運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1984-04-06 第101回国会 参議院 外務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年四月六日(金曜日)    午前十時七分開会     ―――――――――――――    委員異動  四月二日     辞任         補欠選任      幌原 敬義君     久保田真苗君  四月五日     辞任         補欠選任      秦   豊君     前島英三郎君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         後藤 正夫君     理 事                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 松前 達郎君                 抜山 映子君     委 員                 大鷹 淑子君                 嶋崎  均君                 夏目 忠雄君                 秦野  章君                 原 文兵衛君                 平井 卓志君                 久保田真苗君                 八百板 正君                 黒柳  明君                 和田 教美君                 立木  洋君                 関  嘉彦君                 前島英三郎君    国務大臣        外 務 大 臣  安倍晋太郎君    政府委員        防衛庁装備局長  木下 博生君        外務大臣官房長  枝村 純郎君        外務大臣官房審        議官       都甲 岳洋君        外務大臣官房外        務参事官     有馬 龍夫君        外務大臣官房外        務参事官     斉藤 邦彦君        外務大臣官房会        計課長      林  貞行君        外務大臣官房領        事移住部長    谷田 正躬君        外務省アジア局        長        橋本  恕君        外務省北米局長  北村  汎君        外務省中南米局        長        堂ノ脇光朗君        外務省中近東ア        フリカ局長    波多野敬雄君        外務省経済局長  村田 良平君        外務省経済局次        長        恩田  宗君        外務省経済協力        局長       柳  健一君        外務省条約局長  小和田 恒君        外務省国際連合        局長       山田 中正君        外務省情報文化        局長       三宅 和助君    事務局側        常任委員会専門        員        山本 義彰君    説明員        外務大臣官房調        査企画部長    岡崎 久彦君        農林水産省経済        局総務局長    片桐 久雄君        食糧庁業務部輸        入課長      重田  勉君        通商産業省貿易        局為替金融課長  植松  敏君        通商産業省機械        情報産業局航空        機武器課長    渡辺  修君        運輸省海運局外        航課長      寺嶋  潔君        労働大臣官房国        際労働課長    中村  正君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件昭和五十九年度一般会計予算内閣提出、衆議  院送付)、昭和五十九年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付)、昭和五十九年度政府関係  機関予算内閣提出衆議院送付)について  (外務省所管)     ―――――――――――――
  2. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る二日、梶原敬義君が委員辞任され、その補欠として久保田真苗君が選任されました。  また、昨五日、秦豊君が委員辞任され、その補欠として前島英三郎君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 去る四月三日予算委員会から、四月六日及び七日の二日間、昭和五十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管について審査の委嘱がありました。  この際、本件を議題といたします。  安倍外務大臣から説明を求めます。安倍外務大臣
  4. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 昭和五十九年度外務省所管一般会計予算案概要について御説明申し上げます。  外務省予算総額は、三千七百八十六億六千三百六十万八千円であり、これを昭和五十八年度予算と比較いたしますと、百九十五億二千五百六十八万八千円の増加であり、五・四%の伸びとなっております。  一段と厳しさを増す国際情勢のもとにあって、近年国際社会における地位が著しく向上した我が国が、世界の中の日本として各国からの期待にこたえてその地位にふさわしい国際的役割を果たし、積極的な外交を展開していくためには、外交実施体制を一層整備強化する必要があります。この観点から、昭和五十九年度においては定員機構拡充強化情報機能強化在外公館勤務環境整備等格別配慮を加えました。特に、外交強化のための人員の充実外務省にとっての最前要事項でありますが、昭和五十九年度においては、定員八十六名の純増を得て、合計三千七百九十八名に増強されることになります。  また、機構面では、本省においては情報調査局外務報道官文化交流部国際報道課等を設置し、在外においてはブルネイに大使館を開設することが予定されております。  次に、経済協力関係予算について申し上げます。  経済協力は、平和国家であり自由世界第二位の経済力を有する我が国世界の平和と安定に寄与するための主要な手段の一つであります。中でも、政府開発援助の果たす役割はますます重要なものとなっております。このため政府は、五十六年から六十年までの五年間にわたる中期目標を設定し、経済協力強化に努めております。そのような努力の一環として、五十九年度予算においては、無償資金協力予算を前年度より七十五億円増の一千六十五億円としたほか、技術協力関係予算充実にも努め、なかんずく国際協力専業団交付金を前年度比八・二%増の七百七十七億円とした次第であります。  また、各国との相互理解の一層の増進を図るための文化人的交流予算についても、格段の手当てを講じております。  このほか、海外で活躍される邦人の方々最大関心事一つである子女教育の問題については、全日制日本人学校二校の増設を図るなどの配慮をいたしております。  以上が外務省関係予算概要であります。  よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  5. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 以上で外務大臣説明は終わりました。  この際、お諮りいたします。  外務省所管昭和五十九年度予算大要説明はこれを省略して、本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 宮澤弘

    宮澤弘君 五十九年度の外務省所管予算質疑に入ります前に、当面の問題二、三について承りたいと思います。  まず第一番目は、日米農産物交渉でございますが、けさのニュースによりますと、予定を延長して交渉をしている、こういうことでありますけれども、今までの交渉の経過を御報告いただきたいと思います。
  8. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 農産物交渉につきましては、山村農水産大臣ブロックUSTR代表との間で、これまで二回にわたりまして交渉が続けられておるわけでありますが、まだ目下のところ全く四つに組んだというところで、予断を許さないという実態、実情であります。あす金曜日にもう一度やるということで合意を見たようでありますが、金曜日の会談がやはり日米農産物交渉最大山場になると、私はこういうふうに思っております。  大体今までの状況では、アメリカ側のオファーも出てまいりましたし、また日本の方の考え方も整理をしてアメリカに述べておるわけでございますし、その間にはもちろん開きがあるわけでありまして、ですから大変厳しい状況にはあります。率直に言って予断を許さないということであろうと思いますけれども、しかし、これはアメリカに弾力的に歩み寄る可能性があるかどうかというところに私は今かかっておるんじゃないかというふうな判断もしております。  アメリカは非常にきつい態度ですけれど、しかし反面、この交渉妥結に導かなきゃならぬというふうな空気もあるように見受けられるわけであります。ですから、あすの会談を控えて今どうなる、こうなるということをここで申し上げる段階にはありませんけれど、交渉としては、山村農水大臣誠意を持って交渉に当たり、またブロックさんも熱意を持ってこれに当たって、その間に両省とも妥結の意思というものが非常に強く出てきておりまして、交渉の内容については大変厳しいものでありますけれど、しかし、交渉雰囲気は非常に何かこう誠意に満ちたような空気を私は受ける。そうけんか腰ということじゃなくて、非常に冷静な中でお互いに言うべきことは言っておる、こういうことでありますが、まだ今のところはあしたの交渉山場で、ここでどうなる、こうなるということを申し上げる段階ではありません。いずれにしても厳しい、まだ対立点は相当あるということであります。
  9. 宮澤弘

    宮澤弘君 大臣、一月ですか、アメリカヘ行かれたときにこの問題でいろいろ接触をされて、アメリカの方も大分柔軟になっているという感触を得られて、明るい見通しを持てるんじゃないかというような見解を御発表になっておられますけれども、今の段階ではそういう感触といいますか、見解、さらに強くお持ちでございますか。
  10. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私が行ったときよりはアメリカ態度としては大分弾力性が出てきた、こういうふうに思います。私が行きましたときは全く事務折衝は決裂して、再び事務的に会って話をするというふうな状況雰囲気ではなかったわけですが、私はそれではいけないと。三月三十一日に切れるわけであって、事務的にもう一回話をする、それにはやはりアメリカにも弾力性を持ってもらいたい、日本もこれに対して弾力性を持つことが必要だということを強く主張したのであります。  同時にまた、アメリカとしては自由化の旗をおろせないかもしれぬけれど、今、日本自由化を直接求めるとか、自由化日程を示せ、こんなことを言われても、日本側としては到底自由化に対してはこれは応ずることができない。やっぱり枠でアメリカも勝負をしてもらいたい、話し合いに応じてもらわなければならぬ。自由化主張はわかるけれども、これはわきに置いて枠の問題で処理すべきじゃないかと。そして枠についても、今までアメリカが言っているような枠からさらに弾力性を持って日本側交渉する必要があるんじゃないかと。そうしないとこれは意味のない交渉になるということを強く言いまして、アメリカ自由化問題については理解を示しましたし、同時にまた、枠の問題についても大所高所から多少弾力的にこれは応じましょうという空気が見えたものですから、これなら事務当局で話をして、最終的には両方の大臣を通して話をすれば決着――非常に難しい問題だけれども決着可能性はないわけでもないと。お互い努力をすれば可能性というものは出てくるというふうに判断をして帰りまして、そういう面でその後努力をいたしてまいったわけでございます。  そして党・政府においても、全体的にはいろいろと協議をいたしました結果、最後の段階でやはり山村農水大臣派米させて、そしてブロック代表との間で話を詰めることが適当であろうと。その段階においてやはりアメリカの弾力的な対応を望む、そして何とか決着をしよう、こういうことで今回の派米になったわけであります。  そういうことで、一月の当時と比べるとアメリカとしては相当譲ったと。自由化を横に置いたと。あるいは自由化日程についても日本に対してこれを責めないと。枠の問題だけで勝負するんだから、アメリカからすれば、アメリカは随分これは譲りに譲ってきたんだから、もういいかげんに日本に譲ってもらいたい、アメリカの枠に対する主張は認めてもらいたい、こういう気持ちがあるわけですね。ですから、アメリカとしては大変強い態度でありましたが、例えば十三品目等について、これはガットにかけておるわけですが、これを取り下げようということをアメリカも言っておるようですから、そういうところを見ると多少アメリカにもそういう何かまとめなければならぬという、まとめたいという感じが出てきたと。しかし、決して予断は許さないと思うわけであります。
  11. 宮澤弘

    宮澤弘君 次の問題に移りますが、昨日の新聞報道によりますと、東京舞台にして二兎スパイ事件というんですか、そういうことがあったということが明らかにされておりますが、そこで事務当局からで結構でございますが、まずこの事実関係を簡単にひとつ御報告いただきたいと思います。
  12. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 政府としましては現在情報の入手に努めております。事実関係調査はまだ確認中でありますが、なお四日付のFBI新聞発表においては、米陸軍情報保安司令部の元部負で、ワシントン州ベルビュー在住のリチャード・クレイグ・スミス(四十歳)が本日ダレス国際空港にて逮捕された旨、また裁判所に提出された書類においてFBIは、スミスが一九八二年十一月、東京ソ迦通商代表部内においてビクトル・I・オクネフに会い、INSCOMの二重エージェント作戦、いわゆるソ連側の二重エージェントを摘発する作戦、この二重エ-ジェント作戦であるロイヤル・マイター作戦に関する機密情報を渡し、オクネフから一万一千ドルを現金で受け取ったことを認めた旨、FBIは、オクネフソ連情報機関KGB情報将校であると述べた旨が明らかにされておるところでございます。
  13. 宮澤弘

    宮澤弘君 この問題は、FBIから事前日本政府に連絡がございましたか。それからもう一つ我が国も独自にやはり捜査というんですか、調査すべきだと思いますけれども、その辺はどうなっておりますか。
  14. 都甲岳洋

    政府委員都甲岳洋君) 本件につきましては、FBIアメリカにおいて発表いたしましたと同時に大使館通報がございましたので、必ずしも事前通報があったということではございません。後者についてはちょっと私……
  15. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは日本が独自に調査するというか、外務省の担当するべきものかどうか――いろいろと問い合わせ、照会等、そういう意味での調査はしなきゃならぬと、こういうふうに思っておりますが、いわば東京舞台ですけれども日本が直接関係のないことでありますし、ただしかしどういう案件になりますか、捜査当局等とも相談はしなきゃならぬと思いますけれども外務省が実際直接に捜査するという、そういう筋合いのものじゃないと思います。
  16. 宮澤弘

    宮澤弘君 おっしゃるように、我が国と直接関係のない機密をめぐっての外国人同士の問題であったことは事実ですけれども東京舞台で行われた、これもまた事実でございますね。  そこで、この問題で日本政府として今後いかに対応をされるかということを伺っておきたいと思います。
  17. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おっしゃるように、現在事実関係の詳細とか、あるいはまた我が国国内法令関係等について調査検討をしておるところでありますが、仮に御指摘の点が、またFBI発表していることが事実であるという場八口には、我が国国内法令に抵触しない場合でありましても、いわゆる右の行為外交官としてふさわしい行為であるかどうか、外交官としての品位の問題といいますか、外交官にあるまじき行為であるかどうかと、こういう観点から外務省としては検討といいますか、対応していかなきゃならぬ、こういうふうに思って今その対応策についていろいろと事実関係等を調べておるところです。
  18. 宮澤弘

    宮澤弘君 そうされますと、その事実関係等調査された上で今おっしゃったような条件に当たれば、例えば外交措置として国外追放国外退去を求めるというようなことも考えられる、こういうことでございますか。
  19. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 国外退去というのはそれなりに正当な理由がないといけないわけでございますが、この行為がそうした正当な理由に当たるかどうか、いずれにしてもそういう点も踏まえてしかるべき外交措置というものはとっていかなきゃならぬと。果たしてそういうところまでいくかどうかということを、これから少し検討してみなきゃならぬと思います。
  20. 宮澤弘

    宮澤弘君 それでは次に、五十九年度の予算の問題で幾つ質疑をいたしたいと思います。  先ほど外務大臣の御説明にもありましたように、まず外務省重点事項であります外交実施体制の問題について幾つか伺いたいと思います。  最初に定員の問題ですけれども、御説明の中にも今回八十六人ですか純増が行われている。こういう行革の大変厳しい時代に八十六人増員が行われたということは、大臣初め関係者方々大変努力をされたことだろうと思いまして、大いに敬意を表したいと思います。しかし、それにいたしましても、かねて外務省が考えておられる五千人体制、なかなかこれは大変なことだろうと思います。それにつきまして、ことし五十九年度は大変御努力なすったことは、これは大いに評価をしたいのでございますが、同時に五千人体制をいかに今後実現をしていくか、実現をしなければならないと思いますが、これにつきましての大臣決意と申しますか、御所信を承りたいと思います。
  21. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 外務省のいわゆる外交実施体制強化につきましては、本委員会を初め各方面の大変な御理解も得ておるわけであります。また、今回の五十九年度予算編成に当たりましても、政府の全体的な同情、支援も得ましたし、また与党の協力も得まして、外交実施体制強化しなきゃならぬと。大変財政が困難である、また定員はむしろ削減をしていかなきゃならぬ、こういう時代でございますが、外務省についてはこれだけの世界の中で日本国際化が進んでおる、そして今の状況から見ると、外務省予算あるいは定員等は余りにも貧弱である、こういうことで大変な各方面の御支援を得て、今お話もございましたし、私が説明いたしましたように八十六名の純増を得たわけでございます。これはこれまでにない、わずかではありますが、伸びでございました。  また予算についても、一般歳出が厳しい中で五%以上の伸びを得ることができたわけでございます。しかしそうはいっても、定員が八十六名ふえて三千七方九十五人と、こういうことになるわけで、外務省あるいは政府として目標としている五千人の定員体制には到底及びもつかない。この五千人になるにはちょっと気の遠いような時間がかかるのじゃないか、このままいけば。しかし私は、いつまでも財政再建時代があるわけじゃないんですから、これを克服すればまた飛躍的に伸びるということもあり得るだろうと、こういうふうに期待もするわけで、これからの努力次第によっては夢では決してないと思います。したがって、五千人体制目標はこれは目標として、そのために着実に毎年毎年定員を仲はしていく、そのための御支援を各方面に力強く訴えていく、こういうことで努力を傾けてまいりたいと、こういう決意であります。これは全省の悲願でありまして、当委員会でもいつも御激励をいただいておりますが、何とぞひとつ変わらない御支援のほどお願いを申し上げる次第であります。
  22. 宮澤弘

    宮澤弘君 私どもも大いに御協力を申し上げますから頑張っていただきたいと思います。  そこで、人の問題は量の問題もございますけれども、同時に質の問題もありまして、限られた定員の中でいかに活力を発揮していくかということがポイントだろうと思います。そういたしますと、一つは、今おられる方々が活発に動けなきゃならないということになりますと、旅費の問題がかねてから懸案の問題でありましたけれども、承りますと、旅費法を今回改正される、大変結構なことだと思います。今までのお話を聞きましても、あれは昭和五十年以来八年間据え置きですか、そういうことで本省課長補佐が海外出張しても一口一万円ぐらい足が出る。また私ども在外公館へ参りましても、大使が一回管外へ出張すると、あと半年くらいは館員がどこにも出られないというような話をよく聞きますけれども、こんなばかなことはないので、在外の方が筒内の事情を知らないで仕事が勤まるわけがない。  こういうことから申しますと、今回旅費法改正される、大変結構なことだと思いますが、大体承ると平均五〇%ぐらい上がるというふうに聞いておりますけれども、これも不十分だけれども結構な話でありますが、五〇%上がれば、少なくとも総額も五〇%以上上がっていませんと今までと同じ活動は確保できないわけですね。その辺は大丈夫なんですか。事務当局に伺いたい。
  23. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) 旅費法改正につきましては、当委員会初め格別の御支援をいただきまして、御指摘のとおり政府原案でも日当宿泊料引き上げについてただいま五〇%というお話でございましたが、五〇%は若干切る、四〇%台でございますが引き上げら机、また移転料につきましても二五%の引き上げ実現を見たわけでございます。それで、これに伴う予算措置でございますが、これは日当宿泊についての引き上げでございますので、日当宿泊料というのは旅費の種類によって、例えば外国旅費でありますとか、在外職員旅費でありますとか、休暇帰国旅費、赴任、帰朝旅費、それぞれ占める割合が違うわけでございますけれども、押しなべて申し上げますと、大体一八%ぐらいがその旅費の中で日当宿泊の占める割合でございます。したがいまして、一八%の部分が今度は四割強アップになる、こういうことでございますから、全体としましては七、八%の伸びが確保されればいいわけでございます。そういたしますと、五十八年度の予算はざっと四十五億ほどでございました。それが今度五十一億弱になりますので、およそ六億弱の伸びでございます。このうち、ただいま申し上げました日当宿泊分に当たる分の改正に充てられますのが四億六千万ほどでございます。先ほど申し上げましたような数字、七、八%あれば十分だということから申し上げますと、十分その点は手当てをしていただいているわけでございます。
  24. 宮澤弘

    宮澤弘君 定員が十分ふえないまでも、今いる現員が十分に動けなければいかぬわけですから、この辺は大臣も今後十分御留意をいただき、御努力を賜りたいと思います。  次に、質の問題と関連をいたしまして、外務公務員任用の問題について少し伺いたいと思いますが、臨調の基本答申を見ますとここでも任用の問題――ちょっとポイントだけ申してみますと、外務公務員の果たす役割というのは非常に重要になってくるということ。それから、外政機能内政機能は密接な関係にあるということから、「外交面において広く人材を活用すべきであり、各省庁との間で幹部職員を含む相互人事交流を積極的に推進するとともに、民間有識者等の大公使等への起用を図る。」と、こういうことを言っておりますし、また「外務公務員人材育成に当たっては、内政省庁等勤務を積極的に経験させること」が必要だ、こういうことを申しまして、上記の観点を踏まえて、外務公務員制度の全般的な見直しを行うことが必要である、外務省自身においても検討をして、当調査会に早急に改革案を提起してほしい、こういうことを臨調の基本答申でも言っております。  それから、最終答申でもやはりそんなようなことを言っておりまして、例えば、「外務公務員採用上級試験については、試験内容等について改善する。」と、こういう提言もいたしております。  そこで、まず今言っております各省とか地方自治体との間の人事交流ですね、これの実態、それから大公使等任用を含めまして民間の交流、これの今までの実績、それから今後の見通し、これらについてひとつ簡単で結構ですから御報告をいただきたいと思います。
  25. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) それでは事実関係を整理して御報告申し上げますと、まず他省庁との人事交流でございますが、御承知のように在外公館には非常に多数受け入れておりまして、現在三百四十五名を受け入れております。これは全在外公館職員が二千百九十五名でございますが、一六%に相当するわけでございます。五十九年度にはさらに十八名を受け入れる予定にしております。また、本省につきましては、ほかの省庁より五十三名を受け入れておりまして、外務省からの派遣につきましては、他省庁、地方公共団体を含めて三十四名を派遣いたしております。また、最近新聞などでも報道されましたように、外務省から警察庁に派遣いたしまして、宮崎県の県警本部長に就任したというような例もございます。  それから、他省庁からの中途採用者でございますけれども、これはいわゆる採りきりでございます。これも積極的に進めておりまして、昭和五十一年度以降三十一名でございます。これはそれ以前に採用した人でありますけれども、例えば在ロサンゼルスの総領事でありますとか、在リオデジャネイロの総領事でありますとか、他省庁の出身の人も非常に活用しておるわけでございます。  それから最後に、官庁以外の社会経験を有する適任者、民間の方からの採用でございますけれども、これも昭和五十一年以降をとりましても八十六名に上っておりまして、これは出身母体は主として大学でありますとか国際機関でありますとか、あるいは報道関係者、それから青年協力隊とか在外公館の現地職員を登用するというようなことも進めております。こういうので特に顕著な例といたしましては、例えば現在のアジア局参事官はハーバード大学の講師であったというようなことでございますし、フランクフルトの総領事、最近カンボジア問題事務総長特別代表にまた転出いたしましたけれども、前のフランクフルト総領事は国連の職員でございます。そういう点で、民間からの登用ということにつきましては、最近の日本経済新聞の社説などにもありましたが、他省庁には余り例を見ないが、外務省は大分やっておるというようなことも書いてあったわけでございます。むしろ進んでおる、こういうふうに考えております。
  26. 宮澤弘

    宮澤弘君 大臣外交陣に活力を吹き込むためには、今の交流というものを活発にする必要があると思います。それについての御所見を承りたいのと、それから多少関連をいたしますが、女性の大公使でございますね、御婦人の。最近デンマークの高橋さんがおやめになって、後は男性が行かれたようですけれども、外国に比べまして日本は比較的少ないのだろうと思いますが、女性を大公使に任用するということについても、ひとつ御所見を承りたい。
  27. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、官房長から説明しましたように、相当外務省も積極的に、他省庁だとかあるいはその他各界から人材を登用しておるわけなんですが、しかし、これからますます外務省外交体制というものを広く国民的な基盤に置いた形で活性化していくという面では、努力する面がなければならぬとも思うわけであります。そういう点については、また人材等があれば我々としても積極的にこれを登用する方向へ努力さしたいと思っております。  婦人外交官について、高橋さんがデンマーク大使をやめられて、今ちょうど大使がいないんですね。私もよくその問題で、外務大臣、何しているかとお吃りをいただいたりしましてね、早く婦人大使ぐらいは外務省も高橋さんにかわって任用したいと、こういうふうにも思うわけなのです。また、外務省事務当局も随分心がけておるようなんですが、なかなか適材を得ないといいますか、やはり地域の問題等もありまして、その辺のところでいろいろと問題もあるようでございます。しかし、ずっとこれまで婦人大使があったわけですから、何とか近い将来に婦人大使をつくるように努力を重ねていきたいと思います。省内では大分婦人の人材は育っておりまして、公使級にはおるわけですね。ですから、もう少し時間がたてばプロパーの外務省で育った婦人外交官が大使だとかあるいは公使だとか、そういうところにどんどん育っていくだろう、こういうふうに思っているわけです。
  28. 宮澤弘

    宮澤弘君 任用の問題でもう一つ伺いますが、先ほど読みました臨調の答申でも、外務公務員採用の上級試験、いわゆる外交官試験ですね、これについては試験内容について改善をすべきであると、こう言っておりますけれども、これまでどういう改善を加えられましたか。
  29. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) この点は、外務省が上級職の一般の公務員の試験と別の試験制度を持っておるという点、これは非常に伝統的に確立しておるところでございますが、こういうことの確かにメリット、デメリットといいますか、いい点と悪い点とあろうと思うわけでございます。例えば、試験科目に外交史でありますとか国際法でありますとか、そういうやや一般の公務員の志望の方が普通にはとられないであろうような科目、あるいは語学がある程度の比重を占めておるというようなこと、そうしますと、その有為の人材が、初めからどうも変わった試験だからちょっと受けにくいという点がどうしてもある。この点が一つあると思います。  しかし他方、外務省に入る以上はある程度の、そういった外務省で働くための基本的な素養というものを持っている人を選びたいということもございます。またそれ以上に私ども最近感じておりますのは、やはり外務省というところに入って在外勤務をする、特に御承知のように、不健康地というものが在外ポストのうち現在五〇%ぐらい、それ以上になっているわけでございますから、かつテロであるとか戦争であるとかそういった危険もあるわけで、それなりの覚悟をもって、やはり自分は外交官として外務省の職員としてそういう困難にも耐えるのだと、そういう決意を持って入ってきてくれるということが必要でございます。そのためにはそういう特別の志望、やや特殊な科目であっても勉強するというふうな決意といいますか、そういったものが必要であると。この両面のバランスをどういうふうにとっていくかというのが試験制度の改革の何といいますか考え方、我我がいつも念頭に置いて、この両方が余り特殊であってはいかぬと。ただ、やはりある程度そういう任務の特殊性ということについての認識を持った人、それに適性のある人を採りたい、この両方をやっております。  特に最近はむしろそういう特殊性を排して、より一般的に受けやすいようにするという点に重点を置いております。したがって、昭和五十二年度からは外国語の中でも特別の訓練を要すると思われる書き取りの試験でありますとか、あるいは会話の試験でありますとかそういったものは廃止いたしました。現在は主として読解力とそれから文章の構成力といいますか、起案能力というものを重点に見ております。  それから、これは実は明日の官報に出すつもりでございますが、臨調の最終答申も受けまして、選択科目について今まで行政法と民法の中から一科目、それから財政学と経済政策から一科目と、法律、経済両方をとらしておったわけでございます。そうしますと、経済学部出身の人は法律を改めてやるということが非常に負担になる。あるいは法学部出身の人が経済関係でまた経済原論のほかに一科目勉強しないといけないというのは負担になるということでございますので、実はこれは両方四科目の中から任意の二科目をとればいいというふうに改正するつもりでございます。これは外務人事審議会の御了承も得ましたので、明日の官報に告示して昭和六十年度から実施することになっております。
  30. 宮澤弘

    宮澤弘君 国内にいる一般の公務員についても国際的な知識が今必要になってきていますし、また外交官についても内政の見識が必要だとこう言われておりますね。そこで世の中では、外交官試験をやめて一般の国家公務員の上級職の試験と一緒にしたらいいんじゃないか、こういう議論が依然としてあるわけです。私の記憶に間違いなければ、亡くなられた木村元外務大臣が、多分臨調にそういう意見を言っておられたと思うのですが。  そこで大臣に伺いますが、そういう外交官試験をやめてというか、国家公務員試験上級職に統合する、こういう意見についてはどうお思いになりますか。
  31. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに外交官は、最近特に国際的な認識、見識と、国内のことを十分知るという、そういう国内の知識あるいは内政に対する勉強というものが必要だとは思うわけですが、しかしこれはやっぱり一つのプロとしての仕事ですし、そういうことを考えますと、国家公務員の全体の中での一体感というのはある程度必要でしょうけれども、試験などを一緒にやって外交官をその中から選択していくというのは、私はちょっと問題もあるように思うわけですね。外交官は、ほとんど人生の大半は外国に居住するようになりますし、それから問題はやっぱり語学ですけれども、そういう語学なんかは、外交官となる人たちは、一般の公務員とは違ったそれなりの基礎的なものをきちっとやってもらわなければいかぬと思いますね。そういう面から、私はいろいろこの考え方はあると思いますが、一体の中でやるというよりは、やっぱり外交官試験は外交官試験としてやった方がいいようにも思うんですね。しかし、外交官としての心組みとか、外交官になってからの勉強とかそういうものは、もっと幅広いものを培ってもらいたい。そういう感じを私は外務大臣として率直に持つわけですけれども、試験制度を一緒にするところにはどうも問題がある。非常に素人的な議論ですが、そういうふうに思います。
  32. 宮澤弘

    宮澤弘君 いわゆる外交官試験、私も今すぐ廃止をすべきだという議論にくみするわけじゃありませんが、どうかひとつ広い高い見識を持った人が外交官になりますように、試験の内容についてさらに検討を加えていただきたいと思います。  それから、外務公務員の活力の源泉として、在外公館勤務する公務員の職員の勤務環境の整備、これが必要だと思います。五十九年度の予算を拝見しましても、不健康地対策は多少増額をされておりますけれども、もう少しやっぱりやっていただいたらいいんじゃなかろうかと思いますし、それからさらに、これからは公館の警備体制でございますね、この辺もさらに力を入れられる必要があろうと思います。その辺はひとつ今後大いに推進をしていただくように、これは要望にとどめておきたいと思います。  それからその次に、ODAの関係について伺いますが、この倍増計画達成のための御努力については、予算委員会等でも大臣からしばしば表明をしておられますので、その点はきょうは伺いませんで、経済協力基金の赤字の問題について伺いたいと思いますが、五十九年度予算で赤字解消のために交付金で二百九億円ですか、組まれておりますですね。これは、円借款についての資金コストに比べて貸し付けの金利というものが安いわけですからどうしても逆ざやになる、そこで赤字が出る、こういうことでやむを得ないといえばやむを得ないんですけれども予算委員会でこの点について質疑がありまして、政府側の答弁でちょっと気になることがありましたので、その点を私は伺いたいんですが、その答弁は、赤字の解消に関連をして、多分大蔵省の政府委員からの答弁だったと思いますけれども一つは、今後の円借款のプレッジというんですか、約束、これを控えるようにすることを考えたいという答弁でしたかな。  それからもう一つは、貸し付けの金利ですね。これは昨年少し上げたんですか。ですが、その貸し付けの金利を再度引き上げることも考えたいと、こういうような答弁があったと思います。これは財政当帰としては、そういう答弁をするのは当たり前といえば当たり前なんですけれども、しかしこれはちょっと私は問題ではないかと思うんですね。つまり、第一番目のプレッジ、約束を控えるようにしたいということは、これから無償有償、両方含めてODAを増大することがいわば国際的公約だと、こういうふうに言われている時代に、プレッジを控えるようにするということはどうだろうか。  それからもう一つ、金利を少し引き上げるということは、これも日本のODAの質についていろいろ議論をされて、質の悪化を招くわけです。そういう点から申しまして、ちょっとこれは問題ではないかと思うんですけれども外務省は一体これについてどういう御見解でしょうか。
  33. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先生御指摘のとおり、OECFの赤字の問題がございまして、実は私どもも新中期目標のもとで一層援助を拡充していきたいのでございますが、ただ、円借款について見ますとこういう収支問題がございまして、従来のような伸び率でその円借款を仲はすということは、残念ではございますけれども確かに困難な面が出てきておると、こういうふうに考えておるわけでございます。この問題は、長期的に援助の拡充ということと、0ECFの赤字を解決するという二つの、二律背反的な要素をいかに調和させて解決していくかという非常に基本的な問題でございまして、今鋭意、基本的な対策を関係省庁検討しておるところでございます。そういうことでございますから、私どもといたしましても、今先生の御指摘になりました日本の国際責務としての援助の拡充ということを阻害しないようにしながら、何とかしていい解決案をつくりたいと、このように考えておるところでございます。
  34. 宮澤弘

    宮澤弘君 ぜひひとつ、その恒久的な対策を至急に考えていただきたいのですが、それに関連をしまして、一昨日の新聞だと、赤字解消のために外債発行を検討しているという記事があるんですね。私はそんなうまいことがあるんだろうかという気がするんですが、こういうことを実際に検討しておいでになるんですか。
  35. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 私もそれは新聞で拝見いたしましたが、実はこの点につきましては、経済企画庁から私ども何らまだ御相談を受けておりませんし、実はOECFの方からも、どういうことを検討しておるかにつきまして内容をまだ承っておりません。したがいまして、具体的に検討していることについては、私どもとしてまだ何にもないのでございますが、ただ一般論として申し上げますと、確かに外債を発行して、それで日本の円借款の原資にしていくということが本当に適正でかつ安定的な財源になるかどうか、そのためにいろいろな法改正もありましょうし、なかなか難しい問題はたくさんあるんじゃないかという感じはいたしております。
  36. 宮澤弘

    宮澤弘君 いずれにしましてもこの赤字解消をひとつ――そのODAをこれから大いに拡充をしていかなけれぱいけない時期ですから、それに支障のないような形でひとつ恒久的な対策を考えていただきたいと思います。  なお文化交流の問題、それから、これから法案が出てまいります海外邦人の国政選挙の参加の問題を私は伺おうと思っておりましたが、時間がなくなりましたので、いずれ機会を改めて伺いたいと思います。  終わります。
  37. 松前達郎

    ○松前達郎君 先ほど大臣から昭和五十九年度の外務省所管一般会計予算、これについての御説明をいただいたわけであります。全体として五・四%の伸びということでありますが、非常に財政が厳しい中での増加ということですから、これをひとつ効率よく使っていただくということをまずお願いいたしたいと思います。  その中で機構面での、本省においての幾つかの新しい機構の設置の御説明があったわけであります。これについてまずお伺いを申し上げたいと思うんですが、これは以前にこの委員会でも、情報関係の収集について、これが非常に重要な問題であるということで私も申し上げたと思いますが、この情報調査局、それから文化交流部、国際報道課、この三つの機構が新しく追加をされる、こういうことであろうと思います。これについて内容がどういうものなのか、どういう仕事をされるのか、その辺をまずお伺いを申し上げたいと思います。
  38. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) まず、新設されます情報調査局でございますけれども、これは現在の調査企画部の仕事をさらに充実させるということが主員的でございます。それで、主として情報調査局のやります仕事は、各局、地域局あるいは機能局それぞれに情報の収集をし、処理をし、分析をしておるわけでございますけれども、それをよりグローバルな、世界的な観点からフォローしていく、かつ継続的にやっていく。特に原局と申しますか、地域局とか機能局でございますと、どうしても案件の処理というものが主体になるわけでございますから、何か要人の訪問があるとかあるいは特別の案件があるとかということになりますと、継続的な情報の収集、分析ということがおろそかになることもあり得るわけでございます。それを継続的に見ていく、複眼的に注意して見ていく。特に中長期的な観点から見る。これは現在までも調査企画部がやっておりました仕事でございますが、この点をさらに充実させるということでございます。  それから、もう一つ情報調査局の大きな任務というのは、情報そのものの処理についての能力を全省的に高めるということでございます。これは原局の方にサービスをする、そういう情報の収集、分析機能をもってサービスをするということでございます。  次に、外務報道官の設置でございますが、これは情報調査局の設置に伴いましてスクラップ・アンド・ヒルドの原則によって一局を削減する必要があるということで、情報文化局が削減の対象になるわけでございますけれども、臨調最終答申でも指摘されておりますように、広報、文化関係の活動というのはますます必要でございますので、その点で遺漏がないように、報道、広報、文化の三機能をあわせ持つ、それを総括整理する新たな官職を設けたということでございます。  文化交流部につきましては、まさに文化交流の必要性、ますます拡充の必要性がございますので、その点で外務報道官のもとで特に実務的な色彩の強い事務を総括して外務報道官を補佐し、外務報道官が報道、広報の面でさらに十分な活躍ができるような体制をつくる、こういうことから新設をいたしたわけでございます。
  39. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、もう一つ国際報道課というのがございますね。これはその関連においての仕事を担当するということでございますか。
  40. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) そのとおりでございまして、国際報道課と申しますのは、特に外国における日本のイメージというもの、これは在外公館が現地でいろいろ広報活動をするわけでございますけれども、それ以前に、東京に駐在しておる各国の特派員でございますね、これが数百名からおるわけでございます。これの出す報道というものが非常に重要でございます。したがって、特に東京に駐在しておる外国の報道関係者、あるいは日本をわざわざ取材に来る、外回から訪ねてくる外国の報道関係者、これに適当な情報を与え、いろいろ取材に当たっての便宜を図る、そういうことを重点に置いたものでございます。
  41. 松前達郎

    ○松前達郎君 これも私以前にお伺いしたことがあると思うんですけれども、国際的な通信社ですね、こういうものについての内容が日本の場合非常に弱いということを伺っているので、また同時に国際放送ですね、これらもやはり世界に対して情報を流す非常に重要な役割を持っているんじゃないかと思うんですね。ですから、この方面との関連、国際報道課が関連を持つということでございますか。
  42. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 先生の御指摘のとおりでございまして、特に、本邦に在留しております特派員に対しまして、国際報道課が全面的に関係資料を流しまして正確な知識を与えるということが一つでございます。また、フォーリン・ブレス・センターが実際にはいろんな面倒を見ておりますが、諸外国からいろいろな報道関係者が参ります。したがいまして、参りました報道関係者に対しまして十分な資料、便宜供与も与えるというようなことで十分な知識を与える。ただ一つ、外国の通信社の中で、例えばASEANで必ずしも十分な特派員がいないということでございまして、最近アンタラ通信につきましては、特に我々からも要望いたしまして新たに派遣してまいったという経緯がございます。
  43. 松前達郎

    ○松前達郎君 それから次に、技術協力関係予算充実に努めたというふうにありますけれども我が国の対外援助等の全体を見ますと、今まではどうも援助そのものが貿易的援助というふうな感じを私は抱くわけなんですね。ですから、やはりこの前の委員会でも申し上げたように、今後の対外援助というもののあり方ですね、これは発想を少し変えていかなきゃならない時期が来たんじゃないか。非常に長い目で見た対外援助も含めてやっていかなきゃならない、こういうふうに思うんですけれども、技術協力関係にっいてはどういうふうなことを予定されているか。これは大まかで結構ですから。
  44. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先ほども大臣から申し上げましたように、五十九年度のODA予算の中で特に技術協力予算は大幅な増加、言いかえれば技術協力全体を伸ばすという努力をまずしておるわけでございます。  その中でも、私ども五十九年度の予算で特に力を入れましたのは協力隊の活動の拡充でございます。実はこれは昭和五十七年度に約四百人余りを出しておりましたのを六十年までに倍増する、八百人に持っていくということで、五十九年度で今六百五十人まで来ております。そういう形で、協力隊の活動を中心にいたしました技術協力の拡充ということを図っております。  そのほかにも、先生この前のときにも御指摘がありましたような教育分野での技術協力、あるいは研究分野での技術協力等々、さらに拡充を図っていくということを考えておるわけでございます。
  45. 松前達郎

    ○松前達郎君 それから、最後の方にあります子女教育問題なんですが、海外で活動をする分野がだんだん広がってまいりましたし、とりわけ企業等も進出をする、その企業が多くなってきたのが現状だと思います。  私自身も昨年ジュッセルドルフの日本人学校を拝見いたしたわけなんですが、日本人学校二校を増設ということでありますが、これの場所と内容を。  それから、子女教育関係が直接はないかもしれませんが、今申し上げた海外に進出する企業がふえたということで、その企業が必ずしも人口集中地帯だけというか大都市だけに進出をしていないわけですね。ですから、それらの企業に関する問題がたくさん出てくるのじゃないか。  一つの例を挙げますと、これはスペインの北部にバルセロナだと思うのですが、大分いろいろ電気関係の企業が進出をしているわけなんですが、治安が余りよくないということを聞いたんですね。ですから、その進出された皆さんからぜひとも領事館をつくってくれというふうな要望があったわけなんです。こういったことがこれから非常に頻繁に出てくるのじゃないか、こういうふうに思いますが、これらについての対応についてひとつお答えいただきたいと思います。
  46. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) まず最初にお尋ねの日本人学校の新設でございますけれども、現在までに全日制の日本人学校につきましては、全世界に七十四校あるわけでございます。今度の予算で二校、インドネシアのバンドンでございますが、バンドンと、それから中近東のバーレンに増設いたすことになっております。現在バンドンにはかなりの日系の企業が進出しておりまして、現在邦人の子女が三十名おるわけでございます。それにふさわしい体制でスタートいたしたいと思っております。またバーレンの方は、これは特にレバノンがああいう状況になりましてからかなり日系企業があちらの方へ、中近東の金融その他のセンターとして移っておりまして、現在でも五十名の邦人子弟がおるわけでございます。  いずれもこれは日本人学校が開設されるということになりますと、恐らく家族の呼び寄せというようなことがあってふえると思っておりますが、その点も勘案して十分な体制でスタートしたいというふうに考えております。  次に、ただいま総領事館の増設の問題について御質問がございました。具体的にはバルセロナの御指摘がございました。私の承知しておりますのでも、すでに日系の合弁企業が、たしか二十社近く出ておると思います。マドリード周辺よりも、むしろ従来からの工業地帯でありますバルセロナの方への企業の進出が多い。それからスペインの新しい共和体制のもとで地方自治が非常に進んでおるために、カタルニア地方について特殊な状況があるというようなことも承知しておりますので、これは検討課題にはしないといけないと思っております。  ただ、私どもの方針としましては、今までも申し上げておりましたように、在外公館は現在小規模の公館が余りに多うございますので、そっちの方の充実をまず先にしたいということでございます。新設についてはやや慎重には考えておりますが、バルセロナのことも念頭に置いてまいりたい、こういうふうに思っております。
  47. 松前達郎

    ○松前達郎君 それで、先ほど来のお話の中に、予算が非常に少ないというか、ふえてはいるけれども全体的にまだまだ足らないというお話もあったわけでありますが、とりわけ日当ですとか宿泊費あるいは旅費、このような部分で非常に苦労されておるのはよくわかるわけなんです。  これは私から言っていいかどうかわからないんですが、例えば国会議員が夏になるとわんさとヨーロッパに押しかけていくというようなことがあるわけですね。そうしますと、昼御飯とそれから夕食を大使や公使皆さんがおつき合いいただく。しかもこれは全部国家予算で出るのだと思うのですけれども、それはそれとして出迎えだとかいろいろ大変なんですね。これらについて我々の方もこれは反省しなければいけない課題じゃないかというふうに思うんですが、その辺は、外務省から直接言われるのは非常に言いにくいかもしれませんが、その点はどうですか。
  48. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) 大変御配慮をいただいてありがたいわけでございますけれども、私どもとしましては、国会議員の先生方はふだん大変お忙しい中でその時間を割いて海外出張をしていただく、そういうものを通じて日本の国際的な立場、あり方というようなことについていろいろ御調査を願う、さらには、在外公館を初めその外交体制のあり方についていろいろ貴重な御提言をいただく、その基礎になっておりますのはやはり何といってもそういう海外への出張ということでございますので、これに対してはできるだけのお助けをする、これは当然の任務だと思っております。また先ほど来御質問のございましたように、外務省の人間がややもすると国内の事情に疎くなる、その辺のところからしましても、そういう接触を通じていろいろ御意見を伺う機会というのも大変ありがたいわけでございます。負担といえば負担でございますけれども、私どもとしては十分見返りのある負担であるということで、今後とも御協力は申し上げたいというふうに思っております。
  49. 松前達郎

    ○松前達郎君 その点は人員も非常に不足している現状ですから、我々としても対応といいますか、この問題については対応していかなきゃならないたくさんの課題を抱えているんではないか、こういうふうに思っております  さて、そこで対外援助についてお伺いをいたしたいんですが、とりわけ開発途上国に関連して、先ほどお話を伺いましたけれども技術援助といいますか、それからやはり教育援助ですね、これは当該国の基本的なレベルアップにかかわる問題だと思うんですが、こういったような面での今後の我が国の活動というものは非常に重要じゃないか、こういうふうに思うのですね。それから、さらに研究あるいは開発等に関する交流ですね、これもやはり重要だろう。そういうふうな面から考えまして、研究者等の我が国への受け入れ、それから例えば若き指導者といいますか、将来指導的地位につくであろう若い人たちを我々が呼んでそして日本の実情を十分勉強してもらう、こういうことも大いに必要だと思うんですね。これは外国の例はたくさんあるんですね。いろいろな財団等があって、それらによって招聘された方がたくさんおられるわけですが、これらについての現況が一体どういうふうになっているか。これは文部省と外務省両方関連ある問題だと思うんですが、これらについて御説明いただけませんか。
  50. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 御指摘のとおり、研究者が日本に参りまして日本の実情を見ていただき、かつ山川分野の研究をしていただくことは非常に人材養成の観点からも重要であるということでございます。外務省といたしましては、こういう研究荷の一部を、例えば中堅指導者とかオピニオンリーダーという格好で呼んでおりますし、文部省それから学術振興会などの面で、また、各民間でも始終いろんな形で研究者を日本に呼んでいるわけでございます。したがいまして、その研究者の実数につきましては非常に多岐に及んでいまして、全体の数字の把握は非常に難しいということでございますが、相当の数に及んでいるということでございます。
  51. 松前達郎

    ○松前達郎君 研究者については受け入れる側がある程度それに対応できなきゃ話になりませんから、受け入れる側との話し合いのもとに我が国に招聘をするということになるんじゃないかと思うんですが、さらに留学生ですね。この問題も重要だと思うんです。我が国に現在外国からたくさんの留学生が来ていると思うんですが、これは国連の調査等を見ましても日本はまだ非常に少ない、けたが違うんですね。この留学生の受け入れ状況は一体どうなっているのか、これは政府レベルの留学生で結構なんですがお答えいただければ。
  52. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 昭和五十八年五月一日現在の在籍者数でございますが、国費留学生が二千八十二名になっております。それから私費留学生が八千三百四十六名ということで、計一万四百二十八名となっておりまして、諸外国と比較しますと特に私費留学生の面が非常に少ない。例えばアメリカを見てみますと三十一万、イギリスが私費、国費も入れますと五万、西ドイツが約六万、フランスが十二万という数字でございます。それで、国費留学生につきましては一部の先進国並みにかなり近づいてまいってきておりますが、語学の関係それから環境その他歴史的な日本との関係から、どうしても私費留学生の方が少なくなってきております。ただ、国費留学生にっきましてはかなり一部の先進国に近づいてきております。
  53. 松前達郎

    ○松前達郎君 留学生が、今おっしゃった数字でアメリカが三十万人ですか、三万人ですか。
  54. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 三十一万でございます。
  55. 松前達郎

    ○松前達郎君 三十一万ですか。  オーストラリアですら一万三千人ですか、それに対して日本が、今私が調べたので八千百人という数字があったのですが、もうちょっと今たくさんの数字を言われましたけれども、それにしても非常に少ないわけですね。中国ですら日本に千二百人送り込んでいる。そういう状況ですから、これらについてもやはり今後何らかの方法でバックアップ体制をつくりませんとなかなかこれはふえるわけはないし、国際交流そのものの先兵みたいなものですから、その辺もひとつ御配慮いただければ、システムを少し考えていただきたいということですね、これをまずお願いを申し上げたいと思うのです。  それから、今度武器問題に移らしていただきたいのですが、最近イランから我が国に対して、現在防衛庁が使っている三次元レーダー、それからC1という輸送機、これらを輸出してくれないかという要請があったというのが報道されているのです。それから、さらにECからは武器とか航空機を購入しろという要請が行われている。そういうふうな状況でありますし、我が国としては武器の輸出の問題、これについては非常に厳密な政策的な手段をとっておるわけなんですけれども、私どもそういう問題を考えてみますと、一体武器とは何なのだろうということを、その定義といいますか、それがないような気がしてならないのですね。極端なことを言いますと、例えばグラスファイバーケーブルを輸出しても、それが例えばアメリカでペンタゴンの通信用に使われたらこれは武器なのかどうか。鉄板を輸出しても戦車がつくられれば武器なのかどうか。その辺は拡大解釈もあるようですけれども、この武器に関してはどういうふうな日本政府としての定義があるのか、その辺をひとつお答えいただきたいと思うのです。
  56. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 武器の輸出に関する政府統一方針というのがございまして、これは昭和五十一年二月二十七個、衆議院の予算委員会で三木総理からお答えした問題でございますが、「「武器」とは、「軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるもの」をいい、具体的には、輸出貿易管理令別表第一の第百九十七の項から第二百五の項までに掲げるもののうちこの定義に相当するものが「武器」である。」と、こういうふうなことになっております。
  57. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、今のレーダーとかそういうものはどうなんですか。これは直接戦闘にかかわるものであるかどうか。その辺いかがですか。
  58. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) レーダーの問題につきましては、実は四月四日の参議院の予算委員会で防衛庁の木下装備局長からお答えしておるところでございますが、一般に武器ではないというふうに考えておるということでございます。
  59. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、さっきのイランからの要請があったというこの内容について、レーダーというものが挙がっていると思うんですけれども、これは武器でなきゃ輸出するつもりですか。要請があって輸出ができるというふうに判断されるんですか。
  60. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) ただいまお答え申し上げましたのは一般的なことでございまして、具体的には武器の輸出に関する問題は申請があったときに、これは通産大臣がその申請のあったもののスペシフィケーション等いろいろなものを判断しまして解釈する、こういうことになっております。
  61. 松前達郎

    ○松前達郎君 そのときの判断の基礎というのは、今おっしゃったようなことで判断をされるのかどうかですね。
  62. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) ただいま経済局次長の方から御説明いたしましたが、仕組みについてもうちょっと補足して御説則をいたしますと、この武器輸出三原則というのは政府の重要な政治的な方針ではございますけれども、それが実際にどういう形で運用されるかということになりますと、先ほども説明がありましたように、外為法及びそれに基づく貿管令の実施迦用という形で実施されるわけです。そこで、その外為法の四十八条だったかと思いますが規定がございまして、これは通産大臣がその個々のケースについて認定をして承認を与えるということになっておりまして、その運用のための方針として、先ほど御説明をいたしました三木内閣当時の政府の考え方というものが示されておりまして、その武器輸出三原則に言う武器というものは先ほど申し上げたようなものである、こういうことになるわけです。したがいまして、個々の具体的な輸出申請がなされた段階におきまして、通産大臣がこの法律及び法律に基づく政令の実施のときにこの規定に合致するかどうかということで決めるということでございますので、今話題になっております具体的なケースにつきましては、そういう申請が出た段階において通産大臣が認定を行うということになるわけでございます。
  63. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、その問題は通産の方がすべてを握っているということになるわけですね。  その判定といいますか武器であるかないかという問題、これは私どもまだ十分認識がないものですから、どういうふうにそのとき判定されるか。先ほどの答弁をいただいたことで恐らく判定をされるんじゃないかとこう思うんですけれども、レーダーなどは、例えば三次元レーダーというのは、防衛庁が使っているレーダーそのものを輸出してくれということであればこれはあるいは武器かもしれない。ただ、直接戦闘に参加するものではないということですね。レーダーは民間で幾らでも使っていますし、三次元レーダーというものが武器用に開発された特別のレーダーであるかどうか、こういう問題もあるわけですから、まあまあその点はまた輸出の問題が山だときにお伺いすることにいたします。  それから、今度は核の問題なんですけれども、これも私もまだわからないことがたくさんあるものですからいつも繰り返しお伺いをしておるんですが、核の傘という言葉をよく使われるわけですね。これは、例えば米ソの核戦略の中における核による抑止力の問題ですね。これについていろいろと今まで議論がされてきておるわけでありますが、どうやら最近の状況を見ますと、ICBMとかそういったような直接相手国をたたく二大国の間の核の抑止力の問題よりも、それもあるかもしれませんが、しかしそれよりも戦術核の時代に入ってきたんじゃないかと、こういうふうに思うんですね。しかも、最近はトマホークの問題が議論されておりますが、トマホークというのは運搬手段にすぎないのであって、問題は、そこに弾頭として載せるのが核弾頭であるか通常弾薬であるか、こういう問題ですね。トマホークそのものは新しい巡航ミサイルとして配備をされてくる。配備をされてまいりますと、当然その弾頭に何をつけるかというのが問題になってくる。トマホークそのものを持っているのが核を持っていることにはならないかもしれないけれども、トマホークと同時に、核弾頭を搭載した船が例えばトマホークを使うということになると、当然そこに核が装備される可能性がある、こういうことになるわけですね。ですから、そういうふうに考えていくとどうも最近の展開が戦術核の時代になった、こういうふうに解釈していいんじゃないかと思うんですね。例えばSS20の配備の問題もありましょうし、トマホークの問題もありましょうし、あるいは今防衛庁あたりが持っておられる対潜兵器ですね、これも核を搭載できるんですね。核弾頭は今日では通常弾頭と同じような意味で使われてきている。日本の場合は違いますが、アメリカでは別にそのところは余り抵抗なく使うことができるような状態にあるんじゃないか、交換も簡単ですし。  例えば、さっき申し上げましたサブロックとかアスロックですね、これらについても核弾頭が装着できるわけです。サブロックの場合はW55ですか、アスロックの場合はW44、こういうものを装着できる。核弾頭について言えばW31というのがオネストジョン、これは地対地ミサイルに装着できる。それからナイキには地対空ミサイルも装着できる、こういうことになるわけです。弾頭としてはもう常に用意されているんですね。ですから、それを装着するかしないかの問題で、運搬手段は別だというふうになると思うんです。しかし、こういうものがどんどん開発されてきましたし、極東あたりでも相当の緊張が見られるわけですが、戦術核の時代になったというふうに解釈しますと、果たして核の傘というのが有効なのかどうか、こういう問題が出てくるんじゃないかと思うんです。ヨーロッパあたりですと、例えば核攻撃が行われた場合に、NATOの方は、アメリカが自分の国に核が撃ち込まれることを頭に置きながらも、ソビエトに対してアメリカが核を撃ち込むであろうかという問題が出てきますし、いろいろなそういった新しい展開が見られるのが今日の情勢だろうと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  64. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 御質問の、戦術核の時代になったのではないかということでございますけれども、これは物の考え方によるのでございますけれども、現状におきましても終局的な戦争抑止力としての戦略核兵器というものは現存しております。ただ、これは先生御存じのとおり、過去二十年間にわたりまして柔軟反応戦略というものがアメリカの核戦略の基本になっております。これは通常戦力の戦闘から始まりまして戦術核、戦域核、それから最後には戦略核に至る、各種の段階において戦争を抑止するという形になっております。ただ問題は、一九七〇年代の後半ごろからソ連がSS20という非常に精度のいい戦域核というものを配備いたしました。それで、柔軟反応戦略の中の一つ段階であります戦域核というところにおきまして、少なくともヨーロッパを戦場とする戦略において核の均衡が崩れてしまったと、そういうことがございます。それが非常な大きな問題になりまして、それについては先生確かに御指摘のとおりいろいろな議論がございます。  これは政府見解でございませんけれども、例えばキッシンジャーの演説でございますとかそういういろいろな見解では、最終的な戦略的核の抑止力に対して疑念が表明されているというような発言が多々ございます。ただ、これは現在でもアメリカの国防報告等公式の文書、これにおきまして、最終的な抑止力としては戦略核というものが現存する、これによって戦争を未然に防止する、ただ、最終的に戦略核というものを使いますと、これは人類の滅亡につながるという非常な危険なものでございますので、戦略核に訴えなくても抑止を効果的ならしめるという意味で、まずは通常戦力、それからそれに続きまして戦術核、戦域核、その各段階において十分に抑止力を高める、それが政府の公式的な方針になっております。
  65. 松前達郎

    ○松前達郎君 そういう組み合わせといいますか、こういう時代になってきたということですね。そうなりますと、例えば今度六月にアメリカ海軍が核つきトマホークを配備するということを言っているわけですね。トマホーク、これは巡航ミサイルですから、例えば潜水艦の魚雷発射管からも発射できますし、あるいは前にも問題になりましたニュージャージー等は三十二基のカタパルトを持っていますから、これからも発射できる。トマホークそのものを考えてみますと、これは通常弾薬で使うような代物じゃないんですね。やはり核があるからこのトマホークの威力があるのであって、通常だったら大した問題はない。爆発力が全然違います。核の場合であったら相当大きな爆発力を持つわけですね。二百キロトンぐらいです。これがまた六月、原潜等に配備をされるとなると、例えば昨年いろいろ日本にもアメリカの原子力潜水艦が入港いたしておりますけれども、原潜二十五隻のうち十七隻が、これはロサンゼルスとかスタージョン級なんですが、これが対象になってくるわけですね。そうすると、やはりここに逃げられない問題が出てくるんじゃないかというふうに私は思うわけであります。そうなってきたときに、果たして日本政府としてどう対応していくかという問題が出てくるわけなんですが、そのときに必ず問題になってくるのが事前協議事項であろう、こういうふうに思うんですね。これはもう何回も私ここで議論したわけなんですが、いまだにすっきりしないものですから蒸し返してお伺いしたいと思うんですが、事前協議事項の中で日本側が今とっている考え方というのは、米国の方から、アメリカ側から協議を持ちかけられない限り核を持っていない、非核であるというふうに考えているんだと、これは間違いありませんか。
  66. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 事前協議制度というのは、これは安保条約に基づく条約上の義務がアメリカに課せられておるということでございまして、その事前協議の対象となる一つである「装備における重要な変更」、その意味は核の持ち込みということでございますけれども、その核をいかなる形においても日本に持ち込むという場合には、アメリカは条約上の義務として日本政府に対して事前協議をしなければならないということになっております。したがいまして、アメリカ側から事前協議がない限りは日本に対する核の持ち込みというものはないというのが、政府が繰り返し御説明しておるところでございます。
  67. 松前達郎

    ○松前達郎君 アメリカ側は、これはアメリカの法律にあるんだと思うんですけれども、核があるかないか、これについては明らかにできないというのですね。これを何回もアメリカ側は言明していると思うんですが、この点はどうですか。
  68. 北村汎

    政府委員(北村汎君) ただいま委員がおっしゃいましたように、アメリカは核の所在については明らかにしない。その肯定も否定もしないというのが一般的なアメリカの政策であります。また、アメリカにマクマホン法という原子力法がございます。その中でも同様な、核の所在を明らかにしないという趣旨の規定がございます。しかし同時にアメリカ政府は、日本政府に対して二度にわたって通報をしておりますけれどもアメリカ政府は、「合衆国の原子力法又はその他の如何なる国内法も、正当に権限を付与された合衆国政府の官吏が事前協議に関する約束を履行することを禁止し又はこれを妨げるものではない。」ということを日本政府通報してきております。したがいまして、その事前協議を行うということが、先ほども申し上げましたようにアメリカの条約上の義務でございますから、その義務を果たすに当たって、権限ある官憲が核の所在について明らかにするということは、これはできるということを言っておるわけでございます。
  69. 松前達郎

    ○松前達郎君 法律的にはそういうふうに決められていると思いますけれども、現実として米軍側ですね、核のあるなしについては明らかにしないということを再三言っているわけですね。  さて、そこで日本側としまして、もしアメリカ側から事前協議の対象として核の持ち込み等について協議があった場合、これはもう国会で何回も答弁をいただいておるわけですが、核を保有しているというのであれば、艦船の場合ですと入港は拒否をする、こういうことをおっしゃっているわけですが、この点も変わらないんですね。
  70. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 変わりません。
  71. 松前達郎

    ○松前達郎君 ですから、結論としますと、これはなかなかわかりにくいことになってくるんですが、アメリカ側がもし核を持ち込むんだということを事前協議に持ち出したとしても、日本側は拒否するんだからはいれないわけです。そうですね。しかも、アメリカとしては核のあるなしは明白にしないということがその裏にあるわけですね。ですから、持ち込みを許可しないような問題については初めから協議する必要はないと。核の有無を明らかにしないまま入港しようということになりはしませんか。
  72. 小和田恒

    政府委員(小和田恒君) 今、委員の御覧間の点は、安保条約に基づく事前協議制度というものがどうして成立をして、どういう意味を持っておるのかということと関連するかと思いますが、参議院の予算委員会で矢田部委員から御質問がありましたときに私の方から御説明をいたしましたように、安保条約の締結のときに日米両国間で、特定の行動については我が国の意向にかからしめる、アメリカ側が特定の行為を行うについては我が国の意向にかからしめるということが交渉の非常に重要な対象になりまして、そういう問題として三つの問題が討議されたわけでございます。  一つは、配置における重要な変更の問題、それから二番目が装備における重要な変更の問題、それから三番目が日本の施設、区域を利用しての戦闘作戦行動という問題で、これらはいずれもアメリカ側からこういうことがやりたいというようなときには、我が国の意向にそれをかからしめて、我が国がイエスも言い、ノーも言うという権利があるということを条約上明確にするという意味で、先ほど北米局長から御説明をしましたように、安保条約第六条の実施に関する交換公文というのができたわけで、この点は委員御承知のとおりでございます。  そこで、この今の核の問題に関しましては、アメリカによる核兵器の我が国への持ち込みを我が国の意向にかからしめるというのが第六条の実施に関する交換公文の趣旨でございますけれども、その上に立ちまして、そういう制度的な仕組み、したがって制度上の仕組みとしては我が国としてはイエスを言うこともあるし、ノーと言うこともあり得るということでございますけれども、その仕組みの上に立ちまして、非核三原則に表明されておりますような我が国の基本的な国策として核の持ち込みは一切ノーと言うということがかぶっているわけでございますので、制度としては、アメリカから見ればそのことが制度上の意味は持っておる。しかしながら、我が国の政策が基本的にそういうものであるということをアメリカ側に安保条約成立以来周知徹底せしめてあって、アメリカはそのことを十分に了解しておるので、核の持ち込みということはあり得ない、こういう関係になっているわけでございます。  そこで、先ほど委員から御指摘のあった、アメリカは核兵器の所在を確認することも否定することもできないということを言っておるんだから、そんなことを言うわけがないではないかということにつきましては、これも北米局長から御説明したところでございますけれどもアメリカのそういう政策というものの法律的な根拠がどこにあるのかということについては、これはアメリカの国内法上の問題でございますので、マクマホン法の規定も含めまして我が国としては有権的に解釈する立場にはないわけでございますけれども、いずれにしましてもアメリカはそういう法律上の制約、あるいは政策上の立場というものを踏まえて、これは核の抑止力という問題も絡んでまいりますので、核兵器の所在がどこであるかということを明らかにすることは、アメリカの政策上の問題としても高度の機密性を有する国防情報である、こういうことになってくるわけですが、そういうものを踏まえて、先ほど御指摘のあったような政策はとっておりますけれども、しかし事前協議のときにはそういう国内法も、あるいは政策上の立場というものも、正当に権限を付与された合衆国政府の官吏が事前協議に関する約束を履行することを妨げるものではないということを明確にしているわけですから、アメリカとしてそういう持ち込みという希望を仮に持つような場合には必ず事前協議でやっていきます、事前協議の御相談をいたします、こういうことになっておるわけでございます。したがって、確かにその辺のそれぞれの関係というものがわかりにくいという御指摘はある意味でごもっともかと思いますけれどもアメリカとしてはそういう義務を条約上負っておって、その条約上の義務を履行するに当たって国内法上の妨げは何もないという前提で我が国に対してそういうものを協議をしてくる。その協議をしてくる場合には、枠組みとしては事前協議の交換公文に基づいてアメリカはそういうことを協議をしてくる権利がある、しかし我が方としては、それに対するお答えはノーですよということを我が国の基本政策の問題としてアメリカにあらかじめ通告してあって、アメリカはそのことを十分に承知しておる、こういう関係になるのであろうと思います。
  73. 松前達郎

    ○松前達郎君 「妨げるものではない。」というところに、これは必ずそうしろということじゃなくて、有無をはっきりしても構わないということですね。ですから、しなくてもいいわけですから、その辺がちょっとまたひっかかってくるんですが。この辺が、どうも事前協議というのがこっけいに見えてきてしようがないですね、私には。非常にナンセンスに見えてしようがないというのが私の気持ちなものですから今御質問をしたわけでございます。これらについても、六月ごろになると、先ほど申し上げたようないろいろな問題がまた出てくるんじゃないかと思いますから、そのときにまたお伺いすることにしたいと思います。  それからもう一つは、極東における軍事緊張というのが非常に最近高くなってきている、こういうふうに言われておるわけなんですが、大韓航空機撃墜事件が昨年の九月に起こったわけなんですけれども、この大韓航空機撃墜事件のその後の問題について、これは何か政治決着があったような感じで、ぱったりとその問題はなくなってしまったわけですね。取り上げられなくなってきた。それからさらに、新しくソ連がカムラン湾に兵力の準備を始めた。恐らくこれは、米軍がグリーンベレーを沖縄に派遣をするということに対抗した問題じゃないかと、こういうようにも思うんですね。ウラジオストクにも特殊部隊が配備をされるとか、小さいわけですが、そういったように何かお互いに対抗しながら、片っ方がやれば片っ方がそれに対応して同じようなことをやっていくという、その中でどんどんエスカレートする、緊張がエスカレートする、こういう状況であろうと私は思うんです。これらについて、例えば極東における軍事緊張ですね、これらをどういうふうに見ておられるのか。  それから、大韓航空機撃墜事件のその後は一体どうなっているのか、この辺をひとつ御答弁いただきたいと思います。
  74. 岡崎久彦

    説明員(岡崎久彦君) 極東におきます軍事緊張と申しますのは、雰囲気といたしましては、KAL事件以後またさらに強くなっておりますけれども、これは最近の現象でございませんで、強いて申しますれば、一九七〇年代の後半以来ソ連が陸海空ともに非常に大規模な増強をいたしました。またそのほか、陸海空通常兵力のみならずSS20を初めとします核戦力の近代化をいたしました。それで、極東の軍事バランスに非常に大きな変化が起きました。これが緊張の主要原因でございます。  これに対抗いたしまして、アメリカも戦力の近代化等を図っておりますけれども、多年のソ連の蓄積というものが非常に大きいものでございますから、これが緊張の主要原因である、そういうふうに判断しております。
  75. 八百板正

    ○八百板正君 きのう、きょうあたりの新聞でちょっと見たんですが、中身は読まないんだけれども何となく感じたんですが、何か消費構造のルネッサンスというような言葉が出ておりましてよく私はわからないんですが、しかしいずれにしてもその中で感じる点は、我々の家庭生活の中でも非常に消費構造が変わってきているということを指摘したことのようです。  外交なんていうと何か雲の上のことみたいに考えて、庶民とはなじみの薄いものになっておりますけれども、結局我々家庭生活の向こう三軒両隣のつき合いみたいなものでありまして、けんかしないで仲良くお互いにうまくやっていこうと、こういうことだろうと思うのであります。そういうことになりますというと、日本の国際的地位というものがこういう状況になった。世界じゅうどこに行っても日本の品物がないところはないぐらいになっているでしょう。こういう状態になりまするというと、いわゆる国際的つき合いというものが家庭生活の中にも大きな変化を起こしておるようで、虚礼なんというつき合いもございますけれども、もっと外務省というものがクローズアップされていい状況じゃないかと思うんですが、何で外務省は余り幅がきかないんでしょうかね。これはお答えにくかったら私から言ってもいいんだけれども。  明治、大正、昭和、私の生きてきた中でずっと見てみますと、政治の指導者なんかも外交畑の人がかなり羽ぶりをきかして――あなたがこれからどうなるかわからないけれども、あなたが仮に日本のそういう立場に立っても、外務省出身だなんて言わないのじゃないかと思うんですよ、一般の評価は。何となく外務省が弱いといいますか、そんな感じがしますね。これはどんなふうにお感じになりますか。
  76. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私は、日本の近代の歴史の中では外務省の、外交の果たした役割というものは非常に大きいものがあると。いいにつけ悪いにつけ、結局日本の運命というのは日本外交というのが決した時期というのは何回かあったわけでありますし、戦後国際社会の中に日本が入っていって独立を回復してからの日本の今日までの発展、国際社会における日本地位の確立、これがやはり日本外交の果たした役割というのは非常に大きいと思います。  特に最近、私自身が外務大臣をおととしからやってみまして外国なんかに行ってみましても、例えば日本外務大臣とかあるいはその他の大臣なんかが参加しない国際会議なんていうのは余り意味がなくなってきた。ですから、どうしても我々も外へ出ていかなきゃならぬ。というのは、我々が求めていくわけじゃなくて、国際会議等で、日本外務大臣等が出ていかないとその国際会議が有効に機能しないということで強く求められるということで、去年なんか私十三回も出ていったわけですが、恐らくどなたが外務大臣になってもこれからますます外に出ていく回数は多くなる。そういう中でもまた発言力が、これは数年前と比較しましても、日本国際社会における発言力というのは非常に強くなったのじゃないかと私は思います。日本の言うことが非常に重い響きを持つようになってきたということを事ごとに感じますですね。  それから、日本に対する期待といいますか、日本に対する国際的責任を求める、」そういう声も大変強くなっている、期待感が非常にあふれてきている。これはやはり日本がこれだけの経済的な実力、自由世界の中で第二位の実力を持って経済協力等も積極的にやっておるということにも起因するわけでしょうけれども、非常にそういう点は重みが増してきたということは痛感します。また国内におりましても、実は海外からの諸外国の賓客といいますか、公賓といいますか、そういう人たちが日本を訪れてくる回数というものもとにかく物すごく多くなりまして、ウェーティングリストに国賓だけでも何人か常に載っておりまして、外務省なんかでどなたを優先したらいいかということでいつも苦悩しているわけですが、国賓だけじゃなくても、外国からのいろいろのお客さんがめちゃめちゃに多くなったというのはそれだけ日本国際化してきた、国際国家としての存在が重くなったということじゃないかと思いますし、これは外交の面だけじゃなくて、経済の面においてはもう今さら申し上げるまでもないほどの重さというのがふえてきている。これがまた外交につながっていっているわけですから、八百板先生がおっしゃるように、何か国内で外務省という存在が余り重くないような感じを持たれるかもしれませんけれども、しかし国際社会の中における日本、そしてその日本を象徴するものは日本外交ですから、そういう意味では、私は外務省役割というものはこれからますます重くなると思いますね。それにしちゃちょっと人員とか予算が貧弱ですけれども、非常に重い存在になりつつあることは間違いない。そしてこれが、外交のあり方次第で将来の日本の運命というものが決まっていくんじゃないか、そういうふうな感じすら私は持っておるわけであります。
  77. 八百板正

    ○八百板正君 昔、外務省畑がよかったからという意味じゃございませんけれども、やっぱり日本の国際的な地位が変わったという、日本だけじゃございませんけれども、国際関係が非常にどの国も多くなったわけですから、そういう意味外務省がもうちょっと何か、花形になってもらわなくてもいいけれども羽ぶりのきくような存在に考えられていいんじゃないかと思うんですね。  それから、しょっちゅう外国にばかり行っているとおっしゃいましたけれども、十三回行ったとおっしゃいましたけれども、留守するとどうしても一方において国内の発言力が弱くなる。国際的には発言力が出ても国内の発言力が弱くなるというような問題もこれもあるわけでありまして、別に誘導質問をするわけじゃないけれども、こういうふうな状態が出たというのは、日本の発展そのもの、政治構造そのものにやっぱり奇形的な面があるからだと私は思うのですね。これは私の意見です。外務省というのは、言ってみればこれは現業庁じゃありませんから、利権が伴いませんから、金出したってすぐにそれが外務省の利権になるわけじゃなくて、いわば企業の方にずっと回っていくような格好になりますから、いろんな意味で今の日本の政治構造が言ってみれば奇形状態ですから金権政治、そういうところから国内政治の中でそういう面が出てきたんじゃないかというふうに、日本の政治構造の狂っているところから出てきた一つのあらわれだというふうに私は思うんです。  それから、先ほど松前委員の質問を聞いていて感じたんですけれども、何か簡単なことですけれども非常に説明の言葉が多いんですね、聞いていると。言葉が多くなれば多くなるほどわからなくなるんです。例えば、核の話なんかは聞いていれば聞いているほどわからなくなってくるのですね。私がわからないんだから恐らく国民はなおわからないんじゃないかと思う。私の方が上だという意味じゃございませんが。やっぱり私程度の者が国民の多くの理解の水準だと思うんで、何だかわかららないのをわかったようなことを言うから、そして言葉だけで明確なんていうようなことを言うからますますわからなくなっちゃうんですね。そういう意味で、外交関係も私素人ですから余りよくわかりませんけれども、言葉少なくわかりやすく、素人にわかるようにひとつお答えをお聞かせ願いたいと思います。  外務省予算の中身は国際協力経済協力と、あるいは経済援助というふうな形に出てきておるのですが、いわゆるODAという考え方ですね、何か開発をしてやるんだというふうな考え方をもうそろそろちょっと考え直してもいいんじゃないでしょうかね、国際関係の中で。協力するんだ、交流するんだ、何か日本が先進国だからおくれたやつに開発してやったり教えてやるんだというふうな、そういう考え方からもうそろそろ抜け出してもいいんじゃないかと思うのですね。このような点で、これは日本だけじゃございませんけれども、何かそういうふうな点で考えていることございませんか。
  78. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本外交も、まずやっぱりわかりやすい外交でなきゃならぬし、我我がこれを説明する言葉もわかりやすくやらなきゃならぬというのは当然でありまして、そういう方向で努力はしておるわけですが、核の問題等、今、松前さんと我が省の局長とのいろいろの議論もありましたけれども、これは日本政府としてのこれまでずっと続けてまいりました日本の基本的なスタンスを申し上げたわけでありまして、私はそれはそれなりに国民の皆さんにも理解を得ておるんじゃないか、こういうふうに思いますけれど、しかし、全体的にはもう少しわかりやすい言葉で説明をするように、これは努力をいたしたいと思います。  それから、経済協力については確かにおっしゃるように、これはいわば日本の責任、私は国際的責任だと思います。これだけ世界の中で経済的に力をつけてきたわけですから、別にその援助を押しつけてやる、出すということじゃなくて、国際的な責任の一つとして積極的に人道的見地であるとか、あるいはまた相互依存と、こういうことを踏まえて南北関係等を見ますと、開発途上国は非常にまだおくれておるわけですから、これは責任、いわば義務として日本がやっていく、こういうような姿勢はずっととり続けておりますし、これがやはり私はだんだんと日本が援助している国国にも理解をしていただいておる、こういうふうに実は思っております。  先般も中国へ参りまして、中国でも今度は七年間で四千七百億の膨大な円借款を行うことにしたわけでありますが、そうした日本の考え方といいますか、援助に対する基本的な心構え、そういうものがやはりだんだんと中国の皆さんにも理解をされておる、私はそういうふうに確信をして、大変うれしかったわけであります。
  79. 八百板正

    ○八百板正君 言葉じりをつかまえて言うわけじゃございませんけれども、援助援助ということですね。私は、余り援助援助というふうな考え方、言葉を国際関係の中で出すべきじゃないんじゃないかという感じがするのです。それから、おくれているから助けてやるのだと、こう言うけれども、後進国とか何とか言うけれども、おくれているということがなぜ悪いんですか。ちょっと答えにくいいやな質問かもしらぬけれども。答えなくてもいいです。
  80. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) おくれているのが悪いということを言っているわけじゃないのですね。しかし世界の現実を見れば、やはり戦争前に五十一カ国か五十二カ国かあった国が戦後百八十カ国にもふえているわけですから、そうして新しい独立国家等が、建国間もない、体制整備されてない、そういうことで特に南の問題として、非常にいろんな面でおくれていることはこれは現実の姿ですから、これが悪いとかいいということじゃなくて、その現実の姿を我々は率直に受けとめなければならぬと、こういうことですね。そして、それに対して余力のある国が協力していく、私はそれが国際的な使命であろうと思うわけです。
  81. 八百板正

    ○八百板正君 やっぱり国際的任務というものは、おくれているから援助してやるとか、困っているから助けてやるとかいうふうな、余りそういうふうな考えを持たないで、差別なくどの国ともおつき合いをして、その国が困っていることがあればお手伝いをすると。そこから学ぶものがあれば学んでくるというふうな、こういう関係にしていく方がいいんじゃないかと、こう思うんですがね。これは日本だけでそういうわけにはいかぬという状況もございましょうけれども、何かこういうふうなやり方を見ているというと、自民党さんの派閥攻勢の構造に似たような格好の国際関係をつくり上げているというような感じがするんですがね。余りいい聞き方じゃないかもしけぬけれども。応援してやって、おれの方につけて勢力をつくっていくというふうな、そういう発想に似ているような感じがするんですが、国際関係の立て方、そう思いませんか。
  82. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いや、これは違うと思いますね、今おっしゃることは。日本が援助すればそれなりに日本にも姿勢を向けさせようとか政治的影響を大きくしようとか、そういう考え方をして協力しているところもあると思いますけれども日本の場合は初めから伝統的に、経済協力という考え方は人道主義といいますか人道的に、別に体制がどうだとかこうだとかそういうことじゃなくて、本当に困っておる国々に対してはこれは協力をしていくのが自然であるし、これが責任だと。  それからもう一つ相互依存。これもまた体制を超えた、広く南北関係の立場に立っても相互依存関係というものを進めていこう、こういう人道的配慮相互依存というものを二本柱にして協力をやっておるわけです。そうして、これはただ二国間だけじゃなくて日本の場合は三割はやはり国際機関ですね。多国間援助――協力を受ける国が日本からストレートに協力を受けたということじゃなくて、国際機関を通じて日本から受けたということになるわけでして、そうしたいわゆる多国間の援助というものは三割も援助しているわけであります。ですから、政治的にあるいはまた何か日本の影響を相手に及ぼそうと、こういうふうなことでやっておるわけでは決してないんで、これは日本経済協力の基本というものをわかっていただけばよく理解ができると私は思いますし、今後ともこの基本姿勢というものは続けていくという考えです。これは変わりません。
  83. 八百板正

    ○八百板正君 おっしゃることはある程度わかるんですけれども、傾向として、やっぱり何かこう開発援助とか協力とか言って性質が少しずつ変化してきているような感じがいたしまして、殊に最近は、アメリカのいわば露骨に言えば対ソ政策といいますか、反共政策といいますか、そういう手段に使われるような形で、援助関係がそんなふうに引っ張られているというような感じがするんでして、それはアメリカの立場と日本の立場は違うと、その点で日本の立場はきちんと守っていくというようなことを我が外務大臣は言っているようですから、その辺は日本アメリカの立場の違いも心得て取り組んでいられると思うんですが、レーガン演説をこの国会でやりましたときも発言の冒頭で、言葉は違っていても「反対意見を述べ、神との語らいを通して心の平安を求める権利を守ります。」というようなことを言っているんです。ですから、アメリカと違った立場は、やっぱり彼の言うとおり恐れることなく反対意見を述べて、そして将来の世界の立場を考えていくというのが外交の上で大事だと思いますね。  日米関係はいろいろのっぴきならぬひもがついていることも現実ですけれども、何かどこかに自主的という言葉も発言の中に書いてありましたね。これは意見だけじゃなくして、事実をもってひとつやっていただきたいと思いますね。  それから、ODAのお金をふやすという話も、国際的公約のようにこれは実行できますか。これは簡単にひとつ。
  84. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 経済協力の考え方につきましてはこれは日本日本アメリカアメリカでありまして、日米間でこの経済協力問題について話し合いはしております。シュルツ国務長官もぜひ話をしようということで話をしたわけですが、しかしその際に私は、日本はあくまでも人道的配慮あるいは相互依存というこの基本理念というものは変えるわけにはいかない、今後ともこれは貫いていく、そういう中でアメリカとの間で一つのスタンスで協力できるものがあればそれは協力していきましょうと。タイとかフィリピンなどで、農業開発は日米共同の援助プロジェクト等もつくっておりますが、そういう点は今後とも仲はしていく。しかし、アメリカアメリカ流でやるわけでしょうが、アメリカ流に日本もやれと言われてもそれは無理ですということははっきり香っておりますし、これは今後ともこの基本姿勢は変えないということであります。  それから経済協力、特にODAの予算につきましては倍増計画をつくっておりまして、そして掲げておりまして、これは一生懸命努力をしております。今度の予算でも最大伸びといいますか、九・七%伸ばしていただいたのですが、しかし今の実施状況を見ますと、どうしても為替相場で円が安くなるとか、それからまた多国間の国際機関に対する拠出、これがアメリカを初めとしてだんだんとその意欲が薄れてきたわけですね。ですから、そういうものを日本は予定しておりましたけれども、その拠出がずっと落ちてきたものですから、そういうことでむしろ実質のODAの伸びは落ちているということで、倍増計画を打ち出して我々はやっていますし予算もつけていただいておりますが、しかしなかなかこの五年間倍増は、二年終わったぱかりですから何とも言えませんけれども、難しくなっている。難しくなってはおりますけれども、我々はこの旗はおろさないで、これからもひとつこの倍増に向かって全力を尽くしてまいりたいと、こういうふうに思います。  倍増をしても先進国の中で比べますと、国際的なODAなんかの予算は、実質的な経済協力はまだまだ日本はおくれておる。〇・八%という国連の目標等もあるわけですが、そこまで到底まだ追いつくような状況でない、こういうことであります。これは平和国家、平和外交を推進する日本としては、どうしてもこの問題、この経済協力には大きな重点を置いてこれを進めていかなきゃならぬ、こういうふうに私も考えておりまして、努力を重ねてまいりたいと思います。
  85. 八百板正

    ○八百板正君 私はお尋ねしても、お答えいただいてああなるほどと言ってすぐにそれで一件落着というような話にはなりませんから。一つの糸口をつけたような意味でお尋ねして、お聞きをして、また今後にいろいろ問題をつないでいくということだと思います。私も問いただけでよくわかりませんから、後また調べるうちにいろんな問題にぶつかってくると思うので、そんなふうな意味で、気軽に思ったまま簡単にひとつお答え願いたいと思います。  それから、これも新聞記事ですけれども、日米欧委員会というのがあるんですか。タスクフォース、作業部会というのが六月のロンドンサミットに向けて、何か六つぐらいの提青みたいなものを出したのをちょっと見たんですが、これを見るというと、日本は軍備で協力――協力というとおかしいが、軍備でふやして国際的義務を負うことができないのなら金を出せ、金持ちになったんだからというふうな意味のことを言っておるようです。そういうのをこのロンドン・サミットに向けて影響力を行使するというか、根回しをするのだかどうかわかりませんが、そういう話が出ております。しかし、軍備の方はできないのなら無理せぬでもいいが金の方は出せというのは、その金の方は、余裕があるのなら出せというのならそれはそれで、私もそういう意味でどんどんふやしていったらいいと思うんですが、ところがその出し方が、やっぱり西側社会にてこ入れするために出せと、こういうふうな感触が結局出ているんですね。そういうことなんですね。そうしますというと、やっぱり何か国際対立にてこ入れするために一方に加担する、その方向を加速するというふうな形の助言みたいになってしまうんじゃないでしょうかね。そういう対決の面だけに考え方がいかないように、例えば米ソにしたって、私もよく裏の裏のことはわかりませんけれどもアメリカもなかなか外交はしたたかでありまして、一面で対決しているが、一面ではこたつの中で足を出してさわっているような、そんなふうないろいろな外交をやっておるようでありまして、そういう対決の面だけに日本外交、日米関係の取り組みがそこにだけ寄っていくようになりまするというと、そういう面で結局国際関係を悪くする方に加担して、加速するということになりますから、ここは別に御返事はいただかなくても大体わかっていますから、そうじゃないと言うでしょうから、ひとつ御留意を願いたいと思うんです、ロンドン・サミットなんかの今後に。向けまして。  余り時間もございませんしおいでいただいておりますから、また大臣も前に農林大臣をやっておられるから農業のことをちょっと聞きますが、前にも質問の中で日米の今の牛肉、オレンジの交渉の経過が話に出たようですけれども、これについての大体の先ほど来のお答えはそれはそれなりにいたしまして、日本の農民といいますか、農業面でやっぱり心配しているのは、アメリカがこの問題をきっかけにしていろいろな面に自由化を求めてきて、自由化は結構なんですけれども、私から言わせると穀物なんかの自由化はむしろし過ぎるぐらい、えさなんかはし過ぎるぐらいにアメリカとの関係では自由化されておりますね。自由化ところじゃなくて関税もかけていないでしょう、えさなんかは。国際的に見たって、関税かけていないなんというところは余りないんじゃないですかね、えさなんかで。私も余り細かくは調べていませんけれども。むしろ自由でないのは国内なんですよ、えさなんかの場合を見ても。入ってくるのは自由に入ってくるんだけれども、さあ国内に入るというとあっちこっちでかきまぜてわけわからなくしちゃって、値段をつり上げてほかのものが寄りつけないように仕組んじゃっている。自由化されていないのはむしろ国内なんですね。私はそんな感じがするんです。  そういう状況の中でやっぱり日本が心配しているのは、アメリカの米がやがて入ってきて、日本の米作の体系が崩されてしまうんじゃないかという心配が背後にこれは脅威として存在していることは事実なんです。  私も米の問題、稲作の問題は幾らか気をつけて長く見てきておりまするから承知しておるんですが、この間中国に――この間と言っても稲のでき上がった時期ですから去年になりますが、中国の現地の稲を見てきました。見てきましたというよりも、私は専門の技術者ではないけれども、私が一緒に連れていったというと言葉は悪いが、同行者は日本の稲の最高の権威者ですから調査したと言ってもいいと思うんですが、育種なんかになりますと、中国の育種の方が日本よりちょっと先に行っていますね。私も驚いたんですが、私にはわからないけれども日本の専門家の意見がそうでした。アメリカの場合はそれよりもまた上を行っています、今の育種なんかの研究については。日本が非常におくれているという感じです。部分的には日本は進んでいる点がございますけれども。  そんなふうなわけで、何かこうアメリカが食糧の面からアジアに進出するといいますか、日本の米作に対して入ってくるというような、そういう心配が日本の農民にはあるわけであります。これは現に歴史的に見ても、日本の小麦はアメリカの小麦によって実際上つぶされましたわね。ある時期には日本は小麦を外国に売るぐらいのゆとりのあった時期もあったんですけれども、今はもうほとんどアメリカ小麦に押さえられました。押さえられたといいますか、輸入依存になりましたですね。ほかの穀物もそうです。そういうふうな状態で、日本の稲そのものにも、そういうふうなことになるきっかけがこの問題で出てくるんじゃないかというようなことが心配されているわけなんです。  それから現に、ことしの米は足りませんわね。農林省や関係省は、いや、足りなくなんかならぬとこう言っていますけれども、しかし、これは責任のある立場の人が米は足りなくなりますなんと言ったら、売り惜しみで米も足らなくなりまするし、それは大変なことですからそんなことはそれこそ口が腐ったって言えませんが、私どものつかんでおりまする状況から言いますと、結局少し買わなけりゃならないような状況が六月あたりから出てくるんじゃないかと思うんです。そういう場合にアメリカの米を買うなんということになると、これこそ大変な問題になる。そういうふうな点についてどんなことを考えておられるか。これは農水省の方もおいでになっておりますから、ちょっと時間がないという制限がありましたから、簡単にひとつ。
  86. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まず、日米欧委員会の今回の提言ですが、これは民間有識者から成っている委員会でして、例えば大体サミットの前にやるというようなことになっておるようで、その援言はそれなりに政府としても非常にありがたい提言だということで受けとめておるわけですが、しかしお話しのような、例えば経済協力関係で何か日本が筋を間違えて西側の防衛という見地に立って経済協力を進める、そういうことは全然ありませんし、今後ともそんなことは全く考えてないです。先ほど申し上げましたような人道と配慮とそれから相互依存という立場を貫いていくということだけは申し上げておきます。  それから、日米の農産物の協議で心配なのは、これが解決すれば米の自由化が出てくるんじゃないかと、こういうお話でございますが、これはもちろん日本にとっては農政上の最大の問題でありますし、私もはっきり申し上げなきゃならぬと思いますが、米の自由化なんということは日本としてはもう到底これは考えられることではありませんし、今の政府が、もろちん農水省含めてそういうことを考えているわけでは全然ないということははっきり申し上げるわけでございますし、またアメリカもそうした米の自由化日本に押しつけようと、そういうことはこれまたこれまでも言ったことはありません。また、そういうことを日本に言う、押しづけようという考えも持っていないということは、私もアメリカの有識者といいますか首脳部等から聞いておりますから、そうした米の自由化なんというのは、これは御心配は全く要らないということだけは私からも申し上げておきます。
  87. 重田勉

    説明員(重田勉君) 米の問題についてお答えいたします。  農林水産省といたしましては、これまで毎年日米の農産物定期会合というのがございますが、そういう場等を通じましてアメリカに、我が国の農業及び農政におきます米の重要性につきまして繰り返し説明いたしております。米国側も、米が我が国の農業にとりまして最も重要な作物である、そういうことで食糧の安全保障の観点から見ましても、国内で全量需給することになっているという点につきまして十分理解をいたしております。  ちなみに申しますと、昨年の九月に日米の農産物定期会合が日本であったわけでございますが、そのとき来日いたしましたアムスタッツ農務次官も、米につきましては日本に輸入を求めるということは全くないということを明言いたしております。  いずれにいたしましても、現在いろいろ困難な問題を抱えた折に、水田利用再編対策を初めといたしまして需給均衡策を進めているわけでございまして、仮に米国から米の自由化を要求されるようなことがありましても、これを受け入れる考えは全くございません。
  88. 八百板正

    ○八百板正君 形の上でそういうふうになっておるということでしょうが、事実上やはり足りなくなりますと買わないわけにいきませんので、そうすると他用途米とか加工米とかというような形で手当てをするという問題が当然に出てきます。そういう場合に、端的に言ってアメリカから買うというようなことになると、穀物の歴史の関係がございますから大変問題が大きくなる。しかし、これは足りなくなったら何らかの形で手当てしなくちゃいけないのでありまして、恐らく他用途米という形で手当てをして、他用途米といったって、せんべいにする米を人間が食っちゃいけないということはないんですから、いろんな問題がふえてくると思うのでありますが、時間がございませんから……。  それから、外務省が羽ぶり悪いと申しましたが、やっぱりもっと金も人もふやすような工夫をひとつやって、国際社会の中で日本の任務をやるようにしていただきたいと思うんですが、どうしても企業、商社なんかは国際的に非常に進出しておりますから、出先に行きますというと、情報にしたって、商社や企業の方の情報が早くて正確で量も多い。外務省の方が下になってしまう。そこへもってきて予算がピーピーでああだこうだということになりますると、せっかく外国に出した日本外交官が、よい日本の国際環境をつくる上に結果がよく出ないというようなこともあるだろうと思うので、そういう意味で、ふやすという点にひとつ努力してもらいたいし、私どももそういう意味協力すべきものは協力したいと思っております。と同時に、ふやすだけでなくて生かす、少ないなら少ないなりに、多ければなおのことこれを生かして使うという点が大事だと思いますね。これはいずれ、国際的に外国と比べてどんな比較になっているかとか、そういうふうな点は追ってひとついろいろお伺いして、意見も述べ合ったりしたいと思いますが、まず生かす使い方が大事だと思います。  そういう意味では、借款、無償、いろいろございますが、やっぱり韓国の場合なんかにいたしましても、一体韓国というものが将来どういうふうな国として、五十年、百年にわたって発展して繁栄していけるだろうか。二つの朝鮮のあんな状態は、これはある意味では日本の責任があるんですから、なるたけ一緒になってもらわなくちゃいかぬわけでありまして、いろんな外交上の問題があるわけですが、やっぱりその国が、日本の悪いところだけまねするような形で日本の援助の結果が反映したってこれは余りありがたくないわけでありまして、そういうふうな意味で、今度ブルネイとの関係が開けましたが、私はよくわかりませんが、ブルネイは御承知のように油やガスでもってお金はある。しかし、余り民度は高いとは言えないんじゃないでしょうかね、資料を見ると文盲率三〇%なんというようなことがありますから。とすると、金はあるが民度はいろいろ問題があるというような国ですから、今後は直接日本とどういうかかわり合いで関係が出てくるかは別として、やっぱりこういうところは本当に長い目で見て、石油なりガスなり埋蔵量が何ぼあるかわかりませんが、いずれそういうものに頼らない時期が来るわけですから、やっぱりそういう展望を持ちながら、今、国王が日本にお見えになっているわけですから、そういう気持ちで今後のつき合いを、今度初めてなんでしょうから、そういう立場であの国はどういう状況がわかりませんけれども、やっぱり五十年、百年の繁栄に耐えるようなそういう立場で油も買う、ガスも買う、協力もするというような関係を考えていくべきじゃないかと思うんですね。これは後進国とか先進国とか、途上国なんというふうに差別をつけないで、やっぱりその国がどういうふうに将来国づくりをしていったらいいんだろうかという立場をその国の身になって考えて、そして助け合うというそういう態度が大事じゃないかと思うんですね。そういう点から申しますというと、交流にいたしましてもやっぱり役所のベースだけでなくて、民間交流という立場も結びつけて大いにやってもらいたいと思うんです。殊に技術交流なんかになりまするというと、おくれた国が伸びていくためには何といっても農業の面が基礎になりますから、そういうような面になりまするというと、日本もそういう時期を通って今日に来ているわけですから、したがって、そういう時期に日本の発展の礎をつくった有能なる技術者や専門家がたくさんいるんです。しかし、そういう人は大抵もう六十とか七十とかいう立場になって、いわゆる政府ベースといっては何でありまするけれども、そういう感覚では御採用にならないような人材が多いんですね。  私は実際二国――中国との関係ですけれども、交流を十三、四年ばかりやってまいりましてしみじみ思うんですが、例えば日本には、専門家ということになりますと、稲なら稲一つ取り上げましても育種の専門家はいる、あるいは肥料の専門家はいる、栽培の専門家はいる、あるいは土壌の専門家はいる、あるいは病虫害の専門家はいるというふうにいろいろの専門的に詳しい人はたくさんいるんです。しかしやっぱり稲というものは、水を吸って肥料や太陽の光を浴びて天候の中で育っていく一つの穀物ですから、人間ならば歯医者さんや目医者さんだけではこれはどうにもならないのであって、やっぱり総体として健康管理をしながら育てていくという、こういう人になりまするというとなかなか民間の活用をしないというと効果が上がらないというような点があるんですね。私は中国との交流をずっとやっていろいろ考えるんですけれども、どうも政府のやるそういう交流協力事業よりも民間の方が効率がいいような感じもするのですね。  例えば、私は今もう時間がございませんからはしょって申し上げますが、七一年に中国との間の農業関係の専門交流を合意しまして、七一年はほとんど数が少ないが、七五年ごろから少し数がふえてまいりまして、今日までに一これは観光じゃありません、本当の農業の技術者、篤農家、農民、そういう交流のトータルをちょっととってみたんですけれども、今まで四千五百二名が中国との間に技術的交流をやっております。団数にして二百五十二団です。七一年から始めて、七一年はわずかに、十八人の人間を動かしただけです。今日までトータルで四千五百二名。去年はちょっと財政的に苦しくなったので少しこっちも行政整理をやったんですが、三事業団で三百七人くらいの数になっておりますが、これが年間の予算と申しますと五千万そこそこの費用でこれだけの専門交流をやっております。研修生の受け入れや留学生の受け入れも若干やっております。これは政府のお金は一文もいただいておりません。地方自治体にいろいろ協力してもらったり、いろんな方々の若干の協力をいただいております。  こんなわけで、少し民間の活動協力にもひとつ御協力いただいて、官民一体の形で、これは中国だけじゃございませんけれども、そういう御配慮をひとつ今後一属お願いしたいと、こう思います。これは大臣の御見解をちょっと聞かしていただきたいと思います。
  89. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いろいろと今御高説を承りまして、確かにこれからの外交を進める上に配慮していかなければならぬ点も大いにある。そういう点につきましては反省をしながら、やはり平和国家に徹した平和外交を進めてまいりたい、こういうふうに思います。  なお、中国との文化交流、特に技術交流等について今お話も出まして、特に民間の交流が成果を上げておる、こういうお話も出ました。確かに政府でできないんですね、やっぱり民間でなければできない成果というのがあると思います。しかし、政府政府として、大事なそれぞれの国とはしっかりしたひとつ交流体制を進めて、同時にまた、あわせて民間の方の交流も積極的に進めてもらうように政府政府なりにひとつ努力をし、また民間に対しても勧奨をしていきたい、進めてまいりたい、こういうふうに思っております。両々相まって初めて本当の意味の交流の成果というものが上がってくる、こういうふうに思います。
  90. 八百板正

    ○八百板正君 ありがとうございました。
  91. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十八分開会
  92. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ただいまから外務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、予算委員会から審査を委嘱された昭和五十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管を議題として質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  93. 和田教美

    ○和田教美君 私は、五十九年度予算案についてお尋ねする前に、まず二、三の問題についてお尋ねしたいと思います。  そこで、去年の十一月の八日に日米間で取り交わされて発効いたしました対米武器技術の供与に関する交換公文についてお尋ねしたいと思います。これは御承知のとおり、政府は去年の一月でございましたが、我が国が米国の要諦に応じてアメリカに対して武器技術を供与する道を開くこととして、その供与に当たっては政府がこれまでとってきた武器輸出三原則並びに武器輸出に関する政府方針を適用しないということを決めたわけでございます。それで、この交換公文はそれに基づきまして対米武器技術供与を実施するための大枠を決めた取り決めでございます。政府は、この交換公文を国会の承認を必要としない行政取り決めとして扱っております。しかし、私は去る三月二十一日の予算委員会の総括質問で、この交換公文の内容は事実上武器輸出三原則の重大な修正であって、さらに衆参両院の五十六年三月の国会決議にも反する政策変更だから、当然国会の承認を求める条約案件として国会に出すべきだというふうに主張をいたしましたが、結局外務省当局がこの行政取り決めを外務委員会に資料として提出するということになったわけでございます。そして先日、我々全委員のもとにこの交換公文と説明が配付されたわけでございます。したがいまして、一応それを私も子といたしまして、きょうは交換公文の内容について御質問をしたい、こう思うわけでございます。  まず、この交換公文によりますと、武器技術の供与に関する日米間の了解を実施するための協議機関として、日米武器技術共同委員会、JMTC、これを設置するということになっておりますが、一部の情報によりますと、政府はJMTCを今月中に発足させる方針を固めたというふうに伝えられておりますけれども、このことは事実でございますかどうか、まずお聞きをしたいと思います。
  94. 北村汎

    政府委員(北村汎君) JMTCにつきましては、今後アメリカ側とも協議をいたしましてできるだけ早く発足させたいというふうに考えておりますけれども、具体的な期日を決定しておるわけではございません。ただいまおっしゃいました報道というようなことも、四月じゅうとかいう話は、それは全然私どもは考えているところではございません。
  95. 和田教美

    ○和田教美君 もう少しかかるわけですか。
  96. 北村汎

    政府委員(北村汎君) それも、アメリカ側といろいろ協議をいたしまして決めることでございますので、まだその具体的な期日を決めておりません。
  97. 和田教美

    ○和田教美君 それでは次に移りますけれども、この交換公文の前に、去年の一月に出ました政府の対米武器技術供与に関する内閣官房長官談話、これには、基本的には武器輸出三原則は堅持して、国会決議を尊重するというふうに書いでございます。したがって、私の解釈によれば、武器技術は、今度の交換公文によって別扱いでアメリカに対しては輸出するのを認めるけれども、本体、つまり武器そのものについては、従来どおり武器輸出三原則に従って、アメリカに対してもこれを輸出しないというふうに理解しでいいのかどうか、その辺をお聞きしたいと思うのです。
  98. 北村汎

    政府委員(北村汎君) ただいま委員が御指摘になりましたように、昨年の一月に決定をいたしました政府の決定は、これは、武器技術に限り、アメリカに対してのみその供与をするという意味で武器輸出三原則の例外をつくったわけでございますけれども、武器本体というものにつきましては、従来どおり武器輸出三原則の対象になっておるわけでございます。
  99. 和田教美

    ○和田教美君 わかりました。  そこで、さっきから問題にもなっておるんですけれども、一体武器とは何か、武器と武器技術というのは一体どういうふうに区別されるのか、わかったようで非常にあいまいな点があるんですけれども、その辺をひとつ明確にしていただきたいと思います。
  100. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 武器輸出に関する政府統一方針によりますと、「武器輸出三原則における「武器」とは、「軍隊が使用するものであって、直接戦問の用に供されるもの」をいい、具体的には、輸出貿易管理令別表第一の第百九十七の項から第二百五の項までに掲げるもののうちこの定義に相当するものが「武器」である。」と、こういうことになっております。
  101. 和田教美

    ○和田教美君 武器技術とは何ですか。
  102. 恩田宗

    政府委員(恩田宗君) 附属書の方には、「武器技術」とは、千九百七十六年二月二十七日の武器輸出に関する日本政府の方針に定義する「武器」の設計、製造又は使用に専ら係る技術をいう。」と、こういうことになっております。
  103. 和田教美

    ○和田教美君 ところが、去年の一月十四日に出ました官房長官談話ですけれども、これによりますと、武器技術の「供与を実効あらしめるため必要な物品であって武器に該当するものを含む。」というふうになっておりますね。ということは、アメリカに提供するものは単に武器技術だけではなくて、こういう範囲の武器そのものも、武器本体も輸出を認めるということになるんだろうと思うんですが、その点はいかがですか。  それから、この武器技術の「供与を実効あらしめるため必要な物品であって武器に該当するものを含む。」という、これは一体何を言っているものか。
  104. 植松敏

    説明員(植松敏君) 今の御指摘の点でございますけれども、まず武器技術というのは、今御答弁ありましたように武器の製造、設計、使用に専ら係る技術というふうに定義をされております。それから、今御指摘の武器技術、そういった技術を供与いたします場合に、当該技術の移転を実効あらしめるために、例えばその技術の理解の便宜のために試作品などそういったものにつきまして――場合によっては技術内容だけでは十分に理解できないというようなケースにつきまして、その技術の内容を理解するために必要な範囲で、例えば試作品などがその技術供与を実効あらしめるに必要な物品ということで入るという趣旨でございまして、当該試作品が、先ほど申しました武器の定義に該当いたします場合にこれは形式的には武器でございますので、したがいまして、単に武器技術というのだけに限りますと試作品も出せなくなる、そのために当該技術の供与を本当に実効あらしめる形にならないという場合に例外的に認めるという趣旨でございまして、具体的に技術供与の要請があり属したときに、その技術の移転の要請の中身等をケース・バイ・ケースで判断して、必要があれば物品、そういったものが出ていくこともあり得る、こういうことでございます。
  105. 和田教美

    ○和田教美君 そうすると、非常に限定的に考えて試作品ぐらいのところに限るというふうに解釈していいんですか。
  106. 植松敏

    説明員(植松敏君) 具体的に技術要請がございませんものですから、供与をすべき技術が仮に決まりました場合に具体的な技術をどういう形で出すか、その具体的ケース・バイ・ケースで判断されるべきものでございまして、私は今、試作品と申し上げましたけれども、一般的に申しまして、技術が主体でございますから、物として武器に該当するものは非常に例外的なものに限られてくるだろう、こういうことでございます。
  107. 和田教美

    ○和田教美君 次に、アメリカは、日本事前の同意なしに日本から提供された武器技術を他の目的に転用できないし、第三国に移転することもできないというふうに理解していいでしょうか。  それから、またこれは特に重要なことですけれども日本から供与された技術によって製造された武器の本体ですね、アメリカでつくった本体はどうなるんですか。アメリカが第三国に武器、援助や武器輸出をする場合、日本の技術によるものを除外したり、一々日本の同意を求めるというようなことがちょっと考えられるかということです。その点のチェックはちゃんとできるようになっているんだろうかどうかということです。武器技術共同委員会が近く発足されるというんですけれども、この委員会はそこまでの機能は持たされていないんじゃないかと思いますけれども、その点はどうですか。
  108. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 最初に委員が提起なさいました武器技術の第三国移転の問題でございますが、これは今回締結をいたしました取り決めの中でも、またこの取り決めの基本になっておりますMDA協定の中でも、我が国事前の同意なくしてそのような第三国移転は行い得ないということが書かれてございます。したがいまして、これは条約上の義務として米側は必ず我が方に事前の同意を求めなければならないということでございます。  それから、次に御覧間になりました我が国が供与した武器技術を使用して向こうで武器が生産された場合、その武器を第三国に移転する場合の我が国への同意の問題でございますが、この点につきましては、これは技術の問題と申しますのは千差万別でございますから必ずしも一概に申すことは難しいと思いますけれども、具体的事例に即して検討することになりますけれども政府といたしましては、当該武器技術自体の第三国への移転というものを、我が国政府事前の同意に係らしめておるというこの意味が失われることにならないように米国政府と協議をしてしかるべく対処していく所存でございます。  先ほどおっしゃいましたJMTCはこの協定の実施に関していかなることでも協議ができる場でございます。したがいまして、そのような場合、JMTCでそういうことが協議されることは大いにあり得ると思います。
  109. 和田教美

    ○和田教美君 とにかく、アメリカはソ連と並んで世界最大の武器輸出国でありますから、その辺のところをよく押さえていただかないと、日本の技術なり武器技術がアメリカの武粉本体という形で第三国にどんどん出ていくというふうなことになると、結局日本の武器輸出三原則が事実上空洞化しちゃうということにもつながるものですから、その点は十分チェックをしていただきたいと、こう思います。  次に、JMTCが武器技術を識別する際の基準ですね、大体どういう基準でやるのか。この交換公文によると、日米安保体制の効果的運用の確保ということが盛んに強調されているわけですけれども、その辺はかなり拡大解釈にならないような厳密な基準ができておるんでございましょうか。
  110. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 武器技術の対米供与につきましては、これはアメリカから要請があった技術のすべてについて供与を認めるということではございません。具体的な事例に即しまして、我が国自身がその時点において国際情勢とかその他いろんな諸般の事情を考慮に入れまして政府が自主的に判断をいたしまして、そして先ほどおっしゃいましたように、日米安保体制の効果的な運用を確保する上で重要と認められるものについてのみ行うことでございます。  技術の問題は、先ほども申し上げましたように千差万別でございますので、その基準というものについて具体的なことが決められておるわけではございませんけれども、先ほど私が申し上げましたようないろんな事情を勘案して政府が自主的に判断する、決して言ってきたものすべてそのまま出すということではないということを申し上げたいと思います。
  111. 和田教美

    ○和田教美君 次に、武器技術供与に伴ういわゆる密室性の問題を取り上げたいと思うんですけれども、ここの技術供与が具体化する際に日米間が結びます武器技術の内容等の細目取り決め、これは原則的には公表しないというふうに伺っているんですけれども、この間の予算委員会では、細目取り決めそのものはなかなか公表できないけれども、しかしそれに至る経過をなるべくお知らせするようにしたいというふうなこともおっしゃっておりましたが、その辺は具体的にどうなるんでございましょうか。  それともう一つ、具体的にアメリカの方からこうこうこういうものが欲しいというふうなことのオファーがあるのかどうか、その辺はどうでしょうか。
  112. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 最初に実施細目取り決めの問題について申し上げたいと思いますが、この取り決め自体につきましては、これは防衛安全保障上の考慮等から基本的には公表し得る性格のものでないと考えられる点は今までも国会で御説明をいたしました。しかし同時に、対米武器技術供与がどのように行われておるかということにつきましては、どの程度明らかにできるかについて米側とも協議の上検討したいということもお答えをいたしました。できる範囲で米側と協議をして、いかなる技術が供与されたかを公表できるようにいたしたいと考えております。  それから、現在までのところ、具体的な武器技術の供与の要諦というものはアメリカ側から参っておりません。
  113. 和田教美

    ○和田教美君 とにかくこの交換公文で枠組みだけは決まったと、しかしその逆用の実際の細目取り決めは全くわからないというふうな形が続いていくとすれば、これは非常にいわゆる密室性ということが国民の批判を浴びるだろうと思いますので、常識的な企業秘密あるいは軍事秘密というような問題はもちろんあると思いますけれども、なるべくそれを公開するというように心がけていただきたいと、こういうふうに思います。  次に、日本の企業が民生用に開発した技術でありながら武器用にも使える、いわゆる汎用技術ですね、これについてお聞きしたいんです。  交換公文では、武器技術とは武器の設計、製造または使用に専ら係る技術のことであって、そのような専ら係る技術以外の防衛分野における技術がこれはいわゆる汎用技術というふうに解釈しでいいのかどうか、まずその点を。
  114. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 昨年一月の官房長官談話において政府が御説明をしておりますように、我が回として防衛分野における米同との技術の相互交流を図ることが日米安保体制の効果的な運用を確保する上で極めて重要であるという認識を述べたわけでございますが、この防衛分野における技術と申しますのは、日本の場合、これは武器技術と、それから武器技術ではない汎用技術であるけれども防衛分野における技術と見なされるもの、こういうことに相なるかと思います。
  115. 和田教美

    ○和田教美君 私の問いたところによると、アメリカ側の関心は日本の兵器専用技術なんというのはそれほどのものはないと思うんで、そういうものよりも、むしろ例えば高速コンピューターだとか光通信だとか、そういうエレクトロニクス関係などの軍需、民需両方に使える高度先端技術、そういう分野にあるというふうに聞いておるわけなんですけれども、交換公文ではその汎用技術について、現在においても原則として政府の制限は課されていないことを確認すると言っておるわけでございます。しかしこの取り決めで、この交換公文の中で汎用技術も供与の対象に含めるようなことが書いてございまして、おまけにその技術の供与を日本政府は歓迎すると、そのような供与は促進されることとなりましょうというふうなことがつけ加えてございますね。これは一体どういうことを意味するんでございますか。
  116. 北村汎

    政府委員(北村汎君) 先ほど来御説明をいたしておりますように、昨年の一月に政府が決定いたしました対米武器技術供与は、これは武器技術に限ったわけでございます。それでそれ以前も、あるいはその後、現在においても汎用技術と申しますのはこれは自由に提供され得るものでございまして、今までからも規制の対象にはなっていなかったわけでございます。この今回の取り決めの中で、防衛分野における技術という言葉と、それから武器技術という言葉と両方出てまいります。これは先ほども説明しましたように、もともと一月の決定というのは、防衛分野における技術、すなわち、武器技術を含めた防衛分野における技術というものの日米間の相互交流というものは非常に重要であるという認識の上に立って、その場合にそれまで提供できなかった武器技術というものについての提供の道を開いたわけでございます。したがいまして、今回の取り決めは、これは武器技術の対米供与のみの協定でございまして、決して汎用技術をこの協定の中で取り仕切るというようなことではございません。  ただ、先生今御指摘の前文の中で、「武器技術以外の防衛分野における技術の日本国からアメリカ合衆国に対する供与が、従来から、また、現在においても、原則として制限を課されていないことを確認し、関係当事者の発意に基づきかつ相互間の同意により実施される防衛分野における技術のアメリカ合衆国に対する供与を歓迎します。」と、こう書いてございますのは、昨年の一月までは、これは武器輸出三原則の対象で対米供与できなかったものを武器技術に限りアメリカには出すということにしたわけでございますから、その武器技術が自由にアメリカに、日本政府の自主的な判断に基づいての上でございますけれども、とにかく提供できる道が開けた以上は、従来からも自由であった汎用技術を含めて、防衛分野における技術というものが相互に交流され、そしてその交流は「促進されることとなりましょう。」というのは、これは政府の見通しを述べたわけでございまして、今まで武器技術がとまっておったわけでございますから、そのとまっておった武器技術が出るようになったので、その武器技術を含む防衛分野における技術の交流は促進。されるだろうと、こういうことを前文で述べたわけでございまして、決して汎用技術をこの協定によってアメリカに供与することを政府が促進する義務を負うとか、そういうようなことではございません。
  117. 和田教美

    ○和田教美君 命の説明がもうひとつ納得のいかないのは、「そのような供与は促進されることとなりましょう。」という、こういう見通しを交換公文の中に書くというのもおかしな話である。業界の一部なんかには、これは日本の高度技術が非常に進歩してきたということでアメリカ軍がいら立ってきて、この汎用技術については日本側がなかなか技術移転を渋る、日本企業の方が渋っているのを政府からプッシュしてもらって、政治的に圧力をかけることを期待して、外務省もそれに応じたんじゃないかというような観測もあるぐらいなんですけれども、そういうことはございませんか。
  118. 北村汎

    政府委員(北村汎君) そういうことはございません。
  119. 和田教美

    ○和田教美君 民生用に開発したこの汎用先端技術ですけれども、本来民間企業同士の話し合いで技術移転は可能だという建前をこの交換公文はとっておりますね。ところが、このような交換公文を取り交わすことによって、汎用技術であっても一たん武器技術として供与されてしまった場合、政府が民間に勧めて、ひとつ提供してやれということをやったといたしますね、そうすると、そういうふうに供与してしまった後は、先端技術の汎用技術を民生用商品の製造に使ったり、自由に第三国に移転するというふうなことが事実上できなくなる、非常に難しくなるというふうなおそれはございませんか。
  120. 北村汎

    政府委員(北村汎君) ただいまの委員の御質問の中で、ちょっと私理解を十分していないかと思いますのは、汎用技術がアメリカに提供されてそれが武器技術となってしまうという、ちょっとそういう御趣旨の点があったと思いますが、汎用技術はこれはあくまでも汎用技術でございまして、これは今回の取り決めの対象になるものではございません。したがって、これは全く民間の発意に基づき、かつ民間の当事者の同意に基づいてこれは向由に提供されるものでございますから、それが提供された後、武器技術になって制限を受けるとか、そういうことはございません。
  121. 和田教美

    ○和田教美君 私の言い方がちょっと不十分だったと思うんですけれども、交換公文の中に促進されるであろうとか、勧迎するとかというふうな意思表示を日本政府としてしておる、そういう形のもとで汎用技術が仮に民間に提供された場合に、それは要するに民間同士の自由な契約に基づくものであることはもちろんでしょうけれども、その背後に日本政府があってそれを推進するというふうなことがあって、しかもアメリカ側の受け入れるのは武器製造会社でしょうから、日本の企業とアメリカの大きな武器製造会社との力関係で、その技術を自由にあちこち持ち出すということができなくなるというおそれがないかどうかということを事実問題として聞いているわけです。
  122. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 今、北村局長から御説明のありました点についてちょっと補足して御説明させていただきたいと思いますが、確かにアメリカ側の企業は、日本のそういういわゆる汎用技術的な面に関心を持っている点はあるわけでございます。ただ、交換公文に書いております趣旨は、従来定義されております武器技術についての供与が極めて制限されていたというような事実がありますために、例えば、日本の企業がアメリカの企業に協力しようとしても、武器技術に該当する部分と汎用技術の部分と両方出してやるというようなこともあったかもしれませんし、そうしますと、武器技術に該当する部分は供与が従来できなかったわけでございますから、それでこちらの汎用技術の部分もやりにくかったという面もございますし、それからまた、武器技術の部分を供与しないということでございますと、その周辺の汎用技術の部分についても――日本の企業は自由である建前にはなっておりますけれども、注意深く取引について行っているというようなことがございまして、全体として、アメリカで武器の開発に何らかの形で使われる可能性のある汎用技術の供与がスムーズにいがなかった面があったのだろうと思います。その点が武器技術についても自由になったということで、全体としてスムーズになるようになったという意味で、ここで「促進されることとなりましょう。」というような見方を私どもはしているということでございます。  企業にとりましては単に汎用波術だけではございませんで、武器技術につきましても、自主的に自分のところでアメリカに供与するかしないかは決めるということははっきりいたしておりまして、その点はアメリカの国防省との間でも、最終的に企業の自主的な判断に任せるということになっておりますので、武器技術についても汎用技術についても同じように自主判断でやるということになろうかと思います。  それで、汎用技術がアメリカに供与されてそれがアメリカの武器の製造に使われだということを仮定されました場合も、それはアメリカの供与された企業がアメリカで武器技術のためにそれを使ったということでございまして、日本の企業が本来民生川に使っていた技術の第三回への移転とか、それから民生用への利用という問題が制限されるということには全くならないと我々は考えております。
  123. 和田教美

    ○和田教美君 次に、これは外務大臣にお尋ねしたいのですけれども、中曽根総理が今度六月のサミットに出かけられたときにフランスの大統領と当然会談されるだろうと思うんですけれども、この間報道が出ておりましたところによると、フランス側は、その際に日本の武器技術の対欧輪田を持ち出す意向であるというふうなことが書いてございました。つまり、アメリカについてだけ特別に武器技術の輸出三原則を修正して出すというのであれば、おれの方にもよこせという言い分だろうと思うんですけれども、この点については政府対応はどうなんですか、アメリカだけは特殊ですか。
  124. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 武器輸出三原則については厳守していく。ただ、武器技術についてはアメリカは例外ということを決めたわけですが、その他の国については、武器並びに武器技術について三原則を厳守していくという日本の方針はこれは変わりませんから、日本とフランスの首脳会談が仮にあってそういう話があったとしても、これに応ずるということはあり得ない、こういうことです。
  125. 和田教美

    ○和田教美君 これは二月の二十日だったと思うんですけれども外務大臣は衆議院の予算委員会で、アメリカが研究着手を明らかにしました弾道ミサイル防衛システムBMDですか、これに日本の武器技術が使用された場合について、ソ連のICBMに対するアメリカの防衛兵器であって、技術供与があっても平和を守る手段だから技術供与は問題でないというふうに述べたという報道がございましたけれども、この考え方は変わりませんか。
  126. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これはまとめて申し上げておかぬと誤解を招きますので申し上げますが、私が先般申し上げた答弁は、その後の予算委員会における答弁でも明らかにしておりますが、すなわち政府としては、まず米国の国防政策については抑止を旨とする防衛的なものであると承知しており、米国が明らかにしている弾道ミサイル防御構想もあくまで弾道ミサイルに対する防御を基本としているものと承知しておる。  次に、対米武器技術供与について述べれば、これは米国の防衛能力の向上に寄与することにより、日米安保体制の効果的運用に資するとの観点から行われた政府の決定であり、武器技術供与の要請があった場合には、総合的な国益の観点を踏まえて具体的事例に即して慎重に決定をする所存であります。これまでも繰り返し説明しておりますように、現在まで米側より我が国に対し武器技術の供与につきまして具体的な要請はありませんし、我が国のいかなる技術がいかなる形で米国の国防政策において用いられ得るか承知しないが、    〔委員長退席、理事鳩山威一郎君着席〕 いずれにせよ対米供与する武器技術については、我が方が具体的事例に即して自主的に判断して慎重に決定をするわけであります。なお、米国の弾道ミサイル防衛構想は非常に長期的な構想であって、米国において現在あくまでも研究の段階にあり、我が国に対して具体的要請が想定されているものでは全くないわけであります。そうしたいわば仮定の問題でございますから、これについてあれこれ述べるということはかえって誤解を招くことになるのじゃないか、こういうふうに考えておりまして、これ以上の言及は差し控えた方がいい、こういうふうに判断しております。
  127. 和田教美

    ○和田教美君 この弾道ミサイル防衛システムですけれども、これはきょう配付されました政府提出資料の中にも出ておりますけれども、ジュネーブの軍縮委員会、前の軍縮委員会における審議状況我が国が行った提案というのが過去三年間のが出ておりますけれども日本の方針としては、宇宙における軍備競争の防止というのが重要な日本の政策目標といいますか、軍縮委員会における政策目標一つに取り上げられていることが書いてございますね。要するにその方針に違反しないかどうか、その点はどうですか。
  128. 北村汎

    政府委員(北村汎君) これは最近の宇宙開発技術の進展にかんがみまして、宇宙における軍備競争の防止ということに関しても今後十分な検討が進められるべきであると考えておりまして、この我が国の基本的な態度というものについては何ら変化はないというふうに考えております。
  129. 和田教美

    ○和田教美君 先ほども質問に出ましたけれども、イランから輸出要請の来ております三次元レーダー、C1輸送機の問題なんですけれども、先はどの経済局次長でございますかの答弁には、この間、四月四日と言いますと私が予算委員会で質問した内容だと思うんですが、要するに今のお話ですと装備局長は、三次元レーダーについてはこれは武器と考えていないということを答弁したと言っているんですが、私の聞いたのでは、C1は、通産省はこれは武器ではないというふうに考えたことがございますと、しかしレーダーについてはそれほどはっきりおっしゃっていなかったよつに思うんですが、改めてもう一度見解を述べてください。
  130. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 先日の予算委員会の御答弁で、C1輸送機に、つきましては、    〔理事鳩山威一郎君退席、委員長着席〕 五十一年ごろ、通産省として武器ではないという答弁を通産大臣がされているということがあったということを御説明申し上げたわけでございますが、レーダーにっきましては、いわゆるここで話題となっております三次元レーダーということではなくて、そのような警戒管制用あるいは航空管利用に使われているようなレーダー一般にっい」、それは武器とは言えないんじゃないだろうかというような御議論が、やはり通産省とそれから国会における御質問との間で行われたというふうに聞いておりましたので、そういう意味で私は御答弁申し上げたわけでございますから、この三次元レーダーが武器かどうかについては今後検討し低くちゃならない問題だとは思っております。)和田教美君 私はちょっと輸出貿易管理令というのを見てみたんですけれども、その輸出貿易管理令に武器の定義が出てございますね。そしてそり別表で、銃砲とか爆発物、火薬類、軍用車両、早用船舶、軍用航空機、重用の探照灯、単用の細菌製剤などいろいろ列挙をしてございますね。しかし、これらの列挙した物品の中で、「軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるもの」が武器だというふうな定義になっておるわけです。ところが、例えば防衛庁が使っているこの軍用三次元レーダーなんてことについては別表のどこにもそれに該当する項目はございませんね。そうすると、結局貿易管理令の別表の項目の中に全然入っていないんだから、したがって武器ではない、したがって輸出してもいいんだと、こういう三段論法になるんですか。
  131. 渡辺修

    説明員(渡辺修君) お答え申し上げます。  レーダーにつきましては、かねてより国会の場におきましてまさに今議員御質問のような議論が過去にもあったことは事実でございまして、我々御答弁申し上げておりますのは、先ほど委員お持ちの交換公文のところの別表に今の輸出貿易管理令の百九十七項以降の項目が挙がっておりますので、それでもって御説明させていただきたいと思います。  一般にレーダーというのは、ここに書いておりますように気候観測用あるいは航空管制用等種々のものがございまして、汎用品であるということで輸出規制の対象、つまり武器という扱いにはなっておりません。しかしながら、レーダーの中にも例えげ追尾用レーダーといったような例がございますけれども、それがレーダーで情報を収集し、それが火器管制等に連動しておるようなもの、そういったようなものにつきましては我々は、これは軍隊が使用し、直接戦闘の用に供するものということで武器に該当するのではないかといったような考え方を持っておりまして、具体的に申し上げますと、そこの輸出貿易管理令別表第一の関連部分百九十七項それから百九十八項と二つございますが、「銃砲及びこれに用いる銃砲弾」「並びにこれらの部分品及び附属品」ということで火器管制がここで言えば銃砲に相当するわけでございますから、これに連動する部分品及び附属品と、そこでレーダー、私御説明申し上げました直接戦間の用に供することとなるレーダーをこれで読むということで従来から解釈いたしてきておるわけでございます。
  132. 和田教美

    ○和田教美君 そうすると、三次元レーダーなんていうのはそれに該当するという解釈は成り立つわけですね。
  133. 渡辺修

    説明員(渡辺修君) 今申し上げましたような物の考え方でそれに該当いたしますれば、御指摘のように武器に該当すると思います。しかしながら、先ほど来議論になっております三次元レーダーというものがそれに該当するものであるかどうかという点につきましては、実は非公式に打診を受けた現段階でございまして、具体的な要請あるいは輸出の申請といったようなものがあったときに、その仕様、技術の内容あるいは現実に今使われておる使われ方、そういったようなものを詳細にチェックいたしまして、私が申し上げました物差しに該当するかどうかというのを慎重に検討いたしたい、かように考えております。
  134. 和田教美

    ○和田教美君 とにかく今の話を聞いていても非常にわかりにくいわけでございましてね、我々素人から見ると、とにかく防衛庁が開発して、そして防衛庁だけしか使っていないものが武器でないとか汎用品がもしれないとかというようなことはどうも理解ができないわけでございましてね。その辺のところを判定するに当たって、これはやっぱり単に法律の百九十九、二百に該当するとかしないとかいうことの問題より前に、そういう常識というものを考えてなるべく限定的にやっぱり考えていく、武器輸出三原則を厳密に考えていくということが必要だろうと思うんですが、この点は外務大臣、いかがですか。
  135. 木下博生

    政府委員(木下博生君) 外務大臣が御答弁になる前に、防衛庁の運用についての御質問も入っておりましたのでちょっと御答弁させていただきますが、先日も委員会で申し上げたんですが、防衛庁が装備しておりますものであれば、それがすべて防衛庁としても武器とは考えておりませんし、それから輸出貿易管理令上の、通産省で考えておられます武器に該当するということは必ずしも言えないと思います。防衛庁につきましても、武器輸出に関する政府統一見解昭和五十一年二月二十七日に出しました「武器の定義」のところで、防衛庁でやっております武器の定義というのが書いでございますが、その中でも、火器、火薬類等直接人を殺傷しというようなことで、そういうものが自衛隊法で言う武器というふうに考えておるわけでございまして、これは輸出貿易管理令の武器とは必ずしも一致はいたしませんが、したがいまして、防衛庁が装備しておりますものだからすべて武器だということは必ずしも言えないと思います。  それで、レーダーにつきましては、三次元レーダーというものはどういうものとイランが考えているのか私どもは全く承知しておりませんのでわかりませんが、いわゆる航空管制みたいなものに使うような地上におきましてやるレーダーと、先ほど通産省の方から御説明のありましたように、火器にくっついて、いわば照準器みたいなもので使われるレーダーとは質が違いますので、そういう点を十分考慮に入れながら判断していかなくちゃいけないものだと思っております。  ただ、防衛庁が装備しております装備品につきましては、防衛庁自身がみずからの注文等によって決めたものでございますので、こういうものの売買の問題については、防衛庁としてもいろいろ検討を別途しなくちゃいかぬ考えのものだとは思っております。
  136. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今、局長が言いましたように、これはやっぱり防衛庁が開発したものでも、仮にまた外務省が開発したものでも、武器もありますし、汎用品もあり得てもいいわけなんで、その解釈は、輸出貿易管理令によって通産省がやっぱりこれを厳に解釈すべきものじゃないか。その解釈によってこれは武器か、あるいは貿管令上の、武器輸出三原則に言うところの武器であるかあるいは武器技術であるかということは、貿管令に基づいて通産省が厳に判断を下していくべきじゃないか、こういうふうに思います。
  137. 和田教美

    ○和田教美君 時間が大分たってきましたからその問題はこれで打ち切りますけれども、とにかく、要は平和国家として、武器輸出三原則ないしそれに伴う政府方針というものをなし崩しに壊していくようなそういうやり方ではなくて、やっぱりこれはあくまで厳密に守っていくという考え方で、今の問題にしても、それからアメリカに対する供与の問題にしても考えていっていただきたいということを希望しまして、次に移ります。  次は、日中経済協力問題でございますけれども、私は、外務大臣がこの前一緒に行かれた中曽根訪中、これは良好な日中協力関係をさらに安定させるために一歩前進であったということを率直に認めるものであります。特に、日中経済協力については、政府ベースで中国の近代化事業に協力する四千七百億円に上る第二次円借款や無償援助の供与が決まりました。このほかに民間ベースの協力についても、鄧小平顧問委主任らが盛んに日本からの民間企業の進出を熱心に要望したというふうな報告を受けたわけでございますが、私は、中国の近代化に我が国ができる限り協力するということは中国にとって利益であるばかりでなくて、長期的に見れば我が国にとっても利益だというふうに確信をしている一人です。  そこでお尋ねしたいんですけれども、第二次円借款など政府ベースの経済協力は、日本の財政事情が非常に苦しいという中でも比較的順調に進展しているというふうに思うんです。しかし、民間ベースの協力についてはまだまだ解決すべきいろんな問題点がある、これは中曽根総理も中国で指摘されたようでございますが、私もそう思います。鄧小平氏が日本の企業との合弁会社の進出を非常に希望するということを強調されましたけれども、それでは、七九年に合弁法ができましてから日本と中国の合弁企業は今までどのくらいできているのか、何件ぐらいあるのか、それから投資額、それから全体の合弁企業の中で占める割合ですね、そういうものを教えていただきたいと思います。
  138. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まず私から申し上げますが、今おっしゃるような共通の認識を日本も中国も持っておりまして、政府間の協力が非常に進んでおりまして、第二次の四千七百億という借款を一応めどとしてここで合意したということは中岡の現代化には大きな成果を上げるものと思いますが、しかしもっと大事なのは民間の協力で、これがやはり中国側からいいましても非常に不足している、日本の場合も民間が出ていくのにも条件が整わない、こういうことでいろいろと議論になったわけでございますが、これからやはりこの問題は本格的な、本当に地についた日中の協力を進める上においては非常に大事なことであると、私も強く感じてまいったような次第であります。
  139. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) お尋ねの合弁企業でございますが、中国が世界全体と合弁企業を行っております総数は、これは昨年末の数字でございますが、百八十八件でございます。そのうちの六件が日本との合弁企業でございます。したがいまして、この数だけで単純に申し上げますと、中国が全世界のいろんな国とやっております合弁企業のわずか三%、こういうことになります。  それから、もう一つお尋ねがございました金額でございますが、日本と中国との合弁企業の投資額は、一九八二年の末の統計でございますが、五十三万米ドルでございます。
  140. 和田教美

    ○和田教美君 今お答えがございましたように、日中貿易は中国の全貿易量の大体二三%ぐらいと聞いているんですけれども、それに比べますと合弁企業は非常におくれているということは明らかだと思うんです。なぜそういうふうに日本企業の合弁進出ということがなかなか難しいのか、その理由は主にどういうところにあるのか、簡単にひとつおっしゃっていただきたいと思います。
  141. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 簡単に申しますと、日本の企業が安心して進出していかれないという、つまりある種の不安感が、心配があるためこれが一番大きな問題だと思います。もっと端的に具体的に申しますと、投資されたものがどんなに最悪の場合でも必ず返ってくるという保証があるのかないのかという問題、それからパテントの問題がございますが、これがちゃんと保護されるのかどうか、それからあと細かい点はいろいろございますけれども、大体、投資環境が十分安心できるものにはなり切っていないということに対する不安、これがやっぱり根本だと思います。
  142. 和田教美

    ○和田教美君 いろんな不安感があるんだろうと思うんですが、しかし最近、例えばサントリーがビール工場を江蘇省の連雲港――これは僕も兵隊時代にいたところですけれども、あそこにつくったり、いすゞがトラックの組み立てをやるとか、三菱商事も何か缶詰工場をやるとかというような話が大分ございますね。だんだんに出ていくんだろうと思うんですけれども、総理は環境整備ということを盛んに言われたけれども、その環境整備一つとして私はやはり投資保護協定を早急に結ぶということが絶対必要だと思うんですが、ところが、この交渉もなかなか難航しているというふうに聞いているんですけれども、その点はいかがですか。
  143. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) これは、この間中曽根総理、それから安倍外務大臣が訪中されましたときに、中国側首脳とこの問題で確かに相当突っ込んだ話をいたしました。その際に、日中両首脳が宗全に意見が一致しましたのが投資保護協定、現存交渉中でございますが、これを早急に妥結に持っていくように努力しましょうと、つまりそれぞれの事務方を督励し、そういう点については私は双方の意見が一致したと、こういうふうに理解しております。  ただ、今問題となっておりますのは、これは外交交渉の途中でございますからつまびらかにするのはどうかと思いますけれども、せっかくのお尋ねでございますので端的に申しますと大きな問題が二つございまして、一つは内国民待遇の問題、つまり、中国政府が自国の中国の企業に与える保護、待遇に近い、あるいはそれと同じようなやはり保護ないし待遇を与えてほしいと、これは日本の進出する企業の希望でございますが、これをどのように扱うかということが一つ。  それからもう一つは、保護すべき投資、つまり投資保護協定でございますから保護すべき対象となるところの投資というものの定義といいますか、内客でございますね、具体的には。  一つの例で申し上げますと、例えば中国に日本の企業が投資、進出します場合には事務所の経費、支店でも駐在員事務所でも何でもよろしいんですけれども、当然のことながらこれはその投資の中に入れてほしい、つまり保護する対象にしてほしいと、こういうことになります。ところがそれに対しまして中国は、事務所――駐在員事務所でも何でもよろしいんですが、その事務所の経費まで投資と考えるのはちょっと難しいと。ここにまさしく資本主義体制をとるところの我が国と、それから社会主義経済の建前、原則に忠実であろうとする中国とのまさに体制の差がここにはしなくも出てくるわけでございます。中国の考え方でいいますと、生産された果実、その果実を生むための直接の例えば原材料でございますとか労働賃でございますとか、そういうものが投資なんでありまして、それなのに例えば事務所の経費だとか広告費だとか、そんなところまではどうもというところで確かに問題がございます。しかしながら、これはいささか技術的な問題でございますので、お互いが十分話し合って理解していけば、しかも両首脳がともかく早くつくろうということで合意しているわけでございますから、そういった技術的な面で時間は多少かかりましても、私は何とか解決に持ち込めるであろうと期待をしております。
  144. 和田教美

    ○和田教美君 ぜひそれを早急に進めていただきたいと思うのであります。  それからもう一つ、中国が求めております民間ベースの協力の中で、これは中国のやり方なんですけれども、既存工場の技術改造協力というのがございますね。つまり、いきなり新しい工場なりをつくるんじゃなくて、なるべく古い工場でも少しずつ直していって使っていくという、いかにも中国らしいやり方なんですけれども、それについてもこういう問題があるように私は聞くんですよ。  日本側の企業なりにまず企業診断といいますか工場診断をしてもらう。どこを直せばいいかということをいろいろ聞いて、こっち側としては、日本の商慣習からいけば最初に私の方に相談があったんだから当然工場の改造についても自分が引き受けられると思っていたところ、ほかのところに発注されちゃったというふうなケースが間々あるというんですね。それは何か中国の考え方には貨比三家といいましてね、つまり三者を比較して選択するという考え方が原則であって、初めから一社に企業診断から何から全部任すというふうなやり方はしないんだというようなことでなかなかうんと言わないというんだそうですけれども。  そこで私は考えるんですけれども、こういう企業診断、工場診断というものについては民間だけでなくて国際協力事業団、これでもやっているんですね。ですから、その国際協力事業団の分をもっとふやしたらどうかと。それで、要するに国際協力事業団の負担において工場診断なり企業診断をやってあげて、そうして大体こういう計画でやりなさいというところで民間におろせぼもっとこの問題は進展するのではないかと、こういうふうに思うんですが、今の外務省予算を見ると国際協力事業団に対する補助金も大分ふえていますから、その辺のところはどうでございますか。
  145. 柳健一

    政府委員(柳健一君) ただいま御指摘の既存工場の近代化計画を診断するための調査というのは、御指摘のとおり昭和五十六年度から日中経済協会を通ずる民間ベースの協力と同時に並行して国際協力事業団もやっております。ただ、今先生がおっしゃいましたような、国際協力事業団が調査を行った結果を直ちに国際協力事業団の判断で民間の企業に回せというお話は……
  146. 和田教美

    ○和田教美君 いや、そうじゃなくて、民間がそこまで負担しても自分のところに注文があるかどうかわからないから渋ってるわけですよね。企業診断だけやってお払い箱になる危険性があるということで民間が渋っているから、企業診断の方はまず国際協力事業団でやってあげて、そして、中国政府から日本の民間企業にオファーが来るようにしたらどうかと、こう言っているわけです。
  147. 柳健一

    政府委員(柳健一君) はい、わかりました。ですから、国際協力事業団がやっておりますのをもっとふやせというお話だと思います。  これは過去三年間で、数を申し上げますと大体毎年七工場ぐらいずつの平均でやっておるわけでございますけれども、これは予算の許す限り今後も積極的に伸ばしていきたいと思っております。ただ、その結果をどこにやらせるということは中国政府が決める問題であるということを一つ申し上げます。  それから、過去JICAがやったもののうち四工場が既に契約が結ばれているのでございますけれども、その四工場のうち、実は三工場が我が国の民間企業と契約が結ばれているということは事実でございます。
  148. 和田教美

    ○和田教美君 外務省予算について余り詳しく聞いておる時間がなくなりましたので、ごく簡単に一、二点お聞きしたいと思うんですが、まず今度の予算と並行して行われます機構改革でございますけれども、内部部局の再編成ですが、要するに情文局をやめちゃって情報調査局をつくるという考え方で、情報収集が非常に重要だということは臨調の答申にも出ておりますけれども、何か我々の印象から言うと、情報文化的な面が後退をして情報収集ということに非常に力点が置かれたような印象を持つのですけれども、そういう危惧はないかどうかということが第一点。つまり、文化とかPRとか報道とか、そういう関係が少し後退するというようなことがないかどうかということと、もう一つは安保関係ですけれども、北米局に安保課というのがございますね。ところが今度の機構改革によりますと、それ以外に安全保障政策室というのが新設されることになっておりますね。同じ安全保障政策を取り扱うのに二つのセクションが別にあって、軍縮の方はこれは国連局の中にある。何かばらばらじゃないかという感じがするんですけれども、その点、どう考えたらいいでしょうか。
  149. 枝村純郎

    政府委員枝村純郎君) まず最初に、情報文化局の廃止に伴って広報、文化、報道、その面の配慮なり手当てというものが後退するんではないかという御質問でございますが、まさにこの点は、昨年この委員会大臣からも、今度の臨調の最終答申の結果そういうことがあってはならないということ、そこは実際にうまく調整していかないといけないという決意のほどを述べられたわけでございますけれども、それを踏まえて私どもといたしましても関係方面と鋭意折衝し、その御理解を得まして、例えば情報文化局長はこれは廃止になりますが、それにかわって報道官というものを置きまして、これは局長相当のポストということで格付をされております。これが広報、報道、文化の三面を引き続き総合し、かつ政府外務省のスポークスマンとしての役割も果たす、こういうことにしております。その上に文化交流部を設置いたしておりますので、いわば実務的な文化交流については文化交流部長に任かせていけると、こういう体制でもございます。現に、五十九年度の予算につきましては、特に広報、文化関係については力を入れまして一〇%からの伸びをいたしておりますので、決してそういう点をないがしろにするということではございません。  もう一つの、安全保障関係の課のことでございますが、簡単に申し上げますと、今度新設されますその安全保障政策室というのは、あくまで情報調査、分析ということをやるわけでございまして、現在の外交政策を考えていく上で安全保障、グローバルな戦略、そういったことについて調査し、研究し、そういう情報を蓄積する、どうしても必要でございます。そういうことをやる室でございます。  他方、北米局におきます安全保障課というものは既に御承知のとおり、日米間の相互安全保障及び相互防衛援助の問題を取り扱っておる課でございまして、かつ国連局の軍縮は軍縮をやるということでございます。これはそれぞれの観点で安全保障という問題に取り組むわけでございますが、今申し上げましたように、新設のものは情報調査局の中でございますので、調査、分析ということを中心にやるわけでございます。こういったことの総合調整というのは大臣、次官、あるいは政務担当の外務審議官、さらには官房が引き続き行っていくと、こういうことでございます。
  150. 和田教美

    ○和田教美君 時間が来ましたので私はこれでやめますけれども、最後に、午前中の委員会安倍外務大臣から、農産物交渉についての第二回会談の結果についての御意見がございましたけれども、昼のニュースなんか聞いておりますと、日米の双方の主張が牛肉の枠の拡大について相当詰まってきたと、開きが大体四百トンぐらいだというふうなことで、第三回の交渉が山だというふうな報道をしているんですけれども、今の段階外務大臣、どうですか、やっぱり交渉はまだどっちになるかわからないという見通しをお持ちですか。  それともう一つ、農水省の事務当局の方にわざわざ来ていただいておりますので、安倍外務大臣の答弁にもし補足していただくことがあったら答えてください。それで私の質問は終わることにします。
  151. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今鋭意真剣勝負でやっておりますし、その内容について余りここで申し上げると、またあしたがいよいよ本番ですから大変難かしいときだと思いますが、しかし両国とも、そして両代表とも何としてもこれは決着したいということで努力している。そしてまたアメリカも、ブロックさんも、この問題はぜひひとつ解決したいという方向での誠意が相当惑しられるように私はなったと思っております。まだまだ予断は許しませんけれども、しかしそういうことで、あすの交渉というのが全くいよいよ本番の交渉といいますか、我々としても非常に注目してこれを見ておるわけです。
  152. 和田教美

    ○和田教美君 農水省の方、来ていますか。
  153. 片桐久雄

    説明員(片桐久雄君) 山村農水大臣が三日に訪米いたしまして、ブロックUSTR代表と閣僚レベルの交渉をやっているわけでございますけれども、二日目の会議、五日午前十時からと午後四時からと二回にわたって行われました。なお、当初予定を一日延長いたしまして、三日目の協議を行いたいということで、現在国会の承認を得べく手続を進めているところでございます。
  154. 和田教美

    ○和田教美君 はい、結構です。
  155. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 まず最初に、予算委員会で質問する予定だったのですけれども、時間がなくてはしょった問題がありますので、その問題を最初に質問したいと思います。  それは国際連合に関する問題ですけれども、戦後、世界的に国際連合に対して多くの人たちが期待を持ったのですけれども、最近はだんだん熱意が冷めつつあるように思いますし、日本でも、一九五六年に日本が国際連合に加盟したときは大変な熱気を持って期待していたようですけれども、最近はだんだん熱意も薄れてきているように思います。私は、国際連合というのはあんまり過大に評価するのは間違いだと思いますけれども、同時に、田舎の信用組合みたいなふうに見るのも間違いではないかと考えております。確かに、国際紛争を解決する上において余り成功しているとは言えませんけれども、しかし同時に、国際的な世論を形成する上においてはかなりの働きをしているのではないかということを考えております。殊に平和憲法を狩っている日本としましては、やはり国際連合を独化していくということが非常に大事じゃないかというふうに考えるのですけれども、まずその観点から国際連合の問題についてお伺いしたいのです。  昨年の九月八日でしたか、民間人の斎藤前大使外六人の方が国連の平和維持機能強化に関する研究会の報告書を外務省を通じて国連に提出されたように思うのですけれども、この研究会というのは一体どういう経過でつくられたものであり、またどういったふうな基準で外務省としてはこういう方々に依頼をされたのか、そのことを最初にお伺いしたいと思います。
  156. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 今先生から御指摘のございました国連の平和維持機能強化に関する問題につきましては、一昨年の総会において決議が通っております。我が国も積極的に参加して作成いたしました決議でございますが、その決議の中で、国連の平和維持機能を強化するに当たっての検討に際して、各国政府見解のみならず、民間の意見も参照すべきであるという項目がございました。我が国におきましてはその決議の実施の一環といたしまして、先ほど先生からお話のございました、民間で国連の問題に造詣の深い方々にお集まりいただきまして、自由な立場から意見の取りまとめをしていただくという趣旨で検討をお願いして、その結果、昨年の九月に提言という形で外務大臣に御提出があったものでございます。
  157. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 この報告書は外務大臣、国近事務総長に手渡されたと思うのですけれども、そのときに、おしまいの方の「我が国のとるべき役割」という章以下のところはオミットされたように承っておりますけれども、どういう理由でこの部分はオミットされたのでございますか。
  158. 山田中正

    政府委員(山田中正君) この民間の御提言は大きく分けまして二つの部分からなっております。一つは、平和に対する国連の役割りの部分でございます。もう一つは、我が国のとるべき役割りの部分でございます。  今先生から御指摘のございました、外務大臣から国連事務総長に伝達されました場合には、後者の「我が国のとるべき役割」の部分は含まれておらないわけでございますが、この部分につきましては、提言が外務大臣提出されました後に研究会の方より、さきに提出した研究会の提案をめぐりましていろいろ議論が行われており、研究会としては、「我が国のとるべき役割」の部分については我が国国内において広く議論していただきたい、そういう趣旨で問題提起したものであるので、研究会としては、国連事務総長への伝達に当たってはこの部分を別扱いにされて差し支えないというお申し出がございましたので、その申し出にかんがみ、「我が国のとるべき役割」の部分を含めないこととしたわけでございます。
  159. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 国連の事務総長に提出するのを見合わせられたのはわかりましたけれども我が国の国論を大いに喚起する意味でこれを書かれた、それで外務大臣あてに提出されたと思うんですけれども外務省としましては、「我が国のとるべき役割」以下の部分はどういうふうに評価しておられますか。
  160. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 我が国といたしましては、国連の平和維持機能、これは国際の平和、安全の維持という第一義的な目的を持っております国連の極めて重要な機能の部分と考えております。従来から政府といたしましては、我が国の法令下で可能な範囲内の中での協力を考えてきたわけでございますが、この提言につきましては、研究会の方からのお申し出のように広く国内で議論をしていただく部分を含んだものでございますので、私どもといたしましては、現行法令内で何ができるかということを検討していきたい、そんなふうに考えております。
  161. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 この日本のとるべき役割のところではこういうふうなことが書いてあるんです。「国連の活動、とくに、PKO」――ピース・キーピング・オペレーションだと思いますけれども、平和維持活動ですか「に対する我が国のこれまでの協力は、資金の面にのみ限定されていたが、これからはPKOに対し、次のような段階を追って、積極的かつ広範囲に参加していくべきである。」として、資金及び資機材の用意及び提供であるとか、PKОの選挙監視活動への参加であるとか、あるいはPKОの医療活動への参加、あるいは通信・運輸活動への参加というふうなことが書かれておりますけれども、こういう問題について日本の国民の間で討議を巻き起こすためにせっかく提言された。しかし、国民が関心を持って討議するためには、政府は一体どう考えているのか。それを出さないと、国民の問では政府が全く無視しているような問題を討議してもしようがないというふうに感ずるんじゃないかと思うんですけれども政府としてはこういったふうな活動に対してどういう評価をしておられるか、それを聞きたいんです。
  162. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 先生御指摘のように、我が国の従来の国連平和維持機能への協力は資金面の協力に限られておるわけでございます。一般論といたしましては、外務大臣の国連総会におきます演説等で明らかにいたしておりますように、我が国といたしましては、資金面のみならず要員、資材の面における検討も国内法の範囲内で行うことをしたいという建前を公にいたしておるわけでございます。今御指摘のございました提言の中で、私どもが現在具体的に可能性のあるものとして考えておりますのは、これは既に国連におきまして外務大臣の演説でも明らかにした点でございますが、国連の平和維持機能の一環としてのナミビアの独立が達成される場合に、その民生部門についての要員、資材の派遣、これについて検討していきたいと、かように考えております。
  163. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 確かにこの中には、今の自衛隊法を改正するのでないと参加できないような問題も含まれていることは事実でございますけれども、やはりここに書いてありますように、単に金さえ出しておけばそれでいいんだというふうな態度をとっていると、日本というのは国際的に非常に軽べつされてくるんじゃないか、やっぱりエコノミツクアニマルじゃないかというふうに言われるんじゃないかと思うんであります。私も時々外国に行っていろんな人に会うん。ですけれども、例えば、中近東あたりの紛争のときに国連の事務総長から要求があったと思うんですけれども、あのとき日本は断ったと思うんです。そういったふうな問題について、日本はなぜもっと積極的にならないのかということを質問されて、日本の憲法の問題なんかを持ち出すのですけれども、別に憲法に違反しないじゃないか、もっと積極的にやったらどうかというふうなことを突っ込まれますと非常に恥ずかしい思いをするわけであります。  外務大臣も諸国の外務大臣といろいろお会いになるだろうと思うんですけれども、そういうときに日本外務大臣として胸を張って渡り合えるためには、やはりこういった問題について日本はもっと積極的に、今すぐはできないにしてももっと積極的に取り組むんだという姿勢を示すことが必要ではないかと思うんですけれども外務大臣、いかがでございますか。
  164. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 日本外交の基本として、国連外交というものを一つの基調にしてこれまでも進めてきておりますし、国連重視といいますか、国連に対する資金協力等はアメリカに次いでやっておる、こういうことであります。また、国連活動等も非常に熱心にやっております。それだけに世界各国は、日本の国連における非常に積極的な活動、そしてきちっと責任を果たすその姿勢に対しては大変評価をしておる。しかし、谷風から言えば、さらに世界の平和維持のために、あるいは地域紛争の解決のためにもっと日本が持っている力を発揮してもらえないだろうか、こういう議論があることは事実です。しかしこれに対しては、今お話がありましたように、日本の憲法あるいはまた日本の自衛隊法といういろんな国内法上の制約がありまして出ていけない、こういうことでこれまでも資金的な面では協力しておる、そしてまたいろいろの外交的な面でもバックアップして平和維持のために努力を重ねておる、これはこれなりに評価してほしいということで、諸外国でも大体有力な国々は、日本の国連に対しての熱心な活動というもの、そしてまた平和維持機能に対する日本の直接的な参加というものに対してはまた限界があるということはだんだん理解をしておるわけです。  これは日本自身の問題で、憲法あるいは自衛隊法という問題ですから日本自体が決定すべき問題ですね。私は、論外国における日本に対する評価はそう悪いものじゃない、日本が責任を回避しておるというふうにはとっていない、こういうふうに思っておりまして、日本はこれからも――できないところはできないんですが、やっぱりできる面でこれはやっていく以外にないわけですから、国連のその他のいろいろな面で――たとえばユネスコなんかについてアメリカが脱退する、こういうことを言っておりますけれども日本は残って、そしてもっとユネスコ内部の改革をして、またアメリカが帰ってこれるような体制日本が積極的に努力していく、そういうようなことをやっていくことによって日本の信用というものをやはり維持していかなきゃならぬと思っております。
  165. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 この問題については単に国民の間から意見が起こってくるのを待つだけではなしに、政府としてもやはりリーダーシップをとって国民に訴えかけていく、そういう姿勢をとっていただきたいと思いますが、時間がございませんので次の問題に移ります。  経済協力の問題、けさからいろいろお話がございました。政府開発援助ですか、オフィシャル・デベロプメント・アシスタンスですね、ODA。この予算はことしかなりふえたことは事実ですし私も喜んでおりますけれども、もっともっとこの金額はふやしてもらいたいということを考えておりますけれども、しかし、やはり少ない国家予算の中でこれだけ割くわけですから、最も効率的にむだなく使われることが必要であろうと思いますし、また国民の希望だと思うんですけれども、諸外国からのプロジェクトその他のいろいろな申し出に対してどういう優先順位をつけて取捨選択をしておられますか、そのことをまず第一にお聞きしたいと思います。
  166. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 政府開発援助経済協力案件のプロジェクトの選定に際しましての優先順位のつけ方でございますが、基本的には、先ほど来大臣も言われておりますように一つは人道的考慮、ということは、要するにその途上国の貧困の度合いと申しますか、援助需要の大きさということと。第二番目は相互依存。つまり、我が国にとって、我が国とその国との経済的、政治的重要性、この二つを同時に並行して考えながら決めていくわけでございます。したがいまして、国が先に決まるかプロジェクトが先に決まるかということは一概に言えないわけでございまして、もちろん、いずれかといえば国をまず選択いたしまして、さらにその中から、今度は具体的なプロジェクトの案件について、資金協力とか技術協力とかいう案件に応じまして、いわば私ども判断する一つの基準と申しますか、具体的な基準があるわけでございます。  例えば、プロジェクトの適格性とか、相手国の経済、財政状況がどうであるかとか、それから相手国の発展規模がどうであるかとかいうようなことでございますが、そういうチェックポイントという点でございますが、そういうものを全部考慮に入れまして総合的に決めていくということでございます。
  167. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 相互関係ということは、端的に言えば、日本の総合的な安全保障にどれだけの重要性を持っているか、そういうふうに理解してよろしいわけですね。
  168. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 相互依存の度合いと申しますのは、先生がおっしゃいましたような総合的な安全保障という角度からももちろん見るわけでございますが、あくまでもまず第一に考えますのは、我が国とその国との親密度、重要性、そういうところからまずスタートするわけでございます。
  169. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 私がその問題を言いましたのは、やはりこういう問題は国民にもっとPRして国民の協力を得なくてはいけないと思うのですけれども、やはりこれだけの援助をする――人道的な考慮はもちろんですけれども、これだけの援助をすることが、あるいは経済協力をすることが、同時に日本の安全、平和のためにも役立っているんだと、その観点をやはり大いに国民にPRする必要があるんじゃないか、そういう意味で質問したわけでございます。その点はそれでよろしゅうございますけれども。  その協力のために使った金が果たして所期の目的を達しているかどうか。下手に横流しなんかされたり、あるいは一部の勢力の私利私欲を富ませるようなことになったりしたのでは国民の期待は裏切られると思うのですけれども、その後のエバリュエーションといいますか、どれだけの効果があるかということの評価、それについてどういうふうな方針でやっておられるか、それをまずお聞きしたいと思います。
  170. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 経済協力案件の評価につきましては、昭和五十六年の一月に外務省経済協力局の中に経済協力評価委員会というのを設けまして、従来外務省なりあるいは実施機関なりがそれぞれ行ってまいりました評価を総合的に、組織的に行うという体制をつくったわけでございます。  具体的に現在どういうことをやっておりますかと申しますと、大ざっぱに申しまして四つぐらいのやり方をしております。一つは、外務省関係省庁なりJICAなりOECFなりの協力のもとに政府調査団というものを現地に派遣する、第二番目は、民間団体あるいは民間の有識者に委託して実施する、三番目に、我々の持っております在外公館が現地にありますので、在外公館が実施するという評価、それから先ほど申し上げましたJICAなりОECFなりがそれぞれ実施する、こういう四つのやり方で評価をやっておりまして、昭和五十六年度以来毎年度いたしました評価を取りまとめまして、経済協力評価報告書として公表をいたしております。過去において二度公表いたしました。  この評価につきまして最後に一言申し上げますと、何と申しましても評価というのは、援助国側のこちら側と、途上国側の自助努力と両方の面を評価しなければならないということと、もう一つは、主権国の中で評価をするわけでございますから、日本の岡内で会計監査をするようなわけにはなかなかいかないのでございます。そういうことでなかなかデリケートな点もございますので、私どもが現在やっております方法は、できる限り相手国政府協力を得ながらやっていく、共同でやっていくというやり方をとって円滑に行われるように、努力をしています。
  171. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 経済協力評価報告書というのを五十七年と五十八年といただきまして読んで、大変興味あるエバリュエーションがなされているように思うんですけれども、何にしましても大変大部であって、非常に専門的であって、これをこのまま国民に発表してもなかなかわからないんではないかと思うんですが、私は、こういう問題について国民の協力を得ていくためには、単にうまくいっている面だけを強調するんではなしに、失敗している面も私はあったんじゃないかと思うんですけれども、こういう点で失敗したんだ、こういう点の反省をしているんだ、そういうざっくばらんな報告書が必要ではないかと思います。  この中で、インドでダムの建設を援助して、その結果米の生産量が非常にふえたというふうな報告書があります。これは大変感動すべき報告書だと思うんです。そういう問題につきまして政府の方で評価されるのは当然ですけれども、私はやっぱり民間の人たちの評価、これの訴える力が大きいんじゃないかと思います。  三、四年前だったと思いますけれども、たしか文芸春秋に、バングラデシュあたりで働いている青年協力隊の話が載っておりました。非常に献身的な努力をしている、しかし他方、こういった点に隘路があるんだというふうな報告がありまして、大変私は感銘を持って読んだことがあるんです。こういった調査に対して外務省関係あったのかなかったのか知りませんけれども、いわゆる民間のフリーな立場にある人、そういった人たちに調査してもらって、そして総合雑誌あたりでそれをみんなに、国民に知らせる、これがやはり国民の理解を得る上において私は一番いいんではないかと思います。そういう点の努力をお願いしたいのですけれども、どうでしょうか。
  172. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 御指摘はまことにごもっともと存ずる次第でございまして、実は現在でもまだ不十分であるかもしれませんが、一部民間にお願いいたしまして、その民間の方が帰ってこられまして、新聞なり雑誌なりに書いていただいているということも若干はやっております。今後ともさらに推進いたしたいと思います。
  173. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 次はちょっと専門的な問題になるんですけれども、運輸省との共通の問題かと思いますが、便宜離籍船の問題についてお尋ねしたいと思います。  それは、タックスヘーブンなどのパナマなんかに日本の船が船籍を移している、日本だけじゃないのですけれども籍を一時移している、その便宜置籍船の問題ですけれども、ことしの七月のジュネーブでの国連の貿易開発会議、UNCTADで船舶登録用件を決める会議が開かれると思うんですが、そこでこの便宜置籍船の問題が取り上げられるというふうに聞いております。これについては海運界の国際秩序にも関係する問題でありますので、我が国対応を質問したいのですけれども、その前に、運輸省の方が来ておられれば、世界における便宜置籍船の現状及び日本の海運会社の支配のもとにある船がどの程度置籍をしているか、そのことについてお知らせ願いたいと思います。
  174. 寺嶋潔

    説明員(寺嶋潔君) ただいまお尋ねのありましたいわゆるリベリアでありますとかパナマのような便宜置籍、つまり船舶の登録要件が非常に緩やかで、外国人が持っております船を自国船籍として自由に登録することができる国に置籍されております船舶のうちで、実質的に外岡人に所有されておる船舶、これが便宜置籍船になるわけでございますが、これの実際の数というのは、実質的な船主が、所有者がだれであるかということを判定することが非常に難しいので捕捉が困難でございますが、今申し上げたリベリアとかパナマのようないわゆる便宜置籍胴と言われております岡に登録されておりますのは、大部分がこのような便宜置籍船であると思われますので、昨年央のロイド統計によって申し上げますと、これら便宜置籍回に登録されております船は約一億トン、世外の総船腹量の二五%に相当いたします。  それから、我が国の海連企業が実質的に支配する便宜置籍船、この数もただいま申し上げました理由で非常に捕捉が困難でございますが、いわゆる中核六社と言われております大手の会社につきましては仕組み船と言われておりますものの数字がございます。仕組み船と申しますのは、海運会社が初めから自社に用船する目的で外回の船会社に日本の造船所の船台をあっせんしましてつくらせまして、後、自分で用船すると、こういう形をとりますものを仕組み船と言っておりますが、これがほとんど便宜置籍船でございますので申し上げますと、その中核六社では五十八年の年央で百五十三隻、約四百万総トンを使っております。  中核六社以外にも当然このような便宜置籍船があるわけでございますけれども、この数字は捕捉し切れておりません。
  175. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 もしこの置籍船がだんだん拡大していくようになりますと、船賃の労働条件なんかにも悪い影響を及ぼすだろうと思いますし、また日本でもだんだん船員の雇用口が狭められていくんではないか、下手をすると日本人の船員は高級船員だけであといなくなってしまうというふうなことも考えられるんですけれども、そういう事態になるということは、雇用問題はもちろんですけれども日本の安全保障という点から考えましてもやはり問題になるんじゃないかと思います。これに対する開発途上国の態度は必ずしも一つではないようですけれども、しかし建前としては置籍船を排除する方向に向かっているようでありますし、またITFですね、国際トランスポート・ワーカーズ・フェテレーション――国際運輸労連でもそれを排除する運動を続けているように思うんであります。したがって、日本政府がこの問題に対してどういう態度をとるのかということは、日本国内だけじゃなしに国際的にも注目されるんではないかと思うんですが、政府の方としてはどういう態度をおとりになるつもりですか。
  176. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 先生御指摘ございましたように、この七月の会議は国連の貿易開発会議で行われるわけでございますが、そこにそもそも出てまいりました理由は、今先生から御指摘ございましたように、開発途上国が、便宜置籍船が多くなるということは自国海運の発展の妨げになっている、したがって何とかしてほしいという観点がございます。これは南北問題の観点があるわけでございますが、七月の会議にどういう基本方針で臨むか、これにつきましてはこれからさらに運輸省と打ち合わせていたしますので現時点で詳細には申し上げかねるのでございますが、某本的な考え方といたしましては先生も御指摘ございましたように、労働条件でございますとか安全でございますとか、さらに海洋汚染の問題とかいう面につきましては、便宜置籍の場合には往々にしてサブスタンダートと申しますか、いろいろ問題がございます。やはり改善すべき面があるだろうと思います。  また他方、経済面につきましてはその便宜置籍の制度の弊害の点さえ改善されれば必ずしも悪いものではないと申しますか、むしろ企業の自由の観点からは否定すべきでない点もございまして、この点につきましては、先進海運国と開発途上国との見解は必ずしも一致しないわけでございますが、我が国といたしましては開発途上国との間で相互の利益になるような解決方法を見出したいと、そのように考えております。
  177. 抜山映子

    ○抜山映子君 本日は、朝鮮民主主義人民共和国――北鮮と略称したいと存じますが、北鮮に帰化した日本人妻の問題について質問させていただきたいと存じます。  実は、この問題は同会では三十二回にわたる委員会で質問がなされ、総理、外務大臣外所管大臣に数々の質問と要請がなされてきましたが、いまだに進展を見ないわけでございます。  ところが過日、日本人妻の帰還を推進する絶好の機会が訪れました。御存じのように先月二十四日、北京で行われた中曽根首相と胡耀邦中国共産党総書記との会談で、胡総書記が日本と北朝鮮の意思疎通を図るべく中国としては努力したいと提唱したのでございます。この後首相は記者会見で、政治経済問題で依頼する考えはないが人道問題ではあり得ると申されました。胡総書記は五月に訪朝する予定であり、今こそ北朝鮮の日本人妻の里帰りを実現すべく、この機会を無為無策に逸することのないよう切望する次第でございます。  さて、棚総書記のせっかくの好意ある提唱に対し、外務大臣はどのように対処していただいたのか、御回答くださいませ。
  178. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今御指摘がございました胡耀邦総書記の発言は、広い意味日本と北朝鮮が互いの実情をよりよく理解することが朝鮮半島の緊張緩和という観点からも望ましいということでありまして、両者間の意思疎通のために中国としても努力したいと、こういう趣旨であるというふうに受けとめております。  いずれにしましても、当面、政治経済の分野で日本と北朝鮮の、日朝間の仲介を中国に依頼するという考えはありませんが、人道上の問題はあり得るものと、こういうふうに思っております。そうして今、事務当局検討をいたしております。お話しの日本人妻の問題も、我々は人道上の問題という観点に立ちまして、いろいろの角度から検討をいたしておる段階であります。
  179. 抜山映子

    ○抜山映子君 これに対しまして、現在窓口となっております北東アジア課の検討の方向はいかがか、お伺いしたいと存じます。
  180. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 私ども外務大臣の御指示をいただきまして、北朝鮮――朝鮮民主主義人民共和国と我が国との間の人道問題のケース、これは大体、私ども心を痛めております問題が三つばかりございますが、そのうちの一つはまさに先生御指摘のいわゆる日本人妻の問題でございます。この問題も含めまして、私ども現在真剣に検討をいたしておりますが、その際にぜひ御理解を賜りたいのでございますが、何と申しましても日本側の直接の当事者、直接の関係者という方々の御意向をまず十分に踏まえる、その日本側の直接の当事者のお考えあるいは御要望を十分子細に承るということが一つ重要な要素でございますから。  もう一つの重要な要素は、せっかく中国の胡耀邦総書記のお申し出ではございますが、また中国と北朝鮮とは非常に良好な関係にございますけれども日本政府から中国政府に頼むに当たりまして、やはり中国の行為を無にしたくないと申しますか、率直に申しまして中国が困るようなことはあんまり頼むのはどうかというようなそういう観点もございまして、両方あわせて、現在非常に人道問題というのはこれは本当に神経を使うべき問題でございますので、慎重の上にも慎重を期していろいろ考えておるところでございます。
  181. 抜山映子

    ○抜山映子君 ここに朝日新聞の四月二日の記事がございます。ここには人道問題として三つ検討していると。一つは、昨年十一月に捕まった冷凍運搬船の第18富士丸、これの抑留船員の帰還、第二は日本人妻の里帰り、第三は北朝鮮への日本人墓参、この三点を取り上げた。そしてこの新聞によりますと、これそのままに読んでみますと、「中国側のせっかくの好意に全くこたえないわけにもいかない。そこで外務省は「初めてでもあり、一つにしぼって頼むことになるだろう」と検討した。三つのどれを選ぶかとなると、緊急性の点から抑留船員問題に落ち着かざるをえないのではないかというわけだ。」と、こういう記事がございますが、それではこれは本当なんですね。
  182. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 先ほど私が御答弁申し上げましたところが事実ありのままでございまして、ただいま先生御指摘のその新聞記事につきましては、だれがそのような説明をしたか私存じませんけれども、これは私が先ほど御説明申し上げましたようなことで、今本当に真剣に検討しているという段階でございまして、これから具体的に何をどのように中国に頼むかということになりますと、当然のことながら外務大臣に御指示をお伺いするということになって初めて動くということでございまして、現在のところはまだその成案を得るに至っておりませんので、せっかくの御指摘ではございますが、ただいまのその新聞記事につきましてはまだ検討中ということで、何とか御了解を賜りたいと思います。
  183. 抜山映子

    ○抜山映子君 それでは結論がまだ出ていないと、こういうように了解してよろしいわけですね。
  184. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) そのとおりでございます。
  185. 抜山映子

    ○抜山映子君 ただいま橋本様が二つの問題を言われました。  一つは、直接の当事者の要望をよく聞いて対処したい、このように言われましたので、直接の当事者、まさに抑留をされている方のお手紙を読ましていただきましょう。この手紙は郵便物で来たのではございません。日本人が訪朝した折に直接に手渡されて家族のもとに周けられた手紙でございます。日付が昨年の五月二日になっております。平安南道徳川郡というところに住んでおられる方です。    お母さん外皆さんへ   皆さんお元気ですか。このたび帰国訪問した  人が隆弘の友だちの妹さんなので、この手紙と  一緒に私の声の入ったテープを届けます。どう  か二十年ぶりに私の声を聞いて下さい。   話に聞けば、私たち日本人里帰りが近いうち  にできそうな様子なので、お父さんお母さんは  特に体に気をつけてそれまで待っていてくださ  い。私もその日を楽しみに待っております。早  く実現するのもお母さんや皆さんたちの力が大  きいです。   昨年十一月に妹さんが出た時、主人と春美の  子供だけ連れて会いに行きました。お母さんだ  ちのいろいろな話が聞けると思いましたが、日  本をたつ時お母さんたちに会えないで来た話を  聞いてがっかりしました。皆さんたちと別れて  二十年もなるので、その後の皆さんの様子が知  りたいのです。私の住所を知っているのですか  ら、だれか一人でもどうして手紙をくださらな  いのですか。ほかの人たちは手紙やいろいろな  物、またお金も送ってくださるのに、この二  十年、私は手紙を一度もみんなから受け取った  ことがありませんので、ちょっと寂しいです。  そちらで私のことを忘れたでしょうが、私は一  日もお母さんや皆さんたちを忘れたことがあり  ません。  実はこれは郵便事情があるわけでありますが、云々と続くわけでございます。これで当事者の要望がいかに切実なものかおわかりになったと思います。  もう一つ、今、橋本局長は言われました。中国が困るようなことを頼んではいけないのだと。どうしてそのように言われるのですか。人道上の問題でせっかく中国が意思疎通を図るようにしたいと言うのに、どうして日本人の手で人道上の道を狭めることがあるのですか。中国はかつて国交回復前に日本人妻の帰還を認めた例がございます。橋本局長は、国交がなければ難しいじゃないか、そういうようなお考えかもしれませんけれども、仲介をしてやろう生言っている中国自体が、中華人民共和国が国交を回復しない前に先方の好意と日赤の努力によって日本人の里帰りを実現しているのです。  数字を申しましょう。昭和四十年五人、四十一年十人、四十二年八人、四十三年一人、四十六年二人、四十七年二人と帰国させておるわけでございます。このほとんどが女性、すなわち日本人妻であることを念頭に置いてください。  中国自体がこのような姿勢でございますので、北朝鮮に対しても積極的に働きかけるとともに、堂々と中国に依頼してください。先ほど当事者と言われましたが、本日、日本人妻の家族の方も傍聴に来ておられます。中国に依頼することをこの委員会でお約束いただけますかどうか、イエスかノーでお答えください。
  186. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 大変心打たれるお手紙を拝聴いたしましたし、また先生の人道主義的立場に立っての御意見しかと承りましたので、それこそもう一度よく真剣に検討さしていただきたいと存じます。
  187. 抜山映子

    ○抜山映子君 一九八〇年九月、自民党のアジア・アフリカ問題研究会代表団が北朝鮮を訪問したときに、金日成が日本人妻の日本への里帰りを歓迎すると誘っております。この点からしても検討するということではなくて、この場で依頼するということをお約束できないでしょうか、もう一度念を押します。
  188. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 私どもも人の子として十分本当にお気持ちと申しますか、お考えはよく理解いたしております。  ただ、まさにこれは本当に重要な人道問題ではございますが、やはりそれと同時に、現実の今日の世界におきましては、国と国との関係、しかも第三国を介するということになりますと、やはり私どもの立場といたしましては、本質的に人道問題でありながらも、これは政府がやることでございますから、国と国との関係ということも十分一方において配慮しながら進んでいかざるを得ないという事情を何とか御理解をいただきまして、ただいま即答しろという御指示でございますが、私正直申しまして、ただいま私限りの一存でどうこうということではなくて、これは本当に真剣に慎重に人道主義的立場から、先生のただいまの御意見も十分頭に置きながら何とか早急に考えをまとめまして、どうするか最終的には大臣の御指示を受けたい、こういうふうに考えております。
  189. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今局長が申しましたように、この問題は私も何回か予算委員会等で御質問を受けていて、日本人にとりましても非常に心の痛む問題です。国際赤十字等を通じましていろいろと接触もしてきているわけですが、はかばかしくいかない、こういうことであります。今回の胡耀邦さんの申し入れは我々大変ありがたいと思っております。やはりこの好意に我々もこたえたいと。しかし、北朝鮮と日本との間には国交がありませんから、政治、経済、こういう問題で頼むという考えはありませんけれども、人道問題に絞ってはこれはぜひとも頼みたい、こういうふうに考えておりまして、先ほどから申し上げましたようにアジア局に今その検討をさしておるわけで、大体三つばかり案件がありまして、その中の一つが今のこの日本人妻の問題です。いろいろな角度からこれはやっておるわけでありますが、しかし、これは頼むにしても中国と北朝鮮との関係というものを配慮しなければなりませんし、またいろいろとこれから起こるところの外交的な問題というものも我々は配慮しなければなりませんので、頼むようになった、あるいは頼まない、いずれにしてもそういう中のどういう案件についてどうするということを公表するということはどういうものかとも考えております。検討してとにかく依頼をしたいと思うわけですが、その内容について一々これを公表するということも、これからのやはり中国と北朝鮮との関係のいろいろな交渉もあるでしょうし、それから、やはりこれを表に初めから出してやるということも外交配慮からどうかと、こういうふうに思っておりますから、その辺もまだ我々としては公表はしないで外務省で決めて、そして中国にお願いしてやってもらおうと。この結果についてはもちろん発表するわけですが、それ等も含めて今実は検討を進めておる、こういうところであります。
  190. 抜山映子

    ○抜山映子君 ただいま橋本局長は、外務大臣の指示を得てというように言われました。したがいまして、外務大臣の回答ひとつでこれが前向きに進むかそれとも後ろ向きになってしまうか決まると思うのでございます。  そこで、検討中なら検討中で結構ですが、前向きにやるということをここでお約束ください。
  191. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今さっき私が答弁いたしましたような指示を実はアジア局に出しておりまして、そこで今アジア局が検討しておる、こういうことです。アジア局の検討の結果をまた聞きましてそれから判断をしたいと思います。
  192. 抜山映子

    ○抜山映子君 先ほど橋本局長は、中国を困らせるようなことがあっては困ると、このように言われましたが、それは具体的にもう少し説明してくださいますか。
  193. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 具体的ということになりますと、正直申し上げましてこれは申し上げにくいんでございますけれども、やっぱり個人のベーシス、あるいは日本赤十字、これは先ほど安倍外務大臣も御答弁申し上げましたとおりに、ただいま問題になっておりますいわゆる日本人妻の問題につきましては、これは日本赤十字社とそれから北朝鮮の赤十字との間で何度も何度もやりとりがございまして、また安否調査その他部分的ではございますが実現したケースも多々ございます。したがいまして、現在までのところはこの赤十字のルートでもって曲がりなりにもやっておったわけでございますが、しかし、この赤十字のルートでございますと一〇〇%人道問題として扱うことができますが、たとえ一〇〇%人道問題でございましょうとも、国と国との関係、つまり外交チャンネルを通じての話し合いということになりますと、そこでまたおのずからその限りにおきますさまざまな問題が生じてくるということを申し上げたつもりでございます。そこで、日本と中国は、これは申すまでもございませんが非常に友好関係にございますので、この友好関係を大事にするためにさまざまの配慮をしなければならない、こういう意味でございます。
  194. 抜山映子

    ○抜山映子君 この問題は胡総書記から好意的に両国の意思疎通を図るのにお力をかしましょうと言ってくださったのに、日本側からわざわざ中国が困るからということで配慮することはないんじゃありませんか。
  195. 橋本恕

    政府委員(橋本恕君) 先ほど大臣が御答弁されましたように、北朝鮮と我が国との関係につきまして胡耀邦総書記が日本側首脳に仲介の労を惜しまないという趣旨のことを提案と申しますか、お気持ちとして言われたわけでございますが、それは先ほどの大臣の御答弁のとおりに、その言われたときの胡耀邦総書記の頭の中に占める主たる部分は、これは私の勝手な推測でございますが、やはり日本と北朝鮮との間に外交関係がないということ、それから我が国と北朝鮮との間には必ずしも友好協力関係がないということをこれを念頭に置かれての発言であると。つまり、その際の胡耀邦総書記の御発言は、主として頭にあるのは、我が国と北朝鮮との間の政治関係ということを主として頭に置いて言われたのであろうというふうに推測いたしております。もちろん、そのときに人道問題は一切取り上げないということでは決してございませんが、主たる部分は、その発言の際に胡耀邦総書記の頭の中にあった問題は、やはり日本と北朝鮮との間の政治問題ではなかったかというのが私の推測でございます。
  196. 抜山映子

    ○抜山映子君 人道問題も政治問題の一つであることを申し上げたいと思います。  北朝鮮に引き揚げました日本人妻は千八百七十三名で、妻として未入籍の者をも含めますと六千名と推定されております。この六千名の方が今の橋本局長様の発言を聞かれたらさぞかし泣かれたであろうと私は本当に残念に思います。大体外務省は中国に対して少し卑屈な外交を展開しておられるのではないかと懸念されるのでございます。  実は日本に来ております中国の留学生でございますが、この留学生には日本政府が奨学金を支給する国費留学生がおられるわけですね、相当数。ところが、この国費鶴学生は大学院が十七万五百円、学部の学生が十二万七千五百円でございますけれども、実際留学生には六万五千円しか渡っていないということがちまたから伝わっておりますが、この情報外務省は入手しておられますか。
  197. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 一部にこのような報道があるということは私たちも承知しております。したがいまして、これにつきましてはかって中国側に対しましてその事実関係について確認したことがあります。先方からは、外国政府奨学金についてはすべて留学生自身に使わせているという旨の回答を得ている次第でございます。
  198. 抜山映子

    ○抜山映子君 実際に苦情をどこかのルートからお入れになって多分申し入れを行われたと思いますが、その情報はどこから入りましたか。
  199. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) この情報は、外務省が担当の部局に対しまして、責任ある中国の政府に対して照会したものでございます。
  200. 抜山映子

    ○抜山映子君 私が問いておりますのは、奨学金が全然渡っていないということで外務省が中国大使館に申し入れたのであれば、必ずや確かな情報を仕入れて申し入れを行ったと思うのですが、その情報はどこからお入れになりましたかということを問いているのです。
  201. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 本件につきましてはそういうような一部の報道、それから一部のうわさと申しますかそういうことがあったものでございますので、制度の問題といたしまして中国政府関係当局に対しまして行ったものでございまして、そのような報道についての真偽を中国の担当部局に照会したわけでございます。
  202. 抜山映子

    ○抜山映子君 二月二十三日付の週刊新潮、週刊文春にはその趣旨の記事が出ておりました。特に週刊新潮には大きな見出しで、「大使館にピンハネされて……」と、このような記事が出ておりますが、これはお読みになりましたか。
  203. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 読んでおります。
  204. 抜山映子

    ○抜山映子君 私がしっかりとした大学の教授から入れている情報でも、中国の留学生は、奨学金が全額与えられないので苦しくて学生のコンパにも出てこれない、今後は、中国人の留学生を受け入れるのは大学としてもごめんこうむりたい、こういう情報が入っておりますので、きょうの質問はこれで終わりにしますけれども、引き続きこの問題をお伺いいたしますので、この次までに確実な情報を入れて誠意ある御回答をお願いしたいと思います。  なお、北鮮の日本人妻の問題でございますが、日本赤十字社と朝鮮民主主義人民共和国赤十字会との間の在日朝鮮人の帰還に関する協定の前文には、居住地選択の自由及び赤十字の諸原則に基づきこの協定を結んだと書いでございます。この精神を遵守して、日本人妻の帰還の問題についてどうか前向きに御努力いただきますよう、切に切にお願いいたします。  終わります。
  205. 立木洋

    ○立木洋君 先日、アメリカの国務省のヒューズスポークスマンが、イランとイラク戦争の中で使われた化学兵器の問題について、アメリカとしては五種類にわたる化学物質を輸出することを厳しく規制するという措置の発表をされたことは、外務当局としては御存じだろうと思うんです。これに関してそのときに、西ドイツを初め西側諸国からもこれらの化学物質がイランに輸出されている模様である、だから、それらの国にも規制するように要請したいということが述べられています。その対象国として日本も含まれている模様だというふうなことが新聞に出ておりましたけれどもアメリカ側からそのような趣旨の申し入れなり通告なりがあったのでしょうか、どうでしょうか。
  206. 山田中正

    政府委員(山田中正君) 私、アメリカからそういう申し入れがあったということを承知いたしておりません。
  207. 立木洋

    ○立木洋君 それはあなたが担当じゃないからわからないのですよ。私は毒ガスの問題を聞きますからと言ったんだから、そしてそれはアメリカ発表にも関連してと言ったんだから、アメリカ担当の方がいないと困るじゃないですか。――私は何も困らすために質問しているんじゃないですから。それでは、これは残して後の方にちょっと行きます。毒ガスの問題は後から聞くことにします。  これは話がまるっきり変わるんですけれども大臣、ニューリーダーとしていろいろ活躍に忙しいことだろうと思うんですが、先般、田中六助幹事長といろいろ話をされたということが新聞で報道されていましたけれども、副総裁問題についてどういう御感想をお持ちなのか、ちょっとお聞かせいただきたいんですけれども
  208. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 友達ですからいろいろと話はしますけれども、これは党内の人事の問題ですからあえてここでお答えするような筋合いのものじゃない、こういうふうに思っておりますし、まだこれ別にどうという報告も出ているわけじゃありませんし、あくまでもこれは党内人事だと我々は思っております。
  209. 立木洋

    ○立木洋君 私が予算委員会で質問したのを大臣は聞いておられたと思うんですけれども、しかしこれは中曽根さんと違う回答が私は安倍さんから出てくるだろうと思っていたんですよ。やっぱり派閥次元でしか問題が考えられないようなことでは困るんで、日本の政治を浄化するという立場で、国民がどういうふうにこの問題を見ているかということをやっぱり今後とも心にとめておいていただきたい。これ以上深追いしません。  先ほど来同僚議員もいろいろ質問されたわけですが、経済協力の問題について九・七%という伸びを示している。政府が公約している点からいえばこの伸び率というのは非常に低いということですけれども、しかし現在の財政状態からいえば、九・七%というのは伸びとしては極めて高い伸び率で、これは量的にどうかというだけではなくして質的にその問題がやはり問われる必要があるだろう。実際に効果があるのか、正当な形で日本として行われているのかどうか、いろいろな問題を明らかにされることが予算上の問題としても必要な点ではないだろうか、これは今までも繰り返し問題になってきたことでありますけれども。  それで改めてお聞きしたいのは、今日の時点で対外協力を行う場合の基本的な方針あるいはその基準というようなものがどういうものなのか、大臣の方から最初にまずお伺いしたい。
  210. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国は、南北問題の根底にあるところの相互依存と人道的考慮を基本的理念として開発途上岡の経済社会開発のための自助努力支援し、もって民生の安定、福祉の向上に貢献するために援助を実施しておるわけです。この援助は、平和国家でありなおかつ自由世界第二位の経済力を有しかつ対外経済依存度の高い我が国国際社会におきまして果たすべき役割、責任でありまして、援助を通じまして世界経済の調和のある発展及び世界経済の平和と安定に貢献をすることが、ひいては我が国の平和と安定にも資するものである、こういうふうに考えております。
  211. 立木洋

    ○立木洋君 以前、日本経済協力をする重要な基準の一つとして、その国の一人当たりのGNPがどうなっているかということがありましたですよね。一人当たり六百二十五ドル以下の国に対して無償援助を行う、それから、一人当たり千ドル以下の国に対しては円借款を行うというふうなことになっていましたけれども、この基準というのは現在どういうふうになっているんでしょうか。
  212. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先生御指摘の千ドルなり六百ドル何がしというのは二、三年前だろうと思うんですけれども、大体三年前のそれぞれの国の一人当たりのGNPを一つの基準にしまして使っておりまして、現在ですと、円借款はたしかもう千五百ドルぐらいになっているんじゃないかと思います。それから無償援助もたしか七百九十ドルですか、八百ドル近くになっているんじゃないかと思います。
  213. 立木洋

    ○立木洋君 局長、たしかなんてあやふやなことを言わないでこうなっていますと明確にしておいてくださいよ。
  214. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 八四年度に入りましたので無償援助は七百九十五ドル、それから円借款は千六百四十五ドルでございます。
  215. 立木洋

    ○立木洋君 ちょうど一九八一年の鈴木内閣時代にこの対外経済協力の問題について、これからのあり方について見直しをするということが問題になったですね。当時のあれとしては、総合的安全保障という観点から経済援助のあり方をいろいろ検討するということになったんですが、以前の経済協力の政策とその一九八一年に手直しされた経済援助政策とではどこが基本的に変わったんでしょうか、変わった点を明確にしていただきたい。
  216. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 経済協力と総合安全保障の関係というのは別に変わっていないと私は了解しております。と申しますのは、経済協力と総合安全保障がどういう関係にあるかということは、我が国が開発途上国の経済社会の開発、民生の安定、福祉の向上という、今大臣が申されました目的を達成するために協力すること自体が開発途上国の政治的、経済的、社会的な強靱性を強化し安定をもたらし世界の平和に貢献するということで、このような開発途上国の安定と平和が世外の平和と安定の維持に貢献することが我が国の総合的な安全保障にも資することになると、そういう角度から我が国経済協力を総合安全保障の重要な一環として位置づけておるわけでございまして、これは我が国経済協力の基本的な根底にある考え方の一つでございまして、別に一九八一年をもって変わったということはないと私は了解いたしております。
  217. 立木洋

    ○立木洋君 アジア局長の前の局長なんだけれども、今の橋本さんではないけれども、論文を書いているんですよ。物資の安定的な供給の問題だとか、貿易の輸送ルートに関連していわゆる日本経済協力のあり方の問題で東南アジアを今後重視しなければならないと、これは変わってないなんと言ったらいけないな、やっぱり変わっている面があるんですから。私は変わっている面がどこにあるかということを聞いているんです。だから、基本的には一貫しておるのはこういう点がありますけれども、変わっている面はこういう面がありますというふうに答えていただかなければ。それは木内さんがちゃんと書いておるんですよ、この経済と外交の論文の中で。だから、変わってないと言わないで、やっぱり変わっている点は変わっているとはっきり言っていただきたいですね。どうですか。いや、読んでいなかったら読んでいないで結構ですよ、お読みになっていなかったら。
  218. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私も、これは今局長が答弁していますように、経済援助の基本的な原理原則はこれは変わっていないと、こういうふうに思いますがね。それは論文でどういうことを書かれたかわかりませんし、個人的な見解かもしれませんしね。政府外務大臣として言えばこれはもうずっと一貫して変わっていない。例えば、アメリカとの間で実はシュルツ長官が経済協力問題について話し合おうと、日米間で話し合おうということで、アメリカはどういう意図があったか知りませんが、二、三回ここ続けてやっております。その中でだんだんと明らかになっておることは、日本経済協力に対する考え方ですね、アメリカ経済協力の考え方とはやっぱり違いますですね。それは明らかになっております。そして、そういう中で日本日本としての立場と主張と考え方というものを明らかにしなければなりませんからこれ明らかにしておりますが、そういうことから見ましても全然変わっていないということははっきり言えると思っておりますし、われわれはこれは変えようと思いませんですがね。先ほど申し上げましたのが我が国経済協力の基本的な主張です。
  219. 立木洋

    ○立木洋君 だけれども、三木さんだとか福田さんが首相をやっておった当時、日本外交政策というのは全方位外交ということが全面的に強調されて、いろいろな違いがあっても、もちろん日米関係を主軸に置くけれども全方位外交でやりますと、これは経済協力の面でもそうですということをきちっと述べてこられた。その後、大平さんが出られ、鈴木さんになって同盟関係というような話が出されてきて、同盟関係に軍事関係を含むのか含まないのかというような問題になってきて、それでやっぱり軍事関係も含むんだということがはっきりしてきた。そして、今や西側の一員という形ですべて総括的に対外関係を考えると。日米を中軸とするという点は変わらないけれども、全方位外交という言葉がほとんどなくなったのですよ。そして、西側の一員という形に今なってきているわけですね。だから、これは単なる言葉の違いではなくて、やっぱり重点の置き方が若干移行してきているんじゃないか。西側の一員という観点から対外経済援助をやっているんじゃないか、協力を。そういうことが全く関係ないというふうにお言いになるのかどうなのか、やっぱり若干関係があるというふうにお認めになるのかどうか、どうでしょう、西側の一員という立場は。
  220. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) この西側の一員というのはこれは自由主義陣営の一員と、こういうことですわね、私はそう思いますよ。それから、日本外交の基本的な方針というのは、これは自民党内閣、ずうっと続いております。そしてまた外交には継続性がなきゃならぬわけで、そういう中で日本が一貫してとっておる方針というものはこれも基本的には変わってないんじゃないか、中曽根内閣になったからといってそれが大きく揺らいでおるとは私は思いません。それはボキャブラリーの、言葉の問題は多少あるかもしれませんけれども、基本は変わらない。これは私ははっきり申し上げましてもいいんですが、やっぱり日米を基軸にした全方位外交だと私は思いますね。またそれが日本のこれまでとってきた道筋だし、これからもとっていかなきゃならぬ道筋じゃないだろうか、こういうふうに思います。  それから何か西側の一員といいますと、西側に対して非常に軍事的な面で何かコミットしているんじゃないかと、こういう……
  221. 立木洋

    ○立木洋君 いや、そこまで私は今は言ってないです。
  222. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) そういう、何というのか誤解があるわけですね。そういうことを言わんとしておられるのかもしれませんね。それはないわけです、全然。ですから、これは政治的には協力とか協調とかそういう面は、いわゆる自由主義陣営の中で日本も連帯とかそういう面では大いに進めていこうということですけれども、これをさらにもっと軍事的な問題にまで高めていこうと、高めていこうというか強化していこう、そういう考えはないですから、私はそう基本的に変わってはいないと思いますがね。それは日本の憲法がありますし、基本的な日本外交の方針というものは今日まであるわけですから、これを変えるわけにもいかないと思いますがね。
  223. 立木洋

    ○立木洋君 それで、私は若干具体的な資料を提供して御質問したいと思うのですけれども委員長のお許しを得て資料をちょっと配っていただきたいんですが、お願いします。
  224. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) ちょっと速記をとめてください。    〔速記中止〕
  225. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 速記を起こしてください。  ただいま立木委員から御要請のありました資料の配付を認めます。    〔資料配付〕
  226. 立木洋

    ○立木洋君 この資料、今お手元に配る前に若干説明さしていただきますが、外務省が出しております外交青書及び八三年度の分は官報により掲載された交換公文などのものを引用さしていただきました。最近の四年間の外国に対するいわゆる経済協力のこれはデータです。この挙げている国、ここに二十八カ国挙げておりますが、これは一九八三年二月の十七日、アメリカの上院外交委員会の公聴会で、ウィリアム・シュナイダー国務次官が証言をした、その証言はアメリカが戦略的に重要な国、これは戦略的というのも政治、軍事、経済を挙げておりますが、それぞれ重要な用として戦略的重点国として挙げた国のうち、一人当たりGNPが二千ドル以上の国はこれは省いているんですよ。GNP一人当たり二千ドル以下の国だけを掲載しました。これが二十八カ国であります。そして、一九八〇年から八二年までのこれは実績であります。八三年は、先ほど言いましたようにこれは約束ベースでありまして、まだ技術協力費は含まれていません。そういうものとしてデータを出してみました。それで数字は、この日本の経済援助は贈与、無償援助、技術協力、二国間政府貸し付け、これの合計として出したわけです。  これを見てみますと、後ろに比率をずっと出してみたんですが、アメリカの戦略的な重点国とされておるGNPの二千ドル以下の国々に対しての日本の経済援助の額というのは、去年に比べましても二、三の国を除いてほとんど増加している。四年前の状態から見ても増加しているという実績が出ているわけです。このようにアメリカが戦略的に重点的国だとして挙げている国に対して、こういうふうに軒並みにふえているというのはどういうことを意味しているんでしょうか。その全体的な考え方からひとつお聞きをしたい。
  227. 柳健一

    政府委員(柳健一君) ただいま御配付いただきましたこの表でございますけれども、八二年までは暦年の、つまりカレンダーイヤーですね、暦年の支出実績でございます。ところが、八三年はおっしゃいましたように約束ベースでございます。ですから、八二年までの数字は八○年と比較して意味があるものと考えるわけでございますが、八三年の数字は全く約束ベースで、しかもこれも暦年でとられたのかどうかよく存じませんけれども、私ども約束ベースはほとんど円でやっておりますから、もし円をドルに直されたのだとすると会計年度かもしれませんが、とにかくこの八二年以前の数字と八三年の数字はちょっと比較しても議論することが難しいんじゃないかという感じがいたします。
  228. 立木洋

    ○立木洋君 柳さん、私はあなたがそう言うだろうと思って約束ベースのやつも全部つくってきたんですよ。これは配らなかったのだけれども、約束ベースで言いますと、これは八二年、この一九八三年の下のところ、約束べースで言えば、アメリカが戦略的に重点国だとして指定しておる二十八カ国に対する援助、これは日本が外国に対して経済協力を行っている国というのは約百三十数カ国及び地域というふうになっているかと思っているんですが、その百三十数カ国のうちの二十八カ国に対する経済協力の額が七四・七%なんです、これは約束ベースで。そして八二年の場合には、これは実績ベースで言えば四五・五%なんですよ。ところが、これは八二年の約束ベースで見ると四九・九一なんですよ。同じく約束べースで八三年を見ても七四・七なんです。これは皆さんには配ってないけれども、それなら局長、あなたがそういう言い方をすれば、これはあなたにお渡ししなければならない。(資料を手渡す)  これは約束ベースで見ても実績ベースで見ても問題に変わりはないんです。問題は、その傾向が明確に示されているということなんです。つまり私が言いたいのは、一九八三年度は交換公文でやっているわけですけれども、これは技術協力は含んでいないんです。技術協力を含めばもっと多くなるかもしれない。ですから実際の状態でいけば、実施ベースではこれより若干下がって翌年度に回されるというようなことが起こるかもしれないし、あるいはそれよりも多く実施ベースでは支出されるかもしれないということになるわけです。しかし交換公文のケースから見れば同じように上昇してきているというのは明確なんですから。アメリカが戦略的に重点国だとしておる二十八カ国に対して日本が行っている百三十数カ国のうち、それらの国が四分の三も経済協力が占めてそれがふえてきている。翌年度は、半分以下だったペースが四分の三までふえてきたというのは一体どういうことかということを聞いているんですよ、その傾向。それは西側の一員ということと関係があるのかないのか、これは大臣にやっぱり答えていただきたいですな。
  229. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 八三年度の約束ベースが、立木先生のお調べになりました資料によると八二年度の約束ベースに比べて五割から七割五分ぐらいまで伸びているという理由は何かという御質問でございますが、私どもは、あくまでも我が国の援助は日本の立場から日本の独自の判断でやっておるわけでございますので、もしこの数字がそうであるならば、それは偶然そうなったのだろうとしか考えられません。
  230. 立木洋

    ○立木洋君 偶然説ですか。
  231. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは、数字はもう少し検討さしてもらわぬと……
  232. 立木洋

    ○立木洋君 これは外務省発表したやつですよ。
  233. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 全体的にそういう傾向が出ているのかどうか、やはり実績ベースと約束ベースは違いますから。検討さしてもらいますが、しかし挙げてある国々は、アメリカはこれに対してどういうウェートを姓いているのか知りませんが、しかし、それぞれ日本にとりましても人道的な配慮あるいはまた相互依存という立場からやはり重要な国だと私は思いますね。ですから、こういう国々に対して日本経済協力を進めるということは私は当然のことじゃないだろうかと。これを何かアメリカと一緒になったというふうな形で勘ぐられるのはちょっとおかしいんじゃないか。日本日本経済協力の基本姿勢からいっても、こういう国々に対する援助はやっぱり確実にやっていかなければならないんじゃないかと、こういうふうに思います。
  234. 立木洋

    ○立木洋君 私はちゃんと典拠を挙げているのです。一九八三年二月十七日、アメリカ上院外交委員会の公聴会においてシュナイダー国務次官が証言している、その戦略的な重点国なんです。つまり、戦略的に対外援助を行うということは日本の方針にはないわけですよね。  それでは、アメリカからこれらの国々に対して協力をもっと進めてくれ、促進してくれというような要請が文書や口頭であった国はどこどこの国でしょうか。
  235. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) アメリカとの間では経済協力の話をシュルツさんともしまして、日本はやはり南北問題を中心として考える、それも人道、それから相互依存という形でしか日本経済協力というのはできませんよと、こういう話をしております。同時にまた、アメリカとの間の共同のプロジェクトがありますね、タイとかフィリピンで。あれは非常に成果を上げておるので、こういう日米間で成果を上げておるプロジェクトとはお互いに相協力してやっていきましょう、こういうふうな話もしておるわけです。  さらにまた、確かにアメリカからは二、三の地域について、例えばジャマイカなどについて日本経済協力をしてくれておることに対しては大変感謝をしている、こういう発言もあったことは事実なんですがね。しかし、そうアメリカ日本が一緒になって戦略的にどうだこうだ、こういう話はもちろんありませんし、それぞれの立場でそれぞれの主張に基づいてこれはやっていこうということで、お互いに多少の注文は出し合っておりますけれども、その程度であります。
  236. 立木洋

    ○立木洋君 局長ね、アメリカから、何年にどこの国に対してそういう経済協力をやってほしいという趣旨の口頭あるいは文書で申し入れがあったか、ちょっと逐一述べていただけませんか。
  237. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 我が国アメリカとの間では最もよく援助に関する協議をやっておりますけれども、私も過去三回出てやっておりますが、その間に一度も、具体的な国名を挙げてどこの国に援助を拡大してほしいとか、または出してほしいというふうな要請を受けたことはございません。
  238. 立木洋

    ○立木洋君 あなた自身がね。
  239. 柳健一

    政府委員(柳健一君) ございません。いや、私自身のみならず、大臣が会われた場においても、具体的な国名を挙げて日本にこういう援助をふやせとかあるいはしてくれとかいうような要請があったことはございません。  それから、ちょっとつけ加えさしていただきますが、先ほどの表でございますけれども、これは私どもの方でもうちょっとよく調べさしていただきたいと申しますのは、約束ベースでございますと時々時期がずれまして、例えば八二年度分を八三年度になってから交換公文を結んだりとかいろいろございましてかなり複雑でございますので、むしろ支出実績で比較する方がはるかに実際の傾向を把握するのに実態の正しい姿が把握できると思うのですね、約束ベースというのはずれがございますから。
  240. 立木洋

    ○立木洋君 それでは二点だけお願いしておきますよ。  一点は、それじゃ実績ベースで資料をつくって回してください。いいですか。
  241. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 八三年度の実績がまだ出ておりませんので。ですから、八三年度の実績はあと二カ月くらいで出ますから、出ましたら直ちにお届けいたします。
  242. 立木洋

    ○立木洋君 だから、今の時点で私がつくっているのはやむを得ないつくり方をしたという意味なんですよ。それを何かおかしいつくり方をしたというふうな言い方をされないようにしていただかないと困りますから、それだけ念を押しておきます。
  243. 柳健一

    政府委員(柳健一君) そういうことは決して申しておりません。
  244. 立木洋

    ○立木洋君 協力を要諦されていないとあなたも外務大臣も言うけれどもね、そうしたらこの「最近の国際情勢について」「第十回総合安全保障関係閣僚会議配布資料」と、外務省昭和五十九年二月七日に出したじゃないですか、それの一番最後に何て書いてありますか。「安倍外務大臣の今次訪米の際の米側要人との会談等においては、米側より中米・カリブに対する我が国の援助拡充への期待が表明され、安倍外務大臣より、日本として今後とも我が国の援助の枠組みの中でできるだけの拡充の努力を払っていく考え方を表明した。」と。  援助の要請を受けていないんですか。あなた、いいかげんなことを言っちゃだめですよ。
  245. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 私が申し上げましたのは、具体的な国名を挙げてそういう要請があったことは……
  246. 立木洋

    ○立木洋君 地域も国名も一緒じゃないですか。
  247. 柳健一

    政府委員(柳健一君) どこの地域が重要であるかということについては絶えず議論をいたしております。
  248. 立木洋

    ○立木洋君 そういう詭弁を使ったような答弁をしないでくださいよ。要請をされていないとあなた言ったんだから、要請を受けているなら、国名ではございませんけれども地域名ならございますというふうに言えばそれはあなた正直ですよ。何か全然要請がないみたいな言い方をされると話が違う。
  249. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに今そういう報告はしています。間違いなくしていますが、これはカリブ海について確かに話がありまして、むしろアメリカは、先ほど言いましたようにジャマイカなんかに対して日本がしたということに対して謝意を表明したということで、引き続いてよろしくお願いしますと、こういうふうな趣旨でありまして、むしろあれをしてくれこれをしてくれという注文より、日本がそういう地域にいくまでいろいろとやってくれていることに感謝していると、さらにひとつお願いしますと、こういう趣旨の発言ですから。
  250. 立木洋

    ○立木洋君 ちょっとその話が脱線してしまいましたけれども、一九八二年六月の十日、これはアメリカの上院外交委員会で行ったステッセル国務副長官の証言によりますと、特にタイ、パキスタン、トルコ、スーダン、エジプト、ペルシャ湾岸諸国などの戦略的に重要な諸国に対する日本の拡大する対外援助計画に大きな関心を持っている、こういうふうに述べておるわけですね。ところがこう述べられた後、タイ、トルコ、エジプトらへの援助は約二倍かそれ以上、パキスタンは五割増、スーダンもふえる、こういうふうな増額が出てきているんですが、これも偶然の一致でしょうか。
  251. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 偶然の一致ということじゃなくて、やはり日本経済協力の基本はそうですけれども世界情勢が動いていっておりまして、特にトルコなんかでも非常に債務累積その他破産的な状況に陥ったとか、そういう具体的な動きの中でパキスタンなんかでも難民がどっと入ってきた、そういうふうな状況等の変化に応じて日本経済協力がふえてきているということは言えると思いますが、しかし、何かアメリカの戦略的な方向に連動して日本が動くということは、これはもうあり得ないことなんです。これははっきり言えると思います。
  252. 立木洋

    ○立木洋君 もう一つ大臣ね。これは一九八三年三月二十二日、アメリカ下院歳出委員会の軍事建設小委員会での米陸軍ケヴイン・マホー二ー少佐の証言によりますと、「我々の勧告にこたえてソ連のアフガニスタン侵攻後、日本はエジプト、ソマリア、トルコ、パキスタンに対してそれぞれ一億ドル以上に経済援助を増額した」と。「我々の勧告にこたえて」ですよ。これはまさにアメリカがそういう戦略的な重点国にこたえて援助をふやしたということじゃないですか。
  253. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) それは少佐程度が言っているわけですから、どういうことか私にもよくわからないんですが、日本は少なくとも、今先ほど申し上げましたように外務大臣が言っているわけでありまして、少佐が言っているわけじゃありません。日本経済協力は人道援助それから相互依存と、こういうことを貫いてやっている。確かに世界の情勢の変化に対してそれなりに増減というのがあることは事実なんですけれども、何回も申し上げるんですが、これは我々はアメリカと、シュルツさんと論争したところですけれどもアメリカの戦略的な考え方に我々連動することはできないということは、アメリカも十分承知しているはずです。
  254. 立木洋

    ○立木洋君 大臣、だんだん苦しい答弁になってきましたが、人間というのは、外務大臣だからうそをつかなくて少佐だからうそを言うことにならないのですよ、これは。首相になった人だってうそつく人はいるんだから、やっぱり。だから、人間はそういう地位なんかでうそか本当かを決めることはできないのじゃないですか。
  255. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 重さの問題。
  256. 立木洋

    ○立木洋君 重さの問題……。大分苦しい答弁のようですけれども、私はこれは全部ここに一定の数字を挙げて述べているのですから、今言っているのは決して私が証言と全く違っているということじゃない。アメリカで証言したのが事実上これで裏づけられているから私はその証言を引用して聞いているわけです。だから、私の資料にも重みがあるのですから、よくそのことを念頭に置いてお答えいただきたい。  もう一つは、アメリカ支援を受けてニカラグア攻撃をしているホンジュラス、あるいは民族解放運動を弾圧しているエルサルバドル、あるいは親米政権のジャマイカ、ドミニカ共和国などへの政府援助がこれまた急増していますね。これはどういう意味でしょうか。これは中米に頼まれたから、中米援助を協力してくれと頼まれたからふえたのでしょうか。
  257. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 先ほど来から大臣がおっしゃっておられますように、これらの国々に対する援助もあくまでも我が国の独自の立場から援助しておるわけでございまして、この中米、カリブ海の地域なんかは毎年援助しているわけじゃございませんので、二年か三年に一遍援助すると、そのときだけどかんと出ましてまた後なくなっちゃう、こういうふうな実績を大体たどっていると存じます。
  258. 立木洋

    ○立木洋君 だからここにも出しているように、ホンジュラスの場合でもそれからジャマイカの場合でも、これは一九八〇年に比べたら何倍ですか、相当なものですよ、四百二十四倍。昨年に比べたって十九倍でしょう、これは。どかっとやったのはアメリカから要請されたときにどかっとなっているのですよ。だから、これはそういう意味では答弁に私はならないのじゃないかと思うのですが、この点についても先ほど挙げましたステッセル米国務副長官の証言によりますと、日本アメリカのカリブ海地域イニシアチブに対する支持を表明したというふうに述べている。だから結局これはアメリカの要望にこたえてふえたという結果にならざるを得ないのではないかというふうに言わざるを得ないと思うのです。  それで、ちょっと角度は変わりますけれども、一九八一年三月の国会の決議では、紛争当事国に対する経済技術協力については、その紛争を助長するがごときものは行わないことというふうに国会で決議されていますね、これは大臣御承知のとおり。ところがホンジュラスやエルサルバドルの援助をふやすということは、結局現在紛争状態になっているわけですからこういうのは国会決議に違反したもので、日本が何ぼ独自に考えたと、もし強弁されたとしても、国会決議の見地から見たらやはり抵触するのじゃないですか、違反じゃないですか、どうでしょうか大臣
  259. 柳健一

    政府委員(柳健一君) ホンジュラスの援助について申し上げますと、八二年度は、災害援助と農業開発研修センターの建設と食糧増産援助とマラリア、デング熱の制圧援助でございます。八三年度につきまして申し上げますと、円借款でございますが、水力発電所の拡充計画と電気通信の拡充計画、それから再び食糧増産援助と農業開発センターの第二期の計画と、これらは私どもはいずれもホンジュラスの民生の安定と福祉の向上というものを目的としたものとして援助を決めた次第でございます。
  260. 立木洋

    ○立木洋君 援助が具体的にそれぞれの国によって細目全部完全にそのとおり使われるかどうかということについては、いろいろやっぱり問題が残っているわけですから、それは日本はそういう形で援助されたとしても、例えば食糧にしたってそれは軍隊の食糧になるかもしれない、そういう意味になると先ほどの武器の問題じゃないけれども、考え方によってはいろいろなあり方があるわけですから、私が言っていることにやはり明確に答えていただきたい。ですから、これはそういう民生の安定というものにしたって、経済技術協力については紛争を助長するがごときものには行わないということになっているのですから、紛争が行われている現の当事国に対してはやはり慎重にやるべきだということは、私は国会決議の精神じゃないかと思うのです。それをここにがばっとふやすようなやり方は、いかなる事情があろうとも差し控えるべきだ。大臣いかがですか。
  261. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かにこれは国会の決議は尊重しなければならぬ、当然のことですし、私も政府の一員としてだけじゃなく、国会議員としてそう思います。ただ、この援助というのは、先ほど局長が言いましたようにやはり人道的な立場に立った援助でありますし、あくまでも民生の安定、福祉の向上というやはり国民の生活の安定に直結したものであることは間違いないわけで、そういう意味では紛争を助長するような援助では決してない。それでまた日本の援助の場合は、相当精密に鑑定といいますか調査しますし、そしてその援助の行き着くところまでやっぱりきちっとフォローアップしていくわけですから、これはそれぞれの国の紛争を助長するんじゃなくて、それなりの国民生活、福祉向上に役立っておる。それだけに平和を求める日本外交の基本には沿ったものだ、こういうふうに思います。
  262. 立木洋

    ○立木洋君 人道上だということになれば、やっぱり人類の生命を最大限に尊重するということ、これが最大のものだと私は思うんです。  そうしますと、今、アフリカ大陸で三人に一人が飢餓状態に陥っているという状態にあり、これに対しては本当の日本の緊急食糧援助なんかももっとやるべきじゃないかというようなことが国際的にもいろいろ意見が出されていますね。だから、こういうことこそ私はやっぱり考えてもいいんじゃないかと思うんですよ。このアフリカの緊急援助、先般閣僚会議でもいろいろ検討なさったようでありますけれども、現状はどういうふうに対応していかれるのか。
  263. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 基本的には、詳しくは局長から申し上げますが、おっしゃるようにやっぱりアフリカの状況、私は深刻だと思います。相当飢餓状況が蔓延している。三年続きの干ばつということで、アフリカ二十四カ国の国々が大変困難な状況にありますから、日本もアフリカに対する援助はこの数年間の間に大変伸ばしておりますけれども、特に食糧援助、飢餓対策については、これはああした厳しい状況であるだけに思い切ったことをやらなきゃいけないんじゃないかと。先般も二百万ドルですけれども、緊急に食糧援助として支出したわけでありますが、その他国際機関とかあるいは二国間の援助、そういうものを通じてこれからも積極的にやっていきたい、こういうふうに思います。
  264. 柳健一

    政府委員(柳健一君) もう大体大臣が言われたことに尽きるわけでございますが、ちょっと一言だけ数字を申し上げますと、立木委員も御案内のとおり、アフリカの干ばつが十年ぶりでひどくなったのはちょうど八一年からでございまして、日本の食糧援助は七九年、八十年までは大体アフリカ向けが四分の一ぐらいだったのでございますが、八一年からは一気に四三%から四五%ぐらい、半分近くまで急激にふやしまして、それ以来ずっとこのシェアを続けてきております。  それに加えましてさっき大臣が申されましたような緊急援助をさらにつけ加えてやっておりますし、五十九年度におきましても食糧援助の部分を同じシェアを保ちながら、できればもっとふやして、しかもできるだけ早急に行うという今計画を立てております。
  265. 立木洋

    ○立木洋君 もっとその問題もいろいろお尋ねしたいんですけれども、時間が大分なくなってきましたので……。  今の問題というのは、何も軍事的に援助をしているというふうな意味合いで私は言ったんではないんです。ましてや私の言わんとしていることは、政府が今まで掲げていた対外経済協力の基本的なあり方の問題から見て本当にやっぱり正しいやり方がやられているのかどうかと。現実的にこういうふうな数字になってくるとどうしても西側の一員だとか、特に戦略的などというふうなことを絡めて、偶然の一致だってさっき局長は言ったけれども、しかしなかなか偶然の一致ではない事実があるものですから、だからこの点はよく検討していただいて、そういうふうな特定の戦略に基づいたいわゆる意図的な協力というふうにならないように、十分にきちっと常道を踏まえてやっていただきたいということを最後に強く要望しておきたい。  せっかくお呼び出ししたわけですから、毒ガス、アメリカのさっき言ったヒューズスポークスマンが、先般、イラク・イラン戦争の毒ガス使用の問題に関して、五種類にわたる化学物質、その輸出を厳しく規制をするという発表をしたですね。そして、西ドイツなどの西側諸国でもそういう化学物質が輸出されていることがあり得るので、それらの国に対しても要望したい、それでその対象国には日本が入っているようだというふうな報道があったんですが、日本に対してはその旨何かの通知か連絡があったんでしょうか。
  266. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 先月の二十九日に、米国国務省の担当次官補代理がワシントンに駐在いたします先進国大使館の担当者を呼び集めまして、そこで、アメリカはイラン、イラクに対して化学兵器の原料となるような五種類の品目について輸出規制措置をとるということを説明いたしまして、その際に、ここにおられる皆様の国も同様措置をとられるように希望すると、英語では「ウイ ホープ」というふうに述べた次第がございます。
  267. 立木洋

    ○立木洋君 去る一日の日に、ニューヨーク・タイムズの報道によりますと、神経ガスだとかマスタードガスなどの化学物質が日本からイラクに輸出されているというような報道もあるわけです。これは先日外務大臣にもお尋ねしまして、化学兵器の禁止、それは使われるべきではないということが日本政府の毅然とした態度だというふうに述べられていたんで、これは外務当局が調査するなんというようなことはそれは関係当局ではございませんけれども、ひとつやっぱり問題にしていただいて、そういう化学物質の材料になるようなものが輸出されているならば、そういうふうなことは国際的にも日本のやっぱり威信にかかわる問題でもありますから、だから、そういう点については十分に調査をして、そういうことがもしか事実であるならば、きちっとした対応をとられるように外務大臣に要望したいと思いますが、いかがでしょうか。
  268. 波多野敬雄

    政府委員波多野敬雄君) 外務省といたしましても調査をいたしまして、その結果、現在我が国からこれら五品目についてイラン、イラクに輸出されている事実はないというふうに確認しております。
  269. 立木洋

    ○立木洋君 そう言われるとちょっと私また言わぬといかんのよね。私、今いろいろ調べているんですよ。五品目というのはたしかないかもしれない。しかし今、化学兵器というのは発達してきているんですからね。いろいろな調合の仕方によっては化学兵器になるものがあるんですよ。だから、その点は私はあえてここではそういうふうに五品目とは言わないで、化学兵器の原材料になるようなものが出てないかどうかお調べいただいて、もしかそれに相当するようなものがあるならばきちっとした対応をしていただきたい。私はだからあえて五品目とは言わなかった。大臣、よろしくお願いいたします。
  270. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 化学兵器を禁止しなきゃならぬというのは国際的な合意でありますし、日本も強く主張しているところでありますから、十分調査いたします。
  271. 立木洋

    ○立木洋君 終わります。
  272. 前島英三郎

    前島英三郎君 初めて外務委員会で質問さしていただくんですけれども、私は経済協力、技術協力を初めとする各国との協力のあり方を中心にお尋ねしたいと思います。  我が国は、きょうもいろいろな形で討論されましたけれども自由世界第二位の経済力を有するところまで発展をいたしましたが、その発展、繁栄は各国との相互依存関係の上に成り立ってきたものであることは、これは言うまでもないことだと思うんですね。しかし、相互依存関係という言葉は耳ざわりがいいんですけれども、特に発展途上国との関係を考えますと、必ずしも正確に相互という言葉が当てはまるかどうか疑問な点もあるんじゃなかろうか、このように思います。そんな気がしないでもないわけですけれども、特に立場を変えて相手順から見てみますと、エコノミックアニマル等というような言葉もあるように、日本が一方的に甘いところだけを吸い取ってしまっておるんだというふうに感じられるかもしれません。現実に私もいろんな外国を回ってみますと、そうした声を私でさえも耳にするわけなんですね。  こうしたことを考えてみますと、我が国がさまざまな分野で誠実に国際的な協力に貢献していくことの大切さというのは、もう強調しても強調しても、幾ら強調してもいいんじゃないか、そういう気がいたします。その辺は、冒頭に大臣も五十九年度予算の中で、「近年国際社会における地位が著しく向上したわが国が、「世界の中の日本」として各国からの期待に応えてその地位にふさわしい国際的役割を果し、積極的な外交を展開していくためには、外交実施体制を一層整備強化する必要」がある、こういうことを述べられております。単に日本の評判をよくするためというんじゃなくて、真に相手側のことを考えた効果的な協力をしていく必要があるんではなかろうか。そういう意味では、日本はその部分を何となく面倒くさく考えていますと、日本のまさしくこれからの一億一千七百万の生命の保持はあり得ないと言っても過言ではない重要な相互関係だというふうに思うんです。  まず、外務大臣に基本的なお考え、そして決意というものを承っておきたいと思うんですが。
  273. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 援助は、平和国家でありさらにまた自由世界第二位の経済力を有し、かつ対外経済依存度の高い我が国国際社会において果たすべき責任であり、援助を通じ世界経済の調和ある発展及び世界の平和と安定に貢献することは、ひいては我が国の平和と安定にも資するものである、こういうふうに認識をしております。こうした観点から、新中期目標のもとでODAの拡充については従来より格別配慮を行ってきたところであり、同目標のもとで今後ともその拡充に努力してまいりたいと思うわけでございます。  現下財政は困難でございますが、しかし同時に、国際的な役割としての援助は大事ですから、援助の一属の増加、さらにまた、援助の効果的な実施に努めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  274. 前島英三郎

    前島英三郎君 我が国はこの地球上におきましてはアジア・太平洋地域の一員でありますけれども、そのアジア・太平洋地域は人口も多くて、また地域の大半の国々が発展途上国という立場に置かれております。しかも各種の国際紛争が地域内のそこここで火を噴いておりまして、くすぶったりし続けている現状にあります。こうした状況を考えますと、地域内における日本役割の重要さというのも大変大きなものがあろうと思いますし、紛争解決に寄与できればいいなということもありますが、それ以上にそうした紛争が実にむなしいことだと感じ取ってもらえるような、そういう存在に日本はなるべきであるというふうにも思います。それにはこの地域の中で地道に誠実に協力の実績を上げていく必要があると思うんですが、この地域、つまりアジア・太平洋の一員であるという見地から、どのように外務省は認識しておられるのか、その辺も伺っておきたいと思います。
  275. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 御指摘のとおりだと存じております。例えば我が国の二国間援助の約七割がアジア地域に配分されるというように、アジア地域を大変重視した援助政策をとっている次第でございます。また、ただいまおっしゃいました太平洋地域に、つきましても、近年我が国も一この地域の人口が非常に少ないものでございますから、なかなか絶対額で見ますとほかの地域と比べて多くはならないんでございますが、しかし世界じゅうで一人当たりの受け取り額は、アジアで最も多く受け取っているASEANよりも、絶対額では多いASEANよりも、太平洋地域の一人当たりの受け取り援助額はずっと多くなっているということでございまして、太平洋地域に対する援助も漸次拡充に努めておるわけでございます。
  276. 前島英三郎

    前島英三郎君 そうした拡充に努力をしていく姿勢は可とするんですけれども、その協力のあり方についてこれから細かい部分にも触れながら伺ってまいりたいと思うんですが、我が国の場合、どうも物的協力に偏り過ぎているんじゃないかという気がしてならないわけです。近年の傾向として、技術協力の比重が我が国経済協力の中に占める割合を若干増してきていることは認めるわけですけれども、UNDPとか、あるいは拠出金なんかもかなり増加しているというようなことも伺っております。このあたりを見ますと、物的援助という傾斜の方向から外務省も自覚症状として感じているのかなという気もしないでもないんですけれども、しかし他の先進諸国に比べてはまだまだその傾斜というのは大きいと言わなければならないと思うんです。それに技術協力の実態の多くは物的援助とセットになったものでありまして、そのプロジェクトが完成した段階で一たん切れてしまう。もちろん相手方は独力で運営してその社会に役立てることができるということ自体は望ましいんですけれども、しかしこれでは物的なものに傾斜する傾向というのは改善されていかないんじゃないかというような気がするんです。言葉の壁という問題もあるかもしれません。しかし、国際協力というんであれば、やはりもっと人間と人間が手をつないでやっていく人的なものを重視していく必要があるんじゃないかというような気がするんですけれども、その辺は外務省はどういう見解を持っておられるか、承っておきます。
  277. 柳健一

    政府委員(柳健一君) この点につきましても委員指摘のとおりだと私ども考えておりまして、例えば政府開発援助の中で技術協力の占める比率は、先進国平均は大体二〇%いっておりますのに我が国の場合はまだ一〇%ぐらいにすぎないということでございます。これは言葉の問題とかいろいろ理由はあるわけでございますが、近年私どもこの点に着目いたしまして、技術協力の拡充、それから特にけさも申し上げたんですが、五十九年度の予算では青年海外協力隊を三年間で思い切って二倍にするという非常にドラスチックな拡充を図る等、何とかして技術協力面での壁を突き破って画期的にふやしたいという努力をいたしております。  それから第二番目は、近年やはり基礎生活援助と申します農村農業開発とか、それから民生のためのエネルギーとか医療とか飲料水とかそういう分野で、国民に直接裨益するような分野での援助に力を入れるようにしているわけでございます。
  278. 前島英三郎

    前島英三郎君 後で具体的な提案もきょうはさしてもらいたいと、こう思っているんですけれども、技術協力文化交流の中間といいますかね、あるいはその両方にまたがったようなことになるかもしれませんが、情報協力あるいはネットワーク協力といったスタイルを生み出したらどうかと、こういうふうに私は考えているんです。情報協力などといいますとスパイ協力みたいに誤解されると困るんですけれども、発展途上国におきましては比較的新しい分野、しかし工業先進国においては普及し始めているあるいは既に普及しているといった分野、こうした分野ではまず情報が真っ先に必要であろうということはだれしも納得するところだと思うんですね。また、逆に情報がニーズを喚起してまいりますし、発展を促進するということもあると思うんです。私は、情報化社会などと言われるからこういうことを言っているんじゃなくて、国際協力のあり方のいわばソフト化とでも言ったらいいでしょうか、ハードなものに傾斜しがちであるという指摘をしたことを踏まえて何か新しい方向に展開できるものはないかと、そう思ってきょうは私の発言を多く申し上げているわけなんですけれどもね。  かねてから私は国会でたびたび述べているんですけれども、福祉外交外交政策というととかく経済外交というものが真っ先に突っ走っていっちゃうんですけれども、どうも日本の経済外交というのは一足す一は見返りとして二を必ず答えに描きながら何かやっていく部分がありますけれども、やはり、確かに消えてなくなるものには違いないけれども、心と心というものを生み出していく外交の中に大いなる心の外交、福祉外交というものが推進されていくことを常々主張しているわけですけれども、その具体的なものの一つとして障害者等のリハビリテーションの分野における国際協力、こういうテーマがございます。  我が国は、この分野においても欧米諸国から学びながら今日の水準まで到達することができたと思うんです。今度はそれをアジア・太平洋、特に発展途上国の人たちに、かつて我々が欧米先進国を羨望のまなざしで見ていたように、その国々に今度は我々のそうした力をやはりいろんな意味で福祉外交で展開していくことが必要なのではないか。我々の国もまだまだ欧米先進国から学ぶべきことはたくさんあるんですけれども、しかし十分に発腰途上国――アジア・太平洋の中では参考にしてもらいたい、そういう部分というものも、水準の高さはかなり日本も自己評価できるところまで進展してきたという事実もございます。リハビリテーションの分野が充実することは、その国が弱い立場の人々をどれだけ大切にしているか、あるいは大切にできるかという一つのバロメーターではないかというような気がするんです。私は今日リハビリテーションの分野における協力を推進していくことが極めて外交の中で重要な課題となってきていると考えているんですが、この点、国際障害者年を境に国際的にも多くの共感を得ていると思います。外務省はもう一踏ん張り何かその中に踏み出す外務省としての福祉外交の姿勢というものがまだ乏しい気がするんですけれども外務省としてはその辺をどうお考えになっているか、この際伺っておきたいと思います。
  279. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 福祉外交と申しますか、今、先生の御指摘になられました障害者関係協力は、御指摘のとおりまだ日本の場合は、我が国の場合は非常にまだ弱いと思っております。私どものただいまやっておりますのをちょっと申し上げますと、例えば海外からの、途上国からの研修員の受け入れに際しまして、障害者のリハビリテーションを指導する指導者のコース、それからあるいは精神薄弱福祉コースとか、あるいは補装具の製作をする技術コースとか、そういういわば集団コースを設けまして、そのコースに海外から、開発途上国からの研修員を受け入れまして技術訓練を行うことをいたしております。それからまた聾唖の専門家を派遣いたしましたり、あるいは青年海外協力隊でも作業療法士とか、理学療法士というようなものを派遣いだしているのが若干ございます。しかし、その数はまだまだ少ないわけでございます。  ただ、私ども一つ大きな――大きなと言うとあれですが、今申し上げましたものに比べてちょっと大きい計画をいたしておりますのは、プロジェクト方式の技術協力といたしまして、ことしの二月からタイに労災リハビリテーションセンターというものを、これは建物は無償資金協力で建てまして、そこへ我が国から人を派遣いたしましてそこで技術協力を行うという協力を始めたところでございます。こういう分野につきまして、私どももこれからさらに積極的にできる範囲で拡充していきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  280. 前島英三郎

    前島英三郎君 GNP世界第二位という国でありながら、特にまたアジア・太平洋の一員である我が国という責任におきましても、先ほども、途上国からはそのリハビリテーションの人的養成という意味外務省も一役買っておる、そういう研修生も来ておるというところで、本当はここでぱっとバラ色の数字が出ればいいんですけれども、正直言って一けた台だと思うんです。そういう意味ではまだまだとても芽が出るような状況ではない。だからそういう意味でも、このアジア・太平洋の中には、障害者の数でいきますと、地球上四億五千万阻害者がいると言われておりますが、七割がこのアジア・太平洋で占めているという地域でありますし、その中における日本の技術というものは、これはもう大変な先進国の中にいるわけですから、そういう意味でもこれからやっぱり積極的に門を開いてやっていきたいというふうに思うんです。  タイに一つの援助としてリハビリテーションセンターが今つくられつつあるということを私も伺っておりますが、きょうはその辺は労働省の方がお見えにもなっておりますので、その労災リハビリテーションセンターの状況ですね、これはどういう規模で、どういう形でタイに建設されていくのか、その辺をちょっと御説明いただきたいと思うんですが。
  281. 中村正

    説明員(中村正君) ただいま柳局長から御説明があったのが導入部でございまして、タイ国側の要請を受けまして五十七年からいろいろ検討を進めておりましたところ、ごく最近でございますが、三月の二十七日に建物の着工にこぎつけました。完成は、いろいろな自然条件もございまして来年の二月に予定しておりますけれども、そのとおりにいくかどうか、できるだけその完成が予定どおりになるように努力したいと思っております。  さて、内容でございますけれども、先ほどの話にもございましたように、労働災害による身障者、これの現職復帰、または自立の促進ということで四つのプログラムを考えておりまして、一つは潜在的な職業能力の評価をやるプログラム、もう一つはその方々が現職に復帰することを助けるための職業準備プログラム、それからもっと目立をしてやっていこうという方々にかなりの技術をつけて差し上げるという意味での職業訓練プログラム、それから最後に、そういう身障者の方々が不幸にしていまだ医学的なリハビリテーションを必要とする場合もあろうということから、治療を目的とするものではございませんが、医学的なリハビリのプログラム、この四つのプログラムから成っております。開始は明年の四月からということでございますけれども、いろいろな準備段階で人間の派遣等もおいおいやっていこう、こういうような状態でございます。
  282. 前島英三郎

    前島英三郎君 それが一つの形としてでき上がる。でき上がってきますと、当然そこは建物ができたからといって、日本とタイとのそうした二国間の一つのプロジェクトの完成、ゴールだとは私は到底思えないんですね。ともすれば、そこでばったりと何か糸が切れてしまうような状況があるんですけれども、例えばこれを今度は転がしていく中において、やはり労働省は労働省としての責任もありましょう。あるいはまた、外務省外務省として、その人たちの人的な交流を含めて、そのリハビリテーションセンターがいかにタイの人人に喜ばれるものとして日々その業務を遂行していくかということを見守っていく責任があるだろうと思うんですね。そういうフォローアップがこれからの外交の中には大変重要ではないかというような気がするんですが、その辺は外務省はどう計画しておられますか。
  283. 柳健一

    政府委員(柳健一君) 御指摘の点、まことにごもっともと考えておるわけでございまして、何と申しますか、プロジェクトが終わったらそれでおしまいになってしまうというようなことにならないように、私どもきちんと後のフォローアップを十分やるようにしたいというふうに考えております。
  284. 前島英三郎

    前島英三郎君 労働省は、今度は現場の中でいろいろ職業リハビリテーションの出題について窓口になっていくんですが、労働省としてはいかがですか。
  285. 中村正

    説明員(中村正君) 現実に建物が建った後の運営につきましては、私どもの方で、必ずしも役人ばかりではございませんで、いろんな専門家をチームにいたしまして現地に派遣して、その運営についてしばらくの間面倒を見る。一方、カウンターパートもこちらに呼びまして、国内での準備を終えた後、現地に帰ってその運営に参加する、そういうような形で運営にそごがないようにしていこう、こういうふうに思っております。
  286. 前島英三郎

    前島英三郎君 せっかく労働省も来ておりますから、我が回としてこのアジア・太平洋地域のことをいろいろESCAPの中においても考えていくことだと思いますが、そうすると、目玉的なものはそのタイのリハビリテーションセンタしぐらいなものですか。あるいはもっとプロジェクトチームで日本の福祉外交の中でこういうものがある、あるいはILOとはこういうととを考えているというようなものがあったら、この際伺っておきたいと思います。
  287. 柳健一

    政府委員(柳健一君) ただいまのところはそのタイの労災リハビリテーションセンターだけでございまして、それ以外のことは考えておりません。
  288. 前島英三郎

    前島英三郎君 何か非常に寂しい気がするんですね。タイのそのリハビリテーションセンターが何か目玉的福祉外交で、後の部分がまだなかなか――労働省にその意欲があっても、これは外務省が窓口ですから、ここがまず率先して省内でプロジェクトチームをつくって、このアジア・太平洋における外交政策の中で、特に弱い立場の人々にどういう光を与えるべきか。総理はASEANを訪問する、あるいは外務大臣も一緒に訪問されるという中で、確かにそれぞれの国のトップレベルの人は、ああ日本はすごいなという目で見ているけれども、その人たちの本当の声というのは、本当に弱い立場の人々であり、あるいは飢えに悩む人々であり、あるいは医療のおくれの中で命を縮めている人たちであり、飢餓に飢えている人たちであるということをぜひ念頭に置きながら、もっとこの部分に今後の外交、特にアジア・太平洋地域における外交に力を入れていただきたいことを安倍外務大臣に特にお願いしたいのですが、何かコメントがございましたら。
  289. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今おっしゃるとおりだと思います。日本外交、特に経済協力も近年は相当率直に言いまして評判はよくなっていると思います。これはやはりその国々のニーズといいますか、そういうものを吸い上げて着実に進めてきたというところに、向こうの国の政府が感謝しているだけじゃなく、国民が非常に評価を始めておるということで、我々はやっぱりこうした姿勢を続けていかなきゃならぬし、また同時に経済協力というのは常に反省をしていかないと、何か協力してやるんだという思い上がりがあったら、これは逆な効果になってくるわけであると思います。  そういう中で、今お話しのようなこれから協力する国々の福祉の向上というものに重点を置いた障害者対策であるとか、あるいは精薄対策であるとか、一番弱い属に対して日本の国が援助という形で協力するということも、我々としてはこれからの重要な課題として取り上げる必要があるんじゃないかということを率直に感じます。これからいろいろと各国との間で協力案件について相談をいたしますので、そういう中で今お話しのような点については十分ひとつ考えてまいりたい、こういうように思います。
  290. 前島英三郎

    前島英三郎君 すなわち、アジア・太平洋地域では日本も大変責任を果たしていかなければならない、そういう立場にありますけれども、もう一つオーストラリアという国がやはり福祉先進国でありますから、そういう意味で発展途上国では、日本、オーストラリアの福祉に追いつけという気運が大変盛り上がっております。  そこで、リハビリテーションに関してアジア・太平洋地域内で、既存の施設も新しいプロジェクトも含めて相互情報を交換して、そしてさらに交流研修をつなげていくというソフトな事業を内容とするネットワークプログラムを始めてはどうかと、こういうことを私は提案したいと思っております。それにはESCAPとかあるいはILOとか、そういう国際機関と各国政府、あるいはそれに民間団体の協力が必要であると思うんですけれども、むしろこの辺は日本が音頭をとって、そういうネットワークの形成を呼びかけてほしいと思うんでありますけれども、特にそういう部分における外務省の腰はなかなか重いのではないかという気がしてなりません。つまり、リハビリテーションの分野は対象となる人々が多種多様でありまして、発展途上国にとって各国ごとに多様な対応の点で一から始めていくのは大変でございます。それをアジア・太平洋全体として」見るならば、多様な幅の広い経験と実績を積み上げていくことが可能になっていくと思うんですね。それをネットワークで結びつけて、地域全体でその成果を共有できるようにしていくことができれば、この波及効果というのは、形をつくる経済外交とは違った、あるいは福祉外交とは違った波及効果ははかり知れないほど大きなものがあるのじゃないかという気がするんですけれども、そういうネットワークづくりを日本が呼びかけていくという私の提案に対して、大臣はどのようにお考えになりますか。
  291. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 確かに豪州は福祉では先進国であるというふうに聞いております。日本としても学ぶ点が相当多くあるんじゃないか、こういうふうに思うわけでございまして、日本としても勉強しながら、御指摘の点を十分考えながら、緊密な友好協力関係も踏まえてこれからひとつ関係省庁にも連絡しながら勉強さしていただきたいと思います。
  292. 前島英三郎

    前島英三郎君 リハビリテーションネットワークの形成については、ここ数年あちこちからいろんな期待と模索が行われておりますので、ぜひ外務省がそういう意味でのイニシアチブをとっていただいて、宿題として何とか実現できる道を考えていただきたいと思うんです。そういう意味では、先ほどの立木委員の話じゃありませんが、誤解されるような経済援助がかなり莫大に行われていますけれども、NGOに対する援助が弱いというふうないろんな声もあるようでありますから、この辺も、政府一つの看板的な立場でないと援助しないということではなくて、その国のいろんな人たちが、その国が要求しているものがありますから、そういう意味でもNGOに対する援助にこれからは外務省も力を入れていただきたいと思うんですが、その辺はいかがでございますか。
  293. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 経済協力をより効果的に行っていくためには、政府ベースの開発援助だけでなくて、経済協力に従事しているいわゆるNGOの活動の一層の活発化を図ることがもちろん重要であると考えております。こうした観点政府は、例えば昭和五十七年では約六十九・三億円の補助金をNGOに対して支出をしておりまして、今後とも財政状況等を勘案しながら可能な協力があればこれを行っていきたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  294. 前島英三郎

    前島英三郎君 そこで角度を変えて伺うのですけれども外務大臣はことしオーストラリアを訪問する予定でございますか。
  295. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) まだこれは考えておりません。計画は直接しておりません。
  296. 前島英三郎

    前島英三郎君 総理大臣は、七月か八月の外交日程にあるというようなことを伺っておりますが、その辺はいかがですか。
  297. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) これは豪州のホーク首相が日本に来まして、招待を受けているということで検討はしていると思いますが、まだ決まった状況にはないと思います。
  298. 前島英三郎

    前島英三郎君 私は約一カ月前にオーストラリアを訪問いたしまして、実は今いろいろ前段で申し上げてまいりましたが、これは障害者インターナショナル、略してDPIという障害者自身による国際連帯組織が一九八一年にシンガポールで結成されまして、国連の長期行動計画の討議にはNGОの一つとして参加しているわけなんですね。DPIのアジア・太平洋ブロック会議をこの秋にオーストラリアで開催することになっております。これは初めてのアジア・太平洋のDPIの会議になるわけで、その打ち合わせのためにホーク首相以下いろいろな――連邦政府ですから各州知事などにお目にかかっていろいろ御協力をお願いして回ってまいりました。オーストラリア政府あるいは各州も大変積極的に協力援助の姿勢を示しておりまして、この辺がちょっと日本外務省と違うのか、あるいはオーストラリアは日本の国土より二十倍大きいから、心もまさしく二十倍位あるんじゃないかと思いました。  例えば、南オーストラリア州のアデレードというところで初めての会議が開かれるのですが、それについてホーク首相は、私は出席できないけれども女房は必ず出席させる、そして南オーストラリア州に援助の電話を私はすぐすると。南オーストラリア州へ行きますと、ホーク首相も大変心配しておられる、南オーストラリア州政府は十万ドルを発展途上国の障害者をお呼びするために拠出をする、こういうような形で、NGOの一団体にすぎないオーストラリアのDPIの人たちのそういう意気込みに対して、州政府あるいは国が積極的に協力をしている姿勢を見て大変驚いたわけであります。もし総理と外務大臣同行でオーストラリアにいらっしゃるのであれば、この際はDPIの認識を外務大臣にしっかりと持っていっていただいて、そうしたことにぜひおこたえをいただきたいというふうにも思うのです。そういう意味でも、オーストラリアと日本は両国の友好親善を深めるばかりではなくて、アジア・太平洋地域全体のために両国に期待される役割というものは極めて大きいものがあると考えておるわけで、そういう意味でもネットワークづくりということが大変重要である。オーストラリアのその部分を私たちも大いに見習わなけれぱならないというようにも思うわけですけれども、しかし一方経済的な分野では、日本がくしゃみをすればオーストラリアは風邪を引くというようなそういう両国間の関係もあるわけですから、日本はやはりオーストラリアと一緒にそうした意味では責任を果たしていく、特に福祉外交の面での責任を果たしていただきたいというように思います。  私自身実はDPIに直接関与しておりまして、日本政府にDPIを支援してくれるように要請いたしますのは何となく我田引水で、私がアジア・太平洋地域の初代の議長をしているものですから大変言いにくいわけでありますが、しかし私は、アジア・太平洋地域全体で障害者自身がそれぞれの国の中で日立して連帯して、それから積極的に発言していけるというDPIの目的を考えたときには、援助、協力のソフト化という先ほどの指摘の延長線上でやはり前向きに取り組んでいただきたいということを強く申し上げたいわけです。ぜひ外務大臣の御理解をお願いしておきたいと思います。  もう一言つけ加えさしていただくとするならば、先ほど申し上げましたリハビリテーションネットワークを何とかして実現さしていただきたいのでありますけれども、その際、いわゆる専門家にすべてゆだねるのは私は間違いだというふうにも思っております。やはり、車いすは車いすの立場であるとその施策についてもいい提言ができるんです。目の見えない人は視力障害という立場からいろいろなものが見えている部分がありますから、こうしたことがこれからのネットワークづくりでは大変重要になっていくんではないかというような気がいたします。そうした面でもDPIはふさわしい役割を担うことができるであろうという自信を持って私たちも世界連帯をつくり、そして国連でもある程度認知にこぎつけ、そして今、長期十カ年の行動計画の中でも我々の当事者の提言をいろいろ出している状況でございますので、その辺も含めて今後そのDPIの一つの連帯、あるいはDPIがそのリハビリテーションネットワークに対する力強い協力を惜しまないという私たちの願いをも含めてお答えをいただければと思いますが、いかがでしょうか。
  299. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 今DPIにつきまして詳細のお話を承りまして大変ありがとうございました。外務省としてどういう御協力ができるか、十分検討をさしていただきたいと思います。この大会がぜひともひとつ成功をされることを祈っております。また、東京でおやりになることもあると思いますし、いずれにしても外務省としての協力については十分検討させてもらいます。
  300. 前島英三郎

    前島英三郎君 そういう意味では、やはりアジア・太平洋において日本はいろいろな分野で責任を果たしていただきたい、その窓口にぜひ外務省にもお力添えをいただきたいということを最後に申し上げておきたいと思います。  例えば中国に病院ができる、これも二国間の中で大変すばらしい一つのイベントだろうと思いますね。日本の一番近い外国といいますと、そういう意味では韓国になりますし、やはりリハビリテーションと福祉の分野における日韓両国の交流関係というのもこれは大変重要だというふうに思うんです。  実は私は一九八一年に韓国を訪問いたしまして、そのとき初めて韓国で福祉法が誕生したという意味ではかなりまた日本とは福祉についての差があるようにも思いました。当時、韓国の民間の福祉事業をやっておられる方からいろいろ協力の要請を私自身も受けたのです。私としては、日韓の政府協力でリハビリテーションセンターをつくることができないかという構想も考え、彼らに訪韓しまして述べたんですけれども、やっぱり日韓の協力関係ではプライオリティーの問題が何か障壁になりましてまだ実現まではできてない。いろいろ紆余曲折があるんですけれども、しかし今日では両国の関係も大変いい方向に落ちついてきているようでありますし、何とかリハビリテーションや福祉の分野で協力関係を推進していただきたいと私は思っております。殊に私が思いますのは、一九八八年ソウルオリンピックに合わせてパラリンピックが韓国が開催されるということのようであります。実は日本も、昭和三十九年東京オリンピックのときに福祉が大きく進展をしていくきっかけづくりになったんですね。障害者自身が、今まで依存していた者がみずからグラウンドに出てマラソンをしたり、バスケットをしたり、あるいは水泳をしたり、そういう強さというものがこういう一つのステップとしてこうした催しの中に出てくるわけでありますから、これらへの有形無形の協力ということを軸にぜひ日韓相互で展開していくことが必要ではないかということでございますので、ぜひ厚生省等ともこれからは外務省は相談し合って韓国側とこのあたりの協議をしてみていただきたい。そういう形で日本は二国間協力でできる部分もまた今までに引き続いて――タイでリハビリテーションセンターができる、あるいは中国でそうした病院ができる、あるいは韓国にそうしたまたリハビリテーションセンターができて、そこにまた人的交流が活発に行われていく。そして、経済外交は経済外交として日本の今までの継続の中で、特に弱者の問題も日本は決して忘れてはいないんだと、エコノミックアニマルなどというのはとんでもないというふうな、陰の部分でのそうした力をぜひこれからの外交姿勢の中に強くお願いをし、もしお答えをいただければそのお答えをいただきまして、私のきょうの質問を終わりたいと思います。
  301. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 我が国は、韓国における福祉の向上に資するために政府レベルで福祉、リハビリの分野で研修員の受け入れといった方法によりまして協力してきておるわけです。今後とも韓国政府からの要諦に応じて本件分野で積極的に協力していくこととしたいと存じております。
  302. 前島英三郎

    前島英三郎君 どうもありがとうございました。
  303. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) これをもって昭和五十九年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、外務省所管についての委嘱審査は終了いたしました。  なお、委嘱審査報告書の作成に、つきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  304. 後藤正夫

    委員長後藤正夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時六分散会      ―――――・―――――