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1984-06-27 第101回国会 参議院 外交・総合安全保障に関する調査特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十九年六月二十七日(水曜日)    午後一時十一分開会     —————————————    委員異動  六月二十六日     辞任         補欠選任      柳澤 錬造君     伊藤 郁男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         植木 光教君     理 事                 大坪健一郎君                 堀江 正夫君                 佐藤 三吾君                 黒柳  明君                 上田耕一郎君                 関  嘉彦君     委 員                 安孫子藤吉君                 石井 一二君                 大鷹 淑子君                 倉田 寛之君                 源田  実君                 佐藤栄佐久君                 曽根田郁夫君                 鳩山威一郎君                 宮澤  弘君                 梶原 敬義君                 久保田真苗君                 和田 静夫君                 中西 珠子君                 和田 教美君                 立木  洋君                 伊藤 郁男君                 秦   豊君    政府委員        資源エネルギー        庁石油部長    松尾 邦彦君        運輸大臣官房総        務審議官     西村 康雄君    事務局側        常任委員会専門        長        山本 義彰君    説明員        農林水産大臣官        房企画室長    吉國  隆君        資源エネルギー        庁長官官房エネ        ルギー企画官   井田  敏君        資源エネルギー        庁長官官房鉱業        課長       高木 俊毅君    参考人         慶應義塾大学教        授        深海 博明君        食糧農業政策        研究センター副        理事長      並木 正吉君        元三井金属鉱業        株式会社社長   尾本 信平君        日本経済新聞論        説委員      末次 克彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○外交総合安全保障に関する調査  (資源エネルギー食料問題に関する件)     —————————————
  2. 植木光教

    委員長植木光教君) ただいまから外交総合安全保障に関する調査特別委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  昨二十六日、柳澤錬造君が委員を辞任され、その補欠として伊藤郁男我が選任されました。     —————————————
  3. 植木光教

    委員長植木光教君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  外交総合安全保障に関する調査のため、本日参考人として慶應義塾大学教授深海博明明食料農業政策研究センター理事長並木正吉君、元三井金属鉱業株式会社社長屋本信平君、日本経済新聞論説委員末次克彦君、以上四名の方々出席を求め、意見を聴取することに御異議ごさいませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 植木光教

    委員長植木光教君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 植木光教

    委員長植木光教君) 外交総合安全保障に関する調査を議題とし、資源エネルギー食料問題について参考人から意見を聴取いたします。  この際、参考人皆様に一音ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席いただきましてまことにありがとうございます。本日は、資源エネルギー食料問題につきまして参考人皆様方から忌憚のない御意見を拝聴し、今後の調査参考にいたしたいと存じます。  これより参考人方々に御意見をお述べ願うのでございますが、議事の進め方といたしまして、まず最初に参考人の方から御意見をお述べいただき、その後委員の質疑にお答えいただく方法で進めてまいりたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  それでは、まず深海参考人にお願いいたします。
  6. 深海博明

    参考人深海博明君) ただいま御紹介いただきました深海でございます。座って発言させていただきます。  私に与えられましたテーマは資源エネルギー食料問題、後ほど三人の参考人の先生から詳しい御報告があるわけでございますけれども、むしろ総論的な話をしてほしいということでございますので、私は大体次の四点に問題を絞ってお話をしてみたいと思います。  まず第一は、現在の資源エネルギー食料問題をどういうふうに考えたらいいのかという若干過去のいきさつも関連さした上で、現在一部では資源エネルギー問題につきまして、食糧問題は別個でございますけれども、非常に供給過剰で楽観的な状況だというような話がございますので、それをどういうふうに考えたらいいのかという現状認識の問題を申し上げさしていただきたいと思います。  第一点は、こういう資源エネルギー食料問題を考える場合の基本的な視点ないしは総合的な判断必要性といういわばそういう問題について御報告をしてみたい。  第三番目は、資源エネルギー食料問題についての対応策を考えていくとした場合に、考え方としてあるいは考え方進め方としてまず具体的にそういう政策の目標をどういうふうに設定し、どういう形で問題なり危機が起こる可能性があるのか、そしてどういうふうにそれに対応していったらいいのかという、そういう意味でのいわばこの問題論議考え方の展開ないしは進め方の問題について申し上げ、そして最後に若干私なりにここで御示唆いたしたいというような点についても時間があれば触れてみたいと思う次第でございます。  そこで、早速本題に入らしていただきまして、このエネルギー資源食料問題というのが日本ではどういうふうな形で議論されてきて、現在の状況をどういうふうに見たらいいのかということについての私の判断を簡単に申し上げてみたいと思います。  第二次大戦までの状況は省略さしていただきまして、第二次大戦後現在までの動きをごく簡単に要約してみますと、第二次大戦後はいわばエネルギー資源食料という問題につきまして、各資源別に問題の所在は違いますけれども、あるいは展開方は違いますけれども、全般的には一九六〇年代後半まではむしろ自由な貿易によって海外から単純に輸入してくればいいのではないかというそういう形でのアプローチがされてきたのではなかろうかと思うわけでございます。  一九六七年十二月号の「中央公論」の誌上に、前の外務大臣であった大来佐武郎博士が、資源輸入国日本を自覚せよというそういう警鐘的な論文を書かれまして、日本のいわば生存あるいは経済運営に基本的にかかわるこれらの資源が多量に輸入に依存している。しかも、この国際的な資源情勢というのは非常に逼迫化あるいは不安化のおそれがあるんだという形で、むしろここにございます資源エネルギー食料問題が取り上げられるようになってきたわけでございまして、そういう形で一九六〇年代末、七〇年代初めぐらいから政府もあるいは経済界もあるいは学界でもこういう問題論議がされてきたわけでございます。それを現実的に実証すると言い立てられているような形で一九七〇年代に入りますと、例の有名なローマ・クラブの「成長の限界」というような形で、資源枯渇あるいは食糧不足、あるいはエネルギー危機が差し迫っているというようなそういう議論が行われますと同時に、現実的にも皆様方が御存じのように、七二年にはいわゆる食糧危機が、そして七三年十月には第一次石油危機、そして七八年末から七九年にかけて第二次石油危機というような形で、いわば一九七〇年代はこういう問題の一番の焦点となるようないろいろな危機が取りざたされたわけでございまして、この問題の重要性というのがいろいろな形で議論されてきたわけでございます。ところが、一九八〇年代に入ってまいりますと、むしろ目先のというか現在の状況を見た場合には、食糧についてはちょっと除きますと、いわゆるここで言う資源エネルギーというようなものにつきましては、どちらかといえば供給過剰、あるいは特に石油問題について見ればおわかりのように、今まで上がり続けると言われていた石油価格もその石油価格決定権を握っていたOPECは去年一九八三年三月には標準原油のアラビアン・ライトで見ますと一バレル、百五十九リットルですけれども、三十四ドルから二十九ドルへ値下げをする。そしてまた、最近イラン・イラク戦争の激化によりましてホルムズ海峡でそういう封鎖の危機、あるいはタンカーが攻撃されるというような危機になっても、いわば第三次石油危機というようなことも起こらず、これはいろいろ問題が残されていることは事実でございますけれども、あるいはスポット価格等々を見ましてもそれほど危機的な状況ではない。そういうふうに考えてみますと、目先現状を見てみますと、割合に一般には楽観論が支配的となっておりまして、むしろエネルギー資源というような問題につきましては、どちらかといいますと関心が薄れてきている、あるいは問題がなおざり視されているというような現状があるように思われるわけでございますが、私は今のような状況をどういうふうに見たらいいんだろうかということがここでの問題論議の基礎になるのではないかというふうに思っているわけでございます。  そこで、細かななぜ現在のような状況が生み出されたのかというような意味での要因分析等々、本当は申し上げた方がいいのでございますけれども、時間の関係がございますので、むしろ現在の状況及び今後をどういうふうに見たらいいのかというそれについてだけ、私は簡単に現状判断についての大胆な意見を申し上げてみたいと思うわけでございます。  エネルギー資源問題について見る場合に、一九七〇年代の現実展開の過程を通じて基本的に変わった面があるということは確かでございますけれども、同時に変わっていない面、私なりの言い方をさしていただきますと、いわば十年一日のように、やはり依然としてエネルギー資源食料問題というものの重大性は変わっていない面と、それから十年一昔と言われておりますように、確かに大きな変化が見られている面というのが、両方現在存在しているのではないかというふうに思われるわけでございまして、そういうことを考えてみますと、それらを総合的に判断されて、一体今後どうなるのかということをここでもまた議論される必要性があるのではないかというふうに思うわけでございます。  そこで、変わった点をまずお話ししてみたいと思うんでございますが、それは世界全体、あるいは北側の先進国、あるいは日本というもののやはり経済成長率自体がかなり変わってきつつあるのではないかということが一つポイントでございます。これは第一次石油危機までは日本経済成長率は一〇%を超えるあるいは一〇%程度、それが七〇年代には約半分の五%程度、そして、最近また立ち直りの兆しが見られておりますけれども、八〇年代に入っては五%に満たない成長率である。世界的に見ましても、世界全体の成長率もまた七三年の第一次石油危機までと第一次危機後、それから一九八〇年代に入ってという形でかなり成長率変化が見られるのではなかろうか。確かに現在の状況よりも高い成長率潜在成長率その他を見れば高い成長率が達成される可能性はあるとは思いますけれども、しかし過去の世界経済全体としての五%を超える成長、あるいは日本経済としての一〇%の成長率というようなことは、今後は余り起こりそうもないのではなかろうか。すなわち、経済成長率が変わりつつあるということは、やはりこれは資源需要あるいは資源情勢について大きな変化をもたらす一つの要因ではなかろうか。  それから第二の点は、やはり経済構造産業構造というのがかなり変わってきつつあるのではなかろうか。いわば経済ソフト化サービス化、高付加価値化等々というような形で変わりつつある。ただし、このことはだからといってエネルギー産業資源産業等々の重要性がなくなったというわけではなくて、総体的に考えてみますと、そういう経済構造産業構造の転換等々がやはり顕著に進展してきている。この面からも、やはり資源需要エネルギー需要についての大きな変化が見られるのではなかろうか。  それから第三番目は、節約、有効利用というような形がかなり徹底した形で行われてきておりますから、経済成長率に伴って必要となる資源エネルギーの量というものについては、従来ほど一対一あるいは経済成長率を上回るような形で伸びていくというようなことはどうもありそうもない。ちょっとジャーナリスティックな言葉を使って恐縮ですけれども、例えば従来、重厚長大型のものから、軽薄短小がいいかどうかということは別ですけれども、そういうような形で技術体系やその他も変わろうとしているわけでございまして、こういう点から見ますと、従来と違った現象が出つつあるということは確かに思えるわけでございます。  ところが、そうは言っても変わっていない面というのがあるわけでございまして、それは経済成長率が一〇%から落ち込んできたといっても、今後ずっとゼロ成長を続けるというようなことはとてもありそうもない。それから第二番目といたしまして、非常に重要なのは、この委員会外交というふうに題されておりますので特に申し上げたいと思うんでございますが、今のような形で非常に省エネが進み、あるいはそういう産業構造の転換が起こっておりますのは、実は西側の先進国特有現象でございまして、南側の発展途上国におきましては、実は経済成長エネルギー消費あるいは資源消費との間のリンクはまだ明確にございまして、非常に需要消費が伸びている。それから、東側のいわばソ連、東欧あるいは中国といったような社会主義諸国を見ましても、そういう現象は見られていない。したがいまして、世界経済が全体として立ち直ってまいりますと、世界的な意味では需給の逼迫する可能性というのは十分にあり得るのではなかろうか。  それから、石油エネルギー問題になりますと、現在いわば石油が余っている、あるいはエネルギーが余っている、こういうことでございますから、脱石油やあるいは脱OPECが完成したかのように考えられがちでございますけれども、日本で見ましてもやはり石油への依存度というのは六割を超えているわけでございまして、世界全体でもエネルギー消費石油への依存度は四割を超えている。したがって、脱石油が達成されておりませんし、これは後の末次さんから詳しいお話があると思いますけれども、脱OPECあるいは脱ホルムズ海峡あるいは脱中東ということを見てみましても、日本は他の欧米先進国と比べてみまして圧倒的にそういう状態が強い。  それから、最後にもう一つ申し添えたいことは、現在楽観的な情勢になってきておりまして、価格低下あるいは景気回復の見通しが強まっている。そういう状況でございますと、今まで進められてきました省石油、省エネルギーといったような、あるいは省資源といったような動きに対して逆効果をもたらす、あるいは景気回復が軌道に乗ってくるといたしますと、日本や、あるいは先進国の間でも需要が伸びる可能性がある。したがいまして、そういうふうに考えてみますと、私が申し上げたいのは、現在一時的な形で楽観的な情勢が存在していますけれども、その内容をよく分析してみますと、確かに変わった面もありますけれども、変わっていない、特に日本という立場から考えてみますと、この問題をなお重視して取り上げていかなければならないいろいろな側面が見られるわけでございまして、そういった面で考えてみますと、現在の目先楽観論に惑わされないで、もう少し突っ込んだ議論をする形でこの問題の重要性を認識された上で対応策を考えていただきたいというのが第一の点でございます。  そこで、第二の問題に入らしていただきまして、それでは総論といたしまして、資源エネルギー食料問題というのをどういうふうに考えていったらいいのかということでございまして、一つはいわば基本的な問題視点あるいは総合的な判断、評価をめぐっての問題を申し上げたいと思います。  非常に総論的になりがちで、私は大学におりますので、抽象論になることをできるだけ避けたいというふうに思っているんでございますが、私が申したい点は、こういう問題を資源エネルギー食料というようなものを別個に、そしてまた個々に議論される前に、総論という立場がございますけれども、総合的に判断、評価をする、そういう視点をお持ちになったらいいのではないかということを私は申し上げたいわけでございます。そこで、申し上げたいポイントといたしまして、私は五つの点をここでは指摘いたしたいと思うわけでございます。  第一は、時間的な範囲という問題が非常に重要ではないかというふうに思うわけでございます。この問題論議ですと、多くの議論というのはいわば短期的な形で、ホルムズ海峡でいろいろな問題が起こって例えば石油供給が六割削減された、あるいは油断というような現象が起こったらどうかというようなかなり短期的な問題論議というのに中心が置かれておりますけれども、今のような意味で究極的にはやはり今後資源石油エネルギー需給というようなものが適道化の方向に向かうかもしれないというようなことを考えてみますと、いわゆる異常事態緊急事態という短期的な問題への対応というよりは、中長期あるいは超長期的な形で、例えば日本エネルギー供給やそういうものをもっと安定的にするにはどうしたらいいのか、そうすると石油から代替新エネルギーへの転換をどういうふうにしていったらいいのか、あるいはそういう長期的な意味での省エネをどうするのか。そうなりますと、今のような意味でいいますと、短期的ないわば異常事態緊急事態への対応策だけではなくて、中長期あるいは超長期的に抜本的に、エネルギー問題の解決になると言われておりますようなそういう例えば核融合の問題であるとか、あるいは再生新エネルギーだとか、そういう問題を考えてみますと、それらが実現されるまでの時間、これをリードタイム懐妊期間というふうに言われておりますけれども、それがますます長期化しているような状態が続いているわけでございまして、そういうふうに考えてみますと、時間的な意味でも短期、中期、長期、超長期というようなものを総合化する形、しかもそういう長くなったリードタイム懐妊期間をどういうふうに判断して現状対応策をとるのか。例えば今着手しても三十年ぐらいたたないとその成果があらわれてこないというような、そういう問題もかなり資源その他では出てきているわけでございますので、そういう点をどう考えたらいいのか。  それから次は、空間的あるいは地域的な範囲の問題でございまして、日本というものが非常に重要であることは当然ではございますけれども、やはり世界全体としてこの資源エネルギー食料問題の解決を図り、その中で日本の問題を考えるというようなそういう発想が要るかと思いますし、それから後で非鉄金属あるいは特にレアメタルなんという問題が出ましたときの問題、あるいは食糧問題につきましても、やはり東側の例えばソ連というのは、そういういわゆる資源については潜在的に非常に供給能力を、あるいは資源能力を持っておりますですね。それから、今や食糧巨大輸入国になっているという、こういう状態を考えてみますと、やはり東側との関連なしにこの問題は処理できませんし、あるいは食糧問題あるいはエネルギー問題等々というのを考える場合にも、やはり私は非常に重要だと思いますのは、日本が直接食糧輸入あるいはその確保という問題を考えるだけではなくて、例えば南側のアジアやアフリカやその他の国々で食糧自給化やあるいはエネルギー国内資源の開発が進めば、それが迂回的ではあっても日本のいわば食糧あるいは資源エネルギー確保につながってくるという、そういう発想が要るのではなかろうか。  それからもう一つ非常に重要なのは、先進国とのかかわり合いの問題でございまして、総論という形で私が申し上げたい点は何かと申しますと、石油についてはこれは圧倒的にOPECに代表されます南側の発展途上国が主要な供給源ではございますけれども、食糧ないしは石炭あるいは資源といういわば非鉄金属鉄鉱石あるいはその他を含めて工業原材料というようなものを考えてみますと、むしろ主要な供給国は実は北側先進国であるという、そういう事実を考えてみますと、いわばそういう意味でいいますと地域的な範囲でも総合的に考えていく必要性があるのではないかというふうに思われるわけでございます。  それから第三の判断、総合的に考えるということは、きょう私ここで総論を申し上げますので、資源範囲と申しますか、資源エネルギー食料というのを別個に考えるということは非常に難しいのではないかという、いわばその連動性相互作用性を考える必要性があるということを申し上げたいと思うわけでございます。例えば、ちょっと例は悪いかもしれませんけれども、米は一〇〇%自給されている、だから最悪の事態の場合にお米と野菜ぐらい食べれば生きていけるかもしれない、こういう話が出ているわけでございますが、現在これはちょっと古い統計データ、一九七五年の産業連関表を使っての計算結果でございますけれども、米一キログラムの生産だけで石油換算で二百三十cc、〇・二三リットルの石油が要る。今のような耕作方法をとっている限り、実は食糧エネルギーというのは非常に連動しているという、こういう関連性がある。したがって、石油が全然来なくなってエネルギー不足というような状態が起これば食糧生産にも非常に大きな打撃を受けるかもしれない。  あるいは後で尾本参考人から話があると思うんでございますが、鉱物資源、特にレアメタルという希少金属というものとエネルギーとの関連をちょっと例として挙げさしていただきますと、原子力開発がこれは純国産エネルギーであって、非常に原子力をやることはいわばそういう資源エネルギー、一時にエネルギー問題の解消に役立つということでございますけれども、原子炉をつくろうと思いましても、原子炉材として例えばレアメタルのジルコニウムというようなものがないと素材としていわば原子力に制約が出てくるというような意味で、したがいまして食糧エネルギーあるいはエネルギーとそれから資源というようなものが密接に関連している。そういう意味で言いますと、全体としてそれを考えていく必要がございますし、むしろ今の問題関心エネルギー食糧に移りがちでございますけれども、また尾本参考人からそういう話があると思うんでございますが、今、日本最先端技術産業をどんどん伸ばしていこう。例えばICとかLSIとか超LSIとかそういうようなものを、あるいはそういう最先端技術産業を伸ばしていくというような場合には、これは高純度のシリコンを初めむしろそういうレアメタルと言われているようなものが必要不可欠なものというふうに考えられているわけでございまして、そういう問題をやはりここでは総合的にお考えいただく必要性があるのではないかというふうに思うわけでございます。  それから、実はもっとたくさん申し上げようと思っていたのですが、時間の関係がございますのでもう一点、私はこういう問題を考える場合の担い手のレベルということを皆さん方に申し上げたいと思うわけでございます。これはもちろん総合的に判断をしろというようなことを申し上げたので、例えば世界的に言えば国連等々の機関あるいは先進国でのIEAとかいうそういう機関はございますけれども、ここでは日本としてこういう問題を考える場合にどういう形で各担い手が分担してこの問題の処理を図るかということが私は非常に重要ではないかというふうに思うわけでございます。これは一般にはこういう資源エネルギー食料というのは主として国がやるべき問題だという意見もございますけれども、私は国とそれから経済界、産業界あるいは生産者とがどういうふうに分担をし合うのかということが一つの問題だと思いますと同時に、私は忘れられてならないもう一つの当事者あるいは担い手というのは消費者あるいは一般国民というレベルが非常に重要なものではなかろうか。要するに消費者や一般国民は国やあるいは産業界、経済界に対してこういう問題についての配慮を要求するだけではなく、私は個人的には食糧だとかあるいはエネルギー等々の、後でちょっと対応策一つとして触れたいと思いますが、例えば備蓄手段だとかそういうようなものを考える場合に、政府や産業界が備蓄をするだけではなくて、食糧その他であれば、これは一部分は個々人が家庭レベルで備蓄なりそういうものを図るというような政策手段もコスト・ベネフィットみたいなところから考えてみますとかなり重要性を持っているのではないかというようなことも考えているわけでございまして、そういう点でいいますと、私は総論ということだったものですから、その個々の資源別の前にそういう資源間の関連、代替補完関係あるいは時間的、空間的な形でやはり大きな形で問題を設定して考える必要性があるのではないかということを申し上げたわけでございます。  次に第三の問題に入らしていただきまして、それではこの問題論議をどういう形で進めていき、対応策をどのように考えていったらいいのかということについて時間がもうございませんので大胆に私なりの見解を申し上げさしていただきたいと思うわけでございます。  そこでまず、私は三つの段階を追って議論を進めていく、あるいは考えを進めていく必要性があるのではないかと思われてならないわけでございます。  第一は、一体ここで論議してまいりました資源エネルギー食料問題という場合に、それを取り上げる政策の基本目標というのはどういうものなのだろうかということを考えてみる必要性があるのではなかろうか。特にこの目標設定の場合にどうも危機危機ということばかりが論議されておりまして、有事あるいは緊急事態ということに重点が置かれ過ぎているのではないか。それは重要でないというわけではなくて、私はやはり問題は二つございまして、緊急事態、有事に至らない前の平常時、あるいはそういうある程度攪乱的な要素があってもいわば緊急事態にならない平時及びそういった状態と、それから有事あるいは緊急事態というのに分けて、そしてまた目標を設定し、それに応ずる対応策をとっていく必要性があるのではなかろうか。すなわち、この点で申し上げたいのは、やはり平常時というか、平時における政策目標というのは必要な資源をできるだけ総体的に安く、しかも安定的に確保するにはどうしたらいいのか、こういうことだと思いますし、それから有事あるいは緊急事態危機が起こった段階では、そういう事態が生じたにもかかわらず、日本人の生存をどういうふうに確保するのか、あるいはある程度のいわば生活水準あるいは経済活動を維持するにはどうしたらいいのかというような意味で、目標設定そのものも緊急事態とそれから平時あるいはいろいろな混乱事態が起こったとしても一応平常時と言われるものとに分けてやっぱりその政策目標を設定し、その両方に対しての対応策を考えていく必要性があるのではないかというふうに思われてならないわけでございます。  そこで、私一つだけここで申し上げたい点は、必要な資源というものの設定、あるいはそれをする場合に非常に重要なことは何かと申しますと、むしろ必要量というものが与えられていて、それに対してどういうふうに需要を合わせようとするのかという議論が、これはまあ需給合わせというふうに私はいつも呼んでいるんですが、そういう議論が割合に行われがちである。むしろ必要な資源量、これは食糧エネルギーも含めてですけれども、これをどういうものが決めてくるのかというようなことを考えてみる必要性がある。例えば食糧については、後で並木参考人から話があると思いますけれども、日本人の今の食生活の水準というのは、生理的な最適水準に近い、日本型いわば食生活の水準というふうに言い立てられているものでございまして、そういうものを考えてみますと、飽食しないような意味で、生理的な最適水準を維持するような意味での目標設定というふうなものも、食糧については需要水準としてはあり得るかもしれませんし、それから経済成長率をどれぐらい見込むのか、そしてまたその中で産業構造、あるいは生活パターンがどういうふうに設定するのかという、そういう問題も含めた形で必要資源を検討してみる必要性もございますし、それをできるだけ安価に、安定的に確保しようという場合に、いわばコストが安く経済性であるということと、それから安定的に確保するというのが両立し得るのかどうかということが一つポイントになるのではなかろうか。これが両立すれば非常に望ましいわけではございますけれども、むしろ多くの場合は、これは両者は相互に矛盾する可能性がある、トレードオフの関係。すなわち、安全性という意味から言うと、自給率を高めれば高まるほど、一応外国、対外的な要因による影響は受けないというわけでございますけれども、自給率がなぜ下がってきたのかということは、やはり国内で自給できないという絶対的な面もございますけれども、相対的、あるいはコスト面から考えてみて、外国から買うことが安いから輸入してきた。そういう結果がやはり生活水準あるいは経済成長率を非常に高めてきたという面があるわけでございまして、そういうことを考えてみますと、その目標における相互矛盾の可能性あるいは両立の可能性を考慮して目標設定をしてみる必要性があるのではないかということでございます。  その次に、そういう目標設定をした場合に、今度はその目標設定が、あるいはどういう要因によって危機や問題が起こるのか、いわばどういう脅威なり、あるいはどういう要因によってそういうものがもたらされるのか、しかもそういう脅威や要因や危機というのが一体どれくらいの確率で存在するのか。この点は各ケースについて後で御説明があるかとも思うんですけれども、いわばそういう意味で私はどうもこの問題の論議の一つの欠陥はどこにあるかというと、最悪の事態というのがアプリオリに設定され過ぎているのではないかというふうに思われてならないわけでございます。これはどういうのかというと、食糧輸入ゼロの日というような形で、例えば食糧輸入が全面的に途絶して、これが一年間続いたらどうなるかとか、そういうことなんですが、それだけではなくて、今言いました中長期的な問題をも含めてどういう問題、危機がどれくらいの頻度で起こり得るのか。  それから、私が最後に強調したい点はどういうのかと申しますと、そういう危機や脅威があった場合に、一体それはどれぐらいのコストをかけると対応できるのか、こういうことでございまして、例えば一〇〇%食糧を自給しようという政策を考えた場合に、それに要する土地面積は現在の日本の耕地面積の二、三倍のレベルに達する、しかもそのための費用はどうなのか。あるいはエネルギーにつきましても、その他につきましても、そういうふうに考えてみますと、現実的な可能性と、それからコスト・ベネフィットというような、そういう問題を考慮して考えていく必要性があるのではないかというふうに思われてならないわけでございます。  あと、最後に一言二言、私、自分なりに、こういう問題論議皆様方がお考えになる場合に重要な政策手段あるいは政策の前提として申し上げたい点が一、二ございますので、それをつけ加えまして結びといたします。  こういう問題を考える一つの前提といたしましてやはり私がここで申し上げたい点は、二つのソフト面でのまあ前提整理というか、そういう問題をここでぜひお考えいただけないかということでございます。一つは、やはり資源エネルギー食料問題をこういう形で議論するためには、それらが一体世界日本、どういう状態にあるのかというふうな意味での情報の収集処理のいわばシステムがもっとうまく完成されておりますといいのではないか。これは、情報が不足しているという面もございますけれども、その情報を処理して政府なりあるいは国民に的確な伝達あるいは処理して伝えるシステムというようなものがあり得るのかどうかということが一つでございまして、それから第二は、先ほど担い手のレベルとして一般の国民の重要性というのを私は申し上げたんでございますが、そのような意味で言いますと、やはり政府と、あるいは国と一般国民との間の信頼関係というか、そういうものが確保されているというのが重要なポイントになるのではなかろうかというふうに思うわけでございますし、それからもう一つは、できるだけいわばこういう問題所在やその他が国民にPRされて、国民自身がそういう認識を持って自分なりにも対応しようというような姿勢を持つようなことが重要ではなかろうかというふうに思っているわけでございます。  時間がなくて、大変急いだ議論をいたしまして、まさに総論のイントロダクションで終わってしまいましたけれども、与えられた時間が参りましたので、これをもって一応結びといたします。
  7. 植木光教

    委員長植木光教君) ありがとうございました。  次に、並木参考人にお願いいたします。
  8. 並木正吉

    参考人並木正吉君) 並木でございます。座ったままやらしていただきます。  今、深海先生から総論的に非常に示唆的なお話がございました。で、その中で、危機的な状態とそれから平時の状態を両方考える必要があるという趣旨の御説明がございましたが、私がきょうここで申し上げたい第一点は、そのことと関係いたします。  日本の農業がふだんの状態、つまり平和が維持されている状態においてどのように国民経済の中で位置づけられ、また、どのような役割を果たしていくか、いけるかということと、まさかのときに対する貢献度、役割というものが、余り大きな変化なしにその両方の役割が果たせるという状態が私は一番いい状態だというふうに思います。そういう意味で、まさかのときに対する備えという点は、日本の農業の生産性を高めて、できるだけ生産性の高い形で国民の必要とする最低限の食糧は自給できる体制を持っていることだというふうに判断をしております。で、エネルギーとかあるいはレアメタル、特にそのレアメタルとの関係で食糧という問題を考えますときの観点の違いといいますか、その点は最初にはっきりしておく必要があるように思います。食糧は、資源として、一面において生存を図るための最も基礎的な資源であるという側面を持っておりますが、同時にといいますか、他方において再生産が可能であるという特徴を持っております。この二つの特徴を両方バランスよく考えることが私は大切だというふうに思います。で、生命の維持にとって最も基礎的だという点だけを余りにも強調いたしますと、食糧が再生産できるという特徴を見失うことになりますし、食糧が再生産できるというその性格だけ、その性質だけを強調いたしますと、一般的な製造業における生産と同じように見ることになって、これもまた問題の本質を見誤ることになると思います。  それが私の最初に申し上げたい点でございますが、そのような考え方から、食糧の安定的な確保に対してどのような考え方で接したらいいかということになりますが、私はその場合の考え方といたしましては、昭和五十七年でございますが、経済審議会の長期展望委員会から「二〇〇〇年の日本」ということで報告書が出されました。そのときに経済社会安全小委員会からも報告書が出されたわけでございますが、その中で、経済循環が外からの条件によって脅かされる場合に対してどう備えたらいいかということで、危機の予防という段階と脆弱性の克服という段階と不幸にして危機が起こった場合の危機管理の三つの段階に分けて問題を整理したことを思い出します。  その三つの段階に分けて問題を考えるというやり方を食糧に当てて、食糧との関連で申しますと、第一に、その危機的な状態が起こるのを予防するという観点から申しますと、一番大切なことは、世界全体の食糧需給関係を不足という状態にしないこと、もっと端的に言えば、発展途上国食糧増産に対してできるだけ協力をして、世界食糧事情について不足的な状態が起こらないようにすることだと思います。この点は先ほど深海先生から、国際的な視野で考える必要があるということで御指摘になった点と全く同じ考え方だと思います。それからその点について、ある程度の備蓄をしていくこととかあるいは情報を的確に持つようにするということもございますが、私はやはり、一番大事なものを一つ言えということであれば、発展途上国に対する食糧増産への協力だというふうに思います。  二番目の脆弱性の克服という点でございますが、危機的な状態が外から起こるという場合に、そういう国内の食糧生産において脆弱性がなければ危機的な状態は起こらないわけでありますから、そういう脆弱性を克服することが必要ですが、何が一番脆弱性がということになれば、食糧の自給率が極端に下がっていることだと思います。エネルギーベースに換算いたしましても大体五〇%程度でございますし、一番それを近似的に示す穀物全体としての自給率は三〇%程度でございます。こういう状況をやはり克服するということが私は大事だと思いますけれども、そのために一番大切なことは、日本の農地の中で最高の生産力を持っております水田の生産力を最高度に発揮できる状態にしておくこと、また、ふだんからそういう状態である方が私は一番脆弱性の克服に役立つ方法だというふうに思います。  それでは、水田の生産力がなぜ現在十分に発揮できないのかということになりますと、これは御案内のように、米の消費量が減ってきたということがその前提としてあるわけですけれども、その米の消費量が減ってまいりましたのは、これは昭和三十七年、一九六二年になりますか、一人当たりの米の消費量が百十八キロだったと記憶しておりますが、それをピークにいたしまして、現在は七十六キロというふうに約四十キロ減っておるわけでございますが、その理由といたしましては、畜産物と油脂の増大が米の消費を減らした相手でございます。よく小麦の消費ということが言われることがございますけれども、昭和三十七年から今日までの状況に関する限り、小麦の一人当たりの消費量は年間三十キロから三十二キロの間を上下しておりまして、ほとんど一定しておりますので、この間における米の一人当たりの消費の減少は、専ら畜産物と油脂の増大ということになります。したがって、そのような消費構造の変化に対して、水田の生産力を適応させるために最も合理的な方法は、米の消費を減らしてきた畜産物と油脂の生産に役立つようなそういうやり方を水田においてとれる、水田の生産力をそれに役立たせることができるということが私は一番合理的な対応の仕方であったと思います。これはヨーロッパ先進諸国において三十年ないし五十年ほど前のことですけれども、パン用小麦の消費が減りましたときに、そのパン用小麦を大麦に変える、あるいはパン用小麦のままで畜産物とか油脂原料の生産に充ててきたというその対応の仕方があるわけですけれども、そういう対応日本においてもできれば問題はよほど緩和できたわけでございますが、残念ながらその適応ということがうまくいっておりません。  それはなぜかということを考えてみますと、主食用として支払われております生産者価格と、畜産物の飼料ということで海外、特にアメリカから輸入されます穀物の値段の間に余りにも大きな開きがあり過ぎるからでございます。これは諸先生方御案内のとおりでございますが、しかし、これは日本だけの事情ではございませんで、米と飼料用穀物の間には、その二つの穀物を同時に生産しておりますアメリカにおきましても、飼料用穀物を一といたしますと米の値段は二倍から三倍というふうに開いております。また、国際価格も同様に開いております。したがって、米を主食としてやってきた国民が、その食生活の変化に対して水田の生産力をどのように適応させるかということになりますと、日本だけではなくて、恐らくこれからアジアの諸国も同じ問題に当面するだろうと私は思います。この主食と飼料穀物との価格差が大きいということから、日本で飼料用穀物を生産することはやめて、海外から輸入すればいいではないかという考え方もあり得るといいますか、そういう主張もあるわけでございますけれども、私は、やはり日本の農業のふだんの役割とかあるいはまさかのときの役割を考えたときには、その考え方はとるべきではないというふうに思います。しかし、先ほど深海先生からありましたように、飼料穀物を含めて一〇〇%の自給率を考えるのもこれまた非現実的でございます。そこで、水田の生産力を来ないしは稲を中心としてできるだけ発揮できる条件をつくり出すことが、そしてそういう姿に日本のふだんの農薬を持っていくことがまさかのときに役立つということになるわけでございますが、そのためには私は特別の工夫が要ると思いますけれども、その一つの試みが昭和五十九年度から実施されました工業用原料米に対する対応の仕方であったと思います。  これは御案内のように工業用原料、つまりせんべいが中心でございますけれども、そのための原料はかって、これは随分前の話でございますが、海外から輸入をしておりましたが、過剰米が起こる状態になりまして、過剰米の処理の一環としてここ何年か処理してまいりましたが、五十八年度で過剰米の処理が終わりますので、五十九年度から国内で供給するという政策がとられたわけでございます。そしてそのためには、せんべいの原料として米を使うユーザーに対しては従来どおり十二万円で供給をする、これは一トン当たりでございますが、しかし、農家がそういう形で供給するということは、主食であれば三十万円で売れるお米を十二万円で売るわけでございますから、大きな負担になります。そこで、これは転作面積にアカウントするという条件を一つつけ、あわせて財政的な負担をトン当たり七万円つけるという形で、農家もこの政策に対して協力をする、財政面においても協力をする。また、せんべいのユーザーとしても、そういう政策に対して協力をするという形で、いわば三万一両損的な形で、これは大体二十七万トン程度、現在余っております全体の米の量から見ればわずかではございますけれども、私は非常に将来の展望を考えるときに、重要な政策が打ち出されたというふうに思っております。  言ってみれば、政策としては小さな一歩でありますけれども、しかし先ほど申しました、日本の農業の当面しております問題を解決していくということを考えるためには、私は大きな一歩たり得る政策であったと思います。私は、個人的にはこの政策が何とかして成功してほしいということを祈っておる一人でございますが、しかしこのような政策をさらに発展させて日本の水田の生産力を飼料の生産にまで結びつけていくというところへいくためには、さらにもう一段の工夫といいますか、努力が必要でございます。その努力が農家の耐えがたい負担にならないようにするためには、多収品種をできるだけ早くつくり上げていくということが一方において必要でございますし、一方において、これは時間はかかりますけれども、着実な形で米の生産をやっている農家についての面積規模の拡大ということを進めていく必要があると思います。この面積規模の拡大ということになりますと、先ほど深海先生からお話のございました、低成長の場合には失業がふえるおそれがあるので、面積規模の拡大を進めていくということは失業者をつくり出すということになりかねないので、それは難しくなったと判断すべきではないかという御意見もあるわけですけれども、私は日本において農業に従事する人たちがこれまで減少してきたプロセスを見てみますと、やはり規模拡大の可能性経済の低成長時代にもかかわらずあると思います。  それは、非常に大づかみに申しますと、農業就業人口は年率三%程度で減ってまいりましたが、そのうちの三分の二は農業従事者が死亡ないしリタイアするのに対して補充する人が追いつかない。言ってみれば自然減耗的な形で減るものでございまして、現に農業をやっている人を他産業へ移す、産業間移動をやるという形で減ってきた農業就業人口というのは大体三分の一程度でございます。今後老齢化が進むということ、したがってリタイアの率が高まるということを考えますと、私は今問題になっております失業という問題を前提といたしましても、これまでの勢いではありませんけれども、規模拡大の可能性は今後とも進むというふうに思いますので、その辺の条件を頭に置きながら、着実に規模拡大を目的とした構造政策を進めていくことがふだんの日本の農業の体質の改善に役立ち、そしてそのことがひいてはまさかのときの日本の農業の担うべき役割に貢献することになるというふうに思います。つまり、農業を産業として確立していくという方法と、まさかのときに備える方法とは、私はその限りにおいては矛盾するものではないというふうに思います。この点がきょう申し上げたい一番の重点でございます。  時間が参りましたので、これで終わらしていただきます。
  9. 植木光教

    委員長植木光教君) ありがとうございました。  次に尾本参考人にお願いいたします。
  10. 尾本信平

    参考人尾本信平君) 尾本でございます。  長らく三井金属鉱業という鉱山会社におりまして、きょう申し上げたいのは、地下資源、特に非鉄金属類、ノンフェラスメタル、レアメタルを含めまして備蓄についてのお話を申し上げたいと思うのであります。  実は昨年の秋、私、目の手術をいたしまして、まだ十分視力が回復いたしておりませんので、資料を見ながらお話し申し上げるということができませんので御辞退申し上げるべきだったかと思うんですけれども、まあ考えた意見だけでも申し上げろというふうなお話もございましたのでまかり出たようなことでございまして、あるいは失礼を申し上げたかと存じます。  まず、私きょう申し上げたいと思います点は、一つは、こういう金属類の国家備蓄がなぜ必要かといったような問題、それから現在行われておりますいろんな備蓄制度がございます。石油備蓄を初めとして非鉄金属あるいはレアメタル、こういうふうなものがございます。これらについていろいろ実はその成立過程においても問題がございました。また最後には、これらをやりまして私の感じました点、つまりこういう金属類の備蓄と国家財政とは一体どういう関係であるべきかといったようなことについての私見を申し上げて御参考にしたい、こんなふうに考えておるわけであります。  最初に、金属類の備蓄の必要性でありますが、これはあえてここに申し上げる必要もございませんし、深海先生からもお話がございましたので、ちょうちょうする必要はないと思いますけれども、私は特に資源小国の日本としては、これは戦争をするための備蓄といったような意味ではなくて、日本が平和的な発展をするためにも絶対に必要である、こういうことを申し上げたいと思うのであります。それが一つであります。  と申しますことは、皆さんも御存じのように、自分の家の米びつが空になっておって、あした食う米がないという状態でよそと交渉をする、こういうことはできるはずはない。堂々たる外交交渉はできるはずはないというふうに思うのであります。したがいまして、そういう意味からウイークポイント日本経済はなくしておかなければならない。そのためにもある程度の備蓄、何をどの程度ということは品種によりいろいろ違うと思いますけれども、ある程度の備蓄はしておかなければならぬじゃないかという、これはどなたも異論のない点ではなかろうかと思うのであります。  もう一つ国がやらなければならぬ大きなポイントは、御存じのように日本は資本主義国である。自由主義国である。したがいまして、経済の実態はだれがこれをやっておるかというと、簡単に言えば、株式会社というものが集まって日本の国の経済を形づくっておる、株式会社の集合体みたいなものである、こういうことになろうかと思うのであります。そこで、そういう株式会社の固まりといったような日本経済の実態というものに対して、国家がこういうふうな備蓄が必要なんだからおまえら備蓄しておけ、こう言っても株式会社という制度では全く備蓄というものはなじまないものであるということであります。先ほど深海先生からお話がありました、個人である程度持っておけと、これは私は違うと思うんです。個人である程度持っておけというのは意味が違うと思いますが、株式会社というものは決してそういうものになじまないものであるというふうなことを申し上げたいと思うのであります。  これについて一番端的な問題は、たしかトヨタ自動車さんが言い出したことだったと思うのでありますが、かんばん方式というのがございます。これは企業経営にとって棚卸資産は極小にすべきである、棚卸資産は持たないのが一番いいんだということであります。私も長年会社の経営をやってまいりましたけれども、確かにそう思います。株式会社の経営上の経営理念として、棚卸資産をたくさん持っておることは決して誇るべきことではない、むしろこれはゼロに近づけていく、極小にしていくべきである、そして経営効率を上げていくというのが株式会社の経営理念であるということは、皆さんもおわかり願うところだと思うのであります。したがいまして、そういうものの集合体である国民経済というものは、そういう株式会社は皆備蓄を持っておる、こういうようなことを期待することは全く理念に反することであるというふうにも思いますし、しかもどうしてもそれが必要だ、国として必要だとするならば、これは企業に求めてはいけない、これを補完する意味では国家がやるしかないというふうに私は思います。そういう意味で国家備蓄がぜひ必要であるというふうに私は思うのであります。これについてはあるいは異論があるかもわかりませんけれども、私はそれ以外に方法はないなというふうに思うのでございます。  ちょっと話が横になりますけれども、今、日本世界経済大国であるとかなんとかよく話に出ますけれども、それはGNPで言っているんだ、GNPというものは時速何メーターというようなスピードを言っているのであって、物を幾ら持っているか、つまり蔵に何をどれだけ持っているか、いわゆる資産家であるという意味ではないというふうに私は思います。そういった意味で、GNP大国ではありますけれども、日本は私は先ほどのお話から、有事の隊とか平常とかいうお話もございますけれども、ある程度の備蓄は持っていなければならない。特に金属類は腐るものではございません。流行おくれのあるものではございません。したがって、これは何年置いておいても、ちょうど金本位の、金がいい例だと私は思いますけれども、そういうものと同じように、これは国で持っておいてもらいたいというふうに思うのであります。  そういったような考え方を持っておるわけでございますが、実は私が、もう十年近くになりますかもしれませんが、日本鉱業協会の会長をいたしておりますころに資源と備蓄という問題を提起いたしたわけであります。これはどうしてそういうことが起こったかと申しますと、当時非常に不景気になりまして、日本の各製錬所でつくります銅あるいは亜鉛あるいはアルミニウム、こういったようなものは売れなくなった、地金が売れなくなったということになる。そうすると、各製錬所は操短をしなければならない。操短をするということになるとどういうことになるかというと、それらの各製錬所は世界じゅうの低開発資源国から原料鉱石を輸入して、全部じゃありませんけれども、大部分を輸入して、製錬して地金をつくっておる。この輸入する原料鉱石の輸入をカットしなければならない、輸入を減らさなきゃならぬ。減らさなければこちらは回転がしなくなりますね。原料だけどんどん積み上がってしまって地金が売れないということになると、これは回転しなくなるということになりますので、鉱石の輸入をカットするという問題になってきたわけであります。ところが、カットされる方の低開発資源国、これは本当に大変なことであります。大きな社会問題にも発展するといったようなことでございまして、当時、毎年開かれます太平洋経済会議に出席をいたしておりますというと、そういう諸国から猛烈な勢いで私は攻撃を受けた記憶がございます。私もなるほどそうだろうなと思っておるわけです。最近出た本ですが、「炎熱商人」という本がありますけれども、あれと同じように、日本が買うからといっておれは資源開発をしたんだ、借金もして、日本から金も借りてやったんだ、それをでき上がったら買わぬとは何事だ、こういったような、簡単にはそういうことでございます。しかも日本から貸した金は利息はちゃんと取る、しかも返済時期には返済をさせる、品物は買わない、こんなばかなことがあるかといったような非常に強い反論を受けた経験がございます。  そういったようなこともございまして、こういうことをやっておったのでは、将来資源が足りなくなった、今は余っておるとしても足りなくなったときにどうにもならぬぞというような意味で、資源輸入するルートをきちっと維持しておかなければならぬ。と同時にまたこれらの低開発資源国との友好関係、経済協力をきちんとしておかなきゃ日本はいけないといったようなことと、もう一つ日本資源備蓄が全然ゼロである、これではいざというときに困るじゃないかというので、日本の国家備蓄というものをぜひやるべきである、国家備蓄をやるいいチャンスであるということと、それから低資源国との友好関係を維持する、経済協力をするといった、一石二鳥ないし三鳥といったようなことも考えまして、私、資源エネルギー庁を初め通産省あるいは国会の諸先生方あるいは各学者にもお願いをいたしまして、資源備蓄を、特に非鉄の備蓄の創設をお願いいたしたわけであります。こういったようなことで、一応非鉄金属の銅とか鉛、亜鉛とかアルミといったようなものも資源備蓄の制度ができ上がったわけでございます。でき上がったわけでございますけれども、でき上がったものを見ましたら、甚だ私の考えたものと違ったものができ上がってしまったということであります。それはどういうことかといいますと、備蓄期間といいますか、三年間だけ備蓄せい、そして三年だったらおまえら買い戻せということであります。備蓄機関としては備蓄協会というものをつくって、この備蓄協会が民間の銀行から借金をして、その借金の利息に対してはたしか六・五%だったと思いますが、六・五%以上の利息を一般会計が補助する、こういったようなことでございまして、三年たったら買い戻せ、こういうことであります。しかも一番困るのは、三年たって買い戻すときの価格であります。買い戻すときの価格は買い入れのときの価格に利息を乗っけた元利合計のいわゆるコストと払い下げるときの時価と、いずれか低き方ならまだいいのでありますけれども、いずれか高き方で買い戻せ、こういう結果に業務方法書はなってきたわけであります。これじゃどうにもならぬじゃないかと言ったのですけれども、せっかくそこまで言ったのならおまえやれということでやってみたところが、実際はその点が一番問題になってしまいました。どんどん利息は高まってしまう。三年たった、三年だったから買い戻さなきゃならぬけれどもどうも高い、買い戻しても売るときには損して売らなきゃならぬ、こういう格好になりますので、もう三年ばかり待ってくださいというようなこともやりました。けれども、待てば待つほどどんどん利息は高くなってしまう。国際価格は必ずしもそれは上がってこないといったようなことで、このままいったら大変なことになるというので、大損をすることを覚悟してどんどん買い戻しをしてしまいまして、現在ではこの備蓄協会は一トンの銅も一トンの亜鉛も持っていない。持っておるのは約三十億の利益、利益が三十億出たわけです。ということは、いずれか高き方ですから、安く仕入れて利息を払って、民間に払い戻すときは非常に高かったというときにぼっとやりましたから、利益だけが約三十億残っておる。こういう三十億の利益を抱いて寝ておるのが備蓄協会である、こういったような結果になってしまったわけであります。  そういったようなことで、どうもこういう業務方法書のもとにおいての備蓄はもう金輪際やるべきじゃない、こんなばかげたことはどうにもならぬといったようなことで、甚だ私もこれを大いに推進した一人としてどうにもこうにもならぬといったようなことで、もうこんなものはやるべきじゃないというふうに思っておる次第でございますが、そのときにたまたまレアメタルの備蓄をやれ、こういう話が出てまいりました。これは御存じと思いますけれども、アメリカの方から盛んに言われたわけであります。私も当階経団連の資源対策委員長ということでございましたので、アメリカの代表の方とも随分シンポジウムその他でお話をいたしました。結局、アメリカさんの言うところは、ソ連圏はほとんどレアメタルについての自給自足態勢ができ上がっておる。ところが、アメリカはほとんどできてない。特にアフリカから持ってくる資源レアメタル資源でありますが、このアフリカというものがどっちを向くかわけがわからぬ。ソ連の方を向くのかもしれないし、わけがわからぬ、まあ御存じのような状態でございますので、そういったことで非常に焦燥の感に打たれておったように思います。そういった意味で、日本もぜひ相当の備蓄をレアメタルについてすべしというのが強いアメリカの意向でございました。私はこれに対して、それはまあわからぬじゃないけれども、軍備的な意味日本に来て余り押しつけてもらっては困る、日本にはアレルギーがありますよ。ですからそういう言い方じゃなくて、日本の産業、日本経済そのものを維持するのにこれがなければ大変じゃないかというような意味に解釈をしておっしゃってください、私もそういう意味のある方にやりましょうということで、通産省経団連一体になりまして大いにこの推進をいたしたわけでございます。  ところが、これにつきましてもいろいろ問題がございました。当時、通産省はレアメタルの品種十一品目、金額は五カ年間で六百四十億円ぐらいだったと思います。わずかなものですね。それで何日分ぐらいの備蓄かというと、たった六十日分の備蓄、一年に十二日分ずつ備蓄するんですかね。本当にみみっちい案だと思うんですけれどもそういったような案でございました。  そういうみみっちい案に対しましても、私、通産省の方と一緒になって随分大蔵省その他と折衝をいたしましたけれども、とてもじゃないけれども予算がない、金がないというようなことを随分言われました。私はそのときに、甚だ口はばったいことでありますけれども、大体何で予算がないということを言うんですか、何もその予算を費やしてしまう、費消してしまうのじゃないんですよ、お札とコバルト、お札とモリブデンと取りかえるだけじゃありませんか、現に日本政府は外為特別会計というのがあるでしょう、外貨を扱う外為特別会計というのがある、我々物を輸出して外貨が入ってくる、その外貨は皆外為特別会計に入っていく、そのときに円が出てくるでしょう、その円を出すについて国会の予算を必要とするんですか、国家の予算案があるんですか、たしか外為特別会計で外貨を買い上げるものは国会の皆さんの承認を得ている予算ではないわけだと思うんです。これは幾らでもどんどん持っていけば円が出てくる、こういうものだと思うんです。この外為特別会計と同じように資源備蓄特別会計というものをつくったらどうですか、そうしてコバルトを我々は持っている、ニッケルを持っている、そうしたらそれに見合う円を出してそれをちゃんと貯蔵しておけばいいじゃありませんか、国民の税金を費消することは絶対にないんですよと、そのコバルトを使うときに初めてそれを消費するのであって、何にも損失はないじゃありませんかといったようなことを大分言ったこともございます。  あるいはまた、日本銀行にも、これは少し前の銅のときだったと思うんですが、森永さんが総裁であったと思うんですが、日本銀行の中庭はかなり広いですな、ここへ銅を二、三十万トン持つきて置きますが、それでひとつ円を出してくれませんかと言ったことがありますが、金のかわりに銅ではなぜいけないんですか、銅という字は金に同じと書くんです。金に同じと書いてあるじゃないですか、それなのになぜ銅ではいけないんですかということを育って一笑に付されてしまったことはございますけれども、昔はなるほど金というもの、数千年来金を皆人類は愛してきたんですけれども、今では、金の必要性もないわけじゃございません、しかし銅やらコバルトやらニッケル、あるいはストロンチウムとかニオブだとか、こういったものの方があるいはもっとキーマテリアルかもしれませんですね。そういうのは時代によって変わると思いますが、そういうものをしたらどうですか、もしどうしても大蔵省さんそれでもいかぬと言うのであれば、私は日本銀行が持っておる金、非常に世界的に見れば少ない方でありますけれども、それでも日本の金というのは、二、三年前でありますけれども、本日現在はちょっと私存じませんけれども、当時七百五十トンぐらいの純金、純金量で七百五十トンぐらいの金を持っておりました。もちろんそのうちの三分二ぐらいは外国に預けてあるようでございますけれども、それにしても七百五十トンぐらいの金を持っておる。これをひとつ十五トンばかり、ということはたった二%、持っておる金の二%ぐらい、十五トンぐらいを売って、その時分の金の値段から考えますと六百億か六百五十億円ぐらいできる、そうすれば、通産省の五年間の備蓄をしようという、非常にみみっちいレアメタルの備蓄は一遍にできちゃう。そうしたらどうですか、金のかわりに、持っている金のたった二%がコバルトやニッケルやモリブデンやニオブにかわる、なぜそれがいけないんですか、こういう議論も大蔵省の方といたしたわけですが、これも極端に言えば一笑に付されてしまって、いや大蔵省と日本銀行は違うんだと。違うのはわかっているけれども、我々が言ったようなことも考えたらいいと思うんだけれどもどうしてできないのか、私今だにこれは腑に落ちない問題の一つであると思います。  そんなようなことを経験いたしておりまして、何となく私は今の日本のこういった金属類の備蓄という問題と国の財政という問題を、普通の四国に橋をかけるとか道路をつくるとかいう問題とは全く会計的にも経理的にも違ったものであるというような意味から、これはひとつ資源備蓄特別会計というものをつくって別の考え方をしていただきたいというふうに思うのであります。これらをやるのは決して株式会社ではできないと思います。したがって、国会の皆さんにぜひこういうことを深く研究をいただきたいというふうに思うのです。  そのもとは何だというと、国の会計というものが決して複式簿記ではない。現金出納会計ですね。恐らくこれは太政官布告以来のことだろうと思うんですが、現金出納だけやっておる。複式簿記ではない。もし、ああいう会計を民間がやったら大蔵省の国税局は非常に怒ると思いますけれども、そういったようなこともございますし、ぜひひとつこれは国会の皆さんで御研究を願って、何かひとつ備蓄特別会計というふうなものを別個にお考えをいただきたいものだなあと、かように思いますので、その辺をひとつ申し上げて、私のお話を終わりたいと思います。  どうも大変失礼をいたしました。
  11. 植木光教

    委員長植木光教君) ありがとうございました。  次に、宋次参考人にお願いいたします。
  12. 末次克彦

    参考人末次克彦君) 日本経済新聞の論説委員をいたしております末次でございます。  座らしてやらしていただきます。  私に課せられました課題は、エネルギー対策あるいは日本エネルギー問題上の安全保障的側面についての意見ということでございますが、最近のペルシャ湾危機といわれます情勢が我々の将来のエネルギー問題を考える上で大変示唆に富んだ状況といいますか、テキストを提供してくれているように思います。と申しますのは、我が国のようなエネルギー情勢、つまり使います一次エネルギー資源の八〇%を外国からすべて購入する、その使います一次エネルギー資源の六〇%までが石油で賄っているという、こういういわゆる日米欧の先進工業国社会の中では最もユニークな、海外に依存し、石油に依存しているという特別な一つの条件を持った国家の経済体制でございますが、こういうものの中で、しかも現在では入れてくる石油の六五%までがホルムズ海峡以内のペルシャ湾産油国というものに依存をしておるという、これまた非常にほかの国には例を見ない特殊な構造を持っている。つまり、ペルシャ湾の中で危機が起きたときには一番心配しなければならないのは日本であるという前提条件を抱えたままエネルギー経済の運営を行っているという国家の体制があるわけでございますが、したがって恐らく国民ひとしくペルシャ湾の中で一朝事が起こったら大変だ、いわゆる第三次石油危機の再び再現という一つのイメージというものを国民が持っていることは間違いないと思います。  しかし、現在起こっておりますペルシャ湾の中での危機、イラン・イラク戦争という形での危機はどうにか、推察いたしますのに、イラン・イラク双方の背後にあるソ連、そしてイラク及びその周辺のサウジアラビア等の湾岸産油国に対する軍事あるいは精神的支援のコミットメントをいたしておりますアメリカ、この両超大国の存在、その外交というものが現在のところイラン・イラクのこれ以上の暴発といいますか、国際社会のルールを無視したような形で戦争を他に拡大していくという格好のエスカレーションをとどめている。私どもが言います米ソの一種の危機管理機能というものが今回これ以上の危機拡大を差しとめているという抑止要因として働いているということはいろんな現在の現象から一つ確認できる点であろうかと思います。  そして、結局この現在の世界エネルギー及び石油情勢を見ますと、まあイラン・イラクの紛争がこの程度範囲であるならば、世界の第三次石油危機のきっかけになるような事態にはならない、その引き金にはならない。また、このような状況であれば、今言いましたような非常に特殊な、石油の取引に非常に神経質で脆弱性を持っております日本の社会も慌てて動かなくてもいいような状況が出現しておるということがございます。  したがって、ある見方からいたしますと、この程度危機であれば、日本が現在のようなエネルギー供給体制の中で石油に六割を依存し、そのうちの六五%も危ないと言われている、不安定と言われているペルシャ湾に依存していてもまあ大過ないという一つの、逆説的ではございますが、そういう状況認識すらできるという現在の石油問題から見ました国際石油情勢一つの解釈が成り立つのではないかと思います。  我々が通常想定しておりますようなペルシャ湾の危機が即第三次石油危機的な状況に発展する、日本も現在のような特殊な石油の供給構造を持っておりますと慌てざるを得ないという状況というものは一体どういうことなのか。現在のようなイラン・イラクの紛争というものがペルシャ湾危機の最も典型的な形なのか、あるいはもっとワーストな、もっと悪いシナリオというものが起き得るのか起き得ないのか。起きたときにそれをさらに本当にエスカレーションさせないような米ソの危機管理というものが働くのか働かないのか。その辺が石油という現在のポジションをさらに決定的に短期間の時間のうちに変えるべきであるという意見が出てくるのか、あるいはまあ全体的なコストとそのベネフィットを考えた場合に、そう無理した石油軽減対策あるいはペルシャ湾依存軽減対策を、まあしっちゃかめっちゃかやらなくてもいいんではないかという方向へ議論展開するのか、その分かれ目に一つのさらに大きな危機のシナリオというものをどういうぐあいに想定するのか。そして、そういうものが起こる可能性というのはどう見るのかという点にかかわっているのではないかと思います。  その通常想定されます第三次石油危機的なトリガー、引き金になり得る状況というのは、やはりペルシャ湾内の最大の産油国でありますし、その資源量から見まして世界で二、三位を争いますサウジアラビア、ペルシャ湾内の危機というものがサウジアラビアを巻き込んだ形、こういう局面が生じますと、需要と供給のバランス、ペルシャ湾岸が世界石油市場で持っております。そのウエートからいきまして、これはやはり相当な事態、現在のような限定されたイラン・イラク戦争が持つ石油市場への影響とはまた一つ、二つ程度の違うクライシスというものになる可能性が確かにあると思われます。これは通常考えられます。  しかし、そのようなサウジアラビアの石油がとまるような事態、あるいは異常にゼロに近いような局面というものが相当長期的に続く、あるいはサウジアラビアの石油の供給政策が非常に選別的になる、日本初めアメリカには売らないとか、そういうような大異変を来すというような状況が起こる可能性というものをこの一九八〇年代及び九〇年代にどう見るのかということがかかわりがあると思いますが、現在のところ明らかに現実の国際政治の面におきましてサウジアラビアが外から脅威を受けるというような、直接脅威を受けるという事態になりますと、これはそこヘアメリカが自国の利益というような形、あるいは西側同盟諸国の利益という格好でリーダーシップを持って抑止に動きます。これはもう間違いございません。そういうような状況を考えますと、直接サウジアラビアに対する脅威、しかもそれが長期にわたる石油の異変というものに直結するようなことが起こる可能性というものは、まあ私どもが見ますところ正直言ってその可能性は必ずしもそう高くはないというぐあいに考えるのが常識的ではないかと思います。  そういたしますと、現在の国際石油情勢を見ますと、明らかに第一次、第二次の石油危機を通じまして異常に暴騰いたしました石油価格のために、国際石油資本あるいは各国の金融、あるいは資源開発に絡みます企業群が大変積極的にOPEC圏外におきまして石油開発に成功いたしました。この結果、御存じのように世界石油市場におけるOPECのシェアというものは五割を割り込むという一つの比較的小さい地位に封じ込められつつあります。そこで問題は、現在生じておりますのは、要するに石油の供給過剰という状態でございます。今度のようにペルシャ湾の北半分にタンカーが一時期行かないというような事態になっても石油価格がそう上がらない、そして日本のような大消費国が慌てないというほど現在供給過剰の状態が出現している。この状態というものは恐らく基本的にはこの一九八〇年代はそう変わらないのではないか。問題は、そういう供給過剰状態、あるいはイラン・イラク戦争程度では石油価格がはね上がらない、刺激しないというような状況になりますと石油の値段というものが相対的に下がってまいります。実質石油価格が下がってまいります。そうしますと、一たん、西側先進工業国は一層石油への依存度を減らさなきゃならない、代替エネルギーへの転換を図らなきゃならないと息せき切って走ってまいりましたこのペースが明らかに緩みます。これは明らかでございます。  そうしますと、エネルギー市場における石油のシェアというものが現在の状況から場合によっては再び復活してくる。もともと石油は非常に便利でございますし、非常に効率的でございます。石油に依存しました経済体系というものは我々はまことに現代文明の福利として享受しております。この石油が再び復活してくるというような状況が必ずしもうそではないという一つの将来展望はあり得るのではないか。そういうような一つのシナリオがあり得るというときに、日本のように石油依存度が異常に高く、しかもサウジアラビアの超クライシスは別といたしまして、今回のようなイラン・イラク戦争のような中規模程度危機が頻発をする可能性があるこのペルシャ湾の中あるいは中東というものを考えましたときに、日本エネルギー政策展開というのは非常に難しくなるのではないか。国民的にはだんだん石油というものが相対的にまた安くたるという割安感が生じてくる、そして中規模程度のクライシスならば大慌てをしないで済む、そして九〇年代のごく初めごろまでは世界的なグローバルな石油のバランスがとれていく、やや供給過剰ぎみであるということになりますと、石油からほかのエネルギー源へ転換するということも経済的になかなかインセンティブが働きません。恐らくこういうシナリオがあり得る可能性としては非常に高い。  では、一体日本はそれでいいのかということですね。しかし、これは中規模程度といいましてもそうやって再び石油が復活状態ということになりますと——復活状態ということになるということは、石油をこれ以上速いペースで開発していくというインセンティブが薄れるということでございます。これは三年、五作、七年と時間がたちますと明らかに世界のその次の段階における需給関係に影響をもたらします。例えば大変今回の石油供給に貢献いたしております北海の開発というようなものがこれ以上進まなくなる可能性もございます。それから北極海のような非常に極悪な状況で、大変膨大な投資をして行わなきゃならないコストの高い油田の開発というようなものもブレーキがかかってくる。つまり、スペアキャパシティーがだんだん持てないような状態で九〇年代に向かっていって、石油需給がバランスをしてくるというような状況になりますと、そういう時点では現在起こっているような中規模程度のクライシスでもペルシャ湾の周辺で起きますと、この持つ国際的な影響というものはまた違ってまいります。ですから日本の、より安定した価格で国民及び経済体へ石油を供給し、そして量的に極端な懸念というものを起こさないということを確保していくためには、このやや一息ついたような、しばらくこれからの中期的展望に一体どういうぐあいに対応していくのかということが非常に大きな課題ではないかという感じがまあいたします。  では、現在のような、そういう石油情勢についての一つのやや楽観的な展望というものが見える中で、日本エネルギー供給構造上の問題点は何なのかということ。いわゆる今深海先生、並木先生からそれぞれの御指摘がございましたように、当面の危機、足元から鳥が立つような危機がなければなかなか動かない、しかし長期的にはこうした方がいいという一つの明らかに国民的コンセンサスが得られるようなターゲットがある。この間をどうつないでいくかということがひとしくエネルギー問題についても全く大きな国民的課題として言えるのではないかというぐあいに感じるわけでございます。現在、例えば金太郎あめのように断面的に切りましたときに、どういうことが、さらにより安定した、より強靱なエネルギー供給構造にするためには一体何が課題なんだろうか。そして、現在日本の国が置かれております国際的な環境の中において、エネルギーの分野でそれとの関連においてなすべきことは何かあるのかということが問題なのではないかと思います。それについては二つ申し上げることがあろうかと思います。  一つは、まあ日本のようなすべて海外にエネルギー資源を依存する、しかも石油に多くを依存するというこの国家、しかも商人通商国家といたしまして、日本でつくりました商品を大変大量に国際社会に送り込んで、三百億ドル、四百億ドルという貿易収支の黒字をため込んでいるような国家の場合は、非常にやはりエネルギーの問題について諸外国から注文を受けるということにますますなるのではないかと思います。例えば、最近アメリカから大変日米貿易収支の改善という要求をバックにしながら、日本はもっとアメリカの石炭、天然ガスを開発して、それを使えという要求がございます。石油の上にしばらくは一息入れていくことができるのではないかと思い始めた日本の社会にとって、そういうような要求は必ずしも受け入れていくことは恐らく容易なことではないと思います。そして、この現在の大きなシェアを占めております石油産業、そしてそれを支えております政府行政の体制、こういう一つの非常に大きな仕組みでございます。しかも、日本の場合は石油産業、それを支える石油行政体制というものと、それから同じエネルギーではございますが、いささか質が違います電力産業の体制あるいは都市ガス産業の体制、これがいわばタコつぼ的に並立しております。相互間の融通無碍の展開ということは、必ずしも日本のシステムから言うと得意でございません。そういうような中で、例えばそういうアメリカからの、もっと石炭、天然ガスを開発して使えといったような強い要求というものに対応していくのはなかなかシステム的に容易なことではないという問題もございます。  そこで、一つぜひ我々が考えなきゃならないと思っております点は、やはりそういった特異に、非常に対外依存度の高い、そして経済大国としてエネルギー消費量の大きいこのような国家というものは、一端岸辺から入れました海外からの一次エネルギー資源というものは園内のシステムとして徹底的に効率利用をしていく、いわば一粒の石炭も一滴の石油も一握りのガスも骨の髄までしゃぶり尽くす、徹底的、効率的に使いこなすという、このエネルギーの最大効率利用という点で日本世界最大の最効率国家というものに位置しなければならない。恐らくそういう国際的な義務がございましょうし、それは日本の安定したエネルギー基盤をつくっていく上でも恐らく不可欠なことだと思います。  そういう点で考えますと、例えば今のように、石油石油、電力は電力、都市ガスは都市ガスというような体制になっておりますと、なかなかそういうぐあいにいかない、最効率利用を目指す上で一つ問題が生じてくる。例えば、ヨーロッパ諸国では、これは気象という条件もございます。冬が非常に長くて厳しい、暖房需要が非常に多いというような特殊条件はございます。それに比べまして、日本のように経済圏の中心でございます太平洋圏では、大変気候温暖、冬も特別に熱需要も膨大にはね上がるということもございませんので、一概に比較はできませんが、欧州社会の場合は、石炭をたくにしてもガスをたくにいたしましても、電気をつくると同時に熱も生産をして、それを同時に配る。この結果、一端投入いたしました石炭やガスの使用効率というものを七〇%とか八〇%に上げるということがございます。これに対しまして日本の場合は、例えば遠隔地で大量発電をいたしまして、そして東京のような大消費地へ長距離輸送をしてくるということでございますが、御存じのように発電というものは、投入いたします一次エネルギーの効率、三八%とか三七%とかいうぐあいに低いわけでございます。極論いたしますと、ほかのエネルギーは宇宙に放出をしておる、こういうような状況もございます。例えばこういう問題を、熱の供給と電力の供給を同時にするというように徐々にシステムを変えていくというようなことによって、この日本の国内に入ってまいりました外からの一次エネルギー資源というものをより効率的に使うというようなことにもなってくるのではないか。しかし、そのためには、相当ローカルエネルギーシステムの開発を含めまして、システム的な転換アプローチをしなければなかなか難しいという状況がございます。で、時間をかけて平時における長期的なエネルギーの効率使用体制というものを実現いたしますためには、そういった例えば、今申し上げましたような対応が必要になるのではないかと思います。  ですから、中規模程度に起こってまいりますクライシスに対応していくためには、現在これまで石油危機以後やってまいりました民間石油備蓄あるいは国家石油備蓄というものをもう一段高い水準に徐々に完成をしていくということによって国民的な安心を与えるということはぜひやらなければなりません。それと同時に、今申しましたような中期的な、時間のかかる構造改革、システム的な改革ということをやはり心がけていく、それをいかに政策的に対応していくかということが一つの課題ではないかと思います。  それから、もう一つだけ最後に触れさしていただぎたいのは、やはりこれだけの超黒字貿易国家、資本輸出国家ということになりますと、国際的な貢献、国際社会の中における日本対応ということでございまして、石油が断たれたら大変だという緊急時、有事対策だけではなくて、国際社会の中における日本のあり方という点からいきましても、発展途上国におけるエネルギー資源開発に協力を、貢献をして、そしてそれを日本がマーケットを提供して購入して差し上げるというような、一つの国際社会の中における均衡発展を目指す、そして、エネルギー開発をそういうものに絡めていくというような中で日本エネルギー供給構造を変えていくということが一つの大きなこれからの中期的課題ではないかと思います。  大変失礼いたしました。
  13. 植木光教

    委員長植木光教君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  14. 石井一二

    ○石井一二君 石井でございます。  ただいま四人の参考人の諸先生から極めて示唆に富んだ有意義なお話を聞かしていただきまして厚く御礼を申し上げるものでございます。久方ぶりで、きょうは質問者に予定されております関係もございまして、ノートをとるのに忙しくて学生時代に返った気分をも味わわせていただいたわけでございます。せっかくのお越してございますので、それぞれの参考人の先生方よりお答えをいただきたいと思うわけでございますが、時間の関係もございますので行き渡らない場合はお許しをいただきたいと思いますし、また極めて専門的な問題になってまいりますと、きょうは政府出席者もリストをいただいております。場合によっては御迷惑をおかけすることもあり得るということをあらかじめ御了解をいただきたいと思うものでございます。  さて、まず最初に私、若干深海先生にお伺いをいたしたいわけでございます。特に、目先楽観論にとらわれるなと、だからといって危機をオーバーエグザジェレートするな、またエネルギー問題というのは特にリードタイムというものがあるんだといったようなごもっともな御意見もございました。  私は、今ここにたまたまけさの読売新聞の社説のコピーを持っております。「現実的なプルトニウム利用法」という社説でございますけれども、省エネルギー日本といたしまして行く行くは原子力に大きくエネルギー源を頼る時代がやってこようかと思います。現在は約二割を原子力発電に負っておるということでございますけれども、こういった中で今後、例えば新型転換炉「ふげん」、高速増殖炉六十二年火入れと聞いておりますが、予定はおくれております。多目的高温ガス炉、こういったものが我が国のエネルギー供給の主軸をなして石油の心配をしなくてもいいという時代は大体何年ごろと御推察になっておるか、もし御見識があればお伺いをまずいたしたい。
  15. 深海博明

    参考人深海博明君) これは非常に専門的、あるいは今後の技術開発がどうなるかということにかなり依存するわけでございまして、私は実は経済を専攻しておりますので的確なお答えができるかどうかはわかりませんけれども、今おっしゃったような意味でのいわば原子力関係への転換が大きな方向として必要であるということは確かだとは思うんでございますが、ただ問題のポイントは、時間的な順序を追って、いつかということの御質問であったんですけれども、これは例えば高速増殖炉というようなものであるといたしますと、これは私の個人的な見解ではございますけれども、やはりそれが量的にしかも価格的に引き合っても——私は経済でございますから——そういうような形で利用できるようになるというのは二十一世紀に入って、しかも十年とか十五年とかあるいは二十年とか、これから三十年ぐらいのやはり時間的な、あるいはこれは実証炉とかそういう形ではなくて、実際に我々が量的な形で使えるようになるにはかなり時間がかかるのではなかろうか。したがいまして、私が申し上げたかったポイントは、当面の有事に対する対応策、それからいわばそういう抜本的な意味でのブレークスルーが行われるまでの間をどうするのか、それからブレークスルーというような意味でのいわば総合的な戦略が必要でありまして、そういう特に新しい技術開発が要請されているものにつきましては、先ほど来次委員からも話がございましたように、むしろ現在の楽観論というのはそういうものへのテンポをおくらせる可能性があるというようなことを考えてみますと、全部についてのお答えにはなりませんけれども、まあ二十一世紀に入ってから、しかも二〇〇〇年段階ではなくてかなりおくれることになるのではないかというふうに私は個人的には思っております。
  16. 石井一二

    ○石井一二君 もっともっと具体的なお答えを期待したわけでございますが、時間の関係もございますし、また言う方が無理がという気も半分いたしますので、エネルギー庁のエネルギー企画官の井田さんにお伺いをいたしたいわけでございます。  ただいまの二十一世紀になってから云々という論議の傍ら、先ほど来末次参考人も御指摘のごとく、現在ああいったペルシャ湾事件等も起きておる、こういった中で、もちろん石油を中心にして現在エネルギー資源対策がなされておるわけでございますが、私は自然に返って物を考えた場合、現在サンシャイン計画のもとに若干進められておる太陽熱、風力、地熱、波力、あるいは潮流利用、海水の温度差利用などといったような、ごくごく初歩的に感ずるけれども、エネルギー源として特に我が国は豊富だし、二十四時間いつでも利用できる、それに対して昭和五十九年度はたった四百億円の予算しか計上しておらない。この計画の先行きとそれに対する期待、またエネルギー対策の中で通産省としてどの程度の重きを置いてこれを観察しておられるのか、御所見を承りたい。
  17. 井田敏

    説明員(井田敏君) お答え申し上げます。  非常に難しい御質問でございますけれども、御指摘のように太陽熱、太陽光発電、こういったいわゆるローカルエネルギー、それから風力の発電とかあるいは火山国日本としまして有益な国産資源であります地熱、こういうものは今現在は確かに御指摘のとおり非常に量的にはわずかなものでございます。しかしながら、総合エネルギー調査会で昭和六十五年あるいは昭和七十年度の今後の長期の見通しを出しておりますけれども、これによりますと、今現在は非常に微々たる、石油の原油に換算いたしましてわずか百万キロリッターにも満たない量ではございますけれども、今後エネルギー資源を持たない我が国にとりましては、こういったいろんな、細々ではありますが、小さなエネルギーを着実に開発し、導入していく必要があるということで、例えば昭和六十五年度では新エネルギー全体で八百万キロリッターぐらいまで導入が可能ではないか、また導入をすべきであるというふうな見通しをしております。昭和七十年度におきましては、それをさらに原油換算で千九百万キロリッターぐらいまで伸ばそうということでございます。先ほど先生、予算わずか四百億等という御指摘もございましたが、現在非常に財政のきつい折の中で、将来を見越しましてこういった新しいエネルギー開発資源エネルギー庁といたしましてもかなりの努力をいたしておるところでございまして、今後とも重点的に効率的にこういった新エネルギー開発を進めてまいりたいというふうに考えております。
  18. 石井一二

    ○石井一二君 若干先を走って並木先生にお伺いをいたしたいと思います。  食糧問題についていろいろ御教授をいただいたわけでございますが、我々の論議のすべては、自給率が幾つであるかということによって大いに変わってくるわけでございます。自給率が九九%であればそう心配は要らない、一〇%であれば大いに心配が要ると。では、その自給率をだれがどのような方法で計算して理論を立てておるかという前提条件が正しくなければ論議は正しく進まない、そう思うわけでございます。その中でよく使われるのが、いわゆるオリジナルカロリーで計算した自給率という表現がございますが、意味もわからずに、何となくそういう表現を使うと、ああそうかなと思うのが日本人のよいくせでもあり悪いくせでもあると私は思うのでございます。そういった中で、責任ある立場に立ってこういう問題を論ずる場合、例えば耕地の面積計算の基準はどうなっておるか、耕地利用率と作付面積の関係はどうなっておるか、単位面積当たりの収量の見通しについてはどう考えておるか、特にエネルギーに換算する換算率の積算根拠はどうなっておるかということに多くの学説があるわけでございます。先生は現在カロリーベースで計算した自給率、きょうはパーセンテージはおっしゃいませんでしたけれども、先ほど来のお話は何%を根拠に考えられ、どのような基準なり特別なデータを基礎に置いておられるのか、ちょっと御指摘をいただきたいと思います。
  19. 並木正吉

    参考人並木正吉君) 今のエネルギーベースで申しました自給率は、大体五〇%強というのが農林水産省の官房の企画室だと思いますが算定したものがございまして、普通はそれを使っております。ただそのほかに、一番簡単に近似的に実態を知るためには、穀物としての自給率がどうなっているかというのがこれまたよく使われますので、それで申しますと、現在では三〇%程度であるというふうに申し上げたわけです。
  20. 石井一二

    ○石井一二君 ありがとうございました。今たまたま官房企画室という御発言がございました。私はたまたま農水省官房企画室長——当時の肩書だと思いますが、現在の構造改善局長森実孝郎様のある雑誌に書かれておられる食糧危機に対する所見のコピーを持っているわけでございます。その諭旨というものは、そう食糧危機は危ぶむにしかずといった流れが根底にあるのではないか。最悪の場合に、次のような対策を講じるべきだと言われておるわけでございます。水田裏作の徹底、ゴルフ場をつぶせ、生産物を米、麦、豆、芋、野菜に絞る、消費面は畜産、酪農品、砂糖を減らして明治大正時代の水準に戻せ、こういう御指摘でございます。一つの御意見であろうと思います。また、「諸港」という雑誌に、一九八〇年十二月号でございます。中川八洋という有名な教授でございます。「食糧安全保障は真赤な嘘である」という論文がございます。これもそういう心配はせぬでもいいという一つの指摘でございます。また過去の現実として、大平総理の政策研究会報告書でございます。「総合安全保障戦略」と題する総合安全保障研究グループの発表の結論の中で、四つのまさかの事態というものを想像するが、そういったことは起こり得ないであろうといったような指摘がなされているわけでございます。そこへ加えて現実の問題として、先ほど来食糧問題は世界的なマクロな観点からも考えることは必要であるという御指摘がございましたけれども、かってカーター米国大統領は、対ソ穀物制裁というものを食糧戦略として行ったけれども、レーガン大統領は、大統領選挙の中でそういうことは続けないのだということを公約して、現実に八一年四月二十四日にこれを解除しておる。私はこういった中で、先ほど御指摘も先生方からございましたけれども、余り食糧について我が国は大きな心配をする必要がないのではないかという気もするわけでございます。並木先生いかがですか、その辺のずばり御心境を承りたいと思います。
  21. 並木正吉

    参考人並木正吉君) 世界的な食糧需給見通しとか、それからどういう、食糧需給に対して危険な状態が起こり得るかという確率という点だけで申しますと、私はそんなに高い確率とは思ってはおりませんが、しかし、そのことと絶対に起こらないということとは別だというふうに思います。したがって、世界的な食糧情勢を考えて、多分日本食糧輸入できなくなるような事態は起こらないだろうという、確率的な見通しで食糧の安全確保ということを考えることは私は間違いではないかというふうに考えております。それが私の立場でございます。
  22. 石井一二

    ○石井一二君 やや私と意見を異にいたす面もなきにしもあらずですが、並行的な論議になると思いますので次に進ませていただきたいと思います。  先生のお説の中で、発展途上国食糧生産への協力を強く力説されたと思います。私はこれももっともなことだと思いますけれども、現在も毎日のように、新聞を見てもエチオピア等において飢餓の境をさまよっておられる方々の写真というものが写っておりますが、ちなみに、一般論として人口増加の推移を見た場合に、年率一・七%が二十世紀までの人口増加率と言われておりますが、九割まで頭数では発展途上国で人口がふえているにもかかわらず、発展途上国食糧消費量は先進国のそれよりも統計上は極めて低いものになっている。約半分でございます。したがって、穀物消費単位に換算した人口増加率は一・三%と推定され、その結果二十一世紀初頭においては食糧の心配はない、こういったような学説があるわけでございますが、現実、きょうこの日にもそういった飢餓の境をさまよっておる人々の数は極めて多いわけでございます。私は、そういった中で先生の御指摘である発展途上国食糧協力ということは当然であろうと思いますが、なぜ、では現実に先進諸国がそれを具体的に軍備を削ってまでやらないか、そういったことを考えてみた場合に、極めて非人間的な発言のように聞こえるかもわかりませんが、恐らくどんどん新たな食糧増産協力をしても今よりもさらに大きな人口増加率となってもっと大きな人口問題を巻き起こす可能性があるのではないかという悪循環を恐れておる気持ちが私は潜在的にあるのではないか、そのような気がするわけでございますが、発展途上国における人口問題の増加率、現状等について私の申したような考えに御賛同の一面があろうかどうか、その辺いかがでございましょう。
  23. 並木正吉

    参考人並木正吉君) 幾つか御質問の内容が分かれておったと思いますが、穀物消費単位に換算した人口増加率が一・三%程度という数字は多分私が言ったのではないかというふうに思います。かつてそういうことを強調したことがございます。しかし、それは穀物生産が異常気象にもかかわらず年率二・五%程度の勢いで一九七〇年代、八〇年代伸びているということとの関連で今の一・三%という数字を挙げて、世界全体で考えるならば一人当たりの消費水準がもし不変だとすれば、世界食糧の不足ということは平均的な形で起こり得ないというのが私の考え方でございます。しかし、そのことと世界食糧問題がないといいますか、世界について食糧問題を考える必要がないということは全く別のことでございまして、発展途上国についてはますます一人当たりの消費水準が減少していく見通しの地域が西アフリカ、南アジアについて事情が好転しない場合といいますか、これから先を見通したときに事情が不利な条件が重なったときにはそういう地帯があるわけでございます。そういうことで私は、御指摘になりました発展途上国食糧問題が非常に重要な問題であるということについては、世界全体としての食糧不足について、日本食糧輸入について困難が起こるような事態は比較的避けられると思うけれどもということと両立するように考えております。  それから二番目の問題でございますが、発展途上国に対する援助を考えたときに、人口増加との悪循環が起きるから結局やってもある意味ではむだではないかと、端的に申せばそういう考え方もあり得るわけですが、私はやはり発展途上国における食糧増産と、人口の増加に対する別の家族計画については別途進めるべきであって、これは少しずつ浸透してきているというふうに理解をしております。
  24. 石井一二

    ○石井一二君 違った角度の質問をさらに並木先先にもう一つお願い申し上げたいと思いますが、先生のお話の中で、特に我が国の農産物生産体制の脆弱性に触れられて水田の生産力を最高度にしておくべきであると、そのように私は力説されたように記憶をいたしておりますが、そのとおりでしょうか。
  25. 並木正吉

    参考人並木正吉君) そのとおりでございます。
  26. 石井一二

    ○石井一二君 私は、理論的には正しいですが、実際的にはその考え方はむしろ違った問題を起こし得ると思うのでございます。なぜならば、我が国の貿易構造を見ていただきますと、御承知のごとく貿易立国でございますけれども、今先進諸国と激烈な貿易摩擦に直面をしておる。仮にもし我が国が、我が国の生産体制を最高なものにしてアメリカさん、食料品の輸入はお断り申し上げますと言った場合に、違った余波というものが十二分に起こり得る、違った意味のもっと強力な経済摩擦に我々は直面をし、輸出産業は重大な被害をこうむる。水田の生産力というものは潜在的に最高力を発揮し得るような体制を整えて、現在は違った国から輸入をしておくというような現在の方法がベストであろうと私は思うのでございます。特に、現実の我が国の農村の現在の姿を見た場合に、御承知のように、兼業農家のパーセンテージというものはどんどんふえておるわけでございます。天災さえなければ全国どこでも十アール当たり四百から六百キログラムの収量ができるというような体制になっております。百時間以下の月間の労働時間でも機械で片手間に農業はやれます。食管制度が非常に手厚く守られておりまして、大もうけもないかわりに十分飯も食い、生活もできるだけの体制というものを築いておる。ましてや、兼業ということで都市周辺では特に仕事もせにゃならぬ。私は、こういった中で先祖伝来の土地をそう手離すということは難しいがゆえに、農用地利用増進事業なんというものも制度の上ではできてもまだまだ利用率の上で問題がある。こういった中で、潜在的な生産能力さえ確保しておれば現在それを最高限度に発揮する努力はむしろ避けた方がよいと思うわけでございますが、その辺私との見解の相違について再度御意見を承りたい。
  27. 並木正吉

    参考人並木正吉君) 現在、兼業農家が日本の水田面積の五割くらいを経営しているという事情がございますので、そういう事情を考えたときに、いざというときには兼業農家、特にそこでかつて米をつくった経験のある中年齢以上の人に頑張ってもらえば潜在的な生産力が発揮できるという考え方がございますが、私は現状においてはその考え方は間違っておらないというふうに思います。ただし、将来のことを考えましたときに、第二種兼業農家の跡取りたちといいますか若い世代は、一たんそういう状態になったときに潜在的な能力を発揮してもらうお米の担い手としての技術を私は持っておらないと思います。そういう意味で、いざというときの水田の生産力の確保を図るためには、時間はかかることですけれども、またそのことについてそんなに深い心配は要らないわけでございますが、少数の能率のいい経営のできる農家が水田におけるシェアを高めることができるようにそういう体制を進めていくことが今先生が言われました潜在生産力の発揮という観点からもどうしても必要になるというふうに考えております。
  28. 石井一二

    ○石井一二君 ごもっともな御答弁でございますが、それに関連して、農水省の大臣官房企画室長吉國さんでございますか、特に今潜在的な生産力を確保するためにも農耕地の大規模化が不可欠であるというのは自明の理だと思います。  そういう意味で、私は先ほどちょっと触れました農用地利用推進事業も含めて、土地の賃貸契約等も含めて基本的な行政の御方向を若干示唆願えればありがたいと思います。
  29. 吉國隆

    説明員吉國隆君) 構造政策についてのお尋ねでございますが、先生おっしゃいましたように、我が国の農業の生産性という点からしますと、いわゆる土地利用型の農業、穀物等においてでございますが、規模の拡大が非常におくれてきておるということでございます。  この原因として私ども考えておりますのは、やはり土地を先祖代々の資産として考えるという傾向があったということ、それからまた、在宅通勤兼業という形が先生もおっしゃいましたが普遍的になってきた、こういった事情からであろうというふうに考えておりまして、そういった面からいたしますとなかなか所有権の集積という形での規模拡大は進めにくいという認識に立ちまして、御指摘のございましたように、農用地利用増進法を基軸といたしまして賃貸借を進めていくという方向を目指しておるわけでございます。あわせまして賃貸借ということでは進めにくい場合につきましては、少なくとも作業は現在の機械化による高生産農薬になじむような形に地域の農家の話し合いによりまして能率の高い生産組織をつくっていくというような形を交えまして進めていきたい。そのために地域単位での農家の話し合いによる土地利用調整という角度を農政の中に取り込んで進めておるところでございます。
  30. 石井一二

    ○石井一二君 ありがとうございます。  時間の関係もございますので、若干資源関係、特に希少金属関連の質問をしたいと思います。  先ほど来、尾本参考人より極めて実務経験に基づいたありがたい御指導をいただいたように思うわけでございます。特に軽備協会時代には大変な御苦労もあったようでございまして、現在軽備協会という民間から、参考人御指摘のごとく、備蓄は国がやるべきだという方向に沿っていささかの予算計上もされておることもうれしく思うわけでございます。  それに関連して私は本日お越しの鉱業課長、資源エネルギー庁の高木課長にお聞きをいたしたいわけでございますが、参考人御指摘のごとく、五十八年から六十二年までということで六十日分の備蓄をやるという計画が発足しておるやに私は仄聞をいたしております。例えばちなみに五十九年度予算は十億九千九百三万三千円であろうかと認識をいたすわけでございますが、五十八年の初年度における実績を見たら、わずか十二日分しか蓄積をされていないように聞いております。また五十九年度は四・八日分とさらに成績が悪くなっておる。本来は国家備蓄が二十五日分、国と民間による共同備蓄が二十五日分、それで民間が十日分、それが本来の六十日の内訳であろうかと思いますが、この五カ年間の蓄積計画の国家安全保障見地から見た現在の実績に対する御所見と行政的な責任官としての立場からの御所見をあわせてお願い申し上げたいと思います。
  31. 高木俊毅

    説明員(高木俊毅君) ただいま先生御指摘のとおり、このレアメタルにつきましては、経済安全保障の観点から昨年度より六十日分を目標にいたしまして備蓄を進めているところでございます。ちなみに昨年につきましては、先生御指摘のとおり、十二日分というのを五十八年度につきましては達成したわけでございます。ただし、何分にも、御案内のとおり、現状におきます財政硬直化の中におきまして、非常に厳しい予算編成並びに予算の査定状況並びにマイナスシーリングにおきます要求下におきまして、五十九年度は当初計画でございますと、やはり昨年同様十二日分を積み増したい計画であったわけでございますが、不幸にいたしまして四・八日分と、こういう結果に陥ったわけでございます。したがいまして、予算額にいたしましても前年度七億、本年度にいたしましては十億——約十一億でございますが、そういう状況に相なっておる次第でございます。  それから、ただしこれは備蓄といいますと、非常にお金を食うと言った方がいいかと思いますけれども、非常に管理経費あるいは倉庫経費等がかかるわけでございまして、これらを幾分なりとも少なくする観点から、五十九年度におきましては倉庫を建設すべくそういう予算等をいただいて、現在鋭意土地を手当て中というところでございます。今後私どもといたしましては努力をしてまいりたいと思いますけれども、この備蓄制度につきましては、昨年国会審議におきましても御支援をいただいたわけでございますけれども、現状におきましては、そういう財政問題に直面してなかなか厳しい状況にあるということを申し添えさしていただきたいと思います。
  32. 石井一二

    ○石井一二君 ちょっとこの備蓄対象物質について専門家でございます尾本先生にお聞きをしておきたいわけでございますが、今課長の答弁になられた備蓄計画等によりますと、七鉱種が対象となっております。いわゆるニッケル、クロム、コバルト、タングステン、モリブデン、マンガン、バナジウムでございますが、よくレアメタルとして十一種目が出てくるわけでございまして、これにストロンチウム、アンチモン、ニオブ、それからもう一つぐらい加わるわけでございますが、今申した七鉱種以外はそう希少金属として国家の安全保障の観点から大事じゃないのかどうか。ややその辺の専門家としての御指導をいただければありがたいと思います。不勉強でございまして失礼いたします。
  33. 尾本信平

    参考人尾本信平君) 七品目になったということにつきましては、私どもは必ずしもそれでよろしいというふうに考えておるわけではございません。したがいまして、通産省の原案どおり十一品副全部をすべきであるというふうに現在でも思っております。と同時に、さらに今後科学あるいは産業がどんどん変わっていきますから、そういたしますと、レアメタルなんというものは恐らく日進月歩で違ってくるんではないかというふうに思います。わずかなもので大きな仕事ができなくなるというふうなことがございますので、この品目については十品目が二十品目になろうとどうであろうと、むしろ自動的にそういうのが必要になったらどんどん通産省で変えてよろしいというふうにすべきであるということを私は当時申し上げておったわけでございます。  御質問に対しましては、十一品目全部やるべきである、私どもの立場としては七品目でよろしいと言っているわけではございません。
  34. 石井一二

    ○石井一二君 現在、我々は参議院の外交総合安全保障に関する調査特別委員会を開いているわけでございますから、安全保障的な見地から、特にソ連の問題について、若干時間の許す範囲で聞いておきたいと思うわけでございます。  もしこの世の中にソ連という国がなかったならば、レアメタルの問題というものは今日ほど大きくクローズアップされなかったと思うわけでございますが、いろいろ脅威を感ずる昨今でございます。例えば具体的には、モザンビーク、アンゴラ、エチオピアと友好協力条約をソ連が結んだことは御承知のとおりでございます。また最近の報道では、ソ連の海軍はアルファ型原子力潜水艦を建造、船体はチタン合金でできておる。潜航深度は九百メートル余りで米国潜水艦の三倍、水中最高速力は四十三ノットと、極めて強力なものでございます。アメリカはこれに対抗するために、ソ連よりももっともっと高いコストでしかこれができないという現状にあるように聞いております。  また、最近の南アフリカ地域における代表的な紛争を見てみましても、南ローデシア紛争、ナミビア独立紛争、アンゴラの内紛とかザイールの紛争もございます。また我が国が最も頼りにいたしております南アフリカ共和国にいたしましても、人口の大部分が黒人であるということ、そして徐々に黒人の皆さん方の自覚と力が増加し、国内の混乱を招く可能性があるのではないかと言われておるわけでございます。こういったさなかに、つい数年前のソ連の機関紙でございますプラウダは、アンゴラにおける人民が勝利をしつつあることを報じる報道の中で次のようなことを言っているわけでございます。アンゴラから西側の影響力が取り除かれるだけではなく、ナミビア、南アフリカ共和国、ジンバブエにおける人種差別政権に対する人民の解放闘争への力強い刺激となるというような表現でございまして、極めて好戦的でございます。  私は、このような中で、我が国のレアメタルの安全確保という観点から、最近の南アフリカを中心としたソ連の行動戦略について、どのような御所見をお持ちか、どなたでも結構でございますから、ひとつ我と思わん専門家の方の簡単な御所見、御指導を一口いただきたいと思います。  以上で私の時間が多分なくなると思います。ありがとうございます。  有志がなければ御指名を申し上げますが——それじゃ深海先生ひとつ御所見をお願いします。
  35. 深海博明

    参考人深海博明君) そういう意味であれば、確かにソ連が非常に自国自身も、まあ後でもし必要ならば、ソ連がどれくらいレアメタル資源力があるかというあれもあるのでございますが、自国の資源とそれから主要な、今問題になっておりますのはレアメタルの保有国であります、いわば南アあるいはアフリカ諸国に手を広げ、あるいはその影響力を出しているということは確かでございますが、ただ私は非常にソ連のそういう政策について、ある意味では楽観的な見解を持っておりますのは、いわばこれは個人的な見解でございますけれども、政治支配あるいは軍事的な形では権力を確保できても、それが経済建設の段階になりますと、すべて実は失敗するという状況でございまして、したがいまして政権を確保しても、それが今度は経済建設というような形になりますと、ソ連はむしろ影響力を弱めているという傾向がございますので、確かに短期的には非常に脅威の状況があることは事実でございますけれども、同時に長期的な形で経済建設でソ連の影響力がさらに発揮されて、それがうまくいくような形でどうもアフリカ諸国はいかないのではないかという意味で言いますと、今の状況は憂慮すべきではございますけれども、今後永遠にソ連の影響力が軍事的その他の状況から今度は経済建設の段階になった場合に一体どうなるのかという意味で言いますと、やや脅威は減る可能性があるんではないかというふうに思っております。
  36. 石井一二

    ○石井一二君 ありがとうございました。時間が参りましたので……。
  37. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 どうもお忙しいときに先生方にお話しいただきまして、ありがとうございました。  私は、時間もございませんから二、三に区切ってお聞きしたいと思います。  深海先生にまずお聞きしたいと思うんですが、総合的に対応していかなければいけないんだということで強調なさっておったわけですが、私も同感です。その際にやっぱり世界全体の中で考えた場合に、特に東側、ソビエトですね、中国もございますが、こういったところに今後の日本としての目を向けていかなければならぬという点があったと思うんでございますが、この点は具体的に先生のお考えはどういうことを指しておるのか、この点が一つです。  それからもう一つの問題として、有事緊急対策に少し今までの対応というのは置かれ過ぎておったのではないか、したがって平時には一体どうするのかということをあわせて検討する必要がある、こういうお話でなかったかと思うんでございますが、平時の場合に、エネルギー問題として特に日本状況について、先ほど来次先生からもお話しございましたが、一体どういう程度対応がいいのか、今の備蓄の実態と照らし合わして、どの程度が平時の場合でも対応していかなきゃならぬのか、こういった点について、もし先生の御説があればお聞きしておきたいと思います。
  38. 深海博明

    参考人深海博明君) 今二つ御質問をいただいたと思いますので、順を追って回答さしていただきたいと思います。  第一の東側諸国、特にソ連のここで言う資源エネルギー食料問題について持つ意味はどういうところにあるのかという御指摘でございまして、これは私が考えますところは、大体三つないし四つの点から言ってソ連重要性があるのではないかというふうに思うわけでございます。  第一点は、日本と同じような意味資源輸入国という意味での問題でございます。特にきょうの内容でいたしますと、これは食糧問題というのにつきましては、ソ連は非常に資源豊富国ではございますけれども、現在では食糧政策あるいは食糧生産の失敗によってというか、いろいろ原因は別といたしまして、主要な世界食糧輸入国になっている。その意味で言いますと、その一つとしては、食糧輸入ソ連の動向がどうなるのかということが世界食糧需給関係あるいは日本食糧輸入への影響をもたらす可能性があるというのが第一の点でございます。  それから第二の点は、先ほど石井先生から御質問をいただいたような点でございまして、ソ連レアメタルその他、これは石油や石炭あるいはそういうエネルギー資源を含めまして、非常に資源大国、資源を持てる国でございまして、そのような意味で申しますと、一つは、ソ連は自国が豊富であるだけではなくて、主要なアフリカのそういうレアメタルの所有国に対していろいろな形での政治的軍事的な進出、あるいはそういう影響を拡大しているという、可能性があれば、これはまた議論の余地があるところではございますけれども、最近イランとの外交関係を復活させて、今のような意味では中東諸国への影響力を強めようとしている。そういう点で言いますと、日本の重要な輸入先へのいわばソ連の影響力というのも、これは考慮して見る点があるのではなかろうか。  第三番目は、これは日本ソ連との関連という意味でございまして、ソ連はシベリアその他で多くの資源を持っておりまして、そして今のソ連経済状況を考えてみますと、外貨あるいは技術、あるいは資本財等々を輸入したいということで、日本に対していわば資源開発を求めるという動きがございまして、そういう点で言いますと、日本側がソ連との関連でどういうふうな資源供給、あるいはそういう関係を結ぶのかということでございまして、今のような意味で言うと日本資源輸入で競合する面と、それから日本の重要な資源輸入国、あるいは重要な地域へのソ連の影響力が強まっているという問題と、それから第三は日本ソ連とのかかわりの中で資源保有国、あるいは資源輸出国としてのソ連日本がどういうふうにかかわるのかということが非常に大きな問題ではないかというふうに思います。  それから、これはいわば緊急時のレベルで考えてみますと、例のソ連の影響が強まってきたときに、輸送ルートその他というような、まさに狭い意味での安全保障問題もあるかと思いますが、きょうの点では、今言いました輸入国、それから重要な日本輸入先へのソ連の影響力の増大、そして第三が日本とそれからソ連とのいわば資源輸入、輸出という関係の三つから言って、東側、特にソ連の持つ重要性は重要ではないかということを申し上げさしていただいたわけでございます。  それから、第二の先生の御質問の、平時における輸入国、日本としてのいわばエネルギー戦略というものをどういうふうに考えたらいいのかということの御質問だったというふうに思うんでございますが、私はこれをまた細かく説明いたしますと、時間の関係がございますので、ごく大きな意味で申し上げたい点を言いますと、平時の状況におきましては私はいわゆる柔軟な二正面作戦というのがまず必要ではないかというふうに思っているわけでございます。で、これは平時におきましても、先ほど来次委員から御紹介がございましたように、一たん事ある等々ということがございますから、平時におきましても、ある意味ではある程度の備蓄を保持をする。それから、いわば危機管理政策みたいな意味でのそういう異常時に対する備えを怠らないということがまず前提としてあるといたしますと、私はそういう日本は基本的にエネルギーについてはだんだんと自給率を高めていくという政策があるとしても対外的に依存をせざるを得ないというのが現状であるといたしますと、そういう対外的な依存、輸入をどういう形、あるいは確保をどういうふうに安定化していくのかという意味でのいわば多様化転換政策というのが重要ではないかというふうに思っているわけでございまして、そのような意味では、やはり現状では石油依存というのがそう簡単にはなくなりませんけれども、三大代替エネルギーの柱となっております石炭、天然ガス、原子力、それから資源エネルギー等々というようなものもございますけれども、三つのいわば三大代替エネルギー源と石油とのバランスを今後どうしていったらいいのかというような形での多様化問題。それから、その石油について言えば、輸入源を多様化していくというようなそういうもの。  それから、もう一つ、非常に重要なのは、私はやはり先ほど来次先生が御指摘になりましたけれども、日本エネルギー需要をできるだけふやさない形で有効利用、節約に努めていくというような、そういう面を含めまして、有事に備える政策と同時に、いわば対外的な輸入をいかに安定化さしていくのかという問題、あるいは安定的な確保を図るかという、そういう政策を考えていくべきであって、それは多角化路線、それから個々の国々との間の経済協力その他を進める形での安定化を図るというような意味でいろいろな形で多面的に展開されていくべきではないかというふうに考えています。
  39. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 ありがとうございました。  今の問題の後段のエネルギーの問題で末次先生にちょっとお聞きしておきたいと思うんですが、今深海先生からお話ございましたが、それとあわせまして、エネルギーの中で今日本原子力発電というのですか、そういう方向にかなり力を置いておるわけですけれども、これはアメリカの場合には、もう既に原子力発電を取りやめるというのですか、そういう傾向等も出ておるんですが、この点について先生はどういう将来展望を含めてお考えを持っておるのかお聞きしたいと思うのが一つと、それから、システム化というのですか、構造的な面でエネルギー石油行政、電力、ガス、そういうものを含めて、これがタコつぼ的な状況にあって、そこを何とかもっと効率的に検討しなきゃならぬということで、構造的な改革が必要だということが提起されたのですが、これは先生は具体的にどういう改革方法をお持ちになっておるのか、あわせてお聞きしたいと思うんです。
  40. 末次克彦

    参考人末次克彦君) 原子力につきましては、現在公表されております各エネルギー関連会社のコスト試算からいたしまして、原子力が例えばキロワット当たり十三円ということで最も安い、電力生産システムとしては原子力は最も安いということがあらゆる資料で公表されております。我々はそれを信じまして、一つエネルギー、特に発電源を選択していく上ではこのエネルギーが最も経済性が強いという点については、これまでのところそれを信じているわけでございます。  それから対外的に燃料資源を依存しておる、外国に依存しておるということ、あるいはいろんな国際的な変動に対してどういうエネルギーの供給システムが最も拮抗力があるのかという、そういう観点からいたしましても、原子力発電の場合は発電原価に占める燃料費、つまり濃縮ウランとか天然ウラン、そういう外国にストレートに依存している部分のコストに占める割合が一番小さい。つまり日本の国内の工業力をもちまして原子炉をつくり、あるいは周辺の機械をつくって、そういう資本費部分が非常に高いわけでございますから、これはいわば純国内エネルギーとして、そういう対外的な揺さぶりに対しては自国の意思でもってかなり対応できる。そういう意味ではすぐれた構造を持っているという点においても評価しているわけでございます。しかし、今やこれからの問題は、ウランから必然的に出てまいります放射能という問題をやはり我々人類が安全に管理、コントロールし得るという一つの挑戦でございますね。我々人類のとりあえずの大きな挑戦がこの部門にある。今までは二十年近く日本原子力発電所を動かしてきて事故が起きてない。特別大きな事故が起きてない。特にそれが問題で原子力発電所をとめなきゃならないというような事態には至っていない。そこまでこなしてきているという日本の市民的な努力、国民的努力というものは我々みずから大いに評価すべきことだろうと思いますけれども、しかし現在までのところ、まだそうやってプルトニウムを含んだような使用済みの核燃料、そういうものの中に含まれている低度、中度、高濃度の放射能というものを完全にシステムとして国内で処理していくという体制が必ずしもできていない。使用済み燃料をイギリス、フランスにわざわざ運んで、そしてそれで処理してもらっている。それについては日本は処理できないだろうということを、裏を見られまして大変多額のコストを要求されているということもございます。これは、やっぱりエネルギー供給の中で原子力経済性を評価し、そしてその対外的な脆弱性を評価する、それでこれをかなり大きく使い込んでいくというのであれば、その最終的な始末、処分までこの国の中で、一つの単位でございます社会体の中で処理していくということが、これはある意味では国際的な責任の一端でもございましょうし、ある意味では脆弱性を外国に握られないという点でもやはりやっていかなきゃならない。そのために、いわゆるパブリック・アクセプタンスといいますか、社会的な理解というものを得られるように地方の政治、中央政治あるいは従事しております電力産業のメンバーが一段と努力をしなければならないということではないか、そういうぐあいに評価しております。  それから、構造的、システム的な対応が必要じゃないかという点は、先ほど申し上げましたように、このままでは石油をめぐる石油企業あるいはガソリンを売っております流通業者、あるいは何十兆円という金額が動きますので、これに絡みます金融業、あるいはそれを運びます海運界、あるいはそれを保証いたします保険業、あるいは対外的にそれを取引いたします商社界、このように石油というものを取り巻く利害関係者といいますか、そのシステムというのは実に壮大でございます。ましてや、海外で石油資源開発するということになりますと、我々が想像ができないような単位の資金が動きます。またその背景には自動車産業もございます。非常に現代で最も壮絶なる大きな仕組みというものが石油をめぐってはでき上がっている。したがって、ある意味では極めて保守的でございます。このシステムを改編していくということは大変いろいろ難しいリアクションもございます。ですから、国際的にそういう中程度の安定という展望ができますと、やはり便利でございますし、変革に対するエネルギーというものは目の前の危機がない限りなかなか起きてこないということで、現存日本が享受しております石油の割合というものはなかなか容易には変わらないんじゃないかという感じがするわけでございます。しかし、さっき言いましたように、全体にこの港へ入ってまいります一次エネルギー資源というものを効率的に使うためには、やはりほかの石炭とかあるいは天然ガスとか、そういうものを上手に使わなきゃいけない。そのためには、石油産業も電力の供給あるいは熱の供給、そういった分野にも参入し得ると。自分たちはもう石油しか守るものはないんだということで非常に保守的に固まってしまうのか、それとも技術革新をしながらそういう他のエネルギー分野にも参入していけるというような社会的な雰囲気をつくり出していく。それによって、いわば石油族を石油だけの部落の中に閉じ込めないというような柔軟なシステム的対応がないと横の連携的な一次エネルギーの最大効率利用を目指したシステム変革というのはなかなか難しいんではないかと思いますし、そんな感じを持って申し上げたわけでございます。
  41. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 どうもありがとうございました。  ついでに、ちょっとここで松尾さんですか、石油部長も来ておりますからお聞きしておきたいのですが、鳴り物入りで国会でも議論になりましたが、大陸棚ですね、石油開発、あれは今どうなっておるんですか。
  42. 松尾邦彦

    政府委員(松尾邦彦君) 日韓大陸棚の石油開発のことをお尋ねの趣旨と存じますけれども、かねて特別の条約、法律につきまして国会の御審議を得て、その後日韓両国での開発が進められてきてはおるわけでございますけれども、本年も一本試掘をいたして、その成果が期待されておりましたが、これまでの試掘の状況は、残念ながらまだ油の賦存について十分な成果を上げることができなかったわけでございます。しかし、今後とも日韓両国の開発権のある企業、寄り寄り相談をいたしまして、来年度以降も引き続き精力的に探鉱開発事業を継続してまいりたいということで取り組んでいるのが実情でございます。
  43. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 今の問題で、官庁答弁はさっきの答弁のようなんですが、先生方で、末次先生か深海先生か、日韓大陸棚に対してどうお考えになっているか、見通しを含めて、もしそこら辺で何かあればお聞きしたいと思うんですが、いかがですか。
  44. 末次克彦

    参考人末次克彦君) 私は、特にこの日韓大陸棚について固有の知識を持ってはおりませんけれども、これはエネルギー資源問題を勉強している者という感じからいたしますと、やはり理想的には、なかなか両国関係の難しい中で、一つの共同部なプロジェクトに取り組み、そして一つの協力の成果として、両国ともに欠けております石油資源あるいはガス資源というものがそこで発見され、それを開発して、その利益というものをお互いにシェアする、享受するという一つのことができますれば、それは外交的に両国関係の改善に結びつけていく一つの要素として出てくるであろうという一般的な市民的な期待は持っております。  ただ、私が聞いておりますところ、なかなか地理的に、地質的に不確定で、構造上も石油及びガスのつぼが容易に見つからないというようなぐあいに承っておりまして、そういう意味では必ずしも楽観できないんじゃないかというぐあいに感じを持っております。
  45. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 これは別の機会にやりたいと思います。  そこで、並木先生にお伺いしたいと思いますが、私も農村出身ですけれども、今の農家は猫の目農政というんですか、こういう次々変わってくる行政の対応に余り信頼をしていないような、不信感が非常に強いんですよ。そういうことと、もう一つはやっぱり補助金で、補助金、補助金でやってきたものですから、私の言葉で言えば補助金麻薬というんですか、それにかかった麻薬患者みたいな状態、それで若い人たちは絶望感を一層深める、こういうのが私は、今、日本農業のもう一つ危機じゃないかと思うんですね。ですから、さっきいろいろ議論がございましたが、やはり潜在的な生産力といってみても、生産するのは農民ですね。その農民自体が命の日本農業に対して、もう率直に言って若い人ほど絶望感を持っておる、こういう傾向が農を離れさせておる一番大きな原因だと私は思っておるんです。そこで、そこら辺をどう払拭していくかというものも中長期的にしていかないと、私は農業の自給率というものは上がってこないし、同時にまた、我々がひとつ日本の国民の食糧を賄うんだという誇りもなくなっていくと、こういうような危機感を持っております。  そこで、先生のお話を聞いて共鳴するところも多かったんでございますが、いわゆる米価が異常に高いというこの問題、各国と比べてみて高い、その一番大きな原因がどこにあるのか。これは、農民の皆さんは米価を上げなくてもいいと言っておるんですよ。ただ問題は、コストがかかり過ぎる。例えば一年のうちに三日しか使わない田植え機なりそれから農耕機、そんなのを買わなければ今の農業はできない仕組みになっている。背のように牛馬じゃできないわけですね。こういったところを、例えばリース方式ではないですけれども、そういう方向でやっていくとぐっとコストは下がるわけですね。こういった面も私はやっぱり農業の自給体制を確立する中で大きいんじゃないかと思うんですが、そこら辺に対して先生方もし研究の結果があれば教えていただきたいということが一つ。  それからもう一つの問題として、有事の場合に、先ほどから論争をいろいろ聞きましたが、農水省の今の考え方というのは、例えば芋と米は大体つくってもまあ同じだから、いざという場合にはゴルフ場を掘り耕して芋を植えるとか、こういうことで有事には結構間に合う態勢があるんだという、こういう説もございます。しかし、今先生のお話では飼料穀物ですか、それをうまく調和できなかったところに有事態勢の万一という場合に危機があるんだというお話でございましたが、率直に言って農地というものは、減反をして一たび水田の水を張るのをなくすと、もう地割れまでして水がたまらないんですよ。水田に復帰ができないんです。これは私も経験的に知っておるわけですけれども、こういった中で手かなんかで有事の場合に賄い得ると、こういう発想が成り立ちますか。そこら辺の問題について先生のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  46. 並木正吉

    参考人並木正吉君) 最初に、農政がくるくる変わるということと関連しまして、若い人たちが希望を持たないということが一番大きな問題ではないかという御質問がございましたが、私は若い人たちが希望を持つようにするためには、先ほど来強調したことでございますが、水田の生産力をできるだけ発揮しても過剰生産にはならないという仕組みをつくることが若い人たちに対して希望を持たせる一番大事な方法ではなかろうかというふうに思っております。したがって、補助金麻薬というお話もございましたが、米価を上げることによって希望を持たせるのではなくて、今のような見通しを立てることによって希望を持たせることが大切だというふうに思います。  それから、機械の効率化ということにつきまして、いろいろ方法がないのかというお尋ねでございますが、まさに機械の効率をよくすることが米の生産費を下げるための一番大切な条件だというふうに私は思います。アメリカと日本の米の生産費の差は、これは十アール当たりでアメリカの場合には非常に乱暴に申しますと三万円、日本の場合には十三万円かかっておりますが、その十万円の違いの五万円は労働日数が少ないということ、それから、三万円は機械の購入及び償却代金がアメリカの方が少ないということで、肥料とか農薬とか燃料をたくさん使うということによる生産費の差は十万円の中の二万円ということでございますので、そういう意味で私は機械の効率的な利用が非常に大事なことだという御質問については全く賛成でございます。ただ、それをやっていくためにリースというやり方もあるわけでございますが、何といいましても第二種兼業農家がその機械を使ってやろうと思いましたときに、先生十分御案内かと思いますが、日が集中いたします。例えば日曜日に集中するとか、連休に集中するとかいうことがございますので、小さな農家が小さい面積で一つの機械を有効に使うということがなかなか難しい。したがって、私は基本的にはやはり規模の拡大ということを頭に置いて機械の効率的な利用も考えていくべきものだろうというふうに思います。  それから、有事の際において芋をつくって云々というお話がございましたが、多分その場合のサツマイモは畑を想定しておるんではなかろうかと思います。水田の場合ですと二毛作という考え方をできるだけ徹底するということですから、これはやはり米麦作が水田の場合には中心になってその有効利用を図るという考え方かと思います。  以上でございます。
  47. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 どうもありがとうございました。  最後に、もう一遍深海先生にお聞きして終わりたいと思いますが、先生から見た一番大事な問題だということで最後の方にお話がございましたが、二つは情報収集体制というか、処理体制ですね、もう一つ政府と国民の信頼関係、ここが大事だということですが、こういった安全保障にかかわるエネルギー資源食料の問題で、先生から見た信頼関係が損なわれておる問題点、もしお気づきの点があればお聞きしておきたいと思います。
  48. 深海博明

    参考人深海博明君) 一と二は割合関連しておりまして、一のような形で正確な情報を絶えず国民に流すという、そういうシステムができておりますと、信頼関係というのはできてくるんではないかというふうに思っているわけでございまして、実は私時間がなくてそういう発言を申し上げたんですが、確かに、例えば第一次石油危機の経緯を私どもが研究してまいりますと、ちょっと冗談めいた回答で申しわけございませんが、いわゆるトイレットペーパーあるいはその他のパニックが起こったときに、政府あるいは国側が大丈夫だという発言をいたしますと、むしろあれは危ないという形で買い付けに走るという、そういう事実が実際にはあったわけでございます。ただし、第二次石油危機のときに一部の週刊誌その他がまた同じようなことが起こるというようなことをあおり立てましたけれども、国民の側はその辺の経験を生かしまして、今度は騒がずに冷静に対応したということでございまして、今申しましたような意味でいえば、そういうような危機の経験を経、あるいはそういう情報がうまく伝達されるようなシステムができるといたしますと、信頼関係というのは維持され得ることでございまして、今欠如して非常に問題だというよりは、そういう努力を怠らないようにする必要があるのではないかという意味で申し上げさしていただいたわけでございます。
  49. 佐藤三吾

    佐藤三吾君 どうもありがとうございました。
  50. 和田教美

    和田教美君 時間の関係もございますので、私はこの委員会外交及び総合安全保障に関する調査特別委員会でございますので、専ら総合安全保障経済安全保障という観点に絞って参考人方々に御質問をいたしたいと思います。  まず最初に深海先生に二点ばかしお伺いしたいと思います。  私はこの安全保障という問題は、二言で言えば自国の国民生活をさまざまな脅威から守ることだというふうに定義していいんじゃないかと思うんです。ですから、本来安全保障政策というのは総合的なものだというふうに思うんです。ところが、経済安全保障という考え方日本で盛んに論じられるようになったのは、言うまでもなく、先生もお触れになったかと思いますが、第一次石油ショックでいわゆる油断の問題がきっかけになって、やれエネルギー危機にどうするかとか、食糧危機にどうするかというふうな問題の提起、先生のおっしゃる緊急事態に対する対応というふうな問題が非常にクローズアップされた形で論じられているんだろうと思うんです。さっき先生が御指摘になりましたそういう緊急事態対応策というだけでなくて、もっと平時の問題ですね、あるいはまた中長期的な問題ということが大事だという御指摘ございましたけれども、私全くそのとおりだろうと思います。同時に、安全保障論という立場から見ますと、今の緊急事態的な問題は、主として脅威に対処する対応策、努力といいますか、自助努力ということだと思うんですが、それと同時にその脅威そのものをなくす努力という問題も非常に重要だと思うんです。ですから、例えば世界経済の相互依存関係を確実に運用していくとか、例えば最近西ヨーロッパなどに大分出てきております保護貿易主義、そういうものに対してうまく巻き返していく、そして自前貿易体制を維持していくというふうな問題、あるいはまた開発途上国に対する援助の問題、すべてそういう観点からの総合安全保障経済安全保障につながっていくと思うんですけれども、そういう問題について、先生はその脅威をなくしていく努力という問題について、特にどういう問題に注意していかなければならないとお考えか、その点が第一点でございます。  それからもう一つは、先生がまた御指摘になりました安全度を高めるという問題とコストの問題ですね、当然財政負担を伴うわけでございますから、食糧の自給度を高めるということ一つをとっても相当なコストがかかるわけですが、これがしかもしばしばトレードオフの関係に立つんだということをおっしゃいましたけれども、私もそのとおりではないかと思います。特に当面の問題としてこの経済安全保障という問題を考えていく場合の困難性は非常な財政危機にあるということで、先ほどからの議論を聞いておりましても、このコストの問題と安全性を高めるという問題とのトレードオフの関係というのは非常に重要な問題だと思うんですが、そこをどういうところで調和点をとっていくかということですね。やっぱり政策として考える場合は、安全保障ということを第一に考えるべきであるかどうか、少々コストの問題は犠牲にしていくべきかどうか。その辺どうお考えになるか。この二点をお聞きしたいと思います。
  51. 深海博明

    参考人深海博明君) 大変本質的な重要な御質問を受けまして、十分に答えられるかどうか不安でございますが、早速お返事を申し上げたいと思うんです。  今、和田先生から御指摘いただきましたように、一番重要なことは、そういう脅威になるような事態が起こらなくするというのがこれはもう根本的な政策でございまして、それで対応できない事態、そういうことでも脅威をなくせない場合に実は脅威が起こったらどうなるかということで、緊急時対策あるいは備蓄政策というようなものが考えられているわけでございますから、そういう面で申しますと、いわばここでの外交総合安全保障の基本政策というのは、そういった事態を引き起こさない、脅威自体を取り除くにはどうすべきかということが基本戦略であるというのは先生のおっしゃるとおりだというふうに思います。私自身に問われたのは、一体それはどういうふうにしたらいいのかということでございますけれども、やはりこれは基本的には私は三つの戦略ではないかというふうに思います。  一つは、何といいましても一番大きな脅威や危機が起こる、緊急事態が起こるというのは、やはりこれは平和でない状態、戦争ないしは紛争等々が起こるということでございますから、今日本がいわば戦争放棄あるいは平和国家としての基本線を打ち出しているわけでございますから、そういう政策に沿っての外交努力なりそういう形での平和外交、あるいは平和努力、あるいはそういう紛争が起こったときに紛争の解決に努力をするというのは、これは言うまでもない根本的な問題だというふうに思います。  それから第二の問題は、紛争がどうして起こるのかという最近の紛争理論の研究によりますと、これはいろいろな意味での格差が増大すると紛争が起こるという、そういうことが言われているわけです。ですから、そうなりますと、例えば先進国相互間で言えばそういう貿易格差であるとか、あるいは成長率格差であるとか、あるいは南北間で言えば南北間の格差増大というような意味で、そういう意味で言いますと、やはりある程度調和のとれた発展なり、バランスのとれたそういうための努力、すなわちこれは前にここで御検討になったということを聞いておりますけれども、いわば経済協力等々というような手段、あるいは今は外に向かってはかり申し上げたんですが、内であれば、やはりそういう意味で言えば輸入増大、あるいは国内の開放政策であるとか、あるいは国内的な産業調整であるというような、そういうものを結びつけた形でのいろいろな意味での格差是正策というのが重要ではなかろうか。  それから第三番目は、もう一つ重要な点というのは、先ほど先生も御指摘になったんでございますけれども、日本が外国から資源輸入して対外依存度が高いということですけれども、対外依存度が高いということはそのまま脆弱であるということに必ずしも結びつかないケースがある。すなわち、先ほど尾木参考人からも話が出ましたように、日本側に相手国が圧倒的に依存するような状態でありますと、日本輸入を減らしますと相手国の経済は破綻し、その産業は破綻するというような、そういう状態になっている。したがいまして、相互的に、経済関係をお互いに切り離しがたいような、お互いに関係を切ると非常にコストが双方に高いような関係に持っていくという、いわば真の相互依存関係の確立、そういう政策手段というのは日本はもっと真剣に考えたらいいのではないか。ですから、貿易面で言えば例えば資源輸入国に対して相手国の発展開発に不可欠な資本財だとか、技術とか、人的資源だとか、そういうものを供給できる。あるいはもう少し広い意味での交流を進めていくような形で、相互の関係を切り離しがたいものにしていくというような政策も重要ではないかというふうに脅威への対策としては思っているわけでございます。  それから、先生が御指摘になりました、これが一番重要な問題かつ困難な問題だというふうに思いますけれども、いわばできるだけ安いコストで、あるいは生活水準を下げないでどういうふうに緊急事態の対策である自給率の向上だとか備蓄をやるべきかという、こういうことでございまして、そうなりますと、一つはやはりこれは国民が全体として、あるいは国民的な合意で、一体目標をどういうふうに置くのかということが重要なポイントだというふうに思うんです。その意味でどういう目標設定をしたらいいのかということで、先ほど並木先生は違うことをおっしゃったんですが、私はやはりそういう脅威がどれくらい起こる可能性があって、それに対してのコストはどれくらいかかるのか、そういうコストを払えるのかどうかというようなことをお互いに議論し合って決めていくべきではないかというふうに思いまして、私自身の個人的な見解は、最低限度やはりどうしても備蓄というものも必要である。ただ、備蓄の水準がじゃあ三カ月なのか五カ月なのかということになりますと非常に大きな問題がございまして、大体今のめどですと三カ月ないし四カ月程度が最低必要であろうというふうに言われておりますから、それと、今のような意味での自給率の水準も、食糧についても例えば米だけでいいのか、ほかもなのか、こういうこともございますけれども、ある程度最低限度ミニマムレベルでの自給率の確保と、それからある程度納得できる備蓄の確保を前提といたします限りでは、急激に安全保障への確保のための自給率の向上、あるいはそれ以上の備蓄増大という形ではなくて、むしろ対外的な輸入なりそういうものをどういうふうにうまくやっていくか。長期的には基礎研究開発投資を進めるような形でだんだん安定性を増していくという政策は重要かと思いますけれども、現段階ではミニマムなレベルでの自給率、そしてまた今言ったある限度の備蓄を前提として、あと危機管理政策を立てた上では、私はやはり対外的な関係をうまく維持するようなことを前提として対外的な依存、輸入を維持していくという政策が一応今言った意味でのトレードオフ等々があるといたしますと、最適な政策ではないかというふうに考えております。
  52. 和田教美

    和田教美君 次に、末次参考人にお尋ねしたいと思いますが、今のお話をお聞きいたしますと、ペルシャ湾情勢、今程度の中規模程度のクライシスの場合には日本エネルギー情勢はそう混乱を起こさない、まあサウジアラビアがもし巻き込もれるというようなことになればまた状況は違うというふうなお話でございましたが、町ではやっぱりホルムズ海峡が封鎖された場合に一体どうなるんだ、第三次石油危機が起こるのかどうかというふうな議論が、我々も盛んにそういうことを質問されるわけでございますけれども、まず第一に一体例えばホルムズ海峡が封鎖された場合に、今の我が国の備蓄を使ってどの程度持ちこたえることができるのかというふうな推定そのものが新聞その他にいろいろ出るのがそれぞれまちまちなんですね。これは政府として外務省の見解が出たりいろいろ出るんですが、全然ばらばらなんですよ。これを何か一つの戦略を立てるのに、一つのまとまった想定というものがなければなかなか戦略が立ちにくいと思うんですけれども、そういうことについて抜けておるところがないかどうかという問題ですね。その辺をまずお聞きしたいわけでございます。  それから第二点に、末次さんは今の状態なら大丈夫というお話でございましたけれども、そしてこの間のロンドン・サミットの経済宣言、あるいはまたイラン・イラク紛争に関する議長声明というふうなものを見ましても、今は国際システムによって予見し得るいかなる問題にも対処し得る能力と意思を十分持っているというふうな表現で大丈夫だというふうなことを強調しておるわけでございます。多少石油不安という心理的な状態を起こさせないためにわざと楽観的な情報を流しているのではないかという感じも受けておるんですけれども、例えばいざという場合にはIEAの緊急融通制度で大丈夫だというふうなことを政府なんかも言っておりますけれども、あえて異論を唱えるわけではございませんけれども、このIEAによる緊急融通制度というものが果たして放出手続というふうな問題をめぐって問題がないのかどうか、これで果たして大丈夫なのかどうかというふうな点はどうお考えになるか、それが第二点でございます。  それから第三点は、何としても中東への依存度石油の場合には高過ぎるということは御指摘のとおりだと思います。そこで、どの程度まで中東への依存度を下げたらいいのか、下げられるのか。総合エネルギー調査会なんかの見方で五〇%弱まで持っていきたいというようなことを言っておられたように記憶しておるんですけれども、その辺のところがどうなのかということでございます。  それと関連して、先ほど来次さんも御指摘になりました代替エネルギー、新エネルギーに対する開発テンポがどうもスローダウンしているという問題は確かにあるだろうと思います。それに対して、要するに日本人はやっぱりどうも実際にパニック的な状態が起こらないとすぐ冷えちゃうという傾向があるわけなんですが、何か対応策があるのかどうかということ。  それから、ついでにもう一つ申し上げますと、備蓄の問題ですね。通産大臣も最近はもう少し備蓄をふやす必要があるというふうなことを言っておられますけれども、欧米諸国に比べると確かに備蓄率はまだ低い。現在は百二十三日分ぐらいでございますね。どの程度まで上げることが当面必要であるかどうかというふうなことについてお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  53. 末次克彦

    参考人末次克彦君) 現実に細目にわたりますデータはきょう御出席資源エネルギー庁の方でお持ちでございますので、実際のデータに即した分析ないしプレゼンテーションは政府の方がより確実だと思いますが、私は第三者としての感じだけを申し上げさせていただきたいと思いますが、このホルムズ海峡の封鎖云々の問題につきましてはこれはいろいろあるわけでございますけれども、ホルムズ海峡といえども公海部分がございます、国際海峡でございますから。例えば想定されるようなイランというような特定の国がそういう公海に対して機雷を流したり、あるいは艦船を派遣して封鎖をするというようなことが国際法上合法化されるのかどうかという点がございますから、この点にもし疑義があるといたしますれば、これはそのことに対して利害関係を持つ日米欧あるいはほかの諸国が公的に対応をしていくという当然の権利が生じますので、私はイラン一国が、自国の領海であれば別でございますけれども、公海部分にわたってまで国際的な理解を得られるような封鎖行為ができるかどうかについては大変疑問を持っております。  それから現実のパワーバランスからいきましても、それだけの封鎖能力というものを軍事的にイランというものが持ち得るのかどうか、あるいはイランではなくても、仮にシナリオを百八十度逆転して対岸のオマーンがそういう行為に出たような場合にもそういう能力があり得るのかどうか、この辺は冷静に判断し得る余地があると思いますので、ホルムズ海峡封鎖というのは大変新聞では見出しが大きくなってしまってまことに恐縮でございますけれども、冷静に分析すればそういうところがあるというぐあいに考えております。  それからIEAというものの評価でございますが、これは第一次、第二次石油危機を通じて西側の石油消費国が大変なコストをかけて人的資源を投入いたしましてつくり上げてきた機構だと思います。これは現実にはそういう危機が起きたときに、日本が幾ら石油が欲しいから融通してくれというぐあいに言ったときに、本当に物が来るかどうかということよりも石油の消費国が協力をしてそういう相談をし、緊急時に対応するというメカニズムをつくって、現実に店を開いている、何か起きたときに必ずそこで相談をしてある情報を出す、よくわからないことに対して一定の情報を出すということによって——危機というのは極めて心理的な要因が強いと思います。そして情報によって動かされます。ですから、一つのそういう権威を持った機構が一定の情報を出すということによって、この心理的な騒乱状態を静めるという効果は確かに大きいと思いますので、そういう意味一つのレーゾンデートル、存在価値を発揮していると思いますし、第二次石油危機のときにはそれなりの機能を発揮したというぐあいに思っております。現実には実際の物のやりとりということにまでは局面が至っておりませんので、これは何とも評価しがたいと思いますけれども、そういう今言いましたような機能というものは評価できるというぐあいに感じております。  それからどれくらい一体石油のガルフ依存度日本がシフトできるかどうかということだと思いますけれども、これはなぜこの第一次石油危機以降アメリカもヨーロッパ諸国もガルフ依存度を減らしたのに日本だけ逆にふえてしまったのかということをまず考えなければいけないと思いますが、そのことにつきましては石油産業の目から見ますと、将来的に長い将来にわたっていざ石油が足りない、もう少し追加的に欲しいといったときに一審やはり買いやすいという点ではガルフにそういうものが存在している。したがって、この関係は今余っているからということでなかなか切れない。将来先のことを考えればこの連中とはつき合っていかざるを得ないという大きな背景が日本石油産業の背景にあったんだろうと思います。  それからもう一つは、やはり湾岸産油園から石油を買うということによって彼らにドルが落ちる。そして初めて日本のいわゆる組み立て加工産業の商品、テレビ、自動車あるいはVTRというものが彼らのマーケットに輸出し得るというこういう非常に強い相関関係がございますね。しかも、日本石油は総合商社が申に入って買っております。ですから、彼らとしては石油を買うということによって日本商品をあの産油国に売るという一つの裏腹の関係がございますので、これは何も必ずしも石油会社だけの意図じゃなくて、日本のこういう経済体制そのものがガルフからの依存度石油輸入依存度というものを容易に減らせない、また減らさないことによって利益を得るというもう一つの側面があるということを私どもとしてはやはりよく考えなければ、単純にガルフ依存度を危ないから減らせ、減らしたらいいじゃないかというぐあいには右から左にはいかないのではないかというぐあいに感じております。  それから備蓄につきましては、先ほども申し上げましたように大体今の需給関係を、いろいろシナリオはありますが、一九九〇年代のごく初めの時期ぐらいまでにかけてだんだん需給関係がタイトになっていく、そこまでは比較的実質的に価格が余り上がらないのではないかという一つの有力なシナリオがあり得ると思います。そうしますと、その間に石油のシェアはそう急速に減らないということになりますと、その間だんだん需給が均衡していく方向に向かいつつ起きてくる中規模のクライシスといえども、それは大きなインパクトを持ちますので、それに対応していくためには現在考えられているような日本の国家備蓄、例えば現在千五百か千六百万キロリッターですね、それを昭和六十三年度三千万キロリッターぐらいまでふやしていこうというテンポは私は必要ではないかというぐあいに感じております。
  54. 和田教美

    和田教美君 もう余り時間がなくなりましたのであとの問題を詳しくお聞きすることができませんが、二言ずつお聞きいたしたいと思います。  まず尾本さんにお伺いしたいんですけれども、レアメタルの問題に限って御質問しますけれども、レアメタルの備蓄ということがいかに重要かということはよくわかりました。それで、さっきも石井さんの質問にございましたけれども、六十二年度までに大体レアメタル全体で六十日分ぐらいの備蓄を目標にしているということがございましたが、果たして六十日ということで大丈夫なんですか。というのは、アメリカなんか比較になりません、アメリカなんかは戦略備蓄ということがございますから、しかし大体三年分ぐらいあると言われておりますね、それから西独でも一年分ぐらいある。日本の場合にはフランス、スウェーデン並みぐらいのところを目標にしているわけなんですが、そんなことで大丈夫なのか。私は、こういうレアメタルなんという問題は、価格の変動も非常に大きいし、尾本さんがおっしゃるように民間でこれを備蓄しろということはこれは難しいと思うんですね、やっぱり国家備蓄だと思うんですけれども、その辺はどういうふうにお考えでございますか。
  55. 尾本信平

    参考人尾本信平君) 私も六十日の備蓄、先ほども非常にみみっちい案ということを申しましたけれども、これは実は通産省の提案でございまして、私もそれを聞いたときに本当に六十日でいいんですかなというふうな感じを、おっしゃるように私自身も経団連として思ったわけです。しかし、とにかくこれでもなかなか国会その他が通らないだろうといったようなことで、まず六十日を通そうということで資源エネルギー庁と一緒になって通したわけで、これでよろしいとは決して思っておりません。やはり少なくとも一年分ぐらい持たなければならないなと思います。
  56. 和田教美

    和田教美君 一年分。
  57. 尾本信平

    参考人尾本信平君) 思います。一年分ぐらい持たなければならぬかというふうに思います。しかし、それには先ほど申したように何か予算がないとか税金がどうだこうだというんじゃなくて、資源備蓄特別会計でもつくってくれればどんどん入れる、その備蓄特別会計に入れるといったようなことでもしませんと資源エネルギー庁、通産省の方々は大蔵省との折衝において大変御苦労なさるんじゃないかなと思います。何かそういうふうなことを諸先生方お考えになってあげていただきたいというふうに私は思います。
  58. 和田教美

    和田教美君 総理の私的な諮問機関である「平和問題研究会」ですか、あの中間報告にもこのレアメタルのことが非常に強調されておりまして、それには、やっぱり今の日本の重要産業にとって必要不可欠な物質だけれども、それにもかかわらず重要性が一般的にエネルギーだとか食料に比べると認識されていない。つまり、石油ショック以前のエネルギー対策を思わせるというようなことが書いてあるわけですが、まあ政府の国民に対するPRももちろん足らないと思うんです。なぜ必要なのかということが国民はよくわからない。財界も少しPRが足らないんじゃないかというふうに思いますが、いかがですか。
  59. 尾本信平

    参考人尾本信平君) おっしゃるとおりだと思います。ただ、先ほども申しましたように、十一品目が要求項目であったわけでございますが、実際私どももう少し大きく、タンタルみたいなものもやらにゃいかぬなと、こういうふうに思っておったわけでございます。そういうことになりますというと端的にPRするということがどうもなかなかうまくまいりませんで、おっしゃるとおりに確かにPRは足りないと私は思います。これらについては私ども自身も反省をしなきゃならない、かように思っております。
  60. 和田教美

    和田教美君 最後食糧問題が残りましたけれども、まあ最近農業関係で気がかりなニュースがたくさん出ているわけで、例えば気象庁の予報でことしは冷夏だと。もし本当に冷夏というようなことになったら五年続きの米の不作というようなことになる。しかも韓国米の十五万トン輸入だとか、こういうことで農民も一般の国民もいわゆる農水省の場当たり行政というか、農政というふうなものへの批判が非常に強くなっておるわけですが、我々の立場から見ると、これで本当に経済安全保障という点から大丈夫なのかな、米は余っている余っていると言われているけれども、実際にどうも調べてみると今の備蓄という概念に該当するものはほとんどもうゼロに等しい。せいぜいランニングストック二、三日分ぐらいだというふうなことで、そういう意味での経済安全保障という立場からこの食糧問題というものを考える一つのきっかけにはなるんじゃないかというふうに思うわけです。そういう意味でお聞きしたいんですけれども、並木先生は先ほどから、食糧の自給率が非常に低いということから、やっぱり自給率はもう少し高めるべきであるというふうなことを言われておりましたけれども、具体的にそれじゃ、自給率を高めるということになると相当な金もかかるわけですから、どの程度まで高めればいいのか。今は穀物だけで見ると大体自給率は三三%ですか。それからカロリーベースで食糧自給率を見ても五〇%ぐらいですね。それをどの程度まで高めればいいとお考えなのか。それともう一つ、その場合の、緊急対策を中心に考える場合の自給率を高めるという場合に、今のような飽食状態というものを前提としては考えられないと思うんですね。どの程度の、最低限の生活を維持するカロリーですね、それを計算の基礎としたらいいのかというようなことをお教え願いたいと思います。
  61. 並木正吉

    参考人並木正吉君) 食糧の自給率は、考え方から申しますと、国民の生存に必要なエネルギーを国内で自給できるようにしたい。そのエネルギーが結果的に何%になるかということは、平時の状態で申しますと、ふだんの食生活が、つまりエネルギーで申しまして何キロカロリーの食事をしておるかということと関係しますので、その意味では自給率は結果論になってしまいます。したがって私は、目標とすれば、生存に必要な穀物を中心にした場合には一人当たり百五十キロ程度というのが一つの目標になるのではないかと思います。百五十キロと申しますと、一人一日当たりに直しまして千四百四十キロカロリーぐらいになります。それは、一人一日ということで申しますと二千キロカロリー平均くらい欲しいわけですけれども、その他の食物で残りは補うというふうに考えればそれが一つの線になるのではないかと思います。  先ほど私が深海先生と違ったことを言ったようなお話がございましたが、私は水田の生産力を最高度に発揮するということが必要だと申しましたが、そのことによって得られる一人当たりの穀物はまず非常に頑張って百五十キロがやっとだというふうに思っております。したがって、水田の生産力を最高度に発揮するというふうに持っていきたいと申しましたが、自給率の水準で申しますと私は深海先生よりやや控え目な水準を申し上げておったというふうに御理解いただければと思います。
  62. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも参考人方々ありがとうございます。  第一次石油ショック以来十年たって、資源エネルギー食料問題というのが非常に大きな問題で、少し大きく言えば、やっぱり核戦争の問題と並んで人類的な課題だということもよくわかりました。参考人方々お話の中から浮かび上がってくる今の危機の原因、解決方向、いろいろあると思うんですけれども、一つ当面の大きな問題として浮かび上がってきているのは、イラン・イラク戦争ホルムズ海峡危機等々に出ている、その底にある米ソ対決。それからアメリカの中東再支配のための介入、それに対応するソ連の行動などなどがやっぱりエネルギー問題に非常に大きな危機可能性を生み出しているというお話一つありました。  この問題、もう時間もありませんので多少感想的に申しますと、末次参考人も触れられましたけれども、日本石油輸入のうちホルムズ海峡経由分が六五%でアメリカは依存度三%、西ドイツ一一%、フランス二八%だそうですから、非常に特別の位置にある。その点で日本が平和的な外交政策、自主的な外交政策をとることが非常に大事だということですね。私は、改めて強く感じました。より大きく言いますと、非同盟諸国首脳会議が要求し、国連総会でも決まり、ブラント委員会も支持表明している新国際経秩済序、さらにはそれの裏づけとなる新しい国際政治秩序、そういうものをつくり上げていかないと二十一世紀は大変なことになるということを改めて感じております。  もう一つ、やっぱり大きな、より長期的な危機の原因として浮かび上がってきているのは、現代文明の浪費と申しますか、それが根本で、しかもその浪費構造を変えていく上で、代替エネルギーの問題等々なかなか困難もあるということが大きく浮かび上がってきておりまして、それについてもエネルギー消費大国としての日本の責任や今後の政策もいよいよ大事になっているというように思いました。  私は、二番目の問題に沿ってちょっと幾つか質問をしていきたいと思うんですが、まず深海参考人にお伺いしたいと思うんです。  深海さんは、このエネルギー資源問題を考える際、時間的範囲、それから空間的範囲、この広がりを見ることが大事だというふうにおっしゃって、ローマ・クラブの「成長の限界」に触れられましたけれども、その後アメリカ合衆国政府の特別調査報告の「西暦二〇〇〇年の地球」というのが出たんですね。これは政府が発表したものとしては初めてのものだということが書かれていて、百人のスタッフで三年研究したということで、これをひとつ見てみますと、なかなか世界資源問題というのは深刻だというふうに思うんです。例えば、石油については、七六年の産出量二百十七億バレルが一定ならば、「世界石油埋蔵量は約三〇年間で、また全石油資源量は約七七年間で底をつく。」というのが一巻の二百六十八ページに書いてあるんですね。石油の最初の発掘というのは一八五七年、ペンシルバニヤだったそうですから、この計算でいくと、何十万年かかかって蓄積された石油という資源が、どうも資本主義世界になって二百年ぐらいで全部枯渇させてしまうということになるんで、これは非常に大変だと思う。この「西暦二〇〇〇年の地球」では、二百六十四ページ、二百六十五ページに、「世界の利用可能なエネルギー資源量」の見積もりが出ていて、石油、天然ガス、固体燃料、それからさらに代替燃料として注目されているオイルシェール、タールサンド、ウラン、こういうもの全部入れても、いろいろ試算があると書いてあるんだけれども、もし需要の年増加率二%の場合は百三十三年で尽きる。大体二十二世紀でなくなる、西暦一二一〇年になくなると書いてある。もし年増加率五%だと、資源の寿命は七十年余りと。これはやっぱり二十一世紀、二〇四六年と書いてありますけど、これでなくなってしまうという数字が出ていて、まあ、この数字がどこまで信用できるのか、僕も専門家でないのでわからないんですが、大体余り誤差なく、今の科学知識の範囲だと、アメリカ政府の特別報告のような、長期的にはそういう危機があるとごらんになっておられるのかどうか。その点をまずお伺いします。
  63. 深海博明

    参考人深海博明君) 今の御質問、大変重要ないわば資源エネルギー問題を考える根本に通ずるわけでございまして、資源枯渇が差し迫っているのかどうか、あるいはどの程度の規模なのかということでございます。  この細かな意味での今御指摘いただきました「西暦二〇〇〇年の地球」で出されている想定が正しいのかどうかということにつきましての評価につきまして、実はいろいろな見方がございまして、これはいわゆる先ほど石井先生からも御指摘いただいた、例えば高速増殖炉とかあるいは核分裂じゃなくて核融合とかあるいはいわゆる再生型のエネルギーであるとか、そういうものがどの程度使えるのかということによって展望は変わってくるのではないかというふうに思いますけれども、別の資料によれば、例えば核融合が起こればいわば半無限的に、現在の資源消費量であれば五、六百億年のオーダーのものだと、あるいはそういう再生型のエネルギーが使えるようになれば、これは絶えず絶えず供給されるようになるというような形でのものもございまして、私は一番重要なことは、要するに今おっしゃったような意味資源がなくなり出しますと、先ほど上田先生が御指摘になったわけですが、第一次石油危機、第二次石油危機以降の例えばエネルギー需要石油需要世界的な伸び、先ほども申しましたような意味でそれは北欧の先進国で主として起こっているわけでございますが、こういうのを見ますと、いわば一九八〇年代に入って、ことしあるいは昨年末から状況は変わってきておりますけれども、絶対的にエネルギー消費は減ってあるいは石油消費も減るという状況が起こっている。非常に重要なことは何かというと、結局だんだん不足してまいりますと、調整メカニズムが働いて価格は上がるし、消エネへのインセンティブが働くと、こういうことでございますから、絶対的な意味で概数的にあるパーセントで成長率が伸び続けるという想定ではなくて、やはり調整メカニズムが作用することになってくるんだということも重要なポイントではないかというふうに思うわけでございます。  そこで、むしろ専門家たちが今懸念しておりますのは、先生が御指摘になりましたこの「西暦二〇〇〇年の地球」の部分ですと第二巻の方ですね。たまたま私、ここに持ってきているのですが、むしろ人類が資源を消費するに伴って、エネルギー消費に伴って起こる例えば大気中のCO2濃度がふえるとか、あるいは石油から石炭へ転換いたしますと、今度はSOxだとかNOx等々による酸性雨だとかそういう問題というのが、むしろ資源量そのものの限界というよりは資源消費、人類がどんどんやっておきますと、それが環境汚染あるいは環境容量を超えるのではないかというその問題がむしろ今は専門家の間では議論されているのではないかというふうに思いますけれども、しかし、どういう意味であれ、上田先生御指摘になったような意味で、まず我々のこういう問題を考える前提としてそういう資源全体、資源力、賦存力、それからいわば環境容量そのものがどうなのかという検討をしなければならないということは確かでございますけれども、私は先生のおっしゃるよりはやや楽観的、しかも私は経済をやっておりますので、そういう意味での調整メカニズムが作用するのではないか。例えば第一次、第二次石油危機の調整過程を見ておりましてもそういう動きが出ておりますので、先生がおっしゃるほどには深刻ではございませんけれども、問題の所在は確かにおっしゃるとおりだというふうに考えております。
  64. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 確かに私も第二部を読んで驚いたのですが、CO2がふえて地球の気温が下がる、南極西部の氷が解けると地球上の海面が全部五メートル上がるというようなことが書いてあって、これはどうなることだろうということを思ったのですが、今深海さんが言われた二番目の調整メカニズムの問題で、ただ調整メカニズムがいい方向に働くのか悪い方向に働くのかという問題がもう一つあると思うんです。  末次参考人も先ほどおっしゃっていましたけれども、今若干の楽観論が生まれて石油価格が下がったと、石油価格が下がると石油消費が上がるし代替エネルギー開発も緩んでくるというふうに言われたのですね。それでそういう問題がやはりメジャー、大企業の行動の仕方、調整メカニズム、経済メカニズムの働き方ですね、ここがやっぱりどうも非常に大きな問題になってくると思うんです。私、ここに持ってきたのは東京銀行月報の八三年二月号で、「国際石油産業の再編成」という調査報告が阿部由紀さんでしたか、載っておるのですけれども、これを見ると今の再生エネルギー、代替エネルギー開発が落ちていることがこう出ているのですね。「大手石油企業が、自由世界石炭埋蔵量の三〇〜三五%、ウラン資源の二〇〜三〇%に加え、オイル・サンド、オイル。シェールの公的所有以外の開発権利のほとんどすべてを保有し、」と、メジャーがほとんど持っているわけですな。それで「原油価格の軟化に伴い、メジャーズは、それぞれの代替エネルギー開発戦略に修正を加え、三十億〜百億ドル台のプロジェクトの中止に踏み切ってきた。」ということがあるんですね。だから僕は、やっぱりメジャーの行動、これに公的規制をそれこそ加えないと、調整メカニズムに任せられない、むしろ調整を社会的に加えないとだめだというふうに思うんです。  先ほど尾本参考人の話をお伺いしながら、マルクスの「資本論」の労働日にある言葉を思い出しまして、我が亡き後に洪水は来れ、日本語で言うと、後は野となれ山となれと青うんですけど、これが資本家と資本家国家の共通のスローガンなんだ、だから社会的調整が必要なんだということを言っていましたけど、どうも先ほどのお話だと、日本は株式会社国家で、国家備蓄はできないから、国にやれと言ったら、国もまた、後は野となれ山となれで何もしないというふうなお話だったようですけれども、やはりこういうメジャーの行動、メジャーだけでなく日本石油企業についても、公害問題、環境問題、エネルギー問題等々を考えると、公的な社会的な規制、そういうのがやっぱり要るんだと思うんですね。  日本でも、電気事業法、石油業法などなどで、ある国家規制がエネルギー関係の企業に加えられているし、それから、公的事業としても石油開発公団その他ありますけれども、やっぱりヨーロッパではフランス、イタリア、イギリスなど公社も多いし、それから国有化もかなりされているんですね。どうも日本は今、臨調の行政改革で公社まで解体というので、我々共産党反対はしているんですけれども、本来は、こういう重大なエネルギー分野ではむしろ公的な規制、公社化、我々はエネルギー公社というふうに言っているんですけれども、それが必要なんじゃないか。  それを、尾本さん言われたような、備蓄だって株式会社はできないんだという原則をお持ちの企業だけに任せておいたんでは、やはりいろいろできない。末次さんも、タコつぼ的思想も変えなきゃならぬというような、いろいろ課題を言われていたけれども、そういう大きな困難な課題を解決する上で、公的な規制をもっと強化する、国民的な合意で、それが必要になっているんじゃないか。末次さん幾つかの問題を出されたけれども、そのためにもそういう方向が要るんじゃないかというふうに強く思うんですけれども、末次さんいかがでしょうか。
  65. 末次克彦

    参考人末次克彦君) エネルギーとか資源の国際的な危機回避の一つ方法論としては、そういう重要であれば重要であるほど、重みのある資源とか商品というものを、日本的な立場からいいますれば、できるだけ政治的な色合いで動かされない商品、つまり非政治商品化していくとか、自由な需給関係で動く市場メカニズムという、見えざる手ですね、やはりこれのプリンシプルでかなりの部分が動くというぐあいにしておく方が、日本のような商人国家的な立場の場合は非常にいいだろう、こういう一つのナショナリズム的発想法からいきますと、そういうような一つ考え方が出てくるんだろうと思いますね。  現に、石油も、確かにメジャーズの特別な利益の蓄積というような長い歴史を背景にしてOPECが形成されていった。これは国際的な政治構造の一つ変化だったと思いますけれども、しかし、そういう政治商品化した結果どういうことが起こったか。今日、現在の、八〇年代世界経済危機というようなことからいきましても、先進国はいいけれども、LDCあるいはLLDCの方へ一層しわが寄ってしまっているという、こういう現実を考えますと、石油なんかの場合はそういう市場メカニズムで動いて、できるだけ政治商品化しないという方向の方がやはり一つはいいのではないかという感じはするんですね。ですから、これを国内のいろんな問題にそのまま当てはめるわけにいきませんが、基本的には、先ほど上田先生も御指摘いただきました、例えば日本の重要なエネルギーセクター、それがタコつぼ化している、なかなか融通無碍にいかないというような問題も、一つ解決策といいますか、打開策は、この市場メカニズムというものが働くように誘導政策をとるとか、そういうようなことがやはりあるのではないかというぐあいに感じます。  組織の現実は、私どもが信念として持っておりますのは、基本はやはり個人のインセンチブというものをベースに動いていく、競争原理で動いていくというものをベースにしながら、行き過ぎたところを公的にも規制していく、あるいは誘導政策を導入していくというのが基本ではないかというぐあいには感じているわけですが、その使い分けが大変難しいんじゃないかという感じをしております。
  66. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 最後の質問、並木参考人にお伺いしたいんですが、食糧の自給率の問題、今も問題が出ました。並木さんは、自給率の極端な低下があった、それで米の消費減、これは昭和三十七年以後のデータを出されて、ただし、小麦はほとんど一定で、畜産物、油脂の増大が主だった、そういうふうにおっしゃいましたね。  どうもいろいろ本が出てくるんですが、NHKの高嶋さんという記者が書いた「アメリカ小麦戦略」という木がありまして、これはNHKの特集放送で非常に大きな反響があって、高嶋さんが本にされたもので、僕も読んでもう本当にびっくりしたんですが、アメリカ農務省のお金で、アメリカ西部小麦連合会が主体になって、日本食糧庁その他も協力してキッチンカーのキャンペーンをやった、昭和三十一年から三十六年にかけてというんですね。並木さんが言ったデータの直前です。二百万人参加者があって、それでパン食奨励をやったんですね。アメリカ西部小麦連合会の会長は、「一番印象に残っているのは、日本で行なったキッチン・カーのキャンペーンでしょう。あれだけ劇的な成果をおさめたプログラムは他にありませんでした。」、それで、「日本のケースは、私たちに大きな確信をあたえてくれました。それは、米食民族の食習慣を米から小麦に変えてゆくことは可能なのだ」、今関心はもう他のアジア諸国に移っているということがあって、後の方では、昭和四十五年に一億ブッシェル達成で会が開かれて、内村良英氏、当時食糧庁次長で後の農林次官が、だるまに目を入れた話なんかも出ているんですけれども、やはり僕は、その後のデータは並木さんがおっしゃったとおりでも、こういうアメリカのかなり強制的な小麦売り込み戦略ですね、これは学校給食からパン食奨励まで、パン産業育成までいくんですけれども、この点はやっぱり外せない問題じゃないか。私どもはこれを日米の従属構造だと思うんですが、今後この食糧自給問題を考えるとき、これは農産物交渉でいろいろあるし、今度の韓国からの輸入問題で、カリフォルニア米が入るんじゃないかということで農民も非常に心配していますけれども、そういうことで日米関係、特に食糧に関する関係ですね、そこの一方的な構造、私どもが言えば従属構造ですね、ここら辺の問題は並木さんの言われる自給率向上の問題とどうつながっておると判断しておられるか、この点最後にお伺いしたいと思います。
  67. 並木正吉

    参考人並木正吉君) 簡単に申し上げます。  日本人の一人当たりの米の消費水準が、史上で最高を記録いたしましたのは大正七年でございました。百五十数キロでございます。それが漸次減りまして、戦争中は米の生産が減ったことがありまして減ったわけですが、それが戦後回復して、昭和三十七年に百十八キロまで回復をいたしました。これは白米でございます。  もし今、上田先生が御指摘になりました学校給食に対してパン食を奨励するというあの政策がなかったとすれば、恐らく、日本人の米の消費量の戦後のピークはもう少し高まったと思います。私の推定では、多分百三十キロから百四十キロくらいに高まることはあり得ただろうと思います。なぜその数字を言うかと申しますと、韓国が大体百三十から百四十キロをピークとして米の消費水準が下がっているという事実がありますのと、韓国は小麦の輸入はありましたけれども、それは学校給食では使わなかったわけでございます。そこで、そういう差は出得るというふうに私は思います。しかし、三十七年以降は明らかに畜産物と油脂との代替で米の消費が減っているというのが事実だと思います。  それから、第二点のアメリカに対する従属構造という点でございますが、私がここで申しました食糧の自給率を高める政策をとり、またあるいは、ナショナルミニマムという言葉が深海先生からありましたが、それを実現するとすれば、それがアメリカの日本に対する穀物の輸出に対する影響度は現在の穀物の輸出量をふやさないという形の影響があり得ると思います。それを減らすという影響までは私はいかないというふうに判断をしております。しかし、私が申しました食糧の自給率をもっと高めるための政策というのが実現をするためにはかなりの年月を要しますので、その年月の間日本でふえると考えられる飼料穀物の消費量があるわけですから、私が申しました考え方が一番うまくいった場合にアメリカの穀物の輸出量は減らない程度になるであろうというふうに思います。
  68. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 参考人の方お忙しいところをどうもありがとうございました。せっかくの御高見、私はかの委員会をかけ持ちしておりましたので、並木さん以下の参考人の御意見をお伺いすることできなかったので、非常に申しわけないと思っておりますけれども、まず最初に深海先生にお願いしたいんですが、一番最後でしたか、つまり、担い手の問題で、国あるいは企業それから消費者というか市民、これがやはり分担しなくちゃいけないということを言われて、確かに私も、消費者といいますか市民、これが非常に関心が薄いんではないかということを感ずる次第であります。私たしかスイスだったと思いますけど、スイスの人から聞いたように思うんですけれども、あそこでは食糧の備蓄なんかは非常に進んでいる。小中学校のころからそういった学校教育をやっているんだというふうな話を聞いたんですけれども、日本人がそれに対して関心が薄いのは、国民性もあるかもしれませんし、あるいは戦後の一般に防衛意識が非常に低下していることにも関係があるかと思うんですけれども、具体的にどういう方法で消費者の備蓄の意識を高めていったらいいか、何かいいお考えがあればお伺いしたいと思います。
  69. 深海博明

    参考人深海博明君) これは現段階で関先生がおっしゃいましたようにどうすべきかということはなかなか難しいと思うんでございますけれども、私は大学におります関係で常に感じておりますのは、こういう資源エネルギー食料問題というようなことにつきまして、これは初等教育、まあ非常に今、大きな教育改革も進んでいるので、こんなことを申し上げると恐縮なんですけれども、やはり教育レベルでもう少し問題を教えるというようなことからスタートしませんと、今直ちに例えばそういうPRを始めるとまた逆の面で消費者あるいは一般国民の方々の誤解を招くという点もあるかと思うんですけれども、先ほど最後に私申したんですけれども、正しい情報なり現状を絶えず一般の国民が理解できるような形で流していくということと局時に、やはりこの問題は、私は個人的にはもう少し初等教育のレベルからこういう問題の重要性を教育していくというところからスタートしませんと、なかなか今の日本現状ではうまくいかないのではないかというふうに思っておりまして、面接先生がおっしゃったような意味での切り札として今の段階でどうしたらいいのかということについては余りアイデアを持っておりませんで大変申しわけございません。
  70. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 今の上田さんの並木さんに対する御質問ともちょっと関連があると思うんですけれども、資源確保、安くしかも安定的というのはトレードオフの関係にある。しかも経済摩擦の問題もあると思うんですけれども、確かに日本食糧は、アメリカ、カナダ、オーストラリアと、まあ友好国でありますけれども、しかしやはり天候の問題であるとかあるいはいざという場合の船舶の問題とかありますので、最小限度の自給は平生から考えておかなくちゃいけない、自給率を高めることは考えておかなくちゃいけないと思うんですけれども、深海さんは、現在どういうものについてどの程度まで自給率を確保できるようにしておいたらいいというふうにお考えでしょうか。
  71. 深海博明

    参考人深海博明君) 先ほど並木参考人がお答えになったとおりで、私が感じておりますのも、いわば最悪の事態が生じた場合に日本人の最低の生存が確保できるという、そういうレベルではなかろうかというふうに考えているわけでございまして、先ほど自給率についての御質問のときに並木先生がおっしゃったんでございますけれども、そういう文化的な生活等々というのではなくて、日本人のいわば最低限度の生存が維持できるその水準だけ、これは先ほど先生の御指摘ですと大体百五十キログラムでございましたか、その程度ということでございまして、それがやはり一つの目安になるのではないかというふうに思っておりまして、何かこれは並木先生と同じたとは思うのでございますが、唯是さんもまた一人一石というような話がございまして、まさにそのとおりで、私もそのレベルで、それ以上さらに自給率を高めるというよりは、むしろ最低限度ただ日本人が生存を維持できるという、そういうものを一応の目安として考えるべきではないかというふうに思っております。  よろしゅうございましょうか。
  72. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 並木さんの話を伺わないで質問して大変恐縮なんですけれども、あるいは既に述べられたことであればよろしゅうございますし、またほかの質問者が質問したことで、重複するのでありましたならば取り下げますけれども、食糧資源としての水産物ですね、水産資源。最近日ソの漁業交渉でありますとかだんだん狭められてきておりますし、アメリカとの関係もございますし、あるいは鯨の問題なんかもだんだん狭められてきつつあるように思うんですけれども、水産資源をこれも最小限度確保していく必要があるだろうと思う、殊に日本人のたんぱく源として非常に重要なものですから。それで具体的にどういう方策を今から講じていったらいいかということを御質問したいと思うんですけれども。
  73. 並木正吉

    参考人並木正吉君) 私は水産は必ずしも専門的にやっている者ではありませんけれども、食糧問題を一応専門にやっている者として常識的な答えを申し上げますが、やはり水産資源確保という意味で一番大切なのは、日本の領海といいますか、ないしは日本の二百海里の中でとれる、つまり沿岸でとれる漁業を、これから先さらに栽培漁業とかいろいろな考え方がありますけれども、養殖というのではなくて、無資源そのものをふやすという形をとりながらそこに重点を置くべきではないかというふうに私は思います。
  74. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 実際に行われているかどうか私知りませんけれども、例えばイワシとかサバとか非常にたくさんとれる。これは余り食糧としてではなしにほかの魚のえさなんかに使われているんですけれども、こういうのをやはり備蓄しておくために、例えば粉末にして備蓄するとか、そういうふうなことについて政府が補助を出すというふうな考え方はいかがでしょうか。
  75. 並木正吉

    参考人並木正吉君) イワシの持っておりますエネルギーとたんぱくを有効に利用するための方策というのは私は奨励すべきだというふうに思いますが、現在とれておりますイワシを粉末にして、そしてそれを備蓄する政策が現時点でいいかどうかということになりますと、コストとその財源との関係が頭にありませんので、その点については私は答える資格がございません。
  76. 吉國隆

    説明員吉國隆君) 水産物の確保につきましては並木参考人の方からお話がありましたように、日本の近海でとれるもの、これを現在一千万トン余りの漁獲量のうち約八百万トンは日本の領海ないし二百海里にほぼ相当します沿岸並びに沖合漁業でとっておる、こういう実情でございまして、これを栽培漁業と言われております資源の増殖を図りながら漁獲していくという方法を含めまして大事にしていくということが基本であると考えております。  今お話しの多獲性魚の活用という点につきましてやはり緊急時には陸上でつくります農産物に制約が加わるということからいたしますと、たんぱく源としてこれを極力食用に活用するということは考える必要があると思いますが、消費者の選択ということを踏まえて考えますと、平常時におきましてはやはりある程度えさ用等に活用されるということであろうと思います。そういうえさ用としての活用という面で粉末にしてペレット状にして利用するとかあるいはイワシ、サバの成分を肉とまぜて使うフィッシュハンバーガーというようなものが開発をされて、そういったいろんな形での商品化については研究開発がぼつぼつ進んでおるというふうに考えておりますが、備蓄とつなげて粉末化という点については研究が進んでおるかどうか私はよく承知しておりませんけれども、将来に向かっての安定供給という点からすれば近海での資源の増殖とそれを確保できる体制を不断に整備しておくということが大切であろうというふうに考えております。
  77. 関嘉彦

    ○関嘉彦君 どうもありがとうございました。
  78. 秦豊

    ○秦豊君 私の場合は十分間ですから質問を極めて限定したいと思います。  朝からいろいろと御高見を拝聴したわけなんですけれども、参考人皆様御存じのように、我が国の正式な政府機関の一隅に総合安全保障関係閣僚会議があります。ところが、私の知る限り、その公式な場において総合安全保障政策の一環としての国家備蓄、例えばストックパイルあるいは商業備蓄、バッファーストックについて時間をかけた論議が行われたということを寡聞にして知りません。したがって、先ほど尾本参考人が率直に生き生きと述べられたあの御発言の部分、ああいう寒い風景というのは今後とも持続されるであろうと思います、残念ながら。  つまり、この総合安全保障政策というのは歴代の保守党政権にとってはキャッチフレーズにすぎない、何ら実態を備えないままにスローガンと言葉だけが独走をしている、したがって、特にこの保守傍流の中曽根政権になってから目立つことはこの総合安保のごく一部分、ワン・オブ・セムにすぎないある政策分野、狭義の防衛についての例えば正面装備の早期取得というふうな意味での突出は歴然としておりますけれども、政策判断、デシジョンメーキングとして例えば今、対日要求に牽引されていたずらに財政難の中を無理して正面装備の増強にのめり込むことが賢いのか、あるいは、国民生活の生存を大前提にするのが安全保障ですから、それを第一義にするならばむしろ食糧からレアメタルに至るエセンシャルな品目すべてについての国家備蓄を優先することがより賢明なのか、そういう比較考量はついぞ行政のあらゆる部分について行われていません。  したがって、私は当委員会のまさに存在意義があると思うんですけれども、したがって我々全委員視点というのは行政側のいわゆる総合安全保障政策に何が欠け落ちているかということについて、やはり突き詰めて凝縮した提言を行うところに我々の役割もある、また、ねばならない。これが私自身の一つ視点です。  こんなことを申し上げますのは、先ほどの尾本さんの話に触発をされたのと、それから私自身が質問時間が毎回膨大なものですから、ついそのすき間を質問主意書で埋める癖があります。五十六年の五月に、議長経由で出した私の質問主意書の政府総合安全保障政策に関する中で十数項目質問をいたしまして、そのうちの何項目かはアメリカ、スウェーデンの例を引きながら、政府として有事の国家備蓄対策はむしろ有事法制等より優先すべき施策対象ではないのかとか、あるいはさっき申し上げた戦略備蓄と商業備蓄について政府として考えている有事備蓄対策の概要を明らかにされたいとか、あるいは別な項目では食糧、飼料の備蓄対策、それからレアメタルの備蓄についての素案、あるいは危機、有事の期間を最低六カ月として試算をして、それに要する必要量と必要経費を積算しなさいというふうな提言とか、とにかくいろんなことを述べた質問をしたわけですが、それについても御意見は受けとめ、今後鋭意検討を進めていく所存であるという干からびた例の作文が返ってくる。一年たって同じようなことを質問しましても大体便われている日本語は同じです。だから、尾本参考人のあの御発言に結びつくわけです。これが実態だと思います。私は、このままでありますと、やはり総合安全保障政策というのは国内向けの非常にきらびやかな、またやわらかい、スローガンとしては国民の合意を得やすいけれども、いつまでたっても、厳密に解析してみると一九八四年もそうであり、一九八九年もそうであるという状態が残念ながら続いていくのではないかと思えてなりません。  そこで、尾本参考人に伺いたいんですけれども、まさに私の申し上げた総合安全保障政策の中における国家備蓄の位置づけについて、政府のとっている施策の現状についてどういうふうな印象をお持ちなのか、あるいはあるべき備蓄政策の方向についてちょっとお伺いできれば幸いです。
  79. 尾本信平

    参考人尾本信平君) ただいまの御質問といいますか、御意見に、私は大変感激をいたして拝聴をいたしておったものでございます。  私自身、そういった問題でここ十年来随分努力してきたつもりでございます。しかし、事、志と違ってなかなかうまくいかなかった。いかなかった原因が今御指摘のようにことしも来年もといったことで、何か官庁機構あるいは政治機構あるいは考え方、先ほどちょっと私は国庫というものは複式簿記ではない。単式簿記じゃないか、現金出納会計ではないか、そういうところに原因するんじゃないかとまで思わざるを得なかったということも申し上げたわけでございますが、そういった問題については国の主権を持っておられる国会の諸先生方、もう少し突っ込んだ研究をしていただいて、何も太政官布告を今でも守っておる必要はないんじゃないか、複式簿記の時代なら複式簿記時代にちゃんとやったらどうですかと、そこで具体的に私が申し上げたいのは、資源備蓄特別会計というものでもつくっていただいて、外為特別会計と同じようにしていただいて、通産省の皆さんがそう大蔵省と苦労をしなくて必要な備蓄はどんどんできる、こういうふうなことにしてあげていただきたいというのが私の念願でございますし、ぜひこの会で、そういうふうに方向づけていただく、そうでないと今の御質問のことと同じように毎年同じことを繰り返すことになるんではないかということを心配いたしておるものでございます。  こんなことでよろしゅうございますか。
  80. 秦豊

    ○秦豊君 ありがとうございました。  これは高木鉱業課長の分野かもしれませんが、時間がもうあと二分半しかないから、もしこの場ではみ出すようであれば、委員長また各党の理事先生にお願いをして、資料として当委員会に御提出を願いたいと思いますが、例えば私も三年来聞いておりますように、例えばニッケル、コバルト、まあリチウムも僕は入れておいたんですけれども、これは通産のあれでは入ってない。タングステン、モリブデン、ニオブ、マンガン、パラジウム、ストロンチウム等々、いわゆる俗に十一鉱種と言われているものの現在備蓄量ですね、それから数量、これを知って把握しておきたい。それから、あなた方が試算をした場合の積算の根拠にした数字はどういう生産活動を前提にしたものなのか。  それから、俗に二カ月間、六十日分のレアメタルの備蓄というが、それは数量的には最終的に凹凸なくなだらかにすべての十一鉱種について二カ月の備蓄を目指しているのか。多少の凹凸はいたし方ない、つまり、若干政策選択としてプライオリティーを挿入する余地がありますと、こういう意味なのか。その辺を伺いたいが、もし不可能ならば前提しましたように委員長経由、資料として提出を願いたい、こう思います。
  81. 高木俊毅

    説明員(高木俊毅君) ただいまの先生の御質問でございますけれども、私手元に詳細なる資料等持参いたしておるものもございますけれども、持ってきておらないものもございますので、後日資料として提出さしていただきたいと思います。  ただし、最後に御質問のございました六十日分でございますけれども、現在七品目につきまして六十日分を達成すべく努力途上でございまして、先生の御指摘のございました、これに追加すべく、鉱種につきましては今後の課題であろうかと私ども考えておる次第でございます。  以上でございます。
  82. 秦豊

    ○秦豊君 じゃ資料をよろしくお願いします。
  83. 植木光教

    委員長植木光教君) それでは資料を本委員会に提出してくださるようにお願いをいたします。  以上で質疑は終わりました。  参考人皆様にお礼のごあいさつを申し上げます。  本日はお忙しい中を本委員会に御出席願い、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきましてありがとうございました。  ただいまお述べいただきました御意見等につきましては今後の本委員会調査参考にいたしたいと存じます。まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十三分散会