとか、そして大統領が新たにまた大臣を任命するとかいろいろなことが今ペルーでは行われているようでありますけれども、これらについて、全般的に見て状況をちょっと御説明いただければと思います。
  9. 堂ノ脇光朗

    政府委員(堂ノ脇光朗君) ただいま先生指摘のとおり、ペルー政治情勢はかなり不安定であるということは申し上げることができます。  ペルーにおきましては、一九八〇年に民政移管と申しますか現在の大統領が就任したわけでございますけれども国内の経済不振とそれから特に昨年あたりの水害、そういう天然災害ということによりまして非常に経済状態が悪うございまして、昨年は経済成長率もマイナス一〇%を超えるという状況でございました。そういう中で、先ほど先生も御指摘のとおり外債問題、対外債務が百億ドルを超えておりまして、その返済のためにIMFから非常に厳しい条件を守るように言われている、そういうことで、内閣財政政策は非常に緊縮財政国民に対して耐乏生活を強いるということがございますために国民の不評を買って、昨年の暮れには野党が地方選挙で大躍進をする、そういうことの余波としまして今回、就任して一年ほどでございましたけれどもシュワルプ内閣が辞職いたしまして、そして新しくマリアテグイ元上院議員が新しい首相に任命され、内閣をつくるということになったと了解しております。
  10. 松前達郎

    松前達郎君 今回の問題は文化協定ですから、政治体制といいますか、そういうものとは切り離して考えていいんじゃないかと思うんですね。これは何もペルーだけじゃなくて諸外国すべて、ある意味で言うと一つの大きなパイプになるわけですから切り離していいと思うんですが、この種の文化協定ですね、これは各国との間に日本国政府文化協定を結んでいるのはたくさんあると思うんですけれども内容を見ますとほとんど同じようなスタンダードフォームみたいなのがあって、大体同じような内容締結されているのかどうか。私はこれは比較してみたわけじゃありませんが、大体そういう趣旨としては同じような内容なのかということをちょっとお伺いしたいのですが。
  11. 市岡克博

    説明員市岡克博君) ただいま先生御案内のとおり、我が国は今まで二十三カ国との間でこういう文化協定締結いたしてきております。内容的にはおおむね同じ内容ということになっていると考えております。
  12. 松前達郎

    松前達郎君 そこで、第四条にあることなんですが、「教育機関における修学中に又は修学終了の際に取得される学位」ですとか、それから「資格証書その他の証明書及び他方の国において取得されるその他の資格証書」と、こういうふうなものに関して、資格というものが職業上それぞれの国でなるべくこれが生かされていくというのが本来でしょうけれども、この辺、なかなかうまくいっていない分野もあるようなんですね。だから、それらについてちょっとこれから質問させていただきたいと思うのです。  まず最初に、これはペルーとの問題だけに限らず、諸外国との文化協定等に関して医療の問題ですね。これは医師資格というものが、例えば日本大学においては六年間医学部の中で勉学をして所定の単位をとって卒業をして、そして国家試験を受ける資格を取れて医師試験で合格すれば開業資格が取れる、こういうことになっていますね。ところがどうもその資格が、外国へ行ってそれが通用するかというと今のところ通用しないんじゃないかと私は思うのです。とりわけ、留学生などが来て日本医科大学あるいは医学部勉学をしてその結果として自分の国に帰っても、日本医師免許証ではその国には通用しない、そういうふうな開業資格に関してお互いに互換性がないというか、交流ができていないのがどうも現状だと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。これは厚生省からお伺いした方がいいかもしれませんが、現状はどうなっていますか。
  13. 横尾和子

    説明員横尾和子君) 医師免許証国際的な関係については、先生お話しのように原則として互換性はないという形で運用しております。  これの運用趣旨でございますけれども、御承知のように、日本医師免許の位置づけというのは、その免許を持てば何科の診療もできるという開業免許という性格を持っております。しかしながら、世界各国状況を見ますと、そもそも免許証というものを持たない国もございますし、その免許取得条件、つまり免許取得の前提になります教育内容について相当な開きがございます。また、取得された免許に基づいてできる医療の行為ということにも相当差がございます。私どもとしましては、医師免許というものを持つということはすなわち日本国民がその医師によって医療を行ってもらうということに響く、つまり国民の健康にストレートに影響を与えるということから、その国際間の取り決めについても従来から大変慎重に考えてきたという経緯がございます。
  14. 松前達郎

    松前達郎君 それと関連して看護婦資格ですね。これも私自身経験があるんですけれども、例えば東南アジアから日本に来ますね、そして看護婦の修業といっちゃあれですが勉強していく。日本では看護婦資格が二種類ありますが、その資格がそっくりそのまま向こうで通用するとも限らないし、ある外国資格日本では通用するとも限らない。これもまた医師と同じような状況にあるんじゃないかと思うんですけれども、その点はいかがですか。
  15. 横尾和子

    説明員横尾和子君) 看護婦については私詳細は承知しておりませんが、恐らく医療関係職種としては同じような取り扱いになっていると思います。
  16. 松前達郎

    松前達郎君 そういう状況なんで、例えば外務省に関しても非常に居住条件の悪いといいますか、そういうところの在外公館皆さん方健康管理の問題があるわけですね。そして、例えば医師日本から派遣されたとしますね。そうすると、日本人相手にして診療をやるのは構わないかもしれませんけれども、これは私よく知りませんが、ただ、その在外公館に働くほかの外国人に対しては診療ができない。非常に細かい話ですけれども、そういう具体的な例も出てきてしまうのではないかと私思うんですね。どうもその辺が、お医者さんの世界といいますか医療世界というのは全く国際的な問題で検討がされていないような気がしてならないわけですね。ですから、せっかくこういう文化協定等も結ぼうと、しかも第四条の中には、条件等についていろいろ変わっているかもしれないけれども価値を認められるかどうかについて研究をする、こういうこともうたわれているわけですから、これは何もペルーだけではなくて国際的な問題としてひとつその辺を提起して、そして医師国際的な活動ができるように、医療活動できるようなそういう問題をひとつ取り上げていったらいいんじゃないか、こういうふうに私は思うんです。  これはもう何年も前からいろいろ問題が起きていることなんです。特に大学とか研究機関医師に関してはそういうことになるわけなんです。その点についてどうですか、外務省としてあるいは厚生省として何かそういうふうな前向きの検討をする、すぐはできなくても特定の国、まずは先進国同士でも結構ですが、そういったようなことで何か計画、研究等はございますか。
  17. 横尾和子

    説明員横尾和子君) 先生のお話の中にありました在外邦人医療確保という問題でございますが、現地にいらっしゃる日本人の方としては恐らく日本語の話せる日本人医師診療していただくというのが一番安心かと思いますが、多くの国では、日本人医師現地日本人だけを対象に診療することも禁止している現状でございます。そのことについてはいろいろ関係の方々に御心配をいただいているところでございますけれども一つ一つその相手国と、限定的な診療をお許しいただけるかどうか、そういう御相談を積み重ねていく方法がよいのではないかと思います。  つい先ごろでございますけれども関係の省庁の協力のもとに在外邦人の方の医療確保のための組織をつくりまして、これは民間組織でございますけれども、順次了解の得られる国には日本人医師派遣して診療ができるように、あるいは診療までが許可されない場合には健康相談のレベルだけでも実施できるように、そういう体制づくりを発足させたところでございます。
  18. 松前達郎

    松前達郎君 そういうことで今後課題になるんじゃないかと思いますが、余りにもいろんな条件が多種多様でありますから一概にどうすればいいということは言えないと思うんですけれども、例えば研究機関ですね、あるいは教育病院、そういったところは研究が半分ぐらい入っているわけですから、そういうところをまず最初考えていただければ比較的問題の糸口がつかめるんじゃないか、こういうふうに思うものですから、その点、検討していただければ大いに結構だと思います。  それに関連するわけなんですが、これも国際交流一つの大きな問題ではないかもしれませんが、例えば海外医療協力事業、こういう事業日本政府としてやっていると。その事業内容として二つ例を挙げますと、ケニアに対して技術援助の一環として、これは一九七九年から五カ年間で伝染病関係研究対策プロジェクトを組んでやっている。これはケニア医療研究所ですね、これの設立といいますかこれが検討されて、我が国はこれに対して無償資金協力を行うことになっている。できる場所はナイロビ市の市内に建設用地を定めてもう工事に着手をしている、こういうふうなことだろうと思いますが、さてこの研究所運営について我が国から学者――細菌学等、あるいは寄生虫、ウイルス学栄養学媒介昆虫、病理、臨床医学等専門家派遣される、これが必要になってきたということなんですが、そういうものを派遣するに当たって総まとめをして国内委員会をつくって、そしてそのプロジェクト管理運営に当たる、こういうことになっているというふうに伺っておるんです。  これについて、プロジェクト遂行ケニア事前に打ち合わせを十分にした上で調査団というものを派遣する、そして国内委員会をまずつくって対応していこう、こういうふうになったというふうに伺っているんですが、ところがこのスタッフを任命するに当たって、例えば国立大学私立大学とは区別して対応するとか、私立大学の団長だったらけしからぬと、そういうふうな話が出てきているわけですね。この辺がどうも私自身としてはひっかかるんですね。そういうふうにどうしてわざわざ区別する必要があるのか。それから、私立大学教職員リーダーになっているプロジェクトには国立大学教職員参加には協力できない、こういうふうなことですね。これは外務省じゃないんです。文部省の話です。  そういうふうな非常にかたくなな、予算の問題とかいろいろあるかもしれませんけれども、そういった問題がどうも細かいところで常に持ち上がってくる。こういうことですから、この点ひとつ、どうなんですかね。こういうことではとてもじゃないけれども海外協力なんというのはただ字に書いただけであって実際の効力は出てこないんじゃないか、こういうふうに思うんですけれども、これは文部省の方の見解をひとつお伺いしたいんですが。
  19. 内田弘保

    説明員内田弘保君) 国際協力事業団の実施しているいろいろな事業に対して、例えば専門家派遣あるいは研修員の受け入れ、プロジェクトヘの協力、多くの大学が積極的に協力しているところでございまして、文部省としましても国際協力は非常に重要であるというふうに考えているところでございます。  ただ文部省としましては、特にこの中でプロジェクト協力というのはやはり長い期間多くの専門家参加するところでございますので、できましたら日本側として担当の大学あるいは学部、研究所、こういうものを決めましてこれが中心になって協力を行う、プロジェクトを効果的に継続的に実施していくというような対応幾つかの対応の仕方の中にあるというふうに考えているわけでございます。  具体的なプロジェクト内容に入りますけれども、この件に関しましては昨年八月に各省の連絡会がございまして、この協力についての案件が討議されたわけでございます。これについては国際協力事業団の方から独自の構想が出されましてそれに対応協力したいというような案がありました。またこの内容を見ますと私立大学先生が多く参加されているということでございます。私ども文部省としては何らこれについて異議を持っているわけではないので、この点は誤解のないようにお願いしたいと思うのでございます。  私立大学中心になってプロジェクトを行うということは医療協力分野でもほかに幾つかございまして、現在三件、昨年までは六件ございました。私どもはこれに間接的に御協力を申し上げたということでございます。したがって、今のような私立大学の教授がチーフになるということについて文部省が難色を示しているという御指摘でございますが、私どもは全然そういう考えはございません。当該の件に関しましては、またこれは準備開始の段階であるというふうに私ども伺っておりますし、今後とも必要に応じて関係者の間で協議が行われていくというふうに思っているものでございます。  文部省としましては、技術協力にはぜひ大学協力、国公私立を通じての大学協力が必要であると思っておりますし、これについてどんな件でも私ども相談に応ずるつもりでございます。したがって本件に関しても、もし国立大学参加が必要だということになりますれば、私ども極力これに御協力申し上げるというふうに考えている次第でございます。
  20. 松前達郎

    松前達郎君 そうあっていただきたいと思うんですけれども、結局JICAの方が困っちゃって、しかし文部省JICAには協力はすると。ところが、国立大学私立大学は区別して対応するんだということですね。それから、私立大学教職員リーダーになっているプロジェクトには国立大学教職員参加については協力しない。結局そういうふうなことがいろいろあった結果、JICAが四月初旬に予定していた事前調査団派遣も延期されてしまった、こういうふうなことだと思います。ですから、今おっしゃったようなことで対応していただければ結構な話なんですが、その点はひとつ十分対応についてお考えいただきたい、こう思うわけでございます。  さて、今度は外務大臣にお伺いしたいんですが、今のような問題がいろいろあるわけで細かい問題ばかり申し上げたんですが、ある人に私が聞いたのですが、文化交流に関する協定が他国と日本との間に結ばれたら、その時点で文化交流は終わりだと言う人がいるんですね。ということは、やりにくくなっちゃう、とりわけ民間が非常にやりにくくなる。かえって結んでもらわない方が自由な文化交流ができるんだ、こういうことを極論している人もあるんです。非常にこれはある面で当たっているんじゃないかと私思うんですが、その点、大臣としてはいかがでしょうか。
  21. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 文化協定を結ぶことが文化交流を阻害するということにはならないと思うのですけれども、今外務省からも説明しましたように、二十数カ国も文化協定を結びましてそれなりに文化交流の実を上げておると思うんですが、そうした政府間のレベルの文化交流、これも大事ですが、同時にやはり民間のレベルの文化交流を並行的に促進をしていくということではないかと思うんです。したがって、それにはやはり政府が、ただ文化協定に基づく政府間のレベルの文化交流だけに力を入れて民間の交流というものに対してそっぽを向くというふうなことでは、これは本物の、真の意味の文化交流にはならないわけで、今お話しのような弊害も起こってくると思いますが、最近の状況から見ましてやはり民間のつき合いというものが非常に大きな幅を持って、あるいは深みを持ってきておりますから、そういう意味では政府も十分心がけてそうした点についてお世話もし、あっせんもし、協力もするということでやっております。今おっしゃったようないろいろな問題はだんだん累次改善をしてきておりますし、むしろそういう意味では文化協定を結び、それによって民間交流もさらに推進をされていくというパターンにこれからはもちろんなっていくであろうし、またそういうふうに持っていかなければならない、こういうふうに思っておりますし、そういう方向に進んでおるというふうに考えております。
  22. 松前達郎

    松前達郎君 予算委員会の依嘱審査のときにも申し上げたわけなんですが、在外公館の予算も少ないわけですね、それから人員も非常に限られているし仕事は非常に多いということで、在外公館の忙しさというのは私自身も十分わかります。ですから、余りごちゃごちゃいろいろなことを持ち込んでもなかなか処理というのがやりにくい場合もある。こういう中で民間の交流等の状況も把握しながら、国の代表として交流全体を展望していかなければならない、こういうことですから大変だと思うんですけれども、例えて言いますとデンマークにおられた前の大使の高橋さんですね、あの方などは、私ども何回も国会からの派遣でもお伺いしましたし、それからいろんな行事、例えば日本週間ですとかあるいはシンポジウムですね、こういうものについても積極的に協力していただいて提案までしていただく、私ども民間としてもいろいろな行事をやったわけですが、非常に立派な方だったと私は思うのです。こういうふうな協力体制があると、非常に国との間に何といいますか温かい交流ができ上がって、それが基盤になってどんどんと展開されていく、こういうことですから民間との協力という問題ですね、これはやはり相当重要視していただく。ただし、民間が外務省に予算をねだって民間がやる行事にお金を出せというのとはこれは話は別なんです。そういうこととは話はちょっと別ですが、民間が独自でやっていくというときに、やはりそれを展望しながら協力体制を温かく見守っていただければというふうに思うわけであります。ですから、さっきちょっと申し上げた文化協定が結ばれたらそれで文化交流は終わりになるというのは、今はそうじゃないかもしれませんけれども、そういうことを言われないようにひとつ今後外務省の方も対応していただければというふうに思います。  それともう一つお伺いしたいのは、これは文化交流ではございませんが、とりわけ最近、外務大臣活動の中に外国の責任者といいますか要人とのいろいろな話し合いが入ってきておるわけですね。きょうの新聞などを見ましてもイランの外務大臣にお会いになって、そしてイラン、イラクの問題について、とりわけ日本が非常に関係のある石油を輸入しているわけですから、ホルムズ海峡の問題とかいろんな問題を何とか両国の間に入って解決しようという外務大臣の努力が新聞に出ていたわけですけれども、私としてもさらにこれを強力に進めていただければと思うのです。イランの外務大臣にお会いになった様子は大体新聞等で報道されておりますが、その点で特にお感じになったことがありましたらお願いしたいと思います。
  23. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) イラン、イラクは御承知のように四年近く戦闘を続けておりますし、最近の状況を見ますとその戦闘が拡大をする可能性も出てきておる日これが拡大してホルムズ海峡にでも火がつきますと第三国が介入するおそれすらなきにしもあらず、そうなれば世界大戦にもなりかねないということで大変心配な面があるわけであります。特に日本はホルムズ海峡を通して六割も石油を輸入している。日本だけの問題じゃなくて、世界的にもあのホルムズ海峡というのは大きな政治的な経済的な意味を持っているわけであります。そういう中で、日本もイラン、イラク両国に対しては比較的いい関係にあるものですから、日本としても、調停とか仲介というのはなかなか遠方でそう簡単にできないんだけれども、しかし少なくとも平和的な環境をつくる、あるいはまた紛争の拡大を防止する、そういう意味では何らかイラン、イラクに対しても発言力がありますから役割を果たしたい、こういうことで私も去年参りました。ことしも両国外務大臣を呼んでおりましたが、今度やっとベラヤチ外相がやってまいりましてそして二日間にわたりまして議論をしました。  二国間の問題はもちろんでありますが、今のイラン・イラク戦争について意見の交換を率直に行いまして、これも大変私なりに得るものがあったと思っております。もちろん、イランの態度がそれによって大きく変わったとかそういうことではありませんけれども、去年会ったときよりはことし会ったときの方がうんと向こうも胸襟を開いて、そして日本の主張する早期平和回復あるいはまた戦争拡大の防止、そういうことについては心を開いて聞いてくれたと思います。そして日本は、覇権を握ろうとしているんじゃないし、政治的な野心もないと。日本の言っていることは全く善意を持って我々はこれを受けとめて、そして今後とも日本政治的なパイプを通じて、我々も平和を求めておるのでその点についてはいろいろと意見の交換も重ねていきたいということで、今すぐ戦争をやめるとか、またそういうあっせんに乗るとかそういうことは出ませんでした。しかし、例えばホルムズ海峡の封鎖はとにかくイランの石油が全滅するまではやらないんだとか、あるいはまた戦争を拡大する意図は全くないんだとか、相当やはり意欲的な発言もありましてそれなりの日本に来ました意味はあったのじゃないかと、そして日本の言っていることに対しては耳を傾けてくれたということでございまして、私は、今後もさらにこうした関係を重んじながら、大事にしながら努力を重ねてまいりたいと、こういうふうに思っております。
  24. 松前達郎

    松前達郎君 そういうことで、これをきっかけにある程度平和への動きが進行していくといいと思っているんですけれども外務省の予定では、イランの外務大臣が来られたその後に、今後の日程としてイラクの外務大臣を招聘するというふうなことも報道されておりますけれども、タリク・アジズ外務大臣ですね、この方が今度は日本へ来られると。そのときにやはりこの問題を当然外務大臣としてはお出しになるはずであろうと私は思いますし、同じように誠心誠意といいますか、熱意を持って恐らく説得、要望されるんじゃないかと思いますけれども、遠からず来日と報道されているんですが最近おいでになるのかどうか、それから、もしおいでになったらやはり同じようにこの問題について要請をされて努力をされるのかどうか、その辺をお伺いしたいと思います。
  25. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) タリク・アジズ・イラク外相にもイランのベラヤチ外相と同じように同時期に訪日を招請をいたしておりまして、アジズ・イラク外相も日本に来たいという意伺を表明しておりますが、具体的にそれじゃいつだということについてはまだ両国の外交チャンネルで話し合っておりませんけれども、私は、イランの外務大臣も見えたことですし、イラクの外務大臣も恐らく近いうちにはお見えになる可能性は判断としては十分あるんじゃないかと、こういうふうに考えております。その場合は、イランの外務大臣に率直に私が申し上げましたと同じような意見をイラク外相にも申し上げて、とにかく戦争のエスカレーションに対しては自制をイランにも求めたわけですがイラクにも求めて、同時にこれが平和的な解決の方向へ努力をしていくように話をしたい、そうして日本も何かお役に立つことがあればそれなりの力を尽くすということを表明する考えてあります。  幸いにしてイラン、イラクとも今いい関係で、ただイラクは、多少やっぱり日本がイランに少し肩を入れ過ぎているんじゃないかというふうな感じのことを言っている向きもありますけれども日本の立場はそうじゃなくて、きのうのイランの外務大臣との会談におきましても私からはっきりと、やはりあそこのガルフの航行の安全を保障する、安全を確保するということになれば、やっぱりイランだけではなくてイラクの安全も確保しなければならない、それでなければ筋が通らないということをイランにも強く要請をしたわけでありますし、そういうことで日本の努力といいますか、誠意を持った活動というものは十分評価をしてくれておる、私はそういうふうに感じておるわけであります。近いうちに来られることを期待をいたしております。
  26. 松前達郎

    松前達郎君 時間があと数分しかありませんから最後になりますけれども、これは外務大臣、私しばらくソビエト関係については質問をしなかったわけですが、いろんな問題が次々と起こった結果、対ソ関係というのが非常に冷え切った状況から何とか少し脱出できるのじゃないかというそういう感じも持っているのですね。これはいろいろな外交政策等にもよると思いますけれども、最近ではオリンピック問題で、今度はアメリカとの問題でまたいろいろと新聞紙上をにぎわしているわけなんですが、我が国の対ソ外交、これについて大臣の今後の外交推進の考え方を、これは簡単で結構ですからひとつお聞かせいただきたいと思います。
  27. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日ソ関係というのは日本の外交の中でも一番難しい関係ではないかと思います。そうしてどちらかというと一番冷え込んだ状況にあります。特に大韓航空機撃墜事件以降は急速な冷却化をたどったわけでありますが、ソ連においてもチェルネンコ新政権ができましたし、また米ソ関係も、INFとかSTARTとかそういう交渉は中断をしておりますけれども、しかし中断はしつつもやはり対話を進めようという空気も徐々に出てきているようであります。東西関係もいろいろと動きが出てきておるわけですから、日本の場合も、やはり基本はどうしても領土問題をテーブルにのせなければなりませんし、領土問題が解決しなければ私は日ソの真の平和友好ということはあり得ないと思うわけですが、しかしソ連はこれに対してはなかなかイエスとは言わない。これはそれなりにやっぱり辛抱強く腰を据えて取り組んでいくとともに、私たちが今ソ連に対し強く求めているのは、なぜ極東にあれだけの軍事力を強化しているのか、増大しているのかということで我々がソ連に対する一つの非常に不満を持っておるわけでございまして、そういう点は日本とソ連では認識の差がありますけれども、しかし何としても隣の大国でありますし、我々としてもそういう対立は対立、考え方の差は差としても、やはり東西間、米ソ間というものに多少の対話という空気が出ている以上、また日本日本なりにそういう中でできるだけの対話というものを試みるということは、それなりにまた長い将来にかけては意味があるんじゃないか、そういうことでいろいろと今日まで努力をしてまいりまして、ようやく一つの対話の路線というものは多少おぼろげながらできつつあるわけでございまして、この路線をこれから具体的に構築するために日ソ間でいろいろと協議をしておりますが、具体化するためのこれからひとつ話し合いを進めてみようと、こういうふうに思っておりまして、ただ決して悲観的なものだけでもないと。やはり可能性としてはある。しかし、基本的な問題はなかなか根にあってこれは腰を据えてやらなきゃならないと、そういう率直な感じであります。
  28. 松前達郎

    松前達郎君 終わります。
  29. 抜山映子

    抜山映子君 ペルーとの文化協定に関連しまして、日本に来ております外国人留学生の問題についてまずお伺いしたいと思います。  現在、日本留学生受け入れ数は南米からも大変ふえておると思いますけれども、国費留学、私費留学全部含めまして一万四百二十八名というありさまでございます。これを諸外国と比較いたしますと、米国は三十万名を超えておりますし、イギリス、西ドイツも五万名を超えております。これをもっと拡充して日本の理解をより深めてもらう、そして海外において将来いろんな意味で重要人物となる人材に日本を知っていただく、こういうことは非常に大切なことではないかと思うんですが、この留学生の受け入れ数を将来ふやすことについてのお考えはないか、お伺いいたします。
  30. 市岡克博

    説明員市岡克博君) ただいま抜山先生から御指摘のございました数字は、確かに昭和五十八年五月一日現在におきます調査の結果でございます。国費留学生につきましては全体で二千八十二人、私費留学生につきましては八千三百四十六人、合計一万四百二十八人ということになってきております。まだまだこの数字につきましては他の国との比較において少ないという実感がございます。  各国と比べました場合に特に指摘申し上げてよろしいかと思いますのは、国費留学生につきましては、イギリス、西ドイツなどと比べましておおむねそれに近い水準に近づきつつあるということ が申せるかというように思っております。昭和五十三年以降、国費留学生の伸びを見てみますと、年によりましては二百人を超える、少ない年でも百人を超える増加が実現されておりまして、それで二千八十二人という水準にどうやら達してきたということでございます。  他の国を見てみまして少し違いますのは、特に私費留学の点ではなかろうかというように考えております。今後我が国に迎え入れる留学生の全体の数をできるだけ伸ばすということにつきましては、私ども外務省の者といたしまして、できるだけ各国にシンパを得たいと、将来の指導者になるような人を迎えたいと、こういうように思っているわけでございます。特に今後は私費留学の方々が喜んで日本に来られるように、そのあたりについての努力をしていく必要があると、こういうように思っているわけでございます。  具体的にどのようなことをしていくかということにつきましては、先般文部省中心になられまして二十一世紀に向かっての留学生問題についての御審議もございました。今後とも文部省などと協議しながら国費留学生をより多くまたうまく迎え入れられるように相談しながら事を進めていきたい、かように考えておる次第でございます。
  31. 抜山映子

    抜山映子君 その留学生の受け入れの問題なんでございますけれども、個人的に友人が何人もございまして聞いてみますと、帰るときは反日的になって帰ってしまうのですね。これはいろいろ事情を聞いてみますと、一つは非常に受け入れ態勢が十分でない、向こうで考えていたよりずっと環境整備がなっていないということを口にするのでございます。  今、大学院生は月額国費留学生で十七万五百円、学部で十二万七千円ということでございますが、確かにこの金額そのものは日本人の普通の働いておりますOL並みのサラリーでございますから一見十分なように見えるのでございますが、一番問題なのは実は宿舎の問題なのでございます。御存じのように、首都圏とか近畿圏におきましては大変に住居費が高い。しかも、東南アジアの学生は非常に入居難である、家主が喜んで迎え入れてくれない。それに、日本では敷金とか礼金とかわかりにくいお金を取られるわけでございます。留学生宿舎に入居できない人が七割あると言われておるのでございます。そういうわけで、宿舎の態勢をもっと整えていただきたいということを要望したいのでございます。各大学では大学留学生宿舎というものも大変不整備のようでございますが、全員が希望すればこれに入れるというような態勢はつくれないものか、ひとつ御見解をお伺いいたします。
  32. 岡村豊

    説明員(岡村豊君) ただいま御指摘がございましたように留学生の宿舎の問題につきましては、我が国におきましては特に東京、大阪等大都市周辺におきます住宅事情が大変厳しく、良質、低廉な宿舎を留学生のために確保するというのが重要な問題になってきております。これにつきましては、ただいま御指摘のございましたように、私ども国立大学留学生のための宿舎の整備というのを進めている一方、日本国教育協会等民間団体の御協力も得ながら、良質、低廉な宿舎の確保に努めておるところでございます。  また、御指摘ございましたように、一般の民間の宿舎に入る場合、受け入れる民間の、特にアジア人の留学生に対する理解を深めていただくというようなことも重要なことと考えております。このようなことにつきまして、国だけでできる国立大学の宿舎の整備につきましては、今後とも各大学と一層話し合いをして整備について検討していきたいと思っておりますし、また民間等の御協力を得なければならない事柄につきましては、日本国教育協会等を中心にしてそのための努力を文部省としてもしていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  33. 抜山映子

    抜山映子君 日本に来る前に、日本では英語による教育が行われているんじゃないかと思って来日したところ、実際には日本語で授業を受けさせられたとかそういうことも聞くのです。また一部では英語で授業をしてもらっているんだということを聞く場合もあるんで、今、日本の各大学でどれぐらいが英語による教育を行っており、またどれぐらいが日本語で教育を行っているか、また、学位取得について英語による論文を提出すれば足りるのかどうか、その点をお伺いいたします。
  34. 岡村豊

    説明員(岡村豊君) ただいまの御質問について定量的に答えますについては調査等がございませんので難しいので、一応概要について御説明申し上げます。  我が国での教育研究日本語で行われておりまして、そこに入って勉強する留学生もしたがいまして日本語で勉強しているというのが通例でございます。ただ、最近特に大学院レベルの理工系の分野につきましては、留学生日本語能力がないまま受け入れまして英語で授業を行ったり、あるいは当初は英語で授業を行い、次第に日本語を覚えていくに従って日本語の授業に切りかえていくというような特別コースが、東京大学の土木工学関係大学院あるいは京都大学の工学関係大学院に三つほどあらわれております。また、私立大学におきましては御承知のとおり国際大学が昨年開校されました。国際大学国際関係を勉強する大学院だけの大学でございますが、ここは留学生を三分の一程度受け入れまして英語で講義をしておる、こういう状況でございます。このような状況ではございますけれども、一般的には日本語による教育研究が行われているというふうに御理解いただきたいと思います。なお、このような組織的な形態の教育研究ではなくて、特に大学院におきましては個人対個人の研究指導が行われるわけでございますが、こういう個人対個人の研究指導の場合は必要に応じて先生外国語を使用して留学生を教える、こういうようなことは現実に十分行われているところでございます。  また、学位論文を英語で書くということにつきましては、これはかって私ども大学の事情等を調査したことがございますが、相当の、半数以上の大学では学位論文は英語等の外国語でもいいというような扱いをしておるようでございます。これについては次第に今後ともふえていくのではないかというふうに私ども思っておるところでございます。
  35. 抜山映子

    抜山映子君 そこらあたりの情報が留学する前に現地で徹底して理解されておらない面があると思うのでございます。したがいまして、日本教育事情とか各大学教育内容とか、また授業が日本語で行われるのか英語で行われるのか、そういうことを英文で資料をつくりまして在外公館などにきちっと置いておかなければいけないと思うのでございます。また、一方におきましてこの国際化の時代でございますから、受け入れて、世界一難しいと言われる日本語で論文を書けとか、授業は全部日本語だということでは余りにも開かれた大学とは言えないのじゃないかということで、ひとつその今後の受け入れ態勢の充実ということもお考えおきいただきたいと切望するものでございます。  さらに、留学生のアフターケアの問題ですが、各国に帰りまして日本企業に就職する場合に余り厚遇されないとかいう不平もあるようでございますが、全般的に見てそのアフターケアの問題はどうなっているかお伺いいたします。
  36. 市岡克博

    説明員市岡克博君) アフターケアの問題、特に帰国後この方たちに対する我が国の施策は十分ならしめる必要があるわけでございまして、私どもこの辺につきましては十分注意を払ってまいりたい、こういうように考えておるわけでございます。現在のところこの点につきましては、例えば日本語学習者のシンポジウムを帰られた後にやりますとか、あるいはアジアにおきましては元留学生、研修生の会をつくってもらいまして、それの名簿を整備して在外公館等が常時接触し得るように、せっかく日本におられた方が後それぞれの国でいろいろ御活躍ではあろうかと思いますけれども、言うならば我々がよく存じ上げないというような状態になるのはまことに遺憾なことと思います。そういうようなパーソナルなコンタクトを事後においても維持していくように努めてまいりたい、こういうように考えておるわけでございます。それからまた、留学生がそれぞれの国において会をつくりますような場合に、留学生会館とはいかないわけでございますけれども、そういうような集会施設などが欲しいというような場合には、大使館を通じて外務省ども種々便宜を供与しているということがございます。特に御指摘になりました日系企業への就職の問題につきましては、これは民間企業におきます雇用の問題との関連がございます。我々といたしましては、これらの人々が日系企業も含めて現地において枢要の地位につけるように希望いだしている次第でございます。個々の企業によりましてはいろいろな取り扱いに違いが生じるということがあるようでございますが、民間の企業もしくは団体等ともいろいろお話を申し上げて、こういった企業への就職が容易になるように、あるいは就職後の待遇が日本人の職員と比べてそう目立った差ができないように、直すべきところは直していくようにお願いしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  37. 抜山映子

    抜山映子君 名簿を整えるとか就職の問題もさることながら、アフターケアを十分にして徹底的に親日的にしてしまうという配慮が大切だと思うのでございます。そういう意味におきまして、日本在外公館等に指示して、一年に一回はそういう人たちを招いてパーティーを開いて、やはり日本に留学してよかった、日本が懐かしい、こういうような思いにさせるようにひとつ御配慮いただきたいと思うのでございます。  さて、先般も伺ったんですけれども、中国人留学生の問題なんですけれども、去る三月二十三日付の週刊新潮並びに週刊文春に、奨学金が全額留学生の自由にならずに現実には六万五千円しか学部の学生だと手にできない、あとは大使館に持っていかれてしまう、こういうことが印刷物になって出ておるわけでございます。これにつきましてその後外務省は調査していただきましたか。
  38. 市岡克博

    説明員市岡克博君) 中国人留学生に対して奨学金を提供した後、それがいかに使われているかということにつきまして、先生指摘のとおり一部雑誌等にその問題が取り上げられたということはもちろん承知いたしております。この問題につきましてはかって中国側に対しましてその事実関係について確認したことがあり、その際先方からは、外国政府奨学金についてはすべて留学生自身に使わせているという旨の回答を得たわけでございます。奨学金につきましては、その全額を我が国の場合留学生本人に交付いたしておりまして、その後の使途にまで立ち入って調査することはしていないわけでございます。
  39. 抜山映子

    抜山映子君 本人に交付した後は関知しないところであるというのは私は無責任であると思うのでございます。交付した後親御さんに多少渡したとか兄弟に渡したとかいうならこれは私は関知しないという態度でよろしいのですが、いやしくも中国大使館にピンはねされているというようなことを留学生が苦情を申しておるということになりますと、これは留学生にとりまして大変に強制力のあることだと思うのでございます。したがいまして、中国人留学生の間に、日本外務省並びに文部省がこれを強硬に申し入れてほしいんだと、自分たちはせっかく日本に留学して、日本人との交流も六万五千円ではままにならないということで非常に泣いておるわけでございます。これが大っぴらに外務省に泣きついてこれるような体制の国ではございません。これが大っぴらになりますと、国に召還されて収容所に入れられるかもしれないという中国人留学生の苦衷を思いやっていただいて、ひとつこの事実を調査し、そして強硬に申し入れ、そしてそういう留学生たちは将来の中国を担う重要な人材でございますので、目先の、中国大使館の機嫌を損ねてはとか、友好が台なしになるのではないかという短期的な見方ではなく、もっと長期的に見て真の友好を設立するための外交を展開していただきたいと思うのでございます。この点について文部省はいかが事情を理解しておられますか、お伺いします。
  40. 岡村豊

    説明員(岡村豊君) 現在中国から約二千人の留学生が参っておりまして、そのうち約百七十五名が日本政府の奨学金の留学生、そして八百六十名が中国政府派遣してきている奨学生、それ以外が自費という格好でございます。私どもとしては、中国との留学生交流が始まりましたのが昭和五十四年というつい最近のことでございまして、このような短い期間にこのような多くの留学生を受け入れるということで、中国側との間でいろいろ苦労を重ねながら現在の状況に持ってきたところでございます。  ただいまの御質問につきましては、かつてそういう報道等がございましたので、私ども、中国側の関係者にそのような事実があるかただしたことがございます。その際、そのような事実は決してないと明確に中国側は否定いたしておりました。したがいまして私どもとしては、改めて調査するという考えは今持っていないところでございます。ただ、我が国への留学生の約八割はアジアの諸国からの留学生でございます。生活水準、社会体制等非常に違った国で、我が国での留学生活に大変苦労されておるということは十分承知しておりますので、今後とも各大学の御協力を得ながら、これらの留学生日本において充実した勉学、生活ができるよう配慮してまいりたいと、このように考えております。
  41. 抜山映子

    抜山映子君 文部省外務省にお伺いします。  それぞれ中国大使館に申し入れをなさったということですが、いつ、だれが、どういう形で申し入れを行い、また同じく中国側からいつ、だれから、どういう形で回答があったかお答えください。
  42. 市岡克博

    説明員市岡克博君) 外務省が申し入れ、事実の照会をいたしましたのは昭和五十五年でございました。当時、情報文化担当をいたしておりました参事官が、北京におきまして中国語教育特別計画について打ち合わせをした場を使いまして問い合わせをいたしたということでございます。
  43. 岡村豊

    説明員(岡村豊君) 私どもが中国側の関係者にただしましたのは昭和五十六年の十二月でございまして、私どものユネスコ国際部長が中国大使館の関係者に事実を問い合わしておるわけでございます。
  44. 抜山映子

    抜山映子君 皆様ただいまおわかりのように、問い合わせたのは昭和五十五年、昭和五十六年と大変古い年代でございます。週刊誌に載りましたのは昭和五十九年の三月二十三日でございますから、ぜひこのたび改めて申し入れを行い、事実を調査していただきたいということをここに切望いたします。  終わります。
  45. 立木洋

    ○立木洋君 大臣最初にちょっと中東問題でお尋ねしたいんですが、アメリカ政府は、レバノン後ということで、特にペルシャ湾重視の政策を強めて、石油の輸送の安全維持を今後とも図っていくということで、国際艦隊創設構想というような考えがイギリスなど数カ国に打診がされているというふうな報道があるわけです。そういう問題も含めて、最近、中東問題で日本政府と何らかの打ち合わせといいますか何らかの話し合いがあったならば、その内容について最初にお答えいただきたいと思います。
  46. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今アメリカがそうした新しい艦隊、各国連合艦隊ですか、そういうものをつくって中東の海域に進出させる、こういうことについては何も聞いておりません。しかし、アメリカは中東の平和には非常な深い関心を持っていることはもちろん当然のことであります。またイラン・イラク戦争、特にホルムズ海峡の、あるいはガルフの航行安全という点につきましては特に強い懸念を持っておりまして、このままイラン・イラク戦争が続いてそしてこれが拡大をして、ホルムズ海峡が封鎖されるというふうなことになればこれはアメリカとしては黙っておれない、アメリカの実力を行使してもこの封鎖は排除する、こういうことを言っております。そうして、これは国際的に言っているだけではなくて日本に対してもそういうことをはっきりと言っておるわけでございますし、その海上交通路あるいは航行の安全というものについて大変な決意を持っておるということは、私もその点では十分承知をいたしておるわけでございます。  そういう点で、私も実は昨日、一昨日とイランの外相に会ったときも、こうしたアメリカの強い決意があると。これはもちろんイランあるいはイラクに対して敵意を持ってこういうことをやろうということではないんだけれども、しかしそういうことになれば不測の事態が起こる可能性もあるので、イランとしても十分やはりホルムズ海峡あるいはまたペルシャ湾の問題については慎重にひとつ戦火が拡大しないように配慮してほしい、それが実はやはりイランのためにもなるんじゃないかということを言ったわけでございます。もちろん、イランはそうした封鎖は今のところ全く考えてない、こういうことでございました。  中東関係においても、レバノンからアメリカがああした多国籍軍を撤兵するというふうな状況も起こりましたし、今ちょうど大統領選挙の最中ですからこの問題は今後どういうふうに展開していくのか、日本との間には今のところはそう突き詰めた話はしていない。イラン・イラク紛争については非常な関心を持っておる。それで日本も、イラン・イラク戦争についてアメリカがどちらかというとやはりバランスのとれた態度をとることがイラン・イラク戦争を早期に終結することに必要じゃないか、そういうふうな言い方はしておるわけでございまして、アメリカはアメリカ自身で決定することですから、いろいろと論議はしておりますが、今ちょうど大統領選挙の最中で、そういう意味ではアメリカとしても、中東問題についてもイラン・イラク戦争についてもなかなか動きにくい時期ではないか、こういうふうに判断しております。
  47. 立木洋

    ○立木洋君 昨年でしたか、レバノンの国連監視軍といいますか多国籍軍といいますか、これについて日本政府としても財政的な援助の問題を検討してみたいというふうな経緯があったと思うんですが、中東に対して必要な状況が起こればそういう財政的な援助ということを今後ともやっぱり問題にするのかどうなのか、あの考え方というのはその後どういうふうになっているのか、ちょっと確かめておきたいと思います。
  48. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、レバノンの平和回復そして自主独立政権がここで力をつけてくる、そしてレバノンから外国軍隊が撤退をする、そういう方向へ行くことを我々は期待をし念願をし、そういう意味で、そういう立場で日本としてのできるだけの協力はしなければなるまい、こういうことでございましたが、その後の経過の中でいろいろの事件が起こったり、ついには多国籍軍も撤兵をする、こういうことの状況になりましたから、今日本としてこれに対して今すぐどうだこうだという立場はなくなったわけでありますが、しかし日本の基本的な立場は、あくまでも外国軍隊の撤兵そしてレバノンの真の自由な主権的な国家ができることを願っておりますから、そうした国家ができ、同時にまたレバノンが爆撃や戦火で今大変な破壊をされておるという状況ですから、この復興に対してはこれは日本は将来復興援助という形で協力はしなきゃならぬ、こういうふうに思っております。
  49. 立木洋

    ○立木洋君 先ほど大臣も言われておりましたように、戦火をこれ以上拡大させないように、話し合いによって紛争解決できるようにということですから、そういう戦火が拡大するような財政的な援助などは厳に慎んで、そして平和が中東で回復できるようなそういう努力を今後していただきたいということを要望しておきます。  それで、国際電気通信条約ですが、経費の分担方式について若干お尋ねしたいんですけれども日本が分担しておる単位等級といいますか、これが何級で、金額がどれぐらいで、これはITUの中で予算の何%ぐらいの比重を持っているのか。
  50. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) お答え申し上げます。  この新しい条約のもとでは、日本が負担しております単位数は三十単位でございます。それで、金額でございますけれども、一九八四年度分につきましては、約七億七千万円でございます。  なお、この七億七千万円あるいは三十単位が連合員の総分担数に占める比率でございますけれども、約七・六%でございます。
  51. 立木洋

    ○立木洋君 郵政省、この間八十二年ですか、ナイロビ会議が開かれましたですね。この経費の問題でいろいろ大分激しい議論があったようでありますけれども、基本的な点はどういう点だったんでしょうか。そして、どういう点で合意がされたのか簡単にひとつお願いします。
  52. 長谷川憲正

    説明員長谷川憲正君) ナイロビ全権委員会議では、先生指摘のとおりに、開発途上国側からITUの分担金制度に関しましては先進主要国がもっと負担を増大すべきであるという主張が強くなされております。各国がそれぞれの立場からいろいろな議論を展開したわけでございますけれども、大きく分けますと二つに分かれております。  一つは、開発途上国の意見でございますけれども、現在の分担等級任意選定制度――決められた単位の中から自分の国が好きな単位を選ぶという制度に変えまして、各国のGNPを基準とした負担能力に応じた分担金を支払う、いわゆる国連方式という方式を導入すべきではないかという意見でございます。  もう一つの意見は、先進国を中心とする意見でございまして、現在の任意選定制度というものを維持する中で、開発途上国の負担の軽減を図っていこうという意見でございます。  それで、この先進国側というふうに今申し上げましたが、この意見はいろいろな形で提案がなされておりますが、中心的なものを申し上げますと、一つはソ連の提案でございまして、現在の任意選定制度では一番上の単位が三十単位、一番下が二分の一単位でございますけれども、この一番下の単位にさらに四分の一単位、それから八分の一単位というものを加えてはどうかという提案でございます。  それからもう一つは、ASEAN諸国が提案した案でございまして、下方の等級の低いものをつくるのも必要だけれども、上方の等級をもっと引き上げて四十単位、五十単位、六十単位というような単位数を設けたらというような提案がなされております。  いろいろと議論がなされました結果、最終的には今回は国連方式の導入というものは見送りまして、従来の分担等級の任意選定制度の枠組みは維持する。その中で単位数の上限を引き上げまして三十五単位、それから四十単位というものを新設する。さらには、四十単位以上の単位を支出することもできるというふうになりました。  それからまた下限につきましては、四分の一単位、それから八分の一単位というものを新設するということで全体の合意が成立したわけでございます。
  53. 立木洋

    ○立木洋君 今お話があった国連方式という形で分担しますと、例えばアメリカだとか日本というのはパーセンテージはどれぐらいになるんでしようか。
  54. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 国連方式でございますと、日本の場合、現在の国連の分担率というのは一〇・三二%でございまして、アメリカは必ずしもGNPというか、頭打ちがございましてアメリカの場合二五%でございます。
  55. 立木洋

    ○立木洋君 アメリカも現在は三十単位というふうに聞いているのですが、そうすると連合経費の中での分担というのは七・六%、間違いないですね。
  56. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) そのとおりでございます。
  57. 立木洋

    ○立木洋君 外務大臣ね、これは前々から問題になっております、つまり国際機関に対するアメリカの拠出金が非常に少なくなってきているという問題がございましたですね。このITUのあれを見てみましても、つまり国連方式でいけばアメリカは二五%見る。ところが今の任意選択で分担のあれを選択しますから、そうしますと七・六%という比重、日本の場合が国連方式でいけば一〇・三二、今のITUの任意でいけば同じ七・六。だから、こういうふうな傾向というのは、この間から大臣も言われているのですけれどもやはり正す必要があるのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  58. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) ちょっと私から一言御説明申し上げたいと思います。
  59. 立木洋

    ○立木洋君 時間がなくなってきますから簡単に。
  60. 遠藤哲也

    説明員(遠藤哲也君) 国連及び専門機関の分担方式幾つかございまして、先生指摘のような、いわゆるGNPを大体中心とします国連方式をとっていますのが国連とかILO、それからWHO、ユネスコ等々とございます。さらに、任意方式をとっている専門機関もございまして、これは例えばITUとか万国郵便連合とかあるいはWIPO、世界知的所有権の機構等がございます。これは伝統に基づくところがございまして、したがいまして、やはり伝統を踏襲しておるという点が一つございます。もう一つは、しかしそうは言うものの、やはり発展途上国に対して配慮をしなくちゃいけないということから下方修正を行っていまして、現に下方修正に応じました国というのはかなりあるわけでございます。
  61. 立木洋

    ○立木洋君 それはよく知っています。
  62. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いろいろと問題はありますが、全体的に我々もアメリカといつも話しているんですが、アメリカが二国間援助というものにウェートを移して、どうしても国際機関だとか多国間援助というものを、我々から見ておると例えばIMFだとかIDAとか、少しおろそかにするといいますか少し手を抜くという傾向が全くなきにしもあらずと私は思います。そういう意味で、私もしょっちゅう会合のたびにアメリカに対しまして、二国間援助とともに多国間援助あるいはまた国際機関への拠出、そういうものをアメリカとしてもこれまでどおり行うということが世界の平和と安定のためには必要ではないかということを強調しておるわけですが、傾向としては確かに出ておるということは、これは言えるんじゃないかと思っております。
  63. 立木洋

    ○立木洋君 時間がないので最後ですけれども、先ほど言われました下方修正の問題について言えば、国連方式でいきますと〇・〇一%の分担が七十二カ国あるでしょう。八分の一単位まで下げたといいましても、四分の一単位が〇・〇六でそしてこれが三十四カ国、八分の一としても〇・〇三でこれがやっぱり三十四カ国、六十八カ国が、下方修正されたとしてもそれが限度ですから。だから、それは努力されているということは認めていないのではなくて、国連方式あるいは任意選択方式、どちらがどうかということを議論しているんじゃなくて、そういう問題、傾向を今大臣にお尋ねしたわけですから。  それで、この間衆議院でも大臣が言われました。国際機関に対する拠出でアメリカの占めるウエートというのは世界で一番大きいのですから、そのアメリカが締めてきますと、どうしても連動して第二番目の日本もこれを抑えていくということにならざるを得ないわけで、そうすると国際機関からの援助総額というものがぐっと落ちてくる、こういう傾向を指摘されて、こういう立場で日本もアメリカに対しては、国際機関に対する拠出あるいはまた多国間の援助というものはこれまでどおりきちっとやってもらいたいということを再々主張してきた。アメリカとしてもこれに反省するということを述べられているわけで、この点重ねて要望しておきたいと思うんですが、よろしいでしょうか。
  64. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全く私が申し上げましたような傾向にありますから、日米間で十分協議しまして、やはりアメリカも財政的に大変厳しいわけですが、日本も苦しいわけでありまして、しかしそういう中でも多国間援助あるいは国際機関への協力、これはこれまで世界の中ではトップをずっと占めておったわけですし、これは何とかやはり世界のためにひとつやっていただきたい、こういうふうに思います。
  65. 黒柳明

    ○黒柳明君 今もお話出ましたイランの問題ですけれども、総理に会われ、また外務大臣にイランの外務大臣が会って、報道の伝える範囲ですと、イラン側の基本的な姿勢はペルシャ湾岸国に対する戦争は不拡大、あるいはホルムズ海峡を封鎖して日本を初めとする石油輸入国に対して迷惑はかけないと、当然条件はあるかと思いますがそういう基本姿勢で、言うならば、非常にイラン側の姿勢が柔軟になった、こういう報道もされておりますが、外務大臣の受け取り方は、けさのこの報道、そういうもので間違いない、こういうことでしようか。
  66. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私も二回にわたりまして隔意のない会談をしたわけですが、そして随分詰めてみましたが、イランが戦争に対する基本的な主張を変えたとは思えないわけなんですが、しかしホルムズ海峡あるいはまたイランの言うペルシャ湾あるいは湾岸諸国、そういうものに対する配慮というものはにじんできている、出てきておるというふうに私は感じとして受け取ったわけでございます。今までは相当やはりこの点についてもきつくて、イラクがカーグ島を爆撃して相当大損害を受けたならばもうホルムズ海峡は封鎖するんだ、こういうふうなことまで言っておったんですが、このイランの石油施設が全滅をするというふうなことにならない限りはこの封鎖はしない、あるいはまた、戦争の拡大はあそこではしないんだということをはっきり言っておりますから、それなりに多少イランも、そういう点では国際関係、そして戦争の拡大、それによるところの大きい戦争への転化というものをやはり心配しておる、こういう感じは率直に持ったわけであります。
  67. 黒柳明

    ○黒柳明君 そうすると、外務大臣が過去二回会われて三回目ということですが、前よりは相当姿勢が柔軟的になってきた、こういうふうに感ずると、これは間違いないわけだと思いますが、ただカーグ島に対する攻撃が今後は残された問題で、全面的に施設が破壊ということもこれは戦争ですからどういう条件が今後出てくるかわからないと思いますが、カーグ島に対してもけさの報道のとおりだったわけでしょうか。今までは、攻撃されたらば報復するということだったが、全面的な施設の破壊にならない限りはと。そうすると、全面的というのは九九%なのか八〇%なのか、カーグ島がどのくらい破壊されたらばどうなるのか。こういうことは、輸入国である我が国では、これは非常に業界などの関心事で、きのうあるいはけさあたりも、ちょっとこんなことを聞いてくれやなんというような、これはプライベートな話なんかもちょっとあったくらいですが、全面的に破壊というこのニュアンスが、イラン・イラク両国戦争の中でどの程度の許容量があるのか、こんなようなことが、非常にラフな言葉の中で知りたいんだ、心配だなと。外務大臣の感触はいかがでしようか。
  68. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私もとことんまで詰めたわけじゃないんですが、去年行ったときとやっぱりニュアンスで変わってきている。これは戦争を遂行するということについての信念は不動なものがあるわけですが、しかし事、ガルフの問題、あるいはまたホルムズ海峡の問題になりますと、去年は、もうやられたらやるんだ、こういうことでしたけれども、今度は慎重な言い回しといいますか、そういうニュアンスを持ったような、全壊するまではとか、そういう言い方になってきましたから、相当その辺には柔軟性といいますか慎重な配慮といいますか、そういうものがうかがわれるというような感じを持ったわけなんです。
  69. 黒柳明

    ○黒柳明君 かつては日本がイランとイラクの仲介の労をとったことがあるわけですけれども、イラン側は、今の時点においてやっぱり全面的に日本に仲介の労をとってもらいたいというような意思表示はされたんですか、あるいはそういうニュアンスはありありと見えるんですか。
  70. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、仲介とか調停は日本はやる立場にはないと。そこまでやるということになると大変なことですからやる立場にはないけれども、しかし、日本紛争の拡大防止、あるいはまた、平和環境をつくるためには日本なりの努力をしてみる、特に日本はイランだけじゃなくてイラクとも非常にいい関係にあるから、そういう立場で努力をするんだということを主張して、日本のこの主張というものは本当に心の底から出たものだということを強く言ったわけですが、これに対してイランの外相は、とにかく日本はかってもそうだったけれども、今日もイランに対して何らの政治的な野心も持っていないし、あるいはヘゲモニーを握ろうという気持ちも持っていない、善意から出た日本の平和への強い要請というものは我々はこれをしっかりと受けとめると、こういうことでありまして、これはアルジェリアの例を言っておりましたが、やっぱりアルジェリアもそういう立場で我々に対して平和を呼びかけておる、だから、アルジェリアと同じように日本も善意な立場でやっていただいておるんだからそれはそれなりに我々もひとつあなた方の好意は受けますと、しかし我々は戦争の目的はそう簡単に変えるわけにはもちろんいかないと、こういうことでした。  前回行ったときよりは今回の方が私もちょっとざっくばらんに言いましたし、強く平和を主張したわけです。それに対する受けとめ方は前よりは相当何といいますか、日本の忠告はありがたく聞きますよ、そして考えるところは考えましょうというふうなニュアンスもどこかに出ているような感じがして、これはやはり日本としてもさらに努力をしなきゃならぬと、こういうふうにも思ったわけであります。日本はイランに対しても自制を求めておるわけですが、イラクに対しても自制を求めておりまして、イラクの外務大臣も呼んでおりますから近く恐らくお見えになると思いますが、そういう際にはイランとの交渉の経過を説明すると同時に、イランにも自制を求める以上はやっぱりあなた方もひとつ自制してくださいということを、日本が一番両国に対して主張できる立場にありますからそれはぜひともやりたいと、こういうふうに思っております。
  71. 黒柳明

    ○黒柳明君 けさの外務省首脳談として、安倍外相の招待によってイラク外相も近日来るだろうと、あれは間違いないわけですか。見通しはいつごろなんですか。
  72. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 間違いがあるかどうかわかりませんが、同時に招聘しておりましてイランの外相もやってきましたし、情勢から見るとイラクの外相も恐らく来るような環境に――具体的にいつという日にちはまだ決めておりませんが、来られそうだという感じは出ております。
  73. 黒柳明

    ○黒柳明君 なるほど、同時招聘してイランが先に来てイラクの方はまだ意思表示はないけども近々中来るだろうということで、わかりました。  やっぱり靴の底から足をかくようなことよりも、朝鮮半島の問題のみならずむしろこのイラン・イラク戦争の方がこれはもっと日本に現実的なマイナス要素が時によってはあらわれる可能性があるわけでありまして、仲介とか調停とか、こういうものは当然我が国の立場からとれないということも重々承知でありますが、先ほど言いましたようにこれは戦争でありますし、私も在日のイラン、イラクの外交官、大使館とはいろんな話を双方から聞いてつき合いもしておりますけれども、やっぱり当事者同士というのはいざとなりますと、全面的に損害を与えられたらという条件が果たして生きるかどうかという非常に不安な感じもしない面もありません。ひとつぜひともイラクの方から早く来ていただくような方向で、それから両者いつの日か安倍外務大臣中心に会っていただきまして、中曽根さんも安倍外務大臣はよくやった、もう次期は間違いないと、こういうようなひとつ言質も、これはもう重大問題ですからお願いしたいと、こう思います。  それから、同じような他国の問題ですが、何か外務大臣が七月訪韓というような報道も二、三日前に出ておりました。これはまだ決まっていないとは思いますが、あるいはそのような時期にお出かけになるという大臣のお考えはあるんですか、あるいはもう決まっているんですか。
  74. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは最終的には決まっておりませんが、日韓の定期外相会議で去年は日本でやりましたからことしは韓国でやらなきゃならぬ、こういうことで大体七月あるいは遅くなっても八月までには定期外相会談を開きたい、こういうことで向こうに今話はしております。日にちの方は詰めてはおりませんが、七月の初めごろになる可能性は相当あるんじゃないかと思います。
  75. 黒柳明

    ○黒柳明君 今回の定期外相会談はちょっと従来と情勢が変わっているというような感じもいたしますし、またオリンピックの統一チームは残念なことに物別れみたいな感じになっちゃったんで、先委員会で、これができれば結構なんだ、難しいけれども大臣はおっしゃっておられた。大臣がおっしゃるその口の下からもう両方が一応分裂と、こういうようなことで残念ですけれども、訪中のときにはたしか総理が余りこの問題に突っ込みたくないんだと、こうもおっしゃいましたけれども、やっぱりイラン、イラクの問題も大変ですけれども、朝鮮半島の安定は我が国の安定に重要な関係があると、こういう自民党政府の一貫した姿勢は変わりないと思いますし、余りかかわり合いたくないと、こういうわけにもいかないんじゃないかと思います。サミットにも行かなきゃならないし、あるいは訪中の問題も総理はありますし、いろいろ外交日程が忙しい中での定期会議というのはこれは既定方針どおりとして、日にちは決まっていなくても決まっているわけでありますので、やっぱり政府としても外務大臣としても、いわゆる三カ国とか四カ国とかこういう問題、石橋委員長がアメリカに行ってこの問題でアメリカと各方面この問題一色で話し合っているという報道も出ておりますし、南北当事者がまず真剣に話し合うと、米中がそのサポート役と、こんなこともアメリカから伝わっておりますけれども、今回の外相会議ではこれは当事者同士が会うわけですから、あれは余り関与したくないということは当然言うわけにもいきませんし、そうするとやっぱりその問題で話し合いが出なきゃならないし、また出さなきゃならない立場にもあるかと思いますけれども外務大臣、そのあたりの考え、これは七月だからちょっと早いのかなという気はしますけれども、さんざん出た問題でありますし、もうちょっと具体的な朝鮮半島問題に対する日本政府としての構想、これを固めなきゃならないんじゃないかと私思うのですが、いかがでしょうか。
  76. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは当然私は避けては通れないことだと思います。したがって、表にどれまで出せるかわかりませんが、日韓の外相会談では朝鮮半島の情勢の問題あるいはまた緊張緩和の問題、統一の問題、そういうことを含めて最近の動きから日本考えはこうだ、あるいは韓国の考えはこうだ、情勢判断はどうだといった点について率直な意見の交換をしたいと思うわけです。幸いにしてそのころにはオリンピックも始まっておりますし、あるいは中韓の交流というのが、スポーツの交流で直通電話まで引かれたなんというような事態に入りましたからこれはいい方向に進んでおりますし、その辺がどういうふうに展開していきますか、あるいはまた北と南のスポーツの交流も第一回目は失敗しておりますけれども、両方とも今度は余韻を残した別れですからまだ可能性は全然切れておるわけではないと思いますし、そういうことを見ますと、七月ごろにはいろいろの面で展開も出てこないとも限りませんし、そういうものを踏まえてひとつじっくり話し合ってみたいと思います。
  77. 黒柳明

    ○黒柳明君 南北が当事者ですから当然南北がその気になって一生懸命熱意を示さなきゃならないんですが、やっぱりその中で何かのサゼスチョンがあれが、何かの仲介役なり何かの緩衝地帯があれば南北もより話しやすくなるという、これは両方とも統一を望んでいないわけではないし、やっぱり発言の中、態度の中では話し合いをしようというようなことも見えているわけですから、当然日本なんか米中よりも今日的状況においてはやっぱり南北の仲介役なり対話の接着剤にならなきゃならない立場であることはこれは間違いないと思いますけれども、そのためには何か別に何の提案をしろと、こういう必要もないかと思います。提案すれば、三じゃだめなんだ、四なんだ、それじゃ六だなんていうような数字遊びみたいになる可能性もありますし、ですから、余り関与したくないんだということも不見識だし、日本政府の今までの朝鮮半島をめぐる姿勢としてはおかしな姿勢ですし、かといって何となくというのもこれはうまくないと、こんな感じもします。各国が、当事者がいろいろな提案みたいな真剣な姿勢を――数字遊びみたいな感じには結果的にはなっていますけれども各国がそういう提案をする中で何か日本は余り深く関与したくないとか、そういう姿勢を持っていることが果たしていつまでこれは貫けるのか、あるいはそれでいいのかということは私は非常に疑問です。いい面での、もっともっとやっぱり数字遊びじゃないような提案なり具体的姿勢なりを示さなきゃうまくないと、こういうふうに思います。  それから、社会党の委員長が、社会党は北に強いし南は自民党政府が強いから朝鮮半島は日本は強いんだと、こんなことも言ったとか言わないとか、こう活字になっておりますけれども、どうですか外務大臣。この際、与党も野党もありませんから、何かアメリカに行くのにも相当中曽根総理なんかも関心を持っていたし、野党の第一党とは言いながら、アメリカの国務省が案内を買って出たりなんかして、私も何十回かアメリカヘ行って相当アメリカとは仲がいいはずですが、野党でも社会党は第一党ですからこれは我が公明党とは月とスッポンですけれども、国務省が先頭になって案内するなんということはこれは異例です。相当やっぱり高くアメリカも社会党の訪米を評価していると、こう思いますよ。  そうなりますと、北と南に強い日本が、この際与野党抜きにして朝鮮半島問題に取り組んでも、それこそ中曽根さんの、あるいは民社党さんの政策協議以上のものができるんじゃないですか、ひょうたんからこまに、どうですか。
  78. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは確かに日本にも政党は自民党、社会党、公明党、民社党、共産党それぞれありますし、それぞれの立場で政党活動あるいは政党外交をやっておるわけですが、政府一つですから、そういう中で日本政府考えとして朝鮮半島についてはこれは前々から一貫した主張と構想を持っているんでこれは何回も申し上げておりますが、やっぱり南北のまず対話が前提だと、そういうところからいろいろの可能性というのは生まれてくるんで、まずこれをきっちりする必要があるということはずっとこれは言い続けてまいっております。最近ではいろいろと非政治面での対話も、オリンピックの話じゃないんですが少しずつ出ようという空気でありますし、それから中国なんかがいろいろと動いておると、こういうこともありまして、状況は決して悪い方にいっているんじゃなくてむしろ可能性が出てくる面もないわけではないと、こういうふうに判断しております。  しかし日本の場合は、北朝鮮との方はこれは政府としては残念ながら外交関係を持っておりませんので、それは民間の方でいろいろとやっていただいておるわけですが、全体を総合して何とか政府としては南北の対話が進むと、そして南北の緊張を緩和してというところでずっと事態が動いていくことを心から期待をして、そのためにもまた表向きの努力その他いろいろの側面的な努力というものをやっていきたいと、こういうふうに思っておるわけです。
  79. 黒柳明

    ○黒柳明君 私どもは公明党ですから、社会党さんと比べると非常に力がない政党ですから、それは何も大自民党、野党第一党の大社会党、その間に入る必要はないんですけれども、やっぱり中曽根内閣としては、あるいは中曽根総理としてはと言った方がいいんでしようか、政策協議あるいは対話なんというもの、教育問題についても行革についても進めておりますが、安倍外務大臣としては、中国に行ってもどこへ行ってもやっぱり中曽根さんの陰に隠れちゃって、失礼ですけれども、テレビヘ出てこないかなと待っているんですけれども、半分眼鏡だけ見えて、あ、いなくなっちゃったなんというようなことで、ああこれは寂しいなという、私、安倍ファンとしてこういう心境を持っているわけでございますけれども、何も野党、与党問わずいいことはこれはやること、これは安倍外務大臣の本来の基本姿勢だと、こう思いますので、非常に難しい点もありますけれども、しかもいろいろな各国が絡んでいる問題ですけれども、やっぱり政策協議だなんということよりも、こういう具体的な国際問題というものは何らかのちょっとしたところで話がぐっと好転する可能性が幾らもあるんです。私がこんなくだらない知恵を振り回す必要はないんですが、またそのちょっとしたものが必要なのが国際問題なんです。国内問題というのは根回しをしながら、じっくり話しながらと、こういう過程が必要なんですよ。  国際問題というのは、ひょっとしたものが思わぬものに発展するという可能性があるわけですよ。この南北朝鮮問題で政府と野党第一党の社会党との対話を公明党の黒柳が仲介の労をとったと、こんなことになったらこれは大変なことになりますんですけれども、こういうことをやっぱり真剣に考えることも含めて、私はこの朝鮮半島問題について政府・自民党が、やっぱりもっと抽象的でなくて具体的、それから引っ込み思案じゃなくて積極的、こういう姿勢をとっていくのが今までの政府の朝鮮半島に対する関心じゃなかったのかと。それがどうも関心があるにつけ発言や態度が消極的だと。ひとつ安倍外務大臣外交を積極的にやっぱり推進してもらいたい。済みません、変なことを言って。  それで、昨日のアメリカの国防総省、ワインバーガーが発表しました、レーガン政権で三回目ですけれども、ソ連の軍備状況というのは、けさのある社説を見ますと何で今どきソ連は軍備拡張なのかという、こういう社説なんかも出ておりましたけれども、どうですか外務大臣。アメリカの発表が一方的じゃないんですよ。やっぱり間違った発表はしてないという感触が強うございますので、非常にソ連の軍備拡張というものが、アメリカの国防総省を通じてですけれども、量的にも質的にも拡大化されるという感じがしますが、大臣、ごらんいただいてどういう感触をお持ちでしようか。
  80. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今御指摘がございましたこの資料は、これは米国防省のソ連の軍事力に関する第三版公表資料と、こういうことでありまして、一九八一年九月及び一九八三年三月に引き続いて公表されたものであると聞いております。  本件資料は、必ずしも米国の対ソ戦略に直接言及しているものではなくて、ソ連の軍事力の現状につきまして、できるだけ広くこれを明らかにしておるということの考慮から作成されたものであると承知しております。  今度の資料は、構成面を初め、基本的には従来の版を踏襲しておるが、ソ連の兵力、装備等に加え、新たな要素としてはソ連の軍事機構、意思決定メカニズム等機構面についても記述が存在をしております。また、有人宇宙ステーションあるいは特殊部隊等、従来記述が見られなかった分野についても説明していること、あるいは継戦能力、即応態勢等についても言及していること、対ソ技術流出についても従来よりも詳しく説明していることが特徴として挙げられると思いますが、またSS20につきましてもその総数は三百七十八基とされておりまして、そのうち極東方面には百三十五基が配備されておると、こういうふうに承知をいたしておるわけでございますが、いずれにいたしましても、全体的にソ連の軍事力が極東においては特に強化をされておるという感じをアメリカの国防報告のみでなくて我々は感じておるわけでございまして、なぜソ連がそこまで軍事力を強化しなければならないかと、その点について私も理解のできない点がございますが、今後とも十分検討してまいりたいと思います。
  81. 黒柳明

    ○黒柳明君 顕在的脅威と言わなくとも、潜在的脅威から準顕在的脅威ぐらいにだんだん変わりつつありますか。
  82. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全体的に見れば潜在的脅威と、こういうことだと思いますが、しかし、その潜在的脅威がSS20の百三十五基さらにこれが百四十四まで増強されるという既定路線があるようですから、潜在的脅威もますます厳しいものになってきたと、こういう感じを持たざるを得ないわけです。
  83. 黒柳明

    ○黒柳明君 準顕在とはまだ言えないですか、まだ潜在がだんだん強くなっているという程度ですか。
  84. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) パターンとしては潜在的脅威。
  85. 黒柳明

    ○黒柳明君 まだ潜在ですか。  最後に。特にSS20を何か八〇年代の後半までに――八〇年代の後半というとあと二年で後半に入りますね、遅くとも六年。それで五〇%ふやすと言うんでしょう。ヨーロッパにふやすことについては、これは直接的な問題じゃないんで可否はできませんけれども、なかんずくアジア、百三十五、まあ四十四になっているんですか、その五〇%、同じ量だけふやすと、これは二百を超えるわけですよね。何のためにか、これはきょうの社説のみならず、あるいは大臣の話のみならず私たちも非常に疑問を持ちながらも、対米姿勢が大きくやっぱりソ連のそういう姿勢にあらわれているのもこれも間違いない。ですからこのままに行きますと、この前も言いましたけれども、ヨーロッパのINF交渉、STARTなんというものじゃない、何もアジアにそういうパイプがない中で、非常に米ソの顕在的な核の力がもういや応なしに表面に上がってくる。その一つの象徴がSS20、それを五〇%もふやす、こういうことです。こうなりますと、潜在、潜在なんて言っちゃいられなくなっちゃう。それじゃこれ、どうするのか。これは米ソが核を何とかしなきゃならないんだ、こういうパターンなんです。ですけれども内容的にはそんなに変わりはない。しかし、変わっている面も相当あるわけですね。なかんずくSS20の五〇%の増加なんというのはごれは変わっているもいいところなわけです。大変もいいところなわけです。それを踏まえると相当やっぱり日本政府としても中期的な将来に対する見解というものを固めなきゃならない、考え方も従来とは変わらなきゃならないというような感じがしますが、一言最後に。
  86. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) INFの問題はたかが日本だけでもちろん片がつく問題ではなくて、基本はやっぱり米ソの核軍縮交渉、INF交渉にゆだねるというのが今日の世界的な姿なんですが、そういう中でINF交渉はあくまでもグローバルで、これは西側の部門もあるいは東の方も含めた全地球的な面でこの交渉が行われるべきであるというのが日本の姿勢でありまして、我々としても、今のこの極東における百四十四という非常な配備の増強については憂慮せざるを得ないわけで、そういう面からも、INF交渉が中断しておりますが、一日も早い再開というのを心から念願をし、そのためにやはり積極的にアメリカにも働きかける、同時にまた交渉の場を通じてソ連にも、ソ連が交渉再開に決意することを強く求めたいと、こういうふうに思っております。
  87. 黒柳明

    ○黒柳明君 どうもすみません。
  88. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 三件に対する質疑は本日はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後零時三分散会